とある魔眼の概念殺し《完結》 (黒須 紅)
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禁書目録
Prologue 死神は図書館と出会う


―明日学校だってのにプロローグ一時間で書いちまったぜ―
ご意見、ご感想お待ちしております


――七月十九日――

 

「くそっ!あのガキどこ行った!散らばれやろうども、あのツンツン頭のガキを見つけろ!」

 

「はぁ…俺はアイツらを助けてやったのに、追い掛け回されるなんてなぁ…」

 

前者は、いかにもな格好の不良、後者はツンツン頭で、丸い眼鏡をかけた少年―この話の主人公である上条当麻―である。なぜこんなことになっているか、それにはちゃぶ台より低く、洗面台よりも浅い理由がある。簡単な話が、いや見てもらったほうが早いだろう。

 

十数分ほど前に、彼が食事しようと立ち寄ったファミレスで、注文を決めかねていると、

 

「なぁ嬢ちゃん渡すものがあるだろう?」

 

なんて逝ってる(誤字にあらず)不良たちを見て、

 

〈あぁ助けてやろうかな〉

 

などと考えた結果がコレだ。しかし、それは普通とは少し違う。なぜなら

 

「やっと見つけたわよ。上条当麻!」

 

そこまで考えたところで、少女が大きなモノを引きずりながら叫んでいた。

 

「ン?あぁみつかっちゃったか。油断したな」

 

考え事に熱中しすぎたかな、などと人のよい笑みを浮かべながらばやいている少年をみた少女は、額に青筋を浮かべつつ、引きずっていたモノ、いや『者』を手から離した。

 

「あぁやっぱりそうなったか。助けようとしたんだけどな」

 

苦笑を浮かべつつ、黒焦げの不良を見る。―そうそれは先ほどまで彼のことを追っていた不良のリーダーだ―誰がやったか?簡単だ目の前の少女―御坂美琴―である。簡単な話、彼は助けようとしたのだ、『不良』たちを。

 

彼等が住むこの町は『学園都市』。東京都西部に位置する荒野を切り開いて作られた街。この街の総人口は230万人。その約八割が学生のこの街の売りは、街の外の十年先を行く高い科学技術と、子供達に対する超能力開発だ。

 

さてこの超能力開発、とても仰々しいイメージを抱くかもしれないが、やり方は簡単だ。脳に電極ぶっ刺して、薬と暗示で出来上がり。薬品は機密となっているが、学園都市は学生に故意的に脳の障害を起こさせて、超能力者を量産している。(中には生まれ付いての異能者、通称『原石』もいるが)

 

超能力者には七つのLevelが存在する。

能力が無い、もしくはとてつもなく微弱な者たちは、無能力者―Level0―

弱いが、ないよりましな程度の者達は、低能力者―Level1―

使いどころが限られるが、使えなくは無い程度の者たちが、異能力者―Level2―

アニメで言う中ボス程度の者たちが、強能力者―Level3―

アニメで言う主要キャラ、もしくは人外の域に片足を突っ込んだものが、大能力者―Level4―

総人口230万人の学園都市が頂点、七人しかいないトップランカーたち。一人で軍隊と渡り合える者たちが、超能力者―Level5―

いまだ誰も至っていない、学園都市の目標。『SYSTEM』と呼ばれる、神の領域に脚を踏み入れるのが、絶対能力者―Level6―

となっている。そして彼の目の前に居る御坂美琴、彼女こそが学園都市の頂点である、超能力者―Level5―の第三位『超電磁砲』御坂美琴だ。

 

「てゆーかアンタさぁ。不良を助けようとかどこの熱血先生よ。偽善者気取りたいならよそでやって、目障りだから」

 

「はぁ……で、何の用デスカ。三二万八五七一分の一の天才である御坂サマが落ちこぼれの無能力者である俺に何のよう?俺は帰って寝たいんだけど。かえらしてくれないかな?」

 

「ゼロねぇ……」

 

そう呟いた御坂はポケットの中に手を入れ丸い円形の物、ゲームセンターのコインを取り出す。嫌な予感がした上条は右手をポケットの中に入れ左手を自信の眼鏡に添える。

 

「ねぇアンタ、レールガンって知ってる?」

 

「は?」

 

話が飛躍したどころではなく、全く関係のない話を振られた上条は、間の抜けた声で聞き返す。しかし御坂はかまわず話を続ける

 

「超強力な電磁石を使って金属の砲弾を打ち出す艦載兵器らしいんだけど」

 

そこで彼女はコインをコイントスのように真上へとはじく。コインは彼女の指の上に戻り、

 

「こうゆうのを言うらしいのよね!」

 

音を置き去りにし、オレンジの軌跡を残しながら上条の横を通り抜けた。

 

「…………ッ!」

 

「まぁさすがにあんな雑魚に使っちゃ居ないから安心しなさい。普通に追い払うなら、コレで十分よっと」

 

彼女の頭の辺りから角のように雷が飛んでくる。ソレを彼は横に転がり回避する

 

「何でアンタは傷一つ無くよけれるのよ、それに……」

 

もう一度御坂は雷を放つ。上条当麻は、動かないいや、左手を動かし、右手はポケットから取り出した文鎮のようなものを握っている。そして彼に雷が向かい、火花が暗い街を照らす。しかし、目標の少年にあたる直前で雷は消える。彼の右手にはナイフが握られ、彼がつけている眼鏡は外されていた。

 

「で、なんでアンタは傷一つ無いのよ。そんなナイフで避雷針の代わりになるはずが無いでしょ?書庫(バンク)にもそんな能力載ってないしなんなのよアンタは!」

 

それはそうだ。そもそも彼の超能力と、彼女達の超能力は、定義が違う。彼女達の異能が外に矛先を向けているのに対し、彼の異能は自信の内に向かっている。彼女達は脳の回路を送信にあわせているのに対し、彼の脳は回路を受信にあわせている。燃料と理屈は同じ、ただ回路だけが違う。そういった差だ。

 

「ククク、ハハハハハ」

 

彼は嗤う、彼の師のように、彼は嗤うさながら死のように、そして彼は言う、師が使った言葉を

 

「あぁ、御坂お前運がいいな。大凶に当たるなんて選ばれた人間の証だよ」

 

そう、笑いながら言った彼の目は、とても美しい蒼色だった。

 

―七月二〇日―

 

彼はいつもどうり目を覚ました、昨晩ちょっとしたトラブルがあったが、許容範囲だ。軽く体をほぐして、足りていない単位の分の補修のことを思い、朝からテンションが下がったため、気分転換に布団を干そうとベランダに出た。そしてベランダに出ると

 

「ありのまま起こったことをはな「グ~」……」

 

混乱していた頭がこの音で少しマシになった。何が起きたか、ベランダにはすでに干されてた、

 

真っ白い修道服を着たシスターが

 

「おなか減った」

 

「はぁ?」

 

「おなか減ったって言ったんだよ」

 

その言葉にバカらしくなって、上条は考えるのを止めた

 

「わかった、飯作ってやるから入れ、っておっと」

 

「?」

 

言葉を切った上条に首をかしげるシスター

 

「君はなんて名前なんだ?俺は上条当麻だ」

 

「私の名前は禁書目録、魔法名ならDedicatus545だよ!」

 

「魔法名ねぇ……まぁいいか少し待っててくれ飯作ってくる」

 

「ありがとうなんだよ、とうま!」

 

そうして少年は出会う、魔術に、そして少し狂った運命は動き出す。これは正史と外れた物語。蒼の死神の後継はそのチカラでなにをなすのか。

 

―これは死と科学と魔術が交差する正史と外れた物語―




師匠は言わなくてもわかりますね。質問もお待ちしております。キャラ紹介はそのうち


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第一話 死神はオカルトすらも殺す

質問・感想などお待ちしております


死神はオカルトすらも殺す「で、インデックスなんでウチのベランダに干されてたんだ?」

 

朝食を終え、目の前の少女がなぜベランダで布団のように干されていたのかを問う。

 

「こうビルとビルの間を飛び移ろうとしたら落ちたんだよ」

 

そう彼女は昨夜上条が某第三位とやりあっていた頃飛び移ろうとし、失敗。そのまま上条の家のベランダに引っかかったのだ。

 

「しかしなんでまたそんなこと考えたんだ?下手したら死ぬぞ」

 

「仕方なかったんだよ。追われてたからね」

 

その言葉に上条は疑問を隠せない。なぜ彼女のような少女が追われるのか、そして……

 

「なんで屋上から落ちて無傷なんだ?」

 

そう、彼女の体には数メートルの落下をしたにもかかわらず、傷一つ無いのだ。

 

「簡単だよ。私の体には『歩く教会』ってゆう防御魔術が張ってあるからね」

 

「はぁ!?魔術?」

 

この街は学園都市。超能力を科学で作る街だ。だからこそ『魔法』『魔術』などのオカルトは信じられていない。普通の人間ならだが。ここに居る上条当麻は普通などとは540度角度がちがう人間だ。

 

「魔術ねぇ。この世界にもあったのかよ……」

 

知り合いの魔術師を思い浮かべ軽く辟易しつつ

 

「で、オマエの服は防御結界とやらなんだな?」

 

と確認した。

 

「む、信じてなさそうだねとうまは。ちょっとまってて」

 

と、言い残しインデックスは台所まで走っていった。まぁすぐ戻ってきたが。

 

「コレで私を刺せばわかるんだよ!」

 

などと自己主張の慎ましい胸を張って言った。

 

「ふざけるなよ!それでもし不備があったりしたら警察行きだっつーの。もっといい方法があるぞ」

 

「もっといい方法?」

 

インデックスが首をかしげる。そのインデックスの目を見て話す。

 

「俺には二つ異能があってな。一つはこの目、魔眼殺しをかけて抑えてるが、かなりハイエンドな魔眼でな。コレが無いと完全には制御できないんだ」

 

眼鏡を指差して言う。インデックスは唖然として声も出せないようだ。

 

「まぁ今はこっちは関係ないか。で、もう一個がこの右手」

 

ホラ、とインデックスの前に右手を突き出す

 

「コイツの名前は『幻想殺し』異能の力を何でも打ち消しちまう以外に役に立たない右手だ。やったことは無いがカミサマの奇跡だって打ち消せるぞ?」

 

インデックスはこの言葉を聴いて笑い出した。

 

「なんだよ、いきなり笑い出すなんて」

 

