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(0) 美鈴の足元は完全に透明になり、膝から下はもう存在していなかった。
(0)
(0) 腰、胸、肩――
(0)輪郭が揺らぎ、光の粒が舞い上がる。
(0)
(0) レミリアは震えた。
(0)
(0)「美鈴……やめて……
(0) 消えないで……!」
(0)
(0) 美鈴はレミリアの頬に触れようとした。
(0)だが、その指先は――
(0)レミリアの肌をすり抜けた。
(0)
(0) レミリアの瞳が大きく揺れた。
(0)
(0)「いや……いや……いや……!!
(0) 美鈴……触って……!
(0) お願い……触れてよ……!!」
(0)
(0) 美鈴は悲しげに微笑んだ。
(0)
(0)「ごめんなさい……
(0) お嬢様……
(0) もう……触れられないみたいです……」
(0)
(0) レミリアは首を振った。
(0)
(0)「そんなの……嫌……!!
(0) あなたがいない未来なんて……!!」
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) 美鈴の体は、胸元まで透明になっていた。
(0)
(0) 光の粒が舞い、未来の風が吹き抜ける。
(0)
(0) 美鈴はレミリアを見つめた。
(0)
(0)「お嬢様……
(0) 私は……お嬢様と未来を歩きたかった……
(0) でも……
(0) これが……私の選んだ未来です……」
(0)
(0) レミリアは叫んだ。
(0)
(0)「そんな未来、私は望んでない!!
(0) 美鈴がいない未来なんて……未来じゃない!!
(0) お願い……戻ってきて……!!
(0) 美鈴……美鈴……!!」
(0)
(0) 美鈴は涙をこぼした。
(0)
(0)「お嬢様……
(0) 泣かないで……
(0) 私は……後悔してません……
(0) お嬢様の未来を守れたなら……
(0) それで……」
(0)
(0) レミリアは美鈴の腕を掴もうとした。
(0)だが――
(0)腕はもう、そこにはなかった。
(0)
(0)レミリアは崩れ落ちるように叫んだ。
(0)
(0)「美鈴――――ッ!!
(0) 行かないで!!
(0) お願いだから……!!
(0) 私を置いていかないでぇぇぇぇぇッ!!」
(0)
(0) その叫びは、未来の空間を震わせた。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) 美鈴の体は、胸から上だけが残っていた。
(0)
(0) 顔も、髪も、瞳も――
(0)すべてが光に溶けかけている。
(0)
(0) 美鈴は最後の力で微笑んだ。
(0)
(0)「お嬢様……
(0) 私は……お嬢様の未来が……
(0) 幸せでありますように……」
(0)
(0) レミリアは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら叫んだ。
(0)
(0)「美鈴!!
(0) 私の未来は……あなたがいないと……
(0) 意味がないのよ……!!
(0) お願い……消えないで……!!
(0) 美鈴……美鈴……!!」
(0)
(0) 美鈴は静かに目を閉じた。
(0)
(0)「……お嬢様……
(0) 大好き……でした……」
(0)
(0) その瞬間――
(0)美鈴の体は光の粒となり、レミリアの腕の中から消えた。
(0)
(0) レミリアは空を掴むように手を伸ばし、絶望の叫びを上げた。
(0)
(0)「美鈴――――ッ!!!!」
(0)
(0) その声は、未来の空間に響き渡った。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) 滅びの未来が崩壊し、紅と青の光が世界を包み込んだあと――
(0)紅魔館は、静かに元の姿を取り戻していった。
(0)
(0) 崩れた廊下は再び形を成し、歪んだ空間はゆっくりと閉じ、未来の断片は霧のように消えていく。
(0)
(0) だが――
(0)その中心に立つレミリアの腕の中には、もう 美鈴はいなかった。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) 紅魔館は、奇妙なほど静かだった。
(0)
(0) 妖精メイドたちは、何が起きたのか理解できず、ただ不安そうに廊下の影から顔を覗かせている。
(0)
(0) パチュリーは本を抱えたまま、言葉を失っていた。
(0)
(0) 咲夜は、主の背中を見つめながら、ただ静かに手を胸に当てていた。
(0)
(0) レミリアは――
(0)玄関前に立ち尽くしていた。
(0)
(0) 美鈴がいつも立っていた場所。
(0)誰よりも長く、誰よりも変わらず、紅魔館の門を守り続けた場所。
(0)
(0) そこには、誰もいなかった。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) レミリアは、ゆっくりと手を伸ばした。
(0)
(0) 美鈴の肩に触れようとした――
(0)あの癖のような仕草。
(0)
(0) だが、そこには何もない。
(0)
(0) レミリアの手は、空を掴んだ。
(0)
(0)「……美鈴……」
(0)
(0) 声は震え、風に溶けるように消えた。
(0)
(0) レミリアは膝から崩れ落ちた。
(0)
(0)「美鈴……
(0) どうして……
(0) どうして私を置いていくの……」
(0)
(0) 涙が地面に落ちる。
(0)
(0) その涙は、美鈴がいつも立っていた場所に落ちた。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) 咲夜がそっと近づき、レミリアの肩に手を置こうとした。
(0)
(0) だが――
(0)レミリアはその手を振り払った。
(0)
(0)「触らないで……
(0) 今は……誰にも触られたくないの……」
(0)
(0) 咲夜は静かに頭を下げた。
(0)
(0)「……お嬢様……
(0) 美鈴は……最後まで……
(0) お嬢様の未来を守ろうとしていました」
(0)
(0) レミリアは顔を上げた。
(0)
(0)「そんな未来……いらない……
(0) 美鈴がいない未来なんて……!」
(0)
(0) 咲夜は言葉を失った。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) パチュリーがゆっくりと歩み寄る。
(0)
(0)「レミィ……
(0) 美鈴は……あなたのために未来を選んだのよ」
(0)
(0) レミリアは涙で濡れた目でパチュリーを睨んだ。
(0)
(0)「そんな未来……私は望んでない!!
