暴食の魔王 (練火)
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fate/zero monster
~始まり~


はじめまして。暇人練火です。

まあ、知ってる人がいると嬉しい……かな?

これは勇者ものを読んでて思い付いたので見切り発車です。


暗闇に満ちた王宮の中庭、目の前にいる勇者は金色の光を纏いながら、

 

ーーー魔王!!覚悟オオォォォォォッ!!!

 

 

俺に最後の一撃を叩き込もうとする!

 

ーーーーーフハハハハッ!!!!愚かなりッ!!その力ごと食してくれるわ!!

 

右手を前に出し、そこから出る黒渦が勇者を飲み込み始めた!

 

ズバンッ!!

 

ボトリっと鈍い音を立て、右腕が斬り落ちた(・・・・・)

 

ーーーーな、なんだと!?ーーえぇいッ!!貴様かッ!!

 

ーーーーザマアミロッ!!勇者にばっかりィ…良い格好はさせてられねぇんだよ!!

 

そこにいたのは、青く輝く剣を降り下ろした息も絶え絶えな戦士の姿があった。

 

ーーーーだが、まだだ!!この左手があ

 

叫びながら、左手を前に出そうとするが左腕が動かない。それどころか体が動かない!!?

 

ーーーー私の束縛符がやっと効き始めたのね!!

 

神に愛された巫女がその符を此方に見せ付けながら、言いきった。それに気付き、視線を周りに向けると巫女が持っていた同じような符が俺の周りを浮かぶように囲んでいた。

 

ーーーー俺様の視線誘導に漸く、気付いても遅せぇんだよバァーカッ!!!

 

大義賊の頭が嘲るように言った

 

ーーーーこ、この虫けらドモガアアァァァァアアァァアアァアアアッッッ!!!!!

 

 

俺の絶叫に勇者が叫びながら

 

 

 

ーーーーーこれで終わりだアアァァァァアアアァァアアアッ!!!!ーーーアアァァクゥッッッ!!!!

 

ーーーーッ!?

 

ズバンッ!!

 

命を懸けた神々の一撃は俺の体を袈裟斬りに斬った。

 

ーーーーお、俺の夢が……散って……行く…嫌だ。俺は…………まだ

 

ドサリ

 

視界が暗くなり中庭の冷たい土の感触が徐々に無くなっていく。

(嫌だ………死にたくない、死にたくない、死にたくない死にたくない死にたくない!!?

嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌)

 

ーーーーアーク…俺の最大の親友…どうか安らかに…眠ってくれ………

 

(ーーーだ…?アーク……ッ!?)

 

もう見えないが勇者が、俺の頭の側でそう呟いた。その名を聞くと、俺の頭の中にあった死への恐怖が薄れ、代わりに思い出すのは俺が魔王と呼ばれる前の記憶だった。

 

 

 

(ハハハッ…………こんな事になるなんてな……どこで俺は間違えたんだ…か………な)

 

 

 

遂には何も見えなくなり。

 

魔王としての俺の人生は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーハズだった。

 

 

 

「がはッ!ハアッハアッ…コレが俺のサーヴァントか………?」

 

「ほう、お主にしては面白そうなのを召喚したな。そこの、名はなんじゃ?」

 

 

 

 

 

 

「俺か……アーク。アーク・ラッド。しがないただの魔王だ」

 




ガラスのハートだから、批判があればオブラートにお願いします!!


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食事

久々すぎ~

練火だよ~(`ー´ゞ-☆


バイトで疲れたので暇潰しに上げました、


そこは間桐家の地下にある一室。

そこに間桐臓硯と呼ばれる爺さんと今にも死神が命を刈り取りそうな男、間桐雁夜が目の前に召喚された英霊の名を聞き、疑問符が頭に出てくる。

 

「アーク……?お主はランスロットでは無いのか…??と言うか何故喋れる?」

 

臓硯は困惑した。今回、この馬鹿の為に召喚の媒介は円卓の…それも最強の武人であるランスロットを更に強化するために【狂戦士】の座で呼びだしたハズである。意思疏通は出来たとしても喋るのは不可能のハズなのだ。しかも、出てきたのはランスロットでは無く、黒いローブを羽織っている聞いたこともない英霊である。

そうこう悩んでいると、隣にいた雁夜が意識を失ったのかその場に倒れた。

 

(これでは、今回の聖杯は無理も同然じゃな……)

 

ため息を吐きながら、臓硯は前にいる英霊(人形)を見ると、

 

「して…貴様はいつの英霊だ?」

 

「あー…いつのって言われると答えづらいな…」

 

アークと名乗る英霊はヘラヘラとしながら答えた。

 

「……どういう事じゃ?ーーーーーッ!!!」

 

臓硯はその態度が気に入らずに、多少苛つきながら聞き返した瞬間、背筋に寒気が走った。

 

「なぁ、それよりよ…腹ァ減ったんだが……」

 

「な、なんじゃ。貴様は人食いの反英霊であったか。カカカッ、なんとも面白そうな人形がーーーーー貴様、何をした」

 

アークについての情報を知り、臓硯は今回は舞台として楽しめそうだと思った瞬間。自分の身に起こった出来事を確認し、目の前の人形をまるで深淵の如く歪んだ双眸で睨む。

臓硯の右肩から先が鋭利な刃物で切られたかのように無くなっていたのだから。

 

 

 

 

 

 

ペチャクヂャバキュゴギリッ

 

 

 

 

 

「ーーーーーん?何とは食事だが?」

 

アークは咀嚼を止め、なんでもない風に返答する。

その口内からは赤黒くまるで生肉のようにぐちゃぐちゃになっていた。

 

「それにしても不味いな。まるで虫の魔物を食っているような味だ。お前は本当に人間か?」

 

しかも、勝手に食っておいて、文句まで付け始める始末。

臓硯は口をパクパクさせて、顔を憎しみの色で染める。

 

「き、貴様…………!!」

 

「まあ、安心しろ。俺は残さない主義だからな。髪の毛一本まで残さず食べてやろう」

 

アークは血がベッタリと付いた顔でニッコリと微笑みながら言うと、臓硯に近づき。その頭に手を置いた。

 

「では」

 

「~!?人形の分際でワシに噛みつくなど……!!!?」

 

 

 

だんだんとアークが臓硯に顔を近づけ、

 

 

 

 

「ーーーーーイタダキマス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャリッ!ベヂャッパキッジュルルッギャブリッベキベキペチャベチャ

 

 

部屋に響くのは一人の食事の音であった。



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食べ物の力

珍しく投稿しました~~

練火デース。



(ここは…………?)

 

薄暗い部屋の中で横になっている間桐雁夜は月明かりで照らされている自身を眺めた。

どうやらベッドで休んでいたようだ。

雁夜は起き上がろうとすると、背中の痛みが来た後。ベッドに服の端が引っ掛かっているのか、ピンッと引っ張られる。

それを外そうとして見てみると

 

「…………桜ちゃん?」

 

寝ている時は間桐の柵から解放されるのか、年相応の寝顔を覗かせる間桐桜だった。

 

「何で桜ちゃんがここに…………?」

 

「ーーーーーそれはそこの嬢ちゃんの部屋だからだよ」

 

雁夜の呟きに、いつの間にか真横に座っていた漆黒コートを羽織った一人の青年だった。

 

「だ!誰だお前!?」

 

「誰とは酷いなぁ。アンタが俺を呼び出したんだろ。なぁマスター(・・・・)?」

 

「お前……サーヴァントか?バーサーカークラスの…?」

 

青年は頷く。だが、実体化しているのに魔力を吸い上げている虫の痛みが来ない。

少し考え、出た結論が

 

「お前、俺の魔力を使ってないのか?」

 

「そうだが?」

 

青年は何を言ってる?と言う風に首を傾げている。

 

「自分の魔力だけで現界なんてバーサーカークラスじゃ出来ないハズだぞ?」

 

「ああ、だからガンガン魔力が減っているな。だがそれがどうした?」

 

「なっ!?」

 

サーヴァントにとって魔力は姿を表す…人間で言う血液みたいに必要な物だ。ソレを倍以上で減っているのに感想がそれがどうしたと言うだけだ。

さすがの感想に雁夜は口を開けて呆然としていたが、少し間を開けて、もう一つ訊く。

 

「………臓硯は?」

 

そう、召喚時に隣で見ていたジジイがいたならば、今ここに桜がいるハズがないのだ。

今の時間は桜の魔力を虫どもが食べる時間帯なのだから。

そう問いかけると

 

「臓硯………もしかしてあの爺さんの事か?」

 

青年はアレかぁみたいなのんびりとした口調で手をポンッと鳴らすと。

 

 

「うんーーーーー食った」

 

 

なんでもない風に答えた。

 

「…………は?」

 

まさかの返答に雁夜は口を開きそんな言葉が漏れた。

 

「いや、だから食った。でも不味かったわアレは」

 

「お、お前……ッ!?まさか俺達も食べるのか!!?」

 

「……はい?」

 

雁夜が桜をその場で庇うように抱きしめ、青年を睨む。

だが、青年はえっ?と言う顔で聞き返すのみだ。

 

「頼む!俺は食われても良いが桜ちゃんだけは止めてくれ!!!」

 

しかし雁夜は未だに気が動転しているのか、それに気付いていない。

 

「いや、食わねぇよ?」

 

「まさか、俺だけじゃ足りないのか!?」

 

雁夜は絶望の表情を浮かべながらそう言ってくる。

 

「その前に俺の話をだなぁ」

 

桜を抱きしめた雁夜は涙を流しながら、その場で正座して土下座してきた!!

 

「ーーー頼む桜ちゃんだけはッ!!」

 

「聞けや人の話ィッ!!」

 

ベシンッ!

 

「ガッ!?」

 

土下座で頭が下がっている雁夜の頭を軽くチョップしながら青年が怒った。

 

「ーーーーーだ!か!らっ!!食わないって言ってるだろ!?」

 

「だ、だが…人を食べるのだろ?」

 

「昔はな。今は人よりこっちの方が旨い」

 

そう言って青年が取り出したのはポテトチップス(コンソメ味)だった。

 

 

 

△▼(数十分前)△▼

 

アークは自身のマントで、口や顔に付いた返り血を拭い終わると、足元に倒れている男性(雁夜)に気づいた。

 

「……コイツが我のマスターか?」

 

右手の令呪を見ながら暫くどうするか悩んでいると

 

ギィィッ

 

階段の上からドアが開く音が鳴った。

 

(なんだ…上が出口か)

 

雁夜を引きずりながら、階段を上がるとそこには開いたドアとその影から一人の少女が顔を覗かせて此方を見ていた。

アークはそのドアへ近付いていくと、少女は引きずられているのが雁夜だと知り、直ぐ様雁夜に近付き安否を確かめた。そしてこちらに顔を向けると

 

「…………誰?」

 

少女はか細い声で問い掛けた。

アークは少女の目の高さにしゃがむと自己紹介をする。

 

「俺か?俺はアーク、ただの魔ーーーーー嬢ちゃん、何か嗅いだことがない良い臭いがするんだが?」

 

クンクンと鼻を鳴らしながらそう言うと少女はポケットから一つの小さい四角の何かを取り出した。

 

「…なんだソレ?」

 

「?チロルチョコ」

 

「ちろるちょこ?」

 

少女はそう答えると、包装を解き。アークに渡す。

アークはソレを近づけて臭いを嗅ぐ。甘く香ばしい臭いする。

 

「いただきます」

 

アークはチョコを口に含み、モグモグゴックンっと数秒後……

急に立ち上がり!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーー旨すぎる!!!!!」

 

 

 

 

 

 

大絶賛の雄叫びが一室に響き、部屋の壁が震えた。

 

「ーーーんだコレなんだコレなんだコレ!?口の中が全体甘い!?まさか王族限定の砂糖をふんだんに使っているのか!!?」

 

魔王と言うキャラを忘れて、素の感想を口にするアーク。

 

「まさか、これが庶民のお菓子なのか!!?人より旨いお菓子が一般的だと言うのか……」

 

暫く呆然としていた後。

少女にまだ無いかと訊くと、少女は雁夜を指しながら

 

「部屋に……運んで」

 

「了解した!!」

 

今度は引きずるような真似をせずに両腕で抱えて。少女の後を追うのであった。

 

 

 

▼△▼△

 

「ーーーーーそして、報酬に貰ったのがコイツだ」

 

バリッ‼モグモグ

 

説明を終えると、アークは袋を開け。食べ始めた。

雁夜は一通り説明を聞き終えると。

 

「食べ物の力って凄いんだな……」

 

そう漏らしたのであった。

 




すっかり地球の食べ物のに魅せられた魔王・アークでした(笑)


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匂い

テレレレーン(某青狸ポケットから)連続投稿~!!

練火デース




パクパクムシャムシャモグモグ

 

間桐のリビングで、雁夜・桜そしてアークが朝食を食べている。

 

「嬢ちゃん。ちゃんと食わないと大きくなれないぞ?」

 

食パンを少しだけ食べてどこかへ行こうとする桜にハムエッグを口に入れながら喋るアーク。

言われた桜は少しジッとアークを見た後、再び食べ始める。

 

「ーーーーーいやぁ、にしてもこの世界の料理は旨いな。これだけ食が進むのは久方ぶりだ。やはり、マスターを無理矢理起こして正解だったな」

 

アークは頬に付いたマスタードを指で舐めとりながら絶賛する。

 

「と言うかだ。お前はサーヴァントだから、食事は要らないだろ?」

 

雁夜はぶっきらぼうに言った。

それもそうだろう、彼は料理を作るために6時頃に無理矢理起こされたのだ。

誰だってそうなる。

 

「あぁ。言ってなかったか?俺は通常の英霊とは違って、人間よりの英霊なんだ」

 

「「??」」

 

アークの言葉に二人が首を傾げる。

 

「だからな?通常の英霊は飯も睡眠もいらない。召喚者の魔力さえあればここに要られるんだが……俺はそもそもこの世界の住人じゃないのが問題なのかは知らないがーーーーーなんて言ったら良いか……睡眠は別にいいみたいだが、飯で魔力を補給していると思ってくれ」

 

「つまり食べていないと?」

 

「弱体化して、最後には消滅」

 

雁夜の問いにアークは頷きながら答えた。

その答えに雁夜は呆然として、フォークを落とした。

 

「ーーーだが、安心しろ。食った恩を俺は忘れない男だからな」

 

(全然安心できないが……)

 

笑顔で告げるアークに、雁夜は冷や汗を浮かべながらそう心の中で呟いた。

 

「さて、それじゃあやりますか」

 

アークは食べ終えると、立ち上がりそう言った。

 

「いったい何をするんだ?」

 

「?何って…食物探し(・・・・)だけど?」

 

 

 

 

△▼△▼△▼

 

暗くなってきた冬木。

 

瞑想している英霊はコンテナ置き場で魔力を張り巡らして待ち構えている。

それはまるで血の滴る巨大な肉を抱えた人間がサバンナで立っている状態と同じであろう。

ただし、ソレは人間では無く。世界に轟く伝説を持った英霊であり。釣られる動物も同じ英霊であるが。

 

 

ーーーーーザッ

 

近くで足音が鳴り、英霊が目を開ける。

 

「ほぅ。どいつもこいつも穴蔵を決めているとばかり思っていたが、俺の挑戦を受けてくれる武人もいるのだな」

 

「ーーーーーくははっ!!!!そんなに旨そうな匂いを流しているんだ。我慢できるわけ無いだろぅ?」

 

目の前には黒いコートを羽織った青年

 

「おい!バーサーカー!!ここは隠れて様子見じゃなかったのか!?」

 

傍らには白髪でいつ死んでもおかしくない風貌の男

 

「なるほど、狂戦士…だが、俺の一騎討ちの場に来てくれたことには感謝を示そうーーー我がクラスはランサーだ

。さぁ、尋常に勝負!!!」

 

その掛け声と共にランサー(英霊)が走った!!



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真名

えはよー(軽く熱中症)

練火デース(ヤル気0)


急接近したランサーが右手に持つ布で巻かれた短槍をアーク目掛けて穿つ。

 

ギィンッ‼

 

アークはソレをコートの裏に隠してある一本の剣で受け流した。

ランサーは即座に防がれた短槍とは違う、左手の短槍で足元を払う!!

 

ブンッ‼

 

ソレをジャンプで避けると同時に、アークもコート裏から魔弓ボウガンを取り出し、額を狙い射つ!

 

「ハアァッ!!」

 

ブンッバキィッ!!

 

その矢は額に届く前に右の短槍に壊された。

二人は距離を取る。

 

「……本当に狂戦士か?貴様は」

 

槍を構えつつ、ランサーが問い掛ける。

 

「あぁ、正真正銘のバーサーカークラスのサーヴァントだが?」

 

アークも剣を構えつつ。魔弓ボウガンに魔力を込め矢を補充する。

 

『ランサー、騙されるな。ソイツがバーサーカーなら、会話はおろか…そんな器用に魔力使用は出来ん』

 

何処からか、木霊のような…そんな声がコンテナ中に響いた。

 

「やはり、偽クラスなのか…?」

 

「いや、だからバーサーカーだって言ってるだろう………がッ!!」

 

納得したように言うランサーにアークは呟く。と同時に矢を放つ。

ランサーはソレを弾きながら接近する。

 

「二度も食らわん!」

 

「それはこっちの台詞だ!!」

 

ギンッ!ガンッ!ギギギンッ!!ヒュッ‼ギンッ!

 

剣と短槍は何合も打ち合い、すこしでも隙を見せれば、ほぼゼロ距離で矢が、短槍が穿ち飛び交う。

 

「その器量!狂戦士のクラスなら力押しが主だが、貴様は違う!!」

 

「悪かったーーーなッ!!」

 

ドンッ‼ガッ‼

 

アークの蹴りを槍で防ぎつつ、ズザザザッと足を滑らしながら槍を構えるランサー。

 

「本当のクラスを言え!バーサーカー!!」

 

「だから!バーサーカーで正解だよ!?」

 

どう言ったら納得するか悩んでいたら、再び声が木霊する。

 

『ランサー。いつまでバーサーカー相手にいつまでモタモタしているのだ。宝具の使用を許可する……早く仕留めろ』

 

ランサーは一瞬とてつもなく悔しそうな顔をしたが、直ぐ様頷くと

 

「御意」

 

持っていた二つの短槍の布が地面へと落ちていった。そして、姿を現したのは鮮やかな赤の短槍と黄の短槍であった。

それと同時に禍々しいまでの魔力が二つの短槍から微かに漏れ出でる。

 

「……魔槍か…」

 

アークはそう呟くと、警戒を強めた。

 

 

ザッ

 

 

と同時に二人が足音がした場所を見ると

 

「なるほどね。もう戦いは始まってたみたいよセイバー」

 

「そうですね。アイリスフィール」

 

そこに現れたのはセイバーと言われたスーツ姿の男装のサーヴァントとアイリスフィールと呼ばれた白色の耐寒着を着た髪の長い女性マスターであった。

 

「ほぅ。今宵は俺の誘いを受けてくれる武人が二人もいるとはな」

 

ランサーがセイバー達を見ながら言うとアイリスフィールが強い笑みで言う。

 

「あら、無粋な英霊なのね?生憎ですけど魅了の魔術は効かなくてよ?」

 

「それはすまないな。これは生まれ持った物なのだ」

 

そんな発言を嫌そうな顔をせずに軽く笑って返すランサー。

 

ヒュッ‼ギィンッ‼

 

いきなりの矢を弾きながら此方を向く。

 

「おいおい、ランサー。余所見はいけねぇぞ?」

 

「不意打ちとは…貴様は武人では無いのか」

 

「おっ。やっと狂戦士だって信じてくれたか?」

 

再びお互いが間合いを取り始めると、

 

『ふむ……セイバーか……。ランサー、バーサーカーと一時的と手を組み、セイバーを倒せ』

 

「はっ!?何故そんな真似を!!」

 

「俺は嫌だね!せっかくの楽しい調理を奪ってんじゃねぇよ!!」

 

『どうだろうか?バーサーカーのマスターよ』

 

アークの言葉を無視して、雁夜に問い掛ける。

 

(確かに、セイバーは最優のクラス。アークがどれだけの力を持っているか判明してない段階では手を組むのは必定か…)

 

「……解った。一時的に手を組もう」

 

「ッ!!?」

 

マジかコイツと言いそうな顔で雁夜を睨むアーク。

 

「バーサーカー、ここは諦めて手を組もう。相手は最優のサーヴァントクラス・セイバーだ。いくらお前でもーーー」

 

「だからといって、人の楽しみをなぁ……ッ!」

 

ズズズズズズッ

 

アークの足元から伸びる闇が雁夜を飲み込もうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーー手を組むなら、ここに来る最中にお前が行きたいって言ってたファーストフード店に行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーさて、相手はセイバーだな?直ぐに終わらしてやる」

 

 

 

 

 

スッと闇が消失すると、アークはランサーの横に立ち臨戦態勢を整える。

 

 

「お前は……」

 

 

ランサーが何か言いたげな表情をするが、直ぐ様セイバーへと二つの短槍構える。

 

「2対1でやるんだ。代償として俺の真名を名乗ろう。ーーーーー元勇者(・・・)パーティー(・・・・)が一人。『万能魔法使い(オールラウンダー)』アーク・ラッド。よろしくな」

 

獰猛な笑みで告げるアークにセイバー陣営は大きな動揺を見せた。

 

「なっ!?聖杯戦争での一番知られたくない情報をあっさり言った!?」

 

「ですがアイリスフィール。『アーク・ラッド』『勇者パーティー』等聞いたことがありません」

 

「なるほど、嘘の可能性が高いわね」

 

アイリスフィールがアークのマスターである雁夜を見ると、彼は呆然として冷や汗を浮かべている。

 

(けど…バーサーカーのマスターの表情を見る限り、あながち嘘って訳でも無いみたい)

 

アイリスフィールがそう思っていると、目の前のランサーとバーサーカーが足に力を込め

 

「ーーーーーそれじゃあ」

 

「ーーーーー押して参る!!」

 

同時にセイバーに突撃した!!




何であの名乗りなんだと言われても。それは別の話でやりますので許してください何でもしますから~


PS
ライヴ会場って暑すぎじゃない?


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連携

久し振り~

練火デース。
バイトクビに成りましたHAHAHA


ギンッ‼ヒュッ!ギギギン‼ドンッ‼ガッ‼ギィンッ!!

 

セイバーは迫り来る赤と黄の2槍を直感で防ぎ、かわしていくが、その身の至るところにかすり傷が出来始める。

それは何故か?

答えは明白

 

 

「ーーー隙だらけなんだよッ!!!!」

 

ヒュッ‼

 

避けても防いでもその瞬間、アークの矢や剣撃がセイバーに襲い掛かるからである。

 

「くっ!」

 

ほぼ運任せで避けるセイバー、その顔に矢がかする。

一旦距離を取ろうとするが、それが出来ない。まるで、長年一緒に居たのかと思うほどランサーとアークの連携が苛烈を極める。

 

ギィィィィンンッ!!

 

 

「ーーーーーしまっ」

 

ビュオォォオオォォッ‼‼

 

セイバーの不可視の剣が赤の長槍の穂先に触れた瞬間、周囲に風が吹きすさび、中の剣身が垣間見えた。

セイバーの動揺を逃さず、ランサーとアークが自身の技(宝具名)を放った。。

 

 

 

「いけッ!《必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)》!!!」

 

 

 

ビュッ!!

 

 

 

真名解放により怪しく光る黄の短槍がセイバーの右腕に突き刺さり。

 

 

バチバチバチバチッ!!‼

 

 

「唸れぇぇッ!!《雷神の怒り(イナヅヴェリディ)》!!!」

 

 

 

ギャオンッ!!

 

 

 

同じタイミングで剣が致死の雷を纏い、下から上に左腕を切り裂いた!

セイバーは二つの攻撃で後ろの離れた所にいるアイリスフィールの場所まで吹き飛ばされていく。

 

「セイバー!直ぐに治癒を掛けるわっ!!」

 

アイリスフィールが何かを呟くが…

 

「アイリスフィール?治癒しないのですが……?」

 

「そんなっ!?治癒は既に掛かってるのよ!?」

 

セイバーの足元は血で濡れ始めている。アイリスフィールは何度か治癒をセイバーにかけるが、一向に左腕、右腕は回復しない。

 

「セイバーのマスターよ。それ以上の治癒魔術の無駄だ」

 

「……まさか」

 

ランサーの発言に、セイバーはこの傷がどういう事か気付いたようだ。

 

「……治癒阻害の呪い・魅了、二つの魔槍ーーーーーランサー、貴方の真名は輝く貌のディルムッドだな!!」

 

「ほう、この短い時間で俺の真名までたどり着くとはな。だが、俺もお前の真名が見えたぞセイバー……いや、アーサー王と呼ぶべきか?」

 

そう呼ばれ、セイバーは素知らぬ顔をしたがその背後にいるアイリスフィールはほんの少し動揺を見せてしまった。

 

(ふむ……アーサー王ねぇ。知らないから後でマスターか嬢ちゃんにでも訊くとしよう。なのでさっさと)

 

「終わらせる!!」

 

シュッ!!

 

アークが持っていた剣をアイリスフィールに向け投擲するが。

 

「甘いっ!ーーーーーなっ!!?」

 

その剣を蹴りで弾く。

 

「甘いのは貴様だ!セイバー!!」

 

「これで終わりってなぁッ!!!」

 

と既にランサーの赤の槍と何処に隠していたのかアークの二本の長剣が眼前にまで迫っていた。

 

(これは!かわせない!なら)

 

セイバーは剣で防ごうとするが、腕の反応が通常より遅い。

 

(くっ!間に合わない!)

 

諦めそうになった瞬間

 

 

 

 

 

 

 

バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「AAAAAAAAAAAAAAAALALALAAAAAAAAAAAAAッ!!!!!」

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

直感でランサーとアークがバク転のようにセイバーから下がったと同時に、二人の立っていた場所へ雷と共に一台の大きな戦車(チャリオット)が通り過ぎた。

 

「誰だ貴様!!」

 

ランサーが黄の短槍をその操り手である英霊に向け問いかけた。

朱のマントに赤髪の大男は剣を空に掲げて

 

 

 

 

「我こそはマケドニアの王にして征服王・イスカンダルッ!!!ーーーーーこの勝負、一旦中止させて貰うぞ?」

 

アーク達とセイバーの間に降り下ろした。

 

「って…何真名を言っちゃってんですか!?!!?この大馬鹿はああぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!」

 

その腰元で喚き始める青年がいた。



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逆鱗

ヤフー!

正月元旦投稿は出来ないと思うから早く言うよ

明けましておめでとう!!!

練火デース


アーク、ランサーとセイバーはイスカンダル(もしかしてライダー?)と名乗る英霊を見ながら、呆然としていた。

イスカンダル(多分ライダー)は腰元でポカポカと叩いているマスターらしき青年に。

 

「何真名を口走ってんですかァァァッ!!!?ライダー!!?」

 

「えぇぃ。余のマスターなら少しはしゃんとせんか坊主」

 

「あがっ!?」

 

ベシィッと重い音と共にデコピン一発でダウンしたイスカンダル(決定ライダー)のマスター。

 

((((…………うわぁ))))

 

ここにいる全員がそう思ったに違いない。

 

「あ~……で?なんだ?ライダーは戦闘を中止させていったい何がしたいんだ?」

 

アークがそう訊くと、ライダーはそうであったとばかりに口を開き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お主等、余の配下にならぬか?」

 

 

ピシリッ

 

 

「「「……はい?」」」

 

 

ーーーーーここ一帯の空気にヒビが入ったかのような音が聞こえた。

少しどころか息をするのも辛いと錯覚するほどのドロドロとした重苦しい静寂の中、アークが剣を納め。口を開いた。

 

「……なぁ、マスター。俺の聞き違いか?いま、アレは何て言ったかなぁ?」

 

苦笑いで訊かれた雁夜は何も言えない。いや、言った瞬間……確実に喰われる(殺される)

そう思えるほどの激烈な怒気を放つ三人の英霊にこの場にいるマスター達は生唾を飲み込み、この場所から今すぐに逃げたしたい気持ちを抑えた。

それもそうだろう。セイバー陣営は知らないが、此方は後ちょっとで仕留めるチャンスだったのだ。しかも、止めた理由が尚更酷い。

 

「なに、条件は応相談で約束するぞ?どうだ?」

 

ライダーはそれに気付かず笑顔で話し続けている。

 

「「「断るッ!!」」」

 

三人は己の武器をライダーに向け吼えた。ライダーはむうっと唸りつつ

 

「…………厚待遇でも駄目か?」

 

「くどいぞライダー」

 

「これだから王様って奴は……!」

 

「俺の忠義を甘く見るな」

 

セイバー、アーク、ランサーの順でしょんぼりしているライダーに告げる。

 

「ってライダー。真名を言った理由はもしかしてこれだったのか?」

 

「そうだったのだがなぁ、いやぁ。失敗したわい。ガッハッハッハッハッハッ!!!」

 

「笑い事じゃ無いだろうが!?」

 

「いやぁ、物は試しと言うであろう?」

 

豪快に笑うライダーに怒るマスター。するとアークも含み笑いをしながら、

 

「そうかそうか。なら、用事も済んだんだよな?」

 

 

ピシリッ

 

 

「おう。もしや、考え直してくれるのか?」

 

 

ピシリピシリッ

 

 

アークの近くにいたランサーが大きく距離を取る。

 

「寝言は寝て言え」

 

 

ピシリッピシリピシリッ

 

 

「さ…寒い。バーサーカー。いったい何してるんだ?」

 

白い吐息が雁夜、アイリスフィール、ライダーのマスターから漏れ出る。

 

「それとも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリビキビキビキビキビキビキッ!!

