思いつきのネタを書いていくかもしれない集(予定) (カラナシ)
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野良サーヴァントになった男 狂王ver. (FGO)
野良サーヴァントに成った男 〜狂王ver〜


ふぇいとのアニキの汎用性やばいという妄想を極限に捏造したはなし。
妄想全開。初投稿になにしてんだ。
兄貴に夢を見過ぎである。


……でもすまない、まだ狂王様来ていないんだ。
そしてまだストーリー行けてない。本当にすまない。
さらにこの話は冒頭の冒頭で、キャラが出ない。
槍ニキに聖杯ぶちこんでくるから許して下さい。







ざり、ざり……───ザリ。

 

 

気づけば立っていた、荒廃した地平。

遠くで、近くで、けれどもやはり遠くで。

 

砂埃が舞う。

風に吹かれ、異形の何かに踏みつけられ。

──ザリ。

自分の足元で。

 

埃で僅かにけぶる視界の中で、視線を下ろす。

 

一番に目に入るのは光に照らされても黒く光る装甲。体に纏わりつくように覆いかぶさる骨の鎧。

それは足先にまで及んでいる。

 

ところどころに血管を張り巡らせるようにはしる赤い筋。それが覆うは装甲と同色の、肌に密着する衣服。赤い紋様が走る青白い肌。

目を移せば風に遊ばれ、舞う砂埃に混じる暗い青の筋。端に映るのは衣服と同色の布。

 

──砂色の大地に、この姿はさぞ目立つのだろう、とぼんやり思う。

 

 

「あ、あ──。」

 

 

確かめるように声を出す。

息を吸わずに吐き出したそれは、微かな音で宙を震わせる。

 

それは確かに、記憶にある自分の声──では、無かった。

 

自分の脳裏に、鮮烈な衝撃と共に異形の姿を残した『彼』が過ぎる。

 

ふと、手を目の前に出した。

体の至る所にある装甲と何処か触れ合ったか、木の肌を引っ掻いたらこんな音がするのでは、というような音と共に視界に映る。

それは、やはり黒の衣服と同色の布を身につけ肌を隠していた。

 

ぼんやりと見つめて、もう片方を見やる。

 

その手に握っていたのは、何時からか、最初からか。

赤と緋と、紅……ではない──記憶に無かったはずの、見慣れた──槍。

何故だか、当たり前のようにその槍は自分の物だと思う。

 

 

風の音。

 

そこで、意識がようやく外に向く。

いや──興味が、向いた。

この身は頭の中で無意識にか取捨選択を為しているようだ、と認識したのは──少し傾けた顔の横を、狼の顔の人型が放った槍が通り過ぎてからだった。

 

槍を持つ腕を前に出す。

 

それだけで、狼の異形は大げさなまでに飛びずさる。

異形の腕に疾る赤い筋。着地する直前、それは唸り声をあげた。

 

──刹那。

 

槍から放たれた呪いの棘は、正しくその異形の命を内側から喰い破った。

 

倒れ、消えていく異形を見やりながら──腕は動く。

ただ振った、と言わんばかりに見もせずに横に振り抜かれた腕。

その手の先に、同じく狼の……棍棒を持った異形がいた。まさしく悲鳴のような鳴き声をあげる異形の頭を鷲掴む。

 

一歩。

 

踏み込む足に力をこめる。

初めて息をしたように力を入れた体が脈を打つ。

掴んだ頭に手が沈み、異形の断末魔を耳の端で聞いた。

 

一歩。

 

しかしその一歩はあまりに力強く──想像するよりも遥かに遠くへ。

 

気づけば、離れていたはずの異形の群れの中に飛び込んでいた。

 

あまりの風圧に、頭を覆っていた布と髪が舞う。

それは掴んでいた異形の躯が指の隙間からちぎれ飛ぶ程で──

自分の眼が同じ風に曝されて、閉じずとも平静な事実に目を瞬いた。

 

そして──思いの外着地の衝撃が無い事に、

自分の体が無意識の域で記憶にある領域を越えた体であると知覚する。

 

槍を回す。廻す、舞わす。

回転した刃に棘に、一番近くにいた異形が巻き込まれ──

そこでようやく、周囲の異形は自分を敵だと判断したようだった。

 

 

頭の中は未だに不透明で、靄がかかっている。

しかし、体が脈を打つ。

 

薄くなる周囲の音。張り詰めた糸を張る音がする。

同時に体の奥が冷えていく感覚。頭の靄が熱を持ち、冷めた空気を吸おうと口を薄く開けた。

しかし、開けた口は息を微かに吸ったのみ。

靄がかかる頭とは裏腹に、視界が開けた。

 

飛びかかろうと踏み込む異形の足。

力を込める異形の腕の筋肉の脈動する様。

見える全ては周囲を見渡せる余裕を持てる程に鈍重で──

 

まさしく無造作に。

頭で考えるよりも先に奔らせた腕の延長線上で──

──槍は異形の首を刎ねた。

 

 

──爆発。

 

 

砂埃が数体の骸を吹き飛ばしながら巻き上がる。

それがただ一人が駆け出した事で起きた事象だ──そう、異形が気づいたのは、紫の閃光の後に異形達が余すことなく魔力となって四散する間際だった。

 

 

大きな砂埃と共に、足を止める。

足裏にあった装甲が地面に埋まり、足首に至るまで埋まった所で……ようやく体の傾きが平常に戻せたと認識した。

 

槍を地面に突き立て、足を抜く。

不思議と足と離れることなく着いてきた装甲に、そういえばこの装甲はまるで体に融合しているようだと考え──

 

 

 

 

そこで、地面が揺れた。

 

 

目を瞬く。

 

気づけば近づいた地面。

揺れ続ける地面に、槍を掴んで立て直し──揺れるは自分だと理解した。

 

脈を打つ体が、わずかにほどける感覚。

頭の片隅から、知らなかったよく知る知識が渦を成す。

 

魔力の、不足。

 

狂戦士。

霊体。

──英霊。

 

この身が『彼』なれば、〝源泉/主〟が無ければそれは必然。

 

異形を象っていた魔力の〝元〟に目を奪われた。

 

 

──否。

 

 

『彼』を象る魔力と異形の魔力が等価であるはずがない。

いや、自身は異形では無い──と、考えたのだ。そう思いたかった。

 

だから、そう断じた。

──故に。

 

よく知る見知らぬ知識に従って──大地に槍を深く、つき立てる。

 

この槍の棘は体を無数に奔り、隅々まで食い荒らす。その特性に──ルーンを足していく。

ルーンは使う者の腕により無数の使い途を示す。

 

──必殺を必中に改造する。

──槍の特性を変え、別の宝具に昇華する技を成したは『彼』の『大元』だ。

 

更に宝具であれど、其は自身が使う武具である。

その知識を使うのだ。──ならば、必定。

 

大地に深く潜り込む棘は、深く、深い脈を探りあて──吸い上げた。

 

槍が脈を打つように波打つ。

微かな振動と共に仄かに赤を深める紫の槍。それを見て──頃合いか、と容易く抜き放つ。

ぼんやりと赤い燐光を放つ槍を片手で回し短く持ち替える。

 

靄がかかる頭と揺れたままの体。

しかし、操る腕は一つの震えも無い。

 

自身から湧き出る知識の中から、複数のルーンを自身に加える。

槍の刃を抱え込むように自身に向け──

 

 

ちょうど、胸の赤い紋様の中心──肋骨の隙間を違わず一息にすり抜け

 

──心臓を穿った。

 

 

瞬間、胸を中心になんとも言えぬ不快感が疾る。が、眉を動かしたのみで耐える。

隅々を疾る棘が吸い上げた魔力と共に、体に溶け込む。熱を感じた。

 

胸を突く槍を更に押し込む。

喉の奥から僅かにせり上がる感触を飲み込みながら、ずぶり、ずぶりと押し込み続け──

じわりと背筋を熱が奔り──身の丈程もあった槍は、突き出る事なく胸に沈んだ。

 

──ビキ、……ビキ。

何か硬いものに亀裂のはしるような音が、耳元で鳴る。

 

その音が鳴る度、熱と共に体に魔力が浸透し──視界にまで及んでいた靄と、体の揺れが収まっていく。

 

 

靄が晴れつつある頭を動かし、装甲を纏う体に視線を移し

──この辺か、と左腕の中頃に──爪を突き立てた。

 

沈み、掻き分け──硬質なソレを掴み、一気に引き抜く。

 

骨に似た、黒にも見える程に赤黒い棒状の物がごぼりと音を立てて腕を抜け、柔らかいゴムの様にだらりとぶら下がる。

しかし空気に触れた端から劇的なまでに変化を見せた。

耳元で鳴っていたあの音と同じ音が鳴ると──それは先程胸に沈んだ紫の槍と瓜二つ、否──その物に戻っていた。

 

ルーンと魔力をはしらせ、先程の効果を払う。

剥がれ落ちる自分の血だった黒い残骸を、一振りすることで同じく槍から払った。

 

思い出したように払ったルーンの中からいくつかを体に施す。

腕を見ると先程までの穴はすっかり無くなり、音を立てて熱と共に平坦な肌へと戻っていった。

 

異形の屍体は既に魔力となって消え失せ、不自然な血溜まりが足元にあるのみの、乾いた大地。

 

 

今まで見ていなかった、空を見上げた。

 

 

「──知識はあるが、実際に見てみると妙なモンだ」

 

 

初めて男は明瞭に思考を声に出す。

そこでようやく、男は自身を自覚し、認めた。

 

頭上の広大な──穴の開いた空。

 

 

Fate/Grand Order 、通称 FGO 。

この身は、この身が。

人理を取り戻す聖杯探索(グランドオーダー)での、

かの英霊……『クー・フーリン[オルタ]』を象ったのだ──と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




場所イメージはセプテム。
オリ主だけどほぼ狂王かもしれない。
どうやって出てきたねん、とか存在おかしくね、とかは妄想なので……
ぐだーずとマシュ達は普通に何処かで聖杯探索やってる。
多分味方になったらどっかで暴れて消え、敵になったら暴れるだけ暴れて消える。
そうじゃなかったら適当に災害化して自滅するorどっかで定礎復元に巻き込まれて消える。

……ナンダロウコノコ……。


12/10 肌の色が間違ってるとぐぐる先生言ってた! 浅黒い→青白い に変更。




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野良さば。狂王ネタ続き。

とりあえず憑依感を出していこうとしたら温度差がヤバイことになった。主人公視点だと割とゆるくなった気もしないでもない……独自設定&自己解釈のオンパレードです。

狂王様の装備の話とかを全力で妄想していくスタイル。
具体的に言うとルーンがRUUUUuuuNNN!! くらいになったり。
勿論、書籍を読んだりしていやせん。ググった後に捏造です。
……捏造です。絶対かたつきさん調べたら矛盾出るよ……妄想なので許してつかあさい……。




…………あれから、色々試したが──

どうやらこの体にはこの見た目の通りの“知識”があるらしい。

 

便利だがその“知識”に任せた──ゴリ押しとしか言えない俺の戦い方は、一通りの想像した動きを容易く再現し……俺が捕捉した敵を一掃出来た。

 

棒高跳びめいた動きをしたら木に突っ込んだが。

 

……俺じゃなく木が折れたのはどういうことなのか……いや、たしか普通に石蹴り割ったりした気もするからある意味当然……なのか?

 

 

──さて、これからどうするか。

 

 

残党だった骨の兵士? を踏み締めながらぼんやりと空を眺めた。

 

巨大な穴を見る。

雲が穴を避けるように動いている……。

 

空気の流れが彼処を通っていないんだろうか。気圧が別次元なのか?

 

じゃあもし空飛んで彼処まで行ったら空気がどっかで無くなるのだろうか?

 

自分でも取り留めのない事だと思う事を考える。

考えないようにしていた事に思考が傾くのを防ごうという足掻きだった。

しかし、“その思考”は何処かで必ず考えねばならない。

 

周りに誰もいないのを言い訳に、あ゛ー、と意味もなく声を漏らした。

 

 

 

…………自分のこの身は一体何がどうしてここに在るのか。

 

 

 

そもそも魂の格が釣り合っていないのに、この身は──。

──俺はクーフーリン[オルタ]と成っていた。

 

 

──何故だ?

 

 

遠い記憶を引き摺り出す。

 

『彼』はどうして[オルタ]と化したか。

 

今の自分の差異は何だ?

──歪めた当人もいなかった。……俺が象ったから?

 

 

────否。

 

 

思考ごと足元の骨の残骸を踏み砕いた。

 

 

ただの人間だったヤツ如きが核に在るだけで、英霊に至った、しかも半神であった『彼』を歪める等出来るはずが無い。

では何故だ? 聖杯? ──これも違うだろう。

 

そもそも俺を喚ぶ手間をかけるよりも『彼』を喚べば済む話なのだから。

俺という、ただの人間だったはずの魂を──半神の『彼』の器に押し込めたヤツが、いないはずが無い。

 

ふと、何かの影を思い出す。

精神がよく知る記憶の中で過ぎ去ったその影を引っ張り上げる。

 

 

赤い獣。 ──これは先程も屠った異形の一つ。

 

骨の兵士。 ──これも先程屠った一つ。

 

朧げな人影。 ──…………。

 

 

──そういえば、ここでただの人間に未だ遭遇していない。

 

 

目線を空から引き剥がす。

骨と獣の屍体で作った即興の物見櫓(つまりただ積み上げただけ)が魔力に戻り始めた事を視界が下がったことで察し、一足跳びで降りる。

 

人恋しさ、とでも言うのか。

そろそろ自分以外の人型を見たいと思った。

 

 

 

 

“事故で”折った木があったのでそこから木片を採取。

…………さて、と思考で一息つきながら、適当に地面に転がる骨を足で退けた。

 

 

遠い記憶の中で、『彼』のしていた事を試そうと考えて──悩む。

どれに、するか。

ルーンは意味が複数あり、使い手の認識でいくらでも効果が変わる。

 

例えばアンサズ。遠い記憶の中で一時期調べた覚えがあるルーン。

“F”に似た形。とある映像で『彼』が使用した事とその効果に色々騒ぎがあったんだったか。

……その時に出た効果は、火。

 

ひらがなの“く”に似た形のルーン、カノ。象徴は、松明。

……正しく火という意味が結びつきやすいルーンだ。何故、そのルーンを使わなかったのか。

……前であれば単なる作画のミスとかいう話を考えただろうか。

 

 

──しかし、今の自分の姿が姿である。

曲がりなりにもクーフーリン、その姿。半神であり、数多くの武具を使い──魔術を学んだ英雄。

 

 

俺は、アンサズのルーンの意味を自然に知識から引っ張り出した。

何故だかはわからないが、段々意識せずとも引き出せるようになってきている。

正直これはマズイような気もしたが、今は考えないことにする。

 

 

……アンサズのルーンの象徴は、主神オーディン。数ある意味の中に、直接火を表す言葉は無いと言える。

 

だが、あれを使用した状況ではカノでは“足りなかった”のではないか。

 

『彼』が連れて往くと言った、ソレは──ただの松明では燃やし尽くせない可能性を考えたのではないだろうか。

 

アンサズのルーン、主神オーディンをあらわす文字。その意味は……知識・幸運・神託・天啓・知性・メッセージ・防衛・歌・英雄

──神。

 

……あの悪性の塊を、神の下へ燃やし還す。

 

半神の英霊のマスターであった、いけ好かないあの男への最大の皮肉であり……あわれみ、だったのやもしれない。

面倒見のいい気性に半神の視点もあるなら、ありえない話でも──

 

 

 

風に煽られたか横に倒れていた木の欠片が剥がれ落ちて、転がる骨と接触する。──からん、と高い音を立てた。

 

 

 

……思考がズレたな。……戻そう。

 

さて、いい加減ちゃんと考えろ。自分が探そうとするものはなんだろうか。それによって俺が刻むルーンの種類と内容が変わる。

 

……とりあえず、人型のナニカがいいだろう。一般人には会ったところでどうにもならない未来しか見えないから、除外。

……場所ではなく者を指定する方向がいいだろうか。

 

自分にとっての敵味方は、“どれ”だ? ……たしか、どの世界であれ大まかな勢力は3つ。

俗に言う主人公、人理を守る陣営。

この世界の住人であり、戦地に選ばれた被害を被る陣営。

──そして俗に言うボス、世界を破壊する陣営。

 

……この身が聖杯から召還されたであろう事は間違いない。魔力が循環する身体は、まず間違いなく魔力が尽きれば形を維持できないサーヴァントである事を示している。

 

しかし、『どの側面の聖杯から』なのか。

それによっても変わる、が…………

 

 

………………………。

 

──なんか面倒になってきた。

 

 

天に采配を任せるっつーのも込めて、ざっくばらんに神々を象徴とするルーンから選ぶことを決めた。

 

……とりあえず何かしらでかいエネルギーを探るのに使えるだろうと“イング”。

ただの人間には用は無ぇ。宇宙人とかも用は無いが……いや、これは雑念だった。

 

英霊と出会う確率を上げる為に“アンサズ”。

意味に入ってる時点でこれは志向に加えると決めていた。

 

あとは……異形だと面倒くさいから“ラド”も入れる事にする。

意味の一つはコミュニケーション。問答無用で襲いかかる奴なんて体力の無駄になる予感しかしねぇ。

 

よし、とりあえずルーンを刻んで……複数作る、か?

