のんのんびより 輝く星 (クロバット一世)
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プロローグ

息抜きに始めました。


カナカナカナ…

 

ヒグラシの鳴く声が静かに響く中、少し広いこの家で葬式が行われていた。2人の男女の写真の前では小さな少年が暗い顔を無表情にして静かに正座していた。少年は交通事故によって両親を失ってしまったのである。

 

家族旅行の帰りだった。夜道だった。雨がひどかった。

そういった不運が重なり、しかし、運がいいと言っていいのか少年だけが1人助かったのである。しかし、彼にはもう甘える両親がいなかった。

 

『可哀想に…』

 

『ねえ、あの子…これからどうするの?』

 

後ろでは少年の親戚が彼の今後をどうするかについて話し合っていた。

 

『どうするって…ほっとくわけにはいかないだろ?』

 

『普通に考えて…誰かが引き取るか…施設に送るのどっちかだろうな』

 

『引き取れないわよウチ仕事でいつも忙しいし、今で手一杯よ…』

 

『それを言ったら俺のところだって…』

 

『でも誰かが引き取らないと…』

 

『あんなに幼いのにさすがに施設はな…』

 

『誰かいないの?』

 

『誰か…』

 

そんな声が後ろから聞こえてきた。彼らにも色々都合があるのだ。彼らは悪く無い…僕が我慢すれば良いんだ…施設でも大丈夫…僕は…大丈……

 

 

 

 

 

『まったく、さっきから何なの!?誰か誰かって…少しはあの子の気持ちを考えたらどう!?』

 

突然、そんな怒りを含んだ女性の声が聞こえたと思うと 後ろからこっちに近づいてくる足音が聞こえた。

 

『ちょっと!?あんたのところ確か子供が三人いたんじゃなかった?いくら何でも無理よ!』

 

『今更1人増えたってどうってこと無いわよ!!』

 

近づいてくる声の方へと振り向くと、黒い髪の女の人が優しく両肩に手をかけてきた。

 

『一輝くん、よかったら…おばさんのところに来る?』

 

その人は確か田舎に住む母さんの遠い親戚であった。何度か写真を見せてもらって知っていた。しかし、それ以上に、自分を見捨てず手を差し伸べてくれたことによって、今まで抑えていたものが一気に弾けた。

 

ぽたっぽたっ…

 

ふと気付くと目から涙が溢れて止まらなくなっていた。

そして、その人、越谷雪子さんに抱きついていた。

 

 

 

 

 

 

『ただいま〜ちょっとみんな来て〜』

 

『母ちゃんおかえり〜』

 

『おかえりお母さん』

 

『……………。』

 

車で長い移動の後、雪子さんの家に連れられると、雪子さんの声を聞いて赤髪の少女と茶髪の少女、そして、眼鏡の少年が駆け寄って来た。

 

『ん?母ちゃんの後ろに誰かいる!!』

 

すると、赤髪の少女が自分に気づいたのかこっちに近づいて来た。

 

『紹介するねみんな、この子は今日からうちで面倒みることになった、一輝よ。一輝、このヤンチャなのが夏海でこっちが小鞠、そして、こっちの男の子が卓よ。みんな私の子だから怖がらなくても大丈夫よ』

 

『マジで!?わーい!!ウチに弟が出来た〜!!』

 

雪子さんの言葉に夏海と呼ばれた少女は大喜びした。

 

『一輝、今日から私があんたのことを面倒みるから、困ったことがあったら遠慮しないで言いなさい。』

 

その優しい言葉に僕は再び涙がこぼれ、

 

『は…はい、よろしくお願いします』

 

こうして、僕は越谷一輝になった。

 

 

 

 

 




息抜きに始めました。
結構文字数少ないと思いますが気軽に見てください。


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無印編
1話 転校生が来た


原作突入です


 

ここはとある田舎の集落。

アスファルトの道もあるが農道や砂利道が多く、当たり前のようにおじいさんが牛を連れて歩いている。

 

そんな集落の一軒家の一室

 

ppppppp……

 

「ふわぁ〜……もう朝か…」

 

目覚まし時計のアラーム音が鳴り、布団から黒いツンツン頭の少年が現れた。

 

少年の名は越谷(こしがや) 一輝(かずき)、この家の次男である。

 

12月1日生まれ、射手座、『一番星のように輝く子供に育って欲しい』という願いが込められている。

 

この家に引き取られたから数年が経ち、現在小学六年生になった。身長も166センチと普通の小学六年生よりも大きくなり筋肉や体力もそれなりについてきた。

 

「あら一輝、おはよう」

 

「一輝おはよ〜」

 

「おはよう母さん、コマ姉、夏姉は?」

 

「まだ寝てる、よかったら起こしてきてくれる?私じゃ全然起きなくて…」

 

そう言うのは身長130センチほどしか無い茶髪の少女、越谷 小鞠が一輝にそう頼んだ。

 

「あいよ」

 

そう言うと、一輝はもう1人の姉の寝室へと向かっていった。

 

「zzz…」

 

赤い髪の少女が気持ちよさそうに眠っていた。

 

「はぁ〜ったく…」

 

そう言うと一輝は落ちていたクッションを拾うと空中に投げると、

 

「アターーーックナ○バー○ーーーン!!!」

 

「ぶへぇっ!?」

 

そう言ってクッションを少女、越谷 夏海へと叩きつけた。

 

「なにすんじゃ一輝〜っ!!」

 

「おはよナツ姉。コマ姉に起こせって言われたから」

 

「だからってクッションぶつけるなーー!!!」

 

後ろでギャーギャー騒ぐ姉を無視して一輝は食卓へと向かって行った。兄の卓ことスグ兄はいつの間にか食卓におり、手伝いをしていた。我が家の長男は無駄にハイスペックなのである。

 

「母さん、ナツ姉起こしてきたよ」

 

「ありがとね一輝、朝食並べるの手伝ってくれる?」

 

「あいよ」

 

そう言うと一輝はテーブルにおかずを並べていった。

 

「ん?おぉ!!今日の味噌汁はプチトマト入りか〜♪」

 

「そーよ、あんたは本当にこの味噌汁が好きね」

 

「はじめはビックリしたけど食べてみたらスゲー美味いからね♪」

 

そう言いながら一輝は席に着き、寝ぼけながら夏海も席に着き、みんなが食卓について朝食を始めた。

 

 

 

 

 

「ごちそーさま!!」

 

朝食を終えて食器を片付けると皿を洗いはじめた。

 

「ありがとね一輝、まったく夏海もあんたを少しは見習ってほしいんだけどね…」

 

そう言いながら母さんはため息を吐いた。

 

「ははは、まぁあの元気の良さがナツ姉の良いところなんだけどね」

 

「もうちょっとしっかりして欲しいんだけどねぇ…ってそれよりあんたもそろそろ準備しないと、あとは母さんがやっておくから」

 

「っていけね、ありがと母さん、そんじゃあ行ってくる」

 

そう言うと一輝は部屋に戻りランドセルの中身を確認すると支度を整え

 

「行ってきまーす」

 

そう言いながら学校に向かった。

 

この村に来てからもう6年近く経ち、最初は戸惑うこともあったが母さんや兄さん、コマ姉にナツ姉、クラスの仲間のおかげで今ではすっかりここの空気に順応していた。

 

一輝はそのままバス停に向かい、着いてみると、すでにコマ姉が来ていた。

 

「コマ姉、もう来てたんだ」

 

「まあね、それより夏海は?」

 

「もうすぐ来ると思う」

 

「おーい姉ちゃ〜ん、一輝〜」

 

「カズにぃ〜」

 

「ほらね」

 

声の方を向くと、ナツ姉と薄い色の紫髪の一年生、宮内 れんげが駆け寄って来た。

 

「やっと来たのかナツ姉、れんげもおはよ」

 

「にゃんぱすー」

 

この「にゃんぱすー」の意味は今だに分かんない、

 

そんな風に全員揃うとバスに乗り我らが学校、旭丘分校に向かった。

 

旭丘分校は全校生徒がれんげ、一輝、ナツ姉、コマ姉、スグ兄の5人でクラスもみんな同じである。

 

「…今日の教室は、昨日となんか違うのん」

 

れんげの言う通り、確かに何か違和感を感じた。すると、

 

ガララッ

 

「は〜いみんな〜席について〜」

 

そう言って入って来た眠そうな顔の白衣の女性は我らが担任であり、れんげの姉でもある宮内 一穂先生であった。

しかし、その後ろから会ったこともない少女が入って来た。

 

「……?」

 

一輝はその少女を見ていると先生は

 

「自己紹介してくれる?」

 

「あっ…ハイ」

 

先生の言葉に従い少女は黒板に名前を書き始めた。

 

そして、

 

「一条 蛍って言います。よろしくお願いします。」

 

この少女との出会いが一輝の人生に大きな影響を与えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 




続けて書いて見ました。
感想よろしく!!


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2話 転校生と仲良くなった

更新しました


 

「一条 蛍って言います。東京から来ました。」

 

朝、いつもと何か違う気がしたあと先生が入って来ると知らない少女が入って来た。どうやら転校生のようだ。

よく教室を見たら隣に今までなかった席があった。

しかし…

 

「東京!?」

 

「都会っ子じゃん。何年?」

 

「小学5年です」

 

「下!?私より下!?」

 

コマ姉が驚愕していた。確かに彼女は背も高くどこか大人っぽいのでナツ姉やコマ姉よりも年上に見える。でも俺より年下とは思わなかった。同級生かと思ってた。

 

「小5には見えんな〜。んで?前の学校でなんかやらかしたん?」

 

「えっ?いえ、両親の仕事の都合で…」

 

なるほど、ありがちな理由だな。しかし東京か…確かひかねぇが通ってる高校があるところだ…東京タワーとかってやつがある場所だ

 

そんなことを考えていると、れんげが突然立ち上がり

 

「にゃんぱすー」

 

毎度お馴染みのあの謎の挨拶をした。

 

「えっ…あの…にゃん…」

 

いきなりの謎の挨拶に蛍は少し困ってしまった。

 

「とりあえず座ったら?」

 

どうすればいいか困っている蛍に一穂先生が優しくそう言った。蛍は少し恥ずかしそうに一輝の隣の空いている席へと向かった。

 

「はじめましてなのん、ほたるん」

 

どうやらさっそくれんげが蛍のあだ名を考えたようだ。

 

「……ほたるん…」

 

どうやらあだ名をつけてもらえたのが嬉しかったのか蛍は嬉しそうに微笑んだ。

 

「あっ………」

 

その微笑みに思わず一輝はどきりとしてしまった。

1つ年下なのにどこか大人っぽい容姿の彼女の微笑みはそれだけ綺麗だった。

 

ピーンポーンパーンポーン

 

こうして授業が始まった。

 

「一時間目の授業ってなんだっけ?」

 

「国語だよ」

 

そう言いながら問題集を鞄から取り出した。

 

「あ…学年バラバラ」

 

問題集の学年はバラバラなことに蛍は少し驚いた。

 

「うちは小一」

 

「俺は小六でナツ姉が中一、コマ姉が中二、そんでもってあそこにいるスグ兄が中三だよ。学年がみんな違うから基本自習形式だしね。」

 

「どのクラスもですか?」

 

「どのクラスっていうか…クラスはここだけだし」

 

「えっ…全校生徒5人なんですか」

 

「ほたるん入れて6人なのん」

 

れんげも蛍の問いに答えた。

 

「そうだよ、まぁ最初は驚くよね。あっ俺の名前な一輝、『一番』の一に『輝く』って字でそう読むよ」

 

「あっ…よろしくお願いします。一輝先輩」

 

「自然体でいいよ、これから仲良くしようね。」

 

そう言って一輝は微笑んだ。

 

「わっ…わかりました。よろしくお願いします…」

 

少し緊張しながらも蛍は再び一輝に挨拶をした。

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

授業が終わり休み時間

 

「よっしゃー何して遊ぶかー」

 

ボールを持ちながらナツ姉はドアを開けた。

 

「うちなー、中当てが熱いと思いますのん」

 

「中当てかー確かに良いねー」

 

「面白そうだな、ゼッテー負けねーぞ」

 

中当ては一輝も得意だ。一輝は運動神経がとても良いのでそういった競技が大好きなのである。

 

「あの〜教室に来た時も思ったんですが…あのバケツはなんですか?」

 

蛍の視線の先にはバケツがたくさん並んであった。

 

「あぁアレ?雨漏り防止用のバケツ、あんまり近づかないようにね」

 

「えっ?あぁそうですよね、バケツがズレたら雨漏りの位置分かんなくなっちゃいますもんね」

 

「そうじゃなくて、雨漏りで床腐ってるから床が抜けたりしないようにってこと」

 

「……えっ?」

 

予想斜め上の答えに蛍は一瞬固まった。

 

「うそうそ、今までそんな間に合ったお間抜けさんはいないよ。」

 

 

 

そんなことを言いながら彼らは校庭に向かっていったがその後ろで兄の卓がしっかりと落ちていたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 



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3話 転校生と狸見た

気長に書いてます


「そぉーれっ!!」

 

「おっと」

 

ただいま休み時間、一輝たちはみんなで中当てをやっていた。現在俺はこれまでに9回連続で生き残っているので今回生き残れば連続10回生き残り達成なので結構本気で避けていた。現在残っているのはれんげ、俺、そして蛍の三人であった。と言っても5人でやってるのでまだ始まったばかりではあるが、

 

「へっへ〜どうしたナツ姉、そんな攻撃じゃカスリもしないよ」

 

「言ったな一輝〜オリャァァァッ」

 

「ほっと」

 

「きゃっ!?」

 

ナツ姉の本気のボールをかわしたとき、蛍がビックリして転びそうになってしまった。

 

「やべっ!!」

 

俺は慌てて蛍の手を握って彼女を支えた。

 

「ごめん、大丈夫か蛍?」

 

「あ…いえ、コッチこそありがとうございます…」

 

どうやら怪我はないようだ、良かった良かっ…

 

「あ、隙あり」

 

ポスッ

 

「……………………え?」

 

突如背中に何かが当たる感触がして、振り返るとコマ姉が俺の背中にボールを当てていた。

 

「一輝〜アウト〜」

 

「し…しまったぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

か…完全にゆだんしてたぁぁぁぁあ!!

 

「れ…連続10回生き残り記録が…」

 

「へっへ〜やっり〜」

 

「す…すみません私のせいで…」

 

「いや、蛍のせいじゃないよ、俺の油断だから」

 

慌ててこちらに謝る蛍にそう言ってると、

 

「こんなところに鍵がおちてるん」

 

れんげが鍵を拾った。

 

「あ、それ私のだ…」

 

「なんの鍵?」

 

「なになに?」

 

「どうしたの?」

 

みんなも集まって来た。

 

「えっと…今日夜まで家族が帰らないから家の鍵を持って来ていて…」

 

「「「「ふーん………………えっ?」」」」

 

えっと…家の鍵?

 

「れんちょん、家の鍵って閉める?」

 

「ううん」

 

「姉ちゃん、一輝、うちも鍵閉めてないよね?」

 

「閉めるどころか鍵自体見たことがないよ」

 

「うん」

 

「だよね〜」

 

だってこんな泥棒もいないような村で必要ないもんな…うん、やっぱり…

 

「…えっ?」

 

「「「「変わってらっしゃる」」」」

 

4人の意見が1つになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わった〜」

 

「早く帰ろ〜」

 

「くっそ〜結局今日中当て不調子だった〜」

 

あの後も中当てをしたがペースが乱れて何度かナツ姉とコマ姉にアウトにされた。

ナツ姉ならまだしもコマ姉にまでアウトにされるとは…

 

「ほたるん、うちに遊びに来るん?」

 

「え?…えっと…」

 

「来ないんの?」

 

「あっ…うん、じゃあちょっとだけ…」

 

「カズにぃたちも来るん?」

 

「それじゃあお邪魔しようかな?」

 

こうしてれんげの家に遊びに行くことになった。

 

その後、みかん畑に蛍が興味を持った。うちの村ではみかんの他にもお米や野菜、それから料理に添える葉っぱなんかも栽培している。

そんなことを話しているうちにれんげの家についた。

 

「やっぱまだ仕舞えないよね〜コタツって」

 

「なっ?本当に鍵かかってなかったろ?」

 

「は、はい…」

 

「今日はお父さんとお母さん畑にいるのん」

 

「一輝〜それ取って〜」

 

「え〜自分で取れよ〜」

 

「そう言いながらもちゃんと取ってくれるあたりやっぱ一輝だわ〜」

 

「も〜一輝、あんまり夏海を甘やかさなくて良いんだよ?」

 

そんな風に駄弁っていると突然れんげがみんなに見せたいものがあると言い出し外に出た。庭に出てみるとれんげは、口に指をあてて息をふーっと吐く。

口笛のつもりなんだろうが、鳴ってない。

しばらくすると、

 

ガサリッ

 

茂みからタヌキが出て来た。

 

「タヌキ飼ってるの?」

 

てゆーか今のたぬきには聞こえてたのか…

 

「名前もついてるの、『具』!!」

 

生き物につける名前か?と思いながらもみんなでタヌキと戯れた。その時の蛍の笑顔に少し見惚れた俺であった。

 

 




ここで一輝のプロフィール公開です

越谷 一輝(こしがや かずき)

12月1日生まれ 射手座 O型
身長166センチ
小学6年生
好きな食べ物 とんかつ、母さんのプチトマト入り味噌汁

小学1年生間もない頃に両親を事故で失い引き取り先が見つからなかった時に越谷 雪子に引き取られて養子となる。
そのため、母の雪子にはとても懐いており、幼少期はとても泣き虫で甘えん坊であった。
夏海とはたまにイタズラに巻き込まれて雪子に一緒に叱られたりしてる。
最近は小学校からほとんど成長しない小鞠が本当に姉なのか疑問に思っている。


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4話 転校生と花見した

アニメ1話での話、これで終了です。


「あ〜学校めんどくさ〜」

 

「ダメだよナツ姉、サボったら即刻母さんに報告するから、この間隠したテストの隠し場所と一緒に」

 

「うげっ!?やめてよ一輝ぃ…アレが見つかったらシャレにならないって…」

 

一輝の釘打ちに夏海は顔を真っ青にしてそう言った。

ナツ姉は勉強は苦手だが雑学とかは結構知ってるし頭もかなり回る。いつも母さんの言ってる通り真面目に勉強すればそれなりにできると思うのだが…

 

ぴ〜ひゅりらひゅり〜

 

そこへリコーダーの音が聞こえ、そっちを向くとれんげが歩いていた。

 

「おーいれんちょん〜」

 

「一緒に学校行こうぜ〜」

 

そこへナツ姉が声をかけたので俺もれんげのに声をかける。

 

ぴゅりゅんぴょすう

 

するとれんげはリコーダーを吹きながら片手を上げて訳の分からん音を出した。

 

「あんだって?」

 

夏海は訳が分からずそう聞くが一輝は何を言ってるのか大体予想が出来た。

 

「にゃんぱすー」

 

「やっぱりか」

 

「どのみち訳わからん」

 

そんな風に駄弁りながら学校へ向かう途中、突然れんげが

牛を引いてるおじさんを見たかと思うと、

 

「なっつん、カズにぃ、もしかしてうち、田舎に住んでるのん?」

 

「…いきなり何言ってるの?」

 

突然の質問に夏海はれんげにそう聞いた。

 

「ほたるんビックリしてた。タヌキいるのとか学年バラバラで小中一緒なところとか」

 

なるほど、どうやられんげは蛍がここでの生活でいろいろなことに驚いていたからここがそれでそんなことを考えたのか。

 

「前に姉々が車で時速50キロで走れば1時間後にちょうど50キロ先に着くから凄いなぁって言ってたし…」

 

「ふむ…なるほど…………」

 

あっ分かってないなこれ

 

「ナツ姉、普通時速50キロで走っても赤信号とか横断歩道とかあるから1時間後に50キロ先には着かないってことだからね?」

 

「あ………分かってたさ………でもまぁ東京にだって同じ教室じゃないけど小中一貫のところだってあるだろうし、高速に乗れば信号ないんだし別に田舎っことはないよ」

 

「ふーん」

 

なんか屁理屈っぽいけど…いいのかれんげ?それで納得してしまって…

 

すると、バス停にコマ姉と蛍がバスを待っていた

 

「おっ、お二人さんヘロー」

 

「おはようコマ姉、蛍」

 

「にゃんぱすー」

 

「もう遅いよ、あと少しでバス来るとこだったよ」

 

コマ姉は少し呆れた顔でそう言った。

 

「おはようございます」

 

蛍もこっちに挨拶してきた。

すると、れんげは少し何かを考えたかと思うと、

 

「でもうちタヌキ住み着いてるから田舎のような…」

 

どうやら先ほどの話はまだ続いていたようである。

 

「なんの話?」

 

「いやね、ここが田舎なのかって話なんだけど…」

 

「やっぱりここって田舎なのん?」

 

どうやら今度は聞く相手をコマ姉に変えたようだ。

 

「まぁ普通に考えれば田舎…」

 

「いやいやウチが住んでるのに田舎なわけないじゃない?」

 

コマ姉の意見をナツ姉が即否定した。しかしナツ姉…その考え方がもう田舎なような気がするのだが…

 

「東京にだって猿とか出るときもあるじゃん?」

 

「まぁ確かに出るけどここより頻繁には…」

 

「どうしても田舎にしたくはないのだな」

 

コマ姉の意見の通りである

 

「何も出来ないってほど不便なのが田舎だとしたら牛いたってタヌキいたって不便じゃないジャン。だから田舎じゃないよ」

 

「一輝さん…そうなんですか?」

 

「いや、この理屈はおかしいと思う」

 

「なーるほどぉ!!そーかぁー…ここ、田舎じゃないのね…なんとなくスッキリ」

 

それでいいのかれんげ…

 

ブルルルル…

 

どうやらバスが来たようだ。俺たちはバスに乗って学校へ向かった。

 

 

 

その日の給食、今日は今日採れた山菜が出てきた。

蛍もはじめてらしく興味深そうに見ている。

 

「蛍、春の味がして美味しいよ」

 

蛍も少しおそるおそる口に運びしばらく噛んだあと、表情が明るくなり、

 

「美味しい…!少し春の味を感じます」

 

美味しそうに食べた。おっとそうだ…今日は桜餅があるから…

 

「そうそう蛍、デザートの桜餅は残しておいて」

 

「え?どうしてですか?」

 

「桜餅が一番美味しく食べれるところに後でみんなと行くからさ」

 

蛍もあそこをきっと気にいるだろう俺も最初に連れてってもらってからあそこで食べる桜餅が大好きだ

 

 

 

 

その日の学校終わり、俺たちは手に桜餅をもって蛍を連れて例の場所へと向かって言った。

 

「もうすぐだよ蛍」

 

「は、はい」

 

蛍もどんな場所か楽しみのようでまっすぐと一本道を進んでいた。

 

木のトンネルを抜けると、目的地に着いた。

 

「うわぁ…」

 

そこには一本の大きな桜の木が生えていた。その木はとても大きくそして、とても美しい桜が咲いていた。

自分もこの村に来てはじめの頃、ナツ姉とコマ姉に連れられた。思い出の場所であるのだ。

 

「どう?綺麗だろ蛍?」

 

「はい、とても綺麗です…」

 

そして、蛍はとても嬉しそうな笑顔を見せた。

 

「…………っ」

 

その日の桜餅はいつにも増して美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方

 

「待ってぇぇぇぇぇえ!!」

 

ブルルルル…

 

俺たちはつい長く桜の木でくつろいでしまったためにバスに降り遅れてしまった。仕方がないのでバス停で次のバスを待つことにした。…しかし、

 

「次のバスっていつですか?」

 

「2時間後」

 

「えっ!?」

 

そう、うちの村はバスの数がとてつもなく少ないのだ。

そういうところはやっぱり…

 

「やっぱり不便だよね〜田舎のバスって」

 

「………え?」

 

ナツ姉のその言葉に固まってしまった…だって…

 

 

 

 

 

 

 

ナツ姉さっきまでウチは田舎じゃないって言ってたじゃん!!

 

 

 

今日一のツッコミであった。

 

 




遅れましたがクラスの席順を教えます



教卓

蛍 一輝 夏海
れんげ 小鞠 卓

と言った感じです





…感想欲しいな


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5話 ちっちゃな姉をからかった

アニメで言うところの2話前半です


「じゃーみんなテキトーにはじめちゃってー」

 

今日の授業もどこか気合いの無い一穂先生の声で授業が始まった。

 

と、授業と言っても、全校生徒が6人なふのでバラバラな学年の生徒が一つの教室に集められて、各々が自分の問題集を解いていくというかたちだ。

 

授業が始まってしばらくして、俺の姉の1人ナツ姉が、だるそうに喋りはじめた。

 

「あー・・・、勉強とかだるー。ねー姉ちゃん、この問題わかんないんだけどーわかるなら代わりにやってくれるー?」

 

「こーら、授業中に喋んないの。それに自分で解きなさい」

 

机にじっとしているのが合わないのか、早くも問題集から逃げようと、斜め後ろの席のコマ姉に話し掛けている。

 

コマ姉は真面目に勉強に取り組んでおり、

ナツ姉に対して、ウザったげに対応している。

 

「…………………。」

 

そんな2人を後ろからチラリと見つめながらスグ兄は自分の勉強に取り組んでいた。

 

ちなみに俺は勉強はそれなりにできる。

特に得意なのが漢字と理科だ。逆に苦手なのが社会、歴史は平気だが地理は記号がわけわからない。今やっている算数はまぁまずまず出来るってところだ。

 

「これ、できたら姉々のところに持っていけばいいん?」

 

すると、となりの席の蛍とその後ろの席のれんげが話をしていた。どうやられんげは問題集を終えたらしい。

 

「うん、提出出来たら昼休みだって」

 

「じゃあ持ってくーん!!」

 

そう言うとれんげは机を立ち一穂先生のもとへ向かっていった。ちなみに今先生は

 

「んあー、、、なんで四角いの?このウサギは……」

 

爆睡していた。この人は良く言えば生徒の自主性に任せた、ハッキリ悪く言えば放任主義のダメな人である。

 

「姉々ー、問題でけたー」

 

「んぅ? あー、問題集できたのね、それじゃ休み時間でいいよー」

 

「休むんじゃーい」

 

れんげは心持ち軽い足取りで自分の席へ筆記用具などを片付けに行く。

他のみんなもそろそろ終わりが見えてくる頃なのだが、そんな中ナツ姉はというと、

 

「うぅー、わからーん、このままでは休み時間が………」

 

「ナツ姉、大丈夫?」

 

「うーん、ダメだ、ウチ終わった………」

 

「問題が終わればいいんだけどねー」

 

「やかましい。うん、終わってるから、休み時間ってことで。つーわけで休み時間に入っていーでしょーか?」

 

「君は何を言ってんの」

 

ナツ姉の発言に流石の一穂先生も突っ込んだ。

 

「まぁ終わってるって言うんなら、別に何も言わないけど、あまりアレだと先生にまで類が及ぶので、そこんところは良く考えて下さい」

 

「考える、ねぇ………」

 

そう言われながらナツ姉が席を立つ。

頭を掻きつつ教室の後ろの方へ向かい、置いてあったボールを抱えて戻ってくる。

 

「誰かボール遊びやらない!?」

 

「おー!!」

 

「なんも考えてなかったんかい」

 

ナツ姉の提案にれんげは賛同し一穂先生は再度突っ込んだ。

 

 

 

 

休み時間の終わり頃

 

「先生引っかかるかな…」

 

「引っかかるでしょあの人なら」

 

「だって幾ら何でもこんな初歩的なトラップで…」

 

「大丈夫!!姉々なら絶対に引っかかるん!!」

 

教室で俺とナツ姉!そしてれんげが何をしているのかと言うと、この間みんなで読んだ昔の漫画のいたずらに『教室の扉に黒板消しを挟んで先生が扉を開けると黒板消しが降ってくる』っていたずらを見つけナツ姉が『先生にやってみよー』といったのが始まりである。ちなみに黒板消しはチョークの粉がたっぷりと付いている。

だが…こんないたずら、本当に引っかかるのか…だってあからさまに少しだけ開いてる扉が怪しいもん。幾ら何でも…

 

 

 

ガラッ

 

ポスッ

 

 

 

「…?……えっ?」

 

 

 

嘘でしょ?見事に引っかかった…………コマ姉が

 

 

「あーあーなーにしてんのコマちゃん、せっかく先生に仕掛けるつもりだった黒板消しトラップが」

 

「綺麗に黒板消し乗せてるのん」

 

「頭真っ白だよコマちゃん」

 

するとコマ姉は、涙ぐみ

 

「コマちゃんって言うな!!」

 

黒板消しじゃなくてそこに起こったのは予想外だった。

 

「私はお前たちの姉だしここでは1番年上なんだぞ!!ちゃんとお姉さんって言え!!」

 

「わかったから落ち着きなさいチョップー」

 

すると、ナツ姉がコマ姉の頭にチョップした。

 

「なんでそこで突っ込むんだ!?ボケてないぞ!!お姉さんに謝れ!!ついでに黒板消しのことも謝ってひれ伏せ!!」

 

そう言いながらナツ姉にパンチを繰り出すが頭を押さえられており手が届かなかった。

 

「だって100歩譲っても姉には見えないんだもん」

 

そう、コマ姉は背の高さはモチロン、こんな風になんか子供っぽいと言うより本当に子供なところがあり真面目にこの人は本当に姉なのかと考えてしまうのである。と言うか…黒板消しはついでなんだ…

 

「お、落ち着いてください…夏海先輩もあんまりコマちゃん先輩をいじめないであげてください」

 

「コマちゃんをいじめてたつもりは無いんだけどな」

 

「コマちゃんファイト!!」

 

「大丈夫だよコマちゃん俺はそんなコマちゃんを応援してる」

 

おっと俺もついコマちゃんと言ってしまった。だって面白いんだもん

 

「コマちゃんって言うな!!」

 

再びコマちゃ…コマ姉が怒った。うん、やっぱり姉ってより妹みたいだな。

 

「コマちゃ…じゃなくて先輩、チョークとりますね?」

 

「……うん」

 

蛍が優しくベソをかくコマ姉の頭のチョークを取るために手を頭に近づけた。すると、一瞬何かを考えて再び頭のチョークを払い始めた。しかし、途中から払うと言うより頭を撫でるような触り方になり、その顔は凄く満面の笑みになった。

 

「……………」

 

なんだろ?この変な気持ち…

 

「ウチのコマちゃんにチョーク刷り込まないでやって!!」

 

その時、ナツ姉がコマ姉を蛍から救いだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

……うん、分かった。蛍、コマ姉のこと気に入ってんだな…確かにコマ姉はハムスターみたいなとこあるから気持ちはわかる……でもなんでだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか面白くない!!

 

 

 




更新しました。

感想待ってます!!


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6話 みんなで飴を取り合った

アニメ2話中編です


「はぁ〜ひどい目にあった。」

 

チョークの粉をなんとか取り終えたコマ姉は溜息を吐きながら席に着いた。

 

「はははっ、ドンマイコマ姉。」

 

「どの口が言うか、一輝だって夏海と一緒に私のことコマちゃんって言ってたくせに…」

 

だってコマちゃ…コマ姉からかうと面白いんだもん。

昔もナツ姉が俺の部屋の戸棚にコマ姉の大事なぬいぐるみのしょうきちさんを隠した時俺が隠したと思って泣きながら俺にポカポカして来たんだよな…あの時マジで「この人本当に俺の姉か?」って思っただけな…

 

カサッ

 

「ん?」

 

コマ姉がカバンを開けると中から駄菓子屋の飴玉が出て来た。確か新作のミルクコーラ味だっけ?…なんつーか…すこし気になる味だな…

 

じー……………

 

ふと視線を感じたのでそちらを向くと、

 

「良いな…飴」

 

相変わらず嗅ぎつけるの早いなれんげは…

 

「なになに〜?」

 

そこへナツ姉も合流した。

 

「飴を発見しました。新作のミルクコーラ味」

 

「おやおや〜ダメでしょコマちゃん、学校に飴持って来ちゃ〜」

 

「だからコマちゃん言うな!!昨日駄菓子屋で買った飴カバンから出し忘れてたの。フン、私ももう中二だしね、流行も追っていかないと大人の女性として。」

 

コマ姉……駄菓子屋の流行自慢されてもリアクションに困るんだが…

 

「そんなことより、うち飴欲しいん〜」

 

そう言いながられんげが両手を上下に動かしておねだりした。

 

「あ〜うちもうちも〜」

 

それに便乗する形でナツ姉も両手を上下に動かしてコマ姉の飴を狙った。

 

「コマ姉……弟の俺に飴プリーズ」

 

ついでに俺もコマ姉にお願いした。

両手を上下に動かすのはやらなかったけど。

 

「えーやだよ、さっきあんなことをしたくせに…」

 

コマ姉はまださっきのことを根に持ってるようだ…

 

「えーさっきのはわざとじゃないジャーン」

 

「そうだーそうだーそうだーぞー!!」

 

ナツ姉とれんげがブーブー苦情を言った。

 

ガタン

 

「お前らにやるくらいなら、ハイ蛍」

 

そう言いながら席を立つと蛍に飴を渡した。

なるほどその手があったな…

 

「えっ…良いんですか?」

 

「うんっ」

 

まあ良いか、今度駄菓子屋で買ってみよ。

ふむ…結局あの飴はどんな味だったのだろう…

 

 

「なんだよく〜れ〜よ〜」

 

「おくれ〜」

 

「もうありません〜」

 

ナツ姉とれんげは飴がもらえずにブーブー言っていた。

 

「…………ん?」

 

ふと気配を感じて後ろを向くと蛍が満面の笑みで飴を大事に持っていた。

よほどコマ姉に飴をもらったのが嬉しかったのだろう

 

「……………………。」

 

うん、やっぱりなんか面白くない…

 

「れんちょん、れんちょん」

 

突然ナツ姉が俺とれんげに話しかけて来た。

 

「ここは一旦、泣き落とし作戦でコマちゃんを攻めてみよう…もしかしたらこっちに飴くれるかもよ」

 

「なんですと!?」

 

ナツ姉顔悪!!どんだけ飴欲しいんだよ?まぁでも良いや、この飴争奪戦がどこまでいくか見てみよ…

 

「コマちゃんコマちゃん」

 

「だからコマちゃんって…えっ?」

 

コマ姉が振り向くと、ナツ姉とれんげが絶望したような顔でこちらを向いており

 

「コマちゃん…うちら結構長い付き合いだよね…あの時は楽しかった…コマちゃんが昼寝してる時に顔に良い感じの文字書いた時は」

 

それはコマ姉にとっては良い思い出ではないと思うぞ。

 

「ウチも昨日、プリン一口あげたのに.…」

 

「一口じゃん!!それに、そのプリン私のだったしね!!」

 

あ、あのプリンコマ姉のだったのか…やべえ、俺もナツ姉に貰ってた、それも三口も

 

「プリンの一口は、飴玉一個分の大きさでしょ!!」

 

「……それもそうか」

 

「単純な娘大好き♡」

 

おいコマ姉、本当にそれで良いのか…

 

「蛍、あの子達うるさいから飴返して…てっ?」

 

その瞬間、蛍の目から涙が溢れて来た。

 

「そ、そんな。せっかく…飴…貰えたのに…」

 

「お、落ち着け蛍!!大丈夫、飴は取らないから!!」

 

「べ、べつにウチらもそこまで欲しかった訳じゃないから…その泣き落としには勝てません、どうぞ持っていってください」

 

「うんっうんっ」

 

瞬間、蛍の顔が再び満面の笑みになってそのまま廊下を走っていった。

 

「虫歯なのに飴あげてよかったのかな…」

 

「ほたるん虫歯なん?」

 

「いや、知らんけど」

 

教室から蛍を見ながらコマ姉たちが話している中、一輝はただ蛍を見ていた。先ほどの喜び方はやはり小学生のそれであった。いくら大人びているといってもやはり彼女は小学生なのだ。

 

「……かわいいな。」

 

その時、俺はすこし顔が熱かった。

 




すこし遅れましたが更新です。





感想待ってます。


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7話 駄菓子屋に行った

アニメ2話後編です


「さて、着替えて見たは良いけどどんな感じなのかな?」

 

俺は今、新しい服をひたすら貯めた貯金を使ってで購入し、試しに着ていた。

少し大人っぽい衣装を着てみたかったのでネットや雑誌を読んで調べ揃えてみた。

 

無地のTシャツの上に紺色のジャケット、下はデニムにして頭につばの広い帽子をかぶり、首にシルバーのチェーンとリングをつけてみた。

 

うん、自分としては悪く無いと思うが少し冒険しすぎてしまっただろうか?俺はいつもジーパンとTシャツなど春や夏は簡単な服装にしているのでこういった服装はいつもと違って見える。

 

「そうだな…ナツ姉は確か釣りに行っちゃったしコマ姉はさっきでてっちゃったみたいだし…とりあえず外を歩いてみようかな。」

 

そう考えながら一輝は家を出た。

 

 

「さてと…とりあえずどこに行こうかな…やっぱり駄菓子屋のところにでも行こうかな…それとも蛍のところにでも…いや、待てよ…それだけの目的で蛍の家にいってもかえって蛍に迷惑じゃないかな…ええい!!そんなんでどうする越谷 一輝!!そんなんじゃまったく親しくならないぞ!!」

 

一輝はそう意気込むと蛍の家へと向かっていった。

 

「もうすぐ着くな、にしても蛍が家にいると良いけどな…とりあえず近くの電話ボックスで聞いてみよう」

 

そう言いながら一輝は蛍の家の近くにある電話ボックスへと向かった。

 

「……?」

 

電話ボックスが見えてくるとそこには二つの影があった。

1人はいつもは着ないようなワンピースを着ているコマ姉、もう1人はおしゃれな服を着ており、眼鏡をかけた少女が一緒にいた。その少女をよく見てみると……

 

「あれって……蛍?」

 

普段の姿だけでもどこか大人っぽい蛍がファッションを着こなしておりさらに魅力的だった。

 

「(とりあえず話しかけてみるか…)おーいっ」

 

「……あっ先輩、どうしたんですか?」

 

蛍も俺に気づいたのかこちらに近づいてきた。

しかし、コマ姉は俺と蛍をまるで初対面の人を見るように見てきた。

 

(……コマ姉どうした?さすがにそんな目で見られたら傷つくぞ?)

 

小鞠side

ど、どうしよう……蛍に新しいワンピース見せよう待ち合わせしていただけなのに…なんか知らない大人の女性に道案内することになっちゃいそうなんだけど……しかもなんかさらに大人っぽい男の人が来たんだけど……なんかこの女の人と知り合いみただけど……こっちを見ているし……どうしよう……

小鞠side out

 

「それで?どこ行くの?」

 

「これから2人で駄菓子屋に行くことになったんですけどもしよかったら先輩も一緒に行きませんか?」

 

「俺は別に良いけど……良いのか?」

 

「はい、先輩も一緒に行きましょう」

 

そうして俺と蛍はなんかビクビクしているコマ姉と一緒に駄菓子屋へと向かった。途中のお化けトンネルを潜るとすぐに駄菓子屋が見えて来た。

 

「うわぁ〜♪私、本物の駄菓子屋さんに来るの初めてなんです♪」

 

「そうなの?結構いろんなお菓子があるよ」

 

「何買いましょうか?」

 

すると、少し慌てた声をコマ姉が出した。

 

「あ、わ、私…あんまりお金……」

 

「奢らせてください、案内していただいたお礼です」

 

「いや、ここは俺が奢るよ。女の子に奢ってもらうのは少し気がひけるしね」

 

そう言いながら俺たち3人は駄菓子屋へと入っていった。

ここの駄菓子屋の店主とは俺たちもは知り合い色々とお世話になっている。

 

「それじゃあ何買う?」

 

「そうですね…あっかき氷がありますよ。アレにしません?」

 

「良いね、そうだなぁ……俺は《抹茶宇治金時》にしようかな?」

 

「じゃあ私もそれでお願いします」

 

「え、ええと……私もそれで……」

 

俺と同じものを2人とも頼んだ。最近俺は抹茶系のお菓子にはまっているのだ。2人にもこの美味しさを知ってもらいたい。

 

 

 

 

 

抹茶宇治金時が出来、俺たちは駄菓子屋の前にある椅子で食べ始めた。この抹茶のほろ苦さが甘さと合ってとても美味しい。隣では恐る恐るそれを食べるコマ姉と満面の笑みでかき氷を食べる蛍がいた。どうやら蛍は抹茶宇治金時を気に入ってくれたようだ。

蛍が気に入ってくれたのは嬉しかった。

 

 

 

 

 

「今日は色々とありがとうございました」

 

空も夕焼けになり、そろそろ帰ることになった。

 

「それじゃあ俺が送るよ」

 

「えっ?良いんですか?」

 

「夜道は危ないからさ、家の前まで送るよ」

 

そして俺はバス停でコマ姉と別れて蛍を家に送った。

 

 

「ただいま〜」

 

「おかえり蛍、あら?その子は?」

 

蛍の家に着くと蛍のお母さんらしい人が待っていた。

 

「始めまして、越谷 一輝です。」

 

「あら貴方が?蛍から聞いてるわよ?いつも自分を気にかけてくれるって」

 

蛍が俺をそういってくれてると思うと少し嬉しかった。

 

「それじゃあまたね蛍」

 

「はい、今日はありがとうございました一輝先輩」

 

そうして俺は家に帰っていった。

その後、帰って来た俺を見てコマ姉がようやくさっきまで一緒にいたのが俺だと知ったのはかなり凹んだ。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、蛍の家では

 

「蛍、あの一輝って子、中々良い子ね。」

 

「うん、一輝先輩っていつも私にこの村のこと色々教えてくれるからとても助かって……」

「ああいう子なら、蛍を任せられるかもね♪」

 

「えっ?////ちょ、ちょっとママ…」

 

母親の言葉に蛍は顔を真っ赤にしていた。

 





感想お待ちしています♪


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8話 みんなで田植えした


お待たせしました。更新です


 

「〜〜〜♪」

 

今日はみんなで遠足である。俺もナツ姉からそれを聞いたときは小躍りした。

ただひとつ心配なのは発案者が一穂先生という事だ。あの人のことだからなんかくだらないオチが待ってそうである。だから普通に遠足なのを祈りながら俺はお菓子をリュックに詰め、台所に向かった。

台所に向かった俺はナツ姉、コマ姉と一緒におにぎりを作った。

 

「ねぇねぇお弁当にロシアンおにぎりやんない?一個だけ辛子たっぷり入れてさ」

 

「俺は良いけど…あんまりやりすぎないでよ?冗談は冗談で通じるレベルが良いんだから」

 

「はいはい、しっかし今日は絶好の遠足日和だね〜♪」

 

 

学校

 

「あれ?先輩たち、なんでそんな大きなリュックを?」

 

学校に着くと俺たちが大きなリュックを背負っていたのを見て、蛍は疑問を投げ掛ける。

 

「? 今日は遠足だって先生が言ってたんだけど」

 

「え、私は何も聞いてないんですけど・・・」

 

無理もない、俺も聞いたのはつい昨日のことなのだから

 

「どこ行くのかなー。遊園地とかかなー」

 

夏海が楽しそうにどこに行くのか予想をしているが、蛍はいまいち不安が拭いきれないでいた。

というのも、突然すぎる上に、あの一穂の提案だからである。

小鞠と一輝も楽しそうにしているが、卓は何か思い当たる節があるのか、あまり乗り気ではなさそうだ。

 

「とにかく、せっかくの遠足なんだから、おもいっきり楽しもー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなよく集まったねー。それでは、楽しい遠足、田植えのはじまりはじまりー」

 

 

ところ変わって、宮内家の所有する田んぼの一角、作業着を着た一穂が集まったみんなに声をかける。

一穂の隣には、同じ作業着を着た、どこかどんよりしたれんげが立っている。

 

「と、いうわけでー、今日はこちらの田んぼのお手伝いをしましょー。といっても先生のウチの田んぼだけどねー」

 

「えーっと……、一穂先生……?」

 

「おっと、違うんよー。先生が頼まれたけどメンドかったとかじゃなくて、課外授業っていう体でーあ、もしかして遠足の情報、十分に伝わってなかったのかな? 夏海には声をかけといたんだけど、でもれんちょんは遠足って聞いてキャッキャしながら楽しみにしてたもんねー。」

 

「・・・ホント、笑わせてくれる」

 

れんげの顔は全く笑ってなかった。

 

「………うん! それじゃー楽しい田植えのはじまりはじまりー!」

 

そうだ…そういえばこの時期はよく田植えの手伝いやらされてた…チクショー!!