 

 

 

 

「ーーーーー俺が眠らせてやろうか?」

 

アークの背後縦横20メートル範囲で矢の形をした氷柱がライダーに向け、空中で待機している。

 

「ほう。バーサーカーでそれほどの魔術を使うか…」

 

「消え去れ……《氷神の()》」

 

「ーーーまあ、まだ用事もまだある」

 

その言葉にアークは詠唱を止めた。

 

「お主等は気付かんかったのか?これだけ派手に闘っておれば、他にも見物人がいるであろう?」

 

その言葉に、アイリスフィールが内心焦った。

もしや、切嗣が隠れ狙っているのがバレたのでは無いかと。だが次のライダーの発言で

 

「情けない、情けないのぅ!!この聖杯に導かれた英霊豪傑どもよ。誇るべき真名…後世に語られた真名を持ち合わせておきながら、覗き見しか出来んのか?腰抜けだわなぁ。英霊が聞いて呆れるわ。んん!!?」

 

ホッと一息する。

ライダーは挑発的に周囲の闇を見ながら、堂々と叫ぶ。

 

「聖杯に招かれし英霊は、今ッ!!!ここに集うがいい。それでもなお!…顔を見せぬ臆病者はこの征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」

 

その叫びはコンテナ中に響き渡り、地面が微かだが震えている。

ライダーの山彦のような余響がちょうど消え去る中、

街灯ポールの上から一体の英霊が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

(おれ)を差し置いて、王を名乗る不敬者が一夜のうちに二匹」

 

黄金の鎧を纏う英霊はそう言いながらセイバー、ライダー。そしてアーク(・・・)を見ながら

 

「ーーーーいや、三匹居るとはな。しかもそこの雑種に至っては反英霊ではないか。差し詰め魔王(・・)と言ったところか?」

 

その発言にアークは内心聞きたくも無い名に苛立ちが募った。離れた所にいる雁夜は何でと言う顔で黄金の英霊を眺めている。

 

「ほう、なんだバーサーカーよ。主も王であったのか」

 

「魔王……」

 

ライダーとセイバーが此方に視線を向け、そう呟く。

 

「だが、真の英雄たる王は天上天下この我しか居らぬ。後は有象無象の雑種にすぎん」

 

「そこまで言うなら名乗れよ金ぴか。まあ、名乗ってもお前の名は一切知らねぇがな」

 

アークが背後の氷の矢が一斉に黄金の英霊に向けられる。

 

「……我を知らぬと言うか?」

 

感情の無い声がアークに問いかける。アークもニッコリ笑顔で返答する。

 

「あぁ。全く。絶対知らないと豪語出来るね」

 

「貴様………万死で償え」

 

黄金の英霊の背後から虚空と共に剣や槍等、その数十数の武器が黄金の英霊の言葉と同時に射出された。

 

「こっちもよ。聞きたくねぇ名を聞いて機嫌が悪ぃんだ。ーーーさっさと失せろ《氷神の嘆き(シディスピア)》!!!」

 

アークも三十ある氷の矢が黄金の英霊に向け一斉に発射される。

剣と槍の投擲は氷の矢とぶつかり合い、お互いの近くに落ちてこない。

 

(これ以上はマスターの魔力を使う必要があるか……)

 

アークは苦虫を噛み潰したような顔つきに成りながら、氷の矢を止めた。

瞬間、アークに剣と槍の爆撃が襲い掛かる。

 

ドドドドドドドドドッ!!!!

 

「アークッ!!!!」

 

雁夜が爆煙の中、自分の英霊(サーヴァント)の名を叫んだ。

 

「王と言ってもやはり有象無象か……ツマラヌ」

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーだったら、そのまま脱落(リタイア)しとけ」

 

アークが黄金の英霊の背後で銀の大槌を降り下ろした。

 

 

「ッ!!」

 

ズドォンッ!!!

 

黄金の英霊は直ぐ様前方に回避し、立っていた街灯ポールを粉砕した大槌の一撃を避け、地面に降り立った。

 

 

「貴様ァ……天を仰ぎ見るこの我を、同じ大地に立たせるかッ!!」

 

「俺は平等主義者でね、アーチャー?それともキャスターかな?」

 

嘲りを込めた目で笑顔で告げるアーク。

 

「我をあんな陰気な痴れ者と一緒にするな雑種ッ」

 

(という事はアーチャーかコイツ)

 

怒りに滲むアーチャーの双眸がアークを射抜くが当の本人は何処吹く風の如く耳をほじる。

 

「もはや肉片一つ残さぬぞッ!!」

 

アーチャーの背後に輝く宝具がついさっきよりも更に増える。

 

「だったらその前に喰い尽くしてやるよ」

 

ざわりっとアークを纏う空気が変わり、ついさっきよりも重苦しく身の毛よだつ程の殺気が垂れ流れる。

まさに一触即発の空気に二人以外の全員が唾をのむ。

 

 

「ッ!貴様ごときの諫言で、王たる我の怒りを静めろと……?大きく出たな、時臣ッ」

 

アーチャーのマスターの名に雁夜の目が変わる。

アーチャーは忌々しげにアークを一瞥すると、虚空に浮かぶ宝具が一斉に消え去る。

 

「命拾いしたな…平等主義者」

 

「そりゃどうも」

 

アーチャーはそう言うとそのままその場から消えていった。

 

「マスター。俺たちも引くぞ」

 

アークも雁夜の場所まで歩きつつ言うが、雁夜は少しボーッとしたあと、頷いた。

 

「……そうだな」

 

「帰りはあそこのファーストフード店だったよな?な!」

 

「開いてれば良いな……」

 

「よし、急ぐぞマスター」

 

アークが雁夜の肩を叩いたと同時に足元の闇から呑み込まれて消えた。

後に残ったのたサーヴァント達も一人、また一人と消えていった。

 



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約束

明けましておめでとう!!!!

練火デース!!

今年もよろしく!!

ってこれ、前話でも言ったか(笑)


「♪~♪♪~♪♪~」

 

ホクホク笑顔で間桐の家へと帰路を進むアーク。その両手にはファーストフード店のビニール袋の中身をパンパンにして(今日の夜と明日の朝の分三人前)歩いていた。

 

「今日はこれ食って~。明日の朝はコイツで~。あああぁぁッ!!こんなに楽しみな時間は生まれて初めてかも知れないなぁ!なぁマスター!!」

 

「そ、そんなに喜ぶ事なのか?」

 

雁夜がその喜びように多少ひきながら言うと、アークは雁夜の方を振り返り、

 

「あったり前だ。俺の世界ではこんなに旨そうな物は一度たりとも見たことがない。だからこそ楽しみで楽しみで楽しみで仕方がないんだよ♪」

 

周りから音符やら花やらが出てるかと思うほどの上機嫌さで告げ、そのまま、鼻唄を歌いながらまた歩き始める。

 

「なら、良いんだ…。だけど、こんなことしてたら誰かにつけられてるか不安だな……」

 

「♪~♪♪~うん?ーーーだったら安心して良いぞマスター?そんな気配は全く無いし、今の俺たちの姿は魔術適性がある奴には視認されにくいように成ってるからな」

 

鼻唄を止めてアークはそう言った。

 

「……どうやってだ?」

 

問い掛ける雁夜にアークはうん?っと首筋をポリポリと掻きながら

 

「どうやってって…そりゃあ魔法でだが?いや、アイツのアレは魔法なのか?……神符術だったか?あの酒好き巫女は『超巫女魔法』って言ってたが…まあ、そんな魔術だ」

 

「それ聞いてるとクラス・バーサーカーって何なのか解らなくなるな」

 

苦笑いしながら雁夜はそう呟くが、アークは

 

「なに、今は(・・)コッチ(・・・)側にいるからな、それなりに細かい魔法は使えるさ。だけど。クラスに引っ張られてるのか、魔法の方も通常より結構ランクダウンしてるけどな?」

 

(アレでか……)

 

雁夜は空笑いを溢しながら、アークの横を歩いていく。

間桐の自宅(拠点)へと帰り、雁夜達と飯を食った後、アークのスペースとなった地下室のドアを開けると

 

「?坊主、お前は誰だ?」

 

「ーーーなぁ、英霊なんだろ?魔術使えないのか?」

 

目の前に青色の髪をした坊主が、緊張してたのであろう。膝を震わせて、アークを指しながらそう訊いた。

 

「いや、使えるは使えるが……どうした坊主?」

 

「僕は坊主じゃない!間桐慎二って言う立派な名前が有るんだぞ!!」

 

「んで?その坊主が何の用だ?」

 

間桐慎二と言った坊主はまるで藁にでもすがり付くかのような目で

 

「ーーー僕に魔法を教えて下さい!!」

 

「…………はい?」

 

アークは呆然とした感じで聞き返した。

 

「僕は…魔術の才能が全く無いって言われた。ーーーだけど!!たったそれだけの理由で簡単に諦められないんだよっ!!」

 

「それで、召喚された俺なら魔法が使えると…?」

 

アークが重々しくまるで闇のような声で問うと、慎二は真っ直ぐな目で頷いた。

 

(…それだけ本気って事か)

 

慎二の覚悟を見たアークは一つ頷き、慎二の肩に手を置きながら言った。

 

「なら、俺が聖杯を取ったらその後に魔法の練習をしてやるよ」

 

「本当にっ!?」

 

「ああ。その代わり、あんまり悪いことはすんなよ?魔法の質はソイツの行いによって変わるからな」

 

慎二は何度も頷くと、

 

「絶対に!絶対にだからな!!」

 

「解ったから。さっさと帰って寝とけ」

 

大声で何度も言いながら帰っていった。

誰もいなくなった部屋で、

 

「今度は間違えないようにしないとな……」

 

アークの呟きが地下室に消えていった。




ちょっと今から慎二改造(仮)ってタグ入れてきます(苦笑)


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覚悟

久々の~こんばんはー!!!

朝だけどっ!!!

練火デース!!!


『ーーー冬木ハイアットホテル爆破事件は未だ詳細は掴めず、警察ではテログループによる犯行ではないかと捜査を』

 

プツンッ

 

雁夜がフライドポテトを摘まみながらテレビの電源をリモコンで切った。

 

「物騒な世の中に成ったな……」

 

「その物騒な戦争の真っ只中にマスターはいるけどな。どうだ?旨いよな?」

 

同じくフライドポテトを桜に食わせるアーク。

 

「うん、おいしい」

 

サクサクサクとリスのようにポテトを食べる姿に二人はふんわりと和みながら会話を続ける。

 

「でだ、話を戻すが。マスター……言いにくいが、このままだと負けるな。自滅で」

 

それまで、二人の間に有った和みの空気は少しだけ重くなる。

 

「……魔力が足りないのか?」

 

「一番の問題はそれだ。マスターは…雁夜は魔力が少ない。俺が本気で戦闘をしたらーー」

 

そこで、紙コップに入ったジュースを飲み。

 

 

 

「ーーーーー一分持てば上出来だ」

 

 

真剣な顔つきでそう告げた。

 

「……やっぱりか」

 

雁夜は顔を伏せながら、そう呟いた。

解ってはいたのだろう。いくらアークがあの時臣が召喚したアーチャーより強く最強だとしても、その分の消費量や何かしらの害が来なければおかしいと言うもの。

 

「ーーーーそれでも、俺は勝たなくちゃいけない」

 

不安そうに雁夜を見る桜の頭を撫でながら、決意の籠った目でアークに言う。

 

「爺との約束?…違う…時臣を見返すため?……それもあるが違う!」

 

桜は邪魔なのかと思い、部屋から出ていった。

 

「俺は桜ちゃんの人生を今度は間違った所(間桐)に来ないようにーーーーー幸せにさせるために聖杯が必要なんだ……!!」

 

「……お前の勝手で人の人生をやり直させると?」

 

アークから歪な気配が漏れでる。

 

「どれだけ最悪で最低な事かは解ってる!だが!それでも!!桜ちゃんみたいな幼い娘が糞みたいな(間桐)家に養子に出され、そこで辱しめられるなんてそんな人生…!無いじゃないか……ッ!!!」

 

ドンッと机を叩きながら、雁夜はアークを見ながら血を吐くように叫ぶ。

その目には涙がツゥッと滴り落ちる。

 

「もう後戻りは出来ない。桜ちゃんはもう心に深い傷を負ってる。俺は間桐の秘術で時間が足りない。このままだったら桜ちゃんは遅かれ早かれ感情を持たない人形に成ってしまう……それに桜ちゃんを遠阪家に戻しても、時臣が他の魔術家に養子に出すのは目に見えてる」

 

「それであの娘の人生を…か」

 

アークの問いに雁夜は頷くと、アークは片手で自分の額を押さえながら、ため息を吐く。

一言で言いきった。

 

「馬鹿だよマスター」

 

「んなっ!?」

 

「うん、馬鹿だわ」

 

「な、なんだと!!」

 

いきなりの言葉に雁夜はアークの胸ぐらを掴み睨みながら言うが、アークは額を押さえたまま続けた。

 

「だったら、自分の寿命を延ばすでも聖杯を心臓代わりにするのでも良いだろうが?」

 

「そ、それは…」

 

「思い付かなかったのか……」

 

「う、うるさいよ!」

 

雁夜の顔が赤くなり、胸ぐらを掴んでいた手を放す。

 

「まぁ、雁夜が何処まで本気で命懸けなのかは充分理解した。その上で問う。ーーー今すぐ死ぬ覚悟はあるか?」

 

「……どういう意味だ?」

 

「俺が今からとある禁術魔法の一つをその身に刻み付ける。まぁ、焼き付け刃だから通常の三割しか効果は出ないハズだが、この先の戦力にはなるだろ」

 

「禁術……」

 

ゴクリと雁夜が生唾を呑み込みながら、呟く。

 

「あぁ、使いすぎれば廃人確定の魔法だがな…だが多大な戦力になり、しかもすぐに使えるとすればこれだけだ。後はマスター……アンタ次第だ」

 

まるで悪魔の取引のように重苦しく、そして蜘蛛の糸のような希望とも似つかわしい何かが雁夜を誘う。

 

「俺は…」

 

雁夜はギュッと目を瞑り、か細い声で答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「受けない。すまないアーク。俺には…出来そうにない」

 

申し訳なさそうに答えた。そして目を開け、アークを見ると

 

「了解したマスター」

 

アークが笑顔でそう頷いた。

 

「なっ。お前は、怒らないのか?」

 

「何、これはテストだからな。ここでアレを受け入れるようなら、わざと失敗させて廃人か殺すつもりだったからな」

 

その発言に雁夜はゾッとした。

 

「だが、そこまで執念に囚われてても、まだやってはいけない線を解っている。俺は雁夜がマスターで良かったよ」

 

そう言って、アークはマント裏の懐から一つのネックレスを取り出すと、雁夜に渡した。

 

「これは……?」

 

「これか?これは魔法具だ。この宝石にはとある魔法が入ってて、トリガーである呪文を言うと発動する」

 

そう答え、アークは雁夜の耳元でその呪文を囁き

 

「それじゃ、俺は外へ散歩に行ってくるから。雁夜はちゃんと休んどいてくれよ?」

 

そう言い残すと、その足で外へと出ていった。

 

「見ててくれよ桜ちゃん…俺は、俺は絶対に……」

 

後に残る雁夜の呟きは空へと消えていった。




ちなみに雁夜に禁術が授かっていたら禁術魔法暴走ルートで冬木消滅があり得ました(笑)


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守護霊

久々のー

練火デース!!

下痢と嘔吐が止まらない(テヘッ☆)



外へと出たアークは、空中に文字が書かれた札を十数枚ばらまき。それに魔力を流す。

すると、ヒラヒラと重力に引かれ緩やかに落ちていこうとしていた札が、その場で停止して。次の瞬間。

 

ヒュッ

 

 

パッ

 

 

淡い光と共に空高く天に登り、四方八方に飛んでいった。

アークはパンッと両手を合わせると、その両手を地面に置き

 

「《巡れ(マイグレフ)巡れ(マイグレフ)我が目から逃れる術無し(弱)(エスキフィーヤ)》」

 

緑の光が両手を中心に波状と成って拡がる。

その光は徐々に…ついには冬木全土へと拡がっていった。

 

(……1,2,3,4,5…おかしいな。一部に阻害がかかってやがる。多分、そこにも一体で合計6つ)

 

「行くとするか」

 

アークは反応が有った場所へと歩きだした。

 

 

△▼

 

「さて……これで五つ目だな」

 

メモ帳の空欄に文字を文字を書き込む。

 

【教会…アサシン

時臣家…アーチャー

人家…ライダー

廃ビル…ランサー

森…セイバー】

 

(場所だけでも解れば、対策はしやすいな…)

 

「後はキャスターの陣調べ…か…」

 

空は暗く、早く終わらそうと思い。キャスターの痕跡が有った場所へと歩いていった。

すると、

 

トテトテトテ

 

キョロキョロ

 

トテトテトテ

 

路地裏にて魔力の痕跡を辿っていると、その道中にツインテールをした少女が動いては周りを見て、手に持った何かを見ては動き出しと、何やら不審な動きをしていた。

 

(この時間に少女だと?いったい親は何処に目をーーー)

 

そう思った直後、少女の少し先の暗闇の道から

 

「はい。ちゃんと着いてきてね君たち」

 

一人の青年とその後に続く、虚ろな目をした少年少女が群れを為して、青年の後を追う。

 

(あれは……洗脳魔法か?)

 

アークが少年少女の状態を見ていると、先ほどいた不審な少女が、その集団の後を追い始めた。

見なかったことにして、キャスターの陣探しを再開しようと思ったアークは不審な少女と少年少女達の群れとは違う方へ歩き出す。が……

 

「やっぱり……寝覚めが悪いわな」

 

数歩進んだアークはため息を吐き。踵を返すと、少年少女達の群れを追い始めた。

そして、直ぐ様追い付くと霊体化をして。ツインテ少女の背後に忍び寄る。

 

(この少女の手の中の羅針盤…コレは魔道具の一つか。形から見るに探知系?)

 

その魔道具を観察していると、二人の前を歩いている青年と少年少女が一つのダイニングバーの中へと入っていった。

 

「ここにあの娘が…」

 

ツインテ少女が生唾を飲み、意を決したように中に入っていく。アークも霊体化しながらそれに続く。

中は店が元々潰れていたのか、食器やらサーバーやらに埃が溜まり。床や机も汚く汚れている。

そこには青年の姿は無く、少年少女達はその場で立ち尽くしているだけだ。

ただ、この空間は狂気…いや、度し難い程の闇が部屋に蠢く。

 

「ッ!コトネッ!!何処にいるの!?」

 

ツインテ少女は我慢(恐怖)の限界であったのだろう。

歯をガチガチと鳴らし、それを誤魔化すかのように少年少女達の群れに入り込み、友達の名を呼ぶ。

だが、ツインテ少女は既に気付いているのであろう。この部屋に入った時から……

 

 

 

 

ーーーーー友達は既に■と化している事に……ーーーー

 

 

 

その考えが更に、ツインテ少女を動かす。

少女達の顔を一人づつ見ながら、友達の名を叫ぶ。

しかし、最後の一人を見て。

 

「そんな…」

 

ツインテ少女はその場に膝をついた。

そして、諦めた瞬間。

奥のドアから先頭を歩いていた青年が出てきた。

 

「あれっ?おっかしいなぁ~?旦那から貸して貰ったコレが切れたのかな」

 

青年はツインテ少女を見ると、自分のネックレスを触りながらそうぼやいた。

 

「でも…他はかかってるみたいだし。となると後をつけられたってことか」

 

あちゃーっと言うような感じで青年は気軽に自分のミスを呟くと、少女にやさしい笑みを浮かべて

 

「ねぇ君。一人でこんなところに来ちゃダメだよ~?ここには旦那と言う悪魔がいるんだから…って言っても、君もその芸術の一部になるからいっか」

 

「…(るな)……」

 

「ん?何だって?」

 

青年がツインテ少女の言葉を聞こうと、近付き、耳を向けた瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー許さないッ!!!ーーー」

 

 

 

 

ボォンッ!!!!!!

 

 

 

 

ツインテ少女が持っていた羅針盤に膨大な魔力を注ぎ込み、暴発させたのだ。

青年はテーブル等を巻き込みながら吹き飛ばされた。

ツインテ少女は一気に魔力を消費するのが馴れてないのか、気絶している。

 

「痛っ~、いきなりはビックリしたぁ」

 

青年は立ち上がり、気絶しているツインテ少女を見ると。

 

「そうだ…この子は今作ってるアレの材料にしよう♪」

 

ツインテ少女に近づき、その手を掴

 

 

 

ガシッ

 

 

ーーーーむ前に、その腕が別の手で掴まった。

 

「あん?」

 

青年はその手の出所を見ると、その後ろには黒マントを羽織ったアークが笑顔で見ていた。

 

「アンタは英霊かぃ?」

 

「いやなに…ただの…ーーー少女の守護霊さ」

 

短い呼吸と共に青年の顔面を殴った。

 

ドゴォッ!

 

「ぐっ!!?」

 

青年は壁まで吹き飛ばされ、そのまま気を失った。

 

「さてと……警察を呼んで、この子等をどうにかしないとな。だが」

 

ーーーこの娘は雁夜の所に運ばないと…。

 

ツインテ少女が友達を探してる間、アークは念話で雁夜と会話していたのだが。どうやらこの娘はアーチャーのマスターの娘らしい。

本当なら、もっと早くに助けるハズが会話に手間取り。ギリギリ間に合った感じだ。

アークはため息を吐きながら、少年少女達を大通りの場所まで移動させると、天空に超巨大な火を放った。

 

「……ふうっ。これでもう大丈夫だろう。遠くから足音が大量に聞こえてきたし…行くとするか」

 

アークは気絶して眠っているツインテ少女を脇に挟み込み、ビルの屋上から屋上へと帰路へ向かっていった。

間桐邸にたどり着くと、雁夜が後は俺に任せてくれと言いながら、ツインテ少女を背負いながら何処かへ歩いていった。

アークはその背を見ながら、

 

「本当…子供は苦手なんだよな…」

 

生前の自分を重ねるのであった。

 

 

 

 




専門学生にインフルエンザが広まってきてる是よ……みんなも気を付けてね?



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二騎

お久しぶりです


練火デース!!!(´・ω・`)


新しいバイト先決まったぜー!!
……1ヶ月持てば良いけど(ボソッ)


教会の中は、窓や入り口からの光のみでほの暗くなっている。祭壇の前には神父服を着た一人の老人が視線の先の暗闇に向け、口を開く。

 

「それでは、暫定的なルール変更の内容は言った通りだ。何か質問がある者はこの場で言いなさい。まぁ、そこのサーヴァント以外は無理だがな……」

 

「ルール変更…か」

 

長椅子に座りながら、アークは口を開いた。その手には撮影状態のビデオカメラが握られている。

その周りにいた鴉や鼠などの動物は一斉にその場から去っていった。暫定的なルール変更での対象である、キャスターのマスター・雨竜龍之介を殺す(倒す)為に

 

「君は行かなくて良いのかね?」

 

神父であり今聖杯戦争の監督役である言峰漓正は未だに席を立たないアークに向け問う。

 

「なに、俺は俺で聞きたいことが有ってね」

 

「ほぅ。聞きたいこととは?」

 

欠伸混じりに答えるアークに漓正は更に訊いた。

 

「なに、簡単な質問さ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーー中立がなんでサーヴァント(アサシン)を持っている人間を匿っている?」

 

 

先ほどまで欠伸混じりで、どうにもやるきが無さそうだった目の前のアークがまるで鷹が獲物を狙い殺すような視線が漓正を貫く。

 

「……何の事かな?」

 

「惚けなくても良いぞ?神父」

 

話が解らないと言う風な顔をする漓正にアークは何の感情を見せずに続けた。

 

「いやいや、誤魔化さなくて良いぞ?俺の探知魔法には俺を含めて()騎の魔力(英霊)反応が有るからな、だが、それだとおかしいんだよな…だってよ。俺のマスターが言ったんだわ。アサシンは俺が召喚される少し前に、敗北(消滅)したってなぁ」

 

その言葉と同時にアークの足元から槍の形を模した氷柱が出現し、アークの背後に伸びた。

 

ズチャッ!

 

「グギャッ!」

 

そこには、一人のどくろの仮面を顔に縫い付けた黒い男が自身の左腕に刺さった氷柱を引き抜こうとしていた。

 

「じゃあこれは、いったい何なんだろうな?」

 

「そ、それは…」

 

漓正が弁解をしようとした瞬間、アサシンの腕に刺さっていた氷柱がその身を無数に突起させ、アサシンの体を貫いた。

アサシンであったズタボロな何かは光の粉となり消えていく。

 

「ちなみにだがーーー嘘を言ったと判断した場合と不用意に動いた場合……今みたいな事になるから、確実に正しい判断を期待するよ」

 

その言葉に漓正は生唾を飲み、冷や汗を流す。

当初うやむやにしようと考えていた自分を叱咤したい気持ちで一杯だ。そう、目の前にいるアーク(英霊)は何かしらの嘘を見破るスキルでも持っているのだろうか?

そうだとしたら、正直に答える以外に道は…

 

「……だ、だとしたら。君は何が知りたいのかね?」

 

精一杯の平静を装いながら、アークに訊くと。

 

「何、ちょっとばっか教えてほしいことが有るだけだ」

 

そう言うと、アークは三本指を立てて、

 

「一つは今回のターゲットである雨竜龍之介の拠点場所、知ってるんだろ?」

 

漓正は頷いた。

 

「二つ。アサシンの真名はどうでもいいから、その特性だけ教えろ」

 

漓正は渋々だが頷いた。

 

「三つ。アサシンは俺とマスターに対し一切の攻撃行動をするな」

 

漓正は頷…その場で止まった。

 

「そ、それは……」

 

「出来るだろ?なんせ神父、アンタは監督役でありながらアーチャーのマスターである遠坂と手を結び、その同盟関係であるアサシンのマスターまで匿って騙してるんだ。コレがバレたらどうなる?」

 

漓正が想像するに、アーチャーとアサシンを倒すために全英霊が手を結ぶ率が高い。

 

「概ね考えてるのは、俺を含めたサーヴァント達がそちらの2騎のサーヴァントを殺さ(倒さ)せるーーーーー俺が確実にそう仕向けるからよ」

 

そう言うアークの声は冷めきって聴くもの全てを萎縮させた。するとアークはついさっきとは一転して笑顔になり

 

「まぁ、そう縮こまるな。俺達に対し…だ、他はどうでも良いんだぜ?こんなにも解りやすい道は無いだろ?なぁ?」

 

「解った……約束しよう」

 

顔を下に向け、断腸の想いで呟く漓正。

この時顔をアークに向けていたら、さらに心が折れたであろう。

なんせーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「懸命な判断を有り難う♪」

 

ーーーーーこんなにも歪で狂喜に満ちた笑顔で声無く笑う姿なのだから……。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

時刻は昼過ぎ。

アークは漓正から教えて貰ったキャスターの拠点へ向かうべく、下水道を歩いていた。

 

「通りで解らないはずだ。地下にあったのかよ」

 

「まぁ、それだけの殺人犯だからな」

 

昨日調べた時は交番裏の空き地で反応が有ったためにお手上げだったのだ。

 

「それにしてもすべて、使い魔しかいないのか?」

 

雁夜が下水道に浮かぶ、千切れた蛸のような生物を見ながら歩を進める。

 

「マスター。どうやら着いたみたいだ」

 

アークがそう言うと、雁夜は視線を前に向けた。すると、あまりの異臭に目を背けたくなる。

 

「な、なんだこの匂い…」

 

雁夜はそう言いながら、何か情報になるものはないかと下水道の広い部屋を動きだそうする。

 

 

 

 

 

 

 

グチャッ

 

 

 

 

 

 

 

 

「……グチャッ?」

 

「マスター。下を向くな。何も見るなこっちに戻ってこい」

 

アークが重そうな声で雁夜に忠告を出すが遅く、

 

 

 

 

 

「……なぁ、バーサーカー……これ、肉…血?…ッ!ウワァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアァッ!!!!!?!!?!!!?」

 

 

雁夜が踏んだものを手に取り、それに携帯のライトを当てると絶叫しだした。

そう、雁夜が踏んだものは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ桜と同い年くらいの少年かも少女かも分からぬグチャグチャに切り裂かれた顔の皮(・・・)であった。

 

「マスター、落ち着け」

 

アークが近づいて声をかけるが、雁夜は短く粗い呼吸のまま、取り乱している。

 

「ハァハァハァハァッーーーあ、アーク!?か、皮、人の!子供の!!?」

 

アークは短い舌打ちをすると、雁夜の両肩に触れ

 

「すまんが、落ち着いてもらうぞ。《森の安らぎ(スタビイザトール)》」

 

そう唱えると、今にも吐きそうなほど取り乱していた雁夜がゆっくりと眠りに落ちた。

 

「しかし……これはクソッタレだな」

 

アークが周りをみると、微かに声が聞こえる。

 

コロシテダレカ。オネガイコロシテ

イタイイタイイタイイタイイタイイタイ

コロシテヨモウヤダヨダレカダレカ‼

 

どれもこれも嘆きの悲鳴ばかりだ。

アークは両手で顔を押さえながら、内から沸き上がる衝動(殺意)を押さえ込む。

雁夜に対し冷静であったが、その内心は人一倍疑問と怒りで溢れていた。

 

(何故だ、何故世界は子供にこんな仕打ちをする!?あの世界でもこの世界でも!!ーーーふざけるなふざけるなよクソッタレガ!!!何故無垢な子供がこんな地獄よりも更に酷い責苦を負っている!!!?何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだナゼダナゼダナゼダナゼダーーーーーナゼダ!!!!!!)