「だってとうまって神様とか絶対信じてないのに、神様の奇跡も消せるなんて……ねぇ?そもそもソレが本当なら君ってもっと不幸なはずだよ?『神様の加護』も消しちゃうだろうし」

 

「あぁソレはな、この右手の無効化能力ってon/offができるんだよ」

 

そうこの右手は10年ほど前に目を手に入れてから、on/offが切り替えられるようになっていた

 

「で、この右手をonにして服に触って反応したら、魔術を信じよう」

 

「本当!?なら早速「だけど!」なに?」

 

上条はコレだけは伝えなければならないことを伝える。

 

「もし、服を無効化したときに、裸になっちまってもいいならやってやる」

 

「別にいいんだよ。早く早く!」

 

そして上条は右手で修道服の袖をつかむ。後ろを向いた状態で。

 

パリーン

 

ガラスの割れたような音がした。そしてソレと一緒に修道服も千切れた。

 

「キャアアアア」

 

「だから言ったのに」

 

後ろを向いているので見てはいない

 

――修道服修復中――

 

「で、なんでオマエは狙われてたんだ?」

 

「あぁソレはね」

 

安全ピンだらけの、ステキな格好になったインデックスに、疑問をぶつける上条。

 

「それは?」

 

「私が持ってる十万三千冊の魔道書画が狙いだと思うよ」

 

『法の書』などの魔道書を持っているという。何所に在るかが気になったが、聞かないことにした。

 

「そっか、でこれからオマエはどうするんだ?」

 

「教会にかくまってもらうかな?あと数日なら逃げれると思うしね」

 

この少女を上条は助けたくなった

 

「別にウチにいてもいいぞ」

 

だからこんな台詞が出たんだろう。だが、インデックスの反応が悪かった。

 

「いや、いいよ。巻き込んじゃうしね」

 

「そんな巻き込むなんて」

 

そこまでいったところで、悲しそうな顔をしたインデックスにさえぎられた。

 

「じゃあ、一緒に地獄の底まで付いてきてくれる?」

 

「それは……」

 

言葉を濁す上条。

 

「もういいんだよ。ご飯ありがと、おいしかったよ」

 

インデックスは玄関から外に出て行く。

 

「いつでも来ていいからなー」

 

その背中に声をかけて、部屋に戻ると、インデックスの帽子が転がっていた。

 

「おいといてやるか。さて、補修の用意しなくちゃなー」

 

そして彼は自身の高校までの、歩を進めた。

 

――夕方――

 

「えらい目にあった」

 

そう、悪友の土御門元春と青髪ピアスにからかわれ、小学生にしか見えない担任の月詠小萌には居残りを食らった。

そして、寮について自分の部屋がある階まできて見たものは

 

背中をバッサリ切られた血まみれのインデックスだった。

 

「だれが、こんなことを……」

 

口から出た言葉に、知らない声が答える。

 

「僕たち魔術師だけど?」

 

振り返り、声の主と距離をとる。そこには

赤い髪にシルバーリングとピアスをつけた、神父服で長身の男が居た。

 

「でもなんでここにインデックスが」

 

「さぁ?落し物でもしたんじゃないのかい。昨日は被り物があったけどあれはどこにいったんだろうね?」

 

『巻き込んじゃうから』そう彼女は上条のために危険を冒して被り物を取りに来たのだ。

 

「邪魔だから退いてくれないかな?ソレの回収に邪魔だ」

 

「回収だと・・・・・・ッ!」

 

神父の言葉に上条は激怒する。

 

「あぁ回収さ。そこに居る十万三千冊を回収しに来た」

 

その言葉に上条は右手をポケットに入れ、左手を眼鏡に添える。

 

「そんなモンが何所にあるんだよ!」

 

「ソレの頭の中だよ」

 

完全記憶能力って知ってるかい?その言葉に上条は唖然とする。ソレはつまり……

 

「十万三千冊の本を覚えてるのか!?」

 

「わかったから早く回収させ「生命の危機に従い『ヨハネのペン』始動します」起きたか、自動書記」

 

機械的な口調のインデックスが自身の状態を述べる。

 

「あと二十分で生命活動が危険になります」

 

「そんなわけだからはやくどけよ、素人」

 

「オマエの名前はなんだ?」

 

いきなりで少し面食らうが、すぐに答える

 

「ステイル=マグネスと名乗りたいんだけどここはForitis931と名乗っておくよ」

 

その言葉に不穏なものを感じた上条は眼鏡を外し、右のポケットから文鎮のようなものを取り出した。

 

「魔法名と言ってね。色々意味があるんだがここではね」

 

自分の中のスイッチを切り替えるために一時目を閉じる。

 

「殺し名だよ」

 

炎の剣が自分に向かってくる。その直前に目を開ける。

そして彼の世界は

 

――ひび割れる――

 

――――

 

彼の魔眼についての説明はまだだったので、ここですることにする。

彼がもつ魔眼の名は『直死の魔眼』死が見える魔眼だ。

 

この目は死が『線』と『点』に見える。その線を断てばいかなるものも切断でき、その点を穿てば過程を飛ばして、あらゆるものに死を与える。

 

彼の『右手』が神の奇跡すら打ち消せるなら、彼の『目』は存在するなら神であっても殺せるのである

 

――――

 

ステイルは勝利を確信し、インデックスの元へと向かった。

 

「おいおい、つれないな。どうせならもっと殺し合わないか?魔術師」

 

その声にステイルは戦慄する。彼には一切の魔力を感じなかったソレなのになぜ?

 

なぜアイツは無傷で立っている!?

 

そこまで考えた彼は自身の最強を呼び出すことにした。

 

「さて、魔術師逃げるなら……いや、もう遅いか」

 

「それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。

 それは穏やかな幸せを運ぶと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。

 その名は炎、その役は剣。

 顕現せよ我が身を喰らいて力と為せ――――――――――――――――」

 

それは人型をした炎。ルーンがある限り再生する炎であり、現在のステイルが切れる最強のカード。その名は――

 

「『魔女狩りの王』!」

 

呼び出された摂氏三千℃にも至る炎の固まりは上条へと向かい、うでを振り上げそして――

 

「この程度でオレに勝てると思ったか魔術師」

 

死神の手により、一瞬で十七に分割された。ルーンに居所などが無いにもかかわらず『魔女狩りの王』は再生しない。

 

「どうゆうことだ『魔女狩りの王』『魔女狩りの王』ッ!」

 

「無駄だ、線を断った。アレはもう死んでいる」

 

そう彼は一瞬で『魔女狩りの王』の死の線を全て断ったのだ。

 

「話にならん来世からやり直せよオマエ」

 

―――閃走・水月―――

 

一瞬で距離をつめ、ステイルを殴り飛ばす。ステイルは数メートル飛んだ。

 

そこには、血に染まり、倒れているシスターと、とても綺麗な蒼い目をした死神がたたずんでいた。



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第二話 魔術と超能力

えぇー軽く戦闘シーンが稚拙な文章で入っています。期待せずにご観賞ください。

それでは存分にお楽しみください


『魔術師』ステイル=マグネスを撃破した上条はナイフをしまい呟く。

 

「さて、インデックスの様子はどうなっているかな」

 

シニカルな笑みを浮かべてインデックスの元へ歩く。彼女は危険な状況だった。彼は彼女を背負い、とりあえず学生寮を出る。路地裏に入るとインデックスの頬を叩く。

 

「さて、これからどうするかな」

 

そう、問題はそこなのだ。彼女を匿うのならば最悪『死』の可能性も出てくるだろう。だが、

 

「このままほっておくわけにもいくまい。」

 

そうほっておけば彼女は確実に死ぬだろう。仮にもこの身は『殺人鬼』どの程度の傷で人が死ぬかなど簡単にわかる。

 

「べつ、に大丈、夫だよ?内、臓が傷つい、てるわけじゃないから、傷さえふさがればなんとか…」

 

だが、彼に回復魔術は使えない。ならば手段は一つ

 

「おい、インデックス魔術使えるか?できるなら手順を教えろ。その傷を治療するぞ」

 

そう彼に手段がないなら、違う場所から持ってこればいい。インデックスの頭の中にある十万三千冊を使えば容易いだろう。だが、

 

「君、には無、理かも」

 

傷の所為で上手く言葉を出せないが、インデックスは答える。そう彼にこの魔術は使えない。

 

「どうしてだ?オレの右手ならon/offが可能だから問題ないが」

 

「違うんんだよ。そういう意味じゃなくて」

 

そう、なぜなら……

 

「そもそもとして超能力者ってゆうのがダメなんだよ。『魔術』ってゆうのは、君たちエスパーみたいに『才能ある人間』が使うものじゃなくて『才能の無い人間』が異能を使うためのものなんだよ」

 

超能力者には魔術が使えないのだから。

 

「君たち『超能力者』と私たち『魔術師』はつかっている魔術の回路が違うの」

 

ゆえに上条当麻は『魔術』が使えない。彼がいくらLevel0で、異能が使えなくても、彼の『直死の魔眼』はその回路を使って発動しているのだから。

だが、彼もそのままでは終わらない

 

「超能力者じゃない人間なら誰でもいいんだな?」

 

「?うん。この、程度なら、中学生で、もできると思、うけど」

 

上条はインデックスを背負い走りだす。そうソレだけが聞きたかった。魔術の才能がいらないのならば問題ない。

 

彼の頭の中には小柄な担当教諭が浮かんでいた。

 

―キングクリムゾン!小萌先生の家までのやり取りは全て消し飛ぶ!―

 

全力疾走して、担当教諭の住所の場所まで来た上条が見たものは!

