ポケットモンスターXY 道中記 (鐘ノ音)
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番外編
番外編 世界樹の迷宮に集う仲間達


道中記の本編終了後のIF的なあれ。



拝啓

 

カロスの皆さん、お元気ですか?

 

僕は元気です。

 

ここが異世界という事を除けば……

 

「ツカサ、どうしたの?」

 

「今日はマミと初めて世界樹探索をするんだなって感慨に耽ってた」

 

「私がツカサに助けられて半年……ふふ、ギルド『ドリフターズ』始動ね!」

 

「マミが見てた漫画のタイトルだっけ?」

 

「ええ、私達の境遇にそっくりなの!」

 

 

ここはハイ・ラガード公国、世界樹を神木と崇める国。

 

数年前に見つかった遺跡群や世界樹の迷宮の探索をする為に数多の冒険者達が訪れる国でもあり、国が世界樹探索を支援し報酬を用意している。

 

 

「漂流者、ねぇ」

 

ツカサは約一年前に迷い込んでおり、生きて行く為に配達のアルバイトをしたり酒場でウェイターをしたりして過ごしていた。

 

マミを見つけたのは配達のアルバイトが終わり宿に帰宅途中の街中であり、恐慌状態で皆が遠巻きに見ているのをある程度落ち着かせてから連れ帰っていた。

 

宿でもガタガタ震えが収まらず、手を伸ばしてくるマミを抱き締めて優しい言葉と背中をポンポンして落ち着くのを待っていた。

 

それが原因で完全に依存されてしまったが、宿の女将や冒険者達に優しくされても孤独を感じていたツカサはそれを受け入れて共依存のような状態になっていた。

 

「そ、それで今日は帰ったら……ね?」

 

「よっしゃ、やる気出てきた」

 

そんな二人が一線を越えたのが二ヶ月前であり、それから急速にマミの精神が安定して今に至る。

 

快楽よりも心の充足感が凄く、互いに離れられない関係になっていた。

 

 

「もう……ツカサのえっち」

 

「男だからね、仕方ないね。さて、行こうか」

 

此方に来てすぐに嘗てはハイランダーだった爺さんの元でアルバイトを始め、暇な時間には徹底的に鍛えられハイランダーとしての思想と基礎を叩き込まれていた。

 

そして職としていつの間にかハイランダーにされており、爺さんの奥さんもハイランダーだったらしく伝統であるらしいお手製マフラーを手渡されボロボロ泣いてしまったりも。

 

………

……

 

「やったねマミちゃん、まだ1Fなのに二人も仲間が増えたよ!」

 

「先輩、誰に話しているんですか?」

 

「俺と入れ替わりで入院か?」

 

「ツカサ、私はこっちよ?」

 

「マシュとルルーシュにマミもいたのか」

 

ちなみにマシュはいきなり街中で先輩と声をかけられ、詳しく話を聞くとパラレルワールドのツカサがマシュと共に戦っていた事を聞かされていた。

 

スケールの大きすぎる話にもう一人の俺は苦労してんなという同情と、マシュという可愛い子に先輩と呼ばれる羨望が入り混じっている。

 

パラレルワールドだろうが先輩は先輩と押し切られ、今はパラディンとしてギルド『ドリフターズ』の一員でメイン盾になっていた。

 

 

「マミとマシュを同室に、俺とツカサを同室にする話をしに来たんだ。ギルドとして正式な活動を始めたんだ、流石に男女別にしなければな」

 

「でしょうね」

 

ルルーシュはマミより前に助けていて、入院とリハビリで今の今までギルドに加わっていなかった。

 

入院費に治療費を肩代わりして毎日見舞いに行き、ボロボロな心も話を聞いて癒やして完全復活させている。

 

やけっぱちになっていた時にその始まりからギアスや黒の騎士団に自身の最期までを上手く聞き出し、成し遂げたならこれからは自由に生きたら?と告げていた。

 

それから数ヶ月が経過して怪我もよくなり始め、リハビリが始まった時にギルドを作った話をすると治り次第参加したい旨を告げられ了承している。

 

そして皮肉にもプリンスという自身にピッタリすぎる職に就き、座学とリハビリを繰り返しようやく参加するに至っていた。

 

 

「私は同室でいいのに……」

 

「この話はこれで終わりだ。ツカサ、仲間に勧誘していたあの獣人はどうだった?」

 

「ダメだった。ランニングトランクスタイガーさん、散り散りになった仲間を探してるんだって」

 

「そうか……」

 

「仕方ないし、今後も仲間になってくれそうな人を探して声をかけよう」

 

「そうだな」

 

「話は変わるけどルルーシュはあれだよね、シトト交易所のエクレアちゃんを舐め回すように見てたよね」

 

「ばっ、違う!」

 

「ルルーシュさん、まだあの子は小さいんですよ?」

 

「ロリコンは病気なのよ?」

 

マシュとマミはツカサの話とルルーシュの焦り具合からマジモンのロリコンだと思い、生暖かい目で見ながら諭そうとしていた。

 

「だから違う! ツカサ、お前だって酒場で胸のでかい冒険者ばかり見ていたじゃないか!」

 

「ちょっ、こっ、バカ!」

 

「俺の服を引っ張って、『ルルーシュ、あれ見てみろよ。凄い揺れててやばい』と指差していたじゃないか」

 

「へぇ……」

 

「先輩、最低です」

 

そんなこんな野郎二人の足の引っ張り合いで互いに遠慮もなくなり、活動しやすくなったのは言うまでもなかった。

 

ただし野郎二人はしばらく女性陣から冷たい目で見られる事になっていたが。

 

 

そして二人が部屋に戻ったのを確認すると改めて椅子に座り、先程の事を話し始めていた。

 

「……ルルーシュの言った通りにしたら、マジで上手く言ったな」

 

「あの二人は少々距離があった。本格的な探索前に距離を詰める必要があったんだ」

 

「でもこれでお前はロリコン、俺はおっぱい星人扱いか……」

 

「くっ、代償は大きいな……」

 

「シスコンでロリコンとか救えねぇな」

 

「うぐっ!」

 

「俺は健全だし、男だからセーフ。さっさと寝ようぜ」

 

「納得いかない……」

 

 

これが後にハイ・ラガード公国で一番のギルドになる者達の始まりである。




死んでたり、行方不明だったり、一度消えたりした者達が主に集まるよ!

不可思議な力は使用不可、この世界で手に入れた力しか使えない設定。


やっと世界樹5の星喰を倒したテンションで書いちゃったから続きはないけど。


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番外編 世界樹の迷宮に集う仲間達2

荷物を持ち軽く1Fを歩いただけで全身筋肉痛になったルルーシュを見てまずは鍛えないとダメだなと探索を一時中止し、筋トレやランニングでスタミナ諸々を付けさせていた。

 

「俺が持って来てた唯一使える科学の力って凄ぇ鞄のお陰で荷物は楽々だけど、武器や防具は重いからなぁ」

 

「私は平気ですね」

 

「私もツカサと1Fを回っていたから平気ね。ガンナー、私にピッタリよ」

 

「なぁ、あいつ倒れて死にかけてるけどいいのか?」

 

「うわっ、ルルーシュゥゥゥ!!」

 

ひたすら走らせてそれを眺めていたツカサは倒れているルルーシュに慌てて駆け寄って行った。

 

………

……

 

「ルークがギルドに入ってくれたからとりあえず安定するな」

 

「でもツカサは不思議な奴だよなぁ。何でも話しちまうっていうか、俺の話を聞いて泣いてたよな」

 

「ガチ泣きしちゃったのを忘れて欲しい。レプリカで消える運命とか悲しすぎんだろ……」

 

「俺の為に鼻水出して噎せるくらい泣いてくれたのを忘れられるかよ。しかしマジで技も力も使えないのはやばいな。剣術の型は出来るのになー」

 

ルークとの出会いは広場でポカンとした顔で辺りを見回している所に通り掛かり、何かを察したツカサが声をかけて宿に連れ帰った事だった。

 

詳しく話をすると生活の為にもと即座にギルドに加入し、その晩に疲れて熟睡するルルーシュを尻目に話を聞かせてもらったらしい。

 

その話があまりに悲しく切なくて号泣。

噎せるツカサを心配してルークが背中を摩るくらい泣いていた。

 

 

「だよなー」

 

「でも指示されて戦うのは新鮮でいいわ。問題はルルーシュが予想外の展開に弱いのとスタミナがない事だけどな」

 

「そうなった時は俺に指揮がスイッチするようになったから」

 

オールラウンダーなツカサにルルーシュは指揮のコツを教えており、並のギルドリーダーより遥かに高い指揮を執れるようになっていた。

 

 

「まぁ、それが妥当だな。仲間はこれ以上増やさないのか?」

 

「きっと俺達みたいな流れ着く人が居るだろうから、その人達に仲間になってもらおうかなって。仲間が増え始めたら誰も住んでない幽霊屋敷を買い取ろうと思う」

 

「あぁ、あの」

 

「なぁ、ルーク……そろそろセクシーなお姉さんが来てもいいと思わない?」

 

「いや、興味な……いわけでもないか。ただヒステリックなのは勘弁だな」

 

「この話に乗ってくれるルークは最高の親友になれる」

 

「ツカサを見て今が消滅間際の幻でも楽しみたいと思ったからさ」

 

「楽しむ余裕は大事よ。まぁ、俺もマミが来るまでは余裕なかったけどね」

 

デートや身体を重ねる事は今も休養日にしており、その翌日の二人のコンディションは最高になっている。

 

奇しくもハイランダーとガンナー、とある国でのペアと同じ組み合わせだから面白い。

 

向こうのガンナーとは胸部装甲の暑さが段違いだが。

 

 

「まぁ、でも今の俺には恋愛とかは早いわ。ツカサと買い食いしたり、ルルーシュ見ながら駄弁ったりする方が楽しいし」

 

「嬉しい事を言ってくれるじゃないの。とりあえず今日はもう寝ようぜ。明日は……何か嫌な予感がするけどルルーシュは二人に見てもらって、俺とルークの二人で買い食いしよう」

 

「あの串焼きの肉は外せないとして……あのチキンカツサンドをまた作って欲しいんだ」

 

………

……

 

マミはイライラ、マシュは冷たい目、ルルーシュは笑いを堪えた顔、ルークはご愁傷様といった顔で正座させられているツカサを見ていた。

 

「違うんです、俺は違うんです!」

 

「みぃ……ツカサはボクに誓ったのですよ? 『古手 梨花、俺は君と共に生き君と共に死のう』と」

 

「俺じゃない俺なんです!」

 

「フハハハハ! 語るに落ちたなツカサ! 貴様こそロリコンではないか!」

 

「うっせー! シスコンもやしは黙ってろ!」

 

 

いつものパターンで昼にツカサが集合場所にまだ幼い少女と恋人繋ぎで帰って来て、マミ達に見つかり小石等が散らばる地面に正座をするよう言われて今に至る。

 

尚、恋人繋ぎはしないと襲われたと叫ぶと言われ止むを得ずしていただけだったが。

 

「ツカサ」

 

「あ、ごめんなさい……」

 

マミの優しい声と笑ってるのに笑っていない目を見てビクッ!としている。

 

「その被ってる猫を取って話さないかしら、古手さん?」

 

「……ふふっ、バレていたのね」

 

「それはもう」

 

二人の間に火花が散り、強かになってきたマシュは先輩先輩と正座しているツカサの肩に強く手を置いていた。

 

「痛い痛い痛い! マシュ、脚に小石が食い込むからやめてぇ!」

 

「あぁ……この先輩の懇願にゾクゾク来るのは何なんでしょう」

 

 

「うん、俺は恋愛とかしばらくいらない」

 

「ああ、俺もルークに同意する。寧ろツカサはマミ以外には手も出していないのにあの対応、見ていて可哀想になってきた……」

 

 

それからマミと梨花の睨み合いからの嫁アピール合戦、何故かマシュの額に浮かぶ青筋、ツカサの脚に食い込む小石、怖くなって逃げたルルーシュとルークと中々のカオス具合だった。

 

 

そして……

 

「少し不満だけどマミが正妻、私が側室で決着がついたわ」

 

「意味が分からないよ」

 

「世界樹探索に古手さ……梨花さんも加わってくれるそうよ」

 

「ええ。身体を重ねるのは私の身体がしっかりしてからになるわね……何で出会った頃の身体なのかしら」

 

「せーんぱい?」

 

「いや、重ねる気はな……マシュの言い方は可愛いのにいってぇぇぇぇ!!」

 

両肩を掴み可愛らしく言いながら力を入れ、ツカサの脚に小石を食い込ませていた。

 

 

 

それから数日が経過し、表向きには猫を被りギルドメンバーには素の梨花がいた。

 

「もうこの世界に女の子は流れつかないでほしい。その世界の俺がほぼやらかしてるパターンだから死ねる」

 

「あぁ……あの後マミに連れ去られて、翌日ゲッソリして帰って来ていたな。マミはツヤツヤしていたが」

 

「あっ……」

 

「あれが続いたらいつか死ぬから。世界樹踏破するって目標出来たのに死んじゃうから」

 

「ルルーシュ、ガンナーはもう一人探した方がいいな」

 

「ああ、確かに。いつマミが孕むか分からないからな」

 

「まだ1Fも探索終わってないのにパパにはなりたくないよ! せめて前人未踏の所まで行った後なら吝かではないけど」

 

野郎だけの部屋でかなり生々しい話になり、ツカサは耳を塞ぎたくて仕方がなくなっていた。

 

「私的にはガンガン女性の迷い人が来て、修羅場になっている所が見たい」

 

「第三者としては面白いもんな」

 

「いつか二人に彼女が出来たらある事ない事吹き込んでやるからな……」

 

………

……

 

「ルルーシュを鍛え終わる前に梨花が鍛え終わるとかどういう事なの……」

 

「みぃ、ボクと貧弱もやしを一緒にしないでほしいのですよ」

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

「ほら、何とか作ったなんちゃってスポーツドリンク。でもそろそろ行けそうだな。まだ職の許可出てない梨花は宿屋で留守番だけど」

 

座り込むルルーシュになんちゃってスポーツドリンクの入ったカップを手渡し、今までより遥かにマシになっているのを確認している。

 

「仕方ないわね」

 

「早いとこあの家買わないとなー」

 

そろそろ拠点として皆が住める家を用意しないといけないから稼がないとダメだなと考えていた。

 

 

「はぁ……生き返る」

 

「お前いつも生き返ってんな」

 

梨花が洗濯物の入った籠を持ち洗いに行くのを見送り、ルルーシュが落ち着くまで隣に座って待っていたらしい。

 

「仕方ないだろう。しかし俺が言えた事ではないが我がギルドは色物集団だな」

 

「みんなキャラが濃すぎて俺が薄いっていう」

 

「お前含めてみんな同じくらい濃いがな」

 

「マジか……みんなでマミの世界の魔法少女について話し合った末の結論は怖かったよなぁ。マミは取り乱すと思ったのにケロッとした顔で何処かで会ったら潰す発言してて、あっちも怖かったけど」

 

ツカサと共依存の恋仲になり普通の身体に戻って大人の階段も登った事で余裕も生まれ、ルルーシュとツカサが辿り着いた結論にも全く動じなかった。

 

「元の世界で聞かされたり、ツカサが居なかったら発狂していただろうな」

 

「マミもこっちに来て色々成長したから。誰もが一度はかかる病が黒歴史になって悶えてる姿も可愛いし」

 

「相変わらずマミには甘いな。それよりマシュと梨花の世界にツカサが居たのなら、もしかしたら俺達の世界にも居たのかもしれないな」

 

「マミの世界には居るかもしれないけど、二人の世界には居ないと思うけど」

 

「いや、何か絶妙な場所にいる気がするぞ。フラグを満たさないと出現しない代わりにとんでもない性能を持つみたいな感じでな」

 

「えっ、俺隠しキャラなの?」

 

「……そういえば凄腕のテストパイロットを徴収するかで会議が難航した事があったな。期を見てと流れたが、意外とそれがツカサだったのかもしれない」

 

「それはない。人型兵器のテストパイロットとか心くすぐられるけど」

 

「ツカサを味方に付ければ勝てるような気がして仕方がない。……いや、まさか途中からブリタニアに居たのか? データは揃ったからテストパイロットはクビにしたと言っていたような」

 

「外付け勝利の女神とか見つけたら監禁待ったなし」

 

こんな本格的探索開始二日前。




きっとツカサはあらゆる世界で隠しキャラ扱いで存在してる。

セプテントリオンと戦ってたり、タルタロスに挑んでたり。


クロスオメガ、ジュウレンジャー来たし次はシンケンジャーでサムライハオーはよ。


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番外編 世界樹の迷宮に集う仲間達3

世界樹の探索前に伸びた黒髪をツカサは切らず、フラリと何処かへ出掛けて翌朝に帰って来ると髪の一部を三つ編みにしていた。

 

ハイランダーを纏める者を世話になった老夫婦が呼んでいたらしく、問答と手合わせで正式にハイランダーとして認められて細やかなお祝いをしてもらったらしい。

 

『総ての正義である為に』

 

心にストンと落ちたハイランダーとしての在り方、そして纏める者に認めてもらえた嬉しさでツカサは心にゆとりが生まれていた。

 

 

身体を休める為の休日、男女別れて宿の部屋でそれぞれ満喫している。

 

「マミにマシュ、最近のツカサがやばいわ。今まで以上に笑顔が素敵」

 

「動きも今までよりキレがいいですよ」

 

「流石私の旦那様ね」

 

女子達は街で買ったお菓子と紅茶で最近のツカサについて語っていた。

 

 

 

「ルルーシュの女装姿は似合いすぎて逆に引くわ」

 

「わかる」

 

「……今回は俺が最下位だったから次のゲームはチェスで勝負させてもらう。最下位が一日女装、二番が半日女装の罰ゲームだ」

 

ウィッグを付けてメイクをしプリンセス用のドレスを着たルルーシュにツカサとルークはドン引き、カチンと来たルルーシュは得意分野で勝負を挑んでいた。

 

「やった事ねぇよ……オサレでやってみたかったけど」

 

「二位はなしだろ!」

 

「知らんな! 今回は俺がルールだ!」

 

「汚い、流石ルルーシュ汚い。……この前の帰りに倒れてた女性、やっぱり俺の事を知ってたよ」

 

「ツカサに惹き寄せられているのかもしれないな」

 

「ラケル・クラウディウスさん、その世界の俺の上司だったって。思考も人になってて脚も動くとかちょい電波さんっぽかったし、何か俺に討たれたとか物騒な事を言っててやばい」

 

ガチでヤバい人物が来ているが人として流れ着いたらしく、今の所は病院で療養しているので特に問題はなかった。

 

「危険人物か? 他のツカサはどうかわからないが、お前と大して変わらないなら討った理由も正しい行いではない事をしたからだと推測出来るが」

 

「得体の知れない感じはする。異性を見るような目をしたり、子を見守る母のような目をしたり……まだ見極められない」

 

「俺はチキンカツサンドを作ってくれるツカサの判断に従うから」

 

「俺はツカサと次の見舞いの時に共に行こう。ツカサがそこまで言う存在なら一緒に見た方がいいだろうからな」

 

「それと向こうの俺は老若男女問わず無自覚にフラグを乱立させてるって言ってた。自殺志願者かな?」

 

大まかなディストピアな世界についても話は聞いており、そんな世界でフラグを乱立させていると知って頭を抱えたようだった。

 

「普段のお前と同じじゃないか」

 

「あ、ルルーシュもそう思ったか」

 

「ルルルコンビが酷い」

 

「「俺達を纏めて呼ぶのはやめろ!」」

 

「呼びやすいんだもの」

 

………

……

 

ルルーシュと共にラケルの元を訪れて詳しく話を聞いた結果……

 

「ゴッドイーター、か。そんな世界でも俺は生き足掻いてるんだなぁ」

 

「恐ろしい話だったな。正直俺はこの世界に流れ着いてよかったと思ったよ」

 

「世界存続の為に殺し殺される関係だったらしいのに、母として女として愛していますとか言われた時の俺の気持ち分かる?」

 

「面白……厄介な女しか惹き寄せないなツカサは。俺の世界でも似たような目に遭ってそうだが」

 

「あの女医さんは俺が連れて来る=ギルド入りだと思ってるのか勝手にメンバー登録手続きしてたしさぁ……てか魔法使える世界から誰か来てくれてもいいのに」

 

「現実逃避しているようだが、見舞いに行く途中に拾った女性のせいでツカサを中心に誘蛾灯のように集まっている説に信憑性が出たぞ」

 

「俺の顔を見て驚いて、ミーアって名乗ってから気を失ってたね。あとおっぱいが大きかったです」

 

「あの女医もまたかって顔をしていたな。それとあの幽霊屋敷だが、依頼をこなしてくれるなら無料でいいとの事だ」

 

「マジか。男と女の部屋が離せるから毎晩騒ごうぜ!」

 

「寧ろ俺とルークの平穏の為にお前の部屋は女側にしたいんだが?」

 

「道連れって知ってる?」

 

「それにマミと盛るのが目に見えるからな。それならマミの隣にするのが正しいだろう……おい、誘蛾灯。また行き倒れがいるぞ」

 

「え? ……あ、やった男だ! マミにまた女の人を拾ったの?って言われないで済む!」

 

「言われるんだよなぁ……」

 

「ミーアさんについてはきっと俺とは関係ないだろうから! てかあんな女性と知り合いだったら異世界の俺を尊敬するわ」

 

 

マシュに話を聞いてから絶対に秘密にしないといけないと考え、誰にも話していない存在もいる。

 

現在も隔離され精神的な治療をされているオルガマリーという女性、一年近くおかしい状態が続いていたが最近ようやく話が出来るくらいに回復していた。

 

初めて対面した時は付いていた医師達を振り払い物凄い勢いでツカサに詰め寄り、引き剥がされるまで必死に支離滅裂な言葉を並び立てて大変だったらしい。

 

無駄に記憶力がいいのが災いしてカルデアにレイシフトという単語からマシュと関係している人物だと気がつき、会わせようかと思ったが精神が安定するまでは秘密にする事を決めていた。

 

 

「フラグか。もし俺の居た世界でナナリーとその手のフラグを立てていたらツカサを抹殺しなければならないな」

 

「無表情のルルーシュ超怖E」

 

………

……

 

「えっと、ツカサとは私がラクス様の代わりになる前にお付き合いをしていたの。私が夢を叶える為なら身を引くって言ってくれて、そのまま行方不明になって連絡が取れなかったのよ」

 

「よもやこの世界で白河博士に救われ、更にブシドーという職に就くとは……乙女座の私にはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない」

 

「ツカサ、ここは賑やかですね。貴方が大黒柱、これからは私が母として……」

 

「ライダー助けて!」

 

幽霊屋敷が手に入り改装やらも終えた頃に皆が同日退院でワチャワチャして大惨事だった。

 

 

「人材発掘マシーンツカサか……黒の騎士団時代に居てくれたら毎日歩き回らせる仕事だけをさせていたな。バード、ブシドー、メディックが同時に加入とは……梨花はドクトルマグスに適正があったようだが、広範囲属性攻撃持ちが来ていないのが辛いな」

 

「ツカサがマミとマシュに足をグリグリされながら必死に助けを求めてるぞ」

 

「マシュもタイムリミットがなくなった事を俺達に話してからマミに一切の遠慮もなくツカサに甘えたり、マミにばかり構うツカサに嫉妬してみせたりと明るくなったな」

 

「『先輩が先輩すぎて、もうこっちの先輩も先輩ですから!』って色々凄かった。割とみんな腹黒いから全く羨ましくないハーレムだが」

 

「しかも知らぬ世界の自分の行いで好感度は最初から最大、下げようと色々するも向こうの自分と全く同じ事をしているから意味がない。つまり最初から詰んでいる形になるわけだ、可哀想に」

 

「物凄く嬉しそうな笑みを浮かべて可哀想とか言ってるんだよなぁ……」

 

「奴が四苦八苦する姿を見ると何というか……愉悦というやつだな。俺の為に更に増えて欲しい」

 

既に親友レベルで仲良しだが、一度は経験しておこうと娼館に一緒に行っておきながらマミに密告したりとツカサの面白い扱い方を心得ていた。

 

だがルルーシュもツカサに選んだ娼婦が年下のつるぺったんボディだった事を皆に暴露され相討ちだったりする。

 

 

「程々にしとけよな。拠点構えてから料理してるのツカサなんだから」

 

「分かっている。刺されないよう円満に行くように女性陣だけで話をする機会を作り、男性陣は酒場で飯を食う流れを作らなければ」

 

「食の喜びだな!」

 

「あぁ、国営料理店の手助けはルークがツカサに頼み込んだんだったな。レジィナに任された店名はマシュの考えた『カルデア』に決まっていたが」

 

………

……

 

「酒場でグラハム歓迎の為に飲めや歌えやで盛り上がって帰って来たら、何故かマミ以外も養う事になってたんだけど?」

 

「「おめでとう」」

 

「いや、こいつはめでたい! 私の世界の白河博士は逃げに逃げたが最後には薬を盛られ、そのまま既成事実を作られて死んだ目をして婿入りしていたが」

 

「なにそれこわい」

 

「相手は死んだと思われていたが宇宙で漂流していた名家の娘だったはずだ。鬱陶しそうに助けなければよかった、と呟きながら大好きな研究開発が出来ないと嘆いていた姿は痛ましかった……」

 

「研究開発が大好きなのか……相手が美人なら勝ち組だろうけど」

 

「ああ、見目麗しいご婦人だった。ゲッソリした白河博士にべったりしていたのも印象深い」

 

「うわぁ……」

 

「適度に研究開発をさせていれば浮気をする心配がなく、その開発を商品化する事で働かせず、更に身体の相性が信じられないくらい良いから手放せないとご婦人に惚気られたよ」

 

「ピュアな女性と幸せになってる俺は居ないのかな?」

 

 

そんな悲しい話を聞かされて数日、公宮からのミッションである行方不明の衛士を探し終えていた。

 

F.O.E.である駆け寄る襲撃者、そのボスである残酷なる蹂躙者をも撃ち倒している。

 

「鹿は簡単だったけど、今回は罠が使えたのも大きいな」

 

「ええ、それに私達のギルドも少しずつ有名になってきてるわね」

 

新人冒険者は3Fが鬼門になっているらしく、そこで文字通り蹂躙されて散る者が多い。

 

そんなF.O.E.を新人冒険者ギルドが撃ち倒し、更に行方不明だった衛士を見つけた事で酒場では話題になっている。

 

「ツカサ、ここからは慎重に進むぞ。経験を積んでスキルの習得も考えなければ公宮から出されたミッション、百獣の王キマイラ討伐が厳しいかもしれない」

 

「ああ、他にも採集したりもしたいしな。ルルーシュの号令はマジでありがたかったよ。力が漲るし、守りの精度も高まったし」

 

「先輩、私も挑発をして受け流すスキルを覚えますよ!」

 

「そうだな。俺は待機組とも出るから、同時進行のがいいかもしれない」

 

一階層の壁を乗り越える前に地力の底上げに走り始めていた。

 




こんなに居るのにまだ広範囲属性攻撃持ちがいないっていう。

GEツカサはキュウビ辺りが懐いてそう。
喚起と従属の複合的なアレで。

後はカスメ、レンジャー、ダクハン、ペットで全職加入。
所長は強制アルケミスト枠確定。


FGO、弓エミヤと殺エミヤが欲しくてガチャ回したのに鈴鹿御前が出すぎて困る。
かなり好きだけどもう5で重ねられないからレアプリ行き。


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本編
始まりはニート脱却と共に


初投稿です。
リーグクリアまでは原作沿い、クリア後から色々オリジナル予定。


俺はマサラタウンのツカサ、今年で18歳になる男だ。

 

皆は大体10から12くらいでポケモンと共に旅に出たりするみたいだが、俺は現在旅には出ていない。

 

一応11の時にホウエンに居る母方の従姉で一つ上のハルカの旅に同行してアクア団やマグマ団と戦い、どうにかリーグに辿り着き挑戦する前に呼び戻されてマサラタウンに帰郷。

 

 

そしてそのまま何の説明もなくオーキド博士に連れられてシンオウ地方に行き、父方の従妹で一つ下のヒカリちゃんの旅に同行した。

 

その旅の道中でギンガ団と戦い、ディアルガ・パルキア・ギラティナとの遭遇、ヒカリちゃんのリーグ優勝を見届けて俺の旅は一度終わりを迎えたんだ。

 

それからオーキド博士の手伝いでカントーやジョウトを旅しながらバッジも集め、一時的に助手の助手みたいな立場で働かせてもらっていた。

 

そして二年前に一時期騒ぎになったイッシュ地方にオーキド博士のお使いで行き、母さんの後輩の娘さんで二つ下のメイちゃんの旅に同行。

 

復活して暗躍していたプラズマ団との戦い、ブラックキュレムとの激闘、リーグ前に互いに全力を出して戦ったお別れバトル。

 

この最後の旅ですっかり燃え尽き、金だけはやたらあるのでマサラタウンで色々やりながらも二年間ダラダラと過ごしていた。

 

だがいい加減旅もせず毎日出掛けては帰ってきてダラダラする俺に母親はブチギレたらしく……

 

 

 

「お母さん、現役時代に稼いでいたお金の残りでカロスのアサメタウンに家を買いました。ツカサ、そこを貴方名義の家にして飛行機のチケットも用意したからいい加減家から出ていきなさい」

 

いきなり部屋の扉を開けてチケットと権利書を見せながら言い、更に真新しいスーツケースも持ってきていた。

 

 

「はい」

有無を言わさぬ迫力にそう言うしかなく、見ていたエガちゃんピンのDVDを即止めている。

 

 

「ハルカちゃん達もあんたに会いたがってるってのに、気ままなニート生活してますなんて私も言えないわよ。容姿は私とお父さんに似ていいのにどうして……」

ハァ、と溜め息を吐きながら部屋を見回していた。

 

壁には各地方のバッジが飾られており、額に入れられた40ものバッジはエリートトレーナーと言ってもおかしくないものだった。

 

ただ当の本人はコレクター気質からカントーとジョウトのバッジは集めただけで、カントーのリーグには全く興味を抱いていない。

 

カントーとジョウトのバッジを集め始めた時はリーグに行くんじゃないかと一時期期待されていたようだが。

 

 

「でしょうね。それで飛行機いつなの?」

 

「一週間後よ」

 

「マジかよ、グリーンさんとレッドさんに挨拶しに行かないと。グリーンさんは妙に絡んでくるし、レッドさんはアレだし」

 

「……着替えだけ詰めて他の私物は後から送りましょ」

 

 

………

……

 

そんなごたごたから一週間が経ち、カロスで暮らす許可はとっくに出ているようで後は向かうだけだった。

 

カロスの空港に着くのに時間がかかり、そこからツカサ宅のあるアサメタウンに着くのにも時間がかかりそうだった。

 

そして……

 

「まさか到着が夜になるなんて思わなかった。ご近所さんへの挨拶は明日だな」

 

自分の家にようやく着いた頃にはすっかり日も暮れ、今から挨拶をするのは迷惑だろうと考えて明日にしようと鍵を開けて中に入っている。

 

中に入ると殺風景で家具は何もなく、二階にベッドがあるだけで家具は買い直す必要があった。

 

餞別だと渡されたお金は家具の購入に使われるのが確定していた。

 

水やガス等の公共料金は口座からの引き落としにしたと母親に言われており、その手の事を心配せずに済んでいる。

 

 

 

翌日にご近所への挨拶を済ませ、それからあっという間に一週間が経った。

 

注文した家具や実家から送られてきた様々な私物を部屋に運び込み、ようやく生活環境が整っている。

 

「小さい頃から一人になる事が多かったから料理は得意なのであった」

そう独り言を呟きながら作った朝食を食べ、今日は何をしようか考えていた。

 

「今後旅をするにしてもトレーナーカードの再発行頼まないとなぁ……オーキド博士は図鑑くれなかったしやる気になれん」

呟きながらコーヒーメーカーで作ったコーヒーをカップに注いでいる。

 

そして食後のコーヒーを飲みながら従姉妹達+妹分が載っている雑誌を見て、カロスを旅するのも悪くはないかと考え始めていた。

 

二年前のメイとの旅が終わった時に燃え尽きたのを感じてトレーナーカードを返してしまい、これから旅に出て様々な施設を利用するにはそれを再発行してもらうしかない。

 

返してしまった事でバッジがあっても再取得しないと各リーグに挑めないが、カロスではまだ一つも得ていないので関係なかった。

 

ちなみに今までの手持ちは旅の終わりにハルカ、ヒカリ、メイの三人に譲渡したりオーキド博士の研究所に預けているのでいない。

 

 

 

「インタビューで俺の名前を出すとか個人情報とかはどうなっているのか。……まぁ、トレーナー、ブリーダー、ドクターに関してはあってないようなもんか」

自身の事を隠す必要がないとも言える。

 

雑誌の中では三人共別々にインタビューされているはずなのにツカサの名を出しており、いずれも久々に会いたい的な事を話している。

 

 

「だが残念、ツカサさんはカロスに永住させられているのであった。みんな16越えてるし冗談半分で嫁に来ないかって三人にメールしてみようか……チャンピオンだから無理って返されて涙目になる未来しか見えないからやめよう。旅の最中は仲良かったのに、冷たく返されたら枕がビッチャビチャになるわ」

普通にメールをするのもレッドやグリーン、各地方で出会った博士やマサキ等の男ばかりである。

 

 

「とりあえず再発行を頼んで……と。昼には届くとか神対応すぎるだろ」

スマホで簡単に再発行までの操作をして決定を押してみたら、まさかの即日配達だったようで驚いていた。

 

「とりあえず動くのは明日からでいいか……」

 



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欲しかった物と始まりのポケモン

トレーナーカードが届いた翌日、そろそろ動こうと準備をして家を出るとご近所に暮らす二人の少女が待っていた。

 

「えっと、確か……セレナちゃんとサナちゃんだっけ? 何かご用?」

朝からレベルの高い美少女二人を見れてラッキーだなと思いながらも顔には出さず、鍵をかけながら二人に何か用があるのかと尋ねている。

 

「おはよう、ツカサさん」

 

「おはようツカサ! あのね、あたし達はあなたを呼びに来たの!」

 

金髪でポニーテールの背が少し高い少女と、茶髪で独特のツインテールのような髪型をした小さな少女が挨拶をしてきた。

 

既に小さな少女はフレンドリーに呼び捨てしてきて、ただそれだけでもツカサは好きになってしまいそうだった。

 

「ポケモン博士のプラターヌさんがアタシ達五人の子供……ツカサさんは大人ですけど、とにかくアタシ達五人にお願いがあるそうなんです。何でアサメに来たばかりのツカサさんの事を博士がご存知なのかは不思議ですけど」

本当に不思議そうにツカサの顔を見ている。

 

 

「とにかく一緒に隣町に行こ! そこでポケモンが貰えるんだって! ほら早く行こっ!」

そう言うとサナはツカサの腕を取り、待てないとばかりに走り始めた。

 

 

隣町までは少し距離があり、サナが走り疲れて歩き始めていつのまにか三人で並んで歩いていた。

 

両手に花だなと考えながらも久しぶりの旅に心が弾み、自然と笑みが浮かんでしまう。

 

「あの、ツカサさんはカントーのマサラタウンから引っ越して来たんですよね?」

 

「ん? ああ、そうだよ」

 

「さっきのプラターヌ博士の事なんですけど、オーキド博士から連絡をもらっていたんじゃないかって思うんです」

 

「それはあるかもしれない。餞別とか言ってオーキド博士が執筆してる著書を全部渡してきた時は嫌がらせかと思ったよ」

その本の詰まったダンボールの重さを思い出したのかイラッとしている。

 

ちなみに全部初版のサイン入りであり、コレクターやファンからしたら垂涎物。

 

有名になる前の物は発行部数がとても少なく入手困難であり、全部まとめてオークションに出せば七桁は軽いが、ツカサはそれを知らないので本棚にまとめて納められている。

 

 

「詳しくは本人に聞くしかないですね」

 

「だね。それと三つしか違わないし、セレナちゃんも別に敬語じゃなくていいよ。サナちゃんとか思いっきりタメ口だし、呼び捨てにしてるし」

少し疲れた様子で隣を歩くサナをチラッと見て、セレナも敬語はいらないと伝えていた。

 

「そう? それならそうさせてもらうわね」

 

「セレナちゃんはクールというかストイックというか」

今までの少女達と比べると落ち着きがあり、少々苦手な部類の存在だった。

 

「ちゃん付けはやめて。アタシもツカサって呼ぶから、貴方も私を呼ぶ時はセレナでいいわ」

 

「あたしもサナでいいからね」

 

 

「でも呼び捨てにして友達に噂されたら恥ずかしいし……」

まだ知り合って一週間程しか経っていない女の子の名前を呼び捨てにするのが恥ずかしいのか、男が言うべきではない台詞を吐いている。

 

「えっと……ツカサ、友達いるの?」

 

「え、うそ! 誰? 教えて!」

 

「しまった、噂してくれる友達がまだいない。セレナとサナ以外にはあの二人しか……」

そんな話をしながら三人でアサメの小道を抜け、無事に目的の隣町に到着していた。

 

 

 

メイスイタウンと書かれた看板を止まって見ていると、一緒に来ていた二人はいつのまにか居なくなっている。

 

「あ、いた」

少し歩くとオープンカフェに四人で座って何かを話している姿が見え、サナが手を振り来るように呼び掛けているのが聞こえてきた。

 

「今みんなでツカサの事を話してたの!」

 

「そうだったのか。……アイスコーヒーをお願いします」

セレナの隣に座るとウェイターが来たので注文していた。

 

「お支払の方はいかがいたしますか?」

 

「この子達のも俺がまとめて払うんで」

ここぞとばかりに年上の甲斐性を見せ、先に座っていた四人それぞれから礼を言われている。

 

「かしこまりました」

 

 

それからすぐにアイスコーヒーが届くとその場で皆の飲み物の代金とチップを渡し、和やかな空気になったところで改めてティエルノとトロバの話を聞く体勢になった。

 

「ねぇねぇ、早くみんなのパートナーになるポケモンに会わせて♪」

 

「だよねえ! ぼくとトロバっちがポケモンと出会った時の感動、サナ達も味わってねえ」

ふくよかでダンスが得意なティエルノはそう言うと、三つのモンスターボールが入ったケースをテーブルの上に乗せた。

 

「ツカサからどうぞ」

 

「サナ達は後でいいよ!」

 

「年下の女の子に譲られる俺は第三者から見たらどうなんだろうな。まぁ、お言葉に甘えて……この子にしよう」

少し悩んだが一つのモンスターボールを手に取った。

 

「じゃ、あたしのパートナーはフォッコちゃんね! あたし達のコンビ可愛すぎてどーしよー♪」

 

「自画自賛乙」

騒ぐサナにツカサは小声で呟いている。

 

「アタシはセレナ、よろしくねハリマロン。アナタのお陰でアタシもポケモントレーナーになれたわ」

セレナは微笑みながらハリマロンの入ったボールを愛おしそうに撫でていた。

 

「あのう……僕も預かってきた物があるんです」

そんな光景を見ていたトロバが鞄をごそごそしながら三人に話しかけている。

 

「マジか少年」

 

「はい。ポケモンを深く理解する為の大事な物です」

 

「こ、これは……!」

手渡された物はツカサが長年欲していた物……最新のポケモン図鑑がようやく自分の手元に来ていた。

 

「あっ、あのですね……今お渡ししたポケモン図鑑は出会ったポケモンを自動的に記録していくハイテクな道具なんです」

 

というトロバの真面目な説明も右から左へとすり抜けていくくらい嬉しいようで、セレナとサナはちゃんと聞いているのにツカサは全く話を聞いていなかった。

 

そして博士からの用事も終わったからポケモンを探しに行くとティエルノとトロバは席を立ち、改めて飲み物をご馳走になった事の礼を言って去っていった。

 

 

「カロスはね、選ばれた子供がポケモンとポケモン図鑑を持って旅をするのよ。ツカサはギリギリ子供って事ね」

 

「見た目は大人、心は子供って事を見破られているのか俺は。……一度帰って改めて旅立ちの準備をしなおしてくる」

 

コーヒーを飲み干すと席を立ち、アサメタウンのマイホームへ帰ろうとすると……

 

「待って! ツカっちゃん、デビュー戦の相手をお願いしちゃうんだから!!」

 

「しまった、あだ名を適当にツカっちゃんがいいとか言ったせいで変な気分になる。もっとかっこいい刹那とかハーレムが作れそうな一夏とかリトとかにすればよかったか……」

適当に決めたあだ名に後悔しているようで、ぶつぶつ呟いている。

 

「フォッコちゃんとあたしの初めての勝負! キュートに勝っちゃお!」

 

「見せてもらおうか、カロスのポケモントレーナー(新人)の実力とやらを!」

そう言うと互いにモンスターボールを投げた。

 

 

ツカサの投げたボールからはケロマツが、サナのボールからはフォッコが現れ、互いにどう動くか睨みあっている。

 

 

「フォッコちゃん! ひのこ!」

 

「ケロマツ、あわで反撃だ!」

 

ケロマツはフォッコのひのこをくらいながらもあわを吐き、そのあわを避けようとしたフォッコは足を取られて素早さを活かせなくなっている。

 

 

「えっと、しっぽをふる!」

 

「フォッコはあわで足を取られて素早さが下がってる、そのままあわで押し通すぞケロマツ!」

 

その場でしっぽをふるフォッコに更にあわを吐いてダメージを与え、フラフラしている姿を見て次がトドメになるなとツカサは確信していた。

 

 

「ケロマツ、反撃の隙を与えずあわで攻撃!」

 

そして周囲のあわで身動きが取れなくなったフォッコに最後の一撃を与えダウンさせている。

 

 

「あー! フォッコちゃん、もっともっと見てたかったのに! ……うー、はい賞金。でも凄いんだね、ツカっちゃん」

 

「ありがとう」

断るのも失礼だと思い五百円を受け取りながら礼を言っていた。

 

「それとツカっちゃんのポケモン元気にしてあげる♪」

 

「それはありがたいな。……ケロマツも元気になったし、俺は一度帰るよ」

 

「うん、わかった! それじゃ、またね!」

サナは手を振りながら元気に走って行き、ツカサはそのままマイホームに帰っていった。

 

………

……

 

部屋で以前の旅で学んだ日持ちする食料にタウンマップを鞄に詰め、旅に出る前の腹ごしらえに冷蔵庫の中の食料を総て使い早い昼食を作っている。

 

しばらくは帰ってこられないのが分かっているから総て使っており、ケロマツもボールから出してポケモン用に作ったご飯を皿に乗せて目の前に置いていた。

 

「ケロッ」

 

「俺の図鑑か……もっと早く手に入っていれば伝説や幻のポケモンが登録できたのにな」

 

ケロマツががっついているのを見ながら図鑑をいじっており、過去に出会った何体もの伝説・幻と言われるポケモンのデータを登録したかったと溜め息を吐いている。

 

 

「……お前は♀でわんぱく、ちょっぴり強情なのか。図鑑で確認できるって便利だなぁ」

気を取り直し図鑑を介して個体の情報を確認していた。

 

「ケロ」

そうだと言わんばかりに頷いている。

 

「さてと、食休みしたらそろそろ行こうか。どこかでモンスターボールを買うまでは俺とお前の二人旅だ」

いざと言う時の為に値段は張ったが、鞄に入る折り畳み式のテントも準備しており野宿になっても安心だった。

 

他のテントよりも桁が一つ違うだけあり鞄に簡単に入るが、広げると三人は入れるくらいの大きさになる。

 

ワンタッチで展開して、しまう時もワンタッチでコンパクトなサイズになる便利なテントだった。

進歩した科学の力は凄いのである。

 

 

食べ終わったケロマツがボールに入りたい的なジェスチャーをするのでボールに戻し、洗い物をして食後の缶コーヒーを口にしながらボーッとしていた。

 

「今回は誰に同行するわけでもない……ここからは、俺の物語かぁ」

その事が嬉しくて自然と笑みが浮かんでいる。

 

今までリーグに挑戦しなかったのは旅の同行者という立場から自重していたからであり、挑戦したい気持ちを押し殺していただけだった。

 

各地方で知り合った博士達はその事を察しており、今回カロスに引っ越すのを知って様々な博士が手回しをしてくれている。

 

オーキド博士の餞別は渡した本がダミーでこちらが本命だったりする。

 

 

 

「さて……そろそろ行こうかケロマツ」

腰に付けたモンスターボール用のボールホルダーにボールをセットし、コーヒーの缶を洗いリサイクルの袋に入れて家を出ていった。

 



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川を渡って森を抜けて

昼すぎくらいにメイスイタウンに着き、ついでに色々見て回っていると試供品のキズぐすりを配っていたので貰っている。

 

そして現在は噴水の側の掲示板を見ていた。

 

「『ここはメイスイタウン。川面に寄り添う町』か。夏場は涼しそうだな」

夏は川の側で涼むのもいいなと考えながら橋の方に歩いていく。

 

橋を渡ろうとすると山男に止められて何か言われたが、笑顔で聞いたフリをして頷き橋を渡っていった。

 

 

「草むらが……ん?」

 

その先にある草むらに足を踏み入れようとしたが、草むらからジーッとこっちを見ているポケモンが目に入った。

 

片足を上げて横に跳ねるように移動するとポッポも翼を広げながら追いかけてくる。

 

何でカントーでボールを買ってこなかったのかと後悔しながら草むらに入ると、嬉しそうにそのポッポが目の前に飛び出してきた。

 

 

「ケロマツ!」

間髪入れずにボールを投げ、ケロマツをポッポの前に出している。

 

「ケロッ!」

 

「後で捕まえたいから今は逃げるぞ!」

そのまま走り出してケロマツを抱えて草むらを駆け抜け、ポッポから上手く逃げ出していた。

 

 

そしてケロマツをボールに戻し、背後の草むらを見るとさっきのポッポがジーッと見ている。

 

 

「……さてと」

そんなポッポを見なかった事にし、前方にサナとセレナの姿を確認したので近づいていった。

 

 

 

 

「あっ! ツカっちゃん、一緒にポケモンの捕まえ方を教えてもらお! セレナのパパもママもすごーいトレーナーなの!」

 

「マジか」

挨拶をした時の意味深な視線はトレーナーだったからなのかと納得している。

 

「マジだよ! だから捕まえ方や勝負に詳しいんだって!」

 

「うーん、パパやママがそうでもアタシには関係ないけど。ちょっと見てて」

そう言うとセレナは草むらに入っていった。

 

そして出てきたホルビーを相手にサナとツカサに捕まえ方のレクチャーをし、見事にホルビーを捕まえて見せていた。

 

 

「うわあ、ポケモンがボールの中に!?」

 

「まあ、サナったら。アナタのフォッコは何に入っているの? 二人にもモンスターボールを分けてあげる」

 

「セレナ様の優しさはカロス地方を駆け抜けるでぇ……」

ありがたく受け取りながら先日見たDVDの台詞をアレンジしながら吐いている。

 

「セレナ様……あ、サナにも」

年上の男からの様付けが琴線に触れたらしく、少しボンヤリしてしまっていた。

 

「これであたしもポケモン捕まえられる?」

 

「この辺りのならボールを投げれば捕まるわ。それじゃあ、私は先に行くわね」

 

「うん、またねセレナ! よーし、可愛いポケモンに会ったら捕まえて友達になっちゃお!」

そのまま走っていくセレナを見送り、サナはボールを手にして気合いを入れている。

 

「セレナ様はニーソとは分かっていらっしゃる」

走り去るセレナのニーソに注目しながらボールを鞄にしまっていた。

 

 

そしてポッポの事を思い出して振り返ったが既に背後の草むらから居なくなっており、ホッとしたようなガッカリしたような気分のまま目の前の草むらに入っていく。

 

ビードル、ジグザグマ、ホルビー、コフキムシと懐かしいのから目新しいのまで飛び出て来るが、今一捕まえたいと思うポケモンが出てこない。

 

そして……

 

「あ、セレナも持ってたヤヤコマだ。あの足が何か気に入ったから先制モンスターボール!」

ケロマツを出し、ヤヤコマが驚いている間にモンスターボールを投げつけている。

 

抵抗もなくそのままあっさりと捕まり、ツカサの手元にボールが戻ってきた。

 

何が起きたのか分かっていないケロマツをボールに戻し、かわりにヤヤコマをボールから出している。

 

 

「ピピピ!」

 

「えっと、まじめで考え事が多い♀か。特性ははとむね……肩に乗ってきたけど2kgないからまだいいか。よし、戻れ」

 

肩に乗ってきたヤヤコマをボールに戻し、そのボールをケロマツの隣のホルダーにセットすると歩き始めた。

 

 

 

その場から少しだけ進むと看板があり見てみると

『この先 ハクダンの森』

と書かれていた。

 

 

「すっげぇチラチラこっち見てくる少年がいる……」

 

「! 目があうって事は……ポケモン勝負の始まりさ! 行け、ジグザグマ」

向こうから強引に目をあわせてきた挙げ句、問答無用でジグザグマを繰り出してくる始末。

 

「ケロマツ」

仕方なくケロマツを出して勝負を受け入れている。

 

特に見せ場もなく、あわとたいあたりの応酬が続きそのままあっさりと勝っていた。

 

 

「なんだ!? 君、強すぎるぞ!?」

 

「……」

少し可哀想になりながらも120円を受け取り、そのままハクダンの森へと歩を進めている。

 

………

……

 

入ってすぐの所にある看板を読もうとすると、サナがツカサの後を追いかけてきた。

 

「待って♪ 一緒に行こっ! 一緒だとなんだかワクワクしそうなんだもん♪」

 

「いいよ、そろそろ日も暮れそうだし一緒に行こう」

 

ハクダンの森がかなり広いのに入ってから気がつき、抜けられなければこの地方で初の野宿だと覚悟を決めている。

 

『ここはハクダンの森。落し物に注意!』

 

という看板を横目に二人で雑談をしながら森の中を歩き回り始めた。

 

ピカチュウ、ヤナップ、バオップ、ヒヤップ、ヤヤコマ、ビードル、コクーン、キャタピー、コフキムシと目新しいポケモンは出てこず、捕まえる気がないのでケロマツで倒していた。

 

捕まえたばかりのヤヤコマも育てようと野生のポケモンと戦わせていると、サナがジーッとこちらを見ているのに気がついた。

 

 

「どうかした?」

 

「指示出すの上手だね♪ 緊張しないの?」

 

「まぁ、サナやセレナ達より少し長く生きてるからねぇ」

 

サナが成長するように指示の出し方も新人向けのものにし、ヤヤコマを使う事で信頼関係の築き方も同時に教えようとしていた。

 

その後はたんぱんこぞうとバトルをしたり、サナの話を聞いたり、間違えて投げたボールでピカチュウを一発で捕獲しながら歩いていると暗くなる前に森の出口が見えてきた。

 

何故か出口まで後少しという所でセレナが待っていて、さっきの事もありツカサはニーソにしか目が行かなくなっている。

 

 

「少し冷静になろう。図鑑にあるこの謎のミラクル交換?ってのを試して冷静になろう」

 

「ツカサ、セレナがそわそわチラチラ見てるよ」

 

「えっと、こうして……さっきのピカチュウのボールをセットして、と」

 

「ツカサー?」

 

「まぁまぁ、セレナには待ってもらおうよ。何が来るかな……め、メレシー? いわ・フェアリーの複合タイプか……フェアリー? フェアリー!?」

ミラクル交換で来たメレシーの見た事のない新タイプに心底驚いている。

 

「?」

 

「俺が二年間も引きこもってる間に新タイプが出てたのか……」

そんな事をぶつぶつ呟きながらセレナの方に歩いていく。

 

 

「ツカサ、モンスターボールはある? はい」

 

「セレナ様の優しさは五臓六腑に染み渡るでぇ……」

さっきまで気づかないフリをして待たせようとか考えていた男とは思えなかった。

 

「……」

やはりセレナ様という言葉が気に入ったらしく、少しだけ口角が上がっているのがわかる。

 

「あっ、何かセレナ嬉しそうにしてるよ」

 

「俺には全く分からんな……さっさと次の町に行ってポケモンセンターに泊まろう。トレーナーカードがあれば宿泊無料だし、安価でご飯も食べられるし」

 

そのままセレナをそっとしておき暗くなり始めた森を急いで抜けていく。

 

途中バトルを仕掛けてきたミニスカートにデレデレしそうになったがサナが居るのを思い出し、キリッとした表情で勝利を収めている。

 

そしてようやく出口に辿り着くとセレナ、ティエルノ、トロバが追いついてきた。

 

そのまま皆で森を抜けて三番道路、別名ウベール通りに出ると皆はこれからどうするのかを話し合っている姿が見える。

 

セレナがジムに挑戦するという事以外は聞いておらず、ジムという言葉に遂にリーグへの一歩が始まるのかと気合いが入っていた。

 

 

 

「俺も行こう」

 

セレナが駆けていったのを見送り、貰った探検心得を鞄にしまうと他の三人を置いてハクダンシティへと向かっていく。

 

………

……

 

「途中ローラースケートで抜いて行った女の子がいたが……楽しそうだったな」

 

道中のトレーナーを蹴散らし、ハクダンシティに入ってすぐのポケモンセンターに入っている。

 

入るとすぐにメレシーをパソコンに預け、ジョーイさんに宿泊の申請と手持ちのポケモンを預けていた。

 

そのまま併設された食堂で安く夕飯を済ませ、シャワーを浴びてから新しい服に着替えて今日着ていた服や下着の洗濯をしている。

 

そして乾燥機を使用している間にセンター内をぶらついていた。

 

「……チッ」

 

イチャつくカップルトレーナーが何故か多く、羨ましさと妬ましさから思わず舌打ちをしている。

 

部屋でやれとイラつきながら邪魔なカップルを避けてフレンドリィショップの店員に近づいた。

 

そこでモンスターボールを10個購入するとおまけでプレミアボールを1個貰え、ついでにアイスコーヒーを購入してカフェスペースの隅の席に腰を落ち着けた。

 

通りかかったジョーイさんに許可を貰い、携帯端末の充電もさせてもらう事にしている。

 

 

「トレーナー専用掲示板にアクセス、と」

スマホでトレーナーカードのIDとパスを入力してアクセスし始めた。

 

蓋を外しプラスティックのカップの中のコーヒーを混ぜると、中で氷がぶつかりあってカラカラという音がする。

 

無駄に容姿がいいだけあって真剣な表情でスマホを使う姿は決まっており、同じように泊まる予定のセレナ達が声をかけるのを思わずやめるレベル。

 

 

「……有名トレーナーは大変だな。専用のスレとか出来てるし、どこで見かけた系の書き込みまである」

アイスコーヒーで喉を潤しながら閲覧している。

 

チャンピオンのハルカ、ヒカリ、メイは当然として元チャンピオンに各地のジムリーダーに各博士達にも専スレがある。

 

 

他には伝説・幻のポケモンの目撃情報のスレがあったり、進化に関する質問スレがあったりとトレーナー達が盛んに交流していた。

 

 

 

「……そろそろ部屋に帰るか」

 

ある程度の情報収集を終えると充電器を回収し、アイスコーヒーを飲み干してから乾燥機から洗濯物を回収して部屋に戻っていった。

 

 

部屋に戻り灯りを消し、明日の予定をぼんやり考えながら寝ようとするとメールが三通届いた。

 

「ハルカ、ヒカリちゃん、メイちゃんか……三人共『今どこにいるの?』って寸分違わぬ内容でちょっと怖い。『連絡するの遅れたけど、俺だけカロス地方のアサメタウンに引っ越しました』これでいいだろ」

三人に全く同じ文面でメールを送りベッドの上でボーッとしていると、そのまま寝てしまった。

 



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カロスで初めてのジム戦

七時にセットしていた目覚ましで起き、寝癖を直してから新しい服に着替えている。

 

着ている物以外に七日分の着替えがあるので、センターに着いて洗濯して乾燥機を使いローテーションすれば何とかなりそうだった。

 

 

「朝は……クロワッサンとカフェオレとサラダでいいか」

 

ジムに挑戦するのに朝は軽くしようと簡単な物だけを頼み、食堂で美味しく戴いている。

 

荷物を取りに部屋に戻り、ケロマツとヤヤコマの入ったボールをジョーイさんから受け取って礼を言ってからポケモンセンターから出ていった。

 

朝日が眩しく思わず伸びをし、腰のホルダーにボールをセットしている。

ジムに挑む前にハクダンシティを見て回ろうと足を進めた。

 

 

『ハクダンシティ。古式ゆかしい街』

 

街の中央にある水場にはロゼリアの像があり、像の両手の花の部分から水が流れていて涼しげでいいなと思いスマホで写真を撮っている。

 

他にもトレーナースクールもあるが興味がないのでスルー、カフェが多いなと考えながらジムへと向かっていった。

 

するとジムの前に昨日追い抜いて行ったローラースケートの少女がおり、勝てばローラースケートをくれると言うのでジムに挑む前の前哨戦だと考えバトルを受けている。

 

だがヤヤコマがつつくだけの簡単なバトルだった。

 

 

「うわー、凄い! ジムリーダーより強いかも! はい、約束してたコレ!」

 

「ねんがんの ローラースケートをてにいれたぞ!」

 

「使い方は……お兄さんなら分かるよね!」

説明書を探してごそごそしていたが、どうやら無くしたのか誤魔化している。

 

「なんと」

 

「あ、あはは……バイバーイ!」

ツカサの何とも言えない目に耐えられず滑っていってしまった。

 

「雑だなぁ……まぁ、いいか。検索すれば出てくるだろ」

ジムの壁に寄りかかりながらスマホをネットに繋ぎ、ローラースケートの使い方を見始めた。

 

 

………

……

 

無事に使い方は分かったがこんな事をしている場合ではないと、ジムがもう開いているか確認するのにドアの前に立って軽く押してみている。

 

「よかった、開いてる」

開いている事が分かるとそのまま中に入っていった。

 

中に入ると一人のおっさんが居てチラチラ見てくるが無視、それよりも飾られている写真に目が行き見て回っている。

 

その写真には虫ポケモンが多く映っていて、使うならヤヤコマだなと考えながら全て見終えていた。

 

部屋の中央にある棒で下に降りるようで、おっさんの何か言いたげな視線を無視して棒に捕まり下まで滑り降りていった。

 

 

「うおっ! このジムは蜘蛛の巣的な仕掛けなのか。めっちゃ怖いんだが」

不安定な足場におっかなびっくり歩いている。

 

トランポリンのような弾力もあり、それが歩きにくく少し怖いようだった。

 

そのままおっかなびっくり進んでいくとジムに所属しているトレーナー達がバトルを挑んで来て、ここでもヤヤコマのつつく無双が繰り広げられている。

 

そしてそのまま全てのトレーナーを倒すとジムリーダーの元にあっさり辿り着く事が出来た。

 

「あの」

 

「勝負に挑むその表情。いいんじゃない、いいんじゃないの! 初めてのジム挑戦? いいんじゃない、いいんじゃないの! 負けて悔しがるのも……勝った瞬間もどちらも被写体としてサイコー! いいんじゃない、いいんじゃないの!」

 

 

「は、はぁ……」

朝からテンションが高い女性のジムリーダーに引きながらも話はしっかりと聞いている。

 

「さあて、このビオラ。シャッターチャンスを狙うように勝利を狙っていくんだから! やるわよ、アメタマ!」

そう言うと許可も取らずにパシャっとツカサを撮影し、アメタマを繰り出していた。

 

「行け、ヤヤコマ!」

 

 

二匹はにらみ合うようにして向き合い、互いにトレーナーの指示を待っている。

 

「ヤヤコマ、つつく!」

 

「アメタマ、あわよ!」

 

ツカサの指示を聞いたヤヤコマは宙を滑空してアメタマに接近し、その嘴で思いきりつついていた。

 

だがアメタマも負けじとあわを吐き離れようとするヤヤコマを追撃し、両者決め手に掛けたまま元の位置で再びにらみ合いを始めている。

 

 

「ヤヤコマとにかくつつくんだ!」

 

「アメタマ、ちょっと来なさい!」

 

アメタマはすぐにビオラの所に向かい、キズぐすりでつつかれた所を治療してもらっている。

 

そして元の場所に戻った途端にヤヤコマにつつかれ、治してもらった場所以外が傷ついてプラマイ0になっていた。

 

 

「ヤヤコマ!」

 

「あ、アメタマ!」

 

分かってると言いたげに目配せをしたヤヤコマがアメタマをつつき、耐えられなかったアメタマをダウンさせている。

 

 

 

「ヤヤコマ、よくやった。次はお前だ、ケロマツ!」

 

「アメタマの敵討ちよ、ビビヨン!」

 

そしてツカサはアメタマを討ち取ったヤヤコマを戻してケロマツを繰り出し、ビオラは最後の一体であるビビヨンを繰り出していた。

 

 

「ケロマツ、みずのはどう!」

 

「ビビヨン、かたくなる!」

 

水の振動がビビヨンに襲いかかるがどうという事はないらしく、攻撃に耐えて身を堅くしていた。

 

 

「ケロマツ、もう一度みずのはどう!」

 

「ビビヨン、まとわりつく!」

 

ビビヨンが鬱陶しくケロマツにまとわりつくが、至近距離からの水の振動はダメージが大きかったのかビビヨンは少しふらついていた。

 

「みずのはどう!」

 

「まとわりつく!」

 

一番最初のジムだから仕方がないとはいえ、互いに同じ技を繰り返すだけで今一迫力も何もない。

 

ケロマツとビビヨンもそれを感じているのか、若干手を抜いているようにも見えてくる。

 

そしてビオラは目の前の男がジムリーダーを前に一切の緊張をせず、自身のポケモンの限界を把握して指示を出しているのに気がついていた。

 

バトル中に目の前の男が何者なのかと考えていたせいで……

 

 

「みずのはどう!」

 

「しまっ……ビビヨン!」

 

ツカサは自分を見ているビオラの一瞬の隙を突き、まとわりついていたビビヨンに零距離で叩き込むように指示を出し吹き飛ばしてダウンさせていた。

 

 

 

「……勝ったか」

 

「貴方は……ううん、貴方と貴方のケロマツは最高のコンビね。いいんじゃない、いいんじゃないの!! ホラ、これをどうぞ!!」

ビオラはポケットからバグバッジを取り出すとツカサの手を掴み、掌にバッジを乗せている。

 

「ありがとうございます」

 

「それと技マシンもプレゼント!」

 

「技マシン83、まとわりつく……か」

さっき散々使われた技だから印象に残っているが、その技にあまり興味がないからかすぐに鞄にしまっている。

 

「技マシンを使うと一瞬でポケモンに技を覚えさせる事が出来るの。ちなみに技マシンは何度でも使えるのがポイント」

 

「エコですな」

結構前までは使い捨てだったのになー、と考えながら呟いていた。

 

「さて、あたしの後ろにテントがあるよね。その先の階段を昇ればすぐ上に戻れまーす」

ビオラがそう言うとサッとテントが開き、その先には階段が見えている。

 

「あ、その前に一緒に写真撮ってもらっていいですか? これからもバトルをしたジムリーダーと並んで写真を撮りたいので」

 

「いいわよ? あ、ちょっと来て!」

ビオラは近くにいるミニスカートの少女を呼びだしていた。

 

「ビオラさん、何ですか?」

 

「あたしとこの挑戦者君が並ぶから写真を撮ってほしいの」

 

「あ、これでお願いします。それと俺はツカサです」

ツカサはスマホをミニスカートに手渡し、少し間を開けてビオラの隣に並んだ。

 

「それじゃあ撮りますよー……」

 

「……♪」

 

「ッ……ちょっ、まっ!」

急に寒気がしたと思ったらビオラが左腕に抱きついてきて、慌てているタイミングで撮られてしまった。

 

「ふふふ、負けて悔しかったしちょっと仕返しも兼ねて」

 

「災難でしたねー。お兄さん、顔真っ赤ですよ?」

ミニスカートの少女はクスクス笑いながらスマホを手渡してくる。

 

「悪魔だ、ここに小悪魔が二人も居る……えっと、ありがとうございました」

柔らかくていい匂いだったなぁと考えながら冷静にスマホを受け取り、ビオラ達に礼を言いながら階段を昇っていった。

 

 

どこに通じているのかと考えながら昇ると一番上で壁が横にスライドし、出てみると入り口にあった大きな写真が出口になっていた。

 

そのまま何事もなく出ていこうとするとおっさんが慌てて近寄ってきて、今を逃したら無視され続けると思ったのか話しかけてくる。

 

「おー! バクバッジ! いいねぇ、いいねぇ!」

 

「……」

 

「あっ、ちょっ、待って! 行かないで!」

 

「チッ……なんすか」

怪しすぎるおっさんをスルーしようとしたが、追いすがった来たので仕方なく止まって話を聞く事にしていた。

 

「ポケモンセンターで元気にしてあげた後、ミアレのポケモン研究所に行ってみるといいんじゃない? 君にポケモンを託した博士も驚くだろうな!」

 

「あんたに言わなくてもこれから行くよ! あんたはいったい何なんだ!?」

無駄な時間を使わされて思わずキレ、ジムに挑みに来た挑戦者は何事かと見ていた。

 

………

……

 

そして一度ポケモンセンターに寄り、予定通りミアレに行こうとすると途中で女性に声をかけられている。

 

「あら貴方! プラターヌ博士からポケモンを貰った子供達の一人でしょ! 一人だけ大人みたいな子がいるって写真を貰っていてよかったわ!」

 

「は、はぁ……」

 

「ああ! バグバッジ! ビオラに勝つなんて貴方凄いじゃない!」

 

「ど、どうも……」

 

「あっ! ごめんなさい、挨拶が遅れたわね。私、パンジーと言います。ジムリーダービオラは妹で私はジャーナリストなの! これはお近づきの印ね」

そう言うと鞄から何か機械を取り出しツカサに手渡してくる。

 

「学習装置?」

 

「あら知ってるのね。私はミアレシティの出版社に居るから、よければ遊びに来てね!」

そう言うと返事も聞かずに行ってしまった。

 

「……一方的に話すだけ話して行っちゃうとか、カロスの人達はフリーダムすぎるわ。関係ないけど、レッドさんがシロガネ山に山籠りし始めた理由がナツメさんにエスパーストーカーされない場所がそこしかなかったからってマジなのかな」

急に気になり始め、グリーンに真偽の程はどうなのかメールで尋ねている。

 

 

 

そのまま返信が来る前に四番道路のパルテール街道に入り、綺麗な庭園をうろついている。

 

エネコ、レディバ、ミツハニー、フラベベ、スボミーが出てきたが捕まえずに倒していた。

すると

 

「ケロマツ……?」

 

「ケロッ!」

何度目かの戦闘を終えるとケロマツの様子がおかしくなり、いきなりその体が輝きを放ち始めた。

 

「そうか、進化するのか」

 

「ゲコゲコッ!」

光が収まるとケロマツは進化を終えており、その姿はケロマツの時の倍の大きさになっている。

 

「ケロマツ……じゃなくてゲコガシラ、コンゴトモヨロシク」

ツカサはそう言うとゲコガシラに手を差し出した。

 

「ゲコッ!」

完全に意思の疎通が出来ており、差し出された手を握っている。

 

「よし、じゃあ戻れ」

握手を終えるとゲコガシラをボールに戻し、再び庭園を徘徊し始めた。

 

 

庭園の中心にはぺルルの噴水という物があった。

 

真ん中にはパールルの像があり、それを中心に左右の縁にはタッツーの像が設置されている。

 

二体のタッツー像が水を吐いてそれをパールルが受け入れているが、これが受け入れ調和を生み出すという事なのか?と考えながら写真を撮っていた。

 

それから何人かのトレーナーとバトルをしながら進んでいると、あるバトルが終わった時にヤヤコマの様子がおかしくなった。

 

そしてケロマツの時と同じように光輝き始め、その光が収まると倍近く大きくなりキリッとした顔になっている。

 

「ピピピピピピピ!」

 

「おー、進化したからかピが増えてテンション高いな。ヒノヤコマ、ヤヤコマのノーマル・飛行の複合から炎・飛行の複合タイプになったのか。ひのこも覚えたし、これからもよろしく。……重さが1.7kgから16kgって凄いな」

肩には乗せない事を心に誓いながらボールに戻し、そろそろ三体目を手に入れたいなと考えながら先を急ぎ始めた。

 

 

 

 

ミアレへの入り口にいる博士に関係している二人の男女のトレーナーにフェアリータイプの説明を受けている。

 

「フェアリータイプと言うのは最近分類されたばかりのポケモンのタイプです」

 

「タイプの相性を見直す切っ掛けになりましたのよ! で、あたくし達プラターヌ博士に頼まれてフェアリータイプと他のタイプのポケモンと戦わせていましたの。麗しいあたくしの麗しい名前はジーナ!」

 

「僕はデクシオ。二年前プラターヌ博士からポケモンと図鑑を託された……言うなれば君達の先輩です」

 

「よろしければあたくしがポケモン研究所に案内いたしますわ!」

「あ、お願いします」

黙って二人の話を聞いていたが案内してくれるというのでお願いしていた。

 

「レッツゴーですわ!」

 

 

 

研究所に向かう道中のゲートで技マシン27のおんがえしを貰い、ジーナ達に案内されてポケモン研究所に到着していた。

 

イッシュのヒウン並に広いミアレは後で見て回ろうと決め、ジーナと共に研究所の中に入った。

 

「アサメタウンからここまで遠い道のりでしたわね! 博士は三階でお待ちかねでしてよ。さあ、エレベータにお乗りなさいな」

 

「ジーナさん、案内ありがとうございました」

下心八割で礼を言いながら握手を求めている。

 

 

「まあ、紳士ですのね」

 

「それでは」

握手をしてからすぐに三階に向かっていった。

 

 

キョロキョロしながら降りるとやたらイケメンな中年の男性が居り、さわやかな笑顔でツカサを出迎えている。

 

「やぁ、ようやく会えたね」

 

「初めまして、プラターヌ博士」

 

「初めまして、ツカサ君。よーし、こっちにおいで」

そう言うと軽快な足取りで奥に向かっていった。

 

 

「マサラタウンから遠路遙々こんにちは! 改めて自己紹介をするよ、ボクがプラターヌ! ポケモンとの久々の旅は楽しいかい? 色んなポケモンに出会った?」

 

「一応色々見て回りましたが」

 

「よーし、それなら早速ツカサ君の図鑑をチェックしちゃうよー。……セントラルカロスで見つけたポケモンは32匹だね。おお! そこそこ埋まってきていい感じになってるねー! 他の博士が言うように君にはキラメキがある! とにかくいい感じー! 本当はポケモンを託すメンバーを選ぶにあたって一つの町から一人のトレーナーにする予定だったんだ」

 

「そうなんですか?」

 

「うん、アサメタウンなら知り合いのベテラントレーナーさんのお子さん。その時に知ったサキさんの息子さんの引っ越し。 そう! 君はカロス地方を知らない……それがグッときた、つまりグッドポイントなわけ! それにナナカマド先生とボクの妹弟子、オーキド博士から君の事をよろしくってお願いの電話やメールが来ていたのもあるよ」

 

ツカサの母親はサキという名前らしく、プラターヌとも知り合いのようだった。

 

「なるほどなー」

 

そんな会話をしているとエレベータが下がり、再び上がってくる音が聞こえてくる。

 

「博士ー、サナです♪」

 

「お待たせしました」

サナとセレナが乗ってきたようで、一緒に旅立った三人がこの場に揃っていた。

 

「よーし! みんなでポケモン勝負だよ! ツカサ君の相手はこのプラターヌがするよー」

 

「よろしくお願いします!」

 

「言っておくけどボク強くないからねー! フシギダネ!」

 

「何かしまらないというか……行け、ヒノヤコマ!」

 

ヒノヤコマとフシギダネが現れ、互いのトレーナーの指示を待っていた。

 

ヒノヤコマは進化してからの初バトルで、気合いが入っているのが伝わってくる。

 

 

「ヒノヤコマ、ひのこ!」

 

先制攻撃だとフシギダネの弱点で覚えたばかりのひのこを使うように指示を出すと、そのクチバシからひのこを勢いよく放ちフシギダネを一撃でダウンさせた。

 

ひのこの直撃でフシギダネは後ろにひっくり返り、目を回してダウンしている。

 

 

「まさかこんな簡単にやられちゃうとは思わなかったよ。さぁ、次はゼニガメだよ!」

プラターヌはひっくり返ったフシギダネをボールに戻すと、次はとゼニガメを繰り出してきた。

 

 

「ヒノヤコマお疲れ。次はお前だ、ゲコガシラ!」

ツカサもヒノヤコマをボールに戻し、同じ水タイプのゲコガシラを繰り出した。

 

「へぇ! ケロマツをもう進化させたのかい!? やっぱりツカサ君を選んだのは正解だったね!」

 

「そいつはどうも。ゲコガシラ、みずのはどう!」

 

ゲコガシラがゼニガメに放った水の振動は綺麗に決まったらしく、ゼニガメは目を回しながらゲコガシラの方を向いている。

 

 

「まさか混乱!? ゼニガメ、しっぽをふるんだ!」

 

プラターヌの指示を理解しているのかしていないのか、目を回したまましっぽをふった。

ゲコガシラの防御力は下がったが特に影響はないとツカサは判断している。

 

 

「でんこうせっか!」

 

「ゼニガメ……ああっ!」

 

ゲコガシラは高速でゼニガメに突っ込み、すれ違い様に一撃を与えて元の位置に戻った。

 

ゼニガメは起き上がったと思ったら勢いよく転び、自身にダメージを与えている。

 

 

「よし、トドメのでんこうせっかだ!」

ゲコガシラはフラついているゼニガメに高速で接近、そのまま張り倒して完全にダウンを取っている。

 

 

「戻れ、ゼニガメ。最後はヒトカゲだよ!」

ボールにゼニガメを戻すと最後の手持ちであるヒトカゲを繰り出してきた。

 

 

「タイプ相性的に間違いなく勝てるな。ゲコガシラ、みずのはどう!」

 

「やっぱり速い……!」

 

水の振動はヒトカゲを一撃でダウンさせた。

プラターヌは指示を出す間もなく倒れたヒトカゲを戻し、感心したような目で見ている。

 

 

「いやー、まいったなー。凄いじゃないか! ……大体わかった! 」

 

「何がですか?」

セレナとバトルをしていたサナが不思議そうに尋ねた。

 

「ツカサ! 君は面白いポケモントレーナーだね! よし! もう一匹ポケモンを連れていくといいよー! ほら、選んじゃってよー!」

 

そう言うとケースに入った三つのモンスターボールを見せてきて、中にはフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメが入ったボールがある。

 

 

 

「じゃあ……ヒトカゲで」

 

「ヒトカゲかー! なるほどいいねーいいよー! ヒトカゲを選んだのならこのメガストーンも渡しておくよ」

ポケットからリザードナイトXを取り出して手渡してくる。

 

「ほらほら! 君たちも仲良く選ぶといいよー!」

サナとセレナにも選ぶように言いながら残り二つを見せていた。

 

「えー迷うー」

 

「これから長い間一緒にいるのだから、ゆっくり決めればいいわ」

セレナは最初のようにサナに先を譲り、自分は後からにするつもりのようだった。

 

 

「さてとボクの読みではそろそろみんなが揃うね!」

 

「プラターヌ博士」

 

「あれ、みなさんもういらしてたんですか?」

ティエルノとトロバが集まった事で始まりの五人が揃っている。

 

「ねっ。よーし! みんなそろったね! それでは改めてみんなに! 最高のトレーナー目指しポケモンとの旅を楽しんでよ! そしてカロス地方のポケモン最大の謎! 新たな進化の可能性! メガシンカの秘密を解き明かそう。そう! 先程渡したメガストーンは戦いでの新たな姿! メガシンカの秘密の手がかりなんだよ!」

 

「なるほど……」

ツカサはメガシンカという言葉の響きに心を動かされ、他の者達もそれぞれ自身の目的を再確認していた。

 

 

そしてプラターヌの話が終わるとツカサは真っ先に研究所から出て、気になって仕方のなかったミアレの観光を始めようとしていた。

 

しかし入り口に凄い髪型の男がおり、ジーナと何かを話していてツカサに来るように言っている。

 

「ほう! 君が博士からポケモン図鑑を……素晴らしい! 実に素晴らしい事だよ、選ばれし者だね。私はフラダリ」

 

「どうも」

 

「輝かしい未来の為、ポケモンの事を究めようとプラターヌ博士から色々教わっています。おお! 君が持っているそれはホロキャスター! 情報は大事ですからね、君も活用してください」

 

「はい」

家電を購入した時に貰った物であまり使っていなかったりする。

 

「いいかね! この世界はもっとよくならないといけない。その為に選ばれた人間とポケモンは世界をより良くする為に努力せねばならないのです」

 

「はぁ……」

目の前の男に何か嫌な感じがしており、曖昧に返事をしている。

 

「ではプラターヌ博士によろしく伝えておいてください。我は求めん! さらなる美しい世界を!」

そう言うと男は研究所から出ていってしまった。

 

「それにしても……フラダリさんの望む美しい世界ってどんな世界かしら?」

 

「さぁ……」

色々な組織と戦ってきた経験からか、世界を云々言う奴は信じられなくなっている。

 

「この広いカロス地方には色々なポケモンがいますわ。ポケモン図鑑がそれを知る為の切っ掛けになると嬉しいですわね」

 

「はい、それでは失礼します」

ジーナに礼をし去ろうとして……

 

 

「あ、ツカっちゃん。サナ、気になる所があるの! というわけでまた後でね♪」

サナはそう言うとさっさと研究所から出ていってしまった。

 

「話したい事があるの。カフェ・ソレイユで待っているわ、ツカサ!」

そう言うとセレナもさっさと出ていってしまった。

 

「セレナさんの話っていったいなんでしょう。ホロキャスターではダメなんでしょうか……?」

 

「秘密っぽいけどなんだろうね……? 気になるけれど知らないふりをしておいた方がよさそうだねえ」

 

二人が話し合っている内にそっと研究所から出て、今度こそミアレの観光に繰り出していた。

 

 

「貰ったヒトカゲは♂、無邪気で食べるのが大好きか。とりあえずリザードナイトXを持たせておこう」

一度ボールから出し、プラターヌから渡された石を渡してから戻している。

 

「……今気がついたけどこの図鑑の機能にあるポケパルレとかって何なんだろう。まぁ、今晩ポケモンセンターで試してみるか。ここはヒウンより迷いやすいと思うわ……あ、返信来てる『お前、カロスに永住するんだろ? 今度レッドと遊び行くわ。それとさっきのメールの件はマジだぜ』。マジかよ」

軽く本当だと言われて本気で驚いていた。

 

「そういやカントーとジョウトのジム回りしてる時に知り合ったトウコちゃんは探してる人見つけられたのかな。……シロナさんは教えてないのに俺の実家に居た時は心臓止まるかと思ったなぁ。下に降りたら母さんと仲良くなっててお茶してたとか超怖い」

 

トウコとは気が合いしばらく一緒に旅をしていたが最近は連絡もなく、何をしているか気になっているようだった。

 

初めて遭遇してから目をつけていた存在が自身の理想通りに育ち、そろそろ刈り取るかとシロナは確実に外堀を埋めにかかっている。

 

そんな人脈が凄いツカサのせいで一年前の正月のマサラタウンは物凄い事になっていたりする。

 

新年初の元・現チャンピオンによるトリプルバトルを観戦出来たのはツカサとオーキド博士のみなのが贅沢だった。

 

 

「……シロナさんの事は気にしてもしょうがない、そろそろセレナんとこ行くか」

掌の上で空のモンスターボールをどうやっているのかは謎だが、勝手に回転させながら歩いていく。



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五番道路での出会い

カフェ・ソレイユに向かうとセレナが入り口に立ってツカサを待っていた。

 

「ちょっといい?」

 

「ああ、いいよ」

 

そのまま二人で店内に入ると中にフラダリと一人の女性が話をしている姿が目に入る。

 

「フラダリさんと……もしかしてカルネさん……?」

 

「セレナの知り合い?」

 

「あのね、ツカサ。フラダリさんはホロキャスターって映像データの受信装置を作ったフラダリラボのトップで、カルネさんは知ってるでしょ? 世界的に凄い人気の大女優さんだもの」

 

「うーん、そう言えば一回だけイッシュのポケウッドで見たような……」

 

メイのお願いでリオルキッドやルカリオキッドとして多数出演していた時にすれ違ったようで、目と目があって微笑まれた事を覚えていた。

 

二人が何かのやり取りをしているのを眺めながら、セレナが熱くカルネについて語るのを聞き流していた。

 

 

「おや、ツカサくん。こちらカロスが誇る大女優のカルネさんだ。その演技で多くの人を感動させている……つまり自分以外の誰かを幸せにする為に生きている」

 

「そうなんですか」

第六感的な何かがこいつは危ないと告げているが表には出さず、そのまま返事をしている。

 

「ああ! みんなそのように生きれば世界は美しいのに! ……では失礼します」

そう言うとフラダリはカルネに挨拶をしてカフェから出ていき、すれ違い様にツカサを値踏みするような目で見て行った。

 

 

「ふぅ……それで貴方達は?」

 

「は、はい! アタシはセレナでこちらは……」

 

「ツカサ、ね。さっき聞こえたもの、二人とも素敵な名前! それに何て素敵なポケモンなの! あたしもポケモン育ててるの、いつか勝負しましょうね!」

そう言うとカルネは二人に微笑みカフェから出て行こうとして……

 

「……貴方の映画、素敵だったわ」

 

「ッ!」

すれ違い様に耳元で囁かれ、思わず振り返って見たがそのまま出ていってしまった。

 

 

「そっか……トレーナー同士ならみんなと戦えるんだ。あ、そうだ! ツカサに言いたい事があったの」

 

「え……そ、それって」

少し頬を赤らめるセレナにちょっと告白的な事かと期待している。

 

「ツカサとアタシでどっちが強くなるか競争しない? ツカサはアサメに来たばかりで旅立ったけれどお隣さんだし、競い合うのも面白いでしょ?」

 

「うん、そうだね……」

 

「え、何で元気なくなってるの? とにかくアタシ、負けないからね」

 

「うん、意地でも負けないわ。それじゃあ……」

 

「お茶してから行きましょう?」

そのまま出ていこうとしたツカサの腕を掴み、席に座ってウェイターに注文をしていた。

 

………

……

 

ソレイユで色々と奢り、セレナと別れてミアレを彷徨いている。

 

そのまま次の町に向かおうとゲートに向かうとティエルノからホロメールが届き、五番道路に来ないかと誘われていた。

 

そしてゲートに向かうと案内をしてくれる女性に声をかけ、この先の説明をしてもらっている。

 

「この先は五番道路、別名ベルサン通りですよ」

 

「なるほど」

 

「パルファム宮殿へはこちらをまっすぐお進みください。コボクタウンもこちらからです」

 

「ご親切にどうも」

礼を言うとそのままゲートを抜けてベルサン通りに向かった。

 

 

昼過ぎの陽気に手で太陽の光を遮っていると、見ず知らずのルカリオが向こうから嬉しそうに駆け寄って来た。

 

「うおっ! ル、ルカリオ?」

自分の周りを回り出したルカリオに目を白黒させている。

 

「くうん!」

 

「ちょっとルカリオ!!」

向こうからそのトレーナーと思われる少女が、もう一体のルカリオと共に慌てて近づいてきた。

 

「何か凄いじゃれついて来てるこれ!」

ルカリオが物凄い懐いてきてそれどころではなく、物凄く動揺している。

 

「こら! ……大丈夫でした?」

 

「な、なんとか……」

 

「ルカリオ同士で特訓していたらいきなり……ね、ルカリオ。あなた、どうしたの?」

 

「……」

急にポケモンと話し出した少女を眺め、自分も話してみたいと考えていた。

 

「この人から気になる波導を感じた?」

 

「くうん!」

 

「ふふ、ルカリオったら何だかあなたが気に入ったみたい」

 

「そうなの?」

 

「ルカリオは相手が出す波導を読み取れるポケモンなの! もう一体のルカリオといつも張り合ってるから、強そうなトレーナーを探してるのかも……」

 

「ほう……」

 

「あっ、ごめーん! 自己紹介してなかったね。あたし、シャラシティのジムリーダーをしてるコルニ! あなたがバッジを集めていたらいつか戦えるよね! その時を楽しみにしてる! じゃーねー!」

 

「何か凄い一方的な自己紹介だったなぁ……あれはもしかしてシャラシティで名前を聞くよって事かな?」

 

 

去っていくコルニを見送ると、そのまま近くの草むらで新しいポケモンを探しながらヒトカゲの特訓を始めた。

 

「もう昼過ぎか……ミアレから離れないようにして、今日はポケセンに泊まって明日になったらコボクまで行こう」

そう独り言を呟くとヒトカゲと共に野生のポケモンとの戦いに身を投じ始めた。

 

 

そのまま日が暮れるまで特訓を続けているとヒトカゲにも変化が訪れた。

 

「おっ……? 博士が少し育ててたとはいえ、もうリザードに進化とは早いな」

「グルル」

 

「獰猛な感じがワイルドでいい……けど、めっちゃ頭を手に擦り付けてきて可愛いなぁ」

 

持ちながらは戦いにくそうだとリザードナイトXを預かり、目を細めて擦り付けてくる頭を撫で撫でしながらボールに戻している。

 

 

キリもいいなとポケモンセンターに戻り、ボールをジョーイさんに預けてから宿泊の為のスペースに向かった。

 

「ティエルノからまたメールが……しばらく五番道路にいるみたいだし、数日中に行こう」

 

食事が出来る部屋の隅のテーブルに着き、パスタを食べながらスマホで今日もまたトレーナー専用掲示板にアクセスしている。

 

 

器用に食べながら色々な情報を探していた。

 

先日の雑誌のチャンピオン達に対するインタビュー記事のせいでツカサに関するスレが出来ており、正体不明のトレーナーとして随時情報提供が求められている。

 

 

「……」

 

何故かリオルキッドやルカリオキッドをやっていたという情報が出ており、その情報を見てハチクマンのDVD・BDを借りてファンになった者も多数。

 

それ以外の作品には出ておらず、NGシーンや別EDを納めたDVD・BDは既に生産されておらず高値で取引されている。

 

 

「はぁ……よかった、ネガティブな事はまだ書かれてないし完全にはバレてない」

 

そのままパスタを食べ終え、ホッとしてからログアウトしていた。

 

食後のコーヒーを楽しみ、食休みをしてからシャワーを浴びて部屋に戻っていった。

 

 

部屋でトレーナーカードを眺めながらベッドでボーッとしているとノックする音が聞こえ、身を起こしてどうぞと言うとジョーイさんがそわそわしながら入ってきていた。

 

「あ、あの……」

 

「お疲れ様です。どうかされましたか?」

 

「さ、サインを……」

 

「はい?」

 

「これにサインをお願いしたいんです……!」

バッ!と後ろ手に持っていたハチクマンのDVD、リオルキッド仕様の受注限定生産版とルカリオキッド仕様の当選者限定版を差し出してきた。

 

「え?」

 

「あのツカサさんですよね? 私、あなたのファンで何枚もDVDを買って応募して!」

トレーナーカードのIDを調べられる立場故に知ってしまい、プライベートの時間に我慢できず自宅に帰ってから来てしまったらしい。

 

「ほ、他の人には秘密でお願いしますね。……でもサインしちゃっていいんですか? これどちらも限定品でしょう?」

 

「いいんですっ! 寧ろしてもらえなかったら後悔しちゃいますから!」

 

「あ、はい」

グイグイ来る私服のジョーイさんに思わず引いている。

 

 

そして言われるがままにケースにサインをし、更に鞄から出した色紙にモンスターボールと様々な物にサインをさせられていた。

 

「写真も大切にします! リオル、よかったね!」

 

「きゅうん!」

リオルも自分のモンスターボールに書かれたサインを見て、嬉しそうにジョーイさんにじゃれついている。

 

「まさかのリオルまでファンだった。何にでもファンはいるんだなぁ」

 

「ツカサさん、ありがとうございました!」

リオルをボールに戻すと何度も頭を下げ、嬉しそうにグッズを鞄にしまって部屋から出ていった。

 

「……もう寝よう」

鍵をかけ、寝巻きに着替えてから電気を消して眠りに就いた。

 

もっとしっかり口止めをしておけばよかったのだが、この一連の出来事が嬉しすぎて忘れてしまったジョーイさんにブログで書かれ、居場所が特定されてしまう事をこの時のツカサは知る由もなかった。

 

 

翌朝、支度と朝食を食べ終えて仲間達の入ったボールを受け取りに向かった。

 

すると件のジョーイさんが現れ、手を握られながらモンスターボールを一個ずつ手渡されドキドキしながらもポケモンセンターを後にした。

 

 

「めっちゃ怖いけど、これ出来たらキャー素敵!ってなるんだろうな……よし、やろう。モテたいし」

スケーティングパークに入って見て回り、そう呟くとローラースケートのテクニックを磨き出した。

 

男は度胸、何でもやってみるものさ!と設置されたレールの上に華麗に飛び乗り、何とか落ちずにレールの終わりまで滑っていく。

 

 

「……はぁー。緊張しすぎて思わず息止めてたわ」

まだ心臓がバクバクしており、出来るならもうやりたくないとすら思っている。

 

「もう行こう、何か見られてる気もするし」

 

 

五番道路を進んで行くとティエルノとトロバに出会い、軽く勝負するとあまいミツを渡された。

 

「ダンスが云々、群れがどうこう言われたけど覚えてねぇ……男の言葉は右から左に聞き流しちゃう、はっきりわかんだね」

 

 

そのままベルサン通りを颯爽とスケートで駆け抜け、当初の予定よりも早くコボクタウンに到着していた。

 

「ローラースケートめっちゃ便利だな。ゲコガシラ達の特訓も兼ねて二、三日滞在するか……ついでに残りのポケモンをどうするかも決めないとなぁ」

残り三枠をどうするかまだ悩んでいる。

 

悩みながら町を散策していると看板があった。

 

『コボクタウン 枯れた味わいの町』

 

「ホテルに泊まる余裕はないし、今夜もポケモンセンターだな……カロスのポケモンセンターにはそっくりな姉妹や従姉妹がいるってミアレで言ってたっけ。まぁ、関わらないだろ」

 



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コボクタウンでのあれこれ

コボクタウンに滞在して数日が経った。

 

リザード、ヒノヤコマ、ゲコガシラも日々の特訓でレベルで言えば20を越えていた。

 

「あのジョーイさんの妹さんも俺のファンだったとかモテ期が来たのかもしれん」

ミアレの時と同じように色んなグッズとリオルのモンスターボールにサインをし、ポケモンセンターで会うとカロスでは普通というハグをしてきて困惑している。

 

「次にメイちゃんに会ったらハグしよう。それくらいは許されるはず」

 

 

そしてそろそろ次に行こうと考え、その前に見ていなかったショボンヌ城へと観光の為に足を運んだ。

 

「あ、ツカっちゃん!」

 

「サナ? 何とも奇遇だな」

 

「お知り合い? ショボンヌ城に観光客が二人だなんて、凄く賑やかですね! このお城……言わばシャトーは貴族のマナーハウスだったのです」

胴着を着た男性が二人に話しかけて説明をし始めてくれた。

 

「マナーハウスって中世までの荘園主の館って意味だっけ」

 

「はい。ちょっと古めかしいですがそれは歴史があるからで、その歴史の中でみんなに色んな物をあげたので広々とした感じです! 終わり!」

 

「えーっ、終わり? メガシンカに関係するモノとかないの?」

 

「終わりですし、メガシンカってなんでしょう?」

サナの言葉に男性は不思議そうに聞き返していた。

 

 

「……」

 

「まぁ、まだ先は長いしゆっくり調べようよ」

少しガッカリしているサナにツカサはそう声をかけ、肩にポンと手を置いて励ましている。

 

 

「旦那! またあいつが来たよ!」

 

「そんな時期ですか? といってもね、あたし何にも出来ないですけどね。あたし、七番道路に行きますがゆっくり見学しててくださいね」

ツカサにそう言うとため息を吐き、呼びに来た男性と共に出ていった。

 

「なんだろう? ツカっちゃん、どーする? サナ達も七番道路に行こっか」

 

「そうだね、あいつって何か知りたいし」

 

 

サナと雑談をしながら歩いていくと橋があり、大きなポケモンが寝転がって橋を塞いでいた。

 

サナと男性二人の話を黙って聞き、どうするべきかを即座に理解している。

 

「……宮殿でポケモンの笛取ってきてって事かな? 仕方ない」

 

そのままパレの並木道と呼ばれている六番道路へ向かい、並木道を歩きパルファム宮殿へ向かった。

 

 

宮殿入り口で中に入るのに千円かかると言われ、サナの分と共に支払いを済ませて中に入った。

 

「どこ! どこ? 私のトリミアーン! 僕の愛しのトリミアンちゃんが消えた!?」

中に入ってすぐ、金のミロカロス像付近をおっさんがそう言いながらウロウロしている姿が見える。

 

 

「聞いた? ツカっちゃん! あたし達も探そッ!!」

 

「えー……」

 

「だってもし……自分のポケモンがいなくなったら不安で心臓潰れちゃう!」

 

「そりゃそうだけど……わかったよ。とりあえずもう宮殿内は探したと思うし、中庭に行ってみよう」

 

 

二人で中庭に出ると太陽の光が照らし、宮殿に入る時に脱いでいたお気に入りの帽子を再び被っている。

 

「サナ、奥の方を探すね!」

 

「なら俺はまず手前側を探す事になるな」

手分けをして探し始めていた。

 

消極的に探していると庭で秘伝マシン1を見つけ、それを近くに居た庭師の男性に渡そうとすると持っていきなと言われたので儲け儲けと鞄にしまいこんでいる。

 

 

「レシラム……トウコちゃんが見せてくれて、背中にも乗せてくれたっけ」

レシラムの石像を見ながらカントー、ジョウトを巡った日々を思い出して感慨に耽っていた。

 

「向こう側にはゼクロムか……メイちゃん、元気かな? ガチャガチャで当たったおもちゃの指輪でしたプロポーズごっこは黒歴史。それからの旅の最中メイちゃんずっと左手の薬指にそれ付けてたし、あのままマジで嫁になってくれるんじゃないかってちょっと期待しちゃったぜ」

正月等で集まった時にはつけておらず、ちょっと残念だったらしい。

 

 

トリミアンが手前には居ないからと奥の方を見に行くと、迷路のような場所に駆け込むトリミアンとサナの姿が見え追いかけ始めた。

 

「お願い逃げないで!」

 

「サナ?」

 

「あ、ツカっちゃん助けて! 少し先に行き止まりの窪みがあるから、そこに一緒に追い込もう?」

 

「分かった。じゃあサナは右から、俺は左から」

そう言うとグッと足に力を入れて走りだし、トリミアンを追いかけていく。

 

マサラタウン出身だからなのか妙に身体能力が高いツカサが追い込みにまわり、サナは指示通りに場所を移動しながら待ち伏せをして逃げ場所をコントロールしている。

 

そして……

 

「はあ、お疲れ様……やっと捕まったね……!」

 

「久々に跳んだり全力で走ったりしたわ……」

逃げていたトリミアンが途中から楽しくなったのか、しっぽをふりながらツカサにたいあたりをしたりと大変だったようだ。

 

「でもツカっちゃんは凄いね♪ ポケモンの気持ちが分かるから、こうして捕まえられたんだよね!」

 

「途中からトリミアン楽しんでたからなぁ……っと、さっきのおっさんが来たぞ」

走って近づいてくるおっさんに気がつき、サナの手を掴み自身の隣に移動させている。

 

 

「おー! トリミアンちゃん! 愛しのトリミアンちゃん! トリミアンと僕をトレビアンに再会させてくれたのはもしかして君アンド君……?」

 

「あー……まぁ、そうなりますかね」

 

「トレビアン! 素晴らしい、実に素晴らしい! こんな時は花火です! ドカドカーンと打ち上げましょう! 私とポケモンの再会……ついでにちょっとがんばった貴方達の苦労も労うからバルコニーに行きなさい。わかりますか? バルコニー」

 

「あのボステレサがいる……」

 

「二階の鏡のある廊下からバルコニーに行けますからね」

そう言って嫌そうな顔をしたトリミアンを連れて行ってしまった。

 

「……トリミアン、見つけてよかったのかな? あたしがポケモンだったらあんなトレーナーはやだ! ツカっちゃんみたいなトレーナーだったらいいかなー」

 

「褒められてるのかは分からないけど嬉しいよ」

 

「でも折角の花火だし…… ほら、はやくはやく!」

日も暮れ始めており、準備が完了する頃には夜になっていそうだった。

 

 

あれから数時間が経ち、バルコニーで庭を眺めながらサナと共に花火の準備が終わるのを待っていた。

 

そして花火が打ち上がるほんの少し前。

 

「あのね……あたしね。男の子と二人っきりで花火なんて初めてなんだよ」

 

「それは……光栄だな」

 

「これから見る花火……ツカサと一緒だから一生の思い出にする! パパとママにも男の子と一緒に花火を見たってお話しなきゃ!」

 

「……えっ、なにそれこわい」

 

ツカサがそう呟くと同時に花火が打ち上げられ始め、二人は静かに空を見上げている。

 

サナが少し距離を縮めて来た事に気がつかないフリをし、肩が触れそうな程の距離に少しだけドキドキしていた。

 

 

そして花火が終わり

 

「はあ……凄かったね! 絶対に忘れたくないから心のアルバムにしまっとくよ!」

 

「そうだね。やっぱり花火っていいな」

サナはもしかしたら俺の事が好きなんじゃ?と淡い期待を持ちながらも表に出さず同意している。

 

「トリミアンの為のトレビアン花火! これでよろしいかな?」

いつのまに来たのか、何故か青春している二人をニヤニヤしながら見ていたおっさんがそんな事を言い出した。

 

 

「は! そう言えば……」

 

「あのポケモンの笛が必要なんですが」

 

「そうそう!」

 

「はあ……ポケモンの笛ね……ほら。ショボンヌ城の宝物だったポケモンの笛も借金代わり。ほら」

おっさんの指示で執事が急いで出ていき、話を聞いている間に急いで戻ってきていた。

 

「ポケモンの笛でございます」

 

「いいかい君達、借りたものは返す! これ大事だからね」

そう言ってツカサに手渡し、おっさんは軽快な足取りでバルコニーから去っていった。

 

「サナ、色んな思い出を作りたいけど……あの人のこと忘れよーっと」

 

「まぁ、大人には色々あるんだよ」

 

「宮殿を守る苦労は想像しかねますので……」

 

「そうだけど……そうだ、執事さん。メガシンカって知ってる?」

 

「図書室でそういった本を読んだ記憶があります。今で言うトレーナーが不思議な石をかざすとポケモンが更に進化したとか。これは私からです。ささやかな物ですがどうぞ」

 

「メガシンカの情報だけじゃなくて技マシンまで……何から何までありがとうございます」

 

「いえ、それでは失礼します」

何か勘違いしているのかツカサに上手くやるようアイコンタクトで伝え、そのまま去っていった。

 

「それにしても今の人とショボンヌ城のご主人がお友達だったのに驚き!」

 

「確かになぁ……金金金、金以外の言葉を知らないのかな」

 

「カビゴンを起こしたら笛、返さないとね……」

 

「だなぁ。でも起こすのは明日にして、今日はポケモンセンターに戻ろうか」

 

「そうだね! じゃあサナ、先に行ってるね! 一緒にご飯食べようね?」

 

………

……

 

ポケモンセンターに入るとモンスターボールを預け、トレーナーカードを渡していつものように部屋の鍵を受け取っている。

 

「相変わらずカップルが多くて俺の怒りが限界を越えてスーパーマサラ人になりそう。……嫉妬だってわかるけどいいなぁ。俺もイチャイチャして、その行為を愛とか言ってみたいなぁ」

気心の知れたグリーンにそんな愚痴をメールで送っていた。

 

 

部屋に荷物を置いてから食堂に向かい今日は米だと和食をチョイスしている。

 

ほうじ茶を湯飲みに入れトレーに乗せて空いている席に座ると、後から来たサナが正面に座った。

 

「いやー、鯖の味噌煮がカロスで食べられる事に感激したわ」

 

「サナ、あまり和食は食べたことないなぁ」

パスタをフォークでくるくるしながら呟いていた。

 

「それなら一口どうぞ」

鯖の身をほぐし味噌をつけ、手を添えて差し出している。

 

「え? あ、あーん……ん、これ美味しい!」

 

「今度頼んでみるといいよ。おばちゃんから聞いたんだけど、どのポケモンセンターにもあるって言ってたから」

そう言ってから味噌汁を飲み、鯖を食べ始めていた。

 

「うん、そうしてみる!」

 

 

これからの事を話ながら食事をし、食べ終えるとそれぞれ部屋に戻り別れる時におやすみと挨拶をしていた。

 

「あー、さっぱりした。……メール来てるな。『お前が誰を選ぶかは分からないが、姉ちゃんはやらないからな!』このシスコンである。てか選べる立場じゃねーですし、選ぶ相手もいねーよ」

 



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ショウヨウまでのお話

翌朝早くポケモンセンターを出て七番道路、リビエールラインをゆったり歩いていく。

 

途中の分かれ道で農園のようなものが見えたがスルーし、カビゴンが眠る橋まで眠そうなサナと共に向かっていった。

 

「おや、君達。もしかしてポケモンの笛を借りてきてくれたのかい?」

昨日と同じように橋にはカビゴンがおり、胴着姿の男性達も立っていた。

 

「ええ、これです」

ツカサは鞄から笛を取り出すと胴着姿の男性に手渡している。

 

「……うん! 寝ぼけたカビゴンが襲ってくるかもしれないけど、笛を吹いてもいいかね?」

 

「はい」

 

「うん……手に馴染むね。じゃあ始めるとするかね」

そう言うと笛を吹き始めた。

 

 

まだシャキッとしてない頭に笛の音が響き、橋で寝ていたカビゴンの目もパッチリ開きあくびと共に襲いかかってきた!

 

「リザード、りゅうのいかり!」

 

「グルル……!」

 

「ゴン」

 

カビゴンはりゅうのいかりを平然と受け、オボンの実を食べながらたいあたりでリザードを弾き飛ばしていた。

 

 

「もう一度りゅうのいかり!」

 

「!」

 

「……ぺろ」

 

たいあたりで空に飛ばされながらもカビゴンに向けてりゅうのいかりを放って着地、直後見た目からは想像出来ない機敏な動きで接近してきたカビゴンの舌でなめられていた。

 

 

「よっと、それじゃあ……モンスターボール!」

前もって握っていた空のモンスターボールを投げ、それがカビゴンに当たり……

 

 

「カビゴン、ゲットだぜ!ってなー」

抵抗もなく捕まり、ボールが手元に戻りカビゴンの図鑑も自動で埋まっていた。

 

「す、すごーい! カビゴン捕まえちゃったよ!」

そんなツカサをサナがキラキラした目で見ていた。

 

 

直後トリミアンの鳴き声が聞こえて振り返ると昨日のおっさんとトリミアンが居る。

 

「私はポケモンの笛を飾っておく事しか出来ない。だが小さな頃から吹いていた君はいい音色を響かせる。……私のトリミアンも笛の音色が好きなようだ。もちろん私自慢のトレビアン花火の次だがね」

 

「あ、ああ……そうだね」

何が言いたいのかわからず胴着姿の男性は困惑していた。

 

「ただ昔の方がもっともっといい音色だったな。笛は預けておくからもっともっと練習するといい」

そう言うとトリミアンと共に去っていった。

 

 

顔を見合わせていた胴着姿の男性ともう一人の男も笛を持って立ち去り、ツカサとサナだけがその場に残されている。

 

「今のって仲直りのつもり? とりあえずよかったよかっただね!」

 

「何かしら心境の変化があったんだろうね」

 

「さてカビゴンちゃんが寝てた先、何が待ってると思う?」

 

「ワクワクするな。ここからは別行動、またどこかで会おう」

サナにそう告げてローラースケートで颯爽と去っていった。

 

直後トロバとティエルノに捕まり三人で育て屋の見学をし、そのまま外に出て二人と別れてからリビエールラインを進み始めた。

 

バトルシャトーという建物に惹かれて入ってみると何故かビオラが居り、驚いているとこちらに気がつき笑顔で近づいてきた。

 

「あら、久しぶり。ツカサ、貴方の爵位は何?」

 

「爵位?」

 

「えっ? 爵位ないの!? 貴方の強さなら持っていても全然おかしくないのに……!」

 

「え?」

 

「爵位っていうのはね、ここバトルシャトーで実力が認められた一握りのトレーナーにのみ与えられる称号なの!」

 

「ビオラさん、こちらは?」

興奮しながら説明するビオラの背後からダンディな男性が現れ、ツカサの事を尋ねている。

 

「初めまして、私はツカサと申します」

 

「これはご丁寧にどうも……おお! バグバッジをお持ちという事は、ビオラさんに認められたトレーナーさんのようですね。初めまして、私イッコンと申します」

 

「私、推薦しますからツカサに爵位を与えるというのは? かなり強いトレーナーですから、きっとバトルシャトーの為になりますよ」

 

「ほう、なるほど……! ビオラさんの推薦でしたら資格としては十分でしょう。それに……私もただならぬ何かをツカサさんから感じます」

 

「えっと……そうですか?」

何故か急に二人によいしょされて照れている。

 

「ツカサさん! バロンの爵位を今から貴方に授与しましょう!」

 

「俺がバロン……」

ナイト・オブ・スピアーという言葉が脳裏を過っていた。

 

「爵位をお持ちの方は同じく爵位を持つ方々とここで勝負できます。男性ならバロン、女性ならバロネスは爵位としては一番下ですが……ここで勝負を繰り返し勝つ事で爵位も上がります。ではツカサさん、ビオラさん失礼いたします」

説明をしてくれたダンディはそのままバトルシャトーから出ていってしまった。

 

「ツカサ、あたしも爵位を持っているの! サイコーの爵位を目指してお互い競い合えたらいいよね!」

そう言ってウインクをしてビオラもバトルシャトーから出ていった。

 

「何それ楽しそう。でも次の町に行かないと……」

惜しみながらもバトルシャトーを後に……

 

 

「何かヴァイカウントの爵位になった」

我慢できずに一通り回って戦ったらしく爵位が上がっていた。

 

 

そして今度こそはと後ろ髪を引かれながらもバトルシャトーを後にした。

 

「絶対また来よう……あ、セレナ?」

少し歩くとセレナが立っている姿が見え、思わず声をかけている。

 

「久しぶり。ポケモンバトルがしたいんだけど……ちょうどいいわね。ティエルノとトロバのコンビにアタシとツカサで挑みましょ」

 

「オッケー」

背後から走ってくる気配を感じながら軽く了承していた。

 

「ツカサ、お隣さんだしこの組み合わせでいいよね」

 

「ああ、かまわんよ」

そう返すと二人して腰のモンスターボールに手をかけ、二人が来るのを待っている。

 

二人に了承を得てからダブルバトルが始まった。

 

特訓の成果と言う名のレベルの暴力で軽く蹴散らしてしまい、特訓しすぎたかと少々焦っている。

 

「……みんなトレーナーとしてのスタイルが違って面白いのね。さてと、次に行けるのはコウジンタウンね」

 

「なら俺はお先に失礼するよ」

サーッ!とローラースケートで颯爽と立ち去っていった。

 

 

「ツカサ、ポケモンを育てるのが上手だったわ。お隣さんで……ふふ、やっと見つけた私だけのライバル……」

去っていく背を熱く見つめ、自分だけのライバルなんだと独占欲が芽生え始めている。

 

 

走り去って少し行った場所に階段があり、そこは普通に歩いて上がっていた。

 

「セレナ、三つ下なのに妙な色気があってドキドキしちゃう……いや、二つ下のメイちゃんの時の方がやばかったか。やたら甘い声で名前を呼んでくるし、めっちゃ腕組んできたし、ポケモンセンターに泊まる時は必ずツインだったしなぁ」

 

表には出されてないが向こうの一目惚れからスタートしたのでガードが緩く、そんな状態でおもちゃとはいえ指輪を貰った事で好感度もカンストしている。

 

 

「……お、洞穴だ。看板が『この先 地つなぎの洞穴。こちらコウジンタウン近道』向こうの出口がすぐに見えてるな」

 

 

中に入りすぐに洞穴を抜けると八番道路、ミュライユ海岸に出た。

 

「お待ちなさい!」

 

「うおっ!」

 

「あはは! 驚かせてゴメン。リザードも君も元気?」

 

「あー……ジーナさんにデクシオさん、お久しぶりです」

いきなり草むらから出てきた二人に驚いたがちゃんと挨拶を返していた。

 

 

「広大なカロス地方を一つの地方図鑑だけでカバーするなんて何て事!って思わない?」

 

「という事でポケモン図鑑をパワーアップさせますね」

 

「それならお願いします」

図鑑を二人に手渡しワクワクしながらアップデートされるのを待っている。

 

「はい、出来たわ。新たな出会いが人とポケモンを成長させるの! それではおいとまするわ。ボン ヴォヤージュ!」

アップデートが終わった図鑑を手渡し、二人は再び草むらへ入っていった。

 

「……あー、驚いた。きんのたまおじさんに俺にだけ生暖かいきんのたまを手を握られながら渡された時くらい驚いた」

 

 

八番道路が崖の上を通る事に気がつき、ゆっくり慎重に進んでいる。

 

怖いもの見たさで崖ギリギリまで行って下を見て、ビビりながら後退していた。

 

そしてコウジンタウンに到着し……

 

「お隣さん」

 

「え、セレナ?」

さっきまで居なかった少女の声に振り向くと、崖の方からローラースケートで駆けてくる姿が見える。

 

「ここがコウジンタウン。水族館を通り抜ければショウヨウシティだけど……まずはカセキ研究所でカセキの話を聞くでしょ? メガシンカに関わる不思議な石の事も分かるかもしれないし」

 

「カセキ……一度ポケモンセンターに寄ってから行こうかな」

その場でやたら見てくるセレナと別れてからポケモンセンターに向かい、早朝にゲットしたカビゴンを預けている。

 

………

……

 

そのままポケモンセンターでポケモン達とおやつを食べ、少しダラダラしてからカセキ研究所に向かった。

 

途中でお姉さんに声をかけられ、余っているからと技マシンを手渡されている。

 

 

「ツカサ」

 

「あっ……」

どうやら待っていてくれたらしく、少々ジト目なセレナが入り口付近にいた。

 

そのまま逃げないように手を掴まれて連れていかれている。

 

「ようこそ! カセキのロマンに導かれた学究の徒達よ!」

男性と女性の研究者が二人を出迎えてくれていた。

 

「アタシはセレナ、こちらはツカサです。いきなりですがメガシンカについて何かご存知でしょうか?」

 

「よろしくお願いします」

 

「おぉ、君達がプラターヌ博士の! 聞いてますぞ。メガシンカねえ……残念だが不思議な石が関係する……それくらいしかわかっていないのです。だが君達! 彼の弟子ならポケモンのカセキは知ってるかね?」

 

「知ってますよ」

レッドからひみつのコハクを貰っており、今も大切に部屋に飾ってある。

 

「素晴らしい! 流石プラターヌ博士の弟子ですなあ! そうなのです! カセキとは古代のポケモンの名残り! 現物を見る為、採掘場に行くべきですぞ!」

 

「そうですか。メガシンカの事は分からないと……」

 

「あら! カセキから復元出来るポケモンがそのメガシンカに関わっている可能性もあるわ。カセキの復元なら輝きの洞窟にいる、助手クンなら詳しいわよ!」

 

 

「どうしよう、折角だしその助手さんに会おうかな……ツカサは輝きの洞窟に行くの?」

 

「とりあえず俺は行ってみるよ」

 

 

研究所を後にして採掘場へ行く為の九番道路、トゲトゲ山道へと足を向けている。

 

「母さん、かなり有名なサイホーンレーサーだったんだな……やたらサイホーンばかり家に居たし、オーキド博士の研究所にもたくさん預けてたし。とりあえずよろしくね」

座ってこちらを見ていたサイホーンの背に乗ると立ち上がり、ノシノシと歩き始めた。

 

邪魔な岩を頭突きで粉砕しながら進んでいく。

 

「確かこう……うおっ!! はっはー! 風のように走れサイホーン!」

速く走らせるコツをマサラタウンに居た時に教わっており、スピードを出しながら巧みに操り突き進んでいく。

 

 

すぐに目的の洞窟近くに着き、降りてからサイホーンの撫でられて気持ちのいい場所を撫でて待っているようにお願いしていた。

 

「やっぱサイホーンは可愛い。母さんとレースに出てたサイホーンは赤かったなぁ……今はオーキド博士の研究所に併設された広場でのんびりしてるけど」

 

世話をしに行くとまだ現役だとばかりに突っ込んでくるらしく、かつての父親のように何度か吹き飛ばされていたりする。

 

色違いのサイホーンとツカサの母はサイホーンレースでは伝説のような存在になっており、ファンが訪れて写真を撮ったりとマサラも少し賑わっていた。

 

吹き飛ばされても平然と起き上がるツカサに見ていた者達が驚いたり、マサラ人らしい一面も見せてネット上ではちょっとした都市伝説扱いをされている。

 

 

目的の輝きの洞窟に入ると植物が青く輝き、水晶も緑に輝いて神秘的な風景を作り出している。

 

そして次のエリアと思われる広い場所に到着すると先客が居り

 

「あらま? 物好きなトレーナーがやってきちゃったよ。いいか! 俺らは泣く子も黙るオシャレチーム、フレア団!」

赤いスーツに赤いサングラスの男が近寄ってきていた。

 

「……チッ」

アクア、マグマ、ギンガ、プラズマといった組織と戦い続けた経験から、こいつもダメな奴だろうとツカサの機嫌が悪くなっている。

 

「フレア団の目的は俺達だけがハッピーになる事。その為に他のトレーナーやポケモンがどうなってもいいのさ!」

 

「……」

 

「あんたまだ子供でしょ。まだ消えたくないでしょ?」

 

「はぁ……ご託はいいんでそっちが消えてくれます?」

 

 

「おしゃれなスーツも汚れるスマートじゃないやり方だけど、消し去ってやるさ! 行けー、デルビル!!」

そう言いながらダサいポーズを決めて仕掛けてきた。

 

「蹴散らすぞ、ゲコガシラ!」

 

 

二体がボールから出て向き合い……

 

「みずのはどう!」

 

「ゲコッ!」

 

間髪入れずに放たれた水の波動がデルビルを飲み込み吹き飛ばした。

 

 

「一撃!? くっ、行けズバット!」

 

「もう一度みずのはどうだ!」

 

「ゲコゲコ!」

 

再び放たれた水の波動がズバットをデルビルと同じように飲み込み、洞窟の壁まで吹き飛ばしダウンさせていた。

 

「……負けちまった俺はスマートに崩れ落ちるぜ」

 

「いや、こいつマジで弱くて草生える」

フレア団も大した事ない組織だとツカサは心に刻んでいる。

 

「……あらま? 子供のクセに強いポケモントレーナーだ。だけどよフレア団は俺だけじゃないんだぜ」

 

「770円しか持ってないみたいだし、負け惜しみで当たり前の事を言うとかダッサ」

辛辣にそれだけ言うとさっさと奥に向かい始めた。

 

 

お姉さんに貰ったいわくだきの技マシンを使いそれをリザードに覚えさせ、イライラをぶつけるかのように砕けそうな岩を壊させていた。

 

「うおっ! イシズマイか……四番目の仲間はお前に決めた。八つ当たりみたいな真似して、隠れてた岩を壊しちゃったし」

モンスターボールを投げるとあっさり捕まり、手元に戻ったボールを腰のボールホルダーに付けている。

 

「♀でのんき、イタズラが好きなのか。リザードよかったな、ハーレムだぞ」

 

 

先に進むとフレア団が二人おり、相手をしようと腰のボール二つに手を伸ばし……

 

「ツカサ!」

 

「セレナ? 君も来たのか」

 

「フレア団が二人……じゃあ、こちらも二人で戦わないとね」

 

「ああ、そうだな」

互いに顔を見合わせてニヤッと笑った。

 

「さっきも別のフレア団と戦ったの。……アナタ達フレア団がハッピーになるなら好きにすれば?」

 

「だが俺達を消し去るなんてありえないし、許せないんだよなぁ」

 

息ぴったりな二人のタッグを止められるわけがなく、フレア団のズルッグとグレッグルをあっさりと蹴散らしている。

 

 

「ちっ! フレア団御用達のオシャレスーツが汚れたぜ」

 

「カセキを復活させればいい金儲けになるのよ!」

 

 

「あいつらの行動理念がクソダサいんだよなぁ」

 

「さあ、カセキ研究所の助手さんを探しましょう」

 

 

フレア団はそのまま放っておいて奥まで向かうと助手と思われる人が立っていた。

 

「あの」

 

「ツカサ、見つけたの?」

 

「ん? やあ、君達もカセキを探しに来たのかい?」

平和そうに発掘したと思われるカセキを手にニコニコしている。

 

「大丈夫……なの? フレア団来ませんでした?」

 

「ふれあだん……? なにそれ? ポケモン?」

 

「あー、それならいいっす」

 

「カセキ探しに夢中だったみたいね」

 

「ラッキーだね! 君達、今二つカセキを見つけてさ。とはいえ既に見つけた物だから、君達に分けてあげるよ! アゴのカセキとヒレのカセキどっちにする?」

 

「じゃあ、セレナが先に」

 

「ツカサが先でいいわ。そわそわしてるんだもの」

 

「うっ……じゃあ、アゴのカセキをお願いします」

 

「それじゃあ、アタシはヒレのカセキをいただくわ」

二人とも助手にカセキを手渡され鞄にしまっている。

 

「カセキはカセキ研究所でポケモンに復元しますよ! それでは一足お先に」

助手はそのまま満足そうに帰っていった。

 

 

「助手さんを探しに来たらフレア団なる不穏な連中が居たと……無事に旅を続けるにはもっと鍛えた方がいいかも」

 

「ああ、特訓して強くならないとな」

今のままだと幹部が出てきた時に力負けすると考え、更なる特訓をする事を考えている。

 

「となれば……ショウヨウシティのポケモンジムに挑んでみようかな」

 

「それがいいかもな。俺も特訓してから挑もうと考えてる」

一度バトルシャトーまで戻ろうかと考えている。

 

………

……

 

結局バトルシャトーまで戻り、数日入り浸って様々なバトルをして戦う事を慣れさせていた。

 

アール、マーキスと称号も上がりそんなバトルシャトーでの強敵達との戦いで、鈍っていた腕が二年前にプラズマ団の相手をしていた時くらいまで戻っていた。

 

同時に仲間達もかなり成長しており、ツカサ自身はまだまだ本調子ではないが既にフレア団の幹部との戦いになっても遅れは取らない程。

 

「後はジム巡りをしていけば昔の俺……やっとスタートラインに立てそうだ。お前達も格好良く強くなったなゲッコウガ、リザードン、ファイアロー」

 

「……」

 

「グオオッ」

 

「キュイイ」

 

ポケモンセンターに併設されたバトル施設で最終進化を遂げた面々を出して労いながら呟いていた。

 

ゲッコウガはツカサの傍で腕を組んで静かに佇み、リザードンはツカサの後ろから頭を肩に乗せて甘え、ファイアローはリザードンの肩に乗っている。

 

 

「メガストーンは首から下げられるように、アクセサリーみたいに加工したから」

そう言うとお洒落に仕上げたメガストーンをリザードンの首から下げた。

 

バトルシャトーで知り合った面々の知り合いに格安で加工してもらい、ツカサにはそれを付けたリザードンが他のリザードンより格好良く見えている。

 

「うん、似合ってる。それじゃあ……戻ろうか。ちょっと強くなりすぎた気もするけど」

 

イシズマイ以外はレベルで言えば40近くあり、レベルという表現がないこの世界でも仲間達から滲み出る強者の風格にツカサも特訓はもういいかと考える程。

 

 

その晩はコボクのポケモンセンターに泊まり、翌朝早くにコウジンタウンへ再来訪した。

 

「『コウジンタウン 紅く舞う土煙』ちょっとかっこいい。水族館の無料の通路を通って下に行くのか」

 

 

無料の通路でも金のコイキングの像は見え、そのまま八番道路のミュライユ海岸へと出た。

 

「何か水着のお姉さんがダウジングしてるのをじっくり見てたら、欲しがってると思ったのか余ってたダウジングマシンをくれた。やっぱ海岸の……水着を……最高やな!」

 

久々に水着のお姉さんを見てテンションがおかしくなっている。

 

 

ダウジングしながら水着のお姉さんとだけバトルをして進み、ショウヨウシティに到着していた。

 

かなりの距離を強行し、海岸で鼻の下を伸ばしながらバトルをしていたからか既に日も暮れている。

 

仕方なくポケモンセンターに泊まる事にしたようだが、バトルシャトーでの賞金だけで六十万近く貯まっていてホテルに楽勝で泊まる事が出来るのに気がついていない。

 

「浜辺でピクピクしてたラブカス捕まえたけど、どうしよう……」

 

「き、君! そのラブカスと私のハガネールを交換しませんか?」

聞き耳を立てていた男性がガタッ!と椅子から立ち上がり、ツカサの元へと近づいてきた。

 

「え? いいですよ」

 

「それじゃあ……これで成立ですね。ラブカス、こんにちは。これからよろしくお願いします」

 

「それではー」

ハガネールを即預けて夕飯を食べに向かっていた。

 

 

「うーん……」

妙な事を口にしながらスマホを使ってトレーナーの公式交流サイトを見ている。

 

各地方の名物トレーナーを見て懐かしく思ったり、母親がサイホーンレース界のレジェンド扱いされているのを見てなんとも言えない気分になったりしていた。

 

 

「うん、まぁ、こうなるよなぁ……」

既にツカサスレは本スレと探すスレとに別れており、どちらにも目を通している。

 

本スレでは知り合いのようなそうでないようなコテが大量に居て、ほぼ全ての事が明らかにされているような状態だった。

 

特に元サイホーンレーサーであるサキの息子という情報が一番インパクトがあったらしく、サイホーンレーススレからも人が来てちょっとしたお祭り状態である。

 

 

「これで大半の人は一般トレーナーから親が凄いトレーナーに認識が改められたわけか」

珍しく素麺があったようで大きな器に入ったそれを美味しく食べ始めた。

 

 

部屋に戻るとお約束のようにミアレの彼女の姉のジョーイさんにサインをし、コウジンには寄らなかったのかと聞かれて寄りはしたが泊まりはしなかったと告げている。

 

「あらー。姉さんガッカリしてるかもしれないわー」

 

「あはは……」

カロスに住むジョーイさん一族による包囲網である。

 



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二つ目のジムとメガシンカ

早朝、ポケモンセンターから出たツカサは満足そうに腹を擦っている。

 

「気合い入れて朝から肉をガッツリと食ったし……町を見て回ってからジムかな。二人目だし写真も撮ってもらわないとな。でも何か二つ目のジム遠すぎやしませんかね?」

そう独り言を呟きながら、もう開いているサイクルショップにフラッと足を運んでみていた。

 

 

中に入ると店長と思われる男性と目があい……

 

「おお! おおおっ! いらっしゃいませ! こちらへどうぞ!!」

カウンターへ来てくれと手招きしていた。

 

「あ、はい」

 

「お客さん凄いね! オープンしてから一万と一人目だよ。一万人ぴったりなら無条件で自転車をプレゼントしたんだけど……前後賞のあなたはクイズで見事正解なら自転車をプレゼント! ではいきますよ。自転車にはカラーバリエーションがある?」

 

「まぁ……あるでしょうね」

 

「ご名答! いやー、君なら自転車を心から愛してくれるだろう! では黄色と緑、どちらの自転車にするのかな?」

 

「折角だから俺は緑の自転車を選びます」

どうせなら赤がよかったなぁと考えている。

 

「よし、それじゃあそれでカロスをかっとばしてよ!」

 

 

店長に何度も礼を言いながら外に出て、早速自転車に跨がった。

 

「おー、坂道もスイスイ……おっと?」

坂道をサーッ!と駆け上がっていると、カーブで誰かが出てきたので停止している。

 

「おやまあ貴方は……なんという事でしょう。自転車レースは私の一位フィニッシュで終わりましたよ。レースを見れなかった代わりに秘伝マシン『かいりき』をどうぞ」

 

「え? あ、どうもありがとうございます」

 

「ポケモンに使ってもらえば大きな岩も押せますから。もっとも戦っていない時にかいりきの技を使うなら、ジムリーダーの私が渡すジムバッジが必要です。私はポケモンジムにいますのでよろしければいらしてください」

 

「はい、すぐに伺わせていただきます」

 

そう礼儀正しく返すと満足そうにジムへと向かっていった。

 

 

その後を追ってショウヨウジムに入ると巨大な岩があり、ジムリーダーの元に向かうにはクライミングを行うしかなかった。

 

「ザクロさんか……」

 

まだバッジを手に入れていないのを像で確認すると、セレナにスカートで来るのをやめるようにホロキャスターでメールを送っている。

 

 

そして覚悟を決めて登り始めたが、思っていたより楽しいとスイスイ進んでいく。

 

「それでも壊れそうだったからカメラ置いてきちゃった。あの説明したがるおっさんが嬉しそうに預かってくれたのがなぁ……っともう天辺だ」

登りきるとジムリーダーの姿が見える。

 

「私は待っていました。首を長くして……いえ、首だけではなく手足も伸ばして……」

 

「えっと、何を待っていたんですか?」

 

「もちろんチャレンジャーです。貴方は壁を登りここに到達しました。非常に素晴らしい事です。それでこそ私も伸ばした首と手と足を使い存分に戦えます。もちろん手足の長さは壁登りには役立ちますが、ポケモンの強さに何の関係もありません」

 

「それでは……」

 

互いにボールを手に取り

 

「アマルス」

 

「ゲッコウガ!」

 

バトルフィールドに投げられたボールから二体のポケモンが現れ、互いに目を離さず睨みあっている。

 

 

「先手必勝、みずのはどう!」

 

「ゲコ」

コクリと頷くとみずのはどうを放ち、何かしようとしたアマルスを吹き飛ばした。

 

 

「一撃!? チゴラス!」

一撃で倒された事に驚愕したがアマルスを回収し、二体目を即座に繰り出している。

 

 

「あいつ進化したらめっちゃ格好良くなりそう……でも岩っぽいからゲッコウガの敵じゃない」

 

「……」

チラッとアイコンタクトだけで理解したのか、再びみずのはどうを繰り出していた。

 

アマルスと同じようにチゴラスも吹き飛んでいき、起き上がろうとしたが力なく倒れ伏している。

 

 

「まさかこんな……。私の前に聳える高い壁……それは貴方です」

 

「よし! お疲れさま、ゲッコウガ」

手も足も出させない圧倒的な展開で終わらせたゲッコウガを労いボールに戻した。

 