 

 

ふと過ぎる記憶。──魔力Cランク。……………何故今それが気になったのか。

…………効率、か。

『彼』の別の側面であるこの身は魔力を膨大に消費することに慣れた体であるようだから、ルーン魔術も普通より魔力を食うのかもしれない。

ルーン魔術はコストが安いかわりに小規模な結果を起こすんだったか? ……ん? 何か記憶と知識に違いがあるような…………くそ、混ざったか、面倒くさい。

──まあ、いいか……最悪、またマナを吸い取りゃいい。

 

 

横の木──もはや残骸だが──の手近な木片を引き寄せ、大きさをおおまかに踏み割って揃えた。

ズシャ、と音を立てて地面に胡座をかく。鎧が硬くて若干座りにくい気もするがその内慣れるのだろうと放っておく。

 

 

ふと、手を止めた。

手近な刃物は自分の得物だけだった事に数瞬悩む。多分貫通するんじゃなかろうか。

力加減が出来るか怪しいこの身だ。

先程の出来事──木片を採取しようとして縦に木を両断した──からして、未だ不安が残っていた。

 

……そういえば、と後ろを見やる。

 

すっかり体の一部となっていたから気にもしていなかった……自分の身にまとう骨の鎧。

自身の骨盤の上、腰骨の辺りから鎧に分岐が確認できた。

まるで尻尾のように……いや、正しく長い骨の尻尾が生えていた。

 

恐竜の化石等で見るような尻尾とは似ても似つかないそれは、色だけでなく形にも違いが顕著だ。

攻撃性をあらわしているのか、骨の横は杭のように棘が生えている。……これを生き物がするように振り回しでもしたら、相手は穴だらけでは済まないのだろうとも思う。

 

とはいっても、これに神経が通っている感覚は無い。鎧の一部であるのだろうとアタリをつけた。

──長い尻尾は、自分の前に引いてもまだあまりある長さだった。

 

 

 

 

 

「……こんなモンか」

 

 

ルーンを刻み終えた木片の数々を眺めた。

筆記具代わりにした鎧から手を離し、無造作に拾い集める。

 

邪魔なだけかと思ってたが、魔力を流動させると意外と動くから第三の手ぐらいにはなるかもしれない。

練習も兼ねて──身体のおかげか割と楽に動かせたが──尻尾のような鎧のみで木片をかき集め、掬い上げる。

 

腹の高さまで持ち上げ指で一つ抜き出すと、

物は試しと魔力を込め──

──手の中で木片が爆発した。

 

 

「…………。」

 

 

手についた木のクズを払い落とす。…………明らかに込めすぎた結果だ。

 

再度と抜き出し魔力を込め──失敗。

……少し緩める──失敗。

かんなり緩くゆっくり──何故か線香花火のように燃え尽きた。木のクズもチリチリしている。

 

……この後岩を砕いて石を使う方法に切り替えた。

“知識”があるのに木片が全部爆散するとは思わなかった。

 

 

……この一連がマナを吸い過ぎた弊害だったと気づくのは、もっと後の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ロビン下がって! 次、アーラシュ一撃お願い!!」

「はいよっと!」

 

「行くぜぇっ!」

 

 

鋭く細く響く声。牽制として弓矢を放ち、後方へ下がる緑の外套。

矢をうけて怯んだ兵士に、寸分違わず牽制の矢と同じ場所へ矢が飛ぶ。

それは牽制とはまるで違う威力をもって兵士を魔力へと還した。

兵士を倒した二人の弓兵は、指示を出した主を見もせずに駆け出す。

 

──ここは戦場。まだ敵は残っている。

 

 

「──ロマン!! まだ!?」

 

『ちょっと! もうちょっとだから! ああもう焦らせるとミスるからねほんとやめて睨まないで!!』

 

「なるべく素早く急いでくださいドクター!」

 

 

砂埃と幾人もの人影が翻る戦場、その後方に控えた赤髪の少女。その少女を時折飛んでくる埃や戦場の残骸から守る大楯を持った少女。

二人は実像を持っていないもう一人へと“叱咤激励”をしていた。

 

彼等はその身に大きな使命を持ち、この地に降り立った人理を守ろうとする者達。

 

そんな彼女達を眺めながら、一匹の獣は深く息と声を吐く。

もしも誰かが翻訳するとしたら、こう言っていただろう。

──何してんだこいつら、と。

 

 

人理を守る為に降り立った彼女達は、この世界の特異点に出会い、守り、戦った。

無事に『彼女』を守護する陣営と合流し、現在は一度別れ──敵の陣営を切り崩す為に、孤立していた部隊を倒した帰りの道中であった。

であった、のだ。

 

それがどうしたことか、後ろ盾となっているはずの組織──人理継続保障機関、カルデアのシステムの僅かな故障。

それの復旧作業を開始した為に、道中の索敵機能をこの場にいる者達で賄うこととなった。

 

しかし、人から外れた英霊達も現在はサーヴァントという枠に収まっている為か。

どうしても降って湧いたように出現する敵を出会う前に見つけることは、なかなか難しかったのだ。

 

結果、今こうして戦闘となっている。

 

──が。

 

 

「────っ!? サーヴァント反応、来ますっ!!」

 

「『えっ』」

 

 

大楯の少女の言葉に、通信をしていたロマンと呼ばれた男性の声と赤髪の少女の間抜けな声。

前方で戦っていた味方のサーヴァントが、少女達の近くまで跳びずさる。

それをすかさずゴーレムと兵士の敵が追い縋ろうとし──

 

 

 

──轟音。

 

 

 

空から隕石が落ちたのではという衝撃と共に、前方にいた敵が爆ぜた。

 

咄嗟に大楯の少女がサーヴァント達の前に飛び出し構えたことで赤髪の少女達には何の影響も無い。だが……衝撃の中心部は、燦々たる有様としか言いようがなかった。

 

衝撃強さを物語るように離れていたこちらにまで血飛沫と大小様々な土塊が飛んでいる。

(これも盾により被害0。本当に彼女様々だ、と後に赤髪の少女は語った)

ひび割れていた土地だが、普通の地面であったはずのそこは──

 

 

「────なんだ。破壊する方かと思ったら、修復側か」

 

 

声が響く。

大楯の少女がハッと息を飲む音とサーヴァントの臨戦態勢に移る音。同時に、顔をあげ……気づく。

クレーターのようにへこんだ大地。

 

その中心に──異形が居た。

 

 

 

 

 

 

 

……失敗したなこれは。

 

一応警戒されないように槍を地面からおもむろに抜き取りつつ思う。

空から飛び降りながら確認した限り、俺が潰した異形の数はいくつだったか……。

 

 

たしかサーヴァントが徒党を組んでるボス陣営とこの世界の軍が敵対してるんだったか、と石にルーンを刻んでサーヴァント反応を探って──突撃してみたわけだが。

 

気づけば思いっきり“大穴”に突っ込んだようだ。

サーヴァントの塊があれば別の“どちらか”に当たるだろう、と思いこんでいた。

 

……いや。言い訳をするなら、朧げな記憶しかなかったし……主人公達目線じゃわからなかった。

微かに覚えている物を引き出すが、画面に登場?したのは……主人公とあの大盾を構えた嬢ちゃんの二人だった──はずだった。

 

 

「──ずいぶんと派手な横槍だな」

 

「おいおい、新手ですか? 勘弁してくれよ……」

 

「……マスター、指示を」

 

「なあにあれ……激しく厨二的、拙者もああしたらモテるでござるか!?」

 

「ええい袖をつかむでない、何故俺に聞くのだ」

 

「そこの海賊ちょっと黙ってて!」

 

 

自分と対峙する(一部)賑やかな6人のサーヴァント。

そしてその背後に……

 

 

「……っ先輩、下がっていてください」

 

「あれは……」

 

『サーヴァント!? 反応は一騎なのに、なんて──』

 

 

ぼんやり眺める間に赤髪の嬢ちゃんの元へ飛びずさっていた大楯の嬢ちゃん。声のみが響く男の声。

サーヴァント約7騎に人間に魔術要素のある通信。……あとなんか見たような……獣。

アイツ主人公に抱えられてたのか。

 

……多いな、おい。こんだけサーヴァントやよくわからん要素の集まりならそりゃあ敵に見つかるしルーンにひっかかるわけだ。

 

…………そういや連れてくパーティーの数は一戦に6人だったか……ん? 5人だったか? ……まあ、いいか。

一番の要因は恐らく俺が“一般人を避けた”からだろう。

 

 

──この聖杯戦争は異質だ。

 

 

この世界の人間の多くを巻き込んだ戦争だったのを失念していた。

世界を崩壊させる側も守護する側も軍、つまり“人間を引き連れている”。

 

人間の少ない陣営をルーンは探り当てる。

某赤い嬢ちゃんみてえにうっかりしてしまった。

──『人間が相対的に少ない陣営』をルーンが探し当てちまったわけだ。

 

 

「──なあ」

 

『!』

 

 

──用は済んだから帰りてえ。

 

 

声をかけただけだというのに、主人公御一行がこちらの指先、足先、足、腕、肩……全ての動きに注視してきたのを理解した。

警戒されすぎだ。こりゃあ隙をつくのも容易いが多少怪我はするかもしれん、か──?

 

 

 

……………………………ん?

 

 

 

あ? ……なんだ? 今……俺は〈戦うことを前提に〉したのか。

 

俺は別に戦う気は無いはずだ。……異形の輩は押し並べて魔力に還していたが。

 

……いや、そういや正体は突撃すりゃわかるとか考えてた、な。

 

 

……思い当たるとしたら、“知識”が自身の意識に影響を出したとか──か?

なんとなくだが、英霊の“知識”が在る時点で影響0ではないのはわかってたしな。

既にわかっているだけでも例えば──

 

身体能力。薄れた記憶でも俺がここまで動けた記憶は無い。

次に魔術知識。当たり前に使えるが完全に“知識”頼りだ。

さらに──息をする感覚で行使する、魔力。

 

そもそも、なんとなくで使っているがこれは俺が使えるはずが──

 

 

考え込んで黙っていた俺に何かを思ったのか、人影が一つ、一歩進み出て口を開いた。

 

 

「それで…………いきなり天から降ってきたそこな御仁は、一体何を目的に来られた?」

 

『そりゃ戦いに来たんじゃないかな?! だって今さっきめっちゃ殺意あったんだよ!?』

 

「ドクターは黙ってて下さい!」「フォーウ……」

 

「はっ!! まさかその格好的にラスボス!? これはアレですな、勇者が旅立つとすぐに出る芽を潰そうとしてくる定番の負けイベントですな!?」

 

「黙ってろって言ってんのよ!!」

 

 

……侍が真っ当な問いを投げかけてきたが、応える前になんか騒ぎ始めた。

 

──もう人型見たから用は無いんだが、今言っても聞こえねえだろうありゃあ。

 

硬いのをいい事に鎧に魔力を通し──数騎サーヴァントが一瞬身構えたが

 

──尻尾部分を丸めて即席の椅子にして座る。

 

自身は用は済んだが、別に去る用事も無いので賑やかな面々を眺めることにした。

……騒いでいない数騎のサーヴァントがこちらを見たまま固まっている。

 

 

 

おい、とりあえず指示出してやれよ主人公。こっち見てるのはいいけど味方がどうすればいいのか悩んで仕舞ったり持ったり武器ガチャガチャさせてるだろうが。

 

 

 

 

 




ネタバレは極力避けた……つもり! (この転生主人公は除く)
みんな、FGO楽しいぜ! やろうぜ!! 兄貴カッコいいぜ!!! やろうぜ!!!!!

多分ぐだーず陣営につくバージョン。一番ぐだーず達に優しいルート。
でも主人公はどのルートでも消えるエンド。
しかたないネ!
なんかえぐい目ん玉柱を抉り倒して消えてくれるよきっと。

ちなみに災厄ルートだと冬木のバーサーカーみたいなクエスト発生する感じ。ただの傍迷惑。


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野良さば。 狂王編 〜だから消失エンドって決まってるんだってば〜

無課金勢の作者は運営を許さないィ!! 有償て……有償……
まだ作者は第4章を進めています。え、ソロモン……? くま○ンの親戚かな(白目)
あけましたおでめとう。


か、
感想が、感想が来てるひょ、評価ボタン押されてる……だって……え、なにこれ……夢かな(震え)

続き期待された! 褒められた!!
嬉しい
嬉しいけど
連載する気は無いんだってば!!(タタタタッタ-ンッ)
しかし私にネーミングセンスは無い(ぐだ子の名前出ます)







──例えるならば、竹を割ったような快音。

それが一つ、ただ一つ森に響く。

 

遠くから見ている者がいたとしたら、さぞ不思議な事だろう。

その音が一つ響いた直後に、まるで落雷が落ちた様に音の元であった木が。

()()()に別たれたのだから。

 

まるで当たり前のように片方は大地に力強く根を張り、もう片方は──ゆっくりと地面に倒れ伏していく。

不自然な程あまり音を立てずに倒れる様は、驚いて飛び立った鳥が首をかしげそうな程に不気味で。

 

それが一人の男によるものだと言うのだから、世の中はわからないものだ。

 

 

「…………………なんで?」

 

「……………」

 

「だからなんで!」

 

 

“倒された”木のそばで、人影が二つ。

数歩離れた場所立っていた人影が、足を振り上げ地面を踏みしめる。

 

 

「薪集めがっ!!」

 

 

持っている棒状のものを振りかぶり

 

 

「そうなるんですかねぇッ!!!??!?」

 

 

───地面に叩きつけた。

……軽い音をたてて転がった木の枝は、屈んでいたもう一つの人影の足に当たり停止する。

 

 

「……………」

 

 

正直な話、それは俺が知りたい……と答えたらきっと

このサーヴァントたる男は──今も髪を掻き毟ってうがうが言っている──最早遠慮なくこちらを殴り飛ばすかするんじゃないかと、人影は思った。

 

二人の男。

その風貌はまさしく対照的。

 

かたや、麦穂の様な山吹色の跳ねる髪を掻き毟る人影。

木漏れ日を反射し、まさしく黄金色に輝いた。

かたや、暗い夜更けの群青の長い髪を垂らした屈む人影。

木漏れ日に当たる部分が星をちりばめた夜空の様に青く光る。

 

かたや、自然の草木を集めた色の衣服を見に纏い。

かたや、禍々しいまでの夜に染まる獣の骨を象った鎧を纏う。

 

その目の色すらも、かたや優しい草木の色ならばもう片方は血を煮詰めた深紅の色。

 

見た目にここまで差異が現れる二人。

ならば、もはや当たり前の様に中身も対照的だった。

 

 

「あーもー! なんでうちのマスターは……!」

 

 

背後で唸る様につぶやく男の言葉を、もう一人の男は脳内で復唱する。

 

 

───どうして、こうなった。

 

 

 

 

 

 

時間にして数十分ほど前。

 

一対多数という形で、乾いた砂埃の舞う中。

人影達は対峙していた。

 

──はずなのだが。

 

場はよりカオスの道を進んでいた。

 

 

「退葉皆織といいます。私と契約して仲間になってよ!!」

 

「先輩!?」

 

[「───は。お断りだ」]

 

 

 

──………あ?

 

 

 

「マスター! 流石にそれは拙者もお断るやもしれぬでござる! どうせなら魔法少女のコスプレで言われたいでござる!!」

 

「空気読みなさい海賊!」

 

「空気は吸うものでござる! はいテンプレ言えたぐふふふふあいたぁ!! やめるでござる! 殿中でござるよぐふぁ!!?」

 

「おたくら楽しそうね……」

 

「……これは少しばかり、木枯らしに吹かれたようだなぁ……」

 

「えっと、そうだな、後でまた聞き直すって手もあるぜ?」

 

「…………………」

 

 

 

溜め息をつきながらもこちらを窺う視線。数騎。

どつき漫才に移行する一部。

別種の漫才を始めた一部。

 

 

……攻撃はされないだろう。

 

──意識して思考に沈む。

 

 

…………俺は何だ?

 

──クー・フーリン【オルタ】。

 

……今の姿が、という注釈こそあれど。

 

…………そういえば、おかしいと思っていた事がある。

俺に今、聖杯からのバックアップは感じない。

……そう、そうだ。そもそも………()()()()()()()()()()()のか?

 

『聖杯システム』という知識。

それは座よりサーヴァントとして召喚された英霊が「聖杯からバックアップを得て」得る知識だ。

 

……俺の記憶の始まりは、荒野。

 

その時からの感覚の変化は無い。つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

徹頭徹尾、記憶に『聖杯』が無い。

それは今の俺じゃない“俺の記憶”には手に入れられないモノだ。

……一体何処でその『記憶』を得た?

 

もう一つある。

 

さっき、さっきだ。俺の口から出た言葉。

──俺は思考していない。

 

俺はサーヴァントである事を認識して、それこそ……数時間も経っていない。

契約やどうたらなんて知識も、思い出すように探れば後から溢れ出てくる……が。

無意識に断る程に俺に忌避感は無かったはずだ。

 

可能性があるとするならばこの器の───いや。

 

それは無い。だとすれば、()()()()()()()()()

 

そして俺は、この主人公達に着いて行くメリットもあるはずだ。

一、魔力。

たしかバックアップがあるから複数のサーヴァントがいても大丈夫だとか書いてあった気がする。

燃費の悪いこの体を維持する為に一手間はぶけるのはメリットのはずだ。

二、目的。

別に人理滅却する気は正直な話、無い。

というか魂が今はどうだかわからんが元々人間だ。

余程トチ狂ったわけでなければ破壊の権化になる気は……無いはずだ。

 

さらに言えば主人公達と戦う気が今の所無い。

戦うメリットもほぼ無い。

戦いに快楽でも見出してたらわからないが、

さっきまで潰してきた奴らに対して愉快な気持ちになったりとか……なった覚えも無い。

 

……これだけあげてみてわかることは。

なるほど、俺にこの主人公達と戦う意味が見当たらない。

 

 

しかし、さっき自分で言ったのだ。

「仲間にならない」と。

 

…………()()が起きている?

この体のどこかで、何かが?

…………解析魔術的なもの、なかっただろうか。

ルーンのやり方を練れば……

 

 

「………ぃ、ぉい………おい、アンタ! それでいいか?」

 

「…………………………おう」

 

「!! ほ、本当に?」

 

「まじか」

 

『まじで!?』

 

 

ん?

 

………………ん?

 

………何の話してたかわからず頷いちまった。

…………。

 

唖然2、驚愕2、疑心2、歓喜2……声で驚愕に+1か。

 

武器はほぼ下がっている。なら敵対する話じゃない。

俺に伺いをたてる話題ってことは……俺に関する事。

それでいいかと聞いて頷いた奴に本当かと聞くという事に……期待が見える奴がいる。

なら彼奴らにメリットがある話だったということ。

俺が敵対する以外なら、撤退か、それとも。

 

…………………ん?

