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(0) 早朝、ギルドの扉を開け放つと鉛筆の芯を凝縮させた匂いが鼻に付く。
(0) 中へ入るとより一層、何故か、くさ……フェロモンの匂いが立ち込める。
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(0) 『あ、これ昨日嗅いだ匂いだ!』と思いつつも気にせず歩く。
(0) するとお尻に付いているバニースーツの尻尾を掴まれ俺のケツが丸出しになった。
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(0) 「んぁ!?なんぞ?どうしたフレイ、俺の尻尾に何か御用?俺のケツ可愛いの?」
(0) 「いや、そうじゃなくて……ねぇ…その、あの…匂わない?…あの子から…ねぇ?…」
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(0) 指を差された場所へと視線を送ると青髪ロングの僕っ娘アイギスがポツンと寂しそうに椅子に座る姿がある、どことなく長い耳も萎んでいる。
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(0) …やめなされ…やめなされ、アイギスも好きであの体臭になった訳じゃないんだろう。
(0) 上司だって毎日お仕事頑張って手に入れた体臭なんだ。
(0) だからアイギスも同じ位頑張ったんだろうと思うんだ、だから俺は気にしない。
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(0) 「…あー、俺鼻利かないんだよなー、だからちょっと分かんないや…」
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(0) とぼけながら歩いていくとアイギスが此方に気が付いたようで長い耳をピョコピョコ動かしこちらへと歩いてくるのが見える。
(0) まるで躾けられた子犬のような様相にちょっとだけ可愛いなぁと思ってしまう。
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(0) 「お、おはようございます!ミソギさん、昨日はありがとうございます!今、お時間御座いますでしょうか?」
(0) 「おー、おはよー、今日は後ろのフレイと一緒にクエスト行く予定があってさ、昨日のお礼はしたいんだけど明日以降になりそうだ」
(0) 「そ、そうなんですね…その…私もご一緒させて頂けませんでしょうか…足手まといにはなりませんので…」
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(0) 寂しそうに言うアイギスはやっぱり一人ぼっちなのだ、周囲には誰も寄り付かなかったのはそう言う事だ、美人で胸大きいのに勿体ないと思うなぁ。
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(0) 「お?いいよ、いいよ、一緒に行こうぜ?二人よりも三人で行った方が楽だしなぁ」
(0) 「…本当ですか?良かったぁ……僕、頑張りますね!」
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(0) 俺の言葉に徐々にやる気に満ち溢れていくアイギス、先ほどよりもより一層耳が動いている、凄く分かり易い娘だ。
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(0) その耳から漂う匂いはヘソのゴマを濃縮した匂いがして興奮した。
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(0) 「あぁ、よろしく頼む、ちょっとバランス悪そうだけど何とかなるだろ。」
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(0) アイギスの弓にフレイの魔術、そして俺は応援役だ。
(0) 俺はあんまり役に立たないから声だけは頑張って出して行こうと思います。
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(0) 「エヘヘ…ミソギさん優しいですね…、フレイさん!アイギスと申します!よろしくお願いします!!」
(0) 「え、えぇ…アタシはフレイよ…よろしくお願いするわ…」
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(0) その表情は嬉しさが若干勝っている模様、もう一方は……うん、言わなくても分かるだろう。
(0) フレイ的には一人でも多く仲間が欲しいもんなぁ、俺が来るまでパーティー組めなかったって言ってたし……フレイの煽りスキルはそれほどヤバイ。
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(0) 「ねぇミソギ、アタシは待ってるから適当に依頼書取って来てくれない?何でも構わないから」
(0) 「あぁ、分かった、んじゃ行って来る、アイギス行こうぜ」
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(0) そう告げて手招きするとアイギスは俺の隣へと来る。
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(0) そのまま二人でクエスト板まで歩いていくとそこには依頼書が沢山貼ってあり下はスライムから上はドラゴンまで様々だ。
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(0) アイギスにもやりたいクエストがあるのか聞いてみる。
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(0) 「アイギスはやりたいクエストとかあるか?俺達何でも良いからお前が行きたいの優先するけど」
