マッカンから始まるラブコメは間違っている (那由多姫)
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マッカンの思い出①

これはマッカンによる出会いの話


中学一年生の頃に俺は出会った

この出会いはまさに運命だった。

『Maxコーヒー』通称『マッカン』

 

散歩で喉が渇き自販機に寄ったのが最初の出会いだった。俺はこの黄色のフォルムに目を奪われた。気付いたらボタンを押していた。しかも当り。そしてプルタブを開けていた。まずは匂う……甘い匂いがする。そしてそれを口に含む。

これまでにない甘さだった。この甘さは人生で苦かった分を包み込むような甘さだった。

『人生苦いから珈琲くらいは甘くてもいい』

やばい、これはコーヒーのキャッチコピー賞取れるレベルの名言だ。

 

それから来る日も来る日も俺はこの自販機にマッカンを求めて散歩に行っている。

その際に妹の小町から

「お兄ちゃんが……外に」

いや、小町ちゃん俺は引きこもりではないからね?え?違うよね?

今はそんなことはどうでもいい。

問題が今起きている。

それはマッカン機……いや自販機の目の前に同い年ぐらいの金髪の女の子が立っているのだが、オロオロしている。

もしかしてお金を持っていないのか?

親の人は?ダメだ見つからない……

仕方ないか

 

「な、なあもしかしてお金もってないんでしゅか?」

 

噛んでしまった。くそ、ここでボッチスキル『カミカミ君』発動してしまったか。

てか、外人だから日本語とか分かるのか?

 

「……すいません。お金持ってないです」

 

日本語が通じた。しかも日本語が喋れる。

改めてよく見ると……凄く美人だな。

 

「ならこれ当たったので一本あげます」

 

そうやって美人さんにMaxコーヒーを渡す。

このあいだ小町にもやったが評判は良くなかった。でも、仕方ないMaxコーヒーを買ってしまったから……

そして、美人さんはMaxコーヒーを口に含む

眼を見開きこちらを見てくる。

なんて綺麗な碧眼なんだろうか……

 

「おいしい!」

 

「同士!」

 

気付けば俺と美人さんは握手していた。

 

「私の名前はホワイト・アルナリス。ホワイトで良いわ」

 

「俺の名前は比企谷八幡」

 

「ハチマンね」

 

流石は外人。すぐに名前を呼んでくるあたり凄いとしか言いようがない。

 

「ねえ、ハチマンまたここに来る?」

 

「ああ、午後8時にいつもここに来ている」

 

「なら明日も来るから一緒にMaxコーヒー飲もうね」

 

「……善処する」

 

こうやってマッカン仲間が出来たのだ。

 

 

それから毎日午後8時にこの自販機に来ては一緒にマッカンを飲みながら話していた。

ホワイトは昔日本に住んでいたらしくそのために日本語が話せるが口調がおかしくなったりすること。お兄ちゃんがいること。お父さんが日本人。母がロシア人のハーフ。好きな食べ物などなどたくさん話した。もちろん俺の事も話した。そして夜だけでなく土曜・日曜も遊ぶようになった。

 

しかし、そんな事は長くは続かない。

とある事件で俺は人間を信じられなくなった。つまりホワイトの事も……

だから今日でサヨナラしなければならない。

そして、いつもの場所に足を向ける

 

 

 

 

 

 

「ねえ、最近ここにこないけどどうしたの?」

 

「ホワイトには関係ない」

 

「そうかもね……ならさそんな顔は止めてくれないかな?」

 

「え?」

 

「泣いている」

 

いつのまにか泣いていたらしい。手で眼を擦るが涙は付いていない

 

「泣いてなんかないじゃないか」

 

「いーや、泣いてる」

 

「だから……」

 

言い返そうとしたときにホワイトが俺を抱きしめる。すごくいい匂いがした。

 

「大丈夫。泣いてもいいんだよ。私がいる」

 

「嘘だ……」

 

「嘘じゃない。私がいる」

 

「そうやって優しくして裏切るんだろ」

 

