キメラな飼い猫とデーモンな俺 (ちゅーに菌)
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猫と俺のクリスマス

 

 

寒い…お腹すいた…。

 

『にゃー…』

 

僕…死ぬのかな…。

 

『にゃ…』

 

「ん?こんなところに猫が捨てられてる」

 

『にゃ?』

 

僕は男の人に抱き上げられた。

 

「黄毛の女の子か、可愛いなぁ」

 

『ごろごろ』

 

撫でるのが気持ちい…。

 

「うちに来るか?」

 

『に!?にゃー!』

 

行きたい!

 

「おおそうか」

 

『にゃー!』

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

主様に拾われてから大分たった。

 

主様はとってもいい人。

 

「可愛いなぁ。ピトーは」

 

いつもゲーム片手に僕をナデナデしてくれるの。

 

ピトーってのは主様が主様の友達と付けてくれた名前。

 

変な名前だけど主様からもらった名前だからそれなりに気に入ってるの。

 

『にゃー』

 

僕は主様が大好きだ。

 

「そろそろ行ってくるぞ」

 

『にゃー…』

 

主様はいつも朝はナデナデしてくれるけどお昼頃から夕方まではどこかに行って寂しい…。

 

「じゃあ、行ってきます」

 

『にゃー!』

 

いってらっしゃい主様!

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

変だ。

 

あれから三回ぐらいお日様が昇っても主様が帰って来ない。

 

それどころか主様と住んでいたところから知らない人に知らないところに連れてかれちゃった。

 

私を連れてきた人は"息子は死んだ"とか"あの人はもういない"とか言ってるけど僕にはよく解らない。

 

とりあえずあの家で主様を待つんだ。

 

だって主様は"いってきます"って言ったの。

 

いってくるなら必ず帰ってくるの。

 

だから僕は外に出て家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

やっと主様の家に着いた。

 

なぜかどこからも入れないし、明かりもついてないから仕方なく外で待つ。

 

帰ってきたらいっぱい文句いって知らんぶりしてから撫でてもらう、それで許してやる。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

もうお日様を数えるのが億劫なぐらい随分主様を待った気がする。

 

何度か知らない人が来て僕を連れて帰ったけど、その度に主様の家に戻った。

 

一体、いつまで僕を待たせる気? 早く帰って来て。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

い、家が全部壊されてしまった…。

 

沢山止めてって頼んだけど誰も聞いてくれなかった…。

 

またまたまたまた、僕を連れ去る人がきたから今度は指先を噛み千切ってやった。

 

ざまーみろだ。

 

僕は主様を待ってるだけ、邪魔するな。

 

何も無くなっちゃったけどここで待つ。

 

そうすればいつか主様は帰ってくる。

 

帰ってきたら一日中遊びに付き合ってもらうの。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

あれからまた随分たった気がする。

 

ねえ主様…実は僕もうあんまり目が見えないんです。

 

それどころかからだもあんまり動かない…。

 

お願いです……戻ってきてください…。

 

一目見るだけでもいい…です…撫でてくれなくても…ごはんくれなくても許し…ます……だから…………だから…。

 

 

 

 

 

 

 

早く帰ってきて………………主様…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?ここはどこ?また違う場所、早く主様の家に戻るの。

 

ん?前で女の人が泣いてる。

 

「うぅ…グスッこの子健気過ぎよぉ~…」

 

大丈夫か? 元気だすの。

 

「はい…大丈夫…ペットより先に死んじゃダメね…うぅ…」

 

!! この人僕の言葉が解る!

 

「そりゃそうよ。何せ神様ですから!」

 

そうなの!? それはすごい。神様って何か知らないけど。

 

「あらら…」

 

それより聞きたいことがある。

 

「はい。なんなりと」

 

良かった! 主様はどこにいる? 会いたいの。

 

「ぐふぅッ…なんて…なんて子なの…」

 

ど、どうしたの?

 

「そうね…彼の居場所は知ってるわ」

 

ホント!? 会いたいの! 教えてほしい!

 

「でも彼は凄く遠いところにいるの、君の小さな身体じゃ行けないぐらい」

 

え…? じゃあ、会えないの…?

 

いやだ…会いたい…また抱っこしてもらいたい…。

 

「モーマンタイだわ! だから会える為の力を与えましょう! 本当はこういうこと嫌いだから滅多にしないけどね」

 

? なんかよく解らないけどありがとう。

 

「この超チートクジから3枚引くのよ!因果率を弄ってあるから必ず憑依先1枚と、チート2枚を引けるわ!」

 

そういうと神様は黒い穴の空いた箱を取り出した…はっ!箱ー!

 

「にゃー!」

 

「な!箱に入っちゃダメよ!」

 

落ち着くー…。

 

でも神様に文字通りつまみ出された…無念。

 

「あら? ちゃんと3枚持ってるじゃない、偉いわ」

 

口に紙が挟まった。ペッペッペッ。

 

「え~となになに…"Fate/EXTRAのEXスキル星の開拓者"と"Fateの直感のスキルのEX"と"ネフェルピトーに憑依"ですって……物凄いチートができるわね。でも良いわ! 許しちゃう!」

 

「みぃ!?」

 

突然、僕の目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだニャ?眩しかったニャ」

 

あれ? いつもより目線が大分高い気がする。

 

「ふっふっふっ…これをみるが良いわ!」

 

神様がおっきな鏡を出した。

 

「えっ?」

 

そこには金髪の綺麗な女性が映っていた。

 

からだを触ってみても鏡の人が同じようにからだに触れる。

 

耳と尻尾はついてる。

 

「これホントに僕かニャ?」

 

喋れる…。

 

二足で立てる…。

 

片手で物がちゃんと掴める…。

 

「ええ、あなたの体よ」

 

神様は僕を後ろから抱きしめながらいった。

 

嬉しい…これで主様にたくさん御奉仕できる…。

 

「元のピトーは両性だけどあなたの性別はちゃんと女の子にしておいたからね。人の子も孕めるわよ~。うふふ…キメラアントの女王がピトーを生んだらあなたを原作開始1年前に送り込むわ。これでハンター試験にあなたが居れるわね。プププ…ハンター試験にピトーってどんなヌルゲーよコレ、それに彼にとって最高のクリスマスプレゼントねぇ」

 

?神様が何か言ってるけど内容はよく解らない。

 

「でも行く前にまだやることがあるわね」

 

「ミィ?」

 

「人間生活の仕方を覚えましょうね? あと念も教えてあげるわ!」

 

あ、それは大切だ。念はなんだが解らないけどきっと大切なんだ。

 

「はいニャ」

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

あれからまたまた凄く時間がたった。

 

「じゃあそろそろ行くニャ。師匠」

 

念を覚える時は師匠と呼びなさい! と言われたので師匠と呼んでる。

 

「ええ、いってらっしゃい。真面目に念を習得したのだものあなたはもう本来の倍は強いわ。頑張って来なさい、勘を頼りにすれば必ず見つけれるわ」

 

「はい。さようなら師匠」

 

よく解らないけど、僕とっても強くなったみたい、でも師匠とはここでお別れ。

 

ありがとうです、師匠。

 

「ええ、じゃあね」

 

師匠の声を聞きながら僕はまた光に包まれた。

 

さて、主様を見つけにるにゃ!

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「外だニャ」

 

僕は今、洞窟から出た。

 

光に包まれた後、気づいたら緑の玉の中だったの。

 

そんなことはおいておいて服が欲しい…。

 

長い間師匠といた時はいつも服を着てたから着ていないと少し恥ずかしい…。

 

"3kmぐらい"円を広げて人がいないか調べた。

 

僕を中心に波状に円を広げればこれぐらいは広げられる。

 

師匠は地球を包めるらしい、念能力って凄い。

 

「ん?これは…念能力者ニャ」

 

円の中に三人の念能力が確認できた。

 

オーラ量だけでいえば僕や師匠に比べると蚊みたいなもの。

 

でも一人は女みたいだし体格も近い、今の円で気付かれた可能性もあるので殺ることにする。

 

僕は主様が幸せならその他はどうでもいいの。

 

僕は絶を使うと念能力者に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

結論からいうと念能力者はとっても弱かった。

 

絶のまま二人の男は首を切り飛ばした。

 

女はかわして反撃に念弾を撃ってきたけど、僕に当たると霧散した。

 

指で頭を貫き仕留めた。

 

脆い、まるで豆腐だ。

 

「にゃは♪」

 

まぁ、服が手にはいったからいい。

 

着ていた服は血だらけにしちゃったけどリュックに下着と白のセーターとデニムのジーンズがあった。

 

靴も取って死体は放置してその場を後にした。

 

多分、直ぐ生き物のエサになるし。

 

「んー、主様は………コッチだニャ!」

 

僕は勘に頼って主様に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

適当に走っていると人が沢山いるところについたので絶をしながら話を盗み聞きしている。

 

ここはミテネなんとかのN…なんたら自治国の国境だそうだ。

 

そんなことはどうでもいい。

 

主様に会うんだ。

 

僕は途中で他人の持ち物や懐から拾った財布の中身を1つの財布に纏めながら主様を目指した。神様に言われた通り現金以外は下水にポイした。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

一様、途中で人から拾った帽子を頭に被り耳は隠すことにした。

 

海を走って越え、海岸沿いで休んでいた時に子供が大群で耳を触りに来た時はビビった。

 

いつの時代も怖いのは子供だにゃー…悪意が無いからたちが悪い…流石に手を出すのは多少気が引けるし。

 

今はヨークシンとかいうところにいる。

 

ご飯も食べたからそろそろ行こうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

ジャポンとか言う所のなんだか、見覚えのある住宅地に来た。

 

暫く歩いていると、2階建ての大きな屋敷が見えてきた。

 

「あ……」

 

あった………。

 

全部壊されたはずなのに……僕の…主様の家…。

 

僕はそっと二階のベランダに飛び乗った。

 

電気は付いてないしカーテンが引かれてて中は見えないけど、誰かが寝息を立ててるのは解る。

 

僕は窓に手を掛けると窓は普通に開いた。

 

やっぱり……主様は二階で寝るときに窓の鍵はかけないんだ。

 

中にそっと入ると見つけた………。

 

 

 

 

「主様…」

 

 

 

 

スヤスヤ眠っているのは僕の………僕の………主様。

 

「えへへ………ニャ…」

 

枕元に座り込むと自然と涙が出た。

 

やっと会えた…見つけた……主様…。

 

幸せ……主様………。

 

僕は気がついたら主様にの垂れかかっていた。

 

「主様のにおいニャ………主…さま…」

 

やっと…やっと………あるじ………さま………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『にゃ~、にゃ~』

 

『なんだ? 撫でて欲しいのか?』

 

『にゃ』

 

『ほらよしよし可愛いな、眉間が好きなんだよな』

 

『ごろごろ…』

 

『うん?なんか汚れてるな…風呂入るか?』

 

『にぃ!? フシャー!!』

 

『ははは、無駄な抵抗だな! もう手遅れなのだよ!』

 

『にゃ~…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつものように目が醒めた。

 

いつもと違うところと言えば懐かしい夢を見たことぐらいか。

 

枕元のケータイを確認するとまだ5時のようで外はまだ暗い。

 

今は12月24日のクリスマスイブだ。

 

ピトーか…アイツを拾ったのもこの日だったな。

 

ミケだのタマだのしか名前が浮かばなかったので友達に聞いたら、猫って言ったらピトーだろ! と、漫画片手に豪語されたのでなんと無く、その名前にしたんだよな。

 

俺は不慮の事故で、謎の神により半ば強制的に何かの世界に転生して以来、"何でも屋"としてそれなりに活動している。

 

そして、前世と同じジャポンになぜかあった、前世と同じ住居に住んでいる。

 

前世と違うところは今の俺には家族が居ないことだ。

 

無駄に広いなんちゃって武家屋敷に1人でいるのがなんとなく寂しいな………。

 

………何で俺はこんなこと長々と考えているんだろうな?

 

そろそろ日課のオンラインプレーヤー狩りを始めないとな。

 

前世はデモンズソウルの黒ファン廃だったからなー…この世界になぜデモンズソウルが無いんだ…あれほどPKを楽しめるゲームはそうないのに…ダークソウルも闇霊生活していたが、結局デモンズソウルに戻ったな、PKするならデモンズだよなぁ。

 

話は変わるが、生まれてからずっと気になっているこの"身体を覆うもやもやしたモノ"はなんだろうか?

 

なんか纏ったり、消したり、文字作ったり、モノに纏わせたり、身体に集めたり出来るんだが?

 

他の人に聞いても、何言ってんだコイツ的な目で見られるから聞けないし……。

 

「ん?」

 

身体を起こそうとしたら動かなかった。

 

「んん?」

 

頭だけ動かしてよく見ると、俺の上半身に誰かが乗っていた。

 

「金髪?」

 

薄暗くて見辛いが、金髪で身体の細さから考えて女性が乗っているようだ。

 

強盗…なら寝ないだろ。ここ2階だし。

 

「起きてくれ」

 

俺は彼女の頭を触った。

 

「あれ?」

 

おかしいな…人からするはずのない感触がする………なんか……生えてる? と言うよりこれは………、

 

 

 

 

 

猫耳?

 

 

 

 

 

「にゃ……うん……主様…」

 

ピクッと震えると彼女は俺から身体を起こした。

 

弱い外の灯りに照らされて彼女の顔が見れた。

 

金髪で青い目をした綺麗な人だ。淡い光に照らされた彼女はまるで芸術品のようで思わず見惚れていた。

 

「あ?」

 

「にゃ?」

 

彼女と、目があった。瞬間――

 

「あ、あるじ……様………」

 

ぽろぽろと泣き出した。

 

「え?ちょ…」

 

え……どうすりゃいいんだ俺は!?

 

「主様ーー!!」

 

「うぉ!?」

 

そのまま彼女は飛び付いてきて俺に抱きついた。

 

腰に手を回し全身で抱きつかれていた。

 

「えへへ…主様…主様ぁ………」

 

よく見ると彼女には猫耳だけでなく尻尾も生えていた。上下に滑らかに揺れている。

 

明らかに取って付けたようなモノではなく生物(なまもの)だった。

 

ソレを見てふと……気がついたら呟いていた。

 

何故そう言ったのかは俺もよく解らない、もし理由があるとすれば彼女の雰囲気が余りにもよく似ていたからだろう。

 

俺の……家族に。

 

「ピトー…?」

 

そう言うと彼女は俺の胸に埋めていた顔を上げて笑顔になった。

 

「そうですニャ…主様!」

 

そう言うとまた顔を埋めた。

 

「にゃふふふ…ふふ………主様のにおいですニャ…」

 

「……………………………はっ!マジか!?」

 

え? なにコレ? ちょっ…マジでピトー? 家の猫? 人(?)になって帰ってきたの?

 

俺が困惑していた時、ピトーは俺の腰に回されている手の力を強め持ち上げると今度はピトーの胸に俺の頭を押し付けた。

 

「主様ぁ~!!! あるじさまぁ!」

 

「むぎっ…!?」

 

あ、柔らかい…ピトー巨乳さんだったのか………………………………………マズイ………息が出来ない…不意討ちのせいで深呼吸も出来ずに捕まったし。

 

ヤバいヤバい、いつの間にか背中に手が回されてるせいで抜けたくてもとても抜けられない…ってか力強!? 全く動か…な………くふっ…。

 

 

 

 

 

 

俺は薄れ行く意識のなか、とりあえず家に無事(?)に家族が戻ってきた事を感謝した。

 

後で気付いたことだが、再開した日は、ただの猫だったピトーを拾った日と同じ日だった。

 

 

 

 



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猫と俺の縁側

読む際の注意、この娘は身体はネフェルピトーでも中身はピトーちゃんです。


 

 

「にゃー………」

 

目を醒まして最初に見たのは申しなけなさそうな顔で小さく鳴くピトーだった。

 

俺は寝かされているようだ。頭に何やら暖かい感触を感じた。

 

「あ、主様…ごめんなさいですニャ…」

 

ピトーはペコリと頭を下げた。俺は下から見上げてソレを見ていた。

 

あ、そうか…俺胸で死にかけて………ん?この体勢は…まさか……伝説の膝枕というやつですか?

 

ヤバい………膝暖かい…あっ…涙が……。

 

「あ、主様…怒ってますかニャ…?」

 

膝の感触に感動しているとピトーが若干涙目になっていた。多分、後ろの尻尾も萎れているだろう。

 

物凄く名残惜しが、身体を起こしてピトーと同じ正座になった。

 

「いや、全然怒ってないよ?それよりピトー」

 

「そうですか!良かった………なんですかニャ?」

 

ピトーは両手を胸で合わせながらパアッっと笑顔になり、尻尾も連動して滑らかに揺れていた。

 

なにコレ?めっちゃ可愛いんだけど?………いや、違う。違わないけど違う!

 

俺はピトーの両肩に手を置いた。

 

「俺が見ない間にお前に一体何があったんだ?」

 

「ボクですかニャ? そうですニャ~…」

 

ピトーはゆっくりと口を開いた。

 

 

 

暫くピトーの話を聞いた。

 

話を聞く限りピトーは俺が死んだことが解らず、死ぬまでずっと俺の事を待っていたそうだ。

 

それからあの神様にこの姿にして貰い、念とやらの修行と、人としての生活できるように修行してからこの世界に来て、真っ先に俺のところに来たらしい。

 

ピトー……家猫だったのによく家に来れたな……いや、それはひとまず置いておこう。

 

「ピトー…ゴメンな…」

 

「にゃ!? にゃ~…」

 

俺はピトーを抱き締めた。

 

「ゴメンな…ずっと独りにしてな…」

 

「にゃ…」

 

「もう遠くにいかないからな」

 

「当たり前です…にゃ…」

 

「もうずっと一緒だからな」

 

「………………う……うわぁぁぁん!!!」

 

ピトーはまた泣いた。今度は声を上げて。

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「はいですニャ!」

 

ピトーはなき張らした笑顔で答えた。

 

再び離れ向き合っていた。どうしてもピトーに聞かねばならぬ事があるのだ。

 

「ところでピトー」

 

「なんですかニャ?」

 

「念ってなに?」

 

「え?………主様本気で聞いてるんですかニャ?」

 

本気もなにもマジですよ、はい。

 

そう言えばピトーの回りも凄くモヤモヤしてるな、うん。

 

「主様しっかり纏も練が出来てるじゃないですかニャ」

 

「レン?なにそれボカロ?」

「………………」

 

「………………」

 

間とピトーのジト目が痛かった。そんな目で見るなよ…本当に知らないんだよ。

 

「主様……念能力者あるいは四体行もとい纏・絶・練・発なんかに聞き覚えはありますかニャ?」

 

「念能力者?超能力か何かの類いか?纏・絶・練・発ねぇ…知らんなぁ…」

 

「あ、主様ひょっとして本当に何も知らない…? 知らないでそんな(オーラ)してるのですかニャ?」

 

オーラってやんやねん。

 

ん?オーラ?ニュアンスから言うとひょっとして…モヤモヤか?

 

「なんだか知らんがこのモヤモヤの事か?」

 

自分のモヤモヤを指差して言った。

 

「も、モヤモヤですかニャ…」

 

何かピトーに呆れられた気がする。何でやねん。

「………それなら…主様…修行ですニャー!」

 

ど、どうしたピトー?

