ゲームとは所詮“運ゲー”でしょう (人類種の天敵)
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人生とは所詮糞ゲーですね

パッと思いついたネタ。運がある奴って良いよね。



この世界は所詮糞ゲーだ。

名家に生まれた奴、元々身体能力に恵まれてる奴、体格共に恵まれてる奴、コミュニケーション能力に恵まれてる奴、物事全般に一定以上の理解力に恵まれている、いわば1を知って10を知れる奴、顔が恵まれている奴などなど、こいつらは元々先天的なステータスや能力に恵まれている。

元々が御曹司なら職には困らず金にも困らない。

体格や身体能力が良ければ小中高で色々な部活動に熱烈な歓迎を受けて薔薇色な青春を送る。

コミュ力の高い奴はもはや崇敬の域に達している、何をどうすればあんなにペラペラと楽しく会話が出来るのか、頭の中をパクッと割って調べてみたい。

要領の良い秀才は東大だとか名門大学に行って、いずれは日本の頭脳を担う。

顔が恵まれてる奴は論外だ、頭がアレでポンコツでも貢いでくれる奴がいるから生きていける、クソッタレめ。

 

…………そして、そんな憎まれ口を叩く俺と言えば……。

身長は無駄に高いものの、ひょろひょろとしていて運動神経も特に良いわけでもなく、中高一貫してあだ名がノッポかヒョロい壁。

コミュ力なんて最早論外で、女と喋れば直ぐにどもるし舌は噛むしもう最悪だ。

更に要領は並、好きな事や夢中になれる事なら秀才クンには負けねえけども、他の事になるとからっきしのボンクラで、いけるとしてもギリギリ3、4流大学の最底辺か?

顔は至って普通、片目を覆い隠す癖っ毛が長年の相棒でありウザってぇ隣人でもある。

そして最後に、俺は、そんな星の元に生まれてきてしまったのか、どうした事やら“運”とやらに恵まれたことがない。

 

宝くじを引けば必ず参加賞か最低ランクの商品を貰い、俺の前後に並んだ奴らは特賞か一等を掻っ攫って行く。

地元じゃそれを知ってる親しい知人などは俺の特性?を利用して自分だけ良い物を独り占めしやがっていた、畜生が。

あぁ、あと、一つ……運が悪い俺の特技に、変人を呼び寄せる体質……なんて非常に要らないモノがある。

 

ああ、本当に…………。

 

 

この世は所詮、運ゲーだ。

 

 

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

 

 

 

 

ウィーン

 

「らっしゃっせー」

 

「………」

 

ピッ、120円、ピッ、100円、ピッ、362円、ピッ、100、ピッ、592円。

 

「こちら温めますか?」

 

「あ…………や……大丈夫です」

 

「……はい、こちらお会計1274円になりますー」

 

「………お願いします」

 

「はいー、1500円頂きます…。お返しが226円ですね、レシート要りますか?」

 

「ぁ、はい」

 

「アリャーしたー」

 

ウィーン

 

「…………………ふぅ」

 

基本簡単なレジ打ちを終えてカウンターの上に頬杖を突く。

1日1回の気が憂鬱になるノルマ達成〜……はぁ、後は目を瞑ってても楽勝だわ。

 

「センパイ〜、何溜息吐いてんスか。って、さっきの子いつもの子デショ?あの子可愛いっスよね〜」

 

二、三ヶ月前くらいにウチのコンビニに入ってきた新人後輩がお茶らけた軽い感じでさっきのお客さんの話を始めるので、耳を塞ぎたい気持ちで「そーだな」とだけ言って資材の補充を始めた。

 

「髪が長くて黒くて清潔だし、以下にも大和撫子って感じスよね!」

 

お前大和撫子なんだか知ってんのかオイ。

 

「背も高くてモデル体型だし、顔立ちもめっちゃ整ってるからどっかでスカウトされても良いと思うんスけどね〜」

 

まあ、確かに、俺が受けたあのお客さんは、顔立ちといい体型といい、CMやモデルなんかで引っ張りだこになってそうな子だ。

 

「いやーセンパイ羨ましいっス!いつもあの子のレジ打ちやれて超尊敬っスよ!」

 

うるせー、こっちゃ歓喜の感情以前に超ドギマギしてんだよバカヤロー。

 

「はぁ、お名前だけでも聞けたらなぁー……」

 

「バカ言ってないで仕事しろ仕事」

 

「う〜っスw」

 

「…………………名前………か」

 

「あれ?なんか言いました?センパイ」

 

「何でもねーよ」

 

……………………………小比類巻 香蓮。

それが毎日俺の担当するレジに並んで買い物をする彼女の名前だ。

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

「んじゃ先に上がるわ」

 

「あ、う〜っス、お疲れっス」

 

「おう、乙」

 

服装を着替えてパーカーを羽織り、愛用のリュックを背負ってコンビニエンスストアを出る。

時刻は既に午後11時台をマークしている。

直ぐ家に帰ると部屋着に着替えて軽い食事を取り、部屋の温度を適温に設定してベットにゴロンと横たわって、一つの機械を瞼の上にソッと乗せる。

 

「ーーーリンク・スタート」

 

最後に魔法の言葉を唱えれば、夢の世界の始まりだ、頭の中を電子的なナニカが………こういう感想とかバカじゃ無理なんで感覚的に行こう。

 

パーとなってブィーンと言ってパァァァッと光ったらいつの間にか荒廃した世界に立っていた…………………ハイ!

 

…………というわけで、銃弾飛び交う、疾走する戦場……fpsVRMMO ガンゲイルオンライン 通称GGOへとログインした俺は、とりあえずいつもの酒場へと顔を出すことにした。

 

 

「うおっ、ラッキートレジャーのアリーヤじゃねえか!ハッハッハ!今日の獲物は何狙ってんだァ!?ヴィントレスか?はたまた噂実装のレールガンか?………おい、どこ行くんだよ。まあ、とりあえずそこに座れよ!なあ!ハッハッハ」

 

入って早々後悔した。

絡まれたくない奴ランキング1位のプレイヤー「バフォメット」が逃げようとした俺の肩にムッキムキの太腕を巻きつけてきた。

 

アリーヤは 逃げるを選択した → Oh、逃げきれなかった 。

 

筋肉モリモリの2メートルサイズのこのアバターは、絡まれたら最後、レア銃をトレードするまで絡まれると言われてるチンピラプレイヤーだ。

 

「うっせーぞ、バフォメットぉ。…………実はそろそろ対物ライフルを狙って箔付けんのも良いかと思ってる」

 

仕方なくカウンター席に座ってNPC……ではなく、fpsVRMMOで何故か酒場のバーテンダー兼支配人をしているプレイヤーからクリームソーダを頼む。

 

「ブハッ!鯖に数丁しかねーってアレをか!?どうせお前じゃ使わねーんだろォ?」

 

何が面白いのか知らないが、ブハハハハ、と体格に似合った笑い声を上げる大男にVサインを掲げて緑色の液体をストローで啜った。

 

「もち。俺の筋力値じゃフツーに装備とか無理だし第一に芋とか趣味じゃねーよ。フツーに売っ払って今後の資金に致しますわ」

 

「ブフォフォ!何が落ちるか分からんが、こんな奴に拾われるたァレアもんも可哀想だなァ」

 

顎に手を当ててニヤニヤとこちらを伺うこのおっさんは、顔に似合わず沢山のフレンドやコネを持っているので、それらを活用して武器トレードや売買の仲介人的な副業を行っていることがある。

 

「……………………良い商談相手がいんのか?」

 

横目でおっさんの顔をジロジロと見つめながら問いかけると、気色の悪い顔を浮かべてニヤリと笑う。

 

「4、6でどうだー!」

 

「マスター、今度対物ライフル取ってくるけど要るー?」

 

「んー?なになにー?」

 

「ドワァァーー!!!!待て待て!待てェェい!!分かった!分かったァーー!!お前7、俺3、これでどうだ!」

 

酒場のマスターに商談を持ちかけるとバフォメットが慌てて値段を交渉してくる。

 

「最初からそうしとけ、バカ」

 

その真面目くさった顔に対してフッと鼻で笑い、こちらのカウンターに寄ってきたマスターにアイスカフェオレのフロートを頼んだ。

 

「く、悔しい……!ドロップ運性が良いだけのアンポンタンにこんな屈辱を味わされるとは……」

 

「オイ聞こえてんぞアホ」

 

本人としては結構アレなのか、両手で頭を抱える大男の脇腹を軽く小突き、クイッと親指で店の外を示す。

 

「とりあえず行くぞ、準備しろや」

 

とりあえず洞窟っぽい所に行って、とりあえずレイドボス的な奴を倒せば、ドロップアイテムの中からとりあえず対物ライフルが出るだろう………。

ドロップ率がアレなVRMMOでは至極安易な考えだとバカにされるものの、運性能を極めた俺としては、逆にそんな奴らに対してこう、一言言ってやりたいものだ。

 

ーーーあら?おたく……レア銃の一つも持ってないんですね(笑)まあ、俺は?×××とか?〇〇〇とか?持ってますけど?ーーーと。

 

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

荒廃した砂漠の洞窟の中、激しい銃弾の嵐を掻い潜り、天井からひっそりと現れた蝙蝠のような巨大怪物がプレイヤーの1人を掴んで連れて行ってしまった。

 

「ウワァァァァ!?」

 

「うぉっ!?お、おおおおおい!バフォメット!!お前のスコードロンメンバーが連れてかたぞ!」

 

「あァ!?ああ、あいつは借金の片があっから体で払う奴だ、心配すんな。それよりもお前ら!コンカッション持ってきたなァ!?奴ぁエコーロケーションを使って周囲を把握してっから、先ずは奴の耳を潰すぞ!」

 

しゃ、借金の片………ゲームでしょ、これ?

 

「アイサー!!ウラァこれでも喰らえヤァ!!」

 

1人のプレイヤーがコンカッション投げろと言うたのにRPGを天井へとぶっ放した。

 

「大丈夫だ、あの弾頭には通常弾じゃなくてコンカッショングレネードを詰め込んだ特性弾頭になってる。空中で炸裂して奴の聴覚を狂わすのよ………まあ、見てろ」

 

口に含んだタバコを美味そうに吸いながら、バフォメットは右手に掴んだライトマシンガンのグリップを強く握りしめた。

 

「アッ…………ランチャーの弾頭変えるの忘れてた……」

 

「洞窟が崩れッゾーーー!!逃げろォォォ!!」

 

「おい!話が違ぇ!!?」

 

洞窟の出口へと全力疾走しながらバフォメットへと唾を飛ばす。

 

「悪い悪い、あいつ……手先が器用な癖にたまにああしてドジる事があんだよ。まあ、こんな立派な拵えの洞窟がRPGの弾頭1発くらいでそうそう簡単に崩れるわけねーべ」

 

「うおおおおおお!!?何故か天井の隙間に保管されていた大量の燃料缶が起爆したゾ!!も、もうダメだー!!崩れる〜!!!!」

 

「………」

 

「死ね、ガチで死んで下さい」

 

ドドドドドド……と、岩盤が崩れ始め、周囲には逃げ惑うプレイヤーに容赦なく降り注ぐ巨大な岩礫の数々。

 

「オイ待て、まず第一になんでテメーは俺と同じ速度で走ってんだ」

 

「バッカヤロウ、そりゃ、おめーが運ステータスだけは異常に高い運回避野郎だからに決まってんだろ。お前の近くにいれば運良く岩崩れを回避できるかもしれん」

 

キリッと真顔で言い放った目の前の筋肉親父の頭を両手で掴んでガクガクと揺さぶりまくる。

 

「ふっざけんなテメェ!元はと言えばテメェの使えねーポンコツスコードロンが悪りーんだろが!死ね!俺の盾になって死んでくれ!」

 

「オワァァ!?待て待て、今は流石に非常事態だ!今は生き延びることを考えようぜ!「グシャ……」」

 

バフォメットの足に岩礫がクリーンヒットしてあらぬ方向に右足が曲がっている。

 

「………」

 

「………」

 

「…………じゃ、お先っ!」

 

「待て!ストーーーップ!!ここで容赦なく見捨てるとか実にお前らしいけど、も!それ人としてどうな訳!?人としてどうな訳ーー!!」

 

どうなわけーー!どうなわけーー!!どうなわけーー!!!………………。

 

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

 

「ゼェ……ゼェ……ゼェ……………い、生き延びた………」

 

「ふぅ、あっ、お疲れさん。足も戻ったし、もーいーぜ?」

 

足が使えなくなったバフォメットを引きずりながら洞窟を脱出し、砂漠のど真ん中で長い長い息を吐く。

足が復活したバフォメットは新しいタバコを口に含んで火を付けた後、しまっていた機関銃を手元に出した。

 

「…………お前のスコードロンメンバーは?」

 

「ぜーんいん死んだ。まあ、レアもんは落とさなかったらしいし、いんじゃね?」

 

流石にこの後RPGを撃ちやがったバカが袋叩きに遭ったのは言うまでもない。

 

「………とりあえず帰るか」

 

「おう、そーだな。はぁ、お前のドロップ運でレアもん出んのは良いけどよォ、やっぱアレだな。ボスを倒さねーとそれも意味ねーもんな」

 

「おま………MP-7の弾丸喰らうか?あ?」

 

筋力値的に装備できる相棒にして愛銃のH&K社製PDW……MP7A1の銃口をグリグリとバフォメットの顎に押し付ける。

MP7A1のピカニティーレールにはこのゲームの仕様上要らないアタッチメントであるホロサイトやタクティカルライトを装備。

他にもバレルに消音対策のサプレッサーと、拡張マガジンを後付けしている。

 

この消音対策で装備してサプレッサー、音が聞こえないのは良いのだが、その性質上どうしても射程距離や貫通力、ダメージなどが減衰する。

ボス戦ではどうしても威力不足になりがちだが、その代わりに反動も軽減されるわけで射撃の上手くない俺でも軽々と扱える。

これは元々、俺のステータスは運と敏捷性以外あんまりパッとしないので対人戦になった時最低自分の身を守れるようにカスタムしているのだ。

……………ホロサイトやタクティカルライトは完全な趣味というか、飾りというか……モロにヴィジュアルを重視したアセンブルだが、結果的にとっても気に入っている。

 

「んじゃ帰るか………」

 

「そーだなァ……」

 

そう言って止めていたジープに乗り込もうとすると、直前で砂に足を取られて顔から砂に突っ込んでしまった。

 

「ブァフォフォ……!!お、おいおい……ブフォ……何やってんだおまぇぎなぎ……?」

 

「……………は?」

 

バフォメットが変な言葉を発して俺と一緒に砂の中へ顔を埋めるーーーいや、これは。

 

(クソッ!敵か……!?もしかして…………ああ、最悪だ!最悪!!今噂の待ち専キラーかよ!)

 

デザートスコーピオン。

 

今GGOサーバーの砂漠フィールドで特に凶悪とされている姿の見えないPK(プレイヤーキラー)プレイヤーだ。

既に被害に遭ったプレイヤー達の数は数え切れないほどであり、唯一の情報は、このPKプレイヤーの武器が名前の由来となっているVz 61スコーピオンのデュアル装備だと判明していることくらいだろう。

 

ーーーそう、このPKプレイヤーの恐ろしい所は、情報が少ないーーいや、姿が見えないために情報を集められない、という点だ。

武器がスコーピオンだと判明しているのもスコーピオン独自の射撃音やサブマシンガンの威力補正、射撃レートから、被害に遭ったプレイヤー達が情報掲示板やサイト、果てにはPKプレイヤースレで情報提供しているからに他ならない。

 

砂漠を縄張りとして武器が二鳥持ちのスコーピオン、それ以外は何の情報も、一切無し。

故にデザートスコーピオン(砂漠の蠍)

故に恐れられるPKプレイヤー。

 

今俺が相手にしているのは、出会ったら最後、生きて逃げられない恐怖のPKプレイヤーなのだ。

 

 

 

「………」

 

とりあえず、砂に頭を突っ込んだままで考える。

どうするか、いや、どう生き延びよう。

武器はスコーピオンだし、二鳥持ちだし、距離さえ取れば射程減衰やら弾のばらつきやらでひょっとしたら逃げ切れるかもしれない。

つーか死んじまったら武器がMP7A1しか持ってないから絶対落としてしまうだろう、それだけは嫌マジで勘弁して欲しい。

初期でドロップしてから今日まで一緒に戦ってきた相棒なのだ、まあ、大金をはたいてサプレッサーや拡張マガジン、その他の要らないアタッチメントの装備改造なども理由の一つに入るものの、現状でMP7A1を手放す事は絶対に避けたい、だってレアだもの。

 

「………」

 

「………」

 

そんな事を考えてるうちに横たわっている俺の背後に気配を感じる、ああ、こいつが噂のPKプレイヤーか?

とりあえずの処置として俺はまず両手を挙げて戦意喪失している事を表明した。

 

「撃たないでくれ。降参、降参だ。俺の負けだよ」

 

「………」

 

「俺はアンタの姿なんか見てないし、アンタがこれからする事にも関与しない」

 

まあ、見てないというより、見えなかった……し、これからやろうっていうのは、十中八九ドロップ回収………剝ぎ取りだろうな。

 

「だから俺を撃つのだけは勘弁してくれ。命が惜しいとかじゃなく……その、武器が惜しいんだ。MP7って知ってる?今アレしか持ってないから絶対に落としちゃうんだよね……」

 

「………」

 

「そうだ、ジープの中に今回持ってきたアイテムがごっそり入ってるから持ってけよ。あんだけあれば結構な金額になると思うし、アンタにとって損な話じゃないだろ?」

 

「………」

 

クソ、なんか言えよこいつ……。

 

「…………それで、撃たない?………撃たないんなら、肩か体のどこかを二回タッチして欲しいんだけど………」

 

「………」

 

数秒待って、トントンと肩を叩かれた。

ホッと一息ついているとドカン、と洞窟から何かが飛び出した。

 

「ッ!?ずぉっ!?まだ生きてたのかよ!アイツ!!」

 

「……ッ!!?」

 

蝙蝠型の巨大レイドボスは、大きな耳を使ってこちらを発見したようだ。

不協和音を奏でてこちらへと飛び込んできた。

 

「お、おい!とりあえず逃げるぞ!ここにいたら死んじまう!」

 

目の前に落ちていたバフォメットのライトマシンガンーーーMG4ライトマシンガンを掴んでジープに放り投げ、運転席に飛び乗ると、すぐさま助手席側のドアがバンと閉められ、デザートスコーピオンもジープに乗ったのだと知る。

 

「これ使ってあいつを撃ちまくれ!当たらなくていい!」

 

ジープを発進させて片手で運転しながら助手席に座っているだろうデザートスコーピオンにバフォメットが使っていたMG4ライトマシンガンを寄越すと、程なくして後方のレイドボスに射撃を開始する音が聞こえる。

 

「はぁ!クソックソ!冗談じゃねえぞあのバカ!」

 

レイドボスによる空中からの襲撃をギリギリで避けて悪態を吐く。

サイドミラーからレイドボスの動向を気にしつつ目の前の運転にも集中する。

 

カチ、カチ……。

 

「弾が切れたか……もういい、確か後ろの座席にコンカッションが沢山置いてあるはずだからそれをあの蝙蝠にぶん投げて混乱してるうちに逃げるぞ」

 

「………」

 

デザートスコーピオンは俺の指示に素直に従い、後部座席をゴソゴソと漁った後で、コンカッショングレネードをがむしゃらに投げまくった。

 

「ギァァァァァァ!!」

 

レイドボスの苦しむ声が聞こえる。

それを心地よく聞きながらニヤリと笑う。

 

「他にもねえのか?あ?ランチャーがある?」

 

そりゃ………バフォメットのスコードロンメンバーが使用するはずだった、コンカッションランチャー……?は?ジープに放置?……マジ死ねよアイツ。

 

「使ってくれていい!………当てれるか?」

 

その問いかけに、座席を1発、ドンっと叩かれる………良い返事だ。

 

「さぁ、ラストドライブだ!蝙蝠ヤロォ!」

 

空中からの襲撃を避けるためにグニャグニャと運転していた軌道を、直進運転に切り替える。

レイドボスが鳴き声を上げながらそれに追従し、後部座席からコンカッションランチャーが発射された。

 

「〜ーーーーーーーーーッッッ!!!!」

 

レイドボスの悲痛の叫び、そしてサイドミラーからチラチラと見えていた備え付けある装備を見つけた俺は、ハンドルに後付けされている見慣れないボタンを思いっきり叩いた。

 

「オラオラオラオラオラ!M2機関銃の銃弾を喰らいやがれ!」

 

ジープ後部座席に備え付けられていたM2機関銃が唸りを上げて銃撃し、翼を傷付けられたレイドボスが地面へと不時着する。

それを好機と見た俺はハンドルを操作してレイドボスの元へUターン。

そのままレイドボスの顔面へとジープをぶつける。

 

ドガッッッジャーーーン!!!

 

ジープに顔面を撥ねられたレイドボスは、遂に小さな悲鳴を上げてその巨体を砂漠へと沈めた。

よっしゃ!………と小さくガッツポーズした俺は、この喜びを分かち合うためにデザートスコーピオンの方へ振り向くーーーー。

 

「あたた……………頭が……なまら痛い………」

 

「……………は?」

 

「え」

 

助手席には、頭を抱えてわたわたと体を動かす、小さなーーー身長150にも満たない……低身長の、チビが…………………いた。

 




レンちゃん可愛い。
主人公の武器であるMP7A1は、H&K社がFN社のP90に対抗するために開発されたPDWですが、主人公が採用した理由は単に軽いから。


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Gun Army Fire Arms Factory

たとえサイトを使わなくってもさぁ、俺はホロサイトやスコープとかを取り付ける過程が楽しいと思うのよね、うん。


 

衝撃的な出会いは次の瞬間バレットサークルの血のような赤い線を視界に収めた着後に消し飛びました(物理的に)

その後メッセージが届いたのでそれを見てみると『お前のMP7は預かった』なんて脅迫文めいた一文が書かれてあり、必死にレア銃あげますんでそれだけは勘弁して下さいとメッセージを送り返し、何事もなく夜は明けて……。

 

「んじゃ、乙」

 

「お疲れーっス」

 

いつものアルバイトを終えて自宅に帰宅、メッセージに添付されていた砂漠フィールドの集合座標へ赴き人質交換の交渉をするため、アサルトライフルにサブマシンガン、PDW数丁にショットガンなど、古今東西問わず色んな銃をこれでもかと詰め込んだ装甲車に乗った。

 

「おーう、アリーヤ!そんなカモがネギ背負ったような大荷物でどこ行くんだよ!」

 

「今後の俺の身の安全を守るための交渉だ!ついてくんなよ!」

 

「そ、そんなこと言われると…つ、着いて行きたくなっちゃうのが人間のサガなんだからねっ!!」

 

「おぉいいぜ。着いてくるんだったら容赦なくぶち殺してやるよ」

 

チンピラプレイヤーのバフォメットにフラグを吐き捨て砂漠フィールドへいざ行かん。

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

 

 

「………ここか」

 

砂漠フィールド……まあ、どこも似た様なものだが、砂と枯れ木と岩とたまにオアシス。

それしかない、あと廃棄された戦車?