もしかしてこれは結果オーライの話になったか?

 

 

ガシャ、と音が聞こえた。

目をうつすとさっきより一歩こちらに体勢を向けた薄紫色の髪の少女が目に入る。

大盾をちゃんとマスターである少女に被せているのはわかっているな、と思考の片隅に思う。

…………そのマスターたる少女がこちらを覗いているのは目を瞑るとして。

 

 

「で、では……あの、本当によろしいんですね?」

 

 

………あの、菓子……ましゅまろだかそんな感じの名前の……

ああ、マシュだ、マシュ。

大盾持った少女……って細。出るとこ出てるのに。

 

……思考がずれるな。

もうほぼあのマスターというか主人公の視線で話がわかった気がするが……

 

ちょうど良いから思考の戻しついでにカマかけるか。

 

 

「その前に」

 

「「「!」」」

 

 

相変わらず一挙手一投足見てくるなサーヴァント。

思わず魔力動いて尻尾動いたから一部が武器また構えたな。

……まああえて無視するが。

 

 

「一応聞くが、てめえらは……──()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……『ネロ皇帝と知り合いなんですか』と来るとはな」

 

「──は?」

 

「…………別に。何も言ってねえ」

 

 

背中に感じる視線の気配を無視しながら、手に取った木片──と言うには大きかった木々をへし折りつつ腕に抱える。

 

結果的に言えば、現状最適解に至ったと思える。

あのカマかけに対して、マシュではなくその後ろのマスターが声を上げた事で色々わかった。

 

一つ、

やはり自分が仲間入りするかしないかの話題であったであろう事。

でなければ失言と言える人物名をあげる前に、他の世話焼きサーヴァントがマスターを止めたはずだ。

 

(正しくは発言の後しぼられていた。その会話で俺が仲間入りするかしないかの話題だと確証を得る発言も出たので万々歳だった)

 

……二つ、

特異点はネロ皇帝。つまりここは古代ローマであること。

三つ、

ネロ皇帝と主人公は接触済み。しかもネロ皇帝に味方している。

四つ、

知り合いかと聞いてきた。つまり俺の事──この器が【何】なのか、わかっていない。

 

…………まあ、四つめに関してはその内聞いてくるし知られるのだろう。

 

そもそも、()()()()()()()()()()()んだ。

 

……さっき思い出したが。

 

 

まあ、それは別に……どうとでもなる。もうどうでもいいとも言える。

それより現状を言葉に表すと……現在、俺は主人公達と──同盟関係になった。

 

契約はしていない。

……やり方はなんとなくわかっていたが、やはりさっきと同じ事が起きた。

自分で辞退した。………無意識に。

 

あと何でか──

 

手を前に出す。……握っていた木片に衝撃。

 

 

「ちょ──」

 

 

刺さった何かを確認せずに飛んできた方向に振りかぶり、投げる。

──がこん、と音。

木同士の音じゃないから当たったか?

 

…………さっきからこの調子だ。

 

見通しが悪いところに来るのは(この身体では)ほぼ初めてだと思う。

とはいえ、『彼』の知識ではゲリラ戦はザラにあって、この森林の中も通用する知識が思い出せばぼろぼろ出てくる。

 

しかし、鈍い。

 

無意識に一人ではないという安心でもしたのか?

──気配を探れない。

いや、「何かがいる」とはわかる。「()()()()()()()()」が分からない。

…………っと

 

 

「──ぃ───」

 

 

抱えていた木片の中で尖った物を選び──手早く魔力を指にこめて一本の線を引く。

じわりと線が滲んだ瞬間、さっきと同じ方向に投擲。

──同じ距離ほどで何かが崩れる音。

茂みに盛大に散らばる音からして骨の兵士だったか。

 

 

「──……一体だけかよ」

「いや何してんのあんた!?」

 

 

肩に風を感じて振り返るように避ける。

詰め寄ってきた自分よりも低い頭を見下ろした。

 

 

「あ? そりゃ──」

「いや知ってる! 知ってるよ!? そうだな! 偵察ありがとう!」

 

 

顔に「ああそうだったなチクショウ!!」と書かれた男。

──アーチャーのサーヴァント、真名ロビンフッド。

疲れたようにため息をこぼす男。

こいつこんなキャラだったのか、とおもわず観察した。

 

 

……………というか何で妙にキレてんだ?

 

 

 

 




人選はとりあえず皆お世話になったよねって選考基準。
自分より頭良い人書くのめっちゃ難しい(なお書けなかった模様)

ところで災厄ルート考えたら普通にバーサーカーの先達クレスさんにボコられる未来しか思いつかなかったです。
あと頭悪い妄想広げてったら気付けば某真っ二つヤロウと団子三兄弟したんだけどどうしようか(真顔)


作者 は 『傍点振り』 を 覚えた ! ▼
レベル が 1 上がった 気がする ! ▼



ぐだ子の名前は雑な決め方しましたすみません(小声)


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野良さば。狂王編 〜一応野良ですこうみえて〜

評価に色がついていた……だと……?
エゴサーチして自分の作品じゃないと思って2ページスルーした作者です。
とりあえず嬉しさのあまり書いちゃったてへぺろ(ぶたもおだてりゃぶひいい)

タイトルを見る度に思うのです。
あれ、コイツたしかブツ切りのネタ集作るはずだったよな、と……


あ、ところでうちの槍ニキに聖杯ぶち込み続け現在lv98。
ガッツ以外スキルカンストフォウマの槍ニキ居たら作者かもしれません。
監獄やってたら看護長欲しくなってきたけどまだストーリーが……
兄貴オルタはよ見たい……





「あ? そりゃ──」

「いや知ってる! 知ってるよ!? そうだな! 偵察ありがとう!」

 

 

《武力》偵察じゃなかったはずだけどな!

──心の中で、ロビンフッドは目の前の男に対する悪態を吐いた。

 

 

真名ロビンフッド、通称ロビン。

マスターとなった少女からはそう呼ばれるサーヴァント。

 

彼は現在の境遇に満足していた。……先ほどまでは、と注釈がつくが。

 

どちらかというと斥候が向いていると自覚する彼は、

部隊の中で自らのスキルを活かし敵を探る立場にあった。

(とはいえ、基本森以外では別の奴等に任せるが)

 

なるべく魔力に余裕を持たせる為と戦闘以外で部隊の幾人かは霊体化。

節約ができる“単独行動”を持っているサーヴァントは、マスターともう一人半人前である

──と言うがマスターの心理的サポートとして彼女は適任であると全員認識している──デミ・サーヴァントに同行していた。

“単独行動”をクラススキルに持つサーヴァントは、弓兵。

弓兵は二人いた。

レベルが上であったもう一人の弓兵……その名が語源になった英霊『アーラシュ』。

広い攻撃範囲を持つ彼と霊体化したサーヴァント達が護衛になれば、お手すきな自分は得意科目を担当すれば良いだろうと彼は動いていた。

 

……だからこそ、消去法で「彼」と同行するポジションになった。

 

 

「…………」

 

 

無言で先程倒した敵兵の骨をまじまじと見つめている──「彼」。

逸脱した行動をとり続ける正体不明のサーヴァント。

威容な姿。

ただの英雄ではないと(英雄に只の、とは異様に合わない言葉だが)一目でわかる姿。

神性の証たる赤い瞳。

見た瞬間うげ、と声が出かかったのは余談だ。

 

登場から派手なコトをしでかした「彼」は一時的に味方だ

──……ということになっている。

 

正直言って、サーヴァントになれば誰しもがある『属性』

それが仲間になる上で歓迎すべき属性では無い気がしてならないのだ。

(残念なことに契約を結んでいない「彼」のステータスをマスターが見られない以上、予想でしか無いが……)

 

……であるからして。

一応見張りをするつもりも込めて

休憩するマスターの護衛を別のサーヴァントに任せ、二人っきりになった。

焚き火の薪拾いと偵察、と理由をつけて。

 

……意外と協力的に薪拾いを静かにしてると思ったら、

まさか目の前で敵兵を()()()()()で屠るとは誰が予想できたか。

 

確かに、弓兵たる自分も敵の気配は察知していた。

──しかし、あえて屠る程の距離に近づいて居らず。

こちらに気づいた素振りも無いから、わざわざ罠を仕掛けることも無いかと放置を決めていたのだ。

……敵兵が人間でなく、どうやら空気中の魔力で勝手に沸いたらしいスケルトンだったのが……幸いというべきか。

 

 

それもこれも、「彼」がやらかした事が原因なのだ。

曰く、「燃やす用の枝を取ろうとした」。

そんなつもりでこのサーヴァントは木を両断した。

縦に。

 

声を上げなかった己を褒めたい。

 

生木は煙が出るから敵に見つかる危険がある。

そう言うと、すんなりと「彼」は手を離した。

──敵に見つかるという点は木を倒していたのだから最早意味は無かったが。

……森の歩き方を見るに、心得があるはずなのだ。

戦闘もそれこそ英霊に相応しい腕前だった。

なのに、何故かふとした拍子に妙な「素人」が覗く。

まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようだと思う。

正直な話、違和感しか感じ取れない。

 

今だって倒したスケルトンの残骸から異質な骨──

サーヴァントの強化に使える素材『凶骨』を取り出して眺めている。

 

俺達ならば、戦いが終わってスケルトンが消えてからの採取、が定番。

何故なら一々敵がいる側で倒して拾う暇が無いというのもあるが

……砕けた骨の中から色が違うとはいえ、目当ての一本を探すのがこう言ってはなんだが「非常に面倒」だからだ。

 

人間の骨の数は大小合わせて200を越えるらしい。

人の形をした敵。

ならばその数は推して知るべし。

その上、実はというか……

スケルトンから出る『凶骨』とは、倒した時に残った魔力が復活を遂げようと一点に集束した物だ。

一点に集中した結果形を保てず大多数消滅したり、あるいは魔力が減りすぎて『凶骨』が完成されずに消滅したりもするわけだが……

魔力が集中していく途中で、変色が進んでいくとはいえ『凶骨に成っていく物』をピンポイントで探し当てたのだ。

それこそキャスターなんかのサーヴァントであれば、それも可能だとは思う。

──しかし「彼」は明らかに、違う。

その事実に、無意識に利き手が武器の弦を張り直す。

 

 

「…………おたく、色々規格外だな」

 

 

聞こえてもいいつもりの呟きに、反応は無い。

変わらず、手に取った『素材』を眺めている。

人の枠をはずれた英霊なら、聞こえていないはずが無いのだが。

……自分の強くなってしまった視線に気づいてもいるはずだが。

 

──あくまで一時的に、味方なのだ。

ならば、その考えを理解するとはいかずとも『なんのつもりなのか』は探らなければ。

……敵兵に見つかることが前提なのではないかという行動の数々。

一体、何を考えているのか。

 

 

と、そう勝手ながら決意を新たにした弓兵。

弓兵であるが故なのか、目の端に何か()()()を感じた。

何故なのか、と「彼」が動いていないのを確認してそちらに目をこらす。

「彼」の足元。

よく見なければ気づかない程に小さくぼんやりと光る物。

先程敵を屠った木片。

──よくよく見ると、それに魔力で描かれた棒線。と、

 

 

「…………『コレ』が気になるか?」

 

「……っ、」

 

 

気を緩めていたのか、首を少しこちらに動かしていた「彼」の赤い眼光。

内心しくった、と舌打ちをするが表面は反射で口が緩む。

この際だ、それとなく雑談するふりで手札を明かしてもらえるなら儲けものだ──。

相手は明らかに自分よりも格上の英霊、英雄なのだろう。

それなら多少は口が緩む可能性も……

 

 

「あー、まあ気にならないと言ったら嘘になりますかねぇ」

 

「……さっき盾の嬢ちゃんが言ってたが、『凶骨』とか言うらしい」

 

 

そっちじゃねえよちくしょうそうだった骨見てたわコイツ!!!

 

 

 

 

 

 

 

凄いため息をついてきた。

なんだか疲れた様子で辺りを見回す弓兵、ロビンフッド。

ふと、視線を落とし──僅かに足先を動かして木片の魔力を散らす。

 

…………自分でも、何故なのか

──()()()()()()()()()()()()()()()()

視線が向いた方向を、この身はしっかりと感じ取った。

前ならばわかるはずもないが、やはり『彼』は歴戦の英雄なのだと実感する。

ならば、()()は『彼』の経験からくる勘、なのだろうか。

 

 

「……あー、とりあえず戻るとしますかねえ」

 

 

見回していたのを止め、こちらにかかる声。

どうやらもう近くに敵兵はいないと判断したらしい。

こちらを見てついてこいとも言わずに背を向ける弓兵。

まあついてく気はあるから逃げもしないが……

──今がチャンスだろうか。

 

ほんの少し、気配を薄める。

足音は既に消しているから、周囲の木の葉や枝を踏まないようぶつからないように……それだけで、この色々付属した体は自然と薄まる。

しかし、気配を消しきっては逆にこの前を歩く弓兵が警戒を強めるだけだろう。

あくまで敵に警戒していると思わせなければ、と()()()警戒している相手を見ながら思う。

 

眼の端にちょうどよく自身の武器と、その先にちょうど良い言い訳を見つける。

歩く方向を変える。

──背中に感じる視線。

人間だったはずの魂は盛大に挙動不審だ。しかしやはり英雄の器は汗ひとつかかず、平然と槍を拾い上げた。

……槍と木の枝を抱え直す。もう数歩歩く。視線は前に。

──視線が背中から、俺の視線の先の物に移った。

狙い通り、数歩歩いた先の()()()()()を見た視線。

 

瞬間、指のみを動かして槍にルーンを刻んだ。

『彼』の体はこんな所も素早いことこの上ない。

 

──体が脈打つ。

 

 

「何──っ!?」

 

 

跳躍。

素早く弓を構える姿を置いて、()()()()()()()()()へ跳んだ。

 

 

 

 

 

──おかしいとは思っていた。

何気なく歩いていた途中、「彼」は進路を変えた。

ちらりとこちらを見た顔は変わらずの仏頂面。

 

見れば「彼」自身の宝具であろう槍を拾い上げる姿。

いや、それ以外に意識が向いている?

その視線を追って……乾いた枝が転がっている。

薪拾いをご丁寧にもやり遂げてくれるつもりなのか?

 

瞬間だった。

 

 

「っ──!」

 

 

──やられた。

あのド派手な登場をした時から気づくべきだった。

最初に、「彼」は()()()()()()()()ではないか。

魔力を流動させての高い跳躍。あれがその正体だとようやく気づく。

しかも普段は味方の森の木々が、今回ばかりは敵に回る。

青い空に、黒い影は既に消えていた。

思わず舌を打ちながらも、地面に手を当てる。

──葉ですぐに見えなくなってしまったが、跳んだ方角は確認出来た。

 

……少し遠くで、何かの重い物が地面に衝突する振動を感じる。

二度目は……無い。

マスターに報告は、姿を確認してからでも良いはずだ。

地面から手を離し──駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ふきつける風の音。脈打つ体に連動する槍。

──着地の先を見る。

目当てのモノは、居た。

 

 

着地。同時に腕が無意識に槍を振りかぶり、()()()()()()()()()()を薙ぐ。

 

片手に伝わる衝撃から、三体のうち二体の首は折っただろうと予測し──転がっていた棍棒と腕を踏み砕く。

悲鳴。

ついでに、と着地の際に放した木片を一つ蹴り上げる。

手に取り手早くルーンを刻む。

弱った相手ならコレでいいか、と投げ──声が止む。

どうやら当たったか。

 

一つ、息を吐く。

 

今度は、と自身の宝具たる槍に魔力を込め──足元に突き立てる。

……微かに視界のピントがずれた。

 

狼人間の体を貫通して地面に突き立つ槍に片手を添える。

──あの主人公が人間だから、夜には何処かで休むだろう。ならそれまで持てば良い。

前よりは薄く赤に染まった槍を地面から抜いて、

手早く()()()()()していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ったく、たった一回跳んでどんくらい行ってんだ……!」

 

 

マスター達から離れているこの状況は正直歓迎できない。

味方サーヴァントが多数いるから大丈夫だとわかっていても、敵がそこかしこに居る事は感じている。

この状況下で()()味方が一人行方不明とか、笑えない──

 

 

「…………ん?」

 

 

色々な音が聞こえる。

木々の騒めき、鳥の羽ばたき、遥か遠くの微かな喧騒、地面からの振動、重い物がぶつかる衝突音………?

 

 

「………移動したか!?」

 

 

いや、いや……距離はそう遠くない。

予測した場所近くだ。一体何の音だ?

剣戟の音に近い。

しかし「彼」がそんな苦戦をする想像が正直つかない。

 

 

『顔のない王』の発動を確認してから、近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

「………ぐ、」

 

 

槍を抜き、治癒のルーンを体に施した瞬間だった。

──明らかに、()()()()()が近づいている。

抜いた穴が塞がるのを横目に、気配の方向を探り──

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■■■■ーーーー!!!!!」

 

 

ソレは、圧倒的な迄の暴風だった。

 

 

 

 

 

 




最後に登場したのはどなたでしょうね(棒)
日を開けて書くとつぎはぎがまるわかりですねやだー。文才くれ!
実はセプテムストーリーやっと見直しました。
空のアレのかんちがいとかネタバレ不可避とか色々判明した。
直すか直さないか悩んでる。ネタバレどうしよう……
次回、バーサクキャンセル! デュエルスタンバイ!!

うそです。

今回は人理復元陣営目線を考えようとしてわけわからぬってなりました。

文章のはじまりに空白やると見やすいんじゃと思ったけど当方スマホメモでぽちぽちしてるから空白上手く打てないィ!!
半角2個でできるのか?! みんなどうしてんだろうね文才くださいな!
……見やすい文章の打ち方がそもそもわかってないから今更感!!

誤字脱字は毎回確認しますがあったらそっと教えていただけたらなーなんて願望を読者様という聖杯に託しますそぉい!!



