この素晴らしい“はくのん”に祝福を! (白夜の星霊白夜叉)
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第1話 少女の目覚め、神は祝福する

ついにこの時が来たのだ!
Fate/EXTELLAをクリアして早数週間。
FGOとFate/EXTELLAのアルテラのギャップに萌え殺され、未明編のエンドを見てアルキメデスを呪い。
ソロモンよ! 私は書くことができたぞぉぉぉぉ!

とまあ作者の気持ちはこんな感じです。
多分ゲームをプレイした人の大体が思っていたでしょう。
だが安心しろ! 私がいる!
さて、ネタはこの辺で、拙い駄文ですが楽しんでくれたら幸いです。


周りは真っ白だった。

 

「えっと、ここは何処?」

 

確か私は世界の修正で消えたはずでは。

 

どうも岸波白野です。と言っても肉体の方の私だけどね。

 

しかし本当にここはどこだろう、見た所ムーンセルの中ではないようだし、かと言ってセラフの何処かということでもなさそうだし。

本当どこですかここ、見た所私以外何もないみたいだし。

 

『気がついたかの?』

 

「だっ、誰!」

 

誰もいないはずのこの空間に声が聞こえた。

その声がした方に顔を向けると白髪で和服を着た女性が座布団の上に座っていた。

 

『うむ、見た所魂の欠落もないようじゃし大丈夫そうじゃな』

 

見た目の割にジジくさい喋り方をする彼女。

 

「えっと、貴方は……」

 

『ワシか? そうじゃのう、簡単に説明すると神様じゃな』

 

えっと、その神様がどうして。

 

『ん? 何じゃ、ここは「えっ、不審者?」と思うところではないのか?』

 

彼女はさも意外そうにこちらを見る。

 

「えっと、私のいた世界そのものがオカルトみたい場所だし、何よりも今更感があったので」

 

なんせ前の世界では捕食遊星ヴェルバーとか白の巨人セファールとか、カルナやギルガメッシュみたいな神様関係の英霊など、規格外なものを見て来たし今更神様程度じゃ驚かないな。

 

『つまらんのう。まあいいか、取り敢えず聞きたいこともあるだろうが、立ってるのも何だし座るといい』

 

神様はそう言うと座布団を出して私に座るように促した。

私はその好意に甘えて座布団に座り神様の方に向く。

 

『うむ、では自己紹介じゃ、ワシの名前は白夜叉。一応神様をやっている』

 

「えっと、岸波 白野です。一応マスターをしてました」

 

『うむ、汝のことは全て知っておるぞ、実にいい生き様じゃった』

 

そう神様は私の少ない生を肯定するように笑ってくれた。

私も嬉しくて笑顔を返した。

 

『さて、では順に説明しよう。まず何故消えるはずの汝がここにいるかじゃが、ぶっちゃけた話、汝には転生してもらいたい』

 

「えっと、理由を聞いても?」

 

流石にいきなり転生してくれだけじゃ何のことか分からないよ。

 

『ふむ、そうじゃなまず汝、並行世界はしっているか?』

 

「はい、一応並行世界移動もしたし」

 

とは言っても肉体は消滅して記録だけだったけど。

 

『そうであったな……なら話は早い。汝のいた世界での出来事とこの世界での出来事は全くの別物と考えてくれ。つまりワシは汝の世界の神とは違う』

 

「えっと、何となくわかりました」

 

別の並行世界の神様という事ですね。

理論的にはわかりました。

 

『うむ、それでなんじゃがの、お主があまりにも不憫での』

 

神様は目元に涙を溜めながらこちらを見る。

えっ、いきなりなんですか。

 

『暇潰しに別の世界の並行世界を見ていたら偶々汝を見つけての、そなたの世界の記録を見てあまりにも不憫で。一人の少女を救うために己が身すら犠牲にして別の並行世界に希望を託した汝が輝かしくてのう。それでいてそなた本人は世界の修正で消えていくという……そんな汝を見て何故この世界は汝にこんな運命を押し付けたのかと少なからず激怒したものだ』

 

神様は私の人生を見て、私の生き様を見て、神として何もしない理不尽な世界に激怒している。

そして私は……

 

「うっ、ううう……」

 

岸波 白野は泣いていた。

私のことでこんなに怒ってくれる彼女に、私の人生を見て輝かしいと言ってくれた。

アルテラの為にやった私の行動は無駄ではなかったと肯定してくれていることに嬉しくて泣いていた。

私が泣いていると私の頭に何かがポンと置かれた。

涙で濡れた瞳で前を向くと神様が私の頭を撫でていた。

 

『そうじゃ、汝はよくやった。力なき身であの世界の神ですら出来なかったことを成し遂げたのだ、そして汝の行動で消える運命であった少女が一人救われた。汝はまさしく英雄だ』

 

その言葉で私の涙腺は決壊した。

 

「ううう、あぁぁぁぁぁん!!」

 

嬉しくて泣いた、自分を肯定する言葉に、私の行動が無駄ではなかったという言葉に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『落ち着いたかの?』

 

「ずっ! ありがとう、ございます」

 

『よいよい、別世界とはいえ人間はワシらの子供、泣く子に胸を貸すのは親の務めじゃ』

 

泣き止んだ私に笑いかける神様。

その言葉はとても優しかった。

 

『取り敢えず汝をここに呼んだのは、汝に新たな生で幸せになってもらいたいからと言うのが理由だ』

 

「はい、とても嬉しいです。けど、そんな私だけ贔屓しても大丈夫なんですか?」

 

神は平等でないといけないと聞いたことがあるのですが、こんな依怙贔屓みたいな事して大丈夫なのかな?

 

『確かに普通は神々が一人の人間を贔屓するのはいけない事じゃな』

 

「なら!」

 

『しかしじゃ! 汝はちと事情が違う』

 

どう言う事かな?

 

『うむ、普通は人が死ねば冥界に送られて次の生まで冥界で過ごす。しかし時たま汝のように直ぐに転生するものがいる。何故かわかるか?』

 

うーんと……ちょっとわからないね。

その人が何かしら特別とか?

 

『うむ、簡単に言えば生前に溜めた徳によって転生の順番が変わるのじゃ』

 

「へー、そうなんだ」

 

徳ですか、確か仏教の用語でいいことをした分だけ死んだ後の世界でいいことがあると言う話だっけ?

 

「そうじゃ、そして汝が生まれて生きた時間は短い、しかしその短い時間で汝が積んだ徳がとんでもなかったのじゃ」

 

「そうなの?」

 

うーん、そんな徳になるようなことしたかな?

強いて言えばアルテラと話したり。

ムーンセルに敵対したりかな、でもそれは世界にとって困る事で徳が溜まるとは思えない。

 

『うむ、アルテラという少女を救ったであろう? その行為そのものが世界を救った事と同様の徳として汝には宿っておるのじゃ』

 

何と! アルテラのための私の行動で世界が救われたなんて、これは流石の私もビックリだね。

 

『なので、汝には特別待遇で転生させることができるというわけじゃ!』

 

神様はどうじゃ!とでも言うように胸を張る。

その姿が見た目と反して子供らしくて少し笑う私。

 

『さて、さっそくで悪いが転生特典を決めようか。一つだけなら何でも叶えてやろう』

 

「わかりました。特典ならもう決まっています」

 

『ほう、してなんじゃ?』

 

私の特典なんて初めから決まっている。

私の一番大事な願いは一つだけだ。

 

「アルテラ、彼女と幸せに暮らしたい!」

 

私のその願いに神様は一瞬惚けてそして直ぐにその顔が笑顔に変わった。

 

『うむ、良かろう! なんでも叶えるといったからな、その程度造作もない!』

 

神様はそう言うと両手を合わせる。

 

『ホイ!』

 

何とも気の抜けた声が響いた。

そして次の瞬間それは起こった。

 

私の目の前に何処からともなく現れた光の粒子が集まり何かを形作っていく。

その光は段々激しくなりそして真っ白い世界には光が包んだ。

私はあまりの眩しさに目を閉じる。

そんな中で私は聞いた。

 

「……マスター」

 

綺麗な声、その声を私は知っている。

何よりも望んで何よりも欲して、そしてと自分を犠牲にしても救った彼女の声を。

 

私は目を開いた。

そして私の目に飛び込んできたのは一人の女性だった。

 

そこにいたのは戦士だった。

白い戦装束を纏う褐色肌の女性。

私は彼女を知っている。

私が、肉体の岸波 白野の相棒、誰よりも強く、誰よりも優しい彼女。

そう、あなたの名前は……

 

 

 

「逢いたかったよ、アルテラ!」

 

私の最愛のサーヴァント。

私は彼女に飛びついた。

 

「うわっ、ま、マスター!」

 

「逢いたかったよ! 逢いたかったよアルテラ〜!」

 

私は彼女の胸に顔を埋める。

彼女は驚きながらも私の背中を撫でる。

 

「私もです。貴方にとても逢いたかった」

 

彼女は普段の無表情の顔に笑顔を浮かべている。

私も同じく笑顔を浮かべる。

嬉しかった、どんな願いよりもどんな物よりも私にとっては彼女と一緒にいる事が最後まで、何よりも望んだ願いであった。

本当は自分が救えたらよかった。

しかしそれを成すための力が私にはなかった。

だから私は伝えたのだ、彼女を救うために、例え自分が消えるとわかっていても。

そんな私だが消える最後まで後悔した、もっと早く気づいていれば、もっと早く行動していれば。

しかし今は彼女とまた会えた事が何よりも嬉しい。

 

『良かったのう、しかしそろそろ話を進めたいんじゃが良いかの?』

 

私とアルテラがお互いに話していると神様がこちらに声をかける。

それに気づいた私たちは急いで離れて申し訳ないように神様に謝る。

 

『よいよい、それ程嬉しかったのであろう? 別に怒らんよ』

 

神様はそう言って笑った。

 

『さて、汝の願い通りアルテラは復活させたぞ、まあ色々と制約が付いているから説明させてもらう』

 

「はい!」

 

「ありがとう」

 

『うむ、まず白野、そのアルテラは汝が初めにいた世界で消えたアルテラでな、ワシが偶々消えかけのところを魂だけ救出して汝同様この世界に来てもらっていたのじゃ。そしてワシの力で受肉させた、もう彼女は一つの生命だ!』

 

そうだったんだ、私はアルテらの方に顔を向けると彼女もその話が正しいと肯定する。

 

『そして力に関してじゃがまず遊星の刻印は消させてもらった、流石にあの刻印があるとこの世界も捕食遊星に干渉されかねんからの、その影響で巨人化のスキルとセファールとしてのアルテラとは全く別のものになった』

 

それは良かった。

新たな生まであんな星に縛られてちゃ彼女が不憫過ぎる。

巨人化のスキルに関してはそこまで必要じゃないと思う。

だけど、別のものになってると言ったけど彼女は大丈夫なのだろうか。

 

『汝の思いはわかる。安心せい、飽くまでステータスが神霊から英霊に落ちただけじゃ、それでも規格外なので制約はあるがの。アルテラの魂は汝といた巨人アルテラとアバターのアルテラは同じ存在なので遊星との接続が無くなっても、彼女の魂はそのままじゃ』

 

神様の言葉に安心する私。

私のその様子に微笑みを向けるアルテラ。

 

『さて、それじゃあそろそろ汝たちを転生先の世界に送ろう。何か質問はあるか?』

 

「はい、実を言うとその世界についてもうちょっと詳しく教えて欲しい」

 

『構わんよ、さて、何が聞きたい?』

 

「はい、まずは……」

 

私は神様に質問をする。

その世界の通貨、常識、文化レベル。

その他色々とその世界について聞いた。

その過程でわかったのは、その世界が漫画などでよくある異世界で、人間、エルフ、魔族など色々な種族がおり、魔王と呼ばれる存在も確認されているとか。

 

「……以上です。色々聞いてすいません」

 

『よいよい、見知らぬ世界について質問は何よりも生存率を上げる方法じゃ。未知ほど恐ろしいものはないからのう』

 

神様はなんでもないようにそう答えた。

 

『さて、では今度こそ汝たちを送ろう。その前に……ほれっ、受け取るといい』

 

神様はそう言って何処から出したかわからないが小さなカバンをこちらに投げ渡した。

私はいきなりの事で驚きも危なげなくキャッチする。

 

「えっと、コレは?」

 

『旅の選別じゃ、俗に言う冒険者セットが入っている。少ないが転生先の世界の金も入っておる』

 

「えっ、いいの?」

 

『構わんよ、神の気まぐれというやつじゃ、受け取るといい』

 

神様は綺麗な顔に笑顔を浮かべる。

私とアルテラはお礼を言い話が進む。

 

『さて、では送るぞ』

 

「そう言えばどうやって転生するの?」

 

私たちが疑問に思っていると神様が何処からかボタンのついた箱を持っていた。

 

『でわな。ポチッとな』

 

バン! と音が響くと私たちの足元が消えていた。

そして訪れる浮遊感、その時私は気づいた。

自分が落ちていることに。

 

『一度でいいからこうやって転生させてみたかったんじゃよ』

 

私が最後に見たのは笑顔の神様と、私に抱きついたアルテラだった。

 




とある神様

「さてさて、いったようじゃの」

近年稀に見るいい子じゃったのう。
もっと話したかったがあまり長居させるわけにわいかないしのう。

「わしが好きなのはみんな一緒のハッピーエンドじゃ、だから幸せになってくれよ」

白髪の神は虚空を見つめる。
そしてこちらに向き直る。

「ワシは誰かって? ハハハ、それぐらいわかるじゃろ?」

そう言って神が笑うと世界が変わり真っ白な月が登る銀世界になった。

「わしが誰かじゃと? そんなもの決まっておるは!呼ばれてなくても参上いたす! 我こそは白夜の星霊 白夜叉なり!」

そう言って何も無いところに自己紹介をする神がいたとかなんとか。

まあ、作者なんですがね。( ^ω^ )テヘペロ♪



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第2話 キャラ崩壊とは、Fateだ!

今回はキャラ崩壊とネタバレがあります。
まあこうでもしないと作者が描きにくいんですよ。
作者にシリアスや難しい設定を書く技術なんてありませんからね。

では、本編をどうぞ!