本当にデザートスコーピオンがいるのかどうかも怪しい場所だが、とりあえず指定された座標地点に辿り着くと、急にボンネットにくすんだピンク色の服を着たチビが立っていた。

 

「……………うおっ!!?びくった!?」

 

ビクッと肩を震わせて驚きを表し、ドキドキしながら車から出ると、目の前のチビは恐らく俺と同じ様な情けない顔をして手元に俺のMP7A1を取り出した。

 

「こ、交渉……」

 

「お、おーけー……まずは昨日の事だな。とりあえず俺はアンタの情報を言い触らさない。これで良いか?」

 

互いに互いをビビりながら交渉を始め、第一にデザートスコーピオン改めGGOプレイヤーの『レン』に関する情報を他所に漏らさない。

第二に現在『レン』が所持しているMP7A1と俺が持ってきた何らかのレア銃をトレードする。

第三にこれもなんかの縁だしフレンド登録でもしますか……だ。

 

「色んな銃を持ってきたから、好きなの選んで良いよ」

 

「っ!うわぁ………色んな銃が、いっぱいある……」

 

防弾ガラスに顔をひっつかせて中の銃器を覗き込むレンに苦笑しながらドアを開いて一つ一つ解説しながらトレードする銃を決める。

 

「こっちはM4A1にこれはガリル。まあ、ビルドの構成からして、レンはAGI型だし軽くて速射性の良いサブマシンガンが良いよな。なら、ヴェクターとかステアーTMPとか?ああ、有名どころじゃMP5とUMP45って所か」

 

「これは?」

 

ピッとレンが指差す物を見てひっそりとほくそ笑む。

レンが興味を示したのはサブマシンガンの中にポツンと置かれた一つのアタッシュケースだったからだ。

 

「流石にこれはサブマシンガンじゃないよね…?ど、どう見てもただのアタッシュケースだよね…!」

 

「ふふ、これを見て度肝抜かすなよ?」

 

ジィーッとアタッシュケースを注視するレンの期待に応え、近くの岩場に向けて取手の左側に備え付けられたトリガーを軽く引いた。

次の瞬間側面に隠された銃口から曳光弾が飛び出て岩場のあちこちへと銃弾が飛び出していった。

 

「ひゃ〜〜〜〜〜!!」

 

「ふっふっふ、MP5K コッファーって名前のサブマシンガンの偽装モデルだ。外見がもろにアタッシュケースだから誰も警戒しない。まあ、このゲームってfpsだから銃も持たずにただこれだけ持ってたら完全に怪しまれるけどね」

 

まあ、考えによっては幾らでも殺りようはあるということだ。

例えば住宅街、例えば一軒家の室内、例えば飛行機の中……その他諸々エトセトラ。

荒廃した世界でポツンと置かれていても怪しまれない場所に前もって配置し、敵をおびき寄せて、こちらに抵抗の意思はないと騙してからのーーー蜂の巣………とか。

 

「こ、これっ!これにする!」

 

「んん?」

 

ニヤニヤと下らない考えをしていた俺は、レンの興奮による上ずった声に我を取り戻し、MP5K コッファーを装甲車の中へ戻し、彼女が手に持った銃器へと視線を落とす。

 

「へぇ、P90か」

 

レンが両手で持った銃、名をーーーP90。

サブマシンガンというより、厳密に言えばPDWに属するこの銃は、一見すると摩訶不思議な外見をしている。

なんというか、その、なんかこう、グリップ部分がホニャホニャ?となってて?かと思えばストックが全て角っとしていて?うーん、表現に困る。

………まあ、そのP90だが、この特徴的な構造の理由は、調べた所人間工学に基づいた設計によるものらしい………やっぱり訳が分からないよ。

 

「P90……ピーちゃん……かぁ……えへへ、ピーちゃん可愛い……なまら可愛い」

 

「……レンってもしかして道産子か?……ま、まあ、とりあえずトレードする武器はP90ってことで良いか?」

 

「うんっ!」

 

P90のフレームに頰をスリスリしてにへらっと頰を緩めるレンの愛らしい仕草にドキッとしてしまい、それを誤魔化すために慌ててトレードシステムの操作を始める。

程なくして俺のP90と、レンが所持している俺のMP7A1がトレード承認されて、レンは晴れてピーちゃんもといP90を、俺は晴れて愛棒であるMP7A1を、手に入れた、又は無事に取り戻した。

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

「………はぁ、なるほど。つまり……あれか、この時間帯……夕暮れ時の砂漠フィールドに、レンが着込んでるくすんだピンクの迷彩服はぴったり溶け込んでるのか」

 

「うん、というより私ってデザートスコーピオンって呼ばれてるの?」

 

「………姿の見えないPKプレイヤーの正体がこれとはね……ハハ…ハ」

 

トレードを済ませ、ついでにフレンド登録ま終わらせて、レンと俺は装甲車の中で何気ない会話をしていた。

例えばレンは普通はかったるいので直ぐにすっ飛ばして誰もやらないチュートリアルを、鬼教官に叱咤激励されながら完遂し、見事自分にあった武器ーーサブマシンガンへと思い至ったこと。

何気なく武器も迷彩服もくすんだピンクにしたら、砂漠フィールドでは思い掛け無い効果を発揮していて、以降姿の見えない暗殺者としてレベルとお金稼ぎのプレイヤーキルをモンスター討伐の合間にやっていること、などなど………まあ、俺の方も色々と話をしたが、それは今は話さなくて良いだろう。

 

「そうだ、そのP90の迷彩もくすんだピンクに塗装して貰うか?」

 

「えっ!」

 

その話に至ったのは、俺の過去話が一つ話し終わり、レンがまたもP90のピーちゃんへ頬ずりを開始した時だ。

 

「だってレンが姿の見えないPKプレイヤーなのは全身くすんだピンク迷彩のおかげなんだろ?だったらそのP90も初期迷彩から色を変えとかないと、今にバレちまうぞ」

 

そう言って指し示す指の先には、デフォルトカラーである真っ黒色のP90が。

レンも俺の提案に二つ返事で色を変えることにしたようだ。

 

「でも、どこで変えよう」

 

「それなら俺に行きつけの店があるから、そこで変えてもらえよ。丁度、俺も行く所だったしさ」

 

「本当?いいの?」

 

「はは、遠慮すんなよ。ほら、行くぞ」

 

そう言ってハンドルを握ると、アクセルを思い切り踏み込んでGGOの初期フィールドである首都グロッケンへと直行した。

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

首都グロッケンの端っこの外れ。

隠れ家的な様相を呈した誂えの店 銃器工房『Gun Army Fire Arms Factory』のガレージ前へと装甲車を停める。

 

「おーい、グレン!俺だ、とりあえず中に入れろ」

 

ガレージを数度叩いて大声で戦友の名を呼ぶ。

数秒間待つと重厚なガレージがガラガラガラ……と開き始め、色んな銃器や防弾チョッキ、レーザー対策の対光弾防護フィールドや各種グレネードなどにごった返す油臭い工房がその姿を表す。

 

「……………やっ」

 

そしてそんな工房の中から、黒い革ジャケットの上に青色のパーカーを着込み、下は丈の短い青のショートパンツを履いて、首筋に巻いたチェック柄のマフラーの中に口元を隠している、眠くて仕方がないような気怠げな二重瞼のウサ耳少女が片手をひらひらと上げて姿を現した。

レンが工房の中をキョロキョロと眺めている横で、戦友に対して片手を上げて今日の要件を話す。

 

「よぉ、グレン。今日はMP7A1にスリング付けてもらうのと、この子の銃のカラーリングを変えてもらおうと思ってさ」

 

「んー……オッケ……」

 

俺の隣に立つレンをぱちくりと数度瞬きした戦友は、数ミリこくんと頷いて工房の中へと踵を返す。

その後をついて行きながらレンにこの工房と工房の経営者である戦友の紹介を始める。

 

「あいつの名前は「グレムリン」。俺は専らグレンなんて呼んでるけどな。趣味は色々と、銃を弄ったり意味のないアタッチメントを装備させたりとかが大半だけど、ちゃんと仕事はこなす出来る女だ」

 

「……どーも」

 

「よ、よしくおねひゃいひま……噛んだ」

 

先頭を歩きながらひらひらと片手を振るグレンをレンはほえーっなんて言いながら興味津々に見つめている。

 

「ガンスミス系のマスタリやスキル習得に半分ほど注ぎ込んでる変人だけど、ステータスはDEX重視で、一度姿を見せたら周囲には既に地雷やらクレイモアやら、兎にも角にも色んな罠が張り巡らされてると思って良いぞ。……トラップが怖くて近付けない、罠解除をしてる内に撃たれてる。そんでついたあだ名が蟻地獄。近付きゃドカン。うろちょろしてもズドン…………こんな怖い女には近づかないよーにってね」

 

実際、それで被害に遭ってるプレイヤーはレンの実績以上の数を占めるだろう。

革ジャケパーカーに下はショートパンツと首から口元まで隠すマフラーに頭にはウサ耳を付けて戦場を闊歩する気怠げな女。

その外見に騙されてホイホイついていったおバカさん達の末路は、跡形もなく爆散したのちにレアな落し物を容赦なく剥ぎ取られるという至極可哀想な結末だ。

 

「……マグレ撃ちのトリガーラッキーには……言われたくないなぁ……」

 

半顔ジト目でこちらをチラチラと見てくるグレンに分かってねぇなぁ、と肩を竦める。

 

「ステータスも、そこんとこも含めて実は計算尽くなのよ………俺はな!………その点お前はLUXステータスは1すら上げないからドロップはカス武器のまんま………」

 

「はいはい……それで、銃出して」

 

鋼鉄製のカウンター席にちょこんと座り、足をブラブラさせながら指示を出すグレンに従ってカウンターの上にMP7A1をゴトリと置くと、レンもその隣にP90を置いた。

 

「………ん、すぐに済むから……適当に見てなよ」

 

「おう」

 

台の上に置かれた銃器に頰を緩めて奥の部屋へ姿を消すグレン。

工房に置いてかれた俺とレンは、言われた通り工房内の品々を探索することにした。

 

「ふんふん、シールド機構搭載のフォトンソードか。フォトン刃の出力を一時的にオーバーロードさせて対象への銃撃を全て遮断するシールドが張れる……と、まあ、その代わり使ったら暫く使用できないみたいだけど……こりゃかなり使えるな」

 

グレンの新作であるフォトンソードの性能を見て財布の紐がズルズルと緩む。

早速購入タグを打ち込むと、隣でショーケースを見ていたレンがおっかなびっくり飛び上がった。

 

「うひゃっ!?ね、値段………」

 

どうやらフォトンソードの値段を見てびっくりしたようだ。

 

「あ?ああ、こんくらい溜め込んでる銃を売っぱらえば良いし別に痛くも無いな。だいたいフォトンソードはこんぐらいの値段がゴロゴロしてるぞ」

 

「ひょ…………」

 

「それよりグレネードだな、グレネードグレネード!プラズマグレネードより有澤製の超重グレネード!爆破はやはりロマンだよなぁ!!後で装甲車の一つに改造して貰うっかなー」

 

今の所要塞級スコードロンホームすらも爆砕出来るとか、実は中に詰め込んだロマンを飛ばしていると噂の「OIGAMI」グレネードキャノンを重戦車に載せるか、はたまた「OGOTO」グレネードキャノンを装甲車の一つに載せて貰うか、もしくは両方買って載せるか。

 

「………ここまでの値段を還元したらどんな額になるんだろ……」

 

「さあ?そんなの考えたこと無いし、ぶっちゃけグレンの収入源って俺かコアなファンくらいだから一月にこれぐらいのお買い物はフツーだなぁ」

 

「……………」

 

「お、グレン特製簡易トラップキットも出てるな。今回はギロチンチョッパーとカミソリブレードにポータブルレザ雷、有澤製爆烈地雷か。前買ったスーパーカーボン製手裏剣は使い勝手良かったしなー……まあ、買うだけ買ってみるか」

 

「………アリーヤって、お金持ち?」

 

「うん?レア銃だけはかなり溜め込んでるから、全部売っ払っても遊んで暮らせるのよ」

 

どこか達観したようなレンにVサインを見せ付けて気に入った、もしくは興味を示した商品に購入タグを次々と打ち込んでいく。

まあ、このくらい買い込めば最低でも2、3ヶ月はグレンの奴も収入には困らないだろうし、工作に金を注ぎ込めることだろう。

うん、ほんとにイイコトシタナー(棒読み)

 

「ん………毎度ありー……」

 

「お、終わったか、お疲れさん」

 

商品の支払いを終えると、奥の部屋からグレンがひょっこりと現れて青い革製のワンポイントスリングを装着したMP7A1とくすんだピンクに塗装したP90を台の上に置いた。

 

「んじゃ、お前の商品貰ってくぞ」

 

「……ん、ありがと、これで2、3ヶ月は工房に篭って研究に打ち込めるかな」

 

恐らくは商品売買の支払額が記入されているだろうカードを見つめてニマニマと頰を緩めるグレンを見て苦笑する。

一体何が出来るかは知らないが、こいつの実験台や商品の被害に遭うこれからの被害者たちに、合掌南無三。

 

「ここに篭ってばっかいないで、偶にはレイドボス討伐に付き合えよ。昨日、バフォメットとあいつのスコードロンメンバーで行ったけど散々だったぜ」

 

「………あいつ、バカだしね……良いよ、今度呼んで」

 

「おう。……そろそろ行くか、レン。新しい相棒の試射だ」

 

「うんっ!」

 

ムフッと笑うグレンの工房を後にし、レンを連れてもう一度砂漠フィールドへと。

レンの実体験を元にして工房で買ったくすんだピンク色のシートを装甲車に被せて使う物だけストレージに格納する。

レンも準備出来てるようで、カラー変更とおまけで付けてもらったP90のスリングを肩に引っさげ、意気揚々と夕暮れ時の砂漠へと姿を溶け込ませた。

 

「なるほど……これは確かに見えないな」

 

シートを被せた装甲車は物の見事に夕暮れ時の砂漠の風景に溶け込んでしまった、車の中にGPS発信機を置いてなければ誰もこの装甲車の存在に気づかないことだろう。

思いがけずくすんだピンクの脅威を知って乾いた声で笑う。

その後レンを伴って砂漠フィールドを歩いていると、500メートル先にモンスターと戦闘しているスコードロンの一団を発見した。

状況はプレイヤー側の優勢、もう少しすればモンスターを撃破出来るはずで、ここら辺は砂丘の盛り上がりもあって平坦な道は今俺とレンのいる細い砂道のみ……。

つまり、あの連中はモンスターを倒した後でここを通る可能性が非常に高い。

早速工房で買った商品を試してみない手は……………………………ナイ!

 

「よし!レン、ここの道にさっき購入したポータブルレーザー地雷……通称レザ雷と有澤製の爆雷を試してみるぞ!」

 

「らじゃ!」

 

ウキウキとストレージに格納している工作キットを取り出して砂の中をサッサッと穴を掘る。

その中へ円盤型の爆雷と反楕円形のレザ雷を巧妙に設置していく。

レンにオッケーサインをもらい、自分でも偽装の具合を確認する………オッケー!

後はあの一団がここに来るまでひたすら待つのみだった。

 

 

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

「ヒドゥゥゥゥィィォン!!」

 

「よし!」

 

「一丁上がりだぜ!」

 

「ヒャッハーーーー!」

 

「イェアーーー!」

 

砂漠を蠢く巨大蚯蚓がその巨体をゆっくりと砂の地面へと倒していく。

そして巨体蚯蚓の周りで歓声を上げるのは5人からなる黒尽くめのプレイヤー。

その手には光学系ブラスターやレイガン、大口径レーザーライフルなどがそれぞれ握られている。

倒した巨大蚯蚓からクレジットやアイテムなどを回収した5人は、最早こんな場所には用が無いとばかりにスタコラサッサと移動を開始する。

 

「急げ急げ、デザートスコーピオンが出るかもしんねぇぞ」

 

「だけどよぉ、ギータ、ここであいつを倒せば俺たちのスコードロンにも箔がつくって言うもんじゃねえか?」

 

「バカ言うな。姿の見えない敵にどう戦えってんだ!………たく」

 

「あぁあぁ、やっぱり超激レア装備のステルス迷彩かねぇ〜……。デザートスコーピオンが羨ましいよ」

 

軽い光学銃を手に持った5人は砂丘に挟まれた細い道のりを駆け足で走っていく。

その時、先頭を走っていたブラスター使いの男は、カチッと何かを踏んだ音に首を傾げ、次の瞬間には眩い閃光と共にその姿を消した。

 

「〜〜〜ッ!!?ウッ、ソだッろおぁぉ!!?ァダァァァァァァァ………」

 

その後ろを走っていた男もレーザー地雷による至近距離のレーザー一斉射撃によって2人目の犠牲者と化す。

 

「バカな!対光弾防護フィールドくらい持ってるはずだろ!!」

 

「お前こそバカか!こんな至近距離でそんなモンが当てになるか!逃げろ!」

 

「ウワァァァァァァ」

 

5人から一気に2人減り、3人は周囲警戒もせずに一目散に逃げ出そうとする。

そこへ、姿の見えぬ暗殺者が、その牙を剥く。

 

「へーーー」

 

大型のブラスターを手にした男の下半身が一気に千切れていく。

男の股間部から下をマズルフラッシュが埋め尽くし、上半身のみとなった男は、直後に死亡判定を喰らって装備品を一つ落とし、首都グロッケンへ死に戻りした。

 

「ひぃ……!!ケースケがAA-12落とした!?」

 

「拾ってやれよ!あいつ……俺の宝だっつって大金はたいて購入した超レアだろ!?」

 

「そんな暇ねぇよ!相手はあのデザートスコーピオンだぞ………ウバァッッッ………」

 

砂丘の向こうへ走った味方は「ドカッ」という発砲音と共に死亡した。

1人残された男は顔を引きつらせながら横を見た。

姿は見えないはずなのに、そこに、獰猛に笑うデザートスコーピオンが、こちらへ銃口を向ける姿が、想像できたからだった。

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

 

「…………爆雷使わなかったな」

 

「うん」

 

その場にいた5人のプレイヤーが全滅してドロップ回収……剥ぎ取りを終えた俺は、レザ雷とレンの虐殺で戦闘が終わったことに不満を感じていた。

というか、有澤製爆裂地雷で5人がいた場所がクレーターになるのを期待していたために、かなり肩透かしを喰らったような感じだ。

 

「……対光弾防護フィールド持ってても至近距離だと普通に喰らうのね。レンも1個くらい持っとけば?軽いし、ブラスター1個とエネルギーパック2個くらいなら持てるだろ」

 

有澤製爆裂地雷を回収するために周りを掘っていると、レンが早速落ちていた銃ーーー大口径ショットブラスターの「サンダーレイン」を片手で構えた。

 

「並のモンスターなら至近距離でズドン……これで一撃だ」

 

一時掘るのを止めてサンダーレイン試射の為に砂丘の向こう側へ。

砂の坂道を下りながらサンダーレインの説明を軽くして戦闘音を聞いて駆けつけた蜥蜴達に撃ってみろと言ってみる。

 

「えいっ!」

 

バリバリバリバリバリ……!!

 

丸い円筒に幾つも空いた穴から雷鳴と複数に枝分かれした光波が近距離に近付く蜥蜴をいとも容易く撃破した。

このサンダーレインという大口径のショットブラスターは、エネルギーパックの消費が激しい代わりに高いダメージを誇る電磁性誘導レーザー弾を広範囲に撃ちだせる優れもので、小型モンスターの広範囲殲滅やレイドボスへの大ダメージ武器など、対人戦以外なら結構頻繁に用いられる万能光学銃だ。

 

「レンのAGIにモノを言わせて接近。問答無用で撃ち込めば大抵の奴なら一撃死だろ」

 

おお!と感嘆するレンにアドバイスをしといて蜥蜴群が残したクレジットやドロップアイテムを回収していくと、今回使わなかった有澤製爆裂地雷が地震のような轟音を響かせて起爆、範囲一体を焦土と化した。

 

「……………知らない内にレイドボスが引っかかったのか」

 

「あ、レベル上がった」

 

ピクピクと、クレーターの真ん中で痙攣するレイドボスを、若干哀れみの目で見つめた後に奪った光学銃で息の根を止める。

実は初期にMP7A1が手に入ってから、あんまり筋力値は上げなかったし積載量も面白兵器やグレン特製簡易トラップキットで満杯だったので光学銃を使うのは随分と久し振りになる。

昨日のレイドボス討伐と今回のプレイヤーキル及びたまたまレイドボスをぶっ殺した事で俺もレベルが上がったので、余ってるポイントと共に筋力値を少しだけ上げようかな……なんて考えた。

まあ、積める物は何でもかんでも積み込みたし、スキルもマスタリーもMP7A1運用に必要なPDWマスタリーやクイックドローとかトレジャーハンターなどの技能系スキルなど、必要最低限のモノは取っているので今後のステ振りを諦めた上で幾らか余裕はあるのだ。

 

「とりあえず今日は落ちるか……」

 

「そうだね」

 

レイドボスがいたであろうクレーターにドロップしたレア銃を2、3個搔き集め、それを装甲車の中に突っ込んで首都グロッケンへ帰投し、レンに別れを告げてガンゲイルオンラインの世界から意識をログアウトさせた。

 

 





主人公はあんまり強くない……と思う。使ったトラップがクレイジーなだけで中堅レベル上級未満だと思う。
ただ、反則や裏ワザ開発などを日々模索研究しているため、エムが使用するラインなし狙撃などを取得している(ラインなし狙撃は撃てるだけであって実戦だと動かない敵にしか当てられないなど限定的)


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監獄

今回はオリキャラ一杯で大型ボス戦。


 

 

レアもんが欲しければ先ずはレイドボスを潰しなさい………この世界の、というよりは太古から続くアイテムドロップシステムを採用しているゲームの常識だ。

つまりは、ボス級のモンスターを倒さなければレア銃やレア装備を手に入れるのは夢のまた夢であって………。

更にボス級モンスターを倒すには、それなりの実力やそれなりの装備、それなりの人数にそれなりの我慢が必要である。

 

レア装備を手に入れるためには半端な覚悟はお断りということだーーー!!