深夜テンションってこわいよね。


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野良さば。狂王編 〜経験値が足りない!〜

戦闘描写もどきあります。
FGO第2章のネタバレが逃れられない。

私の描写でネタバレではなく、ガッツリ名称入ったり流れが出たりキャラ出ちゃうっていうネタバレです。
しかも隠してるつもりで無意識に入ってる可能性あり。
つまりまだやってない人本当に注意。







 

疾る、突く、反らす、突く、跳ぶ、弾く──。

突く、突く、突きと見せかけ跳び……体を捻る。

 

空中で捻った胸の横を過ぎる大槍。

挟み止めるにはデカすぎる、相手の柄を蹴り飛ばし距離を

──とる前にこちらの槍を打ち当てる。

 

こちらの筋力はA。

──相手は確かA+。

 

槍をたわませ衝撃を無くし足を払う、

と見せかけ腹を突く。逸らされた。

薙いで迫る相手の刃。槍をかえして反らす。

ギャリリ、と顔の横に逸れていく音。

力押しでは不利、離れた方が良いか?

いや、体格を見る限り近場の方が有利か──

 

大振りにした途端に伸ばした先を斬り飛ばされるだろう。

相手もそれを知っている。

 

相手の頭の装飾をかすめる。

引き戻し突き、回し、払い。

頭を反らす。フードを掠める風。

でけえ刃だというのに軽く振るいやがる。

 

片手を離し裏拳で迫った手を打ち払う。

掴まれかけた、槍で突く。かわされる。

 

フェイントは無意味。

心を読む騙すでなく()()()()()()()()()()()()で対応してくる。

迎撃は苛烈。手や鎧で攻撃するには隙が無さ過ぎる。

足で槍の横っ腹を蹴ろうとすれば即座に回転、刃を向けてきた。

 

足を狙う払いを片足を上げて避け、踏もうと──

ズレた。

 

戻ってきた刃先を間に槍を挟み防御。

降ろした足で蹴りを繰り出す。

一歩離れた。槍を回転、相手の柄に突きを叩き込む。

 

これで理性が多少吹っ飛んでるレベルだというのが、

狂戦士たる所以なのか。

意思疎通も出来ないから相手の心理なんて論外。

此方はほぼ『彼』の知識による勘で対応せざるを得ない。

やはり言葉が通じない部類は厄介だ、と頭の隅にすぎた。

 

どこを見ているかわからない双眸。

ならば目に映る全方位を認識しているだろうと想定する。

 

頭、足、胴を狙ってくる突き。

手首をかえして迎撃。

出ないはずの火花が見えそうな程の衝撃が伝う。

 

肌を覆い隠す布地と鎧。

まるで厚手の其れ等が、唯の布とでもいうかのように素早い剣速に踏み込み……しかもその威力は何処でもまともに当たれば両断とくる。

同じ条件だと思いたいが、いかんせん()()()()()だ。

 

 

「■■!!」

 

「フンッ!」

 

 

短い気合いと共に離れ──振り上げた脚に衝撃。

……相手は拳か。

ギリ、と相手の拳と自分の足の鎧が軋む音。

攻撃力は期待出来る。

が、踵じゃピンポイント過ぎて防がれるか。

お互いの追撃でバックステップの形。

 

同時に踏み込んだが速度はコッチが──

 

 

「■■■■■■!!!!!」

 

 

至近距離での咆哮。

咄嗟に足を地面に振り下ろし制動をかける。

一瞬で耳が使えなくなり、視界が激しく瞬いて──

 

無意識に膝を曲げ体を後ろに倒す。

鼻先を刃が通り過ぎる。片足を跳ね上げ蹴りを放つ。

 

──手応えは無し。槍と片足で棒高跳びの要領で下がる。

 

気配が膨らむ、いや近づいている。

槍を勘で振るう。──避けたか。

ルーンは、否間に合わない

 

 

「■■■■■■■■!!!!!!」

 

 

咆哮に合わせて胸の前に腕と槍が跳ね上がり、後ろに跳ね

──直後に首の前の槍と、胸に衝撃が奔った。

 

 

「ぐっ───」

 

 

強制的に息が漏れる。

衝撃も利用した跳躍で大きく距離をとる事に成功。

槍は宝具だ、しなるが折れてはいない。

 

しかし──流石は英霊、腕の隙間を縫いやがる。

出した腕ではなく、胸にビリビリと表面と奥に響く熱。

塞がりきっていなかったか、と加速した思考の中で思う。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

──ゲームの世界ではそんなに希少なサーヴァントでなかったと思ったが、やはり英霊は英霊なのか。

いや、そうじゃない。

自身は『彼』の形を借りただけだ。

ならば十全の彼方とを比べたら劣るのやもしれない。

 

未だ万全とはいえないのだし、

 

 

──否。

 

 

 

 

─………………否。

─何を言い訳している

─この身は狂王。

─ならばこの程度を斃せずして、何が王だ。

─戦い、勝利しないで、何が王か。

─狂王ならば、狂王ならば狂王ならば。

 

 

 

 

──────否。

 

 

…………いや、何を考えている。

なんだ今の思考は。

どんなずれ方をすればそんな思考になる。

いくらこんな戦いの最中で考えるにしても()()()()()

 

息を意識して吐く。

──うだうだ考える前にまずはコチラだ。

目を前に向ければ、数歩で間合いに入る所まで迫る相手。

いや、あの体躯なら既に奴の範囲内だろう。

 

体が脈打ち鼓動を打つ槍。

腕を腰を捻り熱を持った胸も構わず捻り、槍を投げ──

 

 

「ちょおおおーーーっとタンマァーーーーーッッッ!!!」

 

 

──ようとした所で滑り込んだ緑色が一騎。

──槍が当たる位置にいない、相手が止まっていない。

距離が思ったより近い、投げは止めだ。

 

 

「さあ、愛を受け取りたまえ!」

 

 

横の茂みからなんか灰色のデカブツが一騎。

距離は緑よりは遠い。先に槍は届くから除外。

 

 

「マスターっ!!」

 

 

その後から盾の少女一騎。こちらも距離は遠い、除外──

────マスター?

 

眉を潜める前に視界に映り込む赤髪。

 

腕の筋が幾筋か切れる──構わずに槍の方向を変える。

赤髪を数本持っていく穂先。

 

振り切った槍に血は付いていない。

目の前で尻餅をついている少女……そういえば灰色のデカブツに何かがひっかかっていたような、と思考が過ぎ。

 

 

「■■■■■!!!」

 

 

その背後から此方に迫る相手の獲物。

槍を戻すより先に緑の外套が翻り、薄紫の髪が広がり──

その間に走り込んだ灰色のデカブツが両手を広げt

 

 

 

「もっとだ!!」

 

──その男は、筋肉(マッスル)だった。

 

 

 

 

 

──曰く、俺の死んだ目が更に死んだらしい。

一応真正面から見ていた唯一ただの人間からの証言だ、

信憑性はある気がする。

 

 

……その時の思考は覚えていない、とだけ言っておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思いつきで始めたこのお話。
脳内で考えて自分得で第1話しか書いていなかったというのに、
気づけば評価も感想もしていただける状態になろうとは。
とりあえず最近はニヤニヤする自分の顔をひったたく毎日。
……そもそも連載するつもり無かった……はず……

戦闘シーンというかもはや主人公の実況について。
絶対想像してはいけません。作者参考にしたりしたもの無いです。頼む……槍とか扱った人、見ないでくれ……!!
殺陣組めたり描写上手い人代筆してくんねえかな(しろめ)


あと、UBWアニメの兄貴戦闘シーンを見直して、これが★3かよ……と震えています。
戦闘シーン参考にしようと思ってたけど無理や……
ところでにーこにこの解説コメントは何者ですか(戦慄)
★5の戦闘どうすりゃいいんだ……




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野良さば。狂王編〜作者はレベルアップした 気がする !〜

不定期更新タグついてるから、大丈夫大丈夫。
うそはついてない。





風が吹いてざわりざわりと鳴るのは森のさざめき。

それよりも小さくざわざわと響くのは人々の騒めき。

その中で滔々と一際響く声があった。

 

 

「──……貴方がその身に相応しく猛々しさを持ち合わせていながら、巻き込まれかけたマスターを目視し槍を止めて頂けた事は素晴らしい事です。しかしだからといって我々から離れて単独行動して敵に対峙し、あまつさえサーヴァントにカチコ、戦闘に突入した件につきましては問題にしかなりえません。いえ、襲いかかられ正当防衛であると理解はしています。それでもそれは我々と、この場合は彼と共にいたならば遭遇しなかった問題で──…………聞いていますか?」

 

「───……おう」

 

「そうですか。──では続けますが」

 

「…………………おう」

 

 

 

──……まただ。

聖マルタと説教、いや話し合っている「彼」を見ながら、

カルデアのマスター、皆織は考える。

 

「彼」は時折……いや、かなりの割合で、

柔らかく言うと()()()()している。

話の輪に入ろうとしないので無理矢理近くで喋り、

時折問いを投げかけると返答はしてくれる。

だから話を聞いていないわけでは無いのだろう。

 

しかし何故だか、何かがひっかかる。

 

狂戦士だと自己申告した「彼」。

仮でも契約をしていないから、と言って口を閉じた。

 

寡黙なサーヴァント。

動かない表情。

しかし、中身はそうでもないのではと思っていた。

 

狂戦士のサーヴァントの戦いに投げ込まれる、少し前。

ロビンと彼を待ちがてら休憩をとっていた際に、偶然現在味方になっている人々と合流した。

和やかな雰囲気で交流し、さあ二人を待とうとなった。

……突然走り出したサーヴァント、スパルタクスに巻き込まれ(引っかかって)連れて行かれるまでは。

 

そしてあの事件、である。

あわや()()()サーヴァント同士が共倒れだった。

事件と言っていいだろう。

その際に、自分はスパルタクスに放り出され

 

─正しくは彼に悪気は無い。本当に単純に彼の金具?に自分の服が引っかかっていて、外れて吹き飛ばされただけである─

 

……そして衝突する二騎のサーヴァントの間に落ちた。

ぼてっ、と。

それはもう、無残な程にぼてっと。

瞬く間もなく目の前に黒と紫と赤が光り、

 

……瞬間、何が起きたかはわからない。

 

気づけば後ろからロビンに抱えられ、横からマシュに抱きつかれ、その後ろで灰色の巨体スパルタクスが吼え。

目の前で紫の槍を持った「彼」がこちらを見ていた。

 

直後駆け込んできた皆とでてんやわんやの大騒ぎへ。

「彼」に斬りかかろうとしたバーサーカー、呂布。

それをその体で受け止めたバーサーカー、スパルタクス。

何故か仁王立ちのまま沈黙したバーサーカーの「彼」。

「圧政」と咆哮とが響くわ沈黙するわの三者三様。

マシュは抱きついたままオロオロしているし、

ロビンは私達を三人から離して溜息。

後から来た皆はバーサーカーの面倒を見ている『彼女』が来るまで待機した。

(一人は止まってるし二人は謎の取っ組み合いだしで困惑していたともいう)

 

そして現在、味方を大勢引き連れた状態で一時的な拠点へなんとか戻ったというわけである。

 

その間、マシュとたまに何処かに行くロビン以外の皆が「彼」を囲い込むように包囲して代表になったらしいマルタがずっと話しかけていた。

 

どうやらずっとせっきょ、話しこんでいるらしい。

若干げんなりした様子の黒髭と、逆に興味深げに「彼」を眺め回す小次郎以外は黙り込んでいたのが印象的だ。

 

「彼」はずっと、聞かれれば相槌をうつ以外はぼんやりと前を向いている。

 

赤い目から感じる匂い立つ何かの力─神性、らしい─に、骨のくっついたような形ながら、急所を守る気の無い鎧。

気怠げにも見えるけれど離さない槍は、紫色に鈍く輝く。

──もしも「彼」が私が知っている()の側面

……なのだとしたら。

 

 

「──先輩?」

 

 

はっ、と思考の海から自分を引っ張り上げる。

視線を声の方向にうつすと、身の丈よりも大きな盾を持つ

デミ・サーヴァントであり後輩(彼女が先輩と呼ぶから可愛い後輩である。異論は認めない)のマシュがこちらを覗き込んでいた。

 

 

「疲れてますか………ああ、いえ、疲れていないはずが

ありませんね、すみません」

 

 

返答をする前にしょんぼりされて皆織は慌てた。

具体的には、今まで考えていた内容を全てとりあえず遥か彼方に全力投球してしまうくらいには。

 

 

それは違うぞマシュううう!先輩!?鎧ですから痛いですよ!?いいやむしろ痛気持ちいい!!ツボ押しかもしれない!!ええ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──騒がしくなった代わりに視線を感じなくなって密かに鼻を鳴らす。

それでも意識は多少なりとも向けてくるのだから、英雄……いや英霊というやつは悉く人の境地を越えている。

……其れを感じ取るこの身が()()であると感じ取りながら。

 

 

「……………やはり、魔力が足りませんか?」

 

 

声を発した人物を見る。

聖女マルタ。

カルデアのサーヴァントの一人。

周囲の会話から察するに場の統率役。

どうやらあの主人公のパーティの古参の類に属する。

いや、それよりも。

 

 

「…………………何の話だ」

 

「……ここに来る際、マナの減りようが気にかかりました。そして──()()()()()()

…………貴方は、その魔力をどう維持しているのです?」

 

 

目線でこちらの返答を待つ英霊。

 

もしやその質問をする為にずっと張り付いていたのか。

 

魔力供給の後に残る痕跡を誤魔化す為に屠った獣共も、

既に消えていたろうとは思う。

だがこの大地に染み込んだ魔力を含んだ液体は四散に時間がかかる事は実例込みでわかっている。

だからこそ盛大に獣を屠った。

 

……そのせいでサーヴァントと対峙する事にもなったが。

 

ブラフを容易くスルーされている。

……聖女、いや今はライダーだが

彼女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

だからサーヴァントの魔力に対して、どこか敏感に感じ取る資質があるのかもしれない。

 

 

「……いえ、その前に私の予想を言った方が良いのでしょうね」

 

 

言わずにそちらに言わせるのは、と聖女が呟く。

うっすらとそういえばコイツはどっかの特異点で敵方のサーヴァントを助けていたっけか、と過ぎる。

 

 

「貴方が人らしさと言える部分を削っているのは解っています」

 

 

確信を持った瞳。

 

 

「最低限こちらの呼びかけに応える程度の狂化に抑え、今もマスター無しで現界を保っている」

 

 

狂化レベルなんてあったか? ……そういやあったな。

 

 

「……いいえ、むしろ狂化のレベルが高いのにも関わらず

貴方はその状態であるのかもしれませんね」

 

 

訳知り顔でうんうんと頷く聖女。

周囲には聞こえる距離にいるが加わらないサーヴァントが数人。

目線は無くとも意識は向いているだろう。

 

 

正直言う。

 

……何を言っているのか大体わからん。

 

いや、その前にこの聖女は何か言っていた。

 

 

──()()()()()()()()()()()()()()()()

俺の状態はそう見えるらしい。

思い当たるフシは……無いでもない。

 

遠い話でしかないが、記憶を引っぱりだす。

俺がこの姿になる前。

たしかに、人間だった頃。

──ほぼなくなりかけた記憶。

 

覚えていようとしていた訳ではない。

けれど、忘れようとした訳でも無かった。

 

記憶があったから、俺は今こうしてサーヴァントに混じって人理側にいるのだ。

人間の記憶が無かったら、一体どうしていたのかという仮定は仮定だから考えないが。

 

人らしさと言うくらいだから、この記憶が削られているのか。

……()()削ったというわけか。

無意識に自分で、か……

 

──()()()

 

 

 

「──主、今戻ったぞ」

 

「おかえり。どうだった?」

 

「ふむ、実は……そこまで成果は得られていないのだ」

 

「む、戻られたか──荊軻殿」

 

 

ふと、聞こえた声を意識すると黒髪が目に入った。

──記憶が過ぎる。

アサシンのサーヴァント。

そうだ、確かこの特異点に召喚されているんだったか。

……赤髪の少女と並ぶ姿を見て、何か違和感を覚える。

 

 

「実は途中で妙な力場に遭遇してね……敵の大将を見つける前に戻ってきた次第だ」

 

「これを見てほしい」

 

 

アサシンが取り出した物は、布に包まれた幾ばくかの土。

それを集まってまじまじと見つめる主人公陣営。

なんの変哲も無い土にも見える。

しかし……

 

 

「──あ、ちょっと黒っぽい? ここら辺の土じゃない……のかな?」

 

「いいや、主。少し離れてはいるが()()()()()()さ」

 

『……なんだいそれは!?』

 

「ドクター?」

 

『荊軻さん、それに直接触れてはいないね? それは……汚染された土だよ』

 

『いや、正しくは()()()()()()()()()()だ!』

 

 

──なんだこれは。

体の奥でざわりと砂が潜り込んだような違和感。

アイツが主人公に組みしているってのはいくらでも有り得たろうが……

 

いや、これは──

そうだ、引っかかっていた事がわかった。

 

 

()()()()()()()()()()()だ。

 

 

久しぶりに、過ぎる前に俺の記憶を掴み留めた。

 

セプテムは描写的にもあまり時間をかけていない。

兵士を集め進軍するのだから、大軍にする為に数日はかけるとしても……

()()()()()()()()()()()()()()()()がおかしい。

たしか援軍のサーヴァントが情報と共に帰還して進軍したはずだ。

 

その援軍こそ、刃を交えたあのバーサーカー『呂布』だ。

 

 

そしてここでズレが生じた。

 

 

主人公側にその情報を持ち寄ったサーヴァント、

『荊軻』がいてしまった。

同じクラスの同一サーヴァントが存在することは()()()のはずだ。

 

──仮説だが

 

聖杯は主人公側の荊軻を『誤認』したのかもしれない。

 

本来召喚されるはずのサーヴァントが『()()()()()()()()()』と。

 

……本当は違うとしても。

現実に、本来次へ道しるべを示すサーヴァントが居ない。

 

顔を付き合わせて頭を悩ますソレは手がかりでも無い。

 

()()()()()()()()()()()

 

………………………。

主人公が向き合うホログラムの人影を見る。

おそらく背中を向けている主人公も、同じく難しい顔をしているのだろう。

 

 

『コレはマナを吸われ朽ち果てた土だ。……ただの生き物がそれを生み出す事が出来るとは思えない』

 

「じゃあ、これも敵が──?」

 

「土壌から弱らせるとは一つの策にもなり得る。しかし統治する気があるならばおかしいぞ」

 

「うーん……」

 

 

…………一つ気づいた。

俺は()()()()()()()

この『俺が知る情報であり、キッカケ』を。

 

──これでハッキリした。

 

 

「……………おい」

 

 

意識して一歩足を出し、声の隙間に割って入る。

ザリ、と足の裏で石が音を立てた。

音がなりそうな程に勢いよくこちらに顔を向ける数騎。

 

 

「!」

 

「………その土、どこで拾ってきた」

 

 

ソレ、とアサシンの女の手の中を顎で指す。

怪訝な表情のまま、アサシンはこちらを横目に見た。

 

 

「──ここから数十里離れた荒野だ。お前は新入りか?」

 

「仲間にはなってねえが敵でも無い。…………それは手がかりにはならねえよ」

 

 

途端に口が重くなる。

自覚したからこそ、口を鈍くでも開くことが出来た。

 

 

「──それは俺がやった事の残骸だ」

 

 

……頭の隅で、捨て置いた一つの可能性を確信した。

自分の意思の他に()()()()()()()()()と。

 

俺は『人理を壊す気は無い』。

ならばそれに逆らう思考、言葉、行動は()じゃねえ。

 

では『彼』か?