 

「どんなに手を伸ばしても届かないものもあるでしょう。ですが諦めない事、どんな時でもどんな相手でも諦めない事。戦う貴方達の中にその心を感じました。そんなグレードの高い貴方とポケモンのチームワークにウォールバッジを!」

 

「ありがとうございます!」

 

「それとこれを」

 

「技マシン……」

技マシンを鞄にしまいながらバッジをケースに納め、ザクロに向き直った。

 

「このジムの壁登り……ボルダリング以外にながーい手足をどう活かせばいいのか。貴方は共に戦うポケモンをどう伸ばせばいいのか。お互い考えましょう、笑顔になる為に」

 

「……はい!」

 

 

そのまま謎のおっさんからカメラを回収してジムを後にした。

 

………

……

 

「……やっぱり強くなりすぎてたな。ここからは特訓なしで観光しながらジムに挑んでいこう。その前にポケモンセンターでみんなの疲れをとらないと」

 

 

一時間待ちと言われて預けるとセンター内をぶらぶらし始めた。

 

「あ、そうだ買い物しなきゃ。モンスターボールを21個、もしもの為のすごいキズぐすり20個、げんきのかけら20個……なんでもなおしは売ってないからこれくらいでいいか」

普段あまり買わないからかまとめ買いをよくしている。

 

必要個数を記入する紙に書くと店員に渡して料金を支払い、渡された商品を全部鞄にしまっていた。

 

 

「みんなも回復したし。さぁ、次は……確かジムの上に洞穴があったな」

放送で呼び出されたので受け取りに行き、ボールホルダーにセットしながら思い出している。

 

 

自転車でその洞穴に向かい中に入り、かいりきをイシズマイに覚えさせて巨大な岩を押して通れない道を通れるようにしていく。

 

「つばめがえしにやつあたりか……リビエールラインに繋がってたし、邪魔な岩も大体退かしたから今後はみんな行き来が楽になるな」

そう言いながらショウヨウシティに戻っていった。

 

 

そのまま橋を渡ると十番道路であるメンヒルロードに突入、大小様々な石が道端に転がっているのを眺めながら歩いている。

 

「この光景はダイゴさんだったらテンション上がるんだろうなぁ……」

 

 

更に進むと巨大な岩が並んでおり、綺麗な並びに思わず溜め息が漏れている。

 

「あらま? お前は! カセキがカセキでカセキした! あのなここの列石は凄い代物なんだよ! 何でも三千年前……あれ? なんだっけ? まあいい! ここはスマートにリベンジさせてもらう!」

 

「うわぁ……フレア団だ」

 

 

数分後

 

「あらま? まさかの連敗! もしかするとお前は凄いポケモントレーナーなのか?」

 

「おう、賞金あくしろよ」

 

「ふむふむ……スマートに逃げる!」

唐突に通信し始め、賞金をスッと地面に置くと全速力で逃げていった。

 

「何か目をつけられてるし、フレア団は潰さないといけないな。俺の安穏とした日々の為に……あ、イシズマイが」

 

「キュルル」

進化を遂げイワパレスへと生まれ変わっていた。

 

「よろしく、イワパレス。今度その背中に座らせてね」

進化をしたイワパレスの前腕のハサミを軽く握って握手をし、それからボールに戻して再び歩き始めた。

 

 

何人かフレア団を一方的に倒しながら進み、五体目の仲間は誰にしようかと考えながら草むらをウロウロしている。

 

「何か俺の心をズドンと撃ち抜くようなポケモンは……ゴフッ! ぶ、物理的に撃ち抜こうとしたのは何だ……」

腹に何かが突っ込んできて尻餅をつき、その何かを掴んで目の前に持ってきていた。

 

「ブイ!」

 

「おー、イーブイじゃんか。レッドさんはエーフィ持ってたっけ……じゃあ、お前さん一緒に来る?」

地面におろしてから聞くと、尻尾を振りながらピョンピョン跳ねて足に頭を擦り付けてくる。

 

「はい、それじゃあこれに入ってー」

モンスターボールを取り出すとイーブイに触れさせ、捕獲した事を確認すると改めてイーブイのデータを見ていた。

 

「♀でおとなしいのに負けず嫌い……えっ、あれでおとなしいの? 俺の腹にでんこうせっかしてきたのに?」

他のイーブイ達への恐怖を抱きながら、ボールを腰のホルダーにセットしている。

 

「さて、最後の仲間はどうするかなー」

 

………

……

 

「何かイーブイの特訓してたら進化した……見た事ない進化系だけど」

 

「フィア?」

 

「名前はニンフィアでフェアリータイプ……ついにうちのメンバーにもフェアリータイプが来たか。弱点は毒、鋼」

 

「フィア!」

リボンのような触覚を伸ばしてツカサの身体に巻き付け、身体を脚にくっつけて幸せそうに甘えている。

 

「あぁ^〜可愛いんじゃ^〜」

 

 

そんなニンフィアに癒されメロメロになりながらも先に進み、日が暮れる前にセキタイタウンに到着している。

 

「まだ部屋取るには早いし町でも散策しよう、そう思っていた時期が俺にもありました」

目の前で背を向け歌っているフレア団のしたっぱを見て呟いていた。

 

「セキタイタウンは石の町♪」

 

「……」

それだけ歌うとどこかに向かい始めたので、そっと後を追っていく。

 

 

町外れにくるとしたっぱがこちらを振り向き

 

「いいか! 俺達フレア団は十番道路の列石やとんでもないお宝を使ってハッピーになってやる! 世の中、力を持つ奴がスマートに勝利するのさ!」

そう言うと更に奥まで逃げていった。

 

「えぇぇ……」

 

「ツカサ! フレア団来なかった?」

 

「いや、来たんだけどさ」

 

「でもいないよね? その先行き止まりなのに……フレア団ってなんだか不気味ね……」

 

「ちょっと見てくるよ」

そう言うとしたっぱが向かった方へ急いだ。

 

 

確かに行き止まりだがあからさまに怪しい石の建物があった。

 

「遺跡? マグマ団の時の事を考えると入るのに何か必要で、この中に居るんだろうな」

様々な組織と戦った経験からここは入り口だと確信していた。

 

 

今はどうしようもないと町中に戻り色々と見て回っている

 

小さく見えて広い町並みを自転車で疾走しながら気になる所で止まり、知的好奇心を満たしている。

 

「『セキタイタウン 静かな石は多いに語る』か。あの遠くからも見えてた町の中心にある三つの尖った石は……『謎のパワーを放出すると言われている古代の石』。さっき聞いた話だと、次のシャラシティにも不思議な石があるらしいけど」

 

 

 

日も暮れてきたのでポケモンセンターで部屋を借り、併設されているバトル施設で他のトレーナーのバトルを見ている。

 

夕飯ここでも食べられるハンバーガーのセットを注文して持ってきて食べながら見物していた。

 

実力が戻ってき始めたからか、見られている者達は落ち着かない状態でバトルをしている。

 

 

「うん、イチャイチャしながらバトルしてるのを見てると殺意が湧いてくる。……俺もあんな風にダブルバトルとかしたいなぁ」

ポテトを摘まみながら溜め息を吐いていた。

 

「ツカサ?」

 

「ん? ああ、セレナか。ポケモンセンターでは久しぶりに会う気がするな」

 

「そうね。あまり会わないのは、ツカサが一つの町に数日滞在してるからだと思うけど」

 

「あー、確かにそれはあるかも。基本的に町を見て回って写真撮ったりしてるから」

ジムリーダーの写真は諦めたようだが、今後はジムの仕掛け次第で撮るか決めるらしい。

 

「ふふ、楽しんでるのね。それじゃあ、アタシはそろそろご飯食べてお風呂入るから。またね」

 

「ちょっと早いけどおやすみー」

ヒラヒラと手を振って去っていくセレナを見送り、再びバトルに目を向けた。

 

………

……

 

朝になり準備を済ませるとポケモンセンターから出て、太陽の光を浴びて伸びをしている。

 

「んんー……! ここにはジムがないし、さっさと次の町に行こう」

 

「ちょっとルカリオ!!」

 

「ん?」

騒ぐ声が聞こえて振り向いてみると、ルカリオ二体を連れた女の子がこちらに向かってきていた。

 

「あっ! 五番道路のトレーナーさんだよねー!」

 

「あおんっ!!」

 

「……たぶんなんだけどルカリオ、貴方と戦いたいって。よかったら相手してくれる?」

 

「うん、いいよ」

 

「二匹のルカリオ……あなたを気に入ったのはどっちかわかるー?」

 

 

数分後

 

「わわ! 自慢のルカリオコンビで全く歯が立たなかった!?」

 

「……」

どちらのルカリオもリザードンのほのおのきばによる一撃で倒れ、力押しだけでどうにでもなっている現状はちょっとマズイなと考えていた。

 

「うわー、なるほど!! ルカリオが気に入るわけねー!」

 

「え?」

 

「ねっ! あたしがシャラシティのジムリーダーなの覚えてる? この先の洞窟を抜けたらシャラシティだからよろしくねー!」

 

「あ、はい」

サーッと滑っていくコルニを見送り、今後の事を考えながら十一番道路へ踏み出した。

 

 

ミロワール通りを歩きながら力押しになるのは今は仕方ないと切り替え、探索しながら進んでいるとホロメールが届いた。

 

『やー! もうすぐシャラシティに着くんじゃないの。凄いね! ポケモンとカロスを巡る旅は順調だね! そうそう! シャラシティにはメガシンカに詳しい人……その名もメガシンカおやじって人がいるんだ。みんなにも連絡しておいたから、よければ訪ねてみるといいよ!』

 

「プラターヌ博士、久々だったな。てかメガシンカおやじ? 最初からそれを教えてくれていればよかったんじゃ……」

 

 

そのまま映し身の洞窟に入るとローラースケートに自転車が禁止と表示されていて、歩きで洞窟内を見て回っている。

 

「しかし天然の鏡って凄いな。さっきティエルノがフラッシュくれたけどここでは必要ないか」

 

「フィア!」

 

「君は何で勝手にボールから出てきてるんですかねぇ……レッドさんのピカチュウ以外にこんな事が出来るポケモンは初めて見たわ」

 

「フィアフィア!」

 

「これでニンフィアが人間の女の子だったらたまらんシチュエーションなんだがなぁ……出来ればシオニーちゃんみたいな土下座のスフィアを持ってる子を希望」

ニンフィアが触覚を伸ばしてツカサの右手に絡め、並んで歩きながらそう呟いていた。

 

「ん……? え、いや、待った! 私達も出ようと思えば出れる的な震え方しないで!」

現在の中で加入が一番遅いニンフィアがツカサと並んで歩いているのが悔しいらしく、腰のボールがガタガタいい始めて焦っている。

 

 

皆を諌めながら何とか洞窟を抜け、シャラシティに到着していた。

 

「はい、大人しくボールに戻ろうねー」

そして町中でもボールに戻ろうとしないニンフィアを戻そうと必死である。

 

 

じゃれつき甘えられメロメロになりながら二十分かけてどうにかボールに戻し、一度休憩しようとポケモンセンターに足を運んだ。

 

入るとニンフィアとじゃれている姿を見ていた者達が何人も居り、ツカサを見てほっこりした顔を向けてきていた。

 

「今まで俺が捕まえたりしたポケモンの中でダントツでアグレッシブ。リザードンだけ♂で肩身が狭そうだし、出来るなら六体目は♂にしてあげたい」

寧ろ最後も♀でガチハーレム状態にしてあげるのも一興。

 

そのままフレンドリィショップで自分用とポケモン達用におやつを購入し、外に出て迷惑にならない場所で全員ボールから出している。

 

「『シャラシティ 目覚めの街』やだかっこいい……」

芝生に座り人間用ポフレを食べながら、少し離れた場所にある看板を見て呟いていた。

 

「……フィア!」

 

「お?」

 

「……」

皆が普通にポフレを食べている中、ニンフィアはくわえてツカサの前まで来てそれを脚に置き目を閉じて口を開いている。

 

「あざといけど可愛い。ほら」

 

「……」

あーんしてもらってモグモグ食べ始めていた。

 

………

……

 

ティエルノとトロバと合流し、三人で手分けをしてメガシンカおやじを探し始めた。

 

街の奥にあるマスタータワーにいると聞いて向かい、途中ティエルノからすごそうな石を貰って先に行くように言われて歩いていく。

 

巨大な建造物を見上げながら中に入ると、妙なマークの付いている扉の部屋が中央にありその上には巨大なルカリオの石像が乗っていた。

 

「とりあえず入ってみるか」

 

 

中に入ると眉毛が凄いお爺ちゃんとコルニが居り、入ってきたツカサに気がつき振り向いている。

 

「おっ? お前さん、ツカサだな。プラターヌから言付かっているぞ。わしがメガシンカおやじ! プラターヌの知り合いだな」

 

「はじめまして、メガシンカおやじさん」

 

「おっとメガシンカおやじというのは本当の名前ではないぞ。ほれお前さん、ちょっとこっちにおいで」

 

「あ、はい」

手招きをされたので近づいていた。

 

「ん? 一人なのか。ポケモン図鑑を渡されたのは五人と聞いていたが。お前さん以外誰もおらんではないか?」

 

「いえ、多分もうすぐ来ますよ」

 

「あっ。ツカっちゃん、そちらは?」

ツカサの言葉と共にティエルノとトロバが入ってきて尋ねていた。

 

「こちらの方がメガシンカおやじさんだよ」

 

「人呼んでメガシンカおやじ!」

 

「あっ、自分はティエルノです」

 

「ぼくの名前はトロバと言います」

 

「おう! よろしくな、プラターヌの弟子達よ! とはいえまだ三人か……おっ? そのすごそうな石はお前さんが見つけたのかね?」

 

「いえ、これは友人が」

 

「わわわ! えーっと、見つけたのはツカっちゃんだよねえ!」

 

「誰が見つけてもいいのだ。それよりも正直でいる事が大事なんだよ。嘘を吐くと真実は曇り消えるからね。もっともそのすごそうな石はタダの石……それも真実」

 

「それなら知り合いのとある石マニアにプレゼントしてもよさそうですね」

 

「という事はみんな揃ったのか?」

何故かメガシンカおやじはそう言うと部屋から出ていった。

 

 

「セレナとサナが来たのに気がついたのかな?」

 

「ねっ! シャラシティに来たんだね! ルカリオったらボールの中で物凄く喜んでる!」

 

「おー……いいから、お前達は対抗しないでいいから! 喜びでアピールするならまだしもガタガタ動くのはやめて!」

コルニの言葉に対抗心を燃やしたのか、腰の五つのボールがガタガタ動いていた。

 

「わっ、仲良しなんだね! さ、あたし達もあちらに行きましょうよ!」

 

 

 

部屋から出るとサナとセレナが待っていて、最後にツカサが出てきたのを見ると二人とも手を振ってくれた。

 

「うむ! 揃っておるようだな」

 

「ツカっちゃん!!」

 

「元気にしてた?」

 

「みんな揃うのは久しぶりな感じです」

 

「そうだねえ、七番道路以来だねえ」

 

「まだ旅に出て一ヶ月経ったかくらいなのに、かなり懐かしく感じるなぁ」

しみじみと呟くツカサに皆もまだそれくらいなのかと驚いていた。

 

 

「メガシンカおやじさん、ずっと気になってたんだけどそちらの方は?」

 

「孫のコルニ、シャラシティのジムリーダーだよ。さてとプラターヌの弟子達よ、みんな揃ったようだね。ではメガシンカの説明を始めさせてもらおうかの」

 

「よろしくお願いします」

 

「ポケモンの進化についてはばっちりわかっておるよの」

五人それぞれの顔を見て言っている。

 

「ポケモンの進化でしょ。えーっと多くのポケモンは戦わせて強くなると進化します! それに道具を使うことで進化するポケモンもいるよ♪」

 

「他にも懐く事で進化するポケモンもいるし、決められた場所でのみ進化するパターンもあるわ」

 

「特定の技を覚えさせたり、朝昼晩で進化するのもいるな」

 

「そう! 進化のバリエーションは更に色々あるはずだよね。そしてメガシンカとは進化を超える進化なんだ!」

 

「そうだとも! メガシンカとはこれ以上進化しないと思われていたポケモンの更なる変化! 一層のパワーアップ!」

 

「それって例えばヒトカゲ、リザード、リザードンならリザードンが更に進化するとおっしゃるのですか?」

 

「うん! その通りだよ。ただすべてのポケモンがメガシンカできるわけじゃないの」

 

「先程変化と言ったのにはちゃんと理由がある。メガシンカは進化と異なり一定時間で終わる……つまり一時的な進化なのだよ」

 

「えー!? 進化なのに戻っちゃうの?」

 

「うん……メガシンカは特別な進化だから。とはいえメガシンカについてはまだまだわかってない事ばかり。今わかっているのは特別な道具が必要なこと、そして何よりポケモンとの信頼関係が大事ってこと」

 

「信頼……絆ってことね!」

 

「さてとメガシンカにはポケモンにメガストーン、トレーナーには未知の石を埋め込んだメガリングの二つが必要となる。プラターヌから図鑑を託されたお前達全員にわけてやりたい……わけてやりたいのだが……」

 

「だが……? ってなあに。何だか歯切れ悪ーい!」

 

「すまぬ! 今のところメガリングは一つしかない……本当に貴重なものでな、それゆえ研究も進まんのだ。というわけでお前達、メガシンカの継承者に挑む人間を誰か一人決めてくれ」

 

 

「自分はポケモン勝負……あんまり自信ないからねえ。メガシンカなんて凄いこと、うまく使いこなせないよ」

 

「あたしも! 思い出になるだろうし、面白そうだけどね」

 

「まずはポケモン図鑑を完成させたいです。あれもこれも欲張るとどちらもうまくいきませんから」

 

「残るはツカっちゃん達だね」

 

「二人ともトレーナーとしての腕前申し分ないよねえ」

 

「ツカサ、余計な事は考えないで。貴方が年上だからって理由で譲られても嬉しくないわ」

 

「……何でわかったの?」

興味はあるが年上だしセレナに譲ろうと考えていたのを読まれて驚いていた。

 

「ツカサの考えそうな事くらい簡単にわかるわ。だから勝負しましょう」

 

「ふっ……トレーナー同士だもんな」

 

「ここで競いあってアサメタウンのナンバーワントレーナーを決めるのもいいでしょ」

 

「隠してたけど実は俺、かなりの負けず嫌いなんだ。だから俺はメガシンカで仲間達と共に更に上を目指すよ」

 

「メガシンカを使いこなして、アタシだけの価値を手に入れるの。トレーナーであるアタシを信じてここまで来てくれた、ポケモン達の為にも……! ツカサ達の強さ……見ているだけで伝わってくる。だけど負けない! ううん! 絶対に勝つんだから!」

 

互いにそう言って笑うと距離を取り、腰のボールに手をかけ……

 

 

「行っておいで、ニンフィア!」

 

「行きなさい、ニャオニクス!」

 

対面した二体はにらみ合いながら指示を待ち、いつでも動けるように軽く動いている。

 

 

「ニンフィア、かみつく!」

 

「ニャオニクス、ひかりのかべ!」

 

ニャオニクスがひかりのかべを張るが関係ないとニンフィアが飛びかかり、思いきり噛みついてから飛び退いて再び睨みあっている。

 

 

「もう一度かみつく!」

 

「フィア!」

 

 

「ニャオニクス、チャームボイス!」

 

「ニャオ!」

 

ニャオニクスの可愛らしい声を受けてニンフィアが不快そうにし、少し荒々しく強くかみついて再び飛び退いている。

 

 

「でんこうせっか!」

 

「……!」

 

「ニャオニクス、避け……あっ!」

 

「ニャ……」

 

出会った時の技でニャオニクスを吹き飛ばし、そのままダウンさせている。

 

 

「ニンフィア、よくやった」

 

「行って、アブソル!」

 

セレナの二体目であるアブソルが現れ、獲物を狙う狩人のようにニンフィアを見ていた。

 

 

「ニンフィア……ムーンフォース!」

 

「アブソル、避けて!」

 

「もう遅い! 俺のニンフィアは外さないし逃がさない!」

 

『俺の』という言葉を聞いたニンフィアは、避けようと飛び跳ねて翻弄しようとするアブソルの動きを見極め、何度目かの着地するタイミングにムーンフォースを直撃させて壁まで吹き飛ばしてダウンさせていた。

 

 

「い、一撃……?」

 

「え、何あれ怖い」

 

セレナは一撃でダウンしたアブソルを見て呆然とし、指示を出したツカサはまさかのニンフィアの強さに怖がっている。

 

 

「アブソル、お疲れ様……? ハリボーグ!」

 

「ニンフィア、お疲れ。さぁ、行こうかリザードン!」

 

見ていたサナ達はもうリザードンに進化している事に驚き、セレナは相性の悪さに苦い顔をするも諦めるわけもなく

 

 

「ハリボーグ!」

 

「真剣勝負だから遠慮も容赦もしないよ。リザードン、つばめがえし!」

 

ツカサをチラっと見たリザードンがコクリと頷き……

 

 

「は、速い……!」

 

「飛行訓練の賜物だよ。低空飛行に急にターンするのも俺をターゲットに特訓したんだ」

 

「は?」

 

 

特訓の成果を見せようと更に加速している。

 

ハリボーグが必死に捉えようとしている背後から尻尾による強烈な一撃で浮かし、目があった途端に強烈なストレートを叩き込んで吹き飛ばして着地していた。

 

 

「なに今のかっこいい連撃。つばめがえし……なのかあれ」

 

「……アタシの負け、か」

目を回しダウンするハリボーグをボールに戻しながら呟いていた。

 

「お前、つばめがえしにアレンジ入れるとかイケメンすぎんだろ……」

 

「グオォ!」

 

 

労いボールに戻すと満足そうなセレナが声をかけてきた。

 

「本当に強いのね。パートナーとの絆、感じたわ。負けて悔しいけれど……うん、ツカサならポケモンをメガシンカさせられるよ絶対!」

 

「ポケモン勝負だから勝ち負けはあるけど、どちらのポケモンもトレーナーも素敵だった! メガシンカはポケモンを強くする手段の一つでしかないよ。メガシンカさせずともポケモンの強さを引き出すトレーナーは多くいるでしょ?」

 

「あー……」

シロナにダイゴといったやたら構ってくる面々の強さを思い出している。

 

「ではツカサ! まずはジムリーダーのコルニに挑むがいいぞ! メガシンカしたリザードンとお前さんのコンビ、楽しみだな」

 

「あたしのルカリオに気に入られた不思議なトレーナーさん! 貴方が継承者に挑むのにふさわしいトレーナーかポケモンジムで試させてね! もちろん他のお友達もジムに挑戦してよ!」

 

「うし、なら一度ポケモンセンターで休憩してから行くか」

コルニがマスタータワーから出ていくのを見送り、一度休憩を取りに向かうことにしていた。

 

「ツカサがメガシンカを使えるようになれば博士も喜ぶんじゃない? 最高のトレーナーの一つの形だからね」

 

「そっかー。博士もおっしゃってたもんね、最高のトレーナー目指しポケモンとの旅を楽しんでって」

 

「ティエルノさん、ぼくらも最高のトレーナー目指しませんか」

 

「オーライ! サイコーめざそー! じゃあツカっちゃんにサナぴょん、また会おうねえ!」

セレナが去り、二人もそう言って去っていった。

 

「わざわざ比べなくても人もポケモンもみんな違う。それでも競いあってお互い高めあう事ができる相手がいるのは幸せよな」

 

「そうっすね」

 

「ツカっちゃんってこれからもセレナと競いあって強くなっていくと思う! みんなで旅してよかったね♪」

 

「そうだな。セレナとライバル関係かー……初めてのライバルって考えたら燃えるわ」

 

そのまま上がったテンションでポケモンセンターに向かっていった。

 



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メガシンカとルカリオ

ポケモンセンターで少し休憩をしてジムへと向かい始めた。

 

「若いのにやたら色っぽいジョーイさんだと思ったら、まさかの彼女達の母親っていう色んな意味で怖いあれな展開があった。何か夫とは別れてるからとか、今度家に遊びにいらっしゃいとか、やたら見つめてきて怖かったなぁ……私服がエプロンドレスとかちょっと心惹かれたけど」

 

「フィア!」

 

「まーた勝手に出てきて……それに俺にかみつくなんて指示は出してないんですが」

 

「がぶ」

 

「こらやめなさい」

 

 

そのままジムに向かうと中はローラースケートのコースになっていた。

 

「なるほど……全員倒さないとコルニの所に行けないシステムなのか」

 

所属トレーナーを一人倒すとジムの仕掛けが作動し、中央のステージに行けるシステムだった。

 

そして難なく全員を倒し……

 

「この滑るの落ちそうで怖いから嫌いなんだよ……」

勢いをつけて細い鉄のレールの上を華麗に滑り、中央のステージに降り立った。

 

「コルニ参上!」

 

「ファッ!?」

いきなり背後から現れ、ステージを華麗に滑っているコルニを見て驚いている。

 

「なんてね! 貴方が強いトレーナーなの知ってるからさ、始めちゃうよ!」

 

「お願いしまーす」

スパッツ系女子もいいなぁと不埒な事を考えている。

 

 

「コジョフー!」

 

「ニンフィア先生、お願いします!」

 

ボールから出た二体はすかさず動き出し、ムーンフォースを放とうとするニンフィアにコジョフーはねこだましを決めていた。

 

 

「ナイスだよ!」

 

「ニンフィア、怒りのムーンフォース!」

 

してやられた事に怒っていたニンフィアは、クイクイっと挑発するような態度のコジョフーが避けられない速度でムーンフォースを叩き込んでいる。

 

更に追撃だとばかりに本来の用途ではない触覚を優しく巻き付け宙に放り、落ちてくるタイミングで走り蹴りまで叩き込んでいた。

 

 

「あの、俺はムーンフォースとしか……」

 

「トレーナーの言う一を聞いて、自分で十にしたって言うの……!」

コルニはダウンしたコジョフーをボールに戻しながら驚愕の表情を浮かべている。

 

 

「ニンフィアってあれじゃないの? 凄い癒し系で争いを鎮めるとか書いてあったような……」

 

「ゴーリキー、油断しちゃダメだよ!」

 

 

ゴーリキーがボールからフロントダブルパイセプスで現れ、爽やかに歯を見せて笑ってアピールをしていた。

 

 

「ニン……あ、そうですよね」

 

「えぇっ!?」

 

ゴーリキーが構えた瞬間には嫌なものを見たって顔をしたニンフィアのムーンフォースが直撃、吹き飛びはしなかったがサイドチェストで笑みを浮かべながら後ろに倒れてダウンしていた。

 

 

「ニンフィアだけ他の面々と比べてもやたら強いような……」

 

「やっぱり強いね……さぁ、これで最後だよ! ルチャブル!」

 

 

プロレスラーのようにボールから現れたルチャブルは油断せずニンフィアに向き合い、目を離さず一撃で決める為につめをとぎ始めた。

 

しかしそんな隙を見逃すはずもなく

 

「好機! 攻めろ、ムーンフォースだ!」

 

「あ、避けてルチャブル!」

 

 

ツカサからは見えないよう位置でニンフィアはニヤァっと笑い、ルチャブルがその笑みに怯えて思わず後退り身を震わせていた。

 

そして放たれたムーンフォースを震える足で横にダイブして避け、再びニンフィアの方を向くと

 

「フィア♪」

 

物凄く可愛い笑顔で追撃のムーンフォースを放っている所だった。

 

………

……

 

「ドキッ……!!」

 

「触覚が、触覚が俺に巻き付いてくる!」

勝者であるチャレンジャーは無双した存在をボールに戻そうと四苦八苦していた。

 

「参りました! シャラシティ、ジムリーダーのコルニ、貴方の力量を認めこれを進呈いたします。……なんてね、はいどーぞ!」

 

「やっと戻ってくれた……ねんがんの ファイトバッジを てにいれたぞ!」

 

「それがあるとなみのりの秘伝技で水上を進めるんだよ! あとこの技マシン、是非使ってみてよ!」

 

「グロウパンチ……ガルーラ……うっ、頭が……」

ちょっとしたリアルな記憶が頭を過っている。

 

「まず貴方に謝ります。メガリングを渡すのはマスタータワーのてっぺんです。次にお願いがあります」

 

「なに? 死んでとか以外ならなんでも聞くよ?」

 

「メガシンカを使える者同士のポケモン勝負をさせてください! マスタータワーのてっぺんでルカリオと共に待ってるね!」

 

「はーい」

去っていくコルニを見送り、帰りのレールを思い出して心臓がバクバクなりだしていた。

 

落ちそうになったが何とかジムから出て、二度と来るものかと誓いマスタータワーへと急いで向かっていく。

 

 

マスタータワーに入るとサナとメガシンカおやじが待っていて、戻ってきたツカサに気がつき声をかけている。

 

「おう! てっぺんでコルニ……いやメガシンカの継承者がお前を待っておる!」

 

「気合い入れて行ってきます!」

 

 

上がろうとすると胴着姿の見張りが近づいてきた。

 

「マスタータワーは認められた者のみが上がれる! お主は……通ってよーし!」

 

「あ、はい」

 

 

上がっていく途中の部屋でメガシンカおやじの本名がコンコンブルと教えてもらったりしている。

 

「もう日も暮れてきたな……」

 

天辺に着く頃には既に日も落ち、晴天の空に星が瞬き始めていた。

 

「お待たせ」

 

「空を見てると心がふわっとして……ポケモンもあたしも何でも出来そうで……好きなんだ、ここ!」

 

「……」

その言葉を聞き夜空を黙って見上げている。

 

「もう一度ごめんなさい! わざわざここまでこさせて。高みを目指す気持ちを忘れないように……って事でメガリングはここで渡す決まりなの。はいっ! メガリング!!」

 

「これが……」

手渡された黒いメガリングを左手につけ、そのまま見ている。

 

「メガシンカさせたいポケモンにメガストーンを持たせるの! そしてポケモンを勝負に出せば自ずとメガシンカの兆しが見えるはず! ……ってルカリオ!? あんたどうしたの?」

 

「くぁんっ!」

 

「お……?」

ニコニコしながら隣に来たルカリオを見てツカサは不思議そうにしている。

 

「……もしかしてルカリオ。ツカサさんと共に戦いたいの?」

 

「くぁんっ!!」

 

「まさか……あたしとではなく旅のトレーナーさんとの絆の方が強いなんてね。いいんだか悪いんだか……あなた! やっぱり面白いトレーナーさんね!」

 

「む?」

 

「ねっ! あたしのルカリオと一緒に戦ってあげて。あたしもルカリオで戦う! そう! ルカリオ同士1VS1の勝負をしましょ! ルカリオナイトは持たせているし!」

 

「わかったよ」

 

「もう一匹に負けたくないのか、好みの波導を出すあなたを気に入ったのか、よくわからないけれど……行くよ、ルカリオ!」

 

「俺達もやるぞ、ついてこいルカリオ!」

 

「命、爆発ッ!」

 

 

二体のルカリオが場に現れ、互いに隙を見せずに構えている。

 

「そうかこれが……ルカリオ、メガシンカだ!」

 

「ルカリオ、メガシンカ!」

 

ツカサは左手に付けたリングに埋め込まれたキーストーンに触れ、コルニは左手のグローブに埋め込まれたキーストーンに触れていた。

 

すると二体のルカリオの身体が輝き、その輝きに包まれ光を吹き飛ばすとルカリオ達はその身をメガルカリオへと変えていた。

 

 

「メガルカリオ、ボーンラッシュだ!」

 

「メガルカリオ、グロウパンチ!」

 

指示を受けて走り出した二体のルカリオが中心で激突。

 

メガシンカで拳が骨が付いたグローブのようなものに変化しており、ツカサのメガルカリオはその拳を左ストレート、右ストレート、左フックで三発叩き込んでいる。

 

それを耐えた相手のメガルカリオは渾身の一撃を放ち、打ち込んだその拳が更に固くなっていた。

 

 

「今のはかなり効いたな……だけど素早さはこちらが上、もう一度ボーンラッシュだ!」

 

「避けてグロウパンチよ!」

 

追い詰められたツカサのメガルカリオは獰猛な獣のように唸りを上げ相手の懐に飛び込み、それに驚き避けようとした相手のボディに強烈な右ストレートを叩き込み吹き飛ばしてダウンさせた。

 

 

 

 

「勝った……か。何かお前に見覚えがあるような」

メガシンカが解けたルカリオにそう呟いている。

 

「凄い……あなたとポケモンの絆、空前絶後のパワーだよー! メガルカリオ同士……全力を尽くした戦い! 貴方なら絆の力でメガシンカを使いこなせるよっ!!」

 

「くわんぬ!!」

 

「よければあなたの旅にルカリオも連れていかない? 貴方とのコンビもばっちりみたいだし! ね!」

 

「くおーん!」

 

「ちょうど最後の仲間を探していたところだよ。コンゴトモヨロシク……」

 

「ポケモンとトレーナーお互いが勇気を与えあい、お互いが相手の為に心を痛める優しさがあればきっと笑顔になれるよね!」

 

「くわんぬ!!」

 

「コルニ、ちょっと聞きたいんだけど……このルカリオってリオルから育てたの?」

最後の仲間になったルカリオを見てコルニに尋ねていた。

 

「そうだよ。ツカサさんのルカリオはイッシュで二年くらい前に映画に出てたリオルで、一年前に私が引き取って育てたんだ!」

 

「マジかよ。お前、まさか……」

 

「くあんっ!」

スッとルカリオが上げた腕には赤いバンダナが巻かれ、それに加工されたルカリオナイトが付いている。

 

「それは共演していたリオルキッドの俳優さんがお別れの時に巻いてくれて、それからずっと大事にしてるんだって教えてもらったんだ」

ツカサがホウエンに居た時に貰って入れっぱなしだったバンダナを、撮影で懐いていたリオルに巻いてあげていたらしい。

 

「そっか、お前は覚えていてくれたんだな」

 

「くぁん!」

 

「え? それってどういう……」

 

「……真実と理想の使者、リオルキッド参上!」

一度コルニに背を向けるとミアレのジョーイさんにプレゼントされていたリオルキッド仕様の仮面をつけ、振り向くと二年前の決め台詞とポーズを決めている。

 

「くぁん!」

ルカリオもリオルだった時の決めポーズをとっていた。

 

「え、嘘……ほ、本物なの?」

 

「あはは、俺がリオルキッドとルカリオキッドをやってたんだよ。……あの子のおねだりに拒否出来なくてね」

仮面を外し苦笑しながら正体をバラしている。

 

「さ、サインください!」

 

「くぉん!!」

コルニとルカリオは目を輝かせながらサインをしてほしいと詰め寄ってきた。

 

「うん、いいよ。ジョーイさん達以外に知ってる人が居たなんてなぁ」

ツカサはドマイナー作品だと思っているが一作目の短編以外はかなりの制作費がかかった長編になっていて、今はキャストを変えてでも一作目を長編としてリメイクする案も出ている程。

 

「あたしのジムのみんなも知ってるよ! みんなジムには連れてきてないけど、プライベートでリオルとルカリオを育ててるんだから!」

 

「俺、カロスに住むわ。いや、もう住んでたわ」

コルニに手を握られぶんぶん振られながら呟いていた。

 

「えっと、それなら今度遊びに行っていい?」

 

「この旅が終わったらね。その時には他の地方から知り合い達が来てるかもしれないけど……あ、それと知り合い達には絶対にリオルキッドをやっていた事を内緒にしてね」

 

「はい!」

 

この時のコルニは度肝を抜かれるような面々が揃っているとは思いもしていなかった。

 

………

……

 

あれからコルニにサインをし、ポケモンセンターに向かい部屋を借りていた。

 

「ハチクマンシリーズ再ブーム? えっ、なにこれは」

一人隅っこでドリアを食べながらドン引きしている。

 

ツカサの素性が明らかにしていく過程でイッシュとカロス以外の者達も作品を目にして今になって再ブームが起きていた。

 

それに呼応したのかイッシュのスタッフは一作目のリメイクの為にツカサを探し始め、ハチクマンとリオルキッドのフィギュアの製作まで始めている。

 

 

「……これ知られたらメガルカリオキッドとかやらされるんじゃないだろうな」

左手に付けられたメガリングを見て嫌な予感がしていた。

 

続編の子世代設定でメガルカリオ仮面という謎の師匠設定で出てきそうではある。

 

 

「……」

サラダを時々食べながら様々なスレを見ていた。

 

ツカサのスレッドは今日も盛況であり、あるはずのないチャンピオン達との三股説まで囁かれている始末。

 

ミアレで見かけた情報で若干騒ぎになっており、ジョーイさんがサインを自慢しまくっていたという話題も出ている。

 

 

「……」

サラダを咀嚼しながらもう片方の手でニンフィアスレを見始めた。

 

自分の過激なニンフィアについて詳しく書いて尋ねると、そんなニンフィアはいないと全否定からのフルボッコにされてツカサはイラッとしてログアウトしていた。

 

 

「はぁ……本当なのに。今もセンター内を俺を探してるのか爆走して、センターのスタッフとポケモン達が大騒ぎしながら追いかけてるのに」

知らぬ存ぜぬでサラダを食べ終えている。

 

 

『ま、待ちなさーい!』

 

『タブンネ!』

 

『ラッキー、止めて!』

 

『ハピナスも道を塞いで!』

 

『フィアー!』

 

「最後のだけ聞くと恐怖を叫んでるように聞こえるな。てかあいつマジなにやってんだ……おとなしいって嘘だろ絶対」

 

 

そのまま食器を返して食堂から出るとまだ騒いでおり、ニンフィアが華麗に滑ってタブンネの股下を通り抜けている所が見える。

 

更に触覚を振り向いたタブンネに巻き付け振り子のように使い、ハピナスとラッキーの上を飛んで壁を蹴りながら着地して逃げていく。

 

「スタイリッシュすぎんだろ。今後はザ・フィアーとか呼ぶべきなのかな?」

 

「すげー……触覚ってあんな使い方もあるんだ……」

通りすがりのトレーナーも思わず呟く始末。

 

 

これ以上騒がせても申し訳ないとツカサも逃げたニンフィアの後を追っていく。

 

「ユクゾ!」

デッデッデデデデ!カーン!という幻聴が聞こえてくる。

 

「あ……避けて!」

 

「ぐふっ!」

気合いを入れた瞬間に腹に衝撃が走り食べた物を吐き出しそうになっていた。

 

「イラッとくるぜ……」

 

「〜♪」

擦り擦りと胸元に顔を擦り付けるニンフィアに若干イラッとしている。

 

「ごめんなさい! ボールに戻そうとしたら、部屋の扉が開いていきなり逃げ出してしまって……」

 

「大丈夫っす。逆にうちのがお騒がせして申し訳ないです」

 

ポケモンセンターのスタッフが持ってきていたボールに大人しくするよう言い聞かせたニンフィアを戻し、謝罪と頭を何度も下げて再び預けてから部屋に戻っていった。

 




リオルキッド役の時のリオルが進化したルカリオが加入。


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発電所でのあれこれ

そして翌朝早くにボールを受け取るとそそくさとポケモンセンターを後にしていた。

 

「何で昨日に限ってあんな騒ぎを起こすかな……あれグリーンさんが見たら腹抱えて笑うんだろうなぁ」

 

「ツカサ! これ、使うといいよ」

 

「え、秘伝マシン……セレナ、これ貰ってもいいの?」

 

「水上を移動するのになみのりを使うでしょ? だけどツカサがカロスにやってきて一緒に旅をするなんて、よく考えれば凄い事よね。これは運命でしょ」

 

「俺の頭の中にさ、いつも聞こえる声があるんだ。聞こえるのはこうだよ。運命に逆らえってな! ……あ、嘘です、そんな目で見ないでくださいセレナ様」

ここぞとばかりに工藤を真似て運命を否定した途端、セレナが凄い目で見てきてガチでビビっている。

 

「ふぅ、全く……それじゃ、またね?」

 

「はーい……あー、怖かった。とりあえず先に進もう」

 

 

そのまま十二番道路であるフラージュ通りへと足を進めていた。

 

「おー、なみのりが出来そうな水辺があるなー……イワパレスのボールがない」

妙に軽いなと腰のホルダーに触れ、一つだけない事に気がつきサーッと顔色が青くなっていく。

 

「それはファイトバッジ……君、ちょっといいかな?」

 

「は、はい?」

 

「だ、大丈夫? 倒れそうなくらい真っ青だけど」

 

「へ、平気っす……あ、ちょっとごめんなさい」

スマホに着信があり、少し離れた場所で出ている。

 

 

「……あー、よかったぁ。うん、うん……わかった。次に会う時までよろしく。ちなみに好物は抹茶のポフレで、弱点だけどバトル以外では水遊びが好きだから……うん、じゃあまた」

通話を終え、顔色もよくなって戻ってきていた。

 

「心配事は大丈夫だったのかな?」

 

「はい、彼女が見つけて保護してくれてましたから。ホルダーの四番目がちょっと緩んでたみたいで」

 

「それならよかったよ。それで君にお願いしたいのはね、溺れかけた僕を助けてくれたラプラスの事なんだ」

 

「ラプラス?」

 

「そう。でも僕じゃ彼女に広い世界を見せてあげられない……ファイトバッジを持つ強いトレーナーさん。君がよければラプラスと一緒に旅をしてくれませんか?」

 

「これも何かの縁ですし、いいですよ」

 

「ありがとう! ラプラス、カロス地方という広い世界を泳ぐんだよ!」

 

「これからよろしく、ラプラス」

 

 

ラプラスの入ったボールを受け取り別れを告げ、少し行った所にある浜辺でラプラスをボールから出していた。

 

「改めてよろしくね。それとまず、なみのりを覚えてもらいたくて」

 

「きゅー」

 

「……癒し系だなぁ」

頭をツカサのお腹に優しく押し付けて甘えており、ニンフィアにライバルが現れていた。

 

 

ポフレを与えたりして仲良くなってからなみのりを覚えてもらい、カロスでは初の水上への一歩を踏み出している。

 

「すぐ対岸は見えるけどラプラスの背中は快適だなぁ」

 

「きゅー」

 

「いや、ちょっとラプラス? 何で着いたのに岸からまた離れ……え、嬉しいからまだ乗せておきたい?」

 

「きゅー!」

 

 

しばらく水上を楽しみようやく対岸におろしてもらえ、撫で撫でしてからボールに戻していた。

 

「逃れられぬ水上……メェール牧場?」

 

少し歩いた先には農場があり、無料で自由にメェークルに乗れるという看板が入り口に置いてある。

 

誰もおらず勝手に乗っていいものかと悩みながら寝ているメェークルを優しく撫でていると、後ろから足の間に違うメェークルが勢いよく頭を入れてきて自然と跨がる形になっていた。

 

 

「走り始めはサイホーンより速いけど、トップスピードはサイホーンのが速いな」

 

「くくー!」

 

「よしよし、風のように駆けろ!」

 

………

……

 

あれから散々楽しんでから浜辺に戻り、持ってきていたシートを敷き寝転がっている。

 

「〜♪」

 

「フィア〜♪」

 

「きゅ〜♪」

 

「〜♪」

 

「フィアフィア〜♪」

 

「きゅきゅ〜♪」

 

ニンフィアとラプラスはご機嫌でツカサに寄り添いながら鼻唄に合わせて何かを歌い、ゲッコウガとルカリオは波打ち際で立ち会って手合わせをし、リザードンとファイアローは空中戦を繰り広げていた。

 

 

それから少し皆で昼寝をしてから次の町へと向かい始め、自転車で風を切りながら進んでいく。

 

「次はヒヨクシティ、高級リゾートだったかな……やっぱ自転車だと速いわ。もう着いちゃったし、旅を楽しむなら徒歩のがいいかもしれないな」

 

入ってすぐにホロメールを受信したので確認している。

 

『ツカサ、ポケモンジムの前で勝負を挑むわ。準備しておいてよね』

 

「イワパレスについては……」

 

『あ、そうそう。イワパレスなんだけどしばらく借りたいの。私のポケモン達を指導してくれて、教官役になってもらっているから。それじゃあね!』

 

「イワパレスは先生としてやってるんだな……しょうがない、切り替えていこう」

 

 

いいつりざおを貰ったり、技マシンクイズに答えたり、しあわせたまごを貰ったりしながらシーサイドステーションに向かっていく。

 

「モノレールにもの……あ、プラターヌ博士と多分カルネさん」

くだらないダジャレを言おうとしながら中に入ると、プラターヌと変装をしたカルネが居て思わず声に出していた。

 

「やー、ツカサ! コングラッチュレーション!! ついにメガシンカに必要な物を手に入れたね! ポケモンにメガストーン、トレーナーにメガリング、そして絆というわけだね」

 

「絆?」

 

「あ、カルネさんもお久しぶりです」

 

「僕の推測ですが絆がポケモンの持つ新たな進化のカギを握っているのです。ですが絆とはなんなのか? 何故カロスでのみメガシンカの実例があるのか? わからない事ばかりです……」

 

「例えば……ですがカロスの伝説のポケモンは? 他の地方になくてカロスだけに存在する……という意味でですけど」

 

「ああ! ああ!! なるほどです!! 調査する事が増えてワクワクが止まらないねー!」

 

「俺だけ蚊帳の外感が半端ない」

 

「そうだった! コレを渡す為に来たんだったよ」

 

「秘伝マシン2……そらをとぶ、ですね」

 

「うん、そうだよ! 今まで訪れた事のあるポケモンセンターへひとっとびさ! ではツカサにカルネさん、また会いましょう!」

 

「はーい」

去っていくプラターヌの背を見送っていると隣に誰かが立つ気配がし、見ると変装したカルネがこちらを見ていた。

 

「あたしがお芝居をする時って演じるキャラクターと自分との間に絆を探してるのかも。違う部分ばかり探すとキャラがイヤになっちゃうけれど、同じ部分を数えていけば理解できるかもしれないでしょ。……なんてね! ツカサ、今度会う時はポケモン勝負しましょうね」

 

「はい、それではまた」

カルネを見送りモノレールのステーション内を彷徨いている。

 

 

「うふふ。女優のカルネさん、モノレールにものれーる。うふふ」

 

「俺と同じ仲間がいた」

 

 

そんな奇跡の出会いに感動しながらモノレールに乗り、ファイアローにそらをとぶを覚えさせながら到着するのを待っている。

 

「『ヒヨクシティ 海辺と高台が連なる街』……随分高いとこまで来たなぁ」

高台から海辺の方を見下ろしながら呟いていた。

 

 

「さてと……ハッ、殺気!」

 

「遅れてゴメンね。メガシンカが見たくなったの。もちろんメガシンカを使うかはアナタの自由だけど。ポケモンの可能性……その一端に触れてみたいの」

 

 

「わかった。それじゃあいざ、尋常に……」

 

「勝負!」

 

 

距離を取って投げられた二つのボールからファイアローとニャオニクスが現れた。

 

「ファイアロー、アクロバット!」

 

「ニャオニクス、ねこだましよ!」

 

仕掛けようとしたファイアローにニャオニクスのねこだましが決まり、それに驚き体勢を崩して地面に落ちてダメージを受けいる。

 

 

「毎回それにやられるんだよなぁ……何か持ってたら厄介だ。ファイアロー、どろぼうだ!」

 

「チャームボイスでファイアローを魅了しちゃいなさい!」

 

 

空を飛び回り撹乱しながら突撃して持ち物を奪い取ろうとするも何もなく、その時の爪によるダメージでニャオニクスは苦しそうな表情を浮かべている。

 

そしてお返しとばかりにチャームボイスを繰り出すも、騒がしいパーティーメンバーとトレーナーで慣れているからか平然としていた。

 

 

「後一息だ、アクロバットで派手に決めてやれ!」

 

「くっ、ニャオニクス避けて!」

 

特訓の成果だと言わんばかりに空を舞うように飛び、それに翻弄されているニャオニクスをすれ違い様に掴み空に放り投げている。

 

ニャオニクスが追撃を恐れ見回すがファイアローの姿が見当たらず、気がついた時には真上から突撃して来て地面に叩きつけられていた。

 

 

「やだかっこいい……」

 

「しかも自分だけはギリギリで空に戻ってるなんて。アブソル、お願い!」

 

「ファイアロー、お疲れ様。行こうぜ、相棒!」

 

ニャオニクスをボールに戻しアブソルを繰り出したセレナを見て、ここだなとファイアローを戻してルカリオを出している。

 

 

「そのルカリオ……」

 

「俺達の絆が更なる力を呼び起こすんだ。メガシンカ!」

 

ツカサがメガバングルのキーストーンに触れると、赤いバンダナに付いているルカリオナイトが呼応して激しい光を放った。

 

 

「やるぞ、メガルカリオ!」

 

「クァンッ!!」

 

ルカリオが包まれていた光を振り払うと姿が変わり、やる気も十分でかなりの迫力を出している。

 

 

「メガルカリオ、グロウパンチ!」

 

「あれがメガシンカ……アブソル、でんこうせっか!」

 

アブソルは素早い動きでメガルカリオに攻撃を叩き込んだが、そのまま左手で掴まれて右ストレートを叩き込まれ一撃で意識を刈り取られていた。

 

 

「流石にメガシンカ相手は重かったわね……お願い、ハリボーグ!」

 

「お疲れ、ルカリオ。リザードン、お前の出番だ!」

 

ハリボーグが出るのを見てルカリオを戻し、相性がいいリザードンを対面させている。

 

前回のバトルでハリボーグはトラウマが出来たらしく、リザードンの姿を見てビクッ!と後退っていた。

 

 

「リザードン、つばめがえし!」

 

「あっ、しまっ……ハリボーグ!」

 

空から強襲して再び尻尾による一撃を与えようとしたが避けられ、ホッとしている所を鋭い拳で打ち上げている。

 

 

「……」

 

「あなたのポケモンってみんな凄い動きをするわよね」

 

そして落ちてきた所を尻尾でスイングして吹き飛ばしてダウンさせていた。

 

 

「ニンフィアが仲間になってからみんなおかしいくらい強くなってるなぁ」

 

「ポケモントレーナーとしてもアナタが凄く気になる……」

 

「うん?」

 

「アサメタウンから旅立って道のりは同じなのに、強さは同じではないのね。何が違うのかしら……? それじゃジムの挑戦、ベストを尽くしてね」

 

「うん、がんばるよ。俺のイワパレスの事もよろしくね」

強さの違いは新米トレーナーとバッジ40個所持のベテランの差でもある。

 

 

ジムに挑む前にフレンドリィショップに寄り、まひなおし、どくけし、なんでもなおしを20個購入していた。

 

「持ってない時使いたくなる、まひなおしとどくけし。いつも戦うトレーナーの味方、フレンドリィショップはお薬屋さんも兼ねてるな」

 

 

そして高台をくり貫かれたように作られたジムに入ると、中には巨木を中心にロープで上ったりぶら下がって渡るアスレチックのような仕掛けが至る所にあった。

 

「つ、着いた」

一番上にはデスクと本棚があり、椅子に座って何かを書いている人がいる。

 

「おう! 来なすったか。私がジムリーダーのフクジ。……で、どうだったかな。まっすぐ伸びた草木を集め作った草のアスレチックは」

大きな鋏を手に庭師のようなお爺ちゃんが椅子から立ち上がり、ニコニコしながら尋ねてきた。

 

「童心に還るっていうか、楽しかったですよ」

 

「君が感じた気持ちが私のジムリーダーとしての強さ何だが試すかい?」

 

「それはもちろん」

 

 

「さぁ、ワタッコ行ってきなさい」

 

「ファイアロー、出番だ!」

 

距離を取った二人からボールが投げられると、ワタッコとファイアローが同時にフィールドに現れていた。

 

 

「ファイアロー!」

 

「キュイイッ!!」

 

「ほう……」

 

名前を呼ばれ目を合わせただけでワタッコに突っ込み、そのままアクロバットの一撃でダウンさせている。

 

 

「ん……?」

 

「ゴーゴート、行ってきなさい」

 

ワタッコを回収してゴーゴートを出しているが、ツカサは自重しているファイアローを不思議そうに見ていた。

 

 

「まぁ、いいか……アクロバット!」

 

「ゴーゴート、守りを固めて耐えるんだ!」

 

ゴーゴートはこれから与えられる攻撃を耐えようと守りを固めているが、直後に与えられたファイアローの一撃はとても重く防御を突き抜けてダウンさせられていた。

 

 

「今の……なんたら神拳みたいに内部にダメージが行ったのかな?」

 

「面白い。さぁ、ウツドン見極めてきなさい」

 

ツカサは厚そうな防御を抜いたファイアローの事を考えており、フクジはゴーゴートを戻し最後にまさかのウツドンを出している。

 

 

「……え? あ、アクロバット!」

 

「……」

 

まさかのウツドンに動揺しながら指示を出し、フクジはジムリーダーとして見極める為に何も言わずに見ていた。

 

場所が場所だけに自重しているファイアローが加速してウツドンを蹴り飛ばし、起き上がった所を更に蹴り飛ばし、それを続けて転がし回している。

 

そして何度目かの蹴り飛ばしで目を回してダウン、そのまま動かなくなっていた。

 

 

「自重も出来るなんて良妻になれるな、ファイアロー」

 

「ポケモンとの友情は慌てず騒がずじっくりと……言うまでもなく仲良しみたいで結構。ポケモンは君を信じる、君はポケモンを信じる……胸のすく勝負だったよ。さあさ、勝利の証プラントバッジだよ」

 

「ありがとうございます。これで四つ目だ」

受け取ったバッジをケースにしまいながら呟いていた。

 

「後これも持っていきなさい。その技マシン、くさむすびを使えば草を絡ませ相手を転ばす。相手が重ければ重いほど威力が上がるんだよ。……アスファルトを突き破り成長する草木の強さが私の憧れなんだよ」

 

「何から何までありがとうございました。それでは失礼します」

 

「帰りはそこの滑り台を使うといいよ。これからもがんばりなさい、君ならもっと上を目指せるはずだよ」

 

「……ありがとうございます!」

頭を下げて礼を言い、滑り台に向かっていった。

 

 

アスレチックの滑り台なだけはあり、開けられた木の中を通ったりしながら加速して最後は出口から放り出されるようにして着地を決めている。

 

「カントーのジムもこれくらい攻めればいいのになぁ」

 

………

……

 

今から街を出るか悩んでいるとホロメールが届き、誰からだろうと確認している。

 

『久しぶりですね。プラターヌ博士から聞きました。何でもメガシンカを使えるようになったとか。その力であなたの未来をより良い方向に変えるのです。 新しく美しい世界に変えるため、どうすればいいかよく考えてみてください』

 

「フラダリさんか……ちょっと不安になるな」

 

ホロメールを見て得体の知れない悪寒が走り、今後何もないといいなと考えながらヒヨクシティを後にして連絡通路へと向かった。

 

 

「待っていたわ!」

 

「うおっ! そ、その声はジーナさんか」

 

「驚かせてゴメン。待っていたわけではなくて、プラターヌ博士に頼まれて発電所に行こうとしてたんだ」

 

「デクシオさんも。発電所って……ミアレの停電、結構経つのにまだ直ってないんですか?」

 

「そうなんだよ。この先の十三番道路とミアレシティを繋ぐゲートが、謎の停電で閉じているから調査をしないといけなくてね」

 

「ライフラインの一つが断たれてるのにミアレの人達って悠長なんすね……」

 

「さてセントラルカロスにコーストカロスとくればお次は何かしら!?」

 

「答えを言ってしまうけれどマウンテンカロスなんだよね。という事でまたパワーアップさせますね」

 

「よろしくお願いします」

ポケモン図鑑を取り出すと二人に手渡していた。

 

「あなた……ちょっと大人の顔になったかしら……? なんてね! それではお暇するわ。ボンヴォヤージュ!」

 

「颯爽と去って行ったけど、ジーナさん達一つか二つ年上だからって子供扱いはなぁ……下手したら俺のが年上に見える童顔な二人なのに」

 

 

後を追うように連絡通路を出て十三番道路、ミアレの荒野に出た。

 

「か、風が強い! 目にゴミが……いたたたた! 地面からフカマル出てきて足を軽く噛んでる! ら、ラプラス!」

 

少し進んだだけで一人お祭り状態であり、ニコニコして嬉しそうなフカマルに足を噛まれていた。

 

ラプラスを出したが噛んだ状態ではどうしようもなく、どうしたらいいのかとラプラスは困っている。

 

 

「し、仕方ない……頼むから捕まってくれ!」

 

「がぶがぶ」

 

「いったぁぁぁ!! お兄さん許して!」

強く噛まれたらしくボールをすぐに当てている。

 

抵抗もなく捕獲が成功し、科学の力でパソコンへと転送されていった。

 

 

「ジーンズが穴だらけ。一度ポケモンセンターに戻って着替えて、これはお願いして捨ててもらうしかないな……」

 

 

そしてつい先程までいたヒヨクシティに戻ってポケモンセンターに直行。

 

怪我はないが穴だらけのジーンズの男に、笑顔だったジョーイさんも驚きすぐに別室を用意してくれた。

 

「治療するからって着替えようとしたのを止められて、下だけトランクス状態って俺が変態みたいで困る」

 

「バカな事を言ってないで早く見せなさい! ……フカマルに噛まれたって話だけど、何でかすり傷一つないのかしら?」

 

「マサラタウン出身者にはよくある事なんだよなぁ……だから恥ずかしいんで着替えたいんですけど」

 

「……まぁ」

 

「そんなに顔を赤くしてどこ見てんすかね……」

 

 

何故か着替えてる間も出ていかなかったジョーイさんに穴だらけジーンズの処理をお願いし、捕まえたフカマルの確認をパソコンで行っていた。

 

「また♀、性格はむじゃき……まぁ、旅には連れていけないわ。服の替えにも限界があるし」

 

「ちょっとこれはどういう事なの?」

 

治療しようとしてくれた先程の私服のジョーイさんが鞄にジーンズを仕舞って持ち帰ろうとした時に何かに気がつき、それを手にパソコンを使っているツカサにグイグイ来ていた。

 

 

「はい? あー……ポケモンドクターの免許とブリーダーの免許ですね。いや、ちょっとした打算もあって取ったんですけど」

 

「どちらも年齢関係なく実技と筆記を合格して、研修先でしばらく働かないと貰えない難関の資格のはずよね?」

 

「天才やら何やらとやたら持ち上げられて、それが嫌になってどっちも免許貰ってからは身内のだけしか見てないよ」

是非うちにと勧誘されて嫌になったらしい。

 

ぶっちゃけハルカ、ヒカリ、メイの誰かにいつか雇ってもらう為に真剣に取り組みすぎて才能が開花した結果がこれ。

 

トレーナーとしても優秀だが、ポケモンに関わるサポートの才能の方が上だった。

 

 

「そんな簡単な物じゃないはずなのに……」

 

「ちなみに色んな繋がりで闇医者的な人も知り合いにいるよ。ハザマ先生、法外な額を取るけど腕は超一流だった」

 

「闇医者!?」

 

「まぁ、それより……はい、ありがとう。それじゃあ、またいつか」

パスケースに入れっぱなしだったそれを回収し、追求される前にさっさとポケモンセンターから離れていった。

 

 

 

再び十三番道路の荒野に着くと足元を警戒しながら進んでいく。

 

 

「ナックラーは可愛いなぁ……」

 

並走してくる姿に癒されながらも捕獲はせず、 荒野を自転車で走り回って発電所を探し回っていた。

 

 

ようやく見つけた発電所の前には顔馴染みになってきているフレア団のしたっぱが立ち塞がっていたが、あっさり倒してそいつが落とした発電所に入るパスを回収してさっさと中に入っていく。

 

中にもフレア団のしたっぱが居り、ミアレへの送電を止めて電気を奪っている事が発覚していた。

 

「何で悪の組織は毒、悪のポケモンを使うのが多いんだろう。印象悪くなるからやめたげてほしいわ」

 

 

そのまま進むと坊主頭に白いスーツを着た男と、赤いスーツに赤いスカートにバイザーを付けた茶髪の女が何かを話していた。

 

隠れて聞いていたがよく聞き取れず、少し近づいてみると……

 

「あのトレーナーの始末かしら?」

 

「驚きだな。作業者以外にも始末する者が増えたか」

 

「俺はスネークになれない。はっきりわかんだね」

 

 

そのまま幹部らしき男が始末させようとヘルガーを直接ツカサに向かわせるも、投げる前にボールから飛び出したルカリオのはどうだんで吹き飛び一撃でダウンしていた。

 

 

「くっ、すまない! 科学者、後始末を頼む!」

 

「アハハ! いいの? トレーナーさん、カモーンしちゃって!」

 

「ん?」

ルカリオはまた同じ事が起きないよう警戒しながら傍に控えている。

 

「わたくしの名前はアケビ。ご覧の通りフレア団でとある研究をしている科学者です。あなたには悪いのですがお願いされちゃったからね」

 

 

「ルカリオ!」

 

「グラエナ、片付けなさい!」

 

控えていたルカリオが前に飛び出し、ボールから出て飛びかかろうとしたグラエナを牽制していた。

 

二人が指示を出す前に二体は動き始め、それぞれの主人に勝利をもたらそうとしている。

 

 

「……ルカリオ、はどうだん!」

 

「グラエナ、こわいかお!」

 

グラエナが指示通りにこわいかおをしようとしたが、放たれたルカリオのはどうだんが顔面に直撃して吹き飛びダウンしていた。

 

 

「ルカリオ、よくやった」

 

「くぁん!」

 

「……強いのねアナタ。うん、強いよねアナタ」

グラエナをボールに戻しながらアケビは呟いていた。

 

 

「ほら、倒したんだからさっさとミアレに電力を……」

 

「アハハ! あなたおもしろーい! また会いましょ」

 

そう言うと幹部の男と共にツカサの間を素早く抜け、どちらかを捕まえようとしたが二兎を追う者一兎をも得ずそのものになっていた。

 

 

「ちくしょう、毎回組織的なのと戦うと逃がすんだよなぁ……」

 

「あらあなた。あたくし達よりもはやく、ここにいた得体の知れない連中を追い払ってくれたの?」

 

「え……だ、誰なんだいったい……」

赤と青の仮面をつけ、赤と青のマフラーを付けた見知った二人に気づいてない体で話しかけている。

 

「……そうね! カロスを守る人が多いことはいい事ですもの。感謝の気持ちですわ! ポケモンを元気にしますわね!」

 

「あ、はーい……」

 

「うん! 君とポケモンは最高のチームみたいだね。とはいえ無理は禁物ですよ。これを持っていてください」

 

「あ、かいふくのくすり……こんな高い物をありがとうございます」

 

「いや、いいんだ。君達のお陰でミアレの停電も直りましたよ。つまり十三番道路とミアレシティを繋ぐゲートも通行可能になったんです」

 

「ではあたくし達謎の人はこれで。さようならは言われる前にあたくしから言いたいの。オ・ルヴォワール!」

 

「……バレバレなんだよなぁ。セシリア好きな俺はジーナさんの喋り方にドキドキしちゃう」

 

 

作業員が集められていた場所に安全だと告げに行くと感謝の言葉に技マシン等を貰え、少し休んでいくように言われて椅子に座らされコーヒーやお菓子もご馳走になっていた。



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五つ目のバッジ

コーヒーとお菓子をご馳走になってから発電所を後にし、暗くなった荒野を急いでミアレへ向かっていく。

 

「なんだあのやたらでかい人は……」

近づいてみると三メートル近くあり思わず見上げている。

 

「ポケモン……花のポケモン……永遠の命を……与えられた花のポケモン」

 

長身すぎる男性はそう呟きながらミアレの方へと向かっていった

 

 

さっきのは何だったのかと考えながら連絡通路に到着し、再びミアレに足を踏み入れている。

 

「おー、帰ってきた感が半端ないな。こっち側は見てないけど」

 

「ツカっちゃん♪」

 

「ん、サナ?」

 

「後ろ姿を見かけたから、すごい走っちゃった! あのね! ミアレの停電復旧したんだって! カロス発電所の電気を奪っていた悪ーい人達を誰かが懲らしめたんだって!」

 

「へー、そうなんだ」

 

「そんな凄い人っていったい誰かしら?」

 

「さあ? 青と赤の仮面の男女とかかもよ」

 

「世の中にはツカっちゃんみたいに強い人がいるんだね! でね聞いて聞いて! タワーに明かりが灯るの! 行こ! ツカっちゃん、ミアレの名物なんだよ!」

 

「おー、それは見ないとだな」

 

「ほら! まっすぐ行けばプリズムタワーだからね♪」

 

 

街の中心に立つプリズムタワーに話をしながら二人で向かっている。

 

「ナイスタイミング♪ これから点灯するみたい」

 

「おー、よかった。それであのタワーの前にいるのは?」

女の子と男の子を見てサナに尋ねていた。

 

「あっ、シトロンさん! ミアレのジムリーダーだよ! 発明も得意で色んなマシンを作ってるの! ほらほらあの二人……! サナの友達なんだよ!」

 

「マジかよ。俺も友達になりたいわー」

色んなパイプが欲しいらしく下心満載で友達になりたがっていた。

 

 

「あっ! サナさん!」

 

「やっほー♪」

 

「そちらは……もしかしてチャレンジャーさん? ゴメンナサイ! もうしばらく待ってもらえますか」

 

「なんなら明日にしますんで平気ですよー」

 

「ほら、おにいちゃん」

 

「よーし! 準備オーケイ! 今こそサイエンスが未来を切り拓く時! プリズムタワー点灯マシン! パワーオン!!」

 

その言葉と共に点灯されたプリズムタワーは本当に綺麗で、ツカサも思わず感嘆の声を漏らしていた。

 

 

「こんな気持ちの時にウットリって言うんだよね……? ツカっちゃんとの思い出、また出来ちゃった♪」

 

「そうだねえ……」

いつのまにかサナに手を握られている事も気にならないくらい、その綺麗な光景に見惚れている。

 

「んんっ! ……こちらのプリズムタワーがミアレのポケモンジムになりまーす」

そう言うとジムの中に二人は入っていった。

 

 

「凄いよね、シトロンさんのマシン。サナもパズルを解いてくれるマシンをもらったけど、もったいなくて使ってないの。じゃ、ジム挑戦がんばってね♪」

 

「まぁ、明日がんばるよ」

 

 

そのままサナと別れるとプリズムタワー近くのポケモンセンターで部屋を借り、外に出て買ってきたガレットで腹を満たしている。

 

「明日はジムに行かないでそらをとぶでコボクまで行ってバトルシャトーに挑戦、その後はお洒落ってやつをしにブティックに行ってみるか」

 

 

そのままシャワーを浴びてベッドに入り、激動の一日の疲れであっという間に夢の世界へ旅立っていた。

 

 

翌朝早くに目を覚まし、カフェでコーヒーとクロワッサンを食べてから部屋に戻り出掛ける準備をして鍵を返してから外に出た。

 

ファイアローのそらをとぶでコボクに向かい、そのままバトルシャトーで夕方まで休憩を入れながら戦い続けている。

 

「うーん、いつのまにかデュークになってた。とりあえずミアレのブティックに行ってみるか」

 

 

再びミアレにそらをとぶで戻り、メゾン・ド・ポルテに入っている。

 

色々してかなりスタイリッシュだからか入店を許可され、男物がある二階に上がると色々と選び始めた。

 

黒の中折れハット、黒のジップ付きシャツ、赤のチェック柄パンツ、茶のローファーに茶のコーティングジップバッグを試着している。

 

 

「まぁ、お似合いですよ!」

 

「これをこのまま購入したいんですが」

 

「少々お待ちください……合計で五十四万円になりますね」

 

「端数がないのはありがたいですね。とりあえず一括で支払わせてもらいます」

札でパンパンになっている財布から無作為に五十四万を取り出し、店員に渡して支払いを済ませていた。

 

「い、一括……し、少々お待ちください!」

 

他の客もカードではなく現金で支払っている事に驚いており、店員は急いでカウンターに向かい計算をしている。

 

タグ切ってもらわないとなーと考えながら待っていると、計算が終わった店員と何故か接客をしていない店員達も来ていた。

 

 

「申し訳ございませんが、お客様のお名前をお願いします」

 

「ツカサですが」

 

「それではツカサ様、今後も当店をご贔屓に……こちら当店の会員証でございます。すぐにお名前を記入させて戴きますので、少々お待ちくださいませ」

 

「は、はぁ……あっ、ありがとうございます」

付いてきた店員達がタグを切り取っていき、着て帰る事が出来るようになっている。

 

着ていた服や帽子を店の袋に入れてくれ、そんなに買っていないのにVIP対応をされてそわそわしていた。

 

それからすぐに会員証を渡され、店から出ると店員一同にお見送りされて戸惑いながらポケモンセンターに向かっていく。

 

 

「うーん……現金で支払ったからあの対応? まぁ、いいや。かいふくのくすりにゴールドスプレーを買わないといけないし、次はしばらくないな」

 

お洒落をして戻ってきたツカサにジョーイさんは驚くも鍵を渡してくれて、また同じ部屋に戻っていった。

 

………

……

 

翌朝、準備を済ませてすぐにプリズムタワーへ向かっていった。

 

「タイプは電気だろうしゲッコウガ、ラプラス、ファイアロー、リザードンは出番あるかなこれ。逆にルカリオとニンフィアは酷使する事になっちゃうが」

 

 

中に入ると中央にエレベーターがあり、それに乗ると一つ上の階に着いた。

 

「あっ、この前のトレーナーさん! 早速挑戦に来たのね。あたしユリーカ! ジムリーダーの妹です。ではまっすぐ進んで白いパネルに乗ってください。そうするとあたしがクイズを出しますから答えてね!」

 

「おおっ、楽しそうな仕掛け。よし」

 

 

そのまま白いパネルに乗ると上からモニターが降りてきて何かのシルエットが映っている。

 

「このポケモンはなーに!?」

 

「え、どう見てもピ」

 

「1:エモンガ、2:デデンネ、3:ピカチュウ。正解と思う番号のトレーナーに話しかけてね!」

 

そのまま三番に向かいトレーナーを倒し、当然正解でユリーカに褒められながら次の階に向かった。

 

そのまま当たり前のように全問正解で天辺に到着し、シトロンとユリーカが待つライトアップされキラキラとしたステージへと歩いていく。

 

 

「あっ! 改めてよろしくお願いします」

 

「こちらがミアレシティジムリーダーのシトロン! いい? ミアレシティのジムリーダーだからそれなりに……ううん、かなり強いのよ!」

 

「ユリーカってば戦うのは僕の自慢のポケモン達だよ」

 

「はーい! それじゃあ二人とも凄い勝負を見せて!」

 

「うーん、仲が良いんだなぁ。ユリーカちゃんみたいな妹が俺も欲しかった」

気を抜くわけではないが、兄を自慢する妹の姿を見てほっこりしていた。

 

「ではチャレンジャーさん、お互いベストを尽くしましょう!」

 

「ああ。それと俺はツカサ、正々堂々戦おう」

 

 

 

二人の投げたボールからエモンガとニンフィアが現れ、ニンフィアはピシピシと触覚で床を叩きながらエモンガを鋭い目で見ている。

 

「これは……ニンフィア、ムーンフォース!」

 

「……♪」

 

「あのニンフィア……笑ってる? エモンガ、飛び回って撹乱してください!」

 

「エモ!」

 

 

空を飛び回り撹乱しながら高速で移動し、そのままニンフィアに電撃を放とうと一瞬止まったのが運の尽き。

 

その隙に触覚を使い高く跳躍して天井付近まで飛び上がると、天井を後ろ足で蹴りエモンガに突撃していく。

 

まさかの行動にエモンガは慌てて逃げようとするが既に遅く、突撃してきたニンフィアの触覚が巻き付けられ地に叩きつけられていた。

 

そしてエモンガがよろよろと立ち上がった所に追い討ちのムーンフォースが放たれ、そのままフィールドから弾き出され目を回して気絶している。

 

 

「ニンフィア先生、お疲れ様です!」

 

「……はっ! レアコイル、お願いします!」

凄い動きをしたニンフィアに唖然としていたシトロンはエモンガを回収するとレアコイルを場に出していた。

 

「なら俺はルカリオ!」

シトロンがレアコイルを出したのを見てニンフィアをボールに戻し、有利に運べるルカリオを出している。

 

 

「シトロン君、ここも一気に決めさせてもらうよ。ルカリオ、メガシンカ!」

 

「……!!」

 

「メガシンカ……!?」

 

「えっ、嘘!?」

 

兄妹揃って驚愕の表情を浮かべながら、眩い光に包まれていくルカリオを見ていた。

 

包まれた光を吹き飛ばしメガルカリオが現れ、ボールの中で高めていた自身の波導を一瞬で練り上げてはどうだんを放つ体勢に移っている。

 

 

「はどうだん!」

 

「レアコイル、エレキフィールドです!」

 

放たれたはどうだんを頑丈な身体で耐えたレアコイルはエレキフィールドを作り出し、足元に電気を走らせていた。

 

 

「メガルカリオ、もう一度はどうだん!」

 

「レアコイル、すぐに避けてください!」

 

放たれたはどうだんを大きく身を動かして避け、攻撃を仕掛けようとメガルカリオの方を向くが既にその場にはいなかった。

 

背後から凄まじい衝撃を受け地に落ちながら振り向くと、放ったはどうだんに追いつきそれを蹴った後のメガルカリオの姿が見え、レアコイルはそのまま地に落ちダウンして目を回している。

 

 

「今の動きは超格好良いわ……録画しておきたかったなぁ」

 

「ほえぇ……不正がないように録画してありますから、後でそのデータを渡しますね!」

同じようにメガルカリオの動きに見惚れていたユリーカがツカサの呟きに気づいて配慮してくれていた。

 

「レアコイル、お疲れ様です。さぁ、これが最後です。行きましょう、エレザード!」

 

現れたエレザードはメガルカリオを前に堂々としているように見えるが、練度の差が分かるのか足がガクガクしている。

 

 

「メガルカリオ、派手に決めよう。インファイト!」

 

「クァン!」

 

その指示を聞くと守りを捨てた攻撃の構えを取り、エレザードの懐に飛び込む為にピリピリするフィールドを走り始めた。

 

それを見たエレザードは襟巻きを開きエレキフィールドから電気を吸い上げ、口を大きく開くと全力で10まんボルトを放とうと狙いを定めている。

 

 

「……メガルカリオ!」

 

「……エレザード!」

 

懐に飛び込んだメガルカリオの左拳が10まんボルトが放たれる直前のエレザードの顎を下から捉え、そのまま宙に浮いたエレザードの腹に自慢の右拳を叩き込みフィールドから吹き飛ばしていた。

 

エレザードはそれでもよろよろと立ち上がりフィールドに戻ろうとするも、目を回し再びその場に倒れてしまった。

 

 

「……勝ったな」

 

「お疲れ様、エレザード……貴方達の勝負への想い、刺激されます! 閃きます!」

 

「あー、お兄ちゃん……負けちゃったじゃん……」

 

「ユリーカ、負けた事は恥ではないよ。強いチャレンジャーさん……今回はツカサさんから僕達は学べばいいんだから。さあ、勝利の記念にボルテージバッジをどうぞ!」

 

「これで五つ目か」

 

「それとこちらの技マシン……」

 

「はいはーい! 技マシン24、10まんボルト! 安定感あるでんきタイプの技という事で人気なの!」

 

「ああ! ユリーカったら……今こそサイエンスが未来を切り拓く時! 技マシンを渡すマシン! パワーオン!! って言いたかったのに……。僕はその……強さだけを求めているわけではなくて……好きな発明をしつつ、ポケモン達と過ごす毎日を精一杯楽しみたいです」

 

「それはいい事だと思うよ。それじゃあ、またね」

 

 

軽く挨拶をしてプリズムタワーを出るとホロメールが届き、それを確認している。

 

『やー。ちょっと話したいからさフラダリカフェに来てくれるかな? 場所はわかる? プリズムタワーに一番近いポケモンセンターがあるんだけど、そこから見える赤いカフェね。じゃあよろしくね!』

 

「……プラターヌ博士、何の話があるんだろう?」

 

 

そのままフラダリカフェに向かい中に入るとプラターヌとフラダリが待っていた。

 

「ツカサ、こっちこっち! 君が調べたメガシンカの事、フラダリさんと話し合っていたのさ」

 

 

「私からもおめでとう。メガシンカを使えるとは私もあやかりたいものです」

 

「フラダリさん、ありがとうございます」

色々怪しんではいるが素直に礼は言うらしい。

 

「そういうフラダリさんこそ王家に連なる者の子孫……選ばれし者なんだよね」

 

「ええ! 王の弟、その血を引くようです。とはいえ三千年も昔の話ですから怪しいものです」

 

「そういえばツカサ、ホロキャスターをどこで作っているか知ってる?」

 

「え? あ、はい。えっと、確かフラダリさんのラボでと聞いていますが」

唐突に話を振られて驚きながらも答えている。

 

「そう! フラダリさんのラボなんだよね。ホロキャスターで得た利益の幾らかで、トレーナーやポケモン研究所をサポートするフラダリさんは立派だよ」

 

「私は与える存在になりたい。だが世の中には奪う事で自分の強さを示そうとする、愚かな人間も存在する……汚らわしい!」

 

「……」

ツカサはフラダリを冷静に見極めようとしていた。

 

「大昔……カロスの王は全てを手に入れようとして、とんでもない兵器を造り破壊の炎を放った……そう伝わっております。今のカロスは美しい! これ以上人やポケモンが増えなければ、奪い合うような愚かな事はないでしょう。とはいえ未来は決まっていない。同じ明日が来るなんて安心をしてはいられないのです。カロスの王がした事で誉められる事と言えば、最終兵器でその時代の穢れも吹き飛ばした事ぐらいか」

 

「これは?」

そう言い終えるとフラダリが目の前に立ち、おうじゃのしるしを手渡してきて尋ねている。

 

「聞いてくれてありがとう。それは君の時間を頂いたお詫びだよ」

 

鞄にしまうとそのまま立ち去るフラダリを見送り、プラターヌの方に向き直った。

 

「なんと熱い人だ、まるで燃え盛る炎だね。とはいえフラダリさんの言う事はあくまでも一つの考え……正しいとは限らないからね」

 

「それはまぁ……そうですよね」

 

「ツカサ! 大事なのは誰と一緒の時間を過ごすかだよ。ポケモン達とカロスを巡る旅を大切にするんだよー!」

 

「はい!」

 

 

 

プラターヌと別れてフラダリカフェから出て歩いていると、再びホロメールが届いた。

 

トロバからのもので十四番道路に集まろうという事らしく、今回は時間もかけず大人しく向かう事にしている。

 



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ドクターとして

十四番道路へ向かう連絡通路を通り、十四番道路であるクノエ林道に出るとトロバとセレナが既に来ていた。

 

そしてセレナと久々に勝負をしたが、デュークになる程に戦い続けたツカサが負けるはずもなく圧勝で終わっている。

 

「ツカサとの勝負は楽しいけど、負けてばかりじゃよくないわね……」

 

「ふむ」

 

 

悩むセレナに何か助言しようと口を開こうとしたが、誰かが走って近づいてきたので止めている。

 

「ねえねえ! 二人とも凄い迫力だったね♪」

 

「もうサナったら……いつから見てたの?」

 

「バトル中にちょっと視線は感じてたな」

 

「で、ティエるんは?」

 

「格闘道場ですよ」

 

「へ? 格闘道場……?」

 

「みんなごめんよー。組手ダンスに夢中で遅くなっちゃったー!」

 

 

ようやくティエルノが合流して和気藹々とした空気になり、それぞれが話をして久々の集まりを楽しんでいた。

 

「それでティエルノ、いいポケモンと出会えたの?」

 

「うん、そうなんだ! 理想のダンスチームに近づいてるよ」

 

「凄いね、良かったね! ねえねえ、みんな。サナ、怖い家に行きたいの!」

 

「クノエシティ近くの……? あれってただの噂ですよね」

 

「それよりも俺がシンオウであったガチ怖い話をだな」

妙な宿屋でダークライと遭遇したり、森の洋館で恐ろしい目に遭ったりとオカルトにも精通している。

 

「ねっねっ! みんなで噂かどうか確かめようよ!」

 

「どうせ噂だし、アタシはパス。クノエシティに行く前にポケモンと向き合っておきたいし。……ツカサ」

 

「うん?」

 

「……」

名前を呼んでからやたら熱く見つめ、そのまま何も言わず行ってしまった。

 

「……え? 何? まだ怖い家に行ってないのに既に俺だけ怖いんだけど?」

 

「あっ、ばいばーい! で……怖いの……?」

 

「ティエルノさん、確かめに行きますよ。噂には何かしら理由がありますからね!」

 

 

そしてトロバとティエルノが立ち去り、サナとツカサだけが残っている。

 

「はぁ……ツカサは何で旅してるの? みんなやりたい事をがんばってるのに、サナってば思い出づくり!って何となく旅しちゃってるもん」

 

「考えた事もなかったな。カロスを見て回りながら、ジム巡りがメインだけど」

 

「なーんてね♪ ツカサの旅する理由が聞けてよかった♪」

 

サナもそのまま皆の後を追っていき、その誤魔化しきれていない悩みを抱えた背を見送ってからツカサも進み始めた。

 

 

林道を歩いていくと浅い沼があり、こんな時の為に用意してきた長靴や水に入る為の服を鞄から出して準備している。

 

「よし、後は……」

 

「ヌメー」

 

「おぉ、サンキュー……え?」

 

「ヌメ……」

 

「めっちゃひかえめな野生のポケモンが長靴を取ってくれた件。……手持ちには入れられないけど仲間になる?」

顔しかないが可愛いポケモンの控えめな仕草にキュンと来て尋ねている。

 

「……」

コクリと頷き、そわそわツカサの回りを動き始めた。

 

「ほい」

 

長靴を履き終えると彷徨くポケモンにモンスターボールを宛て、捕獲してパソコンに転送されていくのを見送っている。

 

そのまま図鑑を確認してそれがヌメラという名前なのを知り、旅を終えたら触れ合おうて決めていた。

 

 

そのまま泥濘に足をとられたりしながら進み、トレーナーとも戦いながら歩いているとサナが手招きする姿が見えた。

 

「こっちこっち! ここが噂の……」

 

「怖い家ですね。では入るとしましょう」

 

「ええ!? 入るの!? みんな本気!?」

ティエルノが怯えながら平然とする三人に尋ねていた。

 

「まぁ……俺はサナが入るなら」

 

「噂はその眼で確かめるのが一番ですから」

 

「そっかあ! じゃあ、あたし達だけで入りましょ!」

 

………

……

 

怖い家から出てきたツカサは溜め息を吐きながら呟いていた。

 

「はぁ……怖い話を聞かされて金を取られただけだったな」

 

「……はああ。ある意味本当に怖い家だったよ」

 

「ま、サナさんのしたかったキャンプの代わりになりましたね。ほらキャンプって怖い話をしますから」

 

「暗いのとか怖いのとか、ぼくはもうこりごり……ダンスの練習がいいよ。じゃあみんな、またねえ!」

 

「ツカサさん、また図鑑比べをしてください」

 

そう言ってトロバとティエルノが去り、またサナと二人だけになっていた。

 

「次どうしよっか? やっぱりクノエシティかなー♪」

 

「樹齢千五百年の不思議な大木があるのか……それは是非見ておきたい。サナ、お先に失礼」

 

そう言い残し、夕方になる前に着けるといいなと考えながらクノエシティに向かい始めた。

 

 

 

日も落ち始めた頃にクノエシティに着き、ポケモンセンター近くの看板を眺めている。

 

「『クノエシティ ちょっぴり不思議の街』。まだ時間あるし、軽く見て回ってからポケモンセンターに行こう」

 

 

巨木にジムが作られている街を見て回っていると、オカルトマニアの女性が悩んでいたので話しかけていた。

 

するとツカサなら使いこなせるだろうとゲンガナイトを戴き……

 

「ねえ……あなた……どうやってゲンガーを手に入れたの? まさか……そんなッ……! ポケモンを交換してくれるお友達がいるの!!」

 

「あの、何なら俺と交換しますか……? それでゲンガーに進化したら返しますので」

 

「い、いいの? お願い!」

 

「はい、それじゃあ……」

 

 

無事ゲンガーに進化したのが嬉しくて仕方がない女性に別れを告げ、そのままポケモンセンターに向かっていく。

 

部屋を借りて中に入り鍵をかけ、荷物を置いたり着替えたりしてからベッドに横になった。

 

「オカルトマニアの女性は総じて容姿に無頓着っぽいから困る。……さっきの人も結構美人で胸も大きくて、ゲンガーになったって喜びのあまりに抱きついてきた時はもうたまらんかったなぁ」

 

 

それから二時間程経過し、夕飯も食べ終えのんびりアイスコーヒーを飲んでいる。

 

するとセンターの者達があちこち動き焦りながら連絡している姿が目につき、その騒ぎの元に向かうと激しい裂傷や千切れかけた尻尾のピカチュウの傍で泣き叫ぶ女の子と両親が悲痛な面持ちで立っていた。

 

「あれは酷いな……すぐに手術しないと」

 

「この街には常駐しているドクターが居ないんですって……ミアレや大きい街から来てもらわないといけないとかで、さっきからスタッフが走り回ってるわ」

 

野次馬になっているトレーナー達も薬等ではどうにも出来ない状態で痛々しい様子のピカチュウを見て顔を歪めている。

 

 

「ごめんなさい、通してください……はい、ちょっと通してください」

これは仕方がないとツカサは野次馬達を掻き分け、酷い様子のピカチュウの傍に近づいていく。

 

 

「ピカちゃん、しんじゃやだぁぁぁ!!」

 

「ピ…カ……」

 

「はい、お嬢ちゃん大丈夫だからねー。ピカチュウ、お腹の中は痛い? 少し触るけど痛かったら声を出してね」

 

裂傷には出来るだけ触れないように触診し、痛いと声を上げた場所で内側も少しやられている事が分かって早く手術をしないと不味いと焦っている。

 

基本的に手術をしないポケモンの手術もハザマと呼ばれた闇医者にみっちりと仕込まれており、ツカサはこの若さでドクターとしても十分優秀な存在だった。

 

 

「あなた、勝手に何を!」

 

「俺は旅の途中のドクターです、とにかく手術の準備をお願いします。早くしないと手遅れになりますから」

 

触診をしたり女の子の両親に手術をする事への同意書にサインをしてもらっている最中にようやくジョーイさん達が現れていた。

 

責めるように行ってくるのを見越してドクターの免許を見せて準備をするように言っている。

 

 

「これ、本物……! この若さで!?」

 

「タブンネ、助手に入ってくれそうな人と麻酔を使える人を集めて。ハピナスはラッキーと今から言う道具を準備、ジョーイさんも立ち会ってください」

 

「タブンネ!」

 

ツカサの指示で皆がそれぞれ動き出し……

 

 

 

 

深刻な状態だったピカチュウの手術は深夜まで続き、親子も廊下に並べられた椅子で祈りながら待っている。

 

女の子は泣き疲れ、ツカサに渡された秘密基地用のピカチュウドールを抱き締めて寝ていた。

 

「あなた……!」

 

「……!」

 

 

そして遂に手術中のランプが消え、手術衣を着たままのツカサが自動扉を開けて出てきた。

 

「ふぅ……」

 

「先生、あの子は大丈夫なんですか!」

 

「お前、時間も時間なんだ、もう少し静かにしなさい」

 

「ええ、無事に成功しましたよ。それでも裂傷による傷痕は深いので残ってしまいます。しばらくはセンターに入院、退院後もバトルは担当の者が許可を出すまでは控えてください」

かなり疲れながらも待っていた家族への説明をしている。

 

遊び歩いていたと思われていた期間の積み重ねが活き、勧誘が鬱陶しくなり凄腕の闇医者に師事していた時期の成果も現れていた。

 

 

「ありがとうございます! 本当に……!」

 

「……先生はご立派ですね。正直他のドクターもいない状態で、こんなに若いドクターという事で私は諦めていたんです」

 

「あはは……まぁ、そうなりますよね。しっかりした腕と知識があれば子供でもなれますし、ポケモンドクターでの外科はかなり少ないですし」

基本的に儲からないという点もポケモンドクターの人気がない理由の一つ。

 

「先生もお疲れでしょうから、後日改めてお礼と手術代の支払いをしに来ますので」

 

「あはは、ありがとうございます。それでは俺はこれで」

 

………

……

 

翌朝は眠い目を擦りながら着替え、軽めの朝食を取っている。

 

「なぁ、あの人……」

 

「あ、昨日の……」

 

「昨日のピカチュウどうなったのかな……」

 

昨晩の立ち回りを見ていたらしい者達のヒソヒソと話す声があちこちから聞こえてきていた。

 

 

「……」

クロワッサンを持ち食べながらスースー眠り始めている。

 

 

「……あれ食べながら寝てないか?」

 

「……ねぇ、誰か起こしてあげなさいよ」

 

「さっきジョーイさんに聞いたんだけど、あの年で手術も凄い腕だったらしいよ」

 

「それなら新進気鋭のスーパードクターの寝顔を撮影しておこーっと」

 

 

眠り続けるツカサに何人かのトレーナーが近づき、口元にスティックタイプのお菓子を持っていくと食べるので面白がられてたくさん食べさせられている。

 

そしてタブンネに起こされ、まだ全然食べていないのにお腹いっぱいなのを不思議そうにしながら残りを食べ終えていた。

 

 

荷物を持って預けたボールを受け取りに行くと、すれ違うスタッフ全員が向こうから挨拶をしてきてムズムズしている。

 

「ツカサ先生、おはようございますっ!」

 

「あ、おはようございます」

 

「先生のポケモン、みんな元気になっていますよ!」

 

「ありがとうございます。それじゃあ、これで」

 

「あっ、まだあのご家族……」

 

昨日とは違い目をキラキラさせた何女か謎なジョーイさんからボールを受け取り、さっさとポケモンセンターを後にしていた。

 

予定がズレてしまったがジムに挑もうと巨木の前へと歩を進めていく。

 

「何のジムだろう……窓からめっちゃ見てくる人もいるし。あの振り袖的な服はちょっと見ててドキドキする」

 

 

中に入るとキラキラした部屋に出迎えられ、更にワープゾーンもあり少々骨が折れそうだと思っている。

 

ドールハウスのようだと思いながらワープを繰り返しており、トレーナーも女性しかいないのに気がつき落ち着かなくなりそわそわしていた。

 

そして幾度かのワープを抜けジムリーダーの元に到着している。

 

 

「あらトレーナーさん。ひゅんひゅんワープしながらここまで来はったんね。ほな、はじめましょか」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「うちはマーシュ。使うんはフェアリータイプ、うちのポケモン達ふんわりはんなり強いんよ」

 

「はい……」

疲れが完全に取れていないからか、また眠くなり始めていた。

 

 

クチートにバリヤードと出してきたが、ウトウトしながらモニョモニョ指示を出しているがラプラスは理解して軽く倒している。

 

そして相手が最後にニンフィアを出し、それを見て眼が冴えラプラスに指示を出そうとしたがいきなりこちらのニンフィアが勝手にボールから飛び出してしまった。

 

「あら? うちと同じニンフィア?」

 

「いや、ニンフィアが勝手に……仕方ない。ラプラス、戻って。ニンフィア先生、まさか対抗心ですか?」

 

「フィア!」

 

 

ツカサのニンフィアによるムーンフォースの直撃を受け、吹き飛びながらもマジカルシャインでカウンター。

 

だがマジカルシャインは掠るだけでダメージは全くと言っていい程なく、寧ろそれで闘志に火が点き触覚でペシペシ地面を叩き始めていた。

 

 

「……トレーナーさんのニンフィア、ほんまにニンフィア?」

 

「そのはずなんですけど……」

 

 

「フーッ!」

 

「!」

 

まさかの威嚇をされてマーシュのニンフィアはビクッと怯えていた。

 

触覚の正しい使い方もツカサにしかやらず、寧ろ普段は便利な手足のように使っている。

 

 

「このニンフィアについて掲示板で相談しても、誰も信じてくれないんですよね……」

 

「うちもこんなのはじめて……」

 

「……何だろう今の発言にヒヤッと。ニンフィア、おんがえし!」

 

「!」

チラッとツカサを見て可愛らしくウインクをし、相手のニンフィアを恐ろしい顔で睨み付けた。

 

 

「えっと、あれがニン……フィア……?」

マーシュはもう現実逃避をしてしまいたい気持ちでいっぱいである。

 

 

そしてステップを踏むような動きで高速で迫り、そのまま全身でぶつかっていく。

 

その気合いの入った一撃でダウンし、マーシュの足元で目を回して倒れている。

 

 

「はい、お疲れ様」

 

「あんな……明日晴れやったらそれだけで笑顔になれるのにねえ」

 

「あ、あの?」

 

「ほんまお見事やわ。ほなこれ、フェアリーバッジいいますねん。ほんま綺麗なバッジ……………………ああ、堪忍。見惚れてて渡すん忘れてた……」

 

「これが六つ目のバッジか」

 

「あとこれ、この技マシン。うちからの贈り物やさかい、大事につこおてな」

 

「えっと、これは?」

 

「あー、どないしよ? その技マシンやけど、どんな技か忘れてん。堪忍してな?」

 

「あ、はーい……」

 

「うちのファッションちょっと不思議やろ? ポケモンになりとうて自分でデザインしてるんよ。でもね、ポケモンと気持ちが重なりあうのってポケモン勝負で追い込まれた時なんよ。あれっていったいなんやろね……あっ、ええっ? ううん、なんでもないんよ」

 

「バトルで負けたくないって気持ちが一つになるからだと思いますけど……それでは」

 

………

……

 

「ツカっちゃん!」

 

「ん? おお、サナとトロバ」

 

「おー! フェアリーバッジ、きらきらして可愛い♪ あのね、ボール工場を見学するんだけどツカサもおいでよ♪」

 

「ボールに興味あります! 言い換えれば興味津々です!!」

 

「あ、ニンフィア先輩こいつボールに興味あるとか言い出しましたよ。やっぱ好きなんすねぇ」

 

サナとトロバが走り去る背を見ながらそんな事を呟いていた。

 

 

少し気になりボール工場見学の前に、昨日のピカチュウの様子を見にポケモンセンターへ向かった。

 

「だけど何があったらあんな酷い怪我を……うおっ!?」

 

「〜!!」

 

「……えっ、何が起きたの? どうして俺に金髪の幼女が抱きついてるの? 妹が欲しかった俺の願望が現実になったの?」

 

ポケモンセンターに入り受け付けに向かう途中、いきなり横から幼女が抱きついてきてパニックになっている。

 

 

「ああ、よかった!!」

 

「まだ街におられてよかった。昨日のお礼とこれを返しに来たんですが、もう出てしまったと聞きまして」

 

昨日の両親が高そうな菓子折りとピカチュウのポケドールを持って待っており、ツカサに話しかけながら近づいてきた。

 

 

「あなた方は昨日の……って事はこの子はあの時の?」

 

「はい。それと我が家のピカチュウ、まだ眠っていましたが穏やかな表情でした」

 

「これを是非受け取ってください。ジョーイさんに聞きましたが所属していない先生自身には報酬はない、と。今朝ミアレで購入したチョコの詰め合わせになってしまうのですが……」

 

「わぁ、チョコ大好きなんで嬉しいです。それとそのポケドールはお嬢さんにプレゼントしますよ。たまたま鞄に入っていた物ですし、俺には必要ないですから」

 

まだ脚に抱きついている幼女の頭を無意識に優しく撫で、両親にそう告げている。

 

幼女は撫でられるのが嬉しいのか、頭を更に脚に押し付けもっと撫でろと行動で要求していた。

 

 

「本当に何から何まで……ありがとうございました」

 

「ほら、レイナ。先生もお忙しいんだから離れなさい」

 

「やっ! まだピカちゃんを助けてくれたお兄ちゃんといるの!」

 

「あはは……」

 

そのまましばらく幼女に抱きつかれ頭を撫でながら世間話をし、心地好くなりウトウトし始めたのを見計らって別れを告げボール工場へ向かっていった。

 

 

 

急いで向かうと工場前にサナとトロバが待っていて、慌てて駆け寄っていく。

 

「え? 工場に入れてもらえない?」

 

「あたしもう一度お話ししてくる!」

 

「ちょっと! サナさん!」

 

「また置いてかれて寂しい……さっきの幼女のレイナちゃんの温もりを知ってしまっただけに余計に」

 

 

独り言を呟いていると何か気配を感じ横を見るといつのまにかセレナがおり、ビクッとして後ずさっていた。

 

「あれれ? 今サナぴょんとトロバっちが走っていかなかった?」

 

「よかった、ティエルノもいた」

 

「待ち合わせをしたのにどうしたっていうの……?」

 

「分からんけど中に入れてもらえないんだって」

 

 

そう簡単に説明しているとサナとトロバが工場の方からフレア団の下っ端に追われ、ツカサ達の脇を通って逃げていった。

 

「フレア団……? 何か起きているのかも。今の内に中を調べましょ」

 

「ぼくは二人を追いかけるからねえ! 工場は二人に任せたよお!」

 

「何かあると危ないしセレナは後からな。だから俺が先に……イクゾ!」

 

やたらかっこいいBGMが流れたような気になりながら先行して工場内に突入し、フレア団の下っ端を見つけ戦おうとボールに手をかけたが……

 

「ここはアタシが引き受ける! ツカサは先に行って!」

 

「やだ、かっこいい……わかった、任せるよ」

そう言うとフレア団の下っ端の横をスッと通り、先へと歩を進めていた。

 

「なっ、グラエナ!」

 

「アタシが相手って言ったでしょ!」

 

奥へ進ませないようツカサへ仕掛けようとしたグラエナの前には、セレナのアブソルが立ちはだかっていた。

 

 

そしてツカサはコンベアで流されたり、フレア団を倒したりしながら奥へと進んでいく。

 

「マサラに居た頃はオーキド博士が何度もトレーナーよりポケモンを研究して博士にならないかって言ってきてたなぁ……何でコンベアに乗りながらこんな事を思い出してるんだろう」

降りれそうな場所まで長く、ぼんやりしながら運ばれている。

 

 

オーキド研究所の面々だけはドクターでブリーダーでもあるのを知っており、併設された施設で体調管理や世話をよくしていた。

 

旅の途中で共に大変な目に遭ってヒカリが怯えてしまい、眠気と必死に戦いながら捕まえたダークライ。

 

遺伝子の楔で二体のポケモンを一つにするという話を聞いたメイがツカサに捕まえさせたキュレム。

 

その二体以外にも研究所の併設された施設でのんびり過ごしているが、ツカサやオーキド博士以外は伝説や幻と呼ばれる存在を恐れて近づこうとすらしない。

 

 

そんな風に闇医者の所と研究所を一日置きに行き来する生活が遊んでいるようにも見えていたらしく、一部マサラの住人からは穀潰し扱いをされていたのをツカサは知らなかった。

 

 

最後の部屋には社長らしき人の姿と幹部のようなフレア団の女性が一人、発電所で戦った科学者のような女性二人が何かを話している。

 

「あんたさフレア団の為に働きなさい。そうすればいちいちあたし達がボールを運ばなくて済むもの」

 

「それともお金を払ってフレア団のメンバーになるとか。五百万円くらい楽勝でしょ?」

 

「君達フレア団は何を考えているのだ! モンスターボール独占なんか私は許さないぞ!」

 

「いいじゃない、そんな人放っておけば」

 

「そうね。他の人が使えないよう爆破しちゃいましょう」

 

「……はぁ」

話を聞いていたツカサはやはりフレア団は屑の集まりだと思い、今後も全力で叩き潰す事を決めていた。

 

 

溜め息で気がついたらしく、フレア団の三人は振り向きツカサを見ている。

 

「あらあら侵入者」

 

「侵入者はお前達だろ! おお! 君! 助けてくれ!」

 

「あらあら社長さん必死ね。仕方ない、あたしが希望をぷちっと潰しちゃう。昨日のピカチュウみたいにね」

 

「ああ……そっか。もう謝っても許さねーぞ、この屑野郎!!」

 

 

幹部の女の発言で全てが繋がりブチギレ状態になったツカサは一方的な蹂躙を行い、力の差を思い知らせていた。

 

「なっ、何よ! 冴えない社長の為に真剣にならないでよ!」

強気に見えるがツカサの圧倒的な強さと、ゴミを見るような目に腰が引けている。

 

「ヤダー! 幹部なのにダサーい! いいわよ! 後片付けはあたし達科学者コンビで」

 

「2VS1でやっつけましょ。勝てる確率はあげないと」

 

 

そう言って二人はボールを手にダブルバトルを挑もうとするが、ツカサの余裕の笑みを不思議そうに見ている。

 

「そいつはどうかな?」

 

「それはどうかしら? 遅くなってごめんなさい」

 

「セレナ、ナイスタイミング。これで2VS2だな」

そのままセレナが隣に並び、ボールを手にフレア団と対峙する形を取ってあた。

 

 

「まだいたの?」

 

「関係ないけどね、子供が一人でも二人でも。あたし達のコンビネーションなら更に勝利の確率アップ」

 

「科学者っぽいけど計算苦手なの? ツカサ、一緒に戦おう」

 

「ああ、その為に待ってたんだ」

 

「いくよ」

以心伝心で同じタイミングでボールを手にし、同じ投げ方でボールを投げてポケモンを出していた。

 

 

デュークに上り詰める程でかつての強さを取り戻し今も成長しているツカサと、日々強くなっていくセレナの前ではフレア団も鎧袖一触だった。

 

「ヤダー! あたし達ダサいわね」

 

「確率はあくまでも確率。絶対ではないのよね……」

 

「やっぱ大した事ないな」

 

「フレア団が弱いんじゃなくて私達が強いの……?」

セレナは隣の存在がズバ抜けすぎている為か、自分が強くなっている実感が持てないらしい。

 

 

「ヤダー! 残念、敗れちゃった」

 

「ああもう! モンスターボールもスーパーボールもハイパーボールも奪ったし、ここは引き上げます!」

 

「逃がすと思ってんの?」

ツカサは拳をバキバキ鳴らしながら逃がさないと鋭い目で睨んでいる。

 

「科学者!」

 

「煙幕発射!」

 

 

その言葉と共に視界が真っ白になり、走ってくる音が聞こえていた。

 

「くっ……! セレナ、俺から離れるなよ!」

 

「え? きゃっ!」

 

真っ白な視界で自身やセレナに対する不意打ちや抵抗を恐れ、咄嗟にセレナの腕を掴んで引き寄せている。

 

走り去る音が完全に消え、視界も戻るまでそのまま動かないで警戒していた。

 

 

「……何とかなったか」

 

「つ、ツカサ?」

 

「あ、ごめん」

赤くなっているセレナに謝りながら離れている。

 

「……」

頬に手をあて恥ずかしそうにしている姿は、年相応の女の子そのものだった。

 

 

「……んんっ! 君達のお陰で助かったよ! 君達は若いのに素晴らしいポケモントレーナーだ! よーし! お礼をしよう。マスターボールとでかいきんのたま、どちらか好きな方を選ぶのだ」

 

「つ、ツカサから選んでいいわよ?」

 

「え? あー……じゃあマスターボールで」

使い勝手のいい非売品を選択していた。

 

「お礼のお礼だ。選ばなかった方もあげよう! もちろん君にもね!」

 

「あっ、ありがとうございます……でもいいんですか?」

 

「君達なら正しく使える! そんな気がするからね、あんなフレア団と違って。言っておくがでかいきんのたまの使い方は私も知らないよ。それにしても……フレア団め、ボールを独占して何を企んでいるのだ?」

 

「モンスターボールを奪ったという事はポケモンを集めて何かを企んでいるって事じゃない? 聞いたけど発電所もフレア団の仕業なんでしょ? ポケモン……電気……目的は何?」

 

「うーん、嫌な予感がする……」

様々な組織と戦ってきたツカサの経験が悪い方で働いている。

 

 

そのままセレナと共に工場を出ようとすると外に居た三人が入ってきていた。

 

「ねえねえ今更だけど見学しても大丈夫?」

 

「ううん……フレア団のせいで……それどころじゃないの」

 

「フレア団? 聞いたことあるかも……」

 

「もしかしてですが、さっきの赤いスーツ……?」

 

「そうよトロバ、フレア団は…………」

 

「みんなのモンスターボールを力ずくで奪ったの……?」

 

「……なんと。関わり合いにならない方がよさそうな連中ですね」

 

「そうだねトロバっち。フレア団……酷いんだねえ。どうしようかなあ、タウンマップだと次に行くのはフウジョタウンかなあ」

 

そんな話をし終えると、トロバとティエルノは次の目的地についての話をしながら去っていった。

 

「ツカっちゃんとセレナは凄いんだね! そんな悪い人よりは遥かに強いんだもん! でも無理しちゃダメだからね。じゃーねー♪」

 

フレア団の目的について考え皆の話を黙って聞いていたツカサは、そんなサナの言葉に気がついて手を振って見送っていた。

 

「ありがとう、ツカサのお陰でみんな無事だった。でもアナタに頼ってばかりでは旅の意味がなくなるよね……」

 

「セレナ……頼りきりにならなければいいんだよ。実際今回はセレナに助けられたから、工場も爆破されずに済んだんだし」

悩むセレナにそう声をかけ、一足先に工場から出ていった。

 

 

工場から出るとホログラムメールを受信、ボール工場が襲撃されたが解決したというニュースが届いていた。

 

「はぁ……グリーンさんの言っていた、俺が行く場所には必ず何かしらの悪の組織が活動してる説が信憑性を帯びてきて困るなぁ」

 

「あっ、みんな居たわよ!」

 

「ドクター!」

次の町にさっさと行こうと連絡通路へ向かっていると、センターのスタッフ達がこちらに向かってくる姿が見えた。

 

 

「うわぁ、物凄く嫌な予感がするぞ……」

 

 

そのまま皆に懇願されて一度ポケモンセンターに戻ると来賓用の部屋に通され、そのセンターの責任者やスタッフが座るように促してくる。

 

高そうなカップに入ったコーヒーにクッキーといった物まで用意されているが、手をつけず話を切り出してくるのを待っていた。

 

「……昨日の一件でこのクノエシティにもポケモンドクターを常駐させる事が決まりました」

 

「まぁ、近いと行ってもミアレからは徒歩で二時間以上かかりますし当然かと思います」

寧ろ何で今までいなかったのかを問い詰めたい気持ちで一杯だった。

 

「そこでお願いがあります」

 

「……聞ける範囲でなら」

 

「ドクターの赴任まで二週間かかると言われまして……その期間だけドクターとして、当ポケモンセンターに居ていただけませんか?」

 

「……はぁ。基本自由にさせてもらえて、電話で呼び出した時だけ行くという条件が飲めるのなら構いませんが」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「はい。後は期間中の食堂を無料で利用させてもらえれば」

 

「それはこれから用意するセンターのスタッフ証を食堂で見せれば大丈夫です。写真もトレーナーカードと同じものを使わせてもらいますので」

嬉々とした表情で告げていた。

 

周囲に待機していた者達が白衣、スタッフ証が入った吊り下げストラップ、聴診器といった必要になる物を集めに出ていく姿が見える。

 

 

「あ、それと今日の部屋の鍵を借りたいんですが」

 

「二週間の滞在用に部屋も用意させますのでご安心ください。……ああ、よかった」

 

「あーあ……」

旅が二週間も中断されて憂鬱な気持ちでいっぱいだった。

 

 

ドクターとブリーダーの実技や筆記はしっかり勉強していれば子供でも仮免許の合格は出来るもので、問題はどちらもその後の現地研修だった。

 

ドクターは機械でどうにか出来るレベルを越えたポケモンの手当てをする事が必然的に起こり、普段見慣れたポケモンの手術や酷い怪我に耐えられなくなり挫折する者が多い。

 

それにより合格者は多くても現地で篩にかけられ免許が貰える者は一握りしかおらず、更にその中で外科に進んでなる者は一人いるかいないかレベルでかなり貴重な存在。

 

 

「そう言えば、調べてみたら先生はブリーダーでもあるとか」

 

「まぁ、そうですね。必要だったのでドクターの資格と並行で勉強して取りましたよ」

かなりハードなはずの事も目的の為にがんばれていた。

 

ブリーダーは実技と筆記を合格し、現地研修でどんなポケモンの世話も嫌がらずに出来れば誰でも免許が貰えると一見楽に思える。

 

まず現地研修ではダストダスやベトベトン等の懐くまでは悪臭が酷いものから世話をさせられ、どちらも愛を持って世話をして悪臭が放たれなくなったら合格で免許が発行される。

 

それを知って即諦める者が多く、本当にポケモンへの愛が試される資格でもあった。

 

独立するにも現地研修先の責任者から許可が出てようやくであり、開業資金等の問題からそのまま研修先に留まる者が多い。

 

 

「その、現地ではどのポケモンを?」

 

「最初はベトベトン、ダストダス、クサイハナでした。三人で行ったんですけど、二人がすぐやめちゃって一人で三体を相手に世話をさせられましたよ。それからしばらく嗅覚がおかしくなったんですよねぇ……」

無茶な事を言われ、どうしようか悩んだが言われた通りに世話をしたらしい。

 

 

「それは場所が悪かったのでは? そんなまだ免許もない状態で三体も世話をさせるなんて……」

 

「冗談だったのに本当にやるなんて思わなかったと言われましたよ。お陰でブリーダーとしての太鼓判を押されて、これからもうちに居ないかって誘われましたし」

 

「若いのに凄いですね……」

 

責任者の女性は尊敬しているようだが、ただ単に従姉妹や妹分の少女に雇ってもらえないかと下心全開で本気を出した結果だから褒められたものではない。

 




師事した相手は法外な治療費を請求する凄腕の闇医者。
この闇医者は下の名前はクロオなのは確定的に明らか。


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幼女とお別れしてヒャッコクシティまで

あれから十日が経過し、マーシュ達やレイナの家族が毎日のようにポケモンセンターを訪れるようになっていた。

 

「みんなは併設された施設でのびのび過ごさせてるから、今はガブリアスとヌメルゴンを連れてクノエの林道を散歩する毎日」

 

「ガブ」

 

「ヌメルゴ〜ン」

 

大体の時間はクノエの林道で二体を育てながら散歩をしており、今はどちらもボールから出して歩いていた。

 

たったの七日で最終進化を遂げている事に、まだ二体がフカマルとヌメラだった時からセンターに滞在していたトレーナー達は驚いている。

 

 

「三日前にヌメルゴンに進化した日、ヌメヌメにされたのを今でも覚えてるわ。あれはヌメイラになって目が見えなくなった時の反動だったのかな」

 

「ヌメルゴン!」

 

「雨が降ってきたと思ったら進化が始まったんだよな。……今日はまだ抱きついちゃダメだからねー。散歩終わったらポケモンセンターで重傷だったポケモン達の経過を診ないといけないから」

 

「ヌメ……」

ハグをしようとした瞬間にそう言われてシュンとしていた。

 

「マーシュさん、めっちゃ嬉しそうにお前達見て笑ってたな。フェアリータイプが抜群だからなんだろうけど……」

 

 

それからしばらく散歩をしてポケモンセンターに戻り、ボールを預けてから白衣を着て助手になっている新人のタブンネと共に入院中のポケモンを診て回っている。

 

「ピカチュウはもうすっかり良くなったな」

 

「ピッカ、ピカチュウ!」

 

「だけどまだバトルはダメだからなー。今無理したらレイナちゃんがまた泣いちゃうし」

 

「ピ、ピカ!」

 

「タブンネ?」

 

「退院しても一ヶ月は大人しくして、一緒に遊ぶくらいにしとこうな」

 

「ピッカ!」

 

………

……

 

それから四日が経ち、新しいドクターに二週間の間にしていた事の引き継ぎを済ませていた。

 

部屋に戻り白衣やスタッフ証等をまとめ、付いてきていたタブンネに渡している。

 

荷物を持ち住み慣れた部屋から出て、併設施設にいた仲間達をボールに戻して出口に向かっていた。

 

「ガブリアスとヌメルゴンは預けたし……お別れは昨日の内に済ませたし、さっさと行こう」

忘れ物はないか確認してボールをホルダーにセットしていた。

 

仲良くなったスタッフ達に片手を上げる軽い挨拶ですれ違っていき、新任のドクターも他のスタッフ達のようにポケモンセンターから出ていくツカサの背に向かって頭を下げて見送っている。

 

 

 

外は珍しく晴れており、伸びをしながら十五番道路への連絡通路に足を向けていた。

 

「ピッカ! ピカチュ! ……ピカピ!」

 

「おお、元気に走り回ってるな。レイナちゃんには出来ないからって俺の身体を登って肩に乗るとは……傷痕が何個もハートマークみたいになってるのはよかったのかもしれないな。ピカチュウも女の子だし」

 

少し離れた広場で遊んでいたピカチュウがツカサの匂いに気がついて走り寄り、そのまま身体を登って肩に乗りほっぺをすりすりと擦り付けている。

 

 

「先生、もう出発ですか?」

 

「お兄ちゃん……」

 

「はい、長居してしまいましたから。レイナちゃん、またいつか会おうね」

 

「……お兄ちゃーん!」

 

しゃがんで視線を合わせて言うツカサに我慢ができず、抱きつくとわんわん泣き出してしまった。

 

そんなちょっと感動的な別れをしているが、勝手にボールから出たニンフィアは肩に乗りほっぺすりすりをするピカチュウを見て睨み付けている。

 

「フィア! フィー……ア!」

 

「ピッカ! ピカ……ピカチュウ!」

 

触覚を巻き付けて肩から引き摺り下ろし、言い争いを始めていた。

 

 

「……お前達は何をやってるんだよ」

 

「……ピカちゃん、ケンカはめっ!」

 

 

そんなグダグダな別れをしてから連絡通路を抜け、ブラン通りへと足を踏み入れていた。

 

ポケモンレンジャーが落ち葉の下に潜んでおり、驚きながらも戦い倒しながら進んでいく。

 

他にもフラダリからのホロメールを受信したりしながら先を目指している。

 

「ミアレからあぶれた若者がたむろしているから問題になってるって……マップに書かれるとか相当な事だぞこれ。さっきのフラダリさんのメールはちょっと選民思想的なのが……」

 

 

道中の荒れ果てホテルに立ち寄ってトレーナーと戦いながら見て回り、連絡通路をスルーして進んでみるといつのまにか十六番道路であるトリスト通りに出ていた。

 

少し気になりミアレに繋がっているのかを確認するのに戻らず進み始めている。

 

「結構距離がありそうだな……この先は今度行く事にして今は次の町に進もう」

思っていたより距離があるのに気がつき、再びフウジョタウンへと向かい始めた。

 

 

 

そのまま時間をかけてフウジョタウンに向かうと、プラターヌとデクシオが後から来ていたらしく話しかけられていた。

 

「雪が降って……うん?」

 

「やー、ツカサ。ボクも若い頃は色んな地方を巡り様々なポケモンと出会いつつ、土地ごとの味わいに気づいて食べ歩きも楽しんじゃってね。結果カロス各地のカフェに詳しくなったりしてさ」

 

「博士……」

 

「もう……デクシオ君、話は繋がっているんだよ。フラダリさんから伝説のポケモンの事を聞いているかい?」

 

「ええ、一応。確か与える者、奪う者が伝説だとメールで」

 

「カロスの伝説ポケモン、名前は……ゼルネアス!! かのポケモンを見た者はあまりのパワーに圧倒されこう伝えるのみだった。まるでXという文字のようなポケモン……と。なんでもエネルギーを操れるポケモンらしいね。生命エネルギーを与え他のポケモンや植物に活力をみなぎらせるってさ」

 

「へぇ……」

 

「それほどの凄いポケモンが今はどこにいるのでしょうか?」

 

「カロスの伝説ポケモンは活動エネルギーがなくなると人知れず眠るらしくて、居場所のヒントもわかってないね」

 

「ツカサ君達が見つけたら凄いですよね。ぼくも伝説のポケモンの事を調べてみようかな」

 

「 君達が見つけたら痛快だねぇ。それじゃあ、ボク達はこれで!」

そう話すと二人はそのまま歩き去っていった。

 

「あ、はーい……」

 

 

直後にトロバが来て博士を見なかったか聞かれ、もう行ったと告げるとガッカリしていた。

 

そのまま別れると一度休憩にポケモンセンターに向かい、おやつを皆で食べると町の散策に戻っている。

 

「『ここはフウジョタウン 綿毛舞い飛ぶ風の町』かー」

 

「いらっしゃいませ……モーモーミルク、一本五百円。旅のお供にいかが……?」

 

「モーモーミルク……ん?」

 

「あ、あの……?」

 

ツカサの目線はモーモーミルクを売っているオカルトマニアの豊満なバストに釘付けになり、買うつもりがなかったモーモーミルクを購入する事を決めていた。

 

 

「一ダースください」

 

「ありがとうございます……モーモーミルク十二本です。また今度買ってください……」

売れたからか嬉しそうに十二本用意して渡し、上目遣いでお釣りを渡すのに手を握りながらそう告げていた。

 

「はい!」

ツカサは年上からのスキンシップには弱いのである。

 

 

 

町の中にある大きな風車を見て、他の人達から聞いたフロストケイブへと向かっていった。

 

吹雪く中を歩いていくとエリートトレーナーとマンムーが居り、豪雪地帯の十七番道路を行くにはそのマンムーの力が必要だという事がわかった。

 

だがマンムーはフロストケイブを気にしており、その場から離れようとはせず仕方がないと様子を見に行く事にしていた。

 

 

「うぅ、ダウン買っておけばよかった……滑るー」

寒さに震えながら氷の上を滑って進んでいる。

 

「そこの貴方! 私と一緒にビバークしてポケモンの体力を回復させましょ!」

 

「……はい!」

同年代くらいのエリートトレーナーの女性に声をかけられ、嬉々として共にビバークをする事にしていた。

 

 

そして楽しい時間を過ごし、惜しみながらも別れを告げて先へと進んでいく。

 

「フレア団……?」

 

「ツカサさん、どうしたんですか?」

 

「トロバ、あれ」

 

 

シッと言いながら先を指差すとフレア団がユキノオーの前で何かをしている姿が見える。

 

ユキノオーが何かされる度に降ってくる雪の強さが増し、それに機嫌をよくしたフレア団の面々が捕まえようとボールの準備を始めていた。

 

「……不味い! あいつら!」

 

「行きましょう!」

 

 

トロバと共に飛び出し、三人のフレア団に大声で呼び掛けていた。

 

「おい!」

 

「モンスターボール強盗! ここで何してるの!?」

トロバもツカサがいる安心感からか勇敢に立ち向かっている。

 

「! ……なにって?」

 

「ポケモンを捕まえるの! 特にこのユキノオー、強くてエネルギーを秘めてるわ」

 

「エネルギー?」

 

「あのね、ぼうや。お金もポケモンもエネルギーもたくさん持っている人が勝つの。持ってない人は何もせずに欲しい欲しい言ってるだけなの」

 

 

「……どうしてフレア団はポケモンやエネルギー、それに金を集めてるんだ?」

 

「言い換えればどうしてフレア団は独占したがるんですか?」

 

「もちろんあたし達フレア団だけが生き残る為。だってどうでもいい人を助ける必要ないでしょ。……質問好きって嫌いじゃないけど、いつまでも相手出来ないのよね」

 

 

「ツカサさん、フレア団だけ生き残るって……この人達無茶苦茶です……」

 

「だなぁ……とりあえず向こうはやる気みたいだし。一人ずつ片付けよう」

 

「はい!」

 

そんな話をして振り向くとダサいフレア団のポーズを取り、ツカサとトロバに下っ端が襲いかかってきた。

 

 

そのままツカサはさっさと片付けたがトロバはまだ戦っており、今のうちに控えている科学者を倒そうと目を向けた。

 

すると科学者はユキノオーにボールを投げようとしており、ツカサは咄嗟に雪玉を作りボールを持った手にぶち当てて落とし、そのままユキノオーの前に立って自分の背にかばいながら睨み付けている。

 

「……あなた、強いのね。どれだけエネルギー秘めてるの?」

そう言いながらボールを投げヘルガーを出してきた。

 

「ニンフィア、容赦せずにムーンフォース!」

 

ヘルガーは動こうとしたがニンフィアのムーンフォースが直撃して吹き飛び、雪に埋もれてそのままダウンしている。

 

 

「ッ! 強いではなく強すぎる! あなたはイレギュラーな存在?」

 

「知らないよ、そんなの。よくやった、ニンフィア」

 

「でも負けたらつまんないよ! もう帰る!」

 

トロバも何とか勝っていたらしく、下手に抵抗されても困ると下っ端を引き連れて去って行くのをツカサは見送っていた。

 

 

「トロバ」

 

「ツカサさんはフレア団と戦うの怖くないの? ぼくは怖いし嫌です……」

 

「だけどトロバも一緒に戦ったからユキノオーを守れたんだよ」

 

「ぼくは控えめでいいのですが、それだけではダメなんですね……でもこれでマンムーさんも安心してくれますよね、よかった……!」

 

「ああ、きっと安心してるはず。それじゃあ、俺はしばらく彷徨いてから帰るから」

 

「はい! ぼくは先に戻ってますね!」

 

 

その場で別れトロバを見送ると、ユキノオーの容態を見ながら怪我をしている場所の手当てをし始めた。

 

いいキズぐすり等の使わないが余っている物を惜しみ無く使い、手当てを終えるとスッとユキノオーが何かを差し出してきた。

 

「ゆひょお!」

 

「これは……メガストーン!?」

 

「ゆきゅ!!」

 

「つ、冷たいけどハグもありがとう」

軽く抱き締められ、背中をソッと押してもう行くように促されていた。

 

………

……

 

外に出ると吹雪は治まっていたが夜になっており、寒さに空腹とポケモンセンターに急ぎボールを預けてから部屋を借りていた。

 

「……フゥー↑ 気持ちいい〜! やっぱり……ポケモンセンターのシャワーを……最高やな! あ〜、生き返るわー」

 

 

シャワーで暖まりさっぱりした後は食堂へ向かい、暖かいクリームシチューとバケットにホットコーヒーを注文して席に座って食べている。

 

「しばらくは自重しないとなぁ……」

バケットをシチューにつけながら食べ、スマホを使い久々に公式スレを見ていた。

 

 

ポケモンドクター総合スレを見ていると新しくドクターになった者のデータが公開される中、二週間で何件かの手術をした事が原因か過去のツカサのデータも掘り起こされて載っている。

 

当時は若すぎて信用出来ないという理由で相手にすらされていなかった。

 

だが二週間前に公式に登録され公開された手術の動画で安楽死を視野に入れるべきピカチュウを全く新しい術式で救った事が衝撃を与え、賛否両論の激しい応酬がスレでは続いている。

 

 

「師匠の技術には程遠いんだよなぁ……停滞せず最新の知識と技術を求めるとか、その為に俺を使ってたし」

スプーンでシチューを飲みながら数ヵ月前までの事を思い出し、げっそりしながら呟いていた。

 

表に出れない故にツカサを使って様々なデータを毎月持ってこさせ、最新の技術と過去の技術を組み合わせて独自の全く新しい手法を産み出す程。

 

 

食べ終えて部屋に戻ると歯磨きをし、パジャマに着替えてすぐに眠って翌日の十七番道路に備えていた。

 

 

そして翌日……

 

「うわぁ……十七番道路はマンムーロードと言われるだけはあるわ。ちょっと病んでる感じのジョーイさんに上着を貰わなかったらやばかったかもしれない」

 

 

新雪に足をとられながらも進んでいくと、昨日のマンムーが積もりに積もった雪の前で待っていた。

 

「ライドオン! ……自分から積もった雪に入っていくのか」

マンムーがしゃがみ背に跨がるように見てくるので乗っている。

 

するとズンズン歩き始め、積もった雪の中を迷いなく突っ込んでいく。

 

 

そのまま連絡通路手前までマンムーが乗せてくれたが、寒さでガチガチになり何とか降りるとマンムーに礼を言って暖かい通路へとゆっくり向かっていった。

 

「あー、寒かった……マンムーの暖かさだけじゃ耐えられなかった。そして連絡通路直前の吹雪いている所でのホロメールである」

 

『ツカサ、次はヒャッコクのジム前で勝負を挑むわ。準備しておいてよね』

 

「二週間ぶりに見たけど、まさかあの腋を出した状態でここを越えたのか? だとしたらカロスっ子はどうなってんだ……」

ブルブル震えながら連絡通路を通りヒャッコクシティに足を踏み入れた。

 

 

早くポケモンセンターに行きたいと必死に足を進めていると……

 

「そこのあなた!」

 

「ファッ!?」

 

「デクシオの代わりにあたくしが伝えに来ましたわ。ここヒャッコクシティで伝説ポケモンについて知っている人がいるそうですわよ」

ビシッ!と指を差してドヤ顔で言うとそのまま去っていった。

 

「え、それだけ……?」

 

「そうでしたわ! よければこれを使いなさいな!」

 

「リピートボールってまた行っちゃうのかよ。……やっぱあの喋り方はドキドキしちゃうなぁ」

戻ってきたと思ったらボールを手渡され、そのまま再び行ってしまった。

 

「『ヒャッコクシティ 星巡る時告げの街』。これ誰が考えてるのかは知らないけど、やたらかっこいい。でも今はシャワーを浴びたい」

そのままポケモンセンターに駆け込んでいった。

 

 

まだ明るいが部屋を借りてシャワーを浴び、腰にタオルを巻いて部屋に戻り替えの服を着ている。

 

「フウジョのジョーイさんからルカリオキッド仕様の仮面、それと今の俺の体型から作った衣装まで貰っちゃって……怖い。サイズ測らせてないし、俺だって細かいサイズまでは知らないのに」

急に寒気がして周囲を見回していた。

 

 

「……そろそろセレナに会いに行かないと、まーたセレナが怖い目になるかもしれないし」

部屋はこのまま借りる事に決め、鍵をかけるとポケモンセンターから出ていく。

 

 

時間があればジムにも挑もうと万全の状態でジムに向かった。

 

「ここは何のジムなんだろう」

 

「ツカサ! ミアレシティのカフェでライバル宣言したんですもの、強くなった所を見せないとね」

 

 

野次馬が多々出来たが気にせず二人は距離を取り、互いにボールを投げポケモンが飛び出した。

 

「ファイアロー、かえ……」

 

「ニャオニクス、ねこだましよ!」

 

ツカサの指示よりも早いセレナの指示でニャオニクスが動き、勢い余ってファイアローの顔を挟むようにしてひっぱたいてしまった。

 

ファイアローがかえんほうしゃの動作に入ろうとした所だったようで、ニャオニクスは両手をやけどしている。

 

「ニャオッ!」

 

「キュイィィッ!!」

 

 

「嘘、ニャオニクス!?」

 

「ファイアロー、ブレイブバードだ!」

 

両手をふーふーするニャオニクスとまさかのやけどに驚くセレナに、まだまだ甘いなーと思いながらも大技を繰り出すよう指示を出している。

 

 