 

「………っていうわけで君、アウト」

 

「んなーーーッ!!俺が!俺がアウト!?嘘っしょ!?《バフォメット》さぁぁぁぁん!?」

 

「い、いやぁ《チョビ髭》。今回の主催者こいつだし、人数集める係は俺だけど、最終的な権限はこいつにあんだよなぁ……それにお前、前回の失敗があってこいつに相当嫌われてるわけだ」

 

「んなーーーッ!!確かに!確かに前回はRPGの弾頭を間違えるという小さなポカやらかしちまいましたけども!それでもそこは愛嬌でしょう!?こーんな殺伐とした世界でとても必要な癒し要素でしょうよぉ!?」

 

「クビ、帰れ」

 

「待ってぇぇぇぇぇぇぇぇ………………」

 

プレイヤー名通りアバターの口元にチョビ髭を生やした筋骨隆々のプレイヤーが逞しい2人組に脇を挟まれて部屋から追い出されていく。

その様を眺めながら手元のリストにバッテンを弾き、次の討伐メンバーを選定する。

 

「マジで〜、楽にレア装備が手に入るって聞いて〜、超やべーそりゃ俺も一枚噛まなあかんでしょ!っつーかぁ」

 

「アウト」

 

「広告で見てきてきました!武器はコルトガバメントです!あっ、他にもファイブセブンやUSPを使ってて……」

 

「装備的にアウトです」

 

「あ、どぅも!俺が使うのは何と言ってもRPGーー!!これしか使わない!貧弱な火力なんて……邪道!あ?何?何で腕掴んでんの?ちょ……痛………痛い痛い……ハラスメント警告……………」

 

「はぁぁ……テメェは最初にクビっつったろが………出てけゴミ」

 

「アンタヒデェなぁ!オイ!!」

 

今回の討伐で実力不十分な奴らに続々とアウトを繰り返していく。

ブーブー文句垂れるのは当然だが、今回討伐する相手が相手なだけに俺も遠慮容赦する気はない……この世界は弱肉強食なのだ。

 

「RPGをバカにしやがって〜!!呪ってやる〜!テメェが今後RPG撃つ時は火薬とか火薬とか火薬とか……………なんか湿ってて爆発しないんだからね!」

 

「ウルセェなお前まだいたのかよ!オイ!誰かアイツを殺せ!何のためにグロッケンの外のフィールドでこんなことしてると思う!?テメェみてぇなマヌケをブチ殺すためだよ!バーカ!」

 

「ゥギャァァァァ!!!マッハで蜂の巣ーー!!?」

 

討伐から外れた落伍者どもが見せしめを見て一斉に肩を落として部屋を出て行く。

リストにバッテンや合格のマルを書いていくと、次のプレイヤーで最後となった。

 

「あ、あの……お願いします」

 

最後のプレイヤーは、真っ黒のベストに黒いズボンを履いた、銀髪の髪をした女性プレイヤーだ。

 

「はいはい、ええと、プレイヤー名《サラ》さんね。メインアームは……《MK3A1》?……へぇ!随分とレアなもんを持ってんだ!……もしかして討伐経験者?」

 

リストに記入されたメインアーム欄の武器名を見て感嘆の息を吐く。

このMK3A1という武器、アメリカのパンコア社で開発されたフルオート射撃のできるショットガンで、《ジャックハンマー》の名で知られている物なのだが、軍の販売に失敗してしまい、残念ながらプロトタイプのみの開発に終わってしまったショットガンだ。

このショットガンが使う弾薬力セットはGGOの中でも極めて特殊なマガジンで、マガジン部に弾を詰めて地面に置くことで地雷のように使用できる設計らしい。

プロトタイプのみの開発や構造などの珍しさも相まってか、GGOでもトップクラスのレア度に指定されており、俺も過去一度しか手に入れたことがない、まあ、今はもうないが

 

「サイドアームは無しか」

 

「……あの、やっぱり……ダメですか」

 

サラの言葉に、ひとまず首を横に振る。

レイドボス討伐になるわけで、ボス級にダメージを与えられる高威力の火力……ショットガンを持つプレイヤーは貴重な訳で、俺も今回の討伐においては自前のショットガンを幾つかプレイヤー達に貸し与える予定だ(あくまで貸し与えるだけなので終わったら返却してもらう)。

それに、士気向上の意味合いでもサラのアバターの容姿が優れているというのはとても好評点なので9割がた採用である。

なぜなら、野郎は現実がどんなに残酷でも仮想世界の美少女を崇め奉るものである。

サラのリアルがどんなものかは知らないが、レンやグレン、有名どころじゃ《シノン》のような可愛い美少女プレイヤーは大いに持て囃されアイドルやイッちゃうとこだと女神のように扱われる。

 

「別にハンドガン系のサイドアームが無くってもOKだ。それに、今回のボスじゃハンドガンはあんまり効かないだろうから、別に持ってなくて構わないよ。サラさん…で良いかな?今回はよろしくね」

 

「あっ………は、はい!」

 

つまり、こんな好条件のプレイヤーを採用しない手はないわけで、サラという名前の横にマルを囲って討伐メンバーの剪定を終了する。

 

「あの、今回も……よろしくお願いしますね」

 

「?……あ、ああ」

 

過去にサラと会ったことがあったのか?俺は。

 

「終わったか、アリーヤ」

 

「お、おう、今回は相手が相手だしな。慎重に選んだつもりだ。出し惜しみなしで行く、外にM870やスパス12、ストライカー、USAS、KSGにイサカと盛りだくさんで持ってきたから使いたい奴には使わせろ」

 

「フゥ!豪華だな。分かった、任せとけ。他には?」

 

「特に無い……いや、グレンの護衛には気を遣えよ。あいつ、俺と同じで体力がネェから、あいつに死なれたら計画がパァ!だ」

 

「オーケーオーケー。そこも加味しとく」

 

バフォメットに言っといて今回討伐に参加するメンバー表を纏める。

 

《アリーヤ》男 工兵

《グレムリン》女 工兵・マークスマン

《サラ》女 アタッカー

《バフォメット》男 サポーター

《ジャック・ザ・リッパー》男 アタッカー

《チョコ》女 工兵

《バニラ》女 工兵

《池尻》男 サポーター

《サトウ銀二》男 マークスマン

《スカル》男 コマンダー

《ハニンバル灰》男 タンク

《ソープ》アタッカー

《ユーリ》女 アタッカー

《プライス》女 アタッカー

《はぐメタ》男 スカウト

《牛カルビ》男 タンク

《ジム》男 タンク

 

計17人、野郎ばかりと思えば6人も女性プレイヤーがいる、まあ、これも俺のレア銃ハンターというブランド力あってのものだろう。

 

………………嘘だ、いや、半分は嘘じゃ無いけど。

実を言えばこのパーティーの殆どが俺と銃のトレードないし、なんらかの交流や縁を持つプレイヤー達だ。

バフォメットは言わずもがな、《ジャック・ザ・リッパー》……通称ジャックは、フォトンソードや銃剣での斬り合いを好む変わり者だが、その実力は高く、討伐の際には高確率で彼に同行を依頼している。

 

《チョコ》と《バニラ》の双子プレイヤーはアバターの容姿もあってGGOで本人達には非公式のファンクラブが発足してるほどのかなりの人気者、二人共にトレードしたことがあり、チョコは《SIG MPX-SD》、バニラは《レイストーム》という光学銃を未だに使っているらしい。

 

《池尻》はステータス・外見共に筋肉マッチョのプレイヤーで、そのSTR値を使って軽機関銃のRPDで打撃支援を、更にSMAW ロケットランチャーを用いた火力支援も積極的に行う寡黙なプレイヤーだ。

しかも彼は巨体に似合わずとても照れ屋で紳士的な人物のため、男女問わずかなり人気が高く頼りになる。

 

《サトウ銀二》、バフォメットがリーダーを務めるスコードロン、《フォールンダウン》のメンバーだ。

バフォメットのスコードロンメンバーはキチガイやらポンコツやらまともなヤツがいないが、銀二はそんなメンバーやバフォメットを健気に支える素晴らしく有能なプレイヤーである。

武器はH&K G28 DMRを使用している。

 

 

《スカル》は状況判断能力に長けるともっぱら評判のプレイヤーで、武器は欧州製のSCAR-L。

基本的にステータスはバランス寄りでアタッカーやポイントマン、時にはスナイパーもやることがあるらしい。

今回は俺を含めた全員を指揮してもらう事になる。

 

《ハニンバル灰》、バフォメットのスコードロンメンバーでキチガイ。

関わらぬが吉。

 

《ソープ》ソフトモヒカンのナイスなおっさん。

リアルで娘2人がこんな殺伐としたけしからんゲームをやり始めたと聞いて意気揚々とソフトとヘッドギアを買ったという噂がある。

元傭兵だとか現在進行形で傭兵だとかいろいろ噂が流れているが、その出自は自身のブログツイッターという説がある。

 

《ユーリ》、ソープの娘だという噂があるプレイヤーで、ソープと同じく傭兵だとか言われている。

使う武器はM4A1など。

たまにプライスと一緒にソープを殴る蹴るという行為が目撃される。

 

《プライス》、可愛いハットを目深く被るプレイヤーで、いつもユーリと行動している姿が目撃されるが、ちょっかいを出すプレイヤーやスコードロンは、軒並み謎のソフトモヒカンのおっさんに壊滅されている……らしい。

武器はユーリと同じくM4A1。

 

《はぐメタ》はAGI特化の逃げ戦プレイヤー。

あまりにもAGI寄り過ぎてハンドガンもしくは光学銃しか装備出来なくなったらしい。

そのステータス上、モンスター戦は嬉々として戦うが対人戦となると、敵プレイヤーが銃口を構える時には既に姿を消しているらしい。

 

《牛カルビ》、名物スコードロン《お肉屋さん》のメンバーである牛肉を司るお肉神の1人……と言われている。

彼が崇める牛さんの姿を象ったプロテクターは、かなり硬いらしい。

 

《ジム》はどっかで見たような白いプロテクターを装備した光学銃使いのプレイヤー。

どんなこだわりがあるのやら、モンスター戦でも対人戦でも構わず光学銃を撃ちまくる。

プロテクターと片手に持つライオットシールドの防御性能と生命力の高さに加え、そこそこ速い足を生かして弾を喰らいながら敵に接近、至近距離から光学銃をブッパするクレイジーなヤツだ。

 

 

そして、今回討伐を予定しているのは、現GGOで未だに攻略されていないボスモンスターの一匹であるクリスタルプリズンだ。

こいつの外見はまさに結晶体の監獄と呼ぶにふさわしく、中にはこいつが今までに溜め込んだ結晶体が、長年の過程を経て色々な情報体を摂取、そしてレアな装備やアイテム、銃器に変質するという設定がある。

要はこいつをぶっ殺して中を開くとレアもんがどっさりありますよ、という事だ。

この話を聞いて、今までに攻略を行ってきたプレイヤーやスコードロンを、こいつは《看守》や《囚人》、《鞭》などを使い、全プレイヤーの攻略を悉く潰してきたのである。

こいつ自体が動く事は無いが、その分防御力は圧巻の一声で、工兵によるC4などの爆破技能で大ダメージを与える事が鍵とされている。

 

「さて、討伐の時間だ。今回アタッカーとタンクに任せて欲しいのは俺たち工兵によタゲ取りが行かないような立ち回りと《看守》《囚人》の清掃。サポーターとマークスマンは《鞭》の動きを抑制していてくれ。スカルは展開毎に指示を頼む」

 

「分かった。今回勝てば俺たちが初めての攻略パーティーだな」

 

「前回でヤツにフォトンソードが効くのは分かってんだ。初っ端から飛ばしていくぞ」

 

名前通りのスカルフェイスで顔を保護しているプレイヤーが笑いながらSCAR-Lにマガジンを装弾する。

他にも、頭にバンダナを巻いた頬に傷のあるアバターが、両手に持ったフォトンソードやナイフのグリップを、ジャグリングのようにヒョイヒョイヒョイッと手まわししている。

 

「うーし、車に乗り込め!アルカトラズまでアクセル全開だー!」

 

「「「「「うぇーい!」」」」」

 

こちらも色々と準備を済ませ、出向けるのは監獄フィールド、又の名を「アルカトラズ」。

3台の軽装甲機動車に4人と1台に5人が乗り込み、アルカトラズに行くまででエンカウントしたモンスターには遠慮なく備え付けられている銃機関砲のM2機関銃をぶっ放していく。

 

そのまましばらく北へと北上して洞窟に入り、凍え死ぬような寒さを耐えながら地下の最奥部へと進んでいく。

氷の棘で出来たバリケードを叩き壊しながら進んでいき、目的の建てられている場所へ到着する。

 

 

 

「……………デケェ……」

 

「…………ん、2回目だけど……慣れない、ね」

 

グレンと一緒にクリスタルプリズンを見上げる。

青く透き通る結晶の監獄。

それは建物3〜4階建て程の大きさで、この監獄が発しているのか、時折気味の悪い呻き声が聞こえては洞窟の中を延々と響いていく。

そしてその監獄周りをグルグルと周遊する鞭のような触手。

アレこそが監獄に近づく愚か者達を切り刻み、粉々に叩き潰す監獄の《鞭》だ。

 

「ひゃー、こ、怖わ……バニラちゃんボク怖い……!」

 

「にゃー!?ちょ、チョコちゃん……!い、いきなり抱きつかにゃいでぇ……」

 

2人抱き合いガクガクと震える《バニラ》《チョコ》と同じく、クリスタルプリズンの様相に頬を引きつらせながらストレージの中身を確認していく。

クリスタルプリズンの門をこじ開け、中へ侵入するには俺とグレン、バニラ、チョコの動きが重要となるため、その責任は重い。

指揮を務めるスカルから3分後にGOサインを出すという合図を無線越しに受け取り、改めて武器の最終確認を行っていく。

 

「お、落ち着け……落ち着け……!で、ででで、出来る……お、おお、俺なら出来るぞぉ……おおお」

 

「うぷぷ……み、見なよバニラちゃん。あ、アリーヤ……ビビッてるよぅ……うう……こわわ」

 

「にゃは、や、やっぱりアリーヤはビビリ屋さんだー……コワイィ……!!」

 

「………3人とも……びびり……やーいやーい」

 

「な、なに!?お、お俺はびびってなんかねーし!?く、クリスタルプリズンとか余裕ですし!?あ、アレ?オカシイな……はは、え、MP7の安全装置が外れないぞぞぞぞぞ」

 

「ぼ、ぼぼぼボクだってビビってないけどぉー!?《鞭》とか簡単に避けれるから……あ、アレぇ?おかしいなー、MPXのストックが伸縮しないなななな」

 

「わ、私だってビビってないからにゃー!?レレ、レイストームが少し調子悪いけど………アレれ?レイストームのエネルギーパックが入らないんだけどどどど」

 

『おい、何遊んでる。そろそろ《囚人》共が来るぞ』

 

『ほうら、おいでなすった。ザコどもの出陣だ』

 

無線からスカルとジャックの声が響く。

クリスタルプリズンに視線を落とすと、結晶体の監獄の周囲の地面から、ボコボコとナニカが盛り上がり、土の中から異形の生命体が這い出てきた。

 

『時間だ、始めるぞ。まずアタッカー陣が《囚人》を薙ぎ払って門までの道を作る。そこを工兵4人が通って門の爆破工作を開始、アタッカー、タンクはその間の工兵の護衛だ』

 

クリスタルプリズンを彷徨う《囚人》達がノロノロとした動作でこちらへと歩み寄る。

しかし、それよりも先に《囚人》達の元へ駆けたジャックが両手のナイフで遠慮情けなしにザクザクと切り裂いていく。

ソープ、ユーリ、プライスの3人組が互いに互いの背中をカバーし合い《囚人》の群れをドンドン薙ぎ倒していく。

そして俺たちはジャック達が開いた道から、クリスタルプリズンへと続く門へ敏捷性のあらん限り思いっきり全力疾走していく。

 

「わ、わわわぁーー!!?」

 

「ちょ、チョコちゃぁーん!?」

 

疾る過程でチョコが《囚人》に腕を取られる。

《囚人》の外見は映画でもよく見かけるゾンビそのもので、目は白濁し、肉は削げ、腐食した臭いが漂うアンデッド系モンスターだ。

そしてこの《囚人》のいやらしい所は、腐食性の毒……唾液を口から吐き出し、それによってプレイヤーな装備や戦闘服などにダメージを与え、耐久力を徐々に減少……最終的に破壊するのだ。

ジュウッと服の溶ける音と何かが腐る臭いがし、チョコの戦闘ベストがビリビリッと破られる。

 

「ひゃー!?公然猥褻変態変態羞恥プレイぃー!!?」

 

「クソッ!退けオラァ!」

 

チョコにしがみつく《囚人》の頭を撃ち抜き彼女の腕を掴む。

そのまま周りへMP7A1の弾丸を垂れ流しながら門まで走り抜ける。

 

「ふぇぇ……あ、アリーヤぁぁぁぁ」

 

「涙目じゃねえかお前!?しっかりしろよ!」

 

びぃびぃ泣き喚く少女を引っ張りながら周りの《囚人》を撃ち殺していく。

ノロノロと動くゾンビの頭をゆっくり構えてヘッドショット。

近ずく奴には蹴りをかまして強引に地面に倒し、頭を踏みつけて腐りきって脆い頭蓋を打ち砕いていく。

中堅ぐらいの実力を持つ俺(自称)ならば、このくらいのスムーズな動きは今までの経験からどうすれば効果的か……いや、どんなアクションをすれば生き延びれるか、という動きに直結していく。

例えばこのゾンビ共はプレイヤーの動きに合わせて動くため、障害物やフィールドの段差、ギミックに対応出来ない。

そのため地面に横たわる死骸に簡単に足を引っ掛けて倒れ、鈍く起き上がる前に別のゾンビが体の上に倒れていく。

たったこれだけで動けないゾンビが鼠算式に増えていき、門へと辿り着く負担が軽くなっていく。

 

「あ゛、ア゛リ゛ー゛ヤ゛が゛っ゛こ゛い゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」

 

「だー!!こんな時だけ抱き着くな!その成長途中の胸を摺り寄せるな!気が散る!つーかお前も撃たんかぁ!?」

 

「う、うぅ、ひっぐ、ごめんねアリーヤ……今までバカにしてごめんなさい」

 

泣きながらゾンビを撃つチョコのヘッドショット率は傍目に見ても俺より速いし正確だ。

俺のような「なんちゃって中級者」とは違い、このバニラとチョコという双子は実力や名声共に「上級に近い中級者」なのだ。

 

「ちょ、チョコちゃん大丈夫……………ちょ、チョコちゃん?」

 

「ん………アリーヤ………」

 

ゾンビを殺していく中で合流したバニラとグレンがピシッと固まってしまう。

俺とチョコの今の姿は、互いに互いの腕を絡ませたまま阿吽の呼吸で背中を守りつつ門まで走り行くベストカップル(?)だと思う。

 

「誤解すんなよ!大事なことだから二回言うぞ!?いいか!誤解すんなよ!?」

 

MP7A1のマガジンを交換して弾を糾弾、そのまま周りの敵はと撃ちまくる。

バニラもグレンも固まった状態から抜け出して個々に《囚人》共を撃ち殺し始める。

 

「………ちぇ、今から良いところだったのに」

 

「あ!?なんか言ったか!?」

 

「な、なんでもないー!」

 

「おい!ちんたら走ってんじゃねぇよお前ら!」

 

チョコが何やらボソボソと呟いていたために聞き返すと、前で戦っていたジャックが《囚人》を斬り殺しながら笑っている。

 

「お前、フォトンソードは?」

 

「ありゃあ楽しいけど制限があっからよ。《看守長》までのお楽しみだなァ……オラ!」

 

………そうだった、《囚人》を切り抜けて門を壊し、中に入ったとして次は《看守》と《看守長》を倒さなければならないのだった。

他のモンスター戦よりも面倒臭く、果てしなく怠い戦いに憂鬱になりながらも、そのデカさからレイドボス史上最多のドロップ率とレア銃排出を期待して《囚人》を殺す。

 

『上空注意!《鞭》が来るぞ!』

 

群がる《囚人》をジャックが切り払った時、無線からスカルの緊急連絡が奔る。

上を見上げると一本の長い長い触手が唸りを上げて飛来し、やがて地面を這うようにこちらへ迫ってくる。

 

「走れえええええええええええええ」

 

「ひゃー♪」

 

「んにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「んぅ………」

 

「ヒャハハハハハハハハ!」

 

背後に迫る《鞭》をどうにかやり過ごし、あと100メートル先の門へ我先にと駆け出していく。

門の周辺に溜まる《囚人》共へ向けて有澤製の手榴弾を思いっきり投じ、爆発と爆風によって周辺一帯の《囚人》を全て一掃する。

 

「ヒュゥー♪やっぱグレネードっつったら有澤製だなァ」

 

「へっ、分かってんじゃねえか、ジャック。グレン、チョコ、バニラ!始めるぞ」

 

門に辿り着いた俺たちは門をペタペタと触って技能系スキルである《爆破工作》を開始する。

ストレージから取り出したC4爆薬をGGOのシステムがオートで作動するままに最適な配置、最適な角度へと設置していく。

その間俺たちの周りはジャックやサラなどのアタッカーやジムや牛カルビ達タンクが護衛してくれている……………はずだ!

 

「後何秒だァ!」

 

「60秒!」

 

「十分守りきれるな、銀二、もっと火力寄越せ!近づかせんなぁ」

 

「分かった。バフォメット、正面の方にグレネード行くぞ」

 

「プライス、ユーリ!足を撃ってもこいつらは這って来るぞ!頭だ!頭を狙え!」

 

「ハニンバルが邪魔で撃てない」

 

「殺せ殺せ!イライラする!」

 

「はぐメタはまだ死んでないよな!?」

 

ギャーギャーと叫びながら銃声音がいつまでも続いていく。

ボン、ボン、と手榴弾が弾け飛び、幾つもの《囚人》の身体が引きちぎれて行く。

そして門は、大ダメージを与えられる分の爆薬を仕掛け、起爆のタイミングを待つだけの状態になった。

 

「よし、一度下がるぞ!引け!」

 

「《鞭》がまた来る!避けろ!」

 

再び上空から迫り来る《鞭》を辛うじて避けながら門と距離を置き、念のため伏せた状態で思いっきりスイッチを入れる。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーッッッッッッッ!!!