 

──違う。

それならとっくの昔に俺は消えている。

器がクーフーリンオルタならば、その魂がある時点でもう一つの魂が()()()()()()()に決まっているからだ。

 

──予測する限りじゃ、

クーフーリン「オルタ」が引っかかる。

 

「オルタ」は狂うとは違う。

何かが原因で霊基を反転・変質させたモノ。

ならば何が原因か?

圧倒的な魔力による汚染だ。

──それこそ、聖杯のような触媒が無ければ出来ない。

 

 

槍を地面に突き立てもたれかかる。

此方を見る奴らの死角の位置で無理矢理、指を動かす。

多少の魔力反応に一部の奴らが眉をあげた。無視。

あえて()()()()()()()()()()()()

 

体の力が弛緩する。

槍に体重を乗せ、体のバランスを取った。

口が開く。少し喋りにくくとも、開いた。

あとはなしくずしに言葉を出す。

 

どうやら何かは俺の意思を無視するらしい。

──なら、俺が()()()()()()()()()()()()んだろう。

 

 

 

 

 

 

結論。

人間サイドにドン引かれ、サーヴァントに引かれた。

槍で集めて補給。

雑破に言ったらわからんと言われたから説明した。

マナを吸収した触媒代わりにした槍を直接叩き込んだ。

……もめだした。

 

解せぬ。

 

 

「そんな魔力補給は土地にも君にも良くないと思うぞ」

 

『そ、そうそう! もっと別の方法があるはずですよ! 例えば空気中の魔力を集めて……』

 

「足りん」

 

『もう試してらっしゃる……!?』

 

 

知識から得た最適解だ──と答えず口を噤む。

……また勝手に黙りやがる。

ゆるく口を開けたところで、主人公の少女が口を開いた。

 

 

「私と契約しよう!」

 

「先輩!?」

 

「そうすればカルデアのバックアップを受けられるんだよねロマン?!」

 

 

勢い込むここで唯一のマスターたる少女。

そういえば、ゲームの動きを見るに中々どうして、肝のある主人公だったなと思い当たる。

──しかし、今はマズイ。

 

 

「────」

 

「っ何してんだマスター!!」

 

 

サーヴァント達が「俺の手を掴んだ少女を引き離す」。

──ルーンのせいで、反応が遅れた。

 

そして微かな血の匂い。

匂いに気づいた時には、少女が倒れていく瞬間だった。

 

 

「っ先輩?!」

 

 

間一髪で大盾の少女が抱え、頭を打ち付けずに済む。

力無く目を閉じる赤髪の少女。

顔色はさっきの興奮状態からかまだ赤ら顔だ。

──見る間にその血色も失せていく。

 

 

「…………ちっ、鎧に触れたか」

 

 

舌を打つ。

サーヴァント達が一斉に振り返り、武器を抜く。

否、

 

弱体のルーンを消し首を傾ける。

耳元を矢がかすめ、着けていた装飾が音を立てた。

 

 

「てめえ──何をした?」

 

「──何もしてねえ。ソイツが勝手に呪いに触れただけだ」

 

「アンタ──」

 

「──何を勘違いしてるか知らんが、早くしねえと死ぬぜ」

 

 

だから治療を、と続けようとした。

言葉を続ける前に飛びかかってくる紫の髪二騎。

首に迫る刃を一歩横にずれる事で避け、眼前に来た拳を掴んだ。

そのまま足を進める。

──槍を地面に立て矢を弾く。

次を番える弓兵と、こちらを鋭く見据える銃口。

 

 

「……………助けたきゃ手を止めろ。呪いをかける気なんざ無えって言ってんだ」

 

 

足を止めるサーヴァント達。

腕を掴まれ足を振り上げていた聖女も止まる。

止まったのを横目に手を離し足を進める。

眼光は鋭いが、武器が降らない環境。

楽に倒れる主人公の元へ近づく。

 

 

「────!」

 

 

体を目一杯使い、主人たる少女を庇い盾を構える少女。

──サーヴァントを複数従える素質があるからこそ

……主人公足り得るのかもな、とふと思う。

 

サーヴァントは、ある意味人間らしく人間らしくない。

英雄であるからこそ理解することもあるが、英雄であるからこそ理解できない事もある。

その逆もまた然り。

この眼前の少女はある意味ソレのいいとこ取りだ。

何もかも新鮮で、何もかもを真っ新に判断出来る。

 

()()()()()()の言った事は良くも悪くも人間の枠を越える。

──その最終審査をこの少女が担っている。

さて、『彼』なら通る審査だろうが。

 

 

「どきな、嬢ちゃん」

 

「──!」

 

 

……?

 

何故か驚いた顔。

目を瞬いた大盾の少女は、何故かすんなりと横に退き俺を通した。

 

わからんがパスしたらしい。

……何故だ。とも思うが

──とりあえずはコチラだ、と意識を向かせる。

疑問はどうでもいい。

記憶してりゃ後で聞くかと流した。

 

倒れるこの世界の主人公たる少女の傍らに屈み込む。

汗は無いが、血の気が失せ呼吸が浅く早い。

 

知識を出すより先に主人公の魔力反応を感じ取った。

神性を宿している器のおかげなのか、じわりと魔力が()()()()箇所がわかる。

──怪我の発端は指先。離れる時に引っかかったか。

変質した鎧だからこそ多少の影響で済んだか?

 

次々と魔力の線が連鎖するように断裂していく。

……影響だけだから一々治すより元を断てば戻るだろう。

足、体、頭と目を滑らせ──ぴたりと止める。

──()()でいいか。

魔力を指に込め、少女の頭部に手を伸ばし──

 

首元に杖と刀、頭に銃口、背中の中心に視線、腕に殺気。

指にも視線を感じた。

 

──命を獲ればコチラも獲られるな。

……一瞬過ぎる思考。

 

──獲らねえよ。阿呆が。

自分の思考に悪態をつく。

『彼』とてこんな事で命の張り合いをするはずがない。

自分がしているはずの思考のせめぎ合いなんて、

馬鹿げた話だ。

 

だが無意識のまま指を奔らせたおかげで──成功した。

バチン、と空間に音が響く。

 

 

「──う」

 

 

ぱちりと目が開いた。

 

 

「先輩……!」

 

 

外される武器。

 

 

「──俺の鎧は多少攻撃に向いている。槍に触れたら死んでたろうよ」

 

 

立ち上がるこちらを見上げる二つの視線。

透き通る蜂蜜の色の視線がふと地面──弾け飛んだ髪飾りを見た。

 

 

「内側から食い破る棘を抜くには時間が無かった。だからお前の身につけてる物を身代わりにした」

 

 

鎧はあくまで変質し影響を受けたモノだ。

だからその攻撃も本当に棘が体に入ったわけじゃない。

 

主人公の髪飾りと主人公という認識を()()()()、髪飾りを「主人公」主人公が「髪飾り」と定義することで「髪飾り」の棘は「主人公」に移動し──破壊を遂げて消えたわけだ。

 

何か言いたげな複数の視線を感じる。

今すぐヤるって殺気じゃねぇ、流す。

地面に立てたままの槍を抜き取ろうと掴んだ所で、声が聞こえた。

 

 

「──ルーン」

 

「あ?」

 

 

呆然とこちらを見る視線。

大盾の少女が、マスターたる少女を抱えながらこちらを見つめていた。

 

 

「──貴方が使ったのは、ルーン魔術ですか?」

 

 

──そういえば指を見ていたのは殺気が無かった。

薄紫の眼を見返しながら、考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ところでずっと背景に湯に浸かる狂戦士×2が目に入るんだがなんだアレ

 

ズレた、除外。

 

 

 

 

 

 




実はこの話は前話とで一話になってました。
くそなげぇってわかったので分けられるとこわけようとしたらkonozama

あの鎧、明らかに皮じゃなくなってるというかアレの前段階に見えた妄想でした。
ちなみに真っ先に飛びかかったのはマルタさんと小次郎さん。
マルタさんうちのカルデアに居ないんや……キャラ間違えてたら本当、すまない。

そして作者。第5章、入りました。
敵陣営出る度悶え死にそうです。ベオニキすまん、育ててなくてすまん。ステーキうまい。バサクレスより金時な作者。
やってたらあれこれ性格が……とか色々思ったけど見切り発車だし仕方ない仕方ないこれ以上話をテコ入れすると死ぬ(作者が)
後からサーヴァントの数合わなくね、とか思ったけどそこはあの、ほら物資届く過程でサーヴァント交代とか色々してるんですよきっと。
これ以上テコ入れすると以下略。

そして、FGOアニメ、やっと見ました。
デカイ画面で見たかったくそぅ……
兄貴が動いてただけで作者は死にかけた(真顔)
あとマシュ可愛い。
弓兵の弓を防いだ単語で「ルーン使うんだ!ルーン使うんだ!!」と転げ回ってベッドから落ちました。膝イテェ
ところでどう見ても途中のばさばさしてるとこで見えないのおかしくねとか思ってごめんなさい。
だって足の長さ的に股間の位置が……いや、すみません見えても困るけど日本人体型じゃないから腰とかの位置関係が気になって……
あ、しまった凝視してた変態だという事がバレる。
にゅるんってトコで巻き戻しましたすみません。

キャスターであの汎用性だからオルタニキももっと便利でイケルイケル! と思います。
ルーンいちいち書くのはあれです、キャスターじゃないからって事で。
あと書くのカッコイイやん。
いやネタバレなあれそれでそうもいかないのかも。
いやそもそもウチの主人公そこまで出来ないフラグ立てちゃったテヘペロ。
(・ω・)<魔力よこせ



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野良さば。狂王編〜いきあたりばったり〜

おひさしぶりです。あけましたおめでとう。
どうでもいいですが誕生日が近い。





 

 

「うおおおお!」

 

「先輩、足が生まれたての哺乳類のようです! 無理をしてはいけないかと!」

 

「いや、私も物資運び手伝おうと、思って──マシュ力持ちだね!?」

 

「あ、はい。デミサーヴァントであるこの身は、魔力が通えば並以上の力が湧くようです」

 

「すぐ終わるからマスターは休んでな。この程度、俺らには苦にもならんから大丈夫だ。な?」

 

「……そっか。わかった、お先に休ませてもらうよ。あっ疲れたらすぐ皆も休んでね!」

 

「おう、ありがとな」

 

「了解です、マスター」

 

 

「ろびーん」

 

「んー?」

 

「暇でーす」

 

「休むのもお仕事ですよぉマスター」

 

「わかってるんだけどさ……あ、ロビンちょっと鳥さんもふって良い?」

 

「あー今斥候に使ってますねえ」

 

「ウィッスおつかれさまです引き止めてすんませんロビン先輩」

 

「はいはい、マスターもきっちり英気を養ってくださいよっと」

 

 

「く、くく……おや、どうしたマスター」

 

「笑い混じりで言うって事は見てた?」

 

「たまさかだ、わざとでは……ぶふっ」

 

「くそぉ!! 暇です小次郎!!」

 

「拙者これより薪拾いに行かなければならぬでござる」

 

「仕事あって羨ましいですくそぉ!!!」

 

「手隙になれば茶飲み話に付き合うぞ、マスター」

 

「ありがとうくそぉ!」

 

 

「全く、休めと言われていたでしょうに」

 

「あ、ごめんお母さん」

 

「誰が母親よ! ……コホン、そんなに暇なのでしたら是非お話でも」

 

「あっごめんちゃんと休みます」

 

「あ。……まったくもう! ほんとにちゃんと休みなさい!」

 

 

「あれ、君どうしたの?」

 

「あ、ブーディカさん。いやー、休めって言われちゃったんだけど、」

 

「うん、何か気になる? お姉さんでよければ話を聞くよ?」

 

「いやー……休みすぎて寝れないんで何かさせてください暇です」

 

「あらら。うーん、それじゃあ一つお姉さんに頼まれてくれる?」

 

「なんでもどうぞ!!」

 

「はい、あーん」

 

「あーん」

 

「味見。どう?」

 

「んく、美味しいです! けどこれ仕事じゃ」

 

「はいじゃ次はこれ、あーん」

 

「オイシイデス!」

 

 

俯瞰して全体を眺める。

乱立するテント。物資を使い、食事を取り。

木々を切り突貫で整えた地面は凸凹で、木の根に乗り上げたまま傾いたテントも見受けられる。

決して完璧な環境では無いが、行き交う兵士達の顔は明るい。

大多数が空元気でも笑っている様を見ていると、テンパってはいても士気はさほど下がっていないのだろう。

くるくるとよく動くもんだ、と赤い髪の少女をついでに視界に収めながら思考する。

 

 

──自分に闘争心は無い。

戦いに対しての嫌悪感は無い。

だからといって好むのかというと、それも無い。

薄れた記憶でも、学生生活やらなんやらで勉学に励んだだろう知識があるならば……競い合った事くらいはあったはずだ。

前から無いのならば納得もするが、そうで無いという根拠が少しでもあるなら別の可能性を考えた方が良いようだ。

サーヴァントである事よりも、この霊基が戦闘に対して思う事が無いのは───何か引っかかった。

 

 

 

……紫色の頭がひたとこちらを見据えて近づいているので意識することにした。

 

 

「……なんか用か」

 

「用事がなければ話しかけてはいけませんか?」

 

 

は、と口の形が固まる。

今聞こえた言葉の理解が遅れた。

とりあえずどういうつもりかと顔を傾ける。

 

 

「……………………」

 

「……ちょっと、似合わないこと言ったのは自覚してるからその顔やめ ……コホン。そうでなく」

 

 

もう遅い気がするが聖女─サーヴァント、マルタは気を取りなおすように口に手を当て咳払いをした。

……容易く目を閉じる辺り先程までの敵意は消えたらしい。

何のつもりかと勘繰ると、それを見て取った聖女はおもむろに姿勢を正し

 

 

「謝罪を。貴方を誤解していました」

 

「何の話しだ」

 

 

光に当たり紫に光る長い髪の根元、頭の旋毛が見える。

まるで首を差し出すかのようなソレに反射的に声を出した。

誤解とは、一体何だ。

 

 

「マスターの治療に動いた貴方を攻撃してしまった」

 

「別に何とも思ってねぇよ」

 

「そうですね。貴方は私たちを何とも思っていない。これは勝手なケジメに変わりはないでしょう」

 

 

そうは言うが、こちらに向ける視線は。

 

 

「それでも……ありがとう。マスターを助けていただき、感謝します」

 

「用はそれだけか」

 

 

にべもない。

そう言うしかない態度で接する。

と、マルタのこめかみが若干動いたのを知覚する。

 

……何故かまた意に反した。

この口は。

この身は別に何か聖女に思うところは無いはずだ。いやそもそも誰かに何かを思う事も『彼』には無い。

ならばと考えたところでふと聖女を見やる。

先程まず間違いなく癇に障っていたのなら、動きもあるだろうか。

そしてマルタは──肩をすくめてやれやれと言いたげな動きを見せつけこちらに背を向けた。

 

 

「ところで」

 

 

振り仰ぐ顔。

ところで、と言うことは何か別件でもあったのか。

まだ何か用か、と声を出そうとし

 

 

「何故天幕の上にいるのですかアナタは! サーヴァントといえど下りなさい!」

 

「…………」

 

 

聞こえなかったふりをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガリ、ザク、ザク。

何か硬質な物で石や地面を掘る音。

人間たちから離れて森に接するギリギリの範囲で、今の俺がしている事。

 

結界。

 

効果でいうならソレ。

具体的にいうと気配を遮断する壁をつくってついでに音も遮断、前の知識でいうなら変に気流を遮断しないで都合の悪いものははじく網戸のイメージ。

前の知識と『知識』が合わされば妙だろうが出来てしまった。

魔力もほぼ要らねえし便利なもんだ、と頭に過ぎる。

……いや、この場合は空気中のマナも巻き込んでるから多少効果が上がってるか。

アンサズ、スリサズ、ハガル……

とりあえず色々思い出した中で「守護」「隠蔽」「循環」「自然」と利用できそうな物を片っ端から石に刻みつけた。

それ以外だとて、組み合わせでいくらでも変わるから例外ではないが。

 

適当に森との境に突き立てる。

なんとなく人払いの魔術だとかを彷彿とさせるが、

効果は薄い。

思考誘導まではいかないが、なんとなくでも

()()()()()()()()()()()()()こっちのがこの場合効く。

 

……いや、そう『知識』が告げている。

 

 

「こっちの人間から境界を見えるように石を立てて結界もどきを作るとは……随分気の利いたことしてるじゃねぇか」

 

 

背中にかけられた声。

首を回し視線を向ける。

簡易的に作られた拠点、テントがいくつか。

点在する焚き火に照らされるのは、鎧を着た兵士。

それよりも小さいが効果的な松明を幾人が持っている。

 