久々の先発でテンションも上がり、ツカサの指示を聞いてニャオニクスを両鉤爪で掴むと宙返りの要領で思いきり空に向かって投げ飛ばした。

 

そしてサイコキネシスで体勢を整え浮こうとしたニャオニクスを真下から奇襲。

 

それに驚きバランスを崩して落ちていくのを追いかけ、いつかの時とは違いニャオニクスと共に地面に思い切り突っ込んでいった。

 

野次馬はアグレッシブなファイアローの行動に驚き、直後の二体が地に叩きつけられた衝撃で起こった風で一時的に目が開けられなくなっている。

 

 

「く……ごめんね、ニャオニクス。シャワーズ、お願い!」

 

「見え……お疲れ様、ファイアロー。ラプラス、出番だ!」

 

セレナはスカートを抑えながらニャオニクスをボールに戻してシャワーズを出し、ツカサはセレナの後ろのミニスカートの学生を気にしながらファイアローを戻してラプラスを出していた。

 

 

「ラプラス、10まんボルト!」

 

「えっ!? シャ、シャワーズ、オーロラビーム!」

 

ラプラスの口から放たれた電撃がシャワーズを襲うもそれを耐え、オーロラビームで反撃するが何かした?みたいな顔で見ている。

 

 

「もう一度だ!」

 

「みず、こおりなのに何で10まんボルトが……あっ!」

 

先程の一撃で動きが鈍くなり避けようとしたシャワーズに電撃が直撃、そのままコテンと横に倒れピクピクしていた。

 

 

「うぅっ! がんばって、ブリガロン!」

 

「それならこっちはリザードンだ!」

 

二人のシャワーズとラプラスがボールに戻り、ブリガロンとリザードンが現れ野次馬達はテンションが上がっていた。

 

 

「リザードン、だいもんじ!」

 

「ブリガロン、避けて!」

 

ツカサの指示が出た瞬間リザードンは滑空してブリガロンに襲いかかり、慌てて腕で顔をかばったのを見て尻尾で思い切り空に打ち上げている。

 

ツカサのリザードンに対してトラウマが出来ているらしく、空中で絶望したような顔になり口を開いたリザードンを見て恐怖で身体が動かなくなっていた。

 

 

「セレナのブリガロン相手にはやたら厳しいんだよなぁ……」

 

「……ツカサのリザードン、あの首飾りが格好いいわ」

 

 

「グオォォッ!!」

 

「ッ!!」

 

そのまま大の字をした炎が放たれ、それが空中で動けないブリガロンに直撃。

 

その炎はブリガロンを容赦なく焼き尽くし、地に落ちる頃には既に気を失って白目を向いていた。

 

 

「やっぱり強い……これが最後、アブソル!」

 

「お疲れ様、リザードン。行こうぜ、ルカリオ!」

 

アブソルは現れると獲物を狙うように身構え、ルカリオもゲッコウガとの特訓で我が物とした攻防一体の構えで向き合っている。

 

 

「……これが俺達の絆の力。ルカリオ、メガシンカ!!」

 

「くぁんっ!」

 

ツカサがキーストーンに触れるとメガリングから激しい青い光が放たれ、それがルカリオが放つ金の光と混ざり合った。

 

 

「メガルカリオ!!」

 

「クォンッ!!」

 

そして混ざり合い白くなった光の繭にルカリオが包まれ、激しい閃光が放たれるとその身をメガルカリオへと変えていた。

 

 

カロスチャンピオンとコルニ以外でメガシンカを使う者は公には居らず、更にポケモンとの強固な絆がなければ出来ないメガシンカ。

 

それを当たり前のように行うツカサに野次馬達は驚愕と何者なのかと写真を撮ったり、ネットに繋いで探してみたりと相当な衝撃を与えている。

 

 

「メガルカリオ、インファイトで決めろ!」

 

「アブソル、でんこうせっか!」

 

二体同時に動き出し、アブソルの高速の一撃がメガルカリオの腹に突き刺さる。

 

だがメガルカリオはその一撃を受けても全く怯まず、守りを捨て全力の脚でアブソルを蹴り上げていた。

 

練り上げた波導を脚に集中させてアブソルを追って跳び上がり、そのまま空中で拳による高速のラッシュを繰り出している。

 

そしてトドメに高めた波導を内包した脚でアブソルを地面に叩き落としている。

 

 

「アブソル! ……ありがとう、お疲れ様」

 

「お疲れ様、ルカリオ」

 

セレナはアブソルに駆け寄り礼を言いながらボールに戻し、ツカサは労いをしながら姿が戻ったルカリオをボールに戻している。

 

 

「やっぱりアナタの事をもっと深く知りたい……! どうしてそんなに強いの!?」

 

「愛……かなぁ」

 

「アタシのポケモン達も逞しくなっているのに……ツカサ達はいつも先を行っているのね。ほら、ツカサのポケモン元気にしてあげる」

 

「サンキュー、セレナ様!」

 

「うふふ……ツカサとポケモン達ならジムリーダーに勝てるよ。じゃ、ファイト!」

 

「可愛い」

ぐっと拳を握って応援するセレナにそう呟き、ジムの中に入っていった。

 

 

 



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フラダリラボでの攻防

「床を踏んだら宇宙的な何かが見える……凄いジムだな。仲間になってから頼りにしすぎてるしルカリオを休ませて、マンムーロードで自ら捕まりに来たユキカブリ連れてくるべきか」

入り口で悩みに悩み、やはりそうしようとジムから出てポケモンセンターに急いだ。

 

悩みすぎたからか野次馬もセレナも既に居らず、預けて戻ってくるのもスムーズに済んでいる。

 

 

「ユキカブリ、何で捕まりに来たのかは分からないけどよろしくね」

 

「ゆきゅ!」

 

「……そして安定の女の子なんだよなぁ。リザードンとルカリオ以外捕まえるの全員女の子とかどうなってるのこれ」

ポケモンの♀を虜にするフェロモンでも出ているのかもしれない。

 

迷路のようになったジムの中を歩きながら宇宙を眺め、ザ・スーラみたいだなぁと考えている。

 

ユキカブリとはトレーナーと戦いながら仲良くなっていき、がくしゅうそうちで先輩達の戦いを見てそれを我が物として成長していく。

 

「おおっ、進化か」

 

「ゆひょお!!」

 

「ユキノオー、これからよろしく」

 

「ゆきゅ!」

 

「ひんやりー」

ハグをされて冷たいが受け入れていた。

 

 

そのままジムリーダーの元にトレーナー達を倒しながら進んでいき、ようやく到着している。

 

「あ……よろしくお願いします」

 

「これは儀式。これまでを振り返りつつ、これからの道を決めるもの。そうポケモン勝負、ジムリーダーゴジカと。いざ始めるとしましょう」

そう言うとふわっと浮き上がり、ボールも謎の力で勝手にバトルフィールドに飛んでいく。

 

「ファイアロー、頼んだ!」

 

 

ゴジカのボールからはシンボラーが現れ、ファイアローは警戒しながら羽ばたき滞空している。

 

「……ファイアロー、ブレイブバード!」

 

「シンボラー」

 

名前を呼ばれたシンボラーはツカサの指示を読んでいたかのようにファイアローの攻撃を避けている。

 

 

「例えメガシンカが出来なくたって俺達は……ファイアロー!!」

 

「っ……シンボラー、避けなさい!」

 

 

「キュイィィィ!!」

 

ツカサの声を聞いたファイアローは力が漲り、シンボラーとゴジカが読んだ展開を覆す為に睨みつけ鳴き声を上げて自らを鼓舞していた。

 

そのまま翼を折り畳み高速戦闘へと移行し、シンボラーが避けようが関係なく縦横無尽に飛び回っている。

 

そして避けきれなくなりバランスを崩したシンボラーに全力で突っ込み、そのままスピードを緩めず共にフィールドに叩きつけられた。

 

 

「まだやれそうだけどお疲れ様。ラプラス、頼んだ!」

 

「ヤドキング、がんばりなさい」

 

シンボラーは強力な一撃で倒れてボールに戻され、ファイアローは立ち上がると羽ばたいて元気アピールをしていたがボールに戻している。

 

 

そして互いに次のポケモンを場に出し、指示を出すタイミングを窺っていた。

 

「ラプラス、10まんボルト!」

 

「ヤドキング、あくび」

 

ラプラスから放たれた10まんボルトがヤドキングに直撃するも平然としており、更に余裕の現れかあくびまでされてラプラスもそれを見て少し眠くなっている。

 

 

「ラプラス、もう一度だ!」

 

「ヤドキング!」

 

流石に二度目は耐えられず、ぷすぷす聞こえてきそうなくらい黒く焦げてダウンしていた。

 

そのままラプラスはうとうとし始め、ツカサは無理をさせずにボールに戻している。

 

 

「ラプラスもお疲れ様。行こうか、ゲッコウガ!」

 

「さぁ、ニャオニクス」

 

ゲッコウガは公式での久々の出番に気合いバッチリで現れ、ニャオニクスも自身が最後だからと気合いが入っていた。

 

つい先程セレナとのバトルで見た相手ではあるが、ゲッコウガはキリッとした目で油断なくニャオニクスを見ている。

 

 

「ゲッコウガ、ハイドロ……」

 

「ニャオニクス、ねこだまし」

 

毎度のお約束でツカサは指示を先に出され、指示を待っていたゲッコウガはニャオニクスのねこだましで怯んでいた。

 

 

「今度こそハイドロポンプ!」

 

「ニャオニクス、めいそうなさい……」

 

ゲッコウガが印を結ぶと激しい水流がニャオニクスに襲いかかり吹き飛ばすも、痛み等がないかのように平然とした状態でめいそうをしている。

 

 

「そのまま畳み掛けるんだ! みずしゅりけん!」

 

「ゲコ」

 

ツカサをチラッと見てコクリと頷くとフィールドを走り出し、作り出したみずしゅりけんを投げ始めた。

 

ニャオニクスは目を閉じながら一発、二発と避けていたがハイドロポンプで撒き散らされた水に足を捕られ転倒、その隙を逃さずゲッコウガが作り出した三つのみずしゅりけんが間髪入れずにニャオニクスに襲いかかった。

 

 

「勝った……か?」

 

「あなた達なら星すら動かし、進むべき道を作り出せそう」

目を閉じたままダウンしたニャオニクスをボールに戻しながらそう告げている。

 

 

「ありがとうございます。……ゲッコウガ、格好良かったぞ。みずしゅりけん、ルカリオと練習してたもんな」

 

「ゲコ……」

褒められて恥ずかしそうに舌で顔を隠していた。

 

 

「これは証。あなた達がこれまでに歩んだ道程を形にした物。そう、サイキックバッジ」

 

「これで七個目……」

受け取ったバッジを見て呟き、カロスリーグまで後少しだとドキドキしている。

 

「これは一つの力。そう、技マシンめいそう。……命を与える力の目覚め、響く哀しみの声……あなたが関わる未来」

 

「俺が関わる未来……? それってどういう」

 

「それは運命。……そしてこれは道標。あなた、入口に戻りますか?」

 

「えっと……はい」

 

「では……」

そう言うとゴジカはツカサに手をかざし……

 

 

 

「え? 嘘、マジか。いつのまにか出口の前にいる……」

光に包まれたと思ったらジムの出口に居り、驚きながらもジムを後にした。

 

 

中で結構迷っていたらしく外に出ると既に昼も過ぎており、飯を食べようと考えていたら誰かに声をかけられた。

 

「ツカサ、アナタならサイキックバッジを手に入れたんでしょ」

 

「おぉ、セレナ。そんなめっちゃ走ってきて……ちょい残念だけども」

揺れないあれに少し残念がっていた。

 

「……旅が終わったら毎日アナタに勝負を挑もうかな」

 

「毎日って。友達に噂されたら恥ずかしいし……」

 

「だってお隣さんだもの。別にアタシは噂されても構わないんだけど?」

 

「やだ男らしい……。俺が傷ついて終わるパターンだから嫌なんだよなぁ……六歳くらいまで仲良かった子、他の子にからかわれたら全力で否定しててトラウマがががが」

そんな事があって即疎遠になりレッドやグリーンにべったり、仲良し三人組の絆が強くなっていた。

 

「とにかく強くなるには強いトレーナーと戦うのが一番……なにかしら?」

周囲のホロキャスターを持つ者達全員にホロメールが届いている。

 

………

……

 

『ホロキャスターを持つポケモントレーナー達よ、心して聞いてほしい。これよりフレア団は最終兵器を復活させ、我々以外を消し去り美しい世界を取り戻す。何も生み出さない輩が明日を食い潰していく……このままでは世界は醜い争いで覆われてしまうでしょう。繰り返します! フレア団は最終兵器を使い世界を一新します! フレア団以外のみなさん、残念ですがさようなら』

 

 

「フラダリ……やっぱりあいつは……」

ホロメールを見て今までの嫌な予感が的中した事を悟り、今回も叩き潰しに動く事を決めていた。

 

「……フラダリさん……何を言ってるの? 世界を浄化するって……フレア団以外を消すって……ツカサ! フレア団のアジトを探しましょ! フラダリさんが居そうなのって……やっぱり出会った場所、ミアレシティなのかしら……?」

セレナは一人でぶつぶつ言い始め、本人に真意を聞く為にアジトを探そうと提案していた。

 

「わかった! ……ユキノオーすまん、またルカリオと変わってもらう。今回の件が終わったら、今度こそ一緒に冒険しような」

ユキノオーが入っているボールを撫でながら呟いている。

 

 

ポケモンセンターでルカリオとユキノオーを入れ換え、他の皆もジム戦の疲れを僅かでも癒してもらおうとジョーイさんにお願いして普段は使わない機械による回復をお願いしていた。

 

そして一時間程でポケモンセンターを出て、ミアレに向かおうとファイアローをボールから出している。

 

「肩をしっかり掴んでね、落ちたら怖いから」

 

 

ファイアローにしっかりと肩を掴んでもらい、そらをとぶでミアレまで飛び始めた。

 

一緒に飛べるのがかなり嬉しかったらしく、出来るだけ速くと頼んだら空気抵抗等を考えずにミアレまで全力で飛ばれてしまい……

 

「し、死ぬ……呼吸出来なくて死ぬかと思った……」

 

「きゅいぃ……」

 

ポケモンセンター前の路上で仰向けに倒れ、息を吸って吐いてを繰り返して生きている事を実感していた。

 

心配して声を掛けてくれる人に大丈夫と手だけで答え、深呼吸をしながら何とか立ち上がっている。

 

 

「ふぅ……フレア団、絶対に許さねぇ!」

怒りは全てフレア団にぶつける事にしたらしく、絶対に許さない宣言をしていた。

 

 

絶対にここに居るはずだと、ツカサは怒りを抑えずにフラダリカフェに乗り込んでいる。

 

「今日はお帰りください、さもないと……」

 

「本日はお引き取りください、さもないと……」

だが男女の店員が立ちはだかり中に入れないようにしていた。

 

「おう、さっさとかかってこいや。俺はカエンジシの♂みたいなおっさんを探してんだよ」

 

 

数十秒後

 

「そこの家具にひらけゴマって言えばいいんだな」

 

「ゆ、許してください……」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

最初からクライマックスでメガルカリオに蹂躙され、圧倒的な差に二人とも震えて隅に蹲っている。

 

 

家具の前で合言葉を唱えると家具がスライドして入り口が現れ、そのまま中に入っていく。

 

「ようこそ」

 

「フラダリ、あんた」

すると入ってすぐにフラダリが待ち構えていた。

 

「世界はやがて行き詰る……全ての命は救えない。選ばれた人のみが明日への切符を手に入れる。……君は私と共に来る選ばれるべき人間だ。優秀な君なら、私が言いたい事を理解しているのだろう?」

 

「お断りなんだよなぁ……俺はまだ若いから、あんた程世界や人に絶望とかしてないし」

 

「ならばバトルで君が負けたのなら無理矢理にでも連れていく。君のような存在は世界が滅んだ後に必要だ」

 

「その方が分かりやすくて好きだわ」

そう言うと互いにバッと距離を取りながらモンスターボールを投げていた。

 

 

 

「コジョフー」

 

「ルカリオ、メガシンカ! そしてはどうだん!」

 

ボールから出るのと同時にキーストーンに触れ、着地する頃にはメガルカリオになっていた。

 

そしてフラダリが指示を出す前に放たれたはどうだんがコジョフーを吹き飛ばし、その一撃だけでダウンさせている。

 

 

「……カエンジシ、油断しないよう」

 

「くっ……は、はどうだん!」

 

まさかの♂のカエンジシに笑いを堪えながらメガルカリオに指示を出していた。

 

 

「クォン!」

 

「……グッ!」

 

かえんほうしゃを放とうとした顔面にはどうだんが直撃、そのまま倒れて動かなくなっている。

 

 

「……ギャラドス、いかくして攻撃力を下げ戦いやすく立ち回るように」

 

「だろうな。だからラプラスに交代だ」

 

フラダリのギャラドスにいかくされる前にメガルカリオをボールに戻し、出番だとラプラスを出していた。

 

 

「ギャラドス、げき……」

 

「ラプラス、10まんボルト!」

 

現役トレーナーのツカサの指示は早く、ギャラドスが暴れようと身構えた所にラプラスが放った電撃が直撃していた。

 

二重の弱点の技を受けて黒焦げになり、生きてはいるが地面に落ちて白目を剥いてピクリともしなくなっている。

 

 

「聞いていた以上に強い……ヤミカラス」

 

「ガタガタいってるからニンフィア!」

ボールがガタガタ動き、出せと騒がしいからニンフィアを出していた。

 

 

「ニンフィア、マジカルシャイン!」

 

「速い、そして正確……!」

 

ニンフィアから強力な閃光が放たれ、そのままヤミカラスを呑み込み壁まで吹き飛ばして叩きつけている。

 

 

「……君達の心の奥底で燃える信念の炎! いいぞ」

 

「俺の勝ちだな」

互いにボールにポケモンを戻し、ツカサは勝利宣言をしていた。

 

「君は私を止めようとしている。私はラボの利益で人を……世界を救おうとした。しかし、無力だった……。世界は大きく、そこにいるのは私の努力だけでは救えない愚かな人々……だから奪う方にまわったのだ!」

 

「あんた、やる事が極端すぎるだろ……」

 

「私の想いを分かってもらおうとは思わない。ただ最終兵器を止めるなら私達のラボを巡りなさい。……私の後ろにあるエレベーターのキーは君がこれまでに出会った、フレア団の科学者の誰かが持っている」

 

「あいつらか……あのバイザー的なの剥いで素顔も見てやろうかな」

 

「……大それた理想が世界を苦しめるのだ、いつか君にも分かる時が来る」

そう言うとエレベーターに乗って立ち去ってしまった。

 

 

「あ、フラダリから奪えばよかったんじゃ……まぁ、今更言っても仕方ないか。何か厨二病を拗らせたみたいな事を言ってたな」

フラダリラボの中を回りながら呟いていた。

 

 

回転床にワープパネルを使って探し回っていると発電所で出会って科学者と遭遇している。

 

「アハハッ、発電所にいた面白いトレーナーじゃない!」

 

「鍵おいてけ。なあ、科学者だ! 科学者だろお前!? なあ科学者だろうお前」

ようやく見つけた科学者に目をギラギラさせながら詰め寄っていく。

 

「ひっ!? ぐ、グラエナ!」

 

 

数分後

 

「ほ、ほんと面白いトレーナーね。下っ端よりも役に立ちそう」

 

「鍵も持ってないみたいだし、さっさと通してくれよ」

 

「ふふ……ワープパネルについては教えないけど」

 

「総当たりに決まってるだろ。今までもそうだったし」

今まで戦ってきた悪の組織は大体これで壊滅するくらいの被害を受けていた。

 

 

何を思ったのかヒーローっぽくルカリオキッドの仮面と貰った衣装に着替えて歩き始め、それからすぐに後悔して元の服に着替えようと考えて光の漏れている部屋に入っていった。

 

しかしそこには発電所で出会った謎の仮面戦士二人がおり、気配に気がつき振り返った二人と目があっている。

 

「謎の仮面戦士達?」

 

「り、リオルキッドが成長して……ルカリオキッドですわ!」

 

「本物のヒーローだ……」

 

「違うな。私は真実と理想の使者、ルカリオマスク! 君達は……ここはカロスの戦士達に任せよう。私は奥へと向かう、さらばだ!」

 

ボロが出ないうちに颯爽と去っていき、目立たない通路で着替えようと部屋を出てダッシュで離れた。

 

「お、お待ちになってくださいまし!」

 

「さ、サインを!」

 

………

……

 

「カロスでの人気具合はおかしいだろ……もうキッドじゃないから、呼ばれるならルカリオ仮面とかのがいいなぁ。とっさにルカリオマスクって名乗ったのは失敗だった。あの在庫処分的にやたら送られてきた限定やら特別やら抽選限定やらのDVDとBD、今度母さんにまとめて送ってもらおう」

恥ずかしいからと一度も観ておらず、どんな作品になっているか知らないままだった。

 

 

通路で着替え終えて科学者を探して歩いていると、また光が漏れている部屋が見えて中に入っていった。

 

「あーあ、マジでモテたいわ。ホウエン時代は興味なかった、シンオウ時代は少し興味あった。イッシュ時代はフウロさんを口説いていい感じになってたのに、メイちゃんが俺の足をグリグリしながら腕に抱きついてきて台無しになった……まぁ、フウロさんとはメールしてるからいいけど」

独り言を呟きながら入ると奥に科学者が二人いるのが確認でき、向こうはまだツカサに気がついていなかった。

 

 

「あら?」

 

「アラ?」

 

「どこかで見た顔」

 

「誰だったっけ?」

 

「わかんないけど」

 

「フレア団じゃないしやっつけようよ」

 

「うん、そうしよ」

 

「バイザーがゴツくてあまり可愛くないし、こいつら腹立つわぁ……」

 

 

そのまま二人を相手にバトルをしたが、手も足も出させず容赦なく倒していた。

 

「つよーい! ポケモンと心をあわせ戦うポケモントレーナー……仕方ありませんね、説明いたしましょう」

 

「発電所から得た電気を使い最終兵器を起動する準備を終えています。ですがそれだけでは使い物になりません。お分かりでしょうか? 最終兵器の為にポケモンから吸収したエネルギーが必要なのです。そう! 十番道路の列石はポケモンのエネルギーを奪い最終兵器へ送り込むモノです」

 

「十番道路に並んだ石は言わばポケモンのお墓。三千年前戦争を終わらせたという最終兵器は、多くのポケモンの命を奪う代物です。ですが私達フレア団の願いを成就させる為、尊い犠牲もやむをえません」

 

「マジでお前達って馬鹿なの? とりあえずこれはもう本気出すしかない」

 

 

やばい事を聞いてフラストレーションが溜まり、それをどうにかする覚悟が決まったツカサは最後の科学者を探し出していた。

 

そしてようやくエレベーターの鍵を手に入れられると近づいていく。

 

「おい、鍵を寄越せ」

 

「あら、フロストケイブの……今回は一人?」

 

「一人じゃない」

 

「あー、そっかー! ポケモンがいるもんね。ホロキャスターでトレーナーの情報を集めているから、貴方達の事も知っているけど。メガリングと最終兵器、どちらもポケモンのパワーを引き出すもの。あたし達似た事をしてるのよ」

 

「ポケモンとの絆も何もないお前達みたいな奴等とは違う、一緒にされるなんてヘドが出るわ」

 

 

本気を出したツカサの指示は更に戦いやすく、科学者のポケモン達は一度も動く事なく瞬く間に倒されていた。

 

「やはり強すぎる、貴方って完全にイレギュラーね……じゃじゃーん! 勇者はみごとエレベーターのキーを見つけた」

 

「こんな時じゃなかったらそれに付き合ってた」

キーを手渡されてそう呟いている。

 

「伝説のポケモンのパワー、命を与えるパワー。科学では解明できない不思議な能力。それを取り込み最終兵器で撃ち出せば世界はどうなるのか?」

 

「間違いなく最悪な展開になるだろうな。モヒカンが溢れる世界はごめんだよ」

 

 

急いでエレベーターの前に戻りキーを使って地下に降り、エレベーターから降りると更に階段を下っていく。

 

すると牢のような所の前で、フラダリがあの時に見た三メートル近い背の男と何か話している姿が見えた。

 

「聞け、フラダリに刃向かう者」

 

「ッ」

 

彼が語ったのはオトコの愛したポケモンと最終兵器が作られた経緯、かなり重く悲しい話でツカサは気分が沈み込んでいた。

 

 

「カギを取り返せ。あれは起動させてはならぬ、また全てが消える。私のようにいつ終わるとも分からぬ苦しみを味わいたいのか……!」

 

「彼はAZ。三千年前の王様と同じ名前だそうだ。何故だか最終兵器のカギを首からぶらさげていてね。さぁ、ツカサ。私の部屋に来なさい」

 

「……」

今は仕方ないと後を追い、エレベーターで更に下へと降りていった。

 

 

フラダリの部屋にはフラダリと男の科学者が何かを話しており、ツカサが来た事に気がつき振り向いた。

 

「スイッチ一つでここから最終兵器を起動できる。私にとって選ばれし者とは未来を変える可能性を持つ者! 最終兵器を起動させてしまうのか……それとも封じ込めておくのか。君の可能性を試すよ」

そう言い残してフラダリはツカサの横を抜けて立ち去っていく。

 

「おい、待て! 止め方を……」

 

「おおー、噂のオマエか待っていたゾ! オマエを調べる、ほら始めるゾ!」

 

「ちっ、さっさと片付けてフラダリを追わせてもらう!」

 

 

宣言通りにゲッコウガとメガルカリオで一蹴したが既に立ち去られてしまい、目の前の科学者を睨み付けている。

 

「なんだと! オマエすごいゾ! ワタシはオマエを認める。イコールいい事を教えてやる。最終兵器は三千年前カロスであった戦争を一瞬で終わらせた。その凄まじい力を使えばカロスのゴミ……愚かな人間達を消せるゾ! ワタシの背後にある青と赤のスイッチ、どちらかが最終兵器を起動させる為のスイッチだ」

 

「どっちものパターンだろこれ……青だ」

さっさと終わらせようと仕方なく青のスイッチを押している。

 

「せいかーい! だが最終兵器は動かすゾ! 正解なら停めてもいいと言っていたがワタシが許さないのだ。スイッチオン!」

 

「テメェ……!」

拳を握り締め全力で殴ろうと近づいていく。

 

「ほらオマエ、見ろ! モニタだ!」

 

 

映し出された映像はセキタイタウンの中央から現れた最終兵器が光を放ち、家々を薙ぎ払いながら花が咲くかのように展開していく姿だった。

 

「ほら見たか! 最終兵器咲いたゾ! フレア団以外を消し去るゾ!セキタイタウンに咲いたゾ! ボスの夢が叶い、美しい世界が生まれる!」

 

「……ふんっ!」

 

「ぐぎゃっ!!」

 

額に青筋を浮かべたツカサは科学者の男の顔面に容赦なく拳を叩き込み、その太った身体の持ち主が壁まで吹き飛び気絶するのを観てからセキタイへと向かっていった。



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ゼルネアスとカエンジシ♂みたいな人と

フラダリラボから出るとファイアローをボールから出し、そのまま肩を掴まれ空高く舞い上がりセキタイタウンに向かっていった。

 

「酷いな……」

 

町の中心に現れた古代の兵器により家屋は破壊され、怪我人も多く避難誘導が行われている。

 

ツカサは前に町外れの行き止まりで消えたフレア団の事を思い出したらしく、裏道を通りながらその場所へと向かっていった。

 

 

その道の途中にいたフレア団を倒し進んでいくと、やはり行き止まりではなく遺跡が基地のようになっていた。

 

「お約束だなぁ…さて、久々に悪の組織をぶっ潰すか」

 

「ツカサ、アタシも行く!」

 

「セレナ?」

 

「アタシもフラダリラボで謎の人から教わったの。フレア団が最終兵器で何をするのか! フレア団を……ううん、フラダリさんを止めましょ!」

 

「ああ、一緒に行こう」

 

 

そう言ってスッと手を差し出すと強く握り返され、かつての自分のような目をしたセレナがこくんと頷いていた。

 

「悲しむほど世界は汚れてなんかいないもの!」

 

「何か眩しいなぁ……」

 

………

……

 

秘密基地に入るとエレベーターが設置されており、先に様子を見に行くとセレナに言い残してツカサは下に降りていった。

 

降りた先は研究施設があり、大丈夫そうだとセレナにホロメールを出して進んでいく。

 

奥にフラダリの姿が見え、そこに向かうが誰にも遮られずその場所まで着く事が出来ていた。

 

「地上に花開いた最終兵器の美しさ……君達も心奪われただろう。何しろ伝説のポケモンのエネルギーを取り込んでいるからね」

 

「あんた、まだそんな事を……」

 

背を向け話すフラダリにツカサは呆れ、セレナが追いついたのを確認するとさっさと止めようと足を踏み出した。

 

「ツカサ! ラボで正解を選んだのに申し訳なく思う。だが世界の流れとは様々なエゴが混じり決まるのだ」

 

「最終兵器なんか使わせないんだから!」

 

「世界は有限なのに人もポケモンも増えすぎた。金もエネルギーも奪ったものが勝つ世界だ」

 

「だからって……フレア団が選んだ人だけ助けるなんて」

 

「君達は一つしかないメガリングを譲りあったのか?」

 

「ああ。当然年長者だからな」

 

「……一つしかないものは分け合えない。分け合えないものは奪いあう。奪い合えば足りなくなる。争わず奪い合わずに美しく生きていくには命の数を減らすしかない」

 

「うわぁ、出た。都合の悪い事は聞こえないフリするやつ」

 

「ポケモンの命は?」

 

「……」

 

ツカサの発言はスルーし、セレナの問いに振り向いたフラダリの目からは涙が流れていた。

 

「涙……どうして?」

 

「ポケモンには消えてもらう。我々人間はポケモンと助け合い共に発展してきた。それ故に争いや奪う為の道具となりかねない! 君達の望みは最終兵器を止める事! だが私はそれを拒む。少し足止めをさせてもらうよ」

 

 

そしてフラダリラボの時のようにセレナではなく、厄介なツカサにバトルを挑んできた。

 

だが過去最高のコンディションの今のツカサを止められるわけもなく、セレナが息を呑むような一方的なバトルで瞬殺していた。

 

 

「くっ……守る強さ、か。だが君は何を守るのだ? 今日よりも悪くなる明日か?」

 

「俺は自分の為に戦ってるだけで、その結果守ってる事になってるだけなんだよなぁ。それに明日が悪くても、明後日はよくなるかもしれないだろ」

 

「君は強い、だがもう遅い!! 希望は潰えた……! 確かめたければ最深部に行け」

 

「言われなくても行くよ。伝説のポケモンを解放すればどうとでもなるだろうし」

 

 

そう言ってフラダリの横を抜けセレナと共に最深部に向かっていると、フレア団の団員が立ちはだかるも息の合った連携で蹴散らしながら進んでいく。

 

「ツカっちゃん、セレナ!」

 

「ウソ……どうして……?」

 

「ゴメン、わかってる……足手まといだよね」

 

「サナ」

 

声に振り向くとサナがおり、ツカサとセレナは驚き足手まとい発言も否定出来ずにいた。

 

「だってぇ……だって友達だもん」

 

「そうだな……友達だもんな。今から戻らせる方が危ない。サナ、俺達から離れないように」

 

「そうね。アタシとツカサが先に行くから、サナは付いてきて」

 

「うん! ありがと♪」

 

 

 

サナを加え三人で進み、フレア団の団員達をツカサとセレナの二人で倒していく。

 

そして遂に最深部に到着するも扉に電子ロックがかかっており、どうするかと悩んでいたがサナがハッとして扉に近づき鞄から何かのマシンを取り出していた。

 

「これ……パズルで行き詰まった時に一度だけ解いてくれるマシン! 前にシトロンさんにもらったの」

 

「え、それ電子ロックも解けるの?」

 

「電子ロックもパズルも同じよーなモノだよね♪」

 

そういうとサナはマシンを設置し、電子ロックを解除し始めた。

 

「マジで解除されたらシトロンに二度と作らないように言いに行かないと……」

 

「あっ! ロック開いたよ♪ ああっ……! ほんとにマシン壊れちゃった……」

 

「ツカサの言う通りにこれは作らないように言わないとダメね。今回は仕方がないけれど」

 

「下手に作られたらセキュリティ簡単に突破されちゃうからなぁ。ふぅ……よし!」

 

「さて……いよいよね。中にいる伝説のポケモンを助けましょ!」

 

気合いを入れながら力を抜いたツカサはボールを一つずつ撫で、セレナは緊張した面持ちで喉を鳴らしている。

 

 

ツカサが先に扉を開けて中に入ると、中央に機械があり何か白い樹のような物が乗っているのが見えた。

 

危険がないのを確認するとサナとセレナに入ってくるよう伝えている。

 

「ここが最深部……何だか息苦しい……」

 

「ねえ……あの樹みたいなのが伝説のポケモン? 生きているようには見えないけど……」

 

「あー、確かに。どれちょっと……」

 

ツカサが確認の為に近づこうとすると、どこからか現れたフレア団の団員達が立ち塞がった。

 

「あんた達には関係ない事だ」

 

「伝説のポケモンのエネルギーは99%最終兵器に取り込んだ。だが万全を期すためにこいつらをぶちのめしましょう!」

 

「追いかけられるの? やだー!」

 

 

サナが慌てて逃げ出すと一人がその後を追って行き、数が減ったなと思いながらツカサは腰のボールに手をかけていた。

 

「サナってばまた……ツカサ、こっちは頼むわね。アタシ、サナを守るから!」

 

「応、任された」

 

 

サナを追うセレナにそう返しながらも団員達から目を離さず、睨みつけながらいつでも出せるようにボールに手をかけている。

 

「逃げた子供達も始末しろ!」

 

「うわぁ」

 

「さてあんたに我々が倒せるかい?」

 

「寧ろ何で勝てると思っているのか知りたいわ」

 

………

……

 

あっさりと四人のフレア団幹部を蹴散らし捨台詞を残し逃げていく幹部を見送り、改めて機械に載せられている樹に近づいていく。

 

すると樹が奪われていたエネルギーを吸収し始め、激しく光り輝いたかと思うと立派な角を持った青く大きな鹿のような姿のポケモンへと変化し、そのまま機械を破壊してツカサの目の前に降り立った。

 

「こいつがゼルネアス……」

 

『……』

 

「直接脳内に……! 力を貸すのに実力がみたい、と」

 

『……』

 

その言葉に頷くゼルネアスを見て、ツカサはニンフィアの入っているボールを手に取り……

 

 

「ニンフィアとしばらく睨み合ったかと思ったら、スッと近づいてきてボールに自ら入ったでござる。ニンフィアの力を見抜いたのかな?」

 

そんな事を呟いていると背後の扉が開き、セレナとサナが目をキラキラさせながら入って来た。

 

「凄いよツカっちゃん! 伝説のポケモン自ら友達になりたがるなんて!」

 

「二人共無事でよかったよ。ゼルネアスはまだ本調子じゃないみたいだから、後で診ないといけないわ。……伝説のポケモンってどう見ればいいんだろう?」

 

 

最終兵器を止めた事で気が楽になり、三人であーでもないこーでもないと話をしている。

 

すると再び背後の扉が開き、またフレア団かと三人は気を引き締めてボールに手をかけながら振り返った。

 

「まさか君が本当に選ばれし者だったとはな! 伝説と言われつつ、随分と健気ではないかゼルネアスよ! 人に助けを求めるか、人の力を借りるのか」

 

機械を背負いバイザーを付けたフラダリがツカサに向かってそう呟き、ボールの中にいるゼルネアスにも声をかけていた。

 

フラダリの背中の機械から伸びる三本のコードの先には虫のような機械があり、それが羽ばたき宙に浮いている。

 

「フラダリさんはツカっちゃんに負けたんでしょ! 何よ!」

 

「私の勝利は最終兵器を使う事。その為にゼルネアスを返してもらおう!」

 

「いや、そんな事を言われたら絶対にお断りだろ常識的に考えて」

 

「それならば無理やりにでも奪い返すだけだ。今度は負けない。君達が旅で調べたメガリングとメガストーン、私も使わせてもらうぞ!」

 

 

フラダリがボールを投げるのを見てツカサは二人を後ろに下がらせ、遅れてボールを投げゲッコウガを出していた。

 

 

短期間で戦い慣れた相手故にゲッコウガは三体を軽く蹴散らしていた。

 

「やはり君は強い」

 

「そりゃどうも。ゲッコウガ、疲れただろうから戻っておいで。ニンフィア、お前はまだ余裕ありそうだから頼む」

 

「これが私の切り札、ギャラドス」

 

 

ニンフィアが待てないとばかりにボールから飛び出し、フラダリの投げたボールからはギャラドスが現れニンフィアを威嚇している。

 

そんなギャラドスを見てニンフィアは怯まず笑顔で返し、触覚でペシペシ地面を叩き始めていた。

 

「ニンフィア、お前のムーンフォースで容赦なく決めてやれ!」

 

「ギャラドス、メガシンカ!」

 

 

フラダリが指輪に触れると光を放ち始め、ギャラドスに付けられたメガストーンからも光が溢れ混ざり合っていく。

 

光の繭を吹き飛ばして現れたメガギャラドスだが、ニンフィアはメガシンカをした相手にも関わらず平然としながら駆けていく。

 

「馬鹿な、あのニンフィアはメガギャラドスに勝てると思っているのか」

 

「メガシンカしただけで勝てるなら俺は今頃チャンピオンだわ。それに俺のニンフィアは普通じゃないから……」

 

 

素早く翻弄するニンフィアを狙おうとメガギャラドスも動くが、触覚を使った立体機動で背中に乗られてしまっていた。

 

普通のポケモンがしないそんなニンフィアの変態的な動きをツカサは諦めの目で見て、サナとセレナは開いた口が塞がらなくなっている。

 

フラダリもあまりの滅茶苦茶具合に唖然としており、そのまま零距離ムーンフォースでメガギャラドスが倒れたのを見てショックを受けていた。

 

 

 

「くっ……世界は愚かな人間共が汚していき、残された希望を醜く奪い合うのだな……」

 

フラダリは付けていたバイザーを外すと地面に叩きつけ、世界に絶望をしていますとばかりの顔で厨二っぽい台詞を吐いていた。

 

 

「ウオォッ!!」

 

「いや、どんだけ……気持ちは分からないでもないけど」

 

「少なくても分け合った方がいいと思うな……。フラダリさんだってメガシンカ使えたのギャラドスが力を分け与えてくれたからでしょ? 」

 

「アタシはみんなが美しい世界を望むのが正しいと思うけど……」

 

悔しさや絶望感から叫びを上げたフラダリにサナとセレナが優しく諭すように告げていた。

 

「それが出来るならとっくに全ての争いが消えている!」

 

「フラダリ……一人で出来ないなら二人で、二人で無理なら三人でってみんなで少しずつ良くしていけばよかったんだよ。人間の知恵はそれも乗り越えられるよ」

 

「ならば今すぐに愚民共にその知恵を授けてみせろ! そんな事が出来るはずがない。取り込んだゼルネアスのエネルギー……能力……目覚めた時に取り戻されたが出力を抑えれば望む結果は得られるか……。ツカサ、私と永遠に生きよう……美しい世界を作るまで死ねない苦しみをくれてやる!!」

 

「えっ……美人さんからの誘いならともかく、おっさんからの誘いはちょっとNO THANK YOU……逃げるぞサナ、セレナ!」

 

目が完全に据わっているフラダリを見てこれはヤバイと感じ、サナとセレナと共に外に向かって逃げ始めた。

 

………

……

 

最終兵器から放たれたエネルギーは宇宙にまで届き、世界に拡散するかと思われたがそのまま真っ直ぐに最終兵器の元に落ちてきていた。

 

そして地下に最終兵器を押し戻しながら破壊し、その衝撃でセキタイ周囲に激しい爆風と様々な破片が飛び散りかなりの被害を出している。

 

「エレベーターから出なくて助かったな……なんて火力とパワーだよ、こいつは」

 

「うー……」

 

「うー……」

 

「凄まじい衝撃でサナとセレナが抱きついて来たけど……両脚を固定するのはやめてください死んでしまいます」

 

サナとセレナは左右からツカサの脚に抱きついて固定しており、落ち着くまで待つしかなかった。

 

 

そんなこんなで十分程が経過し、外も避難していた者達が戻って来たのか騒がしくなっていた。

ツカサはようやく落ち着いた二人を連れ、最終兵器のあった町の中心へ向かってみる事にしている。

 

「はあ……皆さん無事でよかったですわ!」

 

「あ、謎の仮面戦士。トロバとティエルノまでいるじゃないか」

 

「避難誘導してたんだよぉ。後はみんなで力を合わせて十番道路の列石に繋がれたポケモンを助けていたんだ。フレア団と戦うのはジーナさん達に任せたけどねぇ」

 

「あたくし達は謎の人なの!」

 

「いいんだよティエルノ君。フレア団の作戦に対してそれぞれベストを尽したんだよ」

 

「はい、ボク達はボク達の出来る事をしましたよ!」

 

「んん! 貴方達の勇気、優しさ……あたくし、尊敬しているのよ!」

 

フラダリラボの件を聞きたいのかチラッチラッとツカサを見ながら話をしていた。

 

 

「あー、どうも」

 

「あと君達にニュース。フレア団のラボにあったホロキャスターを勝手に受信する機械は壊したから」

 

「じゃあもうフレア団に関わる事もありませんね。これで安心して図鑑を集められます!」

 

「はあ……終わったんだよね? また冒険出来るんだよね?」

 

「ああ、ようやく安心して旅が出来るな。今まではたまに見かける赤いスーツに警戒してたし」

 

フレア団のあの変なポーズも見ないで済むとホッとしながらサナに返していた。

 

「じゃあヒャッコクシティから出発しなおそうよ♪ 」

 

「そうだなー、明日の朝くらいに集合しようか」

 

細かい事は決めず明日の朝にヒャッコクシティ集合と決め、皆それぞれセキタイから離れていった。

 

 

ツカサは最終兵器跡地を少し眺め、そろそろ行こうと振り返ると皆と共に行ったはずのセレナが立っていた。

 

「ツカサ、ありがとう。アナタの事、友人として尊敬するわ。だからこそライバルとしてアナタに勝ちたい! これは本気よ」

 

「ふっ、いつでも受けて立つよ」

 

「言質は取れた、と。それじゃあ、また明日ね!」

 

セレナがポケットに仕込んでいたボイスレコーダーに格好つけて言った事を録音されてしまい、以後セレナからのバトルを断る事が出来なくなってしまっていた。

 

「マジか……ん? あんたは確かAZ、だっけ?」

 

呆然としているツカサの背後から大きな背の男が現れ、最終兵器跡地を見ながら口を開いた。

 

生き返った永遠を生きるポケモンと永遠を生きる男の重い話を語り、どうすれば会えるのかと呟き、ツカサの事を見ずにAZは背を向けて去って行った。

 

「どっちも救われないな……」

 




フレア団関係がつまらなくて辛かったです(小並感)


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中途半端にレンリタウンで覚醒する者

そらをとぶでヒャッコクシティに向かい、ポケモンセンターで部屋を借りているとプラターヌからホロメールが着ていた。

 

部屋に入って確認すると、直接話をしたいからレンリタウンで待っているとの事だった。

 

 

「ルカリオはしばらくおやすみにして、明日は朝一でユキノオーと交代……のはずだったけど、オーキド博士がキュレム用にユキノオーを預かっていたいとか言い出したからルカリオ続投。ついでにゼルネアスをフレア団残党の手に渡らないよう、オーキド博士に預けたし……めっちゃ迷惑そうな顔されたけど」

キュレムにダークライだけでも大変なのに、カロスの伝説であるゼルネアスまで預けられたオーキド博士の心中を察してしまう。

 

「はぁ、やっとフレア団との戦いが終わった。最終兵器の件はニュースになってるなぁ……連絡済みのオーキド博士以外のみんなが心配してメール送ってくれてるけど、一番に心配してメールくれたのがグリーンさんってどうなんだろう。『被害の中心地に居たけど僕は元気です』ってみんなに送ったし、もう電池ないから電源落として充電」

 

そのまま夕飯を食べ、風呂に入り、朝までぐっすり眠って英気を養っていた。

 

………

……

 

翌朝充電が終わったスマホを手に取ると着信やらメールやらがかなりの数になっており、確認する前に送ったり電話をしてきた者達にしっかりと無事である事をメールしたり電話したりしている。

 

「どうにも間に合わないからセレナ達に謝罪のメールを送ったっていう。ハルカ達は何でマサラタウンにいたんだろう……チャンピオン三人がいる家とかヤバイだろ」

 

母親に電話をすると部屋に常設されているモニター付の電話から掛け直すように言われ、仕方なくしてみるとまさかの三人に母親というツカサが引く面々が待っていたらしい。

 

「しかも母さん、三人からお義母様呼びされて満更でもない顔してたし……娘のが欲しかったとか息子の前で言うとかなんなの? メイちゃんがオモチャの指輪を左手の薬指に付けて、頬を赤らめながらの俺からプロポーズされました発言で即切ったからどうなってるか分からなくて怖い……それまでは俺の無事にホッとした顔をしてたハルカとヒカリの顔が無表情に変わっていくのを見てカントーには帰らない事を決めた」

尚、遠くない内にカロスに乗り込んでくる模様。

 

 

それからすぐにセレナ達から先に行くというホロメールが来たのを確認し、昼御飯を食べてからポケモンセンターを後にした。

 

「ここが十八番道路、エトロワ・バレ通りか。地図で確認すると炭鉱で使ってたトロッコとかあるらしいなー」

 

「石の道 鋼の道♪ 足音響く素敵な道♪」

 

「この通りの歌かな?」

 

 

そんなおじさんの歌を背に歩いていると、草むらからアイアントが飛び出してきたりしている。

途中興味を惹かれて終の洞窟と言われる、元炭鉱の中に入っていった。

 

「天井からアリアドスが落ちてきた時は死ぬかと思った……シャドーボールは手に入ったけど、一番奥に行くにはチャンピオンくらい強くないとダメって言われちゃったなー」

 

やみのいし等も拾っており、そこそこ得る物が多い探検だったと終の洞窟を出ながら呟いている。

 

 

「きゃー! 遅刻遅刻ー! って、うわぁ! ぶつかる、ぶつかるー!」

 

「ちょっ、おま!」

 

「いたた……あっ! トレーナーさん! 目と目があったらバトルだよ!」

 

「この子マイペースすぎんだろ……」

慌てて走ってきたミニスカートの少女と漫画的にぶつかり、相手の勢いが強すぎてそのまま押し倒され至近距離で目と目があっていた。

 

 

仕方がないとツカサはバトルを了承したが調子のいいゲッコウガによりワンサイドゲームで終わり、一方的に負けたのに少女は嬉しそうな笑顔で握手を求めてきていた。

 

「えへー。……あれ? あれれ? そういえばここどこ?」

 

「ここはエトロワ・バレ通りだよ」

 

「あれー? おかしいなぁ。トレーナーズスクールに行くはずが道に迷っちゃったのかなぁ?」

 

「ハクダンに行くのにどうやったらここに来れるんだ……」

 

仕方がないとサラと名乗った少女に許可を貰いお姫様抱っこをし、絶対に暴れない離れない事を約束させてからファイアローのそらをとぶでハクダンシティまで連れて行ってあげている。

 

 

「お兄さん、ありがとー」

 

「どういたしまして。てかマジで誘拐とか疑われてるんじゃないかあの子。歩いて十分かからないスクールに三日前から行ってないみたいだし、お風呂やご飯は世話を焼いてくれたひとがいたらしいけど……とりあえずまた戻らないと」

 

トレーナーズスクールの前でニコニコしながら手を振るサラと別れ、ハクダンシティに向かう途中にここ数日の話を聞いていたのを思い出していた。

どうか自分が誘拐犯だと思われませんようにと祈り、同時にフレア団の仕業になっているかもしれないという淡い希望を抱いている。

 

 

それからすぐに再びヒャッコクシティへと戻り野宿覚悟で十八番道路へと向かい、終の洞窟手前で日が暮れてしまいやむなく邪魔にならない場所にテントを設営した。

 

「ここをキャンプ地とする!」

 

「フィア!」

 

「ボールから出して中に入れそうなのはニンフィアとルカリオ、ゲッコウガかな……ファイアローはボールの中のが楽そうだし」

 

 

皆をボールから出して夕飯を楽しんでいると騒ぎに惹かれたのか、サンドパンやコータス等が寄って来ている。

ツカサは襲ってこないならいいかと考え、ポケモンフードを少し分け与えていた。

 

「お前達、俺みたいなトレーナーばかりじゃないから気をつけるんだぞ」

 

「フィア、フィーア!」

 

「通訳してくれてるのかな?」

 

「フィア!」

 

ニンフィアはそうだと言わんばかりに頷き、引き続き野生のサンドパン達に通訳している。

 

ニンフィアがテントの中に入っていくとモンスターボールを二つ触覚で掴んで出てきた。

 

「ニンフィアは何をする気なんだ?」

 

「フィア」

 

スッとサンドパンとコータスの前にそれを置くと二体は顔を見合わせて頷き、自らボールに入っていった。

 

「……ゲットなのかこれ? オーキド博士も普通のやつなら嬉しいだろうけど」

 

「フィア」

 

「他の野生の面々は満腹になって帰ったみたいだし、後片付けをしたら寝ようか」

 

 

片付けを終えてルカリオとニンフィア以外をボールに戻し、二体を連れてテントの中に入っていった。

 

「寝袋も久々だ。ルカリオは入り口付近でいいの?」

 

「クォン!」

 

「うん、やっぱり頼りになるな。……ニンフィアは当然のように寝袋の隙間から中に入って来てるから困る」

 

「……」

 

「もう寝てるとか。朝から疲れたし、俺もさっさと寝よう……ルカリオもおやすみ」

 

ランタンの灯りを消し、ルカリオに挨拶をしてからすぐに夢の世界へと旅立った。

 

………

……

 

翌朝早くに朝食を済ませ、レンリタウンへ急いで向かい始めた。

 

「あー、やっと着いた……『レンリタウン 異なり連なる町』か」

 

「やあ、ツカサ」

 

「プラターヌ博士、お待たせしてしまったみたいで」

 

「いや、別に構わないよ。……フラダリさんの事、君に謝らなければならない。本当に申し訳なかった……そしてありがとう! フレア団を止めた事で君はフラダリさんも救ったんだ。彼が美しい世界を望んでいたのは知っていた……だけど真の進路を追い求めるよう意見をぶつけあわなかったボクの責任でもあるんだ」

 

「そうだったんですか」

 

「さてとツカサ。君達が旅で得た全てをボクにぶつけるんだ!」

 

「なら、行きますよ」

 

 

 

邪魔にならないように空き地に移動し、プラターヌとツカサは互いに距離を取ってボールを投げていた。

 

「まずはフシギバナだ!」

 

「ちょっと相性が悪いけど……ゲッコウガ!」

 

「ツカサ、最近ゲッコウガには不思議な力があるんじゃないかと言われているのは知っているかい?」

 

「それは初耳ですが……ゲッコウガ、じんつうりき!」

 

「おっとフシギバナ、はなふぶき!」

 

お喋りをしながらも二人はそれぞれのポケモンに指示を出していた。

 

フシギバナが放ったはなふぶきをツカサと息を合わせたゲッコウガは軽く避け、じんつうりきでフシギバナの意識を一撃で刈り取っていた。

 

 

「相性の差を物ともせず一撃とは……それに彼のゲッコウガ、一瞬だけ姿が変わったように見えたな。おっと、お疲れフシギバナ。カメックス、君の番だ」

 

「ゲッコウガ、お疲れ様。ラプラス、出番だよ」

 

「ラプラス! 珍しいポケモンだね!」

 

「託されたんですよ。ラプラス、10まんボルト!」

 

「えっ、ちょっとそれはありなのかい!? カメックス、避けるんだ!」

 

ラプラスはツカサの指示を嬉しそうに聞き、避けようとしたカメックスに牽制の10まんボルトを放った。

 

それを避け反撃しようとしたカメックスがラプラスを見ると、本命の最大火力の10まんボルトが直撃しその場に倒れ伏した。

 

 

「カメックスまで一撃だなんて……リザードン、君が最後だ!」

 

「ゲッコウガ、またお願いするよ!」

 

リザードンを相手にゲッコウガを出すと妙な感覚がツカサを襲い、ゲッコウガもその感覚が襲ったのか振り向きツカサをジッと見ている。

 

「ツカサ、どうしたんだい?」

 

「あ、いえ。行こう、ゲッコウガ。この数ヶ月で結んだ俺達の絆を見せて……やろ、う?」

 

「!」

 

触れていないはずのツカサのメガリングから激しい光が放たれ、それが収まるとゲッコウガは足元から突如噴き出した水柱に呑まれていた。

 

 

「まさか、メガストーンもなしにメガシンカ!?」

 

「これは……メガゲッコウガ? いや、違うか」

 

「!」

 

ツカサとゲッコウガの重なり合う想いが共鳴し、別の世界でサトシゲッコウガと呼ばれていた姿へと変化を遂げていた。

 

ゲッコウガと感覚を共有している事が伝わり、かなり驚いたがこれなら更に的確な指示が出せるとリザードンに目を向けている。

 

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

「!」

 

「速い! リザードン、かえんほうしゃ!」

 

空を飛び回りかえんほうしゃで逃げ道を塞ごうとしているが悉く避けられ、更に速さを上げたゲッコウガの姿を見失ってしまった。

 

直後リザードンの背中に衝撃が走り地面に叩き落とされ何とか空を見上げると、そこには太陽を背にゲッコウガが幾つものみずしゅりけんを投げつけている姿があった。

 

幾つものみずしゅりけんがリザードンを磔にし、トドメの一撃に巨大なみずしゅりけんが放たれそのままリザードンの意識を刈り取っている。

 

 

「凄いじゃないか! お互いが思いやって培った温かな結びつき、それが君達の強さ……絆だよ!!」

 

「うっ……こ、これ疲れが半端ない……」

 

リザードンが倒れゲッコウガの姿が元に戻ると一気に反動が来たのかその場に座り込み、同じように疲れ果てているゲッコウガをボールに戻している。

 

「ツカサにはポケモンへの愛と信頼があるね!」

 

「それはありますよ。俺、ポケモンが大好きですから」

 

「この町にはボクの宝物が隠してあるんだ。よければ探してごらん! それではボクは失礼するよ!」

 

「あ、はい」

 

「フレア団と戦いカロスを守ってくれた君達の為にあれやこれや色々準備があるからね!」

 

「あれやこれや……」

 

「それと出来るならさっきのゲッコウガについては色々調べたいから、ツカサの平気な時に研究所に来て欲しい。それじゃあ、またね!」

 

プラターヌ博士はそう言うと慌ただしく去って行き、ツカサはまだ立つ事が出来ず座り込んだままその背中を見送っていた。

 




サトシゲッコウガ化しましたが、ここでの呼称はキズナゲッコウガかゲッコウガキズナフォルムかなー。


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カロスバッジコンプとこれから

プラターヌが去って少ししてもまだ疲れと怠さが抜けず、そのまま芝生の上に寝転がる帽子を顔に乗せて少し眠り始めていた。

 

「んん……あー、よく寝た。まだ昼前みたいだし、プラターヌ博士が言ってた宝物を探してみるか」

 

 

ホテルや橋を調べてみたが特に何も見つからず、レンリステーションにも足を運んでみている。

 

「マダムからとんぼがえりの技マシン貰った。流石にこれじゃないよなぁ……ん? これは」

 

『これを読んでいる君へ。今どんな風になっていますか? なりたい自分になっていますか? そもそもなりたい自分ってどんな自分ですか? 分からないけれど楽しく生きている。そう胸を張って言えるような毎日だと素晴らしいよね。未来のプラターヌへ、未来を夢見るプラターヌより』

 

レンリステーションのベンチに書かれていたメッセージを見つけ、これが宝物かな?と思いながら捜索を打ち切っていた。

 

 

商店や八百屋で食料を購入し、ちょっとした滝の側のベンチに座りタウンマップでエイセツシティまでの道を確認しながら菓子パンを齧っていた。

皆も早めの昼御飯を食べ、デザートにツカサが定期的に作っている凄い虹色ポロックを楽しんでいた。

 

「迷わなければ今日中には着けるかな。久々に見かけて思わず買ったけど、メロンパン美味しい。このベチャっとしたクッキー生地じゃない、喉に詰まりそうな感じがいいわ」

 

ゴミ箱に食べ終えた袋を捨て、まだ怠さの残る身体に気合いを入れながらエイセツシティへと向かって行った。

 

 

 

連絡通路を抜けると最後のジムのあるエイセツシティへ続く十九番道路へと出ている。

 

「十九番道路、ラルジュ・バレ通りか。俺の順路的に最後のジムへ続く道だな。……リーグに挑戦するには手続きが必要みたいだし、挑戦者の人数次第で結構時間かかるらしいのがなぁ」

 

手続きに一人につき二週間程かかり、無料で提供される豪華な宿泊施設に泊まって待つ者が多い。

そしていざ挑戦となると天狗になっているトレーナー達の大半が四天王に瞬殺され、勝ち残る事が出来ても四人目までに心が折られてしまう者も多い。

 

 

「最後のジムも楽しみだなぁ」

 

「ツカっちゃん♪」

 

吊り橋を渡っていると誰かから呼ばれ振り返ってみると、先に行ったと思っていたサナが手を振りながら駆けてきていた。

 

「サナ? 先に行ったんじゃ……?」

 

「レンリタウンで待ってたの♪ さーてあたし達、これから何をするのかな?」

 

「デートかな?」

 

「あ、それもいいかな。でも残念! 勝負だよ! だってあたし達ポケモントレーナーだもん♪」

 

 

今までの旅の時よりもトレーナーとしての腕を上げ、伸び悩んでいた壁を越えたツカサはサナを相手に巧みな指示を出して翻弄し勝利を収めていた。

 

「やっぱりツカっちゃんすごーい! 友達とのポケモン勝負ってほんとドキドキワクワクしちゃう!」

 

「生き生きとしたポケモン達の真剣なぶつかり合いは楽しいよね」

 

「うん! ……メイスイタウンの事を思い出しちゃった! あの時からツカっちゃんは強かったよね。ケロマツのあわでフォッコちゃんがやられちゃって」

 

「あれからまだ半年も経ってないのにかなり懐かしいなぁ」

 

「ツカサさん、サナさん!」

 

しみじみと思い返しているとまた誰かが名前を呼びながら走ってくる姿が見えた。

 

 

「トロバにティエルノまでレンリタウンにいたのか」

 

「それで二人で何してたの?」

 

「何でもないよ。二人は何しに来たの?」

サナは息を切らせながら走って来た二人に不思議そうに尋ねていた。

 

「サナさんと同じです。博士にツカサさんの事を聞いて必死に走ってきたんです」

 

「ツカっちゃん! いきなりで申し訳ないんだけどポケモン勝負してくれる?」

 

「うん、いいよ。さぁ、やろうか!」

 

 

ツカサの冴え渡る指示にティエルノも翻弄され、ダンスを交えたバトルスタイルも見切りあっさりと全てのポケモンをダウンさせていた。

 

「ツカっちゃんになら負けてもそんなに落ち込まないのは不思議だねえ」

 

「しかしティエルノから勝負を挑んでくるなんて珍しいな」

 

「セキタイで思ったんだ。ツカっちゃんの事をもっと知りたいって、それにはやっぱり勝負だよねって」

 

「ティエルノさん、僕達トレーナーは勝負をする事で相手やポケモンの心に触れる事が出来たらいいですね。その前にポケモンを元気にしてあげないと」

そう言うとトロバがサナとティエルノのポケモンを薬等で元気にさせていた。

 

「よし、次はツカサさん! そしてこの流れで勝負してもらいます」

 

「おっ、また図鑑?」

 

「今回は図鑑ではなくポケモン勝負です! 僕もツカサさんの事が知りたいですから!」

 

 

サナとティエルノとの二連戦で僅かに負った傷を癒してからトロバとのポケモンバトルを始めた。

 

これはプレゼント代わりといきなりメガルカリオを呼び出し、トロバを相手に息の合ったコンビプレイでサクッと倒している。

 

「おみそれしました! それにメガルカリオまで出してもらえるなんて!」

 

「ルカリオ、お疲れ様」

 

「ふぅ……だけど僕の何が足りないのでしょう?」

 

「強い弱いを気にするなんて、トロバひかえめじゃなくなったね♪ ……ってセレナは?」

 

「そういや居ないな……あの子が一番に挑んできそうなのに」

 

ツカサはセレナが一番に挑んで来なかった事を不思議に思い、周囲を思わず見回していた。

 

「メガシンカおやじさんと修行だよ。いつも一緒に居なくても友達だからって」

 

「では僕達やる事がありますからここで」

 

そう言うとトロバとティエルノは去って行ったが、サナだけは足を止めて深呼吸をしたかと思うと背を向けたまま話し始めた。

 

「サナ、旅に出てよかった! みんなと仲良くなれたし、あの時に巡り合ったフォッコちゃんのお陰で色んな所に行けて、沢山の人と出会えて素敵な思い出が作れたもん♪」

 

「サナ……旅に出て成長したんだな」

 

「ツカっちゃん、これあたし達から。エイセツシティのジムでもらえるジムバッジで、戦っていなくてもたきのぼりが出来るようになるよ!」

サナはくるりと振り返るとツカサに近づき、秘伝マシン5であるたきのぼりを手渡していた。

 

「ありがとう。すぐに手に入れてたきのぼりを使うわ」

 

「えへへ……じゃね! ばいばーい!」

 

「またね……妹がいたらあんな感じだったのかな。マサラタウンにいる従妹はここ数年会ってないしなぁ」

 

走り去るサナを見送り、独り言を呟きながらエイセツシティへと急ぎ始めた。

 

………

……

 

「連絡通路を抜けると雪国だった……マジかこれ」

 

エイセツシティに入ると雪に覆われており、街中には当然のようにユキノオー達が闊歩してあたる姿が見える。

 

ユキノオー達はどうやら除雪をしているらしく、ポケモンセンターの近くには多くのユキノオーが定期的に集まっては雪を退けていた。

 

 

「サンドパンとコータスを預けたら久しぶりに普通のポケモンじゃ!って騒いでたなぁ……。ジム行ったらジムリーダーは今不在で迷いの森だから、行ってみたらどう?って言われるし」

 

ポケモンセンターで部屋を借りてジムに挑みに行くとそう言われたらしく、仕方がないと街外れから行く事の出来る迷いの森へと向かっていた。

 

 

森に入るとまだ明るい時間帯なのに薄暗く、少々不気味だなと思いながらウロウロしている。

 

「迷いの森、二十番道路だったんだ……プリンとかサナが好きそう。捕まえておいて、今度交換してあげようかな」

 

それからプリンを捕まえて迷いに迷った末に森の出口と思われる光が見え、やっと出られると足早にその光へと向かって行った。

 

 

森を抜けると花畑があり、髭でふくよかな男性が野生のポケモン達と何かをしていた。

 

近づくと逃げてしまい男性に話を聞くと、ここはナイショのポケモン村だと教えてくれている。

悪い奴等に酷い目に遭わされたり、心ないトレーナーから逃げ出したポケモンの集まりだとも。

 

その男性はツカサが優しいトレーナーであると見抜き、ポケモン達に声を掛けると恐る恐る集まって来ていた。

 

「フィア!」

 

「うん、自由過ぎる」

 

ボールから出てきたニンフィアが近づいて来たポケモン達の元に向かい、本来の使い方である触覚で癒しを与えて早速仲良くなっている。

 

「ほう、お前さんのニンフィアはキラキラして見えるな」

 

「毎食ご飯以外にポロックを食べてるからだと思いますよ」

 

 

ニンフィアが仲良くなって話をしている姿を見ながら男性から話の続きを聞いたり、ツカサ自身の話をしたりしていた。

 

「ツカサはいいトレーナーだな。おっと自己紹介を忘れていた。俺の名前はウルップ、エイセツシティのジムリーダーだ」

 

「やっぱりそうでしたか」

 

「お前さんの挑戦待ってるぞ。その前にこいつらと触れ合ってみるのもいいよな」

 

「はい。また後でジムの方へ伺います」

 

 

去って行くウルップを見送るとボールから他の手持ちの者達を全て出し、それぞれ交流させてその光景を座って眺めていた。

 

「むみゃあ」

 

「おや、ニャスパー。俺が怖くないのかな?」

 

「!」

 

ニンフィアと楽しく話をして興味を持ったらしく、ツカサに恐る恐る近づき膝の上へ来るとそのまま座り身体を預けている。

 

そんなニャスパーの頭を優しく撫で、エイセツシティとは違って過ごしやすい陽気の中でウトウトしていた。

 

撫でながら目を閉じると近づいてくる多数の気配を感じ、そっと開いてみるとトリミアンやヤヤコマ達が傍に来ている。

 

「ちょっと昼寝を……な、なんだ!?」

 

「みゃ」

 

「ん? 落ち着けって?」

 

「みゃあ」

 

「ゴン!」

 

ニャスパーとそんなやり取りをしていると、どこからかカビゴンが現れジーッとツカサを見ていた。

 

「なんだ地震じゃなくてお前だったのか」

 

「ゴン!」

 

「うおっ!」

 

そのままツカサの隣に来るとズシンと勢いよく座り、スッとオレンの実を差し出してきていた。

 

「ありがとう。……美味しい」

 

「……フィア!」

 

「あー、はいはい。あーん」

 

オレンの実をハンカチで軽く磨くと皮を剥かずに齧り、その素晴らしい味を楽しんでいた。

 

そしてカビゴンや他の野生のポケモン達と一緒に齧っていると、ニンフィアがツカサの食べかけに反応して目の前をピョンピョンし始めた。

 

 

皆から完全に受け入れられたツカサはカビゴンの腕を枕に昼寝を始め、皆も同じように集まり昼寝を始めている。

 

………

……

 

「エイセツシティに戻ろうとしたら、めっちゃ引き止められた。また来るからって約束しなかったら帰らせてくれなかっただろうなぁ……ウルップさんと約束したし、まだギリギリ明るいからジムに挑まないと」

 

 

中に入ると壁が氷で覆われており、ジムの中も外に負けず劣らず寒くて仕方がなかった。

 

銀盤の女王を名乗ったエリートトレーナーを倒し、あからさまに置かれたスイッチを踏むと一部の床が回転し始めた。

 

それを見て思いついたらしく何度かスイッチを踏み、反対側に居る男のエリートトレーナーがいる場所に行けるように回転させていた。

 

それからは同じようにトレーナー達を倒しては床を回転させ、ウルップへ辿り着く為の道をしっかりと作っていた。

 

そして

 

「おっ、来たか。あいつらに随分気に入られたみたいだな。……氷ってのは堅く、そして脆いもんだよ。だがそれがいいんだよ。まぁ、お前さん相手に能書きはいいか。ほら、ポケモンだそうや!」

 

「よろしくお願いします!」

 

 

少し後ろに下がるとボールを手に構え、二人同時にフィールドに向かって投げていた。

 

「ユキノオー、よろしく頼むわ」

 

「ルカリオ、最後のジムリーダー相手もよろしく!」

 

 

「ゆひょお!」

 

「クァン!」

 

ユキノオーの特性で雪が降り始め、その中で二体は対峙してトレーナーからの指示を待っていた。

 

 

「ルカリオ、メガシンカ! そしてはどうだん!」

 

「ほう、メガシンカ! あのお嬢ちゃん達以外に使う者が現れたか。ユキノオー、ふぶき!」

 

光の繭に包まれルカリオの姿が変わると両手を腰の右下に持って行き、目に見える形で波導が練られていく。

 

ユキノオーはその隙を逃すまいとふぶきを起こすが素早い動きで背後に跳ばれ、背後のルカリオへ振り向くと同時にはどうだんが放たれ吹き飛ばされていた。

 

 

「うわ、予想外の威力……」

 

「流石にあれを貰ったらダメだな。次はこいつだ、フリージオ!」

 

ルカリオはゲッコウガがツカサとの絆により変化した姿をボールから見ていたらしく、自分も負けていられないと気合が入っていた。

 

そして吹き飛ばされて倒れ伏したユキノオーが回収され、フリージオが現れる間にも波導を練り続けている。

 

 

「相性は良い、このままもう一度はどうだんだ!」

 

「避け……! られないわな」

 

指示と同時に放たれたはどうだんがフリージオのど真ん中に直撃し、地面を何度かバウンドしながら吹き飛び滑って壁にぶつかり止まっていた。

 

 

「いつもより調子がいいな」

 

「うむ、纏う波導がそこらのルカリオとは大違いだ。そしてこれが最後のポケモン、クレベース!」

 

「ルカリオ、最後までよろしく頼む」

 

ウルップが最後に出した氷で出来た亀のようなポケモンであり、かなり重そうな見た目をしていた。

 

 

「ルカリオ、インファイト!」

 

「ほう、構えも変わるのか。クレベース、受け切ってみせな!」

 

波導を纏い守りを捨てた構えを取ったルカリオが跳び、縦に回転しながらクレベースの背中に踵落としを叩き込んだ。

 

苦しみながらも耐えるクレベースの胴体を蹴り上げて宙に浮かし、渾身の右ストレートで巨体を吹き飛ばしていた。

 

クレベースは白目を剥いて気絶し、ウルップの前でピクピクしている。

 

 

「クレベース、あの一撃だけでも耐えたのは凄かった……硬い氷を砕きやがったな! お見事だよ!」

 

「勝った……」

 

「お前さんのポケモン、本当にお前さんが好きなんだな。ポケモンがあんな動きをする事が出来るのも、お前さんの事を信じて愛しているからだよ」

 

「相思相愛ってやつですね」

 

「さぁ、これがお前さんにとって最後であって始まりのバッジ、アイスバーグバッジだよ」

 

「え? 始まり……?」

 

「お前さんなら当然ポケモンリーグに挑戦するだろう? だからこれが始まりだよ」

 

バッジを八つまで集めても多数のトレーナーのように驕らず、ポケモンを愛し愛されるツカサに期待をしていた。

 

「そうでした。そっか、俺はやっと挑めるんだなぁ……」

 

「おめでとう。それとこの技マシンだよ」

 

「れいとうビーム……ありがとうございます!」

 

「堅いものは強いが脆い、しなやかさがいいんだよ。水のように器に合わせ形を変えても、本質は変えない。俺はそれが出来ないから、こおりタイプを愛してるんだよ」

 

「なるほど……それでは失礼します」

 

技マシンをしまうと頭を下げ、本日宿泊予定のポケモンセンターにウキウキしながら向かっていった。

 

 



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リーグに到達したけれど

翌朝、ポケモンセンターから出ると寒さから逃れるように連絡通路へと向かっていった。

 

「二十一番道路、デルニエ通り。ここを抜ければチャンピオンロードか……ワクワクが止まらないな」

 

 

しばらく歩いて行くと同じように八個のバッジを手にしたエリートトレーナー達が居り、挑む前に自信を付けようとしているのか挑んできている。

 

そんな甘い考えをしているエリートトレーナー達を返り討ちにしてどんどん進んで行く。

 

 

そして……

 

「エリートトレーナー達がしつこかったなぁま……でもやっと着いた。反対側は二十二番道路のデトルネ通りか。ハクダンに続いてるんだっけ」

 

「よく来た! このゲートはチャンピオンロードの玄関! ジムバッジを八個揃えたトレーナーだけが通れます! 貴方がお持ちのバッジは……八個揃えていますね! ではその腕前を試します!」

 

「おお、予想外のバトル。でもやります」

 

 

連戦で暖まったツカサ達は止まらず、ゲートにいたエリートトレーナーをあっさりと倒している。

 

「……素晴らしい! 貴方とポケモンの行く道に祝福がありますように!」

 

「あ、はい」

 

 

エリートトレーナーに見送られチャンピオンロードへ続く扉の前に立つと、八個のバッジに床が反応して光始め連動して目の前の扉が開いた。

 

更に開いた扉の先にどんなギミックなのか分からないが上り階段が出来上がっていく。

 

「何ていうか……凄いな」

 

 

階段を上ると念願のチャンピオンロードが広がり、少し先に見える洞窟へと歩を進めている。

 

中にもエリートトレーナー達が居り、挑んで来るからと倒し経験を積みながらながら進んでいく。

 

迷いながらも洞窟を抜けると近くに滝があり、凄い景色だとしばし見惚れて写真を撮って休憩を取っていた。

 

「洞窟内だったから分からなかったけど、かなりの高さまで登ってきてたんだな……そしてまた洞窟かー」

 

 

再び洞窟に入ってトレーナー達を蹴散らし、誤った道を進み滝の裏に行ってしまったりしている。

 

洞窟を抜けると遺跡のようなものがあり、眺めながら進んでいく。

 

「待って、ツカサ!」

 

「ん? ……ああ、セレナも来たんだな」

 

「やっと追いついた……あのね、あれからアタシ考えていたの。フラダリさんはフレア団だけを選んだ。ツカサとアタシ達はフレア団以外を選んだ。立場がそうさせたからであって、どちらが正しいとは言えないよね」

 

「そうだね。俺達の選択も間違っていたかもしれないし」

 

「うん。だからなんだけど……双方に言い分があったら歩み寄ればよかったのかなって。だから決めたの。ただただ勝つだけじゃなく、ツカサ達の想いに触れる……そんなポケモン勝負をするの!」

 

「俺に勝ちたいって言っていた時よりもいい笑顔。俺じゃなかったら思わず惚れちゃうレベル」

 

「ふふ、惚れてもいいのよ?」

 

「今はポケモンが恋人みたいなものだからなー……ニンフィアはガタガタしないの」

ポケモンが恋人発言が聞こえていたらしいニンフィアがボールの中でガタガタしていた。

 

 

それから互いにボールを手に距離を取り、気合いを入れてそれぞれ投げている。

 

「ニャオニクス、お願い!」

 

「ルカリオ、頼んだぞ!」

 

 

ルカリオは叶わない夢だと諦めていた、ツカサと一緒にリーグへ挑む事が実現間際で気合いが入っている。

 

「ルカリオ、はどうだんで様子を……」

 

「ニャオニクス、ねこだまし!」

 

波導を練ろうと集中を始めた所にニャオニクスがねこだましを決め、集中が途切れてはどうだんを放つ事が出来なくなっていた。

 

「今のは仕方ないよ。ルカリオ、インファイト!」

 

「ニャオニクス、なんとか避けて!」

 

セレナの指示を聞いて宙に浮き避けようとした所に強烈な右ストレートを叩き込み、そのまま殴り抜き吹き飛ばして気絶させている。

 

 

「くっ、あのルカリオやっぱり強い……お願い、ブリガロン!」

 

「ルカリオ、お疲れ様。リザードン、お前の相手だぞ!」

 

ニャオニクスをボールに戻したセレナがブリガロンの名を呼ぶのを聞き、リザードンの出番だとルカリオを戻していた。

 

特訓をしてトラウマを克服したのかブリガロンはリザードンを睨み、リザードンも同じように睨みつけている。

 

「リザードン、つばめがえし!」

 

「ブリガロン、のしかかり!」

 

高速飛行で狙ってくるリザードンにカウンターでのしかかろうとするも尻尾で横っ面を叩かれ、クラッと来た所に尻尾で宙に打ち上げられて鋭い爪で引き裂かれて地に落ちて行った。

 

 

「また一撃!? シャワーズ、お願い!」

 

「ならこっちはラプラスだ!」

 

ブリガロンの回収と共にシャワーズを繰り出し、それを見てツカサはリザードンを戻してラプラスを出していた。

 

「ラプラス、10まんボルト!」

 

「シャワーズ、だくりゅう!」

 

ラプラスの10まんボルトがシャワーズを襲うも耐え、シャワーズのだくりゅうがラプラスを呑み込んでいく。

 

「ふっ……ラプラス、もう一度10まんボルト」

 

「え? 嘘、無傷なの……?」

 

特性がちょすいのラプラスはだくりゅうの中から現れても笑顔のままで、ツカサの指示を聞いて即座に10まんボルトを放っていた。

 

避けられるはずもなくそのままシャワーズに直撃し、ビクン!と身体を逸らしそのまま意識を失っていた。

 

 

「シャワーズお疲れ様。お願い、チルタリス!」

 

「こちらから満を持して登場するのはニンフィア!」

 

ラプラスを素早く戻すと、セレナのチルタリスの入ったボールと同時にニンフィアの入ったボールを投げていた。

 

「フィーア♪」

 

「何か俺を見てめっちゃウインクしてくる……」

 

「あざとい……チルタリス、あんなあざとい可愛さを振り撒くニンフィアに負けちゃダメよ! マジカルシャイン!」

 

「とりあえず……ニンフィア、ムーンフォース!」

 

セレナの発言にイラっときたニンフィアは、チルタリスのマジカルシャインにムーンフォースで迎え撃っていた。

 

そのままあっさり突き抜けたムーンフォースがチルタリスを直撃し、ふらつき落ちそうになっている所に高速で接近して蹴りを叩き込んでいる。

 

それが急所に直撃して耐えきれなくなり、気を失い地に落ちて行った。

 

 

「ニンフィアの皮を被った何かなんじゃないかって」

 

「あんな動きをするニンフィアならそう思っても仕方ないわ。……これが本当に最後。アブソル、やるわよ!」

 

「ルカリオ、締めはお前だ!」

 

ニンフィアとチルタリスがボールに戻され、アブソルとルカリオが場に出されている。

 

ルカリオはメガシンカをするのを今か今かと待ち侘び、アブソルもそれを正面から迎え撃ってみせようとしていた。

 

 

「ルカリオ、メガシンカ! そしてしんそくだ!」

 

「アブソル、でんこうせっかよ!」

 

メガルカリオに変化すると地を駆け、同じように駆けてくるアブソルと幾度も攻防を繰り返している。

 

そのまま距離を取ると互いに構え直し、トレーナーからの指示を待っていた。

 

 

「これで決めるぞ。インファイト!」

 

「アブソル、つじぎり!」

 

アブソルが縦横無尽に駆けて鋭い爪で引き裂こうとしてくるのを捨て身の構えで待ち構えている。

 

幾度も引き裂かれるもどれも浅い攻撃だと耐え、本命の一撃を叩き込んでくる瞬間を待っていた。

 

そして致命打を与える為に速度を上げ突っ込んでくるアブソルに……

 

「因果!ってか?」

 

目を見開いたメガルカリオはアブソルの力を利用した強烈なカウンターを飛びかかってきた腹に叩き込み、それを受けたアブソル身体をくの字に曲げて吹き飛び地面を幾度かバウンドしている。

 

そのまま遺跡の壁にぶち当たるも止まらず、壁を突き抜け岩にぶつかってようやく止まっていた。

 

 

「うわ、凄……何ちゃって零式防衛術の練習をしたのが間違いだったのかもしれない」

 

「アタシのアブソルの力を利用した一撃……とんでもない破壊力ね。お疲れ様、すぐにポケモンセンターに連れて行ってあげるからね」

 

セレナは完全に意識を失っているアブソルの頭を撫でてボールに戻しながら呟いている。

 

 

「何か迎撃をしただけなのに、かなり悪者っぽい気が……」

 

「ふぅ、また勝てなかったわね。でもツカサと戦って成長出来たからここまで強くなれた……いえ、まだ終わりじゃないわね!」

 

「そうだよ。頭打ちだとばかり思ってた俺だって成長してるんだし、セレナだってまだまだ伸びるよ」

 

会う度に強くなっていくセレナに思ったままの事を言い、追い抜かれないよう精進しようと考えていた。

 

 

「ふふ。どこがとは言えないけれど、ツカサとアタシは似てる。だから負けたくなかったの」

 

「それは嬉しいような、セレナに悪いような……」

 

「似てるって事は同じ所がいっぱいあるって事でもあるよね? 友達として、異性としても嬉しい……」

 

「ん?」

 

強い男が好きだったのかフラグが積み重なったらしく、少し頬を赤らめながらチラチラ見て髪を弄っている姿が可愛らしい。

 

 

「だからアタシ、改めてツカサをライバルにする!! ライバルはどこまでも強いポケモントレーナーであってほしいの」

 

「お、おう」

 

「もちろんアタシ達も今よりずっと強くなる。まずはツカサと同じ絆の強さも使いこなすから!」

 

「がんばって。俺と同じ土俵に立てればセレナは更に強くなれるよ」

 

「それに使いこなせればツカサとお揃いだもの……そ、それじゃあポケモンリーグの挑戦がんばってね! ツカサなら絶対大丈夫よ!」

もう完全にデレたセレナが手を振り、そのまま走り去っていった。

 

「うーん、あんなにクールだったセレナがデレて可愛い……」

 

………

……

 

セレナを見送ってから先に進むとまた洞窟があり、もう少しで到着だろうと足を速めた。

 

予想通りすぐに洞窟は抜けられ、ここまで辿り着いた数人のトレーナーを倒しながら先へと進んで行く。

 

すると目的地に向かう為の水路があり、ラプラスの背に乗ってそこに突入している。

 

しばらく進んだ水路の先には足場があり、階段とベテラントレーナーが何人か待ち構えている姿が見えた。

 

「あの人達が最後の試練的な事か……まぁ、がんばろう」

 

ここまでの経験を活かしたバトルでベテラントレーナー達を蹴散らし、そのまま一気に階段を駆け上がっていった。

 

 

外に出るとすぐ近くにやたら豪華な造りのポケモンセンターがあり、遠くには城のような建物が見えている。

とりあえずと一度ポケモンセンターの中に入っている。

 

「ポケモンリーグ到達おめでとうございます。疲れを癒しますのでこちらにモンスターボールをお願いします」

 

「あ、はい」

 

ガラガラ故か入ってすぐにクールなジョーイさんに声をかけられ、受付に置かれているボールホルダーにモンスターボールを置くよう言われていた。

 

「それではポケモンリーグの説明に移らせていただきます。まず挑戦の申請をしていただきます。その申請が通るのに一週間、そして挑戦者には一週間の猶予が与えられます」

 

「それは一人につき二週間かかるって事ですか?」

 

「はい。それと貴方の前に三人の挑戦者がいますので、貴方が挑むのは二ヶ月後になります」

 

「二ヶ月……」

 

「はい。当施設にお泊りになってお待ちしますか? 挑戦者の方々はそうなさっておりますが」

 

「今日は泊まりますけど、挑戦三日前から泊まるのはありですか? 時間を有効に使いたいので」

 

ツカサはのんびり待つのではなく、二ヶ月を存分に使いゲッコウガの変化を完全に扱えるようになろうとしていた。

 

「構いませんよ。四人目の挑戦者が来た事で以後の挑戦者の受付は停止しますので、今使われていない一番良い部屋を予約しておきますね」

 

「ありがとうございます」

 

「これで説明は終わりになります。……姉さんや妹達が言ってた通りの本物だぁ」

 

キリッとしてクールだったジョーイさんの雰囲気が一転し、乙女な表情で瞳を潤ませながら受付から出て来た。

 

 

「え?」

 

「今日のお部屋は私の部屋の隣ね。それで夜に交代になったら遊びに行くから」

 

「あの……何か雰囲気変わってませんか?」

 

「あれはお仕事だから。でも本当に二ヶ月泊まらないの? お姉さんがお世話してもいいんだよ?」

 

「え? いや、それは魅力的ですけど……ちょっと鍛えたくて」

 

絆が結ばれ通じ合っているのに未だメガシンカの出来ないリザードン、キズナゲッコウガと内心名付けたゲッコウガの変化、その他仲間達の強化をして万全の状態で挑みたいらしい。

 

 

「残念……」

 

「あはは……」

 

 



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本人視点がないあっさり四天王戦

あれから二ヶ月が経過し、ツカサは色々な経験を積みポケモンリーグへと戻って来ていた。

 

忘れていたジムリーダーとのツーショット写真も撮ってもらいに各ジムを回り直したり、様々なホテルに泊まってみたりと観光も楽しみながらの二ヶ月だったが。

 

新聞で見た限りだと三人の挑戦者は四天王の一人目で惨敗し、慢心して心折られ逃げるようにリーグから去って行ったらしい。

 

「緊張するなぁ……」

 

ツカサ以後辿り着いた者はいないらしく、現在はスタッフとツカサしかセンターの中には居ない。

 

「明日には四天王に挑戦、勝てればチャンピオンにも挑む事になる……そわそわしちゃう」

 

四天王戦まではネット配信限定で放映され、チャンピオン戦になると緊急特番扱いで地上波でも放映されるようになる。

 

ツカサはその事を二ヶ月前のジョーイさんに知らされておらず、色々本人的に黒歴史になりそうな事をやらかしそうである。

 

………

……

 

翌日、ジョーイさんに見送られ城のような建物に向かって行った。

 

中に入るとシンと静まり返っており、左右どちらからでもいけるように別れた通路が見える。

 

キョロキョロと緊張しながらも左側から進んでいくと扉があり、近づくと中に入れと言わんばかりに勝手に開いた。

 

「……」

 

中は高い天井にステンドグラスがあり、他にも像が飾られていたりと自身の場違い感にそわそわしている。

 

「あなたがツカサね。ようこそポケモンリーグへ」

 

「どうも」

 

「私は四天王の一人、炎のポケモン使いパキラ。ポケモンリーグには私を含めた四天王とチャンピオンがいます。チャンピオンに挑むのであれば四天王に勝利して強さを示さねばなりません。とはいえフレア団を食い止めた貴方なら楽勝でしょうけど」

 

「……?」

 

何故か明確な敵意に眉を顰めたが、パキラがそのまま立ち去り自身の担当する部屋に戻ったので確認出来なくなっている。

 

………

……

 

ネット配信が早速始まりツカサの動きが実況されていた。

 

「さて今回の挑戦者はどこまで耐えられるでしょうか。見た感じだけで言いますと、彼は前の三人の挑戦者より頼りなさそうに見えますが……特別ゲストの前々ホウエンチャンピオンのダイゴさん、如何でしょうか」

 

「どうも。ですが見た目だけで強さが決まる訳ではないですよ」

 

ダイゴは年の離れた友人であるツカサが挑むと知って二つ返事で受けたらしく、シロナにもこの話は言っていたが断った事をマサラタウンで後悔していた。

 

 

「ですがあんなのほほんと歩いている姿を見ると……」

 

画面の中のツカサはかなりリラックスしているように見え、視聴している者達からもダメだろこいつというコメントが多い。

 

「バトルを見れば明らかになりますよ。……彼が最初に選んだのはドラゴンタイプの四天王みたいですね」

 

「ドラゴンタイプの四天王、ドラセナさんですね。……ドラミドロを相手に挑戦者はリザードン。ドラミドロの攻撃が当たらない! そしてじしんの攻撃で……一撃!?」

 

ドラミドロの攻撃を悉く避け、空から地面に向けて拳を叩きつけて地震を引き起こして一撃で倒していた。

 

「あのリザードンはかなり育てられていますね。ポケモンがトレーナーを、トレーナーがポケモンを信頼しているから力を発揮出来る。どちらも自身が負けるなんてこれっぽっちも考えていないのがよくわかりますね」

 

「ドラセナが次に出したのは……オンバーン! 対して挑戦者はリザードンを戻し……ニンフィアです! 可愛さを振りまきながら現れました!」

 

「空に逃げるオンバーンに触覚を巻きつけて……引き摺りおろした!? 間髪入れずムーンフォースと容赦ない動きです」

 

オンバーンを超える力で引き摺りおろしたわけではなく、地面に叩きつけてからのムーンフォースでありドラセナもツカサもドン引きしていた。

 

「……はっ!? オンバーンがダウン、次はチルタリスです!」

 

「挑戦者は変えず……ああ、もうこれは挑戦者の勝ちでしょう。ニンフィアの素早い動きによる死角からのムーンフォースに耐え切れずダウン、最後のクリムガンも歯牙にもかけていません」

 

「挑戦者、四天王ドラセナを難なく突破しました……」

 

 

直後今すぐに資料集めろ!だの遠くで人が慌ただしく走り回る姿や音が聞こえ、ダイゴは事前に善意からツカサの情報を集めておくように言ったのが無駄になったなと内心で溜息を吐いていた。

 

沸点が分からないドラセナがニコニコしながらツカサと会話をし、握手をしてから審判をしていた者にツーショットで写真を撮ってもらっていた。

 

「ふふ、相変わらず……」

 

「さぁ、挑戦者は次に誰に挑むのでしょうか」

 

 

何故か連絡先まで教えてくれたらしく、戸惑いながらも礼をして部屋から出て行った。

 

初戦を快勝で終わらせて緊張が解かれたのか軽く身体を解し、そのまますぐに正面の開いている扉の奥へ向かって行く。

 

昇降機に乗り上に向かうと奥で男性が背を向けて佇んでいるのが見える。

 

一歩踏み出そうとすると部屋の仕掛けが作動し、あっという間に部屋が水で満たされ神秘的な光景に呆気に取られ見惚れていた。

 

「選んだ相手は水の四天王ズミ! 仕掛けで変わる部屋はやはり神秘的ですねー……」

 

「そうですね。……ブロスター、ギャラドス、スターミーと育てられた四天王のポケモン達を彼のラプラスは10まんボルトの一撃で倒しています」

 

「水の四天王には有効すぎる選出ですね。そして最後に来るのはズミのエースポケモン、ガメノデス!」

 

エースにはエースをとラプラスを戻してルカリオを出し、初の晴れ舞台だと気合いたっぷりに空気が痺れるような咆哮を上げていた。

 

「ッ! モニター越しとは思えない迫力。あのルカリオ……やはり速い」

 

ガメノデスの攻撃の悉くを最低限の動きで捌き、飛びかかってきた所に蹴りを入れて吹き飛ばしている。

 

体勢を整えたガメノデスに高速で接近し、静かで軽く見える一撃が放たれていた。

 

そんなダメージがなさそうなガメノデスにズミが指示を出すも反応がなく、そのまま白目を剥きゆっくり後ろに倒れダウンしている。

 

審判がツカサの勝利判定をし、二戦目の最後は静かに終わっていた。

 

 

「二人目の四天王を撃破! この強さ、これはもしかしてもしかするかもしれません!」

 

「ポケモンとの関係も良く、礼節も弁えているので四天王にも気に入られていますね。……料理の話ですっかり意気投合しているようです。カントーの郷土料理を教える代わりに、カロスの郷土料理を教えると互いにいい笑顔で約束してハグをしていますね」

 

同じように審判がツーショット写真を撮り、連絡先を交換して手を振って部屋から出て行った。

 

「何故かハグした瞬間からコメントが多く届いております。ズミ×挑戦者、挑戦者×ズミと謎のかけ算コメントも多数……」

 

「あはは……」

 

そんなやり取りがされているとはつゆ知らず、ツカサは三人目の四天王の元へと歩を進めている。

 

そしてまだツカサの情報が集まり切らず、皆が焦りながら作業を続けていた。

 

「えー……ダイゴさん、この快進撃はどこまで続くと思いますか?」

 

「このままチャンピオンまで駆け抜けるでしょうね。今の僕……私でも互角に戦えるかどうか」

キラリと光る石のハマった指輪をチラッと見ながら呟いている。

 

「え……あの歴代ホウエン最強と言われた」

 

「さぁ、彼が三人目の四天王の元に着きましたよ」

 

既に昇降機で上がっており、部屋に入ると同時に上から巨大な剣が二本落ちてきて地面に刺さっている。

 

それが回転すると壁が降り始め、三人目の四天王の元へと続く道が出来ていた。

 

 

「三人目の四天王は鋼の男、ガンピ!」

 

「彼はファイアローを出して……クレッフィの特性いたずらごころによって、まきびしが撒かれましたね。満足している所にファイアローのかえんほうしゃが決まりダウンしました」

 

「二体目のダイノーズを見てルカリオに交代……はどうだんが決まるも耐えています! しかし! ダイノーズ、ルカリオのしんそくを捉えられない!」

 

ダイノーズは反撃をしようにもはどうだんの一撃が重く狙いが定まらず、まきびしを気にせず死角から高速で迫ってきていたルカリオに蹴り飛ばされてまきびしの上を滑りながらダウンしていた。

 

「やはりあのルカリオは強いです。トレーナーを愛していなければ、あのまきびしの上を走ろうなんて考えを持ちませんよ」

 

「跳ねて蹴り倒せばいいから、と指示を出していましたがそれでは間に合わないと自ら走る事を決めたんでしょうね……要望に応える為にちょっとだけ跳ねたルカリオのキックが可愛いと思いました」

 

「撒かれているまきびしを考慮してファイアローに交代しました。ガンピはハッサムですがこれは流石に……やはりかえんほうしゃで一撃ですね」

 

ファイアローは縦横無尽に飛び回って狙いを定められないように動き、姿を見失ったハッサムの背後から蹴りバランスを崩した所にかえんほうしゃを決めていた。

 

 

「最後はガンピのエース、ギルガルド! 盾と剣が一体化したような見た目、挑戦者も目をキラキラさせて見ています!」

 

「男の子ですからね。自分もあのポケモンが欲しいという思いが伝わって来るのが分かりますよ。そしてファイアローと交代でリザードンが出されました」

 

「しかしあの綺麗な石のついた首飾り、リザードンにお洒落させているトレーナーは珍しいですね」

 

「そうですね」

 

いきなりフォルムが変わったギルガルドのせいなるつるぎがリザードンに襲いかかるも鍛えて頑強になった尻尾で弾き、隙だらけになった身体の面の部分を更に尻尾で叩いて地に叩きつけている。

 

そのまま真上に飛び上がると口を開き、倒れているギルガルドに向かって大の字をした炎を吐き出していた。

 

立ち上がり避けようとしていたが圧倒的な火力の炎に縫い付けられ、そのままギルガルドがダウンするまで轟々と燃え上がり続けていた。

 

 

「き、決まったぁぁぁ!! 三人目を難なく突破! ここ十年近くこのように実況をさせてもらっていますが、四人目に挑戦する者は初めてです!」

 

「彼のように力に溺れず、傲慢にならず、慢心をせず、ポケモン達を愛し愛される。これだけでも四天王といいバトルは出来るはずなんですよ。ただ勝てるかどうかは別として」

 

 

 

二人が真面目な話をしている間にツカサは連絡先とツーショットの写真を撮り、部屋から出て四人目の前にポケモン達の怪我を傷薬等で治療していた。

 

連戦で疲れている面々には甘い木の実や凄い虹色ポロックを与えて小腹を満たして疲れを癒し、皆に優しく感謝の言葉をかけてボールに戻している。

 

「……あんな幸せそうなポケモン達、見た事がないですね」

 

「いい事です。……最後の四天王を見て彼は少々険しい表情を見せていますね」

 

「炎の四天王パキラ、私の後輩でもあります。彼女も敵意のような物を向けているような……始まったバトルもカエンジシをゲッコウガのみずしゅりけんが襲いダウン!」

 

「二体目のファイアロー、三体目のコータスもみずしゅりけんを避け切れずダウンです。正に疾風怒濤と言った所ですね」

 

「パキラのエース、シャンデラが遂に登場! ……私は今鳥肌が立っています。彼の前の三人の挑戦者は様々なメディアが注目して経歴等を取り上げ話題にしておりました。ですが彼の事を記事にしたのはミアレ出版のみ。その彼がまさかここまで来るとは予想しておりませんでした」

 

「時間まで贅の限りを尽くしてリーグの施設で過ごした三人と二ヶ月間自分と仲間を鍛えていた彼。それを考えれば結局彼が一番強いって事になりますよ」

 

シャンデラが放つ炎をみずしゅりけんで相殺し、蒸気を煙幕代わりにゲッコウガは走り始めた。

 

そのまま死角から強襲し水を纏った脚でシャンデラを蹴り距離を取っている。

 

着地と同時にシャドーボールが襲いかかるもゲッコウガはそれを軽く避け、ツカサのつじぎり!という言葉に頷いて応えていた。

 

その場で水で出来た刀のような物を創り出し、しっかりとそれを握ると身を低くして駆けていく。

 

真っ直ぐに高速で迫って来るゲッコウガにシャドーボールを放ち続けるもそれが全て切り裂かれて無効化され、迎撃に失敗した段階で逃げられるはずもなくシャンデラはそのまま横一文字に斬り捨てられていた。

 

 

この一撃に実況している二人だけでなく、バトルをしている現場までも静まり返っている。

 

ゲッコウガが水で出来た刀を消し、シャンデラに背を向け目を閉じてツカサの元にゆっくり戻っていく。

 

シャンデラがゲッコウガの方を向きシャドーボールを放とうとしたが、ゆっくりと後ろに倒れていった。

 

「き……決まったぁぁぁぁぁぁ!! 遂に四天王を全員倒しチャンピオンに挑むトレーナーが現れました!!」

 

「おめでとうツカサ。まだ本気を出していない君ならチャンピオンにも勝てるはずだ」

 

「この続きは地上波でもお届けいたします!! ダイゴさんも今から別のスタジオに急ぎましょう!!」

 

「分かりました」

 

「ここまでの放送は私、ユリーシャと」

 

「ツワブキダイゴがお送りしました」

 

放送が一時的に終わり、カロス全土や他地方にまでカロスリーグのチャンピオンへの挑戦者が現れた事がテレビやネット等で速報として流れている。

 

………

……

 

 

「レッドさん、グリーンさん、ダイゴさん、シロナさんレベルを想定してたからよかった。後はチャンピオン……誰なんだろう」

 

直接会うまではと調べて来なかったらしく、ドキドキソワソワしながら大きな扉が開くのを待っていた。

 

 

「ツカサ様、申し訳ありません。チャンピオンの準備がまだ出来ていないので、二時間程お待ち頂きたいのですが……」

インカムを付けたリーグ職員が慌てて来て、申し訳なさそうに言っていた。

 

テレビ放映の準備にノーマークだったツカサのデータ収集、現チャンピオン以来のカロスリーグのチャンピオンとのバトルにお祭り騒ぎになっているカロスの者達が落ち着くの待ちと、二時間は待機させるつもりのようだった。

 

カロスの者達は現チャンピオンの魅せるバトルをイベントで見る事はあっても全力バトルは見た事はなく、今回のバトルを見る為にあらゆる企業や店が休みになりホール等に集まってモニターの前でワイワイ騒いでいる。

 

テレビのあるバーやカフェも満員になっており、今か今かと始まるのを待っていた。

 

 

 

「あの、それだと自分とこの子達のお昼ご飯が……」

 

「それはこちらですぐにご用意致します」

 

そう言って職員がインカムで指示を出すと、あっという間に広間の隅にテーブルや椅子が用意され始めている。

 

そのまま用意されていく料理がかなり豪華な物ばかりでツカサは引き、ポケモン達用の物も普段ツカサが何かの記念やご褒美として用意するような物ばかりが並んでいた。

 

「おかわりもございますので、足りなければ私にお申し付けください」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

仕方がないとそのまま席に着き、それから全員ボールから出して今回は特別だからと言い聞かせてゆっくり食べさせ始めた。

 

「美味しいなぁ……一般家庭だからこんな贅沢な料理を食べる機会なんてリーグに挑戦する時くらいしか食べられないや」

 

母親であるサキに叩き込まれていた完璧なテーブルマナーで食べていて、側に控えている職員も内心驚きながらも関心している。

 

ポケモン達も食べ散らかす事をせず、互いが互いを思い合って美味しい物を分け合っていたりと微笑ましい。

 

 

 

二時間待ちの間に特番が放送され始めており、ようやくツカサのデータが公開されていた。

 

『マサラタウン出身の17歳。幼馴染にはあの元カントーチャンピオンのレッド、グリーンの両名がいるそうですよ!』

 

『それよりもサイホーンレーサーとして一世を風靡して、今も尚伝説として君臨しているサイホーンレーサーサキの息子という所に注目するべきだと』

 

『名前は変えられていますけどドラマ化もしてますよね。あの紅い暴風の道を遮る者は悉くが吹き飛ばされる……引退レースでゴール地点で待っていた旦那様を吹き飛ばしていたのは今も語られていますね』

 

『あれは今でもハプニング物のTVで放映される程ですから。今でもオーキド研究所の敷地内に紅いサイホーンはいますよ』

 

『それは個人的に見に行ってみたいですねー』

 

 

 

レイナはすっかり元気になったピカチュウとソファに座って仲良くテレビを見ており、対面に座る彼女の両親は開いた口が塞がらなくなっていた。

 

「お兄ちゃんのお写真!」

 

「ピッカ! ピカチュ!」

 

「まさかあの先生が……」

 

「あ、あなた、やっぱりあの時のチョコレートの詰め合わせだけじゃダメじゃないかしら?」

 

こっそりツカサが与えていたでんきだまをネックレスのようにして首から下げるピカチュウを見て呟いていた。

 

「あ、ああ。改めて先生を家に招きたいが……もしチャンピオンに勝ってしまったら、忙しいから招くことは出来なくなるな」

 

「お兄ちゃんお家に来るの?」

 

「ピカチュ!?」

 

写真が消えて難しい話をするテレビよりも、大好きなお兄ちゃんが家に来てくれるような話をする両親の方に興味津々だった。

 

招く云々を耳聡く聞いていたピカチュウは急に身だしなみを整え始め、耳に付けてもらったリボンの位置も気にしている。

 

「お兄ちゃんはレイナがいい子にしてたら来てくれるよ」

 

「いい子にしてる!」

 

「ピッカ!」

 

………

……

 

『……あの、ツカサ青年は属性盛り過ぎじゃありませんか?』

 

『この二年間でポケモンブリーダー、ポケモンドクターの資格を取得。ブリーダーとしての評価も現地研修では文句無しの最優、オーキド研究所所属扱いだったようです』

 

『だから彼のポケモンはあんなに懐いていたんですね。……ポケモンドクターとしては現在も勉強中で、他のドクターと同じように既に内科は診る事が出来るようですね。ですが、彼は内科ではなく外科に……身近すぎる故に誰もがなろうとしない外科に進んでなったようです』

 

『これを聞いた各センターにトレーナー達は喉から手が出るくらい彼を欲しがるでしょうね。内科も出来る外科は貴重ですから、彼がチャンピオンに破れたとしてもカロスリーグは絶対に確保に走りますよ』

 

ほとんどの者が研究所に集まり見ていたマサラタウンの面々は阿鼻叫喚だった。

 

今まではただの遊び歩いている穀潰しだと思っていた存在がブリーダーとドクターの資格を取得するのに動いていた事を知り、それまで冷たくあしらっていた者達は頭を抱えている。

 

 

母であるサキは自宅で遊びに来ていたハルカ、ヒカリ、メイと見ていた。

 

「ドクターでブリーダー……はっ! ツカサは負けないだろうけど、もし負けちゃったらお姉さんの私が雇ってあげてもいいかも! お義母さん、安心してくださいね!」

 

「お義母様、その時はあたしが雇いますから大丈夫です!」

 

「私は結婚して主夫になってもらえればそれでいいかなぁ……」

 

「ふふ、引く手数多ね」

 

………

……

 

『これだけでもお腹いっぱいなのにまだまだ濃いですよー。まず現ホウエンチャンピオンのハルカ、現シンオウチャンピオンのヒカリとは従姉妹という事です。それぞれの旅に同行し、当時ホウエンを騒がせていたアクア団とマグマ団と戦いどちらも解散に追い込んだと』

 

『あの当時の事は今でも思い出せますね』

 

『気になる発言は後で聞くとして……シンオウではギンガ団を相手に大立ち回りをして野望を砕き解散に追い込んだとの事ですよ』

 

『その時点で迷惑な組織を三つ潰している事になりますね』

 

『現イッシュチャンピオンのメイとは母親同士が仲の良い先輩後輩で、一人旅が不安だからと彼を同行させたようですね。そしてかつて倒され新生していた新プラズマ団の野望を共に挫いたと。旅に出た当初にメイのおねだりで出演したポケウッドの作品で……リオルキッド、ルカリオキッド役を担当!?』

 

『あー、そっちに食いつきましたか』

 

『勝っても負けてもインタビューは私が行います! ええ、決して握手とサインが欲しいとかじゃありませんとも!』

 

カロスでの人気はツカサが思っているより凄く、今までの情報よりもこの情報に皆が食いつく程。

 

 

自宅でサナと両親と共にテレビを見ていたセレナはハッとしてBDBOXを取りに部屋まで走り、皆が待つリビングまで急いで戻っていた。

 

「これに付いてたリオルキッドとルカリオキッドのブロマイドに変身前のリオ君のブロマイド……それとツカサにお願いして撮らせてもらった写真」

ラミネート加工された三枚のブロマイドと無駄にいい笑顔なツカサの写真を並べている。

 

変身前の役は眼鏡でボサボサな髪、暗い表情と王道の正反対キャラだった。

 

 

「やっぱりこれツカっちゃんだ……」

 

「何で話してくれなかったのかしら……」

 

「それはありのままのツカサ君をみんなに見て欲しかったからだろうね」

 

「そうね、きっと先入観で見てもらいたくなかったのよ」

 

ただ恥ずかしいのとノリノリでヒーロー役をやったのが黒歴史なだけだったりする。

 

「サナはもうツカっちゃんとお友達だから平気です!」

 

「アタシも……あぁ、でもどうしよう。ツカサはリオ君なのよね……」

 

誰もがリオルキッドやルカリオキッド派な中、セレナは変身前の自分を曲げないリオに一目惚れしてそれが初恋だった。

 

 

「おや、そろそろチャンピオン戦が始まるのか切り替わるみたいだよ」

 

………

……

 

切り替わると帽子を取ったツカサが映り、準備が終わったと言われチャンピオンの待つ場所へと向かい始めていた。

 

気負ったり緊張した様子がなく、ワクワクした顔で早足になっているのが分かる。

 




面倒だったのでさっくり書いた。


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チャンピオンとの戦い、申し分程度の後日

巨大な扉から中に進むと玉座のある部屋に出て、その部屋の中央にある昇降機に乗ると上に昇って行く。

 

到着した部屋は床がポケモンの属性で描かれたステンドグラスのように綺麗な造りになっており、陽の光が入り巨大なレースのカーテンが風で揺られていた。

 

光の向こうに見える姿は……

 

「ようこそ。あたくしがチャンピオンのカルネと申します……なんてね」

 

「カルネさん!?」

 

「ふふふ、お久しぶり。私の代わりにフレア団を止めて、カロスのみんなを助けてくれてありがとう」

 

「いや、あれは成り行きでしたから。時間もなかったので全力でしたけど」

 

「さぁ、遠慮は無用よ! 私も本気、貴方も本気でこのバトルを楽しみましょう!」

 

「俺の全力、ぶつけさせてもらいます!」

 

 

距離を取ると部屋が変わり始め、バトルに適した広くそれでも豪華なバトルフィールドになっていった。

 

ツカサは一対一で全員に出番を与えようと考え、最初にファイアローのボールに手を伸ばしていた。

 

「行くわよ、ルチャブル!」

 

「頼むぞ、ファイアロー!」

 

 

向き合う二体は互いに目を逸らさずトレーナーの指示を今か今かと待っている。

 

「ファイアロー!」

 

「ルチャブル!」

 

名前を呼ぶ声を聞くと同時に空に飛び上がると空中戦が繰り広げられ始めた。

 

鍛え上げられたファイアローはルチャブルの攻撃を避け、かえんほうしゃで牽制しながら隙を探っている。

 

「ルチャブル、シザークロス!」

 

「ファイアロー、ブレイブバード!」

 

ルチャブルの鋭い爪から放たれた一撃を身体の力を抜いた自然落下で避け、それに驚くルチャブルの背後に高速で回り込み蹴落としていた。

 

体勢を整え上空のファイアローを見たルチャブルだが、翼を畳みこちらに高速で突っ込んでくる姿が見え……

 

「くっ……!」

 

「っ!」

 

二人は二体が共に地面に突っ込んだ衝撃で起きた風を腕で遮りながらどうなったかを見ている。

 

風が収まると目を回して仰向けでダウンするルチャブルと、反動で少々飛び方がフラついているファイアローの姿が見えた。

 

 

「ファイアロー、お疲れ様。後で治療するから安心してお休み」

 

「ルチャブル、ご苦労様」

 

それぞれボールに戻すと二人は新たなボールを手にし、目が合うと互いに微笑み同時にボールを投げている。

 

「さぁ、ここからは俺達のステージだ! ルカリオ!」

 

「ガチゴラス、自慢の顎で噛み砕いてあげなさい!」

 

 

ルカリオはいつものように攻防一体の構えを取り、ツカサがメガリングに触れようとしたのを見て首を横に振っていた。

 

ガチゴラスは咆哮を上げて睨みつけるようにしてルカリオを見ていた。

 

「そのままで戦いたい、か……それなら一撃で決めろ! ルカリオ、インファイト!」

 

「こちらも全力で行くわよ! ガチゴラス、もろはのずつき!」

 

ガチゴラスが先制とばかりに脚に力を入れて加速し、頭をルカリオに向け守りを捨てた一撃を叩き込もうとしていた。

 

ルカリオは一度目を閉じて呼吸を整え、再び開くと突っ込んで来るガチゴラスに真正面からぶつかる事を決めて波導を練っている。

 

そしてガチゴラスが射程距離に入った瞬間、突っ込んでくる頭に向かって全力で自慢の拳を叩き込んでいた。

 

凄まじい衝突音が響き、ガチゴラスもルカリオもぶつかり合ったまま身動きを取らず固まっている。

 

「……ルカリオ」

 

「ガチゴラス?」

 

ぐらりとガチゴラスが横に倒れ、ルカリオも右腕を負傷しており、このバトル中は戦う事は出来なくなったのは明らかだった。

 

 

「ルカリオ、今回のバトルはもう戦っちゃダメだ」

 

「ガチゴラス、あのルカリオを実質相討ちに持ち込んでくれてありがとう。お疲れ様」

 

二体をボールに戻すと互いに次のボールに手を伸ばし、また同じタイミングでそれを投げている。

 

 

「ラプラス、お前の出番だ!」

 

「ヌメルゴン、お願いね!」

 

綺麗な歌声を響かせながらラプラスは現れ、相手のヌメルゴンが思わず拍手をしてしまう程だった。

 

「この歌声も特訓の成果かなぁ。……ラプラス、ふぶき!」

 

「綺麗な歌声……ヌメルゴン、りゅうのはどう!」

 

ラプラスのふぶきとヌメルゴンのりゅうのはどうが拮抗していたが、ラプラスの気合い勝ちかふぶきがりゅうのはどうを呑み込みそのままヌメルゴンをも呑み込んでいった。

 

ふぶきが収まった後には氷漬けになったヌメルゴンが残り、溶かして出てくるのではと二人で少しの間様子を見ていたが審判がダウン判定を下して勝利を拾っている。

 

「ラプラス、お疲れ様」

 

「ヌメルゴン、今回は運が悪かったわ」

 

 

残り三体だとツカサは気合いを入れ直してラプラスを回収し、そろそろ特訓の成果を見せようとこの旅の始まりと共に過ごした相棒のボールに手を伸ばした。

 

「やろう、ゲッコウガ!」

 

「ふふ、アマルルガ!」

 

何かをしようとするゲッコウガを見てアマルルガはそれを見届けようと考えたのか、カルネをチラリと見て頷かれるとそのままジッとしている。

 

「これが俺達の絆の力……!」

 

「……!」

 

ツカサとゲッコウガは同じタイミングで同じように右手を上げると握り締め、ゲッコウガは瞳が赤く輝いている。

 

「こうやって誰かに見せるのは初めてだけど……チャンピオン相手なら全力だ!」

 

「!」

 

その言葉を呟くと二人はシンクロし、ゲッコウガがいきなり水柱に呑み込まれていった。

 

唐突に起きた不可思議現象にカルネは目を見開き、アマルルガも驚いたのかチラチラとカルネを見ている。

 

 

「……名前を付けるならキズナゲッコウガ、かな」

 

「!」

 

水柱が収まると姿が変わり水に包まれたゲッコウガが現れ、その包まれていた水もゲッコウガの背に集まっていき大きな水手裏剣へと姿を変えていた。

 

「凄い……メガシンカではないのに同じような力強さを感じる」

 

「ゲッコウガ、上げていくぞ!」

 

「それでもアマルルガなら!」

 

一心同体故に指示も基本的に考えるだけでよく、ゲッコウガはアマルルガの元へ走り出し攻撃を避けながら背中の水手裏剣で攻撃を繰り返している。

 

しかし手練れなアマルルガのフェイントにかかり、長い首を使った打撃を受けて吹き飛ばされていた。

 

「うぐっ……! 悪い、判断を誤った」

 

「!」

 

「ツカサ君?」

 

完全にシンクロしている弊害でゲッコウガの受けた痛みもフィードバックし、咄嗟にガードに使った右腕に激しい痛みが走り抑え堪えている。

 

「……ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

「アマルルガ、かみなりよ!」

 

フィールドに降り注ぐかみなりを避けながらゲッコウガは駆けていき、背中のみずしゅりけんを投げつけた。

 

それが直撃して集中力が途切れかみなりを落とせなくなりアマルルガはふぶきを起こそうとしたが、その隙を見逃さないゲッコウガのみずしゅりけんが次々に襲い掛かっていく。

 

「ゲッコウガ!」

 

「っ……アマルルガ、次のは避けて!」

 

 

フラつくアマルルガの頭に着地し、そのまま高く跳び上がると掌を空に向け集中していく。

 

二人の想いが乗り特訓の時ですら見た事がない巨大なみずしゅりけんが出来上がり、そのまま真下にいるアマルルガに向けてそのみずしゅりけんを投げつけてツカサの前に着地していた。

 

「ッ!」

 

「くっ!」

 

巨大なみずしゅりけんを弾こうとするアマルルガだが抑え切れず、直撃してダウンした途端にみずしゅりけんがただの水になり辺り一面水浸しになっている。

 

 

「……一週間前はスタミナ面で負担があったのに、今回はダメージ以外の負担がなくなってる。ゲッコウガ、格好良かったよ」

 

「アマルルガ、お疲れ様でした」

 

二人がポケモンに声をかけてボールに戻す間に審判の指示で排水が行われ、あっという間に乾いて残り二回のバトルも安心して行えるようになっていた。

 

 

「さぁ、ニンフィア出番だ!」

 

「パンプジン、がんばって!」

 

 

「フィア、フィーア!」

 

「あの、ニンフィアさん。真面目にお願いします」

 

パンプジンはボールから出てすぐにフィールドに立ったが、ニンフィアはボールから出ながらツカサに触覚を巻きつけて頬擦りをしに戻っていた。

 

ツカサの事が大好きなのが分かりカルネもほっこりした顔で見ており、審判も同じような顔で見ていた。

 

存分に甘えたニンフィアはフィールドに降り立ち、パンプジンをさっさと片付けてやろうという他のニンフィアとは違った好戦的な顔をしている。

 

「んんっ! ニンフィア、シャドーボール!」

 

「パンプジン、タネばくだんで集中させないように!」

 

髪のような部分で幾つものタネばくだんを投げつけ始めたが……

 

「フィア~♪」

 

ニンフィアは爆発する前のタネばくだんを触覚で器用に掴むと逆にパンプジンに投げ返し始めていた。

 

まさかのニンフィアの行動にパンプジンは焦り必死に逃げ惑っている。

 

 

「うわぁ」

 

「えぇぇ……」

 

流石のカルネもツカサのニンフィアのようなポケモンを見た事がなかったらしく、思わずドン引きしていた。

 

パンプジンが転んだのを見てニンフィアはシャドーボールを放ち、起き上がり追いかけてくるシャドーボールから逃げようとするパンプジンに飛びかかり蹴り倒している。

 

そのままシャドーボールが直撃し、パンプジンの意識を刈り取っていた。

 

「ゲッコウガの活躍が霞むかのような一方的なバトルだったなぁ……」

 

「パンプジン、ニンフィアが苦手にならないといいのだけれど……」

 

 

ニンフィアを戻すと次が最後なんだとツカサは息を呑み、トリを務めるポケモンの入ったボールに手を伸ばした。

 

「ふふ、この子が私の切り札。サーナイト、全力で相手をしましょう!」

 

「リザードン、みんながお前の為に道を切り拓いてくれたぞ。だから見せてやろうぜ!」

 

ボールから出たリザードンはサーナイトを見て咆哮を上げ、いつでも行けるとツカサをチラッと見ている。

 

「最初から全力よ。サーナイト、メガシンカ!」

 

カルネがネックレスに埋め込まれたキーストーンに触れると光が溢れ出し、サーナイトが同じように付けていたネックレスのメガストーンも光を放ち混ざり合っていく。

 

光の繭に包まれたサーナイトが光を吹き飛ばすと、その身を優雅なドレスを纏ったかのような美しい姿へと変えていた。

 

 

「さぁ、ツカサ! 貴方も全力を出して私に全てをぶつけなさい!」

 

「今、俺がこいつと出せる全力を……我が心に応えよ、キーストーン! 進化を超えろ、メガシンカ!」

 

二ヶ月間考えていた決め台詞をここぞという所で使いながらキーストーンに触れている。

 

ツカサのメガリングとリザードンのメガストーンから光が溢れ出し、そのまま腕を高く掲げると光が混ざり合いリザードンが包まれていく。

 

 

互いに通じ合っていても今までメガシンカする事が出来ずリザードンは落ち込んでいたが、この晴れの舞台でツカサの為にメガシンカをしたいという想いが更なる高みへとリザードンを導いていた。

 

自分を愛してくれているツカサの想いを感じながら暖かな光に包まれ、その想いに応えようと考えただけで内から力が溢れ出してくる。

 

暖かな光からも力を吸収し、それが満ちたと思った時には包んでいた光が吹き飛び生まれ変わった姿を見せていた。

 

「メガリザードン!」

 

身体が黒く染まり翼の形状も変化し、尻尾の炎が蒼くなり収まりきらない蒼い炎が口の端から漏れ出ている。

 

………

……

 

『な、なんと挑戦者ツカサはゲッコウガ以外にも切り札を持っていたぁぁぁ!』

 

『あの台詞は流行るでしょう。それと今更ですが彼は生放送されている事に気がついていませんよ』

 

『まさかそんな』

 

『そうじゃないとツカサはあんな派手にゲッコウガを見せたり、メガシンカに台詞を言ったりしませんから。インタビューの時に教えれば顔を真っ赤にして目が泳ぐと思いますよ』

 

『それはそれで私的にはいいと思うので楽しみですね!』

 

『いよいよ決着の時が来ましたね。カロスに新たなチャンピオンが生まれるか、このまま押し負けてしまうか……公平に見れない事を謝罪させてください。がんばれツカサ、君なら勝てるよ』

 

『まさかとは思いますが、ダイゴさんはツカサ君とは……』

 

『ご察しの通り、年の離れた友人ですよ』

 

「ツカサの交友関係も問いたださないと」

 

「サナも一緒にやる!」

 

………

……

 

サーナイトは浮き上がるとフィールドを飛び回りながらシャドーボールを放ちリザードンを狙うも、吐き出された蒼い炎に防がれ逆にだいもんじが襲い掛かられサイコキネシスで防いでいる。

 

ホッとしたサーナイトの頭上からリザードンが高速で襲い掛かり、尾で薙ぎ払い地面に向かって叩き落としていた。

 

地面ギリギリの所でサイコキネシスを使って再び宙に浮き、カルネをチラッと見て頷くのを確認すると空に両手を上げてきあいだまを作り出し、追撃しに追ってきたリザードンに向けて放っていた。

 

そのきあいだまをつばめがえしの代わりに覚えさせていたドラゴンクローで引き裂き、サーナイトに追いつくと右腕で胴体を掴み地面に叩きつけてじしんを起こしている。

 

「次が最後の一撃!」

 

「私のサーナイトが手も足も出せていない……!?」

 

「これが俺達の見せる最高の一撃! フレアドライブ!」

 

「近づけさせたらダメよ! ムーンフォース!」

 

かなりのダメージを受けたサーナイトがフラフラと浮き上がり右手を前に出すと月の光が集まり出している。

 

リザードンは蒼い炎を周囲に大量に吐き出し、そのままそれを自ら纏い始めた。

 

月の光が集まるのとほぼ同時に炎を纏い終わり、それが放たれると同時にリザードンもサーナイトに向かって突っ込んでいった。

 

ぶつかり合い始めは拮抗していたが、受けたダメージが大きすぎたらしく徐々にリザードンが押し始めている。

 

「……成敗!」

 

ツカサの言葉に後押しされ、リザードンはムーンフォースを貫きサーナイトごと壁にぶち当たって止まっていた。

 

「サーナイト!」

 

壁にめり込んだサーナイトのメガシンカが解け、リザードンも反動で受けたダメージが大きくフラフラ着地するとメガシンカが解けていた。

 

よくやってくれたと労うとすぐにリザードンをボールに戻し、カルネもサーナイトをボールに戻していた。

 

 

「勝った……んだよなこれ」

 

「ええ、おめでとう! とてもいいバトルだった……あなたとポケモン達、とても格好良かったわ。プラターヌ博士がきっとあなたが私を倒すからって、時間をかけてミアレシティで色々楽しそうに準備していた気持ちが分かったわ」

 

「準備?」

 

「でもその前にもう少しだけ私にお付き合いくださいます?」

 

「それはもちろん」

 

カルネは手招きをしてツカサと共に乗ってきた昇降機に乗り、更に上の最上階へと向かっていった。

 

 

そのまま乗っていると静かで厳かな雰囲気の部屋に着き、誘われるままに降りて着いていく。

 

「ここが殿堂入りの間。ポケモンとトレーナーを永遠に刻んでおく場所」

 

促されて機械に近づくと六つのモンスターボールを填める穴が開いているのが見える。

 

「ここにセットするんですね」

 

「そうよ。ツカサ君、貴方のポケモンへの思い。貴方の為に力を奮い、戦い抜いたポケモンを記録して永遠のものにしましょう?」

 

「はい!」

 

ゲッコウガ、ファイアロー、リザードン、ニンフィア、ルカリオ、ラプラスと仲間になってくれた順にボールを填めていく。

 

カルネがその場を離れ、最後にちょっとした操作をするとスキャンが始まりモニターにツカサが映し出された。

 

それを囲むようにセットした仲間達が映し出され、無事に登録が完了していた。

 

………

……

 

華々しい勝利から一週間が経過し、雑誌の取材やテレビのインタビューその他多くの事に翻弄されながら過ごしている。

 

数日前に行われたプラターヌが国をも動かして催したパレードとカロスエンブレムの授与には信じられない程の人が集まり、レッドカーペットを歩きながら笑顔で手を振ってみせるだけで皆が黄色い声を上げる程の人気ぶりだった。

 

その場に現れバトルをしてほしいというAZ、それを止めようとする警備員達に知り合いだからと言いバトルを受けていた。

 

そして皆が生で見たがっていたゲッコウガを出し、当たり前のように最初から全力の状態でバトルに挑んでいた。

 

「そんなAZは今、我が家にいるんだよなぁ。しかしリーグのチャンピオン戦が全地方で生放送されてたとかなぁ……」

自宅のベッドで横になりながらボーッとして呟いている。

 

「リーグはこれで来期まで挑戦出来なくなったみたいだし、それまではカルネさんがチャンピオンのままなのはありがたい」

 

「ツカサ、朝食が出来た。早く降りてくるといい」

 

「わかったよAZ、フラエッテ」

 

ツカサはニコニコしながら周囲を飛び回るAZのフラエッテにも答え、欠伸を噛み殺しながら下に降りて行った。

 

 




二年前に途中まで書いて放置、サンムーン発表で途中まで書いて放置、発売直前でやる気出して最後まで書いた。

本当ならここから後日談やら、番外編で劇場アニメXY編とかやりたかったけどサンムーン出ちゃうからおしまい。


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後日談的なお話達
それからのお話


十年ぶりの新チャンピオンだからか、派手なワクワクするバトルを魅せたからか、溜まりに溜まった賞金がツカサにごっそりと入っている。

 

どうしたものかと考えた結果、自宅の裏に広がる広大な森や山を買おうと所持している者を探し出して交渉していた。

 

「あー、しんどい……危ないから丈夫な柵を作って子供達が入れないようにするなら無料で譲渡するって言われるなんてなぁ」

 

ツカサは動きやすいジャージ姿で木槌や柵に使う素材が大量に置かれ、タオルで汗を拭っている。

 

「私も手伝おう」

 

「ありがとうAZ。端から端までやったら権利書やらを正式に渡してくれるっていうからがんばろう」

 

………

……

 

未だ続く取材を受けながらも毎日柵を作り、研究所に預けていたローブシンをオーキドに送ってもらいルカリオと共に手伝ってもらっている。

 

AZも含めた二人と二体で一週間で作り終え、無事に一帯の権利書を貰っていた。

 

同じ町外れで隣のセレナの両親はツカサが何をするのか毎日不思議そうに見ており、セレナは毎日お昼に慣れない手際で作ったサンドイッチと紅茶を入れた水筒を持っていく姿が見られる。

 

権利書をもらって数日が経過してツカサ宅の裏庭が森への入り口になり、町へ迷い込む野生のポケモンが出なくなって安全になっていた。

 

「作業中に襲ってきたストライクを捕まえて、ちょっとした広場を作るのに手伝ってもらってる」

 

森に入ってすぐの所を切り拓いて広場を作り、切った木と柵を作っていた時の余りを使って入り口付近にAZがログハウス風の家を作っている。

 

 

完成したログハウスに招かれツカサが必要だろうと用意したティーセットでお茶を楽しんでいた。

 

「ツカサがこれからどうしたいのか教えてもらいたい」

 

「オーキド博士に預けてるポケモンを引き取って、この山やら滝やら洞窟やらがあるこの土地で過ごしてもらおうかなって。後はどうしてもポケモンを手放さなければいけないって人から預かる形で引き取ったり、お世話したりね」

 

「なるほど。それならば私達にも手伝わせて欲しい」

 

「えっと、あまりお給料出せないけど……」

 

「給料はいらない。作物を育てる肥料や道具、種等を用意してもらえれば自給自足でどうとでもなる」

 

「うーん……わかったよ。チャンピオンとして動き始めたら見れない時もあるだろうし、AZに手伝ってもらうよ」

 

「ああ」

 

 

それから数週間である程度の範囲まで切り拓き、AZの要望した物を揃えてからオーキド博士に預けていた面々も送られてきて自然を楽しんでいた。

 

「キュレムは洞窟に引き篭もってたし、サーナイトは自宅で家事手伝ってくれてるし。大成功だな!」

 

「現実から目を逸らすな」

 

「……いや、だって」

 

赤と黒の鳥のような巨大なポケモンと緑と黒の巨大な蛇のようなポケモンが広場に鎮座しており、ゼルネアスが先程から頻りに脳内に話しかけまくって来ていた。

 

「私達はこれから怪我をしたポケモンがいないか、トレーナーから逃げ出してきたポケモンがいないかを確認しに行かなければならない」

 