 

「はぁ……仕方ない、パパっと終わらせてお弁当食べて帰ろう。」

 

「でも私お弁当持ってきてないですよ…」

 

今日はじめて遠足のことを知った蛍はお弁当がなく困っていた。

 

「な…なぁ蛍、もし良ければ俺の…」

 

「私が作ってきたおにぎりならあげるよ」

 

「いいんですか? (先輩のおにぎり…がんばろう)」

 

「………。」

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜…うまくいかないな…やっぱ俺って奥手なのかな…?」

 

一輝は溜息を吐きながら田んぼに苗を植えていた。因みに蛍はコマ姉のおにぎりのためにスイッチが入りとんでもない集中力を発揮していた。最近になって自分が蛍を意識していると気づいたのは良いが全く行動に移れないことから自分がヘタレなのかと思うようになった。

 

「まぁでも行動しないといけないからな、頑張ろっと。」

 

そう思うと俺は再び作業に戻った。ふと気付くとスグ兄が竹竿で両手を固定され頭に傘をかぶりカカシにされていた。おそらくナツ姉のイタズラだろう。

 

 

 

「一輝〜助けてくれ〜!!」

 

するとナツ姉の声が聞こえその方向を向くとナツ姉とコマ姉が両手を互いに掴みながらこっちに助けを求めていた。

 

「2人ともどうしたの!?」

 

「ぬかるみにハマった!!」

 

「なにやってんだよ全く…俺が支えてやるからその隙に抜けな。」

 

「すまん一輝、助かった!」

 

「はいはい、まずはコマ姉からな」

 

やれやれ、そう思いながらコマ姉を支えながら力一杯引っ張りあと少しで抜けそうになった瞬間

 

どん!!

 

「うおっ!?」

 

「…え?」

 

突然れんげがナツ姉に後ろからぶつかりドミノのように俺にぶつかり…

 

「ギャアァァァァァ」

 

ドッポーン

 

田んぼに落っこちた。

 

「…もうやだ、もう田植えなんかしない」

 

「ナツ姉なんもやってないだろ」

 

俺たちは泥まみれになりながら蛍やれんげ、スグ兄に泥を拭いてもらっていた。

 

「ていうか主催者の先生はどこいった?」

 

すると、

 

「いやー、やっぱり機械の方がいいわー」

 

 

田植え機を運転している一穂がそんなことをのたまっていた。

 

「人の手とどっちがいいか試してみたかったけど、やっぱ断然機械だね。あ、みんなまだいたのー。もう帰ってもいいよー。」

 

と、かなり予想外のオチに、みんな固まってしまった。

 

「はぁ〜お弁当食べて帰ろ」

 

そんなわけでお弁当をみんなで食べた。蛍はコマ姉におにぎりをもらっており美味しそうに食べていた。

 

「はぁ〜」

 

「ねぇねぇ一輝」

 

お茶を飲んでると突然ナツ姉が小声で俺に話しかけてきた。

 

「なんだよナツ姉?」

 

「一輝ってさ、ほたるんのこと好きでしょ?」

 

ブハッ

 

思わずお茶を吹いた

 

「ゲホッゴホッな、ナツ姉なにを」

 

「お〜♪その反応はマジか〜だって一輝ここ最近ずっと」

 

「うわぁぁぁぁあだまれぇぇぇえ!!」

 

俺は慌てておにぎりの一つをナツ姉の口に押し込んだ。

 

「ウギァァァア!!」.

 

どうやらそれが辛子入りだったらしい…

 

 

一番バレたくない人にバレた。

 

 

 

 

 




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9話 怖がる姉をからかった

早めに投稿です


田植えを終えたその日の夜、俺は体の泥をお風呂でしっかりと落とした。帰ってきたら服から髪まで泥まみれになった俺たちは母さんにたっぷりと怒られた。自分まで怒られたのは少し納得がいかなかったが…今俺はコマ姉と映画を見ている。返却日間近なのでまとめて見ているのだ。

 

「うへぇ〜やっと泥落ちた〜」

 

すると、ナツ姉がお風呂からあがってきた。

 

「姉ちゃんズリーよ、さっさと先に入っちゃってさ〜一輝も私に黙って次の風呂先に入るし」

 

「うっさい、姉の特権だ」

 

「巻き添えの被害者の特権だ」

 

今回は俺は完全に巻き添えだし、

 

「なに観てんの?」

 

「レンタル屋で借りてきた癒し系感動恋愛映画だって、明日返却日だから今日中に見るんだって、10駅向こうだから返しに行くの大変だし」

 

癒し系感動恋愛映画だというがなんか途中から変な流れが出てきてるが…大丈夫かこの映画…

 

 

 

 

 

 

「まさか…ウイルス感染で登場人物全員死亡とは…」

 

想像の5割り増しでメチャクチャな映画だった。

 

「なんか微妙だった、おかしいな、評判は良かったのに」

 

コマ姉は少し残念そうだった。

 

「ウチもう寝るね、なんか今日は疲れたし」

 

「私は残りの全部見てから寝る」

 

コマ姉ってほんと貧乏性だよな…って次の映画『都市伝説恐怖映像100選』って…コマ姉大丈夫か?

 

「俺もコマ姉と一緒に観るよ。コマ姉が心配だ」

 

「なんかなめられてるみたいなんだけど…私だってもう14歳だよ」

 

「んじゃおやすみ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜中

 

「コマ姉、無理しなくて良いんだよ?」

 

「ち、違うし!たまにはこっちで寝たいな…って」

 

ホラーが怖かったようでにしがみついたままのコマ姉をナツ姉の寝室へと連れてった。ナツ姉に頼めば良いだろう

 

「ナツ姉、ナツ姉」

 

「んあ?どうしたの一輝?」

 

「ほら、コマ姉自分で言いなさい」

 

俺に促され、コマ姉はナツ姉の布団に潜りながら

 

「えっ…と…私のところ虫の音がうるさくて…」

 

素直に言えんのかコマ姉は…

 

「しゃーない、それじゃあウチが向こうの部屋に行くよ」

 

そう言って去ろうとするナツ姉の手をコマ姉が掴んだ。

 

「さっきのホラーが怖かったみたいで…」

 

「こ、怖いわけないじゃん!!私はもう14だし!!」

 

俺が説明するとコマ姉は全力で否定したが

 

「あー!!姉ちゃんの後ろに白いものが…」

 

「ぎゃーーーーー!!」

 

コマ姉は悲鳴をあげながら布団に潜った

 

「なーんて、ただの障子でした〜」

 

ナツ姉、やって良いことと悪いことがあるぞ

 

「ハハハッやっぱり怖いんだ、偉そうなこと言ってやっぱり怖いんだ、大丈夫でちゅか〜?オバケちゃん映像観て怖くなっちゃったでちゅか〜?大丈夫でちゅよ〜夏海ちゃんがいっちょでちゅからね〜」

 

ここぞとばかりにナツ姉はコマ姉をからかった。その瞬間

 

「ふん!!」

 

コマ姉が枕でナツ姉を殴りチャックがナツ姉の目に当たった。あれって痛いんだよね

 

「一輝、電気夕方にして!!」

 

夕方とは豆電球のことである。俺は真っ暗の方が良いのだが可哀想なのでいう通りにしよう

 

「この宝箱兼ゴミ箱にたしかアイマスクが…あ、そうだ姉ちゃん、怖いならライトと昔姉ちゃんが大事にしてたぬいぐるみのしょうきちさんあるけど…」

 

「怖くないって言ってるじゃん…でもライトとしょうきちさん持ってきて」

 

「はいはい……一輝、ちょっと来て」

 

「…あいよ」

 

俺たちはちょっといたずらを開始した。

 

「「はい…お待たせぇぇ!!」」

 

そこにはピエロのお面をしたナツ姉と馬のマスクを被った俺がいた。

 

「ぎゃーーーーー!!」

 

「コマ姉どうしたぁあぁ?ライトとしょうきちさん持ってきたぞぉおぉ?」

 

「ぎゃーーーーー!!」

 

「ハハハッやっぱり怖いんだ姉ちゃん」

 

「ここまでくると傑作だわー」

 

そう言いながら俺たちはマスクを外した

 

「うるさいバカ!!んなわけあるか!!」

 

涙目でコマ姉が叫んだ

 

「ほら姉ちゃん、しょうきちさんこんななってるけど…」

 

ナツ姉の手には半分首が千切れかかったしょうきちさんがあった。

 

「しょうきちさんがー!!なんでお前の宝箱にしょうきちさんが入ってんだー!!」

 

「だから宝箱兼ゴミ箱って言ってたじゃん」

 

「勝手にゴミに分類するなー!!」

 

「そう言えば夜な夜な宝箱から『暗いよ〜』『呪ってやる〜』って声が聞こえてたけど…これってしょうきちさんの祟り…」

 

するとコマ姉が布団にくるまりながらぐずり始めた。

そろそろやめてあげよう

 

「うそうそ、コマ姉冗…」

 

「ほら、しょうきちさんですよ〜」

 

そう言うとナツ姉はコマ姉の布団にしょうきちさんを放りながら布団を抑えた

 

「ウギャーーー!出れない、暗いよ助けて〜!!」

 

「ちょ…ナツ姉、さすがにこれ以上は…」

 

これ以上はコマ姉が大泣きしそうであったがナツ姉のコマ姉弄りはしばらく続いた。

 

 

 

 

 

 

 

「もうやだ…お化けなんて嫌…お化けなんて嫌…」

 

「幽霊なんて存在しないんだからそんな怖がらなくて良いって」

 

ぐずりながら布団に入ったコマ姉と遊び終えたナツ姉、そして俺もついでに同じ部屋で寝ることになった。

 

「そんじゃあおやすみ…」

 

 

 

 

 

眠り始めてしばらくすると、

 

「ねえ一輝、一輝」

 

「…何ナツ姉?」

 

突然ナツ姉が俺を起こした。

 

「幽霊なんていないって言ったけど…じゃあ死んだらどうなるの?もしかして…真っ暗なの?」

 

どうやら自分で言ってた怖くなったようだ…そうだ、この際に…

 

「コマ姉知ってる?怪談ってでっち上げで作った怪談も時々本当に起こるんだけど…そう言うのって大体怪談を作った人が不幸な目に合うんだって」

 

「不幸な目…?」

 

「例えば…ここじゃない世界に連れて行かされるとか…まぁ気にしないで早く寝なよ」

 

そう言うと俺は眠りについた

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「あれ?なっつん遅刻?」

 

「なんでも昨日寝付けなかったんだって」

 

ナツ姉、覚えておくと良い…標的をからかっていたらいつの間にか自分が標的になることもあるのだよ…

 

 

 

 

 

 




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10話 2人の姉が家出した

アニメ3話後半です


「だーかーらーウチが割ったんじゃないって野良猫が割ったんだって!!」

 

「前もそんなこと言ってガラス割ったの誤魔化したでしょ!?」

 

「今回は本当なんだって!!」

 

「…なんだ?」

 

ある日、庭からナツ姉と母さんが口論しているのが聞こえた。庭へと向かうと母さんに何かを言ってるナツ姉と怯えたコマ姉、そしてナツ姉の前に母さんがいた。

 

「なんの騒ぎ?」

 

「おぉっ一輝ちょうど良いところに!!ちょっとこれを見てよ!!」

 

「……?」

 

ナツ姉の指差した方向を見ると植木鉢の一つが倒れて割れていた。

 

「何これ?ナツ姉が割ったの?」

 

「だーかーら違うんだって、犯人は野良猫なんだって!!」

 

どうやら植木鉢が野良猫に破られたのだが母さんがナツ姉を疑ったのでナツ姉が反論しているようだ。ナツ姉が嘘をついているようではないみたいだし本当なのだろうが…とある童話の羊飼いみたいに日頃の行いが災いして疑われているのだろう…

 

「とにかく!!姉ちゃんと一緒にボール遊びしてたから間違いないって!!そうだよね姉ちゃん!!」

 

「そうなの小鞠?」

 

「ひうっ…!えと…その…」

 

母さんの言葉にコマ姉はビクッと怯えてしまった。

 

「小鞠!!」

 

なかなか答えないコマ姉に母さんが強めに名前を呼ぶと

 

「ひっ…ちが…」

 

「ほら、違うって」

 

「ちがうぅぅぅう!!」

 

「ちょっ…姉ちゃん!?」

 

ますますややこしくなってしまったようだ

 

「こ、コマ姉…少し落ち着いて、母さんは怒ってないから…ね?」

 

「うわーん一輝〜」

 

コマ姉は俺に抱きつきながらベソをかきはじめた。

 

「あ、そうだ!!その猫ちくわ咥えてた!!」

 

「ちくわ?確かに夕飯用にテーブルに置いてたのが一本無くなってたけど…あんたがつまみ食いしたかもしれないじゃない」

 

たしかにナツ姉ならやりそうである。

 

「なんで自分の子供を信じないの!?」

 

「あんたの日頃の行いが悪いからでしょうが!!この間も柱に落書きしたの一輝の所為にしたし」

 

そういえばあった…あの後ナツ姉の手についたクレヨンの跡が証拠となって俺の疑いが晴れたんだっけ…

 

「それから0点のテスト、一輝の枕の中にかくしたでしょ!?」

 

それもあった…その日から枕の中のテストに気付くまで大量の0点のテストに押しつぶされる悪夢にうなされただけ…

 

「おまけに部屋も片付けない、出したら出しっぱなし!!」

 

それもあった…確かその中のスーパーボールを俺が思いっきり踏んづけて途轍もなく痛かったっけ…ていうか母さん、なんか隠し事関係なくなってるような…

 

「大体ねぇ…あんたはもっと、人の言うことを聞かないと…」

 

すると、ナツ姉の体が震えているのに俺は気づいた。

 

「なんだよ…そっちこそ全然人の言うこと聞かないじゃん!!もういいし!!姉ちゃん行くぞ!!」

 

怒ったナツ姉はコマ姉の手を掴むと走り出した。

 

「ちょっと、待ちなさい!!」

 

「アホオカン!!!」

 

「親に向かって何を!?」

 

「家出じゃ家出!!こんな家でてくもんね!!」

 

そう言うとナツ姉はコマ姉を連れて去って行った。

 

「…母さん、俺ちょっと2人を追いかけてくる」

 

さすがにこのままじゃナツ姉が不憫だ。

 

「……おねがい」

 

母さんも溜息を吐きながら俺に頼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたいた、ナツ姉〜コマ姉〜」

 

2人はすぐに見つけられた。水路の近くの道を歩いていた。

 

「ナツ姉、コマ姉も、さすがに家出はマズイって」

 

「私は家出なんてしたくなかった」

 

「だって腹立つじゃん、今回はマジでウチらの所為じゃないし……」

 

どうやらナツ姉はかなりご立腹のようだ…

 

「わかった。じゃあこれからどうする?しばらく俺も付き合うよ?」

 

「とりあえず昔使ってた秘密基地に向かおうと思う」

 

「秘密基地?それってこの辺に秘密通路があるやつ?」

 

「そうそうソレ」

 

こうして俺たちは秘密基地へと向かうことにした。水路を下に降り、大きな排水口を通り抜けると監視場のあるもう使われていない大きな水門にたどり着いた。

 

「おぉ〜結構昔のまま残ってるじゃん」

 

そこには小さなテーブルにバトミントンのラケットなどがあり、いかにも秘密基地といった感じであった。

 

「それで?これからどうするの?」

 

「まぁ心配しなくても食べ物とかはウチが採りに行ってくるからしばらくここで住めるよ」

 

「なんで私たちが夏海に養われなきゃいけないの?」

 

ごもっともである。

 

「あ〜暇だな〜しりとりするか〜りんご」

 

「え〜しりとりなんて幼稚だよ〜ゴリラ」

 

「なんて言いながらコマ姉もやってるじゃん〜ラッコ」

 

「え〜と〜小石」

 

「し?え〜と〜新幹線!!」

 

「コマ姉んがついたからアウト〜」

 

「あう…」

 

しりとり第二回戦

 

「り〜リール」コマ姉

 

「る〜ルッコラ」一輝

 

「ら〜ラッパ」ナツ姉

 

「ぱ…えっと〜パイン!!」コマ姉

 

コマ姉はしりとりが弱すぎであった。

 

「まさか姉ちゃんがこんなにしりとり弱いなんてね〜」

 

「うるさい!!」

 

その後、しりとりも飽きてきて、さらにお腹も空きはじめた頃、ナツ姉が壁に描かれた落書きを見つけた。

 

「これって確か…」

 

それは昔、俺がここでの生活に慣れはじめた頃、ナツ姉が今日みたいに母さんと喧嘩して俺たちを巻き込んで家出した時の落書きであった。

 

「確かこの時お腹が空いてその辺の草を食べた夏海がお腹を壊したんだったよね〜」

 

「あったあった…ってアレ?あの時どうなったんだっけ?」

 

「あの時私が夏海をおぶって家まで帰ったんだよ?まあ途中で一輝がお母さんを連れてきたんだけど、そういえば後から聞いたんだけどその時一輝、『ナツ姉が死んじゃう〜』って大泣きしながらお母さんのところに向かったんだって?」

 

「ちょっ!?なんでそのこと知ってるの!?」

 

「へぇ〜そんなことあったんだ〜」

 

「べ、別にいいだろ?そんだけ心配だったんだから…」

 

あの時の俺はまだ実の両親を亡くした哀しみが強く、ナツ姉が苦しむところを見てまた家族を失ってしまうんじゃないかって気持ちになっちゃったんだよな…

 

「ってアレ?あの猫…」

 

ふと外を見たときに目に映った猫…ちくわを咥えてる…

 

「ちょっナツ姉!!あの猫ってもしかして…」

 

「…?ってあぁーー!!」

 

やっぱり例の鉢植え割った猫か…すると、ナツ姉は急ぎながら猫を追いかけた

 

「ちょっ…ナツ姉!!猫追いかけてどうするの!?」

 

「母ちゃんの前に連行する!!」

 

なるほど、証拠としては十分だろう…と思いながら追いかけると…

 

「子猫?」

 

そこには数匹の子猫がいた。

 

フシャーーー!!

 

母猫は子猫の前に立ち俺たちに威嚇した。

 

なるほど、子猫のためにちくわを…

 

「…帰るか」

 

すると、ナツ姉がそう呟いた。

 

「そうしよ」

 

歩いていると途中でスグ兄が迎えにきた。兄に連れられ家に着いた。

 

「ナツ姉…母さんいる?」

 

追いかけておいて今まで帰ってこなかったんだから相当怒られるだろう…

 

「わからない、とにかくゆっくり部屋に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あんた達、今までどこほっつき歩いてたの!?」

 

すると、後ろから母さんの怒りの声が聞こえた。

 

「あ…あはは…家出したけどやっぱり門限は…」

 

ナツ姉は苦笑いしながら言い訳をするが…

 

「何が門限よこっちは一日中探し回ったんだから!!それに一輝!!ミイラ取りがミイラになってどうすんの!?」

 

そう言いながら母さんは俺たちにどんどん近付いてきた。

 

「わわっストップ!!」

 

「ご…ごめんなさい!?」

「た…タンマ!!」

 

拳骨が来る…そう思って俺たちは身構えた。しかし、

 

 

 

ギュッ…

 

母さんは優しく俺たちを抱きしめ頭を撫ぜた。

 

 

 

 

「おいしー♪スイカみたいな匂いがする〜」

 

「母さんこんなに鮎どうしたの?」

 

食卓にはたくさんの鮎の塩焼きがあった。

 

「親戚のおばちゃんが持ってきてくれたのよ」

 

「取られたのが鮎じゃなくてちくわでよかったね♪」

 

ごもっともである

 

「そーだ母さん、ちくわを咥えてる猫確かにいたよ」

 

「そうそう!!っていうか姉ちゃんしりとり弱すぎ〜」

 

「コラ一輝、口に物入れたまま喋らない、夏海も、箸で人を刺さないの」

 

 

 

 

 

 

 

 

越谷家は今日も平和であった。

 

 

 




今日は少し長くなりました。

感想よろしくお願いします。


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11話 みんなでスイカを食べた


このあいだフェイトグランドオーダーのガチャで星五つのマーリンが二枚出た。


 

今日は夏休み前の終業式、俺とナツ姉とれんげは川で冷やしたスイカを取りに来ていた。我らが旭丘分校では、夏の終業式にはみんなで作ったスイカを食べることになっている。なぜそうなったかは誰も知らないが昔からそうなっているらしい、そんなこんなで今俺たちは川にいるわけだが…

 

「れんちょん、そっちいった!!」

 

「いっけぇぇーれんげぇぇぇえ!!」

 

「………とわっ!!」

 

バシャァン!!

俺とナツ姉と指示を聞いたれんげは思いっきり水面をすくった。

 

「カニとったのーん。」

 

「なんか…鮭を獲る飢えたヒグマみたいに獲ったな…」

 

ポチャン

 

れんげは持って来た小さな水槽に捕まえたカニを入れた。

 

「そのカニどうすんの?飼うの?」

 

「飼うんーこいつの名前は《お塩》にするのん。」

 

なんでカニに調味料の名前をつけるんだ、このあいだのタヌキも《具》だったし…やっぱり…

 

「前から思ってたけど…れんちょんってネーミングセンスないよね。」

 

「え?」

 

ナツ姉の言葉にれんげは驚いた。やっぱり自覚なかったのか…

 

「おそいー!!何してんのー!!川で冷やしているスイカ持って来てって言ったじゃん!!」

 

すると、俺たちが戻ってこないのでコマ姉がみんなを連れて来た。

 

「いけねっ忘れてた。」

 

「も〜こうならないために一輝についてってもらったのに〜」

 

「悪いコマ姉、最初はそのつもりだったんだけど…川に大きなカニがいてつい…」

 

「よいしょ、よっこいせー」

 

れんげが重たそうにスイカを川から取り出して、

 

ゴツンッ

 

「あ、スイカが」

 

予想より重かったらしく川から引き上げたあと岩にぶつかった。

 

「おもいんー」

 

「ちょい貸してみ、ヒビ入ってないといいけど…」

 

れんげから一穂先生がスイカを受け取るとスイカを確認した。

 

「おおっ、いい感じに冷えてんな〜」

 

どうやらスイカは無事だったようだ。

 

「じゃあさっそく食べようよ〜」

 

「その前に通知表配るから、みんな集まってー」

 

「げっ」

 

一穂先生の言葉にナツ姉は固まった。

 

一穂が、持ってきていたカバンから通知表を取り出して、みんなに配っていく。

 

「はいれんちょん、はじめての通知表」

「あーい」

 

れんげが、人生ではじめての通知表を受け取って、開いて眺めてみる。その中身は…

 

オール5

 

「うおー! 5がいっぱいなーん! たしか5が一番いいのんな!」

 

「れんちゃんすごーい。私算数が苦手で」

 

「わーい」

 

俺は…国語と理科、体育、算数が5、図工、美術が4、そして社会が3であった。くそっ…やっぱり社会の成績が落ちたか…

 

「ナツ姉ー。さっさと通知表の中見たらー?」

 

「えー、だってなんか怖いじゃーん。成績悪いと母ちゃんにどやされるし…」

 

「開けても開けなくても中身は変わらないんだからさ、確認だけでもしたら?」

 

「うぅ〜…」

 

俺の言葉にナツ姉は渋々通知表を開いた。その結果、

 

「どれどれ…えっ?」

 

通知表は5と4で埋まっていた。

 

 

「5がいっぱい!」

 

「なっつん、おめでとなん!」

 

「ありがとーございます!」

 

れんげが褒め称えて、夏海もそれに応えて上機嫌になる。

 

「良かったねナツ姉、なんでか知らんけど…」

 

「いや〜夏海ちゃんの時代がとうとう来ちゃった感じ〜?」

 

 

 

 

 

 

 

しかし、現実は残酷である。

 

「あーそうそう」

 

思い出したように一穂が全員に語り掛ける。

 

「小学生は5段階、中学生は10段階評価だから、気をつけるようにねー、それじゃあスイカ切った順に配ってね〜」

 

その言葉にナツ姉はフリーズした。

 

「……ナツ姉本当にごめん、俺も中学から成績が10段階評価になるなんて知らなかった…」

 

「………気をつけまーす……」

 

「ほ、ほらナツ姉、スイカ食べよっ?」

 

「人生ってとんでもねー…」

 

「ナツ姉ぇぇ!!お願いだから戻って来てぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

そしていよいよスイカタイムになった。スイカは学級菜園で作ったとは思えないほど甘かった。

 

「人生もこれくらい甘いといいのに…」

 

ナツ姉はまだ傷が癒えていないようだ…

 

「一応塩持って来たよ〜かける人言ってね〜」

 

そう言って一穂先生が塩を出した。

 

「うーん…私はかけてみるかな…」

 

「そんじゃあ俺もかけてみよ〜」

 

「ウチもかけてみるかな…」

 

俺たちは塩をかけてみることにした。なるほど、しょっぱいあとに甘くなった。面白くはある。

 

「そーいやスイカに塩をかけるのって初めてだな…」

 

「ウチじゃかけないしね」

 

ナツ姉も塩をかけたスイカに噛り付いた。

 

「しょっぱっ」

 

「人生みたいに?」

 

「…………………………。」

 

再びナツ姉がフリーズした。れんげ、お願いだからこれ以上追撃しないでやって……

 

「な、ナツ姉?」

「……母ちゃんになんて言おう…………」

 

確かにあんな通知表見せたら母さんがブチ切れるぞ……

 

「どうしたのそのカニ〜」

 

すると、一穂先生がれんげがさっき獲ったカニを見つけた。

 

「さっき獲ったのん」

 

「飼うの?夏は飼いにくいよ。」

 

「ダメなのん?」

 

「ダメじゃないけどね〜」

 

「まぁ暑いからね」

 

「秋だと飼いやすいんじゃない?」

 

「…………。」

 

すると、れんげはカニの水槽を持つと川にカニを逃した。

 

「次学校が始まったら捕まえるん」

 

その後は夏休みに何をするか話し合った。

 

「成績悪かったし、夏休みはストレス解消に勤しむか〜」

 

「そう言って宿題終わらなくなるんでしょ?」

 

そう話しながら帰り始めると、れんげは1人校舎の前に残っていた。

 

「どうしたれんげ?」

 

「んー。…………また2学期に」

 

びしっ、とれんげが敬礼した。

俺もふと校舎を見た。思えば一年生の夏にこっちに越して来て…もう俺は六年生か…この学校では色々なことを教わってるよな…

 

「また二学期に」

 

そう言って俺も敬礼した。

 

「2人とも〜何してんの〜」

 

遠くからナツ姉の声がした。

 

「ごめんナツ姉、今いくよ」

 

「今行くん〜〜」

 

夏の日差しが、古い、趣のある校舎に降り注いでいた。

 




そんなわけで次からは夏休み突入です。

年末はどうですか?
自分は今年もゆく年くる年見て初詣に行く予定です。


また少しずつ飼いてく予定です。






感想も出来れば書いてほしいな〜


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12話 みんなで朝食を食べた

夏休み編スタート!!


夏休みも残りひと月を切った8月上旬、海水浴に行く日がとうとうやって来た。暑さはジリジリと暑いが風が涼しいので心地よい。

俺たちはそれぞれ準備を済ませて、後は出発するだけとなっている。

でもその前にやらなければいけないことがある、夏休みのお約束であるラジオ体操をこなさなければならない。

早朝の神社に集まった俺たちは、ラジオから流れてくる曲に合わせてお馴染みの体操をする。

しかしそんな中で…

 

 

「とう! もっちょろけ~ダンシンッ!」

 

 

1人だけ高速回転しながらアグレッシヴなダンスをプレイしている幼女ことれんげがいるが、遊び盛りの彼女は常日頃から体操しているようなものなので問題ない。

曲の終了とともに踊りを終えると、サタデーナイトなポーズを決めつつ得意げな顔で俺たちに視線を送る。

 

「フフ、どうですか? うちのダンスは?」

 

「これダンスじゃなくて体操だけどね」

 

れんげの言葉にナツ姉がツッコミを入れた。

 

夏休みのラジオ体操では監督役として母さんがいた。母さんはラジオ体操が終わるとみんなの出席カードにハンコを押していた。

普通は俺たちの担任である一穂先生がやるべきなのだが……

 

「こういうのはカズちゃんの役目だと思うんだけどね…」

 

母さんも俺と同じ考えをしていた。

 

「ねえねえは今日も寝てるのん」

 

「今度ビシっと言ってやらなイカンね」

 

「言ってやって欲しいのん」

 

一穂先生へのオシオキが実行されそうな雰囲気が出来上がってしまった。

 

完全に自業自得なのだが、テレビから気になる情報を得ていた俺たちは、未だに気持ちよく寝ているだろう一穂先生の身を案じずにはいられなかった。

 

「コマ姉、朝の占い、たしか『知人に災難が』だったんだよね……」

 

「海行く前に、保護者がKOされないかな……」

 

一穂先生のことよりも俺たちにとっては海水浴が頓挫することの方が問題ではある…まぁ先生のことも一応心配ではあるけど

 

「そういえば、れんげちゃんとこ、ご両親朝から畑仕事だったけ? カズちゃん寝てるなら、家でご飯食べてく?」

 

「食べるん!」

 

「蛍ちゃんも食べてく?」

 

「いいんですか?」

 

「いいよ、人多いほうが楽しいしねぇ」

 

そういえば俺は前に蛍を家まで送ったことがあったけど蛍は俺の家に行ったことなかっただけな…

 

(蛍と一緒に朝ごはん…)

 

俺は密かにウキウキしていた。

 

 

 

 

「ごめんな蛍、朝ごはんの買い物につき合わせちゃって…」

俺と蛍は一緒に朝ごはんに使う野菜を買いに行っていた。俺だけでも大丈夫だったのだがせっかくだからと蛍も一緒に行くことになったのだ。

 

「いえ、でもこの辺りにお店とかありましたっけ?」

 

「ん?すぐそこだよ?ほらあそこ」

 

そう言って俺は指をさした。蛍はその先を見てポカンとしていた。

 

「そういえば蛍っていつも買い物はどこでしているの?」

 

「ウチは週末に町の方に行ってるんですけど…」

 

町にか〜俺たちが町に行くのなんて月に一度あるかないかだもんな…

 

「ってもう着いた。ほら、ここだよ」

 

そこにあったのは『全て100円』と書かれ野菜が並べられた。所謂無人販売所があった。再び蛍がポカンとしていた。

 

「…店?」

「まぁ無人だけど24時間営業だからコンビニみてーなもんだよ。都会にはこういうのは無いの?」

 

「あんまり見ないですね…」

 

(ふむ…やっぱ変わってるな…)

 

そう思いながら俺は100円を入れると買う野菜を持ってそこを去った。

 

 

 

 

「母さん、トマト洗っておいたよ。ここ置いとくね。」

 

「ありがと一輝」

 

そして蛍と家に帰ると俺は朝食の手伝いをした。

俺たちは食器を並べたり料理を作るのを手伝ったりした。

れんげは茶碗にみんなのご飯をよそっていた。

 

「ごはん持ってきたーん。」

 

俺が箸を並べているとれんげの手にはこれでもかと白米が盛られた茶碗があった。

 

「ほたるん大きいからいっぱいよそったん。」

 

「うわーよそったねー。」

 

「カズにいはもっとよそったん。」

 

「これはこれは…」

 

俺の前には山盛りの白米の塔があった。

 

「もりもり食べてもりもりになって下さい!」

 

れんげは二人にいっぱい食べて欲しいという優しさでご飯を持ってきたのだ。それが分からないほど二人は鈍感では無かった。自然と笑みを浮かべていた。

 

「お待たせ〜遅くなってごめんね」

 

そう言って母さんが味噌汁を持ってきた。

 

「いえ、私こそお手伝いしなくてすいません…」

 

「一応蛍、お客様なんだし気にしなくていいよ」

 

 

「では、」

 

「「「「「「「いただきます!!」」」」」」」

 

そしてみんなで朝食を始めた。

 

「どう?こっちの夏休みは?」

 

母さんが蛍にそう聞いてきた。

 

「神社でラジオ体操とか野菜の置き売りとかみんなで朝ごはんとか初めてのことがいっぱいです。」

 

「ふうん、そういうもんなんだな?」

 

「はい!!」

 

「あっ………////」

 

その時の蛍の笑顔はとても可愛らしかった。

 

「蛍ちゃんは夏海と違って素直でいい子だね〜」

 

そう言いながら母さんは微笑みながらナツ姉の頭を撫でた。

 

「もー!!わざわざ引き合いに出さなくてもいいじゃん!!それより早く食べて海に行こ!!」

 

「本当に行くの〜?」

 

「当たり前じゃん!!」

ナツ姉にコマ姉はきだるそうにそう返した。

ちなみに海には一穂先生が付き添いで行くことになっている。

 

「あれ?この味噌汁プチトマト入ってる…」

 

蛍がふと味噌汁を見てそう叫んだ。

 

「ん?うちではよく入れてるけど…蛍のとこでは入れないの?」

 

「ウチのところでは普通に入れるけど…一輝の好物だし」

 

「蛍のとこでは入れないの?」

 

「は…はい、ウチでは豆腐とかは入れるんですが…」

 

「食べて見なよ、すっぱいけど美味しいよ」

 

俺の言葉に蛍は恐る恐る口に運んだ。すると、

 

「〜〜〜〜〜っ」

 

どうやらすっぱかったようだ。梅干しを食べたような口の蛍はとても可愛らしく思わず微笑んだ。

 

「か〜〜ず〜〜きくぅ〜〜ん(ニヤニヤ)」

ふと俺の隣でナツ姉が俺を見てニヤニヤしていた。…しまった…

 

「な…なんだよナツ姉…」

 

「一輝はいつほたるんに告白すんの?」

 

「〜〜〜〜っゴホッゴホッ」

 

突然の質問に味噌汁が気管に入りそうになった。

 

「ナツ姉っ何言って…」

 

「いや〜〜だって一輝なかなか告白しないんだもん。やっぱ姉として放っておかないな〜〜」

 

ナツ姉は俺を見ながらニヤニヤしていた。本当にこの人にだけはばれたくなかったのに…

 

「ほらっ早く食べて海行くよ!!」

 

俺は慌てて話を逸らそうとしたがその後もナツ姉にからかわれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はみんなお待ちかね海水浴です!!


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13話 みんなで海に行った

お待たせしました!!


所変わって、ここはとある地方の海水浴場。

電車を何回か乗り換えてようやく到着した俺たちは、善は急げと早速準備を開始した。

俺たちは水着に着替えるために更衣室へ行き、保護者の一穂先生は外でみんなを待つことにする。

どうやら先生は海に入る気が無いらしく、海の家でパラソルをレンタルすると適当な場所に陣取ってさっさとくつろぎ始めた。

 

「いやっほ~う!!」

 

「海だぁ~!!」

 

「いよっしゃぁぁぁぁあ〜!!」

 

俺たちはテンションマックスで海へと向かった。れんげの水着は、肩紐のリボンが可愛らしいピンクのスカート付きワンピースで、対するナツ姉の水着は、赤を基調としたスポーティーなビキニである。そしてコマ姉はなぜかTシャツを上から着ていた。

 

「よーし一輝、どっちが砂で高い山作れるか勝負すっか〜」

 

「いいよ、制限時間は10分でいこうか」

 

「よっしゃあ〜〜れんちょん、絶対勝つぞ〜」

 

「カズにいに絶対勝つん!!」

 

俺たちは砂浜で砂山作りを始めた。ちなみに蛍はまだ来ていない。

 

 

 

 

「くそ…まさかれんげがあんなに砂掘りが上手かったなんて…」

 

砂山作りは1秒差で俺の負けであった。れんげが思いのほか強敵であったのだ。その後、シュノーケルをしているスグ兄の顔を埋めたりして遊んだ(呼吸は出来るようにしている。)

 

「ん?コマ姉泳がないの?」

 

ふと気づくとコマ姉がパラソルの下で持って来たキュウリを食べていた。

 

「…海眺めるのが好きなだけだし…」

 

なんか目が少し虚ろであった。

 

「とか言いつつ、水着着ると中学生に見えないから嫌なんでしょ〜」

ガリッ

 

一穂先生の言葉にコマ姉の怒りがMAXになった。どうやら地雷を踏んだらしい。

 

「そうですよ!!せっかく海満喫して忘れようとしてたのにぃ〜〜!!」

 

そう言いながらコマ姉はキュウリをやけ食いしだした。

 

「あ…ごめんね…ってかコマちゃんって身長幾つだっけ?」

 

「140無いくらいです…」

 

ごめんコマ姉、俺には140近くあるようには見えない…でも言わないでおこう…

 

「まあまあ、周りに同い年がいないだけで、みんなそんなもんじゃないの?たしか、14歳の平均身長はだいたい140センチって聞いたことあるし…」

 

「っ!!本当ですか!?」

 

一穂先生の言葉にコマ姉は歓喜の表情を浮かべた。でも確かそれって…

 

「先生、それって確か明治の人の平均身長じゃ…」

 

俺の言葉にコマ姉は再び絶望の顔を浮かべた。

 

「私って明治の人よりちっちゃいんですか!?140でもかなりサバ読んでたのに!!」

 

やっぱコマ姉サバ読んでたんだ…

 

「すいませ~ん、水着着るの手間取って遅くなりました~!」

 

すると、着替えが終わったらしく蛍が来た。

 

「………っ!?」

 

そのとき、俺の顔がマグマのように熱くなった。なぜなら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛍の水着は、胸元をリング状の金具で繋いだとても大胆なデザインの青いビキニで、オシャレなパレオと相まって彼女の年齢ではありえないような色気を発散していたからだ。

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜っ!?ほ……ほた……る……?」

 

「……?どうしたんです一輝先輩、顔真っ赤ですよ?」

 

そう言って心配そうに蛍は俺に近づいて来た。

 

「いや…その…大…丈…」

 

「もし日射病だったら大変です!!ちょっと休んだ方が…」

 

そう言って蛍は俺の手を掴んだ。瞬間、俺の中のナニカが弾けた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

ドッボーン

 

俺は顔をとてつもなく真っ赤にして蛍の手を払い海へと飛び込んだ。いつの間にかコマ姉は絶望に染まった顔でみんなのジュースを買いに行っていた。

 

 

 

 

「2人とも…どうしたんでしょうか?」

 

「それは自分の胸に聞きなよ…しかし君は本当に小5かね?」

 

 

 

 

熱くなった顔が海の冷たさである程度冷え、コマ姉が戻ってくるまでの間、俺達は浜辺でボール遊びや砂遊び、海水浴を楽しんだ。昼食時間になり、パラソルに行くが、コマ姉はまだ戻ってない。おかしい、ジュースのある自販機は目と鼻の先のはず、迷うことはまず無いと思うのだが…

 

「まさか誘拐されてたりして〜〜」

 

不意にナツ姉が冗談を言った。瞬間、蛍の顔が凍りついた。

 

「ゆ…誘拐…?」

 

その反応にナツ姉は不味いと直感で感じた。

「や、やだなぁ…冗談だって…あはは……」

 

「でもありえなくはないじゃないですか!!先輩可愛いですし!!ちっちゃいですし!!持ち運びやすいですし!!」

 

蛍…持ち運びやすいってのは言わんでくれ…まぁたしかにコマ姉なら飴玉一つで釣れちゃいそうだよな…

 

「うわぁぁぁあん!!先輩が誘拐されちゃったぁぁ!!」

 

「うわぁぁぁどうしよ母ちゃんになんて言おう〜!!」

 

「やばい…すごい心配になって来た……」

 

「お…落ち着いて、まずは状況を整理しよう」

 

一穂先生がみんなをなだめ始めた。おおっ、大人の判断力で解決か!?

 

「こほん、あのね?私は今日は友達として来てるから、あなた達を見守る責任は無くてね…だからその…ね?」

 

「「「「だめだこりゃ、(私/俺)たちがなんとかしないと…」」」」

 

「と、とにかく二手に分かれて探そう!!ナツ姉とれんげはあっちを、俺と蛍はこっちを探すから!!」

 

こうしてコマ姉大捜索が始まった。

 

 

 

 

 

 

「先輩〜〜どこですか〜!?」

 

「コマ姉〜〜!!」

 

俺と蛍は一緒にコマ姉を探した。トイレ近くや売店、ゴミ箱の中から自販機の中まで……後半パニクって何をしてたのか…

 

「一輝〜」

 

ナツ姉たちと合流した。

 

「そっちはどうだった?」

 

「だめ、どこにもいない…」

 

こんなに探しているのに見つからない…俺たちは焦り出し、蛍も今にも泣きそうになった。そのとき、

 

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーーン

 

 

『迷子センターからのお知らせです。身長130センチ程度、ロングの髪の毛、お名前越谷 小鞠ちゃんというお子様を『お子様じゃないって言ってんじゃん!!』』

 

放送とともにコマ姉の元気な声が聞こえた。どうやら無事みたいだ。

 

 

「迷子じゃないのに迷子センターに連れていかれた!!『お母さんどこ?』って聞かれた!!なんだこれ!?」

 

幼女と間違われて迷子センターに連れてかれたのが本気で気にくわないようだ。どうやらコマ姉を見て迷子と思ったスタッフが心配して迷子センターに連れていったみたいだった。スタッフにお礼を言ってコマ姉を保護した。コマ姉のプライドはズタズタなのだろうが…

 

「そういやナニカ忘れているような…」

 

ナツ姉がなにか忘れているのに気づいた。

 

「あっ!!」

 

そして俺も気づいた。

 

 

 

スグ兄回収するの忘れてた……

 

その後、あのまま微動だにしないスグ兄にスタッフが来ておおごとになりかけたのはまた別の話……

 

 

 

 

 

 

 




水着回、俺の好きな話の一つです






感想待ってます


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14話 みんなでうどん食べた

最近忙しい…


ガタンゴトン〜ガタンゴトン〜

 

楽しかった海水浴も終わりを迎えてのんびりと帰途についた一行は、行きと同じようにいくつかの電車を乗り継いで、午後8時にようやく最後の乗換駅までやって来た。

時間は既に夕食時を過ぎており、昼から何も食べていない一輝たちは線路わきにみかんが落ちているのを見てすっかりお腹が空いてしまったので、丁度降りた場所から近くにあった立ち食いそば屋に入ることにした。

終電は20分後なのでかなり急がないといけないが、普通に食べれば何とか間に合うだろう。

 

「うちは先に反対路線行っとくけど、次が最終ってこと忘れんなよ~。遅れたら置いてくぞ~」

 

「「「「「「は~い」」」」」」

 

こうして一輝たちは何もしてないはずなのに疲れている一穂先生を置いてうどんを食べに行くことにした。

 

「ここも都会だけあって、駅に店あるなんてスゴイよな~」

 

「そうそう、駅員もいるって知った時はビックリしたよ」

 

「結構郊外のような…」

 

立ち食いそばに喜ぶ一輝たちに蛍は少し呟いた。

 

 

こうして一輝たちは席に着いた。席には左から蛍、コマ姉、一輝、ナツ姉、れんげの順番で座っていた。

 

「子供用の椅子は1つで大丈夫ですか?」

 

「あ、どもー」

 

「ウチだけ椅子ー」

 

れんげは小さいため、1人だけ椅子に座っていた。

 

「……さっきの椅子1つで大丈夫ってさ、2つか1つで迷ったってことかな?」

 

「違うとおもうよコマ姉……」

 

コマ姉は海水浴での騒動以来、かなりそういう話に敏感になっているようだ。

 

 

 

その頃ナツ姉には静かなピンチが迫っていた。

 

「とうがらしぃ~、フフンフフフ~ン♪」

 

 

 

シャッ、シャッ、ドサッ!