(0) 「いえ、僕は何でも良いですよ?ミソギさんにお任せします!」
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(0) そう言われたのだけど腕を組みながらちょっと悩んでしまう。
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(0) …全員が全員何でも良いって言うのはちょっと困るんだよな、だけどスライムとかもう飽きたし、うーん……。
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(0) 腕を組みながら依頼書を眺める、目に付く物はゴブリン討伐だ。
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(0) その依頼書の内容は『ゴブリン討伐10体、報酬6万G』と簡潔に書かれている。
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(0) 丁度報酬が3等分出来るこのクエスト、もうこれでいいかなーとか適当な事を考えてクエスト板から依頼書を引っぺがしてそのまま受付のお姉さんに渡しに行った。
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(0) 受付のお姉さんは鼻を摘まんでいる、多分そう言う事なのだろう。
(0) 隣のアイギスは顔を下に向けて俯いている。
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(0) 特に気にしてない俺はカウンターへ依頼書を出す。
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(0) 「これおねしゃーす、なるはやでー、3人でーす」
(0) 「はい…うけたまゴフォォ…失礼…承りまグフゥ…した…」
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(0) ギルドカードを提示して依頼書にスタンプを押して貰う。
(0) 途中途中で咳き込むお姉さんに隣のアイギスはもう涙目だ。
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(0) 「どうぞ、それ…ゴフッ…ソレデハ、オキヲツケクダサイネ」
(0) 「あざまーす、んじゃ行くぞアイギス」
(0) 「……はい……」
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(0) プルプルと身体を震わせ落ち込むアイギスを見ていると何となく俺と同じシンパシーを感じてしまう、例えると不幸属性とか幸薄そうとかそんなのだ。
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(0) ……この子俺と似てるなぁ。
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(0) そんな失礼な事を考えながら依頼書とカードをポーチに入れつつ俺はとびっきりの笑顔を作りアイギスの肩に手を置いて言ってみる。
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(0) 「今日は一緒に頑張ろうぜ!頼りにしてるからさ!あと俺はそんなに気にしてないからさ!」
(0) 「……ミソギさぁぁぁん……」
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(0) 俺の笑顔にアイギスは涙目で抱き着いて来た、多分こういう態度に慣れていないのだろう。
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(0) その大きな胸を堪能する為に抱きしめ返し頭を撫でると洗っていない犬の匂いがした。
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(0) ◇
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(0) 「なぁフレイ、ゴブリンってここら辺にいるのか?結構歩いたけど……もうそろそろ休憩しない?ちょっと疲れてきたよ…」
(0) 「えぇ、大抵森の奥とかの洞窟に屯している魔物だからもうすぐ出会うはずよ……ミソギもうちょっと頑張りましょう?あとちょっとだからね?」
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(0) かれこれ2時間位歩く俺達は鬱蒼とした森の奥まで進んでいる。
(0) マイナスイオンたっぷりのこの環境で先頭を歩くのはアイギスだ。
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(0) 何かに気が付いたようで足を止めるアイギスが俺達へと振り返る。
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(0) 「見つけました、ゴブリン7体ですね!…僕が仕留めて来ましょうか?」
(0) 「……え?数多くない?アイギス大丈夫か?フレイとかに援護して貰った方が……」
(0) 「いえ!大丈夫ですよ、僕こう見えてとっても強いんです!だから見ててくださいね!」
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(0) そう言った瞬間アイギスが消えた、その場にフェロモンだけを残して。
(0) 森の奥から音が聞こえる、それは何故か打撃音だった。
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(0) 弓使いなのに打撃音がするのは何故だろうとか思うのだけどそれどころじゃない。
(0) 俺とフレイは慌てて駆けつけて見るとゴブリンが5体ほど地面に倒れている光景が見えた。