 

 

 

 

爆轟とも言える地響きに《囚人》は全て地面へと倒れ伏し、堅牢を誇る監獄の門が、悲鳴声を上げて中への道のりを開いた。

 




駄文駄文駄文。
もっと描写上手くなりたいな……。
次は監獄中へ突入死ます。書いてる時のイメージはもろにBO2のアルカトラズですϵ( 'Θ' )϶


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しっかり狙って撃ちましょう

結晶体の監獄が悲鳴を上げる。

自らの体の一部である門が破壊されたのだ。

痛みに喘ぐ監獄の胎内の一室、光の無い暗闇の世界で動く影が一つ。

それは人というにはあまりにも不恰好な背丈と不釣り合いな頭を擡げていた。

 

「クァカカカカカ……」

 

骨だけの状態で、ソレは不気味な笑い声を楽しそうに上げていた。

 

 

 

 

 

クリスタルプリズン 内部

 

「突入!」

 

「クリアー!クリアー!《看守》無し!《看守長》無し!」

 

「周囲を警戒しながら8人ずつリロード!いいか!周囲を警戒しながらだぞ!」

 

C4爆破によって粉々になった門を潜ってクリスタルプリズンの内部へと侵入していく。

中はまさに監獄であり、意味不明な檻が果てしなく広がっている。

 

「グレン、お前先にリロードしろ」

 

「……ん」

 

使用しているマークスマンライフル《MK11 MOD 0》のマガジンを代えるグレンの背中に自分の背中をくっつけながらキョロキョロと辺りを見回す、クリスタルプリズンの中に入ったのは今回で2度目だが、前回はここで油断した所を《看守長》に襲撃された。

その時点で討伐隊の殆どを失い、壊滅しかけながらも一応、《看守長》を殺すことは出来たのだが、その後に群がってきた《看守》共に全滅させられた。

そのため、2人1組になって、まず1人がリロードタイム、片方は全周囲を油断なく監視することになった。

 

「おっけ、代わろ」

 

「……おう」

 

ベストに着けているポケットからMP7A1のマガジンを一つ取り、弾倉を交換する。

それまで使っていたマガジンはそのままストレージの中へ収納して新しいマガジンをベストのポケットへ突っ込む。

最後に腰部のポーチから一本のナックルガード付きのグリップを取り出して準備終了。

 

「ん?……オイオイ、ステータスザコのお前がフォトンソードだぁ?」

 

動作を確認していた俺を目ざとく発見したジャックがニヤニヤと笑いながら茶化すので「うるせーよ」と言いながら何時でも取り出せるよう、ベルト部の専用ホルダーに格納しておく。

 

「厳密には派生型オリジナルのフォトンセイバー」

 

「ヘッ、誤って自分の足をサクッと斬んなよ」

 

ケラケラと笑うジャックを見ると、彼の手には2本のフォトンソードのグリップが握られている。

そのまま左右へ視線を鋭く走らせている彼にとって、前回の《看守長》の襲撃は許されぬものだったのだろう。

 

「よし、リロードは終わったな。先に進むぞ」

 

周りを見て準備完了を待っていたスカルが合図を送る。

 

「あ、待った。流石に《看守》達にはMP7A1じゃキツい。池ちゃん。最初に渡しておいたアレ、貸して」

 

巨体のアバター池尻へ手を差し出すと、彼はこっくりと頷いてウィンドウからストレージを操作、足元に複数のショットガンをゴトゴトと出現させた。

 

「なるほど、確かに《看守》らは堅いからな。チョコとジャックも持っておけ……ジャック、そんな顔するな。“楽しみ”は最後まで取っておけよ」

 

続いて池尻は地面に横たわるショットガンを拾い上げ、次に背中に出現させた蛍光色のリュックサックの中へそれらを突っ込んでいく。

 

「けぃえすじー、けぃえすじー。K!S!Gーーーー!!」

 

鼻歌を歌いながらKSGを手に取り、MP7A1はワンポイントスリングを体にかけてブラブラと提げておく。

こうしておけば弾切れの際に敵が迫ってきたとして、技能系スキルの《クイックドロー》でMP7A1を素早く構えて射撃することができる。

そうしてKSGのグリップを掴んでスカルに頷く。

 

「よし、行くぞ……探索開始だ……」

 

スカルフェイスのマスクを着けている《スカル》は油断なくSCAR-Lの銃口を左右に奔らせ、他のプレイヤー達もその後ろを早歩きのスピードで追従して着々と《監獄》内部を進行していく。

静寂に、しかし心の中では意気揚々と攻略を目指していると、KSGのアイアンサイトに、ぽちゃん、と一粒の雫が落ちて静かに弾け散った。

 

「…………」

 

そして、それはKSGのアイアンサイトに確かな耐久力減少化現象を起こし、嫌な予感のした俺は、他の仲間達に気付かれないように、そっと視線だけを上へ…………。

 

「クフォフォフォフォ」

 

「…………」

 

2階の手すりに、奴らの不気味な二つ目がゆらゆらと蠢いている。

その目の数は……見る限り30位はありそうなので、少なくとも15体は上にいることになる。

それを観察して、近くの奴らに耳打ちするのは混乱を招く可能性があるので無線機でスカルにだけ連絡を取る。

 

「スカル、2階だ。《看守》が少なくとも15体、今はまだ襲撃の機会を狙ってるな」

 

『………分かった』

 

そのまま無線をブツッと切ったスカルは腰部から円筒状のものを一つ取り出し、片手で真上へと放り投げながら早口で怒鳴った。

 

「フラッシュバーーン!」

 

その言葉に追従して俺を除く他のプレイヤーが目を閉じて床に寝転がる。

俺も慌てて目を閉じるも、筒から発せられる眩しい光と強烈な音が監獄の内部に充満する。

すると、大質量の何かが上から落ちてきた。

防寒用のコートの下に分厚いプロテクターを装備した骸骨……要塞型モンスターのクリスタルプリズン内部に生息する《看守》と呼ばれているモンスターだ。

 

『《看守》を全て殺せ』

 

それから、無線から届いた声に怒声のような唸り声を上げて、フラッシュバンを喰らって2階から落ちてきた《看守》の頭へKSGの銃口を向け、1発。

頭蓋骨を砕かれて死んだ《看守》に目もくれず、拙い手つきで装填を済ませ別の《看守》へ1発。

不意に殴りかかってきた《看守》の棍棒を避けて胴体に1発、プロテクターのおかげで生き延びた《看守》をすぐに追撃して頭を破壊。

装填、射撃、装填、射撃、装填、射撃装填、射撃、装填、射撃、装填、射撃…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首都グロッケン

 

「ふんふふーん、あ!アリーヤさんログインしてる……あれ?メール……えぇ!アリーヤさん、レイドボス戦に行ったのか!ずるい!」

 

GGO最初の街、首都グロッケンにログインしたフード付きのローブを着た小さなチビプレイヤーであるレンが自分にしか見えないウィンドウを操作しながら上機嫌なログインから一転、唇を尖らせてメッセージを打つ。

 

「……『次は一緒に行きたい!』転送っと……うん、今回は諦めてまた砂漠に行こうかなぁ?ともかく、ピーちゃんを撃ちたい!………えへへ、ピーちゃん……」

 

ローブの下に出現させたP90、又の名をピーちゃんを抱き抱えるレンはこれから砂漠フィールドに行ってピーちゃん両手にモンスターとたまにプレイヤーを狩って行こうと思案しながら首都グロッケンを歩いていく。

 

「ねえ!そこのおチビちゃん。あんた、中身は女の子でしょ?歩き方で分かるよ」

 

毎度の事ながらレンの身長をギョッと見て「小さすぎだろ」「可愛い……」「ま、まてまて、中身もそうとは限らんぞ」などと言うひそひそ声を聞きながら、バンダナの下でニヤニヤほおを緩めていると、ビキニに毛が生えたような露出魔に声をかけられた。

 

「ちょっとお茶しない?おねーさんがおごるかry」

 

「変態!変態だ!ビキニ着てて顔にタトゥー入れてる変態が話しかけてきたー!!」

 

「っ!?え、ちょ、ま」

 

レンはグロッケンの街並みを敏捷ステータスが許す限りの全速力で駆け抜けて変態露出魔ビキニおねーさんから逃げ出した。

しかし、

 

「おいおいおい、話の途中で逃げ出すなんておねーさん悲しいな」

 

「ひゃー!?変態が車で追ってきたぁぁぁぁ!」

 

「まだ変態言うか……」

 

変態露出魔ビキニおねーさんは何処で買ったか真新しいジープに乗ってレンの後ろを追従していた。

そのままレンは“おねーさん”に追われるまま外のフィールドへ出て自分が最も得意とする砂漠フィールドへ。

狂ったような夕暮れ時の色合いにさしもの“おねーさん”と言えど景色に溶け込んだレンを一度見失い、レンはそれを観察しながらゆっくりと距離を広げていく。

 

「くっそー、ちょっとお茶するだけなのになー、流石に変態はないでしょーよー」

 

砂漠フィールドの全域を目で捉えられるだけじっと睨み付ける“おねーさん”は、何を捉えたかニヤッと口元を歪めて一気に車のアクセルを踏み込む。

 

「おチビちゃんみいぃぃっけぇぇぇえーーー!!」

 

「うびゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでーーー!!?

砂漠の景色に溶け込むデザートピンク迷彩の自分を確かに捉えた“おねーさん”に怯えながら、レンは全速力で逃げ出していく。

しかし、如何にレンの敏捷性が人外級でも、流石にジープの速度にはかなわなかった。

みるみるうちにレンとジープの距離は縮まり、レンの隣をジープが追従すると同時に首根っこをむんずと掴まれる。

 

「ぎゃっ!?」

 

「ピンクのおチビちゃん捕まえた〜〜」

 

そのまま助手席に放られたレンは、グロッケンに辿り着くまで救難要請のメッセージをアリーヤ宛に何度も何度も送り続けたが、絶賛大ボス戦のアリーヤにそれが届くはずもなく、変態露出魔ビキニ姿のおねーさんとのお茶会が始まって誤解(?)そのものが解けるまでガクガクブルブルとまるで高速影分身のように震えることとなった。

 

「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ?シートが震えて運転出来ないんだけど」

 

「ひっ!ひゃっ!?ひぇ!?」

 

「も、もういいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンが謎の女プレイヤーに攫われている頃。

 

「ぎゃっ!?」

 

「バニラちゃんが被弾した!」

 

「おいおい!ジャック!《看守長》はお前担当だろがっ!」

 

俺たちはクリスタルプリズンの中で、《看守》たちの戦いを延々と続けていた。

 

「うるせぇ!……オイ、俺から逃げるなよ。楽しもうゼェ!!」

 

カハァッ、と口を大きく開いたジャックは、獰猛に目の前の《看守長》へと襲いかかる。

それを横目に周りの《看守》たちにMP7A1専用の4.6×30㎜弾を次々と撃ち込んでいく。

頭を撃ち抜かれて脆く崩れていく《看守》を鼻で笑って有澤製手榴弾をポイと投げ、複数の《看守》を爆風で弾き飛ばし、透き通る結晶の床にぐったりと転がる女プレイヤーバニラの元に辿り着く。

 

「にゃぁ〜〜アリーヤぁ〜守ってくれるにゃんてカッコよすぎ〜」

 

「ふぅ、バニラの体力はギリか……手当ては自分でやれよ?……いや、それまで俺が持つかな」

 

空になったMP7A1の弾倉を変えて初弾を薬室に装填して上部ピカテニティ・レールに搭載しているホロサイトを覗く。

レンズに映るレティクルを棍棒を振り上げる《看守》の頭に向けて単射3発、ラインを消すために指は引き金に触れず、撃つときにだけ素早く引き絞る。

果たして頭を撃ち抜かれた《看守》は、その朽ちた両目から不気味な光を消失させて床へと倒れる。

そして流れるように次の標的へと………。

その時には既に幾多もの《看守》たちにバニラもろとも囲まれていた

 

「……………あ、やべ、囲まれた」

 

「にゃぁぁぁ!!?やっぱステータスザコの異名は伊達じゃにゃいにゃ〜〜!その1、エイミングが遅い!その2、わざわざ照準器を覗く意味が分からにゃい!つまりぃ!?バニラちゃんってばピンチ〜〜!?チョコちゃんカムオーーン!!」

 

「助けてもらってそれか!?このクソガキッ!」

 

喚くバニラを一度怒鳴り返してホロサイトを覗き、くるくる回転しながら《看守》の頭へレティクルを合わせて引き金を加減しながら3点ずつ撃ちまくって行く。

グレンの工房で光量をカスタムした青色のレティクルが、プロテクターを着込んだ骸の頭蓋に合わさっては離れ、合わさっては離れていく。

常時引き金に触れているためにバレットサークルが表示されてホロサイトのレンズに干渉するがMP7A1が吐き出す4.6×30㎜弾はホロサイトが投影するレティクル通りの軌道へと疾っていく。

 

「お前やチョコと違って、fpsをやり込んでるプレイヤーならではの戦い方があんだよ、覚えとけ」

 

ピカピカに目立つブルー迷彩のMP7A1をブンブン振り回しながら《看守》の頭をエイムして屍を量産していく。

……………が、状況はあいも変わらず、MP7A1でどれだけ殺そうと《看守》の量は減りもせず増えもせず。

さっきまで使っていたKSGは弾切れでストレージの中に放り込んでいる。

しかも、もうそろそろ、いや、あと数発でMP7A1の弾が、切れてしまう。

 

「くそ、弾が切れたっ!バニラ、そろそろ撃てるだろ?援護しろ!」

 

「チョコちゃぁぁぁぁぁぁんへるぷみーぃぃぃぃ」

 

「バカぁぁぁぁぁぁ!!」

 

弾倉を交換しようにもその暇がない。

空のマガジンを抜いた所で2、3体の《看守》にボコられて死亡、ならば、いっその事……《アレ》を使うか?いや、アレを使ったところで7発分程度で終わる、起死回生の一歩に足りてない。

なら、どうする?どうすれば生き残れる?ストレージ内の何を使えばいい、手裏剣?手榴弾?俺は今何を持っている???トラップ?弾薬?リアルスキルの《真似事》?7発分の《必殺技》?それとも俺自慢の最強装備である《特注品》か?

 

俺は今、何を、持っている、

 

青いブルー迷彩のMP7A1、戦闘ベストのポケットに予備のマガジン、腰部のポーチ、ベルト、ベルト部の応急手当用の注射器、あと、これは?ベルト部に付けているホルダー、注射器と同じように直ぐに取り出せるように、これは、これは、確かーーーーーーーーーーこれだ、これしかない

 

「ぁぁぁぁあッッッラァッ!!」

 

腰部のホルダーから取り出したナックルガード付きグリップを握ると同時に捻り、円筒の先端から青白い粒子が1m程の光の剣を形成する。

それからグリップを握っている右手を無造作に振り回して周りに群がる骸骨共の胴体を、着込んでいるプロテクター共々撫で斬りにした。

骸骨は情けない音を立てて床に斃れ、数秒程度の安全を確保出来た。

 

「リロォォォォォォドオオオ!」

 

空のマガジンを棄て新しい弾倉を突っ込み薬室に初弾を籠め、もう一度フォトンセイバーを振るう。

それだけで《看守》たちは全員死に絶える。

………なるほど、これは一部の愛好家たちがフォトンソードに傾倒するのも無理は無い。

マガジンリロードを終えた俺はジタバタともがくバニラの襟を掴んで陣形に合流すべく走り出す。

 

「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛」

 

「うるせえええええええ」

 

「に゛ょ゛っ゛」

 

泣き喚くバニラをスカルたちのいる方向へ投げ、前転、押し寄せる棍棒を避け切り《看守》1匹の足を掴み《看守》が俺を押し倒す形に縺れ込む。

直後に他の《看守》が動けない俺を盾にしている《看守》ごと棍棒でフルボッコにし始める。

体力は微々たる損害を受け、盾にしている《看守》が死ぬ前にストレージからGGO最強装備と豪語する《特注品》のゴーグルを取り出して頭に引っ掛ける。

 

「よっし、準備完了……《GHOST》、狩りの時間だぞ」

 

静かにゴーグルを起動させるスイッチを押す。

ゴーグルのレンズが不気味な色合いを魅せ、ゆらゆらと青い軌跡を漂わせる。

そのままMP7A1に取り付けたサプレッサーの先端を《看守》に向け、トリガーを、

 

「クァカカカカカカカカ」

 

「うおっ!?」

 

引く、ところで横殴りの衝撃を喰らって吹っ飛んでいく。

グッと立ち上がると、目の前にはバカでかい巨体の骸骨が。

 

「《看守長》………」

 

3m程の身長に小さな頭蓋、右腕はバズーカ砲のようで右腕は丸太ほどの棍棒を持つ。

クァカカ、クァカカと気味の悪い笑い声を上げる骸骨は、振り上げた棍棒を振り下ろす。

 

「あ、死んだ」

 

「ヒャッハァァァァァァァ」

 

が、実際に痛みも体力全損によって首都グロッケンへ帰投する《死に戻り》もなく、振り下ろされた棍棒を二対のフォトンソードがスパスパと切り裂いて行く。

 

「ジャック!」

 

「ァァァァァァァァァァァァァ!」

 

血のように赤いフォトンソードで切り下ろされた棍棒が、直ぐに元の姿へ戻っていく。

この《看守長》が厄介なのは、棍棒による一殴りと異常な再生力だ。

頭を潰して仕舞えばそれまでだが、3mもある巨体にフォトンソードが届くはずもなく、狙おうにも頭は小さくブンブン振り回す棍棒や腕が邪魔で弾丸を遮られる。

 

「…………あ、いいこと思いついた」

 

ふと、いいアイデアが浮かんだ。

切っても切っても直ぐに再生するなら、頭ごと潰して仕舞えばいいじゃないと。

それまでずっとこの骸骨野郎に苦戦していたのが嘘みたいに感じられる。

 

「ジャック、《看守長》の両足を叩っ切れ。後は俺がそーしたらほねほねミンチにしてやるぜ〜」

 

「ああ?………なにするか分かんねぇが、お前に獲物横取りされるのはちょっと苛つくな」

 

「うるせぇ!こん中で一番ステータスザコで悪かったな!良いもん、その代わりに俺はレア装備がいっぱいあるから別に良いもん!」

 

ケラケラと笑うバンダナ男は、右手に持ったフォトンソードで《看守長》の棍棒を切りながら左手のフォトンソードで思いっきり《看守長》の両足を切る。

ドスン、と音を立てて床に崩れる《看守長》より上へとジャンプする。

巨体に似合わない小さな頭でこちらを眺める《看守長》にヒクッと口角を含み笑いして、右手に握ったグリップの、付属しているボタンを押す。

その瞬間グリップから青白い粒子が噴出して俺を中心に《フォトンシールド》と形容できるバリアが形成する。

そしてフォトン粒子による最強無敵のシールドを張った俺は、そのままの勢いで上から《看守長》にぶつかった。

 

「ヒュゥー♪そんな使い方かァ〜」

 

「……………いや、実際は身を守る方法だけどな、たぶん」

 

全てを切り裂くフォトンソードの威力補正をそのままに、それを盾へと使用し、その状態で衝突した結果、再生不可能のほねほねミンチと化した《看守長》の残骸から身を起こす。

周りをキョロキョロ見回すと、既に他の《看守》は逃げたか倒され、周りには大量のクレジットが存在していた。

 

「あいつら逃げたのか?前回は《看守長》が殺られた途端に突っ込んできたのに?」

 

「そういう場所に来たか………《看守長》よりもヤバい奴が来たか」

 

「そうあう思わせぶりなフラグは要らねえぞ。オイ、要らねえからな!」

 

SCAR-Lを持つスカルフェイスの男に指をさしてフラグを折らんとする。

しかしその腕は、虚空から現れた死神の鎌によって見事両断され宙を舞った

 



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死神の鎌

どうも。最近BO2でMMTM……もちろんメメント・モリやリスペクトクランでサーチ&デストロイしてるんですが、メンバーが2人加わりました。合計3人……w
なんで入ろうと思ったんですかねえ……。
あ、最近はタボールにサプレッサー+グレネードランチャーです。サブでダメージ与えてグレでだめ押しします。
盾が来た時はグレ×2にC4で始末します。
他はPDW サプレッサー+レーザーサイト+フォアグリップでしょうか。
反動がクソと言われてますが、現状で一番キルしてるのはこれですね!先日も外国のVCプレイヤーを血祭りにあげました。12K 3Dでした。



 

 

「な………はっ!?」

 

眉を顰め睨みつけるのは肘から先の消えた右腕、赤いポリゴンを煌めかせて宙を飛ぶ腕、虚空を彷徨う恐ろしい死神の鎌。

 

「クソがっ!やられた!」

 

切られた腕から出血ポリゴンが噴き出す。

グングンと体力ゲージが減っていき、全体の3分の1で一度止まり、そこからゆっくりと減少する。

 

「っ、くっ……援護援わひぃぃ!?」

 

出血状態によって体力が全損するのを防ぐために右腕の肘部分の傷口を左腕で抑え、敵の攻撃を避けるために自分から床へ倒れる。

ビュンッと風を切る音、頭の数㎝上を通り過ぎる鎌、ヴァーチャル世界で冷や汗が頬を伝い、「ひ、ひぃ!?」、と情けない声を上げて両足だけを使ってずりずりと後方へ這って逃げる。

 

「お、オイオイ………。《看守長》の次は宙に浮く《鎌》かよ…、ハハ、ハハハハッ!おもしれェ!」

 

「違う、亡霊タイプだ。気を付けろっ!」

 

誰かに戦闘服の襟首を掴まれてズルズルと後ろへ運ばれるーースカルだ、スカルが俺を後ろへ連れて行っているらしい。

 

「亡霊タイプは光学銃が苦手だったかぁ?へいバニラ!いっちょ撃ちまくれ」

 

「ちょいちょいチョコちゃん、髭面のゴミが私に話しかけてきたにゃー、ひっじょーにウザったいにゃー」

 

「うんうん、ボクも聞いてたけど背筋が凍ったかも、女として自分を守ろうって本能やつ?」

 

「お、おま」

 

「「生理的に無理(にゃー)」」

 

バフォメットとバニラ、チョコが言い争いをしている。

この3人、何故だか仲が悪い。

今は俺が間に(強制的に)挟まれてなんとかやっていけてる感じだ。

嘘だ、この3人の板挟みでもう精神がボロボロだ、代われるなら誰かかわってほしい。

 

「このくそチビ!」

 

「うっさいにゃー!」

 

「ボクのスパスが火を噴くかもよー?」

 

バニラチョコに対してギャーギャーと喚くバフォメットの銃は今まで使っていたMG4ではないーーー、欧州製のSCARを分隊支援火器モデルに改造し、更に改良させた《HAMR》というライトマシンガンを装備していた。

 

この前デザートスコーピオンことレンに殺られた時、運悪くMG4ライトマシンガンをランダムドロップしたバフォメットだったが、本人曰くそろそろ替え時だったようで何か売ってくれと俺に頼んできたから数ヶ月前のアップデート後に手に入れたHAMRをべらぼうな値段でふっかけてやった。

所持クレジットの殆どを注ぎ込んで泣く泣く買い取ったHAMRだが、結構気に入っているらしく、ことあるごとに俺に見せつけてくるようになった。

……………まあ、あと一丁ホームの方に飾ってあるんだけどな、面白いから言わないでおく。

 

「って、今はそうじゃねぇだろ!?お前ら逃げろ!」

 

ツッコむ、が、遅かった。

実体を持たぬ存在が、手に持った鎌を一振りしてサクッとチョコの右肩を深々と切り裂いて行く。

 

「ぅぁぁぁぁっ!?痛い痛い痛いぃぃ!?」

 

「ち、チョコちゃん!?にゃぁぁ!?れ、れれ、レイストームが効いてないにゃー!」

 

「畜生!おいアリーヤ、光学銃も実銃も効いてねぇぞ、こいつ!」

 

チョコが斬られた瞬間にそれぞれの獲物で亡霊を撃ち抜くバフォメットとバニラだが、光学銃が放つ光弾も、実銃から飛び出る実弾も亡霊の体を悉く通り抜けて行った。

 

「(実銃も光学銃も効かない?)くそ!……敵を把握しろ、《GHOST》!」

 