なんということでしょう、振りかけていた唐辛子のフタが取れて、中身が全部お揚げの上に乗っかり、赤い山を形成しているではありませんか。

 

 

「……」

 

静かに大ピンチを迎えてしまった彼女は、顔を強張らせて一瞬だけ固まった後に左隣にいる一輝を見ためた。

 

「いやだって疑問形だったってことはさー」

 

「だから…」

 

 

 

なんということでしょう、タイミングの良い事に一輝は小鞠と会話に夢中で全くの無防備であった。

これなら行けると悪魔のささやきに乗ったナツ姉は、

 

(…おあげでかくしてこうかん〜〜)

 

お揚げをひっくり返して上に乗っていた唐辛子を隠し、それを隣の一輝のドンブリとすり替えた。

 

「お店の人もただ普通に聞いただけだと思いますよ?」

 

「そうかなぁ…」

 

「考えすぎだよコマ姉、」

 

一輝は蛍とコマ姉をなだめながらうどんを口にした。

その途端に一輝は動きを止め、しばらくすると無言で箸を落としてペタリと座り込んでしまった。

 

「一輝先輩?」

 

「く…くひがかりゃ…あ……っ」

 

「あ…あの……?」

 

「ありゃんりゃこりゃー!!!!」

 

「一輝先輩ーーーーー!!?」

 

一輝は突如口に襲いかかった唐辛子の猛攻に悶え苦しんだ。

 

「大丈夫ですか先輩!?唐辛子を入れすぎたのでしょうか?と、とにかく水を…!!」

 

慌てながら蛍は一輝に手元にあった水(蛍の)を一輝に差し出した。

 

「みずーーーーー!!」

 

ごくっごくっ…

 

一輝はすぐさま水を口に運びようやく落ち着いた。

この時、2人知らないうちに間接キスをしていたことを知るのはまだ先の話、

 

「はぁ…はぁ…おかしいな…唐辛子入れた覚えはないんだけどな…」

 

「ははっ、どんまいどんまーい…」

 

笑いながら夏海は誤魔化していると、不意に隣から視線を感じたのでふり向くと、れんげが自分の事をじっと見つめていた。

まっすぐで純真無垢な彼女の瞳は、夏海の良心に訴えかけてくるようだった。

 

「もしかして、れんちょん見てた?」

「……」

 

れんげは、夏海の問いに何も答えず、ただ見上げてくるばかり。

自分のやってしまったことに対して、何でそんなことをしたのと逆に問いかけてくるようだ。

流石にいたずら好きの彼女でも、罪悪感を感じずにはいられない。

 

「あー…一輝、それ辛いならウチが食べようか?」

 

「えっ?マジで良いの?」

 

「うん」

 

夏海の言葉に一輝は救いの女神を見るような目で夏海を見た

 

「ナツ姉ってやっぱり良い人だったんだね…俺信じてたよ…」

 

「礼とかいいから心が痛む」

 

良心に突き動かされた夏海は、不自然にならないように誤魔化しながら一輝からどんぶりを受け取ってうどんを啜った。

 

「なーんだ思ったより辛くないじゃん!こんなんで辛いとか言ってるようじゃ一輝もまだまだだねー!」

 

「ほ、本当に大丈夫ナツ姉?」

 

一輝は心配になり夏海に聞いてみると、

 

「ん、なになに!?ウチが無理してるように見えるの!?」

 

「見えるから言ってるんだよ!?」

 

夏海は顔を真っ赤にして目から涙を流していた。

 

「う、うめ~! これちょ~うめ~!!」

 

すると、蛍はあることに気づいた

 

「れんちゃんさっきから何見てるの?」

 

「天井の電気に虫飛んでるのん」

 

「うあっ本当だねー」

 

れんげは夏海の悪事を見てたのではなく虫を見ていただけだった。

 

「ウチ無視して、虫見てたってか! ははは……」

 

「なっつん、なんで泣いてるのん?よくわからないけど、なっつんドンマイなのん」

 

「はは、良きに計らえ…」

 

 

 

 

ジリリリリリリ

 

ガタンガタン

 

ふと気づくと隣のホームに電車が入ってきたことを知らせるベルが聞こえてきた。

 

「先輩、電車来てます!」

 

「うわ! コレ逃したら電車ないじゃん! れんちょんも早く準備して!」

 

「この滑らかかつコシのある麺には、流石のうちも気後れしてしまいます、チョルン」

 

「早くしないとこっちが手おくれになるってーの!!」

 

思わぬイベントが発生したため、時間を誤ってしまったようだ。

見れば既に電車の姿が見えるので、急いで出なければ間に合わない。

店主にお礼を言いながら、スピードを速めるために夏海はれんげを、蛍は小鞠を抱いて隣のホームに向かう。

 

「急げ急げ~!!」

 

素早く階段を駆けて最寄の出入り口に全員が飛び込むと、その直後にドアが閉まった。

まさに間一髪である。

 

 

「何とか間に合った」

 

「ですね~(良かった~、先輩持ち運びしやすくて~)」

 

「スグ兄も来てたんだ。こういうときは素早いのね。いつ乗ったんだろ?」

 

本当にスグ兄は時々すごい行動力を見せる。でも、まだ誰かを見ていないような気がするけど……。

そう思った夏海がドア窓から外を見てみると、ホームの椅子に座って熟睡している一穂先生の姿があった。

そして、無情にも彼女を置いて電車は走り出す……。

 

「ねえねえ、乗り遅れたん?」

 

「終電これで最後だよね…」

 

電車の中は静かになった。

 

「えー……どんまい……れんちょんどんまい!」

 

「どんまいれんげ」

 

「ど…どんまい…」

 

一輝たちはれんげにどんまいコールをした。

 

 

「ウチどんまいん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、今日はいろいろあったな…」

 

一輝は家の冷蔵庫で麦茶を飲みながらふと今日を振り返った。朝食をみんなで食べた、海に行った、迷子騒動にあった、うどんを食べた…とても楽しかった。海はやっぱり良い…蛍…水着…

 

「って何考えてんだ俺は!?」

 

一輝は顔を真っ赤にしてコップの麦茶を一気飲みしようとコップを口に運ぼうとした

 

「くらえ一輝ー!!」

 

「うぉっ!?」

 

突然背中に冷たいものが当たった。どうやらナツ姉が氷を一輝の背中に入れたようだ。

 

「何すんだナツ姉ー!!」

 

「いや〜一輝がほたるんのこと考えてるようだったからつい…」

 

「んなっ!?ち、違うから!!」

 

図星の一輝は顔を真っ赤にした。

 

「またまた照れちゃって〜」

 

「この!?氷返しー!!」

 

怒った一輝は氷を冷凍庫から取り出しナツ姉に入れた

 

「うぉっ!?一輝このー!!」

 

氷を入れて入れられてを繰り返してると

 

ガラッ

 

「ちょっとあんたら何やってんの!!」

 

 

 

 

 

 

 

「良い!?あんたらちゃんと雑巾で拭きなさいよ!!」

 

床を水浸しにした俺たちは母さんにこっ酷く怒られてしまった。

 

「うう…ナツ姉のせいで…」

 

「一輝だって一緒にやったじゃん!!」

 

「ナツ姉が余計なこと言うから!!」

 

互いに文句を言いながらお風呂場に雑巾を取りに行った。

 

ガラッ

 

「……え?」

 

引き戸を開けてみるとそこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『5−1』と書かれた学校指定の所謂スク水の姿のコマ姉がいた。

 

「………ごめん」

 

その時のコマ姉の顔は言うまでもない




海水浴編終了です!!


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15話 姉ちゃんが怒られた

夏海説教回です


「いい?夏海、夏休みだから遊ぶなとは言わんけどね、兄ちゃんも姉ちゃんも、それから一輝ももっと成績よかったよ………なんなのこの成績は?」

 

現在居間では母さんとナツ姉が向かい合っていた。母さんの手には10段階中最高5の通知表が握られていた。

俺とコマ姉、それからスグ兄はそれを襖を少しだけ開けて恐る恐る様子を見ていた。そこにはナツ姉が体を強張らせながら母さんの話を聞いていた。

 

「えーと……それはどこで見つけたのでしょうか……」

 

「あんたの部屋、掃除してたら机の裏にあったよ。もしかして隠してたんじゃないよね?」

 

「いやーそんな…………てか人の部屋勝手に掃除してほしくないんだけど……」

 

顔に冷や汗をかきながらナツ姉が文句を言ってみていた。

 

「あんたがちゃんと部屋片付かないのがあかんのでしょ」

 

全くもってその通りである

 

現在、まだまだ暑い夏の午後、母さんの怒りの温度も絶賛急上昇中、これからさらに上昇しそうである。

 

「で?この成績はどういうこと?怒らんから、黙ってないで言ってみ」

 

母さんが静かに通知表をナツ姉に見せながら質問しだした

 

「え……それは……その…………………だってテスト範囲広くて難しい問題ばっかだったし……」

 

「いいワケしなさんな!!」

 

「マイガーー!!」

 

いいワケするナツ姉に母さんの怒りが爆発した。

 

「ちょ…!!今怒らないって言ったじゃん!!」

 

「いいワケはしなさんな!!これ10段階で5が最高ってことは5段階で最高2.5ってことやないの!!」

 

「そういう言い方やめてよ!ひどい成績とったみたいじゃん!!」

 

「とったから言ってるんでしょ!!」

 

母さんの言うことは最もである

 

「だいたい夏休みの宿題まだほとんど手をつけてないよね!?」

 

そういやナツ姉が宿題やってるとこ最近見てない

夏休み開始とともに遊びに行くことがほとんどでおそらくほとんどやっていないのだろう…ちなみに俺はあらかた終わらせている。

 

「いろいろ忙しくてその……」

 

「だからいいワケはしなさんな!!最近あんた口答え多いよ!!母さんが話しているのに!!」

 

「だって2.5じゃないし!!5だし!!」

 

いやナツ姉、10段階で5だからね、実際の成績は10段階の5でも5段階の2.5もおなじだからね?そこんところしっかりわかってる?

 

「はぁ〜〜〜全くあんたはいつも口答えばっかして……その態度がいかんのよ……もっとちゃんと人の話聞いて、あんたはやれば出来る子なんよ、毎日コツコツ積み重ねて行くのが大事なの、わかる?だいたい母さんがあんたくらいの時は…………」

 

(ヤバい……母さんがどんどん話を進めて行く……これは結構かかりそうだぞ……)

 

そう思った俺はナツ姉に越谷姉弟で使われているハンドシグナルをナツ姉に送った。

 

『居間でテレビ見たいんだけど、まだ終わりそうにないの?』

 

すると、それにナツ姉が気づき、俺にハンドシグナルを送る。

 

『ちょうどよかった、テレビの前にウチのテストどっかに隠しておいて、あの忌々しいプライスレスツ…………』

 

『知らないよそんなの!!それってナツ姉の自業自得じゃん!!自分でなんとかしなよ!!』

 

『イヤイヤ何言ってんの一輝くん、テストがバレたらテレビよりすごいもん見ちまうよ…………我が家のアルマゲドンってやつをさ!!』

 

そうハンドシグナルを送って両手を頭の上にあげた途端、

 

「…………………………人が怒ってるのに……あんた……何してんの?」

 

まぁアレだけハンドシグナル送りあってりゃそりゃバレますね!!さて、ナツ姉はどう弁解する!?

 

「いや……えと……これはその……うさぎ?」

 

は?

 

「そうっ!!うっさぎちゃんだよーーん!!ぴょこぴょこぴょんのぬっぴょんぴょーーん!!」

 

 

 

ナツ姉……ごまかすにももう少しマシな手段がなかったのか……もちろん母さんの怒りを買いナツ姉は頭に通知表を叩きつけられた。頭には通知表が刺さってる。……てゆうか……通知表って武器になるんだ……?

 

「ん?そっちに兄ちゃんたちいるの?」

 

ヤバいっ!!母さんがこっちに気付いた!!このままじゃ俺たちまでとばっちりを受ける!!

 

「にげっ……」

 

ダダダダダッ

 

いつの間にかスグ兄が猛ダッシュでその場からにげていた。

 

「スグ兄速っ!?」

 

「そういえば姉ちゃん、英語の成績落ちとったよね?一輝も今回社会がかなり悪かったよ?いるならこっち来!!」

 

 

「逃げるぞコマ姉!!」

 

「ひいっ!!」

 

俺とコマ姉は慌ててその場から逃げ出した。

 

「ちょっ……どこ行くの!!あんた達も言ったって!!なんか言ったって!!」

 

冗談じゃない、俺たちまでとばっちりを受けるのはゴメンだ!!

 

「ちょっと!!兄ちゃん、姉ちゃん!!一輝!!」

 

俺たちは母さんの声を無視して外に逃げた。そこには既にスグ兄がいた。

 

「ふぅっ……なんとか逃げ延びたね……」

 

「…………(うんっ)」

 

「なんで私たちまで怒られなきゃいけないの」

 

全くだよ……

 

 

「あんたまで何逃げてんの!!話はまだ終わってないよ!!」

 

「あー!!セミが呼んでて体が勝手にーー!!」

 

どうやらナツ姉が逃げようとして母さんに捕まったようだ。そこを見てみると

 

「嫌じゃー!!もう嫌じゃー!!」

 

「柱に足をかけなさんな!!」

 

柱に足をかけて抵抗するナツ姉とそれを引き剥がそうとする母さんがいた。

 

「兄ちゃん姉ちゃん一輝助けてーー!!」

 

こちらに気付いたナツ姉は俺たちに助けを求めるが

 

スグ兄はメガネを直し

 

コマ姉は目をそらし

 

俺は手を合わせた。

 

「往生際悪いよ夏海!!」

 

「あぁぁぁぁ嫌ぁぁぁぁぁ!!」

 

バタン

 

襖が閉まり

 

『ギニェーーーー!!』

 

ナツ姉の悲鳴が聞こえて来た。

 

「…可哀想だしテストは隠してあげるか」

 

「うん、私隠してくる」

 

そう言うとコマ姉はナツ姉の部屋に向かった。

 

1時間後

 

『これからちゃんと予習復習やるんよ!!わかった?』

 

どうやらアルマゲドンは終わりを迎えそうだ……

 

俺たちがしばらくして襖を開けると母さんの姿はなくナツ姉だけだった。

 

「終わった?ナツ姉?」

 

「終わった終わった、こんなのテキトーにハイハイ言っときゃ終わるのよ、それにテストが難しいのが悪い、夏海ちゃん悪くないしー」

 

ほんと反省も進歩もないよ

 

「テスト隠してくれた?」

 

「うん、コマ姉が隠したよ」

 

「まぁ一応ね」

 

「さんきゅー」

 

俺たちはそのまま居間の座布団に座った。

 

「そういや母さんは?」

 

「布団干しにいった」

 

あぁなんだ布団干しに……え?

 

 

 

 

 

 

恐る恐るコマ姉をみると顔が強張っていた。

 

「コマ姉、テストどこに隠した?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「夏海の……押入れの……」

 

嘘だろおい……

 

 

 

 

 

 

「……布団の……下……」

 

 

 

ダダダダダッ

 

足音が聞こえてくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にげろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

第2次アルマゲドン襲来である

 




早めに投稿出来ました


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16話 好きな子の家に行った


のんのんびより投稿しました



…そういやこの前FGOガチャでバーサーカーヴラドとオジマンディアスが出てきた…最近ツキまくりなんだけどどうしよう…


 

母さんのお説教が終わり、俺はナツ姉とコマ姉はあぜ道をを歩いていた。

 

「この果てしなく続くアルマゲドンはいつになったら終わるのさ…」

 

あの後、ナツ姉のテスト隠蔽に加担した罪で俺たちはあの後母さんのお叱りを受けた。解せぬ…

 

「…向こうが勝手に戦いを挑んでくる限り終わらない…」

 

「ふむ…」

 

俺はナツ姉の言葉から幼少期のナツ姉を振り返ってみた。

 

 

 

 

 

 

『障子パーンチッ!!』

 

ビリッ

 

『やめなよナツ姉〜〜』

 

障子にパンチをして大穴を開ける幼いナツ姉とベソかきながら止めようとする一輝

 

 

 

 

『必殺瓦投げ〜〜』

 

パリーンッ

 

『ナツ姉降りようよ〜〜』

 

屋根に登って瓦を投げるナツ姉とベソかきながら屋根にしがみつく一輝

 

 

 

『うわぁぁぁぁぁん!!ゴメンなさぁぁぁぁい!!』

 

『障子破れやすいのが悪いんだし〜瓦もすぐ剥がれるのが悪いんだも〜〜ん。夏海ちゃん、なんか悪いことしましたっけ〜〜?』

 

大泣きしながら謝る一輝とヘラヘラして謝りもしないナツ姉

 

「いやっ!!ナツ姉が謝らない限り終わらないから!!しかも大体とばっちり受けるの俺たちだし!!」

 

「そうだっけ?」

 

「大体あの瓦や障子だって業者に修理頼んだから家計簿に響いたってたまに母さん愚痴ってたよ!?わかってる!?」

 

俺は怒りながらナツ姉に文句を言った。

 

「相変わらず一輝は母ちゃんっ子だな〜〜」

 

「うるさいよ!!」

 

ナツ姉がニヤニヤしながら俺を冷やかしてきた。

すると

 

 

「やっほ〜〜」

 

遠くから声が聞こえそこを振り向くとその先にれんげがこっちに向かっていた。

 

「おぉ〜〜れんちょん」

 

「おっすれんげ〜〜」

 

「どこ遊びに行くの〜〜ん?」

 

れんげはこっちにトコトコ歩いてきた。

 

「特に決めてないぞ、どこ行こうか3人で話し合ってたところ〜〜れんげは?」

 

「ほたるんのとこ行こうと思ってたところなのん」

 

「ヘェ〜蛍のところに」

 

「カズにぃたちも一緒に来るん?」

 

「…っ!?ほ…蛍の家にか!?」

 

俺は突然のれんげの提案に顔が真っ赤になった。

 

「おぉ〜〜!!ナイスアイデアれんちょん!!ねぇちゃんも一輝も行こうか〜」

 

「そうだね、蛍の家にお邪魔するか」

 

「え…ちょ…ナツ姉!?コマ姉!?」

 

ちょっと…えっ?まさか…本当に蛍の家に!?確かに一回蛍を家まで送ったことあるけどすぐ帰ったし…

 

「ほーら行くよ一輝!!」

 

ナツ姉がニヤニヤしながら俺の手を引っ張った

 

如何しよう…マジで…

 

 

 

 

 

 

その頃蛍は…

 

「できたー!小鞠先輩のぬいぐるみ、名付けて『こまぐるみ』!」

 

蛍は部屋でいくつもの小鞠のぬいぐるみ、略してこまぐるみを作っていた。

 

「は~いいな~。こまぐるみいいな~。ちょっと作りすぎたけど。」

 

ピンポーン

 

「誰か来たみたい。」

 

玄関に行くと、クラスのみんながお母さんと話していた。

 

 

 

 

「お…お邪魔します…」

 

「あら一輝くん久し振り、他にいるのは…蛍ちゃんのお友達かしら?」

 

「はい、初めまして」

 

「こんにちは〜」

 

「にゃんぱす〜〜」

 

 

「さ、あがってあがって。蛍ちゃんの部屋二階だから少し待ってね。お菓子用意するから」

 

「あ、どもー」

 

 

 

「せせせ、先輩!来たんですか!」

 

蛍が慌てている。こりゃおそらくナツ姉たち事前に連絡してなかったな。

 

「ごめん蛍、連絡するべきだった。」

 

「ほたるんの家きれーだなー。部屋もきれいにしてそうだし。」

 

二階にあがり始める。

 

「あっあのっ!今部屋片付けますからっ!」

 

すげえ必死だな。まあプライバシーは守らなきゃな。

少しの間待つことに。

 

 

「お待たせしました、どうぞ。(とりあえずこまぐるみはクローゼットに隠したから大丈夫かな。」

 

部屋に入れてもらう。まさかナツ姉やコマ姉以外の女の子の1人部屋に入ることになるなんて…。普段しっかりしてるだけあって中はきれいに片付いていた。

 

「なんだ、普通にきれいじゃん。」

 

「ナツ姉の部屋よりはるかに快適だよな。」

 

部屋の中をみわたす。すると、

 

「ねえ、アルバム見てもいい?」

 

「どうぞ。」

 

小鞠がアルバムをめくると、過去の蛍とその家族の写真がいっぱいだった。その中には、

 

「あれ、この写真の景色どっかで見たような。」

 

「実は私、ここにいる親戚の家に遊びに行ったことがあるんです。」

 

「この時のほたるんちっちゃいけど、これいつの写真?」

 

「それは去年ですね。」

 

その一言に小鞠は固まった。

 

 

 

 

 

 

(…うぅ〜考えてみたらナツ姉やコマ姉、れんげは女の子だから平気だけど男の俺が女の子の部屋に入るなんて恥ずかしい…)

 

俺は1人クッションに座って顔を少し赤くして縮こまっていた。

 

「…?一輝先輩?大丈夫ですか?顔が赤いですよ?」

 

すると、違和感に気付いたのか蛍が様子を伺ってきた。

 

「ほ、蛍!?だだだ大丈夫!!俺は平気だから!!」

 

俺は慌てて立ち上がり、それによって蛍が足を滑らして倒れそうになった。

 

「きゃっ!?」

 

「蛍あぶねぇ!!」

 

俺はとっさに蛍の手を引っ張り自分の元に寄せた。すると、必然的に蛍は俺の元に来て抱きしめるような形になった。

 

 

 

 

 

「あ…」

 

「せ…先輩…」

 

瞬間、一輝の顔は真っ赤になり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!?ごめん蛍!!!」

 

慌てて蛍から離れた。その時、俺の手がクローゼットの取っ手にあたりドアが開いた。

 

カパッ、ゴロゴロゴロゴロ。

 

クローゼットの中からは、ぬいぐるみらしきものが大量に出てきた。えっ、これって。

 

「何で姉ちゃんのぬいぐるみが?」

 

「何で、こんないっぱい?」

 

「いや、これはその、練習したやつで。」

 

蛍は顔を真っ青にして慌てて何かを言おうとした。

 

「なるほど、すべてわかったのん。」

 

「れっ、れんちゃん、何を?」

 

「ズバリこれは、ほたるんの自由研究なのん!」

 

れんげは名探偵の推理よろしくはっきりといった。

 

 

「そういえば夏休みの宿題自由研究まだだった」

 

「ウチもー」

 

「ウチはセミ観察したーん」

 

そういえば俺も自由研究はまだ手をつけてなかったっけ

 

「せっかくだし蛍に教わってぬいぐるみを自由研究にしようよ」

 

「なるほど名案だな」

 

「お、じゃあウチれんちょん作ろ〜いいっしょほたるん」

 

「はぁ…」

 

こうして俺たちは蛍指導のもとみんなのぬいぐるみを作った。ちなみに俺は蛍を作ってみた。

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しました〜〜」

 

夕方になり俺たちも帰る時間になったので俺たちは家に帰ることになった。

 

「また良かったらみんな来てね〜〜」

 

蛍のお母さんは笑顔を浮かべて玄関で見送った。

 

「それではお邪魔しました。」

 

俺たちは蛍の家を後にして家へと向かい出した。

 

 

「自由研究も出来たし良かったね〜〜」

 

「そうだね、あとは算数ドリルの後半をやるだけだな」

 

「相変わらず優等生だな一輝は、まぁ今日はほたるんの部屋ですごい顔赤かったよな〜〜ほたるんのこと抱きしめちゃったし♪」

 

「んなっ!?お、おい!!バカにしてんのか!!」

 

「バカにしてなんかないよ〜〜一輝にも春が来たってだけ〜〜(ニヤニヤ)」

 

「うるせぇぇぇぇぇ!!」

 

ニヤニヤしながらからかうナツ姉に俺が顔を赤くしてナツ姉を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ蛍の部屋では…

 

 

 

「先輩…とっさに私のことを助けてくれた…」

 

蛍は転びそうになった自分を助けてくれた1つ上の先輩、越谷一輝のことを思い浮かべていた。

 

「先輩……」

 

蛍は少し顔を赤くしてクッションを抱き寄せていた。




更新です。
今回は甘く出来たでしょうか?











感想欲しいなぁ…


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17話 みんなで肝だめしをした

肝だめし回です


 

「おお〜3人だと速く進む進む、3倍速〜」

 

「そういえば去年の夏もこうだったような…」

 

ナツ姉は現在、コマ姉とスグ兄に夏休みの残った宿題を手伝ってもらっていた。さすがに俺はまだ中学生の問題は荷が重いとのことでせめてもと麦茶とスイカを3人に切っていた。ちなみに俺も食べるが、

 

「最初から手伝ってもらっていれば…」

 

「ナツ姉、それじゃあ宿題の意味ないからね?」

 

「ハイハイわかってんよ、この調子なら夜までには終わるな〜〜」

 

「うん、そうだね」

 

「………(うん、うん)」

 

「もうアルマゲドンが襲撃してくることは無さそうだな、良かった良かった」

 

さすがに第三次アルマゲドン襲撃は対処しきれない…今日は疲れることが多かった…

 

「…………///////っ!!」

 

とっさに俺は蛍の家での出来事を思い出してしまった。

 

(今度蛍になんて言おう……良い匂いだったな……って何考えてんだ俺!?これじゃあ変態じゃねえか!?)

 

「な〜〜に考えてんのかな〜〜一輝くんは〜〜♪」

 

俺の顔を見て何を考えてるのか察したのかナツ姉がニヤニヤしながら冷やかしてきた。ちなみに俺の蛍への気持ちに気づいているのは現在はナツ姉だけのようである。ただ1つ気がかりなのは……とある隣人にまで知られることだ……あの人にまでバレたら俺はもうおしまいだ……

 

「う……うるさい!!いいから手を進める!!」

 

「(ふっふーん、それじゃあ計画通りやるかな〜〜)ねえねえ、『アレ』やろうか」

 

「『アレ』?」

 

その時、一輝は気づいた。ナツ姉の顔に

 

「アルマゲドンより……恐ろしいやつ」

 

それは何かを企んでる時の顔であった。

 

 

 

 

 

「えーそれではー肝だめしやっちゃうぜー」

 

少し時間が経ってここは神社、そこにはれんげ、俺、蛍、一穂先生、スグ兄、コマ姉、そしてナツ姉がいた。ナツ姉の手には何か箱が入っていた。

 

「夜に呼ばれたから花火でもするのかと思ってましたので持ってきたんですけど…肝だめしですか?」

 

「肝だめしでぇす。本当はお墓でしようと思ったんだけどねー暗くて危ないから明かりがある神社でやれってことになりましたー」

 

「肝だめし許可しただけでもいいじゃないか」

 

確かに暗すぎると転んだ時危ない、それにイノシシや野犬が出ないとも限らない。一穂先生の判断は正しいと思う。

それより俺が気がかりなのはナツ姉が何か企んでないかと言うことだ。

 

「で、ルールは神社の賽銭箱のフチに5円玉置いて帰ってくることーあと脅かし用の道具あるから脅かし役を誰かが……」

 

「ばっ…………かじゃないの?」

 

突然さっきまで黙っていたコマ姉がそう言った。

 

「どうしたコマ姉、藪から棒に?」

 

「まあ最初からこういうことかと思ってたけど…とにかくそんなつまらないことする気ないから」

 

「はー?ノリ悪いなー」

 

コマ姉……多分怖いんだな。まぁ確かにホラー映像観て1人で眠れないもんな……

 

「コマ姉、怖いからってせっかくみんな集まったんだからさ…ね?」

 

「べ…別に怖くなんてないもん…ただ…もしお化け出たらびっくりするじゃん…」

 

「いや出ないから脅かし役がいるんだよ」

 

「じゃあ脅かし役やる。っていうかなんで私が驚かされなくちゃなんないの」

 

コマ姉はどうしても驚かされたくないらしい……

 

「ダメだよコマ姉、脅かし役はジャンケンだから」

 

「よーしそれじゃあ出っさなきゃ負っけよー」

 

「あっちょっと待って!!」

 

慌ててコマ姉はタサ両手を捻って他の隙間を覗く。

ジャンケンのおまじないで確かあんなのあった。

 

「じゃーんけーんほい!!」

 

結果は……

 

俺、ナツ姉、蛍、スグ兄、れんげがパー

コマ姉がチョキであった。

 

「勝った!!これ私が脅かし役だよね!?」

 

「うへ…負けた……」

 

コマ姉は勝てたことがとても嬉しいようだ。

 

「ま、アタシは日ごろの行いが良いしねっ」

 

「じゃあコマ姉、先に神社で準備しておいて。俺たちは20分後くらいに来るからそれまでにね」

 

「はいはい、あんまり脅かしすぎて泣かれても困るし手加減してあげるからね〜」

 

コマ姉は得意げに神社へ向かって行った。

……脅かし役1人だけなの知ってんのかな?

 

「さーてそれで考えたんだけどさ〜〜ほたるん神社あんまり詳しくないでしょ?くらいから石段踏み外すと危ないしさ……一輝いっしょに行ってあげてくんない?」

 

「……っ!?」

 

突然ナツ姉がニヤニヤしながらそう言った。

まさか……ナツ姉これを狙って……

 

「ちょ……俺が!?女の子同士なんだしナツ姉のほうが…」

 

「いやいや、こういうのは逆に男の仕事でしょ〜〜それなら歳の近い一輝が適任でしょ〜〜(名付けて……『肝だめしで2人の距離を近づけよう大作戦』〜〜)」

 

してやったという顔でナツ姉はこっちを見ていた。

そのまま何も言えず俺は蛍といっしょに行くことになった。

 

 

 

 

 

 

「おっ、スグ兄帰ってきた。」

 

肝だめしが始まってしばらくすると、最初にスタートしたスグ兄が戻ってきた。

 

「スグ兄、コマ姉脅かし役ちゃんとやってた?」

 

「……(うん)」

 

スグ兄が頷くが少し心配である。

 

「そんじゃあ一輝とほたるん行ってみよー」

 

そして次は俺と蛍の番である。ナツ姉は俺の耳元に近づくと

 

「(ボソッ…)頑張れ一輝♪」

 

小さな声でニヤつきながらそう言った。

全くナツ姉は……

 

俺はそのまま蛍と石段を登りだした。

 

 

 

「「……………」」

 

 

(気まずい!!蛍の家での出来事からまだ間もないからメッチャ気まずい!!)

 

俺は顔が赤くなります蛍の方を見れずにいた。

 

「あの……一輝先輩……」

 

「っ!!な…なに蛍?」

 

突然蛍が話しかけてきた。

 

「転びそうになった時……助けてくださってありがとうございました。」

 

「え…あぁいや俺の方こそゴメン、なんて言うか…その…抱きしめ…ちゃって…(うう〜自分で言っても恥ずかしい…)」

 

俺の言葉に蛍は顔を赤く染めた。

 

「い…いえ、私は特に…気にして…ないですから…」

 

その後は2人を静寂が包み込んだ。

その時

 

 

 

 

 

 

ガランガランガランッ

 

 

「____っ!?」

 

「ふぇっ!?」

 

突然大きな音が神社の方から聞こえてきた。

 

(コマ姉?いやでもコマ姉がこんなイタズラをする勇気があるとは……)

 

「……先輩…」

 

ふと蛍を見ると突然の音に蛍は怯えており目には少し涙が見えた。

それをみた瞬間、俺はとっさに蛍の手を握った。

 

「え…一輝先輩?」

 

「大丈夫だ蛍、俺が守るから……」

 

そう言うと俺は蛍の手を握ったまま歩きだした。

蛍も落ち着いたのか少し震えが落ち着き歩きだした。

そして石段も終わりになり境内についた。

 

(誰がイタズラしてんのか知らんけど……幾ら何でもやりすぎだ!!)

 

怒りを覚えながら俺は音の方向を見た……すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪霊退散ーー!!あっくりょうー退散ーー!!!あっくりょーーたいさーーーーんーーーー!!!」

 

白いシーツにマジックで黒く目を書いただけのお化けの格好のコマ姉が泣きじゃくりながら神社の鈴を鳴らしていた。それを見た俺が言えたのは

 

 

 

 

「お化けが何してんだ」

 

 

それだけだった。

 

 

 

 

 

 

ひゅ〜〜どどーん

 

「あーるまーげどーんっ」

 

「母さんが聞いたら怒るよナツ姉」

 

肝だめしも終わり俺たちは花火を楽しんでいた。

蛍が持ってきた花火のおかげでみんなも盛り上がっているようだ。今は俺は手に持つ花火を楽しんでいた。

 

「あの…一輝先輩」

 

すると、蛍が俺の元へと近づいてきた。

 

「…?どうした蛍?」

 

「その…さっきはありがとうございました…手を…繋いでくださって」

 

「え…?」

 

突然のお礼に俺は驚いた。蛍は顔を赤くすると

 

「あの時…なんだかとても安心出来ました…本当にありがとうございました」

 

そう言うと蛍はそのままれんげたちの方へと戻っていった。

 

「蛍…」

 

「やーったね一輝♪」

 

すると、ナツ姉が笑いながら俺の肩を叩いてきた。

 

「ナツ姉…」

 

「いやーこんなにうまくいくとは思わなかったよ。これで一気に進展したね♪」

 

ニヤニヤしながらナツ姉は笑った。

だから今回は言っておこう

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナツ姉…その…ありがとう」

 

蛍との距離が縮まったのが俺も嬉しかったのだから




フラグ立ちました!!
ちょっと長くなってしまいましたが…でも後悔はありません!!



それと、俺のページで現在アンケートやってるので良かったらどうぞ宜しくお願いします。

あとできたら感想も


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18話 あやとりと粘土で遊んだ

日間ランキングで3位だった…しかもお気に入り登録がすごく増えた…まさかここまでみんなから評価されるなんて思ってもいなかった。


 

 

夏休みが終わり、2学期が始まる。しかし、夏休み中も頻繁にみんなと会っていたため、日常はそれほど変わらない。俺はいつも通りに学校へ登校した。しかし、ナツ姉は俺とコマ姉が幾ら起こそうとしても起きる様子が無かったためほっとくことにした。まぁ自業自得という奴である。

 

「おはよう〜」

 

「カズにぃコマちゃんおはようなん」

 

俺とコマ姉がドアを開いて挨拶するとすでに来ていたれんげが挨拶を返した。

 

「おはようさん、れんげ。」

 

「なっつんはどうしたん?」

 

「起こそうとしても起きなかったから置いて来た。」

 

そう言って俺たちは机に座った。ちなみに一穂先生も起きなかったためれんげに置き去りにされたらしい。本当に大丈夫かうちの先生…

 

「おはようございます一輝先輩」

 

すると、蛍が俺に挨拶して来た。

 

「あ…おはよう蛍、元気にしてた?」

 

「はい、一輝先輩も元気そうで良かったです。」

 

「ま…まぁな」

 

肝だめし以来、俺は蛍をさらに意識するようになっていた。思えば蛍の家では抱きしめてしまって肝だめしはペアを組んで手まで繋いでいたのだ。この短い間に多くのことがあった。

 

(そうだっけ…俺、蛍と手を繋いだんだよな…ヤバい…蛍になんて言えば良いんだろう…)

 

「…先輩?」

 

考え事をしていると、蛍が声をかけて来た。

 

「え?…あぁ悪い蛍」

 

「すいません、何か悩んでいるみたいだったので…」

 

「いや、大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけだから」

 

ガラッ

 

「すいません、寝坊しましたー!でもウチが悪いんじゃないんですっ!起こしてくれなかった姉ちゃんと一輝が悪いんですーってあれ?先生まだ来てないの?」

 

慌てた様子でナツ姉が教室に入って来た。てゆうかナツ姉…俺たちのせいにするなよ…

 

「なんか今日は遅刻してるみたいですけど…」

 

「ねぇねぇは布団の中で"あと5分だけ"を1時間以上続けてたので放っておきました…何回も起こしたのに全然起きなかったのん…」

 

まじか…あの人何やってんだ…

 

「あ〜そりゃ起きない先生がわるいよしゃあない先生だね〜」

 

ナツ姉…あんたがそれを言える立場じゃないよ…

 

「あ、姉さん一輝、おはようございます」

 

ナツ姉は席に座ると俺とコマ姉に敬礼した。

なんかものすごい腹たつ。

 

「ねーねー、先生いないってことは来るまで外で遊んでても良いのかな?」

 

「ダメだよナツ姉、一応今は授業中なんだから遊ぶなら教室でたよ」

 

「………チッ」

 

ナツ姉が舌打ちをするが俺は無視した。

ふと蛍を見ると蛍が毛糸であやとりをしていた。

 

「蛍、それってあやとり?」

 

「あ、はい。家庭科で使った毛糸が余ってたのでオリジナルで猫を作って見たんですけど…」

 

蛍が見せたあやとりを見ると、なるほど確かに猫が出来ていた。

 

「すごいな…オリジナルとか作れるんだ…」

 

「ウチもあやとりするーん」

 

「ウチも暇だししようかな」

 

「あ、毛糸ならたくさんあるのでどうぞ〜」

 

こうして俺たちはあやとりをすることになった。

ていうかナツ姉あやとりできんのか?

 

「ウチの独特な感性なら簡単簡単」

 

ナツ姉は相当自信があるようだ…俺も少し見てみるが、何か考えながらいろいろ動かしているが…

 

「あ、出来た出来た。これなんだと思う?」

 

「なにそれ?家?」

 

なんかぐちゃぐちゃしているが…

 

「正解は見ての通り…ただの毛糸でした〜」

 

なんかさらに腹が立った。

 

「ウチもオリジナルあやとりできたー」

 

どうやられんげも出来たようだが…なんかさらに訳の分からんものになっているが…

 

「これは見てのとおりーみなさんご存知のー宇宙でしたー」

 

「スッゲー宇宙だー!!」

 

れんげの作品にナツ姉が驚く、嘘でしょナツ姉、アレをどう見たら宇宙になるんだ!?

「この良さがわかるとはさすがなっつん!!」

 

「わかるわかる!その左手のとこらへんが宇宙っぽい!」

 

「どちらかというと真ん中が一番の見どころなのん!」

 

どうやらナツ姉の読みは外れたらしい

さらに言うとれんげ曰く「ねじれてるから宇宙じゃないのん?」とのことらしい………訳わからん

 

「マンガ読も……」

 

ナツ姉諦めたな…

 

「ナツ姉学校にマンガ持って来ちゃダメなんだよ〜あ、そのページもうちょっと見せて」

「なにしてんの一輝も〜あ、ページめくるの早い」

「2人とも見んのかよ」

 

俺たちはそのままナツ姉の持って来たマンガを読むことになった。

 

「あ、私これ好きなんです〜」

 

「俺もこれ好きだな、あとこれなんかも面白い」

「私もこれ好きですよ」

 

俺と蛍は好きな漫画の話で少し盛り上がった。

 

「ウチも見るん」

 

そう言うとれんげはナツ姉の膝に座ってマンガを見始めた

 

「っ!ぷぷ〜い」

 

突然れんげがおかしな声を上げた。

 

「ここ、ここおもしろいのん!!ここの前ページのーここからのー次ページのたたみかけがおもしろいのん!!」

 

れんげの言うページを見ると少女マンガの絵から一気にギャグの絵になっていた…だけどこれって…

 

「これ1ページとばしてます」

 

次ページから『バナナ課長』という別の作品になっていた。でもな…『バナナ課長』って急にバトルものになって微妙になったんだよなー

 

「ウチ粘土で遊ぶん…」

 

れんげはナツ姉の膝から降りて粘土で遊びだした…うん、やっぱり…

 

((((感性が違いすぎて話が合わない))))

 

「お…俺も粘土であそぼ…」

 

「私も…」

 

こうしてみんなで粘土で遊ぶことになった。

 

「あ、一輝先輩作ってるの可愛い…」

すると、蛍が俺の作ってるのを見てそう言った。

 

「あ、これ?まぁラッコと子猫を合わせて『ラッこねこ』って言うんだけど…」

 

前にコマ姉が作ってた。『クリオねこ』を真似て作ったやつなんだけど…蛍に褒められて少し嬉しかった。

ふと見るとナツ姉がスグ兄に助け舟を求めていた。スグ兄はかなりやる気満々のようだ。俺もスグ兄の作品が少し気になるので見ることにした。

スグ兄はみるみると粘土をこねて形を作っていく…そして出来たのは…

 

猫耳と猫尻尾をつけた可愛らしい獣人だった。

 

「スグ兄すげー!!」

 

なんだこの完成度は!?本当にスグ兄ってなんでこんなハイスペックなんだろう…

 

「すごいなナツ姉、早速みんなに見せ…」

 

グチャッ

 

ナツ姉が獣人を叩き潰した。

 

「あぁぁぁぁ!?なにすんのナツ姉ー!?」

 

なんてもったいないことを………すごいうまかったのに………!!

 

「一輝………今のほたるんに見せてたら引かれてたかもよ………」

 

「え………?マジで………?」

 

「大マジで………」

 

いつにも増して真面目な顔で言うナツ姉の顔は本気の顔であった。しかしなぜ獣人がダメなんだろ………

 

「………?」

 

ふとれんげを見ると、れんげは何か丸いものをこねていた。

 

(アレは………団子?いや………月か………?)

 

「れんちょんそれボールだよね?」

 

「いや団子じゃない?」

 

「もしかしてタマゴとか?」

 

みんなもおんなじようなものを連想したらしい

すると、れんげがイラっとして…

 

「………さっきの流れ的に………どう見ても肉球なのん……」

 

あぁ………肉球か……肉球ね………わかんねーよ

 

「でもそれならこんな感じにした方が肉球っぽくない?」

 

ナツ姉が作ってれんげに見せていた。なるほどそれなら肉球ってわかるかも…

 

「それは猫の手でしょーが!!!」

 

どうやられんげは気に入らなかったようだ

 

「さっきからみんな変なのん!!何言ってるかわからないのん!!」

 

みんなと話が合わずれんげはかなりご立腹のようだ…

 

ガラッ

 

「みんなごめんね〜寝坊しちゃった〜授業始まるよ〜だと言ってももうお昼休みか〜」

 

ピンポンパンポーン

 

一穂先生が来たがもうお昼休みだったのでそのまま休み時間になった。

 

「あ、いいこと考えた。細かいことは考えず、外で遊ぼうか」

 

「うん、そうしよう」

 

それが一番平和な解決になりそうだ。みんなも賛成のようである。

 

「遊ぶーん!!」

 

さっきまでの不機嫌が嘘のようにれんげはご機嫌になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

スグ兄はまだ潰れた獣人の前で嘆いていた。

………結構うまかったのにな………




新学期スタートです!!
これからも応援宜しくお願いします!!

