星守レイ○!担任と化した淫夢厨 (投稿者:変態糞先生)
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第1部
第0話 プルルォ!?ーグ


バトガが流行って欲しいので初執筆です。

注意!
この作品には
・増えたり減ったりするガバ設定
・ガバ文章
・バトガ流行らせコラ!
・淫夢要素はありません
が含まれます。

それらを把握して読んで♡(脅迫)

はい、よーいスタート


神樹ヶ峰女学園。

 

人類が《イロウス》によりその生活圏を後退して以降、このスペースコロニーのシンボルである神樹のもとにある女子校である。

現在、コロニー内の女子中高生の大半が通う中高一貫の学校…と言えばそれは何気無い普通の学び舎に聞こえるであるだろうが、この学校には他に無い特異な存在がいる。

 

普通科の生徒を除いた中高まとめて15人の女学生。

神樹の巫女にして地球奪還の要、未来を背負う少女達、星守である。

彼女らは日常を学生として過ごす傍で、地球を跋扈する《イロウス》を観測、これを叩けると判断した際には地球に降りて、瘴気を祓い清めるという星守としての生活を送っている。

 

…ところで、この学校はその名の通り女子校、即ち男性がいる訳も無いのは容易に想像できる。

そんな女の園である校門の前に、ある1人の男が立っていた。

 

大方この様な場合、普通はーーそれを普通と呼んでいいかは兎も角としてーー「か゛わ゛い゛い゛な゛あ゛あ゛あ゛○゛○゛ち゛ゃ゛ん゛ん゛ん゛」とパパラッチ的盗撮行為をしそうなものだが、彼は違っていた。

 

フレッシュマンの如くピッシリとしたスーツの着こなしと良く手入れをしている事がわかる汚れの無い革靴。

その佇まいは一般成人としては人間の鑑の様なーーー

 

「ぬわああああああん疲れたもおおおおおん」

 

ーーー訂正。その男は人間の屑だった。と言うより顔が汚い。

いや、ちゃんと洗顔はしてるのだろうし、ワイルド系の顔と言えばそれだけなのだが、どことなく汚れた様なオーラを放っている。

初めて彼を見た者は恐らく「なんだこのオッサン!?」と驚愕するだろう。それ程に強いインパクトのある顔だ。

 

「こ↑こ↓までの道程すげぇキツかったゾ…

やっぱこーゆう時は調子乗って徒歩で行くのは良くないって、はっきりわかんだね(学習先輩)」

 

何がどうキツかったのかは分からないが、何故こんなクッソ汚い男が女子校の前にいるのか。ともすれば通報ものだ。

 

然し、その男はハッスル(意味深)しに来た訳でも無ければエ○ゲの様な事をシに来た訳では無い。繰り返すがナニをシに来た訳では無いのだ。

それは彼が「あっ、そうだ」と唐突に思い出したかの様に首にかけた入校許可証、ついでに鞄の中の説明資料が物語る。

 

そう、彼はーー田所浩仁はあくまで呼ばれた側の人間。

 

神樹ヶ峰女学園始まって以来の男性教員。然も星守クラスの新担任候補として。

 

「さて…話ならお出迎えの人がいると聞いたが…」

 

田所はそう言うと腕を組み、校門をじっと見つめる。

ただ黙して、不動で、ピッタリと静止しながらもその眼光は野獣の如く。

そうして数秒見つめた後。

 

「おいそこの!さっきからチラチラ見てただろ?」

 

誰かに語りかける様に声を発する。

 

現在は10時頃。学生は授業中だろうし、一体誰に声をかけたのかと思われたが…

 

「ひゃあ!な、何で分かったんですか?」

 

驚きの意思を言葉に乗せながら現れたのは赤髪の少女だった。

この学校の制服を着ているのでまず生徒である事は間違いない。

次いで高校生用のチェックが入ったスカートと赤のリボン、これらは彼女が高校一年生である事を明白に示している。

 

「まあ人から見られる事は慣れてるから、多少はね?

それでも校門から髪がチラついてたゾ?」

 

「あはは…そうですか…

で、でも、男の人って事は新しく来た先生なんですよねっ?」

 

「そうだよ(肯定)

姉貴よく分かりましたね…」

 

「あ、姉貴って…妹、いや弟じゃないんですから…

まあ、新しく来る先生は男の人だって、聞いていましたから!

この学園に男の人っていないので、すっごく楽しみにしていたんです!」

 

「あっ、そっかぁ…(納得)

のわりに随分消極的なコンタクトでしたね…もっと堂々としてホラ」

 

「あはは…何というかその、見た目厳つい人だなって…」

 

「ファッ!?

酷いですね、これは酷い…アーナキソ」

 

「ああああ、違うんです!!

これは言葉の綾というかなんと言うか…!」

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

そうして赤髪の少女ーー星月みきを一頻りからかった後(なおみきはからかわれている事に気付かず、田所は事実を伏せておいた)、田所は校内を歩いていた。

何故か、当のみき本人を伴って。

 

「あのさぁ…本当に良かったのか?

MK姉貴も授業とかあるんじゃないのか?」

 

「大丈夫ですよ!

八雲先生にも、“私が来なかったら案内しなさい”って言われましたし。

それにその…私、失礼な事言っちゃいましたし…」

 

「それこそもう気にしてないんだよなぁ…

酷い時は《野獣》とか、そもそも《人間の屑》なんて呼ばれたしな。」

 

「…流石にそれはひどく無いですか?」

 

「おっ、そうだな(適当)

まあ今更顔の事は気にしてないのでハイ終わりっ、閉廷!」

 

「でも私の気が済まないのでこうして案内を…

…ってこのやり取りも三回目ですよ先生?」

 

「おっ、そうだな(反復)

それにしても…ラボっての?まーだ時間かかりそうですかねぇ?」

 

そう、田所とみきは現在、神樹ヶ峰女学園の核と言える神樹とダイレクトに接続している研究室兼出撃用転送室、通称《ラボ》へと向かっていた。

 

みきによれば、其処に教師であり星守のオペレーターでもある人物、八雲樹がいるのだという。

 

「この学校広いから歩くのも一苦労ゾ…

辞めたくなりますよ〜先生ィ〜」

 

「さ、流石に1日で辞めようなんて言わないですよね…?」

 

「…どうすっかなー俺もなー(棒読み)」

 

「せっ、先生!!」

 

「いや流石に冗談だからな?ジョークスキル磨いて、どうぞ。

ホラそんな事してる間に…もう近くじゃないか?」

 

「えっ、あっ、はい!ここまで来たら…」

 

そういってみきは歩調を早める。

田所も追従して歩いていくと、少々雰囲気が変わりつつある事に気がつく。

 

未だそこが古き良き伝統的スタイルの校舎である事には間違いない。

しかし何だろうか。大いなる何かに守られる様な、そんな感覚が田所を包む。

言うなれば林の中で日光浴をする様な…兎も角その様なものを受けながら進むと、ある所でみきが何やら壁面のパネルを操作しているのを視認する。

 

「…えっと、新しいパスは…A-1-A、M.H.っと…

…よし!」

 

(自分から言っていくのか…(困惑))

 

小声とはいえ、隣に未だ担任の候補に過ぎない自分が隣にいる状況でパスワードを呟くみきに少々の呆れを覚える田所だった。(最も、パネル操作の内に指紋認証や顔認証が自動で行われているらしいが。)

然し、そんな呆れも気にならなくなるほど異質な空間が、壁面の奥に広がっていた。

 

「はぇ^〜、すっごぉい…」

 

先ず特筆すべきは、先程までの校舎と目の前のラボ、二つの空間のギャップだ。

神樹を囲う様なその空間は正に近未来的だとかサイバーチック、或いは最先端と言えるだろう。

至る所に液晶が浮かんでおり、それらには神樹からのエネルギー供給率や、剣や槍など武器の図面、《イロウス》のデータなど…

見ているだけで頭が痛くなりそうな数々が、所狭しと並んでいる。

 

しかしそれですら霞むくらいだと、眼前の神樹は優に語る。

改めて眺めてみれば何とまあ、大きな存在だ。

ただそこにあるだけで総てを見透かす様な威容を放っているにもかかわらず、先の様な安らぎを更に強く感じさせる。

 

計器によって測定・管理され、生み出す力は悉く利用・加工され終いにはコロニーの核となっている…即ち実態は馬車馬か人の玩具の如く扱われているだろうに、それをも許容するかの様に暖かで優しい光を淡く放っている。

それが人間だったのなら、間違いなく人間の鑑と呼ばれているだろう。

 

そしてそんなラボには二人を待ち構えていたのか、青髪の女性が一人、此方を見て居る。

 

「お待ちしておりました、田所先生。

八雲樹です」

 

「田所浩仁。24歳、担任です(もう担任とは言ってない)

YKM姉貴オッスオッス!」

 

やはり田所は馴れ馴れしい。初対面の相手にオッスオッスという社会人が何処にいるだろうか。八雲の顔も多少引きつっている。

それでも田所が気さくに差し出した手を受け、丁寧に握手をする様は彼女の人間性の良さ、その反映だろう。

 

「よろしくお願いします、田所先生。

…みきさんもお疲れ様でした。結局任せてしまいましたね。」

 

「気にしないで下さい、八雲先生!

これはその…私の事でもありますから!」

 

「そうだよ(便乗)

女子高生に初対面から厳ついなんて言われたら涙で、でますよ…」

 

田所の発言に、八雲の放つ穏やかだった雰囲気が変化する。

何かが罅割れるか、はたまた限界を超えて軋む音が聞こえてきそうだ。

田所はなんとも無い様だが、内心「あっ…(察し)」となっている事には間違いなく、みきに至っては冷や汗が一筋二筋と頬を伝っている。早い(確信)

 

「…………みきさん?」

 

「あっ、え、えっと、その…それは…」

「ハアァァァァァァァァァァァ〜〜〜〜〜(クソデカ溜息)

あのさぁ…嘘だよ(優しい世界)これはYKM姉貴への、謂わば場を和ませるジョークなんだよなぁ…

(そんな事実は)ないです。

だから二人とも安心して、どうぞ」

 

「…そうですか。何も無いなら良かったですが。

一応、注意はしましょうね?みきさん?」

 

「はい…

以後気をつけます…」

 

「ハイこの話は終わりッ!

後はもう、パパパッとやって終わりで良いんじゃない?おっ、そうだな(自己完結)そうだよ(三段論法)」

 

パパパッ、て何だよ(哲学)

 

フォロー然り、話題の転換然りで相も変わらず我が道を征く田所である。

そんなあからさまな話の腰の折り方に八雲も何かを感じ取ったのか、嗜める顔から一転、真剣な表情と化して改めて田所に向き直る。

 

「そうですね。では本題に移らせていただきます。

まずは星守クラスですが…星守の事は、貴方なら既にご存知ですよね?」

 

「ま、多少はね?

遙か昔から続く、神樹に選ばれ力を得て、イロウスと闘う女の子の事。

そして今や、奪われた地球を取り戻そうとする人々の希望の星だろ?

…コロニー側の人間の、な」

 

最後に呟くように吐かれたこの言葉に、後の二者は反応を異にする。

八雲はやや眉をひそめ、みきは疑問があるかの表情だ。

 

「えっ?

コロニー側、って…」

 

「世の中にはいろいろな人がいるって事ゾ。

…YKM姉貴、いや、八雲先生。

俺も地球に帰りたい。それは月も火星も…どいつもこいつも変わりっこないんだ。

その為に手を取り合う事は必然だ。とれる手は全てとる、当たり前だよなぁ?俺達は敵でも中立でもない、味方同士仲間同士でなくてはならないんだからな」

 

そんな想いを持っちゃいかんのか?

と、表情を弛緩させて、また元のドヤ顔じみたモノを浮かべる田所に対し、八雲はこれまた複雑な表情を見せる。

 

「それはつまり…」

 

「固くなってんぜ?」

 

「ッ!?」

 

「いいじゃねぇか。要はさ、田所浩仁は星守クラスの担任を喜んで引き受ける。ただそれだけだ。

そこに誰かだけが得をするとか、そんなことは介在してない。はっきり誓えるゾ」

 

「…そうですか。 であれば、その意志はありがたくお受けします。

それに、元々呼んだのは我々の方です。今更な話でしたか」

 

「そうだよ(肯定)

改めて、よろしく頼むゾ」

 

そして二人はもう一度握手を交わす。

そんな光景を眺め、

 

(ええと…私はどうすれば…?)

 

何やら訳有りな大人の話を聞いてしまったみきはこの場において最早空気となっている。

 

果たしてどうなる、これからどうなる?

そんな期待不安の未来が待ち受ける事を、目を泳がせながらも確信するみきであったーー。

 

 




プロローグで生徒ではなく八雲先生に焦点が当たるバトガ小説の屑
こんなんじゃ小説になんないよ?(自嘲)

続くと思ったの?しゃぶってよ。


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第1章 最終テスト〜渋谷奪還編〜
第1話 地球へ行きますよ〜行く行く



Q.なんで続く必要なんかあるんですか?
A.馬鹿じゃねぇの?(煽り)

基本的にこの辺りは原作沿いなのは許してください!不定期更新で何でもしますから!



 

「さて。

一応この後はテストを用意しているのですが…」

 

「え、何それは…?」

 

「田所先生が本当に担任、ないし現地での指揮官として機能可能か…

それを確認する為のものです。要はこれから始まる奪還授業、それに同行し、迅速に事に当たって貰います。

彼女、みきさんとその同学年の星守と共に」

 

奪還授業。

それは星守クラスに課せられたイロウスとの闘いを、あくまで学業や生徒間交流を含む、学校生活の一環として行なうものである。

 

これはイロウスをただ討伐するだけでなく、彼らに奪われ、瘴気により犯された大地を清めるといった意味合いが強い。

 

「ーーー例え小出しでもこの様に着実に積み重ねる事が、地球奪還に繫がるんすねぇ…」

 

「いや先生、何もその資料を朗読しなくても…」

 

「ん?あっ、MK姉貴久し振りスギィ!」

 

「いや私ずっとここに居ましたよ!?」

 

「ファッ!?

うせやろ…?」

 

「先生達が難しい話をしてるからじゃないですか〜!

なんかちょっと気まずかったですよ…」

 

「あっ、そっかぁ…

すいませんでした(センセンシャル)!」

 

「微妙に噛んでる!?」

 

「…そろそろ宜しいですか?」

 

「ハイ(Teh○)

…って、ん?」

 

田所がみきと漫才などをしてる間に、後ろには2つの気配が増えていた。

それを認知した田所は振り返る。

そこに居たのは、みきと同じスカートとリボンをつけた2人の少女であった。

 

…少しばかり、顔が引きつってはいるが。

 

少女達は少女達で、唐突に振り返った田所に対しピクリと肩を震わせる。

 

「こっ、こんにちは!」

 

「こんにちは…えっと、新しい先生、ですか?」

 

若干上ずった挨拶をしたのは濃い緑髪を短めにした少女。

謎の超速理解を見せたのは三つ編みを片側に纏めた少女だった。

 

「MK姉貴、あの姉貴達は…?」

 

「もう代名詞は姉貴なんですね…

んと、私の同級生の星守の若葉昴ちゃんと成海遥香ちゃんです!

2人とも、この方が新しい先生の田所浩仁先生だよ!」

 

「若葉昴です!

戦闘なら、私にお任せください!」

 

「成海遥香です。

よろしくお願いします。」

 

「田所浩仁。24歳、担任です。

SBR姉貴にHRK姉貴、今回はよろしく頼むゾ。」

だから姉貴ってなんだよ。

 

実際、急に姉貴という敬称(?)をつけられた2人は困惑している。

なんともまあ、表情がよく変わる娘達だと田所は思った。十中八九彼の所為なのだが、自身がそれに気づいているかは定かではない。

 

「あー…その、や、八雲先生!

今日の奪還授業は何処に行くんですか?」

 

困った様に頬を掻く昴が八雲に問う。

 

「今回の目的地は、嘗ての日本の大都市東京…その中でも際立った発展をみせた渋谷方面よ」

 

「下北沢?(難聴)」

 

「渋谷区です(断言)」

 

とんでもない難聴は寧ろ態とらしくもとれる。

しかし、今時の中高生が下北沢を知っていればそれは大したものだろう。

 

「…遥香ちゃん、下北沢って?」

 

何しろ人類が活動圏を宇宙に移したのは5年も前の事。彼女達3人は当時小学5年生である。

その時そこに住んでいた等の理由がない限り、みきの様な反応になるのは当然といえる。

 

「えっと、昔東京に下北沢大学と言う大学があったと言うのは分かるのだけど…

多分、東京の地名の一つじゃないかしら?」

 

「HRK姉貴やりますねぇ!

俺の母校、下北沢大は昔、東京一工下って呼ばれる程日本全体で見ても有名な大学だったゾ。

学生時代が懐かしくて涙で、出ますよ…」

 

「へぇ〜

先生ってすごいトコ出てるんですね!やっぱり勉強は得意だったりするんですか?」

 

「多少はね?

飛び入学で学科自体も特殊だったけど、一応選択含めて中高生の全教科はイケますイケます」

「選択って事は…

文系理系や科目に関わらず、という事ですか?」

 

「そうですねぇ…やろうと思えば(王者の風格)

ま、その辺りは追々だな。今は兎に角、奪還授業とやらを終えなきゃ話になんない」

 

「その通りです。

田所先生…貴方自身、地球に降りる事が久しい事だとは分かっていますが、くれぐれも」

 

「大丈夫だって安心しろよ〜

流石に感傷に浸って隙を突かれるとかは、ないです」

 

田所はヘラヘラと笑いながら、八雲に導かれる様にして部屋の奥の転送装置に向かう。

3人もそれに追従する。

 

「ーーーそうでした。田所先生、少しお耳を」

 

装置の手前で八雲は停止し、田所の耳元に顔を近づける。

 

「ヌッ?どうかしたか?」

 

「今回の奪還授業、そのテストで見るのはあくまで指揮能力です。ですのでーーー」

 

星守3人の前を歩いていたために気づかれる事は無かったが、八雲の言葉に田所の眉間に僅かばかりの皺がよる。

 

「ーーーと言う事です。

貴方の行動次第で、我々の動きも変わり得るのです。宜しいですね?」

 

「…考えてやるよ。

3人とも、ほらいくどー」

 

ぶっきらぼうにそれだけ言うと、田所はさっさと装置の上に乗る。

一瞬低くなった声音は戻り、手を叩いて彼女達を急かす。

 

そして、3人も装置に乗りーー

 

「では先生。現場での判断は貴方に任せます。

問題発生時には此方に連絡をして下さい」

 

「ん、おかのした」

 

「皆さんも分かっているとは思いますが、くれぐれも油断なき様に。」

 

『はい!』

 

生徒達の返事と共に装置が起動し、淡い碧色の光が膜となって内にいる4人を包む。

座標軸が《地球・日本・東京・渋谷方面》といった具合に固定され、装置が励起状態に移る。これは即ち転送準備が完了した証だ。

後はオペレーターである八雲が手元の基盤を操作すれば、瞬時にコロニーから地球へと転送される。

 

「では皆さん、武運を。

奪還授業、開始します」

 

「行きましょう!

今日の3時間目はーーー」

 

光が一際強くなり、それを隔てては反対側を認識出来ないほどに密になってゆく。

 

「渋谷奪還、ですっ!」

 

「オッスお願いしま〜す」

 

向こう側が完全に見えなくなって数瞬の内に、ガラスを割るかの如くに光が弾ける。

 

幾千もの光の粒子が霧散した先にあったものは、神樹の暖かな雰囲気とは対を成す(もの)

 

冷たい様で何処か生温く、べたつく様にしてスッキリとしない、人ならざるモノの温床。

 

瘴気によって汚染され、人間の放逐された大地ーーー《地球》であった。

 





だから生徒ともっと話せって言ってんだルルォ!?
てか文字量が前回の半分しかないやん
しかも内容が無いようなもんやん(激ウマギャグ)
はーつっかえ、ほんまつっかえ

まあこの辺りをダラダラやっても、後が尻窄みになるだけだし多少はね?

バトガほんへキャラをTDN表記で呼ぶのはバトガほんへで言う所さん!?の一章までです


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第2話 大分(瘴気)溜まってんじゃん

UAが昨日1日で150まで上がるとかやっぱりホモは偉大なんやなって…(光悦)

でも浪人生が受験期にこんな事してるとかこいつすっげぇ池沼だぜぇ?
故の不定期亀更新です(鉄の意志)

あっ、そうだ(唐突)
今回はバトガ分強めです。




地球・旧渋谷区。

立ち並んだ高層ビルや店により、嘗ては若者の街として隆盛を極めた地区である。

 

然し、それは今も昔。

瘴気による汚染は此処にも至っており、ビル群と人の少なさが異様な断裂(ギャップ)と成って不気味さを醸し出す。

 

そんな渋谷の郊外、半ば平原と化した場所にて、碧光は弾けた。

 

「地球に…着くゥ〜」

 

「ここが、渋谷…?」

 

3人の少女と1匹の野獣改め1人の先生。今回はこの4名が降り立った。

 

一行は周囲を確認する。

敵影は無し。転送されたのは緑が程よく散りばめられよく映える地帯である様だ。

…当然瘴気汚染は進行してる所為で此処が目に良い訳が無く、所々にはそれを養分として咲く気味の悪い花や草が生えているのだが。

 

「しっかし、ここが渋谷かぁ〜

よく知らないけど、こんな場所だったんだな〜

なんて言うか、殺風景ってやつ?」

 

「あっ、おい待てィ」

 

「昴…違いますよ。

此処は渋谷ではありません」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「そうだよ(肯定)

ホラ彼処に見えるだろ?高いビル群

がさ」

 

そう言うと田所は腕を上げて景色の先を指差す。

空気自体がよろしくない所為で見通しは悪いが、その先にはなるほど確かにビルが幾つかチラチラ見えている。

 

「おー、本当だ…」

 

「渋谷は元々、若者の街って言われるぐらいには発展していたみたい。

だからあの先にはもっと大きなビルがあると思うよ!」

 

【その通りよ。】

 

みきの言葉に反応するかの様に、4人の耳に言葉が聞こえてくる。

その主は当然…

 

「あ、YKM姉貴じゃないですか」

 

【ええ、私です。

奪還授業中は基本的に、其方とこうして交信が可能です】

 

「然し瘴気が濃すぎると交信は途絶えてしまいますが、ね」

 

【正解よ遥香さん。

さて、目的地から若干逸れていますか…】

 

「こんな時はやっぱり歩きかゾ?」

 

【はい。どうしても転送は10km近くの誤差が出てしまいますので…

幸い、今回は街まで近い位置に送る事が出来たので、そのまま移動して下さい】

 

「了解ゾ」

 

【ではこの辺りで。警戒を厳にして行動して下さいね】

 

「ああ!

オイ聴いたかぁ?イロウスに警戒しながら行きますよ〜ホラァ…(ねっとり)」

 

「…なんか締まらないなぁ」

 

「あはは…

と、とにかく!今日も頑張ろうね、2人とも!」

 

「と言うより先生が前衛にいては危険ですよ!」

 

田所がそそくさと歩き出す。

その言と見た目の隙の多さに昴が苦笑するが、みきのフォローや遥香の気づきにより3人も歩き始めた。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

そして歩き始めて30分で…5万km(大嘘)進んだ後ーーー。

 

「ウーン…

思ったより瘴気すくねぇな此処んとこな」

 

田所は何処とない落胆を乗せて独りごちる。

 

「転送自体は敵の奇襲なども考慮して、その時瘴気の少ないポイントに送られますから…その様に思うのも仕方ありませんね」

 

「ていうか、先生は星守でも無いのに瘴気の濃い薄いなんて分かるんですか?」

 

「多少はね?

まあどっちかと言えば『慣れ』ちゃったからね、しょうがないね…」

 

「慣れた、ですか…?」

 

「おっ、そうだな(肯定)

人間色々あるって事で良いっすかぁ?」

 

「ん〜まぁ、そんなものなのかね」

 

「そうだよ(肯定)

さて…着いたゾ。此処が所謂、渋谷だな」

 

生徒達と閑談しながらも前へ前へ進み、ある箇所で田所は静止する。

 

その眼前に広がるのは灰色の街。即ち高層ビルの林立する街ーーー渋谷であった。

 

「おお〜!」

 

「スゲー!此処が渋谷か!

見てよみき、遥香!何処もかしこも上が見えないくらいまで…!」

 

「此処まで来てみると…流石に大きいですね。

コロニーでこんなに大きな建物は見た事が無いです」

 

知識はあれど経験は無し。

まだ15、直に16に差し掛かる彼女達にとって初めて見るその街は、すっかり夢中にさせるには十分過ぎた。

 

然しこの男はーーー。

 

「はぁ〜疲れたぁ、キツかったっすね今日は〜

で、どうすりゃ良いんだっけか?」

 

このザマだ。

5年振りの地球に郷愁を感じてはいないのか、全く変わりの無い様子である。

 

「はい!この地区で瘴気を発生させている大型のイロウスがいるはずなので…

目標はその大型を討伐する事ですね」

 

「つまりこの街の中のイロウスを…パパパッとヤッて終わりっ、てことだな?」

 

「そういう事ですね。分かりやすく言えばそんな感じです」

 

「はぇ^〜すっごい単純…」

 

仮にも地球奪還の作戦行動を単純と言ってはいけない(戒め)

 

「じゃあその…これから敵地に入る訳だけどさ?アレは起動しないのか?」

 

「アレ?」

 

「先生のいうアレとは…《星衣》の事ですか?」

 

「それですそれです(食い気味)

今時の《星衣》なんてどうなってるか知らないからな。」

 

田所が《星衣》と言う単語を出した事により、3人は目を丸くする。

特に遥香は何かに気がついた様で…。

 

「?待ってください、今時って言うのはーーー」

 

「おっと、そろそろお話はやめてくれよ…(注意喚起)

前方に瘴気溜まり並びにイロウス生成反応確認。一部、数は少ないが此方に向かってくるゾ

やっぱ目的地ともなると溜まってんなぁオイ」

 

『ッ!?』

 

「そんな驚く様なもんでも無いし大丈夫でしょ…

這う様な音はゲル種、或いはドグー種。割と早く走る足音はロウガ種だって、はっきりわかんだね」

 

3人は驚愕に目を見開いて田所を見る。

その様子はまるで鳩が豆鉄砲を食ったようだ(直喩)

然しながらこの時の彼女等の思考を表すならば次の様になる。

 

 

何故星守でも無い、てんで一般人の田所(先生)が此処まで正確に《イロウス》を、《瘴気》を把握できるのか。

 

 

これは確かに驚くべき事で、元々星守を含めた人間そのものが瘴気下に置いては身体麻痺・感覚不全に陥るほど、それは毒性が強いものだ。

 

増してやその濃淡によるイロウス生成の感知などは、大凡肉眼か、生まれたイロウスが出す何かしらの音で判断するしか無く、それにしたって完全を期す事はまず無理である。

 

にも関わらず、田所は予測して見せた。

肉眼視では未確認の地点におけるイロウスの発生と、僅かな音からの種の特定。

 

こんな芸当が出来るのはーーー。

 

「みんな早くしろよぉ〜?

後ものの数秒で会敵しますよ〜するする」

 

「ッ!そうだよね、今は…

みんな!《星衣》を展開するよ!」

 

「わかった!」

 

「わかりました!」

 

みきに促され、昴と遥香も意識を疑念から戦闘時のものに切り替える。

 

するとどうだろうか。

彼女達から光が溢れ出す。眩いその色は例外無く碧。

そう、間違いなく神樹から成る力そのものだ。

 

光は渦を巻き、少女達を包む。

双肩に、腕に、足に、胴に。

 

その光の中で、3人各々から異なったイメージの具現が立ち現れる。

 

一つは不死の鳳(フェニックス)

一つは一角の獣(ユニコーン)

一つは烈海の蛇(リヴァイアサン)

 

所謂幻獣だの伝説だのという存在。

三者三様に威厳を放ち、眼前の瘴気を見据える。

 

そして具現化した光はそれぞれが一つ嘶くと、己の発生源である主の元へ収束する。

刹那に強く煌めく光は今収まり、其処に立っていたのは相も変わらない少女達。

だがその姿は大きく変貌していた。

 

ベースは元々着用していた学生服であるが、問題は次だ。

3人とも身体の至る所に装飾の様な装甲を纏っている。

 

みきはフェニックスを。昴はユニコーンを。遥香はリヴァイアサンを模した形態である。

成る程先の具現は、彼女達の《星衣》とリンクしたものなのだろう。

 

「Foo〜↑いいゾ^〜これ。

いい構成してんねぇ道理でねぇ!」

 

…で、この男は何がご満悦なのか、満面の笑みを浮かべている。ハッキリ言って汚い。

 

「これが星衣です。謂わば戦闘服ですが…

恐らく先生は御存知なのでしょう?」

 

「多少はね?現物を見るのは久し振りだけどな〜俺もな〜」

 

「む〜…なんか先生って訳有りな感じがするなぁ…」

 

「いや、そんなこと…

ってホラ、お出ましゾ」

 

田所が正面を睨みつけると、駆けて来たのは白と青の色をした、透き通った見た目の犬の様な存在ーーーロウガ種だった。

 

頭や胴体など、全体的に丸っこいフォルムが特徴的で、伸びる四肢はそれこそ、人間が動物ごっこでもするなら中々良いグッズになるかも知れない程にはポップさが漂う。

 

…それが獣の唸りを上げながら、集団纏めて結構な速さでもって接近してこなければ。

 

『ガルルルルルアアアアアアァァァァァァァァァァア!!』

 

「敵影を肉眼で確認。数はロウガ種7、か。

ま、このまま此処にいてもアレだしな。よし!じゃあぶち込んで行くか!」

 

「つまりは突入ですね!

ははっ、分かりやすくていいや…っと!」

 

田所の提案に対し、昴は一歩前に出る事で応じる。

その手にはいつの間にか(ハンマー)が握られており、弾丸の如く跳んで来た1体に対して横に薙ぐ。

 

槌が脇腹を正確に打ち抜く。それをもらったロウガ種は、この時点で透き通った身体から見える核に罅が入る。

正に胴体を捉えた一撃。だがこれで終わりではない。

其処から思い切りーーー

 

「ふっーーーー飛べぇ!」

 

手にした槌を振り切る。

そのロウガ種は体躯の半分以上がひしゃげて歪になりながら宙を舞い、近くのビルに激突するとそのまま霧散した。

 

その光景を見た後続は足を止める。そして4人を包囲したいのか、互いに距離を取りタイミングをズラしてまた突進してくる。

 

「一丁あがり!2人とも、いつも通りに!」

 

『了解!』

 

田所の傍に控えていた2人が飛び出し、市街へと入って行く。

昴と同様に武器を携えているが、みきは(ソード)を、遥香は(スピア)を…

各人に応じて最適な武器が星衣に内蔵されているのだろう。

 

そして最初に接敵したのはみきだ。2体のロウガ種が飛び込んできている。

前方右、前方左より合わせて二振りの前脚が爪で引き裂かんと襲いかかる。

 

この局面で、右からの攻撃が早いとみた後の行動は素早かった。

2体の攻撃軌道から逃れる為に一度バックステップすると、そのまま先の1体を切り上げる。

出した左前脚を胴体ごと切り裂くと、直ぐ様逆手に持ち替え同時に踏み込んだ。

 

「そぉ、れ…てゃあ!」

 

ピンポイント。

 

逆手の剣は遅れてやって来た片割れを、その透明な表皮を削ぎながら勢い良くはたき落とす。

背中を大きく傷つけられたロウガ種はそのまま地に這い蹲りもがいているが、これにて投了。

 

みきが背中から覗かせた核へ向けて剣を突うずるっ込んでやったのだ。

そして剣を引き抜くと同時に核から瘴気がどばーっと溢れ出し、その個体は消え去った。

 

「よし。これで大丈夫大丈夫…」

 

僅かに2回。弐撃必殺にて敵を沈めたみきは周囲を見渡す。

すると見つけたのは、遥香がいつも通りに(・・・・・・)敵を一箇所に集中している最中だった。

 

その周りに1体、消えかかっている個体がいるが、これは彼女が仕留めたそれだろうと判断する。

 

「流石に4体、いや3体はキツイよね…

加勢するよ!」

 

そう言うとみきはイロウスの集団へ突撃していった。

 




バトル淫夢名乗ってる癖にまだ田所さん!?は闘わないのか…(困惑)
然もこれじゃあバトガと変わりないわね(KNN姉貴)

深刻なボキャ貧・戦闘描写に慣れてない・プロット書いてない・見切り発車…etcetc

ガバ要素は多いけど許して!許して!


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第3話 キメるんだろ?魅せてくれよ…

バトガほんへのアレを田所がやると

田所「なでますよ〜なでなで」
みき「はわっ!?先生!?ちょっと、何してるんですか!?」
昴「リアル犯罪はまずいですよ!」
遥香「すいません、警察の方ですか…?今ですね、ろりこん?が現れまして…」

田所「」

野獣先輩のなでなでとかクッソねっとりしてそう(小並感)

今回は場面の転換が多いからよーく見とけよ?
そして原作改変がやって来るので先生兄貴達に謝っておきます。すゆ何!