『敵スキャン開始』

 

音声認識によって起動したゴーグルから色々な情報が飛び交い始める。

透明度のクリアな光学レンズ上を数字や生態ベース、弱点、考察・仮定・推測・結論などが所狭しと画面を埋め尽くし、更にゴーグルと一体型のヘッドフォンセンサーから目に見えないなんとかかんとかフォトンレーザー光各種が前方へ照射され、敵の《解析》を開始する。

 

『スキャン終了』

『実体の有無を確認』

『亡霊type 思念体モンスター《処刑人》Lv???』

『罪人を何百と断頭してきた処刑執行人の鎌が未だに血を欲して彷徨い続ける………といった設定です。評価→B-』

『実銃→効果ナシ』

『光学銃→効果ナシ』

『鎌→本体』

『対処法=幽体には効果が無いので鎌への直接攻撃が有効でしょう』

 

ゴーグルのレンズからはテキストが、両耳を覆うヘッドフォンからは無機質な音声が次々に流れていく。

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、いたぁっ、か、肩……肩が……痛い…痛いよぅ………」

 

「こんな亡霊モンスターなんて見たことないにゃー!?怖いにゃー!!」

 

「がっ!くそ、このヤロォ……!」

 

セーラー服を意識した戦闘ベスト共々右肩を斬られて出血ポリゴンを煌めかせるチョコが床に横たわりながらゴロゴロと転がる。

一方バニラはチョコの周りをグルグルと回りながら頭を抱きかかえて絶叫している。

その2人を無視した亡霊は鎌の切っ先をバフォメットの奴へ狙い定めたようだ、回収するなら今だろう。

 

「はぐメタ、援護する。あの2人を下がらせろ。アリーヤ、何か分かったか?」

 

「うぃーす」

 

ビュン、と体が霞んで見えなくなる速度でバニラチョコの元へ駆け抜けた《はぐメタ》はそのスピードに気付いて自らに向けて振り下ろされた《処刑人》の鎌を、さも当然とばかりに軽やかに避けてバニラチョコを引きずって退がる。

 

「いつもながら速いなぁ……あいつ。スカル、《処刑人》の本体は鎌だ。鎌の部分なら効果アリだとよ……チョコ、注射器打つから動くなよ」

 

片腕を切り落とされてしまったのでMP7A1はスリングを肩にかけてブラブラと提げておき、ポーチから応急手当用のアイテムを取り出して首筋にブスッと突き刺す。

1本2本と突き刺して体力回復を図り、肩を切られた痛みでぐったりしているチョコの体力も回復させてやる。

 

「《処刑人》という名前には納得したが…そうか、鎌が本体なのか………お前のソレが無かったら立派な初見殺しだ、まったく」

 

呆れるようにため息をついてSCAR-Lの引き金を軽やかに引き絞る。

銃口から発射させれた弾丸が幽体の持つ恐ろしい鎌に命中すると、幽体は体をくねらせて嫌そうな悲鳴を上げた。

これで《処刑人》の殺し方は判明した。

あとは全員でこいつをタコ殴りにするだけで……。

 

「………お、おいおい、アリーヤぁ〜。やべえぞ?いつの間にか囲まれちまってっぞ……」

 

注射器を肩に打ち込んで体力を満タンにさせるバフォメットが頬を引きつらせながら敵の出現に気付き、俺たちが囲まれていることを知る。

 

「………今一番聞きたく無い言葉だったよ……はぁ」

 

くるっと振り返ると、そこには10体程度の《処刑人》達が本体である《鎌》を両手で保持してこちらへと迫っていた。

だが、既にこいつらの弱点は分かっている。

 

「敵の本体は《鎌》だ。見た目に騙されるな!」

 

スカルの叱咤とともに他のプレイヤーによる容赦の無い銃撃が始まる。

銀髪の女性プレイヤー、サラはMK3A1ショットガンを、はぐメタやジムは光学銃を、ソープ、プライス、ユーリはM4A1を各人の判断で迫る《処刑人》を撃ちまくる。

 

「アリーヤ、鎌が本体?」

 

「ああ、ヘッドショットゾーンがあるかどうかは分からないが……あ、サラが一体倒したな」

 

銀髪のサラが放つショットガンの連撃に幽体が持つ死神の鎌がボロボロに砕け散った。

それと同時に幽体は悲鳴を上げてもがき苦しみ、いつの間にか消滅した。

 

「おっけ、分かった」

 

傍に寄り添うグレンは装填レバーを引いて、《MK11 MOD 0》に取り付けたスコープを覗き、タンタタン、と引き金を引く。

徐々に再生していく自分の右手を眺めていると、肩を切られたチョコがもぞもぞと這いつくばってきた。

 

「アリーヤぁ〜痛いかも……」

 

「う、うわぁ……なんかグロ……」

 

肩がぱっくり割れてそこから出血ポリゴンが飛び出ている。

肝心なグロゾーンがもろに飛び出ているためになんだか見てると気分が悪くなる。

 

「リロードします!」

 

《処刑人》3体を相手に肉薄しつつ容赦の無い弾丸雨あられを浴びせていたサラがバックステップで距離開けつつMK3A1の弾倉を交換する。

そのサラの声に反応したかは不明だが、ジャックが両手のフォトンソードを煌めかせて突撃敢行、瞬時に2体の《処刑人》を屠る。

残り8体。

 

「我が栄光に乾杯ーーーーー!!!」

 

「………………は?」

 

目の前にプラズマグレネードの爆風が迫った。

 

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、ピトフーイさんは初期のGGOからやってるんだ!」

 

「うんうん。あ、別に敬語使わなくていいわよ。それに私の名前、長いって周りもブーブー言ってるし、普通にピトって呼んで」

 

GGOでも数少ない女プレイヤー《ピトフーイ》との会話は、レンにとっては貴重であり、時にあるある、と言いそうなものであり、楽しいと思える時間だった。

 

「それで、レンちゃん。私とスコードロン、組まない?」

 

彼女……ピトがそう切り出したのは、レンがソフトドリンクをお代わりした頃合いだった。

 

「あ、ごめんなさい。私…最近スコードロンに入ったばっかりで…」

 

「そこ!また敬語になってる。ふむふむ、それならしゃーないね。因みにどこ?」

 

「《レイヴンズネスト》っていう」

 

それは、《アリーヤ》がリーダーを務めるスコードロンだ。

 

「……あー、アレか。レンちゃん、悪いことは言わない、あそこはやめときなさい」

 

「……へ?」

 

「あそこのスコードロンのリーダー、《サンタクロース》でしょ?……て、レンちゃんには分かり辛いか。確か《アリーヤ》とかって名前だったっけ」

 

《サンタクロース》、それは、アリーヤの通り名だろうか?

 

「うん、そうだよ」

 

「あいつのスコードロンが他所でなんて言われてるか知ってる?『初心者ホイホイ』スコードロンってねー。GGO初心者をあの手この手で勧誘して引き込むから他のスコードロンからは嫌われまくり。数少ない女プレイヤーも結構あそこにいるから羨ましがられるのよ」

 

「へー」

 

なら、ピト以外にも女プレイヤーがGGOでプレイしていると言うことか!

 

レンのGGO熱が更に加熱された。

そんなレンを見て、ピトは頬杖をつきながら忠告を促した。

 

「あそこのスコードロンメンバーってだけで狙われるから、あそこだけはやめといたほうがいいわよ」

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

 

 

 

「ぅぉおえあああ!!?」

 

プラズマグレネードの爆風で弾き飛ばされた俺は《監獄》内部の壁に激突してせっかく回復していた体力の半分を減らされた。

一体何が………、そんな疑問を浮かべた俺に対してジャックが至極つまらなそうに一部始終を語る。

 

「バフォメットのォ……ハンニバル灰とかいうクソ野郎だァ。あのヤロ、トチ狂って自爆しやがった」

 

「………」

 

恨めしい目つきでバフォメットを睨み付けるとあいつはてへぺろの仕草をしていて亡霊にサクサクと鎌で斬られた。

別の場所ではバフォメットのスコードロンで大いに苦労しているだろう銀二がペコペコと米つきバッタよろしく頭を下げていた。

 

「………俺、これ以降あいつのスコードロンメンバーは参加させねえわ。あとあのバカは報酬なしな」

 

「それが賢明だ。今ので近くにいたソープが死亡、プライス、ユーリが重症で動けない。一旦引くか?」

 

現状を把握していたスカルは手榴弾を正確に投げて亡霊の鎌に当てる、亡霊は見事に爆散して粉々になると同時に他の亡霊にも威嚇射撃する。

 

「ここまで来て冗談だろ?それに俺、今日はゴーグル持ってきてるから死ぬのは辛い」

 

《特注品》を外してペロッと舌を出す。

今の所この《監獄》の破壊方法が分かっていないが、まずはこの亡霊共を片付けてからの方が都合が良いだろう。

 

「わぁい!復活ぅーいぇー!」

 

「チョコちゃん復活にゃー!」

 

チョコとバニラが戦線復帰、《処刑人》たちはその後すぐに全滅して場に落ちたクレジットやドロップアイテム(落ちてるアイテムの3分の2がレア物)も回収して監獄内部を探索する。

 

「地図があるぞ。…ここ、地下があるな」

 

放置されたテーブルの上に内部地図があり、それを囲んで作戦会議をする。

 

「隊を分けるか?上を目指す方と地下を探索するチームで一旦様子を見ようか?」

 

その地図によると、俺たちのいる一階は本来囚人を処罰する処刑場という設定らしい。

上の二階は食堂、三階には図書室と《獄長室》、4階は屋上。

地下は…………マズイな、ゲームの特有の、イヤらしく地下部分の名称だけ掠れて読めない状態になってる。

こういう時って大体ボス級とかなんかヤッベーモンスターに一撃死級の初見殺しがわんさかいるんデスヨネー。

 

「まあ、ここまで見れば地下には強力なモンスターがいるだろう。それまでこちらの体力が持つかどうかだな」

 

ーーー体力、それは言葉通りの意味であり、同時に残マガジン数やアイテムの数を意味する。

このまま長期戦になればフォトンソードを所持しているジャックと俺以外は戦うことすらままならなくなるだろう。

 

「援軍でも呼ぼうか、来るには最低でも10分程度は掛かるけど」

 

「噂の冒険支援部隊か?」

 

「俺のスコードロンは初心者やカモられるプレイヤーに優しくてね。敵に襲われた時や強いモンスターが現れた時用にローテーションでそういう奴らを組んでるの」

 

俺のクレジットで専用のヘリを数台購入しているので恐ろしく速い速度でここまで救援に駆けつけてくれるだろう。

 

「それなら隊を分けて行動、片方に何かあったら救援を呼ぶ。これでどうだ」

 

「悪くない、賛成」

 

「俺もだァ」

 

「それで良いゾー」

 

「良いと思います。それと、うちのバカが先ほどはすみませんでした……」

 

頭をぺこりと下げた男前のプレイヤー、銀二に気にするなよと言って慰める。

その後は火力等に秀でた半分を下に、それ以外を上に送る隊を分け、相手モンスターの分析が出来る《特注品》を扱う俺は必然的にヤバそうな地下へ送られることとなる。

 

地下探索組

《アリーヤ》、《サラ》、《ジャック・ザ・リッパー》、《ユーリ》、《プライス》、《バフォメット》、《サトウ銀二》

 

上階探索組

《バニラ》、《チョコ》、《池尻》、《スカル》、《はぐメタ》、《牛カルビ》、《ジム》、《グレムリン》

 

 

 

上下階二つに分けられた探索が、始まる。



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追い剥ぎは紳士の嗜みです

どうも、最近レインボーシックスシージを買いました。
しかし遊ぶ暇がないのとオンラインに接続してないので遊ぶことができなかったりします、なんで買っちゃったんでしょうね。






『シュコーシュコーシュコー』

 

袖や足首を覆うずんぐりとした白いスーツ、背中にはどでかなバックパックと、そこから連なるホースは緩やかな曲線を描いて頭部フルフェイスへと繋がっている。

地下にある廊下をウロウロと彷徨う研究者然としたエネミーだ。

 

『研究者A(非戦闘員)』

『戦闘力5』

『攻撃手段無し』

『⚠︎敵発見時→増援を呼ぶ特殊な電波を発信します』

『可能な限り姿を見られないように行動もしくはサプレッサーやナイフを用いたステルスキルが好ましいでしょう』

 

戦闘力たったの5か……ゴミめ。

そう言いたいところだが、こいつは危険を察知すると仲間を呼ぶらしいので出来れば見つかりたくない。

極力近づかない方が良さそうだ。

 

「………行ったぞ」

 

「OK……ったく、敵への攻撃がダメとか…ストレスが溜まんなァ」

 

「勘弁しろ。今の所、攻撃手段はお前の光剣か俺のサプ付きMP-7。はあ、火力組を集中させたのが不味かったか」

 

研究者Aの後ろをコソコソと動き出す影。

監獄攻略に乗り出して30分は経ったか、未だ攻略の糸口が見えない監獄の地下を何か手掛かりを求めて探索する。

 

「おらっ!」

 

『シュコーシュコーシry』

 

バキッ!!

 

「え、ちょ、まっ」

 

バフォメットが背後から近付き、科学者の頭をぶん殴った。

科学者は耐久力もないのか、そのまま床に倒れて昏倒した。

 

「コソコソ行動する気はねえぞ。どうせこのヘルメットで顔はバレねぇだろ。堂々と行くぜ」

 

堂々と追い剥ぎを開始し、堂々と敵の装備を着こなすバフォメットの顔は実に輝いている。

うわ、マジあいつドン引きだわ。

 

「追い剥ぎかァ。面白えこと考えるじゃねえか!」

 

「あ、おい……」

 

男組は俺を除いて嬉々と追い剥ぎを開始し、女性組は仕方ないかとばかりに渋々研究者の死角から近づいて一気に倒すと追い剥ぎを始める。

 

「………」

 

『おい、なにやってんだァ?早くしろよ』

 

『そうだぜアリーヤ』

 

「………なんかなぁ……?」

 

釈然としない思いに頭を傾げながら俺も追い剥ぎ同盟の一員に加わる。

 

『研究者のホイッスルを入手しました』

『効果→仲間の研究者Aやガードメカなどを呼び寄せる』

 

「ふーん?一応装備しとくか」

 

使い道はないだろうけどこれを持ってるか持ってないかで敵判定されるのはゴメンだ。

とりあえずは……お、やっぱりだ。

 

「地下マップはっけ〜ん♡これは3手に分かれてお宝探しだな」

 

幸か不幸か追い剥ぎした研究者の装備一式、それも頭を覆い隠すヘルメットには地下施設の情報が詳細に記されてるデータが残っている。

くそうバフォメットのニヤニヤが頭に来るぜ……

 

「なら光剣を持ってる俺とアリーヤは別々だなァ。俺がいちゃオメェの獲物がねェからなァ」

 

いや、俺は穏便にスルーする側だぞ?

お前と行動してたら体力がどんだけあっても足らねーよ、あとSAN値。

 

「んじゃ、俺、《サラ》のアルファ、《ユーリ》、《プライス》のベータ、《バフォメット》、《サトウ銀二》《ジャック》のチャーリー、でどうだ?」

 

「ん、悪くねェ」

 

「銀二となら俺も構わせねっゾ」

 

「こいつらは俺が責任持って管理しますので」

 

「「……こくこく」」

 

「よ、よろしくお願いしますね!」

 

よし、まずマップを見る限り地下の階層は全3階、そのうち地下1階は部屋が40、地下2階は25、3階は2部屋しかない。

そんで1階は研究者Aや警備兵A・Bしかいないからこの階層は一般研究者の居住区だとか実験室だとか。

2階にはキメラ系や改造された罪人、化学兵士、エリート研究者、警備兵C・Dがいるらしく、こっちの方はマッドな研究や機密が保管されてる場所だ。

当然宝物も期待出来る。

そして最後に、3階………unknown。

 

「まず誰がどこを行く?俺は1階か2階か」

 

1階は何もなさそうだけど、俺は一応マップにある部屋とか隠し部屋は全て潰す派だから、一応ね。

 

「ハッ!決まってんだろ?もちろん俺は3階に行きてェぜ」

 

どうせボス目当てだろコイツ。

 

「まぁ、どうせそこにボスが居っだろうからなぁ」

 

「俺たちが2階を先に調べて3階のボス情報を調べる、その間に2チームで一階を調べ切った後合流って流れですか」

 

流石銀二、考えなしのバカスコードロンを実質纏め上げている名参謀!こいつに来てもらって本当に良かった。

 

「だな、プライス、ユーリもそれで良いか?」

 

2人を見ると、既にM4A1にサプレッサーを取り付け、ストレージの中に格納する。

まさかサプレッサーを持って来てたとはな、討伐戦でサプレッサーなんて代物、持ってくんのは俺ぐらいだろうと思ってたんだけどね。

 

「よし、その案で行こう。サラ」

 

「あ、はい!」

 

サラを伴った俺のアルファ、プライス、ユーリのベータは一階の探索、ジャック、銀二、バフォメットのチャーリーは2階に降りるための階段へ向かう。

 

「さて……と。敵だ、出来る限りスルーする」

 

「はい」

 

前方に二人組の研究者A。

軽く会釈をするとあちらも返して来る。

そして何事もなくすれ違って離れる。

会釈し返して来るとは、このゲーム流石だなぁ、と思いながらもすぐ近くの扉に近付く。

 

カシャン、と自動ドアが開く。

ヘルメットから扉の承認許可が降りましたとあるのでこの研究者装備一式は思いの外地下を探索する上で必須な物らしい。

くそ、またバフォメットのバカがニヤニヤしてるような気が……。

 

「中に入ろう。……自然にな?」

 

「は、はひ」

 

中に入ると、そこには数人の研究者Aと実験中のモンスター、更には人一人分の試験管もある。

よう、と手を挙げるとこちらを見らずに手を挙げ返してくれたので敵だとは思われてないようだ。

今の内に必要な情報を書類から、後は必要そうな物か価値のあるアイテムを探す。

 

(……特に何もない。次に行こう)

 

あるのは実験中のモンスター(どことなくピカ◯ュウに似ている)ぐらいだ。

この部屋にはもう用がないので別の部屋に行く。

そこでは研究員マニュアルとやらがあって、中身は地下1階から2階に出て来るモンスターの装備や特徴とかだ。

見た内容をスクリーショットに写して他のプレイヤーに送っておく。

さあ、次だ。

 

「何か良いものは………おっ♡」

 

入ったのは開発した試作品を置いている保管庫。

どれもが光学兵器であまりレア度は高くないものが大半だが、毒ガスや催眠ガスなどの武器がある。

 

「めぼしいレア武器はぜーんぶ掻っ攫って行こう」

 

「はい!」

 

サラも興奮冷めやらぬ口調で返事をしてストレージの中に光学銃を仕舞っていく。

3分くらいで良いものを奪ったら即座に部屋を出る。

 

『ーーー?』

 

(げ……警備兵A)

 

警備兵Aはスタンダードな野戦装備にガスマスクを着けた奴で、侵入者の迎撃やパトロールを行うタイプで研究者に比べてステータスも装備も段違いだ。

どう躱すか考えるが、逆にこいつの装備を追い剥ぎすれば好都合じゃないかと思い直す。

 

「………」

 

「………!」

 

サラにはメッセージで警備兵を殺して装備を奪うと送っておいた。

敵の警備兵は3人油断させて一気に不意打ち決めれば十分だ、十分イケる。

ジェスチャーで中に入れと仕草で警備兵を誘い、警備兵×3を保管庫に招く。

3人とも中に入った所でガスマスクがカバーしていない首を背後から光剣でサクサク刺していく。

BO2やMW3などで近接武器でのバックアタックは慣れている。

フォトンソードの出力を手の平大に調整して突き刺すのではなくスッ、スッとなぞるように動かすと、警備兵は何の抵抗も声を出す事もなく呆気なく倒れた。

 

「よし、着替えよう」

 

「そうですね」

 

研究者装備一式を解除して警備兵装備一式に変更する。

ガスマスク、ハーフヘルメット、ホイッスル、警備兵証明証、コンカッション×1、光学銃『ライトガン』(レア度は低い)軍用ナイフ、と言ったところか。

研究者装備一式×2と警備兵装備一式(警備兵の死体は装備を残して消滅した)を部屋の中の空いてるロッカーに押し込んでおく。

 

一応地下組に警備兵装備に着替えたことを伝え、また別の部屋に行く。

 

「お、S&W M500だ。貰っとこ」

 

途中休憩室?の自販機にリボルバー最強の呼び名の高いS&W M500が缶コーヒー(150クレジット)のおまけ商品で出ていたので缶コーヒー8回購入(1200クレジット)して見事M500を頂戴し、1階の探索はほぼ完了していた。

 

「隠し部屋は今の所無いな」

 

「ですな。アイテムもあんまりレア度の高い物はなさそうですし、合流して下に行きますか?」

 

サラの言葉にそうだなと頷いて階段を目指す。

プライスとユーリは残りの6部屋を探ってから下に行くらしい。

彼女たちもそれぞれ試作光学銃(レア度は中くらい)をゲットしているが、どうやら1階よりも2階〜3階の方が良いものを置いてあるor開発して保管しているらしい。

2人から後の探索は任せて欲しいとメッセージを貰ったので俺とサラは2階に降りてジャック達の手伝いをすることに決めた。

 

2階への階段に近付くと警備兵B×2が階段付近でストレッチをしていた、どうやら相当に暇らしい。

警備兵Bに手を挙げると陽気な態度で手を振り返して来るのでそのまま階段を降りた。

…………仕様とはいえなんて杜撰な警備とAI思考だよ。

 

「……この警備兵A装備じゃ2階は厳しいな」

 

現在2階では化学兵士、エリート研究者、警備兵C・Dが廊下を歩きながら野戦服にガスマスク姿の警備兵A装備をした俺とサラを凝視している。

このまま訝しみ状態が続けば敵にバレてしまうのも時間の問題かもしれない。

……………こりゃ、追い剥ぎかな?

近くの部屋を軽く見ると誰もいないようだ。

キョロキョロとワザと不審に見える挙動を行うと、おもむろに警備兵Dが2人、此方へ向かってくる。

 

「よし、中は誰もいない。中でアレを倒して追い剥ぎ。おーけー?」

 

「はい!」

 

自分にしか見えない装備欄を空中に出現させ、『解除しますか?YES』部分に触れるか触れないかの状態で待機させる。

そして中に警備兵Dが入室する。

奴はすぐさま俺の方を掴み、室内戦で有効なショットガンを此方へ構えてーーーー。

 

「ほい、処刑」

 

引っ張られる反動を利用して敵の背後に回り、警備兵Dの頭を掴んでグギッと回す。

みんな大好きバイオハ◯ードのハ◯クというキャラクターが使う処刑という近接技だ。

至近距離じゃ無いと成功しないのと俺専用装備の《GHOST》装備時でなければ使えないのだが、その威力は文句無しだ、つまり、敵は死ぬ。

 

『ーーッ!?』

 

「逃すか」

 

グギッ!!