「…ス……ー……マス……タ…」

 

声が響く、優しくて暖かい、そんな声が。

 

「マス…ー…おき…くだ…い…」

 

ああ、懐かしい声が聞こえる。

そう、この声は……

 

「もう、お寝坊さんですね。早く起きないと……イタズラしちゃいますよ?」

 

「……おはよう、アルテラ」

 

悪寒を感じた私は朧げだった意識を覚醒させて目の前のアルテラ挨拶を交わす。

 

「あら、起きてしまいましたか。イタズラができなくて残念です。まあそれは置いといて、こちらこそ、おはようございますマスター」

 

こちらを覗く彼女は悪戯っ子のような表情に笑みを浮かべていた。

私は芝生の地面から起き上がり周りを確認する。

まわりには木々が所狭しと生えている、まさに樹海と呼べる所だろう。

 

「アルテラ、ここが何処だかわかります?」

 

「はいマスター、ここはアクセルと言う町の近くにある森の中です」

 

何故アルテラがそんな事を知っているかというと私が神様が彼女を蘇生する時にこの世界の知識を一緒に入れてくれていたからだ。

彼女の頭に直接と聞いた時は少なからず怒りが湧いたがそれが私たち二人が見知らぬ世界で困らない様にとの理由であったため私も怒るのをやめた。

ほんと、優しい神様ね。

 

「うん、場所は概ね説明通り。では森を出ましょうか、ここは安全だろうけどずっと森というのもあれですから」

 

何故私がここが安全か分かったかというと先程から周りに生き物の気配が感じなかったから、そしてその理由がアルテラが魔力で周りに簡単な結界を張って居るのに気づいたからだ。

 

「そうですね、その前にマスター。こちらをどうぞ……」

 

そう言ってアルテラが渡してきたの綺麗に畳まれた服だった。

 

「これは?」

 

「はい、見た感じ私服のようです。今のマスターの服装はこの世界に適さないので着替えたほうがいいかと思いまして」

 

確かに、今の私の服はセラフでのレガリア所有者の服であり、どちらかと言えば寝間着を思わせる服装だ。

それにあの服はセラフという電子で構成された世界ではとくになんて事はないが、現実の世界であるここでは適さないだろう。

それに、今から町に行くとしてもこの格好じゃ不自然過ぎますからね。

 

「分かりました、けど、こんな服何処にあったの?」

 

私たちはこの世界に来たばかりですし、こんな物が既にあるのは可笑しいと思うのですよ。

 

「それはですね。マスターが寝て居る間暇だったので神様がくれたカバンの中身を確認してたんです、これはその中にあったものです」

 

ああ、あの冒険者セットとかいうやつか、お金や簡単な地図ならは言っていると思ったけどまさか服まであるとは、至れり尽くせりで申し訳ないな。

 

「他にもいろいろありますよ。金貨に回復ポーション、羅針盤に水筒……」

 

カバンの中から次々と出てくる道具の数々、中にはこれ必要? と思うものも見受けられました。

 

「本当いろいろあるね、明らかにカバンの大きさを超えるものもあるけど。多分、神様のことだから異次元収納とかそんな感じのものが付与してあるんだろうね」

 

あの優しい神様ならあり得るな。

しかし異次元収納か、ギルの宝物庫みたいに無限に入るのか、それとも重さや量に制限があるのか、そこは要検証ね。

アルテラがカバンの中身の紹介をして居るうちにさっさと着替えを済ませる。

それにしてもアルテラ以外周りに誰もいないとはいえ、外で裸になるのは恥ずかしいな。

あと、私が下着を残して全裸になると何故かアルテラが後ろを向いて鼻を押さえていたのだけどなんでだろ?

確かに見られながら着替えるのは恥ずかしいけど、その反応はどうとればいいのかな?

 

「さて、後はローブを羽織って完成だね」

 

まあ服装と言っても先ほどの服を少し改造した様な感じの服で、何処となく制服ぽい見た目だけどね。

脱いだ服は畳んでカバンの中にしまう。

白野が着替え終わると丁度落ち着いたアルテラが何事もなかった様に振舞う。

そのまま森の外に歩こうとするアルテラに白野が待ったをかけた。

 

「ちょっと待って。アルテラは着替えないの?」

 

こう言ってはなんだが彼女の格好は少し刺激が強すぎると思う。

 

「ああ、これですか? 大丈夫ですよ。知識の中にもこの様な姿の人もいましたし、それに戦闘意外の時はローブを羽織るので見える事はありません」

 

成る程、アルテラがそれでいいなら私は構わないが、アルテラに悪い虫がつきそうでなんだか嫌な気分になる。

私はそんな事を思いながらも口にはしなかった。

 

「ふふ、心配してくれるのですか? ありがとうございますマスター。それでは失礼しますね?」

 

彼女はそう言うと私に近づき私を持ち上げました、俗に言うお姫様抱っこだ。

 

「え、え? 何?」

 

「口を閉じてください。舌を噛みますよ?」

 

白野が聞くよりも早くアルテラは森を駆けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルテラが森の中を走って数分後、森を出ることができた私たちはそこから見える街に歩いていました。

そして私は先ほどの行動に対する抗議をしていました。

 

「走るなら走ると初めから言ってよ! ビックリしたじゃない!」

 

「すまない、しかし楽しかっただろう?」

 

確かに楽しかった。

絶叫マシン顔負けのスピードを出しながらそれでいて揺れはほとんどなく、風もまるでアルテラを避けて居るみたいにそこまでの風圧を感じなかった。

そのお陰かそこまで怖くはなかった。

彼女の顔を見るに多分彼女も楽しかったのだろう、ならこれ以上何か言うのは野暮ってものね。

 

「そうね、けど今度からはせめて一声かけてね」

 

「ああ、善処しよう」

 

「そこはちゃんと返して欲しかったなぁ……」

 

多分またやるね、私はそんな気がした。

 

「それにしてもアルテラ。何でそんな堅苦しい喋り方なの?」

 

森の中ではほんわかな感じだったのに、森を出たと途端にこの調子になった。

 

「ああ、その事か。さすがに人前でアレは恥ずかしい。だから二人だけの時以外はこの喋り方にさせてもらう」

 

成る程、まあどっちで喋ってもアルテラはアルテラだしアバターの時の彼女を見たのでそこまで違和感はないね。

 

そう言えば今更ながら気になることがあった。

 

「ねえアルテラ。一つ質問いい?」

 

「何だ?」

 

「今更だけど何故か私の記憶に見た覚えのないものが記憶されてるんだけど、知らない?」

 

そうなのだ。

神様がいたあの世界から少なからず感じていた疑問、肉体に芽生えた意思である私は本来石室とアルテラと駆けたセラフでの記憶しかない。

しかし今の私にはその他にも様々な知識や景色が頭の中にある。

それに喋り方も若干変わった気もする。

一体これが何なのか、私にはわかりらなかった。

 

「……気づいてしまったか、我がマスター」

 

なんかアルテラが哀愁漂う雰囲気を醸し出している。

えっ、もしかしてやばい感じのやつ?

 

「いや、別にそんなことはない」

 

先程までの雰囲気が嘘のように真顔で私の疑問に答えるアルテラ。

てか今更ですがナチュラルに心の声を読まないでください。

 

「だが断る!」

 

なんか、アルテラが可笑しい。

何と言うか、キャラ崩壊してる。

てか何でそのネタを知っているの、それと貴方はスタンド使いの漫画家じゃないでしょ。

 

「ネタはここまでにして質問に答えよう。まあすぐに話すつもりだったから別になんてことないがな」

 

「なら早く答えてよ」

 

私がそう言うと彼女は語り出すように話し始めた。

そう言うのいいんで早く話してください。

 

「せっかちなマスターだ。まあいい、ではそうだな……まず私たちが白夜叉に助けられたのは知って居るな」

 

「はい、だからここに居るわけだしね」

 

「そうだな、白夜叉が言うにはその時に少し不具合があったみたいだ」

 

不具合?

一体なんのことだろう。

 

「魂の不具合だ、やはりと言うべきか私たちを、消えゆく魂を掬い上げたはいいがその過程で魂に異物が紛れこんだ」

 

異物、それはいったい……

 

「異物といったが正確には少し違う。何故かは知らないが消えて容量が足りなくなった魂を補強するようにセラフに蓄えられていた知識が私達の魂に混入したらしい」

 

「えっ、セラフの知識?」

 

確かにセラフの知識が私の中にあるなら私の覚えのない記憶などの説明がつく。

膨大な情報を蓄えているセラフの事です、何かしら予想外な事があっても驚きはない。

だけどそれじゃあアルテラが変なのはどうしてなの?

 

「白夜叉の話だとマスターの魂には、並行世界のマスターの知識とあり得た世界の知識が混ざっていて、私の方は何故か知らないがサブカルチャーと呼ばれる、所謂オタク文化なるものが混ざったらしく……その」

 

「そのせいでキャラ崩壊を起こしたと。成る程理屈はわかった」

 

アルテラが変なのは世界の意思と、そう思えばいいね

良かった、危ない事じゃなくて。

私はアルテラの話を聞き終わり安心で吐息が漏れた。

 

「まあそう言う事だ、白夜叉が言うには魂そのものに影響はないらしく、強いて言えばその知識がたまに脳裏によぎるなどあるが概ね害はないらしい。だからあまり気にしなくても大丈夫だ、マスター」

 

「そうだね、むしろ役に立つ知識もあるからありがたい」

 

さて、面倒な事は終わった、話しているうちに町の入り口についたようだし町に入るとしよう。

その前に私はアルテラに話をする。

 

「町に入る前に門番さんが居るみたいだし私が話をしてもいいかな?」

 

「構わないがどうするつもりだ? 別にただ通ればいいだろう」

 

確かにただ通れば変な事もなく普通に入れるだろう。

けどその前にいろいろ確認することがあるからね。

 

私たちが歩いて居ると大きな門が見えてきた、それなりに大きな町のようで外からでも中の人たちの声が聞こえてきた。

私はそのまま歩いて行き門の前に立っている若い男性の門番に挨拶をした。

 

「こんにちわ」

 

「やあ嬢ちゃん、何かようかい?」

 

ふむ、話の感じからいい人そうね。

早速ですが確認できることを確認しましょうかね。

 

「ここはアクセルであってますか?」

 

「ああそうだよ、ここは始まりの町アクセルだ、そう言う嬢ちゃんたちは旅人かい?」

 

私の後ろのアルテラを見てから門番さんが聞きます。

ふむふむ、やはりここがアクセルですか、なら次は。

 

「はい、と言っても目的は冒険者になることなので旅人とは少し違いますけどね」

 

「へー、嬢ちゃんたちも冒険者志望かい。なら改めて、ようこそ、駆け出し冒険者の町アクセルへ!」

 

私の言葉に門番さんは友好的な笑みを浮かべた。

さて、聞く事も聞いたしそろそろ終わりにしようかな。

 

「最後に質問なんですが冒険者ギルドにはどう行けばいいですか?」

 

「ああそれわな、ここから……」

 

門番さんからギルドの場所聞いた私たちは彼にお礼を言って町の門をくぐり町に入った。

 

「さて、場所も聞いた事だし今日中に冒険者登録しよう」

 

 

私がそうアルテラに話しかけると彼女は周りをキョロキョロ見て落ち着かない様子でいた。

 

 

「どうしたの?」

 

「いや、人混みというものが初めてでな、何というか新鮮だ」

 

アルテラの顔は戸惑いの色も見えるがそれ以上に嬉しそうに見えた。

なぜだと疑問に思っていた白野は思い出した、彼女が何者であったかを。

【白の巨人(セファール)】 【遊星の使者】 【破壊の大王】 数々の呼び名のあった彼女、その全ては等しく人類の敵であり、絶対的な破壊者の総評だ。

何万年と石室に一人でいた彼女、アッティラとして大地を駆けた彼女、遊星の使者として彼女、そんな人生だったからだろうか、彼女はこの町のような人々が楽しそうにしている所を見るのが初めてなのだろう。

 

「……アルテラ」

 

「ん? どうしたマスター?」

 

私の後ろを歩いているアルテラに向き直り彼女に聞いた。

 

「嬉しい? アルテラ」

 

私の言葉に一瞬疑問符を浮かべる彼女、しかしすぐ言葉の真意を悟った彼女は笑顔でこう答えた。

 

「ああ、とても……とても嬉しいよ、マスター」

 

その顔は消えゆく彼女が最後に見せた笑顔以上に綺麗で可愛かった。

 




この作品はほんの少しのシリアスとスパイスに戦闘が入る感じです。
基本的にアルテラとはくのんの日常を淡々と綴って行く感じになると思います。てかそうしたい。

どの作品でも青ランサーの扱いが酷い件について。
まあステータス自体が不憫すぎて泣けますけどね。
エクステラの兄貴は結構使いやすかったです。
ただ宝具の演出が少し残念でしたけどね、だって枝みたいに分裂するだけなんですもん、何か物足りない感じがするんですよ。

ここに書いてあるのは作者のFGOのIDです。
まあ、自分で言うのもなんですが弱いです。

375,725,698

他にエクステラを題材にしている人の作品を見て才能の違いを感じました。
まあ自分のペースで頑張っていこうと思います。
それでは次回もよろしく。


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第3話 冒険者登録、普通ですが何か?

ジャンヌゥゥゥゥゥゥゥ!!!!

ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ・ランサー可愛すぎだろ!
ジャックもライムも可愛すぎます。

さて、今回はやっと二人の職業が決まります。
それではどうぞ。



「やってまいりました、ここが冒険者ギルドですね」

 

私たちが町の雰囲気を楽しみながら歩いていると目の前に大きな建物が見えてきた。

たどり着いたこの場所はこの町唯一の冒険者ギルド。

見た感じは大きな居酒屋見たいな感じだね、看板がないと飯屋と間違いそうな見た目だ。

 

「私の思っていたのと少し違うな」

 

「どんなのを想像していたの?」

 

「もっと豪華なものを期待していた」

 

少し残念そうに言う彼女。

 

「どんなのものを想像したか知らないけど早く入るよ」

 

早く登録して宿を探さないといけないしね。

そして私たちは初めの一歩を踏み出した。

 

扉を開けて入った冒険者ギルドは、昼間にもかかわらず非常に活気にあふれた場所だった。

酒屋と併設されているためか、アルコール飲料が入っているジョッキを片手に陽気に歌う者、そんな彼らを手拍子で盛り立てる者、仲間同士で集まりクエストへ向けて作戦を立てる者たち、隅の方で一人寂しく縮こまる者。多くの多種多様な人々が思い思いの時間を過ごしている。

この空間だと私の横で周りをキョロキョロと見ているアルテラが子供っぽくてとてもかわいく見える。

私が雰囲気に圧倒されているとウェイトレスのお姉さんが愛想よくこちらに声をかけてきた。

 

「あ、いらしゃいませ! お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてるお席へどうぞ!」

 

「……はっ! ど、どうもご丁寧にありがとうございます」

 

私はウェイトレスさんに礼を言って、改めて周りを見渡す。

どことなく薄暗い店内は、そこかしこに鎧を着た人たちがたむろしているみたいだけど特にガラの悪そうな人は見当たらない。

想像ではもっと殺伐としたのを想像していたのだけど。

けどみなさん何故かこちらを見ているね、新参者が珍しいのかな?

まあ、私たちの今の姿はフード付きのローブを羽織っているので少し目立つのは確かだろうけどね。

私たちはウェイトレスさんから言われた通り、奥のカウンターに進んで行く。

 

受付は四人。

その内2人は女性職員であり、2人のとこは別の人がいてフリーの綺麗なお姉さんの所に私たちは並んだ。

 

 

「どうも」

 

「はい、なんの御用でしょうか?」

 

「私たち、冒険者になりたいんですが登録お願いします」

 

「では登録手数料に1000エリス頂きます。お二人なので合わせて2000エリスいただきます」

 

今更だけどこの世界の通貨は、1エリス=1円らしいので計算がしやすい。

神様からの選別の中にざっと五十万エリスぐらいあったので二人分の登録料くらい余裕で払える。

私は財布から二人分の2000エリスを取り出し受付嬢さんに渡した。

 

「……はい受領いたしました」

 

そして受付嬢さんの説明が始まる。

 

「では、冒険者について簡単な説明をしますね。まず、冒険者とは街の外に生息するモンスター、人に害を与えるモノの討伐を請け負う人のことです。とはいえ、基本は何でも屋みたいなものです。そして冒険者には、各職業というものがあります」

 

職業か、知識の中のゲームや小説などでもよくあるけど私的には聖杯戦争のクラスみたいなものと思えばいいのかな? でもあれは役職名で職業とは違うし……

私が考えていると受付のお姉さんが私たちにカードを見せてきた。

 

「こちらに、レベルという項目がありますね? ご存知の通り、この世の中のあらゆるモノは、魂を体の内に秘めいます。どの様な存在も、生き物を食べたり、もしくは殺したり。他の何かの生命活動にとどめを刺すことで、その存在の魂の記憶の一部を吸収できます。通称、経験値、と呼ばれるものですね。それらは普通、目で見る事などはできません。しかしこのカードを持っていると、冒険者が吸収した経験値が表示されます」

 

成る程、別に冒険者にならなくても経験値を取得する事が出来るわけか。

冒険者カードはあくまでも経験値を視覚化してわかりやすくする機能だと思えばいいのかな?

 

「では、まずこちらの書類に身長、体重、年齢、身体的特徴等の記入をお願いします」

 

受付のお姉さんに渡された紙に自分たちの特徴を書いていく。

 

「はい、結構です。えっと、こちらのカードに触れて下さい。それで貴方たちのステータスが分かりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んで下さいね。経験を積む事により、選んだ職業によって様々な専用スキルを習得できる様になりますので、その辺りも踏まえて職業を選んで下さい」

 

「それじゃあ先に連れでお願いします」

 

「わかりました。それでは此方をどうぞ」

 

私は先にアルテラにしてもらうことにした。

私は楽しみは後にとっておくの派だからね。

それにしてもアルテラの職業か〜、一体何になるんだろ?

私がそう思っていると受付嬢さんが驚いた声を上げる。

 

「なにこれ!?」

 

受付嬢さんの狼狽ように疑問に思った私は声をかける。

 

「どうしたんですか?」

 

「レベルが既に60越えって何ですか! 他にも耐久と俊敏がカンストしてますし……魔力もアークウィザード並みにあるじゃないですか!」

 

アルテラのカードを見たお姉さんが叫び声をあげる。

そのせいか施設内が途端にざわめきだした。

神様の話だとステータスが軒並み低下したと聞いてたけど、元英霊だけあって低下したステータスですらとんでもないみたいですね。

まあ英霊達は歴史の中で英雄と呼ばれたもや伝承に残っている魔物や神などですから当たり前といえば当たり前ですね。

取り敢えず私は興奮した受付嬢さんを上手く言いくるめてアルテラの職業を決める話に移行させる。

 

「すみません。お恥ずかしいところを……」

 

「いえいえ、あらかじめ説明をしなかった此方にも非が有りますから」

 

「まさか異国の方だとは……」

 

そう、私が考えてアルテラの設定は、海の向こうの異国の国の者でこの町には海を渡って来たと話した、レベルが高いのは向こうの方で魔物を倒していたからだと説明した。

即興で考えたにしてはいい感じのものができたと思う。

ちなみにわたしの設定は、アルテラと一緒に来た付き人だ。

 

「それでは此方から職業をお選びください。これには貴方が今なれる職業が表示されます。アルテラさんのステータスですと上級職も選択可能です」

 

そういって渡された文字が浮かぶ紙を見る。

辺なところでハイテクですね、やはり魔法が一般的だとちょっと違うのかな?

セラフでも同じことができるけどあちらは世界そのものが電子でできているし物理法則無視などそこまで不思議とは思わなかったな。

 

私も横からアルテラの職業欄を見る。

 

ふむふむ、ソードマスター、クルセイダー、アークウィザード、などなど、流石アルテラ、選り取り見取りだね。

するとアルテラの顔が驚きの顔になった。

 

「すまない、このムーンセイバーとは?」

 

「ムーンセイバーですか? 上級職のようですが始めて見ますね……説明だと騎士の職のようです」

 

ムーンセイバー、ムーン、月か、私たちがムーンセル出身だからだろうか、いや、多分だけど神様が何かしたのだろう。

まあ、何にしてもせっかく用意してくれたんだし使わないのはもったいないかな。

 

「それにしたら、アルテラ。剣が使えるなら貴方のスタイルにも合うし」

 

「そうだな、ではこれで頼む」

 

「はい、確認いたしました」

 

アルテラの職業が決まり、私の番になった。

アルテラと同様にカードを受け取る。

カードに触れると文字が浮かび上がる。

見たことがない文字だが何故か読むことができた。

恐らくまた神様の仕業だろう、もう何も驚かないぞ私は。

そしてそのカードを受付嬢さんに渡す。

 

「はい、ありがとうございます。ハクノさんですね、ですね。えっと、筋力と耐久が平均以下でそれ以外は概ね平均です。ただ魔力と精神力だけが飛び抜けて高いです。このステータスならウィザードやプリーストなどがオススメですね、ハクノさんの魔力値なら初めからアーク系の上級職もいけそうです」

 

アルテラのステータスを先に見たからか驚きはしているが先ほどのように狼狽するようなことはなかった。

ちなみに私の名前をハクノにしたのは折角の新しい人生なので岸波白野ではなく“私”としての名前をつけて見たかったからだ。

筋力と耐久が平均以下なのは当然として、魔力が多いのは何でだろう? 確か私はそこまで魔力量が多いわけではないし、もしかしてムーンセルの知識が混ざった影響なのかな?

 

「では、職業を此方からお選びください」

 

アルテラの時と同じようにリストを見る。

 

見た所後衛職が多いようね……ん?

私はリストの中に妙なものを見つけた。

 

「あの、すいません。このムーンウィザードとは何ですか?」

 

「はい、ムーンウィザードですね。これも初めて見る職業ですね……説明では、アークウィザードとアークプリーストの両方を合わせた職のようです」

 

上級職二つを合わせた持った職業か。

やはりこれも月がつくということは神様が何かしらしたものなのかな?

まあ、後衛職ならマスターであった私向きだしこれにしようかな。

 

「ではこれで」

 

「はい、確認いたしました。これにて冒険者ギルドへの登録は終了いたしました。ハクノ様、アルテラ様、スタッフ一同、今後の活躍を期待しています!」

 

「ありがとうございます。続けて悪いんですけどこの近くに泊まれる宿か空き家はありませんか?」

 

「そうですね、少し待ってください」

 

そう言って受付嬢さんは奥の方に歩いていった。

 

「マスター」

 

「どうしたのアルテラ? その前に今更だけどその呼び方は辞めて」

 

今の私は貴方のマスターではないし、それに今はその呼び方よりも名前を呼んでもらいたい。

 

「……わかった。ハクノ、これで良いか?」

 

「うん! それでどうしたの?」

 

「いや、ハクノはこの職業についてどう思う?」

 

「そうだね、十中八九神様が何かしたか、若しくは私達の出身が原因か、だね。まあ神様の仕業なら私達が不利になるものじゃないだろうし、後者なら考えないといけないけど」

 

多分大丈夫だと思うよ。

あの神様は優しいからね。

ほんと色々してくれて有り難い。

私とアルテラが話していると受付嬢さんが戻ってきた。

 

「お待たせいたしました。宿の件ですが残念ながらどこも満室でした。けど空き家なら町外れに一つだけありました」

 

「そうなんですか? けど宿が満室でそんな空き家が余ってたりするんですか?」

 

「はい、元々冒険者の方が住んでいたのですがつい最近、別の町に行くと言うことで家を引き払ったんです。町の端にありますが立地もよくそれなりに大きいです」

 

ふーん、なかなかの好物件だね、これは運がいい。

 

「ならそこでお願いします。今日から住みたいのですが良いですか?」

 

「はい大丈夫ですよ。けど大丈夫ですか? それなりに値もはりますよ?」

 

「はい、お金ならそれなりにあるので」

 

こうして私達は登録初日に家を買った。

 




アルテラたちの職についての説明ですが。
ムーンセイバーやムーンウィザードは日本語訳だとそれぞれ月の騎士と月の魔法使いです。
詳しいことはまだ言えませんが基本的にエクステラ関係のスキルを取得できるとだけ言っておきます。
次回は戦闘回の予定です。
質問等なども常時受け付けております。
それでは次回もよろしくお願いします。


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第4話 戦闘? 何それおいしいの?

今日はやっと戦闘回、まあ一応が付きますがね。

FGOの種火集めがめんどくさい、もっと纏めて手に入るクエスト作ってくれないかな。

誤字報告ありがとうございます。

では本編をどうぞ。


 

「この依頼でお願いします」

 

冒険者登録をして家を買った次の日、私達は初めての依頼の為に朝早くからギルドを訪れていた。

家についてだが、なかなかの広さで昨日はその家の掃除とスキルの取得の確認で1日が終わった。

 

「はい、ジャイアントトード五体の討伐依頼ですね。確認いたしました」

 

ジャイアントトード、簡単にいえば牛サイズの大きなカエルのモンスターである。

 

依頼を受けた後、私達は町の門を出てカエルのいる草原に歩いていった。

といっても町からそんな遠くない場所なのですぐにつくと思うが。

 

「楽しみだなハクノ」

 

「うん、初めてだから緊張するよ」

 

私達はそれぞれ昨日のうちにギルドカードの職業欄でスキルを解放していた。

そのスキルを見てこの職業が神様がくれたものだと確信した。

何故ならその職業で取得できるスキルがムーンセルで使えたスキルや技であったからだ。

アルテラはスキルを上げることでムーンセルでの技の解放、私はコードキャストの解放だった。

まあ私の場合はその他にも色々気になるものがあったが概ねムーンセルの時に使えたものだった。

アルテラの方は剣術のスキルを上げて何個か技を取得した。

宝具などの物は未だ使用不可だがレベルを上げていけばいつか使えるようになるだろう。

私の方は防御魔法や罠魔法、回復魔法など支援系の魔法を多く取得した。

コードキャストの殆どが支援系であり、少しトラップ系がある程度で、直接攻撃する物がないため私の魔法も必然的に支援系が多くなった。

まあコードキャストと関係ない魔法も少なからずあったのでそちらの攻撃魔法なども取得した。

 

「ついたぞ」

 

話をしているうちに目的にの草原についたようだ。

でもこんな町の近くに魔物がいても大丈夫なんだろうか?

それにしても……

 

「ここが草原か……何もいないね」

 

「ああ、まだカエルがいると聞いていたのだが、どうやら眠ってるらしいな」

 

「みたいだね」

 

ジャイアントトードは冬の間は土の中で冬眠する。

そして冬眠から起きると地面から地上に出て餌を探す。

ジャイアントトードはいくら狩ってもすぐに増えるので定期的に狩らないと大変なことになるらしい。

 

でもまだ冬眠の時期には早いし、眠っているならどうしようかな。

 

「うーん……よし、これにしよう。アルテラ、地面に向かってパンチ。強めでお願い」

 

「なるほど、了解した」

 

私の言葉でアルテラが腕を大きく振りかぶる。

 

ドゴォン!