 

いかにもな外見のアパートだった。

 

「……」

 

言葉を失う上条。だがここで止まっていたらインデックスの命が危ないため、眼鏡をかけて担当教諭の部屋のチャイムを鳴らした。

 

「はいはーい。新聞はお断りですよ~」

 

などと、成人女性でも高い声で返事をしたのが、自身のクラスの担任。月詠小萌だ。

 

「あら?上条ちゃんどうしたんですかこんな時間に」

 

「いえ、少し先生に用事がありまして、中入りますよ、答えは聞きません」

 

小萌を押しのけて進んでいく上条。

 

「だめですよ~///教師の部屋に無理やり入るなんて」

 

「背中に背負ってるもの見てからいってください」

 

その言葉を聞いて、上条の背を見る小萌。

 

「キャー血まみれの女の子が、どういうことですか上条ちゃん!」

 

「えーっとですね、この子は知り合いで、学園都市に今日着たばかりでして。案内の約束をしていた俺が迎えに行くと、スキルアウトにこの子が囲まれて、背中を切られたんですよ。で、スキルアウトから逃げ回ってたんですけど、状態が危なかったので、ここにつれてきました。」

 

インデックスを寝かせながら真っ赤な嘘を本当のことのように話す上条。

 

「さて、この子宗教やってるんで、頼み事とかなるべく聞いてあげてください。俺少し用事があるんで」

 

「どこ行くんですか上条ちゃん」

 

少し怒った様子の小萌に引き止められる。インデックスをおいていくことに怒っているのだろう。だが上条にもここに留まれない理由がある。

 

「いえ、コレをやった奴等がここにきたらやばいのから、相手してきます」

 

それだけ言い残し、上条は出て行った。困惑する小萌の姿をスルーして、

 

「生命力の低下に伴いヨハネのペンを起動します」

 

機械的な口調で、抑揚の無いインデックスの声が部屋に響いた。

 

――――

 

一方の上条は路地裏に来ていた。そう彼は尾行されていたのだ。それを撒いたのだが、そのままでは見つかる可能性があったのでわざわざ自分からあいに来たのである。

 

「あの子はどうなっていますか」

 

女の声が路地裏に響き渡る。ソレを聞いて上条は嗤う。

 

「なに、今治療中だよ。そんなことより、だ」

 

彼の右手にはナイフ『七ツ夜』が握られ、顔には何もかかっておらず、目は蒼くなっていた。

 

「殺し合おうじゃないか魔術師」

 

その言葉と同時に上条は駆け出した。暗闇の中に居たのは、二メートル以上ある刀を持った、片足が切られたジーパンと、腹だした格好の美女だった。

上条が駆ける。そして彼女が自身の刀に手をかけると同時、七つの斬撃が、上条の左右前方から迫る。ソレを上条は、七ツ夜で切り裂いた。そして突然彼は足を止める。そこは彼女の間合いの一歩前。後一歩進めば刀が自身を真っ二つにするだろう位置。そして彼女が口を開く。

 

「七閃を初見で見破り、ステイルの『魔女狩りの王』をその、ただのナイフで制す」

 

そう、先ほどの斬撃、魔術ではなく、ワイヤーが七本同時に襲ってきたのだ。ソレを上条は、すべて切っただけ。現に先ほどの場所にはワイヤーが落ちている。

 

「そんなことは素人にはできないでしょう。えぇ問わせていただきます。貴方はいったい何者なんですか」

 

それを聞いて上条は嗤う。

 

「人に名前を聞く時は自分からって聞かなかったのか?まぁいいオレの名は上条当麻。ただのしがない殺人鬼だ」

 

そして彼は彼女に問う。

 

「吾オレ無意識かどうかは不明だが、言葉と一緒に殺気が飛んでくる。いきなりのことに彼女は少し怯むがすぐに答える。

 

「神裂火織です。ですが、できればもう一つの名は名乗らせないでください」

 

「もう一つの名?あぁ魔法名とやらか。別に名乗ってくれて構わんぞ?やることは変わらん」

 

上条の笑みが深くなる。ソレを見た神裂は、

 

「いえ、コレは忠告ですよ上条当麻。次に合うときまでにあの子――インデックスと縁を切ってください」

 

「ほう切らなければどうなる」

 

上条が不敵に嗤いながら問う。ソレを神裂は一瞥した後、背を向け去っていった。

 

「そのときは――名乗ることになるかもしれません。私の魔法名を」

 

とゆう言葉を残して。上条は神裂が居た場所に背を向け小萌のアパートまで歩を進める。

 

「まったく何が「何者ですか」だ。それはこちらのセリフだ。油断していたら一週間は動けなかったかもしれん。だが、まぁいい」

 

彼は七ツ夜をポケットにしまい、眼鏡をかける。

 

「俺はインデックスを守り抜くだけだからな」

 

そこまで行って彼は空を見る。嗚呼今日は――

 

「こんなにも、月が――綺麗だ」

 

聖人と死神は邂逅した。次に待つのは争いか、和解か。

 

月が不気味に輝いていた




どうだったでしょうか?少しはレベルが上がっていると嬉しいのですが。

ご感想お待ちしております


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第三話 死神VS聖人

上条強すぎるwww

第三話お楽しみを


ここは某アパートにある小萌の部屋。

 

「上条ちゃん」

 

真剣な声で、名を呼ばれ彼は振り向く。

 

「なんですか小萌先生」

 

眠そうに彼は返す。彼は疲れているのだ。一日で二度も魔眼をスペックギリギリまで使い、七夜の業も使った。そのため小萌の部屋に入った途端倒れるように眠りについたのだが、小柄な担当によって起こされてしまった。

 

「あのシスターちゃんはいったい誰なんですか?」

 

その質問に彼は嘘で返す。

 

「言ったじゃないですか、知り合いです」

 

だが、その程度で騙されてくれる人じゃない。

 

「言い訳はいいです!上条ちゃん」

 

「先生」

 

だから彼も真剣に返す。

 

「コレはこっちの事情なんです。先生には『魔術』の借りもあるから巻き込みたくないんです。だからなにも聞かないで居てくれませんか?」

 

上条の言葉を聴いた小萌は(少し赤くなりつつ)頬を膨らませて立ち上がった。

 

「もういいです。今から先生は買い物に言ってくるので帰ってきたらちゃんと話してくださいよ?」

 

そういって部屋から出て行った。上条はインデックスの方を見る。

 

「これでよかったんだよな」

 

「うん。もうこれ以上あの人には魔術を使わせないほうがいいからね」

 

そうこの世界の『魔術』は彼の師の世界の『魔術』と違い、世界と異なる常識『異常識』と違える法則『違法則』とゆう、世界にとっての毒でできている。魔術師等と違い、一般人では、二度も使えば確実に発狂してしまう。

 

「で、インデックス。お前があいつらに追われてる理由、話してもらおうか」

 

「……ねぇとうま本当に私が抱えてる事情聞きたい?」

 

悲痛な声の彼女の目を見て上条は言う。

 

「あぁ教えてくれインデックス」

 

彼女は話し始めた。罪を懺悔する罪人のように。

 

――――

 

彼女の話は宗教が分かれた原因から始まった。それぞれが独自に変化していった宗教は、全てが違う特性を得た。

 

ロシア成教は『非現実の検閲と削除』を

ローマ正教は『世界の管理と運営』をそして……

インデックスが所属するイギリス清教は、魔女狩りや異端狩り、宗教裁判などの『対魔術』とゆう特性を。

 

そしてイギリス清教にはいつしか特別な部署がつくられた。

その名は『必要悪の教会』毒をもって毒を制す。その思想で作られた、魔術とゆう『汚れ』を一点に引き受ける組織。そしてその際たるものが……

 

「私の中にある十万三千冊の魔道書の原典なんだ」

 

そう、その中にある本は核兵器と変わらない。

 

「私の中の魔道書は、全て使えば世界の法則も捻じ曲げることができるから」

 

だからこそインデックスは狙われる。彼女の頭にある『爆弾』が欲しいから。

 

――――

 

そこまで聞いて上条は口を開いた。

 

「まったく、その程度かよ。心配して損したぜ」

 

「えっ……?」

 

おびえていたインデックスがあっけに取られる。ソレもそうだろう。なぜなら今上条は世界を捻じ曲げることができる力をその程度扱いしたのだから。

 

「お前の話を聞いてばっかりじゃ悪いな、俺の目について教えてやる」

 

そう、彼には関係ないのだ。いくら世界を捻じ曲げるほどの力でも、『殺せば』問題ないのだから。

 

「この目の名前は『直死の魔眼』っつてな。どこぞの死を与える神様と同質の魔眼だ」

 

インデックスは開いた口が治らないようだ。それはそうだろう。『神の子』と身体的特徴が似ているだけでありえない力を持つのに、あろうことか目の前の少年は神と同じ目を持っていると言い出したのだから。

 

「効果は簡単。あらゆるモノの死が線と点になって見える。だから安心しろインデックス」

 

この言葉に我に帰るインデックス。

 

「存在するなら神様だって殺してみせる。だから、魔術師程度には負けねぇよ」

 

その言葉にインデックスは安心し、涙を流しながら上条に抱きついた。

 

――――

 

互いの秘密を打ち明け翌日の夜。上条とインデックスは銭湯に向かっていた。

 

「コーヒー牛乳ってゆうのがあるんだよね、とうま!」

 

「あぁ奢ってやるから少し落ち着け、インデックス」

 

などと離している間に、銭湯の前まで来た。

 

「じゃあ先に行くね、とうま」

 

走って中に入っていった。よっぽど楽しみだったのだろう。それではこちらも、用を済ませに行くとしよう。

 

「ご丁寧に人払いをかけてくれるとは、相手も準備が良い」

 

眼鏡を外して駆け出した。

 

――――

 

「良い月夜だ、こんな日は殺し合うのにちょうど良い」

 

上条が眼前の相手に対して言う。それに相手は答えない。

 

「あの子と縁を切れ、といったはずですが」

 

「強制じゃないだろう?なら関係のないことだ」

 

オーバーリアクション気味に肩をすくめる上条。相対するは―聖人・神裂火織

 

「そうですか、では少し痛い目を見てもらいます」

 

――七閃――

 

ソレを彼は、七ツ夜で切り裂く。が、

 

「なに!?」

 

魔術による炎が上条に迫る。それを点を突く事で消し、横に移動する。

 

「魔術も併用してきたか。だがオレには聞かないことは見てのとおりだが」

 

「貴方は、いったい何をしたのですか?炎がなぜナイフで消せるのです?」

 

もっともな疑問だろう。だが言っても理解できないだろう。この景色は同じ『直死の魔眼』を持つものしか解らない。嗚呼

 

地面は無いにも等しくて、空は今にも落ちてきそうだ。

 

「なに、コレで突いただけだ。特別なことは何も。しかし良いのか?」

 

上条の言葉に疑問で返す神裂。

 

「何がですか?」

 

「こちらの準備は整ったぞ?」

 

――閃走・水月――

 

神裂の視界から上条の姿が消える。

 

「斬刑に処す」

 

後ろから聞こえた声に神裂は、上条の姿を確認せず全力で前に転がる。

 

――閃鞘・八点衝――

 

神裂が居た場所をあらゆる方向からの斬撃が襲う。

 

「へぇ今のを避けるか、普通の人間ならアレで死んでるんだがな」

 

嗤いながらも、上条は攻撃を緩めない。上条は姿勢をクラウチングスタートのように低くする。と、同時に上条の姿が消える。と同時に神裂がしゃがむ。

 

――閃鞘・七夜――

 

先ほどまで神裂の首があった部分をナイフの刃が通り過ぎる。が、しゃがんだのは間違いだった。上条はその体制から、とび蹴りを放つ。

 

――閃走・六魚――

 

蹴り上げられた後に、踵落としをくらい、地面に倒れる神裂。だが手加減されていたことに気付く。なぜなら今の蹴りで命を刈り取ることもできたのだから。

 

「なぜ殺さないのですか?」

 

「聞きたいことができた。それに答えれば助けてやるさ」

 

コレは上条の気まぐれだ。なぜなら『閃鞘・七夜』を放った時点では殺す気だった。彼の疑問によって、神裂は命をつないでいる。

 

「貴様の所属する組織は何所だ」

 

その言葉に神裂は顔を青くする。

 

(やはり、か)

 

「言いたくないなら吾が言ってやる。お前の所属する組織は」

 

ここで一度言葉を切って、確信を持って告げる。

 

「『必要悪の教会』だろ?」

 

その場から音が消える。月が淡く彼等を照らしていた。




どうでしたか?第三話。お楽しみいただけたら幸いです。

でわまた次回お会いしましょう。


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第四話 必要悪の教会

あー次でクライマックスだァァァ!一巻終了にラストスパートをかける!!