 

もう1人がホイッスルを使う前に金的を蹴り、背後に。

首を折られた警備兵Dは相棒と共に消滅した。

 

「さて、追い剥ぎしますか」

 

最初は乗り気じゃなかったけど今は積極的に追い剥ぎをこなす自分が恥ずかしいデス。

しかし今はアルカトラズ攻略のために躊躇っている場合では無いのダーーー!!

 

「よし、行こか」

 

現在の装備♡

 

ガスマスクD、ハーフヘルメットD、ホイッスル、警備兵証明証、コンカッション×3、光学銃カテゴリーショットガン『ブリッツイェーガー』(レア度は高い)軍用サバイバルナイフ。

うむ、警備兵Aよりもレア度、ステータス共に高い。

警備兵Aじゃチョコ迷彩の野戦服だったのも警備兵Dじゃデジタル迷彩の特殊部隊風になってる、カッコいい。

 

「バフォメット達は……20部屋まで見てるか」

 

メッセージ機能で追い剥ぎ行為と装備の詳細をバフォメット達に伝えると、銀二から2階の20部屋は見回った、という文が届く。

それならあと5部屋はこっちで回るから先に3階に行っておけ、と返しておく。

 

『トラトラトラァァ!!』byジャック

 

「訳が分からないよ(困惑)」

 

我、奇襲ニ成功セリ、とか意味わからん。

首を傾げながらサラと残りの5部屋を見て回る。

 

1つは罪人を某ライダー番組のショッ◯ー軍団みたいに改造する実験室。

2つ目は高威力高レアの武器を保管する武器庫。

3つ目にはベースのモンスターと素材のモンスターを組み合わせたキメラを徘徊させている部屋。

4つ目の図書室には『クリスタルプリズン』のことを記された日記?らしきフラグアイテムが。

5つ目は特に何も無かった。

 

「お宝ざっくざっくでございますなぁ♡」

 

お陰で口調もテンションもおかしくなった。

なぜなら、ボス戦でも無いのにたかが武器庫でデザートイーグル×3、F2000×4、SL9SD×1、VSS×1、XM25×1が見つかった。

防具にしても防御性能の高いジャガーノート装備(激レア)×3など、もうウハウハ♡状態だ。

ただ、ジャガーノート装備なんて普通に持てる訳ない為、プライス、ユーリ、俺がジャガーノート装備を着込んで3階に降りることになった。

 

「よし、じゃあ1階と2階に置いてきたホイッスルを鳴らすぞ」

 

合図の後、耳障りな音が廊下中を鳴り渡り、2階に存在するエネミーが全て音の源へ駆け出していく。

これは敵の存在を知らせるホイッスルを遠く離れた場所に設置して遠隔操作で鳴らしただけだ。

それでも警備兵やキメラ達は強制的に音源に向かうよう設定されてるらしいので今地下3階へ続く道のりに敵はいない。

 

「お、スゲー。ジャガーノート装備って、着けると筋力値がめっちゃ上がるやん♡」

 

「ほんと……凄い」

 

「これ、気に入っちゃった!」

 

無愛想なプライス、冷静なユーリがジャガーノートの性能に興奮する。

いや実際俺も興奮してんだけどね。

 

「よし、3階に行こう」

 

サラ、プライス、ユーリが頷くのを見て3階へ降りる、ジャック、バフォメット、銀二はいない。

目の前には2つの部屋、二分の一。

 

「サラ、プライス、ユーリ」

 

3人が戦闘準備に入る。

俺も武器としてF2000二鳥で行く。

なに、筋力値ステが半端なく上昇したのでF2000を片手で撃っても反動が無いのだ。

ただ、マガジン交代が出来ないのが難点なんですけどねw

 

仕方ないのでジャガーノートの装甲にマガジンポーチを取り付け、ジャガーノート同士が寄り添うことでマガジンを簡単に交換出来るようにした。

 

「あっ、忘れてた。ジャック達にメッセージ打っとこう」

 

銀二にメッセージを送ると、すぐに生存報告が帰ってくる。

どうやら右側の部屋にいた門番らしきモンスターは既に撃破、今は左側で待機中だとか。

そんで、入るなら左側から入って欲しいとか。

 

「よー、どんなかん、じ………え?」

 

ドアを蹴飛ばして中になだれ込むと、目の前にはライオン+鳥+イノシシ+わんちゃん+〜だとか色々なモンスターが融合したキメラちゃん(オス)がこっちを見ていてその後ろにはクリスタルプリズンのコアらしき球状態の塊、あと隅っこの檻の中に3人の男プレイヤー………。

 

「えっ、捕まってる………」

 

引き金に指を置くのも忘れてバフォメット達を見ると、てへぺろっとバフォメット、気まずそうに銀二、くぁっ、と呑気に欠伸をするジャック。

 

「グギャァァァァァァァ!!!」

 

「え、ちょ、待っ………」

 

唖然としていて固まったままの俺にキメラモンスターが襲いかかった。

 

 




ジャガーノート装備……プライス、ユーリ…屋上……うっ、頭が……。


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3人組の場合

 

ジャック・バフォメット・銀二

 

 

「さっさっさー行くぞオラァー」

 

「おーいぇあー」

 

「はぁ……」

 

俺とバフォの奴と銀二の3人は地下二階を先に見ることになったァ。

にしてもunknownボスかァ、ハッ、楽しそうじゃねえか。

つって、ンだ?モブが俺らをずっと見てやがる。

 

「待て。……そうか、この階に降りると今着てる装備じゃ敵にバレるらしい。多分服装でどの階層のエネミー指定がされてるんだろう」

 

「んなら追い剥ぎすりゃいー話だ」

 

「だなぁ、おっ、早速こっち見てる奴いるしあいつでいいだろ。手早くやっちまおうぜ」

 

カシャン

 

『ーーー』

 

「オラァ!」

 

「どっせい!」

 

「ふっ!」

 

中に入ってきた野郎は2体、まず俺が1人目をブン殴って転かす、バフォの野郎が執拗なまでに股間を蹴りつけるゥ、オゥありゃ死んだな。

んで、ハッ、銀二の野郎密着して床に落としやがった。

独特の呼吸からして合気道って奴かァ?

あれはリアルで習得してんな。

 

「ふう、1人余りモンが出んなァ?」

 

「あ?ちょっと待っとけ」

 

「?」

 

「またバフォメットの考えだ。深く考えずに先に着替えよう」

 

ン、そうかァ。

まあ、それならしゃーねーな。

 

カシャン

 

「よーよー。んじゃちょっくら死んでくれや。あらよっ……と」

 

『ーーッ!!?』

 

バフォメットの野郎は敵の頭を引っ掴んで膝をぶつけて曲げやがった。

銀二が合気道とすっと、こいつの場合はチンピラ殺法だなァ。

 

「追ーい剥ーぎ♪追ーい剥ーぎ♪追ーい剥ぎ♪剥ぎ剥ぎ♪」

 

んだあの歌……下手過ぎだろアイツ。

 

「チッ、下手くそな歌歌ってんじゃねーよ。とっとと行くぞオラ」

 

「ちぇっ、とりあえずここは何もねえからな。銀二もそれでいいだろ?」

 

「…ああ、そうだな。次に行こう」

 

カシャン

 

「さて、近くから回っとすっかァ」

 

「掘り出しもんでねぇかな?アリーヤからHAMR買ったばっかしで金増やしときてえんだよ」

 

「お前はそれに加えて弾薬費が掛かるからな。今回の討伐戦で良いのがあると良いんだけど」

 

へぇ、バフォメットの野郎、MG4からHAMRに買い換えたんか。

……こいつの言い草だとアリーヤに相当吹っかけられたみてェだなァ、ったく、あいつもえげつねぇ商売するぜホント。

……それでいて初心者とクランメンバーにはどんなレア銃も金とステータスと戦闘スタイルに合わせてお手頃な値段変えっからなァ。

どんな雑魚でもスグに良いモン手にはいっからとんだ食わせモンだぜ。

最初期から装備面で優遇されたらそこから離れたくなくなるってのが人のサガだァ。

アイツにはそこんとこが分かってる。

……ま、だからこそ他んとこからは妬みに妬まれてっからなァ。

数少ない女プレイヤーも結構数入れてっから恨まれんでだよなアイツ。

 

「こっちはなんもねーや。次々」

 

「ばっ、軽く見回しただけで何があって何がないかなんて分かるわけないだろ!こういうのはな、ちゃんと隅々まで観察することに意味があるんだよ」

 

「お前もしかしてドラ○エやり込んでたクチかァ?」

 

バフォと銀二と話しながら大体20部屋は回ったかァ。

手に入れた武器はRPD一丁、M27一丁、光学銃が四丁ってとこかァ?へっ、トレジャーハンター(笑)のアリーヤがいねえんだ、まァこんなモンだろ。

 

「アリーヤに連絡しとこう」

 

「おらー」

 

「ふぬぁー」

 

銀二に連絡は任せて俺とバフォメットは警備兵を挟み込みラリアットを決めて遊んでた。

アリーヤの野郎からはあと5部屋回るから先に3階に行っとけって連絡が来たみたいだな、ハッ、分かってんじゃねえかあの野郎。

 

「うっしゃー行くぞオラー」

 

「unknownとのご対面ってか。おーら

死んどけー」

 

呑気に階段を降りて3階に降りっと、門番らしきエネミーがいるが関係ねえ。

バフォメットがHAMRを撃ちまくって殺ろすか牽制、その間に俺が近付いて光剣でブスリ、これで終いだ。

 

「門番型か?盾……性能は良いが、要求筋力値が重いな」

 

「何もねえよりはマシだぜ。俺は肩に装備しとくか」

 

「オゥ、カッケーなァ、オイ」

 

バフォメットの野郎、カッケーぜ。

まさか大型の盾を肩に固定すっとはなァ!

アレなら盾で防ぎつつ敵を真正面から撃ちのめす事が出来ンじゃねえか?

 

「さっ、どっちから行く?」

 

「右ィ」

 

「右だ」

 

「よし、右からだな。フラッシュバンを投げる。突入はジャックに任せた、バフォメットは入った後のフォロー」

 

ヘヘッ、突入、室内戦、イイねえイイねえ、ヴァーチャル世界なのに身体ン中がフツフツと暑くなって来やがる!

 

「3、2、1……Go……!!」

 

カランカラン……パシィィィン!!

 

『『『ッ!?』』』

 

「ヒハハハハーーーーッ!!」

 

右手に持った光剣で目の前の奴をブスリ。

力任せに横に薙って隣の奴を両断。

フラッシュバンを喰らって目の潰れてる奴を蹴倒して目ん玉ブスブス。

途中拾った光学銃で弾をばら撒くよーに撃ちまくる、ヒハハ。

オラ?まだ来いよ、オイ、バカふざけんな。

逃げんな、逃げんじゃねえよ、オイ。

 

「ヒャハハハハーーー」

 

あーあ、最後の一体……終わっちまったァ。

 

「クリアしたぞ銀二」

 

「クリア。どんなにステータスが高くともフォトンソードじゃ一発か……」

 

「ヒヒヒ、もう終わりかよ。つまんね」

 

光剣の出力を0にしてホルダーに仕舞う。

後は追い剥ぎの時間だァ。

 

「ステアーAUG。こっちはFALだな」

 

「俺は…ああ!?ベレッタだァ!?クソがッ!」

 

「うぷぷ〜拳銃乙」

 

チッ、バフォメットの野郎は……MINIMIだァ?ざけやがって、クソッ。

 

「あークソ。とっととunknownボス部屋いこーぜ」

 

「んー、あー、そうだなあ。銀二もそれでいいだろ?」

 

「ああ、問題ない。行こう」

 

ドロップ品のショボさに苛ついた俺はボス戦に続くドアを蹴飛ばした。

すっと目の前に看板が……あ?

 

『♡トラップ発動♡』

 

「……………アァ゛?」

 

「げ、これって…おいおい」

 

「はぁ……やらかした」

 

トラップだ!?くそ、ふざけんな!こうなったら仕掛けが作動する前に部屋を出て……!

 

ガコンッ!!

 

「ぐっ、お、落とし穴ぁぁぁぁ」

 

「一撃死じゃないといいんだが」

 

「クソッ、落ちてまるかよォ!」

 

ギリギリでドアノブを掴んだはいいが、バフォメットと銀二は落とし穴に落ちてった。

チッ、床全面が落ちるとか初見殺しだろ。

 

『〜〜?』

 

『ーーww』

 

「ンだコラ殺すぞボケッ!?」

 

ドカッ

 

クソが、クソモブに蹴飛ばされて落とし穴行きだとか……クソ、ふっざけんなァー。

 

「ぁだっつ!?」

 

「おー、遅かったなあ。床が上がるまで粘った挙句落とされたって感じだな」

 

「応急手当てしたほうがいいか。ケアパケをだすから待ってろ」

 

痛え、クソッ、墜落ダメージで半分は持ってかれたか……こりゃアリーヤが落ちたら一撃死だな、アイツ脆いし。

 

「銀二、アリーヤに左から入れって言っとけー。あいつじゃコレ死ぬぞ」

 

「もう出してる。ジャック、注射器刺すぞ」

 

「あー。よりによって檻ン中かよ」

 

回復していくゲージを見ながら周りを見るに、ここは檻ン中、外にはきしょいキメラタイプが1匹、アイツがunknownボスか?

 

「て、アレ?なんか体力減ってんですけどーなんでえ?」

 

「「っ!?」」

 

バフォの奴が言ったと通り継続ダメージだァ?クソが、ここ……なんだこりゃ、液体?……、

 

「「もしかして硫酸か!?」」

 

「え?硫酸?ホワッツ?」

 

檻ン中見りゃ意味不明なホースが備え付けられてやがる。

これじゃ体力全損するまで時間の問題だぞ。

 

「ぐ、ホースから液体がどんどん」

 

「チッ、喰われてデスならまだしも溶けて死に戻りは勘弁だぞゴラァ!」

 

どうする、どうする。

そうだ、光剣でこの檻を纏めてすっぱ切っちまえば。

 

「つ、かえ、ねえ……。フォトン干渉地帯?この中じゃ光剣の出力制御ができねえってことかァ……!」

 

「不味い。こうなったら一か八か檻の中からunknownを撃ちまくって殺すしか無い」

 

「それかアリーヤの奴が来るかだな…おっ」

 

ドカッ!

 

「よー、どんな感じ…………え?」

 

アリーヤの野郎、なんだあの装備はァ?雑魚兵どもでもンなのは着てなかった筈だァ、とすると俺らが見てなかった5部屋の中にアレがあったってことかァ?

 

『オニチャァァーーーン』

 

「え、キモッ!?……って、えっ、捕まってる………アッ!?ちょ、まっ……」

 

バゴッ!!!

 

「ぐぶぉ……あ、死んだ」

 

『ゴロニャーーーン』

 

「ギャァァァァァァァ!!?何この子積極的ぃぃーーーーー!!?」

 

「「「ああ、死んだな」」」

 

 



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ボス戦…しゅーりょー!

どうもお久しぶりです&今回ガチ目の駄文、どうしてこんな意味不明な文章書いた?って思うかもしれないけど俺もちょっと何故書いたか分からないんだ……。


 

 

 

「よー、どんな感じ…………え?」

 

『オニチャァァーーーン』

 

どかっとボス部屋に入って最初に聞いた言葉がそれだった。

甲高い声に思わず耳を疑い、誰がお兄ちゃんやねんとツッコミ入れようかと目の前を見ると、そこには気色の悪いモンスターがいた。

そして、そのモンスターの向こう側、檻の中にはジャック、バフォメット、銀二の2人が捕まっていた。

 

「え、キモッ!?……って、えっ、捕まってる………アッ!?ちょ、まっ……」

 

バゴッ!!!

 

えぇー、と思考停止している隙を狙って気色の悪いモンスターがジャガノート装備の俺に対して強烈なタックルをお見舞いしてきやがった。

 

「ぐぶぉ……あ、死んだ」

 

強烈すぎるタックル、ジャガノート越しにダメージを与えられて悶絶する。

HPバーが四分の一程減って行くのを見て普通の俺だったら完璧死んでた!マジあぶねー!ジャガノート着ててよかった!ジャガノ最強!今の俺は超超無敵ィーー!!と喜んでいると………、

 

『ゴロニャーーーン』

 

「ギャァァァァァァァ!!?何この子積極的ぃぃーーーーー!!?」

 

俺を格好のおもちゃと考えてるのか知らんがボス?はジャガノートのあちこちに噛り付いたり引っ掻いたり挙句にはじゃれついたりしてきやがった。

 

「「「ああ、死んだな」」」

 

3人の声が聞こえる。

……うん、俺も実はそう思うんよ。

だってHPバーがガンガン減ってんだもん、これもう無理だわ、無理ゲー。

 

「さ、させません!」

 

あー、もう死んだわーと半ば諦めたその時、プレイヤーの1人がボスに対してタックルを仕掛けた。

 

『にゃぶー?』

 

「私が、相手でっで、でしゅ!」

 

左手にMK3A1と、右手に……別の銃、アレは、まさかSAIGA-12か!?結構なレア武器ーーーを持った女性プレイヤー、まぎれもない、ショットガン使いの《サラ》だ。

 

そのサラがSAIGA-12とMK3A1をモンスターち向けて一斉射した。

 

12ゲージ弾が次々にライオン+鳥+イノシシ+わんちゃん+〜のキメラ型モンスターへと突き刺さっていく。

そして、突き刺さった直後、物凄い衝撃、轟音、爆風が吹き起こる。

 

「まさかの炸裂弾!?」

 

しかも二丁!エロイ、その武器構成はエロすぎじゃね《サラ》!

 

「ふぅ、行きます!」

 

いきなりの炸裂弾に身を捩るキメラの顔面を蹴手繰ったサラの次なる攻撃は、SAIGA-12による目ん玉への殴打、更にグリグリとほじくりながらのからの炸裂弾ーーーッ!!

至近距離の爆発でHPバーの4割を失ったサラだが気にする風もなくまた一撃二撃と炸裂弾をぶちかましている。

………てかSAIGA-12の耐久力の方が俺は心配なんですが……。

 

『ギョェェーー!!』

 

「うわ、痛っ……鳥肌立たたた」

 

HPバーがなくても分かる、アレはクリティカルヒットだわ。

目ん玉グリグリほじくられて爆発ダメージもプラスされたキメラは目に見えて弱々しい。

しかしキメラは最後の意地とばかりに牙を剥き、一対の翼をはためかせた。

 

「撃て撃て撃て撃て撃て!」

 

タックルで倒された時に落としたF2000を2つ拾ってダブルトリガーで大柄なキメラの体を埋め尽くすように弾幕を張る。

《プライス》と《ユーリ》もM4A1に取り付けたグレネードランチャーをポンポン撃ってはまた装填して、ポンポン撃っては装填するを繰り返している。

 

「しゃー!ってお前ら!何捕まってんだよ!?バカじゃねぇーの!?」

 

俺も追撃をと思ったところでそういえば3人が捕まっていたな、と檻の方を見やった。

あの中は継続ダメージが掛かる特殊フィールド指定なのか3人のHPバーが緩やかに減っていくのが見える。

さっさと出してやらなければならないだろうが、あいつらの態度次第だな。

 

「うっせーゾ、アリーヤ!なんか落とし穴にハマったんだよ!」

 

「いい気ンなってねェーでこれぶち壊しやがれ!」

 

「すいませんほんと、ほんとすいません」

 

チッ、まあ銀二が謝ってるから許してやるか……それにしても3人が入ってる檻、固そうだな。

アレ、5.56x45mmで壊れるかな?

 

「あっ、そういやあれあるじゃぁーん」

 

ストレージを操作して取り出すのはここに来る前に手に入れていたXM-25だ。

 

これはアメリカで採用されているエアバースト・グレネードランチャーだ。

型式の25が示す通り口径は25㎜で、6発の榴弾を飛ばすことが出来る。

更に更に、この武器の真髄は放った榴弾を対象の上空で炸裂させることにある。

具体的に言うと……。

 

XM25は、内蔵されたレーザーレンジファインダーで目標までの距離を測定し、射手が目標の前方3m-後方3mまでの間で起爆位置を設定すると、薬室に装填された25mm弾の信管に信管測合機が自動的に起爆位置を入力する。発射後は25mm弾が自らの回転数で飛行した距離を測定して事前に決められた距離に到達すると起爆する。25mm弾は目標の上空で起爆することで、目標が塹壕や蛸壺・建物の中に隠れている場合でも被害を与えることができる。(ウィキ調べ)

 

つまりこれがあれば障害物や塹壕に隠れている敵がいたとしても簡単にキル出来ちゃう超優れもの!というわけなのだ!最強!無敵ィーー!!

 

恐らく俺が手に入れた武器でもアンチマテリアルライフルより使いやすくて性能も良いんじゃないだろうか。

 

つーか、まず、俺アンチマテリアルライフルとか筋力値と元々の技術力の関係で持つことは愚か撃って当てることすら不可能だしね。

マジあのドロップ品どうしよう……売るか?いや、でもなぁ…持ってるだけでステータスみたいなもんだしな……サーバーに数丁しかないって話だし……すげぇ迷う。

 

「まあいいか、あとで考えよう。っつーわけでぇーエアバースト・ランチャーいっきまぁーーす」

 

「「「やめろ!?」」」

 

XM-25を構えると檻の中の3人が口々に「それはシャレになンねェーぞボケ!」だの「お、おいおいアリーヤ!中に撃ったら俺ららも死ぬじゃねぇよ!?」だの「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」だの宣うので一先ず撃つのは止めることに。

 

「んじゃフォトン……あ?使えねえー…ってえぇー………」

 

フォトンセイバーのナックルガード付きグリップを捻るが青白い光が現れない。

何故だ?と首を捻ると『このステージでは使用できません』という警告文が。

ちっ、と舌打ちしてやっぱりXM-25で破壊することに。

 

「だからそれはやめろッつってンだろがァ!ゴラァ!?」

 

「いやぁぁぁぁ人殺しぃぃぃぃぃぃ!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

「お前ら隅に寄っとけ。後バフォメットの口塞いどけよ!集中出来んで手元狂っても知らんからな!」

 

「んほぉぉぉぁぉぉそんなこと言われれと疼きだぶぐっ!?」

 

「オーケー、この口うるせェバカは俺がなんとかしといてやるからとっとと壊せ!俺らに被害のない範囲でなァ!」

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!ん゛ん゛!?ん゛ーーー!!」

 

バフォメットの口を塞いでささっと右の隅っこに避難したのを確認して左側の最奥目掛けXM-25を撃つ。

空中で炸裂しないよう檻付近に撃つことで屈めば人一人分が通れる穴を作る。

 

「チッ、助かったぜ」

 

「あぁー窒息ダメージで死ぬとかシャレにならん……」

 

「お前がいらんことするからだ」

 

「サテ、とォ。ンじゃま、行くかァ……!!」

 

檻から出たジャックは犬歯を剥き出しにして笑いながら銃剣付きのハンドガン片手に投擲用の投げナイフやトマホークを目に見えないほどの高速でぶん投げている。

サクサクサクサクと突き刺さっているが、ダメージ入ってんの?アレ。

 

「これはァ、こうすンだァァァァァァァァァ」

 

「うおっ!?す、すげぇ」

 

「す、すげぇぇ!!ジャックちょーかっけぇぇぇ!!」

 

「絶対真似はするなよバフォ」

 

頭部まで列をなして刺さったナイフやトマホークを足場代わりにトントントンとボスモンスターの身体を飛び跳ねていく。

《アクロバット》スキルを上げていけば俺もあんなこと出来るんかな……スゲェやりてぇな…《真似事》なら…んー、イケる、か?