まさかここまで評価されるとはとは思ってもいませんでした。






あと感想も是非


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19話 ウサギの世話をした

更新しました。


現在俺たちはウサギ小屋に向かっている。

始業式が終わりあとは帰るだけだったのだが今日は俺がウサギに餌をやる日だったのを思い出したからだ。その際、蛍がウサギ小屋に行ってみたいと言うので一緒に来ることになった。蛍と一緒にウサギ小屋に行けるのはとても嬉しかった………しかし………

 

「ウ〜サギ小屋〜うっさぎ小屋〜♪」

 

れんげも一緒だが………

 

「おっ世話しっましょ小鳥さんっ♪お〜世話しましょっうっさぎさんっ♪きれいに毛づくろいいったしましょ〜♪そ〜してまっとめてダイナマ〜イッ!!」

 

ズサーッ

 

そう言ってものすごいジャンプをしながら地面に飛び込んだ………大丈夫か?腹からいってたけど………

静かにれんげは起き上がるとこっちを見つめ…

 

「膝………やっちまいました………」

 

そりゃやっちまうだろ………

 

「大丈夫かれんげ?血は出てないみたいだが………」

 

「ウサギ小屋に行くと思ったらついテンションがあげあげしちゃいました…」

 

「思いっきりジャンプするから…れんちゃんそんなにウサギ好きなの?」

 

蛍は優しくれんげについた砂を落としながら聞いて来た。

 

「当然ですが!?」

 

「れんげは週末にウサギ小屋に行くのが趣味だもんな」

 

「そうなん!だから今日うちもついてきたん!!」

 

しまった……そういや今日は2学期初日だけど週末だった……

 

「へぇ〜いいなぁ〜私は前の学校だとインコしか世話したこと無いけどやっぱり一番世話したいのは……」

 

蛍がウサギ小屋の鍵を開けようとしたが、ふと何かを見て固まった。俺もそっちを見つめると……

 

 

1羽のウサギが外に出ていた。

 

「ウサギが逃げてる!?」

 

「あらほんと!!」

 

「あ……また穴掘って逃げたな……」

 

よく見るとウサギ小屋の中から外に穴が掘られていた。

ウサギはそのまま何処かへ逃げてしまった。

 

「ど……どうしましょう!!」

 

蛍は逃げたウサギを見て慌てていた。

 

「まずいな……ウサギって普通に追いかけてもキリがないんだよな……」

 

「心配ないのんカズにぃ!!ウチにいい考えがあるのん!!」

 

れんげにいいアイデアが浮かんだようだ。

 

「どんな作戦だ?」

 

俺の質問にれんげは得意げにバケツから取り出したのは…

 

「ザ・もろこし釣り!!」

 

とうもろこしであった。どうやら餌でおびき寄せる作戦らしい。ベタな作戦だが、他に思い付かないのでれんげに任せよう。

あらかじめ抜け穴をふさいでおき、道端数ヶ所から小屋にかけて餌を並べ、小屋の中で待ち伏せすることに。

すると、ウサギがトコトコとこちらへ来た。

 

しかし、なかなか入って来ず、れんげたちも誘導しようとするがなかなか来ない。

 

「…………?」

 

一瞬、ウサギが笑ったような気がした。

 

しばらくするとそいつは、小屋の扉に向かっていった。その瞬間、

 

 

 

 

ガシャンッ!

 

なんとそいつは勢いよく扉を押して閉めた。そのままウサギは去っていった。

 

ガタガタガタガタ

 

開けようとしたが、開かない。閉まる衝撃で金具がかかってしまったみたいだ。

 

 

 

 

「ふむ……れんげ……これは……あれか?ウサギにいっぱい人参食わせるどころか……ウサギに一杯食わされたってことか?」

 

「そういうことなのん」

 

「あっ…上手い」

 

「いや〜それほどでも〜」

 

 

「「「………………。」」」

 

静寂が3人を包み込む……

 

 

 

 

 

「そんなぁぁー!!?」

 

蛍の絶叫が周囲に響いた。

 

ガタガタっ

 

「えぇ〜なんで?なんで開かないの!?」

 

慌てて蛍が扉を開けようとしたが開かなかった。

 

「外から鍵がかかっちゃったんだな……」

 

「ただのお間抜けウサギかと思っていたら最初からこのつもりだったとは……なかなかやりおる……」

 

確かに……あのウサギの笑みには悪意を感じたな…

 

「感心してる場合じゃないですよ2人ともぉ!?そうだ!3人で大声出したら学校まで聞こえるんじゃ……」

 

「うーん……難しいな……」

 

ここから学校まで200メートルくらいいある。俺たちが声をあげても気付かない可能性が高い。

 

「でも大丈夫!!最悪でも飼育当番の人が来てくれれば見つけてくれるのん!!」

 

れんげが蛍を励まそうとした。

……しかし……

 

「れんげ、次の飼育当番はいつ来るんだ?」

 

「今日は2学期初日だけど週末だから……土日挟んでの月曜……3日後……」

 

その言葉に蛍は目に涙を浮かべた。

 

「いやだーっ!!3日もこのままなんていやだー!!おウチに帰りたいー!!せっかく今日はママがシチューをつくってくれるって言ってたのにーっ!!シチュー!シチュー!!シチュー!!!」

 

そうか……蛍の家は今日はシチューなのか……そういや俺は今日は母さんがトンカツだって言ってたっけな……

 

「お、落ち着くのーん。3日くらいなら大丈夫。幸いエサに持って来た野菜があるのん……しなびてるけど……」

 

ほぉ……れんげ……俺たちにそのしなびた野菜を食べてお腹を壊せと……

 

「それにいざとなったら……ほら、鶏の卵だってあるのん……時々フィフティフィフティの確率でひよこっぽいの出てくるけど……」

 

やめろれんげ、それ俺のトラウマだから……あの恐ろしさはとんでもねーぞ……子供の頃飼育小屋で見つけた卵で卵かけご飯をしようとして割ったら……半分ひよこの塊がご飯に入って大泣きしたっけ……

 

すると、

 

「誰かー!!助けてー!!誰かー!!」

 

れんげの提案に蛍の恐怖が限界になったようで泣きながら助けを求め出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして……

 

「本当に……誰も来ないね……」

 

「……来ないな……」

 

しばらく経ったが誰も来ず、ひよこがかえって飼育小屋で鳴いてるだけだった。

 

「申し訳ないのん、ウチがウサギをエサで釣るとかって作戦たてなければ……」

 

「こっちこそごめんね……年上なのに取り乱しちゃって……」

 

「…………。」

 

そうだ、いくら大人びてるって言ったって蛍はまだ小学5年生なんだ……こんなところに閉じ込められたら誰だって怖い……大体ここは一番年上の俺が守らなければ……

 

ぽんっ

 

「ふぇ?」

 

「大丈夫だよ蛍……」

 

そう言って俺は蛍の頭を優しく撫でた。

 

「3日もここにいるってことはまず無いから、必ず蛍の両親や母さん、先生が心配して探しに来てくれるって。だから大丈夫、みんなを信じてここで待ってよう」

 

「一輝先輩……」

 

俺の言葉に安心したのか蛍は落ち着きを取り戻したのようだ

 

「心配すんな、必ず助けが来る……だから、蛍も俺のことを信じてくれ。俺が蛍にウソをつくことは無いから」

 

「……はい。ありがとうございます……なんだか少し落ち着きました……」

 

「そりゃ良かった」

 

蛍も安心したようだ。良かった良かった。

 

 

 

「おぉ〜ここにもモロコシはっけーん。焼却炉で焼いて焼きモロコシ〜♪」

 

すると、呑気な聞き覚えのある声が聞こえて来た。

そこを見てみると……

 

「ん?な〜にお前も食べたいのん?いいぞぅたらふくお食〜べ。ん?3人とも食べます?モロコシ。ってかなんでウサギみたいに真っ赤な目してるのん?」

 

「「「………………」」」

 

見事にエサで釣れました……一穂先生が……

 

その後、飼育小屋の穴はしっかりと塞がれました。

 

 

 

 

 

 

 

その夜、蛍の部屋では

 

「…………一輝先輩……やっぱり頼もしいな……」

 

蛍は自分を励ましてくれた越谷 一輝のことを思い出していた。

 

「一輝先輩っていつも面白いところあるけどやっぱり頼りになる人だよな……」

 

いつもみんなと遊んでいて、でも真面目なところもあり何より困っていると何か相談してくれる……

 

「あれ……?私……そういえば……ここのところ先輩のことばかり……」

 

そう、気づいたら自分はここのところ一輝先輩のことを思い浮かべることが多くなっていた……蛍はふと一輝のことを考えてみる……

 

自分に桜のことを教えてくれた一輝……転びそうになった時助けてくれた一輝……肝だめしの時、怖がっていた自分の手を握ってくれた一輝……

 

「……///////っ!私……もしかして先輩のこと……」

 

瞬間、胸が苦しくなった……そして……顔が熱くなっていた……

 

「先輩……」

 

おそらく気づいてしまった……自分に秘めた彼への気持ちを…

 

 

 

 

 

 




どうでしょう……気に入っていただけたでしょうか?





感想待ってます。


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20話 恋バナに巻き込まれた

ガールズトーク編です


現在、ここは小鞠の部屋。ここでは蛍が遊びに来ており小鞠の部屋でくつろいでいた。ちなみに一輝は現在夏海と外に昆虫採集に出ておりここにはいない。小鞠は最近買ったと言うポータブルCDプレイヤーで音楽を聴いていた。

するとそこへ、

 

ガラッ

 

扉が開き茶髪の高校生くらいの少女が入って来た。

 

「あっ、このみちゃん」

 

彼女の名前は富士宮このみ、越谷家のお隣さんである。そして、旭丘分校の卒業生であり一輝達が小さい頃は何度もお世話になっている。

 

「雑誌持って来た………よ………?」

 

ふとこのみは部屋にいた蛍に気づいた。

 

「あ!もしかして君、噂の転校生!?」

 

「え、あ、はい………」

 

「やっぱり!!始めまして!!この家の隣に住んでる富士宮このみですっ!!」

 

このみは蛍にグイグイ自己紹介をした。

 

「え、あの………はじめまして………」

「いやー私も小・中学生のころは同じ学校通ってたんだよ!!うん!!噂にたがわず大きな美人さんだ!!よし!!大きい転校生ちゃん握手しよう!!」

 

そう言いながらこのみは蛍に手を差し伸べて来た。

 

「えと………ほ…蛍です………」

 

「そか!!よろしく蛍ちゃん!!」

 

グイグイくるこのみに蛍は少し戸惑っていた。

 

「それで?なにしてたの?」

 

すると、小鞠はこのみの質問に得意げな顔になった。

 

「じ・つ・は〜この前思い切ってポータブルCDプレーヤー買っちゃったんだよね〜なんか大人の階段登っちゃったっていうか〜」

 

「MP3プレーヤーじゃないんだ」

 

そう、今はポータブルCDよりさらにコンパクトになったMP3プレーヤーがあるのだが………

 

「MP3プレーヤー………なにそれ?ゲーム?魔法全然使えないじゃん」

 

「いやマジックポイントじゃなくて………まぁ知らないならいいや」

 

このみはこれ以上は言わないほうがいいとなんとなく感じたのだろう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ一輝は

 

「ナツ姉〜〜そっちなんかいた?」

 

「ダメだ………全然いない」

 

昆虫採集に来ていた俺とナツ姉だが今回の狩場は思っていた以上に不作であった。

 

「うーん………もう少し茂みの多いところの方が良かったのかなぁ。1匹もいないや」

 

「おっかしいな〜〜ここならいると思ったんだけどな〜〜」

 

今回はナツ姉の勘で採集場所を選んでみたのだがどうやらハズレのようだ。

 

「田んぼの方の茂み行ってみる?この時期ならカマキリがいるはずだけど………」

 

「う〜〜ん………そうするかぁ」

 

そう言うと俺たちは次の採集場所へと向かうことにした。

 

「ねぇねぇ一輝」

 

突然ナツ姉が俺に声をかけて来た

 

「なにナツ姉?」

 

「真面目な話さ、一輝はいつほたるんに告白するん?」

 

「んな!?なに行ってんだよナツ姉!?」

 

突然の言葉に一輝は再び顔を赤くした。

 

「だってさぁ〜一輝ってばいつも奥手なんだもん………」

 

「奥手って………」

 

「好きなら時には自分から突っ込んだ方が、夏海ちゃんは良いと思うのになぁ〜〜」

 

ニヤニヤしながらナツ姉は俺を見つめていた。

 

「あぁ………本当になんでよりによってナツ姉に知られるんだよ………」

 

「まぁまぁ、なんにせよウチは可愛い弟の恥ずかしがるところが見れて嬉しいし〜〜まぁなんにせよ頑張れ一輝〜〜♪」

 

「はいはい………ってアレ?この網破れてんじゃん」

 

虫取り網をよく見ると、網に大きな穴が開いており使えなくなっていた。

 

「ありゃりゃ、あっそれじゃあ一輝、家近くだから新しいの取って来てくれる?」

 

「はいよ」

 

俺たちの家はここから歩いて5分程度の場所にある。なので俺は新しい網を取りに行くことにした。ナツ姉は網を使わずに何か採れるかやって見るとのことだ。

 

 

 

 

 

「さ〜て網は確か俺の部屋に………」

 

『知ってるもーんっ!!チュチュくらい知ってるもーんっ!!』

 

『いやシュシュね』

 

突然隣のコマ姉の部屋からコマ姉の声が聞こえた。

と言うかもう1人はこのみさんだ。

 

ガラッ

 

「どうしたのコマ姉?て言うかもしかしてこのみさんも来てんの?」

 

「あっ、一輝くん久しぶり〜〜相変わらず背が高いね〜」

 

「やっぱりこのみさんも来て…た………んだ?」

 

「あっ………一輝先輩、お邪魔してます」

 

「蛍も来てたんだ。このみさん、紹介するよ彼女は…」

「あぁ大丈夫大丈夫。さっき挨拶済ませてガールズトークしてたところだから」

 

あぁ〜確かに蛍とこのみさんならそういった話が盛り上がりそうだな………コマ姉には難しそうだけど………

 

「そうそう一輝くん、一輝くんって音楽とか何聴くの?」

 

「ちょ…このみちゃん音楽の話はさっき終わったじゃん………」

 

「いや〜なんとなく興味もってさ〜」

 

「ん?コマ姉それってポータブルCDプレーヤー?」

 

「………わかる?」

 

俺がポータブルCDプレーヤーを目にした途端コマ姉がドヤ顔になった。

 

「まぁね〜〜一輝には少し早いかもしれないけどね〜」

 

MP3プレーヤーじゃないんだ………因みに俺はMP3プレーヤー持ってます。貯金して買いました。

 

「まぁ俺が聴くのは色々だな…J-POPとかロック…あとアニソンとかも聴くし…ボカロなんかも好きだな…」

 

「ぼ………ぼかろ?」

 

「まぁ一番好きなのはジャズかな?」

 

「あ、一輝くんもジャズ聴くんだ〜〜誰が好き?」

 

「やっぱりビル・エヴァンスとマイケル・デイビスかな?」

 

「おぉ〜良いセンスしてるね〜」

 

そのまましばらく俺はこのみさんと音楽の話で盛り上がった。

 

「んもー!!だから音楽の話やめー!!もっと大人の話しようよ!!」

 

突然コマ姉が不機嫌になりだした。なんだよせっかく盛り上がってたのに…

 

「じゃあ恋バナとかしてみるか〜〜」

 

「んなっ!?恋バナ!?」

 

「それ!!私から喋るから!!」

 

(冗談じゃない………好きな子の前で恋バナとか公開処刑だから!!大体それはこのみさんには知られたくない!!)

 

そう、俺がナツ姉の他に蛍への気持ちを知られたくなかったのは他でもないこのみさんなんだ…バレたら絶対に冷やかされる…

 

「じゃあ俺はそろそろナツ姉のとこに…」

 

「せっかくだし一輝くんも参加しなよ〜」

 

自然に立ち去ろうとしたがこのみさんに止められた。

ここは下手に帰ると疑われる…

 

「そ、それじゃあコマ姉…さっき自信ありげだったけど…本当にいるの?」

 

「も〜一輝ったら何言ってんの?私だってそう言う話の1つや2つ…私の恋バナはね…」

 

 

 

 

 

得意げに話そうとしたのもつかの間…しばらく静寂が続き…

 

「……なふ…」

 

ぐうの音は出なかったかなふは出た…

 

「こんなにも浮かばないものなんだね〜無さすぎて笑っちゃう」

 

「男の子なんてここら辺には眼鏡君と一輝くんしかいないもんね〜」

 

確かにこの辺には同学年の男子はスグ兄と俺くらいしかいない。因みに眼鏡君とはスグ兄のことである。

 

「それに比べて蛍ちゃんは東京に住んでたんだしそう言う話ありそうだよね〜」

 

「ふぇっ!?私ですか…?」

 

突然このみさんに聞かれた蛍は激しく取り乱していた。

 

「えっと…その…私は…」

 

蛍の中では最近自分が好きだと想い始めた1人の少年の顔を浮かべていた。

一方一輝は…

 

(好きな子か……やっぱり俺は……蛍だよな……蛍は俺のことどう思ってんだろ?やっぱり友達としてかな…)

 

2人はすでに両思いであると2人が知るのはまだ先の話

そしてそれは…

 

(……なるほどねぇ〜♪)

 

このみに思いっきりバレていた。

 

一方小鞠は

 

(あれ?あの2人の目……相手はわからないけど…恋しちゃってる目だ)

 

2人の顔は赤く染まり、誰かを思い出している顔していた。

瞬間、小鞠の怒りが爆発した。

 

「だーー!!やめーー!!この話もやめーー!!何も聞かなくてもわかったー!!蛍も一輝も恋してる顔してるーー!!」

 

「んなっ!?」

 

「そ、そ、そんな顔してました!?」

 

ヤバいっなんでか知らんけどコマ姉にバレた!?

 

「もぉ〜!!私の方が年上なのになんで2人のが大人っぽいの!?ヤダ〜!!私のが大人なのに〜!!やだやだやだ〜!!」

 

コマ姉はベットの上で駄々をこねだした。

てかコマ姉…駄々をこねて言うセリフじゃないから…

 

「ぐす…2人とも…恋をしちゃってるの?」

 

「えと…その…恋してるって言うか…」

 

その時、コマ姉が絶望の眼差しでこちらを見てきた。

 

「し…して…無いよ?」

「そ…そうですよ…」

 

パアアア

 

その瞬間コマ姉の目が希望に包まれた。

 

「だよね!!してないよね!やった!!これで引き分け!!」

 

いつから勝負になったんだよ…

 

「みんな〜お菓子持ってきたよ〜一輝も良かったら食べなさい」

 

「はいよ」

 

「あとジュースが切れちゃったからコーヒーしかないけど良い?」

 

「全然大丈夫です。ありがとうございます」

 

「私も大丈夫です」

 

俺もコーヒーは全然平気だ

 

「蛍、一輝、砂糖何杯いれる?」

 

「俺はブラックで」

 

「私もブラックで大丈夫です」

 

「…………」

 

その晩、俺はコマ姉に一片も口を聞いてもらえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても………蛍のあの反応………もしかして好きな人がいるのかな…まさかスグ兄?いや、東京の幼馴染とかかも…」

 

 

 

 

 

 

「一輝先輩のあの反応…もしかして先輩には好きな人が…誰なんだろう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「蛍………」

 

「一輝先輩…」

 

2人が互いの気持ちを知るのはもう少し先の話




最近思ったより書ける………時間に少し余裕が出来たからかも………








感想待ってます


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21話 好きな子をデートに誘った


今回オリジナルです


それと、アンケートの結果
圧倒的多数で『入れない』に決まりました。



貴重なアンケートありがとうございます


 

「おりゃっ、ていやぁっ、そりゃっ!!」

 

「………………………。」

 

現在俺はスグ兄と格闘ゲームで勝負をしている。

ちなみにナツ姉は釣りに向かっておりコマ姉は散歩に出かけている。そして母さんは街の方に出ており家には俺とスグ兄しかいない。

俺は自分で言うのもなんだがゲームは得意だ。特に格闘ゲームやパズルゲームではナツ姉に負けたことはないほどである。しかし、そんな俺が唯一勝つことができない相手が他でも無いスグ兄なのだ。その強さは昔ゲームでバトルして5分間ハメ技をくらい続けるという地獄の所業を受けて本気で泣いた程である……ちなみにそのあとスグ兄は流石に悪いと思ったのか夕飯のトンカツの大きい肉をを分けてくれた。

 

「今日こそスグ兄に勝ってあの日の屈辱を晴らしてやる!!」

 

この日のために俺は激しい特訓をしてきたのだ……絶対に勝ってやる!!

 

その時、スグ兄の眼鏡が光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後…………

 

「な……なんだ……あの連続技は……なんであんなコントローラーの操作が出来んだよ……」

 

「……………………(グッ)」

 

結果は惨敗であった。流石に5分間のハメ技は無かったがそれでもあの後、後少しでKO勝利のところでスグ兄が本気になり一気に逆転されてしまった。

 

「やっぱり強いなスグ兄は……でも良いとこまで追い込んだ……次こそ絶対に勝つから覚悟しといてよ!!」

 

「……………………………(うん)」

 

次こそはゼッテー勝ってやる!!

 

 

 

 

 

「なんかおやつあったかな〜」

 

ゲームを切り上げ居間におやつが無いかと探していると

 

「ただいま〜」

 

母さんが帰ってきたようだ。俺は母さんの荷物を運ぶために玄関に向かった。

 

「おかえり母さん、運ぶものある?」

 

「ううん、今日は特に重いものは無いから大丈夫よ。」

 

「あいよ」

 

「そうそう一輝、あんた映画とか観る?」

 

そう言うと母さんはカバンから2枚の映画のチケットを見せた。えーと……『白猫ミィの大冒険』……あぁ、最近話題のアニメ映画か、

 

「ちょっと福引きやったら当たったんだけどもし良かったらいる?」

 

「う〜ん……せっかくだし貰うよ」

 

ふむ……スグ兄はこう言うのあんまり観ないし……ナツ姉かコマ姉と観ようかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってなわけで映画のチケットを貰ったんだけどもし良かったらナツ姉かコマ姉一緒に観る?」

 

夕飯を終えてナツ姉とコマ姉を映画に誘ってみた。

 

「うーん……確かにこの映画、アニメ映画ではかなり評判良いって言うし……夏海はどうする?」

 

「そうだなぁ…………(あっ、そうだ……良いこと考えた)」

 

その時、夏海の頭に1つのアイデアが浮かんでニヤリと笑った。

 

「あーそうだそういや今度姉ちゃんと遊びに行くことにしてたんだっけー!!」

 

「えっ?そんな約束してたっけ?」

 

「してたんだよ〜〜ほら一輝ちょっとこっち来ようか〜」

 

「え?ちょ……ナツ姉?」

 

そう言うとナツ姉は俺の手を掴み廊下に出た。

 

 

 

 

「一輝、それ使ってほたるん誘いなよ」

 

廊下に出るとナツ姉は俺に耳元でそう囁いた。

 

「んな……蛍を!?」

 

「そうそう、ほたるんとデートしてきなよ」

 

なるほどその手があったか……それは確かに良い機会だ……

 

「前に言ったように、自分からアプローチかけてった方が良いって、だから誘ってみなよ一輝」

 

「よし……わかったナツ姉、やってみる」

 

「その意気だよ一輝」

 

俺も覚悟を決めた……それをみてナツ姉は笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、学校

 

(うぅ〜〜昨日覚悟を決めたのは良いけど……やっぱり恥ずかしい…………)

 

いざ誘おうと思うとやっぱり恥ずかしい

そう思っていると放課後になった。

 

 

 

(……ってもう授業終わりかよ!?)

 

このままではいつまでたってもデートに誘えない……それではダメだ!!

そう思った俺は蛍のところに向かった。

 

 

 

 

「ほ……蛍!!」

 

「…………?どうしました?一輝先輩?」

 

みて目の前の蛍を見ると、顔が一気に赤くなった。

 

「その……あの……この間母さんが映画のチケット貰って来たんだけど……ナツ姉とコマ姉が用事あって……だから……その……もし良かったら……いっしょにどうかな?」

 

(ウォォォォォォォォォ行けぇぇ越谷 一輝〜〜!!)

 

「え……?私を映画に……ですか?」

 

(一輝先輩と映画に……)

 

一輝の誘いに蛍は少し顔を赤く染めた。

 

「えっと……その……私なんかでよろしいのなら……喜んで」

 

「そ、そうか!!なら良かった……それじゃあ……今度の日曜にでも……」

 

(いよっしゃぁぁぁぁぁぁ!!やってやったぜぇぇぇぇ!!)

 

「は……はい。楽しみにしています」

 

(ふわぁぁ……先輩と一緒に映画……)

 

2人は自分の顔が真っ赤になってることに気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩、越谷家…………

 

「やりました……遂にデートに漕ぎ着けたよナツ姉……」

 

「いや〜〜やったじゃん一輝」

 

俺はナツ姉にデートの誘いが成功したことを報告していた。

 

「まぁとにかく頑張んな一輝」

 

「うん、頑張って見る……蛍とデート……ってデートの時に着る服とか今のうちに選んでおかないと!!」

 

俺は慌てて部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、一条家

 

「ふぁぁぁ……一輝先輩に映画に誘われちゃった……なんだが……好きな人と2人で映画なんて……嬉しいな……」

 

自分の好きな人と出かけることにとても嬉しい気持ちになっていた。蛍は自分が一輝のことを好きだと気づいてからふと気付くと彼をみていることがあった。

そんな彼から映画に誘われたことがとても嬉しかった。

 

「でも……先輩……どうして私を誘ってくれたんだろう……夏海先輩たちが用事が出来たって言ってたけど……」

 

蛍はどうして自分を誘ったのか気になっていた。

 

「ってそうだ!!当日着る服とか選ばないと!!」

 

蛍は慌ててクローゼットに向かった。

 

 

 

 

 

 

それからの2人…………

 

一輝

「うぁぁぁぁあコレは少しガキっぽいし……かと言ってコッチだと狙いすぎだし……」

 

「うう〜〜コレとコレどっちの方が一輝先輩好きなのかなぁ〜〜それともコッチかなぁ〜〜」

 

一輝

「駄目だコレだとなんか派手すぎるし〜〜」

 

「これも違う〜〜」

 

それから数日間、2人はデートに着る服や小物をひたすら選んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、いよいよデート当日、駅

 

「あ……おはよう蛍」

 

「すいません、待ちましたか?」

 

「いや……俺も今来たばかりだから……それより似合ってるねその服」

 

蛍はデニム生地のスカートを履き頭にベレー帽、そして若草色のコートを羽織っておりとても大人っぽく可愛らしかった。

 

「あ……//////ありがとうございます……」

 

俺の言葉に蛍は顔を赤く染めた。

 

「そ……それじゃあ……行こうか」

 

「あ……はい」

 

こうして2人は電車に乗った。

 

 

 

 

 

 

果たしてこの2人の関係は進展するのだろうか……

 

 

 

 





いよいよ次回デートです


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22話 2人でデートした

デート回後編です


 

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

 

小さな田舎の電車の中で俺と蛍は隣どうしで座っていた。

電車の車内は俺たちしかおらず、好きだと意識している女子と2人きりというシュチュエーションに思ったように口が動かずお互いに無言状態が続いていた。

 

(うう……気まずい……何か喋んないといけないのに……何を喋ればいいのかわかんねぇ……これじゃあ何のためにデートに誘ったんだよ俺……)

 

いざ2人きりになると言葉が思い浮かばず俺は自分がいかにヘタレなのかを実感してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(うわぁぁ〜〜どうしよう……せっかく先輩と2人きりになったのに何を喋れば良いのかわからない……でも失敗して先輩に嫌われるのは嫌だし……どうしたら良いんだろ……)

 

一方の蛍も一体何を話せば良いのか戸惑っていた、

好きな人と一緒に映画というシュチュエーションなど初めての経験であったために戸惑ってしまっているのだ。

 

そんなわけで2人とも会話をうまく切り出すことが出来ずに駅へと到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電車で7駅越えるとそこは少し賑わった繁華街となっている。ここには喫茶店や小さなゲームセンター、本屋さんとそこそこ規模は小さいが娯楽施設などが多く存在する。

そして、そこに今回の目的地である映画館があるのだ。

事前に調べたがそこでもちゃんと今回観る映画があるので問題無い。

 

「上映時間までまだ結構時間あるな……どこかで軽くご飯でも食べるか?」

 

「あ、そうですね。そのあと上映時間までどこか見て回りましょうよ」

 

2人の意見が一致したので早速2人は喫茶店に寄ることにした。

 

 

喫茶店は小さいが落ち着いた感じの店でかなり空いていた。2人は空いてる席を見つけると早速座った。

席に着いた2人は簡単な軽食とコーヒーを注文するとすぐに来たので早速食事を行なった。

 

 

 

「……それでな、ナツ姉がテストを隠したんだけどすぐに母さんに見つかって怒られたんだよ」

 

「あはは…夏海先輩って相変わらずなんですね…」

 

「そうなんだよ……そんで決まって俺やコマ姉にとばっちりが来るんだよな……」

 

「ふふっ…でも話聞いてて何となく感じます…一輝先輩、夏海先輩や小鞠先輩のことが好きなんですね」

 

「ははっ、まあな」

 

 

 

 

 

食事をとりながら2人は会話を始めたが、電車の時よりも自然に会話をすることができ、かなり盛り上がった。

 

「さて、食事も済んだし次はどこか行きたいところある?」

 

「ええと…私この辺りあまり詳しく無いので…」

 

「それじゃあこの先にゲームセンターがあるから一緒に行かない?」

 

「はい!!」

 

蛍も少しウキウキした様子で俺に賛成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがゲームセンターだよ。小さいけど結構たくさんゲームが揃ってるんだ」

 

俺たちはゲームセンターに着いた。ゲームセンターは昼間の休日ということもありそこそこ人が来ていた。

 

「それじゃあどれやりたい蛍?」

 

「ええと…じゃあ先ずは……」

 

それから俺たちはゲームを楽しんだ。

まずはレーシングゲームで競争し僅差で何とか俺が勝った、次のエアホッケーでは蛍がとてもうまく俺は負けた時少し悔しかった。シューティングゲームでは協力プレイで挑戦し全クリした。俺も蛍も気づいたら電車でのぎこちなさは無くなりゲームをとても楽しんでいた。

 

「蛍ってやっぱりゲーム強いな」

 

「一輝先輩もとても上手ですよ」

 

ゲームを一通り楽しんだ俺たちはベンチでジュースを飲んでいた。軽くやるつもりだったが気づいたらとても熱中していた。

 

「…………?」

 

ふと、蛍が何かを見ているのに気づきそこを見てみると蛍がUFOキャッチャーを見ていた。その景品の中に俺たちがみる予定の映画『白猫ミィの大冒険』のキャラの白猫ミィのぬいぐるみであった。

 

「蛍、あのぬいぐるみ俺がとってみるよ」

 

「えぇ!?そんな悪いですよ」

 

「良いから良いから、俺に任せて」

 

蛍がそのぬいぐるみを欲しそうにしてたのは確かに見ていたのだから

 

「あの…………それじゃあお願いします」

こうして俺はUFOキャッチャーに挑戦することにした。

俺は100円を入れるとキャッチャーを動かした。

 

キャッチャーはぬいぐるみの真上で止まりそのままぬいぐるみめがけて降りて来た。そして、爪でぬいぐるみをしっかりと掴むとそのまま持ち上がりファンファーレとともに景品取り出し口へぬいぐるみが落下して来た。

 

「ふふん、どうだ。スグ兄直伝のUFOキャッチャー術は」

 

「うわぁぁ、ありがとうございます先輩」

 

蛍はぬいぐるみを取り出すととても嬉しそうな顔をした。

 

 

ふと、 気づいたら映画の公開時間の20分前だった。

 

「いけないいけない、もうすぐ公開時間だ。思わず熱中しちゃったよ」

 

「はい、とても楽しかったですね」

 

俺たちは少し早歩きで映画館へと足を運んだ。

 

映画館に入ると俺たちはチケットを見せてそのまま目的の映画のやるシアターへと入り席に座った。

 

 

 

「映画、楽しみですね先輩!!」

 

蛍はとても映画を楽しみにしていたのかウキウキしていた。

 

(蛍…猫とか可愛い動物好きなのかな?)

 

俺は改めて蛍を誘って良かったなと感じた。

俺も蛍の隣に座ろうとすると、

 

 

ピトッ

 

 

俺の手と蛍の手が少し触れた

 

 

 

 

 

 

「「……………………っ//////!!」」

 

瞬間、俺は顔が燃えてるかのように熱くなった。

 

「…………っ///すまん蛍!!」

 

「いえ…………///私の方こそ…………」

 

俺の心臓はさらにバクバクと音を鳴らしていた。

そうこうしていると映画が始まり出した。

 

 

 

映画の内容はごく普通の一軒家に飼われている白猫ミィが外の世界で大冒険するというベタな内容だったが評判どうりでとても面白かった。蛍も白猫ミィが気に入ったらしく先ほど手に入れたぬいぐるみを抱きしめながら幸せそうに観ていた。

 

 

 

 

 

 

帰りの電車

 

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

 

今日は楽しいことがたくさんあった。映画もなかなか面白かったし蛍もとても喜んでいたので俺も嬉しかった。

 

(なんにせよ…………俺も楽しかったしな…………)

 

俺は電車の窓から外を眺めていた。

 

 

 

 

ピトッ

 

 

 

 

 

ふと気付くと俺の方に蛍が頭を乗せていた。

 

 

「…………っ//////ほ…………蛍?」

 

「すぅ…………すぅ…………」

 

ふとみると蛍は寝ていた。結構たくさん遊んだので少し疲れたのだろう、そう思った俺は蛍をそのままにした。

 

(それに…………俺も少し嬉しいし)

 

 

 

 

 

 

 

「す……っ///すいませんでした!!」

 

駅に着くと目を覚ました蛍は自分の状況に気づき顔を真っ赤にして謝った。

 

「大丈夫だよ蛍、こっちが昼からかなり付き合わせちゃったんだし大丈夫だった?」

 

「あ…はい、大丈夫です」

 

蛍は顔を赤く染めそう答えた。

 

「そんじゃあ家まで送るよ」

 

「ええと…それじゃあお願いします」

 

俺と蛍はそのまま蛍の家まで歩いた。空は太陽が沈み始めていた。

 

 

「先輩………今日はありがとうございました。とても楽しかったです」

 

「そりゃ良かった」

 

俺は嬉しかった、蛍がとても喜んでくれて。やはり誘って本当に良かった。

そうこうしていると蛍の家に着いた。

 

「それじゃあまたな蛍」

 

「はい、また明日」

 

そうして俺は帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩、俺は自分の部屋で今日のことを振り返っていた。

 

(へへっ…………蛍が喜んでくれた…………嬉しいな…………)

 

ふと思い出すのは嬉しそうな顔の蛍だった。

 

(〜〜♪)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一条家

「今日は楽しかったなぁ〜〜映画も面白かったし♪」

 

蛍も今日のことを思い出していた。

 

「………それに…先輩ともまたさらに仲良くなれたし……………………」

 

蛍は再び一輝のともことを思い出していた。

そして、自分が本当に彼のことが好きなのだと実感したのだった。

 

 

 

 

 

「蛍…………」

 

「一輝先輩…………」

 

こうして俺と蛍のデートはお互いに良い思い出を作ったのであった。





デート編描き終えました。







感想待ってます!!


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23話 文化祭を主催した

文化祭編スタートです

それと新しいアンケート始めました。良かったらお願いします


 

「ぬーりぬり♪ーぬーりぬりー♪まっ黒にぬーりぬりー♪あの日のこともぬーりぬりー♪」

 

現在越谷家、れんげの歌がナツ姉の部屋に響いていた。

そこではれんげかダンボールをマジックでまっ黒に塗っていた。

 

「なっつんダンボールに色塗れたん」

 

「ほいお疲れさーん。姉ちゃんそっちは縫い物はできた?」

 

「まだだってーそんなにすぐには縫えないから。ていうかうちの学校文化祭なんてそもそもないじゃん、なんで夏海は勢いで文化祭したいとか言い出すのかなー?」

 

そう、現在俺たちは学校の一大イベントである文化祭の準備をしている。しかし、コマ姉の言う通り俺たちの学校には文化祭は無いのだが突然ナツ姉が文化祭をやろうと言いだしカズ姉の賛同もあって初の文化祭をやることになった。ちなみにスグ兄は外で木材を切って何かを作っていた。あの兄のことだから凄いものが出来る気がする。

 

「えー?だってやってみたいじゃん文化祭、ねぇ一輝?」

 

「そりゃ俺だってやってみたいけど幾ら何でも今週の週末開催は急過ぎるよ。まぁオーケー出すカズ姉もカズ姉だけどね」

 

「ふふっ、そうですね」

 

俺の言葉に蛍は微笑みながら賛成した。

このあいだのデートから俺と蛍はなんだかさらに親しくなれたような気がする。

本当に気のせいかもしれないがそれでも自分にはそう感じていた。

 

「ところで…招待客とかはどうするんですか?」

 

そうか、せっかくの文化祭なのだからお客さんがいなければ意味がない。

 

「普通に母さんと保護者で良いと思うけど……」

 

「はー?何言っちゃってんの一輝くん、親はありえんでしょ?母ちゃんなんて来たら文化祭が地獄絵図になるよ」

 

ナツ姉はここぞとばかりに母さんのことを好き放題言っていた。しかし……

 

「ナツ姉……その……そのくらいに……」

 

「だって事実じゃーん、奴ぁ地獄の使者ですよー?」

 

「いや……そうじゃなくて……後ろ……」

 

ナツ姉の背後には大皿に乗ったフルーツを持っている母さんが恐ろしい笑みを浮かべて立っていた。

 

ゴチンッ!!

 

そして母さんの怒りの鉄拳がナツ姉の頭に炸裂した。

 

「じゃあ蛍ちゃんもれんげもゆっくりしていってね」

 

「は…はーい」

 

蛍も少し唖然としていたがすぐに母さんに返事した。

 

「そうそう一輝、小鞠、そのフルーツこのちゃんが持って来たのよ」

 

「あれ?このみさん来てんの?」

 

「台所でフルーツ切ってくれたんよ。ちょい待ってね。このちゃーん、こっちおいでー」

 

「はいはいはーい」

 

母さんの呼びかけに呼ばれてこのみさんが部屋に来た。

 

「じゃあみんなの面倒見ててあげてね」

 

「わっかりましたー」

 

このみさんに俺たちの面倒を頼んだ母さんは夕飯を何にするかを考えながら台所へ向かっていった。

 

「…………で?なになに?みんな揃って何してんの?」

「文化祭の準備を…………」

 

「文化祭るあの学校そんなこじゃれたことしてなかったじゃん」

 

「ナツ姉がやりたいって言い張ってそれで…………」

 

「ふーん、それで何するの?」

 

「一応いま考えてんのは工作展示と喫茶店をやることになってる」

 

この2つは文化祭の定番とからしくてナツ姉が強く押していた。あと俺たちでもできるだろうとのことらしい。

 

「ひらめ王(おう)!!」

 

突然さっきまで母さんのげんこつ食らって黙っていたナツ姉が大声でそう叫んだ。

 

「「「「「………………」」」」」

 

部屋を静寂が包みこんだ。

 

「えー…………閃いたってのをひらめきんぐって言おうとしたんだけど…キングは王様だからこんな感じでもいけるかなーと…」

 

さすがに滑ったのをわかったのかナツ姉が解説しだした。解説するくらいなら言うなや。

 

「卒業生!!文化祭に卒業生を呼ぼう!!」

 

ナツ姉の提案は文化祭にこの旭丘分校の卒業生を呼ぼうとのものであった。

 

「お?私も呼んでくれるの?」

 

「もち!!あと思いつくとかはひか姉と駄菓子屋か」

 

ちなみにひか姉とはれんげの姉でカズ姉の妹の宮内 ひかげのことであり現在東京の高校へ通っている。この前こっちに帰省して来て都会風吹かしていた。なんでも新幹線に乗ったことを俺たちに自慢しようとしていた。俺としても少し興味はあったが蛍がその時さらに衝撃的な事実を口にしたのだ。なんと蛍はこっちに来る時新幹線ではなく飛行機を使ったのだ。そんな衝撃的な事実を知った俺たちは蛍に飛行機についてひたすら話を聞いたのである。あとでちゃんとひか姉の話も俺は聞いてあげた。

 

「じゃあウチひか姉に電話するん!!」

 

「おーしじゃあ電話してみるか」

 

「あ、私も久しぶりに話したい」

 

「じゃあ電話して来るから姉ちゃんと一輝あとよろしく!!」

 

「はいはい、早く済ませて来てよー?」

 

ナツ姉とれんげ、このみさんはそのまま電話をしにいった。

 

俺と蛍、コマ姉はそのまま作業をしていた。

 

「一輝先輩、これはどこを縫えば良いですか?」

 

突然蛍が俺に聞いて来た。

 

「あーこれね?これは俺が今縫っているのと合わせるやつだから俺のが終わったらやるよ」

 

「先輩って刺繍とかも上手ですね、以前粘土で作ってたのも上手かったですし…………」

 

「そうでも無いよ、蛍が前作ってたぬいぐるみほほうが…………」

 

「あわわ…それはあまり…」

 

蛍が顔を真っ赤にして俺の言葉を止めた。どうやらあまり触れてもらいたく無いようだ。

 

「あ、ああ…ごめん」

 

「い、いえ…」

 

「「…………」」

 

2人の間に沈黙が出来た。

 

「うーん、赤の布が足りないかな…一輝、私取って来るからちょっと蛍とやってて」

 

作業をしていたコマ姉が布を取りに部屋を出てってしまい。とうとう部屋に2人きりになってしまった。

 

 

 

「…………続けるか…/////」

 

「…………はい/////」

 

(うぅ〜〜ダメだ…………やっぱり2人きりになるとどうしても言葉が出てこない…)

 

(ふわぁ〜〜先輩と2人きりになっちゃった…どうしよう…嬉しいけど恥ずかしい…)

 

2人は言葉が思いつかずそのまましばらく黙りながら作業をしていた。しかし、沈黙に耐えかねたのか一輝が喋りだした。

 

「そういやさ…ひとつ聞きたいことあるんだけど…蛍って東京ではどんな友達がいたの?」

 

単純にそのことについて知りたかったのもあるが本当は別にある。このあいだのガールズトークの時に蛍は恋をしている顔を確かにしていた。それがどんな人なのか…俺が気持ちを伝えても大丈夫なのか…どうしても知りたかったのだ

 

「ええと…同学年の女の子がほとんどでしたね。いつもよく話したりしてましたよ。今でもよく手紙書いたりしてます」

 

少し緊張が途切れたのか表情が和らいだ蛍はそう答えた。

 

「そっか…」

 

(どうする…………やっぱりやめるか…蛍に変なふうに思われたら…)

 

俺は悩んでいた。『このこと』を聞くかどうか…しかしどうしても怖かった。嫌われるんじゃ無いかと…しかし、

 

(ダメだ!!一歩を踏み出さなければ進めないじゃ無いか!!)

 

そして俺は聞いた

 

「それじゃあ…男の子で仲よかった子とかっている?」

 

「えっ…?」

 

突然の質問に蛍はキョトンとした。

 

「その…だから…蛍って…好きな子とか…」

 

ガラッ

 

「あったあった。やっと見つけたよ」

 

扉が開くと同時にコマ姉が布を見つけて入って来た。

さらに

 

「ただいま〜いや〜流石の駄菓子屋もれんちょんの涙には弱かったな〜」

 

「帰ってきたのーん!!」

 

ナツ姉たちも帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ…はは…おかえり…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(一輝先輩…さっきの質問…)

 

『蛍って…好きな子とか…』

 

一輝が何を聞こうとしたのかはなんとなくわかった。

しかし、なぜ彼がそのようなことを聞いてきたのだろう…

 

 

(………っ!!もしかして…先輩の好きな人って……私?)

 

自意識過剰かもしれない…でももしそうなら…そう思ったら蛍は顔がどんどん熱くなってきた。

 

 

 

 

 

 

(もしそうだったら…………嬉しいな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、いよいよ文化祭、2人に待ち受けるのは果たして…





久々に投稿です。
いよいよ始まる文化祭…………






感想いっぱい欲しいなあ…………


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24話 文化祭がはじまった

文化祭編です!!


