行別ここすき者数
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履歴はこちら。
(0) ギルド内のクエスト板、そこの前には人込みで溢れていた。
(0) 仲間を募集する者、仲間たちと談笑しながらしている者等様々だ。
(0) そこから少し離れた椅子に座る赤い髪をポニーテールにした少女が一人、頭を抱えて『グヌヌ』と唸っていた。
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(0) 「またやってしまった……」
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(0) 先ほど土下座をされて、解雇通告を受けてしまった。
(0) もう10パーティーほどから受けたその通告。
(0) それはアタシの口撃による物だった。
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(0) 「また言っちゃった……」
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(0) 後悔をしながら、頭を抱えて思い返すと浮かぶ光景。
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(0) それは仲間へ掛ける言葉は大抵が『プフゥー』等の煽り。
(0) 戦闘中ならまだしも、雑談中ですら煽るアタシの口は悪すぎた。
(0) 所謂デレがない唯のツン、需要がないのは当然かもしれない……。
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(0) 「どうしよう……誰か組んでくれる人はいないかな……」
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(0) 不安になりながらも周囲を見渡す。
(0) そこには和気あいあいとした雰囲気で、仲良くパーティーを組む冒険者の姿があった。
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(0) ……羨ましいわね、けど自業自得かも……。
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(0) そう思うアタシは15歳と言う若い年齢。
(0) だが、Lvは10とその歳の割に高いと思う。
(0) その基準としては初級者を卒業して中級者の入り口へ立っていると言っても過言ではない。
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(0) ……先ほどの解雇通告を与えた元仲間達はこの町に来たばかりの新参者達だった。
(0) 自身の事を全く知らず、猫を被り取り入ったのだ。
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(0) 思い返すは草原でのスライム討伐。
(0) 騙すつもり等は無かったのだけど自然と口にしてしまう。
(0) 『弱っ!』『ねぇねぇ剣が当たってないんですけどぉ』『剣士辞めたらぁ?』と言う罵倒。
(0) 膝から崩れ落ちる少年剣士、それを慰めようとする弓使いの少女。
(0) そこで追い打ちするアタシ。
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(0) 『矢がぁぁぁ当たってぇぇぇないんですけどぉぉぉ???プフゥー!!』
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(0) ドヤ顔で見下ろしているアタシに悪気はない。
(0) 頼りない仲間を叱咤激励しているつもりだった。
(0) だが現実は非情。
(0) 受ける相手はたまった物ではない。
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(0) 二人共泣いてしまった、そこで気が付く。
(0) 『またやってしまった』と。
(0) その後はいつも通りの展開だった。
(0) 泣きながら土下座されて『お願いします、僕達はあなたとやっていけません』と言う解雇通告。
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(0) こうしてまたぼっちになるアタシは椅子に座り頭を抱え込んでいる。
(0) ここではもう噂が広まりすぎて組んでくれる人は居ない。
(0) 一人でクエストを受けるのは寂しすぎる。
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(0) もうすでにLvは10なのだ、本来そのLv帯なら誰かと組んでいるのは当然。
(0) だから焦ってしまう、だけど口が悪く仲間が出来ないと言う悪循環。
(0) 『うーん……うーん……』と唸るアタシ、次は何があっても我慢しようと考えた。
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(0) その時、ギルドの扉が開いた。
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(0) 自然と視線をそちらへ向けてしまう。
(0) 中へと入って来るのは彼女と同じ歳ほどの少女。
(0) セミロングの黒髪を靡かせ、その目は紅くその顔立ちはとんでもなく美人だった。
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(0) だが恰好がおかしい。
(0) 全くサイズが合っていない燕尾服のような紺色の上着と白いシャツ。
(0) 下は縞々柄の薄い短パンのような物を履き、腰は上着と同じ色の腰巻をパレオの様に巻いている。
(0) ……変な恰好してる。
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(0) その黒髪の少女は何かを握りながら迷う事なくギルドの受付嬢へと向かっていく。
(0) アタシは何故かその子が気になってしまった。
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(0) 「武器も何も持って居ない……、もしかして初心者かしら……ならこれはチャンス?」
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(0) 一人なら仲間が必要なはず、ソロで活動するのは果てしなく困難。
(0) ……アタシが優しくしてあげれば仲間になってくれるはず!!。
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(0) そう思い椅子から立ち上がって彼女の後を追う。
(0) その姿はまるでカモを狙う獲物のような様相であった。
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(0) ◇
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(0) 「はい、では登録料100Gでございます、ギルドカードがないとクエストが受けられませんのでご了承ください」
(0) 「……」
(0) ……え? お金いるの?。
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(0) ……冷や汗が垂れてしまった。
(0) 満面の笑顔でそう言われたのだけど金はない。
(0) あるのは右手に握る˝ふぐり˝と名付けた青色のゲル物体だけだった。
(0) 道中で色違いがいたのだ物珍しく思い捕まえた。
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(0) 「お金ありません!!」
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(0) 堂々と少し膨らむ胸を張る。
(0) 自慢じゃないが俺は何も持っていない。
(0) 財布などはいつもリュックの中に入れているのだ。
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(0) 目の前に佇む受付のお姉さん。
(0) 満面の笑顔から見下すような表情へと変わった。
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(0) 「どうぞ、お帰りくださって結構です、お出口は、……あちらですよ?」
(0) 「……」
(0) ……ううむ。
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(0) お姉さんの視線は冷めたまま。
(0) その指は今、俺が入って来た入り口へと差している。
(0) ……帰れと?