 

何かピトーが叫んだ。

 

「早速始めるのニャ!」

 

あ、ちょ…襟掴んで何処へ?庭?修行するの?ちょ…うわなにするやめ

 

 

 

 

この後、俺が修行と言う名の地獄を体験するのと元飼い猫に負ける自分に号泣するのは遠くない未来である。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

そう遠くない未来が訪れてから約3ヶ月。

 

時たま仕事の依頼をこなしながらピトーによるスパルタ軍も真っ青なピトトレ(ピトー式超地獄級念能力強化サンドバッグトレーニング)を繰り返していた。

 

三途の川の船頭の死神と友達になったぐらい死にかけたけどな。

 

小町ちゃんって言うんだって、何でも距離を操る程度の能力を持ってるらしい。大した念能力者もいたもんだ。えーき…だったか? 多分。とかいう名前の閻魔様の説教が多くて長いとか愚痴ってた。

 

大体、ピトーの………ペプシコーラ? は強すぎだろ…そもそも俺の念能力じゃピトーと分が悪過ぎる。

 

それはさておき今は4月。

 

満開とはいかないが庭の桜が綺麗に咲いていた。

 

最近植えた全くジャポンと関係無い、ヒマラヤスギとフェニックスも中々良い空気を醸し出している。

 

なんとも風情があるではないか、なむなむ。

 

湯呑みで紅茶を啜りながらそんなことを考えていると、ピトーが後ろから飛び付いてきた。

 

「主様ぁー!」

 

「ギャン!」

 

湯呑みは手からスッぽぬけ庭にぶっ飛び中身をぶちまけた。しかし、湯呑み自体は無意識に周で強化していたから割れなかった。

 

「貴公……死に急ぐこともあるまいに…」

 

「主様なにいってるんですかニャ?」

 

ピトーは体勢的に、座布団に正座している俺に後ろから俺に掴まり、両肩から手を俺の胸の前で交差させているようだ。

 

おのれけしからん乳をしおって…じゃない俺のセリフや、突然すぎて茶が飛んだわ。

 

「ダーイスンスーン。ピトー、今のは確実に攻撃判定だ」

 

暇なやつはユルト弾幕と検索しよう!

 

「ニャ? なんだかわかりませんがわかりましたニャ」

 

うん、それでよし。解ったら逆に怖いわ。

 

しかし、ピトーよ。そのたわわに実ったけしからん双丘のトップが背中に当たっているぞ。

 

まさか、ノーブラか…なんと俺得な…。

 

「えへへ、うにゃにゃにゃ…主様ぁ~」

 

ピトーが俺の膝の上に回り、抱きつきながら体を丸めて寝転がった。

 

俺がピトーに膝枕する形である。

 

「仕方ないなぁ」

 

既にピトーは目を細め、寝る体勢に入ってしまったので暫くこうしていることにしよう。

 

「しかし…」

 

俺は本当に無駄に広い庭を見詰めた。

 

春の訪れは非常に魅力的だがやはり雑草は永遠の敵だ。

 

木の枝斬りも必要だしな。

 

………今日やってしまおうか。

 

「よし、やるか…」

 

俺はちょっと練をしてから発を使った。

 

「"先生お願いします!"」

 

そう叫ぶと、庭に30体の念獣が出現した。

 

それは成人男性程の大きさで、全身を黒いフルプレートで覆われた騎士だった。

 

目と口の穴からは青色の炎のようなオーラが溢れるのが見てとれる。

 

そう、これは青目先生である。

 

デモンズソウル的には初心者に立ちはだかる最初の難関、ナメてかかると痛い目を見るデモンズソウルを教えてくれる先生だ。特に1ー2ではステージ条件の悪さから弩兵と共に初心者を苦しめるぞ。

 

更にもう1体念獣を出した。

 

今度の念獣の見た目は青目先生と瓜二つだが目と口の穴から赤いオーラが溢れている念獣だった。

 

デモンズソウルのトラウマその1。みんな大好き、赤目先生である。

 

1ー1から出てくる敵なのに一撃で瀕死に成る程の威力の攻撃をしてくる上に防御力と体力も青目先生より遥かに高い先生だ。

 

デモンズソウルの初見プレーヤーの大部分は先生の槍に掘られてお世話になっただろう。

 

てか、俺も掘られた1人だ。アー!

 

最初に赤目先生を見つけたら、とりあえず先生の胸を借りて突っ込んでみよう。きっと良い突っ込みが帰ってくるぞ。

 

青目先生30体+それを統括するように前に立っている赤目先生。

 

端から見ればとんでもない威圧感と対峙した時の絶望感だろう。

 

まぁ、それは装備しているモノが直剣と盾や、槍や大剣だったらの場合で……。

 

草刈り鎌と高枝斬り鋏でなければの話だが…。

 

赤目先生が青目先生に指示を手で飛ばすと、青目先生が庭に散り、赤目先生は近くの用具倉庫に向かった。

 

多分、ゴミ袋を取りに行ったんだな。

 

暫くすると赤目先生が戻って来て、大量のゴミ袋が入ったポリ袋を幾つか抱えながら青目先生に配りに行くのが見えた。

庭の手入れは暫くすれば終わると思うのでピトーに目を移した。

 

「…………もう食べれないにゃ~……」

 

なんて古典的な寝言を吐いているんだろうか、ピトー…恐ろしい娘…。

 

「…………握り寿司の大トロ…だけ…」

 

超ブルジョアな寝言だった…。

 

そんなピトーも可愛いので寝顔を写メってから起こさないように頭と顎をナデナデしているとスマホが震えた。

 

ちなみにスマホとは、うちで造っている全世界秘境まで完全対応携帯、Super・Monster・Phoneの略である。見た目はもちろん、ケモタリである。

 

至福の一時を邪魔したケモタリスマホに殺意が沸いたがとりあえず懐から出そうとした。

 

が、全力でストラップが内ポケットにハマっているようで中々出ない。

 

なんとかケモタリを引き抜くと、続けてナメクジ玉ストラップが現れた。

 

ナメクジ玉ストラップ

現在特許申請中のうちの商品だ。リアルなナメクジのストラップが、真ん中の剣を中心に重なり合って玉になっているという斬新なストラップだ。更に一匹一匹が簡単に外れ、付けるときも剣に向かって直ぐに張り付く優れものだ。念で強化しているので手以外で剥がすことはなかなかできないので紛失の心配もないのだ。それに紛失しても朝になったら勝手に帰ってきてる優れものである。

 

税込9980ジェニー。手作りなので買いたい人は朝早く来てね。

 

ちなみにケモタリは造るのに労力が掛かるから200000ジェニーだ。

 

べ、別にたまたま20万になっただけで獣のデモンズソウル的な自己満足じゃないんだからね! え? 材料費? 1万かからな…もちろん20万だ!

 

ケモタリを買うとおまけにナメクジ玉ストラップもついてくるゾミ☆

 

ケモタリの持ち手の画面を見るとうちのお得意様だった。

 

「はい、なんでも屋"猫と悪魔 (キャト&デーモン)"です。え、店名が違うと? ああ、家族が増えたので改名したんです。ええ、そうです。ところで要件の方はいつも通りですか? そうですか、解りました。では、お待ちしております」

 

電話は向こうから切れた。

 

とりあえず内ポケットにストラップからスマホを押し込んだ。

 

このケモタリもナメクジ玉もなぜか造ると直ぐに売れるんだよな、なぜだろう? 両方ともネタで置いといた商品なのに…。

 

それはそれとして仕事か……。

 

「まぁ、まだ来ないだろ」

 

それまでは時々エロい声を小さく漏らすピトーをナデナデしながら先生方の庭の手入れを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

ついに…ついに…ついにこの時期が来てしまったの…。

 

そろそろかなと思ってたけど余りに突然だった…。

 

僕にとっては、この身体になってからも年に1度通らなければならない道であり、ある意味最大の地獄であり、ある意味最大の天国でもある時期なの…。

 

いつもは師匠と2人だったからなんてこと無かったけど主様と2人っきりはマズイ…。

 

だって僕は主様の事が好き…とっても好き…大好き…。

 

もちろん、愛しているほうで…にゃ。

 

だから…多分、僕。今、主様を目の前にしたら………。

 

 

性的に襲っちゃう…かも…。

 

 

仕方ないにゃ! 発情期なんだもの!

 

僕は人と同じく年中子作り出来るけど、やっぱり猫なの! 発情期しちゃうの! 主様との子供欲しいの!

 

うぅぅ…1~2週間も主様と会えないなんて地獄…。でもこんな節だらな姿見せたくない…。

 

それに猫と違って人が増えることは色々と大変なの…。

 

だから、発情のことは主様には秘密だ。

 

あぁ…でも…主様にシてもらえたら…気持ちよそう…。

 

はっ! ダメだにゃ! そんなこと考え始めたらまた…つぅぅ!?

 

はぁ…はぁ…主様……僕がんばる……でも…。

 

 

切ないにゃぁ………。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

あれから数日後の夜、なんかピトーの様子がおかしい。

 

部屋に朝からずっと籠って出てこないのだがどうしたものか…。

 

余りにも部屋から出ないので三三七拍子のリズムでドアをノックしてたら"主様鬼畜ですニャー!!!"と、めっちゃ怒られてしまった…解せぬ…。

 

少なくとも何か食べねばならんだろう。

 

と、言うわけでピトーの部屋のドアを今度は紳士的にデモンズソウル1ー2の塔の騎士のBGMリズムでノックした。

 

「おっおお、おっお。ピト~。飯ぐらい食べろ」

 

『あ、主さまぁぁ!? 大丈夫ですニャ! お腹空いてないです…にゃぁ…』

 

ドア越しにいつもより2割増しでピトーがエロい声で答えた気がする。

 

「いい加減開けるわ…ん? んん?」

 

ドアに力を入れた。が、周で無茶苦茶に強化されているようで全く開かない。

 

よく見ると壁にまで周が掛かっていた。

 

ピトー…何故に部屋ごと周で強化した?

 

『入っちゃダメですニャ! 最悪、人生が決まっちゃいますニャ!』

 

「なにそれこわい」

 

えぇ…俺が部屋に入ると人生決まるの? 逆に興味出てきたんですけど?

 

ふっふっふっ……俺は鶴の恩返しなら言いつけを5秒で破り、金の斧と銀の斧なら泉の精霊をぬっ殺して財宝を奪い取り、黒ファンならストーム・ルーラーと酸の雲は必ずお供で、闇霊なら酸の噴射でスロットを埋める人間だぜぇ? それぐらいで自重なぞせんわ。(※要するに"外道")

 

「"先生お願いします!"」

 

俺が叫ぶと目の前に3mほどあり、顔が嘴みたいな見た目の亜人の念獣が3体現れた。

 

みんなのトラウマ巨人腐敗人先生である。腐れ谷2ダメゼッタイ。

 

巨人腐敗人先生たちは扉に手を掛けると全力で引いた。その馬鹿力は想像を絶する。

 

『主様ぁ!? だ、ダメですニャ! そんなには持たな…あ…』

 

扉は他方向からの度重なる無理のある力により粉々に砕けた。

 

俺はそれを好機と巨人腐敗人先生を消して部屋に入った。

 

ピトーの世界に侵入しました。

 

そこにいたのは…。

 

生まれたままの姿で息をあらげながら布団に寝っ転がり、潤んだ瞳でこちらを見つめるピトーだった。

 

………これはかつてない強敵だ…。

 

いや、待て。いい加減少し冷静になれ、静まれ静まれ俺。

 

普通に考えるんだ。うん。

 

ピトーは綺麗な身体してるなぁとか、胸大きいなぁとか、…生えてないなぁとかはこの際下半身に押し込めろ。

 

「まさかピトー…発情期なのか?」

 

「にゃぁ………」

 

ピトーは悲しげに声を上げると俺を見ないように布団にうつ伏せになった。

 

あ、マイ・ヴィーナスが…ってそれどころではない。

 

少しネコの簡易診断と当て嵌めてみよう。

 

その1、甲高い声で鳴き続ける。

 

いつもですね。

 

その2、体をこすりつけ、普段より甘えるようになる

 

これもいつもだ。

 

その3、排尿回数が増える。

 

いや、知らんがな。

 

その4、食欲がなくなる。

 

無くなってるな。

 

その5、シッポの付け根を触るとお尻を高くあげる。

 

………………。

 

「ていっ」

 

「にゃぁぁぁ!?」

 

ピトーはびくんびくんと跳ねるとお尻と尻尾を上げた。

 

ふむ…多分ビンゴだがまだ調べるか…。

 

その6、【自主規制】をなめる。

 

いや…その…流石にピトーちゃんはしなくなったようですよはい。

 

その7、床に転がるようになる。

 

「あ、あるじさまぁぁ…」

 

ピトーは尻尾を触ったせいか既に布団の上にどエラい、いや、どエロい体勢でいる。

 

が、ピトーが顔を覆って少し泣き出してしまった。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…こんなボクでごめんなさい…」

 

………なんかこのノリで来た俺が悪魔みたいじゃないか、てっきり1月早い5月病かと思ったんだけどなぁ…よし。

 

「よいしょっと」

ピトーの隣に寝そべり、ピトーをぎゅっと抱き締めた。

 

「にゃ!? な、なにするんですか! だ、ダメですニャ! そんなにされたら…ボク…」

可愛いなぁ、ピトーは本当に。

 

見た目もさることながら、なんだかんだで第一に俺のことを考えてくれてるし、今だってこんなに辛そうなのにな。

 

「可愛いなぁ」

 

俺はピトーと向き合うようにピトーを動かした。

 

「主様ぁ、ダメです…ダメです…」

 

人生が決まっちゃいますか…成る程ねぇ。

 

「ピトーとの子なら、俺だって大歓迎だよ」

 

「え…?」

 

「あのなぁ…俺だってお前のこと愛してるんだぞ?」

 

ずっと待ってくれてたんだぞ? 人になってまで来てくれたんだぞ? 今も一緒にいてくれるんだぞ?

 

そんな良い娘を好きにならないわけないじゃないか。

 

「で、でも……」

 

「ああもう、焦れったい」

 

俺はピトーを布団に押し付けてのし掛かった。

 

「主様…本当に良いいんですか? ボクで…」

 

「他に誰かいるのか?」

 

「もっといい人ならいっぱいいると思いますニャ…」

 

「俺にはお前だけで十分だよ」

 

そう言うとピトーは真っ赤になって俯いた。ふるふると震えながらも嬉しがっていることが尻尾でわかった。

 

「主様…その…」

 

「なんだ?」

 

ピトーは言うのを何度も躊躇いながら最後に呟いた。

 

「幸せに…してください…にゃ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「にゃ~………」

 

約1ヶ月後、縁側で簡易妊娠検査キットを持ってしょぼんとしているピトーがいた。

 

「まぁ、望んでも授からない人がいるんだからそうそう授からないだろ。気を落とすなって」

 

「にゃ…」

 

ピトーは完全に耳が垂れていた。可愛い…これはこれで可愛いなぁ。

 

「それに、今日も頑張ればいいだろ?」

 

「えへへ…」

 

ピトーは隣に座る俺に抱きついてきた。

 

相変わらず、いい奥さんだよ。ピトーは。

 

 

 

 




デモンズソウル捕捉説明

青目先生
初心者に優しい親切設計の敵。

赤目先生
初心者に厳しい心折設計の敵。

ケモタリ
獣のタリスマンの略。恐らくデモンズ最強の触媒、これ1つで魔法と奇跡の両方が使えるようになり、威力も最凶の杖を抜けばトップ。更に実用性の非常に高いバグもある素敵武器。

ナメクジ玉
谷5ー2に吊るされてるナメクジの玉。叩くと落ちてロマン武器をドロップする。

塔の騎士
1ー2のボス。通称"豆腐の騎士"。初見ではその巨大さとかっこよさから、対峙したとき積んだと思うがパターンが解れば大したことなく、身体の防御力が無茶苦茶低い最弱クラスのボス。しかしそのBGMは神BGMの一角でありデモンズプレーヤーから愛されている。

黒ファン
黒ファントムの略。デモンズではシステムとしてPKが存在する。

先生お願いします!
黒ファンをしていると自分もMOB扱いになり、MOBが味方になるため、中ボスクラスの強いMOBに侵入したプレーヤーとの戦闘を押し付けた時や、回復したくて盾にするために逃げ込んだ時に言いたくなる一言。デモンズは周回する毎に敵が強くなるため、周回プレーヤーの世界に侵入した場合、プレーヤーを殺してくれることもよくあり、バカに出来ないためにあえて先生と呼ぶ。MOBと一緒にプレーヤーを殺害したときの達成感は異常。

ストーム・ルーラー
外道を地で行く黒ファンの必需品。武器としての性能は大したことないが、全ての攻撃にぶっ飛ばし効果があるため主に相手の落下死を狙うか、酸の嵐との併用に用いられる剣。

酸の雲
外道を地で行く黒ファンの必需品。まさかの相手の装備耐久度にダメージを与える魔法。耐久を失った装備は性能が二分の一になる他、直すのに凄まじい修理費が掛かる二重苦。多分、黒ファン嫌いの多くはコレのせい。作者などの黒ファンは酸の雲を張り、ルーラーでそこに押し入れる戦法を主体としている。

谷5ー2と巨大腐敗先生
谷5ー2は地面の全面が毒沼で、常時毒状態になる上に走りが制限され、ローリングすら出来なくなる最悪のエリア。そんなエリアで出てくる単純に全能力が通常MOB最強の巨大腐敗先生は鬼を通り越して絶望。基本2体相手にしてはならない。



ダークソウル捕捉

闇霊
デモンズソウルで言う黒ファンだが、回復が簡単に出来ないので黒ファン勢がデモンズに戻る元凶。どうも作者的にはその回復制度がチートを使う原因の一部に思えて仕方ない。多分、駄糞と呼ばれる原因。

酸の噴射
デモンズで言う酸の雲だが、1スロットで2回しか使えないので非常にイマイチ。間違えなく黒ファン勢を落胆させた。というか作者もその1人。だが、作者は酸の噴射で装備を破壊してやりたいがためにプレーヤースキルを磨いたキチガイである。





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猫と俺の幸せ

 

 

ピトーとにゃんにゃんし始めてから1年ほど経ち、自宅の縁側で座布団に正座して湯飲みで紅茶を飲みながら、外の雪景色を見てくつろいでいた。

 

12月の一足早い雪だ。なんとも風情があるではないか、なむなむ。

 

「あー……(ピトトレが無ければ)平和だ…」

 

「主様ー!これに行くのですニャー!」

 

ピトーが襖を勢い良く開けて出てきた。

 

突然だが、家の縁側の廊下は非常に長いので当然、襖のレールも非常に長い、よって大量の襖が一直線に2本のレールに並んでいるのだ。

 

つまり何故かいつもより興奮して力加減を忘れているピトーが勢い良く開たらどうなるかと言うと。

 

襖は凄まじいスピードで片側全てのレールの襖を押し出し、最後に縁側の襖を嵌め込む場所から大量の襖が押し出され廊下に散乱した。

 

誰が片付けんだよ…………俺の念獣か。

 

俺は心のなかで溜め息をつくが、それを顔に出さずピトーを見つめた。

 

ピトーは正座している俺に抱きついて俺の胸に顔を半分ほど埋めてきた。

 

「ニャ~…暖かいですニャ~…」

 

ピトー、炬燵もあるぞ?

 

それは兎も角、ピトーの持っているプラカードのようなハガキ大のものを眺めた。

 

ピトトレ後に姿が見えないと思ったらソレ取りに行ってたのか。

 

「あ、そうでしたニャ。ハンター試験を受けるのですニャー!!!」

 

ピトーは思い出したように少し離れるとソレを掲げた。

 

ソレはハンター試験の受験票だった。第287回と書かれている。

 

「…ハンター試験か、もうそんな時期か…」

 

ハンター試験ねぇ…確か試験会場に辿り着くまでの倍率すら10000倍だろ?