 

 

はち切れんばかりの怒りと殺意を圧し殺していると、雷の音と共に聞いたことある雄叫びがアーク達のいるこの広い部屋に響いた。

 

「坊主、着いたぞ。っと先客がいたようだな」

 

「安心しろ、敵意はない。確か征服王だったか…」

 

「おぉ、覚えていたか!それは重畳。ーーーーー待て坊主、これは見ない方が良いぞ?」

 

ライダーがアークが雁夜にしたような忠告をするが、それを無視して、暗闇の中身を見てしまった。

 

「これはなんだ?家具か?それに食器に…えぇ?これは人の骨…それにこれは…人の皮。この部屋全てを人で人で…ンボェオェェェェッ!!ガハッ‼」

 

「やっぱりか?」

 

「だからな?やめとけと言ったであろうが?」

 

アークとライダーが揃ってウェイバーの元へ近づいていく。

ウェイバーは四つん這いで蹲りながら

 

「うるさいッ!!……チクショウ馬鹿にしやがってチクショウ!!!!」

 

「意地の張り所が違うわ馬鹿者。良いんだよそれで。これで眉一つ動かさぬやつがいたら余がぶん殴っておるわい」

 

「ライダーのマスター。君は正しい。こんなのをみて平静を装えるやつは怪物だ。人から外れた存在に成ってしまうからね」

 

「じゃあお前らはどうなんだよ!!お前らだって眉一つ動いてないじゃないか!」

 

「余は腸が煮えくり返っておる。キャスターが一分一秒でさえも生き長らえているのは胸くそ悪いわい」

 

「俺は怪物だ。だが……こうでもしないとこの街を更地にしちまいそうだ」

 

 

二人の怒気はたちどころにこの広い部屋に充満するのであった。




あ、奨学金の引き継ぎもしなくちゃ!?


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同盟

ひさしぶり―!

練火デース!!(´・ω・`)


もうすぐ新学期だー!!後輩に負けないように頑張らないとなー(布団に横になりながら)


二人は先程までの怒りを沈めると、ライダーが此方に手を差し出して言った。

 

「ここにいるのも何かの縁…どうだ?余と共同戦前を組まぬか?」

 

それはつまりキャスター討伐まで手を貸せと提案しているのである。

 

「俺は別に良いが…なぁ?」

 

アークは後ろの寝ている雁夜へ視線を向け、そうぼやく。

 

(まぁ、後で話すれば良いだけか)

 

そう心に決めるとアークはライダーの手を握り返した。

 

「キャスターを倒すまでの同盟だがよろしく頼む」

 

アークの発言にライダーは笑みを溢しつつ頷く

 

「承知した。ホレ、坊主もそこでボケッとしとらんとここから早く出るぞ」

 

「えっ?でもキャスターの真名の手掛かりが有るかもしれないだろ?」

 

「それもそうかも知れんが止めておけ。こんな所はさっさと供養した方が良いだろうよ」

 

未だに辺り一面から、嘆きや怨嗟の悲鳴がこだまする。

ウェイバーは少し目尻に涙を溜めた後。頷き口を開いた。

 

「……解った。だけど、条件がある」

 

「なんだ坊主。言ってみろ」

 

ウェイバーは溜まった涙を拭き取り。真っ直ぐな目で言う。

 

「痛みも苦しさも無く葬ってやってくれ」

 

ライダーもそれを真摯に受け止め

 

「ーーーーーあい解った、それでは神の仔牛達(ゼウスの子ら)よ!狭苦しい所で悪いが一つ頼むぞ!!」

 

二匹の牛が叫ぶと雷が迸る。

 

「俺も手を貸そう。《焔神の贖罪(ヴェスザドローレ)》!」

 

アークが呪文を呟くと同時に、右手から翠色の炎が燃え盛る。

 

 

 

「ーーー塵も残さず焼き尽くせぇぇぇッ!!」

 

 

「ーーー痛みも…恐怖も無く燃え散れ……!」

 

 

仔牛が動き出すと同時にアークは雁夜を肩に担ぎつつ、翠色の炎を声が響く所へ射った。翠色の炎はそこから瞬く間に広がり、辺り一面が翠色に染まった。

 

ボオオォォォォォォォ

 

「……そうか」

 

 

 

燃え盛る炎の中、声が聞こえたアークは穏やかな顔でそう呟いた。

そのすぐ後に、仔牛による雷の一掃でアーク達以外は全て消え去った。

 

 

ギャリギャリギャリ

 

車輪の音が下水道に響くなか、ライダーが一緒に乗っているアークに訊いた。

 

「ついさっき、お主は何を聞いたのだ?」

 

「…子供達の最後の言葉さ」

 

口を開いたアークは後ろを振り返り、ウェイバーと共に亡くなった子供達に祈りを捧げながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ありがとう』だってよ……」

 

 

 

 

そう言うとライダーもそうかと頷き、外へ出るまで誰も口を開かなかった。

 

 

 

 

下水道から外へ出ると同時に、ウェイバーが安堵の息を吐いた。

 

「フゥッ。やっとあの場所から出てこれた…」

 

「今回は胸くそ悪いわい…なぁ、バーサーカーよ」

 

「なんだ?」

 

雁夜を地面に寝かせながらアークは訊く。

ライダーは悪戯を思い付いたような顔をしながら

 

「お主は酒は飲めるか?」

 

「?飲めることは飲めるが…なんだ?一緒に飲むのか?」

 

「まぁ、それもあるが。こうしてお主と同盟を結べたと言う事は、他の陣営もそれが出来ると言う事だ」

 

ライダーのその発言にウェイバーが冷や汗を流しながら問い掛ける。

 

 

「まさか……」

 

「おう、今からちょっとばかし、酒とツマミを買ってきて憂さ晴らしに他の王を呼んで語り合おうではないか!」

 

さすがのアークもこれには苦笑いをするのみであった。

 

「では一時間後、再びここで集合としよう」

 

そう言うと、アークと雁夜を置いてライダー達はいなくなった。

 

「……ウゥンッ…ここは?」

 

その背後から雁夜が目を覚ましたようだ。

 

(さて、どうやって弁明をするか…だな)

 

内心でため息を吐きながら、軽く同盟を結んだ事に後悔したアークであった。

 

 

▼△▼

 

 

バチバチバチバチバチッ!!!!!!

 

「それでバーサーカーよ!あの森の中心部辺りにセイバー陣営があるのだな!!?」

 

「ああ!多少、迷いの幻覚が掛けられてるがこのまま真っ直ぐに行けば城が見えるから多分それがセイバーの拠点だろうよ!!」

 

ライダーの戦車は雷を土台にして空を駆ける。

正し、物凄くうるさいので多少大声で話す二人。

その背後には両マスターが戦車の端を掴みながら、振り落とされないように気張っている。

 

「君も大変だね。ウェイバー君…」

 

「貴方の所も大変ですね…」

 

「ほぅ、もうマスター同士で気があったのか。そりゃ良かった!」

 

二人が意気投合しているのを見ながら、ライダーはにこやかに言った。

 

「ライダー、もうすぐ着くぞ」

 

「解った!それではーーーーーAAAAAAAAAAAAAAAALALALALAAAAAAAIIッ!!!!!!」

 

ライダーが叫ぶと同時に森に突っ込み、邪魔するものを何もかも蹂躙しながら城の前までたどり着いた。

 

「荒っぽい運転だ」

 

「何、これでも安全にしておるわい」

 

アークの言葉にライダーは軽口で返した。

そのまま戦車は城の中まで入っていく。

 

「なぁ、アーク。これは駄目じゃないのか?」

 

「マスター、諦めろ。ここまで来てしまったし。それに今回は戦闘じゃないからな」

 

雁夜がチラリっとライダーを見ると、少し頷いた。

そう、アークの見た目はいつも通りだが、ライダーはゲームのタイトルロゴが入ったTシャツとジーパンというラフな格好でここに来ているのだ。

 

「随分な挨拶だな征服王とバーサーカー」

 

とそこへ、この城の持ち主であろうアイリスフィールとセイバーがやって来た。

 

「出迎えご苦労であるセイバーよ。何、今回は戦いをしに来たのではない。王同士の語り合いをするためにここに来たのよ…」

 

「あ~、何かすまないが、酒宴が出来るところがあったら案内してくれないか?」

 

 

警戒を厳にしているセイバーに対し、自信満々に言うライダーと、頬を掻きながらそうぼやくアークであった。




進級公演とかめんどくさいよー。やる気無いよー、どうでも良いよー(鬱気味)


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願い

ひっさびさの久しぶり~!(゜ロ゜)

練火です!(・ω・`=)ゞ

(投稿)遅いだって?

……だから言ったじゃないか(多分)!不定期更新だと!(ドヤァ)


ライダーとアークの発言にやる気が削がれたセイバーは城の中庭へと案内する。

しかし先行するセイバー陣営はヒソヒソと話ながら、こちらへの警戒を強めたままだ。

一方此方はと言うと…

 

「では何か?酒の代金は間桐にツケたのか!?」

 

「うむ、なにか問題でもあったか?」

 

「雁夜さん、本当にすいません」

 

ライダーが肩に担ぐ大樽を眺めながら呆然とする雁夜。

ウェイバーは隣で雁夜に頭を下げている。

 

(この温度差は滑稽だな)

 

片方はいつ戦う(やる)のか構えているが、此方はそんな空気は一切入っていない。

 

「なぁセイバー」

 

「なんだバーサーカー?」

 

セイバーのキリッとしたキツい相眸がアークを射ぬく。

 

「いや、そんなに肩肘を張らなくても此方には戦意は無いんだ。だから、警戒を緩めてはくれないか?」

 

「だが、貴様とて聖杯に願いを持った英霊だ。そう易々と貴様の口車には乗らぬ」

 

「そうじゃなくてだなぁ…」

 

本当に飲みに来たと言っても、このセイバーは十中八九信じないだろう。

アークはライダーに向けダメたこれと言わんばかりに肩をすくめた。するとライダーはセイバーの近くに行き、何かを説明すると戻ってきた。

 

(心なしかセイバーの警戒が緩んだ……?)

 

「いったい何を言ったんだライダー?」

 

気になったアークはライダーに問い掛けると、ライダーは悪戯っ子が悪戯に成功したような顔付きで答えた。

 

「何、今回は『戦いは戦いであっても、誰が聖杯の持ち主として相応しいか酒の席で王の破格を競い合おうではないか』っと言っただけよ」

 

「…なるほど、それならばセイバーの警戒が微かに緩んだのが分かる」

 

アークは流し見でセイバーの方を見ながらそうぼやいた。

 

少しすると白き薔薇が植えられた中庭。

その真ん中は十字路のように四つ路があり。ライダーがその中心へ持ってきた大樽を置くと、その上座にライダー

 

「ほれ、貴様達も座らんか」

 

下座にセイバーそして、その真ん中にアークが座り込む。

その後ろにはそろぞれのマスターが座っていく。

それを見届けたライダーが樽の蓋を叩き割り、柄杓で酒を掬い飲む。

 

「これがこの国での由緒正しい飲み方だそうだーーーーフゥッ、聖杯は相応しき者の所へと行く運命にあると言う。それを得るがための闘争だと言うが、何も血を流すには及ばない英霊同士…お互いの格に納得がいったなら自ずと答えが出る。……ほれっ」

 

アークは柄杓を手渡され、ライダーがしたように酒を掬い飲む。

そしてそれをセイバーへと手渡す。

 

「んで、この集まりの共通点は何なんだ?ライダー」

 

アークが訊くと、飲み終わったセイバーがアークとライダーを見てなるほどと頷く。

 

「ここにいるのは王同士の格を競いあおうと言うのか、ライダー」

 

「おお、その通り。果たして征服王・魔王・騎士王、どちらがより聖杯の王に相応しいか。決めようではないか……」

 

ライダーが何かを思い出したかのような顔をすると、

 

「あぁ、そういえば我らの他にも一人ばかし王と名乗る輩がおるのぅ」

 

その言葉と共に辺りに声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戯れはそこまでにしておけ……雑種』

 

 

 

 

 

誰も座っていない一本道からアーチャーが現れた。

 

「テメェかよ金ピカ」

 

「アーチャー!何故ここに!!?」

 

アークとライダーを除くアーチャーを見た全員が驚く

 

「いやなぁ、町の方で見かけたので誘うだけ誘ってみたのさ」

 

「……まさか、こんな所で王としての格を競おうなぞと馬鹿げた事を抜かすのではあるまいな…?」

 

周りを見ながらアーチャーは殺意を交えつつある視線でライダーを見る。

だが、ライダーはそれをさも涼風でも通るかの如く流しながら、アーチャーに酒の入った柄杓を見せ

 

「まぁ、そういうではない。ほれっ。駆けつけ一杯」

 

「……飲むまでもないわ。こんな安酒、飲むにも値せん。酒と言うのはこう言うものと知れ」

 

柄杓を受け取らず、アーチャーの横から金色の徳利と三つのコップが現れた。

アーチャーはそのコップに徳利に入った酒を注ぐ。

 

「おぉ~!!!これは神代の代物じゃないのか!?」

 

いの一番にそれに呑んだライダーはその旨さに驚き、アーク、セイバーも一口飲み同じように驚愕した。

それを眺めたアーチャーはさも当然のごとく、口を開く。

 

「酒も剣も全て、我が宝物庫には至高の財しかあり得ない。ーーーーーこれで王としての格付けは決まったようなものだな」

 

目の前に居座る三人の王を前にしてそう言った。

ライダーとセイバーはその言葉に反論していくが、

アークだけはそれを聴いておらず、手にはアーチャーの出したコップ。そして、アーチャーと同じ徳利(・・・・・・・・)の酒(・・)を一人、満足そうに飲んでいた。

 

「ライダー、貴様はこの我が手ずから殺ーーーーーおいそこの魔王(雑種)

 

「……んだよ」

 

少しばかり上機嫌になっていたアーチャーはそれの違和感に気づき、アークにとっては嫌な渾名で問い掛けた。

 

 

 

「貴様何故、我の酒を飲んでいる(・・・・・・)?」

 

 

その言葉にライダー、セイバーがアークを見た。

アークは少し顔を赤くしながら

 

「何故って魔王だからな」

 

「説明に成っておらんは馬鹿者」

 

「良いじゃねぇかょ。ケチケチすんなよ金ピカ、それにこれは作った物だ(・・・・・)。テメェの物じゃねぇよ」

 

「なんだと……?」

 

アークとアーチャー。二人の間にある樽がお互いの怒気と殺意で傍目から揺らいで見える。

 

「いい加減にしろ。ここは王の格付けを競い合う場であろう。そうしていては王としての格が知れる」

 

 

「ほうだったら、セイバー。貴様の聖杯に託す願いはなんだ?」

 

ライダーの問いに、セイバーが答えた。

 

 

「私は故郷の救済を願う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーー破滅の道に行ったブリテンの未来を変える」



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違い

ヤッハロー!


駄文作者練火デス(・ω・`=)ゞ



小説の内容より、題名付けで四苦八苦しますorz


セイバーが言った故郷の救済。それは自身によって破滅へと辿ったブリテンの未来を変えると言うことである。

自信満々に、堂々と言うセイバーに、

 

アークは酒を飲む手を止め、

 

ライダーはつい先程までの上機嫌さが失せて、

 

アーチャーに至っては目に涙を浮かべ笑っている。

 

それに対しセイバーは怒るが、三人の態度は余り変わらなかった。

 

それもそうだ。

このセイバー(騎士王)様はよりにもよって王として史上最悪の発言をしたのだ。

ライダー(征服王)アーチャー(英雄王)も別の時代での国での王であるが、セイバーのような馬鹿な考えはしない。

かく言うアークは王としての経験は無いが、その一番の親友、大国の王であった勇者でもその願いを聴いたら、確実にキレるであろう。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー何故なら、その願いは王がする願いではないーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ただの忠誠心の高い騎士様ってことか……)

 

目の前ではライダーがセイバーに対し王としての覚悟を諭しているが、セイバーは真っ向から異議を立てる。

 

「ーーライダー、貴様だって世継ぎを殺され、築いた帝国もバラバラに引き裂かれたのではないのか?悔いがあったのではないのか。もしもう一度」

 

「そうであったとしても余はそんな事をせん。余の決断、余に付き従った臣下達の生きざまの果てならばーーーその滅びは必定だ。悼みもしよう、涙も流そう。だが、決して悔やみはしない、ましてそれを覆すなどっ!余に付き従った全て人間に対する侮辱であるっ!!」

 

「いいや、滅びを華とするのは武人だけだ。民はそんなものは望まない。ーーー救済こそが彼らの祈りだ」

 

「王による救済…か…」

 

ぼそりっとアークが呟いた。ライダーとセイバーの議論はヒートアップしていった。

アーチャーは笑い声は消えたものの、セイバーを見る目には愉悦が含まれている

 

「そうだ。正しき統制、正しき治世。民はそれを望んでいるのだ!」

 

「…ツマラナイな」

 

「……なんだと?」

 

セイバーはアークを睨みながら訊いた。

 

「そんな生き方はツマラナイって言ったんだよ。暗愚」

 

「貴様……!!」

 

アークはコップに入った酒を煽り、続けた

 

「んなもん王の…いや人としての生き方じゃない」

 

「そうとも王ならば人の生き方など望めない」

 

「人の生き方が望めない?」

 

「あぁそうだ。民を導くため、滅びを避けるため。国に心命を注がなくてはならない。そこのライダー(征服王)のように我が身かわいさの願いなども」

 

 

 

ダァンッ!!!!!!

 

 

 

 

 

「無欲な王など飾り物にも劣るわいッ!!!」

 

 

 

空になったコップを地面に叩きつけ、ライダーが吠えた。

 

「往年の貴様は清廉にして潔白な聖者であったものだろう。さぞや犯しがたく高貴な姿であったことだろう。だがな!聖者は例え民草を慰撫出来たとしても決して導く事など出来ぬ。確たる欲望の形を示してこそ極限の栄華を謳ってこそ、民を!国を!!導けるのだ!!」

 

言い切るとライダーはもう一杯、酒を煽り静かに続ける。

 

「王とはな誰よりも強欲に、誰よりも強情し、誰よりも激怒する。清濁含めて人の臨界を極め足る者。それは臣下・民草の心に『我もまた王たらん』と憧憬の火が灯る!」

 

(言ってる内容としては存外酷い部分かも知れないが、大方ライダーの方に民草の支持は傾くのか…?)

 

セイバーは肩を震わせ、ゆっくりと問い掛ける。

 

「そんな治世の……いったい何処に正義がある?」

 

その問いにライダーはキッパリと答えた。

 

「無いさ、王道に正義は不要。だからこそ悔恨もない」

 

「……もともとよ、セイバー」

 

ライダーの発言に呆けた表情を見せたセイバーがアークの言葉にハッとして聞き返す。

 

「なんだ……」

 

「王が正義を求めるなんざあっちゃ成らねぇんだ」

 

「なんだと…!!正義を求めずして民は救えない!」

 

ライダーに貶められ、そのうえバーサーカーにまで諭されるセイバーは我慢の限界であるのか、アークに詰め寄ろうとする。

 

「そして、救ったら『後は御勝手に』ってか?……ふざけるなよ?」

 

アークも負けじと睨みながら、そのドス黒い憎悪をソッと放出する。

 

「それは王として最低の采配だ、救われた臣下はその後道に迷った。なのにお前は澄まし顔で独りぼっちで小綺麗な理想を思ってただけの餓鬼だよ」

 

そう言われ、セイバーは何も言えなくなった。

 

「だから、お前は王ではない。そのうえ、この場すら参加する資格は無いかもな。ーーーーんで?目の前にいる金ピカは何でそんなにニヤニヤしてる?」

 

アークに問われたアーチャーはセイバーを見ながら

 

「いや何。そこの小娘の苦悩する様が見物だったと言うだけさ。まるで花を散らされる処女のような顔だった。実に我好みだ」

 

「貴様……!!」

 

セイバーが横に置いてある柄に手を触れようとした瞬間。

 

「ん?」

 

「ッ」

 

「あっ?」

 

「チッ」

 

四人の英霊が一斉に何かに気づき、同じ方向を見た。

ライダーの後ろの館、その屋根の上。

 

『……ふふふふッ』

 

『ーーーーははははははっ』

 

『クックックックッ……』

 

 

無数のアサシンがこちらを見ながら静かに嗤っていた。



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魔王の願い

クハハハハハーーーヤッハロー!


練火デス(・ω・`=)ゞ



言ったであろう。俺は気分屋なのです(;・∀・)


中心の四騎以外の見学人は一様に驚いている。

 

「なぁ、金ピカ。これはそっちの作戦か?」

 

アークがアサシン共を見ながら問い掛けた。

 

「ーーーさてな、雑種の考えることなど一々知ったことではない」

 

ついさっきまでの興が冷めたのか、冷徹な目でアサシン達を眺めている。

 

「ってことは、金ぴかのマスター(遠坂)が勝手にしたってことか……」

 

(しかも一日も持たない内に…か。)

 

内心で約束が破られた事にため息を吐いた。

 

「これだから自意識過剰な凡愚は嫌いなんだ…」

 

「……バーサーカー、何か知っているの?」

 

「一応は……かな。征服王、今回は招待してもらった礼だ。処理は俺がしよう」

 

アイリスフィールが聞いてくる。アークは不本意だとばかりに頷き、ライダーに告げながら既に勝負が着いたとばかりに此方を見ているアサシンに問い掛ける。

 

「…なぁ、アサシンよ。これは俺との約束を破ったと見て良いんだよな?」

 

雁夜を除いた全員がアークを見て約束?と首を傾げる。

しかし、アサシンの誰一人としてその問いに答えない。

 

「なるほど、よく解ったよクソッタレ」

 

アークは興醒めとばかりに立ち上がると各々の武器を構えるアサシン。

 

「最後にこれを見てるそっちのマスターに言っとけ。ーーーーー約束は破られた。もう慈悲は無い…とな」

 

『……あの時は不意を打たれただけの話だ、今度は侮らぬ』

 

アサシンの一人がそう呟いた。

だが、アークはツマラナイ物でも視るかのような目で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーもう遅ぇよーーーーー

 

 

 

 

 

トトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトッ

 

 

 

 

アサシン達の背後の暗闇から数多の千本()がアサシン達の影に刺さった。

 

『動かなっ…貴様いったい何をした!!??!』

 

「《神符術・縛影針》っても解らねぇよな。まぁ、知らなくても良いさ」

 

アークは感情のない死んだような笑顔で告げる。

 

 

ーーーー今からただの食糧(エサ)になるのに

 

 

「ッ!バーサーカー、貴様まさか!!」

 

その呟きでセイバーはアークがどんな魔王なのか気付いたようだ。

此方を見る三人の王にアークは少し…ほんの少しだけ悲しげな笑みを浮かべると。

 

「セイバー、お前の察しの通りだ。まぁ、そこの二人の王は俺がどんな魔王だか知ってたみたいだが?」

 

すぐに元のヘラヘラした顔に戻り言った。

その問いにライダーとアーチャーは頷く。

 

「いったいどこで解ったんだか……まぁ、言動でちらほら言ってたから気付くか…」

 

そう言って軽くため息を吐くアーク。

 

「なら、改めて答えよう。俺の名はアーク・ラット。生前は元勇者パーティーとしての魔法使い。そしてーーーーー暴食の(・・)魔王として勇者に命を絶たれた。ただの魔王(道化)さ……」

 

視線をアサシンに戻し、

 

 

「さあ、食事の時間だ」

 

 

詠唱を始めた。

 

 

ーーー食エ(イーティン)命ヲ(リエヴァ)大地ヲ(アルディ)海ヲ(マーレ)正義ヲ(アデラ)悪を(ジャハッツ)何モカモヲ(トァテ)全テ食ラエ(ロォツ・ノォレリクイッテ)

 

 

 

 

紡がれる言葉と共に、アサシン達の足元の影から黒い物体が浮き出てくる。

それは動けないアサシン達の鼻先まで浮き出た。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー喰ライ尽クセ(ギィジム)

 

 

 

 

 

 

 

 

アークの言葉と共に、黒い物体達が一斉に口を開くと頭から噛みついた。

 

 

 

 

 

 

 

ベキャバキャベキペキクチャベキペキャペキツグチャリベキャバキャクチャクチャクチャクチャ

 

 

 

『~~ッ!!?ッ!~…~………』

 

最初、声に鳴らない悲鳴を上げ。身悶えも出来ぬ体を無理に動かそうとして痙攣していたアサシン達であったが、十数秒もしない内にその動きを止め。なされるがままに喰われていくのみであった。

黒い物体が食べ終わる毎にその姿を消していき、後に残るのは静寂のみだ。

 

「…御馳走様でした」

 

アークは目を瞑ってそう言い、視線を座っている三騎に向けると

 

「……ッ」

 

「……」

 

「ほぅ…」

 

セイバーは外道を睨むような目で、ライダーは目を瞑って無言で腕を組み、アーチャーは顎に手を添え興味を持ったかのように呟いた。

 

「なんとも…終わりは呆気ない物だな…」

 

アークはそう呟くと、雁夜の方をみる。

 

「……ウグッ」

 

「大丈夫かい?ウェイバー君」

 

「ウェイバーくん、落ち着いて。もう大丈夫よ」

 

吐き気を押さえているウェイバーの背中を撫でながら、様子を訊く雁夜と、落ち着かせようとするアイリスフィールであった。

 

「……あー。うん、多少ショッキングではあったのかな?」

 

アークは雁夜達に向け歩きはじめると背後から立ち上がったライダーに問われた。

 

「…お主も一応は王の一人。ならば、お主の聖杯に託す願いは何だ?」

 

アークはその場に立ち止まると口を開き言った。

 

「一人の少女を救うために聖杯の存在が必要なだけだ」

 

「その言い方だと、願いは無い……と?」

 

セイバーが振り返りもせずに答えるアークに更に問う。

 

「俺には叶えたい願いなんて無い。願った願いはとうに過去の物、だったら俺は贖罪の為に戦うだけだ」

 

再び歩き始め、雁夜の元に辿り着き。

 

「それでは、先に失礼するーーーーーまた、戦場で」

 

その言葉と共にアークと雁夜を闇が包み込み、その姿を消した。

 

 



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少女の想い

ヤッハロー……(テンションダウン)


練火デス…(・ω・`=)ゞ


夏なんてくたばれば良いのに……


チュンチュンッと小鳥の囀りで起きました。

私は軽く伸びをして欠伸を噛み殺しながらベットから出ます。

そして部屋のドアを開け、トテトテと階段を降り、一階に着くとリビングからスパイスの美味しそうな匂いが漂ってきました。

今日はカレーライスかな?

 

『美味エェェェッ!!?この袋の中身がこんなに美味いとは凄いなッ!?』

 

『だから、少しは黙って食ってくれないか!?つい一時間前に近所迷惑だって怒られただろうが!』

 

少し遅れてそんな会話も聞こえてきましたけど。

私は少し微笑みながら、リビングのドアを開けると、

 

「おはよう嬢ちゃん」

 

「おはよう桜ちゃん」

 

カレーライスを食べていた二人の男性が()に挨拶します。

私も二人に挨拶しました。

 

「おはよう、ございますアークおじさん、かりやおじさん」

 

カレーライスを口一杯に頬張っている食いしん坊のアークおじさんは今日も美味い美味いと言いながら大皿に乗ったカレーライスを瞬く間に食べてます。

そして雁夜おじさんは私を見て、「ご飯は出来てるから食べよう」と刻印虫で歪に歪んでいる顔で誘ってくれてます。

 

この二人は私の恩人です。

暗くて怖くて痛くて何も出来なかった私を二人は助けてくれました。

あの虫がいた所は、アークおじさんが言うには「不味かったが全て食った」って言ってました。

……あの虫って食べれたんだぁ。

今でもそう思います。

雁夜おじさんの体にもいた虫は全てやっつけたそうです。

前までなら寂しかった朝も今では楽しい朝に代わりました。

 

「桜ちゃん美味しいかい?」

 

「…うん」

 

よかったと呟く雁夜おじさん。

…いつか私は雁夜おじさんでは無く、雁夜お父さんと呼びたいけど許してくれるかな?ーーーーー

 

 

「嬢ちゃん、もういいかい?」

 

アークが桜の部屋の前でそう言うと、部屋の中からパタンと閉じる音が聞こえ。すぐさまドアが開いた。

 

「おじさんは……?」

 

「ああ、雁夜なら玄関で待ってるってよ」

 

そう言うと桜はトテテテテと駆け足で玄関まで向かっていった。

 

「元気で良いねぇ」

 

アークもその後を歩きながら追いかけていった。

あの飲み会から一日が過ぎ、今日は桜と一緒にショッピングをするらしい(アークは今日の朝知った)。

しかも桜が雁夜に言い出したらしいのだ。

 

(まぁ、元気になったのは良いことか…)

 

雁夜と手を繋ごうか悩んでいる桜を見ながらアークは微笑みながらそう思った。

駅前のショッピングモールまで桜と雁夜が話ながら歩いている。

その後ろでアークはぼんやりと空を眺めながら付いていく。

 

数十分歩き、目的地であったショッピングモールに着くと雁夜は食料品を買いに行きに、桜はアークを連れて散策へ行った。

 

 

「それでね。こっちがね……」

 

桜はアークの手を引きながら、店内を案内していく。

聖杯からの情報でどういうものか粗方知ってはいたが、実際に見ると全てが豪勢に感じられる。

 

(これで一般なんだよな……)

 

アークは内心で驚きつつ、ゆっくりと見渡す。

 

「……ん?」

 

チラリと見たことのある人物の背中があった。

赤い髪に巨大な体躯、そして他者を寄せ付けぬ覇気。

 

(ライダー?)