時は数瞬戻り、遥香側。

 

彼女が相手取るのは4体の小型ロウガ種。

元は6体がいたが、みきの誘導により2体は引きつけてくれた。

これは有難いことだと遥香は考えている。

コンディションの良いみきならば、見慣れた小型の2体は、其処まで苦するまでも無く斃せると信じているからだ。

 

ならば、もとより自身の仕事はワン(ウー)マンプレーでは無いと認識する彼女がする事は1つ。

 

より効果的な討伐の為の、下地作り。

 

唐突だが星守が持つ武器とイロウスには、それぞれ侮り難い相性がある。

全てにおいて無難なスペックのゲル種を除けば、現在交戦中のロウガ種にもそれが当てはまる。

 

星守が使用する武器は5つ。

高1星守が使用する剣・槍・槌の近接武器3種。

更に小型の砲の様な見た目の(ガン)と、魔法使いの如く光弾を飛ばす(ロッド)。遠隔武器2種のこれらが該当する。

それぞれが何かしらのイロウスに対して強い特効性を持ち得るのが、神樹の武器であるのだ。

 

つまりどういう事か。

 

結論から言ってしまえば、ロウガ種はーーー遠隔武器の杖には強いが、衝撃を与える槌を弱点とする。

 

走る勢いを乗せて槍を突き出す。

突然の攻撃に反応すべく、個体の1つが身体を低くするが遅い。

突き出した穂先は右前脚を抉りながら胴へ喰い込み、核に傷をつける。

 

『グギャ…ッ』

 

そのロウガを突き刺したまま槍を短く持ち直すと、いつの間にか彼女を包囲していた1体に向けてもう一度突き出すーーー

よりも早く、背後に迫った2体目掛けて石突きを叩き込む。その2撃は顔面にぶち当たり、ノックバックを生む。

 

改めて地を蹴り前方へ突き出すが、後方の2体が迎撃された事に動揺したのか動きが鈍っていた為、そのまま核へと吸い込まれる様に穂先が入り込んだ。堕ちたな(死亡確認)

 

運良く1体を仕留めた所で、体勢を整えかけた2体へと突き刺さったままの個体を振り払ってぶつける。

 

「…遥香ちゃん!」

 

向かって来たのはみき。顔だけ向けるとやはり手早く終えて来たらしい。

 

「みき、大丈夫だった?」

 

「うん。遥香ちゃんの方は?」

 

「1体討伐、1体核損傷、後2体は未だ健在。

ただ、もう昴で一気に殲滅出来る範囲内ではあるわ」

 

「分かった。なら私達は…」

 

「「『出来るだけ残りを留めておく』、だね!(ですね)」」

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「はぇ^〜」

 

一方たどころ。星守達の闘いを見ながら感心の意を漏らしていた。

2人が飛び込んで行って僅かの間に、7体いたイロウスが半数にまで数を減らし、その残りの始末も時間はかからないだろう状況。

其処まで持っていけるのは流石現役の星守、ひいては仲の良い同学年である。

 

「やっぱ得意なんすね…

これって…勲章ですよ…?」

 

「みきも遥香も、ちゃんとした星守って事ですよ!」

 

そしてこの場には昴もいる。

彼女はイロウスが田所に接近しても対応できる様に備えていたのだ。

 

「しっかし、あの様子だとSBR姉貴がラストキメるんだろ?魅せてくれよ…」

 

「おぉ、よく分かりましたね。

私が使う槌は範囲や威力には長けるけど、どうしても隙ができるので2人がああしてやり易い様にしてくれてるんです。

…勿論、何時もこういう戦術がとれる訳じゃないし、況してや1人じゃ何も出来ないわけじゃ有りませんよ?」

 

「大丈夫だって安心しろよ〜

そんな事も分からない無能じゃ、ないです」

 

「ならいいけどね。

…っと、そろそろだね」

 

交戦中、合流した遥香とみきは互いの得物をクロスさせ掲げる。

そして3体のイロウスを取り囲み、右へ左へ動きながら素早いロウガの動きを封殺する。

 

昴にとってそのサインが意味する事柄はただ一つ。《殲滅せよ》だ。

 

「じゃあ先生、行ってくるね!

お望み通り魅せてあげるよ!」

 

「おう!

あっ、そうだ。さっきから瘴気の出所さん探してるんだけどな、結構奥にあるみたいだ。

じゃけんこの陣営を突破したらそのまま前進しましょうね〜頼むよ〜」

 

「ほんと何でもありだなぁ…

兎に角、みき達にも伝えておく

ーーーよっ!」

 

言い終えると昴は槌を担いで駆け出した。

その勢いはグングン増し、女子には似つかわしくない大きな槌を持っているとは到底思えないスピードだ。

 

迅雷風烈、正しく駿速。一気に交戦現場へと接近する。

 

それを見たみきと遥香は3人でアイコンタクトをとると、飛び退いてエンゲージを離脱する。

 

そして昴は低く、低空飛行をするかの様に跳躍するとーーー

 

「終わりだぁぁぁぁあ!」

 

裂帛の気合いと共に槌を振り下ろす。

 

激震を伴った一撃はロウガ3体を、断末魔すら赦さず塵に還す。

2人が核を貫いて屠ったのに対し、此方は核ごとぶち壊す…大層な攻撃であった。

 

「おっし、片付いたね!」

 

「昴ちゃん…何時もより随分張り切ったね…」

 

「ちょっと全力過ぎやしませんか…?

あまり消耗し過ぎても良くないわ」

 

衝撃から逃れていた2人が昴に近づくが、その顔色は芳しくない。

 

「いやその…先生が魅せてくれーって言うもんだからつい…ハハハ…

あっ、せ、先生から言伝。大型はこの奥っぽいから前進しろ、だってさ」

 

「そうっすね。

こ↑こ↓は一気に攻め込んで…ゴー、ゴッ、ゴー!

こんな感じでオナシャス!」

 

田所がのっしのっしとやって来ながら指示する。

3人は「えっ、いつ来たの貴方?」みたいな顔をしているが、そんな場合ではない事は分かっていたので此処はスルーする(激ウマギャグ)

 

 

 

 

(余韻)

 

 

 

「こんな所で立ち止まっていても仕方ないですからね。

皆、行こう!」

 

みきが先頭を取り、周囲に目を配りながら前進する。

 

「後方は私が警戒します。

行きましょう、先生」

 

後方に遥香、先頭にみき、中団に田所と昴を置く形で一行は灰色の街を進んで行ったーーー。

 

◇◇◇◇◇◇◇

進む事数分。

途中でロウガ種やRPGで御馴染みなシルエットのゲル種を撃退しながら奥へ奥へと歩き続け、4人はある地点に到達した。(この時、戦闘においては初戦の様な派手さは抑えて皆堅実に倒していた事も記す。)

 

古くは渋谷の象徴、スクランブル交差点。

そのど真ん中にただ1体、それは鎮座していた。

 

「あれだ…この地区の瘴気発生源は」

 

「大型ロウガ種、ウォルフですね…」

 

大型の名に恥じぬ巨大さを持つウォルフ。

小型のロウガ種が大型犬より一回り大きいか或いは狼程の大きさだったのに対し、大型は座った状態ですら高さは身長の2倍はあり、前脚1本だけで人間1人半。

まともに喰らえば頭が身体とサヨウナラ。上半身と下半身が、でも何ら間違いではないだろう。

間違いなく強敵。その風格を放っていた。

 

「どうします、先生?」

「おいやっちまおうぜ!」

「やりますか…」

「やっちゃいましょうよ!その為の星守、後その為の力…?」

「何で疑問系なんですか…」

 

ウォルフから目を離さず小声で話すも結局田所の妙ちきりんなテンションで内容が無い。

 

「まあそうですねぇ…姉貴達の基本戦術、HRK姉貴とMK姉貴が撹乱してSBR姉貴がメインのダメージを与えるのは変わり無い。

ただ前脚には気をつけろ。喰らうと死ぬ程痛いからな…ああ後、頭の鎌を使った頭突きとか突進もだな。

正面にはなるべく立たず後脚や胴体にかけて攻めて、一撃離脱(ヒットアンドアウェイ)に専念だ。いいな?」

 

ポリポリと頭を掻きながら、真面目な声音だろうトーンで3人に語る。

その言動にはウォルフにも劣らない確かなものがあり、彼女達は息を飲む。

然しその指示の的確さに3人の表情は緊張のそれから気合と闘争の色へと染まっていき、一様にある光景を空目する。

 

ーーー普段とは違う、確固たる勝利への活路。

 

 

「俺の守りはヘーキヘーキ。

本気でいいから…勝ってこい!」

 

 

最早小声という事も忘れ、田所はその檄で、その言の葉で星守の背を押す。

 

『はい!』

 

『グルルルルアァァァァァァァァァァァアアアアア!!』

 

ーーー今この場にて戦端は開かれる。

開戦の号砲を撃ち鳴らしたのは紛れもなく、田所であった。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「さて…」

 

星守とウォルフは戦闘を開始する。

みきは揚々と敵に向かい、剣を振るいながら脇へ脇へ回り、注意を引き付ける。

そうして空いた反対側を昴が槌で殴る。其処には確かな手応えがあり、確実に効果をあげているのが分かる。

 

攻撃をもらったウォルフは猛り、その原因を見定めて丸太の様な脚を振るうが、予備動作を見ていた遥香の指示により回避すると、3人はカウンターとばかりにそれぞれが一撃を見舞う。

 

至って順調。元々彼女達は連携に良いセンスが有るのか、大型相手にも一歩も退いてはいなかった。

 

だがこの男だけは違和感を覚えていた。

 

「あれ〜、おかしいね〜小型がいないね…?」

 

大型イロウスはその下位存在の小型の群れを侍らす。

進行の道半ばで説明された事だが、改めて考え直すと、現状と定説の差異は激しい違和感となっていた。

 

そう、この場にいるのは(・・・・・・・・)大型(ウォルフ)1体(・・)

ただそれだけである。

 

「これもうわかんねぇな…

MURさ…先輩なら分かるんだろうが…何なんだこの不気味さは?」

 

眼前での闘いには目もくれずに田所は思案するも、解が出る訳もない。

 

「落ち着け。せっかちなのは悪い事じゃないが、こ↑こ↓はリラックスゾ…

とりあえず感知はしなきゃ…(使命感)」

 

 

「イキますよ〜、感知開sファッ!?」

 

 

しかし感知する迄も無く、田所は気配を捉える。

ハッキリとどんな存在かまで。

 

だがそれは、絶対に存在し得ない者だった。

 

「地球に、俺等以外の…人間!?」

 

瘴気は糞尿など比べる迄も無い多大な毒性を有する。今田所や星守達がそれをレジスト出来ているのは、《神樹のお守り》と呼ばれる力の端末にて瘴気の清浄器を有しているからなのだ。

その効果が発動していたので瘴気の毒性を無効にしていたのである(YUGOU並感)

しかしながらその効力は、大地に根付かないと長くは持たずに枯れてしまう為、授業と言う形式の元で地球奪還を行なうのが星守だ。

 

故に瘴気に塗れたこの地において、星守と田所以外は存在出来ない。

B.(ブッ)T.(チッ)P.(パ) 脱糞(証明)完了。

 

であるにも関わらず、何故…?

 

「探るしかないか…

俺ならいざとなっても大丈夫でしょ…多少はね?」

 

そう呟くと田所は遠ざかる気配の主を追う為駆け出す。

身体の至る所から瘴気を漏らし始めたウォルフと、大技を繰り出さんとする3人に背を向けて…

 

◇◇◇◇◇◇◇(カットしよっ!)

 

「女の子…?」

 

暫く歩き、ある路地裏にて田所は気配の正体に有り付く。

人型だという事に関して間違いは無かったが、直接この緑髪の少女を見て彼は気づく。

 

耳がね…

そう、耳。此処が異常だった。

黒い無機質。尖った角。形容すればこうなる。

 

その耳は何だ?

何故瘴気まみれの地球にいる?

奇跡的に生存者ならば親は?

仲間は?

この娘1人だけか?

何か眼光鋭いけど、スポーツとかやってたの?週どれくらいやってんの?

 

疑問は尽きず、一体全体どういう事なのか、見れば見る程田所の頭が混乱する。

 

「姉ちゃぁん…何やってんだこんな所で?」

 

田所は言語でもって接触を図る。

回答は、同じく言語で帰って来た。

 

「オマエ…トモダチを傷つけたニンゲン…!」

 

「…………………は?(疑問)」

 

「赦さない…赦さない…!」

 

「あっ、待ってくださいよ。

どういう…」

 

田所は手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■(■■■)に!近づくな!」

 

 

 

 

 

 

 




SDNちゃん誕生日記念です。うん、遅すぎィ!
偶にはダークなSDNちゃんもええやん?でも僕は美少女には笑顔派です(半ギレ)

改変やってしまいましたなぁ…どう収拾つけましょ

(以下おまけ)
兄貴達が疑問に思うだろう事を解決します。

Q.雑魚戦に2話いる?
A.星守達がどう闘うかを演出したかっただけなんです…お兄さん許して!
やってると結構ダレるから、ウォルフ戦は…カットしよっ!山場はまだありますからねぇ!

Q.田所は何故イロウスを感知出来る?
A.あらすじ読んで♡(脅迫)

Q.キャラクターの行動がイメージと違う
A.実際怪外と戦闘する際、彼女達がどんな心情なのかは人により解釈が割れますよね…
取り敢えずSZKはKNN姉貴に詫びろ(全ギレ)

Q.展開遅い&田所戦え
A.今回以降、疾走予定です(投稿ペースが上がるとは言ってない)

終わりっ!閉廷!以上!皆解散!またきてね!


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第4話 お ま た せ

ーーービデオに映し出されたココロの陰部。

これは夢なのか、現実なのか…。

暑い真夏の夜過熱した欲望は、

遂に危険な領域に突入するーーー。



こんな回です。


「これで決めるよ!

2人とも、合わせて!」

 

「おっけー!やってやろう!」

 

「いつでも行けるわ!」

 

全身を傷つけられ、あちこちから瘴気を噴き出す目の前の大型イロウスーーーウォルフを前に、3人は大技でもってトドメを刺すべく等間隔に敵を囲む。

ウォルフは散らばる3人に目をやり、誰が何を仕掛けてくるかを警戒するのが関の山。

 

『せーーーー……のっ!』

 

掛け声と同時に3色のオーラを纏い、3人は跳躍する。

 

みきは紅蓮の炎を。

昴は鮮黄の雷を。

遥香は青碧の水を。

 

星衣に秘められた息吹を乗せ、少女達は宙で1つ回転すると一気に加速して下方へ蹴り出す。奇しくも構えは信頼と安定のライダーキ⚪︎クと同じものだ。

流星の如く、ただ一点へ収束する様に彼女達は降り注ぐーーー。

 

「《炎舞鳳凰翔》!」

「《雷舞聖獣翔》!」

「《蒼舞海皇翔》!」

 

3色は渦と成って敵に殺到する。

 

『ガアアアァァァァ…』

 

焼き尽くす炎と叩きつける雷と押し流す水。

それらを一身に受けたウォルフは元のダメージもあって満身創痍。耐える事は叶わず、虹色の光を伴い爆発する。

 

此処に、瘴気の源は駆逐された。

 

「や、やったぁ!勝ったよ私達!」

 

「うん!

先生のお陰だね、随分やり易かったよ!」

 

「これで瘴気も晴れ…

…て、ない!?」

 

空を見上げると、その色は紫。

つまり、まだこの一帯の瘴気は残り続けているという事。

当然3人はそれがどういう事かも分かっている訳で…

 

「って事は、まだ大型がいるって事か…」

 

そう、大型を斃して尚瘴気が残っている場合、それは単純に瘴気の発生源である別の大型が周辺に存在している事を示している。

 

「まあさっきから小型はロウガとゲルしか見てないし、いたとしてもその大型だろうからなんとかなるでしょ。 ね、遥香。

…遥香?」

 

昴が遥香に声をかけるも、遥香本人は忙しなく目を方々にやり、まるで聞こえていない風だ。

 

「あの…先生は何処へ?」

 

「え?

ってホントにいないし!」

 

遥香が周囲を見ていた理由、それは先程まで自身等の背後にいた田所がいなくなっていたからだった。

 

3人の喜色満面の顔が蒼くなっていく。

 

「嘘でしょ…

まさか私達の戦闘中に背後から…!?」

 

「いいえ、それだったら血痕や襲撃の跡がある筈。

何より…何故かは分からないけど、イロウスの気配を感じ取れる先生なら、その時点で助けを呼ぶに違いないわ」

 

「なら…何処かへ移動したって事?自分1人で!?」

 

「ッ、そうとしか思えないわ…」

 

「あーもうっ、何をやってるんだあの人は!

訳わからないよ!」

 

「兎に角探しに行かないと…!

大型がまだいる以上、此処は危険だよ!」

 

「そうね、急ぎまーーー

 

 

 

 

瞬間。

 

 

 

 

 

 

カッーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

 

 

 

 

 

ーーーな、何!?」

 

「2人とも、あれ!」

 

みきが指を差した先には信じ難い光景が広がっていた。

 

現在いる渋谷区域とは比べ物にならない程濃く、密な瘴気が柱と成って流れ出し、空を染めていく。

 

心なしかーーーいや、確実に陽光も遮っているのだろう。辺りが闇く暗く成って段違いの不気味さを生む。

 

見ているだけで毒される様な、そんな光景(地獄絵図)だった。

 

「そ、んな…何、あれ…」

 

「ーーーハッ!交信は!?

八雲先生!此方成海、緊急事態発生です。応答願います!」

 

【どうしましたか!?】

 

遥香が咄嗟に連絡を取る。

幸い、まだ(・・)回線は生きていた。

 

「先程、いや違う、現在渋谷にて尋常ならざる量の瘴気発生を確認しました!

原因は分かりますか!?」

 

【何……って!?

直…に解…に取………りま…!】

 

だがそれも時間の問題だった。

コロニーのオペレーターとの交信並びに転送は、瘴気が薄くないと不可能。

 

故にこの様な、と言えば語弊があるだろうか。

こんな前代未聞のケース(・・・・・・・・)では。

 

【……う…!

…な…は……………く……り…つ!………!】

 

 

【……………………………………………】

 

 

彼女達は最早、放逐されたのと何ら変わりなかった。

 

「八雲先生、八雲先生!

ダメ、交信も途絶えた…!」

 

「嘘…奪還授業は、瘴気が薄いタイミングでやるんじゃなかったの!?」

 

「落ち着いて…辛うじて“離脱”とは聞き取れたわ。

直ぐにでも脱出しろって…」

 

「でもそしたら先生は…!」

 

「分かってるわ、分かってる…

でも!」

 

「ちょっと、本格的にマズイよ…

神樹のお守りがある筈なのに気持ち悪い…ううっ」

 

「そんな、瘴気の毒が…

どうすれば…どうすればいいの……!?」

 

苦虫を噛み潰した様な表情となり、言葉尻が次第に強くなる3人。

 

そんな彼女達の耳にーーー

 

 

 

 

「ンアッーーーーーーーーーー!!?」

 

 

 

ーーー瘴気よりもクッソ汚いヴォイスが流れ着く。

 

「今度は何…って、あれは…人?」

 

「と言うか声的に考えてあれは…!」

 

声の主は、最後に1つ大きく噴き上がった瘴気により飛ばされて中空を舞っていたが、空中で回転し体勢を整えると、

 

「フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フゥン、フンッ!フンッ!フンッ!ンッ!ンッ!

オォン!アォン!」

 

これまたクッソ汚い喘ぎ(掛け)声をあげながら、お前は何処の忍者かシスコンかと言わんばかりにビルの壁を蹴る。

1つ蹴っては次の壁、また次の壁、と空を駆ける様に動き、一方向に進む。

 

そしてその変態は最後に華麗な宙返りを魅せると、少女達の前に腹立たしいほど綺麗に降り立った。

 

「 お ま た せ 」

 

田所浩仁。

少女達が行方を見失った男が今、此処に帰還した。

 

「先生!無事だったんですね!

いや思いっきり吹っ飛ばされてましたけど!」

 

「全くもう…何処行ってたのさ!心配したんだよ…!」

 

「無事で良かった…本当に…

しかし、あれは一体どういう事ですか?」

 

みき達は駆け寄り、田所に詰め寄る。

 

「ちょ、ちょちょちょちょっと待って下さい!(関東クレーマー)

何から説明したもんかな…

あー…兎に角それは後だ。要点だけ伝える。聞いとけよ聞いとけよ?」

 

田所は逸る3人を抑え、少し目を泳がせると、重々しく口を開く。

 

 

「多量の大型イロウスを中心とした大規模な群れが生成された。 然も真っ直ぐ向かって来るオマケ付きだ。

今の姉貴達の力じゃあまず撃退不可能。下手すれば文字通り死ぬ。

よって現時刻を持ってこの区域を破棄。作戦行動を奪還から離脱に切り替える。

分かったか?返事ィ!」

 

 

伝えられたのは、作戦中断の言葉。

 

「そんな…」

 

「っ、それしか…無いんですか?」

 

「ああ」

 

「本当の、本当に…?」

 

「決定に変更は、ないです。

逃げられるうちにとっとと行きますよ〜行く行く」

 

田所はあくまで冷静に。

少女達は沈痛な面持ちでそれを受ける。

 

「でもこれは…これは先生が《先生》になる為のテストなんですよ!?

なのに諦めたら私達の所為で、先生は…」

 

みきが涙目になりながら食いさがる。

昴や遥香も言葉にはしないが、拳を強く握ったり視線が下がったりするあたり、3人の意思は同じものなのだろう。

 

 

それは最早、意地の領域だ。

出逢ってまだ数刻もしない他人に対し、しかもその他人を想う故の意地が張れる事は、人間性として揺るがぬ根底を持っている証拠だろう。

 

 

だがその意地を田所は、真正面から突き返す。

 

 

 

「あのさぁ…

俺が担任になる以前にさぁ、お前ら(・・・)がちゃんと全員生きて帰るって言う重大な前提があるだルルォ!?

誰かの為の自己犠牲?此処でイロウス(彼奴ら)と刺し違えても俺を受からせる?はーつっかえ、そんなんじゃ甘いよ?

今ムリでもまだ次はあるんだよ!だから今は、生きてぇなぁ…って、それだけでいいだろお前今日はまだ始業式(はじまり)の日だぞ!」

 

 

 

姉貴と言う呼び方すら無くし、ウォルフ戦のアドバイス以上に真剣な、熱い口調で田所が口にしたのは間違い無く《人間の鑑(生徒を想う先生)》としての言葉だった。

 

「…じゃけんとっとと撤退しましょうね…

いいか?こっから先は撤退戦だ。星衣の出力を上げに上げて、生き残る事だけ考えろ。足を止めるな。辛くなっても前見て走れ。

そんでもって…」

 

田所は3人の体を、1人ずつ180度回転させて後方を向かせ、それぞれの頭に手を当ててサッと撫でる。

 

大きく、ゴツゴツしていて。

でも何と言うか…あったかい(ボキャ貧)

そんな手だった。

 

 

 

 

「皆、死ぬなよ…?

…返事ィ!」

 

 

 

『はい!!』

 

 

この場において田所がこんなにも頼もしく見えた理由を、誰も考えないまま。

ただ生きる為。たった1つを考えて、たったそれだけを願って。

 

星守達はオーラを纏って、田所はその足で走り出したーーー。

 

◇◇◇◇◇◇◇(※はえーよ田所)

 

走り出してどれぐらいか。

 

前からも後ろからも、右からも左からも来る小型イロウスを蹴散らしながら一行は進んでいた。

攻撃を躱し、掠られ、喰らいながらもただ只管(ひたすら)に走り続けた。

髪はボサボサ、全身土だらけ擦り傷だらけの酷い有様。そうまでしても、生きる為の意志は途絶えない。

 

最中、大型とは遭遇しなかったのは正に幸いだった。

もしそんなものに会敵していたなら、確実に足止めを喰らいGAME(がめ) OVER(おべーる)であった。

 

それでも星守達は限界を超えており、輝いていたオーラは最早その輝きを失わんとする手前だ。

 

「はぁっ…はぁっ…

何で、どこまでっ、行っても…」

 

「薄くなったポイントが、無い、なんて…」

 

そこに待っていたのは、心を打ち砕く絶望だけだった。

 

瘴気は、何処までいっても濃いまま。

それは大量の大型(発生源)が、此方に追いつかんとすると言う事。

 

状況は既にジリ貧を超えて、詰みに入っていた。

 

「もうっ、だめ…げ、んか、い…」

 

まず崩れたのは進撃時と同じく後続を、即ち殿(しんがり)を買って出た遥香だった。

リヴァイアサンの装飾は光になって消え失せ、星衣が解除されて制服姿に戻る。

残っていた速さに身体を預けるようにして倒れ込んでしまった。

 

「遥香っ!!」

 

消え入るような声に気づいたのは昴。

 

一気に急ブレーキをかけ、彼女はノっていた速度を総て破棄し、倒れた親友の元へ向かう。

 

「遥香!しっかりして、遥香!」

 

「す…ばる…」

 

遥香の顔は既に土気色に染まっている。

それだけ振り絞ったのだ。総てを殿と言う大役で。

 

そんなぐったりとした遥香の腕を自身の肩にかけ、昴は前を見据える。

 

「ほら、掴まって…

行くよーーーーーグッ!?」

 

走り出そうとした瞬間、膝をつく。

彼女も…3人の中で最も運動神経に優れ、体力すら星守でもトップクラスの彼女もまた、尽きていた。

 

星衣ユニコーンの象徴、カチューシャに付いた一角などはとうに塵光になり、いつの間にか星衣が解除されていたのがそれを如実に表していた。

 

「は、はは…ははは…う、ぐすっ…

なんで、なんで…」

 

「すば、る…貴女…」

 

「動いてよ…動いてよ…

頼むから動いてよ。なんで…

動けよ!私!どうしてだよ…!お願いだから…動いて…お願い…」

 

壊れた様に吐くのは慟哭。痛ましい程に響き渡り、みきと田所も2人の脱落者に気付く。

 

「昴ちゃん!遥香ちゃん!」

「ファッ!?」

 

みきは昴の時と同じく迷わず停止する。つんのめりながらも、持ち直す。

そのまま覚束ない足取りで2人へ歩み寄っていった。

 

2人の眼からは既に光は消え、

 

「2人とも…!」

 

「ごめん、みき…

私、ダメみたい…」

 

「そんな…そんな事!」

 

「お願い、みき…

貴女は生き、て…先生と此処から逃げて…」

 

既に諦観のものへと変わっていた。

見た事の無い2人の表情を見たみきは、大粒の涙を止められなかった。

ーーー不死鳥の翼も、例外無く消えていた。

 

「嫌だ!嫌だよ!

先生だって言ってたじゃない!皆で帰るんだって!皆生きるんだって!

なのに、どうして…」

 

「…私さ、楽しかったし、後悔もしてないよ…今日の事…

ちょっと張り切ったりして、自信持って闘えて…だから、もう…」

 

「バカ!バカバカバカ!

そんな事言わないでよ!どうして諦めちゃうの!?

昴ちゃんの見せてくれた漫画にだって…諦めたら終わりだって書いてあったじゃない!」

 

「みき…お願い…だから…」

 

「やだよ…私は、2人とも死なせたくないよ…!

…そうだ。死なせない…だから…だから!」

 

涙を払い、立ち上がる。

 

「はあああああっ!!」

 

みきの祈り(想い)が、不死鳥を呼び覚ます。

星守の力の原点は《祈り》だ。誰かを護りたい、救いたい…人の良心に依った鎮守の祈念こそが、星守の活力なのだ。

故、今此処に星衣フェニックスが再起動する。

 

「みき、何を…」

 

「私は…私はやっぱり、2人を見殺しになんか出来ないよ。

だから私が囮になる。逃げて、先生と一緒に…」

 

『なぁっ…!』

 

本当はみきも分かっている筈だ。

昴も遥香も、もう動けない事などは。

囮になった所で、無駄死にだという事は。

 

それでも、それが自己満足でも、彼女にはそれしか出来なかった。

 

親友を犠牲に生きるなら、自分を犠牲に親友を生かす。

そう言う思考なのだ、彼女の頭は。

 

「ごめんね、2人とも…

ぐすっ…星月みき!突撃しまーーー

 

 

 

 

 

 

「ヌ゛ッ!」

 

 

 

 

 

 

ーーーひゃうっ!?」

 

 

みきがフェニックスの翼を展開し飛ぼうとしたが、田所の脳天チョップによりそれは叶わず両膝をつく様に落ち、星衣も解除される。

 

「いてて…せ、先生?何を…」

 

みきが女の子座りで頭を押さえ視線で訴えるが、田所は素知らぬ風だ。

 

然し何処か納得したかの様な爽やかな表情を浮かべると、みきの頭をガシガシと撫でる。

 

「分かった分かった。分かったよもう…」

 

「え?」

 

「お前らが…みきも昴も遥香もみ〜んな仲が良い、って事だよ。

んで全員が全員に死んで欲しく無いって、そう言う当たり前の事を見失って無い事もな」

 

みきを見る田所の表情は柔らかく、初めて会った際の野獣の眼光を見せた人物と同一とは思えない程だ。

 

「加えて全員揃いも揃って、闘えない俺を見捨てる事無く、寧ろ全力で助けようとした。

力持つ人間の鑑がこの野郎…」

 

「先生…」

 

「だから…俺も決めた」

 

撫でるのを止めてポンポンと軽く叩き、田所が立ち上がる。

 

「俺は…闘う」

 

それは田所の戦闘宣言だった。

 

「なっ、ちょ、先生!何を言っているんですか!?

相手はイロウス、普通の人間が勝てる相手じゃないんですよ!それもあんな沢山…ってわぷっ!?」

 

「ちょっと羽織ってろお前」

 

みきは必死に抗議する。

生身の人間があの恐ろしい存在に勝てる訳無いと、その常識を説く。

それへの返答は田所が投げて寄越したスーツだった。

 

田所はワイシャツとズボン姿で仁王立ち。

その様だけ見れば、正に王者の風格と言うべき存在感を放っている偉丈夫。

 

そしてその男はただ前を、次々と迫り来るイロウスだけを見ていた。

 

「先生!」

 

「あっ、そうだ(唐突)

みき、これ夜中腹減んないスか?

この辺にぃ、美味いラーメン屋の屋台。やってるみたいなんスよ」

 

背を向けたまま田所は軽々しく語りかける。

そして顔だけ振り向きーーー。

 

 

 

「じゃけん夜、親睦会兼ねて行きましょうね」

 

 

 

今日1番の笑顔で笑いかけた。

憂いや怒り、裏に潜むものなど無い、真実の笑顔だった。

 

「せんっ…」

 

「ちょっと《覇》当たんよ〜ヌッ!」

 

刹那、腹に響く音を伴って大気が震える。

 

そして田所は妙な構えを取る。

それは拳法の様に見えなくは無い。なくなくない。

 

「実戦で使うのはいつぶりか…これもうわかんねぇな…

イキますよ〜イくイく」

 

 

 

「ーーー御霊に映されし精神(ココロ)の暗部。」

 

 

再び大気が震え、風が唸りをあげる。

 

 

「ーーー其は夢なるか、現なるか。」

 

 

イロウスが迫る。

 

 

「ーーー熱き真夏の夜過熱した渇望は、」

 

 

昴が見つめる。

 

 

「ーーー遂に至高の領域へと突入する。」

 

 

遥香が見つめる。

 

 

「己が真に迫りて、空手に掴め。」

 

 

誰かが、見ている。

 

 

「我が()は野獣。野を駆り、躍動する1匹の獣。」

 

 

イロウスの内、一体の大型ロウガ種ーーーウォルフが接敵する。

 

 

「ーーー迫真空手ーーー」

 

 

みきが、目を離せないでいる。

 

 

ウォルフの無慈悲な爪が振り下ろされる。

 

 

「ーーー《邪拳・夜》」

 

 

振り下ろされたウォルフの脚と、黒く染まった田所の拳がぶつかりーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーそして、弾けた。

 



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第5話 一 転 攻 勢 〜奮い起ってきちゃったよ…〜

バトル淫夢(淫夢vs淫夢とは言ってない)
お待ちかね、田所無双ショーの開幕や

ネタバレします
(前回みたいな鬱々しい展開は今後)ないです。
嘘です。ちょっとは考えてます。

ですが第2部とか2章以降は受験終わってからですね…(そん時再開するとも続きがあるとも言ってない)
1章は絶対に終わらせるからお兄さん許して!



 

 

弾けた。

弾けた。

 

脚と拳がぶつかり合った。

 

そして弾けた。

 

何が?

 

人間(田所)の拳か?

 

否。

 

弾けたのは、怪外(ウォルフ)だった。

 

…ウォルフの脚ではない。

 

弾け、消滅したのは何でもない。

 

 

 

ーーーウォルフそのものだった。

 

 

殴り抜けた勢いは1体を食い荒らすに飽き足らず、その背後のイロウス迄も衝撃波によって強襲する。

 

捕らえられたイロウスは例外無く“黒い輝線”が走り、菌が広がる様に無惨に蝕まれていく。

もがけど足掻けど効果は無く、顔や四肢、末端に至るまで“黒”が侵食していく。

 

そして全身に“黒”が被さった途端にその個体は活動を停止し、グズグズに溶けていった。

10体規模で生命体が外郭ごと堕ちていく様は何とまあ、えげつないことこの上ない。

 

…結果として、1体どころか大型5体、小型数十体。

先駆けとして迫っていたイロウスの第一陣、その総てを屠った。

 

田所の拳、そのたった一撃が。

 

「えぇ…都会のイロウスはこんな攻撃も耐えられないのか…(困惑)

然も何だこの演出は…たまげたなぁ…これそんな奥義じゃ断じて、ないです」

 

当の本人は何故か不思議がっていて、

 

『………………………はい?』

 

星守一同はポカンとしているが。

 

「え、な、ちょ、な、何今の…?」

 

「先生がイロウスを殴って?それが黒くなって?周りを巻き込んで消滅した?」

 

「まるで意味が分からないよ…」

 

「おっ起きてんじゃ〜ん!大丈夫か?大丈夫か?」

 

少女達が困惑する中、田所は元のヘラヘラとした表情で手を振る。

 

だがその身体からは、大凡常人とは思えない“黒い陽炎”を発していた。

それはまるで水に墨汁を垂らした様だ(直喩)

揺らめきを纏う非常識の存在が先と変わらぬ声音で話すのは、端的に言って奇妙である。

殆ど尽きかけ死を覚悟した少女達も、眼前の現象と存在に対する理解が及ばないと言った呆気に取られた顔だ。

 

「あのさぁ…そんな怖がるなよ…怖がるな…」

 

「いや、それ以前に…何なんですかそれは…?」

 

「はくしんからて…そう聞こえたんだけど、初耳だよそんなの!」

 

「と言うよりも…やっぱり(・・・・)先生は闘えたんですね」

 

「んにゃっぴ…やっぱバレちゃうんスねぇ…」

 

田所は大袈裟に肩を落とし、やれやれといった風。

 

「何で最初から御自身で闘おうとしなかったんですか?

