やはり俺達が世界の銃爪を引くのは間違っていない (シャルルヤ·ハプティズム)
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1話:プロローグ①

完全な自己満足です。読みたい方のみ続きを読むことをお勧めします。

尚、筆者に文才がありませんので苦手な方はブラウザバックをお薦めします。

何番煎じかはわかりません。飽きたら辞めます。

 

 

_______________________

 

 

········冷たい雨が降り続けていた。その冷たい雨を微動だにせず、浴び続ける頭にぴょこんとアホ毛のはえた少年がいる。いる····と言っていいのだろうか。彼の一生はもう少しで終わるのだ。

彼は仲間と共に、ある国の戦争に協力者として参加していた。しかし、彼は敵の奇襲を一身に受けた。それによって彼は左腕と右目を失った。戦況は膠着し始めた。当然助けなど来ない。そして、彼は死ぬ。 ·······否、死ぬ筈だった。彼は死ぬ間際に彼の父親 比企谷時宗(ひきがやときむね)を視界に捉えた。

 

彼は父親が何と言ったか聴き取れなかった·····が父親が灰になり一瞬で崩れ落ちるのを視界に捉えた。その数秒後、彼は事態を理解し立ち上がった。彼の身体はトリオンと呼ばれる物で再構築された。失った右目も左腕も元通りになった。そして首には、死ぬ間際にはなかった黒いネックレスをつけている。ついでに、彼の髪は黒髪から少しくらい銀髪に変わり、瞳孔も黒から紫に近い青色に変わった。そして意図せず彼の口が呟く········『トリガーオン。』

 

彼の姿は生身と変わらなかったが腰に剣を提げ、背中に彼の腕と同じくらいの長さの銃を背負っている。そして、彼は仲間を軽く凌駕する速度で駆け出した。

彼は敵を蹂躙した。

 

 

敵を蹂躙した彼····後に比企谷八幡(ひきがやはちまん)と名乗る彼の目は死んでいた。そして彼の目は仲間ですら恐れる程冷たかった。

 

________________________

 

私、雪ノ下陽乃(ゆきのしたはるの)は目の前の光景に唖然としていた。私の想い人である比企谷八幡が敵勢力を見た事のない武器を使い蹂躙していたのだ。そして、数分と掛からずに敵を殲滅した。周りを見渡せば、私達の仲間である雨取 麟児(あまとりりんじ)鳩原 未来(はとはらみらい)、実の弟であり、後に三雲 修(みくもおさむ)と名乗る彼ですら事態を全くといっていい程把握出来ていなかった。しかも、彼の目は今までの私を気遣う優しい目と違い、恐怖に支配される程冷たかった。何があったのだろうか…?

 

 

 

 

 

僕は、兄の冷たい目から逃れるように周りを見渡した。その時に気付いた。父 比企谷時宗がどこにもいないのだ。そして、兄の走って来た方向を見たら少しだけだが周りとは全く違う色の地面があった。その時僕の頭には最悪の予想が起こった。しかも、この予想なら兄の髪や目の色が違うことにも納得がいく。僕は兄を問い詰めてしまった。

 

兄の口からは僕の最悪の予想が発せられた。父が兄を助ける為に(ブラック)トリガーになったこと。生身の肉体が左腕と右目を失って死にかけており今の肉体はトリオン体だということも併せて知った。

 

その後麟児さんからはこの後の予定について語られた。僕達の元居た玄界(ミデン)界境防衛機関(ボーダー)という組織が出来るという話から、予定を早め玄界に帰還すること。僕、兄、陽乃さんの3人でボーダーの設立に協力することなどが決められた。そして、僕達は玄界への帰還ルートについた。

 

_______________________

 

如何でしたでしょうか。プロローグはもう少し続きます。尚、3人共原作とは別人です(特に修)。

誹謗中傷は書かないで下さい。



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2話:プロローグ②

 

私は玄界への帰還中夢を見た。それは忘れもしない私がこちらの世界に足を踏み入れた日。

 

 

-6年前-

 

私は当時玄界では全く存在を知られていなかったトリオン兵によって、私は攫われた。私はトリオン兵に襲われ気絶したのだが、その直前に自分の死を感じた。

 

どれくらい眠っていたのだろうか。私は牢獄のような所で両手を縛られた状態で目が覚めた。目が覚めてすぐに、看守と思しき人物がやって来た。私は子供ながらに、母と一緒に見たテレビの番組でやっていた[ぞうきていきょう]とか[人しんばいばい]というものになるのかと思った。不思議と恐怖などは感じなかった。まだ頭が朦朧として、感情が出てこなかったのかもしれない。しかし、看守のような人物は思いもよらないことを言ってきた。

 

「お前はまだ生きていたいか?」

 

「元居た場所に帰りたくはないか?」

 

これが、私〈雪ノ下陽乃〉と〈比企谷八幡〉の出逢いだった。

後で分かったことだが、その国は当時とてつもない人員不足で少年兵を多く起用していたらしい。そして、彼が私を助けたのは、何か通じる所があったらしい。今思えば、直感というものかもしれない。

 

その後、国家間の移動は現在よりも時間が掛かる為いざという時の為にと仲間からあらゆる技術を叩き込まれた。現在では八幡に並べるレベルまで来れたのではないかと思う。ただ八幡達は私より更に2年前に兄弟で玄界から攫われ、そこを今は亡き時宗さんに助けられ戦えるようにと鍛え上げられたらしいので、2年間の戦闘の経験は埋めようがなく負け越している。

 

そんなことを夢見心地に考えている内に艇が玄界に到着した。当然の如く人が入りそうにない深い森の中に艇を停め、トリガーで衛星にも肉眼にも見えないようにし、いつでもこの座標に跳べるようにした後、私達はボーダーを設立するという者達に接触した。

 

_______________________

 

結論から言うと、ボーダーという組織を設立する者達には、向こうの世界に対抗するには、全てにおいて余りにも不足している事が分かった。元々麟児さんからはボーダーに協力するように言われている俺達は、戦闘員の指導も含めて組織の立上げから加わることにした。

 

そして元々の計画よりも前倒しにしてボーダーは城戸さんを代表に創設となった。

その2週間後、林藤さんが4人の子供を連れてきた。1人はまだ赤ん坊で林藤さんの実子〈陽太郎〉、1人は俺と同い年の〈小南 桐絵〉、1人は陽乃と同い年の〈迅 悠一〉1人は迅さんの1つ年上の〈木崎 レイジ〉。まだ赤ん坊の陽太郎を除いた3人が俺達の新しい弟子としてボーダーに加入した。新しい弟子としてというのは、忍田さんと林藤さんも俺達の弟子だからだ。そして俺達3人は本格的に修行中開始した。

 

俺の弟子(基本的に誰が教えるかというだけで師匠は俺達3人であるが)は忍田さんと迅さんになった。因みに、陽乃の弟子が林藤さんとレイジさん。修の弟子が、小南となった。小南からは、修といい雰囲気になりたいという願望をサイドエフェクトで見た気がするがどうなんだろうか?

 

 

 

俺達3人はボーダー関連のことが一段落着くまでに帰れなかったので、今頃になってやっと帰れることになったのだが、ここで問題が発生した。俺達はトリオン兵に攫われた時、俺達を庇った両親はモールモッドに殺されたのだ。あの時は修が小さくて俺に隠れていて直に人が死ぬ所を見なくて良かった······。それはそうと、俺達は引き取られる家が違うのだ。俺は向こうの世界で俺達を助け、俺達を実の息子のようにあつかってくれた比企谷時宗の家庭に引き取られるのだ(お袋さんは事情を全て理解してくれている)が、修は三雲家に引き取られることになったのだ。尚、陽乃は実家があるので俺が付き添いで1度会いに行ったのだが、何度も頭を下げられた挙句に「娘を助けていただいてありがとうございます。これからも娘の隣にいてください。」とまで言われてしまった。まぁ、彼女の親公認で恋人になれたことに2人で抱きしめ合ってよろこんだのだが。話が反れてしまった····問題というのは、麟児さんに俺達程ではないが、トリオン量が普通では有り得ないくらい多い千佳という妹がいるらしいのだ(実は、予定を早めて玄界に帰還した理由に、俺の生身の治療と麟児さんの妹の千佳の件も入っていたらしい)。それで、彼女には既にサイドエフェクトが発現しており、彼女をターゲットにしたトリオン兵から1人で逃げ回っているらしいのだ。

そこで、俺達は、麟児さんと修で彼女を保護し、襲って来たトリオン兵を俺と陽乃で内内に処理することにした。尚、トリオン兵はその後回収しトリオンに還元することにした。この頃には既に学校に通っていた俺達3人は内密に忍田さんと林藤さんに回収を頼んだ。

 

 

 

それから3ヵ月したある日、俺達は迅さんに集められた。何でも迅さんには未来を見るサイドエフェクトがあるらしい。そして迅さんは俺達を見てこう言った。

 

「修、お前はボーダーが表に出た時に1度

 

ボーダーを抜けた方がいい。トリガーも

 

使わない方がいい。俺のサイドエフェクト

 

はあまり精度が高くないが複数の未来で

 

お前が弱い奴を演じている未来が見えた。」

 

 

迅さんのその発言に僕は驚かなかった。僕等は麟児さんの妹である千佳を守らなければならない為、迅さんに言われなくても3人の誰かは1度脱退するつもりだったのだ。トリガーが認知されていないこちらの世界でトリガーを使わないのも当然だった。そして迅さんの言った通り弱い奴を演じることにした。

 

 

 

それから3ヵ月後。今、僕は桐絵さんに稽古をつけている。ついでにいうと、近々来ると予想される向こうの世界からの襲撃の後ボーダーが表に出ることが決まり、スポンサーの確保をする必要が出てきたので最年少(陽太郎は普段居ないので)の僕と、まだ兄さんと同い年だが、発展途中の桐絵さんは留守番をしている。尚、最初にスポンサー入りしたのは陽乃さんの実家の雪ノ下財閥だった。陽乃さんの実家が財閥だったのには驚いた。よって僕は桐絵さんと留守番になったのだ。

 

 

僕は今桐絵さんと模擬戦をしている。桐絵さんがブレードを斜め上から振り下ろしてくる。それを右手のブレードで桐絵さんのブレードの横っ腹に叩きつけて反らし、右足で蹴りを入れる。桐絵さんはすぐさま体勢を整え、蹴りを入れた僕の右足を斬ろうとブレードを振る。僕は右足を囮にし桐絵さんが僕の右足を斬ると同時に僕のブレードが桐絵さんの右手を切り落とす。詰みだ。僕はブレードで桐絵さんの胸を貫いた。

 

今、僕達は休憩所のベンチに座ってジュースを飲んでいる。

 

桐絵「あ〜もう!全っ然勝てないじゃないの!」

 

修「桐絵さん、あそこは蹴られたら僕の右足を削りつつ後ろに退るべきでしたね」

桐絵「アタシ修に何回負けたのかしら」

 

修「まぁ、桐絵さんの戦闘のセンスはかなりのものですけど、それでも経験の差とか色々ありますからまだ勝てないのは当たり前です。というか、100本勝負は勘弁して下さいよ。今日だって100本やって4本取れたじゃないですか」

 

桐絵「100本やって4本よ!?4本!4本ともまぐれじゃない。次に同じことしようとしても出来なかったし」

 

修「アハハ······そうだ、この後ちょっといいですか?」

 

桐絵「?いいわよ」

 

 

僕達は今三門市を一望できる高台に来ている。

 

修「実は···相談したいことがあって····。これは後で他の人にも言うんですけど、僕がボーダーを抜けたら僕がこの組織にいたことを隠して欲しいんです。」

 

桐絵「どうしてよ?」

 

修「実は、知り合いにトリオンがものすごく多い女の子がいるんです」

 

桐絵「多いってどれくらい?」

 

修「レイジさんの4倍くらいです。しかも僕より1歳年下です」

 

桐絵「嘘!?そんなに!?」

 

修「えぇ。しかもその娘の兄の話を聞く限りだと今までにも何度か向こうの世界に攫われそうになってて彼女の代わりに友達が連れ去られたらしいんです」

 

桐絵「なら、その娘をボーダーに入れればいいじゃない」

修「それが、彼女はサイドエフェクトを駆使して1人でにげてるらしいんですが「1人で!?」はい。ですが、彼女は友達を連れ去られたことがトラウマになっていてトリオン兵を見ると、尋常じゃないくらいに取り乱してしまうらしいんです。だから僕が、彼女の護衛をすることになったんです。当然、兄さん達にサポートをしてもらいますが。」

 

桐絵「だからって····何でそれを修がやらなきゃいけないのよ!?」

 

修「簡単ですよ。これからボーダーは表に出ていくでしょうけど、ボーダーは人が足らないんですよ。兄さんと陽乃さんにはボーダーに戦闘員として残って貰いますし」

 

桐絵「わ、分かったわ。·····なら、アタシからも1ついい?」

 

修「えぇ。こちらからも聞いてもらう訳ですしなんなりと」

 

桐絵「これは····小南 桐絵としてだけどいい?」

 

修「?はい勿論」

 

桐絵「なら言うわ。·······修、あなたが好きよ。男の子として愛している、私と付き合って欲しい。··········修?」

 

修「え?」

 

桐絵「何で泣いてるの?」

 

修「いや·····嬉しくて···」

 

桐絵「!····じゃあ····」

 

修「はい。これからは恋人として宜しくお願いします桐絵さ「桐絵」え?」

 

桐絵「恋人なんだから···桐絵って呼んで。後、敬語も禁止!」

 

修「····分かった。これからも宜しく、桐絵」

 

桐絵「うん!」

 

 

僕達は抱き合いそして········

 

 

 

 

 

 

唇を重ねた。

 




ウ〜ン。鳩原さんを話に絡ませられなくて困る。設定としては麟児さんと鳩原さんはボーダーには現在全く知られておりません(千佳も)。修と桐絵をくっつけたのは作者のおかしな趣味です。てか、話グダグダ。


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3話:プロローグ③

プロローグは今回で最後の予定。


桐絵とはれて恋人になった数時間後、僕達はボーダーで桐絵に話したことと同様に戻って来ていた全員に事情を説明した。忍田さんがやや難色を示していたが、否定はされなかった。何故、留守番が2人揃って外出したのかを問われたところ迅さんに全部ばらされた。周りは少し苦笑いを浮かべていたが当然だろう。ていうか視えてたんならフォローをいれてくれ。

 

_______________________

 

俺達がボーダーの創設に加わって半年程経った頃、迅さんが未来を予知した。何でも1ヵ月以内に向こうの世界の国がこちらに攻めてくるらしい。出来うる限り最大限の準備を進めた。

 

 

-2週間後-

とうとう敵が攻めてきた。俺達は、俺·陽乃、忍田さん·林藤さん·レイジさん、迅さん·修·小南の3つに別れてそれぞれ敵トリオン兵の迎撃を開始した。

 

俺は今、陽乃と共に敵トリオン兵の掃討をしている。にしても凄い数だな。まだ、トリオン兵しかでてきていないが、アフトクラトル級の軍事力がありそうだな。なんてことを、バンダーの砲撃をブレードで叩き消しつつ考えている時俺は気付いた。この付近に俺の家があるのだ。何で気付かなかったって?トリオン兵が多すぎて近くの情報を取りこぼしてたんだよ。

 

八幡「陽乃!ここ任せてもいいか?」

 

陽乃「八幡どうしたの?そんなに慌てて」

 

八幡「この近くに俺の家がある···この辺はまだ避難が進んでない!」

 

陽乃「分かった!ここは任せて早く行って!」

 

八幡「助かる!!」

 

俺は陽乃がブレードを引っ込め手からトリオンのキューブを出すのを見届けて一旦陽乃と別れた。

 

俺が自分の家が見える所まで来ると、家が壊され、

お袋が小町に覆いかぶさるように倒れていてし下にいる小町が泣いているところにバムスターが襲うところだった。俺はブレードでバムスターを斬りつつ思いっきり蹴飛ばして沈黙させ、小町に声を掛けた。

 

八幡「小町!大丈夫か!?」

 

小町「お兄ちゃん····?」

 

八幡「よし逃げるぞ、お袋は俺が担ぐ。」

 

小町「で····でも···足が動かないよ·····」

 

八幡「なら、お前も担いでいく。掴まっとけ」

 

小町「う····うん」

 

俺は内部通信で簡単に陽乃に事情を話し、退きながら戦うよう指示した後、離脱して、小町とお袋を救護の人間に預けた後陽乃と合流し敵の掃討を再開した。

 

 

 

僕は、桐絵·迅さんと共に敵トリオン兵の迎撃にあたっていた。 僕はキューブ状のトリガー «アステロイド»を火力よりに調整して分割し、目の前にいる40匹近いトリオン兵をバラバラにした。そこで桐絵が叫んだ。

 

桐絵「2人共!あそこに子供が2人!!」

 

修「迅さんどうしますか?」

サイドエフェクトで一応見てもらった。迅さんは僕達の弟子になってから戦闘だけでなく、サイドエフェクトの訓練もしており、精度は半年前よりかなり高くなっていた。

 

迅「よし俺は男の子の方を、2人は女の子を頼む。」

 

修・桐絵「「了解!!」」

 

迅さんは男の子の方に駆け出し、僕等も女の子の方へ全速力で向かった。

 

修「桐絵!女の子の保護を!僕が倒す!!」

 

桐絵「了解!」

 

僕は更に加速して、女の子に襲いかかるモールモッド3体の内2体をアステロイドで沈黙させ、1体の前に降り立ちブレード4本を、僕のブレードで切り落とした。その隙に桐絵が女の子を保護し離脱した。僕はブレードでモールモッドを両断した後迅さんに通信を入れた。

 

修「迅さんそっちは大丈夫でしたか?」

 

迅「ああ。そっちは?」

 

修「大丈夫です。今、桐絵が無事な所まで避難させてます。迅さんもその子を連れて一旦離脱して下さい。」

 

迅「了解。そっちは大丈夫か?」

 

修「えぇ。大分数は減ってきたんで大丈夫です」

 

迅「分かった。後はまかせる」

 

修「はい」

 

 

その後、僕達ボーダーによって敵兵は沈黙·撤退した。ボーダーは表舞台に立ち、僕は改めて周りから了承と協力を得て、ボーダーを抜けた。兄さんによるとボーダーにはかなりの数の入隊希望者が来ており、今はその対応に追われて、かなりまいっているらしい。そして、僕は麟児さんと合流し雨取千佳についての対応を始めた。因みに、桐絵とは桐絵の都合がつく時に市外で会うことになった。

 

 

 

 

-3年後-

 

高校や大学の入試も終わりもうすぐ春休みに入ろうというこの頃、俺達は麟児さんの家に集まり、作戦会議をしていた。内容は、麟児さんと鳩原が向こうの世界に渡り、雨取の異常ともいえるようなトリオン能力を抑制する道具を作る研究とその際に1人で雨取を守る必要になった修をそろそろボーダーに復帰(といっても昔と組織の規模が全く違うが)させよう、ということだ。

 

麟児「さて、ここからが問題だ。俺と一緒に行く未来がボーダーではどうなるか、だ」

 

八幡「俺が城戸さん達に掛け合ってみるってのはどうでしょうか?鳩原はトリガーを民間人に横流しして向こうの世界に密航。表向きは隊務規定違反で違反でボーダーを追放ってことにして、実際は超極秘任務。城戸さん、忍田さん、林藤さんと口裏を合わせるってことで」

 

麟児「出来るのか?」

 

八幡「まぁ、やるだけやってみます」

 

麟児「分かった。頼んだぞ」

 

八幡「うす」

 

麟児「では次だ。修、またボーダーに戻ってくれないか?出来れば千佳をボーダーに入れる説得の協力もして欲しいんだが」

 

修「ボーダーに関してはなんの問題もないですよ。でもまだ、演技は続けますが。ただ·····、千佳の説得は成功するかどうか分からないですね」

 

麟児「そうか······まぁ助かる。それはそうと、俺と未来が向こうに行くのは1週間後を予定している。今日は集まってくれて感謝する。八幡、修、また面倒をかけて済まないな」

 

八幡・修「「いいえ、大丈夫ですよ」」

 

麟児「フッ·····では今日はここで解散だ」

 

八幡「分かりました」

 

その後俺はボーダー本部に行き、上層部の3人に早速今回の件を相談した。修は麟児さんの所に残り雨取の説得をするらしい。俺の説得に、忍田さんと林藤さんは了承してくれたが、城戸さんの説得は大変だった。まぁ、最終的に雨取の事を詳しく話し、そういう人でトリガーへの対抗手段がない人を攫われないようにするためのものだと説明し、何とか納得してもらった。

 

その1週間後予定通り麟児さんと鳩原は向こうの世界に旅立って行った。いくら上層部の3人が納得しているとはいえ、周りに示しがつかない為、鳩原は予定通り除隊処分となった。まぁ、責任を負わされた二宮隊がB級へと降格処分になったのは少し心が痛んだ。

 

 

 

 

麟児さんと鳩原が向こうの世界へ行った3週間後、俺は新しい制服に身を包んでいた。小町、お袋には半分笑われながら写真を撮られた。解せぬ。そして、今日はこれから、俺が通うことになる総武高校に向かっている。ウ〜ン、俺と入れ違いで陽乃は卒業しちゃったからなぁ。とか思いつつも俺の足は総武に向かっている。ん?何だあの犬、首輪とリードの連結部が壊れて今にもはずれそうだぞ。·····それ見たことか。もう壊れやがった。ウェッ、あの犬横断歩道のど真ん中で止まりやがった。で、何であの飼い主は立ち止まってんだよ。赤信号だから立ち止まってんのか?馬鹿じゃねえの?···って、ヤバイ!向こうから車来てんじゃねえか!あのスピードだと確実にあの犬は轢かれる!

 

そう思った俺は無意識に飛びだした。犬抱えた所までは良かったんだが、生身で右目がない俺は反応が遅れて犬道の向こうにぶん投げた後、何とか受け身はとれたが俺は車に思いっきりふっ飛ばされた。

 

_______________________

 

 

「······知らない天井だ····」

 

私は御見舞いに来て少しの後、恋人のその声を聞いた。ここは個室の病室で、わたし以外に、小町ちゃん、修君、私の両親とパニックになるも両親が引き摺って連れてきた妹の雪乃ちゃんがいた。······いたのだが、その声を聞いた瞬間に私は八幡に抱きついてしまった。周りは雪乃ちゃんですら暖かい目でみており、何をしたか悟った私は恥ずかしさで真っ赤になったが、見かねた八幡が私の頭を撫でてくれた。八幡が頭を撫でてくれるのはとても気持ち良い。因みに、雪乃ちゃんは八幡と波長が合うらしいのと、本好きで直ぐに仲良くなった。と、そこで私以外の人が居るのに気付いてバツが悪くなったのか、八幡は少し顔を赤らめ撫でるのを辞めて手を話した。そこで私の母«雪ノ下 夏音»が切り出した。

 

夏音「八幡君、ちょっといいかしら?」

 

八幡「夏音さんどうしたんですか?」

 

夏音「実はあなたを轢いたのはうちの車なの」

 

八幡「そうだったんですか」

 

夏音「本当はこんなこと、ここで言うべきではないのでしょうけど······八幡君、正式に陽乃の婚約者になっていただけないかしら」

 

八幡「え····いいんですか?」

 

夏音「勿論よ。あなたは陽乃を救ってくれたし、数え切れない恩があるわ。あなたも高校生になったことだし、何より陽乃とあなたがいつ結婚してもいいくらいの雰囲気をだしていたもの」

 

八幡「その話は有り難く受けさしていただきます。······陽乃、これからも宜しくな」

 

陽乃「八幡·····こちらこそこれからも宜しくお願いします。」

 

八幡「ああ、宜しく」

 

そう言うと、感極まったのか陽乃がまた抱きついてきた。今度は抱き締め返す。しばらくそうしていると、

 

夏音「あらあら、私達は邪魔なようね。皆さん、2人の邪魔をしないように我々は退散した方がよさそうですね」

 

八幡・陽乃「「えっ!?」」

 

そう言って、夏音さんと秋彦さん·····俺の、お義父さんとお義母さんは出て行ってしまった。おい小町、何故お前はそんなニヨニヨしながら2人について行くんだ。修、そんなに暖かい目を向けないでくれ、お前と小南の時さんざんに弄るぞ。とか考えていると、俺の義妹になった雪乃ちゃんが

 

雪乃「八幡君···いいえこれからは、義兄さんと呼ぶべきかしら。この度はごめんなさい」ペコリ

 

八幡「別にいいって、乗ってただけなんだし」

 

雪乃「それでもよ。だから今回は医療費等を全額うちが出すことになってるわ」

 

八幡「いや悪いって······飛び出したの俺だし…」

 

陽乃「いいの。今回は私達の過失になるんだから少しくらい甘えてもいいと思うわ」

 

八幡「····じゃあ、ご好意に甘えさせて貰います」

 

雪乃「じゃあ、私もこれで失礼するわ。····ごゆっくり」

 

そう言って、雪乃ちゃんも出て行った。改めて、口に出さないでくれよ···

 

 

そうして、俺は陽乃という最高の婚約者が出来た。

 




今回でプロローグは終わりに出来そうです。予定は

八陽のイチャコラを少し→俺ガイル現作開始→クッキー、テニス、川崎のバイト、職場見学→文化祭→ワールドトリガー原作開始→空閑との邂逅、争奪戦てな具合に進めます


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3,5話:設定

1/28 設定少し弄りました。


profile

比企谷八幡

5歳の時、3歳だった実弟の修と共にトリオン兵に攫われた(実の両親はその際に殺されている)。攫われた先で向こうでの父«比企谷時宗»に兄弟で救われる。攫われた理由は2人のトリオン能力が千佳をも超えるほど高かったため。時宗に救われた後、玄界に直ぐには帰れないため自衛の手段も含め、あらゆる戦闘術を叩き込まれる。12歳(玄界に帰る1ヵ月くらい前)で戦闘中に奇襲を受け、右目と左腕を失い死にかけるが時宗が黒トリガーになることで生き返る。目は腐ってないが、家族や仲間、パーソナルスペースを汚されたりすると、目が凍えるくらい冷たくなり、とんでもない殺気を放つ。奇襲で負った傷は、目と腕は治らなかったものの生活に支障はない。。ボーダー創設に加わった時は黒トリガーで生かされており、弟子を1ヵ月ほど指導した後、第一次大規模侵攻の1ヵ月前まで治療とリハビリをしていた。現在(密航事件の時くらい)では、普段はボーダーから支給されたトリガー(戦闘用ではなく、生身とほぼ同じ調整で、右目と左腕があると言うくらい)で学校に通っている。生身もちゃんと鍛えている。ボーダー創設に加わった3人は通常トリガーで並の黒トリガーには勝てる。八幡は上層部の1人。普段のランク戦は思いっきり手を抜いている。実質的な完璧万能手(トラッパー、オペレーターも出来る)だが、ランク戦をしてないので知られていない。因みに、理系教科は陽乃に教わるので全く問題無し。雪乃と学年主席を争っており、入試は雪乃を下して主席合格だった。これはサイドエフェクトで脳が強化されているのもある。現ボーダーの上層部の1人であり、肩書きはボーダー隊員代表(唐沢さんとスポンサーとの交渉について行ったり、上層部の会議に参加し戦闘員目線で意見を言ったり、沢村さんと熊谷から迅さんのセクハラの愚痴を聞いたりとか)。迅ハラ被害者の会の窓口対応にもなってる(強制)。なので、2人以外からも時々愚痴られる。学校では校長と教頭とボーダー隊員以外八幡がボーダーだと知らない。攻撃手1位(弧月)、個人総合1位。雪ノ下陽乃の婚約者。

 

parameter

トリオン:60

攻撃:48(3人は攻撃の度にトリガーに流すトリオンの量を調整しているので、これは最高値)

防御·援護:26

機動:13

技術:34

射程:5(攻撃手)11(銃手、射手)30(狙撃手)

指揮:13

特殊戦術:15

合計:204(攻撃手):210(銃手、射手)229(狙撃手)

*あくまで最高値で基本ここまで行かない。

トリオンも最大の1割も使わない時もある。

 

サイドエフェクト

 

:帯電体質(ランクSSS)

自分の周りの物質が放つ電気や電磁波などを読み取ったり、自身もそれを放つことが出来る。自分が受け取ることで対象の位置や筋肉の動きなどが分かる。自身が放つことで情報の共有·撹乱、幻覚を見せたり、自身を認識出来なくする、限界まで駆使すると対象に電気を送り、外部から対象を操ることも出来る。但し、これを使うと自分の脳の電気信号が異常をきたす可能性があり、1度しか使ったことが無いがその際に、4日間寝込んだ。ON/OFFは自由。八幡は物凄い負担を軽減するため、マッ缶を求める。

 

:強化触覚(ランクC)

これは時宗から受け継いだもので、常人の5倍程触覚が過敏になる。八幡はトリオン体の時に特訓でON/OFFを可能にした。ほぼ使わない。

 

トリガーセット

メイン サブ

弧月 メテオラ

旋空 ライトニング

バイパー シールド

スコーピオン グラスホッパー

 

黒トリガー

たった一つの望み(ラプラス)

 

比企谷時宗によって作られた。学習型の黒トリガー。

パラメータは、8項目中5項目が測定限界を超えるので測定不能となっている(後述の2人も同様)。普段はネックレスに。元ネタはガンダムUCより。

 

悪意(マステマ)

 

これは八幡達が近界を渡り歩いていた時偶然見つけたもの。弧月の半分の重さの、刀身を自由に設定出来るブレードとシールド、砲身の長さと銃弾の射出方法(ガトリングみたいに連射モードにしたり、バズーカみたいに高威力を一発で撃ち出したりとか)を自由に設定できる銃、そして精神攻撃がこのトリガーの装備。普段はイヤリングに。現在は適合した小町が持っている。

 

 

雪ノ下陽乃

 

八幡、修と同様にとてつもないトリオンを持ち攫われた所を敵基地に潜入していた八幡に助けられる。その後、あらゆる戦闘術を叩き込まれる。比企谷八幡の婚約者だが、無理に家を継がなくてもいいと言われている。原作のような強化外骨格はあまりない。八幡同様家族や仲間を侮辱されるととんでもない殺気を放つ。殺気だけなら八幡より強い。

今作では雪乃に嫌われていない。八幡も姉婿として、好かれている。

射手1位(バイパー)個人総合2位。

parameter

トリオン:54

攻撃:42

防御·援護:30

機動:12

技術:37

射程:3(攻撃手)11(銃手、射手)28(狙撃手)

指揮:8

特殊戦術:8

合計:188(攻撃手)196(銃手、射手)213(狙撃手)

 

 

サイドエフェクト

:超直感(ランクA)

 

これは単純に、第六感と呼ばれる直感の精度が限界まで上がったもの。これで、危機管理能力や戦闘における経験の不足を埋めることが出来た。偶に、これだよりでバイパーの弾道を設定してる。

 

トリガーセット

メイン サブ

バイパー アステロイド

スコーピオン スコーピオン

シールド バイパー

メテオラ グラスホッパー

 

魔帝(サンドラ)

トリオンを消費して、トリオン構造に干渉するのがこのトリガーの能力。ただ、1度使うと10分のインターバルが必要で、10分間を固定武装のブレードだけで凌がなくてはならない。普段はピアス。

 

 

 

 

 

三雲修

 

原作との乖離が限界突破した。

 

比企谷八幡の実弟であり、トリオン能力は兄と同じだけある。小南桐絵の恋人だが恋人になって間もなく大規模侵攻があり、千佳の護衛をする為、あまり会えていない。本作では遊真がボーダーに入るまで、小南とはあまり会えず、弱い奴を演じている。八幡、陽乃と同様仲間を侮辱されるととんでもない殺気を放つ。千佳に警戒区域に行かないようにとか、説得しているが千佳が頑固過ぎて頭を痛めている。

 

parameter

トリオン:61

攻撃:32

防御·援護:36

機動:9(但し、演技を辞めた後)

技術:36

射程:1(レイガスト)3(弧月、スコーピオン)14(銃手、射手)31(狙撃手)

指揮:16

特殊戦術:10

合計:201(レイガスト)203(弧月、スコーピオン)

214(銃手、射手)231(狙撃手)

 

サイドエフェクト

:感覚認知·把握能力拡大(ランクSS)

簡単に言うと、普通の人間が聞けない周波数の音が聞こえ、可視光以外の光線が見えると言った能力。ある程度、トリオンの流れも見える。

これも、脳にもの凄い負担がかかるので彼もとんでもない甘党である。

 

トリガーセット

メイン サブ

レイガスト アステロイド

スラスター バイパー

バイパー シールド

メテオラ(スパイダー) バッグワーム

 

天光(クオリア)

 

光を使って攻撃する黒トリガー。自身は最大で光速の99.9%まで加速することが出来る(但し、トリガーの出力から計算した理論上の数値)。このトリガーで体感時間の操作も出来る。装備はレイガストを細めにしたブレードとボーダーの射手用トリガーのようなキューブの弾トリガー(この武器は、弾道を設定することが出来、これを元にアステロイドとバイパーが作られたが、バイパーは使うのが難しいので弾道設定機能の代わりに追尾機能が追加され簡易化されたのがハウンド)。普段はブレスレット。実を言うとこの黒トリガーは、黒トリガー全体の中でもそうとう高位である。

 

 

比企谷小町

 

大規模侵攻で兄の八幡に助けられる。その後兄の支えにと、ボーダーに入隊するがセンスはあるもののトリオンが足りず、オペレーターとして入隊する。因みに、比企谷家の母は大規模侵攻で足に軽い障害を負ったものの、リハビリによって現在は日常生活に支障が出ないレベルまで回復している。小町は、現在A級1位比企谷隊のオペレーターをしているが、ランク戦は2人共支援が要らないので割と暇(オペレートが苦手な訳ではない)。暇な時は、兄に貰った黒トリガーの稽古をつけて貰っている。

parameter

オペレーター時

トリオン:3

機器操作:6

情報分析:8

並列処理:9

戦術:5

指揮:5

合計:33(トリオンを除く)

 

«悪意»使用時

トリオン:41

攻撃:32

防御·援護:14

機動:7

技術:10

射程:8

指揮:4

特殊戦術:3

合計:119

 

 

雪ノ下雪乃

 

八幡と陽乃がボーダーであることを知り入隊。現在はB級個人攻撃手。八幡と陽乃に(2人がいない時も多いのでレイジさんにも)稽古をつけてもらっており、絶賛完璧万能手志望である。一人暮らしをしてない。八幡のことがあり、校長と教頭以外にボーダーのことを言っていない。姉程ではないが、トリオン能力はずば抜けている。

 

parameter

トリオン:24

攻撃:13

防御·援護:6

機動:8

技術:7

射程:5

指揮:3

特殊戦術:1

合計:67

 

トリガーセット

メイン サブ

弧月 アステロイド

旋空 シールド

シールド バッグワーム

Free TRIGGER グラスホッパー

:備考

:旧ボーダーは第一次大規模侵攻の8ヵ月くらい前に設立という設定

:比企谷隊は名目上忍田派で本部に作戦室も持っているが実際は玉狛支部所属で、バリバリの玉狛派。

:八幡と陽乃の弟子には、二宮、時枝、木虎、佐鳥、黒江、那須、熊谷、志岐、照屋、巴。他にも弟子ではないがアドバイスを聞きに来る人が結構いる。遊真は、修の弟子の弟子ということに。

:修は千佳の説得や諸々(これは後に書きます)で、麟児と最後にあった時からボーダー入隊に1年掛かった。

:3人の攻撃、防御·援護、射程の項目が高いのはトリオンの為せる技(攻撃者の射程は旋空、攻撃の項目はアイビスなども含めて)防御·援護が高いのはシールドがアホみたいに堅いため。尚、攻撃は理論値です。3人の場合、トリオンを最大までこめると、攻撃手·射手用トリガーはトリオン供給障害、銃手·狙撃手用トリガーだと砲身が焼ききれます(アイビスでこれをやると砲身も吹き飛ぶ)。八幡の旋空は0.1秒まで縮めて使う場合が多いです(それ以上短縮も出来るけど安定しなくなる)。

:技術、戦術、指揮、特殊戦術は向こうの世界を渡り歩くうちに鍛えられた結果。遊真と比べても危険な戦場を渡り歩き、生き残るために感覚が研ぎ澄まされた。

:総武高所属のボーダー隊員

3年生····荒船、犬飼

2年生····宇佐美、綾辻、奈良坂、三上、辻、熊谷、三輪、八幡(F組は八幡だけ)、雪乃

1年生····歌川、菊地原、古寺

:その他のキャラは概ね原作に準じてます。俺ガイルのキャラは必要に応じて出ます。




全員チートだ····どうしてこうなった···


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4話:俺と彼女は戦いを楽しむ。


やっと本編に入れた····これの次の話から俺ガイル原作に入ります。
·····あれ?まだ本編入れてない?


 

 

小町「お兄ちゃん起きろーーっ!!!あっ兄の寝坊を防ごうとする妹!小町的にポイント高い!」

 

八幡「はいはい高い高いそしてあざとい」

 

叫びながら小町が部屋に殴り込んで来た。俺は着替え終わって、もう部屋を出るとこだったので、小町の叫び声が頭に響く。可愛いから許すんだけどね。

 

小町「お兄ちゃん早く行くよ?今日ランク戦最終日でしょ?」

 

八幡「ああ。···今日は太刀川隊、嵐山隊、加古隊か。どうするかな······」

 

小町「お兄ちゃん作戦は後でいいから早くご飯食べないと陽乃義姉ちゃん来ちゃうよー」

 

八幡「そうだな。頂きます」

 

小町「召し上がれ~」

 

 

 

 

八幡「·····今回の作戦はこれでいきます」

 

陽乃「オッケー」

 

八幡「ランク戦最後も勝って終わりましょう」

 

陽乃·小町「「ええ!(了解っ!)」」

 

小町「じゃあお二人さん転送開始するよー」

 

_______________________

 

 

·····俺は室内に転送されたので、外を見る。ステージは河川敷で天気は雨か。俺等と太刀川隊と嵐山隊を分断して浮いた奴から倒すつもりらしい。他にもあるかもしれないが、とりあえず今は考えないでおく。

 

陽乃『八幡、そっちは誰がいる?』

 

八幡「わかってる限りだと、こっち側には····唯我、太刀川さん、黒江、喜多川、佐鳥、木虎だ」

 

陽乃『分かったわ各個撃破で行く?』

 

八幡「ああ。幸運を祈る」

 

陽乃『そっちもね』

 

内部通信を切り、外に出たとこで佐鳥を発見した。

 

八幡「ライトニング」

 

ライトニングはトリオンが高いほど弾速が速くなるのでこういう時にもってこいだ。

 

佐鳥「え?」『戦闘体活動限界 ベイルアウト』

 

佐鳥の頭をライトニングで撃ち抜き、サイドエフェクトで周りを警戒しながらトマホークを合成する。キューブを普段より大きくし20×20×20の8000個に分割しサイドエフェクトに引っ掛かった奴全員にとりあえず、1600発ずつを弾速重視で撃つ。イメージは添さんの適当メテオラ。

 

八幡「行け。トマホーク」

 

撃ち終わり、サイドエフェクトで周りを確認する。···うわ太刀川さんあれから逃げ切ったんかよ。とりあえず、太刀川さん撃破に向かう。

 

_______________________

 

 

三上『これよりA級ランク戦最終日昼の部を開始します。実況は私風間隊の三上、解説は隊員に定評のある東隊の東隊長と自称実力派エリートの迅さんにお越し頂きました。宜しくお願いします。』

 

東『どうぞよろしく』

 

迅『待って三上ちゃん、自称ってどうい『今回の戦闘はどう見ますか東隊長』ちょっと?』

 

東『そうですね。今回のステージ選択権は加古隊にあります。どこを選ぶかで全く変わりますが…やはり今回も圧倒的な勝利を挙げている比企谷隊の2人がどういうふうに立ち回るで変わりますね。』

 

三上『なるほど。そして、全隊員の転送が完了しました。ステージは河川敷です。東岸では、唯一の狙撃手の佐鳥隊員がバッグワームを起動して移動を開始しました。』

 

東『トラッパーの喜多川と連携して1人ずつ倒して行くのが加古隊の狙いでしょうね。ただ、佐鳥の行動は悪手でしたね』

 

三上『それはどういう······なんと!比企谷隊長がライトニングで移動を開始した佐鳥隊員の頭を撃ち抜いた!!』

 

迅『流石は八幡といったところですね。東さんには申し訳ないけど、あいつランク戦めんどくさいからやらないってだけで狙撃手としても超一流ですし、旧ボーダー時代にスナイパーライフル使ってた時期あるんで本当の最初の狙撃手なんですよね八幡は』

 

三上『なんと!伊達にA級1位部隊隊長ではないという訳ですね。ここで比企谷隊長一瞬にして合成弾を合成し撃ち出しました。これは······トマホークでしょうか。物凄い数です!そしてトマホークを受けて、唯我隊員、木虎隊員、黒江隊員、喜多川隊員がベイルアウトしました!!太刀川隊長も右足と左腕を大きく削られました!』

 

迅『うわ······相変わらずえげつないですね····』

 

三上『一方、西岸でも雪ノ下隊員と嵐山隊嵐山隊長と時枝隊員が戦闘を開始しました!』

 

______________________

 

八幡「トマホークで太刀川さん以外仕留めたから太刀川さんにとどめ刺しに行くわ」

 

陽乃「流石八幡ね、分かった。太刀川さんにとどめ刺したらこっちに合流して。何か面倒になりそうなの」

 

八幡「分かった」

 

 

 

 

私と八幡は合流ではなく各個撃破に変更した。そして私は今嵐山隊の2人と戦闘している。

 

嵐山「行くぞ充!」

 

時枝「はい」

 

その瞬間2人はテレポーターで時枝君が私の背後に、嵐山君が私の斜め前に移動して、お得意のクロスファイアを仕掛けてきた。私はシールドを2つに分割してクロスファイアを防ぎつつ サブのバイパーを、5×5×5の125発に分割して2人に放った。当然これでは倒せないだろう。2人がシールドを展開した瞬間にグラスホッパーで一気に真上に駆け上がり、バイパーとアステロイドを合成し、合成弾コブラを放った。狙いは2人がシールドが張った瞬間に1点に攻撃し撃破だ。案の定コブラは2人のシールドを破り、嵐山君は右腕、時枝君は、脇腹を大きく抉り、右腕と左足を失った。時枝君は、もうすぐベイルアウトするだろう。時枝君は捨て身で、テレポーターで突っ込んで来てスコーピオンで作った義手とメテオラで攻撃して来た。私はシールドでメテオラをぎりぎり防ぎつつ、スコーピオンの義手をもって時枝君を投げ飛ばした。シールドで2人の銃撃を止めてアステロイドで時枝君にとどめを刺す。

嵐山君と1対1になった時、2方向からハウンドとバイパーが飛んできた。ハウンドをシールドで防ぎ、グラスホッパーで、バイパーを避ける。あちゃ~。もう望と出水君が来ちゃったか~。とりあえず、出水君にマンティスをやってみる。流石に避けられた。八幡ならここで真っ二つにするんだけどなぁ。

 

加古「あら奇遇ね。陽乃、比企谷君と上手くいってる?」

 

出水「陽乃さん跳びながらマンティスとか冗談キツいっすよ」

 

陽乃「開始早々トマホークばら撒いた八幡程じゃないわよ」

 

「冗談キツくて悪かったな」

 

八幡がこっちに来てくれた。

 

陽乃「流石早いね。太刀川さんは?」

 

八幡「生駒旋空で真っ二つにしてきた」

 

出水「マジかよ····」

 

嵐山「やはり末恐ろしいな比企谷」

 

私は八幡とともに3人に向き直った。

 

______________________

 

 

八幡が陽乃と合流する少し前_

 

三上『比企谷隊長が太刀川隊長を発見しました!!』

 

 

 

 

太刀川「おい比企谷、さっきのなんだ」

 

八幡「何ってトマホークですよ」

 

俺達は弧月を振りながら喋る。

 

太刀川「なんだよあの弾数。何発撃ちやがった?」

 

八幡「とりあえず、見っけた佐鳥を作戦室にお返しした後残りの太刀川さん、木虎、黒江、唯我、喜多川に1600発ずつですよ。よく避けられましたね」

 

太刀川「5人に1600!?8000発とか出水でも到底無理だぞ、何で攻撃手のお前がそんなに出来るんだ」

 

八幡「出水でも練習すれば出来ますよ。言ってなかったですけど、俺全ポジションの全トリガー使えるんですよ。個人ランク戦やるのがめんどくさかったんで弧月のポイントしかないですけど。あと、一応オペレーターも出来ます」

 

太刀川「は?マジかよ···」

 

八幡「あ、そろそろ行かないと陽乃のヘルプ出来ないんでもう行きますね。グラスホッパー」

 

俺はグラスホッパーを6回使って太刀川さんを45㍍くらい吹っ飛ばした後、0.15秒の旋空弧月で太刀川さんが反応する前に真っ二つにした。

 

 

 

 

三上『なんと!東岸にいた隊員全員が比企谷隊長1人に倒されました!』

 

迅·東『『まあ、あれはしょうがないですね』』

 

三上『比企谷隊長はグラスホッパーで西岸の雪ノ下隊員の援護に向かう模様です』

 

 

 

そして現在_

 

陽乃『八幡どうする?』

 

八幡『小町、サイドエフェクトの共有出来る?』

 

小町『モチのロンだよお兄ちゃん。···共有完了〜!』

 

八幡『よし、もう休んでてもいいぞ』

 

小町『やり〜い♪』

 

八幡『陽乃は加古さんをお願い。おれが嵐山さんと弾バカやる』

 

陽乃『分かったわ。頑張ってね』

 

八幡『ああ』

 

俺達は内部通信を終了しバイパーを、10×10×10の1000発に分割し、加古さんが1人になるように微妙に他2人よりも多めに弾を設定し撃つ。

案の定他2人より遠くに離れた加古さんに陽乃がマンティスで追い討ちをかけ引き離す。

 

 

出水「牽制にバイパー1000発とか辞めてくれよ」

 

嵐山「驚いたな。賢と藍はどうやったんだ?」

 

八幡「佐鳥は移動してるところをライトニングでドン。木虎はトマホーク1600発で蜂の巣にしました」

 

出水「1600発!?本物の化け物だな…」

 

八幡「おい違うわ出水。佐鳥を倒した後残りの5人に同じ数だけトマホーク飛ばして太刀川さん以外の4人を蜂の巣にしたから合計8000発だ。てか練習すれば誰でも出来るぞ」

 

出水「どんな練習すればそれが出来るんだよ…」

 

八幡「普通の練習しただけ」

 

出水「もう着いて行けないからとりあえずお前を倒す」

 

八幡「ヤケクソじゃねえか」

 

出水が俺に攻撃を仕掛けると、嵐山さんも俺に攻撃してきた。

 

出水「比企谷とりあえずくたばれ!」

 

出水がアステロイドで攻撃と口撃をして来た。やっぱヤケクソじゃねえか。

 

嵐山「比企谷!せめて1点貰うぞ!」

 

嵐山さんもアサルトライフルで俺に攻撃してきた。

 

八幡「嵐山さん1点あげます。グラスホッパー」

 

俺はグラスホッパーで出水を嵐山さんの射線に飛ばした。出水は反応出来ずに嵐山さんのアステロイドをもろにくらいベイルアウトした。

 

嵐山さんの視界が出水のベイルアウトの煙に遮られた瞬間に、俺は0.1秒の旋空弧月を突きで放って嵐山さんをベイルアウトさせた。

 

八幡『陽乃そっちはどう?』

 

陽乃『こっちはさっき終わったわ。そっちは?』

 

八幡『こっちも終わったぞ』

 

内部通信で会話している間に俺達も作戦室に転送された。

 

_______________________

 

三上『A級ランク戦最後は8:1:0!!!比企谷隊の圧勝で幕を閉じました!御二方は今回をどう見ます?』

 

東『そうですね。今回は嵐山隊は木虎と佐鳥、加古隊は黒江と喜多川が開始1分で落とされたのが1番の原因と見えます。まぁ、あの数のトマホークを避けろというのが無茶な話ですが』

 

迅『比企谷隊長は最後にやりましたね。出水隊員を囮にし敢えて嵐山隊長に落とさせ嵐山隊長の視界が一瞬塞がった隙に旋空弧月を突きで放ちましたね。』

 

三上『では、今回無得点だった太刀川隊はどうすれば良かったでしょうか』

 

東『まず、太刀川が出水に合流することでしたね。太刀川は比企谷のトマホークを何とか凌げたので出水と合流し乱戦に持ち込むことで1、2点くらいは取れたかもしれません』

 

三上『迅さんから見て如何だったでしょうか』

 

迅『ウ〜ン。俺は東さんみたいに戦術に詳しくないから、相手が悪かったとしか言いようがないですね』

 

三上『そんなにですか?』

 

迅『ええあの2人は片手間で風刃使った俺を瞬殺したり、俺のトリオンが切れるまで待ったりとか普通にやってましたからね。昔、八幡と風刃使って模擬戦した時、俺、文庫本読みながら戦う八幡に負けたことありますね。あの時は心が折れかけました』

 

三上『······な、なるほど···ではA級ランク戦最後の戦闘を終わります。解説の御二方ありがとうございました

 

東·迅『『ありがとうございました』』

 

 

 

八幡「ふい~終わった~」

 

陽乃「お疲れ様、八幡」

 

八幡「陽乃もお疲れ様」

 

陽乃「あっ、そうだこの後2人でご飯食べに行かない?」

 

八幡「2人··って小町どこ行った?」

 

陽乃「那須隊の作戦室に遊びに行ったよ」

 

八幡「相変わらずだなあいつも···」

 

陽乃「いいじゃない、行きましょ?」

 

陽乃が上目遣いで見てくる。ヤバイ超可愛い」

 

陽乃「八幡そんなダイレクトに····///」

 

八幡「ああ悪い、また声に出てたな。それより飯だろ?早く行こうぜ」

 

陽乃「ウン!······フッフ〜ン♪」

 

陽乃と腕を組み道を歩く。視線が集まっている気がするがまぁいいだろう。

 

 

 

八幡「わざわざ誘ってくれてありがとうな」

 

今は、2人で帰途についている。

 

陽乃「い~いの。私も八幡と居て凄い楽しいんだから」

 

八幡「そうか。それは嬉しいな」

 

陽乃「·····八幡」

 

八幡「ん?」

 

陽乃は俺が振り向いた瞬間に唇を奪ってくる。

 

八幡「いきなりか····」

 

少し驚いてそう言いつつも、俺も唇を奪い返す。

 

 

 

八幡「着いたぞ」

 

陽乃「ウフフ。八幡送ってくれてありがとうね」

 

八幡「いいって。···おやすみ、陽乃」

 

陽乃「おやすみなさい、八幡」

 

そう言って、また唇を合わす。そして、陽乃が家に入るのを見届けると俺も、自分の家に向かって歩き出した。

 

 

 

 





設定上、このランク戦は2月下旬から3月中旬頃となっており、八幡と陽乃は新しい学び舎での1年目が終わるところです。


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5話:やはり比企谷八幡は面倒事に巻き込まれる。


やっとです。俺ガイル原作入りします。少ししたら修のボーダー復帰があります。その後はワールドトリガー原作開始までほぼ出番なしです。


 

『高校生活を振り返って

2年 F組 比企谷八幡

振り返ることなんてありません。もっとマシな課題はないんですか?』

 

 

平塚「比企谷!何だねこれは!」

 

八幡「見ての通り先生の出した課題ですよ。高校生活を振り返って···でしたっけ?」

 

平塚「違う!私が出したのは作文の課題だ。これの何処が作文なんだ!?」

 

八幡「いやそんなこと言われても、俺には高校生活に思い出がないんですよ。バイトに重点を置いてるんで」

 

平塚「君は高校生だろう。もう少し学校を楽しもうとか思わんのかね」

 

八幡「うち父親がいないんでそんなこと言ってられません。」

 

平塚「そ、そうか済まない。野暮な事を聞いたな。」

 

八幡「いえ、別に」

 

平塚「········時に比企谷、君は友達はいるか?」

 

ボーダーだと3バカとかとはよくつるんでるし、小町経由で那須隊とかの、一部の女子隊員ともそこそこ仲はいいと思う。

 

八幡「バイト先に仲いい奴なら結構いますよ」

 

平塚「······そうか」

 

八幡「何ですか、今の間」

 

平塚「なら!彼女はいるか?」

 

何でこんな事聞いてくるんだ?

 

八幡「逆に先生は彼氏」

 

ビュオッ!!と風を切る音が耳のすぐ横から聴こえた。なかなか速いな。座った状態から腰の捻りだけでこのスピードか。まあ、当てる気が無いのは軌道からでも分かったが。

 

平塚「次は当てる」

 

八幡「やってみて下さい」

 

平塚「ほぅ······」

 

あれ?間違えたか?サイドエフェクト使えば良かった。

 

平塚「まあいい。作文は再提出だ」

 

八幡「分かりました」

 

平塚「それと、私を侮辱した君には罰として、奉仕活動を命じる」

 

八幡「は?」

 

平塚「黙って、付いてきたまえ」

 

八幡「いや、俺放課後はバイトが」

 

平塚「付いてきたまえ」

 

八幡「はあ」

 

俺は平塚先生に連れられ、特別棟の3階まで来た。ここって確か、空き教室だった筈だが。

 

平塚「邪魔するぞ、雪ノ下!」

 

雪ノ下?雪乃ちゃんか?

そう思い、中を覗くと雪乃ちゃんが本を読んでいた。俺は雪乃ちゃんにアイコンタクトで合図を送る。···どうやら分かってくれたようだ。

 

雪乃「先生、ノックを」

 

平塚「君はノックしても反応しないじゃないか」

 

雪乃「先生が反応する前に入って来るからです。····それで、そこにいるヌボーっとした彼は?」

 

八幡「(ぐっさり言うなぁ)」

 

平塚「彼は比企谷、入部希望者だ。比企谷、自己紹介を」

 

八幡「2年 F組 比企谷八幡です。······って入部って何ですか、聞いてないです」

 

平塚「私の依頼は、このように捻くれた彼の孤独体質の改善と性格の矯正だ。頼んだぞ、雪ノ下」

 

八幡「いや俺放課後バイトが「異論反論その他一切の抗議は認めん」は?」

 

平塚「ではな、頼んだぞ」

 

平塚先生は帰ったかと思ったらドアのすぐ横にもたれ掛かって俺達の話を聞いている。何がしたいんだ?

 

八幡「で、ここって何部なんだ?」

 

雪乃「そうね、ならゲームをしましょう」

 

八幡「は?」

 

雪乃「ここは何部かしら」

 

八幡「何なんだいきなり·········(えっと······平塚先生が奉仕活動がどうのこうのっつってたから)奉仕部ってところか?」

 

雪乃「正解よ。何故分かったのかしら」

 

八幡「簡単だ。ここに来る前に平塚先生が奉仕活動云々とかなんとか言ってたからな」

 

雪乃「そう。ようこそ、奉仕部へ。ここは飢えた人には食糧を、途上国にはODAを、捻くれた人には制裁を、歓迎するわ」

 

八幡「おい、最後明らかに俺だろ」

 

雪乃「あら、自覚はあったのね。あなたのその捻くれた性格は変えなければならないほどよ」

 

八幡「おい、何であったばっかの他人に自分を変えられないといけないんだよ」

 

そこで、 扉を開けて外で今か今かと待っていた平塚先生が入って来た。

 

平塚「雪ノ下、比企谷の更生に手間取っているようだな」

雪乃「彼が自分が問題を抱えていることを自覚していないだけです」

 

八幡「何で初対面の奴に自分の問題を治されなきゃいけないんだって言ってんだよ」

 

雪乃「あなたは変わらなければならないと言ったはずだわ」

 

八幡「だから、それを何でって言ってんだよ」

 

雪乃「変わらなければ、何も救われないじゃない!!」

 

平塚「いいぞいいぞ、私好みの展開になってきた。よし。それではどちらがより他人に奉仕出来るか勝負にしようではないか」

 

八幡「嫌です」

 

雪乃「この男を見ていると何故か貞操の危機を感じます」

 

平塚「おや?さしもの雪ノ下でも、この勝負に勝つ自信は無いのか?」

 

八幡「(挑発下手くそか)」

 

雪乃「いいでしょう。その安い挑発に宣るのは癪ですが、その勝負受けて立ちます」

 

平塚「よし。勝負の判定は私の独断と偏見で決定する。異論反論は認めない。では、勝負を開始する。ガンダムファイト、レディーg「prrrrr」なっ!?」

 

八幡「俺です。少し席を外しますね」

 

 

八幡「もしもし」

 

陽乃『あ、もしもし?』

 

八幡「陽乃か。どうした?」

 

陽乃『ちょっと今から作戦室来れる?』

 

八幡「ああ、行けるけど何で?後、俺まだ学校だから少し待たせちゃうけど大丈夫か?」

 

陽乃『うん。じゃあ待ってるね』

 

八幡「ああ」

 

通話を終え、空き教室に戻ると何故か知らんが平塚先生が床に座り込み泣いていた。

 

平塚「最後まで言わせてくれ·····」

 

八幡「······とりあえず、奉仕部には入部します。条件を呑んでくれるなら、ですが」

 

平塚「じょ、条件とは?」

 

八幡「(いつまで泣いてんだ···)1つ、バイトがあるので来れる時だけでいいこと。2つ俺に口出ししないこと。3つ次に何か俺に危害が及ぶのなら全力であなたを糾弾します。以上が条件です」

 

平塚「·······分かった。条件を受け入れよう。では、今日のところは私は失礼する·····」

 

そう言って平塚先生は、本当に帰って行った。

 

 

 

八幡「ありがとうな雪乃ちゃん。助かった」

 

雪乃「いいのよ。でも義兄さんは何故ここに?義兄さんが問題を起こすとは思えないのだけれども」

 

八幡「いやな·······」

 

 

 

雪乃「·····義兄さん、何故そんなものを出したの?」

 

八幡「昨日、3バカとランク戦100本ずつしてそれから書こうと思ってたんだが太刀川さんと二宮さんと風間さんに捕まって更に100本ずつやらされてヘトヘトになって作戦室で書こうとしてたけど、何も思い浮かばなくてああ書いた」

 

雪乃「それは····お気の毒に·····」

 

八幡「そうだ。出来れば学校では陽乃と婚約者だってこと隠してくれないか?」

 

雪乃「何故?人には言えないような事でもしているのかしら」

 

八幡「いや、ただ単に目立ちたくないだけだ。陽乃は総武いる時は、プリンセスなんて呼ばれてたくらいだからな。バレたら、カースト最下位の俺には何が起こるか分からん。下手したら陽乃と雪乃ちゃんにも迷惑がかかるしな」

 

雪乃「姉さんはそんなことを迷惑とは思わないと思うけど·······分かったわ。改めてよろしく、比企谷君」

 

八幡「ああ、よろしく雪ノ下」

 

 

八幡「で今日はどうする?俺は本部行くけど」

 

雪乃「私も行くわ。弧月のポイントがそろそろ11000に届くの」

 

八幡「マジか!?もうそんなになったんか·····」

 

雪乃「ええ。今日はランク戦しに行こうと思うの。あと、鍵は私が返しておくわ」

 

八幡「そうか。じゃあ俺は行くわ」

 

雪乃「ええ」

 

俺が下駄箱で靴を履き替えてる時、お団子頭でピンクの髪をした頭の悪そうな奴が「ヒッキーヒッキー」叫んでいたんだが、ヒッキーって何のことだろうか。····まあ、どうでもいいや。

 

 

 

 

 

八幡「悪い陽乃、遅れた。」

 

陽乃「いいの。それより早く始めましょ。」

 

八幡「それで、話って?」

 

陽乃「八幡も知ってるだろうけど、修君がそろそろ復隊してくるじゃない?」

 

八幡「ああ、てか暫く会ってないな」

 

陽乃「でね、その際に修君に演技を辞めて貰うかどうかをちょっとこっちでも考えておこうと思って」

 

八幡「なるほどね。ならとりあえず玉狛に行くぞ。迅さんかレイジさんか林藤さんの誰かは居るだろうし」

 

陽乃「分かったわ。でも、桐絵ちゃんはいいの?」

 

八幡「アイツは修と早くイチャイチャしたいとかしか言わんだろ…」

 

陽乃「それもそうね。じゃあ、行きましょ」

 

 

 

 

俺達は今、玉狛に来ている。今日は運良く烏丸と宇佐美がいないらしいので、修も来ている。今は迅さんと小南と林藤さんと話をしている。レイジさんも私用で居ないらしい。

 

修「皆さんお久しぶりです。桐絵も久しぶり」

 

桐絵「修~!」ガバッ

 

小南のデレっぷりに呆れつつ話を進める。

 

林藤「修、やっとボーダーに戻るらしいな」

 

修「はい」

 

迅「でも何でこんなに時間かかったんだ?」

 

修「最初は···千佳にもボーダーに入隊してもらおうと思ってたんですけど、アイツ超が付くくらい強情で首を縦に振らなかったんです。だからせめて、警戒区域に近寄らないように言ってるんですけど、そうも言ってられなくなりそうなんです。だから、先にボーダーに入って、説得しようと思いまして」

 

林藤「何があるんだ?」

 

修「まだ7、8ヵ月後ですけど…玄界に惑星国家であるアフトクラトル、キオン、リーベリー、レオフォリオが接近します」

 

八幡「そうか。もうそんな時期だったか」

 

修「うん。で、出来れば演技はその辺まで続けたいけど、もうそろそろ入隊しないと間に合わなくなってしまって。·····ごめん桐絵。もうちょっと待っててくれる?」

 

桐絵「······分かった」

 

小南が若干不機嫌になりながらも頷く。

 

修「じゃあ名残惜しいのですが、怪しまれるとまずいし、烏丸っていう人と宇佐美っていう人が帰る前に僕はこれで、失礼します」

 

そう言うと、修は先に帰って行った。

 

桐絵「ねぇ、比企谷」

 

八幡「あ?」

 

桐絵「修って本当に私のことが好きなのかしら…」

 

八幡「何言ってやがる。修の奴表に出してないだけでお前のことめちゃくちゃ好きだぞ」

 

桐絵「ホント!?」

 

八幡「ああ、サイドエフェクトで見たから間違いない」

 

陽乃「ヒューヒュー♪」

 

桐絵「ちょっ!ちょっと辞めてよ陽乃!」

 

陽乃「ごめんごめん」

 

八幡「そういうことだ。小南、これからも修と仲良くしてやってくれ」

 

桐絵「こっちがしてもらってる気がするけど…」

 

八幡「ま、そういうことにしとけ。陽乃、俺達も怪しまれる前に戻るぞ」

 

陽乃「ええ」

 

八幡「俺達もこれで失礼します」

 

陽乃「またね〜」

 

 

 

 

 

陽乃「八幡送ってくれてありがとう」

 

八幡「いいっての」

 

陽乃「おやすみ、八幡」

 

八幡「ああ、おやすみ。陽乃」

 

そう言って軽く唇を合わせた。

 

 

陽乃がいえに入るのを見届けて、俺も家に帰路についた。

 

 

 

 

 



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6話:三雲修は演技を貫き、奉仕部は活動を開始する。

この次から暫くの間、修のことは他の人の心情の描写のとき触れられるとかいうレベルになると思います。


-4月 正式入隊日-

 

僕は今、周りの新入隊員と一緒になって正式入隊の訓練の1つ対近界民(ネイバー)戦闘訓練の説明を嵐山という人から受けている。にしてもこのフロア広いな。ボーダーってここまで大きくなってたのか。因みに、使っているのはレイガストだ。理由は一番使いにくそうだったからだ。これまでの地形踏破とかの訓練は、3つともそこそこの順位でクリアした。学力試験の時は6時間以上トリオンを平均並に抑えるので大変だった。

 

 

嵐山「最後に受けて貰う戦闘訓練では捕獲用トリオン兵が相手だ。攻撃はしてこないが、その分装甲が堅くなっている。では皆!くれぐれも頑張ってくれ!」

 

周りの人は皆テンションが高まっている。結構単純だな。

 

そうこうしているうちに、僕の番がきた。どうやら、1分を切ると結構速いらしい。まあ、1分30秒くらいにしておくか。

 

·········訓練が終わったら記録は1分35秒。よし、これでいいだろう。というか、手を抜いた状態で本気でやってるように見せるのって割と大変だな。どれくらいでB級に上がればいいだろうか。まあ2、3ヵ月くらいでいいだろう。

 

 

正式入隊の訓練が終わり、本部から出たところで電話が掛かってきた。

 

修「もしもし?」

 

八幡『よお、修。八幡だ』

 

修「どうしたの兄さん」

 

八幡『いや、今日正式入隊だろ?お前がどんな感じにやってるか気になってな。まぁ見てたが、頑張れよ。あと、レイガストで1分30秒はかなり速い方だからな。マグレってことにでもしとけば?』

 

修「そうしとくよ」

 

八幡『そうか。用件は済んだ。じゃ、またな』

 

修「じゃあね」

 

_______________________

 

 

修が入隊して数日後。

 

 

俺は今とてもイライラしている。理由は時は遡ること1時間半程前、奉仕部で雪乃ちゃん····おっと、雪ノ下と本を読んでいるところ。頭の悪そうなビッチがやって来た。

 

由比ヶ浜「········失礼しま〜す。って何でヒッキーが居るの!?」

 

雪乃「呼ばれているわ、返事をしなさい比企谷君」

 

八幡「え?俺いつ呼ばれたん?あと、コイツ誰?」

 

雪乃「2年 F組 由比ヶ浜結衣さんよ。あなた同じクラスでしょう?状況的にあなたが呼ばれているわ。」

 

八幡「でも、俺の知り合いに俺をヒッキー何て呼ぶ奴は居ないぞ?呼ぶとしても、王子さんくらいだ」

 

雪乃「もういいわ···それで由比ヶ浜さんはいつまでそこに突っ立っているつもりかしら?」

 

由比ヶ浜「私の事知ってるの?」

 

八幡「全員のこと知ってんじゃねぇの?」

 

雪乃「そんな訳ないでしょう。それで由比ヶ浜さんは何の用かしら?」

 

由比ヶ浜「えっと·····平塚先生からここに来れば願いが叶うって聞いて·····」

 

雪乃「違うわ。ここは、簡単に言うと飢えた人に、魚をあげるのではなく、魚の採り方を教える部活よ」

 

由比ヶ浜「えっと············凄いね!!」

 

八幡「絶対分かってねぇだろ」

 

由比ヶ浜「煩いし!ヒッキーキモい!」

 

八幡「あぁ?(て、雪乃ちゃん抑えろ!!!·····ふぅ)てか、初対面にいきなり罵倒か?そしてヒッキーって呼ぶの辞めろ」

 

雪乃ちゃんを抑えつつ言い返す。

 

由比ヶ浜「何で?ヒッキーはヒッキーじゃん!何言ってんのキモい!」

 

八幡「あ?お前は人が嫌だって言ってんのにそれを強制すんのか?あと初対面の相手にいきなりキモいとか常識ねぇのかこのビッチが」

 

由比ヶ浜「ビッチって私はまだ処····て何言わすんだし!ヒッキーキモい!」

 

八幡「あぁ!?てめぇいい加減にしろよ。帰れよお前。雪ノ下いいよな?」

 

雪乃「ええ。私もいい加減聞いていてイライラしてきたわ。由比ヶ浜さん、帰って頂戴。」

 

由比ヶ浜「そんな····ゆきのんまで····」

 

雪乃「いい加減にしなさい。私はゆきのんなんて名前ではないわ」

 

由比ヶ浜「ッ!·····ウゥっ·····ごめんね2人共····失礼しました。」

 

そしてあの頭の悪いお団子頭は帰って行った。

 

八幡「ああイライラする。雪乃ちゃん大丈夫か?」

 

雪乃「ええ。義兄さんも大丈夫?」

 

八幡「ああ。俺はこのイライラを3バカにぶつけることにする」

 

雪乃「私も混じっていいかしら?」

 

八幡「ああ。なら行こうぜ。」

 

雪乃「ええ」

 

 

 

俺達は今日は非番で陽乃も来てないのもあり、さっきまで3バカとランク戦をしていた。

 

 

出水「比企谷も雪乃も強くね?今日なんかあったん?」

 

八幡「ああ実はな······」

 

 

 

米屋「如何にも頭悪そうだなーそいつ」

 

八幡·出水·雪乃「「「お前(あなた)が言うな(ことではないわね)」」」

 

米屋「3人共酷くね!?」

 

緑川「まぁよねやん先輩だしね」

 

米屋「なっ!?お前まで言うか!?」

 

緑川「?ってちょっ痛い痛い痛い痛い止めてよねやん先輩!」

 

米屋が緑川にヘッドロックをかける。

 

八幡「まぁボコボコにして、事を話してスッキリしたわ。今日はサンキューな」

 

米屋「おうよ。でもなハッチ·····300対0は次からやめて···」

 

緑川「雪乃先輩も240対10はやめて······」

 

八幡「悪かったって」

 

出水「ホントに思ってんのかそれ·····」

 

 

八幡「俺玉狛行くけど雪乃ちゃんどうする?」

 

雪乃「私は帰るわ」

 

八幡「じゃあここまでだな。気を付けて帰れよ」

 

雪乃「ええ。ではさよなら、義兄さん」

 

_______________________

 

雪乃ちゃんと分かれた俺は玉狛に来ていた。内容は修が演技をやめてからだ。今回も烏丸と宇佐美は居ない。

 

八幡「さて······どうしたものか·······」

 

桐絵「別に普通でいいんじゃない?」

 

修「それでもいいけど、その場合未来さんと麟児さんのことが露見する可能性があるんだ。そうなると、同じことをしようとする人間が必ず出てくるはずだ」

 

林藤「なら、麟児をボーダーの隊員てことにして、鳩原と一緒に極秘の任務にでたってことにしちまえばいい。任務の内容は普通に向こうに行った理由にして」

 

八幡「いいですねそれ」

 

修「あと、遠征の試運転も理由に加えてみては如何でしょう」

 

林藤「そうだな。よし、話もまとまったし、今日のところは解散だ。3人共早く帰りな」

 

八幡「はい。失礼します」

 

その後、俺達はそれぞれの家に帰った。

 

________________________

 

 

翌日

 

平塚「依頼人を突っ撥ねたらしいな。」

 

八幡「いいえ。アレは俺達を侮辱した上に全く話が通じなかったのでお引き取りいただいたんですよ」

 

俺は職員室で平塚先生と話している。

 

平塚「しかし、君がそこまで怒るなんて何があったのかね」

 

八幡「はい。·············」

 

 

 

平塚「そうか。そういう子ではないと思ってたのだが····そんなところを悪いが新しい依頼人が居るんだがいいか?君と同じクラスの戸塚 彩加、男子テニス部の部長だ。詳しい話は奉仕部でしようじゃないか。彼の人間性については保証する」

 

 

 

 

戸塚「男子テニスの部長の戸塚 彩加です」

 

雪乃「それで、依頼というのは?」

 

戸塚「実は、うちのテニス部はもうすぐ3年生が引退して、もっと弱くなっちゃうんだ。だから、僕を鍛えて欲しいんだ。1年生は高校から始めた初心者が大半で····」

 

八幡「だが、戸塚1人を鍛えても意味は無いと思うんだが」

 

戸塚「それは、僕が練習しているのを見れば少しくらいはやる気が出るんじゃないかと思って···」

 

雪乃「分かったわ。その依頼を受けるわ。いいわね、比企谷君」

 

八幡「ああ、だが俺は放課後はバイトがあって出来ない。だが、昼休みの練習ならいくらでも付き合うぞ」

 

戸塚「2人共ありがとう!」

 

雪乃「なら、明日から早速始めましょう」

 

戸塚「よろしくお願いします」

 

________________________

 

1週間後

 

今は昼休みで、俺は今戸塚と練習をしている。学校での練習では技術中心に行い、筋トレなどを家で行っている。戸塚の筋がいいのか、雪ノ下の指導が上手いのか、戸塚はみるみる上達している。今の練習は雪ノ下がコースによって打ち分け、それを返す練習だ。因みに、俺はボール拾い。そしてその練習中に戸塚が転んで怪我をしてしまった。

 

八幡「戸塚、大丈夫か?」

 

雪乃「比企谷君後は任せたわ」

 

八幡「分かった」

 

戸塚「うっ····僕見捨てられちゃったかなぁ」

 

八幡「大丈夫だ。多分、救急箱とかを取りに行ったんだ」

 

戸塚「そっか。よかったー」

 

八幡「とりあえず一旦休憩だ。雪ノ下が戻って来るまで待とうぜ」

 

その時、耳障りな声が聞こえてきた。

 

三浦「あ〜テニスやってんじゃん。戸塚、ウチらもやっていいっしょ?」

 

 

そこにはクラスで女王様気取りの三浦、薄っぺらい笑みを顔に貼り付けた葉山、····そして相変わらずピンクの髪をお団子にした頭の悪い由比ヶ浜結衣がいた。

 

_______________________

 

 

 

 

 



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閑話:彼と彼女は束の間の休日を謳歌する。


今回も短いです。作者の話を広げる能力不足です。すいません。

時系列が大きく前後しますが、職場見学が終わった2週間後くらいの設定です。クリスマスなんで、普通の戦闘回とか出してもつまんないですしおすし。


 

「起きて八幡」

 

八幡「んあ?もうちょい寝か·····何で陽乃居るの?」

 

陽乃「私が居て何か不都合でもあるの?」

 

八幡「いやそういう訳じゃないけど…」

 

陽乃「なら、問題無いわね」

 

八幡「なんか言いくるめられた気がする····」

 

陽乃「そんな事よりも、ハイこれ」

 

陽乃が何か出してきた。

 

八幡「東京ワンニャンショー?」

 

陽乃「そ。私達2人で行きましょ?」

 

八幡「·····分かった。準備するからちょっと待っててくれ」

 

 

 

 

 

 

 

·····そして現在。俺は、陽乃と2人で東京ワンニャンショーに来ている。

 

八幡「おお、結構色んなのがいるな」

 

陽乃「そうね。あ!あの子可愛い!」

 

 

陽乃「キャッ!可愛い!」

 

八幡「(こういうところはやっぱり女の子だな)どれどれ。おぉ、ホントに可愛いな」

 

陽乃「八幡、この子と私どっちが可愛い?」

 

八幡「なんだいきなり·····コイツも可愛いけど、やっば陽乃には負けるな」

 

陽乃「ムフフ〜♪八幡!」ガバッ

 

八幡「うおっ!よしよし」ナデナデ

 

陽乃「♪〜」

 

八幡「!」

 

陽乃「どうしたの?」

 

八幡「移動するぞ。サイドエフェクトに反応があった」

 

陽乃「?分かったわ」

 

 

 

 

陽乃「誰が居たの?」

 

八幡「由比ヶ浜が居た。あと、別の所には3バカと、綾辻、三上が居た。出水と綾辻のデートに米屋が緑川と三上を引っ張って冷やかしに来たってとこだな。何がしたいのか…惨めになるだけだろうに」

 

陽乃「あはは····」

 

八幡「ま、俺達は俺達で楽しもうぜ」

 

陽乃「うん」

 

八幡「じゃ、向こう見て行こう」

 

陽乃「そうね····よし行こ~!」

 

八幡「おうよ」

 

 

その後俺達は、犬や猫との触れ合いコーナーや普通に見れる動物園の動物を見て回った。動物と触れ合う陽乃はめちゃめちゃ可愛かった。そうして俺達がそろそろ帰ろうかとした時だった。

 

 

米屋「あれ?ハッチと陽乃さんじゃん」

 

しまった、またやってしまった。さっきそろそろ帰るからってサイドエフェクト解除したんだった…

 

米屋「2人はどうしてここに?」

 

八幡「まぁちょっとな·····」

 

出水「流石は夫婦」

 

「「え!!!???」」

 

八幡「い、いにゃ····にゃに言ってんだ?」

 

うわーー!しまったー!噛んだよ俺の馬鹿野郎!

 

米屋「嘘だろ····」

 

出水「妙に仲良かったからカマかけただけだったんだけど…」

 

緑川「そうなの!?」

 

綾辻「いつから!?比企谷君!」

 

八幡「ああもういいや…入学初っ端轢かれた時。お前らもあん時見舞い来てくれてサンキューな。あと綾辻、出水と早く一緒になりたいってことが筒抜けだぞ」

 

感情が高まると脳が興奮してサイドエフェクトに強い反応が出るんでな。

 

綾辻「ふぇ!?」

 

出水「なっ!」

 

三上「そうなの!?」

 

綾辻が「そりゃそうなりたいけど…」とか出水が「まだ付き合い始めたばかりだし…」とか言ってるけど聞かなかったことにしといてやるか。

 

八幡「それで、なんとなく予想ついてるけど米屋と緑川と三上は何でいんの?」

 

緑川「俺はよねやん先輩に引っ張られて····」

 

三上「私も米屋君に来いって言われて······」

 

八幡「おい米屋。2人共昨日、防衛任務があったのに無理矢理連れて来たのかよ」

 

三上「え?何で知ってるの!?」

 

八幡「あ?防衛任務のシフトって周りと相談しながら俺が何人かと一緒に決めてるからだよ」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

陽乃以外は驚いている。何かおかしなこと言ったか?

 

陽乃「八幡が加わってるの知ってるのは大学生組だけだよ〜」

 

八幡「あ、そうなの?」

 

陽乃「といっても、風間さん、二宮君、柿崎君、望、東さんくらいだけどね。まぁ他にも居るかもだけど」

 

緑川「ハッチ先輩って何者?」

 

八幡「ん?役職で言えばボーダー隊員代表だが?」

 

三上「え、そうなの?知らなかった····」

 

八幡「まぁ聞かれてないからな。ま、広報はもっぱら嵐山隊に任せてるが」

 

出水「比企谷がそんなに色々やっていたとは…」

 

八幡「おい出水それどういう意味だ。ともかく俺達はもう行くぞ」

 

米屋「あ、おう。じゃなハッチ」

 

八幡「ああ。お前はもう少し自重しろよ。じゃあな皆」

 

陽乃「じゃあね~」

 

 

 

 

 

そう言って2人は帰って行った。

 

米屋「何か凄いこと聞いた気がする·····」

 

出水「あいつ将来が約束されてんな。来年あたり結婚するんだろうな····」

 

綾辻「え?高校生だよ?」

 

出水「比企谷の誕生日って夏休みど真ん中らしいし、あの2人のことだからホントにやりそうだぞ。しかも、婚約者ときた」

 

綾辻「確かに·····私達も·····」

 

出水「分かったから。もうちょい待っててな」

 

綾辻「うん!」

 

米屋·緑川·三上「「「(((逃げ出したい···)))」」」

 

その後出水と綾辻がどんどん近づいて行ったのは別の話。

 





出水と綾辻は作者が面白がってくっつけました。


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7話·:またしても由比ヶ浜結衣は比企谷八幡の逆鱗に触れる。

職場見学と千葉村で陽乃をどうしようか迷ってます。


 

 

俺は現在、目の前に立つ3人を前に睨みを利かせている。

 

八幡「お前ら何しに来た」

 

三浦「何って、テニスに決まってるし」

 

八幡「そうか。なら一番奥のコートを使え」

 

三浦「は?これじゃ全員で遊べないじゃ「俺は戸塚と練習してんだ。遊びに来たなら帰れ」何言ってんだし」

 

八幡「クルクル縦ロールのお嬢様気取りはこんな簡単なことも分からないのか?」

 

三浦「は?引きこもりの分際で何言ってんだし」

 

八幡「ここにいる時点で引きこもりじゃねぇだろ」

 

三浦「結衣を泣かせた癖に、この根暗男がほざくなし」

 

落ち着け〜、ここで問題を起こせば戸塚と雪乃ちゃん、はたまた陽乃に迷惑がかかる。

 

八幡「俺はそんなに根暗に見えるかよ。てか«ゆい»って誰?」

 

由比ヶ浜「なっ!?·····クラスメートの名前覚えてないなんてヒッキーキモい!」

 

八幡「あぁ!?ゆいっててめぇかよ由比ヶ浜。自分の思い通りにならないからって逃げてその次はオトモダチとやらに泣きついたのか?い〜いご身分だなぁ!俺言ったよな、ヒッキーって呼ぶんじゃねぇって。それすら無視か?てめぇは俺を便利屋とでも思ってんのか?」

 

由比ヶ浜「違っ····」

 

八幡「何が違うんだ?」

 

由比ヶ浜「····っ····ひっく······」

 

雪乃「そこまでよ比企谷君」

 

八幡「雪ノ下か····」

 

雪乃「私達は学校から正式に許可を貰ってここで練習をしているの。部外者が邪魔をしないでもらえないかしら」

 

葉山「······分かったよ。行くよ優美子」

 

三浦「隼人っ····でも····」

 

葉山「今回は完全に俺達が悪い。結衣も何かしでかしたみたいだしね。邪魔して悪かった。失礼するよ」

 

雪乃「そうして頂戴」

 

三浦「なっ!··アンタねぇ…」

 

葉山「優美子」

 

三浦「··ッ·····分かったし」

 

葉山「はぁ」

 

 

そうして葉山が2人を連れてテニスコートから出て行った。

 

八幡「悪い。助かった」

 

雪乃「流石にやりすぎよ」

 

八幡「ああ。それは分かってるんだがどうしても言わないと気が済まなくてな」

 

雪乃「まぁそれには同意見ね」

 

八幡「次からは気を付けるわ」

 

戸塚「あの·····僕なんかの為になんかごめんね···」

 

八幡「気にするな。それより明日からも練習やるか?俺達はお前さえ良ければ付き合うぞ」

 

戸塚「本当?じゃあ明日からもよろしくお願いします」

 

八幡·雪乃「「分かった(わ)」」

 

_______________________

 

 

俺は陽乃と雪乃ちゃんと共にカフェで勉強会をしている。するとそこに小町が知らない男と一緒に入って来た。

 

小町「あれ?お兄ちゃん、陽乃お義姉ちゃん、雪乃お義姉ちゃんも。どうしたの?」

 

八幡「俺達は勉強会だ。それより隣のそいつ誰だ?」

 

小町「えっと、同じ塾に通っている·····」

 

大志「川崎 大志です。比企谷さんにちょっと相談に乗って貰ってて····」

 

八幡「相談て何だ?」

 

大志「はい。実は····」

 

 

 

 

 

八幡「·····なるほどね。俺も首突っ込んでて言うのはなんだが小町、あまり他人の家の事情に手を出すな。次からは気を付けろ」

 

小町「ごめんお兄ちゃん····」

 

八幡「分かったならそれでいい。で、大志だったな」

 

大志「は、はい。こんなこと頼めるのもうお兄さんしかいないんです」

 

八幡「お前にお兄さんと呼ばれる筋合いはない。でだ。事情は分かった。小町の頼みでもあるから手を貸してやる。但し、あんま過度な干渉はしないからな」

 

大志「はい!ありがとうございます!」

 

八幡「なら早速今夜行ってみるわ。」

 

大志「え!?もう分かったんですか?」

 

八幡「ああ。これが終わったら家族でちゃんと話し合え。いいな」

 

大志「ありがとうございます!!!」

 

八幡「おう」

 

_______________________

 

 

そして、俺は今スーツに身を包み、ホテルの最上階にあるバー«エンジェル·ラダー 天使の階»に居る。

え?何で俺がスーツを持っているかって?俺はA級1位部隊隊長であり最古参のメンバーなので、上層部の1人なのだ。肩書きはボーダー隊員代表なんてもんだ。まぁ殆どの奴はしらないがな。

 

 

八幡「川崎 沙希だな」

 

沙希「アンタは?」

 

八幡「お前と同じクラスの比企谷八幡だ」

 

沙希「·····そっか。とうとうバレちゃったか。でも私は辞めるつもりは無いよ」

 

八幡「俺はお前を辞めさせに来たわけじゃない。提案をしに来た」

 

沙希「提案?」

 

八幡「川崎、お前がこんなことしてる理由は学費だな」

 

沙希「なっ!アンタに何が分かるの?それとも用意してくれるわけ?ウチの親が用意できなかったものを!」

 

八幡「落ち着け、俺は提案に来たと言っているだろう。川崎、これを見ろ」

 

俺は持ってきた封筒から1枚のプリントを出す。

 

沙希「!!これって…」

 

八幡「スカラシップ。学業で優秀な成績を修めた者の学費を軽減·免除する制度だ。その塾では最大で7割免除される。そしてもう一つ提案だ。」

 

沙希「何?」

 

八幡「お前、ボーダーに入らないか?」

 

沙希「ボーダー?」

 

八幡「ああ。ボーダーではB級である正隊員になると給料が貰えるようになる。A級になると固定給も出るようになる。ここでバイトするよりも、更に稼げるぞ」

 

沙希「ホントに?てかアンタ詳しいね」

 

八幡「ま、これでもボーダー隊員なんでね。···まぁ後は家族と相談しろ。大志がめちゃくちゃ心配してたぞ。じゃあな、俺は帰る」

 

沙希「ありがとうね比企谷」

 

八幡「どうってことない」

 

 

 

小町から聞いたところによると、川崎は深夜のバイトを辞めたようだ。あと、ボーダーに入るつもりらしい。

 

 

 

 



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8話:比企谷八幡は目立ちたくない。



1/2 加筆修正しました。


 

『職場見学希望調査

2年 F組 比企谷八幡

 

志望先:

 

志望理由:

 

 

平塚「比企谷、何だねこれは」

 

八幡「何って、職場見学の希望調査票ですけど」

 

平塚「そういうことを言っているんではない。何故白紙で出したのかを聞いているんだ」

 

八幡「いや俺バイトしてるじゃないですか。もう社会には入っているんですよ。だからそもそも必要ないんですよ」

 

平塚「屁理屈を捏ねるな小僧」

 

八幡「そうですね。先生の歳からしたら俺は小僧でしたね」

 

平塚先生が鳩尾に向かって殴ってきた。相変わらず速いな。トリオン体なんじゃねえの?まあ、掌で受け止めたが。

 

平塚「よく、止めたな」

 

八幡「こんくらいなら何ともないです」

 

平塚「····そうか。まあいい。職場見学は3人1班だ。あと、調査票は書き直さなくていい」

 

八幡「3人1班はまぁ分かりましたけど、逆に何で調査票は書き直さなくていいんですか?」

 

平塚「これはついさっき決まったことで、ホームルームでも言うんだが、学年の殆どの生徒が志望先にボーダーを選んでな」

 

八幡「え?」

 

まさか···嘘だと言ってよバーニィ!!!

 

平塚「全員でボーダーにお邪魔する事になった」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今絶望の底にいる。今ならヤミーになれそう。

 

そんな事を考えているとメールが来た。送り人は最愛の人、陽乃だ。

 

from:陽乃

 

件名:職場見学

 

職場見学はそろそろボーダーに決まったんじゃない?私の時も全員でボーダーだったわ。あと、私達は職場見学の時何かするらしいわ。忍田さんが計画してるらしいわ。来てね♡』

 

 

よし、行くか。何でそんな直ぐに意見が変わるかって?世界一可愛い婚約者の頼みを断るわけないだろ。

そんな事を考えていると、戸塚が来た。

 

戸塚「八幡ちょっといい?」

 

八幡「戸塚か。どうした?」

 

戸塚「実はね、僕まだ職場見学で班を作ってないんだ。一緒に行ってくれない?」

 

八幡「ああいいぞ」

 

戸塚「八幡ありがとう!」

 

その時戸塚の携帯が鳴った。戸塚は携帯を開く。メールでもきたのだろう。しかし、戸塚の顔は、みるみる暗くなっていく。

 

八幡「戸塚どうした?」

 

戸塚「八幡あのね·····」

 

戸塚が携帯の画面を見せてきた。そこには、

 

『戸部は元カラーギャングでゲーセンで西高狩り』

 

『大和は三股をかけている屑』

 

『大岡はラフプレーで相手のエース潰し』

 

と、書かれていた。

 

戸塚「これ、本当なのかな······」

 

八幡「いや、こういうものは大抵出鱈目だから気にするな。そんなメール消しちまえ」

 

戸塚「····うん。じゃあチャイムなるからもう行くね」

 

八幡「ああ」

 

_______________________

 

放課後。俺は奉仕部部室で文庫本を読んでいる。雪乃ちゃんは防衛任務があるので、学校が終わると直ぐ帰った。そんな中、葉山が来た。

 

葉山「いいかな?」

 

八幡「何だ?」

 

葉山「ちょっと相談があってね。ここは奉仕部って言うんだろ?」

 

八幡「ああ。で?とっとと本題に入れ」

 

葉山「ああ、これだ」

 

八幡「あ?これ戸塚に見せて貰ったがお前にも来たのか」

 

葉山「ああ。聞いた限りでは全員に送られている」

 

八幡「なるほどね。それでお前はどうしたいんだ?」

 

葉山「ああ、これを何とかしたいんだ。でも犯人が知りたいわけじゃない。話し合えば分かると思うんだ」

 

八幡「話し合って全員が分かり合えるわけがないが······今回に限ってはお前の望み通り犯人は探さなくていいだろう」

 

葉山「本当かい?」

 

八幡「ああ。まずは、犯人だがこれはおそらく3人の中の誰か····多分、大和だ」

 

葉山「なっ!彼は被害者だろ!?」

 

八幡「いや、この中の3人で一番被害が軽い」

 

葉山「でもどうして?」

 

八幡「これが出始めたのはいつだ?」

 

葉山「たしか·····週間くらい前からだ」

 

八幡「なら簡単だ。職場見学の班分けの話があったのがその頃だった筈だ。お前はその3人の誰かと行くつもりなんだろ?」

 

葉山「ああ、そのつもりだ」

 

八幡「そうなると1人仲間外れが出来る」

 

葉山「なるほど。で、どうすればいいんだ?」

 

八幡「簡単だ。この3人で班を組ませろ。多分、それで解決する」

 

葉山「分かった。今日はありがとう」

 

八幡「別に。大したことじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2日後。現在は班決めの最終調整をしている。黒板には、戸部、大岡、大和が3人で班になって名前を書いている。

 

葉山「いやぁ助かったよ。ありがとう」

 

八幡「別に何もしてない。動いたのはお前だ」

 

葉山「君は凄いな…ところで、俺も君達の班に加わっていいかい?」

 

八幡「俺は戸塚と組んでいる。戸塚に聞け」

 

葉山「戸塚いいかい?」

 

戸塚「勿論だよ葉山君!」

 

_______________________

 

 

6日後。

 

八幡「帰りてぇ」

 

戸塚「何言ってるの八幡!ボーダーだよボーダー!」

 

葉山「まぁまぁ比企谷そんな事言わないでさ。もっと楽しそうに行こう」

 

八幡「いやまぁ、それはそうなんだけど…」

 

 

 

嵐山「総武高校の皆!嵐山隊隊長の嵐山だ!今日は俺達が皆の案内を担当する!」

 

周りから歓声が起こる。まぁ当然だろうな。嵐山隊といえばボーダーの広報を担当しているだけあってボーダーの花形だからな。尚、俺は今嵐山さんに見えないようにして、隅っこでマッ缶を飲んでいる。サイドエフェクトを少しだけ使い、影を薄くすることも忘れない。

 

 

奈良坂「俺はてっきりめんどくさがり屋のお前はサボると思ってたぞ比企谷」

 

奈良坂と辻が話しかけてきた。

 

八幡「そうしたかったけど、陽乃に来てねって頼まれたし、忍田さんが何か考えてるらしいからな。あの人には大規模侵攻で壊された家の代わりを探すの手伝ってくれた恩もあるし」

 

辻「なるほどね。それより移動するらしいぞ」

 

八幡「そういえば、三輪は?」

 

三輪「おい、分かっててやってるだろ」

 

八幡「気配消せてないぞ」

 

三輪「俺もまだまだだな」

 

八幡「まいいや。それより俺達も行こうぜ」

 

 

 

 

 

嵐山「まずは、入隊訓練で行うことを体験してもらう」

 

木虎が地形踏破訓練、時枝が追跡·探知訓練、佐鳥が隠密訓練の見本をそれぞれ行った。3人とも上達してんな。師匠として嬉しい限りだ。そして最後に対トリオン兵の戦闘訓練がある。

 

八幡「この訓練俺ん時は無かったな(考案したの俺なんだから当たり前なんけどね)」

 

三輪「俺もだ」

 

辻「俺も」

 

奈良坂「俺は狙撃手だったからな」

 

八幡「2年前からだからな」

 

雪乃「わたしは17秒だったわ」

 

熊谷「私は1分40秒くらいだったよ······」

 

雪乃ちゃんと熊谷か来た。

 

熊谷「·····あんたはいつ入隊したの?」

 

八幡「5年くらい前」

 

三輪「お前ボーダーが表に出る前からいたのか····」

 

八幡「まあな」

 

そんな時嵐山さんと目があった。しまった!油断してまたサイドエフェクト解除してんじゃねえか!

 

嵐山「比企谷?·····比企谷じゃないか!」

 

八幡「(ハァ)·········どうも、嵐山さん」

 

嵐山「折角だからな。考案者なんだしお前もやってみたらどうだ?」

 

八幡「えぇ、いやですよ」

 

葉山「···嵐山さんは彼と知り合いなんですか?」

 

終わった····さらば俺の悠々自適ライフ·····

 

嵐山「知り合いも何も···彼もボーダー隊員だからな!!!」

 

そういうと周りからどよめきが起こる。

 

「誰だあいつ?」

「あんな、ぼっちが?」

「学校だとホントにぼっちだったのか」ボソッ

 

おい、ぼっちなのは関係ないだろ。てか最後菊地原だな?カメレオンで隠れてもサイドエフェクトで居場所バレバレだからな?

 

嵐山「まぁまぁいいから受けてみてくれ」

 

八幡「はぁ分かりました。あとで0.05秒旋空弧月の練習に付き合って下さいね」

 

嵐山「それの射程はどれくらいなんだ?」

 

八幡「90メートルくらいって計算で出ました」

 

嵐山「銃手の俺より射程があるぞ…さあ訓練室に入ってくれ」

 

八幡「分かりました」

 

 

訓練室に入ると仮想戦闘モードでバムスターが出てきたので、俺は弧月を抜きバムスターの頭に向かって構える。綾辻の声が聞こえた。

 

綾辻『戦闘開始!』

 

八幡「旋空弧月」

 

俺は0.01秒に旋空を設定する。そしてバムスターの頭が消し飛んだ。

 

綾辻『·········訓練終了。記録 0.03秒!?』

 

八幡「ふう」

俺が訓練室から出ると周りはポカンとしていた。当然だな。俺も目じゃ追えなかったし。

嵐山「····彼はただの隊員じゃない。A級1位比企谷隊隊長で個人総合1位。最強のボーダー隊員だ!」

 

「嘘だろ····あんな奴が···」

 

え?なんなの?俺何かした?