「よーし、準備オーケーだ。もう少ししたらみんなも来るだろうからそろそろ持ち場についていようか」

 

今日はいよいよ待ちに待った文化祭、飾り付けも無事に終えてあとは卒業生が来るのを待つだけだ。

今回来るのはこのみさん、ひか姉、そして駄菓子屋こと加賀山 楓(かがやま かえで)さんである。あとで聞いた話だと初めは駄菓子屋は来ないつもりだったらしいがれんげの泣き落としに屈したようである。あの人は相変わらずれんげには弱いらしい。

 

しばらくすると、廊下を一穂先生、このみさん、ひか姉、駄菓子屋が歩いてきた。それを俺と蛍、れんげの3人で迎えることになった。

 

「いらっしゃいませー、わざわざ足を運んでもらってありがとうございますー」

 

「どうぞ楽しんでってください」

 

「らっしゃいん!!」

 

「お?なにその耳」

 

すると、一穂先生が俺たちの頭についてる耳に気づいた。

 

「今回俺たちがやるのは動物の喫茶店なんだ」

 

「みんなで動物の格好して喫茶店をすることになったんです」

 

ちなみに俺は白猫の耳、蛍は黒猫の耳である。

お揃いなのでちょっと嬉しい。

ちなみにれんげは・・・

 

「駄菓子屋!!ウチ、なんの格好だと思うん?」

 

「ん・・・なんだそれ?虫の触覚にしか見えん」

 

れんげの頭には2本の角や触覚のようなものが付いていた。

 

「触覚じゃないのーん、駄菓子屋わかってないのんなー。これは皆さんご存知のー・・・キリンさんですっ!!」

 

「わっかりにくっ」

 

確かにキリンにはそんな角が付いてはいたが他にも強調できるところがあったと思う。まぁれんげがこれが良いといったのだが。

 

「あ、これメニューとパンフレットになりますー」

 

そう言うと蛍はパンフレットを4人に渡した。

 

「夏海主催とか聞いてたからどうなるかと思ってたが結構ちゃんとしてんだな」

 

「まぁせっかく来たんだしちゃんとしてくれないと」

 

ナツ姉ひどい言われようである。まぁ駄菓子屋の言う通りではあるんだが・・・

 

「ねぇこれもう入っちゃって良いの?」

 

「どうぞ、お楽しみください」

 

俺の案内でひか姉たちが教室に入ると・・・

 

 

 

 

 

 

 

ハサミで紙袋に穴を開けて目が見えるようにし、ダンボールで作ってある耳をガムテープでつけている得体の知れない生き物になったナツ姉が出迎えていた。

 

 

「ウッス!!いらっしゃい、皆さんご存知のUMAです」

 

なんのUMAだよ。これを初めて見たとき俺は思わずそう突っ込んでしまっていた。UMAをやるならせめてチュパカブラとか某擬人化動物アニメに出て来るツチノコとかわかりやすいのがあっただろ・・・何故それをやらない

 

「とりあえず注文なににしますか?」

 

「あーどうしようかな」

 

「それじゃあ私はこの一番安いガーリックトーストと紅茶で」

 

「じゃあわたしは・・・」

 

こうして注文を取っていると

 

「ねーなにあの黒い穴空いてるやつ?」

 

一穂先生が離れたところに展示している展示品の1つに目をつけた。

 

「それはれんげが作ったやつですよ。なんでも最新のおもちゃとかで・・・」

 

「これなーこうやって裏から顔を出して・・・」

 

そう言うとれんげはそれを近くに持って来ると裏から顔を出すと、

 

「とほほ・・・もういたずらはこりごりなーん・・・」

 

あぁ・・・漫画やアニメに出て来るやつか・・・なんとも難易度高い遊びをどんどん思いつくもんだ。

 

「そう言えばこまちゃんは?」

 

現在ここにはコマ姉がいない、ちなみにスグ兄は教室の隅っこで犬の耳と口をつけて『忠犬』と書かれた犬小屋の隣で正座していた。

 

・・・スグ兄、あんたそれで良いのか

 

「先輩は待機中です、先輩の耳とかわたしが作ったんですけど一番出来がいいので楽しみにしてて下さい」

 

蛍はとても得意げにしていた。

 

「じゃあ注文も聞いたし家庭科室いって料理始めますか」

 

「あいよ、じゃあれんげ、あとよろしく」

 

「わかったのーん!!」

 

 

 

 

 

 

「さて・・・早速料理に取り掛かるか・・・」

 

家庭科室で俺はナツ姉、蛍と料理の準備をすることにした。実を言うと俺は料理が得意である。母さんの手伝いをしていたのである程度は作れるのだ。

ちなみに俺たち越谷4兄弟の料理できるランキングは

 

1位 スグ兄

2位 俺

 

超えられない壁

 

3位 ナツ姉

4位 コマ姉

 

である。どうしてもスグ兄には勝てないのだがいつか追いつくことが目標である。

ちなみにナツ姉もコマ姉も料理出来ないのだがコマ姉は芋ご飯でご飯に水を入れるのを忘れたり初歩的な間違いしたりたまにとんでもないゲテモノアレンジをするのでナツ姉より下にランクインしている。

 

 

すると、

 

 

 

『ぽんっ!ぽっ!ぽこぽんっ!ぽんぽん!!ぽこぽんっ!ぽこんぽん!ぽんぽこ!ぽん・・・ぽこ・・・』

 

 

 

コマ姉とれんげのお遊戯が教室から聴こえて来たがやはりコマ姉には荷が重すぎたか・・・どんどん声に力が無くなっていった。

 

 

 

ガラッ

 

 

 

「・・・・・・ふぇぇぇん一輝ぃぃぃ」

 

教室からタヌキの着ぐるみを着たコマ姉が泣きながら俺に抱きついてきた。

 

「はいはい、泣かないの。よく頑張ったね」

 

「あー、コマちゃんやらかしちゃったなぁ〜ここはウチが余興をしないとな・・・」

そう言うとナツ姉は教室へと向かっていった。

 

「・・・ああ言ってる時のナツ姉たまにさらに面倒ごと拗らせるからな・・・とりあえず俺はなんか簡単な軽食のサービス作って持って来るか」

 

そう思った俺はコマ姉を蛍に任せ簡単なサンドウィッチを作って持ってくことにした、

 

 

 

「さて・・・向こうはどうなって・・・」

 

ガラッ

 

「ひえぇぇぇ一輝あと任せた!!」

 

教室の扉が開くとナツ姉が慌てて逃げていった。

 

「なんかしでかしたなこりゃ」

 

そう思いながら教室に入るとテーブルクロスが床に落ちてコップが散乱し床は水浸しになっていた。

 

 

「駄菓子屋・・・これは一体?」

 

「夏海がテーブルクロス引きミスって関節キメようとしたらそのまま逃げた。」

 

「さいですか・・・持ってきてよかった。これはお詫びということで・・・」

 

そういうと俺は床を雑巾で拭くと持ってきたサンドウィッチをテーブルに置いた。

 

「たっく・・・小鞠はへこんで引っ込むし夏海はいらんことするし、一輝ぐらいだろちゃんと仕事してんのは。どうなったんだよ越谷家・・・」

 

「まぁコップがプラスチックだったのが不幸中の幸いだったね」

 

「本当にすいません・・・」

 

全くもって不甲斐ないことこの上ないです。

 

それからもナツ姉の机の引き出しにカチカチになったコッペパンが入っていたりとハプニングがいくつか起こり俺がそれに対処していた。

 

 

 

 

 

 

「それにしても・・・あれから何分たった?」

 

30分たっても注文が来ない、どうなったんだ?

ちなみに一穂先生は待ちくたびれて眠ってしまった。

 

「一輝、ちょっとあたしらも様子見に行くよ」

 

「あ、すいません。それじゃあお願いします」

 

こうして俺たちは家庭科室に向かうと・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未だにへこんでいるコマ姉を励まそうとしている蛍、

ぐで〜としてれんげに引っ張られているナツ姉がいた。

 

「あ・・・なんだこのやる気のなさは、注文したのは作ってんのか?」

 

すると、気だるそうにナツ姉が答えた。

 

「ん・・・いやそれがさーなんか一輝が作ったレシピ見ても作り方よくわからなくてさーそれにコマちゃんもへこんでてんでわんやで・・・何より・・・喫茶展・・・飽きちゃった・・・」

 

瞬間、俺の中で大事な何かがキレた。

 

「いやー喫茶展も難しいね、勢いでやるもんじゃないわ。あ、材料はあるから自由に作っていいよ」

 

「・・・・・・・・・」

 

「そういや一輝この仮面似合うんじゃない?ほれかぶってみ?」

 

そういうとナツ姉は俺の頭に被り物をかぶせた。

 

「うん!思ったとおり似合ってるよ一輝!!」

 

ガシッ

 

瞬間、俺の手はナツ姉の頭にアイアンクローしていた。

 

「あ・・・あれ?・・・一輝?」

 

「ナツ姉・・・へこんでいるコマ姉とそれを励ましてた蛍はまだ良いとして・・・」

 

もうダメだ・・・言わせてもらう。

 

 

 

 

 

「企画者のあんたが・・・いったいぜんたい何ふざけた事ほざいてんじゃゴラァァァァァ!!!」

 

「ギニャァァァァァァ!!!」

 

学校にナツ姉の断末魔が響いた。

 

 

 

 

 

 

「ほんとーにごめんなさい駄菓子屋、来賓なのに作らせちゃって・・・」

 

あのあと結局駄菓子屋たちも協力してみんなで食事を作ることになった。

 

「まぁ気にすんな、良いもん見ながらの食事だからな・・・」

 

そう言う駄菓子屋の視線の先には

 

 

 

 

 

 

 

「えーこの度は調子に乗りすぎたため皆様に多大な迷惑をおかけしたことをここにお詫びします・・・」

 

れんげ作のダンボールの板の穴から顔を出して謝罪するナツ姉がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの・・・一輝先輩」

 

「・・・どうした蛍?」

 

突然こっそりと蛍が俺に話しかけてきた。

 

「前に先輩が聞いていた答えなんですが・・・」

 

「・・・/////っ」

 

その瞬間、俺も思い出した。

以前蛍に聞いた『好きな人はいるのか?』と言う疑問のことだろう・・・

 

「あ・・・いや・・・アレは・・・その・・・」

 

俺が慌てていると・・・

 

「前の学校では・・・そういった人はいなかったんですが・・・」

 

突然耳元に蛍が近づくと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今はいます」

 

そういった蛍は顔を真っ赤にしていた。

 

「すいません、ちょっとトイレに・・・」

 

そういうと蛍は早足で教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な〜に話してたんだ一輝〜」

 

突然駄菓子屋がニヤニヤしながら聞いてきた。

アレ・・・コレッテマサカ・・・

 

「なあ一輝、お前あの蛍って子のこと好きなんだろ?」

 

「んなっ・・・!!」

 

まさかこの人にまで知られるなんて・・・とんだ伏兵が・・・

 

「あ、それ私も思った」

 

しかもこのみさんにまでバレている!!

 

その後、俺はこの2人に散々冷やかされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(しかし・・・蛍に好きな人が・・・いったい誰なんだ・・・まさか・・・俺?彼女に聞いて見るか・・・いや、もし違ったら絶対恥ずかしい・・・)

 

 

 

 

その頃、蛍は

 

「ふわぁぁぁぁ〜言っちゃった・・・ど・・・どうしよう・・・勢いに任せて言っちゃった〜」

 

1人自分のしたことを思い出して顔を真っ赤にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、文化祭は半分グダグダ、半分ドキドキで幕を閉じました。




文化祭しゅーりょー!!





感想待ってます!!


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25話 部屋の片づけを手伝った

続けて更新です


文化祭を行なってから数日後の午後、

 

コマ姉とこのみさん、俺の3人が揃ってゲームをしていた。現在やってるのはコマ姉とこのみさんの対決でありどちらが強いかなどは聞くまでもない。

 

「わわ!あ〜・・・」

 

「はい、これで5戦中5勝〜」

 

コマ姉はこのみさんになす術なくやられてしまい、これで5戦中5連敗であった。

 

「んも〜このみちゃん強すぎ〜一輝私と代わって〜」

 

「はいよ、そんじゃあ勝たせてもらおうかこのみさん」

 

「ふっふーん、手加減しないよ〜」

 

こうして俺とこのみさんはゲームで対戦した。その結果、俺は5戦中3勝し勝つことができた。ゲームをひと通り遊んでいると、このみさんが突然話しかけてきた。

 

「そういえばさ〜一輝くんたちの家って物持ち良いよね〜このゲーム機だってかなり昔のやつだしDVDデッキもビデオ観れるやつでしょ?」

 

「まぁゲーム機は父さんが昔から持ってたやつだしね」

 

そもそも最新ゲーム機なんて買ってすら貰えない。まぁ別に無くてもこれはこれで楽しめるし

 

「あーいたいた、3人ともちょっとこっち来てもらってもいい?」

 

すると、ナツ姉がやって来た。

 

「どうしたのナツ姉?」

 

俺たちがそのままついてくると

 

「いや・・・その、実は・・・部屋の片づけ手伝ってくれませんか」

 

ナツ姉の部屋はいろんなものがぐちゃぐちゃで足の踏み場も無かった。

 

「ないない」

 

「自分の部屋は自分で片づけないとね」

 

「ナツ姉ふぁいと」

 

そう言って俺たちは立ち去ろうとしたが

 

「無理ー!!母ちゃんに今日中に片づけないとご飯なしって言われたのー!!助けてよー!!」

 

ナツ姉は涙目になって俺の体にしがみついて来た。

 

「知らないよそんなの!!というかあのレベルは1日で片づくレベルじゃないでしょ!?」

 

「だから頼んでるのー!!お願いしますお願いします!!」

 

この慌てよう・・・どうやらマジのようだ・・・

 

 

「・・・はぁ、しょうがないな・・・文化祭の準備の時に部屋貸してもらったしね・・・それに、俺たちも母さんのとばっちりうけたくないしな・・・」

 

「このみちゃんはどうする?」

 

「んー2人がやるなら別にいいよ」

 

「あざっす!!」

 

ナツ姉は全力で頭を下げた。

 

「じゃあじゃあこちらへどうぞ〜お見苦しい部屋ですがー」

 

全くだよ・・・ほんとに足の踏み場も無かった。

「もーよくこんなに散らかせたねゴミ袋とかあるの?」

 

「あ、うんこっちに」

 

というかナツ姉・・・よく見たら制服まで転がってんじゃん・・・とても女子の部屋とは思えない。蛍の爪の垢を煎じて飲ませたいよ

 

こうして俺たちはナツ姉の部屋の大掃除を始めた。

雑誌をまとめたりゴミをゴミ袋に詰めたりとかなりの重労働であった。

 

「ん?おもちゃ箱に変なもんが・・・」

 

おもちゃ箱を片付けてると、中に弾力のあるゴムでできた半球型のおもちゃが出て来た。

 

「あーそれ?これはこう裏返して・・・地面に置くと・・・」

 

ぺちん!!

 

「こうやって飛ぶおもちゃ」

 

大きな音とともに思いっきり高く飛んだ。

 

「あーそう言えばそんなのあったような・・・」

 

「懐かしー昔これでよく遊んだっけな・・・えーと、他には〜」

 

「ちょっとナツ姉、見つけた俺が言うのもなんだけど掃除から脱線してきてるよ」

 

俺は慌てて止めようとしたが

 

「まぁまぁ、ウチのおもちゃ箱は思い出箱だから、みんなと思い出共有したいっていうか?」

 

「まったく・・・ちょっとだけだよ?」

 

すると、ナツ姉はおもちゃ箱からバネのようなのを出して来た。

 

「じゃあみんなこれは知ってる?」

 

「あぁそれ知ってる。階段降りるやつだ、神社の階段でよく遊んだっけ・・・」

 

考えて見たら俺ってこの村に来てからよくナツ姉に連れられて遊んでたっけな・・・まぁたまにナツ姉のいたずらに巻き込まれて大泣きして母さんに慰めてもらってたけど・・・

 

「うちに階段ないから仕方なく神社でやってたんだっけ」

 

「・・・そういう思い出つぶしはやめてくださいますー?」

 

ナツ姉はコマ姉の言葉に文句を言った。

「・・・さっきから思ってたけど・・・それうちらの時代に流行ったおもちゃじゃないよね?」

 

このみさんが衝撃的な発言をした。

 

「え?ほんとにこのみさん?」

 

「それって駄菓子屋で買ったおもちゃでしょ?5年前はまだ駄菓子屋のおばあちゃんがお店やってたから先代の時は20年近く品揃え変わらなかったって噂だし・・・」

 

「・・・まじか・・・・・・」

 

「え?じゃあ他の子供は駄菓子屋で何のおもちゃ買ってたの?」

「駄菓子屋自体ないとこ多いんじゃない?」

 

そうか・・・そういやここは田舎なんだっけ・・・

 

「うわ!!そこなんか毛虫みたいなのがいた!!」

 

そのときコマ姉の悲鳴が聞こえた。

 

「え!?どこどこ!?」

 

このみさんも慌てて辺りを見渡すと

 

ふわふわのカラフルな虫のようなおもちゃでナツ姉か遊んでた。

 

「ちなみにこれは・・・」

 

「それもけっこー前のだと思う」

 

やっぱり脱線したよ・・・たしかそれって『モーラー』とかってやつだったよな・・・

 

「えーおかしいな・・・もっとほか見てみよ、スライムとかミニカードダスとか・・・」

 

ナツ姉は再びおもちゃ箱を漁り出した。

 

「ナツ姉?遊んでんなら俺たち手伝わないよ」

 

「えー待ってよあとちょっとだけ・・・」

 

「そんなの待ってたらいつまでたっても終わらないから言ってんの」

 

まったく・・・こりゃ1人で片づけ出来んわけだ。

 

「次は何読んでんの?紙っぽいけど・・・」

 

「いやなんだかわかんないんだけどさ・・・姉ちゃんが小1の時の感想文見つけちゃった」

 

「え!?」

 

何それちょーみたい

 

「えーと『わたしはこまりといいます。わたしは大きくなったらお花さんになりたいです。わたしはチューリップさんになります。』」

 

「あ!何読んでんの一輝!!返してよ!!」

 

「まぁまぁコマ姉、1年生の作文ってこんなもんでしょ?」

 

「いいから返して!!どうせ心の中で笑ってるんでしょ」

 

「ワラッテナイヨ」

 

後から聞いたがこの時俺の顔は思いっきりニヤケてたらしい

 

「笑ってんじゃん!!返してったらそれ!!」

 

「待ってコマ姉、あと5分で読み終えるから」

 

「読まなくていいの!!」

 

コマ姉は俺に飛びかかり俺はそれを避けていた。

 

 

 

「ん?こっちは一輝の小1の時のか」

 

ナツ姉の言葉で俺は凍りついた。

 

「ちょ・・・前言撤回!!ナツ姉返して!!」

 

「えーとなになに・・・『将来の夢 こしがやかずき、ぼくは大きくなったらかあさんにいっぱいおんがえしがしたいです。ぼくはかあさんが大好きです。なつねぇやコマねぇ、スグにぃやとうさんも大好きなのでみんなにもおんがえしがしたいです』あーこれか〜たしかこれ一輝が読んだ時母ちゃんが泣いちゃったやつだ〜」

 

「やめろぉぉぉぉ!!音読すんなぁぁあ!!」

 

ヤバイ、マジでこれは恥ずかしい!!さっきのコマ姉を笑えない!!

俺はナツ姉から感想文を取り返そうと飛びかかった。

 

「ちょっと2人とも!そんな暴れたらおばさんに怒られるよ!!」

 

「いいじゃんかーさっきも一輝姉ちゃんの読んでたし〜」

 

「それでも恥ずいから返して!!」

 

そのまま俺とナツ姉は取っ組み合いを始めようとした途端

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドドッベタッ!!

 

突然このみさんのアイアンクローが俺とナツ姉の後頭部に炸裂した。その瞬間、

 

ガラッ

 

「ちょっと夏海!!どたばた騒いでるみたいだけど掃除できたの!?」

 

あんまり騒いでいたから母さんが入ってきた。

しかし、そこにはアイアンクローを食らって倒れている俺とナツ姉がいた。

 

「あらこのみちゃん、もしかして夏海の掃除の手伝いしてくれてた?」

 

「ちょうど暇だったんで・・・」

 

「・・・2人は何してんの?」

 

「ちょうど雑誌か何かにつまづいたようで・・・夕飯までに片づけるよう見張っときまーす」

 

なんとかこのみさんは母さんをごまかしたようだ。

 

「ごめんね、どうせならそのあと夕飯食べてく?」

 

「はーい、すいませーん」

 

母さんは納得して下手から出て行くと、このみさんは俺たちを解放した。

 

「いやー危なかったねーもう少しでおばさんの雷落ちてたよ」

 

まぁアイアンクローは痛かったけど雷よりはましである。

 

その後は片づけを真面目にやり、午後4時になんとか片づけを終えることができた。

 

「大体こんなもんかな?」

 

「疲れたーこれ貸しだからねー」

 

「今度なんか奢ってよー」

 

「皆さまあざっした!!」

 

ナツ姉は再び全力のお礼をした。

 

「じゃあ夕飯までゲームでもするか」

 

「あ、それならさっき行きの見つけた」

 

すると、ナツ姉は何かを持ち出した。それは・・・

「・・・ビデオ?」

 

「そうそう、プリティキュットの録画したビデオ♪」

 

「へぇ・・・そんなのあったんだ・・・」

「一輝が来る前のやつだからね〜まぁせっかくだしみんなでみよ」

 

しかし、コマ姉は何かを思い出して考えていた。

 

「でもそれって間違えてホームビデオ上書きしちゃったやつじゃなかったっけ?」

 

「うそ?まぁ見ればわかるっしょ」

 

そう言うとナツ姉はビデオを入れた、しばらくするとテレビが映りウチの庭が、映った。どうやらホームビデオのようだ。しばらくするとボールで遊んでる小さなナツ姉が映った。ナツ姉は母さんの呼びかけでこっちに来た。すると、

 

『あ、わぁい兄ちゃんだー』

 

ナツ姉の視線の先には当時のスグ兄が映っていた。

・・・て言うかスグ兄今と変わってないするとナツ姉はスグ兄に抱きつくと

 

『ウチ兄ちゃん大好きーウチねー大きくなったら兄ちゃんのお嫁さんになるのー』

 

ビシィッ!!!

 

瞬間ナツ姉はビデオの電源を切った。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・///////」

 

ナツ姉の顔は真っ赤だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ子供ならあんなもんだよナツ姉、いやー今日は思い出共有できて良かったわ〜」

 

「夏海ゲームやる?好きなソフト選んでいいよ」

 

「あーー!!あーーーー!!!」

 

それから夕飯までナツ姉はパニクってた。

 

ふふっ・・・いつも俺を蛍のことで冷やかしてるからな・・・今日は徹底的にからかってやるよ・・・

 

「『ウチ兄ちゃん大好きー』かぁ(ニヤニヤ)」

 

「わぁぁぁやめて一輝ぃぃぃぃぃ!!」

 




続けて投稿です。





感想待ってます・・・


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26話 布団を姉と取り合った

のんのんびより更新です。


日が沈みあたりが真っ暗になった夜、現在俺たちは旭丘分校にいる。なぜ夜遅くに学校にいるのか、いや違う、いるのではなく家に帰れなくなったのだ。その理由は・・・

 

「いやー、まさか学校に泊まることになるなんてねー」

 

そう、一穂先生の言うとおり、俺たちは急遽学校に泊まることになったのだ。突然バスが走れなくなってしまうほどの大雪が降りだし、俺たちは家に帰れなくなったため学校で一夜を過ごすことになったのだ。これだけの大雪が降ったのはここ最近では久し振りであろう。

 

「まぁいいじゃん、こういうのもおもしろいしー」

 

ナツ姉の言うとおりである。こういうのはやはりいつもと違う感じでワクワクする。しかし・・・ひとつだけ問題がある。

 

「まぁカップ麺の取り置きとか暖房器具があったのは大助かりだけどさ、ただ問題が1つ・・・布団が足りない」

 

そう、布団が足りなくなってしまったのだ。

 

「宿直室の押入れにあった布団と非常用の寝袋、それと保健室に2つあるベットの布団を1つ、さらに予備にあった小さい1人用の布団が1つ、合計で布団3つと寝袋1つなんだけど・・・布団を2人づつと1人で寝て誰か1人寝袋でなればいいんだけど・・・寝袋寒いんだよな・・・でもこれたぶん布団の取り合いになるよな・・・」

 

ちなみにスグ兄はすでに保健室のベッドで就寝している。

それと俺は何故かこっちでみんなと寝ることになった。

 

「まぁこの大雪の中いくら暖房器具あるからって寝袋はな・・・」

 

これは間違いなく布団の争奪戦になるだろう・・・

 

「いやー・・・本当にまいったよ・・・」

 

一穂先生も溜息を吐いながら布団に入った・・・ん?

 

「えっ?・・・一穂先生?冗談でしょ?」

 

まさか・・・うそだろ・・・?

 

すると、ナツ姉が恐る恐る近づいて一穂先生の様子を確かめた。

 

「だめだ・・・寝てる・・・」

 

うそだろおい・・・・・・

 

「ちょ・・・マジかよナツ姉!!まさか取り合いになるって自分で言っといて自分は何のためらいもなく布団に入ったのか!?」

 

「ウチもまさかと思ったけど・・・この人マジで寝てるって!!」

 

信じられない・・・何の悪びれもなく自分は布団を選ぶとは・・・

 

「え?えーと・・・どうなるんですか?誰が寝袋に・・・」

 

「ど、どうなるって言われても・・・」

あまりのことに蛍とコマ姉も動揺していた。

 

「じゃあウチねぇねぇと一緒に布団に寝るん。それでいいんな〜?」

 

すると、れんげがそう言った。確かに2人で布団を使うなら大きい人と小さい人が入るのが得策だろう。1人用の布団は俺がギリギリ入れるくらいだし・・・

 

「ってことは・・・もう1つの布団には・・・コマ姉と蛍が入りなよ」

 

蛍を寝袋には正直したくないし・・・コマ姉は言うまでもない。

 

「むー、背が小さい扱いされるのは気に食わないけど・・・まぁいいや、布団で寝れるし」

 

「それではお言葉に甘えます」

 

よし、これで残る1人用の布団は俺かナツ姉ってわけだ。

 

「ナツ姉は布団と寝袋どっちが良い?」

 

「そりゃ布団一択だってー、絶対寝袋寒いもん」

 

「俺だって寝袋やだよ」

 

蛍には譲ったがナツ姉なら話は別だ。

 

「んーじゃあ何で決める?ジャンケンじゃ面白みないし・・・じゃあいまだにランドセル背負ってる方が寝袋ってのはどう?」

 

「ふざけんなっ!!それ俺一択じゃねーか!!」

 

そんな条件のるバカどの世界にいるんだ!!

 

「うそうそ、じゃあ腕相撲で決めよっか」

 

うわナツ姉きたねえ・・・ナツ姉ば腕相撲バカ強い、今まで駄菓子屋やスグ兄にも負けたことがない。勝てる見込みは少ないだろう・・・・・・しかし、

 

「良いぜ、受けてたってやる」

 

ここで拒んだらなんか負けた気がする。だからあえて挑むことにした。

 

「そんじゃあはじめっか一輝」

 

「上等だ・・・」

 

負けられない・・・この戦いは負けたくない・・・好きな子が見ているところでかっこ悪いところは見せたくない・・・

 

「じゃあやるよ〜・・・レディ・・・・・・ファイッ!」

 

「一輝先輩頑張って!!」

 

「だらぁ!!!!」

 

パニィッ!!

 

蛍の応援が聞こえた瞬間、なんかすげー力が出た。その結果、ナツ姉の手は床に思いっきりついていた・・・変な音とともに・・・

 

「ぎゃあああああ!!?腕か腕が!!ぱにぃって!!ぱにぃって鳴った!!パニィッて鳴った!!」

 

ナツ姉は腕を抑えながら悶え苦しんでいた。

 

「悪りぃナツ姉!!なんか知らんけどすげー力が入って・・・マジで大丈夫!?」

 

「一輝ヤバイよ・・・絶対腕のスジ変なことになってるよ・・・火事場の馬鹿力半端ないよ・・・」

 

「悪りぃナツ姉、今のは無しってことで良いよ」

 

「うう・・・姉ちゃん代わりに一輝と戦って・・・」

 

「無理無理、ぱにぃってなるんでしょ?無理無理」

 

コマ姉の腕じゃナツ姉よりも重傷になりかねない。

 

「うー・・・一輝・・・もう体使う勝負はやめー、違う勝負にしようよ」

 

「別に良いけど・・・何の勝負にすんの?」

 

というかさっさと決めて早く寝たい。布団に入って

 

「うーん・・・そうだなぁ・・・よし!じゃあダジャレ勝負にしよう、より面白かった方の方で」

 

「なんか長引きそうだなぁ・・・どんな感じにすんの?」

 

「例えば・・・んー・・・『アメリカンなペリカン』!!なんてー」

 

「「「「・・・・・・・・・」」」」

 

うん、言葉にできない・・・周りのみんなも何も言えなくなっている・・・そりゃそうだ

 

「よし!じゃあモノマネ対決にしよう!」

 

ダジャレはやめるのか・・・賢明な判断だと思う。

 

「んじゃまずはモノマネ師匠ことれんちょんからお手本をやってもらいますっ」

 

「ウチがモノマネのお手本するん?仕方ないのんなぁ」

 

れんげは溜息を吐きながら立ち上がった。れんげは何気にこう言うのも得意そうである。

 

「じゃあウチのモノマネ十八番ちゃんと見てるのん」

 

「「よろしくお願いします!!!」」

 

すると、れんげは体をひねると・・・

 

「のす!!」

 

・・・わかんねーよ

 

「こんな感じで2人とも頑張ってくださいん!!」

 

「よしっ、じゃあ一輝いってみよー!!」

 

ヤバイ・・・なんのモノマネをすれば良いんだ・・・思いつかない・・・

 

「一輝〜はやくしてよ〜」

 

隣でナツ姉が急かしてきた・・・仕方がない・・・密かに温めていた『あの』モノマネをやることにしよう

 

「確かここに・・・お、あったあった」

 

俺は戸棚の引き出しを探すと『それ』を手にして装着して、みんなに見せた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そこには眼鏡をかけて髪型を若干変えてただじっと立っている越谷 一輝がいた。

 

「一輝・・・まさかと思うけど・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「それって兄ちゃんのモノマネ?」

 

「・・・・・・・・・・・・はい」

 

そう、俺がやったモノマネはスグ兄のモノマネだったのだけど・・・結果は見ての通りである。

 

「まぁじっとしてたのとかは確かに似てはいたけどモノマネって考えるとちょっとな・・・」

 

「よしっこれならウチの勝ち決定だね!!」

 

さっきから自信ありげだけど大丈夫なのだろうか・・・

 

「こいつは一輝のと違って完成度高いよー、あまりに似ているから見た人はびっくりして目ん玉飛び出るよ」

 

良いのかナツ姉、それ自分でハードルあげてるぞ

 

「それじゃあ2番手夏海ちゃんいっきまーす!!」

 

そう言うと、ナツ姉は体を大の字にすると少し体を傾けて・・・

 

「大文字焼き」

 

「こりゃ引き分けだ」

 

よかった!!ナツ姉が馬鹿でよかった!!てかそれモノマネじゃなくね?

 

「えっなんで!!?悪くなかったでしょー似てたでしょー!!?」

 

「なんでって言われてもなーそれモノマネじゃなくない?」

 

コマ姉も俺と同感のようだ、

 

「れんちょんなんか言ってやってよ!!さっきの絶対ウチのかちだよねー!!?」

 

ナツ姉はれんげに抗議するが

 

「んーやっはりウチやカズにぃみたいに人じゃないとモノマネって言いにくいのん・・・」

 

さっきの「のすっ」は誰だったんだ・・・

 

「えー・・・人じゃないとダメとか聞いてないんだけど・・・人か・・・」

 

しばらくナツ姉がそこに立ってたかと思うと・・・

 

「ちなみにそれは赤信号の人のモノマネなんだけど・・・」

 

「だからそう言うのが・・・」

 

俺のツッコミにナツ姉の限界がきた。

 

「あーもーっ!!これじゃ全然まとまんないし!!一輝男なんだから布団譲ってよ!!」

 

「やだよ!!俺だって布団が良いし!!ってかナツ姉風邪引かないんだし良いじゃん!!」

 

俺もナツ姉も一歩も引かない・・・このまま膠着状態が続くのではと思ったころ・・・

 

「う・・・ん・・・うわー・・・良いんすかー?こんなフルコース料理良いんすかー・・・ちょーうめー」

 

一穂先生が寝言を言った・・・

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

そのとき、2人の考えは一致した・・・そもそもこうなったのはこの人が原因だと・・・2人は顔を合わせ頷くと・・・

 

一穂先生を布団から出し、頭から寝袋に押し込んだ。

 

「「・・・・・・・・・(ガシィッ)」」

 

こうして2人の姉弟喧嘩は平和に解決した。

 




更新しました。







感想・・・いっぱい出して良いんすよ・・・


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27話 雪の中で遊んだ


続けて投稿です。


 

学校でのお泊まりが決まりそれぞれの布団で眠る深夜、

 

「うーん・・・なんだか寝付けないな・・・」

 

どうもあまり俺は寝付けずにいた。いつもならすぐに眠っている頃のはずなのにどう言うわけか眠れなくなっていた。おそらく枕がいつもと違うからだろうか・・・

 

「仕方ない・・・すこし外に出てみよ」

 

そう思った俺はコートを体に羽織り外へ出た。

 

 

 

 

外はもうすでに吹雪も止んでおり、新雪が積もっていてとても綺麗だった。そして何より星が空いっぱいに輝いておりとても綺麗だった。

 

「・・・・・・思えば俺がこの村に来てもう6年も経つのか・・・そう考えると早いな・・・」

 

母さんに引き取られてからいろいろなことを体験した。ナツ姉やコマ姉、スグ兄といった兄や姉を得て、このみさんや駄菓子屋、れんげといった友人や頼れる人にも出会えた。そして、今年には生まれて初めて好きな人ができた。蛍のことである。気づけば自分は彼女のことを目で追っており、さらには彼女のことをふと気づけば考えていた。おそらくこれが『好きになる』と言うことなのだろう。

 

「あれ?一輝先輩?」

 

ふと声がしたのでふりむくと、そこには蛍がコートを羽織って立っていた。

 

「蛍?どうしたの?」

 

「いえ・・・なかなか寝付けなくて・・・そしたら雪がすごい積もっていたのでつい・・・」

 

どうやら蛍も俺と同じ目的で来たようだ。

 

「確かに、ここしばらくでは一番降ってるなぁ・・・」

 

「私・・・こんなに雪が積もってるのって初めて見ました。東京じゃこんなにすごい雪見れません」

 

蛍はとてもワクワクしていた。どうやら本当に嬉しいようだ。

 

「なぁ蛍、もしよかったらちょっと一緒に遊ばない?気を紛らわす程度にさ」

 

すこし遊べば寝つきも良くなるだろうし・・・

 

「はいっ!!是非!!」

 

蛍もノリノリのようだ。よかったよかった。

 

 

 

 

 

((ほたる/ほたるんと一輝が、真夜中の校庭でなんかしている))

 

その様子を、夏海と小鞠が様子を見ていた。

小鞠が蛍が外に出るのを目撃しよく見たら一輝もいなかったので夏海を起こして様子を見に来たのだ。

 

「な・・・なにしてんの2人とも・・・」

 

「しっ!2人に気づかれる!!」

 

夏海は2人の様子を分析し・・・

 

「なぁるほどねぇ・・・」

 

「え?夏海なんかわかったの!?」

 

「いやぁ〜別になにも〜(ニヤニヤ)」

 

ある程度は予測できた。

 

 

 

 

 

 

「とりゃっ」

 

「きゃっ、えいっ」

 

俺と蛍は一緒に雪合戦をしていた。新雪なので柔らかく当たっても痛くないので雪合戦にはちょうどよかった。

「やるなぁ蛍、でも・・・これでどうだっ!!」

 

俺は2つの雪玉を蛍へと投げた。雪玉は2つのうち1つが蛍に当たった。しかし、

 

「えいっ!!」

 

蛍は動じず大きな雪玉を俺に投げて来た。

 

「ぶふぉっ!!」

 

 思わぬ蛍の反撃に、俺は思わずバランスを崩して倒れる。

 

 そのまま、雪の上に尻餅を着いてしまった。

 

 その姿に、思わず蛍は慌てる。

 

「すいません先輩!大丈夫ですか!?」

 

蛍は慌てて駆け寄ると 倒れている一輝を覗き込むようにした。次の瞬間、

 

「隙あり」

 

「きゃっ!?」

 

一輝は蛍の手を取って引っ張った。

 

今度は蛍が雪の中に倒れる番だった。

 

雪だらけになって2人は互いを見つめあった。

 

「・・・ぷっ」

 

「あはは・・・」

 

すると、互いに笑みを浮かべあい笑っていた。

 

 

 

 

「ふぅ・・・結構楽しめたな・・・」

 

「はい・・・すごく楽しかったです」

 

遊び終えた俺たちは雪に座って空を見上げていた。

 

「・・・くしゅんっ」

 

すると、蛍がなんとも可愛らしいくしゃみをした。

 

「大丈夫か、蛍?」

 

「いえ・・・すこし冷えてしまって・・・でももう少し星を見ていたいので・・・」

 

「・・・・・・///////」

 

俺はすこし考えるとコートを脱ぎ

 

「はい、着なよ蛍」

 

蛍へと渡した。

 

「そ、そんな・・・それじゃあ先輩が冷えちゃうじゃないですか!!」

 

「俺は平気だよ、鍛えてるから・・・くしゅんっ」

 

・・・かっこ悪い

 

「そ・・・それじゃあ・・・」

 

「・・・?」

 

「・・・いっしょに使いません?」

 

そんなことを言って来た。

 

「え・・・でも・・・」

 

「だ・・・ダメですか?」

 

蛍は心配そうにこっちを見て来た。

 

ヤバい・・・すげーかわいい

 

「じゃ・・・じゃあ・・・よろしくお願いします」

 

そう言うと俺たちは体を寄り添いあい俺の大きなコートをいっしょに羽織った。

 

「「・・・・・・・・・///////」」

 

体が触れ合い時折蛍の髪が俺の頬に触れた。

 

きらっ

 

「あ、流れ星・・・」

 

そんな時、突然空に一筋の光が走った。

 

「えっ?どこですか!?」

 

「ほら・・・あの辺り」

 

きらっ

 

「あっ!!また見つけた!!」

 

蛍は嬉しそうに空を眺めた。

それからも俺たちは何度も流れ星を見つけてはしゃいでいた。

 

「そうだ・・・せっかくの流れ星なんだし、願い事でも・・・」

 

「あっ、そうですね」

 

俺の願い・・・そんなの決まってる・・・

 

 

 

(俺の願いは・・・)

 

(私の願いは・・・)

 

 

 

 

 

 

(蛍ともっと仲良くなれますように・・・)

 

(一輝先輩ともっと仲良くなれますように・・・)

 

 

 

 

 

 

「なんて願ったんだ蛍?」

 

「ふふっ秘密です。一輝先輩は?」

 

「俺も秘密だ」

 

いつか伝えよう・・・この気持ちを・・・大好きな君に・・・

 

「あっ・・・」

 

突然、蛍が何かを思い出した。

 

「私・・・水道の蛇口ちゃんと締めてないかも・・・」

 

「まじか・・・そりゃ大変だ・・・急いで見に行こう」

 

「はいっ!!」

 

そして俺たちは学校へと走った。

俺たちが廊下を走っていると・・・

 

「ほたるんとカズにぃが・・・夜の廊下を走ってるーん!!」

 

みんなを探していたれんげが俺たちを見つけた。

 

「な・・・なんなん?なんで走ってるん!!わかったん!お祭りなんなー!!?ウチも祭るーん!!」

 

れんげのテンションはマックスだった。

 

「あー・・・わりーなれんげ、起こしちゃったか・・・」

 

「あー・・・やっぱり締めきれてなかったみたいです」

 

蛍は慌てて蛇口を締めた。

 

「れんちゃん怖くなかった?真っ暗の中急いで走ったから・・・」

 

「お祭り始まったのかと思ったん・・・でも宇宙人見た方がもっとビックリしたと思うん」

 

「なんでだよ、なんでそこで宇宙人が出てくんだよ・・・」

 

「さっき宇宙人の夢見たのん、足いっぱいある火星人が出て来たん」

 

「ほう、そりゃよかったな」

 

 

ドザザッ

 

「「ぎにゃっ」」

 

すると、窓の外から大きな音が聞こえた・・・あと変な声も・・・まさか・・・

 

「今度こそお祭りなんなー!!うちも祭るーん!!」

 

れんげはテンションを上げて窓を開けた。俺たちも外を見てみると・・・

 

「「もが・・・グーガァー・・・」」

 

雪の中にナツ姉とコマ姉らしき人が埋まっていた。

 

「窓の外に目が光る8本足の火星人が寝転んでるーん!!」

 

「いやナツ姉とコマ姉だから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく・・・まさか2人が見ていたなんて・・・」

 

あのあと2人を救出した俺は水を飲んでトイレに行ったあと寝ることにした。今ならぐっすり眠れそうだ・・・

 

「・・・・・・?」

 

ふとみると、ナツ姉が俺の使っていた1人用の布団に寝ていた。

 

「ちょっとナツ姉、そこ俺の布団なんだけど・・・」

 

「むにゃ・・・一輝はウチの使ってとこ入って・・・」

 

ナツ姉がさっきまで入ってた場所は蛍の隣である。

 

「んなっ!?馬鹿言うなよナツ姉!!ちょっと!!」

 

「むにゃ〜zzzzz」

 

そのままナツ姉は眠ってしまった。

仕方なく俺は布団の中に入った。

 

「はぁ・・・」

 

俺が溜息を吐きながら寝返りを打つと・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?先輩・・・」

 

蛍の顔が数センチにも満たない場所にあった。

 

 

 

 

 

「///////す、すまん蛍!!」

 

慌てて俺は反対側へと寝返った。

 

 

(ヤバい・・・これはこれで眠れない・・・)

 

俺の顔は真っ赤になっていた。

 

 

 

 

 

ギュッ

 

「・・・え?」

 

「んみゅ・・・先輩・・・」

 

ふとみると寝ぼけた蛍が俺の体にすり寄っていた。

 

(うおおおおおおっ!!///////)

 

その晩、俺は一睡もできなかった。





続けて投稿しました!!





感想待ってます!!