 

殴ったことで地震ばりの振動が響き渡る。

うん、知ってたけど規格外、これだと町まで響いてそうだね。

 

私がそう思っていると周りの地面がボコボコと盛り上がり始める。

そして大きなカエルが次々と地面から這い出てきた。

 

「うん、予想通り。やっぱり眠ってたみたいだね」

 

「みたいだな、まあ、この数は予想外だが」

 

うん、軽く見積もって20匹くらいだと思っていたのにざっと50はくだらない程いる。

それにあのような方法で起こしたせいか気が立っているようだ。

まあ誰だって寝ている所を起こされた怒るよね、私だって怒るもん。

 

地面から出てきた全カエルがこちらに向く。

場違いだけど、なんか可愛いな。

 

「さて、どうするハクノ? この数だ、今回は私だけでやろうか?」

 

「うーん、5匹ぐらいこっちに回して。試してみたい魔法もあるし、けど、もしピンチになったヘルプお願い」

 

「了解した」

 

アルテラは羽織っていたローブを脱ぐ。

そしてセラフで何度も見た彼女の戦装束が露わになる。

そして彼女の手には町の店で買った鉄の剣が握られている。

彼女の武器である【軍神の剣】は宝具なので勿論のこと今は使用不可だ。

なので彼女の武器と私の武器は朝早く武器屋で買った安物である。

アルテラは鉄の剣、私は一応ウィザードなので杖を買った。

まあ、私のコードキャストは杖がなくても唱えられるので攻撃魔法以外は必要ではない。

 

私があれこれ考えているうちにアルテラによってカエルが肉塊に変わっていく。

流石アルテラだ、鉄の剣とは思えないほどスパスパ敵が切れていく。

そしてアルテラに見逃されていたカエルが5匹一箇所に集まっていた。

 

うん、それじゃあこっちもやりましょうかね。

 

「燃やすと価値が下がるからダメ、となると氷か風が妥当かな。ならこれで【ウィンドスラッシュ】」

 

私が魔法を唱えると風の刃が寄り添っていた2匹のカエルを横から真っ二つにした。

今の技は中級魔法で、風の刃を生み出し相手に飛ばす魔法だ、硬い相手には効果が薄いがカエル程度なら今のように真っ二つにすることもできる。

 

私の攻撃で仲間がやられたことに気づいたカエル達がこちらに向かって文字通り跳んでくる。

 

牛の二倍の大きさだけあって飛び上がる高さもその飛距離もほんとに空を飛んでると錯覚するほど見事にこちらに向かって跳んでくる。

 

だけど残念、こう見えて私は慎重派なの。

 

「トラップ発動【フリーズコフィン】」

 

私の言葉と同時に周りに冷気が満ちた。

そしてカエル達はそのまま私のテリトリーに侵入した瞬間。

 

三匹のカエルは見事な氷塊となって私の前に落ちてきた。

 

フリーズコフィン、セラフでの領地防衛の時にセクタートラップとしてよく使用したコードキャスト。

効果は言わずもがな、トラップの効果範囲内に入ってきた敵を一定時間凍結する物だ、その力は英霊達にも足止めできるほどで、一度凍結すれば効果時間が過ぎるか、または攻撃を受けるまで相手を凍結させるというとんでも性能である。

トラップ系のスキルは設置してから発動までのタイムラグがなく、あくまでも発動の条件を設定できると言うだけで通常魔法と大差ない。

今回のトラップの発動条件は私の半径10メートル以内に侵入したら発動と言う条件だったので発動してからすぐに効果範囲に入ったためすぐに発動したと言うわけだ。

まあ、発動までのタイムラグがないだけで、設置するまでの待機時間は存在するのであらかじめ魔力を練っていつでも発動できるようにしていたのだ。

さて、このカエル達をどうやって街まで運ぼうか。

私が凍ったカエルをどうしようかと考えていると後ろからアルテラが歩いてきた。

 

「どうやら問題ないようだな」

 

「うん、そっちはどう?」

 

「ああ、全部片付けた。カエル達が寝起きで動きが鈍かったのもあるが、やはり下級の魔物では相手にならなかった」

 

でしょうね。

別にジャイアントトード自体が弱いと言うわけではない。

街の近隣にいるニコゴブリンなどの下級魔物の中でも強く、その習性故、繁殖期になると産卵のため生をつけようと町まで移動して牛や人などを食べてしまう恐ろしい魔物である。

なのでジャイアントトードの繁殖期になると牛や子供などが行方不明になることが多々あるという。

しかし言ってはなんだが相手が悪すぎる。

アルテラはステータスが落ちたとしても元は神霊級の英霊であり、その本体は遊星の使者とも呼ばれる白の巨人セファールである。

幾らステータスが落ちたとしてもアッティラとして戦って得た戦闘経験、生まれながらの類いまれなる戦闘センスは無くなることはないので、低下したステータスとはいえ彼女が下級程度に遅れを取る道理はないわけである。

まあ、最もな話ですが低下したステータスですらこの世界の最高峰冒険者並みなので身体的にも精神的にもカエル達に勝ち目など無かったのである。

 

「それにしても、ハクノはだいぶ戦えていたな。少し以外だ」

 

「そうだね……実を言うと私も予想外。自分の事だけど、もっとテンパったりすると思ってた」

 

私はアルテラと共にセラフを蹂躙したものの私自身はコードキャストでのサポートばかりで今回のような直接戦闘は初めてだ。

だと言うのに私の心は思いの外落ち着いている。

魔物とはいえ生き物を殺した事もなんとも思わない。

 

「うーん、やっぱり魂に混じった物が原因なのかな?」

 

「一概にそうともいえないが可能性はあるな。今のハクノには月の聖杯戦争を勝ち抜いた時や、並行世界で私と戦った魂や精神の岸波白野の知識や経験が記憶されている。根本的なところで私と過ごした白野と今のハクノは違うのだろう」

 

やっぱりそうなのかな。

アルテラと共にいた私はいわば中身のなくなった器に残った雫、それがアルテラとの触れ合いで一つの意識として確立した存在。

それは魂か精神が戻れば消えてしまうとても不安定な存在、それが私だった。

しかし今の私はどうだ、役目を終え消えゆく私は神様によって一つの個人として生まれ変わった。

その過程であらゆる世界の私の可能性の人生、経験、知識を得た。

薔薇の皇帝、九尾の妖狐、紅い弓兵、黄金の英雄達と一緒に戦った月の聖杯戦争の記憶。

並行世界で先のもの達とでアルテラと戦った記憶。

幾多の英霊を従え人類を救う戦いに身を投じた記憶。

ありとあらゆる並行世界、平行次元での岸波白野としての記憶。

その全てが今の私の中に確かに存在した。

別にその事はそこまで悪いと思っていない。

前も言ったが便利であるし色々な私の人生を見るのは楽しい。

しかしふと思ってしまったのだ。

 

ここにいる私は本当に“私”なのかと?

 

その事を理解した時、とても怖かった、私が私で無くなると思うととても恐ろしかった。

しかしそれも過去の話、今の私には既にその事に対する恐怖はない。

何故ならここにいる私が誰であろうともアルテラの最愛の親友はこのハクノ以外存在しないのだから。

幾ら私が知識に侵食されても、ここにいるのは確かに私と言う一個人であるのだから。

 

「そういえばアルテラ、気分はどう?」

 

「ん、急になんだ?」

 

私のいきなりの質問に疑問符を浮かべる彼女、そんなアルテラに私は問いかける。

 

「だってアルテラ言ってたじゃない。叶うならもう一度草原をかけて見たいって」

 

「あっ…………覚えていたのですか?」

 

私の思いもしない問い掛けに素に戻って聞き返すアルテラ。

私はそんな彼女に笑顔でこう言った。

 

「当たり前だよ! アルテラの夢だったんでしょう? 叶えられて私も嬉しいよ!」

 

私のこの言葉に彼女の目は小さな涙で濡れていた。

そして彼女は笑顔でこう言った。

 

「はい、ありがとう、ハクノ」

 

彼女の笑顔は相変わらずとても綺麗だった。

 

 

 

アルテラの夢の話が終わり次の話題はこの大量のカエルをどうやってギルドまで持ち帰ると言う話になった。

 

話し合いの結果、アルテラにギルドまで走ってもらい、ギルド員に取りに来てもらう事にした。

その間私はトラップを仕掛けた状態で彼女を待っていた。

 

アルテラが連れて来たギルド員達が積み重なった大量のカエル達を見て口を開けて唖然としていたのはなんとも面白い光景であった。

 

こうして私たちの初めてのクエストは規定の討伐数を大幅に上回り大成功で終わったのだった。

 

 

 

 

 




今のはくのんの状態の説明、および葛藤。

アルテラの夢を達成。

ああ、なんと優美であるか。
とまあ作者はとても嬉しいです。
エクステラ全クリしてから育成以外やることがないでござる。
もっと面白いゲームは無いものか。

まあ話はここまで、次回もよろしくお願いします。


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第5話 アルテラは可愛い、それは心理!

もう直ぐテストなので来週の投稿はありません。

アルテラさんで新たな小説を書いてみたい。
具体的にデート・ア・ライブか戦姫絶唱シンフォギアどちらかで。
うん、インフレする未来が見える。
最強の魔術師さんがフォトンレイでやられる未来と、ネフィリムがセファールに食われる未来が見える。

仕方ないね! アルテラさんだもの!

でも実際アルテラさんの本質は遊星の使者だから地球上の存在で勝てるのは星が生み出した聖剣を持つアルトリアさんくらいですね。
ネロとタマモは抜く、あんなもん月の王権に物合わせた力押しですもん。
セイバー・ヴィナスは意外だった。
まあアンリ・マユ以上に強大だったからね、神様の力使っても仕方がない。
アルキメデス? 誰それ?


どこにでもある簡単な部屋、所々にその部屋の宿主の方持ち物が置いてある以外は普通の部屋。

座るための椅子や机があり、衣類をしまうためのタンスもある。

そして睡眠をとるためのベットもある。

そして今そのベットはわずかに膨らんでおり誰かが寝ているのがわかった。

 

規則的に上下に膨らんだり凹んだりしている。

そして膨らんだ布団がずり落ちふくらみの正体の姿が露わとなった。

その正体は一人の少女であった。

布団からこぼれ落ちて床につきそうな長髪はとても綺麗だ。

そして髪の隙間から覗く彼女の顔はとても整っており十人中には八人が美人と答えるであろう美貌だ。

 

そして彼女の目が徐々に開かれていく。

おぼろげに開かれたその瞳は髪の色と同じ茶色、しかしその目はまるで星のように輝いていた。

 

「……ん……朝?」

 

綺麗なアルトボイスの呟きが聞こえた。

彼女はカーテンから入るわずかな光に目を細めながらそう言った。

 

「……はぁぁぁ……んーーー。いい朝」

 

起き上がった少女、冒険者ハクノは気持ちのいい朝を迎えていた。

そしてカーテンを開けて部屋に光を入れる。

 

「うん、いつにも増して晴天だね!」

 

そう元気よく叫ぶ彼女はとても嬉しそうだった。

ここは冒険者登録初日に買った家で二階建ての小さな家だ、まあ二人で住むには広いのでそれほど窮屈と言うことはない。

 

「さて、今更なんだけど言っていいかな?」

 

そう言って彼女は窓とは逆方向を向いた。

 

「いつまでこっぱずかしいナレーションの真似なんてしているつもり、アルテラ?」

 

「バレてしまいましたか」

 

ハクノが向いた先には先程からずっとナレーションを続けていたアルテラが椅子に座っていた。

 

「そりゃ誰だって分かるよ。枕元でずっと話し声が聞こえれば」

 

「そうですね。それにしてもマスター……」

 

「マスターはやめてって。今の私と貴方は主従契約もしていないでしょうに」

 

私は呆れるようにそう言った。

 

「あら、もう忘れてしまったのですかマスター?」

 

そう言って彼女は自分の左手を私に見えるように前に出す。

その手の薬指には黄金でできた見事な指輪がはめられていた。

そしてアルテラは私の手の甲を指差しそこには紅い紋章が浮かんでいた。

 

「……ああ、そう言えばそうだったね。寝起きで忘れてたよ」

 

「ふふ、忘れん坊なマスターですね」

 

今、彼女の指にはまっているのは、かつてセラフで私が彼女に渡した指輪、月の王権の象徴、レガリアであった。

なぜ彼女がそんな物を持ってあまつさえ薬指にはめているかと言うとこれには色々と深いわけがある。

 

まずその為には私の職であるムーンウィザードについて説明しなければならない。

 

私の職であるムーンウィザードはアークウィザードの特徴の高威力の攻撃魔法とアークプリーストの高レベルの回復魔法とセラフで使っていた機能の一部を併合した職である。

私の職のスキルで取得出来るのはコードキャストの魔法+アークウィザードの攻撃魔法(アークプリーストの支援魔法や回復魔法はコードキャストにもあるので数えない)である。

そしてその他にも多数のセラフでの機能が使用できた。

まずその一つが先ほどアルテラが見せたレガリアもどきを使った主従契約である。

効果は契約指輪、レガリアを契約対象者が身につけ契約者と対象者との間に魔力のパスを繋げることが出来る効果だ。

これによって片方が魔力切れになってもパスの繋がっている相手から魔力をもらうことが可能になり、どんな遠くに離れていても相手の居場所とその時の感情を察知することができたりなど恩恵が多いスキルである。

まあ簡単に言えば月のサーバント契約と同じようなものだと思ってもらえれば理解しやすい。

そしてアルテラがその指輪を薬指につけているのは彼女いわくこの方がいいからという理由である。

決して何かあったというわけではないので悪しからず。

 

「さて、ご飯はもう出来ていますので、服を着替えて来たら下に降りて来てくださいね。温かい食事はいい文明ですから」

 

「わかった」

 

アルテラは私にそういうと部屋を出ていった。

そのあと私も服を着替えて一階に降りるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が下に降りると丁度アルテラがキッチンから出てくるところだった。

 

「やっと降りて来ましたね」

 

「うん、少し着替えるのが遅れちゃった」

 

「構いませんよ、温めなおしますので少しお待ちを」

 

そういってアルテラは厨房に戻っていく。

私は席について朝ごはんを待つ。

少ししてからアルテラがお盆に載せたご飯を持って歩いて来た。

香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。

 

「うわ、朝から美味しそうな料理だね」

 

「はい、腕によりをかけて作りました!」

 

アルテラはえっへん! とでも言うように胸を張る、その仕草が可愛らしくて頬が緩む。

 

「ありがとう、アルテラ。さて冷めないうちに食べようか」

 

「はい、それでは……」

 

「「いただきます!」」

 

私はまず目の前のパンを口にする。

見た目は日本の食パンを想像してくれたらいい。

綺麗に焦げ目がついた食パンを口いっぱいにほうばる私。

 

「ハム、むぐむぐ……ごくん。うん外はカリカリ、中はふんわり。絶妙な焼き加減だよアルテラ」

 

「……ごくん。ふふ、このスープもどうぞ、このあいだのクエストで狩ったトウモロコシで作ったコーンポタージュ風のスープです。予想外のスピードでビックリしました」

 

「ああ、確かこの世界の野菜は動くんだったけ」

 

「はい、思ってた以上にこの世界は不思議がいっぱいですね」

 

アルテラの言う通りこの世界は不思議がいっぱいだ。

野菜が喰われないために空を飛んで逃げるという話があるくらいだし。

 