 

嵐山「それでは職場見学の次に入ろう。次は、比企谷隊 対 ボーダー連合で、模擬戦を行う!ボーダー連合は三輪、奈良坂、三上、辻、熊谷、そして嵐山隊より、俺と木虎、佐鳥が入る!綾辻と時枝には解説をしてもらう。誰か居たら入れていいぞ」

 

八幡「え?聞いてないんですけど」

 

嵐山「当然だ。雪ノ下と忍田本部長がお前に聞かれないようにしていたからな。知っていたらサボるだろう」

 

八幡「······分かりました」

 

雪乃「比企谷君私も比企谷隊に加わっていいかしら?」

 

八幡「ああいいぞ。嵐山さんいいですか?」

 

嵐山「ああ構わない。では30分後に始めよう」

 

八幡「分かりました。雪ノ下、行くぞ」

 

雪乃「えぇ」

 

 

作戦室に行くと陽乃と小町が居た。

 

陽乃「八幡~!よかった〜来てくれた〜!」

 

八幡「来ない訳ないだろ」ナデナデ

 

陽乃「♪~」

 

八幡「で、何で小町居るんだ?日浦と遊びに行ったんじゃねぇの?」

 

小町「嘘に決まってんじゃん。茜ちゃんは玲さんと模擬戦見に来てるよ」

 

八幡「さいですか」

 

陽乃「····さて、と。そろそろ作戦会議始めましょ」

 

八幡「ああ」

 

 

 

 

 

八幡「というわけで基本は合流中心でいく」

 

雪乃「分かったわ」

 

陽乃「合流が難しい場合は?」

 

八幡「その場合はどっちかが雪乃ちゃんと合流しつつ各個撃破で」

 

陽乃「了解」

 

小町「3人とも〜転送開始するよ~」

 

八幡「分かった」

 

_______________________

 

綾辻『比企谷隊 対 ボーダー連合!実況は私嵐山隊オペレーターの綾辻。解説は、嵐山隊時枝とレポート地獄から逃げ出して来た太刀川隊の太刀川隊長でお送りします!』

 

太刀川『え!?それ言う!?』

 

綾辻『比企谷君に言えと言われてまして。あと、勘弁しないと出水君ごとC級に落とすとも言ってました』

 

太刀川『嘘だろ···やべぇ、あいつならガチでやりかねん』

 

綾辻『さぁ!全隊員の転送が完了しました!ステージは市街地Cです!狙いはなんでしょうか?』

 

太刀川『このステージは高低差が大きいからやっぱスナイパーだな。連合側に佐鳥と奈良坂がいる。ただ、比企谷が前回のチームランク戦でライトニング使ったし、迅が言うには東さんより前からスナイパーライフル使ってるらしいから油断は全く出来ない』

 

双葉「あの米屋先輩··········八幡先輩ってスナイパーも出来るんですか!?」

 

米屋「らしいな。ハッチ凄すぎんだろ」

 

実は、ボーダー内でこの模擬戦を知らなかったのは八幡ただ1人であり、土曜日ということもあり防衛任務等以外のほぼ全隊員がこの模擬戦を見ている。忍田さん始めとする大人数での包囲作戦である。修は気配を消して隅っこにいる。

 

綾辻『各隊員が合流を開始!雪ノ下姉妹が合流しました!比企谷隊長は合流せずに、各個撃破に向かうもようです!』

 

_______________________

 

陽乃『八幡、雪乃ちゃんと合流したよ。八幡はどうする?』

 

八幡『俺は合流しない。小町、今回は雪乃ちゃん達優先で支援を。こっちは気にしなくていい』

 

小町『了〜解!』

 

八幡『雪乃ちゃんは出来るだけ、スナイパーに気を付けろ。俺はスナイパーを殺りに行く。健闘を祈る』

 

『『『了解!』』』

 

俺はグラスホッパーで高台に向かう。右手に弧月をだしているが、サブのシールドとライトニングを準備しておく。案の定佐鳥がツインスナイプをしてきた。学習しろ。シールドで防ぎ、ライトニングを出す。

 

八幡「佐鳥貰いっ!」

 

ライトニングで狙うが違う方向から弾丸が飛んできてライトニングの弾丸を撃ち消す。

 

八幡「奈良坂見っけ」

 

グラスホッパーを駆使し全力で奈良坂を追う。

 

八幡「奈良坂悪いな。旋空弧月」

 

旋空弧月で奈良坂を真っ二つにし佐鳥を追う。

 

 

八幡「見つけた。バイパー」

 

6×6×6の216個で佐鳥を蜂の巣にする。

 

八幡『スナイパー2人倒した。思いっきり暴れていいぞ』

 

陽乃『流石は早いね』

 

 

俺はサイドエフェクトを使い索敵すると、近くに嵐山さん、木虎、辻が近くに居た。トマホークを合成し10×10×10の1000個を使い辻に400個、嵐山さんと木虎に300個ずつ放つ。辻は対応出来ずベイルアウトした。嵐山さんと木虎には流石に通用しないか。そこで、横から旋空弧月がとんでくる。屈んで躱す。狙い通り。

 

熊谷「今日こそ貰うよ比企谷!」

 

八幡「そうか、やってみろ」

 

_______________________

 

現在、私は雪乃ちゃんと合流しレーダーに映った敵に向かってグラスホッパーで移動している。八幡がスナイパー2人を倒してくれたのでひとまず大丈夫だろう。敵に接近し私がマンティス、雪乃ちゃんが旋空弧月で奇襲をかける。

 

三輪「チッ······2対1か」

 

そう言って三輪君は鉛弾を撃ってくる。私達は散開して避ける。三輪君は雪乃ちゃんに弧月で斬り掛かりつつ、私にレッドバレットを撃ってくる。トマホークやコブラでは雪乃ちゃんにも当たってしまうのでなかなかどうして攻め難い。

 

陽乃『雪乃ちゃん戦いながら聞いて。作戦を伝えるわ』

 

雪乃『何かしら』

 

陽乃『単純よ。合図したら雪乃ちゃんはグラスホッパーで三輪君を思いっきり上空に飛ばして。蜂の巣にするわ』

 

雪乃『相変わらず容赦ないわね』

 

陽乃『ニャハハ~、カウントダウンいくよ〜。5、4、3、2、1···今よ!』

 

雪乃「グラスホッパー!」

 

三輪「しまった!クソッ····シールド!」

 

陽乃「バイパー+メテオラ···トマホーク!」

 

三輪「チッ、アステロイド!」

 

三輪君は置土産に、雪乃ちゃんにアステロイドを撃ってくる。雪乃ちゃんは対応出来ずに右腕と右足を削られる。三輪君はトマホークをくらいベイルアウトした。

 

陽乃「雪乃ちゃん大丈夫?」

 

雪乃「まだ平気よ」

 

陽乃「なら、八幡の援護に行くよ。向こうに嵐山君と、木虎ちゃん、熊谷ちゃんがいる筈だわ」

 

雪乃「ええ」

 

私達は、グラスホッパーで八幡のもとに向かう。

 

 

 

 

 

熊谷「どうしたの比企谷。避けてばっかじゃない」

 

八幡「そうか?アステロイド」

 

俺は弾速重視のアステロイドで牽制する。····嵐山さん達は釣りには乗って来ないな。熊谷をあしらいつつ内部通信をいれる。

 

八幡『2人は今何処?』

 

陽乃『もう少しでそっちに着くわ』

 

八幡『そうか。雪乃ちゃん、着いたらバトンタッチ出来るか?俺達は嵐山隊の2人を倒す』

 

雪乃『分かったわ』

 

 

そこで俺と熊谷の間にトマホークが降ってくる。

 

陽乃「お待たせ八幡」

 

雪乃「グラスホッパー」

 

雪乃ちゃんがグラスホッパーで接近し弧月で斬り掛かる。

 

八幡『雪乃ちゃん下がって』

 

八幡「熊谷、餞別だ」

 

モールクローで熊谷の左手を飛ばす。

 

八幡「こっちは任せる」

 

俺は陽乃と共にグラスホッパーで、嵐山さん達を追う。

 

 

 

八幡「追いついた。メテオラ」

 

メテオラを64個に分割して牽制する。

 

嵐山「末恐ろしいな。もう俺と藍だけか」

 

八幡「今回も勝たせて貰います」

 

さっきのトマホークはあんま効いてないな…木虎は左腕と左足に穴が空いているくらいか…。嵐山さんはほぼ無傷だ。テレポーターで避けやがったか。

 

八幡「流石に空爆はもう喰らいませんか」

 

嵐山「そうだな。お前達の対策くらいはさせてもらった」

 

八幡「なら俺達も新しいことしませんとね。陽乃!」

 

陽乃「バイパー+アステロイド·····コブラ!」

 

木虎はスパイダー、嵐山さんはテレポーターで避ける。当然想定内だ。

 

八幡「木虎は任せた」

 

陽乃「了解!」

 

八幡「メテオラ」

嵐山さんは更にテレポーターで逃げる。視線の向きからして俺の後ろだろうな。まぁ余裕は無いもんな。········俺の勝ちだ。

 

八幡「モールクロー」

 

テレポーターは移動距離によってインターバルが必要になる。嵐山さんがテレポーターで移動した直後に、モールクローを仕掛ける。移動直後でまともな反応が出来ない嵐山さんは俺のモールクローをもろに受け、胸に穴が開く。

 

嵐山「流石だな·····」

 

嵐山さんがベイルアウトした。同じように木虎も、陽乃のマンティスで首を斬られベイルアウトした。雪乃ちゃんはアステロイドで熊谷を削り、隙が出来た時旋空弧月で切り伏せたらしい。

 

_______________________

 

 

綾辻『7対0!勝者は比企谷隊です!』

 

時枝『今回は陽乃さんの妹の雪乃さんが大きな役割を果たしてましたね』

 

綾辻『そうですね。陽乃隊員の援護及び、熊谷隊員を足止めしていましたね。太刀川隊長はどう見ますか?』

太刀川『そうだな。まず、スナイパー2人が最初にやられたのが辛かったな。特に佐鳥は、比企谷の陽動にあっさり引っ掛かっちまったしな。そして、奈良坂も場所がバレてしまった。そこだろうな。あえて比企谷を放置して雪ノ下に総攻撃して頭数を減らしたりしたらこんなふうにはならなかった筈だ。』

 

綾辻『なるほど····今回はこれにて終了です!解説に来て頂いた太刀川隊長、ありがとうございました』

 

太刀川『·····ありがとうございました。やべ、風間さん来た····』

 

 

 

 

模擬戦を終え、俺達はランク戦ブースから出てきた。

 

戸塚「凄いね!八幡かっこよかったよ!」

 

八幡「おお、ありがとうな」

 

陽乃「八幡~?その可愛い娘誰〜?」

 

八幡「うおっ?!」

 

え、笑顔が怖いよ陽乃さん········しかし、1つ勘違いしているな…

 

八幡「落ち着け。戸塚は男だ」

 

陽乃「え?ちょっと桐絵ちゃんじゃないんだから騙されないわよ?」

 

他の奴も笑いながら見ている。大笑いしてる佐鳥と熊谷は後で許さん。そこで、俺に助け舟が出た。

 

雪乃「落ち着きなさい姉さん。戸塚君は男の子よ」

 

「「「「「「「え!?」」」」」」」

 

笑いながら見ていた皆も驚いている。まぁ、俺も平塚先生に言われてなかったら絶対女だと思ってたな。

 

熊谷·木虎「「何か女の子として負けた気がする····」」

 

······弟子2人の発言は聞かなかったことにしよう。

そこで、馬鹿が馬鹿丸出しの発言をしてきた。

 

 

 

三浦「あんさぁ~、ヒキオずるしたんじゃないの?www」

 

 

 

 



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9話:三度彼女達は比企谷八幡を激怒させ、彼の仲間は激昂する。


今回は短いです。これからの展開どうしよ······


 

三浦「あんさぁ~、ヒキオずるしたんじゃないの?www」

 

八幡「あ?てめぇいい加減にしとけよ?」

 

しかし、金髪クルクル縦ロール·····めんどいから縦ロールでいいや。は更に調子に乗る。

 

三浦「ヒキオずるしてA級になったんじゃないの?なら、あんたの仲間もそうなんじゃね?」

 

葉山「やめろ優美子!」

 

三浦「てか、ボーダーも大したことない?アハハッ」

 

俺の中で何かが完全に弾けた。

 

三浦「アハハハハッ········え!?」

 

八幡「お前いい加減にしろ。大したことないって?入ってもねぇお前が言うんじゃねぇ。」

 

殺気を全開にして、縦ロールの首に弧月を突き付けて言う。俺以外に雪乃ちゃん、熊谷、辻が弧月。陽乃がスコーピオン。三輪は拳銃、奈良坂はイーグレットを構えている。嵐山さんと時枝は、必死に木虎と佐鳥を抑えている。

 

八幡「次に何か舐めた真似してみろ。お前の首を飛ばしてやる。おっと、死体が残るなんて思うなよ?塵になるまで切り刻んでやるよ」

 

嵐山「比企谷落ち着け!他もだ!」

 

八幡「チッ···分かりました。嵐山さんに感謝しとけよ?」

 

そう言って俺は、弧月を鞘に戻した。他の皆も武器を解除したようだ。三浦は腰が抜けたようだ。周りを見ると殆どが、腰が抜けたのか座り込んでいる。

 

平塚「比企谷、ちょっといいか?」

 

八幡「大丈夫ですよ」

 

 

 

平塚「君はボーダー隊員だったんだな」

 

八幡「できる限り目立ちたくなかったんで、校長と教頭しか知りませんでしたが」

平塚「そうか······奉仕部にあまり来ないのもそれだな?」

 

八幡「はい。あと、俺は防衛任務以外にも仕事があるんですよ。あまり知られてないんですけど、俺の肩書きはボーダー隊員代表なんです」

 

平塚「そうか。·····では、くれぐれも無理はしないようにな」

 

八幡「·······分かりました」

 

平塚「では、私は戻る。比企谷はどうするんだ?」

 

八幡「俺も一応戻ります。今日は職場見学で仕事入れてないんで」

 

平塚「そうか。では行こう」

 

八幡「分かりました」

 

 

 

 

 

 

現在、職場見学も終わり、一回家に帰ろうというところだ。

 

由比ヶ浜「ヒッキー遅い!」

 

八幡「あ?俺はお前如きに用はねぇよ。あと、ヒッキーって呼ぶなっつったのにまだ言うのかよお前」

 

由比ヶ浜「うっ······ヒッキ·····比企谷、君何ですぐ来なかったし······あと、何でボーダーだって黙ってたし!」

 

八幡「は?俺はいつお前と待ち合わせした?そして何故お前はサブレだったか?のお礼の一つも言いに来ないクセにそんなことが言えるんだ?」

 

由比ヶ浜「そっ···それは······」

 

八幡「お前いい加減にしとけよ。どんだけ自分勝手なんだよ。もう話しかけるんじゃねぇ。大迷惑だ。そもそも何でそんなに俺に話しかける?意味が分からない」

 

由比ヶ浜「そんな·····そういうつもりしゃ·····バカ」

 

そう言うなり、あのピンクお団子頭は走り去って行った。

 

八幡「ふざけんじゃねぇ」

 

俺はそう言って走り去るアホ頭を冷たい目で見下した。

 

 

 

 

 






1/3追記。三浦の処分は3週間の自宅謹慎と反省文。由比ヶ浜は1週間。葉山は、5試合出場停止。この3人を報告したのは、八幡が綾辻にです。


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10話:彼等のスタートはマイナスから始まる。


新年明けましておめでとうございます。今回から千葉村です。東京ワンニャンショーは7月上旬、千葉村は時期的に夏休み入ってすぐくらい。今回は話進まない。


 

東京ワンニャンショーから1週間後。

 

 

 

沢村「比企谷君ちょっといい?」

 

八幡「なんでしょうか?」

 

沢村「これを頼みたいんだけど」

 

沢村さんはそう言って1枚の紙を渡してきた。

 

八幡「······千葉村?ボランティアですか?」

 

沢村「そうよ小学生の林間学校の手伝いね、といってもバイト代は出るわ。それにボランティア以外の時間は、自由時間になるわ」

 

八幡「分かりました。人数はどれくらいがいいですか?」

 

沢村「10人くらいかしら。あと、他からもボランティアが来るらしいわ。比企谷君はボーダー代表として行ってもらえる?」

 

八幡「了解しました。防衛任務とかボランティアの日程は?」

 

沢村「防衛任務は行くのが決まったらこちらで調整しておくわ。ボランティアは再来週の火曜日から木曜日ね」

 

八幡「分かりました。誰が行くかは改めて連絡します」

 

沢村「じゃあお願いね」

 

八幡「はい」

 

 

 

 

比企谷隊作戦室

 

八幡「さて、と」

 

陽乃「八幡なに持ってるの?」

 

八幡「これだ」

 

陽乃「千葉村?」

 

八幡「ああ、小学生の林間学校の手伝いをすることになった。陽乃も行くか?防衛任務は調整してもらえる」

 

陽乃「もちろん行くよ。雪乃ちゃん誘ってもいい?」

 

八幡「ああ」

 

小町「2人とも何見てるの?」

 

小町が入って来た。日浦も居る。

 

八幡「これ、千葉村で小学生の林間学校の手伝いのボランティアすることになった。2人も行くか?」

 

小町「小町も行く〜!」

 

日浦「すいません。その日は家族で用事が····」

 

八幡「分かった。謝ることじゃないから気にすんな」

 

日浦「ありがとうございます、八幡さん。あと、またアドバイス貰えませんか?」

 

八幡「いいぞ。今日はどうした?」

 

日浦「照準のブレが気になって」

 

八幡「分かった。小町、頼んだ」

 

小町「アイアイサ〜」

 

八幡「陽乃も見てくれないか?」

 

陽乃「分かったわ」

 

八幡「じゃ、始めるか」

 

日浦「よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

日浦「今日はありがとうございました!」

 

八幡「気にすんな。奈良坂ならもっとちゃんと教えてくれると思うぞ」

 

日浦「はい。それでは私は失礼します。小町ちゃんまたね」

 

小町「また来てね~」

 

日浦「失礼しました」

 

 

 

 

 

 

八幡「ええと千葉村の件、聞いておかないと」

 

 

LINE

 

八幡『千葉村のポスター』

 

八幡『小学生の林間学校の手伝いのボランティアするんだが誰か来るか?あと、6、7人くらいほしい。防衛任務は調整してもらえるしバイト代も出る』

 

出水『他に誰がいんの?』

 

八幡『俺、陽乃、小町、雪乃ちゃんだ』

 

出水『俺行くわ』

 

米屋『おっ、俺も行くぜ』

 

緑川『俺も行っていい?』

 

八幡『いいぞ』

 

緑川『よっしゃ俺も行く!』

 

八幡『他に誰かいるか?』

 

三輪『俺も行こう。陽介が心配だ、何しでかすか分からないからな』

 

米屋『えっ!?秀次酷くね?』

 

桐絵『私も行くわ!』

 

熊谷『私と玲もいい?』

 

八幡『ああ。』

 

八幡『行くのは、俺、陽乃、小町、雪乃ちゃん、出水、米屋、緑川、三輪、小南、熊谷、那須でいいか?』

 

出水『それで大丈夫だと思うぜ』

 

八幡『分かった。沢村さんに連絡しておく。日程は再来週の火曜日から木曜日だ』

 

 

 

 

八幡『もしもし、沢村さんですか?比企谷です』

 

沢村『あ、比企谷君?メンバー決まった?』

 

八幡『行くのは、俺、陽乃、小町、雪乃ちゃん、出水、米屋、緑川、三輪、小南、那須、熊谷です』

 

沢村『分かったわ。防衛任務の調整しておくわね』

 

八幡『ありがとうございます。では、失礼します』

 

 

ん?電話だ。

 

平塚『もしもし、比企谷か?平塚だ』

 

八幡『どうも。どうしたんですか?』

 

平塚『ああ、実は総武高でボランティアをすることになったんだ』

 

八幡『それって千葉村ですか?』

 

平塚『そうだ。よく知ってるな』

 

八幡『ボーダーでも募集がかかったんですよ。他の所からも来るって聞きましたけど、総武校生だったんですね』

 

平塚『ああ。奉仕部でやってもらおうと思ったんだがその様子だと君はボーダーとして行くのか』

 

八幡『はい。俺一応代表者として行きます。あと、雪ノ下もボーダーとして行きます』

 

平塚『そうか。では千葉村でな』

 

八幡『はい』

 

平塚『ではな』

 

 

 

 

2週間後

 

俺と小町が行くと米屋と三輪以外が居た。三輪、ご愁傷さまだ。

 

八幡『よう、皆早いな。これで全員······三輪と米屋がまだか』

 

陽乃「八幡おはよう!」

 

雪乃「おはよう義兄さん」

 

緑川「ハッチ先輩おはよう!」

 

出水「よう比企谷。三輪は槍バカの巻き添えだろうな」

 

八幡「だろうな。あいつも大変だな」

 

那須「あ、比企谷君おはよう」

 

八幡「那須か、おはよう。大丈夫か?」

 

那須「大丈夫よ。ここにいるんだから」

 

八幡「それもそうだな。あ、米屋」

 

米屋と三輪がやっと来た。三輪は朝からあそこまで疲れるなんて米屋は何をしたんだか。

 

米屋「ようハッチ!おはよう!」

 

三輪「······比企谷か·····おはよう····」

 

八幡「だいぶお疲れのようだな。大丈夫か?米屋に何された?」

 

米屋「え?俺が何かしたのは決定なの?」

 

三輪「俺が呼びに行った時コイツは事もあろうに寝ていてな。しかも、携帯ゲーム機を手に持ったまま」

 

八幡「災難だったな·····」

 

三輪「コイツの親が居たが本気で殴りたくなった」

 

東「お、皆来ているな····大丈夫か秀次」

 

東さんが車に乗って来た。もう1台来ていて、向こうは······加古さんか。目が合ったので会釈しておく。

加古さんは手を振り返してきた。いつも思うけど、この人全然ぶれないな。流石マイウェイをマイペースで歩く人だ。

 

八幡「送迎は東さんと加古さんですか。よろしくお願いします」

 

東「ああ。帰りは林藤さんと諏訪が来るからな」

 

八幡「分かりました。じゃあ行きますか」

 

 

 

俺達は現在千葉村に向かって移動中。車の席は

 

三輪 東さん

俺 陽乃 出水

熊谷 那須

小南 加古さん

小町 雪乃ちゃん

米屋 緑川

 

になった。

 

 

三輪は米屋のせいで早速疲れて寝ている。

 

八幡「陽乃、車酔いとか大丈夫か?」

 

陽乃「大丈夫よ。八幡も大丈夫?」

 

八幡「俺も大丈夫だ」

 

出水「うっ·····砂糖吐きそう」

 

八幡「何言ってんだ?」

 

出水「夫婦のイチャイチャは他でやって····」

 

熊谷·那須「「夫婦!?」」

 

八幡「ああね····お前綾辻いるだろ」

 

出水「遥は仕事が多いから中々都合が合わないんだよ…」

 

八幡「·····何かすまん」

 

 

 

 

 

 

米屋「あー俺も彼女欲しー!」

 

緑川「よねやん先輩耳元で騒がないでよ。向こうに夫婦と彼女持ちが居るから気持ちは分かるけど」

 

小南「そうよ米屋。五月蝿い」

 

米屋「でもよー」

 

雪乃「煩いわ、米屋君」

 

小町「そうですよー、米屋さん」

 

米屋「だってハッチと陽乃さんは言わずもがなだけどさ、弾バカですら彼女いるんだぜ?」

 

雪乃「義兄さん達については同感よ·····」

 

小町「それは小町もです·······思い出しただけで砂糖吐きそう」

 

米屋「だろ····」

 

米屋の自爆で車内は微妙なテンションに包まれた。

 

 

 

 

那須「夫婦って?」

 

こちらでは那須がこの話題をつつき出した。

 

陽乃「言葉通りの意味よ。ね~八幡♡」

 

八幡「ああ、あとは入籍だけ」

 

熊谷「嘘······」

 

東「ハハハ、まさか高校生に先を越されるとはな」

 

八幡「まぁこれから次第ですが」

 

陽乃「出水君は綾辻ちゃんとどこまで行った?」

 

水を飲んでいた出水が、思いっきり噎せた。

 

出水「!!??ゲホッゲホッ」

 

八幡「大丈夫か出水」

 

出水「陽乃さんなんてこと聞くんすか·····」

 

陽乃「アハハ、ごめんごめん」

 

東「皆、そろそろ着くぞ」

 

八幡「分かりました」

 

 

 

 

俺達は千葉村に到着したようだ。東さんの車から荷物を下ろす。

 

東「じゃあな皆」

 

「「「「「「ありがとうございました」」」」」」

 

東さんと加古さんは帰って行った。平塚先生はまだ来てないようだ。誰が来るんだろ?そんな時、バンが1台止まった。中から出てきたのは、戸塚、葉山と戸部?と海老名?そして·····

 

三浦「ッ!······」

 

由比ヶ浜「(ヒッキー········)」

 

 

あの憎き2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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11話:比企谷八幡は決意を固める。

戦闘がないので、会話劇みたいになりました。ご了承ください。


葉山「やぁ、比企谷」

 

八幡「あ?ボランティアの総武校生ってお前らか」

 

葉山「ああ」

 

戸塚「八幡!おはよう!」

 

八幡「おお、戸塚。おはよう」

 

小町「お兄ちゃん!?陽乃お義姉ちゃんがいながらこんな可愛い人と仲良くなったの!?」

 

やっぱ勘違いするよな。

 

八幡「落ち着け。戸塚は男だ」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

まぁ信じられないだろうな。驚いているのは、小町、那須、小南、出水、米屋、緑川だ。

 

出水「いや、比企谷。ここまで来て騙すなよ。主に小南が可哀想だろ流石に」

 

雪乃「····戸塚君は男よ」

 

米屋「····マジ?」

 

戸塚「······僕、男です」

 

八幡「戸塚悪いな」

 

戸塚「いいって八幡」

 

平塚「さて、全員揃ったようだし移動するぞ。自己紹介等は移動しながらで頼む」

 

俺達も行くか。縦ロールとピンクお団子頭は怯えているが自業自得なので放っとく。

 

八幡「平塚先生、今回は俺がボーダーの代表で来たので何かあったらお願いします」

 

平塚「分かった」

 

 

 

八幡「比企谷八幡だ。知ってると思うがよろしく」

 

陽乃「雪ノ下陽乃です。雪乃ちゃんのお姉ちゃんです!」

 

陽乃は雪乃ちゃんに抱きつく。

 

雪乃「姉さん離れて。雪ノ下雪乃です」

 

小町「お兄ちゃんの妹の比企谷小町です!」

 

小町、何だその挨拶。傍から見てバカっぽいからやめてくれ。

 

出水「次は俺か。出水 公平だ。よろしく」

 

米屋「米屋 陽介だ!皆よろしく!」

 

小南「小南 桐絵。よろしく」

 

三輪「三輪 秀次。俺も総武だがよろしく」

 

何でコイツらこんなにつんけんな態度してんだ?

 

熊谷「熊谷 友子。私も総武だけどよろしく」

 

那須「那須 玲です。皆さんよろしくお願いします」

 

葉山「じゃあ今度は俺から。葉山 隼人です。皆さんよろしく」

 

戸部「戸部 翔です!皆さんオナシャス!!!」

 

海老名「海老名 姫菜です。よろしくお願いします」

 

三浦「三浦 優美子です······ボーダーでは失礼な態度をとってすいませんでした」ペコリ

 

三浦はおずおずと頭を下げる。へぇ、コイツちゃんと謝れたんだな。少しは見直したわ。 ·····何か忘れてる気がするが気のせいだろう。

 

平塚「比企谷。小学生への挨拶をやってくれんか」

 

八幡「え?·····はぁ、分かりました」

 

そうこうしてるうちに、到着したので、小学校の先生との挨拶を済まし、小学生が集まっているところへ向かう。うおっ、流石は小学生だ。物凄く煩い。

 

先生「皆さん静かにして下さい」

 

全然言うこと聞かねぇ。

 

 

 

先生「皆さんが静かになるまで3分17秒掛かりました」

 

早速出たな、集会で騒ぐ子供を黙らす常套手段だ。俺、中学になっても聞いたな。

 

八幡「皆さん、こんにちは。今日は皆さんが楽しい思い出を作るのをお手伝いしに来ました。皆さんの向かって右が総武高校から、向かって左がボーダーからのお手伝いです。何かあったら僕達にお願いします。3日間と短いですが楽しみましょう。以上です」

 

「おい!ボーダーだってよ!」

 

「さっき喋ってたのってA級1位比企谷隊隊長比企谷八幡じゃね?」

 

「雪ノ下陽乃もいるぞ!」

 

流石ボーダーだな、大人気だ。根付さんは相変わらず宣伝力凄いな。てか、俺よく今まで気づかれなかったな。総武校てボーダーと提携してんのに。

 

「それではオリエンテーリング開始!」

 

平塚「さて、君達の最初の仕事はオリエンテーリングのサポートだ。小学生と一緒に行動して子供達を見守ってくれ」

 

俺達は小学生に何かあった場合、ヘルプに入る事になったがそんな事はないと願いたい。現在は移動中。

 

戸部「いや~小学生マジ若いわ〜!俺らもうオッサンじゃね?」

 

三浦「ちょっと戸部、やめてくんない?あーしがババァみたいじゃん」

 

いや、お前は周りより更に年取ってるように見えるからな?コイツはさっきよりは元気になったようだ。

 

 

 

 

三浦「ヒキオ、ちょっといい?」

 

八幡「あ?なんだ?」

 

三浦「·······この前は本当にごめんなさい」

 

そう言って三浦は頭を下げた。

 

八幡「そうか」

 

三浦「怒らないの?」

 

八幡「まあな、謝るようならまだ救いがある。他の奴にももう一回ちゃんと謝っとけよ?」

 

俺も甘いな。

 

三浦「·······分かった」

 

八幡「ならこれで話は終わりだ」

 

三浦「ヒキオ、ありがとうだし」

 

八幡「どういたしまして」

 

三浦「じゃ、これで」

 

八幡「ああ」

 

 

 

数分後。

 

八幡「ん?あそこ何やってんだ?」

 

葉山「俺が見てくるよ」

 

そう言って、葉山は行ってしまった。俺が見た先には5人グループ(5人でグループを組んでいるらしい)の内、1人だけ周りと離れて歩いていた。葉山は1人の子に声を掛けている。他の4人はその1人の子を見る度にクスクス笑っている。

 

八幡「あいつ·····」

 

雪乃「あれは悪手ね」

 

平塚「そうだ。3人程ゴール地点に先周りしてくれないか?ゴールした子達にジュースを配ることになっていてな」

 

米屋「なら、俺とハッチと出水で行きます!」

 

八幡「え?俺も?」

 

平塚「では頼んだ。私は先に行っているからな」

 

そう言って平塚先生は行ってしまった。てか俺らも一緒に行けばよかったんじゃ·····

 

 

米屋「よっしゃ!3人で競争しようぜ!」

 

八幡「お前それが目的かよ·····トリガー使っていい?」

 

出水「いや駄目だろ」

 

八幡「ハァ分かった。····トリガー解除」

 

米屋·出水「「え?」」

 

俺はそう言って生身に戻る。生身も当然鍛えているが、コイツらの前で生身になんの初めてだな。黒トリガーの換装前のトリオン体は治療が終了してからは使ってない。あれ結構目立つし。

 

熊谷「比企谷?どうしたのそれ······」

 

陽乃「見せちゃって大丈夫?」

 

八幡「まぁ、大丈夫だろ。···これは、俺は昔事故で右目と左腕が吹っ飛んだんだ。だから基本的には生身とほぼ同じに調整したトリガーで生活してんだよ。っても、だいたいは生身でトレーニングしてるけどな。まぁ、事情的には那須みたいな感じだな。それで、競争はいいのか?これでもお前らくらいなら余裕で勝てるぞ」

 

米屋「そこまで言うんなら本気で行くわ!」

 

八幡「ま、精々頑張ってくれ」

 

俺は軽く準備運動して、スタート開始の合図代わりに近くの木で頑丈そうな枝にジャンプして、飛び乗る。

 

米屋「は?4メーターくらいあんぞ?」

 

出水「マジかよ···これで生身とか·····」

 

八幡「どうした?競争開始だ。先に行くぞ?」

 

米屋「え?ちょ、ハッチ待てって!」

 

出水「アイツ人間か?」

 

俺は「NARUTO」みたいな感じで枝から枝に飛び移りながら、先に向かう。場所ならさっき見て、頭に入っているので問題ない。

 

 

八幡「トリガー起動」

 

流石に平塚先生の前で生身になるつもりはないので、さっき解除したトリガーを起動する。

 

平塚「比企谷速すぎないか?トリガーを使ったのか?」

 

八幡「いいえ使ってませんが」

 

平塚「····そうか。ではダンボールをこっちに運んでジュースを配れるようにしておいてくれ」

 

八幡「分かりました」

 

 

 

 

ふぅ、やっと配り終わった。これで全員だな。にしてもほんとに元気だな小学生。

 

平塚「では次の仕事だ。子供達は飯盒でカレーを作る。君達はその手伝いをしてくれ。君達も一緒に食べてても構わない。食後は少し休憩した後、夜に行うキャンプファイヤーの準備だ。ではよろしく頼む」

 

 

 

これから、カレーを作る。最初に平塚先生がお決まりの芸かのように、手早く火を着けてそこに油を注いだ。小学生はこれを見てとても興奮してる。平塚先生····男よりも全然男だ。いや、漢か?

 

調理に回るのは、俺·陽乃·雪乃ちゃん·小町·出水·小南·那須

配膳は、米屋·三輪·緑川·熊谷·葉山·三浦·戸部·海老名だ。······出水が料理出来るとは驚きだな。

 

八幡「出水、お前料理出来たんだな」

 

出水「まあな。遥と付き合い始めてから手伝ったりするようにしてんだ」

 

八幡「ヒューヒュー」

 

出水「ウルセッ!隣の嫁と一緒にやっているであろうお前にだけは言われたくないわ」

 

陽乃「いや~八幡の料理美味しいからね。最近料理は任せちゃってるな~」

 

八幡「陽乃の方が料理上手いと思うんだけどな」

 

陽乃「でも、八幡の料理が食べたいのよ」

 

八幡「それはありがたい」

 

出水「ウッ········この嫁バカめ·····」

 

八幡「最高の褒め言葉じゃないか」

 

陽乃「フフッ、ありがとう八幡」

 

八幡「どういたしまして」

 

出水「比企谷が素直だ····ガチモンの嫁バカだ···」

 

八幡「それは分かってるから。お前手止まってんぞ」

 

出水「クッ!!!」

 

「「「「「「「(逃げ出したい)」」」」」」」

 

3人以外のボーダーからのボランティア勢は小南以外が満場一致でそう思ったのだった。

 

小南「ハァ·····(修······)」

 

絶賛恋愛中の乙女はここに居ない恋人に焦がれていた。

 

 

 

八幡「ちょっと休憩していいか?水分取りたい」

 

陽乃「いいよ〜」

 

八幡「助かる。俺向こう居るから」

 

 

八幡「ふ~」

 

俺は調理場のすぐ近くの傾斜の上で涼んでいる。ここからは、俺達が作業していた反対側で葉山達が作業しているのが見える。

 

葉山「よし、結構進んだね。何か隠し味でも入れようか」

 

葉山がそんな事を訪ねると4人の子供····ん?4人?が、「ハイ!牛乳!」とかなんとか葉山の言葉に騒いでいると、なんかが「果物入れようよ!桃とか!」とかほざいている。あ、そういえば、コイツ居たな。

 

八幡「馬鹿が」

 

留美「そう····馬鹿ばっかり」

 

コイツだな。抜け出して来たな。

 

八幡「······だいたいはそんなもんだけどな」

 

留美「でも、私は違う·····」

 

八幡「?どう違う?」

 

留美「皆、子供なんだもん。こんな事は前にもあったの。クラスの誰かを仲間外れにして·····その内なくなって、今度は別の人が仲間外れになる。私も仲間外れにしたことあるもん。だから、今度は私になった。でも····私は諦めたから·······。それに、中学になったら新しく入って来た人と仲良くすればいいし」

 

なるほどね。········コイツは諦めたのだ。皆と仲良くすること。孤立したこの現状から抜け出すこと。クラスの悪しき現状を何とかしようとすることを。だが、コイツは分かっていない。

 

八幡「そうか·····だがな、中学に上がっても小学校から持ち上がりの奴はお前以外にもいるだろ?なら、現状は変わらない。新しく入って来た奴もイジメに加わるだけだ。辛いだろうがな」

 

留美「そう·····なんだ·····やっぱり、このままなんだ···」

 

八幡「悪いが、そうなるだろうな」

 

留美「·····名前」

 

八幡「は?」

 

留美「だから名前」

 

八幡「名前がなんだって?」

 

留美「名前。聞かれたら答えるでしょ普通」

 

八幡「そうか。人に名前を聞く時は先ず、自分から名乗るもんだぞ。社会に出た者の常識だ」

 

留美「·······鶴見 留美」

 

八幡「比企谷 八幡だ」

 

留美「·······八幡は高校生でしょ?どうしてもう社会に出てるの?」

 

いきなり、呼び捨てかい。まぁいいや。

 

八幡「ああ、俺はこれでもボーダーなんでな」

 

留美「····私もボーダーに入れば変われる?」

 

八幡「それはお前次第だ。ボーダー隊員はだいたいが中学生とか高校生だ。お前みたいな小学生もいる」

 

留美「私どうすればいい?」

 

八幡「それは人に聞くことじゃない。ただ、ボーダーに入りたいってんなら俺が推薦状書いてやるよ」

 

留美「ありがと。考えとく」

 

八幡「そうか。俺はもう戻る。お前もあまり考え込むのはどうかと思うがな」

 

留美「うん。じゃあね八幡」

 

八幡「ああ。ボーダー入るなら、年上に敬語使えよ?俺は別にいいが」

 

留美「·····分かった」

 

八幡「じゃあな」

 

 

 

 

陽乃「あの子どうしたいって?」

 

少し休み過ぎたようだ。もう調理は大半が終わっている。

 

八幡「俺がボーダーだって言ったら興味を示したからな。推薦状でも書くかって言ったら、考えとくってさ」

 

陽乃「優しいね。八幡は」

 

八幡「そうか?」

 

陽乃「そうだよ」

 

八幡「そうか」

 

 

 

 

俺達は雑談ではしゃぎながら食事を終えた。

 

八幡「ごちそうさま。案外こういうのも悪くないな·······?どうしたんだ!?」

 

俺が見たとこには子供が2人、倒れていた。見たところ銀髪の男の子と女の子ということしか分からない。だが····あの2人·····

 

八幡「陽乃、俺様子見てくる」

 

陽乃「大丈夫?」

 

八幡「ああ·····陽乃ちょっと耳貸せ」

 

陽乃「?」

 

八幡「おそらくだ·····あの2人何かしらの事情があるのは間違いない。もしかしたら、向こうの世界が関係しているかもしれない」ヒソヒソ

 

陽乃「!大丈夫?」

 

八幡「ああ、多分大丈夫だ。見たところ、片方は7、8歳。もう片方は4、5歳。兄妹だろうな」

 

陽乃「気を付けてね」

 

八幡「ああ」

 

俺は倒れている2人を抱え、近くのロッジに向かった。平塚先生がいるはずだ。

 

八幡「平塚先生居ますか!?」

 

平塚「?比企谷!?その2人はどうしたんだ!?」

 

八幡「森の中で倒れてました。この2人を寝かすとこありませんか!?」

 

平塚「分かった。医務室はこっちだ。案内する」

 

八幡「お願いします」

 

 

俺は子供2人を平塚先生とともに医務室へ連れて行き、そこのベッドに寝かせた。

 

平塚「比企谷、君はここでこの子達を見ているといい」

 

八幡「え?でも俺代表者だし、あっち居ないと不味いんじゃ····」

 

平塚「それについては大丈夫だ。後は、キャンプファイヤーの準備だけだからな。君のことは適正に誤魔化しておこう」

八幡「誤魔化していいんですか…」

 

平塚「まぁ、何らかの事情がありそうだからな」

 

八幡「分かりました。じゃあ何かあったら連絡して下さい。お願いしますね」

 

平塚「しかと承った。では、私は戻るよ」

 

八幡「はい。お願いしますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「······ん···寝てたか·····。···2人は、まだ寝てんな」

 

どうやら寝てしまっていたようだ。時刻は···5時半か。そこで、

 

???「ぅん····あれ?」

 

八幡「お、起きたか」

 

???「誰!?」

 

八幡「安心しな。俺は2人に危ないことしようとか思っちゃいない。俺は2人をここまで連れて来たんだ。ここは安全な所だ」

 

???「·····そう」

 

八幡「お前名前は?俺は比企谷 八幡だ」

 

祐夜「祐夜だよ。そっちは妹の柚稀奈」

 

八幡「そうか。祐夜に結稀奈だな」

 

結稀奈「う〜ん·····お兄さん誰?」

 

八幡「比企谷 八幡だ。柚稀奈ちゃんでいいな?」

 

柚稀奈「·····うん」

 

八幡「安心してくれ。君を助けるつもりだ。祐夜、何か覚えてることないか?」

 

祐夜「う~ん····白くて大きいオバケが···こっちに来て·······ぼぐのお”父ざんど······お”母ざんが······」グスッ

 

柚稀奈「お兄ちゃん·····お父さんとお母さんが·····ウウッ····」

 

八幡「そうだったか·····2人とも怖いこと思い出させてごめんな」

 

祐夜「八幡?」

 

柚稀奈「···お兄さんはちまんっていうの?」

 

八幡「ああそうだ。よろしくな」

 

柚稀奈「ぅぅっ···うわぁぁぁん!」

 

八幡「·····2人ともおいで」

 

俺は2人を受け入れよう。2人の心が少しでも安らぎを得られるなら。

俺は両手を2人に向けて広げる。2人は俺の腕の中に飛び込んでくる。

 

八幡「うおっ···」

 

俺は2人を抱きしめた。そして決意した。2人を守らなければならないと。この、か弱くて優しい2人をこの両手で力一杯抱きしめると。俺と修が攫われて死をも覚悟した時に救ってくれて、家族同然に扱ってくれた親父のように。

 

 

 

 

 

2人は今俺の腕の中で寝ている。泣き疲れたようだ。俺は2人から聞いたことを平塚先生に全て話した。

 

 

平塚「それで、どうしたものかね·····」

 

八幡「この2人は俺が連れて帰ります」

 

平塚「なっ!何を言ってるんだ」

 

八幡「俺はこの2人を守らないといけないと、って思ったんです」

 

平塚「!!······そうか·······決意は堅そうだな。ただし、とてつもなく大変なことだ。分かっているな?」

 

八幡「勿論です。何としてでも守り抜くつもりです」

 

平塚「なら私はもう何も言わない。家族の方は何て?」

 

八幡「一応、お袋には全部話して納得して貰いました」

 

お袋には携帯で全部話した。勝手に決めるなとは怒られたが、2人を連れて帰ることには喜んで頷いてくれた。ここからが本番だな。

 

平塚「そうか····しかし、近界民に襲われて両親を亡くしたとは·····災難だな·····」

 

八幡「とりあえず、あと2日をどうするか。ですね」

 

平塚「君はどうしようと考えている?」

 

八幡「出来ればこの2人から離れたくないですね」

 

平塚「分かった。一応明日からの予定を伝えておこう。それで判断してくれ。現段階では君に任せる」

 

八幡「ありがとうございます。あと、この件は周りに教えた方がいいでしょうか」

 

平塚「少しくらいはな。協力してくれる人間がいた方がいいだろう」

 

八幡「それもそうですね」

 

平塚「では、私はこれで失礼しよう。···そうだ、君は夕食はどうする?今だと皆食べている頃だ」

 

八幡「なら、誰かに持って来て貰うよう言ってもらえませんか?」

 

平塚「いいだろう」

 

八幡「すいませんお願いします」

 

平塚「ああ、ではな」

 

八幡「はい」

 

 

 

 

 

 

陽乃「で?何で一言も言ってくれなかったの?」

 

やめて······怖いから、そんな怒らないで·····

 

 

俺は夕食を持って来てくれた陽乃に事の顛末を話した。そして現在に至る。

 

陽乃「はぁ······で、これからどうするの?」

 

八幡「とりあえず、家に連れて帰ろうと思う」

 

陽乃「八幡本気?」

 

八幡「ああ。超本気だ」

 

陽乃「·····分かったわ。なら、雪ノ下家が全面的に協力するわ」

 

八幡「え?それは悪いって·····それにお義父さんもお義母さんも知らないだろ?」

 

陽乃「大丈夫。なんたって八幡は私の夫なんだから」

 

八幡「·····本当にありがとう」

 

陽乃「それで、この子達はどうするの?」

 

八幡「とりあえず、帰ったらボーダーで2人の身分証明書とかを探してみる。聞く限りだとこの2人はトリオン兵に襲われてるから行方不明扱いであるだろう」

 

陽乃「そうね。それで?」

 

八幡「俺の力でやれるか分からんが血縁者を探してみようと思う。居なかったら、俺が引き取る。お袋の許可は貰ってある」

 

陽乃「私達はどうすればいいかな?」

 

八幡「そうだな·····なら、雪ノ下家の力で2人の血縁者とかを探してくれ。これは、人脈を持ってる雪ノ下家の方が適任だろうな」

 

陽乃「分かったわ。なら、私は戻るわ。····本当は一緒に居たいけど······」ボソボソ

 

八幡「ハハ、ありがとうな。······協力してくれて誠にありがとうございます」

 

俺は頭を下げる。婚約者だろうが関係ない。俺の無茶振りに付き合ってもらう以上こんなの当たり前だ。

 

陽乃「やめて、そんな改まって」

 

八幡「当然のことだろ」

 

陽乃「そう·····じゃあ帰ったらデートして」

 

八幡「いくらでも付き合うよ。協力してもらうんだし。·······何もなくても断んないぞ」

 

陽乃「ありがとう。おやすみなさい八幡。また明日ね」

 

八幡「おやすみ、陽乃」

 

俺達はおやすみのキスをして、陽乃はロッジに帰って行った。

 

 

 

 

翌日。

俺はとりあえず祐夜にこれからについてを話した後、一旦ボランティアの連中の所へ戻った。

 

八幡「ようお前ら」

 

米屋「ん?ハッチじゃねえか!昨日はどうしたんだよ!?」

 

小町「おはようお兄ちゃん!昨日何で居なかったのさ!」

 

八幡「ああ、ちょっとな」

 

出水「何があったんだ?」

 

八幡「後で話す。米屋は口軽そうだから言わない」

 

米屋「ハッチ酷くね!?」

 

三輪「煩いぞ陽介。お前は実際口が軽い」

 

 

そうなのだ。実際米屋は口が軽い。ボーダーで俺と陽乃が付き合ってるのを言いふらしたのはコイツらしい。お陰ですれ違う人に偶に暖かい目を向けられるのだ。それが、発覚した時コイツを三輪・出水の全面協力の下400対0で切り刻み、蜂の巣にして土下座させたっけ。

 

米屋「秀次まで·····後で、絶対教えてもらうかんな!」

 

三輪「すまんな比企谷。コイツの精で」

 

八幡「いやいい。だが、米屋には言わん」

 

出水「比企谷ー。槍バカが何か知らんが打ちひしがれてるぞー」

 

八幡「ほっとけ」

 

出水「そうする」

 

熊谷「あんたら容赦ないわね·····」

 

八幡「しょうがない。事実だ」

 

 

さてと、2人の事はどうすればいいだろうか。このまま隠し通すなんて、無理だしな·····

 






終わるタイミング見失った。毎回、量が違い過ぎてすいません。本作は由比ヶ浜ヘイトオンリーなので、強引ですが、三浦には和解させました。そして唐突なオリキャラすいません。終わり方雑ですいません。作者の文才の無さが発揮されました。

キャラ紹介

比企谷 祐夜(ゆうや)(旧姓:梓·あずさ) 7歳
柚稀奈の兄。千葉村のボランティアに来ていた八幡に拾われる。祐夜と柚稀奈はトリオン兵に襲われ、攫われる。その際に両親が亡くなっており、ショックで2人は襲われた時以前の記憶をかなり失っている。
(ここからはネタバレ)八幡は、高校生だがボーダーの幹部ということで特例措置として、2人を養子に迎えるのを許可された。玉狛支部所属S級お子様隊員(陽太郎と同じ)になる。性格は、落ち着いている。母親が、日系のロシア人。顔は完全に日本人。母親から銀髪を受け継いだ。

比企谷 柚稀奈(ゆきな)(旧姓:梓·あずさ)4歳
祐夜の妹。兄と同じく八幡に拾われる。(ここからはネタバレ)トリオン能力が常軌を逸しており、そこを狙われた(祐夜は巻き込まれた)。トリオン兵に攫われたが、高すぎるトリオンでトリオン兵のプログラムが誤作動を起こし、兄妹は千葉村の近くに放り出された。兄と同じく玉狛支部所属S級お子様隊員になる。性格は兄とは違い、かなりアクティブで天真爛漫。でも、攫われてからは、少し大人しくなった。兄と同じく顔は完全に日本人。兄と同じく銀髪。

八幡が一瞬で懐かれたのは、2人が八幡の優しさの中に両親の面影を見たからです。


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12話:そして、彼と彼女は迎えられる。

今回も会話劇が続きますがご了承ください。


 

 

俺は、医務室で2人と一緒に寝たが一旦飯を食いに戻って来た。祐夜と柚稀奈には、一応伝えてある。

 

平塚「さて皆、食事中だが聞いてくれ。今日の予定だ。夜に子供達はキャンプファイヤーと肝試しを行う。仮装セットはこちらで用意してある。小学生の予定では、昼間は1日自由行動だ。今日は準備が終わったら君達も自由行動だ。ではよろしく頼む」

 

米屋「弾バカ!準備終わったら川で泳ごうぜ!」

 

出水「おお、いいぜ!競走だ!」

 

コイツらよくやるな·····飯食いながらはしゃぐなよ·····コイツらも小学生じゃねえのか?何か緑川のが大人しくしてる分年上に見える。

 

米屋「緑川もやるよな!」バン!

 

緑川「ゲホッ!ゲホッ!よねやん先輩、食事中に騒がないでよ!」

 

米屋「わりーわりー」

 

緑川「ホントに思ってる?」ジトッ

 

米屋「ほ、ホントに思ってるって」

 

八幡·三輪「「黙れ米屋(陽介)」」

 

俺達は2人で米屋の頭に拳骨を落とす。

 

米屋「いっでー!」

 

八幡「少し黙ってろ」

 

米屋「···········ハイ」

 

八幡「ハァ······俺は今日は抜けさして貰うからな。陽乃あと頼むわ」

 

陽乃「ええ、あんまり気負い過ぎないでね」

 

八幡「ありがとよ」ナデナデ

 

陽乃「♪~」

 

八幡「悪い、もう行くわ。平塚先生ちょっといいですか?」

 

平塚「ああ」

 

 

俺達は少し離れた所へ移動する。

 

平塚「あの2人は大丈夫か?」

 

八幡「ええまぁ。ただ、何とも言えないところですかね····あの2人にも朝食持ってっていいですか?」

 

平塚「勿論だとも。2人とも昨日は殆ど何も食べていないのだろう?」

 

八幡「はい。泣き疲れてすぐまた寝ちゃったんで」

 

平塚「分かった。話は私から通しておこう」

 

八幡「ありがとうございます」

 

平塚「なに、気にするな。私にはこれくらいしか出来ないからな」

 

八幡「いえ、十分ありがたいです」

 

平塚「そうか。そう言ってくれるとこちらとしても嬉しいものだ」

 

八幡「では、もう行きます」

 

平塚「分かった。私はあまり動けない。が、君1人だけで背負うことではないからな」

 

八幡「ありがとうございます。失礼します」

 

平塚「ああ」

 

とりあえず、俺は食堂に戻り2人の食事を受け取り、医務室に居る2人の所へ戻る。

 

 

 

 

米屋「ん?あれ、ハッチじゃね?」

 

出水「あ、ほんとだ」

 

食事を終えた私達は、仕事に取り掛かるための準備のため、一旦各々のロッジに戻ろうとしていた。そこで、用事があると抜け出した比企谷が歩いているのを見つけたのだ。

 

熊谷「何してんのかね?」

 

比企谷は、今回のボランティアには余り関係ない所を歩いていた。

 

那須「何で2人分の食事を持ってるのかしら?それに、あっちは食堂じゃない筈だけど·····」

 

三輪「··········」

 

米屋「よっしゃ!ハッチを尾けるぞ!」

 

出水「よし、俺も行く」

 

緑川「俺も!俺も!」

 

熊谷「ちょっと3人とも····」

 

那須「そうよ、人を尾行するなんて」

 

米屋「でもお前らも気になんだろ?」

 

熊谷「そりゃ、気にはなるけど、それでも····」

 

米屋「なら、決まりだな!」

 

熊谷「え?ちょっと米屋!?」

 

三輪「はぁ·····諦めろ熊谷。今のコイツに何言っても無駄だ」

 

熊谷「ハァ······」

 

私達は比企谷を尾行することになってしまった。

 

 

 

 

八幡「戻ったぞ~」

 

祐夜「あ、八幡!」

 

柚稀奈「?八幡!」ガバッ

 

八幡「おっと!柚稀奈元気か?」

 

柚稀奈「元気だよ!」

 

八幡「そうか。2人とも飯食べるか?貰ってきたんだ」

 

俺がそう言った瞬間に2人のお腹が鳴った。

 

祐夜「····食べる」

 

柚稀奈「食べる!柚稀奈お腹空いた!」

 

八幡「おおそうか、召し上がれ」

 

祐夜·柚稀奈「「いただきます!」」

 

2人はもの凄い勢いで食べ始める。そりゃそうだよな。昨日はおそらくだが何も食べていないんだから。

 

八幡「ゆっくり食えよ〜」

 

陽乃「失礼するね」

 

八幡「陽乃どうした?」

 

陽乃「どうしたって、そりゃあ気にもなるって」

 

八幡「準備は大丈夫なのか?」

 

陽乃「まだ始めるまで少し時間があるからね」

 

八幡「そうか」

 

陽乃「2人ともいい食べっぷりだね~!」

 

祐夜「?」

 

柚稀奈「お姉さん誰?」

 

2人は少し警戒している。そういえば、昨日陽乃と話した時は2人とも寝てたからな。

 

八幡「安心してくれ。この人は俺の奥さんだ」

 

祐夜「お嫁さんってこと?」

 

八幡「そうだ」

 

陽乃「八幡のお嫁さんの陽乃です。気軽に陽乃って呼んでね」

 

祐夜「·····ホントに大丈夫?」

 

八幡「ああ、俺が保証する。この人は2人の味方だ」

 

柚稀奈「··········」ガバッ

 

陽乃「おっとと。よしよし」ナデナデ

 

柚稀奈「♪~。なんだか落ち着く〜」

 

陽乃「それはよかったわ」

 

祐夜「·······」ホッ

 

八幡「2人とも食い終わったから、ちょっと食器を戻して来る。陽乃は俺が戻るまでここ居てくれるか?」

 

陽乃「分かったわ」

 

八幡「じゃあ頼んだ」

 

俺はそう言って、部屋から出る。

 

八幡「····さて、そこに居るのは分かってる。俺のサイドエフェクトで筒抜けだ。何でお前らが居る?」

 

________________________

 

 

私達は、比企谷を尾行した。何故過去形かって?それは、

 

八幡「····さて、そこに居るのは分かってる。俺のサイドエフェクトで筒抜けだ。何でお前らが居る?」

 

たった今尾行がバレたからだ。サイドエフェクトってことは尾行を始めた段階でバレてたかも。

 

米屋「か~!バレてたか〜!」

 

出水「コイツのサイドエフェクト忘れてた····」

 

三輪「······ハァ、済まない比企谷。このバカどもが言うことを聞かなくてな」

 

熊谷「ご、ごめんね比企谷」

 

那須「····ごめんなさい比企谷君」

 

八幡「ハァ。移動するぞ」

 

 

 

八幡「とりあえず戻れお前ら。これは命令だ」

 

比企谷はいつもの、陽乃さんと居る時とは違い、冷たい口調で言う。そこで、ずっと黙っていた桐絵が口を開いた。

 

桐絵「ちょっと比企谷!少しぐらい理由を話してくれてもいいじゃないの!」

 

八幡「今は言わない」

 

桐絵「何よ!アンタ、そんなに偉いわけ!?」

 

八幡「ああ。実際に俺は忍田さんと同等の権限を持ってる」

 

桐絵「·········もういいわ!戻るわよ皆!」

 

米屋「え?ちょっと小南?」

 

八幡「あ~そうしろ。とっとと戻れ」

 

小南「後でぜったい話して貰うからね!」

 

八幡「ハァ····分かったからさ·····」

 

_______________________

 

 

あいつ等やっと帰った······とりあえず早く食器を戻して早いとこ祐夜と柚稀奈の所へ戻ろう。

 

 

 

 

 

ふぅ、やっと戻れた。にしても、子供って可愛いよな。

 

陽乃「八幡お帰りなさい。遅かったね」

 

八幡「ああ。バカどもが尾行してやがった」

 

柚稀奈「八幡?何か怖いよ?」

 

八幡「·····そうか、悪かったな」ナデナデ

 

俺は可愛かったので、とりあえず柚稀奈の頭を撫でる。

 

柚稀奈「えへへ〜♪」

 

八幡「?」

 

祐夜が何か知らんがこっちを見つめている。やれやれ。

 

八幡「お前ももうちょい甘えていいんだぞ」

 

祐夜「·······ウン」

 

八幡「それでいいんだ」ナデナデ

 

そう言って2人の頭を撫でる。こっちまで癒されるな······2人とも可愛い。

 

八幡「陽乃、準備はいいのか?」

 

陽乃「うん。さっき先生に連絡して、私も抜けるよう言っておいたわ」

 

八幡「そうか。なぁ、少し外出ないか?」

 

俺は2人に聞いてみる。

 

祐夜「·····八幡と陽乃が一緒ならいい」

 

柚稀奈「私も八幡と陽乃と一緒に行きたい!」

 

八幡「よし、なら今から行くか」

 

柚稀奈「うん!」

 

 

 

俺達はとりあえず、川まで来た。因みに、

 

陽乃、祐夜、柚稀奈、俺

の順で全員で手を繋いでいる。

 

柚稀奈「わ〜い!」

 

八幡「あんまりはしゃぎすぎると怪我するぞ~!」

 

柚稀奈「は〜い!」

 

祐夜「あっ、柚稀奈待って!」

 

陽乃「·····子供っていいわね~」

 

八幡「だろ?」

 

陽乃「八幡」

 

八幡「ん?」

 

陽乃「あの子達がさ·····もし、身寄りがなかったらさ、私達が結婚してからだけど·····正式に養子として受け入れよ?」

 

八幡「大丈夫だ。最初からそのつもりだからな」

 

陽乃「!···うん!」

 

 

 

柚稀奈「痛っ!」

 

柚稀奈が転んでしまった。

 

祐夜「柚稀奈大丈夫!?」

 

八幡「おいおい、大丈夫か?」

 

柚稀奈「痛い····」

 

八幡「そうか。ならもう戻るか。柚稀奈の怪我の応急処置もしとこう」

 

陽乃「そうね」

 

そうして、俺達は戻ろうとした。その時、後ろから足音がした。

 

八幡「誰だ」

 

留美「········」

 

八幡「鶴見か。·····陽乃、2人連れて先戻ってて」

 

陽乃「····分かったわ。あまり遅くならないようにね」

 

八幡「ああ」

 

陽乃「じゃあ行くよ」

 

陽乃は2人を連れて先に戻って行った。

 

 

八幡「どうした?今小学生は自由行動だろ?」

 

留美「·····朝食を食べて部屋に戻ったら誰も居なかった」

 

うお·····エグイな。

 

留美「八幡はさ、小学生の頃の友達は居る?」

 

八幡「1人も居ないな。だいたいの奴はそうだろうがな。居ても1人や2人ってところだろ」

 

留美「でも·····お母さんが納得しない····林間学校でも沢山、皆との写真を撮ってきなさいってデジカメ····」

 

八幡「そうか·····でもそれはお前のお母さんの意見だ。お前はどうしたい?」

 

留美「私は·······」

 

八幡「······お前さ、ボーダーに入らね?」

 

留美「ボーダー?昨日も聞いたけど何で?」

 

八幡「お前は今のままだと中学生になっても高校生になっても、今の現状から抜け出せない」

 

留美「ッ!·····やっぱりそうなのかなぁ」

 

八幡「おそらくな······なら逃げ出せばいい」

 

留美「·······逃げていいの?」

 

八幡「ああ。逃げるのも立派な手段だ。昨日も言ったが、ボーダーってのは中学生、高校生の隊員が多い。お前と同い年も居る。·····でもそれより年上の奴も当然居る。少なくとも、お前の話くらい聞いてくれる。でも、お前に一番近い大人はお前の両親だ。お前の気持ちを汲んでくれるだろうよ」

 

留美「·······八幡、ありがと。お父さんとお母さんに話してみる」

 

八幡「そうしろ。俺は戻る。じゃあなボーダーに来れる日を待ってるぜ」

 

留美「もし、戦闘隊員になれなかったらどうしよう······」

 

八幡「そん時は、俺がオペレーターに推薦してやる」

 

留美「ありがと八幡。じゃあもう行くね」

 

八幡「ああ、じゃあな」

 

 

 

 

 

 

陽乃「八幡お帰り」

 

祐夜「お帰り!」ガバッ

 

柚稀奈「八幡お帰りなさい!」ガバッ

 

八幡「うおっ····ただいま。柚稀奈、怪我大丈夫か?」

 

柚稀奈「もう大丈夫〜!」

 

俺は抱き着いて来た2人を受け止める。

 

陽乃「八幡!」ダキッ

 

八幡「ただいま、陽乃」

 

やっぱり······俺はコイツらを守っていきたい。

 

 

_______________________

 

 

 

2日目、3日目もつつがなく終わり、私達は今は迎えの林藤さんと諏訪さんを待って居る。総武校の人は平塚先生の車に乗って、先に帰った。そこで、八幡が2人と手を繋いで連れて来た。八幡が2人のお父さんにしか見えない。早く私もあの中に入りたい。

 

八幡「よ、待たせて悪かったな」

 

陽乃「全然大丈夫だよ」

 

小町「え!?待ってお兄ちゃん!その子達誰!?」

 

八幡「そうだな。2人とも、挨拶して」

 

祐夜「梓 祐夜です」

 

柚稀奈「梓 柚稀奈です!」

 

雪乃「義兄さん、その子達は?」

 

八幡「ああそうだな。説明するわ。端的に言うと、この2人家で引き取ることになった。まだ、確定したわけじゃないが」

 

小町「え?!一言も聞いてないよ!?」

 

八幡「そりゃそうだ。お袋と陽乃と平塚先生にしか言ってないからな」

 

小町「何で一言も言わないのさ!」

 

八幡「·····この2人は向こうの世界絡みだ」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

俺がそう言うと、皆の顔が固くなる。

 

三輪「······何となく、2人を見て薄々感じていたがやはりか」

 

八幡「ああ。そういうわけで、よろしく」

 

そこで、迎えに来てくれた林藤さんと諏訪さんが来た。

 

林藤「よう皆迎えに来た····って八幡誰だ?その2人」

 

八幡「ああ、ちょっと家で引き取ることになった子達です。林藤さん、コイツら陽太郎みたいにできませんかね」

 

林藤「あ〜まぁそれは出来るぞ」

 

諏訪「う~す。て比企谷誰だそいつら」

 

八幡「諏訪さんお疲れ様です。家で引き取ることになった子達です····近界民絡みです」

 

諏訪「······分かった。よ〜し全員乗り込めー!」

 

「「「「「「「「お願いします!」」」」」」」」

 

八幡·三輪「「·····お願いします」」

 

 

 

俺達は現在林藤さんと諏訪さんに送られている。車の座席は

 

小南 林藤さん

 

俺(の膝の上に柚稀奈)祐夜 陽乃

 

小町 雪乃ちゃん

 

三輪 諏訪さん

 

緑川 出水 米屋

 

熊谷 那須

になった。

 

 

三輪、熊谷、那須は3バカの騒ぎに巻き込まれてそうだな。

 

林藤「いや~早いな〜。八幡もパパになるのか」

 

桐絵「え!?そうなの!?」

 

八幡「いや、まだ確定したわけじゃないですけど」

 

柚稀奈「八幡?」ウルウル

 

祐夜「······八幡?」ウルウル

 

2人が涙目で上目遣いで見てきた。クソッ、可愛過ぎる!

 

小町「(あ~お兄ちゃんこういうの弱いからな〜)」

 

八幡「お前らは俺でもいいのか?」

 

祐夜「うん!」

 

柚稀奈「八幡がいい!」

 

八幡「ウッ(やべ、泣きそう)···じゃあこれからは家族になるんだな。よろしくな」

 

祐夜「よろしく!」

祐夜凄い嬉しそうだ。よかった。

 

柚稀奈「八幡~!」ダキッ

 

八幡「よろしくな祐夜、柚稀奈」

 

俺は祐夜を引き寄せ、2人を抱き締めた。

 

 

八幡「う~ん。2人の親権を俺達が結婚するまでは、どうしたものか」

 

陽乃「八幡は稼ぎがあるから大丈夫じゃない?」

 

八幡「そんなんでいいのか·····」

 

林藤「とりあえず、2人の親族を探すのが先だな」

 

八幡「そうですね」

 

林藤「その人達が居たら口添えをして貰おう。そんな簡単な話じゃないが、少しぐらいは変わるかもしれん」

 

八幡「なるほど」

 

林藤「それで、2人が結婚するまでは陽乃ちゃんが親権者になっとけばいい」

 

陽乃「そうね。八幡もいい?」

 

八幡「もちろんだ」

 

祐夜「八幡、何の話してるの?」

 

八幡「ん?いつから2人が家族になって、俺と一緒に暮らせるかな〜って話」

 

柚稀奈「直ぐになれるよ!」

 

八幡「ハハッ、そうだな」

 

俺も2人のために頑張らないとな。

 

 

 

 

一方、諏訪の車。

 

出水「クソッ比企谷の野郎、新婚夫婦だったかと思えば父親かよ」

熊谷「え?何で?」

 

出水「あいつが祐夜君と柚稀奈ちゃんだっけ?と一緒にいるとこ見たか!?完全に親子にしか見れんわ。しかも、後1年で本物の妻子持ちと来たもんだ。比企谷の誕生日って、夏休み中らしいからな。あ~!俺も遥と早く結婚してー!」

 

諏訪「クッソこのリア充どもが。そういう話は違う所でやれ。独り身の肩身が狭くなんだろうが」

 

那須「出水君、今の話本当?」

 

出水「比企谷のか?」

 

那須「いいえ。出水君が遥ちゃんと結婚したいって話よ?」ニヤニヤ

 

出水「ああ本当だよ。大真面目に言ってるからな。····何でそんなニヤニヤしてんの?」

 

那須「今ね、LINEのチャットを開いてるの」ニヤニヤ

 

出水「え?誰と!?」

 

那須「遥ちゃんに決まってるじゃない」ニヤニヤ

 

出水「ちょ、え!?待って!いつから!?」

 

那須「クソッ比企谷の奴新婚夫婦かと思えば父親かよ、ってところから」ニヤニヤ

 

出水「最初からじゃねえか!マジか····全部聞かれてたとか·····」

 

綾辻『公平君今の話本当だよね?』

 

出水「····ああ、本気だ」

 

綾辻『エヘヘ·····これからもよろしくね!』

 

出水「遥、これからもよろしくな」

 

諏訪「い〜ず~み〜!どんどん肩身が狭くなるじゃねえかよ!」

 

米屋「弾バカにまで先を越されるなんて····」

 

緑川·熊谷「「(砂糖吐きそう)」」

 

米屋「てか、那須は付き合ってる奴居るの?」

 

那須「居るわ。でなかったら、こんなことしないもの。今の諏訪さんみたいになるから」

 

米屋「それもそうだな······」

 

三輪はうるさ過ぎて、爆睡モードに入りました。

 

熊谷「(この中で寝てるなんて······三輪凄いわ)」

 

熊谷が三輪を少し尊敬したのはまた別の話。

 

 

 

 

 

林藤「じゃあな皆。気いつけて帰れよ~」

 

八幡「うす。ありがとうございました」

 

林藤「じゃあな。八幡後でウチにも顔だしたらどうだ」

 

八幡「そうですね。また今度でも」

 

林藤「ハハッ、じゃあな」

 

八幡「はい。ありがとうございました」

 

そして、林藤さんと諏訪さんは帰って行った。

 

八幡「?なんだ?米屋と緑川と熊谷はなんでそんな疲れてんだ?米屋が何かして相討ちになったとか?」

 

米屋「俺が何かしたのは確定なのね······」

 

那須「ふふっ。出水君と遥ちゃんが比企谷君達に続いて結婚しそうってだけよ」

 

八幡「あ、そうなの?出水、おめでとう」

 

出水「いや、父親になったお前がよく言う」

 

八幡「あれ?何で知ってんの?」

 

出水「いや、お前らのその様子見たら誰だってそう思うわ」

 

俺は陽乃と、祐夜を挟んで3人で手を繋いでいる。柚稀奈は寝ちゃったので俺が抱っこしている。やっぱり傍から見たら普通の仲いい家族か、嬉しいものだ。

 

陽乃「八幡、2人はどうする?」

 

八幡「とりあえずは家に連れてく。お袋も会いたいだろうし」

 

陽乃「分かったわ。何かあったら言ってね」

 

八幡「ああ、ありがとな。さて、帰ろうぜ」

 

俺は陽乃と雪乃ちゃんを送った後、小町と2人を連れて家に帰った。

 

 





祐夜と柚稀奈ですが、三門市の小学校と幼稚園に転校·転園しました。そして、1年間探しても親族が見つからず、陽乃が親権者になる前に、2人が結婚して、正式に迎え入れられました(それまでは、陽乃は後見人で)。という設定です。作者は法律に疎いので、おかしかったらすいません。両原作で原作開始時点から1年経っていないため、書く事はないだろうと思い書かせていただきました。もし、原作がそこまで行けば、書くかも。


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13話:彼等、彼女等は新たな世界に踏み出す。

八月某日。俺は陽乃と小町と、本部の前に居る。あと、何故か知らんが日浦も居る。何で本部に入らないかって?

 

八幡「何で日浦まで居んの?」

 

日浦「何でって、大志君は同じクラスなんですよ?」

 

八幡「いや、俺に言われてもな·····」

 

小町「まぁまぁお兄ちゃん。沙希さんと留美ちゃんも入隊試験受けるんだから」

 

八幡「まぁ、別にいいんだけどさ」

 

そう、今日はボーダーの入隊試験なのだ。そして、陽乃は会場の一つの試験官なのである。因みに、俺も試験官である。そして、川崎と鶴見、あと大志も入隊試験を受けるらしい。

祐夜と柚稀奈はお袋が仕事が休みなので、相手をしてもらっている。あれから、俺と陽乃、それから小町やお袋、更には雪ノ下家に協力してもらって2人の世話と血縁者探しをしているが、血縁者は見つかっていない。ボーダーに2人の身分証明書はあって城戸さん達にも話をしたら、手伝うと言って頂いたが流石にそこまで迷惑を掛けるわけにはいかないのでお気持ちだけ頂くと言って断った。気に掛けて貰えるのはありがたいことだ。

 

八幡「·······陽乃、俺達はそろそろ行かんと打ち合わせに間に合わない」

 

陽乃「分かったわ。行きましょ」

 

八幡「ああ。2人は案内を手伝ってやれ」

 

小町「分かったよ~お兄ちゃん!」

 

日浦「分かりました!八幡さんと陽乃さんも頑張って下さい!」

 

八幡「おお、ありがと。じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 

試験が終わり、俺達は試験官の仕事を終えどうするか話していた所、何故か3人一緒に来た川崎兄妹と鶴見に誘われてサイゼに来た。折角なので、お袋と祐夜·柚稀奈も誘った。小町と日浦はともかく、何故那須と熊谷までいるのだろうか。

 

八幡「鶴見は何で2人と?」

 

留美「······試験会場で偶然会って意気投合した」

 

八幡「····(意気投合か。仲良くできそうな奴を早速見つけられたんだな)そうか」

 

沙希「でもあんたらって凄いね。まさか、あたし達の会場の試験官が比企谷だったとはね」

 

八幡「まぁ、頼まれたしな」

 

陽乃「で、3人とも結果はどうだったの?」

 

沙希「······あたしは合格だね」

 

大志「俺もっす」

 

留美「·······私も······適正トリガー?スコーピオン?」

 

八幡「ああ、適正トリガーってのはな、言葉通りそいつにとっての適正があったトリガーってことだ。訓練生はトリガーを一つしか使えないしな。2人はどうだったんだ?」

 

沙希「あたしはレイガストだね」

 

大志「自分はイーグレットっすね」

 

八幡「なるほどね。鶴見のスコーピオンってのは、機動力の高い奴が使う攻撃特化の攻撃手用トリガーだ。ただ、防御はほぼ出来ないと言っていいくらい攻撃特化だ」

 

鶴見「······へぇ」ニヤ

 

八幡「?川崎のレイガストってのは鶴見とは反対に攻撃手用トリガーだけど防御力が他より高いんだ」

 

沙希「なるほど」

 

八幡「で、大志のイーグレットってのはバランスのいい狙撃手用トリガーだ」

 

大志「分かりましたっす」

 

八幡「それで····お前らはチームを組むのか?」

 

沙希「チーム?」

 

八幡「ああ。正隊員は部隊を作ることが出来る。防衛任務を部隊で行ったり、チームランク戦に参加出来るようになる。俺は陽乃と小町と3人でチームを組んでるし、そこの那須·熊谷·日浦も那須隊としてチームを組んでる」

 

沙希「そうなのか·····どうする?」

 

大志「俺は姉ちゃんが良ければ別に····」

 

留美「·····そっちから誘ってくれるのは好都合」

 

沙希「じゃあ正隊員になったらよろしくね留美ちゃん」

 

留美「留美でいい」

 

沙希「じゃああたしも沙希でいいよ」

 

留美「分かった」

 

大志「じゃあ俺も大志でいいっすよ」

 

留美「·········分かった」

 

大志「なんすか?今の間·····」

 

八幡「じゃあお前ら仮入隊するか?」

 

大志「仮入隊ってなんすか?」

 

八幡「仮入隊ってのは正式入隊前から訓練に参加出来るようになる。更にそん時の成績で正式入隊の時ポイントが加算される」

 

大志「俺やりたいっす」

 

留美「私も」

 

沙希「じゃああたしもいい?」

 

八幡「ああいいぞ。仮入隊したら、俺の隊室に来い。そこまで頻繁には無理だが3人とも鍛えてやる」

 

大志「ハイ!お願いしますお兄さん!」

 

八幡「お前にお兄さんと呼ばれる筋合いはない」

 

小町「うわ·····出たよシスコン···」

 

陽乃「まぁまぁ、仮入隊したら思いっきりやってあげましょ」

 

小町·日浦·那須·熊谷「「「「え!?」」」」

 

八幡と陽乃の強さを知っている4人は驚く。

 

大志「よろしくお願いします!」

小町「大志君!?」

 

日浦「大志君······やめておいた方が····」

 

大志「?何でっすか?」

 

那須「この2人はね、ボーダーで1位と2位なの。3位の人も物凄い強いけど、この2人は3位の人が逆立ちしても絶対に勝てないくらい強いのよ」

 

大志「えっと·····3位の人って?」

 

熊谷「A級2位の太刀川隊隊長の太刀川さんよ。この前テレビに出てたわ」

 

大志「自分それ観ました!あの人そうとう強そうでしたけどお兄さん達ってそんなに強いんですか!?」

 

小町「そうだね〜。太刀川さんと100本やって100本勝てるね~」

 

沙希「嘘でしょ····比企谷が遠すぎる······」

 

那須「大丈夫よ。この前、比企谷君、弧月1本で私の部隊とやって無傷で勝ったわ。ボーダーの全隊員が2人との差を感じてるわ。強さは保証するわ」

 

八幡「おいおい。太刀川さんは実際強いぞ。この前10本勝負で2本取られた」

 

熊谷「それがおかしいのよ······」

 

小町「それお兄ちゃんが思いっきり手を抜いてたからでしょ!」

 

八幡「なっ!バレてたのか·····」

 

陽乃「八幡、あれは観てる全員が気づいてたよ」

 

八幡「マジか······」

 

日浦「どうしたらああなれるんですか?」

 

八幡「そ、それはだな····」

 

陽乃「アハハ·····」

 

沙希「?2人とも何でそこで言い淀むの?」

 

八幡「えっと·····それはだな····」

 

「prrrr」

 

八幡「あ、俺だ。·······少し出てくる」

 

陽乃「分かったわ」

 

俺は席を立ち、祐夜と柚稀奈の頭を軽く撫でてから、店外まで移動する。

 

迅『もしもし?』

 

八幡「何ですかセクハラエリートさん?」

 

迅『え?セクハラエリート!?』

 

八幡「沢村さんと熊谷に愚痴られる俺の身になって下さい。良ければ、熊谷と変わりますか?直ぐ近くに居るんで」

 

迅『いや·····遠慮しとくよ』

 

八幡「それで、何の用でしょうか」

 

迅『ああ、ちょっと未来が視えた。修についてだ』

 

八幡「!·····それで?」

 

迅『ああ····さっき修にも言っといたけど、修はある人物に接触する』

 

八幡「どんな人物か視えましたか?」

 

迅『いや····それは視えなかった。けど、修の未来がその人物次第で大きく変化する。八幡と陽乃さんには修がその人物と接触しても、修が演技をやめるまではその人物と関わらないで欲しい。あと、修はその人物がボーダーに入る時に演技をやめられる。多分、それまでだ』

 

八幡「分かりました。具体的な時期は?」

 

迅『あまり視えなかったけど、今年中だ』

 

八幡「分かりました。じゃあこれで」

 

迅『ああ。時間取って悪かったな。······熊谷ちゃんには何か上手いこと言っといてくれ』

 

八幡「ハァ······失礼しますね」

 

迅『ああ、じゃな』

 

八幡「ええ」

 

俺は通話を終え、席に戻った。

 

陽乃「誰から?」

八幡「迅さんだよ。熊谷によろしくってさ」

 

熊谷「おのれあのセクハラ男め」

 

沙希「えっと······その、迅さんって?」

 

八幡「好きなモノが暗躍とセクハラの変態だ。覚えなくていい」

 

沙希「それは、逆に忘れらんないって·······」

 

熊谷「川崎さん覚えちゃ駄目だよ」

 

那須「くまちゃんは迅さんのセクハラ被害の第一人者なのよ·······」

 

沙希「それは災難だったね·····」

 

留美「八幡は3人全員に教えられるの?」

 

八幡「ん?ああ。お前が、オペレーターになりたいっつっても問題ない」

 

熊谷「それは、比企谷だけだよ·····」

 

陽乃「私も出来るよ〜」

 

熊谷「え?」

 

小町「小町の立場は?普段のチームランク戦も殆ど何もしないで終わるのに····」

 

那須「大丈夫よ小町ちゃん。この2人も別の意味で変態だわ」

 

八幡「本人の前で言うことじゃねぇ····ん?」

 

柚稀奈「」スースー

 

陽乃「ありゃ、柚稀奈が完全に寝ちゃったね」

 

八幡「そうだな。俺達もそろそろ帰るか」

 

沙希「わざわざありがとうね」

 

八幡「大丈夫だ。誘ってくれてありがとな。さて、帰るか」

 

その後、俺達は会計を済ませた後それぞれで帰った。留美は川崎達が送るようなのでそれに任せた。

柚稀奈は俺がおんぶして帰った。祐夜は、陽乃と手を繋いでいた。

 

 





会話劇だ······。作者は終わらせるのが苦手です。新たに入隊した3人は、沙希を隊長にチームになる予定です。チームを組むのは、原作で三雲隊がランク戦開始までにはチームを組む予定。留美は、一瞬でB級に上がる予定。


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閑話2:比企谷八幡は家族と憩いの一時を過ごす。


今回は夏祭り回です。相模達は面倒だったんで出ません。これは、13話の2週間後の設定。留美はボーダーに完全に入り浸っています。


今日は夏祭りと花火大会がある。俺達は家族4人で、遊びに来た。

 

八幡「おお~賑わってんな」

 

柚稀奈「八幡!私あれやりたい!」

 

祐夜「僕、あれやりたい」

 

陽乃「おおっ!いいね〜2人とも」

 

八幡「分かった、分かったから、落ち着け。柚稀奈どれからだっけ?」

 

柚稀奈「あれだよ!」

 

八幡「分かった、行こうか。祐夜は次でいいか?」

 

祐夜「いいよ」

 

八幡「おっし、柚稀奈やるぞ~」

 

柚稀奈「やった~!」

 

その後、俺達は柚稀奈の言ったヨーヨーすくいから始まり、射的や輪投げ、型抜きをして楽しんだ。今は、花火大会の前に夕食を買って行こうという所だ。そこで、

 

 

影浦「あ?ハチじゃねえか」

 

八幡「ん?あれ、カゲさんじゃないすか。鋼さんと、ゾエさんもどうも。カゲさんに引っ張られたんですか?」

 

村上「ハハハ、よう八幡。デートか?」

 

八幡「いや、デートよか家族で遊びに来たってのが正直なところっすね」

 

北添「家族?誰と来たの?」

 

八幡「ほら、あそこに」

 

村上「ああ、陽乃さんか·····その両隣りの子供達は誰だ?」

 

八幡「ああ、俺と陽乃で引き取った子供です」

 

村上「え?お前······父親になったのか?」

 

八幡「はい」

 

影浦「おいハチ!早く何するか決めやがれ!」

 

八幡「おすすめなんすか?」

 

影浦「あ?豚玉だ!」

 

八幡「どうも。じゃあそれ2つ」

 

影浦「あいよ。2つで1000円だ」

 

八幡「じゃこれで、頑張って下さい」

 

影浦「ああ、じゃあな」

 

村上「またな。今度ソロランク戦付き合ってくれ」

 

八幡「また暇な時に。では、これで」

 

北添「またね〜」

 

八幡「うす」

 

 

 

八幡「さて行こうぜ」

 

柚稀奈「うん!いい匂い!」

 

陽乃「早いとこ移動して食べよっか」

 

八幡「ああそうだな」

 

祐夜「お腹空いた·····」

 

八幡「ハハッ、あれだけ遊べばな」

 

ここで、俺のサイドエフェクトに反応があった。

 

八幡「急ごうぜ。俺も腹が減った」

 

陽乃「?·····八幡どうしたの?」ヒソヒソ

 

八幡「いや、学校の知り合いが居た」ヒソヒソ

 

祐夜「2人ともどうかしたの?」

 

八幡「いや何でもない。早く行こうぜ」

 

俺達が行くのはVIPエリアだ。お義父さんとお義母さんもそこにいる筈だ。会えるかは分からんけど。

 

唯我「あれ?比企谷先輩?」

 

八幡「あ?唯我か」

 

陽乃「?唯我君だ」

 

唯我「どうしてここに?僕は父親と挨拶巡りですけど」

 

八幡「俺はお義父さんとお義母さんに誘われてな」

 

唯我「なるほど。あ、父が呼んでるので」

 

八幡「ああ、じゃあな」

 

唯我「はい。失礼します」

 

 

 

柚稀奈「今の人誰~?」

 

八幡「ああ。俺の知り合いだ」

 

柚稀奈「へ~」

 

陽乃「ふふっ、行きましょ」

 

八幡「ああ」

 

 

 

 

俺達はVIPエリアの雪ノ下家が持っているエリアまで移動して来た。

 

夏音「あら八幡君、いらっしゃい。祐夜君と柚稀奈ちゃんも」

 

秋彦「よく来たね皆」

 

八幡「お久しぶりです。すいません俺の我が儘で·····」

 

秋彦「ハハハ、何を言ってるんだい。養子だろうが孫なんだよ?当然じゃないか」

 

夏音「そうよ。この子達とっても可愛いし、貴方達何処から見ても親が少し若いくらいで本物の家族に見えるもの」

 

八幡「御二方には本当に感謝してもしきれません」

 

秋彦·夏音「「いいって言ってるじゃないか(の)」」

 

八幡「本当にありがとうございます」

 

秋彦「ハハッ、ゆっくりしていってくれ」

 

八幡「はい」

 

そこで、花火大会が始まった。ドンッ!と大きな音がして、夜空に大輪の花が咲く。

 

柚稀奈「わー!すごーい!きれーい!」

 

祐夜「·····綺麗」

 

八幡「ああ、本当にな」

 

陽乃「本当に、ね」

 

俺達は祐夜と柚稀奈にもバレないように軽くキスをして、手を繋いだ。

 

陽乃「ふふっ」

 

八幡「2人とも楽しんでるか〜?」

 

柚稀奈「うん!柚稀奈楽しんでる!」

 

祐夜「僕も楽しんでる」

 

八幡「そうか」

 

俺は満面の笑みを浮かべて言う2人の頭を陽乃と撫でる。

 

柚稀奈「八幡、くすぐったい!」

 

八幡「そうか、ならこれでもどうだ~!」

 

柚稀奈「アハハハハハッ!」

 

祐夜「八幡、それくらいに····」

 

流石にふざけすぎたようだな。

 

八幡「おっと、悪い柚稀奈。はしゃぎすぎたな」

 

柚稀奈「楽しかったからいいよ〜!」

 

八幡「ありがとよ」

 

その後も俺達は4人で花火に見とれながら、屋台で買った物を食べ、花火大会を楽しんだ。

 

陽乃「さて、そろそろ帰ろうか」

 

八幡「今日は家来るのか?」

 

陽乃は今までも偶に家に来ていたが、祐夜と柚稀奈が来てから時間がある時は出来るだけ来るようにしてくれている。お義父さんとお義母さんに前回あった時(祐夜と柚稀奈が来てすぐ)は同棲しないのかと聞かれたが、その時は2人が落ち着いてからと断ったのが、そろそろ頃合なのだろうか。

 

陽乃「今日は泊まっていこうかと」

 

八幡「そうか、なら早く帰るか」

 

陽乃「うん!」

 

八幡「ほ~ら、2人とも帰るぞ〜」

 

祐夜·柚稀奈「「は~い」」

 

そして4人で家に帰って来た。

 

 

 

小町「おかえりお兄ちゃん!陽乃お義姉ちゃんもいらっしゃい!2人もおかえり!」

 

八幡「おう、ただいま」

 

祐夜·柚稀奈「「ただいま~!」」

 

陽乃「お邪魔しま〜す」

 

小町「ささっ、どうぞどうぞ。あっ、4人ともお母さんが呼んでたよ?」

 

八幡「?なんだ?」

 

 

 

リビングに行くと、俺の母比企谷 亜真実(ひきがや あまみ)が居た。

 

亜真実「皆おかえり。陽乃ちゃんもいらっしゃい」

 

八幡·祐夜·柚稀奈「「「ただいま(!)」」」

 

陽乃「お邪魔してます」

 

亜真実「それで······早速本題に入るけど、陽乃ちゃんもウチで暮らさない?」

 

陽乃「え?」

 

亜真実「ほら、貴方達もう子供が居るんだし4人で一緒に暮らしたかったのでしょう。場所の問題もないわ。さっき、夏音さんと秋彦さんにも話しておいたわ」

 

陽乃「·····いいんですか?」

 

亜真実「もちろんよ」

 

陽乃「······これから、よろしくお願いします」

 

陽乃はそう言って頭を下げたが、

 

亜真実「陽乃ちゃん、頭を上げなさい。何も気にすることではないわ。貴女は私の義娘なのよ?」

 

陽乃「ありがとうございます!お義母さん!」

 

柚稀奈「ね〜何の話してるの?」

 

八幡「ん?陽乃がこれから一緒に暮らせるよっていう話だよ」

 

柚稀奈「本当!?やった〜!」

 

祐夜「····やった!」

 

亜真実「ふふっ。もう行っていいわよ」

 

陽乃「はい!ありがとうございます!」

 

亜真実「ふふふっ」

 

お袋はそうして喜んでいる俺達を楽しそうに見ていた。

 

 





出そうか迷ってましたが、八幡の母親が出ました。同棲?は直ぐに出水にバレる設定。綾辻は更にデレる。そのタイミングで緑川、双葉にバレ、隠せない緑川は米屋にばれて米屋がLINEに流し、八幡が本気で米屋を潰そうとします。三輪と奈良坂は米屋を放置する、という後日談をいつか描きたい。後、コイツら誰?っていうのは、見なかったことにして下さい。キャラ設定が前提から違うんでしょうがないんです。

キャラ紹介

比企谷 亜真実
比企谷時宗の妻であり、八幡と小町の母。時宗の話から、直ぐに八幡を引き取った肝っ玉母さん。ただし、修を引き取れなかったことを八幡に申し訳なく思っている。実は、八幡が祐夜と柚稀奈を引き取ると言った時、時宗が脳裏をよぎった(ただ、その際八幡が勝手に決めたことを一応叱った)。


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14話:比企谷八幡は相模南を蔑視する。

今回から、2学期入ります。文化祭が終われば待ちに待ったワートリ原作開始です。


 

家族の愛しさを再認識した夏休みも終わり、2学期に入り、数日経ったある日のこと。

 

俺は今本気で帰りたい。何故かって?理由はほんの数分前に遡る。

 

平塚「今日は君達に文化祭実行委員を選出してもらいたい。方法は任せる」

 

 

ルーム長「では、文化祭実行委員の選出をしたいんだが、方法は普通にくじ引きでいいかな?」

 

「いいと思う!」

 

ルーム長「では、男子の実行委員から。1人一枚ずつ引いてくれ」

 

 

 

 

 

八幡「そんな·····嘘だ·····」

 

皆忘れているだろうが、俺達は元来めんどくさがりだ。最近、愛しい家族と一緒に居たから自分でも、半ば忘れてた。そして、俺の手に端が赤く塗ってあるくじが握られていた。

 

ルーム長「えっと····ボーダーの仕事がない時でいいから····」

 

八幡「いや·····ハァ、問題ない。···俺でいいな?」

 

葉山「いいんじゃないかな」

 

戸塚「八幡なら大丈夫だよ!」

 

俺の質問に戸塚と葉山が同意する。まあ、コイツらが言うなら反論は出ないか。家族で文化祭回ろうと思ってたけど無理かな。

······とまぁ、そんな理由で冒頭に戻る。

 

まぁ、なってしまったものはしょうがない。出来るだけ、仕事が少ない部署に行って少しでも4人で居れる時間を確保しよう。そう思って自分の席に戻り、俺は軽く眠った。

 

 

 

 

俺が目を覚ますとちょうど女子の実行委員の選出が、終わったところだった。女子で実行委員になったのは相模南というので、何処かのお団子頭ほどじゃないが頭の軽そうな女だった。あれ?コイツ夏祭りに居たな。お団子頭の近くに居た奴と同じ反応だ。お団子頭の反応で気にしてなかった。まあ、会ってても分からんかったろうが。

 

相模「よろしくね比企谷君」

 

単純だなコイツ。俺はお前に劣ってる所なんてないと思うんだがな。わざとやってるとしか思えない明け透けな態度が苛つくが、今それを言っても何にもならんだろう。

 

八幡「·······よろしく」

 

因みに、戸塚に寝てる間のことを軽く聞いたら、最初はなんか「うち~?絶対無理〜」とかアホ丸出しのこと言ってたらしいが、葉山が一声掛けるとすぐ様「じゃあやろっかな~」とか、掌を返して更にアホ丸出しのこと言ってたらしい。

 

 

 

 

放課後。

俺は、文実のミーティングを行う会議室にいる。これからは、基本ここでミーティングを行うらしい。あ、前に陽乃が言ってた何かほんわかした雰囲気の生徒会長ってあの人か。確か·····城廻めぐりだったか?俺は初回なので出来るだけ早く来たが、他の奴も入って来た。えっと、来たのは奈良坂と三上、あと荒船さん。

 

奈良坂「比企谷か、以外だな。お前は家族で過ごすと思って居たぞ」

 

三上「急に子供ができたって聞いたけど大丈夫?」

 

荒船「よう比企谷。何か変なの食ったか?加古さんの炒飯とか」

 

八幡「加古炒飯については納得出来ますけど、あんたらは俺を何だと思ってるですかね。これでも上司ですよ」

 

奈良坂「究極の嫁バカであり、親バカ」

 

八幡「それは知ってる。······お前米屋から聞いただろ」

 

奈良坂「よく分かったな。そうだ。これを見ろ」

 

奈良坂はそう言って、携帯をいじり始める。

 

八幡「奈良坂何してんの?」

 

奈良坂「お、あった」

 

そう言って奈良坂は携帯を俺に見せる。そこには、LINEのチャットだろうか。俺達が家族4人で手を繋いでいる写真が映っていた。

 

八幡「は?····よ〜ね~や〜!あの野郎!」

 

奈良坂「比企谷、気持ちは分かるがここでキレてもしょうがないだろ。落ち着け」

 

奈良坂、てめえ笑い堪えながら言ってんじゃねえ。

 

八幡「チッ·····奈良坂、後で米屋にランク戦来るように言っとけ」

 

荒船「おいおい、何する気だ?」

 

八幡「あのバカとソロランク戦1000本やって、切り刻んで、蜂の巣にして、消し飛ばします」

 

三上「比企谷君落ち着こ?」

 

荒船「落ち着け、米屋は後で切り刻めばいいだろ」

 

八幡「それもそっすね」

 

三上「アハハ··········まぁまぁ、家族思いって素敵だと思うよ?私も弟妹がいるし」

荒船「まあ、俺は一人っ子だからな·····」

 

そんなことを話していると、宇佐美·綾辻·歌川·菊地原·犬飼さんが入って来た。

 

宇佐美「あれ?ハチ君だ」

 

綾辻「珍しいね」

 

菊地原「何でいるのこの人」

 

歌川「おい菊地原!すいません、比企谷先輩」

 

犬飼「やっほ〜、比企谷ちゃん」

 

八幡「菊地原、弧月でサイコロステーキになるのと、トマホークで消し飛ぶのと、風間隊が合流した瞬間に3人揃ってアイビスで木っ端微塵になるのどれがいい?次のランク戦でお前の望み通りにやってやるよ」

 

歌川「すいません比企谷先輩。3人揃っては勘弁して下さい。ほら、謝れ菊地原」

 

菊地原「へーへーどうもすいませんね」

 

八幡「うわ····ここまで心のこもってない謝罪初めてだわ」

 

そこで、雪乃ちゃん·熊谷·辻·古寺が入って来た。辻はよく引き受けたな。

 

雪乃「あら、義兄さんが何故?」

 

熊谷「本当だ。比企谷?何かの間違いじゃないの?」

 

古寺「ハハハ····どうも比企谷先輩こんにちは」

 

八幡「熊谷、お前は自分に死刑宣告しているととっていいんだな?後、ここにいるのはくじ引きでハズレを引いただけだ」

 

そう言うと全員は全く同じタイミングで「なるほどね」と言わんばかりに首を縦に振る。コイツら俺のこと何だと思っていやがる····

 

八幡「それにしても、辻はよく引き受けたな」

 

辻「·····クラスの出し物が何故か先に決まってたんでな」

 

八幡「?お前のクラスって何やんの?」

 

辻「·····女装喫茶」

 

八幡「それは·····ご愁傷様だ」

 

そんなこんなしている内に、全員が集まっていた。そして、

 

城廻「はい、それじゃあ文化祭実行委員会始めま~す。生徒会長の城廻めぐりです。早速、文化祭実行委員委員長の選出に移りま〜す。誰かやる人居ますか?」

 

なるほど。聞いていた通りだな。にしても、この人言っちゃ悪いけど生徒会長とか向いてなさそう。

 

城廻「あ!もしかして雪ノ下さんだよね?陽さんの妹の!」

 

雪乃「そうですけど·····何か?」

 

城廻「いや陽さんも実行委員でね〜。あの時は総武校に残る素晴らしい文化祭だったんだよね~!どうだろ、陽さんの妹さんなら委員t「実行委員として善処します」そう····」

 

相模「あの!だったら、ウチがやってもいいですか」

 

うわ···嫌な予感しかしねぇ。

 

城廻「本当!?えっと······」

 

相模「2年 F組の相模南です。あんまり前に出るの得意じゃないんですけど、こういうの少し興味あったし、ウチもこの文化祭で成長出来たらなって····」

 

何でお前の成長にわざわざ手を貸さなきゃいかんのじゃ。それくらい自分でやれなくてどうする。

 

城廻「いいと思うよ〜!」

 

どこがいいんだ?あの人かなり考えが甘そうだな。

 

城廻「じゃあ、他に立候補が無ければ相模さんに決定するけど、いいかな?」

 

生徒会長がそう言うと、周りから拍手が起こる。皆コイツのこと見てねえんだな。これが、三浦や葉山だったらまた違いそうだな。これが、"差"だな。三浦にカーストで上回りたいんじゃねぇのかとか思ってたが、この程度だと、何しても三浦を出し抜くのは先ず無理だな。

 

荒船「おい、アイツ何か嫌な予感するぞ」ヒソヒソ

 

奈良坂「奇遇ですね。俺もです」ヒソヒソ

 

三上「私も」ヒソヒソ

 

八幡「だろうな。まぁ、とりあえず、打てる手は全て打っておく」ヒソヒソ

 

あ、これで俺も···ヴェイガンを殲滅するだけになるからやめておこう。

 

そして、今日のところはこれでお開きとなった。そこで、雪乃ちゃんが、相模達と話しているのを見た。

 

相模「平塚先生に聞いたけど、雪ノ下さんって奉仕部っていうのやってるんだのよね?」

 

雪乃「え、ええまぁ」

 

相模は取り巻きと共にクスクス笑っている。スゲェ苛つくな。身内がこんなふうに扱われると。

 

相模「なら、一つ依頼してもいい?」

 

雪乃「何かしら?」

 

相模「ウチ、実行委員長になったじゃない?何ていうかこう····自信がないんだ。だから、ウチを助けてくれない?」

 

雪乃「·····自身の成長」

 

相模「え?」

 

雪乃「という、貴方が掲げた目標から外れると思うのだけど」

 

相模「でもほら、皆に迷惑を掛ける理由にはいかないじゃない?それに、誰かと成し遂げることも成長の一つだと思うし」

 

雪乃「(ハァ、呆れたわ。何となく想像がついていたけどここまでくるとわね。ただ、義兄さん達が家族で遊びに来たいだろうし私もあの2人はとても可愛いと思うから·····)分かったわ。受けましょう、その依頼」

 

相模「ホントに!?」

 

雪乃「ええ。要約すると、貴方の補佐をすればいいのね。私も実行委員だから、その範囲から外れない程度になら構わないわ」

 

 

 

雪乃「ハァ···」

 

八幡「大丈夫か?雪乃ちゃん俺達のために受けてくれたんだろ?」

 

雪乃「大丈夫よ。このままでは潰れそうだったから」

 

八幡「まあ、それには同感だ。何かあったら言ってくれ。出来る限り手伝う」

 

雪乃「分かったわ。ありがとう義兄さん」

 

八幡「そうか、まぁ今日はここまでだな。俺は早速本部で、米屋を潰す」

 

雪乃「流石にやりすぎないようにね」

 

八幡「それは大丈夫。アイツの心が折れるギリギリまでにしとくから」

 

雪乃「それは普通にやりすぎよ···」

 

八幡「さてと、俺も行くか。気ぃつけて帰れよ。」

 

雪乃「ええ。姉さんにもよろしく伝えて」

 

八幡「ああ。じゃあな」

 

 

 

ボーダー本部。

俺は今本部で米屋を探している。奈良坂が、俺に言われた通りにLINEを送ったら、居なくなったらしい(三輪談)。

 

八幡「さてとサイドエフェクトで······居た。アイツあれで隠れたつもりか?」

 

米屋は、太刀川隊の作戦室に居た。というわけで、直行する。

 

八幡「失礼しまーす」

 

出水「どうした、比企谷」

 

八幡「ここにいる、槍バカをとっちめに来た」

 

出水「なら槍バカは向こうに居るぜ」

 

八幡「ああ、情報提供感謝する」

 

出水「いいって。それより········」

 

八幡「·····お、それいいな。貰うわ」

 

出水「どうぞどうぞ」

 

八幡「よし、米屋行くぞ~」

 

米屋「ヒッ!?」

 

俺は米屋を引き摺って、ランク戦ブースに向かう。

 

 

 

 

とりあえず、俺は速攻で米屋を500対0で下した。OK。まだ40分しか経ってない。1回、4.5秒ってところか。早く家に帰りたい。家族と過ごしたい。因みに、さっき出水から聞いたのは、加古炒飯の試作に永久に米屋を使わせていいと言うものだ。命令ってことにしてしまおう。·······職権乱用も甚だしいな。ただ、堤さんとか諏訪さんとかが犠牲になるのはしのびないから致し方ない。よって、米屋というわけだ。再び、米屋を引き摺って今度は加古隊の作戦室へと向かう。よし、米屋が意気消沈してる今がチャンス!!!

 

八幡「失礼しま〜す」

 

双葉「あれ?八幡先輩どうしたんですか?」

 

八幡「よう黒江。加古さん居る?」

 

加古「私に何か用かしら?」

 

八幡「どうもお邪魔してます。それでですね·······」

 

加古「······ありがとう比企谷君。これで、試作がスムーズに進むわ」

 

双葉「(八幡先輩·······)」

 

八幡「じゃあ俺はこれで。早く帰って家族団欒で過ごしたいので。米屋は置いて行きます。三輪が来た時だけ返せばいいと思います」

 

加古「分かったわ。陽乃によろしく伝えて」

 

八幡「はい。失礼します」

 

後ろから、「助けてハッチ····」とか聞こえたが、俺はミツバチじゃないのでスルー。さて、帰ろう。

 

 

 






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15話:相模南は道化である。彼女達道化同士は彼等を邪魔する。



早くワートリに入りたい。後、3、4話です。しばしお待ちを。


 

雪乃ちゃんが相模の依頼を受けた翌日。

 

相模「それでは、定例ミーティングを感じます。雪ノ下さんには、私の補佐に入っていただきます。それでは先ず宣伝広報、お願いします」

 

宣伝広報担当「掲示用ポスターの制作も半分ほど終わっています」

 

相模「いいですね~!その調子です~!」

 

雪乃「いいえ、少し遅いです。」

 

相模「え?」

 

雪乃「掲示箇所の交渉と、ホームページへのアップは済んでいますか?」

 

いきなり来たな〜。

 

宣伝広報担当「まだです·····」

 

雪乃「急いで下さい。社会人はともかく、受験志望の中学生やその保護者は頻繁にホームページをチェックします」

 

宣伝広報担当「はい·····」

 

相模「·········「相模さん?」あ、はい。次は有志統制お願いします」

 

有志統制担当「はい、現在協力をしていただけるのが確定したのが10団体」

 

相模「増えたね〜!地域賞のお陰かな~?」

 

雪乃「それは校内のみですか?地域の方々への打診は?例年、地域の方々との繋がりを掲げている以上、参加団体の減少は避けないと。それから、ステージの割り振りや開演のスタッフ打ち分けなど、タイムテーブルを一覧にして、提出して下さい」

 

有志統制担当「わ、分かりました」

 

「雪ノ下さん凄いね~」

 

相模「あ·····」

 

城廻「凄~い!流石陽さんの妹さんだ〜!」

 

雪乃「あ、いえ。たいしたことでは····」

 

奈良坂「おい、やりすぎじゃないか?」ヒソヒソ

 

八幡「·····まぁ、それは同感だ。後で注意しとく。このままだと、アイツが何するか分からんからな」ヒソヒソ

 

雪乃「次記録雑務ですが、当日のタイムスケジュールと機材申請を提出しておくように」

 

 

 

 

八幡「雪乃ちゃんちょっといい?」ヒソヒソ

 

雪乃「何かしら義兄さん?」ヒソヒソ

 

相模「·····?」

 

 

 

 

 

八幡「····雪乃ちゃんちょっとやりすぎだ」

 

雪乃「ごめんなさい義兄さん。確かにあの手の人間にはああいうやり方は悪手だったわ」

 

八幡「そういうこった。まあ、手伝えることならいくらでも手伝うから言ってくれ」

 

雪乃「ありがとう義兄さん。今日はもう帰るの?」

 

八幡「ああ。陽乃に予定聞いとかないといかん」

 

雪乃「そう。姉さんによろしく伝えて」

 

八幡「ああ、じゃな」

 

雪乃「ええ、また明日」

 

 

 

 

更に翌日。

 

八幡「何だこりゃ·······」

 

ぼく:比企谷八幡

 

王子様:葉山隼人

 

確か、俺達のクラスは演劇で「星の王子さま」をやるはずだ。しかし、一つ問題を見逃していた。

 

海老名「ふふん。説明が必要かね?」

 

総監督·演出·脚本:海老名姫菜

 

これだ。一つ言っておこう。海老名姫菜は腐女子である。

 

八幡「いや、これは無理だろ」

 

葉山「そうだね。一度見直した方がいいんじゃないかな。········例えば、王子様とか」

 

コイツ、それが目的か。

 

八幡「いや、俺文実があるし、防衛任務もあるからな?これ以上何かやるのは、流石に無理だ」

 

海老名「あ、そうだったね····ごめんなさい。ちょっと考え直して·······これでどうだ!」

 

ぼく:葉山隼人

 

王子様:戸塚彩加

 

葉山「結局俺がやるのは変わらないのか·····」

 

海老名「そのやさぐれた感じいいねぇ〜」

 

葉山よ、ご愁傷様だ。安心しろ。加古隊の隊室に放り込まれた米屋ほどじゃない。あ、俺と出水でやったことでしたね。

 

戸塚「僕に務まるかな····」

 

八幡「俺原作持ってるから貸そうか?」

 

読書は好きだからな。かなり色々集めたな。

 

戸塚「本当!?ありがとう八幡!」

 

八幡「ああ」

 

葉山「戸塚〜!劇の詳細な部分を決めるってさ!」

 

戸塚「分かった〜!じゃあね八幡」

 

八幡「ああ。戸塚も頑張ってくれ」

 

あ、俺もそろそろ実行委員行かないと。

 

 

 

 

俺が実行委員のミーティングに行くと、何故かドアの前に人集りが出来ていた。あ、辻がいるから、辻に聞くか。

 

八幡「おい辻。この人集り何だ」

 

辻「ん?比企谷か。元凶が何を言っている」

 

八幡「は?元凶?何言ってんの?」

 

辻「中を見てみろ」

 

八幡「中?·····あれ?どしたの?」

 

中には何故か陽乃が居た。

 

陽乃「やぁやぁ八幡。朝ぶりだね~」

 

八幡「今日大学は?」

 

陽乃「終わったからいるんじゃないの」

 

八幡「あぁなるほど」

 

陽乃「私は雪ノ下家の代表として来たのよ」

 

雪乃「姉さん·····有志なら受けると言っているのだから、とっとと離れなさい。·····暑いわ」

 

陽乃「八幡~!雪乃ちゃんが、冷たいよ~!」ガバッ

 

うぐっ。陽乃と一緒に居れるのはありがたいけど、ここで抱きつかれるのは恥ずかしい。

 

八幡「ハハハ····陽乃、恥ずかしいから離れて····」

 

陽乃「え〜いいじゃない」

 

八幡「···それは、帰ってからな」

 

陽乃「え〜!?·····約束よ?」

 

八幡「ん、分かった」

 

陽乃「ならばよし!」

 

雪乃「(······ハァ)」

 

城廻「あの·····お2人は知り合い何ですか?」

 

陽乃「知り合いも何も私達は「すいませ~ん!クラスに顔出してて遅れちゃいました〜!」····ム~」

 

城廻「あ、陽さん。この子が今回の実行委員長さんですよ」

 

相模「?相模南です。えっと·····」

 

陽乃「·····雪乃ちゃんのお姉ちゃんの雪ノ下陽乃です。······宜しくね?」

 

陽乃、相模の薄っぺらさにもう気付いたのか。流石は我が嫁。·····って、陽乃じゃなくても普通に気付くか。

 

雪乃「今回は雪ノ下家も有志に加わることにしてもいいかしら」

 

相模「えっと·····」

 

城廻「数は多いに越したことはないので全然大丈夫ですよ~!」

 

陽乃「じゃあ決まりね。····それにしても、実行委員長がクラスに顔を出して遅刻とはね。へ~·····「陽乃、ストップだ」·····は~い」

 

雪乃「相模さん。そろそろミーティングを」

 

相模「え?あ、は、はい」

 

八幡「雪乃ちゃん」ヒソヒソ

 

俺は出来るだけ声を抑えて話しかける。

 

雪乃「また、やってしまったわね」ヒソヒソ

 

陽乃「やってしまったって?」ヒソヒソ

 

八幡「アイツは見ての通りの感じなんだが、千葉村で頭下げた奴いるだろ?そいつ三浦って言うんだがうちのクラスのカーストトップで、そこの相模は準トップってところなんだ。で、今回の文実で雪乃ちゃんを利用して、三浦の位置を奪おうとしてるってところなんだよ」ヒソヒソ

 

陽乃「あの子じゃ、雪乃ちゃん利用しても無理でしょ」ヒソヒソ

 

八幡「まあそうなんだが、あのヤローにやらせっぱなしだと文化祭が潰れるからな。雪乃ちゃんに無理言ってあのバカの依頼を受けて貰った」ヒソヒソ

 

陽乃「ありがとうね。八幡、雪乃ちゃん。楽しみにしてるね」ヒソヒソ

 

八幡「おうよ」ヒソヒソ

 

雪乃「任せなさい」ヒソヒソ

 

城廻「えっとあの、3人とも?そろそろミーティングを始めたいんだけど······」

 

雪乃「分かりました」

 

 

 

そして、ミーティングが始まったんだが、バカがとんでもないことをほざきやがった。

 

相模「皆さ〜ん!考えたんですけど、文化祭実行委員は楽しんでこそかな~って思うんですよ。自分達が楽しめないと人を楽しませることなんて出来ないかな〜って。だから、予定も順調に進んでることだし、クラスの方も大事だから少しペースを落としてもいいかな~って思うんです!」

 

雪乃「相模さん、それは考え違いよ。バッファを持たせるために予定を前倒しにして」

 

相模「雪ノ下さ〜ん、少しは私情を挟まないで皆のことも考えようよ~」

 

コイツ、何考えてやがる。

 

菊地原「相模さんって何考えてるの?」

 

三上「確かに、あれだと仕事に来なくなる人が出てきそう」

 

八幡「同意見だ、三上、菊地原。あのバカはとんでもねー爆弾落として行きやがった。ついでに、あいつは自分の成長が〜とか言ってくれてたからな。引き摺り降ろすか?」

 

菊地原「うわ····容赦ない。でも、珍しく意見が合いますね」

 

八幡「だな。とにかく、俺はとりあえず対策を考えとく」

 

歌川「お願いですから、やりすぎないで下さいよ。この前米屋先輩に土下座させてるとこ見ましたよ」

 

八幡「何を言ってるんだ?あんなのはやりすぎに入らないぞ?やりすぎって言うならあいつを3000対0までやってC級に落とすぐらいまでは行かないと」

 

歌川「それは、やりすぎとかいう話じゃないですよ···」

 

三上「アハハ······」

 

菊地原「うわ····鬼畜だ····」

 

何だ?そこまでおかしなこと言ったつもりはないんだが····まぁ今は相模だ。早いとこ対策立てないと文化祭が潰れるからな。

 

 

 

 

 

俺は今陽乃と帰途に付いている。

 

八幡「あんなこと言った手前言い難いんだけど、文化祭デートは出水とかがいる第一高校になるかもしれん」

 

陽乃「あれは、しょうがないよ」

 

八幡「ごめんな」

 

陽乃「やめて八幡。八幡は悪くないんだよ?」

 

八幡「ん·····ありがとな」ナデナデ

 

陽乃「♪~」

 

駄目だな俺も。陽乃を不安がらせるようじゃまだまだだ。もっと頑張らないと。

 

 

 

そして、翌日。

マジかよ·····流石に減りすぎだろ·····昨日は6、70人くらい居たのに今日は20人だと?ふざけてんのか。サボった奴は一致団結でもしたのか?