その明かりを背にしてこちらを見つめる人影。

赤い光に照らされずとも、僅かな光にその眼は輝く。

 

 

「…………それがどうした?」

 

 

何か言いたげにも見えるぼんやり光る眼を見返し、問う。

 

 

「いーや? 別に文句は無え、楽が出来るしな」

 

 

肩をすくめ此方に見えるように両手を広げる影。

ただ、解せねえ。と腰に手を当て声を続ける。

目線は境界を一通り眺めた。

ルーンに精通する者同士であるから、問題はない。

──軽い物が空気を切り裂く音。数は二つ。

視界に入らずとも片手で掴んだ。

 

 

「その形で随分器用な真似だと思って見てりゃ、使()()()()()()()()()()とも使()()()()()()()とも感じる」

 

 

手を開くと、何か細長い四角の銀色の包装紙に包まれた─ふと有名な保存食を思い出した─物ともう一つ……使い物にならなくなった物。

──彼等のマスターたる少女の髪飾り。

 

 

「人のモンを少しくらいは食っとけ。マスターの居ないサーヴァントなら尚更だ」

 

 

感情のこもらない視線を向けながら、宣う。

ふと、思い当たる。

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……昼間も居たな」

 

 

ほぼ確信もあったが念の為も兼ねて告げると、ほおと声が上がる。

表情こそ変わらないが、かすかに眉が上がっていた。

腕をゆったり組み、杖を抱え込むと軽やかな声を出す。

 

 

「まあな。嬢ちゃんはそんなつもりも無かったらしいが、ちょっくら観戦させてもらったぜ」

 

「テメエの仲間が殺気立ってるトコを、か?」

 

「そりゃあ、アンタが何かするってんなら動いたぜ」

 

 

飄々と流す様に片目を閉じ、あっけらかんと。

まるで冗談を告げるように。

 

あの時、背中に感じた視線。

殺気は無かったが……

『知識』を引っぱり出さずともそれこそ、

最大火力でブッ放す準備をしていただろうと想像がついた。

 

 

「で、マスターが謝りたがってたぜ」

 

「………………あ?」

 

 

思わず声が漏れた。

開いていた片目すら閉じている。

仮想敵……しかも()()()であるのに。

俺にその気が無いからか、それとも英雄ならば対応出来るからなのか。

……多分後者か。

そのまま人影は組んでいた腕を下げ杖を片手に持つと、空いた手で後方を示す。

 

 

「アンタを探して見当違いの方向に走ってった。

会ったら伝えてって言われちまったしな……

『助けてくれてありがとう、自分が悪いのにごめん』だとよ」

 

「……何に対してだ」

 

「詳しくは本人に聞きな。だが……そうだな、

サーヴァントに武器を抜かせて悪い、とかだけじゃねぇだろうよ」

 

 

何を言っている、と考えたが口を閉じる。

──サーヴァントはマスターを守るのが当たり前。

しかし、そのマスターはその前提を知らなかったな。

 

カルデアに着くまでごく一般人だった、はずだ。

それは魔術に傾倒した人間の輪にいなかったわけで、

 

そう、それこそ()()()と同じように。

 

 

「…………、」

 

「あん?」

 

 

口を開くが、言葉が瞬間出なかった。

またか、と意識して口を動かす。

ようやくコツを掴んできた。

認識してからだが、コレは特定の条件で起こるモノだと気付いた。

 

 

「……テメエらのマスターは、随分気楽に()()()()()()な」

 

「──ほう?」

 

 

赤い眼が細まる。

焚き火の光を背中に受けているのに、何故かこちらを見る眼が光ったように思う。

 

あの主人公は、きっとここまであの道筋通り進んできた。

たまたま採用され平穏な世界から逸脱した世界へ招かれた。

人が死んだ。

たまたま運が良かっただけの状態で、その道を少し外れた人間が次々に死んでいったと知らされて。

人でなしに目の前で面識ある人物を殺されて。

慕ってくれた後輩が傷つきながら、自分を守っている道のり。

一般人には重すぎる使命を背負わされて、

しかしそれしか道は無かった。

 

そんなものを背負わされて、笑っていられるのは

……ンなモン無理してるに決まってる。

色々支えがある、なんて言ったところで

英雄でもないただの人間が()()()()()()()()()()だけだ。

だから俺は……

 

──だから、?

 

はた、と気づく。

──俺はこの先、何を言ってどうするつもりだ?

剥離する感覚。

 

これ以上……例えば忠言でも言えば、きっと俺は人理側に近づく。

だがそれに反しようとする体。

近づこうとする俺と、遠ざかろうとする俺が存在する感覚。

 

 

「………………」

 

 

俺はこの先を知っている。

ある程度、ではあると思うが。

何せ、今ここに「俺」がいる事がおかしいと知っている。

本来居なかったはずのサーヴァントの体を持つ「俺」。

誰が、なのかはわからない。

俺に何をさせたいのかもわからないが、

()()()()()()()()()()()()()()()()のは確かだ。

 

──俺は『どちら』だ?

 

 

「…………お前、そのナリで随分とまあ協力的だな?」

 

「何が言いたい」

 

「褒めてんだぜ? まあ、()()()()()()は別としてな?」

 

 

ひょい、と肩をすくめる姿にふと同じ仕草をした聖職者のサーヴァントが重なる。

 

 

「どういう意味だ」

 

「ルーンを使うわりに隠そうとしてるようでこうもわかりやすく()()()()もする、ブラフにしちゃあお粗末だしよ。何がしてぇんだか、な?」

 

「…………マスターを得た奴らは全員回りくどい言い回しをするって決まりでもあるのか?」

 

「ん? ……無表情なワリにイラついてんのか? 俺は見たままを言ってるだけだ」

 

 

あのマルタもだが、何故だか俺について何か()()()()()()()()()()()()モノがあるように思える。

ソレについては何故直接言わないのか疑問に思ってはいるが。

イラついている、と評されてもイラついちゃいない。……はずだ。

視線を外して手の中の物を見ながら、口の中で独り言つ。

 

ふと思い返す。

──あの時、嬢ちゃんにルーンと看破された。

それは別に問題じゃなかった。

……はずだ。

 

しかし予想通りとも言うのか俺は()()()()()()()()()()

そしてこの夜まで、接触していない。

俺は今も思った事を言っている。

言わなくていいことも含めて言っている。

 

そもそも二重の意思があるように感じるこの感覚は何なのか。

ある事を探る為のブラフをこんなに派手にやっているのは何故だ?

人に見せる為?

ならば目の前の人物が言うようにこうも目立つようにする物じゃない。

 

いや、待て。……自分で自分の行動に疑問?

別に俺は切羽詰まった状態にもなってない。

自分でわけのわからない行動をするような条件になっちゃいないはずだが……?

 

自分でも分かる程に途端、何かが()()()()()()

 

…………いや、そういえば、別に、どうでもいい、じゃないか。

そう、俺のする事をどう思われようが()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……やはり──ただのバーサーカーでは無いな」

 

 

決して張っていない声だが、さして距離もなく耳に届く。

目を移せば、開く口。

杖を向けない、しかしその気配。

獣めいた瞳孔が細まり、こちらを睥睨する。

声に出さずとも容易く言った言葉を理解した。

 

 

──── お前、本当に俺か?

 

 

元来の『彼』は、万能だ。

 

剣も使えば槍も扱い、その豪腕で城壁を持ち上げるなんて伝承もあり。

リンゴを投擲して敵を粉砕したなんて伝承もあった気がする。

あげく、魔術すらも師事した女王から免許皆伝。

()()姿()になっても扱えるのだから、推して知るべしとも言えるが。

 

そんな英雄の、智の部分を前に出すと決めた姿。

 

……彼が反転したとして、この俺になる事は無いだろう。

口に出さないまま、光る赤い目を見返す。

 

 

「──────」

 

 

兵士が忙しなく動く音。潜められても数に量をなす話し声。火花が散る音。

そんな時にこちらに近づく足音を感知した。

 

 

「──張りつめた空気が快い、良い夜よな両人」

 

 

僅かに地面に擦り合う藁の音。

月と火の光に照らされて赤みを増した紫の髪が風にそよぐ。

 

 

「どうやら逢瀬の邪魔というわけでもない」

 

「あァ?」

 

 

視線の先で薄らと怪訝な声を上げるキャスターに肩をすくめると、こちらを見やった男は軽やかな様子で片目を閉じる。

 

 

「故……どうだろう、少し拙僧と問答でも?」

 

 

 

 




うらぁシリアスだ→やだこの人脳内完結すごい
コメディぶっこむ→おい何故キャンセルした
ならばラブだおにゃのこ→なんでフラグ折るんこの人……
なら友情モノとか→周囲が警戒MAXゥ!!


時間が空いたらすごく……文章が……文才がほしい。
去年うちのカルデア、タマモキャットが来てエミヤさんを配布でいただいたらサラスヴァティ目当てのガチャで騎士王様来ました。ご飯が用意できる環境になった途端ですねわかります。

なんでかそれから金鯖がわりと来て逆にあっぷあっぷしてます。戦術に広がりがありすぎて脳筋に終着する拙者です。
そしてバスターゴリラにまだ泣いてる。







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野良さば。 〜???編〜

あれから少し後の話。


これは人理を守ろうとする者へのありえない、しかしありえたやもしれなく……

又は未だに、既に。

そんなとある一幕……

 

 

「ああ、こんな所に居たんだね! すぐ来てくれ、新たな揺らぎを観測したんだ!」

「揺らぎといっても少しばかり妙でもあるんだけれどね。なあに、この天才の手にかかれば誤差だよ」

 

── カルデアに戻ったマシュと皆織。

そんな彼女達は、またも何かイベントが起きたかと思っていたが……

 

「────ここは、この都市は……?」

「やれやれ……森が一つも見当たらないとか、俺のお株がしょっぱな無いんですけど」

 

── 分断されるサーヴァントとマスター

 

「ちょ、冗談じゃないっての!」

 

「──せん、ぱい?」

 

── 一向に姿を見せない敵

 

「ったく、一体どうなってるんだ……」

 

「不思議ね、まるで白兎を追ったアリスみたいだわ」

 

── 迫りくる危機

 

「霊脈が、無い──!?」

 

『ちょ、皆大丈夫かい?! 物資は届いたかい!?』

「すまない、俺では役立てられない……」

 

── 見つからない聖杯

 

「ここは、おかしい──」

 

「アステリオス! もう少し上よ!」

 

「ええ? 本当にござるかぁ?」

 

── 現れた謎の男

 

「…………あ? 何してんだアンタ」

「──!?」

「治安が良い日本とは言うが、女一人で夜に出歩くもんじゃねえぞ」

 

── 彼は一体──!?

 

 

「サーヴァントじゃ、ない……!?」

 

「生憎、俺はアンタに用はねえ」

 

『逃げるんだマシュ!』

 

「フォウ、キュー……キャーウ」

 

「…………そうか、ここは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

特ヰtE%『記憶ゆ≠幻■市 ォ£rあ▼』tえI理値 #:k

 

 

 

 

 

 

 

 

「遠い、遥か、遠い……話だ──遠い未来の、昔の……」

 

 

 

「簡単な話だ。聖杯戦争は()()()()()()()()──」

 

 

 

 

「私は、退葉皆織……私と契約して、サーヴァントになってよ」

 

 

 

 

 

「蠢動しな、死棘の槍──』

 

 

 

 

 

 

 

 

coming soon……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     *      *

  *     +  うそです

     n ∧_∧ n

 + (ヨ(* ´∀`)E)

      Y     Y    *

 

エイプリルフール!!

いっつあ、エイプリルフール!!!!

ところでこれは本当の話なんですけどね!!!!

亜種特異点、実装前に書いたんだコレ!!!!!!!!!!

舞台が都市とか!!!公式だだかぶっても!!投稿出来なきゃ!!!!!

意味が!!!ない!!!!!よね!!!!!!!!

 

え!!!なにこの後半って!!!?????!????

 

文字数!!稼ぎ!!!!デスネ!!!!!!!!!!

 

いや、ほんと申し訳ない。上記の文面コピペったら制限ひっかかって投稿できませんでした。

本編書けってツッコミ来そうなんですけどすいません鯖の皆さん筆者のド低脳だと知力が……!

ちまっちま書いていきますんで……気長に……お願いします……

 






非公開設定の仕方がわからんのじゃが???(白目)


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野良さば。狂王編〜人生いろいろ〜

お久しぶりです。

マスター陣営にいるだろうなーって人の中で絶対いるイメージ。
実はプロット内でこんな出てなかった(小声)




 

 

……問答とは言っていた。

問答とは言った。が。

 

 

「して、少し気になっていた事があってな……いやなに、その鎧はカラクリなのかと聞きたいのよ。それとも意思で動かしているのだろうか?」

 

「………それを教える意味は無ェな」

 

「ふむ、たしかに。しかしまあ、興味本位よ。問題が無ければ聞いてみたい………いやまて、失礼した。鎧ではなくその身に生じた部類だろうか? それならば……」

 

「………魔力で動くだけだ」

 

「おお、なるほど」

 

 

……かれこれ多分によくわからん時間を過ごしている気がする。

 

これは何の意に反していないのか口も不具合が起きん。

なんとなく起きていいのに、と思考が過ぎたのは久々に名残が出たなと新鮮に感じた気がする。

……いや、やはり俺自身の意に反しているともとれるか。

 

そう思考が惰性に流れるくらいにはだらりとした時間を過ごした。

 

一言二言話したと思ったらあの俺のベースであろう彼、キャスターは何故か野営地へ足を向けた。

いくつかテントを隔てた先。少し開けた俺の居る結界の場よりも明かりの増える兵の休む場所。

こちらを意識する事こそ切れてはいないが、今はそこらの兵士と何か喋り……………いやもはや宴に参加している。

焚き火を囲んで雑談に興じ、盃すら交わして。

視線も切って兵と笑みを交わして声を上げて。

 

この意味もわからない空間に引き釣りこまれたのだから、いい加減ここから離れたく思ってきているんだが………──。

 

…………いや、待て。

 

宴?

 

おかしい。そう見えた事が妙ではないか?

宴は、何か祝い事が起きていなければいけない事が行われていなければおかしい。

それくらい盛り上がる、とはまた違う。

ちらりと見える兵士の手元の食べ物に目を凝らせば、保存したものとはいえ種類が多く。

大盤振る舞いにも感じ、いやそれはまさしく、ならば祝うような物が齎され──それは唐突だった。

 

視線を移した。

強制的にではなく、恐らく本能で。

 

 

「─サーヴァント、とはまこと奇怪なものよな」

 

 

ふと溢れたような声音。しかしその目の奥は。

気配は変わらない、つまり最初からこの自然体と思っていた空気は。

 

 

「なにやら望みがあると言う、無いが存在する理由がある、ただ引きずり出された──」

 

 

笑みも混じる声、吊り上がる口元。

風が吹き、紫の髪が靡く。

少し伏せれば顔も隠れる。

散った枯葉を踏む音、薄く碧に照らされる裾。

薄らとしか見えない足元に、少し屈んでいる事に気づいた。

 

 

「理由は様々にして、この世に顕界する。英霊として座す、或いは至った者達。──俺はその限りでは無かったが」

 

 

肩が密やかに上下する。目を伏せ、笑っているが……鞘に収まらないその刀の反射が目を焼く。

 

 

「降り立ち戦う事をこそ目的に立つのは俺だけでは無い。しかし、その根底は千差万別よ」

 

 

まるで笑むように目を細め、上がりきるのを抑えた頰。

 

 

「佐々木小次郎として立つ俺は、此度マスターと共に立つ事で満足している。しかし、お前はどうだ?」

 

 

人間の笑顔は、動物の威嚇が起源だという。

この男の表情は。

 

 

「それを聞いててめえの利益にでもなるのか?」

 

「いいや? 別にそんなものは無い、ただの興味よ………しかし、なにせ玄人に見えて素人……いやむしろ素人よりも酷い物に見えるが故に、気になってしまったのよ」

 

「…………何が言いたい」

 

「槍を振るうお前に戦意も殺意も、いや意志を感じなかった。理由を知れない槍を振るうは何故か?」

 

「……………」

 

「戦う為に呼ばれたとするにしても、あまりに()()()()()()と感じた。お前の真意は何処か、とな?」

 

 

笑顔にも見える顔のまま、ひたりとこちらを見据える。

射竦めるようにも感じたのか、反射の様に自分の体が薄ら熱を発する。

同時に、思考が内に僅か沈んだ。

 

真意。……理由。

 

理由なんざ必要無え。

 

……そう言おうとした。が、何故だか口に出す気が失せる。

その言葉を本気にしていない自分に気づいた。

しかし、意志だと評したソレを俺は持っていない事に……何故なにも思わなかった?

それはこの身に必要不可欠のはずだ。

そんな機械では無いのは、自分がよく知っている。……はずだった、ろうに。

 

決定的な違い。

彼になれない理由。

──終わりに向けて槍を振るっていない。

では何の為に?

 

 

─────刹那、三歩後ろに跳ぶ。

 

 

「………はて、もう少しのように思えたが……踏み込みが足りなかったか」

 

 

先程のように飄々とした口振り。

木々で遮られたか、けぶる程では無くなった埃を伴った空気。

その風に吹かれて少し舞う紫の髪と袴。

同色の眼は、ひたりとこちらを見据えている。

穴が開いたとて射し込む月明かりに煌めいたのはどちらか。

口振りとは違い、振り抜かれた刃と同じく鋭かった。

 

眼の端。

被っているフードの端に薄らと綻びを見つける。

後ろに下がらなかったら、丁度恐らく───

 

 

「語り合いよりも此方の方が、饒舌であろう?」

 

「──────────。」

 

 

嗚呼、そうだなこれは──

気を抜いていた……いや、何故だか俺は()()()()()()らしい。

 

 

槍を軽く握り直す。ギチリ、皮が音を立てる。

 

 

ボヤけてきた記憶。同時に脳までボヤけたか?