この奪還授業も、そんな力があるならもっと…」

 

「今朝ですね、YKM姉貴に言われたからなんだよなぁ…」

 

「今朝?何て言われたんですか?」

 

「そうですねぇ…」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆(回想はホモの特権)

 

「今回の奪還授業、そのテストで見るのはあくまで指揮能力です。ですのでーーー貴方は一切の戦闘を控えて下さい」

 

「…は?何それ?」

 

「貴方がどの様な活躍をしてきて、どんな力を持っているかは此方も十分に分かっています。

《戦士》としては史上最強級。其処は誰もが認めていますし、私も素直にそう思います」

 

「いやそんなこと…何だか照れますねぇ!」

 

「…ですが我々は貴方を《先生》として、あくまでも《戦士》としてでは無いと断った上で招集した。この意味は分かりますね?」

 

「…あっ、ふーん…(察し)」

 

「御承知を。これは此方側(・・・)彼方側(・・・)、双方が納得する為の条件を、まず最低限満たしているかどうかを測る為の必要措置ーーーという事です。」

◆◆◆◆◆◆◆(回想は終わりっ!)

 

「ーーー猿ゥ!でも分かる様に掻い摘んで言えば、俺の指揮能力を純粋に測る為みたいですね…

最初から俺も闘えてたら、そもそも撤退なんて指示しないゾ

…まぁ姉貴達を生かす為の選択肢としては変わらないと思うんですけど」

 

「そうだったんだ…」

 

「そうだよ(肯定)

じゃあ俺、あの人ら呼んで殲滅してくるから…」

 

「え?あの人って…?」

 

「ああ!(YHN)」

 

何処かの留学生の様に気持ちよく頷くと、あるビルに向き直り両手を当てて1つ息を吸う。

 

「すいませへえぇぇ〜〜〜〜〜〜〜ん!!た〜〜どころですけど〜〜〜!

ちょ〜〜っと姉貴達見ててもらえませんかね〜〜〜〜?」

 

ねっとりとした大声。

それでもって呼び掛ける。

 

帰ってきたのは、静寂だけだった。

 

「…先生、誰と話してるんだろう…?」

 

「さぁ…?

そもそも私達以外に人なんて…」

 

星守達も、訳が分からないと言った顔つきだ。

ついて行けてない、彼女達が。

 

「あっ、そうだ(唐突)

俺もう行っちまうから、姉貴達の面倒見切れないんだよな〜

その間イロウスに襲われないか心配だよな〜俺もな〜(ゲス顏)」

 

人間の屑がこの野郎…(憤怒)

そう言われても当然な言動と表情で語りかける様は、最早この場の全員を煽ってる様にしか見えない。

 

そして、言い終わり数瞬後。

 

高く聳え立つビルの天辺より。

 

3つの影が、飛翔した。

 

「全く…この様子だと、最後まで出る幕は無いだろうと思ったのだが」

 

「あらあら、何だかんだで1番心配してたく・せ・に♡」

 

「はいはい、百合はあっちでやってよねー」

 

青髪の麗人、桃髪のお姉さん、長いツインテールの少女。

 

降り立ったのはそれぞれが独特の風格を放つ女子達だった。

そして彼女達は3人揃って、特異な格好をしている。

 

1人はリヴァイアサンを。

1人はフェニックスを。

1人はユニコーンを。

 

超常を身に受け、常人とは懸け離れた力の象徴たる、星衣。

 

そう、彼女達は紛れもなく星守であった。

 

高校3年、女子中高生にしか資格のない星守の限界年数である現星守頭領格。

 

楠明日葉。芹沢蓮華。粒咲あんこ。

 

それが闖入者達の正体だった。

 

「せ、先輩方!?どうして此処に!?」

 

「何時から来ていたんですか!?」

 

「落ち着け皆。そうだな、まず…

始めまして。ですがお久し振りと申しましょうか、田所さん。」

 

『え?』

 

「え、誰?(語録無視)」

 

「《楠》です。楠明日葉と申します。」

 

「えっ…

あっ、君かぁ!ご無沙汰じゃないですか!」

 

「あら〜?

明日葉はこの人とお知り合い?」

 

「ああ。と言っても個人ではなく家の方で、だがな…」

 

「ワタシも見た事だけはあるわね。

まあ動画でだけどさ。」

 

「へぇっ!?すっげぇ見られてる、晒されてんだね…

ちょっと、やめろよ〜(照れ顏先輩)」

 

戦闘中であった事を忘れさせる様な気の抜けた会話だった。

田所の口元は綻び、照れ臭そうに目線を明後日の方向へ飛ばして腰をくねらせる。

男の照れ顏なんて誰が得をするのか。

男の腰振りなんて誰が得をするのか。

 

…本当に女子高生の前で腰を振らないで頂きたい。

 

そんな田所も言い終わると共に表情を元のドヤ顔染みたそれへと変える。

 

「つーわけでぇ…

ちょっと俺バラしてきちゃいますよ?」

 

首だけを回して背後を睨むと、ポツリポツリとイロウスが現れるのを見る。

その上駆け回る様な音と這って進む音が幾重にも重なり、やってくるのは間違いなくイロウスの大群である事を示していた。

 

それは既に奪還授業の域を優に越えるものである。

 

「はぁ…何でこんな多いのよ…

聞いてないわよこんなのは…」

 

「だがやるしかないだろうな…

先生、私達はーーー」

 

「あっ、いいっすよ(遠慮)

MK姉貴達が覚悟見せてくれたからな、それに応えるのは当たり前だよなぁ?」

 

「随分と勇ましいのね〜

でもあれだけの数を1人でどうにかするつもりかしら?」

 

高3組は一歩前に進み、自分達も闘うと言う意思表示をとる。

そんな提案にも田所は強気の考えを崩さない。

 

「いけますいけます。

ASH姉貴達は、万が一奴等が後ろへ抜けた時の備えになって欲しいゾ。

…ところで怪我人を回復できる奴はいるか?」

 

「はぁ〜い、私がイケるわよ」

 

蓮華はそう言うと、星衣フェニックス特有の炎の様な赤い光を手から発し、杖を取り出す。

 

杖は光弾を、つまり星守の力をそのまま射ち出すが故に含有する量も多く、力の貯蔵庫の様な役割を果たす。

それを活かす事で枯渇した力を充填、即ち他の星守の治癒が可能と言う話だ。

 

そしてそれは、(回復)を使える蓮華がいた事は田所にとって僥倖そのもの。

 

「おっ(パーティに)組んでんじゃ〜ん!やりますねぇ!

SBR姉貴とHRK姉貴の消耗が特に激しい。MK姉貴には悪いがこの2人を優先的に頼む。」

 

「りょ〜かいで〜す♡」

 

「で、後の2人はその間防衛に専念。

その間見たけりゃ魅せてやるからさ、よ〜く見とけよ見とけよ〜?」

 

「了解よ」

 

「了解致しました。お気をつけて」

 

「ありがとナス!じゃあとっとと…」

 

自身が動く為に、やって来た者達に指示をだす。

準備体操でもするかの様に屈伸し、肩をほぐすと田所は構える。

 

そして、

 

 

 

 

「イクゾオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオ!!ヴォエ!」

 

 

 

 

野獣は吼え、放たれた矢の如く跳び出した。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

まず接敵したのは小型ロウガ種と小型ゲル種。それぞれ数体が地を跳ね地を進み迫り来る。

忘れるところではあるが、イロウスとは大概どの種も小型ですら体長は一般人と同規模だ。

 

そんな常人には大き過ぎる(・・・・・・・・・)存在が迫って尚、野獣は速度を抑えない。

 

「偶にはありでしょ…多少は、ね!」

 

纏う陽炎を両手に集約し、形成したのは2丁の拳銃(コスモガン)

 

「《BB展開・2丁拳銃トリガーハッピーBB》行きましょうね〜」

 

それだけ言うと、拳銃は火を噴いた。

さながら機関銃の様に乱れ撃つ銃撃は小型の至る所に着弾し、穴を穿つ。

1発1発は確かに弱く、イロウスの表皮を抉るに過ぎない。

 

だがこの(BB)は超速のコスモガン。

リロードは不要(気分)。ジャミングも起こらない。1秒あたりの発射数は数えるのをやめた。現代兵器とは違う、野獣の力。

 

故に1発の軽さなど、問題にすらならない。

『ダメージが1なら死ぬ迄殴れ』を体現する技として、野獣は使用する。

 

無数の銃撃に晒された個体はその核ごと蜂の巣にされ、瘴気となって搔き消える。

 

「散発に勝てる訳ないだろ!」

 

漂い、視界を塞ぐ様なそれを振り払うと更に加速。

眼前の大型へと攻勢に出る。

 

だが。

 

『グルルルルアァァァァァァァァ!!』

『ゴアアアアァァァァァァァアン!!』

 

「ファッ!?」

 

いつの間にかビルの隙間に潜んでいた2体の大型ロウガ種(ウォルフ)が、待ってましたとばかりに奇襲をかける。

鋭い爪のついた剛腕と、鎌状の頭を使った突進が田所を襲う。

 

「《BB展開・虚空ノ双牙BB》!」

 

それでも田所は冷静に対処する。

拳銃を還すと次に手にしたのは歪な双剣だった。

 

摩訶不思議な形状のそれでもって攻撃をパリィする。

攻撃力の高いウォルフの一撃を、片手の双剣一振りずつで正確に防ぎきったのは、野獣が尋常でない技量と怪力を発揮したという事だろう。

 

「ちょっと刃当たんよ〜」

 

そのまま身体を一捻りして双剣を投擲する。

笑い声の様な風切り音をあげながら空を走り、複雑軌道を描いた(きっさき)はピッタリと核に収まった。

 

ーーーそして自身が攻撃された事にウォルフが気づいた時には、野獣は消えていた。

 

「奥までホラァ!ホラァ!」

 

次に野獣が現れたのは突き刺さった双剣の上。

形成した剣を踏み潰す様にして蹴りつけ跳躍、また踏みつける事で核に刺さったそれを奥まで捩込む。

 

核さえ損壊すれば恐るに足りず。

 

「ホラホラホラホラァ!」

 

徒手となった野獣は拳を握り殴りつける。

限界を越えた2体は瘴気に還っていった。

 

「Foo〜↑キモチイイ〜

あ〜気持ちいいわ〜」

 

したり顔。

御満悦な表情を浮かべてこそいるが、此処は最前線。

隙を見せた野獣に対し、元々野獣が狙っていた大型のゲル種や後続として現れた大小問わず大量のイロウスが殺到する。

 

「ちょ、多すぎィ!しょうがねぇなぁ…(悟空)」

 

野獣は呆れた様な表情で左腕を掲げると、陽炎が手首に集る。

形成したのは黄色のクリスタルが嵌められた腕輪だった。

 

「ちょっと疲れるが殲滅ならこれしかねぇか!

《BB展開・デンキZBB》!」

 

両腕を交差させ、そこから踊りを交えた奇妙なポージングをとると、野獣の周囲にクリスタルと同じ黄色の光が満ちる。

 

「 ひ ろ が る プ ラ ズ マ

で、出ますよ…イクッ、ンアッー!」

 

デンキZの名の通り、満ちていた光は雷鳴と成って疾走する。駆け抜けた電光は益々広がり、絶える事なく一帯のイロウスを焼き尽くしていく。

 

残ったのは、電撃傷にまみれた死にかけのイロウスがほんのちょっぴり程度、たったそれだけだった。

 

「電圧はーーー14万3千ボルトです」

 

14万!?

と当人は主張するも、測る術が無いのでそれは明らかな嘘臭い…嘘臭くない?(不安感)

 

それは兎も角、此処まで技のオンパレード。

 

《邪拳・夜》の分を含めて大分斃したのか、酷く溜まっていた瘴気も徐々に薄れ、初めに渋谷へと突入した際の程にまでなっていた。

 

「ふぁ〜疲れたどおぉぉぉん…

だけどまだまだね、ヤっていきますので…オナシャス!」

 

続々とイロウスが迫るも、既に底は見えた。

1つ大きな欠伸をしてから獣の様に身体を震わせ、野獣は再び突撃していったーーー。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「何、あれ…?」

 

「すっげぇ…」

 

一方、少女達。

蓮華による回復を受けながら、野獣のーーー田所の戦いを見ていた。

 

「うっわ…生で見たのは初めてだけど、これは凄いわね…」

 

「同感だな。やはりあの話は本当だったか」

 

見ていたのは傷ついた3人だけでなく、明日葉やあんこも同様だった。

田所は防衛に徹しろと言ったものの、残らず殲滅している所為でイロウスが来る事は無かった為である。

 

そして当然、彼女達6人も瘴気が薄くなっていくのを感じていた。

 

「はい、これでお終いよ。

大丈夫?痛くは無いかしら?」

 

このタイミングで、3人の治癒が完全に終了する。

 

「有難うございます、蓮華先輩」

 

「どういたしまして♡」

 

「…あの、明日葉先輩」

 

治癒が完了した3人は立ち上がる。

そしてみきは、真剣な眼差しで戦況を見る明日葉に声をかける。

 

「?どうした?」

 

「先生は…田所浩仁さんは一体何者なんですか?」

 

口にしたのは至極当然の疑問。

 

ただの人間にしてはイロウスや星守を熟知し過ぎており、敵の感知もできる。

瘴気に吹き飛ばされたと思えば、壁を蹴って長距離移動。

危機的状況においての判断の早さ。

星衣の出力を上げた走行速度について来て尚平然としている身体機能。

 

極め付けに、単独でイロウスを撃滅出来る戦闘力。

 

この奪還授業で見せた様々な要素は、彼が異常な存在である事を明白にしている。

 

「教えてください。明日葉先輩の知っている事を!お願いします!」

 

「私からもお願いします!」

 

「お願いします、明日葉先輩!」

 

遥香や昴もそれに続く。

 

「…話してあげたら?多分この娘達、絶対に退かないわよ?」

 

「明日葉の家の事もあるんでしょーけど、言える範囲でなら言ってやってもいいんじゃない?」

蓮華とあんこも明日葉に話すよう促す。

 

「ーーーそうだな。この場の者全員は知る権利がある。

私が彼について知っている事、僅かだが語らせてもらおうか」

 

嘆願と促しによって明日葉は語る事を決める。

自身の知り得る事を、星守達に。

 

「あ、有難うございます!」

 

「礼は良いさ。

そうだな、あの人を一口に言うならば…《英雄》だな」

 

「《英雄》、ですか…?」

 

「ああ。彼は、そうーーー。」

 

 

 

 

その男は妙技を操った。

 

 

その男は仲間と戦った。

 

 

その男は決して諦めなかった。

 

 

その男は人間の鑑であり、人間の屑と蔑まれてもいた。

 

 

そして、その男はーーー。

 

 

 

 

「我々星守に連なる者…

楠、千導院、水鏡、神峰。此れ等と《星の箱舟》が自ら追いやってしまった《英雄》の1人だ」

 



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第6話 馬鹿野郎お前俺達は勝つぞ

物語(1章)は終末へと加速するーーー。
嘘だよ(お茶目先輩)
今回は前2回の…半分くらいですか

1章4話がやたら読まれてんの草
やっぱ(絶望&本気出す展開)好きなんすねぇ…(分析)

今更ながら550UA突破、お気に入り登録数10overとかもう許せるぞオイ!(歓喜)
読者兄貴の皆様ありがとナス!



「じゃあ屠りますね〜

今迄人間にした事†悔い改めて† 」

 

野獣が貫手によって小型を貫く。

 

瘴気を洩らし、死骸と化した個体を無造作に引き抜くと、次は後ろから3体が覆い被さらんと頭上に影を落とす。

 

だがそれはーーー。

 

「見える見えるーーー遅いぜ」

 

野獣が真っ向から迎撃する。

 

「武ッ」

 

怪外の獣には拳撃で。

 

「智ッ」

 

伸し掛らんゲル状の体躯には蹴撃で。

 

「破!」

 

迫り来た頭蓋には跳躍し、頭突きで突き破る。

 

一瞬の判断から繰り出す神速の3連撃。

怒涛の攻撃を見せ、着地した野獣をまたも襲わんとイロウスが参集する。

 

「あのさぁ…

余韻感じられないんですよね?」

 

野獣が呆れた様に諸手を振る。

それでも尚眼前の仇敵を見つめ、指と首を鳴らすと三度疾走ーーーーー

 

 

 

 

ドォン!ドォン!

 

 

 

ーーーーーする前に、群れの一部で爆発が起こる。

丁度敵陣ど真ん中。狙った様な現象はイロウス達を破砕し、吹き飛ばす。

 

自爆するイロウスか?

否、少なくとも野獣が現在相対する種はそんな特性など持ってはいない。

 

ならば可能性は一つしかないだろう。

 

「見ているだけで大丈夫だったんだが…態々いいのka〜?」

 

「元々こんな事はワタシらの仕事でもあるしね…

それに、みんなやる気みたいよ。特に…」

 

 

『先生!』

 

 

「後輩連中は、ね」

 

星守の参戦である。

 

やや身の丈に合わないと見える砲による射撃/砲撃は、側へと接近していたあんこによるものだった。

本人は何処なく気怠げにするも、攻撃自体は正確なもの。先鋒として端緒を開く一撃だった。

 

其処に突っ込んだのは前衛の4人。

まず快復した3人ーーー昴の槌、遥香の槍、みきの剣が光を纏って乱れ舞い、群れを小型から着実に崩していく。

 

「もう大丈夫!私達も闘えます!」

 

「先生だけに…貴方だけに闘わせたりなんかしません!」

 

「だから一緒に闘わせて下さい、先生!」

 

死にかけていた表情はもう其処になく、浮かべていたのは闘志の色。

《先生》である田所と共に闘う意志をみせ、燃える光が敵を蹂躙する。

 

その奥に大型。

1つ咆哮をあげると、3人を襲撃せんと突進の体勢に入りーーー

 

 

「その通りだ!」

 

 

剣閃をなぞる様にして首を飛ばされ、胴部も2つに分けられる。一刀による美しい攻撃だった。

(…言葉だけ聞くとえげつないが、イロウスは血では無く瘴気しか噴き出さないのでセーフ、セーフ)

 

「田所さん、いえ先生。

色々と我々に言いたい事がある事は承知の上です。それ(・・)を水に流せとも申しません。」

 

剣閃の主、日本刀を模した剣を携えた明日葉は語り掛ける。

 

「ですがこれからは、いえ今だけでも、その力を惜しむ事無く振るっていただきたい!

恥も外聞も無い、あまりに厚かましい話ではありますが…どうか!」

 

そんな明日葉の振り絞る声を聞いて、

 

「あっ、いいっすよ(快諾)」

 

拍子抜けする程あっさりと出てきたのは承諾の言葉。

 

「あらあら、聞いた話の割に随分あっさりね?もっと何かあると思ったわ」

 

他者の回復を終え、改めて自身の力を充填していた事でまだ攻勢には出ていなかった蓮華も不思議の意を示す。

当然、明日葉もキョトンとして狐につままれた表情をしている。

 

「えっ、な、そんなあっさり…」

 

「えぇ…」

 

何故田所、お前が引く。

 

「いやそんな事、何で気にする必要なんてあるんですか?(正論)

これは姉貴が謝ったり謝らなかったりする問題じゃないんだよなぁ…(しみじみ)」

 

「それは…

いえ、私は楠家の人間として…!」

 

「あのさぁ…

もう難しい話はいいから(呆れ顔先輩)

彼奴ら片付けてさ、それからでいいんじゃない?」

田所の視線の先には、3体の大型。

それらは今迄向かってくる事は無く、ただ此方を見据えていた。

 

ふと空を見れば、紫の景色は薄まり所々から青が覗く。

そう、瘴気が晴れかけているのだ。

此処まで彼や彼女等が討伐を続け、遂に終わりが見えた…つまりそういう事だろう。

 

「と、いうわけでぇ…

勝つ時は!(大声)」

 

6人の星守、その前に田所が出る。

 

「俺達で勝つぞお前(天下無双)」

 

やる気満々・意気揚々。そんな気合を見せて口元を綻ばせると拳を打ち鳴らし、唐突にシャドーボクシングをし始める。

その間、あく・あくして・あくしろよとばかりにチラチラ目線で合図を送っている姿が何とも滑稽で可笑しく見えた。

 

「…」

 

「いいんじゃない?それでも」

 

「そーゆう事でしょ?

昔に囚われて、今やるべき事を見失うなって話」

 

「蓮華、あんこ…」

 

「先輩、行きましょう!」

 

「皆…」

 

呆然と田所を見る明日葉の肩に蓮華とあんこの手が乗り、後輩からかけられたのは勇気ある言葉。

 

5人の気概に満ちた顔から伝わるのは、揃って進撃の意志。

 

「ーーーああ、そうだったな。

これで最後だ、終わらせるとしよう!」

 

その高まった士気を折るほど、彼女は無粋な人間ではない。

躊躇いを捨てた彼女を見て、田所も笑みをこぼす。

 

「おっ、大丈夫か大丈夫か?」

 

「ええ、お待たせしました。

後輩達は左、私達は右、先生は中央。大技でもって一気に殲滅が宜しいかと思われますが如何でしょう?」

 

「粋すぎィ!

最後の敵を派手に斃すのは主人公の特権だからね、アーそれいいよォ…」

 

明日葉の提案に田所はご満悦の顔を見せる。

それを見た星守達も不思議と口角が上がっている。心が昂ぶってないか?

 

「私達が左側ですね!

さっきの大型にやったみたいに3人で合わせよっか!」

 

「スキルだね!

了解。これで終わりならもう1発、派手に行こうか!」

 

「そうね。

せっかく回復して貰ったのだし、力は有り余ってるものね」

 

高1の3人は左につき、

 

「あ〜ら、明日葉ってばやる気満々ね♡

素敵だわ〜♡」

 

「ま、ちゃちゃっとやってさっさと帰りましょ…」

 

「ふっ、それもそうだな。

…2人とも、頼むぞ!」

 

高3の3人は右につく。

 

「熱くなってんぜ?

早くぶっぱなしてぇよな〜俺もな〜」

 

センターに立つのは再び陽炎を纏う“野獣”。

 

『グルルルルゥゥゥゥウ…』

 

対するは最後に残った大型3体。

それぞれが一様に前方の存在から敵意を感じ取り、臨戦体勢をとると喉を鳴らす。

 

それは威嚇行動なのだろう。

平時であれば脅威であり、恐るべき存在。

策を練り、気力を振り絞り、渾身を猛る武に乗せて漸く届く相手。

 

確かに怖い相手だ。

 

「彼奴らも威嚇してんなぁオイ。

でも…ダメみたいですね(無敵)」

 

然し今は、恐れる事はない。

 

一度は死にかけ、文字通り三途を越える状況にまで叩き落とされた。

絶望しか無かった時に差し伸べられたのは希望(田所)

 

希望(田所)が新たな(先輩達)を呼び、そして今、確実に勝利の方程式が揃っている。

 

詰み(チェック)を掛けられた状況から投了(チェックメイト)をかける側へ。

 

ならばどうして、眼前の巨軀に怯む事があろうか。

 

「皆準備はいいっすかぁ!」

 

『勿論!』

『何時でも行けます!』

 

準備は整った。

 

「すっげぇ気合入ってる。はっきり分かんだね…」

 

田所は目を閉じ、1つクソデカ深呼吸をする。

その音が聞こえる一瞬は、いっそ無間にすら感じられて。

 

「…じゃあぶち込んでやるか!」

 

見開いた目は覇気を生む。

その重圧ですら支配しきれない程の音圧をもってーーーーー。

 

 

 

 

 

「イクゾォォォォォォォォォォォォォォオオオ!!」

『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!』

『グルルアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!』

 

 

3つの光と3体の怪外が吼える。

 

 

 

…それからは言うまでも無いだろう。

 

 

 

「《邪拳・》ーーー」

「「《炎舞》ッ!」」

「「《雷舞》ッ!」」

「「《蒼舞》ッ!」」

 

 

 

7人の戦士が其々に輝くとーーーーー

 

 

 

「《夜》!!」

「「《鳳凰翔》!!」」

「「《聖獣翔》!!」」

「「《海皇翔》!!」」

 

 

 

 

ーーー何時しか瘴気は晴れ、其処には虹が架かっていた。

 




ANK「今やるべき事(勉強)を見失うなって話」
筆者「あっ、そっかぁ…(絶命)」
スマホの使い過ぎには気をつけよう!

前回の引きは何だだって?そのうち分かるんじゃない?(適当)
何かASHさんのメンタルが何かアレな感じだけど、ほんへ1章では頼れる救世主なんだよなぁ…
ASHさん推し先生許し亭ゆるして…って私じゃない!?(絶望)

後、敵前で長々と話してるのはほんへも同じだし多少はね?
あ、1章は後2〜3話程でーーー工事完了です。


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第7話 やってやったぜ。

今話書いて思いました。ちょっと今迄に描写とかで触れてない要素多すぎんよ(悔恨)
ゲーム中で再度見れないプロローグにそういう単語ぶち込むのはやめてくれよ…(絶望)

未経験者兄貴達の為に、後で1章迄の用語集作るので許して下さい、なんでもしますから!
…筆者いつも謝ってんな

今回は茶番仕立ての会話マシマシマッシマシでお送りします。



「や、やった…?」

 

「敵影無し、瘴気濃度は概ね正常…間違いないな。

ーーー退治完了です」

 

「や、や…」

 

 

『やったぁぁぁぁぁぁぁあ!』

 

 

 

晴れやかに青く輝く空、其処に少女達の歓喜が響き渡る。

 

「やった!勝ったね、私達!」

 

「うん!こうして生きていて…!

あんな沢山のイロウスに勝ったんだ!」

 

「一時はどうなるかと思ったけど、良かった…本当に良かった…!」

 

溢れる喜びを抑え切れず、互いに抱きしめ合うのはみき、昴、遥香。

それもその筈であり、彼女達が今迄1回の奪還授業で闘うイロウスの量の5〜6倍近いそれを、今回だけで相手取ったのだ。

イレギュラーと化した本奪還授業で、田所や先輩の存在があれど全員無事生還出来た事は実に天晴れ。

 

「うぅ、本当に良かったよ〜

ちゃんと…生きてるよぉ〜」

 

「ははっ…みきってば何泣いてるのさ!」

 

「す、昴ちゃんだって涙目じゃない!?」

 

「へ?別にそんなんじゃ…」

 

「ふふっ、誤魔化さなくたって良いんですよ?昴」

 

「ちょ、遥香!?揶揄うなって!」

 

『あははっ!』

 

心の底から安堵したのか、3人はもう顔中嬉し涙まみれだ。

 

「ふぅ、紆余曲折はあったが…終わってみれば無事成功か」

 

「そうね。後輩等はこのままで…

ワタシ達は最後の仕事、終えちゃいましょ」

 

「え〜…

れんげはも〜少しだけ、見ていたいな〜」

 

「…何て言うか…相変わらずね」

 

「んん〜っ、皆あんなに笑顔で…カワイイ♡」

 

それに対して…対してと言うにしては当然達成感を滲ませてはいるが、それでも高3の3人は元通りとなっていた。

…芹沢蓮華。彼女の女の子好きの性格もまたその表れである。

 

「蓮華。あんな事があった以上、また侵攻されても困るだろう?

早く結界を張ってしまおう」

 

結界。

それはイロウスを祓い大地を浄化するものだ。

奪還授業で瘴気を祓った後これを展開する事で、文字通りその区域を『奪還』した事になる。

つまりは結界を張って漸く奪還授業は終わりを告げ、星守としての役割を果たす事と相成るのだ。

 

その結界の元になるのが『神樹の結晶』。碧く輝くそれは、神樹がつける花が開花して生まれる謂わば『種』である。

武器や星衣、エネルギー体である事から果ては燃料に迄応用が可能な物質だ。

これが地面に埋まる、即ち大地に根付く事で結界が張られる。

 

それは今、万が一(・・・)に備えていた高3の手にもあった。

 

「ん、は〜い」

 

「先生、今から結界を張りますが…

…先生?」

 

明日葉が確認の意味を込めて田所に振り返るが、田所の表情は良くない。

 

鋭い眼光で彼方を険しく睨みつけ、彼自身が何者かを制している様にも見える。

 

「先生?」

 

「ん?ふぁい、どうした?」

 

「いえ、何か有ったのかと思いまして…

…まさか?」

 

「その心配は、ないです。

本当にイロウスがいないか確かめてただけだし、多少はね?」

 

「そうですか…なら重畳。

これから神樹の結界を張り、それをもって当授業を完遂としますが、宜しいですね?」

 

「そうですねぇ…

やった方がいいよね、うん…」

 

改めて問うも、渋々と言った様子だ。

 

「なんかハッキリしないわね?」

 

「いやそんな事無いっすよ?

やっと…授業が終わるんやなって…」

 

「今回は一際キツかったみたいですし、そう思うのも分かるわ〜

そ・れ・と・も、先生も感激してたりして?」

 

「ありますねぇ!

どうにか全員生還できたから…当然姉貴達含めてな」

話すうちに田所も元の軽々しさを取り戻し、ドヤ顔を見せ軽口を叩く。

「じゃけんとっとと終わらせましょうね〜」などといい、大きな欠伸までする始末だ。その緊張は完全に解けていると見える。

 

「じゃあさっさとやりましょ。

はい後輩等、ご注目。結界張るわよ」

 

「あっ、はい!」

 

「そうだそうだ、すっかり忘れた…」

 

「…おぅふ」

 

あんこの一声に高1の3人が作っていた不思議空間が瓦解し合流する。

その気の抜け様に、年長者は揃って一笑に服したのだった…

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

そして、みき・昴・遥香の高1組3人と、蓮華・あんこの高3組2人、田所の6人が見守る中。

 

「では始めますね」

 

明日葉の手に握られた結晶が、スクランブル交差点のど真ん中、其処に置かれる。

 

するとどうだろうか。

 

結晶はアスファルトの地面にゆっくりと沈んでいく。

固く埋め立てられた人工の灰色へと、確かに埋まっていく。

 

それが完全に見えなくなった時、次の変化が起こる。

 

 

ーーー芽が生えた。

 

小さな小さな苗を模って、光の塊が芽吹いたのだ。

それは風に吹かれ、ぴょこぴょこと可愛らしく揺れる。

 

そして、一際輝いた芽はーーー

 

「………はぇ^〜」

 

塊は弾け、碧の光が交差点を起点として優しく溢れ出す。

生み出された光は彼方此方を翔けて、灰色の街と青い空に化粧を施す様にしてそっと撫でていく。

 

言うまでも無く、星守の力、神樹の輝きそのものだった。

 

蛍火として、奔流として、燐光として。

7人は正しく、美しく暖かな光景の中にいた。

 

「いつ見ても綺麗…」

 

「うん。何だろうね…

安心するよ…」

 

「ああ。何ていうか…あったかぁい」

 

(神樹の光浴びたらそれしか言えんのか、と野暮な話は置いておき)

童話の世界に紛れ込んだが如くの神秘。

然してそれは暫く後に元へと戻る。

 

碧光が収まり、再びビル群と空が個々の色を取り戻す。

だが其処には確かな違いがあった。

 

「成る程ねぇ、確かに空気が美味ぇ…ああ^〜ホント美味えなぁ!」

 

クッソ汚い涅槃顏を晒しながら深呼吸。齎された空気はとことん澄んでいた。

つい先程まで混沌とした瘴気に当てられていたせいか、心地良い感情となって全身を巡って行く。

 

「神樹の力は瘴気とは真逆。つまり毒に対しての癒しの効能が期待されます。

授業後には特にその実感が強いんですよ」

 

「そっかぁ…(納得)

それじゃあこれで…」

 

「はいっ!結界の構築が完了したようです!」

 

そう。此処は既に、張られた結界の内部。

清澄な空気は一切の瘴気を赦さずに弾く、神秘の力場。

 

それが今、渋谷一帯に展開された。

 

 

 

渋谷奪還は、此処に成った。

 

 

 

「これで全部終わりですね、先生!」

 

「やったぜ。

は〜今日キツかったね〜

ちょっとホントに…すっげぇキツかったゾ〜」

 

「の、割には全くそうに見えないなぁ…

実は先生、まだまだ元気なんじゃないの?」

 

「あっ姉貴さSBR姉貴さ、流石にそれは無い…無くない?