 

八幡「最悪なことになった」

 

俺は、本格的な対策を立てておかないとならなくなった。

 






会話についてはアニメを見直しながら書いてますが、都合上かなりの改変を余儀なくされております。ご了承ください。


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16話:比企谷八幡は現状の打破に成功する。

相模という道化が周りに被害を撒き散らしてから1週間後。

 

八幡「さて、どうしたものかね」

 

雪乃「ごめんなさい、義兄さん。私が相模さんを止められなかったばっかりに·····」

 

八幡「いやいい。それを言ったら雪乃ちゃんに無理を言った俺が悪い」

 

雪乃「そう·····」

 

八幡「ちょっとキツイが待っててくれ。対策を考える」

 

雪乃「····ありがとう」

 

葉山「失礼します。有志の申し込み書類、提出に来たんだけど」

 

雪乃「ありがとうございます。あちらの有志統制にお願いします」

 

葉山「分かった。·······にしても、ずいぶん少ないね」

 

葉山、なら相模を引き摺って来てくれ。

 

葉山「人手、足りてるのかい?」

 

八幡「全体のことは下っ端の俺には分からん。担当部署で手一杯だ」

 

葉山「担当部署?」

 

八幡「記録雑務」

 

葉山「·····似合うな」

 

八幡「喧嘩売ってんのか?」

 

葉山「ハハハ、冗談だよ。そもそも、君と喧嘩しても勝てないだろ」

 

八幡「そうか」

 

葉山「·······にしても、殆ど雪ノ下さんと比企谷がやってるようなんだけど」

 

因みに、雪乃ちゃんは相模の依頼を受けてから、相模の隣に席を移動していたが、何故か部屋の端に居た俺の席はいつの間にか雪乃ちゃんの隣に変わっている。ここ記録雑務じゃないのに。何故だ。

 

雪乃「·····その方が···効率がいいからよ」

 

八幡「だとよ」

 

雪乃ちゃん、結構堪えてんな。

 

葉山「でも、そろそろ破綻する」

 

「「「「············」」」」

 

葉山「俺も手伝うよ。有志団体の取りまとめだけ、有志側の代表ってことで」

 

城廻「ほらこう言ってくれてることだし、ね?」

 

雪乃「·····では、その話有り難くお受けさせていただきます」

 

葉山の言うことは全く以て正論だ。人手は少しでも多いに越したことは無い。ならば、1人でやるのは悪いことなのか?俺には、分からないだろうが。

 

 

 

 

翌日。俺はこの状況を打開すべく生徒会室に居た。

 

八幡「失礼しま〜す。綾辻いるか~?」

 

綾辻は副生徒会長である。

 

綾辻「あれ?比企谷君どうしたの?」

 

八幡「提案に来た」

 

綾辻「提案?」

 

八幡「城廻先輩も居ますね。丁度いいです」

 

城廻「それで?提案というのは」

 

 

八幡「はい。提案っていうのは、人員補充の案です」

 

城廻「!どうやって?」

 

八幡「うちの学校にはクラスに必ずルーム長が居ますね。生徒会の権限をフル活用で、全員招集します。これを見れば、ほぼ全員が招集に応じることでしょう」

 

そう言って、俺は封筒を2人の前に出した。

 

八幡「これは、議事録です。仕事の合間に作りました。ここには、いままで提出された必要な書類をざっとまとめた物、有志団体の数·規模などの情報、宣伝に応じた所から交渉した者、これが今回のメインですがミーティングの出席者まで、俺が思い付くものを片っ端から全て載っけとけました」

 

城廻「凄い·····こんな量を一人で·····」

 

八幡「これくらいなら造作もないことです。ただ、この案は一つだけ、リスクがあります」

 

綾辻「リスク?」

 

八幡「相模を筆頭とする、今までサボった奴を結果的に切り捨てることになることだ」

 

城廻「そんな··それは酷すぎるよ····」

 

八幡「なら、それは捨てていただいて結構です。俺の手元にもう一個あるんで·····俺は提案に来たと言った筈です。後は、あなた達次第です。もっといい案があるなら、そちらの方がいいでしょう。一つだけ言うなら、そこまで時間に余裕があるわけじゃないってことです」

 

城廻「·········」

 

綾辻「受けましょう、城廻会長」

 

城廻「綾辻さん····」

 

綾辻「これは今の私達に出来る最善のことです。使わない手はないでしょう」

 

流石だな。判断に余念が無い。

 

八幡「では、話がまとまったようなので俺はこれで失礼します。綾辻、文化祭前後の日のお前の任務と出水の任務全部代役立ててやろうか?」

 

綾辻「!?ちょっと、比企谷君!?」

 

八幡「じゃあ失礼します」

 

さて、後はどうなるかね。

 

 

 

 

 

 

その翌々日。

 

平塚「では、ホームルームを終了する。尚、ルーム長には生徒会から文化祭実行委員に招集がかかっている。後で必要書類を渡すので、文化祭実行委員に行ってくれ。このクラスなら比企谷が書類を持っている筈だ。比企谷、今持っているか?」

 

比企谷「持ってますよ」

 

平塚「では、ルーム長は比企谷から書類を受け取ってくれ。以上だ」

 

 

 

ルーム長「えっと、書類って?」

 

八幡「ああ。これだ」

 

ルーム長「こんなに?」

 

八幡「まあ、使うのは一部だ。それは、議事録だからな」

 

ルーム長「う〜ん、まだ事態が飲み込めてないんだけど放課後、行けばいいんだね?」

 

八幡「ああ。よろしく頼む」

 

ルーム長「分かったよ。じゃあ放課後に」

 

八幡「ああ」

 

どうやら、綾辻の援護のお陰で生徒会は動いてくれたみたいだ。あの生徒会長は優柔不断に見えるからな。

 

 

 

 

 

ルーム長「比企谷君、あの出席者の一覧はホントなのかい?」

 

八幡「ああ。まさか、2日目からあの人数になるなんて思うか?普通」

 

ルーム長「····まぁ、そうだね。それにしても相模さんは委員長なのにほぼ欠席なんだね」

 

八幡「実際、あいつがこうなった元凶だからな」

 

ルーム長「な、なるほどね」

 

俺はルーム長と定例ミーティングに来た。そこには、20人弱が仕事をしている現状が広がっている。そこに、招集された他のルーム長が続々とやって来た。

 

「うわっ!全然人居ねぇ」

 

「議事録通りだな。ここまでとは思っていなかったが」

 

八幡「よう三輪。お前も助っ人に来てくれたか」

 

三輪「ああ。奈良坂から軽く聞いてはいたがここまでとは思っていなかった」

 

八幡「そうか、頼りにさせてもらうぜ」

 

三輪「やれるだけやってみよう」

 

うちの学校は全30クラスだが、ルーム長の殆どと、話を聞きつけた人が、更なる助っ人として来てくれた。

サボらなかった人からは、安堵のため息や喜ぶ声が聞こえる。流石に、皺寄せが寄ってかなり疲れてるな。

 

「これで、何とかなる·····」

 

「助かった·····」

 

そんな声も聞こえる。

 

雪乃「·····これは?」

 

八幡「ああ。綾辻に掛け合って、各ルーム長を生徒会権限で招集した」

 

雪乃「なるほど」

八幡「ああ。雪乃ちゃんは少し休みな」

 

雪乃「助かったわ。ありがとう義兄さん」

 

八幡「どうってことない。文化祭が潰れるのはこっちとしても困るんでね」

 

雪乃「姉さんと祐夜君と柚稀奈ちゃんは元気かしら」

 

八幡「ああ。文化祭楽しみにしてくれてる」

 

雪乃「そう。また、顔を出してもいいかしら」

 

八幡「ああ。3人とも喜ぶ」

 

雪乃「そう、なら今度お邪魔するわ」

 

八幡「どうぞどうぞ」

 

 

城廻「それでは、定例ミーティングを始め「すいませ~ん、遅れました〜!」····えっと····」

 

相模「?」

 

「アイツか。変なこと言ったって奴は」

 

「委員長が率先してやるんならこうもなるよな」

 

「何考えてんだか」

 

相模「え?何がどうなって····(ウチが何したってのよ!?)」

 

城廻「·····相模さん、会議始めましょう」

 

相模「え?····あ、はい」

 

あのポワポワした感じの生徒会長までも声のトーンがあからさまに下がっている。ここに来た相模を見て呆れたのか。

 

「あの生徒会長があんな風に言うなんてな」

 

「確かに。いつもほんわかしてるのにな」

 

同感だ。陽乃は、いつも明るくてほんわかしてるってこの前言ってたからそうとうだな。

 

会議は、相模が号令を掛けて始まったものの雪乃ちゃんが手を出さなくなったからか、相模は司会進行すら碌に出来なかった。司会進行っても7、80人だぞ?本番が思いやられるな。口を開けたくてウズウズしてる雪乃ちゃんをアイコンタクトで鎮めたりした。

 

 

 

 

 

陽乃「·····そっか、なら文化祭は安心だね〜」

 

俺は家に帰って陽乃に、文化祭に家族4人で行けることを伝えた。

 

柚稀奈「ぶんかさいに行けるの?」

 

八幡「そうだぞ~。楽しみに待ってろ〜」

 

柚稀奈「やったー!」

 

祐夜「文化祭って何があるの?」

 

八幡「そうだな、主に食べ物屋とか、遊べるとことかがあるぞ」

 

祐夜「僕も楽しみ」

 

八幡「そうか、いい子にして待ってな」

 

祐夜「うん」

 

八幡「それでよし」

 

さてと、これで文化祭事態は一安心だ。最後の作業の準備をしておかないとな。

 

 

 



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17話:彼女は彼を許さない。だが、彼はそんなこと意に返さない。



この後の展開ですが、修学旅行はカットします。何もなく終わったということで。生徒会選挙は、3学期に変更します。


 

今日は文化祭当日。俺の最初の仕事は相模への指示だ。あのバカをフォローするなんて癪だが、雪乃ちゃんに無理言って相模の依頼を引き受けて貰った手前これくらいやらないといけない。因みに、スローガンは「千葉の名物踊りと祭り!同じアホなら踊らにゃSing a Song!」だ。何故、文化祭のスローガンで千葉が出てくるのかとか色々突っ込みたいところがあるが、何か言った人が知り合いな気がするのでパスだ。

 

八幡『開演3分前、開演3分前』

 

雪乃『雪ノ下より各員に通達。オンタイムで進行します。問題があれば直ぐ報告を』

 

『照明問題な~し!』

 

『こちらPA、問題無し』

 

『楽屋裏、キャスト盤順備見直しです。けど、出番までには間に合いそうです』

 

雪乃『了解。では、各自待機で』

 

八幡『開演10秒前。8··7··6··5··4··3··2··1』

 

そして、照明が一気に着く。

 

城廻『お前らー!文化してるかー!?』

 

『『『ウォォォォー!』』』

 

文化してるって何?

 

城廻『千葉の名物踊りと〜?』

 

『『『祭りー!!』』』

 

城廻『同じアホなら踊らにゃ~?』

 

『『『シンガッソー!!』』』

 

かけ声とともに派手なライトアップ。その後、チア部やダンス部のパフォーマンス。

 

『こちらPA、そろそろ曲あけます』

 

雪乃『相模委員長スタンバイします』

 

 

城廻『では、文化祭実行委員長より、ご挨拶です』

 

相模『ひ!!』

 

キィーン!とマイクから、大きな音が広がる。おいおい、コイツ大丈夫か?挨拶ぐらい何とか何だよな?

 

城廻『では、気を取り直して実行委員長のご挨拶です。どうぞ!!』

 

慌てて、生徒会長のフォローが入る。

 

相模『あ、えっと、』カサッ

 

相模が、カンペを落とす。いきなりカンペかいな。

 

八幡「(時間押してんなぁ)」

 

雪乃『義兄さん、相模さんに巻きの合図を』

 

八幡『今やってる。全く気付かねぇんだよ』

 

実際、相模はカンペを使っても噛みまくるしつっかえるしで、テンパりまくっててサインに気付かない。出だしからこれとは。

 

『頑張れ~!』

 

客の中からそんな声が届く。

 

相模『今年の、スローガンは·······』

 

雪乃『以降のスケジュールを切り上げます。各自そのつもりで』

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は自分のクラスの出し物を観ている。今はラストのシーンだ。

 

戸塚「ボクは何も見えてなかったんだ!言葉に騙されるべきじゃなかった。彼はいつもいい匂いがしたし、輝いていた···」

 

葉山「仕方ないよ、君はまだ若い。彼の愛し方を知らなかったんだ」

 

戸塚「あ······」

 

 

戸塚「今晩、君は来ちゃいけない」

 

葉山「そんな!?どうして!俺達はずっと一緒だって言ったろ!?」

 

「「「はぁぁ···キャー!」」」

 

女子から歓声が上がる。何故? おかしい。原作のセリフまで、全てがBLに聞こえる。

 

戸塚「僕を見ると悲しむかもしれない」

 

葉山「そんな!俺達はずっと一緒だ!」

 

戸塚「仕方がないんだ!僕のことは諦めて!」

 

葉山「俺達はずっと一緒なんだ!」

 

 

海老名「ブハッッ!!」

 

駄目だコイツ。早く何とかしないと。三浦は····って居ないのか。どうしたらいいんだ?

 

 

葉山「君は、俺よりも彼を選んだんだ。でもいいんだ。直ぐに会えるから。だって、俺の描いた羊の口和深は、···壊れているからね」

 

 

 

海老名「ふっふっ、羊が····」

 

八幡「ハァ」

 

 

 

 

雪乃「義兄さん、お疲れ様」

 

八幡「お前ほどじゃないさ、ん?」

 

見ると、隣のクラスは繁盛しているが、客が多すぎて収拾がつかなくなっていた。

 

雪乃「じゃあ義兄さん、行かないと」

 

八幡「あんなことまでやんのか。頑張れよ」

 

雪乃「ええ。じゃあまた」

 

そうして、雪乃ちゃんは戻って行った。生徒会長がホイッスルを吹き、他に居た3人が手際よく、客を並ばせていた。見事な手際だ。あの人も会長っぽいことしてんだな。····って会長でしたね。

 

 

 

 

 

 

 

文化祭2日目。昨日は校内のみだったが、今日は一般公開する。よって、俺は家族4人でまわるのだ。文実があるから、一回抜けないといけないが。

 

陽乃「八幡~!」ダキッ

 

八幡「よお、陽乃。朝ぶり」

 

祐夜「八幡居た」

 

柚稀奈「八幡~!!」ガバッ

 

柚稀奈は、俺を見ると同時に抱きついてくる。なんて可愛いやつだ。

 

八幡「よお、祐夜。おっと、柚稀奈危ないからあんま走んなよ?」

 

柚稀奈「は〜い!」

 

八幡「分かればよし」ナデナデ

 

小町「やっほーお兄ちゃん」

 

亜真実「八幡、ちゃんとやってる?」

 

八幡「おはよう小町、お袋。見ての通りだ。ちゃんとやってるだろ」

 

亜真実「嘘言うんじゃないわよ」

 

八幡「嘘じゃねえよ」

 

小町「雪乃お義姉ちゃんは?」

 

八幡「雪乃ちゃんなら、別のところで忙しなく動いてるよ」

 

小町「·····お兄ちゃんはそんなんでいいの?てか、何してんの?」

 

八幡「ハァ、仕事」

 

小町「え!?あのリターンがないと何もしないお兄ちゃんが!?小町嬉しいよ~······あれ?お兄ちゃんが遠くに行っちゃったみたい」

 

八幡「わざとらしく涙目にならんでよろしい。後、それ祐夜と柚稀奈が来た時も陽乃が来た時も言ってたぞ?それに、仕事っつっても下っ端だ」

 

小町「な〜んだ、やっぱお兄ちゃんはお兄ちゃんだね♪」

 

八幡「おい、それどういう意味だ」

 

小町「じゃあ小町色々見てくるから、まったね~!」

 

そう言って小町は駆け出して、行ってしまった。

 

亜真実「ハァ····八幡、ほどほどにね」

 

八幡「ああ、お袋も大変だな·····」

 

亜真実「あなたが子供を連れて帰って来てから、ああなったのよ·······もう少し小町にも構ってあげなさい」

 

八幡「何か、すまん。やるだけやってみる」

 

亜真実「いいのよ。孫が出来たのは嬉しい限りだわ。じゃあ私も行くわ」

 

八幡「ああ。じゃあな」

 

そう言ってお袋は小町を探しに行った。もう小町は居なかった。小町····お袋に無茶させんなよ?

 

雪乃「あら?義兄さん、姉さんも。こんにちは、柚稀奈ちゃん、祐夜君」

 

柚稀奈「こんにちは~!」

 

祐夜「こんにちは」

 

八幡「悪いな、雪乃ちゃん。仕事任せてばっかで」

 

雪乃「そうは言っても義兄さんが居なければそもそも文化祭自体やっていたか分からないわ。今日一日くらいゆっくりしていってもいいのではないかしら」

 

八幡「ありがとな。じゃお言葉に甘えさせて貰うわ」

 

雪乃「いいえ」

 

八幡「なら、俺達も回ろうぜ。じゃな雪乃ちゃん」

 

雪乃「ええ」

 

陽乃「またね〜、雪乃ちゃん」

 

 

その後、俺達は4人で短い時間だが楽しんだ。途中、熊谷や犬飼さんや荒船さんが弄ってきたがのらりくらりかわして、撒いた。

 

八幡「ん?もう2時か······悪い皆、俺ちょっとお仕事があるから少し抜ける」

 

陽乃「あら、八幡頑張ってね」

 

柚稀奈「お仕事頑張ってね!!」

 

祐夜「頑張ってね」

 

八幡「おう。直ぐ終わらせて戻るからな」

 

さて、最後のお仕事だ。

 

 

 

俺は今、コピー機の前でノートパソコンを弄っている。もしもの時のために、文化祭に関するデータは全てコピーしてある。今日のデータもだ。そして、データをまとめて、コピー機にデータを送る。そして、データを紙に起こす。

 

八幡「これでよし」

 

 

 

 

 

 

八幡「どうもどうも皆さん。お困りのようで」

 

平塚「ん?比企谷じゃないか!丁度よかった。実は相模が「逃げ出したんですよね?」何故知っているんだ?」

 

八幡「想定内だからですかね」

 

城廻「え?想定内?」

 

八幡「はい。相模が本番で何かしらやらかすのは分かってたんで。あ、そうそう皆さんにこれをお渡ししておきますね」

 

俺は平塚先生に封筒を渡す。

 

平塚「これは何だ?」

 

八幡「相模がエンディングセレモニーで発表する予定の集計結果です。他にも好評とか」

 

平塚「何故君が持っているんだ!」

 

八幡「想定内、と言った筈です。実は、俺が集計する番を最後に変えて貰ったんです」

 

平塚「しかし、君が普通に回っていたのを見たぞ?」

 

八幡「遠隔操作させていただきました。ご安心を。これ以外のデータには一切触れていないので」

 

平塚「だが、私が見たのは20分前に飲み物を買いに行った時だ。その時君は普通に知り合いと話していたじゃないか」

 

八幡「その時にはもう終わらせといたので」

 

平塚「そ、そうか」

 

実際は、コピー機にデータを送った時以外は、サイドエフェクトで、パソコンと通信していたのだ。俺のサイドエフェクトは範囲内の精密機器を操作することも出来るのだ。物凄く疲れるし負担もかかるが、便利なので久々に使った。

 

八幡「じゃあ俺はもう仕事はないんで戻りますね。後、相模は特別棟の屋上に居ますよ。では、失礼します」

 

平塚「待て比企谷。最後に聞かせてくれ。何故、相模の居場所を知っている?」

 

八幡「想定内と言いました。相模の単純な思考パターンからそこだと推測しただけです。ほんとに失礼しますね」

 

そう言い残し、俺はこの場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はホールでエンディングセレモニーを待っている3人と合流した。

 

八幡「ただいま~」

 

柚稀奈「おかえり〜!」

 

陽乃「もうお仕事終わったの?」

 

八幡「ああ、もう仕事は後片付けとかそんなもんだ」

 

祐夜「一緒に帰れないの?」

 

八幡「ごめんな、でも直ぐに帰るからな」ナデナデ

 

祐夜「···分かった」

 

八幡「ありがとな」

 

柚稀奈「柚稀奈も!」

 

八幡「はいはい」ナデナデ

 

柚稀奈「ん〜♪」

 

ああ、超癒される。やっぱ戻って来といてよかった。

 

そうこうしているうちにエンディングセレモニーが始まる。どうやら、代役に雪乃ちゃんを立てたみたいだな。

 

雪乃『今年の文化祭は過去に例を見ないほどの、盛り上がりを見せ········』

 

 

陽乃「あれ?総評ってあのおサボり委員長ちゃんがやるんじゃないの?」

 

八幡「·····脱走兵に仕事を与えるほど時間が無かった」

 

陽乃「なるほどね」

 

そう言うと前を向き会話をやめる。俺が話したくないことを汲んでくれているのだ。俺に勿体ないくらいのいい嫁さんだ。

 

陽乃「勿体ないとかじゃなくて、八幡がいいの」

 

八幡「あれ?声に出てた?」

 

陽乃「ううん。八幡の考えそうなことぐらい分かるわ」

 

八幡「ありゃ、こりゃ隠し事なんて出来ないな。しないけど」

 

陽乃「しちゃダメ。約束よ?」

 

八幡「分かった。約束だ」

 

陽乃「ムフフ〜八幡!」ダキッ

 

八幡「おっ···と。危ないからあんまりやるなよ」

 

柚稀奈「柚稀奈も~!」

 

八幡「はいはい、柚稀奈おいで」

 

柚稀奈「やった〜!」ガバッ

 

八幡「おっと、危ないんだからな?」

 

柚稀奈「は~い」

 

八幡「全く····可愛いやつめ」

 

柚稀奈「~♪」

 

陽乃「八幡私は〜?」

 

八幡「可愛いに決まってんだろ」

 

陽乃「ウウッ····ありがとう///」

 

祐夜「じゃあ僕は?」

 

八幡「お前も俺の可愛い息子だ」

 

祐夜「ありがと八幡」

 

八幡「どういたしまして」

 

 

 

そして、文化祭は終了した。俺は3人を先に帰し後片付けをしていた。あれ相模か?相模は俺が言った通り特別棟の屋上に居て、葉山と取り巻きが連れ帰ったらしいが、その時にはエンディングセレモニーも終わろうという時だったとか。

相模は泣きながら何かこっちを睨んだり取り巻きと愚痴ってるようにも見えるが、ほっといてもいいか。

 

相模「何であんな奴が···」

 

「南は悪くないよ。アイツが悪いんだって」

 

「そうだよ。アイツのせいだって」

 

何かしら言ってるが、周りは呆れて一切関わろうとしないし、俺も負け犬の遠吠えに耳を傾けるような、お人好しじゃないからどうでもいいな。俺のアホを無視して仕事を再開する。そこで、相模が何処かへ走って行った。ハァ、何でこうも人に迷惑かけるようなことばっかすんのかね。

 

八幡「おい、取り巻きども」

「な、何よ」

 

八幡「俺がやってた片付けを引き継げ」

 

「何でそんなことしなくちゃいけないのよ」

 

八幡「····あのバカが走って行った方向には警戒区域がある。あのままなら間違いなく警戒区域に侵入するぞ。そうなりたくなかったら、やれ」

 

「チッ······」

 

八幡「ハァ、行くか。どこまで人様に迷惑かけりゃ気が済むんだ」

 

 

 

八幡「雪乃ちゃん、相模のバカが走って逃げたと思ったら警戒区域の方行きやがった。俺はバカにお灸を据えに行く」

 

雪乃「分かったわ」

 

八幡「悪いな、もう直ぐ警戒区域に入っちまう」

 

雪乃「頼むわ」

 

八幡「あいよ」

 

 

 

 

 

 

 

ウチは走っていた。文化祭実行委員長というステータスで、三浦から、クラスのトップを奪いたかっただけなのに。比企谷の、アイツのせいで全てが無茶苦茶だ。屋上に一人で居た時も葉山君や遙が探しに来てくれた。でも、戻ってみたら雪ノ下さんが司会としてエンディングセレモニーを進めていた。ウチが戻ってすぐにエンディングセレモニーは終わった。それもこれも、全部アイツのせいだ。ミーティングの時もアイツは集団でウチを追い出した。ウチは何も悪くないのに。悪いのは、アイツだ。死ねばいいのに········

 

 

 

 

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

 

『門発生!門発生!付近の方々は避難して下さい!』

 

相模「·····え?」

 

さっきまで気付かなかったが、どうやら警戒区域内まで入ってしまったいたらしい。そして、ウチの前には灰色で8本の足に鋭い鎌のような物を付けた近界民が門から出てきた。

 

相模「嘘でしょ·····?」

 

近界民はウチに鎌を振り下ろしてくる。その時、ピギュン!という音が聞こえたかと思うと、ウチの顔の直ぐ隣を白い閃光が通り抜け近界民の口の中の球体を破壊して近界民が倒れた。

 

八幡「てめぇはどこまで迷惑をかけりゃ気が済むんだ」

 

そう言いながら、彼は出現した近界民を数秒で全て倒した。

 

 

 

 

相模「比企谷·····?何でここに!」

 

八幡「あ?俺はボーダーだ。近界民を倒すのが仕事だ。警戒区域に居る民間人のお前こそ何してやがる」

 

比企谷はそう言いながら殺気を向けてきた。

 

相模「ア、アンタのせいだ!アンタのせいでウチは、トップになれなかった!」

 

八幡「あん?てめぇが何しようがしらねぇが勝手にほざいてろ。負け犬が」

 

相模「負け犬!?アンタが負け犬なんだし!」

 

八幡「なら、お前が俺に勝ってる部分がどこにある」

 

相模「そんなん決まってる!そもそもぼっちが何言ってんのよ!」

 

八幡「俺がぼっち?普通に友達は居るし、ボーダーに居場所もあるんだが?」

 

相模「アンタが悪いのよ!アンタのせいでウチは三浦を落とせなかった!」

 

比企谷が何を言っているのかさっぱり分からない。

 

八幡「····俺が何もしなくとも、お前が三浦の上に立つことは無い」

 

相模「なっ!?ふざけんじゃないわよ·····いい加減にしろよ!」

 

ウチはそう言って比企谷に飛びかかる。が、比企谷はウチが飛びかかったのを簡単に躱して、ウチの首に剣を突き付けた。

 

八幡「てめぇ、いい加減にしろよ。この愚図が」

 

相模「ヒッ!!?」

 

比企谷は、さっきとは比べものにならないくらい強い殺気を向けて来た。ウチは向けられた殺気に耐えきれず、気を失った。

 

 

 

 

八幡「んだよ、この程度か。ハァ······」

 

風間「大丈夫か?比企谷」

八幡「ハァ······どうも風間さん」

 

俺は、バカが警戒区域に侵入した直後にこの人にヘルプを頼んでいたのだ。

 

八幡「じゃあお願いします。がっつりトリオン兵を見てます。記憶処理を」

 

風間「分かった、コイツは連れて行く。じゃあな比企谷」

 

八幡「ありがとうございます風間さん。俺は失礼します」

 

風間「ああ、じゃあな」

 

そして、風間さんにバカを任せて、俺は雪乃ちゃんに電話を掛けた。

 

八幡『もしもし雪乃ちゃん?八幡だ』

 

雪乃『どうしたの義兄さん。相模さんは·····』

 

八幡『案の定、バカは警戒区域に侵入してやがった。気絶したから、風間さんに連れてって貰って記憶処理を施す。そんなことより、片付けはもう終わったか?』

 

雪乃『え、ええ。さっき全部終わったわ』

 

八幡『そうか。じゃあ、俺はこのまま直接帰るわ。今日はお疲れさん』

 

雪乃『ええ。義兄さんもお疲れ様。また、学校で』

 

八幡『ああ、じゃあな』

 

 

 

 

八幡「帰るか」

 

面倒事が片付いたので、俺は愛しの家族の下に向けて、歩を進めた。

 

 

 

 

八幡「ただいま〜」

 

陽乃「八幡遅い!」

 

八幡「ごめんな」

 

陽乃「なら許す!」ガバッ

 

八幡「うおっ!ありがとな。陽乃、ただいま」

 

陽乃「八幡!おかえりなさい!」

 

陽乃が俺の帰る場所だ。

 

柚稀奈「八幡おかえり〜!」ガバッ

 

祐夜「八幡おかえり」

 

八幡「おう、ただいま」ナデナデ

 

祐夜「·····おかえり」

 

········違うな。こいつらが俺の帰る場所だ。

 

 

 

 





後日談として、記憶を失った相模がまた八幡を問い詰めようとしますが、流石に止められて、相模は更に孤立するなんて話しもあります。取り巻きも、少し相模に呆れました(ボーダーに記憶処理を施されたなんて知らないので)。


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閑話3:やはり、彼は彼女には勝てない。


今回の話は思いっきり受け流してくれて構いません。


 

 

「参加することに意義がある」昔、誰かがそう言った。ならば、参加しないことにも意義なるものはあるのではないか。

 

八幡「ハァ、帰りたい」

 

戸塚「駄目だよ八幡!」

 

体育祭当日。俺は救護班として、強制的に参加させられていた。

 

雪乃「あら、義兄さんはそんなに私に会いたくなかったのかしら?」

 

雪乃ちゃんと戸塚は同じ救護班である。

 

八幡「ちげぇよ。今日は平日だろ?陽乃は大学、祐夜は小学校、柚稀奈は幼稚園、小町も中学、お袋は仕事。俺来る意味ねぇじゃねぇか。家族3人が揃って居ないってだけでも来る意味無いのに」

 

雪乃「流石はボーダーで嫁バカ兼親バカと言われているだけあるわね」

 

八幡「ここでそれ言う?」

 

雪乃「いいでしょう?先の文化祭であなたと姉さんがイチャイチャしていたのは多数の人物が目撃していたわ」

 

八幡「それ、殆どボーダー関係者が占めてるだろうが」

 

あの文化祭に遊びに来たのは、3バカ、黒江、加古さん、太刀川さん、風間さん、冬島さん、忍田さん、沢村さん、林藤さん、陽太郎、レイジさん、烏丸、熊谷以外の那須隊、以下エトセトラ。というか、俺の知り合いは防衛任務がない人はほぼ全員来た。そして、全員が俺達を見て暖かい目を向けて来た。俺達は見世物じゃないんだが。そして、城戸さんと嵐山隊が来なくてよかった。あの状況で城戸さんに会ってたら色々ヤバそう。婚約者なのは知っているが。そして、嵐山隊は更にもの凄く目立ちそうだ。あの人達広報でいなくてよかった。流石に綾辻は居たが。因みに、小南は修と市外でデートだったそうな。

 

雪乃「あら、私は多数の人物としか言ったつもりはないんだけど」

 

八幡「ほぼ同意だろ······」

 

雪乃「失礼な言い方ね。否定出来ないことはとても残念に思うわ」

 

八幡「まぁ救護班だから、最後の棒倒し以外やらなくていいのが幸いだな」

 

雪乃「それこそここで言うべきではないと思うのだけれど」

 

八幡「気にすんな」

 

雪乃「ハァ······そうするわ」

 

とかなんとか言っているが、本来は、俺は来なくてよかったのだ。理由は2週間前に遡る。

 

俺達は、最近行っていなかった奉仕部の部室で久しぶりに、読書していた。別にサボったわけじゃなくて、新規入隊者の書類整理とか色々あって、全然時間がなかっただけだ。比企谷隊は遠征任務を免除する代わりに色々な雑務を手伝うことになっている。そして、それが一段落ついたそんな日。

よりによって、そんな日に依頼人が来た。

 

城廻「失礼しま~す。奉仕部ってここでいいんだよね?」

 

雪乃「ええそうですが、何か?」

 

城廻「ちょっと依頼をしたいんだけどいいかな」

 

八幡「内容にもよりますね」

 

城廻「何か、相変わらずだねって感じだね〜」

 

八幡「文実で初めて会った貴方が言いますか?それ」

 

雪乃「それで、依頼というのは?」

 

城廻「うちの学校の体育祭で何か面白いことしたいね〜って呟いたら、綾辻さんに、比企谷君と雪ノ下さんに聞けばいいんじゃないですか?って言われてね」

 

八幡「綾辻め、丸投げしやがったな。上司をなんだと思っていやがる」

 

雪乃「貴方が上司だと知っている人はほぼ居ないわ」

 

八幡「何それ悲しい」

 

雪乃「依頼というのは、新たな競技のアイディアを考えればよいのでしょうか」

 

城廻「お願い出来る?」

 

雪乃「一応は。そういえば、去年は何をしたのだったかしら」

 

八幡「さあ?」

 

城廻「あれ?全く知らない?」

 

八幡「去年はボーダーで仕事があって、そもそも体育祭出てないんで。雪乃ちゃんは?」

 

雪乃「私も何をしたのか記憶にないわ」

 

城廻「えっと····去年は確か、男子が騎馬戦で、女子が組体操だったよ」

 

雪乃「なるほど。後、期限はいつまででしょうか」

 

城廻「それなんだけどね、今日、運営委員の会議があるからそれに参加してくれない?」

 

八幡「え?今からですか?」

 

城廻「駄目?あ、2人は何組?うちの学校はクラスで赤白の半分に分けるから。私は赤だよ〜」

 

八幡「赤」

 

雪乃「赤です」

 

城廻「おおっ!2人とも赤なんだね!なら、優勝目指して頑張ろ~!」

 

八幡·雪乃「「オ、オー?」」

 

 

 

 

 

平塚「どうやら、無事に人員の確保が出来たようだな」

 

この人また一枚噛んでんのかよ。

 

八幡「それで、体育祭も先生が担当するんですか?」

 

平塚「まぁな。こういうのは若手が任されるんだ。ほら、私、若手だから。若手だからな」

 

八幡「(うへぇ·····大事なことなので二回言いましたって顔してるよ·····)」

 

平塚「城廻、そろそろ会議を始めようか」

 

城廻「はい」

 

 

 

 

城廻「議題は、体育祭の目玉競技です。皆、どんどんアイディア出してこ〜!」

 

その後、アイディアはポツポツと出ていたが、全部却下された。途中から、半分連想ゲームが始まっていた気がするが気の所為だろう。因みに、却下したのは全部平塚先生だ。どんだけ、規制が多いんだ。先生が興味ないだけな気がしてきたぞ。あ、平塚先生が視線送って来た。

 

八幡「ハァ····はい」

 

城廻「はい、比企谷君!」

 

八幡「去年は男子がやったので、今年は女子が騎馬戦を。男子は······棒倒しとか?」

 

平塚「そういうのを待っていたんだ!」

 

八幡「いや、パン食い競争とかと大差ない気がするんですが」

 

平塚「いや、これなら規制はない!」

 

八幡「·····結構危ない競技なのに、規制ないのかよ」

 

回想終わり。そんな理由でここに居るのだ。発案者が逃げるなと言われて、退路ゼロなだけだが。

 

八幡「ほら、そろそろ行かないと着替えが間に合わんくなるぞ」

 

雪乃「そうね。少し席を外すわ」

 

八幡「ああ」

 

着替えというのは、目玉競技が決定した次の会議。どこから聞き付けたのか、デブ(剤·····ざい····材木座)と海老名さんが乗り込んで来た。そして、各競技の大将がコスプレすることを強引に採決させた。

 

材木座義輝。ボーダーで開発室所属のチーフエンジニアだ。比企谷隊は、試作トリガーのテスターもしているのだが、コイツが作るのは小南の双月とかを遥かに上回る色物ばっか作るのだ。陽乃にそんなの使わせるわけにはいかないので、必然と俺がコイツの試作トリガーのテスターになるのだが、この前そろそろマシなもの作るかと思っていたが、コイツが作ったのは刃が2つある大鎌だった。何がツインビームサイズだ。お前は見た奴全員殺す死神になりたいのか。取り回しとトリオン効率が悪すぎて却下した。

 

そして、男子はホストでも着るのを拒むような派手なスーツ。女子はどっかで見たことのある、鎧だった。鎧の意味を教えろデブ。雪乃ちゃんは、女子赤組の大将になってしまった。俺?俺は何とか回避したよ?あんなの今までとか遥かに上回る黒歴史だからな。俺の黒歴史は、中学生の頃。ランク戦でステゴロやったり、グラスホッパーで打ち上げてトマホークで花火やったり(被害者:弾バカ、槍バカ、太刀川さん、二宮さん、風間隊、唯我、カゲさん、佐鳥、以下略。来馬さんと嵐山さんにはやらない。いい人なので)とか色々だ。あの頃は偶に陽乃に怒られてた(戦術的な面で)。

 

 

 

八幡「で、デブよ。何なんだこれは」

 

雪乃「私が知りたいわ」

 

俺の前には、騎馬戦を10分前に控えた雪乃ちゃんが居る。何故か、中世の騎士風の鎧を纏って。

 

材木座「ふふん。これは、長きに渡る千葉での戦いの歴史を考慮した素晴らしい衣装だ!」

 

そこで、白組の大将の海老名さんと川崎が来た。

 

海老名「そりゃあ、合戦だし。大将はちゃんと鎧着なきゃーね」

 

八幡「合戦?」

 

材木座「放送でも言っておったであろう。千葉市民の騎馬戦。略して、千葉戦!」

 

八幡「何だそりゃ。あ、雪乃ちゃん写真撮っていい?」

 

雪乃「何故かしら?」

 

八幡「陽乃に送る」

 

雪乃「却下。殴るわよ?」

 

八幡「悪い、冗談だ」

 

海老名「ふっふっふ、いい衣装でしょ。プロデュースド バイ私。メイド バイサキサキ」

 

川崎「サキサキ言うな!」

 

八幡「川崎、大志と鶴見はどうだ?」

 

川崎「2人とも凄いよ。この前、確か正隊員の·····米屋?っていう人が来てたよ」

 

八幡「ああ、そいつは次からは追い返していい」

 

材木座「それは米屋殿に酷くはないか?」

 

八幡「いやいい。アイツはおふざけがすぎるから、少し前から加古隊作戦室に放り込んでるからな。ちょうどいいだろ」

 

材木座「それは·····酷だな·····」

 

材木座も加古炒飯被害者の会の会員である。

 

雪乃「で、何故西洋風なのかしら?」

 

材木座·海老名「「ふっ、知ったことよ。我(私)の趣味だ」」

 

城廻「よ〜し。次は勝ちが行こ〜!オー!」

 

八幡「頑張れ~」

 

雪乃「ええ。義兄さんも」

 

八幡「ああ····ハァ」

 

 

 

 

 

 

何やかんやあって、赤組の勝利に終わった。個人的には、海老名さんが終始「ぐふふふ」って言ってた気がするが絶対に突っ込んではいけない。

 

八幡「お疲れさん」

 

雪乃「次は義兄さんよ」

 

八幡「ああ、はあ」

 

めんどいな。どうしようか。

 

 

 

 

 

八幡「戸塚····大将になっちまったんだな····」

 

戸塚「うん·····変じゃない?」

 

戸塚が上目遣いで聞いてきた。陽乃が居なかったら惚れてるかも。

 

八幡「ま、変じゃないだろ······材木座いいか?」

 

材木座「何だ?申してみよ!」

 

八幡「ああ·······」

 

 

材木座「あいや分かった!我に任せておけ!」

 

 

 

 

材木座「聞けい皆のども!総大将のお成りである!」

 

戸塚「え、えっと····赤組大将の戸塚彩加です。皆さん頑張りましょう!」

 

材木座「我らが敵は葉山隼人ただ一人!あのいけ好かない、クソイケメンに優勝まで掻っ攫われていいのかー!?我は嫌だ!凄く嫌だ!もうこれ以上惨めな思いはしたくない!·····話し掛けられた時、頬を引き攣らせて笑いたくない!」

 

八幡「(それはお前だけだ)」

 

材木座「近くを通り掛かったとき、黙って道を譲りたくない!」

 

八幡「(お前そんなことしてたんかよ)」

 

葉山·戸部「「···???」」

 

材木座「皆はどうだー!?」

 

「「「お、おお·······」」」

 

材木座「ならば勝つしかあるまい!目覚める時は今しかないのだ。立てよ県民!!!」

 

「「「「「ウオオォォォォ!!!!」」」」」

 

八幡「(陽乃が居なかったらこんな風になってたんかねぇ)」

 

 

 

 

材木座「ふむ。こんなものでどうだ?」

 

八幡「ああ。想像以上だ。後は、俺が気配を消して敵陣に突っ込むだけ」

 

材木座「しかし、お主も容赦がないな。貴様が気配を消したら見つけられるのが陽乃嬢以外居らんではないか」

 

八幡「ならいいじゃねぇか。陽乃、今日居ねぇんだよ····ハァ」

 

材木座「クソッ!爆ぜろよリア充!」

 

八幡「何言ってんだお前」

 

 

 

 

 

 

俺達は睨み合っている。

 

平塚先生がピストルを鳴らす。

 

平塚「試合開始!!」

 

パンッ!!

 

海老名『さぁ始まりました!男子の男子による男子のための棒倒し!攻めと受け!両軍が入り乱れる!』

 

三浦『妃菜、擬態しろし!』

 

何を言っとるんだ·····-

 

 

 

早速白組が攻めてくる。それを赤組の奴で止める。

 

「大丈夫!?」

 

戸塚「あ、ありがとう」

 

「グハッ!」

 

戸塚は上目遣いでそう呟いた。····バタン!取っ組み合ってた奴全員が倒れた。

 

「か、可愛い····」

 

八幡「赤組の男子は馬鹿ばっかりだな」

 

そう言って、俺は堂々と白組の陣に突っ込む。だが、周りは誰も反応しない。

 

海老名『おおっと!?赤組の比企谷君が敵陣に突っ込む!だが、誰も反応しない!?』

 

しかし、葉山が立ち塞がる。

 

葉山「驚いたな。どうやったんだ?」

 

八幡「普通に走って来た。にしても、他対一てのは酷いな」

 

葉山「人聞きが悪いな。物量作戦さ。皆、比企谷を止めろ!」

 

八幡「やなこった」

 

葉山とその周りの奴が突っ込んで来るのを身をよじって躱す。

 

葉山「流石はボーダーだな」

 

八幡「そりゃどうも」

 

来たか。俺の後ろから、赤組がなだれ込んで来る。俺と葉山達が攻め合う間にこっちに来たのだ。

 

葉山「なっ!?」

 

八幡「悪いな葉山。勝たせてもらう」

 

俺は葉山の横をすり抜け、思いっきりジャンプする。そして、ライダーキックよろしく飛び蹴りを棒のテッペンに思いっきりかます。俺は宙返りして着地し、叫ぶ。棒と支えている奴は一気にバランスを崩した。

 

八幡「今だ!やれ!」

 

そう叫び、全員で思いっきり棒を倒しにかかる。

 

葉山「何っ!?」

 

八幡「そっちが物量ならこっちも物量だ」

 

葉山「だがっ!」

 

八幡「まだだ。·····材木座、行くぞ!」

 

材木座「もちろんだ!行くぞー!」

 

俺と材木座でダッシュして、棒に突っ込む俺は材木座の手をジャンプ台にし突撃する。

 

材木座「行けよ!」

 

八幡「ああ。·····悪いな」

 

俺は棒のテッペンを掴んで思いっきり倒す。

 

海老名『···ぶふっ····ハッ!勝者、赤組!』

 

 

 

 

 

戸塚「やったね八幡!」ガバッ

 

八幡「うおっ!」

 

戸塚が抱き着いて来た。

 

葉山「いやぁ完敗だな」

 

八幡「まぁな。·······ヒッ!?」

 

そこで、猛烈な殺気を向けられた。

 

葉山「?どうかしたのか?」

 

八幡「誰d····ヒッ!!と、戸塚離れてくれ····」

 

俺の視線の先には、それはそれは満面の笑みを可愛く浮かべ、恐ろしいオーラを放っている陽乃がいた。陽乃の口が動いた。(どうやら、顔を出しに来たつもりだったようだが······)動きからして····「か·く·ご·し·て·ね·は·ち·ま·ん?」か······やばい、向こうの世界にいた時も含めても、全然殺気のレベルが違う。殺される·····

 

八幡「戸塚離れて···俺、殺される····」

 

戸塚「え!?大丈夫!?」

 

八幡「ああ、だから離れてくれ····」

 

戸塚「·······そ、そうなの?」

 

俺の戦いはここからが始まりだったようだ。

 

八幡「悪い戸塚。俺はここでちょっと席を外す···」

 

戸塚「どうしたの八幡····大丈夫!?顔色が、真っ青だよ!?」

 

材木座「戸塚殿、夫婦間には色々あるのだろう。離してやってやれ」

 

八幡「そういうことだ····悪いな戸塚。じゃあな、材木座、葉山」

 

葉山「あ、ああ。じゃあな比企谷····」

 

俺はフラフラした足取りで陽乃の下に向かった。

 

 

 

 

陽乃「····さて、何か申し開きがあるなら聞くよ?」

 

俺は今、正座で地面に座らされている。物陰から、熊谷、奈良坂、犬飼さん、荒船さんが見ている。やめて······これは見世物じゃない····というか、写真撮んなや。

 

陽乃「聞いてる?八幡?」

 

八幡「ヒッ!!!大変申し訳ございませんでした!」

 

そう言うと同時に俺は土下座する。物陰から見ている4人は大笑いしている。後でシバく。

 

陽乃「ん~どうしょっかな〜?」

 

八幡「大変申し訳ございませんでした。罰は軽めにして下さいませ。お願いします。何でも致しますので」

 

もう一度土下座。

 

陽乃「何でも?」

 

八幡「イッテマセン」

 

陽乃「言ったね?なら今ここで私を思いっきり抱き締めて」

 

八幡「·····え?」

 

陽乃「出来ないの?」ウルウル

 

陽乃が涙目と上目遣いの2コンボでお願いしてきた。

 

八幡「グッ!ああ、もう!」ガバッ

 

陽乃「ふふっ·····八幡約束して?」

 

八幡「約束?」

物陰から携帯が6つくらい出てシャッター音を鳴らしているが、無視だ。材木座と、雪乃ちゃんまで来てやがる。

 

陽乃「約束。私の隣からいなくならないで···私だけを見てて」

 

八幡「ああ。お安い御用だ」

 

俺達はキスをする。俗に言うフレンチキスだ。·············俺達はキスをやめる。俺達の口は銀色の糸で繋がる。そして、トロンとした目でしばらく見つめ合っていた。

 

 

 

 

 

陽乃「さてと····そこに居る子全員出て来なさい」

 

唐突に、陽乃が6人の肩が震えさせる。

 

八幡「·····」ビクビク

 

「「「「「「······」」」」」」ビクビク

 

6人は思いっきり怯えながら出て来る。

 

陽乃「皆は何をしていたのかなぁ~?」

 

八幡「ヒッ!?」

 

「「「「「「ヒッ!!(ヒェッ!?)」」」」」」

 

俺は自分もそうだが、6人に向かって心の中で合掌した。俺の諦めの表情を見て、6人は更に顔を強ばらせる。自業自得の結果だ。

 

陽乃「お姉さん達を盗撮しようとしてどうするつもりなのかな〜?」

 

「「「「「「······」」」」」」

 

 

 

 

 



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18話:そして、三雲修の未来は鳴動を始める。


とうとうワールドトリガー原作開始ですよ!(ここからは、俺ガイルのキャラが加わってるだけ)

現時点での川崎達→9月入隊。今回の話の現時間軸、11月下旬。川崎(レイガス5700点)大志(イーグレット5200点)留美(スコーピオン7200点、熊谷とほぼ同じ点)


八幡「さてと。小町、今日はここまでだよな?」

 

小町『ん〜そうだよお兄ちゃん』

 

俺は小町と防衛任務に着いている。陽乃は今回不参加。大学を休みすぎるわけにもいかないので。

 

八幡「じゃあもう上がっていいぞ。報告書俺が書くから」

 

小町『じゃ、よろしく~。小町は茜ちゃんと遊びに行くね〜』

 

八幡「ああ、迷惑掛けんなよ」

 

小町『お兄ちゃんじゃないんだから、そんなことしないって』

 

八幡「お前は俺を何だと思ってやがる」

 

小町『そんなことよりじゃあ後宜しくね~』

 

その後、引き継ぎの加古隊に後を任せて本部に戻り報告を書いて、本部から出たところだった。

 

迅「よう八幡。ちょっといいか?」

 

巷で噂のセクハラエリートが居た。

 

八幡「どうもセクハラさん。時間あるんでいいですよ」

 

迅「セクハラは酷くない?」

 

八幡「熊谷に愚痴られる俺の気持ちを考えて下さい。なら、やめますよ」

 

迅「ムムッ·····難しいな·····」

 

八幡「そこは否定してくれよ······で、何ですか?早く行きましょう」

 

迅「ああ、玉狛支部に行こう。陽乃さん呼んである」

 

陽乃も居て、玉狛支部ってことは修絡みだな。

 

八幡「······比企谷了解。烏丸と宇佐美はいませんね?」

 

迅「ああ。今は居ない」

 

八幡「なら、行きましょう」

 

 

 

 

俺は迅さんと、玉狛支部に場所を移した。

 

八幡「さて、何を視たんですか?」

 

迅「明日、修が件の人物に接触する」

 

八幡「そうですか。それで、どんな人物かある程度分かりましたか?」

 

迅「いや、それがあんまり視えない。多分、今現在だと俺達が絶対に接触出来ない」

 

陽乃「相当遠い離れた場所に居るのかしら」

 

迅「それはそうなんだけど····それで、2人へ頼みがあるんだ」

 

八幡「何でしょう」

 

迅さんは少し以外なことを言った。

 

迅「2人には俺が合図するまで、その人物と接触しないで欲しい。ここが、未来の分岐点の一つだ」

 

八幡「分かりました」

 

陽乃「分かったわ」

 

迅「2人に言いたいのはこれだけだ。ただ、多分その人物はボーダーに加わるんだが、その時までだ」

 

八幡「そうですか、じゃあ俺達は帰りますが」

 

迅「ああ。時間取って悪かったな」

 

八幡「いえ、他ならぬ弟です。当然ですよ」

 

迅「それを聞いて安心した」

 

八幡「そうですか。じゃあ俺達は失礼します。行こうぜ陽乃」

 

陽乃「ええ、じゃあね。桐絵ちゃん達によろしく」

 

迅「はい、では」

 

 

 

 

迅「····さてと、俺も本格的に動きますかね」

 

 

 

 

 

翌日。

 

僕は今学校に居る。中学校くらいの勉強なんかしなくてもいいのだが、当然の如く学校に来なければ怪しまれる。それはめんどくさい。一方で、クラスでは

 

「今日転校生来るんだってよ!」

 

「この時期に?ボーダー関係者かな?」

 

とか、

 

「トリガー、オン!」

 

とか、周りはとにかく騒いでいる。転校生というのは、迅さんに言われた僕が接触する人物で間違いないだろうか。それにしても、ボーダーは特撮ではない。そこは、嵐山隊を始めとする広報担当が色々やっているからなのだろう。

そこで、僕の頭に筆箱が当たった。

 

「おい、そこのメガネ。それこっちに寄越せ」

 

見ると、如何にも不良やってます。って感じのいきがってる3人組と、筆箱を取られて困っている子が見えた。どうやら、大人しそうな子から取り上げて投げ合って遊んでいるらしい。下らないな。僕は頭の悪い奴は放っておいて、拾った筆箱を取り上げられた子に返した。

 

「かっこいー」

 

「マジかよコイツ。超冷めるわ」

 

超冷めるのはこっちだ。一々下らないことしやがって。再度不良を無視し、時計を見る。もう朝礼の時間だが、先生が来ない。転校生とやらに何かあったのだろうか?というか、その転校生もしかして····いや、それはないだろう。

 

 

 

 

その頃、とある少年が車に轢かれていた。尚、少年は無傷だが、車はボロボロである。

 

警官「大丈夫かい!?」

 

???「大丈夫です。安心して下さい。あと、あっち壊しちゃったっぽいけどベンショウした方がいい?」

 

「とんでもない!貴方が無事なら、こっちとしてはそれだけで十分です!」

 

警官「じゃあ住所とか聞いていいかい?」

 

???「住所?えっと·····」

 

 

 

 

 

???『もう少し周囲に気を配った方がいい。生身なら損傷していたのはユーマだ』

 

遊真「事故ったのはレプリカが急がせるからじゃん。トリガー使っていい?」

 

レプリカ『それを決めるのは私ではない。ユーマだ』

 

遊真「ふむ。なら使わないでおこう」

 

レプリカ『その方がよいだろうな』

 

遊真と黒い浮遊物体のレプリカは、建物の屋上の手すりに手を掛け、そこから見える三門市の景色を眺めていた。

 

遊真「先に基地を見に行ったのは失敗だったな~。学校の後にすればよかった」

 

そして、彼は学校に着くも教室に入らず、ドアから中を覗くなど妙な行動をしていたが、教師のお陰で無事?に教室に着くことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと教師が来た。転校生とやらどうなったのだろうか。

 

水沼「今日は皆さんに新しい仲間が加わります。さぁ入って」

 

担任の声により、そして、白髪の少年が入って来た。何だあいつ。迅さんが視たって言う奴は絶対こいつだ。中学三年とは思えないほどの身長の低さ。紅い瞳に白い髪。サイドエフェクトで見てみるか。······こいつ、昔の兄さんと同じだ。今もトリオン体だ。何でだ?兄さんは大怪我で死にかけたからだったが、こいつもそうなんだろうか?というか、今も偶に思うけど、兄さんよく生きてたな。

 

遊真 「空閑 遊真、背は低いですが15歳です。皆さんどうぞよろしく」

 

······あいつの左手の指輪、黒トリガーだ。間違いないだろうな。こいつが迅さんの言ってた奴だ。未来視のサイドエフェクトって相変わらず凄いな。今日っていうことまで当ててたし。というか、空閑ってことは、有吾さんの息子だろうな。指輪の中にレプリカが居るから。

 

「先生ー、ソイツ指輪してまーす」

あ〜、まあ普通は学校に指輪して来ないよな。言った奴には腹が立つが。

 

「何?確かにしているな。それを渡しなさい」

 

遊真「え?···どうしてもですか?」

「決まっているだろう」

 

遊真「無理です」

 

「なら、学校には居れんな」

 

遊真「なら学校やめます。失礼しました」

 

少しは助け舟を出しておこうか。

 

修「先生。何か指輪を外せない事情があるんではないでしょうか」

 

「ヒュー、かっこいー」

 

「男前ー」

 

お前らに言われても全く嬉しくない。

 

遊真「······親の形見です」

 

「本当かね?」

 

「先生ー、昨日没収された漫画も親の形見何ですー」

 

「俺のゲーム機もでーす」

 

アホ過ぎて先生も無視をする。当然だが。

 

遊真「本当です」

 

何で先生に殺気を向けるんだ。まぁ無意識なんだろうが。

 

「!?····(何だ?····)もういい。水沼先生、ちょっと」

 

水沼「皆、自習してて。三雲君、空閑君に色々と教えてあげて」

 

何故僕に任せたんだ?

 

 

空閑の周りには現在、人集りが出来ている。「何処から来たの?」という質問は、適当に返していたが、

「前いた所では、何が流行ってた?」という質問に「ん~、戦争?」と答えた。こいつは、日本の事を何も知らないようだ。段々と教えていかないといけない。そこで、不良の3人·····3バカでいいや、3バカの一人が紙屑を空閑の頭にぶつけてきた。3バカは素知らぬ顔をしている。明らかにわざとだが、この知らない振りもわざとか?空閑が前を向くとまたやって来た。·······僕はこんな阿呆共と勉強していたのか·····。そこで空閑が、

 

遊真「ねぇ、何これ」

 

「アハハハハ、日本式の挨拶だ」

 

何だその答え。幼稚園児のが大人に見える。そういえば、林藤さんの息子の陽太郎だったか?は元気だろうか。玉狛支部に行く時は一度も居なかった。そんなふうなことを考えていると、空閑が

 

遊真「なるほどね」

 

と言って、紙屑を圧縮して、3バカの一人に向かって親指で弾いた。ビシッ!という大きな音がして、当たった奴が倒れた。空閑にとっては様子見みたいな感じなんだろう。というか避けろよ。

 

「おい!何すんだてめぇ!」

 

遊真「おや?挨拶では?」

 

「てめぇ····舐めてんのか?クソチビ!」

 

遊真「お前、つまんない嘘つくね。俺と仲良くなりたいのか?」

 

一触即発になるが、そこで戻って来た先生が場を納める。今のセリフから察するに、有吾さんのサイドエフェクトを受け継いだのか。兄さんも受け継いでたから、他に居ても不思議じゃない。

目下の問題は3バカだな。放課後にでも弱っちい仲間を引き連れて仕返しにでも来るだろう。それはいい。多少は自分の分を弁えた方がいい。ただし、こいつは日本のことを分かってない。空閑は、下手したら仕返しした奴全員を殺してしまうだろう。ここは日本だ。そんなことしたら、当然問題になる。僕もついて行った方がいいか。その日の授業を終え、今は空閑と下校中だ。

 

修「お前、あんな奴等相手にするなよ」

 

遊真「ふむ。何で?」

 

修「やり返したらことが大きくなるだろ。あれだけ恥かかせたら今日にでも仕返しに来るぞ」

 

遊真「今まで行ったどの国でもやり返さなきゃやられっぱなしなのが当たり前だったけどな〜」

 

向こうならそれが普通だが、この世界でも一番と言っていい程、平和ボケした日本ではそんなことは野蛮な行為と捉えられる。空閑と話していると、3馬鹿の一人が、声を掛けてきた。

 

「よ~チビ。ちょっと付き合え」

 

完全に想像通りだ。思考が単純だな。

 

「嫌でも連れていくけどな」

 

いや、無理だから。お前如きでは、一生かかっても跪かせることすら出来ないから。

 

遊真「ふむ。いいよ」

 

即答か。頭の悪いことをしているのが分かっているが、バカの肩を掴み、

 

修「僕も連れて行け」

 

コイツらに殴られるくらいなら蚊に刺される方が、よっぽど痛いので、空閑に矛先を向けないようにする。バカはニヤリと笑って了承した。バカ達に付いていくと、警戒区域に入って行った。こんなのでも助けなきゃいけないんだよなぁ。何で、折角死なないように立ち回ってるのに死にに行くのかね。

そんなことを考えていると、頭に千佳の顔が過ぎる。今の千佳も死にに行くような事をしてるからな。······昔、兄さんが、父さんが死んでから玄界に帰ってくるまでの短い間だったけど、そんな目をしていたこともあった。あの時は義姉さんが物凄い形相で怒った後に兄さんを抱き締めてたな。兄さんは泣きながらも嬉しそうな顔をしていた。ならば、ここでも道化を演じることにしよう。

 

 

僕は無駄だと分かりつつ、言ってみる。

 

修「ここは警戒区域だぞ!近界民に襲われるかもしれないんだ!分かってるのか!?」

 

まぁ無駄だろうな。これで、はいそうですかって出て行くならそもそも入らない。

 

「あぁん?看板読めば分かるわ、んなモン。馬鹿にしてんのか?」

 

そう言ってバカの一人が殴ってくる。パンチ遅くないか?これくらいなら、全員の両手両足を手刀で切り落として、首をとばしても間に合うな。とりあえず、当たったのを確認して、ダメージが入ったように見せる。全く気付いてない。周りに誰も居ないからいいんだよとか、試しに助けを呼んでみろよとか言ってる。

因みに、ここからなら玉狛支部から応援を呼べば5分足らずで人が来るぞ。まぁそんなことでは呼ばないが。そこで、馬鹿の一人が空閑に、

 

「おいおい、助けなくていいのか?」

 

とか言っている。空閑は、

 

遊真「何で?オサムが自分から首突っ込んだんだから、自分で何とかしなきゃ」

 

「アハハハハ、ひっでぇ。見捨てられたな、メガネ」

 

空閑は正論を言っているので、見捨てるも何もあったわけじゃない。だがそこで、馬鹿の一人が、

 

「·····でもなぁ、俺はメガネよりてめぇにムカついてんだよ!」

 

そう言って、鉄のパイプで空閑に殴り掛かる。流石にここまで来ると、もう庇う気が無くなった。空閑は鉄パイプを片手で止めると、馬鹿の足を踏む。周りにバキッ!という音が響く。あれは足折れたな。まぁ、警戒区域で折ったのがバレても自ら来たんだから、問題にはならないだろう。殺さなければいいや。

 

「いっでぇぇぇぇ!」

 

馬鹿は総掛かりで空閑に襲い掛かる。頼むから、殺さないでくれよ。そんな時、警報が鳴って、門が開いた。空閑は、

 

遊真「ラッキーだ。逃げようぜ」

 

と言ったが、そういうわけにもいかないんでな。門からは、バムスターが4体か。そして、空閑に足を折られた馬鹿がバムスターに咥えられる。全く何のためにわざわざついて来たのか······。だが、黙って見ているつもりもない。こんなことで桐絵に呆れられることのが、よっぽど嫌なんでな。空閑に逃げろと言って馬鹿の救出に向かう。空閑はこの程度なら片手間で何とか出来るだろうが、ここで、近界民の黒トリガーなんて使ったら城戸さんに目を付けられるだろうし。空閑は、

 

遊真「アイツらの自業自得だろ?」

 

と言ったが、僕はこう返す。

 

修「僕がそうするべきだと思ってるからだ!」

 

僕はトリガーを取り出し、叫ぶ。

 

修「トリガー、起動!」

 

僕は戦闘体に換装する。とりあえず、馬鹿を咥えているバムスターにスラスターで突っ込み、タックルをかます。バムスターは、衝撃に耐えきれず馬鹿を離す。馬鹿は他の馬鹿に支えられて逃げていく。

 

修「アステロイド」

アステロイドで1体目に留めを刺す。2体目、3体目には、バイパーとアステロイドでコブラを合成し、射出する。

 

修「行け!コブラ!」

 

コブラは吸い込まれるように、バムスターの口に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

遊真「おおー!強いな!」

 

俺は、オサムが1体目のバムスターを倒すのを見てそう思った。トリガーを使っているところを見るとボーダーなのだろう。それに、かなり強いことが分かる。2体目と3体目も直ぐに倒すだろう。しかし、4体目に隙を見せている。

 

遊真「う〜ん、仕方ない。レプリカ、トリガー使っていいか?」

 

レプリカ『それを決めるのは私ではない。ユーマ自身だ』

 

俺はトリガーを起動する。オサムは2体目と3体目に向かってキューブのようなトリガーを向けていた。俺は、『弾』印(バウンド)を使って、バムスターの上まで飛び上がる。そして、半回転して、『強』印(ブースト)二重(ダブル)を使い、落下を利用して、上からバムスターを殴る。バムスターはバラバラになった。

 

 

 

 

 

 

僕が2体目と3体目を倒した直後に、空閑は黒トリガーでバムスターをバラバラにした。凄い威力だな。

 

遊真「よう、無事か?オサムかなり強いと思うけど。····ってか、あれが出来るならあんな奴等楽勝だろ」

 

修「トリガーの民間人への使用は禁止されてる·········というか、もういいよレプリカ、隠れなくて。後、あそこで空閑が黒トリガー使うのを止めてくれてもよかったんじゃないか?」

 

レプリカ『私はユーマの選択を尊重している·····久しぶりだ、オサム』

 

修「ああ······久しぶりだな、レプリカ」

 

遊真「あれ?2人は知り合いなのか?」

 

修「まぁ昔ちょっとな。それより、移動しよう。他のボーダー隊員に見つかるとまずい」

 

レプリカ『承知した』

 

遊真「····ふむ?」

 

4年間の準備が役に立つだろう。ここからだな、僕のここでの戦いは。

 

 

 

 

 

その数十分後。

 

三輪「三輪隊到着した。これより調査を開始する」

 

米屋「スゲェな。的確に心臓部を撃ち抜いてんじゃん」

 

三輪「だが、おかしい。他の3体と違ってこれだけバラバラにされている」

 

米屋「誰がやったんだろうな」

 

三輪「蓮さん。誰がやったか分かりますか?」

 

月見『ええとB級の···』

 

三輪「二宮さんですか?」

 

心臓部を撃ち抜くならともかく、バムスターをバラバラに出来る射手など、そうそう居ない。三輪はボーダー屈指のトリオン量を誇る(極々一部以外は八幡達のトリオン量を知らない)二宮だと思った。

 

月見「いいえ。三雲って子ね」

 

三輪「三雲?聞いたことがないな····」

 

月見『B級に上がって2ヵ月くらいらしいわ。凄いわねこの子』

 

米屋「マジで!?2ヵ月でこんなん出来ねぇって!」

三輪「とにかく、調査をするぞ。何か分かるだろう」

 

そう言って、彼等は調査に戻った。遠くから見ている三雲修には気付かずに。

 





キャラ追加設定
比企谷隊
玉狛支部所属と知っているのは、八幡、陽乃、修、城戸さん、忍田さん、林藤さん、レイジさん、小南のみ(小町は口が軽いので知らない)。

PARAMETER
近距離:8.5
中距離:8.0
遠距離:8.0

(2人のやる気次第でもっと増える)


比企谷八幡
サイドエフェクトを酷使して、脳細胞が死にかけたことがある。ただし、サイドエフェクトで脳はかなり強化されている。原作程事故犠牲ではない。
雪ノ下陽乃
サイドエフェクトは無意識に使ってる(体に影響するタイプじゃないので)。実は、攫われた時のショックで、生殖機能がかなり弱くなってしまっている。。
隊服
八幡····真っ黒のトレンチコートの前を開け、焦げ茶のパンツと黒いブーツ。インナーは暗い赤(血の色に近い)。エンブレムは左の二の腕の真ん中くらい。黒一色かよ···って思ったけど太刀川隊の隊服が似たような感じなのでスルー。
陽乃····イメージはメーテルの喪服をちょっと派手にした感じ。ただ、メーテルより長くなってる。帽子はない。八幡と同じくトレンチコートを着て、前を開けてる。トレンチコートはメーテルが肩から羽織っていたやつの代わりのイメージ。スカートの下に八幡と同じパンツを履いてる。エンブレムは八幡と同じ位置。
小町····他のオペレーターと同じ。マステマの時は換装時の服装。
エンブレム:玄界に戻って来た時に所持していた黒トリガーの普段の状態をイメージ。ピアス、イヤリング、ブレスレット、ネックレスの順で中から外へ。背景は、明るい紫がプリズムを出してる感じ。

三雲修
有吾、レプリカとは知り合い。ボーダー設立時と、近界でも会った。その時遊真は父親の知人だと知らず、関わらなかった。有吾が死ぬ1週間ちょっと前まで同じ戦場の別の区画で戦ってて、戦いを終わらせて、すぐに玄界にそこから帰った。因みに、八幡、陽乃、修は麟児、鳩原と共に近界全体でも、共通の知識になるくらい強い。小町と雪乃は修が八幡の実の兄弟ということくらいしか知らない。八幡だけ攫われた事になっている。第一時大規模侵攻で小南と一緒に助けたのは、双葉。
サイドエフェクトは、完全なON/OFFが出来る。ただし、使い過ぎると誤作動が起きる。トリオンは全部視認出来るよう変更。泥の王のコアも普通に見える。


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19話:彼は、空閑遊真に協力する。

俺ガイルは割とさらっといきましたが、ワートリは結構細かくいくつもりです。


僕は今、警戒区域のぎりぎり外から、さっきまで自分達が居た場所を見ている。

 

遊真「ねぇオサム。何してんの?」

 

修「時期にわかる。ほら来た」

 

遊真「あれは?」

 

修「ボーダーでも腕のたつ部隊の三輪隊だ。今やってるのは現場検証。ボーダーにはな、トリオンの反応から誰のトリガーが使われたかとか、分かるんだ。多分、これでお前の存在がバレた。黒トリガー使ったら当たり前だがな。レプリカまでバレたかは分からないけど。一つだけ言っとく。今のボーダーには三つの派閥がある。近界民を許さない、駆逐するっていう派閥。街の安全を第一に考える派閥。近界民とも仲良くしようっていう派閥。今あそこにいるのは近界民を許さない主義の筆頭の部隊なんだ」

 

遊真「ふむ。····親父から聞いていたのとはだいぶ違うみたいだな」

 

修「有吾さんの考えと同じ人もまあ少ないが居る。今のボーダー隊員の大半は、トリオン兵に家を壊されたとか、家族が被害にあったとかで向こうの世界に少なからず不平不満を持ってるんだ。とりあえず、今は僕と一緒に行動してくれ。お前、日本のこと何も知らないだろ。レプリカは空閑がトリガーを使うのを止めてくれ。これ以上使うのは色々まずい」

 

レプリカ『心得た』

 

遊真「お、オサムがニホンのこと教えてくれんのか。なら、俺は最初に会ったボーダーがオサムでよかったな」

 

修「まぁそういうことにしとく。あと、僕がボーダーだってことも黙っていてくれ」

 

遊真「ふむ。何で?」

 

修「今はまだ言えない。そこまで重要なことじゃないがな。でも、秘密にした方が都合がいいんだ」

 

遊真「まぁ、分かった。よろしく、オサム」

 

修「よろしく、空閑。とりあえず、移動しよう」

 

遊真「分かった」

 

 

 

 

とりあえず、僕は空閑を連れて移動することにした。今、僕達は飲食街に居る。そこで、空閑が突然腹を押さえた。

 

「ぐぅぅぅ~~」

 

お腹空いたのか。

 

遊真「む、失敬。····腹が減ったから何か食おうぜ」

 

修「お前、日本の金は持ってるのか?」

 

僕がそう言うと、空閑がバッグを漁り始めた。何か違和感が···。そして、バッグの中から、札束を取り出した。何でそんな物を出すんだ······ただでさえこの辺りは、三門市内では結構治安が悪いんだ。案の定周りはざわつき出した。さっきみたいな馬鹿が居そうだな。·····しばらく僕には安寧は無さそうだな。ハァ·····本当に有吾さんの息子なのだろうか。ボーダーに行けって言ったなら、少しくらいは日本のことを教えておいてくれよ·····。とりあえず、無理矢理札束をしまわせて空閑を抱え、全力でその場を離れる。

 

修「いいか、空閑。人前では金を出すな。無用なトラブルを招くぞ」

 

遊真「ふむ?そうなのか?」

 

修「さっきもざわざわしていただろ······」

 

本当に何も知らないんだな·····。そんな時、如何にも、頭が悪いですって言ってるかのような奴が2人来た。これは、肩をぶつけてきて足が折れたとかほざく奴だ。······うわ、本当に予想に違わないことして来た。

 

「うおっ、いってぇな足折れたわ」

 

遊真「ドウモドウモ、コレハスミマセン」

 

「おい、慰謝料出せ。10万。金ならあんだろ」

 

遊真「イシャリョウ?医者に行くお金か?」

 

まぁ違うんだが、それはいいや。

 

修「相手にしなくていい!あのくらいで怪我するわけがない!」

 

遊真「ふむ。それもそうだな」

 

「あぁん?折れたっつってんだろ!」

 

そう言って、阿呆が殴ってくる。さっきの馬鹿よりも更に輪をかけて遅い。とりあえず、やられた感じで「ゴファッ!?」とか言って倒れ伏す。

 

「あ?黙ってろメガネ、殺すぞ」

 

1000%無理だから。そもそも足折れてて殴れる方がおかしいと思うんだが。哀れなり、何処かの頭の悪い誰か。演技だって全く気付いてないな。半年の道化の演技が身に付いてしまったようだ。····全然嬉しくないな。なんか、兄さんの捻くれが移ってきた気がする····最近、兄さんは子供2人にデレデレだけど。

 

「折れてるっつったら折れてんだよ!いいから、金出せ!」

 

遊真「····なるほど。分かった」

 

そう言って、空閑は阿呆の左足を思いっきり踏んづけた。バキッ!という凄い音がしたがまぁいいだろう。

 

「グギャア!?」

 

遊真「オーケー、ちゃんと折れてるな。ほい、10万円。お大事に」

 

 

遊真「全てがまるくおさまった」

 

修「ハァ····確かにそうだがやり過ぎだ」

 

遊真「何で?全部向こうの言う通りにしたじゃん。だから、納得しなきゃおかしいじゃん」

 

修「····ここは、向こうの世界とは違うんだ。やられてもやり返したら、こっちが悪いことになる」

 

遊真「ふむ。ニホンも物騒だな」

 

レプリカ『それだけ、こちらは平和だということだ』

 

修「レプリカ、有吾さんはもうちょっと何か教えなかったのか?」

 

レプリカ『有吾は、こちらに来るよりだいぶ前に戦死している』

 

修「·····そうだったのか。じゃあ、空閑の指輪は有吾さんなのか。なら、空閑が今もトリオン体なのに納得がいく」

 

レプリカ『流石だ、オサム。よくユーマがトリオン体だと分かったな』

 

修「勝手で悪いがサイドエフェクトで見させて貰った」

 

遊真「オサムもサイドエフェクトを持ってるのか?」

 

修「まぁ一応」

 

遊真「それより、飯食おうぜ。もうさっきから腹が減って腹が減って」

 

修「分かった。だが、空閑はココにいろ。僕が買って来る」

 

遊真「助かる。オサムは面倒見の鬼だな」

 

修「何だそれ····まあいい。動くなよ」

 

 

 

 

 

修「ハァ、全く····」

 

僕が、自分と空閑の分の夕食を買って来ると、夕食を買いに行く途中にすれ違った頭の悪い連中が揃って伸びていた。

 

ユーマ「おう、おかえり。大丈夫だ、オサム。今度はちゃんと骨を折ってないぞ。多分」

 

修「そういう問題じゃない、ハァ····」

 

 

 

 

夕食を済ませ、僕は、今、空閑と帰途に着いている。

 

修「空閑、ちゃんと言っておくぞ。暴力に頼るな。人前で金を出すな。あと、絶対にトリガーを使うな」

 

遊真「·····ふむ?ニホンの法律はあんま分かんないけど、相手が法律を守らなかったらどうするんだ?親父が言ってたけど····法律はお前を守るためじゃない。世界を回すためにある··って」

 

修「·····有吾さんらしい考え方だな」

 

確かにその通りだ。日本に居る以上、日本の法律を守らなければならない。でも、こいつがあそこで、金を出さなければこんな風にはならなかったんだけどなぁ。その辺も僕が教えていこう。有吾さんにはちょっとした借りがある。そこで、信号に差し掛かった時またもや空閑が問題を起こした。

 

修「おい待て!赤信号だ!」

 

時既に遅し。空閑は車に轢かれた。あいつはトリオン体だから、車に轢かれるくらいなら問題はないんだが、運転手に金を渡そうとしていた。目が回るくらい先が長そうだ········

 

 

 

 

 

翌日。僕達は屋上で昼食を摂っている。昨日も言ったが、空閑に注意をしておこう。あと、午前中に僕がボーダーだとバラしそうになって、慌てて止める羽目になった。

 

修「空閑、もう一度言っておくぞ。暴力を振るうな。昨日のことは言うな。自分が近界民だと喋るな。人前で金を出すな。出来るだけ目立つな。そして、絶対にトリガーを使うな」

 

遊真「うおっ!厳しいな····分かったオサム」

 

修「ちゃんと守ってくれよ·····」

 

そんな時、昨日の3馬鹿がやって来た。何か、カツアゲして来た。金くらい自分で何とかしろよ····

 

修「何しに来たんだ」

「うるせえ、黙ってろメガネ」

 

馬鹿の一人が杖で突いてくる。他に何かないのか···めんどくさいので、そのまま食らうがやはり弱い。ヴィザが同じことしてきたら冗談抜きで、体の半分が消し飛んで殺されそうだな。

 

遊真「ふむ?コイツらに記憶力はないのか?」

 

修「おそらく·····ボーダーが記憶封印の処置を施したんだと思う」

 

でも、鬱陶しいな。どうしたらいいだろうか。そんな時、空閑が思いっきり地面を踏んづけた。地面が揺れる。·

 

「「「ヒッ!?」」」

 

······昨日のことを何か思い出したっぽいな。

 

遊真「ねぇ、どいて」

 

「「「う······」」」

 

あっさり退いたな。空閑は昨日に比べてかなりマシになった。

 

修「空閑、とりあえず戻ろう」

 

遊真「そうだな」

 

 

 

空閑が教室に戻ると、また質問責めにあう。近界民を知ってる?という質問に、知らないと答える。よしオーケー。そこで、4年前の大規模侵攻について教えられる。被害者は千人を超え、その時ボーダーに助けられ、ボーダーの基地が出来た。このままいくと空閑がまた口を滑らせそうなので、一旦連れ出す。

 

修「空閑、ちょっといいか」

 

遊真「いいよ」

 

修「ちょっと来てくれ」

 

遊真「分かったオサム」

 

僕達は、校舎と体育館の間まで移動して来た。

 

遊真「どうしたのオサム?」

 

修「このままいくとまたお前が口を滑らせそうだったんだよ」

 

遊真「信用ないな」

 

修「前科があるのをもう忘れたのか?」

 

遊真「·····でも、ここだとボーダーは英雄みたいな扱いを受けてるけど何で隠すんだ?」

 

修「バレると色々めんどくさいんだ」

 

遊真「····ふむ?」

 

そんな時、直ぐ近くからバチバチッ!という音と共に門が開く。1箇所じゃない。よりによって、校舎の更に近くにもう1個開く。モールモッドが5体か。とりあえず、戦闘体に換装し、レイガストを展開。スラスターで、僕達の直ぐ近くから出てきた奴2体を真っ二つにする。

 

遊真「おおー!凄いなオサム!」

 

修「空閑は他の生徒に混じって避難しろ!レプリカは絶対出るな!」

 

遊真「ふむ。分かった」

 

修「あと、3体だ。早く行け!」

 

遊真「了解」

 

僕は校舎に入り、2階を目指す。3体とも2階に侵入しようとした。階段をかけ登った所で、窓から侵入しそうだった1体をアステロイドで沈黙させる。

 

修「何してる!早く行け!」

 

呆然としている、生徒達を強引に急かして、上に向かわせる。近い方のモールモッドを倒しに教室に入ると、生徒の何人かが逃げ遅れていた。弾速重視のアステロイドでこちらに向かせる。こちらを向いた瞬間にアステロイドで心臓部を撃ち抜き沈黙させる。

 

修「早く逃げろ!」

 

あと、1体だ。僕は廊下に出て最後の1体と対峙する。ブレードを2本振ってくるが捻って躱し、2本とも切り落とす。

 

修「スラスター、ON!」

 

スラスターで突撃し、心臓部を切り裂く。

 

遊真「オサム凄いな」

 

修「何でここに居るんだ」

 

遊真「いやちょっとオサムがどれくらい強いか見たくて」

 

修「なら見ただろ。もう戻れ」

 

遊真「ちょっといい案があって········」

 

 

修「·····分かった。あまり、気乗りしないけどそれでいこう」

 

修『本部、こちらB級の三雲。三門第三中にてモールモッド5体撃破。回収班をお願いします』

 

『了解しました。ご苦労さまです。現在、嵐山隊がそちらに向かっています。彼等との合流を』

 

修『了解』

 

とりあえず、皆の所へ行くか。

 

 

空閑を肩に担いで皆の所へ行くと、僕は皆に囲まれて「助かったよ」とか「凄いね!」とか「ボーダーだったんだね!」とか矢継ぎ早に言われた。それをのらりくらりと躱した。皆から離れると、空閑が話し掛けてくる。

 

遊真「オサム凄いな。モールモッド5体をあの短時間で倒すなんて」

 

いや、心の中でお前も出来るだろ。と呟く。

 

修「それより、嵐山隊が来る。絶対に噛みつかないでくれよ」

 

遊真「へーい」

 

そこに、赤い隊服を来た、嵐山隊の3人が飛び出して来て、校門の前で着地した。

 

嵐山「もう終わっているのか?····どういう事だ?」

 

空閑、頼むから嵐山隊、特にあの木虎に噛みつかないでくれよ·····

 

 

 

 

 

 

 




八幡達は、有吾が死ぬ国の1つ前は、アフトクラトルに居ました。第二次大規模侵攻の遠征メンバーは全員知り合い。という設定。


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20話:彼は彼で問題を抱え込む。

何番煎じかも、分からない今回の話


 

う~ん。想像はしてたけど、嵐山隊が来て周りを一気にざわつき出したな。

 

遊真「あのアラシヤマ隊?もボーダーなのか?」

 

修「ああ、昨日話した街の安全が第一の派閥の部隊だ。下手に手を出すと面倒なんだから頼むぞ」

 

遊真「····わ、分かった」

 

修「本当に大丈夫なんだよな····」

 

小声で空閑と話している時に嵐山さんは先生に安否の確認をしていた。どうやら、全員無事なようだ。嵐山さんはほっとしているようだ。そして、僕が倒したモールモッドに目を向けた。

 

嵐山「凄いな。心臓部を的確に撃ち抜いている」

 

その時、嵐山さんがこっちを見てきた。そして、顔を明るくする。

 

嵐山「君がこれをやってくれたのか!」

 

嵐山さんは、僕の両肩を掴んで揺さぶってくる。僕は戦闘体の換装を解いていたので、かなりキツい。

 

修「い、いえ·····目の前に突然現れたので、増援を待っていたら、死傷者が出てしまうかもしれなかったので独断で排除に向かいました。勝手に動いて申し訳ありません」

 

僕は頭を下げる。実際に勝手に行動したのだ。普通なら、避難を優先して増援を待つ方がいいのだ。

 

嵐山「とんでもない!頭を上げてくれ。君が居なかったら犠牲者が出ていたかもしれないんだ。うちの弟と妹はこの学校に通っていてね」

 

そう言うと、嵐山さんは弟と妹であろう2人に駆け寄り抱きついた。そういえば、兄さんがあの人は俺に負けないくらいのシスコン、ついでにブラコンって言ってたっけ。

 

遊真「ふむ。なかなかいい奴だなアラシヤマ」

 

修「ああ。嵐山隊はボーダーでも優秀な部隊で、ボーダーの顔として、広報をしていたりとボーダーの顔でもあるんだ」

 

空閑とそんな話をしていると、何だかよく分からないが、木虎が僕を睨んできた。ライバル視されているようだな。まぁ、普通ならB級上がりたてでモールモッド5体とか無理だもんな。

 

嵐山「ふぅ····にしても凄いな。藍、お前なら出来るか?」

 

嵐山さんが、僕が仕留めたモールモッドを見ながら言ってくる。何で今そんなこと言うんだ····

 

木虎「出来ますけど」

 

モールモッドをスコーピオンでバラバラにして、こっちを睨みつつ言う。まぁまぁやるな。

 

木虎「······先程入った報告によると、彼は、近界民を5体討伐したようですが、B級に上がりたての未熟な隊員がこの量に挑むのは、些か無謀だと思います。それに、彼は戦闘前に何も報告をしていない。今回のような場合、余計に動かずに我々の到着を待つべきです。彼には多少なりとも処罰を下すべきです」

 

まぁ傍から見ればそうなるけど、木虎に勝てるかって言われたら1000対0で勝てると思うんだけどなぁ······

今そんなこと言うと更にややこしくなるから言わないけど。木虎の言う事も正しいけど、生徒達の中には殺されかけた人も居る。避難誘導とかだけだと、絶対に間に合わない。それに、戦闘前に報告なんてしていられない。この発言を聞く限りだと、本当に忍田派なのか怪しくなってくるな·····自隊の隊長が僕を褒めているのが気に食わないだけだろう。ぶっちゃけ、凄いどうでもいい。そこに、空閑が爆弾を落とした。

 

遊真「····お前、遅れてきたのに何でそんな偉そうなの?」

 

木虎は意表を突かれたようで、驚いた顔を見せる。ああもう、口出すなって言ったのに····

 

木虎「誰あなた」

 

遊真「オサムに助けられた人間だよ」

 

修「おい空閑!」

 

遊真「ニホンだと、人助けにも誰かの許可がいるのか?」

 

木虎「いいえ、必要ないわ。トリガーを使わなければだけどね」

 

ここで、空閑がさっきとは比べ物にならないくらいの爆弾を投下した。

 

遊真「····何言ってんだ?トリガーは元々近界民のものだろ?お待ちは一々近界民に許可取ってトリガーを使ってんのか?」

·····これはまずい。トリガーの技術が、向こうの世界の物なんて知ってる民間人は普通居ない。

 

木虎「なっ!····あなた、ボーダーの活動を否定する気!?」

 

やってること自体は、向こうの世界と同じだけど。

 

遊真「ていうかお前、オサムが褒められてるのが気に食わないだけだろ」

 

ハァ···言っちゃったよ。しかも、木虎は後ずさりしちゃうから、尚更事実だって認めてるようなものだな。

 

木虎「ウッ·····組織には守らなければならない規律っていうものがあるのよ!」

 

何か、城戸さんみたいなこと言ってる。

 

遊真「ふ〜ん。····お前、つまんない嘘つくね」

 

なるほど。これではっきりしたな。黒トリガーで生命を繋がれた者は、黒トリガーを作った者のサイドエフェクトを受け継ぐのか。これは、他にもありそうだな。空閑は有吾さんの嘘を見抜くサイドエフェクトを受け継いだんだな。

にしても、よく気づかれないな。空閑がさっき言ったこと。普通なら怪しいを通り越しててもおかしくないんだけど。でも、三輪隊はおかしいと思ってるだろうし、嵐山さん達も不自然に思ってるかもしれない。

 

時枝「ハイハイそこまで。三雲君の処分を決めるのは僕達じゃない。ですよね?嵐山さん」

 

嵐山「ああ。充の言う通りだ。三雲君は、放課後、本部に来てくれ」

 

修「分かりました」

 

どうしようか。どんどん身動きが取れなくなってきてる。後で、迅さんに相談してみるか。

少なくとも、三輪隊が空閑に襲撃するのは確実だ。そうなると、城戸さんが絶対に動くんだよなぁ。

 

 

 

その後、質問責めにあったりもしたが、のらりくらり躱して放課後になった。周りは先に帰っており、僕達も帰るところだ。僕は本部行くけど。

 

修「空閑、頼むからボーダーの隊員に噛みつかないでくれ」

 

遊真「あの女がやたら偉そうだったからついな。俺はああいう大したことしてない癖に偉そうな奴が大っ嫌いなんだ」

 

修「それはそうとして。トリガーが、向こうの世界の技術だってことはボーダーでも大半はぼんやりとしか知らないんだ。お前が近界民だってバレるぞ」

 

遊真「う〜ん。難しいな」

 

修「そこを頼むよ。今は結構面倒な時期なんだ」

 

遊真「仕方ないな」

 

修「やっと分かってくれた····僕はこれから本部に行く。一応報告しなきゃいけないからな」

 

僕達が校舎の外に出ると、校門の辺りに人集りが出来ていた。そして、中心には何故か木虎が居た。どうやら、皆はテレビに出てるような有名人の木虎を前にして、写真を撮っていいかとか、聞いている。木虎は口では拒否してる癖に、カメラを向けられるとポージングをとっていた。何でいるのかは分からないが、僕は本部に行かなければいけないので放っておこう。

 

修「空閑、僕は本部に行くけどお前はどうする?」

 

遊真「どうしようかね」

 

修「問題を起こさないでくれよ」

 

遊真「分かってるって。途中までついて行くよ」

 

修「そうか」

 

遊真「いいのか?あれ」

 

空閑が木虎を指差しながら言ってくる。が、構うようなことではないと思う。

 

修「······まぁいいだろ」

 

遊真「そうか」

 

修「なら行こう」

 

校門から出ようというところで、こっちに木虎が気付き、慌てた様子で取り繕っている。

 

木虎「待ちなさい。コホン····改めて、A級5位嵐山隊の木虎よ。あなたを本部に連行します。勘違いしないで欲しいけど、あなたをエスコートしに来たわけじゃないわ。あなたが逃げないよう見張りに来たのよ!」

 

修「いや、逃げるの意味が分からないんだけど」

 

というか、エスコートしてくれるなら桐絵がいい。こいつがエスコートしたなんて知れたら、桐絵に殺される。

 

木虎「簡単に独断先行する人間の言葉が理解出来る?もう少し自分の立場に理解しなさい」

 

本当にめんどくさい。何でここまで僕をライバル視するんだ?こいつは兄さんの弟子だって聞いたけど、兄さんには他にも弟子がいるだろうから、ライバル視するんならそっちでやって欲しい。

 

 

 

 

······今日の近界民、的確に心臓部が撃ち抜かれていた。他にも、真っ二つにされていたり·····とおそらく、一撃で仕留められている。1人で、戦闘用の近界民5体を倒すなんて、私がB級の時に出来た?

しかも、私と同い年。まさか、私より優秀?そんな筈はないわ!私はA級隊員。私のが上よ!