「威圧感半端ねぇよ……ポケモンの村にいたミュウツーも今は野生のベビィポケモン達を見てもらってるからいないし、キュレムはゼクロムいないから本気出せないし」

仕方がないとゼルネアスの元へと向かって行った。

 

………

……

 

「話したらどっちもいいポケモンだった。イベルタルもゼルネアスみたいに森で過ごしたいからって言ってボールに入ってくれたし、ジガルデも二体がやらかさないように近くに居たいって言ってボールに入ってくれた。プニプニしたミニジガルデみたいなのを残して、森のどこかにある洞窟に引き篭もったけど」

 

「カロスの伝説を率いるか……」

 

「まぁ、俺が生きてる間は大人しくするでしょ」

 

「ツカサ!」

 

旅をしていた時よりお洒落をしているセレナがバスケットを手に、小川に架けられた橋の向こうから走ってくる姿が見える。

 

「嫁が来たぞ」

 

「違うってば。てかそれジーナさんの時も言ってたし、本人に聞こえるように言ったせいであれから気まずいんだぞ……」

 

「お前の子孫とポケモン達をフラエッテと共にここで見守る、それが私とフラエッテを再会させてくれたお前への恩返しだ」

 

「それはいいけど、誰彼構わず嫁って言うのはやめて」

 

 

そんなやり取りをしているとセレナが到着し、クールだった時の面影があまりない笑顔でバスケットを見せてきた。

 

「お待たせ。今日はこの前ツカサが好きって言ってたフルーツサンドよ」

 

「あれ美味しかったから嬉しいわ。俺、甘い物好きだから」

 

そう言いながらAZの居た場所を見たが、気を利かせたのか既に居なくなっていた。

 

 

広場にある木で作ったテーブルと椅子に座り仲良く談笑しながら食べていると、楽しげな様子に惹かれてきたポケモン達が集まり始めている。

 

「ふふ、可愛い」

 

「カロスじゃ見た事のないポケモンもかなりいるんだよ。プラターヌ博士がアローラのククイ博士に連絡してくれて、俺の図鑑を更新してくれてわかったんだけどね」

 

「今ツカサのカップに何かを垂らしてる木の実みたいな子は?」

 

「この子はアマカジ。ニンフィア達が拾ってきた木の実の中に紛れ込んでて、傷まないように優しく水で洗ってたらくすぐったそうに動き出して驚いたよ」

ズッシリして香りもよかったのでパイでも作ろうとしたらしい。

 

今はツカサのポケモンになっており、広場でのんびり暮らしている。

 

「かなり大きいから気づくと思うんだけど………」

 

「いや、新種かな?って。セレナが危ない目に遭うから、あそこにいるヌイコグマには触っちゃダメだよ。俺とこの森の仲間以外に触られると暴れて大変だから」

 

「ええ、しばらく前にツカサが空高く吹っ飛ばされるのを見ているから触らないわ。………町のみんながツカサに感謝していたわ。野生のポケモンが来なくなって荒らされたりしなくなったって」

 

「そいつはよかった」

 

旅をした面々が様々な方面のリーダーになっており、それを統括するツカサは野生の者達から見れば大ボスのようなものだった。

 

切り拓いた幾つかの広場で木の実や野菜を育てており、食べる物に困った野生のポケモン達はリーダーの誰かしらと共にツカサの元に来るのでワザワザ柵を乗り越えて町に行く者は居なくなっている。

 

稀に入り込もうとする子供達もいるが、ツカサに捕まり教育され子供の味方になったスリーパー達が暗示をかけて帰らせていたりと対策もバッチリだった。

 

 

「そういえばツカサの手持ちのポケモンって今は違うよね?」

 

「連れてきた奴ら含めて今は忙しいからね。あいつらが探してきた子達が今のパートナー」

 

カロスでは珍しいイワンコ、アマカジ、ドロバンコ、コソクムシ、ミミッキュの五体が今のツカサの仲間達だった。

 

野生のドロバンコがカロスに居てツカサのパートナーになっている事にククイは驚き、近い内にカロスへ来ると言っていたりもする。

 

 

「ツカサのポケモン第二世代ってところね」

 

「ここにいる過去の面々も合わされば第七世代かな。後一枠あるけど、そこは追々」

 

「ツカサらしいね………一年前はこんな風に過ごすなんて考えられなかったな」

 

「俺もだなぁ。どっかでドクターかブリーダーとして暮らすものだとばかり思ってたから、カロスでチャンピオンになるなんて思わなかったよ」

 

「属性盛り過ぎチャンピオンって掲示板で書かれてたわ」

 

「聞きたい事がありすぎて、何から聞けばいいのか分からないって言われまくったよ」

 

引き出しが多すぎて一つの雑誌の特集だけでは扱い切れず、様々な雑誌で被りのない事が書かれていて全て集めるのも一苦労な有様。

 

正式な交代間際にはカロス出版オンリーでカルネと一緒の対談も予定されており、発売前なのに予約が殺到して嬉しい悲鳴が上がっている。

 

「カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュでの話に加えてブリーダー、ドクターの話とか………全部見たけど自伝とか出さないの? 下手な小説とかより面白い話になりそうだけど」

 

「そんな時間ないし、そんな事をするくらいならポケモン達とこのやたら広い土地を探検するよ」

 

………

……

 

ある程度して切り拓くのをやめ、本格的に探検を始めていた。

 

探検が始まる前に各地方でのパートナー達がツカサの新パートナーの特訓に付き合い、進化出来る者は大体が進化をしていた。

 

「頼りになるバンバドロの背に乗って探検。アママイコとミミッキュは可愛いし、グソクムシャはかっこいい。ルガルガンは昼の姿って図鑑に載ったけど、夜に進化させたら夜の姿だったのかな」

 

「きゅきゅん!」

 

「みみっきゅ!」

 

アママイコとミミッキュもボールから出てバンバドロの背に乗っており、陽射しが苦手なミミッキュはツカサが作った黄色いレインコートを纏いよりピカチュウに似た姿になっていた。

 

 

「まだ仲間になる前、ミミッキュの中身を初めて見た時は心臓が止まるかと思ったなぁ……鋼の心臓と呼ばれてる俺じゃなかったら止まってた。中身がピンキーだったら即死だった」

 

「みみっきゅ!」

 

「きゅきゅん!」

 

「アママイコはまだ進化するらしいし、冒険中に進化するといいな」

 

上着の中に潜り込んでくるアママイコを優しく撫でながら呟いていた。

 

 

それから襲ってくる野生のポケモンを倒し、襲ってこない怪我をしている野生のポケモンの手当てをしたりしながら目的地である洞窟へ向かっている。

 

「なんか知らないが見た事のないポケモンがメレシーと一緒に洞窟から出てきたな……」

 

『もしもし、貴方は人間ですか?』

 

「しかもテレパシーで話しかけてくるとか予想外すぎる。そうだけど、君は?」

 

『私はディアンシー。世界中の地下に広がる国の姫です』

 

「やばい、何かスケールが大きくて困る」

 

『実は……』

 

自分は力不足で国のエネルギー源である聖なるダイヤが精製出来ない、だからゼルネアスに会って助言してもらいたいと直接脳内に話しかけていた。

 

「うーん……仕方ないか。なら一緒に行こう」

 

『はい、私と共に来る事を許します』

 

「おー、何か姫っぽいな。じゃ、行こう」

 

 

足並みを揃えるのにバンバドロ達をボールに戻し、会話をしながら今来た道を戻って行く。

 

「髭みたいなの付いてるメレシーとまだ若そうなメレシー二体はお供か」

 

『私は一人で平気だと言いました』

 

「あー……お前達も大変だな。あ、リベンジに来たか。顔色悪いが戦う気満々だな」

 

来る時に怪我をしない程度に戦ったリングマが戦う気満々で目の前に立ち塞がった。

 

 

「お姫様は後ろに下がった下がった。バンバドロ、力比べだ!」

 

「ブルル!」

 

「グゥ!」

 

投げられたボールから飛び出したバンバドロが着地すると、その重さで地震のように地が揺れリングマが少しよろめいている。

 

「リングマが持ってるのはどくどくだま? ……あいつ、まさか! バンバドロ、このままじゃ不味い! ヘビーボンバーで止めろ!」

 

ツカサの焦った声を聞いたバンバドロが走り出

し、その巨体をリングマにぶつける瞬間に相手の繰り出したからげんきとぶつかりあった。

 

ぶつかりあった技の威力が凄まじく、互いに吹き飛び木々を薙ぎ倒していく。

 

 

リングマは遠くでバンバドロが立ち上がるもすぐに倒れるのを見てニヤリと笑い、ダメージの大きさと猛毒の苦しさでこのまま死ぬんだなと達観して気を失った。

 

 

次に目を覚ました時には辺りが暗くなり、人間とポケモン達が楽しそうに焚き火をしながら話をしている姿があった。

 

「起きたか」

 

「グゥ」

 

「不思議そうにするだけで襲ってこないか……やっぱりお前は賢いな。お前を治療したのは俺のバンバドロと相討ちになった事への敬意、それとこのヒメグマに頼まれたからだよ」

 

ディアンシーやアママイコと遊んでいたヒメグマが駆け寄り、リングマを心配そうに見ていた。

 

「リングマ、もう行ってもいいぞ。俺達はもう寝るから」

 

ディアンシーがそれをテレパシーで伝えたのか、リングマは何度か振り返りながらもヒメグマと共に去っていった。

 

それを見送り終わるとツカサは手持ちの面々をボールに戻して鞄から小さな何かを取り出し、それについているボタンを押してから放ると一瞬で大きなテントが完成していた。

 

火の後始末をして、ディアンシーと三体のメレシーをテントに招いている。

 

「寝袋は一つしかなくて……毛布だけで悪いな」

 

『とても暖かいので構いません。人間は凄いのですね』

 

まだ話をしたいディアンシーはツカサの隣で横になり、メレシー達は固まって毛布に包まり既にスヤスヤと寝ていた。

 

「ディアンシー達も凄いと思うけどなぁ……とりあえず今日はもう寝よう」

 

『ツカサの仲間達は寒くはないのですか?』

 

「ボールの中は快適なんだってとあるポケモンが教えてくれたよ。更に居心地がいいのはこれらしいけど」

 

ゴージャスボールを鞄から取り出して見せ、欠伸をしながら戻すのは明日でいいかと適当に転がしていた。

 

『……』

 

「おやすみ」

 

こうして慌ただしい一日は終わった。

 

 




色ミミッキュ出たけど、ちょっと人理修復してた。

映画ディアンシーとは当然別個体で、映画本編は迷い込み系でやる予定。
サンムーンも本編は分からないけど、メインキャラとの関わりは作っていくつもり。


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繋がりはこんな所から

翌朝、メレシー達が騒いでいる声で目を覚ましていた。

 

すかさずツカサにディアンシーが居なくなった事を身振り手振りで伝え、探すのを手伝って欲しいと土下座のような仕草を三体並んで行っている。

 

「手伝うから土下座はやめよう。とりあえず周囲を……」

 

『おはようございます!』

 

「……この声はどこからだ?」

 

『ゴージャスボール、本当に素敵でした! 暖かくて、ふわふわした感じで……』

 

「……まぁ、用事が終わったらボールとのあれこれを切ればいいだけか」

 

『いいえ、終わってもこのままでいいのです。私はあれからすぐに考えました。ツカサのポケモンになってしまえば他の人間には捕まらない、と』

 

「意外といい案だから否定出来ないわ。登録されてるからディアンシーは俺のゴージャスボール以外は弾くようになってる」

 

メレシー達もその手があったかとばかりにディアンシーを褒め称えており、ツカサも悪くない手だなと世間知らずなお姫様を見て頷いていた。

 

『ですのでツカサ、私はゴージャスボールの中に居ます』

 

「いや、違うわ。こいつただ興味本位で入ってハマっただけだ」

 

ニコニコウキウキしながらゴージャスボールに入って行ったディアンシーを見て感心した自分を恥じている。

 

 

着替えてから寝袋等を鞄にしまい、テントもスイッチ一つで小さくなりそれも鞄にしまっている。

 

「メレシー達もゴージャスボールに入れたけど、めっちゃ感動してて引いた。俺もポケモンだったら入ってみたいわ」

 

朝食もそこそこにバンバドロの背に乗り、ゆっくり帰って行く。

 

 

そのまま何事もなくゼルネアスがよく居る広間に着き、ディアンシーをボールから出して話をさせていた。

 

その結果

 

『……ゼルネアス、分かりました。ツカサ、ダイヤモンド鉱国に代々伝わってきたこれを貴方に授けます』

 

「ん? ……ピンク色のダイヤモンド?」

 

『私達はまだ出会って一日……ですが私達はもう以心伝心の仲』

 

「いや、俺は君が分からないよ」

 

『お揃いです!』

 

ディアンシーが首から下げているネックレスには同じようなピンク色のダイヤモンドが付いており、それを見せながらドヤ顔で胸を張っていた。

 

「……ああ、なるほど。そっちが本命だったわけか」

 

『お願いします!』

 

「久しぶりだな……我が心に応えよキーストーン! 進化を超えろ、メガシンカ!」

 

『凄い……これが!』

 

貰ったダイヤモンドの影響で特殊な演出になったのか、メガリングから放たれる光がピンク色になっていた。

 

そしてディアンシーを包んだ光が吹き飛び、再びその姿を現すと……

 

「何かお姫様みたいになったな」

 

『これが私……出来ました!』

 

ディアンシー は綺麗なドレスを纏ったような姿になり、上手くいかなかったダイヤの精製を試して成功していた。

 

「ダイヤ?」

 

『今代の姫様が初代の姫様と同じお姿に……! お美しいお姿ですぞ!』

 

「えっ、お前等も喋れたのかよ!?」

 

『すぐに帰りましょう! 今なら新しいダイヤを作れます!』

 

「あっさり解決したなぁ」

 

『ツカサ、これは貴方への感謝とお礼です。人間には価値のあるものだと聞いています』

 

「いや、ダイヤをこんなに渡されるとか反応に困るっていうか……」

 

『さぁ、行きましょう!』

 

『ツカサ殿、ダイヤモンド鉱国はあの洞窟を奥に向かうと辿り着けますぞ!』

 

「……ん?」

 

結局ゴージャスボールに入った四体を送っていく事になっている。

 

 

数日かけて地下のダイヤモンド鉱国に着くとディアンシーを見てメレシーや地下に住むポケモン達は盛大に歓迎し、一緒にいる人間であるツカサの姿を訝しげに見ていた。

 

歴史を研究しているメレシー達が初代のディアンシーに人間のパートナーがいた事を思い出し、まさかと思いながらも期待した眼差しをツカサに向けていた。

 

 

『ツカサ、私はすぐに聖なるダイヤの元に向かわなければいけません』

 

「ああ、分かったよ」

 

 

そのまま聖なるダイヤが安置されている場所に向かうと、その瞬間を見ようとした野次馬が後を追ってきて大変な事になっている。

 

広間の中心にある巨大なピンクダイヤモンドは力を失いかけているのか少し色が暗く、本当に後少ししか保たない事が見るだけで分かった。

 

ディアンシーはそのダイヤに力を込めるのではなく、今後また長い期間エネルギーが絶えない様に新しく創り出すつもりのようだった。

 

『このご先祖様が創り出してくれたダイヤは宝物庫に。ツカサ、お願いします』

 

「それはいいんだけど俺のメガリングはちゃんと直る? あのダイヤがキーストーンに吸い込まれたかと思ったら、ピンクを基調にしたファンシーなリングになっちゃって恥ずかしさMAXなんだけど」

 

『……さぁ!』

 

「はいはい……」

 

………

……

 

「いやー、しかし聖なるダイヤが生み出される所は綺麗だったな。メガシンカしたディアンシーを見て初代の生まれ変わりだって大騒ぎしてたし」

 

「私は間近で聖なるダイヤを創り出した時の光を浴びたツカサが、テレパシーを使わなくても私達の言葉を理解出来るようになった事に驚きました」

 

「ちゃんと使いこなせるようになれば、オンオフ可能っぽいのはありがたいよ。これでまた医療で救えるポケモンが増えるし」

 

ドクターとしてのアドバンテージが凄まじい事になったが、正直早くオフにしたくて仕方がないようだった。

 

 

「ツカサの家のお庭に出口を掘るとダグトリオとディグダ達が張り切っていましたから、数日はお泊まりです」

 

「遊びに来る気満々じゃないか……」

 

 

その数日でしっかりオンオフのコツを掴み、普段は聞こえないように出来てホッとしている。

 

正当な報酬だと言われディアンシー達に改めて渡された袋一杯のピンクダイヤモンドにドン引きし、受け取りはしたが扱いに悩みながら鞄にしまいバンバドロへ跨っていた。

 

『落ち着いたら皆で遊びに行きますね』

 

「姫様が無闇に出掛けるべきじゃないだろ」

 

『寧ろパートナーのツカサが帰る事がおかしいと皆は騒いでいます』

 

「とりあえずゴージャスボールは部屋に置いとくから。……走れバンバドロ、風のように!」

 

にじり寄ってくるゴーリキー達を見て、すぐにバンバドロを走らせていた。

 

 

 

全力でその日の内に帰宅するとしばらく冒険はいいやと皆をボールから出して自由にさせ、ツカサは風呂に入って汚れを落としている。

 

「長い事地下にいたからか、目がチカチカするなぁ………カミツレさんみたいな事を言ってしまった」

 

風呂から上がると早い内に寝ようとしたが、思い立ってカミツレに先程の発言をメールで送っていた。

 

それが終わると家に残っていたアママイコ、ミミッキュ、ルガルガン、ニンフィアを部屋に連れていきそのまま眠りに就いていた。

 

 

 

そんな面白おかしい日々を過ごしていたある日、レイナとその両親から手紙が届きすぐに確認している。

 

「お誘いの手紙だ……立派な招待状と手紙、それとレイナちゃんからの手紙。やだ、嬉しい……」

 

改めてお礼がしたいという手紙に今度開くパーティーへの招待状が同封されており、返事が貰えれば二週間後の週末に迎えを出すと書かれていた。

 

そしてレイナの手紙には大好きなお兄ちゃんに向けた想いのこもった言葉がたくさん書かれていた。

 

同封されていた画用紙には白衣姿のツカサとピカチュウとレイナが並んでいる絵が描かれ、二枚目にはツカサとチャンピオン戦で見せた仲間達に囲まれたツカサが描かれている。

 

「これは額買ってきて部屋に飾るしかないわ。行きますって返事を書いてから買いに行こう。ミアレならあるだろうし」

 

 

その二週間の間にセレナやサナとラブコメしたり、ミミッキュの群れがディアンシーに招かれて地下鉱国に移住したりしていた。

 

「久々にカロスを旅した面々が全員集合してると感慨深いものがあるな。ラプラスだけ居ないのは残念だけど、湖に居たいみたいだから仕方ないね」

 

セレナが素のままだと目立つからとプレゼントしてくれた黒縁の眼鏡をかけ、勢揃いした面々を見て呟いていた。

 

「フィア!」

 

「お前は家にいるか庭にいるかだもんなぁ……ピカチュウと喧嘩だけはするなよ。しかし迎えって言っても、こんな町外れまで来てくれるなんて」

 

「……ツカサ様、お迎えにあがりました」

 

「えっ、あっ、はい」

 

ニンフィア達をボールに戻して玄関に鍵をかけていると背後から声をかけられ、振り向くとツカサのイメージの執事通りのご老人が立っていた。

 

ぶっちゃけ見た目も声もギャリソン時田だった。

 

「本日ツカサ様をエスコートさせていただくトキタと申します。さぁ、どうぞお乗りください」

 

「お世話になります」

 

………

……

 

車内で会話をしている内に仲良くなり、コボクにある立派なお屋敷に着く頃には連絡先を交換していた。

 

「マジか……」

 

「さぁ、こちらです」

 

 

案内されて向かった広すぎる中庭には結構な人数の人が居り、ドレスやスーツ姿の者ばかりではなく私服の者も多々居てツカサはホッとしている。

 

「……お二人には資金援助をしていただいて感謝しています」

 

「以前ルザミーネさんにはお世話になりましたし、私達が出来るのは保護をする貴女達への資金を出す事だけですので」

 

ブロンドの長い髪の女性がレイナの両親と話している姿が見え、レイナも少し離れた場所で同じようにブロンドの髪の男の子と女の子に遊んでもらっているのが見える。

 

 

「うわぁ、あの女性すっごい美人さんだな」

 

「はっはっはっ、ツカサ殿はお盛んですな。正式に始まる時間までしばし私と話でもしていましょうか」

 

「喜んで」

 

 

眼鏡を掛けて隅にいるからか誰もツカサに関心を抱いておらず、談笑しながらパーティーが始まるのを待っていた。

 

そして始まってすぐに気がついたのはこれがレイナの誕生日のパーティーだったらしく、プレゼントを用意してないという事に思い至って頭を全力で働かせている。

 

「ドリンクはいかがです?」

 

「いただきます」

 

壁際で頭を悩ませているとメイドが近づいてきて、アルコールの入っていないグラスを手渡されていた。

 

 

喉を潤してグラスを近くのテーブルに置くとハッと何かに気がつき、そのまま壁際に戻ると鞄の中を漁り始めた。

 

ディアンシーに協力してもらってピンクダイヤモンドを加工し、市販のネックレスを基礎にして新しいネックレスを作っていた事を思い出したらしい。

 

その内にセレナかサナにでもあげようと傷つかないようにちょっとしたお洒落な箱に入れてあり、まだ小さい子には早いかもしれないがと後で渡そうと取り出したそれを鞄に戻している。

 

 

安心して料理を摘んでいるとツカサを見て場違いじゃないかとヒソヒソ話している者もおり、身の程知らずのトレーナーをバトルで倒していい所を見せようとする者もいたが……

 

「リザードン、じしん!」

 

「ブーバーン、避け……!」

 

リザードンの鋭いアッパーでブーバーンが宙に浮き、立派な尾で更に高く弾き飛ばされていく。

 

それを飛んで追い掛けたリザードンは落下するブーバーンの顔を掴み、更に加速しながら地面に向かって突っ込んでブーバーンを叩きつけて地震のような衝撃を起こしていた。

 

 

相手は結構強い事で有名だったらしく、手も足も出ずに倒されたのを見て皆が驚いている。

 

倒された当人も信じられないらしく、何かの間違いだと甘えているリザードンの頭を撫でている男を睨みつけていた。

 

「よしよし、加減出来たのは偉いぞ」

 

「ふ、ふざけるな! 貴様みたいなトレーナーに私が負ける訳がない!!」

 

「はい?」

 

「私はこれでも四天王と戦った事があるんだぞ!」

 

「へー」

 

「それが貴様なんぞに!」

 

 

そのままカッとなりツカサに掴みかかろうとした所に執事達が割って入ってきた。

 

「お客様、出口はこちらになります」

 

「これ以上こちらのお客様にご迷惑をかけるようでしたら、私達がお相手致します」

 

「な……わ、私は招かれたから来てやったんだぞ!」

 

「君の事は義理で招いただけだよ。だがこれでもう二度と会う事もないだろうね」

 

「っ! 帰るぞ!」

 

レイナの父も来ていたらしく、そう告げると男は若い女性を連れて逃げるように去って行った。

 

「先生、お久しぶりです。不快な思いをさせてしまって……」

 

「ピッカ! ピカチュ!」

 

「お久しぶりで……うおっ! あはは、ピカチュウも元気みたいですね。眼鏡はちゃんと返してね」

 

身体をするすると登ってきたピカチュウが頬擦りをするのに邪魔だと眼鏡を取り、手に持ったまま頬擦りをしていた。

 

 

近くにいた女性はそんな野暮ったい眼鏡を外したツカサの顔を見て息を呑み、ツカサは気にせずピカチュウから眼鏡を返してもらって眼鏡ケースにしまって鞄に戻している。

 

「ははは、どうやら先生の事が大好きみたいで。レイナと一緒に毎日録画していたあのバトルを見てるんですよ」

 

「チャァ……」

 

「いやぁ、その……照れますね」

 

「さぁ、こちらへ。……それと先生が来てくださるのをレイナへは秘密にしているので、ちょっとしたサプライズゲストになっていただきたいのですが」

 

「ええ、構いませんよ」

 

レイナはパーティー用のドレスに着替えに席を外しているらしく、鉢合わせないよう肩にピカチュウを乗せたままレイナの父の後に続いて歩き出した。

 

………

……

 

通された客室で呼ぶまで待っていてほしいと言われ、仕方なく椅子に座りピカチュウを膝に乗せてボーッとしている。

 

軽くピカチュウの健康診断を行っているとメイドが迎えに訪れ、鞄を肩にかけ反対側の肩にピカチュウを乗せて付いて行った。

 

 

「お金持ちって凄い」

 

中庭では既に誕生日を祝う歌を皆で歌っており、設置された舞台の上で両親やブロンド髪の女性の家族が同じように歌って祝福していた。

 

だがレイナは心ここに在らずといった様子で、目の前のケーキには目も向けずにキョロキョロとゲストの方を見て誰かを探しているようだった。

 

「いない……」

 

目当ての者がどこにも居らずジワッと目に涙が浮かび始め、それを見て両親は慌ててメイドや執事にGOサインを出している。

 

 

「ケーキが美味しそう。……えっ、ちょっ、高いですから一度降りて回り込むとか」

 

「時間がありませんので」

 

「お嬢様を泣かせるわけにはいきませんので」

 

脚立に乗りバレないよう覗いていたツカサだが、そこから飛んで舞台に降りるよう促されて物凄く焦っていた。

 

「分かりましたよ……でも8メートル近くあるのに?」

 

「トレーナーなら平気です」

 

「解せぬ。……分かりましたよ、行きます」

 

「ピッカァ! ピカチュ!」

 

流石に冗談で本気で飛ぶとは思わなかったようで、飛ぶように促した執事とメイドは真っ青になりながら慌ててどうなったかを見に向かって行った。

 

 

泣きそうな顔のレイナの真後ろに某怪盗のように華麗に着地し、レイナの両親以外の面々の度肝を抜いていた。

 

急に歌が止まった事をレイナは不思議に思い、俯いていた顔を上げると皆が口を開けて自分を見ていた。

 

「レイナちゃん、お誕生日おめでとう」

 

「あ……ふぇ……うぅぅっ!!」

 

ずっと聞きたかった声が聞こえてすぐに振り向き、会いたかった存在を見つけて涙が溢れ思い切り抱きついて泣いてしまっていた。

 

抱きつかれたツカサは驚いていたが優しく抱きとめ、頭を撫でて落ち着くのを待っている。

 

 

レイナが落ち着いて離れると涙と鼻水が出ており、苦笑しながらハンカチで拭いてあげていた。

 

「ふーっ……えへへ」

 

「改めてお誕生日おめでとう」

 

「ピッカァ!」

 

「ありがとうお兄ちゃん、ピカちゃん!」

 

どんなプレゼントよりもツカサが祝ってくれる方が嬉しいしく、ロウソクの火を消す時も手を握ったまま離さずニコニコしていて皆ほっこりしている。

 

そしてカロス新チャンピオンの登場にゲスト達は驚き、ブロンドの髪の女性の息子と思われる男の子は登場の仕方を目撃していたらしく目をキラキラさせていた。

 

 

ゲスト達にもケーキが配られ、後はパーティー終了まで自由にと言われ皆がそれぞれ談笑したり料理を楽しんだりしている。

 

「まさかの子供枠にされてしまった。ルザミーネさんにも挨拶したら、体良く二人を押し付けられたでござる」

 

「えへへ~、お兄ちゃん」

 

「お兄さん」

 

「兄さん」

 

そして面倒見が良く仲良く遊んでいる内に二人にもすっかり懐かれていた。

 

「レイナ、頬にクリーム付いてるぞ。リーリエとグラジオも」

 

甘えてくるレイナの頬についたクリームを拭き取り、九歳と十一歳の兄妹の頬についたクリームも拭き取っている。

 

「んー」

 

「えっと、ありがとうございます」

 

「そういう兄さんも口の端に付いてるよ」

 

「これはあれだから、チャームポイント的なやつだからセーフ」

 

それをハンカチで拭いた所でプレゼントを思い出し、ピカチュウを肩に乗せたまま鞄からそれを取り出している。

 

 

「お兄ちゃん?」

 

「レイナ、これは俺からのプレゼント。あまりいい物じゃなくてごめんね」

 

少しオシャレな箱をレイナに渡しながら申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「いいの! お兄ちゃんからのプレゼントなら何でも嬉しいから……わぁ」

 

「綺麗です……」

 

「まだちょっと早いかもしれないけど。……大きくなっても大切にしてくれたら嬉しいな」

 

レイナに目線を合わせるようにしゃがみ、彼女が開けた箱の中からネックレスを手に取り首にかけながら呟いていた。

 

「絶対大切にする! パパ、ママ!」

 

自慢したくて仕方がないらしく、ツカサの肩から飛び降りたピカチュウと共に両親の元へと走って行った。

 

 

「ふふ、可愛いです」

 

「あのまま真っ直ぐ育ってほしいよ」

 

「兄さんがいれば大丈夫だと思う」

 

「あ、そうだ。二人には電話番号とアドレスを教えておくよ。何かあった時に連絡してくれれば助けになるから」

 

そう言うとメモ帳とペンを取り出してアドレスと番号を書き、リーリエとグラジオの二人に一枚ずつ渡している。

 

 

「何かなくても連絡したらダメなんですか?」

 

「確かに。兄さんと普通に連絡を取りたいと思ってるんだけど」

 

「いや、いつでも連絡してくれていいよ」

 

向こうでレイナの両親が驚き慌てている姿が視界に入り、どうしたんだろうと思いながらもリーリエとグラジオの相手をしていた。

 

………

……

 

誕生日のパーティーも終わり、またいつかと帰って行くルザミーネ一家とお別れしていた。

 

「二年後くらいに何かに巻き込まれてそうな一家だったなぁ」

 

「先生、今日は泊まっていってください。それとレイナへのプレゼントについてちょっとお話が……」

少し顔色が悪い両親がそう告げて懇願するような目をしていた。

 

 

ツカサからしたらピンクダイヤモンドは部屋にたくさん転がっている石のような物だが、他の人達からしたらとんでもない値段がする超高級品だった。

 

この世界ではディアンシーにしか創れず、その存在も幻で世界にほんの少ししか出回っていない貴重な宝石。

 

 

そのまま防音の部屋に通されるとムスッとした顔のレイナが母に宥められ、傷つかないように厳重に保管されたネックレスが入った箱がテーブルに置かれていた。

 

「先生、流石にこれは受け取れません。これだけの大きさのピンクダイヤモンドを使ったネックレス、私達の家が全財産をはたいても買えないレベルの物です」

 

「……三人にならいいですね。これから見せる事は内密にお願いします」

 

「それってどういう……」

 

「ディアンシー、この子がお前が会いたがっていた俺がプレゼントを贈った相手だよ」

 

 

ラプラスの代わりに行きたいとワガママを言い、仕方なく連れて来ていたディアンシーをボールから出していた。

 

「う、そ……」

 

「まさか……」

 

「わぁ、お姫様みたい……」

 

『レイナ、初めまして。私はディアンシー、ツカサのパートナーです』

 

美しい幻のポケモンを前に両親は開いた口が塞がらず、レイナはその可愛さに言葉を漏らしていた。

 

「し、喋っているの?」

 

「せ、先生?」

 

「テレパシーで脳内に話し掛けているって考えるといいと思いますよ。世間知らずでワガママな所もありますけど、優しいポケモンですから……いや、待てよ? 俺にはワガママばかりで優しくないような」

 

 

ディアンシーはレイナと握手をし終えるとツカサの隣に座り、ツカサの為に用意されたケーキを見つけてそわそわしていた。

 

「俺はさっき食べたから、ディアンシーが食べていいよ」

 

『ありがとうございます! 流石は私のパートナーです!』

 

「ディアンシーを見てもらえれば分かると思いますけど、プレゼントしたネックレスのピンクダイヤモンドとそれの加工を手伝ってくれたのも彼女なんです」

 

器用にフォークでケーキを食べてニコニコしているディアンシーの頭を軽く撫で、問題のピンクダイヤモンドについての話をしていた。

 

「幻のポケモン、ディアンシー……」

 

「はい。自分はこいつのパートナーですけど、ピンクダイヤモンドを創り出させようと思っていません。……まぁ、勝手に出すんで頭を悩ませているんですけどね」

 

『……私が創り出した物は私の意思で消す事が可能です。歴代のディアンシーの物は不可能ですが、ツカサから奪おうとしても無駄になります』

 

「ピカ? ピカピ?」

 

『はい、私が認めない限りツカサ以外の者に渡っても消えます……というよりも消します』

 

ツカサがパートナーになって頻繁に遊びに来るようになり、ツカサのポケモン達から様々な話を聞いて姫から女王と呼べる様な存在に内面が成長し始めていた。

 

「おぉ……プリンセスからクイーンに成長してる感じがするな」

 

『ツカサのパートナーとして当然です』

 

ポケモンを愛し愛されるトレーナーの鑑であり、そんなツカサを知る各地方を巡った時に守ったり戦ったりした様々な伝説や幻のポケモンが森に住み着いていたりする。

 

「……先生は本当に私達を驚かせてくれますね」

 

「あの、俺の事はツカサって呼んでもらいたいです。先生って柄でもないですし、敬語もいいですから」

 

「ですが……」

 

「あなた、あれは先生……ツカサ君のお願いみたいよ」

 

「そうか……」

 

「それとネックレスはレイナちゃんに俺とディアンシーがプレゼントしたものですから、返すなんて言わないでください」

 

「分かった。お世話になったツカサ君の頼みは断れないよ」

 

ディアンシーとケーキを食べるレイナを三人で見て、ほっこりしながら和やかな空気になっていた。

 

 

そのままピカチュウとディアンシーと話をし始め、レイナは改めてディアンシーからネックレスを受け取り嬉しそうにしている。

 

大人組は改めて紅茶を楽しみながら積もる話やパーティーでの話をしていた。

 

「ツカサ君を紹介してほしいって人が多かったのよ? 映画ファンな奥様方もいて、主人の恩人だから私からは無理なのってお断りしたけど」

 

「三人から離れて料理を取りに行った時に結構話かけられましたね。こう、何て言うか……ボディタッチが激しかったですけど。ご迷惑にならないように対応しましたが」

 

様々な女性に話し掛けられては当たり前のようにハグをされて目を白黒させ、早々に料理を手に三人の元へ戻っていたようだが。

 

「私も娘や孫がファンだから後日でもいいからサインを貰えないかと言われたよ。私は妻の恩人だから図々しい真似は出来ないと断ったが」

 

「えっと、それくらいなら書きますよ?」

 

 

そんな和やかな時間も終わり、案内されて風呂に入って出ると新しい服や下着にパジャマが用意されていた。

 

着て来た物はクリーニングに出してから後日届けるとのメモが残されており、仕方なくパジャマを着てからオーダーメイドの高そうな服を持って部屋に戻っている。

 

「広すぎて不安になるなぁ」

 

………

……

 

久しぶりに歩いて帰るからと送ってもらうのを断り、三人にメイドや執事といった面々に見送られながら帰って行く。

 

「さてAZに連絡したし、久々に旅みたいな事をして帰ろう」

 

そう言って暫く歩いていると急に目眩がし、膝をついて耐えていると目の前にフワフワと見た事のない不思議なポケモンが浮いていた。

 

帽子のような透けた部分があり、そこから女性の髪のようになった触手が伸びている。

 

それがツカサに触れようとした瞬間にルカリオがボールから飛び出し、問答無用で蹴り飛ばして普段はしない牙を剥き出した威嚇を行っていた。

 

「……お前が何かは分からない。ただ野放しにしてはいけないって何かが俺の内側から叫んでる」

 

フワフワと浮きながらもツカサに近づき、ルカリオを警戒しながらも触れようとしてくる。

 

 

「……ルカリオ、試してみたい」

 

「……クォン」

 

ルカリオが仕方ないと渋々引き下がり、フワフワと浮いているポケモンはツカサに触れ……

 

「……取り込まれた感が半端ない。ただこいつは別個体と違って、ずっと俺を別世界から見てたとかちょっと怖すぎんよー」

 

受け入れて心が通じ合っており、ルカリオに蹴られた部分を傷薬で治してあげている。

 

「!」

 

「え、マジか。最後の一体が空いてるって結構前に見て聞いてたから、急いでこの世界に来たって?」

 

そうして一度ツカサを解放するとソワソワウロウロし始めていた。

 

「おお、何ともない。私達を研究しているあの人からはUB1ウツロイドと呼ばれている、か。どうせなら最後の仲間になる?」

 

いつも持ち歩いている空きのモンスターボールを手に取りながら聞いてみると、機敏な動きでボールに触れて中に入りカチッと抵抗なく捕まっていた。

 

「……ルカリオ、なんかごめん」

 

「……」

 

危害を加えるどころかツカサに捕まりたくて出てきた事が明らかになり、なんとも言えない空気のままボールの中に戻って行った。

 

 

それからフラフラしながら数日かけて自宅に戻り、第七世代の仲間達にウツロイドを紹介している。

 

「さて、ウツロイドは親睦を深めておいて。俺はディアンシーを送ってくるから」

 

そう言うとカロスを旅した面々を連れ、庭に作られた地下へ続く道を降りて行った。

 

 

そして今度は視界が急に真っ白になり……

 

 

 




かなりの富豪にしておけばこんな感じに繋げられるかなって。
次回はあっさり映画話。

UBはウツロイド以外もその内に加入予定。


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かなり端折り大して活躍もしない破壊の繭とディアンシー

「真っ白になった視界が戻ったと思ったら知らない町にいた」

 

エリートトレーナーの女性が少年とバトルをしている所に居り、エリートトレーナーがアブソルをメガシンカさせた事に驚きながらも野次馬に紛れてバトルを眺めていた。

 

ツカサはバトルが終わり少年のピカチュウが何かを感じ取り走り去るのを見て、少し気になりバレないように後を追って行った。

 

 

追いつくと少年とピカチュウがディアンシーを二人の男女の手持ちであるゲッコウガとマフォクシーから庇っている場面だった。

 

まさかのもう一体のディアンシーに驚きながらも見過ごす訳にはいかないと建物の屋上から飛び降り、ルカリオをボールから出しながら壁を蹴って勢いを殺し華麗に着地して割って入っている。

 

「少年、ここは俺に任せてディアンシーを連れて逃げろ。ルカリオ、しんそくで二体を纏めて吹き飛ばせ!」

 

「クォン!」

 

名誉挽回だと張り切るルカリオは早速マフォクシーを蹴り飛ばし、そのままゲッコウガに襲い掛かっていた。

 

「ありがとう! 行こう、ピカチュウ!」

 

「……まぁ、俺もすぐに逃げるんだけどねー。ルカリオ、はどうだん!」

 

少年達が逃げたのを確認すると地面にはどうだんを撃たせ、衝撃で巻き起こった煙に紛れて少年達の逃げた方へルカリオと共に走って行った。

 

 

「あ、さっきの!」

 

「おう、無事だったか少年……!?」

 

しばらく走るとディアンシーと仲良く談笑している所に追いつき、少年の仲間と思われる面々を見て驚き目を見開いている。

 

「オレ、サトシって言います! こっちは相棒のピカチュウ」

 

「ピッカァ!」

 

「私はセレナ!」

 

「あたしユリーカ!」

 

「僕はシトロンです!」

 

「……マジか。パラレル的なあれかこれ」

 

小声で呟きながらツカサの知るセレナより小さなセレナを見て動揺していた。

 

『先程は私を助けていただき感謝しています』

 

「ディアンシー……あぁ、そうだった。俺はツカサ、旅をしているトレーナーだよ。立ち話もなんだし、お兄さんが奢るからカフェにでも入らないかな?」

 

 

サトシと名乗った少年達を連れてスイーツバイキングがある店に入り、情報収集も兼ねて色々と尋ねていた。

 

結果的に言えばパラレルワールドが確定し、頭を抱えている所にこの世界ではまだ活動しているロケット団がディアンシーを攫っていくという事も起きている。

 

 

皆を先に探しに行かせて支払いを済ませてから探し始め、合流する前にディアンシーをゴージャスボールから出して尋ねていた。

 

「どうするかこれ」

 

『この世界の私を助ける事、それが私達が元の世界に帰る事に繋がると思います……私も以前はあの私のような感じだったのでございますか?』

 

「口調が移ってるぞ。まぁ、あんな感じだったな」

 

『やはりこれからも皆さんに色々教わらなければなりませんね。姫ではなく女王として』

 

 

そんな話をしてからしばらくしてサトシ達と合流し、逃げ出してきたディアンシーも見つけてひと段落ついていた。

 

結果的にゼルネアスを探す事になり、手持ちにいれておけば良かったと思いながらも同行をする事にしている。

 

………

……

 

翌日はディアンシーが感じ取るゼルネアスの残したフェアリーオーラを追ってバスに乗り、更に徒歩で夜まで歩き続け野宿をする事になっていた。

 

夜中にはサトシとディアンシーと共に流れ星にお願いをし、翌朝は軽くバトルをして鈍らないようにしようと一対一でサトシと向き合っている。

 

「ピカチュウ、ツカサ相手に手加減は出来ないぜ!」

 

「ピカ!」

 

ツカサはサトシと意気投合して歳の差なんて気にせずに名前の呼び捨てをお願いしたらしく、早速呼び捨てになっていた。

 

「ニンフィアがやる気満々でちょい怖い」

 

「フィア!」

 

セレナやユリーカにウインクしたりして可愛さをアピールしており、バトルの時に見せる獰猛さの欠片もなかった。

 

「ツカサのニンフィアかわいー!」

 

「本当に可愛い!」

 

「ツカサがちょっと引いているのが気になりますが……」

 

シトロン達にも呼び捨てにするように違和感なく受け入れてもらえていた。

 

 

バトルが始まるとニンフィアはピカチュウを翻弄し、接触した時にメロメロになったピカチュウを触覚で拘束して零距離ムーンフォースでダウンさせている。

 

「あー、もう……」

 

「すっげぇ! ツカサのニンフィア、可愛いだけじゃないんだな!」

 

「ピーカーチュー……」

 

「サトシにはあれが可愛く見えるのか……とりあえず手当てするからピカチュウはおいで」

 

 

ニンフィアがそのままユリーカ達に愛想を振りまきに行ったのを見送り、目を回しているピカチュウに惜しみなく薬を使って手当てをしていた。

 

ドクターとしての仕事が終わるとブリーダーとしての血が騒ぎ、スキンケアもしておこうと専用のオイルとシートを鞄から取り出すとピカチュウを寝かせてケアを始めている。

 

「チャア……」

 

「よし、これでいいな。身体も解れたみたいだし」

 

「ツカサって何でも出来るんだな! タケシみたいに料理も上手いし、手当てもマッサージも上手だし」

 

「まぁ、旅に出て長いからね……タケシ?」

 

「ああ! 一時期一緒に旅をしてたんだ!」

 

 

こちらでもそこまで変わらないタケシの話で盛り上がり、テントや焚き火の跡の片付けをしてから近くの船着場に向かっていった。

 

 

船上でディアンシーが生み出した一つのダイヤを見てツカサは何かを察したが言わず、ユリーカがディアンシーからそれを譲り受けていた。

 

 

船が着いた先にある都市も一応ツカサの居たカロスにも存在しており、戻ったら訪ねてみようと考えている。

 

その都市の巨大なショッピングモールでは女子チームの試着した服の披露が行われ、戻れたらセレナにプレゼントしてみようと小さなセレナのセンスを参考にしていた。

 

「俺は服のセンスとか分からないからなぁ……」

 

 

それからすぐにディアンシーを追って来たメレシー達に遭遇し、何とか撒いて公園に着くも今度は最初の町で出会った泥棒の女が現れていた。

 

「マフォクシー!」

 

「ここは大人の俺に任せてサトシ達は先に行くんだ。行け!」

 

放たれたかえんほうしゃをバックステップで避け、サトシ達に叫びながらリザードンの入ったボールを投げていた。

 

「邪魔よ! かえんほうしゃ!」

 

「残念だがしばらく付き合ってもらうぞ。リザードン、ドラゴンクロー!」

 

久々のバトルに漲るリザードンはかえんほうしゃの中を突っ切り、マフォクシーを殴り飛ばして木に叩きつけている。

 

「いいポケモンね。嫌いじゃないわ」

 

「そいつはどうも」

 

………

……

 

しばらく戦うも相手は分が悪いと引いてしまい、ファイアローに空を飛んでもらいサトシ達の後を追って行った。

 

「あれはイベルタル! ……理性がないのか? 急げファイアロー! リザードン、メガシンカ!」

 

遠くに見えるイベルタルが辺りを破壊しているのが見え、ファイアローに急ぐよう急かしながらリザードンをメガシンカさせていた。

 

 

そしてタイミングがいいのかサトシとピカチュウ達が落ちそうになっている所に着いていた。

 

「すまない、かなり待たせた! リザードン、フレアドライブ!!」

 

「ツカサ!」

 

『ツカサ! 無事だったのですね』

 

サトシを引き上げるのに協力しながらリザードンに指示を出し、イベルタルを相手に互角の勝負を繰り広げている。

 

 

イベルタルがツカサ達に放とうとするデスウイングを横っ面を殴って逸らし、自身にヘイトを集めていた。

 

伝説を相手に一歩も引かず、イベルタルの尾を掴むと背負い投げの要領で地面に叩きつけている。

 

チラリとツカサ達がサトシを救出したのを見て降りようとしたが倒れていたイベルタルが起き上がり、間髪入れずにツカサ達に向けてデスウイングを放ちそれを防ぐのにリザードンは急降下してツカサ達の壁になっていた。

 

「リザードン!」

 

足から石になっていくがツカサ達が無事なのを見て笑い、そのまま全身石に変わってしまった。

 

『……私は諦めない!』

 

為す術もないピンチにツカサも焦っていたがディアンシーが皆の前に立ち、キリッとした表情で再び空を飛び回るイベルタルを見ていた。

 

『ええ、その通りです。決して諦めてはいけません』

 

その決意の声を聞いたツカサのディアンシーは自らゴージャスボールから出て、こちらの世界のディアンシーの隣に並び立った。

 

「ディアンシーがもう一体……!?」

 

「ツカサのボールから出てきました!」

 

皆の説明を要求するような視線を無視し、メガリングに手を触れていた。

 

黒かったメガリングがピンクを基調にしたリングへと変貌し、内心溜め息を吐きながらキーストーンに触れている。

 

 

『目の前に私が……』

 

『私達でイベルタルを止めましょう。ツカサ!』

 

「ディアンシー、メガシンカ!」

 

「わっ!」

 

ツカサがキーストーンに触れると共鳴したらしくユリーカが譲り受けたピンクダイヤモンドもポシェットの中で輝き始め、激しい光が二体のディアンシーを包むとその姿を変えていく。

 

 

『はぁぁぁぁぁ!!』

 

『斬り裂きます!』

 

こちらのディアンシーがダイヤモンドを創り出してデスウイングを防ぎ、ツカサのディアンシーはピンクダイヤモンドで創り出した剣を手にデスウイングを斬り裂いて勢いを殺していた。

 

 

「わぁ、綺麗……」

 

「あー、さっきのかすってたか……」

 

「ツカサ!?」

 

リザードンが壁になる瞬間にツカサもサトシ達の壁になっており、リザードンの防ぎきれなかったデスウイングがかすっていたらしい。

 

「悪い、後は頼むよ。こいつらは巻き込めないから、サトシ達に……」

 

「ツカサ!」

 

ボールを投げ渡して心配そうに見てくる面々にニッと笑い、そのまま石像になってしまい……

 

………

……

 

「……うん、マジで生きててよかった」

 

『静かだからとツカサ達の方を見て石になっている姿を見た私の気持ちが分かりますか?』

 

『全くです。ツカサはもう一人の私のパートナーなのですから、心配を掛けてはいけません』

 

「まぁまぁ。ツカサはオレ達を守ろうとしてたみたいだし、お説教はそこまでにしてやろうぜ」

 

「ピカ!」

 

ディアンシー二体にお説教されている所にサトシとピカチュウが割って入り、助け舟を出してくれていた。

 

 

そして説明を要求されてしまい、信じてもらえないかもしれないけどと前置きをしてから話を始めた。

 

「……って訳なんだ」

 

「異世界の……」

 

「カロスチャンピオン……女の子だったらお兄ちゃんのお嫁さん候補だったのに!」

 

「ツカサって凄かったんだな!」

 

「最初にボク達を見て驚いていたのはそういうわけだったんですね」

 

慣れているのかは分からないがツカサの話をあっさり信じていた。

 

 

「疑わないの? 異世界とか嘘で俺がこのディアンシーを無理矢理捕まえてるとか……」

 

「だってツカサのディアンシー、石化したツカサを見て取り乱しながらイベルタルと戦ってたからな! 無理矢理捕まえてたらあんな風にはならないぜ!」

 

「ピカチュ!」

 

「そうですね。ルカリオもボク達を守りながらもイベルタルに攻撃していましたし、ニンフィアなんて泣きながら縋り付いてましたよ」

 

「ゲッコウガも私達を守りながらツカサも守っていたものね」

 

「ファイアローもイベルタルの動きを制限させてたよ!」

 

皆勝手にボールから出てサトシ達を助けていたらしく、愛され具合の凄さに尊敬の眼差しを向けられていた。

 

「いや、その……照れる。それとそろそろお別れみたいだ」

 

預けたボールを受け取りまだ何かいいたげなディアンシーと石化の解けたリザードンをボールに戻した所で帰還する条件が揃ったらしく、全身が少しずつ透け始めていた。

 

「そっか……短い間だったけど一緒に旅が出来て楽しかったぜ!」

 

「あのポケモン達も食べられるパンケーキのレシピありがとう! 大事にするから!」

 

「科学の話が出来て楽しかったです!」

 

「みんなにするマッサージの仕方、教えてくれてありがとう!」

 

『ツカサ、そちらの世界の私をお願いします。私も立派な姫……いえ、女王としてがんばっていきます』

 

消え始め、もう二度と会えないだろう相手にそれぞれが感謝の言葉を贈っていた。

 

「ありがとう。それじゃあ、俺はこれで」

 

そう告げると笑顔で消えて行った。

 

………

……

 

真っ白な視界が戻り目を開くと地下へ続く道の途中の岩の上に寝かされていた。

 

「夢……じゃないよなぁ。写真残ってるし」

 

『サトシはああ言っていましたが、まだ私のお説教は終わりません! いいですか、私のパートナーとして……』

 

スマホに残されたサトシ達との写真を眺めていると、ディアンシーがボールから出てきてお説教の続きをされている。

 

 

 

 




後二回その内にまた向こう側の世界に。


バンク解禁からゲーフリの無能具合が浮き彫りになりすぎだと思う。
まさか未解禁メガストーンが全世界で十万、大会参加者オンリー配布とか酷すぎるだろこれ。


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色々な出来事の詰め合わせ

異世界から帰って来て一週間、向こうで石化した事に対してこちらのイベルタルに文句を言ったりと忙しい日々を過ごしていた。

 

「あっちの世界で訪れた町はこっちにもあるんだよな。行ってみようと思ってセレナを誘ったら凄く嬉しそうな笑顔で行く!って即答だった」

 

「ようやくデートをする気になったか」

 

「え? ……危ない、サナ達も誘う所だった」

 

「危うく私の右腕が唸る所だった」

 

「なにそれこわい。しかしデートか……この百戦練磨の俺には取るに足らないものよ」

 

「それは初耳だが」

 

「ゲームだとバッチリだからな」

 

「ああ、ツカサの女性関係に少しでも期待した私が馬鹿だったか」

 

最近ではセレナと仲良く買い物をしに行く姿がよく見られ、ツカサは何も考えていないが毎度誘われるセレナはちょっとしたデート感覚だったりする。

 

「えー」

 

「ツカサの話を聞く限りだとだが、お前の嫁になれそうな存在は本当に一握りだ。カロスならサナ、セレナ、ジーナ、コルニ……それとカルネ」

 

「最後の人が予想外過ぎるんですが。てかそれって最近よく訪ねてくるからってだけだよね? てかコルニちゃんもマジかよ。マーシュさんは入ってないんだな」

 

「ああ。サナとセレナは言うまでもない、ジーナとコルニは自分達よりポケモンを優先するツカサを見て微笑んでいた。マーシュはツカサが苦手にしているのを知っているから省いた。カルネは……婚期の問題」

 

「あっ……」

 

 

気まずい空気の中で畑を耕す手伝いをしているといつものようにセレナがやってきて、休憩しようとAZの方を振り向くと遥か彼方の畑に向かっていく姿が見えた。

 

「AZ、毎回気がつくといなくなるんだよなぁ」

 

「ツカサ、今日はおにぎりにしてみたの」

 

「マジか。てか最近夕飯にお呼ばれする事が多くなってるけど、ご両親に迷惑かけてるよなぁ」

 

「気にしないでいいわ。寧ろパパとママのポケモンで中々進化をしなかったカブルモとチョボマキを進化させてくれたり、ここ数年庭を荒らしてたディグダ達を説得してくれたりで二人も喜んで迎えてるもの」

 

 

夕飯の席でセレナの両親が無理も承知でツカサに相談したようだが、進化に関しては下手な博士よりも詳しいツカサは当たり前のように

 

「二体が一緒にいる時に電気のようなエネルギーを浴びせると進化しますよ。お手伝いしますか?」

 

と告げ、少々疑いながらも二人はツカサに頼んでいた。

 

ボールから出たカブルモとチョボマキがじゃれあっている所にミミッキュの加減した10まんボルトが炸裂し、そのエネルギーを受けて本当に二体が進化を始めてセレナの両親は驚いていた。

 

 

「いや、あれはたまたま知ってただけだからなぁ」

 

「とにかく気にしなくていいの!」

 

「だけど食費がかかるだろうし、渡そうとしてもご両親受け取ってくれないから困る。カフェ行ってもお代はいいからって言われるし」

 

街の中心辺りでカフェをしているらしく、セレナ一家と一緒に撮ったツカサの写真とサインを飾るだけでかなり客が増えたらしい。

 

まだ正式にチャンピオンになった訳ではないのにファンが訪ねて来るようで地域も活性化しており、稀にツカサが訪れるカフェとしてファンに有名になっている。

 

 

「ツカサがパパとママに教えたパンケーキがメニューに入って、それが爆発的に売れてるからいいんだって言ってたわ。そのままツカサのパンケーキって名前らしいけど」

 

「申し訳ないなぁ」

 

 

そんな話をしながらセレナのおにぎりを食べ、セレナがツカサの口元についたご飯粒を食べて互いにドキドキしたりとお約束だが順調にフラグが積み重なっていく。

 

「あー、えっと……あ、そうだ。そういやあの子もカロスにいるって言ってたっけ。今もいるのかな」

 

「あの子?」

 

「三年前マサラタウンに来てた母さんの友人の子なんだよね。蒼に近い銀髪で青いフリフリのドレス、泣き虫でマイペースな子だった」

 

「あ、女の子なんだ」

 

「マサラタウンの端っこにある豪華な家が別荘だったらしくて、行きたくないのに挨拶しに連れて行かれたっけ。そこでその子の相手をしてたら物凄く懐かれて、俺だけその一家が帰る日まで自宅に帰してもらえなかったっていう」

 

一ヶ月近く一緒に暮らしていたから様々なマナーやバイオリン等の習い事も共に学び、無駄にハイスペック故に完璧に仕上がったツカサは何処に出しても恥ずかしくない状態で今に至る。

 

 

「え……その子のご両親は何か言わなかったの?」

 

「寧ろ任せておけるって感じで母さんとカントー観光に行ってた。使用人もじいやさんだけだったし、俺は四六時中一緒でまさかの風呂まで一緒だったし」

 

「三年前ならツカサは十五歳で……その子は幾つだったの?」

 

「五歳だったよ。兄や兄やって付いてくる姿は妹が欲しかった俺としては最高だった」

 

「ツカサがお兄ちゃん……何か甘やかされて、それに甘えてダメになりそう」

 

「アポイントメント取らないと会えないだろうし、向こうから接触してくるの待たないとなぁ」

 

チャンピオンになった事でカロスにいるのは知られているが、向こう側の予定が合わず接触出来る機会がまだなかった。

 

 

「もしかしたら有名で私も知ってるかも……どんな名前の子なの?」

 

「アリアって名前で」

 

「……それ会えないと思うわ。カロスでも有数の貴族の一人娘よ、その子」

 

「え、マジで? 俺の知り合い達ってなんなの? バレンタインにやたら有名で高いチョコを手紙と一緒にくれたりしたけど……毎年のホワイトデーのお返しが手作りピカチュウぬいぐるみと手作りチョコとか失礼だったんじゃないかって」

 

「それは私が聞きたいわ。お返しはそれでよかったと思うけど、ツカサはお料理以外にお菓子も作れるの?」

 

「寧ろそっちのが得意。カロスに来るまではマサラタウンに居る従妹に作ってあげてたっけ……カロスに引っ越す時には旅行してて、ちゃんとお別れしてないから次に会った時の反応が怖いけど」

 

………

……

 

懐かしい少女の話をして数日が経ち、ツカサは庭で新たな仲間達と共に寝転がって日向ぼっこをして過ごしていた。

 

「ウツロイドがやたら覆い被さってくる」

 

「♪」

 

「アママイコだった時は物凄く甘えて来たのにアマージョになってから甘えて来ないから、ウツロイドが甘えて来て嬉しいわ」

 

心を通わせて互いに互いを受け入れてから甘えてくるようになり、同時に同種のウツロイドだけではなくまだ見ぬウルトラビースト達をも出し抜いてツカサの元に来た事も明らかになっていた。

 

ウツロイドが見せた断片的な映像で残り六種のウルトラビーストの存在を知り、遭遇した時にどうにか出来るように皆を鍛えている。

 

はずだったが……

 

「テッカグヤを筆頭に一気に六種が来た時は流石に怖かったなぁ……まさかのジガルデが本気で助けに来てくれたけど」

 

「!」

 

「それがウツロイドの出し抜いた面々だったから話が通じてよかったよ」

 

100%のジガルデが助けに現れたらしく、ツカサは恐怖よりロボのような見た目のジガルデへの興味が勝っていた。

 

ちなみにウツロイド以外も既に森に順応しており、いつの間にか居たメロエッタの深夜ライブを見に来る程馴染んでいる。

 

 

「♪」

 

「チャンピオンって名目の時はカロスを旅した時のメンバーを連れて行かないといけないから、それまではお前達と一緒だよ」

 

チャンピオンに求められるのはカロスを旅した時の仲間達であり、今のツカサの仲間達はプライベートでしか共に居られないと遠回しにカルネに伝えられていた。

 

 

更にその時カルネはハチクマンとは別の新シリーズとして大学生になったかつてルカリオキッドだった少年の映画をシリーズ化するという話があると伝え、アクションシーンを楽しみにしているからとBDBOXやらのグッズにサインを要求しながら熱く語っていた。

 

今は無駄にプレミアが付いているハチクマンシリーズの再販や新シリーズの要望が様々な地方から出ており、ポケウッドもどうにかツカサと連絡を取ろうとしてカルネを頼ったらしい。

 

 

「新シリーズはまさかの怪盗、それでいて二代目の敵になったり味方になったりしつつ生身で派手なスタイリッシュアクションとか。……二代目なのにリオルキッドじゃなくてリオルガールとか誰がやるんだろう。ルリちゃんかな?」

 

イッシュでは色々あってルリと知り合っており、オフの日に一緒に観覧車に乗ってデート的な事をしたりしていたようだった。

 

何度目かの自由行動で怪しいと疑い後をつけて来たメイに見つかり、付き合ってもいないのに二人と修羅場が起きていた。

 

観覧車の人に助けを求める視線を向けると任せておけとばかりに頷き、そのまま上手いこと口車に乗せて三人を観覧車に乗せスピードを一番遅くして厄介な客を隔離する名采配を見せている。

 

 

「でも既にレディでガールじゃないもんなぁ……」

 

「ツカサ、新シリーズって本当なの?」

 

いつの間に居たのかセレナが真上から見下ろし少々興奮しながら尋ねていた。

 

「らしいよ。それとセレナ、真上に立つから背伸びした大人パンツが丸見え」

 

「……私、ツカサになら見られても構わないわ」

 

「いや、それでガン見したら俺はただのド変態になっちゃうから。紳士な俺にそんな事は出来ないっていう」

 

「とにかく新シリーズの事を早く」

 

渋々身体を起こしウツロイドに取り込まれたまま話し始めていた。

 

「舞台はカロスだってさ。カロスへの留学を機にルカリオとも別れてしまったから引退、平穏な日常を過ごしている所から話は始まるみたい」

 

「これは熱い」

 

「セレナ、君そんなキャラだった? ……それでハチクマンは一切出ないで、リオが怪盗ゲッコウガ仮面として二代目のリオルガールと敵対する路線らしいよ」

 

「なるほど。平和な日常と見せかけて前作主人公が悪に堕ちている展開なのね」

 

「中盤で現れる悪の組織、一時休戦したリオルガールとゲッコウガ仮面が共闘。そして終盤にかつての相棒であるルカリオが現れ……ってのが初期のシナリオだって」

 

「見なきゃ!」

 

「ゲッコウガ仮面じゃなくてジョーカーって呼び名にしてくれないかなー。何か分からないけど、怪盗って聞いたらジョーカーがしっくり来る不思議」

 

何処から情報を知ったのか既に監督へ熱烈オファーをしている金持ちの家は多く、怪盗が盗みに侵入する豪邸を是非我が家で撮影してほしいと外観や内装の写真や見取り図まで添えられたメールが送られているらしい。

 

「はぁ……楽しみすぎて今日は寝れないでしょうし、サナと朝まで四部作を見ながら語り合わなきゃ」

 

「身近に熱烈なファンがいると少し怖い」

 

………

……

 

正式なチャンピオンになる前にカルネと共にバラエティの番組にテレビ出演をする事になり、緊張しながらもカルネに助けられ笑顔で対応していた。

 

許可を得ていたらしくルカリオキッドだった時の決め台詞と決めポーズをお願いされてしまい、仮面を付けモンスターボールを手に当時よりもキレッキレな動きとよく響く声で決めていた。

 

直後上がった客席や他のゲスト含めたスタジオの皆からの黄色い声にツカサはかなりビビるも表面には出さず、カルネまで一緒になってキャーキャー言っているのを横目で見て若干頬が引き攣っていた。

 

 

収録後にカルネの楽屋に呼ばれゲッソリした顔で座り込んでいた。

 

「……あぁ、エライ目に遭った」

 

「チャンピオンになったら更に色々あるわよー。特にツカサは大変でしょうね、男の子だから私より無茶な事も出来そうだもの」

 

「なる前から辞めたい……」

 

「私は女優業に力を入れていけるから、ツカサと共演する事もあるかもしれないわね」

 

「そういうオファーもくるんです?」

 

「ええ、間違いなく来るでしょうね。ドラマならポケモンドクターに焦点を当てた物とか、監修もお願いされるかもしれないわね?」

 

「それは別のドクターにやってほしいなぁ……ドクターと言えば外科はどんなに最善を尽くしてもダメだった時、怒りをぶつけられるって言うのもあるのでなる人が少ないんですよね。後日謝りに来る方が多いですけど」

 

訴えてやるだなんだと散々罵倒して帰り、自宅で怒り心頭のまま調べる内に手遅れな症状で手の施しようがないという事しか書かれておらず唖然とするまでがテンプレ。

 

申し訳ありませんでしたとすぐに謝りに来る者と、合わせる顔がないと謝罪が書かれた手紙を郵送してくる者の2パターンがある。

 

 

「……そうなってしまうわよね」

 

「だから俺は……」

 

助かる可能性が上がるならばと研修期間が過ぎるとどこにも所属せずそのまま闇医者であるハザマの元へ向かい、師事する事を許してもらえるまで毎日土下座して頼み込んでいた。

 

最初の頃は最新の資料を自由にコピーして持ち出せるツカサを利用、ツカサはその闇医者の技術を見て人形やVRで練習して盗むという歪な師弟関係だった。

 

一年経つ頃には割と普通の師弟関係になり、頼りになる助手として色々な場所に着いて行き腕を磨き続けていた。

 

 

「でもツカサの腕は異常だって掲示板に書かれていたわよね。誰もが見捨てざるをえない怪我のピカチュウを救った技術がありえないって」

 

「まぁ……技術を見て盗んで我が物としましたから。物凄く大変でしたけど今ならゴーストタイプの手術も出来ますよ」

 

これの発案はツカサでホウエンを旅した時の仲間であるサーナイトの協力で可能になり、それをハザマに話すと目から鱗だと呟き翌日にはスリーパーを捕獲して来た程の革新的な事だったらしい。

 

メスや器具にエスパータイプの力を使う発想が今でもないらしく、これはまだ二人しかする事が出来ない術式だった。

 

 

「え?」

 

「あ……な、なーんちゃってー」

 

「怪しい……」

 

「あ、あー、カルネさんのマネージャーさん遅いなー」

 

チャンピオン就任後、この会話を盗み聞きしていた者により本当にポケモンドクター物のドラマの主役に抜擢されるとは思いもよらないツカサだった。




後十一人くらい色んな地方に義妹が居るのかもしれない。


メガ石の大会配布が先行なだけになったのは当然の措置だけど、最初から入れとけと言いたい。

吉田沙保里ネキのカイリキーはセブンに貰いに行かなきゃ。



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アローラ地方へ

ある日の昼下がり、一人でセレナの両親が経営しているカフェに入りのんびりしていた。

 

「いやー、ツカサ君が休憩に利用してくれるからお昼過ぎなのに満員御礼だよ」

 

「いつもご馳走になってしまって申し訳ないです」

 

暇になるとふらりと現れるツカサは名物になっており、コーヒーとパンケーキを毎回頼むからか皆も真似して頼むようになっている。

 

「ああ、いいのいいの。ツカサ君はある意味客引きみたいなものだからさ」

 

「テラス席でただ食べて飲んでボーッとしてるだけですけど」

 

本人に有名人の自覚が全くなく、気持ちがいいからとテラス席でのんびりしていた。

 

「それが見たいんだってさ」

 

「うーん……」

 

 

それから少し話すとごゆっくりと言われ、パンケーキにたっぷり蜂蜜を掛けて食べていた。

 

「うーん、全くモテない。グリーンさんはチャンピオンになればモテるぜーとか言ってたのに、知り合い以外に声をかけたりされないなぁ。……アローラ観光に来ないかってククイ博士が誘ってくれてるし、今度行ってみようかな。向こうではモテるかもしれないし」

 

その時の手紙にZクリスタルという謎の欠片が入れられていたが、それの使い方が分からないからか放置されている。

 

「あー、でも父さんが赴任してるタツミヤジマにも行ってみたいしなぁ……」

 

「ピカ?」

 

カントーでオーキド博士に押し付けられたボールに入るのが嫌いなピカチュウが一緒に来ており、隣の席でツカサが購入した小さなケチャップを舐めていたが不思議そうに見上げてきた。

 

「ああ、全然帰ってこないんだぜ? 小さい頃からあまり家に居ないから、ピカチュウが来るまでは寂しかったよ」

 

「ピカピカ……ピカ? ピカチュ?」

 

「何でホウエンや他の地方に自分を連れて行かなかったのかって? 母さんを一人にしたくなかったし、お前さんはボールに入るの嫌だったでしょ」

 

「ピーカ」

 

「だからって……ニンフィアがお前の真似してボールに入るの嫌がるようになってるんだよ」

 

当たり前のようにピカチュウと話し始めたのを見て皆ギョッとした顔で見ていたが、本当に喋れているようにしか見えない不思議な光景に目が離せなくなっていた。

 

 

「ピカピカチュ」

 

「いや、最近新種っぽいポケモンを見つけはしたけどさ……わたわた言ってるし、何かタイジュの国に行こうとかタンスから毎日出てくるから怖いんだぞあれ」

 

「ピカピ?」

 

「……うん、本当はちょっと行ってみたいと思ってる。今夜辺りにでも誘いに乗ってみようかなって」

 

 

そんなピカチュウとの会話の翌日、少し雰囲気が凛々しくなったツカサがカフェに現れていた。

 

「めっちゃ怖かった」

 

「ピカ?」

 

「あれを題材にゲームを作るならツカサのワンダーランドになりそう」

 

ちなみに部屋のタンスは夜になると向こうと繋がり、いつでも行き来出来るようになっている事には気がついていない。

 

 

「ピカ? ピカピ?」

 

「え? 昨日はずっとベッドで寝てた? ………リアルな夢だったのかあれ。これゲームにしませんかって売り込めば絶対売れると思うんだけど、ピカチュウはどう思う?」

 

「ピカピカピカチュ!」

 

「おお、それなら体験談をまとめて相談してみるわ」

 

 

連日ピカチュウと喋るツカサが気になり、客の一人が自分のピカチュウをボールから出してツカサに話しかけてみるように言って送り出していた。

 

「ピカチュ!」

 

「ピッカァ!」

 

「おお、ほっぺすりすりで挨拶して………うわっ! バチッて来た! バチッて!」

 

ピカチュウ同士がほっぺすりすりで挨拶をしているのを間近で見ていたが、バチッ!と電気が走り驚いて立ち上がっている。

 

「ピカ、ピカピカ………ピカピカピカチュ?」

 

「いや、そう言われてもなぁ………そのお姉さんだって好きな人が出来れば部屋の片付けもちゃんとすると思うよ?」

 

「ピカァ?」

 

「疑わないの。ほら、これあげるから戻ってあげなよ」

 

「ピカピ………ピカチュ!」

 

ツカサが鞄から取り出したポフレを受け取り、ぺこりと頭を下げツカサの頬にチュッと口づけをしてから戻って行った。

 

「ポケモンにはモテると自負してる」

 

………

……

 

当初の目的通りにある程度の整地を終え、残りは自然のままにしてAZと歩き回っていた。

 

「ラプラスの湖は整地してない場所にあって遠いけど、コイキングの群れがいて凄いんだよな」

 

「ああ、魚群だな」

 

「ヒンバス達もいるし、俺のミロカロスもそのヒンバス達を可愛がってるからなー。ただ俺が知ってるヒンバスとはみんな色が違ってるのが気になる。俺がホウエンで捕まえたヒンバスは紫色してたんだけど」

 

ツカサの中では他のミロカロスが色違いで自分のミロカロスが通常色だと思っており、少しだけ湖のヒンバスを捕まえたいと思っている。

 

 

「ほう」

 

「色違いの群れか……胸が熱くなるな」

 

「見事なまでにポケモン馬鹿だ」

 

「いやー、照れるわ」

 

「褒めてなどいない。私とゲームをしている時に呟いた、ネコ嬢が嫁に欲しい発言でセレナが猫耳を付けて来た日の事は忘れられん」

 

「あれはどうしたらいいかマジで分からなかった。旅してた時のクールなセレナは何だったの?」

 

「普段飄々と受け流すツカサが動揺する姿は面白かったが」

 

「それで思いついたんだけど、ほら俺ってメイド服と和服が好きじゃない?」

 

「知らないが性癖の暴露とは畏れ入る」

 

「セレナが居る時にメイド服とか和服っていいよなってAZに言って同意を求めれば着てくれるんじゃないかって」

 

メイド服はゲームやらで好きになったが、和服はカントーのバッジを集めていた時に妙にエリカに可愛がられてから好きになっている。

 

ジムに挑んだ時のエリカの視線で執着するタイプなのを直感で察知したレッドが弟分のツカサの話題を出して語り、偶々持っていたグリーン含めた三人で撮った写真を見せてそっちに執着するように仕向けたからだったりする。

 

そんな人身御供をしたからか罰が当たり、ナツメのエスパーストーカーの餌食になって今も逃げ惑っているが。

 

 

「素直に着て欲しいと頼めばいいのではないか?」

 

「付き合ってもいない男にいきなりメイド服か和服を着てくれないか?って言われたらどう思う?」

 

「警察に電話だな」

 

「でしょ? ちなみに変な理想を抱いて欲しくないから、雑誌のインタビューで普通にメイド服と和服が好きって答えてるけど」

 

少し意地悪な質問にも普通に答えるから逆に記者が戸惑う程で、女性の好みもポケモンを優先しても許してくれる人ならと答えている。

 

 

「赤裸々すぎるのも考え物だが」

 

「それを見たのかエリカさんからめっちゃ写メが届きまくって後悔してる。………家の場所は秘密にしてたのに、レッドさんが匿ってもらう代わりに教えてて俺の怒りが有頂天」

 

「うむ、スキャンダル待ったなし」

 

「AZっちは最近シリアス抜けて緩くなったよね。俺には辛辣だけど、ネットスラングとかも使うようになったし」

 

「ああ、フラエッテと再会出来て安住の地もあるからだ。ちなみに辛辣なのは愛の鞭だ」

 

「飴だけください」

 

「ダメだ。それより最近森にいる白くてフワフワして頭にエナジーボンボンが付いている喋るポケモンはなんだ?」

 

「あれか………夢だけど夢じゃなかったやつだよ。わたわた言いながら飯食って夜にはタンスから帰っていくんだよ」

 

 

湖に向かう途中の花畑ではマッシブーンが他の虫ポケモンに懐かれて纏わりつかれ、ツカサがこれ邪魔だなぁと呟いていたのを聞いていたテッカグヤが巨岩を砕いていたりとUB達は完全に馴染んでいた。

 

「魔王を相手にした俺に怖いものはない」

 

「厨二病というやつか?」

 

「ガチだよ! ………肉と木の実が美味しくて沢山食べたんだよなぁ」

 

つまみ食いしてみた木の実にハマり、ひっそり栽培した木の実を食べ過ぎて全ステカンストしている模様。

 

 

「ふむ………ならば流行りの異世界召喚というやつか?」

 

「それに近い気がする。………おーっすピカチュウ!」

 

「ピカ? ピカピ!」

 

「ちょっ、俺にボルテッカーはやめて! ………グフッ!」

 

「ほう、ピチュー達の世話をしていたようだな」

 

「アババババ!」

 

偶々通り掛かったツカサのピカチュウに声をかけるとボルテッカーで腹に突っ込んで来て、そのまま倒れた所にほっぺすりすりされてビリビリ痺れていた。

 

 

「ほらお前達もツカサにほっぺすりすりをしてあげなさい」

 

AZの言葉を聞いてピチューの群れが嬉しそうに向かい、痺れて動けない状態のツカサにほっぺすりすりをしている。

 

「AZ………後で覚え………アババババ!」

 

小さくても痺れる事に変わりはなく、それでも避けずに全ピチューのほっぺすりすりを受け入れ切っていた。

 

 

 

痺れが完全に取れるまで三十分程かかり、ビクンビクンしていたツカサをAZは呆れた目で見ている。

 

「あー、ビリビリした……」

 

「普通なら入院コースのはずだが」

 

「ふっ、マサラっ子は強いんだよ。よくレッドさんとグリーンさんと一緒にサイホーンに吹っ飛ばされたっけなぁ……」

 

「ピカピカ、ピーカ!」

 

結局付いてきたピカチュウはツカサの肩に乗りながら懐かしい思い出に相槌を打っていた。

 

 

目的の湖に着くとスワンナやコアルヒーが湖面を泳ぎ、水中には様々なポケモンが泳いでいる。

 

「自然だなぁ」

 

「ツカサ、あそこに金のコイキングがいるぞ」

 

「マジで!?」

 

「ん? ……おお! 二匹もいるぞ!」

 

まさかの色違い二体にAZもテンションが上がり男二人でキャッキャしていた。

 

 

「海辺のポケモンは流石にいないかー……あ、そうだ。今度アローラ地方に行ってくるから土産期待しといて」

 

「ああ、期待しておく」

 

「ククイ博士が色々案内してくれるらしいから、今からワクワクが止まらないわ」

 

「ピカピカチュウ!」

 

「ピカチュウはラプラス枠に入りたいのか。常夏のアローラ、グラサンも買わなきゃ」

 

………

……

 

あっという間にその日が来て船に乗ってアローラへ向かっていた。

 

セレナからプレゼントされた野暮ったい眼鏡を掛けているからか誰からも気づかれず、手摺りに寄りかかり海を眺めていた。

 

今回連れて来たのはカロスを旅した面々に、ラプラスは相変わらず留守番でその枠がピカチュウになっている。

 

「サインください!」

 

「ん? 俺?」

 

「はい!」

 

手摺りに寄りかかり海を眺めているとシャツの裾を引っ張られ、目を向けるとキラキラした目をした男の子がマジックと未使用のモンスターボールを差し出していた。

 

 

「誰かと間違えてるとかは」

 

「ないです!」

 

「マジか」

 

「カロスチャンピオンに勝ったの見てました!」

 

周りに人が居ないから助かっているが気がつかれたら囲まれてしまうとツカサは焦り、シーッと指を口に当てて笑って見せていた。

 

 

「君は礼儀正しいし、将来大物になるかもしれないな。ちょっと待ってね……ほい、これプレゼントするからそのモンスターボールはポケモンを捕まえるといいよ」

余っていたプレミアボールを鞄から取り出し、サインを書いて手渡し頭をくしゃくしゃっと撫でている。

 

「わぁ……ありがとうございます! あの、写真もいいですか?」

 

「いいよ。でも最近の子は凄いな、スマホに自撮り棒だっけ? それまで持ち歩いてるんだ」

 

ここまで来たらサービスだと眼鏡を外してしゃがみ、少年の肩に手を回して抱き寄せるようにして笑顔を見せていた。

 

 

「へへ、これ自慢したらあいつら羨ましがるだろうなぁ。ありがとうございました!」

 

「正式にチャンピオンになったら応援よろしくねー」

 

握手をして走り去る男の子の背に声をかけ、海風で冷えてきたからか自身も船室に戻って行った。

 

 

「何か新鮮だったな」

 

「フィア?」

 

「ピカ?」

 

「こら、寝転がりながらポフレを食べない。俺のピカチュウはニンフィアと気が合ってるから困る」

 

どちらがパートナーに相応しいかでガチ対決を繰り広げ、ニンフィアがピカチュウの猛攻に最後まで喰らいついてから仲良しになっている。

 

「向こうには二週間くらい滞在するつもりだけど、ククイ博士が研究所に泊めてくれるらしいのは助かるな」

 

 

 

それから二日が経ちアローラ地方に到着する日が来た。

 

透き通った海、暑い陽射し、遠くに見える巨大な建造物とカロスでは味わえない物が多い。

 

そして港に着き

 

「アローラ! やぁ! 実際に会うのは初めましてだね!」

 

「あ、アローラ。ククイ博士、初めまして」

 

白い帽子にお洒落なサングラスをかけ、上半身裸で白衣を着たククイ博士が笑顔で出迎えてくれた。

 

「うん! さぁ、家に荷物を置いたら会ってもらいたい人がいるんだ!」

 

「会ってもらいたい人?」

 

「島キングのハラさんにツカサを紹介したくてね」

 

「島キング……楽しみです」

 

ククイとワイワイ雑談をしながら研究所兼自宅に向かって行った。

 

 

 

 




アローラ到着までのお話。

サンムーンのメインキャラと交流してフラグやらたてても話題にしか出さないつもり。
ククイ博士は普通に出すけど。


発売日に天獄を買ったのにプレイしないで、先日出たばかりのVプレイ中。
久々のZZとジュドーが本当に嬉しい。



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アローラ観光が後に様々な影響を与える事に

「島キングのハラさんと会っていたら守り神のカプ・コケコがバトルを仕掛けてくるなんて」

 

「引かない所か圧倒して気に入られていたね」

 

挨拶中に強者の存在を察知し、飛び出して来てツカサに返り討ちにされたらしい。

 

「いえ、あのバトルで自分もまだまだ甘いと痛感しました」

 

「ツカサは謙虚だね。あ、それとアローラだとまだツカサはあまり知られていないから過ごしやすいと思うよ!」

 

「やったぜ」

 

ボタンを留めず上半身を露出したアローラシャツに短パンでビーサン、ジーナが選んでくれたサングラスに麦わら帽子のかなり怪しいツカサが爆誕している。

 

「今日は僕の奢りで食べに行こう」

 

「ゴチになりやす」

 

「そして明日からは島を一緒に巡ろう!」

 

「楽しみだなぁ……アローラで捕まえるポケモンは癖のない子だといいなぁ」

 

ピカチュウとニンフィアは砂浜を駆け回って遊んでいて、知らないポケモンも一緒になって遊んでいるのが窓から見えている。

 

「ツカサのニンフィア、話に聞いてはいたけど凄いね。まさかハラさんのハリテヤマのZ技を触覚で捌いて蹴り倒し、そのままムーンフォースで一撃なんて」

 

「あれでも自重して……いや、触覚使って技を捌くのは俺も初めて見ましたけど」

 

「ツカサがカプ・コケコから貰った石でハラさんが腕輪を作ってくれるみたいだけど、あの付けていた黒い腕輪を渡しちゃってよかったのかい?」

 

「ええ、メガリングにも加工すれば組み込めるって聞いたので。一から作るより楽みたいですし」

 

Zリングの機能が付いたメガリングになり、二年後のZリングにキーストーンを組み込む事の出来る仕様に繋がる。

 

 

「そっか。じゃあ、早速食べに行こう!」

 

「はい!」

 

………

……

 

そんなこんなでメガリングZとなった腕輪を装備し、毎日ククイ博士と様々な場所に足を運んでいた。

 

「……」

 

「つ、ツカサ? 大丈夫! いい笑顔のピカチュートだったから! 結構可愛く踊れてたよ!」

 

初めてのZ技を使って踊っている所を観光客に見られ、恥ずかしさのあまりに両手で顔を覆ってしゃがみこんでいた。

 

 

「ピカチュウもあのトレーナーさんも可愛いーとか言われながらも必死に踊ったんだ……写真くらいならいいかって思ったらまさかの動画だった」

 

「うわぁ……」

 

「バトルをするのに邪魔だったからサングラスと麦わら帽子を取ったのが仇に……」

 

「でもなんでピカチュウZを? 試練じゃないけどバトルに勝ったからって色んなZストーン貰ってたよね?」

 

「ピカチュウがずっとやりたいって」

 

「あ、そっか。ツカサはポケモンの言葉が分かるんだっけ」

 

ククイ博士とすっかり仲良くなり、色々と話すようになっている。

 

ククイは技について熱く語っても普通に付いてくるツカサを年の離れた友人と見ており、改めてアローラに招いてよかったと思っている。

 

 

「ええ、オンオフ可能で便利です」

 

「とにかく次に行こう! あ、ボールは足りるかい? かなり捕まえて転送していたみたいだけど」

 

「それは大丈夫です。マオに案内してもらったポケモンセンターで買ったからたくさんあるので」

 

「あれは凄かったね、ツカサの滑って落としたモンスターボールに凄い速さでダイブしてきて捕まったヤトウモリ」

 

「あれは芸術点高かったなぁ。カキさん含めた俺達三人がしばらく何が起きたのか分からなくて固まったくらいに」

 

「ツカサがボールから出してみたら肩にスルスルって登って行ったよね」

 

「ピカチュウが羨ましかったんだって言ってましたねー。今はカロスの私有してる森でみんなと遊んでるんじゃないかなー」

 

「それは気になる……そうだ! ツカサが帰る時に僕もカロスに付いて行っていいかな?」

 

「いいですよ。何なら探検しますか? まだ色々未開なんで」

 

「いいね! 新着の動画が……あっ」

 

「え? ……待って、これ削除申請したい」

 

ククイがスマホを確認して固まったのを見て後ろから覗き込み、まさかの物を見つけて焦っていた。

 

ポケモントレーナー用の公式サイトの一つであるコメント出来る動画サイトにさっきのピカチュートを使ったバトルの動画がアップロードされており、カロスチャンピオンのそっくりさんだと思われているがバレるのも時間の問題だった。

 

 

「『えっ、これ本物?』『カロスチャンピオン何やってんの?』『やだどっちも可愛い……』『これは流行る』……ツカサ、もう身バレしてるよ」

 

「さっきの観光客の女性どこ行った? すぐに消してもらわなきゃ!」

 

これを見たやたら有名すぎる知り合いや友人達が、自身のサイトでこの動画はオススメと紹介したせいで再生数が上がり続けている。

 

 

 

結局観光客の女性は見つからず、見なかった事にして島を二人とピカチュウで再び回り始めている。

 

「ミュウいないかな」

 

「幻のポケモンだね」

 

「三歳くらいの時、よく庭に遊びに来てたんですよ。突然来なくなって寂しかったですけど」

 

「ツカサ、本を書いたらどうかな? 自伝とかを出したら僕は絶対買うよ。間違いなく面白いだろうし」

 

「面倒ですねー」

 

「うーん、絶対面白いと思うんだけどなぁ……」

 

「それよりさっきからこの泣きぼくろのある女の子のピカチュウが俺の脚にしがみついて離れないんですが」

 

「ピカァ」

 

「ピ! ピカ!?」

 

肩に乗ってキョロキョロしていたピカチュウ♂が、ツカサの脚にしがみついて目をハートにしているピカチュウ♀を見て驚いている。

 

メレメレ島でツカサに一目惚れをし、こっそりククイ博士の船に忍び込んでアーカラ島まで付いて来ていた。

 

 

「博士、俺モテてる」

 

「確かにそのピカチュウ♀はツカサ大好きみたいだね」

 

「ただ今はオフにしてるから何言ってるか分からないです」

 

「ピカァ……」

 

「これこのまま歩くしかないんじゃ……下手に刺激したらアバババってなりかねない」

 

ピチュー達が全身にくっついて来た時に地獄を見たらしく、警戒しながらゆっくり摺り足で動いている。

 

やはり歩きにくいと途中で抱き上げ、そのまま左肩に乗せて歩いて行く。

 

両肩にピカチュウを乗せて歩く姿はそれはもう目立ち、観光客だけでなく地元の人達にも写真を撮られる程。

 

 

 

太陽の光が海に反射してキラキラ輝き、ビーチに設置されているチェアに横になってツカサは身体を焼いていた。

 

「うーん、背後に聳え立つホテルは豪華すぎて落ち着かないだろうなぁ。ナマコブシ投げは面白かったけど」

 

「それで今ツカサのお腹に乗ってるナマコブシは? ピカチュウ達が恨めしそうにしてるけど」

 

トロピカル的なドリンクを二つ手に戻って来たククイ博士がツカサの腹の上にいるナマコブシを見て尋ねていた。

 

ピカチュウ達は周囲をうろちょろしてチェアに乗るタイミングを計っており、互いに牽制しあっている。

 

「捕まえました。ヒドイデとスナバァも捕まえてカロスに送りました」

 

「ブシッ……」

 

「僕が少し離れた間に……早業だ! はい、熱中症にならないように水分補給しないとね」

 

「ありがとうございます。しかしククイ博士……鍛えてますね。そのシックスパックが眩しいです」

 

「ツカサも鍛えてるよね。いい筋肉の付き方してるよ!」

 

水着姿の二人は鍛えられた肉体を互いに褒め合い、ピカチュウ♀はツカサの腹筋を見て涎を垂らしている。

 

「トレーナーは丈夫な身体が基本ですから」

 

「多少野生のポケモンにぶつかられても平気じゃないとね」

 

「ですねー」

 

 

サングラスをかけパラソルの下で水着姿の女性を見ていたら気づかれ、手を振られて振り返している。

 

腹の上でうつ伏せで寝そべりスリスリしてきてくすぐったいピカチュウ♀は端から見たら可愛らしく、ビーチの視線を無駄に集めていた。

 

 

「まだ捕まえていないのにこの懐き具合は……お前は最初めっちゃ俺にでんきショックしてきたよなー」

 

「ピ、ピカ? ピカチュウ……?」

 

「そんな事したっけ?って顔してもダメだぞ。仲良く母さんのサイホーンに吹き飛ばされてから、いつかリベンジしようって分かり合ったんじゃないか」

 

「ピカー」

 

「そう言えば……下世話な話になるけど、ツカサって女性に興味はあるのかい?」

 

ピカチュウと話すのをニコニコしながら見ていたククイ博士が気になっていた事を口にしていた。

 

「そりゃありますよ。でもお付き合いするならポケモンを優先しても怒らない女性じゃないとダメだって友人に言われてますが」

 

「あー……昨日もナンパされてるのに女の子が連れてるヤドン可愛がって怒らせてたね」

 

「えっ、あれナンパだったんですか!?」

 

「もう胸元が見えるように強調したり、やたら甘ったるい声で話しかけていたよ。ツカサはヤドンに夢中で全く見てなかったし聞いてなかったみたいだけど」

 

「いや、これでも男ですからおっぱいをそんな強調してたら目が釘付けに……」

 

「気持ちよさそうにひっくり返ったヤドンのお腹をムニムニ触ってたよ」

 

「マジか……見たかったなぁ」

 

「目の前にツカサ好みの女性と色違いのイーブイと普通のイーブイの進化系が全部います。どちらかとだけ話したり触れ合えたりしたらどうする?」

 

「そんなのイーブイズ一択でしょ」

 

「うん、僕もツカサはポケモンを優先しても怒らない女性以外と付き合ったらダメだって言えるよ」

 

「えぇ……」

 

 

 

島を巡り終える頃にはカロスに帰る日が近くなり、一人でブラブラしながら皆へのお土産を物色していた。

 

「母さん達にはちゃんとお菓子やらを送ったし、後はセレナ達に買って帰らないと」

 

「ピーカーチュー!」

 

「フッ……ピカ?」

 

ツカサのピカチュウ♂♀は仲が悪く、どちらがツカサに相応しいかでよく揉めている。

 

「両脚にしがみつきながらケンカするんじゃない。ピカチュウ♀はあまり挑発するなら服作ってあげないぞ」

 

「ピカ!?」

 

「仲良くするならあのアイドルっぽいの作ってあげるから」

 

ポケモン用の服やアクセサリーも最近自作しており、今もピカチュウ♀の耳に可愛らしいリボンが付けられている。

 

 

「お前も最古参の俺の相棒なんだから、少しは余裕を持とうな」

 

「ピカ」

 

「ピカチュ」

 

「フィア!」

 

「最後のやつは大人しくボールに戻ろうね」

 

 

そんな風に騒ぎながら物色していると土産物屋の店主が現れ、ツカサを見てすぐにハグをしてなんでも好きなだけ持って行ってくれと店主自ら売り物の鞄に商品を突っ込み始めていた。

 

「いや、ダメですって!」

 

「他のポケモンドクターから治療は無理と言われた、私の大事な家族のハリテヤマの手術をして助けてくれたんだ! 寧ろこれだけじゃ足りないくらいだよ!」

 

手術をポケモンセンターで行おうとしたが傲慢なポケモンドクターが居り、自分の診断を否定するツカサに対してセンターの治療に関する物の一切の使用を拒否。

 

困っていた所をエーテル財団の職員に話しかけられ、場所を提供してくれるというので付いて行っていた。

 

「流石にそんなには戴けませんって!」

 

「いいからいいから!」

 

助手に付いたエーテル財団の職員達は見た事のない術式と正確で速い執刀に目を見張り、あっという間に縫合まで終えて颯爽と去る姿に慌てて後を追っていた。

 

そしてツカサを是非エーテル財団お抱えのドクターにと勧誘されたが、フリーランスのポケモンドクターとしてやっているのでと断り今に至る。

 

「鞄パンパン、鞄パンパンですって!」

 

「うーむ……よし、それなら先生の自宅に後から送らせてもらうよ! 住所と氏名を……」

 

 

 

手術以上に疲れるやり取りをしてぐったりしながら博士の家に帰り、椅子に座って一息ついていた。

 

「ドクターとしてのサインが欲しいとか初めて言われましたよ」

 

「カロスチャンピオンじゃなければ僕の助手になってもらいたいよ。でもごめんね、今週はツカサ一人でぶらぶらさせちゃって」

 

「平気ですよ、毎日マオが迎えに来て案内してくれてますから。問題は暑いのにずっと手を繋いでいないといけない事ですねー……」

 

四つ下のマオはツカサに一目惚れをしたらしく、メイ程ではないが積極的にアプローチをしていた。

 

メイ以来の積極的な子にツカサもタジタジであり、割と単純で恋人繋ぎを自然にしてくるマオを少し好きになっている。

 

 

「……何だろう、二年後くらいにアローラで修羅場が起きそうな気がする」

 

「怖いっすね」

 

「ツカサが中心にいたりしてね」

 

「ガチでやめてください」

 

「まぁ、ツカサはカロスチャンピオンだから巻き込まれないと思うけどね」

 

「それフラグっぽいんですけど……」

 

 

ククイ博士の手伝いをしながら話をしており、足りない資料もツカサが各博士に連絡をしてメールで送ってもらったりしている。

 

欲しい資料をいいタイミングで持ってきたり、休憩したいなと思った時にアイスコーヒーとお茶菓子が出てきたりと助手に欲しくなっていた。

 

「……これは確かに先輩博士達が欲しがるわけだ」

 

「ククイ博士? これが最近になって本気を出し始めた俺のキュレムです」

 

持って来ていたノートPCで動画を再生するとキュレムが映り、撮影しているツカサがブラックと叫ぶと発光して次の瞬間にはブラックキュレムに姿を変えていた。

 

ホワイトと叫ぶと同じように発光してホワイトキュレムへ姿を変えている。

 

話をしてみると実はフォルムチェンジに遺伝子の楔やゼクロムにレシラムが必要ない事が分かり、最近になって本気を出し始めたジガルデと共にウルトラビーストを含めたバトルの特訓に励んでいる。

 

 

ツカサを慕い仲間になった各地方に伝わる伝説や幻の中で最強の相棒は誰だ議論が行われ、皆が私だ俺だ僕だと名乗りを上げて各々譲らなかったらしい。

 

ホウエンから去る時に付いてきたラティアス。

 

シンオウで色々あって仲間になったダークライにシェイミ。

 

イッシュでメイの代わりに戦い捕まえたキュレム、知らぬ間にマサラタウンまで付いてきていたメロエッタ。

 

カロスで仲間になったゼルネアス、イベルタル、ジガルデ、ミュウツー、そして自らをツカサのパートナーと豪語するディアンシー。

 

かなり昔からツカサを覗き続け、我先にと異世界から現れたUB達。

 

ツカサは気がついていないが、幼い頃にカントーで出会ったミュウもひっそりと住み着いて感動の再会のタイミングをどうするか考えている。

 

 

結局話はまとまらず、各々次に集まる時に己が最強である証を見せるという事で決着がついていた。

 

 

「これがあの……えっ」

 

「はい?」

 

キュレムが戦い始めた相手がミュウツーであり、しかもメガシンカをしてメガミュウツーYへと姿を変えた事にククイは目を疑っている。

 

「……」

 

「?」

 

………

……

 

あれから毎日デートを繰り返す内にマオから呼び捨てにされるようになり、誰よりも後から好意を持ったのに誰よりも一歩先を行く存在になっていた。

 

 

そして……

 

「楽しかったなぁ……」

 

帰りの船の上で呟きながら離れていく島を眺めていた。

 

仲良くなった者達が見送りに来てくれて、マオからはちょっと不恰好だが心のこもったお弁当を貰っている。

 

「また来よう。結局ククイ博士は忙しくなってカロスには来れそうもないのが残念」

 

「ピカ?」

 

「お前は故郷を離れてよかったの?」

 

アローラで毎日ツカサのマッサージを受けて、そこらのピカチュウじゃ敵わないくらいの美しさを得たピカチュウ♀に問いかけていた。

 

「ピカ!」

 

「いいんだ」

 

「ピカー……ピカチュウ!」

 

「ピカピ!」

 

「兄弟分のピカチュウ♂とアローラのピカチュウ♀。♀の方はマッサージ効果でツヤツヤモチモチで触ると最高の感触になってるんだよなー」

 

寝る時はピカチュウ×2とニンフィアが基本になっていて、ポケモン好きには堪らない光景だったりする。

 

 

それからカロスまでの数日、ピカチュート動画の再生数に怯えながら過ごしていた。

 

 

 

 




昨日の夜、石を無くし枕を涙で濡らしていた。

今日の昼、食を犠牲に石買う銭を追っていた。

明日の朝、ちゃちな呼符とちっぽけな課金でガチャをする。

FGOはDWが作った集金箱。

質を問わなきゃ何でも出る。

次回、『爆死』

明後日? そんな先のことは分からない。




色コケコ配信、みんなセブンとかで貰おうね。

前売り券は六枚買うか、初代とカロスの二枚だけにするかで悩むわ。


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ツカサはダンスやってるからな

カロスに帰ってきたツカサ(アローラの姿)は土産を皆に配って歩き、久々の自宅でのんびりしていた。

 

新しく仲間に加わったピカチュウ♀はピカチュウ♂と違い森には行かず、自宅でサーナイト達と過ごす事にしたようだった。

 

「ツカサ」

 

「セレナ? 今日はツインテールなんだ」

 

「ふふふ……」

 

セレナはソファでダラダラしているツカサの隣に座ると、手にしたタブレットでピカチュートの動画を再生し始めた。

 

「はぁ……可愛い……」

 

「ん? この前の仔猫? ……うわぁぁぁあ! やめろぉぉぉ!!」

 

お約束のピカチュート動画であり、満面の笑みでノリノリのダンスを披露するツカサを見てセレナはウットリしていた。

 

「もうカロスで知らない人はいないから安心して」

 

「もうダメだ……おしまいだ……」

 

「ティエルノがキレッキレで最高だって褒めていたし、サナも真似して出来るようになっているわ」

 

「嬉しくない……もう二度とやらない」

 

Zクリスタルは現在ピカチュウZにデンキZとルカリオ用にカクトウZを装着しており、カクトウZの動きもハラにキレがいいと褒められている。

 

 

「きっと要求されると思うけど。怪盗の日常にも入るかも」

 

「マジかよ……」

 

「うふふ……」

 

「女の子がしちゃいけない顔してる……しかし台本分厚すぎて引く。しかもエピソード1って事は続き物なのかよ……あ、リオルガールとのキスシーン入るかもって書いてある」

 

「! ツカサ、拒否しなさい」

 

「そりゃするよ。アクションシーンを増やすかキスシーンって書いてあるし、アクション確定だろ。男がこう言うのは気持ち悪いかもしれないけど、ファーストキスは好きな人としたいしなぁ……」

 

「そうね、それが一番だわ」

 

ツカサはファーストキスをしていないと思っているが、シンオウの旅終盤に二人でテントの中で寝ている時ヒカリに何度かされている。

 

イッシュの旅では序盤からメイがはっちゃけていて、ツカサが寝たのを確認して毎日と言っていい程キスをされている。

 

 

「まぁ、もう気にしない事にしよう」

 

「……あ、あら? 少し眠くなって来ちゃったわ」

 

「寝てもいいよ。ちゃんとお昼には起こすから」

 

「ありがとう。それじゃあ……」

 

ツカサは貸している部屋で寝るのだと思っていたが、そのままツカサに身体を預け肩に頭を乗せて目を閉じたのを見て内心動揺していた。

 

そんなセレナにドキドキしながら、お盆に飲み物とお茶菓子を乗せてちょこちょこ歩きながら持ってくるポケモンの姿を見てほんわかしている。

 

 

「ありがとう、マギアナ」

 

「……」

 

ゆっくりテーブルに置くとセレナとは反対に座り、機械音声で何かを呟き首を傾げて見ていた。

 

「ああ、寝ちゃったよ」

 

「……? ……!」

 

「大丈夫だよ。それよりマギアナ、一応修復はしたけど身体は平気なの? 身体が壊れて動けない状態で長く放置されていたみたいだったから」

 

「……!」

 

ピョンとソファから降りるとちょこちょこ歩き回り、平気アピールをして手から花をポン!と出して見せていた。

 

「ふふ、その花はドレディアが庭で世話してるやつを分けてもらったのかな?」

 

マギアナとの出会いはアローラでマオと出掛けている時にソウルハートの呼び掛けに導かれ、森の奥で壊れた状態で倒れているのを見つけた事だった。

 

マオは人気のない森の奥に連れて行かれ、何か勘違いしたのかモジモジしながら色々と期待していたようだが。

 

「!」

 

「防水加工もしたから大丈夫だよ。でも出来るなら家に居て欲しいかな」

 

アローラでは修復するパーツが足りず、謝りながらソウルハートを取り出してその状態で夜に話をしていた。

 

カロスに戻り土産を配りにシトロンの元に訪れた時に協力してもらい、様々なパーツを使って共に修復をして今に至る。

 

 

「!!」

 

「うん、夜にちゃんと帰ってくるならね……あの森は安全だから」

 

伝説や幻のポケモンに加え、ツカサと旅した仲間達が散っていてかなり安全な場所になっている。

 

「ぴゅう!」

 

「お前はいつの間にか鞄の中に居たんだよなぁ……お手製ポフレを鞄の中で美味そうに食べてるのが気に入ったから、一応ボールに入れて連れ帰って来たけど。ほら」

 

フワフワした夜空のような色をしたポケモンがニコニコしながら浮いており、ツカサの投げたポケモンフードを口を開けてキャッチして食べていた。

 

「お前は進化したらどんな姿になるのかな。まぁ、進化しないって事も考えられるけど」

 

 

寝たフリのつもりが本当に寝てしまったセレナ

が起き、最近上達し始めた手料理をご馳走になってから森を一人歩いていた。

 

「オドシシの群れにゼルネアスが混ざってるとか笑わせに来てるのか」

 

「みゅう?」

 

「そうそう、あれ絶対ウケ狙いだぜ。あの群れさっきからこっちチラチラ見てるし……え?」

 

いつの間にか隣に浮きながら付いて来ていたミュウに驚き固まっていた。

 

「みゅ?」

 

「久しぶりすぎて何から……心配してたんだからな」

 

「みゅう!」

 

嬉しそうに飛びついて来たミュウを抱き締め、長く離れていた小さな頃の友達との再会に感極まっている。

 

 

それから離れていた長い間の話をしながらお気に入りのスポットを目指していた。

 

「ちなみに今は折角だから手持ちがオールスター的な感じだぜ」

 

「みゅう?」

 

「ダークライ、キュレム、イベルタル、ジガルデ、それとお前さんの遺伝子から生み出されてしまったミュウツー」

 

「みゅ……」

 

「臆病な子で初めて会った時は身を守る為に攻撃されたなぁ……」

 

 

そのままミュウツーを出して顔合わせをさせたが、ミュウにビビりツカサの後ろに隠れたがはみ出たりしていた。

 

ミュウもツカサのポケモンになる事を決めたらしく、一度ボールに入ってから出てきて傍をふよふよ浮いている。

 

「これでミュウも家族だよ。しかし代変わりしたからってアローラの守り神達がいつの間にか住み着いてるとか、ククイ博士とハラさんに連絡したら絶句してたんだよなぁ……俺も朝起きて散歩してたらいきなりカプ・コケコが降って来た時は頭がどうにかなりそうだったけど」

 

「みゅう、みゅ」

 

「うん、今も森のどこかにいるよ。……タツミヤジマには色違いのヤミラミがたくさんいるの? マジかよ、見てみたいなぁ」

 

「みゅ」

 

「……ツカサ、端から見ると気持ち悪いから外ではやるなよ」

 

ミュウと会話をしているのを見回っていたAZが見ており、とても辛辣なお言葉を戴いていた。

 

………

……

 

またカルネに連れられピカチュウと共にテレビの収録に参加させられていた。

 

「……ここで回ってポーズ」

 

「ピカピカ……チャア」

 

コンテスト関係の番組だったらしく、コンテスト関係は素人だと思われているツカサにポケモンと一緒に踊るようスタッフが言った結果がこれ。

 

ピカチュウとシンクロしたダンスとアピール、決めポーズまで完璧に仕上がっていた。

 

 

ホウエンとシンオウでバトルにしか興味のなかったハルカとヒカリの代わりにコンテストの全部門を制覇しており、調べればしっかりその時の記録は残っている。

 

ただまさかコンテストまでは手を出していないだろうと誰もが調べなかったから表に出ていないだけで、全部門制覇をしたサーナイトとツカサのペアはコンテスト専門の者なら知らない者はいないレベルの有名人。

 

 

踊り終わると慌ただしく休憩になり、カルネが目を丸くしながら近づいて来た。

 

「ツカサ、まさかとは思うけど」

 

「俺の場合はコンテストのが先なんですよ」

 

「ピカピカ」

 

「さっきまで上から目線で偉そうだったプロが青ざめてたわよ。キレッキレな息の合ったダンス、ペアアピールも完璧、締めの決めポーズも非の打ち所のない出来だったからでしょうけど」

 

「……まぁ、それもあって本気で踊ったんですけどね。歌って踊れるのは本気で隠したいです」

 

ポケモンに関する事なら何でも出来るんじゃないかというくらいに万能であり、最近はメロエッタと共にダンスや歌の練習もしている。

 

AZも悔しいが上手いと褒めてるんだかよく分からないコメントを残していた。

 

 

「でもどうするのかしら。自分より格上を間近で見て自信喪失したんでしょうけど、もう番組辞めるって聞かないらしいわ」

 

「俺は悪くない」

 

「ならいっそツカサが担当したら? なーんて」

 

「「それだ!!」」

 

「うわっ! ビックリした……心臓がバクバクしてる」

 

 

「彼女はちょっと傲慢だったし、チャンピオンなら……」

 

「でもギャラの問題が……」

 

カルネの案を聞いていたスタッフ達が集まり、どうにかならないかを話し合っていた。

 

 

「絶対やらない」

 

「とは言えないわね。お試しに一回やってみたら? 視聴率悪ければ別の人を使うでしょうし」

 

「いや、そんな適当な……」

 

 

それからすぐに一度でいいから等の説得からの泣き落としで無理矢理承諾させられ、仕方なしにコンテスト関係のテクニックや最新の映像に小さな子にも分かるようそれっぽいコメントをしていた。

 

本来の担当者がするはずだった選ばれた視聴者とのコンテストバトルも行ったが加減を知らないツカサの圧勝、落ち込む視聴者に的確で分かりやすい改善点とスタミナを付けるようアドバイスをしている。

 

本来なら残念賞扱いのサイン色紙と番組ノベルティグッズだが、それがツカサのサインだと分かると一生大事にします!と嬉しそうに言いガッチリ握手をしてスタジオから去って行った。

 

 

そして収録も終わり……

 

「ピカチュウ……」

 

「ピカァ……」

 

ツカサとピカチュウは呼ばれたカルネの楽屋で疲れ果てていた。

 

「お疲れ様。私もコンテストに出てみようかしら」

 

「それならアピールにメガシンカも面白いかもしれませんよ」

 

「あら、それもいいわね」

 

ツカサは無意識に見ていた者達もコンテストに参加してみようかなと思えるような進行をしていたらしく、前任者の傲慢さで興味を持たず淡々と作業をしていたスタッフ達すらも引き込んでいた。

 

「早く帰ってピカチュウ♀のお腹をムニムニしたい……」

 

「あの泣きぼくろのあるセクシーな目つきのピカチュウ?」

 

「セク、シー……? 泣きぼくろのピカチュウであってます」

 

「マッサージと食事、適度な運動であんなにツヤツヤモチモチになるのよね……」

 

………

……

 

日焼けもすっかり戻る頃に映画の撮影が始まり、スタントも自らこなして派手なアクションシーンを見せていた。

 

現在は仮面に黒いコート、革手袋で怪盗としての活動の撮影が行われている。

 

「まさかアリアの家で撮影とかなぁ……」

 

「兄や……アリア、いっぱいお願いしたの……」

 

「よしよし、甘えん坊なのは変わらないのね」

 

「ん……」

 

使用人達は普段から甘えている少女を見ており、それとは全く違う本気での甘え方とそれを軽く受け入れて膝に乗せるツカサに衝撃を受けている。

 

「じいやさんが引退して、そのお孫さんがアリアのお世話係になってるなんてなぁ……メイドさんがじいやとか、これもうわかんねぇな」

 

「兄や、パリーンってやるの……?」

 

「うん……アリアのご両親もそれは見に来るって言ってたよ」

 

「アリア、兄やがいればいいの……」

 

五階のステンドグラスを突き破って外に飛び出し、ゲッコウガに助けられながら着地するシーンの撮影準備待ちだった。

 

予めアリアの両親から壊してもいい家具ばかりにしておいたからとツカサは聞いており、ド派手に決めてやろうと考えている。

 

 

警報が鳴り響く豪邸内をお宝を手に走り回り、丈夫なシャンデリアの上に飛び乗り道無き道を通って上へ上へと進んで行く。

 

「観念しろ! もう逃げられないぞ!」

 

「我等精鋭三人に勝てるわけないだろ!」

 

「そうだよ」

 

「あるさ、逃げ道なら」

 

この日の為にアリアの両親が用意しておいた細工のされたステンドグラスを突き破って外に飛び出し、五階という高さに内心慄きながらすぐにゲッコウガをボールから出して支えられながら華麗に着地していた。

 

そしてゲッコウガと共に走り出し高い壁の上に飛び乗り、お宝を片手に持ったまま月を背後にカメラに向かって全てを見下した嗤い顔を見せ、壁の向こう側に飛び降りた所でカット!という声が聞こえて戻って来ている。

 

 

既にリオとしての日常も撮り終わっており、後はリオルガールの撮影が進み話が交差する時まで休みと言われていた。

 

監督達がアリアの両親に物凄く丁寧に感謝とお礼をしているのを尻目に着替えを済ませて帰ろうとしたが……

 

「メイド隊、兄や様を確保!」

 

「執事隊、負けずに兄や様を確保!」

 

「ぬわあああん疲れたもおおん……ヌワー!」

 

どこかの世界の野獣のような言葉を口に歩いていたツカサはあっさり捕まり、胴上げのようにして運ばれていってしまった。

 

 

 

抵抗する間もなく服を脱がされ、風呂場に入れられ外から鍵までかけられている。

 

「おかしいだろ……拉致監禁じゃないのこれ?」

 

「フィアちゃん、可愛いの……」

 

「フィア!」

 

「……事案が、事案になっちゃうから早く開けて!」

 

『大丈夫です。旦那様と奥様が寧ろそれを逆手に取って婿に取ろうとしているだけですので』

 

「全然大丈夫じゃない!」

 

『とにかくアリア様と仲良くお風呂に入ってください。兄や様のピカチュウ達はこちらで面倒を見ますので』

 

「マズイですよ!」

 

 

背中を流したり流してもらったり、髪を優しく洗ってあげたりしてから仲良く大きな浴槽に浸かっていた。

 

ニンフィアもツカサとアリアに全身洗われ、触覚でアリアと共にツカサの背中を流したりと器用さが増していた。

 

 

しっかり暖まり脱衣所に出るとメイド隊が待ち構えており、アリアをそっと行かせると風呂場に戻って着替えが終わるのを待とうとしていた。

 

「やめろ! なんだお前ら! 離せ!」

 

「兄や様も私達が着替えさせますので」

 

「プロのメイド三人に勝てるわけありませんわ」

 

「馬鹿野郎お前! 俺は勝つぞお前!」

 

「さぁ、腰のタオルを取りますからね」

 

「やめろォ! ナイスゥ!」

 

「抵抗は無意味ですよ!」

 

「あ~やめろお前! ……どこ触ってんでぃ!」

 

メイド三人が風呂場に戻ろうとしたツカサの腕を掴んで引き戻し、脱衣所の床でくんずほぐれつの大惨事が巻き起こっていた。

 

 

「あら……」

 

「まぁ……」

 

「ご立派……」

 

「うっさいわ!」

 

………

……

 

食後にコーヒーをいただきながらアリアのご両親含めた三人で話をしており、控えているメイドや執事はおかわりのタイミングをはかっている。

 

「ツカサ君、我が家をアポ無しで訪れる事が出来るようにしておいた」

 

「カロスチャンピオンなら誰も反対しませんもの」

 

「いつのまにかトレーナーカードにサインが……」

 

アリアのご両親が刻んだらしく、第一の門でそれを見せて本人確認が出来れば即中に入れるようになっている。

 

「それとアリアの誕生日に贈ってくれたぬいぐるみなんだが……」

 

「何かいけませんでしたか?」

 

「いや、あのピカチュウぬいぐるみの首に下げられていたネックレスの事なんだ」

 

「ああ、それなら調整すればアリアさんにも付けられますよ」

 

部屋に邪魔なくらい転がっているピンクダイヤモンドで作ったネックレスであり、お金持ちの貴族だしこれくらいのプレゼントは慣れたものだろうとディアンシーから許可を貰って贈っていた。

 

「ピンクダイヤモンド……」

 

「はい」

 

「幻のポケモンであるディアンシーが創り出す貴重なダイヤモンドなのは知っているね?」

 

「ええ」

 

「世界で取り引きされている中で最小の物でも億単位はする」

 

「そうみたいですね」

 

「だから流石にこれは受け取れない」

 

ケースに入れられたネックレスが執事達によって部屋に運び込まれ、慎重にテーブルに乗せて部屋から出て行った。

 

「それはケーキと紅茶くらいの値段みたいなものですから、アリアさんの成長に合わせて調整してあげてください」

 

「それはどういう……」

 

「ディアンシーのおやつ代ですね」

 

「ディアンシーのおやつ代……ディアンシー!?」

 

「ええ。最近はシュークリームにエクレアも好きになったみたいで、作ると呼んでもいないのに座ってるんですよ」

 

「その、もしもディアンシーを譲ってほしいと誰かに言われたらどうする気かね?」

 

「その時点でお引き取り願いますよ。彼女は物ではないですし、私以外をパートナーとは認めないと常々言っていますから。力技や搦め手で奪おうとするなら反撃も辞さないです」

 

「……それを聞いて安心したよ。私も力になろう。もし権力を笠に着るような相手が来た時は私の名前を出して、すぐに私に連絡をしなさい」

 

「ありがとうございます」

 

今はまだ平気だが後々になってそうなる可能性を考慮し、ありがたく力を借りるつもりのようだ。

 

 

「あなた……」

 

「う、うむ……それでこんな事を頼むのは悪いと思うのだが、私達をディアンシーと会わせてもらえないだろうか」

 

「構いませんが、またどうして」

 

「その、妻が……」

 

「小さい頃から一度でいいからお話して遊びたかったの。お母様から読んで貰った絵本のディアンシーが私の理想のお姫様で……」

 

「え、あの……近い近い近いです!」

 

興奮したアリアの母が立ち上がり語りながらテーブルを足早に迂回してツカサに近づき、空いている左手を両手で握りながら間近で更に語り出して焦っている。

 

「あ、私はそろそろ部屋に戻らないといけない時間だ。ツカサ君、妻の相手は任せたよ。……ディアンシーの事になると長いから助かった」

 

「ちょっ、マダムを置いていかないでくださいよ!」

 

「それで私はずっと探していて」

 

「ハハハ、アラフィフ紳士はクールに去るよ」

 

割と面白い人だったらしくそのまま本当に去って行き、ツカサは手を握られたまま一時間拘束されて延々話を聞かされていた。

 

アリアがおねむの時間になり、風呂場での因縁深いメイド三人組がツカサを迎えに来てようやく解放されていた。

 

 

「はぁ……」

 

「兄や様?」

 

「いえ、何でもないです。それより何でサヨコさん達なんです?」

 

仕方なく着替えさせられてから自己紹介をしたらしく、見られてしまった事で嫌でも三人の名前を覚えていた。

 

「私達がアリア様のお世話をしておりますので」

 

「なんつーか、御三方は他の方々より満ち溢れているというか……サヨコさんは色々完璧ですし、モモカさんとサクヤさんは俺とそんな変わらないのに凄いっすね」

 

「兄や様の方が凄いと思いますが」

 

「あのピカチュウぬいぐるみ、毎年衣装を変えてますよね」

 

「アリア様もどんなショコラよりも兄や様のショコラが好きと毎年楽しみにしていますよ」

 

「それならよかった」

 

 

それから毎朝帰ろうとすると引き留められそのままお泊りが続き、仕方なくAZとセレナに諸々の事を頼みタイミングを見て帰ろうと考えていた。

 

 

 




アローラから付いてきてたり、回収してたり、鞄に入ってたり、ミュウと再会したり。

ハルカ、ヒカリとの旅ではコンテスト担当で総ナメしていた模様。
ホウエンにはきっとその時のコンテストを見に来ていて、いつか自分も魅せたいとがんばってNo.1コンテストアイドルになった子がいるかもしれない。

抜きん出てるメイドのイメージがこの三人だった。



ぐだぐだ本能寺とガチャ欲抑えるのに忙しかったです。

巌窟王ピックアップでは40連エレナママのみ。
それ以来久々の20連で、まだ居ないエミヤを狙ってガチャしたら沖田さんが来てくださいました。
第一の桜色の和装が好きで最終再臨後もそれで運用してます。


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集まって来すぎて混沌としてきた森

帰ってくるのに結局二週間ほどかかっていた。

 

最後は三人のメイドの誘惑に耐えてアリアを宥めかし、また来るからと告げて颯爽と帰宅していた。

 

「リオルガール役は当日まで伏せるとか困る……あれ? ドーナツこんな食べたっけ」

 

久々に山盛りに作ったドーナツを食べながら台本を読んでいて、ふと器を見たら山のようにあったはずのドーナツが残り少なくなっていて驚いている。

 

「……ん?」

 

「シシシッ」

 

「まーた見た事のないポケモンが……」

 

観察していると謎のリングが現れ、謎のポケモンがニュッと顔を出していた。

 

そのポケモンは気づかれていないと思っているのか、テーブルのドーナツを掴むと再びリングに戻り消えて行った。

 

それが二、三回繰り返されてようやくツカサが見ている事に気がつきジーッと見つめ合う事になっている。

 

「こんにちは。君の名前は?」

 

「フーパ! フーパ、これ気に入った!」

 

「おー、嬉しい事を言ってくれるじゃない」

 

ツカサに敵意がないのを察して完全にリングから出て来て、お手製ドーナツをモグモグ食べながら気に入ったとニコニコしている。

 

「フーパ、これもっと食べたい」

 

「なら作ろうか。プレーンシュガー以外にも今なら色々作れるし」

 

「フーパもやりたい!」

 

「人懐っこいなー。よし、ならまずは準備をしてから手を洗って……」

 

………

……

 

「ツカサ、よろしく!」

 

「ああ、よろしく。森に居てもいいし、家に居てもいい。旅に出ても他の人には捕まらないから安心していいぞ」

 

すっかり意気投合してツカサのポケモンになり、森に住みやすい場所を探しに行くつもりらしくドーナツを食べながらリングを通って行ってしまった。

 

『これがドーナツなのですね』

 

「ディアンシーは当たり前のように来るよなぁ……」

 

『ミュウとお友達になってからツカサが何か作る時は連絡が来るのです』

 

「マジかよ」

 

『ツカサの家族だからと』

 

「まぁ、捕まえたり仲間になったポケモンは家族だな。……最近捨てられてた卵を八個拾ってジュンサーさんに届けたら、流石に預かれないのでチャンピオン引き取れませんかって言われて引き取ったのを思い出したわ」

 

『生まれた子達がツカサを親だと思っている姿は可愛らしかったですね』

 

「まさか全部イーブイの卵だとは思わなかったよ」

 

『いつかは里親を探すのですか?』

 

「行きたい子がいればね。森で暮らしてもいいし、家に居てもいいし……あ、そうだ。ディアンシー、お前さんに会って話がしたいって大ファンが居るんだけど」

 

『お断りします。私、そんなに暇ではないのです』

 

「そっか。ケーキとかシュークリームとか沢山用意してくれるって話だったけど」

 

『行きます!』

 

「食いしん坊すぎるだろ……」

 

 

 

それから数日が経ち久々のカフェに入ると、いつものテラスの隅っこのテーブルが予約席扱いになっていた。

 

違う席に座ろうと移動しようとしたらセレナママが来て、予約席に座るよう言われている。

 

「ここはツカサ君の予約席って事にしてあるのよ」

 

「でもそれってご迷惑じゃ……」

 

「全然! 座って写真を撮りたいってお客さんが多くて、それを目当てに来てくれるから逆に嬉しいのよ!」

 

そして美味しいパンケーキとコーヒーを気に入りリピーターになる者が多く、隠れた名店として雑誌の取材が来たりもしている。

 

「そ、そうなんですか?」

 

「だからここはツカサ君の予約席でいいのよ」

 

「えっと、ありがとうございます」

 

若々しいセレナママに手を握られてドキドキしながら礼を言い、いつものメニューを注文しようとしたが指を唇に当ててきてニコニコしたまま戻って行った。

 

「うーん、若々しい。母さんもだけど、不思議」

 

セレナも将来ああなるのかなと思いながら、ぼんやりと街行く人々を眺め始めた。

 

 

「わん」

 

「ポケモン……なのかなぁ。森で見つけて餌付けしてから裏庭に住み着いたけど」

 

真っ白な毛並みの犬でポケモンではないがかなり賢く、ツカサに懐いて出掛ける時は大体付いてきている。

 

「……俺にしかこいつの隈取りと背中の上で回ってる銅鏡?が見えてないのもおかしい。たまに剣だったり、勾玉だったりする時もあるし」

 

「?」

 

「……まぁ、みんなも受け入れてるしいいか。シラヌイが背中にわたわた言ってるアイツを乗せて走り回ってた時は衝撃的だったけど」

 

「わん!」

 

シラヌイとツカサが付けた名前を聞いて嬉しそうに尾を振って答えている。

 

あちらはタンスからまだ結構な頻度で来ているらしく、森の奥に大きく育ちすぎる木の苗をこっそり植えたりとやりたい放題している。

 

「シラヌイ用のおやつは帰ったら用意するからね。……しかし公式開発のスマホ用ゲームアプリか。ポケモンは違いはあれど無償で捕まえられるみたいだけど、代わりにトレーナーキャラのガチャとかなー。俺も出したいからって担当の人が来てたし」

 

最高レア扱いで何種類か出せると興奮しながら言われご自由にと伝えると喜び、アカウントを作って楽しみにしていて欲しいと言われ適当に作っていた。

 

トレーナーナンバーやらを登録するからか連絡先を交換している知り合い達がフレンドになっており、カロスチャンピオンになった時の手持ちのポケモンの進化前が皆からのプレゼント扱いで既に揃っている。

 

「俺だけやってなかったんだよなぁ、セレナも驚いてたし。……一番怖いのが登録して一分経たずにエリカさんから自分のトレーナーキャラのコモンから最高レア、イベント限定やらのを纏めて贈って来た事だけど」

 

「わん!」

 

「怖すぎてお前に抱きついたっけ」

 

それ以降ログインするのも怖くなり完全に放置している。

 

………

……

 

「伝説って何だっけ? 美味しいの?」

 

「現実逃避をするな。お前のあだ名は歩くポケモンホイホイで決定だ」

 

「サンダー、フリーザー、そして何故か俺を睨みつけているファイヤー。特定の伝説のポケモンは複数体いるって聞いてたけど、一気に来るとかおかしいだろ……」

 

「今更だ」

 

「まぁ、ルギアとかホウオウがいるよりはマシかな……寧ろその二体がいたら気絶してたし」

 

「やめろ、お前が言うと洒落にならん」

 

「だよなぁ……綺麗な自然の森だからセレビィいるんじゃない?って言ったら、いきなり目の前に現れた時は乾いた笑いしか出なかったし」

 

「あのエナジーぼんぼんの付いた不可思議生物とシラヌイと仲が良いのか、森でよく一緒に遊んでいるな」

 

「俺なんて綺麗な金髪のお姉さんがニュッと出てくるのを見たし。目と目が合って、どうしようもないから笑顔を向けたら凄い速さで消えたけど」

 

「ツカサ、疲れているのか……」

 

「でもそれから妙に視線を感じるから、あれは幽霊的なサムシングだったんじゃないかって」

 

「ツカサのゲンガーではないか? 心配だからとよく影に潜んで警護しているようだぞ」

 

「あぁ、だから夏場なのに寒気がしたりするのか。暑いはずの室内が快適な温度になったりしたんだ」

 

今も潜んでいるようで影に顔が浮かび上がり、チラリと視線を向けたAZを見て笑っていた。

 

「少し羨ましいと思えたな」

 

「でも風呂場でも視線を感じるんだよな……ゲンガーだって流石に風呂場までは居ないだろうし」

 

「さっき言っていた幽霊的なサムシングではないか?」

 

「マジか……メジェド様、どう思いますか?」

 

「……」

 

最近森に入るといつの間にか傍に居る、裸足で白い布を被って目だけが見えているそんな存在に尋ねていた。

 

「分かりました。お昼はカレーうどん、おやつはドーナツにします」

 

「混沌とした森になってきて、何千年と生きて来た私でも困惑する」

 

「割り切らないとダメだぞ」

 

もう何でもありの楽しい森、楽しい仲間達がいると割り切っていた。

 

 

結局ツカサが三鳥と会話をした結果、家族になるかは保留でしばらく森にいるとの事。

 

「ナチュラルに会話したけど、これ知らない人が見たら頭がおかしい人に見えるんじゃ……」

 

「手遅れ」

 

「辛辣な一言すぎる。めっちゃ便利なんじゃが?」

 

「それは分かるが、ポケモンの鳴き声に分かる分かるとか言って親しげに話す人間は手遅れだろう?」

 

「ポケモンの言葉が分かる医者の映画に主演でオファーが来そう。タイトルはドクターツカサとか」

 

「本名で出るのか……」

 

「AZが知らない間に起きた俺の異世界召喚物でもいいけど。パジャマでシラヌイしか居なくて死ぬかと思ったんだよなぁ」

 

ガチなのか冗談なのか分からない事を呟き、困惑していた長生きAZを更に事をさせていた。

 

 

「ガチなのか冗談なのか」

 

「冗談に決まってるだろ。そんな世界に行ってたら死ぬわ」

 

「いや、お前なら魔物を全て味方に付けて魔王を蹴落として君臨するくらいやりかねん。そうなっていた場合、私はどんな顔をすればいい?」

 

「あいつ、やったんだな……って優しく微笑みを浮かべるといいよ」

 

「大魔王になるわけだな」

 

「それ勇者に殺されちゃうじゃないですかやだー!」

 

「だがそれまではハーレム……いや、ツカサの場合はもふもふした魔物を集めて戯れるくらいが限界だろうな」

 

「ハーレムとかギスギスしそうだし。仲良しハーレムとか知らない間に作られてたら中心の男が詰むよね」

 

現在それに極めて近い状態の男がヘラヘラ笑いながら呟いている。

 

………

……

 

「いらっしゃいませー」

 

「おはよう、マスター……じゃない!?」

 

風邪で倒れたセレナパパの代理として眼鏡装備のツカサが立っており、皆が同じような反応をしてはビクビクしながら席に着いている。

 

看病の為にセレナママも居らず、セレナが注文を聞いて回っていた。

 

 

コーヒーの淹れ方は習った通りで完璧にこなし、紅茶に関してはアリアの家に滞在中に仕込まれたからかセレナパパよりも上手かった。

 

料理も意地の悪い客の無茶振りに応えたり、ケーキやクッキーがいつもより美味しかったりと常連達も驚いている。

 

特にパンケーキは昨日まで使われていたのが旧ツカサのレシピであり、日々改良している今のレシピで作られた物は香りやふわふわ具合が違っていた。

 

 