 

「うううゥゥァァァァァッ、ヒャァッハッハァァァァァァ!!!」

 

窮屈な檻から出られて狂喜したジャックはどうやらバーサーク状態に陥っている。

手に持ったナイフでザックザック、姿勢を崩して落ちたかと思えばブーツのつま先や踵から飛び出したナイフをキメラの皮膚に突き刺してロッククライミングのようにシャカシャカと這いずり回る。

 

お前は何処ぞの黒いGだよ……そうツッコミたくなったが、それは言わんといてやろう。

 

なんにせよライオン頭の鬣を引っ掴んだジャックはナイフをキメラの鼻に投擲して突き刺し、更なる足場を生み出す。

キメラが痛みに悶え身体を捩るというのに当の本人は素知らぬ顔でキメラの顔面をスイスイ歩いていく。

 

そして手に持った手斧やナイフを突き刺して笑うのだ。

まるで何処のホラー映画だよ、と今度ばかりは突っ込んだ。

そしてそれに対する返しが、

 

「知るかンなもン」

 

ときたもんだ。

本当にこいつなんでGGO来たんだろうか?剣で切り結びたいなら空を飛べて斬り合えるALOに行けばいいものを、何が楽しくて300、700、果てに1000メートル以上遠くから銃弾が飛び交うGGOというゲームで、2、3メートル範囲もしくは室内でしか効果の発揮出来ないナイフや光剣などという武器を持ってチャチャンバラごっこをやるのか1つも理解が出来ない。

 

「それがいいンじゃねェか。この距離なら俺は負けねェ、今にテメェのドタマ射抜いてやるぜ……だとか思ってるバカの喉元に刃を突き付ける瞬間、そしてそれに至るまでに弾丸を避け続けるスリル……ヒャハッ!このゲェム!最ッ高じゃねェかァ……!!」

 

とはジャックの言だが、マジで1つたりっとも理解出来ない。

まずこのゲームは抑えているとはいえ、リアル感を出すために痛みなどの感覚はある。

もし肩を撃たれたなら肩が、足を撃たれたなら足が撃たれた時の痛みを忠実に再現するのだ。

 

勿論俺はそんなのごめんなので、「あ、これ無理」とか「ハイ、死にまーす!」と直感で感じた時はすぐにトンズラ決めるスタイルで最近の対人戦は通している。

 

だって痛いの嫌ですし、死ぬのはマジごめんですし、それでレアもの落としたらマジ絶望。

 

………まあ、対人戦って言ってもフィールドに出る時は必ず3人以上のクランメンバーや別のプレイヤーと行くし、みんな俺より強いし……つーかごく最近に加入してくる新人もたった一ヶ月か遅くて半年ごろには俺の実力軽く抜き去ってくし……《チョコ》と《バニラ》が一番良い例だし……。

 

あれ、なんでだろ…自分のステータスや実力の無さが無性に悲しくなってきたぞ?

 

っていうかなんでみんなそう簡単に中級者下位止まりの俺を抜き去って行くの?

GGO運営開始の頃から俺このゲームやってるはずなのになんでクラン加入は元よりGGOプレイし始めて一週間の新人とタイマンやると負けるの?なんでぇ?教えてよ《チョコ》さん……どうやりゃあ最初期のプレイヤーがレア装備で固めたベテラン(自称)をハンドガン縛りの舐めプで瞬殺出来るんですか?

 

「な、何泣いてんだよアリーヤ」

 

「うん、なんかね、なんか哀しくなっちゃって」

 

「お、おう?」

 

誰にも言わないことがある。

まあ、黙秘しててもバレてるけど……。

俺は現在クランメンバー全員に多かれ少なかれ一度キルされている。

例えばタイマンで、例えば偶然の後ろ弾で、例えばクラン内の最強決定戦で、例えば《サンタ狩り》で。

 

勿論バフォメットにも、ジャックにも、銀二にも、ユーリやプライスにも一度以上戦って負けている。

チョコやバニラなんかそうだ。

最初の2、3日くらいは先輩の威厳+レア装備で固めた恩恵で10回20回と返り討ちにしてやったが、その内段々と負け始め、今じゃあの2人に勝てる見込みが一切無い。

 

51勝0敗だったチョコとの戦績も今や51勝180敗くらい……あ、9引き分けがあった。

俺をキルってドヤ顔になった直後仕掛けたB-ベティ地雷とかプラズマグレネードとかクレイモアで道連れにしてやったんだったわ。

 

……卑怯とか言うなよ?……ま、まあそんな訳で、多分少なくて6回以上はクランメンバーとタイマンなりやって返り討ちにされている。

グレンなんかは500から先は数えてない。

あいつはちゃんと覚えてるらしいし記録にもつけてるとか言ってたけど「ねえねえ、俺のこと何キルくらいしてる?」とか聞いて下手すりゃ3桁逝ってそうで怖過ぎて聞けそうに聞け無い。

 

……こほん、話が逸れた気がするが、ぶっちゃけいうと俺の実力はプレイ時間に比例していない。

むしろ反比例、なんかドンドン弱くなってる気がする。

 

他の交流のあるクランリーダー…有名どころで《メメント・モリ》のリーダーとかに聞くと「バカ言うな、お前が弱くて他の奴が強すぎるだけだ」とかいう辛辣なコメントを言われてガチ切れした結果2秒で軽く捻られたのはつい最近の話だ。

あの後酒代を奢らされた代わりに慰めてもらったからよぉく覚えている、無念。

 

とまあ、そんな感じで、俺はジャックの様に正面切って撃ち合ったりするタイプでは無い、サプレッサー付きのMP7A1を使ってるのがその証拠、サプレッサー大好きってのもあるけどさ。

他にも罠を張ってずっと待ち伏せしたり、芋ってたり、角待ち、キャンパー、et cetera。

 

エイム力はクランメンバーの半数には負け越してるしCOD系の癖でアサルトライフルとか持った状態で両手を振るーー分からなければ△ボタン早押しで実践したまえーーとか、意味のない癖をやっている時、他の奴らから「遂にアリーヤが一時的狂気に(笑)」「SAN値消滅」「気が触れたか、死に腐れ」という心無い誹謗中傷を受けたりもするほど素の実力はマジ中級クラス底辺の評価。

 

ーーまあ、なんでもありのタイマンだったら砂戦以外負けるきしねぇけど。

俺ってば道具と《真似事》と幸運スキルだけが持ち味の男だから☆

 

とまあ、長くなったが、俺の言いたいことは、俺が逆にこいつらの足引っ張ってない?っていうこと。

 

「ウヒャヒャヒャヒャヒャ自慢の鬣が丸ハゲになっちまったなァ!?ウッヒャッヒャ」

 

「ギャハハハハさいこー!ジャックガチさいこー!!ギャハハハハ、ハーゲハーゲ!」

 

『ヒドゥィィィン』

 

「なんでボス戦をナイフと斧で戦うかな……」

 

そしてなんで俺fpsそんな強く無いのに猛者揃いのクランのリーダーやってんだろうか、ってこと……。

 

「あーァ、楽しかったぜェ?ただ、弱すぎンな。まだアリーヤのが粘れる」

 

「あっ!それ分かるぜぇ。あいつあんま強くねえ癖に防衛戦とか逃げ戦とか囮役だとしつけーぐれぇ死なねぇもんな」

 

そもそも俺のクランメンバーは、クランに入って7ヶ月のプレイヤーで、元は別の近接武器をこよなく愛するクランのリーダーで、光剣の使い手の《ジャック》や何時もは《工房》に引きこもってなにかしら制作をしている《グレムリン》、《ソープ》から逃げるために加入して来た《プライス》と《ユーリ》など、他にも《分福茶釜》や《パンツァーラクーン》の愛称で知られる《隠神刑部》、破壊屋《デストロイ》、神出鬼没のゲリラ好き《セツナ》、クラン最強《ラプター》師匠、ヘリ担当の《ドラケン》などなど、他にも沢山いるが代表的なメンバーがこいつらだ。

どれも癖の強いプレイヤーだが、どこのクランに行っても軽くエース張れる強さだと思うし正直今タイマンやってこいつらに勝てる感じがしない。

 

で、中でも一番ヤバイのが《チョコ》と《バニラ》、俺のGGOを始めて、そして俺のクランに入って2ヶ月の「上級者に近い中級者」。

幾ら何でも成長速度パネェし非公式とはいえファンクラブあるし、GGOの宣伝とか紹介PVにオファーが来た事もあるらしい。

PvPの動画シーンでは画面に出て来た瞬間

『チョコチョコチョコチョコチョコ』『チョコちゃんハァハァ』『チョコちゃんペロペロ』

『バニラバニラバニラバニラバニラバニラバニラバニラバニラ』『バニラにゃんバニラにゃん』『バニラにゃんむしゃむしゃ』で画面が埋め尽くされたりPvP時の相手プレイヤーが有志の協力で特定されて翌日ファンクラブメンバーにリンチされたりネットの海に晒されたりとGGOでの人気度はヤバイ。

多分半年以内にチョコ教とかバニラ教が出るんじゃない?って規模の人気度。

 

そのお陰で俺のクランは知らない奴はごく一部ってレベルの認知度になったしファンの俺への当てつけは酷くなる一方だし……。

あ、あとクラン中二位の女性プレイヤー数も自慢の一つだけど、全部俺のトレードかPvPから始まった縁だぜ!俺ってば多分女性邂逅スキルがあるんだよ!隠しスキルで!それが俺が他の野郎共に嫌われてる要因の一つだけど!ヤベェ泣けて来た!

 

『イャァァ………ン』

 

「あ?殺ッちまったっかァ」

 

「おう、終わったかあ」

 

「ドロップは頼みましたアリーヤさん」

 

「うん、アリーヤ、期待する」

 

「良い物、良い物。わくわく」

 

「?なんのこと、ですか?アリーヤさんが何かするんですか?」

 

……実は言うとね、俺ね、別に討伐に参加せずとも良いんよ。

俺が行っても行かんでもこいつら何のこともなく倒すし、別に俺いらんのよ。

でも必要とされる理由、それは幸運パラメータを異常に高くステ振りしてるから。

最近手に入れた『もう一回』とか『ドロップ確率・倍』『ドロップ数増大』『レア上昇率・大』のお陰で、クランの中心的リーダーというよりは『ドロップ要員』的立ち位置だし、昔からついてるあだ名が『サンタクローズ』だし……。

 

てか俺がクラン立ち上げたのも俺をリンチして武器ドロップを目論むハイエナ共に対抗する盾役だったのになんかクランの中のクラン的な存在になり上がってるし……。

 

「わっ!良いの出たよプライス!」

 

「ほう、これは随分良いのだユーリ!」

 

どうやら今日も俺のゲーム内での運は良いみたいだと苦笑する。

出て来たのはHK417一丁、HK416C一丁、FAMS一丁、MP9一丁、MG4一丁、KSG一丁、トミーガン一丁、DSR一丁、ステアーAUGA3一丁。

その内トミーガンはいらない子なので『もう一回』を発動、トミーガンは晴れてMaxim 9へと生まれ変わった。

 

「Maxim 9か。これは俺欲しい。HK416、417はもう持ってるから良いわ」

 

Maxim 9を手に取ったのは、そのフォルムに心動かされたのと、これ以外はもう軒並み二丁か三丁は持ってるからだった。

 

「お、マジ?じゃ《フォールンダウン》で売るかクランメンバーの誰かに置き換しーー」

 

「それは当然私のものだよ」

 

「そして当然私のものでもあるのだ」

 

プライスとユーリがそれぞれHK416、417をストレージに放り込む。

HK416と417はM4カービンの強化型のようなものだし当然なんだろう。

 

「止めとけバフォ、俺とお前何もしてないから……」

 

「ちくしょぉぉぉぉぉぉいいもんねぇぇ!FAMSとMG4貰うからいいもんねぇぇぇぇぇぇぇ」

 

バフォメットの悔しそうな悲痛の叫びを最後に地下フィールドの探索が終わった。





作者はH&K社が大好きです。
MP7とかMP5とかXM8とかG36シリーズとか。
皆さんはどこの武器か好きっすかね?
次からは上階探索組です。


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上層探索組

 

 

キメラ型の気持ち悪いモンスターを倒した地下御一行。

そして彼らの上部階層では8人による探索が行われていた。

 

「食堂か。カメラを持ってる奴はいるか?」

 

大きな扉、食堂と書かれた看板の前に骸骨のバラクラバにサングラスを掛けた黒ずくめの男が1人、プレイヤーネームは《スカル》。

連携やフォロー力に定評のあるプレイヤーで、愛用しているSCAR-Lの銃口を下げて後続のプレイヤー達を振り返る。

 

「ある。これなら多分、隙間から入れられる」

 

小型カメラを取り出したのはチェック柄のマフラーに口元を隠した眠たげな二重瞼が印象的な女性。

プレイヤーネームを《グレムリン》といい、偵察用カメラや携帯用の罠などを入れてあるストレージから100円玉程の面積のカメラを取り出して扉に放った。

それは着地同時に動き出し、扉の向こうへ消えていく。

 

「何食ってるんすか。カルビさん」

 

「ぐふふふ。ビーフジャーキーですよぉはぐメタ君。君も食べてみますかぁ?」

 

全身灰色のSFチックなスーツを着た小柄の少年《はぐメタ》が横に太く、大柄な体型の《牛カルビ》に質問をすると、牛カルビはストレージから8枚入りビーフジャーキーと書かれた袋を取り出して、一枚どうですかな?と聞いた。

 

「んじゃ、お一つ。どもっす」

 

「ぐふふふ。いえいえ、1人より2人で食べた方が美味しいですしねぇ。池尻君もどうですか?」

 

「………」

 

《池尻》と呼ばれた寡黙な男が1人、ぺこりと頭を下げてビーフジャーキーを手に取る。

その横では某ロボット物に出てくるメカに酷似した全身プロテクターを装備した男が光線銃のエネルギーパックを交換している。

彼は《ジム》と呼ばれるプレイヤーで、彼もまた中々の実力を持っている。

 

「チョコちゃんチョコちゃん。そういえばにゃー、今日の宿題終わった?」

 

「バニラちゃんってばもしかしてまたボクにやらせる気でしょ。ボクやだからね」

 

「にゃー!?そんなこと言わないでほしいにゃ!バニラちゃん最大のピンチなんだにゃー!?」

 

一方は白髪、もう一方は黒髪。

顔の造形も瓜二つな少女は2人、リアル割れを気にせずお喋りをしている。

《バニラ》と《チョコ》というプレイヤーだ。

容姿の良さもあってかGGOでもかなりの人気を博す有名人である。

 

「……んーぅ。何も……無いよ。でも、中は暗くて……動きにくいかも」

 

「分かった。全員サーマルとフラッシュハイダーを装備しろ。準備が出来次第中に入って探索だ」

 

「オッケーっす」

 

「ぐふふふ。私のプロテクターはサーマル内蔵でしてねぇ。私の方はいつでも行けますよぉ」

 

「……」

 

10秒経過して問題なしと判断したスカルはゆっくりと静かに食堂の扉を開く。

サーマル越しに見える暗闇を足早にクリアリングしていく。

ざっと見渡していくと、食堂は全体の7割をテーブルや椅子が占め、3割ほどを厨房や冷蔵庫などで構成されている。

 

だが、この食堂、めぼしいものも何一つ見つからず、ただ探索を終えた8人は得るもの無しと若干落胆しながら直ぐに食堂から離れていった。

 

「しかし、ずいぶん楽に進むな。《看守》も不意打ちを喰らわなければ存外脆いモンスターだしな」

 

三階への階段を上る途中、スカルは朗らかに笑う。

今回、戦力増強の作戦として、傭兵の形で参加したスカルだが、普通のボスモンスターを倒すよりも簡単な労力でレア武器の報酬を山分け出来ると確信して気分が浮ついたのだ。

 

「それにしても、俺にはどうしてもお前達があの《看守》に負けるとは思えないんだが」

 

「違う」

 

スカルの疑問とグレムリンの即答。

自然と話す気配はなくなり、言葉を漏らすのはスカルとグレムリンだけになった。

 

「ん?……俺は前回加わってないから分からないが。……前回お前達を全滅させた看守長があいつらじゃないのか?」

 

「違う。……少なくとも、私や彼を全滅させたのは……あそこには、居なかった」

 

それは、どういう。

スカルの言葉だけが闇に溶ける。

 

「……あの時見た、看守は、あそこに居た看守達より……大きかった」

 

「まだ何処かにいるというわけだ」

 

「………」

 

階段を上りきり、右手に図書館が、左手に獄長室と書かれた看板を見た8人は、まず危険度の低い図書館から調べることにした。

 

「フラグアイテムがあるかもしれない」

 

とはスカルの言だったが、それに反論する者も少なからずいた。

 

「いやだにゃー!?絶対体に対して頭がすごくおっきいあいつが出てくるにゃ!バニラちゃんは反対にゃ!?」

 

「バニラちゃんビビりすぎ」

 

光学銃使いのバニラだ。

彼女は図書室に入ると某青い鬼さんのようなモンスターが出ると言って絶対中に入ろうとしない。

仕方なく廊下に池尻とバニラが見張りをして他の6人が中で探索をすることにした。

 

「ほわーっ」

 

「ナイスキル」

 

「……GJ」

 

ドスンと崩れ落ちたのは全身に黒い靄が纏わり付いている人型のモンスター。

名称を《司書》というらしいそれは、靄だらけの頭部を派手に撃たれまくってポリゴンとなり、消滅した。

 

「しゅーりょー。あ、なんかドロップ」

 

ドロップしたアイテムは、敵モンスターをキルしたプレイヤーに所有権が移される。

この場合は《司書》を倒したチョコに所有権が渡った。

 

「《なりきり司書コス》……あれ、ボクってて運が良いのか悪いのか…」

 

 

《なりきり司書コス》

普通に可愛い司書さんの姿になりきることができるレイヤー。

眼鏡をかけて本を持てば貴女も立派な司書さんに!

 

 

ドロップしたアイテムを見てコテンと首を傾げるチョコに周りのプレイヤーもぞろぞろ集まり各自の収穫を確認する。

 

中をくり抜かれた本の中に収納されていたグロック18、英語で書かれた官能小説、ハンドガン型光学銃×3(レア度はどれも低い)、快○天、ピースメーカー(SAA)で、所有権はグロック18が池尻、官能小説がはぐメタ、光学銃をチョコが2つと牛カルビが1つ、快楽○はジムだった。

 

(なんで日本の雑誌が……)

 

すごく気になったがスカルは心の中にとどめることにした。

あとジムによると「去年の3月号だな」との事。

 

「にゃー!チョコちゃんチョコちゃん!何かあったにゃ!?」

 

「んー、どうかもねー。ハンドガン型のブラスターくらいだよ」

 

「にゃはぁっ!!ブラスター!見せて見せて〜!!」

 

「ひゃー!?ちょちょ、ちょ!バニラちゃん!ブラスターくらい見せるからいきなり抱きつかないで欲しいかもー」

 

少女プレイヤー2人が抱き合い密着する百合百合しい姿にほっこり顔を綻ばせる男性陣。

その中スカルは顔をブンブン振って魅力状態から抜け出し、提案する。

 

「獄長室に行くか」

 

反対意見は出なかった。

これまでと同じように先ずドアの隙間に小型の偵察カメラを潜入して簡単なクリアリング。

 

バン! カランカラン パシィィン!!

 

「ゴーゴーゴー!!」

 

索敵は慎重に、突入は大胆に。

 

扉を開けてその中にフラッシュバンを投げ込むと、そのまま中へなだれ込む。

凡そ2メートルある机、棚、至る所をクリアリングしても敵の姿は見当たらない。

 

(………いない?)

 

スカルはただ、ただ違和感を覚えた。

fpsの他にもバイオハ○ードなどのゲームをプレイして鍛えたゲーマーとしての勘だ。

此処はイベント部屋だと油断なく周囲を観察する。

 

「お、良いもんあるじゃないっすか〜」

 

はぐメタが机の引き出しを開けてその中に入っていたショットガンを手に取るーーー所で、ズドン!!という大きな音と一緒にポリゴン片と化して死に戻りした。

 

「!?こいつ、まさか天井に」

 

驚いたのは束の間、驚異的なまでの冷静さで残る7名のプレイヤー達は動いた。

前転、ヘッドスライディングなどなどの動きで距離を離して障害物の影へ逃げ込んだ後、はぐメタを潰した存在はその暴力を振るう。

 

「……でかい」

 

ポツリと溢したグレムリンはストレージからクロスボウを取り出し、徐に撃ち出す。

どでかい何かにクロスボウの矢が刺さり、直後爆発するーーーー否。

 

「照明弾か?…ナイス!」

 

「ぐふふふ。サーマル要らず…ですねえ!」

 

暗い獄長室に光が灯る。

次々と速射されるクロスボウの雨あられが巨大な存在に突き刺さり、自身を主張するように煌々と部屋を照らしているのだ。

 

「……分かった?…これが、《看守長》」

 

「確かに、デカイな」

 

部屋が明るくなり、その存在の大きさを認めたスカルはウッ、と小さく呻く。

デカイ、その大きさは実に8メートルはあろうか?2メートルの机でさえミニチュアグッズに見えるほどだ。

それが、不気味な1つ目でプレイヤー達を見下ろし、クフォクフォクフォと嗤う。

 

「撃て!」

 

弾丸、閃光、爆発。

7方向から放たれる射線を物ともせず、看守長は右腕をやおら持ち上げると、そのまま振り下ろした。

 

「死んだ死んだ死んだーーあーッ!!?」

 

「ジムがやられた!」

 

「ぐふっ、まさかこんなに強いとは…ですねえ!!」

 

「クッ、頭集中的に狙え!身体はプロテクターでガードしてるぞ!」

 

ブチュッと、白いプロテクターを着ていたジムが潰れてポリゴン片がキラキラ光る。

嘘……、黒髪の少女が呟きを残し、手のひらで顔を覆う。

 

「こんなに、こんなに看守長ってノロマなんだ。……なーんだか、ボクがっかりしたかも」

 

「バニラちゃんもチョコちゃんに同意にゃ!」

 

不敵にも2人の少女が笑う、その幼さに不釣り合いな銃を引っさげて。

 

「よっ、ほっ、ほっ」

 

「にゃーははー。鬼にゃんこちら〜」

 

軽快なステップを刻み2人は動く。

机の上を飛び回り、壁を走り、棚を、模型を、アイアンメイデンを蹴り飛ばし、看守長の周りをうろちょろと駆け巡る。

 

「やたっ、橋が架かったかも」

 

看守長が左手を振り下ろす。

しかしそれすらも背面跳びで交わしたチョコはぺろりと舌を出してその腕に乗っかる。

高い敏捷性に《アクロバット》スキルもかなり高いことが窺いしれる動きだ。

……もしくは、リアルでこのような動きを実際に出来るバランス感覚と体幹の持ち主か……。

 

「ほいほいほいっと」

 

看守長の腕を連続ジャンプで上り詰め、肩から頭へクルクルと空中一回転して着地したチョコは、同じように駆け上がって来たバニラと看守長の頭上でハイタッチして看守長の頭から飛び降りながらプラズマグレネードを看守長の口に放り込んだ。

 

数秒後、起爆したプラズマグレネードが青白い光を発して看守長の頭を爆散させた。

 

「しゅーりょー」

 

「お疲れにゃん」

 

「……」

 

呆然としたスカルは、この瞬殺劇を繰り広げた少女を見て絶句する。

 

(アリーヤから強いとは聞いていた。fps系は元よりVRMMOが初めてにしてはセンスが良いとも!……最近のGGO関連のスレ立てでもGGOのアイドルとか聞いて今回実際に戦いながら観ていたが!こいつら、こいつら…!今まで実力を隠していたのか?)