そうだ、他愛ない雑談。

つまりは間合いの探り合い。

 

そう。

だからこそ、彼等は俺を蚊帳の外に置いた。

手慰みに結界なんぞを置いて回れるくらいに。

 

──此奴は()()だ。

 

 

「さて、マスターに言われたのだ」

 

 

言葉を切り、笑みを深める。

 

 

「味方では無いけれど、だからといって敵じゃないんでしょ? ──と、な。たしかに、何も確定していない段階ではあった、が。いやあ思い切りの良いマスターよな!」

 

 

快活に笑い、そして刀に手を添える。

薄い笑みを携えて、視線がこちらを貫いた。

 

 

「故に─果たし合いでなく、手合わせとしよう」

 

 

藁と石の擦れる音と、皮の擦れる音は同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

剣を捌くなんて芸当、出来るはずも無い。

 

数十・数百にも至るであろう交差を経て、体の傷をこそ無いが。

修復もしないでいた身に纏う衣服の綻びは十を超えて余りある。

 

これだけ剣の閃く気配と土を踏み壊す音が響くのにも関わらず、明かりの下からの視線はほぼ感じない。

少しだけ空いた隙間に目をやれば、赤い視線を感じ得る。──少しだけフードが深く切られた事で眼前の男以外を意識的に遠ざけた。

 

 

先程から服は綻ぶ程度にかすめる事はあっても、刀を避ける事は出来ている。

ギリギリとしか言い様がないが。

この身体の動体視力と反射神経を使って、見てから避ける──力任せ極まりない。

佐々木小次郎、たしかスキルになった程の技の持ち主ならば剣筋を予測するのはまず不可能だろう。

 

……ならば、この場は()()()()()()()()とした。

 

槍を払う。突く。そらされる。火花は無い。こんだけの速度同士で摩擦が起きないなら刃が触れたのは一瞬か。

加えて他には無いあの長さを持つ日本の刀。

こうして考える間も足や手指を狙う閃光のように煌めく太刀筋。

叩き斬る西洋とは違う、薄いしなやかさ。

耐久には宝具に劣るただの武器。突くならばソコだ。

 

しかし、それを許さぬ技巧。

足を反らす。

まだ考える余裕があるのでは無く。

首を曲げ、体を外へ。

考えられる程度に抑えられている。

手首を捻り、槍を合わせる様に回す。

命は取らずあくまで手合わせという様式。……多少、それすら外れている気もするが。

腕を見るというより、思考を読もうとしている。

 

何度見ても、避けても新鮮だと感じる事がこんなにも。

 

こんなにも、───、──?

 

 

「───如何した」

 

 

跳び退いた。

あくまで手合わせだった故に、あえて距離を今まで離し切らなかった分を越えた。

退く寸前、思考を読むように刀を下げた英霊、を見るよりも先に

自身の内心に気を取られた。

 

俺は何を思った?

──何も思わなかった。

こんだけ戦っても?

何も思わなかった。

 

 

──何も思わなかった事に気づいた。

 

 

それは英霊の霊基だとしても、魂の元の人間だとしても()()()()()()()だろう。

 

楽しい、嬉しい、悲しい、怖い、何でも良かった。

腕試しでしかなかった。

表に感情を出さないのは戦士としても別に問題はない。

裏でも感情が出ないのは、おかしい。

まるで何かに封じ─────。

 

 

─否、どうでもいい。

 

─どうでもいい事だ。

 

─ただ槍を奮えば。

 

─それ以外はどうでもいい。

 

 

事あるごとに過ぎる思考。

槍を奮い戦う事。

──先程それが目的でないと、認めたのは自身であったはずなのに。

端から疑問が解け消える。しかしそれは、答えを見出したからではない。

 

……森へ、体を向ける。

 

 

「……どうやら仕切り直しともならぬようだ」

 

「野暮用だ」

 

「ふむ、そうか。まあ、マスターを見かけたら伝えよう」

 

 

──調べなければ、ならない事が増えた。

 

余韻の熱を回し、結界の先へ跳んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

似た者同士のような、そうでないような。

やれやれ不可思議な事もまだまだあると見える、笑いながら嘯く亡霊が一人。

もう一人居た空間を一瞥し、高く結った髪を翻して仕える主人の元へと歩く。

 

──前に。

 

 

「ん? おお、如何した」

 

 

足を止める。

人の散見する中、ふと人影が絶えたテントの合間。溶け出る様に現れる緑。

 

 

「いかがしたって、そりゃちょっとした野暮用ですよォ」

 

 

そう言いつつ、右手の弓を畳む。

その様子に心得たとばかりに、小次郎はふっと笑みをたたえた。

 

 

「そう構えずとも、アレは今は敵にはならんさ」

 

「随分と肩を持つようだが、なんか確証でも?」

 

「なに、マスターからの頼みだというのもあるが……どこぞであの男とは違う彼奴といささか()()した覚えがあった」

 

「ほーぉ?」

 

 

誰かが去った森の箇所を見やりながら、腰に手を当てる緑の影。

未だ賑やかな様子の焚き火の周囲を見やりながら、信用されなくても構わない様子で小次郎は自身の心証を口に出す。

 

 

「敵対したらば即刻刈り取るが彼奴よ、わざわざ何度も好機を逃してまで離れるとは思えん」

 

「……まあ、マスターの治療もしてはいたがねぇ……」

 

 

フードの中に手を突っ込む動きでフードが下される。ガリガリ、と頭をかくのはロビンフッドと呼ばれる青年だった。

 

 

「そういう戦法と言われたら某にはもうわからぬがな」

 

「おい」

 

 

途端、対面するアサシン─佐々木小次郎は相好を崩す。

 

 

「まあ拙者? なにぶん身分が身分であったゆえにぃ? 門外漢であるからしてぇ! 間違っていたらごめんでござるぅ!」

 

「そこでぶん投げんのやめてくれませんかねえ!!?」

 

 

はっはっは! という笑い声と

おたく本当にさぁ!? という叫びが響く。

どこかで肩をすくめたドルイドがいたとか、いなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






今回見逃してくれたようですが。
勿論彼ら、マスターに危機が及べば容赦なく主人公切り捨て(物理)に来ます。
主人公にその気が無い(?)のでお目こぼし。
敵方が情報取りに来たにしては杜撰と判断したってことでどうかひとつ。

とりあえずfgoのレア度の基準は何なのか誰か教えてくれ切実に。運営のさじ加減とか言わずに。
低レアの魔境頼もしコワイ

ちなみに後でマスターとマルタ姐さんによるお話(物理含む)が待っています。ゲーム目線だとマルタサポ鯖枠で小次郎ロビンと第一線、最終戦でキャスニキな感じの。







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野良さば。狂王編〜れっつ自分探し〜



バスターゴリラ突破しました。息切れしました。
最近朝日と共に寝る自分がいます。





 

 

 

──奔る閃光。

紫の線を引くと、それに触れた物は悉く離される。

自然の緑は突風に煽られたように。

木々は鎌鼬に刈られるように。

砂煙は線に沿って青い空を見せ、

立ち塞がる者は……断ち切られた。

 

 

 

軽く勢いをつけて槍を回転させ、血糊を払い掴み直す。

点々と地面に散った赤はそれより大きな赤に塗り潰される。

 

時間が経てば魔力の残り香に引き寄せられて有象無象が増えるだろうとは思っていた。

……にしても妙に集まっている。

比較対象は無い。

いや、あるにはあるが血に引き寄せられたハイエナでもここまでだろうか。

そういえば確かハイエナが狩った物をライオンがぶんどるって話も聞いたような。

 

そこまで考えて『知識』に引っ掛かりを覚えた。

 

──無意識に進めた足で散らばる骨をいくつか踏んだか、軽い音が鳴る。

 

その音で現実にかえり、何を考えてるんだかと鼻を鳴らす。

にちゃり、粘質のある音に漸く足元を見ると、

ちょうど消えていく血痕を目にした。

 

 

荒れた大地。

緑が点在する森の途中でふと出現した空き地。

その中で異様な色がぽつりと一つ。

 

……俺はバーサーカーが集まったあの場に戻った。

 

消えた血痕と肉片。

いくらか残る『素材』。

それほどの魔力を残した獲物がそんなに居たか、と見渡したところで気づいた。

 

 

「───残り香、か」

 

 

トン、と軽く槍を払う。薄らぐ熱の名残を込めた。

“フェオ”のルーン。この場にとっての財産を提示。

続けて“イス”。散らばりを安定、静止。

それにより吹いた小さなつむじ風。

風が止む頃には、足元にパラパラと赤い糸筋が地面に落ちた。

 

………成る程。

たしかに()()は自然発生した獲物供にとって財産だ。

 

 

「跡も残せねえとは、難儀なモンだ」

 

 

マスターと呼ばれた少女。その髪の毛の束。

 

……魔術を使う者にとって、髪の毛は蓄えるには適したモノだ。

それは殆ど魔術に触れなかった者であれども。

 

あの時俺の槍は、寸前で軌道を変え本体には当たらなかった。……掠めたのは髪の端、幾らか。

 

地面の底や大気、漂うマナはある。

それでも其れを吸うだけでは()()だったか。

あの唯一のマスターは、カルデアという機関の残された人理……持てる技術全てで援助されているのだ。

……それはもう、身体のどの部位であれ。

彷徨う奴等には極上の獲物だろう。

周りにいるのもこの条件では悪い。

なにせ英霊、エーテルの塊だ。

長時間共に行動し、魔力に晒される素人魔術師。

危機感というものも働かない木っ端では、本能のままに引き寄せられるというものだろう。

 

薄らと指の動きが鈍る──成る程、これも()()()()()か。

時間をかけて描いた“カノ”のルーン。シンプルに焼く。

留まる物が無くなれば勝手に散らばるモノだ。

──これで少しは時間も稼げるだろう。

 

煙も出ずに赤が焼け消えるのを見届け、目的のものに目を移す。

黒。

青い空に照らされても、何を照らしても変わらない色。

 

少しだけ意識し、見る「もの」を変える。

大地の下には脈打つマナが奔る。

空気の中を昇り立つマナ。……これは先に屠った敵の残滓だろう。

 

しかし、その中で黒い箇所だけ。

ぽかりと空いていた。

地面から僅かでも揺れ立ち昇るマナ。

それが無かった。

 

俺が此処に戻った理由。

それは『知識』に()()が無かったからだ。

ならば聖杯に関する知識ではない、か……もしくは「新たに生まれた現象」なのか。

 

──気づいた事があった。

自身の魂についてだ。

 

記憶がこぼれ落ちている事はわかっていた。

それこそ、この思考の仕方もこの姿になった当初から既に変質している事も理解している。

『知識』も既に辛うじて別の物としているが、引っ張り出すでなく()()()()()()()時が増えた。

しかし、何故か未だ自身の物として()()()()()()()()()()()

 

それは、『()()()()()/()()()()()()』。

 

記憶は様々だ。

落ちているのは人の名前だとか顔もあるし、

住んでいた部屋も実家か一人暮らしか。

配偶者もいたのかどうかも零れたようだ。

自分の前の声も最初の頃は容易く再生出来た。

今ではもう他人の声に思える程度になっている。

性別も覚えてはいるが、この分だとその内感覚で推察するくらいにでもなる気もする。

 

……自身の生涯の記憶を忘れて、やっていたゲーム()()消えないなんてあるか?

無いだろう。

 

それこそまだ覚えていた限り自分は成人していた。酒を飲んだ覚えがあったから間違いは無いだろう。

……未成年で嗜むような気概を持っていたなら話は別だろうが。無かっただろうよ。

……ともかく。

十数年以上付き合いのあるモノより数年付き合っただけのモノの方を忘れない、なんて普通ではない。

それこそ反復する回数を増やさねばすぐに消えるはずだ。

 

しかし、もしも。

もしも……

前提が違ったとしたら?

 

 

そこらの石を拾い──手の中で砕けた。

またか、と手近な岩を蹴り砕き転がした。

大きすぎた塊はヒールの様な踵部分で軽く突き、割った。

地面に片膝をつき、黒い大地に触れる。

 

 

──サーヴァントはエーテルの塊。

そう、集合体だ。

もしもだが。

もしも──()()()()()()()()()()()()()

 

 

現界維持だけで定期的に魔力補給を必要とするこの体。

魔力を全て奪い取り、小規模とはいえ大地を()()()()()()()()程。

黒い土を一掴みしてみると掴んだ側からボロリと砕け、

指の隙間からきめ細かい砂のように零れ落ちていく。

どう見ても、生きた要素の無い土だった。

 

記憶は、反復すればする程残る物だ。

 

 

この記憶も集合体ならば、だが──いや、疑問すら間違いだ。

 

 

俺は『知識』と「記憶」とを分けていた。

なら単体でなく集合体であることは既に──証明されている。

 

であるならば。

 

 

槍を握り直し、二箇所ある内の比較的大きく広がっている黒い土の上に座り込む。

まあ、今しがた使った所ではあるが。急拵えで吸った前の分に比べ、時間をかけてより吸った今の方が規模が広い。

 

とはいえ然程広くない面積。

胡座をかいて長い尾の鎧を横からぐるりと自分の前に回す。

槍を胡座の間から地面に突き立てた。

さながら、獣が木のウロに体を入れ込むような。

それだけで、黒い大地はほぼ隠れる。

 

大地の上でルーンを使うと空気中のマナを吸着するようだ。

──ならばこの黒い土の上ならば絶縁体の役目を果たすかもしれない。

違ったとしても試して成功すれば儲け物だ。

 

先程散りばめた大小様々な石は目論見通り散らばった。

手のひらに収まる石を拾……うとまた砕きかねない、

届く範囲の石にルーンを刻む。

槍を使い、手を使い。鎧も使った。

何が効くかは考えず、拡散するような意味合い以外は書き連ね。

 

抑えた魔力─あれだけやれば学ぶ─を素早く込める。

一瞬ルーンが輝く。

 

自分に集中するように、内側に発動させる。

いくつもの燐光が目の中に飛び込んだ。

 

 

そう認識した瞬間、視界に土が広がり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ふと、思考が浮く。

 

俺は今なにをしていた?

 

一つ一つ、認識、確認。

 

……サーヴァント、英霊、聖杯戦争……

そうだ、俺はクー・フーリンに……

 

………「俺は」?

 

 

……そうだった。

自分の内部を調べようとした。

体ではなく、精神、魂。

途端にそこから何も覚えていない。

 

意識を失った? ……何故。

 

……周囲の邪魔をする気配は消していた。

ならば原因は…………内側?

自己防衛、か?

──自己だと?

 

自分にリミッターをかけた覚えなんぞ無い。

解析をかけた程度で意識を失う器でも無い。

魂は知らん。

それでも器の影響なのか、今まで()()()()()()()()()

しかし現にこうして意識を失っている。

魂が解析に耐えられなかった? 否、それならば俺は今迄のどこかで霧散している。

ならば解析を遮断? 意識を遮断した?

……いや、意識を失ったならこの状態は何だ。

サーヴァントは夢を見ないんだったか。

では夢ではないならばこの状態は。

 

体を動かす感覚は無い。

しかし色は認識した。

黒。

ならば意識はある。

 

光は感じない。

目を閉じている?

いや、外気に触れる感触が無い。

触覚を感じない、匂いも……他の五感はどうだ。

 

触角と嗅覚は除外。

視覚、無し。

味覚、無し。

聴覚、無し………?

 

何か引っかかった。

遠雷の音を小さく聞いているような。

何かを見ているのに脳が認識を拒否して見えていないような。

この状況で脳がというのもおかしいが。

……無意識だというなら気づきもしないはずだ。

では一体これは何なのか?

意識を向けてみれば何かわかるのか。

 

……………意識……

 

 

 

………………どう、やる?

 

 

 

なんだ、この感覚は。

息をするようにしていたコトが出来ない。

 

……いや、これは前の俺だったら当たり前の事だ。

 

……()()()

 

では「今の俺」ならば出来る事だと判断している?