 

一体全体本試験にはどんなピトー以上の超化け物念能力者がゴロゴロしてるんだか……想像しただけで行く気が失せる。

 

まあ、ライセンスは非常に魅力なのだがな。

 

「却下だ」

 

「な、なんでですかニャ…」

 

「受かんないだろそんな試験」

 

「そんなことないですニャ、ボク達が合格しなかったらハンターなんて今頃10人もいないのですニャ~…にゃふふ暖かいですニャ~……」

 

ピトーは俺の膝の上に体を丸めて乗るとニマニマしながらぬくぬくしていた。

 

おい、ハンター試験はどうした。そして萌え殺す気か。

 

「行くニャ~…そうしないとちゃんとした戸籍が持てないですニャ…」

 

ピトーは顔を赤らめて、もじもじしながら俺を見上げた。

 

 

 

 

「結婚…出来ない…です…」

 

 

 

 

「よし、行こう。今すぐ行こう。さっさと行こう」

 

ハンター試験だかなんだか知らんが、凄まじくやる気が沸いてきた。

 

最悪、先生たちと騎士を使えばなんとかなるだろ。いや、する。絶対する! なにがあろうとしてやんよ!

 

「さて、ピトー」

 

「ニャ~?」

 

俺はピトーの背中と膝の裏に手を入れて起こし、立ち上がった。

 

所謂、お姫様抱っこである。

 

「今日も…抱いていいか?」

 

「にゃー……優しくシて…下さい…」

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そんなこんなで試験日当日。

 

俺とピトーは本試験会場にいた。

 

「10000倍ねぇ…」

 

ひょっとして無能力者も含めて10000倍だったのだろうか?

 

それならまぁ、解らんでもない程度に簡単だったのだが…。

 

そして、早く着き過ぎたな。

 

まだ、50人も人がいないし、ほぼ無能力者じゃん。

ちなみに俺が42番で、ピトーが43番である。

 

ふと、俺の腕にくっついているピトーを見た。

 

「にゃ?」

見上げてきた。よし、和んだ。

 

「ん?」

 

突然、細く粘着質な殺気を感じた。

 

剣を抜こうと思ったが止めて、片手を殺気の方向に向け、何かを指のスキマで全て掴んだ。

 

それは周で強化された4枚のトランプだった。

 

飛んできた方向を見るとピエロっぽいのがいた。

 

「やあ、ヒカゲ。それとピトー」

 

「なんだヒソカか」

 

ヒソカにトランプを返した。

 

説明しよう、ヒソカとは俺の数少ない友達の1人である。

 

トランプは挨拶のようなものだ。

 

酷いときは本格的に襲い掛かって来ることもある。まぁ、ヒソカもそこまで本気では無いようで途中でお互いに止めるが。

 

「君が来るなんて意外だねぇ」

 

「まぁ、有って損はしないからな」

 

「ニャ」

 

なぜかピトーがすりすりと、更に身体を寄せてきた。胸がふよふよと腕に当たっている。悶死するぞオラ。

 

「クククッ…ボクは邪魔みたいだね。じゃあ、また後で」

 

そう言ってヒソカは去っていった。

 

俺たちは壁に半分ぐらい埋まっているパイプに腰かけた。ピトーの幸せそうな顔を見ているだけでお腹一杯になりそうだが、ふと疑問が浮かんだ。

 

「なあ、ピトー」

 

俺は俺の膝に置いてあるピトーの手の上に手を置いた。

 

「なんですかニャ?」

 

ピトーは俺の手の上に手を置いてきた。

 

「む…」

 

またピトーの手の上に手を置いた。

 

「ニャ?」

 

ピトーはまたまた手を俺の手の上に置いてきた。

 

「……昔から疑問だったが、なんで上に手を乗せたがるんだ?」

 

「………………なんででしょうかニャ?」

 

ピトーは首を傾げてハテナを浮かべた。

 

自分も解らんのかい。

 

とりあえず可愛いかったのでピトーをなでなでしたり、手をお互いに重ね続けながら試験開始を待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、やっと試験が始まった。

 

ふむ、見渡すと俺とピトー、ヒソカを含め約400人中、4人は念能力者のようだ。

 

ひょっとして暗黙の了解的に念能力者はハンター試験を受けないんだろうか?

 

え…それなら無茶苦茶KYだったな…いや、しかしピトーのためだ。仕方あるまい。

 

それは兎も角、一次試験は試験官に着いて行くだけだそうだ。なんか緩いような…。

 

んー…3000kmぐらい走らせるのだろうか? それなら解らんでもない。

 

「よし、行くか」

 

「はいですニャ!」

 

ピトーは俺に続いてオートバイに跨がり、ネコミミ付きの特注ヘルメットをしっかり被り、俺の腰に手を回した。

 

ついて行くだけなら何でついて行っても問題あるまい。

 

ちなみにこれは念能力者用オートバイ、黒王号である。

 

名前とは裏腹にオーラを消費して走る非常にエコなオートバイなのだ。しかも音もほぼ無い。

 

しかし、オーラを消費しているので結局のところ走るのと同じぐらい疲れるらしい。俺は感じたこと無いが。

 

年間数台しか生産されないレア物だ。

 

回りの受験者が汚いだのセコいだの言っているが知ったことか。

 

暫く、低速(約20km)で走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

階段も平地のようにすいすい登って外に出た。

 

黒王号は地形による制限無く走れるのだ。ぶっちゃけ海の上も走れる。あ、空は飛べないぞ。

 

だが、どう見ても普通のオートバイが水上を走る光景はかなりシュールだ。

 

「……最悪ですニャ~…」

 

ピトーが不満の声を上げた。

 

バイクは止まっているので、ピトーを見ると尻尾が垂れていた。

 

ほう、詐欺師の塒か。

 

じっとりヌメヌメ、ピトーの嫌いな水気だらけだ。

 

ちなみに、ピトーは飲み物以外の水気が本当に嫌いだ。特に風呂が大っ嫌いだ。

 

仕方なく、いつも一緒に入っている。

 

いや、 俺得なんですけどね。

 

そんなことを考えているとサルが現れた。確か人に擬態する奴だとワイドショーで見たことあるぞ。

 

なんか俺が試験官的なこと言ってるな…念を覚えてから出直しておくんなまし。

 

だが、受験者の中には疑惑を抱く者もいるようだ。それにしてもあの死体役のサル試験官と顔似すぎだろ。確かに騙されるわ。

 

どうしたものかと考えているとヒソカが行動を起こした。

 

トランプを周で強化して双方に投げたのだ。

 

結果は一目瞭然だ。

 

猿は死に、試験官は難無く掴み取った。

 

流石ヒソカ…出来ないことを平気でやってのける。そこにシビれる憧れるぅ! かは、個人の自由だな。

 

ならばおれも少しは見習うか。

 

懐からスローイングナイフを取り出すと逃げ出した猿に投げた。

 

ナイフは猿の頭を貫通し、直線上のモノをつらぬきながら見えなくなった。

 

「撃ち漏らし」

 

「クククッ…ありがと」

 

ああ、サルは(スタッフ)が美味しく頂きました。

 

まだ走るそうなので再び黒王号をとろとろと走らせた。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

僕は主様に掴まりながら幸せを噛み締めていた。

 

一緒のお出かけ。

 

同じものを食べる食事。

 

抱き合って眠る。

 

こうやってバイクに乗るのもそうだ。

 

お風呂も主様と一緒なら…嫌…じゃな…い…と思うにゃ…。

 

それに主様は僕を人としてはもちろん、女としても見てくれるの。

 

いつも僕を女として抱いてくれる…最高の幸せ…。

 

それにこのハンター試験も主様は僕のワガママのために動いてくれた。

 

これだけ繋がっていられるなら別に結婚したりする必要も無いのに…。

 

それに…。

 

僕はお腹の下の方を撫でた。

 

主様にはまだ内緒だけど…この子のためにもね。

 

だから、僕の幸せのために。

 

そして、なにより主様のために。

 

 

邪魔なモノは消さなきゃね。

 

 

「主様」

 

「ん?」

 

「ちょっと行ってきますニャ。先にいってて下さい」

 

「おう」

 

僕はバイクから跳ね降りると、爪を立てて他の集団へ向かった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

ピトーより先に次の試験会場と思わしき施設の前に着いてしまった。

 

が、ピトーのことだし、直ぐに来るだろう。

 

「主様ぁー」

ほら来た。ネコミミ付きのメットを被りながらニコニコ笑顔のピトーが、走って俺の胸へ飛び込んできた。

 

猫まっしぐらである。

 

なんか非常にやり遂げた顔をしているが何かしてきたのだろうか?

 

暫く経ち、門の前に80人程の人が集まったところで門が開かれた。

 

えらく減ったな…走るだけでそんなに減るってどういうことだよ…みんな気が抜けすぎだろ。

 

しかし…。

 

俺はピトーからヘルメットを取りながらピトーを見た。

 

「ニィ!? 尻尾に血が…汚い…」

 

可愛いなぁ…本当に…最近それしか言ってないがもしピトーに離れられたら俺、どうにかなっちゃうな。

 

暫く染々と感傷に浸りながらピトーの耳を弄っていると突然、受験者が外へ一斉に走り出した。

 

え? あ…ヤヴェ…全く試験内容聞いてなかった…。

 

「主様? どうしたんですかニャ?」

 

「いや…試験内容ってなんだった?」

 

ふと、試験官を見た。

 

………あのデコボココンビ…まさか、オンスタじゃあるまいな?

 

「豚の丸焼きを持って行くことですニャ」

 

「豚の丸焼き…?」

 

なにその楽々試験…確かこの辺の豚はグレイトスタンプ? とか言う豚だけだったよな?

 

「僕が殺ってきますニャ。待っててください」

あ、ピトーがもう行ってしまった。

 

仕方ない…調理器具でも出しとくか。

 

台拭きを絞ったりしていると、妙にデカイ豚2頭を片手にバランスよく乗せたピトーが、帰ってきた。

 

「ただいまですニャー!」

 

「はやっ!?」

 

おのれピトー…まさか軽ロリ木目か…恐ろしい娘。

 

ピトーは俺に豚をパスすると手を綺麗に洗った。水も手だけは問題ないらしい。だが昔、試しにコーラで濡れた手でネコミミを触ろうとしたら飛び退いて"主様鬼畜ですニャー!"と言われた。解せぬ。

 

「この場で〆ますニャ」

 

それから、俺の目の前で爪で首を飛ばした。

 

相変わらずアルクェイドのような動きをしますねピトーさん。

 

ピトーは内蔵を取りだした。

 

「主様」

 

「ん?」

 

「念獣出してくださいニャ」

 

「なんの?」

 

「長い槍持ってる騎士ですニャ、2体欲しいですニャ」

 

「よし来た。"銀騎士"」

 

目の前に3m近く、更に全身が銀色の騎士が2体現れた。盾と長い槍を持ってる。

 

ピトーはその銀騎士の槍それぞれに…。

 

「ニャ」

 

豚肉を掛けた。

 

「おい」

 

「ここには血抜き用の機具が無いんですニャ」

 

そうか、なら仕方ないな。

 

暫くは血抜き待ちのためピトーの尻尾の毛並みを整えていた。強く触るとビクッとして可愛い。

 

暫く手で弄っていたらお返しと言わんばかりに腕に絡みついてきた。おのれあったかふわふわめ。

 

そして、血抜きが終わり豚をバラバラにすると皮を剥ぎ、大部分の骨を抜いた結果、幾つかの巨大な肉塊が乗っていた。

 

「………これ、どうなる?」

 

「とりあえず、ステーキで良いと思いますニャ」

 

丸焼き…いや、ステーキも見方によっては丸焼きか。というかタイヤみたいな肉だな。

 

ちなみにピトーは今、銀騎士の槍を楊枝のようにプスプスさして肉を柔らかくしている。

 

銀騎士はやることもなく棒立ちである…なんかスマン。

 

「主様、鉄板に油引いといて下さいニャ」

 

「おう」

 

ちなみにお分かりだと思うが、ピトーはレンジでチン女子ではなく、料理を作る派の女子である。

 

更に、料理の腕は贔屓目に見ても超一流の腕前だ。なんでも屋の仕事で、金だけは無駄にある俺が言うんだから間違いない。

 

「主様、焼くの手伝って下さいニャ」

 

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

な、なんとあのスモウ(ブラハさんです)……70頭分の豚を食いやがった。

 

伊達にスモウハンマーを片手で振り回す超筋力してないなぁ…。

 

染々とオーンスタイン(メンチさんです)の聞いていると次はスシを作れ、だそうだ。

 

それを聞いてピトーの尻尾は跳ね上がった。

 

「主様ぁ! 魚ですニャ!」

 

ピトーは大声で叫んだ。

 

うん、嬉しいのは解るからな、そんなに笑顔で尻尾振らんでもいいぞ。

 

「銀騎士、ゴー!」

 

銀騎士は走って川へ向かった。

 

ちなみに、無能力者に念獣は見えないから問題ないらしい。

 

会場の他の受験者も川へ向かい、ここの人は俺とピトーと試験官のオンスタだけになった。

 

「ニャ♪」

 

ピトーは鼻歌を歌いながらシャリの準備を始めた。

 

「ところでピトー」

 

「なんですかニャ?」

 

「魚はどんなのがいいんだ?」

 

現在、片方の銀騎士が次々と陸地に魚を引き上げて、もう片方が魚番をしているようだが無差別に獲ってるからな。

 

ちなみに、俺の円の範囲は特殊で自分の半径1000m程と、念獣の半径100mだ。なのでリアルタイムで念獣が何をしているか解る。

 

(ナマズ)ですニャ」

 

「ナマズ…?」

 

なんでそんなレアなものを? そもそもあれ食えんの?

 

「主様わかってないですニャ。ナマズは漁師の間でのスタミナ食なんですニャ、その味は鰻と比べても引きをとらないほど美味いですニャ。それに、そもそも泥臭い川魚は刺身にはあまり向かない上、こんなところの川魚なんてたかが知れてますニャ。それなら生食は諦めて、どこにでもそれなりにいるナマズの焼きスシが無難ですニャ。でも、別に川魚のスシが無理だとは言ってないですニャ。ただ、この湿原の川魚は清流の川魚と比べれば遠く及ばないだけですニャ~」

 

へぇ…相変わらずの魚への情熱ですねピトーさん…。

 

ちなみに現在、ピトーは最早俺の領分に無いなにかの調味料でタレ作りを終えて爪を研ぎ始めた。

 

ピトーは基本的に包丁などは使わない、全て爪でやっているのだ。

 

ふっ…まさに手料理ってか。

 

「主様……なんか凄く寒いこと考えなかったですかニャ?」

 

す、鋭い…なぜバレた…。

 

………ん?

 

銀騎士の円の中に誰か念能力者が入ったな…片方はヒソカだが、もう片方のトゲだらけは一体なんだ?

 

まさか……カークか? カークなのか? 人間性集めご苦労様です。

 

『やあ、ヒカゲの念獣かな?』

 

ヒソカの声が俺に聞こえた。

 

俺は橙の助言ろう石を銀騎士の目の前に具現化させ槍と持ちかえさせ、地面に字を書かせた。

 

 

"太陽万歳!"

 

 

『人違いじゃないみたいでよかったよ』

 

さらっと流されたな…まぁ、解るとは思っていないが。

 

"何か用か?"

 

『そう、スシがジャポンの料理だってことはもちろん知ってるんだけど、作るとなるとどうもね』

 

まぁ、家にヒソカが 来たときとかに出前取ったりするから知ってるわな。

 

"それっぽいのを作ればいいからとりあえずピトーの前に作ればいいだろ。酢飯その他の魚は俺が用意するからそれを持っていくか"

 

『ありがと、彼もいいかな?』

 

"後ろにいるカークか?"

 

『カーク? 彼の名前はイル…じゃなかったギタラクルだったね』

 

ギタラクルとやらがイルと言った瞬間にヒソカに針を向けていた。

 

"訳ありか何かは知らんが障害にならない限りは問題ないぞ"

 

『ありがと、じゃあボクたちも向かうね』

 

そう言って2人は去っていった。

 

こっちもナマズなどを捕ったので銀騎士を走らせて帰らせた。

 

約2分後、銀騎士が到着してピトーの料理が始まったので、俺は銀騎士たちとやることもなく突っ立て太陽を眺めていた。

 

無論、俺はグラサン着用で、ソラールさんの真似は出来ません。

 

暫く、太陽ェ…俺の太陽ェ…とか思いながら眺めているとヒソカとカー…ギタラクルが到着した。

 

「やあ」

 

「おう」

 

それを待ってたと言わんばかりに(実際待ってた)銀騎士が動き出した。

 

酢飯にさわる前に全力で手を洗ってから、銀騎士が酢飯を握って米粒のような見慣れた形にした。

 

全自動シャリ握り機×2である。

 

それに持ってきた魚に生食でいけそうなのをピトーに選んでもらい、3人で捌き、シャリに乗せてオーンスタイン(メンチさんです)に持って行った。

 

評価は"うーん…まあまあね。回転寿司なら許せるけどスシっていうのはそもそもry)"と長々々々と語られた。解せぬ。

 

なんとか3人は合格し、残りはピトー1人になったと思っているとハゲがなんか恐ろしいことを言ったのが聞こえた。

 

え………そんな大々的にスシのこと…いや、魚料理をバカにするの?

 

その瞬間、ズドンッ!と巨大で重圧な殺気に周囲が完全に包まれた。

 

やりやがった…あのハゲやりやがった……。

 

普通の料理人の前で言っても明らかにアウトな発言をよりにもよって…ピトーの前で魚料理の批判コメを言いやがった…。

 

ピトーは手を止めて、いつも社会に溶け込むために隠しているオーラを解禁した。

 

ヤバい…ピトーの背中に黒紫色のドクロ状のオーラが見えるぞ。

 

ピトーはゆっくりとハゲへ向かって振り向くと笑顔だが、全く笑ってない目をしながら言った。

 

 

「面白そうな話をしてるね?」

 

 

あ、お外(俺以外)モードのしゃべり方のピトーだ。なぜか俺にしかにゃあにゃあ言わないんだよな。

 

これがホントの猫かぶりか…プププ…。

 

お? ピトーが一瞬、俺に何か言ったぞ? どれどれ唇読みで…さ・む・い・で・す・にゃ…か……ぐふっ、なぜバレた…!? ピトー…恐ろしい娘…。

 

ピトーはゆっくりとオーラを撒き散らすと突如、ハゲの目の前へ一歩で移動した。

 

会場の俺を除いた全員、恐らく試験官すらピトーの生物的な恐ろしさに絶句していた。

 

俺? 相変わらずピトーは綺麗で可愛いなぁとか思ってるよ。というかオーラぐらい慣れてるし、ピトトレナメんな。

 

「ああ…イイ…」

 

訂正しよう。ヒソカは恍惚としながら楽しんでいた。

 

だが、この時のヒソカの下半身を決して見てはいけないぞ? ピトーのお婿さんとのお約束だ。

 

書く言う俺はガン見してしまってSAN値駄々下がりだけどな!

 

「知ってるかな? 鮨をまともに握れるのに10年の修業が必要といわれてるんだよ? それをお手軽料理……ね」

 

ピトーは溜め息をついてから爪を立てて、それなりに練で爪のオーラを増やし、黒紫色のオーラを纏った。

 

あ、これはアカン。何がアカンかってピトーの後ろにはオンスモ(試験官)がいるからだ。

 

俺が飛び出し、ピトーの真後ろに来たのと同時にピトーは爪を振りかぶった。

 

「キミ、とりあえず死んで?」

 

"ねこぱんち"

 

ピトーの念能力の1つが発動した。

 

名前は和やかな名前だが、実際にぬこに"ねこぱんち"を食らった事のある人ならその恐ろしさが解るだろう。あれはガチで危険な攻撃である。

 

しかもスーパーキャットピトーの念で超強化された"ねこぱんち"なんて最早、ギガスラッシュを越えてギガブレイクは確実である。

 

具体的にいえば"ねこぱんち"は、爪を振るった線上のあらゆる物体を両断した挙げ句、生物に当たるか外れた瞬間に自動的に爆発するという念能力だ。無論、爪本体にも攻撃判定があるぞ。

 

全く…どこの月光の大剣だ。原案出したの俺だけどね。てへぺろ。

 

とか、言っている場合ではなく、さっさと止めなければヤバい。主にピトーが欲しがっている綺麗な戸籍が。

 

しかし、どうする? 既にピトーは攻撃体勢に入っている。

 

ハゲとの隙間に入り込んで、ねこぱんちを逸らしたとしてあらぬ方向へ飛んでいったら、地上で人を捲き込みながら爆発して本末転倒だ。

 

それにピトーの攻撃をキャンセル出来る確率は五分五分といったところか…なにせ俺が後ろから前に割り込む形になるから微妙に間に合わない可能性もある。

 

むー…前からなら普通にどうにか出来たのだが…ならば、これが最も確実か!