(0) そのまま帰れと?。
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(0) 無言の俺は、思わず右手のふぐりを握り締めてしまう。
(0) 『ブニュ』と言う音がしたが幸いにも潰れていない。
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(0) 高速でブニブニと握ると、冷めた目で見られて、冷えた心が安定してくる。
(0) ……これは良い物だ。
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(0) 俺は諦めない、今から俺は冒険者になるのだ。
(0) 冒険者になって金持ちになりチンコを手に入れハーレムを作ると言う夢がある。
(0) それを思うとやる気に満ち溢れて来る。
(0) 代わりにふぐりを金の代わりにしてみようと思う。
(0) 何故なら良い物だからだ。
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(0) 「これでいいですか!」
(0) ……心苦しいが俺に取ってはこれしかない。
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(0) 物々交換出来る事を期待して、右手に握るふぐりをカウンターへと置いてみる。
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(0) 可愛らしい受付嬢の顔は見下しから軽蔑の表情へと変わった。
(0) それはまるで『お金の概念を知らないのか?』とでも言う表情だ。
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(0) 「……」
(0) 「……」
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(0) 数十秒経ってもお互い無言のままだった。
(0) ……ふぐりじゃ駄目か。
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(0) ふぐりだけでは取り付く島さえないように思える。
(0) その長くもあり短くもある無言に耐えきれなくなってしまった。
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(0) 俺は、カウンターに置いたふぐりを、再度右手で握り締めた。
(0) それは水色の奴とは違いコリコリした弾力でナタデココのような感触。
(0) ……やっぱりこれは良い物だ。
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(0) 受付を背にして歩き出す。
(0) お金が必要なのは誤算だったが、次の作戦はもう頭の中に浮かんでいた。
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(0) それは人の善意を期待しよう作戦。
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(0) 足りない知恵を無理やり絞り出したのがこの作戦だ。
(0) 100Gがどの位の金額なのかは分からない。
(0) だけど登録料程度の金額だ。
(0) 誰かに頼めば快く払ってくれるだろうと思っている。
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(0) ……最悪ふぐりと引き換えにお金を貰おう。
(0) 腕を組んで、うんうんと頷き、そう思っていると横から声を掛けられた。
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(0) 「……ねぇ、アンタ、お金ないの?」
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(0) 声の主へと振り向くと、そこにはポニーテールの赤い髪と翡翠色の目をした少女がいる。
(0) いかにも『魔術師です』と言うような木製の杖を持ち、赤色のローブを羽織る少女の顔は可愛い。
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(0) だが、可愛いのだけどそれ以上の美人で可愛いTS巨乳オッサンを目近で見てしまった。
(0) それと比べると動揺するほどではない容姿だ。
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(0) 俺は、その赤髪ポニテの少女へと向き直し。
(0) 「ああ、ふぐりならあるんだけどさ……」
(0) と、手の中のふぐりを差し出すと、赤髪ポニテの少女は。
(0) 「なんでブルースライムなんか持ってるのよ……」
(0) 呆れ顔を俺へと向けている。
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(0) ……もしかして、ふぐりは人気が無いのかもしれない。
(0) いや、そんな事はないはず……、この感触は最高だ。
(0) だが、それよりも、ブルースライムとは……なんぞや……。
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(0) 気になった俺は、赤髪ポニテにふぐりの事を聞いてみる。
(0) 「ブルースライムって、これの事?」
(0) 「えぇそうよ? ユニークモンスターのスライムの亜種ね? ……もしかしてアンタ……、そんな事も知らないのぉぉぉ? プフゥー!!」
(0) 赤髪ポニテは、口に手を持って来て『プフゥー』と笑い、俺をナチュラルに煽る。
(0) 仕草がちょっと可愛いけど、ちょっと凹む。
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(0) ……だが30歳の大人な俺、それ位で凄く落ち込むほどの、軟弱な精神は持ち合わせていない。
(0) 煽られた俺の心は、ふぐりをプニプニすると、すぐさま回復する。
(0) ……うん、いい感じ、やっぱふぐり最高だわ。
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(0) ふぐりしかない俺は、それを赤髪ポニテへと差し出して……。
(0) 「ふぐり……いる?」
(0) すっごく勿体なさそうな表情を作りながら、聞いてみる。
(0) すると、やたらとテンションの高い赤髪ポニテは。
(0) 「いらないわ? それよりも、……しょぉぉぉぉがないわねぇぇぇぇ! アタシが出してあげるわ!!」
(0) 「……マジで?」
(0) プルプル震えるふぐりを引っ込めて、様子を伺う。
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(0) そんな俺に赤髪ポニテは、自信満々の表情で詰め寄って来る。
(0) 「……だからアタシと組みなさい? 丁度アタシは一人だったからこれでパーティーが組めるわね!!」
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(0) ほう……、俺に目を付けるとはお目が高い……。
(0) 俺は不敵な笑みを浮かべて、赤髪ポニテに頷いた。
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(0) 「……よろしく頼むよ、俺はミソギだ」
(0) 「アタシはフレイよ、よろしくね!」
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(0) はにかんだ笑顔を俺へと向けるフレイと名乗る少女。
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(0) ……これは最高の滑り出しかもしれない、もしかして……チンコを見つけるのも、早いのではなかろうか。
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(0) 「それじゃ、行きましょう?」
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(0) そう言われて、後ろへとついて行く俺だった。