「裏切らない」

 

「なんでそう言いきれるんだよ」

 

「強いていうなら私がハチマンの友達だからだよ」

 

「そんなのは欺瞞だ。嘘だ」

 

「ならこれから本物にしたらいい」

 

「できるわけが……」

 

「今のままでは出来ないね。だってお互いのこと知らないから。だからこれから始めたらいい」

 

「なにを?」

 

「ハチマンと私の本物の物語を」

 

『本物』という言葉が胸の中に響く。

もしかしたらホワイトとはそういう本物になれるのかもしれない。でも怖い。また裏切られそうで……でもホワイトは言っているお互いの事を知らないからと。

 

「俺さ……クラスメートに告白したんだ」

 

「うん」

 

「それでフラれて……」

 

「うん」

 

「次の日にクラス中にそれが広まって……虐められて……」

 

「うん」

 

「それから人を信じるのが怖くなったんだ。ホワイト……お前の事も」

 

「そっか……でも君は凄いよ」

 

「なにが?」

 

「だって信じるのが怖くて仕方がないのにこうやって私を信じて話してくれる。君は勇気のある人だよ。そして人を信じる事のできる純粋で優しい人」

 

その言葉を境に俺の目から涙が溢れてくる。

ああ、俺はこんな言葉が欲しかったのか

 

「ねえ、今更だけど私のお願い聞いてくれる?」

 

「……」

 

「ハチマン……私の友達になってくれない?」

 

彼女が手を差し伸べてくれる。彼女が励ましてくれる。なにより彼女はちゃんと俺を見てくれる。なら答えは出ている 

 

「……こんな俺でもいいなら」

 

「いーや、ハチマンじゃないとダメなんだ」

 

そうやって彼女は俺を優しく抱きしめる。

 

こんな時間が続いてくれたらなと俺は思っていた。

 

 




これがマッカンによる出会い
後にこの二人はどうなるのか
マッカンのみぞ知るラブコメなのか


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マッカンの思い出②

大嫌い。大好き。ちゃんと喋らなきゃ人形とさして変わらないし

シュガーソングとビターステップ
UNISON SQUARE GARDENより



土曜日。

今日ホワイトと遊ぶ約束をしていた。

集合場所はマッカンの売ってある自販機だ。

ホワイトの分のマッカンも忘れずに買っている。

 

「おーいハチマン」

 

「よぉ、ホワイト」

 

今日もホワイトは元気がいいな。見ているこっちまで元気になるまである。

 

「今日はなにして遊ぶの?」

 

マッカンを飲みながらホワイトが話しかけてくる。ホワイトにマッカン最強の組合せだな

 

「そうだな……ゲーセンなんてどうだ?」

 

ゲーセンはいいぞ、中は暑くないし。暇にはならないからな。

 

「分かった。なら行きましょ」

 

「了解」

 

歩きながら昨日なにをしていたかなど話をしていた。そしてあっという間にゲーセンに着いた。

 

「ハチマン……私あれにする!」

 

そうやってホワイトが指差したのはマリオカートだった。

 

「よし、やるか」

 

そうやってコインを入れる

 

はじめのうちはホワイトが下手くそで勝負にならなかったが案外センスがあったらしくあっという間に同じくらいのレベルになった。

そもそもボッチな俺はマリカーなどパーティー系のゲームはあまりしたことがなかったのだ。なにそれ悲しくなってくる。

 

「次は絶対に勝つ」

 

「そうか、だが残念俺が勝つのさ」

 

「なら賭けようか。勝った方が負け方に何でも命令できるってのはどう?」

 

なんでも……だと。ホワイトになんでもできるだと……。ダメだ煩悩退散。ハチマン落ち着け。

 

「隙あり!」

 

あっ……やっちまった。考え事をしていると既にスタートしていた。あれ?これ負け確定じゃね?だって既にホワイトの実力は俺と同じくらいだ。今からスタートしても間に合わない。くそ、なんでも命令できるって言葉は相手の時間を止める能力なのか?いや、俺だけか。結果は……はい。負けました