「それにしても、もう一ヶ月か。早いものだね」

 

私達が冒険者になってから早1ヶ月、レベル1だった私のレベルも今や38になった。

アルテラも上級の魔物を多く倒しているのでレベルは既に89になっている。

私とアルテラは普段は二人でパーティーを組んでクエストをこなしており偶に別々で仕事をすることもある。

いつの間にか二つ名がついていたときは二人して笑っていた。

 

「さあ、ご飯が冷めてちゃうし早く食べよう」

 

「それもそうですね」

 

私は美味しそうなパンを頬張るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝ごはんを食い終わった私たちは今日の予定を決める為にリビングで話していた。

 

「今日はどうしますか? 私はクエストに行くつもりですが」

 

「そうだね、久しぶりに私も行こうかな。最近は道具作成で部屋に篭りっきりだったし」

 

さて説明しよう。

私の職、ムーンウィザードのスキルの一つ。

その名も道具作成、簡単に言えば魔法アイテムなどを生産できるスキルである。

このスキルはセラフのシステムの一つ礼装作成を真似たスキルであり、材料があればそこから錬金してアイテムを作ったりすることができる。

クエストに行かない時はこのスキルを使ってアイテムを作りギルドや道具店に売ってお金を稼いでいる。

最近はクエストよりも道具作成ばかりしていたので久々に外に出て体を動かしたい気分なのだ。

 

「では後ほど」

 

私たちは着替える為にリビングを後にした。

 

着替え終わり家から出た私たちはギルドに向けて歩いていた。

 

「はあー、久々の外は気持ちいいなあ」

 

「一週間もこもっていたらそうだろうな」

 

だって仕方ないじゃない。

普通のアイテムならともかく魔法アイテムなどは作るのが大変なんだもの。

作るのに夢中で日が昇っていたなんてザラだったし。

 

今更だけど今の私たちの姿を説明しよう。

私の服装は白いローブに帽子を被った見た目で、杖を持っている。

この服は私が作った礼装で、魔力の自動回復と自動修復を付与してある。

アルテラの服装は真っ白な騎士鎧を着ている。

例えるなら青セイバーの騎士鎧の白バージョンと思えばいい。

この服も私が作った礼装でアルテラの負担にならないように重量軽減と自動修復が付与してある。

 

「まあそれは置いとくとして、最近なんか面白いことでもない?」

 

「置いとくのか、まあいい。面白いことか。そうだな……そう言えば最近不思議な二人組を見たな」

 

アルテラが説明する。

一人はジャージをぽいものを着た男性で、もう一人がヒラヒラしている服を着た凄い美人な女性らしい。

初めて見た時は服装が気になって観察していたが最近は三人パーティーを組んでクエストをしているのをよく見かけるらしい。

その姿が楽しそうで印象に残ったらしい。

 

「へー、私も見て見たいなあ」

 

「今日会えるかもしれないな」

 

そうして私たちはギルドに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちはギルドについたので扉をあけて中に入った。

私たちがギルドに入るとヒソヒソ話が聞こえた。

 

「おい、あれって……」

 

「ああ、白銀の軍神だ」

 

「隣には慈愛の聖女もいるぞ!」

 

「相変わらず二人ともお美しい……」

 

「おい、お前誘ってこいよ……」

 

「バカ言え、無理に決まってんだろ!」

 

ああ、うん相変わらずで安心した、私はいつも通りのギルドの様子に安堵を感じる。

ギルドに来ると大体みんなこんな反応をする。その理由は私とアルテラがここいらの高難易度のクエストをあらかた達成したからだ。

なので実力のある私たちを引き抜こうと色々なパーティーが勧誘に来たがアルテラがその全てを断った。

中には実力行使を行おうとしたもの達もいたが全員アルテラにのされた。

因みに先ほどの二つ名は前者がアルテラ、後者が私になる。

おそらくアルテラの方は私たちの戦闘を見た冒険者が見た目とその戦いの激しさからつけた二つ名だと思われる。

まあ、ドラゴンを討伐したら嫌でも目立ちますよね。

しかし私の方の二つ名の意味がわかりません。

何故私に二つ名なんてついたのでしょうか、謎だ。

 

「アルテラさん、ハクノさん、おはようございます」

 

「こちらこそ、一週間ぶりですルナさん」

 

彼女の名前はルナさん、ルナさんとは私たちが冒険者になった日から何かとお世話になっている人だ。

 

「相変わらずの人気ですね」

 

「面倒なだけだ」

 

「まあコソコソ話すだけなら別に良いですよ」

 

酔っ払いなら偶に絡んで来るが話すだけの人達は基本的に無害だから気にしない。

 

「討伐系のクエストでいいものありませんか?」

 

「そうですね。少しお待ちください」

 

ルナさんはそう言うと奥に歩いていった。

そして少ししてから紙の数枚持って歩いて来た。

 

「お待たせいたしました。今の所ある討伐依頼はこちらになります」

 

私はルナさんが出して来た紙に目を通す。

 

 

 

『ジャイアントトードの五匹の討伐。

報酬金額 10万エリス』

 

『森のウルフの群れの討伐。

報酬金額 5万エリス』

 

『町の廃墟のゴーストの浄化。

報酬金額 8万エリス』

 

 

うーん、何と言うか微妙なラインナップ。

まあ現実なんてこんなものね。

楽して稼げる仕事なんてありはしない。

 

「最近アルテラさんがここいらの上級魔物を刈り尽くしたので最高で中級ぐらいの討伐依頼しか無いんですよ」

 

「やる事もなかったからな。暇つぶしにはなった」

 

アルテラが私は悪く無いと言うようにそっぽを向く。

別に気にして無いよ、だからその顔をこっちに向けてくださいな。

 

「うーん、ならカエルさんにしようかな、そろそろ狩りどきだし」

 

私はジャイアントトードの討伐依頼の紙をルナさんに渡す。

 

こらそこまたカエルか、とか言わない。

カエルさんほど便利な子はいないんだよ。

それにカエルさんの肉はそれなりに美味しいからね。

 

「確認いたしました。それと一つお知らせが、今日は他にもジャイアントトードの討伐に向かったパーティーがいますので気にかけておいてください」

 

「了解です。それにしても私達に気にかけろとは、もしかして駆け出しですか?」

 

「そんなところです。ではお願いしますね」

 

ルナさんが去った後、私とアルテラは早速カエルさんを狩にいくのだった。

 




FGOでアルテラに聖杯を使うべきか否か、クロエを100Levelにするか否か、迷うなぁ〜。

エクステラに対戦システム追加してほしい。
対戦で陣取りゲームとか楽しそう。
レベルにものを合わせたゴリ押しが容易に想像できるけど。

てか衣装の追加も良いけどサーバントの追加が欲しい、金かかっても良いからジャックちゃん追加して欲しい。
師匠でも可。

では来週もよろしくお願いします。





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第6話 お前は誰だ! はくのんです。

今回は結構無理やり書いた感が否めませんでした。
やはり小説は難しい。

そして今更だがテストで出すのが遅くなると言ったな?
ははは、あれは嘘だ!

いや実際テストがあるのは本当なんですけど、なんかやる気が起こらなくて、てかテストの時に限ってネタがどんどん思いつくという。

まあいいや、とりあえず本編をどうぞ。



カエルさんを討伐する為、私たちは草原を歩いていた。

 

「平和だねぇ〜」

 

「ああ、退屈なくらいな」

 

アルテラとハクノの雰囲気はこれからクエストをするとは思えないほどリラックスしていた。

まあジャイアントトードは二人が何度も狩った魔物だ、無論油断などはしないがそれでも今の二人ならここらの魔物に囲まれても無傷で突破するだろう。

ハクノは空を見ながら話す。

 

「空はいつ見ても青いね〜」

 

「そうだな、しかし本当にハクノは空が好きだな。何か理由でもあるのか?」

 

アルテラは気になりハクノに問う。

 

「そうね、理由は特に無いかな。強いて言えば現実の空を見たことが無いからかも」

 

セラフの世界は電子の世界で空も電子で空っぽく見えるだけで地上の空とは別物だ。

セラフの世界が嫌いってわけじゃ無いです、けどやっぱり本物を見て見たいと思っていた。

 

「この世界は初めてがいっぱい。味めての冒険、初めての散歩、初めての買い物。どれも私にとってとても楽しいもの。アルテラはこの世界をどう思う?」

 

「私か? そうだな、私もこの世界は面白いと思う。私たちの世界とは違いのどかで、死と隣り合わせの世界なのに何処か緩い、こんな世界があるなんて、私にこんな人生があるなんて今でも信じられない」

 

彼女は破壊の化身だった、どんなに美しくても、どんなに大事でも、彼女は壊すことしかできなかった。

そんな彼女だから、のどかなこの世界がたまらなく嬉しいのだろう。

 

「本当、神様には感謝だね」

 

「ああ、本当にな」

 

私とアルテラは空を見ながら神様にはお礼を言った。

 

白夜叉様、私たちを生まれ変わらせてくれてありがとう! と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私とアルテラが談笑しながら歩いているとやっと目的の草原に着くことができた。

はじめに比べてレベルが上がったことにより総合的にステータスが強くなってもなんでか遠くまで歩くのは疲れる。

まあそこは感じ方の問題なのだろう。

 

「さてと、仕事の開始で……おや、先客がいるようだね」

 

私の目線の先には大きなジャイアントトードの前に立つ人影が三人見えた。

おそらく彼らがルナさんが言っていた冒険者達だろう。

 

それにしても……

 

「大丈夫なのかな?」

 

なんか水色の髪の女性の人がカエルに特攻して自らカエルの腹のなかに入って言ったんだけど。

仲間の人はそんな彼女をガン無視だし。

一応あれって危険だよね?

 

「……ああ、彼らか」

 

「ん? 知ってるの?」

 

アルテラが彼らを知っているかのような反応をした。

気になった私は彼女に問う。

 

「ああ、あのトンガリ帽子の少女は知らないが残りの二人は知っている。今朝言っていた不思議な二人組だよ」

 

へー、何という偶然だろう、それにしても彼らが。

見た感じアルテラが言うほど不思議には見えませんね。

 

「うーん、それにしてもどうしようか?」

 

一応彼らもジャイアントトードの討伐依頼を受けているし私たちが横からかっさらうというのも気がひけるし。

 

「取り敢えず様子を見ればいいんじゃないか?」

 

「そうだね、もう少し様子を見ようか。もし、ピンチになったら助けに入れば良いんだし」

 

私達は彼女達を見守る事にした。

すると彼らの中の一人、トンガリ帽子の少女からとてつもない魔力を感じた。

私たちはその現象に驚き、そして感心した。

 

「……凄い。とんでもない魔力収束だね」

 

「ああ、恐らく彼女はアークウィザードなのだろう、それにしてもすごい魔力だ」

 

遠く離れている私たちにも溢れた魔力が伝わってくる。

彼女の杖に膨大な魔力が凝縮し、その力を解放した。

 

「『エスクプロージョン』ッ!」

 

そんな小さな声とともに平原に一筋の閃光が走り抜けた。

 

そして次の瞬間強烈な光と共に空気を震わせる轟音が響いた。

私たちは思わず耳を塞ぐ、そして爆煙が晴れると、カエルがいた場所には二十メートル以上のクレーターができていた。

 

「……凄まじい威力だ。軽く見積もってCランク宝具くらいの威力ありましたよ今の」

 

「感嘆の一言だ、魔道士とはいえあのクラスの爆裂魔法が撃てるものはそうはいないだろう」

 

私とアルテラが先ほどの魔法に戦慄していると今の爆発で目が覚めたと思われるカエル達が地面から何匹か這い出ていた。

 

「ふむ、増援ですね。けど今のを見るに心配なさそうだね」

 

私は安堵の思いで彼女達を見ていた。

しかし

 

「……あれ? あの子動きませんよ?」

 

「なに……本当だな、地面に突っ伏したまま動かないな」

 

何ででしょうか、いくらあんな強烈な魔法とはいえ、一発で倒れる魔法なんて打つはずないだろうし。。

 

「いえ、もしかして本当に?」

 

マジで一発でダウンする魔法打ったんのあの子?