 

まさしく『征服王』イスカンダルだ、だが立っているその場所はゲームショップである。

なんとも場違いな…とも思うが、周りの客も店員も何も言わず、素通りしている。

 

「あ、アークおじさん……」

 

桜も気付いたのか、その覇気に触れ。微かに震えている。

アークは桜の頭を撫でながら、ライダーに近づく。

 

「う~む…ん~…ほぉ~……?」

 

近づくに連れて、ライダーが何かを見ながら凄く悩んでいるようだ。

 

「ライダー……何してるんだ?」

 

「ん~?おぉ!アークか!!」

 

ライダーは此方に気付くと幸いとばかりにアークに問いかける。

 

「坊主が資金をくれての。コイツを買おうとしたのだが、どちらを選ぶべきかと思ってな」

 

コイツと言われて、ライダーが指しているのは、『アドミナル大戦略Ⅳ』の完全限定品。その横には同じタイトルの数量限定品。

 

「その為だけにそんな怒気みたいな雰囲気を出すなよ」

 

「おぉ、出ておったか!そりゃちと悪いことをしたのぅ」

 

ライダーは苦笑いを浮かべながら、頭を掻いている。

 

「しかもライダー。これ機種が違うんだが。二つ持ってるのか?」

 

「…………何?」

 

どうやら持ってないようだ。

 

その後、悩むライダーのためゲームを買い。桜はと共に軽食をとるため、近くの喫茶店へと足を運んだのだが……

 

「何でお前が付いてくる、ライダー?」

 

「何、同盟を組んだ者の事を知りたくなるのは当たり前であろう?」

 

イタズラっ子のような邪気の無い笑顔を浮かべつつ言い切るライダー。

アークはため息を吐きつつ、注文したカフェオレを一口飲む。

その横にいる桜はちびちびとショコラケーキを啄むように食べていた。

それを眺めながらアークは顔を綻ばしていると

 

「なるほど、それが貴様が言っていた救いたい娘か?」

 

「……悪いか?」

 

「いや、魔王と言われた男も人の子であったと安心しただけよ」

 

ライダーはそう言って、注文していたサンドイッチを豪快に食う。

アークも最初は不機嫌だったが、ライダーがお楽しみと後に取っておいたパフェを奪い、満面の笑みを浮かべて食している。

 

「おい、アーク。それは余の」

 

「残念、食べちった」

 

「貴様なぁ…」

 

ため息を吐くライダーに満面の笑みで答えるアーク。

桜はそれを見ながら、クスリッと笑みを溢す。

周囲から見れば、とても怖い二人が怒りを放ちながら話しているが、桜から見えるのは、まるで二人の少年が笑いながらじゃれてる様子にしか見えなかった。

 

その後、アーク達は店を出ると。雁夜との集合場所へ足を向けた。

 

「ありがとうアークおじさん」

 

「?なにか言ったか?」

 

「ううん。何でもない!」

 

桜は笑顔一杯で答えた。

 

 




あー、パフェが食いてぇ…いっそパフェになりてぇ。


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宴の始まり

ヤッハロー…


練……火…デス……(・ω・`=)ゞ


ライダーと別れた後、雁夜と合流し家に着いた雁夜はアークを飯作りの手伝いのため呼ぶが

 

「……いない?」

 

桜も一緒に探してくれたが、どこかへ行っているようだ。

その瞬間、形容しがたい何かを感じた。

 

▽▲▽▲

 

未遠川を境に冬木の地を繋ぐ冬木大橋の上。

アークはそこから、眼下の川へ飛び込む。

 

バシャアンッ!!

 

水飛沫を上げながらアークは前にいる者に顔を向け

 

「……何してるんだ?キャスター」

 

川の中心には詠唱を一旦中断し、まるで同士にあったかのように笑みを浮かべるキャスター。

 

「おや、初めましてですねバーサーカー。貴方も天上の主を引き摺り落とすために協力を?」

 

「神さまってのは大嫌いだから、そいつは是非にでも参加したいが…そのまえに」

 

笑顔でそう答えるアークは懐から銀色の大剣をキャスターに向け、殺意の籠った目で言った。

 

「ーーーーーお前は俺の尾を踏んだ。生かして置くわけにはいかねぇよ」

 

「なんと!?私と同じであろう貴方が牙を向くとは神はどれ程人を悲しませれば……」

 

キャスターは役者のような落胆し、次にはアークの顔を親の仇のごとく睨んだ後、何もなかったかのように暗い笑みを浮かべ、

 

「ならば、今宵の宴の邪魔に成りますね」

 

「あ?ーーーッ!!」

 

その瞬間、アークは危険を感じ取りバックステップをすぐさまする。

同時に、アークが立っていた場所から蛸とヒトデを合体させたような変な生き物がジュクジュクと不快な音を立てながら、何体も出現してくる。

 

「さぁ、そこで見ておくといい。神を引き摺り殺すための、ーーーーー最っ高にCOOOOOOOL!!!な死と退廃の宴を!!」

 

「クソッタレが!」

 

アークは横一線で海魔共を一掃するが、次の瞬間にはまた復元され襲い掛かってくる。

 

「チッ。キリがねぇな」

 

『既に始まっていたのか!』

 

声のする方を見ると、堤防上からセイバーとアイリスフィールがやって来た。

 

「キャスター!今度は何をするつもりだ!!」

 

叫ぶセイバーにキャスターは優しそうな笑みで優雅に一礼しながら答える。

 

「おぉ聖処女よ。申し訳ありませんが、今宵の宴の主賓は貴女ではない…ですが、貴女も見物してくれるのならばより一層頑張るといたしましょうーーーーーククククハハハハハキャハハハハハハハハハッ!!!!」

 

笑みから一転して狂ったように嗤いだすキャスター。その足元から海魔がキャスターを包んでいき、ついには全身を覆う所かその化け物の体は冬木大橋と同じくらいの高さと成った。

橋の上では、野次馬が集まっていたのだろう。あの化け物を見た瞬間、悲鳴を上げて逃げ始めた。

アークはもう一度海魔を一掃すると、冬木大橋の手すりまでジャンプして手すりにぶら下がりながら川との距離を取った。

 

「これはいったいどう言うことなんだ、アーク?」

 

「マスターか。すまんミスった」

 

叫びながらこちらへと走る雁夜にアークは苦虫を噛み潰したかのように答えた。

 

「いや、それは良いんだが。何か手はあるか?」

 

目の前には化け物と相対するセイバーとライダー。

空ではそれを見物するアーチャー。

それを見ながら、アークは言う。

 

「令呪の許可を頼む」

 

 

 








かゆ……うま……


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海魔戦

こんにちはー!(朝の12時)

練火でーす!(;・∀・)



まぁ、駄文ですけどどうぞ!!


「令呪の使用…?まさかアークッ!」

 

それがどう言う意味なのか気付いた雁夜はアークに問い掛ける。

 

「あぁ、その通りだ」

 

アークは頷くと、上に目を向けた。

 

「早くしないと手遅れに成っちまう」

 

雁夜も目を上にすると、二機の戦闘機が化け物の近くへ移動していき、化け物の触手が一機の戦闘機を掴むと、まるで鮫のような歯に持っていき

 

「や、やめろおぉぉぉぉッ!!!!!」

 

雁夜は叫ぶが、化け物にそんな言葉が解る筈もなく。戦闘機を中に乗っている人物ごと喰った。

 

「ほら、手遅れになるまで後一歩って所か…」

 

淡々とした言い方でアークは言うが、冷や汗が流れている。

もう一機は喰われたパイロットと仲が良かったのか、怯えて逃げるのではなく、まるで仇討ちをするかのように化け物へと向かって行った。

 

「チッ!?普通は戻って情報を伝えるとかだろ!」

 

アークは手すりを掴んでいた手を離すと、重力に従い自由落下する。

その状態のまま、両の人差し指と親指をくっつけ、長方形の形を作る。

 

「間に合え!《果てなき時の狭間(トラティションルート)》ッ!!」

 

その長方形の中心を触手に襲われかけている戦闘機に合わせると

 

「《開道(ショット)》」

 

瞬間、戦闘機が姿を消し、化け物の触手は虚しく空を切った。

アークは足元に魔力を張り、川面に着地する。

眼前ではライダーが乗っている戦車が雷を出しながら突撃を繰り返している。

 

「おぅッ!!バーサーカー!やっと参戦か?」

 

こちらに近づいていつも通りの笑みで言うが、若干顔色が悪い。

 

「策は有るのか?」

 

「無いな。今、坊主達がそれを話し合っている所だ」

 

チラリッと堤防を見ると、アイリスフィールとウェイバーが呆然としながら化け物を見ている。

間に合いそうにも無い……か

アークはタメ息を吐くと、

 

「やるしかない……か…」

 

「お?っと言う事は有るのか、打開策」

 

ライダーは興味津々と言った様子で此方を見てくるが、アークは頷いきながら戦車に乗る。

 

「ライダー、俺をあの化け物の中心へ落としてくれ」

 

「おぅ。して?お主は自身の命と引き換えにじゃあるまいな?」

 

「そこは安心しろ、確実に生きてるよ」

 

「そりゃ良かった!」

 

車輪から雷が迸りながら、戦車は化け物の真上へ移動する。

 

「何が良かったんだ?」

 

「何、お主も我が配下に加えたい一人だからのぅ?」

 

ライダーはいつも通りの豪快な笑みで言った。

 

「はっ。ライダーも奇怪な人物だな。俺の悪友にそっくりだ」

 

「そりゃいい。ソイツとも会ってみたいわい」

 

二人は軽く笑い合いながら化け物の真上へと辿り着いた。

 

「じゃ行ってくる。一応、離れといてくれよ?」

 

アークはそう言うと、戦車から飛び降り化け物の肉の中へと引きずり込まれていった。

 

「頼んだぞアーク」

 

ライダーはそれを見届けながら迫り来る触手に剣を振るう。

そうして戦っているとセイバーが近づいてきて叫んだ。

 

「どういう事だ征服王!!何故、バーサーカーをあの中に入れた!?あれではアイツに餌をやるようなものでしか」

 

「ならばお主はアレを倒す手が有ると申すのか?」

 

「それは…」

 

触手を切り落としながら、顔を背けるセイバー。

 

「それにもう、遅いわい」

 

ライダーは化け物を眺めながらそう呟いた。

 

 

 

▽▲▽▲

 

 

 

 

周囲の肉はアークを磨り潰して吸収しようと指一本動かせないアークを締め付け、圧迫し胃液のような液体が体を溶かしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュワッベキゴリメキャジュッベキゴリメキャメキャベキコリゴギベキジュッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い苦しい痛い痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい苦しい苦しい痛い苦しい苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い痛い痛い痛い痛い苦しイイタい苦シいイタイイタいクルシいイイイッ!

 

 

 

 

 

 

だが…こんなもの

 

 

 

 

 

 

 

「《我は望む(Nos spes mea)邪悪の祖よ(Malum antecessoris)》」

 

 

 

 

 

あの魔王に成る直前に比べれば…

 

 

 

 

 

「《我呪う(EGO maledicite terrae)そのために災厄の知恵を(Ad ultimum quod clade sapientia)》」

 

 

 

 

 

コイツらの贄となった子供達の痛みに比べればーーーー

 

 

 

 

 

「《我殺す(EGO occidere)そのために御身の力を(Ad ultimum quod the power)》」

 

 

 

 

 

アークの目から血のような涙が流れていく。

 

 

 

 

 

「《我欲す(EGO egestas)そのために御身の全てを(Ad ultimum quod Omnia et nihil)》」

 

 

 

 

黒き霧が立ち上ぼり、アークに纏わりつく。

 

 

 

 

 

「《ここに(contractus)》」

 

 

 

 

ーーーーー誰一人として助けれなかったアノトキニクラベレバッ!!!!!!

 

 

 

 

 

「ーーー俺に…全てを…!寄越せェェェッ!!!!《魔王(perfectio)》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーアーァアーーアァァーァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア■■■■■■■ーーーーーッ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心の奥底から封じ込められていた災厄が目を覚ます。

出来る事なら、この姿は見て欲しくは無かったな…

内側の力の蹂躙にアークは意識を手放した。

 

 




何故か、バトル回の時の方が読んでる人多くて、頭を傾げる今日この頃


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魔王

ヤイサホー!!

練火でーす(-.-


駄文ですがそれではどうぞ!!
φ(..)


 

 

 

 

 

「アーァアーァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア■■■■■■ーーーーーッ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

押し潰そうとしていた肉の壁がアークの叫び声でボロボロと崩れ修復していく。

そしてその叫びは未遠川に響き渡った。

 

「な、なんだ!?いったいライダーとバーサーカーは何をしたんだ!?」

 

「何、この魔力は!?アレがバーサーカーの本来の力なの!?」

 

堤防にいる二人のマスターは訳が解らないと言う風に驚いた。

その後ろへ雁夜が歩いてきた。

 

「ウェイバー君と…えっと、セイバーのマスターで良かったよな?」

 

「え、えぇ…そうよ」

 

雁夜の言葉に少し冷静を取り戻したアイリスフィールは返事を返す。

 

「あんた達と同盟を組みたいんだが……良いかな?」

 

 

 

▽▲▽▲

 

 

 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎イ憎い憎イニクイニクイニクイニクイニクイ

 

 

 

 

ーーお前が貴方が彼が貴様が憎い

 

 

 

 

ーー世界が憎い

 

 

 

 

ーー全てが憎い

 

 

 

 

ーー俺から全てを奪った神が憎い

 

 

 

 

ーーそウだ、喰らオう

 

 

 

 

ーー魔物も精霊モ人間も動物も無機物モ有機物もあリとアラゆル全てヲ喰らオう

 

 

 

ーーこノ憎シみガ無クナるマデ

 

 

 

 

ーー…一切合切全テヲ

 

 

 

肉の壁が修復し、再びアークに迫り来る

 

ーークラオウカ…

 

アークを中心にして黒い円が出現する。

その円は肉壁に触れると、触れた肉壁がまるで粉のように小さくなっていき、終には消失していく。

その黒い円は徐々に大きくなっていき、肉の壁は触れた所から消えて言った。

 

「そんな!?何故だ!何故、使い魔が消えていく!!!?」

 

アークの下にいたキャスターが信じられないと言う顔で原因であるアークを視る。

 

「き、貴様は……貴様が!!こ、この化け物メエェェェッ!!!」

 

キャスターが姿の変わったアークを睨み、怨嗟の叫びをあげた。

 

「『…魔術師風情が…喧しいぞ』」

 

マントを翻しながら、死んだような目でキャスターに言う。

 

「おぉ!神よ!!何故ワタシに更なる試練を与えたまう!!!?何故だ!何故ダァ!!」

 

キャスターは叫びながら、海魔を召喚していく。

だが、瞬く間に海魔達は黒い円に触れた途端、消失していった。

 

「『こんなものか……足らぬ。もっと寄越すが良い』」

 

アークは舌舐めずりをしながらキャスターに言う。

だが、当のキャスターは現実から目を背けており

 

「何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だなぜだナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダーーー」

 

ただひたすらに呟くのみであった。

アークはため息を吐くと、何の光も灯していない目で

 

「『…飽いた……即、往ね』」

 

アークが右手をキャスターに向けると

 

 

 

「『《終わり無き(Non evadere)飢餓(fame)》』」

 

 

 

黒い霧がキャスターを包んでいく。

 

「ーーーーアァ!神よ!!ジャンヌ(聖処女)には罰を与え!何故!!この化け物には罰を与えぬゥゥゥゥゥウウウッ!!!!」

 

キャスターの悲鳴じみた叫び辺りに響き渡り霧が無くなった頃にはキャスターが消失していた。

 

「『…これが英霊と呼ばれた者の味か…不味いな』」

 

まるで道端に痰を吐き捨てるような感覚でそう言い切るのであった。

 

「『さて…次は貴様らだな?』」

 

アークの両手がセイバーとライダーに向けられる。

 

「「ッ!!」」

 

ニ騎は己が武器を構え、

 

「『《終わり無き(Non evadere)(fa)『令呪を持って命じる!バーサーカー、今すぐ元に戻れ!!!』」

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、アークの全身に雷が迸る。

 

 

 

 

 

▲△▽▲

 

 

「令呪を持って命じる!バーサーカー、今すぐ元に戻れ!!!!」

 

雁夜の右手の甲から令呪の一画が消えたと同時に、アークの体から紫電が迸る。アレが令呪の縛りなのだろう。

アークは令呪に抗おうと体を暴れさせるが、令呪の強制力の方が強く。

次第にアークは動かなく成っていき、遂には呪い殺すとばかりの眼光を周りに向けながら

 

 

『ーーーアアァァアアァァアアッ!貴様等ァァァアア■■■■■ッ!!!!』

 

 

バシャアァンッ!

 

 

意識を失い、川へと墜ちていった。

 

「お、終わったのか……?」

 

ウェイバーが呟く。

眼前では川面に浮かぶ気絶したアークと消滅し残った化け物の残骸が光の粒子となり、空へと昇っていく光景のみであった。

 

「なぁ、あれがバーサーカーの本来の姿なのか?」

 

ウェイバーが雁夜に向きながら、問い掛ける。

 

「……あぁ。アレがアークの…魔王本来の姿らしい」

 

「らしいって……」

 

雁夜もアークからの申告でしか知らなかったのだ。

 

「見たのはこれが初めてだったんだ」

 

 

 

ーーー魔王と化したアークがどれ程の力を発揮するかを

 

 

 

ーーー漆黒のマントを翻し、自身の体の一部が紫や赤黒く変色していくその姿を

 

 

 

 

「何でだ…」

 

 

 

 

 

ーーーそして

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー悲しみ(絶望)に塗れた相貌で此方を見たのを

 

 

 

 

 

 

 

「何でバーサーカーは…アークは魔王に成ったんだ……」

 

 

雁夜の呟きは誰一人として返答が無いまま虚空へと消えた。

 

 




FGOシャーロク爆死しますたorz
150全て使ったのに…


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夢幻


ヤイサホー!(;・∀・)


練火ですヒャッハー!!




夢をみた

 

世界は貧困で人々が魔物に脅える日々。

まだ幼い少年は生まれついての才能があった。

その非凡の才は『神々から祝福された物だ』と人々は言った。

それを聞いた国王は少年を王都に呼び。近い未来、人々を救う為にと、あらゆる分野でのエキスパートを師に鍛練を積んでいく。

そして齢15に魔王を討つため勇者と旅に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…表向きの話では

 

 

 

少年は国王の命で王都へ呼ばれたのでは無い。

両親は明日の食い扶持の為だと二束三文の端金で奴隷商に少年を売った。

奴隷となった齢6才の少年は暗闇の片隅で一人膝を抱えて脅えすくむ。

ある日、国王は奴隷商を訪ねて少年を買った。

人類を救う為?

 

 

 

 

 

ーーーーー違う

 

 

 

 

 

国王に買われた少年に待っていたのは四六時中、襲い来る暴力であった。

近衛や臣下からはストレス発散として出会い頭、殴られる。機嫌が悪ければ帯刀した鞘で意識が無くなるまで殴打され、自身の血の水溜まりに何度沈んだことか。

魔法の権威と呼ばれた大魔導師からは魔法の実験体として少年の体に幾百ともいえる種類の魔法を撃ち込まれていく、少年が死にかけていけば回復魔法や回復薬で治しては試す。

気が狂いそうになるが、残念な事に『神々からの贈り物(クソッタレ)』のおかげか気が狂うことが出来なかった。

そんな毎日が続き、7年経った少年が齢13の年。

 

 

転機が訪れた。

 

 

国王の目の前に訪れた神聖な巫女…先詠みの巫女が少年を見て言ったのだ。

 

『この子は世界を救う一人だ。この子がもし死んだら、たとえ勇者が現れても魔王は倒せぬ』

 

その日から少年に、まるで赦してもらうかのように最大限の豪華で華やかな生活が始まった。

だが、その時には少年の心は粉々に成っていた

 

ーーーすでに遅かったのだ。

 

巫女に言われた言葉一つで掌を返し、過去の生活を忘れてくれとばかりに気を使う。

そんな糞の如き態度に少年は何一つ信用しない。

目の前で国王やその臣下達が今までの非礼を詫びていく。

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー少年の目にはもう誰も写らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▽▲

 

グキュルルゥゥゥ

 

腹の音が聞こえた。

ベッドに突っ伏していた雁夜は目を覚まし、ゆっくりと視線を上げると、アークの顔が見えた。

 

「おはようマスター」

 

「あぁ、おはよう」

 

雁夜が立ち上がり、伸びをしながら返事を返す。

 

「所であの後どうなった?」

 

アークもベッドから降り、立ち上がりながら雁夜に問う。

 

「ん?とりあえず、同盟は結んださ」

 

「となると…」

 

「あぁ。ーーーーー次は時臣だ」

 

苦虫を噛み潰したような顔つきに成って、雁夜は告げる。

一階へ降り、リビングのドアを開けると、

 

「おはよ…う?」

 

アーク達の目の前で

 

 

ガツムシャガツムシャムシャモクガツモクパクモクパク

 

 

 

『すみません、そこのジャムを…』

 

 

『ふむ、このコンビニ弁当とやらも上手いな』

 

カチャカチャ

 

『は、い…これ…』

 

 

『ライダー!それ、僕が食べようとしてた物じゃないか!?』

 

ダンッ

 

『ふふっ、舞弥さん。口許に米粒が付いてるわよ』

 

 

『ッ…ありがとうございますマダム』

 

 

桜とライダー・ウェイバー・セイバー・アイリスフィールと舞弥と言われた見知らぬ女性が一人。

全員がテーブルの上にあるアークが買い置きして楽しみのために魔法を使い保存していた食料を食べていた。

 

 

 

 

 

「ーーーーーNOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOッ!!!!!!?」

 

 

 

 

結構(ガチで)楽しみにしていたアークの絶叫が家に響き渡った。

 

 

 




とりあえずこれでZEROの第一期は終了です。

次の第二期からはオリジナルルートなので、時間をください(__)


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閑話・槍の無念

久々の~~こんばっぱー!!

覚えてる人は誰かいますか?いませんか、そうですか……Orz

まぁ久々の練火です( ̄~ ̄;)

ちょっと(?)書き方を変えてみました。


ーードドドドドドドドドドドドドドドドォンッ!!

 

人気の無い廃ビルで爆撃のような音が響き止む。

それを放ったのは金色の鎧の男ーーーアーチャーは眼下で黄の短槍を杖にして、倒れる事無く、荒い息を整えつつアーチャーを睨むランサー。

 

「ふむ…」

 

「ーーーァッ!ハァッ……どうした?アーチャー。まだ戦いは終わってないぞ?」

 

「吠えるな雑種。これは戦いではない。ただの……戯れに過ぎん」

 

「貴様ッ」

 

興味も無く、ただただ冷たいだけの視線を向け、そう呟くアーチャーにランサーは睨みながら、2つの槍を構え直す。

 

「ほぅ?まだやるか?良いぞ、もっと楽しませろ」

 

「ほざけッ!」

 

ランサーが身を低くしてアーチャーに突撃する。

アーチャーの背から無数の武器が発現し、そして絶えることなく発射される。

暴風雨の如くランサーに迫り来る武器、ランサーはそれを紙一重で避けながらも進んでいく。

そして、自身の必殺である槍の間合いに入る!!!

 

 

 

破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)》!!

 

 

 

紅く魔力が滲み出る長槍でアーチャーの胸を貫こうとした瞬間、ランサーの()()()()()()()

 

「貴様ら……!」

 

ランサーが見た先はアーチャーの少し後ろのビルの壁。そこから神父服を着た男性と、その手で引き摺られている瀕死の女性であった。

アーチャーは顔を動かずに口を開く。

 

「言峰、ようやく終わったのか?」

 

「あぁ、男の方は簡単に始末出来たが。この女が強情でな…時間がかかった」

 

ドサッの音と共に瀕死の女性を地面に捨てた。

と同時にランサーがアーチャーを通り過ぎ

 

「よくもソラウ様を!!」

 

鬼の形相で神父服を着た男性(言峰)に襲い掛かる!

 

「我は通り過ぎて良いなど許可を出した覚えは無いぞ、雑種」

 

アーチャーの言葉と同時にジャララララッ!!と音を響かせ、鎖が体を縛る。

 

貴…様等ぁぁああっ!!

 

「なに、そう怖い顔をするなランサー。今からお前は私の使い魔(サーヴァント)になるのだから」

 

言峰が右の手の甲をランサーに見せる。

その瞬間、ランサーの顔が強張った。

 

「ッ!?それは俺の」

 

そんなランサーを見た言峰は右手を翳し、口を開く。

 

 

「令呪を持って、ランサーに命ずる【前のマスターとの記憶を全て消去しろ】」

 

 

「何だと!!?ーーーーッァァァァアアアアアアアッ!!!!!

 

令呪による魔力の紫電。鎖が消えたランサーは両手で頭を押さえ血の涙を流し、悲鳴にも似た叫び声を上げる。

その目の前にいる言峰にアーチャーは近づきながら

 

「言峰…気付いているか?貴様、いま嗤っているぞ?」

 

言峰はその言葉に少し驚くと、震える左手で自身の顔に触れる。

 

「なんだとアーチャー?ーーーこれが…私なのか…?」

 

「それが全部とは言えんがな。喜べ。今、貴様は自ら求めた答えに近づいているやも知れぬぞ……?」

 

そんな事を呟きながらアーチャーは虚空へと消えた。

 

 




一応、数話書き溜めがでけたよ~
はいそこ、執筆遅いって言わない


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三騎同盟

ヤイサホー!!


練火です( ̄~ ̄;)


寒いねぇ~。雪降らないけど…


「今回の同盟、心から感謝する」

 

アークの眼前にはイスに座っているライダー・ウェイバー、少しだけ離れたソファーに腰掛けたセイバー・アイリスフィール・舞弥。

アークの後ろには雁夜と桜がイスに座っている。

 

「ーーーとりあえず、後で俺の飯を返してもらうとして」

 

そう苦笑しながら言うと、ライダーとアイリスフィール、桜がクスリと笑みをこぼす。

 

「さて、本題に入ろう。ーーーこの聖杯戦争で一番の脅威と成りうるのが今回の標的であるアーチャーと遠坂時臣だ」

 

「標的は解ってる。それで僕達はどうすれば良い?」

 

「アーチャー陣営は遠坂邸に拠点を置いているんだ。しかもご丁寧な事に、正門からは罠無しの堂々とした感じだった」

 

全陣営の拠点を調べた際に彼処を見たアークは思わず呆然としたほどだ。

 

「……『余裕を持って優雅たれ』それが時臣の口癖だからな」

 

「あら?間桐さん、遠坂を知っているの?」

 

アイリスフィールが紅茶を飲み終え訊いた。

雁夜は一瞬言いにくそうな顔つきになった後。

 

「アイツとは腐れ縁だったからな……」

 

苦渋の表情で答える雁夜。

心配そうに桜が雁夜に近づき、その背に触れる。

アークはそれを片目で眺めながら、説明を続ける。

 

「マスターは遠坂と戦うって言ってるから、ライダー勢とセイバー勢にはアーチャーを倒す為に、付いて来てほしい」

 

「なっ!?()()()で戦うって言うのか!!魔術の事を余り知らない一般人のアンタが!!?」

 

ウェイバーが有り得ないと言った顔つきで言う。

 

「ごめんねウェイバー君。ーーーだけど、アイツは俺の手でしないとダメなんだ」

 

桜の頭を撫でながら、雁夜はそう告げる。雁夜の決意は固く、それを見て何を言っても無駄だと悟ったのだろうウェイバー達はそれ以上に言葉が出なかった。

 

「それともう1つ、今回の戦いでは()()()()()()()()()

 

『『『!?』』』

 

アークのまさかのカミングアウトに雁夜を含め全員が驚いた。

 

「アーク…それはどうして?」

 

雁夜がそこにいる全員を代表して問う。

 

「…魔王化は魔力の消費量が大きくてな。場合によっては現界すら出来なくなるんだ」

 

苦笑いで頭を掻きながらアークはそう答えた。

 

「だから、誘いを掛けたのね?」

 

「まぁ、そう言う事だな」

 

アークを見ながらアイリスフィールはふぅっと息を吐くと。

 

「解ったわ…私たちセイバー陣営はその同盟に参加する」

 

「良いのですかアイリスフィール?」

 

怪訝な顔でセイバーが問い掛ける。

 

「えぇ、彼は嘘をつく事が出来ない英霊みたいだしね」

 

「……解りました」

 

憮然とした表情のままセイバーは頷く。

ウェイバー達も同盟に参加してくれるようだ。

 

「これで、コイツがアンタ達に借りた金額とか…帳消しに出来ないか?」

 

苦々しい笑みを浮かべながらウェイバーがそう訊き、アークと雁夜も苦笑いを浮かべながら頷いた。

 

「ーーーーー決行は今夜。集合場所はここだ。各々、準備を整えてくれ。っとその前にセイバーは俺と来てくれ」

 

アークの言葉とともに、ライダー陣営が去っていった。

 

 




それでは字話をお楽しみに~~


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戦場

ヤイサホー!!