人が増えてくるといつの間にかツカサのサーナイト、ドレディア、カイリキー♀がセレナを助けに来ていた。

 

「マスター代理、何で俺等のとこはカイリキーなんだよー!」

 

「可愛いだルルォ!」

 

ちなみにこのカイリキー♀はアローラでサオリと言う名の霊長類最強っぽい女性から託されたポケモンである。

 

どうしてもツカサの所に行きたいとアピールしたからと六体のカイリキーのうちの一体をボールごと渡され、今はサーナイト達に混ざって家事を習っている。

 

 

「マスター代理、精神状態おかしいよ……」

 

「おう、それがデフォだ」

 

「メニューにない無茶振りした料理も普通に出してくるし、それもやたら美味いし……」

 

無茶振りメニューは一律二千円からと張り出してからは頼まれなくなり、稀に余裕のある者が頼んで来たりしていた。

 

「……俺、カイリキー可愛く見えて来た」

 

「俺も……」

 

「お前達まで何言ってんの!?」

 

「あの腹筋がセクシー、エロい!」

 

「流石に引くわ」

 

だんだんカイリキーの魅力に取り憑かれていく面々を見て、洗脳していたはずのツカサが普通に引いていた。

 

 

午後になると奥様方ばかりになり、今なら一人でもどうにかなると判断してセレナ達を休ませている。

 

「ゲホッ! ゴホッ! 来ちゃった……」

 

「来ちゃった♪」

 

「失礼を承知で……おう、さっさと帰って寝ろ。ママさんも連れてきちゃダメでしょうが」

 

セレナパパとママが暑いのに仲良くマスクをして来てカウンター席に座り、ツカサは頭を抱えてストレートに言いたい事をぶつけていた。

 

「暑いのに寒いぃぃ」

 

「どうしても見に行くんだって聞かなくて……でもエプロン似合ってるわねー」

 

「あぁ、もう……この一家に振り回されてないか俺」

 

セレナパパに持参していた茶葉で作った暖かい緑茶を出し、元気なセレナママには紅茶を出している。

 

他にも食事をしていないと聞いて消化にいいお粥を作り、母から送られてきた海苔の佃煮や鰹節を入れた小皿と共に出していた。

 

「はい、あーん」

 

「あーん……」

 

「このセレナが見たら発狂しそうなイチャつきぶり」

 

「ツカサ、そろそ……い、いやぁぁぁっ!? 二人共いい歳してやめてよ!」

 

「この狙ったかのようなタイミングよ」

 

「ツカサも二人を止めてよ!」

 

「いや、無理かなって。あ、ちゅーしようとしてるぞ。風邪うつるのに」

 

セレナが店内に聞こえる声でツカサの名前を出したせいで奥様方がぐるりと向き、代理マスターをジロジロ見始めていた。

 

「いやぁぁぁっ!」

 

「俺も自分の両親がやってたらそうなるだろうなぁ」

 

 

セレナの悲劇から数日、セレナパパが完治して御役御免になり自宅でポケモン達とのんびりしていた。

 

「……シラカワ ツカサ、と」

 

「シラカワ……」

 

「こっちだとあっちの苗字は珍しいかもね」

 

封筒にフルネームを書いているのをセレナが見て、シラカワという聞き慣れない言葉を口にしていた。

 

そんな二人の側ではピカチュウ♂♀が睨み合い、カイリキーがそれを見てオロオロし、サーナイトが溜息を吐きながらピカチュウ達をサイコキネシスで引き離していた。

 

 

「じゃあ、あのリオ君の苗字のカワシロって」

 

「ひっくり返してシラをシロにしたんだろうね」

 

「ピッカァ!」

 

「ピカァ」

 

「ツカサが新しく捕まえてきたピカチュウ、何でいつも私とツカサの間に無理矢理入ってくるの? しかも威嚇してくる……」

 

シャー!とツカサに近づけまいとセレナを威嚇していて、意外と鋭い牙を見せている。

 

「やめなさい」

 

「ツカサに掴まれたらデレーってなるのよね」

 

「他人に撫でさせたりはするけど、俺以外には全く懐かないんだよなぁ……ピカチュウ以外のポケモン達とはもう馴染んでるんだけども。ピカチュウ♀……じゃなくてピカ子は独占欲が強いんだろうけど」

 

「ツカサってネーミングセンスだけはないよね」

 

「グサッと来た。でもピカ子は喜んでるからセーフ」

 

唯一ニックネームが付いている個体であり、誰よりも特別扱いだとツカサ命名のピカ子は喜んでいた。

 




他にも探せば森の中に色んなのがいる。


ひぐらし絆のDL版配信再開は嬉しいなぁ。


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色々使い勝手のよい新チャンピオン

裏庭に設置された椅子に座り、テーブルにお茶菓子と紅茶を並べていた。

 

オフの日だからと朝早くから訪ねて来たカルネをもてなしており、庭をイーブイズが走り回るのを見て癒されていた。

 

カルネのサーナイトとツカサのサーナイトは井戸端会議をするおばさんのように楽しそうに話をしている。

 

カルネがツカサのサーナイト用にと誂えたサーナイトナイトのネックレスはカラー違いのお揃いであり、そんな二体のサーナイトは姉妹のように仲が良かった。

 

「ツカサのサーナイトは色違いなのよね」

 

「ええ。色違いの個体は野生だと弾かれやすいみたいで、ラルトスだった時の彼女もそれでしたよ」

 

色違いが持て囃されるのは人間達の間だけであり、他とは違う個体はポケモンであろうとも弾かれやすいようだった。

 

「……見つけたのがツカサでよかったのかもしれないわね」

 

「その手の個体は保護して家族にしてますから。ジョウトではマリルがそうでしたねー」

 

「マリル……可愛いわよね」

 

 

しばらくしてお互いサーナイトをメガシンカさせて写真を撮らないかという話になり、カルネからメガストーンを貰ってから初めてサーナイトをメガシンカさせる事になった。

 

そして……

 

「まぁ!」

 

「おぉ……マジか。メガシンカ後の姿が正反対じゃないか」

 

白いドレスを纏ったような姿の清楚なカルネのメガサーナイト、黒いドレスを纏ったような姿の妖艶なツカサのメガサーナイトが並び立っていた。

 

「ツカサ、写真撮るから並んで並んで! 私のサーナイトは右、ツカサのサーナイトは左に」

 

「はいはい……」

 

「あ、挑発するような笑みを浮かべて……それなら玉座みたいな椅子を用意した方がいいかしら」

 

「いや、凝らなくていいですから」

 

 

 

それから数日が経過し、幾度目かの収録に参加させられていた。

 

「解せぬ。しかも何かこのコンテストの番組のレギュラーになりましたからとか、いきなりカルネさんのマネージャーさんに言われたんじゃが?」

 

「何か私とセットが普通になっちゃったみたいね、新旧チャンピオンって。それと基本的にツカサとの連絡が取れないから私のマネージャーにお願いしてるのよ」

 

「えぇ……」

 

「とりあえずチャンピオンに就任してからリーグにマネージャーを付けてもらうか、なってくれる人を探すしかないわ。寧ろ今すぐ探すべきなんだけど」

 

「ハルカ達はおばさん達がマネージャーやってるらしいしなぁ……」

 

「まぁ、しばらくはあの子が私とセット運用するって言ってるから安心なさいね」

 

「はーい」

 

やたら豊富な知識と技術のあるツカサと聞き上手で的確な質問をするカルネのペアはかなり使い勝手が良く、ギャラが一人ずつ呼ぶよりもかなり高い代わりに視聴率も高くなるのでオファーが殺到している。

 

 

バラエティ番組ではポケモンの言葉が分かるという偽天然不思議キャラアイドルにドン引きし、全くあってない言葉にポケモンもツカサも溜め息を吐く始末。

 

胸が大きいくらいしか評価出来ないなぁと、そのアイドルのパートナーである疲れた顔のプリンを見て思った程。

 

収録後にそのアイドルから許可を得て、プリンを診察してから軽くマッサージをして疲れを取りお手製のポフレを食べさせて元気を出すよう話しかけていた。

 

 

「今日はちゃんとサーナイトを連れて来た?」

 

「ええ。本人は家事があるからって嫌そうでしたけど、カイリキーが任せてくださいと説得してました」

 

 

そして……

 

「よっと!」

 

「フッ!」

 

ツカサとサーナイトのペアは前回のピカチュウとの息の合ったアピールが霞む程であり、かつてのコンテスト覇者の腕が錆びていない事をこれでもかと見せつけている。

 

お互い久々の感覚に楽しくなってしまい、少し古いが当時のアピールを織り交ぜながら見ている者達のテンションを上げていた。

 

「フィナーレだ」

 

「!」

 

アピールをしながらメガリングに触れると光が放たれそのまま二人を包み込んでいく。

 

それすらも組み込んでいたらしく、光が弾き飛ばされると黒いドレスを纏ったメガサーナイトの腰に手を回し最後のポーズを決めていた。

 

 

 

収録も終わりいつものようにカルネの楽屋に呼ばれ、出しっ放しのサーナイトと共に訪れている。

 

「やべぇ、凄く楽しくなってた……」

 

「私、チャンピオンの任期が終わったらコンテストに挑戦してみるわね。女優業と両立してみせるわ」

 

カルネはすっかり魅せられ、カルネのサーナイトもツカサのサーナイトに興奮しながら何かを話しかけていた。

 

「いいと思いますよ。今回は最後にしましたけど、途中でメガシンカしてアピールの仕方を変えると面白いかもしれないです」

 

「でもツカサ、きっと私より大変になるわよ」

 

「権力があれば拒否とか出来そうって期待」

 

「無理でしょうね。広告塔になる為にチャンピオンになったんじゃないかってレベルじゃない? ブリーダーでドクターでチャンピオンで役者でコンテスト覇者とか」

 

「俺はどこに向かってるんです?」

 

「それは私が聞きたいわね」

 

「カロスに来なかったら父さんみたいな医者目指してたかもなぁ」

 

ツカサの父はタツミヤジマの風土病を研究しつつ治療法を確立する為に長くマサラタウンを離れていて、いつか会いに行きたいと思っている。

 

そんな父の性能をかなりマイルドにしたのがツカサであり、マサラタウンの者達も父を基準にしてツカサを見てしまっているから扱いが割と雑だったりした。

 

シラカワ家の大黒柱シラカワ シュウ、世界が世界だったらとんでもない人物だがこの世界では恐ろしい程に有能なだけなのでセーフ。

 

 

「それは人の?」

 

「はい。師事していた方にも人の方も診れるようにならないかと常々言われてましたから……いつでも呼べば駆けつけるって引っ越す前の日に言ってたなぁ」

 

依頼料は貰うがね、と笑いながら言われて苦笑いをしながら握手をしたのをツカサは今でも覚えている。

 

 

そんな話をしながらカルネのマネージャーを待ち、二体のサーナイトは腰を支えられながら抱き寄せられた時の話題で盛り上がっていた。

 

………

……

 

「セレナ、流石に俺の洗濯物と君の下着を一緒に干すのはおかしくない? てか当たり前のように家で暮らしてるよね?」

 

「ダメなの?」

 

「いや、洗濯物は流石に……俺のと一緒に洗ってもらうのも干してもらうのも悪いと思うし。暮らすのはパパさんとママさんが許可してるならいいけど」

 

「許可は出てるし、洗濯は予行練習ですもの。寧ろ洗濯は任せて、私がやるから」

 

最近はシャツを抱き締めてスーハーするのが日課になっており、ピカ子達ツカサLOVEのポケモン達にも分け前を与えて口止めをしている。

 

「お、おう……とりあえずセレナの下着は俺の目の届かない所に干してね。割と目が釘付けになる」

 

「ツカサの洗濯物で挟んでるから、ツカサ以外には見えないから平気よ」

 

「いや、そうじゃなくて……お兄さん、まだあんな黒の透け透けでセクシーなのは早いと思うの」

 

「そう? 想像してみた?」

 

「してないけど」

 

「……ツカサ、もしかして不能なの?」

 

「頭出しなさい、拳骨をくれてやるから。不能じゃねーよ、寧ろ元気で悲劇が生まれたぐらいだわ」

 

鍵を掛けても部屋に入って起こしに来るメイド組に毎朝観察され、風呂上がりにも毎度争いが起きて見られたりと踏んだり蹴ったりな事があった。

 

「まさかポケモンにしか」

 

「違うからね。モモカさんに抱きつかれた時とかそれはもう……」

 

「モモカって誰?」

 

「アリアの家のメイドさん」

 

マネージャーの兼は何故かアリアの両親にも伝わっており、メイド三人組をローテーションでマネージャーにする算段が付いていてツカサは既に詰んでいた。

 

アリアはツカサの様子を聞ける、ツカサは見知った存在がマネージャーで安心、メイド組はアリアが幸せでニッコリのみんな幸せ。

 

サヨコのゲッコウガ、モモカのサーナイト、サクヤのキリキザンとそれぞれのパートナーともツカサは仲良くなっている。

 

「ツカサはメイドさん好きなの?」

 

「シンプルなメイド服が見てる分には好きだよ。負けたら俺にも一日着てもらうって言われたトリプルバトル……」

 

実質1対3で息の合った三人に圧倒され、ゲッコウガとサーナイトは倒すもキリキザンに押し負けて一日メイド体験をしていた。

 

ウィッグとメイクまで施されてヤケクソになり通常のメイドの三倍働き、偶々訪れていたアリアパパの未婚の友人(48)に一目惚れをされてアプローチをされたりとカオスだったが何とか一日体験は終わらせている。

 

尚、一部執事も思いの外似合ってしまっていた姿を見て道を踏み外した模様。

 

 

「えっ、何それ見たい」

 

「見た目から入ろうって言われた瞬間執事達に抑えつけられて、服を脱がされて全身の無駄毛を無理矢理処理された気持ちが分かる?」

 

「どんな気持ちだった?」

 

「マジで怖かった。下手に暴れると首が落ちるかもしれませんな、とか老執事のウォルターさんに言われて身動き取れなくなったし……フォルカさん達に死ぬ程鍛えられたのに鈍ったかなぁ」

 

世界観が違うと嘆きながらも一家に鍛え抜かれ、マサラ人らしい頑強さとぶっちゃけ生身で無双出来そうな強さは得ている。

 

 

「あのはかいこうせんにも突っ込んでいくツカサが怖い……明日は雪かしら」

 

「当たらなければどうという事はないから。夢で金髪ノースリーブグラサンが言ってたんだよなぁ……最初に夢に出て来た時は仮面付けてたけど」

 

レイナと出会った日に初めて仮面で現れ、アリアと再会した日にグラサンで出て来たらしい。

 

 

 

そんな話を延々していると裏庭に続く窓が開き、足拭きマットで綺麗にしてからピカチュウとイーブイズが帰って来た。

 

「ピカ!」

 

「ブーイ!」

 

「フィア!」

 

「イーブイズはモフモフしてるなぁ……夏場だからめっちゃ暑いっす」

 

「真夏にコート着てるみたいになってるわ」

 

ツカサが大好きで親と思っているイーブイズはソファに座るツカサに我先にと群がっていた。

 

「来年の春になったらお前達を進化させるからなー」

 

まだまだ子供だからと進化を先延ばしにしていて、それまでは遊ばせながらバトルの厳しさと痛みを覚えさせている。

 

ニンフィアとピカチュウが指導をしていて、最初は痛みに泣いていたイーブイズも今は反撃をするくらいにはなっていた。

 

ツカサを守りたい、褒められたい、ずっと一緒に居たいと思いながら日々強くなっている。

 

 

「あ、そうだツカサ。メガシンカおやじさんが一度メガリングを見たいって連絡して来てたよ」

 

「げっ、この前の街中で暴れたギャラドスを抑えるのにリザードンとルカリオを同時にメガシンカさせた件かな……」

 

メガシンカおやじにアローラで組み込まれたZストーンを使用する為の仕組みを見せに行った時、考えなしのトレーナーが街中でギャラドスを逃がして大変な事になって止めに奔走していた。

 

たまたま一緒に居たコルニには止められたが時間も戦力も足りないと強行し、キズナゲッコウガまで出して皆の避難が終わるまで抑え続けて最後はぶっ倒れて終わっている。

 

 

「無理したからお説教かもね。キズナゲッコウガまで出して最後は立ったまま気絶、大人しくなったギャラドスも引き取ってるみたいだし」

 

「行きたくねぇ……」

 

「ダメよ」

 

「あのおやじ、説教の後にコルニちゃんと二人きりにするのがなぁ……コルニちゃんも何か最近は近づくとサッと距離を取るし」

 

「はぁ……ツカサはポケモンの心は分かるのに乙女心は分からないのね」

 

「そう言われても……」

 

「汗をかいた状態で異性に近づいて欲しくないのよ」

 

「む? そうなんだ……気にせずに寧ろ抱きついてきたりした奴もいたから知らなかった。メイはマーキング云々言ってたし」

 

「なるほど」

 

「とりあえず今度から気をつけるよ。女心かぁ……」

 

 

 

 




人間のハニトラよりもポケモンのハニトラに掛かりそうなのがツカサ。


CCCイベント、リップが鬼のように強くて令呪使う寸前まで追い込まれるとは思わなかった。
やっぱり殿ヘラは強いなぁ。


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カロスでの地盤が安定していく

ここら辺から明らかになっていく人脈がやたらカオス。


「アリアの家に泊まった翌日、ご両親に呼ばれて応接室に入ったら綺麗な土下座をする女性が居る件について」

 

「ほら、ツカサ君がパニックになってるからやめなさい」

 

「そうよ、まずは話をしてからにしないと分からないでしょう?」

 

「伯父様、伯母様……申し訳ありません」

 

「おお、なんつー美人」

 

アリアより薄い青に近い銀色の髪でドストライクな年上のキリッとした女性にツカサはドキドキしていた。

 

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私の名前はシオニー・レジス、カロスの外務大臣を務めています」

 

「ご丁寧にどうも……私の名前はシラカワ ツカサ、次期カロスチャンピオンで現フリーランスのドクターです」

 

「……はっ!? そ、そうでした! お願いしますす、助けてください!」

 

「ファッ!?」

 

綺麗な無駄のない土下座への移行に驚きオロオロしている。

 

「私の、私のヒンバスを助けてください!」

 

「! シオニーさん、とにかくソファに座って詳しく話を聞かせてください」

 

 

政治がらみだったら即拒否予定だったがヒンバスと聞いて土下座をやめさせ、追い詰められた表情をしているのを見て隣に座り詳しく話を聞き始めた。

 

よく分からない症状でセンターを盥回しにされ、挙げ句の果てには袖の下を要求してから無理だと言う屑まで出る始末。

 

それを聞いている内にツカサの額には青筋が浮かび、顔面蒼白で助けてくださいを連呼しながら泣き出したシオニーの背中を撫でて落ち着かせている。

 

「腐ってるんだよなぁ……外科が出来るドクターが少ないからって王様気分かよ、反吐が出るわ」

 

「ツカサ君……君なら何とか出来るんだね?」

 

「出来ます、なんて無責任な事は言えませんが最善は尽くしますよ。問題は症状を診ても、それをどうにかする設備と助手が足りないって事です」

 

センター側は所属していないドクターに使わせる訳にはいかないという建前で権力に屈しており、回復と宿泊しか使えずネット上ではフリーランスの締め出しとほぼ無能しか残っていないと阿鼻叫喚の大騒ぎになっている。

 

「そうか、あのフリーランスの締め出し……屑どもは足を引っ張る事しか出来ないのか」

 

「あなた、今は使わせてくれそうな場所を探しましょう。それからツカサ君の自宅と我が家にその設備を整える事も」

 

「え? いやいや、あれ新しく建築して機材やら集めるのに軽く二桁億とかかかりますから! それに自分には扱いきれませんし」

 

「ムッシュハザマ……いや、ドクターBJの愛弟子への先行投資のようなものだよ。今回の件も彼に連絡したら君を使えばいいと言われてね」

 

「まさかツカサ君の名前が出るとは思わなかったわ……またディアンシーに会いたいのだけれど」

 

「先生が俺に投げた、だと……?」

 

………

……

 

カロスにもいるエーテル財団と連絡を取り、どうにか場所を貸してもらえる事になり……

 

「いや、これマジ危なかった……先生の見て必死に練習してなかったら俺じゃ無理なレベルだった。やっぱ先生はあんだけ金を毟るだけあってすげぇわ」

 

助手についていた者達は未だ興奮が収まらず、録画されているオペの映像を参加出来なかった者も含めた皆で見ていた。

 

 

シオニーとアリアの両親には軽く説明をし、詳しくは明日話しますからと告げてフラフラしながら車に乗り込んでいた。

 

 

 

そんな翌朝、よく寝て元気になって執事達と世界観の違う手合わせを行っていた。

 

「砕く……止めても無駄だ!」

 

「なっ、何処に……うぐっ!」

 

目にも留まらぬ速さの一足飛びで相手の執事の背後を取り、重い裏拳が相手の身体に響き動きを止めている。

 

「でやあああっ!!」

 

「うあぁぁぁっ!!」

 

そしてそのまま蹴りのラッシュで宙に蹴り上げ……

 

「せいやぁっ!!」

 

「やめ……ぐあぁぁっ!!」

 

落ちて来た所に渾身の左ストレートを放ち、吹き飛ばしていた。

 

ルカリオが最近参考にしているツカサのバトルスタイルであり、その動きに惹かれたらしくはどうだんの放ち方まで変えている。

 

 

ちなみにツカサは久々に連絡した師達に、次に会った時に劣っていたら死んだ方がマシレベルで鍛え直すと言われて必死になって鈍っていた身体を動かしていた。

 

「キレが悪い、不味い、やばい、怖い」

 

トレーニングも終わりシャワーを浴びながらガクブルしつつ、されるがままに着替えさせられて朝食を取りに向かった。

 

 

朝食が終わるとすぐに応接間に呼ばれ、カルテやらを用意してから向かって行った。

 

アリアの両親は今回の報酬の為に動き、いっそ研究所のような施設に手術も出来る場所を作る事にして、ツカサ宅近くの余っている土地を購入するのに交渉をさせたりしている。

 

「……という訳で病巣は取り除けました。それとヒンバスがこんな自分の為にプライドの高いシオニーさんが土下座までしたのを知って、進化して力になりたいと」

 

「ぷ、プライドの高い……ですがヒンバスを進化させる方法が私には分からないのですが」

 

「俺が教えますよ。それと普段通りの話し方でいいですよ」

 

「わかり……いや、分かった。ツカサ、と呼び捨てにさせてもらっても?」

 

「ええ、寧ろそうしてもらった方がこちらとしても気が楽です」

 

「ツカサ、今回の件は本当にありがとう。伯父様と伯母様程ではないが私もツカサの力になろうと思う」

 

「いえ、これは当たり前のことをしただけですから。それより今度一緒に食事にでも行きませんか?」

 

「ふふ、それなら私のお気に入りの店を紹介しよう」

 

………

……

 

「あれから休日になるとシオニーさんが自宅に来るようになったでござる。最初はド緊張したけど、だんだんボロが出始めて今じゃ残念美人に」

 

「私とツカサの愛の巣だったのに……」

 

「ここだと肩肘張らないで済むのよ。私のミロカロスもツカサのミロカロスと仲良しだから」

 

シオニーも猫を被るのをやめたらしく、ソファでぐでーっとしながら紅茶とケーキを楽しんでいる。

 

シオニーのヒンバスも無事ミロカロスへと進化して、色違いのツカサのミロカロスと仲良くなっていた。

 

 

「シオニーさんがあの外務大臣……まぁ、今じゃ私と同じリオ君のファンって分かったから気にしないけど」

 

「みんなあの魅力が分からないなんて。撃退出来る力はあるのに、正体がバレるかもしれないからと土下座するシーンは何故かキュンキュンくるわ」

 

二人で仲良くBDを見始め、ツカサはいつものようにソファの隅に移動して昔の自分を見ていた。

 

「わっかんねー……てか日常の設定ハードよね。地味にハブられたりしてるし、好きな子は今見ると普通に屑だしなぁ。そりゃヒロイン人気出るはずないわな」

 

「ぶっちゃけ演じてる人も嫌いってブックレットで言ってるわね」

 

「私だったら付け回して、こちらから告白している」

 

「何で告白保留にしておいて他の奴と付き合うのか。それでリオは目が覚めて完全に想いが吹っ切れたのに、好意を向けられなくなったら相手がウジウジしだすし」

 

真ヒロインはハチクマンと言われるくらいに人気がなく、日常でのナチュラル屑具合だけではなくルカリオキッドの足まで引っ張るせいで殆どの者に嫌われている。

 

「ツカサだったらどうするの?」

 

「まずこんな奴を好きになんてならないから問題ない」

 

「身も蓋もない……」

 

「それと関係ないんですけど、最近やたらとシオニーさんとの関係はって聞かれるんですが」

 

「いや、その……男避けにツカサとは仲良くしていますとは言ったけど」

 

「それが原因だよ! 『現外務大臣のシオニー・レジス氏との関係をお聞きしたいのですが』って一個質問が終わる度に言われる身になってほしい。恋人ですーって言って困らせ……ヒッ!?」

 

「……」

 

「えーっと、私は別に困らないな……」

 

恋人云々でテレビを見ていたセレナの首がグルンとツカサの方を向き、無表情のままジーッと見つめてきて小さく悲鳴を上げていた。

 

「いや、その……アババババ!」

 

「ピカ」

 

見かねたピカ子が痺れさせて助け船を出している。

 

 

有耶無耶になった所にイーブイズが乱入、いつものように二人には見向きもせずツカサに飛びついて頭や身体を押し付けて甘えまくっていた。

 

「うぅ、ビリビリして暑い……」

 

「す、凄い……イーブイ達が冬場のコートみたいに埋め尽くしてる……」

 

「夏場は羨ましくないわ」

 

エアコンを使っていても太陽を浴びてぽかぽかなイーブイズは暑く、ツカサは汗がダラダラ出ている。

 

………

……

 

裏庭にはポケモン達が日頃の感謝の気持ちで作った大きめの簡易プール的な物があり、今はミロカロス達が入っている。

 

「ポケモン達とプールとか最高だろ」

 

『ツカサ、気持ちいいですね!』

 

「フーパ、浮き輪好き!」

 

「ツカサ、似合う?」

 

当たり前のようにディアンシーとフーパが遊んでいて、セレナが水着姿を披露していた。

 

「似合ってるよ。それでこれどうよ?」

 

「ピカッ☆」

 

テレビで見たアイドルを参考にして作った衣装にマイクを持ち、ウインクしながらポーズを決めるピカ子を見せている。

 

「すっごい可愛い……」

 

「でしょ。ピカ子にマッサージは容赦なく出来るけど、サーナイトにマッサージは妙に緊張するっていう」

 

「あー……」

 

「それと人間は対象外なのに要求してくるセレナのママさんとパパさんどうにかならない?」

 

「無理」

 

「だよなぁ。……しかしアリアのご両親は報酬だからって隣の空き地を買い取って専用の施設を作ってくれるとか金持ちって凄い。消耗品まで申請すれば無料で届けてくれるみたいだし」

 

ツカサ専用の研究に医療と育成・リハビリの施設で下手なポケモンセンターや研究所よりも豪華な作りであり、現在ではアリアの両親が常駐してくれる信頼出来る者達を探している。

 

今はセンターに不信感を持ったカロスのジョーイ一族に声をかけているらしく、後輩達に丸投げして一族総出で来てくれる可能性が高かった。

 

 

最早ツカサは何を目指しているのか本人も分かっていないが、貰えるものは貰うスタンスなのでありがたくいただく事にしている。

 

「ツカサがよく工事の方々とポケモンに差し入れ持って行ってるわよね」

 

「そりゃね。初めて行った時はみんなポカンとしてたよ」

 

好き勝手動き回るのでリーグ側も『街で会えるチャンピオン』をキャッチコピーにしており、そのチャンピオンがまさかお茶とお茶菓子を持ってくるとは思っていなかったらしい。

 

 

「そう言えば最近は眼鏡してもすぐバレるって言ってるよね」

 

「髪ボサボサにして眼鏡なのになぁ……」

 

「それが原因だよ!!」

 

「うおっ! セレナがそんな風に大声出すの初めてだからビックリした……」

 

「おっきくなったリオ君じゃない! バレバレ以前に宣伝してるようなものよ! 私も見たい!」

 

「カロスだけおかしいんだよなぁ……てか俺の情報出回りすぎてて引く。連日エリカさんから小さい方が和服は似合うって電話が毎日来るからなんだと思ったら、大きい方が好きとかいうデマが流れてたし。修羅の街マサラタウンって情報は笑ったけど」

 

 

相手への敬意を持つ心構えをツカサに教えた三つ編みで武術の達人の老人。

 

ポケモンにしか興味のなかったツカサに性的な知識を惜しげもなく与えた亀の甲羅を背負った老人。

 

亀の甲羅を背負った老人といつも争っているが可愛がってくれる鶴の顔の付いた帽子を被った老人。

 

レッドとグリーンが旅に出て一人ぼっちだったツカサと遊びながら十字陵を作っていた金髪オールバックの男。

 

いつも赤いマスクを付けていて暇だからとツカサにギャンブルや喧嘩の仕方を教えたヒモの青年。

 

霊力の修行という名目でボッコボコにしてくる婆さん。

 

全身白くて一部紫、尻尾の生えた丁寧で優しい不思議な人?

 

よくツカサを担いで旅行に連れて行ってくれた腕が伸びて耳が尖っている緑の人?

 

そして窮地に陥った時に単身どうにかする為の技術を鍛えたフォルカ。

 

下手な街より安全すぎて今では犯罪者が恐れる街である。

 

 

「うーん……?」

 

ポケモンの技を受けてもピンピンしているツカサを見ると修羅の街説が正しいんじゃないかとセレナは考えていた。

 

ツカサやその周りがおかしいだけでマサラタウンの人達は普通だが、その中でも分かりやすい異常具合だったツカサを穀潰し扱いするくらいの普通さである。

 

 

「亀の爺ちゃんはまだセクハラしてんのかなー。あの人が居なかったら異性に一切興味のない俺が居たかもしれない」

 

「ツカサをまともに導いてくれてよかったわ」

 

ニーソとふとももに魅力を感じ、そこから教育されて女体に興味を持つようになったのは僥倖だった。

 

「爺ちゃんとエロゲやったりエロ本読んだり、重い亀の甲羅を背負わされて牛乳配達したり忙しかったなぁ……一番辛かったのは素手で畑を耕した事だけど」

 

「だからたまに素手で耕してるの?」

 

「ボーッとしながらだと癖になってるみたいでやっちゃうの。『ツカサさんは今日もがんばっていますね。これ、差し入れですよ』っていつも見に来てくれた人……人?もいたから辛いだけじゃないけどね」

 

「やっぱり自伝書かない? 詳しく聞きたいし読みたいよ」

 

「嫌だよ面倒だし。その人?は夏には夏祭りとかにも連れて行ってくれたんだよなぁ……『さぁ、気にせず好きな物を食べなさい。私の財布の中身は五十三万です』っていっぱい食べさせてくれて、『見なさい、ツカサさん。こんなに綺麗な花火ですよ!』って有料席で花火まで見せてくれたし」

 

「凄い人なんだね……ツカサの事を気に入ってたの?」

 

「分からん。でもご近所の方々からは愛されてたかも。腕が伸びる緑の人とか学校休みになる長期休暇に旅行に連れて行ってくれたし。マサラタウン以外に空を飛んだりビーム出せる人居ないの旅行するまで知らなかったし」

 

「……は?」

 

「ふんふーん♪」

 

「ちょ、ちょっと詳しく……!」

 

そのままプールに入っていくツカサをセレナが慌てて追いかけていった。

 




マサラタウンの外れのオーキド研究所付近にはシラカワ一家を筆頭にこんな人達が住んでる。

他にも色んな常識外れな人達がいるカオスエリア。



DSのDQ5を買って楽しんでるけどメタルスライムが全然仲間にならないなぁ。
サンタローズで主人公とピエールとスラりんがレベル38とかになっちゃったぜ。


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隔てた世界へ遥々と

捕まえたいポケモン的にこっちのが都合がいいので、今回と次くらいまでこの世界でのお話。




メジェド様を背に乗せたシラヌイとツカサの肩に乗ったピカチュウが何度目かの森の調査へ向かっていた。

 

「絶対に負けないメンツすぎる。ピカチュウとシラヌイしか連れて来なくて後悔したけど、いつの間にか加わってたメジェド様のお陰でかなり安心」

 

「ピカ?」

 

「わふ」

 

「うおっ!? め、メジェド様が増えてる……分かりました、お昼はうどんと親子丼にします」

 

いつの間にか二柱に増えジーッとツカサを見ていて、ツカサも一瞬ビビったが二柱の希望を汲み取っていた。

 

 

「あの金髪の超美人さん、八雲紫さんとはあれから何度か会ってるけど毎回顔赤いんだよな。そして何故か魔王扱いされてるけど」

 

最近他国の配合技術を参考にしてタイジュの国でグランエスタークを生み出し、アスラゾーマやジェノシドーをも従え始めているので魔王扱いは間違っていない。

 

 

「ピカ? ピカピカチュウ?」

 

「狐耳に尻尾、露出強の桃色髪の和服?の女性はあれから見てないよ。変な鎖でセルフ縛りプレイしてジタバタしてる本とかもあったし、俺の森がだんだんやばくなってる」

 

伝説幻UBが共存してなんやかんやで魔境化しており、時折調査に出てポケモン達が巻き込まれないようにしている。

 

一定の区間だけがそうなっている事が分かり、柵を作り分かりやすくする作業も行なっていた。

 

 

「ピカ」

 

「あぁ、あれは怖かったよなぁ……その一部分だけ入ると性別が反転するとか。危険すぎてすぐに囲って入れないようにしたけど」

 

「ピカ! ピカピーカ、ピカピカチュウ!」

 

「うん、メジェド様が蹴り入れてくれなかったら危険に気づけなかったし感謝感謝」

 

「ピカ……ピカピカチュ?」

 

「この前のあれな、家に戻ったらカントーにいるはずのエリカさんがご飯作ってた恐怖な。夢かと思ったらマジで居たんだよなぁ。お? おぉ……ちょっ、助け……!」

 

「ピカ!?」

 

妙な浮遊感を感じ下を見ると空間が裂けていて中に無数の目が見え、肩からピカチュウが転がり落ちるとそのまま綺麗にツカサだけを呑み込み閉じてしまった。

 

………

……

 

気がつくと神社の境内に立っており、キョロキョロ見回しているがシラヌイもピカチュウもメジェド様も居ない。

 

「何処だここ……唯一のピカチュウもいないとか詰んでる感が半端ない」

 

店で買える消耗品やボールは各種大量に鞄に入っており、捕獲するのに余裕はあるが運任せにボールを投げるかトークして捕まえるしかなかった。

 

「不味いわ、いったい何処に……い、居た!」

 

「あ、八雲紫さん。相変わらずお綺麗で……」

 

「そ、そう? ……じゃなくて!」

 

「あ、ロコン!」

 

紫が何か話そうとしたが愛くるしい姿のロコンを見つけ、その時点でポケモンしか目に入らなくなっている。

 

「ほらおいで……よしよし、ちょっと臆病だけどいい子だね。俺のポケモンにならない?」

 

「……コン!」

 

「やっぱり手際が良すぎるわ」

 

警戒心をあっという間に失わせてモンスターボールに自ら入らせたのを見て呟いていた。

 

すぐにロコンをボールから出すとツカサの匂いを嗅ぎ始め、他のポケモンの匂いを感じ取ると身体を押し付けて自身の匂いで上書きを始めていた。

 

「このまま抱き締めてゴロゴロしたいなぁ」

 

「ポケモン、幻想郷の個体は大体が凶暴なはずなのに凄いわね」

 

「一度捕まえたら死ぬまで家族ですから」

 

 

そわそわチラチラ見てくる紫を見て何となく察していた。

 

前々から誘われていた事と助けてもらえないかとやんわりと遠回りに言われていた事を思い出し、ちょくちょく帰れるならいいかと覚悟を決めていた。

 

「八雲さん、ちょくちょく帰してもらえるなら貴女の助けになりますよ」

 

「えっ、嘘、本当?」

 

「はい。妖怪とか神様とかも一度見てみたいですし、何より流れ着いたトレーナーが迷惑をかけているのなら叩き潰しますから」

 

主にその手のトレーナーを懲らしめたり、一部勢力がポケモンを取り入れて調子に乗っている横っ面を引っ叩く役割を期待されている。

 

そして何よりも道具のようにポケモンを使う者達にツカサの在り方を見せ、心を入れ替えさせたいという思いが紫にはあった。

 

愛し愛されツカサの為に全力を出し戦うポケモンの姿を見て紫は感動し、これを皆にも見せてあげたいと幾度幾度となくツカサと交流して心象をよくしていたらしい。

 

「ありがとう……」

 

「まぁ、チャンピオンという立場に縛られる前に冒険するのもいいかなって思惑もありますから気にしないでくださいな」

 

「あ、拠点は私の家にしましょうね。歩いての旅は一年以上かかっちゃうから、私や藍が連れて行くわ」

 

「こういう時に鶴の爺ちゃんが教えてくれた空を飛ぶ術が使えたらよかったのにって思うなぁ」

 

「……え?」

 

「さてと、こっちではどんなポケモン捕まえようかなー」

 

「コン!」

 

「えっ、ちょっと、えっ?」

 

 

 

それから数日が経過し、お世話になりながら仲間を集めていた。

 

「話を聞いて仲間になってくれたのがヨーギラスだけかぁ……」

 

「紫様が言っていた通り、君は無茶をするんだな……」

 

「いや、藍さん。俺はあそこまで凶暴だと思わなかったんですよ」

 

仲良く並び食器を洗いながら話をしており、ここ数日近場で仲間探しをするツカサに付き添っていた藍は正直な感想を述べていた。

 

「紫様と捕まえてきた警戒心剥き出しのヨーギラスが、たったの二時間で擦り寄り甘えるのを見た時は目を疑ったよ。紫様のドヤ顔にはイラっとしたが」

 

「後は育てるだけなんですよねー。懐いて心を許してくれるとグングン成長しますし、指示にも従ってくれますし」

 

既にヨーギラスが進化の予兆を見せ始めており、ロコンも進化したいと願えばほのおのいしを惜しげもなく使うつもりらしい。

 

現在ヨーギラスとロコンはツカサの為に仲間になってくれそうな者達に声をかけに向かっていた。

 

紫はツカサに二体が出て行った事を告げるも平気平気とスルーされ、不安に思い部屋でスキマを開いて動向を覗いている。

 

 

昼までのんびり縁側でお茶を飲んでいると、ヨーギラスとロコンが仲間になってくれるポケモンを連れ帰って来た。

 

にょろにょろと長い体を器用に動かしながら二体の後ろから付いてくるミニリュウを見て、ツカサは予想外のポケモンの登場にお茶を吹き出し噎せっていた。

 

「げほっ、ごほっ……マジか。ドラゴンタイプはありがたいけど」

 

「りゅー」

 

「ありがとう。後は追々増やすとして……」

 

………

……

 

たったの五日でツカサはミニリュウをカイリューに進化させていて、八雲一家は信じられないものを見る目で見ていた。

 

ヨーギラスもサナギラスに進化し、既に更なる進化の予兆が見えている。

 

「何か育てやすい」

 

ラッキーが無精卵だからと渡して来たしあわせタマゴを食べたからなのか、今までの倍くらいポケモン達の成長が早くなっていた。

 

 

そしてある雨の日……

 

紫と共に傘を差して散歩を楽しんでいると急に雨があがり、何処からか視線を感じたと思ったら目の前に黒く大きな存在が降りて来て二人の前に立ち塞がっていた。

 

「……ツカサ、逃げましょう」

 

「キュリリリリ!!」

 

「マジか……いや、認めさせて退かせるしか無理。こっちに来て初のガチバトルが伝説、しかも色違いってハードすぎないかこれ?」

 

腰のボールに手を伸ばしながら軽口を叩き、黒いレックウザから目を逸らさないようにしながらカイリューの入ったボールを掴んだ。

 

 

そこからの攻防はとても激しく、紫と藍が結界を張って被害が広まらないように必死になる程だった。

 

黒いレックウザの誤算はツカサのカイリューがマルチスケイルだった事、そしてツカサが持たせたドラゴンZにより一撃必殺レベルの火力を手にしていた事、自身がまともなドラゴン技を覚えていない事だった。

 

「やるぞカイリュー!」

 

「!」

 

そう告げると腕を顔の前で交差させてから重ねた両手を顔の横に持って行き、その両手を目の前に突き出し竜が口を開くかのように大きく上下に広げている。

 

するとツカサから溢れ出したエネルギーがカイリューに集まりだし、その集まったエネルギーを口を開いて放出していた。

 

 

「えっ、何あれ……」

 

「紫様! サボってないで手伝ってくださいよ!」

 

エネルギーで作られた翼竜が凄まじい軌道を描きながら黒いレックウザに襲い掛かり、逃げようとした所に突っ込みそのまま大地に叩きつけ一撃で瀕死にまで追い込んでいた。

 

 

カイリューの頭を撫でながらかいふくのくすりを使ってボールに戻し、気絶している黒いレックウザの元に向かって行く。

 

「マジでZクリスタルを送ってもらっておいてよかった……よし」

 

げんきのかけらを使い少し回復させてからかいふくのくすりを使い、軽く触診をして異常がない事を確認してから離れていた。

 

「キュリリ……」

 

「いや、こっちもやりすぎたから……えっ、マジで!?」

 

 

「紫様、ツカサが何か話してますよ。話を聞いていなかったら頭がおかしくなったのかと思える光景ですが」

 

「私達はツカサがポケモンの言葉が分かるのを知っているからいいけど、知らない者から見たらぶっちゃけ狂人よね」

 

 

そんな会話がされているとはつゆ知らず、こうべを垂れたレックウザをモンスターボールに入れていた。

 

「まさかの切り札ゲットは嬉しいなぁ」

 

「ツカサー、今日は帰りましょ。そろそろ下準備も出来たでしょうし、明日から動くのがいいわね」

 

「確かあの日留守だった神社の博麗の巫女に挨拶をするんですよね」

 

「ええ。話を通さないで私達と回ると間違いなく異変扱いをしてあの子が襲ってくるわ」

 

「お土産とか用意して印象良くしておかなきゃ。それと出来るなら格闘の手合わせが出来る相手が欲しいです」

 

「それなら紅魔館か命蓮寺、鬼達もいいかもしれないわ」

 

フォルカを筆頭に鍛えていなかった事がバレると厳しいトレーニングを課せられるので必死に鍛え直すつもりらしい。

 

特に一番恐れているのが霊光云々の後継者にしようとしている老婦人であり、顔面がジャガイモみたいになるくらいボコボコにされた経験からガチでビビっている相手の一人だった。

 

「何処もヤバイ気がする……いや、でも幻海婆ちゃん達よりはマシかなぁ。気絶しないギリギリを攻める天才集団だったし」

 

「なにそれこわい」

 

 

 

そんなこんなで数日が経ち、日中は大体博麗神社でダラダラしていた。

 

「お賽銭に切りよく十万入れたら博麗さんから超VIP対応されたっけ」

 

お高い料理を食べてお土産にかおるキノコを貰い、それを売って食べるだけで何故か所持金が増える不思議。

 

「霊夢ったらツカサが木の実を分けて栽培するの勧めたら泣いて喜んでたわね」

 

「食べるのに困らないって素敵なんだよ」

 

 

「凄い! もう実がなったわ!」

 

そんな霊夢はニャースと共に様々な実を採って興奮している。

 

 

「それから出掛けた紅魔館の紅美鈴さんとの手合わせは最高だったなぁ……お陰でやっと安定した覇気が扱えるから、機神拳が本領発揮する」

 

気を使う彼女に指導をお願いして見てもらい、覇気は知識としては知っていたが実際に使える存在を見たのはツカサが初めてだったらしい。

 

「何で空が飛べないんですか!って詰め寄られて焦ってたわね」

 

「何で飛べるのが普通だと思うのか。普通の気を使う方法を教えてもらえるらしいから、鶴の爺ちゃんの空を飛ぶ技とか亀の爺ちゃんの必殺技が遂に出来るかもしれないと思うと胸熱」

 

「ツカサの手合わせをワイワイと見ていたツカサのポケモン達……凄い光景だったわ」

 

キュウコンは美しい鳴き声で声援をおくり、バンギラスとカイリューは手に汗握りながら応援、レックウザは興奮してグルグル上空を回っていたらしい。

 

「自衛手段も出来たし、これでポケモン達に集中出来るよ。何故か湖にいたアシマリも仲間になったし、メインメンバー後一体誰を仲間にしようか悩むなー」

 

一目惚れされる枠がアシマリだったらしく、湖近くで休憩中に水辺から寄って来てスリスリされ撫で撫でしている内に可愛くて仕方がなくなり、仲間になって欲しいとお願いして捕まえていた。

 

所持制限はないと自分ルールで決めたからか他にも多々捕まえている。

 

ユキワラシ♀は暑さにダウンしていたが、友達のアシマリに案内されたツカサに助けられて心地良いモンスターボールの中で快適に過ごしていた。

 

「あんなに威嚇したり問答無用で襲い掛かってきて凶暴だった子達がツカサの前だと大人しくなるのよね……」

 

「寧ろ紫さんが嘘吐いてるのかと思った。まぁ、紫さんにはめっちゃ唸って威嚇して襲い掛かろうとしてたけど」

 

 

「ニャース、まだ食べないのよ。更にこれを埋めて増やして増やして……それからだからね!」

 

「ニャー!」

 

 

「やるやる。だんだん管理が面倒になって食べ尽くしそうになって焦るまでがセット」

 

霊夢とニャースのやり取りを見て自分にもそんな時期があったと思い出していた。

 

「明日は守矢の神々に会いに行きましょうね」

 

「はーい。……すっげぇ嫌な予感するけど」

 

………

……

 

翌日、目立たないように眼鏡を付けて何故か男性がひしめき合う守矢神社に到着。

 

紫に連れられて行こうとしたが、面白い事を思いついた顔の紫に最後尾に並ぶように言われ大人しく従っていた。

 

落胆して帰る人達を見送りながらポケモンブリーダー用の最新版テキストを読み始めていた。

 

気がつくと目の前の人がおみくじを引く箱に手を入れており、無料で出来るから並んでたのかと納得しつつ鞄にテキストをしまっていた。

 

「お待たせしました! 貴方で最後ですね!」

 

「はい」

 

緑の髪に霊夢のように腋を出した青い袴の巫女服の少女が箱を差し出し、ツカサはその中に手を入れて掴もうとしたが………

 

 

「八雲紫、挨拶に来たはずなのにあの子は何で混ざってるんだい?」

 

「だって婿を決める為の催しを何も知らないまま色々やらせたら面白そうじゃない。今回も一人しか残ってないみたいだし」

 

「残ってるのも最低ライン下回ってるから失格だけどね。前回から増えた外来人に期待してたんだけど」

 

紫は二柱の神と共に引こうとするツカサを眺め、あーだこーだ言っていた。

 

 

「掴んでないのに手が抜けない不具合が起きてます」

 

「えっ」

 

「ぶっちゃけ気持ち悪いくらい手に張り付いてきてドラちゃんハンドみたいになってて抜けない。あ、取れ……これは呪いのおみくじボックスでござったか。それが拙者で発動するとは」

 

無理矢理引き抜くもまだ手にビッシリ紙が張り付き、箱の中に残された紙までもが飛び出して来て張り付いてドラちゃんハンドになっていた。

 

 

「「頂戴!」」

 

「絶対ダメ」

 

「何あれ何あの子!」

 

「頂戴よー!」

 

「私が協力してもらってる子なの。週に一度は外に戻さないといけないし、何より異性に興味はあってもポケモンがいるとそっちに付きっきりになるくらいのポケモン好きよ」

 

コンテスト番組の収録の件で週に一度は外に戻すと決めているらしく、その時にデートをして藍へのお土産を買ったりと満喫していた。

 

その時にツカサのレックウザは森にあった隕石を食べ、更にガリョウテンセイという技を思い出したらしくこちら側での最強の戦力になっている。

 

ツカサの切り札であるメガシンカも可能になり、伝説のポケモンでパートナーポジションに収まるという快挙を成し遂げといた。

 

「そんなのデメリットにもならないよ」

 

「だからはよ」

 

「本人がよくても立場がそれを許さないのよ。今は冒険に出てるって体だからいいけど、近い内にこちら側に来るのが難しくなるわ」

 

「へぇ、有名なお坊ちゃんか何か? それなら話を通して婿にするくらい軽い軽い」

 

「……カロスチャンピオンよ」

 

「「……は?」」

 

「カロスチャンピオン」

 

「……そんなオーラないよ!」

 

右手をブンブン振って紙を剥がそうとしているツカサを見てそう感じたらしい。

 

「ポケモン関係ないとあんなものよ。……そこがいいんだけど」

 

「人は見かけによらないとは言うけど……」

 

「霊力を隠すのが物凄く上手いから退魔師だと思ったのに……」

 

幻海にボッコボコにされながら必死にコントロールを覚え、一定以上の霊力と様々な者に鍛えられて下地が出来たのを確認すると修の行 呪霊錠を施されて地獄を見ていた。

 

次に会って鈍っていたら再び施されるのは確定的に明らかであり、ガチビビリしながら日々鍛え直している。

 

「貴女達の大事な子はツカサの左手を握って身体を寄せて、何か一方的に話し続けてるわよ。ツカサが引き攣った笑みを浮かべながらもう一人に助けを求める視線を向けてるけど、その子も謝りながらダッシュで階段降りて逃げて行ったわ」

 

「うわぁ……」

 

………

……

 

「東風谷早苗さんの目が怖い。可憐で清楚な容姿から放たれる野獣の眼光……」

 

「自分好みのドストライクな異性、しかも合格どころか即婿入り確定な霊力持ち。野獣の眼光にもなるわよ」

 

あの後すぐに助けられようやく落ち着き、嫌々ながら母屋に案内されていた。

 

 

「神奈子様、諏訪子様離してください! あの方が私の運命の人なんです!」

 

「早苗落ち着きな!」

 

「ちょっ、力強っ!」

 

遠くの部屋からそんな声とバタバタ暴れる音が聞こえ、ツカサは何故かウロウロしていたニョロモとアーボを撫で撫でして癒されていた。

 

 

「やだあんなストレートに運命の人とか言われたら好きになっちゃう」

 

「それ絶対言っちゃダメだからね」

 

 

「ほらツカサさんも私を好きだって言ってます!」

 

「かなり離れた部屋の声が聞こえてるのかい!?」

 

「いいから神奈子早く縛って!」

 

 

「なにあの子こわい」

 

「私も怖いわよ。完全にロックオンされてるじゃないの」

 

 

そしてツカサの人生で幾度目かの……

 

「ヒッ!?」

 

「追い詰めましたよー」

 

興奮して目が血走った早苗が二柱を振り切り部屋に突入、ツカサは慌てて逃げようとしたが逃げ道を塞がれ部屋の角へ追い詰められていた。

 

紫はあまりの形相に真っ先にスキマに飛び込んで逃げたらしく大ピンチだった。

 

「お、落ち着いて……ヒッ!」

 

「これで逃げられませんね」

 

俗に言う蝉ドンで完全に逃げ道を塞ぎ、ギラギラした血走った目を見開いて見下ろしている。

 

「怖い怖い怖い! 何この……何!?」

 

「好きな食べ物はなんですか? 好きなポケモンは? 好きな女の子の髪型は? 胸は大きい方がいいですよね?」

 

「神奈子早く! やばいよ早苗が今まで見た事がないくらいのアグレッシブ具合だよ!」

 

「そんなおかしな真似しないで普通にアプローチしなさい!」

 

 

それから二柱の神が何とか拘束して転がし、ツカサは額に青筋を浮かべながら戻って来た紫の頬を引っ張っていた。

 

「あっさり見捨てやがって。もう敬語も敬称も付けないからな」

 

「ごめんなひゃい」

 

「血走った目を見開いて笑う女の子はトラウマになるわ。普通にアプローチしてくれてたらなぁ……」

 

「本当に申し訳ない。……婿に関して諦めて受け入れてくれた所に、早苗好みで非の打ち所がない婿候補が来たからおかしくなって」

 

「縛られて猿轡されながらニョロモとアーボに見張られてるとかカオス」

 

 

どうにかみんな落ち着きテーブルを挟んで改めて自己紹介を終えたが、解放されても早苗は野獣の眼光でツカサを見ていた。

 

そしてニョロモとアーボが早苗からツカサを守ろうと両サイドに控えている。

 

神奈子と諏訪子は自分達のポケモンが自分達よりツカサに懐いている事にショックを受け、紫は扇子で口元を隠しながらニヤニヤしていた。

 

「長く一緒にいる私達よりもツカサのがいいなんて……」

 

「ニョロモぉ!」

 

「私もあっち側がいいです」

 

 

「セクハラしたら嫌いになったり……」

 

「ほらまた余計な事を言うから目を輝かせてるわよ」

 

「俺マジ帰って半年に一回来るか来ないかにするから」

 

「はいはい」

 

尚、紫が週一で連れて来る模様。

 




通常色レックウザはハルカが捕獲しているので、黒いレックウザと次回予定のもう一体のポケモンの為にこの世界を使わせてもらいました。

仕方ないと諦めた所に好みで色々合格な相手がいたら普通に形振り構わなくなるよね。


迷い込んだ世界の一つで全く歳を取らないままFIMBAで一流ブリーダーになって助手に後は任せて帰還。

次に迷い込んだ時には別大陸のIMaでブリーダーになって、とある大会で前助手現ブリーダーと再会し現助手と修羅場になったりもしてる。


ディスガイアのアサシンの為にガチャ回すか悩む。

去年どうしても欲しかったのに手に入らなかった水着マルタが復刻するまでガチャ力を貯めるべきか。


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恐怖の順位がガバガバな者

蝉ドン事件から一週間が経過し、本日は人里を見て回っていた。

 

紫が結界のメンテナンスの件で藍と話している間に散策していると、アリアの家で働いているサクヤに似た十六夜咲夜という女性と目が合い軽く会釈をして……

 

「ファッ!?」

 

何が起きたのかいつの間にか洋室で椅子に座らされており、目の前で蝙蝠のような翼を持った少女が興味深そうに見ていた。

 

「ふふ」

 

「やだ、凄く可愛い……」

 

「あらありがとう」

 

「それよりいったい何が……」

 

「とりあえず紅茶をどうぞ。喉を潤してからお話しましょう?」

 

いきなりすぎて考えが纏まらず、戴きますと目の前に用意されたカップを手に取り飲んでいる。

 

「あ、美味しい」

 

「でしょう? それより貴方、此方側に来て怖かった事とかあるのかしら?」

 

「蝉ドンが怖かったです。リアルにされると思わなかったし、出来るものだったんだなぁ……」

 

夢で見て魘されるくらいトラウマになっており、早苗を見かけると隠れて通り過ぎるの待ちする程。

 

尚、残り香を地図に見つけ出される模様。

 

 

「せ、セミドン? ……とりあえず改めて自己紹介させてもらうわ。私はレミリア・スカーレット、この紅魔館の主よ」

 

「ご丁寧にどうも、シラカワ ツカサです。それで私は何用で招かれたんです?」

 

「この前門番と何かしていたでしょ? それを窓から見ていた咲夜が貴方に一目……」

 

「ファッ!?」

 

いきなりレミリアの姿が消え、誰もいない部屋に一人きりになっていた。

 

「これも何かの能力なのか。俺もかっこいいのが欲しい」

 

いつの間にか自分の前に山盛りになっているクッキーに手を伸ばしながら呟き、でもやっぱりいらないなと考え直してサクサクと食べていた。

 

「ゾワゾワする何かを感じる。レックウザ以外のボールが震えてるなぁ……婆ちゃんより全然マシで笑える。こっちが攻撃に使った霊力吸った挙げ句に若返ってフルボッコにしてくるんだもん」

 

 

しばらく寂しさから独り言を呟いていたが飽き、勝手に出歩く訳にもいかず仕方なく鞄から先日買ったばかりの本を取り出して読み始めた。

 

「これマニアックすぎるな。ベトベトン写真集とか俺以外に誰が買うんだろう」

 

ポケモン関係のあらゆる新書の取り置き取り寄せをミアレの大きな書店で頼んでいて、月の終わりに支払いと受け取りに行くようになっていた。

 

今ではかなりのお得意様になり、ちょいちょいサービスでポケモン関連のグッズのおまけが付いたりして喜んでいる。

 

「ドレディア写真集はあまりの良さに二冊買い増し……何か直後みんなもそれ持ってレジに向かってたけど」

 

モロバレチャンピオンが二冊も買っていく本が気になって購入したらしく、それが広まり重版出来となって今でも売れ続けている。

 

他にもツカサが軽く立ち読みして買った雑誌や漫画や小説が飛ぶように売れ、チャンピオンとしての自覚が皆無なツカサは自身の影響力を理解していないと怒られていた。

 

スーパーで大好きな少しマイナーなお菓子を箱買いしてそこを目撃され、みんなそれを買い始めてメーカーの生産が追いつかなくなったりもしている。

 

最近は麩菓子を取り扱っているスーパーを見つけ、発注ミスで在庫過多になって怒られているのを盗み聞きしてこれ幸いと全部買い占めて帰ったりもしていた。

 

 

「……やっぱり下の方からピリピリ感じる。名前を呼んでガチモードになったトンカラトンとやり合わされた時よりはマシ……なのかわからないけど」

 

継承者(強制)故に妖力等には敏感で背筋がゾクゾク、肌がピリピリして落ち着かなくなっていた。

 

トンカラトンとは激闘の末にズッ友になり、呼べばチャリで駆けつけてくれるイカした怪異である。

 

 

「ごめんなさい、少し席を外してしまって」

 

「大丈夫ですか? 疲れているように見えますが」

 

「ちょっと従者と色々あったのよ……」

 

「はぁ……」

 

「そうそう、八雲紫に話は通したから数日泊まっていってちょうだい」

 

「何かピリピリするので遠慮したいんですが……」

 

「これに慣れないと他の場所に行けないわよ」

 

「……とりあえず美鈴さんに鍛えてもらいます。すっごいピリピリしてますし、強くならないと対面したら漏らしそうですし」

 

 

初日に紫の制御しない妖力全開状態を体験して意識が飛びそうになり、余りの圧に呼吸も出来なくなって粗相をしてしまっている。

 

心臓が停まるだろうと予想していた紫と蘇生の為に控えていた藍は耐えた事に驚き、妖力を抑えると同時にその場に崩れ落ちたツカサを介抱していた。

 

そんな目に遭って怯えたり罵声を浴びせるでなく、ただ粗相をしてしまった事と二人の服が汚れてしまう事を謝りながら気を失ったツカサを見て二人は苦笑しながら世話をしたらしい。

 

「あー……漏らす程度ならいいけど心臓停まるかもしれないのは危ないわ」

 

「なにそれこわい」

 

「いざとなったら連れて逃げると言い出し……私が従者に言っておいたから安心なさい」

 

「それは漏らしてからだと手遅れなんですが」

 

「大丈夫、ありのまま全てを受け入れて逃げてくれるわ」

 

「それが女性だと男としての尊厳がズッタズタになるんですが。てかそれ絶対メイドさんですよね? さっきからチラチラと視界の端に映るのに見えない謎の」

 

「それよ」

 

………

……

 

あれから五日程が経過し、ピリピリに関してはあっさりと解決していた。

 

「霊力での受け流しが出来るようになったからピリピリしなくなった」

 

「まさか受け流さないで全部受け止めているなんて思いませんでしたよ」

 

「受け流さないで受け止めて慣れろって婆ちゃんに言われたから……死ぬかと思ったから帰ったら絶対文句言いに行く。美鈴さんに鍛え直してもらってるし、きっと勝て……ないよなぁ」

 

「強くなればその方も見直してくれますよ!」

 

「強くなったら呪霊錠をされるから程々に強くなりたいです。あれ霊気を全力で巡らせてやっと動けるかどうかになるから絶対嫌なんです」

 

「き、厳しい方なんですね……」

 

「美鈴さんが天使に見えるレベルでキッツイっす。道場破りみたいな感じで来た仮面付けてたスズキさんは顔面ジャガイモみたいにされてましたし」

 

殺気や威圧は慣れて平気なツカサも慣れない妖気の圧等は恐怖心が刺激されてしまうらしい。

 

地味な弱点だが幻想郷では致命的な弱点だった。

 

仲間になったポケモン達は幻想郷で暮らしていて妖怪達とやり合う事もあったらしく、本当に危ない時はボールから飛び出しツカサを抱えたり咥えたりして逃げるつもりらしい。

 

 

「うわぁ……」

 

「何か嫌な予感もしますしこの話はやめましょう」

 

 

それから慣れる為に受け流さずに美鈴の妖気を少しずつ強くしてもらい、歯がガチガチいうくらいの強さをキープしてもらい共に身体を動かしていた。

 

「お疲れ様でした。はい、お膝にどうぞ。 ちょっと汗臭いかもしれないですけど……」

 

「やだ、優しくされて好きになっちゃう……」

 

美鈴は終わって動けないツカサの頭を膝に乗せ、強がっているが震えているツカサの頭を撫で撫でして落ち着かせていた。

 

「お話してくれた魔王とかのが怖いんじゃないですか?」

 

「魔王達は仲間が強いから怖くないんですよ。仲間にも魔王達がいますし」

 

モンスターは怖くないが妖怪達は怖いというガバガバなツカサである。

 

尚、妖怪達よりも魔王達のが圧倒的な死の恐怖を与えてくる模様。

 

「魔王が仲間……それならツカサさんは大魔王ですね」

 

「あ、大魔王も仲間に居るんですよ」

 

「えぇ……」

 

 

そして昼にはレミリアと食事をするも自慢の従者は姿を見せず、メイド服を着た女性という情報だけで見たいのに見れないのが残念で仕方がなかった。

 

「レミリアさんのゴルバットはそろそろ進化すると思いますよ」

 

「えっ、まだ進化するの?」

 

「はい。トレーナーに懐いて自ら進化したいと望むと進化しますから、ゴルバットのままのトレーナーは愛が足らないだけです」

 

ちなみにツカサくらいのブリーダーになると一週間でクロバットに進化させる事が可能。

 

「へぇ……」

 

「やっぱりポケモンは可愛いなぁ」

 

「ツカサはマッサージとかもやるの?」

 

「やりますねぇ!」

 

「え、本当に?」

 

「やりますやります」

 

人へのマッサージは未熟だがポケモン達なら即堕ちする程の腕前になっており、岩だろうが鋼だろうが関係なく施せるようになっている。

 

 

「しゅごい……」

 

ポケモン関係なら一人で何でも出来てしまうので世話役に欲しいなと本気で考えているが、何故か紹介する前からツカサのファンになっていたパチュリーに本気で怒られるので勧誘はやめようと諦めていた。

 

 

蒐集されるあらゆる本の中にハチクマンシリーズの解体新書的な分厚い本があり、たまにはとパチュリーが暇潰しに読んでドハマリしてしまい今に至る。

 

関連本を使い魔である小悪魔に集めさせ、その結果どうしても映像が見たくなり恥も承知で永遠亭へ向かったりもしていた。

 

尚、永遠亭組は重度のファンだったらしく仲間が増えた喜びで月一で鑑賞会が開かれるようになっている。

 

 

「うーん……そろそろ撮影するって話もあるみたいだし、紫に話をしてしばらくカロスに居なきゃ」

 

映画の前に二時間の二代目リオルガールの前日譚をやるらしく、ツカサは日常パートで悩むヒロインにアドバイスをする前作主人公の役割を負う予定である。

 

メインの事件をリオルガールとして初解決、そのまま終わりに向かうと思いきや怪盗事件が発生。

 

怪盗姿で仮面を付けリオルガールをビルから見下ろし嗤うリオの姿が映し出されて終わり、劇場版の予告が入る仕様。

 

 

「それパチェには秘密にしてね。大興奮して大変な事になるだろうから」

 

「パチュリーさん、握手したら気絶されましたしね。倒れそうになったのを慌てて抱えたら意識が覚醒、自分がどんな状態か見て鼻血を出してまた気絶って大惨事でしたし」

 

「あれは酷かったわね。それより酷いのはこの五日、ツカサに一度も姿を見せないあの子だけれど」

 

「視界の隅にチラッと映ったりはするんですけどね」

 

「あ……ねぇ、言いたくはないと思うけど女性の身体でどこが好き?」

 

「ナチュラルなセクハラパネェっす。あ、ちなみに太ももが好きです」

 

モテたいと言っている割にはポケモン以外からどう思われようがどうでもよく、平然と性癖を暴露していた。

 

「てっきり胸とかだと思ったわ。門番と仲良くしているみたいだし」

 

「サッパリしてて一緒にいて気楽なんです。それに勝負で勝てたなら胸を見てても何も言わないって言われて勝ちに行きましたし」

 

「勝てたの?」

 

「31を言ったら負けのゲームで全勝しましたよ。揺れるのをジーッと見てたら恥ずかしそうに両腕で隠す姿にキュンと来ました」

 

体育座りで準備運動を観察していたらしく、脳内のフォルダに保存して亀の爺ちゃんに話してあげようと考えていた。

 

 

「……1!」

 

「2」

 

「3、4、5!」

 

「6」

 

「7、8!」

 

「9、10」

 

「11!」

 

「12、13、14」

 

「15!」

 

「16、17、18」

 

「19、20、21!」

 

「22」

 

「23、24!」

 

「25、26……はい、俺の勝ちです」

 

「……あっ」

 

先行を取られて焦ったがルールを把握される前だったのが幸いし、そのまま勝ちに行っていた。

 

「ちなみにこれ分かっていたら先行なら絶対勝てるゲームなんですよ」

 

 

そんな話をしているとツカサのモンスターボールの一つがガタガタ動き始め……

 

「ツカサ、そろそろお昼の時間ニャ。ニャーは今日もツカサの料理がいいのニャ」

 

「おっ、そうだな」

 

「……やっぱり慣れないわね。ツカサが捕まえたニャースだけ自然な二足歩行で普通に喋るなんて」

 

「ニャーが話しかけてもツカサだけは逃げなかったのニャ!」

 

「寧ろ妖怪、神様、吸血鬼等が跋扈している幻想郷では普通だとばかり」

 

 

そのままレミリアの部屋を後にしてキッチンでニャース達のお昼を用意し、ついでに自分と美鈴の分の簡単なサンドウィッチを作り鞄に入っていたバスケットへ詰めていく。

 

おいしいみずやサイコソーダ、ミックスオレが鞄に大量にあり飲み物はそれでいいかと門の方へと足を運んだ。

 

「毎日ありがとうございます」

 

「いいんですよ」

 

「あのシュワシュワした甘味もいいですねー」

 

「大丈夫ですよ、バッチェ冷えてますよ!」

 

姿を見せないメイドに興奮しすぎて倒れる魔女の二人とは親交が持てず、必然的に美鈴やパチュリーの使い魔である小悪魔との仲がどんどん深まっていく。

 

最後の仲間であるニャースも皆と馴染み、仲良くツカサの用意したご飯を食べている。

 

「食べ終わったらまた膝枕してあげますね」

 

「やったー」

 

「あ、でも昨日みたいにお腹に顔を埋めるのはダメですからね」

 

「はーい」

 

互いに相性がかなり良く数日で仲良くなりすぎて越えていいラインが曖昧になってきていた。

 

………

……

 

「……毎晩お風呂から戻ってくるとベッドの上の掛け布団がこんもりしてるんだよなぁ」

 

「暖めておきました!」

 

「小悪魔さん……」

 

パチュリーの介抱をしてから悪い事をしてしまったと小悪魔の手伝いをしてから妙に懐かれている。

 

「えへー」

 

「普通に可愛いから困る」

 

「ツカサ、毎晩同じ事を言ってるニャ」

 

ニャースは基本的にボールから出ており、仲良く一緒に寝るくらいツカサに心を許していた。

 

「仕方ないんだ。手伝い中に事故で胸を鷲掴みにしちゃった時も土下座して額を地面に擦り付けて謝ったら、笑って許してくれて額の治療をしてくれた心の広さとかも」

 

「ツカサ! 気をつけないとニャー達が路頭に迷うニャ!」

 

「あれは事故だったの! 人生初タッチが事故とか情けないし、小悪魔さんに申し訳なさすぎるしで泣ける」

 

「パチュリー様にご報告しましたら血涙を流して悔しがってましたよ。何で触られるのが私じゃないのズルい!ってベッドでジタバタしてました」

 

「これがモテ期か」

 

「違うと思うニャ。ニャー達にばかり構うツカサじゃ普通に考えたらモテないニャ」

 

「……うへへ、小悪魔すぁーん!」

 

ニャースの容赦ない指摘を無視し、九割冗談で服はそのままでルパンダイブを敢行していた。

 

「きゃー」

 

「……えっと」

 

そして逃げないどころか両手を広げてウェルカムな小悪魔に逆に動揺している。

 

 

そんな事があった翌朝。

 

「昨日はいい雰囲気になってキスしそうな空気になったと思ったら、ベッドから小悪魔さんが消えたんだよなぁ。何か唇が瑞々しく感じたけど」

 

「今日はニャーとアシマリがカロスに初めて行く日ニャ」

 

「ピカチュウ達と仲良くしてね」

 

「ニャーと同じ女の子だったら仲良くなれるニャ」

 

「……え?」

 

「ニャ?」

 

ツカサはずっとニャースが♂だと思い込んでいたらしい。

 

喋れるからオンにしていなかったが改めてオンにしてみると……

 

「どうしたの? 私が女の子なのは知っているでしょ」

 

「Oh……吹き替えみたいで面白いくらい可愛い声になってマックス大草原」

 

ただ既に普通の喋り方に慣れてしまって違和感しかないので即座にオフにしていた。

 

………

……

 

いつものようにカロスに戻され、その時に改めて様々な撮影やらで一ヶ月近く行けない事を伝えていた。

 

紫も忙しく同じくそれくらいの時間迎え入れられないと言われ、お互いがんばろうとハグをしながら励まし合って別れている。

 

そして……

 

「ツカサが最近冒険ばかりしてるから私の女子力が上がって大変よ」

 

「女子力高い子は人のベッドに下着姿で入ってたりしないんだよなぁ……布団干そうとして捲って目が合った時は俺の心臓が止まるかと思った」

 

「ツカサの周りには癖のある女の子しか集まらないニャ」

 

「えっ、ニャースが喋ってる……まぁ、ツカサが連れて来たなら喋るくらい普通よね」

 

セレナも伝説幻を飽きるくらい見て麻痺しており、喋るニャースくらいでは動じなかった。

 

「ピッカァ!」

 

「ピカ子まで一緒に居るのか……」

 

「このピカチュウ変態ニャ!?」

 

「知ってる」

 

「いいのニャ!?」

 

「……害はないから」

 

「声が震えてるニャ」

 

常識が通用しない世界に居た筈のニャースが一番常識を持っており、ツカサの癒し枠にランクインしていた。

 

「ツカサ、似合ってる?」

 

「こっちも変態ニャ!?」

 

服を着る事もせずにセレナの中ではセクシーなポーズをし始めたのを見て、ニャースが的確な突っ込みを入れていた。

 

「これあれなんだよね、隣のご両親に相談したらグルだったのが一番心に来た」

 

ツカサも誘惑されるのは嫌な訳ではないが、どう転ぼうとセレナが16になるまでは受け流すしかなかった。

 

「とりあえず今期でコンテストの番組は終わりってカルネさんが言ってたわ。今の1コーナーじゃなくて、新しくツカサをメインに据えた番組を作りたいんだって」

 

「やだなぁ……あまり喋りたくないし。カルネさんとか居てくれないかな」

 

「ゲストを招いてトークしたり、改めてコンテストのテクニックやポケモンとのコミュニケーションの取り方を教える番組になるんじゃない? スペシャルだとコンテスト大会を見に行ったり」

 

「ぶっちゃけ逃げていいならチャンピオン辞めて引きこもるわ」

 

尚、カロス歴代最強のチャンピオンの名をこれから数十年欲しいがままにする模様。

 

 

「ダメよ」

 

「それより早く服を着るニャ! ツカサの目を塞ぎ続けてるニャーの身にもなるニャ!」

 

ニャースは肩車状態でツカサの目を覆っており、平然と会話をする二人に痺れを切らせていた。

 

「いや」

 

「肉球が気持ちいい。もうこのままでいいんじゃない?」

 

「ウニャー!」

 

 

結局セレナが渋々服を着た事で肉球アイマスクが外されていた。

 

「さぁ、セレナゆっくり脱いでみようか」

 

「馬鹿な事を言うんじゃないのニャ!」

 

「もう……」

 

「素直に脱ごうとするんじゃねーのニャ!」

 

肉球アイマスクの感触がたまらなかったようでセレナに脱ぐよう要求、何故かセレナも頬を赤らめながら脱ごうとしてニャースが荒ぶっていた。

 

 

渋々二人で布団を干し始め、ニャースはその間にピカ子にも説教をしていた。

 

「ニャースの肉球柔らかかったなぁ」

 

「最近猫ポケモンカフェとか鳥ポケモンカフェとかあるみたいよ」

 

「それは……行きたいな」

 

「だから今度一緒に行きましょうね」

 

「やったぜ」

 

基本的に森が娯楽になっているツカサを引っ張り出すのはセレナ達であり、最近では寝ている間に車に乗せて連れて行く連携プレイを覚えていたりもする。

 

 




これでこの世界での話はおしまいで今後は気まぐれに行ったり来たり。

紅魔館の彼女とカロスの彼女はそっくりさんなだけで別人。

喋るニャースをどうしても手に入れる為の世界。
cvはアニメと同じだけど、ツカサが変換して聞くとくぎゅ的なボイスになる模様。




去年は始めたばかりで引けなかった水着マルタ。

一年間欲しくて仕方がなかったから引けるまで回す予定。

アガルタクリア記念の10連で欲しかったディスガイアのアサシンは引けたけど、一番欲しかったレジスタンスのライダーがピックアップされないのが不満。

アンリの宝具が2になって、高難易度ヤドカリは二度とやりたくない。


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そうだ、カントーに帰ろう

自由すぎる次期カロスチャンピオンは思い立つと即行動する困った存在だった。

 

「久々のカントーは結構楽しみ」

 

予約していた飛行機に乗り里帰りを敢行、まだ就任前だから自由に動けるがカロスリーグの者達は大人しくしていて欲しくて仕方がないようだが制限出来ずにいた。

 

 

少し値は張ったが小型のポケモンなら連れて乗れる席を予約しており、ピカチュウを連れて席に座らせていた。

 

他にはゲッコウガ、ルカリオ、リザードン、ニンフィア、レックウザを連れて来ている。

 

ファイアローはツカサが孵化させたヤヤコマ達の子育てで忙しく、ラプラスは相変わらずの湖から出ない宣言で仕方なく置いて来ていた。

 

「ピカチュ?」

 

「ん? ああ、今のカントーチャンピオンはコトネって子だっけ? 知ってる地方のチャンピオンが俺以外女性……公式発行の情報誌でハルカ達女性チャンピオンに対する世の男性陣の意見が『憧れはするけど付き合ったり結婚は絶対したくない』ってなってて面白かったな」

 

「ピカピーカ」

 

「あれだな、女性トレーナーは強すぎても弱すぎてもダメって感じなんだと思う。俺は熱いバトルをしてくれて、ちゃんとポケモンを大事にしてくれてるなら何でもいいと思うけどね」

 

………

……

 

「おー、ピカチュウのクッキー缶だ。ニャースの小判最中、プリンのプリンも買っとこう」

 

セレナコーデの服と目立たない髪型に新しくプレゼントされた眼鏡で、完全にそこらの兄ちゃんのようになっている。

 

おみやげを自分用に購入し終えるとそのまま空港から出て……

 

 

「怖ぇよ……何でエリカさん待ってんの? 見た事のあるお高そうな黒塗りの車から出てきたから咄嗟に隠れたけど。誰か別の人を迎えに来たか出掛けるとかなら……すっげぇスマホが振動してるし、見たらエリカさんからの着信だしで間違いなく俺」

 

セレナから情報が漏れている等とは夢にも思っておらず、タイミングを見計らって見つからないよう駅まで走っていった。

 

 

 

電車でヤマブキに向かい、タマムシからタクシーでマサラタウン付近まで来ていた。

 

そして駅にあるフレンドリィショップで買ったポテトを歩きながら食べている。

 

「笑顔とWピースが可愛い女の子を助けた話をしたかったけどなー、俺もなー」

 

「ピーカピカピカチュウ!」

 

「同い年くらいで下手なカロスのアイドルより可愛かったな。お前もその子が連れてたピカチュウにいいとこ見せたくて張り切ってたみたいだし」

 

ヤマブキからタマムシまでの近道をするのに裏道を通っていた時に、残党の残党であるロケット団に攫われそうになっていた女の子を発見して助けていた。

 

誘拐をして資金を得るのが再起の為の一手だったらしく、その一手を通りすがりのポケモントレーナーにあっさり潰され再起不能にされて無事完全解散になっている。

 

「ピカ!? ピカピカ!」

 

「ふっ、誤魔化しちゃって愛いやつよ。アイドル目指してるらしかったし、いつかテレビで見かけたりしたら応援だけはしとこう。がんばります!って可愛かったし」

 

名前は聞かず名乗らずで安全な場所まで送り、去り際に名前を聞かれたが通りすがりのポケモントレーナーとだけ名乗り格好つけて立ち去っていた。

 

「ピカ、ピカピカピーカ?」

 

「とりあえずロケット団残党の残党は縛って転がしておいたし、ジュンサーさん達が見つけるだろ。それよりピカチュウのクッキー缶とプリンのプリンを元気付ける為とはいえあげちゃったから、帰りにまた買わないと」

 

何処までもポケモン関係が優先な所はブレない男だった。

 

………

……

 

帰郷すると連日連夜お祭り騒ぎが続き、更に鍛錬をサボっていたのがバレて死んだ方がマシといったような目に毎日遭わされていた。

 

「心臓が止まっても動かしてくれる素敵なお師匠様達。妖怪とかもう怖くないわ」

 

大体三十分置きに臨死状態になるからか三途の川でサボっている死神の女性と現世から死んだ者達を運ぶ死神の女性二人とすっかり仲良くなり、将来ガチ死亡したら迎えに来て渡してもらう約束をしていた。

 

「それも今日まで。明日からはカントージムのリーダー達に挨拶して回って……ジョウトのジムはまた今度だな」

 

時間が足りないと久々に自宅の庭で自転車を整備しながら呟いている。

 

 

グリーンはジムリーダーとして忙しいらしく、冷やかしに行ってみたらジムトレーナーに勘違いされ最後にはグリーンとガチバトルまでさせられていた。

 

そのままテンションが上がり白熱した試合を繰り広げて快勝すると、トレーナーカードを返却した時に停止していたグリーンバッジ取得情報を取得済みに戻してくれていた。

 

「カロスで有名なショコラティエの店のショコラ詰め合わせをちゃんと沢山用意したけど、やたらたっかいんだよなぁ……美味しいけど俺はマルマインの棒付きチョコとか、おまけにポケモンのカードが付いてるウエハースチョコのがいいや」

 

いつまでも少年の心を忘れず、ゲーセンでもポケモンのぬいぐるみの入っているUFOキャッチャーやポケモンのカードや衣装等のカードが出る簡易コンテストの筐体に一直線だったりする。

 

小さな女の子達にアドバイスを貰って遊んでおり、ナチュラルに混ざる青年に警戒した母親達が様子を見に来てまさかのカロスチャンピオンに黄色い悲鳴を上げたりしている。

 

 

「そうだ、ゲーセンでカントー限定のカードも手に入れてこなくちゃ」

 

ポケモンのカードばかり集めて衣装やアクセサリーのカードを配ろうとするツカサに、衣装やアクセサリーのカードでアバターとポケモンを着飾らせないと楽しくないとまだ小さな子供達にマジ説教をされて改心している。

 

筐体の前で正座をして多数の幼女に叱られているツカサの姿は見ていた誰かに撮影されており、それがアップロードされるとまたカロスチャンピオンかと瞬く間に広まっていた。

 

「さてと……」

 

 

 

翌朝、まだ寝ている母親にまたいつか帰って来る旨を書き置きして自転車でマサラタウンを飛び出して行った。

 

「ピッカァ!」

 

「ニビシティのポケモンセンターで朝ご飯を食べよう。舗装された場所を走り続ければ二時間くらいかな」

 

「ピピッカピピッカピッカチュウ♪」

 

「ご機嫌だなー」

 

「ピカ、ピカピカ?」

 

「確かに朝の爽やかな空気の中を自転車で走るのは気持ちいいけどさ。結局ミヅキはまーた家族旅行で居なかったし、手紙を書いて投函するしかないのが」

 

ちなみに一週間の強行でカントーを回り切る予定らしく、今日はハナダのポケモンセンターに泊まる予定だった。

 

「ピカピカピ、ピカ?」

 

「明日帰ってくるから待ってればよかったのに、って言われても」

 

そのままピカチュウと会話しながら自転車を進めて行った。

 

 

「ニビはマサラからだと遠いなぁ……タケシんとこにも食べ終わったら行かなきゃ。ゲーセンはハナダでいいや」

 

まだ朝八時のポケモンセンターで手持ちの皆を預けて朝食をお願いし、ツカサは食堂で朝から焼肉定食をガッツリ食べていた。

 

そんなツカサの隣には制服姿で透けた女の子が座り、頻りに話しかけてくるが食事中で人前だからチラリと見ただけでスルーしている。

 

『トキワの森で乗った時は喋ってくれたじゃない!』

 

トキワの森を成仏出来ずに彷徨っていたようで、目と目があって逸らしたら見えている事に気づかれて憑かれてしまったらしい。

 

唯一触れるからなのかひんやりした手でボディタッチやらを何度もされ、接触によって過剰に生気を吸われ少々ダルくなっていた。

 

朝から食べるには重い焼肉定食を食べているのも、今はスタミナを付けるしか対処法がないからだった。

 

「おかわりしてこよう」

 

 

その後もあまりにしつこく話しかけてくるので仮眠の為と部屋を借り、ベッドに腰掛けて隣に座ったのを確認すると容赦のないアイアンクローが幽霊少女に襲いかかる。

 

「誰もいない時以外は話しかけない、OK?」

 

『痛い! 熱い! 何で痛くて熱いの!?』

 

「霊力を流し込んで凄く痛い強制成仏させようとしてるから」

 

『いやー!!』

 

「HAHAHA!」

 

『ごめんなさいー!』

 

「未練を晴らして成仏するまで剥がせないんだから、最低限のルールは守るように」

 

『うぅ……でも久々に触れて触ってもらえたし、ご飯も美味しかったなぁ』

 

憑いているからかツカサの味覚が伝わるらしく、食べる度に嬉しそうに話しかけてきての悪循環だった。

 

「そうやってふわふわ浮けるの羨ましいけど、さっきから縞々なパンツが丸見え」

 

『もう死んでるし別に見たければどーぞ』

 

「そう言われると見たくなくなる不思議。さて軽くシャワー浴びてからタケシの所に行くか……それじゃあ静かにしておくように」

 

『はーい』

 

 

 

鍵を返しながらピカチュウ達を迎えに行き、その足でニビジムに向かって行った。

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

「あっ……サンド!」

 

タケシを呼んで欲しいと告げるも新人ジムトレーナーにチャレンジャーと勘違いされ、仕方なくバトルを行っていた。

 

 

ツカサの指示の意図を汲み、ゲッコウガは手加減をして軽くみずしゅりけんでサンドを弾いている。

 

たったそれだけでサンドは目を回してダウンし、圧倒的な差を見せつけられたジムトレーナーは悔しそうにサンドをボールに戻していた。

 

「騒がしいと思ったらツカサだったか」

 

「おっ、タケシじゃん。おっすおっす」

 

「ああ、久しぶり。君もジムリーダーを呼んでもらいたいと言われたら素直に呼ぶようにな」

 

「は、はい……」

 

 

何も出来ず瞬殺されて自信を失い俯くジムトレーナーにタケシは告げていた。

 

「だがジムトレーナーになって初のバトルがカロスチャンピオンなのはある意味記念になったんじゃないか? 多分数多いるジムトレーナーでも初だぞ」

 

「……え?」

 

「基本的に俺はもうジムでバトルはしないしなー」

 

 

タケシに誘われて休憩スペースでお茶をご馳走になり、少し年の離れた友人と楽しい時間を過ごしていた。

 

「そうか、今日はハナダまで行くのか」

 

「カスミさんにはエリカさんに誤情報を流してくれるからお礼したいんだよね。カロスに行ってからは無意味になったけど」

 

「ほんわかした見た目だが、かなり腹黒いからな。しかも一方的だが色々と重い。レッドは上手くツカサをスケープゴートにしたわけだ」

 

「最初は抱き締められたりしてドキドキしたけど、今じゃ近づかれると別の意味でドキドキするよ……ちなみに俺はナツメさんにレッドの情報を流しまくってる」

 

「似た者同士か……」

 

足を引っ張りあうレッドとツカサは幼馴染だけあって遠慮はなく、利害が一致するとグリーンに擦り付けたりもしている。

 

尚、グリーンは上手く受け流して相討ちにさせるスキルを身につけている。

 

「ナツメさんは俺にはまだ十一人の妹が世界中にいるとか面白い冗談を言うし、レッドも諦めてくっつけばいいのに」

 

「ツカサ、俺の家族を見ても冗談だと思うか?」

 

「いや、でも流石に……」

 

「まぁ、夢があるじゃないか。きっとツカサのようにポケモン好きなトレーナーかもしれないぞ?」

 

「それなら大歓迎だわ。……さてと、お茶もご馳走になったしそろそろ行くわ」

 

「気をつけてな。それとチョコの詰め合わせはありがたく食べさせてもらうよ」

 

「カントーに帰ろうって思い立ったのが先週で、それくらいしか用意出来なくてごめんねー」

 

 

「ピカピーカ」

 

「ラッシャイ!」

 

そう言うと出口まで送ろうとするタケシを止め、イシツブテと遊んでいたピカチュウを抱き上げ肩に乗せるとジムを出ていった。

 

 

 

おつきみやまは流石に歩いており、襲ってくるズバットはピカチュウが倒していた。

 

『可愛いのに凄く強い……』

 

「そうか、こいつは俺に憑いたからトキワから離れられるのか……」

 

「ピカ?」

 

ピカチュウには見えていないらしく、いきなり呟いたツカサを振り向き首を傾げている。

 

「何でもないよ」

 

『いいなー、触りたいなー』

 

「ほら行くぞー」

 

『はーい、ご主人様ー』

 

「お前じゃないし、ご主人様じゃない」

 

吸われ続けている現状早く成仏して欲しく、出来ないなら離れて欲しくて仕方がなかった。

 

 

憑かれた事を嘆きながらもピカチュウと共に出口を目指しているとピッピが目の前を通り過ぎていく。

 

「お、ピッピだ」

 

「ピカ」

 

『可愛い!』

 

「今は助手にラッキー、ハピナス、タブンネが欲しいからスルー」

 

リーグの者達は教育を終えたその三体をツカサに与えようと動いており、外科のポケモンドクターを増やす為に募集のポスターにも使おうとしている。

 

「ピカー」

 

「くっそ汚いピッピもいたよなぁ……普通に喋ってたし、カントーの旅で勝手に仲間に入ってたけど今は何処にいるんだろうな」

 

『き、汚いピッピ?』

 

「なんつーか……ピッピとは思えないピッピ。てかあれはポケモンだったのかな? 今でもギエピーって悲鳴を思い出す」

 

『ぎ、ギエピー?』

 

汚いピッピも世界を旅しているのかもしれない。

 

 

「お、出口が近いな。さっさとポケモンセンターで部屋を借りて今日は休みたいし、ハナダジムはまた明日だ」

 

置いて行かれないように幽霊少女が抱きつき、ピカチュウが肩に乗ると急いで出口へと走り出した。

 




しばらくカントーぶらぶら編。

ゲーム本編登場の悪の組織との対戦経歴はこれでコンプのはず。



今年のポケモン映画面白かったなぁ。

映画オリジナル同行者二人も中々良かったし、ホウオウと三犬の圧倒的強者感も好き。

スタッフロールで真っ先に出てきたタケシが何かツボに入って、笑いを堪えるのに必死だった。

買い忘れたモンスターボール型のポップコーンケースを買うのにもう一回映画館に行かなきゃ。


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カントーには姉代わりがいっぱい

ハナダジムでも新参ジムトレーナーをピカチュウで蹴散らし、カスミの姉達にも軽く挨拶をしてからカスミに挨拶をしに向かった。

 

「あら? ツカサじゃないの! 久しぶりねー!」

 

「カスミさん、お久しぶりです。これつまらないものですけど」

 

「ありが……ってこれカロスの有名なショコラティエのじゃないの!」

 

カスミは箱を受け取りチラッと見るとまさかのお土産にテンションが上がっていた。

 

「俺はそれよりもポケモンウエハースのがいいですけど」

 

「あー、あの。私のカード引いてポケモンじゃないってガッカリして、次に開けたのからはエリカのカードが出て仰け反ってたのは面白かったわね」

 

「ポケモンウエハースなのに二連続ジムリーダー、二枚とも無駄な高レアでしたし。あれからお二人のサイン入りレアやらは出たのに、あの弾の高レアの中では出やすい色違いのソーナンスが手に入ってないです」

 

発売されたウエハースの初弾から買っており、世界で一枚だけと大々的に報道されていたサイン入りのオーキド博士のカードが初めて買ったウエハースから出て来たカードだったりする。

 

オークションに出せばコレクターが八桁以上出すくらいの幻のカードであり、リーグ公式のHPに載っている全カードリスト一覧でしか見る事が出来ない。

 

「あ、それならあたしも買ってみて当たったからあげるわよ?」

 

「水着で濡れてなかったら抱きついてたレベルで嬉しいっす。あ、それならこの前ダブったゲッコウガとトレードしましょうよ」

 

「あら、水ポケモンでツカサのエースの子のカードね」

 

「それならサインしましょうか? なーんて……」

 

「欲しい欲しい! あたしがツカサの友人で姉のようなものって言っても新参のジムトレーナーはだーれも信じないし、流石にサインと写真があれば信じるでしょ」

 

「新参のジムトレーナー、ピカチュウで全員倒しちゃったんですけど」

 

「あぁ、いいのよ。ジムトレーナーに選ばれて天狗になり始める前に、圧倒的な強者に叩きのめされるのが一番だしね。……それより今日は泳いでいかないの?」

 

「ピカチュウとニンフィアも楽しそうですし、そちらがいいのなら」

 

浮き輪で浮かびゴルダックに押されて楽しそうにしているピカチュウとニンフィアを見て決めていた。

 

「水着ならあるから着替えてきなさいな」

 

「はーい」

 

………

……

 

「カスミさんのお姉さん方にご結婚されないんですか?って聞いたら笑いながら凄い圧をかけられたんですけど」

 

綺麗に地雷を踏み抜いたようで、笑っていない目で無言でにじり寄られて逃げて来たらしい。

 

 

「……強い女性トレーナーにそれは禁句よ」

 

「うーん……?」

 

「まぁ、ツカサみたいな男ばかりじゃないのよ」

 

「よくわからないですけど、強いのはいい事なのでは?」

 

「……ツカサが自分より強い女性トレーナーとお付き合いをしたとしましょう」

 

「はい」

 

「何をどうがんばっても相手のが自分を上回る、そうなったら流石に嫌になるでしょう? 男ってそういうのに拘るらしいじゃない」

 

「うーん……ポケモンを大切にしてる女性なら自分より強くても嬉しいと思うんですけど」

 

「やっぱりツカサはズレてるわね」

 

「それに俺だったら支えますねー。ドクターとブリーダーの資格もありますし、家事も好きですし」

 

最近ではかなり高い小型の回復マシンまで購入し、サナから歩くポケモンセンターという褒めてるのかよく分からない称号を戴いていた。

 

「これでポケモン中心じゃなければねぇ……」

 

「そこは譲れません」

 

 

「ピカ~」

 

「フィア~」

 

そんな話をしている二人の側を浮き輪で浮いた二体がすいーっと通り過ぎていく。

 

 

 

そんなハナダでのやり取りから数日、必死に自転車を漕いだりレックウザの背に乗ったりしてタマムシのエリカ以外のジムリーダーに挨拶を済ませていた。

 

グレンジムにはピカチュウと共になみのりをしながら向かい、帰りはレックウザの背に乗ってセキチクまで戻っている。

 

「行きたくないなぁ……挨拶しに行ったら即離脱、タマムシの電気街に向かってルミホ姉さんに挨拶ついでに匿ってもらおうか」

 

「ピカ!?」

 

「お店では本名で呼んだらダメって言ってたっけ」

 

「ピカー」

 

「まぁ、とりあえずお客さんとして行ってみようぜ」

 

………

……

 

「単行本一冊くらいになるんじゃないかって大脱出だった……」

 

「ピカチュ……」

 

「タマムシジムでお茶に薬を盛られてお屋敷に連れてかれて、脱出するのに数多の使用人と知恵から武まで様々な勝負を繰り広げたもんなぁ……」

 

そんな疲れ切った一人と一匹は電車に乗り、電気街へと向かって行った。

 

 

メールやテレビ電話では話すが、直接は数年程会っていない姉のように慕う女性の店の前に着いていた。

 

「メイクイーン+ニャン2……ピカチュウ、非常に入りにくいんだが?」

 

「ピカピカチュウ」

 

「メイド喫茶は予想外」

 

 

勇気と好奇心で中に入ると席に案内しようと現れたのが……

 

「ご主人様、おかえ……ニャ!? ちょ、ちょっとこっちに来るニャ!」

 

「姉さん……」

 

「ピピカ……」

 

オーナーでもありツカサの姉のような存在でもあるルミホだった。

 

 

即VIP扱いで隔離された席に案内され、ピカチュウと共にメニューを見ていた。

 

「コーヒーとオムライスでも頼もうか。ポケモンも食べられるみたいだし、ケチャップ多めにしてもらおう」

 

「ピカ!」

 

「とりあえずお店が終わるまではここにいるニャ。……詳しい話は家で聞くから」

 

「うん」

 

「コーヒーとオムライスもすぐに用意するから待ってるニャ。あ、ここにいる間は私の事はフェイリスって呼ぶように」

 

他の客にバレないよう至近距離で囁き、素のままの自分で対応していた。

 

「はい」

 

「ピカ」

 

 

そのまま本を読んだり、コーヒーのお代わりを貰って目を見て混ぜ混ぜをしてもらったりと濃厚な時間を過ごしていた。

 

「目を見て混ぜ混ぜはこう、なんていうか……ドキドキするな」

 

「ピカピカチュ」

 

「フェイリスの必殺技の一つなのニャ」

 

「あ、母さんが久々に会いたいって言ってたよ。サイホーンの成長具合とル……フェイリスさんとお茶会がしたいって」

 

「それなら今度のお休みに行くニャ! サキさん、元気なのニャ?」

 

「元気だよ。娘が欲しかったからフェイリスさん達が来ると凄く嬉しいって、帰って来たばかりの息子を盛大にディスってたよ」

 

「相変わらずなのニャ。……そろそろおしまいだから、お店の外で待っててね」

 

「はーい。ピカチュウ、行こうぜ」

 

フェイリスが取ろうとした伝票をサッと掠め取り、ピカチュウを肩に乗せて会計を済ませてから外に出た。

 

 

 

そのまま終わるのを待って合流し、やたら高そうな高層マンションに向かって歩き始めた。

 

ナンパやらが鬱陶しいという理由で腕を組んで向かい、ピカチュウが茶化してきて鬱陶しくなりオフにしている。

 

小さな頃は守るのと守られるのが逆だったなぁと楽しげに話しかけてくるルミホを見ながら考えていた。

 

「お邪魔します」

 

「はい、いらっしゃい。それで急にどうしたの?」

 

「エリカさんが……」

 

「あ、わかったから平気」

 

「ルミホ姉さんはすぐ分かってくれるから嬉しい。とりあえずまだしばらくはカントーに滞在予定だから、数日間タマムシのポケモンセンターに居る予定だよ」

 

「それなら家に泊まればいいよ。ツカサは私の弟みたいなものだもの」

 

ルミホの父がサキのスポンサーだった頃からの付き合いであり、ルミホは同じくスポンサーだったアリア一家とも繋がりがあったりする。

 

「え、マジで? やったー」

 

「それで明日なんだけど、お店のお手伝いをしてもらえない? アルバイトの子のご家族に不幸があって、お休みにしてあげたら人手が足りなくて……」

 

「姉さんの頼みなら何でも聞くよ」

 

「今、何でも聞くって言ったよね?」

 

「で、出来る範囲でなら」

 

「よかったー……とりあえずアリアちゃんのお家の方に話を聞いて服は送ってもらってるから、明日は朝一で行ってメモ通りにお化粧するからね」

 

「あっ……」

 

調理スタッフだと思っていたら斜め上の事を告げられて目が泳いでいる。

 

「ピ、ピカ……!」

 

話を聞いていたピカチュウは足元で腹を抱えて笑い転げ、苦しそうに床をペシペシ叩いてプルプルしていた。

 

幽霊少女は目をキラキラさせながらツカサの周りをグルグル飛び回り、女装が好きなのかと答えられないのをいい事に調子に乗って話しかけまくっている。

 

 

「お風呂でムダ毛の処理とお肌のケアもさせて……ウィッグはあるし、服に高性能なボイスチェンジャーもあるから声も平気。名前は……ホワイト・ニャンニャンね!」

 

「俺の黒歴史に新たな一ページが刻まれるのに?」

 

「ダメ?」

 

「いや、そんな悲しそうな顔をされたらやるしかないじゃない……」

 

基本的にツカサは身内に甘々であり、頼めば大体の事はしてくれたりする。

 

「アリアちゃんのお父様が売り出そうと開発した、メタモンの細胞を独自に研究して作ったアイテムの試供品もあるからね」

 

「メイド服に仕込んであったあれと肌に塗るやつね。鍛えた自慢の肉体が柔っこい身体にされた時の絶望感は凄かったなぁ」

 

「女装好きから男装好きまで、あらゆる人達の夢を叶える素敵なアイテム! お値段なんと服の方が八桁、塗る方は七桁!」

 

「誰が買うんだよ……」

 

とにかく科学の力は凄いらしく、付けたり塗ったりした人物の体格から女性や男性だった場合のスタイルを再現するアイテムだった。

 

尚コストがかかりすぎるのとよくわからない状態で商品にする事は出来ないと既に開発は中止になっており、説明をした上で欲しいという知り合いや身内に配っている模様。

 

「塗る方は専用の液体で洗わないと落ちないかわりに、副作用で一週間そのままにすると戻れなくなるから注意って。あ、みんなには今の状態で紹介してそれから塗って着てもらうからね」

 

「罰ゲームかな?」

 

「貰ったツカサへのお化粧方法でどんな見た目になるか楽しみね」

 

「楽しみじゃないんだよなぁ……」

 

………

……

 

翌日お店に着くと皆への挨拶もそこそこに別室に通され、全体的に満遍なく塗られ柔らかボディになって無事に着替えは済んでいた。

 

メタモンの細胞を培養して作られた謎のアイテムで身長はそのまま、ただ様々な部分が女性のようになっていて本当に専用の液体で剥がせるのか不安になっているが。

 

ウィッグでロングになりポニーテールにしている黒髪、ホワイトブリムに白いネコ耳、変声機付きアリアの家仕様ロングスカートのエプロンドレスでパーフェクトメイドフォームになっている。

 

そして開店すると店内を優雅に移動して注文された料理や飲み物を運び、ルミホに教わっていた通りに対応していた。

 

「語尾にニャン……お給料と膝枕とイワンコの為だ」

 

引き取り手を探していた卵から孵ったばかりのイワンコが店に居り、ルガルガン昼と最近仲間に増えたルガルガン夜の弟分として引き取りたいとお願いしたらしい。

 

今日一日がんばれば譲ると言われ、ポケモンが関わった事で口調も仕草も女性になりきって完璧にこなしていた。

 

イワンコもすぐにツカサに懐き、本来の姿を写真で見せピカチュウに頼みなんとか今の姿は一時的な物だと理解してもらっている。

 

「おかえりなさいませ、ご主人様。お席にご案内しますニャン」

 

 

180近い長身のメイドに驚く者は多いがフラットな身体と顔面偏差値の高さで気にならなくなり、聞き上手で話し上手なのもあり癒しの面でも喜ばれている。

 

「ホワイト・ニャンニャンは引っ張りだこなのニャ。オタクトークにも嬉々として参加、フェイリスの必殺技もラーニングして実践するアクティブ具合……恐ろしい娘ニャ!」

 

「姉さん、遊んでないで運んで。それとさっきハシダさんとホウオウインさんが、余裕が出来たら姉さんを呼んで欲しいって」

 

「分かったニャ。……それと他の子達が過剰なスキンシップを嫌がるタイミングで色々フォローしてくれてありがとうね」

 

「まぁ、男だからね」

 

手を握られるくらいならスルーしているが、中には調子に乗り始めてスキンシップ過多になるのを見ると割って入るようにしている。

 

 

そのまま時間は過ぎ……

 

「はい、整列するニャー。ちゃんと並べた子から順番にポロックとポフレをあげるニャン」

 

休憩時間になると店員達が連れて来ているポケモン達が寄って来て、そのまま囲まれ幸せな時間を過ごしていた。

 

ちなみに語尾のニャやニャンにも慣れ始めて自然に出るようになっている。

 

 

手が荒れているサーナイトにはツカサのサーナイトも使用しているポケモン専用のハンドクリームを優しく塗ってケアをし、バトルをしてから来たらしいフシギダネの傷もちゃんと治療していた。

 

薬で軽く治せる病を患ったポケモン達をせっせと治し、治療出来る怪我は塗り薬で癒し、精神的に辛そうなポケモンは悩みを聞いて解決策を提示してみたりとドクターとブリーダーの力を存分に発揮している。

 

それを見ていたフェイリスが閃いたらしく、急遽店の隅に作ったポケモンお悩み相談コーナーに座らされていた。

 

「お店のメニューを注文すると無料でお悩みを聞いて差し上げる、ホワイト・ニャンニャンのポケモン相談コーナーなのニャ!」

 

「まぁ、ポケモンなら……」

 

 

それから閉店時間ギリギリまで話を聞いて改善策を提示したり、薬を処方したり軽い怪我の治療をして過ごしていた。

 

進化の相談等にも丁寧に答え、最後の相談者が帰るとグデーっと目の前のテーブルに突っ伏していた。

 

「疲れた……」

 

ポケモンの事になると周りが見えなくなるのを何とか抑え、尚且つ女性のように振る舞い笑顔を絶やさない対応で疲れ果てている。

 

閉店作業を手伝おうとしたが皆に座って休むよう言われて休んでいた。

 

「ご主人様達、帰る時にホワイトさんに感謝してますってスッキリした顔して言ってたのニャ」

 

「それは良かったけど、今日一日でかなり太ったかもしれない。……ご主人様方が相談終わるとケーキとかジュースを注文して差し入れてくださって、食べないと悪いから全部食べたし」

 

「ケーキ、ホール二個分くらい食べてるよ。でも今日くらいはいいんじゃない?」

 

「晩御飯入らない……トレーニングして腹を空かせないと」

 

ただでさえ運動量が多く消費カロリーが摂取カロリーを越えているのに、取り憑かれてから消費カロリーが増えたので太るどころかトントンだったりする。

 

 

『色んなケーキあんなに味わったの久しぶりで嬉しー! しかも私は太らない!』

 

「帰ったら塗ったの落とすからね。どんな仕組みか分からないし、早めのがいいよね?」

 

「当たり前だよ。鍛えた身体と筋肉を早く戻して欲しい」

 

「全身に塗ってたらおっぱいも膨らんだのかな」

 

「それは想像するとすっげぇ気持ち悪いから辞めて」

 

 

皆が帰り戸締りやガスの最終確認を終え、二人で仲良く帰宅を始めていた。

 

「んー、イワンコ可愛い」

 

「いわん!」

 

「お前はどっちに進化するんだろうね」

 

「ピーカ、ピカピ?」

 

「ピカチュウは真昼の姿だと思うんだな」

 

「……ツカサ、みんな見てるからポケモンとお話するのはダメ」

 

ルミホはツカサが奇異の目で見られないようぐいぐい引っ張り、マンションへと急いでいた。

 

………

……

 

本日はメイクイーン+ニャン2の定休日、二人で仲良く軽めの朝食を摂ってからソファで休んでいた。

 

「いやー、濃い一週間だった。姉さんに連れて行ってもらった未来ガジェット研究所、あのホウオウインさんがオカベさんだったり、ハシダさんがスーパーハッカーだったり、マユリさんが不思議ちゃんだったり凄かった」

 

「カロスチャンピオンだって一瞬で見抜かれてたね。オカベさんもツカサを気に入ってくれたから、私が帰るまでツカサを匿ってもらえてよかった」

 

「同年代の男の友達が出来て凄く嬉しかったよ、ハシダさんも友達になってくれたし。ビックリしたのは自力でポリゴンのアップグレードする為のパッチを作って進化させてたり、あやしいパッチまで自作してポリゴンZがいた事かなー」

 

「それより今日は出掛けないの? 来週にはカロスに帰るって言ってたのに」

 

「姉さんは?」

 

「折角だし今日は一日ツカサと遊ぼうかなって」

 

「なんだろう普通に嬉しい」

 

「お姉ちゃんが昔みたいに行きたい所に連れて行ってあげるからね!」

 

「あ、それなら小さい頃に約束した姉さんに服を買うって約束を果たしたいな」

 

「いいの?」

 

「うん。ぶっちゃけチャンピオンになってから毎月お金が有り余るくらいだし」

 

こんな感じのがあれば旅が楽なのになというツカサの要望を商品化。

 

それが大ヒットしてアリアパパから毎月かなりの額が振り込まれるようになり、他にも様々な活動でかなりの収入を得ている。

 

「お姉ちゃんお姉ちゃんって付いて回って来てたあのツカサが……立派になったんだね」

 

「この年になって頭を撫で撫でされると思わなかった」

 

 

割と此方でも認知されているカロスチャンピオン。

 

そんな存在が姉のような者とはいえ女性と二人で出掛けたら……

 




忙しくて一ヶ月経っちゃってた。

三体目でいつかアレになる予定のイワンコとパーフェクト女装回。

とりあえず他のジムリーダーはカットしてでもこの人は好きだから出したかったの。
この世界だとあの作品のあんな大変な事は起こらないけど。

いつか出すはずのイワンコのアレ、ゲームだとUSMで配布されるのからしか進化しない感じで始まる前から終わってるのが悲しい。

次回くらいでカントーからカロスに帰る予定。




忙しい合間にFGOやらやってガチャも回してた。

1諭吉だけ課金してネロ、ノッブ、メイドオルタ、マハトママン、新宿のアヴェンジャー、三蔵ちゃん。

誕生日にいの一番に来てくれた三蔵ちゃんにはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない。

とりあえず今回のイベでDWには今後何も期待しない事にしたけど。


マギアレコードはずっと楽しみにしてて、リセマラ覚悟で始めたら☆4マミさんがすぐに来てくれてこちらでも運命を感じずにはいられなかった。


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いつか神と自称しそうなNo.

案の定ルミホとのお出掛けはスッパ抜かれたが、ポケモンにしか興味ない説が出ていたツカサが女性と出掛けているのに安心する者が九割を占めていて問題にはならなかった。

 

どちらかと言えば憑いている幽霊少女の腕がツカサの肩から垂れているのが写っている事の方が騒ぎになっていたりする。

 

「『あのカロスチャンピオンの恋人!?』って。姉さんにモザイクかけられてるのだけが救いかな」

 

「気になる映画を観てからツカサの知ってるブティックでプレゼントしてもらって、外食しただけなのにね」

 

「ね。とりあえず明後日には帰るから、今日はカントーの幼女パイセンにお別れと最後の指導してもらってくる」

 

「捕まらないようにね」

 

 

朝ご飯を食べてルミホをメイクイーン+ニャン2まで送り、開店時間まで町を見て回っていた。

 

「店頭のホットドッグの置物に顔がある店、いつか入ってみたいなぁ。まぁ、次に来た時でいいかな」

 

カロスに帰るとツカサが自由に動くのを封じる為にリーグ側が看護師としての教育を終えたラッキー、タブンネ、プクリン、ハピナスを与えようと動いているのでしばらくはカロスからは出られなくなる。

 

寧ろ嬉しくて仲を深める為に自ら出掛けなくなる可能性がある諸刃の剣だったりも。

 

 

「タマムシは中心部からサイクリングロードとヤマブキにはすぐ行ける距離なのが不思議。この電気街とか中心部からちょっと離れるだけでどっちにも遠いし」

 

「ピカー、ピカピ。ピカピカチュ」

 

「あー……お前がサイクリングロードで自転車の籠から落ちそうになってぶら下がってるの見て笑ってたら、わざと手を離して顔面に突っ込んできたんだよな。顔は痛いし目の前は黄色いし、よく無事に降り切れたと思う」

 

ピカチュウが顔にしがみついている男が坂道でブレーキをかけるも止まれず華麗に降っていく光景を撮影していた者もいて、それを見た者が冗談でまたお騒がせなカロスチャンピオンじゃね?というコメントを残すくらい凄い光景だった。

 

尚、そのコメントが事実だと知れ渡るのに一日もいらなかった。

 

 

「ピカ~」

 

「お互い必死だったもんなぁ……」

 

 

まだ朝早く誰もいないからいいものの、ピカチュウと喋る姿は悲しく見えてくる。

 

そして開店時間が来て……

 

「幼女パイセンと遊んでお別れの挨拶をしたら泣かれてそのまま抱きつかれて、騒ぎになって警察の方を呼ばれるという悲劇。婦警のカタギリさんが幼女パイセンの話を聞いてくれなかったら大惨事だったなぁ」

 

今は解放されて電気街を歩き回っており、精巧なポケモンのフィギュアを見たりして過ごしている。

 

「バチュルが其処彼処にいて可愛い」

 

「チャァ……ピカピ!」

 

「……ん? お?」

 

ピカチュウが何かに気づき空を指差したので見上げると、大きく綺麗な色をした鳥ポケモンが通り過ぎて行く姿が見える。

 

しかしここは欲望が渦巻く街、ツカサとピカチュウ以外それを見ていなかった。

 

「あれは……ホウオウ? カントーチャンピオンが捕まえたって聞いてるけど」

 

ふわりふわりとにじいろのはねが落ちて来て、ツカサが伸ばした掌に乗って綺麗に輝いている。

 

「これは最高のお土産だわ」

 

自分へのお土産だと鞄からジップロックを取り出し、そのまま中に入れて大事そうに鞄の中へと仕舞い込んだ。

 

 

他にもカントーに来て早朝ランニング中にスイクン、ライコウ、エンテイを一日置きに見かけたりと伝説運は相変わらずかなりよかった。

 

捕獲はしないからバトルをして貰えないか話しかけて許可を得て戦い、カロスを旅した面々とピカチュウで快勝している。

 

またいつかどこかで出会えたら仲間になってくれると約束をし、薬で怪我を癒してから別れて今に至る。

 

 

「ピッカァ!」

 

「……雲行きが怪しいけど台風直撃しないよな。明後日逃したら次にピカチュウが乗れるチケット買えるの二週間後なんだから勘弁してくれよ」

 

「ピカ!?」

 

「最悪ボールに入ってもらう事になる」

 

「ピーカー!」

 

カロスに転送される為に嫌々入ったのが最後で、もう絶対に入りたくないとツカサの脚にしがみついていた。

 

「姉さんは寧ろこの話をしたら台風直撃祈願って言ってたから困る」

 

ルミホは近々開かれるサイホーンレースでツカサを騎手にしたいのと、まだ一緒に暮らしていたいので台風直撃を願っていた。

 

 

ツカサは小さな頃から大人っぽく自分と遊んでくれたルミホを二つくらい離れた姉と考えているが、実際はルミホが数ヶ月早く生まれただけの同い年だったりする。

 

ツカサが必死になっていた二年間でイッシュに留学して飛び級で卒業、その時にちょっとした出会いもあったらしい。

 

戻って来て一応体裁の為に学校に通ってはいるようだが、基本的にオーナー兼店長として日々楽しく過ごしている。

 

 

「ピィカ?」

 

「てか姉さんは何歳なんだろ。誕生日は知ってるけど聞いた事なかった」

 

 

異性よりもポケモンで今でも姉としてしか見ていないツカサとは違い、ルミホは弟のように可愛がっていたツカサを一緒に暮らす内に異性として見始めていた。

 

同い年なのに同年代の男子よりも大人っぽく、からかうつもりで下着姿を見せても紳士的に持って来ていた上着を着せて来たりと逆にドキドキさせられている。

 

その日から少しずつ意識し始め、その姿を目で追っては今まで見た事のない一面を見つけてキュンと来ていた。

 

完全にLIKEからLOVEに堕ちるのは時間の問題であり、普段のスキンシップ過多がそれを更に加速させて今に至る。

 

最近は寝静まったのを確認してからマスターキーで部屋に侵入、ベッドで一緒に寝ているピカチュウをそっと反対側に移しその位置に収まったりもしている。

 

 

「ピカピカ?」

 

「うーん、私の王子様はこんな近くに居たってなんなんだろう。……はい?」

 

ピカチュウと話していると肩をポンポンと叩かれ、振り向くと笑顔のジュンサーさんと婦警さんが立っていた。

 

「さっきは小さな女の子に抱きつかれて泣かれてて、今度はポケモンと話す危ない男がいるって通報があったのよ」

 

「ピカピカ」

 

「確かに怪しいってお前が話しかけてくるからで……あ、ジュンサーさんもカタギリさんもお疲れ様です」

 

「とりあえず行こっか。ちょっとお話を聞くだけだから」

 

「はい、乗った乗った。署の方で身分確認とかはするからね」

 

ミニパトで二人で来ていたらしくさっさと乗るよう促し、ピカチュウもスルリとツカサの肩に乗っていた。

 

………

……

 

カロスチャンピオンなのも分かりあっさり解放、ジョーイさん達と写真を撮らされてから帰って来ていた。

 

「カタギリさんの下の名前を聞いたら身体が震えちゃったぜ。俺はサナエって名前に恐怖を覚えているのか……」

 

帰って来る途中の公園で休んでいると女の子と目と目が合って即逸らしたがバトルを挑まれ、カントーではまだ珍しいニンフィア無双をしてから戻って来ていた。

 

「ピカピカ」

 

「フィーア」

 

『警察署内って初めて見た!』

 

「また捕まりそうだから絶対に答えないぞ」

 

ツカサ(カントーでの姿)状態ではポケモンと喋っていたら捕まるのが理解出来ており、ルミホの言う通り外では喋らず声が聞こえないようにしていた。

 

 

結局すぐにぶらぶらするのに飽きたらしく、高架下にある業務用スーパーで買い物をしてから昼時に未来ガジェット研究所を訪ねている。

 

「フゥーハハハハ! やはり今日も来たかデンジャラスマァッドドクター!」

 

「その呼ばれ方だとカロスのやべー奴みたいで嫌なんですが」

 

「でもツカサ氏は他のポケモンドクターがやらない術式をぽんぽんやり出すって書いてあったから、マッド扱いも強ち間違いじゃないと思われ」

 

「ハシダさん、それはまぁ……あはは」

 

「これは特別に誂えたドクターのユニフォーム……そう、白衣! さぁ、早く着て共に背を合わせて立とうではないか!」

 

「あ、それはちょっとやってみたい」

 

「狂気のマッドサイエンティストと闇のマッドドクターの共演……ダル、写真の準備だ!」

 

闇のマッドドクター扱いが割と的を射ていて否定できなかった。

 

 

背中合わせから始まり、二人で様々なポーズを決めては写真を撮ってもらっている。

 

「マッドドクターをラボメンNo.X-0に任命する!」

 

「オカリン、なぜにエックスゼロなん? 普通にラボメンNo.4でよくない?」

 

「何故か頭に浮かんだからだ。特別感もある」

 

「おー、何かカッコいい」

 

「まぁ、ツカサ氏が満足してるならいいんだお」

 

「とりあえずお昼作りますねー」

 

 

白衣を脱いでエプロンを付けると昨日作り置きしておいたクリームシチューが食べられているのを確認し、今日は米だなと米を研いで炊飯器にセットしている。

 

二人の胃袋を既に掴んでいてそわそわしているのが分かり、先にサラダを食べるよう言って水洗いをして適当に千切ったレタスとトマトに千切りにしたキャベツを器に入れて出していた。

 

「ダル、ツカサが帰った後の俺達の食生活が不安だな」

 

「昨日のクリームシチューは野菜も肉もたっぷりで絶品だったお」

 

「ああ。俺は昨晩作り置きしてあったクリームシチューとサラダに切っておいてくれたバゲットでちょっと洒落た夕食だった」

 

料理人でもあるズミが訪ねてきた時に習った作り方を試したかったらしく、市販のルーは使わずに一から作ってみせてそれが大好評だった。

 

二人の反応を見て昨晩のルミホとの夕食がクリームシチューになったのは言うまでもなかった。

 

「今日は手抜きになっちゃいますけどねー。玉ねぎ、鶏肉、卵……それと入ってるのが好きな紅い方のかまぼこに刻み海苔」

 

「親子丼だとぅー!?」

 

「オカリンテンション上がりすぎ」

 

「フェイリスが散々自慢していたあの親子丼、聞くだけで涎が出そうだったアレが!」

 

「あー……自慢の弟が作ってくれたーってフェイリスたんが言ってた」

 

滞在四日目くらいに作った親子丼がルミホにクリティカルヒットしたらしく、兎に角自慢しまくっていたらしい。

 

「言ってくれさえすればいつでも作りましたよ?」

 

「ルカ氏といいツカサ氏といい、男なのが不思議だお」

 

「ああ、それには同意する。炊事洗濯掃除と進んでやってくれるから最近はラボが快適すぎるな」

 

「あ、そうだ。昨日階下のテンノウジさんにシチューのお裾分けに行った時に家賃の支払いも済ませておきましたよ」

 

もし女として生まれていたら献身的に貢ぎ尽くすツカサは間違いなくダメな男に捕まっている。

 

「ミスターブラウンがやたら俺に探りを入れていたのはそういう……流石にそれは立替てもらった事にするぞ」

 

「姉さんがいつもお世話になっているみたいですし、これくらいはさせてください。無駄にお金だけはあるので」

 

これくらいで向こう十年は支払わなくていい家賃を現金一括で支払っており、弱味を握られてるんじゃないかと心配されたりしていた。

 

娘さんとはピカチュウを通じて仲良くなっており、今ピカチュウとニンフィアと一緒に階下で遊んでいる。

 

 

「フェイリスたんの妹だったら今頃萌え死んでたお」

 

「男ですからねー」

 

 

それから二人に腹一杯食べさせてから自身も食べ、お茶を淹れて三人で食休みをしていた。

 

「美味かった……もう兎に角美味かった」

 

「順調に胃を握られている件」

 

「おやつはプリンですよ」

 

「ダルよ、ダメ人間が出来上がる」

 

「女の子だったら間違いなくフェイリスたんの次に好きになってたお」

 

ほぼ同年代の男友達が初めて出来たのが嬉しくて自然に尽くしていた。

 

レッドとグリーンは幼馴染だからノーカンらしい。

 

「午後は何します?」

 

「久しぶりにゲームでもやるのはどうだ?」

 

「ツカサ氏が物珍しさからポテトで買って来たゲーム機で遊ぶん?」

 

「デンジャラスドクターがファミコン、スーファミ、64と大量に買って来たからな」

 

一人でぶらつかせると必ず何かしら買って来るらしく、先日はウエハースの欲しかった弾をダンボールで買って来てラボの隅に積まれていたりする。

 

「呼び方変わってません?」

 

 

夕方になりルミホが迎えに来るまでゲームで遊んだり、発明品を見て説明してもらったりと楽しんでいた。

 

その途中でダルが用事があると帰ってしまい、ラボに二人だけになっている。

 

「またカントーに来たら我がラボに寄るがいい。デンジャラスドクターはもう立派なラボメンだからな」

 

「オカベさん……」

 

「違う! ホウオウイン キョウマだ!」

 

「キョウマさん……」

 

そんなちょっといい話で締めようとした二人だが、誰かが階段を駆け上りラボの扉を全力で開けて飛び込んで来て驚いていた。

 

「ツカサおじさん!」

 

「ファッ!?」

 

「あっ、オカリンおじさんもいるじゃん」

 

髪型と頭にバンダナを巻いていない事を除けば昔のハルカまんまな格好の少女が立っており、モンスターボールに何かを戻すのをツカサは凝視していた。

 

「おじさんではないしオカリンでもない! だぁれだお前は! まさか……貴様ッ、機関の者か!」

 

「いや、ちょっと待ってキョウマさん……今君がボールに戻したのセレビィじゃないの? 何で君がセレビィを?」

 

「ツカサおじさん……んんっ! あたしはツカサおじさんを助けて未来をほんのちょっと、みんなが幸せになるようにする為に来たんだ」

 

「まるで意味がわからんぞ!」

 

「キョウマさん、セレビィは時を超えられる……って話なんです。俺もセレビィは見た事があるだけですから詳しくは分からないですけど」

 

森でわたぼうと遊んでいるのでよくご飯を与えているが、まだそこまで仲良くはないので分からないらしい。

 

「時間がないから単刀直入に言うけど、明後日の飛行機に絶対乗っちゃダメ。絶対だよ! ……もう限界みたいだね。セレビィ、お願い!」

 

「ちょっ、君の名前は!」

 

「あたしは鈴羽! ツカサおじさん、オカリンおじさん! 未来で会うこの世界のあたしによろしくね!」

 

 

ボールから出たセレビィが何かをするとラボに閃光が走り、二人が目を開くとそこには誰も居なくなっていた。

 

思わず二人は無言でラボの中を調べ回ったが本当に跡形もなく消えていて、冷蔵庫からドクぺを二本取り出しソファに座って気を落ち着かせている。

 

「……未来が変わったらあの娘は居なくなるんじゃないのか?」

 

「ここが分岐点なんでしょうね。俺が予定通りに帰ると何かしら起きてあの子の居る未来、帰らないと未知の未来に」

 

「これが運命石の扉の選択か……いや、マジで初めての不思議体験すぎて頭がついていかない訳だが」

 

「うーん……台風も近づいているしリーグの人には悪いけど忠告に従おうかな」

 

「それならば明日のプロアマ問わずのチームバトルの大会に共に出ようではないか! まゆりでもよかったのだが、我が右腕のダルと我が左腕であるツカサがいるのならば勝てるぞ!」

 

「チームバトル……はい!」

 

「ふっ、もう敬語も敬称もいらんぞ。フェイリスと話す時のように砕けた喋り方で構わん!」

 

「はい、じゃなくて分かったよ」

 

「俺の手持ちはエースのポリゴンゼェット! メタグロス、ユンゲラーだ。ツカサ達のような本職のトレーナーではないから三体を育てるのが限界だ」

 

「あー、確かに沢山いたら普通の人は育てるの大変かも。それでキョウマはユンゲラーは進化させないの?」

 

「ダルに見栄張って進化させられなかったんです、どうかこの私めのユンゲラーをフーディンに進化させてください」

 

「あはは……いいよ。しかしポリゴンZにメタグロス、なかなかエグい」

 

味方にすると頼りになる二体のポケモンがいてホッとしていた。

 

「ちなみにダルはポリゴン2、ハピナス、ドリュウズだ」

 

「なんとまぁ……俺は出すならゲッコウガ、リザードン、ニンフィア。ルカリオは最近頼り過ぎてるからお休みにしたいし、ピカチュウはちょっと癖がある、最後の奴は出したらちょっとした騒ぎになるから」

 

………

……

 

ルミホとスーパーで買い物をしてから帰り、夕食後にソファに並んで座りテレビのニュースと天気予報までバラエティ番組を見ていた。

 

「姉さん寄りかかるのはいいけど寝たらダメだよ。運べるの借りてる俺の部屋のベッドしかないし」

 

「寝ないよ。明日の夜までしか一緒に居られないんだもん」

 

「あ、そうだ。俺、明後日の席キャンセルして二週間後に帰る事にしたから」

 

「ニャ!?」

 

「ビックリしながらも腕の中に転がり込んでくるって器用。あ、姉さんいい香りがする」

 

「それなら後二週間一緒に暮らせるんだよね?」

 

「うん、でもキョウマに誘われてるしラボにお泊まりも」

 

「ダメ」

 

「え? いや、でも男だけのお泊まり会とかも」

 

「絶対ダメ。ツカサは私と一緒に居るの」

 

「ね、姉さん……?」

 

今までなら仕方ないと送り出してくれたルミホの変貌に動揺し、腕の中からジーッと目を見てくる姿に少々恐怖を覚えている。

 

 

「ツカサがお泊まりに行っちゃったら、お姉ちゃんお家に一人になっちゃうんだよ?」

 

「それは……」

 

「だから、ね?」

 

「う、うん……」

 

「全くダメダメな王子様なんだから」

 

やっと見つけられた自分の王子様が残り少ない一緒に居られる時間を、知り合ったばかりの男友達と過ごそうとするのが受け入れられなかったらしい。

 

ちょいちょいと腕を身体に回すようにジェスチャーで指示され、それに従い両腕を身体に回してルミホを抱き締める形にしていた。

 

「う、密着するとさっきよりもいい香りが……」

 

「小さい頃にツカサが好きって言ってくれた香水だよ。当時は背伸びしてつけてたんだけどね」

 

「あー、あれかぁ……」

 

「懐かしい思い出話はお風呂入ってからベッドでしましょ」

 

「え、今日も一緒に寝るの?」

 

「今日も明日もだし、帰るまでずっと」

 

こうしてツカサはまた一人自分を狙う者を増やしてしまっていた。

 

 




ちょっとこの面々使うのが楽しくてカントーまだ終われなかったです。


姉枠じゃなくて実は同い年ヒロイン枠だったり、セレビィの助けで飛んでくる未来形ヒロインがいたり。

オカリンのヒロイン枠のセレセブはまだ出会ってないしイッシュだからね、出なくても仕方ないね。


三犬やカントーチャンピオンのとは別個体なホウオウから羽の贈り物を貰ったりとジョウトフラグも立てておくスタイル。



ドリボ夢アチャモ預けてドリボ夢キモリ狙ってるけど全然来ないなぁ。
後はこいつだけで御三家夢ドリボ揃うのに。


ネロ祭り必死に金リンゴ齧って回ってる。

塩川尊師が今後クソ不味くするのが分かってるから、クッキーを必死に集めないといけない。

髄液がボックスに欲しかった。


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若い芽を知らない間に摘む男

夜遅くまで話し込んだ翌日、起きるとルミホに弁当を手渡され一緒に家を出ている。

 

ルミホを送りラボに向かうと既にエントリー済みの紙を手にした、狂気のマッドサイエンティストがツカサを待ち構えていた。

 

「本気でやっていいんです?」

 

「よく見たらチームで勝ち抜きバトルだった。だから全力を許可する」

 

「いつでも変更出来るからって初戦からツカサ氏を先鋒にするオカリンの采配にビックリ。リアル無双になると思うお」

 

「あはは」

 

 

午後から始まった大会は荒れに荒れ、チーム未来ガジェット研究所はその中心にならざるを得なかった。

 

「ツカサ、あの時より遥かに強くなったな」

 

「手も足も出ないなんて嘘でしょ……」

 

「ふふ、流石私の一族が認めた殿方ですわ」

 

優勝候補だったタケシ、カスミ、エリカのジムリーダーズを一回戦の先鋒であるツカサだけでストレートに撃破した事で会場はどよめいていた。

 

「何で分かったの? 選手名もデンジャラスドクターだったのに」

 

ロボ物のアニメに出てくるライバルキャラが付けていそうな仮面を付けたツカサは不思議そうに尋ねていた。

 

「いや、お前を知っていればバレバレだぞ」

 

「寧ろ分からない訳がないじゃないの」

 

「ええ、バレバレでしたわ」

 

「えぇぇ……」

 

そこそこな規模の大会故にテレビ中継やネット配信もされており、使用した三体のポケモンとツカサのニンフィア特有の荒々しい触覚の使い方でカロスチャンピオンじゃないかとネット上で騒ぎになっている。

 

オフィシャルの大会で久々に行うバトルにファンは興奮し、いつか打倒するべき壁と見ていた者達はカルネを降した時よりも遥かに強くなっているツカサに驚愕していた。

 

「さて、残りの時間はお前の応援でもさせてもらうかな」

 

「そうね、まさか一回戦で負けると思わなかったし」

 

「私達の応援に来てくださった方々も巻き込んでしまいましょう」

 

 

そう言ってフィールドから出て行った三人を見て、蚊帳の外だったチーム未来ガジェット研究所の二人はとんでもない奴と友達になったのかもしれないと改めて思っていた。

 

「とりあえずツカサを見せつけた事で俺達は大した事ない数合わせ、と相手に油断が生まれるだろう」

 

「ぶっちゃけダルさんのポリゴン2の相手は俺でもマジで辛いよ、きせきまで持ってるし」

 

「どくどくで相手を猛毒にさせて、じこさいせいで耐えてダウン待ちはな」

 

「オカリンは高火力ばかりだからやりやすいけど、ツカサ氏は不利なら即引いて有利対面にするみたいだから苦手なタイプだお常考」

 

「とりあえずこれ以後は決勝までツカサを温存させるぞ。ダル、二回戦はどっちが先鋒になるか決めようではないか」

 

そんな思惑もあっての先鋒だったらしく、誤算だったのは最後の壁になるだろうと予想していたジムリーダー達をサクッと倒した事ぐらいだった。

 

ちょっとした指導をツカサにしてもらった事で自信も付いており、そこからは一度も大将に回る事なく勝ち進んでいった。

 

 

休憩の合間に挟まれるアイドルのライブを見に行き、そこで先日助けた少女を見つけて仮面の怪しい男のまま応援してみたりしている。

 

「あー、可愛かった。姉さんテレビにアイドルとか映るとすぐチャンネル変えちゃうから新鮮だったな」

 

「寧ろフェイリスたんがアイドルなのでは?」

 

「フェイリスのアイドルはツカサだがな」

 

「意味が分からないよ」

 

 

 

そしてそのまま優勝決定戦まで勝ち進み……

 

「ゲンガー、シャドーボール!」

 

「リザードン、ドラゴンクロー! ……あー、もう! 邪魔!」

 

互いに二人目まで相討ちで終わり大将戦に突入し、白熱した試合展開に指示を出すのに邪魔な仮面を投げ捨てていた。

 

 

「ゲンガー!」

 

 

「次がラストの6体目。久々に見せてやろうじゃないか、リザードン!」

 

「グォウ!」

 

リザードンはシャドーボールを耐えて空中から襲い掛かり、ドラゴンクローでゲンガーを弾き飛ばし気絶させてからツカサの前に着地していた。

 

テンションが上がりこの後の事も考えずメガリングZのキーストーンに手を伸ばし

 

「我が心に応えよ、キーストーン! 進化を超えろ、メガシンカ!!」

 

仮面を投げ捨てた事で露わになった顔を見てカロスチャンピオンを知っている者達は驚愕、出番が終わり見学していた助けたアイドルの子もあの人に助けられたんですと言って大騒ぎになっていた。

 

 

「メガリザードンX!!」

 

「グルルァッ!!」

 

光の繭を吹き飛ばして現れたリザードンは体表が色違いのように黒くなり、口からは蒼い炎が溢れ出て翼の形状まで変わっている。

 

そんなメガシンカを生で見た者達は大興奮して歓声が上がり、その声で会場が揺れていた。

 

 

「め、メガリザードン……くっ、エレキブル! 先手必勝、かみなりパンチ!」

 

「メガリザードン、受け止めて投げ飛ばしてやれ! そのままじしんで決めろ!」

 

ツカサの指示に前を向いたまま頷きエレキブルのかみなりパンチをドラゴンクローで軽く受け止め、そのまま空高くに投げ飛ばしていた。

 

そしてその後を高速飛行で追い抜き、再びドラゴンクローでエレキブルを捕らえると落下の勢いと自らの加速で大地に叩きつけ一撃で戦闘不能に追い込んでいる。

 

 

「嘘だろ……俺のエレキブルが一撃……?」

 

 

「うん、勝った勝った」

 

軽く言っているが相手は今大会で注目されていたトレーナーでもあり、ジョウト・カントー統一リーグに挑むのも間近と言われるような存在だった。

 

少々天狗になっており、統一リーグで優勝したら他地方でも……と甘い考えをしていた所に現れたカロスのやべー奴こと、カロスチャンピオンの圧倒的な力で捩じ伏せられて心が折れていた。

 

「遂にやったなデンジャラスマァッドドクター! ……所で相手は強かったのか?」

 

「そこそこ強いって感じかな。一回戦のタケシ、カスミさん、エリカさんとの三連戦のインパクトが強すぎて」

 

「兎に角優勝だお!」

 

統一リーグでは話題のトレーナーもツカサにとっては普通扱いであり、自チームの優勝にもあまり興味がなかった。

 

友達の為にバトルをして優勝に導く事が大切な事であり、喜んでいる二人を見てニコニコしている。

 

 

そのまますぐに優勝チームの表彰式が行われ、賞金に賞品にトロフィーが授与されてオカベが高笑いをしながら掲げて見せつけていた。

 

「フゥーハハハハ!!」

 

「あぁ、オカリン凄い撮られてるお。こっちもこっちで参加賞に夢中で……このチームでまともなの僕しか居ないだろ常考」

 

「参加賞のモンスターボールセットと背中にあるボタンを押すとソーナンス!って音が出るソーナンス人形まで貰えるとか最高かよ。『ソーナンス! ソーナンス! ソソソーナンス! ソーナソソソーナンス!』あはは!」

 

半々くらいで写真や映像を撮られており、あまりに楽しそうに遊ぶ姿を見て玩具メーカーへ取り寄せの電話やメールが殺到する程だった。

 

そのままメディアのインタビューが行われたが、ツカサは面倒だとオカベに丸投げして後ろの方でソーナンス人形を弄り回していた。

 

………

……

 

ラボに帰る途中でお菓子やらジュースやらを大量に買い込み、三人で祝勝会を開いていた。

 

「あのミスターブラウンが照れながらツカサに握手とサインを求める姿は中々にレアだったな! あの小動物がツカサに懐いているのも意外だったが」

 

「ツカサ氏、いつの間に二人と仲良くなったん?」

 

「テンノウジさんはお裾分けの時にブラウン管の話を聞いてたら仲良くなって、ナエちゃんはピカチュウとニンフィアを見てくれるからかな」

 

 

「ツカサー!! 出て来るニャ!!」

 

しばらく三人でワイワイ楽しんでいたが、外からルミホの声が聞こえた瞬間ツカサは空のダンボールの中に身を投じていた。

 

ネットで知り合った自称引退した傭兵というHNの人物から教わったダンボール万能説を信じ、息を殺して部屋の隅で潜んでいる。

 

「キョウマ、ダルニャン、ツカサは何処に居るのか白状するのニャ?」

 

階段を駆け上って来て激しく扉を開け飛び込んで来たフェイリス状態のルミホは、紙を手にしたまま二人を見て圧をかけていた。

 

「な、何を慌てているのだフェイリスよ」

 

「そ、そうだお」

 

「ツカサが今日は帰らないかもって書き置きをしていったのニャ。だから連れて帰ってお仕置きしないといけないのニャー」

 

ニコニコしているが目は笑っておらず、隠しても無駄だという目で二人を見ていた。

 

「まぁ……フェイリスにはツカサが何処に居るのか一目で分かってるのニャ」

 

 

「オカリン、フェイリスたんちょっと怖いお」

 

「う、うむ。俺達に弟分が取られたと思っているのかもしれんな」

 

ソファに正座をした二人がヒソヒソ話し合っていた。

 

割と本気で奪い返しに来ており、二人の視線で隠れ場所を探ろうとしているが一向に見ようとしないので痺れを切らして自ら動き始めている。

 

 

「こんな時の為にフェイリスと同じボディソープ、シャンプー、コンディショナーを使わせていたのニャ」

 

ツカサが慌てて隠れた時の残り香をスンスンと嗅ぎ、ゆっくりと部屋の隅に積まれているダンボールの山へと歩を進めている。

 

「ニャ!?」

 

「うおっ!?」

 

「うわぁっ!?」

 

ルミホがダンボールに手をかけようとした瞬間、そのダンボールが動き奇妙で器用に迅速にラボの扉に向かって走り出していた。

 

三人が呆気に取られている間に脱出し、慌てて窓から見てみるとかなりの速さでダンボールが遠くに逃げて行く姿が見える。

 

「凄い……はっ! お、追うのニャ! あんな怪しいの間違いなく警察に捕まっちゃうニャ!」

 

「ダル!」

 

「オーキードーキー!」

 

 

一時間の鬼ごっこの末に捕獲され、戦友のダンボールはちょうどあったスーパーのご自由にのダンボールの中に置かれてしまっていた。

 

「うむ、いい運動になったな。それじゃあ、解散! フェイリスとツカサも帰っていいぞ」

 

「オカリン、僕達はツカサ氏の分まで楽しもう」

 

「さっ、帰るのニャ」

 

「はーい。汗掻いたし帰ったらお風呂入らないと……」

 

 

 

後ろ髪を引かれながら二人で帰宅して風呂に入り、夕食の時間までソファでダラダラ過ごしていた。

 

「姉さんが優勝したご褒美に飲み物を作ってくれるらしいけど、どうせならラボにお泊まりを許可してほしかったなぁ」

 

「そう言えばツカサはファーストキスって経験してるの? はい、飲み物。アイスティーしかなかったけどいいよね」

 

「ポケモンもカウントされるなら。うん、姉さんのアイスティー好きだからいいよ」

 

「ポケモンはなしだよ」

 

「その、ないです……」

 

尚、寝ている間にメイに奪われている模様。

 

「だよね」

 

「だが待って欲しい、ドレディアの蜜のお裾分けはちゅーでいいのでは?」

 

朝ご飯の準備をしているとドレディアがテテテと駆け寄ってきて袖をくいくいされたのでしゃがんで目を合わせると、お裾分けの花の蜜を口移しで渡してきたらしい。

 

あまりの美味しさに次からはこれにと容器を渡していたが、それからも定期的に同じようにお裾分けをしてもらっている。

 

 

「人間とだけよ」

 

「ないよ……。 俺もお付き合いをしてイチャついて、それを愛とか言ってちゅーとかしてみてぇなぁ……」

 

「……」

 

「? あ、あれ……何か、フラフラ……姉さ……」

 

………

……

 

「フェイリスは今頃捕食しているかもしれんな」

 

「フェイリスたん、本人は気づかれていないと思っているんだろうけどバレバレだったお」

 

ダルとオカベはツカサの残して行った料理を食べながら話し合っていた。

 

「ダルはいいのか?」

 

「僕、彼女出来たしフェイリスたんはアイドルのようなものだから平気だお」

 

「何ィ!? それは後で追求するとして、とりあえず明日ツカサが来たら暖かく出迎えるとするか」

 

「色々あってきっと来ないと思うけど」

 

 

 

そんな話をしてから大会の話で二人は盛り上がり、そのまま朝までラボで過ごしていた。

 

「ダル、今何時……うおっ!?」

 

「十時前だお……うわぁっ!?」

 

今にも雨が降り出しそうな天気の中、真っ青な顔のツカサがラボの中をうろうろしていてそれを見て二人して驚き寝ていたソファから転がり落ちている。

 

 

二人がしっかり目を覚ましたのを確認するとソファに座り、相談したい事があると頭をフラフラさせながら呟いていた。

 

「薬を盛られて目が覚めたら大変な事になっていた、と」

 

「はい」

 

「大人の階段を……」

 

「いや、それは意外とチキンなルミホ姉さんじゃ無理だから。朦朧とする意識の中で何か書かされて、何かを押したような気はしてたんだけど……」

 

「長い付き合いだからなのかフェイリスへの熱い信頼を感じるな」

 

「朝起きていきなり甘い声でダーリン呼び、クリアファイルに入った記入済みの婚姻届を見せられて真っ赤な顔でちゅーされた俺の身にもなって。誰かとテレビ電話を始めたからこっそり抜け出してラボに来たの」

 

ただルミホもそれを使う予定はなく、今後は異性としてちゃんと見る決意の為に書かせていただけだったりする。

 

現在はツカサ囲い込み計画に参加する為に父親へ連絡をして許可を貰い、アリア家へ連絡を取り話し合いをしていてラボに逃げたのに気づいているが泳がせている状態だった。

 

 

「フェイリスたん、オカリンに追い込まれて遂に実力行使に……」

 

「おう、オカベリンタロウちょっとツラ貸せや」

 

「いや、違うんです私はただ彼女に姉離れは近いなと言っただけでですね」

 

 

あーでもないこーでもないと話し合っている内に風が強くなり、雨も降り出して台風が近づいて来ているのが分かる。

 

「みんなで買い物してこようよ。済し崩しでラボに泊まりたい」

 

「確かに食材がなかったな。台風は危険だから早く行ってこよう」

 

「お菓子も買って三人で盛り上がるしかないだろ常考」

 

「おでんでも作ろうか? 沢山おでん種買って来て、うどんかそばもあれば出汁で美味しく食べられるし」

 

「あぁ、どんどんダメになる」

 

ワイワイ騒ぎながら傘を手に三人で買い物に向かった。

 

 

スーパーへ向かう途中に視線を感じ、何気なく空を見上げるとスキマから紫が見ているのが分かり笑顔で手を振りそのまま二人の後を追って行った。

 

紫は手を振り返しカロスに戻ったのを確認したら久々に連れて行こうと考え、まずはファンが集まる永遠亭へ向かわせて……と楽しそうに考えながらスキマを閉じている。

 

某風祝の娘は最近自称ツカサの妻として勧誘活動に勤しんでいるが、最近定住したツカサファンの外来人が面白いくらい引っ掛かっているようだった。

 

 

 

「お店の人が捨てられてた二つのポケモンの卵を持って困ってたから貰っちゃった。何か感謝されちゃったぜ」

 

「ポケモンの卵は手持ちを増やせない家庭だと困って平気で捨てる奴がいるからな」

 

ダルが商品を選んで来るまで二人きりになり、邪魔にならないよう店内に設置されている二人掛けの椅子に座って話をしている。

 

「都会ならではの問題だね」

 

「ああ。一部は研究所に引き取られ孵化されて旅立つ子供に与えられるが、それでも数が多すぎるのだ」

 

「ブリーダーも一緒に預かる所は卵が出来ないように分けて預かるのが基本になってるよ。卵が欲しい人は追加料金と幾つ必要なのかを書いて、トレーナーカードの提出が義務になってる。正規のブリーダーは卵にポケモン用のペンでサインと預かった人のトレーナーIDを入れるから、誰が捨てたか一発で分かるんだよ」

 

「そうか、お前はドクターでありブリーダーでもあるんだったな」

 

「この白衣で人間のドクターと勘違いされないようにこれ首から下げてるよ」

 

自由に動いてもいいようにリーグ側公認のフリーランスドクターという訳のわからない立ち位置になっており、社員証のようにしてもらったポケモンドクター証明証をネックストラップに付けたネームホルダーに入れて首から下げている。

 

「一部権力を有したドクターからは危険な医者だと非難されているようだが……誰もが尻込みをする所をガンガン進み、一人先を行くその姿は素晴らしいと俺は思うぞ。流石我がラボメンNo.X-0、デンジャラスドクター!」

 

「あはは」

 

 

 

ダルが買い物を終えて戻って来ると急いでラボに帰り、ツカサはエプロンを付けておでんを作り始めていた。

 

「二週間したら俺達はまたカップ麺や牛丼、ケバブの生活に戻るのか……」

 

「僕、最近ちょっと痩せたんだお。ツカサ氏のご飯をお昼に食べ始めてから」

 

「……少しは自炊してみるか」

 

「だお」

 

 




おまけ

シラカワ ツカサについて語るスレ part810

1: 転載禁止 ID:nyan2

ここは次期カロスチャンピオンであるシラカワ ツカサについて語るスレです。

次スレは>>950が建てる事。

無理な場合は950に指定された人が建てる事。


2: ID:nyan2

全盛期のツカサ伝説

・ポケモンを捕まえようとモンスターボールを投げると別のポケモンが自ら捕まりに来る、自ら空きのボールを持って来るポケモンも。

・ツカサにとっての急所は一撃必殺の当たり損ない。

・バトルフィールドに立つだけで相手トレーナーが泣いて謝った、心臓発作を起こすトレーナーも。

………
……


560: ID:mob1

カロスチャンピオンをタマムシの電気街で見たけど、肩に乗せたピカチュウとずっと何か喋ってたな。


561: ID:mob2

俺も見た。

店でフィギュアを見てたんだが隣からこれ欲しいけど置き場所がなぁって声がして、チラッと横目で見たらカロスチャンピオンだった。

何が欲しいのか見てみたらメイド服姿のアニメキャラのフィギュア……と思ったんだけど、それを買うとおまけで付いてくるメイド服姿のピカチュウフィギュアだけ欲しいって散々悩んで諦めてたわ。


562: ID:mob3

誰かそれプレゼントとしてカロスリーグに送ったら?