もしそうなら大変だ。

今あそこで戦っているのは少年が一人だけだ。

いくら冒険者でも駆け出しが一人で五匹以上のジャイアントトードを相手にするなんて無茶過ぎる。

 

「アルテラ!」

 

「心得た!」

 

アルテラは私を抱えて彼の元に走った。

そして大きくジャンプすると私は杖を構え呪文を唱える。

 

「縛れ、戒めの木よ!『ナチュラルトラップ』ッ!」

 

私の魔法の光がそのまま彼とカエルの間の地面に吸い込まれた。

そして次の瞬間地面から大きな木の根がカエル達を縛り上げた。

 

私たちはそのまま彼の横に降り立つ。

 

「うわっ、何だ!」

 

私たちが空から落ちてきたことに驚く少年。

 

「大丈夫?」

 

彼に言葉をかける私。

 

「は、はい! ありがとうございます」

 

「いえ、それよりも早く助けないと。アルテラ!」

 

「承知した」

 

私の掛け声に答えるように彼女は懐から剣を取り出す。

そしてそのまま全てのカエルを一瞬で絶命させた。

 

「……すっげー。一瞬だよ」

 

アルテラの剣技に感動しているのか惚ける彼。

アルテラは倒したカエルの腹のなかから二人の女性を救い出してからこちらに歩いてきた。

 

 

「終わったぞ」

 

「うっ……生臭いよう……」

 

「カエルの体内って、臭いけどいい感じに暖かいんですね……知りたくもない知識が増えました……」

 

アルテラに背負われた二人は気持ち悪そうに唸る、そのまま彼女らを下ろすアルテラ。

そんな彼らに呆れながら周りを見る私。

 

「はあ、取り敢えずこの量は運ぶのは無理だからギルドに報告して取りに来てもらおう。アルテラ、町まで走ってもらえる?」

 

「……わかった」

 

私の言葉に一瞬疑問に思ったアルテラだがすぐに理解してそのまま歩いていった。

彼女が見えなくなるのを確認した私は未だ呆然としている彼らにこう言った。

 

「さて、ただ待つのも何ですしお話でもしますか?」

 

私は笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜カズマside〜

 

 

「それじゃ、自己紹介だね。私の名前はハクノ、職業はムーンウィザード。よろしくね」

 

そう言って俺たちに笑いかけるハクノさんを呆然と見る俺。

何でこんな状況になったんだろう。

 

俺たちは新しくパーティーに入っためぐみんの実力を見るために惨敗したカエルのリベンジに来ていた。

 

めぐみんは予想以上に強い魔道士だったらしくとんでもない威力の爆裂魔法を打った。

しかしめぐみん曰く限界を超える魔力を使うので、1日一発しか爆裂魔法が打てないらしいく、動けないまま地面から出てきたカエルに食べられた。

そして爆発の音で起きたのか地面から次々と湧き出てくるカエル達に半ば絶望していた時彼女たちは現れた。

 

空から降ってきた二人のうちシスターのような格好をしたハクノさんが俺に近づくカエル達を一匹残らず地面から生えた根っこで拘束して、もう一人の真っ白な鎧を着た白髪の女性が目に止まらぬ速さでカエルを一瞬で倒した。

 

一瞬で敵を倒した彼女に俺は呆然とするしかなかった。

 

そしてそんな彼女達の一人がもう片方の女性にギルドに向かわせ、暇な時間に話をしようとこちらに振ってきたことで話は戻る。

 

未だ笑顔でこちらを見つめるハクノさん、今更だかよく見ると彼女はとても美人だ。

身長は俺よりも低い。

白いシスター服のような物をに身を包んだ、茶髪の美女だ。

 

……っと、いかん、早く言葉を返さねば。

 

「えっと、それじゃあ俺から。俺はカズマ、職業は冒険者だ、それでこっちの二人が」

 

「う……生臭いよう……」

 

「ベタベタで、気持ち悪いです」

 

紹介しようと二人の方に向くとアクアとめぐみんが未だ唸っていた。

まだやってたのかよ。

 

「そのままじゃ確かに気持ち悪そうだね。うーん……それじゃ『クリーン』」

 

目の前の彼女が呪文を唱えると二人の周りに光が集まりそれが消えるとそこには新品の服を着た二人がいた。

 

「う……生臭……く、ない? えっ、どういうこと?」

 

「ベタベタが無くなりました。今のは何ですか?」

 

いきなりの変化に驚く二人、そして呪文を唱えた彼女が答える。

 

「魔法で二人を綺麗にしたの。流石にずっとベタベタは気持ち悪いもんね」

 

そう言って先ほどと同じく笑いかける彼女。

うわ、この人めっちゃいい人だ。

 

「さて、話を戻しましょう。それで、お二人のお名前は?」

 

「私はアクアよ、綺麗にしてくれてありがとハクノ」

 

「我が名はめぐみんです。服ありがとうございますハクノさん」

 

「いえいえ、これぐらいなら別にいいよ」

 

そう言って返事を返す彼女。

 

「さて、自己紹介も終わったことだし何か聞きたいことでもあるかな? 私に答えられることなら何でもいいよ」

 

任せてください! とでも言っているように胸を張る彼女。

なんか微笑ましいな。

まあそれは別として話が聞けるなら色々聞いておこうかな。

 

「それじゃあ質問です。どうして助けてくれたんですか?」

 

「そんな話? 別に人を助けるなんて当たり前でしょう?」

 

俺の質問に当たり前のように返す彼女。

うわ、マジでいい人だこの人。

うちの残念美人とは大違い。

 

「……あの……私も質問いいですか?」

 

身体がいまだ動けないめぐみんが仰向けの状態で問う。

 

「別に良いですよ」

 

「えっと、もしかして慈愛の聖女さんですか?」

 

えっ、何その二つ名。

聖女? えっ、マジで?

 

「はい、自分で名乗ったことは無いけど慈愛の聖女とはおそらく私だと思うよ」

 

えっ、もしかしてハクノさん有名人ですか?

 

「知らないんですかカズマ。慈愛の聖女と言えばアクセルの町ですごく有名ですよ!」

 

「うーん、そんなに言われることをした覚えは無いんだけどな」

 

ハクノさんは困ったように笑みを作る。

有名な内容に気になった俺はハクノさんに質問する。

 

「えっと、じゃあどんな事ですか?」

 

「うーん、そうだね。病気の人の病気を治したりとか、彷徨う死霊の群れを浄化したりとか、怪我を負った人を治したりとかかな? その程度で聖女なんて呼ばれないだろうし、本当に謎だ」

 

いやいやいや、明らかに良いことしてるじゃないですか!

もしかしてこの人天然なのか?

 

「(おい、めぐみん。マジか今の話)」

 

「(はい、全部本当です。付け加えるなら病気の人は不治の病にかかっていて余命二日だったところを彼女が治した話で、怪我の話は魔物との戦いで欠損した腕を治した話です。どちらもアークプリーストでも難しい案件です)」

 

マジかよ、そりゃ聖女なんて言われるは。

 

「(しかもですよカズマ。今の話全部無償でやってるんですよ、これを聖女と呼ばずに何と呼べと!)」

 

マジか、めっちゃ良い人じゃんハクノさん。

こんな人と知り合いになるなんて人生何があるかわからないな。

俺たちがコソコソ話しているとアクアの方からグゥーーとっ腹の虫がなった。

 

「おいアクア……お前なあ」

 

「し、仕方なんじゃない! お腹空いたんだもの!」

 

アクアが顔を真っ赤にしながら叫ぶ。

その光景に微笑みながらこちらに問うハクノさん。

 

「ふふふ、そうだね。そろそろアルテラもギルド員を連れて戻ってくるでしょうし、街に帰ったらご飯でも一緒にどうかな?」

 

彼女の言葉に頷く俺たちであった。

 

 

〜sideアウト〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルテラがギルド員達を連れてきた後私たちは彼らと一緒に街まで帰ってきた。

 

そしてアクアさんとめぐみんさんはギルドに戻るとシャワーを借りて体を流しに行った。

私が魔法で綺麗にしたとしても気分的にはシャワーで流したかったのだろう。

 

二人がシャワーから帰ってくると私たちはギルドの酒場でご飯を食べながら話しの続きをする事になった。

 

「へー、魔王を倒すね〜」

 

私はカズマ君の話を顔に微笑みを作りながら見ていた。

 

「あ、その顔信じてないでしょ」

 

「さて、どうでしょう♪」

 

彼らの話を聞くうちに私が思ったことは彼らがとても面白いことだった。

彼らはやはりつい最近冒険者になった駆け出しで冒険者のイロハも何も知らない子供だった。

パーティーも最近募集したばっかりでまだまだ不安定なパーティーだ。

 

「それにしてもカズマ君のパーティーは何というかアンバランスだね」

 

「……やっぱりそうですよね」

 

そもそもこのパーティーの子達はカズマ君を除いて特化型すぎる。

 

まず初めにアークウィザードのめぐみんさん、アークウィザードは後方からの高威力遠距離魔法が売りの職だ。

その中でも彼女が使った爆裂魔法はアークウィザードが覚えるスキルの中でも高難易度を誇る。

爆裂魔法が使えるのは強いウィザードの照明で、どこのパーティーでも重宝される人材だろう。

しかしめぐみんはと言うと爆裂魔法とその補助スキルにステータスを全振りしており爆裂魔法以外の魔法を覚えていない。

そして今の彼女の爆裂魔法は打つのに全魔力を使うので一度打つと魔力が回復するまで動くことができない。

これは冒険者にとっては致命的だ、誰だって高威力の魔法は憧れだろう、しかし一日一度きりの爆弾を誰が欲しがるだろうか。

つまり今の彼女は役立たずなのだ。

 

次にアークプリーストのアクアさん、アークプリーストは後衛職で主に回復や浄化、などの聖魔法のエキスパート、その他にも多数の支援魔法、味方に対するバフなど、パーティーを後ろから支える大黒柱だ、しかしだ、アクアさんの場合は知力が低いため難しい支援魔法がうまく使用できず、攻撃力も皆無なためただの回復要員になっている。

普通のパーティーならパラディンなどの防御職に守って貰えれば良いのだが、前衛がカズマ君しかいないこのパーティーでは、少々役不足である。

 

ん? 何が言いたいかわからない?

仕方がない、簡単に説明するとめぐみんは一発きりの高威力手榴弾。

アクアは紙装甲の低脳回復員である。

言い方が悪くなったが概ねこんな感じ。

 

「とまあ、こんな感じでバランスが悪いとどうにもなりませんね」

 

「うーん、はっきり言われるという落ち込みますけど、間違ってないからな〜」

 

カズマ君はそう言いながらご飯にがっつく件の少女達を見る。

ちなみにアルテラは私の横でちょびちょびお酒を飲んでる、騎士甲冑を装備の割に行動が可愛いため、すごく愛でたくなる。

 

「楽しそうで良いね」

 

「はー、疲れるだけですよあんなの」

 

まあ、そうだろうね。

私だったら二日で見切りをつけてるは、あれは。

 

「ハクノさん達が入ってくれたらこのパーティーも安定すると思うんですけどね」

 

「うーん、それは難しいかな。私は別に構わないけどおそらくそうなるとあなた達のためになりませんよ?」

 

私とアルテラはこの町でも少ない高レベル冒険者だ、今の私たちが特定のパーティーに長居するのはあまり頂けない、それにそうなるとどうしても彼らが私たちに寄生する形になるため周りに悪い印象を与えるだろう。

 

「もう少し早くあっていればパーティーには入ることもできたんかもしれませんね」

 

「はは、まあこうしてハクノさん達と知り合いになっただけでも儲けもんですよ」

 

「そうかな? まあそれならいいけど」

 

 

 

その後彼らと少し話した後私とアルテラは家に帰った。

 

これからの彼らの活躍に期待することにしよう。

 

 




FGOついに第七特異点 バビロニア解放されましたね。
まあそれよりもメデューサ・ランサーとエルキドゥが出たのが何よりも嬉しい。
メデューサの小さい頃、うん、やばい。

それではまた次回。


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第7話 二人の交差、二人の友人

今回はハクノとアルテラと別々の視点です。

特に言うことないので本編をどうぞ。


カズマ君たちと知り合ってから数日。

アルテラと別行動の私は用事のため、ある店に訪れていた。

 

「いらっしゃいませー」

 

私がお店に入ると中から女性の声が聞こえた。

 

「こんにちは、ウィズさん」

 

「あ、ハクノさんですか。こんにちわ」

 

私を出迎えてくれたのはおっとりした感じの女性でこの店の店主のウィズさんだ。

そして彼女は普通の人ではなくリッチーと言う魔物で又の名をノーライフキング、不死者の王と呼ばれる種類の魔族だ。

初めて会った時は流石に警戒したが直ぐに仲良くなり今ではアルテラ以外を抜いた中で一番の友達になっている。

そしてここは彼女が経営する魔道具店で、私が作った魔道具を売ったり、たまに入った珍しいものを買ったりなどしている。

 

「元気そう……じゃないね」

 

「ははは……やっぱりわかります?」

 

そりゃ、両目の下にクマができて誰だってそう思いますよ。

 

「……またですか?」

 

「はい、予算の計算がどうしても……」

 

ああ、またやっちゃったのね。

ウィズさんは時たま何故これを買ったと思われる物を仕入れる癖がある。

そのせいでよく予算不足で嘆いているのを見かけるのだ。

 

「それで、今回はどんな物を仕入れたの?」

 

「えっと……これですね」

 

そう言って出したのは赤い液体の入った瓶だった。

 

「……何これ? 見た所ポーションじゃないみたいだけど」

 

「はい、名前は確か【キュッとしてドカーン】ですね」

 

「そのふざけたネーミングセンスと言うことはひょいざぶろー作ですか……大丈夫なの、これ?」

 

「だ、大丈夫だと……思いたい」

 

でしょうね、今話に出てきたひょいざぶろーとは紅魔族の人で主な仕事は魔道具開発をしており、作ったものをこのアクセルの町に売りにきている。

しかし彼の作品は駄作ばかりで滅多に売れない。

偶にいい物も作るが大体は何故か爆発する。

そしてこれは名前からして彼作成の物、明らかに危険な香りしかしない。

 

「……突然爆発したりしないよね」

 

「大丈夫だと思いますよ……多分」

 

私から目をそらしながら答えるウィズさん。

大丈夫なら視線をそらさずちゃんと合わせてください。

まあそうですよね、彼の作品ですから断言できませんよね。

 

「それで、道具の説明とかありますか?」

 

「あ、はい、ちょっと待ってくださいね。えっと、蓋を開けたら爆発する……」

 

「それから?」

 

「……以上ですね」

 

「はあ、説明ぐらいちゃんと書こうよ、ひょいざぶろーさん」

 

私はここにいない彼に向かってため息を吐いた。

売るならせめて説明するかちゃんと詳しく詳細を書いた紙を渡すかしてくださいよ。

 

「大体わかった。それで、何個買ったの?」

 

「えっと……一個1000エリスくらいで、ざっと一万個くらい」

 

「……マジで?」

 

「はい、マジです」

 

何やってんのウィズさん。

いくら安いからって買いすぎでしょ。

いや、それでも一般人からしたら高いか。

まったく、いったいそれだけの量を誰が使うのやら。

 

「もう、私が言うのも何だけどいい加減その癖を治そうよ」

 

「はい……気をつけます」

 

話が終わってから私は今日ここにきた本題に移る。

と言うのも今日私がここにきたのはウィズさんに呼ばれたからだ。

 

「それで、私を呼んだと言うことはいつものアレですか?」

 

「はい、そうです」

 

「まあ別に良いけど、大丈夫なの?」

 

私の言うアレとは墓地の浄化についての話だ。

街から外れた丘の上にある共同墓地。

そこでアンデットモンスターが大量発生しており、そのために彼女は定期的にそこへ向かい浄化を行なっている。

 

今までは彼女一人でやっていたが私と会ってからは度々一緒に行くことが多くなった。

と言ってもまだ3回目なんだけどね。

 

「大丈夫です! これでも不死者の王、リッチーですから」

 

そう胸を張りながら宣言するウィズさん。

そして胸を張ったことで彼女の大きなお山が二つ揺れる。

うん、目に毒ですね、もちろんいい意味でですよ。

しかし私が大丈夫かと聞いたのはそんな意味じゃないよ。

 

「いや、そのリッチーと言う種族が大丈夫じゃないから」

 

先ほどもいったがリッチーとは不死者の最高クラスの魔族で、触れただけで数々の状態異常を相手に与える効果がある。

そして墓地に行くと彼女の魔力に当てられて墓地のアンデットが目覚めるのだ、つまり彼女が死霊を浄化しても、彼女がいる限り何度でも墓地の死霊が目覚めてくる。

なので、浄化、湧く、浄化の繰り返しで全然作業が捗らないのだ。

もう本当、毎回毎回めんどくさい。

 

「まあ良いや。それじゃあ一週間後の夜に墓地に集合でいいですか?」

 

「はい! それでは今度よろしくお願いします」

 

私はそのまま家に帰って行った。

 

さてと、今日の晩御飯は何にしようかな?