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28話 クリスマスの準備した

再びオリジナルです


クリスマスも間近になった真冬・・・

 

「と言うわけで!!みんなでクリスマスパーティーを開催しようって話!!」

 

こたつの中で俺とナツ姉、コマ姉、スグ兄がくつろいでいると突然ナツ姉が言い出した。

 

「・・・・・・夏海もまたまた突然言いだすなぁ・・・」

 

「いや〜だってせっかくのクリスマスじゃん、大勢で盛り上がりたいと思ってね」

 

ナツ姉はワクワクしながらそう言った。

 

「・・・言っとくけどやるからにはちゃんとやるんだよ?文化祭みたいなことになったら俺も本気で怒るから」

 

「げっ・・・わかってるって一輝、もう一輝の怒りは買いたくないしさ・・・」

 

俺がジト目でナツ姉を見つめるとナツ姉は冷や汗をかきながらそう言った。

 

 

 

 

「さーて、それではクリスマスパーティーに向けての会議を行いまーす」

 

それからナツ姉はれんげと蛍を呼ぶと早速作戦会議をすることになった。

 

「ええと・・・とりあえずクリスマスパーティーで何やりたいかとかを話し合いたいんだけどさ・・・何か意見とかってある?」

 

「ええと・・・私はプレゼント交換とかしてみたいです」

 

すると、蛍が手を上げて提案した。

 

「なるほどぉ・・・イイネイイネ、他に意見は?」

 

「ケーキ食べたい!!」

 

そう提案したのはコマ姉だった。

相変わらず子供らしい意見である。

 

「手品みたいな出し物とか?」

 

俺も思いついたアイデアを出してみる。

こうして、いろいろなアイデアが次々と出ていき、クリスマスパーティーの大体の出し物を決めることができた。

出し物も決まったので早速俺たちは準備をすることになった。

 

 

 

「れんげ、そっちの折り紙で飾り作って」

 

「わかったのーん」

 

「ほたる、そっちの刺繍終わったらこっちもお願い」

 

「わかりました」

 

俺とれんげ、ナツ姉は折り紙でいろいろな飾り付けを作り、コマ姉と蛍が刺繍でいろいろなものを作っていた。他にも綿を使って雪を作ったりと飾りはだいぶ出来てきた頃、

 

「あ、そうだ。ケーキはどうしよっか」

 

ナツ姉がケーキのことを思い出した。街まで買いに行くのもアリだがかなり遠く手間もお金もかかってしまうだろう・・・

 

「あ、それでは私が作ってきます。確かちょうど材料があったはずなので」

 

「お、ほたるんの手作りかぁ〜楽しみだなぁ〜」

 

蛍の提案にナツ姉は嬉しそうにした。

しかし、

 

(・・・蛍だけにやらせるのもなんかひけるなぁ・・・)

 

何か俺も手伝わなければ・・・

 

「じゃあ俺も手伝うよ」

 

「本当ですか、ありがとうございます」

 

俺の提案に蛍は嬉しそうに微笑んだ。

 

「それじゃあ私も手伝いを・・・」

 

「「コマ姉/姉ちゃんは手伝わなくていい!!」」

 

俺とナツ姉の全力のツッコミが炸裂した。・・・コマ姉が手伝ったらケーキに砂糖の代わりに大量の塩をぶちこまれたり変なものをケーキに入れたりしかねない・・・

 

「と・・・とにかくケーキの方はほたるんと一輝の2人に任せるよ」

 

「あいよ」

 

「任せてください」

 

こうして俺と蛍にケーキ作りの使命が出来た。それからもクリスマスパーティーの準備は着々と進み、あとはケーキ作りだけになった。ケーキ作りはクリスマスパーティーの前日に行うことになった。

 

 

 

 

 

クリスマスパーティー前日

 

「母さーん、俺ちょっと蛍の家に行ってくるからー」

 

「はーい、夕ごはんまでには帰っておいでよー」

 

「わかったー」

 

俺は蛍とケーキ作りをするために蛍の家に行くことになった。

 

(・・・蛍と一緒に料理かぁ・・・なんだか楽しみだなぁ)

 

好きな子の家で一緒に料理を作る、それがなんだか楽しみで仕方がなかった。

しばらく歩いていると蛍の家に着いた。

 

ピンポーン

 

『はーい、どちらさまですかー?』

 

ガチャリ

 

扉が開くと蛍のお母さんが出てきた。

 

「あら一輝くん、話は蛍から聞いているわよ。蛍は今キッチンで準備しているわよ」

 

「ありがとうございます」

 

「良いのよお礼なんて、一輝くんのことは蛍から聞いているわよ。いつも自分に優しくしてくれるって、これからも蛍と仲良くしてあげてね♪」

 

「あ・・・はい///////もちろんです・・・」

 

思わず顔が熱くなってしまった。

 

「ふふっ、頑張ってね♪」

 

「///////っ!!そ・・・それは・・・」

 

蛍の母さんは微笑みながら部屋に戻って行った。

・・・蛍の母さんにバレてしまったかもしれない。

 

 

 

 

「あっ、いらっしゃい一輝先輩」

 

すると、俺がきたのに気づいたのか蛍がキッチンから出てきた。

 

「あっ・・・」

 

そのとき、蛍の姿は私服の上にエプロンを羽織っており、とても大人びていた。どこか大人びておりとても似合っていた。

 

「あ・・・あぁ・・・ごめんな、待たせちまったか?」

 

「いえ、準備をしていただけなので・・・」

 

「「・・・・・・///////」」

 

いつの間にか2人きりになっていることに気づいた蛍は顔を赤く染めて黙ってしまった。

 

「・・・作るか」

 

「・・・はい」

 

少し顔を赤くしながら俺と蛍はキッチンへと入った。

 

「そういえばどんなケーキを作るんだ?」

 

「ええと・・・いちごがたくさんあったのでいちごケーキにしようかと思っています」

 

「なるほど、みんなも好きだし良いと思うよ」

 

いちごケーキは俺も大好きである。前にいちごケーキのをみんなで食べた時にいちごを巡ってナツ姉と取り合いになったことがある。あのあと母さんのげんこつが炸裂したっけなぁ・・・

 

さっそく俺たちはケーキ作りに取り掛かることにした。

 

「蛍、クリームはこれくらいかき混ぜれば良い?」

 

「はい、それが終わったらいちごを切ってもらえますか?」

 

「あいよ、生地の方は調子はどう?」

 

「はい、だいぶ出来てきましたよ」

 

俺がクリームとトッピングを、蛍は生地を作り始めた。

クリームはうまい具合に作れ、俺はいちごを切り始めた。

 

(・・・チラッ)

 

俺はふと生地を作っている蛍を見た。

ボウルに入った生地をかき回している蛍はとても大人っぽく、しかし可愛らしさもありとても魅力的だった。

その時、

 

「・・・痛っ!!」

 

突然指に痛みが走った。どうやらいちごを切っている時に指を少し切ってしまったようだ。

 

「あっ・・・先輩大丈夫ですか!?」

 

それを見た蛍は慌てて戸棚から救急箱を取り出した。

 

「あ・・・いいよ、大して切れてないしほっておけば・・・」

 

「ダメです!!ばい菌が入っちゃったら大変です!!絆創膏を貼りますから!!」

 

蛍は俺の手を取ると血を脱脂綿でふき取ると可愛らしい絆創膏を俺の指に貼り付けた。

 

「・・・//////////////」

 

暖かく柔らかい蛍の手が俺の手に触れていた。

 

「・・・よしっこれで大丈夫ですよ・・・どうしました?顔が赤いですよ?」

 

「・・・っ///////だっ大丈夫!!・・・ありがとな」

 

俺は慌てて立ち上がった。

 

「そ・・・それじゃあそろそろオーブンに入れるか」

 

「あ、はい。そうですね」

 

そして俺たちはケーキの生地を型に入れるとオーブンに入れて焼き始めた。

 

 

「今日は手伝ってくださってありがとうございます。先輩が手伝ってくれたおかげでとても上手く出来ました」

 

蛍は嬉しそうに笑みを浮かべながらお礼を言った。

 

「あ・・・いや、蛍の料理が上手いからだよ」

 

「そ・・・そんなお世辞なんて・・・」

 

「「//////////////」」

 

2人は互いに顔が赤くなった。

 

 

 

 

 

チーーーーン

 

突然オーブンの音が響いた。

 

「・・・そ、それじゃあ私、生地を出しますね」

 

「あっ・・・それなら俺が・・・」

 

慌てて俺はオーブンに手を出した。

 

 

「「・・・あっ///////」」

 

瞬間、2人の手が重なった。

 

 

「///////っすまん蛍!!」

 

「い・・・いえ、こちらこそすいません・・・」

 

2人の顔はもう燃えているのかと思うほど赤くなっていた。

 

「あ・・・はい・・・」

 

俺たちは生地をオーブンから取り出すとクリームを塗りトッピングを盛り付けた。

 

「なんとか出来たな」

 

「はい、とても上手く出来て良かったです」

 

自分たちで作った手作りのケーキに達成感を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩、クリスマスパーティーを明日に控えた俺は空を見ながらある決心した。

 

 

 

「・・・俺・・・決めた・・・」

 

俺は蛍につけてもらった絆創膏を見ながら言葉を続けた。

 

「俺は・・・このクリスマスパーティーで・・・」

 

眼に浮かぶは、自分の好きな人。自分より1つ年下だがどこか大人っぽくしかし、可愛らしい少女、一条 蛍であった。そう、俺は・・・このクリスマスパーティーで・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蛍に・・・告白する!!」

 

越谷 一輝、覚悟を決める




次回・・・乞うご期待!!






感想待ってます!!


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29話 好きな子に告白した

タイトルどうりです


物語は少しだけクリスマスパーティーの数日前にさかのぼる、俺はあるものを買いに街の方へ来ていた。

まず、クリスマスパーティーで交換するプレゼントを、そして、蛍にあげるためのプレゼントを買うためである。

 

「交換用のプレゼントはみんなが使えるものを買うとして・・・蛍にあげるプレゼントは何がいいのかなぁ・・・」

 

はっきり言って俺には特定の女の子にプレゼントをあげたことなど一度もない・・・よく「自分がもらって嬉しいものや自分の気に入ったものをあげる」といいと言うが、自分のセンスで大丈夫だろうか・・・

 

「とりあえずいろいろ見てみよう」

 

そう思った俺はとにかくいろんな店を回ることにした。

 

 

「うーん・・・蛍が好きそうなもの・・・何がいいかな・・・」

 

交換用のプレゼントを買った俺は早速蛍にあげるプレゼントを探しているのだがなかなか見つからなかった。

 

「・・・・・・ん?」

 

ふと俺はある店が目に入った。そこには小さいながらもどこか小洒落たアクセサリーショップがあった。

 

「ちょうどいいや、ここで何か探してみよ」

 

そう思った俺はすぐに店の中に入っていった。

 

カランカラン

 

扉を開くと鐘の音がなり中から年をとったおばあさんが出て来た。

 

「いらっしゃい、何をお探しでしょうか?」

 

おばあさんは皺くちゃの顔でニッコリと優しく微笑んだ。

 

「あの・・・女の子にプレゼントするアクセサリーを探しているんですけど・・・何かあるでしょうか?」

 

俺の問いかけにおばあさんは再び優しく微笑むと

 

「そうですね・・・それならこれなんてどうでしょうか?」

 

おばあさんはカウンターから『それ』を取り出すと俺の前に置いた。

 

「これは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしていよいよ今日はクリスマスパーティー当日、俺たちは部屋に飾り付けを済ました部屋に集まっていた。

 

「えー、それではこれより、クリスマスパーティーを開催しまーす!!」

 

「開催するのーん!!」

 

ナツ姉の開催の宣誓とともにれんげが叫んだ。

俺たちは今回クリスマスパーティーということで頭にはサンタの帽子を被っている。ちなみにれんげはトナカイの角である。テーブルには持って来たお菓子、そして昨日俺と蛍の2人で完成させたケーキが並んであった。

 

「いやー今日はいい天気でクリスマスパーティーにはいい日和だねぇ〜」

 

「部屋の中でやるのに天気関係あんのか?」

 

「気分が違うでしょ〜♪」

 

まぁ確かに言われてみればそうではある。

 

「そんじゃあみんなコップ持って〜」

 

ナツ姉の言葉に従い俺たちはジュースの入ったコップを手にした。

 

「そんじゃあせーの・・・」

 

「「「「「カンパーイ!!」」」」」

 

こうして俺たちのクリスマスパーティーが始まった。

 

 

 

 

「このケーキおいしー♡一輝も蛍もありがとー♪」

 

コマ姉はとても幸せそうにケーキを食べていた。

 

「あっ、おいナツ姉!!いちご取りすぎだぞ!!」

 

ふと気づいたらナツ姉が自分のとったケーキにいちごをさらに乗っけていた。

 

「えーいーじゃんべつにー」

 

「よくねーよ!!俺たちのいちごがなくなっちゃうだろ!!」

 

「まぁまぁ、こんど飴玉あげるから」

 

「割りに合わねーよ!!」

 

ヘラヘラしているナツ姉に俺は怒った。

 

「お・・・落ち着いてください、夏海先輩も、ケーキは1人2つはあるので取りすぎないように・・・せっかくのクリスマスパーティーなので・・・」

 

蛍は慌てて俺たちをなだめた。

 

「あ・・・悪りぃな蛍」

 

俺は慌てて蛍に謝った。俺はポケットに入った『それ』を静かに握りしめた。そうだ、俺は今日蛍にこれを渡して告白するんだ・・・落ち着け落ち着け・・・

 

その後もみんなでお菓子を食べながら楽しんだ。ケーキはみんなに高評価でとても嬉しかった。

お菓子の数が少なくなって来た頃・・・

 

「よーし、それじゃあそろそろプレゼント交換しよーか!!みんな持って来たプレゼントだしてー♪」

 

ナツ姉の合図とともに俺たちは交換用のプレゼントを取り出した。

 

「えーとですね、それではプレゼントに番号を貼った後、くじを引いてその番号と同じプレゼントももらえまーす♪ちなみに自分のプレゼントの場合はやり直しで〜」

 

ナツ姉は俺たちの持って来たプレゼントに番号を貼り付けるとくじの入った箱を持って来た。

 

「そんじゃあ誰から引く?」

 

「ジャンケンでいいんじゃね?」

 

「そうだね、そんじゃあ行くよー」

 

ナツ姉の合図とともに俺たちは身構えた

 

「「「「「じゃーんけーんポンッ!!」」」」」

 

俺、ナツ姉、蛍、れんげがグー

 

コマ姉がパー

 

「ヤッタァわったしー♪」

 

「うげぇ、姉ちゃんかぁ・・・」

 

蛍は嬉しそうにくじを引いた、

 

「ええと・・・3番かぁ」

 

コマ姉は3番のプレゼントを手に取り箱を開けると・・・

 

 

画用紙で出来たちょうちょのような羽と触覚が出て来た。

 

 

「それうちが作った『妖精さんなりきりセット』なのーん!!」

 

れんげのプレゼントのようである。

 

「・・・・・・・・・」

 

ヤバい、コマ姉にめっちゃあってるかも・・・

コマ姉はなんとも言えない顔になっておりナツ姉は笑いを全力で堪えていた。

 

「それじゃあ次は俺の番ね?」

 

次は俺の番である、俺はくじを引いてみた。番号は1番だった。

 

(蛍のプレゼントが当たったら・・・嬉しいなぁ・・・)

 

そんな風に少し希望を抱きながら俺は1番のプレゼントの包みを開けてみた。

 

中からは弾力のあるゴムでできた半球型のおもちゃ、バネのようなおもちゃ、ふわふわのカラフルな虫のようなおもちゃが出て来た・・・

 

 

「・・・・・・これってひょっとしなくても・・・」

 

「あ、それウチのやつだ」

 

やっぱりあんたのか・・・てかこれって要らないおもちゃを入れただけじゃねーか・・・

 

次はナツ姉、ナツ姉はくじを引いてその番号のプレゼントを開けてみた。

 

中からはオシャレなマグカップが出て来た。

・・・そのプレゼントは・・・

 

「よりにもよってナツ姉が俺のプレゼントを開けるか・・・」

 

「へぇ〜一輝いい趣味してるね〜♪」

 

「さんきゅ〜一輝♪」

 

コマ姉は羨ましそうにそれを見つめナツ姉も気に入ったようだ・・・まぁいいか、蛍にあげるプレゼントはもう決まってる・・・

 

その後、れんげと蛍は余ったプレゼントのうち、自分のプレゼントでない方を手にした。れんげは蛍の持って来たアロマキャンドル、蛍はコマ姉の選んだシュシュであった。

蛍はとても嬉しそうであった。

 

 

その後もみんなで盛り上がり、俺は少し風に当たりたくなったので外に出た。

 

「・・・やっぱりなんだかんだで結構盛り上がったな・・・」

 

ガラッ

 

「あ、先輩どうしたんですか?」

 

すると、扉から蛍が出て来た。

 

「蛍・・・ちょっと風に当たりたくなってね・・・」

 

「あ、私もです・・・」

 

こうして俺たちは2人、庭で風に当たっていた・・・すると、

 

「あっ!!先輩、雪ですよ!!」

 

空を見ると白い雪がチラチラと降り出した。

 

ホワイトクリスマスとはなんとも風情がある・・・

 

「・・・・・・よしっ」

 

そして俺はある決心をした。

 

 

 

 

 

「蛍・・・ちょっとだけついて来てくれる?」

 

「え・・・?あ、ハイ・・・」

 

俺たちは懐中電灯を手に歩き出すと少し離れたところにある川辺についた。

 

「まず最初に・・・蛍、これプレゼント」

 

そして俺は買っておいた蛍へのプレゼントを出した。

 

「え・・・これって・・・」

 

「蛍に似合うと思って・・・買って来たんだ、開けて見て?」

 

そう言われた蛍は小箱を開けて見ると、

 

「わッ これってッ」

 

 途端に、目を輝かせた。

 

 小箱の中に入っていたのは、小さなネックレスだった。銀色の素体に美しい装飾が施された2枚のリングが安置されている。

 

「こ、これを私に、ですか?」

 

「あ、ああ」

 

 尋ねてくる蛍に対し、俺もまた、少し照れくさそうに目を逸らしながら答える。

 

そして俺は言葉を続けた。

 

 

 

 

 

 

「俺さ・・・蛍にずっと言いたかったことがあるんだ・・・」

 

「・・・え?」

 

俺の言葉に蛍はキョトンとした。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

顔が熱い・・・心臓がばくばくする・・・でも、言わなければ前に進めない・・・

 

(勇気を出せ越谷 一輝!!今日はそのために来たんだろ!?)

 

 

「・・・・・・先輩?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺・・・蛍のことが好きだ」

 

 

 

「・・・・・・え?」

 

俺の告白に蛍は顔を赤く染めた。

 

「え・・・?先輩・・・それって・・・」

 

「ずっと一緒にいて・・・いつしか蛍のことを目で追っているようになった・・・そして・・・気づいたんだ、この気持ちに」

 

心臓がドキドキする、しかし、自然と言葉が出て来た。

 

 

 

 

「俺、越谷 一輝は一条 蛍のことが好きです。もしよければ俺と付き合ってください」

 

そして、俺は蛍の目を見て再び告白した。

 

 

「わ・・・私も・・・」

 

すると、顔を真っ赤に染めて蛍が言葉を続けた。

 

「私も・・・一輝先輩のことが好きです・・・こんな私でよければ・・・よろしくお願いします」

 

こうして、2人の思いが通じあった。

 

「あは・・・なんか・・・恥ずかしいな・・・」

 

「えへへ・・・そうですね・・・」

 

2人は見つめあって恥ずかしそうにはにかんだ。

 

「あ・・・そうだ、実は私からも・・・」

 

そういうと蛍は蛍手に持っていた紙袋を取り出すと俺に差し出して来た。

 

俺が包みを開けると

 

 

 

「マフラー・・・」

 

そこには手編みの白いマフラーがあった。

 

「編んでくれたの?」

 

「はい・・・」

 

蛍は照れながらそう返した。すると、蛍は手を伸ばしてマフラーを俺の首にかけて来た。

 

「あ・・・蛍・・・」

 

「苦しくないですか?」

 

俺の首にマフラーを巻き終えると蛍は手を離した。

・・・マフラーはとても暖かく少し顔が暑かった。

 

「それで・・・このネックレスなんですが・・・」

 

「・・・?」

 

「付けて・・・もらえますか?」

 

考えて見たらそうである。プレゼントされた蛍としては、取りあえず付けてみたいと思うのは当然の事だった。

 

「貸して」

 

 俺は蛍の手から小箱を受け取ると、ネックレスを手に持って蛍に近付く。

 

 近付く2人。

 

 互いの吐息が重なるくらいに近付いた状態で、俺は蛍の首にネックレスを付けてやる。

 

「ど・・・どうですか?」

 

顔を赤く染めて聞いてくる蛍に俺はストレートに答えた。

 

「似合ってる。とても似合ってる。綺麗だよ」

 

「・・・嬉しいです」

 

その言葉に蛍はとてもしあわせそうだった。

 

 

 

空には綺麗な雪がなお降り続いていた。

 

 

 

 




祝!!カップル成立!!




感想お待ちしています!!


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30話 恋人と初詣に行った

正月スタートです


「〜♪〜〜♪〜〜〜♪」

 

新しい年になって俺は初詣に行くために駅前にいた。

現在俺はグレーの着物に袴を履いている。

普段、俺たちは初詣には近くの神社で済ませるが、今年は特別である。それは・・・

 

「すいませーん、お待たせしましたー」

 

俺が声のする方向を見ると、そこにはクリスマスに晴れて恋人同士になった蛍がいた。蛍は綺麗な着物姿でとても魅力的だった。

 

「すいません、着物の着付けに少し時間がかかって・・・」

 

「いや、俺もついさっき来たからだから」

 

そう、これから俺と蛍は2人で初詣に行くのだ。

2人での初詣デートということでとてもドキドキしている。

しかし、それ以上にとても幸せであった。

 

「あ・・・あの・・・先輩、わたしの着物似合ってますか?」

 

突然、蛍が恥ずかしそうに聞いて来た。

 

「ああ、すごく綺麗だよ」

 

「あ///////・・・ありがとうございます・・・」

 

俺の素直な感想に蛍はとても嬉しそうだった。

俺も、こんなに素敵な彼女が出来てとても嬉しかった。

 

ガタンゴトン〜ガタンゴトン〜

 

「あ、電車来たみたいですよ」

 

しばらくすると、一両しかない電車がやって来た。俺と蛍は電車に入るが、

 

「あ、蛍整理券取り忘れてるよ」

 

整理券を取る電車には慣れてないのかそのまま席に座った蛍に俺は整理券を渡した。

 

「あ、す、すみません・・・私慣れてなくて・・・」

 

「気にしなくていいよ、こういう電車ってなかなかないみたいだしね」

 

こうしている内に電車が発進し、俺たちは目的地に着くまで車内でおしゃべりしていた。

 

しばらくすると、電車は目的地の駅に着いた。

 

俺は電車が止まると立ち上がり、蛍へ手を差し伸べた。

 

「あ・・・ありがとうございます先輩・・・」

 

おずおずと手を乗せ、蛍も立ち上がる。が、話はそこで終わらなかった。

 

「あの・・・先輩、このままでも・・・良いですか?」

 

「このまま?」

 

「先輩と・・・手をつないでいたくて・・・」

 

蛍は顔を赤く染めてそう聞いて来た。その言葉に俺は優しく笑い、

 

「良いに決まってるだろ?俺たちは付き合ってるんだからさ」

 

「はいっ」

 

蛍は嬉しそうにはにかみつつも、きゅっと繋いだ手を少しばかり強く握ってくる。俺もそれがとても嬉しかった。

 

 

 

 

駅を出ると、そこは俺がたまに行く商店街よりも大きな建物が並んでいる街だった。何よりここにはコンビニがある。後から聞いたが、ここもかなりの郊外だったようだけど・・・

 

「向こうの通りの先に神社があるんだ」

 

「あ、あの出店出ているところですね?」

 

そこにはいくつもの屋台がありとても賑わっていた。

 

「どこか行きたいところとかある?」

 

「あ・・・それじゃああそこ行ってみませんか?」

 

そう言って蛍が指差したのはわたあめの屋台であった。

 

「いいね、じゃあ行こうか」

 

俺もわたあめは大好きである。よく祭りとかみんなで行くときもよく買っていた。

こうして俺たちはわたあめの屋台へ向かおうとすると、

 

「あれ?一輝と蛍来てたんだ」

 

ふと聞き覚えのある声が聞こえ振り返ると

 

「コマ姉、このみさん?」

 

そこには着物を着たコマ姉とこのみさんがいた。

そういえば2人も初詣に行くとか言ってたのを思い出した。

 

「あ、一輝くんヤッホー」

 

「2人も来てたんですね」

 

「なんだ、一輝と蛍もこっちの神社に来るなら一緒に行くのに」

 

コマ姉・・・俺たちは今日はデートで来てんだよ・・・コマ姉たちが一緒だと意味ないじゃん・・・

 

「まぁまぁ小鞠ちゃん、2人にも事情があるんだからさ・・・ね?」

 

このみさんはそういうと俺たちにわかるようにウィンクした。あ・・・この人わかってるな

 

「まぁ・・・そうですね」

 

「はい・・・」

 

まぁバレたところで隠すことじゃない、俺と蛍は互いにそう思った。

 

「すいませーん、わたあめを2つください」

 

俺がわたあめを注文するとメガネのおじいさんが

 

「お、お兄さん袴似合ってるねーお連れのお姉さんも美人だし、2人にはおまけしちゃおうか」

 

「「え?」」

 

俺たちは慌てて遠慮しようとしたが

 

「いいからいいから、30円おまけな」

 

わたあめを少し大きめに作ってくれたばかりか30円おまけしてくれた。

 

「2人とも・・・大人扱いされてる・・・私も・・・」

 

それを見てコマ姉が羨ましそうに見ていた。

 

「んで、そっちの子は・・・」

 

おじいさんがコマ姉に視線を向けるとコマ姉はビシィッとなんか大人っぽい?ポーズをしているようだ・・・しかし俺には・・・

 

「お嬢ちゃんはスーパーマンごっこかい?お姉さんたちに連れて来てもらえてよかったねぇ」

 

「・・・ぷっ」

 

笑いながらそういうおじいさんに俺は思わず吹き出してしまいコマ姉は表情が固まっていた。

 

 

 

フッヌー・・・

 

お嬢ちゃん扱いされたコマ姉はとても機嫌を損ねていた。

 

「コマ姉、せっかくの初詣なんだから機嫌なおせって・・・」

 

「だって私のほうがお姉さんなのにお嬢ちゃん扱いするんだもん、一輝ちょっと笑ってたし」

 

「いやだから悪かったって・・・なんども謝ってるじゃん、それになんだかんだでおまけしてくれてたし・・・子供にはみんなもおまけって言ってたしさ」

 

「それがダメなの!!」

 

フォローのつもりがさらに機嫌を損ねてしまったようだ・・・まぁそのうち機嫌も直るだろう

 

すると、コマ姉は石段をしばらく見つめると一段飛ばしで登り始めた。

 

「コマ姉、段飛ばしは危ないって・・・」

 

「願掛けしてんの、一段飛ばしで階段上がりきったら願いが叶うように」

 

多分無理だと思う・・・しばらく一段飛ばしで上がってると踊り場が出て来た。さて・・・コマ姉はどうする?

 

「ここの踊り場は2歩で歩けたらOK、良いよね?」

 

「まぁ・・・良いじゃない?」

 

俺は呆れながらそう言った。

しかし、コマ姉の足では2歩はおろか4歩くらい必要だった。

 

「・・・着物じゃなかったらいけてたはずだからセーフ」

 

ごまかした・・・コマ姉今ごまかした!!

 

境内に着くとやはり待ちの方に来たということもありかなり混んでいた。俺たちは列に並び順番を待っていた。

 

「よしっ、並んでる間に今年こそ大きくなれるように念をこめておこう、2人ともお願い」

 

なんで俺たちまでコマ姉の身長お願いしなきゃいけないんだよ

 

「てかコマ姉・・・確かお願い事って口に出しちゃダメじゃなかったっけ?」

確かそんなことを聞いたことがある。お願い事をした後も言っちゃダメとかとよくいうし俺もあまり詳しくはないけど・・・

 

「なんでこのみちゃんも電車乗る前に言ってくれないのー!?」

 

「んなこと言われても電車乗る前から速攻で言ってたもん、あの時点できっともうダメだったんだよ」

 

なるほど、どうやら俺たちに会う前にもう言っちゃってたようだ・・・

 

「え・・・え・・・?じゃあ私今日何しに来たの?せっかく遠出までして来たのに・・・」

 

なんか・・・さすがに可哀想になって来た・・・何か教えてやらんと・・・

 

「じゃあコマ姉、間接的に背が大きくなるようにお願いしたら良いんじゃないか?」

 

「そ・・・それって明日になったら私以外の人の身長が半分になってるとか・・・!?」

 

ちょっとスケールが飛躍しすぎなのとネガティブだがまぁそんなところだ

 

「もうすぐ順番だから早めに考えておきな」

 

コマ姉は慌てて何が良いかと考えていた。

 

そしていよいよ俺たちの番になった。俺たちは賽銭箱に5円玉を入れると早速お願いした。

 

((どうか今年も・・・))

 

((蛍/一輝先輩と一緒にいられますように・・・))

 

2人の願いは全く同じものだったのはいうまでもなかった・・・ちなみにコマ姉はあれからなかなか思いつかず後ろが使えていたこともあって慌ててしまい・・・結局、

 

「カルシウム!!」

 

と叫んだ・・・だから声に出しちゃダメだってば・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、コマ姉たちと別れた俺たちは周囲を散策していた。

 

「あっ・・・蛍、おみくじやってるよ」

 

俺の指差す場所にはおみくじを売っていた。

 

「良かったらやっていかない?」

 

「あ、はいっ!私もやりたいです!!」

 

蛍も嬉しそうに答えたので早速おみくじ売り場へ向かった。俺たちは五角形の筒を振り、出て来た竹を巫女さんに渡すとおみくじを渡された。

 

「あっ、私大吉です!!」

 

蛍が嬉しそうに見せたおみくじは紛れもなく大吉だった。

 

「ええっと・・・俺は・・・あっ大吉だ・・・」

 

よく見ると俺のおみくじも大吉だった。さらに詳しく見て見ると・・・

 

恋愛・・・これからさらに向上するでしょう

 

の一文が書かれていた。

 

「先輩・・・」

 

「ははっ・・・」

 

俺たちは見つめ会うと嬉しそうに笑いあった。

 

 

 

 

 

ガタンゴトン〜ガタンゴトン〜

 

初詣から帰りの電車の中・・・俺と蛍は隣同士の席で座っていた。遠出ということもあってかお互い少し疲れていた。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

ふと気づくと、蛍が俺の肩で気持ちよさそうに眠っており、手は俺の手を握っていた。

 

「・・・やっぱり可愛いな・・・」

 

そう思いながら俺も蛍の手を握り返した。

 

今年はとても素晴らしい年になりそうだ・・・

 




どうですか・・・甘く・・・できたでしょうか?







感想待ってます!!


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31話 給食にカレーが出た

皆さんにお知らせがあります・・・私、クロバット一世ですが・・・四月から諸事情によりかなり投稿が遅くなります。おそらく半年近く投稿できないかもしれませんが空いてる時間を見つけて投稿しますので今後ともよろしくお願いします。

ちなみに今回はどうしても描きたかった過去編を投稿します。


 

これは・・・越谷 一輝が旭丘分校に来て間もない頃のお話

 

「やっすみじかんー♪やっすみじかーーん♪」

 

現在授業が終わって休み時間に入った時間である。

 

「ウチ、ブロックであそぼー♪一輝も一緒にやろー」

 

そう言って元気よくブロックのあるおもちゃ箱へと向かったのは、当時小学2年生のナツ姉こと越谷 夏海である。

 

「う・・・うん、ナツ姉」

 

そのナツ姉の後ろについて来ているのが当時小学1年生だった俺、越谷 一輝である。

 

「えへへ、小吉さ〜ん♡」

 

その後ろでランドセルの中に入っていたぬいぐるみの小吉さんで遊びだしたのが当時小学3年生のコマ姉こと越谷 小鞠である。

 

「あ、小鞠ちゃん学校にぬいぐるみ持ってきちゃダメじゃない」

 

そんなコマ姉に注意をしているのが当時中学1年生の富士宮このみさん、

 

「先生に見つかったら没収されるぞー」

 

頬杖をつきながらコマ姉に声をかけたのが当時中学3年生の駄菓子屋である。

 

「センセも授業中に遊ばなきゃいいっていってた」

 

コマ姉はこの小吉さんのぬいぐるみが大好きでいつも大事に持ち歩いていたのである。

 

「・・・このみさん・・・ひか姉って今日休みなの?」

 

ナツ姉とブロックで遊んでた俺はふと当時小学5年生だったひか姉の姿がないことに気づくとこのみさんにそう聞いた。

 

「風邪でも引いたのかな?」

 

「昨日までピンピンしてたぞ?あーでも今日の給食カレーだからひかげの分も食べれるなー」

 

「だっ・・・ダメだよ駄菓子屋!!ひか姉苦しんでるかもしれないんだよ!?心配しなきゃ!!」

 

俺は慌てて駄菓子屋に言った。

 

「じゃあ一輝はおかわりなしだな♪」

 

すると、駄菓子屋がからかうつもりでそう言った。すると、

 

「・・・ふぇぇぇんだってぇぇぇぇえ」

 

「うおっ!?待て待て悪かったって一輝!!」

 

「もう駄菓子屋!!一輝くん泣かせちゃだめだよ!!」

 

このみさんは慌てて俺を撫でて慰めた。幸い今回はすぐに落ち着いた。

 

そう、当時の俺はものっすごい泣き虫だったのである・・・何かあるとすぐに泣いてこのみさんや母さんに泣きついていた・・・今思うとすごい恥ずかしい・・・

ガラッ

 

「ういーっす」

 

すると、噂をすれば影とやら・・・ひか姉が遅れてやってきた。

 

「おっ、ずいぶん余裕の登校だな」

 

「いやーちょっとごたごたがあって遅れた」

 

すると、ナツ姉がひか姉を見つけた

 

「ひか姉遅刻かー!?」

 

「いいじゃんか別にー」

 

「いーけっないだーいっけないんだー♪ほら、一輝もー」

 

「えっ!?えと・・・せーんせいにいっちゃーおー?」

 

ナツ姉に催促された俺はナツ姉に続いた。

 

「お前ら子供か」

 

子供である。

 

「って・・・」

 

「あれ?」

 

すると、俺たちはふとひか姉の後ろにいるソレに気づいた。

 

「ひか姉の後ろになんかいる!!」

 

「うわぁ・・・赤ちゃんだ・・・」

 

そう、そこにいたのは皆さんご存知、当時赤ん坊だったれんげである。

 

「えっ!?ひかげちゃん学校にそんなの持ってきちゃダメじゃないっ!!」

 

「先生に見つかったら没収されるぞ」

 

「おおーーー動いてるっ!!」

 

「か・・・噛みつかない?」

 

「あんたら人の妹なんだと思ってんの」

 

まだ幼かった俺には赤ん坊とは未知の生命体のような存在であったので恐る恐るそう聞いたのだ。

 

なんでも親が仕事で忙しく、当時は大学生だった一穂先生もいなかったため今日は学校で面倒見てもらうことになったらしい、なお、今日の給食がカレーだと覚えていたため学校に来たとのことだ。

 

「じゃあ駄菓子屋はい」

 

そう言うとひか姉はれんげを駄菓子屋に差し出した。

 

「え?」

 

「先生がさ、一番年長者の駄菓子屋がれんげの世話係やれって言ってた」

 

「はぁ!?なんだよそれっ!!こういうのはこのみのほうが適任だろ!!」

 

「そう言われても決まったもんは決まったんだしよろしくたのむよ年長者」

 

駄菓子屋は慌てて抗議するがひか姉は聞く耳持たんらしい

 

「はーい、なっちゃんと小鞠ちゃんと一輝くんは一緒に遊ぼうねー眼鏡君もおいでー」

 

「あっおい!!」

 

このみさんは俺たちを連れてその場を離れた・・・ちなみに眼鏡君とはスグ兄のことである。

 

「このみさん、駄菓子屋ほっといていいの?」

 

「へいきだよー♪駄菓子屋強いから」

 

心配する俺にこのみさんは優しくそう言った。

 

「一輝〜早くブロックやろー、今日は2人で積み木の高さ最高記録作るんだよー」

 

すると、ナツ姉が俺をせかしはじめた、

 

「あ・・・ごめんナツ姉」

 

「おー、なっちゃん、一輝くんふぁいとー」

 

ナツ姉はよく俺をいろんなところに連れ出して遊んでくれる。トラブルに巻き込まれることも多いが当時から一番一緒に遊んでいたのは間違いなくナツ姉だろう

 

「一輝そっちを積み上げろ〜」

 

「い・・・いえっさぁ・・・」

 

ナツ姉の指示に従って俺は恐る恐る積み木を積み上げていった。

 

積み木はどんどん高くなっていきあと1つ俺が積み上げれば完成というところまで来た。

 

「よっしゃーいけ一輝〜高みの道へー」

 

「まっ・・・まかせろ!!」

 

ナツ姉の声援もあり勢いが出て来た俺は慎重に積み木を開こうとした瞬間、

 

ガラァァァンッ!!

 

赤ん坊れんげが積み木に突進して積み木は崩れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ・・・・・・積み木が・・・・・・」

 

「ウチらの・・・さいこうきろくがぁーー!!」

 

一瞬の静寂の後、ナツ姉と俺の泣き声が教室に響いた。

 

「うわぁぁぁん!!あと1個だったのにー!!」

 

「どういうことーーっ!!」

 

「ちょ・・・2人ともそれくらいで泣かないのっ!!」

 

そんな2人を見てコマ姉が俺たちを慰め出した。

 

「ほら、2人とも落ち着いて、家に帰ったら私のお菓子半分2人にあげるから」

 

「え・・・まじで?」

 

「・・・ゔんなぎやむ・・・」

 

瞬間、2人は泣き止んだ。

 

「おおーーーさすがお姉さんだね、えらいよ小鞠ちゃん」

 

俺たちを慰めたコマ姉にこのみさんは感心した。

 

「ふふーん、私もう3年生だもーん。これくらい当然・・・」

 

コマ姉は得意げになるが・・・ふとコマ姉が隣を見ると、

 

 

 

 

 

 

 

 

コマ姉のとっても大事なぬいぐるみの小吉さんがれんげに噛みつかれ、その後床に叩きつけられ・・・よだれでベットベトになっていた。

 

「小吉さん小吉さん小吉さん小吉さんがーーー!!小吉さんがべっとべとー!!」

 

瞬間、コマ姉は大泣きした。強がってもやっぱり当時からコマ姉はコマ姉であった。

 

「・・・あれ?れんげちゃんがいない?」

 

するとま、俺はれんげの姿がないことに気づいた。

 

慌てて俺は廊下へと走った。

廊下へでると・・・配膳室へと入っていくれんげが見えた、

 

「たしかあそこって・・・カレーが置いてあるところ!!」

 

みんながずっと楽しみにしていたカレー・・・慌てて俺は配膳室へと入った。

 

中に入ると、れんげがよりにもよってカレーの鍋を引っ張りだそうとしていた。

 

「ちょ・・・だめだよれんげちゃん!!それみんなが楽しみにしているカレーなの!!離して!!」

 

「んなー!!」

 

慌ててれんげを引っ張るがれんげはカレーを離さない

 

「おい一輝!!そっちにれんげいんのか!!」

 

すると、騒ぎを聞きつけた駄菓子屋たちが配膳室に入って来た。

 

「ほら!!れんげちゃんカレーはだめ!!離して!!」

 

「なぁーっ!!」

 

俺はれんげを引き剥がそうと必死で引っ張るがれんげはなかなか離さない・・・そして

 

「ちょっ・・・待って一輝くん!!そんなに強く引っ張ったら・・・」

 

 

 

 

 

ガコッザバァッ!!

 

遂にカレーは床へと盛大に溢れていった。

 

「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」

 

その光景にみんなが沈黙する・・・-

 

ふとれんげが溢れたカレーを指で舐める

 

パァァァ

 

「うままっ」

 

どうやら気に入ったようだ・・・

 

「カレーが・・・」

 

「楽しみにしてたのに・・・」

 

ぷるぷる・・・

 

幼いナツ姉とコマ姉は目に涙が溢れていき・・・

 

「あ・・・ご・・・ごめんなさい・・・だって・・・カレーを守りたくて・・・」

 

責任を感じた俺も涙が溢れていき遂に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダム決壊

 

「「カレーカレーカレー!!ずっと楽しみにしてたカレーがーーーーー!!」」

 

「うわぁぁぁん!!ごめんなさぁぁぁぁい!!ぼくのせいでぇぇぇぇ!!」

 

「「カレェェェーーー!!!あああああっ!!!」」

 

「ごめんなさぁぁぁぁい!!」

 

「「ぴやぁぁぁぁぁぁ!!!カレェェェェェカレェェェェェかれええーーーー!!」」

 

「ふぎゃぁぁぁぁぁあ!!!ごめんなさぁぁぁぁい!!」

 

教室に俺とナツ姉、コマ姉の3人の絶叫が響き続けた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在

 

「こうして赤ん坊のれんげは初登校にして学校を制圧したってわけ」

 

「す・・・すごい話ですね・・・」

 

給食の時間、偶然カレーだったことでふとこの時のことを思い出した俺は蛍に教えたのだった。

 

「あれは本当に衝撃的だったよ・・・しばらく俺はれんげがトラウマでひどい時は見ただけで泣きそうになったからな・・・」

 

まぁ今ではいい思い出だが・・・

 

「ウチそんなことしたん?」

 

 

れんげはその日のことを覚えてないんだよな・・・

 

俺はため息を吐きつつカレーを口にした。





つい書きたくなった過去編書きました!!




感想待ってます!!


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32話 姉の料理を見守った

好きな話の1つです


世の中には、こんなことわざがある。

 

『天災は忘れた頃にやってくる』

 

要するに「油断大敵、危機はいつくるかわからないから用心せよ」とのことだ。そう、俺たちの危機は突然やって来たのだ。

 

「・・・あのさぁ」

 

冬も終わり春になって間もない頃、俺たち4兄弟が居間でくつろいでると突然コマ姉が『それ』を・・・おぞましい言葉を述べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の晩御飯、私が作ろうかなって思うんだけど」

 

「「「・・・・・・っ!!!!」」」

 

瞬間、俺たち3人に戦慄が走った。

 

「えっ!!今日晩御飯抜き!!?」

 

「ナツ姉ぇぇぇぇえ!!!急いで駄菓子屋いくぞ!!今日の夕飯のパンを買うんだァァァァ!!」

 

ナツ姉が驚愕し俺は慌てて財布片手に外に出ようとした。

 

「なんで最初から食べないつもりなの!!」

 

俺たちの態度にコマ姉が怒る。だがこれは至極当たり前の判断なのだ。なぜなら前にも言ったと思うがコマ姉の料理は壊滅的にヤバい・・・何よりコマ姉自身が自覚を持ってないのだからなおタチが悪い

 

「だってさぁコマ姉!!数日前にグラタン作って失敗したばっかりじゃん!!」

 

「そうだよ姉ちゃん!!味付け忘れてコゲの味しかしないあの味無しコゲタン!!あれを忘れたか!!」

 

あれはひどかった・・・まさかチーズすら入れるのを忘れていたとは思ってもいなかった。

 

「ま・・・まぁ覚えてるけどさ・・・アレはちょっと味付けるの忘れただけだし・・・それに焦げだほうが香ばしい感じがするかなーと思って・・・」

 

「炭化と香ばしさは似て非なるものだから!!」

 

まずい・・・なんとかコマ姉の暴挙を止めなければ・・・

「そ・・・そうだ!!それなら俺かスグ兄が手伝うよ!!良いよねナツ姉!?」

 

「い・・・良いじゃん!!それなら安全だし!!」

 

手伝いと言いつつ俺かスグ兄が中心に料理をすれば・・・

 

「ダメーお兄ちゃんや一輝が手伝うと全部1人でやっちゃうんだもん、それじゃ面白くないじゃん」

 

くそ・・・バレたか・・・

 

「面白さで俺たちの一食を奪うような真似はやめてくれよ!!」

 

これはマズイ・・・俺たちじゃ説得しきれない・・・

 

ガラッ

 

「あんたたちどうしたの、ガヤガヤさわいで?」

 

すると、騒ぎを聞きつけたのか母さんが入って来た

 

「あっ!!母さん良いところに!!コマ姉が俺たちに毒盛ろうとしてるんだよ!!なんとか説得して!!」

 

母さんならうまく諭してくれるはず・・・

 

「ああ小鞠が料理するってのね?別にいいじゃない」

 

しかし現実は残酷である。

 

「ええ!?ちょっと母ちゃん!?」

 

「娘が息子に毒盛ろうとしてんだよ!?いくら俺やナツ姉が育ち盛りでも毒は食べられないから!!」

 

あまりの衝撃発言に俺たちは驚愕した。

 

「あ、お母さん絶対に手伝いに来ないでね!!1人でやるんだから!!」

 

「はいはい手伝わないよ、それより一輝か夏海、この回覧板隣に届けてくれない?」

 

回覧板より今日の夕飯の危機でしょ!!