「『必要悪の教会』だろ?」

 

彼の確信を持った問いかけ、否確認に彼女は唇を噛んで答えない。

 

「沈黙は是とみなす……だが一つわからないんだが」

 

上条は彼女に、疑問をぶつける。

 

「同僚ならなぜインデックスを襲った?いやそもそもなぜインデックスはお前たちから逃げる」

 

その言葉に神裂の感情は爆発した。

 

「しょうがなかったんですよ!あの子は、そうしないと死んでしまうんですから」

 

上条は何も言わない。神裂は語る。彼女に無理やり背負わせた荷物の重さを、彼女の体質で一年おきに記憶を消さなければ死ぬことを。自分達のそのときの思いなどを。それを聞いて上条は、

 

「ククク、クハハハハハハハハ」

 

爆笑していた。

 

「何を笑っているのですか!あの子はもすぐ死んでしまうのですよ!?」

 

彼女の声に我に帰る。上条は目じりを指でぬぐい、その言葉を発す。

 

「完全記憶能力者が一年で脳の十五パーセントを使うだと?それは嘘だ」

 

神裂は絶句する。今まで信じてきたものが完全に否定されたのだから。

 

「人間の記憶は三つに分けられる。魔道書の原典は『意味記憶』運動の慣れなどは『手続記憶』思い出などは『エピソード記憶』といったように分かれていて、それらは互いに干渉しないんだよ。記憶喪失でも体が覚えてるとか言うだろう?」

 

だが神裂はそれを認めない。真っ向から叫んで反論する。

 

「ですが、彼女は膨大な知識を有していま」

 

ここまで言って上条に遮られる。

 

「それでも変わらない。そもそも人間の頭は百四十年分の記憶を保有できるんだよ」

 

その言葉に神裂は力を失う。

 

「でも、ならなぜ彼女は一年周期で苦しむのですか!」

 

彼女は、最後の手札を出す。組織が言っていたことなのだから間違いが無いと信じていたのだろう。だが、

 

「簡単な話だろう。インデックスの頭の中には正しく使えば世界を捻じ曲げるモノが入っているんだろう?それが理由だ」

 

あっけなく返された。その言葉の意味を神裂は考える。

 

「何の関係が……!まさか」

 

神裂は気付いたのか顔を青くする。そう、

 

「そんな危ないモノ、首輪もなしに所有するわけが無いだろう」

 

そこまで言うと彼は踵を返す。倒れ付す神裂を置いて。

 

「信じる信じないはお前の自由だ、だが信じるのなら明日ここに来い」

 

紙を神裂の前に投げる。そこには小萌のアパートの住所が書いてあった。

 

「まともじゃないよなお互いさ。じゃあな魔術師」

 

七ツ夜をしまい眼鏡をかけて去っていく。彼等の頭上を月が淡く照らしていた。

 

――――

 

翌日の昼

 

「上条ちゃ~んお客さんですよ?」

 

小萌の言葉にインデックスと上条は玄関を見る。そこから二人の人物が入ってくる。その二人を認識したインデックスが逃げようとする。

 

「大丈夫だインデックス。小萌先生、少し席を外してくれないですか?」

 

その言葉に小萌は少し考えた後、

 

「いいですよ~買い物に行く途中でしたしね、今晩は鍋なので、そこのお客さんと一緒に食べましょう」

 

そういって去っていった。

 

「で、答えは出たのか?マグヌスと神裂だったっけ?」

 

だが、ステイルと神裂は答えずにインデックスへ向かって土下座した。

 

「へ?」

 

そうして二人の魔術師は語り始める。自身が行ってきた罪を。そしてそれをインデックスは許した。

 

「ステイルもかおりも辛かったんだね?ありがとう」

 

そういって二人を抱きしめた。二人は呆然としながら問う。

 

「僕たちは君にこんなことをしてきたのに」

 

「許してくれるんですか?」

 

インデックスはうなずいた。俯いていて二人の魔術師の顔はよく見えないが、二人の頬には輝くものがあった。

 

――――

 

「で、結局二人はどうするんだ?俺はコイツにかかってる魔術を解きたいんだが」

 

二人は上条を見る。驚愕を顔に浮かべて。

 

「ん?あぁこの右手は『幻想殺し』つって異能の力なら何でも殺せるんだ」

 

二人はなんて非常識ななどといった類の視線を上条に向ける。

 

「で、どうするんだ?」

 

「私は協力します。この子の記憶はもう消したくない」

 

「僕も、協力するよ」

 

非常に不本意だけどね、などと言っているあたり嫌われたみたいだ、などと考えてインデックスを見る。

 

「で、インデックス俺に任してくれるか?」

 

「うん!」

 

上条の問いにインデックスは笑顔で答えた。

 

――――

 

そんなこんなで、時間は過ぎ、夕食の鍋も終え、深夜。この場に小萌は居ない。温泉に行ったらしい。

 

「じゃあ始めるから二人は入り口を見張っといてくれ。誰か来たら大変だからな」

 

人払いは張っているが、それも完璧ではない。それに上条がいまから行うことは秘密にしたいことであり、彼の奥の手(その割にはよく使っているが)なのだから、当然といえ当然だろう。

 

そして他に誰もいない部屋で、上条とインデックスは対峙する。

 

「じゃあ行くぞインデックス」

 

眼鏡を外し、七ツ夜を持つ。

 

「うん、よろしくなんだよとうま!」

 

そして、彼は彼女に浮かんでいた点を突く。そして、彼は壁に叩きつけられた。彼が殺したのはインデックスの『首輪』では無くそれを守る結界だった。そこまで認識した上条の耳に機械的なインデックスの声が聞こえた。

 

「――警告、第三章第二節―禁書目録の『首輪』第一から第三まで全結界の貫通を確認。再生準備……失敗。『首輪』再生は不可能、現状、十万三千冊の『書庫』の保護のため、侵入者の迎撃を最優先にします」

 

禁書目録を助ける最後の壁『自動書記』が立ちふさがった。



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第五話 禁書目録と自動書記

1巻しゅーりょー

次回は姫神!ではなく過去へんです。

それではお楽しみを


「私には魔力が無いから魔術は使えないんだよ」

 

(なんてインデックスは言ってたが、やれやれ聞くのを忘れてたな)

 

考えを一時中止し、彼はインデックスの様子を見る。

眼の中には血のように紅い魔方陣が浮かび、表情は氷のごとく冷たい。

 

「教えてくれるか?インデックス」

 

目の前の少女は何も答えない。それでも彼は言葉を止めない。

 

「なんで超能力者でもない貴様に魔力が無い」

 

その理由は目の前にある。イギリス清教のセキュリティだったのだ。彼女の使うことができる魔力は全て、この『首輪』に使われていたのだ。

十万三千冊の魔道書を全て使い放たれる魔術は確かに『最強』だろう。ソレはもう『魔神』の域だ。

 

「―――『書庫』内の十万三千冊により、防壁を破壊した魔術の術式を解析。――失敗。該当する魔術は発見できず。侵入者に最も効果的と思われる特定魔術を組み上げます」

 

瞬間インデックスの前の空間が――割れた。

 

「―――侵入者個人に対して最も有効な魔術の組み込みに成功。『聖ジョージの聖域』を発動。侵入者を破壊します」

 

上条は自身が愛用する凶器―七ツ夜を探す。発見し、七ツ夜(とてつもない衝撃を受けたにもかかわらず傷一つない)を取ろうと得物の元へ走り出した瞬間、上条の背中に悪寒が走る。彼は咄嗟にインデックスを見る。

魔方陣が宙に浮かび、空間に走る亀裂が今――割れた。

 

「クソ、がぁ!」

 

反射的に右手を亀裂に伸ばす。その瞬間亀裂から光の柱が上条に迫る。

『幻想殺し』が魔術を打ち消す。しかし、光の柱は一つ一つの粒で構成されており、完全には打ち消すことができない。

 

「どうした!何があった上条当麻」

 

「いったい何が……コレは『聖ジョージの聖域』!なぜインデックスが魔術を使っているのですか!?」

 

二人の魔術師が音を聞き、部屋に入ってくる。

 

「コレを一旦止めてくれ、この状態じゃ動けない」

 

「Salvare000」

 

神裂が魔法名を名乗り、彼女の『七閃』がインデックスの下の畳を切り裂く。

ソレによりインデックスの放つ魔術は上にそれる。

その隙に上条は七ツ夜を拾う。

 

「早くあの子を助けろ、超能力者!」

 

インデックスは体勢を元に戻し魔術を放つ。

しかしステイルの『魔女狩りの王』が『聖ジョーシの聖域』を食い止める。

 

「言われなくてもやってやる!」

 

――閃走・水月――

 

上条はゼロから百まで加速する。と、同時に上から羽が降ってくる。

 

「気をつけてください上条当麻!その羽は一枚一枚が『ドラゴン』の一撃と同意です」

 

その言葉を聴いた上条は進む道の邪魔をする羽を一枚一枚、『点』を突いて殺していく。

 

『魔女狩りの王』が『自動書記』により逆算され、消される。だがソレと同時に上条はインデックスまでたどり着く。

 

(神サマとやら、世界がお前が作ったシステムの通りに動いているんなら)

 

上条は眼を限界まで見開き、世界に対し宣言する。

 

(まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!)