 

俺はピトーとハゲとの間には入らずに、ピトーを後ろから抱き締めるように手を回した。

 

 

そして………、

 

 

胸を強く揉んだ。

 

 

「にゃぁ!?」

 

ピトーの形も大きさも良い胸が両手のひらで変えた。

 

結構乱暴に揉んだのでピトーはびくりと震え、振りかぶられた腕は風を斬り、ねこぱんちの紫色の斬撃波は空高く飛んでいった。

 

いやー、よく飛ぶなぁ………ん? 鳥か?

 

 

ズゴォォォォォォオォォォン!!!!!!

 

 

次の瞬間、空が波紋状の薄紫色の淡い閃光を放ちながら大爆発を起こした。

 

幸いかなり高い位置で爆発したため被害は無いようだ。

 

うん、流石ピトーだね。これじゃ月光の大剣じゃなくて、コジマ・キャノンだよ。

 

「主様! なんて嬉し…ひどいことするんですかニャ!」

 

お? 止めたハズなのにピトーがプンスカ怒っているようだ。

 

何か反論があるようだ。だが断る。

 

「うにゅ…!?」

 

ピトーの唇を唇で塞いだ。

 

さらに強引に舌を入れて暫くピトーの味を堪能した。途中からピトーも舌を絡めてきた。

 

「にゃぁ……」

 

舌を引き抜くとトロンとした顔をしたピトーがいた。

 

「ピトー、料理に戻ったらどうだ?」

 

「は、はいですニャ、主様…」

 

そう言ってピトーは何事も無かったように頬を染めて、鼻唄を歌いながらニギリズシを作りに戻った。

 

うん、満足してハゲなど忘れたようだ。

 

俺は他の受験生からの刺さり過ぎる視線に耐えかねてトイレへ走った。

 

チキンとかいうな。

 

 




デモンズソウル用語解説

スローイングナイフ
奴隷王ですらほぼ使わなかった廃産アイテム。ステマ? ステマです。


ダークソウル用語解説

あったかふあふあ
チュートリアルエリアにある大カラスの巣にあるあったかふあふあ交換のこと。卵を暖めるために色々なモノを欲しがる。しかし、いくらなんでも敵に投げ付けて猛毒状態にする糞団子を欲しがるのはどうなのだろうか? ついでに周回しなければ渡せないラスボの魂をラスボが持つ攻撃技と変えてくれたり、DLCのラスボの魂を超鬼畜魔法と変えてくれたりするあのカラスは一体何者なんだろうか?

月光の大剣
魔法使い御用達の大剣。厨武器の一角ではあるが攻撃に回数制限のある魔法使いには仕方のない気もする。元ネタはフロム・ソフトウェアのキングスフィール最強の剣、ムーンライトソード。ちなみにフロム作品には大体出ており、アーマード・コアには最強の威力のブレードのMOONLIGHT。前作のデモンズソウルには逆に信仰(アンバサ)戦士御用達の月光大剣といった具合である。

オンスタ
アノールロンドのボスの竜狩りオーンスタインと処刑人スモウの略。二体同時に襲い掛かって来るダークソウル最強格のボス。初見でコイツらとマップでたまに侵入して来る闇霊に苦戦し、コントローラーを投げ捨てる人の大半はここか病み村。

スモウハンマー
スモウの持つハンマー。必要筋力が最高の武器だが、これを持つぐらいなら他の武器の方が使われる一種のネタかコス装備ただし廃産ではない。しかし、威力的に300レベ帯でスズメスタブなら中々ガチ。

軽ロリ木目
ダークソウル最速の移動アンセンブ。正直、作者的に闇霊はコレ最低限じゃなきゃやっていけない。


銀騎士
アノールロンドにいる騎士。右手に銀騎士の剣か銀騎士の槍を持ち、左手に銀騎士の盾を持つ。銀騎士の剣を持つ銀騎士は高確率で竜狩りの弓という強制ノックバック弓を持っている。初見は地味に鬼畜だが、慣れると経験値(ソウル)の餌にされる可哀想な人たち。

カーク
トゲの騎士カークの略。病気持ちの妹属性人外娘の痛みを和らげるために人間性を集める紳士。

太陽万歳!&ソラール
Y←コレ


その他用語

アルクェイド
メルティ・ブラッド&月姫出身の型月世界のヒロイン。主人公が言っているのはコマンド入力が鬼畜なことで有名なメルティ・ブラッドのアルクェイドのこと。作者はカレー先輩が好き。

コジマ・キャノン
あんなものを浮かべて喜ぶか、変態どもが!
コジマは、まずい…。




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怒りネコ

「主様、あーん」

 

「あーん」

 

只今飛行船の中、個室でピトーが作ってくれた手料理をパクついている最中である。

 

相変わらず笑顔が可愛いなぁ。まあ、いつも口角は上がってるけどな。俺の前では目も笑っているのである。

 

それはそれとしてあの後、二次試験でピトーが作ったスシの味であの試験官に究極と言わせるほど素晴らしかったらしく普通に通過していた。

 

しかし、矢張と言うべきか他の受験者には苛めとしか思えない審査基準だったらしく結局合格者は俺、ピトー、ヒソカ、ギタラクルの4人となった。

 

俺も流石に苛めだろ。と、思っていた時、1人のレスラーみたいな男が美食ハンター風情が!とか言い出して試験官に突っ掛かったのだが、首を飛ばされて殺されていた。

 

うちのピトーに。

 

なんだろう…流石に俺もどうかと思ったよ。

 

料理人の前で失礼過ぎるだろ。本気で食と向き合っている人間は生涯を食に捧げているんだぞ?

 

賞金首ハンター? そんなろくな修行もせずに喧嘩だけ出来りゃ誰でもできるような凡庸なモノの方が格上とか妄言も大概にしろよ。

 

俺が賞金首ハンターになろうとすれば即座になれるだろうが、美食ハンターになろうとしても絶対に無理だ。

 

ピトーの顔は一度までだから案の定殺しに行ったが、止める気になれなかったよ。

 

その後、流石に二次試験で4人は鬼畜過ぎるということでハンター協会の会長直々のパワハラで別の試験内容に変わり、クモワシ(本体より卵が旨いことで有名)の卵を取りに行く試験となり約60名が通過した。

 

今、ピトーが作ってくれた料理は残りの豚肉とクモワシの卵の他人丼である。

 

「ニャ~…♪」

 

ピトーはスプーンで俺に食べさせただけなのにえらく上機嫌だった。

 

頬を染めて小さくくねくねしている。

 

お返しにピトーにもあーんしていると、持ってきたモノのことを思い出した。

 

「そうだピトー」

 

「ニャ?」

 

「じゃん」

 

俺が取り出したモノは……、

 

 

マタタビ"酒"だった。

 

 

「ニャんと…」

 

ピトーはそれを見ると虚ろな目になり、ゆらゆらと手を伸ばした。相変わらず最早麻薬である。そしていつも通り封を…、

 

「ッ!?………」

 

ぬ? ピトーは覚醒すると目を瞑り手を胸の前でぎゅっと握った。

 

そして目の端に涙を浮かべるとカッと目を見開いた。

 

「主様………鬼畜ですニャァァァ!!?」

 

「ええぇぇ……!?」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

そんなこんなで三次試験なのだが、生憎それどころではない。試験内容より遥かに優先せねばならんことがある。

 

「ふぅー………」

 

ピトーが頬を膨らませてツーンとしているのだ。尻尾の毛が全部逆立っている。

 

完全に拗ねちゃいましたね。相変わらず俺に抱き着いてるけど。

 

「ピトーごめんって」

 

「にゃ!」

 

ピトーはそっぽを向いた。

 

むうぅぅ……解せぬ。ピトーはずっとこの調子なのである。なぜだ…俺が何をしたんだ…。

 

嫌そうだったし、飛行船から投げ捨てようとしたら涙ながらに止められたし。

 

「知らなくていいんですニャ…」

 

心読まれた。ならなぜムスッとしてるんだよ。

 

ピトーは一瞬、止まってから何か考えるような素振りをした。

 

「………………なんでもないですニャ」

 

「えぇぇ…」

未だに女心というものは解らん…。

 

ピトーが少なくとも拗ね拗ねモードではなくなったので試験に取り組むとするか。

 

って………ん?

 

なんか減っていた。いや、この塔の上にいた受験者が明らかに減っていたのだ。既に10人ぐらいしかいないのだが…。

 

「主様、下ですニャ」

 

アメーバみたいな円を出しながらピトーが答えた。

 

「下?」

 

俺も円を広げてみると塔の中に受験者はいたようだ。

 

「ふむ…」

 

どうしたものかと考えながら一歩下がると床のブロックが傾いた。

 

「ぬ?」

 

イラッとしたので地面ごと蹴り砕き、ピトーと下に着地するとそこには扉が一枚と、猫目の少年と、黒髪の少年と、オッサンと、金髪の……男…いや、女か?…多分、がいた。

 

………黒髪の少年を見ているとなんだか奴に似ているような………くそ、腹立ってきた。

 

「………さま」

 

あの糞野郎…今度あったらピトーを叩き込んでやる…。

 

「主様!」

 

「お、おう?」

 

気が付いたら背伸びしたピトーの顔がドアップて見えた。…綺麗な顔してんなぁ、パッチリお目目とか睫毛とか。

 

「聞いてなかったんですかニャ?」

 

え? 何を………先に下にいた人たちも俺を見ているでらありませんか。

 

「………………面目ない」

 

「主様は相変わらず人の話を聞かないですニャ…」

 

いや、本当にスマン。そういう☆の元に生まれたの。

 

「絵文字なんて使ってもダメですニャ」

 

心の文字にさえ突っ込みだと……。

 

ピトーから試験の話を聞いた。5人で多数決を取り、進むそうだ。4人はもう決まっているので2人のうちどちらかがやればいいとな。まあ、試験は下までいけばいいだけだしな。

 

「どっちが着けますかニャ?」

 

「ふむ」

 

俺は何の躊躇もなくピトーの腕に装備した。

 

「ニャう?」

 

「頑張れピトー」

 

め、めんどくさいんじゃないぞ? 資格が欲しいのはピトーだからな。ピトーが中心に試験をしなければな。

 

「頑張りますニャ!」

 

「待ってくれ、今ピトーと言ったか?」

 

パツキンの男女がピトーに話し掛けてきた。

 

「そうだけど、何の用かな?」

 

「まさか…ピトー・ネイルか?」

 

ちなみにネイルとは俺の苗字である。

 

「そうだよ」

 

「なにっ!?」

 

パツキンとオッサンが反応した。特にオッサンの反応が凄い。

 

「やはりか…」

 

「天空闘技場251階闘士で、現バトルオリンピア優勝者のピトー・ネイルだと!!?」

 

「あー…」

 

そういえば去年あったな。高いところでお昼寝がしたいから飛び入り参加で優勝したのだ。なんというか…最後の方ピトー片手しか使ってなかったけどな。

 

ちなみに家は月一ぐらいで行く別荘になってるよ。

 

しかし、今までよくバレなかったな。やっぱり有名人がいてもまさかと思いそれが本物だとは思わないものか。…ネコミミに尻尾ついている美人なんて世界広しと言えどピトーだけな気がするが…。

 

「え?」

 

「なにそれ?」

 

少年×2は首を傾げた。きっとテレビもスポーツニュースも見ないんだろうな。うちは食事中によくテレビ見てるよ。あと映画とかな。

 

「そんなことより早くいこうか?」

 

目だけは一切笑わない笑みを張り付けたピトーが4人を急かした。笑みというか口角が上がってるだけだな。

 

うーん、人見知り中のピトーも可愛いなぁ。実はこれが人見知りだと誰が想像出来ようか。

 

地味にちょっとだけオーラ送ることも忘れていないようだ。

 

4人は生物的な悪寒から冷や汗を流している。止めてあげなさい可哀想だから。

 

ほら銀髪の少年が飛び退いたじゃないか。

 

とりあえず試験が始まったようです。

 

 

 

 

 

 

数十分程道を多数決で選んだり、扉を開けたりしていた。ちなみに鼻唄を歌いながら、行進するように歩くピトーを先頭に進んでいる。

 

「~♪」

 

しかし、なぜにカゲロウデイズ? まあ、猫を撫でたり、抱き抱えたりするからか。そろそろ歌い出しそうだ。

 

あ、前からセンのゴロゴロが…。

 

しかし、ピトーはゴロゴロを指で突き刺して粉砕した。

 

……さっきからこの調子である。なんというヌルゲー。

 

落ちてくる天井を小指で押し戻すのはどうかと思ったよ。いや、ゲーム的にな?

 

割るなら兎も角、砂クラスの粉々だしな。流石ピトーちゃんだ。爆砕点穴でも使えるんだろうか? いや、ピトーは人体にも使うから違うか。

 

「少しいいか?」

 

「ん?」

 

パツキンに話し掛けられた。おのれ男だが女だが解らん容姿をしおってけしからん。

 

「なんだ?」

 

しかし、コミュニケーションは大切ですね分かります。

 

「始めに私はクラピカだ。三次試験の間よろしく頼む」

 

「あー、自己紹介とかしてなかったな。俺はサウロン・ネイルだ。よろしくな」

 

「なら俺はレオリオだ。よろしく頼むぜ」

 

オッサンたちも話に入ってきた。

 

その頃、ピトーは多方向から来る矢を人差し指で発射口へ弾き返していた。

 

「俺はゴンだよ!」

 

そうか、ゴンか………ゴン?

 

「まさか、ゴン・フリークスとか言わないよな?」

 

「凄い、よくわかったね!」

 

………………………………………………ふっ…。

 

「ピトぉぉぉぉ!! そこのツンツン坊やを取り押さえろぉぉぉぉ!!」

 

「あまらんちゅですニャ」

 

え? なぜピノコネタ?

 

既にゴン君の後ろにいたピトーがゴンの手を拘束して組伏せた。

 

凄まじい速業により、他の連中は何が起こったか分からなかったようだがそんなの関係ねぇ。

 

俺はちょっと通路が歪むぐらいオーラを解放して膝を落とした。

 

「なあ、ゴン君?」

 

他の連中はアイツすら引くほどのオーラに当てられて動けないでいるようだ。まあ、10分は死なないだろうから何も問題ない。

 

「君のお父さんを知らないかい?」

 

最高の営業スマイルで言った。

 

「…ジ、ジンを知ってるの!?」

 

………え? 息子に名指しで呼ばれてるの? いや、知ってんのって…。

 

「なあ、ピトー」

 

「嘘はついてないと思いますニャ」

 

「そうかい…」

 

どうやらジンの居場所は知らないようだ…よく考えればあの糞野郎が真面目に親父とか、子育てなんぞするわけが無いな…。

 

俺がオーラを出すのを止めると、ピトーはゴン君を離した。

 

俺は服の汚れを払いながらゴン君を立たせた。

 

「スマンな。ジンに少しO☆HA☆NA☆SHIがあってな…」

 

主に物理的な。

 

「いいよ。それよりジンのこと教えてよ!」

 

「ふむ…そうだな」

 

今思えば念能力だったなぁ…の部分はかなり簿かして、昔ジンとよくつるんでしょっちゅうハメられた事を話ながら歩いていた。

 

例えば、大丈夫絶対捕まらねぇって! 共に国境警備隊に追い掛けられる。ちなみにガキだった頃の話。

 

わりぃ預かってくれ! と言われたモノがヤバい国がやってた貧者の薔薇の密造の証拠でそのヤバい国から追われることになったこと。

 

すまん!一生の頼みだ! 金貸してくれ! 総額1000億ジェニーほど返ってこず、奴の一生は何度あるんだ?

 

まあ、一番殺意が湧くのは別のことだがそれは置いておこう。

 

「ひでぇな…」

 

「最低だ…」

 

「うん…」

 

「バカじゃん」

 

「ニャ」

 

うん、キルア君殺す。それは、冗談だが。

 

ちなみに上からレオリオ君、クラピカく…いや、ちゃん?、ゴン君、キルア君、ピトーちゃんである。

 

「アイツとはガキの頃からの腐れ縁だからなぁ…」

 

「え? サウロンさん20歳ぐらいでしょ?」

 

「サウロンでいい。48だけど?」

 

ジンとは結構歳離れてたからなぁ………ん?

 

見ると5人が唖然とした顔で止まっていた。

 

え? なしてピトーまで?

 

『なにぃぃぃ!?(えぇぇぇ!?)』

 

いや、なぜそんなにビックリする? 実年齢だぞ?

 

「ニャん…だと…!?」

 

………最近ピトーの方向性が心配…。

 

「どう見ても20代前半のハズだ!? 寧ろレオリオの方が…」

 

「おい、クラピカどういう意味だコラ!?」

 

「47歳差ですにゃ~…」

 

ピトーまだ1歳だからな。この世界でだが。

 

しょげて耳が倒れているピトーも可愛い。撫でておこう。ナデナデ。

 

 

 

それからジンはゴン君と同じくらいの頃に島を出たと言っていたこと。

 

俺とジンは俺が28から共に旅をしていたこと。

 

初めて会ったときはまあ、色々あったこと。

 

共に笑い共に泣き世界を巡ったこと。

 

そしてそれぞれの道を見付けて笑いながら別れたこと。

 

そんな話をしながら下へと進んで行った。

 

友情話に関してはゴン君だけでなくキルア君の食い付きも非常によかった。

 

まあ、その後一悶着ありアイツを市中引き摺り回し(ジャポン地図測量の旅編)ぐらいしたいのだがそれは置いておこう。

 

「へー。ピトーさんは魔獣なんだ」

 

「そうだよ。ボクのことはピトーでいいよ」

 

それより、気づいたらゴン君とピトーが仲良くなってた。どこぞの育児放棄野郎のように生き物に好かれるのかねぇ。ああ、忌々しい忌々しい。忌々しいったら忌々しい。

 

いや、子には罪は無いぞ? 親の罪は親の罪だ。精算させる気満々だけどな。

 

そんなこんな談笑しているうちに開けたところに出た。

 

するとアナウンスが流れきた。

 

内容を説明するとスイッチを持っている5人と、囚人5人との個別対戦を先にして3勝すれば通れるそうだ。

 

ちなみにその回で他の人が手を出せばその回は反則負け。

 

そして1人目のハゲの囚人はデスマッチを所望らしい。

 

さて、5人の中でだれが行くのか。

 

「私が行こう」

 

クラピーが行った。男女がわからんのであだ名を作ってみたぞ。

 

え? 聞けば済む? バカ野郎。どっちだとしても失礼すぎる質問だろうが。

 

そしてクラピーとハゲ囚人のデスマッチが始まった。

 

クラピーは速さと二刀流の手数でハゲ囚人の攻撃をいなしている。………独特の剣術だな…ありゃまさか…いやな…。

 

「間違えなくクルタ二刀流ですニャ。主様」

 

「………………そうだな」

 

クルタ族か…その生き残りがここにいるとは驚きだ。

 

………それ以上に民族武術まで普通に知っているピトーはなんなんだろうな?

