ハーメルンには珍しい、原作が蟲師のクロスオーバー作品。クロス先は東方Project。両方とも和風の世界観で、親和性が高い。

　幻想郷に迷い込んだ蟲師のギンコが、幻想郷の様々な『蟲』の事件に関わっていく中で、幻想郷のキャラクターたちと交流していく話。

　情景描写が丁寧で、ゆったりとした進みの文体。章完結型の作品で、どの章から読んでも楽しめるようにと書かれてあり、文法的にも目立っておかしな点は無いので安心して読める。
　とても完成度が高い文章で、幻想郷の豊かな自然の環境音や、ギンコの独特な語調の語りがまるで本当に聴こえてくるかのよう。

　自分は、蟲師についてアニメを少しばかり囓って漫画をチラリと見ただけだが、作者の方が蟲師という作品の世界観や作風を尊重し、愛情を持っているのが容易に伝わってくる。勿論、東方Projectについても同様に感じられる。

　両作品の幻想的な雰囲気に包まれて、読後に心地いい余韻に浸れる。幻想郷の個性豊かな少女たちと、余人とは違った魅力を持つギンコとの掛け合いは読んでいて楽しい。

　──忘れ去られた幻想と、およそ遠しとされしモノの物語。
　ふと時間が空いたとき、お気に入りの小説をひと通り読み終えて次話の投稿がまだのとき。そのような機会に、この作品を読んでみるのは如何でしょうか。

▼読む際の注意事項など

　描写が丁寧なことに加えて、一話一話の文量が多いという訳でもないので、展開をやや遅いと感じる方もいるかもしれない。
※現在第八章公開中
　基本的に原作の世界観を尊重し、それらに忠実に描かれているが、多少の原作改変や独自解釈が含まれる。オリジナルの蟲なども出てくるので、そういった新規の設定が苦手な方は注意が必要。
　ギンコ自身の荒事に対する能力は高くないので、弾幕ごっこなどの要素は少ない。
　時々、試験的に文法を変えることもあるようだが、感想で率直に言えば聞き入れてもらえるので、自分に合わない文法・言葉の使い方があったらその旨を感想欄で伝えることをお勧めする。

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