食事は偉業
(衝動的推薦につき乱文注意)
▼読む際の注意事項など
タイトルのわかりやすさを真に受けておやつ感覚で読もうとすると胃が持ちません。かなり重い話です。鬱小説でも読みたいような気分のときでないと序盤の絶望的状況を読み進めるのは難しいかもしれないです。
(14行省略されています)
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
しかしながら、はじめから重い話と分かって読めばこれほど素晴らしいグルメ(?)小説はなかなかないと思います。生々しい心情描写の分だけ、食事の解像度も上がるというものです。さらに主人公は周囲からの善意も受けて少しずつ状況を克服していきます。最新話の主人公を一話と比べればまるで子供の成長を見たときのような感慨を覚えるでしょう。
作者はこの作品について、
> 「ドカ食いダイスキ!もちづきさん」にインスパイアを受けて書き始めたんですが、もう原形が無い。
と言っていますが、案外、日常の食生活を通じて現代社会の闇が描き出される(作者にその意図があるかは別として)という点は両者に通底しているのではないかと感じます。もちづきさんではサスペンス性やコメディ性によって、一方こちらでは病による葛藤とその克服という要素によって味付けがなされているため、ここまで違った料理になってはいますが、かたや食習慣維持の困難さ、かたや自炊の困難さ。現代の人間は、日常生活をまともにこなすだけで一般の人間のキャパシティを超えた能力を要求されてしまっているのではないでしょうか。
さきほど味付けと言いましたが実のところ、病による葛藤、より正確には「自己同一性および性別違和との葛藤」もこの作品の重要なテーマです。失った男性性はもう戻ってこない、自分の容姿を自分のものとして受け入れられない、それでも周りは否応なしに自分を女性として見てくる……昨今のTSものでは無視されがちともいえる要素です(もとからTS願望持ちの主人公もそれはそれでいいものです)が、こうした望まないTSによる心的不安定をこの作品は非常に精確に描写していて、ほんとうに見事だと思います。
これほどまでに深みのある作品が「食」によってまとまっている、というところに人類どころか生物全体を貫く食事の偉大さを感じます。みなさんもどうか無理せずおいしいご飯を食べて生きましょう。
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C6N2 2025年01月15日(水) 23:56 ★ (Good:2/Bad:0)