 

見開いた眼は『自動書記』の『死』を明確に映す。見えた点を七ツ夜で穿ち、そのままインデックスの体を抱え、羽が降らない場所まで駆ける。

 

――閃走・水月――

 

最高速まで一気に加速し、ステイルと神裂に続き部屋を出る。

と、そこで何かに気付いたように部屋を振り返り、敵に最後の言葉を放つ。

 

「理解したか『自動書記』。それがモノを殺すってことだ」

 

シニカルに笑い彼は眼鏡をかけて外に出た。

 

――――

 

結局、インデックスは一時上条が預かることになった。ステイルが言うには

 

「あの女狐、ブッ殺シテヤル」

 

などと危ない笑顔で言っていた。

 

「こっちなんだよ、とうま!」

 

だが、そんなこと今は関係ない。日常はまだ、続いていく。 



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第六話 殺人貴と少年

過去編です。

お楽しみください。


インデックスを助けた次の日。上条当麻、インデックス、ステイル=マグネス、神裂火織は上条の部屋に集まっていた。

 

「さぁ話してもらおうか、上条当麻」

 

ステイルは上条を問い詰める。

 

「君の右手に『幻想殺し』とやらがあるのは認めよう」

 

しかし、と言葉を切り彼は言葉を続ける。

 

「君はこの子を助けるときにそんなものを使っていなかっただろう?」

 

そう、インデックスを助けるときに上条は『幻想殺し』を使っていなかった。

 

「だから教えてもらおうか」

 

上条の目を見つめ、彼は力強く言葉を紡ぐ。

 

「上条当麻、君は何をした?」

 

ステイルの目を見た上条はため息を吐き真実を口にする。

 

「誰にも言うなよ、俺には右手以外にも異能がある。ソレがこの『眼』だ」

 

『直死の魔眼』について説明する。

 

「けど、そんな眼どうやって手に入れたの?私の中の十万三千冊の中にもそんな情報無いんだけど」

 

インデックスが質問する。上条から説明されてからずっと情報を探していたが見つからなかったのだ。『魔道書図書館』であるインデックスにも、だ。

 

「それに聖人である私を圧倒する技もです。それになぜ貴方は眼鏡を外すと性格が変わるのですか?」

 

三人の視線が上条に集まる。

それに上条は苦笑して答える。

 

「分かった分かった、教えてやるから、そんな見るな」

 

そうして彼は語りだす。10年前の、始まりと出会いを。

 

――――

 

あれはもう十年前になるのか、死にかけたんだよ、俺。

 

「「「死にかけた!?」」」

 

黙ってろ、話の途中だろうが。

 

車に引かれて、三分間心臓止まって、三日間目覚めなかったんだ。

その時にさ、見ちまったんだよ。

 

「何を?」

 

話してやるから終わるまで黙ってろ。で、見たもんだったな。

黒い『虚無』だ。そのときに理解しちまったんだよ。『死』って奴をさ。

 

で、目ぇ覚ましたらさ、見慣れない兄さんと、黒い落書きみたいな『線』と『点』が見えたわけだ。

で、その兄さん、変わっててな、目に包帯巻いててさ。そんな怪しい人間に聞いちゃうぐらいにはその落書きに戸惑ってたんだよ。

 

「お兄さん、この気持ち悪い落書きは何?」

 

ってさ。そしたらその兄さん驚いた顔した後、包帯とって黒い線と点を指差して言うんだよ。

 

「この『線』と『点』のことかな?」

 

俺がそれに頷くと、悲しそうな顔して言うんだよ。

 

「そうか見えるのか……」

 

それでソレのこと聞いてみたらあっさり教えてくれたよ。

『直死の魔眼』のこと。聞いたときは、そうだな驚きもしたけど『線』と『点』の気持ち悪さに納得したよ。なんせ生物が恐れる『死』だ。人間に耐えられねぇよな普通は。

で、兄さんが言うわけだ。

 

「君のその『眼』は戦いを呼ぶだろう」

 

強い力は互いに引き寄せられるからな。なんて言う訳だ。いやぁ戸惑ったね。で、恥ずかしながら泣いちまった訳だよ。そしたら兄さんが言う訳だ、

 

「君の身を守れるくらいの力は教えて上げられるけどどうする?」

 

すぐに頷いたよ。ソレが俺に『業』を教えてくれた師匠との出会いだ。

 

名前は―志貴、七夜志貴だったと思う。

 

で、師匠が言うには俺の体は「 」と呼ばれる場所につながり、脳は『死』を理解しちまったらしくてな。繋がったせいで俺の脳は、歴代の直死の魔眼保持者の一人である師匠の情報も理解しちまったらしくてな。

脳が体を作り変えるって奴でな、俺はその一族しか使えないはずの『七夜の業』を使えるようになったんだよ。

 

眼と業は話したし後は口調だけど、コレは師匠の真似してたら定着した。

師匠に俺も気になったからなんで口調が変わるのか聞いたんだよ。そしたら

 

「当麻、俺は二人の人間の居場所を奪って生きてるんだ」

 

師匠が言うには、『七夜志貴』が死んで、幼馴染だった『遠野四季』の場所を奪って『遠野志貴』になり、彼に居場所を返すために『七夜志貴』になったらしい。

 

「四季には返せたんだけど、七夜には居場所を返せなかったからな、口調を真似て、忘れないようにしてるんだよ」

 

師匠は悲しそうだったな。

それで一年くらいたった時だったな。眼をある程度制御できるようになったときに、師匠が自分の世界に帰ったんだよ。平行世界ってところが故郷らしくてな。

そのときにこの『七ツ夜』と『魔眼殺し』を貰ったんだ。

 

「コレは平行世界の俺の家にあった、俺のと同じナイフで、こっちは恩人に貰ったもので、お守りみたいなもんなんだけど、弟子に何もやらないのはアレだからな。使ってくれ」

 

って言われたよ。

そして、師匠は自分の『通り名』を教えてくれたよ。

 

『殺人貴』、『貴く人を殺すから』らしい。長くなったがコレで終わりだ。

 

――――

 

「つまらない話だっただろう?」

 

疲れたように息を吐く上条。

 

「今日はコレで終わりだ」

 

そういって彼はベッドに沈んだ。

 

時刻は1時。話し始めた時間が十時だったから、三時間話していたことになる。

 

そうして、この話題は終わり、三人は寝た。

 

余談だが、神裂とインデックスがベッド、ステイルがソファー、上条が布団で寝ている。

 

――――

 

「どうしたの?志貴」

 

美しい金色の髪を持った女性が、眼に包帯を巻いた青年に質問する。

 

「いや、弟子がどうしているか気になっただけだ」

 

二人は、歩いてその場から去った。

 

頭上には、月が美しく輝いていた。




コレが、上条が魔眼、七夜の業を手に入れた理由です。

ではまた次回お会いしましょう。


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吸血殺し
第七話 夏の日の出来事


少し短いです。

お楽しみを。


夏。そうとしか形容することができない天気と温度の中、彼、上条当麻とインデックスは歩いていた。彼等の前から見慣れた青と金の髪とゆう、目に優しくない二人組みが歩いてくる。

青髪にピアスな男がそのまま青髪ピアス。略して青ピ。

金髪にグラサンな男が土御門元春。

上条の悪友とゆうやつである。

 

「おひさぁー上やん、ってそこの美少女は誰や!」

 

「とうとう誘拐したのかにゃー。上やん世の中にはやって良いことと悪いことが……」

 

そこまで言った土御門の鳩尾に右ストレートを放ち、そこから回し蹴りを青ピに叩き込む。

 

「コイツとは普通にあって、普通に居候してるだけだ」

 

冷徹な目で見下ろす上条。苦しげに土御門が口を開く。

 

「居候は普通とは言わないぜよ、上やん……」

 

二人を引きずりながら大手ファーストフード店に入る。

 

「アイスでも食おうぜインデックス」

 

その言葉に太陽を恨めしげに見てインデックスは目を輝かせて上条の後ろについてくる。

冷房が『マジでエンジェル!』だった。

 

「はっ!なんか僕がのらなアカン気がした」

 

「寝てろ」

 

いきなり起きた青ピを再び沈め、店内に入る。なぜか注文の際には復活していた。

インデックスが真面目にゾンビと思って怖がっていた。

 

――――

 

その後、巫女の格好をした少女がやけ食いをした挙句帰れなくなっているのを呆れて聞いたりしたと色々、ソレこそ文庫本にして十二ページほどの物語があったのだが、ここでは割愛させてもらう。

 

「久しぶりだね、上条当麻」

 

「そうだな、ステイル。また厄介ごとか?」

 

猫を飼うと言い、その猫を追いかけて路地裏に向かったインデックスを放置して、彼等は話す。

 

「君に持ち込むのは筋違いだし、あの子を助けてくれた君には感謝しているからイヤだったんだけどね。こうしないとインデックスを強制送還するなんて脅されたんだよ」

 

そう言った後、書類が上条の前に飛んでくる。

 

「三沢塾ってところ知ってるかな?」

 

ステイルが言い、上条は首を縦に振る。

 

「科学崇拝を軸にした新興宗教のことだろ?けど、なんの用があるんだよあんな掃き溜めに」

 

その言葉にステイルが笑う。

 

「いや、そこに女の子が監禁されてるから助けに行くのさ」

 

ステイルは続ける。

 

「あの塾は今『錬金術師』にのっとられているからね。面倒なことこの上ないけどそいつを始末するのが僕の役目。この街に入る交換条件がその女の子を助けることなんだよ」

 

ステイルは詰まらなさそうに言い捨てる。

 

「その女の子は『吸血殺し』吸血鬼を殺すための能力をもった『三沢塾』の巫女だよ」

 

「吸血鬼、だと」

 

ソレを聞いて彼の頭に浮かぶのは師の、彼女であったあの金髪の女性。

 

「まぁ確かにいるかどうかも分からないけどね・で、ソレが『吸血殺し』だ」

 

上条の前に一枚の書類が飛んでくる。そこに移っていたのは、先ほどやけ食いしていた少女だった。

 

――――

 

「とうま、飼っていいでしょ!?スフィンクスもお願いしてるよ」

 

