「才能」と「師弟」を原作と異なる切り口で描いた物語。
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
この小説には、原作に登場する雛鶴あい、夜叉神天衣に加えて、3人目の「アイ」が登場します。
その正体は、転生主人公の脳内別人格。
主人公を「マスター」呼びする少女人格の脳内AI「アイ」です。
(33行省略されています)
しかもこのチートAI、どうも神様チートではなく、主人公が幼少期から時間をかけて一から育てた、いわば自作チートらしいことが作中でほのめかされます。
──「才能」は後天的に作れる(伸ばせる)のか?
これが物語の大きなテーマの一つとなっています。
「才能」は原作でも重要なテーマであり、才能の「壁」に挫折する者たちの描写も原作の大きな魅力です。
しかしこの主人公は、少なくとも作中では挫折とは無縁です。
本人の棋力は並みの新人棋士レベルですが、作中最強の「名人」にすら圧勝できる脳内AIのいう通りの将棋を、さながら佐為の指示通りに囲碁を打つヒカルの如く指すことで、公式戦で勝利を重ねていき、あるいは舐めプして適度に負けたりします。
当たり前の勝利。そこに喜びはありません。
ただただ賞金を得るための作業。
本人が自分を脳内AI抜きでは凡才と評価しているからこそ尚更に。
こうして物語開始時点での主人公は、華やかな戦歴とは裏腹に、脳内AI抜きでプロになれなかった挫折からは目を背け、完全に腐りきっています。
そんな主人公が将棋の楽しさを思い出す切欠は、原作と違って八一と接点がなくなり弱体化していた天衣の指導を頼まれたこと。
初めは興味本位から、しかし次第に真剣に、天衣の育成にのめり込んでいきます。
自分と同じように「才能」を後天的に伸ばすために。
そしておそらく、自分の「才能」と再び向き合うために。
──「師弟」関係は師匠と弟子にそれぞれ何をもたらすのか。
この物語のもう一つの大きなテーマです。
つまり、最高に強くて可愛い天ちゃんを読める小説ってことです。
天衣ちゃん可愛いよ天衣ちゃん。
▼読む際の注意事項など
主人公の脳内会話で原作12巻までのネタバレが頻出します。
主人公の原作語りや公式戦舐めプが人によっては不快に感じます。
姉弟子、桂香さんの扱いが原作より悪いです。
天ちゃんは八一好き好きじゃないと嫌な人には合いません。
天ちゃんの棋風は、主人公の魔改造によって原作とかなり変わります。
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あんべ瀬木帆/2020年04月12日(日) 02:55/★ (参考になった:47/ならなかった:16)