 

「えーウチこれから宿題が・・・」

 

「俺も・・・問題集があと1ページだけ残ってるから・・・」

 

それに回覧板届けるのめんどくさい

 

「まったく・・・一輝はともかく夏海はいつも自分から宿題やるなんて言わないくせに・・・しゃあないね、兄ちゃんお願い、それじゃ母さん洗濯してくるから」

 

「・・・・・・・・・・・・(えぇ〜)」

 

スグ兄は嫌そうな顔をして母さんを見た。そして母さんはそのまませんたくをしに居間を後にした。俺とナツ姉はそれを見つめると

 

「・・・一家の食の危機というのになんたる無責任・・・あんなので母が務まるとお思いですか一輝くん・・・」

 

「まったくですね・・・母さんは尊敬してるけどこれはいくらなんでも無責任ですね・・・」

 

「あのさぁ・・・2人ともいくらなんでも私をバカにしすぎじゃない?」

 

すると、コマ姉が怒りながら俺たちに文句を言って来た。

 

「えー?これでも控えめに言ってるつもりなんだけど・・・」

 

「オブラートに包んで言ってるな」

 

「いや、結構私を馬鹿にしてたよね?」

 

失礼な、本当に控えめに言ってるっての。これ以上どう控えて言えと・・・

 

「よーし!!そんなに言うんなら見ててよ!!今日こそすっごい料理作って目にもの見せてあげるから!!」

 

ハイ出ましたコマ姉の料理失敗フラグ。コゲタンを作った時も同じこと言ってた気がする・・・

 

 

 

 

そして時刻は午後5時・・・

 

「もうこんな時間か・・・そろそろ晩御飯の用意しなきゃ」

 

いつも母さんはこのくらいの時間に準備をするのでコマ姉のそうするつもりのようだ・・・

 

「うーん・・・何作るかなぁ・・・こう夏海と一輝が驚くような創作料理を・・・」

・・・ささっ

 

キッチンへと入っていくコマ姉を俺はこっそり観察していた。

 

「・・・さっそく不安なワードを並べて来た・・・様子を見に来て正解だったな・・・」

 

やっぱり心配になった俺はコマ姉を見守りあわよくば手伝おうと言う算段だ。さて・・・コマ姉はどうなって・・・

 

 

 

ここから越谷 一輝のセリフ、ナレーションはほとんどツッコミになるのでご了承ください

 

「まずフランス料理のように前菜を・・・オードブルで・・・」

 

(コマ姉・・・そもそもフランス料理わかってるのか?)

 

「そしてそれを和風アレンジにしつつ餃子を・・・うーん難しいなあ・・・」

 

(なんでだよ!!なんで和風アレンジに餃子が出てくんだ!!コマ姉一体どんなアレンジ加えるつもりだ!!)

 

「その前に材料なにあったか確認しないと・・・」

 

そう言うとコマ姉は戸棚を開けて料理を確認しだした。戸棚の中には・・・

 

 

 

カレールゥがあった

 

 

「・・・カレーでいいや」

 

(よぉっしぃっ!!)

 

いい判断だコマ姉!!シンプイズベスト!!

 

「だ・・・妥協するわけじゃないけどみんなカレー好きだもんね!!カレーもいろんな種類があるし私の理想のカレー作れば大丈夫大丈夫!!よーし、じゃあ野菜から切っていこー」

 

そう言いながらコマ姉はさっそく玉ねぎを切り出した。

 

(もう普通のカレーで良い!!コマ姉の判断は正しいよ!!)

 

あとは余計なアレンジをせず凡ミスをしなければなら・・・

 

 

 

 

「フンフンフーン♪フッフンフー♪フンフー♪フッフンつああ・・・」

 

・・・あれ?

 

「っあああ・・・フンフあああ・・・ああああ」

 

ポロポロ

 

コマ姉の目からは涙が溢れたきた。あぁ・・・タマネギはよく冷やさないと・・・

 

「もー!!タマネギ嫌い!!目が痛すぎる!!鼻歌も歌えない!!」

 

コマ姉はタマネギに八つ当たりを始めた。

 

「も・・・もう具材はタマネギだけででいいや・・・結構頑張ったしみんなわかってくれるよね・・・」

 

(ちょっと待て!!タマネギだけのカレーってさすがに寂しいぞ!?煮込んで溶けちゃったらタダの具なしカレーじゃん!!そこはせめて人参かじゃがいもを入れようよ!!)

 

「あれ・・・カレー鍋もう出てる・・・」

 

よく見るとカレー鍋がすでにスタンバっていた。

あれ?あれって確か・・・

 

コマ姉が開けると、中には肉じゃがが入っていた。

 

・・・やっぱり昨日の肉じゃがの残りか・・・

 

「そうだ!!この肉じゃがを具材にしよう!!カレーに必要なものは大体入ってるしこのまま温めれば・・・イケる!!す・・・すごい発想だ!!こんな発想プロでも思いつかない!!」

 

・・・すいませんコマ姉・・・その方法すでにネットによくあります・・・

 

「肉じゃがの甘さがカレーのコクを作り出す・・・夢のコラボ・・・!!もっとコクを作るためにハチミツ・・・は無かったはずだから・・・」

 

・・・あれ?コマ姉?小鞠さーん?なんだかまたおかしな方向に・・・

 

「よしっ!!砂糖をてんこ盛り入れよう!!」

 

(アホかァァァァァァァァァァァァ!!!)

 

ふざけてるのかあんたは!?そんなもんまずいに決まってんだろ!!

 

「これはすごいものが出来そうな気がする!!砂糖砂糖・・・」

 

マズイッ!!コマ姉が砂糖を探し出した・・・こうなったら多少強引でも砂糖を隠さんと・・・

 

「あれ・・・砂糖が無い・・・」

 

よく見ると、いつも砂糖を置いてある場所には砂糖が無かった・・・一体誰が・・・

 

 

「お〜砂糖にアリいっぱいきよる」

 

すると、ふと庭からそんな声が聞こえ様子を見ると、ナツ姉が砂糖を庭の一箇所に撒いてアリを集めていた。

 

(よしっ!!でかしたナツ姉!!)

 

まさかナツ姉のイタズラに我が家の食卓が守られるとは・・・さて、それじゃあ俺はまたコマ姉の様子を見に・・・

 

「・・・ん?なにか焦げくさい?」

 

かすかだが・・・なにかが焦げてるような匂いがする・・・まさか!!

 

「わ!わ!お鍋から煙が!?」

 

キッチンからコマ姉の慌てた声が聞こえた。どうやら火をつけっぱなしにした肉じゃがの鍋が焦げ出したようだ。

 

(はぁ・・・仕方ない・・・こうなったら手伝うかな・・・)

 

コマ姉には怒られるかもしれないがもうほっとけない・・・そう思った俺がキッチンへ向かうと、母さんがコンロの火を消していた。

 

「・・・あんた何やってんの?ちょっと煙出ただけでしょう?火止めればいいじゃない」

 

慌てるコマ姉のところに心配してきたみたいだ。その後、母さんはコマ姉に簡単な指示を出した後その場を去ろうとした。どうやら「1人でやりたい」というコマ姉の今朝の意見を尊重したらいるようだ。すると、

 

「お・・・お母さん、美味しいカレー作りたいからやっぱり手伝って」

 

「・・・はいはい」

 

コマ姉の言葉に母さんは優しく答えて手伝い始めた。

 

(・・・そういえば)

 

その時、俺はふと昔のことを思い出した。

 

この村に母さんに連れてこられてしばらく経った頃のこと、母さんが夕飯の支度を始めようとしていると幼い俺が恐る恐る近づいてきた。

 

「ん?あぁ一輝?ごめんね、今から夕飯作るから」

 

俺に気づいた母さんは優しくそういうと再び準備を始めた。

 

「あの・・・かあさん」

 

「ん?」

 

俺の声に母さんは気づき再び振り向いた。

 

「あの・・・僕も・・・手伝いたい」

 

ビクビクしながらそういう俺に母さんは優しく笑うと

 

「はいはい、いいよ」

 

その言葉に俺は嬉しそうに笑うと母さんの手伝いをした。と言ってもタマネギの皮むきやお皿を並べたりと簡単なものだったが俺にとってはとてもいい思い出である。

 

「・・・もう大丈夫だな」

 

懐かしい昔を思い出した俺は安心して部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

「はいっ!!晩御飯出来たよ!!」

 

そして晩御飯の時間、コマ姉が自信を持ってカレーを持ってきた。

 

「まぁ見た目はカレーだけど・・・うーん」

 

ナツ姉は心配そうにカレーを見ていた。

 

「なにー?食べないのー?」

 

「まぁ食べるけどさ・・・大丈夫か?」

 

そう心配しつつナツ姉は恐る恐る口にした。

 

「・・・っ!!こ・・・これカレーだ!!姉ちゃんが作ったカレーなのにカレーっぽい!!」

 

「カレーっぽいじゃなくてカレーなの!!」

 

「・・・ははっ」

 

ナツ姉に突っ込むコマ姉を見て俺はふと笑っていた。

 

「なになにどうしたの一輝、急に笑って」

 

「いや別に?それよりおかわりもらっていい?」

 

「私まだ食べてないんだから先食べないでよー」

 

そうだな、コマ姉が作ったカレー、なんだかんだ言ったってやっぱりコマ姉の「美味しいカレーを作りたい」っていう思いがあるから美味しいよな・・・

 

 

 

 

 

 

「うん、おいしっ」

 

 




個人的に気に入っていた話をもう1つ







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33話 恋人の素顔を見た


のんのんびより久々に書きます!!


 

「そっか……それじゃあしょうがないな……」

 

『すいません先輩…せっかく誘ってくれたのに…』

 

俺は現在蛍と電話をしている。ちょうど今度の休日は予定もなかったので蛍と一緒にデートでも行こうかと思い誘ったのだがその日はちょうど両親と街に買い物に行くことになっていたので無理とのことだ。

 

「良いよ良いよ、せっかく両親と買い物なんだから楽しんでかなよ」

 

『はい…また今度一緒に…』

 

「うん、楽しみにしてるよ」

 

こうして俺は電話を切るが…

 

 

 

 

「……………はぁ〜〜〜……」

 

大きなため息を吐いた。

 

「せっかく蛍が好きそうなスポットとか探したんだけどな……しゃあない、休日はテキトーに映画でも見に行こう」

 

蛍とデートを楽しみにしていたので途轍もなくガッカリしてしまった。

 

 

 

 

 

 

そして休日、

 

ガタンゴトン〜ガタンゴトン〜

 

「ふむ……今回観た映画は悪くなかったな……ナツ姉が好きそうな映画だ。コマ姉には少し内容が難しそうだけど……」

 

映画を観終えた俺は特にすることもないのでそのまま電車で帰ることにした。

今回観た映画は冒険家が謎の秘宝を巡って悪の組織と闘うと言うアクション映画だったがなかなか面白かった。

 

「……ああいう映画は蛍観るのかな……今度誘ってみよ……」

 

今後の予定を改めて考えてた。

 

「ふぁ〜まだ駅までかなり時間あるし少し寝るか……」

 

こうして俺は電車に揺られながら少し寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、

 

「ん……?いけないいけないもうあと数駅なのか……」

 

どうやら思っていたよりぐっすり寝ていたらしい。

慌てて降りる準備をしようとしたとき、

 

「はー買い物楽しかったー」

 

後ろの方から声が聞こえた。

 

「車故障しちゃって電車でお出かけになっちゃったけど疲れなかった?」

 

「ううん、大丈夫。電車も久しぶりだったし」

 

どうやら自分が寝ている間に他の乗客がこの車両に乗っていたようだ。しかし……この声どこかで聞いたような……まさか……!!

 

そう思って後ろを振り向くと……

 

 

 

家族と楽しそうに話している一輝の彼女、蛍がいた。

 

(んなっ!!ほ……蛍……なんでここに!?)

 

会話から察するに本当は車で買い物に行くはずだったのだが急遽電車で行くことになったようだ。

 

すると、蛍はカバンから板チョコを取り出すと

 

「ねーねーパパ、家帰ったらこのお菓子食べていい?」

 

と眼鏡をかけた父親に聞いていた。しかし、夕飯が食べられなくなるからやめなさいと言われると、

 

「ええー!やだやだー食べてもいいでしょー?」

 

と、そういいながら父親の膝にゴロンと寝転がったのだ。

 

「ねぇパパ……ダメ?」

 

そういいながら見つめる蛍に折れたのか蛍の父親は

 

「……仕方ないなぁ、ちゃんと夕飯も食べるんだよ」

 

と、優しく答えた。

 

「本当!?わーい!パパ大好きー!」

 

そう言って蛍はさらに父親に甘えた。

 

俺は普段と違う蛍の姿に驚いた。いつも見ている蛍とは違う姿にどこか愛くるしさを感じた。

 

そうしているうちにどうやら駅に着いたようだ。

 

俺はそのまま電車を降りると

 

「早く行こ!早く!」

 

両親と手を組みながら笑顔で蛍も電車を降りてきた。

 

「こら蛍、あんまり慌てない」

 

「大丈夫大丈夫……」

 

 

 

 

すると、ふと俺と蛍の目があった。

 

 

 

 

 

 

「//////////////〜〜っ!!!!」

 

瞬間、蛍の顔が信じられないくらい真っ赤になった。

 

 

「き…奇遇だな蛍」

 

「か……一輝先輩!?」

 

俺がいたことに気づいた蛍は顔を赤く染めて慌てふためいた。

 

「あら一輝くん?」

 

「お久しぶりです。」

 

「誰も乗ってないと思ってたからうるさかったでしょ?ごめんなさいね」

 

「いえいえ、自分はちょっと気晴らしに映画に行ってたんですけど向こうでもやることあまりなかったので……」

 

「そ……そうなんですか……」

 

蛍は未だに顔を赤く染めていた。

 

「せっかくだし一輝くんと一緒に遊んでくる?」

 

「えっ?」

 

そんな様子を見ていた蛍の母は優しく微笑みながら蛍に聞いた。

 

「う…うん」

 

「じゃあ蛍ちゃん、お夕飯までには帰ってくるのよ」

 

そう言うと蛍の両親はそのまま歩いて去って行った。

 

「わりぃ、なんか邪魔だったか?」

 

「あ、いえいえ!私も用事があったわけしゃないですし……」

 

「そっか……」

 

しばらく周囲に沈黙が続く

 

「あのさ……蛍」

 

「は……はい」

 

「蛍って普段あんな感じなの?」

 

ドッキーン!!

 

俺の言葉に蛍は大慌てした。

 

「ち、ちちちち違うんです!!ち、違わないですけど!!その……っで、電車の中誰もいないと思ってて……えっと……お父さんとお母さんの前だと……あんな感じになっちゃって……」

 

うん、やっぱりかわいい。考えて見たら普段はどこか大人びている蛍だがまだ小学5年生なのだ。

 

「やっぱり……変でした?」

 

蛍は恥ずかしそうにこちらを見つめてそう聞いてきた。

 

「そんなことはないさ、蛍だってまだ小学生なんだからさ、親に甘えたくなるのは普通だって」

 

実際俺だって時々母さんに甘えたくなってしまう時がある……まぁナツ姉たちがいる手前公にはしてないが……

 

「ただ……あえて言うとするなら……」

 

「……先輩?」

 

うん、恥ずかしい……でも……

 

「俺にもさ……たまには甘えてほしいな……なんて……」

 

(うわぁぁぁぁぁ!!スッゲェ恥ずかしい!!)

 

途轍もなく恥ずかしいことを今俺は言った。

だけどこれは本心だ。いつもしっかり者で責任感の強い蛍を知っているからこそ、時には甘えて俺を頼ってほしい。

 

「先輩……」

 

俺の言葉に蛍は顔を真っ赤に染め、少し考えると

 

「じゃ……じゃあ先輩、1つ……良いですか?」

 

「ん?」

 

「迷子にならないように……手を握ってくれませんか?」

 

恥ずかしそうに蛍はこちらを見ながらそう言った。

 

「わ…わかった…それじゃあ…」

 

ギュッ

 

「ふぁ」

 

あたたかい、蛍の手の温もりを感じてしまう。

 

「せ…先輩…」

 

「………………///////」

 

お互いに沈黙が続く

 

「………行こうか///////」

 

「……はい///////」

 

こうして俺たちは歩き始めた。

以前手を繋いだ時以上に意識してしまう。心臓の音が耳に聞こえてきている。

 

「あ……先輩、見てください。桜が……」

 

ふと近くにある桜並木を見ると桜の蕾が少し開いていた。

 

「……もうすぐ桜の季節か……今度みんなでお花見でも行くか?」

 

「はいっ!今から楽しみです!!」

 

俺の提案に蛍はとても嬉しそうにそう言った。

 

その時、

 

 

ビュウッ

 

 

突然突風が吹いた。いわゆる春一番というやつだ。

 

「きゃあっ!!」

 

突然の突風に蛍はバランスを崩し転びそうになってしまった。

 

「あぶない!!ってうお!?」

 

俺はとっさに蛍を支えようとするが足を滑らせてしまい一緒に坂を転がってしまう。

 

「いてて…大丈夫か蛍…」

 

ふと抱きしめている蛍を見ると蛍の顔は3センチと満たないところにあった。

 

「あ…先輩…」

 

蛍は顔を赤くしこちらを見つめていた。

 

「わ…悪かった…」

 

慌てて俺は蛍を離し立たせた。

 

「大丈夫だったか?」

 

「は…はい…先輩がかばってくれたおかげで…」

 

「「…………///////」」

 

再び2人に沈黙が続く

 

「そ…………それじゃあ戻るか…」

 

そう言って歩き出そうとした時、

 

 

ギュッ

 

 

突然蛍が俺の腕に抱きついてきた。

 

「ほ…………蛍…?」

 

「こ…こうしたほうが…また風が吹いても安心なので……」

 

「わ…………わかった」

 

顔を真っ赤に染めそう言う蛍とそのまま歩いた。

 

先ほどよりもはるかに心臓の音が大きく聞こえた。ふと蛍を見ると互いの目が合った。その時、2人は自然と言葉を述べた。

 

「…先輩、大好きです」

 

「俺もだよ蛍」

 

互いの言葉に2人が嬉しそうに微笑んでいると、ふと視線を感じた。そこを見ると…………

 

 

 

「…………」

 

ポカンとした顔でこちらを見つめるこのみさんがいた。

 

 

 

 

「「…………っ///////」」

 

瞬間、2人の顔は灼熱の炎のように燃え上がった。

 





ふうっ…………ついやり過ぎてしまった…………でも後悔はしていない!!


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34話 また春が来た


今まで待たせてすんません!!
のんのんびより無印編はここまで、次からはりぴーとになります。


 

「いや〜晴れた晴れた。野草採りには絶好の天気なんじゃないかな〜」

 

「そうだね、あとは蛍が来るのを待てば良いだけだし。」

 

「カズにぃ、ほたるんもう直ぐ来るん?」

 

「うん…そろそろだと思うけど…」

 

今日は道普請という村の行事が行われる。

どのようなことをやるのかと言うと、簡単に言えば周辺の掃除である。冬の雪解けで汚れた用水路の点検や掃除、道端に伸びて来た植物の枝打ちを村のみんなでやろうと言うものだ。まぁかなりの重労働と言うことで子供達は近場で遊んで良いとのことなのでれんげの家が持ってる山で野草採りをしようと言う話になったのである。

 

 

 

 

 

 

「……蛍まだかな…(そわそわ)」

 

そろそろ来る頃だと思いながらそわそわしていると

 

「一輝〜〜そんなにほたるんが心配なら迎えに行ってきなよ(ニヤニヤ)」

 

そんな様子を見たナツ姉がニヤニヤしながらそう言って来た。

 

「あぅ……その……//////」

 

「(ボソッ)昨日からすごい楽しみにしてたもんね〜」

 

たしかにナツ姉の言うとおり、昨日はすごく楽しみで無意識にニヤニヤしていた覚えがある…蛍にいろいろな野草を教えようって張り切っていたのだ。

 

「それじゃあ…俺ちょっと行って来る。」

 

「よしよし、行ってらっしゃい」

 

ニヤニヤしながらそう言うナツ姉を背に俺は歩き出した。

 

 

 

「いたいた、おーい蛍」

 

しばらく歩いていると、両親と一緒にいる蛍が一穂先生と話していた。

 

「あ、一輝先輩おはようございます♪」

 

俺が声をかけると蛍はこちらに気づき嬉しそうに駆け寄って来た。

 

「それじゃあ蛍ちゃん、一輝くん達と遊んできなさい」

 

「はーい♪」

 

蛍のお母さんは優しく蛍に手を振ると道普請のために水路の方へと向かっていった。

 

「それじゃあ行こうか蛍」

 

「はい一輝先輩、すみません遅くなってしまって」

 

「へいきへいき」

 

そう言うと俺は蛍の手を握って歩き出した。

 

「あ//////……えへへ♪」

 

すると、蛍は嬉しそうにすると手を握り返した。

 

 

 

 

「ナツ姉〜〜蛍来たよ〜〜」

 

「ほたるん来たーん」

 

 

 

ナツ姉たちは俺たちを見つけると手を振って来た。

 

「すいません、待たせてしまって」

 

「おっけーおっけー、にしても…(チラッ)」

 

「ん?…あっ!!//////」

 

ナツ姉が俺の手を見たのでそこを見ると、蛍とまだ手を繋ぎっぱなしであることに気づいた。

 

俺と蛍は顔を赤くして手を離すも

 

「いや〜〜相変わらず見せつけてくれちゃいますな〜〜(ニヤニヤ)」

 

「あぅ……」

 

ニヤニヤしながら弄ってくるナツ姉に俺たちはタジタジだった。

 

それからもしばらくナツ姉に弄られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し歩いていると

 

「そう言えば先輩、私野草採りって初めてなんですけど…どんなのが取れるんですか…」

 

ふと、蛍が見た方を見ると『この先私有地』と書かれた看板があった。

 

 

「あのーーー…私有地って書いてありますけど…まずくないですか?」

 

「あー平気だよ蛍。」

 

「大丈夫なんほたるん。ここ、ウチの山なん」

 

「…?…?」

 

れんげの言葉に蛍はよくわからなかったようだ。

 

「要するにここの山全部れんげんちの土地だって事だよ」

 

「この山って…えっ!?ええええ!?どこからどこまでが!!?」

 

「ウチもよくわからないん大体ここらへんの山ぜんぶなん」

 

まぁウチもおじいちゃんが山持ってるしそんなに珍しくないな

 

「ほたるん東京にいたときとかは山持ってなかったん?」

 

「持ってるどころか周り見渡しても山自体なかったし…もっといえば砂場とかも公園に行かないとないくらいだもん」

 

そう言えば前にテレビで観た街は土の道すら無かったな…そう考えるとウチの村って相当田舎なのかな…

 

 

 

「おーいそんなことしてる間に山菜ゲットして来たー」

 

「んなー!?先越されたん!!なっつん何とったん!?」

 

「タラの芽ー」

 

俺たちが話しているうちにナツ姉がタラの芽をゲットしていた。こう言うときナツ姉輝くんだよな…

 

「そんじゃあ蛍、俺たちも山菜探すとするか」

 

「ふふっ、そうですね先輩」

 

ナツ姉たちの様子をみて俺たちも山菜を探すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「どこかなーっとあったあった」

 

探しているとぜんまいがたくさん生えているところを見つけた。

 

「蛍、一輝〜ぜんまいとれた」

 

「あ、それ写真か何かで見たことあります。よーし…じゃあ私も…」

 

蛍も負けじと周囲の草を探し…

 

「先輩、これなんて植物ですか?」

 

植物を手に見せて来た…うん…これは…

 

「「ただの雑草だな(ね)…」」

 

「雑草…どれが食べられるのかわかんないです…」

 

俺とコマ姉の言葉に蛍はとてもがっかりしていた。

 

「じゃあ俺が食べられる山菜とか教えるよ」

 

「え、本当ですか?ありがとうございます♪」

 

俺の言葉に蛍は一気に嬉しそうな顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蛍、これがよもぎだよ、天ぷらとかおもちとかにも使える奴で…」

 

「うわぁ…たくさんありますね」

 

いくつか山菜を探しているとよもぎがたくさん生えているところを見つけた。

 

「山の中ってたくさん食べられる野草があるんですね」

 

「まぁね、けど気をつけないといけないんだよ」

 

「なんでですか?」

 

「山菜の中にはそれにそっくりな毒草もあるんだ。中には人を殺しちゃうような危険な奴もあるからしっかりと見分けないといけないんだ」

 

「…一輝先輩詳しいんですね」

 

「まぁね、ナツ姉と一緒に採りにいったり母さんに教わったりしたからね」

 

ナツ姉こう言うのすごく詳しいし母さんも結構詳しいからな…

 

「…私、この村に初めて来たとき、友達が出来るか心配だったんです。」

 

突然、蛍がそう呟いた。

 

「蛍?」

 

「ずっと東京で暮らしていたから…みんなと馴染めるのか…とても心配だったんです。けど、れんちゃんや夏海先輩、小鞠先輩あと卓先輩…なにより…」

 

顔を少し赤くして俺を見ると

 

「一輝先輩に会えた…」

 

「蛍…//////」

 

「私、ここに来てとても幸せです。」

 

俺と蛍は頬を赤く染めて見つめあっていた。

 

「蛍…」

 

「一輝先輩…」

 

…すると、

 

 

 

 

 

「ぶっうぉうぉーん!カズにぃ、ほたるーん!」

 

突然背後かられんげが走って来た。よく見ると頭にれんげ(花)の冠、背中に大きな葉っぱの羽を付けていた。

 

「お、どうしたれんげ、なかなかイカす格好だな」

 

なかなかファンシーな感じじゃないか?

 

「なっつんにつくってもらったん!!この格好ふぁ………ふぁん…この格好ファンキーなん?」

 

「ファンキー!!?」

 

ファンキーのほうか!?ファンシーじゃなくて!?

隣では蛍もどうリアクションすれば良いか困ってる…

 

 

 

 

「ま…まぁ見ようによってはファンキーかも…?」

 

「ファンキーなのーん!!」

 

れんげは大喜びで雄叫びをあげた。

 

「どう一輝?野草とれた?」

 

すると、ナツ姉たちも戻って来た。よく見るとスグ兄は口に大量のカタバミを加えてもそもそしていた。スグ兄…流石にそれはやりすぎだ……

 

「じゃあ向こうもそろそろ休憩だろうしもどろっか」

 

「はーい」

 

「そんじゃあこの後どうすっか?」

 

「うちおなかへったん」

 

確かに俺も少しお腹が減っていた。

 

「せっかく野草とったんだしウチでお昼ご飯にする?」

 

「あ、それなら私お母さんに言わないと」

 

「ご飯食べたらみんなでなんかして遊ぼうよ。」

 

「良いね、その後駄菓子屋に行くか」

 

どんどんこの後の予定が出来てきた。

 

「うち妖精ごっこしたいん!!こまちゃんも妖精になっていいん!!」

 

「いや私は妖精じゃなくて人間役がいいけど…」

 

……いや、コマ姉は絶対に妖精役の方が似合ってる。下手したられんげよりも似合うかも……そう思いながら必死に俺は笑いを堪えてた。

 

「本番に備えて妖精の正しい飛び方教えるのん!!」

 

「いやちょっと……私やるって言ってないからね」

 

「しょうがないんなーじゃあウチとなっつんが妖精役なんなー」

 

「えー流石にウチも妖精ごっこは無理だって〜〜」

 

「こうやって手を前にだして前かがみになりながらぶっうぉうぉーんって言って走るん!」

 

「ぶっうぉうぉーん!」

 

ナツ姉ノリノリじゃねえか

 

「…ははっ」

 

…思えば俺もこの村に来て良かった。

母さんやナツ姉、コマ姉、スグ兄、れんげ達、そしてなにより蛍に出会えた…やっぱり…うん

 

 

 

 

 

「俺は今幸せだな」





はい!!これで無印編終了デス!!
次は新章りぴーとですのでお楽しみに!!


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ばけーしょん編
35話 デパートに行った


大変長らくお待たせしました。

ばけーしよん編スタートです。



「デパート来たーん!!」

 

「デパートだー!!」

 

「おーっし2人ともどこいく!?」

 

夏休みも終わりが近づく頃、俺たちは駄菓子屋とカズ姉たちがデパートへ日用品を買いに行くことを知り同行することにした。駄菓子屋はゆったり買い物をしたかった様子だったが毎度お馴染みれんげのお願いには弱かったらしく結局折れた。

 

「何買おっかなー、最近新しい服とか探してたからなー。この期に買おっと」

 

「ねえねえ一輝」

 

すると、ナツ姉が俺に話しかけて来た。

 

「なにナツ姉?」

 

「今兄ちゃんとお年玉とおこづかいかき集めてゲーム機買うことにしてたんだけど………あと少しあればそれにプラスで欲しかったソフトが手に入るわけなのよ。というわけでちょっと融資してくんない。一緒にやらせてあげるからさ」

 

「ふむ………いいけど俺も服とか買うからあんまり出せないよ」

 

そう言って俺は持って来た財布からナツ姉にお金を渡した。

 

「おおっ!!サンキュ〜一輝、これなら足りるよ」

 

「ちゃんと俺にもやらせてよ。約束破ったら母さんにこの前とったテストの0点の隠し場所バラすからスグ兄もナツ姉裏切らんように見張っといて」

 

「……………………(まかせろ)」

 

「うげっ!?わかってるって……てゆーか一輝隠すとこ見てたの?」

 

「バッチリと」

 

ナツ姉へ警告を終えた俺はそのまま服のフロアへと向かった。

 

 

 

 

 

 

「よし、とりあえずこんなもんか」

 

気にいった服を選び終えた俺は服を過去に入れ、他には無いか探し始めた。

 

「ん?あれは……」

 

すると、婦人服・子供服コーナーのあるあたりで蛍が何かを選んでいた。

 

「あ、一輝先輩ちょうどいいところに」

 

蛍も俺に気づいてこちらに声をかけて来た。

 

「どうしたの蛍?」

 

「今ちょうどどっちを買おうか迷ってたところで……もし良ければ見てもらえませんか?」

 

「うん、いいよ。いったい何を選んで……」

 

俺がそちらへ行くと……

 

 

 

 

 

 

 

可愛らしい色にフリルのついたデザイン

 

「ある部分」を覆う為の独特の形

 

男の俺が関わることはまず無いもの

 

 

 

 

 

 

 

所謂……ブラジャーであった。

 

 

 

「くぁwせdrftgyふじこipーー!!」

 

 

あまりに衝撃的な事態に俺は言葉にならない声を発した。

 

「……どうしました先輩?何か慌ててる感じですけど……」

 

「えっあっいや!!そんなつもりは……た、ただ迷ったってちょっと早いと思うような……」

 

「?そうですか?前の小学校だと同級生でもつけてる子結構いましたけど……」

 

「ぴゃgdmてもゃykjたんgzlーー!!」

 

再び言葉にならない声を発した。

考えてみれば蛍はすごくスタイルがいい。それは前に海水浴に行った時に知ったことだ……都会ってそんなに進んでるのか……

 

「せ、先輩!?本当に大丈夫ですか!?」

 

「だだだ大丈夫ぶぶぶつつつ続けて」

 

「は、はい……それで今着けてるのが子供っぽいんで……黒とかどうかなーて思ったんですけど」

 

「くろーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

突然の衝撃的な発言に俺の中の何かが弾けた

 

「ささささ流石にそれは攻めすぎでははははは!?」

 

「そ、そうですか?私はありかなーって……」

 

(ほ、蛍が黒のブラを……)

 

一瞬俺の頭の中に蛍の

 

ボコっ!!

 

すぐさま俺は自分の顔面を殴った。

 

「先輩!?どうしました!?」

 

「顔に蚊が止まった。」

 

危うく俺はしてはいけない妄想をするとこだった……

 

「それで……どんなのが先輩は好みですか?」

 

「えっ!?俺!?」

 

突然の質問に対し、俺はなんと答えたらいいかわからなかった。

 

「え……ええと……そういうのは駄菓子屋とかの方が……」

 

「え、でも先輩いつもいろんなの着けてるから詳しいかなって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

 

「……着けてる?」

 

「はい、今のそのベルトとか、先輩いつも服に合わせていろんなベルト着けてるので詳しいのかと思ったんですけど……」

 

よく見るとブラのコーナーの隣にベルトのコーナーがあった。

 

 

 

 

 

……ああなるほど、ようは俺の勘違いか……

 

「そ、そうか……それならこれなんか基本いろんなのに合わせられるからオススメかな」

 

そう言いながら俺はベルトの中から一つを取り出すと蛍に渡した。

 

「あ、ありがとうございます先輩」

 

「う、うんまあね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恥ずかしい……死にたい……

 

 

 

 

 

 

 

「あ、夏海センパイ買い物終わりました?」

 

「お、ほたるん。兄ちゃんと一輝とお年玉とおこづかいかき集めてゲーム機買った」

 

「え、この前出た最新のやつですか?」

 

「いやそれは高いからもっと前に出た安いやつ……って一輝なんで顔赤いの」

 

「……ナニモキカナイデ」

 

おねがいだから触れないで

 

 

 

 

 

「そういえば昨日福引券貰ったけど皆ももらった?」

 

皆も集まり帰ろうとした時ナツ姉が聞いてきた。

 

「貰ったけど一回ぶんもなかったと思う」

 

「皆の合わせれば何回か引けるんじゃないですか?」

 

「ウチもひきたいーん」

 

皆の意見が一致し福引していくことになった。

 

 

 

 

福引会場

 

「にゃんぱすぱすーん」

 

一番乗りのれんげは福引会場のお姉さんに福引を見せながらいつものにゃんぱすをした。てゆーかそれ知らない人にもやるなや

 

「あ、お嬢ちゃん福引券持ってるの?」

 

「持ってますん」

 

福引券に気づいたお姉さんはれんげに福引のガラガラを回させた。すると、

 

カッコロン

 

「あーー……青色はティッシュねーはい、どうぞ」

 

青色の玉が出てきてお姉さんは少し残念そうにティッシュを渡した。

 

 

 

 

「ティッシュあたったーん!!」

 

しかし、予想に反してれんげは大喜びしていた。

 

「これもらっていいん!?」

 

「え?あ、うんあげるよー」

 

「駄菓子屋!!ティッシュあたったん!!」

 

「あーー…やったな」

 

「やりましたん!!」

 

予想外の反応に戸惑うお姉さんを置いてれんげはその喜びを駄菓子屋に伝えていた。

 

「きっと日頃の行いよかったからなんなー毎日お風呂掃除手伝ってたおかげなん」

 

なんか割りに合わなくないか?

 

その後もナツ姉と蛍がやったが同様にティッシュだった。

 

「よし、俺もやって見るか」

 

そう言って福引券を手に福引会場へと向かった。

 

「じゃあ一回引いてみてくださーい」

 

お姉さんに言われた俺はガラガラを回そうとした。

 

「先輩頑張って!!」

 

すると、後ろから蛍の応援が聞こえた。

 

(面白い……やってやろうじゃないか!!)

 

俺は覚悟を決めてガラガラを回した。

 

 

 

 

 

 

 

カッコロン(青色)

 

「ティッシュをどうそー」

 

現実は残酷である。

 

 

 

 

「まぁ福引なんてこんなもんか、んじゃかえるかー」

 

福引も無くなりやることも無くなったのでかえる準備をし出した。

 

「ところでコマ姉はやんなかったの?」

 

「やってない。私こういうの絶対はずれちゃうんだもん」

 

(あれ?でも確かあと一回分くらい残ってたような……)

 

俺がそう思った瞬間、

 

 

 

カランカランカランカランカラーン

 

「おめでとうございまーす!!特賞!!特賞でーす!!」

 

なんとさっきの福引で特賞が出たらしい。一体誰かと思って振り向くとそこにはスグ兄がいた。

 

「……え?」

 

「改めておめでとうございます!お客様は見事特賞を引き当てましたので……こちら!!沖縄旅行4名様旅行券プレゼントです!!」

 

「「「…………………………」」」

 

静かにこちらへと戻り俺に沖縄旅行の券を渡すスグ兄……

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「うわ……!!うわわわわわわーーーー!!」」」

 

 

俺、ナツ姉、コマ姉の3人の驚愕の声がデパート中に響き渡った。




久しぶりに投稿しました!!


しばらく待たせてすみませんでした。


ばけーしょんを観てきてようやく筆が進んだ自分をお許しください


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36話 飛行機に乗った

皆さん!!長らくお待たせしました!!
「のんのんびより 輝く星」久しぶりの投稿です!!


「私が東京から帰ってくる間に間にそんなことあったんだ」

 

「俺もまさかスグ兄が当たるなんて思わなかったよ」

 

デパートでの一件から数日後、帰省してきたひか姉に俺達は沖縄チケットの事を話していた。テーブルの上座では『今日の主役』と書かれたタスキをつけたスグ兄がジュースを飲んでいる。

 

「で、結局沖縄行くの?」

 

「もちろん行くよ、だって沖縄だもん」

 

チケットは4人分なので俺、ナツ姉、コマ姉、スグ兄、蛍、れんげ、このみさん、駄菓子屋、一穂先生でいってもチケット代をかなり抑えられる。

 

「まさか沖縄に行けるなんて夢にも思ってなかったよ。今からすごい楽しみでさ〜」

 

「へぇ〜沖縄…ねえ…」

 

すると、ひか姉が黙り込む。あ、これはやはり…

 

「ひか姉は沖縄行きたくないん?沖縄海ものすごく青いのんに?」

 

「べ、別に行きたくないし、沖縄とか今めちゃ暑いっしょー?青いものくらい東京にだってあるしー」

 

れんげが問いかけるがひか姉は強がる。

 

「沖縄より断然東京だよ。そうだれんげ、東京みやげのおまんじゅう仏壇にあるから食べてきな」

 

「おまんじゅう!?食べてくるーん!!」

 

ひか姉の言葉にれんげは嬉しそうに仏壇へと駆けていった。

 

扉が閉まった瞬間、ひか姉はものすごい速さで俺に土下座してきた。

 

「沖縄行きたい沖縄行きたい沖縄行きたい沖縄行きたい!!お願いしますお願いします!!連れてってください!!沖縄沖縄ーーーー!!」

 

「変わり身はえーな」

 

あまりの変わり身の速さに俺は思わずツッコんだ。

 

「まったく、行きたいなら行きたいって言えば良いのに」

 

「妹の前で土下座なんて出来るかーー!!」

 

いや、土下座する必要ないから

 

「これが私の生涯最後の土下座だ!!ここまでしても駄目かーー!!」

 

「いやだから金払うのは一穂先生なんだから俺に頼んでも無駄だって」

 

「チクショーー!!」

 

俺の言葉でひか姉は床を叩きながら叫んだ。

 

「はぁ…心配すんなって、そう言うと思って一穂先生がひか姉の分もチケット用意してくれてるから」

 

「っっっしゃーー!!」

 

俺がそう言うとひか姉は歓喜の雄叫びを上げてガッツポーズをした。

 

「あ………」

 

すると、仏壇からお饅頭を持ってきたれんげがお饅頭を食べながらこっちを見ている。ひか姉もそれに気づいてガッツポーズをしたまま固まる。

 

「ま、チケット取ってくれたなら行ってやっても良いけど?」

 

「仏壇のとこまできこえてきたのん」

 

ま、そりゃあれだけ大声を上げてりゃそりゃそうなるな

 

 

 

 

 

 

 

旅行当日

 

『8時35分発 沖縄行き135便はまもなく搭乗手続きを開始いたします』

 

空港にたどり着いた俺達はその広さに、人の多さに絶句した。

 

「すげ…これが東京……」

 

ここにくる途中も田舎には無いような巨大な建築物や大勢の人がいた。越谷家に来る前にいたところもここまで凄くはなかった…

 

「駄菓子屋!!飛行機どこなん!?」

 

「待て待て、今センパイ達が荷物預けているからその後だ、迷子になったら沖縄行けなくなるから勝手にどっか行くなよ」

 

「んー」

 

れんげも空港に興奮しているようで駄菓子屋がそれを抑えている。

 

(ふむ、やっぱ駄菓子屋ってとことんれんげに甘いよな…)

 

れんげが赤ん坊の頃から面倒見てたのもあってすっかりれんげの母親状態になっている。

 

「一輝先輩、沖縄楽しみですね」

 

そんな俺を見て蛍が話しかけてくる。

 

「そうだな、俺も今から楽しみでしょうがないよ」

 

「はい!私、沖縄に行くのは初めてなのでやりたい事が沢山あります!!

 

「そうだよな、沖縄料理に、南国フルーツ、マングローブに海水浴…」

 

「海も楽しみですね、水着も新調しましたし…あ///」

 

「み、水着………///」

 

水着というワードに俺達は顔が赤くなる。その理由は数日前に遡る…

 

 

 

 

 

 

「水着を買いに?」

 

「そー、ほら姉ちゃん水着学校指定のしか無いじゃん?それでデパートで新しく水着買おうってことになってさ」

 

沖縄旅行の準備をしているとナツ姉が俺にそう提案してきた。たしかにせっかくの沖縄旅行、水着を新調するのはいいと思う。

 

「ちなみにほたるんも一緒に行くって」

 

「なっ!?」

 

蛍も来る、その言葉に俺は顔が真っ赤になる。

 

「おやおや〜一輝くんは何を想像したのかな〜」

 

「い、いや違…」

 

かつての海水浴、そこで見た蛍の水着姿…

 

「あっはっは!!一輝わっかりやすいな〜ほたるんを付き合い出してからさらにからかい甲斐があるな〜!!」

 

「ふん!!」

 

「あいたぁ!?」

 

思いっきり揶揄うナツ姉に俺は渾身の拳骨を繰り出した。

 

「全く…ここぞとばかりに俺をからかいやがって…」

 

俺はそう呟きながら準備を進める。しかし…

 

「蛍の…水着か…」

 

ちょっと見てみたくなった。

 

 

 

 

「はあっ!?行けない!?」

 

水着を買いに行く当日突然ナツ姉とコマ姉がドタキャンした。

 

「いや〜今日姉ちゃんに宿題見てもらう約束しててさー悪いけど一輝はほたるんと2人で行ってきて」

 

「宿題?いつも宿題サボってるナツ姉が…?」

 

「あーもう!!ウチの事はいいから行ってきて!」

 

ナツ姉はそう言うと俺の背中を押して外に出した。

 

「頑張れ一輝♪」

 

「な!?そう言う事か!!ナツ姉おい!!」

 

ナツ姉の言葉に俺は狙いに気付くがナツ姉は扉を閉め出してしまった。

 

「はぁ…まったくしょうがないなぁ」

 

 

 

「そうですか…夏海先輩達が…」

 

「全く…ここぞとばかりに俺をからかってさ…」

 

蛍と合流した俺はナツ姉達のことを蛍に話してため息をついた、

 

「えっと…じゃあ行こうか」

 

「は、はい…」

 

蛍は恥ずかしそうに頷くと俺の手を握って歩き出す。

 

「「…………////」」

 

お互い恥ずかしくなるが互いの手を優しく握るとデパートへと入って行った。

 

 

 

 

 

「うん、やっぱりこれだな」

 

俺は自分の水着を選ぶとカゴに入れた。我ながら中々良いやつが予算内で見つかって良かった。

 

「あ、一輝先輩。ちょっと良いですか?」

 

すると、蛍がこちらに声をかけてきた。何やら少し顔が赤い

 

「ん?どうしたの蛍?」

 

「えっと……水着を選んで欲しいのですが……」

 

 

 

 

 

「ゑ?」

 

衝撃の発言に俺は一瞬思考が停止した。

 

「み…水着を…」

 

「はい……」

 

顔を真っ赤にしてそう言う蛍に俺の顔はどんどん熱くなる。

 

「一輝先輩に……見てほしいんです。」

 

その言葉に嬉しさと恥ずかしさが込み上げてくる。

 

「わ…わかった…」

 

俺は頷くと蛍の持ってきた水着から俺は白をベースにしたフリルのついた水着を選ぶ

 

「こ…これなんか良いんじゃないかな?」

 

「え…えと…じゃあ試着してきます」

 

蛍はそう言うと更衣室に入っていった。

しばらくするとカーテンの向こうから微かに服を脱ぐ音が聞こえる。

つまり今カーテンの向こうには…

 

「な…何考えてんだ越谷一輝!!色即是空煩悩滅殺…」

 

俺はやましいことを考えてしまい慌てて目を閉じて心を無にしようとした。

 

「着替えました…」

 

しかし、その頃には蛍が着替え終えてカーテンを開けた。

 

「ど…どうですか?」

 

「…………………。」

 

その美しさに俺は言葉を失った。以前海水浴で見たものとはまた違うが可愛らしいタイプでありながら蛍のスタイルの良さを引き出していた。

 

「す…すごい似合ってる。とても綺麗だ…」

 

「ほ、ほんとですか…ありがとうございます」

 

俺の言葉が嬉しかったのか蛍は恥ずかしがりながらも嬉しそうに笑った。

 

「ん?」

 

俺はふと気配を感じその方向を見る。するとそこにはニヤニヤしながらこちらを見つめるこのみさんとナツ姉がいた。

 

「「〜〜〜〜〜〜っ!!///////」」

 

俺たちの顔は烈火の如く熱くなった。

 

 

 

 

 

「あの後…散々弄られたっけな…」

 

「あはは…そうですね…」

 

今思い出すとすごく恥ずかしくなってくる。

 

「おーいお前らーさっさとこーい」

 

すると、駄菓子屋がナツ姉とひか姉をヘッドロックして俺達を呼んでいた。

 

 

 

荷物を預けた俺達はいよいよ検問へと移った。ここで金属探知を行なっていよいよ飛行機に乗り込むのだ。

 

「反応しないか心配だな…」

 

「服のチャックとかは大丈夫かな?」

 

「それくらいなら良いんじゃない?」

 

「引っかかってお縄になるとか俺やだよ」

 

「大丈夫だってー早く行ってよ2人ともー」

 

中々入ろうとしない俺達をコマ姉が急かした。

仕方なく俺とナツ姉はゲートをくぐる。

 

「お、鳴らなかった」

 

「良かったお縄にならなくて」

 

「だから言ったじゃん、時間取らせないよね」

 

俺とナツ姉にそう言ってコマ姉はやれやれとゲートをくぐった。

 

ビィィィィ!!

