お前と俺と (ぽんどらいすふぃーるど)
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私の家・・・来てください。

なぜ朝が来るのだろう。

来なければずっと寝ていられるのに。

 

現在午前6時50分、そんなふざけたことを考えながら起床。

まあ実際朝が来ない状況になってしまったらこんなことは考えられないはずだから、今日も世の中が平和な証拠だろう。

 

・・・・こんなことをあいつらの前で言ったら一体なんと返されるだろうか。

少なくとも腐れ縁のあいつはどこかの汎用人型決戦兵器のパイロットのごとく

 

「あんた、バカァ?」

 

と、きついお言葉が返ってくるのだろう。

 

 

そんなことを考えながら、朝食を食べる。

朝の時間というのは実にあっという間で、時計をみると7時25分である。

 

「そろそろ出るか」

 

若干、憂鬱な気分になりながら玄関に向かう。

 

「いってきます」

 

両親は海外に出張に行き、姉は海外を飛び回っている。

したがって家には今誰もいないのだが自然と言ってしまう。

 

「よし、いくか」

 

今日はいい天気だ、自分の灰色が溶けてしまうくらいに

 

 

 

 

神山高校は徒歩でせりぜい15分のところにある。どこかのお嬢様のように自転車通学をする必要はない。

 

「折木さん、おはようございます」

 

噂をすれば、例のお嬢様だ。

千反田える。同級生であり、俺の所属している古典部の部長でもある。

 

「ああ、おはよう」

 

 

最近朝よく遇う気がする。

まあ偶然だと思うが。

 

 

「折木さん、今日の放課後何かご予定はありますか?」

 

「家に帰って寝なければならない使命が俺にはある」

 

「空いてるんですね、よかった!」

 

 

最近俺の扱いがわかってきているらしい。

 

 

「それで何かあるのか」

 

「少しお話したいことがありまして、私の家に来てもらえませんか?」

 

 

千反田の話か、あまりいい予感はしないが断る理由はない。

・・・・・まあどうせ断ったところで断りきれないのはわかっている。

やらなければならないことは手短に・・・だ。

 

 

 

今日は学校の都合により、半日で授業が終わり、なおかつ部活がなしという日だった。

だから千反田は誘ったのだろう。

適当に授業を過ごし、あっという間に放課後となる。

 

「折木さん!」

 

わざわざ教室まで迎えに来てくれたらしい。

 

周りによく聞こえるように名前を言った気がするのだが・・・

いや、俺の座席が遠いからだろう。きっとそうだ。

 

「千反田か、心配しなくても俺は逃げないぞ?」

 

「わかってますよ。折木さんはそのような方ではありません」

 

「私が来たかったから来たのです」

 

「そ、そうか。じゃあ行こうか」

 

 

2人そろって校門を出る。少し周りの視線が痛い。

このお嬢様は気にならないのだろうか?

 

俺は少しため息をつきながら千反田家を目指すのであった。

 



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家の中、二人

なぜ外は暑いのだろう。

まあ七月ともなれば当然だと思うが。

 

 

千反田の家までは少し距離がある。

七月の暑い日差しを浴びながら徒歩で向かうという苦行を続けること30分、相変わらず広い千反田家が見えてくる。もうへろへろだ。

 

「折木さん、もう少しですよ!」

 

「おう・・・」

 

明るい声で励ましてくれる。

この暑い中30分も歩いても大丈夫な千反田に比べ俺は一体・・・

少し心が折れそうだ。

 

 

 

「折木さん、申し訳ないのですが少し玄関で待っていてもらえませんか」

 

そう言って千反田は中に入っていく。

部屋の片づけでもしているのだろう。

ふと、自分たちがまだ昼食を食べていないことに気付く。

 

「腹減ったな・・・」

 

時刻は1時30分、昼食には遅い時間だが腹が減っていることに変わりない。

千反田はどうするつもりだろう。

 

「どうぞ、上がってください」

 

千反田が白いワンピースに着替えて出てくる。

俺はその格好に息をのんだ。

千反田の白い肌が白いワンピースと相まって一層映えて見える。

思わず目を逸らしてしまう。

あの雛祭り以来のしまったという気持ちが俺の心を満たした。

 

「お、おじゃまします」

 

千反田の部屋に案内される。

そういえば前にも千反田の家には来たことがあったが、千反田の部屋に入るのは初めてではないだろうか。

 

「折木さん、お昼まだでしたよね。これからご馳走しますね」

 

「ああ、頼む」

 

同級生の女子の部屋にいることに若干緊張しながら、ふと疑問に思う。

 

「千反田、今日お前ひとりなのか?」

 

「ええ、そうですよ」

 

「そ、そうか。けどよかったのか、こんな状況で俺が上がり込んで?」

 

「折木さんだからいいんですよ!」

 

そう言うとそそくさと部屋から出て行った。

どうやら俺は千反田から信頼はされているようだ。

しかしなぜ千反田は顔を赤くしていたのだろう。

 

 

 

 

こんなうまい冷やし中華は食べたことがあっただろうか。

そう思えるほど千反田が作ってくれた冷やし中華はおいしかった。

みずみずしいトマトときゅうり、麺に絶妙に絡むタレ・・・

俺は無言でそれを10分足らずで平らげた。

 

「ご馳走様、おいしかったよ。」

 

千反田は嬉しそうに微笑んで、

 

「お粗末様です。お口に合ったようでなによりです」

 

「千反田、このトマトはお前の家で作ったものか?」

 

「はい、そうです。桃太郎という品種のトマトで、おそらく折木さんが普段食べているトマトも桃太郎ですよ」

 

「そうなのか、なぜわかる?」

 

「この桃太郎という品種は国内シェアの7割ほどを占めるそうです」

 

「よく知ってるな。・・・よしそろそろ片付けるか、洗い物はまかしてくれ」

 

「それではお願いします」

 

 

 

さて洗い物が終わったら本題を聞くとしよう。

 



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