練火ですだ(*´ω`*)←こんな顔ですが、今月金欠で大ピンチnow





辺りは暗く。

しんっと静まり返った夜。

遠坂邸周辺もそれは例外ではなく、物音一つしない夜で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーは無かったようだ。

 

「なあバーサーカー!本当に大丈夫何だよな!!?」

 

遠坂邸の正門より離れた上空から牡牛の戦車を動かしているライダーを横目で見ながら乗車しているウェイバーがアークに訊ねる。

 

「大丈夫だ。人払いの結界は俺とセイバーのマスターがしているのを見ただろ」

 

アークがそう返すとライダーが獰猛な笑みを浮かべながら頷き、宝具を使う。

 

「ならば、いざ行かん!!《蹂躙制覇》ッ!!ーーーーーaaaAAAAAAAAAAAALALALALALALALLLIッ!!!!!!

 

牡牛の戦車は更に早く激しく重厚感が増した車輪の音と雷を撒き散らし、遠坂邸に正面突破を繰り出す。

 

 

バチバチバチバチバチバチバチバチッ!!

 

 

遠坂邸までもうすぐと思った刹那、()()()()がウェイバーに向け投擲された。

 

 

 

 

 

 

ーーーガギィンッ!

 

 

 

 

 

いち早く気づいたアークが懐から取り出した短剣を勢いそのままで弾き飛ばした。

 

「ほ、本当だったなんて…」

 

「だから言っただろ?アイツは…」

 

呆然とした表情を浮かべながらそう呟くウェイバーに言いながら黄の短槍(ゲイ・ボウ)を投擲したランサーを見る。

 

「ライダー」

 

「……解っておる」

 

アークが言うと、ライダーはため息を吐き、牡牛の戦車の速度を緩め。

 

「よぉ、こんばんは。ランサー?」

 

「バーサーカーか…あぁ、こんばんはだな」

 

遠坂邸正面入り口前で止まった。

アークは戦車から降り、ライダーの前に立つ。

軽薄な挨拶とは裏腹に互いに敵意と殺意が漏れる。

 

「どうした?人に『忠義を甘く見るな』なんて言っといて簡単に()()()か?」

 

アークの問いにランサーは無言で返す。

 

「黙ってないで答えろよ。手前に送られてる魔力があの時と今とで質も匂いも何もかもが全然違う…所か、今の匂いは知ってる匂いだ」

 

懐から出した剣でランサーを指す。

 

「手前、前のマスター捨ててアサシンのマスターと再契約(・・・)したな?」

 

アークが問うと、ランサーは口を開いた。

 

「ーーー再契約?何の事だ?俺はお前と戦った時からマスターは一人だけ(・・・・)だ」

 

本当に何も知らないと言う顔で告げてきた。

端から見れば、アークの思い違いと言われるが、その言葉でアークは大体を理解しそして嘆息した。

 

「なるほど…令呪ってのはそこまでの強制力が効くのか」

 

「何を言っているのか解らないが…あの時の続きをするとしよう」

 

ランサーが赤と黄の槍を器用に操りながら言った。

 

「あぁ、そうだな」

 

その呟きと同時にアークは走りだし、ランサーの側面から懐から装填したボウガンを射出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーー心行くまで楽しみやがれ

 

 

 

 

 

 

 

 

ビュンッバキィッ!

 

 

 

 

ブンッギィィイインッ!!

 

 

しかし、それはランサーに届く前に黄の短槍で破壊され、同時に斬りかかったアークの横薙ぎの一撃を赤の長槍で受け止める。

 

「同じ手は食らわんと言っただろ」

 

ランサーは軽口を吐く。

 

「そうかい。じゃあこれならどうだ?《道の終(リード)》」

 

その言葉(キー)と同時に二人の頭上の空間が歪み、瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー風の刃(・・・)と黄の短槍が交わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギイイィィインッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両腕で不可視の剣を振り下ろしながら着地したセイバー。それをランサーは咄嗟に黄の短槍で防いだ。

そしてアークとセイバーに左右を挟まれたランサーは微笑み口を開く。

 

「ふっ……何故か懐かしいと思ってしまうなセイバー、バーサーカー」

 

「そうかい……」

 

「……決着をつけるとしよう、ランサー」

 

 

ガラガラガラガラガラガバチバチバチバチィッ!!

 

 

アークの後ろからライダーの戦車がセイバーの後ろにある庭を目指し再び動き出す。

 

「俺はこの後、用があるんでなーー二人で殺ってくれや」

 

戦車がアークの横を通り過ぎた瞬間、アークがナイフを戦車に突き刺し、その勢いのままランサーから離れようとする。

 

「行かせるか!」

 

「隙有りッ!」

 

ビビュンッ!!バキッカランコロンッ

 

ランサーがセイバーに抑えられて尚、体を器用に使い赤の長槍で阻止しようとするが、ボウガンの矢がその邪魔をした。

 

 

 

 

「結局、最後までお前に当たらなかったかぁ…クソッタレ」

 

 

 

アークはそう呟きながらライダー達は遠坂邸庭園へと消えていく。

 

 




ヤバいなぁ……もうそろ、書き為が無くなりそうOrz


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意地と憎悪

ヤイサホー!!

練火です(-.-)Zzz


もうすぐクリスマスか……ハッ!(゜ロ゜)リア充を呪わなきゃ(使命感)


ガラガラッ!!と戦車の音を響かせ、アーク達は遠坂邸庭園・中心部へと辿り着く。

 

「頼むぞライダー」

 

「解っておるわぃ。さぁ派手にやろう!頼むぞゼウスの子らよッ!!」

 

ライダーの声に答えるかのように二頭の牡牛はモオォォォオッ!!と雄叫びを上げながら、雷を周囲に撒き散らす!

雷は遠坂邸の結界石を破壊していく。

アークはそれを眺めながら、マント裏から一本のナイフを掴み

 

「さて、これでこっちは終わりだーーーがッ!」

 

ヒュンッ

 

気配が有る方(遠坂邸屋上)へ躊躇い無く投擲する。

 

パシッ

 

だがそのナイフは出現したアーチャーに当たる前に、アーチャーが軽々と投げたナイフを掴み取った。

 

「ーーー我の庭で無作法な事よ…ッ!」

 

 

 

 

ドオォンッ!

 

 

 

 

アーチャーが掴みとったナイフに刻まれた魔法文字が光った瞬間、アーチャーを巻き込み爆発した。

爆煙が風に消えると、怒りの形相で無傷のアーチャーがアークを睨んでいる。

 

「魔王…貴様ァ」

 

「おはよう、金ピカ…更に色男に成ったんじゃないか?」

 

アークがおどけて挨拶すると、アーチャーのついさっきの怒りの表情から、冷静な顔つきに変わった。

 

「良いだろう……貴様は我自ら殺してやる」

 

いや、冷静な顔になったが怒り過ぎて逆に冷静になったみたいだ。

アークはミスったかと舌打ちをすると、雷を収めたライダーが口を開く。

 

「よぉ、英雄王。本当なら一対一で戦いたかったが、これも戦のつね……卑怯とは言わぬよな?」

 

「ふっ。いくら有象無象が集まったとしても、我の足元にも及ばぬと知れ」

 

屋根の上から、そんな事をアーチャーは呟くと、ライダーは豪快に笑いながら

 

「ガハハハッ!!そうかっ!ならば端から遠慮は要らんな!ーーーーそう言えば、あの時に聞きそびれた事があったわぃ」

 

「…なんだ?最期の言葉として聞いてやろう」

 

アーチャーは警戒を緩め、ライダーの声に耳を傾ける。

 

「ここにあの小娘がいないが、どうせ言う事は決まっておろう。余の質問はただ一つ」

 

 

 

「ーーーーー王とは孤高なるや否や?」

 

「…頂点にいるのはただ一人のみよ」

 

アーチャーが落ち着いた顔で答える。

 

「なるほどのぅ…貴様がそうなら、余は否と答えねばならんのぅ…」

 

少し残念といった顔でライダーが言うと、厳つい笑い顔で

 

「ならば!今ここでどちらが上が決着を着けるとしようか!!」

 

剣を掲げ、吠え叫ぶ!!

 

集えよ、我が同朋!!今宵、我らは最強の伝説に勇姿を印す!敵は万夫不当の英雄王!!相手にとって不足なし!ーーーいざ益荒男たちよ、原初の英霊に我らの覇道を示そうぞッ!!!

 

その言葉と同時に砂一つ無いハズの庭園に砂塵が舞い上がり、次の瞬間には砂漠のど真ん中にライダーとアーク、離れたところにアーチャーが立っていた。

 

「これは…固有結界か!」

 

アークが魔法の気配で解り言うと、ライダーの後ろから千…二千では足りない程の兵士が実体化していく。

 

「コイツら……全員が英霊だ…話では聞いてたけど、実際はそれ以上だな……」

 

開いた口が閉まらないっと言った感じでウェイバーが呟く。

その間にも無数の軍勢が列を成し、ライダーの元へと集う。

 

「見よ!この無双の軍勢を!!肉体は滅び、その魂は英霊として『世界』に召し上げられて、それでもなお余に忠義する伝説の勇者たち…時空を越えて我が召喚に応じる永遠の朋友たち!!」

 

ライダーは気にせず、アークやアーチャーに向け叫び告げる。

 

「彼らとの絆こそ我が至宝!!我が王道!!!イスカンダルたる余が誇る最強宝具

――王の軍勢(アイオニオンヘタイロイ)』なり!!!

 

 

 

 

 

 

『『『オオオオオオォォォォォォォオオオオオオッ!!!!!!』』』

 

 

 

 

兵士達の雄叫びで大地が揺れるような錯覚がくる。

 

「ほぅ…絆か」

 

アーチャーは懐かしむかのように呟いた。

 

「然り!王とはッ――誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉!」

 

『然りッ!然りッ!』

 

兵士の唱和の声とその手に持つ武器が一斉に音を出す。

 

「すべての勇者の羨望を束ね、その道標として立つ者こそが、王。故に!!!王は孤高にあらず。その偉志は、すべての臣民の志の総算たるが故に!!」

 

『然りッ!!然りッ!!!然りッ!!!!

 

兵士の唱和に熱が篭っていく。

見ているだけでアーク自身も突き動かされそうになる。

 

「フハハハハハッ!!面白い!ならば見せてみよ!貴様らの栄華をッ!!ーーーーーそして散れ、夢の如く……

 

アーチャーは笑っ言った後、悲しみが混じる顔で誰にも聞かれない言葉で呟いた。

 

「余に続けッ!!!AAAAAAALALALALLLIッ!!!!

 

戦の火花は今、切られた。

 

▲▽▲

 

ブオォォォォォン!

 

「どうやら、予定通りに進んでいるみたいです」

 

車の運転をしながら、舞弥は合図の音を雁夜に告げた。

 

「時臣は……?」

 

「……アーチャーのマスターは言峰綺礼にすでに連れられて避難しているとの事です」

 

インカムに耳を当てながら舞夜は雁夜の質問に淡々と答える。

 

「このまま回り込みます」

 

そのまま移動していると、冬木大橋に入る直前、後ろにタクシーが一台。教会に向かって走っている。

後部座席に見えるのは、忌まわしい遠坂の姿

 

「ッ時臣……!」

 

「間桐雁夜、舌を噛みますので口を閉じてください」

 

と同時に急ブレーキが踏み、舞弥がハンドルを切り。車体を横に向ける。

タクシーは慌てて、ぶつからないように急ブレーキとハンドルで避けようとするが。

 

 

 

 

 

キイィィィガシャアァァンッ!!プァァァァアアーーーーー

 

 

 

 

 

橋の鉄骨部分に衝突した。

フードを目深に被った雁夜は車から降りると、タクシーに近づく。

ゆっくりと近づいていくと、タクシーのドアが開き、遠坂が降りてきた。

 

「なるほど君か…間桐雁夜」

 

憎々しげに睨む時臣

 

ブロロロブォーンッ

 

それを見た舞弥は車を操作して走り出した。

 

「あぁ、久しぶりだな遠坂。とりあえず、ここじゃ目立つ。場所を変えるぞ」

 

遠坂は頷くと、橋近くの広場に移動する。

二人は距離を取りつつ向かい合うと、

 

「…先に聞きたい。君はどんな願いのためにこの戦争に足を入れた?間桐雁夜」

 

「俺は聖杯に叶える願いはただ一つ。ーーーーー桜ちゃんが最高に幸せだと思えるその日までの延命だけだ」

 

嘘偽りなく真剣な目で告げた。

 

「……なんて馬鹿な願いだ」

 

雁夜の願いを聞いた遠坂は数秒、意味がわからないと言った顔をしたあと、そう呟いた。

 

「どういう意味だ……」

 

雁夜の言葉に憎悪が混じる。

 

「その言葉通りだ、魔術から逃げた落伍者。この世に一つしかない願望器をただの延命措置として使う……これほどに()鹿()()()()()があるか?」

 

遠坂の一言一言に雁夜の顔が歪んでいき、ギチッと歯ぎしり音が鳴り叫んだ。

 

「時臣……ッ。俺からも問いたい。何で桜ちゃんを間桐の家…養子に出した…?」

 

「決まっている。魔術とは一子相伝、故に遠坂の魔術を継ぐのは一人だけだ。だが、遠坂葵(我が妻)は母体としては優秀すぎた。…凛も…桜も、ともに等しく稀代の素養を備えて生まれてしまったのだ。娘たちは二人が二人とも、魔導の家門による加護を必要としていた。いずれか一人の未来のために、もう一人が秘め持つ可能性を摘み取ってしまうなどーー親として、そんな悲劇を望む者がいるものか」

 

「ならば何故!」

 

「だからこそ…間桐の翁の申し出は天恵に等しかった。聖杯の存在を知る一族であれば、それだけ遠坂の望みである『根源』に到る可能性も高くなる。ーーーー私が果たせなくても凛が、そして凛ですら到らなかったら。桜が、遠坂の悲願を継いでくれることだろう」

 

「なッ!?き、貴様は姉妹で殺し合えって言うのか!?」

 

遠坂の真意を聞く内に雁夜は憎悪から驚愕に変わっていった。

 

「ハッ。仮にそんな事に成ったとしたら…我が末裔達は幸せだ。栄光は勝てばその手に、負けても先祖の家名にもたらされる。欠くも憂いなき対決はあるまい」

 

雁夜の驚きに遠坂は鼻で笑い、まるでそれが正しいかの如く話していく。

 

「狂ってる……貴様は狂ってる!!」

 

「フゥ……語り聞かせるだけ無駄な話だ。魔導の尊さを理解できず、あまつさえ一度は背を向けた

ーーーー裏切り者にはな」

 

「ほざけぇッ!!」

 

チャキッ

 

懐から舞弥に借りた拳銃を取りだし、怒りに震える両手で狙いを定める。

 

「アークに言われ…もしかしたら桜ちゃんの未来を考えて…もしかしたら臓硯が時臣、お前を騙して桜ちゃんを間桐の養子に出したんだと思いたかった……」

 

雁夜の目から憎しみの(紅い)血が流れる。

 

「ーーーその言葉を聞いて、確信した。俺は貴様を赦さない。薄汚い魔術師めーー殺せば葵さんが泣いてしまう…だから、命は取らない。ーーが絶対に半殺しにしてやる」

 

雁夜の言葉に反応して、遠坂も呪文を呟くと、持っている杖の先端に炎が現れる。

 

「赦さない…?それは私もだ。君を許せない。血の責任から逃げた軟弱さ…その事に何の負い目を抱かぬ卑劣さ、そして魔術を使わないで戦おうとする愚劣さ。 

ーー間桐雁夜は魔導の恥だ。再び合間みえた以上、もはや誅を下すしかあるまい」

 

両者が睨みあう。

 

「ッざけるなこの人でなしが……!!」

 

「違うね。自らに責任を負うことが人としての第一条件だ。それが果たせないものこそ

ーーーーー人以下の狗だよ。雁夜」

 

「時臣ぃぃッ!!!!」

 

雁夜の叫びと共に

 

ダンッ!!

 

非殺生用のゴム弾が撃たれた。




ってもリア充を呪っても俺自身が幸せになれないから意味無いんだけどねぇ~~(笑)


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二つの決着

ヤイサホー!!

今年ももうすぐで終わりですなぁ……
練火です( ̄ω ̄;)





キィンッジャッ‼ギイィィンッ!!ギンッ!ガチッ!ガアァンッ!

 

遠坂邸の正門では赤と黄の流線が鋭く動き、そして弾かれる。

 

「ハァッ!!」

 

セイバーがランサーの槍を弾いた瞬間に、一気に懐へ潜り込み剣を振るっていく

 

ヒュッビュッヒュッ ガギィッ

 

「やらせん!」

 

ランサーはそれを紙一重で避け、二槍と不可視の剣が交じりあう。

 

ガチガチガチガチ

 

「フッ……貴様と出会えて良かった。セイバー!」

 

互いの顔が目の前にあり、ランサーが言う。

 

「私もだッ!!」

 

セイバーも同意したと同時に力強く剣で押し返す。

 

ギイィィンッ!!

 

「ッ!?」

 

強引にしすぎたのか、セイバーの体制が一瞬崩れた。それをランサーは見逃さない。

 

「今ッーーーー必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)!!」

 

黄の短槍に魔力が漂い、それは一筋の線となりセイバーの喉へと突き刺さーーー

 

「それはもう知っているぞランサー!!」

 

コォォンッ

 

ーーー刺さる前にセイバーは腕の装甲に当て軽い音が鳴り、身を低くして、驚いているランサーの懐へ下から上に斬り上げようとする。

 

「ッ!!」

 

ランサーはバランスが崩された突きの状態から瞬時に赤の長槍を短く持ち、剣で斬るように横凪ぎで払うが、セイバーが剣の腹で受け

 

ギィッ‼シュラァァァッ‼

 

剣の腹を滑らせ、ランサー元へ更に近づき

 

終わりだ!ランサーッ!!!

 

ザシュッ!!

 

不可視の剣がランサーの左胸を切り裂いた。

 

カランカラン

 

先ほどの剣激の音が嘘のように無くなり、二つの落ちた音のみが響いた。

 

「……なぜだ。セイバー…なぜ貴様は俺の宝具(真名)を知っていた?…一度も会ってはいない筈だ」

 

セイバーに凭れながら血を吐くランサーは疑問を口にした。

 

「ランサー…貴方と戦ったのはこれで2回目だ」

 

ランサーはすこし驚いた顔をした後、納得したような穏やかな顔に成り、

 

「……そうか…バーサーカーが言っていたのはそういう事か…」

 

そして、悲しそうな顔で消滅していった。

 

「あぁ……俺はまたしても主をーーー」

 

シュゥゥンッ

 

「……貴方は逸話に劣らぬ英雄でした」

 

セイバーの呟きは風の音に消えていく。

 

▲▽▲▽▲

 

ドドドドドドドドッ!!

 

『右翼は突撃!飛来する武器には防御の陣で対処し、左翼は回り込み反対から攻めよ!』

 

数千の兵士が綺麗に右左に別れ、アーチャーを挟撃しようとする。

 

「チッ……我が眼前でチョロチョロ蠢くな雑種ッ!!!!」

 

アーチャーはバックステップで距離を取りつつ、その背から無数の武器を斉射し始める。

 

『来たぞ!防御!』

 

ドドドドドドドドッ!!!!

 

まるで一つ一つがミサイルの如く、盾を構え防御をする兵士達に突き刺さっていく。

 

『今だ!投擲隊は狙いを定めて放ち、左翼は更に行進速度を上げ、攻め立てよ!!』

 

『『『応ッ!!』』』

 

ライダーの号令で後ろにいた数千の兵士が一斉に槍を投擲し始め、それと同時にアーチャーと距離のあった左翼が一気に距離を詰め出す。

 

「それにしても、この風魔法ってのは便利だな」

 

ライダーの横にいるアークを横目で見ながらそう呟く。

 

「これでも、下級魔法なんだが」

 

「いやいや、瞬時に全体指示を出せるの魔法ってのは万金にも値するものだわぃ。ーーやはり、我が臣下にならんか?」

 

アーチャーが数千の投擲された槍と右翼の牽制を眺めながらライダーが勧誘してくる。キラキラと子供っぽい視線がアークに突き刺さる。

 

「……俺に勝てたらな」

 

ため息を混じりにボソリッと告げると、ライダーは呆けた顔をした後、すぐに満面の笑みに成り

 

「ーーーガハハハハハハハッ!!!!そうかそうかッ!ならば、早々に決着をつけるとしようか!」

 

そう叫ぶと、ライダーは腰に刺した剣を高く掲げ

 

「余に続け!!!!AAAAAAALALALALLLIIッ!!」

 

「ちょ!ちょっと待て!?僕も乗ってるんだああぁぁァァァ(ァァァ)ーーーーー」

 

ウェイバーを乗せた戦車を走らせ、ライダーは突喊していく。

それと共に残っている兵士全員が雄叫びを上げ付いていった。

 

「まぁ……あそこの方が生存率が高いよな」

 

それを見届けながら、アーチャーの方へ視線を戻す。

 

「さて、やるとしますか」

 

目を瞑り、緑の光が周囲から出現し、アークの体に吸い込まれていった。

数秒たった後、ゆっくりと目を開き深呼吸する。

左手は何も持たず、右手には一枚の符を持ち、詠唱を始める。

 

左の魔は弓(マレィフトボウ)に、右の符は矢(マートラアロー)に》

 

左手から光が出現に弓の形が出来上がり、右手の符は細く鋭い一本の矢に変化する。

 

シィィィィィッッ‼

 

弓矢周囲の魔力を奪い尽くすかの如く、吸い込みの音が響き渡る。

アークの目から血が流れ、

 

「持ってくれよ……ッ!!」

 

節々から出血し体が悲鳴を上げてる中、ついに十数キロにまで離れた所で戦っているアーチャーを確実に捉えた。

 

「見えたッ!堕天使の嘆き(アエルズ)ッ!!!」

 

シイィィィィィンッ!!

 

矢は激しい風切音を鳴らせ、アーチャーへと迫る。

 

▲▽▲▽

 

ドシュッ‼

 

目の前からアーチャーに、一本の矢が腕に刺さった。

 

「ッ、雑種供がッ!!これ以上調子に乗るなァッ!!」

 

アーチャーは前方から迫ってきているライダー達を睨み付け、己の武器の中でも最強とも言える対界宝具の武器を宝物庫から取り出そうとするが、何故か宝物庫の気配がしない。

 

「ッ!?何故だ!?」

 

驚きの余り、周囲に視線を向けるとつい先ほどまで発動していた王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)までもが消えていた。

 

「ど、どういうことだ!!?何故消えるッ!!」

 

流石に動揺を隠し切れないアーチャーはそう吠えるが誰一人として答えない。ーーーいや、一人だけその問いを答えた。

 

『簡単な事だ、金ぴか野郎……いや、ギルガメッシュ』

 

まるで耳元で言っているかのような近さで聞こえるが、アーチャーはライダー達の遥か後ろにいる魔王を睨む。

 

「その薄汚い技で何をした!!?アァァァクゥゥウッ!!!!

 

『…お前の敗けだ』

 

その言葉にアーチャーは怒りの形相で叫び、腕の矢を力づくで引き抜いた。

 

「ふざけるなよ雑種!!!!我にこんな魔法が効くと思うかッ!!!」

 

『いや、終わりだ』

 

アーチャーとは対象的に、アークは淡々と答える。

 

『この技の効果はな…命中した相手の魔力を奪う技だ』

 

「だからどうした!無くなった魔力など直ぐに」

 

『そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

アークの説明でアーチャーの思考が止まった。

 

『さて、英雄王ギルガメッシュ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーお前は()()()()()()()()?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き、貴様あぁぁぁッ!!!!

 

アーチャーは既にイスカンダルの軍勢に囲まれており、多勢に無勢。最後に出来るのはただただ殺意をぶつけるのみであった。

 

 

 

 

 

 

『ごちそうさまでした』

 

 

 

 

 

それがアーチャーの聞いた最後の言葉であった。

 

▲▽▲▽

 

「終わったな……さて、雁夜(あっち)も終わってると良いんだが…」

 

アーチャーの最後の雄叫びを聞き流しつつアークはそう呟くのであった。

 

 




これで書き貯め分が無くなった……だと!!
すいませんね!文才なくて!!Orz


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因縁の結末

明けましておめでとう!!


練火です(;・∀・)


駄文ですがどうぞ!!


公園の草むら。木の影に凭れながら雁夜は息を潜める。

 

「どうした雁夜。もう終わりか?」

 

近くを遠坂が言いながら、遠ざかっていった。

雁夜はそれを隠れて見ている。

 

(どうする、こっちの持ち弾は後数発。遠距離で撃ったら、炎に溶かされてまた反撃をくらう…)

 

ポケットからハンドガン用のゴム弾を取りだし装填する。

 

(後、7発しかないのか…)

 

装填しながら、雁夜は自分の腕を見る。

あの炎の直撃を受け、やや爛れている左腕。

 

(マヒしてるのか、腕に痛みは無いけど…余り動かせないし、痛みを感じたら泣き叫びそうだな)

 

空笑いが出そうになるのを抑えて、雁夜はネックレスを握り締める。

 

【ーーーーー呪文は■■■■■。効果は一回限りだけどな】

 

(使うとすれば一回勝負、だけど……いつ使う…?)

 

「クソッ……迷うな。チャンスは一回だけ。ならーーーッ!?」

 

小声で思案していると、視界の端から炎弾がこっちに迫っているのに気付く、雁夜は草むらを抜け、広場の方へと緊急回避をした。

 

「クッ……!!」

 

咄嗟の事で受け身を上手く取れず、多少擦り傷が出来るが、雁夜は一瞬だけ顔をしかめると直ぐに、燃えている木を睨む。

燃えている木々から遠坂が出てきた。

 

「やっと見つけたぞ。間桐雁夜」

 

ヒュボッと言う音と共に、燃えていた木々全ての炎が一瞬で消えた。

 

「私も暇ではないのだよ雁夜」

 

宝石が付いた杖の先端を雁夜に向け、

 

「ーーーこの辺りで終わりにしよう」

 

先端に炎が集まり、つい先程の炎弾のように雁夜に向け幾つもの炎弾が撃たれた。

 

「ほざけッ!」

 

雁夜はそれが直撃しないように大回りで避け、遠坂へと突喊する。

 

迫る炎弾が尽きることは無く、近づく度に体の何処かに当たり、激痛がひた走る。

 

「…策も無し、か。どうやら君はただの自殺志願者のようだな雁夜」

 

だが速度は一切落とさない。

 

「う、る……さい!」

 

左腕に当たる。左腕が真っ黒な炭状態で地面へ落ちた。

 

「チィッ!!」

 

「余所見は禁物だ」

 

雁夜がほんの少し、怪我状況を見るため、視界を動かしたのは間違いだった。

その一瞬を突かれ、一発の炎弾が雁夜の胴体に当たり、血ヘドを吐きながら雁夜は最初立っていた位置まで吹き飛ばされる。

 

「し、しまっ!ーーッガッ!…ゲボッ!ぐ、ぐうぅぅぅぅぅッ!!!」

 

激痛が走ると共に強烈な熱さが腹部を支配する。

 

「…やはり、間桐に桜を養子に出したのは正解だったな」

 

そんな雁夜を養豚所の家畜でも見るような感じで呟いた。

 

 

 

「…ッ……ふ、ふざけるな…」

 

 

雁夜は痛みに顔をしかめながらもゆっくりと立ち上がり言った。

 

「貴様は一回でも…養子に出された桜ちゃんの気持ちを……考えた事があるか?」

 

荒い息を抑えつつ、遠坂に問い掛ける。

 

「何?」

 

「考えた事があるかって言ってるんだ!!」

 

声と同時に雁夜は右腕で銃を撃つ。

ゴム弾は俯いている遠坂に当たる前に炎で溶かされた。

 

「…雁夜。私も大事な娘の事を考えた」

 

遠坂は顔を雁夜に向け答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー娘は今頃、間桐の魔術師になるための修練を受けているだろうと」

 

 

 

 

 

 

雁夜の中で何かがキレた。

 

「…時臣ィィィッッ!!!」

 

ダァンッ!!