 

 

 

 

何か、考え込んでいるがどうせ私がこんなしがないB級に劣っている筈がないとかそんな程度のことだろう。···にしても、A級ね。全員がこうな筈ないと思うが、こいつは思ったほどたいしたことじゃなかったな。まぁいいや。こいつとはそこまで関わらなそうだし。

 

木虎「三雲君。あなた、派手に活躍してヒーロー扱いされたからって調子に乗らないことね」

 

修「いや何で乗るんだよ」

 

これで調子に乗るようなら、戦闘に参加しない方がいいまであるぞ。そもそも、調子に乗るなんて三流未満じゃないか。僕や兄さんは昔、調子乗ってて死にかけたことがあるから、そんなこと二度としないし。あの時、2人揃って正座させられて、説教されたな。義姉さんに。父さんは笑って見ていたな。イライラが限界まで行ったことを覚えている。今思い出してもイライラするなあの顔。

 

木虎「はっきり言って、あなたがいなくても私達の隊が事態を収拾していたわ。あなたは偶然その場にいただけよ」

 

そこに、今まで黙っていた空閑が反論する。

 

遊真「いやいや無理だから。別に責めるわけじゃないけど、お前全然間に合ってなかったから」

 

木虎「いつの間に!?····何であなたがついてきているの」

 

遊真「いや、俺じゃなくてお前がついてきたんだ。それに、アラシヤマ隊を待っていたら何人も死人が出てたぞ」

 

木虎「それでも、私達を待つべきだったわ」

 

遊真「お前、オサムに対抗心だかなんだか持ってるっぽいけど、お前とオサムじゃ話にならないから」

 

まぁそうだな。かなり傲慢になってるけど、向こうの世界なら一瞬で死んでるな。ていうか、A級じゃなくても強い人いるし。木虎くらいなら、両目塞いでも勝てる。

 

木虎「なっ!?私はA級よ!」

 

遊真「A級って何?」

 

木虎「A級っていうのは、ボーダーにいる400人近くのC級の訓練生の上の100人いるB級の正隊員の上にいる、上位5パーセントの精鋭よ」

 

遊真「ふーん?」

 

まぁこれまでの口ぶりからだと、木虎が強そうに見えないのも仕方がない。人を見かけと口ぶりだけで判断するのは間違いだが。今回の件はどうせラッドだろうけど、知らない体で聞いてみるか。

 

修「そういえば、今日の近界民は何だったんだ?本部基地には誘導装置がある筈だろ?」

 

そう言ったら、何故か木虎が勝ち誇った顔をしてきた。実際は原因を知っているので思うところがあるが、知らないと思われているだろう。

 

遊真「そういえば、そうだな。本当なら基地の周りにしか出ない筈なんだろ?」

 

木虎「B級に上がって間もないあなたには知りえない情報ね。でも、悪いけど部外者がいるから話せないわね」

 

遊真「俺は部外者じゃない。被害者だ」

 

それ結局部外者だと思うんだが。

 

木虎「なら、仕方ないわね」

 

納得しちゃうのかよ。大丈夫かこいつ。

 

木虎「どうやら基地の誘導装置が効かないイレギュラーな門が発生しているようなの。これまでにも6件、似たような報告があったわ。全部非番の隊員が近くにあるいたお陰で対処出来ているし、被害も未然に防いでいるけど」

 

これで、ラッドが原因で決まりだな。お陰ってのは、間違いだが。非番の隊員がいたから門が発生したんだ。そんな時、空からバチバチッ!という凄い音が聞こえた。出てきたのは、イルガーか。結構珍しいな。時期的に、アフトクラトルの尖兵の可能性が出てきた。やはり、アフトクラトルは今回の接近で攻めて来るかもしれない。

 

木虎「何この近界民!こんなの見たことないわ!」

 

そうだろうな。イルガー使うところは少ないし。こちらに送り込まれたのは初めてなんだろう。

 

木虎「クッ···他の部隊は待っていられないわね。私がやるわ!」

 

修「初めて見る近界民なんだろ!?大丈夫なのか?」

 

木虎「私はA級よ!三雲君は市民の避難をお願い!」

 

そう言って、木虎は走って行ってしまった。仕方ない。ここは空閑に頼もう。

 

修「空閑、お前は木虎の手助けをしてくれ。木虎はイルガーを初めて見たんだ。イルガーの自爆モードに対応出来ない」

 

遊真「なかなか面倒だな。それに、キトラがやるって言ってんだから任せとけばいいだろ?」

 

修「いや。あいつは間違いなくイルガーの自爆モードを起動させる。あいつじゃ対処出来ない。だから、自爆モードに入ったら、川に引き摺り落とす感じで出来ないか?」

 

そこに、レプリカが出て来る。

 

レプリカ『可能だ。『鎖』印(チェイン)を使えばオサムが言うように出来る』

 

修「それで十分だ。悪いが、僕は市民の避難誘導に当たる。さっきとは矛盾なことを言ってるのは分かってるが頼む」

 

そこに、レプリカが小さな物を渡してきた。

 

レプリカ『持っていけオサム。私の分身だこれで、私達と連絡が取れる』

 

遊真「困った時は呼べよ。まぁ心配ないだろうけど」

 

修「ああ。頼んだぞ」

 

僕は、全力で市街地に向かった。

 

 

 

 

 

僕は避難誘導をしている。イルガーの爆撃で既に結構な被害が出ており、市民は大混乱だ。小さな子を瓦礫の下から助け出したり、道を塞いでいた、鉄骨や瓦礫を撤去した。あらかた避難が出来ると、市民から次の場所に関する情報を貰って、次へ向かう。避難指示を出して。

そこで、外を見ると、やはりと言うべきか、イルガーが自爆モードを起動していた。その時、木虎から見えない位置に下から鎖が伸びてきて、イルガーが下に引き摺り落とされた。木虎は川から出て来て、トリオン体に入った水を吐いていた。言った通りに空閑がやってくれたようだ。周りの市民から離れて、ちびレプリカで連絡を取る。

 

修『空閑、助かったよ』

 

遊真『何、オサムの頼みだからな。それにしても、やっぱりオサムは面倒見の鬼だな』

 

修『何だそれ。····ああ悪い。一旦切る』

 

遊真『ああ。また後で』

 

そこで、市民に囲まれた。口々に助かったと言う。でも、僕は避難誘導しかしていない。そこで、木虎が見えたので彼女がやってくれたと言った。人の手柄までは流石に要らないから。

 

 

 

 

 

遊真「ほらな。言っただろ?お前とオサムじゃ話にならないって。お前とオサムは見てるところが全然違うんだよ」

 

木虎「確かに、ヒーロー気取りの隊員ではなさそうね」

 

そして、キトラはオサム達の周りで建物が壊されたとか騒いでいる奴等の所に向かって行った。イレギュラー門に関してはオサムがどこまで知ってるか分かんないけど、キトラには多分どうしようもないだろうな。あとは、ボーダーのお手並み拝見だな。

 

_______________________

 

 

迅「ハイハイもしもし」

 

『俺だ。片付いたか?』

 

迅「こっちは終わりました。向こうのチームも終わるでしょう」

 

『よし、お前は本部に直行しろ。城戸さんのお呼びだ』

 

迅「ほう、本部司令直々とはね···この実力派エリートをお呼びとは。迅、了解」

 

_______________________

 

 

『トリガーを認証しました』

 

遊真「ふむ。トリガーが基地の入口の鍵になってるのか」

 

木虎「そうよ。ここから先はボーダー隊員しか入れないわ」

 

遊真「なら、俺はここまでだな。何かあったら連絡くれ」

 

修「分かった」

 

そうして、空閑は帰って行った。一応、僕の制服の内ポケットにちびレプリカが入っている。木虎に会議室に案内され、そこで、木虎とも別れる。

 

修「失礼します」

 

会議室には、上層部の面々が揃っていた。兄さんも居たが、知らない振り。兄さん····会議中に欠伸するのはどうかと思うよ·····

 

城戸「よく来たな·····」

 

忍田「実際に会うのは何年ぶりだ?」

 

林藤さんとは、時々会ってたが、城戸さんと忍田さんは本当に久しぶりだ。

 

根付「お二方のお知り合いですか?」

 

鬼怒田「如何にもひょろっとしたメガネだが」

 

城戸「彼は、三雲修。現ボーダーに入隊したのは、半年程前だが、旧ボーダーに所属していた。幼少の頃を近界で過ごしており、通常トリガーでも近界全体で屈指と言える程の実力者だ。今回の一件も彼なら納得がいく。

私の方から紹介しておこう。向かって奥から、根付栄蔵メディア対策室長、鬼怒田本吉本部開発室長、唐沢克己外務·営業部長だ。3人は現在の体制のボーダーになってからスカウトした。」

 

忍田「修、我々は君を処罰するつもりは無い。だから、気を楽にして今回の一件の報告をして欲しい。学校の件と新型の件だ」

 

修「分かりました」

 

それから、今までの事について報告した。空閑については細心の注意を払い、一切話さなかった。新型トリオン兵·イルガーについても。イルガーは、爆撃を主とし、攻撃を受けると、自爆モードを起動して、なるべく人が多い所に向けて突っ込む。自爆モードは、弱い攻撃だと一切通用しなくなる。

 

忍田「·····なるほど。だが、何故、それは今まで使われなかったんだ?こちらの戦力を分散するならうってつけの筈だが」

 

修「あれは、一体作るのに使うトリオンが他よりかなり多いんです。だから、使う国もかなり少ない筈です」

 

忍田「なら、どこが使ってくるんだ?」

 

修「接近している国で言うなら、アフトクラトルですかね。近界全体でも有数の軍事国家で、他の国から、神の国なんて呼ばれています。あそこは兵力がこちらより圧倒的に多いです」

 

城戸「そのアフトクラトルというのは、また後日聞かせて貰おう。今は、イレギュラー門が先だ」

 

そこで、入口が開いた。2人の人物が入ってくる。片方は迅さん。もう片方は女性だが誰だろうか。

 

迅「迅悠一。ただ今参上しました」

 

僕については、2人とも特に触れて来ない。

 

城戸「···では、迅が来たので本題に入る。議題は報告にもあったイレギュラー門だ。根付メディア対策室長」

 

根付「今回の爆撃による被害は、分かっている限り、18人が死亡、重軽傷者が合計で100人超え。被害総額も相当な額となっている筈です。被害総額は現在、算出中です」

 

城戸「ご苦労。では次、鬼怒田本部開発室長」

 

鬼怒田「現在、発生する門をトリオン障壁で強制封鎖していますが、あと46時間程しか持ちません」

 

だから、早急に解決するために迅さんを呼んだんだな。そこに、城戸さんが僕に聞いてきた。

 

城戸「修、お前なら原因に心当たりがあるのでないか?」

 

修「·····まぁ一応。おそらく、門発生用の小型トリオン兵、ラッドではないかと」

 

城戸「続けてくれ」

 

修「今日木虎から聞いた話によると、他の同様な6件は全部非番の隊員が近くにいたそうですね」

 

忍田「それがどうかしたのか?」

 

修「ラッドっていうのは、周りの人間からトリオンを少しずつ集めて門を発生させるんです。6件とも公共施設みたいな人が大勢いる所だったんではないですか?」

 

忍田「そうだ」

 

修「だからです。隊員以外にも人が大勢いた方が、トリオンを集めるのは早いですし、人がいるなら、そっちに捕獲型を仕向ける方が大勢攫えます」

 

鬼怒田「なら、それで決まりではないのか!」

 

修「いいえ。今まで僕が言ったのは状況証拠からの推測です。迅さんが調査するべきです」

 

城戸「分かった。迅、調査続行だ。修は迅について行ってくれ。知識のあるお前がいれば調査が進めやすい」

 

迅「了解しました」

 

修「分かりました」

 

城戸「では下がってくれ」

 

修「はい。失礼します」

 

そこで、今までずっと黙っていた三輪先輩が話掛けてきた。

 

三輪「三雲君ちょっといいか?」

 

修「はい。えっと····」

 

三輪「A級三輪隊の三輪秀次だ。」

 

流石に現場検証を遠くから見ていたのは気付いていないだろう。

 

三輪「昨日警戒区域内で倒されていた4体の大型近界民。3体は急所を撃ち抜かれていて、1体はバラバラにされていた。全て君がやったのかな?」

 

ハァ·····出来れば兄さんに迷惑を掛けたくないんだけどなぁ。さっきだって、三輪先輩が僕に話し掛けてきた時、周りにバレないようにため息ついてたし。

 

修「····はい。全て、僕がやりました」

 

三輪「そうか。ならいい。変な質問をして済まなかった」

 

修「いいえ。ではこれで失礼します」

 

 

 

 

修が退室してすぐ。

 

鬼怒田「そうだ、八幡。材木座が呼んでおったぞ。シールドの改良型をテストして欲しいと」

 

八幡「やべ、忘れてた」

 

鬼怒田「早う行け。いいですね、城戸司令」

 

城戸「ああ。比企谷は下がってくれて構わない」

 

八幡「そっすか。じゃあこれで失礼しますね」

 

八幡も会議室を出て行った。

 

 

 

 

 

三輪「城戸司令、うちの隊で三雲を見張らせてください。奴には近界民と接触している疑いがあります」

 

城戸「ほう。何故だ?」

 

三輪「今日学校で回収したモールモッドは全て三雲のトリガーで倒されていますが、昨日警戒区域で回収したバムスターの中に1体だけ、ボーダーの物ではないトリガーが使われていました」

 

城戸「なのに····彼が全部倒したと言っているということだな」

 

三輪「はい。証拠は直ぐに上がるでしょう」

 

城戸「なるほど。任せよう」

 

三輪「もし、近界民が実際に絡んでいた場合は」

 

城戸「決まっている、始末したまえ」

 

三輪「承知しました」

 

城戸「ただし、修には気を付けろ。奴はバレていることなど百も承知だろう。証拠が直ぐに上がるようであれば罠の可能性がある。警戒したまえ」

 

三輪「了解しました」

 

物語は加速を始める·······

 

 






迅と話していたのは、嵐山か風間さんを想定してます。


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21話:三輪秀次は彼を受け入れない。

会議終了後、迅さんと、三輪隊をどうするかを話した。結果として、今は何もしないことになった。下手に動いて空閑が更なる危険に巻き込まれる可能性がある。おそらく、三輪先輩は空閑を人ではなく、人型近界民としか、認識していない。

夜になって、空閑とも話したが、空閑は、イレギュラー門の調査に学校にいた。

 

 

 

翌日。僕は家を出ると、遠くに三輪隊の人がいた。隊服から三輪隊だとは分かったけど、誰かは分からなかった。こういう時兄さんのサイドエフェクトって本当に便利だな。今は三輪隊の人は相手にしなくてもいいだろう。迅さんとの待ち合わせの場所に行く。

 

迅「よう修」

 

修「どうも迅さん、おはようございます」

 

迅「さあ行こうか。この先にイレギュラー門の原因を知る奴がいる」

 

修「相変わらず便利なサイドエフェクトですね」

 

迅「ハハッ、八幡のほどじゃないって」

 

修「あれは、チートみたいなもんでしょう」

 

迅「そう言う修のもかなりチートじみてるがな」

 

修「そうですかね」

 

そんな軽口を叩きながら、歩いて行くとこの前馬鹿に連れて行かれたところに来た。そして、そこには空閑とレプリカが居た。そこで、迅さんが口を開く。

 

迅「お前、向こうの世界から来たのか?」

 

その一言で空閑は身構える。

 

修「落ち着け空閑。この人は一昨日話した近界民とも仲良くしようっていう派閥の人だ。迅さん、こいつは空閑遊真。有吾さんの息子です····って言っても分からないと思いますが」

 

遊真「でも何であんたは俺が近界民だって分かったんだ?」

 

迅「俺のサイドエフェクトだ。俺には少し先の未来が視えるんだ」

 

修「それで、ラッドは見つかったか?」

 

遊真「まぁね。てか、オサムが分かってんなら俺がやる必要なくない?」

 

修「悪いな。今僕を見張ってる奴がいてな」

 

遊真「へぇ〜。で、どうする?ラッドって数千とかいるけど」

 

迅「いや、助かった。こいつは俺が持ってってもいいか?」

 

遊真「どうぞどうぞ」

 

どうやら、ラッドをレーダーに映るようにして、隊員総出で駆除するらしい。市民には緊急放送で伝えるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

その後、昼夜を徹して駆除を行い、なんとか時間内に終わらせることが出来た。

その後、迅さんと空閑と話しをしたら何がどうなったかは分からないが、空閑の手柄が僕に付けられることになった。普通、迅さんに付けると思うんだが。しかし、空閑がバレると引き合いに出されて、押し付けられてしまった。もうバレてるの言った筈なんだが。

 

迅「·····そういえば、あの子はどうなの?」

 

修「そうですね。相変わらずです····ハァ」

 

遊真「···ふむ?」

 

 

 

 

 

翌日。一人の少女·····雨取千佳は河川敷で待ち合わせをしていた。彼女は自分の時計を覗き込む。

 

千佳「(ちょっと早すぎたかな·····)」

 

ガシャン!

 

千佳「?」

 

千佳が音のする方へ行ってみると、自転車に乗っている遊真が居た。しかし、再び遊真は自転車に乗っていたが、転んでしまっていた。

 

千佳「大丈夫?」

 

遊真「ムムッ。これはご心配おかけして申しわけない」

 

2人は、それぞれ待ち合わせしていること、遊真は自転車に乗るのが難しいことなどを話している。そこで、千佳の携帯が鳴る。千佳は通話を終え、遊真の自転車に乗る練習の手伝いをする。少しは真っ直ぐ進めるようにはなったが、川に突っ込んでしまった。2人で自転車を引き上げる。

 

遊真「いやぁ助かった。買ったばかりの自転車が川の藻屑になるところだった」

 

その時、千佳が突然血相を変えて走り出した。

 

ウウーッ!!『門発生!門発生!付近の方は避難して下さい!』

 

千佳「ごめん!私もう行くね!」

 

遊真「おい!そっちって!」

 

 

レプリカ『彼女···警報がなる前に気付いているように見えた』

 

遊真「ああ。追うぞ!」

 

レプリカ『遊真、トリガーは使うな。オサムが近くまで来ている』

 

遊真「分かった」

 

 

 

 

遊真「お、見つけた」

 

千佳「····え?」

 

警戒区域内で千佳を見つけた時、近くに砲撃型トリオン兵・バンダーが居り、危ないところだった。そして、遊真は千佳を抱えて離脱する。その直後、バンダーの頭部にアステロイドが放たれる。アステロイドは直撃し、バンダーは向きを変える。向きを変えた瞬間にスラスターで加速したレイガストで、心臓部を斬られバンダーは沈黙した。

 

 

 

 

修「·······千佳!」

 

遊真「·····へ?」

 

千佳「修君!?」

 

修「何度言ったら分かるんだ!バカなことはやめろ!」

 

千佳「ごめんなさい·····街の方に居たら危ないと思って····」

 

遊真「····?」

 

修「ハァ·····レプリカ、ちょっといいか?千佳のトリオン量を計測して欲しい」

 

レプリカ『ならば、場所を変えよう。付近に別のボーダーがいる』

 

修「分かった」

 

 

その後、僕達は弓手場町駅に跡に来た。ここらは、警戒区域に指定され、路線から外されたのだ。何かくっついて来たが、ここで襲撃するだろうな。絶好の場所だし。まぁそれは放っといて、2人から何で一緒に居たのかを聞いたが、待ち合わせ場所が同じで自転車の練習してたら川に落ちたとか、半分くらい何言ってるか分からなかった。

 

修「一応紹介しておく。空閑、こいつは雨取千佳。うちの学校の2年生だ。千佳、こいつは空閑遊真。うちのクラスに転校して来たんだ」

 

そう言ったら、千佳は驚いた。まぁ気持ちは分かる。千佳と同じか、それ以下の身長だからな。

 

千佳「そういえば、さっき修君がトリオンって言ってたけど、トリオンって何?」

 

修「まぁ簡単に言うと、トリガーを使うのに必要なエネルギーだ。お前が狙われるのは、これが理由なんだ」

 

遊真「そういう事だ。レプリカ!」

 

レプリカ『心得た』

 

レプリカはそう言って、空閑の指輪から出て来る。千佳は、さっきより更に驚いている。

 

レプリカ『はじめましてチカ。私はレプリカ。ユーマのお目付け役だ』

 

そして、舌のような物を出す。僕がやると、三輪隊が更にややこしくなるので誤魔化して、千佳に握らせる。少し手間取っているな。そこで、空閑が話し掛けてきた。

 

遊真「オサムとチカって·····コイビト?」

 

修「いや、違うよ。千佳はお世話になった人の妹なんだ。というか、僕の恋人は違う人だ」

 

遊真「おおっ!それは失礼しました」

 

なら、もう少し申し訳なさそうにしてくれ。

 

修「いやいいよ別に」

 

遊真「それより、チカはあんなにあからさまに狙われてんだから、ボーダーに助けて貰えばいいじゃん」

 

修「それが出来たら苦労してない」

 

遊真「ふむ?」

 

修「あいつは超が付くほど強情で、絶対に首を縦に振らないんだ。ボーダーに入るよう説得はしていたんだ。4年前から」

 

遊真「4年もか!どんだけ強情なんだ····」

 

修「だから、ボーダーに入れっていう説得はだいぶ前に諦めたんだ。警戒区域に近づくなって何度も言っているけど」

 

遊真「なかなかにめんどくさい奴だな」

 

修「まぁそう言えちゃうんかな····」

 

遊真「でも、そんなに何で1人で逃げてられるんだ?」

 

修「あいつは近界民の場所が分かるサイドエフェクトを持っているんだ。でも、そのうち限界が来る。だから、せめて自衛の手段くらい持ってて欲しいんだ」

 

実際に今回みたいなことは増えていくだろう。そうなると、千佳が一人で逃げるなんて絶対無理だ。

 

遊真「大変だな····にしても、やっぱオサムは面倒見の鬼だな」

 

修「何なんだそれ」

 

レプリカ『2人とも、チカのトリオン量の計測が終了した』

 

遊真「うおっ!凄いな····」

 

やっぱりこれくらいあったのか。それなら狙われて当然だな。

 

遊真「こんな量持ってる奴初めてだ」

 

ごめんなさい、僕はこれより多いです。······そろそろいいかな。邪魔が入るくらいなら、邪魔をしようとしている者を引き摺り出してしまおう。

 

修「······さてと」

 

遊真・千佳「「?」」

 

修「このトリオン量を見逃すなんて、ボーダーも結構ザルですね!」

 

遊真「突然どうしたんだ?オサム」

 

修「隠れてても最初からバレバレなんですよ。三輪さん!米屋さん!」

 

僕が叫ぶと、三輪隊の2人は出てきた。

 

米屋「あちゃ〜バレてたか~。いつから?」

 

修「僕が家を出た時からです」

 

米屋「ホントに最初からかよ····」

 

修「あと、向こうにスナイパーが二人待機してますよね」

 

三輪「!·····チッ···現場を確認した。これより近界民を排除する」

 

米屋「さ〜て。近界民はどっちだ~?」

 

三輪「今までトリガーを使っていたのはその女だ」

 

千佳「え!?」

 

遊真「違うよ、近界民は俺だよ」

 

その瞬間に三輪先輩が発砲してきた。空閑はシールドでガードする。空閑は迅って人に聞いてくれと言っているが、

 

修「空閑、無駄だ。その人は近界民を駆逐するっていう派閥の人だ。この前も言ったろ。だから、手加減しなくてもいい。全力で制圧しろ」

 

遊真「オーケー。オサム、俺一人でやる」

 

修「分かってる。遠慮なくやってくれ」

 

遊真「よしきた。トリガー、オン」

 

空閑は、真っ黒なスーツのような物を纏った戦闘体に換装する。

 

米屋「うひょー、強そうじゃねぇか!なあ秀次、コイツとサシでやらせてくれよ」

 

三輪「ふざけるな陽介。遊びじゃない。こいつは4人がかりで確実に仕留める」

 

そう言って、お互いに臨戦体勢を取る。三輪先輩が近界民を殲滅するっていう憎悪は、城戸さんを上回ってそうだな。とりあえず、迅さんと連絡を取ろう。

 

修『もしもし迅さん?』

 

迅『ハイハイ~どうした?』

 

修『こっちが見えてますよね?』

 

迅『まぁね〜』

 

修『僕は何かした方がいいですか?』

 

迅『いや、今回は何もしない方がいい。遊真はあれぐらいなら、全然大丈夫だ』

 

修『敢えて、言わなかったこと言っちゃいますか』

 

迅『まぁまあ大丈夫でしょ』

 

修『まぁそれはそうでしょうね。じゃあまた後で』

 

千佳「修君、遊真君って本当に近界民なの?」

 

修「そうだ。でも、他の近界民とは違う。千佳はどう思う?」

 

千佳「私も·····近界民でも、遊真君は怖く感じない···」

 

修「そうか、ならそういうことだ」

 

 

現在、空閑は三輪さんの鉛弾を食らっており、今まさに、三輪隊の2人が飛びかかるところだ。そこで、空閑が動いた。鉛弾をコピーし、オリジナルの数倍の威力で2人に返した。2人は動けなくなり、線路の上に落下した。

 

修「なるほどね····いい連携だな。でもお前なら、もう少しあっさり倒せたろ」

 

遊真「いや、なかなか強かったよ」

 

三輪「クッ·····三雲!何なんだソイツは!」

 

三輪先輩はかなりの動揺を隠さずに聞いてくる。

 

修「空閑がかなり手加減していたとはいえ、あなた方は善戦したと思いますよ。こいつのトリガーは黒トリガーですから」

 

三輪「何!?」

 

そこに、迅さんが奈良坂先輩と古寺先輩を連れてやって来た。

 

迅「やめとけ秀次。黒トリガーを敵に回しても何もいいことはないし、一つも得しないからこれ以上追い回すのはやめとけって、帰って城戸さんに伝えろ。何なら、クビでも全財産でも賭けてやる」

 

三輪「一つも得をしない、だと···そんなことは関係ない!近界民は全て敵だ!」

 

イライラしてきたから少しくらい言い返してもいいかな。

 

修「何をそんな子供みたいな事言ってるんですか?」

 

三輪「何だと!?」

 

修「向こうの世界にだって、いい人はいくらでもいる。例を言えば、第二次世界大戦で日本は原爆を落とされました。でも、アメリカ人全員を恨むのは筋違いですよね」

 

三輪「貴様·····何のつもりだ!」

 

修「近界民全てが敵だなんて言ってたらいつか、破綻しますよ?」

 

三輪「黙れ!貴様に····貴様に何が分かる!?」

 

修「だから、それですよ。あなたの事情は知っています。何で城戸派に居るのかも」

 

三輪「だったら···」

 

修「言いましたよね。全てを恨むのは筋違いだって。そもそも、向こうの世界でそんな事言ってたら、利用されて利用されて潰れますよ。詰まるところ、あなたは何も分かってない」

 

三輪「あぁぁぁぁぁっ!!······ハァハァ······ベイルアウト!」

 

三輪先輩は僕が言ったことを、理解するのを拒むかのようにベイルアウトして行った。

 

遊真「うおっ!飛んだ!」

 

迅「ベイルアウト。ボーダーのトリガーはトリオン体を破壊されると、自動的に基地に帰還出来るようになっている」

 

遊真「負けても逃げられる仕組みか。便利だな~」

 

修「ああ。負けても死なずに済む」

 

迅「·······(死なずに済む、か)」

 

そこで、米屋先輩が戦闘体を解除した。

 

米屋「あー負けた負けた。しかも手加減されてたとか。好きにしろ。殺そうとしたんだから、殺されても文句は言わねー」

 

そのまま、駅のホームに寝転がった。

 

遊真「殺さないよ。あんたじゃ俺を殺せないし」

 

米屋「かーマジかー」

 

遊真「あんたは近界民に恨みはないの?」

 

米屋「·····俺は別段恨みはないけど、あそこにいる奈良坂と古寺は家を壊されてるからそれなりにあるだろうし、さっきベイルアウトした三輪は近界民に姉貴を殺されてるから一生許せないだろうな」

 

奈良坂「陽介、帰るぞ」

 

米屋「おっと、じゃあな!次はサシでやろうぜ!そこのメガネボーイも!」

 

迅「三輪隊だけじゃ報告が偏るだろうから、俺も基地行くけど、修はどうする?」

 

修「僕も行きます。どうせ召集がかかるだろうし。2人はどっかで待っててくれ。千佳、空閑に日本のこと教えてやってくれ。まだ全然分からないだろうから」

 

千佳「分かったよ修君」

 

迅「じゃあ、行こうぜ。またな、2人とも」

 

遊真「じゃあね迅さん」

 

 

 

 

 

 

 

僕達は、会議室に向かっている。迅さんが何を言っても城戸さんが簡単に頷くとは思えない。空閑は多分、玉狛に入るだろうから、ボーダー内のパワーバランスが崩れるっていう名目で、直ぐに襲撃されるだろう。尤も、実質的に玉狛には、ラプラス・サンドラ・クオリア・マステマ・風刃と黒トリガーが5つあるから、パワーバランスなんて最初から存在してないのと大差が無い。今思ったけど5つって凄いな。近界に黒トリガー5つ持ってる国が幾つあるだろうか。

 

 

 

 

 

城戸「·····なるほど。報告ご苦労だった」

 

僕達が報告すると想像通り、近界民の持つ黒トリガーの危険性について騒がれている。迅さんが黒トリガーが、仲間に加われば戦力の大幅な強化になると言ったが、城戸さんは素直にそれを飲まなかった。城戸さんは、空閑を始末して、空閑の黒トリガーを手に入れると言い出した。根付さんと鬼怒田さんが賛同し、忍田さんが反対した。これで、この一件で城戸派と忍田派が完全に対立したことになる(忍田さん引き込めないかな·····)。それに、迅さんが城戸さんの言う事を素直に聞くわけがない。

 

城戸「迅、黒トリガーを奪取しろ」

 

迅「お断りします。城戸さんに俺に直接命令することは出来ません。命令したいなら、うちのボスを通して下さい」

 

上手いこと考えるな。流石は趣味が暗躍。

 

城戸「·····林藤支部長、命令したまえ」

 

林藤「やれやれ。支部長命令だ。迅、黒トリガーを捕まえてこい」

 

迅「はい」

 

林藤「····ただし、やり方はお前に任せる」

 

林藤さんがそう言うと、迅さんは不敵に笑う。

 

迅「了解、ボス。

実力派エリート迅、支部長命令により任務を遂行します」

 

城戸「···林藤!」

 

林藤「ご安心下さい。城戸さんのご存知の通りうちの隊員は優秀ですから」

 

そこで、迅さんが退出しようとしたので、僕も一緒に退出しようとしたところで、

 

唐沢「三雲君、ちょっといいかな」

 

修「何でしょうか」

 

唐沢「君の友人の近界民が何故こっちに来たのかという、目的などは聞いているかい?」

 

この人は、外務·営業部長。交渉の余地があるなら、しておこうと考えたのだろう。

 

修「父親の知り合いがボーダーにいて、その知り合いに会いに来た、と言っていました」

 

唐沢「その知り合いというのは誰なんだい?」

 

修「名前は聞いていませんが、おそらく最上さんです。·····そして、僕の友人の名前は空閑遊真。有吾さんの息子さんです」

 

その言葉に、旧ボーダーの3人が反応する。兄さんも多少驚いたかもしれないが、あまり分からない。鬼怒田さんや根付さんは分からないようで、首を傾げている。それに忍田さんが説明する。有吾さんは、旧ボーダーの創設に関わった人で、忍田さんや林藤さんの先輩であり、城戸さんの同期であると。そこで、忍田さんが聞いてきた。

 

忍田「有吾さんは、今どこに?その、遊真という息子だけを来させるとはあの人の性格からして考え難い」

 

修「有吾さんは、空閑の黒トリガーになって亡くなられています」

 

城戸「修、その空閑遊真という人物は本当に有吾の息子なのかね」

 

修「それは間違いないと思います。顔とか仕草とかかなりそっくりだし、有吾さんが作ったレプリカが同行していましたので」

 

忍田「なるほど。修が言うなら間違いないだろう。迅、修。彼との繋ぎを頼む」

 

迅「はい」

 

修「もとよりそのつもりです」

 

城戸「では解散とする。進展があれば報告するように」

 

 

 

 

僕達は人の居ないところまで、移動して来た。

 

修「ハァ····ここから、どうします?城戸さんは遠征部隊が帰還したら、絶対送り込んで来ますよ」

 

迅「それはそうだろうな。玉狛に黒トリガー6つって向こうの世界の国に匹敵するレベルだから」

 

修「迎え撃つのに僕が出ますか?」

 

迅「いや、修は遊真の方を見てやってくれ。こういうのは俺の役目だ」

 

八幡「それ、俺が手伝いますよ」

 

兄さんが来た。

 

修「兄さん····でも」

 

八幡「問題ない。有吾さんの息子なんだろ?それにあんまいいやり方じゃないけど、その空閑遊真が何かしたなら、最悪の場合俺が始末すればいい。あるいは、何かされたら城戸派を潰してやろうぜ」

 

修「それはどうかと思うよ····出来るとは思うけど···」

 

迅「出来る方がおかしいってお前ら····」

 

 

 

 

 

遊真「おお〜っ!いいところだな!」

 

遊真と千佳は、三門市内でもかなり高所の神社に来ていた。2人は途中で買った、ハンバーガーや飲み物に手をつける。

 

千佳「ねぇ、遊真君。近界民に攫われた人ってどうなるの?」

 

遊真「う~ん。向こうにも国がたくさんあって、千佳ほどじゃなくても、トリオン量が多い奴は結構大事に扱われるよ。でも、何でそんな事聞くんだ?」

 

千佳「えっと····た、ただ気になっただけだよ」

 

遊真「千佳って嘘つくんだね」

 

千佳「えっ?··ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの。·······えっとね···私、昔から近界民に狙われてたの。ボーダーができるよりずっと前から。

それでね、昔はボーダーが無かったから、皆、近界民に襲われてるって言っても信じてくれなかったの。····でも、一人だけ信じてくれる子が居たの。その子が居てくれたお陰で私は凄い救われた。でも、ある時···その子は私を庇って近界民に攫われてしまった。その後は、私の兄さんが必死に私を守ってくれた。修君はその時私を守るのに、協力してくれた。でも、兄さんはある時いなくなってしまった。修君は近界民に攫われたかもしれないって言ってた····それで、私は人に頼るのが怖くなったの。

········修君はボーダーに入れってよく言ってたけど、私がボーダーに入ればまた、周りの皆に迷惑をかけるかもしれないって、怖くてボーダーにも入れない····」

 

千佳の話を聞く間、遊真はずっと黙って千佳の話を聞いていた。

 

遊真「それでも、千佳は誰かに頼ることを覚えた方がいいよ。オサムに頼れないんなら、俺を頼ってくれ。ボーダーが何人かかってきても俺は負けない。····いや、迅さんは違うな····」

 

千佳「じゃあ、迅さんが敵になったらどうするの?」

 

遊真「大丈夫だよ。迅さんは敵にはならない。迅さんはそんなことしない」

 

千佳「そう、なの?」

 

遊真「ああ。俺が保証する」

 

遊真と千佳はその後も、様々なことを話した。遊真が向こうの世界にいた時のこと。自分のせいで、父親が死んだことや、父親に教わったことを。その後も更に話し込んでいると、修から、合流しようという連絡があったので、2人は神社を出て、言われた場所に向かった。

 

 

 

 

 

迅「お、来たか」

 

修「···早速で悪いが、残念な報せだ。空閑、ボーダーにお前のトリガーが狙われている」

 

遊真「まぁそうだろうな。黒トリガーなんて1個でも大変な代物だからな」

 

迅「ここで、遊真に提案があるんだ。これなら、お前がボーダーに狙われることもなくなる」

 

遊真「ふむ?その提案とは?」

 

迅「シンプルだ。遊真····お前、ボーダーに入んない?」

 

 

 





ボーダー設立時の面々はレプリカと面識がある設定。


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22話:彼等は彼女のためにチームを組む。

 

遊真「····俺が、ボーダーに?」

 

迅「おっと、さっきの三輪隊みたいな考えの本部じゃない。うちの支部に来ないか?っていう話だ。うちの隊員は向こうの世界に行ったことのある奴も多いし、向こうの世界にいいヤツが居ることも知ってる」

 

遊真「う〜ん·····オサムとチカが一緒ならいいよ」

 

迅「決まりだな」

 

僕達は4人で玉狛に移動することにした。

 

 

 

 

遊真「おおおっ!川の真ん中に建物が!」

 

迅「ここは、元々川の水質を調査する施設だったんだ。だけど、使われなくなったからボーダーが買い取って基地にしたらしい。いいだろ?」

 

迅さんはそう言って端末を出す。

 

修「今は誰が居るんですか?」ヒソヒソ

 

迅「今居るのは、宇佐美と陽太郎と雷神丸だ。ただ、もう少しすると、ボスが帰って来る」ヒソヒソ

 

千佳「2人とも何の話してるんですか?」

 

迅「いやぁ?何でもないよ?」

 

遊真「???」

 

そう言って、迅さんは入口を開ける。

 

迅「おっ、陽太郎。今誰か居る?」

 

陽太郎5歳だっけ?デカくなったな。いつも、陽太郎が居ないか寝てる時にしか来てないから、ボーダーを一旦抜けてから会ってなかった。

 

陽太郎「しんいりか?」

 

迅「こ~ら陽太郎」

 

それに、迅さんがチョップを入れる。そこで、女の人が出てきた。この人が宇佐美さんか。

 

宇佐美「あれっ?お客さん?お菓子ないかも····待って待って!やばいやばいちょっと待って!」

 

早口で捲し立てた後宇佐美さんは、バタバタ走って行った。直ぐに戻ってきて、僕達は案内された。

 

宇佐美「どら焼きしか無かったけど、これいいとこのどら焼きだから食べて食べて。アタシは宇佐美栞。よろしくね!」

 

修「(これ、この前桐絵が買ってきたやつの気がするけど、食べて大丈夫かな·····)」

 

遊真「これはこれは立派なものを」

 

千佳「いただきます」

 

そこで、陽太郎が空閑のどら焼きを取ろうとした。陽太郎は宇佐美さんから叱られ、空閑からチョップを貰った。

 

千佳「よかったらどうぞ」

 

不憫に思ったのか、千佳が自分のどら焼きを陽太郎に差し出した。そこで、陽太郎が

 

陽太郎「きみかわいいね。オレとけっこんしない?けっこんしたら、らいじんまるのおなかさわりほうだいだよ」

 

プロポーズした。しかし、陽太郎があまり言う事を聞いて貰えていない。飼い主が一番舐められている。そこで、半泣きの陽太郎に代わり、空閑が雷神丸を軽く啄くと雷神丸はあっさり倒れた。

 

千佳「何だか·······想像していたのとは違って皆仲がいいですね」

 

宇佐美さんが自信を持って言う。

 

宇佐美「そうだね。うちはスタッフが全員で10人だけの、ちっちゃい基地だからね〜。でも、はっきり言って強いよ」

 

·····特に桐絵は、僕が基本的に教えていたのだ。強くない筈がない。それは、確信しているし、彼女の強さに誇りを持っている。

 

宇佐美「うちの防衛隊員は迅さん以外に3人しかいないけど、皆A級の少数精鋭の実力派集団なのだ!」

 

この人迅さんの影響受けてないか?だが、宇佐美さんの言っていることは、言い得て妙と言えなくもない。実際にそれが、玉狛が城戸さんから見逃されてきた理由だからだ。実際は比企谷隊の影響で強く出られないからかもしれないけど。

しかし、空閑遊真という黒トリガー持ちの近界民が玉狛に入る。黒トリガーと、近界民という玉狛に介入する格好の言い分が手に入る。城戸さんはここを見逃したりしない。いつ来る?····三輪隊との戦闘で、空閑の黒トリガーが学習型なのは、バレている。ならば、早いうちに奪取する。城戸さんならそう考える筈だ。空閑が入ったなら、直ぐに刺客を差し向けてくる。僕は空閑達と一緒に居ることになったので、兄さんと迅さんに任せよう。

千佳が宇佐美さんに、向こうの世界に行ったことがあるかと、聞いていた。宇佐美さんは1回だけあると返した。遠征部隊の何処かに居たのだろう。やはり、千佳は向こうに行きたいだろう。しかし、今行っても、奴隷として何処かに売られるか、最悪母トリガーの生贄にされかねない。

 

修「千佳、急いでも仕方がない。ボーダーに入ってもいないお前じゃ、話にならない」

 

宇佐美「およ?修君も向こうに行ったことがあるの?」

 

修「·····さぁ、どうでしょうね?」

 

とりあえず濁しておこう。

 

宇佐美「····うん?」

 

そこに、林藤さんの所に行っていた迅さんが戻って来た。

 

迅「よう、3人とも。今日は親御さんに連絡して、うちに泊まってけ。ここなら、本部は直接介入出来ないし、空き部屋もたくさんある。宇佐美、案内してやって」

 

宇佐美「アイアイサ~」

 

迅「修と遊真はちょっと来てくれ。うちのボスが会いたがってる」

 

迅さんの言う通りに、宇佐美さんに千佳を任せ付いていく。迅さんに支部長室に案内される。林藤さんここに居たのか。

 

林藤「お、来たか。お前が有吾さんの息子さんか。初めまして」

 

遊真「どうもどうも」

 

林藤「お前のことは、迅と修から聞いている。うちは、お前を捕まえようだなんて考えてないよ。一つ聞きたいんだけど、お前の会いに来た知り合いってのは誰だ?」

 

遊真「モガミソウイチ·····親父が言ってた知り合いの名前はモガミソウイチだよ」

 

そこで、林藤さんが最上さんについて少し話した。そして、迅さんが持っていた風刃を机の上に置いた。

 

修「·····それが、最上さんだ···」

 

遊真「オサムはそのモガミさん、の知り合いなの?」

 

修「少しな····」

 

林藤「最上さんは、5年前にこの黒トリガーの風刃を残して亡くなったんだ」

 

空閑は、風刃に触れる。何か、寂しそうな目をしている。やはり···空閑は、有吾さんを生き返らすためにこちらに来たのだろう。しかし、ここでも黒トリガーから人間を元に戻すことが出来ないことが分かってしまった。

 

遊真「そうか····このトリガーが·······」

 

林藤「·····最上さんが生きていれば、間違いなくお前を庇っただろうし、有吾さんに恩もある。ここなら、お前を大っぴらに庇える。どうだ?うちに入らないか?」

 

これが、今出来る精一杯のことだ。しかし、空閑はこれを断った。そして、空閑は出て行った。迅さんもそれに付いていく。

 

修「···多分、空閑は有吾さんを生き返らすために来たんですよ。レプリカは、空閑の生身を治療するためでしょうけど」

 

林藤「そうか···」

 

そして、僕も支部長室から退室した。部屋に行くと、レプリカから、空閑の昔の話を聞いた。

 

 

 

 

修「······そうだったのか。僕達がカルワリアを出た直後に有吾さんは···」

 

レプリカ『私はユーマの肉体を元に戻すために来たが、ユーマは違う』

 

修「ああ···有吾さんを生き返らすためだろ?」

 

レプリカ『そうだ』

 

にしても、空閑にはもう生きている目的がない。今までの話を聞く限り、特定の趣味があったわけでも、他に大切な人がいるわけでもない。

 

レプリカ『···オサム。ユーマに生きる目的を与えて欲しい。今のユーマには、生きる目的がない』

 

修「···分かった。ダメ元で一つやってみよう」

 

レプリカ『オサム、感謝する』

 

修「別にいい。とりあえず、空閑の所に行こう」

 

レプリカ『承知した』

 

 

 

 

 

 

迅「·····お前、これからどうするつもりなんだ?」

 

遊真「そうだな〜。親父の故郷だけど、こっちだと肩身が狭いし、向こうに帰るよ。俺がこっちにいる理由もなくなった。これ以上こっちにいてもゴタゴタが増えるだけだし」

 

迅「······そうか····」

 

遊真「·······でも、この何日かは面白かったな。久々に楽しめた」

 

迅「そっか。なら、これからもきっと楽しいことはいっぱいあるよ。お前の人生には」

 

 

 

 

 

 

 

部屋からでて歩いていたところで、宇佐美さんから声をかけられた。そのまま一緒について行くと、千佳がボーダーに入りたいと言ってきた。どうやら、宇佐美さんが千佳も、迅さんにスカウトされたと思ったらしい。だが、こちらとしては好都合だ。千佳ならボーダーには、100%入れる。千佳が自衛の手段を持つなら、麟児さんの心配もかなり減る。

 

修「······そうか。やっとその気になってくれたか····」

 

千佳「···うん。ボーダーに入れば、兄さんと青葉ちゃんを探しに行くことが出来る」

 

修「····分かった。お前に力を貸す。だけど一つだけ言っておくことがある」

 

千佳「言っておくこと?」

 

修「·····麟児さんは探しに行かない」

 

千佳「!?修君····何言ってるの?」

 

修「お前にはボーダーに入ったら言おうと思って、ずっと言ってなかったことがある。麟児さんは、攫われたわけじゃない。自分の意思で向こうに行った」

 

千佳「どういう事!?····それにどうやって?」

 

宇佐美「何か、修君妙に詳しいね」

 

今までの発言から、怪しまれるのは当然だろう。

 

修「今は言えません。言ったら千佳、お前は行こうとするだろ?今のお前が行ったって、よくて捕虜。悪ければ殺される」

 

千佳「そんな······」

 

修「·····千佳、ちょっと来てくれ。」

 

千佳「う、うん····」

 

僕は千佳を連れて、屋上に来た。屋上では、空閑が手摺に腰掛けていた。

 

修「空閑」

 

遊真「?どうしたオサム、チカ?」

 

修「ちょっと話がある···········

 

 

 

 

 

 

だから、僕と千佳に手を貸して欲しい」

 

僕は、空閑に、千佳が友達を助けに行くために遠征部隊に入る手助けをして欲しいと、提案する。

 

遊真「·····オサムは、親父に似てる」

 

修「似てる?有吾さんに?」

 

遊真「親父は·····笑ってた。自分が死ぬっていう時なのに最後まで笑ってた」

 

修「それが何で似てるってなるんだ?」

 

遊真「自分が損をしてでも、人に世話を焼いてるところが。俺は、何で親父が笑ってたのか分からない。会って直接聞きたい。····オサムは何でそんなに人のために動くんだ?」

 

修「僕は、人のためにやってるわけじゃない。自分がこうだと決めたことに従ってるんだ。結局自分のためなんだよ」

 

遊真「なるほど·····オサムらしいな」

 

そう言って、空閑が立ち上がる。

 

遊真「······さて、なら俺も手伝うか。チームを組むってのも面白そうだ」

 

修「決まりだな。それじゃあ、これからよろしく」

 

 

千佳「じゃあ、隊長はどうなるの?」

 

遊真「オサムだな」

 

修「僕?」

 

千佳「そうだね。修君がいいと思う」

 

遊真「俺はそうするべきだと思う」

 

修「そうか·····なら、早速林藤さんの所に行こう」

 

遊真「さっき断ったばっかだから、何か恥ずかしいな」

 

修「大丈夫だ。そんなこと絶対気にしない」

 

僕達は支部長室へ行った。そこには、僕の転属用の書類と、空閑と千佳の入隊用の書類が置いてあった。

迅さんには全部お見通しらしい。

 

遊真「迅さん··この未来が視えてたの?」

 

迅「言ったろ?楽しいことはたくさんあるって」

 

僕達が書いた書類を、林藤さんが整える。

 

林藤「····よし。正式な書類は保護者の書類が揃ってからだが·····支部長として、ボーダーへの参加を歓迎する」

 

僕達を一瞥し、更に言う。

 

林藤「たった今からお前達はチームだ!このチームでA級及び、遠征部隊選抜を目指す!」

 

 

 

 

 

 

 

 

迅「もしもし?」

 

八幡『どうしました?』

 

迅「3人がチームを組んだ。目標は遠征部隊だ。千佳ちゃんの友達を探しに行くらしい」

 

八幡『そうですか。次は俺達の出番ですね』

 

迅「ああ。襲撃は早ければ明日だ」

 

八幡『了解』

 

 



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閑話4:日常。



今回は、ギャグっぽいナニカ編です。


 

八幡と陽乃が婚約したばかりの頃。

 

八幡「にしても、加古さんが飯をご馳走してくれるってまた何でだ?」

 

陽乃「まぁ、私達の婚約祝いと、八幡の退院祝いってところじゃない?」

 

この頃、比企谷隊の3人は加古隊隊室からちょくちょく運び出される堤や太刀川が何故、悪夢を見ているかの様な呻き声をあげて苦しみながら運び出されているのかを知らなかった(喋ろうとした人が皆体調を崩すので、理由を聞けていなかった)。

 

小町「望さんって料理得意なの?」

 

陽乃「う~ん。望はある程度自炊してるって聞いたからそこそこ得意なんじゃない?私は八幡の料理が一番だけど♡」

 

八幡「ありがとよ///」ナデナデ

 

陽乃「♪~」

 

 

 

 

 

加古「3人ともいらっしゃい。よく来たわね」

 

八幡「いえいえ。呼んでくれてありがとうございます」

 

小町「それで!料理はまだですか!?」

 

八幡「やめてくれ小町·····恥ずかしいから····」

 

陽乃「アハハ、小町ちゃん涎垂れてるよ」

 

小町「はっ!失礼しました!」

 

加古「いいのよ、それより料理だったわね。今持って来るわ」

 

八幡「ありがとうございます」

 

 

八幡「小町····お兄ちゃん、小町がそんなはしたないなんて思わなかったよ···」

 

小町「しょ、しょうがないじゃん!楽しみだったんだもん!」

 

八幡「何故お前がそこまで楽しみにしてるんだ·····」

 

加古「はいはいそこまで。料理は逃げないわ」

 

八幡「小町がすいません····」

 

小町「お兄ちゃんがすいません····」

 

陽乃「まぁまぁ。そういえば、双葉ちゃんは?」

 

加古「双葉は緑川君と模擬戦中よ。今はそれより料理ね」ドン!

 

この時、比企谷隊の3人は何故堤や太刀川が運び出されているのかを身をもって知った。

 

八幡·陽乃·小町「「「!!!!!!??????」」」

 

加古が出した料理?は禍々しいオーラを放っていた。

 

陽乃「の、望?えっと····これは?」

 

加古「『チョコミントイクラ納豆炒飯』よ!」

 

小町「あー!こ、小町これから茜ちゃんと遊ぶ約束がー!」

 

人間は、時には自分に降りかかる火の粉を人に擦り付けることもある。

 

八幡·陽乃「「······」」ガシッ

 

しかし、そう簡単にいくわけではない。

 

小町「ふぇ!?」

 

八幡·陽乃「「逃がさないぞ(わよ)?」」

 

小町「そ、そんな·····駄目?」ウルウル

 

八幡·陽乃「「ウッ!可愛い!···だが(でも)駄目だ!(よ)」」

 

2人揃って、妹(義妹)の上目遣いと涙目の2コンボにやられそうになるが、今回ばかりは、そうはいかない。

 

小町「そんなぁ····」

 

加古「小町ちゃん」スッ…

 

小町は必要以上に騒いだので、加古に捕まった。

 

小町「は、はい?···ムグッ!?」···バタン

 

加古「あら?どうしたの?」

 

八幡「き、きっと····加古さんの料理が美味しすぎて昇天したんですよ····」ガクガクブルブル

 

陽乃「八幡!?」

 

八幡「俺も、···いただきますね····(何だこれ······人がこんなもの作れるのか!?)」バタン

 

陽乃「八幡?八幡!?」

 

加古「ほらほら、陽乃も」スッ…

 

陽乃「ングッ!?····(何これ···毒!?)」バタン

 

加古「あら?そんな美味しかったかしら?」

 

 

 

 

その後、3人は本部の医務室に運ばれた。担当医の話では、3人ともこの世の果てを見たかのような絶望を口にしていたという。····3人が加古炒飯被害者の会に入会したのは、言うまでもない。

 

 

 



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23話:迅悠一は、暗躍する。

作者の趣味で書いているのであしからず。

有吾は、遊真に黒トリガーを託す直前(本作では5年前)に玄界に来て、ボーダー設立に立ち会ってたことにします。


修達がチームを組んだ翌朝。

 

宇佐美「さて諸君!諸君はこれからA級を目指す!そのためには····」

 

宇佐美さんは、何故か一息つく。

 

宇佐美「既にB級になっている修君を除く、千佳ちゃんと遊真君にはB級に上がってもらわなければならない!」

 

正式にチームを組むには、B級以上の正隊員にならなければならない。訓練生のC級は、そもそも基地外でトリガーが使えないので当然といえる。そして、A級になるにはB級ランク戦で勝ち上がらなければならない。これ考えたの有吾さんだけど、5年前のあの少人数の中でよく考えたな。人数的に出来なかったから。空閑は黒トリガーを使えばS級になってしまうので、チームを組めない。流石に空閑のトリガーまで特別扱いは無理だろう。僕がS級にならないように説得するのも大変だったのだ。空閑は今狙われてるけど。

そこで、千佳のポジションの話になった。宇佐美さんが千佳が何が得意かとか聞いていたが、千佳が答えられなかったので僕が答えた。

 

修「千佳は、忍耐力とか柔軟性がありますね。あとは、集中力もあると思います」

 

宇佐美「なるほど·······私目の分析によりますと千佳ちゃんに一番合うポジションはs「スナイパーだな」······ちょっと迅さん!アタシが言いたかったのに!」

 

迅「もったいぶったお前が悪い」

 

2人が軽口を叩いていると、大きな足音が向こうから聞こえてくる。これは桐絵だ。機嫌を損ねている時の。今の桐絵だと、何かばらすかもしれない。まずい。

 

桐絵「あたしのどら焼きがな「す、すいません!ちょっと電話で!出てきます!」···へ!?」

 

仕方がないので、かなり慌てていたがアイコンタクトで強引に黙らせた。後ろから来ていたレイジさんも。

 

宇佐美「どしたの?あの子」

 

桐絵「··········(びっくりした。今日は宇佐美もとりまるもいるのに何でいるの?)」

 

レイジ「さあな」

 

烏丸「?」

 

 

 

 

僕は、基地の外まで出て来た。

 

修「·····もしもし兄さん?」

 

八幡『修か。どうした?』

 

修「空閑と千佳が玉狛に入った。僕も玉狛に転属する」

 

八幡『そうか。これから演技続けた方がいいか聞いてきたんだろ?』

 

修「うん····」

 

八幡『なら、大丈夫だろ。空閑は狙われてるし、アフトクラトルが何時来るかも分からん。アイツらが来たら、流石に演技だなんだって言ってられん』

 

修「そう。なら、宇佐美さんと烏丸さんに喋って大丈夫だね」

 

八幡『ああ。俺はこれからやることがあるから、これで』

 

修「分かった。ありがとう。義姉さんにもよろしく伝えて」

 

八幡『ああ。じゃあな』

 

 

 

 

修「林藤さん、いいですか?」

 

応接室に戻る前に、僕は支部長室に来た。

 

林藤「お?どうした?修」

 

修「玉狛の人に僕のことを話そうと思います」

 

林藤「そうかそうかー。これで、小南と堂々とイチャイチャ出来るなー?」

 

修「なっ!ちょっと!·····ハァ、まあとりあえず林藤さんも来てください。僕一人だと説明が面倒ですので」

 

林藤「····お前、兄貴に似てきてないか?」

 

修「言わないでください。自覚はあります」

 

林藤「(あったのか自覚)····まぁいいぜ。待たせてるだろうし、早く行こう」

 

修「ありがとうございます」

 

 

 

 

僕は、林藤さんと一緒にリビングまで戻って来た。

 

遊真「お、電話終わったのか?」

 

修「ああ。先ず、最初に·····」

 

烏丸「??」

 

修「·····改めまして。桐絵、迅さん、レイジさん、林藤さん、三雲 修ただいま帰りました!」

 

「「「「おかえり(なさい)!」」」」

 

4人が、笑顔でそう返してくれた。その後に、桐絵は、抱きついて来た。

 

桐絵「修、おかえり!」ガバッ

 

修「ただいま、桐絵」

 

桐絵は抱きついてくる。

 

迅「····2人がラブラブなのは知ってるからさ。イチャイチャは後にしてくれない?」ハァ

 

修・桐絵「「·····」」///

 

烏丸「あれ?小南先輩そいつのこと知ってるんですか?」

 

桐絵「知ってるも何も、修は恋人よ!」

 

宇佐美「恋人!?」

 

修「桐絵、そんな大声で言わなくても····」

 

遊真·烏丸「「ほうほう」」ニヤニヤ

 

遊真「でも、何でただいまなんだ?」

 

修「ああ、今説明するよ」

 

 

 

 

 

それから、僕は幼少期から近界を旅していたことや、ボーダーの設立時のメンバーだということを話した。念のため、未来さんのことは黙っておく。確か、桐絵も知らない筈だ。この後、林藤さんは支部長室に戻った。

 

遊真「·····なるほど。向こうにいたなら、親父と知り合いなのも頷けるな」

 

宇佐美「ハチ君に弟なんていたんだね~」

 

烏丸「にしても、小南先輩の師匠ですか。とてもそうは見えないんすけどね」

 

桐絵「何か文句ある?」ギロ

 

烏丸「あ、すみません。何でもないです」

 

修「まぁまぁそれくらいにして」

 

桐絵「分かったわ」

 

宇佐美「小南の聞き分けがいい!?」

 

桐絵「あんた、あたしを何だと思ってるわけ!?」

 

宇佐美「直ぐ騙されちゃう子」

 

桐絵「ウウッ····修〜!」ガバッ

 

修「はいはい」

 

何か、桐絵を見てると凄い癒される·····

 

修「まぁ、この話は僕や兄さん達がいない時は秘密で」

 

烏丸「いたらいいのか?」

 

修「僕達で判断してどこまでかで、ストップを掛けますので」

 

烏丸「そうか。分かった」

 

修「ありがとうございます」

 

迅「さてと、やっと本題に入れる」

 

修「そう言えば、本題じゃなかったですね····」

 

迅「こいつらは、分け合ってA級を目指してる。これから厳しい世界に身を投じるわけだが、C級ランク戦までまだ時間がある。正式入隊日が1月8日。それまで3週間だ。この3····じゃない。2人を、レイジさん達が師匠になって鍛えてもらう」

 

桐絵「え!?ちょっと待って!あたしこの2人の師匠になるなんて一言も····」

 

迅「これは、ボスからの命令だ」

 

桐絵「え····ならおさ「修は駄目」何で!?」

 

迅「それだと、お前が弟子だろ」

 

桐絵「そもそも弟子なんだからいいじゃない!」

 

修「まぁ、僕も桐絵の師匠になってから学ぶことも多かったよ」

 

桐絵「う~、ならこいつにするわ。見た感じアンタはそこそこ強そうね。あたし、弱い奴は嫌いなの」

 

遊真「ほほう。お目が高い」

 

レイジ「じゃあ俺は····」

 

千佳「お、お願いします!」

 

烏丸「俺はどうすれば?」

 

迅「修と軽くやってみたら?」

 

烏丸「え?俺死にませんよね?」

 

修「僕を何だと思ってるんですか?」

 

烏丸「悪い。冗談だ。じゃあ俺達はこっちだ」

 

修「分かりました」

 

遊真「そういえば、迅さんはコーチやらないの?」

 

迅「ん?俺はちょっとやることがあってな。今回は抜けさせてもらうよ」

 

修「迅さん、大丈夫ですか?」

 

迅「大丈夫だって。今回は休んでな。京介を軽くボコせば?」

 

修「僕はそこまで悪趣味じゃありません」

 

 

 

 

 

 

僕達は、地下の訓練室まで来た。今思ったけど、何で川の上にあるのに地下があるんだ?これもトリガーかな。スピラスキアみたいに空間に干渉出来るものもあるからトリガーだろう。スナイパー組に容量を割いてるから殺風景だけど、やっぱりトリガーって凄いな。

 

烏丸「じゃあお前の力を見せてくれ。あの4人があそこまで言ったんだ。どれくらいなのか見てみたい」

 

修「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

修「烏丸さんも結構強いですね」

 

僕達が一息ついた時には、10時を回っていた。

 

烏丸「おい。お前が言うと皮肉にしか聞こえないんだが」

 

修「あ····なんかすみません」

 

そこで、宇佐美さんから水をもらい一口飲んだ時、別の訓練室から桐絵と空閑が出て来た。

 

桐絵「ありえない····あたしが····」

 

修「桐絵?」

 

烏丸「?」

 

遊真「····勝った」

 

烏丸「小南先輩負けたんですか?」

 

桐絵「ま、負けてないわよ···」

 

遊真「10本勝負して、最後に1本だけ取れた。トータル9対1」

 

桐絵と、ボーダーのトリガーで、しかも初めてで1本取れたのか。空閑も凄いな。

 

遊真「にしても、オサムがコナミ先輩の師匠か」

 

修「?それがどうかしたのか?」

 

遊真「オサムとコナミ先輩は何本勝負でどんな感じ何だ?」

 

修「う〜ん···最後にやったのは4年前だからな···その時は94対6、が桐絵の最高だったかな····」

 

烏丸「マジですか、小南先輩····」

 

桐絵「まだ、10本やっても1本か2本くらいが限界だと思うわ····」

 

修「じゃあ久々にやってみようか」

 

桐絵「ホント!?今日こそ勝ち越すわ!」

 

修「ハハッ。楽しみにしてるよ」

 

桐絵「早く!行くわよ修!」

 

修「分かった分かった」

 

 

 

 

烏丸「········」ポカーン

 

桐絵「また負けた·····10対0だなんて、修あの時より全然強くなってない!?」

 

修「そうかな?というか、レイガストは使いにくいから選んだだけなんだけど····」

 

遊真「なるほど。オサム俺より全然強いな」

 

修「そんなことないって。空閑が自分のトリガー使ったら全く分からない」

 

桐絵「でも、修って、昔迅が風刃使っても無傷で倒せたわよね?」

 

修「あれは、僕がサイドエフェクト使ったからだよ」

 

桐絵「嘘よ!前トリオン体でサイドエフェクト使えない設定でやって瞬殺してたじゃない!」

 

烏丸「え?迅さんが風刃使っても勝てないんですか?」

 

桐絵「多分、天羽も勝てないわ。忍田さんとボスを纏めて倒せるのよ?」

 

烏丸「マジですか·····」

 

遊真「ふむ。オサムがそうとう強いのが分かった。というか、もしかしてあの噂ってオサムか?」

 

桐絵「何よ噂って」

 

遊真「向こうでは共通の知識になってるくらい強い人達がいるって親父が言ってたんだよ。確か、そいつらの誰かがトリガー使い最強だって」

 

修「それは多分兄さんだよ」

 

桐絵「でも、修も比企谷と同じくらい強いじゃない」

 

修「う~ん?そうかな?」

 

桐絵「そうよ。····そうに決まってるわ!」

 

修「ありがとう。桐絵に言ってもらったら自信が出てきたよ」ナデナデ

 

桐絵「あっ///····♪〜」コテン

 

桐絵が僕の肩に頭を乗せてきた。肩にかかる重みがとても心地よい。

 

遊真「なるほど。これがイチャイチャというやつですか」

 

烏丸「ああ、····見ているこっちが恥ずかしいくらいだ。(迅さん達は4年前からこれを見てたのか·····)」

 

 

______________________

 

 

 

バチバチッ!!!

何も無い空間が派手な音を立てて門が開く。しかし、その門は普通とは違う。門から出て来たのは遠征艇である。

 

鬼怒田「待ちくたびれましたな」

 

「遠征部隊の帰還です」

 

 

 

風間「お納めください城戸司令。こちらが今回の遠征の収穫です」

 

城戸「確かに受け取った····」

 

その後、しばらく話をした後に、城戸は本題を切り出した。

 

城戸「さて、帰環早々で悪いが、お前達に新しい仕事がある。現在玉狛支部にある黒トリガーの奪取だ。三輪隊長説明を」

 

三輪「はい。12月14日午前、追跡により、近界民を発見。本隊と交戦したところ、「能力を学習する」能力の黒トリガーを確認。その後、近界民と面識のあった玉狛支部の迅隊員により停戦。近界民は迅隊員の手引きの下、玉狛支部に加入」

 

風間「·········今回の問題は近界民が黒トリガー持ちだということだな。玉狛に黒トリガーが2つともなれば、パワーバランスが逆転する」

 

風間は、隣でニヤニヤしていた太刀川を蹴りながら言う。

 

城戸「そうだ。それは許されない、何としてでも····と言いたいところだが、それは出来ない。玉狛からパワーバランスを少しでも取り戻すのが目的だ」

 

風間「どういうことです?玉狛にあるのは風刃一つではないのですか?」

 

城戸「それは違う。実質的には、玉狛には黒トリガーが風刃含め5本ある。我々でも介入が難しい」

 

太刀川「5本!?」

 

城戸「そうだ。そして、今回入隊した近界民には三雲修がついている。彼は、幼少期より近界を渡り歩き、我々とは次元の違う強さを身につけている。並の黒トリガーなら通常トリガーで倒せるほどだ。玉狛と戦争になるのはまずい」

 

当真「それじゃ、どうすれば?」

 

風間「黒トリガーは報告を聞く限り、生き帰りは一人で行動している。そこを襲撃する。黒トリガーさえ、手に入れれば怖くはない」

 

太刀川「なるほど。···なら今夜にしましょう」

 

三輪「太刀川さん。あんたは油断している。敵は黒トリガーだ」

 

太刀川「黒トリガーは学習型なんだろ?なら早い方がいい。今も玉狛でこちらのトリガーを学習しているかもしれん。それに、監視してる米屋と古寺も疲れるだろ」

 

城戸「いいだろう。太刀川、今回はお前が指揮をとれ。ただし、比企谷隊の介入に気を付けろ。以上だ」

 

_____________________

 

 

僕達は玉狛で千佳のトリオン量を改めて測定していた。

 

宇佐美「おおー!」

 

桐絵「何この数値、黒トリガーレベルじゃん」

 

修「まぁ、実際にこれが原因で何度も狙われていたわけだし」

 

遊真「そういうオサムは?この前測らせてくれなかったじゃん」

 

修「しょうがないだろ。近くに三輪隊が居たんだから」

 

遊真「じゃあ、今ならいいだろ」

 

修「う~ん、分かったよ」

 

 

 

遊真・烏丸・宇佐美「「「··········」」」

 

修「何ですかその顔·····」

 

烏丸「いや、お前は更にやばいだろ。何だこの数値。黒トリガーを遥かに上回ってるぞ」

 

修「まぁそれが理由で3歳の時に攫われた理由ですが」

 

千佳「3歳····」

 

レイジ「とにかく、雨取のトリオン量が超A級なのは分かった。忍耐力と集中力もあって、性格もスナイパー向き。戦い次第ではエースにもなれる」

 

桐絵「うちの遊真だって強いわよ!今だって余裕でB級上位くらいの強さがあるし、ボーダーのトリガーに慣れれば直ぐにA級よ!」

 

両方ともべた褒めだな。

 

桐絵「とりまるは····聞くまでもないわね。修と戦ってどうだった?」

 

烏丸「いやもう、全く勝ち目が見つからないんですが。そういえば、こいつが小南先輩のこと可愛いって言ってました」

 

桐絵「え!?ホント!?」

 

修「言ってないけど、桐絵が可愛いのは事実だよ」

 

桐絵「修〜!」ガバッ

 

修「ハハハッ」ナデナデ

 

桐絵「·····///」

 

烏丸「そうだった。この2人恋人だったの忘れてた」

 

小南を弄ろうとして、失敗した烏丸だった。

 

 

_______________________

 

 

『目標地点まで残り1000』

 

暗闇に包まれた警戒区域を疾走する幾つもの人影があった。言うまでもなく、本部司令・城戸正宗より、黒トリガーの奪取を命じられた部隊である。

 

太刀川「おいおい三輪。もっとゆっくり走ってくれよ。疲れちゃうだろ」

 

出水「何でトリオン体で疲れるんすか····」

 

太刀川「······にしても、何で城戸司令は比企谷隊に気を付けろなんて言ったんだ?確かに、忍田派が向こうに着くかもしれんけど」

 

風間「今そんなことはどうでもいい。任務に集中しろ」

 

太刀川「そんなこと言わないで風間さ····止まれ!」

 

疾走する彼らの目の前には、迅悠一が立っていた。

 

三輪「·····迅!」

 

太刀川「なるほど。そうくるか」

 

迅「太刀川さん久しぶり。皆さんお揃いでどちらまで?」

 

 

 

 



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24話:彼は彼らの考えと相容れないのか。


運営が非公開にしてたのに一ヶ月気付かなかった俺氏。




 

玉狛に仮入隊した黒トリガーを持った近界民、空閑遊真。彼のトリガーを狙う太刀川達の前に現れたのは、玉狛支部所属がS級隊員、迅悠一だった。

 

迅「········太刀川さん久しぶり。皆さんお揃いでどちらまで?」

 

迅は風刃に手を掛けながら口を開いた。対峙している太刀川達は全員が臨戦態勢に入っている。

 

当真「迅さんじゃん、何で?」

 

迅「よう当真。冬島さんは?」

 

当真「隊長なら船酔いでダウン。今頃寝てるんじゃない?」

 

この場にいない冬島は乗り物に滅法弱いため、現在本部の医務室で薬を飲んで、仮眠中である。諏訪は、このおっさんはいい歳して夜通し俺らと麻雀してるからでは、と思ったことがあるとかないとか。

 

風間「余計なことを喋るな当真」

 

軽く答えた当真に風間が釘を刺す。

 

迅「後輩にちょっかい掛けに来たんだろ?かなりいい感じだから邪魔しないで欲しいんだけど」

 

太刀川「それは無理だ······と言ったら?」

 

分かりきったことを聞いた迅だったが、結局自身の予想通りの答えだった。

 

迅「なら仕方ないな。実力派エリートとして、守らなきゃね」

 

迅は少しばかり目を細めて太刀川に答える。

 

風間「そうか·····隊務規定違反で処罰を受ける覚悟はあるんだな?」

 

ボーダーには、模擬戦(ランク戦など)を除く隊員同士の戦闘を堅く禁ずる。という隊務規定がある。

 

迅「風間さん、それならうちの後輩だってボーダー隊員だ。あんたらがやろうとしている事だって立派なルール違反じゃないのか?」

 

迅の主張に対して、三輪に強い怒りがこみ上げる。三輪の頭には4年前のあの光景が浮かんだ。何も出来ず、ただ見ていることしか出来なかったあの日の光景を。

 

三輪「何がボーダー隊員だ!ふざけているのか!近界民を匿っているだけだ!」

だから近界民に目の前で最愛の姉を殺された三輪にとって、近界民は到底許せるものではない。

 

迅「近界民を入隊させてはならないなんてルールはない。あいつは正式な手続きで入隊した真っ当なボーダー隊員だ。あんた達に文句は言わせない」

 

迅は風間と太刀川と押し問答を繰り返す。

 

太刀川「いや、お前の後輩はまだ正式な隊員じゃない。玉狛で正式手続きが済んでいようが、本部はまだ認めてない。お前の後輩はまだ黒トリガーを持った野良近界民だ。戦っても何も問題ないな」

 

出水「(それ、あんたが戦いたいだけでは?)」

 

流石は戦闘狂、と出水は思った。

 

三輪「(····何で俺が太刀川さんを苦手としているのかをよく分かった。似てるんだ。この2人のやり方が·······)」

 

迅「·········やっぱりそうなっちゃうか········」

 

風間「大人しく近界民の黒トリガーを渡した方が身の為だ。それとも、黒トリガーを使って戦争でもする気か?」

 

迅「そっちにも事情があるんだろうけど、こっちだって事情があるんだ。そっちからしたら単なる黒トリガーでも、本人からしたら命より大事なものだ。戦争しようなんて考えちゃいないが、大人しく渡すつもりはないね」

 

迅は風間や太刀川に飄々として答える。

風間「抵抗を選ぶか·········遠征部隊は黒トリガーに対抗出来ると判断された部隊だ。他の連中ならいざ知らず·····俺達をお前一人で相手に出来るとでも思っているのか?」

 

迅「俺はそこまで自惚れてないよ。あんたらの強さならよく知ってる。三輪隊までいるんだ。俺が風刃を使っても勝率は五分にも満たないだろうね。

 

 

······俺一人なら、の話だけど」

 

「「「「「「「!!!」」」」」」」

 

風間「何!?」

 

ザッ!!!

 

嵐山「嵐山隊現着した!忍田本部長の命により、玉狛支部に加勢する!」

 

太刀川「忍田本部長と手を組んだのか····!」

 

そこに、襲撃部隊である彼らの後ろから、もう一つ足音がする。

 

ストッ。

 

「「「「「?」」」」」

 

八幡「·····玉狛支部所属、比企谷隊隊長比企谷八幡。迅悠一に加勢する」

 

八幡は、迅と、襲撃部隊を挟み込む位置に降り立つ。

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

三輪「玉狛····だと!?」

 

八幡「·····俺は最初から玉狛だ」

 

迅「いいタイミングだ。嵐山、八幡」

 

八幡「他ならぬ修のためですからね」

 

嵐山「三雲君のチームの為だからな。彼には大きな恩がある」

 

迅「木虎も修の為?」

 

木虎「命令だからです!······それよりも、比企谷隊は玉狛だったんですか?」

 

八幡「派閥そのものが出来た時からな」

 

三輪「比企谷!何のつもりだ!」

 

八幡「向こうもいい奴がいるからな。修に言われたんだろ?いつまで子供みたいなこと言ってるのか~って」

 

三輪「何故それを····!」

 

 

迅「悪いね。八幡と嵐山隊が居ればこっちが勝つよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

 

太刀川「未来視か。本気のお前は久しぶりだな」

 

太刀川は、腰の弧月に手を掛ける。

 

太刀川「··········お前の予知を覆したくなった」

 

太刀川は弧月を抜く。同時に全員が臨戦態勢に入る。八幡も弧月を抜いた。迅は風刃に手を掛け笑っている。

 

迅「·····やれやれ。そう言うと思ったよ」

 

ボーダーのトップ部隊の戦いが端を開いた。

 

 

 

戦闘が始まって、迅さんが、太刀川隊と風間隊と当真さんの相手をしている。冬島さん居なくて良かった。トラッパーはめんどいからな。

 

迅『八幡は、嵐山達と一緒に三輪隊の相手してくれ』

 

八幡『了解。今んとこプランAですね?』

 

迅『ああ。頼んだぞ』

 

八幡『比企谷了解。ついでに、こっちに来るであろう出水も対処します。そのうち当真さんも来るだろうし』

 

迅『オーケー。頼りになるわ』

 

八幡「旋空弧月」

 

旋空を1秒で放つ。いつもより長い時間だから慣れんな。

 

出水「うおっ!危ねぇな比企谷」

三輪「チッ·····」

 

八幡「バイパー」

 

バイパーを威力重視で撃ち、こちらに来るように仕向ける。

 

八幡「どうした三輪。そんなもんか?」

 

三輪「比企谷っ!···」

 

三輪が弧月で斬りかかってくる。三輪は激情しやすい性格だからこういうのは、直ぐ食いついてくる。

 

八幡『嵐山さん。こいつらは出来るだけ迅さんから引き剥がします』

 

嵐山『分かった』

 

八幡『迅さん、そっちは任せます』

 

迅『あいよ~』

 

 

 

 

当真が迅を狙撃する。だが、夜の住宅街だったこともあり迅は易易と狙撃を回避する。

 

当真「うへぇ、流石迅さん。嫌な地形選ぶぜ。全然射線通んねぇ」

 

太刀川「にしても、なかなか削れないな」

 

風間「それに、迅はまだ1発も風刃を撃っていない。トリオンを温存する気だろう」

 

菊地原「風間さん。こいつら無視して黒トリガー奪いに行っちゃ駄目なんですか?うちの隊だけでも」

 

風間「····玉狛には木崎達がいる。ここで、戦力を分散させるのは危険だ」

 

太刀川『三輪、米屋と古寺の合流はまだか?』

 

三輪『もうすぐ合流出来ます』

 

太刀川『なら、お前らはこのまま比企谷達を殺れ。出水は三輪達と一緒に行け』

 

出水『りょ〜か~い』

 

風間「玉狛と忍田派が手を組んだということは、黒トリガーに本部隊員の3分の1。更に玉狛第一と並んで最強と歌われる比企谷隊。戦力の上で完全に我々を上回っている。黒トリガー奪取の失敗は許されない」

 

 

 

 

三輪「比企谷!何故、近界民を庇う!?」

 

三輪が弧月で斬りかかってくる。弧月で受け止め、三輪の腹に蹴りを入れる。三輪は体勢を立て直し、アステロイドを撃ちながら再度斬りかかってくる。

 

八幡「何でかって?····お前と違ってただ近界民を恨むだけなら意味がないことを理解しているからだ」

 

三輪「なっ!?近界民を恨むことの何が悪い!」

 

八幡「そういうとこなんだよっ·····!」

 

俺は三輪の懐に突っ込み、思いっきり弧月を斜めに振り下ろす。三輪はぎりぎり受け止めたが、吹き飛んで三輪の弧月の刃が折れた。 三輪の躰からは、所々トリオンが漏れ出している。

 

三輪「ぐっ!」

 

······俺は、三輪のような人を多く見てきた。そして、俺自身も実の両親を目の前で殺され、向こうの世界でそこでの父・比企谷時宗を目の前で失ったので、三輪の気持ちは痛い程分かる。俺だって全ての近界民を許してる訳ではない。だが、俺は三輪とは違う。俺には支えてくれる人がいた。陽乃や修がその最たる人である。だから、俺は三輪と違い、前を向くことが出来た。そして、復讐が何も成さないことにも気づくことが出来た。三輪にも、もっと寄り添ってやれる奴がいたら変わるかもしれない。

 

出水「アステロイド!」

 

出水がアステロイドの両攻撃を撃つようにキューブを出す。そこに、佐鳥が狙撃する。が、出水は両攻撃に見せ掛けた両防御で佐鳥の狙撃を防ぐ。

 

出水「佐鳥見っけ」

 

そこに米屋が合流した。古寺はそのまま迅さんの方へ行ったな。

 

米屋『秀次、状況は?』

 

三輪『相手は嵐山隊と比企谷だ。しかも······比企谷は玉狛派だった·····』

 

古寺『ホントですか!?比企谷隊が玉狛!?』

 

米屋『マジか、ハッチが居るとなるとめちゃめちゃキツイな』

 

 

米屋「よっすハッチ」

 

八幡「敵に挨拶すんなや····狙撃!」

 

ぎりぎりで首を捻って躱す。危ねぇ。当真さんもう来たのか。

 

当真「あーれ?当たんねーな」

 

八幡「そう簡単に当たりませんよ」

 

 

八幡『嵐山さん。米屋がこっちに来ました。古寺はそのまま迅さんの方に』

 

嵐山『分かった。藍は賢のサポートだ!』

 

木虎『了解!』

 

木虎は佐鳥のサポートへ向かう。

 

嵐山『充はこのままいくぞ!』

 

時枝『了解しました』

 

迅『全員、プランBだ』

 

『『『!···了解!』』』

 

 

 

数分前。

 

菊地原『おかしいですよ、風刃を一発も使わないなんて』

 

太刀川『菊地原の言う通りだが、迅が考えている事を俺達が考えても仕方ない。今は···』ニッ

 

そう言って太刀川はニヤリと笑い迅に斬り掛かる。迅も笑みを浮かべながら受け止める。太刀川と鍔迫り合いになっている迅に、風間隊も連携して斬り掛かる。

 

歌川「アステロイド」

 

歌川が、射手用トリガーのキューブを浮かべる。だが、迅が自分と歌川の間に風間を吹っ飛ばした。歌川は展開したキューブを消す。その間に、迅は更に下がる。

 

太刀川「随分と大人しいな迅。昔のがプレッシャーあったぞ」

 

太刀川達も、迅と一旦距離をとる。

 

菊地原「戦う気ないんですよ。単なる時間稼ぎ。今頃玉狛の連中が近界民を逃がしてるんだ」

 

風間「いや、守りに徹しながらもこちらのトリオンを削りに来ている。こいつは俺達をトリオン切れで撤退させるつもりだ」

 

太刀川「········なるほど。撃破より撤退の方が本部との摩擦が少なくて済む。戦闘中に後始末の心配とは」

 

迅のプランAは、風間の推測通り襲撃部隊をトリオン切れで撤退させることだった。但し、それは洞察力に優れた風間に見破られてしまった。

 

菊地原「風間さん、やっぱりこの人は無視して玉狛に行きましょう。目標は近界民の黒トリガー。この人とやったって時間の無駄でしかないです」

 

風間「確かに····このままでも埒が明かない。玉狛に向かうか·····」

 

風間の狙いは迅の逃げ道を封じることである。だが、ここにいるのは、S級隊員の迅悠一。そう易々と通すわけではない。

 

迅「·······やれやれ、やっぱりこうなるか」

 

太刀川・風間「「!!!」」

 

迅の持つ風刃から複数の光の帯が現れる。そして、迅は躊躇なく風刃を振るう。全員が身構える。が、次の瞬間、塀から伝播した斬撃が菊地原の首を刎ねた。菊地原はそのまま緊急脱出した。

 

太刀川「···出たな風刃」

 

太刀川は薄笑いを浮かべる。迅も薄笑いを浮かべているが、迅の目には先程とは明らかに違う、強い光が宿っている。

 

 

迅「····仕方ない。プランBだ」

 

 

 

 



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25話:彼は過去を語り、彼は迷う。

八幡『誰が緊急脱出しました?』

 

迅『菊地原だ』

 

八幡『迅さん、この後は思いっきりやっちゃっていいですね?』

 

迅『ほどほどにしといてくれよ〜』

 

嵐山『頼んだぞ比企谷』

 

八幡『とりあえず出水を仕留めます。嵐山さん達は俺の追撃で』

 

嵐山『分かった』

 

時枝『分かりました』

 

 

八幡「バイパー」

 

バイパーを125個に分割して放つ。出水は後退しつつ俺に攻撃してくる。

 

出水「アステロイド!」

 

出水は64個に分割したアステロイドで攻撃してきた。シールドで防いで、スコーピオンを構える。

 

出水「比企谷ってスコーピオンも使えたんだな」

 

八幡「まあな。それよりいいのか?」

 

出水「何が?」

 

八幡「今回は綾辻がこっち側だぞ?」

 

出水「·····し、仕方ないからな。後で、好きなだけ奢る」

 

あ、ちょっと動揺してる。この辺まで考えてなかったのね。

 

八幡「そうかよ。後、動くなよ?」

 

出水「は?何言って·····」スパッ

 

そう言って出水は右腕を前に出したが、出水の右腕は出した通りに切れた。

 

八幡「悪いな。話してる間にお前の身体の中にモールクロー通した。無理に動けばそのまま緊急脱出だ」

 

出水「ハァ!?····しょうがねぇな···ぐあっ!」

 

そう叫び、出水は後ろに跳ぶ。どうやら、体内にシールドを張ったらしい。モールクローを強引に折ったようだ。だが、目に見えて、出水からはトリオンが漏れている。

 

八幡「動くなっつったのに」

 

出水「·······そう言われて動かない奴が何処にいる。相変わらずいやらしいな比企谷」

 

八幡「そうかい。弧月」

 

スコーピオンを消し、再度弧月を出す。出水に斬り掛かろうとした時に狙撃をされた。当真さんか。弧月を後ろに振って、弾を叩き消す。当真さんはイーグレットしか入れてなかった筈だから、弧月でも弾を斬れる。アイビスは無理。

 

出水「無茶苦茶だな比企谷」

 

八幡「褒め言葉だ」

 

その時、2人緊急脱出した。

 

出水「!!」

 

八幡「メテオラ」

 

出水「うおっ!」

 

出水に目眩しでメテオラを放ち、一旦後退する。

 

 

八幡『嵐山さん、誰が緊急脱出しました?』

 

嵐山『充と米屋だ』

 

八幡『分かりました。木虎は?』

 

嵐山『当真を追っている』

 

八幡『分かりました』

 

 

 

一方の出水も内部通信をしている。

 

出水『三輪、緊急脱出したの誰?』

 

三輪『陽介と時枝だ。後、当真さんが木虎に追われてる』

 

出水『そうか。悪いが比企谷の相手で精一杯だわ。一旦合流するか?それとも、太刀川さんの方行くか?』

 

三輪『ああ』

 

出水『わあった』

 

 

 

嵐山『賢、レーダーの制度を10秒だけ上げてくれ』

 

佐鳥『ほいほい~』

 

佐鳥がレーダーの精度を上げる。

 

嵐山『まずいな、迅の方に向かってる』

 

八幡『こっちでも確認出来ました。こっちに引き摺り出しますか?』

 

嵐山『そうだな』

 

八幡「トマホーク」

 

トマホーク125発で、2人の進路を塞ぎつつ、こっちに来させるを得ないように撃つ。

 

 

 

三輪「チッ····比企谷め!」

 

出水「落ち着け三輪。当真さんどうします?」

 

当真『俺は無理そうだ。もう位置がバレてる。比企谷か木虎あたりが首刎ねに来るだろうよ』

 

出水「分かりました。戻るぞ三輪」

 

三輪「·····ああ」

 

2人は合流を諦め、連携して攻撃することにした。

 

 

 

 

出水「嵐山さんだけ?」

 

三輪「おそらく、木虎が当真さんを追っている。比企谷は嵐山さんと連携するつもりだろう」

 

出水「どうする?ここら一帯をメテオラで吹き飛ばすか?」

 

当真『おいおい、警戒区域といえど人の家だぜ?』

 

三輪「とりあえず3人で連携して嵐山さんをやる。比企谷はその後だ」

 

出水「分かった」

 

三輪「いくぞ!」

 

2人は嵐山に奇襲を掛ける。出水がメテオラで目眩しをし、三輪が鉛弾で嵐山の機動力を削ぐ。2人は止めとばかりに攻撃を仕掛ける。が、突然三輪の右腕が飛んだ。嵐山はテレポーターで距離を取る。その直後、当真が木虎の脚ブレードで緊急脱出した。

 

三輪「なっ!?」

 

出水「そうだ、比企谷ってライトニング入れてたんだ」

 

三輪「チッ·······当真さんもやられた。出水、嵐山さんだけでもやるぞ」

 

出水「ああ」

 

2人は再び嵐山に攻撃を仕掛ける。テレポーターがあるとはいえ、足に鉛弾を食らった嵐山は攻撃を完全には捌けず、徐々にダメージが増える。嵐山は鉛弾を食らった右足を切り落とし、後退する。出水と三輪は、嵐山に止めを刺そうとする。ところが、突如として、2人の動きが止まった。八幡が、2人の体にシールドを拘束具の様に巻き付けたのだ。

 

八幡「シールドだ。悪いな」

 

そこに、木虎が戻って来た。

 

木虎「比企谷先輩、お疲れ様でした」

 

八幡「おお、お疲れ様」

 

三輪「比企谷っ!」

 

月見『三輪君、作戦終了よ』

 

三輪『蓮さん!?』

 

月見『太刀川君達が緊急脱出したわ』

 

出水『マジで!?6対1で勝ったのかよ!?黒トリガーやべえな!』

 

八幡『蓮さん、太刀川さん達何か言ってましたか?』

 

月見『特には何も言ってなかったと思うわ』

 

八幡『そっすか』

 

三輪「比企谷、嵐山さん、近界民を庇ったことをいずれ後悔する時が来るぞ。お前達は分かってないんだ。家族や友人を殺された人間でなければ、近界民の本当の危険性を理解出来ない。近界民を甘く見ている迅はいつか必ず痛い目を見る。そして、その時には、もう手遅れだ」

 

嵐山「そんなことはないだろう。迅だって近界民に母親を殺されているぞ?」

 

三輪「なっ!?」

 

三輪が目を見開く。

 

八幡「········4年前、大規模侵攻で迅さんは未来視でお前達かお袋さんのどちらかしか助けられないことを知ったらしい。そして、迅さんはお前とお前の姉さんを助けに行った。その後、迅さんはお袋さんも助けに行ったが間に合わなかったらしい。更には、師匠の最上さんは目の前で亡くしている」

 

三輪「そんな····」

 

嵐山「大切な人を失う辛さなら、迅だってよく分かっている筈だ近界民の危険性もよく分かっている。その上で迅には迅の考えがあるんだと思うぞ」

 

三輪は、歯ぎしりをしている。

 

八幡『蓮さん、ここからはオフレコでお願いします』

 

月見『?分かったわ』

 

八幡「少し、昔話をしてやる。皆もこれから話すことは秘密にしてくれ」

 

嵐山「分かった」

 

出水「ああ」

 

木虎「?分かりました」

 

三輪「·······」

 

八幡は頷いて続ける。

 

八幡「もう12年も前のことだ。俺は5歳の時、3歳の弟と共に近界民に攫われ、両親を殺された」

 

三輪「!?」

 

出水「待て待て、まず弟!?」

 

八幡「出水は知らないだろうが·····弟の名は、三雲修。まぁ、名字については気にしなくていい」

 

三輪「なんだと!?」

 

嵐山「彼は比企谷の弟だったのか!?」

 

木虎「彼はいったい···」

 

八幡「続けるぞ。俺は目の前で両親を亡くした後、修とともに近界民に攫われた。だが、幸運なことに、俺達はそこで、比企谷時宗という男に助けられた。······その後、比企谷時宗にありとあらゆる戦闘術を叩き込まれ、向こうの世界の戦争に参加した。陽乃とはその時、潜入任務で敵基地に潜り込んだ時監禁されていた所を救出した。その後、陽乃も戦闘術を叩き込まれた」

 

三輪「··········」

 

それぞれは黙って八幡の話を聞いている。

 

八幡「その後、俺達は向こうで傭兵として戦争に参加していた。だが、俺が11歳の時·····敵の黒トリガーの奇襲を受け、右眼と左腕を失い、俺は死んだ。死ぬ筈だった。·····だが、俺は死ななかった。比企谷時宗が黒トリガーを遺して俺を助けたからだ」

 

出水「だから、片腕だったのか·····」

 

八幡「ああ。その後、俺達は俺の治療も兼ねて、こっちに戻って来た。そして、ボーダーに接触。今に至る。今玉狛にいるお前らが狙ってる奴もだいたいは似たような事情らしいしな」

 

三輪「だからって、何で玉狛につく!」

 

八幡「言っただろ。復讐は何も成さない。俺は、親父が遺した黒トリガーで、奇襲してきた奴ら全員を皆殺しにした。ただ殺したんじゃない。そいつ等が苦しんで死ぬように殺したんだ。その直後、陽乃と修の顔を見た時に気付いた。俺は··········俺が情に流されてやったことは無駄だったってな。もう一つ言っておく。·····向こうの世界に居るのは、人型近界民じゃない。人間だ。俺達となんら変わらない。体の構造も同じだ。地球外から攻めてくるような何処ぞのエイリアンじゃない」

 

三輪「!·····ぅ、ぅぁぁぁぁぁぁあ!」

 

三輪は、地面を思い切り殴る。何度も何度も。彼の行き場のない感情が、一気に流れ出ていくかのようだった。

 

 

_________________________________________

 

 

鬼怒田「いったいどうなっとるんだ!」

 

鬼怒田の怒声が会議室に響く。

 

鬼怒田「迅や嵐山隊、比企谷の妨害!精鋭部隊の潰し合いだと!?忍田本部長!何故玉狛側についた!?何故近界民を守ろうとする!?ボーダーを裏切るつもりか!」

 

ここまで言われては忍田も黙ってはいられない。

 

忍田「裏切るだと!?議論を差し置いて強奪を強行したのはどっちだ!もう一度言おう。私は黒トリガーの強奪には反対だ!ましてや、相手が勇吾さんの息子さんなら····これ以上資格を差し向けるようであるなら、次は私が相手になるぞ、城戸派一党!!!」

 

忍田の剣幕に、鬼怒田や根付は気圧される。忍田は、太刀川の師匠であり、虎という異名を持つ。その忍田に鬼怒田と根付は怯え、唐沢は、如何に懐柔するかを考えていた。だが、城戸は引かない。

 

城戸「·····なるほど。なら、次の刺客には天羽を使おう」

 

鬼怒田「なっ!?」

 

根付「城戸司令、それは····ボーダーのイメージが」

 

城戸「A級トップ部隊を1人で迎撃出来る迅の風刃に、通常トリガーの虎の忍田君。更には比企谷隊まで出て来たとなれば、なりふり構ってはいられまい」

 

忍田「城戸さん、街を滅ぼす気か····!」

 

城戸と忍田は睨み合う。

 

八幡「失礼します」

 

迅「失礼しま〜す」

 

そこに、八幡と迅が乱入した。

 

鬼怒田「なっ、何の用かね迅!八幡!」

 

迅「まぁまぁ落ち着いて鬼怒田さん。俺は交渉しに来たんだ」

 

八幡「俺はただ着いてきただけです」

 

鬼怒田「交渉~?」

 

唐沢「····ほぅ」

 

迅「····こっちの要求はただ一つ。空閑遊真のボーダー入隊を認めてもらいたい。こちらからは風刃を出す」

 

城戸「ボーダー内において、模擬戦を除く隊員同士の戦闘を固く禁ずる。貴様の風刃だけを没収すればいいだけだ」

 

迅「それなら、太刀川さんや風間さんのトリガーも没収しないとね」

 

迅は隊務規定違反を堂々と利用する。太刀川達のトリガーを一緒に没収すれば、これ以上の追手が来ないし、城戸が迅に何もせずにまた刺客を差し向けるようであれば、また風刃で迎撃すればいいだけの話だ。

 

城戸「迅····貴様、何を企んでいる····」

 

城戸は迅を睨む。

 

城戸「この取引は我々のとって有利すぎる。何が狙いだ?」

 

迅「何も企んじゃいないよ。別にボーダーの主権争いに加わるつもりもない。ただ、後輩をあんたら大人達に邪魔されたくないだけだ。それに、うちの後輩達は城戸さんの目的にも一役買うだろう。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

 

城戸「······いいだろう。取引成立だ。黒トリガー、風刃と引換に玉狛支部空閑遊真のボーダーへの入隊を正式に認める。ただ一つ聞きたい。比企谷、君は空閑遊真についてどう思う?」

 

八幡「そうですね·····こちらに牙を向けない限りは何も問題ないでしょう。何かあった場合、俺や修がそいつを始末すればいいでしょうし。まぁ、そうはならないとは思いますよ。修に聞く限り、既に玉狛に馴染んでるらしいですから。迅さんのサイドエフェクトでも必要だって視えたんですよね?」

 

迅「ああ」

 

城戸「·····そうか······」

 

八幡「俺は今日は失礼しますね。じゃあ、迅さんまた今度。そのうち子供2人連れて玉狛行きます」

 

迅「そうか。じゃあな八幡。俺もその子達に会ってみたいな」

 

八幡「じゃあこれで」

 

八幡は先に会議室を出て行った。

 

迅「俺も失礼します」

 

城戸「······」

 

城戸が折れたことによって、黒トリガー争奪戦は幕を閉じた。

 

 

 

 

迅が本部の廊下を歩いていると、太刀川と風間に絡まれている八幡が居た。

 

迅「あれ?八幡帰ったんじゃなかったの?」

 

八幡「この2人に絡まれてたんですよ。迅さん、俺帰りたいんでバトンタッチして下さいよ」

 

太刀川「駄目に決まってんだろ。それより、何で風刃を手放したんだ?」

 

風間「····風刃の価値を引き上げるためだろう?A級トップの部隊複数を相手取り、使えるか分からない玉狛の黒トリガーより、適合者の多い風刃の方が利用価値が高いと上層部に分からせるためだ」

 

迅「ハハハ〜、流石風間さん。大正解。後、俺個人ランク戦復帰するよ。とりあえず個人1位目指すからその時は八幡もよろしく~」

 

八幡「ふぁ〜、う~す」

 

迅「八幡眠そうだね」

 

八幡「今何時だと思ってんですか········(早く帰って、陽乃と、裕夜と柚稀菜を愛でたい)」

 

太刀川「おい!本当か!?」

 

風間「····太刀川···ハァ」

 

八幡「風間さんお疲れ様です。どさくさに紛れて帰ります」

 

風間「ああ。引き止めて悪かったな」

 

八幡「いえ。さよなら」

 

風間「ああ。じゃあな」

 

八幡はそのまま帰って行った。

 

迅「あ、八幡行っちゃった。じゃあね太刀川さん、風間さん」

 

風間「ああ」

 

太刀川「おい、ランク戦は!?」

 

迅「太刀川さん·······それはないでしょ······」

 

風間「太刀川、お前は終わってないレポートを終わらすぞ。いい加減高校生をお前の都合に付き合わせるな。迅、じゃあな」

 

迅「またね風間さん」

 

太刀川「ちょっと待って風間さん!俺の意思は!?」

 

風間「お前の意思など関係ない。行くぞ。徹夜で仕上げろ」

 

太刀川「そんなぁ〜」

 

 

 

 

 

迅「大丈夫だ····未来はもう動き出してる」

 

玉狛に戻った迅は、自室で一人、確信する。

 

 




後日、出水はスイパラを綾辻に奢りました。↓

出水「そんなに食って大丈夫か?」

綾辻「大丈夫大丈夫♪」

出水「そ、そうか(明らかに普通の人の5倍くらい食ってる気がする)·······」

綾辻「???」



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閑話5:日頃の行い(一部除く)。


なんだ今回。


祐夜「今日はたまこまに行くの?」

 

八幡「ん?そうだ」

 

今日は正式に玉狛に加入した、3人の顔でも見に行こうかと思っている。

 

柚稀奈「早く行こっ!」

 

陽乃「ほらほら、急がなくても逃げないから」

 

 

というわけで、俺達は玉狛に来た。

 

修「おはよう兄さん、義姉さん、祐夜、柚稀奈」

 

先に来ていた修が出迎えてくれた。

 

八幡「よう修」

 

陽乃「おはよう修君」

 

祐夜「修さんおはようございます」

 

柚稀奈「修さんおはよう!」

 

修「相変わらず元気だね」

 

八幡「可愛くていいだろ」ナデナデ

 

柚稀奈「♪~」

 

修「うん可愛いと思うよ。さ、上がって」

 

 

烏丸「おはようございます比企谷先輩。その子達が2人の子供ですか」

 

八幡「ああ。可愛いだろ」

 

烏丸「そっすね。にしても、ホントによく懐いてますね」

 

八幡「まあな。今林藤さんいるか?」

 

烏丸「ボスならこっちです」

 

 

林藤「よう八幡。お、子供達も元気にしてたか〜?」

 

祐夜「はい」

 

柚稀奈「ヒッ·····!」ダキッ

 

柚稀奈は林藤さんが怖かったようで、俺の足に抱きついた。確か、千葉村で一回会った筈だが。あ、直ぐ寝ちゃってたわ。既に何度も玉狛に来ている祐夜と柚稀奈だが、実は迅さんと烏丸は初対面である。

 

林藤「!?·····嫌われた····」ガクッ

 

林藤さんは、膝から崩れ落ちた。

 

八幡「ま、まぁとりあえず気を取り直して下さいよ」

 

林藤「····そうだな·····これが、書類だ。俺の何がいけなかったんだ····」

 

陽乃「アハハ·····」

 

祐夜「?」

 

 

一通り書類を書き終え、応接間に来た。

 

修「あ、兄さん。もう手続き終わったの?······って、林藤さんどうしたんですか?」

 

八幡「柚稀奈に怖がられちゃったんだよ」ヒソヒソ

 

修「·····林藤さん、気を取り直しましょう」

 

林藤「そうだな·····」

 

桐絵「あれ?どうしたのボス?·····ああ、柚稀奈に嫌われたとか?」

 

小南は、俺の足にしがみついている柚稀奈を見て言った。

 

林藤「グフッ!?」バタン

 

林藤さんは大ダメージを食らった。

 

桐絵「え?ちょっと、ボス!?」

 

八幡「駄目だって気にしてるんだから」ヒソヒソ

 

桐絵「あ、えっと····ごめんね、ボス····」

 

林藤「あ、ああ。気にすんな····」

 

レイジ「しっかりして下さいボス」

 

林藤「そうだな···」

 

林藤さんには、可哀想なくらいにダメージが入ってしまった。無垢なる少女の一言って一番恐ろしいのでは?

 

柚稀奈「八幡?」

 

八幡「ん~?」

 

柚稀奈「なんでもない!」

 

八幡「ハハッ、そうか」

 

空閑「どうもどうも、はじめまして。空閑遊真です」

 

八幡「ああ、お前が有吾さんの」

 

そこで、空閑の指輪からレプリカが出て来た。聞いちゃいたが便利な機能だな。流石有吾さん。

 

レプリカ『久しぶりだな、ハチマン、ハルノ。話はオサムから聞かせてもらった』

 

八幡「ようレプリカ。久しぶりだな」

 

陽乃「久しぶり、レプリカ先生」

 

レプリカ『はじめましてユーヤ、ユキナ。レプリカだ。ユーマのお目付け役をしている』

 

柚稀奈「可愛い!」

 

可愛い?

