ポケットモンスター 〜千貌の剣士メタモン〜 (永久 光)
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転生、新たな出会い
「お母さーん、似合ってるかなぁ」
私は、今日から通うこととなる高校の制服を着て、お母さんに感想を求めた。
「もう何回も聞いてきたじゃない、ほら!早く行かなきゃ遅れちゃうよ」
そう言いながら玄関の方へ向かうお母さんに付いていき、私は家を出て高校に向かう。今日は待ちに待った入学式の日だった。自分が浮かれているのは自覚の上でなお、数日前から何回も制服が似合っているかと感想を家族に聞き、幼馴染みともクラスが同じになれるか、どんなクラスメイトや先生がいるかなど、話題が尽きなかった。
高校を選んだ理由は家から近く、学力的にもちょうど良かったからだ。けれど、一番の理由はやっぱり制服のデザインがよかったからだ。これから3年間、どんなことが起きるかわからないけど、幼馴染みもいるし、それ以外にも同じ高校になった友達がいる。だからそこまで不安などはなかった。花の高校生活を夢見て歩いていたら、ふいに隣からお母さんが大きな声を出した。
「美怜!赤だよ!」
……赤?信号を見ると、赤だった。はっとして、私の意識は現実に引き戻され、なんとか踏み留まれ……
「なっ!?」
急に止まろうとしたことでバランスを崩し、走行する車へと激突してしまった。
最期に見えたお母さんの顔はとても驚き慌てているようで、そんなお母さんのことを初めて見たと思うのと同時に、とても親不孝なことをしてしまったと、心の底から両親に謝りたい気持ちでいっぱいだった。
そうして私の視界は、黒く染まった。
―――
目を覚ました時、私の体はうまく動かなかった。
辺りを見回すと、空は暗く、草木が生い茂り、まるで森のような場所だった。
「………………森?えっ!?森!?なんで!?」
私は慌てた。記憶が正しい限り、私は車に引かれたはずだった。それならば病院にいるのが普通じゃないのだろうか。混乱する私に、一筋の希望が見えた、というより聞こえた。そう、人の声がかすかに聞こえたのだ。
「おい、今確かに聞こえたよな?」
「あぁ、こちらから聞こえたが、人影がないな。どういうことだ?」
胸にメタリックなバッジとお揃いの服を着た二人組がこちらにやってきたが、私に気付いていないようだった。
「ここです!体が動かないんです!助けてもらえませんか?」
私が話しかけると、二人組はこちらを向き、目を見開いた。
「なっ……なんだこらぁ!?」
「これは……まさかメタモンか?」
「だけどよぉ、こんなに潰れてて……しかも喋るメタモンなんて聞いたことないぜ?」
「とりあえず珍しいモノに変わりない。捕獲するぞ」
………………へっ?メタモンって、あのメタモン?
意味不明すぎる出来事の連発で、私の頭はパンクしそうだった。
―――
私はあの後、カゴに入れられた後、さらに何かに入れられ、出された所は、たくさんの檻の中に私の見た事のある架空の生物、ポケモンがそこそこいた。状態から考えると、私はポケモンの収容所かなにかにいれられるのだと予想した。
私はカゴの中に入れられた時から考えていた。もしかしたら自分は死んでしまって、ポケモンの世界に転生しちゃったんじゃないか。でも、そう考えると、納得したくはないけど納得できてしまう。そもそもそれ以外に思いつかないわけだけどね。
最初は力も入らず、動けなかったけど、混乱も収まって、体を動かそうとしたら、動かそうと思う部分に力を入れれば、ぎこちないながらも動かすことができた。
そんなこんなで収容所?に入れられるのかと思ったら、私以外のポケモンは入れられていたけれど、私だけ他の所へ連れていかれるようだった。もしかして喋れるからかもしれない。
運ばれてる間、私はお金持ちに売られたりするのかなー、とか考えていた。だけど、一通り考えることも無くなると、悲しさが表面に出てきた。今まで育ててもらった両親や、いつも一緒にいた幼馴染み、どんどん思い出していき、いつの間にか泣いて、そして寝てしまった。
―――
トントンというノック音が外から聞こえ、目が覚めた。
「ボス、お持ちしました」
「ふむ、これが喋るメタモンか?少し潰れた形状をしていると聞いたが、特に変わったことはないな」
「おい、なにか話せ」
私に言ってるのかな?これは話さないと処分とかされちゃう感じなのかもしれない……それは嫌なので私は何かを喋ろうと思った……が、なにを話せばいいんだ!?
「おい!」
「うわっ!?」
私はカゴを叩かれてびっくりしてしまった。きっと私が喋らなかったらこの手下っぽい人も……いや、それはないか。でもなにか話さないとな……
「今の驚いた様な声が、そうなのか」
「あっ!は、はい!そうです!私です!」
「まさか、本当に喋るとはな。コウにも見せることにする。付いて来なさい」
「了解しました。ボス」
手下っぽい人が返事をして、私の入っているカゴを持って、ボスと呼ばれる人に付いて行った。
―――
連れてこられた部屋には、男の子がいた。男の子が私達に気付いて振り向くと、笑顔で駆け寄って来た。
「父さん!どうしたの?こんな時間に。僕はもう寝るとこだったんだけど」
「そうだったのか。すまなかった、ただお前にも見せておこうと思ってな」
そう言うと、手下っぽい人が私のカゴをボスと呼ばれる人に渡して、ボスさんが男の子に私を渡した。
「なにこれ?ただのメタモンじゃないの?」
「いや、このメタモンはな、喋るんだよ」
「え!?ほんと!?ねぇメタモン!喋ってみてよ!」
「フフン!こんな可愛い子に頼まれたら喋らないわけにはいかないね!私の名前は美怜!よろしくね!」
「ほんとに喋るんだ!僕はコウ!よろしくね、ミレイ!」
これが私とコウの出会いだった。
読んでくれてありがとうございます!
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