それに上条はため息を吐き、インデックスの頭を撫でる。

 

「ちゃんと世話しろよ」

 

「……うん!」

 

ソレを見届けた彼は、指輪を右手につけて部屋を出る。

 

「出かけてくる。留守番よろしく」

 

返事を聞かずに外へ出る。そこにはルーンのカードを張っているステイルが居た。(上条の助言によってラミネート加工済み)

 

二人で無言で歩き、目的のビルへ到着する。

 

「準備はいいか?ステイル」

 

「僕はいつでも。行くぞ上条当麻」

 

彼等は戦場に足を踏み入れる。

 

太陽が嫌になるくらい暑く照らしていた。




次あたりから戦闘回です。当麻の強さがインフレしすぎて面白くは無いと思いますが


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第八話 超能力者と魔術

一ヶ月もの間更新できず申し訳ございません。
それではお楽しみを


――予想外に疲れる――

 

『魔術師』ステイル=マグヌスと『殺人貴』上条当麻の共通の意見だった。とは言えたかだかビルの階段を登る程度では、二人ともそう疲れたりはしない。《普通》のビルであるなら、だが。

このビル、錬金術師アウレオルス=イザードが結界を張ったこのビルにはある魔術がかけられていた。正式名称は不明ここでは『裏表』と呼ばせてもらう。

コインに例えて説明をするのなら、上条たちコインの《裏》の存在は、コインの《表》に存在するこの『三沢塾』の生徒や建物にはどんな力も加えることができない。

例外として『直死の魔眼』を使ったなら《殺す》ことは可能だが。

 

「しかし衝撃を反射されるのがここまで辛くなるのは予想外だった。アイツの能力が羨ましいね」

 

思い出すは白い彼。襲い掛かってくる不良たちを次から次へとなぎ払う様は爽快感すら覚えたものだ。

 

「アイツ?それは一体誰だい」

 

ステイルが問いかける。まぁこの様な状況(敵地のど真ん中)でいきなり呟かれれば誰だって気になるだろう。それにステイルもおそらく溜まっていく疲労にストレスを感じていたのだろう。

 

「アイツって言うのは、そうだなあんまり顔を合わせることが無い親友ってのが一番適した言い方だと思う。まぁそいつの能力が反則モンでな」

 

上条は少し頬を緩めて彼について語る。ステイルは口を挟むことも無くその言葉を聴いている。

 

「『ベクトル操作』ソレがあいつの能力だ。俺の『目』か『右手』くらいじゃないとダメージすら与えられないような奴だよ」

 

少し昔を思い出す。

上条が彼と出会ったのは中学三年生の夏、何人もの人間が倒れていた路地裏でだった。

このことについてはいつか話すこともあるだろう。今重要なのは『吸血殺し』の保護であり、彼との出会いは今はまだストーリーに関係しない。

 

そこで上条が思い出したかのようにステイルに質問する。

 

「錬金術師ってどんな奴等なんだ?師匠がシミュレートがどうのっていってたんだけど」

ステイルはすぐに話し出す。忘れてなどはいない。ただ、上条が聞かなかったから言わなかっただけである。

 

「まぁ簡単に言うと未完の学問を完成させようと何百年もの間研究を続けている馬鹿共さ」

 

錬金術師。イメージとしては不老不死の薬や鉛を金に換えるなどが挙げられるが、それは《過程》に過ぎない。彼等が目指す《結果》とは、

 

「頭の中で世界の全てをシミュレートすることさ」

 

「は?いやまてよ、そんなことできる訳無いだろ」

 

この世のすべてをシミュレートする。それはつまり約七十億人の人間の動きを、血の流れを、風の吹くタイミングを、波が陸に押し寄せるときの海水の量を、何もかもをシュミレートするできるだろうか?答えは簡単無理だ。

 

「いや、理論上は可能なのさ。そのための呪文も完成はしている」

 

「じゃあそんなことしてどうしようとしてるんだよ」

 

「頭の中身を現実に引っ張り出すのさ」

 

「は?」

 

魔術師にとってはそれ自体はおかしいことではない。そもそも魔術自体が思い込みのようなものである(と筆者は考えている)しエクトプラズマなど実例もある。しかしコレを『世界全てがシミュレートできる頭』で行ったらどうなるか。それは

 

「世界を思いどうりに操れるだろうさ。あぁけど安心して良いよ、さっき言った通りに錬金術は未完だからさ」

 

呪文はできているならなにが足りないのか、それは万物に平等に流れこの世で唯一無限であるかもしれないモノ。

 

「なるほど『時間』が足りないのか」

 

「Exactly(そのとおりでございます)」

 

世界全てをシミュレートするだがソレが百年や二百年でできるであろうか。答えは否。先人達が挑み、そのことごとくが失敗した大魔術。その名は

 

「『アルス=マグナ』と言う。まぁ今の奴にはこの『三沢塾』を要塞化することしかできないだろうがね」

 

ステイルが安心させるように言う。だが、上条はわずかな引っ掛かりを覚えていた。魚の小骨がのどに刺さったような妙な感覚を。だが、関係ないと思って無視したのが今回の彼等の敗因だったのだろう。

彼の直感は正しかったのだ。彼は思い出すべきだったのだ師の言葉を。魔術師の基本であるのだから。『魔術師の工房とは敵を生かして返さないためにある』そして『足りないものがあるのなら、他の場所から持ってくればいい』この二つは。

 

図面にあった『吸血殺し』が居るであろう隠し部屋を発見したが、『コインの裏』に干渉できない二人にはどうしようもなかった。

どうにかする方法を探して隠し部屋の壁を伝った先に部屋があった。その部屋は食堂だった。

 

「誰も自分を見てないってのは案外新鮮だな」

 

暗殺術を使い、人の気配や敵意などに敏感な上条には分かる。この部屋の誰も自分達を認識していないことが。などと考えながら食堂に入った瞬間

 

食堂に居る八十人近い生徒が上条を見た。

 

「ちっ逃げるぞステイル」

 

出口へ走った二人が見たものは魔術を詠唱する生徒達と、何百という青白い光の弾だった。

 

「クソッ、上条当麻『アレ』をなんとかできないのか!」

 

「質はともかく量が絶望的だ、あれじゃあ捌ききれなくなるのが目に見えてる!」

 

「ちっ『グレゴリオの聖歌隊』をレプリカと言えど使ってくるとは、僕は奴を過小評価していたようだ」

 

ローマ正教の最終兵器である『グレゴリオの聖歌隊』は、本物であればビル一つ消し飛ばすような代物だ。

 

「だけど、この魔術は生徒達の同調の鍵となる『核』を破壊すればなんとかなるだろう」

 

もうすぐ階段が見える位置にいる二人は、作戦を定めた。

 

「だから僕が『核』を破壊するまでの間『幻想殺し』をonにして囮になってくれ」

 

その言葉を聞くと、上条は階段を飛び降りた。ステイルは階段を上っていき、光の弾は上条を追ってくる。

この建物を絵だと考えて欲しい。絵は一つの色(アウレオルスの魔力)で染まっている。その絵の中に違う色(ステイルの魔力)が混ざればすぐに気付くだろう。だがもっと分かりやすいのが『幻想殺し』である。簡単に言うならば修正液なのだ。満ちた魔力が消されていくのだから当然違う色よりも目立つことになる。

 

迫る『球体の洪水』を避け下の階に降りた上条の目の前には、ひとりの少女が居た。少女の額にある光は、彼女の言葉とともに風船のようにふくらむ。

上条は『幻想殺し』をonにした右手を握り締める。そして

何の前触れも無く少女の頬が弾けた。

少女が言葉を続けるたびに彼女の体は破裂し続ける。

 

『超能力者に魔術は使えない』

 

脳の回路を薬物などで『送信』に開いている超能力者は、魔術師が使うマナの生成による外界への力の『送信』や『魔術回路』を流れる魔力が発する力の『送信』が影響しあう。それでも無理に使ったらどうなるのか。答えが上条の目の前にあった。

 

電圧の違う電流でも機械は動く。代償として回路を焼ききりながら。

 

そしてブチッ!とゆう言葉とともに少女は糸の切れた人形のように倒れた。

 

上条は少女の前に立ち球体を排除することを決めた。傷ついた少女を置いていくなど、どんな人間であろうと許されるような行為ではない。

 

目の前に球体が迫り上条は眼鏡を外しポケットに手を入れる。

 

世界に黒い罅が入り、球体の『死の点』を右手のポケットに入れた『七ツ夜』で穿とうとして止めた。

球体はビデオの一時停止のように止まっていた。七ツ夜をポケットにしまい、眼鏡をかける。

と同時に彼の聴覚は一つの音を捉えていた。

 

カツン、カツンと、出入り口に繋がる下の階から音が聞こえてくる。彼が警戒しながら下の階を見るとそこには、

 

紅い夕焼けに照らされながら、『吸血殺し』姫神秋沙が立っていた。




本当申し訳ございませんでした。
テストや、委員や色々会って遅れました。
学校なんてクソくらえ!!