やっぱり運動した後は誰でも疲れるって、はっきりわかんだね」

 

「あれが運動かぁ…

あれを運動って言っちゃうのかぁ…常識が壊れそうだよ…」

 

「落ち着け昴。この場に於いては詮無き事。

今はこの事態を乗り越えた事を、素直に喜べばいいじゃないか」

 

「明日葉先輩…

分かりました。そうします…」

 

「昴の目が若干輝いていますね(小声)」

「堕ちたな(確信)」

「オチたわね」

 

「いやアレは堕ちた訳でも無いでしょーし、そもそも何で3人してそんな仲良いのよ…?」

 

イロウス発生の心配の無くなった渋谷で歓談が繰り広げられる。

 

彼女達はもう、星守では無く普通の女の子に。

田所もまた、1人の男性として笑い合っていた。

 

「あっ、そうだ(唐突)

MK姉貴。ASH姉貴が持ってた結晶とやら、姉貴達も持っているんだろ?」

 

「え?あっ、はい、持ってはいるんですが…」

 

田所の唐突な質問に対し、みきは懐から物質を取り出す。

…其れは色の抜けた球だった。

 

「…は?何これ?」

 

「いや〜その…

私達逃げる時思いっきり走ったじゃないですか?あの時何時も以上に力が出たような気がして…」

 

「結晶はエネルギー体…出力…何時も以上の力…

…あっ…(察し)」

 

「多分、結晶のエネルギーを3人で1個丸々吸い上げたんだと思います。

じゃないと説明がつきませんね…」

 

「道理であんなに走り回れたんだ…

それでも枯渇したんだからなぁ、今にしてみれば、ホントにヤバかったねこれ…」

 

「こんなに枯れた状態ではまともに結界も張れなかったでしょうね。

…つまり、先生や先輩達が居なければ私達は…」

 

「あっ、待ってくださいよ!

起らなかった事態の話をするのはナンセンスだって、それ一番言われてるから(至言)

そんな後ろ向きな事言わないでくれよな〜頼むよ〜」

 

「その通りね。何時迄もネガティヴ思考なのは後味悪いわ。

明日葉も言ってたけど、勝ったんだから笑えばいいのよ」

 

「…そうですよね。はい!分かりまーーー

 

 

くうううぅ〜〜〜

 

…腹の音が鳴る。

 

沈黙。

 

皆が皆、視線をそろりそろりと動かし、音の主を探している。

特段みきや遥香、昴の顔が赤いのは気の所為では無いだろう。多分。

 

神樹の護りの中で、あまりに突然鳴った其れが示すのは当然…

 

「そう言えば、いえ、多分なんですけど…そろそろお腹が空く様な時間ではありませんか…?」

 

最初に口火を切ったのは遥香だった。

 

「そっ、そうだね!お腹空いちゃうかもね!

アタシ別にそんなでもないけど!」

 

便乗したのは昴。

 

「ああっ、確かに!今何時位かな!?

気になるな〜私!皆お腹空いちゃうもんね、皆が!」

 

またまた乗っかってきたのはみき。

 

…三者、目線が泳ぎまくりである。

その様子に約1名、目を爛々と光らせているが気にしてはいけない(戒め)

 

で、この男がすっとぼけているのかそれとも素なのかは知らないが言うには。

 

「嘘つけ絶対腹減ってるだろ?

俺も腹減ったんだからさぁ、クッソでっかくお腹鳴っちゃうのもね、しょうがないね」

 

『先生にはデリカシーっていう物が無いんですかっ!?』

 

何で こ ん な と こ ろ で点を下げる様な真似をするのか。コレガワカラナイ。

 

「でも空腹感じるんでしたよね?」

 

「それはその…」

 

「時間は…13時を回ったところか。やっぱりお昼じゃないか(確認)

じゃけんとっとと帰りましょうね〜」

 

などと言うと、腹減ったなぁ…と零し、アスファルトの上に寝っ転がる。

過去であれば只の阿呆の行動であるが、現在(いま)はそれを咎める事は無いだろう。

 

無いんだからそんな日光浴か日焼けをする様な、清々しくもクッソ汚らしい御満悦顔はやめて欲しい。

 

「アレは先生なりのフォローって事なのかな…?(小声)」

 

「多分絶対違うと思います…(小声)」

 

「ま、何時迄も此処に居る理由も無いしね。帰りましょ帰りましょ」

 

「そうだよ(便乗)

と言うか、どうやって帰るんだ?」

 

「結界の元、埋められた結晶が神樹とリンクしてるから、此処からなら何時でも戻れるわ」

 

「はぇ^〜すっごい便利…」

 

「では直ぐに帰還致しますか?」

 

「ん〜、そうだな。

上がったらお昼ですかね皆?」

 

「はい。も〜お腹ペコペコです…」

 

何処かより聞こえたその発言に田所は身体を起こし、意味深な表情を浮かべる。

 

あの顔は間違いなく、他人の弱みを握ったそれだ。

 

「ん?今お腹ペコペコって認めたよね?」

 

「あっ…」

 

「よしじゃあお腹鳴っちゃう位腹減ったMK姉貴の為に早く帰ってやるか!しょうがねぇなぁ(悟空)」

 

「えぇっ!?ちょっ…もうっ!先生!」

 

「何だよMK姉貴嬉しそうじゃねぇかよ〜フゥーッ↑フゥーッ↑」

 

「違いますからっ!そういうんじゃ無いんですってばぁ〜〜!!」

 

子供の様にはしゃぐ田所と真っ赤な顔で否定するみき。

まるで旧知の友の如くに振舞う2人を見て、少女達は息を吐く。

 

「あらあら、もう2人ともあんなに仲良くなっちゃって」

 

「ははは…仲が良いと言うか何というか…」

 

「でも、気さくな先生ですね」

 

「全くね。見ていて飽きない…って言うのはあるかも」

 

言葉にはこれからへの期待。

短期間ではあるが、新しい担任を見た彼女達が抱いた感情。

 

「昴ちゃんも遥香ちゃんも見てないで何とか言ってよぉ〜…」

 

「みき…頑張れ!」

 

「ひどいっ!?」

 

「さあ、みきの為にも早く帰りましょうか」

 

「えっ、ちょっと?遥香ちゃん!?」

 

「は〜い撤収よ♡み・き・ちゃん?」

「は〜っ、やっと終わりね…」

 

「ハイ奪還授業終わりっ!閉廷!以上!皆帰還!」

 

『は〜い(!)(♡)』

 

田所の号令と共に7人の傍から光が立ち昇る。

それは帰還の際のものだ。地球へ来た時と同じく、膜の様に7人を包む。

 

徐々に視界は碧に覆われ、渋谷の光景は薄れていく。

 

「…案ずるなみき。アレは…うん、悪ノリというものなのだろう。

わ、私も空腹なのは違いないからな?みきがそうなるのもやむなしと言うか…」

 

「明日葉先輩、多分それ地味〜にフォローになってないです!」

 

肩に手を置き言葉を掛けるもダメな様でーーー

 

 

 

 

「もぉ〜〜〜っ、何でこうなっちゃうんですか〜〜〜〜〜!」

 

 

 

 

ーーー色づいた街に最後に木霊したのは、みきの切実な叫び(ツッコミ)だった。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「ぬわああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおん」

 

スペースコロニー内、神樹ヶ峰女学園ラボ。

 

其処へと転送され(帰還し)た一行からあがった最初の一声は、田所のものだった。

 

「皆さん、お疲れ様でした」

 

「はい、八雲先生。

7人とも無事帰還しました」

 

「YKM姉貴オッスオッス!

いやキツかったっすよ今日は〜」

 

明日葉が真面目に帰還報告をする中で、相も変わらず田所は最初と変わらずに馴れ馴れしい。

 

だが八雲の顔に、最初の様な怪訝な表情は現れなかった。

 

「宜しい事です。

では、田所先生から改めて報告を受けるので…貴女達は教室へ移動。5時間目を待っていてください」

 

「了解です。皆、行こうか」

 

「あの、八雲先生。行く前に1つ良いですか?」

 

先程迄散々におちょくられていたにも関わらず、元の表情に戻るみき。

移動しようとする少女達の中、彼女から手が挙がった。

 

「如何かしましたか?」

 

「えっと…田所先生の事、よろしくお願いします。

今日の授業、私達は先生にすっごく助けられたんです」

 

今回の奪還授業。思い返せばそれは田所浩仁が担任となる為の最終テストだった。

 

「イロウスとの闘いでもアドバイスを貰いましたし…

何より勇気を貰えたんです。死ぬなって。生きろって。」

 

「そうだね…

もう無理だ、って思ったけど…あの時の先生は頼もしかったな」

 

「まだまだ色々、聞きたい事も恩返ししたい事も多いですからね。

此処でお別れになるのは心苦しいです」

 

みきの主張に、昴と遥香も続く。

3人の眼には譲れない意志。そう見える輝きが其処にはあった。

 

そんな姿を見て、田所は照れ臭そうに目線を逸らす。

 

「…嬉しいなぁ(感動)」

 

「決めるのは確かに私達じゃありませんけど…どうかよろしくお願いします、八雲先生!」

 

「ーーー随分と信頼されましたね、田所先生?」

 

「んにゃっぴ…

自分に出来る事をしただけなんだが…これもうわかんねぇな」

 

「変な所で謙虚な方ですね…

勿論、貴女達の想いも評価対象として考慮するわ。どうなるかは後でのお楽しみよ」

 

笑みをフッと零して八雲が言う。

彼女も外道や鬼畜では無い。生徒の言葉を受け止める事を約束し、この場を締めくくる。

 

「では先生、本日はお疲れ様でした」

 

「お疲れ様、午後も頑張ってくれよな!頼むよ〜」

 

「はい!失礼します!」

 

そう言って6人の生徒、何の変哲も無い少女達はラボを後にする。

 

残されたのは、教員1名(八雲樹)候補1名(田所浩仁)だけだった。

 

「初作戦を成功させ、生徒達からも信頼を得た。

先生としての技量も十二分にある様ですね。それとも、これは貴方の人格が成せる業なのでしょうか?」

 

「買い被り過ぎなんだよなぁ…俺はそんな大した奴じゃないって、はっきりわかんだね」

 

「御謙遜を」

 

「そんな事)無いです。

今回の成功は俺が手を出しちまった事、結局は救援に頼った事も含めての結果だ。

やっぱ未熟なんすねぇ…」

 

「やはり貴方も闘いましたか…

事態はそれ程逼迫していたと?」

 

「ん…瘴気の異常発生、についてか?」

 

田所が提示した案件。

それを以って、場は一気に緊迫の様相へと移り変わる。

 

「ええ。

遥香さんからの通信を受け、僅かに確認できた程度ですが…

一体何があったんです?明日葉達にはいざとなったら手を出せとは言いましたが、彼女達の存在には気付いていたのでしょう?

それでも戦闘を自重させた筈の貴方は闘った。何かあった以外に考えが及びません。ご説明を」

 

八雲の詰問。

彼女自身、今回の件は把握しきれていない。

ならば現地にいた者に聞くしかない。

 

現職として、星守の指導者として、据わった眼を田所に向ける。

 

田所が口を開いたのは、暫く逡巡した後だった。

 

「本格的にまずいですよ…

あんなのが居たなんて初めて知ったんだよなぁ…」

 

「“あんなの”?」

 

「まずこれさぁ、イロウスは基本的な知能を持たない前提なんだけど…

それが覆るかもしれない」

 

「なっ…知能を持つ個体がいたと!?」

 

「そうだよ、と言いたいが…

そもそもあの存在はイロウスだったのかすら判別出来ない。それが現状だ」

 

「…どういう事です?

順を追って話していただけると有難いのですが」

 

「聞きたきゃ聞かせてやるよ…そもそも俺だって空前の事態だったんだからな。

 

 

 

 

 

 

ーーー俺が邂逅したのは、殆ど人間でありながら瘴気に適応し、イロウスを操る女の子だったんだ」

 




茶番書くの疲れたもおおおおおおん
こんなんじゃ2章以降が書けないよ…精進しなきゃ(使命感)

次回は回想回


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第8話 不安感が広がってないか?(懸念) 〜前〜

ホモの力でUAは1000、目次PV1300、全話PV2700突破とか…ご立派ァ!
ホモの兄貴達には聖人しかいないのか?(感涙)

予告通り、回想(を主軸とした結局TDNほんへ進行)回行きますよ〜ホラァ…
時系列及びナレーションガバ、台詞中心なのにも気をつけよう!


話は少し戻り。

 

■■■(■■■)に!近づくな!」

 

緑髪の少女より、瘴気が噴き上がる。

それより生まれた衝撃波は棒立ちであった田所を激しく打ち、後退させる。

 

その少女が異形の耳を持つ事もあって、田所はある結論に辿り着いた。

 

「ファッ!?お前イロウスかよぉ!?」

 

「イロウス…■■■(■■■)が…?

違う、みんなは…お友達だから、■■■(■■■)イロウス(お友達)じゃない」

 

「ッ…だとしてもッ!」

 

暴風として吹き荒れる瘴気の中、田所は眼前の存在ーーー敵へと野獣の眼光を向ける。

 

彼は今正に、少女は仕留めるべき獲物、そう断定した。

 

「お前が脅威だという事に何ら変わりはないんだよなぁ…!!」

 

「!!」

 

敵と判断した田所の行動は文字通り疾かった。

 

逆風どころでない滂沱の中で大きく前方へと跳躍すると、拳を強く握り、殴り抜ける体勢へと入る。

 

一瞬のうちに迫り来た相異なる存在に、少女も目を見開いた。

 

「頭いきますよ!」

 

勢いのまま突き出される右。

 

とった(・・・)

遠慮も容赦も無く、少女の顔面へと拳は吸い込まれるーーー

 

 

「っ!みんな、お願い!」

 

 

ーーーもそれは激突の寸前、第三者によって防がれる。

 

「ファッ!?」

 

然も庇った存在が大問題であった。

 

突然現れたその存在は、青の体躯を持つ剛腕の獣。

 

大型ロウガ種、ヴォルフ。

少女を庇ったのは、なんたる事かイロウスだった。

やはりかの女とイロウスには関わりがある事を、事態は確信させる。

 

傍に現れ、盾となる様にして腕を突き出したのだ。その隙に、背後へ少女を移動させて。

後は思惑通り。田所の振り切った拳は本来の標的に当たる事は無く、邪魔者に妨害された。

 

「ヌッ…ラアア!!」

 

それでも田所の拳撃は、確かに対象を破壊する一撃だ。

拳を喰らい、痛ましい軋みをあげたヴォルフの腕が弾ける。続け様に放った掌底が胸部を捕らえると、遂に瘴気へと還っていった。

 

『グオオオオオォォォォ…』

 

「ッ…!オマエまた…」

 

「えぇ…

庇わせたのはそっちだろ、いい加減にしろ!」

 

「うるさい!みんな、前後からコイツを圧殺して!」

 

少女の物騒な言葉と共に、田所の前後に渦が生成される。

 

其処から生えて出てきた頭蓋や手足を見て、察してしまう。

察してしまったのだ。

 

「イロウスを生み出し、操るってウッソだろお前…アレか?イロウスの親玉か何かか!?」

 

「違う!みんなは友だち!■■■(■■■)の大切な…大切な友だち!」

 

少女の一声により、生み出されたイロウスが田所を挟撃する。

前方にゲル種、後方にロウガ種。どちらも大型。

 

「あーもう話がめちゃくちゃだよ…」

 

狭い路地の中、前にも後ろにも逃げる空間が無い状況で2体の大型イロウスが迫る。

 

「やるしか無いか…はい、よーいスタート」

 

前後からの同時攻撃。ゲル状の体をしならせ振るう一撃と、その隙間を縫う鋭利な爪。

回避を赦さない筈の無慈悲な攻撃は、然し田所の跳躍によって回避される。

 

ビル伝いに壁を蹴って上昇したのだ。

狭い間隔ですら壁キックを決めるその姿は何処かの配管工の鑑である。

 

「ホラ落ちろ!」

 

浮かび上がった事により生じた高低差。

地に向かって1つ壁を蹴り加速すると、半回転してゲルを蹴撃する。

 

ゲル種は原始的なイロウスだ。

大きな核を表皮が覆うだけ。ある意味では全身弱点まみれのクソガバ構造体である。

 

それは大型となっても同じ事。

踏みつける様にして着地すると、その身体からは罅割れた核が覗く。

 

「(生存は)ダメみたいですね…ヌッ!」

 

限界まで潰れ瘴気が滲み出るゲルを足場に、次は目の前に降って湧いた田所を見るので僅かに硬直したウォルフに目標を定めた。

ゲルの反発を糧として三度跳躍すると、貫手を喉元へ撃ち込む。

 

そのまま跳び上がり、貫いた腕を振るって獲物を壁にぶち当て弧を描く様に引きずると、暫しの痙攣の後、力尽きたのかぐったりとしてしまった。

アーチを描く紅葉おろしの完成である。人だったら。

 

「堕ちたな(死亡確認)」

 

少女の後ろを取った田所は、瘴気となっていく残骸を落として歩み寄る。

 

「こんなに瘴気散らかして…ただで済むと思ってるわけ?もう赦さねぇからなぁ?」

 

対して、少女は動かない。

 

唯一の動きは。

 

「何で…?」

 

「は?」

 

「どうしてお友達に酷い事するの…?

此処はもう、みんなのものなんだよ?」

 

怨嗟。背を向けたまま肩を震わせ、それを呟く事だった。

 

「ああ。皆のものだな。

俺達人間の、が付くけどな」

 

「違う…。

■■■(■■■)達のもの。人間はもう、此処には要らない」

 

「巫山戯んじゃねぇよお前…俺↑等↓のだルルォ!?そんな事言ってタダで済むと思ってんのかよ!」

 

「うるさい…!人間は干渉するな!」

 

憤怒の形相で振り向いた少女が諸手を挙げると、再び莫大な瘴気が噴き上がった。

先程よりも強く、厳しく吹き荒れる。

 

「オォン!?」

 

咄嗟に身構えようとした田所も、予想外の風圧に押されて体勢を崩す。

 

それを少女は、待っていた。

 

「消えろ…ッ!」

 

何時手にしたのか、その片手には、剣と見紛う程の巨大な鋏が握られていてーーー。

 

「アォン!?」

 

田所を裂かんと振り下ろされる。

すんでで少女の攻勢に気づいた田所は横転にて回避する。本当にギリギリであった。

 

刃の着地地点は田所の顔、その目と鼻の先。

コンクリートの地面を抉る一撃だ。まともに喰らえばマミる所の話では無い。

 

「動くな!」

 

「動かないと当たっちゃうだルルォ!?」

 

地に埋まった鋏を取り出す瞬の内に、田所は持ち直す。

立ち上がった田所は流れる様にバックステップを決めて後退し、少女はその分の距離を詰める。

 

交戦の構えを取った2名が、またも硬直状態に陥った。

 

片や拳を何時でも打てる様に。

片や鋏を何時でも振える様に。

 

「…………」

「…………」

 

そして流れる静寂。貫く眼光。

 

両者共に理解していた。

 

 

本気で行かねば、死あるのみ。

この場を制せねば、死あるのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逡巡の後。

 

「………!」

 

少女がハッとして眼光を緩めると、鋏の鋒を下げる。

 

手足は脱力した様に下がり、まるで戦闘の意志を感じられない。

 

好機。好機。

それは間違い無く好機。

かの女の首をとり、鮮血と散らし、この奇異な存在を滅する好機。

 

あまりにあからさまな(・・・・・・・・・・)千載一遇(好機)

 

「…おっ、大丈夫か大丈夫か?」

 

一切の緊張を保ったまま、煽る様に問いかける。

何て事は無い、それは粗末な罠だと断じた上での回答だ。

 

「思い出した。

言われたの。■■■■■(■■■■■)に、まだ闘うなって」

 

少女の口から飛び出たのは、これまた驚きの事実だった。

 

彼女側の存在が、更にいると。

然もそれは眼前の、田所をも苦戦させる少女に対して指示を出せる存在だと。

 

この言に田所は目を見開く。

只々驚愕した。

自分が未だ見た事の無い強大な存在が、いや勢力がいるのだと。

平生を装うが、内心は動揺に駆られていた。

 

「御仲間がいるみたいですね…(分析)

これ以上滅茶苦茶なのはやめてくれよ…(懇願)」

 

叩いた軽口をも気に留めず。

少女は目線を下げたままである。

 

「確かにもう■■■(■■■)は闘えない…ヤクソク、守るから…」

 

その呟きは少女の停戦を意味するのだろうか。

だとすればそれは重畳。何れにせよこれ以上彼方から来ないのであれば此方からーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもオマエだけは、お友達をたくさん傷付けたオマエだけは赦さない!」

 

 

 

()ね!」

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「…それで、どうなったのです?」

 

時は戻り、神樹ヶ峰女学園・ラボ。

 

其処に居る2人の人物…田所浩仁と八雲樹は冷や汗を止める事が叶わなかった。

 

人間に近い容姿を持ち、言語を解し。

然し瘴気を操るイロウスの長の様な存在。

 

前代未聞の存在と交戦し、状況を振り返るだけで息が詰まる話だった。

 

「もうわかんねぇな…

気が付いたら吹っ飛ばされて空に浮いていた。それで離れていた3人と合流した。で、撤退指示して高3?連中呼んだって次第だな。

事の些末はそれで終わり、閉廷だ」

 

閉廷ってなんだよ(正論)

 

「そう、ですか…

良からぬ状況になってしまいましたね…我々にとっての異常事態を易々と引き起こす瘴気量に、貴方までも苦戦する単独戦力。加えてほぼ同等かそれ以上の仲間…」

 

素の(・・)、がつくとも言っておきますよ〜

念の為聞くが、其方側で何か情報は?」

 

「あったらこんなに頭を抱えてなどいませんよ…

多分この学園中を漁っても出る事は無いでしょう」

 

「そっかぁ…(落胆)」

 

余りにも突然に現れた脅威。

現在の高3も引き継ぎを終えたばかりであり、新しく入った中1などは戦闘経験も訓練経験も無い。

 

体制が切り替わったばかりの状態で、こんな存在が現れたのだ。

どうしろと言う。

これが2人の心境であった。

 

「…目下、如何するつもりですか?」

 

「今はまだ、この事は伏せた方が良いかもな。

ただ、星守達には対人戦の特訓も課す。確定です」

 

「訳を聞いても?」

 

「最初から俺だけがアレを相手どれればそれが良いが…

今生徒達に、それも仮にも武力を持っていて、化け物としか闘ってないような娘等にいきなり人間に近しい敵を討てと命令して、実行なんて出来ると思うか?

良心から躊躇って、ガバガバになって、瓦解して…そんな未来が見える見える」

 

田所が指摘したのは、星守と言う少女達が怪外と闘うことに慣れ過ぎて、対人の場で力を振るう事が出来ない…その可能性だった。

 

「幸い、俺()は対人戦に関しては一日の長がある。なら餅は餅屋。手を尽くそう。

それに…あいつ等はちゃんとイロウスを斃せる。ならするべき事は勝利のパターン化では無く自他の研鑽だ。これは俺の意見だがな」

 

「つまり、仮想体を用いた実戦訓練などは意味を成さないと?」

 

「曲解過ぎィ!流石に其処まではいってないゾ…

現行の課程をちょっと上向きに弄るだけだし大丈夫だって安心しろよ〜」

 

話している内に田所の顔にも余裕が滲み出る。

少し前まで綱渡り状態で闘っていたにも関わらずである。

心臓に毛が生えてますね…間違いない。

 

そんな田所の調子を見て八雲の方は1つ溜息をつく。

 

「はぁ…分かりました。

やはり、我々は貴方の力を借りなければならないでしょう。

改めて…星守クラスの担任、引き受けて下さいますか?」

 

依頼なのか懇願なのか。

八雲は一度真っ直ぐな目で田所を見ると頭を少し下げ、返答を求める。

 

彼の出す答えは、既に決まっていた。

 

 

 

 

 

 

「(担任を)やりますねぇ!

これからオッスお願いしま〜す」

 

「ありがとうございます。

では…当学園理事長、神峰牡丹に代わり、田所浩仁さん…貴方を星守クラス担任に任命します」

 

「ありがとナス!

YKM姉貴もこれから宜しくお願い致しナス!」

 

こ ん な と こ ろ で噛むな。

 

「勿論、私だけで無くこの学園の教職員皆でサポートします。

共に地球奪還に向けて、頑張って行きましょう」

 

分かりました(おかのした)

そしたら5時間目出ますかねYKM姉貴?」

 

「そうね。生徒との顔合わせをしてもらいましょうか。

…時間も丁度5分前ですか。行きましょう」

 

八雲が腕時計を確認すると同時に鳴り響く予鈴。

それは始業5分前のチャイムである。

 

「そうだな…あっ、そうだ(唐突)

帰ってきたばっかだから腹減った…腹減らない?」

 

これが何を示すか。

つまり、昼抜き。

運動と称してはいたが、激しい闘いの後に昼抜きで教卓に立つ事に異論があるのか、上目遣いで八雲を見る田所は棄てられた犬の様だった。

 

「…○ロリーメイトならありますが?」

 

「イイぞぉ!」

 

何処かの親父の様なハイテンションヴォイスをあげながら、取り出された○ロリーメイトを頬張る田所。

それを見ながら八雲が。次いで田所も歩き出す。

 

新たな舞台。星守の学び舎へと向かってーーー。




長くなりそうなので2分割です。1章完結までもう少し付き合ってくれよな〜頼むよ〜

あっ、そうだ(唐突)
ホモの兄ちゃんはクリスマスにはちゃんと4章を見て愛の意味を確かめましたか…?(小声)
改めて見直すと、あっこれかぁ!などと発見もあるので偶にはほんへ巡回、しよう!

…ノンケ諸兄はしなくていいから(良心)


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第8話 不安感が広がってないか?(懸念) 〜後〜

この作品には現状未登場ですが、イヴに誕生日迎えたキャラがいるんですよね…
間に合わなくてすいません許して下さい、何でもしますから!不定期で!

今回は星守側の回想とほんへです。
よって淫夢要素はありません。

※前回以上にナレガバです。



此方も時を戻し。

 

「彼は我々星守に連なる者…

楠、千導院、水鏡、神峰。これ等と《星の箱舟》が自ら追いやってしまった《英雄》の1人だ」

 

前方で雄叫びをあげながら敵を撃滅する田所を目に、明日葉は重々しく口を開く。

その意味を正しく理解する者は、誰もいない。

 

「《英雄》…?」

 

「私はあの日から…人類が地球を離れる前から八雲先生達と闘っていたから分かる話だがな…」

 

「そう言えば明日葉は、れんげ達より前から星守だったわよね。」

 

「それがどう関係するんですか?

明日葉先輩、と言うより楠家だけじゃ無く、千導院や神峰等は確か星守支援の家柄でしたよね?」

 

明日葉やみきがあげた家柄、楠・千導院等の家は昔から星守を輩出し、他にも様々な面で活動を応援してきた一族だ。

 

それらが関係しているとなると、事態は大事。そう思い、質問を逸るのも無理はないだろう。

 

「慌てるな。

先ずはだな…いや、此処からか」

 

質問を一度遮ると思案顔になり、暫し考えを巡らせる。

そして、整理がついたようで話し出す事には。

 

「前提だ。『非常識的存在であるイロウスを斃せるのは星守だけ』である。

間違いないな?」

 

「あの闘いを見る限り、それが崩れそうですけどね…」

 

「そう、其処なんだ。その前提は先ず間違っている。

イロウスの討伐に関わっていたのは星守以外にも居たのだよ」

 

「それが、先生…」

 

「だけではない。知り得る限り、それは複数だ。

然もほぼ全員がある共通点を持っている」

 

「それって…」

 

其処まで言うと、1人2人…全員が改めて田所を見る。

 

「およそ人間とは思えない戦闘力、強靱性、そして精神的強度…

《迫真空手》。極一部の例外を除けば、彼等は皆、その法に通じている」

 

出てきたキーワードは《迫真空手》。

それは田所が唱えた一節にあった単語だ。

 

「一体その《迫真空手》って何なんですか?

どう見てもおかしいですよね、普通の人間があそこまで闘えるなんて…」

 

「…そればかりは私も知らない。

分かっているのは、それが下北沢大学元迫真空手部顧問のAKYS、本名で言えば秋吉亮なる人物から派生した技だという事。

神樹の力程では無くとも、イロウスに対して確かな効き目がある事。

そして…今はもう、その使い手たる彼等をあてにできないという事だけだ」

 

目を伏せ、悔恨の情を滲ませる。

 

「あてに出来ないって…?

先輩の話だと、その《英雄》達はイロウスと闘っていた。ならアタシ達と目的は同じじゃないんですか!?」

 

「共同で闘える方々であれば何故ーーー

…いや、もしかして」

 

問い詰める昴と遥香。

だが、遥香は何かに気づいた様で。

 

「やっぱり、それってそういう事でしょ。

所謂大人の事情ね」

 

「これも、明日葉の家の事なんでしょ?伏せるべきなら…」

 

「ああ…だけどこれは楠の、ひいては我々の派閥の間違いだ。言わせてくれ」

 

「ん…は〜い」

 

あんこと蓮華が、深刻な表情を浮かべる友を心配するが、明日葉はそれでも語る。

 

「…都合が悪かったんだ。此方側の権力者にとって、星守以外(・・・・)にイロウスを打倒されてはな。

世界を救うのは、古来より闘ってきた星守だけ(・・)で無くてはならない、とな…」

 

「え、っと…それは…」

 

「ああそゆこと…

分かりやすく言えば、横取りだの割込みだのされる事を嫌ったって事でしょーね。」

 

「ーーー成る程、察しが付きました。」

 

その言にいち早く理解を見せたのは、あんこと遥香だった。

 

「どういう事?」

 

「大分込み入った…ある意味単調だけど、権力絡みよ。

星守と同じく、イロウスを斃せる人物が急に現れたら…大衆はどう思う?」

 

「それは…頑張れーって、なりますけど…」

 

「そうよね。人々の関心はそっちに向くでしょうね。星守そっちのけで(・・・・・・・・)

 

「ーーーあっ」

 

此処まで言って、やっと全員が多かれ少なかれ事態を把握する。

 

「星守は神樹に選ばれた存在。本来神聖である存在。人々を救えて当然。

なら一般人である彼等が闘えれば?神樹に選ばれた星守と同等以上に闘えたなら、星守側の人達と普通の人達ははどう思うかしら?」

 

「な〜るほど、ね…

そんな人が現れたら、み〜んな《英雄》サマを讃えるでしょうね」

 

「そういう事だ。

だからこそ、力を怖れた派閥は地球を離れる事を逆に好機として彼等を追い出し、それを月や火星が拾い上げたんだ。彼処は中立か反対派が首脳陣となっているからな…」

 

「じゃあ今は…」

 

「…和解も申し込んださ。何人かとは和解がなったが、肝心のAKYSさんが首を縦に振らない故、彼等も表立って動けない。

此方側も不満が爆発だ…今でこそ鎮静化したがコロニーが出来た最初は暴動も起きたんだ。

自らの保身の策が、結果として一部の人々からの信頼を失った。皮肉だろう?」

 

「明日葉…」

 

憂いを浮かべて自嘲気味に笑う明日葉を見る蓮華。その表情にも影がかかる。

 

然し、語り手はここで顔色を一転させる。

 

「故、最初に聞いた時は本当に驚いた。

まさか、田所浩仁さんが此方側に来るなんて有り得ないと思っていたからな」

 

思わぬ登場人物に、全員が…特に高1トリオが目を丸くする。

 

「ここで、先生ですか?」

 

「ああ。あの方は…

あの方は《英雄》の中でも抜きん出た実力者で、何よりAKYSさん直々の弟子。懐刀とも謳われた方だからな…」

 

「ん?ちょっと待って下さい!

その、AKYSさん?って人は和解出来てない方ですよね?それなのに先生はそんな人の弟子って…どうなってるんです?」

 

「分からない…

だが、この事をよく見るのであれば…AKYSさんが此方側に歩み寄ろうとしているのかもしれない、とも取れるんだ」

 

「おおっ、朗報じゃないですか!」

 

「…悪い意味で見ればスパイか工作員。此方側の情報を絞れるだけ絞って妨害するってオチかも分からないわよ?」

 

「それはっ…しかし…」

 

可能性の思索に、場が滞ってしまう。

 

彼は救いの一手なのか破滅の一手なのか…疑念が募るばかりだ。

 

 

 

「ーーーそれは違うと思います」

 

 

だが不穏な空気を破る者がいた、みきだ。

 

「先生言ってましたもん。

自分も地球に帰りたい。手を取り合うのは当たり前だって。私にはあれが嘘だとは思えないんです。

それに…ついさっき、約束しましたから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しいラーメン屋に行こう、って」

 

ずるっ

 

そんな擬音が飛び出そうな勢いで、全員がずっこける。

 

「何だそれは…」

 

「あはは…でも、私は先生の事を信じたいんです。

この授業中何度も助けてもらった、あの真っ直ぐな目をした人を」

 

「みき…」

 

「寧ろ今迄いがみ合っていた人達と、もう一度一緒に闘えるんですよ?それは多分、凄く勇気をもって来てくれたからだと思うんです。

だから今度はーーー私が先生を信じます」

 

宣言と共に、碧の光が赤い焔となってみきを包む。

星衣の起動だ。制服姿の彼女に、不死鳥の意匠が立ち現れる。

 

その姿は、護星の将たる星守のものだった。

意志の力で強まる神樹の神秘は、今一層輝いている。

 

「行こう、皆!今の私達に出来る事、それは先生と一緒に闘う事だよ!」

 

焔の如き光は剣の形を成して右手に収まる。

その鋒を天から前方へと向ける。それは進撃を意味するサインだった。

 

晴れやかな闘志を顔に広げた少女は今、誰よりも満ちていた(・・・・・)

 

「ーーーへへっ。相変わらず、カッコつけちゃって!それとも天然?」

 

「ラーメン屋のくだりはどうかと思ったのだけれどね…でもみきらしいわ。色々とね、色々と」

 

「えっ、何か2人して酷くない!?」

 

茶化す様に言葉をかけたのは昴と遥香。

口元を綻ばせたり肩を組んだりするのは良いのだが、何故2人で煽るのか。

然し言動とは裏腹に、その身には既に星衣を展開している。

 

つまりはそういう事だろう。

 

自分も闘う。

みきが伝えたその意志は、確かに伝染した。

 

「あらあら♡準備万端みたいよ?」

 

「熱血ねぇ…ま、良いんだけど」

 

そして蓮華とあんこも武器を携え、明日葉を見る。

顔には当然、行こうとする意思表示。

 

その様相に。

 

「…ああ、ありがとう。

行こうか、闘いに!」

 

リーダーたる明日葉も太刀を展開し、眼前の戦場に対して闘気を昂ぶらせる。

 

「敵は多い。分かっているとは思うが、油断は禁物だ。

では行くぞ!これで終わらせる!」

『はい!』

 

号令と共に全員で駆け出す。

 

1歩、2歩と加速する少女達は光を纏い、混濁の戦場へと突入していったーーー。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「ふぅ〜…」

 

大きな伸び。両手を真上にあげると、身体を震わせる。

 

「お疲れね、みき」

 

「5時間目は一応ホームルームだけど、居眠りなんかしないでよ?」

 

「し、しないよっ!?」

 

此処は教室。

中高に散らばる星守達を束ねる為の、専用の教室だ。

 

現在昼休みと言うだけあって、帰還したばかりの3人はちょっと遅めの昼食を囲んでいた。

 

「ねぇねぇ、みき先輩!