 

遊真「ほう?」

 

柚稀奈は感性が豊かなようだ。

 

祐夜「可愛いかな····これ。···お目付け役?·」

 

レプリカ『そうだ。まぁ、話し相手と受け取ってくれて構わない』

 

祐夜「へー凄いね」

 

納得早え。普通これ見たらもっと疑うだろ。祐夜も若干天然の兆しが·····あ、俺もこんな感じだったわ。

 

千佳「あ、あの·····」

 

八幡「?」

 

千佳「は、はじめまして···雨取千佳です。修君にはお世話になってます」

 

こいつが、何度も襲われてるっていう·····

 

八幡「ああ、お前が麟児さんの妹か」

 

千佳「はい····兄と会ったことがあるんですか?」

 

八幡「まぁ、ちょっとな」

 

修「昔のことだからね」

 

千佳「そう·····」

 

八幡「ああ、昔のこと話したのか」

 

修「そこそこ掻い摘んだけどね」

 

遊真「そういえば、あなたが最強なそうで」

 

そういえば、昔そんなアホな噂あったな。麟児さんとか絶対俺より強いんだけどな。

 

八幡「それは間違いだっつってんだけどな······」

 

修「まぁでも、兄さんは実際に強いよ」

 

遊真「ほうほう、では一度お手合わせを」

 

八幡「まぁそれはいいが····」

 

陽乃「ほら八幡、やる気だして」

 

祐夜「?よく分かんないけど八幡頑張って」

 

柚稀奈「八幡頑張れー!」

 

八幡「おうよ!」

 

烏丸「(これが、子供の力か)」

 

迅「よう、八幡いらっしゃい。模擬戦頑張れ」

 

八幡「う~す」

 

と、ここで迅さんが来た。来たのだが····

 

柚稀奈「·····」

 

祐夜「·····」

 

2人とも警戒心剥き出しなのである。そして、2人とも俺の後ろに隠れている。

 

桐絵「アハハハハ、迅、アンタ物凄い嫌われようね」

 

遊真「どんまいジンさん」

 

迅「·········」ガクッ

 

林藤「気持ちは分かるぞ迅·····」

 

うわぁ、迅さんの心が泣いている。てか、皆、子供に弱すぎだろ。

 

八幡「迅さんお疲れ様です。陽乃、2人見てて。空閑、行くぞ」

 

空閑「よろしくお願いします」

 

陽乃「ちゃんと見てるから安心して思いっきりやっちゃって!」

 

八幡「まぁ、やれるだけやってみるわ」

 

 

 

八幡「10本勝負でいいな?」

 

遊真「オーケー、早くやろう」

 

宇佐美『りょーかい、模擬戦開始!』

 

1本目。空閑が、突っ込んで来る。まぁ最初だし様子見だろう。とりあえずモールクローを風刃みたいな感じで攻撃。空閑は対処出来ずにダウン。2本目。流石に突っ込むのは悪手だと判断したか、動かずに様子を見ている。ただ、それはもっと悪手だ。バイパーの鳥籠で攻撃。弾数が多いので、処理出来ずにダウン。

 

修「兄さんももうちょっと本気出せばいいのに」

 

桐絵「こんなの小手調べでしょ?」

 

陽乃「多分ね。そろそろ空閑君も本気出すんじゃない?」

 

千佳「強い·····」

 

3本目。空閑の周りの空気が変わった。そろそろ本気出してきたか。弧月を抜く。そして、空閑に思いっきり斬り掛かり、一気に攻める。空閑は全て受け流す。なるほど。結構強いな。もうちょいギアを上げるか。ギアを上げた瞬間、空閑が首を狙って斬りかかってくる。弧月でずらしつつ、身を後ろに反らして躱し、空閑が突っ込んで来る勢いに合わせ、空閑の体を真っ二つにした。

 

 

 

 

 

遊真「いやぁ、負けた負けた」

 

八幡「お前もなかなか強かったと思うぞ」

 

あの後の7本は、俺が大人気なくやって圧勝した。最後は、ちょっと危なかったかもしれんが。

 

修「2人ともお疲れ」

 

遊真「オサムも強いけど、ハチマン先輩も同じくらい強いんじゃないか?」

 

八幡「まぁ俺とオサムはだいたい同じくらいだと思うぞ」

 

修「兄さんには負けるよ」

 

八幡「いや、技術面だけなら修のが上回ってるっつっても過言ではないな」

 

これは本当だ。実際に修には技術的な面では負けててもおかしくない。俺は、経験とか、戦術とかで相手を攻めるなら勝てると思う。普段全くやらないけど。

 

陽乃「でも空閑君もなかなかやるね」

 

遊真「どうもハルノ先輩。ところで、ずっと気になってたけど、その2人って誰の子だ?」

 

レプリカ『ユーマ、この2人はハチマンとハルノの子供だ』

 

八幡「さっき言ったと思ったんだが」

 

遊真「なんと!?それは失礼した」

 

八幡「別にいい。それに、そんなに驚くことか?···いや、驚くことだな」

 

遊真「どうもどうもはじめまして。空閑遊真です」

 

祐夜「祐夜です」

 

柚稀奈「柚稀奈です!」

 

遊真「ほうほう、ユーヤとユキナか。よろしく」

 

祐夜「よろしくお願いします」

 

柚稀奈「よろしく!」

 

遊真「ふむふむ、元気があることはいいことだな」

 

空閑も懐かれる側だったようだ。林藤さんはどうすればいいだろ。まあ後でいいか。迅さんが、懐かれるかどうかのが問題だし。迅さんは早いとこ相手を見つけてくれ。昨日も沢村さんが愚痴ってきた。迅ハラを。

 

八幡「あ、そういえば陽太郎どうした?」

 

桐絵「陽太郎はアンタ達が来る少し前からお昼寝してるわ。迅と遊んでたのよ」

 

八幡「ああ、だから最初から居なかったのか」

 

修「その後に2人に思いっきり警戒されたけどね·······」

 

あ、迅さん居たんだった。

 

迅「ウッ····八幡、何がまずかったんかな······」

 

「「「「「「日頃の行い(ですね)」」」」」」

 

迅「そんな·····」ガクッ

 

八幡「これに懲りたらセクハラなんてやめることですね」

 

迅「それは無理」

 

八幡「·····迅ハラやめない限り諦めた方がいいかと」

 

迅「!?まず迅ハラって何!?」

 

八幡「そのままですよ?いつまでセクハラする気ですか?っていいや。2人が居るし。柚稀奈、この人をどう思う?」

 

柚稀奈「う〜ん····さっきのおじさんよりも怖い?」

 

迅「なっ!」

 

八幡「祐夜は?」

 

祐夜「僕は·····悪い人?」

 

八幡「····そうか。迅さん、これが日頃の行いの結果というわけです」

 

向こうでは、小南が腹を抱えて笑っている。

 

迅「少しはくるね····」

 

八幡「そうですか·····」

 

柚稀奈「八幡~!」ガバッ

 

八幡「おっとと」ダキッ、ナデナデ

 

柚稀奈「〜♪」

 

八幡「····」ナデナデ

 

祐夜「·····♪」

 

迅「こんなに差が·····」

 

桐絵「迅、何やってんの?」

 

修「今はほっといてあげようか」

 

烏丸「それがいいと思いますよ?」

 

八幡「もう結構な時間だな。「スー·····スー····」ってもう柚稀奈寝てるし」

 

陽乃「帰ろっか」

 

八幡「そだな。というわけで、迅さん。セクハラやめるように。懲りないと減給しますよ」

 

迅「はい······」

 

そして、今日は解散となった。迅さんの減給は本当に検討しておこう。

 

 

 

 

 




宇佐美のセリフが少ない。雑すぎた今回。この段階でもまだ、小町は自身が玉狛に所属していることを知らない。雪乃は既に知ってる(他の人にも言ったから)。


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26話:やはり、彼の実力は本物である。そして、彼女は彼に憧れる。

追加設定
黒トリガー
サンドラ(所有者:雪ノ下陽乃)
能力の仕組みとしては、トリオンの構造に干渉して、様々な作用を起こす。トリオンを消費した分だけ作用を引き起こせる。範囲と対象を任意で設定出来る。元々、アフトクラトルの国宝の黒トリガーだった。八幡達一行がアフトクラトルで宝物庫を襲撃し(当時適正を持った者がアフトの軍に居なかった)、強奪した。実は、陽乃は片手で数えられるくらいしか使ったことがない。

クオリア(所有者:三雲修)
修が限界までトリオンを込めても問題ないくらいの耐久性と高出力。若干燃費が悪い(能力の仕様上)。元々レオフォリオの準国宝で戦争に参加し、戦争を集結した時の感謝の品として贈られた。修も限界まで性能を引き出せない(能力が強すぎる為)。尚、使用は全身にとんでもない負担がかかっており、修は全力で使うと暫く寝込む。

マステマ(所有者:比企谷小町)
装備の、ブレードはサーベルに近い形。銃は銃身が3、4cmくらいしかなく、そこからトリオンを消費して銃身を形成する(銃身は最長1mくらいまで伸ばせる)。起動しても、換装体の服装自体はそこまで変化がないが、頭からくるぶしの上くらいまでをすっぽり覆う黒い外套を纏っていたりする。

本作のキャラの強さ

近接
八幡≧修≧陽乃>遊真(黒トリガー・レプリカの補助あり)≧迅(風刃)≧忍田>太刀川≧風間=小南≧影浦≧村上=生駒>他

中距離
陽乃=八幡=修>迅(風刃)>>二宮≧出水>他

遠距離
鳩原>修>八幡=陽乃=東=当真=奈良坂≧絵馬=半崎>>他


天羽とレイジさんの狙撃とヒュースは原作でまだ描写がないのでカット。陽乃のトリガーの設定は一応です。陽乃はアフトとは直接は戦いません。ネタバレですが、予定だと玉狛支部の防衛に着きます。八幡が城戸さんに頼み込んで。陽乃は八幡の母と、祐夜、柚稀奈を連れて玉狛に。麟児さんの強さ決めてません。鳩腹は修のスナイパーの師匠。



 

今日は正式入隊日だ。比企谷隊は、嵐山隊の補佐を任されている。そして、ここには先日入隊した空閑と雨取も居る。修は転属手続きでこっちに居る。確か、小南は修にくっついて来たとか何とかで、暇してる間は、誰かボコしてる筈だ。

 

八幡「にしても、やることねえな·····」

 

木虎「少しはやる気を出して下さい·····」

 

俺と木虎は攻撃手組の案内などをしている。陽乃は、銃手·射手組の応援に行った。と言っても、やること変わらないし、場所もたいして変わらんけど。小町は暇してそうだったんで、玉狛でレイジさんとマステマの特訓をしている。それでいいのか受験生。危なくなったら追い込みだな。

 

 

 

 

 

修「確認するぞC級の空閑と千佳はB級を目指す」

 

修は2人に確認する。

 

遊真「俺達がB級に上がったら3人でチームを組んでA級を目指す」

 

千佳「A級になったら選抜試験を受けて、近界民に攫われた友達を助けに行く」

 

修「·····今日がその第一歩だ」

 

3人は、前を見据える。····周りの視線の集まる先には、新入隊員を鼓舞するように挨拶する忍田、隣には嵐山隊と嵐山隊の補佐をする比企谷隊を居る。その後、説明を受け、千佳は狙撃手組について行き、空閑は残って初の訓練を受ける。

 

修「千佳、アイビスには触るなよ。下手すると施設の一部が吹っ飛ぶかもしれないからな」

 

千佳「···うん」

 

千佳への注意も忘れない。

 

 

 

嵐山「改めて、攻撃手組と銃手組を担当する嵐山だ!先ずは入隊おめでとう!では、早速だが、訓練の内容について説明して······」

 

空閑の一件は嵐山隊にも結構恩がある。僕は嵐山さんに軽く会釈する。空閑は手を振っている。

 

嵐山さんの説明は、武器ごとのポイントや訓練生の規則に移る。そして、それぞれが右手の甲を見る。空閑の右手には1000と表示されている。

 

嵐山「君達は訓練生だ。見てもらったようにそれぞれにポイントが表示されている。このポイントが4000まで溜まったら正隊員だ」

 

兄さんに聞いた話によると暴力沙汰でポイントを没収された人がいるらしいけど、その人は何があったんだ?ただ、基本的にはこのポイントがその人の強さとみて問題ないだろう。けど、強いけどランク戦をしてないって人はそこそこいるらしい。そこで、さっき嵐山隊が広報だけの部隊って言ってる奴らは、仮入隊していたらしい。才能はあるにはあるが、それにかまけるタイプだろう。そんなことだと直ぐにやっていけなくなるのは目に見えている。遊真と移動しているところで、木虎が来た。

 

木虎「三雲君」

 

修「木虎か」

 

僅かだが、一瞬寒気がしたのは気の所為だろう。

 

木虎「何故B級のあなたがここに?」

 

修「ああ、転属の手続きと空閑の付き添いだよ」

 

木虎「比企谷先輩から聞いたわ。あなた達のことを。あの時はごめんなさい。ただ、馬鹿にして」

 

修「まぁ、分かってくれるんならそれでいいよ」

 

木虎「あと、あの中学のモールモッドはあなたなのよね?」

 

修「ああ」

 

遊真「お、キトラじゃん。俺ボーダーに入ったからよろしくな」

 

木虎「でも、あなたって近界民なのよね?」

 

遊真「まあね。あ、俺早くB級に上がりたいんだけど、どうしたらいい?」

 

木虎「そうね。訓練で満点を取り続けてランク戦に勝ち続ければいいわ」

 

遊真「なるほど。単純でいいね」

 

八幡「まぁ、それがボーダーだからな」

 

話を聞いていたのであろう、兄さんが来た。

 

修「やぁ兄さん」

 

遊真「どうもハチマン先輩」

 

木虎「それここで言って大丈夫なの?」

 

修「周りは聞いてないだろうし大丈夫だよ」

 

そこで、対近界民戦闘訓練の訓練室に着く。ここでは、バムスターを相手に戦闘してトリオン兵との戦闘の適正を見る。戦闘のセンスがあっても、トラウマになってトリオン兵を見て気を失う人もいるらしい。後は、単純に敵への洞察力や分析力を見る。初心者が弱点以外を攻撃しても倒せるとは思えないし。制限時間は5分。基本、1分切れば充分だとか。手を抜いてやったのが懐かしいな。兄さんに聞いてなかったら、レイガスト投げて真っ二つにしてたと思う。

 

木虎「初めてなら1分切れればいいほうかしらね。あなたは、どれぐらい知ってだったのかしら?」

 

修「確か·····1分半くらいだったはず」

 

木虎「もっと早く出来るでしょ?」

 

修「あんまり目立つのもどうかと思ってね」

 

木虎「····そういうものかしら?」

 

訓練は着々と進んでいく。さっきの新3馬鹿はリーダー格と思しき奴がぎりぎり1分を切っていた。そうして、空閑の番になった。

 

 

 

 

その頃、オペレーター室には、新入隊員の訓練の様子を見ている諏訪隊の隊長、諏訪と、堤が居た。

 

諏訪「今期もなんっかパッとしねぇなあ。今の奴がトップだろ?」

 

堤「いや、一時期が凄すぎただけでしょ。木虎が9秒、緑川が4秒、黒江が11秒って豊作だったんですよ?それと比べるのは可哀想ですよ」

 

諏訪「まあなー」

 

堤「あ、あの次の白い髪の子、玉狛らしいですよ?」

 

諏訪「へぇ?なんか変わってんなあ、アイツ」

 

 

 

 

修「次、空閑だぞ」

 

遊真「おう、行ってくる」

 

 

 

『対近界民戦闘訓練、開始!』

 

その合図とともに、空閑は大きく跳躍し、バムスターの頭部を縦に両断する。

 

『訓練終了。記録 0.6秒』

 

遊真「ふぅ」

 

甲田「な、なんかの間違いだ!」

 

遊真「ふむ?」

 

 

八幡「まあ、こういう奴いるよな」

 

修「だね。ハァ····」

 

 

甲田「とにかく!もう一回やり直せ!」

 

遊真「いいよ」

 

空閑はもう一度訓練室に入る。

 

『訓練開始·····訓練終了。記録 0.4秒』

 

さっきと同様、合図とともに跳躍し、弱点を切り裂く。今度はさっきより0.2秒縮んだ。

 

甲田「な····縮んでる!?」

 

 

木虎「·····流石は近界民と言ったところね」

 

修「ああ。見事だと思う」

 

木虎が空閑の実力に感嘆していると、桐絵と烏丸さんが来た。

 

烏丸「やってるな。あ、どうも比企谷先輩」

 

八幡「よう烏丸」

 

桐絵「修、遊真はどう?」

 

木虎「か、か、か、烏丸先輩こんにちわ!」///

 

木虎の態度が凄いあからさまだけど、烏丸さん一切気付いてないな。鈍感ってこの人のことを言うんだろう。

 

桐絵「今日はどうりでブースに人が少ないわけね」

 

烏丸「悪い、バイトが長引いた。どんな感じだ?」

 

修「まあ、想像通り空閑が凄い目立ってますね」

 

烏丸「だろうな。今年も嵐山隊が入隊指導か。大変だな」

 

木虎「いえ!この程度全然です!烏丸先輩、最近ランク戦に顔出されてないですけど、お時間があったらまた稽古つけて下さい!」

 

烏丸「いや、お前充分強いだろ。俺もうお前に教えられることないぞ。·····あ、そういえば、お前修と同い年だよな?」

 

木虎顔真っ赤なんだから少しは察してあげて下さい。てか、僕の名前出してどうするんですか?

 

木虎「?そうですけど」

 

烏丸「なら、折角だし修に教えてもらえ。偶に玉狛で模擬戦やるんだが、俺今んところ一回も勝ててないんだよ」

 

木虎「そんなにですか!?」

 

修「なんかすいません····」

 

木虎が何故あなたばかり、と言わんばかりに睨んで来る。なんだか、気まずいので空閑の方に目を逸らすと、さっき難癖をつけてた奴らが空閑を勧誘していた。空閑は、他に組む奴をもう決めてると言って断った。まあいざとなったら他の人のフォローをもらおう。

 

風間「······なるほどな」

 

そこに中学s·····じゃなかった。確か、A級3位風間隊の風間さんだっけ?

 

風間「嵐山、訓練室を一つ貸せ。迅の後輩とやらの実力を見てみたい」

 

ああ、迅さんが風刃を手放すほどだから、空閑の実力を確かめに来たのか。

 

嵐山「待ってください風間さん!彼はまだ訓練生ですよ!?」

 

遊真「俺は別にやってもいいよ」

 

だが、ここで全員が想像していなかったことを風間さんは言ってきた。

 

風間「違う。お前じゃない。····俺が確かめたいのはお前だ。三雲修」

 

なるほど、僕が空閑を従えてた感じだからそっちに興味が湧いたのか。

 

遊真「オサムと?」

 

木虎「風間さんが模擬戦!?」

 

嵐山「いきなり何を言い出すんですか!?また城戸司令の命令ですか!?」

 

それは違うだろう。城戸さんがわざわざそんな無駄なことするわけがない。5年前に僕の実力を見てる筈だし。

 

風間「こいつは正隊員だろ?なら、何も問題ない。訓練室に入れ。お前の実力を見せてもらおう」

 

嵐山「無理に受ける必要はないぞ三雲君。これは強制ではないからな」

 

桐絵「いいじゃない、受けなさい修」

 

修「ああ、もちろん」

 

嵐山「三雲君!?桐絵も何故?」

 

桐絵「あら、あたしは修を信じているから言ってるのよ?比企谷からあらかた聞いたんでしょ?」

 

修「大丈夫ですよ嵐山さん」

 

風間「よし、じゃあ行くぞ」

 

修「分かりました。あ、時枝さんありがとうございます」

 

さっきから周りで「正隊員同士の模擬戦!?」って騒いでいた人達は時枝さんが移動させてくれた。

 

 

 

 

 

修が風間さんと模擬戦をすることになった。面白くなってきたな。そこに、陽乃と何故かいる黒江が来た。

 

木虎「こんにちわ!双葉ちゃん!」

 

双葉「·····どうも」

 

木虎「········」

 

相変わらず黒江に嫌われてんな木虎。

 

双葉「あの、何が始まるんですか?」

 

陽乃「まあまあ、それは見てのお楽しみよ双葉ちゃん」

 

八幡「修がちゃんと戦うのを見るのって以外と久しぶりか?あいつランク戦ずっと手を抜いてたし」

 

桐絵「そうなのよね·····この前も完封されちゃったし。なんで双月を刃モードのレイガストで防げるのかしら?あたしじゃ出来ないわ」

 

双葉「!?そんなに強い人がいるんですか!?」

 

烏丸「俺そいつに1回も勝ててないな。もう50本ぐらいはやってるんだけど」

 

双葉「凄いですね····私もご一緒していいですか?」

 

八幡「もちろん。お前も直ぐに戦うことになるかもな」

 

黒江にとっては色々と縁があるからな。

 

 

 

 

 

 

僕は風間さんと対峙する。

 

風間「早速お前の力を見せてもらおう」

 

修「はい」

 

『模擬戦開始!』

 

僕は左手にレイガスト、右手には何も展開しない。

 

風間「····(レイガストで戦う攻撃手、もしくは射手か)」

 

そう言った直後、風間さんがカメレオンで姿を消す。まあサイドエフェクト使えばカメレオンくらいなんともないし、足音とかで居場所は分かるんだけど、敢えて何もしない。そして、1本目、2本目を取られる。3本目は、アステロイドを軽く撒いてみる。当然これぐらいじゃ無理だ。B級の隊員でも殆どの人は倒せないだろう。だから、個人総合3位の人に通じるとは思わない。そろそろちゃんとやろう。これ以上ふざけると、桐絵と兄さんと義姉さんに怒られる。

 

 

 

八幡「あんにゃろ、わざと手え抜きやがって」

 

双葉「え!?わざとやってるんですか!?」

 

木虎「····風間さんの動きを見てるんでしょうか」

 

八幡「だろうな。あいつにはカメレオンもバッグワームも全く効かんから。俺もだけど」

 

双葉「どうしてですか?」

 

八幡「あいつは肉眼でトリオンの流れが見えるんだよ。そういうサイドエフェクトを持ってる。まあ、風間さんのカメレオンくらいなら俺もサイドエフェクト使わなくても、足音とか気配で場所分かるしな」

 

陽乃「それが出来るのは私達くらいじゃない?桐絵ちゃん出来る?」

 

桐絵「無理よ無理。そもそも、足音と気配で、姿消してる奴の場所分かるって初めて聞いたわ」

 

嵐山「流石だな。伊達に何年もトリガーを握ってるわけではないな」

 

八幡「そういうことです。後、修は背後でカメレオン解除して攻撃されてもカウンターで対応出来ますから」

 

木虎「それどうやるんですか?」

 

八幡「さあな、こればっかりは俺も出来ん。てか、カメレオン解除する前に真っ二つにしちゃうし」

 

嵐山「それが出来るのが凄いんだが····」

 

八幡「お、やっと本気出すっぽいですね。目の色が変わった」

 

 

 

風間さんの動きは分かった。かなり正統派で整合性のとれたスコーピオンの二刀流、といったところだ。

 

風間「立て三雲。まだ小手調べだ」

 

それはこっちも同じです。

 

修「····続けましょう」

 

4本目。風間さんがカメレオンで姿を消す。そして、僕の背後に周り跳びながら切りかかろうとしている。攻撃直前までカメレオンを使っていて助かった。

 

修「スラスター」

 

風間さんがカメレオンを解除する前にスラスターを使い、回転の威力も合わせて、風間さんを腰の当たりで真っ二つにする。

 

風間「!?(どうなっている?何故俺がいる場所が分かった?)」

 

修「(動揺が顔に出てるな)····続けましょう。ここからは、本気でいきます」

 

 

 

諏訪「なんだあの動き!どうなってんだ!?」

 

堤「凄いですね。カメレオンを使っている風間さんの動きを完全に把握しているように見えました」

 

 

 

 

 

風間「(どうなっている?カメレオンを使ってもいつの間にか真正面にいて俺を斬ってくる)」

 

これで24本目だ。さっきからかなり一方的な戦いになってきた。

 

修「まだ続けますか?」

 

風間「!···ああ。もう一本頼む」

 

修「分かりました」

 

 

 

 

双葉「····あの風間さんがあんなにも圧倒的に····」

 

菊地原「まぐれ····とは言えないね」

 

八幡程ではないとは言え、普段から捻くれていると言われる菊地原でさえ、認めざるをえない。

 

遊真「流石オサムだな。姿を消すトリガー使っても全く関係ない。俺が勝てるようになるにはまだまだ長いな」

 

そう言う遊真の額からは若干の冷や汗が出ている。

 

双葉「あの人何処かで·····あ!思い出した!」

 

陽乃「どうしたの?」

 

双葉「大規模侵攻の時、私を助けてくれた2人の内の一人です!····ってあれ?あの人、私がボーダーに入隊した時は居なかったような····」

 

桐絵「え?ああ、あの時助けたのってあんただったのね。髪型が変わってて分からなかったわ」

 

双葉「ふぇ?」

 

桐絵「修は、大規模侵攻の時、あたしと一緒に行動してたわ。修は一回抜けたけど、ボーダーが表に出る前から居る古株よ」

 

八幡「ついでに言うと小南の師匠だ」

 

双葉「え!?小南先輩の師匠!?」

 

桐絵「そうよ」

 

嵐山「そうだったのか····どうりでこの前街で見かけた時、仲がいいと思ってたんだが」

 

桐絵「え!?見られてた!?····ま、まあ今はあたしの師匠であり恋人だもの」

 

嵐山「なんだと!?それは本当か桐絵!?」ガシッ

 

嵐山は小南の両肩を掴む。

 

八幡「嵐山さん落ち着いて下さい」

 

嵐山「あ、ああそうだな」

 

陽乃「····桐絵ちゃん喋りすぎじゃない?」

 

桐絵「いいんじゃない?事情を知らないの双葉だけだし」

 

八幡「あ、終わったようだな」

 

 

 

 

 

25本目。風間さんは、真っ直ぐ突っ込んで来た。カメレオンを使った奇襲は通じないと分かって、真正面からやり合うつもりだろう。当然、斬り合いになったら取り回しが良くて手数の多い向こうが有利だ。風間さんがスコーピオン二刀流の連撃を繰り出してくる。僕はレイガストを刃モードの形のまま、盾モードで使用し、迫り来る刃を防ぐ。その間に着々と準備を進める。

 

風間「なるほど。お前が比企谷の弟だな。俺は名前を聞いていなかったがそれなら納得がつく。旧ボーダーに居たんだろう?」

 

修「はい、そうです。そして、比企谷八幡は僕の実兄です。家庭の事情で苗字は違いますが」

 

風間「なら、小町のほうが義妹なのか?」

 

修「はい。そうなりますね」

 

会話しながらも全く攻撃を緩めない。僕も準備する。風間さんは本気だ。なら、僕も本気でいく。そして、風間さんが必殺の一撃とばかりに突きを繰り出してきた。かなり鋭い突きだ。

 

修「バイパー」

 

風間「何!?」

 

僕が準備していたのはこれだ。砂粒レベルまで分割したバイパー。全弾迂回しながら僕に戻ってくるように設定してある。斬り合いで接近しているため、風間さんは避けられない。風間さんは、シールドを張って、防御に入る。だが、弾が見えないので、シールドにぶつかった時の発光でしか見えないだろう。そして、そのバイパーは威力に全振りしてある。いくら極小だからといって、それを防ぎきるのは至難の技だ。そして、僕は止めを差す。

 

修「スラスター」

 

スラスターを起動し、思いっきり投げる。風間さんはシールドを張っており逃げられない。万一逃げた時のために、メテオラを出す。だが、スラスターで加速したレイガストをモロに食らい、風間さんはダウンした。

 

 

僕達は、模擬戦を終え、訓練室を出る。

 

風間「·····今日は俺の我が儘に付き合ってくれて感謝する」

 

修「いえ、カメレオンは似たような物も向こうの世界ではあまり無かったので、いい経験になりました。ありがとうございました」

 

風間「そうか。そう言ってくれると助かる」

 

修「はい。僕はこれからやることが「あの!!」ある·····え?」

 

ツインテールの女の子が突然声を掛けてきた。しかし、僕は何 かした覚えはないが·····

 

双葉「助けていただいてありがとうございました!」ガバッ

 

しかも、頭まで下げられた。

 

修「え、えっと····」チラッ

 

先ず誰か分からないので、とりあえず横にいる風間さんに助けを求める。風間さんは分かってくれたようで彼女を紹介してくれた。

 

風間「····三雲。こいつはA級6位加古隊の攻撃手、黒江双葉だ。それで黒江。突然どうした?」

 

双葉「あ、えっとはい。この方は大規模侵攻で小南先輩とともに命を救っていただいたんです」

 

修「····あ、あの時の女の子か。髪型が違ったんで分からなくて。ごめんね。あの後は大丈夫だったかい?」

 

双葉「はい!あの時はありがとうございました!····それより、小南先輩と全く同じこと言ってますね」

 

修「桐絵と?」

 

双葉「分からなかった理由がです。あ、風間さん、この方は小南先輩の師匠らしいです」

 

普通に言われた。

 

風間「なるほどな。No.4攻撃手の師匠か。強いのも頷ける」

 

修「あ、どうも」

 

そこに、黒江さん以外の他に見ていた人もやって来た。

 

八幡「どうでしたか?うちの修は。こいつは俺と同じくらいかそれ以上ですよ」

 

風間「ああ。お前の弟だったな。強かった。他の隊員の強さとは根本的なところが違うな」

 

八幡「まあ、修は3歳から戦いの中に放り込まれてトリガー握ってるんで経験とか色々あるでしょ」

 

双葉「さ、3歳······」

 

修「今はそんなことはいいよ兄さん」

 

遊真「いやいや〜強かったぞ、オサムは。3歳からトリガー使いか。納得だ」

 

風間「俺はこの辺で失礼しよう。今日は失礼したな三雲」

 

遊真「あれ?俺とはやらないの?」

 

風間「お前はまだ訓練生だろう?勝負したければこちらまで上がってこい」

 

風間さんはそう言って、去っていった。嵐山さん達も、仕事があるようで、帰っていった。

 

遊真「A級3位風間隊か。上を目指す理由が増えたな」

 

修「先ずは、B級に上がるところからだけどな」

 

桐絵「そうだ!双葉、あなた玉狛に来ない?私達がビシバシ鍛えてあげるわ。比企谷隊も玉狛だし」

 

修「え?」

 

八幡「何言ってんだ小南。先ず、こいつには加古隊があるだろ。そっちはどうすんだ」

 

陽乃「いいじゃない。どんどん派閥を広げようぜ!」

 

義姉さんまで乗り出した。なんかおかしな方向に話が進んでいく····

 

八幡「おい····」

 

双葉「是非行きたいです!でも、加古隊を抜けるのも·····」

 

修「ま、まあ一旦考えてからで····」

 

あれ?これ失敗した?

 

桐絵「なら、加古隊が玉狛に来るのは?」

 

双葉「····なるほど!ちょっと加古さんに聞いてみます!」

 

なるほど······って、行動早いな······

 

双葉『もしもし?加古さんですか?実はですね·····』

 

八幡「話が進みすぎじゃないか?」

 

陽乃「いいじゃない、私トラッパーって出来るには出来るけど、そこまでよく分かんないから喜多川ちゃんに聞いてみたいし」

 

八幡「そこなのかい·····」

 

双葉『······はい·····はい!加古さん!ありがとうございます!』

 

双葉「というわけで、転属の方針でお願いします!」

 

八幡「早いな·····」

 

そこに、小町ちゃんと那須隊の日浦さんが来た。

 

小町「あれ?お兄ちゃん達何やってんの?あ、修君こんにちわ~」

 

日浦「皆さんこんにちわ!」

 

修「小町ちゃんこんにちわ」

 

日浦「えっと?」

 

修「ああ、はじめまして、三雲修です。よろしく」

 

小町「修君、茜ちゃんは同い年だよ」

 

日浦「あ、那須隊の日浦茜です!よろしく!」

 

凄い元気だな。日浦さん。

 

小町「それで、皆して何やってんの?」

 

八幡「なんか、加古隊が玉狛に来るかもしれないらしい」

 

小町「え!?てか、そうなったら双葉ちゃんの指導はどうなるの?最近よく来てたのに」

 

兄さんの弟子の一人なのか。

 

八幡「あ?問題ないな。ぶっちゃけ他の弟子が問題だな。比企谷隊も玉狛所属だし」

 

小町「え!?そんなこと一言も聞いてないよ!?」

 

兄さん、いくら小町ちゃんの口が軽いからってまだ言ってなかったのか······

 

双葉「そうなんですか!?」

 

日浦「え?初耳です!」

 

桐絵「あんたまだ言ってなかったの!?」

 

修「兄さん·····」

 

陽乃「まあ、八幡だしね〜」

 

八幡「え?それどういうこと?」

 

修「言葉通りだよ·····」

 

兄さんはやっぱり兄さんだった。そこに、帰った筈の嵐山さんが駆け込んで来た。

 

嵐山「大変だ!君達のチームメイトが!」

 

修「千佳がアイビスで壁に穴開けたんですね·····ハァ」

 

嵐山「ああ。基地の壁に穴を開けたらしい」

 

やっぱりついて行くべきだったかもしれない。

 

双葉「その····千佳、って?」

 

小町「修君のチームメイトだよ双葉ちゃん」

 

双葉「ふむふむ」

 

何がふむふむなのかは分からないが、まあいいや。とりあえず、今は千佳だな。

 

 

 

日浦さんと別れ嵐山さんに言われた通り、狙撃手の訓練場に行くと、何故か物凄く上機嫌な鬼怒田さんに頭を撫でられている、顔を真っ青にした千佳が居た。

 

鬼怒田「そうか、千佳ちゃんというのか。凄いトリオンだねぇ。ご両親に感謝しなきゃいけないよ。ああ、壁については気にしなくていいよ。あの壁もトリオンで出来てるから簡単に直せるから」

 

八幡「何やってんすか鬼怒田さん····」

 

鬼怒田「ん?八幡か。それに、玉狛の連中まで。ん、そういえば三雲は玉狛に転属したのだったな。この子の面倒をしっかり見んか!」

 

そして、何故か腰を殴られる。解せぬ·····念は押したが無駄になったのか。とりあえず謝っておこう。

 

修「す、すいません····」

 

その後、千佳は、他の狙撃手志望に囲まれた。まあ、あれ以来友達を作らなかった千佳に友達ができるならよしとしておこう。

 

 

 

 

迅『よしよし、皆入隊したか』

 

迅は自身が倒した大量のトリオン兵の上に座り、通話している。

 

迅『派手に目立っただろあの3人。····え?一番目立ったのは修?ハハ、流石だなぁ。3人とも今頃超噂になってるだろうな。サイドエフェクトなんかなくても分かる』

 

実際に、迅の予想通りに噂になっている。入隊訓練で、1秒を切った白い髪の男の子。アイビスで壁をぶち抜いた女の子。そして、風間を無傷で圧倒したメガネの正隊員の男。

 

迅『あの3人が注目されるのはこれからだ』

 

迅はそう言ってニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

正式入隊日の2日後。

 

双葉「玉狛に転属になりました!これからよろしくお願いします!」

 

加古「これからよろしくね」

 

加古隊は本当に転属してきた。比企谷隊が口添えしたら、あっさり申請が通ったらしい。兄さんによると、加古隊はどこの派閥にも所属してないらしいからかな。

 

 

 

レイジ「いつの間に決まったんだ?」

 

烏丸「2日前っすよ」

 

林藤「いやぁ、突然来たからびっくりしたよ。なんでも、黒江ちゃんが加古ちゃんに直々に頼み込んだとか」

 

宇佐美「あたしも小南から聞いてなかったらね」

 

陽太郎「お?しんいりか?」

 

レイジ「話が早すぎる····」

 

 




ここに突然のオリ展開。一応、加古隊の隊室は本部でそのままとなり、加古炒飯は今日も堤を殺します。玉狛に来るのは、基本双葉が、小南や修や遊真と修行しに来るだけ(というか、修がもう遊真の修行も見てる)で、加古さんは付き添いだったり、偶に陽乃さんと模擬戦しに来たりするくらい。他2人は原作に出てないので、書きません。



作者「双葉だけを玉狛に入れようかな→加古隊の戦力(特に接近戦)下がるな→じゃあ加古隊ごと放り込も」


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27話:未来とは、時に光にも闇にも成りうるものである。


ボーダーの設定変えます。
八幡達が接触したことで旧ボーダーが発足出来たが、それよりかなり前から城戸、忍田、林藤、最上、有吾が個人的に集まって動いていた(有吾は、使い捨てのトリガーで向こうの世界から色々なデータを城戸達に送ってた)。迅のみその頃から城戸達と知り合いだった。ボーダー発足前は、忍田は精々木虎ぐらいの強さだった(林藤は、那須くらい)。


 

加古隊が玉狛に転属した翌日。

 

「おい、あいつじゃね?」

 

「ああ、間違いない」

 

「でも風間さんを圧倒するなんてホントに出来るの?」

 

僕は、今本部のラウンジにいる。本部に出頭しろとの城戸さんの命令だ。時間になったら迅さんが僕と空閑を呼びに来る。ところで、話は変わるが僕は今とてもめんどくさい事態に陥っている。空閑がランク戦をしに行ったので、僕は、他の隊員のランク戦でも見ていたのだが、周囲からの視線が非常に痛い。この前の風間さんとの模擬戦で、風間さんを圧倒したことがもう広まっているらしい。これはきっと、嵐山隊の狙撃手の人の所為だ。うん、絶対にそうだ。そうに違いない。でも、まだ3日しか経ってないのにこんなに広まるのか。ボーダーが思ってたよりも狭いのか、隊員皆の仲がいいのか。そこで、茶髪の少年と目が合った。

 

「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけどさ」

 

修「何?」

 

あ、この子が兄さんと黒江が言ってた迅バカだな。確か···A級草壁隊の緑川だっけ?

 

緑川「その肩のエンブレム、玉狛のやつだよね。玉狛支部の人?」

 

修「そうだよ。最近転属したんだ」

 

緑川「転属?なんで?どうやって?」

 

ああ、迅さんが玉狛にいるから嫉妬してるのか。ええと、大規模侵攻の時、僕と桐絵で助けたのが黒江で、迅さんが助けたのが緑川だったっけ。ここで迅さんの名前を出さなくてもいいけど、折角だし軽く付き合ってもらおう。

 

修「まあ、色々あったんだけどね。玉狛の迅さんに口添えしてもらってね」

 

緑川「迅さん?······ふ~ん。ねぇ、今日って非番?」

 

修「うん、今日は非番だけど?」

 

緑川「じゃあさ、これから俺と個人ランク戦しようよ」

 

よし、かかった。

 

緑川「10本でも5本でもいいからさ」

 

ここで、緑川を軽く圧倒すれば少しは気が晴れるかも。って、年下相手に情けない。でも、最近桐絵と空閑とばっか模擬戦やってるから、偶にはいいか。

 

修「いいね。分かった、やろう」ニャッ

 

緑川「ありがとう、それじゃついてきて」

 

こいつ、わざと目立つ所を通ってるな。でも何で僕なんだろうか。玉狛なら僕以外にも居るし、この前木虎が、稽古がどうとか言ってたから烏丸さんあたりは、偶に来てたと思うんだけど。とりあえず、1、2本適当に流してスラスターで真っ二つにすればいいか。

 

 

双葉「あ、修さんと····駿?」

 

黒江は尊敬する命の恩人と、幼馴染みが何故一緒にいるのか分からないので、後ろを付いていくことにした。

 

 

僕達は、部屋に入る。緑川は隣の部屋に居る。

 

1本目。適当にアステロイドを撃つ。レイガストは出さない。緑川は、そこそこ素早く移動して僕の首を刎ねた。

2本目。緑川はグラスホッパーで、僕の周りを飛び回る。乱反射を使うのはいいけど、そんな直ぐに見せていいのだろうか。緑川は背後に周り、僕の胸を後ろから貫いた。もう動きは分かったから、いいか。緑川は整合性がないけど、動きが単純だから読みやすい。フェイントもあんまり無いし。動きを見せたくて仕方ないって顔してる。

3本目。さっきと同じように、緑川はグラスホッパーで接近してきた。また、乱反射。めんどくさいので、グラスホッパーに着地した瞬間にスラスターで真っ二つにした。

 

 

『10本勝負終了。勝者 三雲』

 

あの後も全部スラスターで真っ二つにしてた。最後の方は、なんか申し訳なかった。ブースを出ると、周りが騒然としてるけどまぁいっか。噂も直ぐに収まるだろうし。そこで、緑川が頭を下げて来た。

 

緑川「すいませんでした!この人数の前で負かして、恥をかかせようとしてました!」

 

修「うん·····目が合った時から知ってた」

 

緑川「え!?」

 

緑川は目を見開いて驚く。そこまで驚くことなのか?

 

双葉「駿!」

 

緑川「···双葉?」

 

修「黒江も来てたのか」

 

双葉「はい。昨日早速教わったことをランク戦でやろうと思いまして」

 

緑川「双葉の知り合い?」

 

双葉「あれ?加古隊が玉狛に転属したの知らなかったの?」

 

緑川「え!?初めて聞いたよそんなこと」

 

修「それ昨日のことだからね。····玉狛支部の三雲修だ。よろしく」

 

緑川「あ、はい。草壁隊の緑川駿です。よろしくお願いします」

 

双葉「修さん!私ともランク戦やって下さい!」

 

修「ごめん。これから会議なんだ。空閑の付き添いってのもあるし」

 

双葉「あ、そうなんですか」

 

緑川「三雲先輩!今度また俺ともランク戦して!」

 

なんかいきなりフレンドリーになった。どうしようかな。そこで、遊真と米屋さんが来た。何故か陽太郎と雷神丸がいる

 

遊真「ようオサム。お、クロエもいたのか」

 

双葉「こんにちわ遊真先輩」

 

あ、そうだ。

 

修「緑川。次ランク戦したかったらこいつと戦って勝ち越せたらだ」

 

唐突に空閑を巻き込む。

 

遊真「オサム、何言ってんだ?」

 

米屋「お、なんか面白そうなことやってんな」

 

陽太郎「?」

 

修「いいだろ?こいつはA級だ。お前も一度戦ってみたいだろ?」

 

遊真「ほう?」

 

修「緑川、こいつはまだ入隊したてのC級だけど実力は確かだ」

 

緑川「えー·····C級?」

 

何故そこまでぐだる。

 

修「それは戦ってみてから決めるといい。C級だけど、A級部隊でエース攻撃手になるくらいはある」

 

双葉「遊真先輩は強いよ。昨日やってもう負けたし」

 

緑川「え?双葉が?じゃあ、お願いします」

 

遊真「いいだろう」

 

なんか、胸を張って空閑は緑川とランク戦ブースに入って行く。

 

米屋「三雲、面白いことやってんじゃねぇか」

 

修「想像以上だったんでとりあえずって所ですよ」

 

米屋「それより、いつ黒江と知り合いになったんだ?」

 

修「昨日、加古隊が玉狛に転属してきたんですよ」

 

米屋「あー、そういえばそんなことあったな。秀次がなんか言ってた」

 

修「······三輪さんにはなんか上手いこと言っておいて下さい」

 

双葉「修さん、会議っていつから始まるんですか?」

 

修「ああ、もう少ししたら迅さんが呼びに来てくれる。そうだ。加古隊も、2週間は三門市から離れないでくれ」

 

米屋「突然どうした?」

 

修「まあ、会議の内容次第ですけど通達がいく筈なので詳しいことはそれで。後、何で陽太郎がいるんですか?」

 

さっきから聞きたかったことを聞く。

 

陽太郎「ようすけはしおりちゃんのいとこなのだ。そして、おれの陽なかまでもある」

 

修「そうなのか」

 

そうこうしていると、空閑と緑川のランク戦が始まった。最初の二本は、緑川が余裕な顔をして取った。

 

修「緑川······」

 

双葉「駿·····」

 

修·双葉「「ハァ、学習してない」」

 

米屋「何でだ?」

 

修「空閑が、さっき僕がやったのと同じことしてるのに、気付かないんですよ」

 

米屋「ああ、わざとやってんのか」

 

修「その後は、動きが簡単に読めたんで」

 

米屋「それで、どうだったんだ?」

 

修「2本流して残りの8本はスラスターで真っ二つにしました」

 

米屋「おう、言ってること結構怖いぜ」

 

修「まあ、そろそろ空閑が勝ち始めるでしょう」

 

そう言った瞬間に空閑が右腕を犠牲にして、緑川から1本取った。

 

陽太郎「おさむのいったとおりになった」

 

米屋「まあ、うちの攻撃を4対1で凌いだ奴が緑川1人を捌けないわけないしな」

 

双葉「なるほど。遊真先輩もそんなに強かったんですね」

 

陽太郎「おさむ、なんでゆうまがきゅうにかちはじめたんだ?」

 

修「年季の差だよ。緑川は、無駄が多いし読みやすい。覚えたことを試したいって感じだ。逆に言えば、空閑の動きは人を殺すための効率的、実践的な動きだ。緑川の動きとは、本質的な部分が全く違う」

 

米屋「俺の言いたいこと全部言われた····」

 

双葉「修さんもそうなんですか?」

 

修「どうだろう······僕の場合は他対一の殲滅戦が多かったから····」

 

僕らは、傭兵として戦争に参加していたので、その国の部隊で先陣切って戦うってのが多かった。当然、他対一になる。

 

米屋「おおう·····お前のが凄かったぜ······」

 

空閑と緑川の戦いは進み、6対2になった。もう空閑の勝ちが確定しているが、そんなことで気を抜いたりしないだろう。緑川の雰囲気が変わった。遊真の強さを認めたんだろう。

 

 

 

 

城戸「風間、どうした?」

 

風間「失礼、玉狛の空閑がA級の緑川を圧倒しているようです」

 

忍田「風間、君から見て彼の動きはどうだ?」

 

風間「最低でも··マスタークラス。8000点以上はあるでしょう」

 

林藤「そりゃそうだな」

 

忍田「彼を他のC級と混ぜるのはまずかったかもしれないな」

 

林藤「蒼也、この前修とやったんだろ?どうだった?」

 

風間「····端的に言って強いですね。今の俺では勝てないでしょう」

 

林藤「そうか」

 

 

 

その後、空閑と緑川の戦いは進み、8対2で幕を閉じた。

 

米屋「よーし、白チビ、今度こそ俺と······」

 

迅「修、遊真」

 

迅さんが呼びに来た。

 

迅「来てくれ。城戸さんが呼んでる」

 

修「分かりました。米屋さん、ではまた。黒江はまた玉狛で」

 

双葉「はい!」

 

大規模侵攻だ。黒江に2週間とか言ったが、アフトクラトルはもう直ぐそこまで来ている。明日来たとしてもおかしくはない。おそらく、4年前の何倍もの戦力で来ることは間違いないだろう。千佳はどうしよう。あのトリオン量だとまず間違いなく狙われる。

 

緑川「迅さん!」

 

米屋「また始まったぜ」

 

修「ああ、あれが迅バカってやつですか」

 

緑川「迅さん、迅さん、迅さん、迅さん」

 

緑川は、迅さん迅さん言いながら、迅さんの周りを踊るように回っている。

 

迅「おー、元気か?駿」

 

あ、大規模侵攻で迅さんが助けた男の子が緑川か。逃げてる途中で黒江と離れ離れになったのかな。そして、空閑と緑川も仲良くなったようだ。迅さんは、2人を見て嬉しそうな表情を浮かべる。これからは、緑川の興味はできる限り空閑の向けさせよう。波風立たなくて済む。

 

緑川「迅さん!三雲先輩と遊真先輩に勝てたら玉狛に入れてよ!」

 

駄目でした。

 

迅「おーいいぞ。でも草壁隊どうすんの?」

 

緑川「兼任する!」

 

迅「まあ、修に勝てるくらい強くなったら考えてやる」

 

緑川「ホント!?」

 

なんか玉狛の実権が迅さんにあるみたいな言い方だ。

 

迅「·····さて、ほんじゃまあ行こうか2人とも」

 

修「分かりました。じゃあこれで失礼します」

 

遊真「悪いなよねや先輩。勝負はまた今度な」

 

米屋「ちぇー」

 

そんなに楽しみにしてたのか·····

 

 

迅「にしても、2人とも駿に圧勝できるなんてな」

 

修「まあ、魂胆が分かってたんで乗っただけなんですけどね」

 

遊真「ふむ?」

 

修「風間さんとの模擬戦の噂が流れて、周りの視線が痛かったから丁度よかったんだ」

 

遊真「なるほど?」

 

迅「着いたぞ」

 

話している間に会議室に着いた。どうなるんだか。

 

 

 

八幡「ふわぁ~」

 

林藤「どうした八幡。寝不足か?」

 

八幡「まぁちょっと。それより、来ましたよ」

 

 

迅「失礼しま~す」

 

修「失礼します」

 

会議室に入ると、初っ端から鬼怒田さんの怒号が飛んでくる。今日は兄さんの隣に義姉さんも居る。

 

鬼怒田「遅い!何をやっとるんだ!」

 

迅「まぁまぁ落ち着いて鬼怒田さん」

 

陽太郎「そうだぞ、おちつけぽんきち」

 

鬼怒田「何故お前がおるんだ!」

 

城戸「·····時間が惜しい。早く始めてもらおう」

 

城戸さんが苛つく鬼怒田さんを無理矢理収めて、始める。

 

修「あの人が、ボーダーで一番偉い人だ」ヒソヒソ

 

遊真「なるほど」ヒソヒソ

 

忍田「今回の議題は近々来ると予想される大規模侵攻についてだ」

 

先のイルガーの被害を加味して、ボーダーとしては被害を最小限に抑えたい。だから、近界民の空閑から情報が欲しいということだ。鬼怒田さんも近界に数多くの国があるのは分かっており、何度も遠征してはいるが、全然情報が足りない。知りたいのは、どこの国がどんな攻撃をしてくるかということらしい。そして、空閑はレプリカを表に出した。

 

レプリカ『久しぶりだな、マサムネ、マサフミ』

 

忍田「お久しぶりです」

 

城戸「······久しぶりだなレプリカ」

 

レプリカ『私の中には、ユーゴと旅した国の情報がある。だがその前に、マサムネ、ボーダーの責任者として、ユーマの身の安全を保証していただきたい』

 

鬼怒田「そんな口約束になんの意味がある!」

 

城戸「······いいだろう。ボーダーの隊務規定に従う限り、空閑遊真の身の安全と権利を保証しよう」

 

遊真「嘘はついてないよ」

 

レプリカ『······確かに承った』

 

近界には、国境などはなく、国一つ一つが独立した星として、近界の中を浮かんでいる。惑星国家と呼ばれるそれらは、天体の公転のような、軌道があり、それに沿って移動する。そして、その星がこちらに接近した時だけ、門を開き、こちらに戦力を送ってくる。乱星国家となると、決まった軌道がないので、話は別だが。レプリカがそこまで説明すると、鬼怒田さんは、そこまでは分かっていると、怒鳴る。知りたいのはそれがどの国でどれくらいの戦力と戦術で攻めてくるかということだと、言ってくる。レプリカはボーダーのデータでは不十分だと、不足している分を宇佐美さんを通して、送信する。それと同時に、有吾さんとレプリカによって、今まで蓄積されたデータが、浮かび上がる。惑星国家の軌道配置図だ。凄いな。流石有吾さんだな。この量のデータにそれぞれが驚いている。兄さんと義姉さんも驚いている。

そして、この情報だと、接近している国は四つ。

広大で豊かな水を持つ国、海洋国家リーベリー。

特殊なトリオン兵に騎乗して戦う、騎兵国家レオフォリオ。

激しい気候と地形。雪原の国、キオン。

······そして、近界最大級の軍事力を持つ神の国、アフトクラトル。

·····やはり、アフトクラトルが接近しているのか。今回の接近で間違いなく大量の戦力が投入されるが、四大領主のどこが来る·····待て、アフトクラトルの母トリガーは、後数年もつか、もたないかのレベルだった筈だ。なら、今回は例を見ないレベルの戦力が投入される可能性すらある。

 

城戸「······確か、修はアフトクラトルについて話していたことがあったが」

 

修「······そうですね。アフトクラトルが攻めてくるのは、まず間違いないかと」

 

忍田「どういうことだ?」

 

修「まず、向こうの世界の国は国そのものが、母トリガーっていう大きなトリガーでできています。この母トリガーっていうのは、数百年ごとに寿命がくるんです。寿命が来ると、国は完全に死にます。天気もおかしくなれば、太陽も昇らなくなる。この母トリガーっていうのが、全近界の国の中枢ですから」

 

忍田「まさか」

 

修「はい。アフトクラトルの母トリガーは、十中八九、後数年で死にます。そうなったら、アフトクラトルという国は死ぬ。なりふり構わず、接近する国全てに襲撃するでしょう。こちらに攻めてくる戦力は、4年前とは比べ物にならない筈です。母トリガーは中途半端な人間では扱えないので、生贄を求めてこちらを襲撃するでしょう。アフトクラトルではないですけど、母トリガーの生贄を探すために、戦争で黒トリガーを4本投入した国があったと聞いています。」

 

鬼怒田「黒トリガーが4本!?」

 

レプリカ『ふむ·····アフトクラトルが満足するほどのトリオン量をもった者を捕らえに来るか』

 

遊真「そうなると、一番危ないのは千佳だな。今の千佳じゃいい的だ」

 

鬼怒田「何だと!?おい林藤!なんとしてでも雨取千佳を外に出すな!」

 

林藤「言われなくともそうするって鬼怒田さん。今の話を聞く限り、千佳は、恰好の的だ。表に出すわけにはいかない」

 

遊真「···ていうか、迅さんのサイドエフェクトでなんか視えないの?どんな手段を使うとか」

 

迅「俺のサイドエフェクトは会ったことのない奴の未来は視えないんだ何かが攻めてくるっていうのは、分かるけど、今いる奴らから断片的にしか情報が拾えない」

 

遊真「ふむ····なるほど」

 

迅「·····ただ、今回は、場合によっては千佳ちゃんを出した方がいいかもしれない」

 

囮か。千佳以外の奴だって当然狙われる。なら、敵戦力を千佳に集めるべきだということか。

 

修「千佳を囮に使うんですね」

 

迅「ああ、流石だな修」

 

だが、これに空閑が反論する。

 

遊真「ふざけてるのか?何でチカを囮なんか·····」

 

迅「考えてみろ。今回は4年前とはレベルが違う。修の話だと、過去例を見ないような戦力を投入される恐れがある。ボーダーがいるって言ったって万能じゃないんだ。市民への被害も考慮しなきゃならない」

 

·····なら、僕が囮になって暴れた方が早いと思うんだがなぁ。

 

八幡「なら、俺と修が囮になるのは?俺らで派手に暴れて、敵を引きつける」

 

兄さんと考えが全く一緒だったようだ。

 

陽乃「じゃあ私も····」

 

八幡「陽乃は玉狛に居ろ。お前がアフトクラトルの連中と、戦うのはまずい。雨取は戦えないし、当日は、多分陽太郎と宇佐美も居るだろ?陽太郎はトリオン量はそこそこあるから、狙われないとも限らない。祐夜と柚稀奈も玉狛に居させよう。お袋には言っとく。······で、小町を戦闘員として、本部待機ってのはどうです?」

 

城戸「·····いいだろう。比企谷隊と修の黒トリガーの使用を許可する」

 

八幡「ありがとうございます」

 

三輪「いいのか?比企谷、お前の妹も危険が及ぶぞ?」

 

八幡「問題ない。小町なら、風刃使った迅さんと渡り合えるくらいには鍛えてある」

 

鬼怒田「いつの間に·····」

 

城戸「迅、今回は比企谷の言うように行く。それでどうだ?」

 

迅「そうですね。八幡と修は、千佳ちゃんよりトリオン多いし、戦力としても充分すぎるくらいだ。今の所は問題ないと思います」

 

城戸「では、今日の会議はこれにて終了だ。解散してくれて構わない」

 

 

 

修「·····ふぅ」

 

会議が終了し、僕は、兄さんと義姉さんと空閑と本部のラウンジに居る。

 

八幡「お疲れさん」

 

兄さんがマッ缶をくれた。疲れてるので、一気に喉に流し込む。

 

陽乃「2人ともよくそんなに甘いの飲めるね····」

 

八幡「何言ってんだ。俺の血液みたいなもんだぞ」

 

修「そんなにだったの?」

 

遊真「それどんな味?」

 

八幡「凄い甘い。飲むか?」

 

遊真「あ、ちょうだい」

 

空閑はそのままおもむろにプルタブを引いて、一口飲む。

 

遊真「うげぇ、甘くない?よく飲めるね2人とも」

 

八幡「最近、サイドエフェクトの有効範囲が広がっててな。偶に、軽い頭痛が出るんだよ」

 

修「ああ、お大事に····僕は、サイドエフェクトのON/OFFを、しても偶に誤作動みたいな感じで発動しちゃうんだよ」

 

遊真「ハチマン先輩のサイドエフェクトもオサムのもはそんなに負担がかかるのか」

 

そこに、会議の前、ランク戦ブースに置いてきた人達が来た。

 

双葉「お疲れ様です」

 

緑川「どうも〜ハッチ先輩、三雲先輩」

 

米屋「お前らが会議行ってから陽太郎見当たらねぇんだけどどこ行った?」

 

八幡「ああ、陽太郎なら会議に来てたぞ」

 

米屋「は?」

 

八幡「まぁ鬼怒田さんが軽く怒鳴ってたくらいだな」

 

陽乃「林藤さんと一緒に帰るって」

 

米屋「そっすか。びっくりしたわ。突然居なくなるもんだから」

 

修「アハハ····」

 

八幡「あ、黒江」

 

双葉「何ですか?」

 

八幡「暫くは、三門から離れんなよ。加古さんにも言っとけ」

 

双葉「分かりました」

 

八幡「修、お前この後どうする?俺達このまま帰るけど」

 

修「僕は、玉狛に行くよ」

 

八幡「お前元気だな···」

 

修「桐絵と模擬戦100本する約束しちゃって·····」

 

八幡「お前すげえな」

 

米屋「俺も小南と100本はやりたくねぇ····」

 

双葉「私もご一緒していいですか?」

 

遊真「オサム、俺も加わっていいか?」

 

修「勘弁してくれ······」

 

 

 

 

 

 

 

······

 

迅「なっ!!?」

 

迅は突然頭を過ぎった未来に驚きを隠せない。

 

風間「どうした!?」

 

太刀川「おい!大丈夫か!」

 

偶然一緒にいた風間と太刀川がたまらず声をかける。

 

迅「視えた······最悪の未来·····」

 

太刀川「何が視えたんだ?」

 

迅の額からは玉のような汗が噴き出る。

 

迅「ハァハァ·······最悪の未来だと····修が死ぬ」

 

風間「何だと!?」

 

迅「しかも·····八幡が攫われる」

 

太刀川「は!?」

 

彼らの未来は光か、闇か。

 

 

 



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28話:遂に、大規模侵攻が始まる。

 

 

修「······というわけだ。千佳、分かったか?」

 

僕は、学校の屋上で空閑と千佳と千佳の友達の夏目さんにアフトクラトルが来た時の行動を教えた。こうでもしないと、千佳は囮になろうとする。それは、千佳にとっては危険以外の何物でもないし、千佳クラスのトリオン量の人間を奪われると、敵が大幅な戦力の増強を図ることも出来てしまう。

 

修「空閑は、千佳を玉狛に送り届けたら、そのまま戦いに参加してくれ。黒トリガーは、出来れば使わない方がいいけど、いざとなったら使ってくれて構わない。夏目さんは、千佳と一緒に玉狛に居てもいいし、本部に行ってもいい」

 

遊真「分かったオサム。チカ、これ持ってけ」

 

そう言って、空閑は指輪からレプリカを出して、ちびレプリカを千佳に渡す。

 

千佳「ありがとう遊真君」

 

夏目「分かったっすメガネ先輩」

 

修「後は、いつ来るかは分から·····」

 

千佳「何か来た」

 

警戒区域には、無数の門が開いており、空の色も一気に暗くなった。一旦教師に戻り、先生に一刻も早避難するよう指示を出す。空閑達は、もう玉狛に向かわせている。

 

修「もうか。空閑、千佳を頼むぞ」

 

遊真「任せろオサム」

 

もう一度屋上に上がり、トリガーを起動する。黒トリガーの使用許可は下りてるけど、あれの負担はかなり大きいから、まだ使わない。

 

修『義姉さん聞こえる?』

 

陽乃『聞こえるよ~』

 

修『今、そっちに空閑達が向かったからよろしく』

 

陽乃『分かった。今、望が一緒に居るんだけど、どうする?』

 

修『聞こえますか加古さん』

 

加古『聞こえるわ』

 

修『加古さんは、南部地区に向かって下さい。合流出来る人が居たら合流して下さい』

 

加古『分かったわ』

 

通信を切る。

 

修「鬼が出るか蛇が出るか·····」

 

一人呟いたあと、通常トリガーを起動し、空に飛び上がった。

 

 

 

 

十数分前。総武高校。

 

俺は、奉仕部の部室で雪乃ちゃんと飯を食いながら、平塚先生の連れてきた依頼人の話を聞いていた。依頼人は一色いろは。後、付き添いで城廻先輩も来ている。依頼ってのは、なんでも、今度の生徒会選挙に勝手に立候補させられたらしい。うちの学校は、推薦人を最低30人は集めないといけないから、計画的に行われたのだろう。でも、推薦人名簿に本名書くのはアホすぎるとは思うが。

 

八幡「······まぁ、話は分かりました」

 

一色「ありがとうございます~」

 

雪乃「それで、担任の先生へ話したりはしたのかしら」

 

一色「もちろんしましたよ〜!で~も〜、なんか先生が凄いノリノリで〜話聞いてくれないんですよ~」

 

うわ、なんだこいつ。めちゃくちゃあざとい。あざといけどそこまで可愛くない。ただあざとい。

 

雪乃「とりあえず、依頼は受けましょう。まず、先生の説得など、そちらても出来る限りやっていただけないかしら。私達は、それが通じなかった時の対策をこうじておきますので」

 

一色「ありがとうございます〜雪ノ下先輩!」

 

そんな、あざといくだりがあった時、外から悪寒がした。見ると警戒区域内に、かなりの門が開いている。

 

八幡「····っとそんなお前には悪いが、依頼は一旦中止だ」

 

一色「え!?何でですか!?」

 

八幡「外を見てみろ」

 

一色「外····な、何ですかあれ!?」

 

八幡「あざとい演技忘れてるぞ~。平塚先生、生徒の避難をお願いします。雪乃ちゃんは、C級とともに避難誘導」

 

雪乃「了解」

 

八幡「平塚先生、雪乃ちゃん以外のボーダー隊員を全員集めて下さい。指示を出します」

 

平塚「分かった。すぐにやる」

 

そう言うなり、平塚先生は、ダッシュで出て行った。

 

八幡「一色だったか?お前も早く行け」

 

一色「分かりました·····」

 

 

 

八幡「よし、隊員全員集まったな」

 

三輪「どうするんだ?」

 

その後直ぐに平塚先生は校庭にボーダー隊員を集めてくれた。

 

八幡「とりあえず、正隊員は俺以外は東部と南部の二手に分かれて、迎撃だ。C級は市民の避難にあたれ。雪乃ちゃんには、C級と市民の護衛を頼んである」

 

奈良坂「お前はどうするんだ?」

 

八幡「俺は西部区域の担当だ。北部には天羽。北西部には、迅さんが向かってる」

 

熊谷「あんた一人でやるの!?」

 

八幡「トリオン兵だけなら何体居ようが問題ない。····全員、敵の人型には注意。単独で行動しないように」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

八幡「行動開始!」

 

俺が一声かけると、全員が、散っていった。といっても、俺以外は誰かしらと連携するけど。

 

八幡「もしもし小町」

 

小町と携帯で連絡をとる。

 

小町『な~にお兄ちゃん』

 

八幡「状況は分かってるな?」

 

小町『もちろん、これから本部に向かうよ』

 

八幡「それでいい。誰かいたら合流しても構わない」

 

小町『了解!』

 

八幡「頼んだぞ」

 

通話を終了し、俺も担当区域に向かう。

 

八幡「出し惜しみはしない。ラプラス、起動」

 

親父の形見でもある黒トリガーを起動する。ボーダーのトリガーは、全部使えるように学習させてある。俺は、グラスホッパーで西部に向かった。

 

 

 

 

 

僕は、警戒区域に突入し、湧いて出てくるトリオン兵の殲滅をしている。既に、200体近くバラバラにしたけど、全然減らない。迅さんの予知···最悪の未来。阻止するには、兄さんと合流しないといけないらしい。兄さんは、西部地区に向かったから、今はまだ合流出来ないな。空閑は千佳を玉狛に送り届けたらしい。よりによって、ラービットが出て来るなんて思ってもみなかったが。

 

 

 

 

諏訪「何だコイツ!?」

 

諏訪隊は、新型トリオン兵ラービットの遭遇した。

 

笹森「新型····!?」

 

諏訪「日佐人、カメレオンで奇襲しろ。俺達で気を引く」

 

笹森「了解です!」

 

諏訪と堤が散弾銃で攻撃する。そして、笹森はラービットの背後に周り接近する。そのまま、ラービットの頭部に飛び乗り、弧月を突き刺した。しかし、突然電流が走り笹森は気を失う。笹森を庇って前に出た諏訪は、ラービットに捕まる。ラービットの腹が開き、中から触手が出て来て、諏訪は、キューブにされた。同様にキューブになりかけた東隊の小荒井は、東に狙撃されることで難を逃れる。鈴鳴は、攻撃手の村上が単独で時間を稼ぐことになった。

 

 

 

『敵の新型に諏訪隊長が捕まりました!』

 

忍田『何だと!?』

 

八幡『····忍田さん、そいつはラービットです。ラービットは、トリガー使いを捕獲する用のトリオン兵です。こっちでも既に6体出ました』

 

修『忍田さん!こっちにもラービットが来ました!B級C級には戦わないよう指示を!』

 

忍田『よし、B級は全部隊で合流しろ!A級はラービットの撃破だ!守るのは、東部と南部だけでいい!』

 

根付『そ、それでは、北部と西部はどうなるんですか!?』

 

忍田『問題ない。北部と西部には、天羽と八幡。南西部には、迅が。トリオン兵の殲滅をしている』

 

根付『そ、そうですか。なら大丈夫でしょう』

 

 

諏訪が捕まり、ピンチに陥った諏訪隊もとに、風間隊が到着した。風間隊は、ラービットを連携して攻撃する。後少しのところで、音により、カメレオンからの奇襲が防がれる。風間隊は、連携して弱い所から攻めていく。

 

 

 

 

「おいおい、もうラービットとまともに戦える奴が出てきたぞ」

 

黒髪で黒い角を持つガラの悪い男、エネドラはディスプレイに映る青い服の男を観ながら嬉しそうに喋る。

 

「いやはや、玄界の進歩も目覚しいということですかな」

 

白髪の杖を持った老人、ヴィザがそう続ける。

 

「······ん?これは?」

 

黒い角を持つ今回の襲撃部隊の隊長、ハイレインの呟きに、弟のランバネインが返す。

 

ランバネイン「どうした兄者」

 

ハイレイン「エネドラ、これを見てみろ」

 

ハイレインは、ディスプレイを指差す。

 

エネドラ「こりゃあ、ツキが回ってきたんじゃねぇか!」

 

ヴィザ「ほう、もしかしなくとも彼ですな。懐かしい」

 

ランバネイン「そうか。あいつは玄界の人間だったのか」

 

彼らが見ているディスプレイには、銀髪で1本だけピョコンと髪がはねている中肉中背の男が映っている。

 

ハイレイン「そのようだ。もうプレーン体のラービットを7体破壊している」

 

ヴィザ「彼が居る、ということは、彼の弟も来ていますかな」

 

「こいつは····!」

 

今まで黙っていた青年、ヒュースも続ける。

 

ハイレイン「奴の弟も既にラービットを5体破壊している。もう少ししたら、お前達の出番だ」

 

違うディスプレイには、メガネを掛けた少年がラービットをバラバラにする様が映っていた。

 

エネドラ「早くしろよハイレイン。戦いたくてたまんねぇ」

 

 

彼等の士気と興奮は高まり、戦いは加速する。

 

 

 

 

 

 



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29話:彼等は、否応なく戦いを続ける。

現在の修のトリガーセット(ランク戦編もこれで行く予定)

メイン サブ

レイガスト アステロイド
スラスター メテオラ(スパイダー)
バイパー グラスホッパー
イーグレット シールド


警戒区域北西部。

 

八幡「お~、派手にやったな天羽」

 

俺は、西部地区のトリオン兵を全部片付けて天羽の様子を見に来た。

 

迅「やってるね〜」

 

天羽「ハチさん?その髪どうしたの?」

 

俺の髪がやはり気になったようだ。そりゃそうか。俺の髪は黒だから、突然銀髪になったらびっくりするわ。

 

八幡「これか?俺が黒トリガー使った時はこうなるんだよ」

 

天羽「ふ~ん。黒トリガー持ってたんだね」

 

八幡「まあな。城戸さんに頼んでA級にしてもらってるがな」

 

迅「天羽、俺の所も任せていいか?」

 

八幡「あ、俺も頼んでいいか?弟と合流しないといけないらしくてな」

 

天羽「いいよ。ハチさん弟いたんだね」

 

八幡「ああ。というわけで頼む」

 

ドッ!!!!

 

その時、物凄く爆音がした。

 

八幡「は?」

 

忍田『聞こえるか八幡!』

 

八幡『どうしました?イルガーですか?』

 

忍田『ああ』

 

 

『第二波来ます!』

 

その時、新たにイルガーが4体出現した。

 

忍田『一体でいい!確実に落とせ!』

 

鬼怒田『忍田本部長!?残り3体はどうすんですか!?』

 

 

太刀川『お~い、比企谷~』

 

八幡『どうしました?』

 

太刀川『俺が爆撃型落とす』

 

八幡『じゃあ、俺も2体落とします。こっからなら届きます』

 

太刀川『いいねぇ』

 

 

その声が聞こえたなり、本部の屋上から何かが飛び出し、イルガーを1体斬った。

 

八幡「天羽、どっかに掴まっとけ」

 

迅「伏せろ天羽」

 

八幡『小町、イルガー消し飛ばすからどっか掴まっとけ』

 

小町『ふぇ?いきなりどうしたの!?』

 

小町が何か言ってるが、今はイルガーが先だ。迅さんが自分ごと天羽と地面に伏せる。

 

八幡『太刀川さん思いっきり上に跳んでください。早く!』

 

太刀川『わ、分かった』

 

太刀川さんが、グラスホッパーで跳ぶのを確認する。この間僅か7秒。

俺は、グラスホッパーで素早くイルガーの前まで飛び出し、ライフルを構える。流石黒トリガー。グラスホッパーのパワーが違う。

 

八幡「消し飛べ」

 

俺が銃爪を引くと、銃口より圧倒的に太い、淡いピンク色の光条の弾丸が撃ち出される。反動で後ろに飛ばされないように背面にシールドを張る。弾丸は2体のイルガーに直撃し、2体ともを、文字通り消し飛ばした。因みに、ラプラスでは、グラスホッパーもシールドもトリオンキューブも全部淡いピンク色である。何故かは知らんが。

 

八幡『忍田さん大丈夫ですか?』

 

忍田『ああ、こちらはなんとか大丈夫だ』

 

 

八幡『小町、大丈夫か?』

 

小町『いや〜びっくりしたよお兄ちゃん。物凄い衝撃と閃光だったんだから』

 

八幡『てか、お前もう本部に着いてるのか?』

 

小町『そだよ』

 

八幡『よし、お前は、本部付近でトリオン兵の殲滅だ。人型には注意しろ』

 

小町『りょ~か〜い』

 

八幡『天羽、後は任せた』

 

俺は、修と合流に向かった。

 

 

 

イルガー撃墜数分前。

 

僕は、無数のトリオン兵を殲滅している。それにしても数が多い。空閑や千佳は大丈夫だろうか。そこで、レプリカからB級が、一箇所に集まるよう指示が出たことを聞かされる。避難が進んでいない所からB級部隊を送り込むらしい。ということは、避難がスムーズに進んでいる所ほど後回しにされる。確か、雪乃さんがいる所が一番警戒区域から遠かった筈だ。加古さんが向かってる筈だけど、間に合うかな。あそこには雪乃さん以外C級しか居なかった筈だ。とにかく、僕の中学の知り合いも居るのでここは、片っ端から倒す。その時、ラービットが3体も一気に現れた。やっぱり僕がいることがバレてるな。でないと、一回に3体も送り込まないだろう。とりあえず、一体にアステロイドを撃ち、ラービットがガードした隙に、スラスターを使いラービットを真っ二つにする。そこで、残りの二体のうちの一体が攻めてくる。その時、

 

遊真「ブースト、クインティ!」

 

空閑が、ガードしたラービットを吹き飛ばす。ラービットの片腕にヒビが入った。ラービットの腕は、トリオン兵の中でもかなりの強度なので、一撃でヒビを入れるには、かなりの攻撃力が必要になる。

 

遊真「うお、こいつ硬いな」

 

修「千佳達は大丈夫か?」

 

遊真「大丈夫だって。オサムは面倒見の鬼だな」

 

そこで、最後の一体にクロスファイアが撃ち込まれる。ラービットは、沈黙した。

 

嵐山「大丈夫か三雲君!」

 

その時、空閑が撃たれる。

 

茶野「そこのメガネ!早く逃げろ!人型近界民が!」

 

嵐山「茶野、落ち着け。彼は味方だ」

 

茶野「味方!?」

 

どうやら、黒トリガーを使っている空閑を敵と誤認したらしい。嵐山さんが来てくれて助かった。茶野隊。B級18位の部隊で、僕らが真っ先に当たる確率の高いチームだ。その時、嵐山さんが本部に通信を入れるが、応答が無い。見ると、イルガーが接近していた。

 

修「なるほど····」

 

木虎「ちょ····そんなに悠長に言えるの!?」

 

修「大丈夫だよ。多分これは、牽制だ」

 

嵐山「何故だ?」

 

修「メインの基地に、下手に攻撃すれば黒トリガーの報復をくらうかもしれないからですよ。勝利目前の国が黒トリガーの報復を受けて、敗走したことだってあります」

 

遊真「確かにそうだな」

 

修「それに、今回の向こうの目的は、多分僕らを叩くことじゃないです」

 

嵐山「というと?」

 

修「トリガー使いの捕縛」

 

「「「「!!」」」」

 

その時、第二波のイルガーが4体送り込まれた。一体は、基地の迎撃用の砲台に落とされ、一体は本部の屋上から飛び出した人に斬られた。

 

遊真「うお、自爆モードのイルガー斬ったぞ。凄いな」

 

その直後、残り2体のイルガーがピンク色の太い光条の弾丸を食らって····いや、弾丸に呑み込まれて、消し飛んだ。

 

「「「「は!?」」」」

 

修「ああ、あれは兄さんですよ。兄さんの黒トリガーのライフルの最大出力があれくらいだったと思います」

 

そこに、本部から通信が入り、空閑が黒トリガーを使っているのがバレたが、僕がいたからか、城戸さんは黙認することにしたようだ。

 

修「忍田さん、A級の何人かをC級に向かわせて下さい!敵の狙いは、C級隊員です」

 

「「「「!!!!」」」」

 

城戸『いいだろう。嵐山隊は、避難誘導中のC級の援護に向かえ。修と空閑遊真は、トリオン兵の殲滅をしろ』

 

修「分かりました」

 

忍田『急いでくれ!南東地区に新たな新型が出現した!』

 

嵐山「分かりました!行くぞ!充、藍!」

 

嵐山さん達は、南東地区に向かった。

 

 

遊真「俺達はどうする?」

 

修「こっちは二手に別れよう。僕らはあまり連携して攻撃が出来るわけでもないから、そっちの方が効率がいい」

 

遊真「オーケー、じゃ、また後で」

 

修「ああ」

 

空閑は、東部地区に向かった。僕は、トリオン兵を排除しつつ兄さんと合流しに向かう。

 

 

 

 

 

 

敵遠征艇内。

 

エネドラ「やっとモッド体投入かよ。遅ぇんだよハイレイン!」

 

エネドラは、色違いのラービット、モッド体の投入が遅かったため、文句を言う。

 

ヒュース「黙れエネドラ。上官に対して何たる態度だ」

 

エネドラ「あ?やんのか?」

 

ヴィザ「いやはや、お2人に暴れられてはこの艇ももちませんな」

 

エネドラ「チッ·····」

 

ヒュース「失礼しました」

 

ヴィザ「それより、楽しみですな。悪魔とまで呼ばれたあのお2方と久しぶりに戦えるというのは」

 

エネドラ「そうだぞハイレイン!早いとこ俺を出せ!あいつらはともかくそれ以外の猿どもなら、俺一人で楽勝だ!」

 

ハイレイン「もう少し待て。奴らの行動をもう少し見る」

 

エネドラ「チッ·····早くしろよ····」

 

なおも、悪態をつくエネドラにヒュースも訂正するのを辞めた。エネドラは、戦いたくてウズウズするのを抑えられない。

 

 

 

 

僕は、兄さんとの合流に向かっている。そこで、

 

八幡『修、合流するぞ』

 

兄さんから、通信が入る。

 

修「了解。合流後はどうする?」

 

八幡『引き付けつつ、人型が出て来るのを待つ。向こうも俺達がいるのは分かってるだろうから、ある程度は釣れる』

 

修「分かった」

 

その数分後、僕達は敵を引き付けつつ、連携して殲滅を再開した。だが、何だろう。この感じ。何か分からないけど、なんとなく違和感を感じる。でも、今分からないことを考えても仕方がないので、頭の隅に留めておくことにした。

 

 

 

 

 

雪乃「急いで!」

 

私は今、避難誘導をするC級の援護をしている。途中で川崎さん、大志君、鶴見さんと合流し、避難誘導を続けていたところ、今までとは、違う色のラービットが3体も出現した。直感だが、このラービットは、先程の白いラービットより強い。先程の白いラービットは、4人で連携してなんとか1体倒せた。が、このラービットは私達だけでどうにかなるだろうか。その時、ラービットの一体に、無数の銃弾が降り注いだ。

 

嵐山「嵐山隊現着した!これよりC級の援護に入る!」

 

木虎·時枝「「了解」」

 

どうやら、嵐山隊が、私達の援護に来たようだ。

 

「嵐山隊だ!」

 

「すげぇ!」

 

避難しなければいけない市民が、騒いでいるのだけれども、早いところ逃げてほしい。

 

木虎「この新型、さっきのと色が違う····」

 

嵐山「皆は、早く避難してくれ!」

 

嵐山さんの一声で、やっと我を忘れていた市民達が、ハッとする。

 

雪乃「嵐山さん、お願いします」

 

嵐山「もちろんだ!敵は、3体。一体一体確実に仕留めるぞ!」

 

木虎·時枝「「了解!」」

 

それを合図に、嵐山隊の3人が戦闘を開始した。

 

雪乃「私達は、引き続き市民の避難を」

 

沙希「分かった」

 

大志「了解っす!」

 

留美「·······分かった」

 

その時、白いラービットが新たに出現した。そこに、玉狛第一が救援に来た。小南さんが、新型に双月で上から奇襲し切りかかった後、メテオラで攻撃する。

 

桐絵「あれ?雪乃じゃない」

 

レイジ「お前はC級の援護か。向こうの嵐山隊も」

 

雪乃「そうです」

 

烏丸「こいつが新型っすか。結構硬いですね」

 

そして、全員が臨戦態勢を取り直した時、10時の方向から、爆音が轟いた。

 

 

 

 

 

 

ハイレイン「玄界の戦力は、ほどよく散っている。ラービットが仕事をする舞台は整った。お前達は、ラービットの邪魔にならないように、玄界の兵と遊んでこい。」

 

エネドラ「ケッ·····猿どもかよ·····」

 

ヴィザ「いやはや、この老いぼれ、楽しみで待ちきれませんな」

 

ヒュース「······」

 

そうは言うものの、全員は不敵に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

俺と修は、何千と群がって迫り来るトリオン編を蹴散らしていた。2人でメテオラを放ち、ラービット7体をバラし、若干下がった時、俺達は、自分達が釣られていた事に気付いた。

 

雪乃「義兄さん!?修君!?」

 

八幡「は?雪乃ちゃん!?しかも、玉狛第一に嵐山隊まで······やられた!」

 

完全に敵の掌の上かよ!

 

修「C級!?何でまだこんな所に!?」

 

その時、バチバチッ!!と激しい音がして、門が開いた。

 

ヴィザ「······いやはや、お久しぶりです。ハチマン殿、オサム殿」

 

ヒュース「チッ····こいつらか」

 

しかも、この状況で襲撃しに来たのがヴィザかよ!?

 

修「なっ!·····ヴィザ!?ヒュース!?」

 

レイジ「知ってるのか?」

 

八幡「····爺さんの方は、アフトクラトルの国宝の黒トリガー«オルガノン»の使い手·です。そんじょそこらのトリガー使いとは、次元が違います」

 

レプリカ『オルガノンだと!?』

 

桐絵「それどういう武器なの?」

 

修「あの杖を中心とした軌道にブレードを走らせて、広範囲に攻撃する。初見で対処するのは厳しいだろう。兄さん、僕がヴィザをやる。兄さんはヒュースを」

 

八幡「やなこった。俺がやる。お前はこのまま玉狛第一と行動しろ」

 

修「····でも!」

 

その時、ヒュースが欠片を飛ばして来た。弧月で弾く。

 

八幡「へぇ。完成したんだな。«ランビリス»」

 

ヒュース「チッ·······」

 

八幡「ハイレインめ。やってくれたな」

 

 

 

 

同時刻。

 

エネドラ「ケッ、こいつらか」

 

門から飛び出したエネドラは、風間隊と鉢合わせした。風間隊は、エネドラの角からエネドラが黒トリガーを持っていることを察する。風間隊がエネドラのトリガーの能力を見定めようとした時、地面から液体のブレードが飛び出した。だが、菊地原の強化聴覚を共有していた風間隊は、易々と躱していく。聴覚を共有したことで、風間隊の3人は、襲いかかるブレードを躱す。歌川がアステロイドで応戦するが、弾は、エネドラの体をすり抜ける。

 

エネドラ「あ?どうやって避けやがった?猿のクセに生意気だな」

 

 

風間『奴のトリガーの能力は自身を液体に変化させることのようだな』

 

歌川『どうします?かなり攻めにくいことは間違いないです』

 

エネドラ「ちまちまちまちまめんどくせぇ。一気に蹴散らしてやる」

 

「「「!!」」」

 

エネドラの一声とともに、大量のブレードが襲う。回避し、風間はカメレオンでエネドラの背後に周り込み、首を刈る。だが、エネドラの首は液体化し、風間にブレードに変化し襲いかかる。風間は、スコーピオンでいなして躱す。

 

風間「貴様のトリガーの能力。自身の体を液体化させ攻撃することだな」

 

エネドラ「······ハズレだ。ハッ!だからてめぇらは猿なんだよ!」

 

風間「何!?·····ガッ!?」

 

その時、風間が咳き込む。風間の戦闘体から、トリオンが漏れ始める。

 

風間『何だ?攻撃は受けていない筈だ』

 

三上『風間さんの戦闘体の内部にトリオン反応が出現!内部からブレードが発生しています!』

 

エネドラ「攻撃自体は悪くねぇ。そこの2人を囮にしてエースのチビが仕留める。悪くねぇ。一生懸命毎日毎日練習したんだろなぁ。だが残念。

 

 

·····俺は黒トリガーなんでな」

 

エネドラがそう言うと同時に、風間の戦闘体の内部からブレードが突き出る。そのまま成す術もなく風間は緊急脱出した。

 

エネドラ「一瞬でも勝てると思ったか?雑魚どもが!」

 

エネドラのブレードが、歌川と菊地原に襲いかかる。2人は風間がやられたことに動揺しつつも回避する。

 

風間『撤退しろ。俺がやられた正体不明の攻撃もある。不用意に戦っても無駄死にするだけだ』

 

菊地原『そうですけど······』

 

風間『なんだ?諏訪隊はもっと聞き分けが良かったぞ?』

 

菊地原『······分かりました』

 

そのまま、風間隊の残りの2人は、撤退した。

 

エネドラ「ハッ!逃げやがったか。まあいい。俺は誰でも構わねぇ。ぶっ潰せるならな!」

 

エネドラは、そのまま基地に向かって移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

現在、小南がラービットを破壊し、レイジさんと烏丸はヒュースと戦っている。俺と修はヴィザと対峙したまま動かない。

 

修「·······全部ヒュースに丸投げか?」

 

ヴィザ「ふふ、私の役割はあなた方の足止めです。あなた方に本気を出されては私では敵いませんので」

 

八幡「よく言うぜ」

 

ヴィザ「本心ですよ?当時から私ではどうしようも出来ませんでしたので」

 

修「······お前がそれを言うか」

 

修がアステロイドのキューブを展開する。俺は、ブレードとバイパーのキューブを構える。ヴィザも杖を構える。修がアステロイドで攻撃するが、全て叩き落とされる。バイパーを撃ちつつ、接近戦に持ち込む。ヴィザは、俺が振り下ろしたブレードを杖で受け止め、俺を押し飛ばしつつバイパーを叩き落とす。

 

ヴィザ「······ヒュース殿、手練と無理に戦う必要はありません。目的を果たしたら撤退しましょう」

 

ヒュース「分かっています」

 

ヒュースが右手にレールガンを構え、欠片を撃ってきた。俺達はシールドで対処しようとした。だが、ヒュースが撃った欠片が俺達に届くことは無かった。

 

迅「エスクード」

 

迅さんのエスクードで全て止められたからだ。

 

修「!···迅さん!」

 

迅「やあやあ皆さんこんにちわ。ここからは俺が相手させていただくよ」

 

その時、空から空閑が飛んできてヴィザに強烈な蹴りを繰り出した。ヴィザは杖でガードする。

 

迅「間違えた。俺達が、だ」

 

八幡「ここは任せます」

 

迅「お前らは本部に向かえ。その方がいい。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

 

八幡「了解」

 

俺達は、そのまま本部に向かう。

 

空閑は、身体能力の強化で、ヴィザを吹き飛ばし、自身もそれを追っていった。ヒュースは、レイジさんのレイガストパンチを食らって吹き飛び、迅さんが1対1で相手をしている。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

 

諏訪「来いよミスター黒トリガー。お望み通り遊んでやる」

 

キューブ化された諏訪が復活し、本部に乗り込んできたエネドラと対峙している。

 

エネドラ「ハッ!雑魚がいきがんな」

 

 

 

 

 




次回、小町の初戦闘回(ちょっとだけど)


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30話:彼女にも意地がある。

 

現在、小町は 偶偶近くまで来ていた那須隊の皆さんとトリオン兵の迎撃にあたっています。本部に居た玲さんと茜ちゃん、合流して来た友子さんと、本部に到着した時会って、その時大量に門が出現したので、そのまま迎撃中です。

 

小町「はっ!」

 

小町は、ブレードを振り下ろして、新型の弱点を後ろから頭部ごと真っ二つにします。これで、新型を3体撃破です。

 

那須「·······それにしても、小町ちゃんが黒トリガーを持っててしかもそんなに強いなんてね」

 

小町「これは、お兄ちゃんから貰ったんですよ。俺は適合しなかったから〜って」

 

熊谷「ホントにあいつって何者?」

 

小町「いや~ぶっちゃけ小町にもよく分からないんですよ」

 

実際に、お兄ちゃんはよく分かりません。陽乃お義姉ちゃんに聞いても、修君に聞いても何も教えてくれません。雪乃さんは最近聞いたようですが、口止めされたようです。旧ボーダーの人達も教えてくれませんでしたし。

 

日浦『でも、小町ちゃんは十分強いよ!』

 

小町「ありがとう茜ちゃん」

 

八幡『小町、聞こえるか?』

 

噂をすればなんとやら。お兄ちゃんから通信が入りました。

 

小町「どしたのお兄ちゃん」

 

八幡『本部に、敵の人型が侵入した。今諏訪隊が訓練室で時間稼ぎしてる。忍田さんも向かってるから、お前も行け』

 

小町「今那須隊の人達と居るんだけどどうしたらいい?」

 

八幡『······那須隊聞こえるか』

 

那須「ええ、聞こえるわ」

 

八幡『お前らは、B級合同部隊に今すぐ向かえ。そこも人手が要る』

 

那須「分かったわ」

 

八幡『いいな?小町、出番だ』

 

小町「了解!」

 

 

 

 

 

B級合同部隊は、ランバネインを相手に苦戦していた。旧三門大学に誘い込んで緑川の機動力で攻めたが、また上空を取られてしまう。上空を取ったランバネインは最大の威力で砲撃を開始しようとしていた。しかし、その攻撃が成功することはなかった。

 

八幡「久しぶりだな。ランバネイン」

 

ランバネイン「!?」

 

八幡は上空へ駆け上り、ランバネインの背後から踵落としでランバネインを先程緑川と戦っていた所まで叩き落とした。そして、自身もそのまま着地する。ランバネインは、後ろを見る間もなく叩き落とされた。

 

緑川「は?」

 

修「大丈夫か緑川」

 

さっきの八幡は、修がレイガストのスラスターで思いっきり打ち上げたのだ。そして、ランバネインが墜落した煙が消えると、生身のランバネインと、ランバネインの首にブレードを突きつける八幡が居た。しかし、そこに黒い窓が開いた。八幡は跳んで回避する。八幡が居た場所には黒い棘が突き出ていた。スピラスキアの大窓が出現し、ミラが現れる。

 

ミラ「久しぶりねハチマン、オサム」

 

修「久しぶりだな。ミラ」

 

八幡「ランバネインを回収しに来たか」

 

ミラ「ええそうよ。邪魔はしないでもらえるかしら」

 

八幡「邪魔はしない。だからとっとと帰れ。アフトクラトルに」

 

緑川「いいの?ハッチ先輩」

 

ミラ「それは無理ね」

 

ランバネイン「また会おう、勇敢なる玄界の若き兵士よ」

 

そう言うなり、ミラとランバネインは、ランバネインを回収して門の中に消えていった。

 

八幡「修、本部に向かうぞ。緑川、引き続きトリオン兵の駆除をしろ」

 

緑川「分かったよハッチ先輩」

 

修「行こう兄さん」

 

八幡と修はグラスホッパーで本部へ。緑川はB級合同部隊の方に向かった。

 

 

 

 

 

 

本部基地仮想戦闘訓練室。

 

諏訪「来いよミスター黒トリガー。お望み通り遊んでやる」

 

諏訪隊は、本部に侵入したエネドラを仮想戦闘訓練室に閉じ込めることに成功した。

 

エネドラ「猿が、ほざいてんなぁ!」

 

諏訪『堤、こいつを絶対こっから出さねぇぞ』

 

堤『もちろんです、諏訪さん』

 

 

 

 

同時刻。

 

忍田『小町、訓練室に向かってくれ。私も出る』

 

小町『分かりました。お兄ちゃんによると、あれはボルボロスって言って、自分の体を液体や気体に出来るらしいです』

 

八幡は、風間隊から送ってもらったデータから本部に侵入したのがエネドラだということに気付き、小町にもデータを送っていた。

 

 

 

風間『諏訪、お前のトリガーは手数が多い。いくら液体になれるといえど、弱点は必ずある。お前のトリガーはそれに適している』

 

諏訪『へいへい分かったよ』

 

エネドラ「どうした?もう終わりか?」

 

諏訪「もうちょっと遊んでてもらうぜ!」

 

諏訪は、ショットガンを放つ。しかし、液体化しているエネドラの体に弾は当たらず、すり抜けていく。

 

諏訪「まだまだぁ!」

 

その時、弾丸の一つが何かに命中する。

 

諏訪「ビンゴだ」

 

エネドラ「·····その程度か?」

 

エネドラは、ダミーを精製する。しかし、スタアメーカーでマーキングされているため、諏訪には弱点が見えている。

 

エネドラ「チッ·····鬱陶しい!」

 

諏訪「そうかよっ!」

 

諏訪の放った弾丸が弱点に命中する直前、エネドラは弱点からカバーを外して、ぎりぎり回避した。

 

エネドラ「·····ハッ!どうせこの部屋自体に仕掛けがあんだろ?もう遊びは終わりだ!」

 

そう叫びエネドラは、先程風間達にもやったように、大量のブレードを出現させる。ブレードの攻撃に耐えられない訓練室は、仮想戦闘モードが終了する。その時、壁を破壊して突入してくる者がいた。

 

忍田「旋空弧月」

 

忍田は、旋空でダミーの一部を破壊する。更にもう一人、忍田が壊した壁の穴から訓練室に突入してくる者がいた。

 

小町「はぁっ!」

 

小町は、銃の砲身を諏訪のショットガンと同じくらいの長さにして、弾丸を連射し、更にダミーを破壊する。

 

エネドラ「猿が増えたか」

 

諏訪「比企谷の妹じゃねえか!」

 

小町「話は後です諏訪さん!」

 

諏訪「そうかよっ!」

 

『訓練室にトリオン反応が充満していきます!』

 

忍田『空調を稼働させろ』

 

空調により、エネドラの気体の攻撃は押し戻された。

 

エネドラ「猿が、ごちゃごちゃと!」

 

エネドラは、大量のブレードで攻撃するが、忍田と小町には当たらない。

 

忍田「貴様のような奴を倒すため、我々は牙を研いできた!」

 

その瞬間、忍田の旋空の4連撃と小町の連射により、ダミーが全て破壊される。その瞬間、エネドラの目の前にカメレオンで隠れていた笹森が現れる。エネドラは笹森をブレードで貫いた。笹森の換装体は爆発する。

 

エネドラ「甘ぇんだよ!」

 

 

 

 

 

 

「·····そっちがね」

 

その瞬間、エネドラの弱点は、風間隊の歌川と菊地原のスコーピオンによって破壊される。小町はマステマの能力の一つ、人の精神に干渉する能力で、エネドラにバレない程度に能力を使い、こちらにだけ気を向けさせていたのだ。

 

エネドラ「なっ····!?」

 

エネドラの戦闘体が爆発し、生身のエネドラが現れる。

 

エネドラ「ああっ!クッソがっ!」

 

その時、エネドラのすぐ近くに門が開き、ミラが現れた。

 

ミラ「回収しに来たわエネドラ。随分と派手にやられたものね」

 

ミラが右手を伸ばす。

 

エネドラ「チッ、遅ぇんだよミラ」

 

エネドラは、悪態をつきつつも、ミラの出した右手に左手を伸ばす。そして、ミラは微笑みながら、

 

ミラ「あら、ごめんなさいね」

 

そう言った瞬間、エネドラの左腕が切断される。

 

エネドラ「ぐぁぁぁぁっ!?」

 

小町「ヒッ!!?」

 

突然の出来事に、小町は怖気ずく。そんな小町の視界を塞ぐように忍田が小町の前に立つ。

 

ミラ「回収を命令されたのはボルボロスだけなの」

 

エネドラ「なん···でだ?」

 

ミラ「自覚がないようね。あなたの脳はトリガー角に侵食されているの。もう長くは生きられないでしょうね。右目が黒くなっているのがそのいい証拠よ。影響が人格にまで影響している。暴言や度重なる命令違反。あなたはもう手に余るのよ。そもそも、通常トリガーに負けるなんてね。·········心配しなくとも、あなたの角から得たデータで新しい適合者はすぐ見つかるわ」

 

エネドラ「ミラ、てめぇ!」

 

エネドラはミラに殴りかかる。しかし、その瞬間エネドラの体はスピラスキアの小窓によって、無数の棘に串刺しになる。

 

エネドラ「ガッ!!····ハイ······レ····イン····」ドサッ

 

エネドラは、そのまま息絶えた。

 

小町「······ハァ、ハァ」

 

小町の額には、恐怖によって冷や汗が滝のように流れている。

 

ミラ「昔は、真面目でいい子だったのに。·······もう失礼するわ。また会いましょう?マステマ使いのお嬢さん」

 

小町「·····!!」

 

そう言って、ミラは、ボルボロスとともに門の中に消えた。

 

小町「·········ハァ···ハァ···ハァ···ハァ」

 

小町は、膝から崩れ落ちる。冷や汗は止まらない。目の前であんな事があれば当然とも言えるだろう。肩で息をしながら震えている。

 

忍田「大丈夫か?この後、医務室で休んでくれても構わない。君にも十分助けられたからな」

 

小町「だ、大丈夫です。まだやれます。お兄ちゃんだってまだ戦ってるんです、から·····」

 

小町は、ふらつきながらも立ち上がる。震えは止まっていないが、目には力がこもっている。

 

忍田「······分かった。この後は、本部周辺のトリオン兵の排除を頼む。諏訪は、彼女の援護だ」

 

諏訪「······了解。大丈夫か?」

 

小町「大丈夫です。行きましょう」

 

諏訪「······ああ」

 

小町も兄に頼まれている以上、彼女なりの意地がある。兄から貰った黒トリガーで怖気ずくわけにもいかなかった。

 

 

 

 

 

 

敵遠征艇内。

 

ハイレイン「ミラ、トリオン兵の卵はあといくつある?」

 

ミラ「ラービットが30体。モールモッドが80体。バンダーとバムスターがそれぞれ150体ずつです」

 

ハイレイン「それだけあれば十分だ。あの2人の所にラービットとモールモッドを全て投入しろ」

 

ミラ「了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

俺達は、本部に向かっている。さっき、忍田さんと小町、風間隊、諏訪隊で、エネドラを撃破したと報告が来た。ハイレインは、本部前に待ち構えてC級を一気に捕まえるかもしれない。そんなことさせるわけにはいかない。しかし、そこに バチバチッ!!!! と激しい音が響いた。門からは、数十体のラービットとモールモッドがわんさか出てきた。この量はまずいかもしれんな。ハイレインは、ラービットとモールモッドを全て投入して俺達の足止めをしに来たのかもしれない。

 

八幡「まずいな····」

 

修「僕もそろそろあれを使うよ」

 

八幡「大丈夫か?」

 

修「ああ。無茶はしないさ。トリガー、解除」

 

修は、トリガーを解除し、 懐からブレスレットを取り出して右手首に付ける。

 

修「クオリア、起動!」

 

修の体が黒トリガーの換装体になる。見た目は、生身と何ら変わらない。

 

八幡「久しぶりに見たな」

 

修「まあ、実際に使うのは4年ぶりかな?今のボーダーになってからは使ってなかったし」

 

八幡「それで大丈夫か?」

 

修「ああ。兄さんこそ、黒トリガーを久々に使ってるけど大丈夫?」

 

八幡「そこまで軽口叩けるんなら大丈夫だな。いくぞ!」

 

修「ああ!」

 

加古「あら?二人ともこんな所に居たのね」

 

双葉「凄い数ですね······」

 

加古隊の2人と、偶然合流出来た。

 

八幡「合流しなくて大丈夫すか?」

 

加古「向こうには、東さんが居るから大丈夫よ。A級B級合同部隊がC級の避難をさせてるわ」

 

八幡「そっすか。じゃ、加古さんと黒江はモールモッドをお願いします。俺達はラービット片すんで」

 

加古「分かったわ」

 

双葉「この数のラービットをたった2人で!?」

 

修「大丈夫。向こうが黒トリガーなら、こっちも黒トリガーだ」

 

八幡「行くぞ修!」

 

 

 

 

未来の分岐点までーー後、1200秒。

 

 



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31話:こうして、戦いに決着がつく。

 

アフトクラトル遠征艇内。

 

ハイレイン「·······やはり、あいつらを放っておくのは危険だな」

 

ミラ「如何がなさいますか?」

 

ハイレイン「······出るつもりはなかったが······不本意ながら俺が出る」

 

 

 

 

 

 

遊真「······どんどん近つげなくなるな」

 

レプリカ『こちらの動きに対応してきている』

 

優真とレプリカは、ヴィザ相手に分の悪い戦いをしていた。ヴィザは、足止めと考えている分戦いに余裕があるのだ。対して、遊真にとってはヴィザの攻撃を凌ぐだけでもそうとうキツかった。

 

遊真「····一つ聞きたいんだけど」

 

ヴィザ「何でしょうかな?」

 

遊真「俺よく知らないんだけどさ、オサムやハチマン先輩って向こうでどれくらい強かったの?」

 

ヴィザ「·····そうですね。彼等は、救世主とも死神や悪魔とも呼ばれていましたね。私にとっても、彼等2人の連携になす術もなくやられたのはいい経験でしょうかな?」

 

遊真「ふ〜ん、なるほどね」

 

ヴィザの遠隔斬撃が飛んでくる。優真は跳んで避ける。

 

レプリカ『もう1度策を練ろう。この相手は、今のユーマでは意識の外から攻めなければ勝てない』

 

遊真「·····いや、それでもだめだ。それに、オサム達が勝ったんなら、何かしらいける筈だ」

 

レプリカ『·······!』

 

遊真「揺さぶり合いじゃ勝負にならないことはよく分かった。このままじゃ時間とトリオンを削られるだけだ」

 

遊真「(親父に鍛えられ6年間。親父が死んでからの3年間。その全部を合わせても、この爺さんの厚みには勝てない)」

 

遊真「勝負をかけるなら、技術とか経験とかとは違うとこだろ·············仕掛けは出来るだけシンプルなものにして、正面から最速で叩く。読み合いのポイントを絞って、相手を一本道に引きずり込む」

 

レプリカ『勝算はあるのか?』

 

遊真「ないと思うか?」

 

レプリカ『いや、それを決めるのは私ではないユーマ自身だ』

 

ヴィザ「(·········来る)」

 

 

 

 

 

修は、八幡、加古、黒江とともに、トリオン兵の殲滅を続けていた。加古、黒江と合同した後も、更にバムスターやバンダーが投入されたため、合計で500体近いトリオン兵を4人で相手する羽目になったのだ。

 

 

修「行け」

 

僕はキューブを27分割し、ラービット3体を狙う。狙い通り3体はガードしたが、ガードごと突き破って3体の上半身を破壊した。

 

八幡「これでラービットは片付いたな」

 

加古「早くないかしら?こっちはまだ30体近く残ってるんだけど?」

 

八幡「そうですか。トマホーク」

 

兄さんは、加古さんと黒江に当たらないようにトマホークを放った。そして、黒江が最後の1体を旋空で倒したことで、僕達は投入されたトリオン兵を全て破壊した。

 

加古「この後はどうするの?」

 

修「他の地区のトリオン兵の殲滅に行きましょう。まだラービットも残ってる筈です」

 

そこに、嵐山さんから内部通信が入った。

 

嵐山『····三雲君!そっちに、キューブ化の黒トリガーとワープ使いの黒トリガーが向かった!こっちは藍と出水、緑川、烏丸が緊急脱出してC級が何人か連れ去られた!』

 

修『嵐山さん達は、そのまま無事だったC級を誘導して下さい!黒トリガーは僕達が相手します!』

 

嵐山『分かった!気を付けろ!』

 

そう言って嵐山さんは通信を切った。その時

 

黒江「········鳥?」

 

八幡「!!」

 

鳥?この状況でそんなことをするのは一人しか居ない。·········まずい!

 

修「·····!!逃げろ黒江!」

 

しかし、僕が声をかけるのは遅く、鳥が直撃し、黒江がキューブになり始めた。

 

黒江「······え?」

 

修「クッ····!」

 

僕は、キューブを分割せずにそのまま撃ち出して、黒江を緊急脱出させた。

 

加古「どうしたの?」

 

八幡「敵の黒トリガー «アレクトール»です」

 

加古「アレクトール?」

 

修「トリオンならなんでもキューブにするトリガーです。使用者は、今回の敵遠征部隊の隊長です」

 

加古「······親玉ってわけね」

 

そこで、僕達の目の前から門が開き、ハイレインとミラが出てきた。

 

ハイレイン「······久しぶりだな。ハチマン、オサム」

 

八幡「ようハイレイン。久しぶりだな」

 

ここを凌げば·······

 

 

 

 

 

 

遊真「行くぞレプリカ!」

 

レプリカ『承知した!』

 

遊真とレプリカは、大勝負に打って出た。

 

遊真は、ヴィザの斬撃をそれ以上のスピードで躱していく。

 

ヴィザ「なかなかに鋭い。(しかし、正直すぎではありませんかな?)」

 

その時、突っ込んできた遊真の体が空中で停止した。遊真の首のすぐ下を斬撃が通り抜ける。

 

遊真「チェイン······バウンド!」

 

チェインで急停止し、バウンドで再加速した遊真がヴィザに突っ込む。ヴィザは遊真の視界の外から斬撃を放ち、遊真の両足を飛ばす。

 

レプリカ『即死は避けた。攻撃は届く。こちらの狙い通りの展開だ』

 

その時、遊真の戦闘体が真っ二つになる。

 

ヴィザ「······残念ですな。気迫だけでは、私の剣は破れない」

 

遊真の戦闘体が爆発する。

 

レプリカ『······良し』

 

その時、煙の中から、換装が解けた遊真が飛び出してくる。

 

ヴィザ「馬鹿な······(生身で·····?)」

 

その時、ヴィザの剣が突然重くなる。

 

ヴィザ「·····!(重石のトリガー!?まさか、わざと斬らせたと?)」

 

遊真「ブースト」

 

遊真がヴィザを殴って、トリオン体を破壊した。

 

ヴィザ「(······換装前からトリオン体だったと?)······やれやれ、これだから戦いはやめられない」

 

ヴィザの戦闘体は、爆発する。遊真は後ろを見もせずに、そのまま飛びだし、オサム達の下に向かった。

 

 

 

 

 

ハイレイン「·····!!!!」

 

ミラ「ヴィザ翁!?」

 

俺達と戦っている最中に、突然2人がおかしな声を発した。そうか、ヴィザと戦っていた空閑がヴィザを倒したのか。

 

八幡「どうした?·····ヴィザがやられたな?」

 

ハイレイン「黙れ「おー怖い怖い」チッ····(ヴィザがやられた!?信じられん······)」

 

修「余所見を!」

 

修がハイレインに向かってブレードを振り下ろす。ハイレインは咄嗟に回避したが、左腕と左足の一部を切り落とした。これで、ハイレインはじきにトリオン切れで撤退せざるを得ないだろう。

 

 

 

 

レプリカ『ユーマ、戦闘体を失った。トリオンも残り僅かだ』

 

遊真とレプリカは、全速力でオサム達の方へと向かっていた。

 

遊真「分かってる!残りは全部印にする!バウンドと遠くから殺せるやつだ!」

 

レプリカ『承知した』

 

遊真「レプリカ!敵の位置を教えろ!······ブースト+ボルト クインティ!」

 

 

 

八幡「ここまでたな。終わりだ、ハイレイン」

 

俺達3人は、できる限り細かく分割したキューブを、ハイレインに撃つ。

 

ミラ「隊長!」

 

ミラがハイレインの前に大窓を出現させ、違う所に反らそうとする。

 

八幡「甘いな」

 

俺の放った弾の一部が門を避けてミラに飛んでいく。

 

ミラ「!!!??弾道が変わった!?」

 

ミラの右腕、右足、左足が穴だらけになる。その時、ハイレインに向かって、後方から多数の弾丸が放たれた。周りの鳥が殆ど消えていたハイレインは、抵抗出来ずもろに受けて、大ダメージを食らう。だが、それで終わらせるわけじゃない。

 

八幡「······修!!!!」

 

修「うぁぁぁぁ!!!!」

 

修が叫ぶと同時に、瞬間移動かとしか思えないようのスピードで、ハイレインに突っ込み、すれ違いざまにハイレインを斬る。あまりの速さに対応出来ずに、ハイレインは真っ二つにされた。

 

ハイレインの戦闘体が爆発し、生身のハイレインが姿を現す。俺は、ハイレインの首にブレードを突きつけた。全く関係ない話だが、俺のラプラスではボーダーのトリガーのうち、テレポーターだけはコピー出来なかった。出来てたら、俺が止めを差してただろうか。

 

八幡「撤退しろ」

 

ミラ「隊長!」

 

ハイレイン「クッ·····ミラ、撤退だ······急げ!」

 

ミラ「わ、分かりました!ヴィザ翁を回収します!······ヒュースは、如何が致しますか?」

 

ハイレイン「ああ、目的は達成した。予定通りヒュースはここに置いていく」

 

修「······自分に噛み付く犬は捨てるのか?」

 

ハイレイン「貴様達は分かっているだろう?ヒュースは連れ帰れば敵になる」

 

修「············」

 

門はそのまま閉じて、アフトクラトルは撤退して行った。空は、侵攻前の晴れた空に戻った。

 

 

侵攻は終わったが、修の様子がおかしい。もしかして、またか?

