それについて、『ヘルマプロディートスの恋』を読んでいることをほぼ前提としていることもあり、評価はつけないことにしました。
この作品は、『ヘルマプロディートスの恋』に付属しているサイドストーリーのようなものだと思うので、
この作品単体での評価は無粋と判断した故です。
さて、読んでみて感想というか、言いたいことがあるのは1話と5話ですね。
第1話。夏海君は非常に馬鹿です。能力が足りないのではなく、性格的に馬鹿という、原義での馬鹿ですね。
最期の瞬間、その間際まで周囲を馬鹿にし続けた彼に、永遠の静寂が訪れるというのは、
死の描写としてはとても秀逸だったと思います。
端的な言葉の羅列なのも高ポイントかと。
わたしも普段から周囲を馬鹿にすることが多いのもあり、彼の気持ちはわからなくはないのですが、
彼は他人を馬鹿にする際心がけるべきことがわかってないものと見受けます。
周囲を貶めた場合、自らも同じく愚かなのではないかと疑ってかかる。これを行わなければそれはただの罵倒でしかありません。
まあ、そういうキャラなのでしょうが(苦笑)。
若気の至りということでしたが、しかしどうでしょう？
若気の至りで片付けるには少しばかり馬鹿が過ぎた(馬鹿をする、という意味で)のではないかと個人的には感じました。
その他には、夏海君に同意できる部分もやや見受けられましたが……。
たとえば、断末魔の罵詈雑言。使えない親だというのは確かに少し同意できてしまいます。
母親の姿を見れたということは意識は戻っており、なおかつそれは母親も然と認識していました。
ということはナーヴギアを強制的に外してもさしたるデメリットはない……というよりは外さないと死ぬかもしれません。
はじまりの街でのチュートリアル終了時には関係各位へ情報の発信は終えられていたのは間違いない。
となれば母親もナーヴギアの脳破壊シークエンスについては知り得ているはず。
ゲームクリアがすぐになされる訳はなく、それなのに意識が回復しているということは、
既に脳破壊シークエンスが実行されている可能性もある。
どちらにせよ死ぬのであれば、
ナーヴギアを強制的に取り外した方が生き残る確率があった……と考えられるのはやはり傍観者だからでしょうね。
意識が戻っているにも関わらず全身が動かなかったのは未だナーヴギアによって信号が遮断されていたせいか、
それとも脳破壊シークエンスが致命的な運動障害を引き起こすほどに進行していたのか……。
こういう形で死者が出ることを鑑みると、茅場の世界創造プランはかなり強引な手法であるのだと実感します。
現実世界への帰還を求める心は世界の住人をアインクラッド攻略へ駆り立て、
HP0=現実での死となるデスゲームはただのゲームでは成し得ないリアリティを世界にもたらす。
ここまでは良いのですが、やはり現実世界から引きずっている現代的な感覚が世界からの落伍者を大量に生み出していると思います。
それらを見て他の者が心を新たにし、仲間の死がより一層死への恐怖を増大させ、あるいは世界からの帰還をより強く求めさせる。
そんなプロセスを経て、住人が世界へと馴染む、というのはやはりいささか荒療治であるのは否めないかと思います。
そして、世界完成の礎として荒療治の犠牲となった人々を描くのがこの作品ではないかと考えましたが、いかがでしょうか。
話は変わって第5話。マティアスさんがクローズアップされましたが、
本編でカットされた前衛の人はマティアスさんであったかと、彼の死を悼まずにはいられません。
絶対的な死を前に、死亡フラグを建てまくって逆フラグにしようと掛け合いながら死の暴威へ立ち向かう姿。
もうそれが死亡フラグだよ……(泣)。
アレン君が死に、ブラントも消え、たった一人でスキルのコンボを駆使して死神を相手取るマティアスさん。
きっと彼はその手に握ったリズベットの剣が消耗し、折れるそのときまで戦い続けたのだろうと思います。
……また長ったらしい文章になってしまいましたね。感想を書くといつもこういう風に羅列してしまうのです。ご了承ください。
流れる2話はバッドエンドでは無いということでしたが……と思ってふと鏡秋雪さんの活動報告を調べていると、
内容について書かれているものを発見。コーがリズへ正体を打ち明ける話でしたか(ｷﾏｼﾀ話についてはスルー)。
個人的には打ち明けない選択肢もそれはそれで面白そうだと思ったのですが、作者様が書くというのならそれが正史なのでしょう。
ついでに言わせていただければ、作者様は「完結したのに更新するのは……」とお考えになっているようですが、
わたしはそれも良いのではないかと思います。まあ是非更新していただきたいという個人的な理由も含まれていますが(笑)。
完結した後更新再開した作品はいくらでもありますし、それを若干期待してお気に入りに入れている方もいます。
いい顔をしない方が中にはいると思いますが、好きな作品が更新されるというのを頭ごなしに否定する人もいないのではないかと。
無論完結している以上、作者様の創作意欲がなければ更新する意味はありませんが、
更新したいと思ったのであればしてもよいのではないかと思います。
少なくともわたしは大歓迎な側ですのでそれだけは申し上げておきます……(笑)。
では、言いたいことは全部言ったので、ここらで筆を置いて感想を終えたいと思います。
告白イベント……楽しみだ。

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それにしてもおっさん頭いいですね。検証に命の保証がないのなら他の誰かにやらせればいい……夏海よりはるかに現実を実直に見据え、そして頭を使っていたのですね。1人称だと相手の気持ちは分かりませんが、きっとあのおっさんは自分の話にホイホイ乗せられてゆく夏海のことを心の中で「こいつ馬鹿だ」と言っていたことでしょう。

では気になった点を。
遥か遠くには浮遊大陸が浮かび幻想的な風景。
という部分なのですが、『浮かぶ』にした方が自然な文章だと思います。もしくは『風景である』でしょうか。ここだけですが。

コーとジークの登場も期待しつつ、次の話を待っていますm(__)m

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