うちの子供が手紙と似顔絵を描いてカロスリーグに送ったんだけど、一週間後にリーグ経由でお礼の手紙が来てビックリしたよ。


563: ID:mob4

しかし最近はやらかさないからスレの進行緩やかだな。


564: ID:mob5

【速報】カロスチャンピオン、カントーの大会でチームを組み容赦なく優勝を掻っ攫う。


565: ID:mob4

噂をしてたらキター!!


566: ID:mob1

うpされた動画見たけど強すぎィ!


567: ID:mob4

対戦相手はカロスチャンピオンにも勝てるかもしれないとか雑誌に書かれてたトレーナーだな。

勝てるどころか手も足も出ないでフルボッコやんけ。


568: ID:mob1

一回戦でのピカチュウ強すぎワロタ。

どんな育て方したらあんな強いピカチュウになるんだ?


569: ID mob2

家から近いから急いで会場に向かったら、カロスチャンピオンが参加賞に夢中で遊んでる件。


570: ID mob1

インタビューしてた記者の一人がリーグ挑戦直前の対戦相手が可哀想じゃないかみたいな事を嫌味ったらしく言った途端、遊んでたカロスチャンピオンがボソリと

「あれでもかなり手加減してたんだけどなぁ……」

って不思議そうに呟いてドン引きさせてるわ。


571: ID mob4

これカロスは毎年恒例のチャリティバトル大会、地方別四天王+チャンピオンの最有力優勝地方じゃないか?

以下延々と続く……



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少しずつ変化して

投稿開始から一年、これからもひっそりとやっていきます。


あれからルミホがレインコートを着てラボに凸、おでんを食べてから風雨が強くなる前に帰ろうと無理矢理連れて帰られていた。

 

「明後日はサイホーンレースが開かれるのよ」

 

「へぇー。あ、俺の弟分の二代目赤いサイホーンは元気?」

 

「えっと……ちょっと凶暴すぎてみんな振り落としちゃうから誰も乗りこなせていないの」

 

「え、それじゃあレース出れないんじゃ?」

 

「ツカサ、お願いできない?」

 

「えぇ……おじさん、他にもサイホーン育ててなかった?」

 

「経営はしてるけど、カントーにいるのはあの子だけなの。雇っている騎手の人も絶対乗りたくないって……業界にも先代より凶暴って話が広まっちゃって誰も乗ってくれなくなっちゃったの」

 

「マジかよ」

 

「台風が過ぎてたら明日一緒に会いに行って、無理そうだったら諦めるから……あの子もサキさんの元に返そうってパパが言っててね」

 

「わかったよ」

 

 

そんな翌日は快晴、二人で二代目に会いに向かっていた。

 

ピカチュウはブラウン管工房の娘さんと遊ぶ約束をしていたらしく、行く前に寄って一日お願いしますと菓子折りと一緒にポケモンフードとおやつのポフレを渡していた。

 

 

タクシーで施設に到着すると施設の者にVIP待遇で迎えられ、そのまま二代目のいる部屋に案内されている。

 

危険だからとルミホと共に入るのを止められたが、大丈夫と一人中に入って行き弟分でもあるサイホーンに話しかけていた。

 

「グゥ」

 

「おー、久しぶり」

 

「グゥ!」

 

「で、何でお前は騎手の方を振り落とすの? あんなにいい子だったのに」

 

「グゥ……グ!」

 

「あっ……それなら明日、俺とレースに出たら以後は他の騎手の方も乗せる?」

 

「グゥ!」

 

「うし、男と男の約束だからな。とりあえず今日は母さんに教わった練習を軽くして明日に備えようか」

 

施設の者は今までギラギラした目で他者を寄せ付けなかった紅いサイホーンが頭を擦りつけて甘える姿に目を疑い、ツカサを背に乗せ意気揚々と訓練用のコースに向かって行く姿に開いた口が塞がらなかった。

 

ルミホはやっぱりと呟きながら後を追っていた。

 

 

レース用の器具を慣れた手付きで取り付けるとゴーグルとメットを鞄から取り出して装着、跨ると軽く走ろうと声を掛けてコースを軽く流し始めた。

 

何周かしていると施設の方がマイクで話しかけてきて、障害物を出すので破壊しても構わないから走ってほしいと言われている。

 

サイホーンの頭を撫でて全力で走るよう伝えると嬉しそうに身体を震わせ……

 

「よっと」

 

障害物の巨岩に突っ込んで行くサイホーンがぶつかる直前にその背から前方に高く飛び、砕かれ飛び散る岩の破片を足場にして飛び移りながら前方へと進んでスピードに乗ったサイホーンの背に再び乗っていた。

 

サキが現役時代に一度だけやって魅せたアクロバティックな動きを再現した事で見ていた者達はどよめいている。

 

………

……

 

「てか母さんと同じ発想をしていたらしいのが悔しい」

 

「やっぱり親子なんだね。ちゃんとサキさんにも教えてあげなきゃ」

 

「姉さんやめてくれよ……それとあいつ、スピードもパワーも先代よりあるから普段は加減させた方がいいよ。二代目紅い暴風よりも紅い暴君のがいい」

 

兄貴分のツカサと一緒に走れるのが嬉しかったらしく、全力で走ったから半端ないスピードとパワーを感じたらしい。

 

「それとスピードの世界で見た幻なのか、姉さんみたいな桃色の髪にメイド服を着た獣っぽい女性が見えたんだけど」

 

「いないよ? え、そういうのが好みなの?」

 

「いや、そうじゃなくてね」

 

「帰ったら着てあげようか? お店のとは別にあるんだけど」

 

「是非お願いします」

 

改造・正規問わずメイド服が好きらしく、まさかの提案に食い気味にお願いしていた。

 

この方面で攻めるのがベストかとルミホは理解し、残り少ない期間でどうにか異性として見てもらい一歩踏み込んだ関係になる為にガンガン行く事を決めている。

 

 

「じゃあ、明日のレース参加のサインをして登録とかはお任せして帰ろっか。今日は私が夕飯作るからね」

 

「はーい」

 

 

来賓室で参加の為のサインや、保証についての項目をよく読んでしっかりサインをし捺印していた。

 

流石に本名だとまずいからと選手名を決めて登録する事になり……

 

「うーん、紅いサイホーン……あ、リオ・ノーレッジにしよう」

 

紅い館でよく鼻血を出して倒れていた魔女を思い出し、とっさにその名前を拝借していた。

 

 

「じゃあ、それで決まりね」

 

「顔は隠せるから安心」

 

その後の事は全てお任せして、タクシーを呼んでもらって二人は帰って行った。

 

 

 

電気街に着きタクシーから降りると即座にルミホが腕を組んでぴったりとくっつき、ツカサも慣れたようでおしゃべりをしながらラボの方へ向かい始めた。

 

「でもダーリン呼びをやめてくれてよかったよ。姉さんには呼び捨てにされないと違和感が凄いから」

 

「呼び捨てのが特別感があるからねー。それよりツカサ、最近その黒髪根元から少しずつ紫がかってきてない?」

 

「えっ、嘘。小さい頃の母さん似の自慢の黒髪だったのに……」

 

パッと見は分からないが髪色が何故か少しずつ濃い紫色に変わりつつあり、父親似になり始めていた。

 

 

「え、あっ、ほら! シュウさんに似始めたって思えば!」

 

「父さんか……あの人は何考えてるか分からないからなぁ。どの分野で争っても勝てる気がしない壁すぎる」

 

「いつもニコニコして可愛がってくれたイメージしかないよ?」

 

「あれは裏のある笑顔っていうか……俺に対してはあらゆる面で強くなる事を望まれてる感じがしてる。独特なゲームの筐体みたいなのでロボット倒すシミュレーションは楽しかったけど、必殺技が音声認識だったのが玉に瑕だったなぁ」

 

「一時期忙しいからって会えなかった時の事?」

 

「うん。使ってたのが蒼くて正義の味方っていうか恐ろしい魔神?みたいなロボットだったのがちょっと残念だったよ。確か武装機甲士って名前だったかな。ガワだけで使わせてもらえなかったけど魔装機神はヒーローっぽかったし、次元烈風は禍々しかった」

 

取れたデータを元にフリーザの兄の会社がゲーム筐体を開発し、誰でもあそべるマイルドな仕様に変更して最終調整を行っている最中だったりする。

 

 

「ツカサはロボットも好きだったんだ。ポケモンにばかり詳しいから興味ないんだと思ってた」

 

「それでもポケモンのが好きだけどね。姉さんのお店で譲ってもらったイワンコは自分のタイミングで進化したいからって、かわらずのいしを首輪のアクセサリにしてほしいって言ってた」

 

ディアンシーのお陰で身についた加工技術でかわらずのいしをアクセサリにし、邪魔にならないようにバンダナに付けて首に巻いてあげていた。

 

「あ、だから最近自慢気に首に巻かれたバンダナ見せに来るんだ」

 

「昼のルガルガンは青、夜のルガルガンは赤、イワンコには緑。ニャースは割烹着に三角巾が気に入ってるみたいでねー」

 

ルガルガン昼夜は進化前からこれでもかと可愛がられていたからか、ボディガードのように昼と夜で分担して側にいたりする。

 

 

「え? ニャースが三角巾と割烹着?」

 

「うん。恋人を早く作れとかちょっと口喧しいけど、毎日掃除したり洗濯したりしてる」

 

サーナイトを筆頭にお世話をするポケモンが増え、ツカサの恋愛への興味がまた減り始めてAZに早く子を見守らせろとせっつかれている。

 

「あ、そっか。ツカサはポケモンの言葉が分かるって設定だっけ」

 

「いや、リアルガチだからね」

 

「私みたいなキャラ付けかなって。ほら最近のツカサのネット上での呼び名がカロスのやべー奴だから」

 

「えぇ……」

 

「現実のツカサもだけど、アプリで実装されたツカサがおかしい性能してるから仕方ないよ。新チャンピオン就任記念の全チャンピオンピックアップとかいやらしいガチャガチャだったの」

 

「あ、されたんだ。全く興味なくて起動してないから知らなかった」

 

毎日リアルなポケモンと楽しく過ごしているから興味がなく、ルミホに教えられて初めて知ったようだった。

 

「苦手なポケモンのタイプが一切なくて、寧ろ全タイプ相性最高だからサポート枠に確定で入るの。しかも怪我の治療に育成促進、懐き度上昇率三倍でメガシンカとゲッコウガ限定で変化させたりも出来るから」

 

「それは強いの?」

 

「基本的に今までのチャンピオンは絵が特別でただ強いだけだから替えは効いたんだけどね。でもツカサだけは替えが効かないブッ壊れ性能だから」

 

「へー。俺はリアルのポケモンのが触れるし興味ないわ」

 

「まぁ、ゲームだとトレーナーの才能関係ないからね」

 

………

……

 

翌日の夕方、少し豪華なホテルでサイホーンレース優勝の祝勝会が開かれていた。

 

「……あれ? 何かバッサリカットされたような気が」

 

「凄く格好良かったよ? 私に『勝利の栄光を君に!』って言ってくれたのと、始まってすぐの妨害に『当たらなければどうという事はない!』って避けてたのとか」

 

基礎スペックがツカサもサイホーンも高すぎて並のレーサーでは相手にならず、普通に走らせるだけで誰も彼もを置き去りにして勝てる程だった。

 

二代目を乗りこなせる者が現れた事と、先日のバトル大会にいた仮面を付けたコスプレレーサーがバレないと思って偽名で参加している事に皆が戸惑っていたが。

 

「まさかすぐに仕掛けてくると思わなかったよ。弟分が本気出してくれたから以後は誰も付いて来てなかったけど」

 

正体はバレバレだが赤いサイホーンを乗りこなす姿から、アキハの赤い流星と色々混ざった二つ名が付けられている。

 

 

久々の快勝で大盛り上がりの中、ジュースだと思って渡されたカクテルを飲んだツカサがべろんべろんになりルミホと共に用意された部屋に帰って行った。

 

 

そして翌日……

 

「キョウマ、相談があるんだけど」

 

ルミホ宅に帰るとすぐにラボを訪れて開口一番にそう告げてソファに座っている。

 

ピカチュウ達はまだ寝ていたので置いて来たらしく、何かあった時用に持て余しているレックウザだけ連れて来ていた。

 

 

「ふむ、話してみるがいい」

 

「ジュースだと思って飲んだのがお酒で、酔って起きたらベッドで全裸で寝てたんだ」

 

「酒乱というやつか?」

 

「問題は姉さんも同じような姿で隣に寝てて、起きて目が合ったらニッコリしながら抱きついて来てお腹を撫でてた事なの」

 

「朝からそんな重く怖い話を聞かされても困るんだが?」

 

「何やったのか怖くて聞けないし、今まで見た事ない艶やかな笑みを浮かべてたしで」

 

「そりゃナニをしたんだろう」

 

「くっ、他人事だと思って! ツカサ呼びがダーリンになって、やっとツカサ呼びに戻ったと思ったら今度はあなたって呼び方されてるんだよ! 正妻はアリアに譲るけどって意味深な発言も不安すぎてカロスに帰るのも怖い」

 

ツカサの前ではほんわかゆるーい見た目と動きのアリアだが、父譲りの黒幕体質でかなり頭が切れる娘だったりする。

 

複数の嫁を娶る事が出来るようになりそうなのもアリア一家が一丸となって動いているからで、今の所カントー以外のチャンピオン達とルミホが協力している。

 

ヒカリが余計な気を利かせてシロナを誘い、ルミホがエリカを勧誘、メイド三人組がセレナに話を通して知らない間に包囲網が形成されていた。

 

 

「まぁ、なんだ……生きろ」

 

「死ぬ時はポケモンに囲まれて死にたいから生きるよ。だけど俺の知らない所でヤバい事が起きてる気がするんだよなぁ……」

 

「とりあえず俺は祝福する事しか出来ないが」

 

「姉さん家に帰るの怖いなぁ……実はドッキリの可能性もあるんじゃないかと疑ってる」

 

「泊めてやりたいが間違いなく迎えに来るぞ。最早フェイリスは姉としてではなく妻か嫁として」

 

「えぇぇ………あ、でもよく考えたら姉さんならいいのか? ポケモンばかりに構うのも理解してくれてるし、出来るだけ束縛しないし」

 

特訓としてゴム弾を全弾掴み取らされた男も恋や愛は理解出来ず弱く、姉として大好きなルミホならいいんじゃないかと思い始めていた。

 

 

尚、師匠方が素手で打ち出したゴム弾は実弾よりも恐ろしい破壊力を有していて何度も死にかけている。

 

慣れ始めて掴めるようになると速さと数が増す悪循環に泣きそうになりながら必死に掴めるようになり、今じゃ実弾も遅いと思え掴めるくらいになっているが愛の鞭が半端ない方々だった。

 

 

「おい、何か洗脳されてるみたいだぞ」

 

「ウググ……やっぱり男女の恋とか愛とか分からないよ。ゲームなら分かるんだけど」

 

「一度聞いてみたかったんだが、ツカサは主に何を考えて毎日生活しているんだ? お前くらいの歳だと普通はモテたいとか考えるだろう?」

 

「80%くらいはポケモンの事。あ、可愛いなって思ったアイドルもいるから10%は女の子の事で残りが衣食住かも」

 

「あの大会の時にツカサが怪しい見た目のまま応援していたアイドルだな」

 

「キョウマが付けろって言ったんだろ……とりあえず助けた縁もあるし、あの子にはがんばってもらいたいよ」

 

変な仮面で応援をして目立ち決勝で仮面を脱ぎ捨てた事で、あまり女性に興味を示さないツカサが応援をしていたアイドルとして注目を集めていたりする。

 

 

「まぁ、がんばらざるをえない状況にはなっているだろうな」

 

「アイドルって大変だろうしね」

 

「いや、それはお前が……まぁ、いいか」

 

「あ、それと今日のお昼はチキン……じゃないわ、カツ……え?」

 

「どうした急に」

 

「いや、何か急に言葉が出なくなって。とりあえずパン粉とかも買って来たから、お米研いでね」

 

………

……

 

その日の午後……

 

「まだ時間あったから幼女パイセンに会いに行ったらまた泣かれて、カタギリさん達にまた捕まったでござる」

 

「警察からいきなり携帯にオカベリンタロウさんですか?ってかかってきた怖さを教えてやりたい」

 

迎えに来てくれそうな人物の番号を教えたらしく、即迎えに来てくれて解放されていた。

 

「姉さんに電話したらやばいでしょ」

 

「ああ、いい判断だった。フェイリスは間違いなく乗り込んで大惨事になっていたな」

 

「でしょ?」

 

「さっき探しにラボに来ていたぞ。三十分くらい惚気に惚気ていたから、帰りを待つのも妻の役目なのではないか?とアドバイスをしたら急いで帰って行ったが」

 

「ピカチュウ達が何とかしてくれていると信じてる」

 

「まぁ、がんばれ。それでこの後はどうするんだ?」

 

「幼女パイセンのとこに行くと捕まるからラボに戻るよ」

 

もう懲りたらしく今日は行かないようだった。

 

「まだ出会って一ヶ月も経っていないのに、もう何年も一緒に居るかのような馴染み具合だな。フーディン本当にありがとうございます」

 

「進化出来てフーディンも喜んでたから。それより幼女パイセンに会う前に案内した同年代の女の子からあかいいと貰っちゃったぜ」

 

「確か持たせていると異性のポケモンにメロメロにされた時に相手もメロメロにする不思議アイテムだったか」

 

「ブリーダーの間で最近話題のアイテムなんだ。道案内しながら読モやってたって話を聞いたり、女性のプロデューサーにスカウトされてアイドルになる為にタマムシまで来たんだってさ」

 

「ふむ、またアイドルか。ツカサはスキャンダル……を寧ろ望まれているのか。性欲がポケモン愛に変わる男と新たな呼び名が付いているのが不憫だが」

 

「聞き捨てならない呼び名が聞こえた気がする……とりあえずあかいいともくれたし、サクマさんも応援しようと思うわ」

 

カントーで二人のアイドルを応援するようになり、今後カロスの番組の収録でちょくちょく名前を出してファンを公言していく模様。

 

「とりあえず残ったカツで作ったカツサンドをおやつ代わりにラボで新しいガジェットを考案しようではないか」

 

「はーい」

 

………

……

 

遂にカロスに帰る日になり、また来るから見送り不要と前日に挨拶周りをした時に皆に告げていた。

 

ルミホとはまた近いうちに来るからと店の前まで送ってから別れ、そのまま空港行きの電車に乗り継ぎながら向かって行った。

 

「空港着いたら乗せるように言われたってやたら豪華な自家用機に案内されるとかVIP扱いに不安を覚えるわ」

 

「ピカピカ」

 

「そわそわしちゃう」

 

ルミホから連絡を受けていたアリアパパが手を回していたらしい。

 

次からはアリア家のメイド三人のうちの誰かが同行する手筈にされており、毎度休暇を貰ったという体で現地の空港や港で合流する事になる。

 

それから到着するまで超VIP扱いで落ち着かず、更に空港から自宅まで送って貰っていた。

 

 

 

そして久々のカロスの自宅では……

 

「一週間くらい前に凄いプレッシャーを感じるポケモン三体が森に現れたのよ。AZさんは敵意がないから放っておけっていうから接触はしてないわ」

 

「それならセレナも一緒に見に行く? 声掛ければみんな付いてくるだろうし」

 

ツカサは帰ってすぐにピカチュウ達を自由にし、セレナは部屋で上着を受け取りながら居ない間に起きた出来事を話していた。

 

割烹着と三角巾のニャースは洗濯物を籠に入れており、不在の間にすっかり家事になれている。

 

 

「夕飯の仕込みをしたいから遠慮するわ」

 

「ニャーが味の保証はするのニャ」

 

「楽しみだわ。じゃあ、ちょっと見てくるよ」

 

「いってらっしゃい」

 

「夕飯までには帰ってくるのニャー!」

 

 

 

 

 

 




誰も選ばないでふらっと消えるフラグを潰していくスタイル。

この世界観的に母方の先祖にケールやカリフラ的な人がいるのかもしれない。


三つの里にハマって牧場経営してました。

FGOはまだ剣豪未プレイだけど宝蔵院欲しくてガチャだけ回して、50連ですまないさん1、エリちゃん1、カーミラ1、パライソ1、インフェルノ5、宝蔵院3って結果で終わった。

ピックアップ2は柳生欲しくて十一月分の呼符5枚だけ回したら頼光来て宝具2になったけど、やっぱり持ってない酒呑が出て欲しかったなぁ。

アンリマユ宝具6になりました。


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カロスでの日常

帰って来てすぐに贈られてきたラッキー、ハピナス、タブンネと仲良くなる為にツカサは大人しくなっていた。

 

幽霊少女は結局カロスまで付いてきてしまいツカサを中心に活動範囲が広がり、ツカサの不思議な森を毎日見て回っている。

 

「複合施設の完成は来年春くらいだからなぁ……」

 

「私も勉強すればツカサの助手になれる?」

 

「がんばればセレナが18になるくらいにはなれるかな。どっちの助手になりたいのかで教える事が変わるけど」

 

「出来るならポケモンドクターとしてのツカサの助手になりたい」

 

「じゃあ、これから一緒にがんばろうか。筆記はジョーイさん一族にお願いするけど」

 

「ツカサは興味が湧くと嘘のように有能になるから安心ニャ」

 

二人の話を聞いていたニャースは洗濯物を畳みながらつぶやいていた。

 

「照れるわ」

 

「留守の間に八雲紫が来てセレナと仲良しになっていたニャ」

 

「息が止まるくらい綺麗な人で緊張しちゃった。スタイルも良くて、物腰も穏やかで……憧れちゃうな」

 

「セレナはそのままでいいのよ。それとあいつの腕力半端ないから気をつけてね。俺は頭が身体とさよならするかと思ったから」

 

ラッキースケベから紫が徐々に赤面、ノーモーションビンタで錐揉み回転して死線を彷徨ったりもしていたらしい。

 

「あんなスラッとした腕で?」

 

「うん。紫じゃないけど他にも日傘でボッコボコにされたりもしたよ。そのまま二、三日監禁されたけどドレディアのお陰で花の話題で盛り上がって仲良くなったり……いや、何であいつ大ピンチに助けに来なかったの? 」

 

上手く立ち回ったからどうにかなったが下手したら大変な事になる所だった。

 

怪我も癒えて解放された日にはグラシデアの花の種を分けたり、向日葵の種を戴いたりと花関連で友人と呼べる仲になっているようだが。

 

「あ、そうだ。パパとママが何かレシピを貰えないかって言ってたよ」

 

「看板メニューにしたいって言ってたんだっけ……ピカチュウも大好きな自家製ケチャップを使ったケチャップライスのオムライスとかはどうだろう」

 

「ピカ!?」

 

ケチャップライスという単語が聞こえたらしくピカチュウが部屋に飛び込んで来て、ツカサの周りをグルグル回り始めた。

 

「最近作ってあげてないから反応が半端ないな」

 

………

……

 

「映画の撮影終わって試写会も終わったけど、アンケートでラストの二人の雰囲気が良かったのにキスシーンがないのに違和感を覚える的なコメントばっかあって困る」

 

ツカサは自分のベッドで寝そべりながら何かを読んでいるセレナに話しかけていた。

 

「怪盗になって悪の組織と手を組んだと思わせておいて、実は正義の味方側からの依頼で潜入していただけって定番だけど最高」

 

「……セレナは語る時だけ別人みたいで怖い」

 

「再会したルカリオと現パートナーのゲッコウガと共に新主人公をサポートして、ボスと戦わせる為に悪の組織の四天王を一人で引き受けるシーンとかもう……ファンでよかったなぁ」

 

「あ、これ一般公開されたら毎週見に行くパターンだ。俺は行かないけど」

 

エピソード2では自身の出番は大幅に削る方針と聞いてホッとしていた。

 

尚、エピソード2は日常でほんの少ししかツカサは出ずファンからは黒歴史扱いされ大転け。

 

エピソード3でW主人公としてエピソード1以上の出番が与えられる事になる模様。

 

 

「一般公開されたら一緒に観に行こうね?」

 

「えっ」

 

「もう前売り券沢山買ったの」

 

ほら、と封筒を取り出すと10枚以上の前売り券を取り出してみせていた。

 

「やっぱ好きなんすね。てか買いすぎじゃない?」

 

「毎日行きたいくらいだから」

 

「Oh……それより早朝にカントーで貰った卵からヒトカゲ♀とケロマツ♂が生まれたんだけどさ」

 

「あ、孵ったの?」

 

「何か体色薄いなーって思いながら図鑑弄ってたら、色違いで図鑑に載ってたんだよ」

 

「かなり凄いんだろうけど、伝説とか幻のポケモン達を見てると素直に驚けないのだけれど」

 

伝説幻のバーゲンセールのような森のせいでセレナの目は肥え、色違いくらいでは驚かなくなっていた。

 

おやつの時間にはディアンシーが入り浸り、フーパがドーナツを食べ、マギアナが飲み物を運んで来てくれたりもしている。

 

一生で一体だけでも生で見られたら幸運だと言われている面々を毎日好きなだけ見られ、話しかければ応えてくれるとんでもない環境だった。

 

「色違いのレックウザは?」

 

「レックウザなだけでも驚いたのに更に色違いだったから驚いたわよ。色違いの伝説のポケモンなんて誰も見た事ないんじゃないかしら?」

 

「だよなぁ。とりあえずヒトカゲとケロマツはリザードンとゲッコウガに任せたから、すぐに進化するんじゃないかな」

 

「何故かツカサと一緒に育てると強く育つし、すぐ進化するのよね……」

 

歩くしあわせタマゴ状態であり、ポケルスも過ごしやすいツカサ宅に棲みついていて入るだけでどのポケモンにも感染するようになっている。

 

ツカサの料理にも成長促進の作用があるようでブリーダーとしてもトップクラスの仲間入りは確定的に明らかだった。

 

「そう? ニャースは進化したくないって言うから、かわらずのいしを加工してポケモン用ブレスレットの一部にして渡したんだよなー」

 

「だって私のゼニガメ、たった二日でカメックスになったのよ? しかもツカサにばかり懐いて

るし……湖に行ったら嬉しそうに私に近づいてきたのに、別方向からツカサが来たら方向転換してたのは笑っちゃったけど」

 

「勢いよく来たから俺は全身ずぶ濡れだったんだけど?」

 

「ツカサに行ってくれてよかった。透けちゃったら恥ずかしいし……」

 

「……え?」

 

恥ずかしそうに身体を隠すセレナを見たツカサは訳が分からなくなっていた。

 

「だって下着が透けちゃうし……」

 

「何だろう、毎晩下着姿で勝手にベッドに入り込んで見せつけて来るのにこの反応……モジモジしてるのは可愛いけど納得いかない」

 

「外はダメなの」

 

「あぁ、それなら仕方ないね……いや、家でもダメだよ。危うく納得しかけたわ」

 

「最近は見つかるとニャースがお尻叩いて怒るから大変なの」

 

ニャースはツカサとセレナの保護者のようになっていた。

 

お風呂上がりに下着姿で彷徨くセレナを叱ったり、トレーニング終わりで上半身裸でシャワーに向かうツカサを叱ったりと毎日大変な思いをしている。

 

「俺もトレーニング終わりに上半身裸で風呂場に向かうと怒られるよ。何度も死にかけて蘇ってを繰り返してから身体がやけに軽くてトレーニングが楽しいんだよね。それで汗だくになるから上半身裸になるのは仕方ないのに」

 

ニンフィア、ピカ子、セレナに幽霊少女はトレーニング中のツカサを見守り、上半身裸になるのを毎日今か今かと待っているようだった。

 

お師匠様方も心停止からの蘇生でやたら動きがよくなるツカサの特性に気がつき、物理的に叩いて伸ばすを実践して今に至る。

 

「寧ろ最初から上半身裸のがいいと思うの。シャツが汗で濡れちゃうのを防げて、私達も嬉しいし」

 

「それか亀の爺ちゃんから貰った胴着かなぁ。山吹色だからちょっと派手だけど……兄弟子の一人が凄く似合ってるから俺も似合うようになりたいわ」

 

兄弟子はマサラタウン近くの山で家族と暮らして野菜を作っている模様。

 

その兄弟子の息子の一人はオーキド研究所で働いており、いつか一学者として独立する為に日々がんばっているらしい。

 

ツカサはそれを知らずに既に仲良くしており、まだ明らかになっていない一部のポケモンの習性を熱く語り合ったりと年の離れた友人のような関係を築いている。

 

 

「試しに明日着てトレーニングしてみたら?」

 

「そうしようかな」

 

「あの人差し指だけで尖った岩の上に倒立するのは見ててハラハラするのよね……」

 

「色々コントロールをするのにちょうどいいから仕方ない。集中力途切れると顔面にガン!ってなる恐怖とも戦えるから一石二鳥……あ、今日は伝説幻ポケモン大集合の日じゃないか」

 

 

慌てて鞄を肩にかけてボイスレコーダーを手に取り、急いで森へと向かって行った。

 

 

アローラに妙な気配を感じるから自分の代わりをと言って色違いのジガルデを残して旅立った

初代ジガルデ。

 

性格が女の子っぽい二代目ジガルデにツカサは頭に浮かんだきよひーというニックネームを付け、その頭によく乗せてもらって森を徘徊していたりする。

 

旅立ったジガルデの予備のような扱いで今迄日の目を見られずに居たからか構いまくってくるツカサに懐き、会いに来ない日は10%の姿でおはようからおやすみまでを見守ってくれていた。

 

今も家から飛び出して来たツカサを見て偶然を装って併走し、一緒に集合場所の広場へと向かっている。

 

 

「晩御飯はツカサが好きって言ってくれたハンバーグだからねー! ……何かこれ夫婦っぽい気がする」

 

「セレナは家事をもっと出来るようになるのニャ」

 

仕方ないなと見送りに付いてきたセレナは大きな声で叫び、洗濯物を干していたニャースは鋭い指摘をしていた。

 

………

……

 

ドーナツや買い食いを報酬にフーパの力を借りて何度かカントーを訪れ、安定してから未来ガジェット研究所にも普通に行って驚かれたりしていた。

 

 

久々にAZと森に木の実畑を増やしながら色々と語っている。

 

「婆ちゃんに見てもらったら、幽霊少女がいつの間にか守護霊になって元々の守護霊と交代してるって衝撃的な事を言われたんだよ。パンツ見えてヒンヤリするくらいしか役に立ってないから困る」

 

「幽霊とは子作り出来ないだろう。早く子を作りそれを私達に見守らせてほしいのだがな」

 

「相手が居ないんだから仕方ないね」

 

「お前が一ヶ月近く離れていた時に訪ねて来たフウロとカミツレという女性のどちらかはどうなんだ? 特に前者は居ないとセレナに伝えられてガッカリしていたから脈はあると思うが」

 

「えっ、嘘、マジで?」

 

「ああ」

 

「メールはするけどそんな気配微塵もなかったけどなぁ」

 

「チャンピオンになったから、とかではないのは確かだ。セレナは何かを感じたのか連絡先を交換していたが」

 

「えぇ……」

 

毎日セレナからツカサ情報が皆に届くようになっており、こっそり作った専用のサイトにはトレーニング中の写真やイーブイズに群がられている写真等をアップしている。

 

 

「今度来た時に口説いてみたらどうだ? どんな女の子がタイプなんだろうって呟いていたから間違いなく行けると思うが」

 

「どんな子がタイプかって? 目の前におるじゃん」

 

付いてきていたドレディアが目の前におり、話を逸らす為に好みのタイプにしていた。

 

「ポケモンじゃなくてだな」

 

「シスタモン・ノワール」

 

「最近ツカサの中で再ブームが来たデジモンでもなくてだな」

 

「好きな女の子のタイプとか分からんわ。好きになった人がタイプでよくない?」

 

「正論だがお前が言うと腹が立つな」

 

「おっぱいが大きい子が好きとか言うよりはマシだろうよ。……あ、ポケモンが好きな女の子がタイプってのは?」

 

「それは全員に当てはまる」

 

「ならもう全員嫁でいいよね」

 

面倒になったらしく投げやりに言い放って休憩を終え、ドレディアと共に木の実を植え始めた。

 

「複数人を娶るのには後ろ盾に素晴らしい功績と強い立場が必要……いや、お前は全て持っているな」

 

「そう言えば最近グランデュークになったよ。それと形式的なものでいいから学園やらに所属しておいてほしいって」

 

父親譲りの頭の出来で幼い頃からマンツーマンのレッスンで大学卒業レベルの知識は有しており、今はそれを全てポケモンに使って幸せに暮らしていた。

 

「カロスに縛り付けたいのだろうな。無条件で大学にも入れるぞ」

 

「お断りするけどね。学園生活でちょっと青春してみたかったけど」

 

「ふっ」

 

「鼻で笑うなよ。綺麗な先輩、仲良しな同級生、可愛い後輩……はゲームだけか。何よりポケモンに囲まれた今の方が幸せだし」

 

 

 

シラヌイが当たり前のように木の実を植えるのを手伝い、遊びに来ていたわたぼうがよく育つように祝福をし、ツカサに慣れたセレビィがふよふよ浮かびながら興味深そうに見ていた。

 

最近増えた黄色く大きな鳥のような生き物はウロウロしており、終わったらツカサを背に乗せて走り回るのを楽しみにしている。

 

「ポケモンじゃないし、タイジュのモンスターでもない不思議な鳥のような馬のような……脚めっちゃ速くて可愛いからいっか」

 

「荷台を付ければ引いてくれるのはありがたい。誰も食べなかった木の実は定期的に回収しないといけないからな」

 

「その木の実を俺がパイにしたりジャムにしたりするからねー。兄弟子二人に送ったら喜ばれたし、そのうち一人はその日の晩に直接礼を言いに来たし。いきなり部屋に現れたから驚いたなぁ」

 

「とりあえずさっさと木の実の回収をして飯にしよう」

 

「今朝一斉にピチューがピカチュウに進化したし、回収しなくてもいいんじゃない? 食べる量増えるし」

 

「ピュイ!」

 

「こいつも色んな木の実を摘み食いしてるしな」

 

コスモッグは食べ物が豊富な森をふわふわ浮かんで行ったり来たりして、木の実を摘み食いをして日々を過ごしている。

 

「あぁ、だから今も増やしているのか。ところであのツカサの好きな桜餅のような生き物はなんだ?」

 

「いや、ちょっと向こうのファームから迷い込んで来てね」

 

………

……

 

裏庭の木にハンモックを吊るしてツカサはスマホを片手にスヤスヤ寝ており、ニンフィアが腹の上で丸くなって一緒に寝ている。

 

隅に出来た地下へ続く通路はミミッキュ達が出入りし、ミツハニーが花壇で花の蜜を集めていた。

 

イーブイズも遊び疲れたのか芝生の上で転がって寝ている。

 

「……カタギリさん、アドレスやら交換したら休みの日にめっちゃ連絡してくるな」

 

振動で起きたらしくスマホを確認しながら呟いていた。

 

 

他にもマオやククイ、グリーン等からメッセージが届いており寝ぼけ眼で返している。

 

全員に返し終えるとポケットにしまってまた眠りにつき、しばらくするとエプロンを付けたカイリキーがタオルケットを掛けにきていた。

 

サーナイトが脚立に乗ったニャースと談笑しながら洗濯物を干し、森の方ではアローラで捕獲したカラカラ三体が進化したガラガラ(アローラの姿)がダンスをする姿が異様な儀式のように見える。

 

そんな光景を二階からセレナが撮影しており、それをアリアが作ったグループにアップしていた。

 

「私だけだと逃げちゃうミツハニーとかミミッキュもツカサが居るだけで逃げないのよね……野生のビークインは蜜のお裾分けにくるし、最近見つけてきたミルタンクも毎朝ミルクを搾ってもらいにくるし」

 

他にも元ピチュー軍団が遊びに来てイーブイズとはしゃぎ回ったり、ディアンシーが凄い速さで地下に続く穴から出て来ておやつを食べに来たりとポケモン好きにはたまらない裏庭になっている。

 

引退して付いてきた先代のアローラの守護神達も頻繁に現れ、ツカサとのポケモンバトルを楽しんでいた。

 

「さてと、この写真はサイトのトップにして……」

 

 

 

それから二週間程が経過し……

 

「ラプラスが背中に乗せてた異世界から来た女の子も無事に返せたし……話に聞いたイナヅマちゃんの世界が怖すぎる」

 

「ツカサなら上手いこと言い包めて仲間にしちゃいそうよね」

 

異世界では魔王や大魔王すら従え、また別の異世界ではモンスターを育てて二つの大陸で一番のブリーダーになったりと、人ならざるモノに好かれやすいツカサならありえない話ではなかった。

 

「話に聞いたようなリアルな女性の姿をしてるのはちょっと……」

 

「だよね」

 

「さて、今日はとりあえずログハウスに匿ってるグラジオとタイプ:ヌルの件を……」

 

 

 

 




色んな人が来ては還す為に奮闘する日々。

また未解禁な色ジガルデをせめてこの作品の中だけでも。


USMは終盤以外ほぼSMの焼き直しなのは正直酷い。
手抜きマイチェンで二本発売は擁護出来ねーわ。

デジモンは前作プレイ済みで限定予約したし、シスタモン育成出来るようになるから楽しみ。


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再び訪れた世界で

「絶対おかしいのに慣れて普通になってるんだよなぁ」

 

「んん……ふぁ」

 

早朝、当たり前のように一緒に寝ているセレナを見ながら呟いていた。

 

ペアセットでしか販売されていなかったピカチュウ柄のパジャマを着ており、腕枕で寄り添って寝ている。

 

ポケモン達も一緒に寝るからとベッドもキングサイズのものに買い替えていたらしく、それからセレナも一緒に寝るようになっていた。

 

「マサラタウンにいた頃の俺に現在の事を話したら間違いなく『は? 金髪美少女と同衾? 妄想乙。本当なら死ねば?』ってなるだろうなぁ……」

 

「ピカ……チュ!」

 

あくびと共に目を擦りながら起きたピカチュウが伸びをしてからイーブイズを優しく起こして回り、なかなか起きないニンフィアにゲシゲシと蹴りを入れて起こすと皆を連れて顔を洗いに向かって行った。

 

「セレナは夜遅くまで勉強してたから起きれないか……この子はもう完全に俺の家で暮らしてるんだよな。まぁ、おかえりなさいって言ってくれる相手がいるのは嬉しいからいいけど」

 

「んん……」

 

『あったかーい』

 

「ぼたんさんが迎えに来たのに守護霊になっちゃってるから無理だって言われたのが背中でスリスリしてる」

 

守護霊少女はツカサ限定の守護霊で死後は共に閻魔の裁きを受けに向かう手筈になっている。

 

 

 

枕にどうにかセレナの頭を乗せてから胴着に着替え、森の方に向かうと身体をほぐしてから走り始めていた。

 

そのままトレーニングを終えてシャワーを浴び、私服に着替えてから朝食を作っている。

 

「ツカサはいつも朝早いのニャ」

 

「ニャースも早いでしょ」

 

「ニャーは早寝早起きだから平気ニャ!」

 

「助かるよ。……あ、そうだった。明日から少しの間だけ紫のとこに行ってくるから、その間はセレナの面倒を見てあげてね」

 

どうしても捕まえたいポケモンが居たのを思い出し、数日前に遊びに来た紫にお願いをして互いの利害が一致したのもあり再び幻想郷へと向かう事になっていた。

 

ツカサは幻想郷のポケモンを捕まえたい、紫は少々禁断症状が出始めた一部の者を落ち着かせたいとすぐに決まっている。

 

「わかったニャ。ツカサは妖怪にやられないように気をつけるのニャ?」

 

「大丈夫、寧ろ師匠方と兄弟子のが強いから避けるくらいなら余裕だろうし。中でも兄弟子が一番やばい」

 

「あのいっぱい食べる人ニャ?」

 

「うん。でも俺も身体を限界まで動かした後だったらあれくらい食べるし、母さんもイベントとかだと凄い食べるから懐かしさを覚えたけど」

 

兄弟子はちょくちょく来るようになり、今は気の扱い方を学び数センチだけちょっとの間だけ浮けるようにはなっている。

 

「あんな食べるお母さんニャ!?」

 

「食費がかかるから普段はあまり食べないようにしてるけどね。オーキド博士の開くBBQとか亀の爺ちゃんの食事会とか、幻海の婆ちゃんに招かれた時とかは遠慮なく食べてる」

 

「あんな食べるのがもしも三人揃ったら大変そうニャ……」

 

「まぁ、俺はセーブ出来るから。正月とかにだけ会うハルカ達じゃない従姉妹達は、沢山食べてくれるからって泊まりに来てる間は色々作ってくれて感想を求めてくるけど」

 

「ツカサの親戚は女性ばっかりニャ」

 

「何ででしょうね~、不思議ですね~。姉妹で姉はお菓子作りが得意で、妹はピアノが上手かったけど。あ、歌が上手い従姉妹もいるよ」

 

父方の従姉妹達は何処かしら突出して総じて美人、可愛がってもらったり懐かれたりしていたが当時のツカサは誇れるものがなくちょっとしたコンプレックスを持っていた。

 

「ニャーが聞いても分かるくらいに濃すぎるのニャ」

 

「だよなー」

 

「今はツカサがダントツで濃いけどニャ」

 

「ハルカとヒカリ含めたみんなに言われたよ。俺がコンプレックス持ってたのを何故かみんなが知ってたのが恥ずかしかった」

 

「いつも自信に満ち溢れてるツカサしか知らないニャーには信じられないニャ」

 

「優秀な両親に従姉妹達と遠回しに比べられてたからなぁ……まぁ、今は得意分野がハッキリしたから自信持ってるしコンプレックスも払拭出来たけど」

 

 

 

そんな話をした翌日、最近進化したオシャマリとレックウザにイワンコだけをボールに入れて迎えに来た紫と共に再び彼の地へ舞い戻っていた。

 

「……何処だここ」

 

色んなポケモンがいるからと紫に言われるがまま鬱蒼とした竹林を見て回っていたが、何処をどう通ったのか分からず目印もなく完全に迷っていた。

 

「見渡しても同じような光景。色違いのヤンヤンマを近くで見たいからって追いかけなければこんなミスしなかったのに……あ、色違いのナゾノクサだ」

 

今まで悩んでいたはずが視界に色違いのナゾノクサが入った途端切り替えたらしく、歩いていく後ろをニコニコしながら付いていき始めた。

 

 

そして日も暮れて暗くなり始めた頃、ナゾノクサがようやくツカサが付いて来ているのに気づいて驚き慌てて逃げて行った。

 

「あぁ、行っちゃった。さて……目の前に大きな建物があるけど、道を教えてもらえないかな。ごめんくださーい!」

 

ツカサの前には和風の大きなお屋敷があり、とりあえず竹林から出る方法だけでも聞けないかと門を叩いて声をかけていた。

 

………

……

 

もう日も暮れて危ないからとウサ耳ブレザーの少女に招かれ、屋敷の中へ案内され応接する為の部屋へ案内されていた。

 

明るい部屋でツカサの顔を間近で見た少女は息を呑み、真っ赤な顔と呂律の回らない口で待つように言い何かを叫びながら家主達を呼びに走って行ってしまった。

 

「変態じゃないけどすれ違う時に凄くいい匂いがした、変態じゃないけど」

 

残り香にソワソワしながら座布団に正座をして待っている。

 

 

しばらくするとバタバタと近づいてくる足音が聞こえ、背筋を伸ばして待ち構えた。

 

「……失礼しますね」

 

「うわ、美人さん……じゃなくて、夜分に申し訳ありません」

 

銀色の髪を三つ編みにした赤と青の特徴的な服を着た女性が襖を開けて入って来て、綺麗だったり可愛かったりする女性を見慣れているはずのツカサも思わず口に出していた。

 

「……」

 

「あの?」

 

こちらの世界のツカサの大ファン一号であり、頰を朱に染めモジモジしながら手で三つ編みを弄ってチラチラ見ている。

 

「あ、み、道に迷われたんですよね?」

 

「はい、ですので人里方面への道を教えていただけたらと。すぐに行かないと晩御飯や色々間に合わないので」

 

「夜の竹林は危険ですよ! 明日の朝に私が案内しますので今日は泊まっていってください」

 

「ご迷惑をかける訳にもいきませんので……」

 

「真っ暗な中を行かせる訳にもいきません」

 

 

結局隣に座って懇々と説得をされて押し負け、一晩だけお世話になる事になっている。

 

夕飯の準備をさせていると言われて空腹なのを思い出し、それまで話し相手になってほしいと言われて様々な話をしていた。

 

医療に携わり頭の出来が良すぎる二人はあっという間に意気投合し、実はファンだの色々とあり互いに敬語は使わないで呼び捨てにしあおうと決めている。

 

 

「私達もツカサのファンなのだけれど、姫が私達以上のファンなのよ」

 

「永琳もファンなんだ。俺がよく分かってないだけであれ面白いのかな……」

 

「展開も王道だし、ヒロインが屑な事以外は最高だと思うわ」

 

「ヒロインがボロクソに言われてて草生える。まぁ、あれは仕方ないけども」

 

「それと明日は一日健康診断をさせてもらうから」

 

様々な話の中でポケモンの技を生身で受けたり三途の川に二桁以上行っていると聞いて一日拘束してでも健康診断をする事を決めていた。

 

「げ、元気だから……」

 

「ダメよ。医者の不養生って言葉があるでしょう?」

 

「ポケモンのお医者さんなんですけど」

 

「そのポケモンを診る時に自分が病気になったらどうするの?」

 

「それは……分かったよ」

 

ちょっとの間でツカサをコントロールするのにはポケモンを使えばいい事を理解したらしく、上手く誘導して健康診断を受ける事を了承させている。

 

「ふぁ……ねー、えーりんご飯まだー?」

 

そのまま健康診断の話を進めようとした時に襖がスッと開き、長く美しい黒髪の上下赤いジャージ姿の美少女が欠伸をしてお腹をぽりぽり掻きながら入って来た。

 

「あの、えっと……お邪魔してます」

 

「くっ……ふふっ……!」

 

「……え? やっ、違う、私、違うからぁ!」

 

ツカサの顔を見てだんだん顔が赤くなり、自身の今の格好を思い出し言い訳をしながらスパーン!と襖を全力で開くと凄い速さで走って行ってしまった。

 

「何が違うんだろう」

 

「笑いを堪えすぎてお腹痛いー……はー、ふー」

 

「ジャージ姿を見られたのが恥ずかしかったのかな?」

 

 

それからしばらくして……

 

「あら、姫ったら着替えて来たの?」

 

「え? 何を言ってるの? 最初からこの服だけど……」

 

「なかった事にしようとしてる……」

 

「……」

 

「あ、私はシラカワツカサと申します。竹林で迷っていた所にこのお屋敷を見つけまして、人里までの道を尋ねようと……」

 

ジーッと見て来るから不審に思われないよう自己紹介と来た経緯を説明し始めていた。

 

「式はいつにする?」

 

「日も暮れて危ないからと招かれまして……は?」

 

「もうこれって運命的なデスティニーだから結婚してマリッジするしかないわ!」

 

「なにこれデジャヴ」

 

山の上に住んでいる緑の髪の自称妻の少女の素敵な笑顔がツカサの頭を過っていた。

 

「姫がごめんなさいね」

 

「幻想郷にはこの手の方々が多いのかな?」

 

ちなみに前回滞在中に偶々地上に出て来ていた地底の地獄鴉にストーキングされ、邪な笑みを浮かべ壁を抜けて来る仙人に目をつけられていたり、三人組の妖精にポフレをこっそり食べられていたりと人以外を惹き寄せてしまっていた。

 

「割と多いかもしれないわ」

 

 

なんとか落ち着かせて蓬莱山輝夜という名を教えてもらい、今日と健康診断をする明日の二日だけ泊まる事を伝えていた。

 

「それならサインもらってー、あーんってしあってー」

 

「昔話で聞いた事のあるかぐや姫……ん? あれ? 結婚するには難題がどうとかって話じゃなかった?」

 

「当然お風呂も……それは求婚された時に出した条件だから。私からは無効だから」

 

「話が通じてるのに通じてない感じがやばい。バーサーカーかな?」

 

永琳は夕食を作る手伝いに出て行ってしまい、ジリジリと距離を詰めて来る相手に焦っていた。

 

 

それから夕食前にブレザーの少女と自己紹介をし、目と目が合うもピリッとしただけで何かをレジストしたなー程度で用意された席についていた。

 

セレナとルミホ以外の女性の手料理に舌鼓を打ち、食後は和やかな会話を楽しみ……

 

「おっ、色違いのニドラン♂?」

 

食休みに縁側に腰掛けてお茶を楽しんでいると脚に何かが纏わり付き、何だろうと手を出して持ち上げて見ると青い体表のニドラン♂だった。

 

「迷い込んで来たのか、それとも飼いポケモンかのどちらかだな。聞いて回るべきじゃん」

 

 

聞いて回った結果迷い込んで来た野生のポケモンだったようで、ニドラン♂に確認をとってから自分のポケモンにしていた。

 

「鈴仙さんに後ろから話しかけたらビックリさせて転ばせてしまったのは失態だったなぁ……パンツ丸見えになってるのに気づいて真っ赤になって恥じらう姿が可愛らしかったのと素敵な太ももだった」

 

「パンツを見られて恥じらう姿と太ももが好き、と」

 

「また誤解を招きそうな事を……お姫様がずーっと腕を組んで付いてくる恐怖」

 

目の前を通り過ぎては戻るを繰り返していた輝夜に最初に声を掛けたらしく、それからずっと腕を組んで付いて来ていたようだった。

 

「嬉しいでしょ」

 

「断言されるとは思わなかった。まぁ、姉さんの次くらいには嬉しい……のかな」

 

泊まるならば敬語をやめて呼び捨てにしろと言われ仕方なくそうしている。

 

 

「むっ」

 

「密着しすぎておっぱい当たってますけども」

 

「当ててるの」

 

「おっぱいよりも膝枕をしてくれた方が……」

 

「脚が好きなの?」

 

「いや、まぁ……うん。あ、おっぱいも好きだよ?」

 

「それツカサ以外に言われてたら間違いなく引っ叩いてたわね」

 

「うん、自分でも何言ってるんだろって思った。……こいつがニドリーノになったら何処かでつきのいしを探さないとなぁ」

 

話しながら何度か輝夜を離そうとしているがかなり強い力で腕を組んでおり、どうやっても離す事が出来ずにいる。

 

「それなら庭に転がってるはずだから持って行っていいわよ」

 

「転がってるの?」

 

「ええ。今から見に行く?」

 

「明日の朝の方が明るいから探しやすいよ。だから今日はもう解散しよう」

 

「じゃあ、部屋に帰ったら布団とか持ってすぐに行くから」

 

「遊びに来る気なんすね」

 

………

……

 

一晩遊びに付き合わされ朝方に就寝したがそれからすぐに起こされていた。

 

「眠い……」

 

「姫が迷惑をかけてごめんなさいね」

 

「明け方にポッキーゲームをしたんだけど、凄い力で俺の頭ロックして凄い勢いで食べ進めて来た時は目が覚めたよ……何であんな振り切ってるの? あれはノーカンだと思うけど舌ってあんな風に動くんだね。チョコ味だったけど」

 

「後で唇と口内をちゃんと消毒しましょうね」

 

「いや、そこまでしなくても……」

 

そんな会話をしながら様々な検査の準備が進められていた。

 

 

ツカサが検査の間はボールから出して貰ったイワンコがニドラン♂に兄貴風を吹かせて庭で遊び回り、何処からか現れたピィやピッピ達と楽しく過ごしていた。

 

「俺もあれに加わりたいなぁ」

 

「終わったら混ざって来なさいな。身体測定も兼ねてウドンゲと戦わせてみたけど、本当に人間なの? あんなハッキリとした残像とか初めて見たわ」

 

「あれ兄弟子から教わったんだよね」

 

「しかも同じように指から霊力の弾丸撃ち出して」

 

「あれは婆ちゃんから」

 

「でも空は飛べないと」

 

「うん。兄弟子が時間のある時に集中してやろうっていうからまだ飛べないよ」

 

「何と言うか……幻想郷で空から狙われたら勝てないんじゃないかしら」

 

「でしょうね。まぁ、勝てないけど負けないからセーフ」

 

前回までなら致命傷になったであろう妖怪達の攻撃も普通に痛い程度で済むようになっているから安心だった。

 

寧ろ死に追いやれば追いやる程に強くなり、切っ掛けを与えてしまえば大変な事になる地雷のような男である。

 

「確かに張られた弾幕を物ともせずに真っ直ぐ行って抱きついたのにほぼ無傷だったものね。殴れないから抱きつくって発想はどうなの?」

 

「抱きつく前に謝ったし、抱きついた後も謝ったからセーフ」

 

「この件はまだまだ追求したいし後にしましょうか。次は不妊検査を」

 

「それはいらないでしょ」

 

 

それから全ての検査が終わり、結果が分かるまでの間ずっとイワンコ達と遊んでいた。

 

「イワン!」

 

「よしよし……ほら、とってこい!」

 

いつものように愛用のボールを投げると追いかけて行く。

 

ピィやピッピにミミロルやミミロップ、普通の兎や妖怪兎も混ざったりと混沌としているがツカサは幸せそうに過ごしていた。

 

縁側に腰掛けていると頭を手の下に入れて来て撫でてほしそうにする者が多く、片手で撫でながら他の者達の相手をしている。

 

「あーとけるー」

 

「ひえっ」

 

順番待ちをしていたらしく輝夜のサラサラな黒髪を撫でており、妙に手触りがいいなと考えていた所に声を出された事に驚いていた。

 

「私はポケモンだから」

 

「違うでしょ、お姫様でしょ。あー、でもビックリした。サラサラな毛並みと思ったら喋り出すし、しゃがんで見上げてるしで」

 

「あれよ、私はホーライサンって幻のポケモンがテルヨってポケモンに進化した姿なの」

 

「はいはい。セクハラだなんだ言わないなら撫でるくらいは幾らでもやるから」

 

「やったー」

 

「でも朝にされたちゅーでこっちは気まずいのに普通に接されて困る。永琳が消毒だってアルコールで凄い唇拭いてきて、口内洗浄も強要されたけど」

 

「またしましょうね」

 

「いや、普通にお付き合いもしてないのにダメ。それより輝夜も隣に座ったら? 一緒にみんなとのんびりしようよ」

 

イワンコがパタパタ尻尾を振りながらボールをくわえて戻って来る姿が見え、隣をぽんぽん叩いて輝夜に早く座るよう言っている。

 

隙あらば既成事実を狙って来た早苗を基準で考えており、輝夜はまだまともだと思っていた。

 

「今夜はまた泊まるでしょ? 寧ろ外に帰るまで泊まるわよね」

 

「迷惑になりそうだからそれはちょっと。明日はハスボーとタネボーを捕まえに妖怪の山の方に行きたいし、徒歩だから帰って来る時間もなさそう」

 

ツカサはハルカと共に旅をしたホウエンで見たルンパッパとダーテングを仲間にしたかったようで、今回の目的はその進化前の二体を捕まえる事だった。

 

「なら永琳に頼んでイナバを付けさせればいいわね。ツカサくらいなら抱えて飛べるでしょうし」

 

「抱えられるとか恥ずかしいんだけど?」

 

 

 

日も暮れ始めた頃に検査結果が出たと永琳が呼びに来て、何故か保護者のように輝夜まで一緒になって結果を聞きに診察室に来ていた。

 

「複雑な説明をしても仕方ないから簡単に言うけど、ビックリするくらい何も悪い所はなかったわ」

 

「やったぜ」

 

気に入った永遠亭飼いのピィをムニムニしながら聞いており、心地良いマッサージにピィがヘブン状態になっているが気にせず続けている。

 

「そりゃそうでしょ。聞いてみたら健康的すぎる生活だし、寧ろ最近はトレーニングでの消費カロリーが高すぎて沢山食べないと食べても食べても痩せるって嘆いてたもの」

 

「帰る前に挨拶しに紅魔館行くつもりだし、何かご馳走になろうかなって」

 

「昨日は普通くらいしか食べてなかったわよね?」

 

「兄弟子のようにいきなりガッツリ食べるわけにもいかないし。嫌だけど、本当に怖くて嫌だけど明日はついでに山の神様達にもご挨拶してこなきゃ」

 

「健康を祈ってお賽銭と御守り買って来たらどうかしら?」

 

「前に早苗……に貰った御守りには陰毛が入ってるって恥じらいながら言ってたよ。お役に立ててくださいって上着のポケットに下着をねじ込んで来て、神様二柱が申し訳なさそうに縛り上げて下着も早苗も回収してくれたり」

 

アプローチを普通にしていれば秒殺出来るくらいチョロいのに手段を間違えツカサの警戒心を最大まで上げてしまったのが敗因。

 

「変態じゃないの」

 

「御守りはそういうのがあるって聞いた事があったからいいけどさ。てか下着を役立てるって何なの? 変態仮面的な事?」

 

「永琳がさっきから何が面白いのかツボに入ったみたいで肩を震わせて背中を向けてるわね」

 

「隠れてるけど膝枕してもらいたい太ももをしてそう」

 

 

そして超健康判定を貰い夕飯はやたら食べるならどれだけ食べるのか試そうと今ある食材を全て使って料理をするよう輝夜が指示を出し、ツカサはこれが原因でみんなに飢えられたらたまらんと許可を貰って庭に沢山の木の実を一定の間隔で植えまくっていた。

 

成長促進の肥料を土に与えて翌日から数週間ほぼ毎日何かしらの実が取れるようにしている。

 

「鈴仙さん、手伝ってくれてありがとう」

 

「いいんです……じゃなかった、一緒に土を弄るの楽しかったからいいの」

 

「ディグダディグダ」

 

「ダグダグダグ」

 

「敬語もやめてくれてありがとう。後半混ざってきたダグトリオとディグダのお陰でサクサクだったね。……いや、何か他にも増えてない?」

 

「え? ……本当だ。しかも普段見かけるような敵意剥き出しのポケモンじゃない」

 

ツカサが見かけた色違いのナゾノクサやマダツボミが成長を見守るのにウロウロしており、マリルやルリリが植えた木の実に水を与えて回っていた。

 

「うちの裏庭みたいになってて居心地が最高だわ」

 

「そうなの?」

 

 

みずてっぽう(弱)で水を与えるマリル達をニコニコしながら見ているツカサの隣に鈴仙はさり気なく立ち、普段の生活について根掘り葉掘り嫌がられないレベルで聞き出していた。

 

「それでピチューの群れが一斉にピカチュウに進化してさ」

 

「えー、それは見てみたいなぁ」

 

「それで大好きーってみんな抱きついて来たのはよかったんだ。直後のでんきショックがなければだったけど」

 

最近は慣れて来たらしくちょっとやそっとのでんきショックでは痺れなくなり、ちょっとしたスキンシップとマッサージ感覚ででんきショックを受けている。

 

ピカチュウ軍団もツカサにだけするスキンシップらしく、セレナやAZには全くしないので安心だった。

 

「えっ……そ、その、心臓止まる……よね?」

 

「もう止まらなくなったよ」

 

「そっか、もう……もう!?」

 

「だから気をつけてね。サボり魔な死神さん達に会いに来るペースが早いって怒られたり、おしゃぶりしてる閻魔様に現世の案内を頼まれたり、大きな赤い閻魔様にまだ早いが帰すのに時間がかかるって界王様の所に送られたりするから」

 

様々な閻魔様や死神に会っており、また来たの?となるくらいに馴染んでいる。

 

「うん、気をつける」

 

「ダネダネ!」

 

「うわ、マジか! フシギダネだ! いいな、連れて帰りたいな」

 

くさポケモン達に混ざるフシギダネを見つけテンションが上がり、手を握ってみようか迷っていた鈴仙に気づかず走り寄っていった。

 

残念そうにしながらもフシギダネを抱え上げて話しかけているツカサの元へ向かった。

 

………

……

 

三日目の朝、早くに起きたツカサは昨晩の残りに手を加えて皆の朝食を作っていた。

 

ついでに昼に食べる予定のお弁当も一緒に作り、鞄から取り出した未使用の重箱に詰め込んでいく。

 

「いやー、昨晩はかなり食べたなぁ。お陰で力満タンだ」

 

「ツカサー許してー」

 

「朝一で波長を狂わせて体調不良を起こさせようとした鈴仙さんは目隠しさせて縛って転がしてあるし」

 

緊張やらも解けてフレンドリーになった鈴仙は逃げられないようにされており、霊力を込められた縄からは力づくで抜けられずにもがいていた。

 

「もうやらないからー」

 

「さっきそれで目隠し外したらガン見してたじゃんか。永琳が来るまではそのままジッとしてなさい」

 

「やだやだやだやだー! 料理してる所が見たいのー!」

 

「いや、それちょっと可愛いけどそんなキャラじゃないよね? あの二人が居ないから?」

 

小さなお賽銭箱を持ち歩いている兎少女がドン引きしながら静かに見ており、そして黙ったままツカサの手をぎゅーっと握るとドヤ顔で賽銭箱を差し出してきた。

 

「ちょっと待って……はい」

 

外貨でもOKと書かれた紙を見せられたので貝塚レートで35万を入れている。

 

「ツカサ? 他に誰か居るの?」

 

「居ないよ」

 

手で×を作る少女の願いに応えて知らないフリをし、ぺこりと頭を下げて去って行くのを見届けた。

 

 




中途半端だけど今回はここまで。

今回は永遠亭メインのあれだけど、3回目くらいで地底に連れ去られるかもしれない。
ツカサは適応する程度の能力を持ってそう。



BotWはコログ探したり、試練の祠探したりしててまだ神獣一体も解放してないや。
まだボンバーマンやってるけど。
DLCは買うべきなのか分からなくて未購入。


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昼でもなく夜でもなく

紆余曲折あり妖怪の山に向かう時間が遅くなっていた。

 

「鈴仙さんが縛られる喜びに目覚めて俺の趣味だと思われたり、輝夜の喧嘩相手の方に遭遇したり……朝っぱらから飛び出る臓物、焼ける人肉の匂いとか勘弁して欲しかった。てか口開けてたから少し口に入って吐いたし」

 

「でもエチケットだからって自分で袋を出すまで我慢したのは偉いよ? 私だったら我慢出来ないと思う」

 

「それで少し飲み込んじゃったんだよなぁ……全部吐いてる時に小さな女の子が背中をさすってくれたのはありがたかったけど」

 

全部吐き出したようだが気分が悪くなり、永琳に診察をしてもらい今まで休んでいて出発が遅れたようだった。

 

「姫様、肉は吐き出されたけど血がツカサの身体の一部になったってはしゃいでたね」

 

「流石にリアルで言われるとドン引きだったわ。まだ残ってるかもって腹パン連打してくる永琳にも恐怖を覚えたよ……やっぱり俺は外の世界を旅してる方があってるって改めて思った」

 

「今まで知らなかったけど師匠って独占欲強いのかも」

 

「俺は嬉しくないけど、普通なら嬉しいんじゃない? あんな超美人さんに束縛されるなら」

 

「ツカサは束縛されるのが嫌い、と」

 

「何でメモしてるの?」

 

 

途中で歩いて行くのは時間がかかるからと後ろから抱き締められる形で抱きつかれ、そのまま空を飛んで連れて行かれている。

 

 

沢に着くとようやく離され、二人で会話を楽しみながらまずはハスボーを探し始めた。

 

「タネボーは山に居そうだけど許可貰えないだろうなぁ……今回はハスボーを捕まえられたらいいな」

 

「あの頭に蓮の葉が付いたようなポケモン?」

 

「そうそう。それと誰か付いて来てる」

 

幾つかの気を感じ取りチラッと川の方を見て呟いていた。

 

「え?」

 

「それよりも何でおてて繋いでるんだろう」

 

「いざって時に飛んで逃げる為よ」

 

「成る程」

 

割と単純だからか鈴仙の発言に納得するとしっかりと手を握って河原を歩いて行く。

 

「ツカサの手はゴツゴツしてるね」

 

「鈴仙さんの手は小さいね」

 

側から見ればイチャイチャしているようにしか見えないが、二人は純粋に互いの手の感想を言い合っているだけである。

 

「帰ったらお話の続きをお願いしてもいい?」

 

「いいよ。昨日はホウエンの話をしたから、今度はシンオウの話を40分くらい話そうかな……縁側で並んで話してたらいつの間にかあの二人も居たし、今度は食後に話そうと思う」

 

「ホウエンでツカサの仲間になったラティアスってポケモン見てみたいなぁ」

 

ラティアスはハルカに内緒で夜更かしをしてテントからこっそり出た時に出会い、脳内に直接語りかけて来て明け方まで語り合ってそのまま仲間になっていた。

 

ハルカはキモリとラルトスしか捕まえていなかったはずのツカサがいつの間にかラティアスを捕まえていた事で夜更かしを看破され叱られている。

 

「他にも色々居るから逆に見に来て欲しいレベル。ラティアスはきよひーと一緒に人間の姿になれないか修行してるから付いて来てくれないんだよね」

 

なれないとは思っているが、いつかなったらどうしようと少々不安になっていたりもする。

 

「きよひー?」

 

「ニックネームを付けたポケモンだよ。ジガルデってポケモンの色違い」

 

「いつか見に行きたいな」

 

最近はビークロンがヘラクロスの親玉になって群れを作っていたり、湖にウンディーネが居たりとツカサの異世界ファームから来訪する者が増え始めていた。

 

シラヌイと夜中に星を見ていて不思議な現象が起きて真っ白で綺麗な筆を貰ったり、馴染んだUB達が新しく仲間を連れて来たりとやりたい放題になっている。

 

「紫は割と遊びに来てるし許可貰って連れて来てもらうといいかもね。そこそこ危ないから一人で歩き回らせる事は出来ないけど」

 

「危ないの?」

 

「特定のエリアだけ入ると性別が反転したりするんだよなぁ……子供化したりするエリアもあるし」

 

「それはちょっと見てみたいかも」

 

「セレナ……隣に住んでるのに俺の家で暮らしてる子がツカサの不思議な森って名付けて入り口に手作りの看板まで立ててくれたよ」

 

 

鈴仙が聞き上手なのかすっかり捜索よりも会話に夢中になり、大きな平たい岩にレジャーシートを敷くと二人で座って鈴仙が冷えないようにタオルケットを取り出して渡していた。

 

「こうお尻に敷くようにしながら脚の方にも回せる大きさだから上手く使ってね」

 

「はーい」

 

「俺のお昼寝用だから汚しちゃっても大丈夫だから」

 

「へぇ……」

 

ツカサが鞄をゴソゴソしている間に鈴仙はタオルケットに顔を埋めてみたりスーハーしてみたりとちょっと変態ムーブをしている。

 

ポケモンや異世界のモンスター達が好むツカサの匂いがし、これで寝たら朝も気持ちよく起きれるだろうなと思いながら顔を上げていた。

 

「輝夜からチョロまかしたお菓子とかあるから紅茶と一緒に食べよっか」

 

「姫様からチョロまかしたの?」

 

「まぁ、正確には交換したんだけどね。最新のポケモンウエハースが一箱余ってたからちょうどよかった」

 

「あ、姫様が小脇に抱えてスキップしてたのってそれ?」

 

「多分。まだチャンピオンに就任してないのに俺のカードも収録されてるっていうね。ハズレ枠だろうから沢山出て捨てられてそうなのがなぁ」

 

ゲッコウガ、メガリザードンX、ツカサが最高レアであり、バーコードを貼って送ると抽選で当たるカードがルカリオキッド衣装でルカリオと並び立つツカサだったりする。

 

本人の要望に応えてツカサの封入率は低くされており、本当に入ってるのかとメーカー側に問い合わせが行く程。

 

「意外と大当たり枠じゃないの?」

 

「ポケモン以外はハズレ枠だと思ってる。ワクワクしながら初めて買ったウエハースを開けた時に近所の博士のサイン入りカードだった時の気持ちは忘れられない」

 

「あ、あはは……」

 

「新弾出る度に買うとまずジムリーダーとか四天王、チャンピオンのカードばっか出るからね。色違いのソーナンスは出やすいとかデマに踊らされたし」

 

「でも私はツカサのカードなら欲しいよ?」

 

「それなら試供品って事で貰ったのがあるから帰ったらあげるよ。俺は自分で当てる派だからいらないし……欲しがった身内には配り終えてるから本当に余ってて困る」

 

セレナを含む四人には配り、ハルカ達に送ってもまだ余っているようだった。

 

サインの練習と称して落書きのようなサインをし、それをメイにだけ送った事で後々大変な事になるのを今のツカサは知らない。

 

「それなら師匠と姫様、あとツカサが来てから姿が見えないけどてゐって子の分もいい?」

 

「いいよ。寧ろ嫌がっても置いていくまである」

 

………

……

 

「イワンコ、ストーンエッジ!」

 

「ヤミカラス、どろぼう!」

 

イワンコが作り出した鋭い岩を宙返りをしながら蹴り飛ばすがヤミカラスはそれを避け、イワンコの首に巻かれたかわらずのいしを掠めとってから蹴って着地を失敗するよう仕向けている。

 

 

「旦那様ったら私達に取材をしたかったらバトルに勝て、だなんて」

 

「あぁ、ツカサが来たがらなかった理由はこれなのね」

 

日も暮れ始めた守矢神社の境内で烏天狗の少女とツカサのバトルが繰り広げられていた。

 

「早苗のネットリとした視線で舐め回すように見られる度にツカサの指示が滞ってない?」

 

「……確かにワンテンポ遅れてるね、全力を出し切れてないよ。それよりもツカサから私達が会った事のない神より上の存在と接触した感じがしてるのが気にかかる」

 

まだ接触していないがその上に更にその上とも接触するフラグは出来ており、一番上に関しては料理に興味を持たれてしまう可能性が高かった。

 

 

「ッ……かみなりのキバ!」

 

「ヤミカラス、ブレイブバード!」

 

また避けられ痛烈な一撃をもらってイワンコは吹き飛び、オシャマリと交代させるべきかとツカサは悩みながら立ち上がるイワンコを見ていた。

 

 

イワンコは立ち上がりながら昼の兄貴分のようにツカサを守りたい、夜の兄貴分のように力が欲しいと願っていた。

 

進化をしたくないという甘えも受け入れてくれたツカサ、だが……

 

「バトル中に進化ですか!?」

 

「どっちだ……?」

 

日が落ちるほんの少しの間だけ起こり得るグリーンフラッシュという現象をイワンコは目にし、まだこの世界では誰も見た事のない姿へとその身を変えていく。

 

「ルガン!」

 

「兄貴分達を足して割って色々加えたような姿……呼ぶのならルガルガン黄昏の姿かな。山吹色の毛並みか」

 

「進化してもこっちは鍛えてますからね! ヤミカラス、トドメのブレイブバード!」

 

「アクセルロック!」

 

ルガルガンは今までの身体では出来なかった動きでヤミカラスに突っ込みブレイブバードの初動を潰し、口に加えた何かをツカサへと放り投げていた。

 

「は、速い!?」

 

「……ははっ! わかった、やってやろうじゃないか!」

 

動揺する烏天狗の少女を尻目にメガリングZにルガルガンZを嵌め込み、久々のZ技の発動に深呼吸をして覚悟を決めていた。

 

「な、何を」

 

「絆の力、お借りしますってね」

 

クリスタルに触れてから腕をクロスさせ岩のZ技のポーズを決めている。

 

 

二人の絆で生まれた力、溢れるパワーを分け与えられたルガルガンは緑の瞳を赤く染めて幻想郷に響くような遠吠えをあげていた。

 

「えっ!? ちょっ、えっ!?」

 

「ラジアルエッジストーム!!」

 

周囲には大量の鋭い岩が浮かび、ルガルガンが跳び上がるとその全ての先端がヤミカラスへと向けられた。

 

ツカサが手をパン!と叩くと一斉に岩がヤミカラスへと襲い掛かり……

 

 

 

「気絶する一発以外は外すってのをアイコンタクトだけで分かってくれて嬉しいよ」

 

「ルガン!」

 

パタパタと尻尾を振りながらツカサの周りを走り回り、ワシャワシャと兄貴分達のようにやや乱暴に撫でてもらって嬉しそうにしていた。

 

「ワンワン!」

 

「早苗さんや、犬になれば撫でるとかじゃないのよ? てか抱きつくのやめて」

 

 

「ヤミカラスの手当てをしてくださって、進化させるのにどうぞってやみのいしを渡されたんですけど……取材はやっぱりダメなんでしょうかね?」

 

「さぁ……」

 

 

 

暗くなって来て久しぶりの再会だからと二柱の神に母屋に招かれ、お茶を飲みながらここ数ヶ月の話をお互いにし始めていた。

 

「神奈子、私はツカサのお姉さんが綺麗で可愛くて大好きって事くらいしか分からなかったんだけど」

 

「私もだよ」

 

「だってそれしか言ってませんし。あ、最近は異世界にちょくちょく迷い込んでます」

 

「神奈子」

 

「ツカサを常識で考えたらダメだって事は基本だよ」

 

割と頻繁に迷い込んでいる。

 

迷い込んだ世界で同じように迷い込んでいたゼロを名乗る光の巨人と意気投合して互いの利害が一致し抜け出せる目処が立つ迄は一体化していたり、また別の世界では太陽の子を名乗る存在をサポートしすぎて悪の組織に執拗に狙われたりと中々にハードな異世界体験を繰り返している。

 

異世界で歳を取っても肉体は迷い込んだ時固定らしく擬似不老状態だったりする。

 

 

 

様々な話をしたり聞いたりしている内に調理をしている三人がおつまみやらお酒やらを運んで来始めていた。

 

「進化ならぬ神化、ねぇ」

 

「ニョロモはこれ、アーボはこっちね」

 

「シャーボ!」

 

「ニョロ!」

 

ツカサは纏わり付いてくる二体のポケモンにポフレを与えている。

 

「ニョロモは進化したらニョロボンになりたいの? それともニョロトノ?」

 

「ニョ……ロモ、ニョロ!」

 

「成る程」

 

「ニョロ?」

 

「うーん……あ、おっぱいを触ってみたいって言ったらミルタンクが搾らせてくれたってのは面白くない?」

 

「何の話してるんですか?」

 

「いやね、ニョロモが最近面白い事がなかったかって言うからね」

 

ツカサのする妙な話題に早苗が食いつき、料理の載った皿を置くと当たり前のように隣に腰を下ろしていた。

 

「ニョロ! ロモ!」

 

「お前、柔らかかった?って興奮気味に聞くとかド変態かよ。あ、でも搾り方が上手いテクニシャンって褒められたよ」

 

「ツカサ、それ普通にセクハラだからね。姫様なら喜んでるかもしれないけど」

 

「あやや、割と自然にそういう事を口に出す方なんですね」

 

自分達が作った料理を運びながら聞いていたらしく鈴仙は忠告をし、烏天狗の少女は驚いてていた。

 

「ありのままの俺を見て幻滅するならそれでいいから。勝手に清廉潔白なイメージを押し付けられても困るよ。俺は俺が大切だと思うものを守る為なら手を汚す事も厭わないし」

 

チャンピオンらしい振る舞いをと言われ、じゃあ辞めますお疲れ様でしたと即答して帰ろうとした存在は過去にも未来にもツカサだけだと思われる。

 

「寧ろそれは美点なのでは?」

 

「だといいけど」

 

「それよりそのテクニシャンというのが信じられないので二時間くらい私の部屋で実演を……」

 

「さっきから密着してて凄いおっぱいが当たってる。何がとは言わないけど輝夜の完敗!」

 

早苗からのアプローチがかなり積極的レベルに落ち着いているからかホッとし、妙なテンションで口走っていた。

 

「それ姫様に報告するね」

 

「輝夜ならまぁ……」

 

「師匠には胸を押し付けられて鼻の下を伸ばしてデレッデレしてたって八割り増しにして報告するね」

 

「何されるか分からない恐怖で身体が震えるんじゃが?」

 

「押し付けてるところを抉るとか」

 

「怖ぇよ……死の淵から復活すると何故か強くなるって話を聞いて仮死にするドラッグをニコニコしながら渡してくる人だからやらないとも言えないし」

 

仮死状態の間に服を剥いで色々採取されたり全身くまなく観察されており、ツカサの身体の隅々までを知っているとガチで言えてしまう存在になっている。

 

「それ飲んだんですか?」

 

「えっ、嘘、飲んだの?」

 

「流石にどんな頭が残念な人でも飲みませんよ。死ねって言われてるようなものですし」

 

「飲んだよ。絶対蘇生させるからって言ってくれたし」

 

仲良くなると無条件で相手を信じてしまうピュアな面もあり素直に飲んだらしい。

 

当然二柱の神を含めた皆が唖然とした顔でツカサを見て、 ツカサは何で?といった不思議そうな顔で黙ってしまった皆を見ていた。

 

「それに割と参考にもなったから。どうしても手の施し用がない怪我や病を患ったポケモンを苦痛を味わう事なく逝かせてあげるって考えもあるなって」

 

その薬を教えてもらうにはまだ早いと考えており、幾度か通い交流して本当に仲良くなれた時に聞こうと思っている。

 

技術と知識を与え合う関係になるのが理想だと二人は内心で考えており、おふざけも兼ねてじゃれ合ってはいるが信頼関係を築こうと互いにノッているだけだったりも。

 

「早くぺっしてください! お薬残ってたら危ないですから!」

 

「えとえと、あっ、そうだお腹を強く叩いて!」

 

「『謎の外来人、純粋を通り過ぎて馬鹿なのか?』で決まりですね」

 

「最後の天狗さんだけ酷くない?」

 

………

……

 

食事を終えてから改めて自己紹介を済ませ取材を受ける代わりに輝夜に手紙を届けてもらう事になり、守矢神社にこのまま一泊する事になっていた。

 

「『泊まって明日帰ります。 ツカサから愛をこめて』ってこんな端折った書き方だと流石の姫様でも怒るんじゃ……」

 

「それなら『神社に泊まって明日帰ります。 ツカサから輝夜へ愛をこめて』」

 

「……まぁ、それなら姫様も納得するかも」

 

「帰ったら旅してる時に見つけた綺麗なアイスの実の枝をあげてご機嫌伺うか。出来るなら上げたくないし家に飾りたいんだけど」

 

蓬莱の玉の枝をホウエンを旅していた時に見つけていたらしく、誰にも取られないようにずっと鞄の中にしまい時折取り出しては眺めているようだった。

 

「それでは届けて来ますから待っていてくださいよ。根掘り葉掘り聞きますからね!」

 

「射命丸さん、ちゃんと約束は守るよ。変な質問以外なら答えるし」

 

「性癖とかは……」

 

「膝枕が好きだから肉付きのいい太ももが好きです」

 

「えぇぇ……これ以上の変な質問なんてありませんよ」

 

「好きな下着はなんですか?」

 

「縞々かなぁ」

 

普通の男ならまず誤魔化すような早苗の質問にも普通に返していた。

 

「何がダメな質問なのか分からないわ……」

 

文は頭を抱えて思わず素の自分を出してしまっている。

 

「縞々ですね!」

 

「修行の内容は基本NG。真似されて死なれたら洒落にならないし」

 

「死ぬような修行って何なんですか……」

 

「心臓が止まって蘇生させられて強くなるでしょ? それで更にハードな修行になるを繰り返してやべー事になったの」

 

「はぁ……とりあえずお手紙届けて来ますね。詳しい話は戻って来た時にお願いします!」

 

「いってらっしゃーい」

 

ツカサが書き終えて封筒に入れたのを見るとサッとそれを手にし慌ただしく母屋から出て行った。

 

 

早苗と鈴仙がガールズトーク的な事を始め、ツカサは手招きをする二柱の神の元に向かい腰を下ろしている。

 

「空を飛べるって本当に便利で羨ましいです。地球で亡くなった異星人の方の霊に暇潰しですげー技を伝授してもらったけど、やっぱり自力で空を飛びたいですし」

 

「異星人の霊とかいうパワーワード」

 

「まぁ、異星人くらい居るだろうね。ほら外にいた時に偶に参拝に来てたじゃないか、オーッホッホッ!って笑ってた異星人」

 

「あー……兄弟で来てた時もあったよね。何か誰かが有名になったら自分がCMに使うって言い合って喧嘩してたっけ。お守りも競うように買って行ったし」

 

「それは見てみたかったです」

 

尚その兄弟は可愛がってくれているツカサの知人の模様。

 

「それより今回は早苗を孕ませるくらいはしていかない?」

 

「そのお風呂くらい入っていかない?みたいなノリでとんでもない事を言わないでくださいよ」

 

「まぁ、初対面であれだったからねぇ……」

 

「初対面で今日みたいな落ち着いたアプローチをされていたら普通に好きになってたでしょうね。あれ見てるので警戒心のが先に来ますけど」

 

「あれは本当に悪手だったよ。ツカサくらいの歳なら微笑んで傍に居たり、ちょっと抱きついたりすればコロっと落ちたでしょ。男の子だからおっぱいとか好きだろうし」

 

「俺そこまでチョロくないです。珍しいポケモンがいる場所を案内とかされたら危なかったかもしれないですけど」

 

ツカサの中での珍しいポケモンは幻や伝説が基準になっているので割と判定がシビア。

 

最近もフーパがおでまししてしまったルギアと交渉の末に仲間になってもらい、そのまま森の中に存在する広大な湖を住居としている。

 

「珍しいポケモンねぇ……」

 

「これみたいな」

 

スマホで撮影したシキジカ、メブキジカ、オドシシを従えるドヤ顔のゼルネアスの写真を二柱の神に見せていた。

 

撮影したのはセレナらしく指をさして笑うツカサとそれを囲むようにディアンシーときよひーが写真の隅に写り込んでいる。

 

「鹿の群?」

 

「小さいのがシキジカ、大きいのがメブキジカとオドシシです。真ん中にいるのはゼルネアスっていうカロスの伝説のポケモンですね」

 

「伝説のポケモンよりこっちの二体のポケモンが気になるんだけど」

 

「ディアンシーとジガルデですね。他にも色々……」

 

様々な話をしている内に守矢神社での夜が更けて行った。




この世界では世界初進化扱いの黄昏の姿。
外に帰って写真付きレポートを提出して大変な騒ぎになる模様。


色々忙しかったり、暇が出来ても積みゲー消化してたりで久々の更新。

進撃の巨人2を遊んで、名もなき兵士との絆最大で名もなき兵士以外強くてニューゲームを誰かに書いて欲しいと思いました(小並感)

ゼルダ無双はDLCでリーバルかミファー来てくれないかなぁ。


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彼を中心にくっついていったり

そんなこんなで数日楽しく過ごしカロスに帰る日が近づき、帰る前に前に以前お世話になった紅魔館を訪ねていた。

 

「いやー、みんなに会うのが楽しみだなー。特に膝枕してくれる美鈴さんと仕草がドストライクな小悪魔さん」

 

「師匠と姫様を出し抜いて毎日出歩けるツカサって凄いよ」

 

「見逃されてるだけだよきっと」

 

「気がついたら居なくなってるから私を四六時中付けるって師匠に言われてなかった?」

 

「ハスボーとタネボーに構ってたから聞いてなかったなぁ……ん? お? オンバットにオンバーンの群がこっちに……ぬわぁーッ!」

 

「つ、ツカサー!?」

 

紅魔館の方から大量のオンバットとオンバーンが現れ、複数体がツカサをガシッと掴むとそのまま空を飛び元の場所へと戻って行った。

 

あまりの光景に鈴仙は唖然とし、助けを求めるツカサの声が遠ざかるのを見ているしかなかった。

 

………

……

 

連れ去られたツカサはそのまま紅魔館の庭にそっと置かれていた。

 

「……普通に怖ぇーよ! オンバットも沢山顔をぺろぺろしてくるし、あの数のオンバーンも怖いわ!」

 

「迎えに行かせて正解だったわね。こうして会うのは久しぶりね」

 

次の瞬間にはレミリアの部屋で椅子に座り上着も脱がされている。

 

「手紙でやり取りはしてたけど……それよりあの子達この前どっちも居なかったでしょー!?」

 

手紙でのやり取りをしているうちに敬語もなくなり、フランクに接するようになっていた。

 

「探して連れて来たのよ。私のクロバットもズバットやゴルバットを連れて来てくれたわ」

 

「コロモリも居るんですね、わかります」

 

目の前に急に現れた紅茶で喉を潤し、クッキーを摘みながら諦めたように呟いていた。

 

「ツカサの連れて来た月の兎にはちゃんと明後日には帰すからって咲夜に説明させたから安心なさいな」

 

「へー、明後日……明後日!?」

 

「いいでしょ?」

 

「えー……」

 

「……怪我の治療をしたけど警戒心剥き出しで、ご飯は食べるけど誰にも懐かないポケモンがいるんだけど」

 

「とりあえず話を聞いてみるよ」

 

テレビの生特番で嫌々司会をやらされた時にストレスで体調が悪くなったゲストのポケモンと話をしてしまい痛いチャンピオン扱いをされ始めたが、そのポケモンのトレーナーはダメ元でツカサが言うストレスの元をどうにかしていた。

 

何をやってもダメだったのにその日から快方に向かうポケモンに驚き、生放送から数日ですっかり元気になりブログに感謝やらベタ褒めをする日記を書いたりとすっかりファンになっていた。

 

偶然治っただけ、本当に言葉が分かる、頭がおかしい、俺も診て欲しい等言いたい放題されているツカサだが冗談半分に言われたポケモンカウンセラーが新たな呼び名に加わっていた。

 

「お願いするわね」

 

「とりあえず何とかしたらメイドさんに会わせてほしい。同名の知り合いがいるから気になる」

 

「そうね。あの子も恥ずかしがってる割にいつもツカサの使っていたベッドで寝」

 

「あ、消えた……おぉ、帰って来た」

 

「……とりあえず手袋とマフラー、セーターに帽子を預かって来たわ。あの子が作っていたやつだから冬になったら使ってあげて」

 

「嬉しいけど、嬉しい。ただマフラーめっちゃ長いなぁ」

 

「姿を現わすのが恥ずかしいって言ってるのに一緒に巻けるような長さにしたらしいわ」

 

「あの選ばれたリア充しか出来ないし、実際やったら危ないと思うあの。行きたい方向がバラバラだったら首グーン!ってなるよね」

 

「手を繋いで同じ方向に行くようにすればいいんじゃないかしら」

 

「なるほどなー」

 

 

それから数十分二人での会話を楽しみ、美鈴やパチュリーと小悪魔にも挨拶をしたいからとレミリアに伝えて部屋を出ていた。

 

「俺はもう小悪魔さんの膝に住む」

 

「よしよし」

 

早速小悪魔に遭遇し部屋に招かれて甘やかされ膝枕をしてもらっている。

 

「しかし何と言うか……生まれる前から俺を知っているって言われた時は電波な方なのかと思った」

 

「私が幸せになれる相手をずっと昔に故郷で占ってもらっていたんですよ。何年後何処で出会ってどんな性格か、それに名前と容姿まではっきり分かるのは珍しいって言われましたね。今まで占って来てここまで互いに噛み合う相手を見たのは初めてだって」

 

「なにそれこわい」

 

「後は激情の金と清らかな青が見えると。そこは何かが強すぎて色しか見えないと言われましたけど」

 

「金と青って何だろ。色違いのヤミラミとカメックスかな? 近い内にどちらかが家族になってくれるのなら胸熱」

 

占い師はその内に怒りで発現する状態といつか辿り着く可能性のある世界を色で見ていたようだった。

 

「相変わらずポケモンの事ばっかりですねー♩」

 

「おはようからおやすみまでポケモンの事で頭がいっぱいだからね、仕方ないね」

 

「前回はニャースに夢中でしたものね」

 

「オフの時の声とオンにしてる時のツンデレ美少女ボイスの差が半端ないニャースね……ふぁ」

 

頭を優しく撫でられ続けて眠くなり始め、身体を起こそうとしたが肩を優しく抑えられて起き上がれなかった。

 

「このまま寝ちゃいましょうねー」

 

「まだパチュリーさん達に挨拶してないの」

 

「パチュリー様達には私が話をしておきますから。その間は私の枕と掛け布団もお貸ししますね」

 

「いや、貸して貰える部屋で……」

 

「ぶっちゃけちゃいますとツカサさんの匂いを私のベッドに染み付けて欲しいのでここで寝てくださいね」

 

「いや普通に男臭くなるだけだからやめた方がいいと思うの。カロスにいる時はドレディアとアマージョのお陰か甘い香りがしてたみたいだけど」

 

「まぁ、さっきの紅茶に一時間程痺れちゃうお薬を入れておいたので横になっているしかないんですけどね」

 

「あー……だからさっきから妙な痺れが来てるんだねー。動けない程じゃないけど誰かに狙われたら死ぬレベルの」

 

「ですから寝ていてくださいねー」

 

そう言うとそのまま頭を持ち上げて膝を抜き、ベッドに横にしてから掛け布団をかけて部屋から出て行ってしまった。

 

「凄い可愛い笑顔で痺れ薬を紅茶に入れてたとかやっぱり小悪魔さんも悪魔なんだなって……カロスに帰ったら耐性付けられないかお師匠様方に聞いてみよう」

 

尚、長期休暇に登らされる塔で想像を絶する毒のような物を飲まされて一昼夜悶え苦しむ模様。

 

………

……

 

「あの後すぐにパチュリーさんが慌てて入って来て解毒してくれてよかった。呂律も回らなくなってきてたし」

 

「ダメですー!ってパチュリー様に小悪魔さんが引っ付いていた理由はそれだったんですね」

 

まだ微妙に痺れを感じているが美鈴の元へと足を運んだらしく、美鈴に膝枕をしてもらいながら話をしていた。

 

「それより美鈴さんのポケモンがすっごいお腹に乗ってくるんですけど。何このコジョフー可愛い」

 

「好戦的で私にもまだ完全には懐いてないのにデレデレしてますね……」

 

「生放送特番の司会とかいう無茶をやらされた時に、ゲストがドヤ顔で私以外には懐かないとかいって出したポケモンが即俺に懐いたりもしたからなぁ……」

 

全盛期のツカサ伝説の一つになるチャンピオン生放送で他人のポケモン籠絡事件である。

 

「大変なんですねぇ」

 

「使い勝手がいいって思われたみたいで、前チャンピオンがあまり出なかったバラエティ方面からガンガン出演依頼も来ちゃってるのが面倒臭いんですよ」

 

色々動きもあって春にはコンテストの情報番組がリニューアル、料理を作ったり夏野菜を育てたり甘い物対決をしたりする新番組に抜擢されていたりと暫くは慌ただしい日々が続く事になる。

 

「あ、面倒臭いなんて言ったらダメですよ。求められているのならしっかりやらないと」

 

「しっかりやるとドン引きされちゃうの。壁走ったのがダメだったのかなぁ」

 

撮影中にポッポが目を回して空から落ちてくるのを見て走り出し、そのまま壁を走り高く跳躍をして助けたらしく見ていたスタッフ達が人間離れした動きにドン引きしていたらしい。

 

「うーん、普通ですね」

 

「ですよね」

 

 

それからすぐに成長加減を見たいので手合わせをと言われ……

 

「ぜ、全身が軋む……」

 

「赤い闘気を纏って強くなっていたみたいですけど、その強すぎる力に振り回されて意味がなかったですね」

 

「全部目を閉じたまま避けられるなんて予想外……はぁ、ふぅ……」

 

「最初に掠った時に速さが今までの大体二倍くらいだって分かりましたからね。後はそれに合わせれば避けられますよ」

 

「切り札を切ったら即見切られてるとかメゲるわ……」

 

 

 

それからほんの数日が経過し、ちょっとした技を身につけたらまた来るからとあっさりとした別れを永遠亭、紅魔館、守矢の集まって来た者達に告げてカロスへと帰って行った。

 

帰ってから次は何処に泊まるかで激しい弾幕ごっこが起こり、今回は完全にスルーされた博麗の巫女があまりの騒ぎに異変かと飛んで来て大変な事になった模様。

 

………

……

 

紫に直接自宅の部屋に送ってもらい、またいつかと握手をして別れていた。

 

セレナは出掛けているらしく、とりあえず向こうで仲間にしたポケモン達をサーナイトに預けて部屋着に着替えてからベッドに腰掛けている。

 

「グラジオ、カントーに行ってみたいって言ってたから試しに凶真に預けたけど大丈夫かな……」

 

「ピカ」

 

「凶真に染まってたりして、とか怖い事を言うのはやめてよね。グラジオは兄さん兄さんって付いてくる俺の可愛い弟分なんだから」

 

「ピーカ……ビッ!」

 

「ピカァ!」

 

「おぉ、ピカチュウが走って来たピカ子の蹴りで吹っ飛んだ。何かすげー仲悪いのは同じピカチュウだからなのかな」

 

そのまま取っ組み合いの喧嘩になり、流石に騒がしくなるのはダメだとツカサが二体の電撃をくらいながらも止めに入っていた。

 

「なんつーか慣れちゃって軽く痺れるくらいで済んでる自分が怖いなぁ……」

 

「ピーカー……」

 

「ピッカァ」

 

「ツカサ、さっきからうるさいニャ!」

 

ツカサの机で家計簿を付けていたニャースが振り向いて騒ぐ三人に文句をぶちまけていた。

 

「何で俺が名指しで怒られなきゃいけないのって話ですよ。それならね、自分が止めてみろって話でしょ。私はそう言いたいですけど」

 

「ニャーはツカサみたいに人間辞めてる存在とは違ってポケモンやめてないから嫌ニャ」

 

「悲しい現実を突きつけられて終わりですね」

 

「そう言えばツカサ宛の手紙がまた来てたニャ」

 

そう言うと机に置いていた手紙を手に取り、そのまま椅子から降りて手渡しに来た。

 

「ありがとう。……片桐さんと佐久間さんからだな。前者は仲良くなって連絡先やら交換したから分かるけど、後者は本当何処から俺の住所を知ったんだろう」

 

「毎週あかいいとを同封して日常の事を書いて送ってきてるのニャ?」

 

「何かあちらの自腹で俺が佐久間さんのファンクラブの会員になってるっぽいのがちょい怖い。連絡取ろうにもこっちは分からんし、事務所に電話するのもおかしいだろうし……まぁ、これ以上は怖いから考えるのやめる」

 

「いつか刺されるニャ」

 

「何で刺されないといけないんですか」

 

ゲンガーだけでなく最近は妙なポケモンがツカサの影に潜んでいるようで、仲良くなったのかゲンガーと日替わりで影に潜んでいるから安心だったりする。

 

「彼女が欲しいとかモテたいって流れで言ってみたけど実はどうでもよくてポケモンさえ近くに居れば後は何でもいい、って発言をするような奴は刺されても仕方ないニャ?」

 

「実際ポケモンさえ居ればいいしなぁ……厄介な事になりそうだったら着の身着のまま旅に出ればいいな」

 

「まぁ、もう何処にも逃げられないから安心だけどニャ。ツカサの兄弟子さんとお話をしたら快く承諾してくれたニャ」

 

「それはガチで逃げ場ないやつじゃんか……」

 

「その代わりにツカサは明日、兄弟子さんの知り合いの息子さんのお誕生日パーティーにゲスト参加ニャ」

 

「バカなの? ねぇ、バカなの?」

 

ポケモン大好きを恥ずかしげもなく全面に押し出しているツカサは子供人気も高く、セレブ的な家庭は子供の誕生日会に呼びたいと打診している所が多い。

 

「ニャー、安い出費で助かったのニャ」

 

「また知らない人に囲まれるの嫌なんじゃが……兄弟子の家族はもう何か家族の一員みたいにしてくれてるけど。てか俺なんかよりハルカ、ヒカリ、メイを連れて行くのはどうだろう」

 

「きっとツカサみたいに暇じゃねーのニャ」

 

「ひでぇ。てか雑誌のインタビューで俺を名指しして対談がしたいとかやめていただきたいね」

 

「ちなみにネット上だと運良く辿り着けた挑戦者を笑顔で蹂躙するチャンピオンパッション、クール、キュートって書かれてたニャ」

 

加減なんて知らない彼女達はリーグ挑戦者相手にはレックウザ、ギラティナ、ゼクロムといった伝説のポケモンを初手から繰り出し蹂躙する事で有名になっている。

 

「あいつら基本的に加減を知らない鬼だからな。俺みたいに勝てるかもって希望を徐々に折るんじゃなくて、最初から全力だから性質が悪い」

 

ツカサのバトルはいつか乗り越えられるかもしれないと後で思わせるようにしているが、三人娘はいきなり心を折って圧倒的な戦力差で蹂躙するタイプだった。

 

「……ニャーとツカサが今度のチャリティーバトルの前に予習も兼ねて見た防衛戦の映像は酷かったニャ」

 

「あいつらぜってー嫁の貰い手ないぜ。俺だったらやだもん、あんな笑顔で蹂躙する自分より強いトレーナーの嫁さんとか」

 

実際防衛戦を幾度かこなした後には誰一人口説こうとしなくなったらしく、寧ろ通ると壁際に寄って立ち去るまで頭を下げ続ける程に恐れられている。

 

「まぁ、誰かしら犠牲になるニャ……手遅れだけどニャ」

 

「俺はきっと……俺のファンの女性でなおかつ俺の事が好きで、それでそういう人が会いに来てくれて、恋に発展して……素敵な事じゃないですか」

 

「ハッ」

 

「冷ややかな目をして鼻で笑うなよ……そんな夢を見てもいいじゃない」

 

「馬鹿言ってないで早く明日の準備をするニャ。ツカサを許容出来るファンはいねーニャ」

 

「いるかもしれないじゃない」

 

「そんな電気でビリビリしながら平然としてる変態には間違いなくいねーニャ」

 

興奮状態のピカチュウ達を引き離し抑えており、ビリビリしながらずっと喋っていたらしい。

 

「好きでビリビリしてるわけじゃないのよ」

 

「とりあえず明日の誕生日パーティーの子はツカサの大ファンらしいニャ。サイン入りモンスターボールとか喜ばれるんじゃないニャ?」

 

「そんな安いものでいいのかな……」

 

子供達のネットワークは凄いもので、あの船でサインをした子供の自慢から話が広がりツカサからサインを貰うならモンスターボールというのが常識になってしまっていた。

 

「寧ろそれがファンには最高のプレゼントになるはずニャ」

 

「そっかー……メーカーが何で送って来たのか分からない子供用リオルキッドなりきりセットもついでにあげよう」

 

そんな話をしながら翌日の準備を済ませ……

 

………

……

 

「何か普通にお祝いをしに行ったら物凄く喜ばれたわ」

 

「セレナはもう寝てるから静かに話そうニャ」

 

「うん。それと空も飛べるようになったし、お師匠様が更に増えて弟分も更に一人増えた」

 

尚、弟分二人よりも遥かに弱い模様。

 

「人は空を……あぁ、兄弟子さんが飛んでたニャ」

 

「ちなみに新しいお師匠様は兄弟子のライバルの方で、どちらの育て方がより伸びるかを今度の長期休暇でやるって言われて今から超怖いなぁ……。五人に囲まれて謎パワーを送り込まれて妙な状態に変化した時はどうしようかと思ったよ。コツ掴んだからそれもオンオフ出来るようになったけど、死ぬ程疲れるからやりたくない」

 

「ツカサは何処に向かってるのニャ?」

 

「自分でもどうなっていくのかわかんないよ。新しいお師匠様の奥さんに凶真……岡部さんの事をさりげなく話してみたら興味持ったみたいだったよ。今度見に行ってみるって言ってたなぁ」

 

「いきなり世界的に有名な企業の実質トップが見に来るとか倫太郎には同情するニャ」

 

「俺だったら心臓止まるかもしれん」

 

「あのキャラが崩壊する姿が目に浮かぶニャ」

 

「CCに一度見学に行きたいって言ってたし、俺からの素敵なサプライズだな。凶真からすっげぇ電話来そうだけど」

 

「振り回す側が振り回される側になるからニャ」

 

「そういやチャリティバトルの事前募金額が凄いらしいよ。新しい試みで何かを演じながらバトルをしたり、チャンピオン達によるコンテストバトルをしたりとか、いつもみたいな固いだけのバトル以外にも色々やるってさ」

 

他にもチャンピオン達による料理対決やら一週間丸々使った大規模イベントで物販などもあり、事前販売の各地方のグッズも既に好調な売り上げを出している。

 

「ツカサが全制覇してドン引きされる未来が見えるニャ」

 

「伝説のポケモンを使わない俺は大穴なんだって。カントージョウト統一、ホウエン、シンオウ、イッシュが人気みたい」

 

「まだまだ知名度不足ニャ」

 

「知名度か……誕生日パーティーで格闘技世界チャンピオンにサイン貰ったけど不思議な魅力のある方だったよ。あんな愛されるチャンピオンに俺もなりたいな」

 

 

チャリティイベントが後少しに迫り様々な地方は調整に入り、ツカサにもリーグや四天王達からの要請が入る日が近い。




今回もフランちゃんと咲夜さんはおあずけな模様。
とりあえずタイムマシン繋がりだったり、グラジオが預けた先のせいでサンムーン本編よりやや酷い感じになってしまったり。

次くらいからチャリティーイベントに入る予定だけど、次はいつになるかは未定。



アポイベントはQPが美味しかったくらいしか覚えてないなぁ。

ジャック欲しさに我慢出来ずジャンヌとジャックピックアップの時に10連だけして、虹回転ジャンヌ二枚抜きっていうそっちじゃないけど神引き。
宝具3ジャンヌは防バフでカッチカチになりそうだなぁ。


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イベント初日のお話

今年はカントーでのチャリティイベント開催だったらしく、ツカサはやたら高いホテルに泊まる事になりソワソワしながら連れて来たポケモン達の世話をしていた。

 

「ハルカ対策のレックウザ、ヒカリ対策のゼルネアス、メイ対策のキュレム……後は過去に旅した面々を連れて来たけど」

 

カロス四天王達がドン引きするくらいの数を連れて来ており、試合毎に別のポケモンを使うツカサのデータが集まらず各地方のチャンピオンは苦戦を強いられる事になる。

 

圧倒的な力で捩じ伏せる面々の人気は相変わらず高く、伝説や幻を所持していないと思われているツカサの人気はチャンピオンの中では未だ低い。

 

「ピカー?」

 

「カントージョウト統一チャンピオン対策にジガルデのきよひーも連れて来てるよ。ホウオウを使うらしいし」

 

四天王も含めた総当たりなのかと思っていたようだが、四天王は四天王だけでランダムに試合が組まれているらしくツカサは一人で全てのチャンピオンの相手をがんばるよう言われてしまっていた。

 

ぶっちゃけツカサが頭を潰せば四天王が勝とうが負けようが関係ないらしく、他四人は試合が終わった後の観光等のが大切なようだった。

 

 

 

そして記念すべき一日目の一試合目……

 

広すぎる大会場は観客で埋め尽くされ、天井は開いて青い空から太陽の光が降り注いでいる。

 

「悪役っぽいキャラを演じながらバトルってなんだよ……絶対途中から出来ないわこれ」

 

「ツカサ、容赦しないからね!」

 

「ハルカはお馴染みの初手レックウザかな? 旅してた時はやたらかもかも言ってたハルカはもう居ないんだなって」

 

今まで戦った事のないくらいでかい会場でのバトルにワクワクしていたが、チャリティバトルだからかキャラを演じながらという無茶振りをされていた。

 

「えっと……オーッホッホッ! さぁ、行きなさいダーテング!」

 

「ハッ、行けリザードン!」

 

『さぁ、記念すべきチャリティバトル第一試合はホウエンチャンピオンのハルカ! 好きなタイプは自分よりバトルが強く優しく家事が出来る人! これはアラフォーコース一直線だー! それに対するはカロスに生まれたニューチャンピオン、カロスのヤベー奴ことツカサー! 好きなタイプはみずタイプ、こちらは趣旨をまるで理解していないー!』

 

実況もノリノリなのか色々毒を吐きながら二人の紹介をしていた。

 

 

そこからは一進一退の激しいバトルが繰り広げられ、互いに一体また一体と倒れていき観客達の盛り上がりも凄い事になっていた。

 

「お願い、バシャーモ!」

 

「お前の師匠に勝利報告をしような、ゲッコウガ!」

 

ハルカの一番古いエースのバシャーモ、ツカサの2代目の黒いゲッコウガが場に出ると会場の歓声は更に大きくなっていた。

 

「バシャーモ、とびひざげり! ゲッコウガはあくタイプもあるはずだから当たれば一撃かも!」

 

「ゲッコウガ、かげうち」

 

とびひざげりを繰り出そうと踏み込むバシャーモの背後から影が襲い、それは体勢を崩すつもりの一撃だと誰もが思っていた。

 

「そんな攻撃じゃ私のバシャーモは倒れないよ!」

 

「だろうな。だから自爆してもらう」

 

 

ハルカからの信頼に応えてバシャーモは体勢を崩さずにとびひざげりをゲッコウガに放ち……

 

「えっ……な、なんで!?」

 

「俺のゲッコウガは変幻自在なんだ。かげうちを使うのにゴーストタイプに変わった、だからかくとうタイプの技は効かない」

 

微動だにせず睨みつけるゲッコウガの身体をバシャーモはすり抜け、とびひざげりの勢いを殺せず地面に激突してかなりのダメージを受けていた。

 

「それならほのおのパンチ!」

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

痛みを耐えてハルカの指示通りに走り寄ってほのおのパンチを繰り出そうとするも、それより速く動いたゲッコウガが掌に作り出した小型のみずしゅりけんで動きを制限され誘導されていく。

 

気づいた時にはもう遅く、いつの間にか分身していたゲッコウガが全方位からみずしゅりけんを放ち容赦なくバシャーモの体力を削り切ってダウンさせていた。

 

 

「バシャーモ! ……やっぱりツカサは強いわ。でも次でわたしもツカサも最後、勝つのはわたしかも!」

 

「そうだなぁ……あ、忘れてた。ハルカ達のバトルは素晴らしかった! コンビネーションも戦略も! だが! しかし! まるで全然! この俺を倒すには程遠いんだよねぇ!!」

 

唐突に悪役っぽいキャラを演じながらゲッコウガをボールに戻す姿は若干シュールな光景だった。

 

 

そして皆が待ち望んだハルカの切り札、伝説のポケモンであるレックウザの入ったマスターボールが手に取られフィールドに向かって投げられている。

 

「あの時より強くなった私のレックウザ、ツカサは倒せるかしら?」

 

「キュリリリリ!!」

 

緑色の巨体をくねらせ叫びを上げながら現れたレックウザがハルカを守るように佇んでいる。

 

「この瞬間を待っていたんだ」

 

最後の最後に出されたレックウザを見て不敵に笑うツカサが大モニターに映し出され、伝説のポケモンを相手にして笑えるツカサに観客達はやはりチャンピオンは普通のトレーナーとは頭の中身が違うんだなと思われていた。

 

 

「うん、やる気満々だな」

 

そう呟くと歓喜で震える最後のモンスターボールに手をかけフィールドに向かって投げている。

 

「キュリリリリリ!!!」

 

ボールが開くと黒いレックウザが渦を巻くように飛び出し、ツカサの周りを嬉しそうに回ってからハルカのレックウザと対面していた。

 

ツカサのレックウザは基準とされていたハルカのレックウザを越える大きさになっており、色も相まって威圧感が半端無い事になっている。

 

 

「……え?」

 

 

『初戦から伝説対伝説!! カロスチャンピオンは伝説のポケモンを捕まえていないクソザコナメクジだと一部から馬鹿にされていたがこれはどう言った事なんだぁぁぁぁ!!』

 

『どうやらカロスチャンピオンは強すぎる力を安易に振りかざさないタイプのチャンピオンのようですね。いつか誰しもが辿り着ける可能性のある手段だけでチャンピオンになったようですし私は好きなタイプのチャンピオンですよ』

 

『確かに毎年伝説のポケモンが最初にぶつかりあって立っていた方が勝ちのパターンばかりでしたからね』

 

視聴率も募金も年々減っていた理由がこれでワンパターンになりすぎており、ツカサの参戦に期待をして今年は盛り返しているがそれもここから最終日まで続くかどうかが問題だった。

 

更にハルカを相手に一歩も引かず互角以上に戦い、挙げ句の果てに黒いレックウザを出して不敵に笑う姿が魔王のようだと様々な地方の人達に印象付けてしまっている。

 

 

「レックウザ!」

 

「……我が心に応えよキーストーン! 進化を超えろ、メガシンカ!!」

 

レックウザへの指示を出すハルカを尻目にツカサはメガリングZのキーストーンに触れ、光を放つその腕を高く掲げていた。

 