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(0) 小学生位の背丈に緑色の体色をするゴブリンは腰布を巻き付けた姿だ。
(0) 地面にはへし折れたこん棒らしき物が散らばっている。
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(0) その先にはアイギスが6体目のゴブリンを素手で殴っている姿が見えた。
(0) ボコボコに顔が腫れているゴブリンを見ている無傷なゴブリンは恐怖に顔を引きつらせて腰を抜かしていた。
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(0) 「なぁフレイ…俺…要らなくね?てかアイギス、背中の弓はどうしたよ、何で拳?いや、もう何言えば良いか分かんない…」
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(0) 「……」
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(0) 7体目の小便を漏らしたゴブリンに腹パンを決めるアイギスをフレイが無言で眺めている。
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(0) 多分アレだ、フレイは目立ちたいのだろうと思う。
(0) 恰好良く俺達に魔術を見せつけて自慢したいのだ、前のスライムの時でも褒めてあげるとつけ上がっていたのを思い出す。
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(0) 「フ、フレイ、今回は楽出来て良かったじゃん!な?な?アイギス強いし、危なくない事は良い事だ、な?」
(0) 「えぇ、けどアタシも活躍したいのよ、久しぶりのクエストだもの、次はアタシがやるからね!……アイギスー!!次はアタシの番よーー!!」
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(0) フレイはアイギスへと走っていく、7体目のゴブリンはボコボコにされて地面へと伏している姿は可哀想に思えた、まるで少し前の俺みたいだ。
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(0) 「分かりました!次はフレイさんの番ですね!僕はミソギさんと一緒に応援してます!それじゃ行きましょうか!」
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(0) 俺は『うんうん』と頷きながらギルドカードを見ると『ゴブリン討伐7/10』と書いてあった。
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(0) 適当に散歩してたらフレイとアイギスが仕事を終わらせてくれる、ホント楽な仕事だなぁとか思いながらゴブリンを探す為に歩き出す。
(0) その途中フレイが俺達に向かって笑顔で語り掛けてきた。
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(0) 「ふふふ!次はアンタ達は見てるだけよ?手を出したらダメなんだからね?」
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(0) クエストジャンキーが張り切っている、もうこの二人に着いて行くだけで人生なんとかなりそうだ、もうこのままこの二人に寄生しよっかなとか考えちゃっている俺が居る。
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(0) 「おー、頑張ろうぜ、俺達応援してるからなー、あっ!………うーん…」
(0) 「ミソギさん、どうしました?」
(0) 「別に大した事じゃないんだけどさ、まぁいいや、行こうぜ」
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(0) ちょっと思いついた事があるのだけどどうしよう、言ってみるべきか、それとも黙っているべきなのか……うーん…次見つけたらでいいか。
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(0) そう思いながら腰の木剣を引き抜きブンブンと空を斬ってみる、試してみたい事はスキルの事だ、男を女にするスキル、これは魔物にも有効なのだろうかと不意に思ってしまった。
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(0) 森の中をちょっとだけ歩くとアイギスの足が止まる。
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(0) 「見つけました!数は……4体ですね、それじゃフレイさんお願いします!」
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(0) やっぱりスキルを試してみたい、そう思う俺はフレイへと言ってみる。
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(0) 「なぁフレイ、ちょっとだけ試してみたい事があるんだけど……やって見て良い?止めはお願いするからさ」
(0) 「えぇー……しょうがないわねぇ…それで何をやりたいの?」
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(0) 滅茶苦茶嫌そうな顔で俺へと聞いてくるクエストジャンキーに『まぁ見てろって』と返してポーチのふぐりを取り出した。
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(0) 「んじゃ行ってくるから危なくなったら助けてくれよ?」
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(0) そう二人に伝えてゴブリンへと駆け出した俺はふぐりを奴等へと投げつける。