 

それは兎も角、最初は善戦していたが徐々にクラピーは苦戦し始めた。やはり筋肉系ハゲ囚人に殺傷力のない木刀では分が悪いな。

 

「潮時ですニャ」

 

「ああ」

 

その言葉の少し後にクラピーが膝を付き、ハゲ囚人は首に手を掛けようとして…。

 

後ろにいたピトーから腕を掴まれた。

 

クラピーとハゲ囚人は驚愕に目を見開いていた。相変わらず速いな。

 

「これで反則負け」

 

それだけ言うとピトーはジャンプして俺の隣に降り立った。

 

「なんで入ったんだよ!」

 

「よせ、レオリオ」

 

レオリオ君が怒鳴り込んできたが、クラピー本人に止められた。

 

「あのままだったら私は喉を潰されて、時間一杯まで拷問されていただろう」

 

だろうな。俺だってそうするし。

 

「むしろ感謝する。そしてすまなかった」

 

クラピーはピトーに頭を下げた。

 

「気にするニャ。別にキミのためにやったわけじゃないから」

 

ピトーはツンデレ発言をした。いや、多分本心で言ってるけどな。

 

続いて出て来たのは爆弾魔。

 

それにはゴン君が対戦をして、相手のロウソクの火を吹き消してKOした。

 

「次はボクが行くね?」

 

三回戦目はピトーが出るようだ。

 

出てきた囚人は………フランケンシュタインみたいな奴だった。

 

そのフランケンはまず19人コロコロした言った。

 

………コロコロした人数なんて覚えてないな。

 

そしてジャンプして地面に拳を突き立てて穴を開けた。

 

………ピトーがやったらこの搭全壊できんじゃね?

 

そして極めつけは八本脚の蜘蛛の刺青を見せ、自分は幻影旅団四天王の1人だそうだ。

 

………………四天王ってなんすか? ちょ…笑いが…。

 

ん? あ…マズイ、ピトーがぷるぷるしてる。

 

「………冥土の土産に教えてあげるよ」

 

ピトーは右手の人差し指をピンと立てた。

 

「その1、クモは団長含めて12人の少数集団だよ。四天王なんてあるわけないね」

 

さらに中指を立てた。

 

「その2、クモの刺青は脚が12本。ついでに1から12までの番号が入れてあるんだよ」

 

さらに薬指を立てた。

 

………………そういえばいつ渡そうか?

 

「その3」

 

ピトーは左手を離れた壁に向けて練をすると、鈍い音と共に波状に壁が潰れた。

 

俺以外のメンツはあまりの事態に呆然としていた。

 

そういえばさっきまでピトーは念使ってなかったな。

 

「旅団員クラスになればこれぐらい出来なきゃお話にならないよ」

 

ピトーはやれやれと呆れたように首を振った。

 

「最後に…」

 

ピトーは右手を広げてから握り拳を作り、再び開いた。

 

そこには赤黒い肉塊が乗っていた。

 

見る者が見ればわかるだろう。それは人の心臓だと。

 

 

「殺した数なんて一々覚えてないね」

 

 

その言葉に遅れてフランケンみたいな囚人が前のめりに崩れ落ちた。

 

囚人の周りには血溜まりはなく、外傷すらない状態で心臓を抜き取られていた。

 

…ピトー………お前いつから南斗聖拳の使い手になった?

 

ピトーは心臓をまじまじと眺めてから放り捨てるとこっちへ戻ってきた。

 

一瞬食べようか迷って止めたな…? ダメじゃないかちゃんと調理しなきゃ、どんなバイ菌がいるかわかったもんじゃない。

 

「殺りましたニャ主様」

 

「殺ったなピトー」

 

両手を広げてトテトテと向かってきたのでピトーとハグした。

 

なんかキルア君が親父と同じ…だと…とか言っているがピトーの双丘とか、いいに匂いとか、線の細い身体とかを堪能しているためどうでもいいや。

 

 

 

その後、5対5の戦いを勝ちはしたがレオリオ君が大幅ロスをやらかした。

 

それにキレたピトーを宥めるのが中々大変だったよ。伝家の宝刀丸ごと鰹節をあげたら落ち着いた。

 

それに引き換え俺の中のレオリオ君の株は鰻登りだ。そりゃあ男なら揉みたくもなりますわ。

 

え? ピトー? ちょ…誤解だ。俺が愛してるのはピトーだけで…え? なにその構え? 一夫多妻去勢拳? ちょ…なぜそのネタを洒落になら…アーー。

 

 

 

 

~しばらくお待ちください…………ニャ…~

 

 

 

 

ふう…硬がなければ即死だった。

 

ピトーめ…愛が重いぜ…一瞬、良妻狐の幻影が見えた気がした。だか、いいぞもっとやれ。俺はどんなピトーでもウェルカムです。

 

ちなみに、4人共最初はピトーと俺が使っている何か…まあ、念なのだがそれについて聞こうとしたようだがピトーの恐ろしい技を見て止めたようだ。

 

賢明だ。そんな死に方は嫌だもん。

 

それは兎も角現在、かなり暇なので5人でゲームを囲んでいた。

 

某いつまで経っても終わらない最後の物語のⅦ作目である。

 

コントローラーはクラピーとキルア君が交互に握っているが、俺以外初見ということで大いに盛り上がっている。

 

「………ジェノバが倒せない上に戻れないのだが?」

 

「いいじゃないか何度もBGM聞けるんだから」

 

「…そういう問題か?」

 

「おい! クラピカ!」

 

「あ………ああ!?」

 

いやー、ストップ→レーザー×3→テイルレーザーは鬼畜だな。

 

そんなこんなであっという間に時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

「………眠いニャ…」

 

「言うなピトー」

 

結局、田代まで50時間以上ぶっ通しでやり続け、海チョコボ作ってたら時間になったぜ!

 

いやー、久々に有意義な時間を過ごした気がする。もちろんピトーが隣か膝にいるのがデフォだぞ?

 

それから再開された三次試験はまたピトーを先頭にごり押しで進んだ。

 

すると6人中2人を備え付けの手枷に嵌めれば短い時間で着くドアが開くところに出た。時間的にも長い方は無理だろう。

 

俺とピトーを除く4人があーだこうだ言うなか真っ先にピトーが動いた。

 

「もう……めんどくさいニャー!」

 

ピトーは蹴りで床をぶち抜いた。

 

そのまま落下しながら何度も床をぶち抜き、ずんずん降りていった。

 

………その発想はなかった…。

 

精々長い道に入って短い道の壁をぶち抜くと思ったが…ピトー恐ろしい娘…。

 

「続くか…」

 

俺は他の奴らと共にピトーの穴に飛び降りた。

 

 

 

 

 

 




~ダークソウル用語解説~

センのゴロゴロ
ダークソウルで一番ホットなテーマパーク。センの古城で大人気がアクティビティ。慣れても初見のトラウマが蘇る。


~その他用語解説~

爆砕点穴
良牙くん、ヨーガ、ピーちゃんで検索。土木工事アタック!

南斗聖拳
悪党(ボケ)ケンシロウ(ツッコミ)が織り成す世紀末ギャグ漫画のネタ。

一夫多妻去勢拳(呪法・玉崩天)
んふっ……うふふふふ…。弁明!無用!浮気撲滅!又の名を、一夫多妻去勢拳!






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猫と騎士

随分遅れてすいませんね。

話は変わりますけど作者の好きな武器ランキングを発表します。

1:黄金の残光
2:ブルーブラットソード
3:アストラ直剣
4:ブラムド
5:グラント

そう………残光なのです。

私の高強靭ブンブンのおとmげふん、あの黄金の光の軌道を描く素晴らしい剣が大好きです。

と、言うわけでこの小説にも出したいところなのですが、小説でまで主人公に高強靭ブンブンさせたりピトーに持たせたりするのはなんか味気無いと思いまして………なんと。


"サブヒロインの主武器にすることにしました"


痛い!痛い!石を投げないで! もう決まったんだ! というか最初から決めてたんだ!

な・の・で! 作者の独断と偏見で決めた私が思うナンバーワン黄金の残光が似合うアニメキャラをサブヒロインにします!

誰だかはお楽しみということでそれでは今回も主人公とピトーのイチャイチャをお楽しみ下さい。



















なんちゃて、蛇足宣伝です。

私が小説家になろうで投稿してる小説。"魔水晶女王(俺)は魔王の一人である"もよろしくお願いします。TSモノですよ。受験のため半ば凍結中(報告無し)でしたけど晴れて解凍します!

それから受験に受かったので更新速度が上がりますよ。月一ぐらいでこの小説の更新をしたいと思います。

以上、宣伝その他終わり。長い前書き失礼しました。













 

 

 

三次試験はピトーの活躍により幕を閉じた。

 

あのタワー、監獄だそうだけどあんなにぶっ壊して大丈夫だったんだろうか?

 

まあ、いいや。そんなこと考えている暇があったらピトーと戯れよう。なでなで。

 

現在、第四次試験のリアルサバゲーの為にクジ箱から番号が掛かれた紙を引いてその番号の受験番号のナンバープレートを受験者から奪うと高得点だそうだ。

 

具体的には自分のプレートが3点、番号のプレートも3点、他のプレートが1点で合計6点集めればいいらしい。

 

早速、俺もピトーも札を引いた。

 

そして全員が札を引いて中型の船に乗り込み、俺とピトーは船首付近に座った。

 

「ピトーは何番だった?」

 

「何番でしたニャ?」

 

「じゃあ、見せ合うか」

 

『せーの…』

 

………………………………………………ゑ?

 

「ニャンと…」

 

「おいおい…」

 

紙に掛かれた番号はピトーが42番で俺が43番だった。

 

俺のプレートの番号が42番でピトーのが43番である。

 

と、いうことは二人で6枚必要だということだ。

 

「どうしようピトー?」

 

なんとなく座ったままの体勢でピトーとナンバープレートを流々舞をしながら高速で取り合っていた。じゃれてるだけなので何も問題ない。

 

「ブン取ればいいんですニャ。手当たり次第に」

 

「違いない」

 

ちなみにこの会話は結構声を抑えずに話していたため受験者を震撼させたとかどうとか。

 

あ、ゴン君ry)とも見せ合ったよ。集めたプレートの中に入ってたら渡すためにね。

 

え? ヒソカ? アイツは別にどうでもいいよ。意味もなく3枚集めそうだし。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「ニャ~♪」

 

草むらを歩きながらピトーはいつも以上に絡み付いてきた。

 

ふよふよした双丘の谷間に腕を挟まれて俺は大変です。

 

「どうしたピトー?」

 

「にゃふふふ…久々の二人っきりですニャ~」

 

確かに塔の中は二人っきりじゃなかったもんな。

 

甘えん坊のピトー的には多少苦行だったんだろう。

 

「あの…主様…」

 

ピトーが頬を染めてもじもじしながら俺を見上げてきた。

 

コレはピトーのおねだりのポーズである。

 

「かまって…くださいニャ…」

 

なんだこの可愛い生き物は…人間が出せる可愛さではない!(※キメラアントです)

 

このアングル、この角度、この造型美。流石は俺の嫁さんだ。

 

いや、これは永久保存が必要だ!

 

念能力発動!

 

"心の思い出帳(スクリーン・ショット)"

 

カシャッとな…。

 

説明しよう。心の思い出帳とは視界に写る光景を撮影し、心の中でいつでも見ることができる俺が最初に開発した史上最強の念能力だ!

 

100枚まで保存する事が可能で現在79枚がピトーの可愛かったり、綺麗だったり、いとおしかったりした画像で埋まっている。

 

ちなみにこの事をピトーに話したら大事な記憶容量をなに無駄なことに使ってるんですかニャー!? と本気で怒られた。

 

蛇足だがアングルを俺の視点ではなく、ゲームのように上からのアングルで周りをぐるぐると回転させたりできる。

 

さらにS〇NY製のパソコンなら落としてちゃんと写真として保存できる。

 

その事を話したらなんていい念能力なんですかニャ~と焼き増しをしたツーショット写真を持ってデレッとした顔で寝転びながら尻尾をふりふりするピトーがいた。

 

無論、それも撮りましたとも。

 

あ、ついでに何かの証拠とかも撮れるぞ。ついでだけどな。

 

「おー、よしよしピトーは可愛いなぁ。ここか? ここがいいんだろう?」

 

俺は迷わずピトーの眉間を撫でた。

 

撫でるときについでにネコミミも一緒に撫でてあげることがポイントだ。

 

「ニャ~…♪」

 

ピトーは目を細めて気持ち良さそうな声を上げた。

 

ふっ…長年連れ添った夫婦(※まだ未婚の上、同居1年目)ともなればピトーの考えていることなど手に取るようにわかるわ!(※最近、理解できないモノ:ピトーの女心)

 

 

 

 

~愛撫で(エロい方ではない)が続くため1時間ほどカット……ニャ…~

 

 

 

 

「ハッ!」

 

「ニャん?」

 

気が付いたら凄く時間が過ぎていた。

 

いや、大したことはしていなかったのだが…。

 

頭→顎→背中→お腹と順に撫でるという名の全身マッサージをしているうちに時間が過ぎていたようだ。

 

「ピトー、そろそろプレートを集めようか?」

 

「ハイですニャ!」

 

俺が地面に引いた猫饅頭もといニャンコ先生柄のビニールシートを片付けながら言うと元気な返事が帰ってきた。

 

「主様、どっちが先に3枚集めるか競争しませんかニャ?」

 

「おう、望むところだ」

 

「じゃあ、始めですニャー!」

 

ピトーは文字通り森の木々を薙ぎ倒す勢いで走っていった。

 

さてと…俺もやるとするか。

 

『"銀騎士"』

 

その言葉と共に横一列の等間隔で全身を銀のフルプレートアーマーで覆われたお馴染みの騎士が出現した。

 

ピトーには悪いが人(?)海戦術なら俺の方が遥かに上手だ。

 

前と違うのはその数。前は2体だったが、今回は16列×8行の148体の銀騎士が綺麗に並んでいた。

 

だが念獣は数を揃えればいいというわけでもない。

 

例えば俺にこの80体を同時に別のことをさせる手動操作が出来るかといえばかなり辛い。

 

かといって自動操作では確実性がない。

 

だから、俺は半自動操作という多少特殊な操作方を取っている。

 

半自動操作は念獣の動く方向だけを俺が決め、残りの移動や攻撃は念獣に自動でやらせる方法だ。

 

もっともこれは俺の円が念獣一体一体の半径100mの範囲だという特殊な円をしているから出来る荒業なのだがな。

 

判りにくい方は某本能寺で殺されちゃう人の野望ゲームのリアルタイム戦闘版をやっているような感覚だと言えば分かりやすいだろう。

 

まあ、ぶっちゃけ大量同時手動操作で念獣を動かすことが出来ないこともないが疲れるのだ。主に精神が。

 

それを軽減するための半自動操作であるのだ。

 

さらに、半自動操作の便利なところはそこだけではない。

 

さて…やるか。

 

まず銀騎士たちを50mぐらい退避させた。巻き込まれたら出し損だからな。

 

俺はオーラ整え身体の内側に溜め込むように練をした。

 

そういう風にイメージして練をしなければ一帯を吹き飛ばしてしまうからである。

 

ちなみに俺とピトーがいつもかなり抑えている普通(いつも)のオーラは生半可な精神状態だと錯乱したり、発狂したりするほどドス黒いらしい。

 

昔を思い返せば思い当たる節が大量にあったりするがそれは置いておこう。昔のことだしな。うんうん。

 

俺を中心に竜巻を巻くように赤黒いオーラが回転し、地面を抉った。

 

それが徐々に大きくなり木々や草花に触れると瞬間的に竜巻と同じ方向に裁断されながら形を無くした。

 

そしてオーラの竜巻が俺の右掌に急激に吸い込まれるように縮小し、練が終わった俺の周囲はクレーターのような抉れた空間ができあがっていた。

 

掌を開くと眩い程に輝く銀色の揺らめく球がそこにあった。

 

それを地面に落とした。

 

『"つらぬきの騎士"』

 

その言葉と共に銀の球は爆発し、俺の目の前には銀に輝く長剣を持ち黒紫色のフルプレートアーマーを纏った騎士が跪いていた。

 

「受験番号44、99、301、403、404、405は対象外だ。ピトーは無論狙うなよ。部隊の指揮はお前に任せる」

 

それを伝えるとつらぬきの騎士は立ち上がり、3m級の巨体を翻して銀騎士たちに身体を向けた。

 

つらぬきの騎士がその手に光る長剣、つらぬきの剣を銀騎士たちにかざすと銀騎士たちは4体編成に別れて16の方角へそれぞれ散っていった。

 

それからつらぬきの騎士も動き出し、深い森の中へ消えていった。

 

そう、なんと半自動操作は操作権を丸々ある程度以上の強さの念獣か、操作の得意な者に委託することが出来るのだ。

 

要するにこれで俺はCPUの操作するゲームを見物するだけの簡単な作業になるわけだ。

 

まあ、一つ問題があるとすれば一般人でも任意で見えるようにしたり見えないようにしたり出来る銀騎士たちのような念獣と違い、つらぬきの騎士クラスの念獣は念を込めすぎているので一般人にも確実に見えてしまうという欠点がある。

 

が、プレート集めには何も問題はないな。

 

30分もすれば三枚は余裕だな。

 

ふふふ…ピトーよ。この勝負もらっ

 

『主様ぁー! 大好きですニャー! 主様ぁー! 愛してますニャー!』

 

俺の携帯のピトーからの電話の時のピトーの肉声着メロが流れた。

 

………嫌な予感しかしない…。

 

「………どうしたピトー?」

 

『主様! 三枚揃いましたニャ』

 

ああ、そうか三枚揃ったのね。三枚……三…まい?

 

「お、おう?」

 

『いそうな気がしたから移動したら近くに三兄弟みたいな奴らがいて直ぐに集まりましたニャ~』

 

………負けた…ピトーの勘を計算にいれていなかった…。

 

「主様ぁー!」

 

『主様ぁー!』

 

ピトーがとびだした。

 

ピトーの攻撃、フライングボディアタック。

 

お、おのれ…電話を切らずに戻って抱きついて来るとは可愛いことしやがって…。

 

とりあえず電話を切ると耳の裏と眉間をなでなでした。

 

「主様、勝ったんですから…」

 

ピトーは誇らしげにそれでいて僅かに微笑むと人差し指を唇に当て、俺を見上げた。

 

「ご褒美をください……」

 

………………………………………。

 

心の思い出ry)

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、1時間以内にプレートは6枚集まった。

 

というわけでプレート集めは終了した。

 

が、つらぬきの騎士クラスの念獣は制約で本人(?)が満足するまで指揮させた念獣部隊ごと消えないため、現在島の中を自由に徘徊している。

 

エンカウントした人は運がなかったということだ。

 

まあ、早々エンカウントなんて…あ、猿連れてる奴が上半身と下半身が泣き別れして、鼻がデカくてブヨ虫みたいな奴が背中からつらぬかれ、ぶん投げられた先の岩に衝突して潰れた。

 

………運のない奴らだ。

 

ところでさっきから黒スーツの人達がつらぬきの騎士につらぬかれたり、銀騎士の竜狩りの大弓で上半身が消し飛んだりしているのだが一体なんなのだろうか?

 

それは兎も角、現在ピトーシェフの手伝いで料理の材料を集めている最中である。

 

うーん…いいキノコが無いなぁ。

 

お? つらぬきの騎士がさっき飛行船から降ってきたネテロ会長とエンカウントしたぞ?

