紫音君との出会いから始まって、別れがあって、こころと出会ってまた花音が前を向いてドラムを叩くことの出来るまで……そんな僕が見たかったもの以上の物語がちゃんとこの花音にはあるんだなと……本当にありがとうございます。

中学生の男子のぶっきらぼうな優しさであるとか、確かに花音は年上には見えなさそうだなとか、好きな相手を取られた女性の嫉妬であるとか。他にも色々とありますが、公式の情報と現実のリアルさをうまい具合にかけあわせていて特に疑問に詰まるところもなく、素直に読むことが出来ました。

組んでいたバンドを抜けるのも、バンドリ1期の沙綾を見ているだけでかなりきついものだとわかるのに、ドラムを前にして叩けなくなった花音。叩かない、ではなく叩けない。その表現が本当に悲しいなって。
ただ“私だけの秘密の恋” はそういった辛さも、この話の目的である“原作開始時の花音”に繋げるために綺麗にまとまっているのが凄いなぁと。
花音視点だったからこその、そこへ至るまでの感情移入もあって。バンドを辞めたのも痛いほどに理解出来て。あぁもう言葉が上手く出てこなくてすみません好き。
最近まで女主人公の作品をあまり読まないでいたので、感情移入出来るかどうかって不安も勿論あったんですけど全然そんな心配は杞憂でした。

ほのぼのとした日常、そしてシリアス。
中高生の微笑ましい……と言っていいのかはわかりませんが、そんな恋愛模様。
一緒にいる時間が楽しくて、大切で。
けどずっと続くと思っていたものは唐突になくなって、でも失ってからもっと一緒にいれば良かったなんて思っても遅くて。後悔して引き摺って、苦しくて悩んで辞めようと思って。
そんな時にこころと出会って、あぁ、原作が来たんだなって。
その後も紫音君のお母さんとの会話、日記。日記の時点で割と限界だったのに、指輪なんてもうベタだなぁ泣かせに来てるなぁと思いながらも泣きながら読んでしまって。
最後の締め方も、個人的に好みだということもあるとは思うんですが、凄く綺麗だなと思います。
ダメ押しと言わんばかりに涙腺を崩壊させられました。好き。

物語が進み亡くなってしまった紫音君。冒頭から続いていた過去形の不穏な前書きを思い出すとやっぱりこういう風になっちゃうんだなって思いはあったんですけど、それでも彼はきっとこれからも花音のことを見守ってくれているのかと思うと安心してこれからの花音を見守っていけます……(誰目線だ？)
番外編で“Schicksal”和解(?)できて本当によかった……ありがとう……ありがとう……

始まりと終わりがしっかりとしていて、綺麗な小説だなと思いました。
どうして始めたのか、そしてどうしてやめようと思ったのか。そのふたつを繋ぐ、花音の空白期の物語。
バンドリは各々個性豊かなヒロイン達がいますが、そのヒロインがなぜ原作に至ることになったのか……というあまりハーメルンでは見ないタイプのお話だったので新鮮な気持ちで読むことができました。
加えて僕の好きなタイプの小説であったこともあるとは思うのですが、こうして普段ハーメルンであまり書かない感想を書かせて頂きました。長文で申し訳ありません。あと解釈違いとかもあったらすみません。

とてもいい作品に巡り会えました。茜崎さんがこの作品を書いてくださったことに感謝したいです。ありがとうございます。

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