新しい先生ってどんな人だったのー?」

 

「あっ、ミミも気になる〜」

 

其処に話しかけたのは、ショートヘアで快活な少女とうさみみフードを被った少女。

 

「なんでも、大変武に精通した方らしいな!

うむ、私も楽しみだ!」

 

「特訓とかは厳しくなりそうじゃのう…面倒じゃがまあ、精々面白くなれば良いのぅ…」

 

「早速上から目線ですぅ…」

 

ポニーテールの少女、年寄り言葉で話す少女、そして気弱そうな少女も会話に参加する。

 

星守は各学年2、3人しかいないので、学年の垣根を越えて皆仲が良い。

その為、他学年が会話に入り込む事も多々あるのだ。

そんな一幕が、今日もまた盛り上がる。

 

「どんな人かなぁ〜?イケメン?イケメンだった?」

 

「お花に詳しい方なら良いですね…」

 

「この2人は相変わらずというか何というか…アタシも気になるっちゃ気になるけどね」

 

「何れにせよ、これから教えを請う方。良い人物である事を願うだけですわ」

 

男性の新任が来るかもしれない。

そうとしか知らされていない少女達が新たな先生の情報を少しでも聞き出そうと集団を大きくした所で、予鈴が鳴り響く。

これは5分前のチャイムだ。

 

「ん〜、簡単に言えば…凄い人?なのかな?」

 

「えぇ〜、流石にザックリ過ぎない?」

 

「事実形容のしようがありませんからね。不思議な方です」

 

「でも、頼りになる人だったよ。

すっごく、すっごくね」

 

ヒントを零す3人の顔は、清々しい笑顔。

子供の様に無邪気で、見つめる母の様に優しくて…そして何かを確信した明るいそれが意味するところは、推して知るべし。

 

「凄くて不思議で、頼りになる…?

これだけでは良く分からなんな…」

 

「一度会えば直ぐに分かりますよ。

そういう人なんです。多分」

 

「そうだな。

さて皆、そろそろ5時間目も始まる。席に着いておくんだ」

 

時計を見れば長針はもう、授業開始1分前を告げていた。

やれ急げと集団は崩れて、少女達は席に戻っていく。

 

そして教室が1つふっと静かになると、2つの足音が近づいてくる。

 

来たよ、来たね、足音が2つ…来るぞ皆、などと教室が少しザワつき始めた所でドアが開き、其処から入って来たのは1人。

 

「それでは皆さん。5時間目ーーーもとい、特別ホームルームを始めます」

 

八雲だった。

 

その登場に少女達が困惑するが、登壇した彼女は気にもとめずに話を進める。

 

「朝の始業式で、貴女達は既に私の事を知っているとは思いますが、改めて自己紹介をさせていただきます。

本年度星守クラス、副担任(・・・)を務めます八雲樹です。宜しくお願いします」

 

副担任。

敢えて其処を強調した理由は言うまでも無い。

 

「はいはーい!

八雲先生が副担任なら担任の先生はー?」

 

「ふふっ、そうね。

聞いている人もいるでしょうけど…本年度から新しい先生が担任として指導にあたってくれるわ。

どうぞ、お入りください」

 

教室の外に声を掛けると、迫真の音と共にドアが開く。因みに引き戸である。

 

何時の間に服装を整えたのか、上下共に皺の1つも無いピッシリとしたスーツ姿。

その若々しい精良な出で立ちに補正を掛けるかの如くに滲む、クッソ汚くもフレンドリーなドヤ顔。

 

その人物はチョークをとると、自分の名前をつらつらと綴り出す。

顔の割に綺麗な字だ。寧ろ女の子みてぇな字してるが気にしてはならない(戒め)

 

男性は様々な目で見られている。

それは好奇だったり、驚愕だったり、観察の程をなしていたり…或いはそれは、素直な歓迎を示している。

 

そんな少女達を一瞥し、男は遂に口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「田所浩仁。

24歳、担任です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今ここに邂逅したのは、《英雄》が1人と《星守》の少女達。

 

 

それは快進撃の始まりか、苦難の入り口か…。

 

 

桜舞う春の折、盤面に揃った人物達は。

 

 

遂に未来へと動き出すーーー。

 

 

バトルガールハイスクール × 真夏の夜の淫夢

 

星守レイ○!担任と化した淫夢厨

1章 最終テスト 〜渋谷奪還編〜

 

エピルルォ!?ーグへ続く

 

 



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第8.10話 ねー今日奪還授業きつかったねー

読者兄貴お久しナス!
久々に覗いてみたらバーに色がついてるんだよなぁ、お前らのお陰でよぉ!(歓喜)と言う訳で記念短編です。完全にダイナモ感覚だけで書いてます。
なのでかなり超展開なのも、ホモ特有のって事で御理解オナシャス!センセンシャル!

…冷静に考えたらこのジャンルで初めて色付くのが淫夢クロスってこれもうわかんねぇな…3部も始まったしバトガはもっと流行って、どうぞ。

(今回はほんへとそんなに関係は)ないです。
もうさ、8話後編とエピルルォ!?ーグの間の話ってさ、その解釈でいいんじゃない?(棒読み)


太陽。

それは地球を投げ売った今の人類にも平等に降り注ぐ光の主。

そんな太陽も沈みかかり、夕焼けが緋色のヴェールとなって街々を照らす頃。

 

当然こ↑こ↓、神樹ヶ峰女学園に於いても柔らかな暮れの光が窓から差し込み、「なんか幻想的」と呟いてしまう様な情緒を醸し出している。

 

影の色も益々濃くなるそんな時間。1人廊下を歩くその人物は、伸びをしながら深く息を吐いた。

 

「ぬわああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおん」

 

こいついつも疲れてんな。後臭い息吐くな。

 

「まさかあの後質問攻めに合うとは思わなかったけどなぁ〜…

女子中高生の好奇心を舐めてたって、はっきりわかんだね。もっと気をつけなきゃ(使命感)」

 

…ともあれ、廊下をのっしのっしと歩く人物。それは野グs…田所浩仁である。誰が言ったか、別称・野獣先生。

先にボヤいていた疲れとは、まあ大方、始めての奪還授業に於けるそれもあればいきなり多くの女子に詰め寄られたのもあるのだろう。

 

最もこの男の場合、その文言は定型句(テンプレ)の様なものかもわからないが。

 

そうこうしている内に、田所の足はある場所で止まっていた。

壁に打ち付けられた板には、《星守クラス》の文字。詰まる所、星守達の教室だ。

そんな一室のドアを迫真の音を立てながら開くと、目に飛び込むのは色褪せない光景。

 

きっちりと並べられた机。吊り下げられた手提げ。綺麗に磨かれた黒板。後方にはロッカーに掲示板。学園通信や掃除当番表、あるいは新聞部の学園スクープなんてものまである。

ラボの様な近未来的空間を見た後だと、やけに古めかしくも見えなくはないこの学び舎を眺め、田所は悟ったかの如くに独りごちる。

 

「懐かしいなぁ…(懐古) 何て言うか、ここは 王 道 を 行 く 青春系ですね。皆と過ごした日々を思い出すと涙がで、出ますよ…」

 

実の所さん!?は涙など流れはしないのだが、田所が郷愁に耽るのも一理あるだろう。

 

現在、こうして田所がーーーいや、全人類が地球に足を下ろしていないのは、全て5年前の災厄によるものなのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

克明克明克明に浮かび上がって、然しながらそれは余りにあっさりと切り替わっていく。

 

阿鼻叫喚の光景が。怒号をあげ、また落胆する人々が。絶望に覆われた視界が。

 

然り。

今双眸に映るのは、過去の風景。

 

 

ではそれは誰の記憶なのだろうか。

 

 

 

 

「◼︎◼︎◼︎!大丈夫か大丈夫か!?」

 

「先輩!?今迄一体何処にいたんですか!?」

 

「それは後だ!いいからとっとと脱出しますよ〜するする!」

 

 

 

 

 

いや、わかりきっているのだ。

 

それが自身の、田所浩仁の記憶だと言う事は。

 

 

 

 

 

「◼︎◼︎◼︎さん、悔しくないんですか!?俺はーーー!」

 

「田所。お前なら分かるはずだぞ。

力が、どんな事だって誰よりも出来る力があっても、どうする事の出来ない…その苦しみや辛さを一番感じている人をな」

 

「ッ!!

自分の無力さに、頭に来ますよ…!」

 

「おっ…そうだな」

 

 

 

 

 

 

結果的にあれからは何時だって他人任せだった。

 

お前は所詮人間の屑だ。能無しでしかないただの獣なのだ。

 

だから大事な時に何も出来ないし、誰も救えない。

 

 

 

 

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎先生、◼︎◼︎さん、何でなんですか…」

 

「いいじゃねえかお前、自由の身だぞ。彼奴らに愛想が尽きて、尽かされたんだよ俺達は」

 

「…田所君。君はおじさんと一緒に来るんだ」

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎先生、先生は、どうするんですか…?」

 

「ーーーいいか田所。望まれてもいない世話ってのはな、ただのおせっかいなんだよ。それを覚えておけ」

 

 

 

 

お前は誰を助けられたんだ?

 

仲の良い先輩や後輩か?

慕い、慕われた後輩か?

拳の恩師か?剣の恩師か?

世話になった主治医か?

何時ぞや遊んでやった幼子か?

 

友か?家族か?

 

阿呆。

 

否だろうが。

お前は誰にだって何も出来なかった。

 

そんな事ない、だ?

いいやそんな訳がない。

単に悦に浸ってるだけ。

それはお前の錯覚なんだ。自分に酔ってるだけなんだよ。

 

田所浩仁は野獣故に、

 

無力な無力な、たった1つのいのちに過ぎないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも。

 

 

 

 

 

それでも決意した。

あの日・あの時に、田所浩仁はもう一度決意で満たされたのだ。

 

例え立ち向かうのが理不尽でも。

例えこの身が甚だしく傷ついても。

 

この力で、自分に出来る事を為すと。

この力で、隣人を助けるのだと。

 

もう惨劇なんか起こしてやるものかと。

 

救え(・・)ないなら、この手で掬って(・・・)みせると。

 

 

もし赦されるならば。

 

与えられた使命を果たし…即ち星守達を正しく導き、共に闘う仲間として。

必ず全てを取り戻してみせると。

 

 

 

 

何故ならこの力は、

 

 

いや、己が真とはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーせい?先生!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファッ!?」

 

「ひゃう!?」

 

両者の身体が大きくビクリと跳ねる。

1人はクッソ黒い肌が影の作る濃淡を一層際立たせる男性、田所。

もう1人はといえば。

 

「せ、先生…驚かさないでくださいよぉ〜」

 

「クゥーン…ん?あっ、MK姉貴オッスオッス!」

 

「今気づいたんですか!?」

 

田所の言葉の一々に良い反応を返す少女。赤い髪と笑顔が特徴の、星月みきであった。

 

「ちょっと(ぼう)っとしてたし多少はね?でもどうしたんだ、こんな時間に?」

 

「いや〜部活終わりだったんですけど、その…忘れ物をしちゃいまして…」

 

「あっ、そっかぁ…それならね、しょうがないね。でも気をつけてくれよな〜頼むよ〜」

 

「す、すみません…」

 

忘れ物をした旨を苦笑気味に伝えるみきに対し、田所は注意を促すがその顔に怒りの感情はなく、寧ろ口角を柔らかく上げ、枕よりもデカい許容の心で言葉だけを伝えた。

 

「確かみきの部活は…えっと、アメフトォ…?」

 

どうみてもアメフトやってる体型じゃないんだよなぁ…ちゃんと見て、どうぞ(ステマ)

 

「だったら私、もっとがっしりしてると思うんですけど…

ラクロスですよ。知りませんか?」

 

「そうですねぇ…何だっけあの棒、クロスか何か?それ使って点を取り合うスポーツだった気がする…しない?」

 

「そうそうそれですよ!

こう…玉をハッ!っと取って、ビュッ!と投げて、ドーン!…こんな感じのカッコいいスポーツなんです!」

 

「あっ、そっかぁ…」

 

みきが身振り手振りを交えて解説する。…が、ちょっとオノマトペが多過ぎるんだよね。それ一番言われてるから(辛辣)

 

流石の田所も返答がまた池沼じみたものとなってはいたが、ノリノリで語るみきを見る目は優しく、時折頷きながら意外にも真面目に聞いていた。

生徒の話をしっかり受け止め反応する野獣先生は人間の鑑だった…?

 

「あれ?そういえば、先生は何故ここに居るんですか?」

 

フィーリングで話す話題が終わると、思い出したかの様にみきが疑問を呈した。

それを聞くと田所は一瞬野獣の眼光を瞳に称え、素人男優の様なクッソ棒読み口調で言う。

 

「えぇ…俺みたいな男の先生がこの学校にいちゃいかんのか?酷いですね、これは酷い…」

 

「あああ違いますよっ!?そうじゃないですからね!?」

 

また言葉狩りか壊れるなぁ…

自分の言葉を思わぬ方向に取られたみきは慌てふためき、両手をブンブンと振っている。すっげぇ必死になってる、はっきりわかんだね(分析)

 

そんな様子を相変わらずのにやけ面で見ていた田所は、暫くするとやれやれといった風に訂正してやる。

 

「嘘だよ(お茶目) ちゃちゃっと弄っただけだしヘーキヘーキ!」

 

「ああ、またそのパターンなんですね…」

 

「そうみたいですね」

 

何したり顔で言ってんだ、と横槍を入れたくなるくらいには腹の立つ真顔で答えると、両者の間に変な苦笑が生まれる。

 

然し、全くもって妙ちきりんな空気になった所さん!?でみきは口を開いた。

 

「はぁ…でもホント変でしたよ?

凄く怖い顔で外を見つめたまま、私が何回声をかけても全然反応無しなんですもん」

 

「ほんとぉ?」

 

「はい。なんて言うんでしょう…何かを見ているはずなのに何も見えてないみたいな…

このままずっと寝ているんじゃないかって位に静かなのに、何か言いたい事があるんだー、みたいな?

う〜ん、上手く伝えられませんね…」

 

「んにゃっぴ…よく分からなかったです」

 

伝えようとした言葉は酷く曖昧で、その真意を推し量る事は出来ない。

だが、みきが自身を心配してくれている。それは分かったのだろう、田所は…

 

 

「でも…大分心配してくれてんじゃんアゼルバイジャン。これだけははっきりわかんだね。MK姉貴、ありがとナス!」

 

 

素直に礼を述べる。

笑顔ながら何処か憂いを秘めた、言うなれば無理をしている者の笑みで。

 

言葉尻だけを盛り上げた、疲れた笑み。

 

優しい癖して誰よりも傷ついた者が辿り着く、笑み。

 

田所の笑みの真意などみきにはわからない。

何故ならば男は、少女には届かない程に生きてきた(・・・・・)から。

 

到底分かるはずも無いのだ。

生きてきた中の咎や(マイナス)などを、誰が態々下の者に押し付けたいものか。

 

「先生…」

 

「じゃあ俺、職員室戻ってラボ行くから…やりたい事が多くて疲れるもおおおおおおおおおおん…」

 

そう言うと態とらしく肩を落とし、教室に背を向けて立ち去ろうとする。

 

無駄にデカい背が、縮こまっている気がして。

 

「あの、先生!」

 

少女は声をかけずにはいられなかった。

 

「ん?」

 

「あ、その…笑顔です!先生!」

 

「…は?」

 

歩みを止められ、そこから急に述べられた単語に、田所は困惑する。

 

「先生、凄く辛そうなんです。今の顔で何となく分かったんです。

絶対何処かで無理してるって。自分だけで何とかしようとして、背負いすぎてるって。」

 

みきの顔には、躊躇いも嘲りも無い。

 

ただ田所の、その脂ぎって寧ろ輝く顔を見つめて。

 

「《英雄》について明日葉先輩から聞きました。いろんな事情があって…それこそ、私じゃ分からないくらいに沢山嫌な事もあったんだろうな、って…」

 

田所の顔からはたった1つ、形容のしようがないがそれでも1つ。ただそれだけを残してその他の感情が抜け落ちる。

 

「でも…だからこそ、先生には笑って欲しいんです!

私、笑顔が好きなんです。皆で笑って、楽しく過ごして…そんな毎日を守りたいって思ったから、私は星守になったんです」

 

1歩、2歩。前へ踏み出す。

 

田所の目と鼻の先まで接近すると、その口元に2本の人差し指を当て、むにぃ…と口角を吊り上げさせた。

 

笑顔。

 

無理矢理作られたそれは不恰好極まりないが、みきの目には満足の意思が浮かぶ。

何故ならばその不細工な笑みには、暗い背景などと言った混じりっ気が無いからだろう。

 

「えへへ…この感じですよ。さっきよりも、ずっといい笑顔です」

 

十分堪能したのか、その手を放す。

 

田所の顔の険しさは、いつの間にやら薄れていた。

 

「忘れないで下さい。何があっても、今日から先生は私達の《先生》で、一緒に闘える《仲間》なんだって事。

…そりゃあ、私なんて先生と比べたらまだまだ弱いかも知れませんけど…でもでも!ちゃんと頑張りますので!」

 

「…ぷっ、ハハァ…」

 

「え、先生?」

 

今迄真剣に見つめていたみきが視線を泳がせ、ちょっとばかりの苦笑を見せた所で田所は弱く吹き出した。

 

何が可笑しいのか、口元に手をやりクツクツと笑う。

 

「いや、(何でも)ないです。やりたい事を1つ思い出しましただけですねぇ!」

 

「やりたい事?」

 

またもニヤケ顔に戻った田所は人差し指を立て、左右に振る。

 

「そうだよ(肯定)

イワナ…書かなかったあの時?ラーメン屋、連れてくってさ」

 

「え、ホントに連れてってくれるんですか!?」

 

「当たり前やん!しかも俺が奢りますよ〜するする、嬉しいだルルォ?」

 

何だこの人間の鑑!?

 

思わぬ気風の良さに、みきも喜びを隠さず目を輝かせている。

…知り合って間もない成人男性とご飯食べに行くとか、このJKちょっと無防備すぎるんとちゃう?…などという無粋な疑問を抱くのはーーー止めようね!

 

「何だよMK姉貴嬉しそうじゃねぇかよ〜いいゾ^〜これ。

折角だしSBR姉貴とHRK姉貴も誘いたいけどなぁ〜 今日の良き日に皆で食事会とか良い…良くない?」

 

「あっ、じゃあ聞きに行きましょうよ!きっと2人とも喜びますよ!」

 

「ん?場所分かるのか?」

 

「この時間なら昴ちゃんは部室だろうし、遥香ちゃんも音楽室にいると思います。

案内しますから行ってみましょう、先生!」

 

「いいっすかぁ!?じゃけん今行ってみましょうね^〜」

 

やたら高いテンションのまま、2人は教室を出る。

案内と称し、またも先を行こうとするみき。

 

田所からしてみれば小さな、然し大きなものを背負ったその背を追いながら…

 

 

 

「先生で、仲間。それに笑顔、か。みき…ありがとナス」

 

 

 

「ん?先生、何か言いましたか?」

 

「いや?MK姉貴はいつも腹空かせてんな、ってな」

 

「えぇ〜〜〜〜〜!?いつもなんて…そ、そんな事無いですよ!

今日は奪還授業も大変だったし、そもそも部活終わりだから今お腹空いてるのは仕方ないじゃないですかぁ!」

 

「正体現したね。まぁ今日いろいろあったしね、しょうがないね…

じゃあ腹減りMK姉貴の為に早くしてやるか!しょうがねぇなぁ(悟空)」

 

「ああ先生!?待って下さいよ〜〜!!」

 

 

夕暮れの校舎を、田所は歩く。

 

その顔にクッソ不器用な笑みを浮かべ、傍らには少女を伴って。

 

陽に照らされた道を力強く、また歩き出した。




野獣先輩は女の子なので女の子の日に初投稿です。あけましておめでとうございます(遅漏)
受験前後や深夜に急ピッチで書くとやはりヤバイ(クソガバ文章)

2章は現在書き直そうか考え中
まーーだ時間かかりそうですね…


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第00話 はじまりのエピルルォ!?ーグ

あーねんまつ
今年最後に初投稿です。

プラスチックアドベンチャーほんとすき
毎秒耳が孕む

何となくこれ迄の話で掴めたと思いますが、多人数交流の場面などでは場面の雰囲気を重視して、台詞が中心になり地の文が少なくなります。これは筆者の癖だって、はっきり分かんだね。

そんな時は会話している所さん!?を想像して読んでみて、どうぞ(懇願)



「おかわりをお願いします」

「こっちもオッスお願いしま〜す」

 

夕暮れの残光も駆け抜けた後、田所と高1の3人組はある場所に来ていた。

 

聞こえるのは麺を茹でる音に啜る音。

または付け合わせの葱を切る小気味良いリズム。

 

ラーメン屋の屋台。

田所が約束した場所に、4人は夜飯と称して集まっていた。当然、高校生達は親への連絡は済ませている。友達と食べる、としか言ってないが。

 

「HRK姉貴早いっすね…

もう3杯だよ3杯、ちょっと良いんじゃないこんな食いっぷり〜?」

 

豪快に麺を啜る田所が示すのが、遥香の意外過ぎる食べっぷりだった。

 

現状ではみきが普通盛りで昴が大盛りで各1杯ずつだったのだが、遥香は既に普通盛りと大盛りを平らげ、更に大盛りを頼みだしたのだ。

 

「すっ、すみません!

思ったよりも箸が進んでしまって…」

 

印象としてはこの儚げな少女、普通盛りの1杯を平らげられるかも不安であった。事実、最初の2・3口はスローペースだったのもらしいと言えば確かである。

…が、其処から何故か爆発的な加速がかかると、他の2人が半分にも差し掛からない内に1杯目を平らげてしまう。

 

続く2杯目は大盛り。これもペロリと完食。その様子には流石の田所も息を巻く。

因みにこの男は大盛り3杯を食し、シメに普通盛りを頼んでいた。

ラーメンのシメがラーメンとはこれもうわからない。

 

「ヘーキヘーキ。

遠慮せずに食えって言ったのは俺の方なんだし、こっちだってガッツリイくつもりだったから…姉貴達を変に待たせなくてホッとしてるんだよなぁ…」

 

「でも先生、まさか遥香と張り合うとはね。

流石に敵わないかと思ってたよ」

 

「本当。遥香ちゃんが食べるペースで競えるの、先生が初めてかもしれませんよ?」

 

「え、何その太鼓判は…」

 

「ふふふ、行こうと思えばまだまだイケますよ?」

 

「ファッ!?胃袋が深すぎィ!

凄いですね、これは凄い…」

 

如何やら印象などはこの場では(厳密には遥香の食欲に於いてだが)役に立たないようで、昴やみきもその強靭さは認めるところであるようだ。

 

そうしている内に頼んでいた2杯が作り上がり、2人は一礼と共に其々受け取る。

食べ終わった組はお冷を喉に通していた。

 

「ズッ、ジュッ、ズッ、ズゾズゾズゾズゾズゾゾゾゾゾッ!ジュリ!ズルッ、ジュリィ!ジョジョジョジョ!

ああうめぇ…あぁ^〜うめぇなぁ!」

 

絶望的に食べ方が汚いのは如何にかならないのか。無理でしょ(諦観)

犬が餌にかぶりつくが如くに勢い良く食べる田所。それとは対照的に。

 

「ズズズッ、ズルッ。ズズッ、ズ、ズルルンッ」

 

あくまで淑やかに、上品に啜る遥香。

その食べ方の随所には彼女の育ちの良さが表れている。何処となく洗練されたそれは、何か芸術的で美しい。

 

…早さで成人男性である田所と渡り合っている時点で十二分におかしいのだが。

何で普通盛りを食する田所よりも大盛りの丼の方が減りが早いのだろうか。麺だけでなく、スープまでも。全くもって意味不明である。

 

「ふぅ、御馳走様でした」

 

「ズーーーッ…ぷはー☆ 御馳走様。

HRK姉貴早い…早くなぁい?

いやどう考えても早ぇんだよォ!」

 

「相変わらずだね…」

 

「大食いか早食いの対決なんてしたら正直勝てる気がしないって、はっきりわかんだね…

男としてちょっと辛いですね、これは辛い…」

 

「後大盛りで…そうですね、3杯はイケると思いますよ」

 

「へぇっ!?さ、3杯ですかぁ!?」

 

推測する遥香の顔には笑み。きっと彼女は食べる事を快とする性分なのだろう。田所はそう判断する。

或いは寧ろ驚愕か。いや、多分にそうであろう。

 

「…ねぇ昴ちゃん。すっごく今更だけど私達おかしくないよね?」

 

「おかしくないでしょ。先生は見るからに食べそうな人だし、遥香はいつも通りだし」

 

「何時も食べに行く時とかはこんな感じなのか?」

 

「うーん、アタシ達に合わせる時もあれば自由な時もある、って感じですね」

「だけど遥香ちゃんが満腹だ、っていうのは今迄聞いた事ないですね…」

 

「腹八分。それが善い食べ方ですもの。

無理を押してまで食べる必要も無いと思うわ」

 

「その腹八分がとんでもないんだよね…

ホント、良く体型維持できてるよ…」

 

「私は運動部じゃない分、皆より頑張って特訓しなくてはならないから…」

 

「う〜ん…やっぱり体質だと思うよ。昔からそうだったよね?」

 

「さぁ、そうかしら?」

 

露骨に顔を逸らす遥香にあっ、逃げたなどと言うみきと昴。

これを皮切りに、女子高生の会話にも花が咲く。

 

その様相を田所は端と眺めながら、晩餐会の時間は過ぎていったーーー。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「ん?昔って事は、3人は幼馴染か何か?」

 

すっかり暗くなった夜分。

田所は3人を其々の家に送り届けていた。春先で浮ついている変質者等の対策である。

 

ふと洩らした質問は、先程の屋台での一幕を思い出したものだ。

 

「遥香ちゃんと私はそうなんですけどね。昴ちゃんはこの学校に入ってから親友になったんです」

 

「そうそう、今じゃ3人揃って仲良し星守組なんですから!」

 

「いいねぇー!交友関係を広げていくのは大事だって、それ一番言われてるから」

 

肩を組む3人を見て、田所も御満悦顔だ。

 

 

 

其処からも歩き続けながら、様々な事を話した。

 

勉強について、学校について、特訓はどうだ、と真面目な話もあれば、3人の私生活についても交えた楽しい楽しい帰り道。

 

 

 

そんな道も、各人が此処までで良いと言った箇所で終わりを告げる。

 

「本当に大丈夫か?なんなら家迄見送っても構わないが?」

 

「大丈夫ですよ。皆此処からは近いので」

 

「と言うか、先生までいるの知らせてないしね…

送ってもらっただけって言ったとしても、多分家族全員びっくりするでしょ」

 

知らないおっさんが自分の娘と帰って来たら、びっくりするどころか普通はひっくり返る。

 

「そうですねぇ…なら此処でお別れするのもね、しょうがないね…」

 

「でも明日からは、先生としてまた会えますから!」

 

「おっ、そうだな(肯定)

これから宜しく頼むよ〜」

 

「はい!先生…今日はほんっとうに、有難う御座いました!」

 

「おう!気をつけて帰って、後…歯磨けよ!」

 

「ふふっ、そうですね。しっかりとします」

 

「じゃあ姉貴達、また明日な!」

 

 

田所が最後の言葉を発した途端、3人は少し不満気で不機嫌そうな調子になる。

 

これには流石の田所も、驚きを隠せない。何せ良いサヨナラを決めたと思った最後にこれである。

 

「え、何その顔は…(困惑)」

 

「やっぱりアレだよね…」

「うん、アレだね…」

「アレですね…」

 

「いやアレって何だよ(哲学)」

 

「先生…その姉貴って呼び方は、ちょっと止めてもらいたいんです」

 

「な〜んか壁を感じちゃうんだよね、

その呼び方はさ。他の皆も困ると思うな」

 

「それにあの時は…私達が諦めかけたあの時は、名前で呼んでくれましたよね?」

 

少女達が進言したのは、田所が女性を呼ぶ際の呼称についてだった。

どうやら3人とも、姉貴と言うのはお気に召さないらしい。

 

「これから先…もしかしたら私達が卒業するまで一緒にいるかもしれないんです。

だったら互いに壁なんて作らず、仲良くするのが良いとは思いませんか?」

 

「…ほんとぉ?」

 

「ホントホント。気軽に呼び捨てで良いからさ!変に呼ばれるよりも、その方が安心するよ」

 

「…そんなもんですかね?JKとの付き合い方はよくわかんねぇな…」

 

「いいんですよ。それに私達は皆、先生に助けられたんです。大袈裟なんかじゃない、命の恩人なんです。

そんな人に邪険にされたら、流石に変な気分になっちゃいますよ」

 

別に邪険に扱う訳じゃないんだけどな…とボヤきながら、田所は思案顔で少女達1人ひとりに目を向ける。

 

共通してるのは、皆期待の眼差しで田所を見ていることだ。

 

 

 

ーーー暫く唸ると息を吐き、参った参ったと両手を挙げる。

 

 

 

「わかったわかったわかったよもう…

まぁ改めて、これから宜しく頼むな。みき、昴、遥香。俺の初めての生徒達よ」

 

 

観念したかのような彼の顔は、何時だったか見えた優しい顔付きだ。

 

一方の3人はしてやったりと言わんばかりに無邪気な笑顔。

 

何が可笑しいのか、不思議と笑みが零れる。

 

何だろうか、何故だろうか。

名前を呼ぶだけだと言うのに。

『姉貴』を外しただけなのに。

 

どうしてこんなにも滑稽なのだろうか。

どうしてこんなにも暖かな気持ちになるのだろうか。

 

 

「何だよお前ら嬉しそうじゃねえかよ〜…

ああ^〜もう顔から火でちゃいそう!(半ギレ)ハイもう終わり!閉廷!以上!皆解散!」

 

 

そんな彼女達を見て何かクるものがあったのか、田所は慌てふためいて後ろを向いてしまう。

 

これは意外だった。

平時には飄々として、戦場ではイロウスにも怯まず苦境にも折れない眼前の男が見せた、恐らく初めてだろう“隙”。

 

これもまた堪らなく愉快で、遂には吹き出してしまう。

 

嘲笑などではない、心からの笑い声が木霊する。

この間田所は居心地悪そうに頬を掻いていた。だが彼は逃げ出さない。

ある言葉を待っていたからだ。

 

少女達の笑い声が止むと、先生!と声がかかる。

 

振り返る。

 

その先にいるのは、良い顔をした3人の少女。

星を守る命を背負った、ただそれだけの、普通の女の子。

 

彼女達は手を差し出し、輝かしい笑顔で男を迎えた。

 

 

 

『先生!これから宜しくお願いします!』

 

 

 

 

 

2045年4月某日。

 

この日を境として世界にある変革が起きる。

大局的にはある2勢力が再び結びついた話だが、それはこの場に於いて否。

 

神樹ヶ峰女学園に男性教師が赴任した?惜しい話だがそれも否と告げる。

 

起こったのはそう。

 

 

 

1人の男と3人の少女に絆が芽生えた事である。

 

この絆を渦の目として、世界は変わり始める。

それが意味するところは、今はまだ、誰も知らない。

 

 

第1章 完

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

運命は廻り始めた。

 

 

 

「先輩、上手くやってるんですかね?」

 

「それを確かめる為に俺達が視察に入るんだゾ。■■■■先生に良い報告してぇよな〜俺もな〜」

 

「…そうですね。あっ、あっちに行くならいっそ、■■君にも挨拶して行きますか?」

 

「おっ、いいゾ^〜それ。だけど今からアポなんて取れるかゾ…?」

 

「前に聞いた時、僕達が行くタイミングで丁度空く日がある、とは言ってましたよ」

 

「そっかぁ…よし!じゃあアイツら纏めて様子見に行ってやるぜ!」

 

「ありがとうございます…

で、先輩。沢山詰め込んでるみたいですけど、流石に人形は1つにしましょうね。荷物になってしまいますよ」

 

「ポッチャマ…」

 

 

 

一度(ひとたび)交差した道は、

 

 

 

「ふぅ…今日はもうあがりかな…」

 

「お疲れ様です、■■先輩」

 

「あ、■■ちゃん。お疲れ様」

 

「お疲れ様です、先輩。

今から■■と一緒に駅前のカフェに行くんですけど、先輩も如何ですか?」

 

「あ^〜いいっすね^〜

でも、2人のお茶会に僕が参加しても大丈夫?」

 

「とんでもない!先輩なら何時でも大歓迎ですよ」

 

「そう?じゃあ遠慮なく…おじゃましまーす」

「どうぞどうぞ。ふふっ、楽しいお茶会になりそうですね」

 

 

 

捻じれに拗れて、

 

 

 

「店長いるかい?」

 

「お、■■か。お仕事帰り?」

 

「ああ、ちょっと今回は遠出になりそうだからね。今の内に書類の整理くらいは終わらせないと」

 

「大変だねぇ、遅くまで。とりあえず何飲む?」

 

「ミルクでも貰おうか…アイスミルク、ダブルってOK?OK牧場?」

 

「そう言うと思った。さぁどうぞ」

 

「ん、ありがとよぅ。

……あぁ^〜うめっ、うめうめっ!」

 

「…なあ■■。彼のーー田所君の話は聞いたか?」

 

「星守、か。全く懐かしい話じゃい…」

 

「どう思う?」

 

「どう、ってそりゃあーーー」

 

 

 

 

今、再び交わる。

 

 

 

 

「……………………」

 

「今日も御参りか?ほれ、これ供えてやれや」

 

「師匠…ごめんな、何時も来てくれてさ。■■■もきっと喜んでるのぜ」

 

「阿呆、お前が稽古サボりださないか見張るだけだ」

 

「と言いながら手を合わせてくれるなんてな。私は個人的に師匠のそーゆうとこ大好き」

 

「調子いい事ばっか言いやがってこの野郎…

今日も直々に、空手を教えるからな」

 

「お、おう…師匠〜、程々で頼む!」

 

「言うじゃねぇかお前…いいぞ。 お望みならならさっさと始めなきゃな。

行くぞ」

 

「あっ、師匠!