襲いかかってくるハルカのレックウザと激しい空中戦を繰り広げていたが、ツカサの声を聞いて長い身体を打ち付けてハルカのレックウザを叩き落としている。

 

そのまま黒のレックウザが光を放ち始め、ツカサのリングから放つ光と強い祈りがレックウザに届いて混ざり合い光の繭が空高くに生まれ……

 

「来い、メガレックウザ!!」

 

黒く禍々しい見た目と更に迫力を増したメガレックウザを見て少々ツカサを舐めていた他地方のチャンピオンズは認識を改めていた。

 

 

ツカサ以外女性チャンピオンしか居らず、他に漏れず軒並み加減が出来ない面々で男からは避けられている。

 

容姿だけでなくオープニングセレモニーでのファンや纏わり付くホウエン、シンオウ、イッシュチャンピオンへの対応と、チャンピオンだけで挨拶をした時に全く怯えず笑顔で握手やハグに応じる姿で性格も良かった。

 

もしかしたらこれはチャンスなのでは?と皆が内心考えており、ポケモンの話で盛り上がった一部の者達は連絡先を既に交換しており内心勝ち誇っている。

 

 

 

「れ、レックウザ! 」

 

「メガレックウザ、これは俺達カロスの強さを証明する為の始まりのバトルだ。絶対に勝つぞ」

 

 

ハルカの言葉で襲いかかって来た自身の同族を睨みつけながらツカサの言葉に頷くと、その長い尾を鞭のようにしならせてレックウザの横っ面を薙ぎ払って地に叩き落としていた。

 

レックウザはたったそれだけで苦しそうに身悶えをしており、薙ぎ払ったメガレックウザはあまりの手応えのなさに戸惑っている。

 

今まで圧倒的な力で相手を倒して来たホウエンチャンピオンのレックウザがあっさり叩き落とされた事に観客達も静まり返り、何が起きているのか皆が理解出来ていなかった。

 

「……え?」

 

「まぁ、仕方ない」

 

毎日ツカサのポケモン達とのバトルで鍛えられているメガレックウザは今の一撃も防がれる前提で繰り出したらしく、まさかこうなると思わなかったようでチラチラとツカサを見ている。

 

 

「はっ……レックウザ、げきりんでこっちのペースに戻すわよ!」

 

「メガレックウザ!」

 

悶えていたレックウザはハルカの指示で急上昇、そのまま加速してメガレックウザ目掛けて襲いかかっていく。

 

 

メガレックウザは暴れようとするその全てを見切って会場を飛び回り、疲れ果てたのを見ると空に向かい急上昇

 

「ガリョウテンセイ!」

 

ツカサがこれでトドメにしようと出した指示を聞き、空高くから加速しながら疲れ果てているレックウザに向かって急速落下し……

 

 

『初戦勝ったのは……』

 

「俺の……勝ちだ!!」

 

バトルフィールドにはハルカのレックウザが埋まって気を失っており、ツカサのレックウザもメガシンカが解け少々フラフラしながら浮いている。

 

ツカサは悪役の演技を忘れて右腕を突き上げて勝利宣言をしていた。

 

………

……

 

試合後に勝者へのインタビューがあり、それに答え終わってハルカと握手を交わそうと近づくと

 

「ツカサー!」

 

「握手だって言ったでしょ! 離れなさいってば! こんな事してると彼氏やら出来なくなるぞ!」

 

まだ撮影されているのにプライベートのように抱きついてきて、慌てて離そうとしたが写真もパシャパシャ撮られて既に手遅れだった。

 

「あ、それは別にいいかも」

 

「いや、マジでハルカのママさんが嘆いて何故か俺に電話とかしてくるから言ってるの。最近は何かご機嫌で電話してくるからちょっと怖いけど」

 

個人の控え室ではなく暇潰しに大きな休憩室に集まっていたチャンピオン達はハルカが当たり前のようにベッタベッタする映像をビキビキしながら見ており、ヒカリとメイは自分達もバトルをしたらやろうと決めていた。

 

………

……

 

初日はもうやる事もなく自由時間になり、周辺の散策をしようと一度ホテルに帰って着替えてから出歩いている。

 

「兄弟子達はパーティーで知り合ったみんなと見に来るとか言ってたなぁ。姉さん達もグラジオ連れて来るって言ってたし」

 

「ピカピカ」

 

「明日はクッキングバトルの日だからなぁ……審査員にだけは絶対なりたくない」

 

各地方のチャンピオンのデータを見て全員家事×が付いてるのを見て何かの間違いじゃないかと資料の担当者に連絡をするも、何一つ間違っていないと言われて絶句していた。

 

「ハルカ達には俺が旅の最中に何度も料理くらいは出来るようになれって言っておいたのに……」

 

「ピカピーカ」

 

 

二日目は色んな意味で地獄絵図になるのは確定だった。

 

観客、実況、ツカサの誰もが怯える中で抽選で選ばれてしまう審査員、嫌だぁぁぁっ!!という切実な悲鳴と共に連れて行かれてしまう選ばれた幸運な観客。

 

毎回各地方チャンピオンが頬を朱に染めながら審査員に指名してきて、撮影されていようが関係なく美しい土下座をして断るもそのまま運ばれて行くツカサ。

 

「とても嫌な予感がする……俺のお腹が大変な事になるような」

 

「ピカ?」

 

「審査員は可哀想な料理研究家に抽選で選ばれた観客、会場内の誰かから指定だから心配はないと思うけど……嫌な予感が拭えないわ」

 

 

ピカチュウに愚痴りながら公園のベンチに座りボーッとしており、これから暇な時間をどう潰そうかと考えているだけで時間が過ぎて行く。

 

「異星人の霊に教えてもらった瞬間移動、早く自分の物にしたいなぁ……毎日姉さんに会えるようになるとか最強の技だわ」

 

留美穂が毎日会いたいと言えばそれだけで即自身の物にするくらい振り切っているが、今は早く使えるようになりたいと焦って中々身につかない悪循環に陥っている。

 

「しかし最近荒廃した未来の世界とかいう怖い夢を見る日が続くのが嫌だなぁ」

 

「ピカ、ピカピカピ」

 

「うなされてるからって顔を叩いても痺れさせても起きないって? もっと優しく起こしてくれよな~、頼むよ~」

 

「ピーカ」

 

ありえた絶望の未来の世界に精神だけで行っており、その時だけ肉体も構成されていて向こうで死ねばこちらでも死ぬかなりヤバイ状態なのに気がついていなかった。

 

「とりあえずうなされてたらみんなで起こしてくれればいいよ。あの世界は怖いから……」

 

先日は苛烈な戦いが始まるのを目撃して気を抑えて潜み、終わった後に倒れていた二人を見つけ運んで助けたりしている。

 

こちらで貰った不思議な豆もいくつか持ち込めていたらしく、自分が起きる前に食べさせた所で目を覚ましていた。

 

「ピカピー?」

 

「兎に角起こして。……そういやわたぼう達があの不思議な豆を育てるって全部持って行ったけどどうなってるんだろう」

 

皆に大切に育てられて順調に成長しており、一年後にはちゃんと一定数収穫出来るようになっている。

 

 

アイスの移動販売の車が来たのでポケモンも食べられる物を購入し、再びベンチに座りピカチュウと一緒に食べていた。

 

「チャァ……」

 

「頭がキーンってする……」

 

美味しかったからか早く食べ過ぎて一人と一体はアイスクリーム頭痛に苦しめられている。

 

ピカチュウはスプーンを手に片手で頭をテシテシ叩き、ツカサはアイス片手に額をトントン叩いていた。

 

 

同じようにアイスを買って歩いて来た学校帰りの女生徒達にクスクス笑われているがそれどころではなく、治るタイミングまでシンクロする光景を皆が見守っていてくれている事にも気がついていない。

 

「……あー、痛かった。なんならクレープでもよかったかもしれない」

 

「ピーカ! ピカ、チャァ!」

 

「でもアイスが好きだからね、しょうがないね」

 

ツカサは気づいていないが亞里亞の家の執事やメイドの何人かが私服姿で見守っており、不埒な人物等の接触がないよう警戒と亞里亞に送る写真を撮っていた。

 

ツカサのご先祖様に兄弟子とそのライバル、年の離れた友人である兄弟子の息子にツカサと種族的にお金持ちな異性に好かれやすい何かがあるのかもしれない。

 

「ピカ!」

 

「モーモーミルクのアイスは美味しいもんな。ビークインの蜜かけたり、ドレディアの花の蜜をかけたり」

 

様々な天然素材でアイスを自作するらしくサナやティエルノ達にも好評で、セレナパパのカフェにも稀にアイスを納品しており即完売になるくらいの人気はある。

 

不思議な豆程の効果はないが擦り傷や切り傷といった軽い物や荒れた手や肌等にも効果があるらしく、食べるだけで肌荒れが治ると深夜まで勉強をしているセレナは毎日食べてツヤツヤしたお肌を保っていた。

 

「ピカ、ピカピー」

 

「帰ったら作ろうな」

 

………

……

 

ホテルに戻り夕方のニュースを見ているとド派手な初戦の事が取り上げられており、自身が初参加でハルカを破った事でカントー以外にも名を轟かせる事になっていた。

 

「うわぁ……ネットだけで有名だった頃に戻りたくなる。うたた寝してただけで荒廃した世界の夢を見るのはつれぇわ」

 

うたた寝ですら迂闊に出来なくなってしまい頭を抱えている。

 

「森の警備に雇って四月から来てくれるっていう17号さんともう一人の兄弟子の奥さんの18号さんに似た二人組が暴れてたの超怖い」

 

自然とポケモンの保護も兼ねて割と厳しい条件で募集しており、十中八九来ないだろうと思っていたら来たらしく即採用。

 

広範囲の見回りと怪我をしたポケモンの保護、今は被害は出ていないがポケモンハンター等 が侵入した時の対処等の危険な可能性もある故にかなりの高給だった。

 

「あぁ、また眠く……」

 

地獄を見た。

 

………

……

 

「あの世界の悟飯さんパネェ。教えるの上手いし……年齢以外フィードバックしてるからちょっと服のサイズがキツいな。金髪碧眼、こっちの変身のがカッコいいなこれ。……あれ? これから人助けの時はこうなれば正体バレないんじゃね?」

 

翌朝眼を覚ますと何かに吹っ切れたツカサは鏡の前に立ち、逆立った金髪と鋭い碧眼を見ながら呟いていた。

 

「野生のミルタンクが沢山居たお陰でモーモーアイスを沢山作れたから助かったなぁ。修行で出来た怪我も治ったし、コンディションも整うから毎日が修行修行……」

 

鬱フラグブレイカーとして派生した世界を掻き回し中であり、更に適応する程度の能力がヤベーくらい機能して恐ろしい速度で成長しており兄弟子達も会場で再会した時に驚くレベル。

 

「……ん? こっちの十数時間で向こう側でのランダム日過ごせて、更に老けず色々フィードバックするとかチートやんけ」

 

もう存在そのものがチートの塊なのでセーフ。

 

「確かこっちは……あ、二日目だっけ。朝食に新聞もお願いして総当たり一日目の結果見ないと」

 

 

初日は統一、シンオウ、イッシュは当然のように白星を挙げていた。

 

「うわっ、相変わらずエグいなぁ……」

 

鮮烈な世界デビューを果たしたツカサ特集も組まれており、ハチクマンが置かれている希少なレンタル店では特設コーナーが早速出来ている。

 

「ギラティナとゼクロムとホウオウが大暴れとか伝説所持者は圧倒的すぎるのがまたなんとも……明日は午後の一般参加も可能なちょっとした武道のレクリエーションに格闘技世界チャンピオンのサタンさんが来てくれるんだ。挨拶はしに行くとして……うわ、参加者には自腹で賞品を用意してるとか本当いい人すぎる」

 

新聞に挟まれていた予定表を見ながら呟いていた。

 

「……『あの唯一の男性チャンピオンであるカロスチャンピオンも参加するぞ!』って隅っこに書いてある。やだー!」

 

尚色々やらかしてもカロスチャンピオンだしなぁ、で済まされるくらいに有名になってしまっている。

 

カロスの有志が作ったまとめサイトにはやらかした事の時期一覧や写真、動画もあり初心者からツカサガチ勢まで楽しめる模様。

 

「……最優秀者には『どんな怪我も治すマシンを自宅に設置しませんか?』のCMで有名なクウラさんの会社の最高級メディカルマシンが貰えるの? ガチで勝たなきゃ」

 

鍛え始めた今は割とガチで欲しい物だったが高すぎて手が出せず、賞品になるなら必ず手に入れてやろうと物欲に釣られていた。

 

「まぁ、まず負けないだろうし余裕……嫌な予感がする。兄弟子とか普通に楽しそうだからとか言って参加してきそう」

 

パーティーで知り合い仲良くなった面々は賞品に釣られたり兄弟子が出るならと軒並み参加し、ちょっとした天下一武道会のような様相になってしまう模様。

 

「とりあえず今日のクッキングバトルをがんばろう。四天王のみんなはカントー観光を楽しんでて写真まで送って来てめっちゃ腹立つけども」

 

殆どの四天王はチャンピオンとは一歩引いて公私を分けているが、カロスはツカサに変わってからみんなで仲良く食事をしたり遊びに出掛けたり日常的にバトルをしたりと仲良くなっていた。

 

 

そして激動の二日目が始まる……




色々やらかしていく初日。
三号に任命されちゃう可能性が高まる。


またジラーチの配布がポケセントウホクオンリーでいい加減嫌になってきた。
トウホクだけ色違い、その他ポケセンは通常色の配布でいいじゃん……。






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二日目のお話

二日目は数戦のバトルが先に行われ、ツカサの試合は満員御礼で会場に入れない人が出る程だった。

 

相手は色仕掛けで指示を出す時の動揺を誘いながらしっかり育てたポケモンでチャンピオンになったその地方では有名な美少女チャンピオンであり、これは流石のカロスチャンピオンもヤバイかもしれないと思われていたが……

 

「やーん、スカートが捲れ……」

 

「メガルカリオ、インファイトでブチ抜け!!」

 

胸元を露出する等の色仕掛けを一切無視。

 

容姿に自信のあった相手のプライドはズッタズタ、鍛えたポケモンはボッコボコで最後の一体が倒れた時には涙目になっていた。

 

そんな相手に興味がないツカサはルカリオとハイタッチをしてからボールに戻している。

 

 

そしてインタビューでは

 

「何で色仕掛けにかからなかったのか? いや、だってバトル中にそんなの気にするわけないでしょ。それに姉さんに女性の胸とかをジロジロ見るものじゃないって言われてますし。見ていいって言うなら見ますよ、これでも男ですからね」

 

至極真っ当な意見を不思議そうに答えており、近くで涙目で聞いていた他地方のチャンピオンは引っ込んだら改めて見せようと涙を拭っている。

 

尚このインタビューが行われるまでカロスチャンピオンはホモ、野獣先輩カロスチャンピオン説等色々大変な話題がネット上で起きていた。

 

 

他のチャンピオンのバトルを一人控え室でダラダラ見ていると兄弟子がいきなり現れ、手にした山吹色の胴着一式とインナーやら靴やらを手渡されていた。

 

それじゃあまた明日な、とだけ言われそのまま消えてしまい頭を抱えている。

 

「はっ、あ、ちょっ! えぇぇ……チチさんの好意で用意してくださったみたいだけど、流石に仕立てたお金は渡さないと」

 

旦那や長男があまりやらない事を率先して行い、下の子の遊びから勉強までしっかり見て懐かせ、料理も美味く良い肥料を持って来てくれたりと超好印象で最早ナチュラルに家族の一員として迎えられていた。

 

「すげぇ、いい生地使ってる……これカロスの職人に定期的に作ってもらおう」

 

以後も何かある度に新調して届けてくれるらしく、今は亀の字が入っているがいつの間にか一家の一員として孫という字にひっそりと変えられる事になる。

 

「明日はこれ着て最優秀者になろう。最悪でもフリーザ冷凍食品の一年間毎月新作が一ヶ月分届くのが欲しいなぁ……」

 

他にも車やら服やらブランド物やら色々あるが、ポケモン関係が全くないからかツカサはメディカルマシンと食べ物にしか興味を惹かれていなかった。

 

「あ、さっきのチャンピオンからまた写真送られて来た。何で俺の知り合う相手は変態か普通かの二択なんですかねぇ……わざわざ自撮りで谷間やら太ももやらの写真を送って来るなんて痴女かな?」

 

今まで可愛い綺麗エロい等で視線を独り占めするのが普通だったのが普通に無視され、控え室でも連絡先を交換して即お疲れしたーと興味なさそうにされてブチっと何かが切れたらしい。

 

「早苗とセレナ並だから容姿はいいのに……しかしでかい」

 

普段は引きこもっていてセレナくらいしか見ていないからかマジマジと画像を見ながら呟いていた。

 

現在

ポケモン関係>強い者との戦い>>>>>異性への興味

になっているが年相応には興味はあるらしい。

 

「性格に難あり、このチャンピオンの地方の女性からは軒並み嫌われてて色仕掛けでの動揺を誘うバトルで男からの人気も低い処女ビッチ。えぇ……すっげぇ悪く書かれてる。早くチャンピオン交代してくれとかコメントの数も凄い……あ、カロスの新チャンピオンがうちのチャンピオンだったらよかったのにってコメントは嬉しい」

 

対戦相手のまとめをスマホで調べてみてドン引きしている。

 

ツカサ以外のチャンピオンの書き出しは性格に難ありがデフォになっており、ツカサは様々な悪の組織を潰しまくったのが露呈して悪の組織絶対殺すマンと書かれていた。

 

子供達に混ざりガチャポンを回して被ったのを交換していたり、ゲーセンで幼女先輩達に囲まれて指導されている姿の写真等も載っている。

 

昨日のピカチュウと頰を寄せ合ってアイスを食べている写真もあり、趣味は子供レベルと書かれてしまっていた。

 

「大人の趣味ってなんだよ。いいじゃん別にガチャガチャして幼女パイセンに教わってアイス食べても……ピカチュウがオムライス好きだから俺も好きでもいいじゃない」

 

………

……

 

阿鼻叫喚の料理バトル、ツカサは食べられなくはない絶妙にクソ不味い料理を出され続けて毎回完食してから素で0点評価と厳しいコメントを出し続けていた。

 

尚最初はツカサの罵倒に近いコメントに会場はされた側を擁護するような騒めきが起きていたが、完食出来ず悶える残り二人の審査員を見て何かを察している。

 

しかも散々罵倒するようなコメントで半泣きにさせながらも審査員二人がギブアップした残りをしっかり食べていた。

 

「甘辛苦しょっぱいとかなんなんだよこれ……」

 

 

「カロスチャンピオンがんばれー」

 

「あんなに食べてるし実は美味しいとか?」

 

観客席から応援や第三者だからこその無責任発言が飛び交っている。

 

「おう、今実は美味しいとか言った奴に食べさせてやろうか。寒気と鳥肌と吐き気に手の震えに急に視界が真っ暗になったり半端ねーぞ。抽選でそいつ引っ張り出して地獄を見せてやりたい」

 

 

「カロスチャンピオン、○○××番ー!!」

 

「ばっ、やめろォッ!!」

 

 

「サンキュー、教えてくれた人超愛してる! よーし、次の一般審査員はこれで決まりだな!」

 

ぶるぶる震える手でスプーンを口に運びながら精一杯の笑顔で元気に応えていた。

 

 

もうチャンピオンからの指名枠はツカサ固定でいいなという判断により逃げられないよう黒服のSPが審査員席の背後に立ち、ツカサは突っ伏してブツブツ呟いていて少々不気味だった。

 

「……美味しいご飯が食べたいよぅ」

 

切実な呟きがマイクに拾われて会場が一瞬静まりかえり、がんばれ負けるなと応援の声が上がっている。

 

「俺このまま食べ続けたら死ぬかもしれんな……」

 

食べ合わせが最悪過ぎて瀕死状態→少し落ち着くをループしており、種族的にはかなり美味しい状態だった。

 

『えー、あー……がんばれカロスチャンピオンツカサ! 君が最後の希望だ! 今回のクッキングバトルで君以外のチャンピオンの婚期は間違いなく遠退いたぞ!』

 

「でしょうね! 会場にいる良い子のみんなはちゃんとお母さんに料理を習おうね! お兄さんとの約束だからね!」

 

『はい、切実なカロスチャンピオンの叫びでした』

 

「何でみんな料理下手なの? 旅の時に作らなかったの? 戦うだけでレトルトとかで済ませてた戦闘民族なの?」

 

リアル戦闘民族の血筋が切ない疑問を呟き続けていた。

 

基本的にレトルト等で済ませるのが一般的であり、ツカサのように自炊しながら旅をするトレーナーは珍しい方だった。

 

『さぁ、まだまだ先は長いぞー! カロスチャンピオン、ファイト!』

 

「楽しいイベントだって聞いてたのに俺だけ楽しくない……」

 

視聴者や観客達は楽しんでいるからセーフ。

 

ネット上では一日目から半端ない速度でスレが消費されており、二日目は酷い料理画像が作ったチャンピオンの写真と共にアップされて阿鼻叫喚だった。

 

「鳥肌がさっきからおさまらないとか病気かな? お願いだから醤油スープとか言う醤油をただ沸騰させた劇物は二度と作らないで」

 

流石に飲んだら間違いなく死ぬから勘弁してくださいと土下座で拒否をした一品である。

 

 

そして……

 

「もうダメだ……おしまいだ……食べ切れるわけがない……」

 

押し付けられた生焼けの海老やほぼ素材そのままの野菜の入ったたっぷりのお湯が入った鍋を前にテーブルに突っ伏していた。

 

「来年絶対クッキングイベントには参加しない。何が悲しくてほぼ生の玉葱やらを丸齧りしないといけないの……素材の味を楽しむってこういう意味じゃないから」

 

………

……

 

「すっげぇ気持ち悪い……これからまだ何試合かあるとか辛い」

 

『ツカサ、私の出番はいつになるのですか』

 

「ディアンシーは最終日付近で当たる統一リーグチャンピオンの時かな。きよひーがちょっと興奮しすぎてダウン、代わりにお前さんが来てくれたのはありがたいよ」

 

『ツカサの一番のパートナーは私ですからね』

 

ドヤァっと両手を腰に当てて宣言しており、首からはツカサが加工したディアンシナイトがネックレスのようにして下げられている。

 

「亞里亞んちに行くのを知った時だけ即来る一番のパートナー」

 

『ふふふ、嫉妬しなくても私はツカサのパートナー……』

 

「いや、食い意地はってんなーって」

 

『レディに対して失礼です!』

 

「俺の舐めてた飴が好きな味の最後の一個だったからってチューしてまで奪いに来るのはレディとしてどうなの?」

 

『後々考えてみましたら、あれが私のファーストキスでした』

 

「食い意地で失うファーストキスとか知りたくなかったわ」

 

『レモンの味でしたね!』

 

「そうだよ」

 

そんな独り言のようで独り言じゃない会話を時間いっぱいまで楽しみ、残り数戦の本日のバトルをこなしに向かって行った。

 

 

巧みな指示で魅せながら場をコントロールするバトルと毎回様々なポケモンを使用するツカサの試合は人気があるのか、二日目の午後であるにも関わらず満席で立ち見も厳しいくらいになっていた。

 

「何かドヤ顔でそこが新米チャンピオンである君の限界だ、なんてバトルの前に言ってたけど……あー、うん。俺に限界はねぇ」

 

無意識にボソリと呟いたお気に入りの言葉もしっかりマイクに拾われていた。

 

 

ちゃんと分析したデータで挑んで来た相手チャンピオンだが午前のデータが午後にはゴミのようなものになっていたレベルで成長しており、それを逆手に取られて一方的に蹂躙される形での敗北で終わっている。

 

その後の試合でも安定して連勝記録を伸ばし、現段階で歴代最多連勝数を記録していた。

 

 

そして本日の予定もなくなり、帰り道にお腹を抑えてフラフラしながら公園に立ち寄ってベンチに座っていた。

 

「桃色の髪が見えて姉さんかと思って声をかけたら知らないギャルっぽい人で焦ったなぁ……ナンパと勘違いされそうだったから姉と間違えましたって謝って即離れたけど、直後に破壊神を名乗る方とお付きの方が来るとか予想外すぎるわ」

 

センスや才能が完全に兄弟子タイプ故に興味を持たれたらしい。

 

そのまま話の流れで軽く遊んでもらったようで、命の危機を感じて赤くなったり神の気を理解して瞬間移動を自分のものにしたりと成長していた。

 

その直後腹に強烈な一撃を貰って動けなくなり、それを見てつまらなそうに欠伸をしながら今後に期待するよと言い残して帰っていく姿を見送っている。

 

「……期待されたくなかった」

 

今後に期待→これからも会いに来る→強くならないと破壊されるかもしれないという考えに至って頭を抱えていた。

 

「金より強い赤でダメとか……やっぱり毎日限界まで赤になってコントロール出来るようにならないとダメっぽいなぁ」

 

一番やべー存在との遭遇でツカサの強さがインフレ的に加速していく事になる。

 

「金の先があるのは壁にぶち当たってるから分かるけど赤より先はあるのかな。まぁ、あっても赤が長く維持出来ないから無理だけど……ゼロがやったっていう修行を本格的にやってみるべきなのかな。」

 

 

 

悩みながらホテルの部屋に戻るとテレビをつけ、冷蔵庫に入れておいた水を取り出して飲みながらベッドに腰掛けている。

 

「四日目はコンテストバトル、五日目は本戦とは関係ないくじ引きタッグバトル、六日目と七日目は本戦とサインやら握手やらするって聞いたけど……絶対俺の所には誰も来ないパターン。普通に男よりロリからお姉様系チャンピオン達の所に行くよなぁ」

 

キッズ人気はダントツであり、他にも冷やかしで来る者や知人友人も並ぶので割と一番列が出来る事になる。

 

「……しかし、この羽根はいつまでもキラキラしてるから不思議だよなぁ」

 

ホウオウが落として行った羽根は何ヶ月経過しても輝きを失わず、ツカサはいつも肌身離さず持ち歩いていた。

 

「この大会が終わったらしばらく設備メンテナンスやらで各リーグの休業期間に入るらしいし、その間にホウオウ探しに旅に出ようかな。とりあえずピカチュウだけ連れてひっそりと早朝に出掛ければセレナにも見つからないだろうし」

 

亞里亞に仕えるメイド達がツカサの知らぬ間に居場所を特定する為の自社開発のアプリをスマホにインストールしており、世界中のどこに居てもスマホを持ち歩いている限りは居場所を把握される仕様。

 

 

「スイクン達曰く、羽根が導くらしいし気ままに旅しよう」

 

「ピカ、ピカピカピ」

 

「案外近くに居るかもしれないって? 流石にそれはないでしょ」

 

「ピーカピカピカ」

 

「もし森に居たらみんな騒いで教えに来るだろうし……まぁ、森の未開部分にホウオウが居るとかだったらガッカリするけど」

 

『都会はやっぱり面白くないね』

 

「守護霊なのに好き勝手動き回るのやめない? 寧ろ守護されてる霊だよね?」

 

守護霊少女にランクアップした元幽霊少女は基本カロスを自由に遊び回っているらしく、よく成仏出来ない霊を連れて来てはツカサに叱られている。

 

『ふふん、私は自由よ!』

 

「胸張ってすげぇドヤ顔してるけど、とりあえずおっぱいが足りない」

 

『死んでて成長しないから仕方ないんですー。大人になってたら大きくなってたのになー』

 

「まぁ、ヒンヤリした膝枕はいいからセーフ寄り」

 

『やったー。じゃ、また遊んでくるからね!』

 

「いや、だから……あぁ、壁すり抜けてった」

 

 

色々大変な二日目もようやく終わり、更に大変な三日目へ突入する。

 

 




料理を学ばなかった者達の末路。
一番ヤバい方との遭遇は決まってた。

次回更新は未定。


ギリギリ八月更新。
ポケモンの映画、今年は何かメインキャラ多すぎてなぁ。
正直去年のが面白かったと思う。





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色んな事があった三日目

お久しぶりです。


ボロボロの胴着で上はインナーだけのツカサが控え室で横たわっている。

 

「グラサンの司会の人、めっちゃテンション上がってたなぁ……まさかの参加者に死ぬかと思った。クリリンさん、ピッコロさん、悟空さんの順で戦うとか罰ゲームのがマシなレベルだわ」

 

皆で育てる期待の新人扱いで最後はどんなに相手が優勢でも必ず棄権をして次に回し、ツカサは毎回泣きそうなくらい辛い戦いを強いられていた。

 

「戦いながら金の壁を超えたと思ったら更にその上も見せられるし、それよりも強い赤の上には青もある……。姉さんの声が聞こえた気がして負けたくなかったからやるなって言われた神化をして、見様見真似で青になろうとしたら何か薄い桃色になったし。悟空さんが驚いた顔でロゼって言ってたけど何の事だったんだろ」

 

身体へかかるかなりの負担を耐え、これなら勝てるかもしれないと挑むも……

 

「青の界王拳はまず無理。腹に一撃貰っただけで一瞬意識飛んだし普通に死ぬかと思ったし、こっちの攻撃は当たらないしでなぁ」

 

青の強さに手も足も出なかったが適応する程度の能力と薄桃色の力で徐々に戦えるようになっていき、その事に気づいて嬉しそうに笑ったと思ったら今出せる全力を見せると言われフルボッコにされて終わっていた。

 

「もう今日は一歩も動きたくねぇ……」

 

「とりあえずがんばってきてね。その後にあの金髪、赤髪、薄桃髪について詳しく聞くから逃げないように」

 

「……姉さん?」

 

「そうよ。近くの席にいたチチさんとブルマさんに大体の話は聞いたけど、私は本人から聞きたいの」

 

予め渡しておいた関係者用のパスで控え室まで来たらしく、腰に手を当てて寝転がるツカサを見下ろしていた。

 

寝転がったままでは悪いと身体を起こして胡座をかいて向き合い、久々の留美穂を見て癒されながら言い訳を口にし始めた。

 

「最後のはほら、姉さんとお揃いの髪の色だから」

 

「私以外にも岡部さん達だって心配してたんだからね」

 

「だろうなぁ。佐久間さんと島村さんからも心配するメールが来てたし……どうやって二人がプライベート用のアドレスを知ったのかは怖いからスルー」

 

「それより今度私も空を飛んでみたいな」

 

気弾に舞空術に変身と二人のやりたい放題をサタンはトリックで誤魔化していたが、過去の天下一武闘会を知っている者はそれを信じていなかった。

 

「いいけどしっかり捕まってないと危ないからね。それと飛べるようになってからはとりポケモン達が毎朝空中散歩を誘いに来るようになったんだよ」

 

普通に飛べるミュウやミュウツーも来ており、飛びながら森に住むポケモン達に挨拶をしたりして楽しんでいた。

 

ズルいと喚くセレナを抱き上げて一緒に飛んであげたりもしている。

 

「ツカサにぎゅーってすればいいんでしょ? 空ってどんな感じなの?」

 

「それでいいよ、それと空は何か気持ちいいかな。雨の降ってる日にレックウザと雲を突き抜けて雲の上に出てみたり……何かその時に会った黄色いラティアスが懐いて来て、今は赤いラティアスと姉妹のように暮らしてるよ」

 

ラティオスには会えないらしく度々探しているが未だに遭遇出来ていない。

 

「いいなぁ。……この前会った時よりも筋肉ついてる」

 

「最近は鍛えるのが楽しいからね、しょうがないね」

 

「腹筋……」

 

「うちのピカ子がよくペロペロしてくる自慢の腹筋です。くすぐったいんだよね」

 

「何それ羨ま……ダメじゃないの」

 

「えっ、姉さん今羨ま」

 

「言ってない」

 

「でも……」

 

「言ってないから」

 

「……うん。そういえばこの前ちょっと用事があって空港に行ったんだけど、そこでポケモンの卵が二つ捨てられてて職員の方が困ってたんだ」

 

話を変えようと最近問題になっている免許のない自称ブリーダーによって生み出されて捨てられるポケモンの卵の話題を出していた。

 

「最近その手の話をよく聞くけど……」

 

「空港の卵は話をして俺が回収したけど、流石に世に溢れてる卵を全部は無理だね。白いロコンとタマタマが生まれたよ」

 

アローラから持ち込まれ捨てられたようでタマタマは巨大なナッシーに進化して森をノシノシと歩き回っており、白いロコンは自宅か裏庭で過ごしている。

 

「ブリーダーさんに卵をお願いする時の手続きが凄く大変な事に対して同級生が文句言ってたけど、ニュースとか見るとそれは仕方ない事なんだって」

 

「生態系が壊れちゃうから厳しいんだよね。ちなみに受け取り直前にやっぱいらないとかやると、以後手続きだけで一年近くかかるようになるから注意してね」

 

横の繋がりが強いブリーダー間で情報が共有されており、悪質なトレーナーの情報は即拡散されてしまう。

 

「どうしても卵が欲しくなったらツカサにお願いするから大丈夫」

 

「姉さんの為ならいいよ。……さてと、そろそろ着替えておかないと」

 

「午後からもがんばってね。それと……今日までがんばって勝ち続けたご褒美」

 

ツカサの頰に両手を添え流れるように額にキスをし、顔を赤くしながら部屋から出て行ってしまった。

 

「マジか……マジか。これ全勝したらどんなご褒美なの?」

 

ヘロヘロだった身体に活力が漲り、気合いを入れて着替え始めている。

 

………

……

 

ヒカリとのバトルは互いが互いの二手先を読もうとする激しくも静かなバトルが繰り広げられていた。

 

エンペルトがアクアジェットによる高速移動攻撃を仕掛け、ルカリオは紙一重でそれを避け続けている。

 

「エンペルト、ハイドロポンプ!」

 

「ルカリオ、ハイドロポンプごとブチ抜け! インファイト!!」

 

エンペルトらアクアジェットで突っ込みながら口を開き、ルカリオは真正面からそれを迎え撃つ構えを取っていた。

 

エンペルトから放たれた強力なハイドロポンプを受けるも怯まず、そのまま大地を蹴り水を切り裂くようにエンペルトへと迫り……

 

『エンペルトにルカリオ、共にダウンです!

今日まで数多のチャンピオンのエースを葬って来たエースキラールカリオ、ここに来て初のダウンだぁ!!』

 

「エンペルト、お疲れ様」

 

「ルカリオ、お疲れ様」

 

互いに気づいていないが全く同じ動きでボールに戻して同じ言葉をかけ、戻したボールを撫でて微笑む姿まで同じで会場からちょっとした笑いが起きていた。

 

ヒカリとツカサは何で笑われているのか分からず、互いに顔を見合わせて肩を竦める仕草まで同じでますます会場に笑いが起きている。

 

『クールに見えて天然系なシンオウチャンピオンヒカリ、好きなタイプは料理が上手くポケモンが好きでバトルが強い一つ年上の従兄と遠回しに名指しする大胆さ! 一方カロスチャンピオンツカサは追加アンケートの好きな異性の服装にメイド服かエプロンドレスと綺麗な字で書かれていたー!』

 

「いいよね」

 

メイド服やエプロンドレス好きに引くよりも本当に異性に興味があった事への驚きが会場に広がっていた。

 

 

そんな空気を壊すようにヒカリは最後のマスターボールを手にし、ツカサも最後のモンスターボールを手にしていた。

 

「この子はツカサと手を繋い……恋人繋ぎをして一緒に巡ったやぶれたせかいで……」

 

「えっ、何でヒカリは語り始めてるの」

 

「怯えるあたしの手をしっかり指を絡ませて決して離さないでいてくれて……」

 

「よーし……さぁ、出番だゼルネアス!」

 

シンオウを旅した時の事を頬を染めながら思い出して語り始めたヒカリを遮り、ツカサはモンスターボールをフィールドへ投げていた。

 

出された瞬間はリラックスモードだったゼルネアスだが即座にアクティブモードに切り替わり、角が煌びやかに七色に輝き始めている。

 

「貴方の出番よ、ギラティナ!」

 

投げられたマスターボールから飛び出したギラティナはオリジンフォルムと呼ばれる姿で現れ、ゼルネアスを嫉妬の眼差しで見つめて今にも襲いかかる気満々だった。

 

ゼルネアスはチラチラとツカサを見るギラティナを見て察し、フッと勝ち誇った笑みを浮かべて挑発していた。

 

 

「何か俺ギラティナにすげぇ見られてない?」

 

「あたしじゃなくてツカサに捕まりたかったんでしょ」

 

ギラティナもやぶれたせかいからたまたま暇潰しにツカサが成長していくのを見ていたらしく、一緒に旅をして野宿をしたり仲良く水浴びをしたりする妄想に耽っていたらしい。

 

「まぁ、いいや」

 

「ツカサって結構ドライな所があるわよね」

 

「まぁね」

 

 

二人がそんな言葉をかわしている間、ねぇ? どんな気持ち?と言っているかのようにゼルネアスはギラティナの周りをステップを踏むかのように回っていた。

 

「さてと……ゼルネアス!」

 

「ギラティナ!」

 

 

名前を呼ばれるとゼルネアスは華麗に跳び跳ねて襲いかかって来たギラティナの攻撃を避け、そのまま宙に浮いた状態でムーンフォースを乱れ打ちしている。

 

ギラティナはそれを全て避けてチラリとヒカリを見てから影に潜り込み、ゼルネアスは警戒しながら持たされていたパワフルハーブとジオコントロールで自身の能力を高め始めていた。

 

「あ、勝ったわこれ」

 

「え?」

 

ツカサが呟くのと同時にギラティナが影から飛び出しゼルネアスにその巨体をぶち当てて吹き飛ばしていた。

 

「シャドーダイブは悪手なんだよなぁ……ガチなムーンフォース乱れ打ち劇場始まるよ!」

 

「えっ、なにそれは」

 

そのツカサの言葉が会場に響くと吹き飛ばされていたゼルネアスが器用に着地をし、空高く跳び上がり逃げる暇を与えない速度でムーンフォースの乱れ打ちを始めていた。

 

容赦のない乱射に頑強なツカサ側のフィールドがバンバン砕けてその破片がツカサに襲い掛かり、ギラティナも巨体故に避け切れずほぼ全てが直撃している。

 

「凄い、あのポケモン落ちながら乱射してる……」

 

「危ねぇ!」

 

「味方にやられちゃうんだ……」

 

ヒカリが落ちながら乱射するゼルネアスを見ている間、反対側でツカサは飛んで来た破片を叩き落としたり蹴り砕いたり必死になっていた。

 

 

そして……

 

『圧倒的なスピードでの乱射でギラティナダウン! 今回もカロスチャンピオンツカサの勝利だぁぁぁぁ!!』

 

「よし勝った! 次勝ったらイーブイ柄のパジャマを自分へのご褒美に買うぞ!」

 

ゼルネアスの強敵の基準がツカサの家族である伝説、幻、旅をしたエース達という化け物軍団だったのがギラティナの敗因だった。

 

『そして今のバトルで歴代最多連勝の新記録達成です! どうですか解説のダイゴさん』

 

『このまま全地方のチャンピオンを撃破して伝説になってもらいたいですね。まだ幼い彼に将来なりたいものを聞いた時に伝説になりたいと言っていましたから』

 

『やはりカロスチャンピオンツカサは幼い頃からどこかズレていたぁぁぁ!!』

 

ツカサとヒカリの激闘で上がっていた大歓声が一瞬で笑いに変わっていた。

 

「? ……あっ、将来なりたいものって職業とかの事だったの?」

 

「それ以外ないわよ。寧ろ伝説とか言っちゃう小さい頃のツカサ可愛い」

 

………

……

 

ヒカリ戦の後にも幾度か戦い全勝して数時間後、ポケモンセンターで休ませていたポケモン達を受け取ってから連れて行くポケモンの入れ替えを行なっていた。

 

そして再び会場に入ると最前列で手を振るラボメン達に笑顔で手を振り返している。

 

「今日ヒカリとメイって地味にキッツい」

 

「先輩の連勝は私がストップさせちゃおうかなーって」

 

「名前呼びだったのに可愛く先輩呼びとかあざとい。まぁ、負ける気はないけど」

 

「先輩って本当頭おかしいレベルで戦い方が変わるのよね……さっきも勝ち抜きで倒れるまで交代はなしルールを押し付けられたのにピカチュウだけで6体倒すとかいう意味不明な事もしてたし」

 

ピカチュウに覚えさせていた技が上手く噛み合ったらしく、ツカサも思わず笑ってしまうくらい綺麗に倒してしまったらしい。

 

「こんな大観衆の中でピカチュートをやらされた俺の身にもなって」

 

「あの手で耳を作ってパタパタするの可愛いですね」

 

「くっ……」

 

恥ずかしさに顔を赤くしながらツカサは急いで指示された場所へと走って行った。

 

 

 

バトルが始まると相変わらずの一進一退が続き、白熱する会場の空気を感じながら互いのエースを繰り出していた。

 

「お願い、ジャローダ!」

 

「頼んだよ、フォッぷ」

 

ボールから出たジャローダは旅の間世話をしてくれていたツカサを見つけてウインクをし、現れたマフォクシーのフォッぷをジーっと見ている。

 

マフォクシーはボールから出てもジャローダには目もくれず、火のついている枝を振るいツカサの周りにハート型の炎をいくつも浮かばせて大好きアピールをしていた。

 

 

「あ、その子可愛い」

 

「うちの子はみんな可愛いしかっこいいから。フォッぷ、マジカルフレイム!」

 

「ジャローダ、リーフストーム!」

 

マフォクシーが杖を振るうと炎で出来た魔方陣が目の前に現れ、更に杖を振るうとそこから炎で出来た龍が飛び出しジャローダに襲い掛かっていく。

 

ジャローダは驚きながらもリーフストームでその龍の勢いを削り、更にマフォクシーへと攻撃を集中させていた。

 

 

「このままだいもんじで押し切るぞ!」

 

「やっぱり相性が悪いー!」

 

メイはマジカルフレイムとリーフストームで特攻が三段階下がって弱体化したジャローダにアワアワしており、そんなメイを見て相変わらず想定外には弱いんだなぁと思いながらツカサは容赦なくだいもんじを指示していた。

 

『ここでマフォクシーのだいもんじが襲いかかる!! ジャローダ手も足も出ません!』

 

『まぁ、手も足もありませんしね』

 

『あーっとここでジャローダはダウン! 両者共にボールに戻し最後の一体に手をかけた!』

 

マフォクシーの炎捌きは凄まじくまるで鞭のように逃げるジャローダを追い詰め、逃げ場を塞いだ所で宙に浮き空からだいもんじを容赦なく放ちダウンするまで火力をジワジワと上げて倒していた。

 

 

「うー!」

 

「あざとい」

 

うーうー唸りながらメイはマスターボールを手にし、ツカサはモンスターボールを手にして同時にフィールドに投げている。

 

「バリバリダーッ!」

 

「ヒュラララ!」

 

『メイのゼクロムに対してツカサはまさかのキュレム! これは選択ミスか!?』

 

 

「ふふん、私のゼクロムと合体してないからキュレムの実力は出せないね!」

 

「ホワイトキュレム!」

 

胸を張り勝てそうと踏んだメイをスルーし、ツカサはキュレムに変化の指示を出している。

 

それを聞いたキュレムの身体が変化を始め、カッ!と発光したかと思ったらレシラムを吸収した時の姿へと変わっていた。

 

「バァーニキュラムッ!」

 

 

「……え? なんで? それ何?」

 

「何か単独変化は愛の力だってキュレムが」

 

「ずーるーいー! 私がツカサと合体しないとダメなの!」

 

「おい馬鹿やめろ! メイのゼクロムが俺のキュレムとって言わないと変な勘違いされるだろ!」

 

「私はそれでもいいの!」

 

「よくない!」

 

 

旅の途中によくやっていたじゃれあいを始めてしまい、ゼクロムとホワイトキュレムは互いに睨み合いをやめて世間話をするような仕草を始めていた。

 

「とりあえずホワイトキュレム、コールドフレア!」

 

「ゼクロム、らいげき!」

 

指示を出した直後会場を激しい冷気が覆っていき、ゼクロムは凄まじい電気を身に纏いホワイトキュレムへ突っ込むが……

 

「やっぱりパワフルハーブって凄い」

 

「ゼクロム、逃げて!」

 

メイはブラックキュレムでパワフルハーブを持たせてよく使っていたフリーズボルトを思い出し、慌てて逃げるように叫ぶも手遅れだった。

 

「すげぇ痛そう」

 

「何で他人事みたいに呟くの!」

 

ゼクロムが激しい冷気に包まれ苦しみ叫ぶ姿を見て小学生並の感想を呟くツカサにメイが吼えていた。

 

「駄目押ししとこう。今の内にブラックキュレムになってフリーズボルト!」

 

「また勝手に変化させてる! 私としか合体しちゃダメ!」

 

「……はい、そのままドーン!」

 

ツカサの指示を聞いてすぐ宙に浮き、作り出した電気を帯びた巨大な氷塊を冷気で苦しむゼクロムに向かってぶん投げている。

 

………

……

 

勝利を収めたもののツカサはげっそりした顔で誰もいない大控え室に戻っていた。

 

「お疲れ様でー……お、誰もいないや。ピカチュウ、俺が大魔王とか呼ばれ始めてるのおかしくない?」

 

「ピーカピカチャァッ!」

 

「何笑ってんだオラァン!」

 

「ピカ!? ピーカピカチュ!」

 

腹を抱えて笑い転げるピカチュウの腹を撫で回しながらくすぐってじゃれついていた。

 

尚現在この光景が次のバトルの繋ぎに会場で流れている事をツカサは知らない。

 

「ふわふわモチモチ。小さい頃からこうやって遊んでたっけ」

 

「ピーカピカピカピカチュウ」

 

「言っとくけどお前が弟だからな。それにあれだったじゃん、オーキド博士にお前を押し付けられてすぐはめっちゃツンツンしてた」

 

「ピーカ?」

 

「そうだっけ?じゃないよ。一緒に母さんのサイホーンに吹っ飛ばされてから仲良くリベンジを誓って仲良くなったんじゃないか」

 

「ピカー……」

 

「誰かいるかなー……あ、ツカサくんじゃん」

 

「痴女のチャンピオンだ」

 

「どんな覚え方してるのよ! その言い方だとあたしが痴女のトップみたいになるでしょ!」

 

制服姿で学校指定の鞄を持ち丈が凄く短いスカートに胸元をワザとらしく開けた格好をしており、会場で見ている男達はちょっとザワついていた。

 

「似たようなものじゃ……注目されたいからそんな格好なの? それとも油断を誘う為?」

 

「どっちも。てか学校行ってないの? あたしみたいな格好の子何人もいるっしょ」

 

「行ってないからわかんないや。寧ろそんな格好してる子何人もいるとか怖い」

 

「えー?」

 

「それでこんな広いのに何で椅子持って来て隣に座るの? 後課題は家でやった方がいいよ」

 

話しながら部屋の隅に重ねられていた椅子を持って隣に来て、鞄から参加期間中欠席する代わりの課題を出したのを見て告げていた。

 

「こんな広いからこそ離れてたら寂しいんじゃん」

 

「それはよく分からないけど……そんな格好で寒くないの?」

 

「寒いけどこれがあたしの正装みたいなものだからね」

 

「ほーん……」

 

「何で聞いといて興味なさげなのよ」

 

「聞いてから興味ないやって。あ、今は人目に付いてないだろうしこれ着る? なーんて……」

 

「うん、着る着る」

 

冗談半分で着て来た上着を手に言っていたがそのまま取られて着られてしまっていた。

 

「いや、あの、汗臭いかもしれないからやっぱり脱いだ方が……」

 

「えー? スンスン……」

 

「おいバカやめろ! 積極的に嗅ぎにいくんじゃない!」

 

「いーじゃん減るもんじゃないんだし。寧ろあたし達はこんな機会でもないと男の子と触れ合えないんだから。普段歩いてるだけで道の端に避けられる悲しさはみんな分かると思うのよね……女優業してたカルネさんとかは違ったんだろうけど」

 

「女性チャンピオンは大変なんだね」

 

「ツカサくんだって避けられるでしょ」

 

「寧ろ何やったら避けられるの? カフェのテラス席でボーっとしてるだけで知らない人達からもめっちゃフレンドリーに声かけられるよ」

 

「それなめられてるんじゃないの?」

 

「親しまれてるんだと思いたい。それよりその課題間違いだらけだよ」

 

「え、どこどこ?」

 

「まずここが……」

 

そう言って椅子を寄せて教え始めた所で準備が終わったらしくモニターが切り替わっていた。

 




次は最終日まで飛ばしていこうと思う。
フェイリスと髪色がお揃いになるから神化状態からのロゼにしたかった。


四ヶ月近く経過しての投稿。
また次も投稿日は未定。


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一気に飛んで最終日

色々あったチャリティ大会も最終日、募金も例年より多くなっていた。

 

そしてほぼ毎回映るツカサの大控え室での光景が地味に好評になっており、昼休憩の時間に垂れ流しにされていたりしていた。

 

「最後が統一リーグチャンピオンかー……」

 

「ほんとおかしいレベルで強いよねー。それより昨日聞いたツカサくんの幼馴染の一人ってヤバくない?」

 

「ブルーさんの事は本当勘弁して。レッドとグリーンさんが旅立って少ししてから旅立った時にモンスターボールめっちゃ投げて来たの本当トラウマなんだよ……旅立ったはずなのに朝起きて目を開けたら無表情で覗き込んでた時は心臓が止まるかと思ったし」

 

現在消息不明でホッとしている反面いつ再会するか分からない恐怖にも苛まれている。

 

「えぇ……」

 

「今何処に居るんだろうなぁ……。姉さん以外の俺の知り合いの女性は残念な部分が強烈なの本当勘弁してほしい」

 

「ピーカ」

 

「俺も残念だから引き分けとか言ってくれるなピカチュウくんよー」

 

膝に乗って丸くなっていたピカチュウを撫でながら呟いていた。

 

「あはは、なんだ類友なんじゃん」

 

「ねー」

 

大控え室にほぼ全地方のチャンピオンが揃っており話を聞いていた近くの者達が笑っていた。

 

「言っておくけどこの大控え室にいるみんな残念な仲間だからね。みんなキャラ濃すぎるし早くカロスに帰りたいわ」

 

「一番濃いのがなんか言ってるし」

 

「ツカサ君はそのピカチュウだけで私を倒したり、コンテストに出てたアイドル衣装を着たピカチュウのせいでピカ厨とか言われてるもんね」

 

「ありがとう、最高の褒め言葉だ」

 

「ピッカァ」

 

大控え室で楽しそうにじゃれ合う姿が何度も流れていた事もあってピカ厨呼ばわりされ始めていた。

 

 

「だけどやっぱツカサくんの子供人気がダントツなのは納得いかなーい」

 

「私はツカサ様が子供人気があるのは当然と思いましたわ」

 

「あ、居たんだ。一昨日までハルカ様ーハルカ様ーって騒いでてツカサ君を敵視しまくってツンツンしてたのに掌大回転したよね」

 

「バトル終わったらすげぇ勢いで走って来て滅茶苦茶怖かったんだよなぁ……逃げたら追いかけてくるし、タックルしてくるし」

 

癖の強いチャンピオン達の中でも更に癖の強い三人と仲良くなったらしくキャラの濃すぎるグループになっていた。

 

普段交流しない人達と交流しなさいとツカサに言われたハルカ達もそれぞれ仲良くなったチャンピオン達と居て側に来れないでいる。

 

「本気で逃げていないのが分かったから仕掛けましたの」

 

「百合系お嬢様チャンピオンとかいう属性盛り過ぎなのが割と素早い動きで追って来る恐怖を分かってもらいたい」

 

「みんな刺される!って思って見てたよね」

 

「怖くて誰も止めに入らなかったのは面白かったし」

 

「私はハルカ様のバトルスタイルが美しく、それに憧れていただけで女性が好きという訳ではありませんのよ」

 

勘違いが重なってそう思われてしまったようで本人はその事実のように語られるそれをどうにかしたいと常々思っている。

 

「ツカサくん大好きを押し出せば両刀くらいには思ってもらえるんじゃん?」

 

「俺を都合良く使うのはやめてくれよなー頼むよー」

 

「使いませんわ。それより昨日の公園で捕まえていたヘラクロスはどうなさいましたの?」

 

「あれか……お姉さんがカリスマギャルでアイドルだって話す元気な女の子と交換したよ。ヘラクロスを探してた時に捕まえたっていうズバットと」

 

空のボールを暇潰しに高く投げてはキャッチを繰り返していた所にヘラクロスが突撃してきたらしく、そのまま捕獲成功というミラクルでツカサを含めそれを見ていた者達みんながえ?という顔になったのは言うまでもなかった。

 

「ズバットなんてそこらで夜に捕まえられるのに割とレアなヘラクロスと交換しちゃったの?」

 

「いや、もうヘラクロスはいるから別にいいかなって。寧ろ色違いのズバットだったからこれ以外のと交換した方がいいんじゃないかって何度も言ったんだよ」

 

「でもズバットは個体数が多くて群れの中に一体は色違いがいるから特に珍しいわけじゃないよね」

 

狙って捕まえるのは大変だがそこまで珍しい色違いではないらしい。

 

「へー、そうなんだ。グラサンしてたのにカロスチャンピオンだって見抜いてきたし中々やりおる少女だった」

 

「ピカチュウが近くにいるだけでツカサ君の事バレバレなのに分かってない所が本当可愛い」

 

「何か言った? それと空のボールにサインを貰うのが流行ってるらしくてサインもしてあげたけど……」

 

「あ、それあたしも欲しい」

 

「私も欲しいな」

 

「私も戴きたいですわ。今日勝てば名実共に世界の頂点に立つ事になりますもの」

 

「いや、バトルフロンティアがあるから違うっしょ。最近バトルフロンティアを制覇した頭おかしい新進気鋭のトレーナーがいるって掲示板に書かれてたし、ツカサくんも制覇してそいつ倒さないと頂点じゃないし」

 

「制覇した頭のおかしいトレーナーなら目の前の殿方ですわよ」

 

「いやぁ、試行錯誤しながら全部制覇するの超楽しかったです。全部三周くらいしちゃった」

 

「うん、普通に引くわ」

 

「私も」

 

「何で!?」

 

一つでも突破するのが大変な施設を全て突破しただけでもおかしいのに、更に三周もしているのを知ってドン引きしていた。

 

「流石です、ツカサ様」

 

「君だけが味方だよ。……あっちで手を振るお姉様方の一人、ゴスロリのマリリンさんは戦法がえげつなかった。顔芸チャンピオンの意味は理解出来たけど別に普段可愛いならいいと思うんだよなぁ」

 

追い詰めた時に顔芸をされたが特に引きもせず試合後も普通に接しており、連絡先の交換もツカサからお願いしていたりとえげつない戦い方を吸収しようとしていた。

 

 

「ツカサ君、あれでも私達より一回りくらい上だからね。可愛いは作れるんだよ」

 

「ツカサくんは割とピュアだから心配。あのおばさんにフラフラ付いて行きそうだし」

 

「昨日早速付いて行ってご飯をご馳走になっていましてよ」

 

「美味しかったし次も機会があれば誘ってくれるって。カップルでしか買えないイーブイの限定ペアパジャマもマリリンさんのお陰で買えたし本当感謝してる」

 

流石に有名になりすぎてマリリンとデートしていたことがすぐに話題になっており、よりにもよって相手が一回り上の顔芸チャンピオンだからか趣味が本当に分からないとツカサの好みのタイプ考察が捗っていた。

 

 

「だからあのおばさん今日は朝からご機嫌だったんだ。ちょっとスキップしてたし」

 

「今度から連絡くれれば私が一緒に行ってもいいよ?」

 

「いやそれだけの為にカロスまで来れないでしょ。……統一リーグチャンピオンのコトネは何であんなボサボサな髪でブツブツ言いながら目が血走ってんの? めっちゃ怖いし、初日はお洒落でお化粧してたよね」

 

「何か三角関係に近かったライバルと幼馴染がくっついたんだって」

 

「それは……」

 

「ちなみに男と男だって。昨日ウキウキして食事に行ってカミングアウトされたみたい」

 

多かれ少なかれチャンピオンは悲しみを背負うものらしい。

 

「それはああなるわ。てか何があったらくっつくんだよ……普通は統一リーグチャンピオンを取り合うとかじゃないの?」

 

「取り合って、チャンピオン業務が忙しい間に育んで……ご覧の有様ですのよ」

 

「きっと自分は二人から選べるから婚期は大丈夫とか思ってたんだろうね」

 

「悲しいなぁ……」

 

………

……

 

注目のツカサの全勝を賭けたラストバトルだが、自暴自棄になった見た目も恐ろしいコトネの強さに皆が引いていた。

 

「どうせ貴方も……!」

 

「事情は聞いているが今は俺だけを見てもらいたいな統一リーグチャンピオン」

 

「えっ……だ、騙されないんだから! どうせホモなんでしょ!!」

 

「ないです。普通に異性が好きに決まってるでしょ」

 

「嘘だ!! どうせそうやってあの実況席のイケメン元チャンピオンとイチャイチャしてるんでしょ!!」

 

「おいやめろ、ダイゴさんに飛び火させんな!」

 

 

『これは酷い』

 

『友人ではありますがそのような関係ではありませんので』

 

 

既にコトネのヨルノズク、ポリゴン2、ギャラドス、マリルリを相手にし終えており、ツカサはゲッコウガ、ルカリオ、ラプラス、ニンフィアとカロスを旅した面々を次々に繰り出して魅せながらも激しく攻め立てていた。

 

『残り二体を倒した時点でカロスチャンピオンが世界の頂点に立つ事になりますがダイゴさんはどう思われますか』

 

『前代未聞の大偉業で歴史に名を残すでしょうね。正直この大会が始まった時よりも更に強くなっていて今も成長している事に少し恐怖を覚えます』

 

ネット上の俺ならこうして倒せる系の書き込みが数秒で無駄になるレベルで成長し続けており、殿堂入り化け物トレーナーとしてたった数日でツカサなら仕方ない扱いにまでなっていた。

 

 

「そろそろ結婚を前提にお付き合いをする頃だって色々準備してたのに!」

 

「きっと大控え室でみんなざまぁって顔してると思う」

 

「せめて大会終わってからカミングアウトしてよ!」

 

「正論すぎる」

 

「半年単位で会わなかったり、会ってもポケモンの話しかしないからって酷い!」

 

「それは自業自得だと思う。俺はポケモンの話とか大好きだから嬉しいけどなぁ……」

 

ツカサは開き直って今後相手が出来なかったら一生ポケモンと過ごす覚悟を決めているからか余裕が生まれている。

 

「『君はポケモンを優先しても笑って許してくれる男性を探した方がいい』って……そんな男性いるわけないじゃない! デートの日にポケモンが病気になってポケモンセンターで付きっ切りになっても許してくれる人とか絶対いない!」

 

「そんな女性もまずいないよなー……」

 

残り二体になった所で爆発したコトネの叫びに会場にいた者達は憐れみの目で見ており、ツカサは分かる分かると頷きながら腰のモンスターボールに手を伸ばしていた。

 

「とりあえず少しスッキリした……よし、やるわよバクフーン!」

 

「バクフーンのあのフォルム可愛いなぁ。さてと……リザードン、やるぞ!」

 

 

同時にフィールドにバクフーンとリザードンが現れ互いに睨み合っている。

 

バクフーンが走り出すのと同時にリザードンは飛び上がり腕を振るってエアスラッシュを放っていた。

 

そのまま縦横無尽に駆け回り紙一重でエアスラッシュを避けると高く跳躍してリザードンの背を蹴り、コトネのハンドサインをチラ見して下にいるリザードンに向かってきあいだまを叩き込んでいる。

 

「まぁ、それは大きなミステイクなんだけど」

 

「え?」

 

ツカサが呟きながら出したハンドサインを見てリザードンはニィっと笑い、放たれたきあいだまに向かって炎を身に纏いながら突っ込んで行った。

 

『これは……カロスチャンピオンまさかの悪手です!』

 

『いえ、これは統一リーグチャンピオンの悪手ですよ。空に跳ばなければ……』

 

リザードンはダメージを受けながらもきあいだまをブチ抜くとドラゴンクローで相手を掴み、そのまま逃げられないようフィールドへ全速力で突っ込んでバクフーンを叩きつけて埋め込んでいた。

 

「ナイスフルコンビネーションアタック」

 

「すっご……じゃなくてバクフーン!」

 

エアスラッシュで牽制、フレアドライブの突撃、ドラゴンクローによる拘束、じしんでフィニッシュの一人連携技を繰り出し一撃でバクフーンを倒している。

 

 

「あ、そっかぁ……ふふふ、失恋したばかりの私に何の躊躇もなくこんな激しく攻め立ててくる理由」

 

「お疲れ様! ……これで次が最後の一体、統一リーグチャンピオンのホウオウか」

 

コトネはダウンしたバクフーンをボールに戻してマスターボールを手に何か小声で呟き始め、ツカサもリザードンとハイタッチしてからボールに戻しガタガタと騒がしいゴージャスボールを手に取っていた。

 

「そうだったのねカロスチャンピオンツカサ。貴方、私を口説いていたってことね!」

 

「ないです。本当そういうのうちの三馬鹿だけでいいからマジでやめて」

 

「成る程、恥ずかしがり屋さんってことね」

 

「お願いだから都合よく解釈しないで話を聞いて!」

 

「でもそう簡単に私は好きになったりしないんだから! 覚悟を決めてアプローチすることね!」

 

「オカリン助けて!」

 

暴走を始めたコトネとガチビビリしているツカサに会場に笑いが起きており、一部からオカリンではない!という叫びも聞こえてきたり。

 

「さぁ、現実の女性はそう簡単に靡かないって事を教えるわよホウオウ!」

 

「あぁ、もうめちゃくちゃだよ……待ちに待った晴れの舞台、お手をどうぞクィーン」

 

コトネの投げたボールから現れたホウオウは美しい羽根を広げ会場を軽く一周飛び回り、そのままコトネの前で羽ばたいている。

 

そんな派手な登場とパフォーマンスに会場が沸く中、ツカサはゴージャスボールを手に取り投げずにその場で出していた。

 

『えぇ、私の手を取る事を許します』

 

会場にいる者達は脳に直接響くディアンシーの可愛いらしい声と見た目にざわついている。

 

「ちょい油っぽいのはドーナツをつまみ食いしたからかな?」

 

『違いますサーターアンダギーを……あっ』

 

「つまみ食いはしたのね。後でお説教だからな」

 

『つまみ食いではありません、味見をしただけです』

 

「物は言いようだなぁ……」

 

誰が見ても仲良しでじゃれ合っているようにしか見えず、荒んでいたコトネもほんわかしていつもの調子が戻り始めている。

 

『さぁ、そんな事よりも私の晴れ舞台なのです』

 

「台無しになってる気がする」

 

「それな」

 

「ファッ!?」

 

皆には鳴いたように聞こえているホウオウからの同意の声に思わず驚いていた。

 

「ふふん、そんな可愛いポケモンで私のホウオウは……」

 

「可愛いだけじゃないんだよ。んじゃまぁ……」

 

メガリングZをつけた腕を真上に上げるとその腕全体がピンクダイヤモンドで覆われていき、そのまま勢い良く腕を振り下ろすとピンクダイヤモンドが砕けるように消えてキラキラ輝くピンク色のリングへ変貌している。

 

「改変すんの本当嫌だけどやらないと機嫌悪くなるから……我が愛に応えよキーストーン! 進化を超えろ、メガシンカ!」

 

『はぁぁぁぁぁぁ!!』

 

ディアンシーが首から下げたネックレスに付いているディアンシナイトとリングから激しい光が溢れ出し……

 

「ロイヤルピンクプリンセス……メガディアンシー!!」

 

『……ええ、ツカサの一番で最高のパートナーである私に任せなさい。ふふん』

 

光の繭を吹き飛ばして現れたディアンシーはドレスを着ているかのような見た目に変わり更に美しさに磨きがかかっていた。

 

「その一番とか喧嘩になるからやめてほしいんだよなぁ……」

 

「……はっ! ホウオウ、せいなるほのお!」

 

「メガ……ディアンシー、まもるで受け止めろ!」

 

『ホウオウ、私の盾は厚いですよ!』

 

ホウオウが放った物理的な威力を持った清らかな炎がメガディアンシーに襲い掛かるも巨大なピンクダイヤモンドで出来た六角形の盾で完全に防いでいた。

 

だが聖なる炎の強さに皹が入り防ぎ切るのと同時にピンクダイヤモンドの盾が砕け散り、バトルフィールド中に散らばってキラキラ輝いている。

 

「ホウオウ、ゴッドバードで仕留めなさい!」

 

 

『これはカロスチャンピオン大ピンチ!! 統一リーグチャンピオンのホウオウはゴッドバードの体勢に入っています! しかしキラキラと幻想的な光景ですねダイゴさん』

 

『ええ、散らばったピンクダイヤモンドが光を反射……あぁ、彼はこれを狙っていたのかもしれませんね』

 

『だ、ダイゴさん、どういう事でしょう? ただ防ぎ切って限界が来て砕けたのでは』

 

『砕け散ったはずのピンクダイヤモンドが空中に止まっているんです。しかも大きさは程良くダメージを与えられるくらいで』

 

 

「砕かなければ良かったのにな。ホウオウ、逃げ場はねーぞ」

 

『ツカサ!』

 

「ディアンシー、綺麗なだけじゃないって所を見せてやれ! ダイヤストーム!」

 

『私が命じます、ツカサと私の為に貴方は地に堕ちなさい。はぁぁぁぁぁ!!』

 

ディアンシーがホウオウに向けて両手をかざすとピンクダイヤモンドが次々と現れ、物凄い勢いでホウオウへと射出され始めた。

 

更に砕け飛び散ったはずのピンクダイヤモンドもフィールドの全方位からホウオウに向けて殺到し、ゴッドバードの体勢を維持できず逃げる事も出来ないまま蹂躙され……

 

 

『ホウオウ戦闘不能です! ……おめでとうカロスチャンピオン! 君が全世界のトレーナーの頂点であり、チャリティ大会初の全勝無敗記録保持者だ!!』

 

白眼を剥いて倒れるホウオウに審判が戦闘不能と判断、会場は地響きが起きる程の歓声に包まれていた。

 

「好き!」

 

「倒したら即好きになるとかチョロすぎて不安になるわ」

 

『やはり私がツカサの一番のパートナー。これはもう公然の事実になるのでは?』

 

「ヤバイヤバイ。モンスターボールがすっげぇガタガタいってる、ハッキリわかんだね」

 

勝ち誇るディアンシーに抗議の声をボールから上げているらしくガタガタ動いていた。

 

「やっぱり昨日のあれは今日運命に出会う為だったってことね!」

 

「ないです」

 

 

そのまま大控え室に帰ろうとしたが記者に囲まれもう何度目かも分からないインタビューをされていた。

 

誰にこの喜びを伝えたいか等の質問に答え、そろそろ終わりかなと思っているとプライベートな質問が飛び出していた。

 

止めようとした大会の責任者に構いませんからと伝え、ツカサはその記者の質問に答えようとしている。

 

「見目麗しいチャンピオン達の中で誰が一番好みでしょうか」

 

「マリリンさんですねー」

 

「えっ……」

 

絶対ないと思っていたまさかの答えに固まり、会場もあの顔芸見てるのに?といった困惑した空気が流れている。

 

「何か?」

 

「あ、いえ、その……どんな所が好みですか?」

 

「お互いにポケモンが好きで会話が弾むので。本当何時間でも話せますし、彼女の話を聞くのも面白いですから」

 

尚渦中の人物は大控え室でドヤ顔で勝ち誇っており、呪詛の言葉を吐かれても負け犬の遠吠えが気持ちいいと煽りに煽っていた。

 

「じゃあ、異性として見てるとかは?」

 

「見てますねぇ!」

 

「見てるんですね」

 

「綺麗な方ですから」

 

「あの追い詰められ時にする顔芸についてはどう思いますか?」

 

「ギャップがあっていいと思いますけど」

 

ねーよ!の声が其処彼処から上がってザワザワと会場が別の意味で盛り上がり始めていた。

 

「あ、ありがとうございました……」

 

この記者はハルカ、ヒカリ、メイの三人の誰かの名前が上がると思っていたらしく、まさかの人気ランキングの下から数えた方が早いチャンピオンの名前が上がって動揺して質問を切り上げている。

 

 

会場から聞こえる○○にしとけって!という数多の声を背に手を振りながら大控え室へと帰って行った。

 

………

……

 

閉会式の準備が整うまで大控え室で待機になりドリンクを手にのんびりしている。

 

「何か帰って来たらダーリン呼びでマリリンさんにすげぇ纏わり付かれたんだけど」

 

「ちなみにツカサくんがインタビュー受けてる間に先に帰って来た統一リーグチャンピオンとあのおばさんで取っ組み合いの大騒ぎしてたし」

 

「何やってんだあいつら……」

 

「ハルカ様がちょっとした幸せになる為の『お話』をして落ち着かせていましたのよ」

 

「俺にも幸せになるお話をしてほしいんだけど?」

 

「可愛かったり綺麗だったりするからきっと幸せなんじゃないかな」

 

「よく分かんないけども。帰って来る時にスポンサーの偉い人達が私の娘と結婚を〜とかいう冗談を言ってきたよ」

 

あらゆる面でツカサが欲しくて仕方がないらしく半ば本気で言っていた事には気がついていない。

 

聞き耳を立てていたチャンピオンズはシーンと静まり返り、ツカサは何が起きたのかとキョロキョロ見回している。

 

「断ったんでしょ?」

 

「当たり前だよなぁ。てか5歳とか6歳の時点で無理でしょ。そんな小さい頃から将来おっさんと結婚するとか可哀想だし、知らない人すぎて嫌だわ」

 

「それならよかったー」

 

尚水面下でツカサの両親が許可を出して結ばれ、無事婚約者になっているのはゆるふわほんわかに父親譲りの腹黒が追加された亞里亞な模様。

 

「それより閉会式で会場から空高くにモンスターボール投げろって言われたんだけど」

 

「それなら投げて落ちて来たボールをキャッチしてポーズを決めておしまいですわ」

 

「えぇ……」

 

………

……

 

その後の閉会式は恙無く進行したが……

 

『世界チャンピオンツカサ、どうした事でしょう投げたボールをキャッチするもポーズを決めません』

 

『あっ、前代未聞です! ボールを投げました……あぁぁぁ!?』

 

かなり高く投げてキャッチしたが手の中で揺れていたらしくらカチッという捕獲音を聞き、また何か勝手に捕まったと投げて確認していた。

 

「ファッ!? あの時のホウオウ……?」

 

「私好みのイケメンが居たから折角羽根を落としたのに全っ然会いに来ないから来てあげたの! だけどあの高さまでボールを投げてアプローチしてくれるなんて……ずっと見てたけどイケメンで強いのね! 嫌いじゃないわ!」

 

「リリース、リリースしたい。おっさん声が精神にヤバい」

 

『世界チャンピオンが最後の最後でまたやらかしたぁぁぁ!!』

 

「逃すから、逃すからもう一回やらせて!」

 

「もう私はあなたのモ・ノ。これから毎日楽しくなりそう!」

 

「もうやだぁぁぁ!!」

 

最後の最後までツカサが騒ぎに騒がせたチャリティ大会だった。

 




新年初投稿です。
もう一年の三分の一過ぎてるのが怖い。



FGOに飽きてグラブルにハマったけど結局ハムスターな事に変わりはないっていう。
エイプリルフールのるっ!リアスキン本当面白いし、復刻エイプリルフールのジンさん好き。
某はヴァンピィ殿のけんぞくぅ!


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それから一ヶ月ちょいで

チャリティ大会から一ヶ月と少し、その間にも色々あり……

 

「何かもうこれからあの48分間以上の短くも濃い時間は過ごさない気がする」

 

「向こうのカプセルコーポレーションでお祝いパーティをしてもらって、帰って来たら強制的にパレードに参加させられて連日連夜のパーティにも参加するのが終わったと思ったら一ヶ月留守にするとか言い出して驚いたわよ。しかも地球っていうか宇宙守って来たとか冗談言いながら17号さんと帰って来るんだもの」

 

ガチで守ったようなものだが当時は信用されておらず、ハイハイとスルーされていた。

 

 

「悟空さんが休みになるなら修行だって……カリン塔を登らされて飲んだ超神水は一昼夜悶えたなぁ。あれはいっそ殺してくれって思った」

 

「普通の人が飲んだら苦しさで狂うって聞いたわ」

 

「本当あれは気が狂うと思うくらい苦しかった。その後は神様の宮殿でご飯食べさせてもらって……精神と時の部屋で悟空さんと一年、ベジータさんと一年修行をしたよ。一日が一年とか凄いよね、みんなと二年弱ぶりに会ってるから懐しさとかが凄い」

 

修行の合間にしっかりとドクターやブリーダーの技術を磨くのも忘れておらず、様々な面で超強化された状態で帰って来ている。

 

「うわぁ……」

 

「その後は悟飯さんと悟空さんに連れられてお爺ちゃんの界王神様に会って、25時間変な儀式を受けさせられて……みんなが俺をどうしたいのか分からなくて困る」

 

何かあった時の為に強い奴は多い方がいいとあちらの面々は合意したらしく、全部やったらどうなるかも同時に試されていた。

 

「筋肉更について着られない服が増えたから沢山新調したわよね。着れない服はグラジオ君が兄さんの服なら欲しいって言って嬉々として持って帰ってたけど」

 

「弟分で可愛いけど、オカリンのせいでグラジオがあちら側に目覚めたのが本当もう……」

 

「闇の〜とか機関が〜とか可愛いわよね。何で怪我もしてないのに包帯右腕に巻いてるのかしら」

 

「それ絶対本人に言っちゃダメだからな」

 

黒歴史となってからツカサがグラジオをからかうのに使うらしく、最近はよく写真も撮って残していたりする。

 

「はいはい。それでその後はどうなったの? 勉強の追い込みで忙しくて聞き流しちゃったけど」

 

「参加させられた大会で複数人に囲まれて戦ってたらいきなり現れた女の子のサイヤ人に求婚されたり、キャベとライバルになったりしたよ。最後の最後に悟空さんとフリーザさんが多少でも回復するまでの時間稼ぎをしてボッコボコにされた」

 

「ツカサが強いのか弱いのか分からないけど、格上に抗う姿は素敵だと思う」

 

「ありがとう。でももうあの人とは二度と戦いたくないなぁ……一発入ったけど全然効いてなかったし、百倍くらいになって返ってきたし」

 

かなり強くなっているが上が強すぎて実感が湧かず、まだまだ強くならないといけないと日々鍛え続けている。

 

「うわぁ……そういえば後二ヶ月はカロスリーグ開催されないけど、その間はどうするの?」

 

「自由にしてていいって。だから少しだけ紫のとこに行ってくるよ」

 

「八雲さん? 私もいつかあんな素敵な大人の女性になりたいわ」

 

「セレナはそのままのがいいよ。だけど最近バストが大きくなったって言いながら見せようとしてくるのはやめてね」

 

………

……

 

すっかり使いこなせるようになった瞬間移動で紫に会いに行き、そのまま久々の幻想郷を見て回ろうとしていた。

 

「あ、そうだ。セレナが紫みたいな素敵な大人の女性になりたいとか血迷った事を言ってたから止めたよ」

 

「なんでよ!」

 

「いや、胡散臭いのよりも藍さんみたいなクールビューティのがいいと思って」

 

「ぐぬぬ……」

 

「じゃあいってきまーす」

 

「ああ、いってらっしゃい。紫様もいつまでも唸らないで」

 

 

 

二人に見送られながら幻想郷の空に飛び立ち……

 

「早苗ったら挨拶に来たツカサを見ていきなり脱ぎ出すんだもの」

 

「ツカサが機転を利かせて、そういう行為をするなら服を着てる方が脱がせる楽しみがあっていいって言ったらすぐ着たけどね」

 

「勧誘があるから帰るまで待っていてほしいって言って出て行ってしまいましたけど」

 

「ゆっくりしていってね!」

 

「まぁ、早苗との約束がありますからゆっくりしていきます」

 

そう答えて諏訪子に出されたお茶を警戒しながら飲んでいる。

 

「早苗じゃないんだから何も混ぜてないよ」

 

「いえ、ちょっと一ヶ月くらい前に飲んだ超神水を思い出しまして……」

 

「へー」

 

「それより諏訪子、早苗が何か入れてる前提で話すのはどうなの?」

 

「まぁ、汚いものとか食べられないものじゃなければいいですけど」

 

 

そんなやり取りをしてお茶を飲みながら二柱の神とこれまでの事を話していた。

 

「……って訳です」

 

「人の身でありながら神へ……」

 

「まぁ、宇宙人がご先祖様なのは今時珍しくないからへーって感じだけど」

 

「潜在能力を引き出されても変身する方が格好良くて好きなんですよね」

 

やっぱり変身は浪漫があるしとニョロモとアーボを撫でながら呟いていた。

 

「なら早苗が帰ってきたら見せてもらおうか。特に神の力を引き出す方」

 

「だねー。どれくらいなのかは見ておかなきゃね」

 

「早苗が引いて迫って来なくなるかもしれないからやります」

 

尚様々な変身を見て今までバッチリがんばれだったのがガンガンいこうぜに変わり、それまで以上に過激なアプローチに変わる模様。

 

「そうなったら私が孕むから安心して」

 

「ないです」

 

………

……

 

「一応これが青の力なんですけど」

 

「へー、こっちも髪が逆立つんだ。収まりきらない神気がダダ漏れしてて凄いね」

 

「あ、近づくとちょっと心地いいよ」

 

「やっぱり時代は赤より青ですね!」

 

「はい、こっちに目線お願いします! 『人か神か! 謎の外来人の秘密に迫る!』で決まりですね!」

 

ブルーになったツカサをベタベタ触りまくる二柱の神と早苗、写真を撮る文と割とカオスだった。

 

「何でいんの?」

 

「見張りも兼ねてますから。様々な姿になったのを見て我々がご機嫌を伺う立場になったのを理解しましたが」

 

「天狗も大変だな。一方的に喧嘩売られたりしなければ基本何もしないから」

 

「助かります」

 

「気にしな……おい馬鹿やめろ! 神奈子様もこのちょっと頭のネジ飛んだ一人と一柱を何とかしてくださいよ!」

 

「下、下の毛も青いのか確認するだけだから!」

 

「暴れないで、暴れないでください……」

 

文と割と真面目な話をしている最中に早苗と諏訪子がベルトを弄り始めたので必死にガードしていた。

 

「いや、あの、私はそういう経験がないから……」

 

「両手で顔を隠して指の隙間から見るお約束とかしないで!」

 

「赤と金でも確認しなきゃ」

 

「諏訪子様、ちょっと切って私専用の御守りにしたいです」

 

「ちょっ、本当に……やめてくださいよ!」

 

………

……

 

あれからすぐにこれ以上何かされたら敵わないと早々に守矢神社から離れていた。

 

「で、私の所に来たのね」

 

「交友関係的に永遠亭か紅魔館しか行くとこないし……で、輝夜のとこが近かったから」

 

「その割には私の部屋まで来るのに時間かかってたじゃない」

 

「身長体重を測ってから血圧、採血、視力に聴力、検尿、診察、カウンセリングと永琳に捕まって全部やらされたんだよ……」

 

「大変ねー。ほら、こっち来て隣に座りなさいよ」

 

「ええ、それはもう本当に土下座しないといけないんじゃないかって大変な結果も出ましたよ」

 

輝夜が自身の隣をぽんぽんしていると少々顔色が悪くなった永琳が襖を開けて入って来た。

 

「永琳? 大変な結果って何よ」

 

「ツカサと姫様の相性が凄まじく良かったみたいです。あの時の姫様と妹紅の殺し合いで摂取してしまった肉片と血がツカサの体内でスーパーベストマッチ、吐き出したようですが手遅れだったみたいです」

 

「これはもう実質夫婦なんじゃない?」

 

「ないです。てかスーパーベストマッチって何それ怖い」

 

「簡単に言えばこれから数年で完全に適合してツカサは老いる事がなくなるわ」

 

「やったわ! これは不気味に思われる前に永遠亭へ永久就職確定ね!」

 

「へー……ん? 待って、それって殺されるか病気にならない限り死なないって事では?」

 

最初は若いままならいいかなと思っていたが嫌な予感に恐る恐る尋ねていた。

 

「そうなるわね。後ちょっとした怪我くらいならすぐ治るかもしれないわ」

 

「そんなおまけみたいに言われても……」

 

「半世紀くらい待てばツカサが永遠亭に来るなんて凄く素敵ー、素敵だわー」

 

「……あれ? そうなると俺はビルス様を満足させる為に強くなり続けないといけないルートに入った? え、嘘、マジで?」

 

何かしらの原因で死ぬまで楽しませてご機嫌を伺う胃が痛くなるルートが確定していた。

 

「でもそうなったら守矢神社と永遠亭で対立が起きそうね。ツカサ次第ではあるけれど、貴方は何処がいい?」

 

「ウィスさんが『ツカサさんとは長いお付き合いになりそうですねぇ』って楽しそうに言ってたのはまさか……え? でもそうなると紫のとこが一番争いにならないんじゃないの?」

 

「あんな胡散臭い妖怪のとこがいいの?」

 

「まぁ、胡散臭い笑顔はしてるけど。普段はすげぇ乙女だよ」

 

尚幻想郷の者達が次はいつツカサが来るか楽しみに待っている間、紫は赴いてデートを重ねていたりとバレたら大変な事になりそうな事を平然と行なっている。

 

「永琳、ツカサの頭がおかしいわ」

 

「風呂上がりに乾かしてあげながら髪を梳くとモジモジするの本当可愛いと思ってる」

 

「それ私にはやってくれなかったやつじゃないの!」

 

「仮にもお姫様の髪に触れるのはダメかなって」

 

「別にいいわよ! ほら……さらっさらよ! 今晩とかいいんじゃないかしら!?」

 

「アッハイ。……何で俺が出会う見目麗しい女性は基本的に残念なのか。早苗とか無駄に能力使ってまた下着をポケットに入れて来てたし」

 

最早慣れてしまいすぐには返さず、ある程度貯まったら返すくらいの余裕が生まれていた。

 

「心中お察しするわ」

 

「じゃけん明日は紅魔館に行って癒しを求めましょうね〜」

 

………

……

 

翌朝色々騒いだ永遠亭を後にして紅魔館へと向かっていた。

 

そして……

 

「フランちゃんの暴走を止めたら懐かれたでござる」

 

「ちょっと会わない間にツカサが頭おかしいレベルで強くなってて引くわ」

 

「強くならなきゃ死ぬし、満足させなきゃ地球がやベーんだよ……」

 

「……えぇぇ」

 

何言ってんだこいつと思いながらツカサの辿りそうな数多の運命の先を見てドン引きしていた。

 

「変人ばっか集まってくる運命なんとなりませんかね」

 

「無理」

 

「すげぇ食い気味に……」

 

「だけど改めて見るとツカサの運命は笑っちゃうわ。マッピングしてるんじゃないかってくらい全部網羅していくんだもの」

 

「意味が分からんのだけど」

 

「普通はAからZまで枝別れてしていてどれか一つに進んで他は体験しないのよ。ツカサの場合はAからZのどれを進んでも最終的にはその全部を通過するから目が痛くなるの」

 

「俺は何でそんな過酷な運命を辿ってんの……」

 

「前向きに考えなさい。これからどんなポケモンとも必ず出会う事が出来るんだって」

 

「あ、そっかぁ……」

 

尚何年経っても来ないツカサに会いにグラードン、カイオーガ、ディアルガ、パルキアといった面々が近々押しかけてくる模様。

 

「それより何か面白い事とかあったのかしら?」

 

「三段階の変身と二段階の変身と一段階の変身が出来るようになったよ」

 

「変身……これからツカサの一発芸はそれに決まりね!」

 

「俺にはやらないという選択はないの?」

 

「ないわね」

 

「十六夜さんも見るの?」

 

「ええ。恥ずかしがって一度もツカサの前に姿を見せない咲夜も流石に今回は私が命令して待機させるわ」

 

「楽しみだわ。そういや外の世界にいる同姓同名の十六夜さんは亞里亞の家の分家だかの潰れた一族に仕えてたメイドさんの娘さんらしいんだよねー。銀色の髪で色々察したジェームズさんが手回しして雇って説明したらしいけど、メイドが天職だからこれからも雇ってほしいって言われたみたい」

 

「逆にちょっとそっちの咲夜にも会ってみたい気もするわね」

 

「幻想郷の十六夜さんが奥ゆかしい草食系なら、こちら側の十六夜さんは何か俺限定で超肉食系だから……」

 

「ますます会ってみたいのだけれど」

 

「セクハラしたら大人しくなるかと思って『おっぱいってどんな感触なの?』って聞いたら、ニコニコしながら凄い力で俺の手を掴んで自分の胸に押し当てようとしてきたり凄いアグレッシブで」

 

「何やってんのよ」

 

「ちなみに世界チャンピオンになってから週替わりで最低一人は常駐するようになったんだよ。みんな超肉食系なの本当笑っちゃうぜ」

 

亞里亞が成長するまで相手をする意味も兼ねており、手を出されてもいいし将来的にツカサ達に仕えたい優秀な者だけが送られている。

 

「ツカサはさながらシマウマかしら。それより世界チャンピオン?」

 

「ポケモントレーナーとして世界の頂点になったから」

 

「へー」

 

「うわぁ、興味なさそう。後はパラレルな世界から嫁さん連れて迷い込んで来て、ひたすらイチャついてた俺と森で遭遇したりくらいだな」

 

「それよく似た偽物じゃないの? ツカサって割とドライだし」

 

「俺だったんだよなぁ……桃色の髪で狐耳、露出強な嫁さんでドン引きしたわ。ハネムーン代わりに人ん家に三泊くらいしてからどうやってか知らないけど普通に帰って行ったけど」

 

「八雲紫に頼んだらツカサの家に遊びに行ったり出来ないかしら。何か日常的に非日常的な事が起きていて楽しそう」

 

「そこまで色々起きてないよ。たまに知り合いの婦警さんがカロス観光に来て家に泊まって呑んで酔ってたりとかするくらいだし……クリリンさんが女の子紹介するって連れて来たのが片桐さんなんだもんなぁ」

 

尚ドストレートに女の子じゃないと文句を言ってシメられた模様。

 

「普通に楽しそうじゃない」

 

「無理矢理客室に連れて行かれてガッチリロックしたまま寝られて、翌朝悲鳴と共に起こされて正座させられてすげぇ説教される理不尽さを知ってほしい」

 

「手は出したの?」

 

「出すわけないじゃん。向こうがロックして来た時以外は一切触れなかったし」

 

「それ女としてのプライドかなり傷つけたわね。嫌だけどちょっと触るくらいはしてほしかったでしょうね」

 

「モジモジしながら何処か触ったか聞いてきたのはそういう……」

 

これがポケモンの心は理解出来ても女心は全く理解出来ない世界一位の男である。

 

「まぁ、少しずつ理解していきなさい」

 

「前回の帰り際に小悪魔さんが耳元で私は愛人でいいですからって言ってきたんだけど、これはどうしたらいいの?」

 

「刺されないようにがんばれば?」

 

「投げやりすぎんよー」

 

対等な友人として仲良くなっている二人はそんな雑談をしながら楽しいティータイムを過ごしていた。

 

 

疲れて寝ていたフランも午後には目覚め、ツカサの後ろを付いて回るようになっていた。

 

「お兄様ー」

 

「どちらかといえばフランちゃんが俺のお姉さんになるのでは?」

 

「いいの! アイツよりお兄様のがお兄様って感じだし」

 

「割と姉妹仲悪いのね」

 

「お姉様よりお兄様のが好きー」

 

「凄い懐いてくる年上の妹が出来ました」

 

好きーと言いながら腕に抱きつき、後ろを振り返り隠れて付いて来ていたレミリアにべーっと舌を出して挑発していた。

 

「ほら行こ! 美鈴も待ってるよ!」

 

「さっきフランちゃんからの攻撃から守った時にボーっとこっち見てたからちょっと心配してたんだよね」

 

ツカサが当たり前のようにしたヒーロームーブでトゥンクしてしまったらしい。

 

 

それから数日が経ち……

 

「さっき進化したレミリアのクロバットが俺に秒で懐いたからかうーうー唸っててちょい鬱陶しい」

 

「最近私の扱いが雑!」

 

「お姉様さっきからうるさい。出てって」

 

「ここ私の部屋よ!」

 

フランはツカサと出掛けて捕まえたガーディをモフりながらシッシッとレミリアを雑に扱っていた。

 

「ツカサ様、おかわりはいかがですか?」

 

「お願いします」

 

「咲夜もツカサに言って! 私を大事に扱いなさいって!」

 

「レミリア愛してるよー」

 

「棒読みィ!」

 

「お嬢様、くたばった方がよいのでは?」

 

好意を寄せている相手の愛してる発言をもらったレミリアにくたばれと言う瀟洒な従者である。

 

「何かツカサと会わせてから咲夜が辛辣なんだけど」

 

「俺には凄い優しいけどね」

 

「納得いかないわ」

 

「まぁ、夜中にホットミルクを飲んで話したりしてるからね」

 

「私みんなで夜更かししながらお話したり、お兄様の冒険のお話を聞くの好きー」

 

咲夜とツカサが話していると皆が自然と集まって来るらしく、ちょっとした深夜のお茶会になっていた。

 

「なにそれきいてない」

 

「十六夜さん以外は勝手に集まって来るだけだから」

 

「お兄様は異世界でもポケモンじゃないモンスターを沢山育ててるんだって」

 

フランは教わったブラッシングをガーディにしながら呟いており、ツカサは仕方ないとばかりに話し始めた。

 

「二つの大陸に俺のファームがあるんだ。どっちかにしてくれって言われてそれなら引退したいって言ったんだけど、四年交代で行き来して所属を変えればOKとか言い出してね」

 

未知のモンスターを復活させ育成する存在が別の大陸に行かれては困ると秘密裏に二つの大陸が手を組んでそうなっていた。

 

「ツカサは育てるの本当好きよね」

 

「正直カロスに行く前に迷い込んでいたら向こうに永住してたよ。プライドの高いドラゴンとか育て甲斐があったし」

 

ブリーダーであろうとその背に乗せるのは心から認めた者のみであり、一時期ハマって育て続け毎度ドラゴンの背に乗って大会会場に現れていたからかドラゴンライダーの二つ名が付けられている。

 

「幻想の生物を平然と育ててるのが本当怖いわ」

 

「ディノとかロードランナーの背中に乗って遠くに出掛けるのも楽しいんだよ。ワームが脚伸ばして歩いてる姿見てすげぇ!って笑ってたら、背中に乗せてくれたりもしたなぁ。そのままファームを高速でワシャワシャ徘徊してて、その光景があまりにもアレだったのかホリィが卒倒したり」

 

こういうの、と咲夜がいつのまにか用意してくれた紙にやたら上手く絵を描いて見せていた。

 

「これが高速でワシャワシャ動いて近づいて来たら私でも卒倒するわよ。よくこれを育てようと思ったわね」

 

「育てて見ると可愛いんだよ」

 

「ツカサの可愛いの範囲が広すぎるわ。何が可愛くないとか具体的なのはないのかしら」

 

「もし俺が女性に生まれていたらって姿は可愛くなかったな。男に生まれて正解だった」

 

ツカサの不思議な森にある柵で囲われた性別反転エリアでセレナやAZと色々試してみたらしい。

 

女性として生まれていた場合の姿はガンソのファサリナそっくりだったらしく、思っていた留美穂のような可愛らしい姿とは違う自分にショックを受けて即座に封鎖に踏み切っていた。

 

「何それ異世界怪物牧場よりも興味あるわ。やっぱりツカサの家に行ってみたいわね」

 

「侵入出来ないようにしてあるから来ても入れないよ。他にもまだまだ危険なエリアがありそうだから確認中だし。それに伝説のポケモンやら幻のポケモンやらが自由に徘徊してて笑っちゃうんすよね」

 

他にもポケモンではないモンスター等が生息しており、ツカサがボスだと理解し上手く共存して過ごしている。

 

 

 

そのまま昼食を取り午後からは少し幻想郷散策をして来ると告げて紅魔館を出て行った。

 

「やべぇ、何あれ人里ってこんな殺伐としてんの?」

 

興味本位で立ち寄った人里で騒ぎが起きており、何だ何だと見に行くと子供を左腕で拘束して包丁を持ち騒ぐ男が居てツカサはドン引きしていた。

 

子供に危害を加えられたらと迂闊に近づけず、皆が遠巻きに説得しようとしている。

 

「まぁ、この距離なら」

 

そう呟きながら軽く準備運動をして……

 

 

「早くあの女を……」

 

「よいしょ」

 

瞬間移動で男の目の前にいきなり現れると包丁を左手で握り右腕で子供を引き離し、男の腹に鋭い蹴りを叩き込んで吹き飛ばしていた。

 

「ほらお母さんの所に。……いてて」

 

ポカンとしている子供の背をそっと押して母親の元に帰らせ、痛みが走り左手を見ると包丁を握った時に力を入れすぎて手が少し切れたらしく掌から血が流れていた。

 

周りにいた者達が男を拘束しているのを見て気を消してその場を離れ、ペットボトルの水で傷口を綺麗にしてから塗り薬を塗りガーゼを当てて器用に包帯を巻いていた。

 

 

「外貨でもいいって言われてよかった」

 

歩き回っていて茶屋を見つけたものの此方の通貨がないとスルーしようとしたが、外貨でもいいと言われお茶と団子を頼み支払いを済ませてのんびりしている。

 

外に用意されている席に座りボーっと遮る物のない青空とその先を眺めていた。

 

「ダネダネ」

 

「チョゲプリィィィ!!」

 

「ゼニィ!」

 

ゼニガメとフシギダネとトゲピーがツカサの足元に座っており、フシギダネへ蔓でトゲピーを持ち上げたり下ろしたりして遊ばせていた。

 

ゼニガメはみずてっぽうを口から出して虹を作って遊んでおり、ちょっとした見世物のようになっている。

 

「こいつら何処からか未使用のモンスターボールをそれぞれ転がしながら寄って来たんだよな。勢いよく俺の方に転がしてきたからそれを拾って渡そうとしたら、そのままボールに入ってカチってなったし」

 

「ダネダネダネフシ」

 

「俺からニャースの匂いがした?」

 

「ゼニィガメガメガメガ」

 

「人間と仲良くなって一緒に暮らすんだって出て行ったきり見かけなくなって心配してたと」

 

「チョゲチョゲプリィィ!」

 

「強いトゲキッスになりたいからこれからオナシャス!とか欲望に素直すぎる」

 

トゲピーだけは目的が違かったらしくハイテンションでツカサにペッコリしていた。

 

 

それからすぐに運ばれて来た団子を食べてお茶を飲み、誰かを探しているのか人通りが激しく騒がしい人里でトゲピーを膝に乗せてのんびり過ごしている。

 

「ブルーさんが持っていったゼニガメは今頃どうしてるんだろうなぁ……」

 

この世界ではレッドがヒトカゲ、グリーンがフシギダネ、ブルーがゼニガメと各自相性ではなく自分の好みのポケモンを選んだらしい。

 

「ゼニ?」

 

「何か俺がホウエンに行った辺りから音信不通なんだよね。まぁ、あの頃とは違って色んな変態と出会ってるからもう怖くはないけど」

 

「なるほどなるほど」

 

「パンツ丸見えだったから次からは気をつけた方がいいよ射命丸さん」

 

当たり前のように空から降りて来て自然に隣に座り、変態多数と遭遇済みとメモしている文に対して注意していた。

 

「かなり速度出して降りてますし、ちょっとしたアレで普通は見えるはずないんですけど」

 

「暇なの?」

 

「暇ではないです」

 

「あ、そうだ。この辺にぃ、美味い団子を出す茶店があるらしいっすよ」

 

「え?」

 

「じゃけん追加注文しましょうね〜。お姉さん、お団子とお茶二人分追加してくださいな」

 

一人で駄弁るのも飽きて来たと追加注文と代金を渡し、フシギダネ達用の水とポケモンフードを器に入れて用意していた。

 

「流れるように奢られてちょっと不安なんですが……私は軽い女じゃないですからね!」

 

「寧ろその方が安心するからずっと重いままでいて」

 

「それはそれで腹立たしいというか……」

 

「どっちだよ」

 

「乙女心ってものがあるんです」

 

「へー、そうなんだ」

 

「そうですよ。下心に警戒はしますけど興味ないって方が腹立たしいんです」

 

「俺が生まれる前から知っていて愛してますとか言う超重い愛系の女性がいるから本当可愛いとか美人だとかどうでもいいんだもの」

 

この数日で押せ押せな小悪魔に根負けし、そういった関係に発展して素敵な事になっている。

 

「ちょっと引いてます」

 

「俺も初めて言われた時は引いたもん。モテ期かなと思ってたら愛人のポジションがいいですとか言われて更に引いたし」

 

「どんな人生送ってんですか」

 

「人生に悪魔やら妖怪やらが関わる時点で普通じゃないだろうね」

 

「それはまぁ……あ、そうでした。今晩博麗神社である宴会には参加されますよね?」

 

「ないです」

 

何だかんだで過ごしやすい紅魔館に居たいらしく即否定していた。

 

「えっ、な、何でですか?」

 

「どうして行く必要なんかあるんですか」

 

「ほら、霊夢さんに挨拶するとかあるじゃないですか。他にも可愛かったり美人の妖怪も来ますし」

 

「招待されてないからね、しょうがないね。さっきも言ったけど可愛いとか美人とかに釣られないから」

 

能力不明の変なのに絡まれたくないのが本音であり、バトルマニアが居ても嫌だなと考えて行かない理由を最もらしく語っていた。

 

「最近夜の博麗神社に珍しいポケモンとか居るらしいですよ」

 

「マジかよ行かなきゃ」

 

「うわ、凄い食いついて来ましたね」

 

美人や可愛いには釣られないがポケモンには即釣られるトレーナーの鑑。

 

「タツベイとか居ないかな」

 

………

……

 

その夜の博麗神社に紅魔館組として向かい、久々に挨拶を済ませ……

 

「風見幽香さんがやたら絡んできます」

 

「私のヒマナッツとキマワリが懐いたから絡まれても仕方ないわね」

 

「でも落ち着く」

 

花の香りがしているからか完全に気を抜いており、ツカサをよく知らない者達は心配そうに眺めながら呑んでいる。

 

「図太いわね。でも貴方とはいい関係が築けそう」

 

「花の育て方とか本当に参考になったなー。きっとうちのドレディアもキレイハナも喜ぶよ」

 

急に隣に座って来て花の話題を振られ、答えている内に意気投合して今に至る。

 

「草タイプのケアの仕方を教えてもらったからキマワリ達も喜ぶわ」

 

「あ、なんなら草タイプ用のお手入れセットいる? 今は新品フルセットでないから使い古しで悪いんだけど」

 

 

そんな話をしていると……

 

「なぁ、霊夢。あっちに紫やら永琳やらが凄い圧を出しながら集まってるけど、あの中心の奴は何で平然としていられるんだぜ?」

 

「何かツカサさんが誘蛾灯みたいになってるわね。物珍しさから寄って行ったのもいるみたいよ」

 

「なんだ霊夢の知り合いなのか?」

 

「お賽銭に十万円ポンとくれて、色んな木の実も分けてくれて増やし方を教えてくれた素敵な人よ」

 

「よくわからないんだぜ」

 

「まぁ、いい人よ」

 

「あ、閻魔にぺこぺこしてる」

 

ツカサはいつも世話になっている映姫にぺこぺこしていた。

 

そのまま説教が始まり巻き込まれたら叶わないと皆サッと居なくなっている。

 

 

「彼の所有している土地にある広大な森の話とか面白いから魔理沙も聞いてみたら? お説教終わったらだけど」

 

「それならついでに挨拶もしておくよ」

 

「……ふぅ」

 

「アリスも一緒に行かないか? 挨拶するなら一回で……」

 

「残念だけど私は初対面じゃないもの。週に一度は家に来てお茶をしたり、人形やぬいぐるみについて話し合ったりしているわ」

 

森の特定のルートを通ると何故かアリスの家の近くに出るらしく、紫以上に交流していて仲良し具合は一番だったりもする。

 

「早苗と違って常識は投げ捨ててないからとか言ってた男が一番常識外れね」

 

 

それから一時間程で説教から解放され当初の目的のポケモンを探し回っていたが、霊夢のニャースを見つけて健康診断を始めていた。

 

「うん、健康でよろしい。本当最近の旅しないトレーナーは人間用に調味された食べ物をポケモンにバカバカあげるから、ここまで健康なポケモンは久しぶりだよ」

 

「ニャース!」

 

「最近オンにし続けてたら成長したみたいでポケモン以外の動物の声まで分かるようになってんだよなぁ……」

 

今はオフにしているらしくニャースの声はニュアンスで理解している。

 

「ニャ、ニャース!」

 

「大丈夫、何かオフでも言いたい事は何となく分かるから」

 

「ニャー」

 

「はい、お大事に」

 

ペコリと頭を下げたニャースにそう声をかけ、再びポケモンを探そうと立ち上がり振り向くとほぼ全員が見ていてビクッ!としていた。

 

各々が連れて来ていたポケモンに何か話すと頷き、そのままツカサの元に向かって歩いたり飛んだりして来て行儀よく整列している。

 

「……まぁ、いいけどさ」

 

「あ、助手は私がするね」

 

「ああ、お願い……鈴仙?」

 

「近くでお説教終わるの待ってたの。姫様がずっと独占してて私は全然お話出来なかったから」

 

「輝夜なぁ……それよりも明るい室内借りて診たいから霊夢に言って許可貰ってきて。それとカルテも作るからそれぞれのトレーナーも一緒に来るようにって」

 

「分かったわ、すぐ行ってくる!」

 

「お前達も一度戻ってご主人を連れて来て。後は痛いとか違和感ある場所をちゃんと言う事。俺はお前達の言葉なら分かるから」

 

そう話をして皆を一度帰し、鈴仙が戻って来るのを待っていた。

 

 

 

 

 

 




グラジオはもうオカリン効果で手遅れ状態。


色々忙しかったりモチベがなくなったりしてました。


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ほのぼのとした日常

年内に後一回くらいは投稿したいなぁ。


「うん、西行寺さんのゲンガーは食べ過ぎだね。運動をして食べる量を減らす事。これは人間も食べられるポケモン用のご飯のレシピですから、作っている方に渡してくださいね」

 

「先生、ありがとうございました。妖夢ー、これ今度からゲンちゃんのご飯ー」

 

「ゲンガー、これのレシピも書いておいたから作ってもらいなね。霊力でピリピリするのを我慢したご褒美」

 

そう言いながら抹茶のポフレを取り出しゲンガーの手に乗せニコニコしている。

 

触診の時に霊力を纏った手で触ったらしく、我慢したらいい物をあげるからと言って我慢させていた。

 

 

「じー」

 

「鈴仙、カルテをファイルに入れて棚……はないから重ねておいて。電子カルテじゃないのこんなに書くの久々だよ」

 

「はーい」

 

「ねぇねぇ、先生。私、ポケモンが食べる前に試しに食べて安全か確かめないといけないと思うの」

 

「あはは、みんなそう言いますね。西行寺さんと魂魄さんの分も用意してありますから、部屋を出たら霊夢から受け取ってください」

 

「妖夢、ゲンちゃん、早く行きましょ!」

 

「幽々子様まだしっかりお礼も……ありがとうございました。これはちゃんと料理担当の者に渡しておきます」

 

「お大事に」

 

ぺこりと頭を下げて出て行くのを見送り、今のが最後だと大きく伸びをしてそのまま畳に仰向けで倒れ込んでいた。

 

「疲れた……」

 

「お疲れ様でした。ね、残りの時間は一緒にお喋りしながら食べたり飲んだりしよう?」

 

「あー、いいっすねぇ」

 

「私、またツカサの話が色々聞きたいな」

 

「自慢したくて仕方なかった筆しらべって技とシラヌイが何処からか持って来た身の丈程ある筆の話を40分くらい話そうかな」

 

シラヌイとの絆が最大まで深まったのか奇妙な技を身につけていた。

 

「じゃあ、灯りを消して行きましょ」

 

「うん」

 

………

……

 

その宴会から数日の間は紅魔館や守矢神社で過ごし、皆の気をある程度覚えると好きな時にいつでも来れるからとサクッとカロスに帰っていた。

 

それからすぐに修行がてら別荘に誘われ流れでドラゴンボール探しを手伝ったり、フリーザがちょっとした伝手で連れて来たとあるサイヤ人が暴走してしまったのをどうにかしようと時間稼ぎをして殺されかけたり、そんな濃い毎日を過ごしている内に数週間が経過している。

 

そんな中、各地方でリーグが再開される日が近づいていた。

 

そしてツカサは……

 

「おっぱいっていいよね」

 

小悪魔とのアレコレで異性への興味がかなり上がっていた。

 

「ようやく異性に性的な目を積極的に向けるようになってくれたか……」

 

「AZは何でそんなしみじみ呟いてんの?」

 

「ではその胸を触らせてくれるという女性とモフモフさせてくれるキュウコン、どちらかしか選べないとしたらツカサはどちらを選ぶ?」

 

「そらキュウコンよ。おっぱいよりポケモンでしょ」

 

「期待した私が馬鹿だった。だがこれは大きな一歩か」

 

「まぁ、それに小悪魔と早苗も居るし」

 

ある晩に早苗にサーッ!とされ、混濁する意識の中で理性を失いそういう関係になっていた。

 

「むっ……」

 

「それより怖くて誰にも話せなかったんだけどさ、数週間前幻想郷に行くちょっと前にまた異世界に迷い込んだんだ」

 

「いつものか」

 

「小さくなった悟空さんとか悟飯さんの娘さんが大きくなってたりした世界だったの。で、迷い込んだら即身体を乗っ取られちゃってさー」

 

本来使われるはずだった純血の王子ではなく、丁度よくフラフラしていたベストコンディションで仕上がっているツカサを使う事にしたらしい。

 

「どんだけー」

 

「最近テレビやらDVDやら見てるの知ってたけどそれは引く」

 

「私も言ってからないなと思った」

 

「それで話にだけ聞いてた大猿になって大暴れしたらしいんだよね。乗っ取ったベビーって奴が」

 

「それを聞かされた私のが引く」

 

「それからしばらくあっちでお世話になってたんだけど、本来尻尾があるだろう位置が最近妙にムズムズしてて困るの」

 

乗っ取られた件を話したらまず入院だ何だと騒ぎになるから黙っており、唐突に幻想郷に行ったのも永琳の検査のが正確だからという一点だったりする。

 

「とりあえず様子を見るのがいい。最悪私が孫悟空か孫悟飯に連絡をしよう」

 

「てかマジで生えて来たら切るしかないような……」

 

「今時尻尾くらいなら珍しくない。宇宙人の血を引いて先祖返りで猫の耳と尻尾がついた渋いおっさんを私は見た事がある」

 

「小さい頃に近所に住んでたお姉さんはウサミン星から来た宇宙人だったな。あのお姉さんのお陰でメイド服が好きになったんだよなぁ……今どこで何やってんだろ」

 

よく遊んでもらっていたらしく、フリーザやクウラが居たからか宇宙人説をガチで信じていた。

 

「あぁ、ちなみにだがツカサの森はお前が居ない間は平和そのものだったぞ」

 

「嘘つけ。絶対誰かしら迷い込んで来たりしてるゾ」

 

「寧ろ何もなさすぎてポケモンに私、17号も戸惑ったくらいだ」

 

「やっと、異常現象が収まったんやなって」

 

「多分お前が居ると色々起きるんだと思うのだが」

 

「ねーよ。死んだ目をした同い年くらいの女の子がフラフラしてた時はどうしようかと思ったけど。とりあえず一ヶ月かけてメンタルケアと色々吐き出させて、もう大丈夫だろうなってくらい元気になったの確認してから元の世界に送り届けたけどさ」

 

「また来たいと言っていたが……」

 

「もう無理だろうね。お土産に俺とセレナとその子と家に居たポケモン達で撮った写真を写真立てに入れて渡したから、こんな事もあったなって想い出くらいにはなるでしょ」

 

「あの娘ならどうにかして此方側に来そうな気もするが……」

 

「まぁ、向こうで友達が出来て楽しく過ごしてる限りは来ないでしょ。完全に回復してるといいね、西住さん」

 

「ああ、元気でやっていてもらいたいものだな」

 

「さてと……あ、そうだ。父さんとクウラさんが開発してゲーセンで大盛況な色んなロボが出るシミュレーターの筐体、あれのAI凄いよね。接する内に学習して投影される姿も変わるし、ちょっと高いけどスマホに専用アプリ入れれば日常的に一緒に居られるしで」

 

クウラは自社製品の大ヒットに嬉しい悲鳴で部下と一緒に社長の自分も走り、シュウはツカサにだけ仕掛けた高難易度をどう切り抜けるか楽しみに待っている。

 

「本宅のリビングの隅にある巨大なあれか。邪魔だ邪魔だと騒いでいた割には楽しんでいるな」

 

「だってやらなきゃ損だもの。ネットで情報見ると最初は好きな量産機を選んでミッションをこなして武器やら金やら稼いで新しい機体を買うとか書いてあった。俺だけグランゾンしか選べなくて、しかも低威力のグランビームしか使えないし量産機以下の紙装甲、しかも鈍重って罰ゲームなんだけど」

 

遅い、脆い、弱いの三重苦でビックリするくらい使えなかったりする。

 

かするだけでやばいレベルで対人戦でも見た目だけラスボスの鴨状態だが、チマチマした見向きもされないようなお使いミッションをこなしているのでまだ誰にも確認されていないツチノコ状態。

 

「草」

 

「本当どうした、最近現代に染まりすぎてないか? スマホも何か俺より巧みに使いこなしてるし」

 

「ふっ」

 

「バカにされてる気がしてムカつく……」

 

「まぁ、私も心に余裕が生まれたという事だ」

 

「あのポケモンのアプリも何か凄いやり込んでるし」

 

「ツカサから貰ったLRワールドチャンピオンツカサがぶっ壊れだったからだな。ブリーダーで経験値3倍、トレーナーで与えるダメージと全タイプステータス1.5倍、ドクターで回復速度3倍。排出期間が終わって今はおりゅ煽りが半端ない事になっているぞ」

 

「それでも男だからいらないって人が多そう。そういえば俺のサポートAIが何かロリに変貌したのが納得いかない」

 

「寧ろ納得出来る変貌なんだが?」

 

「おかしい……姉さんみたいなAIになるように会話をして誘導したのに何で銀髪ツインテールの無口系少女になるんだよ。早く稼いで戦艦を買ってくれってチラチラリストを見せて来て無言の催促もしてくるしさ」

 

「ほう」

 

「資金管理にミッションスケジュール管理とか全部やってくれてるからありがたいけど……違う量産機買える金額貯まったのに修理費やらメンテナンス費用やらに使うからダメって言うし」

 

AIの尻に敷かれておりゲーム内で自由に買い物が出来ない縛りプレイを強要されている。

 

尚資金の一部は戦艦購入費や自身のカスタマイズの積立に回されている事に気がついていない。

 

「不憫な……」

 

「みんなは1対1の鍔迫り合いとかチーム戦とかレイドバトルとか楽しんでるのに、俺だけAIと一緒に荷物運んだり指定された廃ビルを更地にしたり何ゲーやってんのか分からんレベル。近いうちにVR化もするみたいで、そうしたら農作業とか牧場の手伝いもミッションに加わるって」

 

そうなると完全に牧場物語を遊び始める事になってしまう。

 

「それはそれでブログやらに記録すれば面白いのではないか?」

 

「何が悲しくてロボゲーで牧場物語みたいな記録を残さないといけないんだよ……」

 

「コンバインってロボみたいな名前の機械もあるらしいじゃないか」

 

「農作業の機械が今のグランゾンより強かったら悲しいから絶対嫌だ。……それとブロリー達はもう平気そう?」

 

「ああ、パラガスは気が抜けて日がな一日ポッポに餌をやったりコイキングに餌をやりながら過ごしている。ブロリーは私やポケモンと共に木の実を植え、畑を耕し、ルールを教えたらリングマと相撲をしていた」

 

「あのリングマは本当凄いわ……チライとレモはフリーザ冷凍食品でしっかり働いて休日には遊びに来て泊まって行ってるし、一度うちで働かないかってスカウトしてみたけどダメだったんだよね。適度な距離感も大切だし、決まった日に会いに行く楽しみも知ってほしいって」

 

「ああ、なるほど」

 

ツカサと二人は連絡を取り合い、ブロリーと一緒に撮った写真等を送ったりと割と仲良しだった。

 

「それと歳離れてるけど兄弟みたいだってチライ達に言われてから弟扱いされてるよ。人間状態のまま大猿の力を引き出す方法をフィーリングで教えてくれてすぐに試したけど、気がついたら全身激痛で身動き取れなくてよく見たら心配そうな顔したブロリーに押さえ込まれてたんだよね」

 

見事なまでに呑まれて大暴走して襲いかかったが格上のブロリーにあっさり鎮圧されたらしい。

 

………

……

 

午後はまったりハンモックに揺られながら森へ続く庭を走り回るイーブイ達を眺めていた。

 

「ピカチュ」

 

『ツカサちゃん!』

 

「うわぁ……」

 

突如頭に直接話しかけながら降りて来た色違いのホウオウに心底嫌そうな顔を向けている。

 

『その蔑むような視線、嫌いじゃないわぁ……』

 

「お前本当他の伝説のポケモンに謝った方がいいんじゃないの?」

 

『そんな事はどうでもいいの! それよりツカサちゃん、おっぱいが好きになったんですって?』

 

「いや元から好きは好きだけども」

 

『セレナちゃんより私の方がおっぱい大きいわ』

 

「は?」

 

『私の方がおっぱい大きいわ!』

 

「ピカチュウ、10まんボルト!」

 

「ピーカー……」

 

『キャー! お兄さん許して! ピカチュウにビリビリされるなんてイヤよー!』

 

「こら待て逃げんな!」

 

「チュー!」

 

『おーっほっほっほっ! 悔しかったらここまでいらっ……あっ、ダメ! 来ないで! ツカサちゃん私より速く飛べるの忘れてたわ!』

 

「アホなのかな?」

 

「ピーカチュ」

 

 

逃げ去るホウオウを呆れながら見送り、再びハンモックに揺られ始めると……

 

「ツカサ、ボクの頼んだうすしおのポテチはどこにあるんだい? 映画を見ながらコーラと一緒に食べたいんだ」

 

「お前さ、感情が分からないだの魔法少女になれだの言ってた癖に完全にニートになってるじゃん」

 

喋る白い小動物のような生き物がハンモックで揺られるツカサの上に飛び乗り、テシテシしながら要求していた。

 

「この世界に来てリンクが切れて暇だから恐怖以外の感情も学んだんだ。でも何でボクのニックネームはキリコなんだい?」

 

「お前がボトムズ見てる時にいきなり現れたからだよ。キュゥべえよりいいと思うけど基本キュゥべえって呼んじゃうんだよなぁ」

 

なんやかんやあってツカサの家でニート生活を堪能しており、もう元の世界に戻る気はサラサラなかったりする。

 

「ツカサはネーミングセンスがないからありがたいね。ピカチュウの女の子だからピカ子って単純すぎないかい?」

 

「そんな事を言うなら晩飯抜きにして色々取り上げるぞ」

 

「やだやだやだやだ! ご飯の後にお風呂入ってブラッシングしてもらって、部屋で動画サイト見て回るんだから!」

 

「いつもの。クール系からだだっ子のニートになってんだよなぁ」

 

「ピカチュ」

 

こちらに来てから誰でも見えるようになっており、野放しにしたらヤバいと感じたツカサがペット扱いで保護して甘やかした結果がこれ。

 

「もうあんな勧誘活動なんてごめんだね! ボクは一生ここでツカサに寄生してやるんだ!」

 

「すげぇ送り返したい」

 

「この身体じゃ働けないから仕方ないね! ボクじゃない個体がガンガン殺される世界に帰ってたまるか!」

 

「あー……最初に覚えた感情は死への恐怖だったもんなお前。足滑らせて湖に落ちてギャラドスが口の中に入れて助けてくれたっていう」

 

「感謝はしてるけどギャラドスがトラウマだよ……真下から巨大な恐い顔をしたのが口を開けてくるんだもん」

 

「そいつはまだ生きてるし美味しくないだろうからペッしなさいって言ってなかったら食べてたかもしれないな」

 

ツカサはそれを笑いながら見ていたらしく、思い出してイラッとしたのかキュゥべえはペシペシと前脚で叩いている。

 

「この! この!」

 

「あ^〜、程良い力で顔をフニフニされるのたまらねぇぜ」

 

こうしてツカサの珍獣ランドに新たな仲間が加わっていた。

 

「はぁはぁ……」

 

「今度またロボゲーでマスコット扱いにしてやるからもっとやってどうぞ」

 

「そういえば知ってるかい? あのサポートAI、ツカサとボクのやり取りを見て「バカばっか」って呟いていたんだ」

 

「そりゃコンテナ運びながら何処のスーパーの駄菓子が美味いとか言ってりゃな。何処で買っても変わらないわ」

 

「ボクはスーパービッグチョコが好きだね。この身体でよかったーって思うくらい満足感溢れる大きさだよ」

 

「お前太らないからって毎日食べてるもんな。セレナ煽って踏まれてグリグリされてたけど」

 

「平たい胸族だから仕方ないね!」

 

「お前本当いつか埋められるぞ」

 

「ちなみにおっぱい大好きになったツカサ好みの巴マミはメンタルがクソザコナメクジだよ」

 

「個人情報漏らしすぎだろ。てかメンタルクソザコナメクジってなんだよ」

 

興味がないからか適当に話を聞きながら返答していた。

 

「どうせもう会わないしツカサも会わないから平気だよ」

 

「フラグっぽい事を言うんじゃない。あの時だってお前が当たりだらけの中で10分の1なんて引かないよ絶対、とか言ったせいで壊れたヒュッケバインMk-2になったんだからな。他だったらGN-Xとかドラグーンとかの高性能量産機貰えたのに」

 

「あれは思わず笑っちゃったよ。当たりやすい量産型ゲシュペンストすら引けないとかツカサは色んな意味で持ってるよ」

 

「うっさいよ! だけど次やる前にまたどっか行きそうだなぁ……」

 

その勘は正しかった。

 

………

……

 

数日後、リビングでメイドが運んで来た紅茶とクッキーを食べながらくつろいでいた。

 

「あ、そうだ。キュウべぇ聞いてくれ、お前の量産型と魔女を見て来た」

 

「『ワールドチャンピオンツカサ持ってないやつおりゅ?』ふぅ、今日も一日煽って発狂させないと。で、何? 魔女? 量産型?」

 

買い与えたノートPCで煽るキュウべぇを見ながら迷い込んだ世界での話をしようとしていた。

 

「何とか戸籍を作ってアルバイトしながらブラブラしてて……何やかんやあってマミちゃんがすげぇ依存してきた」

 

「は?」

 

「スーパーでいつも会うなぁって思ってて、遠出した街でカフェに入ってアップルパイ食べてたら偶然マミちゃんも入って来て向こうも驚いてたり」

 

「……ん?」

 

「それからもよく行く本屋で会ったり、バイト先に来たりと割と行動範囲が似てたのかもしれない」

 

「あっ……」

 

キュウべぇはよくツカサが行く場所や勤務先で遭遇すると聞いて察したらしいがツカサは全く気がついていなかった。

 

「お茶しませんかって自宅に誘われたからホイホイ付いて行ったらまさかの一人暮らしだし、仲間だねーって話もしたな」

 

「君は知らない人の家に付いていっちゃダメだって親に言われなかったのかい!」

 

「いや、その時にはもう自己紹介も済ませてたし……それから少しして最近物騒で一人だと怖いからってマミちゃんに言われてしばらくお泊まりよ」

 

「そんなもっともらしい言い分を……」

 

「それでそろそろ帰らないとって話をしようとしたら、何か大人びた服装のマミちゃんが帰って来て俺がアパートに残して来た荷物持ってて……幽霊アパートだったから解約するの楽だったってニコニコしながら言ってきてさ」

 

「それ完全にストーカーだよね? 寧ろ何で解約出来たんだい?」

 

「何人も逃げ出して解約しまくってたからまたかって。そんな彼女はメンタル激強だったんだけど?」

 

「偽物かな?」

 

「それから毎日学校から帰って来て朝起きるまでずーっと側にいるの。流石にちょっと怖くなってアルバイト帰りに公園に寄り道して時間稼ぎしてたんだよ。なのにいつのまにか隣に居た時は本気で驚いた」

 

気を探るのは近くにいたら怖いと思ってしなかったらしく、そのまま腕を組まれて自宅まで連行されていた。

 

「よく帰ってこれたね。ボク達はどうしていたんだい?」

 

「俺が一緒に暮らすようになったからか邪魔になったみたいで追い出してた」

 

「草」

 

「で、一ヶ月くらいしてもしかしてこれ依存されてないか?ってなった」

 

「遅いよ……」

 

「キュウべぇが見えてたからか、魔女退治を見てほしいって言われて付いて行ったりもしてたからかなぁ……まぁ、それから兎に角色々あって帰ってこれたんだよ。最終的に色々お手伝いしてたら黒髪ロングのぺったんな女の子も超依存して来たけど、一人も二人も大差ないしもう帰って来たからセーフ」

 

「また迷い込んだら最後だと思うよ」

 

「まずないから平気平気。二人共友達になってたし、なんなら百合百合してるかもしれないし」

 

「血眼になって探してそう」

 

地雷原でタップダンスして無事に帰って来たツカサをキュウべぇは尊敬しつつも呆れて見ており、いつかこっちに来たら大惨事だなと思っているがそっと心に秘めていた。

 

「何があっても高校生になるまでは手は出さないからって二人とは距離を置いてたから大丈夫」

 

「何というか……餌を与え続けて懐かせたのにいきなり居なくなる無責任糞野郎だね」

 

「意味が分からないよ」

 

「それはボクの台詞だよ」

 

「ちなみにカフェでご馳走する代わりに愚痴を聞いてもらってたまどかちゃんが癒しでした」

 

「あー、あの。フラットな身体で凄い才能のちっぱいの」

 

「後ですり潰しの刑な」

 

「なんで!?」

 

「俺みたいなお兄さんがいたらって言ってたから、彼女のお兄さんになったんだよ。だからすり潰そうかなって」

 

「そのだからですり潰す意味が分からないよ!」

 

「ちっぱいとか言ったからね、しょうがないね」

 

「お兄さん許して! お兄さん許して! すり潰されるなんてイヤよー! あー!」

 

「うるせぇ! 冗談だから喚くなって!」

 

 

数分待ち落ち着いてから話を再開していた。

 

「はぁ……冗談なら早く言ってよ」

 

「何なら向こうのお前にやったみたいに吊るして炙ってやろうか」

 

「すり潰すよりそっちのがリアルすぎて怖いよ!」

 

「まどかちゃん守る為とはいえ、最終的にサイヤパワーに興味を持たれて俺がストーキング対象に変わったのは本当ひで」

 

一段階目でも余裕で星を砕く力を持っているから仕方がない。

 

「だってツカサ達から溢れ出るエネルギーは凄まじいからね」

 

「へー」

 

 

そんな一人と一体の会話が終わるのを反対側のソファで待っている三人が居た。

 

「ディアンシー、セレナ、ボクはツカサの作ったシュークリームが沢山欲しいのです」

 

『私はエクレアを所望します』

 

「私はツカサのフレンチトーストかなー」

 

「あぅあぅ、梨花には内緒で毎日シュークリームが食べられて幸せなのです!」

 

『羽入は本当にシュークリームが大好きですね』

 

「ツカサも羽入ちゃんが来る時だけは沢山シュークリームを作るのよ」

 

「ツカサが持たせてくれるお土産も大好評で梨花達と取り合いになるのですよ! 当然この世界の話は秘密にしているのです! あぅ!」

 

 

 

キャッキャッ言いながら姦しい三人を見てツカサは呟いていた。

 

「何だろうね、この中じゃ純粋な地球人はセレナしか居ないとか笑っちゃう。そういや羽入は本来見えないとか言ってたな」

 

「最初から見えてたのに馬鹿らしいよね」

 

「お前も同じような事言ってたんだよなぁ……警察だ! もう抵抗しても無駄だぞ!って羽入を抱き上げた時はあぅあぅ言いながら混乱してたっけ」

 

「何やってんの?」

 

「何かピカチュウをおっかなビックリ見てたり、一発芸シワシワピカチュウで笑い転げてたり可愛かったからつい……」

 

「いつか小さな子と戯れてて捕まりそう」

 

「カントーでもう捕まってるんだよなぁ……」

 

若干トラウマになっておりカロス以外の幼女パイセンとはあまり戯れたりはしていない。

 

「マジで何やってんの?」

 

「親御さんに見ていてもらっていいですか、からの勘違い通報で話を聞くだけだからって連れて行かれたんだよなぁ……慌てて俺の擁護に来てくれた幼女パイセン達の親御さんと迎えに来てくれたオカリンに感謝」

 

世界チャンピオンになっている今ならば微笑ましく見られるだけで済みそうだが、カロス以外では自重している。

 

「何だろう可哀想すぎて仕方ないよ……でもツカサは整った容姿をしているのに捕まったのかい?」

 

「そんなのリアルで考慮されるわけないでしょ」

 

まともな感性を持った大人もいるんだなと思いながら素直に付いて行ったらしい。

 

「世知辛いね……」

 

「それで思い出した。この前マリリンさんが遊びに来て一緒に出掛けた時、マリリンさんが迷子を見つけて話しかけたらギャン泣きされて警備員に連れて行かれそうになってたのは笑ったわ」

 

笑いを堪えながらツカサが割って入って事なきを得たらしく、誤解が解けた後に笑い出したツカサの胸をポカポカ叩く姿を見てチャンピオン同士で本当に仲が良い事に野次馬は驚いていた。

 

 

「色んな意味でお似合いじゃないか」

 

「第三者だと見てて凄い面白かった。おばちゃん怖いー!とか言われて額に青筋浮かべて、笑顔なのに口元がヒクヒクしてたし」

 

そういう面も含めてツカサはマリリンを好ましく思っており、最近はインタビュー等で好きなタイプを聞かれると普通にマリリンと答えるようになっている。

 

「あ、そっかぁ……」

 

「泊まった翌日に俺にすっぴんを見られたって部屋に引き籠ったり、他にも色々残念な所も好意をもてるよ。薄く化粧するだけでも可愛いのに子供っぽさが残るから嫌って言うし」

 

「あぁ、ボクがいい歳して何恥じらってんだよBBAって扉をノックしまくって煽ってエライ目に遭った時の」

 

「般若みたいな顔で出て来てお前を鷲掴みにして部屋に戻って行ったっけ……」

 

「ツカサの好みとかを色々話して解放してもらえてよかったよ。グライオンってこわい」

 