 

ゴム弾が溶かされる。

 

「何をそんなに憤る、間桐雁夜?そんなにも桜に間桐の魔導を受け継がれてしまったのが認められないか?」

 

「貴様!貴様だけはッ!!」

 

ダァンッ‼

 

銃を撃つと同時に雁夜は右方向へ走り出す。

 

ジュツ‼

 

ゴム弾が溶かされたと同時にもう一発放ち、左方向に走る。

 

ダァンッ‼

 

「間桐雁夜。無駄なことは止めろ、そんな玩具では私には攻撃は届きはしない」

 

遠坂はそう言いながら危なげ無く右から来ているゴム弾を炎の盾で壊して直ぐに、雁夜が放った左からくるゴム弾も溶かす。

 

「今度は右側か、単純過ぎるぞ雁夜」

 

雁夜が放つと思われる右側へ遠坂は警戒を向けるが、誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーッッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なッ!?」

 

左側で消えていない炎の盾から雁夜が獣のような声を上げながら飛び出て、火傷が酷い右腕を振りかぶりながら、遠坂の顔面を思いっきりぶん殴った!

 

「グッ!」

 

不意の攻撃に遠坂は倒れる。そのチャンスを見逃さず、雁夜は銃口を遠坂の額に突きつける。

 

「時臣!!貴様だけは絶対に赦さな」

 

 

パァンッ!!ビチャビチャッ‼

 

 

遠坂の脳獎がいきなり地面にぶちまけられた。

 

「ーーはッ?」

 

何が起こったのか解らず、少しだけ呆ける雁夜。

だが、銃を掴んだ右手で自分の顔を触るとヌルッと感覚、そして生暖かい液体と異物を感じた。

 

「こ……コレはコイツの…」

 

パシャッ

 

銃が血溜まりの中に落ち、気付いた瞬間に雁夜は数歩倒れるかのように遠坂の遺体から離れ、ペタリと腰を地面に着けた。

 

「な…なんで?だってまだ…俺は……」

 

震える片手で自身の口を抑える。

頭の中では、何が起こったのか理解できず…いや、理解したくないと脳が拒否をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、時間は待ってはくれない……

 

 

 

 

 

 

 

「…雁…夜…君?」

 

 

 

 

 

 

その声は雁夜の後ろーー公園の入口付近からか細く

 

 

 

 

 

 

「そこに…いるのは……時…臣?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、今この場には最も……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…葵…さん……なん、で…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が来てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雁夜は腰が抜けながらも弁明しようと葵の方へと体を向ける。

 

「ち、違うッ!!葵さん!俺は……何もッ!!」

 

荒い息をしながら言葉を紡ぐがその前に葵が口を開く

 

 

「ねぇ雁夜君……間桐は、私から桜を奪っただけじゃ…物足りなかったの?

よりにもよって、この人を、私の目の前で殺すだなんて。

ーーーどうして?そんなにも…()()()()()()()()()?」

 

冷めきった静かな声が雁夜の心を突き刺す。

雁夜は荒い息を止めること無く震える声で呟く。

 

「違う…ハァハァ…俺はしてない、俺じゃない…そうだ。

ーー時臣……そ、ソイツが…その男さえ、いなければ誰も…ハァハァ…不幸にならずに済んだ!そうだ、葵さんだって、桜ちゃんだって!幸せに……ハァハァ……なれた筈」

 

瞬間、公園に怒声が響いた。

 

「ーーーふざけないでよッ!!あんたなんかに……何が解るっていうのよ!!」

 

葵の目には先ほど雁夜が時臣に向けていたような憎しみの炎が暗く燃えている。

雁夜は悲痛な表情で涙を流しながら、懸命に弁明する

 

 

 

「でも葵さん!俺は二人を想って!!」

 

 

ーーーが

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーあんたなんか……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

 

 

その瞬間に、雁夜の心がバラバラに砕ける音が聞こえた。

それは雁夜の心を壊すには過剰過ぎる程の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…、あ、あーーーーーァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

自身の顔を覆いながら泣き声のような悲しい悲鳴を上げ蹲る雁夜。

 

「ねぇ!!なんとか言ったらどうな」

 

森の安らぎ(スタビィザドール)

 

何処からかそんな声が聞こえると。悲鳴を上げていた雁夜はそのまま、意識を失った。

 

「……悪い、マスター。間に合わなかったか」

 

と同時に、雁夜の横にアークが出現した。

 

「貴方は……ッ!」

 

葵が驚きながらもアークを睨むがアークは雁夜の方へ向いているので、表情が一切見えない。

 

「御初にお目にかかる。我が名は『狂戦士(バーサーカー)』雁夜のサーヴァントである」

 

アークは雁夜から葵に向くと

 

 

()()()()()()()()

 

 

憤怒の表情をしたアークは葵を睨む。

 

「アーチャーの魔力を吸い取っておいて正解だったよ……」

 

葵はその顔を見た瞬間、命からがら逃げようとするが

 

「何で体が動かないの!!?ヒッ!!」

 

足が、いや指一本ですら動かせない。そして、気づけば眼前に立っているアークの手が葵の顎をクイッと上げる。

 

 

 

 

 

「なぁ……お前は知ってるか?一人の…魔術の才能に溢れた少女が養子に出され、そこで辱しめを受け、絶望に染まった日々を」

 

 

 

 

アークの顔が段々と葵に近づく

 

 

 

 

 

「知ってるか?魔術から離れた一人の青年が、たった一人の少女を救う為……自らの命と引き換え、魔術が使えるようにと無理やり魔術の虫で五蔵六腑、体の端から端まで激痛で苛まれ。それでも少女を救う為だと体を壊しながら耐えた日々を」

 

 

 

 

アークの目が血よりもなお紅く葵の目を射抜く。

 

 

 

 

「そして、信じて戦い…なのに助けたかった人から裏切られた絶望を」

 

 

 

 

葵は恐怖で声が出せず口をパクパクしながら、何かを言おうとしているが……もう遅い

 

 

 

 

「知っているかッ!!?記憶伝承(イヒャクタミール)!!」

 

 

 

 

木も震わす恫喝と共に葵は気を失った。

アークは雁夜を背負うと公園の入口へ向かう。

その道には葵が倒れているがアークはその横を通りすぎ、

 

「あの二人が受けた絶望…永久に苛まれろ」

 

既に悪夢に囚われている葵にそう告げて、アーク達は消えた。

 

 




すこし、後味悪い?
仕方がないよな、それが運命なんだもん

葛飾北斎ガチャ、見事に爆砕(石240個、出てきた鯖、星四、ランスロット)


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一時休戦

おはこんばんにゃー!!

練火です(;・∀・)


やばい。ストックが無くなったぜよ。


遠坂葵が言ってくる。

 

『好きになった事が無いくせに!!』

 

葵さん、止めてくれ

 

遠坂凛が言ってくる

 

『貴方のせいで御父様が死んだのよ!人殺し!!』

 

違う…凛ちゃん違うんだ……頼む。俺の話を聞いてくれ

 

手が葵と凛の肩を掴む。

 

刹那、視界が一転して。時臣が死んだ公園……足元には頭の無い時臣

 

そしてーーー

 

頭に銃弾を食らい、中身が弾け飛んでいる二人。

 

あ、ああ……

 

自身の手には銃が未だに銃口から煙を上げている。

 

違う。俺じゃない!俺は……俺は!!

 

雁夜の後ろから、声が聞こえる。

 

『……雁夜おじさん。何で、私の大切な人達を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--コロシタノ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り向くと、感情が一切無く目が死んでいるあの頃の桜が淡々とそう告げた。

 

▲▽

 

 

 

「ーーーーーァァアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 

 

 

絶叫と共に目が覚める。

 

「おーーーーーッ!きーー」

 

アークが雁夜の肩を揺さぶりながら何かを叫ぶ。

 

「ーーー落ち着けって言ってるだろうが!!」

 

両頬をムギュと挟まれ、アークと視線が合う。

雁夜は荒い息をゆっくりと整えながらアークの目を見る。

 

「すまない、アーク」

 

「ようやく落ち着いたか」

 

アークの両手が頬から離れる。

 

「も、もう……大丈夫?」

 

落ち着いて気付いたのだが、雁夜の左手を桜は怯えきりながらもずっと掴んでいた。

 

「あぁ、ありがとう桜ちゃん」

 

そう礼を述べながら雁夜は桜の頭を撫でる。

 

「桜ちゃんのお陰で良くなったよ」

 

ーーー嘘だ。桜の手から震えを感じ。それを誤魔化すように撫でたが、雁夜自身内心では悪夢を引きずっているのか、心拍数が落ち着かない。

 

「良かっ、た」

 

「嬢ちゃん、昨晩から寝てないんだ。今からでもゆっくりと寝ておいで?昼の飯には起こして上げるから」

 

満面の笑み…とはいかないが、それでも喜んでいると解るほどに表情が柔和になる桜。アークはそんな桜の背中を押して、部屋から出した。

アークはイスを雁夜のベッドの横に置き、座り黙りこむ。

二人の周囲が静まりかえった。

 

「……アーク。そっちはどうなった?」

 

その静かさに耐えきれなくなった雁夜がそう言うと

 

「こっちの完全勝利ってところか?一番謎だったイスカンダルの最大宝具を観察出来たし、相性の悪いアーチャーを撃破出来た」

 

「魔力は回復したのか?」

 

そう聞くと、アークは少しだけ笑い

 

「じゃなかったら、その雁夜の左腕は人形の腕って事になるな」

 

言われた雁夜は即座に左腕を見る。

あの夜、焼き爛れ炭と化し散り落ちた左腕は戦う前と同じ、()()()()()()()()()に戻っている。

 

「これは……お前が?」

 

「俺以外に誰が出来ると?」

 

苦笑を溢しながらアークは言ったが、そのすぐ後で

 

「だが……悪いなマスター。そんな事は出来ても、死んだ者は無理なんだ

 

小さな声で一瞬ーーーほんの一瞬だけ寂しそうな顔をした後、真面目な顔で告げる。

 

「マスター。今は俺たちを含め残り三騎、全員が休戦状態に入っている」

 

「休戦…状態……?」

 

雁夜の問いに頷くアーク。

 

「ーとはいっても1日だけの休戦だがな」

 

アークがあの夜の事を簡潔にすると

 

・セイバー陣営は聖杯を内包しているアイリスフィールが倒れたサーヴァントの帰還魔力に耐えきれなかったためダウン。

 

・アーク陣営は昨夜の雁夜の件でダウン

 

・ライダー陣営は「貴様等と戦うのは、万全の状態の方が良い」とのこと

 

「ーーーそれで、話し合った結果。全員で今日1日は作戦や、最後の晩餐を楽しめって事で休戦状態になった」

 

「…最後の晩餐はお前だけだろ?」

 

バレた的な不敵な笑みでアークは続ける

 

「ってな訳で、雁夜。今日は1日休んでいてくれ、明日は大忙しだからな」

 

そう言って、アークは雁夜をベッドに倒れさせた。

 

「けど、アーク。俺たちも作戦を考えた方が良いん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーダメだ

 

 

 

 

 

雁夜が起き上がりながら抗議しようとしたら、重い声が響いた。

 

「雁夜。今のお前は他人から見ても未だに精神状態が安定してないのは一目瞭然だ」

 

冷めきった顔で雁夜を見るアーク。

 

「そんなお前がそのまま明日の戦いに挑むなんて無茶ぶりにも程がある」

 

雁夜はアークの一言一言を聞くたびに落ち込んでいく。

アークは雁夜の額に手を置いて、まるで遠足前日で体調を崩した子供に言い聞かせるように続ける。

 

「だからな?今日1日は食って、ゆっくりと眠って明日に備えてくれ。明日はたぶん今まで以上に忙しくなるからさ…なっ?」

 

優しい顔でそう言いながらアークの手は雁夜の髪をゆっくりと撫でる。

 

「……アーク。子供扱いはしないでくれ」

 

「俺からしたら二百歳越えてないのは全員子供だ」

 

恥ずかしかったのか、雁夜は頭まで布団に入りながら抗議するが、アークは優しい顔のまま、その布団を二回ポンポンっと軽く叩き、雁夜の部屋から出ていった。

 

「ふぅ…嬢ちゃんいるんだろ?」

 

廊下に出て、軽く息を吐きながらそう言うと、廊下の柱に隠れている人影がビクリッと動いた。

 

「え…あ…その…」

 

パジャマ姿に両手で枕を持っている桜は動揺しながら出てきた。

その姿にあぁとアークが納得しながら

 

「まぁ、嬢ちゃんも寂しかったんだろうしな。良いぞ、雁夜と一緒に寝てこい」

 

ドアを開けようとしたアークはその手を止め、そうだったと一人呟くと、内ポケットから一つのブレスレットを取りだし

 

「雁夜と寝る前にこれを嵌めてからにしてくれ」

 

「…これは?」

 

首を傾げながら訊く桜、アークは桜の左腕にそれを嵌めながら答える。

 

「コイツは俺の世界での良い夢を見るための魔具でな、嬢ちゃんぐらいの発展中の魔力でも十分使える代物だよ」

 

実際は()()()()()だが、巫女が浄化してこの魔具となった。

魔具が微かに反応したのを見た後、アークは桜と別れ、一階のリビングへ行く。

 

「電話は……これか」

 

アークは受話器を耳に当てると内ポケットから一つのメモ用紙を取りだし、そこに書かれているダイヤルを押して。

 

プルルルルプルルルル

 

ガチャッ

 

「よぉ、久しぶり。ちょっと頼みたい事があってな?明日は暇かい?」

 

そう言うのだった。

 

 




よぉおし、どこぞの作家キャスター達の如く締め切りギリギリまでやってみますかぁ……(白目)


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最後の朝

おはようー!!

連か……じゃなくて練火ですッ!(゜ロ゜)



もうそろストックがまた尽きそう……Orz


ガヤガヤ

 

午前10時過ぎ、駅前の朝の喧騒も落ち着いては来ているが、眼前にいる多くの人々はあっち行ったりこっち行ったりと忙しなく動いている。

 

「……遅いな」

 

「そうだ、ね」

 

アークと桜は直ぐ近くのベンチに座りながら、そう呟く。

時折、アークは懐の懐中時計で確認しては戻してを繰り返している。

桜も足をぶらぶらさせながらのんびりと待つ。

そのすぐ後、雁夜は片手を振りながらこっちにやって来る。

 

「おーい!ーーーーゴメンね桜ちゃん、結構待たせちゃって」

 

そう言うと桜は首を左右に振り、

 

「だ、大丈夫だよ。雁夜叔父さ、ん」

 

笑顔でそう答えた。

アークはそれを横目に見ながら、()()()()()()()()()()に声をかける。

 

「よぉ、元気だったか?坊主」

 

「全く、急すぎない?()()

 

先生呼びはまだ早いぞぉ~、なんて言いながらアークは間桐慎二の頭をグシャグシャ撫でる。

 

「あ、ちょ、や、止めろよ!」

 

慎二はあまり嫌そうじゃない表情で言いながら怒った。

 

「いや、急だったけど良かったよ」

 

「でも、呼んだってことは教えてくれるんだろ!!?」

 

撫でられながらもキラキラした瞳でアークを見る慎二。

アークはたははと笑いながら、

 

「半分正解で不正解だな」

 

「え~!!教えてくれないのかよぉ~!!」

 

慎二は頬を膨らませながらそう言うとアークは苦笑いを浮かべ、

 

「まぁ待て、そんなに焦るなよ坊主」

 

そう言いつつ、懐から真っ白なネックレスを取り出したアーク。

 

「先生、それは……?」

 

慎二、桜、雁夜の三人は目の前で出されたソレを見ながら、慎二が問う。

 

「ん、これか?これは」

 

「……魔具?」

 

遮るように桜が答えた。アークは頷き、続きを話す。

 

「コイツは【罪過(ざいか)の輪】って言ってな?俺の世界で裁判官しか持っていない魔具なんだ」

 

「罪過の輪……?」

 

雁夜がそれを握りながら眺めていると、その部分が少しずつ黒く濁っていく。

 

「うわっ!?」

 

雁夜は驚いて、アークに放り投げるように返した。

 

「雁夜、もうちょっと大事に扱ってくれないか…?まぁいいかーーーーとまぁ。こんな風に罪を犯した・罪悪感があるって言う人の心に反応して、このネックレスは黒くなっていく魔具だ」

 

アークはソレを慎二に着けた。

 

「それじゃあ、約束通り。坊主が良いことをしていたか、調べるためにコイツを長時間身につけて貰う。その間は皆で遊びに行って来なさい」

 

アークの言葉にネックレスを弄っていた慎二と、へぇっと眺める桜、その二人を見る雁夜が返事を返した。

 

▽▲▽▲▽

 

改札口で切符を持ち

 

「じゃあ、行こうぜ桜」

 

「う、ん」

 

タッタッタと慎二と桜は先に行った。

 

「……本当に良いのかアーク」

 

「…あぁ。こっからは確実に敵は手段は選ばないと思うからな…この方法なら雁夜と桜には危害が来ないと思う」

 

念のために、慎二に着けた罪過の輪には周囲から狙われにくくなる魔法も付加してある。

 

「だが、お前は」

 

「ーーー何言ってる雁夜。俺を誰だと思っている?」

 

訊くと雁夜はそうだったなと苦笑し

 

「じゃあ、後は任せたぞ

 

 

 

ーーーーー魔王」

 

雁夜は桜達の後を追いかけた。

アークはそれを眺めながら

 

 

 

 

 

 

 

 

「聖杯は我が主、雁夜の手に」

 

 

 

 

 

 

 

一瞬だけ黙礼すると直ぐ様、行動に移した。

外に出ると、近くの高層ビルに入り屋上へと登った。

 

「この街とも見納め、か…」

 

呟きながら、アークは懐から二枚の符を取り出すとそれを近くのパラペットの上に重ねて置いた。

 

 

 

「《 巡れ(マイグレフ)巡れ(マイグレフ)あなたは何処に(ウェアユ) 》」

 

 

 

 

符が淡く光る

 

 

 

 

 

「《 人々は我が目から逃れる術無し(エスキフィーヤ) 》」

 

 

 

 

 

 

シュッと言う風切り音と共に、符が別々の方向へ飛んで行った。

次に懐から瓶に入った水を取り出す

 

「《 答えをここに(アンサー)共有(コット)液体(イエティ) 》」

 

パリーンッ!!

 

その瓶を叩き割ると、中に入っていた水が広がり、その広がった水が二種類の映像を映し出した。

 

一つは山中でカップラーメンを食べている青年

 

一つは古くから有りそうな武家屋敷が写されている。

 

二機は動かず、か……

アークはそれを見た後、霊体化しながらビルから飛び降りた。

 

 







さぁ、最後の戦いが始まる


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騎対狂

こんばっぱー!!

練火です!


二話書けたので今日と明日の二回投稿します!


 

 

「ハァ…同じような事をしたら倍のお金と時間を使うのになぁ」

 

ライダーのマスターであるウェイバー・ベルベットは夜の時に自身の体を暖めていたカイロを触りながら、そうボヤいた。

ライダーは魔力温存の為に霊体化しており、傍目から見れば一人の青年がキャンプをしているように見えるだろう。

 

『ガハハハッ!そう悄気るでは無いわ、坊主』

 

「……はぁ」

 

もう何度目かも解らぬため息を吐きながら、立ち上がり。ライダーに問う。

 

「それで?魔力はどうだ?」

 

『おう、王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)は後一、二回、神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)は数回って所だな』

 

「アーチャーに手酷くやられたな」

 

ウェイバーが苦々しく呟くとライダーが現界して首を横に降った。

 

「いや、それだけではないわぃ」

 

「えっ?どういう??」

 

ライダーの言葉にウェイバーが聞き返そうとするが

瞬間

 

「ーーーこういう事だ!」

 

ウェイバーの腕を掴み引き寄せるライダー。

そして

 

 

 

ギィインッ!!

 

 

 

腰に差した剣で素早く上から降るナイフを弾き飛ばした。

 

「なっ……!?」

 

 

「もう、休戦状態は切れているから誰だと思っていたら貴様だったか」

 

驚くウェイバーを他所にライダーは地面に降り立った英霊を警戒しながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

全身黒づくめ、顔にはドクロの仮面

 

「な、何で!!?だってあのときアークが……!」

 

「全員で威力偵察など…下の下の下策よ」

 

ライダーが吐き捨てるように呟いた。

アサシンはナイフを構え

 

「……いつから気付いていた?」

 

「そりゃあ…のぅ?あんだけジットリと見ておったら誰でも気付くわぃ」

 

 

シュシュッ‼

 

 

その言葉と同時にアサシンが複数のナイフを投擲する。

 

キィンッ!

 

それをまるで紙屑の如く弾き飛ばすライダー。

 

シュシュシュシュッ‼‼

 

弾いた瞬間、四方八方から十数のナイフがウェイバーへと襲い掛かる。

 

「ヌゥンッ!!」

 

ギィィインッ!!

 

迫り来る十数のナイフはライダーの豪腕による薙ぎ払いで全て地面へと落ちた。

そして、素早く落ちたナイフを掴むと横の草むらへ投擲する。

 

ビュッ‼グチャッ‼

 

「グェッ!?」

 

それは別個体のアサシンの喉に突き刺さり消滅した。

 

「さて…後何体かな?」

 

「チィイッ!」

 

今度も同じように四方八方から十数のナイフが投擲された…いや、先ほど消滅したアサシンの所からは来ない。

 

「なるほど、後七体って所か!!」

 

ライダーは同じように豪腕で防ぐと考えたのか、周囲の草むらや木陰から一斉にライダーへ突撃する。

 

「クククッ。終わりよ」

 

最初に降り立ち少し離れた所にいるアサシンがそう漏らすと、ライダーが獰猛な笑みで

 

「それはどうかのぅ?ーーッ!!」

 

ライダーはウェイバーを担ぐと、力を籠め即座にその場を跳躍した。

 

「ちょおぉぉぉッ!!!!!!??!ライダー何を」

 

「ククッ空中ではもう避けられまい!!」

 

アサシン達が突撃しながらも第2擲の準備を瞬時にしたと同時に

 

 

 

 

 

 

「ーーーそう思うか?」

 

 

 

 

 

 

ライダーの斜め下後ろの空間に亀裂が出来た瞬間、

 

 

 

『『ブモオオオオオオォォォォォォォッ!!!!!!!!!!!!』』

 

 

 

 

神威の車輪が雄叫びを上げ稲妻を迸らせながらドリフト走行をぶちかました。

 

『なバチュバチュバチュバチュバチュバチユバチバチバチバチバチバチ‼‼‼

 

アサシンの一人が声を上げようとしたが、ソレすら許さず稲妻を纏った戦車は六体のアサシンを全員轢き殺した。

一周した神威の車輪はピタリと止まると落ちてきたライダー達を乗せ、眼前で呆然としている最後のアサシンに向け突撃する。

 

AAAAAAALALLLIIIIIIッ!!!!ーーーーーッ!」

 

ライダーは剣を掲げながら目の前のアサシンへ突撃するーーーーーいや、その場から()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なッ!?ライダーいった」

 

ウェイバーが驚いて問いかけたと同時に、眼前まで迫っていたアサシンの背後から一本のボウガンが射出された。

 

キイィィンッ!

 

ライダーは空中でそれを弾き、地面へと着地する。

 

『ブモオォォッ!?』

 

アサシンの背後の陰から一つの物体が空中に出現したと同時に神威の車輪を引いている二匹の牡牛の脳天に2槍の銀色の長槍が突き刺さり、神威の車輪は最後のアサシンを轢き殺したと同時に数歩進み焦げ跡を残しながら消滅した。

黒い布を被った物体は地面に降り立つと、口を開いた。

 

 

「よく気付いたな…征服王」

 

 

「……目の前に即死するのが迫っておるのに一歩も動かぬのは闘う経験が無い英霊がすることだわぃ」

 

 

そう言いながらライダーは警戒を解かず、足元に落ちてあるナイフを強引に蹴飛ばした!

それは弓矢の如く黒い布に突き刺さり中にいる者の姿を表せる。

 

「のぅ?魔王(アーク)

 

「はぁ、失敗か…殺れると踏んだんだがな」

 

黒い物体(アーク)は溜め息を吐くと、懐から一本の銀剣を取り出す。

 

「余も、貴様は正々堂々とする性格だと思っていたのだがのう……」

 

ライダーも剣を構えながらアークと距離を測る。

アークは獰猛な笑みで

 

「それは簡単だ……雁夜(マスター)がいたからな、だが今はいない……なら俺は俺のやり方でお前を殺す」

 

そう言いながらアークは銀剣を地面に突き刺した。

 

「……何をしてるんだ?」

 

ウェイバーの問いにアークは片手を前に突き出し

 

「何…本気で行くんでな。多少?いや確実に無理を通させて貰おう!!」

 

「ほう、ならば余も本気で行かぬとなぁ……!!!」

 

 

 

ライダーは獰猛に笑い剣を真上に突き上げ。

アークは言を呟いた。

 

 

 

 

 

我は望む(Nos spes mea)我は願う(Nos Ir aasha)

 

 

 

 

 

 

「集えよ!我が同胞よ!!今宵の相手は異世界の王ーーーーー魔王なりッッ!!!」

 

 

 

 

アークの頭から血が流れ。

周囲に砂塵が吹き荒んだ。

 

 

 

 

 

 

「ーーー我が体は(Mo chorp)憑代となり(Impahla)汝を受け持つ(Jasotzeko)魂の器となる(Alma)

 

 

 

 

 

 

魔力に依る力か、アークとライダーのちょうど境目に亀裂が迸る。

 

 

 

 

 

 

「今、此処に!!我等は異世界の魔王に足跡を残さん!!!いざ、勇者達よーーー」

 

 

 

 

 

ライダーとアーク。お互いが相手を睨みながら、最後の言を叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー来てくれッ!!汝、勇者(Храбрый человек)名は(Named)結城(Yuki)》ッ!!!!

「ーーーーー余に続けッ!!!!王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、周囲は砂漠に覆われ、ライダーの背後からは何千もの大軍が彼の元に集う。

 

アークは光に包まれた後、その姿を見せた。黒い服だった服装は鈍い銀色をした頭部の無いプレートアーマー、その左胸には円と十字のマークが書かれており、背中に羽織った赤いマントにも同じマークが書かれている。

 

「……バーサーカー…その姿は」

 

ウェイバーが震える手でアークを指す。

 

「これは、世界を救った友の……その魂が記憶している最後の装備』

 

アークは手に力を込めると、その手には焔より紅い長剣と氷よりなお冷たく感じる長剣が握られていた。

 

「ほぅ…」

 

ライダーは顎に手を添えながらその二本の長剣に感嘆の息を漏らす。

アークは紅い切っ先をライダー達に向け

 

この身は万を越える(この魂の器は)魔王の軍勢を独りで(勇者の右腕)殲滅した僕の姿(となった俺なり)ッ!!!!!

征服王よ!この()に勝てるものなら掛かってこいッ!!!!! 』

 

ステレオ音声のような叫びと同時に

 

「「AAAAAAAAAAAAAALALALALALALALLLIIッ!!!!!!」」

 

天まで貫かんとばかりの雄叫びを上げ、ライダーの軍勢が突撃を始めた。

 

 




では明日もこの時間で……このすばぁッ!!!!(←特に意味はない)


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決着

はいこんばっぱー!!

練火です!!

今回はちょっとシリアス?(作者的には)

それではどうぞ!!


『!♪~ッ♪~~~♪♪♪!♪』

 

 

 

踊る

 

 

 

数多の剣が迫ろうと踊り躱す

 

 

 

踊る踊る

 

 

 

幾多の槍が眼前まで突き刺してこようとも踊り躱す

 

 

 

踊る踊る踊る

 

 

 

空を覆うように見える無数の矢が降り掛かろうとも踊り躱す

 

 

 

『♪♪~~♪~♪ッ~♪』

 

 

 

 

踊る踊る踊る踊る踊る踊る踊る踊る踊る踊る踊る

 

 

 

その躍りはまるで宙に浮かぶ綿のように襲い来る全ての攻撃をヒラリヒラリと避けていく。

端から見れば、魅せられる踊りだがその中心に行けば行くほど冷や汗が流れる。

それもそうだろう。

彼の手が振られることに、十を超える首が宙に舞い、鮮血が周囲に飛び散って。彼の足元は紅い砂場が出来上がっている。

 

『♪~♪♪~♪』

 

そして、首が飛び、鮮血が散らばる程。彼の両手に握る火・氷の長剣が光を集めているかのように淡く輝いていく。

 

「ッ!?下がれィッ!!!」

 

ライダーが何かを覚ったのか、全体に後退命令を出すが、

 

『遅んだよ()ッ!!』

 

アークが呟くと、両の長剣が白く光輝いた。

その両の長剣を地面へと突き刺し

 

 

 

 

 

 

 

『《 現実は空想に(X.XFR) 》』

 

 

 

 

 

 

足元の紅く染まった砂丘が輝きだし、そこから亀裂が走っていく。

 

「な…なんだ、あの裂け目は!?」

 

 

 

 

 

 

 

『《 空想は幻へと(O:Gefr) 》』

 

 

 

 

 

ライダー。その横にいるウェイバーが止まらず拡がっていく亀裂を目で追っていく。

その顔は下から段々と頭を上に

 

「うそ……だろ……」

 

ウェイバーがそう呟くのも無理は無かった。兵士達も誰も彼もが警戒しながら亀裂を目で追い、呆然とする。

 

その周囲に迸る亀裂は生まれた砂丘から上の雲一つ無い晴天へと刻まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

『《 全ては無くなる物語(OZ.C.NFX) 》』

 

 

 

 

 

 

 

最後の詠唱が終わると同時に世界がビキビキッビキと音をたて初め

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキガシャアァンッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

崩壊した。

 

周囲にいたライダーの軍勢は一斉に消え、景色も砂漠から先ほどまでいた山の風景へと戻っている。

 

「…やられたのぅ…えぇおい」

 

ライダーは呑気な口調で呟き、ウェイバーが焦りながら訊く

 

「どうするんだよライダー!?こ、このままじゃ」

 

ウェイバーがライダーの顔を見ると、ライダーは真剣な表情でウェイバーの頭を撫でると、

 

「ウェイバー、生きろ。そして見届けよーーー王の疾走を!そして生き永らえて語るのだ、この征服王イスカンダルの生き様をッ!!!」

 

ウェイバーに背を向け

 

「ブケファラスよ、待たせたな」

 

前でアークを牽制するかのような立ち位置にいる馬に跨がり剣の切っ先をアークへ向ける。

アークは右腕を左から右へと振ると、一本の銃剣が握られていた。

 

『別れの挨拶はもう良いの(かな)?』

 

「応とも。ーーーそれでは最後の一騎討ちと行こうか!!」

 

二人は互いに構えを取り、動き出した!!