 

これは中々面白い事になったなぁ………。

 

「ん?」

 

すると電話が鳴った。

 

どれどれ誰からだ……くっ…うっ…この素晴らしいナメクジ玉ストラップがポケットで引っ掛かって……よし、取れた。

 

発信元を見ると馴染みの奴だった。

 

ああ、終わったのか。

 

俺はアイツの仏頂面と、アイツに渡した武器を思い浮かべて表情を綻ばせると電話に出た。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「『キング・クリムゾン』の能力では、この世の時間は消し飛び………そして全ての人間は、この時間の中で動いた足音を覚えていないッ!」

 

「空の雲は、ちぎれたことに気づかず!………」

 

「消えた炎は、消えた瞬間を炎自身さえも認識しない!」

 

「『結果』だけだこの世には結果だけが残る!!」

 

まあ、何が言いたいかと言うと………。

 

「7日立ちました!」

 

「うるさいですニャ。主様…」

 

「………ごめんなさい」

 

ピトーは猫耳を押さえて俺をジト目で見つめてきた。

 

あの後、つらぬきの騎士が無駄に大量に余ったプレートをゴンたちに配った。

 

その結果、俺、ピトー、ゴン、キルア、クラピカ、レオリオ、ヒソカ、ギタラクル、と後1人の9名が4次の通過者となった。

 

そして現在、面接の順番待ちである。

 

プレート番号の大きい順から呼ばれるので俺が最後だ。

 

暫く暇なので俺とピトーとクラピカとでDDFFをやっていた。

 

「………………」

 

「………………」

 

「なあ………ピトー?」

 

「何ですかニャ?」

 

「アルティミシアのハメは止めなさい」

 

「勝てば官軍ですニャ~」

 

「友達減るぞ…」

 

「ボクは主様だけいればいいですニャ~。主様がティファに浮気ばっかりするからいけないんですニャ」

 

「よし、表出ろ。エクスデス先生の力見せてやんよ!」

 

「4フレアトラクターをナメないで下さいニャ!」

 

「………………(テ、テクニックが高くてついていけない…)」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

あ、ありのまま起こった事を話すよ! ボクはアルマゲストを見てから攻撃しようとしたら、いつの間にかオルガカウンターを喰らっていた…。何が起こったk(ry

 

エクスデス先生には勝てなかったニャ………。

 

主様……どれだけやり込めば最強CPUクラスの反応速度でカウンター出来るんですか…大会にでも出ればいいのに…。

 

まさか、ティファにアシストエアリスがジャスティス!とか主様が言ってたし、それしか使わないから使い手だと思ってたのに…本当はエクスデス先生使いだったなんて反則ニャ…。

 

「あのー、そろそろ始めても構わんかのう…?」

 

そもそも主様はいつもセコい。

 

ゲームにしても仕事にしても自分が必ず勝てることしか基本しないもの。

 

仕事も基本的に主様の弟子の実働部隊か、主様の念獣任せだし…。

 

というか念能力を知らないであれだけの化け物念能力者三人も育て上げた主様には脱帽だ…よくバレなかったニャ。

 

それはそうと主様ってああ見えて全く自分から動こうとしないタイプなんだよねー。

 

でもそんな主様もボスっぽくてカッコいいんだけどね。

 

んー、それにしてもあの人にはちょっぴりだけ悪いことしたかも。

 

あの人は主様にずっと片想いしてたからボクが寝取った形になるのかな?

 

………………それだけ聞いたらまるでボクが淫乱な悪女みたいなの…。

 

んー、困った。

 

ボクは主様が幸せなら正直他はどうなってもいいんだよね。

 

もちろん、主様が他人の女に鼻の下伸ばしたら速攻で師匠直伝の玉崩天かますよ?

 

でも主様の子供が欲しいと真剣に思っている人なら寧ろ歓迎するもの。

 

だって主様みたいに素敵でカッコよくて強くて優しくて……ああもう! とにかく全部が最高の主様の子供はいっぱい残した方がいいでしょ?

 

ボクだけだと効率が悪いからね。

 

せめて後一人は欲しいところだよねー。

 

「おーい、聞いておるかー?」

 

それに日本はどうだったか知らないけどジャポンは一夫多妻制度だし。

 

なんでも主様が言うにはペリーの黒船をジャポンの達人や、剣豪や、忍びという名の念能力者たちが体一つですべて沈めてから歴史がおかしいらしいの。

 

確かに当時のマスケット銃や、大砲や、ガトリング砲なんかじゃ荷が重い相手だよね。

 

主様はきっと戦国時代はBASARAみたいになってたんだろうなーとか遠い目で言ってた………バサラってなに?

 

話が反れた。

 

一人、主様の弟子なんだけど凄く強くて主様が好きな女性がいるんだよね。

 

というか主様とボクがあの人に夜道で斬られないようにあの人も主様と結婚して欲しいんだけど…。

 

…ぶるぶる…あの人が死んだ魚のような目で主様がプレゼントした"金の軌道を描く剣"を振りかざす姿を想像しちゃったよ…。

 

………不味いニャ……よく考えればあの人なら本気で殺りかねない…。

 

このままじゃあの人が怖くておちおち赤ちゃんの名前も考えられない…。

 

うーん…どうしよう…。正直、本気の主様と同じぐらい正面から勝てる気がしないし。

 

剣術なら主様より上なんだよねー。

 

まあ、主様から襲名したんだから当然だけど。

 

うーん、やっぱりなんでもいいや。敵になるなら殺せばいいし、主様と一緒になりたいっていうのなら歓迎すればいいだけだ。

 

「えへへ…」

 

「………(こ、こやつ話がさっぱり通じん)」

 

うーん、赤ちゃんの名前どうしよう?

 

女の子なら和風に黒歌ちゃんかなー。

 

いや、白音ちゃんも悪くないなー。

 

あー、でもやっぱり主様に決めてもらうのが一番ry)

 

 

 

 

 

 

 

 




~その他用語解説~

アルティミシアのハメ
君の回りに1人はいたであろうアルティミシアのハメ使いの必殺技。当たらなければ…なんてことの言えない格ゲーのDDFFではマジで鬼畜。ピトーちゃんのように地球にサウロンと2人っきりでも生きていける寧ろバッチ来い! 的な思考をお持ちでない方は使用を控えよう。まあ、勝利と引き換えに友達を犠牲にしてもいいと思う人にはオススメである。

4フレアトラクター
アルティミシアのグレートアトラクターを4フレームの時に発射すると最大溜めで撃てる技能。これを習得できたら君は立派なDDFF廃人だ。おめでとう。

エクスデス先生
カメェェェッ!

黒歌&白音
凸凹にゃんこ姉妹。



~デモンズソウル用語解説~

つらぬきの騎士
神ムービー。壮絶なかっこよさ。唯一NPCと共闘できる。見た目ほど強くない。それらのことで有名。まあ、強くないと言われても初見ならまずあのつらぬき攻撃を食らって死ぬ。ついでにいえば次のステージのボスで実質的なデモンズソウルのラスボのアーマード・コアじじいが強すぎるのがいけない。今でも根強いファンが多くつらぬきの騎士一式装備まだー?との呼び声も高い。


~ダークソウル用語解説~

竜狩りの大弓
本来、竜を狩るための大弓。中盤のステージの銀騎士が持つ。みんなのトラウマ配置の2体によって星の数ほどのプレイヤーを葬ってきた恐ろしい弓。自分が装備することも可能でその凶悪なノックバック性能を遺憾無く発揮してくれる。だが、対人でも攻略でもその発射間隔の長さと反動と弓(笑)の重さと専用太矢しか射てない上に太矢の地味に懐に優しくない値段の高さから一定条件下以外で使われることはあまりなく、作者的にもそのステなら羽根矢コンポジットボウの方が………うわ銀騎士さんたちなにするのやめry)





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サウロン・ネイル(ピトー成分ほぼ無し)


月一更新と言ったな…あれは嘘だ。



『うわぁぁぁぁぁ……!!?』←視聴者に殺られる作者



やあ、皆さん。ちゅーに菌or病魔です。

言いたいことは解る。まずはその物騒なモノ(雷ボトルアヴェリン)をしまってくれ。

正直、すまんかった。orz

まさかね……暇潰しで投稿したジェノバさん小説があんなに受けると思わなかったんや…。

すっかりこっちの更新が滞りましたよ。ええ。

でもアニメでピトーがゴンさんにZAPされたり、ニコニコ漫画で強くてハンターハンター(ピトーが仙逗の話)読んだり、ピトー×ノ×シットという静画を見たら目が醒めました。






ピトーは金髪より白髪の方が可愛いと!!!!!!!!!!






痛い! アヴェリン撃たない!

全く……フルハベルじゃなかったら即死でしたよ。

本当の所、話は投稿から半月後には完成していたんですが……はたしてサウロンさんがここまでチート性能で良いのかと思いましてね。

いや、設定段階から決まってたんですが……その事に悩むこと数ヵ月。

結論はそう言えばこの小説はソウルシリーズの設定を使いまくりながらピトーちゃんを愛でる小説だから問題ないでした。

タグに超絶チートってありますしね(震え声)。

それではどうぞ、次の更新は速いといいなぁ(遠い目)。





















 

 

時は少し前に遡り、とある無人島は阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。

 

既にほとんどの受験者は銀騎士の手により死に絶え、その魔の手は受験者の監視員にまで及んでいた。

 

「ヒイッ…化け」

 

1人の監視員は次の言葉を紡ぐこともできず、銀騎士から機関銃のように秒間数十発放たれた太矢に貫かれ、上半身が跡形もなく消し飛ぶと残った下半身から血が噴き出した。

 

少し遅れて地面に倒れ伏した死体は"黄緑色の光"となり、どこかへ飛んでいった。

 

一体の銀騎士は標的が死亡したのを確認し、他の対象を探そうと動こうとすると100mの円の中に別の対象が入ったことに気づいた。

 

しかもオーラから推測するに相当な手練れだ。

 

直ぐに4体編成を組んでいる他の三体が集まると二体が竜狩りの大弓を構えると、残りが銀騎士の盾を構えながら銀騎士の槍を構え、標的が来るのを待ち構えた。

 

そして標的が50mに入った瞬間…。

 

ガトリングのような連射力で竜狩りの太矢が放たれ、正面の木々と地面を抉り、土煙を巻き上げながら標的を襲った。

 

一撃、一撃が中堅以下の念能力者程度なら硬ごと消し飛ばすほどの威力だ。

 

ただでは済まないだろう。

 

だが、何かを感じ取り、竜狩りの大弓を構えていた銀騎士は銀騎士の盾と銀騎士の剣に装備が変化した。

 

すると土煙の中から白髪に長い髭した和服姿の老人が現れ、それに4体の銀騎士は陣形を組ながら対峙した。

 

真ん中にもう一体いればインペリアルクロスの陣形の完成だがそれは置いておこう。

 

「ほう…まるで洗練された騎士のような念獣じゃな。流石は"剣聖"とまで呼ばれた男の念獣なだけはありおる。ならば…」

 

次の瞬間、老人の背後に金色の巨大な観音像が現れた。

 

「一撃でぶっ潰すだけだ」

 

次の瞬間、降り下ろされた想像絶する数の拳の波が銀騎士に降り注ぎ、銀騎士は何があったかすら理解する前に黄緑色の光となり消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「次じゃ…」

 

銀騎士らをいとも簡単に消滅させた老人…ハンター協会会長のネテロであったが内心は穏やかではなかった。

 

何せ次々と受験者を監視するための隠密スタッフが殺されているからだ。

 

スタッフを秘密にし、試験官への攻撃だけでなくスタッフへの攻撃を制限していなかったことがこんなところで裏目に出るとはネテロ自身も思いもしなかった。

 

何せスタッフと言えどそれなりの念能力者だ。

 

さらに受験者の倍以上配置されたスタッフは連絡を取り合って隠れながら行動しているため、基本的に被害は最小限に収まっていた。

 

だが、今回ばかりは相手が悪過ぎた。

 

何せ全ての現況はそのたった一人の男…。

 

 

 

 

 

 

"世界で6人しかいないS級首のサウロン・ネイルだったからだ"

 

 

 

 

 

ジンは"アイツはドス赤いオーラのせいで周囲から誤解されるだけで本当は天然で良いヤツなんだぜ?"などと言っていたがこの惨状からは信じられたものではないだろう。

 

サウロン・ネイルの念能力が念獣だということはわかっていたが、ここまで大規模かつ、規律と確実性のある協力な念獣展開をするということがわかっていれば被害は防げていただろう。今となとなっては後の祭りだ。

 

そこまで考えたところでネテロは銀騎士を倒した場所に1つの淡い光球が浮いているのに気がついた。

 

「なんじゃ…」

 

自分でも無意識にネテロはソレに手を伸ばしていた。

 

後で振り替えればその光球がサウロンの攻撃用念能力でも可笑しくなかっため、通常のネテロならするはずの無かった行動であろう。

 

だが、その時の光球には絶対的な確信を持って安全であり、自分にとって利益になり、さらに取らなくてはならないとネテロに感じさせるだけの何かがあった。

 

恐らく、それもサウロンの念能力の一端であろう。

 

これだけでも単純だが、恐ろしい能力だ。

 

光球に手を入れた途端、光球は長槍へと変貌した。

 

それは銀騎士の持つ"銀騎士の槍"であった。

 

長細く、銀の光沢を放ち、先端はレイピアがそのまま付けられ、まるで祭儀用の槍のようであるにも関わらず、その槍からは凄まじい貫通力と計り知れないほど念で強化されていることが一目で見てとれた。

 

繊細な工芸と、確かな実用性の奇跡的な融合を果たしたその武器を暫く、目的も忘れて眺めていた。

 

その刹那、異常としか言えないほどの莫大なオーラをネテロは感じ、現実に引き戻され、槍を地面に落とした。

 

いつの間にか、目と鼻の先に"黒紫色のフルプレートアーマーを纏い、銀に輝く莫大なオーラを纏った3mほどの巨大な騎士"がそこにいた。

 

「ほう…」

 

ネテロが感心するのも無理は無い。

 

その念獣から放たれるオーラは極限まで精錬され、最早芸術の域まで達しているような銀色のオーラだったからだ。

 

騎士が腕を振るうと、騎士の手に身の丈ほどもある巨大な直剣、"つらぬきの剣"が出現し、切っ先が向けられた。

 

次の瞬間、ネテロとつらぬきの騎士の周囲、全てを濃霧のような何か覆い、虫1匹出入りの出来ない巨大な閉鎖空間…いや、戦闘場が出来上がった。

 

「おいおい……冗談じゃねぇぞ…」

 

そう呟くネテロの前方にいるつらぬきの騎士は自らのオーラの全てを解放していた。

 

 

 

"現在のネテロのオーラ総量の10倍以上に相当する量のオーラを"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その次の場面が写し出したのは全ての百式観音の腕と、頭が両断され、空中を舞い、つらぬきの剣の刃先がネテロの首筋に突き付けられている状態だった。

 

"負けた……"

 

ネテロは念能力者として完全に敗北した。

 

勝負は一瞬でついていた。その理由は単純。

 

つらぬきの騎士がネテロの拳より遥かに速かったというだけの話だ。

 

百式観音はネテロの正拳突きにより、最速で型の攻撃を繰り出す念能力だが、百式観音の動作よりも遥かに速く動かれてしまえば?

 

型の攻撃をすることしか出来ない百式観音はただの的でしか無かったのだ。

 

ネテロは見ていた。

 

つらぬきの騎士に向かった百式観音の腕が全て手首から両断され、腕を伝って胴体の前へ移動した光景を。

 

そして、百式観音の全ての腕が、一瞬で胴体から離れた。

 

最後に頭が落とされた瞬間を。

 

 

 

"ありえない"

 

 

 

目の前の惨状はまさにそれだろう。

 

あまりもの隔絶した強さの存在により、ネテロは剣を突き付けられたまま硬直するしか無かった。

 

『………………終止』

 

つらぬきの騎士は一言そう呟くとつらぬきの剣を下げた。

 

その言葉につられるようにネテロは静かに膝から崩れ落ちた。

 

すると周囲を囲んでいた霧のような何かが晴れ、なんの変鉄もない元の空間へと戻った。

 

さらにネテロから離れると片手を天に掲げた。

 

すると緑の光が片手から放たれ、それが宙で分散すると地面に落ちた。

 

光が晴れるとそこには今日、銀騎士らとつらぬきの騎士に殺されたはずの黒服ら全員が倒れていた。

 

それを見てネテロは気づいた。

 

どうやらつらぬきの騎士は初めからネテロだけと戦うつもりだったということに。

 

そして、騎士の声に明らかな落胆の意が込められていた事に。

 

つらぬきの騎士はそのままネテロに背を向けて歩き出し、その身体は一歩、歩く毎に徐々に身体が透け、存在が薄れて行った。

 

「…………て…」

 

地面の土を掴みながらネテロは呟きながらさっきの戦いとも呼べぬモノを思い返した。

 

全盛期の万全の状態の自分ならきっと互角の戦いが出来た……と。

 

「……待て…」

 

ネテロの心は久しく感じていなかった感覚に塗り潰された。

 

「待て!」

 

その絞り出されたような声につらぬきの騎士は顔だけ少し、振り返り視線を向けた。

 

「俺はまだ……」

 

立ち上がり、拳すら向けずにつらぬきの騎士と対峙するそれは完全に愚者のそれだった。

 

「死んでねぇぞ!!!!」

 

その言葉も、行動も負け惜しみでしかなく、声も震えていた。

 

だが、感情の読み取れるモノなら容易に理解しただろう。

 

紛れもなくそれは歓喜の震えだということに。

 

つらぬきの騎士は足を止めるとネテロの前に何かを投げた。

 

ネテロが手を伸ばし掴み取るとそれは何かの文字が描かれた白っぽい石の欠片だった。

 

再び、目をつらぬきの騎士へ向けたネテロへ対し、消える寸前のつらぬきの騎士は言葉を紡いだ。

 

 

 

『王城にて我は待つ』

 

 

 

そう言い残すとつらぬきの騎士は銀のオーラへと完全に姿を変え、空高くへと飛んでいった。

 

 

 

 

「………………やってやろうじゃねぇか…」

 

一人の挑戦者を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそも彼のようなS級首と言う存在そのものが天災のようなものなのだ。

 

S級首とは"存在自体が危険過ぎるため一部の念能力者と権力者以外には公表されていない伝説とも言える者たち"である。

 

例えばハンター協会ならジンを除けば会長のネテロ、副会長、三ツ星ハンターと一部のハンターしか知り得ないのだ。

 

なぜそんなことになっているのかと言うと、サウロン・ネイル以外のS級首が関係する

 

例えば初代S級首のとある女性がこれまでにしてきた犯歴を多少上げてみよう。

 

 

累計少数民族根絶数:1789

 

累計国家壊滅数:92

 

累計殺戮人数:推定10億以上(行方不明者は含まない)

 

 

ちなみにこれは単身による過去400年間の記録だ。

 

たった1人の狂った念能力者によりこれだけの被害を人類は被っているのだ。

 

もしだ。彼女を世界の明るみに再び出したとしよう。

 

民衆は大パニックを起こし、恐怖に脅え、国やハンター協会に抗議するであろう。

 

だが、一番問題なのは彼女に立ち向かう者が出ることだ。

 

そうした場合、最も特をするのは誰か?

 

それは殺戮癖があり、人体収集が大好きな彼女自身であろう。

 

なぜなら、最悪なことに彼女はある程度の人数以上を短時間で殺すと、性的興奮により周囲を無差別に殺戮を行うという精神病を患っているからである。

 

彼女は世界最悪のサイコパスなのだ。

 

ちなみにピトーもサイコパス診断で100%当てはまったりするがそれは置いておこう。

 

一度スイッチの入った彼女を止める幾つかの方法を教えよう。

 

1つ目は彼女を殺すこと。

 

だが、これは彼女が数百年を生きている時点で実現が不可能に等しい事がよくわかるであろう。

 

2つ目は殺戮以上の興味対象を与えること。

 

だが、彼女が興味を引くようなモノを知る人間などほぼいないであろう。

 

だからS級首が出来る前の世界は考えた。

 

そもそもまだA級首であった彼女を焚き付ける原因は何か?