 

「私の勝ちね。なら命令するわ」

 

ゴクリと唾を飲む。美女の命令か……なんかゾクゾクする……って変態かよ

 

「何があっても私の事を嫌いにならないでね。あ、あと今度また一緒にマッカン飲もうね」

 

「当たり前だろ。てかマッカンならいつでも飲めるだろ」

 

どんだけマッカン好きなんだよ。いや俺もか、人のこと言えねぇな。だって家のなかにストックがたくさんあるからな。

 

そのあともたくさんのゲームコーナーを回った。

 

「ちょっとトイレに行ってくる」

「なら、私はここでまってるわ」

 

ホワイトは近くのベンチに座る。

しかし、こいつといると面白くて楽しいな

などと思いながらトイレに向かった。

 

トイレを済ませてホワイトのところに戻るとなにやらホワイトの声がする。

 

「やめて!あなた達なにすんのよ」

 

ちっ、ナンパか……

ホワイトがナンパされてて凄くイライラしてくるのがわかる

「おい!お前ら俺の女に手を出すな」

ついつい俺の女と言ってしまったが仕方がない。これで退いてくれるとたすかるが。

退く気配なしと。

しかし、困ったな俺は喧嘩なんてしたことがない。が、虐めにあってたこともあり打たれ強い。

ナンパ男Aが拳を俺に向けて放ってくる。直撃したが倒れそうになるのを堪えた。

だって後ろにはホワイトがいるからな倒れるのは格好がつかない

その後もたくさん殴られ続けられた。

何回殴られたら終わるのだろうか……

 

「もう、やめてよ!」

 

ホワイトが俺の目の前に立つ。

くそ……格好悪いな俺……

 

「なんだよ女のくせに男に楯突こうてか?なんなら今からお前を犯してもいいんだぜ?」

 

「残念だったね。今警察を呼んだわ」

 

「は?何言っているんだ?お前電話してなかったじゃねーか!ははっ笑わせるなよ」

 

「私のお父さんはね……警察官なの」

 

そう言ってホワイトはボタンの付いた装置を出す。

 

「これはね押すだけでお父さんのところにつながる仕組みなの。で押すときのルールがあってねこれを押すときは私が危険なときだけなの。つまりこういう時とかね」

 

そうホワイトが言うとナンパ……いや不良は逃げて行く。

 

「大丈夫ハチマン!?」

 

「ああ、辛うじて……」

 

視線をホワイトに向けるとホワイトの後ろ側でバールを振りかぶる不良の姿が見えた

 

「このくそ女が!」

 

くそったれが女の子に手を出すとは最低だろ。俺は最後の力を振り絞ってホワイトの盾になる。そしてバールが俺の頭部に直撃する。意識が遠退く感じがした。ああ好きな女の子を守れたんだ。だからもう……

自分の倒れた地面を見るとたくさんの血溜まりができている。もちろん全部俺のだ。

 

「ねえ、お願い!ハチマン死なないで!」

 

ホワイトの声がする。ああ、最後に笑った顔が見たかったかな。

サイレンの音がする。良かった。

「お願い……なんでもするから死なないで」

 

なんでもしてくれるのか……

なら、最後一緒にマッカン飲みたかったな

 

「さっき、命令したじゃん一緒にマッカン飲もうって」

 

最後の力を振り絞り涙交じりで口にする。

 

「ごめんな……ぞじで、ありがどう」

 

そこで俺の意識は途絶えた。




でも言葉にしようものなら稚拙が極まれり

シュガーソングとビターステップ
UNISON SQUARE GARDENより


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マッカンの思い出③

目を覚ました時そこは病院だった。

なぜ病院にいるのかは思い出せない。

近くでは小町が泣いていた。何をしていたの?って怒られたりしたが本当に何も覚えていないのだ。何日か経って金髪の女の子と警察官が来たのだが部屋間違ってますと言って追い返した。なぜなら金髪の女の子などと関わったことがないからだ。