■■■、ごめんな…また来るよ」

 

「■■■!早くしろ!」

 

「お゛お゛お゛お゛い゛!師匠ちょっとー!」

 

 

 

未知のエリア(レ)へ、いざ鎌倉ーーー。

 

 

 

次回、第2章

 

幼星群と集う雄 〜星雄遭逢編〜

 

お楽しみは、これからだぞお前。

 




此処まで1章を、ひいては本作をお読み頂き本当に有難う御座います…
また来年、3月以降にお会いしましょうね〜






激寒注意・激寒注意
此処から先はノンケもビックリの後書き染みた何かがありますあります

「後書きなんて必要無いんだよ!」な方はこのままブラウザバックの上、ハーメルンを楽しんでくれよな〜頼むよ〜




(淫夢要素は本当に)無いです。







初挨拶です。筆者の変態糞先生です。

この度はホモ諸兄もノンケ諸兄も、本作をお読み頂き本当に有難う御座います。
冗談抜きの初執筆である本作は暖かな感想や評価、何より皆様の御愛読に支えられて、何とかバトガ1章に当たる部分まで進行が叶いました。

感謝の念は尽きませんが、本題としてこの欄では言いたかった事の解説なり何なりを進めていこうと思います。これまた筆者の自己満足が多分に含まれておりますが、どうぞ御付き合い下さいませ。


1.この作品を執筆するにあたり

当サイト、ハーメルン様に於いて「バトル淫夢」で検索をかけると、なんとジャンルがFateしか無かったんですね。(投稿以前時点)
戦闘描写を含む淫夢クロスは多々あれど、これには少し驚きました。
更にバトガ小説を検索しても、件数が少なくて意外でしたと。
「これはいけない」と思い、「よし、じゃあバトガ×淫夢をぶち込んでやるぜ!」と意気込んだ結果が本作です。

2.バトル淫夢がタグに入ってないやん

執筆中に思ったのが、「バトル淫夢とは何か」という疑問。
バトル淫夢の先駆者様やニコニコなどを見ていると、このジャンルの見所さん!?はやはり『淫夢勢vs淫夢勢』や『茶番もあれど、基本は手に汗握る展開』だと気付いた次第で御座いまして。
『淫夢・原作勢vs原作敵勢』だったり『今後茶番マシマシで戦闘少ないかもよ?』などはバトル淫夢に入らないのでは?と思い、冒険譚の様な意味を込めて『活劇淫夢』とさせて頂きました。

3.何故田所は『浩二』ではなく『浩仁』なのか

これは作者の所為です。
多くの作品で描かれる野獣先輩ですが、本作でも描写するにあたり筆者はある願いを持っていました。

人を教え導くならば、力としての存在として在るよりも人として熟した真人間として在る方が良いと。

より人間らしさを描写するぞ、と自身を戒める為、『浩二』の『二』に人偏を足した『仁』として『浩仁』と致しました。
やっぱり教職は人間の鑑でないといけませんしね。
汚職?やめてくれよ…(魂の叫び)


言いたかった事は以上です。

最後に繰り返しとなりますが、本作は皆様の閲覧や感想、評価で成り立っている作品で御座います。
感想を貰えたのは本当に嬉しく、お気に入り登録者が増えるのもまた大変に喜ばしい話です。

それでも筆者は初執筆故、まだまだ表現が稚拙な箇所や文脈の錯綜が多々あります。
そんな際には、「ここいる?」などと御指摘下さいませ。改善するよう、精進致します。

ここまで来れたのは一重に皆様のお陰で御座います。
足は遅くなりますが、行けるところまで駆け抜ける所存ではありますので、これからもどうぞ宜しくお願い致します。

以上、変態糞先生でした。
皆様良いお年を。

2016.12.30記す




長げぇんだよぉ!


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おまけ キャラ紹介&用語集(〜1章)

43個ぐらいが集まって作られた蛇足です☆
1章時点で判明している情報が主に記載されています☆
読んでくれてありがとー☆


キャラクター紹介

 

第0話初出

 

・田所浩仁

淫夢側主人公。熱い人間の鑑であり、他人を煽るなど無礼な面もある人間の屑。

女性しかいない神樹ヶ峰女学園に初の男性教員として招かれる。1章終了時点で無事星守クラスの担任になる。

嘗てその戦闘力からコロニー側即ち星守派の人々から追い出された《英雄》の1人であるらしい。

(因みに名前が浩二では無く浩仁なのには理由あり。1章エピルルォ!?ーグ参照)

 

・星月みき

バトガ側主人公。高校1年。

最初に田所が邂逅した学生かつ星守。

よく田所に発言を弄られているが、そんな悪感情は無いらしい。

戦闘に関して何か特化したものは無いが、闘い慣れてはいるようで、小型を即座に処理したり田所のアドバイスを理解し実行出来たりする。

3人の中で先頭に立ち、1章中盤で友の為に特攻をかけようとした等、友達想いだが自身を顧みない面が見られる。

装着中の星衣はフェニックスモデル。

 

・八雲樹

神樹ヶ峰女学園教職員。星守達のオペレーターも務める。

1章終盤で、田所の星守クラス担任就任を認めた。

田所の扱いについても何か思うところがある。

 

第1話初出

 

・若葉昴

高校1年。端的に言えばボーイッシュガール。同学年の2人とは仲が良い。

スポーツ万能であり、転じて戦闘センスも良い。重量武器の槌も難なく扱える。

星衣はユニコーンモデル。

 

・成海遥香

高校1年。見た目文系チックな少女。高1は3人とも本当に仲良いわね。

トリオの中では頭脳・サポートに長ける。緊急事態に陥って真っ先に連絡を試みるなど、大局的にものを見る事ができる。

星衣はリヴァイアサンモデル。

 

第3話初出

 

・???

限りなく人間に近いが異形の耳を持つ、緑髪の少女。

莫大な瘴気を内包し、任意にイロウスを生成出来る。田所曰く初めて見る存在。

イロウスを友達と呼ぶ、現在地球に居座っている等、謎が多過ぎる。

 

第5話初出

 

・楠明日葉

高校3年。星守を支援する一族の1つ、楠家の令嬢。

お真面目さんで、結構責任を感じ易い人物。(だからメンタルクソガバな訳じゃ)無いです。無いから(迫真)

1章では進言をしたり解説役をしたり…みきを除けば発言数はトップだろう。特に5話以降。

田所ら《英雄》についても知る所がある様だ。

星衣はリヴァイアサンモデル。

 

・芹沢蓮華

高校3年。ダイナマイッ!ボディが特徴的な、女の子好きのク○○ズ(○ソレ○)お姉さん。

1章ではヒーラーを勤めたが以降はあまり描写に参入せず。

シリアスムード故目立たなかったが、キャラは濃い為2章以降の活躍に期待がかかる。頑張ります。頑張るから蓮華おじ兄貴許して

星衣はフェニックスモデル。

 

・粒咲あんこ

高校3年。すげぇ毛量を洗濯バサミ型の髪留めでとめてツインテにしたダウナー系少女。この娘に関しては画像を見りゃわかる。

1章ではスナイパーだったり、割とキレる面だったりを見せた。

2章以降にも乞うご期待。だからあんこおじ兄貴許して(対句)

星衣はユニコーンモデル。

 

第8話(後)初出

 

・神峰牡丹

名称のみ。神樹ヶ峰女学園理事長らしい。

明日葉の言った、神峰の名字を持つ存在だが…?

 

・AKYS/秋吉亮

名称のみ。迫真空手に通ずる人物であり田所の師匠、だそうだ。

多分ホモは察してる(確信)

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

用語一覧

大体は以降空気化するんだよなぁ…

1章の参考資料くらいの気分で読むのがいいってそれ一番言われてるから

 

第0話初出

 

・神樹ヶ峰女学園

コロニー内における中高一貫の女子校。

古くから存在し現在コロニーの核部として機能する自然存在、《神樹》を囲う様にして建てられた学園である。

ある事情から創立以来教職員・事務員までも女性であり、男性は田所のみ。

 

・神樹

バカでかい木。世界樹か何か?

人に良い独特の気を放っている、所謂守り神的存在。

人の祈りに応える性質を持っており、星守はその力を受けた代行者。

 

・星守

神樹の力を行使し、瘴気を祓う事が出来る唯一の存在。

誰もがなれる訳ではなく、12〜19歳の少女かつ神樹に選ばれた者しか覚醒出来ない。

故、神樹ヶ峰女学園という組織だった体系によって管理されている。

第8話(後)にて、古来より星守などがいた事が示唆された。(その様な一族がいたと言う点で)

 

・イロウス

瘴気の凝縮によって生成される敵性生命体。描写外ではあるが、所謂現代兵器は通用しにくい。

小型と大型が存在し、小型は自身と同種の大型と群れを作る。大型は瘴気を発生させる事が出来る。

大体のイロウスは体躯の一部が透き通ったゲル状となっており、そこから見える球体、核部を弱点とする。

1章では獣の様な外見のロウガ種や、スライムの様な…と言うよりはまんまスライムのゲル種が登場。

他にも多数の種が存在する。

 

・ラボ

神樹ヶ峰女学園に存在する施設。一般生徒は立入禁止。

神樹の一部分が室内中央に居座っていて、エネルギー抽出や加工等をしている。

それだけで無く、コロニーと地球を繋ぐ転送装置もあり、ある意味では星守達のベースキャンプとも言える。

 

第1話初出

 

・奪還授業

瘴気による汚染が進行した地球を清め、人類の活動圏を取り戻していく為の作戦行動。

星守でも、瘴気下においては時間による活動制限がある為に授業と言う形をとっている。

基本は瘴気が薄まった所で実行する。

 

・瘴気

人類にとってクッソ有害な物質。一般人が当てられたら大体死ぬか、良くて障がいが発生。

凝縮してイロウスになる他、大型イロウスであれば自分で生成出来る。

但しその濃淡には波があり、その性質を利用して奪還授業が行われる。

 

・渋谷

渋谷。終わりッ!

 

・下北沢

下北沢。田所の母校たる大学があったらしい。

然し人類が地球を脱したのは5年前の筈だが現在田所は24歳。その時点では19歳のはず…どういう…事だ…?

 

第2話初出

 

・星衣

星守達の戦闘服。任意に発動可能。

神樹の力が込められており、イロウスに対する強力な特効性を持つ。

然し、気力や集中が切れると強制解除されてしまう。

現在判明しているのは、フェニックス・ユニコーン・リヴァイアサンの3種である。と言うより、本作では基本的に多分これのみを考えて貰えれば良い。

星衣にはそれぞれスキルと言う大技が1つ搭載されている。

 

第3話初出

 

・なでなで

ゲームほんへに於ける、星守と絆を深める行動。

ツンだろうがヤンだろうが×××してようが中学生だろうが高校生だろうが喜ばせる不思議行動である。

実際にやると多分TDNセクハラだと思うんですけど(凡推理)

 

・神樹の武器

(ソード)(スピア)(ハンマー)(ガン)(ロッド)の5種からなる星守達の武器。

イロウスの表皮を容易に裂き、核部を打ち壊すことが可能。

同じ種でもデザインは全く異なり、例えばみきと明日葉は両者共剣を使用するが、みきが所謂西洋剣なのに対して明日葉は太刀の形状をとる。

 

・神樹のお守り

瘴気をレジスト出来る。但し継続時間が2〜3時間も持たず、瘴気が濃すぎると更に短くなる為過信は禁物。

 

第4話初出

 

・○舞○○翔

星衣フェニックス、星衣ユニコーン、星衣リヴァイアサンに搭載されたスキル。

フェニックスは炎舞鳳凰翔。

ユニコーンは雷舞聖獣翔。

リヴァイアサンは蒼舞海皇翔。

 

・シスコン

■■!?何故■■が此処に?逃げたのか?自力で脱出を!?■■!

多分某動画サイトで嘗て、野獣先輩と並んで「全ての動きを切り抜かれる男」として名を馳せた人物だと思うんですけど(名推理)

ん?つまりKRSKさんは淫夢ファミリーだった…?

ーーーあっ、そうだ(天啓)

 

・はえーよ田所

人間がD・ホイーr…バイクと合体する訳無いだろいい加減にしろ!

 

・美味いラーメンの屋台

夜行きたくなる…ならない?

正直エピルルォ!?ーグで描写するとは思わなんだ。

 

・覇

オーラか何か?

 

・迫真空手

田所の詠唱に含まれた一節。(某学園奇伝バトルオペラなADVは多分関係)無いです。

一般人であるはずの田所がイロウスを打ち倒した決定打であるが、詳しい事は分かってはいない。

いつか明かされる時が来るでしょ。

 

・邪拳・夜

田所が迫真空手として放った一撃。大体20前後のイロウスを屠った。

黒の揺らめきが拳に宿り、波導の様に侵食していったが、本人曰くこんなんじゃ無い。らしい。

 

第5話初出

 

・YHN

ああ!それって留学生?

詳しくは「ヨハン・アンデルセン」で調べれば良いんじゃない?(適当)

 

・BB展開

拳銃や双剣、果ては宝石等…様々な事象を作り出す田所の技。

由来や理屈は現時点で不明。詳しく分かる時が、いつか来るだろう。

 

・星の箱舟

詳しい事は述べられず。

ただ、星守達に関連する何かである事に違いは無いだろう。

 

・英雄

強力さ故に星守支持者やその一族等に追い出されたと言う人物達。田所もその1人だという。

田所や作中で示唆されたAKYS以外にどんな人物がいるかは不明。

然し此の世界に於ける重要人物である事には間違いないだろう。

 

第6話初出

 

・スキル

大胆な大技はホm…星守の特権。

当然乱発出来るわけでは無い。

星衣によって異なるとの話。

 

第7話初出

 

・結界

瘴気を彈き、地球をあるべき姿に戻す為に張る。

奪還授業中ずっと瘴気に当てられた状態で結界が展開されると、神樹の力による平癒効能で2回も男汁を出せるらしい。

 

・神樹の結晶

上記結界の素となる、神樹の種。

小さいながらも大量のエネルギーが内蔵されている為、武器や星衣等に加工されたり、緊急時にはブーストとしても働く。

作中に於いては、高1組3人をブーストして枯れた物も登場した。

…ぶっちゃけお守りの意味ある?とは思うが気にしてはいけない(戒め)

 

第8話(前)初出

 

・仮想体

詳しくは述べられず。

字体から、恐らくはソリッドビジョンか何かかと思われる。

 

・○ロリーメイト

PRGS「イイぞぉ!今のお前の味で、空腹を満たしてしまえーー!」

BRR-「お前達が満腹の意思を見せない限り、俺はその空きっ腹を満たすだけだぁ…!」

 

第8話(後)初出

 

・○○が△つ…来るぞ■■!

何が来るんだアストラル!

 

第00話初出

 

・歯磨けよ

風呂入ったり歯磨いたり顔洗ったり宿題やったり風邪ひかなかったりしろ(至言)

 

・ミルクでも貰おうか

蟹。

 

・アイスミルク、ダブルでね!

ヒューッ!

 

 

・終わり

閉廷!以上!皆解散!

 




本当に40個近くあるのは草


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第2章 幼星群と集う雄 〜星雄遭逢編〜
迫真テスト!教官と化した先生 ‘一’家団欒


新年なので初投稿です。
オッハーーーーーー!!(激寒)

バトガアニメPV、そして迎えた2周年の興奮からか書き貯めも無くあげちゃったゾ…


神樹ヶ峰女学園。

コロニー最大の中高一貫女子校であり、奪われた地球を取り戻すべく闘う少女達、星守を擁する機関。

 

そんな学園が、創立以来初めての男性教師を雇ったと言うのはここ最近の話の種である。

 

人柄はどうだ、学歴は、ルックスは、顔は、顔は、顔は。

様々な憶測や噂が飛び交い、街は静かに盛り上がる。主に奥様方中心だが。

 

さて、そんな噂の渦中の男とは言えばーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホラこの問題で注目するのは…こ↑こ↓

こっから反応量計算にもっていけば解けますねぇ!」

 

赴任2日目から既に教鞭をとっていた。今回の担当教科は高3の化学である。

そう、この授業は一般生徒へ向けてのものだ。

 

「いいka〜?化学の計算…特に理論化学なんかは、常に単位の次元を意識してくれよな〜

何を求めたいかも何を使うかも、全部単位が教えてくれるって、はっきり分かんだね」

 

黒板に書いていくのは一見複雑な式。

なれど1つ1つは意味が分かりやすくなるように分割されており、生徒達は頷きながら板書をとる。

 

写している間に時計を見ると、授業終了は5分前に迫っている事に気付く。

それを確認した所でいそいそとプリントを小分けにして配る。これは田所お手製の練習シートと例題が記載されたものだ。

 

「復習教材は今日の範囲と次の時間の話もあるからちゃぁんとやっとけよやっとけよ〜

じゃあ今日はこれで…終わりッ!閉廷!以上!皆解散!」

 

 

 

 

田所浩仁は先生として招かれている。

 

それは『星守クラスの担任』としてが主な命である事に違いは無いのだが、それだけでは一般生徒との断裂が生まれてしまう。

曰く、不平等だと。私も仲間に入れてくれよと。星守達(お前ら)ばっかりいい思いしてんなよと。

 

こんな事態になって星守達にストレスを与えるのは本意では無いと、田所自身の提案により『各学年で教える教師』としても動く事になったのだ。

 

担当は本人の希望とは言え化学と数学、国語、更に体育と多忙な上にまるで統一感が無く、その上中1から高3までみるというのだから驚きである。

だがこの学園では、科目1つ取っても複数の分野に分かれているものも存在するので、本来の目的を阻害する事が無いように配慮されてはいるのが幸いか。

 

「ウーン…」

 

で、現在一般生徒向けの授業を終えて職員室に帰還…ではなく、ある目的からラボへとやってきた訳であるが。

 

「やっぱり特訓だけだと実際の強さが分かりませんね…これは分からない」

 

田所が目にしているのは、ラボのディスプレイ、その1つに映し出された星守達のデータだった。

基本的なプロフィールと共に記載されているのは、今迄の訓練に於ける動き方や数値化された指標(パラメータ)を用いた強さの比較。

 

この精密な資料を見るのも悪くはないだろう。何せ当人のイロウスとの闘い方まで映像化されているのだから。

…最もそれは、仮想体と呼ばれるデータ構築体を用い、擬似空間で行われた戦闘ではあるが。

 

「それにまだ下の学年は情報も少ないし、何よりひなたや桜…新しく星守になったばかりの中1の戦闘データが少ないんだよなぁ…

まだ星守になったばかりで仕方ないのも分かるが…こんなんじゃ実力測れないよ」

 

そう。田所の頭を悩ませるのは、現在の彼女達の実力についてだった。

 

先日攻撃くれた瘴気好きの異形の嬢ちゃん(多分若い)と交戦し、更に奪還授業で見れた闘いから判断して、今の星守達は上位の存在を討ち斃すにはまだまだ力が足らないと、そう結論が見えたこの男。

 

足らないならば鍛えれば良いとはするも、伸ばすには当人らの癖なりを把握する必要がある、と思っていたのだ。

 

「何かいい案…

全員の闘いについて一遍に把握できて…ああ後頭も使わせたいですねぇ!

こんな感じィ…これもうわかんねぇな」

 

ウンウンと唸り、改めて戦闘映像を確認する田所。

 

「しっかし、いい作りしてるねぇ!

架空のデータ上でこんなに動けるなんて、これ作った人って…勲章ですよぉ…?」

 

仮想体訓練は、当人をスキャンしてデータ空間に送り込み、そこで同じくデータ化したイロウスと闘うと言ったもの。

観れば観るほど非常に完成度の高いシステムだ。その気になれば電脳世界でのウイルスバスティングなり最強進化系の決闘(デュエル)なりが出来そうである。

 

架空上での、実戦。

 

「ん?」

 

田所の頭に“何か”がポップアップする。

 

組んだ腕を解き、髭はないが脂ぎった顎を2本指で撫でる。

ウンウン言うのを止めると、目を細めて眼前の映像を注視する。

 

其処に映っているのは、少女達が武器を手に駆け回る光景。

 

紛れのない、戦場の風景。

 

「ーーーあっ、そうだ(天啓)」

 

以って“何か”は“閃き”へと昇華する。

 

一瞬目を見開いたと思えば、直ぐに見せたのはクッソ汚い野獣の眼光だった。

 

「YKm…八雲姉k…八雲先生!」

 

「…呼びづらいなら如何様にしてもらって構いませんが?」

 

田所が声をかけたのは、今日もラボに詰めていた八雲樹だ。

呼ぶ際のガバガバな言い直しから、返答はあからさまにジト目で返ってきたのだが、田所は気にしない。

 

ちょっとした事(・・・・・・・)があったし、多少はね?

それよりも明日の訓練、早速だけど一発ぶち込んでやるぜ!」

 

「随分早くから動きますね。もう少し機を見るかと思いましたが」

 

「と、言っても本格的な訓練にするわけじゃないんだがな」

 

「?一体何をするおつもりで?」

 

首を傾げる八雲に、人差し指をあげて返すのは。

 

 

 

「そうですね…あの、テスト形式の、っていうんですかね。

ちょっとゲームに近い感じ?」

 

 

遊戯(ゲーム)の宣言だった。

 

 

 

「あっ、そうだ(唐突)

作って貰いたいのがあるから手伝ってくれるかな、ちょっと…」

 

「???」

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

翌日。

昼休みも終わり、5時間目が始まる頃。

星守クラスの15名はラボに集まっていた。

 

「言われた通り集まったけど…何するんだろうね?」

 

「先生は『お楽しみはこれからだぞ』って言っていたけど…一体全体何なんだか」

 

この日の朝、田所はクラスのホームルームで、

『今日は確か5時間目と6時間目が特訓だな。ですのでぇ〜(ねっとり)ラボへ集まってくれよな〜

ヘーキヘーキ、お楽しみはこれからだぞ?』

と、教職にあるまじきTNP(テンポ)で連絡していたのだ。何だこのチャラ男!?(驚愕)

 

星守クラスの少女達はその日によって訓練や授業などが入る時間が異なっている。要は時間割の事だが、丁度この日は午後の両時間とも特訓の日だったのだ。

よって十中八九特訓には違いないのだが、如何にも気にかかる。

 

あの人物がお楽しみなどと述べたのだ。

言葉面だけ見れば楽しそうな事を想起出来るが、そうも行きそうに無いのがあの先生(田所)だろう。

 

田所を関わりを持った6人…高1と高3は何とは無しに感じ取っていた。

 

…中学生組、各学年2人ずつの6人の大体が目を輝かせているのは、純粋にお楽しみとやらに期待しているのだろうか。

 

そして、ザワつきが大きくなった所で手を鳴らす音が耳に届く。

 

「皆さん揃ってますね」

 

ラボの奥から現れたのは八雲だった。

 

「はい、15名揃っております」

 

「了解したわ。なら5時間目を始めるけど宜しいわね?」

 

「でもその5時間目で何をするかを聞いていないんですけど…」

 

「そうね…なら担任から聞けば良いと思うわ」

 

「えっ、先生ですか?でも何処に…?」

 

「後ろを見てみなさい…」

 

ため息混じりの八雲の指摘に、少女達は次々と背後を振り返る。

 

 

 

其処にいたのは。

 

 

 

 

 

 

 

椅子に座って足を組み、

 

 

 

 

 

 

 

 

足首を揺すってリズムを刻み、

 

 

 

 

 

 

 

 

何故か華麗にギターを弾く担任、田所だった。

 

 

 

 

 

更に謎だが弾いているのは名曲と名高い「L◯ve T◯gether」、そのサビである。

加えてその旋律を、顔に似合わぬ透き通ったヴォイスで口ずさんでいるのも、この不思議空間を加速させている要因だ。

 

 

 

「…何やってんのあれ?」

「楽器?」

「上手いな…いや意味はわからんが」

 

その奇妙すぎる行動に生徒達が鳩が豆鉄砲を食らった顔をする中、対して終始ドヤ顔の田所はサビの終わりと共に演奏を終える。

 

「演奏完了です…」

 

何が演奏完了だ。

 

そのままのっそりとギターを端に避ける様、それを誰がツッコめようか。

シュールで、謎。形容しようとも例えようが無い。

田所の行動が全員を“?”の渦に引き込んだ所で、彼は改めて全員の前に立ち…

 

 

 

「ーーーこれもうわかんねぇな」

 

『何でですかっ!?』

 

漸く盛大にツッコまれた。

 

「いや緊張してるとやる事もやれないしね、しょうがないね…」

 

「緊張と言うか只々意味不明なだけだったんですけど!?」

 

「戦闘特訓の時間に内容の予告も無しに呼び出されて、そんな中いきなり演奏会なんてされてどう反応すればいいんですか…」

 

「あっ、そっかぁ…(反省)」

 

みきや遥香のツッコミに対して晒される間抜けたアンニュイフェイスに皆頭を抱える。

やっぱりこいつ精神状態おかしいよ…と雄弁に語る全員の顔を見て、田所は。

 

「んにゃっぴ…早く始めて欲しいみたいですね…しょうがねぇなぁ(悟空)

じゃあやる事を言うゾ…今日は俺が直々にィ、テストをする」

 

テストの実施。それを言い付ける。

 

期待していた中学生組などは落胆した様に口をへの字に曲げて、不満顔だ。一部ではブーイングもあがっている。

 

「ええーーーっ!?テストなんて聞いてないよぅ!」

 

「ぶぅ〜ぶぅ〜、テスト反た〜〜い」

 

「あっ、待ってくださいよ。今回はテストって言っても、所謂テストよりかは体力テストみたいな感じゾ。

だからそんなこと言わずに気楽に楽しんでくれよな〜頼むよ〜」

 

「然し『楽しめ』と言われても…

具体的な説明をお願いできますか?」

 

ブーイングを収める為の田所の言葉はやはり曖昧で、其処に明日葉が説明を要求する。

 

「そうですねぇ…やっぱりこれは、 王 道 を 征 く …ゲーム系ですか。

まあ要は星守達皆で強めな1個の敵を倒す、協力する感じのイベントだと思ってくれ」

 

「ゲームと聞いちゃ黙っちゃいられないわね。さしずめ多人数レイドイベ、といった所かしら」

 

「あんこ早いっすね…お前もしかして、無類のゲーム好きか?(超速理解)

事実言う通りで、これから皆には15人で作戦を立てて敵を討伐してもらうからなぁ?」

 

「頭脳戦や連携も絡んだ、ある意味ではより実戦に近い訓練と言う訳ですね!

ではその敵と言うのは?先生の言い方だとただの大型ではないようですが…」

 

あんこがほんのちょっとばかり得意になった所で、田所から大雑把な説明が入る。

その言い様に何処からか解釈の声があがると、更に声の主は質問を投げかける。

 

「ん?あっ、そうだ(想起)言ってなかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今からお前達と闘うのは他でもない、俺ですねぇ!」

 

 

 

 

 

 

 




と言うわけで味方同士で殴り合って分かり合う2章、星守編の開幕です。
予告詐欺だって?何で予告通りにする必要があるんですか?(暗黒微笑)
バトガ布教と言う初志を貫徹せんとする宣教師の鑑だゾ(大嘘)

今回からバトガ側のキャラがもりもり増えていきますが、ほんへ中に名前が出てかつ田所とちゃんと対話するまでは詳細をぼかし、個人の主張なども抑えて総意を統一しています。(特にこのシリーズ序盤では誰の発言かすら書か)ないです。書き手の屑がこの野郎…
いきなり9人も増えたら読んでくれる皆様のキャパシティ壊れる!壊れる!し、多少はね?

なので、バトガを知らない兄貴達はほんへDLして…遊べ
若くは場の雰囲気からこんな発言があがっていると察して下さい、オナシャス!
(つまり『これは○○の発言ゾ』とかをあまり考える必要は)ないです。

2章も相変わらずの一切合切ノープラン方式で書きます書きます


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迫真テスト!教官と化した先生 ‘二’律背反

前書きの前書きは…キャンセルだ。


 

 

『………………………………は?』

 

 

 

田所の口から出た言葉に、全員がポカンとなる。

 

今彼は何と言ったか。

 

仮にも星を背負った自分達15人を相手に、たった1人で闘いを挑むと?

 

「ルールは簡単。仮想空間で俺と闘って、俺の手から武器を放させればお前らの勝ち。全員が武器を放棄するか負けを認めたら俺の勝ち。

だったら15人一遍にかかれば良い…良くない?って思うかもしれないけど、其処はちゃんと追加ルールを設けるゾ?

分かったら返事ィ!」

 

再び唖然とした少女達に構わず、田所は平然と言の葉を垂れる。

 

「あの〜…」

 

「おっ、どうしたみき?」

 

「いえその、え、今から闘うんですか?私達が?先生と?」

 

「ん?今俺が直々にテストするって言ったよね?(無垢)」

 

大抵の人物は田所に対してこう思うだろう。

「ウッソだろお前?」「馬鹿じゃねぇ?」と。

実際に彼女達の大半は未だ、理解の追い付いていない目で彼方此方と目線を泳がせる。多分疑心に裏付いたものだと思うんですけど(凡推理)

 

だが、それはあくまで普通の場合。

 

田所を知る6人は、此処でも反応を異にする。

 

「………」

「あら〜…」

「…えぇっと」

 

口を結んで田所を見る明日葉。戦慄を隠せないのか冷や汗を浮かべる蓮華。諦めた様に天を仰ぐあんこ。

三者一様に顔が「これマジ?」と物語っている。

 

然し此方はまだいい方だ。

 

「はわわわわわわ……」

「ヤバイって、どうすんのこれ…」

「これは流石に…」

 

高1組の顔は真っ青だ。

当たり前だろう。彼女等はあの状況からの田所の闘いを直に見ているのだから。

何十、何百…とはいかないかもわからないが、兎も角大量に過ぎるイロウス相手に無双したそれを。

 

凡そ初耳の法を用いて一切の容赦無く敵を撃滅してみせた戦闘力は、言うまでもなく脳裏に焼き付いている。

そんな相手とーーー明らか以上の格上と闘えと言われて腰がひけるのも、納得が行くだろう。

 

「すっげぇ青くなってる。大丈夫か大丈夫か?」

 

「いやぁ…どうしろって言うんですかホントに」

 

「先生多分分かってていってますよね、私達が先生の闘い見てる事…」

 

「おっ、そうだな(適当)」

 

対してこの男、何処までがおちゃらけで何処からが本気なのか全くもって読めやしない。

…或いは最初から何も考えてなどいないのかも知れないが。

 

「え、皆して怖がってるけどさ、そんなに強いの?先生ってさ。

と言うか先生ってただの人じゃないの?」

 

「あー…何と言えばいいのやら…」

 

「兎に角普通じゃない、としか言えませんね…」

 

「ちゃんと『見れば分かる』も加え入れろ〜?