 

それは彼女を集団で襲う賞金稼ぎなどが殆どであった。

 

彼女の殺戮癖は一定数の人間を短時間で殺すと殺戮スイッチが入る。

 

集団なら勝てるという愚かな思考が災いし、彼女に襲い掛かり彼女のスイッチを入れる。

 

なんとも最悪な悪循環だ。

 

そこで世界は名案を考え付いた。

 

彼女の存在を完全に隠蔽してしまえば被害は最小限になるのではないか?

 

そこで考え出されたのがS級首だ。

 

本当に実力のある者が彼女を奇跡的に倒せるかも知れない上に無謀に挑む者がいなくなる。

 

この案は大成功し、近年の彼女による犠牲者を10分の1にまで抑えることに成功したのだ。

 

まあ、一つ問題があるとすれば…。

 

彼女の存在が世に露呈しないため、彼女が気分で殲滅した少数民族や街の中で偶々、殺さなかった人間をハンター協会が口封じのために殺すことが仕事に増えたことであろう。

 

要するにS級首とは存在自体が危険過ぎるため一部の念能力者と権力者以外には公表されていないということ自体が建前であり本音は…。

 

"人類の問題児を世界のために保護する最悪の拘置手段"だということだ。

 

話を戻そう。

 

S級首の中でもサウロン・ネイルの存在は異彩を放っている。

 

なぜなら、居場所が最も掴みやすく、記録されている戦闘数が非常に多い上に実力も極めて高いにも関わらず、念能力の情報が1年前までほぼ不明だったという極めて妙なS級首だからだ。

 

だが、彼が一際、異彩を放っている一番の理由は…。

 

"彼が世界各国の要人から贔屓され、庇護されたためS級首入りした"ことだった。

 

その理由は彼の立ち位置にある。

 

まず彼は48歳という若さで流星街の各ブロックの長老を取り纏める大長老という役職をやっている。

 

これは対外的に見れば流星街の長にあたり、流星街の指導権を持っているといっても過言ではない凄まじいことだ。

 

………しかし、ここだけの話。大長老は仕事のイカれてるとしか思えないオーバーワークっぷりから流星街でやりたくない仕事55年連続ベスト1位だったりする。

 

しかもデスクワークではなく、現地作業(デスワーク)だ。

 

まあ…犯罪者オンリーで出来ているような街を統括するのは非常に大変だということである。

 

最も現在はそれも一段落し、ジャポンにて何でも屋を開きながら隠居に近い何かを送っているが。

 

次にこれが最大の理由でもあるのだが、彼がトップの組織"暗月の剣"の直属の構成員3人と、その3人が創設した組織だ。

 

彼は過去にジンらと共に数年に渡る長旅をしていたが、その時の道中で拾った弟子の全てが後の裏の世界の大物になっているのだ。

 

1人目は言わずと知れた後の幻影旅団の団長。

 

彼がジンとつるむとこ早10年程経過し、偶然、流星街にいたときに教えられるわけでもなくナイフに念を纏わせ、襲い掛かってきた子供その人である。

 

一捻りにされ、"世界の広さを教えてやんよ!"という言葉と共に結果的にだが、ジンとの地獄めぐr…諸国漫遊に強制的に連れていかれることとなった可哀想な…もといラッキーな男だ。

 

当時の事を遠い目をしながら彼はこう語る。

 

"流星街は天国(パラダイス)だった"

 

二人目は近年急速に発展し、ゾルディック家に肩を並べる暗殺組織のトップの女だ。

 

彼女は産まれた瞬間、オーラによって産みの親を殺すほどの才能を持っていた一国の王女だった。

 

それにより城に半ば幽閉されながら育っていたが、偶々城に殴り込みを掛けていた彼らに助けられた。

 

その後は彼らと世界を巡りながら剣を習い、やがて師である彼をも越え、彼の流派を受け継いだ経歴を持つ。

 

当時の事を彼女はこう語る。

 

"彼は私にとって初めて外の世界に連れ出してくれた人であり、父であり、師であり………最愛の人…です…"

 

最後は国崩しを専門とするテロ組織の頭領であり、A級首歴代3位の賞金首。

 

まだ幼い頃に生まれついて、自分に対する世界の非情さに絶望していたところを偶々、通り掛かった彼に"自分が世界で一番不幸な人間のようなツラしやがって…本物の地獄を教えてやるよ…"との発言と共に拐わr…保護され、地獄巡りに連れていかれた男だ。

 

当時の事を彼は大女優の妻を肩に抱きながら、ワイングラス片手にこう語る。

 

"今の僕がいるのはサウロンのお陰だね。あれ? なんでだろう? 足の震えが止まらないな。ハハハ"

 

さて、これまでの彼の肩書き事を並べよう。

 

世界最高クラスの念能力者。

 

流星街のトップ。

 

最強の盗賊団、伝説の暗殺一家に並ぶ組織、世界最悪のテロリスト集団のトップを育成した伝説の男。

 

………凄まじい肩書きだ。

 

彼がS級首した理由は念能力者としてのポテンシャルもさることながら、流星街の大長老の地位と、世界最強クラスの念能力者部隊を間接的に3つも抱えていることにより…。

 

 

 

 

"流星街から全てを見下ろす形で実質的な裏の世界のトップの一角を成す存在だと思われているのである"

 

 

 

………ちなみにこれは彼の事を深く知らない者による客観的な評価であり、ピトーと弟子3人とジンらの場合だと…。

 

"主に弟子が危険人物過ぎて、それらを育て上げた師が超危険人物認定されたという酷い話なのである"

 

まあ、実際のところ彼にも問題はある。

 

 

彼が流星街のトップであるため、報復活動をよく行う。

恩義を感じている3人が、彼が直々に出向かせるわけにはいけないと代行を彼に持ち掛ける。

ならよろしくね☆

最優先事項として組織総出で代行。

師からの直々の依頼のため、必要以上に頑張る。

地図から国や街が消える。

世界的には彼がやったことになる。

 

 

酷い話だ……。

 

最後にハンター協会が掴んでいる彼の念能力は以下の通りだ。

 

 

特質系念能力

 

拡散の獣(the old one)

 

自らの円の最大範囲内で生物が死亡した場合、それをオーラに変換し、吸収する能力。また、自らの眷属と念獣の円の範囲内、彼が所有する特殊な領地の中でも効果が及ぶ。

 

さらに念を消費することで自由に物を造り出すことが出来る。その物は込めたオーラ量、制約などによって効果や強さの大小が決まる。

 

彼はこの生まれついてのこの能力により、48年間殺してきた全ての生命を自らのオーラとして取り込み続けている。

 

その総量はジンをして"反則"、"仲間ならコイツより心強い味方はいない"など豪語させるほどだ。

 

何より恐ろしいのはそれだけの量のオーラを飲み込み続けるサウロン・ネイルの底無しの身体であろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

彼の視線の先に銀の莫大なオーラが空を飛び、こちらへ向かい、目の前で停止した。

 

それだけではなく目の前には100を越える数の小さな銀のオーラも浮いていた。

 

「満足したか」

 

その言葉と共にバンダナを頭に巻き、大きな鍋を持ち、嫁の炊事の手伝いをしている彼に100以上の小さなオーラは吸い込まれるように戻って行き、巨大な銀のオーラは空を越え、島の遥か彼方に飛んでいき、見えなくなった。

 

「つらぬきの騎士が楽しそうでなによりです」

 

「主様ー。そのきのこシチューはこっちに移すニャー」

 

「おうよ」

 

耳をぴこぴこさせながらおたま片手に夫を呼ぶ嫁に彼は答え、移動していった。

 

 

 

 

 




デモンズソウル用語解説

拡散の獣
古き獣。the old one。デモンズソウルの全ての元凶にして終点のデーモン。だいたいこいつのせい。オオサンショウウオと樹を混ぜたような見た目をしており、さらに数km~数十kmというとてつもない大きさをしている。デモンズソウルの世界で信仰されている神の正体だったり、全てのデーモンの祖だったりする。残念ながら最終イベントのMAPなので戦えない。戦えれば間違えなく最強の敵であったであろう。



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剣師

サブヒロインバレたな(確信)

〇〇〇姐かわいいよ〇〇〇姐。


 

流星街のとあるビルの一角。

 

『何故ですか!? サウロンさん!』

 

部屋の中にある社長が座っているような椅子と机を無視し、部屋の隅に座布団を敷いてそこで酒瓶片手に座っている彼と、それに交渉に来たとおぼしき男たちがいた。

 

『流星街の仲間が謂れの無い罪を着せられて不当に拘置されているんですよ!? それなのに黙っていとというのですか!!』

 

男の腕には手榴弾の詰まった箱が抱えられていた。

 

何をしに行くかは明白だろう。

 

『おいおい物騒な…少しは大切にしろっての…自分の……って言っても伝わらねぇか』

 

彼は目を瞑ると少し考えてから瞼を上げた。

 

そこには男だけでなく、数人の男女がそこにいた。

 

『うーん、それならさ…』

 

彼は半分ほど中身の入った酒瓶をリーダー格の男に投げ渡した。

 

『!? 何を…』

 

彼の姿は既にそこにはなく、そこにいた者たちが慌てて見渡すと部屋の入り口に彼が立っていた。

酒瓶の変わりに男たちが用意していた手榴弾の詰まった箱を小脇に抱え、肩には刀身の極めて長い刀を担ぐように乗せていた。

 

『お前らは明日飲む美味い酒の事でも考えてろよ。そこの棚にある暑中見舞の酒好きに持ってって良いからさ。ってか俺一人じゃ全部飲めねぇし。まあ、酒道楽もほどほどだがな』

 

彼の謎の行動にそこにいる人間が戸惑っていると先に彼が動いた。

 

『じゃ、ちょっくら行ってくる』

 

一言、そう言い残すと彼は完全に彼らの目の前から姿を消した。

 

"明日"

 

残された者たちにはその言葉が何故か頭に残った。

 

 

 

 

 

明くる日、不当に拘置されていた流星街出身の男が救出される。

 

その跡には警察署員死傷者224名という稀に見る被害と、一人の人間を救出する為に流星街のトップであり、"剣聖"とまで呼ばれた剣師であり、念能力者の男が動いたという事実がだけ残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、おぬし、第267回ハンター試験を受験しているようじゃな」

 

「は?」

 

「ニャ?」

 

ピトーがまじまじと俺を見詰めてきている。

 

現在、ピトーだけでは話にならなかったようで、俺とピトーは一緒にネテロ会長からなにやら話を聞いているのだが開口一番がこれだ。

 

267…今が第287回だから丁度20年前か……。

 

「来てたんですかニャ?」

 

うーん…そんな記憶は…。

 

「4次試験での試験官殺害により失格及び10年間の再受験禁止になっておるな」

 

「あ」

 

「思い出したんですかニャ…」

 

いやー、それジンに無理矢理連れていかれた時の奴じゃないか。

 

懐かしいなぁ、うんうん。

 

確か3次試験でジンと俺だけが残って、4次試験の試験官に…。

 

"互いに戦闘を行い、勝ち残った方を合格者とする"

 

とか言われて思わず試験官を真っ二つにしちゃったんだっけなぁ、あれは試験が悪い。

 

「………まあ、20年前のハンター試験といえば色々と過激だったからのう。それにしても少し短気過ぎやしないか?」

 

「2人でずっと試験通過して最後にアレでしたからねぇ…」

 

そりゃ、ねえよ。

 

11歳のジンと、当時の俺。

 

あの頃はまだ俺の方が遥かに上の実力だったからな。

 

ふむ、そう言えば前の試験より今回は大分楽だったような気がする。

 

「その時のお前さんと行動していたジンは当時11歳か…。時が経つのは早いのう。それはそうとジンとはハンター試験からの付き合いなのか?」

 

「まさか、俺みたいなはみ出し者が自分から受けに来るわけないでしょう? アイツとはハンター試験の1ヶ月ぐらい前に会いましてね……っていりますかこの話?」

 

「ジンは自分の話をせんからのう。良いネタが聞けると思ってな」

 

「それなら後でいくらでも話しますよ。アイツにはキツいお灸が必要ですからね…」

 

あの野郎今頃どの辺にいるんだろうか? まだ、暗黒大陸にいないだろうけどな。

 

「それにしてもジンとは本当に仲が良いのじゃな。ジンの経歴を改めて見通すと……ふむ、どの功績にもどこかしらに必ずオヌシの名前がありおる」

 

ネテロ会長はペラペラと何かの資料を捲りながらそう言った。

 

「相棒でしたからね…」

 

俺はネテロ会長とピトーに染々と昔のこと幾つか、かいつまんで話した。

 

ルルカ文明遺跡では発見がニュースに流れたため、押し寄せて来た盗掘、盗賊、強盗、狂信的なファンetcを修復、保護、一般公開可能に至るまでの間、全て斬殺して護ったり。

 

ジンが二首オオカミの繁殖法の確立する過程で、個体の天敵となる外来種と密漁者を殲滅し、保護区を超巨大な柵で囲ったり。

 

コンゴ金脈の発掘の時は金脈発見のためのドリル代わりとして牛馬以上の働きをしたり。

 

酒の席でどちらが強いか喧嘩になった果てにどういうわけか、クート盗賊団を2人で壊滅させたり。

 

レイザーの捕獲の時なんてレイザーとジンが一騎討ちしてる間、他のレイザーの一味全員を相手にしたな。

 

ん? ピトーとネテロ会長の目がなんか優しいような……。

 

「………………いつも貧乏クジ引いていたのじゃな…」

 

「主様可哀想にゃ……」

 

………………。

 

止めろ…そんな目で俺を見るな!?

 

特にピトー! その"ボク…あなたと一緒に背負っていくよ…"みたいな目を止めろ!

 

嬉しいけど悲しくなるから止めろぉぉ!!

 

あ、でも表情は凄く良い……"心の思いry)

 

「ジンは最強の喧嘩師、俺は最強の剣師。全く…世界最高の腐れ縁ですよ」

 

ついでに悪友、親友、後盟友もつくか。

 

本当にアイツの隣にいつもいた頃は退屈しなかったな…。

 

「ああ、でももちろん今度あったら八つ裂きにしてやるよ…」

 

「そ、そうか…ではいくつか質問をするぞい?」

 

「はい」

 

「はいニャん」

 

「ハンターの志望動機は?」

 

「「ボク(ピトー)が戸籍取って、主様(俺)と結婚するため(です)ニャ」」

 

「リア充爆ぜろ」

 

ひでェ!?

 

「まあ、どんなハンターになるかは人それぞれじゃ、おぬしらのような者も少なからずいるわい」

 

なるほど……つまり、あなたがハンターだとおもうものがハンターです。ただしたにんのどういをえられるとはかぎりません。 ということですねわかります。

 

「次じゃ。注目している受験者と、一番、戦いたくな受験者は何番じゃ?」

 

「注目してるのは405番。なにせジンの息子ですから…その内一体何をやらかすのやら…。一番戦いたくないのは44番ですね」

 

「ほう、何故じゃ?」

 

「アイツが望むのは誰の邪魔の入らない静かな場所で2人だけの死合ですから」

 

もう10年間で3回ぐらい撃退してるけどね。

 

……撃退する度にソウルシリーズの周回NPCの如く実力が上昇してんのはスゲーと思うけどな。

 

「お前さんなら一捻りじゃろうに…」

 

「そんなこと無いニャ。ヒソカは強いニャ」

 

ぬ? ピトーが他人を評価するなんて珍しいな。

 

「ヒソカが死力で掛かってきたらボクと刺し違えるぐらい出来ないこともないニャ」

 

………………ファ!? え? ヒソカってそんな強かったの?

 

「主様とヒソカじゃ相性が最悪なだけですニャ。もちろん、ヒソカが不利ニャ」

 

まあ、伸縮自在の愛は俺にほぼ効かないしな。

 

「でも理論上の話ですニャ。本気で戦えばぜったいボクが勝ちますニャ」

 

「避けるもんな…ピトー…」

 

俺は誇らしげな表情を浮かべるピトーを少し疲れたような目で見つめた。

 

ピトーはどういうわけか"未来でも見えてない限り回避不可能"な攻撃をさも普通に回避するんだもの…。

 

その上で"未来でも見て無い限り不可能な攻撃"も普通にしてくるし…。

 

そして、なぜそんな事が出来るか聞くと決まってこう言われる。

 

"直感ですニャ"………………解せぬ…。

 

「これで質問は終わりじゃが1つ聞きたいことがある」

 

そうするとネテロ会長の雰囲気が、のらりくらりとしたぬらりひょんのようなさっきまでの状態から、まさに武人と言った風格に変わった。

 

「コイツはなんだ?」

 

ネテロ会長は懐から神字がびっしりと刻まれた白っぽい石の欠片を出した。

 

ああ…やっぱり渡したのか。

 

「それは要石(かなめいし)欠片(かけら)。"北の大国(ボーレタリア)"へのテレポーターですよ。練だけだと間違えて飛んじゃう可能性があるのでそれに周を掛けると行けます」

 

「ボーレタリア?」

 

「ええ、GI(グリードアイランド)という俺も製作に関わったゲームを元に最近、俺が作った念能力者強化用ゲームです」

 

「ニャんニャん」

 

ピトーが横からぎゅっきゅっと弱く引っ張ってきた。

 

「訂正、俺とピトーで作った念能力者強化用ゲームです」

 

ちなみにグリードアイランドで俺は"S"の文字だ。

 

……具現化系とアイテム確認(実験台とも言う)の担当だったということを知ったのは最近の話だがな…。

 

ボーレタリアはグリードアイランドの親戚に当たるわけだ。まあ、今度は俺とピトーが2人で作ったんだけどな。知り合いにαテスト手伝ってもらってるけど。

 

「ほう…グリードアイランドは知っている。それに似たゲームか」

 

「ええ、詳しい話は中にいるガイドに聞いてください。後、一度入ると中のとある場所で要石の欠片をもう一度使わないと現実へ戻れないのでその辺り注意してください。ついでに要石の欠片は消耗品ですから使うと中で手に入れる必要があります。最後ですがこのゲームはグリードアイランドをクリア済みの者向けで、さらに戦闘が得意な方用の難易度に作られています」

 

一度、言葉を区切り、目の前のお茶を啜った。

 

まあ、念能力強化用なんだから戦闘向けで構わないもんな。

 

「最もまだ、β段階なので製品版はもう少し先になりますね。そのアイテムは特別招待チケットのようなモノです。と言ってもゲーム自体は既にほぼ完成していますから問題はありませんよ」

 

β版の理由はテスターもとい、クロロたちなんかにもやらせているが、未だにピトー1人しかクリア出来た人間がいないということ内緒である。

 

あ、ピトーはホモサピじゃないからノーカンか?

 

ちなみに今、一番クリアに近いのはレイザーだな。後、坑道の3、嵐の2と3、王城の3と4、腐れの3を残すだけだ……その中の嵐の3以外の4体のボス…もとい俺の念獣が特に地獄なんだけどな。

 

「これぐらいでいいですよね?」

 

「ニャ」

 

「試験と関係のない話題で引き止めて悪かったのう」

 

「いえいえ、俺の落ち度ですから」

 

それだけ言うと俺とピトーは部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「ふぃ…」

 

ネテロは事実婚カップルが部屋から出ていったのを確認すると短く溜め息を付いた。

 

最強の剣士とは誰か?