そして、分かったことがある。それはここ一ヶ月の記憶が無いことだ。しかし何か大事なことを忘れているような気がするが思い出せない。

医師によれば強く頭を打ったせいでエピソード記憶などが無くなったらしい。しかし、俺には関係ない。なぜならボッチだからだボッチの記憶には何も残らないのだ。あら言ってて悲しい。

 

そらから何日か経ち退院した。

家に戻ればなにか思い出すかもしれないと思ったが……黒歴史を見つけてしまった。

俺の赦さないリストに『折本かおり』の名前が入っていた。しかも告白してフラれていじめられたなどとも書かれていた。

おい!記憶をなくす前の俺何してくれてるの?どういう状態で学校に行けばいいの?

あ、いつも通りでいいのか。ボッチだもの。

 

いつも通りにボッチライフを満喫した俺は帰り道に寄り道をした。そうMaxコーヒーことマッカンを買うためだ。

自販機にお金を入れてマッカンを買う。

あっ当たった。一本GETだぜ!

近くのベンチに座る

プルタブを開けてまずは匂いを嗅ぐのがマッカンソムリエの掟。マッカンソムリエってなんだよ。そして口に含み喉を通す。

 

何故か涙が溢れてくる。

 

「Maxコーヒーってこんなに涙の出る飲み物だったか?」

 

なにか大事なことを忘れているような。忘れてはいけないなにかを……

 

すると、自販機を利用しにきたのか金髪の女の子が来た。ん?病院で見たような。気のせいか。女の子はオロオロしている。

もしかしてお金を持ってくるの忘れたのか?

どんだけ忘れっぽいんだよ。あ、俺も記憶なくなってた。

しかし、なんだろうこのデジャヴ。

ま、考えていてもしかたがない。てかあの子ずっとマッカンをみてるけど興味あるのか?

これは布教するしかないな。

俺は立ち上がり女の子に話しかける

 

「な、なあもしかして貴女お金もってないんでしゅか?」

 

噛んでしまった。くそ、ここでボッチスキル『カミカミ君』発動してしまったか。

てか、外人だから日本語とか分かるのか?

 

「……すいません。お金持ってきてないです」

 

日本語が通じた。しかも日本語が喋れる。

改めてよく見ると……凄く美人だな。

 

「なら、これ当たったので一本あげます」

 

そうやって美人さんにMaxコーヒーを渡す。

このあいだ小町にもやったが評判は良くなかった。でも、仕方ないMaxコーヒーを買ってしまったから……

そして、美人さんはMaxコーヒーを口に含む

眼を見開きこちらを見てくる。

なんて綺麗な碧眼なんだろうか……

やっぱりなにか……

 

「おいしい!」

 

「同士!」

 

気付けば俺と美人さんは握手していた。

あれ?やっぱりデジャヴ感がすごい。

 

「もしかして……前に1度こういう出会いしませんでしたか?」

 

なに言ってるんだ俺は……こんなナンパ見たいなことを……黒歴史を作ってしまったようだ

 

「病院で間違えてあなたの部屋に入ったことがあると思う」

 

なるほど、だから見たことあるのか

 

「そうだ、私最近この町に来てここの事あまり知らないの。だから教えてくれないかな?」

 

この子はどこに何があってなど地理を聞いているのだ。勘違いしたらいけない。美人にお願いされたからと言って勘違いはダメ絶対。

 

「……分かった。出来るだけ俺の知っている範囲で教える……え~と」 

 

ボッチである俺は初対面の相手の名前を聞くことに抵抗があるのだ。まったくボッチスキルはたまに発動するから嫌なんだよ。

しかし、向こうは俺の考えてていることが分かっているかのように答える

 

「私の名前はホワイト・アルナリス。ホワイトで良いわ」

 

「俺の名前は比企谷八幡」

 

………………

…………

……

 

 

 

 




これにてこの物語は終わりです。
この後のお話は……

読んでくださりありがとうございました。


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