 

「ハアァァァッ!!」

 

 

ドンッ‼ギンギギギギギッ‼ドスッギンギンドンッ‼ギィンッ‼

 

 

ライダーは迫り来る銃弾を剣で弾き、躱し。アークと鍔迫り合い、アークはライダーの乗ってる馬を足場に後方へ宙返りしながら銃剣で狙い放つ。

その銃弾を弾き落としたライダーが口を開く。

 

「貴様は強い。あまりにも強い。さすがは異世界の魔王よ」

 

ドンッ‼‼ギィンッ‼‼

 

「なればこそ、なぜ征服王が挑まずにおれようか。アレを乗り越えたならば、それは異世界への征服の始まりとなる!」

 

ライダーが言いながら吶喊し、アークへ剣を降り降ろす!

 

 

 

『残念!吹き飛(びな)ッ!』

 

 

 

ドォォンッ‼‼

 

 

 

「ぬうっ!!」

 

ドサッ!

 

それに合わせるかのように地面に倒れスレスレに避けると同時にベーッと舌を出し、乱射した。

銃声は一発だが、撃ち出された弾数は十数発。数発は弾くライダーだったが、弾けなかった数発がその身を撃ち抜き、乗っていた馬も撃ち抜かれ倒れた。

 

 

 

『さぁ、これでチェックメイトだ()?征服王』

 

 

 

倒れた瞬間を見逃さず、瞬時に立ち上がろうとしたライダーへ銃剣を向けるアーク。

動いた瞬間、引き金が引かれーーー勝負は決する。

だと言うのに片膝立ちで目の前にいるライダーは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

 

 

 

『?なぜ(なんで)笑っている(んだ)?』

 

「いや何。まだ勝負は終わってはおらんのに勝った気になるのはまだ早いんじゃ無いかのぅ?」

 

『じゃあ、ここから逆転でも出来るの(するのか)?』

 

冷めきった視線でライダーの顔から狙いを反らさないアーク。

ライダーは右で握っている剣を掴み、

 

「まぁ、やってみなけりゃ解らんわなぁ!!」

 

『なっ!?!?』

 

 

 

 

 

 

 

ブンッ‼ブシュウッ‼‼

 

 

 

 

 

 

「何やってるんだよ!ライダアアァァァーーッ!!!!?」

 

 

 

 

 

剣を振り、自身の首を斬りつけた!!?

余りの珍行動にアークが硬直。その瞬間、腹部へライダーがショルダータックルをかまし、距離を離す。

 

「ウェイバー!」

 

「ッ!あぁ、今やる!」

 

ウェイバーの令呪が輝いたと同時にライダーの首元が治っていく。

 

「重ねて令呪をもって命ずる!!勝てライダー!!

更に重ねて命ずる!!僕に最後の瞬間まで…その生き様を見せてくれ。我が王ーーーーーイスカンダル!!

 

その期待と願いにライダーは

 

「ーーーーガハハハハハハハハッハッハッハッ!!!!応とも!マスター、いや我が臣下、ウェイバー・ベルベットよ。その願い聞き届けたぞ!」

 

豪快に笑いながらに了承した。

 

『第二ラウンドかな(かよ)?』

 

「そうさな。【彼方にこそ栄えあり(ト・フィロティモ)

ーーー届かぬからこそ挑むのだ! 覇道を謳い!!覇道を示す!!その為に負けるわけにはいかん!!!

ーーーーこの背中を見守る臣下のためにッ!!!行くぞ魔王!!

 

それと同時に走りだーーアークの眼前で剣を振り落とした!

 

『早いッ』

 

アークがギリギリで避けると、地面が剣圧で凹んだ。

急いで大幅に距離を取り、片膝立ちで銃剣を構えるアーク。

 

『此方も時間が無いからこれで仕留める(終わらせる)ッ!!!』

 

アークの周囲が光だし、その光が銃剣へと集まっていく。

 

「ならば、この一撃で決着を付けるとしようか、魔王・アーク!」

 

やってみろ(やってみなさい)。征服王・イスカンダル!!』

 

その言葉と共にライダーが走り出し、

 

「いざ!遥か万里の彼方まで(ヴィア・エクスプグナティオ)ッ!!!!!!AAAAAAALALALALLLIIッ!!!!

 

お互いの距離が徐々に縮まり、ライダーが跳躍して剣を上段に構える。

アークも狙いをライダーから離さず、更に光が集まっていく。

 

AAAAAAAAAAAAAALALALALALALALLLIIッ!!!!!!

ハアアアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!

 

そして、

 

 

 

 

 

ドンッ‼‼ビュッ!!

 

 

 

 

弾丸と剣が交差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ガハッ』

 

 

 

 

 

 

 

アークが口から血を吹き出し倒れた、その右肩は鉄球でも食らったかのように抉れている。

 

 

 

 

「ーーーハハハ」

 

 

 

ライダーが笑いながら憑依状態から解除されているアークを見る。

 

 

 

 

 

「これが異世界の王の力か……」

 

 

 

 

 

そして、両膝を付き。左胸から流れ落ち、血に染まった地面を見て、空を見上げながら

 

 

 

 

 

「此度の遠征も心…踊った……わい…………」

 

 

 

 

 

血に染まった地面に倒れた。

アークはゆっくりと立ち上がり、ライダーに畏敬の念で見ながら

 

「人の境界線上でここまで殺られたのはライダー……アンタが初めてだよ。ゴフッ……誇って良いぜ、そして。次は共にいろんな世界でも征服してみるかぃ?」

 

口から血を流しながら、そう言うアークにライダーは聞こえていたのか笑みを浮かべたまま、消失した。

アークはゆっくりと見届けた後、呆然としている

 

「少年、ライダーとの約束は覚えてるよな?」

 

ウェイバーは微かに震えながらアークを真っ直ぐに見つめ、頷く。

 

「……生き延びる、生きて語り継いでいく。それが……僕が王に…命じられた事だから」

 

泣きそうなのを必死に我慢して、言い切るウェイバーにアークは頭をポンッと軽く叩き、彼の横を通りすぎ

 

「それでいい、その忠義は忘れちゃいけないぜ」

 

姿を消した。

山にヒュウッと風が吹きすさび

 

ーーーッ!!ーーーーーーーッ!!!!

 

後に残ったのは声に成らない、泣き声を上げ、泣いているウェイバーの叫び声のみだった。

 

 





さてここで問題だ。どうやってこの話締めようか……


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少女の悲鳴

ヤイサホー!!



練火デス(・・;)


久々なので、こんな言い方してない!とか思うかも知れませんが、許してね♪


時刻は既に昼を過ぎ、夜となっている。

 

「ーークソッ…雁夜にカッコづけといて、この様かよ」

 

あの後、食事と睡眠である程度まで回復したアーク。

 

ーーそう、()()()()

 

先のライダー戦で消費した魔力とライダーによる最後の一撃のダメージが予想以上に大きく、傷を回復するための魔力もなけなしの魔力を使った為、数回の食事と仮眠での回復があっても先程の二分の一でも出せれば良い方である。

そんな状態のアークは只今、夜の市民会館の前にいた。

 

「セイバーの魔力はこの中、か……罠か?」

 

セイバー陣営の拠点としていた屋敷からセイバーの魔力を追い、最後には辿り着いたのだが

中から感じられる魔力は

 

屋上に続く階段で

セイバーのが一つ

アサシンのが四……今、二つ消えたな

 

地下の立体駐車場で

マスターと思われる魔力が二つ

 

そして

 

 

 

 

ーーー得体の知れない何かが一つ

 

 

 

 

「感じからして……特大の魔道具(聖杯)か?」

 

顎に手を添えながら考えるアーク。だが、考えても悩んでも一向に答えは出ない。

 

「仕方ない…見れば解るか」

 

苦虫を噛み潰した顔になりつつ、戦場となっている市民会館の中に入って行くのだった。

 

 

 

 

 

■□■□市民会館・屋上■□■□

 

 

キィキィキィキィキィキィキィンッ!!

 

 

セイバーの剣がアサシンのナイフを弾いていく。

 

 

ドンッ!

 

「ーーハアァァァァッ!!!」

 

「クッ!!」

 

ギィンッ!

 

セイバーの魔力放出による変則じみた攻撃により残り二体となったアサシン。

猛攻は更に激しくなりアサシンはかろうじて防いでいる。

 

「ッ!綺礼はまだかッ!」

 

ギィンッ!ドンッ!ギギィンッ!!

 

「耐えろ!そうすれば我等の勝ーーーーーッ!!?」

 

セイバーの攻撃を防ぎ、己を鼓舞しようとしたアサシン達が一瞬だが()()()()のだ。

 

 

 

 

ーーーーーそれをセイバーは見逃さなかった。

 

 

 

「ーー風王(ストライク)鉄槌(エア) ッ!!!!」

 

 

 

 

ビュオオオオオォォォォォッ!!!!!

 

 

暴風を纏った剣が、アサシン達の足元へ振り抜かれる。

 

 

「「ッ!」」

 

アサシン達はそれを跳躍して避けるが、次の瞬間

 

ザシュッ

 

ゼロ距離まで迫っていたセイバーの一刀で消滅するのだった。

地面に降り立ったセイバーは自身の足元へ目を向けながら

 

「……この魔力…アークか!」

 

周囲を警戒しつつアークのいる場所へ行くセイバー。

 

 

 

 

 

 

 

スタスタスタスタス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーータッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーータタタタタタッ!

 

 

 

 

 

 

セイバーは急ぐ。

反応があった地点はよりによって聖杯に成ったアイリスフィールがいた場所ーーー大ホールである。

 

「アークの事だ、聖杯をーーアイリスフィールを食べるかも知れない!そんな事は…させないッ!!」

 

 

 

 

大ホールの入り口がもうすぐ見えてくる。

 

 

「ッ!」

 

一息でドアを交差するように斬りつけ、ズドォンッ!!と言う重低音の音とともにドアが崩れ落ちた。

ハァッハァッと荒い息とともに聖杯の間近にいるアークを睨み付け叫ぶ。

 

「アーク……何をしようとしている!!!」

 

その言葉にアークは両手を上にし、降参のポーズを取りつつ言う。

 

「まてまて、俺はまだ何もしてはいない」

 

「ではその床の黒い液体はなんだ!」

 

そうアサシン達との戦闘が始まる前には無かった液体。

アークは降参のポーズのまま。

 

「解った。すぐに消すから、攻撃は止めろよ?コレが壊れてしまう」

 

「……外道め…」

その言葉にセイバーは睨み付けたまま、剣を下げる。ソレと同時に床の黒い液体も消えていった。

 

「さて、どうする?コレの異常さはセイバー。お前だって解るハズだ」

 

アークが、その背後にある聖杯を指しながら問い掛ける。

異常さ?アークはいったい何を言っている?

セイバーがそう思っている間にもアークの言葉が続いていく。

 

 

 

「ーーーーーセイバー。俺がこの聖杯の被害を出来るだけ最小限に抑えて()()する。だから、俺が消滅するまでは倒さないでほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー今、貴様(アーク)は何て言った?

 

 

 

 

 

 

「?セイ「分解……?分解と言ったのか?聖杯を?」」

 

 

セイバーがワナワナと震えながら呟いたのをアークが

 

 

 

 

「あぁ、そうだ」

 

 

 

 

 

ーーー肯定した。

 

 

 

 

 

「それにもう時間が「ふざけるなッ!!」」

 

セイバーは親の仇でも見るように表情が歪んでいく。

思い出されるのは聖杯に変わる前のアイリスフィールの弱々しい笑顔と、変わった直後の感情を圧し殺しつつ言ったキリツグの言葉。

 

 

 

聖杯(アイリ)を守ってくれ』

 

 

 

「セイバー!話を」

 

「ーーー絶対に!絶対にそんな事はさせない!!私の命に変えてもッ!!!

 

今まで以上の決意を胸に剣を構えるセイバー。

 

 

 

「ああ!!!クソッ!!王族ってのはいつの世界も似たようなもんかよッ!!!!」

 

アークも懐から銀の双剣を抜き、構える。

互いが相手の動きを読み取る中、セイバーは悩む。

アークの位置はどこを取っても聖杯の真正面…どうする?

そんな中、視界の端。アークの後ろの客席のドア…そこから衛宮切嗣が現れた。

 

キリツグ!何か策が有るのですね?

 

切嗣が気づかれないようにセイバーはアークへと斬りかかる為、客席の椅子を足場にしようとした直前

切嗣が令呪を胸の前に言った。

 

 

『衛宮切嗣の名のもとに令呪を持って命じる。セイバーよ。宝具を持って聖杯を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー破壊しろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?ッ!?」

 

ビュオォォォオオオオオオオッ!!!!!

 

セイバーの理解よりも早く、セイバーの持つ不可視の剣が姿を現し、真の姿を発揮する。

その魔力量たるや、アークもそれを理解し

 

「馬鹿かお前!?そんな物で攻撃したらどうなるか解ってるのか!!!?」

 

「ッ!!違う!!コレは!!」

 

アークの叫びにセイバーは否定し、その体に紫電が迸るのが確認したアークはホールに響き渡る声で叫ぶ!

 

「セイバーのマスターよ!やめろ!!やめるのだ!!」

 

だが、切嗣は感情の無い瞳で

 

 

 

『続けて令呪を持って命じる。迅速に聖杯を破壊しろ』

 

 

 

そう言うのみだった。

 

止めなさいキリツグッ!!アナタは!私に『守れ』と言ったではないかッ!!!

 

セイバーもそう悲痛に叫ぶが切嗣の返答はただ一つ。

 

『ーーー最後の令呪を持って命じる。セイバーよ、全魔力を使い聖杯を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー破壊しろ

 

その言葉が引き金となり

 

 

 

 

 

 

 

やめろオオオオオォォォォォォォォッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

真の姿を見せた黄金の約束された勝利の剣(エクスカリバー)は少女の悲鳴と共に振り下ろされた。

 

 

 

 

 





疲れたよ~、千葉に引っ越しが


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閑話・別れ

ヤイサホー!!


練火デス(・ω・`=)ゞ


前話書いてたら、気づけば、コレも書いていたと言う謎現象??犯人は誰なんだ!?←犯人は練火(ヤス)


ここは冬木の市民会館・大ホール

 

「…ここ…なら。周囲の事を考えずに…戦える…ハズよ」

 

息も絶え絶えな表情でアイリスフィールは自身の手を握る切嗣に言う。

 

「ありがとうアイリ、君はゆっくりと休んでいてくれ。後は僕の仕事だ」

 

切嗣はそう言いながら、空いた手でアイリの長髪を愛しそうにゆっくりと撫でている。

 

 

静寂が二人を包む。

 

 

この広い大ホールにいるのはたった二人だけ、セイバーは廊下で待機し、舞弥は周囲の探索に出ている。

そんな静寂を楽しんでいる二人。

不意にアイリが微笑み。

 

「ふふっ…まるでアダムとイブのようね」

 

「それだと、イリヤは神様かな?」

 

二人の脳裏にえっへんと胸を張っているイリヤが浮かび上がり、クスリッと二人は同時に笑みを溢した。

 

「ねぇ、キリツグ?」

 

「なんだいアイリ?」

 

「ーーーイリヤの事、お願いね?」

 

「あぁ、約束する。…絶対に」

 

弱々しい手で切嗣の顔を触れながら、そんなお願いをするアイリ。

切嗣もそれに儚い笑みで返した。

 

もうアイリは戻れない(帰ってこない)

それを知ったイリヤはどれだけ悲しんでしまうだろうか。

そして切嗣にも、もう二度と会えない。

その事に切嗣自身…どれだけ心を痛めているのだろうか。

切嗣は目の前で弱々しくも普段と変わらない表情で話しているアイリを見る。

そのアイリも表情は変わらないが、目尻に涙が溜まっている。

 

 

ーーーそれもそうだろう。

 

感情をーーーーー人としての心をくれた愛すべき夫。

その愛の結晶でもある愛すべき娘。

二人と別れたくないのは彼女も同じである。

もし神様がいるとして望みを叶えてくれるならば、こう答えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『別れたくない』

 

 

 

 

 

 

 

もしあの時、切嗣の提案に乗って逃げていれば別の可能性もあったかも知れない。

 

 

 

ーーーーーだが、それはifの話だ。今となってはもう遅い。

 

 

 

アイリは優しくーーそれでいて儚く切嗣の頬を撫ぜ

 

「キリツグ、アナタにこれを……」

 

 

そう告げると、

 

 

シュオォォォォ

 

 

アイリの腹部から一つのきらびやかな鞘が出てきた。

 

「これは、セイバーの」

 

「えぇ、私に使ってと渡したもの。でも、これからはアナタが使うべきよキリツグ」

 

切嗣が何かを言う前にアイリがその鞘を切嗣の体内へ入れた。

 

「さぁ、行ってキリツグ。これ以上はもう耐えられないわ……」

 

アイリの手がゆっくりと離れていく。これから聖杯の器へと変わってしまうのだろう。切嗣はゆっくりと入り口のドアへと足を運び、ドアに手を掛けた時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーさようなら、切嗣」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろから声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……さようなら……アイリ」

 

 

 

 

 

そう返した。

扉を閉めると、切嗣はセイバーを呼ぶ。

 

「……何ですか?キリツグ」

 

セイバーの真剣な顔を見て、切嗣はいつもの表情で、いつもの声音で言う。

 

 

 

「聖杯をーーーーアイリを守ってくれ」

 

 

 

目を見開くセイバーを余所に、いつもの冷徹な感情のまま、綺礼を迎える場所(戦場)へと行く切嗣。

 

 

彼の手は自身の握力により血が流れている。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーそれが切嗣の涙でもあるかのように




なんだろうね、別れの場面を書くと胸が締め付けられるようでツラい……


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敗北

ヤイサホゥ!?(゜o(○=(゜ο゜)oこんばっぱー!!


練火デス(。・x・)ゞ


連投稿3話目、頑張りました(。・x・)ゞ


ボギンッ‼ドゴッ!ダンッ!ヒュッーーメキャッ

 

ドゴオォォォンッ‼‼

 

1メートル歩く度に、至るところから銃弾・ボウガンの矢ーー果ては手榴弾までもがアークを襲ってくる。

それを全て破壊しながら

 

「やっぱり、すんなり通してはくれないか」

 

言いつつもスピードは一定の速さで乱れてはいないアーク

そして、謎の魔力が漂う大ホール前のドアに手を開け、ゆっくりと中を覗くよう確認するが、謎の魔力以外、罠等も置かれてはいないようだ。

 

「あれが……聖杯なのか……?」

 

開けたドアをゆっくりと閉め、壇上の上に置かれた、どす黒い液体に使っている魔道具(聖杯)を見て…疑惑の目を向けるアーク。

そして近付きながら、どす黒い液体が足に浸ると同時に理解し呟いた。

 

「ふざけんなよクソッタレ……なんだ…コレは」

 

アークはすぐさま聖杯まで歩を進める。

 

ジャブジャブ

 

「何が……願いを叶えるだ…ッ」

 

ジャブジャブジャブジャブッ!

 

「こんな……ものが…ッ!」

 

ジャブジャブジャブジャブジャブジャブッ!!!ガシッッ!!!!

 

こんな物のために!俺達は殺しあったのかアァァッ!!!!!!

 

聖杯を潰さんとばかりに力を込め握り。この世を呪うかの用な慟哭が大ホールの壁を震わせる。

こんな物は一秒でも早く、分解を…ッ。こんな時にッ!

アークは自分が入った入り口に向くと次の瞬間

 

ズドォンッ!!!

 

扉が切り落とされ、そこには。急いだのだろう息を切らせたセイバーがいた。

セイバーは此方を睨みながら叫ぶ。

 

「アーク……!何をしようとしているッ!!」

 

話を聞いてくれそうに無いか、だが、戦闘する時間は無い。

アークは両手を上に、降参のポーズを取った。

 

「まてまて、俺はまだ何もしていない」

 

「では、その床のどす黒い液体はなんだ!!」

 

しょうがない、交渉させる為に先に液体を喰うか。

 

「わかった。すぐに消すから、攻撃は止めろよ?コレが壊れてしまう」

 

「……外道め」

 

セイバーが剣を下げたのと同時にアークは足元に口を開き、全て体内へ消化していった。

スゲェ……魔力は大半戻ったが糞がつくほど……不味ぃ…

アークはそれを顔に出さず、セイバーと交渉を始める。

 

「さて、どうする?コレの異常さはセイバー。お前だって解るハズだ」

 

そう、こんな物解放したら、どれだけの生きる者が死ぬか……

 

「それに、俺は後一時間足らずで魔力が保てず消滅する。その前にこの聖杯を壊して治すーーだから、セイバー。俺がこの聖杯の被害を出来るだけ最小限に抑えて分解する。だから、俺が消滅するまでは倒さないでほしい」

 

刹那、セイバーの気配が揺らいだ。

 

「?セイ「分解……?分解と言ったのか?聖杯を?」」

 

微かにセイバーは体を震わせながら言ってくる。

アークはそのセイバーの問いを真正面で真剣に

 

「あぁ、そうだ」

 

ーーー肯定した。

 

「それにもう時間が「ふざけるなッ!!」」

 

セイバーが何故か、復讐の目で睨み、表情も怒りか悲しみか憎しみか、それが混ざったように歪んでいく。

 

「セイバー!話を」

 

絶対に!絶対に、そんな事はさせない!!!私の命に変えてもッ!!!!!

 

セイバーは構えながらそう叫んだ。

ちくしょうッ!馬鹿かお前はッ!?

 

「ああ!!!クソッ!!王族ってのはいつの世界も似たようなもんかよッ!!!!」

 

アークも懐から銀の双剣を抜き、構える。

どうする、こっちは戦ってこの聖杯をどうにかする時間が…魔力があるのか!?

 

「クソッ!」

 

セイバーの移動に合わせてアークも聖杯を背に移動する。

そしてセイバーが客席の椅子を足場にした瞬間

 

「えっ?ッ!?」

 

ビュオォォォオオオオオオオッ!!!!!

 

隠されていた剣が姿を現した。

なんだ!?あの魔力はーーー宝具か!?

 

「馬鹿かお前!?そんな物で攻撃したらどうなるか解ってるのか!!!?」

 

「ッ!!違う!!コレは!!」

 

アークの叫びにセイバーは否定し、その体に紫電が迸るのが確認できた。

令呪!?なら、マスターはこの近くにいるハズ!

 

「セイバーのマスターよ!止めろ!止めるのだ!!」

 

ーーーー。~~ーーー

 

ホールの一部から声が聞こえた。

その声が何なのか解っているセイバーが悲痛な顔をしながら叫ぶ。

 

止めなさいキリツグッ!!アナタは!私に『守れ』と言ったではないかッ!!!

 

セイバーの顔向きから場所が解ったアークは向き説得しようとするが、

 

『ーーー最後の令呪を持って命じる。セイバーよ、全魔力を使い聖杯を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー破壊しろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー遅かった

 

 

 

 

 

 

 

 

やめろオオオオオォォォォォォォォッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

真の姿を見せた黄金の剣は少女の慟哭と共に振り下ろされた。

 

「間に合えよ!!」

 

アークは目の前の虚空に向かって、紋を描きつつ、早口で詠唱する。

 

「《 守護天使の加護(ガーディーズ)付加(エント)地獄の門(ヘルゲルト) 》!!」

 

禍々しき巨大な門がアークの足元から出現し、天空から光が舞い込みその門を包み込んだ。

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガギギギギギギギギギギギギギギッ!!!!

 

聞きたくないと思う程の不協和音がホールに鳴り響き、アークは顔を歪ませるが、魔力を途絶えさせはしない。

 

「早く…無くな…れエェェェェェェッ!!!!」

 

バギャンッ!!

 

そんな音と共に、アークは

 

「……クソッタレが…」

 

光に包まれた。

 

 




只今4話製作中..._〆(・・;)シメキリマニアワナイヨー


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絶望

こんばっぱー……


練火……です


ここはどこだ……?聖杯の中身か?

暗い……光は……何処だ…?

 

 

 

殺意憎悪悪意怨念愚劣怨恨悔恨後悔呪詛怒気悲鳴破滅呪殺懐疑嫉妬憤怒劣等慟哭陰湿増悪殺意怨恨呪詛破滅憤怒悪意愚劣殺害

 

 

 

 

ーーー人の?いや、一人ではない。少なくとも大多数…違う。数えきれないくらいの

 

 

 

 

 

悪悪悪意悪意死殺銃殺毒殺爆殺嘆悲鳴憎殺憎悪悪殺死死死死死死殺死殺殺殺呪呪呪呪呪呪死死殺殺殺

 

 

 

ーーーやめてくれ!!頼むから、やめてくれ!!

 

 

 

死死死死死死死死死死死死殺死殺殺死死殺殺殺殺殺殺死殺死死死死死死死死殺死殺殺殺殺殺殺死殺死死殺殺殺殺死死殺殺死死

 

 

 

 

 

ーーーやめろやめろやめろやめろやめろヤメロヤメロオオォォォォッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

死死殺殺死死殺殺死死死死殺殺殺殺殺殺殺死死死死死死死死死死死死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー軽い、軽すぎるぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺死死死死死死殺殺殺殺殺ーーー?

 

 

 

 

魔法使いには効果的でも我には効かぬわ

忘却の悲願(winf-Volas)

 

 

 

 

 

 

 

!?殺死死死死殺殺殺殺殺死死刺殺銃殺圧殺溺死転落死爆殺絞殺斬殺殴殺撲殺殺ーーー

 

 

 

 

 

 

劣化魔具風情があまり魔王を嘗めるではないぞ

 

 

 

 

 

 

ーー死ー(さt)……

 

 

 

止…まっ…た……?

 

 

これは貸し一つだぞ。魔法使い

 

お前……は……

 

代償は、そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー我は回転寿司とやらを所望する。ゆめ忘れるでは無いぞ?魔法使い

 

■□■□■□■□■

 

 

「……ッ…ここは……」

 

頭を押さえながらアークは起き上がった。

倒れていた地面は瓦礫で埋まっており、アークにとって馴染みの臭いが漂う。

 

「これは…死の臭い…戦争?ーーッ!」

 

そこで思い出した。

戦争…聖杯戦争!じゃあ、これはセイバーが!?

アークは立ち上がり、周囲を眺める。

 

「なん…だよこれは……」

 

ーーーその光景は地獄だった。いや、地獄と言う言葉では生温い…ここは煉獄か?

 

「……ッ…ハッ!ハァッ!!」

 

気づけばアークはその煉獄の中を走っていた。

 

ーー走っている最中、聞こえてくるのは、燃える音と崩れる瓦礫の音のみ……人の気配は一切……

 

「ちくしょう……ちくしょう…!!」

 

苦虫を噛み潰した顔に成りながら、アークは必死に走り回り生存者を探す。

 

ポツリッ

 

水の礫…雨が降ってくる。

 

 

 

 

『ーーーおーーん!かーーーじーー!!』

 

 

 

 

 

不意に泣いてる声が聞こえた。アークは喜びつつ、そこまで走る。

 

「大丈夫か!助けに来た…ぞ?」

 

何故、気付けなかったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

セイバーと戦闘に入った時間帯は?

 

 

 

 

 

 

 

何分、意識を失って倒れていた?

 

 

 

 

 

 

何故、走り回った?

 

 

 

 

 

 

 

何故、思い出さなかった?

 

 

 

 

 

 

 

 

何故、何故、何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜナゼ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きて!雁夜叔父さんッ!!ねぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザアアァァァァァァ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー何故、泣いてる桜がここにいて、雁夜が倒れている

 

 

 

 

 

 

 

ピシリッ

 

 

 

 

 

 

何処かで音が聞こえた…

 

「…嬢ちゃん。何があった…?」

 

震える声で問うと桜が此方に気付き、泣きながらアークに言う。

 

「解ら、ないグスッ。きゅ、急に空が黒くなってヒック、そ、それで解ん、ない物が、落ちてきて…雁夜叔父さんが、ヒッグ私と兄さまをま、守ってグスッそれで」

 

雁夜の下には気絶した慎二がいた。だが、アークの表情は明るくならない。

落ちてきた…?じゃあ、セイバーの宝具じゃなくこの末路は…聖杯の力?

 

「嘘…だろ。か、雁夜?ほ、本当は気絶したんだろ?な、なぁ」

 

アークは震える手で雁夜をそっと抱き締める。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーその身体は冷たかった。

 

 

 

 

ピシリッピシリッピシリッピシリッ

 

 

 

 

「ーーーー()ぁぁぁぁぁあああああああアアアアアアッ!!!!