と言う訳でルール説明は…こ↑こ↓」

 

一体何が『と言う訳で』なのか。

そんな視線も意に介せず、田所は腕を上げて中空を指差す。

 

すると流石はラボ、計ったように近未来的ホログラムーーースクリーンが浮かび上がり、文字の羅列が現れる。

 

其処に記されている事はと言えば…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

迫真テスト部 ーー征の裏技ーー

 

一、15人で田所と対戦する。

 

二、勝利条件は田所の手から武器を離させる事。それに関しての手段は問わない。敗北・脱落条件は各人の武器の放棄とする。

 

三、15人一度にかかっても良し。分隊を作り、何回かに分けて闘いを挑むのも可。

 

四、戦力を分散させる場合、全ての試合に於いて観戦が可能。試合の間にはミーティングも設けられる。

 

五、同時に6人以上で挑む場合、規定内での手加減は保証出来ない。

 

六、全員星衣を展開し、普段通りイロウスを斃す様に全力で闘う事。

 

七、田所側の武器は木刀1本とし、木刀並びに手足を用いた白兵戦以外の特殊な行動は禁止行為とする。また、初撃は星守側からとし、田所はそれを必ず防御しなければならない。

 

八 王 子、勝ったら豪華プレゼントがある可能性が微粒子レベルで存在する…?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

…との事である。

何かとツッコミを入れたい所ではあるが、少女達は比較的真剣に上から読んでいきーーー

 

「おぉーっ、豪華プレゼント!?」

 

「うわぁ〜!どんなのかなぁ?」

 

最後の最後で物に釣られた。

何でも物で解決しようとするのは担任として如何なものか。教職の屑がこの野郎…

 

「ねぇ先生!このプレゼントってなぁに?」

 

「何だよお前ら嬉しそうじゃねぇかよ〜

それなんだけどな、

 

 

 

 

 

 

 

…まだ決めてませんでした(小声)」

 

 

 

は?

 

 

『えぇ〜〜っ…』

 

生徒達のこの落胆ぶりである。

場の空気を下げて下げて上げて下げてしか出来ないんかこの野獣ゥ!と声を荒げたい所さん!?だ。

 

「どうしょっかなぁ〜〜?八雲先生どう?」

 

最早信用のカケラも見受けられない視線を受けても尚動じず、薄ら笑いを浮かべながら田所は八雲へと意見を促す。

急な振りに対し、八雲は溜息混じりで答えた。

 

「そんな事言われても私からは何も言えませんよ…」

 

「いいじゃねぇかお前特訓の日だぞ(意味不明) だからなんか意見して、どうぞ」

 

「貴方という人は…」

 

意味不明で図々しい田所の物言いには、流石の常識人たる八雲も呆れ果てたかの様にゲンナリとした顔だ。

 

だがそれでも幾らかは考えてくれるのか、顰めた表情を思索のものと変えてから出てきた言葉はーーー

 

 

「そうですね…では、先生が負けた場合には…

常識と良識と道徳の範囲内で生徒に1つだけ、『何でもして』あげる、と言うのは如何でしょうか?」

 

 

ーーー男性(ホモ)に対して絶対に使ってはならないものだった。

 

「あっ、それかぁーーん?

…ファッ!?先生!何言ってるんすか!?やめて下さいよ本当に!

八雲さん!?ちょっと、まずいですよ!」

 

その意味を知ってかしらずか言ってしまった八雲に向かい、いつになく動揺と焦燥を露わにして田所は慌てふためく。

 

当然彼は知っているのだろう。

 

『何でもする』の言葉に秘められた恐ろしさを。

 

だが不幸にもその発言は少女達に聞かれてしまう。

 

「へぇ〜、何でもするねぇ…」

「何でもすると言ったのぅ」

「何でもするって…何でもするって事ですよねぇ…?」

 

『…じぃ〜〜っ』

 

言質を取られ、全員の眼差しを背負わされた田所に対し、

 

「え、何その視線は…(当惑)

す、すいませんすいません!ちょっと、止めてもらって…!」

 

提案の主、学園教員八雲から言い渡されたのは、

 

「でも皆期待しているみたいですし、決定でいいと思いますよ?」

 

『賛成で〜す!』

 

『何でもする』事からは逃れられない事実だった。

 

「ああ逃れられない!!」

 

田所はガックリとした様に肩を落とし、頭を抱える。

そんな担任を尻目に、生徒達は思い思いに要望を口にし始めた。

 

「へへっ、どうしようかな〜?」

「わしは特訓を減らしてもらいたいのぅ…」

「私としては、是非学園の風紀改善に協力して貰いたいものだ!」

「教室にお花さんを増やしてもらうのはどうでしょうか…?」

 

和気藹々となる一団。

この学園、《地球を取り戻す》と言う使命を背負う星守クラスにおいて、担任は強い権限を有するのが常である。

そんな人物…と言うよりは枠組みに対して優位に立てると知り、皆はりきっているのだ。

…そして、この様に盛り上がっている者達を生暖かい目で見ているのは言わずもがな、かの6人であった事も此処に述べておく。

 

「欲望とは神が与えし大罪…逃れられぬ(カルマ)なんやなって…」

 

こいついつまでぐちぐち言ってんだ。

しかし、『何でもする』事を半ば無理矢理確約させられた以上、こうなるのも無理はない…なくない?

 

「ままええわ。じゃあ俺先行って待ってるから…お前らでブリーディング、パパパッとやって5分後に、開始ッ!はいッ、よろしくゥ!」

 

一層盛り上がる集団に促すように手を叩くと、田所はそう言ってさっさと転送装置に乗り込んでしまう。跳ねる様にして駆けて行った。逃げたな(確信)

 

此処で転送装置とは、地球とコロニーを繋ぐだけでなく、データ上に構築された仮想空間ともアクセス可能な代物である。

田所が八雲に声をかけ、応じて操作をすれば彼の姿は忽ちに碧い光に包まれていく。

 

地球へと降り立った時と同じ現象だ。

光が弾けると同時に田所の姿は其処に無い事を場の全員は認識し、立ち現れたモニターによって田所が仮想空間に転送された事を確認する。

 

【あぁ^〜いいねぇ!(無邪気)

技術が進化してないか?すんごぉい…これって、勲章ですよぉ…】

 

…ぴょんぴょん跳ね回ったりゴロゴロ転がったり腰をくねらせたりなど、やたらとテンションが高い姿によって、各自しっかりと確かめた。

生徒の大体は引いてるが気にしてはならない(戒め)

「と、とりあえず作戦会議ですねっ」

 

何処からか声があがる。田所というよく分からない存在に対し放心していた生徒達も気がついた様に我に帰り、輪をなして談合を始めだした。

 

音頭をとるのは、星守としての経歴が最も長い明日葉だが…

 

「6人以上で不利になるという制約上、此方を分けて闘う様に誘導されているな。

ならば先ずは先鋒、(さきがけ)だが…」

 

「その前に1つ失礼したい。

…本当に大丈夫なのですか?先輩方は大分分かっていらっしゃる様ですが、我々は田所先生の実力について何も分からないのでこの催しもいささか…」

 

「ミミも、先生をいじめるのはイヤだなぁ〜…」

 

「ああ、ふむ、やはり皆はそう思うか…確かにそうだよな」

 

一部では冷静に状況を見つめ直し、仮想の身体とは言え《一般人》を傷つける事に抵抗のある声があがる。

 

それは純粋な心配からだろう。

神樹の使徒たる星守となった時点で、星衣を展開せずともその恩恵を受けている…即ち身体基礎能力が向上している星守。

この時点で既に同年代の人よりも強化されてるにも関わらず、更に実戦形態である星衣で来いとあの担任は言ったのだ。

 

仮にも此方は星守。片や彼方は生身の人間。

しつこい様だが通常ならば星守vs.一般人(こんな事)は話すらにならないのだ。

 

そんな訝しむ空気の中、明日葉に寄り添った蓮華が提案をする。

 

「やっぱりここは先生の言う通り、物は試しの《見れば分かる》方式で行くしかないんじゃないかしら?

そうすれば多分皆、嫌でも納得できると思うわよ?」

 

「…そうだな。皆言いたい事は多いだろうが、先ずは初戦を見てからにして欲しい。という事は先鋒は、先生の実力を把握している人物が望ましいか。

慢心なく戦えて、かつ継戦能力を高くするには…」

 

「明日葉先輩、それなんですけど…」

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

仮想空間・平原地帯。

 

夜戦、野戦、市街戦、屋内戦など…この空間は様々な戦闘状況を想定されて作られており、必要に応じて自由自在に構築出来るのだが、今回は田所が《星守が何処まで闘えるか》を見るため、つまり純粋な戦闘力調査のために昼の平野として設定してある。

 

草と土の匂いに包まれ、陽光とそよ風が肌を撫でると言ったそれは現実の…地球がまだ美しかった頃の体感と遜色無い。

 

「あぁ^〜 た ま ら ね ぇ ぜ 。 」

 

そんな風景に自然と不自然に溶け込んでいるのは、デカい糞かと見紛う程の存在。田所である。

大文字を描いて仰向けになり、脂ぎった顔を天に向けると、人工の優しい光が彼を照らす。現実、今となっては殆ど叶わぬ体感に彼も郷愁を覚えたのか、1人しみじみと言の葉を零す。

 

「どんな命も太陽の下で生きてるんやなって…また帰りたくなりますよ〜地球ゥ〜」

 

感傷に浸り、瞼を閉じようとして。

然し現れる幾つかの気配に上半身を起こしてみれば。

 

「ん?3人は…どういう集まりなんだっけ?」

 

「…えっと、そんな所ですっとぼけられても…」

 

「いやどう見てもアレは分かって言ってるでしょ」

 

「と言うか先生、大分余裕ですね…

あんなはしゃいでたり今は寝っ転がったりって…」

 

「こんな時でもないと自然感じられないんですよね?

それはそれとして…何だよお前ら学年別にしたのかよ〜?」

 

田所がその視界に収めたのは3人。

笑顔の眩しい赤髪の少女。肩を鳴らし身体をほぐす緑髪の少女。理知的な三つ編みの少女。

言葉を発した順は逆だが、それは兎も角彼女等には見覚えがある。

 

その3人は、田所と共に戦った少女達だった。

 

「いや、それは追々。

今は先生の力を全員に知ってもらうため、私達で出るのが良いと言う事で一致したまでです」

 

「ほら、まだ先生の闘いぶりを知らなかったり信じない人もいるしさ?

瞬殺されない程度に闘えて、かつ先生を知ってるからこそ油断せず闘える人が丁度いいよねってなって。

それで高3の先輩方という主力を大将と仮定して除外すれば後は…」

 

「必然的に、初戦は私達が相応しい…ってなった訳です!」

 

「成る程ねぇ…良い組み方してんねぇ、道理でねぇ!

最初に情報(アド)を持つ奴で闘って、更なるうま(あじ)な情報を引き出して後続に繋ぐ…

シンプルながら良く出来た方針だって、はっきりわかんだね」

 

少女達の話す方針に田所は感心し、手放しで称賛する。

爛々と輝く瞳から察するに、恐らく彼からしてみれば、自分の提示した状況に対し真剣に向き合ってくれた少女達に感謝しているのだろう。

そうだとすれば真っ直ぐな男だ。一本糞の様に。

 

これを以って田所はいよいよ待ちきれないとばかりに右手の木刀を弄ぶ。

 

「ああもう待ちきれないよ!早く始めるんだよ、あくしろよ〜」

 

「何だかんだ、先生が1番張り切ってませんか?」

 

「当たり前だよなぁ?

いつも(・・・)と勝手は違うが、星守相手に組手を取れるから昂ぶるのも多少はね?」

 

「そうですか…なら」

 

「あっ、そうだ(唐突)

既に把握こそしてるけど、打ち合う前に名乗ってくれると嬉しいけどな〜

決闘に於いては闘いの前の名乗りこそが譽れだって、はっきりわかんだね」

 

双方やる気に満ち溢れた間に唐突に挟まれた一言は、如何にも古めかしいというか仰々しいというかーー。

予想だにしない発案に3人はキョトンとする。

 

「先生は騎士か侍かっ!?

いやまぁ、アタシはそーゆうの嫌いじゃないけどさ…!」

 

「ハハァ、先生だったり騎士だったり侍だったり…ジョブ多すぎてこれもうわかんねぇな。

んじゃ、そろそろ始めまスー…」

 

ツッコミを笑顔で受け止めると、田所の雰囲気が変わる。

木刀に左手を添え中段に構えると、いつものおちゃらけた気配はそのままに、然し闘う者としての威容が漂う。

 

それを受けて3人も其々の得物を具象化し構えをとると、其処はもう穏やかな平原ではなくなっていた。

 

「改めて名乗りますよ〜。田所浩仁。24歳、担任です」

 

「高校1年、星月みきです!」

「同じく1年、若葉昴!」

「同じく、成海遥香」

 

示し合わせた様なーー実際やれと言われたがそれにしてはノリノリであるーー名乗りをあげた四者は唯眼前を見つめる。

 

そして、吹いた風を合図として。

 

 

「征きますよ〜征く征く!」

『行きます!』

 

 

迫真テスト(闘い)が、始まった。

 




こっから先何話かは筆者の戦闘描写練習も兼ねてるってそれ一番言われてるから
これみたいなクロスものがよォ、能力に頼らないバトルをしちゃあいかんのか?

絵面が地味になりそうで「狂いそう…!(静かなる怒り)」な兄貴ゆるして
次の話も、頑張ります!


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迫真テスト!教官と化した先生 ‘三’位一体

vs.みき&昴&遥香なので初投稿です。
淫夢要素はありません。


開始宣言と共に、三者、初期位置から飛ぶ様に駆け出す。

一歩、二歩、三歩と踏み込むたびに距離は縮まり、一番槍となったのは…

 

「でりゃぁあ!」

 

3人の中で最も運動性に優れる少女、昴だった。

身に余る程の槌を長く持ち、勢いのまま強く大きく踏み切ると、(田所の)間合い外から失礼するゾ^〜とばかりに矢の如く速く低い跳躍を見せ、其処から大上段で振り下ろす。

その姿勢は端的に言って隙だらけ。当てる事以外、つまり完全に攻撃のみに重きを置いた一撃である。

 

だがそれは『田所は初撃回避禁止、後手開始』というルールがあるからこそだろう。謂わばルールの穴に突っ込んだ対応である。

現に田所は、迫り来る殴打に対して木刀で防ごうと動いた。

中段の構えから木刀の鋒にあたる部分に左手を添え、顔面に持ってきて防御姿勢を取ると、上からくる大質量と鬩ぎ合う。

 

「オォン!?重いですね、これは重い…!」

 

全体重・全意識で以って守りを考えずに振るわれた槌の一撃なんて重いに決まってるだろ!(余裕ぶるのも)いい加減にしろ!

気合を出して踏ん張るも、田所の肌は血管が青々とするまで張り、筋肉が悲鳴を挙げ歯を食い縛る。

 

仮想空間に於いては武器もデータ化されている為、木刀であってもその強度は保障されている。にも関わらず、今にも砕けそうな程の軋みが聞こえる…軋み聞こえない?

そう錯覚する程度には強烈な衝撃が踏ん張る田所を襲い、逆に昴は得意げに言う。

 

「折角だからね、思いっきり行かせてもらったよ…使える規則(もの)はきっちり使わないと!」

 

「やりますねぇ…!そうこなくちゃーーーなっ!」

 

互いに不敵な笑みを浮かべ、拮抗する田所と昴。

そんな場面で、意識の外側から2つの光が田所の胴部に迫る。

 

だがそれは回避された。

田所は昴を一瞬押し返す事で浮いた力を地面に逃がす様に誘導すると、迫り来る二撃を片手持ちに切り換えた木刀で切り払いながら右後方へと跳び下がったのだ。

 

「くっ…」

「わわっ!?」

 

払われたのは遥香とみきだ。

成る程、昴の一撃は囮。それで隙を作り、其処に2人が叩き込む形を取ろうとしたのだろう。確かに田所は衝撃の瞬間昴にのみ気を取られており、後数瞬彼女達の双撃が早かったらどうなっていたかわかったものではない。

失敗に終わったとは言え、その一連の攻防を食らった田所は実に満足そうである。

 

「人間相手に中々容赦無い攻撃、誇らしくないの?これは認識を改める必要がある…必要じゃない?(自問自答)」

 

「流石ですね…

幾ら昴に全力で叩けと言ったとは言え、先生なら或いは凌ぎそうだなとは思いましたが、まさか本当に大丈夫だとは…これは機を失いましたね」

 

「あっ、おい待てぃ遥香。最初から自分達の攻撃に際限なんか決めていたら、当たるわけが無いんだよなぁ…

もっとぶっ倒す気でIKEA!ホラ打ってこい打ってこい!」

 

「なら遠慮なく…次は私です!2人とも、お願い!」

 

田所の叱責を受け、遥香が飛び出す。

追随する様にしてみきと昴も左右に展開すると、機をうかがう為に田所の両脇に回り込んだ。

 

そして、遥香の槍と田所の木刀が剣戟を謳う。

 

「はっ!」

「ヌッ!」

 

飛ぶ様に突き出された穂先は田所に向かうと、回避の為に横へ跳びのく。

だがそれで、それだけで終わるはずも無い。

 

其処から円軌道を描く様に槍が振るわれた。突きから胴部への払いへ素早く移行し、攻め立てる。

 

片手。

 

両手。

 

右。

 

左。

 

中段に振り、次は足元を薙ぐ。

 

機を見れば突き、時に叩きつける様にそれは振り下ろされる。

 

宛らお手本の様に安定した流れ(・・)を見せる槍を流し、受け、躱す田所。

現在まで一切攻勢に出ず、特徴的なニヤけ面を浮かべながらただのらりくらりと対処している。

 

そしてそれは横や背後、死角からやってくる攻撃に対しても変わらない。

 

「やあっ!」

 

「いいねぇ〜!」

 

みきの振るう剣は空いた片腕を手刀として、軌道を逸らす様に処理し。

 

「せいっ!!」

 

「おっぶぇ!」

 

昴の振るう槌は確実にかつ華麗に、僅かに空いた空間に避ける。

 

そう。3人の攻撃に対して田所は一切反撃をしていない。ただただ余裕綽々といった風に相手をしているのだ。

四肢をフルに活用し、飛んで跳ねては然し捌き切る。というより剣を手刀でどうこうするのは軽く人間やめてる…やめてない?

 

暫く打ち合っても全く変わらない。そんな現状に、少女達は歯噛みする。

 

「せ、攻めてる気が全くしない…」

 

ここでも先陣を切り、最初にボヤいたのは昴。

比較的小回りの効く槍や剣、その攻撃に出来る僅かな開き(・・)を埋めるようにして攻めていたのだが、解っているかの様に対処されては話にならない。そんな所さん!?だろう。

 

その意図を知ってか知らずか、右手の得物を手放さないままに頬を掻き、田所は言う。

 

「んー、そうは言っても三方向から殆どノータイムで攻撃されるのはいや〜キツイっす(素)

実際此処まで見ている限り、ちょっと上手いんじゃないこんな戦い方〜?」

 

「ですが…まだまだ、届く気がしませんね」

 

「それでもだ。お前達はいい連携してるって、それ一番思ってるから。

間隙の無い波状攻撃に加え、俺が移動しても素早く包囲陣形をとれる…動きがまるで素人のそれじゃない、はっきりわかんだね」

 

果たして嫌みなのか、此処に来てべた褒めする田所。

然しながらその言に一切の偽りは無い。

 

現に少女達は小言をはきながらもその隊形は崩しておらず、田所を中心とした三角陣形を綺麗に保っている。

田所が離脱しようとすれば近くの誰かが追いつき応戦。その間に別の2人が塞ぐ様に取り囲む。そうしてできる領域は…

 

「…正に“何たらの魔の手からは絶対に逃れられない”を表した様な戦術だぁ…(直喩)

なんか(特訓)やってたの?(陣形)ガッチリしてるけど…こんなの一体何時出来る様になったんですかね…?」

 

「あの奪還授業の後、3人で考えてみたんです!対大型用フォーメーション、すごくいいーーーと、思ったんですけどね…」

 

「効果に難あり、かなぁ…参ったね」

 

「そもそも体格差が810倍ある様なヤツ相手の戦い方と対人戦に於けるそれは別モンだって、はっきりわかんだね。ただ普通に多対一で通用するし、(別に不安に思う事は)無いです。

さて攻め手が尽きたなら、じゃけん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次のステップ行きましょうね〜」

 

 

 

(GO)ッ。

 

足元を抉り強く踏み出す。

 

包囲する正三角の中央から一気に外れ、ただ一直線に駆ける。

 

獣の様に1つ地を蹴るだけで、田所はホモの如く唐突にその人物の懐へ深く入り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーえっ」

 

 

 

その餌食になったのは、みき。

 

 

 

「YO!」

 

 

 

何気無い一振り。上から下へ。

 

袈裟ですね、と言わんばかりの…或いはそんな事すらも考えてない、無心とも思わせる程煩雑な一撃。

 

だがそれが、効く。

それだけで十分なのだ。

 

加速した一振りは構えた得物を叩きつけんと苛烈に迫る。思考が0にまで落とされ、ただ棒立ちの様に芯の無い得物がーーー

 

 

 

「ッッッッ!!?」

 

 

 

ーーー落とされる事は無かった。

 

田所の強襲に際し最後の最後で攻撃に気付けたみきは、柄を握る両の手に力を込め、どうにかして持ち堪えて見せたのだ。一瞬大きく輝いた不死鳥の装飾が、みきが如何に力を放出したかを物語る。

完全に落とす気でかかった田所も、この咄嗟の反応には思わず舌を巻いた。

 

「ファッ!?よく耐えましたね…凄いですね、これは凄い…だけど」

 

そう。得物を落とさなかったまでは良い。

然しだからと言って彼女が助かった訳ではないのだ。

 

事実みきがしたのは力を込めただけであり、前提としてそんなもので防ぎきられるような田所の攻撃ではない。

 

みきの剣は痛打の衝撃からか構えた位置から大きく外れ、

 

 

 

「…ちょっと刃当たんよ?」

 

 

 

気づいた時には、田所の返す刀が首筋にピタリと添えられていた。

 

「あっ…」

 

「さて、普通なら一本どころか(タマ)取ったりなんですが…降参するのka〜?

そこの2人も見てないでなんとか言えや?」

 

さて、此処で状況を一般化して確認する。

 

完全包囲した筈の存在がいつの間にかあっさりと突破していて、終には1人が捕らえられている。

 

…こうして見れば大変なガバである。或いはそれが人間アピールだとしても大変稚拙であり、は〜つっかえ、辞めたらこの仕事、と野次が飛んでも仕方ない程に。

 

「今、一体何が起こったの…?」

 

「分からない…だけど、これが、これが先生の実力か…!」

 

「おっ、そうだな(適当)

…その目を見る限り諦めはしないんですかね?」

 

当然、と応えようとした口は紡がれる。

 

何故ならみきの首筋に当てられた木刀が、ほんのちょっぴりと押され完全に密着しているため。

怖いやろ、怖いやろ…これが真剣や星守の武器であれば既に落ちてたな(確信) 首が。そんな状況で2人が迂闊に動ける訳ないだろ、いい加減にしろ!

 

(困ったね…遥香、どうする?)

 

(ルールに則るなら私達はまだ負けてない。降参を受け入れる気は…)

 

(まさか。負けてないなら、“敗北(まけ)”じゃないからね)

 

(だと思った)

 

そんな中、昴と遥香は近寄り作戦会議とばかりに小声で話し合う。視線と構えは変わらずみきと田所を向いている。

 

(…いっそ、思いっきり突っ込むとか?実戦形式とはいえ、テストなんだし先生だってこれ以上みきになんもしないでしょ)

 

(ただでさえ3人でかかっても凌ぎきったのよ?然も、あの時より大分手加減しているし…無策ではみきも私達もまたやられて…それこそ終わりだと思うわ)

 

(ハハ…アレで手加減、ね…)

 

だが話を続けるも打開策は見出せそうにない。普通高校生はこんな状況にならないからね、しょうがないね…

 

一方たどころ。

 

「…考えてる考えてる、キテるぜ。さぁ見せてみろ、俺を楽しませるんだろう?」

 

やはりヤバイ(戦慄)

此方も呟く様な小声で洩らす事には、まるで戦闘狂(くるい)か何か?その様な雰囲気を漂わせる。

 

「どうして来るかな俺にな〜?ん〜、破り甲斐があるぜぇ〜?みき、お前どう?」

 

「えっ?な、何がですか?」

 

1人満悦顔でニヤける田所は、自らが行動を封じているみきに話しかける。

現状をぼんやりと眺めていた彼女は思わぬ質問にはっとすると、こ↑こ↓で我に帰った。

 

「今昴や遥香はああして打開策を考えてる。つまりそれは、お前が捕らえられてるこの状況でも勝ちに来るつもりなんだって、はっきりわかんだね。…まぁ、だけどあの分じゃ煮詰まってるんですかね?

で、だ。たかだか喉元に刃を突き付けられた(・・・・・・・・・・・・・・・・)ぐらいで全部諦めちまうのは勿体無い…勿体無くない?彼奴らをさ、お前も見習わんといかんのちゃうのか?」

 

「いやこの状況でそれを言うんですか!?」

 

この野郎醤油瓶…!(頭の中)ぱらぱらり^〜とかお前精神状態おかしいよ…普通こんなんタマ壊れちゃ^〜うんですがそれは…

あっ、そっかぁ…とすっとぼけたように顎を撫でる田所は、苦笑いを浮かべると諭すように言う。

 

「んにゃっぴ…さっき聞こえた昴の言葉を借りるなら、死んでないなら“死亡(しん)”でない…そんな所さん!?」

 

「は、はぁ…死んでないなら、死亡でない…」

 

「そうだよ(便乗)」

 

(アドバイスしたいのか便乗したいのか)どっちだよ。

語気の強め所さん!?に軽く引いたみきは然し言われた言葉を反芻し、噛みしめるようにして顔を下げた。

そうした項垂れではない視線の下りを確認した田所は1つほっと息を吐くと、ねっとりとした声で「いいka〜?」と呼びかける。

 

 

次に放たれた言葉は、何処となく重いものだった。

 

 

 

 

 

「最期の一瞬まで思考と意志は動かし続けろ。手が動くなら首を搔け。足が動くなら駆け抜けろ。心の底から信じ抜け、それが生きてる証拠だよ!」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

その言葉は、真っ直ぐに私を見て放たれた言葉は、多分私への励ましなんだろう。

 

「まま、そう焦んないでよ。どうしても無理ならさぁ…もう闘わなくていいから。さっさと投降してさ、終わりでいいんじゃない?」

 

なんのフォローかは分からないけど、そう吐き捨てると先生はまた視線を昴ちゃん達に戻す。

これは分かりやすい。いや、さっきの言葉から、先生が何を期待してるのかが分からない訳ではない。

 

死んでないなら死亡じゃない。

最後の最後まで諦めない事、それが生きるって事なんだって。

 

首元に据わる木刀を見る。

木刀なんて、偶に体育が剣道の授業だった時、剣道場にひっそりと置かれたものぐらいしか見てなかったけど…今こうして私を捉えてるそれは、とても木の刀とは思えない威圧感を放っている。

 

さっき話している最中も、と言うよりは最初に突き付けられた時からそうだったがこの木刀は一切ぶれていない。私自身剣を武器にしているから分かる話だけど、武器を構えるとどうしても僅かにぶれてしまうのに。

これは昴ちゃんや遥香ちゃんだけでなく、剣道部で活躍するゆり先輩や長く星守として戦っている明日葉先輩にも共通してる。最も、先輩方のそれは私からすれば分からないくらい小さなものなんだけど…

 

そんな常識を笑うかのように全く動かずピタリと静止し、不気味さをも感じる木刀。一体どれだけ特訓すれば、あんなに脱力したままこんな高度な事ができるんだろう。改めて横に立つ先生の凄さを感じる。

渋谷奪還の時もそうだったけど、本当に田所先生は強い。強い。強い。この強さが《英雄》の証なら、どうして最初から一緒に戦えなかったのかと思わざるを得ない。

 

…だけど今は、こうしてその凄い人から教えを受けられる。私達の“地球を取り戻したい”という想い、そして闘いに協力してくれている。

 

何より今、ここで、私に期待をかけてくれている。昴ちゃんや遥香ちゃんが2人で勝ちにいこうとする中で、私にも出来る事があると教えてくれた。

 

やろう。

 

何が出来るかは分からない。

力が足らずに負けちゃうかもしれない。

 

でもそれでも、やっぱり諦めたくない。

 

諦めるのは、あの時だけで十分だって、はっきり分かる。

 

今はただ、全力でーーー

 

 

 

 

 

 

 

闘ってみせる!!

 

 

私の中で何かが、“流れ”が変わった気がした。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

(っ、遥香、アレ…)

 

中々解決策を見いだせず硬直した状況に、1つの変化が生じる。

 

(?みき…?笑ってるの…?)

 

(どういう事…?)

 

田所により一切の行動を封じられ、戦意喪失とばかりにへたり込んでいたみきが、ゆっくりと顔を上げる。

 

その顔に浮かんでいたのは、笑みだった。

 

遂にトチ狂ったかと言われればそれは違うと断定できる。

ギラギラと輝いた双眸に加え、溢れんばかりに滲み出る闘志。凡そ首に木刀(カタナ)を当てられた者のそれではない表情には、何処から来たのかまるでわからない自信が見える見える。眩いぜ。

 

そんなみきの、今迄見たこともない友達の顔を見て直感する。

 

(何か(・・)あるみたいね。昴…)

 

アレは確信の目付きだと。

未だ昴や遥香には見えてない光が見えた証明だと。

 

(マジ?大丈夫なの?)

 

(どうかしらね。だけど、やるしかないみたいよ)

 

(…そっか。なら、さっさと覚悟を決めた方が良さそうだね)

 

小声で続いていた作戦会議は終わり、2人は武器を握り直す。ヌッ、と気付いた田所も欠伸を噛み殺すとバァン!バァン!と首を鳴らした。首が大破してないか?