 

そうだな、うん、ジャイアントトードの唐揚げにしよう。

てか私もこの世界にだいぶ慣れてきたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれのクエストのためハクノと別れた私はギルドに来ていた。

と言うのも酒場である者を待つためである。

 

「あ、いたいた、おーい」

 

私がちびちびミルクを飲んでいるとこちらに声をかけるものがいた。

 

「……やっときたか、クリス」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

私にに軽く謝る彼女の名前はクリス、職は盗賊で、私とハクノが駆け出しの時によく一緒にクエストを受けた仲だ。

 

アルテラは初対面の相手には他人行儀だがある程度話せば少し親しい喋り方になる。

 

「相変わらず見た目の割に少食だね。もっと食えばいいのに」

 

「人の勝手だ」

 

「それもそうか」

 

この様に彼女は気さくな性格でギルドでもファンクラブなるものが出来るほどの人気を誇っている。

ハクノにもファンクラブなるものがあったが私がお・は・な・し、して解散してもらった(ニコ)

 

「あれ? ハクノはいないの?」

 

「ハクノなら今日はウィズの所だ、その後は部屋にこもって道具作成をするらしい」

 

「そうなんだ 」

 

ウィズはハクノがこの世界で初めてできた友達だ、種族こそ魔族のリッチーだがその性格は温厚、むしろ彷徨える魂を浄化をするなどのそこら辺のプリーストよりも善行をしているので私もいい関係を築いている。

 

「今日は金髪の彼女はいないのか?」

 

「金髪?……ああ、ダクネスのこと。彼女なら新しいパーティー候補を見つけたからその人たちの所に行ったよ?」

 

「そうなのか?……しかしよく見つかったものだ」

 

私が言った金髪の女性、彼女はクルセイダーの職でその見た目と相待って忠誠を騎士を思わせる雰囲気を出している。

しかし彼女は防御力はピカイチだがいかんせん戦闘が下手なのだ。

命中力のステータスが極端に低く攻撃してもまともに当たらないのだ。

そして彼女はドMで、モンスターの攻撃を真正面から受けて顔を喜び染めるほどの変態だ。

そのせいで魔物との壁役にしか使えないと言う残念な人である。

 

「まあ遠目から見た感じ相手も変な人多かったり案外うまく行くかもよ?」

 

「類は友を呼ぶとはよく言ったものだ」

 

ダクネスとそれなりに一緒にいた彼女が変わり者というか。

なら相手のパーティーもダクネス並みの変人が揃っているのだろうな。

 

談笑に花を咲かせる二人だが、いい加減クエストの話を始めた。

 

「それで、今回のクエストは?」

 

「うん、実はこれなんだ……」

 

そういってクリスが出して来た依頼書に目を通す。

 

「近くにある廃墟の城の探索か、何とも微妙な依頼だな」

 

町からそう離れていない場所に小さな城があり、今は誰もおらず城の中には亡霊や魔物で溢れていると噂のある城である。

しかし私に言わせれば討伐依頼ではないのでそこまで心躍るものではなかった。

 

「まあそう言わないでよ。依頼は依頼だよ」

 

「わかっている。それに本来の目的は違うだろ?」

 

「へへ、まあね」

 

クリスがわざわざこんな依頼を受けるとは思わない、これでも私とクリスは上級冒険者なのでこの依頼もランクで言えば妥当といえば妥当だが、私たちのことを知っている彼女がわざわざこんな依頼を受けるとは私には思えなかった。

私の思いを知ってか知らずかクリスが話を進める。

 

「依頼は依頼でやるよ。けど本命は城に眠っているある物さ」

 

「なるほど、そこにあるのか……神器が」

 

「そう言うこと」

 

神器とはその名通り神の作った道具で、武器や防具、はたまた道具など、数々の種類がある。

しかし共通しているのはその物がとてつもない力を持っていることだ。

殆どの神器は持ち主が死ぬと機能が停止して使えなくなが、それでも神器が危険なことは変わりない。

エリス教の教えで持ち主のいない神器を見つけたら封印して教会に届けると言うものがある。

エリス教のクリスは自ら神器を探して完全に使えないように封印してから教会に持っていく役目を自ら率先してやっている変わり者だ。

 

「大変だな……エリス」

 

私は彼女に同情するように話す。

私の言葉にクリスは慌てたように狼狽える。

 

「ち、ちょっと!……その名で呼ばないでください」

 

彼女の口調が変わる、先ほどまでのボーイッシュな雰囲気から一変してお嬢様のような雰囲気に変わる。

 

「安心しろ、誰も聞いてない」

 

クリスは周りを確認すると私の方を睨むように見てくる。

しかし元の顔が可愛いのでそれほど迫力がない。

 

「もう、公然の場でその名を呼ばないでくださいよ」

 

「すまなかった」

 

さて、今の話で分かったものもいるだろうが説明しよう。

彼女はクリスと名乗っているがその実彼女の正体は人の姿となって地上に降りた女神エリスその人だ。

彼女が地上に降りている詳しい理由は聞いてないが、主に彼女の先輩である女神アクアが転生者に渡したまくった神器などを回収するためだと聞いている。

 

「さて、話を戻そう」

 

「誰のせいだと思ってるんですか。はあ、まあいいよ」

 

彼女の喋り方が戻り話は進む。

 

「それでいつ行くんだ、今すぐか?」

 

「いいや、また今度にするよ。今日は話だけさ。別に期限がきまってるわけでもないし、誰もあの城に行きたがらないからね。今日はハクノもいないし揃ったら行こう」

 

「わかった、なら今日は飲むか?」

 

「まあ受けるはずのクエストも延期になったし一杯だけね」

 

「すまない、ミルクと果汁ジュースを一杯」

 

「早いよ!」

 

そうして私とクリスはジュースとミルクを片手に会話に花を咲かせた後、私は家に帰った。

 

さて、今日のご飯は何でしょうか。

 

 

 




この小説のウィズは残念な人、しかしとてもいい人。
クリスは活発な男勝りの女の子、けど誰よりも乙女。

まあ、二人は概ね原作通りです。

最近ふとおもったんですけど、幼女と全身鎧ってなんか良くないですか?
幼女が身の丈以上の大剣や大斧を持っているのはとてもそそるものがあります。

それでは次回もよろしくお願いします。


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第8話 修羅降臨、カズマ死す

テストも終わり久々の投稿。
今回はやっと書けた作品です。

これ書いてから当分は書かないつもり。
ネタがない、あと携帯が瀕死なためです。

それでは本編をどうぞ。


「アルテラ、そっち行ったよ!」

 

私は空を指す。

そこには大きな物体が飛んでいた。

大きなトカゲに翼が生えた見た目の魔物。

 

「了解した」

 

アルテラが地面を蹴り飛び上がる。

その高さは軽く10メートルは越している。

鎧を着てるとは思えない跳躍力だ。

 

そして彼女は腰にかけていた剣を振るう。

その剣はまるで鞭のように伸び空中で踊る。

 

「トドメだ!」

 

アルテラがそのまま剣を振るうと、トカゲの巨体に光の線が走った。

 

そして次の瞬間トカゲの体はバラバラになっていた。

 

そしてアルテラが回転しながら綺麗に着地する。

私は彼女の顔を見た。

 

「依頼完了だね」

 

「今日はなかなかの歯ごたえでした」

 

今更だがなぜ私たちがこんなことをしているかと言うと、ぶっちゃけた話ギルド直々の依頼を受けたからだ。

 

ギルドの依頼には二つの種類がある。

 

ギルドが発行した依頼とギルドを通して発行された依頼の二種類だ。

 

前者はギルドが駆け出し用に作ったものや、魔物などを間引くために常に出している依頼でそのほとんどが討伐か探索の二つに分かれる。

 

後者の依頼はギルドとは別に個人で出した依頼のことでその種類は護衛から討伐、捕縛、探索、採取と多岐にわたる。

 

今回の依頼はギルド直々に私たちに依頼が来たためこうして狩りに来たと言うわけだ。

今回の依頼は町の付近に現れた巨龍の討伐だ。

 

私は目の前に沈むバラバラになったトカゲを見て思う。

 

「アルテラが相手なんて、このドラゴンも災難だね」

 

「そうですか?」

 

いやだってそうでしょ、何処の世界に15キロくらいある鎧を着てピョンピョン飛び跳ねる騎士がいるんですか。

しかも大体の攻撃は逸らされたり私の魔法で防がれたりでまともに攻撃が決まらない。

うん、相手からしたら悪夢ですね。

 

「それにしてもこのドラゴン大きいね」

 

見た感じ全長50メートル位ある。

ワイバーンが5メートルぐらいだから約十倍の大きさだ。

 

「ふむ、種族名はタイラントドラゴンか、中々の相手でした」

 

「ふふ、良かったね」

 

アルテラのスキルの一つ、ステータス観覧。

人間や魔族相手には効かないけど、魔物などには使える便利なスキルです。

 

タイラントドラゴン、別名放浪龍。

ドラゴンでは珍しく巣を持たず空を飛びながら世界を旅するドラゴンだ。

その見た目の巨大さの割に発見されにくく普段は雲の上を飛んでいる。

しかし時たま餌を求めて地上に降り立ちそこら一体の生物を蹂躙する。

タイラント(暴君)の名に恥じない最上級魔物である。

 

「さて、依頼も終わったし、ギルドに報告しにいこうか」

 

「そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、タイラントドラゴン一体の討伐の達成金額の150万エリスです。ご確認ください」

 

「ルナさん、ありがとうございます」

 

わたしは冒険者ギルドに戻り以来の達成を報告した。

ドラゴンに関しては大きさが大きさなのでギルドに輸送してもらった。

貴重な部位や素材とお肉の半分を無限カバンに収納している。

本当便利だなこのカバン。

 

わたしはルナさんから依頼料を受け取るとアルテラの待つカウンターに向かう。

 

「アルテラー……ん? あれは……」

 

わたしがカウンターに行くとそこにはアルテラと一緒にアクアとめぐみんがいた。

 

「アルテラ、それにアクアとめぐみん、どうしたの二人とも?」

 

「あ、こんにちはハクノさん」

 

「ん? あらハクノじゃない。今カズマを待っていたの、その間アルテラが見えたんで話していたと言うわけ」

 

「そう言うことだ」

 

へー、そうなんだ。

意外な組み合わせだからびっくりしたよ。

 

「カズマ君は今何を?」

 

「カズマは盗賊の女の子から盗賊系スキルを教えてもらうために外に行ったんですよ」

 

ふーん、そう言えば冒険者には他の職のスキルを取得する能力があったね。

まあ、本来の物よりも威力は劣るし、性能も低くなるし、元々冒険者の職の人が少ないからあまり使われない能力だけどね。

 

私がそう思っているとカズマと金髪の女性、それからなぜかクリスが泣いてこちらに歩いてきた。

 

「こんにちはカズマ君。それと……どうしたのクリス?」

 

「えーっと、実は」

 

「ひぐっ、はくのーん!」

 

カズマ君が話そうとしたが泣いているクリスが私の胸に飛び込んできた。

 

「うん、なんかよくわからないけど取り敢えず、よしよし」

 

「ひぐっ……やらかい……」

 

私は彼女を頭を撫でる。

なんか可愛いな、このクリス。

 

「それで、どうしたのクリス?」

 

私がクリスに返答を求めると、クリスの横にいた金髪の女性が先に口を開いた。

 

「うむ。彼女はカズマにパンツを剥がれた上にあり金全部毟られて落ち込んでいるだけだ」

 

「おいあんた何口走ってんだ!」

 

えー、カズマ君、それは流石にどうかと思うよ。

そう思っていると、私の胸に顔を埋めているクリスが泣きながら口を開く。

 

「パンツ返すだけじゃだめっだって……。ひぐっ、じゃあ幾らでも払うからパンツを返してって頼んだら……。ぐすっ、自分のパンツの値段は自分で決めろって……」

 

えーと、うん、これはカズマくんが悪いね。

女の子にパンツパンツなんて言わせたらいけません。

擦ったのカズマ君だし。

 

「さもないとこのパンツを……。ひぐっ、我が家の家宝として奉られる事になるって……」

 

ああ、もうこれはダメだね。

 

「おい、待てよ。なんかすでに、他の女性冒険者の目まで冷たいものになってるからほんと待って」

 

仕方ないよカズマくん。

故意じゃなくても有罪判決ものだよ。

 

「それで?カズマは、無事にスキルを覚えられたのですか?」

 

私が彼に憐れみを向けていると、めぐみんがカズマ君に聞いていた。

 

「ふふ、まあ見てろよ?いくぜ、【スティール】!」

 

カズマ君は相手のものをランダムに奪うスキル、スティールをめぐみんに使った。

そして彼の手にはしっかりと黒い布が握られていた・・・そう、パンツだ。

 

「……なんですか? レベルが上がってステータスが上がったから、冒険者から変態にジョブチェンジしたんですか?……あの、スースーするのでパンツ返してください……」

 

ほんともう無理です。

自首しましょうよカズマ君、さすがに二度目は言い逃れできませんよ。

 

「……カズマ、あんた……」

 

「あ、あれっ!? おかしーな、奪うものはランダムなはずなのに! 今度こそ!【スティール】」

 

三度目の正直、またスティールを使った。

そしてその手には真っ白い布が……またもやパンツが握られていた。

 

懲りずにまたか、さて、今度は一体誰のが……

 

 

 

 