 

 

 

 

アークを中心に一瞬、白い円が広がり、それに触れた桜が気を失い倒れたが。アークは涙を流しながら吼える。

 

「またか。またなのか…また!ーーまた、俺の大事な、大切な人が消えていく……!!ピシリピシリピシビシ………あの時も、あの時もあの時もあの時もあの時もあの時もあの時もあの時もあの時もッ!!!!!!

 

ビシビシビシビシビシビシビシビシ

 

何かがひび割れる音が聞こえる。

この感覚には覚えがある。

あの時と同じだ。

何も出来なかった自分を怨み、何も出来なかったから亡くした人を嘆き。

只々悲しみが、憎悪が!怨嗟が!!怒りが!!!

 

 

 

クソッタレの神達よ!!!アンタはまた俺の大事な人を奪うのか!!!?直接的に!!間接的に!!あの時と同じように俺から奪うのかッ!!!!

 

 

 

 

ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシパリィンッ!!

 

 

 

 

ーーこの体を支配するッ!!!!

 

 

 

 

何か言ってみやがれクソ神共がああぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!

 

 

 

 

 

アークの体が段々と変色していく。

彼が着ている服も変化していく。

そして

 

「ーーーもう…いいや、全てーーーーーキエチマエ

 

アークを中心に黒い円が現れ

 

 

 

 

 

 

ドスッ!!

 

 

 

 

 

アークの右胸と背骨に何かが刺さった。

 

 

「ーーー?ーーいったをーーッ!?ガアアァァァァァァァァッ!!!!!??』

 

それは痛みを増してきて、アークが悲鳴を上げた。

 

『ッ!貴様ぁ!コンナ物、スグニシテーーーーー何故魔力流れナイッ!!??」

 

ドサッ

 

遂には地面へ倒れるアーク。

そこへ、一人の男が少年を背負いながら、説明してくる。

 

「【起源弾】ーーー僕はそう呼んでいる」

 

「貴、様…?』

 

急な魔力消費でアークは薄れ行く意識の中、男に聞いた。

 

 

 

 

 

「僕かい?僕は衛宮切嗣。正義の味方さーー受肉したアーク・ラッド」

 

 

 

 

 

 

その言葉の直後、アークは気を失った。

 

 





最近、不幸すぎてワロエナイ……orz


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エピローグ

こんばっぱー!


練火です(;・∀・)


永久凍土楽しかった~!


 

トサッ

 

 

協会の近く、墓に一輪の花が置かれる。

 

「…雁夜叔父さん…またね」

 

桜は両手を合わせた後、そう言って立ち上がる。

 

『桜~!もう行くぞ~?』

 

遠くから慎二が手を振って先に歩き始めた。

桜は最後にもう一回『間桐』と書かれた墓を一瞥し、直ぐ様小走りで後を追う。

 

■□■□■□■□■

 

とある道場にて、竹刀を持った少年と少女が地稽古をしている。

 

パシ!パシンッ

 

「やあぁァァーッ!!」

 

「甘い!」

 

バシッ!

 

振り上げた竹刀を少女が紙一重で後ろに避け、すかさず下から少年の竹刀を蹴り飛ばした。

 

メエェンッ!!

 

バシンッ!!

 

少女の竹刀が少年の頭を叩いた。

 

「ッ痛ゥ~!!」

 

少年は頭を抑えながら、潤んだ瞳で少女を睨む。

 

「藤ねぇ!蹴りは卑怯だろ!!」

 

だが、藤ねぇと言われた少女はフフンッとドヤ顔で

 

「この世は弱肉強食…負けた方が悪いのよ!」

 

オーホッホッホッとでも笑いたげに言いきった。

 

「でも反則は反則!だからノーカンだ!ノーカン!!」

 

そんな事を言う少女に少年は飛んでいった竹刀を拾い、構えた。

 

「もぅ、士郎ったらいい加減諦めて、おやつのプリンを渡しなさいよ」

 

「イ・ヤ・だ!!」

 

 

ダッ!

 

 

ダッシュで藤ねぇに向け、横凪ぎに払おうするが、その前に

 

 

 

 

 

ゲシッ!!

 

 

 

 

 

「……あ」

 

 

 

 

 

 

ーーー藤ねぇの無意識の前蹴りが士郎の顔面を捉えるのだった。

 

「ーーぶげらっ!!?」

 

ドサリッ

 

 

 

 

「し、士郎ーーーッ!!?」

 

 

 

 

 

一発KOをもらったボクサーの如く、地面に横たわるのであった。

 

△▲△▲△▲△▲△

 

プリン争奪戦から数日後、

 

とある軒下にて、士郎と衛宮切嗣が座って月を眺めながら、茶を飲んでいた。

 

 

 

「士郎…僕はね、子供の頃、正義の味方に憧れていたんだ…」

 

 

 

湯飲みを隣に置き、ポツリとそう溢す切嗣

 

「いたってことはならなかったのかよ?」

 

士郎は切嗣の寂しげな横顔を見ながらそう問うと、切嗣は視線を月にむけたまま、自嘲ぎみに返す。

 

「そうだね…正義の味方っていうのは、期間限定で子供の頃にしか成れなくてね。僕は、それをつい最近。ある友人から言われて知ったんだ…」

 

「へぇ~。そうなのか」

 

切嗣に顔を向けていた士郎は月の方に顔を向けながらそう流すと、不意に立ち上がり、月に手を伸ばしながら

 

 

 

 

 

 

「ーーーなら、俺がなってやるよ」

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

切嗣が立ち上がっている士郎に顔を向けながら聞き返した。

士郎は月に向けていた手をギュッと握り

 

 

 

 

 

「だから、俺が爺さんの代わりに正義の味方になってやるよ。爺さんは大人だからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ?任せろって、爺さんの夢は__________」

 

 

 

士郎が誓いの言葉を続けている最中、切嗣は自身の胸の内の疵が癒されていくのを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーそうか…ああーーー安心した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湯飲みに入った残りの茶を飲み干し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は良い日、だ。ーーー月が……き、れい…で______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴンッゴロゴロコロ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……爺さん?」

 

湯飲みが軒下に落ち、衛宮切嗣はまるで憑き物が全て落ちたような安らかな顔をしながら、亡くなった。

まるで、天から迎えが来たかのように、月の光が彼を照らしていた。

 

◯●◯●◯●◯●◯●◯

 

外が吹雪いているとある城の中のとある部屋、まるで親子三人が寝れるキングサイズのベッドに腰掛け、いまだ、吹雪く外を寂しげに見ている少女。

 

「そこな嬢ちゃんに尋ねたいのだが、貴方がアイリスフィールの娘である、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンで間違いないかな?」

 

イリヤスフィールと呼ばれた少女は急に聞こえた声に驚きつつ、立ち上がって部屋を見渡す。

 

「だ、誰?どこにいるの?」

 

「ここですよ、ここ」

 

声がした方ーーー自身の真上に目を向けると、そこには逆さに立っている一人の青年がいた。

 

「ッヒッ!!」

 

ペタッ

 

イリヤスフィールが悲鳴を上げる直前に、青年がその口を手で防いだ。

 

「おっと、大声出されると厄介なんでね。大丈夫、俺は君の父さんーー衛宮切嗣から、頼まれて来た者さ」

 

青年はゆっくりと手をどかすと同時にイリヤスフィールは青年の顔を見つめながら

 

「なんで…なんでキリツグは来ないの?」

 

「それも含めた手紙を渡してくれと頼まれた」

 

これを、と青年は懐から手紙を一枚、イリヤスフィールに渡す。

イリヤスフィールはそれを受けとると、内容を読み始めた。

青年は近くの椅子に腰掛けながら、読み終わるのを待つ。

 

「そう…何だね……」

 

青年は座りながら、イリヤスフィールに問い掛ける。

 

「さて、イリヤスフィール。その手紙に書かれている通り、君には2つの選択肢がある」

 

「うん…」

 

 

 

「一つ、このままここで暮らすか。二週間に一回は俺がここに手紙を持ってくる」

 

 

 

そう言って、イリヤスフィールに右手を差し出し

 

 

「そして、もう一つ。俺がこのまま君を拉致り、衛宮切嗣と一緒に暮らす」

 

 

イリヤスフィールの顔を真剣に見ながら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、悔いの無い道を選べ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴクリッと唾を飲む音が聞こえる。そして、イリヤスフィールは口を開く。

 

 

 

「_________________」

 

 

 

 

「悔いは無いかい?」

 

 

 

コクりとイリヤスフィールは頷きながら、

 

「所で…貴方の名前は?」

 

「ああ、俺かい?俺はーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーアーク・ラッド。ただの化け物(魔王)

 

 





そして、物語は亜種staynightへと(嘘予告)


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fate/staynight the end nightmare
プロローグ


ヤッハロー!!


久しぶりー!!練火です(ФωФ)


久しぶり過ぎる【暴食の魔王】続編です(駄文だがな)

そいでは~~~どうぞ!!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュオォォォォ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳元から風の音が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーンッカーンッカーンッカーンッ━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くで何かを打つ音が響いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュオォォォォ___カーンッカーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな音が聞こえる中、数多の剣が突き刺さる荒野に佇む少年。

 

「━━━━━━」

 

少年は何を言い━何を見て━━そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビュオオオォォォォォオオオオッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━何を感じたのであろう━━━━

 

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

ジリリリリリ━━タンッ

 

目覚まし時計の音が鳴る。

その頭のボタンを布団から伸びた手で押し、音が止まった。

 

「ーんっ……もう朝か…」

 

オレンジ色の短髪の少年=衛宮士郎がそう言いながら、布団から這い出てきた。

士郎は眠気眼のまま、軽く伸びをして時計を眺めながら……

 

「……あれ?俺、何で布団で寝てるんだ?」

 

最後の記憶にはいつもの物置小屋で魔術の自主練をしていたハズの士郎。

段々と目が覚めていくのと同時に、冷や汗が出てくる。

それもそうだろう。なんせ、時計の時刻を写す画面に一枚の紙……

 

 

 

 

 

『急げよ。遅刻するぞ。by慎二』

 

 

 

 

そんな文字が書かれていたからである。

そして、その下の時刻は後十数分で朝のSHRが始まる時刻にまで迫っていた。

 

「ち、遅刻だーーッ!!?」

 

ドタバタと騒がしい音が衛宮邸に響くのであった。

 

▽▲▽▲▽

 

二年C組の黒板の前で、藤村先生が本日の連絡事項を話している。

 

「~~と言うことで、テストの準備しときなさいよ?」

 

『『『は~い』』』

 

やる気無さげな声がちらほら上がる。

 

「……ったく。テストなんてそうしなくても良いじゃないか」

 

間桐慎二もその一人で机に頬杖しながら藤村先生の話を聞くと

 

 

 

カラッ

 

 

 

後ろのドアが少し開き、そこから士郎が四つん這いの状態でゆっくりと教室に入ってくるのがチラッと見えた。

 

(ほんとに遅刻しやがったよアイツ…)

 

藤村先生が気付かないように士郎が音を立てずにソォッと自身の机まで移動して行く。

その途中、士郎は慎二と目が合い、慎二が少し悪どい笑みを浮かべると

 

「よぉ、衛宮!遅かったな遅刻か!」

 

大きな声でそう言った。

 

「し、慎二!?」

 

「……衛宮君?遅刻した上に隠れて入ろうだなんて」

 

「っ!そ、その…」

 

後ろから冷たい声音に士郎はビクリッと肩を震わせ、ゆっくりと後ろを向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━『』がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽

 

 

 

 

頭がジンジンする…。

 

気づけば、士郎は机に突っ伏していて、藤村先生は出席簿を持ち、教室から出ていった。

 

「クククッ___おはよう衛宮、目が覚めたかい?」

 

慎二が笑いながら、士郎の目の前に陣取り

 

「あぁ、おかげさまで最悪の目覚めだよ」

 

「それは良かった」

 

お互いに軽い憎まれ口を交わしながら、話を続ける。

 

「にしても、慎二。家に来てたのなら起こしてくれても良かっただろ?」

 

「あのなぁ、衛宮…先生に

『日々の練習はするべきだが、無理をするな━━特に衛宮(オマエ)

って注意されてただろ?」

 

その言葉に士郎は苦虫を噛み潰したような顔になった。

 

「なのに、また無理をして同じ場所で。しかも、冬の季節なのに上半身裸で…何?新しい自殺方法なの?」

 

「そ、それは!その……」

 

反論しようとしたが、慎二の言葉が正しい為、何も言えない士郎。

 

「…ハァッ…全く、見つけたのが先生じゃなくて、桜で良かったよホント」

 

それをみた慎二が頭を掻きながらため息を吐いた。

桜だったから、まだ遅刻で済んだものの。先生であったなら本日の練習でボロボロにされている未来が二人の脳裏を走った。

 

「後で桜に謝りに行かないとな」

 

「そうしてくれ」

 

慎二はそう言うと、自分の席へ戻って行く。_____が不意に慎二が振り返り。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、先生が

『衛宮の乱取り稽古…本数を増やすべきなのか?』

って訊いてきたからOK出しといたぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんでさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━未来は変わらないようだ。

 

 





ちなみに、今回のstaynight編は原作よりの6-8割位、オリジナルストーリーの予定です。

頑張りますので応援ヨロシク(*`・ω-)ノ


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雪降る夜に

ヤッハロー!!

練火です( ・_・)ノΞ●~*


久々の投稿だから、話し方がさっぱり解らない今日このご((はい、そこ今さらとか言わないで泣くから

とまぁ、こんな作者ですが、さいごまで!頑張ります!!

では、どうぞ~~


その後も慎二と雑談したり、桜に謝りに行ったり、生徒会の一成と備品修理に回ったりと。

まぁ、いつも通りの日常を過ごす士郎。

そして放課後

 

士郎・慎二・桜が人気の無い教室で机等を端に寄せていた。

 

「もうそろそろか。慎二、桜。そっちは終わったか?」

 

壁時計を見ながら士郎が問うと二人は終わったと返してきた。

後は先生が来るまで、自由時間なので、各々がバックの中から準備をする。

ガラッと教室のドアが開き、黒のジャンパーを着たアークが入ってきた。

 

「もう、準備してたのか?……もしかして遅れたか?俺」

 

アークは既に準備万端と言う感じで待っている三人を見るとそう訊ねた。

 

「ちょうど準備した所です。先生」

 

三人の思いを纏めた桜が先生(アーク)に返す。

 

「それは、良かった。では()()を始めようか」

 

アークがそう言うと、三人は横一列に座り、目を閉じる。

 

「では、最初は━━」

 

そうして、アークの魔()の指導が始まった。

 

 

 

▲▽▲▽▲

 

 

 

「___よしっ!本日はここまで」

 

二時間後、アークはそう言うと三人はふうっと息を吐き、タオルで汗を拭き取り始める。

 

「今日は増幅をしたから、3日後の日曜日。衛宮の家で復習と実技するから無理はしないように」

 

『はいっ!』

 

揃った返事を聞きつつアークが去っていく━━前に

 

「そうだった━━━衛宮」

 

「は、はい!」

 

アークの冷えた呼びに士郎がビクッとしながら返事をする。

 

 

「次無茶したら、

 

 

 

 

 

 

━━━赤点な」

 

 

 

 

 

 

「━━━すいませんでしたァァッ!!」

 

 

 

アーク先生の成績下げるぞ?宣言により士郎は即座に土下座した。

 

「じゃ、次から気を付けろよ」

 

そう言うと、アークは教室から出ていった。

その後、三人は教室を片付け。校門前で談笑していた。

 

「はぁ……せめて乱取り増やすとか、瞑想時間長くするとかだったら」

 

ため息を吐く士郎に、桜はクスクス笑いながら。

 

「でも先輩、そんな事しても『これも練習だ』って思いますよね?」

 

「そ、そう言われると」

 

思わなくもない。そう思う士郎であった。

 

「ほんっとに衛宮らしい思考回路だよ」

 

ヤレヤレと桜の後ろで慎二がそう言った。

 

「……なんだよ」

 

「少しは桜や僕の気持ちも考えて欲しいってことさ」

 

頭に?マークを出す士郎を見ながら慎二はまたヤレヤレと言いながら桜を連れて、帰っていった。

 

「??桜と慎二の気持ち……?」

 

解らないと一人呟き、士郎も帰路へ着いた。

 

 

 

▲▽▲▽▲

 

 

 

 

家までの坂道、微かに粉雪が降り始める。

士郎は粉雪降る空を眺めながら

 

「そう言えば……あの日もこんな日だったっけ…」

 

切嗣が亡くなってから数ヶ月、初めてアークと出会ったあの日もこんな粉雪の日だった。

 

 

 

▲▽▲▽

 

 

 

正義の味方になると決めたあの頃。少年の士郎は人助けやお手伝いを断らず、全力でやっていた時代。

だが、士郎は本当に、これだけで切嗣に誓った『正義の味方』に成れるのかと疑問を抱いていた。

 

そんな時は初めて切嗣とあったあの場所に赴き、もうこんなことは起こさせないと固く誓っていた。

 

そして、あの日も同じように行き、広場の中心で雪降る空を眺めていた。

すると

 

 

 

 

 

 

 

 

『こんな怨念渦巻く墓場に来てどうした?少年』

 

 

 

 

 

 

いつ来たのか、後ろに真っ黒の服とフードを被った不審者がいた。

 

 

 

 

 

 

『おい待て、何しようとして━━警察?━まてまてまてまて、何で声かけただけで不審者扱いなんだよオイ?』

 

 

 

 

 

 

 

藤ねぇから持たされた警報ベルを鳴らそうとしたら止められた。

 

 

 

 

 

 

『全くよ、これでも善人の類いだと……いや、善人なら人食わねぇか……ん?いや何でもねぇ。でどうした少年?こんな深夜の時間に、しかもこんな場所で』

 

 

 

士郎は質問で返した。

 

『質問を質問で返すなよ?話が進まないぜ?━まぁ良いか、俺はな、ここの土地の怨念を和らげに来たんだ』

そう言うと不審者は、何かを呟くと

 

 

 

 

 

聖光(シズム)

 

 

 

 

 

その言葉と共に広場が淡く光だした。そして、地面なから大量と言う言葉も掠れるほどの光の玉が天に昇っていく。

その時の自身の驚きは今でも覚えている。興奮冷めやらぬまま、不審者に問いかけると

 

 

 

 

『ん?こいつか?これは魔法さ。俺は魔法使いでね』

 

 

 

 

その言葉を聞いた時、士郎の中で何かがキレた。

気づけば涙を流し、不審者がゆっくりと慰めてくれた。

 

 

 

『頑張ったな。大丈夫だ。切嗣だって向こうで誉めてくれるさ━━ってどうした?そんなに驚いて?えっ何故親父の名を?えってか少年は俺の事知らねぇの?』

 

 

 

士郎が頷くと不審者はマジかぁと落ち込みつつ、立ち直った後フードを取って自己紹介をしてくれた。

 

 

 

 

『それじゃあ、改めて。俺はアーク。アーク・ラッド。切嗣の友人で魔法使いさ』

 

 

 

 

この日、少年は運命に出会った。

 

 

 




因みに切嗣とは何処かのbarで酒を嗜む中です(笑)


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平和の終わり

ヤッハロー!!

練火です_〆(゜▽゜*)

書きたいシーンとかやってみたいストーリーの展開とか色々思い浮かべるのに、それを載せるのが難しい……(文才が無いためorz)

それでも書くんですけどね!?


衛宮邸内にある小さめな道場。

中から打ち合う音が響く。

 

 

 

パンッ!パパンッ!ズゴオォォォンッ!!!!バシッ!ヒュッバシッ!

 

 

 

士郎とアークが一本の武器を手に乱取りをしていた。

 

「どうした衛宮!速度が落ちてるぞ!!」

 

「━━ッッ!!」

 

足元が揺れるなか、士郎は声を出すのも辛くなったのか、畜生!とでも言うような表情をした後、攻撃の速度が上がる。

 

 

 

パシッ!ヒュビュッ!バンッ!!パパパパンッ!!!

 

 

 

「ふむ、速度は上がったが」

 

 

 

アークは上下左右から迫り来る攻撃を軽く防ぎ。最後の一撃のみ、多少力を込めて薙ぎ払った。

 

 

 

ビュッベキッ!!

 

 

 

 

 

 

「━━━やはり、魔力が粗くなったし」

 

 

 

 

 

士郎の武器は軽く凹み、仕切り直すため、大きくバックステップをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━集中力も落ちたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

アークの顔が目の前にあり、次の瞬間。

 

スパンッ

 

そんな軽い音と共に、士郎の武器が斬られた。

それと同時に魔力が切れた士郎の武器が()()()()()()()()()()()()()

 

「よし、今日は終わりにする」

 

アークがそう言うと、士郎が仰向けに倒れ、倒れる途中に手放した()()()()()()が宙に舞う。

 

「お、終わった……」

 

そんな言葉を最後に士郎は眠るように意識を手放した。

アークはそれを見た後、道場の外へ出ると。

そこには、ちょうど終わったばかりなのか。荒い息と共に地面に座っている慎二と同じく荒い息を整えようと深呼吸を繰り返す右手に包帯を巻いている桜がいた。

 

「そっちも終わったか?」

 

アークがそう言いながら、虚空から二本のスポドリを取り出し、二人に渡しながら訊いた。

 

「先生。ちょうど終わったよ」

 

「はい、数分前に兄さんの魔力が切れて終了しました」

 

二人がそれを受け取りながら、そう言うが、桜の発言に慎二が少しムッとした表情になる。

 

「それを言ったら桜だって、地面に大穴開けなきゃ、余計な魔力を使わなくてすんだのにさ」

 

慎二の言葉に軽く目を反らす桜。

 

「あぁ、途中の揺れはそれだったか」

 

アークが納得すると、桜が弁明し始める。

 

「……だって兄さんがウロチョロするから…つい」

 

「つい、であの威力は僕が死ぬか重症を負うからな?」

 

「だ、大丈夫ですよ!!先生が治してくれます!」

 

「重症前提かよっ!?お前、あれ使うと絶対に腹黒くなるよな……!」

 

胸元でぐっと両の握りこぶしをしながら笑顔で言う桜に慎二がツッコミを入れた。

そのやり取りを見たアークは苦笑しながら、

 

「兄妹漫才はそれぐらいにして、二人とも、汗を流しに行こうな」

 

「今日はもうオシマイですか?」

 

「あぁ、衛宮がぶっ倒れたから終いだ。ってことで汗を流して晩飯をここで食ってから解散だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 

「そういえば、昨日、買い物帰りに不思議な少女に出会ったんだ」

 

衛宮邸の居間で士郎と桜が作った料理を全員で食べている最中、思い出したように士郎が言った。

因みに晩飯は鳥の唐揚げとサラダ・白米・味噌汁と和風である。

 

「ング…不思議な少女ってモグッどんな不思議だよ」

 

慎二が唐揚げを食べながら訊いてきた。

 

「おい慎二。アグ…食いながらは汚いだろ」

 

「それ言ったら、お前もだろ衛宮」

 

いいから続きと促すと、渋々とでは有るが、話を続けた。

 

「いやさ…帰り道の途中の坂で真っ白な髪と赤い目をした少女がさ」

 

それを聞いた瞬間、隣にいたアークがピクリと反応した。

 

「俺を見てた目が…何だろうな?慈しみ?嘆き?そんな感じになっててさ。俺がその横を通りすぎた瞬間、こう言って来たんだ」

 

 

 

 

 

━━━━もうすぐ始まるよ━━━

 

 

 

 

 

「って、それで何が始まるのか聞こうと思って、振り替えったら……誰もいなかったんだ」

 

「衛宮……お前疲れてんじゃないか?」

 

話を聞いた慎二が物凄く心配そうな顔で告げてきた。

 

「んなっ!?いや本当だって!桜は信じてくれるよな!?」

 

「えっ?…………………………そ、そうですね!」

 

「今の間とその優しい目がとてつもなく心に突き刺さるから止めて!?」

 

士郎は先生だったら!と期待に満ちた目で見てくるが、アークは士郎の両肩にポンッと両手を置くと。

 

「すまなかった…男だもんな。溜まってたんだな」

 

「違う!!?ってか女の子がいる前でセクハラしてんじゃねぇ!バカ教師!!」

 

アークの発言にキョトンとしていた桜だが、慎二がコソリっと意味を教えるとヤカンが沸騰するが如く羞恥で顔が赤くなった。

 

「お前はお前で意味を教えるんじゃねぇー!!」

 

士郎は流石に居た堪れなくなったのかガツガツと飯を食べ、

 

「ごちそうさまでしたっ!!慎二達の布団の準備をしてくる!!」

 

そう言って居間から出ていった。

士郎が出ていったのを確認すると、アークが真剣な表情になる。

 

「━━なぁ、慎二、桜。雁夜が死んだあの日の事……覚えているか?」

 

「……忘れられるわけないだろ」

 

「えぇ、今でもハッキリと覚えています」

 

アークの言葉に二人が沈んだ顔で答えた。

 

「だよな…だが、あの悲劇()が再び始まる」

 

そう言うと二人の目が見開かれ、理由をと言った表情でアークを見る。

 

「衛宮が見たと言った少女は紛れもなく、聖杯に関わる御三家の一つ。_______アインツベルン家だ」

 

 





因みに、今章のアークは受肉しており、少しのドタバタを得て、クラスが変わっております(・・;)


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再会

ヤッハロー!

行き当たりばったりが日常の練火(・ω・`=)ゞ

まあ、そんな作者の三文駄文お楽しみください(笑)


外は冬の時期で葉が落ち、山は茶色の風景一色だが。ここ中庭は自然の色生い茂る花々。

そして中庭の中心部には真っ白い丸テーブル、それを挟んで二人の人物が椅子に座っていた。

 

「お久しぶりねアーク」

 

「最後の手紙を届けてからだから……五年ぶりだな」

 

イリヤの側に控えるキリッとしたメイドが二人に紅茶を注ぐ。

 

「ありがとう」

 

アークは軽く礼を述べると、軽く呑む。

 

「で?今日は何の用なの?」

 

頬杖をしながら、イリヤが訊いてきた。

 

「…先日、俺の教え子が接触したと言っててな。だったら久々に顔を見せに行こうと思っただけさ」

 

カチャリッとカップを置き、そう返すアークにイリヤが?と言うような顔になり

 

「教え子?」

 

「?切嗣の手紙に書いて無かったか?衛宮士郎は俺の教え子だぞ?」

 

エエェェーーッ!!

 

イリヤはそんな驚きの声を出すと、イスから降りて

 

「ズルいーッ!それだったら私にも教えてくれて良かったじゃん!!」

 

ほっぺを膨らませてむぅーと言うような顔でポコポコとアークの胸を叩いていく。

 

「ハハハッ、そんな事をしたら俺は切嗣からまた撃たれちまうよ」

 

あの親バカ(切嗣)は人に手紙を頼んどいて、イリヤの近況報告がてら少しだけ遊んだと言ったら、薄い笑みを浮かべて数少ない切り札(起源弾)を容赦なく撃ってきたからな…。

 

そんな過去を思っているとイリヤも少し思い出したのか、寂しそうな顔をしていた。

 

「なんだったら、士郎の所に連れてって説明ぐらいするぞ?」

 

アークがそう問うとイリヤは顔を喜ばせたが、その直後俯き

 

「…それをしちゃうと……せっかくの決意が揺らんじゃうかな……おじい様から、今回の聖杯戦争で必ず、アインツベルン家の本懐を遂げて欲しいって言われちゃったし…」

 

「━━━となると、今回の聖杯は」

 

「うん、キリツグには悪いけど、私は聖杯を取るよ」

 

イリヤの瞳と言葉は覚悟と決意を見せているが、未だに悩んでいるのだろう、表情が酷く泣きそうになっている。

 

「…そう、か…。なら、俺との関係もこれまでかな」

 

アークはそんなイリヤの髪を撫でながらそう言うと、

 

「でも、アークとは敵対したくない…かな」

 

イリヤは撫でている手を掴み、その手をキュッと胸元へ抱き締め

 

「だってアークはお母様と切嗣が居なくなった後に週1だったけど、私を心配して来てくれた人だもん……」

 

「でも、俺と切嗣が決めた答えは真逆なんだ…」

 

アークも寂しそうな顔になりながら、イリヤの目線に立ち。

 

ギュッ

 

ソッと抱き締めた。それが限界だったのだろう、アークの右肩が少しだが濡れ始め、右肩に乗っている少女の頭を撫でつつ、小さく泣くのを宥めるアーク。

 

「ヒックッキリツグもアークもグスッ酷いよ…」

 

「ゴメンな…俺もキリツグも勝手なヤツでゴメンな」

 

そんな少女の嗚咽を聞きながら、

それでもアークの思いは変わらない。

 

何故なら刻まれたのだ、あの日の光景全てが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━あの日見た、煉獄の焔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━あの日聞いた、死に行く人々の嘆き、怒り、悲しみの合唱

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━あの日嗅いだ、噎せ返すような人の死の臭い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━あの日感じた、死んだ大事な友(雁夜)の冷たさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークは忘れる事は無いだろう。

 

聖杯を破壊し自身の存在すら消滅したとしても……




因みに、切継の起源弾騒動は月に二~三回あったそうな……(士郎・藤村時たまアークのお菓子戦争は週三~四回)


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