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第九話 偽者の錬金術師

一人称を『吾』から『オレ』に変更しました。

それではお楽しみください。


上条当麻が姫神秋沙と出会っていた頃、ステイル=マグヌスは『グレゴリオの聖歌隊』の『核』を破壊していた。

コンクリートの壁で隠す、なるほどそれは確かにこの『表』と『裏』であれば絶大な効果を発揮するだろう。

しかし、ステイルが操るものは形の無い『炎』だ。隙間さえあればそこに『炎』を押し流すことができる。コンクリートの壁で隠すには相手が悪かったのだ。

ステイル相手に対する『鉄壁の防御』が欲しいのならば隙間ができない物に入れておけばよかったのだから。

コレが上条当麻であったなら核を『魔眼』によって殺されていただろうが。

 

「血路とは、かの錬金術師も歪んだようだ」

 

彼は加えたタバコが肺に流し込んでいる煙をため息と共に吐き出す。自身に人間らしい感情がまだ残っていたことに少し驚きを感じながら。

 

「血路とは他人ではなく自身を切り開いて作るものだろうに」

 

基本的には、『原石』であろうと『超能力者』に『魔術』は使えない。『吸血殺し』や『正体不明』のように自身の力が何らかの形で目に見える形で発現している者では『魔術師』の『回路』と超能力者の力を『送信』する『回路』がショートするためである。逆に絶対に認識できない『脳の回路の受信』という形の超能力であれば魔術も使えるわけだが。

そのため超能力者が無理に魔術を使うと魔力が全身の神経と血管をズタズタにしてしまう。ちょうど彼の足元にも何人もの人間であった『モノ』が倒れ付している。何所からか漂ってくる鉄の臭いからするとそこらへんの部屋にはもっと凄惨な光景が待っているだろう。

そこで彼の耳は廊下に響く足音を捕らえた。

 

「自然、『偽・聖歌隊』を使えばどこに居ようとおびき出せると思っていた」

 

足音は止まらず、その主はついに姿を現す。

緑の髪をオールバックにし、白いスーツを着た男―アウレオルス=イザードが存在していた。

 

「当然、侵入者は二人だったはずだが……もう一人はどうした、貴様の使い魔は呑まれたか」

 

アウレオルスの言葉に心底おかしそうに笑いながら、アウレオルスを嗤う。

 

「呑まれる?呑まれるだって!?」

 

彼は瞳に涙を浮かべ、腹を押さえてアウレオルスを嗤う。

 

「彼はあんなチンケな攻撃じゃかすり傷一つ負わないだろうし、使い魔なんて生易しいものでもない」

 

アウレオルスは戯言と思い、ステイルの言葉を流す。

 

「コレは忠告だ、覚えておくといいさ錬金術師。アレは純粋な『死』でありそれ以外の何者でもない。油断していると」

 

―殺されるぞ―

 

そう言ったステイルはアウレオルスに言い放つ。

 

「君ごときじゃ何十の魔道具に身を包もうと、三秒と持たないさ骨董屋」

 

「……」

 

骨董屋それはアウレオルスにとっての禁句であり、二人の戦いの合図だった。

 

「厳然、貴様―ッ」

 

金の鏃が弾丸のごとくステイルに襲い掛かった。

 

――――

 

「見た目が派手なだけ、手当てすれば平気」

 

一方その頃姫神と上条は先ほどの女生徒の怪我を見ていた。

 

「そうか、じゃあ手当て頼む」

 

上条に応急処置などのスキルは存在しない。上条の『業』は敵を闇に葬り、『魔眼』は魂ごと殺すため、破壊はできても修理ができないのだ。

傷つけるための技術しか持たない『七夜』らしいといえばらしいのだが……

 

「手伝って」

 

「了解」

 

そこからは医者や看護婦、救急隊員などと同じような作業だった。

的確な処置で少女を止血し、傷口をふさぐ。それだけでも少女は命が助かった。

 

「これでおしまい」

 

その言葉を聞いた上条は姫神に言う。

 

「じゃあ、救急車呼んで、帰ろうぜ。俺たちも」

 

何十の人間が死んでいるであろう、この建物の中で一人の人間を救った。たったそれだけのことだが、確かな充実感を上条に与えた。

そして、自身がここに来た理由である姫神の救出を果たそうとしていた。

しかし、一つの『モノ』がその邪魔をする。

 

「くそが。断然、何だこの重さはたかが材料の分際で私の足を引っ張るか」

 

憎悪、激怒そのような負の感情で構成された言葉が上条たちの耳に入ってくる。

 

「貴様なぜ『此処』に居る。

貴様もコチラの人間……あの炎の仲間か!!」

 

アウレオルス=イザードが六人ほどの生徒を引きずって歩いていた。

ソレを見た姫神が表情を変えずに呟く。

 

「かわいそう」

 

その一言で錬金術師の動きが止まった。

 

「気付かなければアウレオルス=イザードのままで居れたのに」

 

そう、このアウレオルスは偽者。ステイルに体を焼かれ左腕及び左脚を消失した哀れな人形でしかなかった。

 

「き、きさまぁ!!」

 

姫神の言葉を聴いたアウレオルスは叫びながら金の鏃を姫神に射出する。

彼が引きずっていた六人の生徒を貫きながら姫神の眉間に迫り、

 

肉を貫いた音が聞こえた。

 

姫神が支えていた少女が姫神を守るように手のひらを盾にしていた。

もう片方の手で力の限り姫神を押して、

少女の肉体はどろどろの液体へ変わった。

六人の生徒と名も知らぬ少女一瞬にしてが高熱により溶けた『金』へと変化する。

それはアウレオルスが触れてはならない『逆鱗』に触れたことを意味していた。

絶対零度の声が響く。

 

「関係の無い人間を巻き込むなよ。アンタも一応、プロのプレイヤーだろう?」

 

眼鏡を外し自らの得物を手にした『死神』がそこに居た。

その言葉を詰まらなさそうに聞いたアウレオルスは金の鏃を射出する。そして鏃は当たる直前で彼の持つナイフによって弾かれる。

 

「いきなりかよ……まぁいいか。アンタのその首、吾が貰い受ける」

 

アウレオルスが射出した金の鏃が四方八方上下左右から上条に迫る。対する上条はナイフ―七ツ夜を右手で逆手に握り、構えてすらいない。

 

「危ないッ」

 

「当然、絶命」

 

姫神が叫びアウレオルスが勝利を確信する。そして、上条の姿が消える。

 

「フハハハハハ!!自然貴様程度では話にならん」

 

高笑いしながらアウレオルスは上条を罵倒する。

しかしアウレオルスは気付いていない。上条の居た場所に『金』が存在しないことに。

 

「あの程度でオレが死んだだと?冗談も大概にしてくれ」

 

「―なッ」

 

振り向いた先には傷一つ無い上条の姿があった。

再度金の鏃を射出するが上条は天井に着地し当たらない。

 

――閃走・水月――

 

彼が体に覚えこませた『七夜の業』の初歩も初歩。0から100の加速を行う歩法である。

天井から地面に降りた上条は宣言する。この狭い空間は自身のテリトリーだと。

 

「吾は面影糸を巣とする蜘蛛―ようこそ、このすばらしき惨殺空間へ」

 

――閃走・水月――

 

常人なら捕らえきれぬ急加速によってアウレオルスの目前まで移動する上条。

その蒼い瞳に先ほどのステイルの言葉を思い出す。

 

『アレは純粋な『死』でありそれ以外の何者でもない。油断していると』

 

「殺されるッ!!」

 

「お前はやりすぎた―よって、斬刑に処す」

 

――閃鞘・八点衝――

 

人間の限界点まで鍛えられた肉体を使用した、0から100への加速を用いての前方への斬撃の乱れ打ち。

上条の持つ七ツ夜はアウレオルスの身体のいたるところを切り裂いた。

その結果、アウレオルスは滝のように血を流し、倒れた場所に血の湖を作った。

アウレオルスは確認するまでもなく絶命していた。

 

「その魂、極彩と散るがいい。せめて毒々しい輝きならば、誘蛾の役割は果たせるだろう」

 

七ツ夜を振るい血を落とし、眼鏡をかけ七ツ夜をしまう。

蒼かった瞳が黒に戻り、殺気は嘘のように消え去った。

 

「しっかし、下手だな、どうも」

 

『死神』は『巫女』に微笑んだ。

そのときだ、急に人ひとり分の気配が現れた。

 

「ふむ、貴様も侵入者か。禁書目録の扱いだけで手一杯なのだがな」

 

突然現れた気配の原因の男性は何気なく呟く。

気絶した禁書目録を両の手で支えて。

それに気付いた上条が振り向こうとすると、男性は首に鍼を刺して言い放つ。

 

「動くな、少年」

 

その一言で上条当麻は動くことを禁じられる。

見えない手で押さえつけられるかのように動くことができない。

 

「案ずるな殺しはしない」

 

そう言った男性は首に鍼を刺して先ほどのように違うことを言い放つ。

 

「ここで起きたことは全て忘れろ」

 

その一言で上条の意識はブラックアウトした。

最後に見えた姫神の無表情を瞳に焼き付けて。

上条当麻の、完全無欠に『敗北』だった。

夕焼けがビルの中を紅く染めていた。




えーなんとかあげることができました、最新話。
文化祭とかどうでもいいわ!!コレを書く時間をよこせ!!
そんな感じです。
感想、ご意見お送りください。
では、また次回。Have a good day


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第10話 追い求めた先に

上条当麻は公園のベンチで目が覚めた。

しかし彼にはなぜ自分がここに居るのかが思い出せない。それどころかここ半日分の記憶が存在しない。

 

「キミも何でここにいるのか分からないのかい?」

 

その声に振り向くと知り合いである『魔術師』ステイル=マグヌスがブランコに腰掛けていた。

 

「君が居るという事は学園都市なんだろうけど、なんで僕は日本に居るんだろうか」

 

その言葉に上条は一つの可能性にたどり着く。

上条は自身の頭を触る。『幻想殺し』をonにした状態で。

 

「ッ!!そういうことかよ」

 

ガラスが砕け散るような音と共に上条は全てを思い出す。

三沢塾に潜入したことも、

少女が姫神を庇い溶けた金になったことも、

アウレオルスの偽者を殺したことも、

そして――インデックスが本物のアウレオルスに連れ去られたとこも。

 

「ステイルちょっとこっちに来い」

 

ステイルは首をかしげながら大人しく上条の前に歩いてくる。

 

「どうかしたのかい?」

 

「さっさと思い出せ、インデックスが危ない」

 

ステイルの頭に右手で触り、同時に『三沢塾』へと走り出す。

上条の顔から、眼鏡はすでに外れていた。

 

――――

 

三沢塾周辺には人が存在していなかった。

―払い―

その名の通り人がその空間に近寄らなくする魔術だ。

そして三沢塾の周りには誰も居ない、わけではなく時代錯誤の騎士甲冑に身を包んだ集団が、何かを呪文のように唱えながら『三沢塾』を包囲していた。

 

「まさか―『グレゴリオの聖歌隊』を使うつもりか!!」

 

否―それはまさしく呪文だった。三沢塾を灰へと変える、儀式魔術。

止めようとした上条の足に何かが当たった。

それは―インデックスの帽子だった。

それに上条が気を取られた瞬間、ラッパのような音が夜の空へと鳴り響き、

 

世界から音が消えた。

 

『三沢塾』が魔術に呑まれ、灰にとなり、撒き戻すように元へ戻った。

騎士団の連中は地面に座り込み絶望を隠しもしない。

無理からぬことだろう、自分達が絶対の信頼を置いていた『切り札』が無効化されたのだから。

 

「覚えておけ上条当麻」

 

上条が横を見ると、苦虫を噛み潰したかのような表情でステイルが呟いていた。

 

「アレが世界中の錬金術師が挑み、破れ、絶望し、諦めたもの」

 