 

 

 

一体()()

 

 

 

途端。

 

何かに押される感覚。

まるで何かに急き立てられるように押し上げられる。

もがくなんて事は四肢があって出来る事だ。

 

有無を言わせずその感覚は、たちまち俺の意識を覚醒に放り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………どぷり。

 

 

───音がする。

 

粘着質な音。

 

ごぷり。

 

まるで泥の溢れるような。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろ頭に、体に広がる地面の感触。

 

地面に倒れた覚えはなかった。

ならば要因があったのだろう。

目を開ける。

日差しがあるはずだった。

 

日に当たり、鈍く反射する表面。

青い空と黒のソレとでは、まるでちぐはぐな。

 

 

──何かが、自分の上に覆いかぶさっている。

 

 

咄嗟に、足を曲げ踵で地面を蹴る。

跳んで抜け出た直後、自分の顔があった位置にぼたりと液状で粘性のある物が落ちた。

 

何も生まないはずの地の上で、蹲るモノ。

ああ、つまり()()か。翻るフードの隙間から視界に捉え理解する。

 

 

「……テメエもオレも、死んだ身ならそうもなるか」

 

 

象ったが、固定されず這いずるカタマリ。

時折見える白もすぐさま黒ずみ、不定形と化す。

中途半端に呼ばれ、中途半端に引っかかった物。

 

─シャドウとすら呼べない、ただのなり損ない。

 

数メートル離れた場所に着地。

まだ動きは無い。

あえて空気を切る音を立てて、槍に僅かに付着した土を払う。

這いずったそばから溢れるソレの、恐らく頭であろう部位がコチラを向く。

 

一応聴覚があるかのような動きをするのは、元にしたナリが人型であるが故だろうか。

 

ずる、ぐちゃり。

 

途端。足に見立てた箇所が隆起し、手をつこうとしたように地面に……一度溶けかけ、しかし一応芯はあるようで。

ソレはまるで人のように、立ち上がった。

すると多少定義されたのか、足にあたる箇所が二本に別れ。

交互にすり足の様に、崩れながら再度構築を続ける様は。

膝が曲がるように、新しく地面に下ろした片方が崩れかけては構築し高さを保つその無様は。

ゆっくりではあるが先程より速く、こちらに向かってくる人の形。

 

 

「─失せろ」

 

 

無感動に、無情に。

─無常であるように槍を突き立てる。

人の形と定義した瞬間に、その核たりえる場所に。

他人が定義したのではなくソレ自身が自分で定義したのだから、当然のようにソコにある。

少し狙いがズレた事に頭の隅でこれも都合が悪いコトか、と自分の体に向けて呟く。

槍の棘に砕かれるあまりに脆い核。

魔力をわずかに散らしながら急速に崩れていくカタチ。

 

 

「…………」

 

 

それでも。

槍が刺さっていても、伸ばす腕。

数歩分、槍がより深く刺さり砕けていくのにも構わず近づく。

少しのズレが、致命傷の延命にでもなったか。

 

地面に触れ消えていく欠片。地面が影響無く、空気中のマナも乱されない事を見るに触られたところで有害性も無いようだ。

 

攻撃性も見られない、というよりも既に発揮できる程の余剰も失せているようだ。

 

──では何故こちらにその()をのばすのか。

 

伸ばされる腕、細く脆い指。

黒い泥が滴り落ちても、ふと覗くその下の白は眩く。

不思議と、するりと赤い紋様のある頰を撫ぜた手。

感触だけはその白い装束のように滑らかで。

 

顔に当たる場所も、何もかもが泥塗れ。

ソレがごぽり、と穴が開き─

全て跡形も無く崩れた。

 

 

「……………」

 

 

泥にも似た何か──途端に端から消え失せた。

なんの感触も欠片も無い。

ただ、槍を突き出した腕がそこに何かがあった事を証明するのみ。

 

──何もせずとも消えただろうに。

 

自分の内から出る問い。槍を突き出したのは、何故だったのか。

 

 

「……………どうでもいい事だ」

 

 

そう。

どうでもいい事だ。

 

収穫もほとんどなかった。

精々、自身に何かしらこの身()()()()()事情が複数あるだろうとわかったくらいだ。

──そしてソレが俺を保っているということも。

 

 

見回すと、ルーンを刻んだ石は消えていた。

僅かな魔力に反応して、恐らくあの()()()が取り込んだのだろう。

アレが()()()()()()()()()に誘われてこの場に来たのか、それとも()()()()使()()()──。

 

 

思考を遮断し、背を向ける。

ここはもう無意味だ。

 

 

 

────おう──さ─

 

 

 

あの泥が求めたものも、何もかもが無いのだから。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして戻った先で。

俺は、人の消えたテントの山を目にした。

 

 

 

 

 






描写しないんで明かしちゃうと主人公の体前面の紋様はゲームのオルタ通りではないです。
ゲームの中で居た存在が主人公にはいないので。
どんな紋様なのかは各自妄想願いたい所存。ちなみに今後の展開に影響はしません(断言)


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召喚されたのは賢者でした (オリジナル)
とある賢者の異世界転移。








なお即解決する模様。


 

 

 

 

 

テンプレに巻き込まれたのだと思う。

それも異界の。

いや何を言っているのか以下略。

 

前方の数歩先で恐らく術を行使した女の子が叫んで……いや強めの口調で恐らく年長であろう壮年の男性に話しかけている。

二人は同じ種族に見えるから、見た目は違えど年齢は同じ……という事は無いはずだ。種類はともかく魔力質は似ているし。

態度を見る限り同等もしくはって感じに見えるのは、何かあるかな。身分とか。

それ以外に私の周囲の数歩分の距離で生物はいない。

数十歩離れれば居るが、まあそれはあとにしよう。

 

ココに来る直前を思い出してみる。

 

たしか、城下の街中を歩いていた。

 

目の前で轢かれそうになったデンプシーキャットを助けに走った男の子。

それを目と鼻の先で見つけた。

 

私には助ける手段がある。

悪人でも無い親が叫ぶ未来を感じ取り、ああこの子は愛されている民だと判断して……

転移の術で親の元に移動させた。そこで何かの術式が引っかかったのを感知したのだ。

 

自惚れでなく国一番の腕を持つ自分。その術に茶々を入れる奴がまだ居たのかと解析を起動させた。

 

そして自分の力の遠くで似た力を感じた次の瞬間、引っ張られ。

 

 

 

それでこの状況。

 

 

下を見ると、黒い石の床。薄く切られた石を貼り付けた床にも見えるが、白い線が自分を中心に描かれていて途切れもしていない。

凹凸の少なさから削り出した物ではない。しかも磨いたようでもないからおそらく何か液体状にして固めた物だろうと推測。

 

うーん。

周囲からこちらに殺意が向いている気配は無し。

敵意もまあ放っておいて大丈夫。ならもう少し移動せず様子見ても良い。

視線は向いてるけれど……魔眼も無いな、なら観察を続けよう。

 

足元に広がる線は明らかに意味を持たせた形状で、術式の一種と容易に理解ができる。

筆記具で幾度も描かれたのか、先ほどまで光っていた白い線の周囲は白い粉が付着し白く濁っている。

消しては描いて、を繰り返している辺り一度使えば効力を失くす術なのだろう。

いや、もしくは書いた者しか発動しない術式の可能性もあるか?

この白い粉……軽石、じゃ無いな。もっと目が細かい?

あ、ふむ。あの転がっている白の棒、筆記用具か? 何か固形を一度粉状にして固めた物、だろうか。

形状を持ちやすく出来るし作った際に使えない部分も出にくくなる……なるほど。

何かつなぎにして固めるか圧縮すればいけるか?

筆記用の液を持ち運ぶよりも良いな、今度提案しよう。

 

線は途切れてはいないが、線が少しブレている。僅かに楕円……この箇所、術式粗いな。

意味を理解して描いているとしたらもう少し丁寧に……おや、ココは書式がバラバラだ。

お手本ありきの写しだろうか。

自分で編み出したならもっと改良するだろう。

この粗さに気づけないレベルで編み出せる陣ではなさそうだしな、コレ。

 

 

辺りを改めて見回すと、少し薄暗い。

女の子以外にも人影がたくさん見えたが、顔の作りまでは把握しきれない程度の距離。

同じ年頃に見える複数の少年少女。

どうやら少年少女たちと女の子の服装が揃いである事を見るに、共通の組織に属しているか共通の職についているのだろう。

 

集団の後ろに広いが等間隔にいくつかの明かりを確認、室内は確定だ。

天井が高く少し光量が足りないようだし松明……じゃないな、弱い術を利用したものだろうか。

天井は高く、柱が少ない。

建築技術は割と進んでいるのか、それとも術の……いや、これはないかな。

文明はそこそこありそうだ。術はともかく。

あまり重要視されていない文明?

いや、ならこの集団の感じはありえないか。

術が進歩せずに技術が発達した文明……?

いや、これは確定には早いな。

 

……で、ええと?

女の子の言葉は……うん、少し形式は違うが古代イマルギカ語に似てる。

にしては、ちょっと略式も混ざってるかな?

うーん、試練、する、と、否に?

魔、無い、えっと……まあ単語は合ってるみたいだし、効くか?

 

手持ち無沙汰を装って後ろ手に手を組み、右手の指輪の一つの石を回転させる。

カチリと微かな感触を指先に感じた直後、雑音だったソレが意味を持つ音に変わった。

一番に耳に届いたのは、やはりというか前方で怒鳴りつけ……いや、話し込んでいる二人の声。

 

『マシュゾクでもないただのヒンペイが間違いで召喚された事例はありますでしょう?!』

『たしかにありました。が、それは数例のみですからまずは……』

 

……ううん。

前者が女の子、後者が恐らく壮年の男性。

翻訳魔術は起動した。それは意味ある文面に聞こえるのだからわかる。

でも、余計にわからない言葉が増えた。

なんとなく察せるのだけれど。

 

……とりあえず今の二言から推測できるのは、私は本来召喚されないはずが召喚されてしまった……とかかこれは?

間違いとか言ってるから、確定だろう。

大人が数例、とか例をあげてるならこの何かを召喚する術は今回が初の使用ではない。

さて、聞き取りづらくなった箇所は固有名詞か用語だと仮定して。

ヒンペイ、マシュゾク。

……ひんぺい。ただの、と言うなら平民的な位置を意味する身分の単語か、この場合。

そしてあの女の子はそのヒンペイでは無い。多分周囲も同じ。

学生より身分の差を感じさせる言い方だから予想通り貴族にあたる何かだろうか。

お互いに敬語ではあるから、身分と立場でそれぞれの上が逆転している? いや、性分や癖もありえるから決定とはいえないけれども。

 

一塊に待機してる少年少女たち。

……と同じ服装たる女の子が身分であろう何かを気にしている所を見るに、貴族の子息達又はご学友とか?

……あ、よく見たら何人か守護隊形らしき陣形をとっている。

護衛役もいるなら数人は確実に貴族のような上の身分だな。

うん、これならひとまず確定と見ていい。

一定の文化はある国、又は機関の存在があるならとりあえず一定の力を見せ屈服するのは下策かな。

もう少し様子を見ておく。

さて、ましゅぞくとは何か。 魔族と似た意味であるとは予測がつくが。

種族と魔、で言葉が別れるならだけれど。

ん、いや魔種と族も可能だな。

マ・シュゾ・クーとかだったら違うけれどとりあえず暫定で良さそう。

……いや、分類に少し偏りもあるようだしうちの国とは価値観が大分違う可能性もあるな。

 

後ろの方の少年少女達はこちらを見たり見なかったり。

 

肩にピクシーめいた精を乗せた少年が頬を突かれている。

その隣では少女に擦り寄る長い尾……あ、龍か。

へえ結構強い個体の幼体だね。

 

うんごめんねー怯えなくても何もしないよ今のところ。

あ、ごめん君の主の首締まりそうだからやめてあげな。

 

魔力渦巻くこの空間だからこそ、思念を伝える事も容易い。

龍はぴたりと止まり、おずおずと主人の首に絡めた尾を緩めた。

よしよし。

 

 

一対で繋がる子供と獣達。

私と同じように召喚されているならば、懐いたり側にいる時点で何がしかの契約が結ばれている。

……どうやら順番に召喚契約して何かの資格を得る儀式でもしていたようだ。

そしてまだ言い争ってる(?)女の子が私を召喚した、と。

 

まあ事故だったようだが。

 

多分魔力が無いからこの儀式は無効だーとか言ってる辺り、

やり直しは普通はきかない儀式なのか。

……いや、一回のみにする事で召喚された魔獣や幻獣、妖獣の強さで力量を証明しているのか。

魔力の感じられない固体を召喚したから自分の力量が低くみられてしまう、とかそんなところだろうか?

多分着いた瞬間に無意識に繋がりを切ってしまってるんだけれど、もしやマズイだろうか。

 

視線をまた足元に戻して解析をかける。

っと。

バレないように周囲の魔力でごまかし、と。

 

ふーむ。思ったより術式が古い。いや、程度が低い?

教本が古いのか、ここのレベルがこの程度なのか。

……お手本がこの程度?

まさかとは思うけれど、誰かが編み出した術式改良前にメモっといたの写したとかでは無いよなまさか。

 

……にしても、魔力を感じられない、ねえ。

 

そりゃあ、魔力を表に出したらダメだろうもったいない。

内側で完全制御出来てなかったら魔法制御の腕がポンコツだと認識されるんだから、内に秘めて出さない奴ほど腕が立つと相場が決まって……ん、やっぱり価値観の違い?

 

威嚇行動や攻撃体制を取っている方が良いのか?

この世界、もしくは国は私の居た所とは随分違う可能性が更に大きくなったな。

……ああ、そうか。うちの国近辺では服装で職を証明しているから、魔力を出す出さないの意味が変わるか。

……にしても精霊は見えないし、この場にはいないのか?

魔獣も姿を現してる奴以外はいない……。

ふむ、いやこの状況だとあそこの水妖とかも魔獣と違う可能性もあるな。

それこそマシュゾクの一端として数えられている可能性が高いか。

マシュゾク、は広義的な用語かな? それこそ、ヒト・ケモノ・セイレイくらいの。

もしかして3通りくらいかなマシュゾク・ヒンペイ・あともう一つくらい? ヒンペイならあの塊の中に居られないようだし。

ふむ? いや、女の子がマシュゾクだったとしても、男性をヒンペイと扱っているようでは無いからもう少し分類されそうだな。

少し置いておくか。

 

さて、術式は……空間系も混じってるな、移動も兼ねて……もしかしなくても次元にもかかってる。

ああ、転移の術にひっかかったのはコレか。

解析した事で行使中の力が私に引き寄せられて誤認した……という感じかな?

次元か。ならこれはココにうちの国の影響が一つも見られないのは予想の一つが当たりそうかな。

やはり国や時代が違うのじゃなく……世界規模かな、これは。

ああ、それならやりようはあるね。

 

 

その時、まるで布を引っ張りちぎるような音が響いた。

ん?

音の発生源は……あれ、私を召喚した? 女の子からか。

膝をついてへたり込んだ体勢で、こちらを見ている。突然だったようで、隣の男性が慌てたように女の子の片腕を持っている。

支えようとはしたようだ、やはりこの場の保護者の立ち位置はあの男性のようだね。

 

そして感じたのは引きちぎられ漂う魔力の名残。

引きちぎられたという事は何かに無理やり干渉して弾かれた、という状況かな?

……ああ、女の子がこちらに何か力を向けたんだな。薄らぐ魔力の質はこれは──解析の下位互換に似ているな。

能力は隠していたから見られて問題は無かったけれど……

考え事をしたせいで私が干渉を無意識に遮断してしまったという所だろうか。

……ん?

そうか、しまった。力量の差があり過ぎて弾かれた……では次に来るのは……

あっ。

 

ボロリ、とへたり込む女の子の両目から流れる涙。

呆然としたままこちらを見つめる目の焦点は合っていない。そして薄く開かれたままの口。弛緩したまま力の込められない体。

 

しまった。反動だ。

魔力と一緒に意識の糸までほつれてる。

長く放置しなければ害はさほどないが……大人が解析していない、これは気づいていないか。

事故とはいえこれは……

少しだけ力を入れて"視る"──よし、見え……。

うんまずいな女の子は悪人では無い。

 

ええと、言葉がまだ解析しきれてないか。仕方ない代用は……意味が通じれば些細な事だろう。

今回限りだし記録の必要は無いだろう、即興で大丈夫だ。

指に殊更ゆったりめに体内魔力循環。燐光。よし、干渉は効く。

ささっと空中に陣を書い──

 

目の前に着弾する雷撃。陣の余剰魔力に散らされ辺りを火花にも似た光がパチリと弾ける。

うんそうだね、唯一動ける大人で保護する立場なら。何をするかわからない者が動けばそうなるか。

威力より邪魔出来る速さ優先。

陣の魔力に散らされてしまうくらいだから急ぎ過ぎではあるけれど、着眼点は悪くない。

よし出来た。

とりあえずそうだな、魔力の差がある相手に力を向けると危ないと忠告を……

 

『……そこの童、我を阻害なぞ身の程を弁えよ』

 

あっダメだ。

これ古語が歪んで作用した。

術式は基本命令形だよね皆固まってるなマズイ

 

『ふむ……謝辞を述べよう。我の言葉にのった力のみで動けなくなる程に次元の違う存在であったとは思わなんだぞ』

 

あ、ほんとにダメださっきの散った魔力と反応して余計にこじれる意訳されてる。

 

まあ……これ以上ココにいてもお互い不利益だし女の子さっさと治して国に帰ろう。

別次元なら外交問題どうたらも無いだろう!

一足飛びに近づいて女の子の頭に触れ──よし治ったかーえろ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元の世界に戻った瞬間捜索隊の頭上に落ちたのは不可抗力だよ。

座標高度と時間軸が数度ズレたんだ、だからそんなに怒らないでくれよ。十日も留守にした……わかった、わかった北の龍との和平交渉の橋渡しやるから。

あー外交面倒くさい。よく君はその冠つけてられるねえ。

先生っておだててももうやらないからね、役職なんて面倒極まる。だいたい皆伝して何十年経ったと思ってるんだい君は。

 

……わかった、わかったごめんよ心配かけたって。え?彼女にも謝れって……あー、わかったわかった。後で訪問するよ、仕方ない。

 

頼むから歓迎式典はもうしないでくれよ?

したら国を出るからな?

 

しないなら出ないよ、出ないから抱きつくな暑苦しい!

 

 

 

 

……この後。

再度自らあの世界に飛ぶことになるとは私は予想もしていなかった。

 

ん? 予知は普段からはしないよ、使いすぎると諸々から心配という名の突貫受けるし。

 

 

って言ってるそばから、ちょっと待って待って気が早いな君も相変わらず!

ほら五体満足! え、次元?

ああそうそうちょっと越えたよ、すぐ戻ったから問題はないだろう?

……いや、私は何もないってば。

まったく君もか!

君にも立場があるんなら職権濫用はやめろと言っているだろう?

友人と仕事を天秤にかけない、ほら復唱。

というかあちらの事に手を出したら私が後始末を手伝う事になるのわかってるだろう!

 

こら! 一緒にやる事が出来るからって理由なら絶交するよ君!

 

おいそこの神!

 

 

 

 

 

 

 

 

 







※どうでもいい追記
デンプシーキャット
見た目は普通のネコ。毛並みや模様は様々な為に見分ける特徴は瞳の瞳孔と尾の太さ。人に対して敵意を特に持たない魔物。(ゲーム的に言うとノンアクティブ)
唯一ネコ型魔物の中でギルドに登録せずに愛玩動物として飼われる事を許可されている。
(※魔物として登録する場合、いざという時戦力に数えられる為に一般家庭のペットとしてなら登録を免除扱い)
攻撃手段は魔法ではなく、その脚力を活かした立体機動を用いる肉弾戦。壁などを蹴って死角から高速で攻撃が飛んでくる可能性が高い。
威嚇行動は主にほかのネコ型と変わらない。
発達した尾を使い後ろ足で立ち上がり、構えをとって上半身を揺らしだした際はこちらを敵と認識している証なので要注意。
猫型魔物の中でも唯一、背を向け逃げた物を追う習性を持たない。
敵とされたら即座にその場を離れる事を推奨されている。

名前の由来は諸説あるが、どこかの国で誰かが「デンプシーロールをする猫だ」と言ったとされる説がある。

ちなみに冒頭のデンプシーキャットは馬車の車輪を蹴り無事回避して飼い主と家に帰った。


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