(0) 私は……美鈴と一緒に未来を歩きたかった……
(0) それだけなのに……!」
(0)
(0) パチュリーは静かに言った。
(0)
(0)「それでも――
(0) 美鈴は“あなたの未来”を選んだの」
(0)
(0) レミリアは唇を噛んだ。
(0)
(0)「……どうして……
(0) どうして私の願いより……
(0) 自分の未来を犠牲にするの……」
(0)
(0) パチュリーは目を閉じた。
(0)
(0)「それが……美鈴だからよ」
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) レミリアは立ち上がり、美鈴がいつも立っていた場所に手を伸ばした。
(0)
(0) そこには、風しかいなかった。
(0)
(0)「美鈴……
(0) あなたのいない紅魔館って……
(0) こんなに……寒いのね……」
(0)
(0) レミリアの声は震えていた。
(0)
(0)「戻ってきてよ……
(0) 美鈴……
(0) お願いだから……」
(0)
(0) 返事はなかった。
(0)
(0) ただ、風が吹き抜けるだけだった。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) そのとき――
(0)紅魔館の影が揺れた。
(0)
(0) 影が姿を現した。
(0)
(0) レミリアは涙を拭い、影を睨みつけた。
(0)
(0)「あなた……
(0) 美鈴を……返して……」
(0)
(0) 影は静かに首を振った。
(0)
(0)「美鈴は……未来を選んだ。
(0) その代償として――
(0) “未来から消えた”」
(0)
(0) レミリアは叫んだ。
(0)
(0)「そんなの……認めない!!
(0) 美鈴は……私の未来なのよ!!
(0) 返して……返してよ……!!」
(0)
(0) 影は静かに言った。
(0)
(0)「レミリア・スカーレット。
(0) 美鈴は――
(0) 完全に消えたわけではない」
(0)
(0) レミリアは息を呑んだ。
(0)
(0)「……どういうこと……?」
(0)
(0) 影はゆっくりと語り始めた。
(0)
(0)「美鈴は“未来の外側”にいる。
(0) お前たちが選んだ未来の――
(0) 境界に」
(0)
(0) レミリアの瞳が揺れた。
(0)
(0)「美鈴は……まだ……どこかに……?」
(0)
(0) 影はうなずいた。
(0)
(0)「だが――
(0) 呼び戻す方法は一つしかない」
(0)
(0) レミリアは息を呑んだ。
(0)
(0) 影は告げた。
(0)
(0)「美鈴を取り戻す唯一の方法は――
(0) レミリア・スカーレット、お前が“未来を差し出す”ことだ」
(0)
(0) レミリアの瞳が大きく揺れた。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) レミリアは震える声で言った。
(0)
(0)「未来を……差し出す……?
(0) どういう意味……?」
(0)
(0) 影は静かに説明する。
(0)
(0)「美鈴は“未来を守るために”未来を削った。
(0) その結果、未来の外側へ押し出された。
(0) ならば――
(0) お前が“自分の未来”を差し出せば、
(0) 美鈴の未来と交換できる」
(0)
(0) レミリアは息を呑んだ。
(0)
(0)「つまり……
(0) 私が……未来を失えば……
(0) 美鈴は戻ってくる……?」
(0)
(0) 影はうなずいた。
(0)
(0)「そうだ。
(0) お前が“未来を持たない存在”になれば、
(0) 美鈴は未来へ戻ることができる」
(0)
(0) 咲夜が叫んだ。
(0)
(0)「お嬢様!!
(0) そんなこと……絶対に……!」
(0)
(0)レミリアは咲夜を見ず、ただ影を見つめた。
(0)
(0)「美鈴は……戻ってくるのね……?」
(0)
(0) 影は静かに答えた。
(0)
(0)「戻る。
(0) だが――
(0) お前は“未来を持たない吸血鬼”になる。
(0) 永遠に生きることはできても、未来へ進むことはできない」
(0)
(0) レミリアは目を閉じた。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) レミリアの胸に、美鈴の最後の言葉が蘇る。
(0)
(0)――お嬢様の未来が、幸せでありますように。
(0)
(0) レミリアは震えた。
(0)
(0)「美鈴……
(0) あなたは……私の未来を守った……
(0) じゃあ……今度は……」
(0)
(0) レミリアは拳を握りしめた。
(0)
(0)「今度は……私があなたの未来を守る番よ……」
(0)
(0) 咲夜が叫ぶ。
(0)
(0)「お嬢様!!
(0) そんな未来……私は認めません!!」
(0)
(0) パチュリーも叫ぶ。
(0)
(0)「レミィ!!
(0) あなたが未来を失えば……
(0) 紅魔館は……!」
(0)
(0) レミリアは静かに言った。
(0)
(0)「紅魔館は……美鈴がいないなら……
(0) もう……私の家じゃないのよ」
(0)
(0) その言葉に、咲夜もパチュリーも、何も言えなくなった。
(0)
(0)
(0)
(0)◆
(0)
(0) 影は静かに告げる。
(0)
(0)「レミリア・スカーレット。
(0) 選べ。
(0) 未来を持つか――
(0) 美鈴を取り戻すか」
(0)
(0) レミリアは迷わなかった。
(0)
(0)「私は……
(0) 美鈴を取り戻す」
(0)
(0) 影はゆっくりとうなずいた。
(0)
(0)「では――
(0) “未来の核”の前へ行け。
(0) お前の未来を差し出す儀式を始める」
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(0) レミリアは歩き出した。
(0)
(0) その背中は、涙で震えながらも、確かな決意に満ちていた。