否―どこか恐れるかのような表情でステイルは口を開く。考えうる限り最も最悪の可能性を言葉に乗せて。

 

「アレが僕たちの敵―『アルス・マグナ』だ」

 

その言葉と共に吐き出した紫煙が、宙に消えた。

 

――――

 

「実を言うとね」

 

アウレオルスの元へと急ぐステイルが唐突に語りだす。

 

「アウレオルスは僕であり、君でもあるんだよ」

 

「なに?どういうことだ」

 

長い廊下を疾走しつつ上条もその言葉に反応する。

 

「そのままさ、奴はインデックスのパートナーだった男だ」

 

かつて彼女のそばには先生になろうとしたものが居た。友に、親に、恋人になろうとして、そして失敗した。

 

「馬鹿な男だよ、おそらくアイツは記憶を元に戻そうとしているんだ」

 

「だからさ、上条当麻」

 

タバコの煙を肺へと流し込み、ステイルは言う。

 

「教えてやってくれ、奴にインデックスは救えないことを」

 

もうアウレオルスの居る部屋は目の前だった。

上条はステイルに何も言わずに扉を開いた。

 

――――

 

「これまでのインデックスは脳の処理量が多すぎたせいで一年おきに記憶を消さねばならなかった」

 

彼等が部屋に入るとそこには三人の人間が居た。

 

『吸血殺し』姫神秋沙

『錬金術師』アウレオルス=イザード

『禁書目録』インデックス

 

錬金術師は語り続ける。

 

「人間の脳では処理できない、ならば」

 

「人間以外にすれば良いってことかな?」

 

ステイルが忌々しげに呟く。アウレオルスはどこか狂ったような笑みを浮かべ言葉を続ける。

 

「その通りだ。奴等は膨大な時間を生きている、その全てを記憶しているのだから」

 

―脳の処理能力を底上げする方法も知っている筈だ―

 

その言葉を聴いたステイルは皮肉気に嗤って上条に視線を送る。

そしてここで初めて上条は口を開く。

 

「いったい何時の話をしてるんだ、アンタ」

 

その言葉にアウレオルスは固まる。

ソレを見たステイルは嗤いながらアウレオルスに言葉をかける。

 

「三年間も地下にこもってたキミには知る由もなかったと思うけど、その子はもう救われている」

 

その瞳に絶望が宿るのを見てもステイルは言葉を続ける。

 

「キミの三年間は無駄だったと言うわけだだけど安心してくれ」

 

アウレオルスが後ずさる。それでもステイルは言葉を止めない。

 

「君が望んだとおり、その子は今、今代のパートナーと一緒で幸せそうだ」

 

錬金術師は言葉を発することができない。糸の切れた人形のようにインデックスを見つめる。

そして首に針を刺し、上条とステイルに言い放った。

 

「倒れ伏せ、侵入者ども!!」

 

その言葉と共に上条の瞳は自身の上から迫る『水』を見た。その『水』に体を押さえつけられる。

目の前の錬金術師は首筋に針を突き刺し、口を

 

「待って」

 

開く前に、姫神が二人を庇うように立ちふさがる。

だが、目的の達成が不可能になった今、錬金術師が道具を必要とするはずもない。

 

「邪魔だ女」

 

錬金術師が口を開いた瞬間、上条は自身の上にある『水』に触れる。

 

「死ね」

 

錬金術師の言葉と共に上条は駆け出した。

幻想殺しをonにして、姫神に触れる。

姫神が息を吹き返したしたところを見ると、錬金術師を睨みつけた。

 

「馬鹿な、我が秘術を破るとは、貴様何をした!!」

 

「うるさいな、黙れよ」

 

上条は魔眼の出力を最大まで上げて、錬金術師を睨みつける。

 

「殺すだの死ねだのそんな簡単にいう事場じゃないだろう?それとも自分は死ぬわけがないとでも思っているのか?世界はこんなにも『死』に満ちているのに」

 

右手に七ツ夜を逆手に持ち、錬金術師に言い放つ。

 

「オレがモノを殺すってことを教えてやるよ」

 

戦いの火蓋が切って落とされた。




えーまず、『水』と言うのは比喩表現です。イメージとしてはスライムを想像してください。

数々のご指摘ありがとうございました。この作品は後、二、三話で、終了となります。ありがとうございました。


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第11話 死神vs錬金術師

あ~戦闘だけだったよ、苦手なのに


「フハハハハハアハアハハアハ」

 

錬金術師が嗤う。彼がインデックスの元に歩き出したとき、後ろからズルッという音が聞こえた。

その音は一人の少年から発せられていた。

上条は片手で器用に立ち上がる。

上条はブツブツと呟いていた。

 

「……さ…る殺…される殺される殺される殺される殺される」

 

錬金術師はその言葉を聴いて、気が狂ったと判断した。そのまま首に鍼を刺す

 

「ほかの何でもなく、ほかの誰でもなく」

 

錬金術師は口を開いた。

 

「二十の暗記銃、刀身を高速射出し、奴を殺せ」

 

暗器銃が空中へと姿を現す。

 

「オマエはオレに殺される」

 

そう呟いた後、上条の姿が消える。

 

――閃走・水月――

 

暗器銃の半分がハズレ、もう半分は切断された。

その光景に錬金術師は恐怖を覚える。

 

「幾戦もの刀剣にて奴を刺殺せよ!!」

 

世界中の刀剣が上条に迫る。上条はその刀剣の線を断ち、点を穿ち、

 

殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺しきった。

 

七ツ夜を口にくわえ、刺さっているナイフを錬金術師が持つナイフの束に投擲した。

鍼は床に落ち、錬金術師は無様に這いつくばって逃げようとしていた。

 

「化け物化け物化け物化けも化け物、まさかあの魔術師も生き返って」

 

錬金術師はステイルが五体満足で立ちふさがるところを想像した、してしまった。

 

「キミのアルス・マグナは言葉で世界を歪めるんではなく、思ったことを持ってくるようだね」

 

「心の折れたオマエに逃げ場はない、諦めろ」

 

前方にはステイル、後方には上条。錬金術師はそれでも逃げようとした。

 

「インデックッスとオマエも信頼していた姫神に手を出した罰だ。オマエごときには少々もったいないけどな」

 

上条は脳の酷使による頭痛と、血を流しすぎた虚脱感に気絶しそうになりながらも、七ツ夜を全身の力を使って、錬金術師に投げる。ソレと同時に跳躍し、左手で錬金術師の頭をアイアンクローのように掴み、体を回転させる。

 

――極死・七夜――

 

心臓に七ツ夜が突き刺さり、頭は捻り切られている錬金術師を一瞥し、眼鏡をかけながら呟く。

 

「右手のお返しだ」

 

錬金術師だったモノに背を向けステイルの元へ歩く。ステイルに声が届く範囲まで近づき、彼に言葉を放つ。

 

「ゴメンもう無理、後は頼んだ」

 

糸の切れた人形のように倒れ、意識を失った。




はい、次が最後となります。話し短いし、描写が下手でございます。
この様な駄作をご愛読くださった皆様にこの場を借りて、感謝を。ありがとうございました。


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Epilogue

最終回、コレでこの作品は終了です。題名を変えて続編を投稿するかもしれませんが、まだ何も決めてません。ご愛読ありがとうございました。


「やぁ、久しぶり。近頃来てなかったから元気か心配だったんだよ?」

 

病院の個室(費用はイギリス清教持ち)にて、ベッドにて横になっている少年に向かってカエル顔の医者が話しかけていた。

 

「いや、病院来てなかったら普通元気ですよ」

 

医者のジョークに少年―上条当麻は答える。ただ左手でこめかみを押さえながら。

 

「病状は、まぁだいたいいつもどおりだよ」

 

「だいたい?」

 

医者のあいまいな言葉に質問で返す。

 

「うん、だいたい。まず脳の過負荷による運動能力の低下とソレに伴う手足の一時的な麻痺。キミ、もう少しで一生寝たきりだったよ?確実に寿命が縮んでるから、その『眼』はあまり使わないほうが良いね」

 

にこやかに寿命が縮んでいるなどと言う医者に眼で続きを促す。

 

「で、これがいつもと違う箇所。キミの右腕は捻り切られてて使い物にならなくなっていた。骨が突き出て、肉が弾けとび、神経が千切れるなんてどうやったんだい?手首に縄つけて高速回転させてもああはならないと思うよ?」

 

その言葉に右腕があった場所を見る。そこには綺麗に何もなかった。

 

「まぁ、一般人には分からないような精巧な義手をつけてあげるから安心して良いよ」

 

そういって、医者は部屋から出て行った。

 

次に入ってきたのは魔術師だった。

 

「何しに来たんだよステイル」

 

「一応結末の報告と謝罪だね」

 

そう言うとステイルは上条に向かって頭を下げる。

 

「すまない、僕のせいで君は右腕を失った」

 

その言葉に上条は笑い出す。

 

「なんで笑う、こっちは真剣なんだが」

 

「ククッ、いや悪い悪い。気にすんなよステイル。コレは俺がしくじった結果なんだらさ」

 

そのままステイルは椅子に座り、林檎の皮を剥きはじめる。

 

「で、あの錬金術師はどうなった?」

 

「死んだよ、むしろアレで死ななかったら驚きだけどね」

 

心臓に刃物が突き刺さり、首がもがれて死なない人間は流石に居ないだろう。

 

「だよな、アルス・マグナはどうなった」

 

「不可能は不可能のままさ。彼の脳髄はなぜか潰されていてね、僕たち『必要悪の教会』でも記憶は読み取れなかった」

 

その言葉に上条は口の端を吊り上げ笑う。

 

「なぜか、か?」

 

「なぜか、さ」

 

剥き終わった林檎をさらに置いて、ステイルは部屋を出て行った。

 

次に入ってきたのは修道女だった。

 

「具合はどう?当麻」

 

心配そうに顔を覗き込んでくるインデックス。

 

「傷口も傷まないし、起き上がれないのと、手足が動かないだけだ、なんともないさ」

 

「あんまり無理しないでよ?心配、するから」

 

その言葉に上条は少しだけ表情を曇らせるが、すぐにいつもどうりの笑顔になってインデックスを励ます。

 

「あぁ、約束する。オマエを心配させない」

 

上条の言葉に笑ってインデックスは部屋を後にする。

 

彼等の物語は終わらない。




この物語は終わりますけどね。
こんな駄作を読んでくださった皆さん。ありがとうございました。お世話になりました!!


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