 

修「·······疲れた。兄さん、ちょっと······休む、ね······」

 

八幡「あ、おい!」

 

案の定、修はそのまま何かが途切れたかのように眠りについた。この状態になると数日起きねんだよなぁ。

 

加古「修君、どうしたのかしら?」

 

八幡「こいつの黒トリガーの反動ですよ。見たでしょ?こいつが瞬間移動したみたいなスピードで動いたの」

 

加古「ええ」

 

八幡「修は、今でもそのスピードに体がついていけてないんですよ。だから、こうやって、黒トリガー使いすぎるとその場で倒れるみたいに寝ちゃうんすよ」

 

向こうの世界で、修は、クオリアを手にしたばっかの時は、しょっちゅう倒れてたからな。最初のうちは1分と、もたなかったからかなり成長していることは間違いないんだが。しかも、初めて起動して能力を使った直後は、倒れて半日眠ってたからな。

 

遊真「········あれ?オサム寝てる?」

 

その時、ヴィザを倒した空閑がこっちに来た。

 

八幡「ああ。黒トリガーの使いすぎによる反動でな」

 

遊真「オサム、無茶したのか」

 

八幡「本人は認めないだろうがな」

 

遊真「ふむ、十分有り得る」

 

レプリカ『有り得る、と言うより確定だろう。オサムの性格を考えれば』

 

八幡「そうだな。それより、修を運ぶの手伝ってくれないか?念のために、本部の医務室で寝かせておこうと思ってな」

 

遊真「いいよ、早く行こう」

 

八幡「ああ」

 

俺達は、そのまま修を本部の医務室に連れて行き、そこのベッドで寝かせておいた。

 

 

 

 

 

迅『くあ~っ!もう大丈夫だ。皆無事だ』

 

ヒュースと戦っていた迅は、地面に寝転がった。

 

宇佐美『本当!?でも、修君が倒れたって····』

 

迅『多分大丈夫だよ。修は疲労で疲れて眠っただけだから。八幡によれば、向こうでも黒トリガー使いすぎて、疲労でしょっちゅう倒れてたらしいから』

 

宇佐美『よかった~』

 

ヒュース「·····貴様···!」

 

迅「悪かったな。お前がフリーになるとうちの後輩がやばかったんだ·······でも、お前、こっちに残って正解だと思うよ?俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

 

ヒュース「·····!(コイツ·······)」

 

迅「もう戦ってもしょうがない。投降しろ悪いようにはしないさ」

 

ヒュースは、結局ハイレインに置いていかれたため、捕虜として迅についていくことにした。

 

 

 

 

 

迅『城戸さん、もう戦力の追加はないよ。ぶっちゃけ、八幡と修の所に敵の戦力の半分以上が行ってたから。各地区へに救護班向かわせても大丈夫だよ』

 

城戸『········迅。この結果はお前の中ではどのあたりの出来だ?』

 

迅『う~ん······最高に限りなく近い2番目ってところかな?A級B級が捕まりまくるパターンも民間人が死にまくるパターンも、玉狛が襲撃されて避難してる陽乃さん達が連れ去られるパターンもあったし、八幡が攫われて修が死ぬ未来まであった。·······皆本当によくやったよ』

 

城戸『·······なるほど。分かった。御苦労』

 

 

 

民間人 死者0名 軽傷42名 重傷23名

 

ボーダー 死者6名(全て通信室オペレーター)重傷2名 行方不明者23名

 

近界民 死者1名 捕虜1名

 

対近界民大規模侵攻三門市防衛戦 終結

 

 

 

 




被害者が原作より少ないのは、千佳が居なかったことと、戦力の多くを八幡達に割かれたからです。


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31,5話:設定2

今回は、説明不足の設定とか、ボツになった設定とか。


キャラ

 

・陽乃とハイレインは面識がない。そのため、«サンドラ»の行方を修や八幡に対して聞かなかった。ハイレインは強奪されたとしか知らない。«サンドラ»が保管されていた宝物庫はハイレイン領ではないので、情報の殆どが揉み消されている(国宝を盗まれたなら、当然とも言えるかもしれないが)。

 

・アフトクラトルに立ち寄った時、八幡達はエリン家にいた事がある。

 

・本作においての、修が玉狛第2を結成した理由には、千佳の友達の捜索以外にも理由がある。これは後々。

 

・レプリカは当然の如く無事。ヴィザと戦った時は、本体が最後まで遊真と一緒にいた。

 

・修に遊真呼びさせた理由に深い意味はない。

 

 

黒トリガー

 

・ラプラス

遊真のトリガーとは違い、レプリカみたいなのがいるわけではないので戦闘中に敵のトリガーの解析は出来ない。戦闘中のデータや回収したトリガーから解析して、新しく追加するシステム。実際、ボーダー以外のトリガーは数種類しかない。 何故か、テレポーターを学習(解析)出来ない。但し、韋駄天は出来る。

(追記)同時使用が出来るのは6つまで。旋空やスラスターなどは、オプショントリガーではあるが全ての近接トリガーで使用出来るなど、学習したものも、ボーダーの規格とはかなり異なる。尚、オプショントリガーは旋空とスラスターの同時使用なども可能。

 

・クオリア

戦争の感謝品として贈られたというのは殆ど建前で、実際は、クセが強いし適合者いないし、ただ敵の戦力になるよりはまだマシか。という理由で、修に渡った。修が実体でも疲れまくるのは、脳の神経が高速で動くのに耐えきれない(処理しきれない)から。

 

・サンドラ

八幡や修の黒トリガーの換装体を一発で破壊しようとすると、陽乃のトリオンが一回で空になる。サンドラはすこぶる燃費が悪い。しかも、一対多だと、能力を使った直後はほぼ無防備(«サンドラ»にはシールドを展開する機能はなく、飛び道具もない)。

 

・マステマ

外套のフードにあたる部分の左耳の位置に、ボーダーのエンブレムをつけてある。八幡は本当は適合している。けど、小町が心配なのでマステマを預けた。八幡は旧ボーダーだった頃、これでも訓練している。

 

 

 

原作との変更点など

 

・スナイパー組に戦功がない。諏訪の戦功が1級にアップ。

 

・千佳の存在がアフトクラトルに知られていない。代わりに、八幡達がいることがバレた(今回の侵攻で、アフトが迂闊に手を出せなくなったのでそんなに問題ではない)。

 

・三輪は風刃を使わなかった。なので、風刃は敵勢力にバレていない。

 

・侵攻終了時、川崎隊は留美だけ緊急脱出している(出水・緑川の緊急脱出で焦った留美がラービットに突っ込んで捕まりそうになり、大志がヘッドショットしたため)。

 

・今回の侵攻でアフトクラトルが投入したラービットは、合計120体。そのうち110体が破壊されている。

 

 

 

没ネタ(その後の展開が思い付かなくて没)

 

エネドラVS八幡&修

 

本部に向かう途中、八幡と修は、風間を撃破した直後のエネドラに遭遇した。まだ、歌川と菊地原がいる。

 

八幡『お前らは退け』

 

菊地原『まだ戦えますよ』

 

風間『比企谷の言う通りだ。コイツは俺達とは相性が悪い』

 

菊地原『·······分かりました』

 

歌川『後はまかせます』

 

歌川と菊地原は、その場からカメレオンを使い離脱した。

 

エネドラ「ハッ!雑魚どもが。お前らは少しは楽しませてくれんだろうなぁ!」

 

修「悪いが時間がないんでね。」

 

八幡・修「「トマホーク」」

 

2人同時にトマホークを合成。2人はトマホークを8000個に分割して、エネドラの周囲を爆発で囲みながら少しずつダメージを与えるように弾道を設定して放った。

ガスを吹き飛ばされ、液体ブレードも避けられ、トマホークの爆発に巻き込まれたエネドラの戦闘体は呆気なく破壊された。爆発の後、エネドラの生身が姿を現す。

 

エネドラ「クソがぁぁぁぁっ!」

 

修「············」

 

八幡「«ボルボロス»の武器は特殊性。ネタ割れてりゃどうとでもなる」

 

その時、門が開きミラが現れる。

 

ミラ「派手にやられたわね」

 

エネドラ「チッ······遅せぇよ」

 

エネドラは、ミラに左手を伸ばす。ミラはその手を取る。かに思えたが、エネドラの左腕の肘から先を小窓で斬った。

 

エネドラ「はっ·······!?」

 

ミラ「あら、ごめんなさい。回収を命じられたのは黒トリガーだけなの」

 

エネドラ「ぐぁぁぁっ!」

 

斬られた左腕から血が大量に出る。

 

エネドラ「テメェどういう······!」

 

ミラ「······気付いてる?あなたの右目。トリガーホーンが脳にまで根を張ってる証拠よ。脳への影響が現れてる。それに、なにより·······黒トリガーで通常トリガーに敗北するなんて。致命的ね」

 

ミラは、エネドラの左腕から«ボルボロス»を取り外し、左腕を放り投げた。その時········

 

八幡「韋駄天」

 

ミラが«ボルボロス»を手に取った瞬間、八幡が韋駄天で急接近し、ミラの右腕を斬り落とす。その後、八幡は、ミラの右腕を放り投げて«ボルボロス»だけを回収する。

 

ミラ「あなた·······!」

 

八幡「悪いな。こういうのを見逃すほど優しくないもんで」

 

ミラ「返しなさい!」

 

ミラが小窓を大量に展開するが、八幡はシールドで全て防ぐ。

 

ミラ「なっ······!?」

 

八幡「じゃあな」

 

八幡がそう言った瞬間、修によって、ミラに無数の弾丸が降り注ぐ。ミラは全て大窓で敵に送り返した。つもりだったが、真後ろから弾丸が飛んできて、ミラの供給機関を貫いた。ミラの換装が解かれ、生身が現れる。

 

八幡「ここまでだな」

 

ミラ「そんな·······っ」

 

修「キューブにしたこちらの隊員を解放しろ」

 

ミラ「っ··········!」

 

 

 

 

その後、エネドラは死に、ミラ、ヒュースは捕虜として(ヒュース及び«ランビリス»は玉狛預かり、ミラは本部で厳重に監禁、«スピラスキア»は本部に厳重に保管となる)捕えられた。

ミラが最後に、自分がやられたことをランバネインに伝え、ランバネインは戦闘を中止。ヴィザを回収し遠征艇に戻る。ハイレインは、ミラを取り戻すべく出撃するが、修が«クオリア»を限界まで使い、単独で継戦不可まで追い込んだ(その際、修自身もキューブにされかけ、慌てて通常トリガーに換装し直す)。ハイレインはランバネインに回収され遠征艇に戻った。尚、修はその後1ヵ月寝込むことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 




没ネタって後の展開が完全オリジナルになりかけたので、作者には荷が重かったんです。


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32話:戦いは終わり、新たな戦いが始まる。

 

········ここは何処だ?見たことがあるような気がする······あれは兄さん?かなり幼い。それに······あの二人は夫婦か?かなり切羽詰まっている。二人の後ろからモールモッドがブレードで襲いかかっている。助けないと·······体が動かない?ああ、何も出来なくてごめんなさい·········父さん、母さん。

 

 

······今度は何処だ?ああそうだ。ここで時宗さんと出会って······兄さんと2人で時宗さんに弟子入りして·····麟児さんと未来さんに出会って······義姉さんを兄さんが助けて······6人で旅をして······時宗さんが死んだ。兄さんは黒トリガーで命を繋ぎ止めた。

 

 

何で時宗さんは死んだ?何で兄さんが奇襲を全て1人で受けた?ああそうだ。兄さんがあそこで1人で戦ってたから。僕が近くに居ればこうはならなかったのに·········僕が1人じゃヤダって駄々こねて、他の人にずっとくっついてなんかいたから······

 

兄さんの治療のため、玄界に帰還することになった。かねてより接触を図っていた、玄界の対トリオン兵の部隊、ボーダーに接触するためでもある。そこで、1人の少女に出会った。少女、と言っても兄さんと同い年だけど。僕は、彼女の師匠になった。なったとは言っても、具体的な方法がすぐには思い浮かばなかったので、体力をつけるための運動以外は、殆ど2人で模擬戦をしていた。暫くして、彼女に告白された。その時、僕は、気付いた。何に気付いたかは、今ではよく思い出せない。でも、その少女には、ずっと隣で笑っていて欲しいと思っていた。その時彼女に聞かれた。

 

「何で泣いてるの?」

 

何故泣いたのだろうかも、今でもよく分かっていない。でも、1人じゃないってことが分かったのだろうか。当時は、時宗さんが死んでから、かなりショックを受けていて、自分が本当は1人なんじゃないか、とか思っていた。だからかもしれない。単純に、僕を受け入れてくれたからかもしれない。ああ······僕には、常に一緒に居てくれる人がいるじゃないか·········きっと······そう思ったのだろう·····

 

 

 

 

 

 

修「··········ここは·······?」

 

僕が目を覚ました所は、初めて来た所だった。見たところ、何処かの医務室かなんかだろうか?ていうか、1月27日か。丸々10日も寝てたんだな。

 

八幡「······お、起きたか」

 

修「兄さん····?」

 

見ると、周りには、僕の寝ているベッドに突っ伏して寝ている桐絵、壁に寄りかかっていた兄さん、そして、寝ている千佳に寄りかかられている母さんが居た。

 

八幡「ほれ、小南起きろ」

 

兄さんが桐絵の頭を叩く。

 

桐絵「·····何すんのよ····」

 

八幡「修が目を覚ましたぞ」

 

桐絵「····!!!!」

 

兄さんがそう言うと、桐絵は目を見開いて、僕に抱きついてきた。

 

桐絵「修っ!本っ当に心配したんだから!」

 

八幡「(テンプレみたいな台詞だな)」

 

修「うん···ありがとう桐絵」

 

桐絵「·····もう、大丈夫なの?」

 

修「まあ、疲れて眠っただけだから。桐絵が心配しすぎただけだよ」

 

そこで、母さんに寄りかかって寝ていた千佳も目を覚ました。

 

千佳「·······修君?」

修「おはよう千佳」

 

千佳「おはよう······?って大丈夫なの!?」

 

修「まあね。後2、3日もすれば完全に元通りになる筈だから」

 

香澄「起きたのね修」

 

修「母さん·······」

 

香澄「修········

 

 

 

 

よかったわね。こんなに可愛い子に泣いて抱きついてもらえて」

 

修「は?」

 

桐絵「可愛いだなんてそんな····」///

 

八幡「クククッ····良かったじゃねえか」プルプル

 

修「兄さん······」ジトッ

 

八幡「あ~はいはい。悪かった悪かった」

 

そこで、空閑含む玉狛の他の人も来た。

 

遊真「お、起きたかオサム」

 

レプリカ『だいぶよくなったようだな』

 

修「ああ心配かけたな」

 

陽太郎「しんぱいしたんだぞおさむ〜」

 

修「はいはいもう大丈夫だから」

 

レイジ「大丈夫か修。これお見舞いに食うか?」

 

修「あ、いただきます」

 

レイジさんはそう言って、果物の詰め合わせをを近くのテーブルに置いて、果物包丁を取り出して、詰め合わせから出した林檎の皮を向き始めた。

 

宇佐美「あ、修君が寝てる間に論功行賞があったからサクッと報告だけしちゃうね〜」

 

 

特級戦功 報奨金150万円+1500ポイント

 

A級1位 比企谷隊 比企谷八幡

大多数のトリオン兵の排除に尽力。基地を狙う爆撃型トリオン兵を迎撃。その後、B級合同部隊と戦闘する人型近界民に止めを差し、キューブ化の黒トリガーを持つ人型近界民の撃破に尽力した。

新型撃破数 33

 

玉狛支部 B級 三雲修

大多数のトリオン兵の排除に尽力。キューブ化の黒トリガーを持つ人型近界民を撃破し、一部のC級が攫われるのを未然に防いだ。

新型撃破数 28

 

A級2位 太刀川隊 太刀川慶

基地を襲う爆撃型トリオン兵を迎撃。その後、新型を中心に敵戦力を大きく削った。

新型撃破数 9

 

S級 黒トリガー 天羽月彦

単独で西部·北部地区を広範囲にわたって防衛、人的被害を未然に防いだ。

新型撃破数 3

 

玉狛支部 空閑遊真

人型近界民(黒トリガー)を単独で撃破。その後、キューブ化のトリガーを持つ人型近界民との攻防を射撃で援護した。

新型撃破数 3

 

A級1位 比企谷隊 比企谷小町

本部基地に侵入した人型近界民(黒トリガー)の撃破に大きく貢献した。その後、諏訪隊員と連携し新型を中心に敵戦力を大きく削った。

新型撃破数 7

 

 

一級戦功 報奨金80万円+800ポイント

 

A級3位 風間隊

本部基地に侵入した人型近界民(黒トリガー)の撃破に大きく貢献した。

新型撃破数 3

 

B級6位 東隊 東春秋

対·人型近界民戦の指揮を執り、撃破に大きく貢献した。その後、南部地区に向かい、被害を小規模に抑えた。

 

A級2位 太刀川隊 出水公平/A級8位 三輪隊 米屋陽介/A級5位 草壁隊 緑川駿

対·人型近界民戦において主力として戦い、撃破に貢献した。その後、基地へ避難するC級を援護した。

新型撃破数 出水2 米屋2 緑川1

 

A級7位 加古隊

新型を中心に敵戦力を削った。その後、キューブ化の黒トリガーを持つ人型近界民と戦う比企谷・三雲 両隊員を援護した。

新型撃破数 5

 

玉狛支部 A級 迅悠一

北西部地区から基地へ避難するC級を援護。人型近界民を足止めし、捕虜にした。

 

玉狛支部 A級 玉狛第一 小南桐絵

南西部地区から基地へ避難するC級を嵐山隊、川崎隊とともに援護。その後、南西部地区に集中したトリオン兵の侵攻に対して、嵐山隊と連携して追撃し、人的被害を未然に防いだ。

新型撃破数 4

 

A級5位 嵐山隊

警戒区域内の敵戦力を排除。玉狛第一、川崎隊とともに基地へ避難するC級を援護。その後、小南を援護し、南西部地区の被害を防いだ。

新型撃破数 4

 

B級10位 諏訪隊 諏訪洸太郎

本部基地に侵入した人型近界民(黒トリガー)の撃破に大きく貢献した。その後、比企谷小町隊員と連携し新型を中心に敵戦力を削った。

新型撃破数 2

 

 

二級戦功 報奨金30万円+350ポイント

 

玉狛支部 A級 玉狛第一 木崎レイジ、烏丸京介

A級8位 三輪隊 三輪秀次

B級6位 東隊

B級7位 鈴鳴第一

B級9位 諏訪隊

B級11位 川崎隊

B級12位 柿崎隊

B級13位 荒船隊

B級15位 那須隊

B級18位 茶野隊

B級 雪ノ下雪乃

 

 

 

修「·····僕が特級戦功ですか·····」

 

宇佐美「いや~、十分誇れると思うよ?ラービット28体とか」

 

八幡「そうだぞ。······あ、そういや言っとくことがあったな」

 

修「?」

 

八幡「今回の侵攻を踏まえて、雨取を特例でB級に上げた。提案したのは、主に鬼怒田さんと林藤さんだ」

 

修「···どうやって?」

 

八幡「俺と小町と迅さんの戦功を雨取に移した」

 

修「なるほど····なら僕のも」

 

八幡「お前のは貰っとけ。俺はポイント必要になったら、太刀川さんから徴収すればいいし」

 

小町「(うわぁえぐい······)」

 

八幡「小町はポイント貰ってもしょうがないし、迅さんも要らないだろ。空閑も今回の戦功でB級に上がったからな」

 

遊真「あがらせてもらいました」

 

千佳「········(私なんかが貰っていいのかな······)」

 

小町「千佳ちゃん!」

 

千佳「!?」ビクッ

 

小町「頑張れ!皆応援してるよ!」

 

千佳「は·····はい!」

 

小町ちゃんからの思わぬエールで、千佳は元気を取り戻したようだ。

 

八幡「お前は、体を酷使した反動だから、医者曰く、あと1週間は安静にしてろってさ」

 

修「1週間か····そういえば、チームランク戦ってもうすぐじゃないか?」

 

烏丸「2月1日だから、今週だぞ」

 

修「え?」

 

レイジ「初戦は雨取と遊真の二人で出ることになりそうだな。お前はこれ食って元気を出せ」

 

レイジさんはそう言って切った林檎を皿に盛り付けて出してくれた。

 

修「ありがとうございます」

 

香澄「修······」

 

修「?」

 

香澄「私は、ここまでになったあなたを、目を覚ましたらボーダーから辞めさせるつもりだったわ」

 

修「·········」

 

香澄「····でも、この人達以外でもお見舞いに来た人達は、誰一人として、ボーダーを辞めさせるべきだって言わなかったわ。······血は繋がってなくともあなたの母親だもの。いくらでもサポートはするわ。でも本当に嫌になったら言いなさい。首に縄かけて引き摺ってでも引き戻して上げるわ」

 

八幡「そん時は俺も手伝いますよ」

 

香澄「助かるわ」

 

修「········ありがとう母さん、兄さん」

 

遊真「·····頑張んなきゃなオサム」

 

修「最初からそのつもりだ。先ずはA級に上がる。やるぞ·····遊真!!」

 

遊真「·····おう、任せろ」

 

修「兄さんも待っててね?後でランク戦で戦ってもらうんだからさ」

 

八幡「いいぜ。早いとこ上がってこいよ」

 

修「もちろん。やるぞ二人とも」

 

遊真「ああ!」

 

千佳「うん!」

 

 

 

 

 

 

そして、来たる2月1日。

 

玉狛第2(三雲隊) ボーダーB級ランク戦 開始

 

 




完全に空気と化した川崎隊(作者は、もう絡みを思い付かない)。諏訪さんが一級戦功になったのは作者の趣味だったり。

論功行賞の表記について。
八幡→比企谷隊員
小町→比企谷小町隊員


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33話:彼らは動き始める。

八幡達俺ガイル勢は、ここからは完全にモブ扱いです(ガロプラまでは少なくとも)。すいません。ホントに展開が思いつかない·······


2月1日。ボーダー本部。

 

修「流石に、隊服は間に合わなかったな」

 

遊真「まあまあ、来週3人揃った時のお楽しみってことで」

 

千佳「そうだね」

 

今日は、三雲隊の初陣だ。よりによって隊長の僕が居ないんだが。

 

修「僕は今日は観覧席で見てる。2人とも頼んだぞ」

 

遊真「任せろ」

 

千佳「行ってくるね」

 

遊真と千佳は、そう言うとランク戦のために隊室に向かった。遊真と千佳が隊室に向かった後、城戸さんが来て、話しかけてきた。

 

 

城戸「·····修」

 

修「?·····城戸さんどうかしましたか?」

 

城戸「言っておこうと思ってな。B級チームの結成と退院おめでとう。もう大丈夫なのかね?」

 

修「まだあんまり激しい運動とかは出来ないですけど、来週のランク戦からは参加出来ますから」

 

城戸「····そうか。A級昇格に向けて頑張ってくれたまえ」

 

修「·····はい」

 

 

 

 

 

そして、ランク戦を見に観覧席に向かっていると、米屋さんと緑川と、あともう一人、金髪の人に会った。

 

米屋「お、メガネボーイじゃん。もう大丈夫なんか?」

 

緑川「あ、三雲先輩。大丈夫なの?」

 

出水「お、こいつが比企谷の弟だな?·····あ、初めましてか。太刀川隊の出水公平だ。よろしく!」

 

修「三雲修です。よろしくお願いします」

 

そこで何故か佐鳥さんが来た。

 

佐鳥「お、三雲君じゃん!ちょっといい?」

 

修「佐鳥さんどうしたんですか?」

 

佐鳥「いやぁね〜·············」

 

 

 

 

 

米屋「········面白そうじゃん。行ってこいよ」

 

修「はぁ、じゃあやります」

 

 

 

 

 

海老名『ボーダーの皆さんこんばんは!海老名隊オペレーターの武富桜子です!B級ランク戦新シーズン開幕!初日・夜の部の実況をしていきます!本日の解説は、「オレのツインスナイプ見た?」でお馴染みの、嵐山隊の佐鳥先輩!』

 

佐鳥『どーもどもーも』

 

海老名『そして、もう一方。本日がB級デビュー戦!玉狛第2、三雲隊長です!』

 

修『よろしくお願いします』

 

海老名『三雲隊長は、退院明けで今日はお休みとのことなので、解説席にお越しいただきました!』

 

なんか、「あいつ緑川に勝ったメガネだ」とか聞こえるけど、気にしなくていいだろう。

 

海老名『おっと、そうこうしているうちに、隊員の転送がスタート!折角ですので、今回は玉狛第2の試合に集中してお届けしたいと思います。初日ということで、佐鳥先輩。簡単にB級ランク戦の説明をお願いします』

 

佐鳥により、ランク戦のおおまかな解説がされる。

B級は、上位・中位・下位の3つのグループに分けられており、現在は中位が8チーム。上位と下位が7チームずつ。それぞれのグループ内で、3つ巴、4つ巴のチーム戦を行い、ポイントを取り合う。ポイントは、相手の隊の隊員を1人倒すごとに1点ずつ加算。最後に1チームが生き残った場合、生存点としてボーナス2点が加わる。シーズン終了時の1位と2位には、A級への挑戦権が貰える。佐鳥は、最後に「頑張れ!終わり!」と言うのを忘れなかった。

 

海老名『·····ありがとうございました。一つ補足させていただくと、前シーズンの順位に応じて、初期ボーナスが付きます。上位ほど、アドバンテージがあります』

 

佐鳥『それそれ~』

 

修「(·······佐鳥さんいつにも増してノリがいいな·····)」

 

 

 

海老名『さあ!吉里隊、間宮隊、玉狛第2、それぞれの転送が完了しました!』

 

佐鳥『今回は、全部隊が合流優先だね〜』

 

海老名『今回2人チームの玉狛第2は数では不利ですが、三雲隊長はどうお考えですか?』

 

修『·······そうですね。全くもって問題ないと思います』

 

 

修が、そう言うと同時に、遊真が一瞬で吉里隊の3人の首を狩る。合流したことが逆に仇になったとも言えるかもしれない。一概には言えないが。

 

 

海老名『!?は、早い!吉里隊、一瞬で全滅!?玉狛第2、空閑隊員、B級下位の動きじゃないぞ!?間宮隊はどう動く!?』

 

 

間宮「あいつ、緑川に勝って噂になってた奴だぞ」

 

鯉沼「まともに当たるのは良くないね」

 

間宮隊の3人は建物の死角に隠れる。

 

 

海老名『おっと!?間宮隊、建物を影にし動かない!』

 

佐鳥『これは「待ち」っすね。寄ってきたところを全員で削り倒すんじゃないすか?』

 

海老名『間宮隊は3人全員が射手!必殺技、「ハウンドストーム」は決まれば超強力です!これは迂闊には手を出せないか?』

 

佐鳥『それはどうだろうね〜?』

 

 

 

宇佐美『千佳ちゃん、あそこの建物を撃ってくれる?』

 

千佳『····了解!』

 

ズドン!という激しい音の後、命中した建物が、軒並み吹き飛ぶ。隠れていた間宮隊の3人は、爆風の勢いで吹き飛ばされた。

 

 

海老名『どあああ!!?』

 

佐鳥『出たぁ!!』

 

驚く海老名。はしゃぐ佐鳥。

 

修『佐鳥さん········』

 

佐鳥に少し呆れる修。

 

 

爆風の影に隠れて、遊真は間宮隊に接近する。両腕からスコーピオンを展開し、間宮隊の3人を音もなく切り裂く。もれなく3人とも緊急脱出した。

 

 

海老名『衝撃の決着!!!スナイパー雨取隊員のアイビスで障害物を破砕!というか、威力がおかしいぞ!?·····生存点の2点を含めて、一挙8得点!強いぞこのチーム!!』

 

修「······」ホッ

 

気を緩める修の肩に佐鳥が、修の肩を軽く叩いた。

 

海老名『この一戦で、暫定順位は一気に12位まで急上昇!早くも中位に食い込んだ!この勢いでどこまで行けるか玉狛第2!水曜日に行われる2戦目は······10位、荒船隊!8位の諏訪隊です!B級に現れた新星から次回も目が離せません!』

 

 

 

 

 

本部基地ラウンジ。

 

迅「·······唐沢さんってランク戦とか見てましたっけ?」

 

唐沢「·····玉狛第2デビュー戦快勝おめでとう。流石に三雲君はまだ無理だったようだね」

 

迅「10日も寝込んじゃうくらいですからね。修の病室から離れない小南を宥めるのが大変でしたよ」

 

唐沢「おや?三雲君と彼女は?」

 

迅「ラブラブのカップルですよ。全く·····独り身には辛い現実を見せつけて来ますよ」

 

唐沢「ハハハ、それは災難だったね」

 

迅「·····にしても、随分修を買ってくれてるんですね」

 

唐沢「まあ、彼の頑張りはあの侵攻の結果から見ても火を見るより明らかだからね。彼一人で、トリオン兵のうち実に2割近くを倒している。それに、彼は戦闘以外でもかなり優秀じゃないか。彼の性格も相まって」

 

迅「そうですか」

 

唐沢「三雲君が大変なのは、これからだよ。君も精一杯応援してあげなさい」

 

 

 

迅「俺が、応援する必要あるんですかね·····」

 

 

 

 

 

翌日。玉狛支部。

 

陽太郎「しょくん!きのうは、はつしょうりおめでとう!わたくしもせんぱいとしてはながたかいぞ!」

 

レプリカ『当然、と言えるだろうな』

 

桐絵「当然の結果ね」

 

桐絵とレプリカが同調する。そして、桐絵が遊真の頭をわしゃわしゃ撫でる。

 

遊真「この調子でどんどん行こうぜ」

 

桐絵「でも油断は禁物よ?」

 

遊真「ほう?」

 

桐絵「昨日蹴散らした下位グループと違って、中位グループはそこそこまあまあよ。部隊ごとに戦術があってちゃんとした戦いになってるわ」

 

修「······そこそこまあまあって何だ?」

 

桐絵「········上位グループは、かなりまあまあ。どの隊にもA級レベルのエースがいるわ。A級にいた事のある隊もいるから、A級予備軍ってところかしら」

 

無視された。A級にいた隊って、未来さんがいた二宮隊?かな?

 

遊真「·····じゃあ、A級は?」

 

桐絵「A級は·····全力でまあまあね」

 

桐絵の負けず嫌いが出てきた。ここまでだったっけ?いや、ここまでだったな。昔から。

 

遊真「まあまあしかいないじゃん」

 

修「それ、自分も全力でまあまあって言ってないか?」

 

桐絵「ハッ!!·······あたしは違うわよ!?修が一番分かってるでしょ!?」

 

自分で「ハッ!!」って言ったな······

 

修「まあ、そうなんだけど·····」

 

桐絵「そもそも、修一人でもA級行けるでしょ?」

 

修「それはやってみないことには分からないよ」

 

烏丸「実際、中位は舐めてかかれる相手じゃないぞ。修には当然劣るけど、戦闘経験でいえば千佳よりはずっと上だ」

 

千佳「······!」

 

修「次はどうしょうかな·····荒船隊がスナイパー部隊だからな·····」

 

桐絵「あれ?もう相手のデータ見たの?」

 

修「一応ここ数回分だけは、ね」

 

桐絵「また体壊したりしないでよ?本当に心配したんだから!」

 

そう言ってもらえるのはありがたいな。

 

修「もうしないよ、約束する」

 

桐絵「本当?約束よ?」

 

修「分かってるさ」

 

 

 

 

 

 

ボーダー本部基地ラウンジ。ここで、諏訪隊が作戦会議をしていた。

 

諏訪「次は玉狛か〜。第2ってあれだろ?風間に圧勝したメガネの奴がいるとこだろ?」

 

堤「入隊訓練で最高記録出した子がいる部隊です」

 

笹森「昨日の試合見てないんですか?スナイパーの子がやばかったですよ!?」

 

小佐野「全員知ら~ん」

 

 

試合閲覧中。

 

諏訪「んだこりゃ!大砲じゃねえか!」

 

堤「それだけに、メガネの子の記録が少ないのがきついですね」

 

小佐野「どっちもちっちゃい」

 

笹森「スナイパーの子レイジさんの弟子らしいですよ」

 

諏訪「は!?身長差がおかしなことになんだろ!何考えてんだあのゴリラは!」

 

小佐野「レイジさんは頭いい筋肉だよ?」

 

笹森「2人とも脱線してます·····」

 

堤「レイジさんが師匠ってことは基本がしっかりしてそうですね」

 

笹森「白い子とメガネの子は個人で緑川に 8対2 で勝ったらしいです」

 

諏訪「日佐人、お前緑川とならいくつ引ける?」

 

笹森「一回だけまぐれで4本取りました」

 

諏訪「·········よし、片方だけでもいい。どっちかを4秒止めろ。俺達で吹っ飛ばす」

 

笹森「それ、俺も吹っ飛ぶやつですよね?」

 

 

 

 

 

同時刻。本部。荒船隊作戦室。

 

穂刈「·······やばいな、何回見てもこの威力」

 

半崎「俺、訓練で見ましたよこの子。そん時はイーグレット使ってましたけど」

 

諏訪隊に同じく、荒船隊も作戦会議を行っている。

 

荒船「基地の外壁ぶち抜いてた子だな」

 

穂刈「来たか?スナイプ界に新しい波が」

 

半崎「この威力で狙撃ポイント潰されたらダルいっすね·····」

 

荒船「それは大丈夫だろ。一発で居場所を晒してる。2発目撃つ前に場所の捕捉出来る」

 

半崎「そっすね」

 

そこに、加賀美が入って来た。

 

加賀美「空閑君と三雲君のデータあったよ。緑川君とソロ戦してるやつ。2人とも8対2で勝ってた」

 

半崎「三雲って攻撃手なんすかね?レイガストとシールドしか使ってないすけど。データこれだけか····」

 

荒船「三雲と空閑はマークしておこう。2人とも大規模侵攻で特級戦功貰ってた筈だ。データ全部出しといてくれ。動きの癖を頭に叩き込む」

 

加賀美「分かった」

 

荒船「後は······何処を選んでくるかだな·····」

 

 

 

 

 

玉狛支部。

 

宇佐美「おお!?頑張っとるね~、諸君」

 

修「お疲れ様です」

 

遊真「次の相手のデータ見てたとこだよ」

 

玉狛第2も作戦会議を行っていた。レプリカは、3人の会議をプカプカ浮きながら黙って聞いている。

 

宇佐美「なるほど。では、君たちの見解を聞かせていただこう」

 

修「先ず、諏訪隊は·········」

 

修の見解では、諏訪隊は、銃手2人・攻撃手1人の密集型。銃手2人のトリガーは散弾銃型で、威力重視。近づいて蜂の巣にする戦法、攻撃手がカメレオンで奇襲する戦法が多い。

荒船隊は、3人全員がスナイパーで、射程を活かして攻防両面で連携する。3人が離れているため、はまってしまうと崩しにくい。隊長である荒船が攻撃手だったこともあり、遠近で精密な連携をしてくる。

 

宇佐美「·······うんうん、だいたい合ってるね。なら対策は?」

 

修「僕は、諏訪隊の銃手2人とだと火力勝負で分が悪いので、射程で散弾銃の威力を削ぎます。今回は相手の行動を封じていこうと思います。逆に、遊真は近距離でやりやすいと」

 

遊真「カメレオンだっけ?に気をつければ不利な相手じゃないよ」

 

修「千佳は当然······」

 

千佳「見つからないようにする、です!」

 

宇佐美「もし見つかっちゃったら?」

 

千佳「えっと·····その時は·····」

 

宇佐美「あたしが逃げ道を指示するよ!」

 

千佳「···はい!ありがとうございます!」

 

修「千佳にはここ一番って時だけで撃たせます」

 

宇佐美「それがいいだろうね」

 

修「あとは、転送位置によっては乱戦に持ち込めないかもしれないってところですかね·····」

 

レプリカ『そこは運なのでどうしようもないだろう』

 

宇佐美「ふふん!まだまだやれることはあるよ!昨日使わなかっただけで、その試合の一番ランク低いチームにはステージの決定権があるのです!」

 

遊真「なるほど。こちらがかなり有利だな」

 

修「ああ。だから、今回は地形で荒船隊と諏訪隊を動かそうと思ってる」

 

レプリカ『オサムの地形戦での経験はどれくらいだ?』

 

修「まぁ······かなりキツかったのは色々あるよ。崖とか」

 

千佳「崖?」

 

修「敵が奇襲を仕掛けるために崖付近で待ち構えた時かな?あの時は崖がいつ落ちるか分からないくらい地盤が脆かった。結局奇襲を何とか凌いで普通の白兵戦に持ち込んだけどね」

 

宇佐美「奇襲を凌ぐのは凄いね」

 

修「別働隊が最初から居て奇襲をやり返したからなんですけどね。よし、次の対戦まで後3日だ。もっと作戦を練るぞ!」

 

遊真·千佳「「了解!」」

 

 

 



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34話:彼らは、ROUND2で実力の一片を見せる。

戦闘描写ってホントに難しいですね······




武富『B級ランク戦新シーズン!2日目・夜の部が間もなく始まります!実況は、本日もスケジュールが上手いこと空いたわたくし、武富桜子!そして、解説席には先日の大規模侵攻で一級戦功をあげられた·············東隊の東隊長と草壁隊の緑川君にお越しいただきました!』

 

実況の武富の声が響き渡る。

 

東『どうぞよろしく』

 

緑川『どもっす』

 

武富『今回の注目はなんと言っても、前回、隊長が不在でありながら完全試合で8得点の玉狛第2!注目度の高さから会場には非番のA級隊員の姿が数多く見られます』

 

会場には、比企谷隊、風間隊、嵐山隊、加古隊。個人的に、出水、米屋、古寺が来ている。

 

武富『さて東さん。一試合で8得点というのはなかなかお目にかかれませんが········』

 

東『確かに凄いですね。8得点なんて比企谷隊くらいしか出せないでしょう。それだけ玉狛第2が新人離れしている証拠でしょう』

 

緑川『三雲先輩と遊真先輩は強いよ。2人とも特級戦功貰ってるし、遊真先輩は特級戦功を取ってB級になったし』

 

武富『緑川君は、玉狛の三雲隊長と空閑隊員と個人で戦ったという話が·····』

 

緑川『ここでその話しちゃうの!?·····2人に 8対2 でボコボコにされました······でも、遊真先輩とは10本勝負する約束出来たから次は勝つよ!』

 

緑川は、修にもランク戦をせがむが基本躱されている。因みに、黒江もである。

 

緑川の発言に、会場にいるC級がざわめく。黒江は深く頷いて、米屋も少し遠い目をする。

 

武富『······玉狛第2の本日の相手は、接近戦の諏訪隊。長距離戦の荒船隊、と戦法が明確な部隊です!』

 

東『順位が低い玉狛第2にはステージの選択権があるので、地形で有利を取っていきたいところですね』

 

武富『·····ここで、ステージが決定しました!玉狛第2が選んだステージは······〈市街地C〉!坂道と高低差のある住宅地ですね!』

 

東『······?』

 

武富『スナイパー有利なステージに見えますがどうなんでしょうか?』

 

東『スナイパー有利ですね·········』

 

〈市街地C〉は、道路を挟んで階段状に宅地が斜面に沿って続く地形だ。登るには道路を横切らなければならないので、スナイパーが高い位置を取れればかなり有利。一方、下からでは建物が邪魔で身を隠しつつ相手を狙うのは難しい。射程がなければ尚更である。

 

緑川『三雲先輩なんでここにしたんだろ?』

 

武富『······玉狛にも超強力なスナイパーがいますが······高台を取れれば、ということでしょうか?』

 

東『どうでしょうね····スナイパーの熟練度が違うので····普通にやるのは分が悪いと思いますが』

 

武富『となると·····諏訪隊のいない諏訪隊は····』

 

緑川『いや、超キツイでしょ。諏訪さん今頃キレてそう』

 

 

 

 

 

 

諏訪隊作戦室。

 

諏訪「は!?〈市街地C〉!ざけてんのかクソMAPじゃねえかよ!AかBにしとけよ!」

 

堤「これはなかなかにきついですね·····」

 

笹森「玉狛は狙撃が怖くないんすかね?」

 

小佐野「スタートはバラバラだからチャンスはあるよ」

 

諏訪「取られる前に全力で上を取るしかねえ······やるぞ!!」

 

堤・笹森・小佐野「「「おう!!!」」」

 

 

 

 

 

荒船隊作戦室。

 

荒船「〈市街地C〉?」

 

加賀美「スナイパー有利じゃん。なんでここ選んだんだろ?」

 

半崎「スナイパーとやるの初めてとか?」

 

穂刈「助かるな·····俺達にとっては」

 

荒船「一応玉狛のスナイパーには注意しろ。あとはいつも通りだ」

 

半崎・穂刈・加賀美「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 

玉狛第2作戦室。

 

宇佐美「······うんうん。お揃いの隊服いいね!燃える!」

 

レプリカ『似合っているぞ3人とも』

 

前回はC級時の服装だったので、隊服の今回が隊服のお披露目だ。

 

遊真「いいねこれ」

 

修「そうですね。やっとですね」

 

宇佐美「修君、チーム戦の準備は大丈夫?」

 

修「大丈夫です」

 

遊真「そうだぞ。心配する必要ないって」

 

千佳「修君が作戦立てたんだもん。大丈夫だよ」

 

宇佐美「うんうん、チームの絆だね〜」

 

修「よし、行くぞ!」

 

修の声とともに転送が始まった。

 

 

武富『····転送完了!各隊員は一定以上の距離をおいてランダムな地点でのスタートとなります!』

 

転送が完了すると同時に、スナイパー全員がバッグワームを起動する。スナイパー3人の荒船隊がまっすぐ高台に向かう。転送された中で、半崎が高台に一番近い。諏訪隊はそれに続く。

 

 

武富『おっと!?玉狛第2はチームの合流を優先したようです!』

 

東『転送直後は一番無防備ですからね。合流はアリです。(しかし·······)』

 

 

 

 

1歩遅れた諏訪隊で、笹森が慌てて高台へ向かう。その時、突然襟を引かれる。その一瞬の後、穂刈からの狙撃を受け、寸でのところで緊急脱出を免れる。

 

諏訪「飛び出すなよ日佐人。壁に張り付いてねーと死ぬぞ」

 

笹森「諏訪さん!」

 

諏訪「くそったれ。めんどくせーなおい」ボソッ

 

 

荒船「ここまでは100点だな」

 

その時、下から千佳の砲撃で荒船がいた所が吹き飛ばされた。荒船は吹き飛ぶ直前に飛び降りる。

 

半崎「撃ってきた?」

 

荒船「素人だな······位置がバレバレだ」

 

荒船隊の3人が千佳達に向かって狙撃をする。それを修と遊真のシールドで防御する。

 

荒船「シールド固いな」

 

半崎「うわ、ダル」

 

 

 

修「千佳、もう一発だ!今光った所を撃て!」

 

千佳「了解!」

 

千佳がもう一発狙撃する。狙撃、と言っても威力で見れば砲撃だが。

 

 

武富『この威力、最早砲撃です!玉狛第2、以外にも撃ち合いに持ち込んだ!東隊長、この展開はどう思われますか?』

 

東『三雲のシールドがかなり固いですね。とは言っても玉狛第2の分が悪いです。威力はあっても荒船隊の動きが見えていない。しかし、自分達の居場所はバレている。荒船隊からは的がよく見えていますからね』

 

武富『東隊長の解説通り、玉狛第2の分が悪いです!本職のスナイパー相手に無謀だったのでしょうか!?』

 

東『いいえ。どうやら、予定通りだったようです』

 

武富『·····え?』

 

 

加賀美『荒船君!』

 

荒船「!!!」

 

狙撃に入っていた荒船に諏訪が散弾銃で襲いかかる。荒船は右足を削られる。

 

諏訪「よお荒船!」

 

荒船「そう来たか······玉狛め····やるじゃねぇか!」

 

諏訪の奇襲により、荒船が真っ先に玉狛第2の作戦に気付いた。

 

 

武富『砲撃の影で諏訪隊が登って来た!』

 

東『さっきの砲撃は諏訪隊の援護ですね。長距離戦で分が悪いことは織り込み済み。ステージを敢えて荒船隊有利にすることで、諏訪隊と利害を一致させた。地形戦をよく練っている事が窺えます』

 

 

修「荒船隊を捕捉·······遊真、暴れてこい!」

 

遊真「オーケー、こっからは俺の土俵だな」

 

修「千佳はここからはバッグワームを着て別行動だ。顔を出すなよ」

 

千佳「うん!」

 

修『宇佐美さん、千佳への指示出しをお願いします』

 

宇佐美『ほいほ〜い』

 

修「行くぞ遊真。点を取りに行くぞ!」

 

遊真「おう!」

 

 

諏訪が荒船に射撃する。

 

武富『玉狛第2は別行動を開始!一方の荒船隊は有利から一転!玉狛の砲撃を隠れ蓑に諏訪隊が荒船隊に食らいついた!』

 

東『砲撃もさることながら·····如何にもスナイパーが撃ちたくなるように玉狛が動いていますね』

 

武富『完全に諏訪隊長の距離です!荒船隊長苦しいか!』

 

東『·····いや釣りですね』

 

 

半崎が狙撃し、諏訪の頭を狙う。諏訪はシールドを集中させ狙撃を防御する。

 

諏訪「ビンゴだ」

 

 

半崎「うえ、マジで?」

 

 

堤「半崎を確認しました!」

 

諏訪『逃がすんじゃねぇぞ!』

 

 

武富『ヘッドショットをピンポイントで防御!諏訪隊長、なんて胆力!』

 

東『半崎の狙撃の正確さが仇となりましたね。イーグレットはシールドを集中すれば防御は可能ですから』

 

半崎の狙撃を防いだ諏訪だが、穂刈の狙撃で左足を失う。

 

武富『今度は防げなかったか!しかし、荒船隊は3人全員の位置が割れました』

 

東『諏訪も足の一本くらいなら必要だと考えているでしょう』

 

 

笹森「諏訪さん退りますか?」

 

諏訪「アホいってんじゃねぇ。こっからだぜ?」

 

笹森「ですね」

 

 

 

加賀美『下から来る!気を付けて!』

 

半崎『見えてますよ?堤さんでしょ?』

 

加賀美『違うわ!玉狛よ!』

 

加賀美が言うと同時に遊真が半崎に奇襲をかける。半崎は間一髪で躱すが、遊真に続いて出てきた修と、堤に同時に蜂の巣にされる。

 

半崎「こりゃダルいわ。すんません」

 

半崎は緊急脱出した。

 

 

武富『半崎隊員 緊急脱出!得点は堤隊員に入りました!』

 

東『スナイパーは基本的に寄られるとこうなるので、寄らせちゃダメですね』

 

 

堤は、遊真に散弾銃を撃つ。遊真は射撃を躱しつつ接近。堤は修に射撃される。堤はシールドを張りつつ遊真の動きに対応する。背後に回り込んだ遊真を狙うが、遊真はグラスホッパーで方向を転換し、堤を真っ二つにする。堤は、緊急脱出した。

 

修「よし、この調子でいこう」

 

遊真「了解」

 

 

武富『今の動きはグラスホッパー?前回は使わなかった気がしますが······?』

 

緑川『俺と三雲先輩で教えました。昨日』

 

武富『昨日!?普通に覚えたてだった!そして、三雲隊長と空閑隊員は別れて行動を開始!』

 

 

黒江「修さんはともかく、なんで駿が?」

 

米屋「いいじゃねえの。俺はああいうの好きだぜ」

 

 

武富『玉狛第2も次を狙う!目標は穂刈隊員!荒船隊狙いを徹底しています!』

 

緑川『スナイパーがいるのはめんどいからね』

 

 

穂刈が遊真を狙撃する。が、遊真は穂刈が狙撃する瞬間を見ていたので易々と防ぐ。

 

武富『トリオン体の反応速度次第で、防御は可能です!荒船隊は位置を知られてかなり苦しくなってきた!』

 

東『普通なら、そうですね』

 

穂刈を狙う遊真の背後から、荒船が弧月を抜いて遊真に斬り掛かる。遊真は、ぎりぎりで屈んで避ける。

 

東『ですがまぁ、荒船は元攻撃手ですからね』

 

 

諏訪「荒船が抜きやがった!日佐人!穂刈やれ!」

 

笹森「諏訪さんは?」

 

諏訪「攻撃手2人まとめて吹っ飛ばす!」

 

笹森「了解!」

 

 

武富『荒船隊長が弧月を抜きました!空閑隊員と剣比べでしょうか!?』

 

東『今は本職のスナイパーではないですが·····空閑の足止めをしたことで穂刈の援護が利きやすくなりましたね』

 

 

遊真「こっちで来たか·····まあそれはそれで」

 

荒船「クソ生意気な新人だ。ぶった斬ってやるよ」

 

荒船は、弧月を逆手で握る。

 

 

武富『·····私がB級に上がった時には、既に荒船隊はスナイパー部隊だったと記憶してしていますが······』

 

緑川『荒船さんは8ヵ月前まではバリバリの攻撃手だったよ。順位も結構上だったし、今も偶にランク戦してるし。スナイパーに転向した時は皆「なんで?」って言ってたくらいだし』

 

 

荒船が遊真に斬り掛かる。躱された荒船は、バッグワームで自分の体を隠し、バッグワームの内側から弧月で突きにかかる。ぎりぎり躱すが、完全に避けきれず、右腕を少し斬られる。

 

武富『バッグワームを目隠しに!?』

 

東『それっぽいですね。実際には、諏訪に削られた足を隠すためなんでしょう。バレればそこを攻められるので』

 

武富『·····なるほど』

 

穂刈が遊真の頭を狙撃する。遊真は首を捻って避けるが、荒船の追撃の弧月をスコーピオンで受けたことで、スコーピオンにヒビが入る。

 

武富『空閑隊員、初めて太刀を受けた!穂刈隊員の援護が効いています!スコーピオンと弧月では、耐久性で弧月に軍配があがるので、打ち合えば荒船隊長が有利か!』

 

 

遊真「(思ったよりやりにくいな······俺の動きは知ってるってことか)」

 

遊真は、自分の動きを既に研究されていることに気付いた。

 

 

武富『諏訪隊も二手に別れて得点を狙う!戦況が混沌してきました!』

 

東『各隊、ここが勝負所ですね荒船隊はマークされて、諏訪隊もバラけた。玉狛が最初から狙っていた状況に近づいた筈です』

 

バッグワームでレーダーステルスになった笹森が穂刈に襲いかかる。穂刈は、笹森から逃げるが追跡される。

 

東『荒船と空閑の攻撃手対決を中心に、おそらくここで決まるでしょう』

 

武富『緑川君から見て、この対決はどちらに分がありますか?』

 

緑川『当然遊真先輩だね。荒船さん今はスナイパーだから本職の攻撃手には勝てないと思うよ』

 

東『それにしても三雲がいい動きをしていますね。荒船隊2人を狙えるいい距離をいつの間にか陣取ってます。バッグワームを使っていないので、荒船隊は三雲の攻撃に意識を割かなければならない。特に、空閑と斬りあっている荒船にはかなり邪魔な筈です。いい射程の使い方ですね』

 

 

笹森は穂刈の追跡を続けていた。

 

穂刈「(玉狛の射線が邪魔だな。バッグワームで隠れてるしな、スナイパーも)笹森、諏訪さんにつかなくていいのか?······それとも、外されたか?お前じゃ勝てねーもんな。荒船に」

 

笹森「······それはそうですね。でも、今の俺の仕事は穂刈先輩を抑えることなんで」

 

穂刈「(こいつこんな落ち着いてたか?·····撃っても当たんねーだろうな走りながらじゃ)こりゃ死んだか?俺」

 

そう言うと、突然穂刈は荒船の方へ向き、遊真を狙撃する。だが、穂刈の狙撃は、別の方向からの狙撃で撃ち消された。

 

穂刈「マジか」

 

穂刈は笹森に斬られて緊急脱出した。

 

武富『三雲隊長、穂刈隊員の狙撃を狙撃で消しました!!!』

 

東『これは驚きですね。三雲はレイガストを展開していたのを、一瞬でイーグレットに展開し直して狙撃しました。照準を合わせる時間すら殆どなかった状況であれは俺でも出来るか分かりませんね』

 

緑川『うわ······三雲先輩凄すぎ』

 

武富『ここで、三雲隊長からの援護狙撃!荒船隊長の右腕が吹き飛ばされました!』

 

 

修は、穂刈の狙撃を撃ち消した後、荒船の右腕を狙撃した。荒船は、すかさず弧月を左腕に持ち替える。遊真は、2歩下がってグラスホッパーを展開。荒船は遊真が跳んで、上から来ると睨んだ。

 

荒船「逃がすか!」

 

だが、遊真はグラスホッパーではなく後ろの建物の壁をジャンプ台にして、荒船に突っ込んだ。

 

東・緑川『『上手い!』』

 

遊真の想定外の動きに、荒船は一瞬動きが止まる。遊真はその隙をついて、突っ込んですれ違いざまに荒船の両足を切り落とした。

 

荒船「(この場面でフェイントのためだけにグラスホッパーを·····?こいつ戦い慣れしすぎだろ······!)」

 

荒船が両足を失った次の瞬間、修が両足を失った荒船の頭を狙撃して、荒船を緊急脱出させた。

 

 

武富『三雲隊長の狙撃で荒船隊長緊急脱出!!』

 

 

荒船が緊急脱出した直後、遊真に、諏訪が散弾銃を放ってきた。

 

諏訪「(チッ······荒船は緊急脱出したか····)ああ〜っ!片足だとバランス狂うなクソッ!」

 

遊真は、シールドとグラスホッパーで建物の屋根に上がり回避する。

 

修『遊真、笹森さんがカメレオンを起動してそっちに向かった!宇佐美さんサポートお願いします』

 

宇佐美『OK!遊真君、真後ろのちょっと左!すぐ来るよ!』

 

遊真『了解(それさえ分かれば、顔出した瞬間に殺せる)』

 

だが、笹森はカメレオンを起動したまま遊真を羽交い締めにする。

 

修「(武器を使わないか······)」

 

笹森「諏訪さん!止めました!!!」

 

笹森は、遊真のモールクローでトリオン供給機関を破壊される。笹森の換装体に罅が入っていく。

 

諏訪「よくやった日佐人!吹っ飛ばす!」

 

諏訪が、散弾銃2丁を笹森ごと、遊真に向ける。

 

宇佐美『千佳ちゃん!』

 

千佳『はい!』

 

その時、千佳の砲撃で、遊真達がいた辺りの建物が軒並み破壊される。

 

崩れる建物に紛れて、遊真は、笹森を蹴り飛ばした。笹森は、戦闘体形成の限界によって緊急脱出した。

 

諏訪「(日佐人もやられたか······)ここで大砲かよ、くそったれ······射線も何もお構いなしかよ······っ!」

 

諏訪は、遊真に向けて散弾銃を放つ。遊真は銃撃を避けつつ接近する。至近距離の銃撃をグラスホッパーで回避するが、諏訪に先読みされる。

 

諏訪「もらったぜ·····!」

 

 

武富『読み切った!』

 

東『勝負ありですね·····

 

 

 

 

玉狛の勝ちです』

 

修は27個に分割したアステロイドを放つ。諏訪も同じくして、散弾銃を放つが、遊真にシールドで防御される。目の前の遊真と、千佳の砲撃によって、修が意識から抜けていた諏訪は、アステロイドに気が付かずに、修に撃ち抜かれた。

 

諏訪「(最後の最後で)········エースが囮かよ!」

 

 

武富『諏訪隊長緊急脱出!最終スコア 6対2対0!玉狛第2の勝利です!デビュー2戦目にして6得点!玉狛第2の破竹の勢いは止まらない!』

 

 

荒船隊作戦室。

 

加賀美「お疲れ様」

 

半崎「0点でしたね」

 

荒船「悪い。空閑を仕留められなかった」

 

穂刈「いや、相手が上手かったなあれは」

 

 

諏訪隊作戦室。

 

小佐野「諏訪さん0点!つつみんとひさとは1点ずつ取ったよ!」

 

諏訪「うるっせ!俺が一番凹んでんだよ!」

 

 

玉狛第2作戦室。

 

遊真「サンキュー チカ。助かった」

 

千佳「·······うん」

 

 

 

武富『·····さて、振り返ってみて、この試合如何でしたでしょうか?』

 

東『そうですね········終始玉狛の作戦勝ちでしたね。相手の得意な陣形を崩す。エースの空閑を上手く当てる。三雲もエースなんでしょうが。まぁ、この2つを実行出来ていたことが6点という結果に繋がりましたね。標的にされた荒船隊には終始苦しい展開でしたが、玉狛第2が、それだけ荒船隊を警戒していたということでしょう。

三雲が狙撃したことについては、スナイパーライフルを初めて使ったので、対処のしようがなかったとしか言えませんね。諏訪隊は堤が落とされたのは痛かったですね。本来なら、笹森と連携して諏訪と組んでの集中砲火が強みなんですが、荒船隊をマークせざるを得ない状況に追い込まれた。これも玉狛の計算通りでしょう』

 

東と緑川は指を2本立てる。

 

 

ここまでで、黒江には腑に落ちないことがあった。

 

双葉「米屋先輩」

 

米屋「どした?」

 

双葉「修さん達の作戦ってそんなに意味があったんですか?遊真先輩が強かっただけに見えましたけど。後、修さんの狙撃」

 

東・緑川「「(······お?)」」

 

米屋「どうなの先輩?」

 

古寺「俺ですか?······確かに黒江ちゃんの言う通り、空閑は強いし、三雲の狙撃も凄いけど、普通のMAPだったら玉狛はもっと分が悪かったと思うよ。東さんが言った通り、玉狛の大砲と荒船隊じゃ遠距離戦の経験の差が歴然だからね。玉狛だってそれは分かってる筈だから、極端な地形で勝ち筋を限定した。諏訪隊も巻き込んで、「如何に高台を取るか」っていう勝負に引き込んだ」

 

双葉「荒船隊と諏訪隊を巻き込んだってことですか?」

 

古寺「そういうことだね。「地形を使って相手を動かす」これは地形戦に基本であり真髄だ。今回の試合の場合、「動かされた側」は最後まで対応に追われ続けて、「動かした側」は、最後まで「次の一手」があった。その余裕があったから、6点っていう得点に繋がった。······もっと詳しいことが聞きたければ、三雲に聞いてみるといいよ」

 

双葉「······なるほど。ありがとうございます」

 

古寺・米屋「「どういたしまして」」

 

東『え〜······古寺に全部言われて話すことか無くなりました』

 

周りから、笑い声が起こる。

 

武富『·····本日の試合は全て終了!暫定順位が更新されました!』

 

玉狛第2は、8位にアップ。諏訪隊は10位、荒船隊は11位にダウンした。玉狛第2の次の対戦相手は、13位・那須隊と、9位・鈴鳴第一になった。

 

東『······面白い組み合わせですね。那須隊も鈴鳴第一も、玉狛第2と編成が全く同じ。3隊とも、中衛の隊員が隊長ですね。そして、鈴鳴第一にはNo.4攻撃手の村上がいます』

 

緑川『次の対戦で玉狛第2はMAP選べないし、順位で見てもマークされるね』

 

東『玉狛第2の真価を問われる一戦となりそうです』

 

 

 

 

 

対戦終了後。

 

米屋「嵐山さんどもっす」

 

嵐山「珍しい組み合わせだな」

 

双葉「嵐山さん、時枝先輩、お疲れ様です」

 

木虎「お疲れ様、双葉ちゃん」

 

双葉「·······どうも」

 

木虎にだけ、睨みつけて返した黒江。

 

双葉「失礼します」

 

黒江は、先に帰って行った。

 

八幡「相変わらず黒江に嫌われてんな······(黒江がB級の時に、木虎とばっか対戦させたのがまずかったかな······)」

 

黒江は、八幡に弟子入りしていたが、練習相手に、当時同じくB級で、嵐山隊にまだ所属していなかった木虎を一番多く練習相手にしていた。木虎は、これで黒江を可愛いと言うようになったが、黒江には完全に嫌われてしまった。

 

木虎の対人欲求は、

年上→舐められたくない

同年代→負けたくない

年下→慕われたい

 

なので、年下である黒江に素っ気ない態度をとられると、普通より更に傷つくのだ。

 

木虎「ウッ······言わないで下さい比企谷先輩·····」ウルウル

 

八幡「あ、わ、悪い」アセアセ

 

陽乃「落ち着いて藍ちゃん。全く、八幡たら·····」

 

八幡「ホントに申し訳ない」

 

緑川「木虎ちゃんおーっす」

 

木虎「(緑川君は生意気だけど好意的ね······)」

 

八幡「(緑川がいて助かった······)」

 

 

 

 

 



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35話:彼等は、新たな戦いと邂逅する。

ROUND2終了後、宇佐美と千佳と別れた修と遊真は、米屋・古寺・緑川とともに、個人ランク戦ブースに来ていた。ブースに来てすぐに、遊真と緑川は、対戦を始めた。その対戦は、丁度終わったところだ。

 

 

緑川「あー、だめだね。やればやるほど勝てなくなってくるなー」

 

遊真「よし、だんだん分かってきたぞ」

 

緑川「よねやん先輩、トータルいくつ?」

 

米屋「21対9だな」

 

緑川「それ、10本勝負でどれくらい?」

 

古寺「ちょうど 7対3 だね」

 

7対3か。緑川の腕も上がってるな。

 

緑川「7対3 か〜。前よりはマシだけどな〜」

 

遊真「成長してるぞミドリカワ」

 

米屋「前半は割と五分ってたじゃん·······お?荒船さん、個人ランク戦すか?」

 

談笑していたところに、荒船さんが来た。

 

修「あ、荒船さん。さっきはどうもありがとうございました」

 

荒船「お待ちも来てたのか。そして、ありがとうございましたってどういうことだ?」

 

修「いや、言葉通りの意味ですよ?」

 

それ以外にどうしろと·······

 

荒船「·····まぁそういうことにしといてやる」

 

緑川「どしたの?荒船さん。2人に負けて熱くなったの?」

 

荒船「あ?てめー俺が負けるって予想してたらしいじゃねえか」

 

今日はヘッドロックする光景をよく見るな·····さっきも、宇佐美さんが菊地原さんにやってたし。

 

緑川「遠距離に逃げてちゃ近距離には勝てっこないよ?」

 

荒船「いい度胸じゃねえか。ブース入れ。ぶった斬ってやるから」

 

その時、周りがざわついた。

 

修「······?」

 

あの人は確か······攻撃手4位の村上さん?周りもそう言ってるし、あってるな。

 

荒船「·······綱」

 

村上「荒船か。こっちにいるのは珍しいくないか?あ、試合見たぞ?弧月使ったの久々だな」

 

荒船「····見んなよ」

 

遊真「また人が増えたな」

 

緑川「攻撃手5位の村上綱さん。遊真先輩達の次の相手の鈴鳴第一の人だよ」

 

遊真「ふむ······攻撃手5位か·····」

 

そこで、村上さんと遊真の目が合った。

 

村上「はじめましてだな。鈴鳴第一の村上綱だ」

 

遊真「ご丁寧にどうも。玉狛第2の空閑遊真です。そこにいるのが隊長のオサムです」

 

遊真が僕の紹介もしたので、会釈する。

 

修「はじめまして。玉狛第2隊長の三雲修です」

 

村上「よろしく。鈴鳴第一の村上綱だ」

 

米屋「·····綱さんもこっちにいるの珍しいっすね。もしかして、こいつの対策?」

 

村上「そんなところだ。荒船を斬り倒す新人攻撃手に、弧月を抜かせたチーム戦術。かなり手強いだろうからな」

 

随分と買ってくれてるな。あと、荒船隊が噛ませみたいだ。

 

荒船「俺を噛ませみたいに言うな」

 

村上「緑川がいてくれてよかった。対策付き合ってくれ」

 

村上さんがそう言うと

 

緑川「やだね」

 

緑川は両手でバツの字を作って拒否した。

 

緑川「今ごっそりポイント取られたんだもん。今日これ以上ポイント減らしたくない」

 

緑川が負けること前提で話してるな。4位が名前だけなわけがないか。流石に。

 

米屋「俺でよければやりますよ〜」

 

村上「それはありがたいんだがお前グラスホッパー使わないだろ」

 

米屋「ありゃそっちの対策か·······」

 

そこで、遊真が口を開く。

 

遊真「·····じゃあ、俺とやろうよ。直接対策した方が早いし、こっちもそっちの戦い方知りたいし」

 

村上「······それは」

 

荒船「やめとけ。次の試合が不利になるぞ」

 

修・遊真「「········?」」

 

米屋「う〜ん、口出すのも出さねーのもあんまフェアじゃない気がすっけど、まぁ、荒船さんの言う通りにしとけ。勝負は試合までとっとけよ」

 

どういう意味だ?何か仕掛けがあるのか?

 

遊真「ふむ····余計戦いたくなってきた」

 

緑川「遊真先輩·······」

 

遊真「こっちが戦うと損するってとこは分かった。3人とも嘘ついてないのが分かるし。でも、なんでなのか知りたくなった」

 

村上「······なるほど。データが少ない分、願ってもない話だ。ただ、2つ頼みがある。一つは10本勝負。2つ、5本目が終わったら15分のインターバルをとる。それでいいか?」

 

遊真「いいよ」

 

何で15分のインターバルが必要なんだ?そこに仕掛けがありそうだな。確か······向こうで、記憶能力がやたら強化されたサイドエフェクトを持った奴がいたが、その類いか?

 

 

 

ラウンジ。

 

迅「やぁ、熊谷ちゃん」

 

そう言うと、迅は熊谷の尻を触る。そして、熊谷に思いっきり殴り飛ばされる。

 

迅「·····相変わらず健康的なパンチだ······」

 

迅の右頬は真っ赤になり、煙が出ている。

 

熊谷「迅さん······いい加減にしないと、ガチで訴えますよ?」

 

迅「アハハハ、まあまあお詫びにいいこと教えてあげる。今、個人戦のブースで、熊谷ちゃんの次の相手2人が10本勝負してる。でも急がないと、終わっちゃうかもね」

 

 

 

 

あの後、結局遊真は 6対4 で負けた。村上さんのサイドエフェクトは、〈強化睡眠記憶〉というらしい。古寺さんと米屋さんに聞いた。

 

 

村上『俺の脳は、人より少し極端らしい。〈強化睡眠記憶〉····それが俺のサイドエフェクトだ』

 

遊真『こりゃ手強いね』

 

 

その後、遊真と村上さんは、チーム戦後にもう一度ランク戦をする約束をもう取り付けていた。早い。

 

修「どうだった?攻撃手4位は」

 

遊真「想像以上だ。·······でも、チーム戦は俺にやらせて欲しい」

 

修「分かった·······米屋さん」

 

米屋「ん?どーかした?」

 

修「あそこでさっきから2人のランク戦見てた人誰ですか?」

 

バレないように、指を差す。

 

米屋「あいつか?あいつは、那須隊の攻撃手の熊谷だよ。お前らの次の相手じゃなかったか?」

 

修「そうですね。挨拶してきます」

 

米屋「おー」

 

 

 

 

少し移動し、熊谷さんという方に、挨拶する。

 

修「那須隊の熊谷さんですね?」

 

熊谷「·······あんたは?」

 

修「玉狛第2の隊長の三雲修です。次のチーム戦はよろしくお願いします」

 

熊谷「·····よろしく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュース「本国に関することは、如何なるものでも回答するつもりはない」

 

林藤に連れられて、ヒュースは会議室にいた。その場には上層部以外に菊地原がいる。

 

鬼怒田「·······全く。玉狛に置くと捕虜まで態度がでかくなるわい。近界民よ。我々は玉狛と同じではない。必要ならば荒っぽい手も使う。貴様らにこちらの法は通用せんからな」

 

そこに忍田が反論する。

 

忍田「鬼怒田さんの話は性急すぎる。捕虜をもう少し丁重に扱ってはどうだ」

 

八幡「(·······何に使えるかは分からないんだがなぁ····)」

 

八幡は、アフトクラトルの、特にハイレイン側の内情を少しは知っていたため、忍田に反論はしないもののヒュースがアフトクラトルとの取引に使えるかは分からなかった。

 

忍田「八幡、向こうでは捕虜の扱いはどうなっているんだ?」

 

八幡「そっすね·······情報目当てで拷問とかはあんまやらないですね」

 

忍田「何故だ?」

 

八幡「助かりたくて適当なこという場合がありますから。まともな情報を手に入れたいなら、それなりの人数を用意して情報のすり合わせしないといけなくなるんで。憂さ晴らしとかで拷問とかはありますけど」

 

ヒュースが捕虜なら、いくら反論しても最終的にこちらが強引に決めることも出来るが、捕虜を丁重に扱うべきとの忍田に、八幡は反論しようとは思わなかった。ヒュースの育ての親である、«エリン家»ではヒュースは家族に近い扱いなので拷問しようものならば、もし交渉にヒュースを使う場合、こちらが不利になるかもしれないということもある。

 

忍田「ヒュースだったな。私は、この組織の軍事指揮官の忍田だ。私個人としては、君を捕虜として全うに扱いたいと思っている。君が一兵士で、命令に従ったことも分かっている。あくまで、責任を君一人に負わせようとはしていない」

 

忍田は、エネドラがミラに串刺しにされた場面を間近で見ていたので、ミラが初めからエネドラを殺すつもりで、ヒュースも初めから置き去りにされることが決まっていたのでは、と踏んでいた。八幡から、ヒュースを置いていくことが決定事項として扱われていたことを聞きていたため、忍田はそれで間違いないと思っていたため、流石に口を割るだろうと考えていた。

 

忍田「·····込み入った事情は私には分からないがアフトクラトルが君を故意に見捨てたなら、もう忠義を立てなくもいいのではないか?」

 

ヒュース「·······侮るなよ。遠征に出る以上死ぬことも覚悟の上だ。それしきで本国の情報を漏らしたりしない」

 

菊地原が内部通信で城戸に話しかける。会議室のように一部の設備があれば、トリオン体というだけで内部通信を使用することが出来る。

 

菊地原『心音に変化はないです。これ以上の揺さぶりは無駄ですね』

 

城戸「·······分かった。今日はここまでにしよう。林藤支部長、ご苦労。さがらせろ」

 

林藤「了解」

 

城戸「鬼怒田開発室長は開発室に戻って元々の任務を。比企谷は空閑隊員を開発室に連れていけ」

 

八幡「分かりました」

 

城戸「今回の会議はこれにて解散とする」

 

 

 

 

 

八幡は、修と遊真を探しにランク戦ブースに来ていた。もうボーダーに馴染んでいる遊真は、ランク戦をしているだろうと踏んだのだ。修は、遊真の付き添いにいるだろうとも考えていた。

 

八幡「お、いたいた」

 

遊真「ハチマン先輩じゃん。どうしたの?」

 

遊真と修は、村上や荒船達と一緒にいた。

 

八幡「どうも鋼さんに荒船さん。修と空閑、ちょっと借ります」

 

修「何かあったの?」

 

八幡「鬼怒田さんがお呼びだ」

 

修「分かった。すいません、失礼します」

 

米屋「じゃあな~。次は俺とも頼むぜ〜」

 

八幡「あ、米屋いたんだ」

 

米屋「ハッチ酷い!」

 

 

 

 

 

修と遊真は、八幡に連れられて会議室に来た。

 

鬼怒田「遅いぞ八幡。やっと来たか空閑。で、何で三雲までおる?」

 

八幡「えぇ、その言い方はないでしょ·····」

 

修「えっと·····?」

 

遊真「何で呼ばれたんだ?」

 

鬼怒田は八幡と遊真の突っ込みを軽く躱し、雷蔵に指示を出した。

 

雲母坂「まぁいい。雷蔵、あれを起こせ」

 

雷蔵「了解です」

 

修・遊真「「··········«あれ»?」」

 

八幡「あぁ、あれだよ」

 

そう言って八幡は指で2人の疑問の答えを指差す。

 

修「·······黒いラッド?」

 

強化ガラスで仕切られた空間の向こう側には、台に黒いラッドが置かれていた。

 

雷蔵「トリオン注入します」

 

修の疑問には誰も答えず、雷蔵が黒いラッドにトリオンを注入する。トリオンを注入されたラッドから黒い角が生えた。

 

 

「やっと来やがったか。遅せぇんだよ······」

 

 

黒いラッドからは修に聞き覚えのある声がした。

 

修「この声·····エネドラ?」

 

黒いラッドから聞こえた声の正体は、エネドラのものだった。

 

鬼怒田「察しがよくて助かる。彼奴は、死体の角をラッドに移植したものだ。奴らの角には、生体情報を収集する機能があるようでな。しかも、こいつの角は脳の一部と同化していた。人格や記憶までバックアップされとったようでな」

 

修「人格までバックアップ出来るのか·······(レプリカみたいな自律型のトリオン兵がいるから、おかしくはないのか?)」

 

遊真「なるほど。だからあっさりヒュースを見逃したのか」

 

八幡「そういうこった。代わりに、俺達の力を貸す。林藤さんの城戸さんとの取引らしい」

 

遊真「OK。俺の役目は分かった」

 

 

 

そこから、エネドラへの質疑応答に近い形の尋問が始まった。

 

鬼怒田『近界民よ。これから質問に答えてもらう。つまらん嘘をついたらトリオンを抜いて川に捨てるからな』

 

エネドラ『あ~はいはい。とっとと始めろよ』

 

鬼怒田『まず一つ。貴様らの侵攻の目的は何だ?』

 

エネドラ『あ?んなもん兵隊として使うからに決まってんだろ。ウチ以外からもちょろちょろ来てんだろ?』

 

鬼怒田『そんなことは分かっとる。聞きたいのは、何故今回に限って、黒トリガー4本というまたとない大戦力までつぎ込んだのかということだ』

 

エネドラ『そりゃ、アフトクラトルの「神」がもうすぐ死ぬからさ』

 

八幡・修「「(······やっぱり神問題か)」」

 

やっぱり、と八幡と修の2人は同時に考えていた。

 

エネドラ『ウチの国の「神」は、あと何年かで死ぬ。そうなりゃ、風も吹かねえ。雨も降らねぇ。夜も明けねぇ。だからあちこち遠征してんだよ』

 

鬼怒田『うちから攫った隊員を生贄に、か?』

 

エネドラ『そう簡単にお眼鏡に適ったら苦労しねぇよ。「神」がショボけりゃ星も小さくなる。そうなりゃ、今いる雑魚市民が飼えなくなる。ウチが「神の国」だなんてダッセェ名前で呼ばれてんのはねちねち「神」を厳選してっからだ。·········お?そいつらがまだここにいるってこたぁ、ハイレインのヤロウしくったか?ざまぁねぇな!』

 

エネドラは八幡と修を見て言う。

 

鬼怒田『黙ってとれ。質問するのはこちらだ』

 

エネドラ『早くしろよ』

 

鬼怒田『黙れ。·····何故貴様は基地に侵入して一般人を殺した?』

 

エネドラ『俺の仕事は撹乱さ。砦に乗り込んで雑魚をぶっ殺してこいってな。命令だから仕方ない』

 

遊真「はい嘘」

 

エネドラの嘘は、遊真のサイドエフェクトによってあっさり見抜かれた。

 

鬼怒田『いらんことを抜かすな。情報自体は他の捕虜から手に入れとる』

 

エネドラ『他の捕虜ぉ?·······ヒュースか!ざまぁねぇな!あいつ置いていかれやがったか!········けど嘘はいけねぇなオッサン。あの犬っころが国裏切るわけがねぇ。死んでも情報吐かねえだろうよ』

 

八幡「分かってたか······」

 

 

 

 

そこからも尋問は続き、エネドラはヒュースに比べるとかなりの量の情報を話した。遊真のサイドエフェクトにも、殆ど引っかからなかった。今は、エネドラからトリオンを抜ききったところだ。

 

遊真「·······う〜ん。部分的にだけど、嘘ついてたね。でも、こっちの味方をするってのは本当っぽい」

 

鬼怒田「ふん·······まだ聞きたいことはいくらでもある。尋問の時には、また来てもらうぞ」

 

遊真「いいよ。夜とか大体空いてるし」

 

八幡・修「「(空いてる、か········)」」

 

八幡と修にとって、その発言には思うところ、がやはりあった。

 

 

 

 

 

 

 

あの後、そのまま家に直帰する八幡と別れ、修と遊真が本部を出た時に修に電話が掛かってきた。

 

 

修「ごめん、電話がきたから待っててくれ」

 

遊真「いいぞ」

 

遊真から少し離れた場所で電話に出る。

 

修『もしもし·······どうも、お久しぶりです。·······頼み事?······はぁ、分かりました』

 

 

遊真「誰からだったんだ?」

 

修「親戚だよ」

 

僕自身の親戚ではないが、三雲家の親戚ではある。結構な遠縁だけど。嘘は言ってない。

 

遊真「そうか」

 

ヒュースのこともあるし、後で兄さんにも相談しとかないと。

 

 

 

その日の夜、玉狛支部。

 

桐絵「······遊真が負けた?誰に!?太刀川?風間さん?」

 

桐絵が想像以上に驚いていた。

 

遊真「むらかみ先輩って人」

 

桐絵「村上·····綱さん!?」

 

宇佐美「あちゃ〜先に戦っちゃったか。帰ったら話そうと思ったんだけど······」

 

修「サイドエフェクトですか?米屋さんと古寺さんから軽く聞きましたけど」

 

あんな感じのサイドエフェクトを持った奴は、向こうでは、強かったけど、突然想定外の攻撃をすると、割と脆かった気がする。

 

宇佐美「綱さんのサイドエフェクトは攻撃手界隈では知られた話だよ」

 

遊真「なるほど。だから15分の休憩を挟んだのか」

 

レプリカ『オサムは、あのようなサイドエフェクトを持った敵と戦ったことはあるのか?』

 

修「少しね。あの時は····確か、僕が引き付けて兄さんに奇襲をかけてもらった筈」

 

遊真「ふむ·····奇襲か·····」

 

桐絵「それで?何対何で負けたの?」

 

遊真「6対4 。後半で5本一気に取られた。あれ以上やったらもっと取られてたな。でもまぁ、先に戦っといてよかったと思うよ。情報ないと対策立てらんないし」

 

そして、遊真は部屋から出ていった。

 

桐絵「·····修はどうするつもり?」

 

修「今回は、村上さんに遊真をぶつけようと思う」

 

桐絵「······何で!?」

 

修「その方が楽なんだよ。条件があえば狙撃出来るかもしれないけど。今回は遊真がそうしてくれって言ったし」

 

桐絵「修はどうすんのよ」

 

修「僕は、村上さん以外の鈴鳴と那須隊から点を貰っていこうかと。那須隊に用事が出来ちゃったし」

 

桐絵「用事?······修?」ジトッ

 

う〜ん、やましいことは何もしてないのに心が痛む·····

 

修「大丈夫、桐絵が考えてるようなことじゃないよ。ちょっと頼み事を引き受けただけだよ」

 

桐絵「·····最近色々と抱え過ぎじゃない?」

 

心配してくれるのはありがたいけど、そんなに色々抱え込んできたわけじゃないし、これからするつもりもない。

 

修「大丈夫だってば。何かあったら頼るかもしれないけど」

 

桐絵「そこはどんどん頼って欲しいわ」

 

修「じゃあ、何かあったら頼むよ」

 

桐絵「任せてちょうだい!」

 

修「ありがとう桐絵」

 

桐絵「いいのよ。あたしと修の仲なんだから」

 

その頃·····

 

宇佐美「(誰かー!ブラックコーヒー持ってきてー!!)」

 

一瞬で空気と化した宇佐美は、心の中で思いっきり叫んでいた。

 

 

 

 

翌日。ボーダー鈴鳴支部。

 

来馬「······昨日玉狛第2の子と戦ったんだって?」

 

村上「はい。4対6 で勝ちました」

 

来馬「綱相手に4本か····!相手まだ中学生だろう?凄いね!」

 

今「でも、綱君が勝ったんならもう一対一なら負けないわね」

 

村上「それはどうだろう。昨日は全力じゃなかっただろうし、なにより·······」

 

来馬「どうかしたの?」

 

村上「あそこの隊長は色々やばそうな気がしたんですよね。昨日戦った子より」

 

来馬「隊長がかい?昨日は狙撃で凄い技やってたけど、接近戦なら綱は負けないよ」

 

村上「ありがとうございます来馬先輩」

 

村上「一対一の場面があれば俺が倒します。でも、チームで仕留められるならそっちの方がいいです」

 

来馬「そうだね。太一とも連携して·······」

 

 

 

 

 

同時刻那須邸。

 

熊谷「······これ、昨日の村上先輩と空閑君の10本勝負ね。空閑君の情報少なかったからデータが貰えて助かったよ」

 

志岐『村上先輩相手に前半 4対1 とかヤバイっすね』

 

熊谷「荒船さんと駿君にも勝ってるし、昨日のランク戦見ても間違いなくこの子が玉狛第2のエースだろうね」

 

修 対 緑川のデータは、那須隊は手に入れられなかった(本当は、修と八幡が裏で画策して、ROUND2の直後、裏で色々やってデータを全消しした。あと、風間を圧倒した噂も完全に消してて、那須隊はその噂を知らない。やりすぎである)。

 

那須「そうだね。三雲君も狙撃が凄いとは思うけど、メインで動いているわけじゃないし」

 

志岐『作戦とかもこの空閑君が考えてるんですかね?』

 

熊谷「そうなんじゃない?昨日三雲君には会ったけど、そこまで強そうには感じなかったし」

 

感じさせないのは、修がそう装っているからである。

 

那須「この雨取ちゃんも、トリオンが凄いけど·····」

 

志岐『なんだかんだで1点も取ってないですからね。大砲での«崩し役»がメインっぽいです。ポイント取りに来るのは空閑君ですね。他の2人は空閑君に取らせるための援護ですかね?』

 

那須「そうでしょうね。しっかりイメージしておけは、問題ないわ」

 

熊谷「問題は鈴鳴だよね·····昨日も乱戦に持ち込んだけど、結局村上先輩を崩せなくて······これで、鈴鳴には6連敗か·····荒船隊くらいとんがったやり方じゃないと有利取れそうにないわ·····」

 

志岐『それなんですけど、今月1日の第一戦で、諏訪隊が2人残して勝ってるんですよね。鈴鳴に』

 

熊谷「うちが防衛任務の時?」

 

志岐『はい。見逃してました。その試合、諏訪隊は攻撃手の火力を捨てて、村上先輩の間合いに絶対に入らないようにしてました。村上先輩さえ封じれば勝てるっていう戦法だと。このあたり、鈴鳴と玉狛は似てますよね。攻撃手が強くて、他はそうでもない』

 

熊谷「確かにそうかも·····」

 

志岐『だから、うちも那須先輩の間合いで戦うのはどうでしょう。中距離に限って言えばうちがかなり有利だと思います。諏訪隊ほど火力あるわけじゃないんで、引き気味に戦うことになりそうですけど』

 

熊谷「じゃあMAPもそれに因んだ所選ばないとね」

 

那須「·······あとは、茜ちゃんがどうなるかね·····」

 

熊谷「········そうだね」

 

志岐『········そうですね』

 

 

 

 

同時刻。日浦家。

 

茜「お願いしますお父さん。どうしてもボーダーにいたいの!」

 

茜は、涙を浮かべて頭を下げる。その茜の必死な懇願に、茜の母親・葵が折れた。

 

葵「少し話を聞いてあげてもいいじゃないの?この子がここまで言うのは初めてなんだし」

 

妻の言葉を聞いた茜の父親・碧也も折れる。

 

碧也「分かった。なら、条件を変えよう。俺の知り合いにボーダー関係者がいるんだ」

 

茜「··········!!!」

 

碧也「その知り合いに、お前のチーム戦の様子を見てもらう。お前がボーダーに残れるかはその結果を見て考える」

 

茜「ありがとうお父さん!じゃあ私、玲さんの家行くね!行ってきまーす!」

 

機嫌を取り直した茜は、すぐさま家を飛び出して行った。

 

 

 

葵「全く·······あなたっていう人は·····」

 

碧也「ここまで食い下がる茜が初めてだって言ったのは葵だろ?修には申し訳ないけど協力して貰う」

 

葵「はぁ、後で修君に謝っときなさいよ。こんなことに付き合わせて·······」

 

 

 

 

 

再び那須邸。

 

茜は、全力疾走で那須邸まで走って行った。呼び鈴を受けて出てきた那須は、茜が肩で息をして、汗だくになっていることに驚きつつも、自室に茜を招いた。

 

 

那須「茜ちゃん慌ててどうしたの?」

 

茜「実は·······

 

 

 

ということらしくて······」

 

茜は、先程の父親との話を全て話した。

 

那須「その知り合いって誰なのかしら?」

 

茜「分かりません······お父さんの知り合いにボーダーの関係者がいること自体初めて知ったので·····」

 

熊谷「ほら茜!今その茜のお父さんの知り合いのことを考えても分からないんだから!今私達がやるのは、ランク戦を全力でやることなんだから!」

 

茜「·····はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、玉狛支部屋上。

 

遊真は、レプリカと夜空を眺めていた。そこで、屋上に通じるドアが開く。林藤が出て来て、遊真にカップに入ったホットミルクを渡す。

 

林藤「寝ないのか?遊真」

 

遊真「俺は眠らなくていいんだ。この身体になった時から」

 

林藤「······八幡と同じか·····」

 

遊真「?何でハチマン先輩が出てくるの?」

 

レプリカ『ハチマンも普段はトリオン体だからだ』

 

遊真「どういうこと?」

 

レプリカ『ユーマと同じだ。ハチマンも、昔死にかけて、父親が黒トリガーになるとこで生き延びたらしい』

 

林藤「あいつはこっちに戻って来た時に、生身の治療が間に合ったから黒トリガーとは別のトリオン体なんだ。生身だと、右目と左腕が欠損しちまったけど」

 

遊真「そうだったのか·····」

 

林藤「·········ってか、お前派手に負けたんだって?また修が心配してたぞ?」

 

遊真「全く······オサムは面倒見の鬼だな。俺は別に凹んでなんかないよ。俺が強くなったって、周りだって鍛えてるんだから強くなっていく。オサムも分かってると思うんだけどな」

 

林藤「ははっ、そういう所も含めて面倒見の鬼なんだろ」

 

遊真「·····にしても、ランク戦の仕組み作った人はなかやか考えてる。特に、誰も死なないところとか」

 

林藤「はっはっは、作ったのは俺と鬼怒田さん。あとは八幡と陽乃だよ」

 

遊真「なんと、ボスだったのか。あと、ハチマン先輩とハルノさんとな?」

 

林藤「で、システム自体を考えたのは、お前の親父さんだ」

 

遊真「·····親父が?」

 

レプリカ『あのシステムはユーゴが考えたのか』

 

林藤「ボーダーが、まだボーダーじゃなくて、10人もいなかったような大昔に、ご機嫌で未来のこと語ってた。その頃は、小南あたりは、話が始まってすぐに寝てたな」

 

遊真「·····へぇ····そうか······」

 

林藤「遊べよ遊真。楽しいことはまだまだたくさんある。八幡達も、昔に比べてずっと表情が柔らかくなったんだ」

 

遊真「········」

 

2人のカップからは、温かな白い湯気が立ち込めていた。レプリカは、黙ってそれを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして··········B級ランク戦 第3戦 試合当日

 

 




情報に踊らされる那須隊が少し見たくなってしまった。ファンの方々申し訳ございません。作者は那須隊嫌いじゃありません(アンチなわけがない)。寧ろ好きです。


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閑話6:一対多。

今回修のキャラ崩壊すげぇ······





ランク戦ROUND3を間近に控えた修は、この日も玉狛支部に来ていた。と言っても、今日は、遊真はランク戦、千佳はスナイパーの合同訓練で、本部に行ったが。修は、桐絵と訓練でもしようか、と考えていた。

 

 

迅「お、来たね修。模擬戦しようぜ」

 

修「突然どうしたんですか迅さん。模擬戦はいいですけど·····」

 

迅「 よっし。OKだって。本人の許可降りたよー」

 

修「·······は?」

 

迅の一声とともに、ぞろぞろと人が出て来る。玉狛第一と加古隊だ。······何故?

