名作「天空の城ラピュタ」のありえたかもしれないもう一つの姿
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
この世は不条理と理不尽に満ちている。
とびきり優秀で、自らを高貴な身分と信じながらもそれを明かせぬ若い男にとっては、特に。
ラピュタの存在と歴史をただの伝説だと一蹴した無能な上層部、冷たい視線、困惑する両親。
(36行省略されています)
ただ遺言のままに保存してきただけの古い文献がおさまった、誰も触ることのない本棚。
鬱屈した日々が彼の野心を育てた。
無能で不愉快な豚どもにも首を垂れ、騙し、利用し――そして、最後には何もかもを支配するのだ。
遥か天空の城こそが、王の座所なれば。
若くして大佐となり、政府特務機関を牛耳る冷血漢ムスカはついにラピュタへの最後の鍵を手にかける。
かつて祖先が捨てたゴンドアの谷で細々と暮らす、一人の子供。
ただの農民に落ちぶれたかつての真の王家の家系、その最後の一人。
神秘の飛行石は今もそこにある。
なに、金さえ積めば、事は容易く進む――。
楽観する彼は、待ち受ける運命を未だ知らない。
この作品は、名作「天空の城ラピュタ」のありえたかもしれないもう一つの姿を見せてくれる。
"前世"を知る故に清廉な少年王を演じるうち、次第に真の『最後のラピュタ王』として立つことを決めるシータ。
原作のジブリ作品には珍しく徹底して悪役として描かれたムスカは、シータに振り回されながらも自らの誇りと喜びを見出していく。もちろん原作主人公、パズーもその明朗快活さで活躍してくれる。
特に出色なのはムスカの描写。
野望の為に悪に生きる男にも、捨てられないものはある。
もはや領地も民もなく、しかし誇り高い少年王は、世の汚濁を力にしてきた男には眩しいのだ。
『最後の王族として、ラピュタの末裔として、僕らは仕事をせねばならない。兵器を壊し二度と使えないようにする。そのために浮遊島へ向かうことを、誓え』
『僕とともに来い、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ!』
彼ら三人のどたばた冒険行は一抹の悲しみと、それを補って余りある爽やかな感動を残してくれる。
素晴らしい「もうひとつの天空の城ラピュタ」でした。二次創作かくあれかし。
この世は喜びに満ちている。
誇りと、仕えるべき主と悪友と、心弾む明日を得た男にとっては、特に。
▼読む際の注意事項など
せっかく完結したので、一度原作を見てから通しで読むのがオススメ。
BGMやせりふが脳内で再生されるぞ!
▲短縮する
Tugu 2019年11月12日(火) 02:21 ★ (Good:53/Bad:3)