 

 

 

〜三人称視点〜

 

 

「ん? それはいったい誰のだ?」

 

ダクネスがカズマの持つパンツを見て呟く。

対象を決めないでおこなったようで必然的に近くのもの達の誰かということになる。

 

「私じゃ無いわね」

 

「私でも無いぞ」

 

「私も違います。てかいい加減返してください」

 

「私のも、返して!」

 

上から順にアクア、ダクネス、めぐみん、クリスの順番で自分のじゃ無いと語る。

 

「みんな違うか、じゃあいったいだ……」

 

「……すまない」

 

カズマが喋ろうとすると後ろから誰かに話しかけられた。

振り向いてみればそこには体をわずかにもじもじさせたアルテラがいた。

よく見れば頬も少し赤い。

 

「……すまない、返してくれないか……その…私のパンツ……」

 

「え、えっと、ハイどうぞ……」

 

ほのかに頬を染めて話すアルテラ。

そんないつもの物静かな女騎士の印象と違う彼女にびっくりしたカズマはそのままパンツを返した。

 

「アルテラが可愛い、だと……」

 

「いきなりどうした、クリス?」

 

「いや、何となくさ」

 

ダクネスとクリスが喋っているのを見ているカズマは後ろからトントンと肩を叩かれる。

 

「ん? 一体誰、だ…………」

 

何だろうと何気なく後ろを振り向くカズマ。

しかし後ろを振り向いた瞬間、彼は固まった。

 

何せそこには…………

 

「…………………(ニコ)」

 

満面の笑みを浮かべたハクノが立っていたからだ。

 

しかしその目は一切笑っておらず瞳は恐ろしいまでに虚無を写していた。

それを見たカズマは思った。

 

「(あ、これあかんやつだ……)」

 

「……ねえ、カズマ君、少し、いいかな?」

 

「な、何でしょうか……ハクノさん」

 

極寒と見紛うほどの寒気を背筋に感じながらカズマはハクノに聞き返す。

彼女の顔は未だ笑顔を浮かべたまま。

 

「いえいえ、ちょっとだけ貴方と“おはなし”したくて、ね」

 

「えっと……今は、遠慮したい、かなあ。なんて……」

 

「あはは、そんな遠慮しないで。紅茶でも飲みながら“ゆっくり”と、ね?(ニコ)」

 

彼女はそういうとカズマの首根っこを掴み引きずるようにしてギルドの個室に向かおうとする。

 

「あ、謝りますから! 何でもしますから!許してください!」

 

「あはは、どうしたのカズマ君? そんなに顔を青くして。私はただアルテラの件について貴方とじっくり“おはなし(物理)”したいだけだよ?」

 

カズマは最後の抵抗か、暴れて、ハクノの拘束から逃げようとする。

しかしいくらハクノがウィザード職とはいえ、レベル差が大きく開いたカズマに脱出する術はなかった。

 

「あ、アクア! めぐみん!助けてくれ! 死にたく無い!」

 

「カズマ、頑張りなさい(嫌よ! 私だって死にたくない!)」

 

「カズマ、骨は拾ってあげますよ(私も死にたく無いので)」

 

カズマの叫びも虚しくそのまま二人は部屋に入った。

そして入ってすぐ……

 

「ちょっと待ってくださいハクノさん! そこの関節はそっちには曲がらなくて……」

 

と言うと声や。

 

「まって、それなんですか! その手のバールは! え? バールじゃなくて、【名状しがたいバールのような物】だって? いや明らかにそれバー……あ、まって、振りかぶらない! そんなもの受けたら死んじゃいま……」

 

などなど、部屋からは延々と叫び声が聞こえたという。

 

そして彼らが入ってから約10分後。

 

声が聞こえなくなり、静まり返った酒場、ゆっくりと扉が開かれる音がした。

そしてそこから出てきたのは……

 

「いやー、楽しい“話し合い”だったね♪」

 

満面の笑顔のハクノと。

 

「…………………(真っ白に燃え尽きている)」

 

何故か燃え尽きているカズマだった。

 

そしてその場にいたもの達は思った。

 

「「「(ハクノはだけは絶対に怒らせないようにしよう)」」」

「(ん……聴いてるだけで、あそこが熱く!!)」

 

若干一名を抜いた、ほぼ全員の意思が一致した瞬間だった。

 

 

そしてアルテラはと言うと。

 

「(ハクノが私の為に……嬉しいです///)」

 

やっぱりアルテラは可愛かった。

 




アルテラさん可愛す、はくのんマジ怖い。

ちなみにアルテラさんの今の武器は蛇腹剣です。



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第9話

「死ぬかとおもった。 割とマジで」

 

真っ白燃えカス状態から復活したカズマはアクアたちとジュースを飲みながらそう呟いた。

ちなみにアルテラはパンツを履くついでにシャワーを浴びてくるように言いました。

理由は何となくです。

 

「カズマが悪いですよ。女性のパンツを剥ぎ取るなんて真似したんですから」

 

「同感だ……(私にしてくれたらよかったのに……)」

 

「さすが引きこもりニートね」

 

「それについては事実だからな。弁解のしようもない。それとニートじゃない」

 

よほどハクノの“おはなし”が身にしみたのか顔を青くしながらそう呟く。

 

「とまあ、彼も反省してるし許してあげたら?」

 

そういって先ほどからミルクを飲みながら無言のハクノにクリスが話す。

 

「反省したならいいわ。そもそもの話、やられたのは私じゃなくてアルテラだし、私がいつまでも怒るのは筋違いというもの……まあ、次やったら殺るけどね」

 

「マジ勘弁してください!」

 

鬼気迫る表情で土下座をするカズマ。

それを見ていつものような柔らかい笑顔にハクノは戻った。

 

「今度から気をつけてくださいね?」

 

「イエス マム!」

 

どこの軍隊ですか。

私が呆れているとアクアさんたちがダクネスさんを見ていた。

気になった私は二人に声をかけた。

 

「どうしたの?」

 

「いや、今更なんですが、この人は誰ですか? もしかして昨日言っていた面接に来た人ですか?」

 

「よく見たら、この子クルセイダーじゃない。断る理由なんてないんじゃないの?」

 

あれ、そうだったんですか。

てっきり知り合いだと思っていました。

カズマはそんな二人を見て、しまったなあ……という顔をしていた。

 

すると何を思ったのかカズマ君はいきなり語り出した。

 

「実はなダクネス。俺とアクアは、こう見えて、ガチで魔王を倒したいと考えている」

 

普段でも滅多に見せない真剣な表情をしたカズマ君は言い聞かせるように話す。

その話マジだったんだ、普通に飯の席での冗談だと思ってた。

 

「俺達の冒険は過酷な物になることだろう。特にダクネス、女騎士のお前なんて、魔王に捕まったりしたら、それはもうとんでもない目に遭わされる役どころだ」

 

まあ薄い本では定番の展開だよね、普通ならこの話でパーティー申請を拒否するだろう。

エリス様からの話じゃ、この世界は魔王軍に殺されて年々人が少なくなっているらしいし、その魔王軍に殺された人は怖がってこの世界への転生を拒んで異世界人口そのものが減ってきているという話だ。

けどねカズマ君、君の話している相手は普通の騎士じゃないんだよ。

その証拠に、ほら……

 

「ああ、全くその通りだ!昔から、魔王にエロい目に遭わされるのは女騎士の仕事と相場が決まっているからな!それだけでも行く価値がある!」

 

「え!?……あれ!?」

 

「え?……何だ? 私は何か、おかしな事を言ったか?」

 

うん、カズマ君の反応は普通だ、しかし前提条件を間違えているよカズマ君。

君が話している相手は騎士であるものの敵の攻撃を受けて喜ぶ超ド級のドMなんだよ。

 

「めぐみんも聞いてくれ。相手は魔王。この世で最強の存在に喧嘩を売ろうってんだよ、俺とアクアは。そんなパーティーに無理して残る必要は……」

 

うん、それも無理だよカズマ君、なんせめぐみんは……

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操りし者! 我を差し置き最強を名乗る魔王! そんな存在は我が最強魔法で消し飛ばしてみせましょう!」

 

そう、ここ最近の彼女を見てわかったこと。

それは彼女が紅魔族の中でも特別頭が弱いことだ、そして本物の厨二病である。

なんせ他の冒険者で一人紅魔族の子を見たがめぐみんほど酷くはなかった。まあ、彼女は紅魔族の中では異端だったけど、むしろなぜ紅魔族に生まれたのか尋ねたくなるほどに。

 

カズマ君の話で俄然やる気を出した2人。

まあ実際のところ、魔王軍の力がわからないからどうと言うこともできない、せめて幹部の力量を見ればどれぐらいかわかるというのに。

幹部クラスでトップサーヴァントクラスの力だったら今のアルテラでは苦戦するだろうな。(勝てないとは言っていない)

 

私が魔王軍の事を考えていると……

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急正門に集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急正門に集まってください!』

 

大音量のアナウンスがギルドに鳴り響いた。

一体なんだろうか?

もしかして数週間前にあった魔物の大行進でもまた起こったのかな?

 

「装備は整えているな!」

「今回も来たのね、この時が……」

「腰入れてけよ! 生半可はお断りだぜぇ!」

「よーし! うん、やってやるっ!」

「大丈夫だろうかなぁ」

 

凄い気迫だ、もしかしたら私が知らないとんでもない事が起こるのかもしれない。

ハクノは背中に刺してあった杖を取り出し強く握りしめた。

アルテラもわずかながら臨戦態勢に入っている。

 

「おい、緊急クエストってなんだ?モンスターでも街に襲撃してきたのか?」

 

カズマ君が当然の疑問を投げかける。

そして私たちは彼女が話した言葉に驚くことになった。

 

「ん? 多分キャベツの収穫祭だろう。もうそろそろ収穫の時期だしな」

 

その言葉に思わずズッコケそうになるカズマ。

ハクノとアルテラはこの状況を理解したのか、脱力したように警戒を解いた。

 

「あ〜、成る程ね、キャベツが来るのか」

 

「……人騒がせな」

 

納得してしまう自分がいる事を考えるに、私もこの世界に染まったなぁと自覚した。

 

しかしキャベツか、ちょうど野菜の備蓄が乏しくなってきたしいいタイミングで来てくれたと喜ぼうかな。

私は別の意味で杖に力が入った。

 

「は? キャベツ? キャベツって、モンスターの名前か何かか?」

 

うん、カズマ君の反応はもっともだ、でも残念ながらこの世界の常識だと彼は田舎者扱いだろうな。

 

アクアがキャベツについてカズマ君に説明をした。

話を聞いた彼は神妙そうな顔をしてブツブツと呟いていた。

 

「なるほど、この世界のキャベツは飛ぶのか。しかも食べるとレベルも上がるとはな、なんでこの世界は変なところでふざけてるんだ?」

 

残念、この世界の五分の四はおふざけで出来ているんだよカズマ君。

あの神様ですらふざけた世界と称した世界は伊達じゃないと改めて実感した私だった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

キャベツ狩りが終わり町中で収穫されたキャベツがふるまわれる中、ハクノとアルテラ、そしてクリスはハクノの家でご飯を食べていた。

 

「いや〜、いいこずかい稼ぎになったよ」

 

クリスは野菜炒めを食べながら満面の笑みでいた。

カズマに有り金を全部すられたこともあり、今回のキャベツ狩りは渡りに船だったようだ、まあ、大量の冒険者が参加した関係もあり報酬が払われるのは数日後なのだが。

 

「それにしても相変わらず美味しいね、この世界の野菜は」

 

「そうですね。生きがいいからでしょうか?」

 

うん、そうだねアルテラ、食われないために自分で動いて逃げるくらいだからね、生きがいいと言うのは正しいだろう。

しかし食べるだけで経験値がもらえると言うのもおかしな話だよね、初めて知った時は「どこのグルメ世界の食材だ! 」と思わず突っ込んだ記憶があるよ。

 

まあそもそもの話、元の世界で本物のご飯を食べた事がないから比べる事が出来ないけどね。

 

「そう言えばクリス、ここは私たちの家だしエリス様に戻ってもいいですよ?」

 

何せこの家には私が全力でかけた認識阻害、及び工房化により、高位の魔術工房になっているのだから。

この中でなら彼女の神性が漏れる心配もない。

 

「そうかい?……なら、お言葉に甘えさせてもらいますね」

 

クリスの体が光を纏い、その光が晴れるとそこには神聖な雰囲気を醸し出した女神が座っていた。

彼女こそ、エリス教の御神体である女神エリスその人である。

 

「うん! クリスの姿も綺麗だけど、その姿のエリスも綺麗だよ、流石は女神様だね」

 

「そうですね。私も少なくない女神を見て来ましたがあなたほど美しい女神を見たのは少ないです」

 

「もう! 二人ったら……そんなに褒めても何も出ませんよ」

 

恥ずかしがりながらそう答える彼女、その姿はとても保護欲をそそられる。

てかアルテラのは褒めてるのか?

 

「それにしても初めて二人に会った時はびっくりしました。なんせ一発で私が神だと看破されましたから」

 

ハクノたちとクリスがあったのは約三週間前、その頃のハクノたちはある程度冒険にもなれ驚愕的なスピードで成長していた。

そしてある探索クエストで同じく神器を探すためにめぼしいところを探索していたクリスに遭遇した。

そして遭遇して簡単な問答をした後にあっさりとハクノがクリスの正体を言い当てたのだ。

その時の会派を再現するとこんな感じ。

 

「こんにちはクリスさん、私はハクノです」

 

「私はアルテラだ」

 

「うん、こちらこそよろしく」

 

「それでいきなりなんだけど質問いい?」

 

「ん? 構わないけど、一体何んだい?」

 

「いえ、どうしても気になったから……なんで女神が地上にいるの?」

 

「……………………え?」

 

とまあ、こんな感じに唐突だった。

正体を言い当てられたクリスの顔はそれはもう女の子とは思えないほど口を開けて数分ほど固まっていたほどだ。

フリーズから回復したクリスが色々と言い訳や質問をして来たが全て論破して観念した彼女は自分が女神であることを認めた。

 

「そんな事もあったね。あの時のエリスの顔は今でも鮮明に覚えてるよ?」

 

「わ、忘れてください、そんな事は!」

 



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