勘違いものに見えて、全然違う“失敗しない”主人公の強さ
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
一見すると、勘違いものに見える。
だが、この作品の面白さはそこではない。
(28行省略されています)
くたびれた日々を、ただ生きる為にやり過ごしてきた主人公。そんな男が唯一続けていたのがFPSだった。
別に天才ではない。長時間やり込むわけでもなく、仕事終わりに一戦だけ。勝っても負けても終わり。そんな乾いた縛りを淡々と続けてきた主人公が、ある日を境にFPSのUIを現実で見るようになってしまう。
そこから始まるのは、異能でイキる話ではない。
今まで積み上げてきた地味な立ち回りが、現実の危険地帯で最悪の形で噛み合ってしまう話だ。
この作品が上手いのは、主人公の強さにきちんと納得感があること。
勘違いでもなければ、派手な成功だけで持ち上げられる話でもない。殺し屋としてやっていくために必要なのは、派手な成功ではなく失敗をしないことだ。これは非常にFPSでの主人公の立ち回りと適合している。
正面から圧倒する怪物ではなく、危険を見抜き、踏み込みすぎず、通すべき一手だけを通す嗅覚の鋭さ。その地味さがそのまま強さになっている。
だから読んでいて白けない。
「なんでこいつがこんなにやれるんだよ」ではなく、「こいつの積み上げ方なら、こういう形で活きるのも分かる」が先に来る。ここがかなり強い。
文章も読みやすい。
変に気取りすぎず、それでいて必要な不穏さはきっちり置いてくる。怪しげな時計店、Bar、美少女に見える美男子。そうした危うい要素が、露骨すぎない塩梅で混ざり合い、作品全体をじわじわ裏社会の色に染めていくのが上手い。
しかも、この作品は雰囲気だけで押してこない。
なぜUIが見え始めたのか。組織の目的は何なのか。主人公は最強の殺し屋としてどこまで祭り上げられ、その果てに何へ辿り着くのか。先を読みたくなる謎がきちんと吊り下げられている。続きを読ませる力が強い。
派手な無双をする主人公ではない。
だが、地味に積み上げてきた判断力と危険察知能力が現実の死線で通用してしまうタイプの主人公が好きなら、かなり刺さると思う。勘違いものっぽい入口から入って、全然違う質の面白さを見せてくる作品。お薦め。
▼読む際の注意事項など
序盤は爆速で爽快感を叩きつけるタイプではなく、違和感と不穏さをじわじわ積み上げていく。
その為、最初から全開のカタルシスを求める人には少し合わないかもしれない。
ただ、そのタメを越えると景色が開ける。
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pqrsman 2026年03月19日(木) 17:01 ★ (Good:14/Bad:2)