 

道中の戦闘でもチョコとバニラの戦闘力は自称fps中級者のアリーヤを凌いでいると判断していた。

しかし、対人戦からモンスター戦まで幅広いジャンルを戦って来たベテランのスカルでさえ一瞬慄いた看守長を瞬殺したチョコとバニラは、既に上級の域に達しているといえる。

 

(アリーヤもいい拾い物をしたな)

 

古参のプレイヤーからはお財布、サンタクローズなどと嘲られている1人のGGOプレイヤーを思い返し苦笑していると、少女が首を傾げた。

 

「……あれ、ドロップしなくない?」

 

『クフォクフォクフォクフォクフォクフォクフォクフォクフォクフォクフォクフォ』

 

「!?なっ」

 

「……しぶと」

 

頭を爆散された筈の獄長から新しい頭が生え出している。

そのまま不気味な笑い声を木霊させて、右腕を振りかぶる。

 

「ぐふふふ。消化不良でしたしねぇ。第2ラウンドといきましょうかぁ」

 

「………」

 

「うわー。バニラちゃん。ちょっとあれ、グロいかも」

 

「チョコちゃんチョコちゃん。ちょっとも何も、アレはグロテクス過ぎて気分悪いにゃ〜」

 

一体の骸骨と6人のプレイヤーの第2ラウンドが始まるーー。

 

 

 



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心臓ドッカン!

 

 

 

 

 

暗い、暗い一室。

とある監獄の中にあるその部屋には、8メートルを越す巨大な怪物と、怪物に比べれば豆粒のように小さいプレイヤー達が死闘を繰り広げていた。

 

「くぅっ!」

 

「……んっ!」

 

「ぐふふふふ!まだです。まだ耐えられますよぉぉぉ!」

 

「……」

 

「にゃはは〜」

 

「バニラちゃん、もう一段ギア上げるよー!」

 

骸骨模様のバラクラバを被った男《スカル》のSCAR-Lが5.56x45mm NATO弾を弾き出し、それらは怪物ーーー《看守長》の顔に、それも約7割強の確率で左右どちらかの不気味な眼球に突き刺さっていく。

ベテランfpsプレイヤーの熟練したエイム力は的がデカくて助かるとでも言いたげに全身から力を抜き、《看守長》の攻撃に備えつつヘッドショットを連続して当てていく。

 

続いてバニーガールのようなウサギの付け耳とチェック柄のマフラーで顔の半分を隠す黒髪の少女《グレムリン》は両手に保持したMK11 mod0を撃ちながら器用にストレージを操作して手榴弾やクレイモア、他地雷などを巨大の進路方向や動きを予測して設置、更に味方が危険だと思ったならば支援行動に移るなど、ちょこまかと動きつつ安定したサポート支援を行なっている。

 

対して一見無謀とも言える特攻をかますのは牛の姿形を象ったプロテクターを見に纏う小太りの男、名は《牛カルビ》。

彼はその手に持った片手用のアックスで巨大の足を切りつけ、更に片手で握ったショットガンを撃ち込んで近距離による大ダメージを着実に与えているが、敵に最も近い距離に立ち回りをしているため、自慢のプロテクターは傷だらけになっている。

だがしかし、それすらも誇りであると言わんばかりに真っ向から立ち向かう姿は他のプレイヤー達に「クレイジーだ」と思われていることに彼は気付いていない。

 

そしてそんな彼の背後で寡黙なガッチリマッチョの《池尻》がRPD軽機関銃を乱射する。

通好みの軽機関銃から吐き出される7.62x39弾は元々の反動もあってかあまり射撃精度はよろしくない。

が、RPD軽機関銃はそれを想定して反動抑制用の二脚のバイポッドが標準装備されているのだが、今回池尻は反動安定のバイポッドを使わず、こまめに足を動かし、自身の筋力値で強引にRPD軽機関銃の《看守長》の巨体に照準を合わせていく。

まるでじゃじゃ馬の手綱を握っているような池尻はニッ、と微笑みながら視線はそのまま《看守長》へ固定している。

 

容姿が瓜二つの《チョコ》と《バニラ》のコンビは《看守長》の股の下を潜ったりと、存分に敵をおちょくっている。

どうも《看守長》を絶叫系アトラクションか何かと勘違いしている。

そしてスカルはそれを見て(これが若さか……)などと考えているが、スカルの中の人は今年で21、バリバリの大学生であった。

 

「それに、しても、全然、死にそうにないぞ!こいつ」

 

「ぐふっ、私のお牛さんアーマーレベルの固さですかぁ!なるほどなるほど」

 

「………右に寄せて。クレイモアで動きを止める」

 

インカムからボソボソとグレムリンの声、彼らはさっと身を翻して《看守長》を誘導し、見事怪物の片足が爆発と共に粉微塵に吹っ飛ぶ。

 

「クフォクフォクフォクフォクフォクフォ」

 

「再生……死ぬのか、こいつ」

 

だがしかし、見る見るうちに《看守長》の足が再生、怪物は再生した足でもって床を踏みしめ、新品の足の状態を確かめている。

 

「……ボク思うんだ。これ、勝ちそうになくない?…それにボク、そろそろ眠くなっちゃった……かも」

 

「バニラちゃんも疲れたにゃー!」

 

「……確かに、これではジリ貧か」

 

むしろ徐々に押され気味だ。

しかしここで幸運男の《アリーヤ》からメッセージが、内容は《看守長》の倒し方について。

それによると、《看守長》の設定は監獄を装っている裏で囚人を実験台にしていた研究施設の所長が囚人の反乱で死亡、その時に死亡した怨霊達が集まって監獄を超巨大モンスター《クリスタルプリズン》に変質したわけで、クリスタルプリズンを破壊するには監獄内部に巣食う悪霊どもを消滅させなければならないのだとか。

 

「悪霊の親玉は全部で6。その中で倒しているのは《死神》、《マーダーキメラ》。まだ倒せていないのが《看守長》、《処刑人》、《殺人鬼》、《狂った研究者》だ。《狂った研究者》はあいつらが始末するらしい。俺たちは《看守長》だ。どうやらこいつは囚人を殺すのが好きな残虐性のくせして臆病者の小心者。自分の心臓を後生大事にこの部屋のどこかに隠していたらしい」

 

暴れる《看守長》から距離を取りつつ周囲を見やる。

机、棚、タンス、観葉植物、額縁、ライトスタンド、シャンデリア、ベット。

順当に考えればこれらのどれかに《看守長》の心臓が隠されていて、それを破壊することで《看守長》は消滅する。

しかし悠長に探そうとしても《看守長》が暴れていて手がつけられない。

ならばどうするか。

答えは簡単ーーー、

 

「プラズマグレネードで全て吹き飛ばせ」

 

それぞれが手にしたプラズマグレネードが部屋の至る所に放られる。

時間は3秒、投げたら即撤退!

そそくさと獄長室を逃げ出すと扉の先から眩い光と爆発と爆風と悲鳴が。

再度部屋を除くと、そこにはプラズマグレネードの威力でぐっちゃぐちゃに破壊された部屋と悲壮感漂うようにポリゴン片と消えていく元部屋の主人の姿だった。

 

 

 

 

「………《なりきり看守たんコス》……ふふっ」

 

「チョコちゃん。元気出すにゃん」

 

「ぐふふふ。着てみてはいかがですか?案外似合っているかもしれませんよ?ぐふふ」

 

「………!!もー!いやだー!!なんでボクだけこんな痛いコスプレセット拾わなきゃならないのー!?全くもって意味不明〜!」

 

プラズマグレネードを放り投げた場所がたまたま《看守長》の心臓を隠した場所だったのだろう。

見事ラストアタック賞に輝いたチョコが拾ったドロップ品は、《なりきり看守たんコス》であり、女物の看守……というか是非女王様と呼ばせてください、と卑しい豚どもが喜びそうな服装だった。

 

こんなの趣味じゃないってー……でもアリーヤ好きそうかもにゃー、アリーヤはああ見えてドMと見たにゃー……などとじゃれ合っているバニラチョコを尻目にスカルがアリーヤと連絡を取る。

 

「アリーヤ達に《看守長》討伐完了のメッセージは送っといた。俺たちはこのまま下に降りて《処刑人》と《殺人鬼》を狙うぞ」

 

スカルの号令に他四人のプレイヤーが追従する。

クリスタルプリズンとの戦いも、残る4体の準ボスモンスターを倒して終わりだろう。

しかし気を緩めるつもりはない、と一行は階段を降りていった。

そしてそこで見たのは、

 

「なにこれ」

 

「さあ?わかんにゃい」

 

「……」

 

「………仲間割れ?」

 

「それはそれは、好都合だ」

 

包丁両手に高笑いをあげる2メートル大の囚人服の男と、2メートルほどのハルバードを振りかぶる170程の身長をしたいかつい形相の男だったーーーーー。

 

 

 

 



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ドロップ

今回でオリジナルストーリーはしゅーりょーダァァ!!
次回からはイカジャム一回目を書いていきます。(イカジャム1巻目がアップを始めたようです)

あ、書いてて思ってたんですが、GGOのレア度の基準ってなんなんでしょうね。最新式の奴ほど高くなるんでしょうか?レンのピーちゃんとなシノンのMP−7たんみたいに。


 

包丁両手に高笑いをあげる2メートル大の身長を誇る囚人服のハゲチャビンと、2メートルほどのハルバードを振りかぶる170程の身長をしたいかつい形相の男。

 

プレイヤー達は直ぐに直感する。

 

この2人が《処刑人》と《殺人鬼》だと。

 

しかし彼らは目の前の敵に対して迂闊に攻撃することを憚れた。

 

それが、

 

「…………速い」

 

「くそっ……エイムが合わない。速いな、あのハゲ」

 

囚人服を着たハゲは敏捷性重視のステータスをしているのか、目にも留まらぬ速さで監獄内を縦横無尽に駆け回っているのだ。

その速さは凄まじく、たとえ止まった瞬間に照準を合わせて撃ったとしても弾丸が届く頃には別の場所にいるだろう速度だ。

 

「うひっ!瓦礫飛んできた!?」

 

「あたっ!?痛いにゃー!瓦礫痛いにゃー!」

 

「いやはや、末恐ろしい。あの威力は私のアーマーを切断する威力ですねぇ」

 

ハルバードを振り回す大男の破壊力は絶大で、まともに喰らえば死に戻りは確定だ。

 

プレイヤー達がどうしよと迷っていた時、下の階から階段を駆け上がる音が響く。

銃口を構えて何者かを待ち構えると、足音の主はアリーヤ達、地下探索班だった。

 

「こっちは終わった!お前ら、あとは……あー、あれか?おおっ!?……す、すげぇ速いな…おい」

 

アリーヤは超高速で駆け回るハゲの速度に冷や汗を垂らし、大男のハルバードの威力に腰をガクガク震えさせた。

 

「うぷぷ、アリーヤビビりすぎかも」

 

「ダサいにゃー」

 

「うう、うっせーな!…ったく。ああ、そうだ。ドロップ品でなりきりコス一式ってお前ら持ってる?」

 

え……ピタッと停止した《チョコ》。

なぜならアリーヤの言ったなりきりコスとは、彼女が手に入れた使い道のなさそうなドロップアイテムだったからだ。

そうとは知らず、アリーヤは手元の本を開きながら宣う。

 

「いやあ、あのハゲの動きを止めるのが《なりきり看守たんコス》らしいんだよ。大男の方は《なりきり司書コス》な?」

 

なんでも……と続け、アリーヤの解説が。

 

それには、モンスターの設定でハゲ頭こと《殺人鬼》は《なりきり看守たんコス》を着たプレイヤーを見ると犬の服従のポーズのように地面に背中をつけて足と腕を折り曲げ、へっへっ、と何かを期待するかのように動きを止めるのだとか。

……余談であるが、これが男が《なりきり看守たんコス》を着ると血の涙を流しながら自滅を図るとか……。

 

更に《処刑人》の設定では、内気の彼は図書室の《司書》が好きならしく、《なりきり司書コス》を着たプレイヤーを見るとモジモジと動きを止めて恥ずかしさのあまり、憤死するらしい。

なお、男が着用した場合は怒りのあまり憤死するらしい。

 

「なるほど。好都合だな。コス一式ならチョコが持ってるぞ」

 

「え?マジで?…………。じゃあ、そういうことだから、チョコ。………な?(悪い笑み)」

 

ウィンドウを操作してカメラモードを起動させた悪い笑みのアリーヤ。

それに対してチョコは親指を下に突き下ろして涙ながらに訴えた。

 

「なんでボクがこんな……!意味不明かも〜〜〜〜!!!!」

 

 

 

 

 

『キャイ〜ン!ハッハッハッハ』

 

ドン!ボカーーン!

 

『あぅあぅあぅあぅあぅ……///』

 

ドンドンドンドンドンドガガガン!

 

 

 

「はい、しゅーりょー」

 

大男とハゲ頭が残したドロップ武器の数々にいたくご満悦のプレイヤー達。

そしてその輪の中には《なりきり看守たんコス》と《なりきり司書コス》を披露したチョコがプルプルと震えている。

その目はまっすぐにアリーヤを射抜いているが、それを知ってか知らずかアリーヤは生き残ってるプレイヤー達を手招きして集合させる。

 

「えー、ととりあえず今回はお疲れ様でしたー。設定ではこの後超弩級ボスモンスターの《クリスタルプリズン》は浄化という形で消滅するようです。その際にドロップ武器を落とすというので我々は今から外に退出後、どっさり山盛りのドロップアイテムを入手して解散になります。アイテムは整理した後、カタログを各自にメール送信しますので欲しいのがあったら後日山分けするわ。んじゃ撤収ー」

 

うーい、とプレイヤー達は帰り支度を始める。

キラキラと輝く監獄を抜け、ぞろぞろと集まる囚人ゾンビ共を薙ぎ払って止めておいた車に乗り込む。

その数分後、監獄はまるで花火のような煌めきを残して全てポリゴンへと消滅し、監獄があった場所の中心地には大量のドロップアイテムが落ちていた。

 

そこへワラワラとハイエナどもがニタニタ笑顔で集っていく。

 

「!!うおおおお、マジかこれ!マジかこれ!?」

 

アリーヤの手には黒色のマントが握られている。

実はこれ、 メタマテリアル光歪曲迷彩(オプチカル・カモ)という名称の防具で、装甲表面で光そのものを滑らせ、自身不可視化するといういわば究極の迷彩能力をもつマント。レア装備の光学迷彩である。

 

とあるBoB大会で存在を確認され、一躍時のレア装備と噂されたもので、今回アリーヤはそれをゲットしたのだった。

これには勿論彼の幸運値の高さとそれに関連するアビリティーーーレアアイテム上昇率やアイテムドロップ数を底上げする系の能力が役に立ったのだろう。

 

「これで他のスコードロンの奴らに追いかけられても逃げ切れる……」

 

感無量と涙を流すアリーヤの姿に、他のプレイヤー達は呆れ半ばで他のアイテムを物色していく。

 

「おいおい!これは、 ベヒモスが使ってるガトリング銃のGE M134だぞ!ははは、重い!重すぎるだろ!!こんなの、全然持てないぞ!」

 

「にゃはははは〜!凄そうなブラスターにゃー!!バズーカ型の光学銃もあるにゃー!」

 

「とりあえずボクはアリーヤを締め上げて録音記録を消させなきゃだねーって消えるの早ーーっ!?バカアリーヤーー!!」

 

「JailBrake……ジェイルブレイク?これ、もしかしてハンドガード?なんの銃に対応するものか調べないと……」

 

今回ゲットできたアイテムの数は総勢で94個。

そのうち半分がゴミウェポンであるわけだが、一部のドロップ武器がかなり強武器、超レア武器で、プレイヤー達はホクホク顔でスコードロンのホームに帰宅、アイテムを保管してその日は乙る事となった。

 

 

 

 

 

 

 

「えー、と。GGO……サンタクローズ……」

 

高級マンションの一室、背が高い女性が人差し指で苦労しながらパソコンのタイピングを続ける。

 

「……本当に出た。GGO初期から続けてる有名なカモプレイヤー……《アリーヤ》初期から始めているため、ステータスはベテランと言えるものの、中の人の実力は低い。……推定ステータス……幸運高い!」

 

プレイヤーの参照画像ではモザイク線の入った頼りない雰囲気のアバターがピースサインをしている。

………それも、複数の銃口に囲まれた上で、額から大量の冷や汗を垂らしながら。

きっと彼はこの後無念の蜂の巣にされたことだろう。

 

「アリーヤさんも苦労してるんだ……」

 

女性ーーー小比類巻香蓮は少しの間、フィールドに出ればカモにされ続けたとあるGGOプレイヤーに同情の念を抱き、次に苦労しているのは自分も同じだけど……と自らの身長の高さに肩を落とした。

 

「……ん?」

 

ピコン、と出てきたのは『やっと終わった!(≧∀≦)今回は良いものザックザックでマジ最高(*´ω`*)』というメッセージだ。

差出人はアリーヤ、顔文字を出してくる彼のセンスに香蓮は笑みを含んだ。

 

「お疲れ!アリーヤさん」

 

わざわざ口に出さなくても良いのだが、無言でニヤニヤ笑う自分を想像して根暗陰キャはダメだと香蓮はメッセージに打った言葉をそのまま口にした。

その後1人っきりで独り言を言う自分って……と哀愁漂う表情を浮かべるのもまたご愛嬌。

 

『今度は一緒にどっか行こうか( ´∀`)無敵のマント手に入れたから今度見せてやんよ!ふおおおおぉぉぉぉ フオオオ(((卍(^ω^)卍)))フオオオ』

 

余程イイ物を拾ったのか、アリーヤのリアルの人が今現在どんなテンションで打ち込んだのかよく分かる文章だ。

 

うん、楽しみにしてるね!……と、普段の香蓮なら言う場面はないセリフを、GGOのレンが言っているのだと脳内でイメージ補完しつつメッセージを送信。

そのあとはもう夜は深いと香蓮は欠伸を一つ、ベッドに潜り込んだ。

 

 

 

 

 

「ふぁ……あー、寝みぃ……」

 

GGOサーバー内に無数に存在するスコードロンの一つ、レイヴンズネスト。

そのホームの中でたった1人、頼り無さげな背中を見せる男はドロップ品の数々を整理しながらカタログを作成していた。

 

「アサルト…9。サブマ14、ショットガン6、砂3、ライトマ8、 ハンドガン11、ランチャー系が6、ブラスターが24、特殊系10、光剣3……か。……希望が無けりゃ半分は売っぱらっても良いよなぁ。…つって、ガトリングとかどうするっかねぇ。筋力に余程振りまいてる《ベヒモス》でさえ重量過多で動きが鈍いって話だし……かと言ってショップでぼったくろうにも扱える筋力値の使い手がいない=買い手がつかない…だしなぁ。でも売れればこれだけで何十万……ウヘヘヘヘへ。い、いやいや…でもなぁ…んー」

 

今の所《ジャック》は光剣総取り、《サラ》はショットガンをいくつか、《チョコ》《バニラ》は軽いものとブラスターを、《プライス》《ユーリ》はジャガーノートを希望している。

《スカル》は金になるものが良いって言ってるし……今回戦力にならなかったバフォメットにはクズレア度のブラスターを、《狂った科学者》を撃ち殺した銀二にはレア度の高い銃を進呈しよう……。

……《グレン》は……『金と昨日の講義のノート貸して栗山くん』か…おいリアル割れやめぇ。

 

他にも今回の参加者にカタログを渡していき、ドロップ品の整理を終えていく。

しかし最後に使い道のあまりなさそうな武器、ガトリングが壁として立ちはだかるのだ。

 

「これ…うーん。いや…うーん」

 

ウンウンと頭を捻り、仕方ないから装甲車にでも括り付けるか……それとも。

 

「売るとしたらこいつかぁ。でも俺苦手なんだよなぁ…こいつ。……マジで」

 

アリーヤの持つ顧客リストと銘打たれた名簿の1番上。

お得意様の☆印を書かれたその名前は《ピトフーイ》と書かれていた。

 

しかし、それを見るアリーヤの顔はとても渋りきったもので、というのも《ピトフーイ》というプレイヤーを彼が苦手とする理由はGGO初期の頃から弾除け・囮・後ろ弾と味方にされたくない裏切りプレイを散々された経験があるからだ。

 

「まあいいや、当分は飾り物って枠で。物珍しさに客が集まるだろ」

 

何の気なしにそう呟いたわけだが、後日アリーヤは考えなしの行動を後悔することになる。

なぜならば彼のスコードロンにとあるマシンガン好きのラバーズが立ち上がったからだ。

 

今回立ち上がった彼らは、とあるカテゴリーの銃にいたく心酔している。

 

曰く、マシンガンはイイぞ〜^^コレ、、、イイ

 

曰く、サイドアーム?邪道だそんなもの!マジガンイガイノジュウハミナシネバイイ!

 

曰く、ブラスター?もっとダメに決まってるだろ!バカか貴様は!キエロ!イレギュラ-!!

 

彼らはマシンガンが大好きで大好きで大好きなラバーズである。

対MOB戦でも対人戦でもマシンガンしか使わない、正に漢の中の男達なのだーーー。

 

「「「「「「ガトリング下さい」」」」」」

 

「だが断る」

 

金はないけどガトリングは撃ってみたい彼らの出現にアリーヤは頭を抱えたのであった。

 




実は今回のお話は、とあるGGOプレイヤー達を真改z……ちょこっと強化しようと思って書いただけなんだ(棒読み)。
まさか彼らが第一回イカジャムを制してしまうなんて……誰が予想出来た!?…そう思うだろ?アンタも。思わないのか……?思ってんだろ……?


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