 

「もういいっすかぁ?」

 

「うん。腹は決めたよ…やるしかない、ってね」

 

「いいねぇ…じゃあ最後に(面目を)立たせてやるか。いつでも514」

 

「最後、ですか…ええ。これで最後です」

 

強気の発言に口角を上げ、ええやん。とだけ吐き出すと、それを皮切りとして再び静寂が場を支配する。

 

 

目線は相対する者へ。

 

闘志もまた然りて膨れ上がり、

 

限界を迎えた風船のように張り詰めた空気が、

 

屋上で肌を焼くように全身をピリピリと刺激する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃりっ

 

 

 

 

 

誰かがそんな雑音を投じた瞬間、昴と遥香は同時に飛び出す。

高まった集中は星衣の力を放出し、さらに前へと押し出した。片や猛る雷光、片や呻る水烈のオーラを纏い、唯真っ直ぐに。

 

速度の差で一瞬早く着く昴は横薙ぎの構えをとり、遥香の持ち方は突きに至るものだ。

この動きは敵を逃さない。振られた槌を避ければ槍の突きが飛んでくる。だからといって粉砕を幻視させる鋼を無視は出来ない。必然の帰結か偶然の産物かは兎も角、星守として闘う2人が魅せたのは、現状出し得る至高の連撃。

 

目的は1つ。

打倒、田所浩仁(先生)

 

それのみを願った一撃は先程までと違う、敵を討つ意志に満ち溢れ。

田所は全力を以って掛かる2人に最大の敬意を評しながらゆっくりとーーー

 

 

 

 

 

 

「ここだっ!!」

 

 

 

 

刹那、赤の輝線が視界に入る。

 

輝線は広がり、彼の景色を染め上げる。

 

「ファッ!?」

 

思わぬ奇襲。

 

得物を振る。

 

ガツン。何かが触れる。

振り切った木刀は触れたそれを破壊した。

 

手応えにより、確かに命中こそしたのは判別できる。

 

咄嗟の一振り。砕き切ったのは他でもないーーー

 

 

 

「星衣の、装飾…!?」

 

赤色の光が収まると、見えたのはチカチカと光を反射する見慣れない物体。あんなものに心当たりなど、1つしかない。間違いなくあれは星衣のパーツだった。

 

粉々となった赤い欠けらが光に還る。

その先に、籠手の様に展開された星衣の左腕部分が其処だけ無惨に無くなりながらも、紙一重で田所から逃れたみきがいた。

 

彼女は探っていたのだ。たった一瞬における田所の間合いと自分の移動可能距離を。

ずっと首を捉えていた一振りが僅かに遠退いた、その一瞬に全てをかけて。

 

自身が剣を使うが故に感覚的に悟れたのだろう。どの目線、どの立ち方、どの握り方、意識の向け方。そこから自分に振られる一太刀は如何に至るか。半ば奇跡とも言える一致を見たみきは必死に脱してみせたのだ。

 

 

それは即ち、足掻いたという事。

生きる証明として、諦めない心を見せた事。

 

 

してやられた。心にきますよ!そう嗤う田所の正面では不死鳥の翼が赤く大きく輝く。バックステップの様に下がったのをバネとして今度は前へ飛翔すると、いつの間にか消えていた剣を炎の中から再び形成し、2人に遅れて田所へ迫る。

 

どうやら先程の閃光(フラーッシュ!)は、剣自体に星守の力を注いで爆破させたものか。剣がなくなっていた事、強烈な発光、そしてみきの急加速…一切の辻褄があう。落とし所さん!?はこ↑こ↓のようだ。

 

 

だが今、この瞬間。

田所はそれに気づけない。そんな間など無い。

 

 

不意を突かれ、赤の煌めきを目で追えば。

 

 

いつの間にか目と鼻の先に迫った閃雷と豪流が、

 

 

「あっ…(察し)」

 

 

そのまま田所に殺到した。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「…勝った、の…?」

 

星衣から放出された3色の力、その衝突により爆発が起き、仮想訓練空間に土煙が広がっているのをモニター越しに見た誰かから、そんな声があがる。

 

彼女達の明確な敵であるイロウスを討つのと同じくらい真剣に闘う同輩らを、または至った結末の凄さに呆然としていた大多数の少女達は、少しずつ騒めきを大きくした。

 

「勝った、んだと思うけど…」

 

「凄かったな、あんな…仮にも《ヒト》相手に…」

 

「せ、先生は無事なんでしょうか…?」

 

「仮想訓練だから大丈夫…大丈夫だよね?」

 

あがる声はやはり、先生である田所を相手に文字通り全力で闘った3人への感想や田所本人に対する心配が主なものだ。

 

無理もない。仮にも高校生の星守3人による全力全開の攻撃を受けたのだ。今回厳密には違うが、スキルを使ったかの如くに放たれた力はイロウスを撃滅する必殺技に等しいと言っていい。

 

それが決まった。ならば結果は1つ。

星守側の勝利とーーー

 

 

 

 

 

ザシュザシュッ

 

 

 

モニターから異音が鳴る。

 

恐る恐る見れば、それは剣と槍。

 

銀光瞬く刃が空を泳いで偽りの土を抉り、突き立った。

 

 

【ぬわああああああああああああん痛かったもおおおおおおおおおおおおおおおおおおん】

 

 

何人かには聞き慣れた、クッソ汚いヴォイスが響き渡る。

 

次の瞬間に視界を覆う光を纏った煙が渦を巻き、直ぐに霧散した。

 

遮るものを失ったその景色にいたのは、爆心地から少し離れた所に立って一太刀を振り終えた田所と、罅の入った槌を持つ昴、そしてすっかり手空きとなってしまったみきと遥香だった。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「いやキツかったっスねこれは〜

こんなん続いたら止めたくなりますよ〜なんかテストォ〜」

 

右手の木刀を左手に持ち替え、空いた手を左上腕から乳首へとサインカーブを描きながら往復させる。蜂に刺されたわけでもないんですがそれは…

 

まるで注意喚起でもしそうな動きをするなか、ポカンとしていた3人もゆっくりと田所の方を向いた。未だ得物を握っていた昴は特段驚愕を隠さなかった。

 

「…うっ、そ…」

 

「あ、どもこんちゃーす。3人とも中々やるじゃない!今のは効きますねぇ!」

 

「どうして…アタシのはしっかり当たったはずじゃあ…!?」

 

「そうですねぇ…確かに昴の振り抜きは食らっちゃいましたね…痛かったですね、あれは痛かった…」

 

「ならどうして…?」

 

「え、そんなの簡単でしょ。

 

敢えて直撃させて吹っ飛び、そん時に回転を使ってみきと遥香の武器を叩き落とした…

 

だけです。」

 

「…は?」

 

「あ、語弊ありますあります。

 

これで上から…ドバーッとやってぇ…」

 

昴だけでなくみきや遥香も聞き入る中、緩みきった表情で木刀を上下させる田所。

…何時ぞやのみきばりにオノマトペばかりの説明だったが、要はこういう事らしい。

 

インパクトの一瞬、被せる様にして木刀で思い切り槌の頭部を殴る。力の流れを制し、然し与えられた力の大きさを使って意図的に真上に吹っ飛ばされ…

後は横目で捉えた迫る2つの鋒を掬って飛ばし、投了。閉廷。

 

「だけです。質問(言いたい事)あるならはっきり言えよ?」

 

特段不思議なこともないと語る田所の答えに少女達は互いに目を合わせると、やれやれ改めて納得したとばかりに肩をおろしーーー

 

 

『参りました』

 

ただ、そう言わざるを得なかった。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「ぬわああああああああああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおおおおん」

 

若草の映える光景に再び横になるクッソ汚い存在がいつもの声をあげる。

先ほどまでと違ってその身体には汗が滲み、脂ぎった顔がより一層テカテカしていた。

タマのように浮かぶ汗の雫を丁寧丁寧丁寧に指でなぞると、更にチュン!ピチュン!ピチュ!とクッソ汚い音を立てながら舐めとる。汚い。

 

「こうしてみると汗とかリアルっすね…八雲先生からは死ぬとか以外は大体再現されてるって言われてるけど、やっぱ凝ってますねぇ^〜」

 

その真意は成る程、改めて仮想空間に於ける生命体の再現について感じ取るものらしい。汚い絵面にも意味があったのだ。汚いけど。

 

「しっかし…最初から興奮させてくれたねぇ、俺の事ねぇ!彼奴らで良かったって、はっきりわかんだね。…折角作ったアレいる?(いら)なくない?なくなくない?」

 

うるせぇ!と言いたい程には口のよく回る人間だ。静かにせい!(レ)

 

さて、そんな事をして身体を休めている内に、またも空間に幾つかの気配が降り立った。

 

「あらいらっしゃい!4人はどういう集まりなんだっけ?」

 

やって来たのは4人。

制服姿から、そのうちの3人が中学生で後の1人が高校生だとわかる。

 

高校生の方はあの日、渋谷の件からか田所と面識のある少女だった。

腰の辺りまである長いツインテールを洗濯バサミ形の髪留めでとめた彼女、粒咲あんこは高校3年であるが、こ↑こ↓で投入してきたかと意外性感じるんでしたよね?

 

一方で田所が中学生組とこうして実戦の場で会うのは初めてだ。

カールを巻いた金髪がお嬢様の様な優雅さを生み出している少女。制服付属の黄色いリボンから、彼女が中学2年だとわかる。

次いで眠たげに瞼を下げている少女。気怠げな雰囲気は本人の風貌も相成って、何処か古臭さや懐かしさをも見て取れる。

最後に犬を模した様なヘアゴムでツーサイドアップに纏めた元気そうな少女。先の少女と合わせ、リボンの赤色から中学1年である事は自明だ。

 

「集まり、ってかまぁ…そーゆう事よ。大体わかるでしょ?」

 

「ですがワタクシ達がこうして立っている以上、精一杯立ち向かわせて頂くだけですわ。“田所浩仁”先生」

 

あんこと金髪の少女が言う。

改めて見れば高校3年生がいるとはいえ、中1が2人と中2が1人。先の戦闘を見るあたり、このメンバーではやや心許ないといった印象を受ける。

 

しかしだからどうしたとばかりに凛とした表情をする少女達に、田所もまた善しと顔を引き締める。

 

「みんなしてやる気じゃのう…まぁ、わしとてただでやられるつもりはない。めんどくさいが、精々頑張るとするか」

 

「そうだよ桜ちゃん!ひなた達みーんなで、勝つんだから!先生、ひなたやるからねー!!」

 

一方此方は中1の2人組。落ち着いた少女と溌剌とした少女。ちぐはぐな様で実は馬のあう彼女達もそれぞれに田所を見据え、次の闘いへの刻が近づくのを直感させる。

 

「全員気合いは十分でいいゾ^〜ならさっさと行きますよぉ〜いいですかぁ?」

 

「ええ。始めましょうか、先生」

 

「おぉぅけぇ…引き続き担任、田所浩仁」

 

「…高校3年、粒咲あんこよ」

「中学2年、千導院楓ですわ」

「中学1年の藤宮桜じゃ」

「桜ちゃんと同じ1年、南ひなただよ!」

 

高まる緊張。そこに油断はない。

 

あの闘いを見て、互いに油断など出来ようものか。

 

少女達が神樹の力を身に纏い、其々の星衣が展開されるとーーー

 

 

 

「行くわ!」「行きますわよ!」

「行くぞ」「行っくよー!!」

 

「オッスお願いしまーす!」

 

 

闘いの幕が、また上がる。

 




ちょお待って10177字ええん!?
嫌な予感はしたが長くなりましたね、これは長い…「もっと頂戴…!」って言うならもっと長いのも考えてやるよ(考えるとは言ってない)

3000UA!?うせやろ!?閲覧者さんありがとー!!フラーッシュ!!それなのに4週間も執筆サボりやがってよ〜

(書きだめも、次回の投稿予定も決まって)ないです。


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迫真テスト!教官と化した先生 ‘四’庫全書

鉄を熱いうちに打てない無能ですがvs.楓&ひなた&桜&あんこなので、私生活などの全てを振り切り勇気を持って今初投稿です。


 

「さて、と…」

 

 

粒咲あんこは思案する。

 

今回の手番、自分達の役割を如何に遂行するか。

このメンバーでどのような事が出来るのか。

此処は盤面。5人は駒。うち敵対するその1人は取るべきキングか王将か、はたまた魔王か勇者のそれだろうか。

 

…駒と形容するには皆、彼女にとっては余りに未知数すぎるのだが。

 

 

「よぉーーーしっ!いっくよぉぉーーー!!」

 

 

気合い満々とばかりに槌を構え、元気に飛び出すひなた。

 

 

「先手を譲られてるとはいえ、緒戦と同じでは…あんこ先輩、桜。後方支援はお任せしますわ!」

 

 

一頻りの状況把握の後槍を握り、追随する様に駆け出した楓。

 

 

「…やれやれ。で、どうするのじゃあんこ?」

 

 

1人マイペースに欠伸をし、具現化した銃をだらりと持つ桜。

 

いやぁ後輩達の個性豊かな事。何時もながらよくまとまっているものだと感心を覚える。

 

 

「ん…ワタシ達の砲撃による爆風は星守に作用しないし、前衛の視界を塞がない範囲で十字砲火(クロスファイヤー)を叩き込む…これを基本にするわ。

だから後衛(こっち)は纏まらず散開するけど…大丈夫よね?」

 

「く、くろ…何と?」

 

「…クロスファイヤー。十字砲火(じゅうじほうか)で通じるかしら?」

 

「ああ、ふむ。動き回られたり一方に近づかれても対処出来る様にか。

まぁあの先生相手に何処までもつかじゃな。無為自然。どうせなるようになれ、じゃよ」

 

「…それもそうね。じゃこっちも動きましょ」

 

 

リヴァイアサンの星衣を纏った古風な彼女、桜も中々どうして達観したものだ。こうしてみると普段の気怠げさすら隙のないものに見えなくはない。

最も、隙のないのは彼方も同じか。寧ろ1番訳がわからないのが彼だろう。

 

突進するひなたと楓を、そのニヤついた顔で涼しげに見つめる先生、田所浩仁を尻目に2人は射撃地点へと動き出した。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「せぇー、のっ!!」

 

 

ユニコーンの星衣を纏って爆走する少女、ひなたから勢いよく振り下ろされる槌。その幕開けにデジャヴ感じるんでしたよね?

 

 

「ヌッ!いいねぇ^〜」

 

 

当然、田所は難なく受ける。それもそうだ。第1戦で昴からもらった初撃とは振り方からしてまるで違うのだから。

まだまだ得物に振られ、フォームも煩雑な幼い攻撃では、彼を崩すに至らない。

 

だが扱いの難しい槌を存分に振るい、ちゃんと攻撃として成立させている時点で、彼からしてみたらちょっと上手いんじゃないこんな年で〜?という具合だ。

加えて田所に迫った際の最高速度、そして何より最年少でありながら真っ先に敵に突っ込んでいくガッツには目を惹くものがあり、ひなたのそんな見所さん!?にご機嫌な表情を浮かべる。

 

 

やりますねぇ!

 

 

称賛が口から出んとしたその時。

田所の遠方で煌めきが2つ。

 

 

「あっ、ちょっと砲撃あたんよ〜当たらないで(小声)」

 

「ふぇ?うわぁ!?」

 

 

木刀で受け止めた状態からひなたを押し、自身は反作用で後ろへ跳躍。正にその後、一瞬遅れてそれらはやって来た。

尾を引きながら飛行するそれは“砲弾”。

神樹の武器、遠隔の一。銃と名のついた武具から放たれた鉛色が、田所のいた地点で交差せんと飛んでくる。

 

一般的な銃と言えばそれこそ拳銃、ライフル、マシンガン…この様な例が挙がるだろうか。

だが星守の銃は、例えるなら大砲。大砲と言うには小さいかも分からないが兎も角マスケットと大砲の中間値と言えば話が早い。

 

そんな銃から撃たれた2つの砲弾は空中、田所の正面ですれ違うと互いに爆発を起こし、 ひ ろ が る 爆 炎 が田所を焼く。

 

 

「アツゥイ!!」

 

 

漏れ出る反射。顔を塞ぐ。0単位のゲスい反応は浣↑腸↓で噴き出るアレの如く。

避けたおかげで衝撃こそ食らわずには済んだものの、田所の後退した髪の毛や服がチリチリと焦げて僅かに焦げ臭さをを放つ。元からくさいとは言ってはいけない(戒め)

 

加えて厄介なのはその爆煙に音。

戦闘において視覚や聴覚というのは、互いの位置や挙動の把握に始まる重要なアドバンテージだ。それらを一瞬とは言え塞がれるのは、一対多を強いられる田所にとってまず(あじ)な展開である。それこそ…

 

 

ギュォン!!

 

 

煙を劈き一閃が翔ぶ。

 

 

「くっ…(女騎士)」

 

「そこですわっ!」

 

 

振るわれた一槍を何とか弾けば、返す払いが脇を捉える。

 

 

「オォン!…アォン!」

 

 

だが田所とて柔ではない。今の一振りで視界を取り戻し、拾う軌道は身を捻って避け、バク転をする様に距離を取る。

 

景色は晴れ、見れば槍を振るっていたのは楓だ。赤色の光を放つ星衣フェニックスが彼女の凛とした振る舞いを一層引き立てている。

そんな彼女は間合いから外れた田所に対して穂先を向け、直ぐにでも次の攻撃に移れる体勢をとっていた。

 

 

「…やはりお強いですわね。お父様が言うだけはあると」

 

「お父様って誰だよ由緒正しい千導院家の当代か?」

 

 

確かに田所の言う通り千導院家は古くからの銘家であるが、んな当たり前の事を聞くな。

 

 

「ええ。常々口惜しむように言ってらしたのは耳に入っておりますわ。一目で分かる風格、これは油断など以ての外ですわね」

 

「『Never E(退屈な)ver Le(んてさ)t U Down(せねぇよ)』…俺ももっと熱くして欲しいけどな〜」

 

「御心配せずとも…直ぐに燃え上がらせて差し上げますわ!」

 

「頼むよ〜!」

 

 

互いに言の葉を交わせば、後は打ち合うのみ。

騎士の様に振るう槍が田所を狙い、木刀は交差する様に打ち付けられる。

歌い踊るかの様に跳ねる穂先が今にも彼を捕らえようと動くが、まだまだあの汚物も余裕そうに捌いている。

 

然し中々結構なものだ、千導院楓とは。

 

彼女の戦いはとても整ったものと言えるだろう。(自分の得物を振るっている)姿勢(かたち)もいいし、(空を裂く)音も良い。はたから見れば申し分ないどころか総おっぱげな程だ。

模擬戦とはいえ田所と相対する気迫は十分千万。中学2年生がこうも凄みに満ちているのは如何程のものを背負っているのか、その一薙ぎが静かに語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、だからだろうか。

 

 

(クゥーン…)

 

 

楽しんでいただろう彼の顔が僅かにアンニュイな物へと変わっていったのは。

 

 

(この違和感はなんなんですかねぇ…そんなに抵抗はないですけどね。これもうわかんねぇな…)

 

 

右へ左へ次々に振り払われる槍をぼんやりと流しながらそう思案する。

…仮にも切羽詰まった斬り結びで考え事などするのはどうなんですかね…

そう、ただでさえ田所は楓ただ1人と戦っているわけではないのだ。

 

 

 

 

「っ!ヌッ!」

 

 

楓の攻撃に対処する最中、唐突な嫌な予感から前転して右に避けると其処に質量が降ってきた。

見やれば、ひなたが再び此方に突っ込んできたらしい。地面にぶっささった槌を引き抜く様にして振り上げてそのまま攻撃に転じると、またも暴れ馬の如く大胆な攻勢が始まる。

 

 

「もーーーっ、先生!ひなたも忘れちゃだめだよぅ!」

 

「いやそんな事…ちゃんと見てるしヘーキヘーキ!こんな風に…オォン!アォン!」

 

 

滂沱の様に激しい攻撃と的確に追い詰める攻撃。二者に対応していた田所が木刀を回転しながら振る。回転斬りの要領でひなたと楓を振り切ると、次は、いつの間にか迫っていた銃弾を自身の得物で掠め取る。

 

そのまま別の銃弾へ逸らす様に誘導してやればまたも小爆発が起こるが、これは田所の剣風が煙を払ったおかげで大した実害も無く、彼も「そう…(無関心)」と涼しく見ていた。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「流石じゃのう…」

 

 

一方、射程内に田所を捉えている藤宮桜は自分の先生たる男の姿に息を吐く。

 

 

「ああも易々と流されては打つ手がないわい。一手一手を確実に潰してきよる」

 

 

観ていたのは始まってからの攻防。

 

パワーのある一撃。

爆発。

視角外からの振り払い。

槌と槍の2方向連撃。

そして最中に撃ち込まれた砲撃。

更には回転斬りを躱し、たった今再開し出したひなたと楓の攻勢。

 

いくらひなたと桜の実戦経験が浅いとはいえ、決してこれらがガバガバ極まりない事などはない。だがそれらへの正確な対処から、此方側が遊ばれているのは至って明らか。

桜の精神年齢が高いのもあってか、この現状が彼によって保たれている(・・・・・・)事は直ぐ様理解できた。

 

 

「…しかしまあ、みき達の戦いぶりからここまではわかっておったわい。問題は…」

 

「ん〜、悪いって感じじゃない…でも硬直してるのも結構退屈だよね、結構ね」

 

 

こ↑こ↓で田所が皆に聞こえる様に声を上げる。

見れば流されてばかりの2人が肩で息をし、剣戟の音は止まっていた。

 

それもそうだろう。全力でかかっても目ぼしい戦果はあげられず疲弊が募るだけ。大局的に見ればこんな消耗戦など あ ほ く さ としか言いようがない。

そこを理解した…或いはさせられたのか、それとも単にバテたのかは定かではないが、猪突猛進のひなたさえもが停止してぶきっちょに構えてるのは、今4人が置かれている状況を淡々と伝えている。

 

即ち、マズイですよ、と。

 

先とは違い、今回は前衛と後衛の二重戦線をとっているこの場にてそれが、前衛の機能停止が何を意味するか。

 

 

「なら叩くべきは…こ↑こ↓」

 

 

またも疾走。

 

打たせ撃たせて討ちにイく。飽きもせず、王道を征くとばかりにとった田所の行動は反攻(カウンター)

 

せっかちにもノーモーションで最高速度まで達すると、どこぞの爬虫類のSHIBUKIの如くにその人物まで迫り征く。

 

 

 

ーーー桜から最も離れた、あんこのところまで。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

『あんこ先輩!?』

 

「ヒィッ!?わかっちゃいたけどさ…!」

 

 

視界から消失した田所に気がついたひなたと楓が声を荒げた。

 

それを聞き遂げる前後、次の目標は自分だと言う彼女の予想の的中と急に野獣の如くやってくる存在への驚愕が交じった上擦った声をあげたあんこが、照準を補正して速射でもって迎撃する。

狙撃から弾幕へと切り替えた砲撃。放たれた銃弾は動きながら壁の様に広がり、田所を包まんと迫った。

 

だがよくよく考えれば、田所は先程銃弾を木刀の一振りで対処しきっているのだ。

ならばそう。田所の行動(回答)とは言えば、

 

 

「タマぶつかんなよ?(優しい配慮)

…ホラホラホラホラホラホラホラホラァ!!」

 

 

前進し、強者(ホモ)特有のステップを踏みながら、剣舞と成って狂いだす。

幾重もの銃弾が躍る弾幕に対し、その一つ一つにオイルを塗る様にねっとりと刃を滑らせると、弾は誰も彼もを避けるかの様に逸れていく。

 

それにしても何度もステップを変え、時にはあんこに対して背を見せる動きをしながら弾幕を切り崩していくのは超人的な技前と言う他にはない(BKコピペ)

 

 

「ハァ、アッ、アッ、アッ、アッ…ンギモッヂイイ!!アッー!」

 

 

その超スローボール投げそうな辛い顔は本当に苦しいのかただ単にイキすぎてるのかどっちだよ、と問いただしたくなるほどには顰められているが、やってることは随分派手なものだ。

結局のところ、あんこの即席弾幕は一息の間に突破され、田所はよくわからない発音をした迫真の叫びと共に飛びかかる。

 

 

「んなっ!?」

 

「頭いきますよ!(予告)」

 

 

さあどうするか。

 

それを弾き飛ばさんと大きな砲身に向かう一刀。マトモに食らえば、自覚する程に力のないあんこでは潰されてお仕舞いだ。というか頭に打つんじゃないのか。ホモは嘘つき。

ならば避けるか?否。ここまでの事を忘れたか。田所がああして来る以上、ラッシュを仕掛けられて詰みだ。

 

今迫るのは、恐怖。

今迄相対してきたどのイロウス、どの敵キャラよりも恐ろしいまであるそのニヤケ面に冷や汗が流れ、自分が怯んでいると確信させる。

 

 

「っ…そう、簡単…にっ!」

 

 

然しそこは先輩の意地というものがある。

あんこの纏う星衣ユニコーンが雷光を発すると、彼女にしては珍しい事に、眼前の敵へ突っ込んで行く。

事前にあんこの戦闘スタイルーーできる限り固定砲台に専念ーーを、記録映像として見ていた田所は意外さから口元に一瞬だけ草を生やしたが、そのまま木刀を振り下ろした。

 

 

「オラァ!」

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

「…ここよっ!!」

 

 

 

その捨て身は花開く。

 

無限にすら思える刹那、土竜などある職業特有のスローを掛けられた様な一瞬の間、身を捻って前転する。長いツインテールを揺らしながら取る行動は、俗にいう緊急回避。

 

 

「ヌッ…YO!」

 

 

咄嗟に軌道を変える。

 

 

「ぅぐっ!」

 

 

その木刀は腰に展開されている装飾にぶち当たり、植木鉢の様な音を立てて砕け散った。無理矢理切り替えた一閃にしては力強く、堪らず呻き声があがる。

だが肝要なのはそこではない。あんこが態々向かって来た事、星衣の力を増幅させた事、

 

 

 

 

 

 

 

何より、死に体となりながらもその銃を放さず、

 

 

 

その照準が未だ空の田所を捉えていた事。

 

 

「そ…こっ!!」

 

 

星衣ユニコーンの力、強烈なスパークを伴った砲撃が、最大速度で田所にーーーーー命中する。

 

凶弾は爆ぜると同時に プ ラ ズ マ を内展開し、拡散する爆破との挟撃が田所の周囲を焼き尽くさんと暴れ狂う。

 

正真正銘、本気の一撃だった。一瞬一発に総ての星衣の力を込めて放った、正に最大限。

あんこはこの様な一撃を放ったのはトレーニングを含めて人生で如何許りかと、この状況にしては多少ズレた考えを起こす。見れば砲身は排熱の為なのか煙を延々と吐き出し、腰部の装飾は先の攻撃で砕け散って何処にもない。

 

1つ遅れた炸裂音が煙中から響くと、直ぐ様駆け寄る影が。

 

 

「あんこ先ぱ〜〜い!!」

 

 

槌を携えたひなただ。並ぶ様にして楓も合流する。桜は…やれやれと言ったばかりに銃を下ろし、離れたその場で待機している。

 

 

「あんこ先輩、ご無事でしたか?」

 

「何とかね…っつつ、何だかんだ先生からモロに食らったのってワタシが初めてじゃないの…?」

 

 

あんこの言はその通りで、みき達と闘った時田所は打ち合いや首に当てる事こそしても、1発たりとも直接の攻撃を食らわせていないのだ。

今回の戦闘(迫真テスト)での『武器の放棄が敗北』という制約上、武器を狙った方が割がいいのもあるが…それでも戦いを制したという事実には苦笑が溢れてしまう。

 

 

「だけどだけどっ!これでひなた達の勝ちだね!」

 

「いや、まだそう思うのは早いじゃろう」

 

「ええっ!?そうなの?」

 

「桜に同感ね。確かに命中したのは見えたけど、あれで終わるとも考えづらいわ…いや立たれていても困るけど」

 

「ならどうなさいまして?もう一度ワタクシがあの中へ攻撃を仕掛けるのも構いませんことよ?」

 

「そうね…一度やった手が通じるか…ああして出てこない以上待ちか…?」

 

「悩んでいても仕方ないじゃろう。ここで先手を取り、ダメでもわしやひなたで畳み掛ける。あんこは暫く休んでいた方が良かろう。よくはわからぬが、その銃も限界に近いのではないか?」

 

「…バレてる、か」

 

 

未だ排熱を続ける銃をよく見れば、所々にヒビが入り、反動の大きなこの武器種()では攻撃できる回数も少ないと思われる。

…これが実戦だったらと言う杞憂はかぶりを振って、前を見る。

 

 

「ま、今更それをいった所での話よ…

桜、射線を修正していつでも撃てるように構えて待機。ひなたは先生の左側から叩けるように移動。ワタシはこれだしいざとなったら捨て駒になるわ。楓、切り込みは任せたわよ」

 

『はいっ!』「了解じゃ」

 

 

あんこの指示に従い、ひなたと桜が移動する。それを見届けた楓は徐々に薄れる煙の中へと飛び込んだーーー。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「…見えましたわっ」

 

 

楓がそこに突入してその姿を見つけるのに時間はかからなかった。

木刀を杖の様に地に刺して膝をついてこそいるが、直撃にも関わらずその手を離していないのは大した根性だ。

 

 

「ですがこれで…終わりにしますっ!」

 

 

一薙ぎ。それで良いと判断した。

自分もそうだが満身創痍の人物相手にはそれで十分。そういう決定に落ち着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、そっかぁ(気づき)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獲物がぶつかる鈍い音。

 

浮かび上がるシルエットは、未だ目線を下げながら確かに軌跡を受け止めた。

 

 

「っ!?」

 

「お前さ楓さ。さっきこっ…攻撃する時にさ、中々『突き』しなかったよな?」

 

 

唐突に投げ掛けられる問い。

あまりの脈絡の無さに首を傾げる。

 

 

「そ、それがどうかしまして?」

 

「いや〜ずっと疑問だったんですよね。楓の戦闘資料を見る限り、イロウス相手では何の問題もなく…寧ろ結構…戦い方上手いじゃんって思ってたんすよ。

でもこうして俺と打ち合ってる時は『払い』しかしてなかったんだ。ーーなんで?(殺意)」

 

 

意志を込めた眼光が、真正面から放たれる。

 

糞と小便でズルズルした中に二回も男汁を出して糞遊びした如くに濁った眼球が放つのは、ある種詰問ですらある。

少なくともお嬢様…いや女子に見せられない様な強い気持ち悪さを受けて一瞬怯んだが、この気丈な令嬢(激ウマギャグ)は臆す事なく回答する。

 

 

「…確かに先生に対し直接突く事は控えさせて頂きましたわ。ですが我が千導院の理念は世の為人の為。故にーー」

 

「故に必殺の威力を持ち得る『突き』を封じ、武器を落とさせる用途として『払い』を重視した。人を、俺を傷つけず、然し勝負に勝つ為に。

…違いますかぁ?(ねっとり)」

 

「っ…仰る通りですわ」

 

「そう…つまり楓は、理念の為なら格上相手でも意図的に手を抜く奴だって事だな?不マジメだなぁ…」

 

 

その一言だった。

自らの誇りを貶められた様な田所の言が、彼女の琴線に触れる。

 

 

「その様な事、有り得ませんわ!」

 

「ならどう弁解するんですかね…あんこ達がいるならどうにでもなると?それとも(タマ)がかかってないなら多少はね、とでも?」

 

「それは!それは…」

 

 

彼女自身分かっているのだ。確かに意図的に自分に枷をはめていた事位は。

だが決して、決してそれは手抜きだとかそんな事ではない。彼女は自らの意志、自らの誇りに依って、その中で闘おうとしたまでだった。

 

ーー説明する言葉など、この場では上手く出てこなくとも。

 

 

「楓、お前の言いたい事もわかる。実際俺だって勝つ為に武器を落とさせる事を第一として攻撃してる訳だしな。何かの為に自()分を律する事()はよくする事だ。

…だがそれは時に自分の足を掬う。特に実戦なんかじゃな。覚えとくといいぞ、これ」

 

「…はい。分かりましたわ」

 

 

返事は不承不承、と言った具合か。まだ踏ん切りがつかないのだろう。千導院の誇りとして、このウンコの擬人化に穂先を突き立てるのは躊躇われるのか。まあ別の意味でお断りでもあるが。

 

ここで彼は分かっていた様にクソデカ溜息を吐き、「しょうがねぇなぁ(悟空)」とボヤく。

 

 

「ま、この展開も予想してたし多少はね?」

 

「…どういう事ですの?」

 

「正に楓みたいな奴が出て来た時だよ(説明)

イロウス相手じゃない、人間相手じゃマトモにやりあわない奴への対処法さ」

 

 

なんで一々人を煽る必要があるんですか(呆れ)

当てつけの様な言葉に楓の顔がまたも歪む。

 

だがそんな事はつゆ知らずニヤリと笑うと、腕を振り小さなモニターを展開する。仮想空間特有の連絡手段、と言った所さん!?か。

展開されたそれに応対したのは八雲だった。

 

 

「すみませーん、た〜どころですけどぉ〜。そろそろお願いしていいっすかねぇ〜〜?」

 

【分かりました。…やるんですね】

 

「うん、そうっすね。寧ろ予定通りなんでぇハイ、ヨロシクゥ!」

 

【…了解しました。外装展開、起動します】

 

 

八雲の言葉と同時にモニターは消える。

 

 

「何をする気でして?」

 

「言ったルルォ?人間相手じゃあ星守の力を振るうのを躊躇う奴用の対策だよ」

 

 

その言葉を言い終わると共に、田所の姿が“変わっていく”。

青を基調としたーーー少なくとも星守である彼女達には特に見慣れた姿へと。

 

完全に変わった彼の姿に、楓の瞳は驚愕に染まった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「…楓先輩、出てこないね…」

 

 

一方、待機組。

 

仕掛けたきり出てこない楓を案じ、戦況は正に膠着状態に陥っている。

 

 

「そうじゃのう…こうも静かだと気味が悪い」

 

「せめてスキルでも使ってくれればね…」

 

 

一応煙自体は薄まりつつあるので突入出来そうでもあるが、それで同士討ちになれば目も当てられない。

だからこそこの場にて待っているのだが、先手を取ると言ったのに後手に回らざるを得ない現状に3人は其々歯噛みする。

 

 

「もう行っちゃだめかなぁ?」

 

「これこれ。待ちの手も一つの手。今は動かずにいた方がよい」

 

「…桜ちゃんは動きたくないだけじゃないの?」

 

「む、そんな事はないぞ?今はまだわしが…コホン、わしらが動くべき時ではないだけじゃ」

 

「え〜…ほんとに?」

 

 

ひなたと桜に至ってはこのように軽口を叩きあっている。

やれやれと思いながらあんこは前を見据え、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂に楓が、煙の中から吐き出される。

 

 

 

 

「っ!ひなた、桜、警戒!!」

 

「「はいっ!!?」」

 

 

素早くあんこは2人に伝達し、眼前に降りた楓に寄る。

 

 

「楓!どうだった…って、どうしたの?」

 

 

見れば、楓はあんこに一瞥をくれた後、ただ一方向を見つめるだけだ。

 

 

「あんこ先輩…何やら妙な事になってしまいましたわ」

 

「妙?」

 

 

その言葉にあんこは再び前を見る。

 

煙は徐々に掻き消えていき、その人物の姿が露わになる。

 

その姿に皆は皆驚愕を隠せなかった。

 

そこに居たのはあのウンコ色の男ではない。

 

青き姿、獣のような意趣を纏った存在。

 

 

 

 

大型イロウス、ロウガ種、ヴォルフ。

 

それを模した鎧を身に纏った田所だった。

 

 

 

 

 

 




どこ行ってたんだよお前よ(執筆から)逃げやがってよぉ!!!しかも07/21とか逃してんじゃねぇよ!!!折角の8/10にも8:10とか9:31とか投稿できてないやん!?ホンマ使えんわ…はーつっかえ!!!辞めたらこの仕事!!
すみません許してください!何でもしますから!!

…取り敢えず、自分が沈下していた間にバトガでは様々な動きがありまして。
ノベライズ発売、アニメ開始、久々のセンバツ、各企業様とのコラボ企画…此処では語りつくせぬ程大きな動きとなっています。
勿論自分も1人のバトガプレイヤー、所謂先生として方々に足を運ばせて頂きました。
結論だけ言えば、やっぱり自分は【バトルガールハイスクール】が大好きなんだ。これに尽きます。(それ以上書くには余白が足り)ないです。(FeRMの最終定理)

さて、アニメからバトガに入った方は誰が誰とかキャラクターの関係性などがまだまだ不透明かと思われます。KNN(KNN姉貴に非ず)やSH、MSKに至っては未登場ですし。
そんな兄貴姉貴達の為にわかりやすくする為に今後こ↑こ↓でも様々な工夫をして行きたい所存です。遂に夏休みを得たのでまたしっかり歩き出します(決意)

改めてどうか皆様、バトガや淫夢のお供として本小説を宜しくお願い致します。

(後書きだけ)マジメだなぁ…

追記:あっ、そうだ(想起)
田所の言葉に出てきた『Never Ever Let U Down』はノーナの曲だからホモの兄ちゃんは聞いとけよ聞いとけよ〜(ダイマ)
良い意味でノーナらしくない、すっげぇカッコイイ曲だゾ^〜


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