「あいつかぁ……特性のポイズンヒールで回復してはねやすめ、どくどく、ハサミギロチンに苦戦させられたの思い出した」

 

仲良くなってからマリリンのエゲツない戦法は更に磨きが掛かっており、挑戦者の心をガンガン折りまくって惚気まで始めたせいでツカサにコントロールしろという謎のクレームが入り始めている。

 

「本当あのBBAは……そろそろお菓子作り始めた方がいいんじゃない?」

 

「そうね。今日はセレナが間違えて買って来たシュガーなしのコーンフレークを使ったパフェかな。昨日余ったガトーショコラにバニラアイス、チョコソースも生クリームもあるし」

 

そう言うとソファから立ち上がりキッチンに向かって行った。




こうなるとホウオウのNNはカチョウになるんやなって。
花鳥、火鳥、課長でピッタリ。


セレナ以外宇宙人やらポケモンやらで純粋な地球人が居ないツカサ邸。

餌やりおじさんと化したパラガス、ギャラドスやバンギラス等の強面ポケモンが懐くブロリー、スーパーニートなキュウべぇ、当たり前のように週一でシュークリームをタカリに来る羽入と個性的な面々が大集合。


FGOはSタルがヒロイン性能高めで満足だし、カラミティ・ジェーンは可愛いしでハロウィンシーズンにやらなければ良かったのになぁ。

PS4やっと買ってP5Rとアイスボーンを購入。
DLCペルソナは全部購入、衣装は10円のは全部購入してデモニカを買うか悩んでる。


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正式に就任した後のお話

恙無くチャンピオンとしての活動が始まって数週間が経過していた。

 

「挑戦者が来てもガチ四天王達に阻まれて暇すぎる」

 

「まぁ、カロスが世界一になって四天王の方々も気合い入ってるから仕方ないよ。だけど君の重度なファンの一人がリーグの職員になっていたのには驚いたね。男性だから講演等に付いていかせるのにも丁度いいし」

 

様々なチャンピオンの業務を教わり仲良くなった男性職員と休憩時間に食堂に足を運んでいた。

 

「正式にチャンピオンになって生放送した時に凄いテンションで俺を紹介してくれたけどちょい怖かったね」

 

「『祝え! あらゆる地方のチャンピオンを降し、国を越え歴史に名を刻むカロスの英雄! その名も白河ツカサ! まさに最強のチャンピオン生誕の瞬間である!』って本を片手に紹介したせいでツカサ君霞んでたよ」

 

「別に構わないんだよなぁ」

 

「まぁ、ツカサ君の周りには濃いキャラしか集まらないから関係ないか」

 

「俺が薄く見えるくらいにね」

 

「それはない」

 

二人の会話を周りで聞きながら食事をしていた者達も思わず頷いていた。

 

「そうかなぁ」

 

「この前のバラエティ番組に出た時なんて大食いタレントを遥かに凌ぐ大食いを見せていたじゃないか。しかも食材尽きたって言われて『まぁ、腹八分目って言うし……』ってグーってお腹の音を出しながら若干不満そうにしてたでしょ」

 

「あの日は朝にした手合わせが激しくてお腹凄い減ってたから……」

 

フルパワーで暴走する怒り形態の燃費が激しく、ブロリーに鎮圧されるまで力配分無視の全力なせいで朝食昼食をいつもと同じように食べても足りなかったらしい。

 

「川で泣いて暴れてた誰かの逃がしたギャラドスのはかいこうせんを片手で何かバリアみたいなの出して防いであっつい!で済ませたりもしたよね?」

 

「上手く出来なかったからあれは熱かったなぁ。あのギャラドスはうちの兄のような人が可愛がってるよ。まだ若くて小さいからうちの湖にいるギャラドス夫婦の養子みたいな扱いにもなってる」

 

ブロリー預かりになっており毎日背中に乗って湖を遊覧している。

 

「それでも自分が薄く見えるって言い張ると」

 

「絶対周りのが濃いよ。シオニーちゃんとか最近酔って脱いで泣いて吐いて翌朝土下座とかするし……まぁ、ストレス溜まるんだろうけど」

 

「聞きたくなーい! あのクールビューティーなイメージを壊さないでくれ!」

 

「俺がワールドチャンピオンになってから色々とカロスに有利に事が進むようになってて大変だって言ってた」

 

「うちも大変だからね? CMやら番組出演やら講演やらの依頼がミッチリだし」

 

「ドクターの方はようやく向こうが折れてポケモンセンターでも手術や診察も出来るようになって助かったよ。ブリーダーの方は仲良かった研修先のオーナーとかパイセン達から今までより頻繁に連絡が来るようになったけど」

 

ポケモンの卵に関する話をテレビでしてからよく連絡が来るらしく、近々会いに行く予定もあったりする。

 

「経歴を詳しく聞いたけどやっぱり頭おかしいよね。いつまでも図鑑貰えないから不貞腐れてトレーナー辞めて、従姉妹か後輩に雇って貰えるかもしれないからとドクターとブリーダーの資格を取得って」

 

改めて聞くと頭おかしいなと聞き耳を立てていた者達も頷いていた。

 

「あの時は何かもういいやってなってたから。ちなみにピアノの音が好きなポケモンがブリーダーの実習時代にいたからピアノも並には弾けるよ。流石にずっとピアノやってる従姉妹にはかなり劣るけどね」

 

「なんて言うかこの数週間でやらかしまくってるからもう驚かないけどさ。当たり前のように空飛んで天井とかの掃除をしたり、転がって来て道を塞いだ撤去するのが大変な大岩を持ち上げてどかしたり……で、まだ18歳でしょ? 当然の様にリーグにまで色んな地方のお偉いさんやらから見合いを〜とかも来るし。その中でも一番引いたのは孕ませてくれるだけでもってやつだったな」

 

「なんかごめん」

 

『何回来てもひろーい』

 

『そうですわねー。私の時代にはなかった物ばかりですわ』

 

ツカサの守護霊になった守護霊少女は最近リーグをウロウロしており、今もあっちこっち行ったり来たりして探索を楽しんでいた。

 

先日の心霊番組の撮影で向かった心霊スポットになっている古城に居た、古いデザインのドレス姿のお嬢様のような霊も憑いてしまっている。

 

波長が合い目と目があって自然に逸らすも長年一人で離れられず寂しさ極まっていたからかグイグイ来て、それを上手く避けて何とか撮影も終わり帰る事になりホッと油断した瞬間城の上から飛び降りて来て背中にしがみついたらしい。

 

「まぁ、お仕事だからね。ツカサ君は明日からまた忙しくなるからがんばってね」

 

「カントーでなんかアイドルと心霊スポットに〜って最近これ系ばっかじゃない? 他の地方とかも基本これだし」

 

「怯まず騒がず冷静に淡々と見て回る姿が逆にいいらしいよ。しかも映える」

 

「憑かれるから嫌なんですけど」

 

「疲れるのは仕方のない事だからがんばって」

 

「成仏させるには手続きがあるから面倒なのに……」

 

守護霊少女と仲良くなり成仏を拒んだ霊嬢以外は小町とぼたんを呼び出して手続きをし、それぞれ半々で閻魔の元へ連れて行ってもらっていた。

 

「何か言ったかい?」

 

「何でもないよ」

 

『生まれてから身体が弱くてあまり出られなかった外の世界……甘くて美味しい物も沢山あって幸せですわ』

 

『味覚と満腹感は出来るけど太らないし、幾らツカサ君が大食いでも苦しくないしで最高だよね!』

 

「……うーん、カオス」

 

「それじゃそろそろ戻ろうか」

 

「午後からはシオニーちゃんと他の国の偉い人と会うんだっけ……世界チャンピオンなんかになった弊害が酷い」

 

週に三回リーグに顔を出し、残りが休みや外のお仕事だったりで多忙な毎日を過ごしている。

 

…………

………

 

そんな忙しい中のとある休日

 

「あの夢の世界の17号さんと18号さんは見た目似てる別人だよなぁ……」

 

「キュウべぇ! おみゃーも掃除の手伝いくらいするのニャ!」

 

「無理無理無理ー! ボクはニャースみたいに二足歩行出来ないからね! カーッ! 残念だわー!」

 

「ニャース先輩、終わりましたのニャ!」

 

「キュウべぇは一度ぶん殴ってやるのニャ……ご苦労様ニャ!」

 

「……森で倒れてた猫っぽいの助けたら喋るし懐くしニャース並に家事出来るし可愛いしで家で雇っちゃったんだよな」

 

「旦那さんのお家は働き甲斐がありますのニャ!」

 

「アイルーって種族は働き屋さんだなぁ……てかなんだこの空間」

 

ニャースが掃除をしながらキュウべぇに突っかかり、アイルーがパタパタと動き回って掃除を手伝い、キュウべぇがテーブルの上でノートPCで煽っている訳の分からない空間に仕上がっていた。

 

「ボクはツカサのペット枠だからお手伝いしませーん! 理解できりゅ?」

 

「ウニャー! もう勘弁しねーのニャ! ニャーが躾けてやるのニャ!」

 

「お手伝いしますのニャ!」

 

「蚊帳の外すぎんよー。ブロリーが怒り状態を少しずつ制御出来る様になってきたのに俺は全く制御出来んなぁ……悟空さんとベジータさんとブロリーにボッコボコにされてようやく理性が戻るし。だけどあの三人と血縁関係だったとかどうなってんだ」

 

ドラゴンボールで気になっていたご先祖様について尋ねてみると、パラガスの妹とベジータ王との間に産まれた娘がブロリーより前に辺境に放り出されちょっとしたトラブルに巻き込まれてポッドごとタイムスリップ。

 

辿り着いた過去の世界の惑星で暮らしていると同じようにタイムスリップしてきたバーダックが現れ色々あって成長した娘との間に子をなし、その子供が旅立って地球に辿り着いたのがツカサのご先祖様だった。

 

そんな光景をパラガスを含めた皆でカプセルコーポレーションで見ており、ツカサは予想していなかった展開に思わず頭を抱えてマジかよ……と呟いていた。

 

「パラガスの複雑そうな顔ったらなー。ブロリーは本当に弟だったって喜んでたけど……」

 

世界は狭いなと見ていた者達は呟き、これで遠慮はいらんなとベジータは嬉々として修行のメニューをハードに仕上げて更なる地獄を見たりしている。

 

他にもその場の空気で試しにと悟飯とフュージョンをして二回失敗したり、成功したらしたでグレートサイヤマンネオとか名乗り出して相性が良いのかかなり強かったりとツカサにちょっとした黒歴史も生まれていた。

 

「2対1なんて卑怯だよ! ツカサ! 超サイヤ人になってボクを助ける時だ!」

 

「いやでーす」

 

「助けてグレートサイヤマン3号!」

 

「おいやめろマジで」

 

「合体ヒーローグレートサイヤマンネオ凄いですね」

 

「やめてぇ!!」

 

尚悟飯がフュージョンのポーズをかなり気に入ってしまい、これから頻繁にネオになる模様。

 

「だから助け」

 

「ニャースの味方になるわ」

 

「なんで!?」

 

当たり前の結果だった。

 

………

……

 

キュウべぇをシバいているうちに午後になり、リビングに吊るされたままのソレを放置してツカサは森へと出ていた。

 

「森で拾った謎のページが集まる度に夢に黒いゴスロリの女の子が出て来るんだよ」

 

「ツカサ、俺達に殴られて頭がおかしく……」

 

「ブロリー、違うよ……マジなんだよ」

 

「ブロリー、ツカサの言う事は話半分で聞くといい」

 

「分かった」

 

「AZも酷いけどブロリーも納得しないで……」

 

三人で熟れた木の実が腐る前にせっせと回収しながら話をしており、遠くの方で17号がバンバドロと一緒に森を見て回っている姿も見える。

 

「それでロリコンは何でそんな夢を?」

 

「ロリコンじゃねーよ! ……まぁ、呪われたページとかかもしれない。夢の中とはいえ可愛いからプラマイゼロかな。悪の組織のボスとか黒幕が座ってそうなでかい椅子に座ってて、ゴスロリ少女が膝に座ってマスター呼びしてくるから何か目覚めそう」

 

「もしもしポリスメン?」

 

「やめろォ!!」

 

「ツカサ、流石に俺も引く」

 

「ブロリーもだんだん常識を得ていくなぁ……ディアンシーにシュークリームを与えてたし」

 

「ブロリー義兄様と呼んでくる。ツカサの兄だからだと」

 

「あいつ何か嫁さんみたいな事言ってんな」

 

ディアンシーは割とガチ目に嫁気分でパートナーと言っており、次代のディアンシーも自身の力が弱まればツカサとの絆の力で産まれるだろうと確信している。

 

「二人とも手を動かせ。まだまだ食べられなかった木の実は残っているんだぞ」

 

「はーい」

 

「ツカサの作る木の実のパイはレモとチライもお気に入りだから楽しみ」

 

ウキウキしているブロリーは丁寧に木の実を回収しては背負った籠にポイポイ入れていき、ツカサはたまに食べながら背負った籠に回収していた。

 

 

回収が終わるとツカサは17号も呼び、四人でそれぞれ分けて消費しようと提案したが……

 

「なら俺は木の実を沢山使ったタルトを頼む。差し入れだと持って行ったら18号やクリリンが喜んでいたからな」 

 

「俺は木の実のパイがいい。色々食べてみたがツカサの作るパイが一番」

 

「私は絞ったジュースを頼む」

 

「やっぱり今回も全部俺に渡されるんすね」

 

割と皆がツカサに胃袋を掴まれており、仲良くなったヤムチャも女の子だったらとガッカリしながらも食事を作ってもらうかわりに遊びに誘って来たりと歳の離れた友人として上手くやっている。

 

「菓子作りはツカサが一番だからな」

 

「ツカサの作った物は凄く美味しい。それに買うと高い……」

 

「私が作る物と一味違うから頼みたい」

 

「バリアとか大猿の力を引き出す方法とか教わってるからいいよ。AZも管理引き受けてくれてるし」

 

最近は怒り形態で暴走しながらもピンポイントでバリアを張ってダメージを軽減する姑息な手段を使い出してしまい、ブロリーは謝りながらも脚を掴み地面に何度も叩きつける事で意識を刈り取るようにしている。

 

「……」

 

「ブロリーは何で目を逸らすの?」

 

加減を誤り一度瀕死にしてしまった事があり、本人には言っていないので思わず目を逸らしていた。

 

………

……

 

カロスでのテレビやスクールでの講演、他地方からの出演オファー等で忙しい日々を過ごしていた。

 

「ハニートラップが多い」

 

「でしょうね。私だったら簡単に行けそうに見えるからそうするもの」

 

あまりに露骨なハニートラップの多さに休憩中のセレナに少しだけ愚痴を零している。

 

「そんなチョロそうに見えてるの?」

 

「うん。おっぱい押し付ければ行けると思えるくらい」

 

「それはないわー……」

 

「実際は理不尽なくらい攻略難易度高いけど」

 

早苗みたいに八意印のお薬をアイスティーにサーッ!とするか、生まれる前から愛してましたをリアルにやった小悪魔レベルのアプローチがないとダメな模様。

 

「そこまで高くないよ」

 

「カロスNo. 1アイドルの誰でもコロッと行きそうなアプローチよりも元ガラルチャンピオンに貰ったポケモンの卵の方に夢中だったでしょ」

 

チャリティー大会直後に辞めたらしく、現在新チャンピオンを決める諸々がガラルで行われている模様。

 

「ガラルに居るポケモンの卵って言われて大興奮しちゃったわ」

 

「大事に暖めてたわよね」

 

「卵からマホミルが生まれて、元ガラルチャンピオンに貰ったいちごアメざいくを渡して可愛いなーって抱っこして軽く回ってたらマホイップに進化したんだよね」

 

イーブイズが好きな抱っこしてくるくるをやったらいきなり進化したらしく、驚きながらも生まれたばかりだからとすぐにモンスターボールに入れて休ませていた。

 

「マホイップを仲間にするのはパティシエの憧れらしいわよ」

 

「へー。彼女の出すホイップクリームは美味しいし色々使わせてもらってるけど普段より美味しく出来るから助かるんだよね」

 

シンプルなフルーツサンドも絶品に変わるくらいにマホイップは幸せを感じているらしい。

 

可愛がるだけではなく叱るべき所は叱り、毎日のお風呂やマッサージで心を掴んで美味しいご飯で胃袋も掴んでいた。

 

「正直ツカサのせいで太ったのだけは許せないの。助手になるのに資格の勉強してるから運動不足だし……なのに毎日美味しいご飯とおやつ用意するんだもの」

 

「私的にはもうちょい肉付けた方がいいと思うけど、女の子は大変らしいもんな……カントーで佐久間さんと島村さんもグラム単位でがんばってる話を聞いて大変だなーって思ったし」

 

「お気に入りの服もあるから絞らないと……」

 

「キュウべぇがめっちゃ煽ってくるから気をつけて」

 

「もう踏んで吊るしてあるから大丈夫」

 

裏庭の木にブラーンとぶらさがっているキュウべぇがツカサに助けてくれとテレパシー的なもので訴えかけて来たが、近くにいたサーナイトがブロックしサイコキネシスでカーテンを閉めて見えなくなった。

 

「メイドさん達も慣れて踏んで縛って転がしたり、吊るしたりしてるしな」

 

「本当イラッと来る事を言うのよね」

 

「何であんな感じになっちゃったんだろうな……幻想郷から何か付いてきた座敷童子も最近マリリンさんの影響でお化粧したり、何か用意してもらったらしいメイド服着て休憩中のメイドさんに遊んでもらったりしてるし」

 

紫が派遣したようだがツカサに完全に懐いてしまい、もう報告に行く以外に幻想郷に戻る気が一切なかった。

 

毎日ポケモンと遊びツカサの作るご飯とおやつを食べ、セレナと一緒にお風呂に入りフカフカのベットで寝る毎日を過ごしている。

 

「最近は慣れてきてお風呂で背中を洗ってくれるのよね」

 

「俺なんて風呂入る時に鍵かけてるのに、こっちの世界の十六夜さんがピッキングして入って来て背中流してくれるんだぜ」

 

「あれ鮮やかな手並で憧れちゃうわ」

 

「向こうのお淑やかな十六夜さんと交換して」

 

尚向こう側も猫を被っているだけで、切っ掛け次第で早苗のようにはっちゃけてツカサの癒し枠から外れる可能性が高い。

 

「お淑やか咲夜さんは咲夜さんじゃないわ。あの堂々とツカサの脱いだ服をスーハーする姿も憧れちゃう」

 

「汗臭いだけだと思うのに何でそんな」

 

「コートとか上着だとツカサの匂いに包まれるような安心感があるの」

 

「マホイップとかニンフィアがたまに俺のシャツに埋もれてる時があるんだけど」

 

「仲間」

 

「仲間ってなんだよ……」

 

「マホイップはツカサの匂いに包まれてる時が一番美味しいホイップクリームを出せるって言ってるってニャースが言ってたわ」

 

「口にやたら美味いホイップクリームを入れて起こしてくれたりするのはそういう……何回目かで加減ミスしたみたいで鼻に入って死にかけたから以後やめるように言ったけどさ」

 

「ちなみにそれからはツカサのほっぺとかにちょっとホイップクリームを出して舐めてるわよ」

 

「お皿代わりにされてるのか……」

 

なくなったらおかわりもする模様。

 

「ピカ子はパジャマの中に潜り込んで腹筋に頬擦りしてるけど」

 

「それはもう諦めてる」

 

「隙あらばスリスリしてるものね。サーナイトがあついしぼうをトレースした時に全身肥大化したのがショックだったってニャースが言ってたわ」

 

「あれで炎とか氷のダメージ減らすんだから仕方ないと思うけど。丸っこくなっても可愛かったし」

 

「割とデリカシーがないわよね。それでコントロールしてあついしぼうをトレースする時は……」

 

「えっ、何? 何でギリィッてなってんの? セレナさん?」

 

急に憎々しげな顔になったセレナにツカサは思わずビビっていた。

 

「胸にあついしぼうを集中させられるようにしたって」

 

「あっ……」

 

「私もトレースしたい」

 

「はい、この話はやめやめ!」

 

………

……

 

数日後リーグにて

 

「新ガラルチャンピオン男だったねー! やったぜ、来年は肩身狭くならない!」

 

「親善バトルであんなニコニコしながら相手に手も足も出させない実力差を見せつけちゃってガラルの人達からは大魔王扱いだろうけどね」

 

「まぁ、経験浅いから強くはなかったよ」

 

「うわ辛口」

 

「まぁ、今後に期待。それよりあの生放送の時のコメントでやたら絵を描いてとか歌ってとかあったけど」

 

「あれ実はトラブルで30分くらい前から生放送始まってたんだ。暇だったツカサ君がやたら上手く歌いながらホワイトボードにポケモンの絵を描いては消してを繰り返したり、ピカチュウと話をしている姿が延々流れててね」

 

「それを今知らされて超恥ずかしいんだけど?」

 

「後評判良いっていうかみんなの腹筋を崩壊させたVR追加されたロボットゲームは再生数が凄いよ」

 

「まぁ……俺だけ牧場物語やってるし」

 

「『今来たんだけど何で牧草刈ってんの?』『ツカサのAIがロリ』『1時間経ってもロボット出ないの草』『他の人が宇宙で鍔迫り合いとか繰り広げてるのに、ツカサだけ別ゲーやってんの本当面白すぎて困る』」

 

「仕方ないんだよ……」

 

「『町の人達からの信頼度に親愛度が最大とかやべぇ』『え、何これ恋愛も出来んの?』『恋愛対象キャラ全員愛情値最大なのに一切靡かないからかみんなで手を組み始めてるなこれ』『ライバルであろう男キャラが本来恋仲になるだろうキャラとツカサの取り合いしてるの草』」

 

「普通に接してるだけでああなるから怖いよね」

 

「『今回の生放送見て遊びたくなった』『その牧場で遊びたいなぁ』『ピカチュウの銅像が設置されてるのは流石としか』……こんな感じで高評価だからまたやろう」

 

「まぁ、また耕したりするだけだからいいけど。あれから島村さんと佐久間さんとフレンドになったんだけどさ、二人の機体がサイバスターとペインキラーとかいう高性能機だったんだ」

 

「あっ……」

 

「一方俺はレアコンテナからエクシアリペアが出て理不尽さに嘆いた。一番強い機体でもあるけど」

 

「まぁ、ツカサ君の配信でのメインは牧場と町の人達との交流だから」

 

「リアルで見てた人に遭遇すると必ず第二弾はまだですかって言われるよ」

 

「だって凄く面白かったからね。攻略キャラの相手が面倒だからって男の娘系ライバルとくっつけようとしたのに何故か両方から好感度が爆上がりした時は僕達も声出して笑っちゃったし」

 

「あれは本当意味分からない。あれからどっちかと遭遇すると何処からともなくもう片方が出て来て、どっちと出掛けるんだって迫って来て怖いし面倒だし」

 

「百合系な攻略キャラも懸想する相手にも興味がないからって普通にやり取りをして、いつの間にか親しくなる妙技にコメ欄が沸いてたよ」

 

「一般的なやり取りならそこまで目の敵にはされないでしょ普通は」

 

「初対面であんなギャンギャン言われて目の敵にされたのに普通に接するメンタルの強さが凄いよ」

 

「まぁ、会ったら軽く会話する程度ならね」

 

「そんな積み重ねだけで小さめとはいえ町一つを自分の味方にしてるツカサ君に恐怖を覚えた視聴者もいたみたいだよ」

 

こうやって学習するNPCの味方を増やして自分だけのチーム作りも出来たりするが、今のツカサの場合は牧場経営のお手伝いが増えるくらいだが。

 

ちなみにツカサのAIは予想外の優秀さらしく、専用アプリのないツカサのスマホに自作のプログラムで独自のアプリを埋め込みバレないように潜んでいたりする。

 

「それは理不尽すぎない?」

 

「直後に森で遺跡を見つけて唐突なアクションRPG要素が始まって困惑する姿で帳消しになってたけどね」

 

「謎解きして剣と盾とか手に入れてボスも倒したけど、剣と盾は貴重品だから捨てられない地雷アイテムだったよ……」

 

キャラクリも本人まんまだからかかなり話題になっており、アーケード筐体とは違い安く手に入るVRの方の注文が殺到している。

 

「とりあえず予定決まったら連絡するからね。明日はカロスのジュニアスクール訪問だからね」

 

「はーい」

 

 

 




年内投稿ギリギリセーフ。

チャンピオン業務を正式にこなすようになって、公式生放送やらでもやらかすようになってます。

グレートサイヤマンと化したチャンピオン。
血縁関係も判明。

新しいファミリーのアイルー以外に天狐とかも拾って来てたり。


FGO福袋は槍に決めました。
キングハサン欲しくて殺にしようかと思いましたけどまず引けないし。

グラブルは明日からのビカラが本当楽しみ。
あのあざとい奥義好き。

ガチャ引くだけのログイン勢だったポケマス、何したらいいかわからねぇ。




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色々拾って困惑したりする日

 

 

裏庭に設置されたテーブルで優雅なコーヒーブレイク中。

 

「ピーカ」

 

「ふっ、ブラックは大人の味なんだよ……あっ、ちょっ!」

 

違いの分かる舌を持つツカサはピカチュウにドヤっていたが、それを見ていたマホイップが苦いのは美味しくないだろうとあまーいホイップクリームを大量にブラックコーヒーに投入していた。

 

「まぁ、甘いのも好きだからいいけどさ」

 

ドヤってるマホイップを撫で、お茶菓子のクッキーを齧ってのんびりしている。

 

「チャァ……ピカ、ピカピカピカ?」

 

「ああ、レイナちゃんの授業参観に行けないので許可は得ているから行ってもらえないかって言われたんだよな」

 

「ピーカチュー?」

 

「予定見たら3時間目から5時間目まで、お昼は学校の給食が用意されるみたい。お嬢様校らしいから給食もシェフが沢山居て用意してるって。大半はお弁当とか昼になったら従者と食べに行ったり、持ってこさせたりしてるらしいけどね」

 

「ピカ、ピカチュ」

 

「サプライズだから当日まで秘密にって言われたよ。後何年お兄ちゃんって慕ってくれるかね」

 

年頃になれば距離を置かれるだろうと考えており、それまでは兄代わりとして可愛がる事にしていた。

 

ツカサのドクターとしての強烈なヒーロームーブが彼女の根幹となっており、まだ幼いが明確に夢が出来始めていたりする。

 

「ピカ、ピカチュウ?」

 

「あー……色んな伝説やら幻のポケモンの写真とレポートを書いて、ルガルガンの黄昏の姿についても色々書いてオーキド博士に送ったらすぐに電話来て驚かれたよ。シワシワピカチュウの写真が混入してたみたいで爆笑してたけど」

 

「ピカ!?」

 

「はじめてピカチュウと俺を会わせた時はボールに入る入らないで喧嘩してでんきショックをくらっていたのが嘘みたいじゃなって」

 

「ピーカー……」

 

「しんみりしてる所で悪いんだけど二人の会話が何の参考にもならない事が分かったわ」

 

セレナはポケモンと会話をするのを見て学習しようとしたらしいが、理不尽なまでに何を言っているか分からなかった。

 

「でしょうね」

 

「ピカピカ」

 

「ツカサの子供にはその力は遺伝するのかしら」

 

「多分しないと思う。ディアンシーの謎パワーを間近で見てたらこうなったわけだから」

 

「ツカサだけの力ってわけね」

 

「他にも似たような人はいると思うけどね」

 

「あ、そうだ。そういえばさっき倉庫で妙な本がガタガタ動いてたけど……」

 

「あー……あれはちょっと曰く付きっぽいから。古書店で買った日から夢に白のロリータファッションの女の子が出て来るようになってね。何か最近は黒のゴスロリ少女と夢でブッキングして喧嘩になったし、とりあえず倉庫に隔離してからはゴスロリ少女しか出て来なくなったけど」

 

本の上にポケモンの雑誌を載せ、出来るだけ動かないようにハードカバーを沢山重石代わりにしていたりする。

 

ある意味時限爆弾を作ったようなものだが、夢の中で騒がれるよりはいいと判断したツカサの悪手だった。

 

………

……

 

リーグのチャンピオン用待機室で色々なスケジュールを確認し、カロス以外はほぼカントーでのテレビ関係だなぁと呟きながら父親であるシュウからいきなり郵送されてきた手帳に記入していた。

 

笑わせてもらいましたよという手紙もついており、まさか生放送を見ていたのかと少し恥ずかしくなっていたりも。

 

「いやー、第二弾凄く面白かったよー」

 

「レアコンテナ見つけて開けたら綺麗なOガンダム入ってた時は大興奮だったなー」

 

「中身が壊れてて動かないと知ってショックで崩れ落ちてたよね」

 

「GNドライヴがちゃんと使えるくらいで残りは張りぼてとかなぁ……」

 

ツカサのAIは倉庫に放置されているGNドライヴなしのOOにOガンダムのGNドライヴを積み、後はツカサが気がついた時にエクシアリペアのGNドライヴを積もうと考えて黙っていたりする。

 

牧場入口に体育座りにしたOガンダムが鎮座しているが、街の人達はまた何かやらかしてるなと軽くスルーしていた。

 

「呪われてるんじゃないかってくらい壊れてるのしか出ないよね」

 

「父さんがちょいちょい何かしてるんだとは思う。第三弾はもういいよね」

 

「寧ろやらなかったらクレームがくると思うけど。あれ? ゲーム内で旅行出来る!ってウキウキして出かけた先の町を散策中にガソリンスタンドでゾンビが出て来て……って所で終わらせたじゃない」

 

「あれ怖いからやめたいんだけど……ゾンビに戸惑って逃げ惑ってたらガソリンスタンドからいきなりお兄さんとお姉さんが出て来て驚いてたら早く乗って!って車に乗るよう言って来て、乗らなきゃいいのに乗っちゃって」

 

「行き先が安いからって選んだのが失敗だったね」

 

「羽生蛇村、皆神村、日上山、朧月島、サイレントヒル、ラクーンシティとか安くて一番都市っぽいとこ選ぶでしょ。皆神村、日上山、朧月島は選んだらカメラ貰えたっぽいけど高かったからなー」

 

何処を選んでも地獄を見る模様。

 

「何かどれ選んでもダメな気がして仕方ないラインナップだけど」

 

「ゾンビよりはマシだと思うけど」

 

「ゾンビより厄介なのが出てくるかもしれないよ」

 

「それは嫌。てかゾンビ出て来たから銃使うんだろうけど苦手なんだよなぁ」

 

「チュートリアルみたいな感じで旅行前に撃ち方学んでたけど、何度か的に当たりもしなかったのに『大体分かった』って言ってから精密な射撃をし始めてみんなドン引きしてたよ。忠実に再現してるらしいから反動とかもあって難しいはずなのにって」

 

ロボゲー部分の白兵戦でも使えるらしくまず当てる事が難しいリアル仕様。

 

「動いてないから出来たんだよなぁ」

 

「それでも的に当て続ける難しさはみんな分かるよ」

 

「まぁ、銃は持ってないから拾った鉄パイプでどうにかするしかないんですけどね」

 

「この前見せてくれた破邪剣征・桜花放神ってやつなら行けるんじゃない?」

 

仲良しなツカサ担当の職員はやー、と手にしていたタブレットを振り下ろす仕草をしていた。

 

「曾祖母ちゃんから教わった秘密の必殺技だし、霊力的な意味でゲーム内じゃ使えないと思うの。お墓参り行かなきゃなぁ……お盆にまた色々言われちゃうし」

 

幼い頃に少しの間預けられた時に発現してしまった霊力を安定化させる為、過剰な分を放出するのに教わったらしい。

 

同時に剣術も学んでいたようだが、自宅に帰って引き継いだ幻海の体術の方が肌に合ったらしく今じゃ訛りに訛っている。

 

尚見えて話せて触れるツカサはお盆になるとご先祖様達のお世話役に自然となってしまい、流行りの洋菓子を供えて欲しいだの恥ずかしいから隠してある恋文を処分してほしいだの忙しい。

 

 

「あれは凄く綺麗だったけどあの施設の壁をあんな綺麗にブチ抜くとは思わなかったよ。解体するから好きにしていいって言ったけどさ」

 

「昔はあれだったのよ、でっかい樹を揺らすくらいの力しかなかったの。まさかあんな破壊力あるなんて……」

 

一直線に貫く桜色の閃光、過ぎ去った後に舞う桜の花弁のような霊力は美しいが破壊力も半端なくなっていた。

 

「ゲームでも使えたらホラーゲームが無双系になっちゃうね」

 

「そっちのがいいわ」

 

「あはは、とりあえず第三弾は決定だからがんばって」

 

「ゾンビは本当やだなぁ」

 

………

……

 

瞬間移動を我が物としてからは頻繁に遊びに行くようになった幻想郷。

 

初めて来た時から次元が違うレベルで成長したツカサは博麗神社で霊夢を相手に話をしていた。

 

「本当早苗の鬱陶しさが上がって仕方ないんだけど」

 

「俺に言われてもなぁ」

 

土産にと持って来た手作り団子を摘みながら愚痴を聞き、煎れて貰ったお茶を飲んでいる。

 

「見た目はいいけど色々地雷だったからツカサさんには犠牲になってもらおうって人里の男達は満場一致してたみたいよ」

 

「まぁ、責任は取らないといけないからお仕事終わりに毎日様子を見に来てはいるけどね」

 

こちら側にも亞里亞の家の交渉の手は伸ばされており、ツカサの逃げ場は世界中の何処にもなくなりつつある。

 

「あれだけ避けてたのに」

 

「とりあえずブレザーっていいなって」

 

外にいた時の制服を着てデートしたりと落ち着いた早苗に対してはガードが緩くなっており、中身は変わりない事からは目を逸らしている。

 

「ツカサさんは髪型と服装に拘るわよね」

 

「メイド服で桃色の髪のツインテールが一番好き」

 

「はいはい自慢のお姉さんの事ね」

 

「最近は緑色の髪のストレートもありかな」

 

「もう完全に早苗を受け入れてるじゃない」

 

「たまにおかしな行動を取ったりする以外は好みだから……」

 

「変な女を惹き寄せる何かがありそうね」

 

「早苗だけでお腹いっぱいなんだけど……」

 

ツカサの中では産まれる前から愛していた系小悪魔は普通のカテゴリーらしい。

 

「私以外の幻想郷の面々は変人だらけよ」

 

「腋出し巫女服なのに?」

 

「それはそれ。ちなみにツカサさんも変人の仲間よ」

 

「えぇ……」

 

「地底に連れて行かれて暇だからってウロウロ、ちょっかい出して来た鬼達を真正面から倒して行ったりしたでしょ」

 

「あぁ、空ちゃんがいきなり俺を拐って行った時の話ね」

 

「何で抵抗せずに拐われたのかしら?」

 

「何か凄い嬉しそうに拐っていくから……めっちゃ首辺りに顔を押し付けて来てスーハーしてたからくすぐったくて仕方なかったよ」

 

空は早苗がしているのを見ていてやってみたかったらしく、それでハマってしまったようで戻る時に洗濯に出したまま忘れて来たシャツを洗われる前に回収して寝巻き代わりに使っていたりする。

 

「男の人の匂いを積極的に嗅ぎたいとは思わないわ。早苗達はちょっとおかしいんじゃないかしら」

 

「分かる。汗臭いとか脂の不快な匂いだと思うのに」

 

「まぁ、好きになった男の人の匂いならいいのかもしれないわね」

 

「そうなのかなぁ……匂いって言えば風見さん、花の香りがするし笑顔も綺麗だし相変わらず素敵な方だよね」

 

「は?」

 

「風見さんの家にキマワリとかヒマナッツの健康診断をしに行ったり、花の種を貰ったりしてるんだよ」

 

「あの幽香が?」

 

「俺にはみんなが言うような方とは思えないんだよなぁ。一緒に料理してて食材を取る時に手が触れ合うと恥ずかしそうにするし」

 

「それは幽香の偽物ね、間違いないわ。そんな乙女みたいな反応するはずがないもの」

 

「凄い言われよう。あんな優しいのに」

 

「大丈夫? 永遠亭行く? 送りましょうか?」

 

「何でガチで心配されてるのか……」

 

扱いにくい存在とも仲良くなるからか里では便利屋みたいになっており、タブー扱いの厄神への供物を届けたりもしている。

 

「あいつは危険なのよ」

 

「紫の時みたいに躓いて押し倒しちゃった時は顔真っ赤にして首が取れそうな強さのビンタくらったから分かる」

 

本来なら軽く首が離れる程の強さだがツカサは何回転かして倒れ、そのまま土下座に移行していたようだが。

 

「それはちょっと見てみたかったわ」

 

「油断してたからグルングルン回ってドシャっと落ちてそのまま土下座よ。八雲さんちの紫ちゃんみたいな反応だったけど、風見さんのがパワーは上だった」

 

「だからあの日は頬に紅葉が出来てたんですね。諏訪子様はお腹抱えて笑ってましたけど」

 

当たり前のように現れた早苗が密着するように隣に座り、まだ慣れず身体が勝手に動くのか少し距離を置いていた。

 

「急に現れるわね」

 

「なかなか帰って来ないので探しに来たんですよ。諏訪子様がまだ帰ってこないーって騒ぎ始めましたので」

 

「早苗が落ち着いたと思ったら諏訪子様が落ち着かなくなったのが本当もう」

 

あれだけ距離を置かれたりスルーされていた早苗がツカサに受け入れられ、更にナチュラルにイチャつく姿を見せられて何か暴走が始まったらしい。

 

「諏訪子様はツカサさんを気に入ってますから。私が気づかなかったら昨晩はサーッ!とお薬を入れたアイスティーを飲まされる所でしたよ」

 

「初めて会った時の早苗の焼き直しなんだよなぁ……早苗が抑える側になっただけっていう」

 

「一族的に相性がいいから早苗を見て自分も!ってなったんじゃないの?」

 

「そんな漫画とかアニメみたいな事はない」

 

「漫画みたいな男が言ってもね」

 

「私は諏訪子様の気持ちが手に取るように分かりますけどね」

 

ただ散々妨害された意趣返しに自分も妨害する側に回っているだけだった。

 

「真面目な顔で超サイヤ人になってる写真を持ち歩くの本当やめてほしい。てかなんで123、ロゼ、ゴッド、ブルー、潜在能力解放とフルコンプしてるのかも知りたい」

 

3に関しては見せてもらってしばらく研究してなれるようにはなったが、燃費が悪すぎると全くならなくなっている。

 

逆に燃費はかなり良いが見た目の変化がない潜在能力解放も滅多に使わない贅沢具合。

 

「文が一部欲してる相手に販売してるからでしょうね」

 

「輝夜かな?」

 

「輝夜さんは割と本気で50年待つからって嬉々として永遠亭に部屋用意してますからね」

 

「紫も似たような事を言って部屋用意するって藍に任せてたわよ」

 

何十年後かにこちら側に来たら人里の外れに住みたいなとツカサが慧音に相談しているのを皆はまだ知らない。

 

「そう言えば白玉楼に行ったら若返った曾祖母ちゃんが居たんだよ。魂魄さんと剣術の稽古してたけど思わず二度見したわ」

 

「あの長い黒髪に赤いリボンに桜色の和服の綺麗な方ですか?」

 

「潜在霊力が凄まじいから転生するのにも時間がかかるし、なら白玉楼預かりにしましょうって事だったらしいわよ」

 

「なるほどなー……ほぼ同年代の容姿で生前と変わらず接してくるから反応に困る」

 

小さい頃に可愛がられていたからか頭を撫で、お茶を飲みながら膝枕で子守唄と完全に当時の扱いをされていた。

 

「一度お会いしてご挨拶しないといけませんね」

 

「若返ったから剣術指南してくれるって。出来るなら曾祖父ちゃんみたいな二刀流がいいけど私じゃそれは無理だからーって」

 

「……ツカサさんのご両親どちらの家系図も見てみたいですね」

 

「絶対面白いと思うわ。というか現在進行形で面白いわ」

 

「母方の爺ちゃんはサラリーマンで婆ちゃんは主婦だったみたいだから面白くはないよ。夏とかはサバイバルの事を実践して教えてくれたりね」

 

「絶対裏があると思います」

 

「爺ちゃんは身のこなしが凄かったくらいだよ。婆ちゃんは射撃系のゲームがめっちゃ上手かったくらいだし」

 

楽しかったからかサバイバル系の知識や技術をモリモリ吸収しており、パオズ山で何日かサバイバル生活をしてみたりもしている。

 

「ツカサさんはそれも吸収したのね」

 

「技術の集大成ですね!」

 

「うーん……?」

 

静かなる狼、嗤う牝豹とか呼ばれていたりいなかったりする祖父母である。

 

………

……

 

「この子どうなってんだ……」

 

「捨てられてたモンスターボールに入ってたんだって。呪われてるんじゃないかって怖がって置いていったんだよ」

 

ガラルから迷い込み喰われたトレーナーが落としたボールのようで、ツカサが出してみるとウオノラゴンが出て来て唖然としていた。

 

「ツカサー、あーもーいい匂いー」

 

「諏訪子様どうにかなりません?」

 

「毎日毎日ツカサとの子供を早苗と同時期に孕んで仲良く育てる妄想を聞かされるんだよ……だから今くらいは受け持って」

 

「いやでも……お? おぉ?」

 

ウオノラゴンはツカサが新しいトレーナーなんだとハッと気づいたらしく、背中に抱きつきクンカクンカしている諏訪子を咥えて引き離しぶら下げたままドヤ顔を決めていた。

 

「ちょっとー!」

 

「いい子だね」

 

「目を逸らしたくなるくらいのセクシーランジェリーが丸見えなんですけど」

 

逸らすとは言ってない。

 

 

「ギャップで攻めるって昨日から準備して、さっき着替えてたよ。で、目は逸らさないの?」

 

「どうせならあの紐みたいなのより縞々のがいいなぁ」

 

「あぁ、だから早苗は一時期八雲紫に縞々の下着が欲しいって……」

 

「はーなーせー!」

 

ウオノラゴンはツカサの指示待ちで諏訪子を咥えたまま待機していた。

 

 

一時間後

 

「ほらツカサ縞々だよー」

 

「境内なのに堂々と見せて来て恥じらいがない0点」

 

「ツカサがなかなかに辛辣で面白いね」

 

ウオノラゴンと話をしてツカサが世話をする事を決め、そのまま二柱の神とダラダラ過ごしていた。

 

「あのー、ツカサさんにってこれ預かって来たんですけど……」

 

「何で早苗さんがまともになったら神様の方がおかしくなってるんですか? あ、これ私も預かって来ました」

 

「なるほど盟友は縞々が好き……私も仲間達から預かって来たよ!」

 

そんな中ワイワイと仲良さげに入って来た早苗、文、にとりがそれぞれモンスターボールを差し出していた。

 

「もう嫌な予感しかしないんだけど……ほら何か可哀想なやつー」

 

受け取ったボールをそれぞれ投げてみるとパッチルドン、パッチラゴン、ウオチルドンとガラルの化石ポケモン達が境内に現れていた。

 

どうやら喰われたトレーナーのモンスターボールが散らばったり持ち去られたりしていたらしく、ツカサはアップデートした図鑑から情報を複雑そうな顔で見ている。

 

 

「凄いポケモン達ですね……」

 

「これ何で復元出来たんだろう……てか何で組み合わせて復元しようとしたんだろう」

 

「最近私達妖怪よりも人間のが何考えてるか分からないから怖く感じますよ」

 

「盟友、この子は何で頭が逆さまに付いてるんだろうね」

 

「とりあえずボールに戻して中に入ろう。早苗待ってたから外に居たんだし」

 

ポケモン達をボールに戻すと皆でワイワイ騒ぎながら母屋に入っていった。

 

 




新年初投稿です。

ガラル化石達はこうするしかなかった。
正式な姿も出してくださいなんでもしますから!


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あつまれツカサの家

 

やる事もなく相変わらず待機室でダラダラと過ごしていた。

 

歳の離れた友達になっている専属職員は動画の編集をしており、どこをカットするか悩みながら黙々と作業をしている。

 

「最近は色々落ち着いて来てよかった」

 

「生放送が話題になって世界中から注目されて、カントー以外からも出演オファー殺到してるんだけどね」

 

「調整してくれてありがとナス!」

 

「第三回はホラー要素にグロ要素あり要注意って事前に知らせておいてよかったね」

 

「旅行には二度と行かない」

 

「だろうね。全部終わってあの三人と別れるまでに『金髪ロリと仲良くなれても絶対これはやりたくない』『安定の全員信頼度好感度最大値は草』『当たり前だよなぁ』『お別れの時にハグしたクレア姉貴とレオン兄貴の野獣の眼光よ』『シェリーちゃんまた会えるよねとか本当可愛い』『あ、ちゃんと銃を返してる偉い』『代わりにってレオンが拾ってた邪剣・夜を渡されてて草』って」

 

「本当怖かったからね。レオンに付いて行きたかったのにクレアの方に分断されちゃったし」

 

頼りになる警官の男の方に付いて行きたかったらしいが飛び出した方が悪かったようで、クレアと行動を共にしていたらしい。

 

「ナイフと体術でタイラントからクレアを庇ったり、感染したシェリーが不安にならないように手を握って牧場での話をしていたよね」

 

「実はあれから何度かあの三人は牧場に遊びに来てるんだよね。イベントクリアのご褒美なのか牧場の生産物の質も上がってるし。持ち帰って来たグリーン、レッド、ブルーハーブの栽培もしてるし」

 

様々なイベントをクリアする事でツカサ牧場は最高評価を得て資金繰りもかなり楽になる。

 

ちゃんと区切ってハーブ栽培をしているらしく、繁殖力は凄まじいが制御可能で回復アイテムにもなるとやたら生身イベントの多いツカサは大喜びだった。

 

 

「念願のちゃんとしたガンダムも手に入ったしいいことだらけじゃないか」

 

「ダブルオーかぁ……マジで同調させて起動させるのにトランザムを使う事になるとは思わなかったよ。同調して起動はしたけど不安定だし」

 

割と高性能な量産機にも劣る出力しか出ておらず、ワンオフ機ではあるがオーライザーの開発も取得も不明な為ハズレ機体扱いをされている。

 

「迫真の『目覚めてくれダブルオー。ここには0ガンダムと、エクシアと、俺がいる!』で再現キター!コメントで溢れてたよ」

 

「なのに下手な量産機並なの」

 

「『廃課金の格上相手に技術だけで勝つとか変態すぎる』『調子に乗った視聴者の末路』『ビームサーベルでビームライフルを弾くとかアムロみたいな事を咄嗟にやってて引くわ』」

 

「何で引かれてるの? 折角がんばったのに……」

 

「あ、そういえば前に話してくれたもう一人のツカサ君はまだ度々奥さんと遊びに来てるの?」

 

「来てるよ。イチャつき具合が来る度に上がるしちょいウザいけど」

 

幼い頃には母として、大きくなれば姉として、年頃になれば恋人のように振る舞い、現在は妻として玉藻は不動の地位を築いていた。

 

「へー」

 

「向こうの俺は何か株やら何やらで死ぬまで遊んで暮らせるくらい稼いで隠遁してるって。露出強な奥さんさえいれば後は何もいらないって極まってるし、それ聞いて感動した奥さんとイチャつき始めるしで……」

 

分岐点はレッドやグリーンが旅立ち、一人きりになってから寂れた神社に遊びに行ったかどうか。

 

遊びに行ってしまった故にポケモンや留美穂と仲良くなる機会がなくなり、玉藻に依存レベルで懐いてそうなっている。

 

「最近は他にも色々あったんでしょう?」

 

「家の前に大量のポケモンの卵が放置されてたよ。慌てて回収して伝を頼りに調べたんだけど、どうやら資格ない自称ブリーダーが考えなしに卵を増やしてたみたい」

 

亞里亞の家の力をお借りして探り、自称ブリーダーを探し出して二度と出来ないようにポケモン関係の仕事にもトレーナーにもなれないようにしていた。

 

安易に生態系を乱す行為をした時点で重罪であり、そのまま警察にも突き出され完全に詰んでいる。

 

「毎年何人か出るけど、この世界で死ぬ程生き難くなる処置をされるのによくやるよ」

 

「色違いのポケモンを産まれさせたかったーって喚いてたよ。野生じゃ色違いは迫害されたり大変なのに」

 

「本当にね」

 

「それで卵を孵化させたらガラルのウールーが沢山産まれたよ。最後の子は他の子と違って顔が白くて毛が黒い子だったけど、俺がみんな平等に可愛がってるから仲良し」

 

数日は皆ボールの中で過ごし、今は元気にAZのログハウス周辺に集まって過ごすようになっている。

 

「本当色々起きてて毎日退屈しなさそうだね」

 

「普通に色々ありすぎて疲れるよ……」

 

小悪魔とイチャつくのを覗き見して限界を超えた咲夜が入れたアイスティーに一服盛られ、二人は幸せなキスをして終了な流れになったりと毎日何かしらやらかされたりやらかしたりしている。

 

「僕は普通で本当によかったよ」

 

「遊びにくれば体験出来るよ!」

 

「散々聞かされて素直に行くと思う?」

 

「いいよ! 来いよ! 家に駆けて家に!」

 

「絶対嫌だ。どう聞いても魔境じゃないか」

 

「めっちゃ煽ってくる奴もいるけど楽しいよ!」

 

キュウべぇは相変わらずネット三昧で日々煽っては吊るされている。

 

「ますます行きたくないよ」

 

「最近他所の宇宙から遊びに来る人達もいるからさ」

 

あれからそこそこ連絡を取っているキャベやカリフラ、ケールが急に訪ねて来て驚いたり。

 

 

力の大会以降何度か参加宇宙の代表と破壊神と天使達による会合が頻繁に行われており、丁度いいとツカサは毎回強制的に参加させられている。

 

闘いながら恐ろしい速度で成長していくのを皆が感じていたらしく、皆に絡まれたりしながらも和やかに会合は終わっていた。

 

偶々作っていて持って来ていたプリンのおかわり争奪戦が破壊神間で起きたり、二回目にまさかの全王様も参加で皆がド緊張したりと毎回何かしら起きる事に頭を抱えている。

 

 

「ちょっと興味は惹かれるけど嫌だ」

 

「だよなぁ……この前はパンケーキ作って食べようとしたら全王様が座って待っていて一瞬意識が飛んだし」

 

成長具合や敵の敵を味方にする闘い方が面白かったらしく気に入られ、偶々悟空に会うついでに会いに来たらしい。

 

ツカサのパンケーキを大変気に入り、以後悟空に会う前に食べに来るのが定番になる事をツカサは知らない。

 

「全王様……?」

 

「まぁ、とりあえず一時的に全宇宙一やべー家になったくらいだから」

 

「本当普段何やってるの?」

 

「レポート書いて、ドクターの技術を磨いて、ポケモン達のケアと世話をして、トレーニングしてる」

 

異世界に迷い込むのはボーナスタイムだと割り切り、最近ではとある世界で海軍の下っ端として雑用に励みながら技術を我が物としていた。

 

事務の手伝いで処理能力の高さで現場から引き抜かれ、普段より早く終わると覇気やら六式やらの話を聞かされ期待の新人下っ端をいっちょ揉んでやると手解きも受けて順風満帆だった。

 

「レポート……あ、今度は博士にでもなるの?」

 

「ならないしそう簡単になれるもんじゃないよ。レポートの中身を盗むのにハニートラップも多いってオーキド博士が溜め息吐きながら言ってたし」

 

「おっぱい見えそうなくらい露出過多な女性より道端でひっくり返ってるヤドンに夢中だったよね? ハニートラップ効かないんじゃない?」

 

「ヤドンのお腹は柔らかくて最高なんだよなぁ……ちなみにその女性割としつこくて週一で出会うよ」

 

「引っ込みつかなくなってるからだろうね。今までならコロッといってたのにツカサ君は対応普通だし、たまにおっぱいジーッと見てるけどそれだけだし」

 

「露骨に腕組んで強調して見ろよ見ろよされたら見るでしょ」

 

「まぁ、確かに……」

 

「それに俺は堂々とおっぱい大好きって公言してるから」

 

「完璧な人間扱いは嫌だって愚痴りながらおっぱい大好きって生放送でぶちまけたもんね。おっぱいとポケモンはどっちが好きかって質問に、即ポケモンって答えて知ってたってコメントで埋め尽くされたけど」

 

「ヤドンのお腹はきっとおっぱいより触り心地いいと思う」

 

「まぁ、ツカサ君のヤドンは全身モチモチしてて最高だけどさ」

 

「でしょ。でも何か事あるごとに尻尾を差し出そうとしてくるのはやめてもらいたいんだよなぁ」

 

ヤドン的には尻尾は再生出来るし、大好きなツカサに自分の尻尾を美味しく食べてもらいたいと思っている。

 

「本当ポケモンの常識とか色々覆すよね。ブラッシング終わったエンテイとじゃれあってお腹わしゃわしゃしてたり、いきなりラティアスに連れ去られたり」

 

「連れ去られてる途中でラティオスが来て、ビックリしたラティアスが止まったせいでそのまま異世界行きよ。しばらく歩いてたらヒンヤリし始めて、死にかけてる女の人と何かなんとかの鬼?とかいう変な男の人がいたし……何でいきなり命を狙われたのかも分からんし」

 

夢の中だと思っている世界の悟飯に習ったバリアで凌いで撃退してから女性に仙豆を与え、軽く雑談をしてからまだ帰れるなとそのままカロスに帰還するフットワークの軽さ。

 

「僕以外が話を聞いていたら情報量が多すぎて目眩を起こすよ」

 

「最近ようやくわたぼう達から余った仙豆三粒だけ分けて貰えたのに早速一個使っちゃってさぁ」

 

シラヌイ、わたぼう、メジェド様達による栽培が行われており、今は甕に貯めている最中で貯まり次第ツカサに渡すつもりらしい。

 

まずはお試しにと三つだけ渡されており、早速人助けに一個使ってしまっていた。

 

「世界は不思議でいっぱい」

 

「本当だよね」

 

「一番不思議な存在が何か言ってる」

 

………

……

 

「眼鏡に亞里亞パパから戴いたオーダーメイドのスーツ……」

 

普段の気さくな近所の兄ちゃんスタイルやジャージスタイルから一転、授業参観に参加する為のスーツ姿で割と似合っていて違和感はなかった。

 

「やだキュンとしちゃう……」

 

「やだボクもキュンキュンして女の子になっちゃう」

 

「ピカァ……」

 

セレナ、キュウべぇ、ピカ子が着替えた姿を見ており、普段とのギャップもありそこそこ破壊力があったらしい。

 

「調べたらめっちゃ高いのこれ。しかも何着か予備作ってあるからって気楽に言われて血の気引いたわ。やっぱ庶民とお金持ちの意識の差って凄いんだな」

 

「お嬢様が集まる学校みたいだしそれくらいがいいのよ」

 

「ツカサ、本当にですわとかですのとか言うか調べてきてよ。金髪縦ロールで高飛車なお嬢様とかも」

 

「いないでしょそんなの。てか初等部で居たら引くわ」

 

「フラグかな?」

 

「もしいたらキュウべぇが欲しがってた人をダメにするクッション買ってあげるよ」

 

「マジで!?」

 

「マジだけど……最近お前キャラブレてない?」

 

「ボクはあいつらとは違う一個体だからね! キャラとか関係ないよ!」

 

「いつかお前を元の世界に連れて行ってあげたい。で、ほむらちゃんの前に置き去りにしたい」

 

「死んじゃうでしょ!」

 

そのまま時間まで騒いでいると迎えが来て、必要な物だけを持って車で送ってもらっている。

 

 

学園に到着して車から降りると周りにはいかにもセレブな夫婦が多く居り、若干怯んだがまずは手続きを済ませないといけないので警備の人に声をかけていた。

 

「名前言ったらいきなり学園長室に案内されるとか。しかもケーキに紅茶まで出されちゃって……緊張してたのか手がブルブル震えてたな」

 

本当に来るとは思っていない超有名人の来訪に本気で慌てており、職員を集めて授業前に緊急職員会議が開かれていてツカサはのんびりしている。

 

「……金髪縦ロールでおほほな高笑い系の子がマジで居たのは笑うしかないわ」

 

案内されている時に高笑いが聞こえチラッと見て目があったがそのままスルー。

 

マジでいるのかよあんな典型的な高飛車お嬢様と思いながら今に到る。

 

「お待たせいたしました。白河様、すぐに教室までご案内いたします」

 

「ありがとうございます」

 

流石に男を一人では行かせないわなと思いながら立ち上がり、ド緊張して何故か案内してくれている学園長に話を振ったりしていた。

 

「まだお若いのに学園長なんて凄いですね」

 

「ありがとうございます。ですが白河様の方が凄いと思います」

 

「いえ、何というか……個性的な生徒さんが多いでしょうし」

 

「祖母や祖母の祖母の代からずっと我が学園は……個性的で社交界に出すには早く、出したら出したで大変な事になる御令嬢が多く集まるので」

 

「急激に帰りたくなってきた」

 

「あのチャンピオン達に好かれたツカサ様なら気に入られますよ」

 

「要するにあれですよね? 将来的にあのチャンピオンズレベルになりそうな御令嬢が沢山いるんですよね?」

 

「……こちらですよ」

 

「何でスルーなんです? 実はレイナちゃんみたいな子だけですとか……」

 

不安になりながら案内されていった。

 




とりあえず三ヶ月経ってないからセーフ。

パラレル夫妻は頻繁に来るからか部屋も用意されている模様。

定期的な全王様来訪とかいう胃に超ダメージを与える罰ゲーム的なアレ。

色違いの為に卵を量産するのは間違いなく生態系崩壊するから絶対重罪。



この前のセールでスプラトゥーン2を衝動買いしたけど積みゲー多すぎて遊べない。
全機種で計30以上積んでるし、買って満足しちゃうの本当なんとかしないとなぁ。
六月は九龍買うから間違いなくそればっか遊ぶだろうけど、何でリチャージじゃないんだ。


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ピカチュウの言葉を理解する者

教室は広く保護者が全員入っても余裕があり、ツカサは邪魔にならないよう隅の方に移動していた。

 

自分だけ両親が来れないからかしょんぼりしているレイナは授業の準備をしており、他の子供達はチラチラ後ろを見たりソワソワしている。

 

「……」

 

流石に超有名人だからか隣のご婦人にチラチラ見られて息を呑まれ、隣のダンディな紳士にヒソヒソと何かを話し確認されて目を見開かれたりしていた。

 

それが少しずつ伝播していき、子供達より大人達が緊張し始める中ツカサは後何年お兄ちゃんって呼んでもらえるんだろうなと考えながらレイナを見ている。

 

「はい、おはようございます。今日は授業参観ですがいつものように最後まで授業はありますからね」

 

『はーい!』

 

まだお嬢様的な教育はしないらしく、ツカサも知っているような子供達の反応をしていた。

 

「今日はポケモンの授業の日です。皆さん、自分のパートナーやお家のポケモンは連れて来ましたか?」

 

『はーい!』

 

「はい、元気でよろしいです。今回はみなさんのお父様お母様も一緒に受けてもらいましょう。さぁ、皆さん椅子は後ろに用意してありますのでそれぞれのお子さんの所にどうぞ!」

 

前もって決めていたらしく生徒間の間隔も大きく開いており、皆が椅子を手にそれぞれの子の所に向かっていった。

 

ツカサも椅子を手にきょろきょろしながら半泣きのレイナの元に向かい、椅子を置いて座りぽんぽんと優しく頭を撫でていた。

 

「あ……お兄ちゃん?」

 

「レイナちゃん、久しぶり。ご両親に誘われて来ちゃった」

 

「うー」

 

「ほら、先生の話を聞かないと」

 

ハンカチで目に溜まっている涙を優しく拭き、椅子を少し近づけて前を向くように告げている。

 

「今日はポケモンがどんな事を考えているかご家族で考えて、それを書いて発表してもらいます! はい、皆さんモンスターボールからポケモンを出してください!」

 

 

「ピッカァ!」

 

「おー、お前さんも久しぶり」

 

「ピカちゃん」

 

そのままピカチュウとコミュニケーションを取り二人で話し合いレイナがノートに書いていく。

 

それから何コマ目かの授業が終わり……

 

「……レイナちゃん、あの子知ってる?」

 

「有名なお姉様だよ!」

 

向かいの校舎の窓に足を掛けパンツ丸見えのまま、双眼鏡でこっちを見ている金髪縦ロールの子を指差して尋ねていた。

 

双眼鏡越しに眼があったように思え、何か喚いているが取り巻きのような少女達に押さえ込まれている。

 

すぐに落ち着いたのかまたこちらを覗き見しているが。

 

「最上級生っぽいのにアグレッシブすぎる」

 

「ピカチュ」

 

「優しくしてもらったから大好きなの!」

 

「あんな謎の高笑いしてたのに面倒見はいいんだ……」

 

そう呟くと向こうで頷くような動作をしているのに気がついた。

 

「……え? まさか読唇術身につけてるの?」

 

そう呟くとコクコクとハッキリ頷いている姿が見えた。

 

「仮にもお嬢様みたいなのに何つーもん身につけてんだ……寧ろお嬢様だからなのかな」

 

何とはなしに笑顔で手を振ってみると双眼鏡で此方を見ながら後ろに倒れ、教室が大騒ぎになっているのが分かる。

 

「それとお兄ちゃんの事が大好きだって言ってたよ」

 

「ファンなら大切にしないといけないわ」

 

尚自分だけに向けられた笑顔で手を振られ感極まって気絶した模様。

 

………

……

 

「何か最終的に俺の話を聞きたいとか先生に言われてずっと話をしてた気がする」

 

「ピカチュウ語のお話面白かった!」

 

最近オンじゃなくてもピカチュウの言葉が自然に分かるようになって頭を抱え、同時に自分もピカチュウ語を流暢に喋れる事に気づき愕然としていたようだ。

 

「みんなピカチュウ連れて来てたからやったんだけどね」

 

あっという間に大人気になり、何故か父兄の方々や先生も食いついてきて昼までツカサのピカチュウ語の授業が続いていた。

 

「お兄ちゃんのピカチュウはすっごく強いから、ピカちゃんもみんなのピカチュウも目がキラキラしてたね」

 

「まさかピカチュウ達が自分のボールを持って来てサインくださいって言ってくるとは思わなかったよ」

 

ツカサがピカチュウをパートナーにすると底上げがされて伝説や幻並の強さになる不思議な現象が起こる。

 

パラレルな自分の影響かロコン系、フォッコ系も同じように上がるが気づいていない。

 

「あっ」

 

「ん?」

 

朝に見かけたお嬢様が取り巻きを連れて何か緊張した面持ちでこちらに向かって歩いて来る姿が見えた。

 

「あの縦ロール凄い似合って違和感全くないなぁ」

 

「わぁ、綺麗……」

 

「エレガントな感じを出してるけどさっきアグレッシブな姿を見てるからなぁ……」

 

「お兄ちゃん、ご飯食べよう?」

 

「一応お弁当は用意して来たけど席を借りるのに食堂に行こっか」

 

 

手を繋ぎ邪魔にならないようすれ違い……

 

「ツカサ様とお食事が出来るなんて夢のようですわ……」

 

「いきなり腕を掴まれてここまで連れて来られたんですけどね」

 

テラスのような場所に連れて来られ、メイドや執事に囲まれて取り巻きの少女達とレイナも含めて椅子に座らされていた。

 

「ツカサ様はレイナさんの慕うお兄様、私はレイナさんを可愛がっているお姉様……こう考えるとツカサ様は実質私のお兄様ですわね。もうこうなると私はお兄様とお呼びするべきなのでは?」

 

「ヤバい何か今までにない怖さを感じる」

 

「ツカサお兄様、食べ物で苦手な物はありますの?」

 

「これもう何言っても曲げないやつだ……好き嫌いはないよ。好きな物はポケモンウエハースです」

 

「まぁ! 私も最近ツカサお兄様のカードを当てる為にポケモンウエハースを買っておりますの」

 

一対一で会話が出来る様にとレイナの相手を取り巻きの少女達がしており、レイナも憧れのお姉様方に可愛がられて嬉しそうに話をしていた。

 

「……当たった?」

 

「それがなかなか……」

 

「最近封入率上げますって確認来ていいよって返事したから手に入りやすくはなると思うよ。まぁ、一箱に一枚の最高レア三種類のうちの一枚だからシングル買いが安定だとは思う……それかトレードする?」

 

「……? ……! ぜ、是非!」

 

ツカサが触りまくったカードが手に入るまたとないチャンスにすぐに今までに集めたカードのファイルを持って来るように執事に指示していた。

 

「……しまった、可哀想な事をしたかもしれない」

 

自宅まで取りに行くという事だったらしく、今の内に昼食をと食器等が並べられ始めていた。

 

………

……

 

「俺の作ったお弁当を俺以外で食べて、俺は沢山ご馳走になっちゃったけど」

 

「寧ろ余らずに済んで助かりましたわ」

 

食後の紅茶を楽しみながら取り巻きの少女達とお喋りを楽しむレイナを見てほっこりしていた。

 

「しかしまさかレイナちゃんを可愛がった最初の理由が自分の名前に似てたからって理由はえぇ……ってなったわ。自分がミレイナだからって」

 

「今は名前は関係なく普通に可愛がっているんですのよ」

 

「そこは分かってるから大丈夫だよ」

 

「お父様とお母様もツカサお兄様の大ファンですの。私の話を聞いて今日の父兄参観に来られなかった事を後悔するはずですわ」

 

「さっき渋い老執事さんが旦那様と奥様の為にお願いしますって懐中時計と香水の瓶をスッと出して来てそれにサインはしたけど」

 

「お父様は家宝にすると騒ぎますわね。お母様はツカサお兄様のイメージにあう香水を作るようにと言い出すと思いますわ」

 

「お金持ちで会社経営してる方には毎回その手のはよく言われるなー。フリーザさんはカロス進出してからのCMには毎回俺を使うって契約をリーグ側としてたし……ミレイナちゃんは何ていうかまだ子供って年齢なのに大人っぽいね」

 

冷凍食品を綺麗に沢山食べる事が出来て知名度があり、何より小さい頃から可愛がってきた存在と肩を並べられる嬉しさから即契約を持ち掛けて今に到る。

 

「そういう教育を受けて来た賜物ですわ」

 

「本当俺は一般家庭でよかったと思う」

 

「ツカサお兄様は既に一般家庭とは認められておりませんわ。引っ越して来た一般トレーナーだったツカサお兄様は一年も経たずにカロスチャンピオンになり、そのまま世界を相手に華麗に大活躍。全てのチャンピオンを降してワールドチャンピオンにまで一気に駆け上がった男性版シンデレラストーリーですのよ」

 

「完璧で優しいって思われても困るから生放送で色々やってるんだけどね」

 

スタジオに作った簡易滑り台の上で全身タイツでローションを被り、滑り降りた先にあるトリモチに貼り付くかどうかといった本当にくだらない事を全力で楽しんでいる。

 

「最近はゲームの生放送が面白くて家族みんなで楽しんでいますわ。あの唐突に歌い始めた真夏の謎かけセンチメンタルボーイが耳に残ってつい口ずさむ事もありますのよ」

 

「見てくれてありがとう。次はポケモンが喜ぶお菓子作りの生放送だよ」

 

勝手に決められた放送以外はツカサが正しいブラッシングの仕方を教えたり、こんな症状が出ていたらすぐにポケモンドクターに見せるよう詳しく説明したりと自由に使っている。

 

真面目なドクター回は視聴者数が減り、ゲーム回は毎回増えている模様。

 

「……まぁ、私は楽しそうなツカサお兄様が見られるのでしたら何でも構いませんわ」

 

側に仕えていた執事とメイドが分かるとばかりに頷きおかわりの紅茶を注いでいた。

 

「ゲスト招こうって俺達三人以外は盛り上がってるけど普通に困るんだよね。あの画面外の二人と話しながら色々三人でやるのが好きだから」

 

本人とツカサ担当職員とツカサ大好きで広報兼マネージャーの職員はゲストを招くのに難色を示していた。

 

「楽しそうにお喋りしてから色々始めていますものね」

 

「少し歳は離れてるけど男友達が増えて本当嬉しくて。頻りにゲーム内で旅行を勧めてくるの本気でやめてほしいけども」

 

好感度が最大になった骨董品屋から貰った射影機が大事な物に加わり、誤って選択した旅行先という名のホラーイベントでとある双子のNPCを救出するファインプレーを見せたりと嫌がりながらもしっかりと全て終わらせている。

 

「スポンサーを募集する予定があるのでしたらいつでも連絡をお待ちしておりますわ」

 

「それとなく話はしてみるよ」

 

「お父様のお友達でツカサお兄様の大ファンのおじ様はスポンサーになれたと嬉しそうで……」

 

「ちなみに一番のスポンサーはミスターサタンです」

 

機材が回を重ねる度に豪華になっており、ツカサの私物であるミスターサタンフィギュアが毎回違うポーズでテーブルに飾られていたりもする。

 

「それは絶対に勝てませんわね」

 

………

……

 

そんな楽しい授業参観から数日が経ち、キュウべぇにクッションを買い与えたりスポンサーの話をリーグに伝えて名刺を渡したりしていた。

 

「リーグの部屋にもあの日以来クッソ高いスーツがズラっと並んでて目眩が……」

 

「公の場で着るようにと贈られて来たんだよ。それとまた駄菓子の詰め合わせとか飲み物が箱単位でファンから届いてるよ」

 

「ありがたいなぁ」

 

「この前コーヒー溢してあまりの熱さに上脱いだよね? あの鍛え抜かれた肉体を晒したからかプロテインも届いてるよ」

 

「寧ろ高カロリーの食べ物のが欲しい。普通にタンパク質は足りてるからプロテインはいらないや」

 

「大食いチャレンジの店でお金払うからってチャレンジメニューおかわりしてたもんね」

 

「お金払えばあの量を自分で用意しないで食べられるんだからありがたいよ。最近は気絶するまでブルーを維持とかいうので毎日死ぬ程腹減るし……てか気絶するまでって言いながら気絶したら起こされて時間までまたブルー維持とか地獄の方がマシなような目に遭ってるからなぁ」

 

「あれ綺麗だよね。逆立った髪も目も水色に近い青だし、何よりあのオーラ?が清らかで浄められるっていうか」

 

「神秘的な感じの好きだよね。さてと……嫌だけどロケに行ってくる。また廃城だってさ」

 

「本当心霊系ばっかになってるね。とりあえずがんばって」

 

「嫌だなぁ……」

 

 

 




書いてるの消えたり、五行書いて七行消したり色々あって半年経ってました。

ピカピカ言いながらピカチュウと会話する男とか絶対通報されちゃう。


野良スコが本当好きで仕方ないんだけど、周りに知ってる人が居ないから話せない悲しみ。
グラブルは鬼滅コラボ楽しみだなー。


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色々エンジョイしているチャンピオン生活

明けましておめでとうございます。
世間的にも大変な時期はまだまだ続きますが今年もよろしくお願いします。


今日もまたいつものようにチャンピオン待機室でダラダラと過ごしていた。

 

「チャレンジャーが全然来ないから暇で仕方ないんだけど」

 

「四天王の方々が割と本気出してるからね。そう言えば最近毎日ツヤツヤして来るけど何かあるの?」

 

「毎日本気で殺される寸前まで行ってメディカルポッドで回復してるだけだよ。何か悟空さんに近いバトルスタイルと成長の仕方だから、死の寸前まで追い詰め続けて短期間で経験を積ませてみたら身勝手の極意に目覚めるかもしれないってビルス様が」

 

「本当何やってるの?」

 

「本当ね。ケフラ相手にほんの数秒だけなってたらしいけど」

 

二人で遊びに来て毎日の日課に面白そうだからとツカサが預かっていた界王神のポタラをつけて参戦していた。

 

身内の面々よりも容赦のない激しい攻めと激しいエネルギーのぶつかり合いで限界を超えたのかほんの数秒だけ兆が芽生えたらしく、ケフラは力の大会で悟空にやられた時と同じようにツカサの神越かめはめ波で吹き飛ばされた所で合体が解除されていた。

 

そのせいでやはり間違っていなかったと切り上げるはずだった死の淵まで追い込む修行は続行になってしまっているが。

 

 

しばらくダラダラ話をしているとノックの音が聞こえ、ツカサのどうぞという声に反応して扉が開いて一人の青年が入って来た。

 

「我が王、今日もファンレターが届いているよ。嫌がらせと思われる物は全て処理してあるのでご安心を」

 

「魚住さん本当イケメンで有能。やっぱり敬語やめてもらって正解だわ」

 

「ツカサ君の為に何かしてる時は本当に生き生きしてるよね」

 

広報担当をしていたが今はマネージャー兼不要だがボディガードとして働いている。

 

「我が王、先日こちらで名前の変更を行ったんだ。これから私の事はウォズと呼んでほしい」

 

「当たり前のように変更してる事に驚いたけど、凄いしっくり来る名前すぎて困る」

 

「自分の名前を少し残しつつカロスに適応した名前だね」

 

「それとこれからは我が王の事は巷での呼び方に寄せ、我が魔王に変更する事に決めたよ。……あぁ、やはりしっくり来る」

 

「この前の生放送で変な怪人っぽいのを邪剣・夜で倒して謎のライダーっぽいベルト手に入れた時にウォズ大興奮してたよね。視聴してた人が祝え!って声に反応してたし、俺もビックリしたし」

 

この世界でもライダー作品は存在しているが、ここでは未放映でオリジナル扱いのジクウドライバーをゲーム内で手に入れていた。

 

「ツカサ君だけ本当何のゲームやってるか分からないってネットの記事にもなってるよ。ロボゲーで牧場経営して怪人やBOWと戦ったりしてるしで」

 

「本当それ一番言われてるから」

 

「我が魔王、次回はあのベルトを皆の見ているタイミングで使ってみるべきだ」

 

「あれ呪いのアイテムだから」

 

俺よりヒーローごっこ似合うの居るだろうと捨てようとしたが大切な物に強制的に入ってどうしようもなくなっていた。

 

尚VRで紡がれる全くの素人主役にした前代未聞の最新ライダー作品の予定が、まさかの存在が手に入れてしまい出来レースを疑われていた。

 

即捨てようとしている動画と牧場の畑にあるカカシに雑に巻かれたベルトから疑いは即晴れた模様。

 

「あれ絶対何かあるだろうし、カカシから外した方がいいと思うよ」

 

「みんな見てる中でポーズ決めて変身するのがなぁ……」

 

面白そうだからとツカサだけに何の説明もなく他の役者を送り込み、ゲーム内イベントと錯覚させて撮影を行うつもりのようだった。

 

カロス側は喜んで協力を約束しツカサへの情報封鎖を行い、名前をウォズと改めたツカサの狂信者をカバー役で使ってもらう事も決まっていた。

 

「逃げて野生化してたハンターを見つけて戦うのに躊躇なくポーズ決めて変身してたじゃない」

 

「あのポーズはベルト巻いたら頭に浮かんで来て勝手に身体が動いたんだよ……でもジオウかぁ。ベルトのボイスが何か霞のジョーみたいだったけど」

 

「我が魔王、私とフレンドになっておこう。ここに転職するまで無駄に稼いで使っていなかった給料で私も筐体ごと購入したんだ」

 

「本当ぉ?」

 

「ウォズは割と趣味に全力だよね。リーグの出すツカサ君のグッズとか絶対買うし、色んな地方のリーグが集まって運営してるソシャゲの合同会議でツカサ君の季節限定も出すべきだって熱くプレゼンしてたし」

 

「我が魔王の浴衣姿やサンタ姿は必須では?」

 

「絶対売り上げ下がるわ」

 

「まぁ、許可は出たから今度着てもらうけどね」

 

「ハルカ、ヒカリ、メイの3人が完凸した俺をスクショして送って来てさ……よく見たら3×5の15凸だったんだよね」

 

「我が魔王を育成用、治療用、バトル用に固定するのがデフォなんだ。寧ろ我が魔王実装が全てのガチャを趣味枠に変えてしまったとも言える」

 

「あれは一地方の新チャンピオンごときにやりすぎだって運営にクレーム入ったよ。でもこの前ツカサ君がチャンピオン達を容赦なく薙ぎ倒してからはもっと盛るべきだ上方修正をしろって」

 

「もうこれわかんねーな」

 

「掌返しが凄いよ。だからピカチュウをパートナーにした時のツカサ君ペアの強さをチートレベルにしたみたいだけど」

 

リアルでもピカチュウの性能を伝説幻並に引き上げる隠し能力的な物もあるが、本人含めてまだ誰も気付いていない。

 

「何か凄い世界なんだなぁ……」

 

………

……

 

休日になると普通に自宅で映画を観たり、誘われればサナやトロバ達と遊んだりしている。

 

「あれ? セレナまた太っ……」

 

「キュウべぇは本当懲りないよな」

 

「太ってませんー! ちょっと胸が大きくなったんですぅー!」

 

ぼさぼさな三つ編みおさげ眼鏡で少し疲れた顔をしているセレナがキャラ崩壊しながらキュウべぇの顔をグリグリ踏みつけていた。

 

「あー、そろそろポケモン看護士の試験だっけ。研修はカロスのジョーイさん一族が来てくれる複合施設のあるウチでいいって話だから」

 

「よかった……」

 

「不安になって何徹かして下着姿で逆立ちしてたの見て流石のキュウべぇも心配してたからなぁ……」

 

「あれはその……忘れてほしいわ」

 

「あれは普通に怖かった。血走った目を全開にしてブツブツ言いながら逆立ちしてて、何かそのままこっちに歩いて来たし……キュウべぇが我先にと逃げ出したせいで加速してくるから俺も逃げたけど」

 

「その時の記憶ないのよ……」

 

「気持ち悪いくらい速くて捕まったの本当トラウマ。逆立ちやめたと思ったら『何逃げてるの! こうやって! 揉むんだよ!』って血走った目を見開いたまま俺の腕を掴んで強引に乳揉ませてくる痴女っぷりも」

 

「それは覚えてるわ」

 

「なんでだよ!」

 

「ドン引きしてるツカサを見て正気に戻ったから……」

 

「あれから勉強を更に優しく教えるようになったんだよなぁ」

 

セレナが自分で勝手に追い詰められて奇行に走った訳だが、ツカサは教え方が悪かったのかと更に分かりやすく頭に入るように教え方を変えていた。

 

「お陰様で過去問なら合格点を取れるくらいになったわ」

 

「セレナがずっと我慢してる生放送は全部ノーカット版もあるから合格したら楽しんで。そういやこの前迷い込んだ世界で久々に電ちゃんに会ったよ」

 

「あのなのですって可愛い子よね」

 

「凄い世界だったよ。男がくっそ生まれにくい世界みたいでこっちの世界と男女の力関係やらが反転した世界だったし、女性の美醜だけ反転してるカオスな世界でもあったし」

 

「うん……?」

 

「最初無人島でサバイバル生活してたんだけど、ログハウス作って魚釣ったり畑耕したり虫食べたり割と楽しかったよ」

 

「虫とかも平気で食べられるの本当凄いわよね。テレビの罰ゲームで食べられる虫の天ぷらとかみんなが悲鳴上げる中、普通にいただきますしてムシャムシャ食べてて引かれてたもの」

 

それからその手の番組にはバンバン呼ばれ、しまいには現地で調理して食べるロケにまで行っている。

 

「謎の温泉もあって本当いい暮らしをしてたんだけど……ある日釣りしに海岸行ったら何か電ちゃんみたいな装備つけて巫女装束っぽいの着た女の子がいてね。目と目があったら鳥の雛のように付いてきてさ」

 

「聞いてるのが私じゃなかったらツカサは絶対電波系男子ねこれ」

 

「だろうなぁ。それから数日一緒に暮らしてただけでバーニングラブとか言い出すチョロさにビックリしたわ。そこからは二人暮らしでまたサバイバルだったけど」

 

「それ多分普通の人間じゃないわよね」

 

「空飛んだら口開けて驚いてたからまだ普通かもしれない。セレナみたいに抱えて飛んであげたら大興奮してたわ」

 

普通の人間は飛ばないのでその反応が普通です。

 

「ツカサのレックウザも一緒に飛べていつも大興奮してるわよね」

 

雲の上を一緒に飛んで地球をぐるっと回ってみたりしている。

 

最近はホウオウやルギアにミュウ、ミュウツーも一緒に飛んでおり、楽しそうに飛ぶのに釣られて様々な鳥ポケモンが混ざって来て百鬼夜行のようになっていた。

 

「犬の散歩ってあんな感じなのかも」

 

尚、散歩で地球を一周する模様。

 

「それでその女性とどれくらい二人きりでサバイバルしたの?」

 

「一年くらいかな。ある日いきなり電ちゃんが俺の匂いがしたって無人島に来て、それで3人で本土に渡ったんだよね」

 

男女二人無人島に一年間、何も起きないわけもなく……

 

加減したエネルギー波で人類の脅威を軽く蹴散らしながら渡り、貴重な男故に即座に入院をさせられ身体検査やら空を飛べると言ったせいで精神鑑定やら何やらで一ヶ月近く拘束された模様。

 

「そこでもやらかしてそうね」

 

「何か毎晩夜這いが凄かったよ。こっちで魔改造しちゃったせいで扱いに悩まれてた電ちゃんと金剛が常駐してたから追い出されまくってたけど」

 

「男性が少ないから目をつけられたのね」

 

「寧ろ空飛べるって言ったから頭弱い男なら行ける!って感じだったんだと思う。それでクレーム入れてみたら偉い人が来て保護という名の監禁種馬生活か、お飾りの提督として安全な鎮守府での実質監禁生活かの二択を迫られてお飾りを選んだんだ」

 

「あっ……ふーん」

 

「それで行く前に偉い人から餞別にって謎の指輪三つと書類二つを貰ったから電ちゃんと金剛に渡して書類も書いて……こうなってる。最初の方は六式と三種類の覇気を使いつつ4人だけで頑張ってたんだよなぁ……お飾りだからって侵攻されてから周囲も鎮守府もほぼ廃墟の誰もいないとこスタートは無人島生活を思い出したわ」

 

普段は付けられないからと指輪にチェーンを通して首から下げている。

 

「ツカサのサバイバル技術が最大限に活かせてるじゃないの。私は虫とかダメだから……」

 

「後々聞いたら近々大侵攻が起きるって情報を得ていて、それから出来るだけ遠ざける為だったらしいけどね」

 

「優しいのか厳しいのか分からないわね」

 

「翌日に俺の教育担当をする為にって着任した鹿島が引きつった顔してたわ。金剛と電ちゃんの指輪見て頭を鈍器で殴られたかのような顔もしてたし」

 

「またやらかしたの?」

 

「いや今でもよくわかんない。ただひたすらあざとくて可愛いから目がいって、気づいた金剛にほっぺをギューってされてた」

 

「何それボクもやられた……重いぃぃ……」

 

「重くないわ」

 

黙って聞いていたキュウべぇだがつい反応してしまいセレナに更に強く踏み潰されていた。

 

「そういや遠目にキュウべぇの量産型を見たような……確か神浜、だったかな。一回だけ行った場所で」

 

「助け……重いぃぃ……大体前回から+3kgぐらい……」

 

「燃やすわ」

 

「ヒェッ」

 

ツカサはセレナの聞いた事がないような低く腹に響くような声に身が竦んでいた。

 

………

……

 

夜空を飛ぶポケモン百鬼夜行、ツカサを先頭に様々なポケモン達が楽しげに飛んでついて来ていた。

 

「ミュウ!」

 

『ツカサちゃん! 素敵! 抱いて!』

 

「ホウオウだけキャラ濃すぎない?」

 

『だってみんなツカサちゃんが好きすぎて恥ずかしがってテレパシーで話そうとしないんだもの! 私が代わりにいっぱい話さないと!』

 

「今は空だから居ないけどエンテイは最近ワンちゃんみたいになってるんだよなぁ……まさか自分がでかいからってバランスボールを持ってくると思わなかった」

 

スイクン、ライコウよりも遥かに早くエンテイが一番最初に威厳を投げ捨てていた。

 

森で出会えばじゃれつき、腹を見せてワシャワシャされ、バランスボールを投げてもらって拾いに行く遊びを楽しんでいる。

 

『ディアンシーちゃんときよひーちゃんもツカサちゃん大好きよねー』

 

「ジガルデは何か付けたニックネームがお気に入りらしくて……あの蛇形態でめっちゃ可愛い声でギャップが凄い」

 

『いきなり一緒に現れたディアルガとパルキア、グラードンとカイオーガはツカサちゃんが迎えに来るのずっと待ってたらしいわね』

 

「グラードンとカイオーガは何か凄い見られて怖かったくらいしか覚えてなかったんだよ。ディアルガとパルキアは何か妙に俺に鳴いて来たから頷いてはみたんだけど……」

 

最初の旅で出会ったグラードンとカイオーガにガン見されたのは流石に怖かったらしい。

 

ディアルガとパルキアはもう少ししたら迎えに来てもらえると思って何年も待ち、なかなか来ないので協力して覗いてみたらエンテイとジャレあっていて我慢出来なくなったようだった。

 

「シンオウで仲良くなったけど捕まえないで別れたシェイミも気がついたら裏庭のグラシデアの花畑でスヤァしてたし。ずっとストーキング……見守ってたとか言ってたけど」

 

『ツカサちゃんったら本当ポケモンたらしなんだから!』

 

「たらしってのはパラレルな俺のような奴の事だよ。玉藻さんがロコンとキュウコンに好かれまくってるって話をしてたし……てかあのパラレルの俺はマジでヤバい。多分ブロリーの血筋のが濃く出てるみたいだし」

 

『あのツカサちゃんはちょっと怖いのよね。愛が玉藻ちゃんにしか行ってないからかしら』

 

「愛故に俺がブロリーに気絶させられてる隙に血を勝手に採って不老になろうとする狂人だからなぁ……」

 

無事成功したらしく長く生きる為に資産を増やす作業をしておりしばらくは此方には来ない模様。

 

『採取した後に指で軽く掬うようにして舐めてみてたわね。不味そうに顔を顰めてたからよかったわ』

 

「まぁ、でも世界よりも玉藻さんが大事って言うくらいだから仕方ないとは思う。……てかVRの生放送明日かぁ。何かあのシナリオ限定の設定がされた状態でTV版エヴァシナリオをやらされてる最中だし。初期から参号機搭乗のフォースとか本当に洒落にならんわ」

 

原作介入シナリオが見てみたいと言われランダムで選んだせいで大変な事になっていた。

 

尚、前後はイデオンとザンボット3でどのみち精神的に負担はかかった模様。

 

『ツカサちゃんは本当大変ねぇ……』

 

最近になって愚痴を零せる貴重なポケモンだと色ホウオウをそれなりに扱い始めている。

 

………

……

 

「何か知らないけどコミュ力おばけとかいう新しい呼ばれ方してるんだけど」

 

生放送も終わり次回まで少し間が空くらしく、ツカサはエンテイ観察日誌を書きながら呟いていた。

 

「そりゃそうでしょ」

 

「我が魔王、今度カレー食べに行ってもいい?」

 

「何がそりゃそうでしょなんだよ。ウォズは最近緩くなってきて本当面白いしいいよ」

 

我が魔王呼び以外は完全にフランクになっていて、それをツカサは気に入って自宅に招くようになっていた。

 

「あ、僕もやっぱりツカサ君の家に行きたい。何かあったらウォズを盾にすればいいんだし」

 

「私は我が魔王以外の盾にはならない」

 

「本当この二人と居ると毎日が楽しいわ」

 

連れションから食堂までほぼ三人で行動しているからか仲良しトリオで有名になっており、男三人でチャレンジメニューのジャンボパフェを肩寄せ合ってつつく姿に女性陣と一部男性陣から黄色い声と野太い声が上がっていたりも。

 

「僕も最近は楽しく仕事をしてるかな」

 

「私は我が魔王のマネージャーになってから毎日がキラキラしているよ」

 

「二人とも俺より8つくらい上とは思えないんだよなぁ……」

 

「それより今度の休みにミアレに出来たアイスの店に行かない? 三人以上でダブルを頼むとトリプルにしてもらえるキャンペーンやってるって事務の女の子達が騒いでたよ」

 

「私は構わないが」

 

「俺も。そこじゃないアイス屋のピカチュウパインは凄いよ……誰も頼まないからサービスで乗せてくれたんだけど、舌を這わせたら全身に電気がビリビリ走ってたまらんかった」

 

「それ嫌がらせなんじゃ……それじゃあ今度の休みはリーグ受付前集合だね」

 

「ちょうど生放送の翌日だから我が魔王は変装(笑)をしてくること」

 

「はーい」

 

ただ眼鏡と髪型を変えるだけなので即バレているが、変装(笑)をしている時は声をかけないという暗黙の了解がファン達の間に生まれている。

 

「生放送はエヴァ編の途中だったね」

 

「始まりは我が魔王がフォースチルドレン扱いで参号機が初期からネルフにあるご都合展開だった。本来のフォースチルドレンはセーフになったようなものだ」

 

「最終的にグシャッてされそう。みんなチョロすぎるのは罠かもしれないと思うの」

 

シナリオクリアで参号機を取得出来るようだが、シナリオ内でS2機関を取り込まない限り電力的な意味で運用不可な模様。

 

「そこそこ痛みがフィードバックするシステムも凄いよね。ツカサ君凄い文句言ってたけど」

 

「割と痛いけどアイス食べに行くの楽しみにしてがんばる……」

 

特定の条件を満たすといつの間にかゲンドウが長谷川さんみたいになっているギャグシナリオのハッピーエンドになる仕様が含まれている。

 

 

「そういえばこの前リーグに直接連絡が来て呼び出されていたけど何だったの?」

 

「真宮寺の本家からの呼び出しだったの。霊剣荒鷹と神刀滅却を俺にって話が本家で出たらしくてさ……破邪の血は流れていてもそんな力はもう私達にはないって桜色の袋と真っ白な袋に入れて即渡されたよ。それからはサインが欲しい、写真も撮ろうって本家の方々に近くの分家からもワラワラ集まって来ての大宴会で超VIP扱いだった」

 

「そりゃそうでしょうね。とんでもない伝説を残したワールドチャンピオンだし、あの記録を塗り替えるのはほぼ不可能だもの」

 

「やはり公の場で我が魔王を盛大に祝う言葉のレパートリーを増やしておかなければ」

 

「伝説は塗り替えるものよ。クウガだって塗り替えたんだし」

 

これから毎年自ら塗り替え続けていく模様。

 

「ツカサ君って最終的に相手の心を折りに行くよね。この前も呼ばれて行ったスクールでチャレンジャー募集して、これは行けるんじゃないかってバトルをしていると思わせて……」

 

「大体分かったと呟き、手加減は失礼だと本気になり手も足も出させない蹂躙具合は流石我が魔王と言わざるをえない」

 

「あれで折れるならそこまでだよ。本当に強いトレーナー……てか各地方のチャンピオン達なんて自分より上が居たって嬉々として鍛え直してるんだし」

 

ヤベー奴等が切磋琢磨して毎年強くなっていく恐ろしいイベントに早変わり。

 

「最初から全力で一切の容赦なく折りに来る他地方のチャンピオンよりは夢を見せてくれるからいいって意見はあるから理解はされてるよ」

 

「本当あいつらマジで頭のネジぶっ飛んでるんだよな……容赦のなさが本当怖い。躊躇なく初手伝説とか初手エースで圧殺しようとするの本当挑んだ人達が可哀想」

 

対チャンピオンや悪の組織以外には伝説や幻を基本的に使わないツカサは希有なチャンピオンだが、パワースピードテクニックの複合タイプであらゆるポケモンを育成していてパターンが読めない一番厄介な存在でもある。

 

「前チャンピオンのカルネさんはそんな彼女達と楽しそうに笑ってたんだよなぁ……」

 

「大体チャンピオンになれる時点でみんなちょっとおかしいから仕方ないんだけどさ。てかプレゼントとか言ってクッソ高い服とか時計とか靴とか贈ってくるの本当やめてほしい。なんならモンスターボール1ダースとかのが嬉しいし……てか何もしてないのに貢がれるのが耐えられない」

 

代わりに保存の効くお菓子やジャム等を沢山作ってお礼の手紙を書き、やんわりとプレゼントはそちらの負担になるだろうから今後は遠慮したいと最後に書いていた。

 

尚皆が手作りのお菓子とジャムに同封された手紙でテンションが上がり、全然負担じゃないからセーフ理論とまたお返しが貰えるかもしれないという打算でプレゼントを贈ってくる模様。

 

「ツカサ君は残念な女性を放っておけないタイプだよね。貢がれるより貢ぐタイプっていうか」

 

「我が魔王は酔って泣いて脱いでゲロ吐いて気絶するように寝ると噂のシオニー・レジス外務大臣を可愛いと言う耳を疑う発言をしたくらいだ」

 

「ストレスが凄いらしくて……パーティーとかシオニーちゃんから要請あればリーグの偉い人に許可貰ってからカロスチャンピオンとして基本付き合ってるもん。俺がいるだけで相手の態度もかなり変わるみたいだし」

 

「もうテレビでキリッとしている彼女を見ても私生活が超残念なんだよなぁ……ってなるよ」

 

「マリリンさんとシオニーちゃんと片桐さんが合わさると地獄絵図だったよ。その時は誰も吐かなかったけどみんなして絡んでくるわ酒臭いわで本当もうね……一回放っておいて先に寝たら大変な事になったから、それ以後は酔い潰れるまで嫌々付き合ってるけど。酒って怖いなぁ……」

 

「僕もお酒より甘い物のがいいな」

 

「私もスイーツの類ならば幾らでも」

 

「だよなぁ」

 

別の種類のケーキを注文してシェアするくらいに仲良しで甘い物好きな三人である。

 

 




祝う人がガチ勢の仲良しトリオ。
ツカサ担当の職員のイメージはロマニのような感じ。

死にはしない程度の再生力があるからアークワンになったら苦しみながらも色々撒き散らす最悪の存在になりそう。


伊吹童子に聖杯を躊躇なく入れたくらいに二臨のニットの蛇お姉さん本当好き。
今年は面倒臭くてクリスマス箱は50箱でやめちゃった。

グラブルは全神石揃ったけどリミ程よくあるの闇しかないんだよなぁ。


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お休みの間に

リーグの施設に不具合が多々あり、テレビのロケや収録もしばらくはないので一週間の休みを貰っていた。

 

「紫ん家に突撃して気を殺して添い寝した結果がこれだよ」

 

ツカサの頬に綺麗な紅葉が出来ており濡らしたタオルを当てて冷やしていた。

 

「私は紫様を起こすよう頼んだだけですので」

 

「ビックリしたの!!」

 

「あんな甘えた声で胸元に擦り寄って来たのに目を覚ましたらこれだよ。鍛えてなかったら首取れてたね」

 

散々甘い声を出して抱きついたり胸元に顔をすり寄せたりしていたが意識が覚醒して状況を認識、とりあえずツカサを立たせて自分も起き上がり深呼吸してからの全力でビンタをお見舞いしたらしい。

 

「私の胸をこう……た、楽しんだでしょ!」

 

「ハッ!」

 

「ツカサに鼻で嗤われてますよ紫様」

 

「むーかーつーくー!」

 

「セクシー系は似合わないからやめようね、永琳とか藍辺りがセクシー担当だし。紫は乙女可愛い担当でいいじゃない妖怪だもの。ツカサ」

 

永琳や輝夜の件で月のお姫様達と一悶着あったりもしたが今は何とか丸く治っている。

 

「そう言われると照れてしまうな」

 

「幽香は紫と同じ乙女可愛い系で」

 

「遊びに行って帰って来たら両頬に立派な紅葉が出来て腫れてたわね。何でも手と手が触れ合ったら何故か往復ビンタされたとか」

 

「乙女すぎるからね。幽香と恋仲になって最終的に子作りまで行くのに百年単位必要になると思うから相手が人間じゃ無理だろうね」

 

「こ、子作り……」

 

「分かりやすく言うなら愛のあるセッ」

 

「言わなくても分かるから!」

 

「ワイルドに言うなら交」

 

「わーっ!!」

 

「ほらツカサも紫様で遊んでないで箸とかを運んでくれ」

 

割烹着を付けた藍が遊ばれている紫に助け船を出し、ツカサの腕を掴むとそのまま連れ出して行った。

 

「……あの二人は本当怪しいのよね。藍が物凄く調子が良くてツヤツヤして機嫌が良い日はツカサが泊まった次の日だし」

 

朝食を待ちながら絶対怪しいとブツブツ呟いている。

 

………

……

 

朝食を食べしばらくダラダラ過ごし、最終日に戻るからと藍にだけ告げて人里にあるお気に入りの茶屋が開く時間に向かっていた。

 

「……」

 

山のように積まれた団子を食べながらのんびりしており、時折顔見知りが通ると片手を上げて挨拶をしている。

 

「……そういやロゼに変身して暴れてから天狗達が凄い敬語になってたな」

 

禍々しいオーラに丁寧な口調で傲慢な態度がブラックのようになり始めており、使う技も頭に浮かんでくる物を次々に使用して気の剣や大鎌まで扱うようになっている。

 

とある吹けば消えそうな残留思念のような物に取り憑かれているが乗っ取りは出来ず、ロゼの時だけ強く脳内に現れるお助けキャラだと思われていた。

 

「当たり前ですよ、なんなんですかあの禍禍しい神の力」

 

「ロゼ」

 

「それは知ってますよ!」

 

降りて来た文に一言だけで応えて団子をパクついている。

 

「しかし文は本当なんで俺が来たの分かるの? 気を探ったとか?」

 

「ツカサさんを見かけた天狗が騒いでいたんですよ」

 

「あぁ、里に来る途中ですれ違ったっけ」

 

「それを聞いて急いで来たんですよ。私がご機嫌伺い担当にされてますし」

 

「ほーん……」

 

全然減らない団子を話しながらも食べ続けており、正直話がほとんど頭に入っていなかった。

 

「今回は厄神の彼女と腕を組んで歩いていた件についてなんですけど」

 

「雛さんはブルーになった時の神気で厄が浄化されて俺には影響がないから好きに触れ合える、俺はブルーの持続時間を延ばす修行にもなるし綺麗なお姉さんに膝枕や果物をあーんってしてもらえる。これがWIN-WINの関係だね」

 

「本当好き放題やってますよね。この前聞いた別の世界のツカサさんもかなりの変人みたいですし」

 

「もし迷い込んで来ても嫁さんと一緒にさせて隔離しとけば安全だから。あの俺はブロリーみたいな変身するんだよなぁ……もっと守る力が欲しいって言うから嫁さんが殺されるのをイメージしてみろって変身させたら薄緑色の髪に白眼ですげぇ筋肉膨張、直後にフルパワーで暴走し始めてマジで殺されるかと思った」

 

悟空やベジータ、ブロリーが急激に膨らんだ気に気づいて駆けつけなければ嬲り殺しにされていた模様。

 

超化のトリガーを玉藻にしたのが悪い方に転がってしまったらしい。

 

「それは周知させます」

 

「とりあえずお似合いの夫婦ですねーとか言っとけば何とかなるから」

 

「あぁ、そういう感じの」

 

「自分達に有益な存在と嫁さん以外は石ころみたいなもんって考えてるから本当ヤバいからね。同一存在の俺すら益がないと石ころだと思ってそうだし」

 

「えぇ……」

 

「……」

 

とりあえずこの話題はここまででいいかなと再び団子を食べ始め、文はメモしながらウンウン唸っていた。

 

団子を食べるよう手で勧めてお茶を飲み、お茶のおかわりついでに文の分も頼んでいる。

 

「あぁ、こっちは平和でいいなぁ……」

 

「外の世界より命の危機が多々あるはずなんですけど」

 

「まぁ、最近の永遠亭は少し怖いけど」

 

「あー……確か輝夜さんがツカサさんのお味噌汁に血を少しずつ混ぜていたり、野菜炒めに自身の肉を入れたりしていた事件の件ですね」

 

「どっちも気づいた永琳にすげぇ腹パンくらって吐いてるからね。後者に関しては食べてたら目の前で頬杖ついてニコニコしてた輝夜の口の端からツーって血が流れ出て更に服の腹の辺りが血に染まり出してね……俺に自分の一部が食べられる事に興奮を覚えるって言われた時は本当逃げ出したかった」

 

「聞かされた私もちょっと怖かったですよ。人を食べて興奮するのは分かりますけど、食べられて興奮するのはちょっと……」

 

「うちにいるメイド仕様座敷童子に愚痴ってみたらおやつ食べながらドン引きしてたよ」

 

「今物凄く気になる言葉が出て来たんですけど」

 

「三十路間近の他地方の某チャンピオンが制服着て起こしに来る方のが凄いと思う」

 

「うわぁ……」

 

「そのまま一緒に出掛けたせいで俺は制服好きのレッテルを貼られてる。てかメイド服と制服好きと太もも好きとおっぱい好きとロリコンのレッテルを貼られてる」

 

「大体事実ですよね。よく私の太ももとか見てますし」

 

「膝枕してもらえそうな相手を見極めてるだけだから」

 

「この前は湖の畔で妖精に膝枕してもらってましたよね。母性に目覚めたのか膝枕で眠るツカサさんの頭を撫でている妖精の絵面が本当酷かったですけど」

 

「あれから大ちゃんと遭遇する度にニコニコしながら無言で座って膝をぽんぽんしてくるの」

 

遠慮しようとすると悲しそうな顔をするので断れず、いつも膝枕をしてもらっている。

 

「その後あの門番にも膝枕されてましたよね」

 

「まぁ、スカーレット姉妹以外とはそういう関係でもあるから……」

 

「あー……」

 

「まぁ、この話はここまでに……」

 

団子を咥えて話すのをやめ、鳥の鳴き声を聞きながら何か言いたげな文をスルーしていた。

 

「……あ、もこたんだ」

 

「そんな呼び方すると燃やされますよ」

 

「俺からもこたんって呼ばれてるって輝夜をめちゃくちゃ煽ってたから大丈夫。あの二人互いにマウント取り合ってから殺し合い始めるんだよねー」

 

もう慣れたらしく輝夜の生首やら妹紅の腕やら飛び散ったりしたのを回収したり、燃え広がりそうなのは消火したりと淡々と処理していた。

 

「長く生きていると変化を求めたくなりますからね。私も新聞の書き方を変えてみたりしていますし」

 

「一番怖いのが相討ちで半分になった二人がこっちに這ってくる事なんだよなぁ。乙女の中身(ガチ)をこんなに見てるのは俺だけだと思う。臓物が溢れて血やら匂いやら光景やらが凄い酷いし……まともに見えて狂ってるって感じがする」

 

「そんな事を淡々と話しながら団子を食べる姿にドン引きですけど」

 

「だって俺が他に話せる事って言ったらこれくらいだし……」

 

そう呟きツカサが手を宙に向けて差し出すとパッとどこからか剣のような鍵が現れ、文が口を開けてポカンとしている間にそれを消して見せていた。

 

「……は?」

 

「迷い込んだ世界で知り合った人から継承のなんたらをしようって言われて、よくわからないまま付き合ったら使えるようになっちゃったんだよね」

 

「いやいやいやいや! 何ですか今の! さっきまでのクッソ生々しくて怖い話よりそっちのがいいですよ!」

 

「お前切実な俺の悩みを……腹掻っ捌いて自分の子宮とか中身を全部見てもらいたいとか言い出して実行した猟奇系女子になっちゃった輝夜に対する話をだな」

 

「もうそれはいいですから!」

 

「毎回おっぱいかパンツ見せてもらう方が嬉しいからって言わされる身にもなって。掻っ捌いた後の処理が大変だからって永琳達に言わされるの」

 

「もしかしなくてもさっきのアレを誤魔化そうとしてますよね?」

 

「だって最初から話すの面倒臭いし……光と闇の話とか聞きたいの? 心とかの話にもなっていったりするけど」

 

一応旅をしたりグミシップにハマったりと色々楽しんでもいたが。

 

 

「うーん、それなら今度私の家に来てもらった時の寝物語でいいわ」

 

「いきなりプライベートモードに変わるのね」

 

「もういいかなーって」

 

「文はあれだもんね、俺と仲良いからって下っ端天狗達が俺を襲った事への謝罪やら何やらで人身御供にされたんだよね」

 

「死を覚悟して訪ねたのよねー……まぁ、今じゃマウントってやつをはたてとかに取れるからいいんだけど」

 

「お腹摩りながら慈愛の笑みを浮かべて自宅に帰ったらしいけど、天狗大喪女軍団が発狂してたって紫が教えてくれたっけ」

 

「次は私が行きますーってのが多いけど、最初に私だけを人身御供にするって決めちゃったから出来ないのよねー」

 

「そういや何か男の天狗達から俺が神って崇められるようになったのはなんで?」

 

「兎に角男なら片っ端から手を出そうとする私より遥かに上の者を乙女にしたからじゃない?」

 

「あの胸元バーン、太ももドーンでおへそ出してたセクシー系ビッチな天狗の女性かぁ……見た目若いから俺は全然平気だけどみんな目を背けてたってことはアレなんでしょ、人間でいうお婆ちゃんがそういう格好をしてる的な」

 

「今はツカサ以外には肌を見せない宣言をしてキッチリと服を着ているし、男達にも余程の事がなければ近寄らなくなってるわね。大体その日から男達はツカサを女の趣味は悪いけど凄い神だと崇めるようになっていったみたい」

 

「ただ話を聞いてカウンセリングの真似事をしただけなのに重くない? 軽く手を握ったりはしたけど他には何もなかったよ?」

 

「まぁ、乙女だから……」

 

「てか別に俺にも肌を見せなくてもいいと思う」

 

………

……

 

文と別れ土産の団子を包んでもらい、そのままのんびり里をフラフラしながらここ数週間を振り返り始めた。

 

「時の界王神様の呼び出しがいきなりあったりして辛い……時の流れが違うのが唯一の救い」

 

外部協力者でゼノバ2主人公的な立ち位置らしく、違う世界のフリーザが大悪党な事にショックを受けたりしている。

 

何を間違えたのか時の界王神に口説き落とされ、事あるごとに呼び出されては料理をお見舞いされてそれを食べ切り倒れては看病されていた。

 

「マミちゃん達の執念めっちゃ怖かったなぁ……異世界への歪みを塞ごうとしたらリボンが飛び出て来て腕に巻きついて引き込もうとしてくるとか近寄れない。精神安定の為に色々やって最後は若干寝取った感あったさやかとほむらちゃんの魔力も感じたんだよなぁ」

 

あまりよろしくない世界に続く歪みを鍵穴に見立てて閉めていく最中に起きたアクシデントだったらしく、危うく引き摺り込まれそうになったがギリギリで鍵を閉めてリボンを切っていた。

 

何故かそのまま残ってしまったリボンは回収し捨てるのも怖いからかしまってあるが、それは位置を特定する為の物の可能性が高い。

 

「とりあえずこれから輝夜のとこに行って……」

 

人差し指と中指を合わせて額に当て、一番安全な鈴仙の気を探り始めていた。

 

悟空に憧れて真似をしていたら普段の目を瞑るだけよりも探りやすいのに気付いて癖になっている。

 

 

 

「何で着替え中に来ないの!」

 

「着替え終わった最高のタイミングで来れたと思ったらプンスカし始めて困惑するんですけど?」

 

ちょうど髪をファサァっとやって鏡に微笑みを浮かべた瞬間に背後に出たらしく、久しぶりーと声を掛けたらこれである。

 

「立ち位置的に私はそういう役目でしょ!」

 

「お願いだから出会った頃の甘酸っぱい感じのやり取りが出来る鈴仙に戻って……」

 

「みんな成長していくものなの」

 

「確かに俺も毎日成長してるけどさぁ……兆しのまま持続時間が伸びてモヤモヤしてるけど」

 

「その素敵な筋肉のツカサに好き勝手されたいの!」

 

「来たばかりで即夜這いに来て朝までハッスルした鈴谷の台詞みたい。金剛が正妻の貫禄で新人に夜這いの許可を出した日の晩に来たもんなぁ……こんな所で思い出すと思わなかった」

 

あわよくば正妻の立場を奪おうと金剛がいない時はずっと側にいる大和や加賀等の素敵な仲間達がいっぱいいる世界のお話。

 

「師匠みたいに穏やかな午後、風で竹の揺れる音を聞きながら縁側で二人肩寄せあってお茶を飲むだけは嫌なの!」

 

「何かあの世界で再会して妙にはっちゃけてた胡蝶姉も思い出すなぁ……俺と関わると美人はがっかりになるのか、はたまた最初からがっかりな美人に出会しているだけなのか」

 

本来隠れていたがっかりな部分を引き出しているからどちらも正解。

 

「うー、このまま色々したいけど師匠に材料採取を頼まれてるから……」

 

「俺もそろそろ……」

 

「やっぱり居たわね。さぁ、まずは問診からよ」

 

鈴仙が渋っているとスパーン!と襖が開き永琳が現れ、そのままツカサの腕を掴むと引き寄せてグイグイと診察室へと連行して行った。

 

「……早く帰って来なきゃ!」

 

見送ってから籠を手にダッ!と走って行った。

 

………

……

 

検査を終えて縁側に腰掛けてお茶を飲み、寄って来たピィを膝に乗せてまったりしていた。

 

「……」

 

「よいしょっと」

 

スススっと忍び寄って来た輝夜がピィを持ち上げそのまま自分がツカサの膝に座り、ピィを自分の膝に乗せている。

 

「普通にしてればなぁ……」

 

「ふふん」

 

「もう腹を掻っ捌くのはやめてね」

 

「ツカサがどうしても私と同じになりたいって言ってきたらやるわよ」

 

「それはない。それより今日は泊まって行くつもりだけどいい?」

 

「ツカサはファミリーみたいなものだし私から許可貰わなくてもいいの。妹紅はツカサとお友達だけど私はツカサとファミリーだから」

 

またくだらない事で殺し合いが行われたらしく、最終的にマウントの取り合いで輝夜に軍配が上がったらしい。

 

「てかそこそこ仲良くなってるよね、妹紅が俺の生放送の内容知ってたりするし」

 

「10分の1でハズレ枠の騎士GEAR凰牙の電池なし取得して崩れ落ちたのは笑わせてもらったわ。永琳は抱きしめて慰めてあげたいってキュンキュン来てたみたいだけど」

 

「もうガチャは信じない。ハズレなし!とか絶対嘘」

 

「とりあえず紫を介して手に入れた新しいグッズにサインしてね」

 

「いいよ。でもあの誰が許可したか分からない俺の写真がプリントされた男女両方の謎パンツがめっちゃ売れて売り切れてるのが本当怖い……」

 

「なかなかいい付け心地だしツカサに守られてる感があっていいのよ」

 

「マジかよ……ウォズは何か三桁単位で買い込んだってドヤってたけど」

 

「あのツカサマニアの祝う人?」

 

「そうだよ、多分俺検定とかやったら殿堂入りするレベル。超サイヤ人の俺フィギュアをフルスクラッチビルドしたとか割とドン引きしてる」

 

「アリスみたいじゃない」

 

「何個か作ってあるからって貰ったやつをアリスが訪ねて来た時に見せたら興奮してたっけ。SDな俺人形を作るってしばらく来てないけど」

 

「これ見よがしに人里の人形劇で使ってるみたいよ」

 

「ボロボロになった胴着とインナー持ってったからミニサイズの胴着とインナー作ったんだろうね。洗濯してないから新品渡そうとしたのに頑なに勿体無いからこれでいいって言ってたし」

 

「そういえば一回ボロボロの死にかけで宴会中にスキマから落ちて来たわよね」

 

「ビルス様が実際に見てみたいとか言いだしてフュージョンしたゴジータさんの相手をしてたからね! ブルーで潜在能力フル解放とかいう、どうやったのか今でも分からない状態でもギリ死なない威力のかめはめ波を放ってくるから本当もう……」

 

死に物狂いで身勝手の極意ではない奇妙な形態になったが勝てる訳も防げる訳もなく、これは消し飛ぶかなぁと諦めが入った瞬間にスキマに飲まれたらしい。

 

「全治にどれくらいかかるか分からないって永琳が言って皆どよめいてたわ。そのまま瞬間移動ですぐ帰って行っちゃって、翌日完治した状態で二日目の宴会に来た時は流石に驚いたけど」

 

「メディカルポッドじゃダメで仙豆食べて治ったから。いやぁ、マジでトラウマになるわ合体戦士」

 

尚ツカサは悟飯とフュージョンするとグレートサイヤマンネオ、ポタラを使うとネオグレートサイヤマンと名乗ってしまう模様。

 

「仙豆、永琳がサンプルに欲しいって言ってたわね」

 

「もう少し増えたらね。いざって時の為に貯蓄しておきたいから……てかこの前パラレルな俺に何個か渡しちゃったからなぁ」

 

「自分に会うってどんな感じなの?」

 

「ありえた可能性の自分なんだなぁって感じ。ただ初対面で嫁さんから聞かされた惚気兼依存計画はちょっと怖かった。幼い頃は母として、成長したら姉として、年頃になれば彼女として、自立してからは妻として隣に立ってるって」

 

「割とヤバい人じゃないのそれ」

 

「神様に近い狐の女性だから仕方ないね」

 

「何というか……濃いわね」

 

「幻想郷の面々も負けないくらい濃いけどね。俺が霞むレベル」

 

「濃い……よくよく考えたら私は月から来た宇宙人」

 

「そうだね」

 

「ツカサはご先祖様が宇宙人」

 

「うん」

 

「という事は……ツカサと私は夫婦」

 

「それが成り立つなら俺と永琳と鈴仙とも夫婦になると思うんですけど」

 

「ツカサならいけるいける。あのナデシコ編でやらかしてルリルリルート一直線だったツカサさんなら!」

 

「おいやめろ」

 

「対等だけど妹のように接していたら向こうからはクソ重感情を向けられてて、最速攻略で序盤から詰んでる状態になっててコメント草まみれだったわ。エヴァ編の参号機バルディエル乗っ取られからのエヴァ三体によるタコ殴り、エントリープラグ引き抜きTAも凄かったけど」

 

「嫌がらせなのかシンクロ率クッソ高くてあかん死ぬぅ!ってなったんだよなぁ……」

 

「シリアスなシーンのはずなのにコメントで遊び始めたせいで完全にギャグだったわ。三人に勝てるわけないだろ!から始まって」

 

「俺が苦しんでる時にホモ遊びされてたんだなって」

 

ちなみに既にイベントだと思ってウォズやゲイツ、ツクヨミ役の人達と散々楽しんだジオウの撮影は終わっている。

 

追加イベントだと勘違いしている映画版のゼロワンが今年の新ライダーだと思っており楽しみに待っているが、初回放映で自分が散々やらかしたジオウが始まってパニックになる模様。

 

「最終的な相関図で老若男女問わず依存、愛してる、大好き、監禁したいの矢印だらけになってて無言になってそっと牧場に帰ったのも面白かったわ」

 

「輝夜もやらない? 機器なら有り余ってる金使ってプレゼントするし、やたら高性能でどうやってんのか知らないけど機器だけでオンライン出来るし」

 

「いいの? 本当? 好き! 抱いて!」

 

「輝夜と永琳は月のお姫様達的にクッソ面倒な事になるから抱くのはちょっと……」

 

「なんでYO!」

 

「クッソ陰湿な粘着してきそうなんだもんあの二人」

 

「まぁ、力じゃ勝てないから仕方ないわね」

 

「神を降ろすの凄いけど何か見てると頭に反逆しろって叫びが木霊するというか」

 

前世的なアレが主観で見ていた夢の屋根裏のゴミ的なサムシングなのかもしれない。

 

尚夢だし別にいいだろうと流されるままに全員と恋仲になりバレンタインでえらい目に遭った模様。

 

「あの時は何か急に頭抑えてたものね」

 

「多分その内嫌でも覚醒しそう。世界を渡ったり主観で夢を見たりする度に何か色々蓄積されていくんだよなぁ……死ぬほど怖かったのはライドウに誤解から狙われた事とダンテに誤解から狙われた事。何とか誤解と分かってもらえたと思ったら済し崩しで協力する事になるしで」

 

「一回大冒険を本にしてみない? 絶対面白いと思うんだけど」

 

「面倒臭い。てかみんな言うけどそんな面白くないと思うんだよなぁ……FIMBAとImaの世界は育成ゲームにしたら面白いかもしれないけど」

 

どちらの大陸でもあらゆる種族を蘇らせ全種族で四大大会制覇の名誉名人になっている。

 

現在は助手としての資格も当然手に入れてホリィとコルトをメインブリーダーにしながら自分は助手として働いている。

 

「何か育てたりするの本当好きよねツカサって」

 

「何かそのせいで大変な事になったけどね。育てた魔王達にすげぇ崇拝されて、頼んでもいないのに侵略しに行った異世界で後一歩まで行ったけどみんな倒されて帰って来たり」

 

またやらかしたら困ると魔王達を止める時の為にグランエスターク、ダークドレアムを配合で産み出して抑止に使っている。

 

「ツカサが完全に黒幕じゃないの。『ツカサ様、お許しを……グフッ』とか言って倒されてるわよ絶対」

 

「やだこわい…やめてください…アイアンマン……。胡蝶姉の世界で守護霊一時的にバトンタッチ、目的を達したらそのまま俺の守護霊になるっていう霊的なアレもあったなぁ。守護霊少女とシェアする形で守護霊になってて日頃は自由にしてもらってるけど」

 

「日記帳プレゼントするから毎日何かあったか書いてどうぞ」

 

「日記ならいいかな。ちなみにとある世界でこっそり見て学んだ憑依で目的達成したんだよね。縁壱に提案してみたら二つ返事だったし、何よりめっちゃ相性良かったから全盛期以上の力を出せたっぽいし」

 

ヤベー奴にヤベー霊がスーパーベストマッチ、知らぬ間にとんでもない最終兵器が爆誕していた。

 

「嫌な予感しかしないからこっちじゃそれやらないでね」

 

「縁壱は連れて来てないから大丈夫。最近こっちの食にも興味を抱き始めて、羽入のシュークリーム愛に感化され始めてるんだよなぁ……俺の大好きな桜餅も好きになってくれたから一緒にカントーとジョウトで色んな和菓子屋巡りしてるけど」

 

皆の分とは別に二個ずつ購入し自分が食べてから縁壱に身体を貸して食べてもらうという、側から見たら気が狂ったようにしか見えない事をリビングで行っている。

 

「なんていうか似た者同士?」

 

「仲良しではあるけど似てはいないと思う。今度妖夢と曾祖母……さくらさんと手合わせする時には縁壱も連れて行くけど」

 

覇気を使い呼吸を駆使し気を操り超化して襲い掛かってくる悪夢のような存在になっていた。

 

「何かツカサが自分の力が封じられた時用に外付けの最強装備を手に入れた感じがするわね……」

 

「外付け最強……あ、鈴仙の気が近づいてきてる」

 

………

……

 

初日はそのまま永遠亭で過ごし……

 

「いーやー!」

 

「離せって!」

 

翌朝紅魔館に向かおうとするツカサに輝夜が背後から抱きつき手足を絡ませ行かせまいと駄々を捏ねていた。

 

「残りもうちで過ごせばいいじゃない! 私がいるじゃない! イナバの胸でも尻でも好きに触っていいから!」

 

「何で雷みたいな事言い出してんだよ! 鈴仙が凄いバッチコイみたいな顔してにじり寄って来てるから離せ!」

 

「いーやー!!」

 

 

午後になりてゐの力を借りてようやく脱出し、人里で手土産に団子を購入してから紅魔館へと向かった。

 

門番をしていた美鈴にいつものように差し入れをし、そのまま中には入らず会話をして過ごしている。

 

「それで今日は泊まっていくんですか?」

 

「出来るなら何泊かしたいけど……多分明日の昼くらいにはお空ちゃんに拐われて地底だと思うから」

 

「毎回のお約束ですね」

 

「途中鬼の宴会の真ん中に落とされるのもね。みんな分かってるから空けてるし、そのまま引き止めるのに綺麗所集めて囲ってくるしで。成人したらいくらでも付き合うからって酒は勘弁してもらってるけど」

 

「普通の人間でしたら垂れ流して気絶するくらい恐ろしい状態だと思いますけど」

 

「もう俺は普通じゃないんだなって。あっ……俺もファンタジー的なキーチェーンが欲しかったなぁ」

 

博麗大結界という文字のキーチェーンをいつの間にか手にしながら呟いていた。

 

キーブレードのキーチェーンも悪鬼滅殺、魔戒騎士、魔砲少女、戦姫絶唱、艦隊提督、円環の理等の今まで迷い込んだ世界に関する文字系であり、道中で知り合った少年は全く別路線のキーチェーンで羨ましく思っていたりする。

 

「ツカサ自体が既にファンタジーみたいな存在だからいいんじゃないですか?」

 

「俺にファンタジー要素は一個もないと思う」

 

「世界を彷徨う者とかファンタジーじゃない」

 

日光を遮る日傘を持ち優雅に現れたレミリアだが慌てて出て来たのか口元に涎の跡が残っている。

 

「俺だからいいだろうって判断だろうなぁ……」

 

「何?」

 

「お嬢様、口元に涎の跡が……」

 

「ふっ、その手の引っ掛けは咲夜の常套手段だから引っかからないわ!」

 

「はいはい」

 

ドヤっているレミリアに近づくとポケモンにも使えるウェットティッシュを取り出し、優しく涎の跡を拭い始めていた。

 

「む……」

 

「フランちゃんはよく口の周りを血だらけにするし、こっち来る時は多めに持ってるからレミリアは気にしなくていいよ」

 

「……え、待って。私はもう何ヶ月も吸ってないんだけど?」

 

「直に吸うのらレディに相応しくないとか言ってたし、それからはちゃんと咲夜に血を入れた小瓶渡してるけど」

 

「たまーに出してもらえるやつかしら……」

 

「ほら行くぞー。美鈴はまた後で」

 

拭いたウェットティッシュを適当にポケットに突っ込み、レミリアに日傘をしっかり持たせてから抱き上げてそのまま館の中に入っていった。

 

………

……

 

「……って感じの休みを満喫してたよ。俺VS幽香VSダークライ的な感じになって、俺達のぶつかり合いから逃げ惑ってた臆病なダークライを流れで捕まえたり」

 

新たに撮影もしやすいキッチンが臨時で増設されたチャンピオンルームで駄菓子を広げながら仲良し三人組は休みの間の話をしていた。

 

「サラッと幻のポケモン捕まえてても驚かなくなったよ。さっき画像見せてもらったけど黒髪の輝夜さんは本当美人だね、懸想されてるの全く羨ましくないけど」

 

「我が魔王、夏の長期休暇は三人でアローラに行こう。私はマラサダという物を腹一杯食べてみたいんだ」

 

「それなら僕は島を色々見て回ったりしたいかな」

 

「オッケー、今からめっちゃ楽しみなんですけど。どうする一ヶ月くらい行く? 金なら死ぬ程あるから別荘的なの買えば長期滞在も余裕だと思うし」

 

「一ヶ月バカンスを楽しめるのは良さそうだ。ツカサのお陰でリーグの資金は潤沢、騙し騙し整備してた部分含めて夏に二ヶ月くらいかけて大改修工事する事が決まったからね」

 

「俺も手伝ってたけど割と酷かったもんなぁ……良く言えば歴史ある建造物、悪く言えばボロ建物だし。フーパと二人で崩れた壁を修復した日なんて俺チャンピオンだよね?ってなったし」

 

高い場所を飛んで直したり、掃除をしたりとかなり便利に使われている。

 

「ツカサの圧倒的な強さとポケモン愛に寄付金が一気に増えたから全面改修して、残せる場所も中身を最新にしたりする予定だよ」

 

「我が魔王と私達が撮影する部屋も増やす予定になっていると聞いたが」

 

「あの部屋でダラダラやりたいのに」

 

「ちなみに我が魔王がボックスから引いてしまったリクエスト企画の女装回が大好評で、第二弾をやってほしいと様々な方面から要望が出ているよ」

 

「メイドさんの服は好きだけど着たいわけじゃねーんだよ……」

 

「僕は寧ろあのメイドさん達に攫われて化粧や着替えを施される姿が面白すぎて笑いが止まらなかった」

 

「我が魔王と私達の声だけが聞こえてくるシュールな映像だが面白かったのか切り抜かれたり字幕を入れたりした動画が多々上がっていたね」

 

ひん剥かれた時の悲鳴やムダ毛の高速処理の為の雑なガムテープ剥がし、何故か流れで行われたすねギロチンのリアルな音等が想像を掻き立てたらしく再生数は多い。

 

「地味に痛いサイズの文鎮持って来た奴を絶対許さないよ。打撃は慣れてるけどあの絶妙なサイズが脛に当たる痛さはなんとも言えないんだから」

 

「遠目に見てて本当笑いが止まらなかったよ」

 

「笑い袋みたいにずっと笑ってたもんね。こっちは痛いし女装させられるしで酷い目に遭ってたのに」

 

「女装したままレトロゲームで遊び始めた姿は写真に収めてあるから商品化出来そうだよ。そうだ我が魔王。明日からのスケジュールはカントーの特番のゲストとして心霊スポットにアイドルと自称霊能力者と共に行く事になる」

 

完全に心霊系にはツカサみたいな扱いになり始めており、自称霊能力者がワチャワチャ言っている間にツカサの目線の先を映すと何かしら映ると引っ張りだこである。

 

「俺が居るだけで心霊現象多発するから引っ張りだこすぎて困っちゃう。三途の川に大勢連れて行くの割と大変だし」

 

「やたら帰りのロケバスが重いって話が有名だけどそれって……」

 

「その考えてる通りだよ。……あ、そうだ。今日帰りにどこか寄ってかない?」

 

「僕は構わないよ」

 

「私は最近出来た店の鯛焼きがいい」

 

「ウォズと買い食いした冷凍たい焼きは硬かったなぁ」

 

物珍しさに頼んだらカッチカチだったらしく、ガリガリ音を立てながら食べて二度と頼まないと決めていた。

 

「硬いので少し溶かしてから……と店主が言う前にガリガリ食べ始めて私は撮影、店主はドン引きしていた」

 

「ツカサ君は食に関しては我慢出来ないもんなぁ……駄菓子とか出してあればずっと食べてるから生放送で最初から最後まで何食べたかカウントされてたし」

 

「色んなメーカーから売り上げが伸びましたって感謝のお手紙来てたからセーフ」

 

「あのチョコのお菓子で金のピカチュウを引き当ててそっとしまったのにソワソワして挙動不審になった所は切り抜かれてたよ」

 

応募してピカチュウ缶を手に入れご満悦だったが、最近プレゼントでファンから沢山届き始めて困惑もしていたりする。

 

「早く応募したかったんです……」

 

生放送も上の空で集中力が完全になくなり、見ていたみんなに応募したいんだなと見抜かれた結果のピカチュウ缶ラッシュである。

 




チマチマ書いては消し書いては消しで一年が経ってました。
今年は何とか幾度か投稿したいと思っています。


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