 

その道の歴史家は遠い過去の人間を挙げる。

 

テレビとインターネットからでしか世界を知らない者は人気の天空闘技場のフロアマスターを挙げる。

 

剣を取り、日の浅い者は自らの師の名を挙げる。

 

そしてそのフロアマスターと、弟子を抱える師は揃ってある男の名を挙げる。

 

この問いを世界最強の剣術流派は何か? という問いにしても結局は同じ回答に成るだろう。

 

サウロン・ネイル…と。

 

賞金首にも関わらず"剣聖"と呼ばれ、現在、過去、未来において彼を越える剣士はいないと謳われる伝説の男。

 

そして、世界に2人だけしか扱えない世界最強の剣術流派を修得する人間でもある。

 

剣士としての誇りがあるのならばハンターであろうと犯罪者であろうと、自らの剣がどこまで通じるか是非とも手合わせ願いたいと思うことだろう。

 

彼の剣術流派自体は数千年の長きに渡り、究極の殺人剣術として脈々と受け継がれてきたモノだ。

 

だが、数百年ほど前に使い手が消え、流派自体が消滅してしまい。文献の中に残るだけの存在となってしまったのだ。

 

現存する数少ない指南書を読んだ者は10億人中10億人はこう答えるだろう。

 

"こんなものを人間にやらせようとするな"……と。

 

それほどまでにその剣術流派は人間が剣を振るうことを想定していると思えないような机上の空論をブッチギリで超えるの何かのため、実現不可能と言い切ってもいいような産物なのだ。

 

ネテロも昔、一部を読んだことがあるが、自分の拳より遥かに意味が解らなかったことをよく覚えている。

 

難易度で言えばラジオ体操第100ぐらいのレベルである。

 

だが、それを実現しようとし、実際に実現した馬鹿がただ一人だけ存在した。

 

そう、若き日のサウロン・ネイルその人である。

 

年代が古すぎる故に世界中のモノをかき集めたとしても全体の60~70%程度しか全容が掴めないであろうその文献を10代の頃に読み解き、そして研究に研究を重ね、足りない部分は自らが考案して補うことにより、僅か数年で完全に自分の剣術流派を新たに復活させ、体得してしまったのだ。

 

文献が存在しないために彼が考案した技も入っているので実質的には本来のモノからは多少外れているが、それでもこれだけでハンターなら三ツ星ハンターになれるような偉業だったりする。

 

当時の彼はただ強い者を求める幽鬼のようなモノだったため、特に関係はない。

 

つまり、彼は他に並ぶ者の無い剣士…いや、剣師なのである。

 

さらにそれだけではなく、底無しの化け物のようなオーラの総量を持ち、さらにオーラの質に関しては間近でみたネテロすら舌を巻く程だった。

 

それからピトー・ネイルという彼の恋人の魔獣。

 

彼女の単純な戦闘能力も恐らくは今の自分の倍以上の実力があることをオーラから理解した。

 

だが、何よりも彼女の恐ろしいところはその思考だろう。彼女は彼さえ居れば他を踏みにじり、擂り潰すことに何の躊躇も抱かないのだから。

 

もしサウロン・ネイルという男と本気で殺り合うとすれば戦いながらさらにあの念獣とも戦はなければいけない。 オマケにあの猫も付いてくる。

 

なんの冗談かと言いたくなるレベルである。

 

最も現在は彼の世界最強たる由縁の剣術流派の師範代の称号は1人の弟子へと渡り、ジャポンで隠居のような生活を送っているだけなのでネテロに討伐の命令が入ることは恐らく無いだろう。

 

まあ、世界の上層部から贔屓されている彼に討伐隊が編成される可能性など明日星が滅ぶ並みにあり得ないが。

 

「おっと」

 

ふと、風に流されて彼の応募してきた時のプロフィール文のようなものが空を舞い、それをネテロはキャッチした。

 

プロフィール文とは言ってもかなり簡易的なモノで試験においても特に参考になるものではないが形式上…いや、伝統として受験者が書くことになっているだけのモノであり一応、面接に持ってくるだけは持って来ていたのだ。

 

「ん…?」

 

ふと、さっと目を通すと欄のなかに妙な回答があることに気がついた。

 

いや、書くことは自体は間違っていない。

 

「ここに書くことも無かろうに…」

 

そこにはこう書かれていた。

 

 

 

特技:"アークス流剣術"…と。

 

 

 

 

 

 




サウロンさんは念の概要と発を知らなかった×
サウロンさんには念の基礎と応用だけで二十分だった⚪


その他用語解説

アークス流剣術
人間止めましたシリーズ代表格。最終奥義の滅界は一瞬の斬撃で正面の敵を粉にするぐらい切り刻む神速の面攻撃。どういうわけか壁には仁王が彫られる。逃げるには地面に穴を掘っ て潜りましょう。作中には36手中2手しか出てこないので、私が幻想世界和風ネーミングナビゲーション片手に34手を捏造します。

どうでもいいがTo LOVEるの作者が前に書いた正当派バトル漫画の流派だったりする。


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ピトーvs

おかしい…なんか更新が妙に早いように感じる…(白目)。


 

 

 

 

 

そんでもって最終試験。

 

ぶっちゃけ、俺とピトーなどからするとかなり狭い格技場の様な所に集められた。

 

1対1のトーナメント形式らしい。なんかものスゴい形のトーナメント表だな。

 

なでりなでり、もみもみ。

 

「主様、耳は止めるニャ」

 

えーと、左から43、405、53、99、301、404、42、44、403か。

 

ピトーは最初はゴンと戦って、俺はヒソカか………あれ? 面接さっぱり考慮されてないような…。

 

「耳は嫌にゃ…」

 

仕方ない…ヒソカには悪いが勝たせてもらうか。

 

「み、耳は…」

 

断る。

 

「ニャー…」

 

ん? なんだネテロ会長の説明よれば一勝すれば良いのか。なら楽勝だな。やっぱりヒソカは退場頂こう。

 

殺害失格の勝ち上がりねぇ…随分、悪どい試験を考えつくもんだな。

 

「第一試合。ピトー対ゴン」

 

「行ってきますニャ」

 

「おう、殺すなよ?」

 

「わかってますニャ」

 

ピトーは俺の頬にキスしてから黒服の審判の言葉に続き、爪を伸ばしたり、戻したりしながらゴンの前に出た。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

開始の合図と同時にゴンはボクへ一直線に駆け出してきた。

 

「うニャ、威勢の良い子は好きだよ」

 

ボクは爪を伸ばすとゴンに向けた。

 

「ただし、手加減はしないよ?」

 

もちろん、念は使わないけどね。

 

ゴンが何か言い切る前にボクはゴンの後ろに跳び跳ねて移動すると全力で脚を後ろに振り上げた。

 

早くコッチ向かないかな? うずうず。

 

「なっ…」

 

ニャんと、念無しとはいえ一応、ボクが見えるのか。

 

確かに主様とヒソカが気に入っているだけはあるね。

 

ま、それとこれとは別の話。

 

ゴンが振り向いた瞬間、ゴンの腹にボクの脚がめり込んだ。

 

ジャストミートにゃん。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「ゴンが"ボ"られた」

 

「ボってなんだい?」

 

「いや、なんかそんな凄い音がしただけ」

 

「アレを使ってないとは言えちょっとやり過ぎじゃないかな?」

 

ヒソカは視線に非難を込めて俺を見てきた。

 

ゴンが蹴られてぶっ飛んだ方向を見ると、コンクリート壁にめり込んだようで土煙を上げて見えなくなっている。

 

「アイツの息子がそんな柔な玉なわけないだろ」

 

煙が晴れると息絶え絶えだが、二本の足で地面を踏み締めるゴンがいた。

 

「ほらな」

 

普通なら即死級の一撃でも、壁への接触の寸前に適切な受け身を取れた…いや、取ったのだろうな。

 

親に似てやっぱり武道派か。

 

「これは……」

 

ヒソカの中でゴンの位置がまた上がったのだろう。口角が釣り上がっている。

 

島で食事中に聞いたのだが、自分のプレートを奪ったとの事でヒソカは偉くゴンに興味を持っているようだし。

 

よくもまあ、上位から数えた方が遥かに早い場所にいるヒソカからプレートを奪ったもんだよな。

 

「ところでだけど」

 

ヒソカは反りの強い円い曲剣を4本取り出した。うち1つには渇いた血が付いている。

 

「なんだそれ?」

 

「トリックタワーで僕に復讐してきた奴が使ってたんだ。無限四刀流と言うらしいよ」

 

「ふむ……」

 

無限四刀流ねぇ…ヒソカの肩にあった傷はそれで付けられた跡か。

 

そんな剣術流派は無いな。俺が知らないって事は我流だろう。

 

見たところ投擲用の武器、円形なのは飛ばしてから手元に戻しやすくするために見えるな。無限ってのはそれに多少の操作能力を使って確実に手元に戻らせるためってか。

 

「君なら技量だけで使えるんじゃないかな?」

 

「なるほどな」

 

とりあえず4本をジャグリングしてみた。

 

予想通りよく回る。投げれば対象を掠めながら、直ぐに手元に戻せるだろう。まあ、目の前ではピトーがゴンをボールにしてるからそんなことしないがな。

 

「…………うーん…なあ、ヒソカ?」

 

「なんだい?」

 

「これって曲芸じゃね?」

 

「やっぱり? 僕もそう思うよ」

 

「んー…」

 

ジャグリングしながら表情を変え、唸る俺にヒソカは目を向けている。

 

「28本だな」

 

「何がだい?」

 

「戦闘に支障が出ない程度にこれを回して攻撃出来る最大の数。両手で16本、両足で12本だ。それ以上はやる意味が無い」

 

「ククク…相変わらず化け物だ…」

 

そんなことをやっていると俺の顔に何かが飛んできたのでジャグリングを止めた。

 

拭き取ってみると掌が少し赤くなった。まあ、ゴンの血だな。

 

ピトーの方を見るとぶん殴られまくり、地面に伏せているゴンと、後ろに手を回し、尻尾を揺らしながら何か考えるように顎に手を当てているピトーがいた。

 

「ククク…相変わらず君の奥さんは容赦が無い」

 

「それがピトーの良いところだ。あれでもかなり手加減してるけどな」

 

「そうだね」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

試合開始から10分ほど経ったニャん。

 

ボクの目線の先にはお手玉にし過ぎてボロボロのゴンが地に伏せている。

 

加減してるけど頑丈だねー。全く参ったって言わないよ。

 

どうしよう…流石に主様ほど頑丈ではないからこれ以上は死んじゃうよ。

 

そしたら試験にも落ちちゃうし…。

 

それ以前に主様はゴンの事気に入ってるから殺したら不味いよね…折ったりとか、解剖も止めた方が良いし…。

 

そんなことを考えているとゴンがむくりと起き上がった。

 

「ニャんと…思ったより頑丈だねー」

 

「うぉぉぉぉ‼」

 

そんなことを言っているとゴンはボクへ向かって走り出してきた。

 

………………本当に人間かニャ?

 

そのまま、拳をボクに向け、振りかぶった。軌道的にボクの腹に目掛けてみたい。

 

ボクは腹にちょっと力を込めた。

 

「ッ!?」

 

ゴンの手から弾けるような凄い音が出た。

 

「にゃはは、ボクとっても硬いから気を付けてね。ってもう手遅れか」

 

虫の外骨格は伊達じゃないにゃん。

 

あーあー。骨とかグシャッと行っちゃったね。

 

オーラ纏ってなくても荷が重かったかな?

 

「仕方ないにゃあ…」

 

ボクはゴンに迫ると尻尾を伸ばし、腕を2~3周くるんだ。

 

 

"玩具修理者(ドクターブライス)"(簡易版)。

 

 

オーラを普通のドクターブライスの倍以上消費する代わりに尻尾でくるんだモノなら直ぐに治せる。

 

ま、爆発で吹き飛んだ手とかは流石にこれだと治せないけどね。

 

精孔を開かないように直すのも大変だ。

 

「え? え…?」

 

突然、腕が治ったゴンは動揺している。

 

「うーん、それなら…」

 

ボクはゴンの首に両手を掛けるとそのまま持ち上げた。

 

「ぐっ!?」

 

「少しずつ首を絞めるにゃん」

 

そのまま、2分ぐらい抵抗していたがやがて力が無くなってきた。

 

ボクはそれを確認して手を解き、下に落とした。

 

「はぁ…! はぁ……! はぁ……!」

 

ゴンは地面に手を付きながら深呼吸を繰り返した。

 

「もう一回ニャ」

 

それを確認するともう一度首を絞めた。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

現在、ピトーが目の前でゴンに首を絞めては放すという単純な作業をし続けていた。

 

既にゴンに何も言わせずに12セット目に入っている。

 

「単純な拷問だね」

 

「ああ、だが道具を必要としない拷問ならかなり、確実性がある」

 

「その分、時間は掛かるけどね」

 

呼吸の制限、或いは停止。

 

どんな痛みよりも最終的にキツい拷問だ。

 

「"まいった"って言うにゃん」

 

そう言ってからピトーはゴンを落とした。

 

ゴンは呼吸を整えてから、強い眼差しでピトーに言葉を吐いた。

 

「イ…」

 

いや、吐こうとした瞬間に再びピトーに首を絞められ、持ち上げられた。

 

「ボクが聞きたい言葉の1文字目は"ま"、2文字目は"い"、3文字目は小さい"つ"。4文字目は"た"。他の言葉なんて要らないし、聞くきもないニャ」

 

そう言うとピトーはゴンに微笑んだ。

 

「後、30セット追加にゃん♪」

 

「君の奥さんイイねぇ……ゾクゾクするよ」

 

よせや、褒めるなや。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

約2~3時間ほど拷問が続いていた。

 

よくもまあ、首の骨を折らずに気道だけを的確に塞げるもんだ。

 

この試験がどれ程残酷なものかここにいる全ての受験者は理解したようで数人を除き、一様に顔を青くしている。

 

まあ、ここまで進んできた受験者がそう簡単にまいったというわけもないな。結果がこれだ。

 

「お、おい! もういいだろ! 止めさせてくれよ!」

 

レオリオ君(なんと十代らしい)が俺にすがるように寄ってきた。

 

「俺の妻に負けろと言えというのか?」

 

「う……それは…」

 

レオリオ君は悲痛な表情でゴンとピトーを見つめた。

 

「冗談だ………………ピトー」

 

ピトーの名前を呼ぶと、俺から見ると背中が見えるピトーの動きが止まり、手からゴンがこぼれ落ちた後、両耳がピクピクと動いた。

 

相変わらず細かい動きが可愛い…いや、それは今は置いておこう。

 

「もういいだろ。それだけやって吐かないんだから1日どころか1年掛けたってまいったなんて言わんさ。ピトーだって薄々気づいているだろ?」

 

本当に頑固なところがアイツにそっくりだ。それとその曇り一つない目。

 

本当に…よく似ている。

 

「はいニャ」

 

ピトーは俺に背を向けたままそう呟くとさらに言葉を続けた。

 

「ボクの負けだね。まいった」

 

その言葉が響き、暫く会場に静寂が訪れる。

 

そしてハッとした様子で審判がゴンの勝利を告げたことでその場の空気が再び動き出した。

 

「すまねぇ…真剣な勝負だったのに…」

 

レオリオ君は感情のままさっきのことを言っていたようで今は頭が冷えたのか俺にそんなことを言ってきた。

 

「気にするな。嫌なことをノーと言えるのは大切だ」

 

「サウロンさん…」

 

まあ、ぶっちゃけいい加減俺が飽きてきただけだったりするとは口が裂けても言えないな……ん? あれ?

 

俺は隣にいたヒソカがいつのまにか消えていることに今、気がついた。

 

アイツどこ行った?

 

それはまあ、良いか…それより…。

 

「負けたニャ…」

 

そう言いながらピトーは耳をしょげさせて俺の方に歩いて来ている。

 

それをどう慰めようか思考を凝らしているとゴンが立ち上がった。

 

その目に浮かぶのは…怒りだ。よくもまあ、あれだけされた後でそんな目が出来るもんだ。

 

「イヤだ!」

 

ゴンは一言そう言い放った。

 

それによりピトーの足が止まる。

 

「こんな勝ち方…」

 

まあ、予想はしていたが…勝ち方が気に入らないとでも言うのだろう。

 

どこまでもアイツ似なんだなと半ば呆れていると次の瞬間、ピトーから少量のオーラが噴き出した。

 

まあ、この場にいる全ての人物がオーラに呑み込まれるには十分過ぎる量だろう。

 

それによりゴンは言葉を吐けなくなった。

 

そのまま、ピトーはゴンに近付いて行くとしゃがみ、頭を優しく撫でた。

 

「そう言うの嫌いじゃないニャ。でももっと強くなってからお姉さんを楽しませるんだニャ」

 

こちらからは見えないが……ゴンの冷や汗と表情、そして焦点の定まらない目から察するにピトーの瞳はさぞや殺意に満ち溢れているんだろうな。

 

………………お姉さん(1歳ちょっと)。

 

「でも君の気持ちも少しは汲み取るとするニャ」

 

ピトーがゴンを手を撫でていた手をオデコに置いた。

 

「悔しかったら天空闘技場の251階で待ってるニャ」

 

次の瞬間、爆発音のようなものが響き渡り、ゴンの頭が凄まじい速度で背中から地面に衝突し、小さなクレーターを作った。

 

デコピンLv100である。

 

そんなこんなで第1回戦はゴンの勝ち(昏睡状態)で終了した。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

と、言うわけで第2回戦。ヒソカVS俺であるのだが…。

 

「ククク……」

 

目の前にはピエロではなく、黒スーツ姿の赤髪のイケメンが立っていた。

 

もう一度言おう。黒スーツ姿のイケメンが立っているのである。

 

会場の全員が思っているであろう事を代弁してやろう…。

 

「誰だお前」

 

「ヒドイな、君は何度も見てるじゃないか」

 

まあ、そうなのだがそれとこれとは話が別である。

 

そんな事は関係無いと言わんばかりにヒソカは内ポケットに手を入れた。

 

「ククク……"コレ"を使うのは久し振りだ」

 

さらにそう言いながら"裏面が金色のトランプ"をゆっくりと取り出した。

 

さらにヒソカの片手の甲にはさっきまで無かった"Ⅸ"という番号の刺青が小さく入っている。

 

「おいおい……こんな模擬戦で"そのトランプ(ジークフリード)"は反則だろ…」

 

会場全壊するぞ…という言葉を俺は呑み込んだ。まあ、止められるのも面白くないしな。

 

俺は鞘から大型の片刃の剣を引き抜いた。

 

引き抜かれた刀身はびっしりと神字の紋様が隙間なく刻み込まれており、強度の水増しに貢献している。

 

「ククク……」

 

隠す気の無い殺気と歓喜を込めたヒソカの笑い声が聞こえてくるが、それを無視し、鞘をピトーへ投げると切っ先をヒソカへと向けた。

 

「簡単に終わってくれるなよ?」

 

「ご期待に添えるように頑張るよ」

 

「勝敗の決め方は……先に血が出た方が負けで良いか」

 

「賛成」

 

俺とヒソカが黙り、暫く静止した。

 

それでやっと審判は気付いたのか慌てて開戦の言葉が響く。

 

「だ、第二試合。サウロン対ヒソカ!」

 

次の開始の合図の直後、金色のトランプと片刃剣が交差した。

 

 

 

 




会場崩壊待った無し(確信)


~その他用語~

ジークフリード
とあるスーツ姿がトレードマークの暗殺組織のⅨ番の殺し屋に支給される世界最高の物質(オリハルコン)製のトランプ。ヒソカにぴったりな一品。前任者がどうなったのかは語るまでもない。ちなみにmade in サウロン。素材から拘った完全オーダーメイド品。


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