 

「あ、少し失礼しまーす」

 

その瞬間、ゲートが大きな音を響かせて係員がやって来た。

 

「少し調べさせてもらいますねー。手、あげてもらえますか?」

 

そのままコマ姉は金属探知器で調べられる。

 

「うわー姉ちゃん捕まった」

 

「一番大丈夫って言ってたのに捕まったよ」

 

「容疑者小鞠の写真撮っとこう。地元じゃこんな写真撮れないわー」

 

すると、ひか姉が携帯でその様子を取り出した。

 

「やめてよー撮らないでよーやめてよー」

 

「いいよーその表情、捕まった悲壮感半端無いよー」

 

「コマ姉逮捕ナウ」

 

「あいつら何してんだ」

 

 

 

 

いよいよ飛行機に乗り込んだ俺は蛍の隣に座る。

 

「いよいよ飛行機かーまさか空を飛ぶ日が来るなんてなー」

 

「楽しみですね一輝先輩」

 

隣の蛍も楽しそうだ。

 

「ご搭乗ありがとうございます。非常設備についてご案内します。緊急の際は…」

 

その時、アナウンスが聞こえて緊急時についての話をする。

 

「……………。」

 

その時、俺は気づいた。飛行機は雲の上まで飛ぶことを、仮にそこから墜落なんてしたら…

 

「ほほほ蛍…だだだ大丈夫だよね…墜落したりとかしないよね…」

 

「だ、大丈夫ですよ一輝先輩!墜落なんて殆どしませんから!!」

 

固まる俺を蛍が慌てて宥める。

 

瞬間は飛行機が動き出す。

 

「ひっ!?」

 

そして滑走路をものすごく速いスピードで進み出し機体が持ち上がった。

 

「うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「沖縄に出発なーん!!」

 

俺の絶叫と共にどこかでれんげの声が聞こえた。

 




久しぶりにこちらも投稿しました。
こっちもこれから現在書いている「仮面ライダーリューマ」とは別に書いていこうと思いますので応援よろしくお願いします。


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37話 沖縄で海水浴をした

「おーすごい海青い」

 

「ちょっと前々!!」

 

沖縄にたどり着いた一輝達は沖縄の道路をレンタカーで走っていた。

一輝は一穂先生が運転する車に乗っているのだが肝心の一穂先生は運転中にもかかわらず窓から海を見ていてこのみさんに怒られている。

まぁ今の一輝には関係ない…なぜなら

  

「ちょっと一輝大丈夫!?」

 

「先輩、生きてますか先輩!?」

 

「うぅ……蛍……」

 

初めての飛行機&墜落するのではという恐怖によって一輝はグロッキーになっていた。

 

「蛍……俺初めて知ったよ……雲の上に天国って本当にあったんだな」

 

「先輩!?何言ってるんですか!?大丈夫ですか!?」

 

「雲の上は青空と真っ白な雲…それどころか蛍にそっくりな天使がいたんだよ…」

 

空な目で笑いながら一輝は蛍にそう言う

 

「先輩違います!!それ天使じゃなくて隣に座ってた私です!!」

 

「そうか…蛍は天使だったのか…道理で可愛いと思ったら…」

 

「え!本当ですか…じゃなくて戻ってきてください先輩〜!!」

 

ぐったりしながらそういう一輝を蛍は涙目で揺さぶっていた

 

 

 

 

 

「ふっかつ!!」

 

しばらく車に乗った俺はなんとか正気を取り戻した。

 

「いやー…なんか空港出てからの記憶がほとんど無いんだけど…なんか変なこと言ってなかった?」

 

「い、言ってなかったですよ…///」

 

俺が質問すると蛍は恥ずかしそうに顔を逸らしながらそう答えた。

 

 

 

 

「お、おぉ〜沖縄、沖縄なのん!!」

 

駐車場に着いて車から降りた俺達は今日からお世話になる民宿まで歩いていた。れんげは初めて見る沖縄の景色に大はしゃぎしていた。

…まぁさっきまで沖縄だったんだけどな

 

「すっげ〜雰囲気あるな〜」

 

「初めて見る造りだな」

 

家の造りもうちの村とも全然違うし見るもの全てが新鮮だ

 

「なっつん、カズにい探検なん!探検するん!」

 

「お、れんちょん威勢いいね〜」

 

「よーし、あの角の向こうがどうなってるのか見に行くぞー!!」

 

「「おぉ〜!!」」

 

俺とナツ姉はれんげと一緒に走り出した。

 

「あー待て待て勝手に行くな、テンション上がるのは分かるがまず宿に行ってからだ」

 

「「「はーい」」」

 

はしゃぐ俺達を駄菓子屋が止めたので俺達は言う通りにした。

 

 

 

 

「な……」

 

「これは……」

 

しばらく道を歩いていると、道の草むらから一頭の牛が現れた。草をもそもそ食べているその牛はいつも見ている牛よりも大きい角を生やしていた。

 

「ここも田舎なのん?」

 

「沖縄だぞ」

 

 

 

 

「お、ここだ」

 

そんなこんなで俺達はついに目的の民宿にたどり着く。

『やど家のにいざと』というこの民宿はナツ姉がガイドブックで見つけてみんなの満場一致で決まった所だ。

 

「趣があって良いところだな」

 

「瓦綺麗ですね」

 

色鮮やかな瓦で周りの草木と合わさり写真で見た時よりも素敵な民宿だった。

 

「すいませーん、予約していた宮内ですけどー」

 

「はいめんそーれ、中はどうぞ〜」

 

一穂先生が扉を開けると中から優しそうなおばさんが挨拶しながら出てきた。

 

「えんぽーる?」

 

「何言ってんのひか姉?」

 

「蟹食ってんのイカ天?」

 

本当に何言ってんだひか姉

 

「めんそーれだよ、沖縄の挨拶なんだって」

 

俺はため息を吐きながらひか姉に教えてあげる

 

「はー沖縄の挨拶ってめんそーれだと思ってた。えんぽーるってのもあるんだ」

 

「鼓膜大丈夫かひか姉!?」

 

飛行機の気圧で耳が変になってるとしても限度があるぞ!?

 

「あおいー、お客様お部屋に案内さしあげてー」

 

「はーい!」

 

すると、ナツ姉くらいの褐色の少女が駆け寄ってきた。

 

「お暑い所ご苦労様です!お部屋、奥のところになりますのでご案内しますね!」

 

あおいと呼ばれた少女はテキパキとした様子で俺達を部屋に案内する。ナツ姉も同年代とは思えないその動きに思わず動揺していた。

 

「夏海同い年なのに敬語使ってる。」

 

「うっさいな…」

 

「ははっ、たしかに」

 

「あ〜!一輝も笑ったな!!」

 

こんなナツ姉は新鮮でなんか笑ってしまった。

 

 

 

 

「では、お部屋にお茶とお菓子がございますのでお召し上がりください。浴衣とタオルもございますので他に何かありましたらお呼びください」

 

部屋に案内したあおいさんは丁寧な口調でそう言ってお辞儀をすると駆け足で戻っていった。

 

「ほぉ〜夏海と同い年とは思えないくらいにしっかりしてるね」

 

「ナツ姉もあれだけしっかりしてれば我が家のアルマゲドンも無くなるのにね」

 

立ち去ったあおいさんを見た俺とコマ姉はうんうんと頷いた。

 

「それで、部屋はどうする?4人部屋2つと2人部屋1つなんだか…」

 

ふむ、普通に考えれば4人部屋①に俺達越谷兄妹、4人部屋②に宮内姉妹と駄菓子屋、2人部屋にこのみさんと蛍だが…

 

「はい!!4人部屋はウチら子供組だけで使わせてもらいたいです!!」

 

子供組…ってことは俺、ナツ姉、コマ姉、れんげ、蛍ってことか…でもそれだと…

 

「それだとベットの数足りなくね?」

 

「大丈夫!!旅行当ててくれた兄ちゃんは2人部屋を1人で使ってもらいます!!そんで2人部屋の布団を地べたに履いて、誰かはそこで寝てもらいます!!そんなわけで良いよね一輝!!」

 

俺で確定かよ

 

「まぁ布団で寝るのは別に平気だし…良いよ」

 

前にあった布団争奪戦と違ってちゃんと布団で寝れるしな

 

「まぁ一輝がいいなら良いが…とりあえず荷物置いたらそっち行くからな、先に明日の予定を決める」

 

「「「はーい」」」

 

部屋に入るとナツ姉が早速クーラーをつけていた。まぁいつも家ではよほどの気温じゃない限りクーラーつけさせてもらえないもんな。

 

 

 

 

「で、明日の予定どうするー?確か昼が予定が決まってないんだっけ?」

 

荷物を置いた俺達は部屋で予定を決めていた。

 

「そうだな、明日の午後は灯台に行ってその後沖縄料理を食べる。次の日は午前午後共に観光だ。1秒たりとも無駄には出来ん、一銭でも多く元を取って帰ろう」

 

出たよ駄菓子屋の貧乏魂、お金にうるさいというかドケチというか…さて、確か昼の時間のイベントにシュノーケルとマングローブをめぐるカヌーがあったはずだ。

 

「私カヌーって乗ってみたい」

 

「あ、私も乗ってみたいです!」

 

コマ姉と蛍はカヌー派のようだ

 

「ウチはシュノーケリングが良い」

 

ナツ姉はシュノーケリングか、2つに割れたぞ。時間的に2つは無理だからどっちかに絞らないと

 

「ひか姉とれんちょんもシュノーケリングだよね」

 

「ん?うん?はいはいおっけ」

 

「ウチもそれでいいん」

 

れんげとひか姉はシュノーケリングか、てかひか姉まだ耳治ってないのか

 

「スグ兄はシュノーケリング?」

 

「…………………(ぺけ))」

 

スグ兄はカヌーらしい

 

「それならそれぞれ分かれてやるってのでどうかな?レンタカーも2台あるしさ」

 

「それもそうか、一応電話して聞いてみる」

 

そういうと駄菓子屋は電話で確認した。

 

「そういえば一輝はどっちにするの?」

 

ナツ姉が聞いてきた。そうだったまだ俺は決めてなかった。

 

「そうだなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ、これで予定は決まったな」

 

「じゃあみんなで海行こうよ!!」

 

俺はどっちに行くのかを決めるとナツ姉が俺達を海に誘う

 

「海!!ウチも海いくん!!」

 

れんげも俺達に賛同して大はしゃぎする。

 

「おーっし、早く水着に着替えよー!」

 

「あ、私も行きまーす」

 

「私も着替えよー」

 

蛍とコマ姉も海に行く準備をする。

…ん?待てよ

 

「あ……」

 

「………。」

 

そうだ、ここにいる中で俺とスグ兄だけ男だ

 

「スグ兄、俺達は隣の部屋で着替えよ」

 

「…………………(こくっ)」

 

こうして俺とスグ兄は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

「海きたー!!すげー真っ青〜!!」

 

沖縄の海は地元の海よりも青く宝石のように輝いている。

 

「こんな海がみれるのもスグ兄が旅行当ててくれたおかげだね」

 

「……………(ぐっ)」

 

相変わらずスグ兄は喋らないがその顔は誇らしげだった。

 

「お待たせ〜」

 

すると、着替えを終えは女子チームが合流した。

 

「ごめんね〜水着着るのに手間取っちゃって」

 

「……………(うんうん)」

 

このみさんが謝るとスグ兄が女子達を見て何か頷いている。

まぁうちの女子達って容姿は良いからね。こうしてみると絵になる。

 

「か、一輝先輩!!」

 

すると、蛍が俺に声をかける。そちらを向くと

 

「あ………////」

 

「ど、どうですか…?」

 

俺はその水着姿に見惚れてしまう。蛍の水着姿はこの前水着を買いに行った時見ていたはずなのに…白い砂浜、青い海と空、それらと合わさることで更に美しく見えてしまった。

 

「ほらほら一輝〜ちゃんとほたるんの水着を褒めてやんないと♪」

 

「そうだよ一輝くん、蛍ちゃんがせっかく一輝くんに感想聞いているんだからさ」

 

俺が固まってるとナツ姉とこのみさんがここぞとばかりに小声でイジってくる。

 

「うう…わかったよぉ…」

 

恥ずかしくなりながらも俺は蛍の前に立つ

 

「ええと…すごい似合ってる…本当に…」

 

「あ……ありがとうございます……」

 

俺が素直な感想を言うと蛍は顔を赤く染めて嬉しそうにそう言った。

 

「そ、それじゃあ泳ぎに行くか…」

 

「そ、そうですね…」

 

俺達が海へ向かおうとするとナツ姉、このみさん、駄菓子屋がニヤニヤしていて更に恥ずかしくなった。

 

 

 

 

こうして始まった海水浴、俺は蛍達とビーチバレーで遊んでいた。れんげはジュースを飲む駄菓子屋の膝の上でヤシの実を飲んでいた。2人ともサングラスをつけており中々様になっていた。ただれんげがつけてるサングラスはひか姉の物のようでれんげに返すよう文句を言っていた。

スグ兄はビーチバレーをやるナツ姉とこのみさんを見て静かに頷いていた。

 

「あれ?コマ姉泳がないの?」

 

浜の方を見ると浮き輪をつけたコマ姉が波打ち際にいた。もしかして…

 

 

 

 

「まさかコマ姉が泳げないなんて…」

 

「お、泳げないわけじゃないから。浮き輪があれば泳げるし…」

 

「コマ姉本当に中2だよね?」

 

仕方ないのでコマ姉の手を引いて海に入れてあげる。しかし、そんなに深くないところで足がつかなくなってコマ姉はベソを描いていた。

 

 

 

 

「あ、一輝先輩」

 

「蛍…どうしたの?」

 

ある程度泳いで少し疲れた俺は浜辺でまったりしていたら蛍が近寄ってきた。

 

「少し疲れたので休もうかと…」

 

「俺も、いっぱい遊んだからね」

 

「はい、私もとても楽しくて…」

 

そういうと蛍は俺のそばに腰掛ける。

 

(……やっぱりかわいいな)

 

隣に座る蛍はとてもかわいい。

水着姿の蛍は美しく、まるで人魚のようだ。

 

「先輩?」

 

すると蛍は俺の視線に気づきこちらを見つめた。

 

「あ…ご、ごめん!!蛍に見惚れていて…あっ!!」

 

思わず漏らしてしまった本音に蛍は顔を真っ赤にした。

 

(うう…自分で言って恥ずかしい…)

 

「…えいっ」

 

すると、蛍は俺に寄りかかってきた。

 

「ほ、蛍!?」

 

「しばらく…こうしてて良いですか?」

 

恥ずかしそうに言いながら蛍はさらに擦り寄ってくる。

 

「…良いよ」

 

恥ずかしくなるが俺はそう言って肩を引き寄せる。

 

「「…………………。」」

 

温かい、蛍の温もりが…心臓の鼓動が聴こえてくる。

 

「先輩、大好きです。」

 

「俺もだよ蛍」

 

2人は互いを見つめて微笑んだ。

 

 

 

 

 

その後、一部始終を見ていたナツ姉とこのみさんにめちゃくちゃ弄られた。

 

 

 

 

 

 

「いや〜ご飯めちゃくちゃ美味かった〜」

 

海水浴を終えた俺達は宿で夕飯の沖縄料理を堪能した。見たことのない料理ばかりで初めての味に俺は感動しっぱなしだった。

 

「しかしあおいさんってほんとナツ姉とえらい違いだよな…」

 

夕飯の時もナツ姉がコップの水を誤って溢してしまった時も慌てずすぐに片付けていたし民宿の手伝いもちゃんとやってた。宿題もサボらずやりそうだ。

 

「ん?」

 

ふと外を見るとナツ姉とあおいさんが話していた。

 

「バドミントン好きなんだ」

 

「うん、中学でやってて…うちだと壁で練習するしか無いんだけどおかあちゃん、『壁が傷つくから練習するな』って…」

 

先程とは打って変わって砕けた喋り方をするあおいさんにナツ姉も同じように喋る。

 

(ナツ姉…楽しそうだな)

 

初めて出会う同い年の女の子、ナツ姉も嬉しいのだろう

 

「…部屋に戻ろ」

 

そう言って俺は部屋へと歩き出した。

 

 

 

「ぷあー、1日目から疲れたー明日のカヌー楽しみだね〜」

 

「ウチしゅのーけるなーん!」

 

部屋に戻るとコマ姉、れんげ、蛍、ひか姉が寛いでいた。

 

「俺も疲れた〜」

 

「一輝行きの飛行機でぐったりしてたしね」

 

「ゲートで係員に止められてたコマ姉に言われたくない」

 

 

「じゃじゃーん、宿の売店でカップラーメン買ってきたー」

 

「おお〜!!」

 

部屋に戻ってきたナツ姉が素晴らしいものを持ってきた。

 

「え?さっきご飯食べたばかりなのにまだ食べるの?」

 

「こういうのは別腹なんだよコマ姉」

 

俺はそう言ってナツ姉からカップラーメンを受け取る。

 

「ひか姉も食べる?」

 

「食べる食べるえんぽーるえんぽーる」

 

いい加減鼓膜治せ

 

「なっつん、かずにぃ、ご飯の後にラーメンなんて食べたら怒られるん」

 

ラーメンの準備をする俺達にれんげが注意する。ふ、分かってないなれんげは

 

「れんげ…この部屋には俺達しかいない…それがどういう意味かわかるか?」

 

「どういうことなん?」

 

すると、俺に続いてナツ姉が喋る。

 

「今ここに、怒る大人はいないんだよ?いわばここではウチらが法律」

 

「ラーメン食ってもお菓子食べでも、夜ふかししたって許されるってわけだ」

 

「それでもれんちょんは食べないのかなー?」

 

 

 

 

 

 

「ラーメンおいしーん!!」

 

「そうだろうそうだろう、夜中に食べるラーメンは格別なんだ」

 

家でやると母さんに怒られるけど

 

「もー夏海も一輝もれんげも変な道に走らせちゃダメだよー」

 

「そういう私達も食べちゃってますけど」

 

「よーし!これ食べたら…はい一輝!!」

 

「トランプやりましょー」

 

「もう9時なのにまだ起きてていいん!?」

 

「いいんです!!」

 

「すごいーん!!」

 

ふふふ…これが旅行の醍醐味よ!!

 

 

 

 

 

「ありゃ、一輝寝ちゃった」

 

トランプをやってると一輝が寝落ちしていた。

 

「珍しいね一輝が1番に寝ちゃうなんて」

 

「じゃあウチらもそろそろ寝るか…ってアレ?」

 

その時夏海は気付く、予定では床に寝るのは一輝だった。でも一輝が今いるのは蛍が寝る予定だったベット。このままでは…

 

「ほたるん、悪いけど一輝そのまま寝かせてあげて」

 

「あ、はいベットも広いので大丈夫ですよ」

 

蛍が快く引き受けてくれて良かった。あとは…

 

「ひか姉別に床でもいいよね?」

 

「んあ?あぁいいよいいよ〜」

 

寝ぼけているひか姉も承諾してくれた。そのままひか姉を床に敷いた布団に誘導する。

 

「そんじゃおやすみ」

 

「おやすみなさーい」

 

こうして長い一日が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで私が床なんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、目を覚ました一輝が自分に抱きつく蛍を見て顔を真っ赤にするのは言うまでもない




「そういえば一輝はどっちにするの?」

「そうだなぁ…」

《以下選択》
①やっぱり海でシュノーケリングだな

②ジャングルでカヌーとかやってみたいな




色々悩みましたがどちらも面白い話なのでシュノーケリングとカヌー、それぞれ選んだ場合で次回の2話を書いてみようと思います。


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38話 シュノーケリングをした

前回の選択
①やっぱり海でシュノーケリングだな
の場合




「ん…もう朝か…」

 

ふと目が覚めるとそこはいつもの天井ではなかった

 

「そっか…今俺達は沖縄にいるんだった」

 

そういえば昨日はトランプをやっていて途中で眠っちゃったんだった…飛行機でも色々あったし海水浴でも思いっきり遊んでたからまぁ当然っちゃ当然か…

 

「ん?」

 

そういえばさっきからうまく動けない。誰かが抱きしめているみたいだ。俺が誰かを確かめようとすると

 

 

 

 

 

「うみゅ…お母さん…zzzz」

 

「…え?//////」

 

蛍だった。蛍が、俺に思いっきり抱きついている。

 

「ほほほ蛍…!た、頼む…離れて…!」

 

「もうちょっと…あと5分…」

 

しかし蛍はさらに強く俺に抱きついてくる。その為彼女の胸が俺の体に密着した。

 

「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい先輩…/////」

 

その後、目を覚ました蛍は顔を真っ赤にして俺に謝った。

 

「い、良いよ…俺も気にしてないからさ…」

 

俺はそう言うが頭の中では先程の映像がフラッシュバックしていた。

 

(や、柔らかかった…!!それになんかめっちゃ良い匂いがした…!!)

 

「ほら2人とも〜朝ご飯行くから早くして〜」

 

そんな俺達にコマ姉が呼びかけてきた。

 

「い、行くか…」

 

「はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉ〜すげ〜!!」

 

「海なーん!!」

 

朝食を食べ終えた俺達はシュノーケリングとカヌー、それぞれが選んだ方へと向かった。今回俺はシュノーケリングを選び、カヌーを選んだ蛍とそれぞれの写真を撮る約束をした。現在は同じくシュノーケリングを選んだナツ姉、ひか姉、駄菓子屋とれんげと共に船でシュノーケリングをするスポットへと向かっている。

 

「蛍にもこの景色を見せてやろうっと」

 

「いつの間にシュノーケリングやることになってなだけど、やべーちょー楽しみ」

 

俺が写真を撮ってるとひか姉がそう言う。やっぱり昨日理解してなかったか…

 

「でしょー?運が良ければマンタ見られるらしいよ」

 

「マンタ!?」

 

マンタなら子供の時母さんに買ってもらった図鑑で見たことがある。自分よりもはるかに大きく海を羽ばたくように泳ぐその姿が幻想的だったのを覚えていた。

 

「いよーっし!!絶対マンタ見るぞー!!」

 

「おーー!!」

 

俺が意気込むとひか姉も賛同する。

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁ〜」

 

ウェットスーツとライフジャケット、そしてゴーグルとシュノーケルを着けた俺達は遂に海の中へと入っていった。

 

「すげぇ…まるで別世界だ…」

 

透き通った海、色とりどりのサンゴ、そして様々な形や色をした魚が沢山いた。見惚れていると綺麗な魚が数匹俺の方へと泳いでくる。

 

「え?わっわっ」

 

俺は突然の事に驚くが魚達は俺の周りを楽しそうに泳いでいる。

 

「…ははっ」

 

俺はそれを見てると何故か楽しくなって思わず笑ってしまった。魚達はどれも美しくいつの間にかいろんな種類の魚が俺の周りを泳いでいる。まるで彼らが俺を歓迎してくれてるようだった。

 

「ん?うわぁっ!!」

 

ふと後ろに何か気配を感じ振り返ると、そこに綺麗な甲羅をしたウミガメが泳いでいた。

 

「まさかウミガメまでいるなんて…」

 

ウミガメはヒレを懸命に動かしながら泳いでおりこちらを見つめながらゆっくりと立ち去っていった。俺は今見た感動を伝えようと近くにいたナツ姉とひか姉の元へと向かった。

 

「ナツ姉ひか姉!!ヤバイよそこにウミガメが…」

 

「おぼ…やばい…波酔いやばい…」

 

「ひか姉しっかりしろー!!」

 

しかしひか姉は波に酔ったのか海面をぐったりしながら浮かんでいた。

そういえば飛行機降りた後も気圧で耳やられてたっけ…ひか姉ってもしかして三半規管弱い?まぁ俺が言えた事じゃないけど…

 

「大丈夫ひか姉?ダメそうならスタッフさんに…」

 

「こっちにマンタ出ましたよー」

 

「マンタ!?」

 

俺はスタッフの言葉に驚愕した。ウミガメが見れただけでも凄かったのにまさか本当にマンタが出るなんて…

 

「ひか姉マンタ出たんだって!!見にいこうよ!!」

 

「そう……なんだ……」

 

ナツ姉がマンタの存在に驚愕して慌ててひか姉を連れて行こうとするがひか姉は波酔いからまだ立ち直れずにいた。

 

「ナツ姉、あんまり無理強いしても…っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

この瞬間、越谷一輝は危険を察知した!!

 

例えるなら出港後に沈没する船から一斉に逃げ出すネズミのように!!

 

例えるなら地震を予知し暴れるナマズのように!!

 

それは生物が生まれながらに持つ危険察知能力!!

 

その能力が…後に来る危機を越谷一輝に知らせたのだ!!

 

「…じゃ、じゃあ俺先行ってるよ」

 

俺は小さな声でそう言うとこっそりとマンタの方へと向かった。

すると、海底近くを巨大なマンタがゆっくりと泳いでいた。

 

「うわぁ…」

 

美しい海をゆっくりとヒレを動かしながら泳ぐその姿はとても壮大で心を掴んで離さなかった。まさかこんな美しいものを見ることができるとは思わなかった。これこそ沖縄に来れたからこそ見れた奇跡と言えるだろう。

 

 

 

「ぶおっす…飛行機の時といい波酔いといい…私の三半規管だめかもしんない…」

 

「早くしないとマンタどっか行っちゃうって!!マンタ見たいって言ってたじゃん!!」

 

「マンタ…?知らねえよ…そんなのよりビニール袋流れてこないの…?おっぷ…」

 

「え…ビニール袋って…ちょ…ひか姉…うわ…うわーー!!」

 

 

 

 

 

 

「…聞こえない、俺は何も聞こえない」

 

俺は見捨てたわけじゃない、だってしょうがないもん。あそこで俺に出来ることはなかった。巻き込まれるだけだもん。スタッフさんもおそらく間に合わなかっただろう。

 

「俺は絶対に振り向かない。絶対に後ろを見ない」

 

今後ろを見たら先程の神秘的な映像が汚されてしまう。何が悲しくてこの美しい海の映像の後にゲ○なんて見なきゃいけないんだ。

 

「俺は悪くない。絶対に悪くない」

 

だから恨まないでくださいナツ姉。どうか許してくださいひか姉。

 

 

 

 

「マンタすごかったんなーあんな大きい魚見たんはじめてなんー」

 

「本当だな〜まだ目に焼き付いて離れないよ」

 

シュノーケリングを終えた俺とれんげは海の中で見た素晴らしい光景を思い出しながらうっとりとした。地元では決して見ることができない、沖縄にきたからこそ見れたあの感動は生涯絶対に忘れることは無いだろう。

 

「なんでひか姉となっつんマンタ見てなかったのん?」

 

「とんでもない目を見てたからねー」

 

「とんでもないもの見ちゃったからねー」

 

ナツ姉とひか姉は死んだ目でそう呟きていた…ごめん、本当にごめん

 

「まだセンパイ達と合流するまで時間あるし…近くの灯台でも見に行くか〜時間は1秒たりとも無駄にはしない」

 

「貧乏性がー」

 

ひか姉はそう言うが個人的に灯台は見たいと思っていた。それに今は夕方、灯台から見る夕焼けの海はきっと綺麗だろう。

 

 

 

 

 

「ちょっと後ろ見てくれるか?」

 

「へいへーい」

 

灯台近くの駐車場に着くと駄菓子屋はナツ姉に後ろを確認するように頼みナツ姉も車から降りた。

 

「ばっくおーらい、ばっくおーらい」

 

後ろでナツ姉がそう言い駄菓子屋はその指示通りにバックする。その時、すごい衝撃が車に響いた。

 

「えっ…?今何があった?」

 

まるで何かにぶつかったようだが…俺は車から降りて後ろを見た。すると、タイヤがタイヤ止めブロックにめり込みパッ○マンみたいになっていた。

 

「ナツ姉〜何がバックオーライだよ全然大丈夫じゃなかったじゃん」

 

「バックオーライじゃないときバック何て言えばいいか分かんなかった。オーライってオールライトのこと?それとも漢字の往来?」

 

「そういう時はストップって言えば良いの!!それとオーライは『all right』!!大丈夫って意味だよ!!」

 

全く…タイヤがパンクしたら俺達は宿に帰れなくなるところだったよ。

 

「お、ヤドカリだ。こんな水の無いところでもヤドカリいるんだなー」

 

「本当だねーお、ここにもいた。」

 

すると、ひか姉がヤドカリを見つけて捕まえた。確かに海からだいぶ離れたところにいるなんて珍しいヤドカリがいたもんだ。そう思いながら俺も見つけたヤドカリを捕まえる。

 

「ん?アレ?」

 

すると、それを見たナツ姉が突然震える

 

「2人ともそれ…天然記念物のオカヤドカリじゃない?」

 

「え?天然記念物?」

 

それって確か絶滅の危険がある貴重な生物の事じゃ…

 

「うわー!!2人が天然記念物生け捕ってるー!!」

 

「え?え?なに?だめなの?」

 

騒ぎ立てるナツ姉にひか姉は少し心配になる。

 

「えっと…これって私達逮捕されちゃうのかい?」

 

「んなわけあるかい」

 

ちゃんと元いた場所に逃せば良いだろ。しかし沈黙するナツ姉にひか姉はさらに冷や汗をかく

 

「くそ!!こうなったら天然記念物と灯台前で記念写真撮ったらーー!!」

 

「ひか姉待ってー」

 

「ウチもいくーん」

 

灯台に全力疾走していくひか姉をナツ姉とれんげが追いかける

 

「やれやれ、待ってよみんなー」

 

俺もため息を吐きながらみんなを追いかけた。

 

 

 

 

美しい夕焼けと灯台をバックにしヤドカリと共に撮った記念写真に写る俺達はとても良い笑顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

「うんうんはーい、きつく言ってやっていいよ」

 

記念写真を終えて車に乗るとひか姉へと電話が来る。

 

「どうしたのひか姉?」

 

「このみから電話、姉ちゃんがバテて運転したく無いって駄々こねてるってさ」

 

「勘弁してくれよ」

 

その時の駄菓子屋は本当に嫌そうだった。

 




前回の選択肢でシュノーケリングを選んだ回にしてみました!!
次回はカヌーを選んだ場合で書きます!!


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39話 ジャングルでカヌーをした

37話の選択肢
②ジャングルでカヌーとかやってみたいな
の場合


「うわぁ…すっげー」

 

「カヌー乗り場に行く前からジャングルみたいだね」

 

朝食を食べ終えた俺達はシュノーケリングとカヌー、それぞれが選んだ方へと向かった。どっちも楽しそうで迷ったが今回俺はカヌーを選んだ。俺の他にも蛍、コマ姉、このみさん、スグ兄、一穂先生がカヌーを選んでいる。ナツ姉、ひか姉、れんげと駄菓子屋はシュノーケリングを選んでいる。

 

「変な虫とかいないかなー?」

 

「だ、大丈夫ですよきっと…」

 

「まぁ気をつけた方がいいかもね」

 

毒虫なんかがいるところはルートにならないって言ってたから心配ないと思うけど気をつけた方がいいと思う。

 

「ほら3人とも、立ち止まって他の人の邪魔にならない様にしろよー」

 

すると、一番後ろを歩いていた一穂先生が俺達に注意する。

 

「おーなんかかずちゃんが教師っぽい」

 

「いやまぁ教師ですし」

 

たしかにこのみさんの言う通りだ。いつもなら一番後ろをぜえぜえ言いながら歩いてるのに今日の一穂先生は珍しくしっかり先生してる気がする。

 

「お、見えてきたよ」

 

しばらく歩いてるとカヌー乗り場が見えて来た。

 

 

 

 

 

「皆さーん、パドルは両肘が直角になる様に持ってくださーい。あとカヌーは1人乗りのものと2人乗りのものがあるので、カヌーを選ぶ際にお申し付けくださーい」

 

カヌー乗り場に着くとガイドのお姉さんが俺達にカヌーの乗り方などを教えてくれた。

 

「ふむ、どっちのカヌーにしようかな…」

 

俺はどっちのカヌーにするか悩んだ。

 

「コマ姉はどっちに…」

 

「2人乗りがいい」

 

俺が聞こうとするとすかさずコマ姉が答える。

 

「2人乗りがいい」

 

「いや聞こえてるから」

 

「1人だと怖いっていうか…ひっくり返った時助けてもらえないし…」

 

「いやひっくり返ったら2人まとめて落ちるから」

 

それに2人乗りはバランスを取るのが難しいそうだからそっちの方が…

 

「とにかく私は2人乗りにする。蛍、一緒に乗ろうよ」

 

「うーん…じゃあ蛍、コマ姉の事まかせていい?」

 

「わかりました、一緒に乗りましょう先輩」

 

俺が頼むと蛍は快く受け入れてくれた。

 

 

 

「よっこいせ」

 

俺は1人乗りのカヌーに乗ると係員の指示に従い岸を離れた。教えられた通りにオールを漕ぐと水をかき分け思った以上に進んだ。

 

「ぶゅわっぷ!?」

 

「せんぱーい!?」

 

コマ姉と蛍の叫び声が聞こえそちらを向くとコマ姉がカヌーに乗るのに失敗して水の中に落ちた様だ。

 

「大丈夫かなコマ姉…」

 

 

 

 

「うわぁ〜〜〜!!」

 

カヌーを漕ぎ進めていくと景色がどんどんひらけてきた。青空の中に燦々と輝く太陽、澄んだ川、そして無数に生い茂るマングローブの木々、生まれて初めて見る光景に心が躍った。

 

「ん?あれは…」

 

ふと岸を見ると巨大なハサミを持つカニがいた。前に図鑑で見たシオマネキというやつだろう。さらにその近くには変な顔の魚、トビハゼが地面を這っていた。

 

「すごいなぁ…あんな生き物が本当にいるんだ。」

 

図鑑でしか見たことがない珍しい生き物達、実際に見てみるとその感動に感動した。

 

「うわぁー!!一輝助けて〜!!」

 

すると、先の方からコマ姉の助けを求める声が聞こえた、

 

「コマ姉どうしたの?」

 

「カヌーが枝に引っかかっちゃったのー!!助けに来てー!!」

 

どうやらマングローブを近くで見ようとして枝に引っかかってしまった様だ。

 

「まったくしょうがないなぁ」

 

俺は2人を助けるためにそちらへ近づこうとする。

 

「ん?」

 

すると、白い大きな蝶が俺の目の前を飛んできた。

 

「うわぁ…こんな蝶初めて見た」

 

大きさも模様も村で見たことのあるどの蝶とも違っており思わず見惚れてしまった。

 

「うわぁっ!!なんだ!?」

 

すると、突然衝撃が走り仰反ってしまう。前方を見ると俺のカヌーの先端が枝に挟まっていた。

 

「先輩大丈夫ですか!?」

 

「なんで一輝まで挟まっちゃうの〜!!」

 

「く、くそっとれない…」

 

まさかミイラ取りがミイラになってしまうとは…なんとか枝を取ろうとパドルで押すが枝がしっかり挟まってしまい動かない。誰かに枝を引っ張ってもらわないととれなさそうだ。すると、離れたところにこのみさんとスグ兄が2人乗りカヌーを漕いでるのが見えた。

 

「このみさーん、俺達カヌーが挟まっちゃったんだ。なんとかこっちに来れるー!?」

 

「えー!?流れがあるから川上にはいけないってー!!」

 

たしかにそうだ、今俺達がカヌーをしているのは川だ。湖とはわけが違う。

 

「どうしましょう一輝先輩…」

 

「このままじゃ…」

 

蛍とコマ姉が心配そうにこっちを見ている。

 

「うーんどうすれば…」

 

俺も景色に夢中で随分ゆっくり漕いでたからだいぶ後ろの方だったし…あと他に後ろにいるのは…

 

「あ」

 

すると、一穂先生がゆったりと1人乗りのカヌーを漕いで来た。

 

「一穂せんせー!!」

 

「枝に引っ掛かっちゃったの〜!!」

 

「助けて下さーい!!」

 

俺達は藁にもすがる思いで一穂先生に助けを求めた。

 

「あらー何してるの君達」

 

一穂先生は俺達に近寄るとまず初めにコマ姉達の枝を引っ張った。

 

「枝持ってるからパドルで押してみ?」

 

「う、うん」

 

コマ姉は一穂先生の指示に従いパドルで押すとカヌーは見事抜け出すことが出来た。

 

「ほい、一輝くんも」

 

「あ、ありがとうございます」

 

すぐさま一穂先生は俺のカヌーを抑えている枝を外してくれ、俺は脱出することが出来た。

 

「よし、それじゃあ皆とはぐれないように早く行こうかー」

 

そう言うと一穂先生は俺達をみんなの元へと程よいペースで誘導した。その時の一穂先生は何故かとても頼もしく見えた。

 

 

 

 

「あ、3人とも大丈夫だった?」

 

「はい、一穂先生が助けてくれたんです」

 

岸にたどり着くとこのみさんが心配そうに駆け寄ってきた。

 

「確かここから山に登るんですよね?」

 

「そうだよー上のところでご飯食べるって」

 

頂上でご飯か、上の方から見るジャングルがどうなってるのかとても気になるな。すると、このみさんがバッグからお茶を取り出してそれを飲んだ。

 

「あ、私お茶車の中に置いてきちゃった。」

 

「え、飲み物持ってくる様にって言われてたじゃーん」

 

「あ、私もお茶忘れてきちゃいました」

 

「えー?」

 

コマ姉と蛍はお茶を忘れてきてしまったらしい。

 

「しょうがないなぁ…俺のお茶まだ結構あったからそれを…」

 

俺はバッグを開くとお茶を取り出そうと中身を探る。

 

「……………あれ?」

 

おかしい、無い。たしかに入れたと思ったのに…

 

「もしかして…俺も忘れた?」

 

「え、一輝君まで!?どうするのー?」

 

まずい、このままじゃ俺達3人喉がカラカラの状態で山を登ることに…

 

「お茶なら2人のは車に忘れていたから持ってきたよー」

 

すると一穂先生がコマ姉と蛍のお茶をバッグから取り出して渡した。

 

「あと一輝君のはこれ、さっきバッグから落ちてたから拾っておいたよ〜」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

一穂先生に俺のお茶を渡されて俺はお礼を言った。どうやらバッグが少し開いていたみたいだ。

 

「すいません一穂先生、さっきから迷惑かけてしまって…」

 

「いいよーこれくらい」

 

俺が謝ると一穂先生はいつものようにニコニコしながらそう返した。

 

「あと疲れた時様に、飴と冷却シートもあるよ」

 

そう言って一穂先生はバッグから飴と冷却シートを取り出した。

 

「おお…」

 

おかしい、一穂先生がしっかりしてる。いつもぐうたらでまったく頼りない一穂先生が

 

「一穂先生、体大丈夫?どこか異常ない?」

 

「ん?絶好調だよ」

 

俺が心配すると一穂先生は首を傾げながらそう答えた。

 

「お待たせしました〜今から出発しまーす」

 

すると、準備ができたのかガイドのお姉さんが俺達に呼びかける。

 

「お、じゃあ行こうか」

 

「あ…はい」

 

 

 

 

 

ガイドのお姉さんの案内に従いついていくと

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

大きく美しい滝壺が見えてきた。滝から落下した水は水飛沫となって離れた場所にいる俺達にまでかかってきた。

 

「お疲れ様でした〜ご飯の用意ができるまで、ここで泳いでいただいて結構でーす」

 

「だって、2人とも行こっ」

 

「はい!!」

 

「よっしゃ行こ行こ」

 

 

 

 

 

 

「うわっつめたーい」

 

「でもすごい綺麗だよ」

 

水は透き通っておりとても美しかった。でも夏だと言うのにすごい冷たくてびっくりした。

 

「でもこれだけ冷たいと急に泳いだら体に悪いかも」

 

「そうだね、まずは体を慣らしてから泳ごうか」

 

「はいっ!!」

 

 

 

 

俺がそう言った次の瞬間、誰かが岩の上から勢いよく飛び込んできた。

 

「ぷはっ冷たくて気持ち〜」

 

水面から出てきたのはなんと一穂先生だった

 

「か…一穂先生…やっぱり今日なんか生き生きしてない?」

 

カヌーの時から思ってたけど今日の一穂先生は妙にしっかりしてるし元気に満ちていて頼り甲斐がある。

 

「いやーなんだろうねー?こう陽気な気候の中にいると、こっちも陽気になるって言うか…童心に戻ってはしゃいじゃうのかなー」

 

そうか、しかし一穂先生が言ってることも理解できる。自然に満ち溢れたこの場所はそこにいるだけで俺も元気になっていく。しかしあの一穂先生がここまで元気になるとは…大自然の偉大さに俺は驚きを隠せなかった。

 

「とか言って、帰り道でへばらないでよ〜」

 

「大丈夫大丈夫、今のウチはパワーに溢れてるから」

 

心配するコマ姉に一穂先生は元気よく返事した。

 

「かずちゃーん、写真撮ってあげるからポーズとって〜」

 

すると、このみさんがカメラを手に俺達に呼びかけてきた。

 

「お、サンキュー」

 

「はいポーズ」

 

 

 

 

 

 

 

「うーん本当に生き生きしてるな。これがbefore」

 

このみさんが撮ってくれた一穂先生の写真には生き生きとした笑顔でポーズを決める一穂先生が写っていた。

 

「で、こっちがafter」

 

「ほらかずちゃん、車運転しないと帰れないよ」

 

「…やだ、運転したくない」

 

あれだけ元気だった一穂先生は電池が切れたかの様にぐったりしながらぐずっていた。

 

「太陽光が…ウチをむしばむ…」

 

「やっぱり一穂先生は一穂先生だったな」

 

なんとも言えないオチに俺はため息を吐いた



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