 

加古「言ったわね修君。というわけで、私達と模擬戦をしましょう」

 

修「え?迅さんとじゃないんですか?ていうか、私達って·····」

 

迅「今回の修の模擬戦の相手は、玉狛第一+加古隊+俺 対 修 だよ?誰も一対一なんて言ってないし」

 

修「その言い分、年上としてどうなんですか·······?しかも、僕一人ですか?今日は遊真も千佳もいないのに·····フルアームズとコネクター出来る前の桐絵・レイジさん・迅さん 対 僕 とは話が違うんですから」ハァ

 

この場で修より年下なのは双葉だけなので、他の8人は修より年上である。修の年上発言に、双葉以外の全員の心に若干の棘が刺さる。双葉は、修以外の年上が若干テンションが下がった理由が分からずに、首を傾げている。

 

迅「い、いいからいいから。早く準備して」

 

もう何を言っても無駄だと判断した修は、諦めた。

 

修「······分かりましたよ·····トリガーのセットいじるんでちょっと待ってて下さい」

 

迅「それぐらいならいいよ」

 

 

 

修「レイジさんがフルアームズ使うとなると両防御しないとまずもたないし、喜多川さんがトラッパーだしな······」ブツブツ

 

 

 

修『出来ました。準備OKです』

 

宇佐美『今回は、修君のオペレーターは私がやるね。向こうは杏ちゃんがやってるよ』

 

修『お願いします』

 

 

 

転送が完了した。全員がバッグワームを使っているので、サイドエフェクトで周囲を見渡すと、ここから一番近いのが·····レイジさんだな。フルアームズ使われる前に倒さないと。

 

修「グラスホッパー」

 

修『宇佐美さん、トラップの位置分かり次第教えて下さい』

 

宇佐美『了解!』

 

修「見つけた。アステロイド」

 

手始めに、アステロイドを216個に分割して放つ。今回は、いつもより、キューブを結構大きくして放ったので、レイジさんのシールドを一部突き破って、右腕と右足を削ることが出来た。

 

レイジ「一番は俺か?」

 

レイジさんが機関銃を放ちながら、聞いてくる。シールドで防御する。この機関銃こんなに威力高かったのか。

 

修「そうですね。あまり時間かけられないんで速攻でいきます。コブラ!」

 

一瞬でコブラ合成。コブラを8000個に分割し放つ。弾が小さくなれば、それだけ弾一つにつき威力は小さくなる。いくら合成弾といっても、トマホークやサラマンダーみたいに爆発したりするわけじゃないし、キューブもそこまで大きくしなかったから、一発はかなり弱い。だから、コブラをレイジさんの360度全方位から囲むように弾道を設定して、放つ。·····でもこれ凄いトリオン任せの戦い方だな。まだ相手の一人目だから、目を瞑って貰おう。

レイジさんは、当然の如く両防御した。が、8000発のコブラは、シールドを突き破り、レイジさんの右足と左腕を完全に破壊した。左足もほぼ機能していない。

 

修「マンティス」

 

レイジ「······!」

 

僕は、腕を振ってしなるようにでるスコーピオンを2本重ねた、マンティスを放つ。レイジさんは、シールドを2枚張るが、マンティスでそれごと突き破ってレイジさんの供給機関を穿つ。レイジさんは緊急脱出した。レイジさんが緊急脱出したから、僕がスコーピオンを2本入れているのはもうバレているだろう。

 

修「次に近いのは····黒江か」

 

再び、グラスホッパーで移動を開始する。唯一スナイパーが出来るレイジさんを真っ先に倒せたので、僕が空中を飛び回っていれば倒せないだろう。射手トリガーならシールドで対応出来る。

黒江は、加古さんと合流しようとしていた。合流されると、加古さん+黒江+喜多川さんで、いつもの加古隊の戦い方に巻き込まれるので、黒江には悪いが、先に倒させて貰う。

 

修「バイパー」

 

バイパーを、黒江の正面、背後、左右から来るように弾道を設定して、125個に分割して放つ。

 

双葉「レイジさんをこんなに早く倒すなんて修さん凄いですね!」

 

修「ありがとう。でも、今回は敵同士だ」

 

そう言うと、黒江が弧月で斬りかかってきた。前に模擬戦した時風間さんがやってたみたいに、スコーピオンを2つ片手に持って防御する。耐久ではこちらが不利だが、攻撃だけなら負けてはいない。それにしても、黒江が韋駄天を使わないのは何でだ?その考えは頭の隅に置いて、モールクローで、鍔迫り合いになっている黒江の左足を飛ばす。

 

黒江「しまっ·····!」

 

修「油断したな黒江」

 

黒江の左腕も、切り落とす。年下の女の子にやると胸が痛む·····

 

黒江「クッ·······韋駄天!」

 

黒江が一旦退る。その直後、黒江が韋駄天を使って来た。が、黒トリガーでこれ以上のスピードで動く僕なら対応が出来る。グラスホッパーで素早く上に飛びつつ、韋駄天の軌道上に、シールドを張る。

 

黒江「······え?」

 

張ったシールドは、黒江のスピードそのものを利用して黒江を真っ二つにし、緊急脱出させた。だが、完全に避けれず、左手首から先を斬られてしまった。まあ、イーグレットは基本片手持ちだから、右腕が残って、なられなかっただけよしとしよう。グラスホッパーで飛び上がった時、喜多川さんを発見したので、迷わずイーグレットで狙撃し、緊急脱出させた。その次に近いのは加古さんか。グラスホッパーで加古さんを追う。

 

 

 

 

今、加古さんと対峙している。

 

宇佐美『判明したトラップを表示していくね』

 

修『ありがとうございます』

 

内部通信を介して、宇佐美さんと連絡をとる。

 

加古「双葉が緊急脱出した理由が分からなかったらしいけど」

 

修「グラスホッパーで避けた後、韋駄天の軌道上にシールドを配置しただけですよ。あとは、韋駄天のスピードで勝手に黒江が切られます」

 

加古「よく韋駄天を見切れるわね」

 

修「僕のトリガーがあれより速く移動することが出来るからですよ。あと、運が良かったってところですかね」

 

加古「確かに、あれは韋駄天とは比べ物にならないわね」

 

修「反動も大きくて、10日も寝込みましたけどね」

 

アステロイドを125個に分割し放つ。加古さんは、シールドで防御しながらハウンドを撃ってきたので、こちらもシールドで防御。この付近には、喜多川さんが張ったトラップがまだある。さっき、サイドエフェクトで近くのものは発見出来たが、加古さんが置き弾を使っていて、判別がつかないものも多い。とりあえずモールクローで、加古さんの右足を狙う。モールクローを回避した加古さんが、スコーピオンで斬りかかってくる。こちらもスコーピオンで受ける。

 

加古「モールクローなんてなかなかいやらしいじゃない」

 

修「いやらしいかどうかは分からないんですけど·····でも、倒させてもらいます。バイパー」

 

背中に展開したキューブを、125個に分割し、加古さんの背後に回り込むように弾道を設定し放つ。もし、避けたとしても、追いかけられるよう弾道を設定している。加古さんは、避けつつシールドで弾を消していったが、対処出来ずに何発か食らう。両足に穴が空いている。加古さんは、スコーピオンで足を補強して、再度襲いかかってきた。しかし、加古さんが僕に攻撃は出来なかった。上下から、バイパーを撃ち込んで、加古さんを緊急脱出させた。

 

加古「えげつないわね」

 

修「模擬戦を図った迅さんに言って下さい」

 

加古「ふふっ、そうさせてもらうわ」

 

そうして、加古さんは緊急脱出した。その直後、両サイドから斬りかかられる。桐絵と烏丸さんだ。

 

桐絵「出し惜しみしないわよ、とりまる」

 

烏丸「了解。ガイスト、起動。スピードシフト」

 

流石に、スピードシフトを躱しながら桐絵の双月を受け続けるわけにはいかない。迅さんがどこにいるかもよく分かってない以上は。それと同時に、2人が斬りかかってきた。

 

桐絵・烏丸「「これで!」」

 

修「シールド」

 

2人が斬りかかってきたが、僕に振り下ろされることはなかった。烏丸さんの右腕と、桐絵の両腕の付け根から、振り下ろすと、それぞれが切れるようにシールドを張ったのだ。2人は、突然のことで、一瞬動きが完全に止まる。その隙を見逃すつもりはない。動きが止まった隙に、2人を、スコーピオンを両腕からだして水平に振り、真っ二つにした。

 

桐絵「流石ね」

 

烏丸「ガイストでもだめか·······」

 

その時、桐絵はメテオラ、烏丸さんはアステロイドをありったけ撃ち込んできた。シールドで何とか防御した。アステロイドは数発食らったけど。2人は、戦闘体の活動限界で緊急脱出した。そこで、今回模擬戦をする羽目になった張本人が来た。

 

迅「いやぁ凄いな。もう俺だけだ」

 

修「なんとかなりましたよ······何でこんな模擬戦やったんですか?」

 

迅「今回、修はスコーピオン使ったろ?でも、ここで使わせないと、一生使わなそうだったから、折角だし使ってもらおうって思ってね。スコーピオンって俺が作ったわけだし」

 

修「そうですか·····(浅いのか深いのかよく分からない。でも、迅さんだからな·······)」

 

迅「もうちょっと俺の意思汲んでよ······」

 

斬り合いながら会話する。

 

修「これで、終わりです」

 

ブランチブレードとモールクローの応用技で、風刃みたいな感じで、モールクローを枝分かれにしたスコーピオンの刃10本が地中から迅さんに襲いかかる。迅さんは避けるが、下に気をとられた隙に、スコーピオンを解除する。突然消えたスコーピオンに、迅さんが驚くがもう遅い。

 

修「マンティス」

 

腕を振ってマンティスを放つ。スコーピオン二刀で構えた迅さんだったが、スコーピオンを二本とも破壊して、迅さんの供給機関を穿った。

 

迅「敵いっこなさそうだ」

 

そのまま迅さんは緊急脱出した。

 

 

『合同チーム 対 三雲修 勝者 三雲修』

 

そう音声が流れた後に、僕も隊室に転送された。

 

 

 

 

宇佐美「いや〜、凄いね修君。あの人数を左腕の犠牲だけで全員倒しきるんだもん」

 

修「いや、黒江の韋駄天がもっと複雑な軌道になってたら、あそこでやられてたかもしれないですから」

 

黒江が思ったほど複雑な軌道に慣れていなくて助かった。

 

双葉「·····でも、よく韋駄天に対応出来ましたね」

 

修「僕のトリガーは韋駄天とは比べ物にならないくらいのスピードで動けるから」

 

双葉「ホントですか!?私もそれ使ってみたいです!」

 

加古「やめなさい双葉。黒トリガーに適合出来るとは限らないわ。それに、修君が10日寝込んだ理由はあの黒トリガーの反動らしいから、韋駄天の要領であなたが使えば、2ヵ月とか寝込むことになるわよ」

 

双葉「黒トリガーの反動ですか·······寝込むのは嫌です」

 

桐絵「にしても、よくあそこでシールドを展開するわね」

 

烏丸「全く。2人で斬りかかって2人同時にカウンターくらうとは思わなかった」

 

修「やろうと思えば、誰でも出来ますよ。あと、掌に展開してスコーピオンみたいに使うとか」

 

加古「その発想はなかったわ」

 

加古さんの目の奥が光った気がした。

 

修「今日はとりあえず、帰りますね。流石に疲れたので·····迅さんは自重して下さい。セクハラもですけど」

 

迅ハラについては、色んな人から情報が入っている(主に兄さん。あと、何故か沢村さんもかなり言ってきた)。

 

迅「本当にすいませんでした」

 

 

 

 

 




今回の修のトリガーセット
メイン サブ
スコーピオン スコーピオン
バイパー アステロイド
イーグレット グラスホッパー
シールド シールド

超攻撃的になりました。陽乃のトリガーセットが割とこれに近い感じなんで、修が参考に考えたってことでお願いします。修達の会話の間も結構な攻防があったのですが、文才がなくて、あまり上手く表現出来ませんでした。


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36話:ROUND3。三雲修は、尚も戦いながら牙と爪を研ぐ。

 

三上の声が、ランク戦ブースに通る。今回、比企谷隊や加古隊など、前回は観戦に来ていた部隊は、軒並み自隊の隊室で見ている。

 

三上『B級ランク戦第3戦、昼の部が間もなく始まります。実況は風間隊の三上。解説には、No.2攻撃手の太刀川さん、「ぼんち揚げ食う?」でお馴染みの迅さんにお越しいただきました』

 

迅・太刀川『『どうぞよろしく』』

 

三上『······さて、那須隊が選んだステージは「河川敷A」これはどういう狙いがあると思いますか?太刀川さんお願いします』

 

太刀川『······マジメに?』

 

三上『真面目に』

 

太刀川『普通に攻撃手封じだな。川を挟んで橋落とせば、射撃メインの那須隊はやられにくくなる。とはいえ、鈴鳴にも玉狛にも射程持ちはいるんで、地形で勝負が決まるってことはないだろうな。分断されても、川は腰ぐらいの深さだから、援護があれば渡れないこともない』

 

迅『それはどうかな〜?』

 

太刀川『何?お前なんか見えてんの?』

 

迅『さあね』

 

三上『スタートまであと僅か。全部隊、転送!』

 

 

 

三上『各隊員転送完了!MAP・河川敷A、天候・暴風雨!』

 

ステージは暴風雨が吹き荒れ、川は氾濫寸前である。東岸には、修、千佳、那須、来馬、太一。西岸には、遊真、村上、茜、熊谷となった。西岸で橋から一番遠いのは、村上である。西岸では、全員が橋に向かっていた。

 

太刀川『マジか。こりゃ、川渡んのはキツい。落ちたらヤバいな』

 

迅『MAP選択には天気や昼・夜の設定も含まれますが、ここまでハードな設定は見たことないですね。那須隊の本気度が感じられます』

 

三上『仕掛けた強みからか、那須隊の動き出しがやや早い!』

 

 

他の隊員が、悪天候に左右される中、那須隊は合流しようとしていた。

 

那須『皆、作戦開始よ』

 

茜・熊谷・志岐『『『了解(です)!』』』

 

 

一方の修も、作戦を通達した。

 

修『作戦を説明するぞ。先ず遊真、お前は村上さんを全力で迎え撃て。こっちのことは考えなくていい。可能な限り、僕が狙撃で援護する』

 

修は東岸に村上が来ることを一番の不安要素と判断して、遊真に村上を止めるように指示した。

 

遊真『了解。助かるぜ、オサム』

 

修『千佳は鈴鳴第一······特にスナイパーの位置を、逐一僕に送ってくれ。あとは、敵から離れて見つからないこと優先。必要だと思ったら撃っていい。宇佐美さんとの判断に委ねる。那須さんの射程には入らないこと』

 

千佳『了解』

 

遊真『オサムはどうする?』

 

修『僕は·····こっちで点を取る』

 

遊真『そうこなくっちゃな』

 

 

 

三上『西岸では早くも会敵!鈴鳴第一・村上隊員を、玉狛第2・空閑隊員が足止めか!一方の東岸では、誰も橋に向かわない。全隊が合流を優先。西岸でのチームメイトを待つ構えか』

 

 

遊真は、橋に向かっていた村上を奇襲した。そして、今対峙している。

 

村上「·····意外だな」

 

遊真「どうもムラカミ先輩。隊長の許可が下りたんでね。ちょっと遊んでってよ」

 

村上「そうか。悪いが、すぐに終わらせる」

 

 

迅『東岸は、雨取隊員の砲撃を警戒していますね。橋を渡るところを砲撃されるのは危ないですから。河岸に向かっている那須隊長も橋を押さえに行くつもりでしょう。射撃で牽制する役ですね』

 

太刀川『こりゃあ、那須隊の作戦が当たりか?橋を渡りきったら爆破用に持ってるであろうメテオラで橋を落とす。くまと日浦はもう渡り始めてるからな』

 

 

熊谷「行くよ茜!三雲君と太一君の狙撃に注意して!」

 

茜「分かりました!」

 

茜と熊谷は、橋を渡り始めた。

 

 

東岸では、修が河岸で那須と会敵した。修は、アステロイドで牽制する。

 

修「·····(那須隊はやっぱりこっちで合流しようとしてたか。鈴鳴にも作戦に加わってもらうか)」

 

那須「(絶対に負けられない······)勝つ······一点でも多く取って·······」

 

那須はバイパーを修に放つ。修は、住宅地を利用して弾から逃げる。修にバイパーを放った直後、那須は太一にイーグレットで狙われたが、回避する。

 

 

太一「うーん、当たらん。ライトニングのがマシか?これ」

 

太一は照準を那須に当て直す。

 

今『太一!不用意に撃っちゃだめよ!』

 

 

志岐『弾道解析。立体図送ります』

 

那須「ありがとう小夜ちゃん」

 

那須は、太一にバイパーを放つ。太一は、なんとか躱しビルから飛び降りるが、バイパーが迫る。そこを、太一と合流しようとしていた来馬のシールドで難を逃れる。

 

来馬「太一大丈夫!?」

 

太一「助かりました。那須先輩怖~」

 

 

三上『東岸では那須隊長のバイパーが縦横無尽!軽はずみな攻撃には手痛い反撃が待っています!』

 

太刀川『玉狛がやられりゃ次は鈴鳴だからな。太一が撃つのはナシじゃないが·····相手が悪い。那須はリアルタイムで弾道引けるからな』

 

 

 

修「·······バイパーか。リアルタイムで弾道を引ける相手が使うと厄介だな。出水さんと違って、部隊の攻撃のメインがバイパーか」

 

修は敢えて分かりやすいように逃げる。千佳から離すためだ。

 

修『千佳。那須さんのメインはバイパーだ。確実に当てられないなら、絶対に撃つな。那須隊がもう少しで合流する。出来るだけ、橋から離れろ。橋は落とすな。向こうが勝手に落としてくれる』

 

千佳『うん、分かった』

 

 

 

三上『西岸では、空閑隊員と村上隊員が斬り結ぶ!村上隊員、やや優勢か!』

 

西岸では、遊真と村上が斬り合う。遊真からは、既にところどころからトリオンが漏れ出している。

 

太刀川『空閑も戦い慣れてはいるが、村上の方が上だな。ただ、空閑がまだ何か隠してる可能性は十分にある。村上も、まだ本格的な攻撃には移ってないな。お互いに様子見って感じだ』

 

三上『では、自分達も東岸に渡ると?』

 

太刀川『そうだろうな。このままだと、那須隊に橋を落とされる。空閑はグラスホッパー持ってるからいいとして、村上は橋を落とされたら対岸に渡れないからな。でも、このままいけば、村上が空閑を落として、那須隊に橋を落とされて、時間切れってとこだな』

 

迅『いや、そうはならないよ』

 

太刀川『何?お前なんか視えてんの?』

 

迅『確かに分は悪いけど、勝負ってのはそこだけじゃ決まらない』

 

 

 

解説が西岸について話している間に、東岸では、那須と鈴鳴が射撃戦を展開していた。

修は、那須を、鈴鳴と挟み込むような位置を陣取る。アステロイドを弾速に全振りし、那須の意識を散らしにかかる。那須としては、前後の相手の背後に回り込み、3人を素早く倒したいところだが、隠れている千佳を警戒するあまり、修には狙いを甘くしている。来馬は、太一と2人分のシールドで、那須の«鳥籠»を防御する。だが、尚もバイパーが襲いかかる。2人は、全体を覆うような半球のシールドで防御する。が、«鳥籠»に見せかけた、一点集中攻撃で、シールドを割られる。

 

三上『«鳥籠»に見せかけた一点集中の両攻撃!』

 

迅『対応が早いですね』

 

太刀川『対策の対策だな』

 

その時、突如として、太一の換装体の頭部が破壊される。

 

 

来馬「太一!?」

 

いつの間にかイーグレットに持ち替えていた修が、シールドが割れた瞬間に、太一を狙撃した。修は、那須にアステロイドを放った後、そこから少しだけ北東に向かって移動した。

 

三上『なんと!三雲隊長、シールドを割られた別役隊員を狙撃!別役隊員、緊急脱出!········その一方、那須隊の熊谷隊員、日浦隊員が東岸に到着。橋をメテオラで破壊しました!』

 

太刀川『マジかよ。あの一瞬でイーグレットに持ち替えて狙撃とか手際良すぎんだろ』

 

迅『去り際に、那須隊長を攻撃するあたり、かなり用意周到ですね』

 

太刀川『来馬はまだ生かしておくのか。でも気を引きすぎんのは逆効果だろ。那須の気が変わったら、スナイパーの援護ないのがバレるぞ』

 

 

那須『2人は、三雲君をマークして。でも、無理はしないように。あまり踏み込みすぎるのは危険だわ』

 

熊谷・茜『『了解!』』

 

 

 

一方の西岸では、遊真は村上相手に劣勢を強いられていた。既に、遊真の右腕が死んでいる。

 

村上は、弧月を横薙ぎに振るう。遊真は屈んで躱す。村上はレイガストで、遊真を攻撃。遊真はスコーピオンで腕をガードしつつ、回転してダメージを殺す。そのまま壁に着地し、モールクローで村上の首を狙う。寸でのところで躱されるが、スコーピオンで攻めかかる。レイガストで尚もガードされるが、スコーピオンを足から出し、横から蹴る。弧月でガードされると、ブランチブレードで膝から突きを繰り出すも、躱される。村上は、避けると同時にスラスターで遊真を弾き飛ばし、遊真が壁に叩きつけられた瞬間に、レイガストで押さえつけ、弧月で斬り掛かる。遊真は、後ろの壁を破壊してぎりぎり躱すも、右腕を切り落とされる。

 

三上『空閑隊員、右腕をやられた!』

 

太刀川『······でも、凌ぎきったな。村上と正面から斬り合って1セットで死なない奴は結構珍しい』

 

三上『空閑隊員の攻撃もなかなかに鋭いものでしたが』

 

太刀川『そうだな。風間さんとか比企谷隊が偶~に使うモールクロー。木虎が最近よく使う脚ブレード。あと、体ん中で枝分かれさせる········そうそう、ブランチブレード。技の冴えも使い所もなかなかいいが、まだ軽いな。それだけじゃ、村上には届かない。あいつの剣には、今までの戦いの経験が全部乗ってるからな。············流石に、村上の勝ちだ』

 

迅『かなり分は悪いね。9ー1 から 8ー2 ってところだね。でもまだ未来は決まってない。あいつの剣にだってちゃんと乗ってるよ。積み上げてきた重みってやつが』

 

 

 

遊真は、«乱反射»を駆使して、村上に襲いかかる。が、村上に読まれ、反撃を食らう。その時、修から通信が入った。

 

修『遊真、村上さんを出来るだけ開けた場所に誘い出してくれ』

 

遊真『了解』

 

修『宇佐美さん、村上さんの位置情報教えて下さい』

 

宇佐美『分かった』

 

 

遊真は、数歩下がる。その後、グラスホッパーで更に後退する。飛び道具のない村上は、遊真との距離を詰めるべく遊真を追った。その遥か東で、修はイーグレットを構えていた。

 

 

三上『三雲隊長、再びイーグレットを構えた!······しかし、何処を狙っているのでしょうか?あの方向には誰もいませんが』

 

迅『いや?一人だけいるよ。

 

 

 

 

·······対岸に』

 

太刀川・三上『『は········!?』』

 

 

迅がそう言うと同時に、修がイーグレットを撃った。イーグレットから放たれた弾は命中し、遊真に誘い出されるしかなかった村上の右足を吹き飛ばした。

熊谷と茜が狙撃を警戒し修に攻撃しないことも、修は分かった上でやっている。

 

修「命中確認(よし·········久しぶりにやったけど腕はそこまで落ちてない)」

 

 

村上「·······!?(狙撃!?何処から!?)」

 

遊真「流石だな、オサム」

 

遊真は、モールクローで気を取られた村上の左足を斬り飛ばす。

 

村上「しまっ·······!」

 

遊真「悪いね、ムラカミ先輩」

 

姿勢を崩し、グラスホッパーで急接近した遊真に首を刎ねられ村上は緊急脱出した。

 

三上『三雲隊長、対岸の村上隊員を狙撃!村上隊員の右足に命中させました!』

 

太刀川『······おいおい、どうなってんだ?あいつの狙撃のセンスは····』

 

迅『いやぁ、あそこまでやったのは俺も始めて見ました。三雲隊長の狙撃の腕前は、八幡とか東さんとかを普通に凌ぎますからね。普段は狙撃自体あまりやらないですが』

 

太刀川『マジで?あいつ射手だろ?』

 

迅『吸収出来るものは何でも吸収した結果、だとか』

 

太刀川『吸収のレベル超えてるだろ····あいつに狙撃教えたの誰だ·····』

 

迅『それは秘密』

 

 

 

修『遊真、こっちに向かってくれ。日浦さんの狙撃には注意しろ』

 

遊真『オーケー。さっきは助かった。あのままだと危なかった』

 

修『その話は後だ。こっちに渡ったら、熊谷さん達を追ってくれ』

 

遊真『了解』

 

遊真は、グラスホッパーで川を渡り始めた。

 

修『千佳、堤防に2発撃て』

 

千佳『了解、修君は大丈夫?』

 

修『ああ。僕もグラスホッパー入れてるから』

 

千佳『雨取了解』

 

千佳は、堤防に2発砲撃し氾濫した川の水を住宅地に引き込んだ。住宅地は、およそ30cmほど冠水した。

 

修『千佳、あとは隠れててくれ。宇佐美さん、全員の位置教えて下さい』

 

宇佐美『日浦ちゃんがバッグワーム使ってるけどいい?』

 

修『大丈夫です』

 

宇佐美『じゃあ、送るね』

 

宇佐美から、修に、茜以外の位置情報が送られる。

 

修『ありがとうございます。来馬さんを倒しにいくので、遊真に熊谷さんの場所を送って下さい。日浦さんはそこからそんな遠くにはいない筈です』

 

宇佐美『了解』

 

修「グラスホッパー」

 

修は、グラスホッパーで那須と射撃戦を展開している来馬にの方へ向かった。

 

 

 

 

志岐『那須先輩!村上先輩が落ちました!』

 

那須『ウソ!?』

 

熊谷『なら空閑君がこっちに来るの?』

 

志岐『多分····今、グラスホッパーで茜と熊谷先輩の方向に向かってます!』

 

那須『くまちゃんは茜ちゃんの方に行って。私は、三雲君と来馬先輩を倒す』

 

 

 

 

修「········コブラ」

 

来馬とあと少しで接触する所まで来た修は、64個に分割したコブラを放った。すぐさまレイガストを再展開し、スラスターで来馬に斬り掛かる。

 

来馬「·····三雲君!?」

 

スラスターで加速したレイガストには対応出来ず、来馬の左腕と左足が切り落とされる。その直後、コブラが来馬に襲いかかる。

 

来馬「······«鳥籠»!?」

 

来馬は、那須のバイパーによる«鳥籠»だと判断し、半球のシールドを張った。しかし、コブラによる«鳥籠»は、来馬のシールドをあっさりと突き破り、来馬を蜂の巣にした。

 

来馬「そんな········」

 

来馬は、そのまま緊急脱出した。修は、那須を撃破すべく、グラスホッパーで那須の方に向かった。

 

 

三上『三雲隊長、«鳥籠»で来馬隊長を撃破!』

 

太刀川『あれ威力おかしくね?三雲が弾道引けるのも驚いたけど』

 

迅『あれは······バイパーではなくコブラでしょう。陽乃さんくらいしか使わないので、分からないのも無理はないですね』

 

 

 

 

志岐『那須先輩!来馬先輩が落ちて、三雲君がそっちに向かってます!』

 

那須『分かったわ。空閑君は?』

 

志岐『あと少しで熊谷先輩と接触します!』

 

茜『今、熊谷先輩と空閑君が戦闘を始めました!』

 

那須『くまちゃん達は空閑君を倒して。私は三雲君を倒す』

 

 

那須「·······来たわね」

 

那須の見上げた先には、屋根の上から見下ろす修がいた。

 

 

 

 

 

その一方、遊真は熊谷に奇襲をかけ、戦闘に入った。

 

遊真「どうもクマガイ先輩。初めまして」

 

熊谷「あんたが空閑遊真ね。熊谷友子よ。よろしくっ!」

 

熊谷は、言うと同時に弧月で斬り掛かる。遊真は、スコーピオンでガードするが、荒船と戦った時のようにスコーピオンと弧月では、耐久性に圧倒的な差があり、スコーピオンにヒビが入る。受け太刀はまずいと判断した遊真は、熊谷が弧月を降ると同時にグラスホッパーで後ろに避けた。が、グラスホッパーで下がった瞬間に右足の膝下を飛ばされた。茜が狙撃したのだ。

遊真は熊谷と戦うのを辞め、グラスホッパーで茜を追う。

 

熊谷「待て!······クッ!(この水じゃ追いつけない·····)」

 

空閑を追おうとした熊谷だったが、冠水していたため、グラスホッパーを持つ遊真に追いつけないと判断し、茜に緊急脱出するよう促した。

 

熊谷『茜!緊急脱出しろ!』

 

しかし、茜は緊急脱出せず、遊真をライトニングで狙撃する。が、既に居場所が割れているので、遊真にシールドで防御される。

 

 

迅『緊急脱出しない方を選んだか······』

 

三上『確かに······緊急脱出を選んでもいい場面です。自発的に離脱すれば、敵に点を与えず撤退が可能。ただし、ランク戦では「周囲半径60m以内に敵の隊員がいない場合に限る」という条件があります』

 

遊真は、シールドを展開したまま茜に近づく。その時、茜は道の端に落ちていたキューブを撃つ。キューブは、置き弾のメテオラで、爆発が起こる。

 

三上『メテオラを仕掛けていた!?』

 

太刀川『橋壊したやつだな』

 

 

爆発の煙の中に影が写る。

 

茜「······この距離なら···外さない!」

 

しかし、爆発から現れたのは遊真が自ら切り落とした右足のみで、遊真はいない。茜の側方から現れた遊真をアイビスで狙い撃つ茜だが、遊真に躱される。遊真は、グラスホッパーで加速しつつ突撃し、茜をすれ違いざまに袈裟斬りにして、緊急脱出させた。

熊谷は、茜が緊急脱出したのを確認すると、那須の援護に向かった。

 

三上『日浦隊員 緊急脱出!空閑隊員、村上隊員を破った勢いが止まらない!』

 

遊真『栞ちゃん、オサムはどう?』

 

宇佐美『かなり押してるね。もう玲ちゃん·····那須隊の隊長は右腕がないし、足ももう殆ど機能してない。あ、くまちゃんが玲ちゃんの方に向かったよ。修君の援護を』

 

遊真『了解』

 

遊真は、切り落とした右足をスコーピオンで補って、サブのグラスホッパーで熊谷を追った。

 

 

 

志岐『空閑君がそっちに向かいました······』

 

那須『そう·····』

 

修「余所見を!」

 

修のスラスターで加速したレイガストに、那須は右足を斬られる。冠水したなかで、那須の機動力は完全に殺されていた。

 

那須「クッ·······」

 

熊谷「玲!」

 

那須と合流していた熊谷が斬り掛かるが、あっさり避けられる。修は、レイガストだけで攻めていた。自分の足の裏にシールドを張ってそこを足場にすることで、自分は水も関係なく攻められる。2人の機動力を完全に殺すことで、2人を圧倒していた。

 

熊谷「分が悪すぎるね。空閑君もこっちに向かってる」

 

那須「それでも·····茜ちゃんのためにも諦めるわけにはいかない!!」

 

修「·········(合格、かな?)」

 

その時、遊真が再び熊谷に奇襲をかける。水攻めで対応出来なかった熊谷は左腕を斬られる。遊真は、熊谷を那須から引き剥がす。

 

那須「くまちゃん!」

 

援護に向かおうとした那須を修が阻む。

 

 

太刀川『やばいな。くまの基本スタイルは弧月両手持ち+シールド······片手持ちになったら、もう空閑はもう右腕右足がないとはいえどきついぞ。三雲はここまで見越して水攻めをしたのか?』

 

その時、熊谷がメテオラを使った。遊真はシールドで防御する。射手用のトリガーをほぼ初めて使う熊谷は、弾の性能の調節をしなかったため、遊真はぎりぎり耐えることが出来ている。

 

三上『メテオラ!日浦隊員に続いて熊谷隊員もメテオラで反撃!』

 

太刀川『おぉ~』

 

三上『この展開はどうでしょう?迅さん』

 

迅『熊谷隊員いいですね。変化というのは大事です。今の熊谷隊員では、普通の戦いが出来ないので片手片足の空閑隊員とも満足に戦えないでしょう。·····それに、不利になっても崩れない気迫がいい。今日の那須隊には、いつもより更に気持ちがこもっていますね』

 

三上『なるほど。太刀川さんはどう見ますか?』

 

太刀川『······三上には悪いが····気持ちの強さは関係ないでしょ。勝負を決めるのは、戦力・戦術、あとは運だな』

 

三上『そうでしょうか?気持ちが人を強くすることもあると思いますが······』

 

太刀川『多少はな。けど、それだけじゃ、戦力差はひっくり返ったりはしない。気持ちでどうにか出来るのは実力が近い相手だけだ。もし気持ちで勝ち負けが左右されるってんなら、そもそも俺はA級に上がれてない』

 

迅『うわぁ·····嫌なA級······』

 

太刀川『ただ·····展開自体は面白いな。メテオラで片腕を上手くカバーしてる。普通の空閑ならこれくらいなんとかなるかもしんないが、今の空閑にはかなり効果的だな。くまのやつ思いのほか様になってる』

 

 

熊谷「(射撃トリガーなんてほぼ初めて使うけど、玲の戦い方をイメージしたら上手く体が動く気がする。空閑君のシールドが割れるまでメテオラを叩き込む!)」

 

遊真「(······まずいな。もうシールドがもたない)」

 

メテオラの爆撃に、遊真のシールドのヒビはどんどん大きくなる。そして、遊真のシールドが割れる。

遊真は、相討ち覚悟でグラスホッパーで加速して突っ込む。熊谷の狙いの定めが甘いため、被弾自体は少ないものの、どんどん換装体は破壊される。残っていた左足も完全になくなり、腹にも穴が空いて、もう緊急脱出は免れない。最後に残ったトリオンを振り絞って、左腕を突き出し、スコーピオンを出して限界まで伸ばし、熊谷の胸を貫く。貫いた瞬間に遊真は、緊急脱出した。

 

熊谷「ごめん、玲······」

 

直後、熊谷も緊急脱出する。

 

三上『熊谷隊員、空閑隊員、相討ち!勝負は、三雲隊長と雨取隊員、那須隊長に委ねられました!』

 

太刀川『·······粘って粘っていい勝負だったな。勘違いすんなよ?俺は気合いの乗ったアツい勝負は大好物だ。·······けど、気持ちの強さで勝負が決まるって言っちまったら、じゃあ、負けた方の気持ちはショボかったのか?って話になるだろ』

 

 

 

修「バイパー」

 

修は、シールドを足場にしたまま、125個のバイパーで、«鳥籠»で攻撃する。

 

那須「«鳥籠»·····!」

 

シールドで防ぎきれず、那須はどんどん削られる。が、那須の気迫は消えなかった。

 

修「······合格です。碧也さんと葵さんには、そう伝えましょう」

 

那須「········!?」

 

修はそう言うと同時に、シールドを解除しアステロイドを威力重視で125個に分割し放つ。那須は、耐えきれず蜂の巣にされ緊急脱出した。

 

 

 

 

三上『那須隊長 緊急脱出!そして試合終了!そして、玉狛第2には生存点の2ポイントが加算されます。

最終スコア 8対1対0 玉狛第2の勝利です!』

 

迅『今回の那須隊は特に気合いがこもっていましたね。1点を取って空閑隊員と相討ちになった熊谷隊員からよく見られます』

 

太刀川『今回、三雲は敢えて那須隊の策に乗って行動したな。空閑が村上倒したのも、最初っから狙い通りだろ。·····なるほど。こいつはかなりの曲者だな』

 

 

 

那須隊作戦室。

 

茜「那須先輩!」

 

那須「ごめん。全く歯が立たなかった」

 

志岐「お疲れ様でした」

 

熊谷「大丈夫?」

 

那須「なんとか····」

 

茜「私の方こそ、役立たずで······どぅわあぁ〜〜!」

 

志岐「落ち着け〜茜。熊谷先輩も凄いです。あそこで相討ちに持ち込めたんですから」

 

熊谷「ぎりぎりね·····」

 

那須「·····合格だって」

 

熊谷「何が?」

 

那須「碧也さんと葵さんにそう伝えるって、三雲君が」

 

茜「ヒック·····どぅわああぁ~〜~!!」

 

熊谷「じゃあ何?あいつが茜のお父さんの知り合いなの?」

 

那須「そうみたいね。三雲君って何者なのかしら?」

 

 

 

鈴鳴第一作戦室。

 

来馬「ごめん。勝てなかった」

 

村上「いえ。駆けつけられなかった俺のせいです」

 

来馬「綱だって負ける時ぐらいあるさ。あそこで狙撃されるなんて普通思わないよ。でも······次は勝つ、だろう?」

 

村上「はい!」

 

 

 

玉狛第2作戦室。

 

遊真「ふい〜手強かったな。オサム、狙撃助かった」

 

修「いや、それで遊真が村上さんに勝てたんなら十分だな」

 

宇佐美「皆お疲れ様~」

 

遊真「最後メテオラ使われるなんて思わなかった。危なかったな」

 

修「相討ちなんだから誇っていい。3点お疲れ様」

 

遊真「オサムもお疲れ様」

 

修と遊真は、軽く拳をぶつけ合った。

 

 

 

三上『暴風雨の河川敷という特殊なステージ。それを逆手に取った玉狛第2の勝利となったこの試合。改めて振り返ってみて如何でしたか?』

 

太刀川『あんま予想当たんなかったな。やっぱ東さんみたいにはいかない』

 

三上『もうちょっと真面目に』

 

太刀川『マジメに?OK。一番でかいのは玉狛が那須隊の作戦に乗ったとこだな。三雲は那須隊が橋落とすのなんかお見通しだったんだろ。やろうと思えば、転送が終わった直後に橋落とすことも出来た筈だ』

 

三上『東岸に到着した那須隊の2人が橋を落としたところが印象的ではありましたが、西岸の方からお願いします』

 

迅『西岸は、空閑隊員と村上隊員の一騎打ちになりましたね。空閑隊員が村上隊員を止めることで、仮に空閑隊員が落ちても、那須隊が橋を落として村上隊員を向こうに残せる。スラスターで渡ることも出来なくはないとは思いますが、危険です。三雲隊長の負担が増えることにはなりますが、悪くない作戦だと思います』

 

三上『エースに「任せた」玉狛と、エースを「待とうとした」鈴鳴。隊長のとった作戦の差が最終的に、勝敗に結びついたということでしょうか?』

 

太刀川『それは結果論すぎるだろ。村上が合流してりゃ、鈴鳴がポイント差で勝っただろ。どっちかって言えば、勝てる相手に、負けた村上が悪い。狙撃で意識を散らしすぎだ。来馬が合流しようとするのは、勝算があるからだ。結果だけ見て戦術を語るのは意味無いぞ』

 

三上『なるほど。確かにそうですね』

 

迅「·····三上ちゃんはそんなの分かってて、解説のために敢えて言ってるんだよ」

 

太刀川「な!?これ俺が恥ずかしいやつか?」

 

三上「(迅さん言わなくていいのに····)」///

 

 

三上『さ、さて、東岸の銃手・射手対決ですが·····』

 

太刀川『こっちはもっと単純。全部三雲の掌の上だったってわけだ。太一を倒して、来馬と那須をぶつけて消耗させる。自分は、いつでも狙いにいける位置に陣取って、精神的にも消耗させる。マジでいやらしいな』

 

三上『雨と風で長距離を封じられた雨取隊員を、地形への砲撃に絞ったことも印象的でした。おそらく、雨取隊員は他の敵の隊員の射程には一度も入っていない筈です』

 

太刀川『隊長として、「勝ちの画を描く力」が3人の中で一番高かったってとこか』

 

迅『那須隊長はリーダー兼エースだから、負担がどうしても大きくなっちゃうんですよね。木虎を新エースに据えて戦績が上がった嵐山隊みたいに、那須隊長の他に点取り屋がいれば、もっと変わると思いますよ。攻撃力で言えば、那須隊のアドリブのメテオラがいい感じでしたね。熊谷隊員はメテオラがなければ、空閑隊員と相討ちには持ち込めなかったでしょう。しっかり磨いてものにすれば、いい武器になりそうですね』

 

太刀川『逆に言えば、鈴鳴は、村上の負担が大きすぎる。村上が来馬と太一の面倒を見なくてよくなるなら、鈴鳴はもっと上に上がれるだろ』

 

三上『今回敗れた2チームですが、敗北に喫したことで、逆に進化の兆しを見ることが出来たと言えます。·····そして、8点を取った玉狛第2は上位グループ入りがほぼ確定したことでしょう。A級予備軍とも称されるB級上位部隊にどう挑むか。次の試合にも期待がかかりますね。以上をもって、B級ランク戦 ROUND3昼の部を終了します。皆さん、お疲れ様でした。太刀川さん、迅さん、解説ありがとうございました』

 

迅・太刀川『『ありがとうございました~』』

 

 

 

 

 

 

出水「·······いや〜なかなか面白かったっすね。太刀川さん割とちゃんとやってたし。メガネ君戦い方がいやらしいな~。あ、玉狛のスナイパーの子見ました?黒トリガーレベルですよ」

 

二宮「·········メガネと白い髪の奴が強いことは分かった。あいつらはA級でもトップクラスだ。それは認める。だが、メガネの奴はその気になれば、開始早々全員を狙撃で落とせた筈だ。何故そうしない?······太刀川の野郎もぬるい解説しやがって。出水、お前やたら玉狛を評価してるが、玉狛が太刀川隊に勝てるか?」

 

出水「う〜ん·····メガネ君単体なら俺達の方が不利なまでありますけど。·······隊としてはないっすね」

 

二宮「だろうな。つまりはそういうことだ」

 

出水「でも、雨取ちゃんの火力も侮れないっすよ?その気になれば、狙撃以外も出来るんすから」

 

二宮「いくら威力があっても、やることは土木工事だけだ。今日の試合ではっきり分かった。あの大砲は·······

 

 

 

 

········人が撃てない」

 

 

 

 

 



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37話:彼等は、"頼み事"を全うする。

ROUND3終了後。玉狛第2作戦室。

 

喜びの声をあげていた玉狛第2の面々。そこで、隊室のドアが開いた。

 

八幡「う~っす」

 

修「あ、兄さん」

 

遊真「ハチマン先輩どうしたの?」

 

八幡「あ〜······悪いんだが、修借りるわ」

 

修「あ、もう時間?」

 

八幡「ん?ああ。陽乃が外で待ってっから早くしろ~」

 

修「分かった。ということで、すいません先に失礼します。何かあったら、碧也さんの所に行った。と、言ってないおいて下さい」

 

宇佐美「いいよ〜·····碧也さんって誰?」

 

修「あ、親戚です。·····僕は失礼します。あ、そんなに時間かかるわけではないんで、後で玉狛に寄ります」

 

遊真「じゃな~」

 

修は、八幡と、外で待っていた陽乃と碧也の家に向かった。

 

 

 

那須「失礼します。三雲君はいますか?」

 

修達が去った十数分後、那須隊は玉狛第2の作戦室を訪れていた。

 

宇佐美「あ、玲ちゃん?ごめんね~修君もういないの」

 

遊真「確か······ヘキヤさん?の所に行くって言ってたよ」

 

那須「ありがとう。用件はそれだけなの。栞ちゃん、今度お茶しましょう」

 

宇佐美「いいね〜!あ、玲ちゃんまたね〜」

 

 

 

 

 

日浦邸。

 

修「お邪魔します」

 

八幡「お邪魔します」

 

陽乃「お邪魔しま〜す」

 

碧也「········よく来たな。上がってくれ」

 

修達3人は、日浦邸に来ていた。陽乃が来た理由は、ただの付き添いというのが、正直なところである。

 

碧也「······早速本題に入るんだが······ランク戦の映像を送ってくれて助かった。修は合格だと判断したんだろ?」

 

修「····そうですね。あの気迫があるなら、那須隊はもっと上に上がって行けるでしょう」

 

尚、ランク戦の映像は、八幡が終了直後に碧也に送っていた。

 

八幡「それで、碧也さんは娘さんをどうなさるんですか?こっちとしては、ボーダーに残って貰った方が都合がいいんですけど」

 

碧也「そうだな·······現段階なら、茜はボーダーにいて問題ないだろう。そこで、だ。お前達の一つ頼みがある」

 

修「またですか······?」

 

碧也「ああ··········

 

 

 

 

 

 

というわけなんだが、頼めるか?」

 

修「分かりました。そういうことなら、受けます」

 

陽乃「大丈夫?」

 

修「大丈夫です。桐絵は·······当初のように遊真と模擬戦させておけば、時間を作ることは可能です(本当はちゃんと教えたいけど)。今なら加古隊もいますし」

 

陽乃「あ、なるほど」

 

そこで、那須隊と茜が帰って来た。志岐は、他に任せて家に帰った。

 

茜「ただいま~!」

 

那須・熊谷「「お邪魔します」」

 

茜「·····って、何で八幡先輩いるんですか!?陽乃さんに······三雲君まで?」

 

修「お邪魔してます」

 

八幡「知りたいが一人だけなんて誰も言ってないだろ。·····あ〜突然で悪いんだが、今日からお前ら俺達の弟子な」

 

熊谷「は?」

 

八幡「あ、那須の師匠は修な。この中で修が一番バイパー使うのが上手いから。日浦は今まで通り奈良坂に狙撃を習うと同時に、陽乃が近接戦闘を教える」

 

陽乃「よろしく~」

 

八幡「で、熊谷には、弧月での立ち回りと、射手用トリガーの扱いを俺達3人で教える」

 

那須「ちょ、ちょっと、いきなりどうしたの?ていうか、師匠!?」

 

八幡「まぁ事情を説明するから」

 

 

 

 

俺達は、日浦達に説明を始めた。

 

八幡「先ず最初に言っておく。日浦茜、お前は「神」だ」

 

茜「·····神?」

 

熊谷「·········は?」

 

八幡「ああ。向こうの世界······俗に言う近界にたくさんの国があるのは知ってるよな?」

 

茜「何となくは聞いてますけど·······」

 

八幡「お前は、その中の国の一つ、アフトクラトルの従属国の一つでもあるロドクルーンの母トリガーの適合候補者だ」

 

那須「母トリガーって言うのは?」

 

修「母トリガー····近界の国は、国そのものが巨大なトリガーなんです。先の侵攻でアフトクラトルが攻めてきた理由が母トリガーなんです。母トリガーは数百年に一回死んで、新たな適合者を見つけられないと国そのものが死ぬんです。超巨大な黒トリガーだとでも思っていただけると」

 

母トリガーの適合候補者は、「神」と呼ばれている。日浦が神だって分かったのは、碧也さん達が凄いんだが。

 

熊谷「······なるほど」

 

八幡「······で、ロドクルーンっていう国が、今こっちに接近している。日浦の存在が向こうにバレてるかってのは把握してないが、万に一つが起こらないとも限らないからな」

 

那須「それで突然師匠とか言い出したのね」

 

八幡「ああ。で、ここまでで何か質問は?」

 

茜「あの〜」オソルオソル

 

日浦が恐る恐る手を挙げた。

 

八幡「ん?」

 

茜「お父さんもお母さんもボーダーじゃないけど話してて大丈夫何ですか?」

 

そうか。碧也さん達は日浦の中では一般人か。何も聞かされてないのか。

 

八幡「あ、そこからか。言って大丈夫ですか?」

 

碧也「ああ。問題ない」

 

八幡「そっすか。問題ない理由。それは······日浦碧也と日浦葵が元々ロドクルーンの国民だからだ。こっちで言う近界民ってところか?」

 

茜「え?····う、嘘········じゃあ、私、は、近界民?」

 

日浦は、自分の両親が近界民だと知って、取り乱し始めた。

 

那須「あ、茜ちゃん落ち着いて·····」

 

八幡「落ち着け。せいぜい·····日本人か、アメリカ人かの違い程度でしかない」

 

熊谷「しかないって·······」

 

八幡「·····そもそも人型近界民ってのは、城戸さんが差別化するために作った造語でしかない。向こうの世界に住むのも俺達と何一つ変わらない人間だ。別段考えるような違いでもない」

 

向こうがトリガーの文明だってことくらいか?大きな違いは。

 

茜「何で·····そう言えるんですか?」

 

八幡「向こうの世界で嫌ってほど見てきたからな。·····話がズレた。で、何で俺達が2人が近界民かを知ってるかってのは、俺達がボーダーを設立する際に接触した人物の内の一人だからだ」

 

那須「まるで比企谷君達が設立したみたいな言い方ね」

 

八幡「いや、俺達3人は、ボーダー設立時からのメンバーだからな。修だけ一回抜けたけど」

 

熊谷「何で三雲は抜けたの?」

 

修「それは·······家庭の事情というやつです」

 

熊谷「·······ふ~ん」

 

熊谷は修の言い方に疑問をもってんな。

 

修「(·······流石に警戒されるか)」

 

八幡「で、日浦が母トリガーの適合者で、攫われるのを阻止したいってのが、俺達の話だ」

 

那須「じゃあ聞くけど、何で私の師匠が三雲君なの?」

 

八幡「俺が知る中で、修よりバイパーを上手く使える奴がいないからだ。修が日浦に狙撃教えるってのも考えたんだが実力差が離れすぎてるからな」

 

那須「でも、バイパーが出来たのってボーダーが今の体制になる直前に出来たって聞いたことがあるけど、三雲君が何でそこまで上手く扱えるの?」

 

八幡「あ〜これは現ボーダーにいる奴は誰一人として知らないんだが、バイパーってのはもともと修のトリガーの装備をグレードダウンしたものなんだよ。そのまま使おうとしたら修以外の奴が誰も使えなくってな」

 

本当にあん時はガチでびっくりした。弟が使ってたのがこんな扱いに困るレベルの色物だとは思ってなかった。バイパーまでグレードダウンしたら、最初は、威力が今の二割にも達してなかったからな······開発室ホント様々だわ。

 

那須「三雲君のトリガーって?」

 

八幡「クオリア······修の黒トリガーだ」

 

「「「黒トリガー!?」」」

 

八幡「黒トリガーの装備を、通常トリガーで使えるわけがなかっただけだがな」

 

修「まだ僕も完全に扱えるわけじゃないんですけどね」

 

八幡「というわけで頑張れ。あ、お前ら暫く玉狛預かりになったからな。これ辞令だから。ちゃんと上層部に話を通してある」

 

那須「いや、突然言われても······」

 

陽乃「鍛えるなら、玉狛の方が楽なのよ。知らないと思うけど、玉狛には空間を作るトリガーがあるから、スペースをいつでも確保出来るの」

 

熊谷「空間を作るトリガー!?」

 

空間に干渉するって凄ぇよな。門のシステムとかは未だによく分からん。スピラスキアってかなりおかしな性能してんな。

 

修「アフトクラトルにワープ出来る黒トリガー使いがいたんで、そこまで不思議な話じゃないですよ」

 

熊谷「そりゃ、そうかもしんないけど······」

 

碧也「今日からもう玉狛に行くのか?」

 

八幡「そうですね。顔合わせは早い方がいいでしょう」

 

八幡がそう言うと、碧也が立ち上がり、頭を下げる。葵も続いて頭を下げた。

 

碧也「頼む。茜を強くしてやってくれ」

 

葵「お願いします」

 

八幡「分かりました。精一杯やらせていただきます」

 

碧也「済まない、恩に着る」

 

葵「ありがとう皆」

 

俺達は、那須達とともに日浦邸を後にし玉狛に向かった。

 

 

 

 

玉狛支部。

 

宇佐美「あ、修君おかえり~。ハチ君と陽乃さんも来たんだね~·····あれ?何で玲ちゃん達いるの?」

 

八幡「よぉ宇佐美。那須隊は暫く玉狛預かりになったからな。俺達の弟子なった流れで(·······何で二宮さんが?)」

 

玉狛に戻って来て、八幡は いち早くサイドエフェクトで二宮の来訪を察知した。

 

宇佐美「········また弟子増えたんだね~」

 

八幡「そういうこと」

 

宇佐美「·····あ、修君にお客さんが来てるよ。今、千佳ちゃんと遊真君と、2階の応接室で待ってる」

 

修「分かりました(きっと未来さんについてだろうな·······千佳もってことは、麟児さんまで辿り着いたか)。じゃ、兄さんは先行ってて」

 

八幡「おお分かった」

 

修は、2階の応接室に向かった。

 

那須「さっき三雲君が比企谷君を〈兄さん〉って言ってたけど······」

 

宇佐美「修君はハチ君の弟だよ〜」

 

那須「え!?」

 

八幡「何故お前が言う······」

 

宇佐美「こういうのは驚かしたくなるでしょ!」

 

宇佐美は、何故か嬉々として言う。

 

八幡「すげぇ理論······じゃ、俺林藤さんとこ行ってくるから。陽乃案内したげて」

 

陽乃「分かった〜、八幡、林藤さんに説明してないんでしょ」

 

八幡「あ、バレた?」

 

陽乃「八幡は何かはぐらかしてる時ポケットに左手を突っ込んだまま出さないからね。ずっと」

 

八幡「マジか、じゃあ案内しといて」

 

陽乃「オッケー、着いてきて」

 

八幡は支部長室、陽乃達は訓練室に向かった。

 

 

 

玉狛支部、応接室。

 

修は扉を開けて中に入る。中には、千佳と遊真、そして、今回の客である二宮隊隊長・二宮匡貴がいた。

 

千佳「·······修君!」

 

修「二宮隊隊長の二宮匡貴さんですね?」

 

二宮「話が早い。突っ立ってないで座れよ、三雲」

 

遊真「ニノミヤ隊?」

 

修「次、僕達が当たるかもしれない部隊だ」

 

二宮「······長居するつもりはない。手短に用件を言おう。·······雨取麟児。この男の名前を知ってるな?」

 

千佳「!·······私の、兄です」

 

修「家庭教師をしてもらっていました。それが何か?」

 

二宮「········なら、この女に見覚えは?」

 

千佳「いえ·····知りません·····」

 

修「元二宮隊スナイパー 鳩原未来。あなたの元部下ですね。名目上、重要規律違反でボーダーを追われた」

 

二宮は修の発言に驚く。

 

二宮「!·····貴様····どこまで知っている!」

 

修「彼女が、トリガーを民間人に横流しして、そのまま門の向こうに行方を晦ました·····ってところまでですかね」

 

千佳「······修君····?」

 

二宮「チッ······そこまで知っているなら話が早い。この冴えない作り笑いが顔に張り付いた女の 協力者 について調べている。雨取麟児はその候補者の一人だ」

 

修「(······冴えない作り笑いが顔に張り付いた女、か。酷い言われようだな未来さん·····)」

 

遊真「·····もしチカの兄さんがその 協力者 だったら、ニノミヤさんはどうするの?」

 

二宮「別にどうもしない。今更捕まえようがないからな。これは、あくまで俺個人で調べているだけだ。·····俺にはこの馬鹿がそんな大それたことをしでかすとは思えない。唆した黒幕を知りたいだけだ」

 

修「······そうですか。なら、僕はこれで失礼します」

 

二宮「何?」

 

千佳「修君?」

 

遊真「オサム?」

 

修「·········一つ言っておくとすれば、そもそも黒幕はいません」

 

二宮「何故そう言いきれる!」

 

修は扉を開けるが、そこで立ち止まる。

 

修「さあどうでしょうね。いずれ帰って来るかもしれない未来さんにでも聞いてみて下さい。僕は那須さんに特訓をつけることになったので、これで失礼します」

 

修は、開けた扉から出て行った。

 

 

二宮「·······邪魔したな」

 

遊真「あれ?もう帰るの?」

 

二宮「もうここにいても情報は得られんだろう。じゃあな」

 

二宮もそのまま出て行った。

 

 

 

那須「?·······二宮さんどうかしましたか?」

 

二宮「いや、何でもない。じゃあな」

 

 

 

支部長室。

 

八幡「失礼しま〜す」

 

林藤「お、八幡か。聞いたぞ。那須隊が玉狛預かりになったって。俺を通してくれよ~?」

 

八幡「あ、すんません」

 

林藤「まあいいや。それで、何でこうなったんだ?」

 

八幡「あ、それはですね。

 

 

 

··················というわけです·」

 

八幡は、碧也や葵達のことは最小限に留めて説明した。

 

林藤「話は分かった。·····次からは俺にも話を通してくれよ」

 

八幡「それは本当にすいません」

 

 

 

 

 

 

訓練室。

 

那須「川の上にあるのに地下が·····」

 

陽乃「これもトリガーだよ。今、千佳ちゃんとレイジさんがスナイパーの特訓してるから、こっちは殺風景なんだけどね」

 

茜「私は何の特訓をすれば·····」

 

陽乃「さっき八幡が言ってたように、接近戦をやるよ。スナイパーの特訓は本部で奈良坂君とやってね。スナイパーは接近されたら終わりなのは分かってると思うけど、ROUND3で茜ちゃんは、遊真君に近寄られてあっさりやられちゃったでしょ?」

 

茜「はい······」

 

陽乃「そこを私がメインで補っていくよ。大丈夫。う~んそうだね〜·······10本勝負で風間さんから3本取れるくらいには強くしてあげる!」

 

茜「そんなにですか!?」

 

陽乃「鍛えておいて損はないよ」

 

熊谷「なら私は?」

 

陽乃「そうだね。オールラウンダーの戦い方を教えようかな。くまちゃんは片手になると、接近戦が一気に不利になっちゃうから。スコーピオンも教えようか?」

 

熊谷「······お願いします」

 

陽乃「玲ちゃんだけど、これは修君次第だね。頑張ってね〜、修君はバイパーを砂粒サイズまで分割することもあるから」

 

那須「砂粒ですか!?」

 

陽乃「風間さんと模擬戦した時だったかな〜。あれは凄かったね~」

 

熊谷「三雲って何者·····?」

 

そこで、訓練室のドアが開き、修・遊真・双葉の3人が入ってきた。

 

修「義姉さん、その話はしないように言ったじゃないか」

 

遊真「あれ?ナス隊の人だ。何で?」

 

双葉「どうしたんですか?」

 

そこに、八幡も来た。

 

八幡「·······その3人はわけあって俺達の弟子になった。お前らの妹弟子ってとこだ。前から教えてはいたけど」

 

遊真「なるほど」

 

双葉「私が言うのもなんですけど、急ですね」

 

八幡「まぁ事情があるってことは理解しといてくれ」

 

双葉「分かりました」

 

陽乃「じゃあ、早速始めよ〜!」

 

陽乃が手を叩きながら言う。その後、修は那須と、陽乃は茜と、違う訓練室に行った。そのまま残ったのは、八幡、遊真、双葉、熊谷である。

 

遊真「俺達は残っていいの?」

 

八幡「ん?ああ。お前らにも協力してもらうからな」

 

双葉「具体的に何をすれば?」

 

八幡「簡単だ。熊谷は、攻撃手としての立ち回りの見直し······それと、空閑と相打ちになった時みたいに、射手用トリガーと攻撃手用トリガーの併用を教える。お前らは、熊谷をボコせ。熊谷には 2対1 で戦ってもらう」

 

熊谷「はぁ!?いきなり!?」

 

八幡「あ、黒江は韋駄天、空閑はグラスホッパーは使わないでくれ。勝負にならないからな」

 

遊真「いいよ」

 

双葉「分かりました」

 

八幡「というわけだ。宇佐美~」

 

宇佐美『りょ〜か~い』

 

八幡「仮想戦闘モードにしたから、とりあえず10本勝負だ。熊谷頑張れ。······よし、勝負開始」

 

八幡が言うとともに、熊谷に遊真と双葉が攻撃を仕掛けた。

 

熊谷「え?ちょっと待って!?」

 

 

 

 

 

修「那須さんはバイパーの弾道を何個までリアルタイムで引けますか?」

 

修も、那須と訓練を始めていた。

 

那須「64個、かしら」

 

修「分かりました······それだけ引けるなら、個人の練習でももっと増やしていけます」

 

那須「そうなの?」

 

修「はい。あ、合成弾は作れますか?」

 

那須「作れるけど·····まだ時間がかかるわね」

 

修「なるほど。なら、合成弾の合成の練習をしましょう。現段階の目標は········太刀川隊の出水さんと同じくらいで、2秒切るくらいですね」

 

那須「三雲君はどれくらいかかるの?」

 

修「そうですね····ちょっとやってみます」

 

修は、アステロイドとバイパーを展開。展開と同時にコブラに合成した。

 

那須「え?いつ合成したの?」

 

修「展開と同時です。仕組みさえ理解出来れば、すぐに時間を縮められますよ」

 

那須「仕組み?」

 

修「······僕がボーダー抜ける前なんですけど、射手用トリガーの弾丸を合成して、片方の弾丸にもう片方の弾丸の効果を付加させるプログラムを仕込んでおいたんですよ。とりあえず説明します」

 

那須「·········(これは、想像以上ね······)」

 

 

 

 

 

 

陽乃「スコーピオンの扱いは分かった?」

 

茜「はい、一応·····」

 

陽乃は、茜にスコーピオンを教えていた。近寄られた時、弧月やレイガストでは、使い慣れない茜では対処が遅れると考え、奇襲用とも言われるほど軽く、形も自由自在で、体の何処からでも出し入れが可能なスコーピオンが一番いいと判断した結果だった。ただ、一つ言うとすれば、サイドエフェクト頼りで戦闘を行うこともある陽乃に、茜はついていけないと早々思ってしまっていた。

 

陽乃「ついていけないと思ってるでしょ~?」

 

茜「!!?」

 

陽乃「そこはゆっくりといこ?大丈夫。ちゃんと教えてあげるわ。打倒風間さんよ!」

 

茜「ハードルが上がってる!?」

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

熊谷「疲れた·····」

 

茜「私も疲れました······」

 

遊真「クマガイ先輩も最初よりだいぶ動きがよくなったよ。··················そう言えば、ニノミヤさん昔の仲間をボロクソに言ってたな」

 

修達は、レイジの作った夕飯にあやかっていた。

修達の他に、茜と熊谷もいる。レプリカは指輪の中である。那須は、体力的な問題であまり長くいられなかった。八幡と陽乃は、日が暮れ始めた頃に祐夜と柚稀菜を愛でるべく、残っていた熊谷と茜の訓練を修に押し付けて帰った。尚、帰った2人が先ず目にしたのは、祐夜と柚稀菜(主に柚稀菜)に振り回されて、家の中なのに汗だくで、くたくたになっていた小町である。

 

レイジ「二宮隊は鳩原の隊務規定違反の責任を取ってB級に降格させられたことになってるからな」

 

遊真「なってる····?」

 

レイジ「実際には、鳩原は 近界 に密航した責任を取ったってことだ」

 

遊真「レイジさん詳しいね」

 

レイジ「俺も鳩原も、東さんの弟子だからな。妹弟子だ。上層部以外だと、比企谷隊、俺、東さん、二宮隊、あとは、追手だった風間隊だけがこの件を知ってる」

 

熊谷「それ、私達がいて言ってもいいんですか?」

 

レイジ「あ~····他所では喋るなよ。鳩原のやったことが広まれば、同じようなことしでかす人間が出てくるからな」

 

日浦「は、はい」

 

熊谷「わ、分かりました」

 

レイジ「そう言えば、修は何て言ったんだ?」

 

修「いえ、帰って来た未来さんに直接聞いてくださいとしか、言ってませんね」

 

レイジ「·······お前、全部知ってたな」

 

修「そうですね。全部」

 

千佳「········修君。兄さんは、何で密航したの?」

 

修「そうだな·······一言で言っちゃえば千佳のため、かな。僕や兄さんにも一因があるとも言えるけど」

 

実際、麟児が密航したのは、千佳のようにトリオン能力が桁違いに多い者のトリオン反応を、一時的にステルス状態にするための機器を作る研究を、近界にしに行ったためである。

 

千佳「私の、ため····?」

 

修「······僕や千佳みたいに、トリオン能力が高くて近界民に狙われるやすい人間をステルスにする研究をするためだ。向こうで、その機器を作ってるよ。千佳が心配しなくとも、すぐに帰ってくる。麟児さんは僕よりずっと強いから」

 

遊真「オサムがそこまで言うのか。戦ってみたいな」

 

修「本当に何も出来ないまま終わるぞ」

 

遊真「····マジか」

 

修「あ、未来さんは僕のスナイパーの師匠ですよ。密航したのは、麟児さんについて行っただけですから、そのうち帰って来るんじゃないですかね?」

 

レイジ「どうりで······修はスナイパーなんて、全くやってなかったのにあれだけの技術があったわけだ。東さんの弟子になる必要ないだろ」

 

修「まぁ、ボーダーのトリガーなら東さんの方が慣れてるって思ったんじゃないんですかね」

 

レイジ「そういうものか?」

 

修「そういうものなんじゃないですかね」

 

茜・熊谷「「(会話についていけない········)」」

 

そこで、書類整理をしていた宇佐美が自室のある2階から降りてきた。

 

宇佐美「レイジさんのご飯だ〜!あ、修君達の次の相手が決まったよ!」

 

修「何処ですか?」

 

宇佐美「1位二宮隊、2位影浦隊、7位東隊、そして我らが玉狛第2!

四つ巴だよ!」

 

遊真「お、ニノミヤ隊か。いきなりか」

 

修「いきなり2トップ部隊か······」

 

 

 

 

 

翌日。本部狙撃訓練場。

 

千佳は、夏目とともに合同訓練に訪れていた。

 

夏目「はぁ!?チカ子もうB級7位!?早くない!?」

 

夏目の驚く声が響く。千佳は、玉狛の大砲として既に、多くの隊員の中で有名になりつつある。尤も、修や遊真もとっくに有名人になっているのだが。

 

千佳「そんなことないよ。チームの人が凄いだけだから······」

 

夏目「いやいや~あんたも大概でしょ。アタシはまずB級に上がれるかどうかも怪しいもんだわ。師匠がいないとだめかね·····」

 

 

千佳「そんなことない。出穂ちゃんは頑張ってるよ」

 

夏目「ありがとチカ子。········あれ?もう2つ並びで空いてるとこないね。下いく?」

 

千佳「そうだね」

 

その時、端の方で訓練をしていた男の子-影浦隊スナイパーの絵馬ユズルが隣のスペースの荷物を一番端·····自分の左隣に放り投げた。

 

ユズル「····空いたからどうぞ」

 

千佳「いいの?その荷物······」

 

ユズル「知り合いのだから大丈夫」

 

夏目「マジで?サンキュー!」

 

千佳「ありがとう」

 

ユズルは手を突き出して、別にいい、とジェスチャーをした。

 

茜「あ〜っ!にゃんこだ~!」

 

千佳「こんにちは日浦先輩」

 

夏目「猫好きなんすか?」

 

茜「こんにちは千佳ちゃん。猫大好きだよ!」

 

茜は、夏目の頭の上に乗っかった猫を見て、かなりテンションが高くなっていた。

 

茜「ぐむむぅ····」

 

夏目「どうかしたんすか?」

 

茜「撫でていいのかダメなのか······この子の表情が読めない!」

 

夏目「大丈夫だと思うっすよ······?」

 

そこで、夏目の頭に乗っていた猫が、入ってきたリーゼント·····もとい、冬島隊のスナイパー-当真勇の頭に飛び乗る。

 

当真「お?なんだネコ助。積極的だな」

 

茜「いいな~当真先輩!」

 

夏目「どうもっすリーゼント先輩。すんませんウチの猫が」

 

当真「俺のリーゼントに乗っかるたぁ違いが分かってんじゃねぇか。なあユズル?」

 

ユズル「·······訓練始まるよ当真さん」

 

当真「······?俺、荷物ここ置いたっけ?」

 

訓練はつつがなく進んだ。

 

 

 

 

 

千佳「出穂ちゃん凄く上がったね」

 

夏目「1位は······ナラサカさんと、ヒキガヤさん?何これ·····バケモンだわ」

 

八幡は、A級3バカとランク戦をしようと本部をブラブラしていたところを荒船に捕まり、狙撃訓練場に連れ込まれていた。

 

茜「奈良坂先輩は私の師匠だよ」

 

夏目「そうなんすか?」

 

茜「あ、奈良坂先輩~!」

 

奈良坂を見つけた茜は、奈良坂を呼ぶ。

 

奈良坂「茜か。どうした?」

 

茜「流石ですね奈良坂先輩!今回も1位ですね!」

 

奈良坂「そうでもないよ。今回は比企谷がいたし·····当真さん達の的も見てみるといい」

 

奈良坂にそう言われた3人は、ユズルと当真の的を見る。ユズルの的には星が、当真の的にはニコニコした顔のマークが描かれていた。

 

夏目「何これ!?無駄に正確!」

 

茜「最初から点を取る気なかったんだ·····」

 

奈良坂「点数だけで実力は測れない。型にはまらない『自由な才能』があるからな」

 

 

 

当真「いや~頭にネコ助乗っけて狙撃すんのは初めてだぜ。新鮮な体験じゃね?奈良坂もやるか?」

 

奈良坂「遠慮しておこう」

 

茜「絵馬君凄〜い。いつも順位が低いのはこういうことだったんだね!」

 

夏目「マジテクいわ!」

 

ユズル「(テクい········?)別に、こんなの遊びだし」

 

千佳「ううん、凄いよ。ホントに自由自在だね!」

 

当真「お?モテモテだな~。こいつは絵馬ユズル 14歳。お嬢さん方仲良くしてやってね」ペシペシ

 

当真はユズルの頭を叩きながら紹介する。

 

夏目「うちらと同い年じゃん。年下かと思った。アタシは夏目出穂。よろしく」

 

千佳「雨取千佳です。よろしく」

 

ユズル「······どうも」

 

茜「雨取ちゃんはあれだよ。玉狛の大砲娘」

 

ユズル「大砲娘?」

 

茜「試合の記録とか見ない?」

 

ユズル「あんまムービー見ないから······」

 

夏目「ユズルってリーゼント先輩の弟子なわけ?」

 

当真・ユズル「「そうだよ(違うよ)」」

 

当真とユズルが同時に答える。

 

夏目・千佳「「???」」

 

ユズル「この人が勝手に師匠面してるだけだから」

 

当真「悲しいぜ~。切ねーこと言ってくれるじゃねーの」

 

ユズル「何回も言わせないでよ。俺の師匠は鳩原先輩だけだ」

 

千佳「·······!(鳩原先輩·····兄さんと一緒に近界に行った人·····)」

 

夏目「はとはら先輩·····?」

 

その後、奈良坂と茜が帰り、4人で自主練することになった。千佳とユズルは少し休憩を取っていた。

 

千佳「ユズル君」

 

ユズル「···········?」

 

千佳「えっと、その·······鳩原先輩ってどんな人?」

 

ユズル「もうボーダーにはいないよ。上層部に干されて辞めたんだ」

 

千佳「干されて······?」

 

千佳は、昨日のレイジと修の会話を思い出した。口には出さないが。

 

ユズル「鳩原先輩は選抜部隊を目指してて、選抜試験もちゃんと通った。けど······上層部が後から鳩原先輩の合格を取り消した」

 

鳩原が再び近界へ行ったことは、奇しくも、二宮隊の降格材料にさせられてしまっていた。

 

ユズル「鳩原先輩が、人を撃てなかったから·····」

 

千佳「······!」

 

ユズル「勿論、役に立たなかったってわけじゃない。二宮隊は、元々A級4位だったから、狙撃は超上手かった。人は撃てなかったけど、相手の武器を狙撃したりして、チームを勝たせてた。ポイントは当真さんとか奈良坂先輩より全然低かったけど·····俺は、鳩原先輩が一番上手かったって、今でも思ってる。·····雨取さんはどう思う?」

 

千佳「私も·····怖くて人が撃てないから······悪いことじゃないと思う」

 

ユズルはびっくりした。

 

ユズル「それ····喋っちゃっていいの?次当たるのウチの隊だよ。俺は、影浦隊のスナイパーやってる」

 

千佳「·········え?」

 

 

 

 

個人ランク戦ブース。

 

遊真と村上が、ランク戦をしていた。

 

遊真「攻撃手の1位がハチマン先輩で、2位がタチカワさん、3位がカザマさん。そんで、5位がムラカミ先輩でしょ?じゃあ、そのカゲウラ先輩が4位なわけ?」

 

村上『いや、カゲは20位とかそこらだな』

 

遊真「ムラカミ先輩より強いのに、20位なの?」

 

村上『強いよ。八幡に太刀川さん、風間さんとカゲ。·······あと、あんまり勝負したことないけど、陽乃さんと小南。俺が勝ち越せてない攻撃手はその辺だな』

 

遊真「ハルノさんって射手じゃないの?」

 

村上『あの人は、射手だけど、スコーピオンだったら風間さんより強いよ』

 

遊真「じゃあ、迅さんは?」

 

村上『迅さんとは戦ってないな。俺が入隊した時にはS級だったんだと思う』

 

遊真「なるほど。なら、カゲウラ先輩は何で20位なの?」

 

村上『多分·····会えば分かる』

 

 

 

 

 

 

ブースを出た2人は、影浦との待ち合わせ場所に来ていた。

 

村上「悪いカゲ。待たせたな」

 

影浦「·······鋼。遅ーよ!目立ってんじゃねえか!」

 

村上「俺のせいじゃない」

 

影浦「·····で?誰だこいつは」

 

影浦は遊真を指差す。

 

遊真「どうも初めまして。玉狛第2の空閑遊真です」

 

影浦「空閑って言やぁ······鋼と荒船が負けた奴か!?おめーらこんなのにやられたのかよ!帰ったら久々に記録見るわ!」

 

影浦は、遊真にしてやられた村上を見て笑い出す。

 

村上「見るなよ」

 

影浦「玉狛って言や、次のウチの相手か。B級上がりたてでもう上位入りたぁなかなか必死じゃねぇの。遠征でも狙ってんのか?」

 

村上「おいカゲ······」

 

遊真「知りたかったら、心でも読んでみたら?そういうサイドエフェクト持ってるって聞いたよ?」

 

影浦「·····ケッ、帰るわ」

 

村上「おい、来たばっかだぞ」

影浦「ここはギャラリーが多くてイライラすんだよ。········一つ言っとく。Aに上がりたきゃ、俺らに勝ってから行くんだな」

 

遊真「······ほぅ」

 

 

 

 

玉狛支部。

 

2人は、玉狛に戻っていた。因みに、修は小南と特訓をしたためである。小南が、修と那須の訓練を見て自分もメテオラ以外の射手用トリガーも使いたい、と言ったためである。

 

遊真「·······どうしたチカ?元気ないな」

 

千佳「それが·······」

 

 

 

 

修「········とうとう千佳が人を撃てないのがバレたか······」

 

千佳「ごめんなさい·····」

 

修「いや、別にいい。試合を見てたら、いずれ皆気が付くことだからな。······喋ったのはだめだけど」

 

遊真「ハトハラ先輩と似てるってことは、ニノミヤさんも、もう気付いてるかもな」

 

修「·····多分な。未来さんが東さんの弟子だったことを踏まえると、千佳の反撃がないと分かれば、他の部隊がガンガン千佳を狙ってくる。今まで以上に見つからないようにしないと·····」

 

遊真「撃てないと思わせないといて、撃つ!とか出来たらいいんだけどな」

 

千佳「うん····」

 

修「今回のMAP選択権は東隊にある。どんなMAPで来るかは分からないけど·····ある程度戦法は決まってる筈だから、記録を見直して対策を立て直すしかない。あとは、連携の確認と個人で腕を磨くこと」

 

遊真・千佳「「了解」」

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所。

 

迅「·····················!·····何だ?」

 

 

 

 

 





駄に文字数だけ増えた。·······ここでキャラ紹介です。

キャラ紹介

日浦碧也
茜の父。元ロドクルーンの国民だったが、その当時、アフトクラトルとロドクルーンの戦争で、ロドクルーンの敗戦を予想していた。茜を守るため、葵・茜(当時はまだ赤ん坊)とともに玄界に来た。玄界の情報はデータバンクから簡単に見つけることが出来た。その際、3人分の戸籍の偽装もした。

日浦葵
茜の母。碧也と同じく元ロドクルーン民。アフトクラトルの影響を恐れた碧也に連れられて、玄界に来た。尚、2人が逃亡先に玄界を選んだ理由は、トリガー以外の文明なら、戦争に巻き込まれにくいと判断したため。2つ年上なのに碧也より10歳ぐらい年下に見えるというボツ設定がある(葵が童顔で、碧也の雰囲気がより大人っぽいからという、ボツ設定があった)。




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38話:ROUND4。彼らは新たな壁に直面する。

今回の修のトリガーセット

メイン サブ
レイガスト アステロイド
スラスター イーグレット
バイパー グラスホッパー
バッグワーム シールド

バッグワームは使った方がいいか、と反省したよう。
実は、修のトリガーにはリミッターが他の隊員同様にかけられています(緊急脱出とかでの基本性能に使う際、安定させるため)。ランク戦時は、リミッターの解除は出来ません(防衛任務時は可能)。
しかし、八幡と陽乃のトリガーは、(何段階かある)リミッターを、最終段階以外全て外しています(玉狛で、かなりトリガーを改造しているので、基本性能で使うトリオン量を調節してある)。なので、修と八幡・陽乃では、ボーダーのトリガーで使えるトリオン量が全然違います(黒トリガーなら違う)。今回、突発的にできたこのオリジナル設定を適用します。


2月15日。

 

綾辻『·······B級ランク戦ROUND4!実況を務めます嵐山隊の綾辻です!解説席には、風間隊隊長の風間さんと、加古隊隊長の加古さんにお越しいただきました!』

 

風間・加古『『どうぞよろしく』』

 

綾辻『転送まで後僅か!MAPは「市街地B」です!高い建物と低い建物が混在し、場所によっては非常に射線が通りにくい地形。選択したのは東隊です。

地形戦と言えば、ROUND4にて、那須隊が天候設定で敵部隊の分断を狙うという大技を使ってきましたが·····』

 

加古『面白かったけど······東さんがそういう博打をするとは考えにくいわね』

 

風間『だろうな』

 

綾辻『なるほど。ここで、全チーム仮想ステージへと転送完了!······天候「雪」!積雪は30cmといったところか。戦闘体なら走れなくはないが、移動には少々骨が折れるといった様子』

 

積雪の中、全隊員が転送される。ほぼ全ての隊員が、均等にバラけた状態になった。

 

加古『これ、東さんじゃないわね。小荒井君よ小荒井君』

 

綾辻『転送位置は、どの部隊も均等にバラけています。雪上戦を仕掛けた東隊、仕掛けられた3チームはどう動くか!』

 

 

 

辻『ひゃみさん、レーダーの敵の数が足りないんだけど』

 

氷見『東隊が全員バッグワーム使ってる。雪で動きを鈍らせて、奇襲してくるかも。グラスホッパー持ってるかもしれないから気をつけて』

 

辻『了解です』

 

犬飼『二宮さんどうします?やっぱ、合流しますかね?』

 

二宮『·······チッ』

 

 

 

綾辻『玉狛第2、東隊は合流を優先する模様。影浦隊は急戦を仕掛ける模様。二宮隊は動きが鈍いようですが·····』

 

二宮の動きが鈍いため、他の隊員も必然的に動きが鈍る。

 

風間『慎重だな。東隊が仕掛けたMAPの意図を図ろうとしているのかもな』

 

加古『雪は絶〜~〜っ対、東さんの作戦じゃないわ。そんなことも見抜けないんじゃまだまだね』

 

綾辻『東隊は迷わず合流地点を目指す!玉狛より合流が早そうです!』

 

 

 

奥寺『7番で小荒井と合流します。目標の情報を下さい』

 

東『一番近いのは玉狛の空閑。次が二宮隊の犬飼。もう1人はまだ未確認だが、空閑と合流しようとしてるあたり玉狛の三雲だろう』

 

人見『バラけてるうちに獲りたいわね。空閑君と三雲君には気をつけて。戦う時は3人で。いいわね?』

 

小荒井『了解!』

 

 

 

修「(·····東隊の動きが掴みづらいな。こっちの動きはスナイパーの東さんとかが見てるだろうからな······こっちもバッグワームを使うべきか?)」

 

その時、7番周辺の隊員にメテオラが降ってきた。

 

修「(······あれが北添さんの適当メテオラか·····)」

 

適当メテオラは、全てが避けられる。

 

 

仁礼『おいゾエ!一発も当たってねぇぞ!』

 

北添『いやいやヒカリちゃん。レーダー頼りならこんなものじゃない?ついでに、東さん達が隠れてそうな所教えて?』

 

仁礼『······ったく、お前らはアタシがいなきゃ何も出来ねぇな!』

 

 

犬飼「出た、ゾエの適当メテオラ。これはウザい」

 

 

二宮「アステロイド」

 

二宮は、正四角錐型にアステロイドを6個に分割し、近くにいる北添に放つ。北添は間一髪でこれを免れる。

 

北添「やばっ!一番近いの二宮さんだった!」

 

北添『ユズル、ヘルプ!』

 

ユズルは二宮にイーグレットを撃つ。が、二宮はシールドを集中し難なく防ぐ。

 

ユズル『(イーグレットじゃダメだな······)ゾエさん頑張って逃げて』

 

北添『マジ?』

 

 

 

二宮『北添と絵馬が近い。俺が獲る。辻と犬飼は玉狛を獲りに行け。影浦と空閑には必ず2人でかかれ。スナイパーの射線に入るなよ』

 

二宮は2人に命令を下す。

 

辻『辻了解』

 

犬飼『犬飼了解』

 

二宮は、まず北添を獲るべく、北添を追う。

 

 

北添『ちょっ、二宮さんマジでこっち来てるんですけど!』

 

仁礼『なるべく粘って死ね!』

 

北添『ヒドイ!』

 

影浦『俺ぁ空閑と遊んで来るぜ。あいつが一番面白そうだ』

 

仁礼『ちゃんと点取って来いよカゲ!ゾエの犠牲を無駄にすんな!』

 

影浦『へーへー、空閑のついでにな』

 

北添『あれ?ゾエさんの犠牲軽くない?』

 

 

 

宇佐美『他の隊が集まって来たよ。多分、東隊の攻撃手2人も来てる。合流前に当たることも有り得るから気をつけて!』

 

遊真『了解』

 

遊真は塀を走りながら、返答する。

 

修『千佳は下手に動くな。敵にスナイパーが2人いる。見つかったらやられるぞ!』

 

千佳『了解!』

 

 

 

綾辻『北添隊員お得意の曲射砲撃!二宮隊長がそれを追う!影浦隊長も乱入か!絵馬隊員は北添隊員の援護にまわる模様です。MAPは、玉狛を中心に9人が集まる!唯一援護のない影浦隊長は不利か』

 

加古『乱戦ならそうでもないわね。影浦君には狙撃も不意打ちも通用しない。他の人に比べたら、数の不利は関係ないわね』

 

風間『それは東隊も同じ。獲りやすい点に狙いが集中する。狙われる玉狛がどう動くか見物だ』

 

 

 

犬飼「目標確認。こっちがメガネ君か」

 

辻と合流目前だった犬飼が修を発見する。修も同様に犬飼を発見。

 

修「目標確認」

 

修はレイガストを盾モードで構える。犬飼がライフルで撃ってくるのを皮切りに、2人が射撃線を始める。

 

 

 

一方。修と合流しようとしていた遊真は、立ち止まる。遊真の目の前を斬撃が通り過ぎる。そのまま進んでいれば、辻に斬られていただろう。

 

遊真「······足止めか」

 

辻「その通り。だが、悪いが相手は俺じゃない」

 

辻はその場を離れる。遊真は、追おうとしたが逆から来た影浦に意識を向け、辻を追うのを諦める。

 

影浦「よぉチビ·······遊ぼうぜ」

 

遊真「今、忙しいんだけど」

 

 

 

綾辻『転送して間もなくですが、あちこちで既に戦闘が始まっています!MAP中央付近では、玉狛の合流が阻まれた模様』

 

加古『修君はなかなか近づけないわね。雪で鈍った機動力では犬飼君の攻撃を掻い潜れない』

 

風間『それくらい分かっているだろう。そうなる前に何か手を打つだろう』

 

修は付近の建物の壁をアステロイドで破壊し、建物に入る。

 

綾辻『三雲隊長、雪上戦を嫌って建物の中へ!』

 

修は、アステロイドの置き弾で攻撃しつつ犬飼と距離を取る。犬飼はそれをシールドで防ぎつつ、修を追う。修に追いついた犬飼だったが、レイガストを持って待ち構えていた修に、スラスターで吹き飛ばされる。犬飼がアステロイドの追撃をシールドで防ぐと、窓を蹴破って侵入してきた東隊の2人に右腕を斬られる。

 

犬飼「君達いたの」

 

犬飼は斬り飛ばされた右腕からライフルをとり、左腕でライフルを撃つ。東隊と修の3人は、銃撃を防ぐ。そこに、辻が壁を破壊して割り込む。

 

小荒井『あらら、揃っちまった』

 

奥寺『まぁ、まだ予定のうちだ』

 

 

辻『東隊の2人がいるってことは、東さんが狙撃位置についてますよ』

 

犬飼『分かってる。足を止めるなよ』

 

 

修「(······二宮隊と東隊が2人ずつ。二宮さんは別として、東さんは何処だ?)······アステロイド」

 

修は、アステロイドで4人を牽制する。4人は、シールドで防ぎつつ接近戦を展開している。犬飼は修を狙うが、2人の間には東隊の2人と戦っている辻がいるため、修を狙えない。

 

犬飼「·······チッ」

 

 

綾辻『屋内戦に5人が集って2対2対1!有利はマスター級2人の二宮隊か!それとも、手傷を負わせた東隊か!』

 

加古『有利なのは東隊ね。あの位置だと、犬飼君は援護しにくいのよね。味方を撃つ可能性があるわ。銃手が乱戦で援護するには角度がいるのよね』

 

風間『小荒井と奥寺は、一人一人ならそこまで手強くはないが、連携のレベルは風間隊に次ぐと言っていいだろう。組んで戦えば格上も食える使い手に変わる。そして何より······』

 

 

修は、レイガストを消しバイパーを出す。

 

修「(·······狙えるか?)········バイp··········しまっ!」

 

 

風間『·······最初のA級1位部隊を率いた東春秋がいる』

 

 

修は、急いで後ろに跳ぶが、壁に大穴を空けて撃ち込まれた弾に、右腕の肘から先を飛ばされる。修は、左手にイーグレットを出し、カウンターで撃ち返し、東の左腕を奪う。

 

修「(······東隊がすぐ側で戦っている隙を狙ったのは失敗だったか!)」

 

修はイーグレットを消し、グラスホッパーを展開。左手にレイガストを再展開して東を追う。

 

 

綾辻『東隊長、壁越しに狙撃!三雲隊長の右腕を奪う!しかし、三雲隊長も負けてはいない!カウンター狙撃で東隊長の左腕を奪った!三雲隊長、そのまま東隊長を追う!』

 

修は、レイガストを盾モードに展開し、グラスホッパーで素早く東を追う。90m近くあった距離は、修がグラスホッパーの出力を最大まで引き上げたため、一瞬で60m圏内まで距離を縮められてしまった。

 

東「(·····緊急脱出·····は無理か)」

 

東は、グラスホッパーで自身を狙う修を狙撃するが、グラスホッパーとシールドで全て躱される。

 

東「·········早かったな」

 

東は降参のポーズをとる。

 

修「·····それはどうも」

 

修はレイガストで東の首を刎ねた。

 

 

綾辻『東隊長緊急脱出!乱戦は玉狛第2が一歩リード!東隊長の壁抜き狙撃は、チーム3人の観測データと精細な地形データとの複合オペレーションです!MAP選択権を持つチームならではの大技!』

 

加古『珍しいわね。壁抜きなんて当てにくいから普通はやらないのに』

 

風間「(·······それだけ三雲を警戒していた、ということか?)」

 

 

小荒井「うげぇマジで?東さんがやられた!?」

 

奥寺「(········ヤバイな)」

 

 

4人は互いを睨み合っている。

 

犬飼『「東隊は深追いするな」って指示だ。もう屋内戦に付き合う必要もないな』

 

辻『でも、表も足場は悪いですよ?狙撃されません?』

 

犬飼『表でも面倒なのは一緒だろ。メガネ君が狙ってくるかもしんないし。ここいても得をしない。外に出てやれることを増やそう』

 

辻『了解。玉狛の大砲もまだ撃ってませんしね』

 

犬飼『大砲ちゃんは気にしなくていい。人が撃てないって話だ』

 

 

風間「(··········三雲がその場を離れて東さんを倒してから、あまり動いていないが、何故大砲を撃たない?この状況以上に大砲が活きる場面があるのか?)」

 

 

修も風間と同じように考えていた。

 

修「(········この位置なら、砲撃で点を獲るチャンス。······でも千佳は········どうする?····無理に撃たせても、人を撃てるようになるとは限らないし、逆に、もっと怖がるかもしれない······)」

 

修が一瞬戸惑う。その時───

 

 

氷見『警戒!』

 

犬飼・辻『『!!!』』

 

 

ドゴォォォッ!!!!

 

東隊・二宮隊の4人が戦っていた位置が大爆発した。

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 

綾辻『雨取隊員、4人まとめて狙った!しかし、これは全員に躱される!』

 

千佳が、自分から狙撃したのだ。

 

 

修「(····千佳が······自分で撃った!?)」

 

 

辻『人撃てないんじゃなかったんですか?』

 

犬飼『レーダー頼りだろ。獲りに行こう。浮いた駒だ』

 

 

修『······ッ!千佳、緊急脱出しろ!』

 

修は、一瞬の思考の停止を振り払い千佳に指示を出す。

 

千佳『了解!』

 

ピーーッ!

 

千佳「·······!!!?」

 

千佳は緊急脱出しようとしたが、既に二宮隊が千佳の周囲半径60mまで接近していた。ランク戦時は、相手の隊員が周囲半径60mまで接近していた場合、緊急脱出出来ない。

 

 

綾辻『あっと!雨取隊員、自発的に緊急脱出!?しかし、60m圏内まで二宮隊に接近されていた!』

 

 

犬飼『思ったより近くにいたな大砲ちゃん。ちゃちゃっと獲りに行くぞ』

 

辻『了解』

 

二宮隊の2人は千佳を獲りに向かった。

 

 

修『遊真!千佳をカバーだ!僕もすぐに向かう!』

 

修も遊真にカバーの指示を出す。

 

遊真『了解!』

 

 

 

遊真「悪いねカゲウラ先輩。急用ができた」

 

影浦「あァ!?」

 

遊真は、グラスホッパーでその場を離脱し、千佳のカバーに向かう。

 

 

 

遊真と修がカバーに向かっている一方、千佳は既に二宮隊の2人に追いつかれていた。犬飼が銃撃で千佳を狙うが、千佳のシールドする易々と防御する。

 

犬飼「シールド固っ。流石トリオンモンスター」

 

そこに、遊真がグラスホッパーで接近し、犬飼に斬り掛かる。が、辻が弧月で遊真を阻む。

 

犬飼「辻ちゃんナイス」

 

その時、遊真が、千佳にグラスホッパーを踏ませ犬飼と距離をとらせる。

 

犬飼「(味方にグラスホッパーを踏ませて·····)面白いけど······悪足掻きだね」

 

犬飼が千佳に接近する。その時、犬飼の前方の建物の屋根が光る。犬飼は集中シールドで防御するが、弾はシールドを突き破って犬飼の右肩を消し飛ばし、犬飼はそこから先を失う。

 

犬飼「アイビス······!」

 

体勢が崩れた犬飼だったが、修の狙撃によって、更に左膝の先を失う。その時、犬飼に影がかかる。次の瞬間、犬飼の上空から影浦が襲いかかる。犬飼は影浦を狙って銃を連射したが、影浦が身を捩って躱す。影浦は、犬飼の供給機関をスコーピオンで貫いた。その数秒後、千佳も自発的に緊急脱出した。

 

犬飼「おいおい·····皆女の子に甘くない?」

 

影浦「知るか。黙って死ね」

 

 

綾辻『犬飼隊員緊急脱出!影浦隊が見事掻っ攫った!雨取隊員も逃げ切り緊急脱出!結果的に影浦隊に救われた模様!』

 

 

 

 

一方、千佳が緊急脱出していく軌道を遠くから眺めていたユズルの後ろから二宮が現れる。

 

二宮「お前が玉狛贔屓だったとはな。絵馬」

 

ユズル「そんなんじゃない。あんたらが嫌いなだけだ」

 

二宮「······そうか」

 

二宮は、三角錐型に分割したアステロイドをユズルに撃つ。ユズルはシールドで回避するが足を削られる。

 

氷見『命中しましたが倒せていません。脚に当たったので、機動力は鈍ってる筈です。周辺の建物の内部MAPを送ります』

 

二宮「ああ。あとは辻をサポートしろ。俺は絵馬を追う」

 

氷見『了解』

 

 

 

綾辻『得点をアシストした絵馬隊員だったが、二宮隊長に捕まった!そして、MAP中央では攻撃手5人が勢揃い!スナイパーのいる玉狛に分があるか!?』

 

影浦がしなるように両腕のスコーピオンを振るう。それを筆頭に、場の全員が戦闘を開始した。修は、それぞれをイーグレットで狙うが、場が入り乱れており、遊真に当たる可能性もあるため迂闊に撃てない。

 

綾辻『入り乱れる5人の攻撃手!東隊の2人と玉狛の空閑隊員はグラスホッパーを使える分、雪の影響を受けにくいか!尚、三雲隊長はスナイパーに徹しています!援護のある玉狛の空閑隊員に対する4人はどう動くべきだと思いますか?』

 

風間『玉狛の有利を抜け出したいところだが、三雲がバッグワームを使っている。場が動いて敵が散らばるなら玉狛には好都合。浮いた順に狙撃するだけだ。三雲を獲りに行きにくいこの状況なら、他の4人

が動くのはキツいだろう。だが、幸いなことに、乱戦で三雲もまだ撃っていない』

 

 

 

二宮から逃げていたユズルは、屋内に身を隠していた。

 

北添『ユズルヤバい?ヘルプ行こっか?』

 

ユズル『いや、いいよ。どうせ逃げきれないし。カゲさんの方に行って。普通なら負けないだろうけど、今回雪だし、カゲさんグラスホッパー入れてないし』

 

北添『OK!』

 

その時、ユズルの近くの壁が破壊され二宮が現れる。

 

ユズル『ゾエさん急いで。もうあんま時間稼げないから』

 

 

 

ステージ中央部。

 

遊真が奥寺に斬り掛かる。奥寺に止められるが、膝からブランチブレードで更に攻撃する。これも防がれる。 今度は、遊真の後ろから小荒井が斬り掛かる。遊真は頭からブレードを出してこれを止める。そこを、辻がまとめて斬ろうとする。奥寺と小荒井はグラスホッパーで避けるが、遊真は動けない。ブレードが遊真に及ぶ瞬間、辻の弧月が狙撃され、ブレードの真ん中が破壊される。遊真は斬られずに済んだ。

修は、無理に敵を狙わず、遊真が防げなそうな攻撃を、狙撃で防ぐ方針にしていた。

 

辻「な·······っ!」

 

その時、小荒井と遊真をまとめて影浦のマンティスが襲う。遊真はグラスホッパーで難を逃れる。小荒井も身を捩って躱す。

 

小荒井『あっぶね!影浦先輩の間合いだった』

 

奥寺『距離間違えるなよ』

 

影浦「チッ······邪魔クセーな······」

 

辻「(あの狙撃·······)」

 

 

綾辻『やはり、空中組が乱戦のメインを張る展開。地上戦組は足元の悪さからかいつものように踏み込めない。全体的に玉狛が有利か』

 

 

ドン!!!

 

修「(·····緊急脱出?誰だ?)」

 

 

綾辻『影浦隊絵馬隊員、ここで緊急脱出!二宮隊が1点取って3チームが並んだ!』

 

二宮から逃れられなかったユズルが緊急脱出したのだ。

 

 

仁礼『おいカゲ!ユズルが緊急脱出したぞ!』

 

影浦『ケッ····おいゾエ!』

 

北添『はいはい、ユズルの分も働きますよっ』

 

北添が適当メテオラを放つ。

 

 

修『遊真、メテオラだ!』

 

遊真『了解』

 

 

北添のメテオラが、攻撃手が斬り合う中に放たれる。それぞれは爆発で視界を塞がれるが、オペレーターの視覚支援により、すぐに視界が元に戻る。

 

影浦「やっと来やがったな」

 

煙の中から現れた影浦が奥寺を切り裂く。

 

小荒井「奥寺!」

 

辻「余所見したな」

 

奥寺の緊急脱出に気を取られた小荒井が辻に首を斬られる。小荒井は緊急脱出した。小荒井の緊急脱出と同時に、修が辻を狙撃する。辻は、対応出来ず緊急脱出する。

 

辻「(爆撃で射線が······)不覚だな····」

 

 

遊真は影浦と対峙していた。

 

影浦「来いよチビ。今度こそ遊ぼうぜ!」

 

 

修は、辻を狙撃したすぐ後、北添も狙撃した。しかし、二宮のシールドによって、狙撃を防がれる。

 

修「······!?」

 

北添「二宮さん?」

 

 

綾辻『二宮隊長が北添隊員をカバー!?』

 

加古『貪欲ね』

 

 

二宮「俺のポイントだ」

 

北添「ですよね〜」シュドッ

 

北添が適当メテオラを放つ。その直後、二宮のアステロイドで北添が緊急脱出した。

 

修『遊真、もう一発爆撃だ!』

 

修は、再度遊真に爆撃を伝えるが、影浦に押されつつある遊真は、メテオラにまで気が回らずメテオラに巻き込まれる。シールドで何とか緊急脱出は免れたが、左足を完全に失う。

 

遊真「クッ·······」

 

影浦「どうしたチビ!」

 

 

綾辻『影浦隊と玉狛第2の攻撃手対決!ザクザクとスコーピオンで削り合う!ただし、得点は3チームで横並び。となれば当然·······黙って見ている筈がない!』

 

二宮が、両攻撃ハウンドで遊真と影浦を狙う。修は、バイパーで遊真に当たりそうな弾を撃ち消していくが、間に合わない。遊真と影浦にハウンドが襲い掛かる。遊真と影浦はシールドを張って防御する。

 

 

綾辻『二宮隊長の両攻撃ハウンド!三雲隊長、バイパーで撃ち消していくが間に合わない!この火力!射手2位は伊達ではない!』

 

 

影浦「チッ·······二宮·····!」

 

 

風間『人数が減ったから火力差で押し込みに来たな』

 

綾辻『空閑隊員被弾!流石に苦しいか!?なんとこ遮蔽物を使って凌ぎたいところ!二宮隊長、距離を詰めて寄せにかかる!』

 

二宮は遊真の背後からハウンドで襲いかかる。修がイーグレットで狙撃するも、集中シールドで防がれる。二宮は、修の狙撃位置を辻が狙撃された角度などから割り出していた。それを見た遊真は、グラスホッパーで二宮に突っ込む。

 

修『遊真!』

 

 

綾辻『空閑隊員前に出た!?ハウンドの有効半径を見切ったか!』

 

加古『遊真君いい動きね。でもそのハウンドは·····相手を動かすハウンドなのよ』

 

二宮は接近しようとした遊真をアステロイドで撃ち抜く。遊真は、穴だらけになりながらも、マンティスを二宮に放つ。

 

修・影浦「「········!」」

 

修は遊真のマンティスを見て、もう一度狙撃する。しかし、狙撃は集中シールドで防がれ、遊真のマンティスは届かなかった。遊真は緊急脱出した。修は、二宮と影浦相手に火力勝負に出ようかとも考えたが、東に右腕を撃たれ、更に二宮の両攻撃ハウンドを撃ち消すために、トリオンを大幅に使っていたため、遊真の緊急脱出を見て、やむなくバッグワームを起動し二宮と影浦から距離をとった。

 

 

 

 

綾辻『さぁ、試合は一転して静かな展開。全員がバッグワームを使って距離をとりました。これはどういうことでしょうか?』

 

風間『狙える駒がいなくなった、ということだな。普通なら攻撃手が的にされるが、影浦には不意打ちが決まりにくい。三雲は東さんに右腕を撃たれているから、グラスホッパーと併用しながら2人と戦うだけのトリオンが残っていないのだろう。他の2人は下手に動けば、狙撃されて即死も有り得る。普段なら噛みつきに行く影浦も、雪のMAPではいつものようにはいかないだろう』

 

 

 

仁礼『絶対動くなよ!狙撃されて殺されるだけだからな!』

 

北添『二宮さんも狙ってくるしね』

 

ユズル『2点獲ったんだから好きにさせれば?』

 

北添・仁礼『『いやいやいや』』

 

影浦「·······チッ、つまんねーことになったぜ」

 

 

 

犬飼『メガネ君から落とすのはなしなんです?その後カゲを落とせば·······』

 

二宮「三雲は待ちに徹している。しかも、奴はグラスホッパーを持っている。捜しても無駄だ。特にこの雪なら尚更のことだ」

 

 

 

宇佐美『流石に·······今回はこのままタイムアップ待ちだね。修君、もう2人と戦うだけのトリオン残ってないね。東さんに右腕撃たれて一気に漏出しちゃったからね〜』

 

修「すいません······せめて、東さんを右腕落とさずに倒しておけば·····」

 

遊真『いやいや〜、今回の得点は全部修が獲ってんだから、そんなに気負わなくていいよ』

 

千佳『うん、私が不用意に撃たなければ、二宮隊の人に狙われずに済んだかもしれないし』

 

修「そうか··········」

 

宇佐美『3人とも、もう試合終わるよ』

 

修「········分かりました」

 

修がそう言うと同時に、時間切れとなった。今回は複数のチームが生存のため、生存点はどのチームにも入らない。

 

 

 

加古『試合はもう終わりね。修君が完全に撤退モードだわ。二宮君もそれは分かってるだろうから、危険を冒してまで攻めにはいかないでしょ』

 

綾辻『········試合終了!最終スコア 4対2対0対2 二宮隊の勝利です!そして、本日全ての試合が終了!暫定順位が更新されます!二宮隊、影浦隊は順位変わらず。鈴鳴第一が6位、諏訪隊が7位にそれぞれジャンプアップしたため、玉狛第2は8位、東隊は10位にダウンという結果になりました!それでは、時間も押してきてますので、試合の好評をお願いします』

 

風間『·····今回は殆どの得点が各部隊のエースによって上げられているが、重要なのはそれ以外の動きだ。エース以外の隊員の動きが、そのまま得点差に現れていると言える』

 

加古『そうね。影浦君も雪で動きは鈍かったけど、ゾエ君とユズル君のアシストで2点獲れてるし、早めに犬飼君を倒せたのも大きかったわ』

 

綾辻『確かに······東隊もMAPで積極的にチャンスを作り出そうとしていました。では、空閑隊員中心の玉狛第2はどうでしょうか?』

 

風間『前半、3人とも単独行動になったのが痛かったな。あのチームがそこまで合流を意識しているとも限らないが。三雲も空閑も、それぞれが敵のエースに狙われていたからな』

 

綾辻『なるほど。それではB級ランク戦ROUND4これにて終了です。解説の風間隊長、加古隊長ありがとうございました』

 

風間・加古『『ありがとうございました』』

 

 

 

 

その夜。玉狛支部。

 

陽太郎「うっ······ひっく····」ボタボタボタ

 

玉狛第2の面々が支部に戻ると、そこでは陽太郎が大泣きしていた。隣では、ヒュースがたい焼きを頬張っている。

 

遊真「··········?どうした?」

 

八幡「落ち着け陽太郎」ナデナデ

 

八幡が陽太郎の頭を撫でる。

 

陽太郎「いいんだ·····みんなはよくがんばった」

 

陽太郎は泣きながら、遊真に親指を立てた。

 

陽乃「ヒュースってホントに捕虜なの·······?」

 

遊真「····で、何で泣いてんだ?」

 

陽太郎「今日な·········」

 

 

 

 

陽太郎は、実は今日、迅とヒュースが玉狛第2が勝つか負けるかで、賭けをしていたことを話した。

 

遊真「なるほど·····賭けか」

 

修「それで、陽太郎が泣いてたのか」

 

レプリカ『私個人として見れば、いい試合だったとは思うが』

 

ヒュース「お前達が勝っていたなら、迅は俺に玉狛第2に入れとでも言うつもりだったんだろうが······残念だったな。俺はお前達に協力などしない」

 

桐絵「何偉そうなこと言ってんの?そんなの本部が認めるわけないでしょ。あんたを入れて遠征部隊に行くなんて100%有り得ないわ」

 

八幡「(ヒュースって捕虜なんだよな·······?)」

 

ヒュース「だからそうだと言っている。それに、今のオサムに組む価値はない」

 

桐絵「なんですって!?」

 

修「桐絵落ち着いて(······とは言ったもののヒュースの言う通りだ。こんなんじゃ、また上位に上がっても負けるだけだ。どうすれば······)」

 

レイジ「(捕虜としての交換材料なら····いや、流石にそれでもチームに入れるのは無理か)」

 

 

 

 

 

 

 

修「烏丸さん、折り入ってお願いが」

 

烏丸「どうした?」

 

修「実は·······」

 

 

 

烏丸「分かった。連絡をとってみる」

 

修「ありがとうございます」

 

 

 




修のサイドエフェクトは、五感が強化された(菊地原の強化聴覚みたいな)というよりは、霊感があるみたいな感じで、トリオンが見えたり普通じゃ聞けない周波数の音が聞けたりという感じです。


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39話:水面下で、戦いは進行する。

嵐山「········チームの戦術を見直したい?」

 

修「·······はい」

 

ROUND4から2日後。修は、嵐山隊の隊室を訪れていた。

 

嵐山「だが、君のチームは順調に勝ち上がっている。下手に戦術を変えるのはどうかと思うが」

 

修「それは分かっています。······ですが、一昨日の試合みたいにこのままだと、勝てなくなっていくと思います」

 

嵐山「流石にそれはないんじゃないか?君は十分強いと思うが?」

 

修「それは······傲慢かとも思いますけど、あくまで《僕が1人で戦っていたら》の話です。ですが、僕は今チームで戦っています。僕にはチームで戦うという経験はないんです。なので、連携に優れた嵐山さん達に無理を承知の上でお願いに参りました」

 

そう言って、修は立ち上がり頭を下げる。

 

嵐山「······分かった。なら、少し試して欲しいトリガーがある。綾辻」

 

綾辻「はい。トレーニングルームですね」

 

綾辻はそう言ってパソコンを操作し、訓練室を起動した。

 

 

 

 

 

修と嵐山は、訓練室に移動した。

 

嵐山「····君に試して欲しいトリガーはこれだ」

 

嵐山の右手の上に、左右から鏃が出たキューブが展開される。

 

修「·····これは?」

 

嵐山「これは«スパイダー»。ワイヤートリガーだ。藍が使っているものを見た事があるかもしれないが、それと同じものだ。藍のは巻き取り機能が付いた特注品だけどな」

 

修「なるほど······嵐山さん、ありがとうございます」

 

嵐山「まぁまぁ待て待て。これにはまだ機能があって··········」

 

 

 

 

修「嵐山さん、ありがとうございました」

 

あの後、30分ほどだが、嵐山さんにスパイダーのレクチャーをして頂いた。凄い分かりやすかった。

 

嵐山「気にしないでくれ。君には色々と恩があるからな。また何かあったら是非とも言ってくれ」

 

修「ありがとうございます。じゃあ、僕はこれで」

 

嵐山「ああ、またな!」

 

 

 

 

 

 

修が、嵐山にレクチャーを受けているのと同じ頃。

 

遊真「·········え〜っと·····」キョロキョロ

 

 

 

 

 

遊真は、

 

遊真「迷った」

 

ボーダーの基地内で迷っていた。

 

レプリカ『どうしたユーマ。ランク戦をしに行くのではなかったのか?』

 

レプリカは遊真の耳元まで体を細長く伸ばして、遊真に話しかけた。

 

遊真「参ったな·····修を待ってれば良かった」

 

遊真は、ランク戦をする約束があったため、嵐山隊の隊室に向かう修とは一旦別れたのだが、それは失敗だったようだ。

 

遊真「本部ってホント似たような道ばっかだな。エレベーターはどっちだ?」

 

「······どうした?道に迷ったか?」

 

1人(厳密にはレプリカがいるが)で迷っていた柿崎が見かねて、遊真に声を掛けた。

 

遊真「?·····うん。迷った」

 

柿崎「.どこ行きたいんだ?」

 

遊真「個人ランク戦のとこ」

 

柿崎「分かった。着いてきてくれ」

 

 

 

柿崎「ほら、着いたぜ。俺も昔はよく迷ったよ」

 

遊真「おぉ。どなたか存じませんがありがとうございました」

 

柿崎「おいおい。そりゃあねぇだろ」

 

遊真「ふむ?」

 

柿崎「うちの隊は次のお前らの対戦相手だぜ?」

 

遊真「なんと········これは大変な失礼を」

 

加古「あら柿崎君。あなた遊真君と知り合いだったのね」

 

2人がランク戦ブースの前で話していたところに、加古が絡んできた。

 

遊真「どうもカコさん」

 

柿崎「加古さんお疲れ様です」

 

影浦「おいこら空閑ァ!いつまで待たせてやがる!」

 

更に、元々ランク戦の約束をしていた影浦も来た。遊真を待っていた影浦は今日も順調に目立っていたため、普段より若干荒れていた。

 

加古「あら影浦君」

 

影浦「あ?ザキさんにファントムばばあじゃねえか」

 

遊真「ファントムばばあ·····?」

 

柿崎「気にしなくていいぞ」

 

加古「影浦君と待ち合わせしてたの?」

 

遊真「すまんね、カゲウラ先輩。迷ってた」

 

影浦「遅れんなら連絡しろボケ!」

 

加古「そうだわ。そんなことより、遊真君炒飯食べない?」グイ

 

影浦「おい、行くぞ空閑!」グイ

 

加古と影浦が、それぞれ遊真を引っ張る。

 

柿崎「おいおい、子供を引っ張るな!」

 

ワーワーギャーギャー

 

修「遊真、鬼怒田さんが読んで··········何やってるんだ·····?」

 

偶然鬼怒田に会った修は、遊真を呼びに来た所、騒ぎの中心で引っ張られる遊真というカオスに遭遇した。

 

 

 

 

 

開発室。

 

鬼怒田「やっと来おったか」

 

あの後、修は、加古と影浦に引っ張られ続ける遊真を何とか引き剥がし開発室に連れてきた。

 

修「すいません時間かかってしまって」

 

遊真「どうもキヌタさん」

 

鬼怒田「·······ふん」

 

 

 

 

 

エネドラ『だからもう全部教えたろうが』

 

3人は、エネドラへの尋問を開始していた。

 

エネドラ『ガロプラかロドクルーンか。あるいは、その両方が攻めてくる。こんだけでも十分だろうがよ』

 

修「(ロドクルーンか·······どれくらいの戦力だ?)」

 

鬼怒田『その両方の国の情報が足らんのだ。勿体ぶっとらんでさっさと教えんか!』

 

しかし、鬼怒田がそう言うとエネドラが沈黙を始めた。

 

鬼怒田「何とかせい雷蔵!」

 

雷蔵「はいはい」

雷蔵がエネドラに何やらぼそぼそと呟く。それによって、エネドラが口(?)を開いた。

 

エネドラ『教えたくても詳しくは知らねんだよ。外回りは雑魚共の役目だ俺の仕事じゃねえ·······ま、どっちも取るに足らねぇような国だ。ウチの攻撃を凌いだ玄界様がやられるこたぁねぇだろうよ』

 

修は、遊真に確認を取る。遊真は、「嘘ではない」と言う。鬼怒田は、それについて、今、上で会議中だと言った。

 

遊真「なら、レプリカがいた方がいいんじゃない?」

 

鬼怒田「レプリカには、八幡に小さいのを渡させてある。小さいのを介して会議に出ておる」

 

遊真「あれ?そうだったの?」

 

レプリカ『そうだ』

 

 

 

 

 

同時刻。本部第二会議室。

 

城戸「·······今回の迎撃作戦は、可能な限り対外秘で行う」

 

「「「「!!」」」」

 

城戸の発言に一同が騒然とする。

 

会議室では、アフトクラトルの従属国家であるガロプラ・ロドクルーンの侵攻の、緊急対策会議を行っていた。特別顧問であるレプリカは、八幡に持たせたちびレプリカで会議に参加している。そこで出たのが城戸のそれだ。先ほどまで、日浦茜の処遇についての議題もあがっていた。結局、比企谷隊に一任されたが。

 

ちびレプリカ『それがいいだろうな』

 

嵐山「対外秘!?市民には知らせないのですか!?」

 

修への指導を終え、会議に出席していた嵐山は、特に動揺していた。

 

城戸「そうだ。先の侵攻からまだ日が浅い。この期間に再度侵攻があるとなれば、市民の動揺がぶり返す可能性もある。敵の出方にもよるが、市民に襲撃があったとは気付かせないのが望ましい」

 

風間「気付かせない······となれば、ボーダー内部でも情報統制の必要が出てきますが」

 

忍田「そうだ。作戦を伝えるのは、B級以上の必要最低限の人員のみだ。ランク戦も防衛任務も通常通りに行う」

 

城戸「尚、一応大規模な侵攻である可能性も押さえつつ、基本的にはA級中心で警戒・迎撃に当たる。八幡、2国の情報があれば、追加で教えてもらえないか?」

 

八幡「それは······難しいっすね。ロドクルーンなら少しだけ立ち寄ったことありますけど、補給のためでしたから。せいぜい、トリオン兵が他より若干特殊なものを開発してるって噂で聞いたくらいです。レプリカは?」

 

ちびレプリカ『私の内部のデータバンクの情報でもほぼ同じだ。申し訳ない』

 

城戸「いや構わん。迅、今回はお前の予知が前提になっている。働いてもらうぞ」

 

迅「そりゃもちろん。実力派エリート、存分に働かせていただきます」

 

 

 

 

開発室。

 

エネドラ『···········おっと。一つ忠告しといてやる。ヒュースの奴には、このこと知られねー方がいいぜ』

 

遊真「······?」

 

修『·····それは、ヒュースが帰りたがってるってことか?』

 

エネドラ『察しがよくて助かるぜメガネ。今は大人しくしてるかもしんねぇが、あの犬っころのことだ。国に帰るチャンスをみすみす逃すわけがねぇ』

 

修『······その話、もう少し聞かせてくれ』

 

エネドラ『·········あ?』

 

 

 

 

 

 

 

遊真「いやはや。なかなか面白い話が聞けたな」

 

尋問を終えた2人は本部の廊下を歩いていた。

 

遊真「それにしても、随分とヒュースの話に食いついたじゃん」

 

レプリカ『······今回の侵攻で何らかの行動は起こすだろうが·····』

 

修「ああ。今日嵐山さんに会いに行ったのは、チームの戦術の相談だったんだけど······ヒュースをうちの隊に引っ張り込めないかな」

 

修は、ヒュースと利害が一致するなら、遠征部隊の目標に協力させるのもアリだと思っていた。

 

遊真「なんと!オサムは考えることは違いますな」

 

レプリカ『しかし、何故急にそのようなことに?』

 

修「一番は利害が一致してるってことなんだけど······」

 

遊真「?他にも何かあるのか?」

 

修「ああ。多分だけど、今回の侵攻で········

 

 

 

 

ヒュースは何をしようと帰れない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガロプラ遠征艇内。ここで、ガロプラの遠征部隊の会議が行われていた。

 

ガトリン「今回の任務について。決定を伝える」

 

それぞれご固唾を飲んでガトリンの言葉を待つ。

 

ガトリン「·······アフトクラトルからの指令は、玄界での《足止め》だ」

 

コスケロ「足止め?」

 

ガトリン「玄界の兵がアフトを追えないように打撃を与えるのが俺達の仕事だ。やり方は一任されている。で、今回は敵の基地への攻撃を行う」

 

レギー「基地っすか?街を狙うんじゃないんすか?」

 

ラタ「それは、基地のトリガー使いを狙うと?」

 

ガトリン「いや、人間は狙わない」

 

ウェン「雛鳥もなしってこと?」

 

ガトリン「そうだ」

 

コスケロ「何故です?トリガー使いを狙うのは、玄界にとって文字通り痛手·····アフトの注文通り足止めにもなる」

 

レギー「そうっすよ。アフトは20とか捕まえたんでしょ?戦利品くらいあったって······」

 

ガトリン「今、玄界の民に手を出せば、玄界の戦力は俺達に向く。ウチの方が軌道が近いからな」

 

ラタ「玄界の目をウチに逸らすのがアフトクラトルの狙いだと?」

 

ガトリン「少なくとも、俺はそう見てる。ロドクルーンもまた然りだ」

 

レギー「あの角野郎ども·····」

 

ガトリン「玄界は、黒トリガー4人を含むアフトの精鋭を退けている。戦術的有利があったとしても、相当な戦力だ。そんな相手に恨みを買う必要はない」

 

ラタ「そこで、基地への破壊工作というわけですね?」

 

ガトリン「そうだ。次に作戦の話に移る。ヨミ」

 

ヨミ「了解」

 

ヨミは、手元のコンソールを操作し、立体のディスプレイを表示させる。

 

ヨミ「今回、アフトから送られてきた情報から確認された玄界の実働部隊は、50人程度。総数はその倍から3倍ほどだと思われます。雛鳥については、戦力として数える必要はないでしょう。そして、最低でも3つ、多ければ5つの黒トリガーを持っています」

 

アフトクラトルが実際に確認した玄界の黒トリガーは、修、遊真、小町のものであり多ければ、の2つは八幡と天羽のそれである。学習型の黒トリガーなので、アフトクラトルは八幡のトリガーの識別を行えなかったのだ。

 

レギー「3つと5つじゃ全然違えだろ。適当な情報寄越しやがって」

 

ウェン「直接アフトに言いな」

 

コスケロ「こちらの戦力は、我々6人と手持ちのトリオン兵·····ロドクルーンと連携が取れないなら、戦力的に厳しいですね」

 

レギー「てか、何でロドクは不参加なんすか?」

 

ガトリン「不参加じゃない」

 

ヨミがコンソールを操作する。ディスプレイに情報が追加される。

 

ガトリン「ロドクルーンは、黒トリガー2個、ドグ200対にアイドラ150体を出すと言ってきた。これでは文句は言えん」

 

レギー「はぁ!?黒トリガー2個!?そもそも、あそこは黒トリガーは1つしかなかったんじゃ」

 

ガトリン「傭兵を雇ったと聞いている。詳しい話は俺も知らない」

 

レギー「マジすか······」

 

ラタ「向こうが雇ったのと、連携は取れるんですか?」

 

ガトリン「いや、向こうの黒トリガーは向こうでやるらしい。邪魔はしないとのことだ。ま、やりようはある。これからそれを詰めていく。玄界に着き次第、実地調査を行う。ロドクルーンからトリオン兵が届き次第、作戦開始だ」

 

「「「「了解!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月19日。ROUND5当日。

 

『ズガッ!』

 

香取隊隊長の香取葉子がモールモッドをスコーピオンで両断する。

 

香取「·····アタシ達これからランク戦なのに防衛任務っておかしくない?うちが不利になんじゃん。不公平」

 

雄太「ホントだよね!俺もそう思う!」

 

若村「何処だってこういうことはある。不利だっつーなら少しは記録見ろよ」

 

香取「今日の相手って、柿崎隊と川崎隊と玉狛の中学生チームでしょ?柿崎隊にはずっと負けてないし、川崎隊は弱いし。玉狛だって上位あがってボコられたって言うじゃん。大したことないでしょ」

 

若村「柿崎隊と川崎隊と対戦したのはずっと前だろうが」

 

染井『········3人とも。仕事中よ。真面目にやって』

 

香取と若村が不満を言い合うなか、染井が半分呆れながら制す。

 

若村「········華さんに怒られたじゃねえか」

 

雄太「まあまあ落ち着いて」

 

香取「あんたのせいでしょ」

 

雄太「葉子ちゃんも」

 

香取隊の3人は任務を引き継ぎ、本部に戻っていった。

 

 

 

 

·····香取が倒したモールモッドの口の中から、犬のような姿のトリオン兵・ドグが現れた。

 

 

ガロプラ遠征艇内。

 

コスケロ「結構手際いいですね。玄界の兵は」

 

部隊の面々は、偵察モードのドグから送られてくる映像を見ていた。

 

ウェン「今のが玄界のトップなら楽なんだけどね」

 

コスケロ「真ん中ぐらいじゃないか?昨日の槍使いの方が強かったよ」

 

ヨミ「······探知トリガーは無効化していますが、これ以上は近づけません。監視の目に掛かります」

 

ガトリン「流石に、忍び込むのは無理か」

 

レギー「アフトから情報漏れてんじゃねぇの?」

 

ヨミ「·····この数日で、目標が地下にあるのは分かってます」

 

ラタ「強行突入でも問題ないでしょう。新型もありますし」

 

ウェン「そうね」

 

ガトリン「トリオン兵は?」

 

ヨミ「準備は完了しています」

 

ガトリン「よし。玄界よ部隊が交代する時間を狙う。日が沈んだら仕掛ける目標は······玄界の艇だ」

 

 

 

 

 

 

同時刻。警戒区域。

 

八幡「········迅さん、今香取が倒したモールモッドから、なんか犬みたいのが出てきました」

 

八幡はドグから見つからない程の距離から、ライトニングを構えてドグを監視していた。迅の予知により、夜以外本部にずっと居るのだ。

 

迅「そうか·······ッ!······敵が来る。八幡は本部の付近まで戻ってくれ」

 

八幡「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 




黒トリガー使いの傭兵はオリキャラの予定です。パロキャラは極力使いません。


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40話:表と裏の戦い(裏側、その1)


時系列は、表側その2が終わる直前です。表側は、香取隊の防衛任務が原作より早い時間に終わっています。


レイジ『······司令部、こちら木崎。狙撃班、位置についた』

 

当真『こちら当真。同じく準備完了』

 

古寺「!·····来ました!トリオン兵です!」

 

古寺の覗くスコープには、敵の集団戦闘用トリオン兵・アイドラが映っている。アイドラは、人型のトリオン兵で何体かが一塊になって行動する。

 

半崎「多くてダルい·······」

 

穂刈「面倒だな。数が多くて」

 

そうこうしているうちに、アイドラがスナイパーの射程まで接近する。

 

レイジ「······迎撃開始!」

 

 

 

 

 

 

レイジ『迎撃開始!』

 

レイジさんの声とともに、目の前から迫り来る大量の人型トリオン兵に、本部の屋上で待機していたスナイパー達の射撃が放たれる。

 

八幡「早速始まったな」

 

当真『なんだこいつら。シールド重ねてガードしやがる』

 

見れば、射撃をシールドでガードしていた。性能高いな。

 

奈良坂『一体ずつ集中して倒す』

 

今度は、張られたシールドの一点に射撃が集中。シールドを突き破ってトリオン兵を迎撃していく。

 

八幡『地上部隊迎撃を開始。狙撃班の援護を』

 

俺は、地上で待機していた部隊の指揮権を与えられている。俺の合図に、色んな人が『了解!』と返して側面からトリオン兵に攻撃を開始した。その時、何かが空に打ち上げられた。

 

 

 

 

 

コスケロ『·······玄界の部隊が集まって来ました。どうします?』

 

ガトリン『このままいく。1分でいい。黙らせろ』

 

コスケロ『了解』

 

コスケロは、門発生用の小型のトリガーを打ち上げる。打ち上げられたトリガーは、本部の屋上に突き刺さると門を発生させ、ドグが現れる。

 

 

 

八幡「レイジさん、何が打ち上げられたんすか?」

 

レイジ『門発生用のトリガーだ。下の部隊は一旦退け。狙撃なしだと数に食われるぞ!』

 

レイジさんによると、門発生用のトリガーらしい。門からは、さっき見た犬みたいのが大量に出て来たらしい。上は、レイジさんと荒船さんが対処するらしい。流石は武闘派スナイパー。

 

八幡『一旦後退します』

 

俺達は、後退して引き気味に射撃で攻撃する。射撃トリガー持ってない攻撃手はキツイな。·······その時、俺は確かに見た。トリオン兵が壁に何かをくっつけたと思ったら壁に穴が空いて、4体のトリオン兵が本部に侵入するのを。

 

八幡『忍田さん!本部にトリオン兵が侵入しました!』

 

言ってて気付いた。まさか·······トリオン兵に化けた人間····?

 

忍田『こちらでも確認した!』

 

八幡「何人か、中に戻って追って下さい!」

 

俺は近くにいた人に叫ぶ。その時、突然声が聞こえた。

 

「そうはさせないよ」

 

八幡「は!?」

 

この声······間違いない、少し低くなってはいるが、絶対にアイツだ。あの日、俺を殺して、俺が殺した筈のアイツだ········!

 

八幡「てめぇ·······何で······!」

 

その時、近くにいた嵐山さんと木虎に、物凄い雷撃が飛んできた。

 

八幡「クソッ!」

 

俺は、2人の前に滑り込んでシールドを限界まで強度を上げて張った。

 

『ドゴォォォン!』『バリバリバリバリッ!』

 

雷撃がシールドにぶつかった瞬間物凄い音が響いた。······ただ、皮肉なことに、この音が復讐心に支配されかけていた俺を現実に引き戻した。

 

 

 

 

八幡「·······てめぇの所為で通常トリガーが両方ともパーだ。クソッタレが」

 

俺の戦闘体の爆発の後、生身で現れた俺の掌の上の戦闘用・生活用のトリガーが、『パリィンッ!』という甲高い音とともに、2つとも粉々に砕け散った。緊急脱出は雷撃でトリガーが不具合起こしたっぽくて、発動しなかった。が、この状況じゃあ幸いだな。まぁ、今右目と左腕がない生身。戦場でこれとかマジで死ぬかも。死ぬ気はないが。

 

嵐山「比企谷·····?お前·····その腕····」

 

木虎「比企谷先輩·····?」

 

2人は、俺の左腕を見ながら言ってくる。他にも、何人かは俺を見て驚いたり訝しんでいた。こういうの嫌だから極力トリガー使ってたんだがなぁ·····ただ、今は無視する。他に話がしたい奴がいるからな。

 

八幡「······てめぇはあの時確かに殺した筈だ。何で生きてやがる····ジーガ········!」

 

俺は、ソイツに言った。そして、ソイツは言い返してきた。

 

ジーガ「それを言うなら、君こそ殺したのに生き返ったじゃないか。その黒トリガーによって」

 

ジーガ・アリアド。あの日、あの時、あの場所で俺を殺した男。そして、親父を生贄にして生き返った俺が殺した筈の男。

 

八幡「てめぇの所為で·······親父は死んだ」

 

ジーガ「それこそ、君は僕の部隊を全滅させ、全員残らず殺した。一人残らずね。あの中には僕の妻になる筈の人間もいた。今は、この黒トリガーになってるけど」

 

コイツは何があったかは知らんが、どうやら俺のように黒トリガーを媒体として生きていた。

 

八幡「嵐山さん、俺の指揮権全部譲ります。代わりに、手を出さないで下さい」

 

嵐山「待て比企谷。お前はどうするんだ」

 

八幡「俺がアイツと戦います。敵は黒トリガーですから、下手に突っ込んで頭数減らされるのは困ります」

 

そう言って、俺はネックレスを握りしめる。

 

八幡「«ラプラス»起動」

 

俺の体が«ラプラス»の戦闘体に換装される。背中にライフルを背負って、左腰に帯刀していたブレードを抜く。ブレードは、淡いピンクの光を放って輝いているかのように見えた。

 

ジーガ「作戦会議は終わったかい?」

 

八幡「ああ、てめぇをぶっ倒すな」

 

ジーガ「そうか!」

 

ジーガは、そう言うと同時にさっきよりも大きな雷撃を放ってきた。コイツの黒トリガーは、砲撃型か。ランバネインの奴みたいな感じだろうか?それを考えるのを辞め、雷撃を防ぐ。

 

八幡「フリスベルク」

 

さっきよりも大きな音が響き渡る。雷撃を防いでも、一瞬だけ『バチッ!』という音が聞こえたので、少しその場に留まるのだろう。まぁもう大丈夫か。

 

ジーガ「········へぇ。一時流れた天使とか言うのは君のことか」

 

八幡「あっそ」

 

ジーガが言ったのは俺の背中に生えた純白の1対の羽根だろう。尚、背中に背負っていたライフルは自動的に解除されて消えている。俺が思いっきり羽根を広げると、一瞬だけ光る粒子が飛び散った。

 

フリスベルク。それは玄界への帰還中に補給で立ち寄った国で襲撃された時、襲撃した奴らが使っていた、羽根の生えたトリオン兵だ。これを解析した結果、この羽根を俺も使えるようになった。

 

さっきの雷撃を防いだことからも分かる通り、これはめちゃくちゃ堅い。羽根だけでも、俺が全力で展開したシールドを重ねたものよりも堅く、そのうえフィールドとして羽根にシールドが常時展開されている。羽根も、破壊されたらすぐに修復される。後、これが一番デカイのだが、普通に空を飛行出来る。グラスホッパーがなくてもぶっちゃけいいのだ。

ここまで聞けば、かなり使い勝手のいい高性能シールドと取れるが、当然デメリットもある。一つ目は、一度展開したら、トリガーを解除しない限り羽根が解除出来ないことだ。2つ目に、そもそも羽根がデカすぎる。この羽根一枚につき3m近くもあるのだ。何で展開したかっていうのは、雷撃がこれじゃないと防げないと思ったからだ。ただ、今の俺の横幅は羽根を含めたら7m近くある。

 

因みに、アフトクラトルが攻めてきた時使わなかったのは、この羽根がハイレインと戦う時邪魔だと分かっていたからだ。これが使用出来るのは一回きり。切り落とされたり、完全に破壊されたら、トリガーを一旦解除する必要があるし、«アレクトール»だったら、羽根を修復してもすぐに穴だらけにしそうだったからだ。·····ここまで長々と、誰に説明したんだろうか。まあ、考えるだけ無駄だからいいか。

 

ジーガ「······ここにいてもいいのかい?僕の仲間がロドクルーンの神を探しに行ったよ?」

 

ジーガがそんなことを言ってくるが、それくらい想定内だ。

 

八幡「だからどうした?」

 

嵐山さんは、他の人に指示を出して、少しずつ俺達から遠ざかっていく。

 

八幡「自分の心配してる場合かよ」

 

俺は、羽根の羽ばたきで加速してブレードで斬り掛かる。

 

ジーガ「君の方こそ」

 

ジーガは電気で作ったと思しき、バチバチと音を鳴らすブレードで俺と切り結んだ。

 

 

 

 

 

 

 

八幡とジーガが戦っているのと同じくして。

 

小町「·······陽乃お義姉ちゃん。来たよ」

 

陽乃「······あなたがロドクルーンの?そうは見えないけど?」

 

陽乃と小町は、比企谷隊の隊室の前に、佇んでいた。そこに、招かねざる来訪者が一人。陽乃は通常トリガー、小町は«マステマ»を起動していた。

 

「····-どうも初めまして。リクリー・ロビートと申します」

 

男はそう名乗った。そして、男は言った。

 

 

 

 

 

 

「神を引き渡していただけますか?」

 

 

 

 

 




キャラ紹介

ジーガ・アリアド
傭兵。今回はロドクルーンに雇われており、中で仕事中をするリクリーの邪魔をさせないための陽動にあたっている。プロローグ①で比企谷時宗が黒トリガーになる原因を作った張本人。黒トリガーで蘇った八幡に殺されかけており、妻になる筈だった女性が黒トリガーになることで生き返る。姿は、中肉中背で、比較的大きな目。髪は金髪。キャラの性格のイメージは、《双星の陰陽師》の石鏡悠斗と、《ガンダム00》のリボンズ・アルマークを足して2で割ったみたいな感じ。容姿の具体的なイメージは《僕達は友達が少ない》の長谷川小鷹みたいな人(と、なりました)。

黒トリガー «雷獅子»
雷獅子は«バンシィ»と読む(名前は《ガンダムUC》のバンシィより)。砲撃型の黒トリガー。電気をブレードにしたり、貯めて一気に放出したりして攻撃する。



リクリー・ロビート
傭兵。ジーガに同じくロドクルーンに雇われ、神の回収を任された。ジーガには、コイツには何か違和感がある、と思われている(本人はさして気にしてない)。背が高く、髪は黒。キャラの性格のイメージは、《るろうに剣心》の斎藤一を少し柔らかくした感じ。容姿もそのまま。

黒トリガー ????





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40話:表と裏の戦い(表側、その1)

玉狛第2作戦室。

 

修「········敵の確認だ」

 

玉狛第2は作戦室に集まっていた。言うまでもなく、ランク戦のためである。

 

修「香取隊はうちと似たような部隊。近距離のエースを中心に戦う。それをカメレオンで他2人がサポートする。逆に、柿崎隊と川崎隊には、決まった点取り屋がいない。柿崎隊は、全員の集中攻撃で点を取る。全員が万能手に寄せたトリガー構成だ。嵐山隊から佐鳥さんを抜いた感じかな?········で、川崎隊は攻撃手2人、スナイパー1人のバランス型だ。三輪隊に近いかな。後、今回で一番うちの隊にも近い。

今回は、敵のスナイパーが少ない。離れた場所から手を出せる千佳が勝負の鍵だ。頼んだぞ、千佳」

 

千佳「うん!」

 

修「川崎隊はバランスを意識した編成だから、何処を選ぶかは分からない。けど、こっちの狙撃を意識して、ある程度建物の多い場所を選ぶ」

 

遊真「そこでオサムの新兵器が活きると」

 

修「そうだ。有利な状況で戦う。作戦通りにいくぞ!」

 

遊真・千佳「「了解!」」

 

 

 

 

川崎隊作戦室。

 

沙希「今回のMAPは《工業地区》だ」

 

ここでは川崎隊が作戦会議を行っていた。

 

沙希「建物の配置、頭に入れた?」

 

大志「もちろんっ!」

 

留美「······問題なし」

 

沙希「玉狛と香取隊は戦い方が似てる。他で守ってエースで叩く。三雲、空閑、香取には単独で戦わないように。分かった?留美」

 

留美「そんなこと分かってる」

 

沙希「ホントに?大規模侵攻でラービットに突っ込んで自滅したこと忘れてないでしょうね?」

 

留美「ッ!·······もうそんなヘマしない」

 

大志「まぁまぁ姉ちゃん。もう試合始まるんだからさ」

 

沙希「分かってるよ大志。玉狛のスナイパーに注意ね」

 

大志「了解っ!」

 

 

 

 

 

 

ランク戦、観客席。

 

武富『······ボーダーの皆さんこんばんは!海老名隊オペレーター武富です!B級ランク戦、5日目夜の部。実況を始めたいと思います!解説席には、嵐山隊の時枝先輩と、太刀川隊の出水先輩のお越しいただきました!』

 

実況についた武富が紹介する。2人がそれに返す。

 

時枝・出水『『どうぞよろしく』』

 

武富『さて!今回の組み合わせは如何でしょうか?』

 

時枝『今期デビューの玉狛第2はともかく、香取隊、柿崎隊、川崎隊が対戦するのは久々ですね』

 

出水『香取隊がずっと上位にいたからな~。香取隊って玉狛と入れ違いに中位に落ちたんだっけ?』

 

武富『そうですね。ROUND3で玉狛第2と入れ替えで中位に降格。ROUND4で那須隊に敗北し、現在暫定順位9位。逆風の吹く中、二期連続上位キープ部隊の意地を見せられるのか!』

 

出水『玉狛がな〜』

 

武富『柿崎隊は、ROUND3で荒船隊に惜しくも敗れ下位に降格。ROUND4ですぐ中位に復帰し現在13位。必要以上に慎重になるという評価を跳ね返して、勝利をもぎ取れるのか!そう言えば、柿崎隊長は、嵐山隊の初期メンバーでしたね』

 

時枝『はい。今も大好きな先輩ですよ』

 

武富『川崎隊は、前期のランク戦でデビューした部隊です!前衛2人に後衛1人のバランス型部隊。連携にまだ固さがあるものの、総合力の高さから、すぐに中位しました!現在14位です!』

 

出水『確か、比企谷が結成に1枚噛んでるって聞いたな』

 

海老名『なるほど······そして、もう1チームは今期の台風の目、玉狛第2!開幕から3連勝して最速で上位入りを果たしましたが、ROUND4で2得点のみの初黒星!上位陣の壁はやはり厚かったか!』

 

時枝『今回はちょっと面白いものが見れるかもしれません』

 

出水『お、何?何か知ってんの?』

 

時枝『さぁ?』

 

海老名『それでは!B級ランク戦ROUND5!間もなく試合開始です!』

 

 

 

 

 

 

 

海老名『さあ転送完了!MAPは《工業地区》!比較的に狭いMAPです!』

 

海老名は、意気揚々に実況している。

 

 

 

修「工業地区·········」

 

修が工場を見上げながら呟く。

 

 

 

海老名『まずは、全部隊合流優先か!?』

 

出水『いや······これは、香取ちゃんが突っかけるな』

 

 

 

 

遊真「1体1か?」

 

急接近してくる香取を見ながら遊真が呟く。

 

香取「勝てばいいんでしょ」

 

2人はグラスホッパーで空中戦を繰り広げる。

 

 

雄太「葉子ちゃん!?」

 

若村「あのバカ一人で突っ込みやがった!」

 

染井『2人とも、援護を』

 

雄太・若村『『了解!』』

 

 

 

海老名『若村・三浦両隊員が隊長の援護に向かう。·······が、転送位置ではやや不利か!』

 

 

遊真と香取がグラスホッパーで飛びながらスコーピオンで斬り合う。

遊真が右腕から出したスコーピオンを香取が左腕からスコーピオンを出して防ぐ。そして、拳銃を至近距離で撃つ。遊真はそれをシールドで防御する。そこに、両腕からスコーピオンを出した留美が2人に斬り掛かる。2人は一旦離れて、突撃してきた留美から距離を取った。

 

留美「チッ······」

 

香取「·······ウザッ」ボソッ

 

留美「········聞こえてる。ニセ胸」

 

香取「あ?」

 

 

 

照屋『空閑君、香取さん、留美ちゃんを確認しました。バッグワームで奇襲しますか?』

 

3人が睨み合っているのを照屋は、近くから見ていた。

 

柿崎『いや、攻撃は合流してからだ。敵が削り合ってくれるのはラッキーだ。うちは、消耗したところを万全の状態で叩く。いいな?』

 

照屋・巴『『了解!』』

 

 

 

海老名『柿崎隊はそのまま合流へ。玉狛と川崎隊は?』

 

時枝『それぞれのスナイパーが高台を取りましたね』

 

 

 

千佳『狙撃準備に完了しました!』

 

修『千佳、敵の位置を逐一確認しろ。宇佐美さんは千佳のサポートをお願いします』

 

宇佐美『オッケー!』

 

 

 

 

海老名『雨取隊員がいい位置を取った玉狛だが、三雲隊長が動かない·······?』

 

出水『香取ちゃんと鶴見ちゃん連れてくんの待ってんな』

 

 

 

修「アステロイド」

 

修がアステロイドを125個に分割して、遊真に誘い出された香取と留美に放つ。2人はシールドでそれを防ぐ。

 

香取「あぁウザッ」

 

 

宇佐美『修君、3人来るよ香取隊ならカメレオン使ってる。レーダーとかで対処してね』

 

修『了解』

 

 

修が再び2人にアステロイドを放つ。香取は、シールドで防いで修に突っ込んで来た。

 

香取「鬱陶しいっての······!」

 

 

留美「·····チッ」

 

遊真「おっと」

 

香取を追おうとした留美は、遊真に阻まれる。

 

その一方、修を狙う香取は、空中で突然何かに跳ね飛ばされた。

 

雄太・若村「「!?」」

 

跳ね飛ばされた香取を千佳が狙撃する。狙撃を集中シールドで防ごうとした雄太だったが、弾丸はシールドを突き抜け雄太の左腕に直撃。雄太の左腕に重石が現れる。

 

雄太「········鉛弾!?」

 

重石で動けなくなった雄太を狙って修がアステロイドを放つ。若村が間に入りシールドで防ぐ。

 

若村「この······!」

 

香取「そっちじゃない!小さい方が来る!」

 

若村は急襲してきた遊真に銃撃するが、遊真はワイヤーを使って立体的に動き、若村の肩を裂く。

 

若村「ぐっ······!」

 

香取が拳銃を撃つが、それを遊真はグラスホッパーで躱す。

 

遊真「ちょっと外れた」

 

修「鶴見さんは?」

 

遊真「何か、突然戦うのやめてどっか行った」

 

修「多分、隊長の川崎さんが呼んだんだな」

 

遊真「ああ、そっか」

 

修達の眼下では、香取が雄太の左腕を斬り落とし、後退して行った。

 

 

海老名『玉狛第2、早くも新技が飛び出した!三雲隊長のスパイダーと空閑隊員の高速機動の合わせ技!更に、雨取隊員のライトニング+鉛弾!香取隊、開始早々手痛い傷を負う!』

 

出水『なるほど~。スパイダーは色変えられるからな〜。敵にとっては障害であり、味方にとっては盾であり足場だ。空閑の身軽さにグラスホッパーってだけでもやばいのに、更にやばくなった。空閑を捕まえるのは相当難しいぞ』

 

時枝『雨取隊員の鉛弾も面白いですね。シールドに干渉しないことに加えて、バッグワームが使えないことを差し引いても、前に比べれば人目を引きにくい。まぁ、莫大なトリオンがないと出来ないことなので他の人には真似出来ないでしょう』

 

海老名『敗戦から僅か数日!玉狛第2、新技を引っ提げて帰ってきた!対する他の3チームはどう戦う?』

 

 

 

 

沙希『ワイヤー?』

 

留美『うん。スパイダーだと思う』

 

沙希『厄介だね。向こうには留美以上の機動力を持った奴がいるから』

 

大志『姉ちゃんどうすんの?』

 

沙希『今はまだ下手にやり合わない方がいいかも。この数日で新技引っ提げてくるぐらいだし、まだ他にも何かあるかも』

 

留美『·······了解』

 

 

 

 

海老名『川崎隊、動かない!』

 

時枝『今動けばワイヤーと鉛弾の餌食になりかねませんからね。他が消耗するのを待つつもりでしょう。柿崎隊も同様ですね』

 

 

 

巴『玉狛がスパイダー使ってます。で、香取隊が追われてて三浦先輩の左腕がないです』

 

照屋「·······隊長、どうしますか?」

 

柿崎「香取隊を狙う。玉狛の新戦法のデータは無え。手負いからやる」

 

 

 

染井『柿崎隊が寄ってきてる。仕掛けてくるよ』

 

香取『分かってるってっ!』

 

柿崎隊が香取達に横撃を仕掛ける。香取と若村がシールドで防ぎつつ銃撃で応戦する。一方の雄太は、空中から襲いかかった巴と対峙する。巴が左手の拳銃のハウンドを雄太の後ろにいた若村に放つ。そこを防ぐが、がら空きになった前から柿崎が銃撃を放った。堪らず、香取隊は更に後退する。

 

染井『3人とも、指示通りに動いて』

 

 

 

海老名『おっと!?香取隊が開けた場所に移動······!?障害物がなければ尚のこと不利になりますが?』

 

出水『いや······そうはなんねぇよ』

 

 

 

宇井『ザキさん!』

 

柿崎「!」

 

香取隊を追う柿崎の後ろから、修がアステロイドを放ってくる。

 

柿崎「玉狛······!」

 

若村「撃ち返せ!」

 

若村と香取が銃撃で反撃する。柿崎隊は一旦後退した。

 

 

海老名『柿崎隊、挟撃を嫌ってか退却!香取隊は玉狛第2に救われたか!』

 

時枝『香取隊が動いた位置は、無防備に見えて玉狛第2と香取隊で、柿崎隊を挟める位置だったんですよね』

 

海老名『しかし、玉狛が動かなければそのまま全滅も有り得ました』

 

出水『玉狛が動くっつう目算があったんだろ』

 

時枝『玉狛第2は遠征部隊を目指していますからね。上に追いつくために大量得点を狙うのは当然かと。香取隊もそう踏んだんでしょう』

 

海老名『3部隊、それぞれ距離を取った。膠着状態に入るのか?』

 

出水『どこも3人揃ってて、無理に動く必要ないからな。今まで動かなかった川崎隊がどう出るかも気になる』

 

 

 

修「実践でのワイヤーはどうだ?」

 

遊真「かなりいいね。まだ少し慣れんけど、機動力なら負ける気がしない」

 

修「なら、どんどん張っていこう」

 

修『千佳、そこから頼んだ』

 

千佳『了解』

 

 

 

 

時枝『·······この膠着状態は玉狛に有利ですね。現に、好きなだけワイヤー張ってます』

 

海老名『他の3部隊はどう動くのか!』

 

 

 

香取「玉狛は遠征狙いなんだから、点が欲しいんでしょ?うちと柿崎隊で競り合えば、手を出す筈。ワイヤーないとこに引き摺り出すのよ」

 

若村「その方がいいだろうな。上手くすりゃあ、動きがない川崎隊も誘い出せるかもしれねぇ」

 

雄太「玉狛の鉛弾はシールドじゃ防げない。射線に注意して」

 

 

 

 

 

留美「······どうするの?」

 

沙希「そろそろ動くよ。どの道、柿崎隊と香取隊は戦いながら、玉狛第2を引き摺り出そうとするから、そこをまとめて叩く。スナイパーは·······」

 

沙希『大志、敵のスナイパーに注意しな!あと、任せたよ!』

 

大志『了解姉ちゃん』

 

 

 

 

海老名『MAPに動きが!香取隊・柿崎隊は戦う素振りを見せる!川崎隊も動き出した!露骨な罠には踏み込めないか。ひとまず放置するというところか!』

 

時枝『········さて、放っておけるかな?』

 

その時、千佳が建物に向かって狙撃した。

 

 

 

 

香取「何よこれ!?」

 

香取の目の前は建物が吹き飛んでいた。

 

若村「知らねえのか!?玉狛の大砲だよ!」

 

 

 

千佳が再びアイビスを撃つ。今度は、柿崎隊のすぐ側の建物を吹き飛ばした。

 

柿崎「やっぱ来やがったか·····!」

 

照屋「まずいですね。下手したらワイヤー地帯以外全て吹き飛ぶかも」

 

柿崎「とりあえず移動するぞ!ここにいたら俺達は無防備だ!」

 

 

 

海老名『玉狛の大砲が炸裂!得点というより、獲物を燻し出すようです!』

 

時枝『レーダー頼りで命中させるのは難しいですからね。炙り出しでイーグレットで狙うのでしょう』

 

千佳は更に砲撃し、どんどん建物を破壊していく。

 

海老名『雨取隊員は、連射で位置が割れている!しかし·····討つには、玉狛の張った蜘蛛の巣と踏み込まなければなりません!』

 

出水『意地でも罠に引き込むつもりか〜。ワイヤー地帯以外全部吹っ飛ばすかもな~』

 

海老名『大砲という利点をワイヤーで更に強化しま玉狛第2!対する3部隊の対応は!?』

 

 

 

 

 

修「そろそろ、3部隊とも動く筈だ。一旦分かれよう」

 

遊真「了解」

 

修「川崎隊の方へ行ってくれ。僕は柿崎隊を獲りに行く」

 

遊真「香取隊は?」

 

修「あそこが一番火力に伴う射程が短い。速攻で倒して、香取隊を倒しに行く」

 

遊真「空閑了解」

 

修と遊真は、それぞれで撃破に向かった。

 

 

 

柿崎「スナイパーを獲りに行くぞ!ここで吹っ飛ばされたくねぇ!」

 

照屋・巴「「了解!」」

 

 

 

 

香取「あたし達もスナイパー獲りに行く。他の部隊もスナイパーを狙う筈」

 

若村「分かった」

 

雄太「鉛弾狙撃はどうする?」

 

香取「そんなもん、撃つ場所が分かってれば怖くないわ」

 

 

 

 

 

 

沙希『あたし達はスナイパーを獲りに行くよ!他に先越されちゃたまんない』

 

沙希と留美は、砲撃をもとに千佳を獲りに向かう。

 

大志『分かった!いつでもいいよ!』

 

留美「!······待った!」

 

沙希と留美が退る。2人がいた所にスコーピオンのブレードが走った。

 

沙希『大志、あんたのタイミングに任せた』

 

2人の前に遊真が立つ。

 

遊真「初めましてカワサキ先輩」

 

沙希「欲しいのは2点?」

 

遊真「·······随分つまんない嘘つくね」

 

沙希・留美「「!!?」」

 

 

 

 

修「どうも初めまして柿崎隊の皆さん。3点頂いていきます」

 

一方の修は、柿崎隊と対峙していた。

 

柿崎「アテが当たったか·····?いや、外れたな」

 

巴『俺がスナイパー狙いに行きますか?』

 

柿崎『それは香取隊に任せよう········正直言ってこいつはやばい。全員でかかってもどうなることか』

 

 

 

 




最後の遊真のくだりは突発的に書きたくなっちゃったんです。


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41話:表と裏の戦い(表側、その2)

 

 

 

沙希と留美は遊真と対峙していた。

 

留美『········どうする?』

 

沙希にスコーピオンを構えた留美が通信で話しかける。

 

沙希『数ならこっちが有利。向こうには射程がない。あんたとあたしで釣って大志が落とす』

 

留美『······了解』

 

大志『了解!』

 

留美がスコーピオンを右手に遊真に突っ込む。遊真も留美に突っ込み、2人で斬り結ぶ。遊真は、留美を盾にして沙希の射線を避ける。

 

沙希「········厄介だね·····」

 

 

 

武富『玉狛の砲撃を止めるため、敢えてワイヤー地帯に踏み込んだ3隊!玉狛は柿崎隊と川崎隊を迎え撃つ!一方、香取隊は着実にスナイパーに近づいている!』

 

 

 

沙希はアステロイドのキューブを展開するが、留美を盾にされて攻撃出来ない。キューブを消して、レイガストで遊真に斬り掛かる。それを短くしたスコーピオンで受け止める。

 

沙希「あんたには譲れなくってね」

 

遊真「········ほう」

 

沙希は至近距離でアステロイドのキューブを27個に分割して放つ。

 

遊真は退りながらシールドで防ぐが最初の何発かを食らい、足に穴が空きトリオンが漏れ始める。

 

遊真「·······」

 

沙希「(まだ大志が撃つ場面じゃないね·····)」

 

そこに、留美が再び遊真に斬り掛かる。

 

 

 

 

 

 

一方の修は、柿崎隊の3人を相手取っていた。

 

柿崎「········やってみな!」

 

修が周りにワイヤーを張る。

 

照屋・巴「「ハウンド!」」

 

照屋と巴がハウンドを撃つ。修はシールドを2分割して防ぐ。そこに柿崎が弧月で斬り掛かる。修はそれを集中したシールドで防ぐ。巴は、修を撃てる位置まで回り込みにかかる。照屋は、張られたワイヤーを斬り始める。

 

 

 

武富『柿崎隊長が三雲隊長に斬り掛かる!照屋隊員がワイヤーを斬るための時間稼ぎか!三雲隊長、それを見過ごさない!』

 

 

 

修は柿崎を蹴り飛ばし、照屋と巴に125個に分割したバイパーを放つ。そして、スコーピオンを両手から出し巴に斬り掛かる。

 

柿崎「(········スコーピオン!?前回までレイガスト使ってたのに!?)」

 

巴がスコーピオンを受け止めると、柿崎と照屋はライフルを出して、修に撃ちかかる。修は片方のスコーピオンを消し、ワイヤーを巴の腹と自分の後ろの壁に張る。

 

巴「!!!!?」

 

修は、ワイヤーを思いっきり引っ張って巴を柿崎と照屋の方に放り投げる。

 

柿崎「なっ!」

 

銃撃が巴に直撃する。そこに、修がマンティスを放ち巴の供給機関を貫いた。

 

 

武富『巴隊員 緊急脱出!先制点は玉狛第2です!』

 

出水『いや~あんな使い方するなんてな〜』

 

時枝『スパイダーの使い方が面白いですね』

 

 

 

柿崎「おいおいマジかよ·······っ!」

 

修が2度目のマンティスを柿崎に放つ。柿崎は横に跳んで躱した。

 

柿崎「上等だ·····!」

 

 

 

 

 

遊真は沙希と留美に対して一人、戦っていた。

 

 

遊真と留美が斬り合う。沙希はレイガストで連携して斬り掛かったり、アステロイドやハウンドで留美の援護していた。尚、遊真は留美にカメレオンで左腕を根本から斬られている。そのためトリオンもかなり漏出していた。ただ、留美も右足が死んでいる。

 

遊真「(········流石にまずい····)」

 

沙希「ハウンド!」

 

沙希がハウンドを放つ。遊真はシールドで防ぐが、とうとう遊真の戦闘体にヒビが入り始めた。

 

沙希『押し切るよ!』

 

留美・大志『『了解!』』

 

留美が遊真に突っ込む。留美が右手のスコーピオンを横に薙ぐ。遊真は回転してそれを受け流しつつ、留美右腕を斬り落とす。

 

留美「·······っ!」

 

留美は片手片足になりバランスを崩す。遊真はその隙を突いて留美の首を刎ねた。

 

 

武富『鶴見隊員、緊急脱出!ただ、空閑隊員も戦闘体にヒビが走る!』

 

出水『あ〜空閑がもう限界か?』

 

 

 

沙希「留美!······アステロイド!」

 

沙希が64個に分割したアステロイドを遊真に放つ。遊真はサイドステップでそれを避けつつ接近。すれ違いざまにレイガストを持っている左腕を斬り落とした。

 

沙希「ぐっ·······!アステロイド!」

 

沙希は尚もアステロイドを放ち、レイガストを右手に持ち直す。遊真には限界が迫っていった。

 

 

 

 

 

 

柿崎と照屋は、修に有効打を与えられないでいた。一方、修は千佳に迫る香取隊を注視していた。修は戦いながら、通信を入れる。

 

修『宇佐美さん、香取隊は今何処ですか?』

 

宇佐美『香取隊は一番遠かったけど、あと400mくらい。後1分もかからないで千佳ちゃんに接触だよ!』

 

修『分かりました。千佳、全力で北東に逃げろ!僕も出来る限り急いでそっちに向かう!』

 

千佳『了解!』

 

宇佐美『千佳ちゃん、ルートを送るね!』

 

千佳『ありがとうございます!』

 

修は、銃撃してきた照屋にマンティスを放つ。照屋はマンティスを跳んで避ける。

 

修「コブラ、«鳥籠»!」

 

修は、コブラを125個に分割し照屋に全て放つ。その後、柿崎に斬り掛かる。

 

照屋「シールド!」

 

柿崎「やべぇ!」

 

柿崎は、修を強引に押し飛ばし、照屋の周りに自分のシールドを2枚とも張る。いくつものコブラが、重なったシールドを突き破っていく。修は2人に接近していく。

 

照屋「隊長!」

 

柿崎「まだだっ······!」

 

修がスコーピオンを横に薙ぎ、柿崎の体が腹部のあたりで真っ二つになる。

 

柿崎「文香行け!」

照屋「っ!·······了解!」

照屋は全力でその場を離れる。

 

修「待て!」

 

柿崎「·······お前は強えよ。けどな、ただ負けるのは性にあわねえ」

 

修「·······!」

 

柿崎は、修の右腕を掴み、左手にライフルを出す。そのライフルを修に向けて連射した。そして間もなく、柿崎は緊急脱出した。

 

 

 

 

修「はぁ、危なかった」フゥ

 

修の前にはシールドが張られており、柿崎の銃撃に気付いて、間一髪防ぐことが出来た。修は、敵の特攻にはあまり慣れていない。当然、特攻を受けたことはある。しかし、緊急脱出のない近界では、負け=死であり、自ら特攻しに行くなど、余程切羽詰まっていない限りすることはない。負けそうになる場合、その国の兵だろうが傭兵だろうが一旦退却するものである。

 

 

武富『柿崎隊長 緊急脱出!相打ちで道連れを狙ったか!』

 

時枝『ですが、三雲隊長に看破されてしまいましたね』

 

出水『よくあの場面で対応出来んな』

 

 

 

 

遊真は、沙希に猛攻を仕掛けていた。

 

沙希「·····グッ!」

 

遊真のスコーピオンが沙希の右足を狩る。

 

遊真「(スナイパーは·······)」

 

 

大志『姉ちゃん!』

 

沙希『ダメだ大志!あたしが釣るから撃ちな!』

 

大志『·····分かった·····!』

 

 

沙希「アアッ!」

 

沙希がレイガストを振る。片手片足のため、バランスが取れず姿勢が崩れる。そこを遊真が右肩から袈裟斬りした。遊真のスコーピオンは供給機関を切り裂いた。

 

沙希『今だ大志!』

 

大志が遊真を狙撃する。狙撃が命中し、遊真は右足を根本から失う。それと同時に沙希が緊急脱出する。

 

遊真「そこか」

 

遊真がグラスホッパーで大志を獲りに向かう。

 

 

 

沙希『大志、緊急脱出しろ!』

 

沙希が大志に向かって緊急脱出するよう命令する。

 

大志『グッ·······緊急脱出!』ドンッ!

 

大志は命令に従い、自主的に緊急脱出した。その顔は何処か悔しそうだった。

 

 

遊真「·····!!!」

 

遊真は近くの建物に降りて、宇佐美に通信を入れた。

 

遊真『栞ちゃん』

 

宇佐美『?』

 

遊真『俺後何分もつ?』

 

宇佐美『······いや、後数十秒しか·····』

 

遊真はそこで暫く黙って

 

遊真『······悪いオサム。後は任せた』

 

修に通信を入れて、自分から緊急脱出した。

 

 

 

 

武富『川崎隊員自主的に緊急脱出!』

 

時枝『相手に得点を与えないためには妥当ですね』

 

出水『でも、空閑も自主的に緊急脱出するかも·····って、したな』

 

武富『なんと!空閑隊員も自主的に緊急脱出!』

 

出水『空閑も後1、2分もつかもたないかだったんだろ』

 

時枝『玉狛は上に上がらないといけませんからね。他に得点を与えないためには仕方なかったんでしょう』

 

 

 

 

修『遊真は今どうなってます?』

 

修は、千佳を獲りに向かった照屋を追いながら通信を入れた。それは、遊真が考えているタイミングで。

 

宇佐美『留美ちゃんと沙希ちゃんを落としたけど、もう·····』

 

修『そうですか·······』

 

遊真『悪いオサム。後は任せた』

 

その時、ステージから2人緊急脱出した。

 

修『誰が緊急脱出しました!?』

 

宇佐美『大志君と·····遊真君』

 

修『!!······分かりました。千佳のフォローに向かいます』

 

宇佐美『·····分かった』

 

 

 

照屋「(······雨取さんが一番浮いた駒には変わらない。でも、急がないと三雲君が来る······!)」

 

 

 

若村『川崎隊と空閑が落ちた!三雲が戻って来る!』

 

雄太『三雲君が来る前に何とかしないと······!』

 

現在、香取隊は千佳から70mの地点でバッグワームを使い隠れていた。ライトニングの射程は40m程なので、この距離なら千佳には狙えない。

 

香取『あんなメガネ、どうとでもなるでしょ』

 

若村『お前知らねえのか!?アイツ、大規模侵攻で新型20体以上倒してんだぞ!?』

 

香取『はぁ!?········あぁヤダヤダ。とっとと向こうの大砲落とす』

 

香取隊も、千佳を獲りに向かう。

 

 

 

 

照屋「(·······近づくほど狙撃が正確になる)」

 

照屋は、千佳に追い付く所まで来ていた。尚、千佳はステージの端まで退っており、もう逃げる場所はない。

 

照屋「(後······後1発だけ·······!)」

 

 

 

宇佐美『千佳ちゃんもう逃げられないよ!修君急いで!』

 

修『分かってます!』

 

修はワイヤーをジャンプ台にして照屋を追う。

 

 

 

 

香取『柿崎隊に先越されてんじゃん』

 

香取達は照屋が狙撃され隠れる瞬間を一部見ていた。照屋を狙っても良かったが、その場合千佳の狙撃に晒される可能性もあるので照屋を放置していた。

 

若村『チッ·······後は照屋と三雲だけか』

 

玉狛第2は既に4点取っている。照屋が単独でこの場の全員を倒すなら話は別だが、玉狛第2は勝利がほぼ確定している。

 

香取『やる気なくすわ·····』

 

雄太『もうちょっと頑張ろう葉子ちゃん。ね?』

 

 

 

照屋は、千佳を獲れる距離まで来ていた。

 

武富『照屋隊員、障害物を縫って雨取隊員に確実に接近していく!』

 

出水『もう逃げらんねぇか』

時枝『ここまできたら、雨取隊員も迎え撃つようですね』

 

出水『一転して強気になったな』

 

武富『シールドの効かない鉛弾!照屋隊員、どう出るのか!?』

 

時枝『あ、出ましたね』

 

スクリーンには照屋が飛び出る様子が映し出された。

 

武富『隠れる場所はない!純粋な反射と技術の勝負です!雨取隊員まだ撃たない!ぎりぎりまで引き付けるのか!?』

 

 

照屋が突っ込んで来たのを見て、千佳が狙撃する。当然当たるかと思われたが、照屋は、先程隠れていた建物の破片で鉛弾を防ぐ。その時、千佳はライトニングを解除する。

 

照屋「(······武器を解除した·····!?)」

 

千佳の頭上に、巨大な黒のキューブが現れる。それには照屋も、実況席にいた3人も驚く。

 

『『『「!!?」』』』

 

千佳「ハウンド!!!」

 

黒いキューブは125個に分割され、照屋に襲いかかる。千佳は、鉛弾を使うならと、射手用のトリガーを修に勧められていた。ハウンドはその中で一番鉛弾と相性がいいと、千佳が選んだのだ。

 

 

武富『鉛弾のハウンド!?』

 

出水『いや~まだこんなん隠し持ってたのか〜』

 

 

照屋が鉛弾をもろに食らい地に伏せる。照屋は、ライフルを出し、ハウンドを撃つ。千佳は真正面から来た弾は防御出来たが、時間差で囲むようにして弾が襲いかかる。

 

千佳「!」

 

「よくやった千佳」

 

照屋「·····!」

 

千佳「········修君!」

 

修が千佳の周りにシールドを展開してハウンドを防ぐ。修は、照屋にコブラを放つ。照屋は、それを食らい緊急脱出した。

 

修「何とか間に合ったな······(でも、ワイヤー戦術はまだまだだな。少し考えが浅かったかもしれない。現にワイヤーがかなりやられたし。次は、もう少し考えるべきか)」

 

修の視界には切られた多くのワイヤーが入っていた。

 

 

武富『三雲隊長、間一髪で間に合った!』

 

出水『メガネ君よく間に合ったな』

 

時枝『隊員思いのいい隊長です』

 

出水『これで、玉狛の勝利が確定したな』

 

武富『はい。玉狛第2の現在の得点は5点。香取隊が三雲隊長と雨取隊員を倒しても、生存点含めて4点です』

 

時枝『これを香取隊がどう受け取るかですね』

 

 

 

 

染井『照屋さんが落とされた』

 

若村『どうすんだよ葉子!』

 

香取『あぁもうウッサイ!とりあえず、あのイラつくメガネは倒す!』

 

雄太『その意気だよ葉子ちゃん!』

 

染井『·····なら、葉子は正面から行って三雲君の気を引いて』

 

染井が作戦を指示する。

 

香取『·····了解』

 

染井『雄太と麓郎君は、横に半隠密で回り込んで、雨取さんと三雲君を』

 

雄太・若村『『了解!』』

 

若村『行くぞ!』

 

若村がバッグワーム、雄太がカメレオンを使用する。

 

 

宇佐美『サイドから来るよ!多分、カメレオンとバッグワームでこっちを混乱させる気だね』

 

修『了解。迎え撃ちます。千佳は援護を頼む』

 

千佳『了解!』

 

 

修と香取が射撃戦をしていた時だった。

 

香取「あんたらって、遠征部隊目指してるんだって?」

 

千佳「·····!」

 

香取が大声で修と千佳に話しかけた。

 

修「(話しかけてきた·····?)」

 

香取「友達だか何だかが、攫われてるって話じゃん」

 

千佳「!!?」

 

修「(·······何処でそれを·····?玉狛以外だと上層部ぐらいしか知らないと思うけど·····兄さん達や加古さん達はもちろん、上層部も喋るとは思えないし·····)」

 

 

 

出水『ん?何か喋ってんな香取ちゃん』

 

武富『音声はここまで届きませんが······』

 

 

 

香取はしゃべり続ける。

 

香取「そんなサクッとA級に上がれると思ってんの?二宮隊に負けたクセに」

 

千佳「·········っ!」

 

千佳はROUND4で修と遊真に迷惑を掛けたと思っているので、香取の言葉に悔しくなり下唇を噛む。修はそんな千佳に内部通信で話しかける。

 

修『千佳、聞かなくていい』

 

千佳『でも······』

 

修『いいんだ。千佳はちゃんと前へ歩いてる』

 

千佳『うん······』

 

 

香取「大事な人を助けるためとか、頑張れば出来ないことなんてないとか、本気で思ってるわけ?」

 

修「何のためにそんなことを聞くのかは分かりませんが······僕が遠征部隊を目指してるのは、僕がそうするべきだと思っただけです」

 

千佳「·····!」

 

香取「ムカつく······!!!」

 

 

宇佐美『修君後ろ!』

 

宇佐美から通信が入る。

 

修「千佳、退れ」

 

千佳「うん·····!」

 

修は千佳を退らせ、スパイダーでワイヤーを張る。

 

若村「赤いワイヤー····?」

 

若村が赤いワイヤーを避け、後ろに退ると、そこに張ってあったワイヤーに足を引っ掛け後ろに転ぶ。

 

若村「(気を付けてんのに······何で引っかかる·····!)」

 

転んだ若村に修がスコーピオンで襲いかかる。若村はシールドでそれを受け止める。

 

若村「スコーピオン!?」

 

雄太「ろっくん!」

 

若村「こっちじゃねぇ!大砲だ!」

 

若村がそう言った瞬間、修がモールクローで若村の供給機関を貫く。若村は緊急脱出した。

 

香取「待て!」

 

千佳は、香取から必死に逃げていた。戦闘状態に入った時には既に、修達からある程度距離を取ったが、グラスホッパーですぐに追いつかれてしまった。

 

香取「この!」

 

千佳「·····!」

 

香取が振ってくるスコーピオンをシールドで防ぐ。千佳は、自分が高いトリオン能力を持っていることに改めて感謝した。その時、千佳を追っていた香取と雄太が突然後ろに飛び、香取の右腕と雄太の左腕が突然落ちる。そして、入れ違いに修が千佳の前に立つ。

 

香取「この·····メガネっ!·····!?」

 

修に突っ込んで香取が突然空中で止まる。同様に、仕掛けてきた雄太も動きが止まる。

 

香取「あぁっ!」

 

香取と雄太の背中にはワイヤーが張られており、香取はブランチブレードでワイヤーを切ったが、動きの止まった雄太は修のマンティスの餌食になる。

 

雄太「強い·····!」

 

雄太が緊急脱出した。香取はそれを見て更に憤慨した。

 

 

 

武富『一瞬の攻防で、香取隊 2人が緊急脱出!香取隊長追い詰められた!·····三雲隊長と雨取隊員を包囲したかのように見えた香取隊でしたが、やはりワイヤー地帯は三雲隊長のテリトリーだった!』

 

 

 

染井『ごめん葉子。私の見立てが甘かったわ』

香取「ホンっとに······ムカつくわ·····!自分達は主役面して······!」

 

香取がハウンドを修に撃ちまくる。修はシールドでそれを防ぐ。

 

 

武富『香取隊長の激しい銃撃!玉狛サイドはやや退って対応!』

 

出水『香取ちゃんちょっとかかり気味だな』

 

武富『·······かかり気味。と、言いますと?』

 

時枝『玉狛はトリオン切れを狙ってるのかもしれない。香取隊長の方がダメージは大きいですから』

 

武富『なるほど!玉狛第2は戦い方が徹底しているようです!』

 

出水「(·····申し訳ないけど、2対1で既に香取ちゃんに勝ち目ないと思うな·····)」

 

 

 

香取「(·····勝ちの目はもうないけど、まだコイツには負けてない。右腕はちょん切られたし、トリオンもあんまないけど準備は整った。メガネは寄ればこっちが有利。大砲はその後やればいい。一人ずつ·····落とす!)」

 

香取が突撃をかける。修はそれを見て、左手にスコーピオンを構え、右手に浮かべたキューブを64個に分割して自分の後ろに放った。

 

 

武富『香取隊長突撃!』

 

出水『雨取ちゃんは後回しか』

 

 

香取がワイヤーに突っ込む。

 

修「······!」

 

香取はワイヤーと壁をジャンプ台にしてジグザグに修に突っ込む。

 

 

武富『香取隊長ワイヤーをジャンプ台に!』

 

出水『ある程度は見えてるからな』

 

出水「(とはいえ·····いきなりやって出来るものか?)」

 

時枝『香取隊長もワイヤーを利用出来るなら·····』

 

出水『いや、メガネ君には、いや玉狛第2には通用しねぇよ』

 

 

香取「これでっ·····!?」

 

香取がスコーピオンを振ろうとして、突然空中から落ちる。香取が見ると、右足に重石が付いていた。

 

香取「しまった·····鉛弾·····!」

 

香取の後方には黒いライトニングを構えた千佳がいた。そして、修が右腕を振った。伸びたスコーピオンの刃に、香取は首を刎ねられる。そして、緊急脱出した。

 

 

 

武富『香取隊長 緊急脱出!ここで決着です!最終スコアなんと!

10対0対0対0!玉狛第2の勝利!香取隊が一騎打ちに持ち込んだものの、点数では圧勝という結果になりました!今回の試合、振り返ってみて如何だったでしょうか?』

 

出水『玉狛の新技が山盛りだったな。初見で当たった3つの部隊はご愁傷様としか言いようがない』

 

時枝『玉狛の勝ちパターンが出来てましたね。戦術で優位を取って最後まで倒しきる』

 

武富『なるほど!ROUND4の敗戦から躍進した玉狛第2の新戦術。その肝は何処だと思われますか?』

 

出水『そりゃ·····メガネ君のワイヤーだな』

 

時枝『ですね』

 

出水『近接戦闘しか出来ない空閑にとってあのワイヤーは絶好の足場だからな。しかも敵には邪魔という。空閑が動きやすくなって、敵の意識を散らせて、一石二鳥』

 

時枝『それは雨取隊員の狙撃にも言えますね。川崎隊は、まともに3対1で当たれば空閑隊員を落とせてたでしょうが、ワイヤーとシールド無視の狙撃でかなり意識を散らされた。空閑隊員の位置取りも上手かったので、川崎隊員は狙撃が出来なかった』

 

出水『逆に、空閑にとっては深く斬り込む必要がない。砲撃から全部空閑に有利を取らせるための戦術だろ』

 

武富『では、敗れた隊については如何だったでしょうか?』

 

時枝『柿崎隊は全体的に普段通りやれてたと思いますね。ですが、3人の陣形に拘って雨取隊員を押さえに向かうのが遅かったことなどが敗因かなと』

 

出水『柿崎隊では照屋ちゃんがいい仕事したな。鉛弾狙撃の防ぎ方を見つけて、隠し技のハウンドまで引き出した。今後玉狛と試合するとこは照屋ちゃんに感謝しねーとな。初見で食らったら躱しようがない。玉狛は切り札使っちゃって勿体なかったかも』

 

時枝『川崎隊と香取隊はワイヤー戦術にはまって調子が悪かったですね。いつもの戦術なら、点取り屋の攻撃手を他がフォローしますが、特に香取隊は点を取るチャンス自体がなかった。良くも悪くも香取隊長次第の部隊ですからね』

 

出水『川崎隊も結構惜しかったな〜。空閑と同じく機動力で勝負の鶴見ちゃんが点取り屋だから、ワイヤーにかなり足引っ張られたな。あれがなかったら空閑は普通に落とされてただろうし。メガネ君のワイヤーの仕掛けも分かんなかったしな』

 

時枝『予想はつきますけど、ここで種明かしするのはフェアじゃないので』

 

出水『釣れね~な〜。ま、何にせよ今回はしっかり準備した玉狛が勝つべくして勝った、って感じだな。空閑が自主的に緊急脱出したけどそれでも玉狛には余裕があった。メガネ君のスコーピオンには皆驚いただろうけど』

 

武富『三雲隊長は前回までレイガストを使用していました。何故変更したのでしょうか?』

 

出水『さあな。でも、メガネ君がマンティスやったのには驚いたわ。あれも動揺を誘う戦術なのかね』

 

時枝『とにかく、玉狛第2の戦術に対する貪欲さは他の部隊にも影響を与えるでしょう』

 

武富『この先、ワイヤー戦術が流行するなんてことも·····?』

 

出水『あれは、あの3人がいて初めて成り立ったようなもんだから、同じレベルでやれるとこはあんまないだろうな』

 

出水「(比企谷隊ならって思ったけど、あそこがまずやらなそうな戦術だし)」

 

武富『····さて、本日の試合が全て終了!ランキングが更新されました!玉狛第2は大量得点で4射にジャンプアップ!香取隊、柿崎隊、川崎隊は変わらずという結果になりました。玉狛第2はまだまだ台風の目になりそうです!以上をもって、ROUND5夜の部を終わりたいと思います。解説の御二方、ありがとうございました!』

 

出水・時枝『『ありがとうございました』』

 

 

 

 

 

 

玉狛第2作戦室。

 

遊真「·········それにしても凄いな修。単独で6点か」

 

快勝した玉狛第2は作戦室にいた。

 

修「いや、あれは千佳ありきだから千佳に4点ぐらい入れても良いんじゃないか?」

 

千佳「ええ!?」

 

遊真「確かに、解説でイズミ先輩とトキエダ先輩が言ってた通り、千佳の狙撃がないと成立しないからな。よし、今回のえむぶいぴーというヤツは千佳に決まりだな」

 

修「そうだな」

 

千佳「2人とも!?」

 

千佳が予想外に褒められて逆に慌て始める。

 

宇佐美「いいよいいよ〜。千佳ちゃん一歩前進だよ~!」

 

千佳「は、はい········!」

 

宇佐美「······んん?修君、陽乃さんから何か通信が来たよ」

 

そんな時、宇佐美のデスクに陽乃から連絡が入った。

 

修「義姉さんから?」

 

宇佐美「比企谷隊の隊室の前で小町ちゃんが······黒トリガーと交戦中!?」

 

遊真・千佳「「!!?」」

 

修「分かりました。すぐに向かいます。トリガー起動」

 

修は解除していたトリガーを再度起動した。

 

遊真「それ、いつものトリガーじゃないな」

 

修「ああ。玉狛で改造した予備のトリガーだ」

 

宇佐美「いつの間に!?」

 

修は、先の大規模侵攻で特例で2つ目の戦闘用のトリガーの所持を認められた。理由としては、また黒トリガーを使ってしまうと今度は修の体にどんな変調を起こすか分からないからだ。

修の戦闘体は生身と同じ服だが、パーカーのフードに、小さくボーダーのエンブレムが付いた特別製だ。

 

修「悪い、少し行ってくる」

 

遊真「おう。行ってらっしゃい」

 

修「ああ。行ってきます」

 

修は、隊室のドアが開くと同時に飛び出して行った。

 

 

 

 

千佳「修君大丈夫かな····」

 

遊真「あのハルノさんが来てくれって言ったんだ。修にどうしようもなければ俺達にはどうにも出来ない」

 

千佳「そうだね」

 

 

 

 




ライトニングの射程40mは作者の勝手な想像です。原作で細かいことが出たら無視して下さい。

トリガーセット

三雲修
メイン サブ
スコーピオン スコーピオン
バイパー アステロイド
イーグレット スパイダー
バッグワーム シールド

※尚、今回よりトリガーのリミッターを一部解除している。


川崎隊

川崎沙希:オールラウンダー
メイン サブ
レイガスト アステロイド
スラスター ハウンド
FREE TRIGGER バッグワーム
シールド シールド


川崎大志:スナイパー
メイン サブ
イーグレット バッグワーム
ライトニング ダミービーコン(試作)
アイビス FREE TRIGGER
シールド シールド

※東のものを参考に(というか引用)している。


鶴見留美:攻撃手
メイン サブ
スコーピオン スコーピオン
グラスホッパー グラスホッパー
シールド シールド
バッグワーム カメレオン

※師匠は八幡の紹介より風間さん。グラスホッパーは緑川に一通り習った。







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42話:表と裏の戦い(裏側、その2)

茜は、比企谷隊の隊室に匿われています。陽乃と小町がいるのは本部の廊下。


リクリー「·········単刀直入に言います。神を引き渡して頂けますか?」

 

リクリー・ロビートと名乗った男はそう名乗った。私と小町ちゃんの答えは当然······

 

陽乃「無理」

 

小町「お断りします!」

 

リクリー「········そうですか·····なら、仕方ありませんね」

 

リクリーがそう言った瞬間、彼の目の色が変わった。この目は、強い人の証だ。

 

リクリー「«月の炎(フェネクス)»」

 

リクリーのトリガーは«フェネクス»と言うらしい。黒トリガーだろう。

 

陽乃『来るわよ小町ちゃん』

 

小町『はいっ!』

 

私はスコーピオン、小町ちゃんはブレードをそれぞれ構える。対するリクリーも、青い炎でブレードを形成して構えた。変わった構えだ。重心を下げ、左手を前に出し、ブレードを持つ右手を後ろに引いた。

 

リクリー「しゃあッ!!」

 

リクリーが突きを繰り出してくる。私達との距離はだいたい10m。ブレードは、その距離の分だけ真っ直ぐ伸びて私達に襲いかかった。小町ちゃんは大きく斜めに跳んで避ける。私も、退りつつスコーピオンで刃をずらす。

 

陽乃「中々に高音······真っ向からやるのは部が悪いね」

 

刃をずらしたスコーピオンは、大部分が融解している。まぁ、これでだいたいの限界が分かった。

 

陽乃「マンティス」

 

私はマンティスを繰り出す。向こうとの距離などお構い無しに、スコーピオンがリクリーの左腕を肩から裂ききった。裂ききったのだが······

 

陽乃・小町「「!!!?」」

 

リクリー「これこそが«フェネクス»の能力です」

 

斬った筈の肩は、一瞬炎に包まれたと思うと何もなかったかのかのように平然と無傷で繋がっていた。

 

陽乃「あちゃ~·····これは想像以上の奴ね」

 

リクリー「お褒め頂き恐縮です」

 

リクリーが左手を前にかざす。すると、今度はブレードにせずそのまま火球を飛ばしてくる。分割したシールドを直線上に重ねて防ぐ。

 

陽乃『普通に強いね·····』

 

小町『えっ!?』

 

陽乃『向こうのトリガーの能力は、恐らく······ボルボロスに近い能力か再生能力。とんでもない理不尽だね』

 

小町『えぇ·····』

 

リクリー「戦っている最中に余所見とは」

 

小町「!!」

 

リクリーが再び火球を飛ばしてくる。先程と同じようにシールドで防ぐ。

 

陽乃「!!!」

 

が、今度はシールドを突き破って私の右腕の肘から先を飛ばした。何気に、玄界に来てから弟子との稽古以外で初の被弾だったりする。

 

小町「お義姉ちゃん!」

 

小町ちゃんも少なからず動揺している。それだと、«マステマ»の能力使えないよ?

 

陽乃『小町ちゃん落ち着いて。まだやられたわけじゃないわ』

 

小町『でも······』

 

小町ちゃんが言うのも尤もだ。私の右肘にはまだ炎が揺らめいており、少しずつ私の腕を侵食している。それによって、少しずつ腕が短くなっていっている。時期に、炎がトリオン体の全身を溶かすだろう。右腕を根本から切り落とす。これで大丈夫········の筈。

 

陽乃『いいから。小町ちゃん、悪いんだけど時間を稼いで』

 

小町『え?小町一人じゃ······』

 

陽乃『出来るわ。小町ちゃんは八幡に鍛えられたんじゃないの?』

 

小町『っ!·······了解』

 

陽乃『後は任せたわ』

 

陽乃「カメレオン」

 

私の体が透け始める。暫く頑張って小町ちゃん。

 

リクリー「!?·····敵を前にして逃亡ですか?」

 

こんな揺さぶりなら引っかかるつもりない。向こうも分かっているだろう。

 

 

 

 

 

陽乃「八幡は········外で戦ってるか。ん?······これは頼もしいね。頼んだよ───」

 

 

 

 

 

小町「はぁっ!」

 

小町は、今一人でリクリーと戦っています。陽乃お義姉ちゃんが一旦離脱したので、小町は一人なのです。にしても······

 

リクリー「これでは私を倒せませんね」

 

今斬り落とした腕は直ぐに元通りです。«マステマ»の能力で、小町一人に意識を向けさせているので、正直·······とか言わなくても普通にしんどいです。

 

リクリー「お仲間の方は逃げましたよ?あなたも逃げてはいかがですか?」

 

小町「そんなこと······しません······!」

 

«マステマ»を使う以上、誰かを守るために戦う。お兄ちゃんが小町に«マステマ»を渡した時にした約束です。«マステマ»は、その気になれば、一瞬でボーダー隊員全員の精神を崩壊させることも出来ます。

 

リクリー「威勢がいいのはいいことです」

 

今度は火球を細かくして飛ばしてきます。ライフル(ホントにライフルなのかは分からない銃)を連射して炎を迎撃します。が、向こうの方が数が多いです。小町の左足と右腕の一部に被弾しました。········このままだと、戦闘体がなくなるので、仕方なく左足と右手を切り落します。

 

リクリー「中々いい判断です。あなたの動揺から察するに···戦いに慣れていない。もっと言えば人が死ぬのに慣れていない。違いますか?」

 

小町「そんなの·····っ!慣れたくもない!」

 

自分の周りで人が死んで、それに慣れるなんて。そんなの絶対に嫌だ!

 

 

 

 

 

 

飛んできた雷撃を羽根を前に出して防ぐ。

 

ジーガ「堅いね〜······ホントに面倒だよ」

 

ジーガが電気で作ったブレードで斬りかかってくる。こちらもブレードを出して切り結ぶ。

 

ジーガ「ホンッと面倒だよ!君はぁっ!」

 

八幡「何で2回言った」

 

ジーガ「さあね······っ!」

 

左手にキューブを出して64個に分割。至近距離でそれを放った。だが、ジーガは退りつつ、電撃で弾丸を相殺した。あれ、ギムレットなんだがな····ラプラスには、アステロイドとギムレットを別物として入れてるからトリガーセットのうち1個分でギムレットを出すことが出来る。

 

ジーガ「·····とっとと朽ちろ、天使もどき」

 

ジーガは、今までで最大の雷撃·····恐らく、奴の最大の威力の雷撃であろうそれを放ってきた。羽根を2枚とも前に出してそれを防ぐ。今までは、雷撃をちゃんと防いできた。今回も問題ない。

羽根2枚で雷撃を防ぐ。そのうち1枚は大部分が消し飛んだが、すぐに修復される。

 

八幡「俺は朽ちねぇよ。俺はまだ·····死ねないんでな!」

 

俺は羽根を羽ばたかせ空に舞い上がる。本当は、羽ばたかなくてもイルガーとかバドみたいに浮ける仕組みが組み込まれてるんだけどな。気分だよ気分。羽ばたいた際に、飛び散る光る粒子が、一瞬だけ見えた。

 

ジーガ「·····!」

 

 

 

 

黒江が下で呟いたことには誰も気付かなかった。

 

双葉「·············綺麗」

 

戦っている全員が見入っていた。

 

 

 

 

 

上空まで舞い上がった俺はブレードをしまい、両手を真横に突き出し両手から漆黒のキューブを出す。今までで一番デカいキューブだ。2つあるキューブの両方が小さめな家1軒と同じくらいの大きさだと思う。

 

八幡「両攻撃鉛弾ハウンド」

 

ハウンドを視認誘導で放つ。ジーガは雷撃で相殺しようとしているが、そんなことでは防げない。何せ、50×50×50×2で、25万発の鉛弾ハウンドだ。防げる奴がいたら俺が知りたい。

 

ジーガ「なっ·····!!!?重石のトリガー!?」

 

八幡「大当たりだ。じゃあな。ジーガ・アリアド」

 

ジーガは、鉛弾を食らいまくって、体が重石塗れになった。もう一歩も動けやしないな。俺は空に右手を掲げる。更にキューブを4つ出した。全てギムレットのキューブだ。まぁ、今度は1辺が3mの立方体だが。

 

八幡『全員後退してください。消し飛ばすんで』

 

諏訪『はぁ!?』

 

レイジ『諏訪、八幡は本当にあたり一帯を吹き飛ばすかもしれない。早く後退しろ』

 

諏訪『わあったよ』

 

レイジさんナイス。よし。全員後退したな。

 

八幡「いけ、ギムレット」

 

ギムレットのキューブ4つを全て27000個に分割する。手を振り下ろして一斉に放った。周りでトリオン兵と戦っている人に後退を指示しといてよかったぜ。地面に降りたら、周囲15mくらい更地になってるわ。人型トリオン兵の破片が足元に転がっとる······完全にやりすぎた。やべ、何のためにメテオラ禁止にしたんだっけ。

 

ジーガ「クソッ·······!」

 

ジーガの換装が解けた。

 

八幡「お前の負けだよ。ジーガ・アリアド」

 

俺はブレードを突きつける。

 

ジーガ「こんな奴に······!」

 

八幡「黒トリガーを渡せ。そして投降しろ。殺しはしない」

 

ジーガ「それは·······嫌だね!!!」

 

ジーガは耳に触れる。その時だった。

 

『ブゥン』

 

低音が耳に届いたと思ったら、今度は女の声が聞こえた。

 

「あら、随分と惨めね。ジーガ・アリアド」

 

八幡「·······!?何でここにいる!ミラ!」

 

門から現れたのは、アフトクラトルのワープ女──ミラだった。

 

 

 

 

 

 

リクリー「これで終わりですね」

 

リクリーが小町ちゃんに大きな火球を幾つも飛ばす。

 

小町「······っ!」

 

小町ちゃんは左足と右腕を完全に失っており、もう避けられないだろう。現に、もう壁に寄りかかって立っており、殆ど動けなそうだ。

 

陽乃「残念。そうはならないよ」

 

リクリー「おや、逃げ出したと思っていましたよ」

 

私は、火球を全てブレードで細かくなるまで斬り裂いた。彼のトリガーの炎はブレードにしたり火球にすると、高温の物体になるようだ。«サンドラ»のブレードはこの高温でもびくともしない。端的に言って凄いと思う。

 

リクリー「随分頑丈なブレードですね。なら、これはどうです?」

 

リクリーが小さな、無数の火球を現出させる。

 

陽乃「何のために時間を稼がせたと思ってるの?」

 

八幡と修君しか知らないことだけど、«サンドラ»は起動時に使用者の血を必要とする。血をピアスに吸わせないといけない。というか、あのピアス血を吸うとか、身をつけてる我ながら怖い。血は1、2滴でいいけど、黒トリガーを前にしたあの状況では、生身になど戻れない。トリオン体だと血が出ないからね。

 

リクリー「······!!!?」

 

陽乃「気付いたみたいね」

 

小町「······?」

 

リクリーは、どうやら私の頭を見て気付いたようね。«サンドラ»を起動した時のトリオン体では、何故か私は頭に金のティアラを付けている。

 

小町「陽乃お義姉ちゃん·········?」

 

リクリー「どうして·····あなたがそれを!?」

 

陽乃「言う必要はないわ。«サンドラ»」

 

私が前に両手をかざし、«サンドラ»と呟く。それと同時に、飛んできていた火球全てと、リクリーの動きが止まる。

 

リクリー「グッ········!!」

 

小町ちゃんは何が起きたか理解が追いついていないみたい。まぁ、後で説明すればいっか。

 

陽乃「生憎、簡単にあなた達の思う通りにはさせられないのよね~。そうでしょ?」

 

「そうだね」

 

『ドスッ』

 

リクリー「········!?」

 

突然現れた人物が、リクリーの背中に腕を突き刺した。

 

陽乃「あなたの負けね。············修君」

 

修「メテオラ」

 

修君はリクリーの戦闘体内に腕を突き刺した状態でメテオラを使った。直後大爆発が起こるが、修君がリクリーを覆うようにシールドを張ったことで、修君も私もノーダメージだ。

 

 

 

修君がシールドを解く。中からは生身のリクリーが出てきた。

 

修「······それにしても、義姉さんがそれを使うのはこっちでは初めてじゃないか?」

 

陽乃「そうだね〜。使ったのは5年ぶりだよ」

 

その時だった。

 

『ブゥン』

 

私達の耳に低音が届いた。

 

「あら、やはりあなたが持っていたのね」

 

「「「!!!!」」」

 

 

 

 

 

数分前。

 

八幡「てめぇ·······何しに来た!」

 

ミラ「今回はあなたに用はないの」

 

俺の前には、門から出てきたミラがいた。

 

ミラ「ジーガ・アリアド。あなたは始末するよう命令されているわ」

 

ジーガ「何だと!?」

 

八幡「随分物騒な話だ」

 

ミラ「·······さようなら」

 

ミラは、有無を言わさずジーガの左手の中指にはめらていた指輪を、小窓で真っ二つにした。

 

ジーガ「嘘だ······シル······嘘だぁぁぁぁっ!」

 

ジーガの体にヒビが入り始める。

 

ジーガ「嘘だ········」

 

ジーガの体は爆発し、俺を殺した時の茶髪だった生身が現れた。尤も、既に死んでいるが。

 

八幡「黒トリガーの回収じゃねぇのか?」

 

ミラ「彼とその黒トリガーを作った人物は我が国において最高位の大罪を犯した人間。問答無用で殺して黒トリガーも破壊しろ。それが領主の命令よ」

 

八幡「アイツもやることに容赦ないな······」

 

予想してはいたがやはりハイレインか。アイツ、政治に関すること好きすぎだろ。

 

ミラ「そういうことよ。またのようね、ハチマン」

 

八幡「待てミラ!」

 

ミラが門を開く。慌ててブレードを出して横に薙ぐが既にミラは消えていた。

 

八幡「チッ·············ジーガ・アリアド。大罪人か·······」

 

俺の所には、死体のジーガ・アリアドと真っ二つの指輪だけが残された。

ミラが関わってるっつうことは、ロドクルーンの神問題が想像以上に面倒だってことだな。アフトクラトルだけでも厄介だってのに。

 

 

 

 

 

 

修「何しに来たんだ。ミラ」

 

修君が門から現れたミラに問う。何故この女が?傭兵だと思っていたリクリー・ロビートはアフトクラトルの人間だったと?

 

ミラ「今はあなたに構う程暇ではないの。·······ジーガ・アリアドの始末完了しました」

 

リクリー「了解しました」

 

ジーガ・アリアド·······!?その名前は······!!!

 

修「待て。ジーガ・アリアドを知っているのか?」

 

修君がミラに問いただす。

 

ミラ「ええ。先程始末したわ」

 

陽乃「奴は生きていたの······?」

 

ジーガ・アリアド。あの日、あの時、奇襲部隊のリーダーだった男。奴は八幡を殺したけど、«ラプラス»で八幡が殺した筈·······

 

リクリー「奴はアフトクラトルにおいて大罪人。黒トリガー共々始末されて当然です」

 

修・陽乃「「大罪人·······?」」

 

尚、小町ちゃんは一切話に付いて行けず、頭の上にハテナマークが浮かびまくっている。

 

ミラ「リクリー様。帰投します」

 

リクリー「了解。では皆さん失礼致します」

 

修「待て!······クッ」

ミラとリクリーは門の向こうへと消えた。

 

忍田『皆!よくやってくれた。敵は撤退した!』

 

大罪人、ジーガ・アリアドか。私達に様々な遺恨を残したまま、対ガロプラ・ロドクルーン防衛戦は終わった。

 

 

 

 

犬飼「何これ!超滑る!」

 

戦闘が終わった。何かスライムみたいなのが足に付いてる米屋を、犬飼さんが槍を持って回っている。

 

八幡「何だあれ」

 

三輪「敵のトリガーだ」

 

三輪の右足にも同様のものが付いている。

 

諏訪「また変わったもん作ったもんだな敵さんは」

 

三輪「鉛弾と同じ発想のトリガーです。このまま帰って解析に回します·······それより、お前のその羽根は何とかならないのか」

 

警戒が必要だ。と、解除しようとしたら忍田さんに止められました。

 

八幡「これ·······トリガー解除しないと消せないんだわ」

 

三輪「何だそれは······」

 

諏訪「お前、何だそれお前。小っ恥ずかしいwww」

 

八幡「言わないで下さいよ········俺だって恥ずかしいんすから」

 

双葉「カッコイイですよ!」

 

八幡「ああ、サンキュー·······」

 

あの後、ミラに黒トリガーを破壊されたジーガ・アリアドと、破壊された黒トリガーは呼んどいた回収班に回収してってもらった。

 

八幡『忍田さん·······もう解除していいすか?また換装し直すから····』

 

忍田『まあ、それなら構わん』

 

八幡『そりゃどうも······』

 

八幡「ラプラス解除。も1回起動」

 

諏訪「おおっ!羽根が消えた!」

 

三輪「それ······どういう仕組みなんだ·····?」

 

八幡「元々トリオン兵のもんだからな。トリガーに起こしたらこんな仕様になった。あの国のトリオン兵、グレーに近い色だったのに俺のは真っ白だし」

 

三輪「お前のも······学習型なのか·····?」

 

八幡「ん?俺のは空閑のやつほど便利じゃねぇよ。敵のトリガーなりデータなりちゃんと回収しないといけんし」

 

戦闘中に敵のトリガー解析するとか·········レプリカさんマジ有能。

 

三輪「そうか·····」

 

やっぱり襲撃失敗の身としては似たようなのを使ってる奴ってのは何かしら複雑なのかね。そう言えば、修達は快勝したって結果だったな。新しい戦術でも組んだのか?何も聞いてねぇわ。一言ぐらい言ってくれてもいいと思うんだがね······

 

 

 

 

 

陽乃「あ、そうだ。修君、玉狛第2快勝おめでと~」

 

さっきボーダーから支給されたスマホに結果が来ました。10点とかヤバいね!!········って言おうとしたら、うちも2人で7、8点は当たり前になってました。

 

修「ありがとう義姉さん。嵐山さんに少し助けてもらったんだ」

 

陽乃「なるほど〜。嵐山隊は連携のレベルが高いことで有名だからか。何組み込んだの?」

 

う~む。修君のことだから、それなりにエグいことをしてくる筈········

 

修「あ、それは記録見てのお楽しみで」

 

陽乃「ちぇ~釣れないな〜」

 

 

 

 

 

 

ガロプラ遠征艇内。

 

ラタ「········あの陣形、どこかから情報が漏れていたかのようでした。アフトの捕虜でしょうか?」

 

ウェン「それはないね。情報が正確すぎる。玄界とアフトクラトルが繋がってるわけじゃあるまいし」

 

襲撃に出ていた面々は艇に戻って来ていた。

 

ガトリン「······«バシリッサ»が折れた理由は?」

 

ヨミ「········折れたパーツを解析した結果、損傷が2つ重なっていました」

 

ガトリン「同じ場所に2度攻撃を受けたと」

 

ヨミ「はい」

 

ラタ「あの乱戦でそんなことを······」

 

ガトリン「予想以上だ。敵も腕が立つ」

 

ウェン「任務は放棄出来ないでしょ?どうすんの?」

 

ガトリン「少し待ってくれ。ロドクルーンはもうすぐ玄界から離れる。次は期待出来ないな······ウチは玄界の軌道から外れるまでまだ日がある。それまで各自休んでくれ」

 

コスケロ「ロドの雇った黒トリガー使いの一人は殺されたって聞きますが·····」

 

ガトリン「ああ。さっきアフト経由で連絡が来た。ロドはもう一人の黒トリガー使いももう投入しないそうだ」

 

ウェン「向こうは諦めが早いことね」

 

 

 

 

 

ロドクルーン遠征艇内。

 

ここで、2人の男女が会話していた。

 

リクリー「助かりました」

 

ミラ「それには及びません。リクリー様」

 

リクリー「それにしても······«サンドラ»が敵に渡っていたとは聞いてはいましたが·····」

 

ミラ「はい。あれは私達の失態です」

 

リクリー「まぁ、今それを考えても仕方のないことです。ロドクルーンへの報告をどうするか考えましょう」

 

ミラ「········承知しました」

 

 

 

 

 




あっさり終わらせすぎた····三輪君は昔ほど近界民に明確な恨みを持てていません。迷ってて。原作と同じですね。
那須隊VSウェン 太刀川・風間・小南・村上VSガトリン・ラタは省きます。
フリスベルクは、ウイングガンダムゼロ(EW)のバインダーがGNフィールド張ったチートだと思って下さい。1対につき、トリガーセットのうち1を使用し、最大3対まで使用可能(もの凄い邪魔になるけど)。


キャラ設定

ジーガ・アリアド
元々、ある国の奴隷だった。本国を何人かとともに脱走した。その後、傭兵として様々な国を転々としていたが、プロローグ①で八幡に奇襲部隊のリーダーとして襲い掛かり、1度殺す。だが、黒トリガーで生き返った八幡に殺された。その時、結婚の約束をしていた女性(シルリー・ハシュミールという設定)が黒トリガーになることで生き延びた。アフトクラトルとは色々あった(後で書くかも)。ミラがアフトクラトルの軍人であることも、ロドクルーンがアフトクラトルの従属国家であることも知らなかった。

リクリー・ロビート
そもそも傭兵ではない。実際は、傭兵としてロドクルーンに雇われたとなってはいるが、本来はアフトクラトルでハイレインの部下(ハイレインとの関係的には、ヴィザとハイレインの関係に近い)。ジーガ・アリアドの始末のために送り込まれた。

黒トリガー «フェネクス»
炎を実体化(もっと言えば、超高温の物体を作り出す)させ攻撃する。再生能力については、《ワンピース》のメラメラの実みたいなもんだと思って下さい。







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43話:戦火が消えても火種は残る(前編)。


レイジさんのフルアームズって、某〇動戦士のフルアーマーVer.に似てると思うんだ。


 

八幡「··········以上です」

 

城戸「ご苦労だったな。今日はひとまずさがってくれ。また後日招集がかかるだろう」

 

これで、今回の侵攻の報告は終わった。ジーガ・アリアドの事とか、まだ色々と調べたいことがあるが、それはまた今度にしよう。とりあえず今日のところは陽乃を拾って帰るとしよう。祐夜と柚稀菜はまだ早いけど、もう寝てる頃か?

 

八幡「分かりました。失礼します」

 

俺は、会議室を後にした。因みに、トリガーを破壊されて、不便なので仕方なく黒トリガーのトリオン体である。銀髪に蒼眼とか目立ってて恥ずかしい。

 

 

 

 

八幡「······空閑じゃねえか」

 

比企谷隊の隊室に向かう途中、ランク戦を終えたのであろう空閑と雨取と遭遇した。この2人は訓練で俺の黒トリガーをもう見慣れてるので、何とも思わないらしい。未だに何か言うのは那須隊くらい。当たり前か。

 

遊真「おや、ハチマン先輩。どうも」

 

八幡「あ、見たぞランク戦。圧勝じゃねえか」

 

千佳「いや······修君がいたから······」

 

遊真「そうだな。あれは修のお陰だ」

 

そんなことはないと思うんだがな······空閑は単独で川崎隊を撃破したし、雨取も鉛弾で、砲撃と緩急つけてていい援護だったと思うが。

 

八幡「そんなことはねえと思うが····」

 

遊真「そう言えば、ハチマン先輩は何でこんなとこいんの?」

 

八幡「こんなとこって言うなや······隊室で陽乃拾って帰るとこだ」

 

というか、ランク戦終えたコイツらこそ何でここに居んだ?

 

千佳「あ、さっき陽乃さんから隊室の前で戦闘してるって通信が······」

 

八幡「あ、陽乃が修を呼んだんか。てか、本部に侵入した奴か」

 

だからコイツらここに居たのか。

 

八幡「まぁ行こうぜ。まだ修も居るだろ」

 

千佳「は、はい」

 

 

 

 

 

八幡「········修元気だな·····」

 

隊室の前で、陽乃・修・小町は談笑していた。ランク戦やって、戦闘に途中参加してんのに、修が一番疲れてなさそうだぞ。小町なんか目に見えて疲れてそうなのに。

 

修「あ、兄さん。それに遊真に千佳も」

 

陽乃「この中で一番バイタリティ溢れてるからね。新進気鋭の隊長さん?」

 

修「新進気鋭かどうかは分からないけど········」

 

八幡「逆に小町の疲れようが凄いな。何故ここまで差が出るのか」

 

小町「ちょっとその言い方なくない!?小町途中一人で黒トリガーの相手したんだよ!?」

 

遊真「あれ?じゃあハルノさんが通信送ったのって」

 

陽乃「一回カメレオンで隠れました」テヘッ

 

陽乃のテヘッ可愛い。じゃない。それは置いといて。

 

八幡「格上相手に一人にさせるなよ······」

 

陽乃「だって〜。«サンドラ»使わないと勝てなそうだったんだもん」

 

陽乃がブーブー言っている。なんだよ「もん」って。可愛いなおい」

 

陽乃「なっ!?ナチュラルにそんなことを······」///

 

何だ突然顔赤くして。てか、何で修と小町は呆れた目を向けてくるのか。何で空閑は意味深に頷いて雨取は驚いているのか。

 

修・小町「「うわー久々に聞いたよ兄さん(お兄ちゃん)のそれ」」

 

え?声に出てた?恥ずかしいけど言ったことは事実だろ?

 

八幡「声いつから出てた?」

 

修「なんだよ······ってあたりかな」

 

八幡「やべ。久々に癖が出たわ」

 

遊真「ハチマン先輩がハルノさんを口説くのは癖なのか?」

 

修「そうだね」

 

小町「同じく」

 

何故コイツらはこんなに恥ずかしいことを真顔で言ってしまうんだ·······

 

八幡「お前は何処からそんな言葉を覚えてくるんだ·····」

 

遊真「えっと·······この前ハチマン先輩とハルノさんが玉狛に来た時にとりまる先輩とウサミ先輩が言ってた」

 

よし、2人は今度処刑だな。宇佐美は一日眼鏡無し、コンタクト着用だな。烏丸は······思い浮かばねえ。とりあえずポイントは貰っておこう。·······年上の年下いびりだなこれ。しょうがないから、烏丸からは諦めて太刀川さんと米屋から2000ポイントほど徴収しよう。そうだな。それがいい。そうしよう。

 

八幡「とりあえずアイツらの言うことはあんま間に受けなくていい」

 

遊真「ふむ。なんかよく分からんが分かった」

 

八幡「それはどっちなんだ············小南?」

 

気付いたら、いつの間にか小南が近くに来ていた。

 

桐絵「修······」

 

修「」ダラダラ

 

小南は何を言うつもりだ?修に冷や汗がログインしたのは何でだ?

 

桐絵「陽乃や小町や千佳と、随分仲が良さそうね?」ニコッ

 

怖っ!!?小南さん怖っ!!!ヤヴァイ。ヤバイじゃなくてヤヴァイ。目からハイライトがログアウトしてやがる。小南はヤンデレだったのか········修の冷や汗が凄いことになってる。俺と陽乃と空閑は震えが止まらない。小町と雨取なんかはあからさまに怯えてる。

 

修「·····きr」

 

桐絵「何かしら?」ニコニコ

 

修「な、何でもありません······」オビエ

 

 

 

遊真「ハチマン先輩、コナミ先輩が怖すぎるんだけど·······」ヒソヒソ

 

千佳「わ、私も····」ヒソヒソ

 

震えの止まらない俺に、同じく震えの止まらない空閑と怯えてる雨取が小声で話しかけてきた。雨取は俺や陽乃や小町や空閑の後ろに隠れててもおかしくない勢いである。

 

八幡「諦めろ。アイツの性格からして、修が従うしかない」ヒソヒソ

 

何か言えって?ハイライトオフのあの目に何か言える奴が居るなら知りたいくらいだ。あの笑顔はヤヴァイ。何度も言うがヤヴァイ。決して立体機動装置で飛び回る人ではない。

 

桐絵「行きましょう?」ニコッ

 

修「は、はい······」ビクビク

 

終始怯えていた修は、そのまま小南に何処かに連れていかれた。修の将来が心配だ·······憐れ修。強く生きろ。

 

レプリカ『先程のコナミの殺気は驚いた。有吾ですらあのレベルの殺気を相手にしたことはあるかないかだ』

 

レプリカが空閑の指輪から出てきた。機械がダイレクトに殺気を感じるとは·····てか、指輪に避難とかズリぃ。

 

遊真「マジか······」

 

 

 

八幡「·······そう言や日浦は?もう帰ったのか?」

 

ずっと気になっていたことを聞いてみた。熊谷とかが迎えに来たのか?

 

陽乃・小町「「あ」」

 

八幡「お前らなぁ······」

 

帰ったんじゃねえのかいな。コイツら忘れてたのかよ·····日浦可哀想だろ······

 

 

八幡「あ〜·····日浦、もう出て来て大丈夫だぞ」

 

茜「はい」

 

とりあえず忘れていた2人にチョップを食らわして日浦にもう大丈夫だと促す。

 

茜「えっと、さっき凄い怖い殺気?を感じたんですけど······あれはいったい·····?」

 

小南の殺気は壁を余裕で通り抜けたらしい。アイツ何者だよ。

 

陽乃「それは·····アハハ」

 

小町「そだね·····ハハハ」

 

ほら、コイツらも苦笑いしか出来ない。あれをこれ以上の人間に見せてはいけない。特に、これから修に絡んでくるであろう太刀川さんには要注意だ。マークするのは太刀川さんだが、注意するのは小南で、それを未然に防ぐように努力するのは修だ。俺は太刀川さんを注視すればOK。

 

遊真「あ、あれはむぐっ」

 

口を滑らしかけた空閑の口を手で塞ぐ。

 

八幡「言うな空閑。あれは思い出してはならない」

 

遊真「分かった」コクコク

 

空閑が頷く。雨取は「ヒッ!!!」と声を上げていた。流石に、あれはキツい。日浦は話が分からないようで首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迅「玉狛第2大勝利おめでと~う」

 

あの後、家に帰る予定だったが迅さんに誘われて、迅さんの鍋を頂くことになった。なので、一旦家に帰ってお袋と祐夜と柚稀菜を連れて、今玉狛にいる。尚、祐夜は俺と陽乃の間で。柚稀菜は俺の膝の上に座って飯を食っている。柚稀菜だけは特別に具がちょっと違う(単純にアレルギーで)。

 

八幡「はい、あーん」

 

柚稀菜「あーん」パクッ

 

ああ、癒される。

 

八幡「ほれ、祐夜も」

 

祐夜「······あむ」パクッ

 

いや、ほんと可愛いよコイツら。陽乃の目がもうね。俺もだけど。

 

亜真実「ホンット仲いいわね~」

 

遊真「ユキナとユーヤはハチマン先輩が大好きだな」

 

祐夜「うん」

 

柚稀菜「大好きだよ~。えへへ〜」

 

八幡・陽乃「「!!!!?······生きてて良かった!」」グッ

 

可愛すぎる。天使だ······2人の天使が······

 

小町「わっ!?突然どしたのさ2人とも」

 

 

 

 

 

烏丸「見てたぞ。スパイダー上手くいってたな」

 

烏丸はスパイダーの練習に付き合ってたのか。

 

修「練習に付き合って貰ったお陰です」

 

桐絵「え〜。アタシ聞いてない」

 

修「あ、そ、それは」アセアセ

 

修は何であんな慌ててんだ?え、ヤンデレ?何言ってんだ?

 

修「あ、驚かせようと思って」

 

桐絵「そうなの!」

 

小南の修への感情が直線的すぎる。烏丸の目が点になってんぞ。アイツ最近しょっちゅうだよな。まあ、小南のつんけんした態度がああなれば当たり前か。

 

宇佐美「今回の得点で一気にA級挑戦が見えてきたね!レイジさんからのお褒めのメールが······」

 

陽太郎「すばらしい。まったくすばらしいたたかいでした」

 

陽太郎が立ち食いしながら言う。座りなさい。

 

ヒュース「座って食え」

 

ヒュースが言うとは。意外だ。

 

陽太郎「そんなたまこま第2のみなさんに、うれしいおしらせです」

 

「「「「「「········?」」」」」」

 

皆一様にハテナマークを浮かべているが、迅さんだけニヤリと笑ったのが見えた。

 

陽太郎「ヒュースがたまこま第2にはいりたいそうです」

 

「「「「「····!」」」」」

 

有り得ない話じゃないが、そうくるか。迅さんだな。また裏で何かしたのか。

 

桐絵「どういう風の吹き回しよ!?だってこないだ、「100%有り得ない」とか言ったじゃない!」

 

修「それは桐絵が言ったんだ」

 

桐絵「そうだっけ?」

 

小南ェ············

 

ヒュース「迅との取引だ。アフトクラトルまで同行することを条件に力を貸してやってやる」

 

遊真「ほう」

 

桐絵「何考えてるのよ迅」

 

迅「いや〜面白いだろ?」

 

桐絵「面白くないわよ!!コイツはこっちに攻めてきた連中の一味よ!?普通に危ないわよ!」

 

とりあえず柚稀菜の耳はこっそり塞いでる。

 

修「まぁ落ち着いて。それで?」

 

ヒュース「今はオサムと組んだ方が早いと判断した。本国に戻ることを最優先にする。信じるかは貴様らに任せる」

 

遊真「·······一応ヒュースは嘘は言ってないよ」

 

こういう時、嘘を見抜くサイドエフェクトは便利だな。

 

千佳「私は別に······修君と遊真君がいいなら····」

 

桐絵「またそうやって主体性のないことを······」

 

千佳「迅さんも大丈夫って思ってるみたいだし·····」

 

雨取よ。それで判断するのは些か早計ではないか。

 

桐絵「元々、修も遊真も強いんだし、新戦術も上手くいったんだから、こいつをチームに入れなくてもいいでしょ?」

 

ヒュース「それはどうか。今日の戦いはだいぶマシになったが、それでも穴はある。特にチカの重石攻撃。あれは十分に効果的だが、「普通の弾では人が撃てない」と自ら言っているようなものだ。外から見てもバレバレだった。普通の弾なら得点出来るタイミングで重石攻撃をしていたからな」

 

遊真「·········ふむ」

 

修「·········」

 

ヒュースは元々鋭い奴だったが、この数試合で見抜いてたか。この様子だと、他にも気付いてる奴は多そうだな。あ、二宮さんは確定です。

 

ヒュース「それに、3人揃って初めて新戦術が成り立つ。これでは一人欠けただけでそれが瓦解する。現に、今回の試合でもチカはテルヤに落とされかけた」

 

千佳「······!」

 

ヒュース「どれだけ個々が優れていようと、それまでだ。俺が新たなエースになってやる。そうすれば、どんな相手でも互角以上に戦えるだろう」

 

こいつ言い切ったな。

 

修「·······後は、上層部が納得するか。か」

 

八幡「こればっかりはな······」

 

城戸さんが何て言うかだな。あの人は向こうの世界を相当恨んでるからな······

 

修「ヒュースが協力的ならまだ······」

 

ヒュース「一つ断っておくが、俺は本国の情報は何も話さないぞ」

 

こいつの忠誠心も凄いことだ。この状況でもこれなんて尊敬出来るわ。

 

桐絵「何言ってんのよあんたは!我が儘すぎるでしょ!」

 

ヒュース「この点だけは譲れない。ダメならこの話はナシだ」

 

遊真「·····ヒュースが喋らなくても、ボーダーはエネドラの角から情報を引き出してるぞ。意地張るだけ無駄だし仲良くした方が良いんじゃないの?」

 

空閑の言うことも尤もだが、それはないだろうな。

 

ヒュース「情報を得たなら知っているだろうが、俺は主に忠誠を誓っている。損得ではない。再び主君の下に馳せ参じる時、己に恥じる所があるかどうか、だ」

 

流石エネドラットに犬っころと言われただけある。

 

桐絵「情報は漏らさないけど、一緒に遠征には行くわけ?」

 

ヒュース「貴様らが主に害を為すなら、同行して艇もろとも沈める」

 

言い切った。普通に考えたら止めるべきだが·····

 

修「分かった。交渉成立だ」

 

お前ならそう言うよな。

 

桐絵「ちょっと!?」

 

修「損得じゃない分説得は難しいけど、利害が一致してるだけでも組む意味はある。僕もヒュースの主には少し世話になったことがあるし」

 

あの人底なしのいい人だったからな······«サンドラ»の強奪で相当迷惑掛けたろうなぁ·······

 

桐絵「上層部はどうすんのよ」

 

修「ボーダーにとってもそこまでマイナスの話じゃない。やれるだけやるさ」

 

八幡「じゃあ、頑張れ修」

 

修「ああ」

 

 

 




何時かの感想からですが、那須隊のパラメーターを出します。後、修のもう一個のトリガーセットを紹介。

那須玲

トリオン:7
攻撃:9
防御・援護:7
機動:8
技術:9
射程:4
指揮:6
特殊戦術:5 合計55
※BBFで明かされたトリガーセットで空いていたサブの1枠にアステロイド追加。


熊谷友子

トリオン:5
攻撃:7
防御・援護:9
機動:9
技術:9
射程:4
指揮:4
特殊戦術:3 合計50
※空いていたメインの1枠にグラスホッパー。サブの1枠にアステロイド追加。


火浦茜

トリオン:5
攻撃:8
防御・援護7
機動:6
技術:9
射程:7
指揮:3
特殊戦術:4 合計49
※空いていたサブの1枠にスコーピオン追加。



三雲修(改造トリガー)
メイン サブ
スコーピオン スコーピオン
レイガスト イーグレット
スラスター メテオラ
バイパー アステロイド
ハウンド バッグワーム
韋駄天(試作) テレポーター(試作)
グラスホッパー グラスホッパー
シールド シールド
※ホルダーの数をレイジと同じ片側8個ずつに増設。










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