悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」 (須井化)
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第0話

地球育ちのサイヤ人……孫悟空は幾多の困難を乗り越え、遂に超一神龍を撃破した。

 

マイナスエネルギーは全て浄化され神龍も復活を遂げる。

 

だが再び人間にドラゴンボールを乱用される事を恐れた神龍は自ら姿を消す事に決め…

 

孫悟空を連れ空の彼方へと消えていった…

 

 

 

 

 

悟空「………」

 

悟空「なぁ、神龍…もう寄りてぇとこはねぇんだが……」

 

悟空「オラ達ゃ今どこに向かってんだ?」

 

神龍「……貴様が行くべき場所へだ」

 

悟空「意味分っかんねぇよ…もうちっとはっきり…」

 

神龍「暫くかかる。眠っていろ」

 

悟空「えっちょっ…しぇっ…」

 

………男曰く、そこからの記憶は無いらしい

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「ん…ん………」

 

悟空「ここは…」

 

長い事気絶していた為、意識が朦朧としている

 

つい先程まで神龍と話してた筈だ…

 

そう思いながら男はよろよろと立った

 

悟空「………」

 

ブルンブルン…

 

悟空「こりゃ…」

 

鳴り響く車の音…

 

美しい街の風景…

 

全てが懐かしい感覚であった

 

悟空「オラが見た事ある……ような」

 

悟空「無いような………」

 

 

 

 

 

 

 

ウィィ…

 

<いらっしゃいませー

 

「…」

 

少年は何時もの様に雑誌を手に取り立ち読みをし始めた

 

「………へー…」

 

1度ハマると中々その世界から抜けられず数分…数十分間その空間に居座り続けた

 

店員「…あの…お客様…」

 

「ハッハイ!!」

 

店員に呼びかけられて初めて現実に戻される

 

買う物自体は決まっていた訳では無く、少年にとってこの立ち読みの為だけにここに通っているようだった

 

余りのオタク臭に店員は失笑する程という

 

「……はぁ」

 

少年は今日もため息をつきながら店を出ていった

 

 

 

 

 

執事「……お嬢様、お待たせ致しました」

 

「ええ、ありがとう」

 

少女は何時もの様にティーカップを手に取り紅茶を口にした

 

執事「如何でしょうか…」

 

「……美味」

 

そう言いながら少女は執事に笑顔になりながら顔を向ける

 

「やはり貴方のいれる紅茶は至高ですわ」

 

執事「いえいえ、身に余るお言葉」

 

「爺や。この後の予定は?」

 

執事「……えー…弓道を行った後、お夕食を取りまして剣道と茶道のお稽古……」

 

執事「で本日は以上でございます」

 

「ではそろそろ準備を致しませんと…」

 

ティーカップをそっと置き少女は静かに立つ

 

今日も少女は忙しいのだ

 

 

 

 

 

 

世界総人口の約8割が何らかの【特異体質】である超人社会となった現在

 

混乱渦巻く世の中でかつて誰もが空想し憧れた1つの職業が脚光を浴びていた

 

これは1人の少年が最高のヒーローになる迄の物語である………

 

 

 

 

悟空「…………で」

 

 

悟空「ここはいってぇ何処なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 




初めましての方は初めまして。
そうでない方は
つーか引き続き見てる人っていんの

須井化です。
前述の通り、2chで同様のタイトルで執筆しておりました。
ドラゴンボールと僕のヒーローアカデミアのクロスオーバー……のつもりです。
私の脳内設定がクロスオーバー超えちゃってるぞオイ
原作と大きく設定や展開が変化しております。後時折見せるネタとか寒いです。日本語でおkってレベルの語学力です。
それでもよろしいという方はご自由にお楽しみください。


駆け足になってしまいましたが私からの挨拶を終わらせていただきます。本格的な開始は来年を予定しています。お楽しみに…………


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ChapterⅠ-episode1 プロローグ
第1話



…………

あやっべ焦って1分前に送ってもうた………

鉤括弧の説明だけしますわ

緑谷(なんでそれだけ…?)

「」←通常の台詞(喋っている)

()←心の中の台詞

『』←回想時の台詞(多分)


本編始まります……

後さらば2016年。





 

 

人間には不完全と完全の2種類が存在する。

 

僕はそれの中では不完全な人間の部類に入るんだろう。

 

「……はぁ」

 

ため息をつきながら携帯を取り出し直様ヒーロー関連の情報を検索する。

 

ちょっとした気分転換だ。

 

習慣というか日課というか悪い癖になっていた。

 

僕は緑谷出久、しがない中学3年生。

 

どこにでもいるごく平凡な受験生だ。

 

……っていう訳でもないか。

 

緑谷「ん…?」

 

操作し始めてから数分後、ようやく携帯から離れた僕の目に映ったのは1人の女の子だった。

 

女の子「…」

 

何やら困った様な顔をしていたので周りを見回すと

 

緑谷「ははぁん…あれだな」

 

風船の紐が木の枝にかかっていて取れなくなっていたのだ。

 

多分ここでそもそも少女に気を留めない人や知った所でって顔で通り過ぎる人が大半だろう。

 

でも自分は馬鹿正直で困っている人は放っておけないタイプだ。

 

そのまま見過ごす訳にも行かなかった。

 

緑谷「んしょ…」グイッ

 

身体を伸ばし風船を掴もうとする……

 

が1ミリ身長が足りない!!

 

緑谷(僕のバカ〜)

 

緑谷(でも取らなきゃ……)

 

そう思いつつプルプル身体を震わせながら手を伸ばし続けてた……

 

 

 

その時だった

 

「よっと」パシッ

 

突如人を覆えるんじゃないのかって位巨大な手が僕の前に現れた。

 

緑谷「うわわっ!?」

 

余りに突然の出来事だったもので腰を抜かしてしまった。

 

ビビり過ぎにも程がある。

 

こんな光景慣れっこだろ。

 

「はい。今度は離すんじゃないぞ?」

 

女の子「うん!」

 

颯爽と登場した少女は風船を女の子に渡しいとも容易くミッションクリアした。

 

風船を持った女の子は直様道路を走っていった。

 

「………へへ」

 

少女もまた、僕に一礼するとその場を去って行った。

 

緑谷(……これが格の差ってやつか…)

 

緑谷(はぁ………)

 

……身体の巨大化?この世界じゃ然程珍しい事じゃない。

 

 

 

 

 

事の発端は中国で起こった。

 

生まれた赤ん坊が発光したというニュースが世間を騒がせた。

 

それ以降人々に様々な突然変異が巻き起こっていった。

 

後にこの事態は【超常】と名付けられた。

 

今や【超常】現象が見られる人間の数は世界総人口の8割にまでに至る。

 

そしてある時人々は身体に宿されたその超能力・特殊体質を利用し、トンデモないモノを実現させてしまった。

 

誰しも一度は憧れたあの空想上の存在に…

 

 

 

 

 

緑谷「……」

 

懲りずに再度携帯で調べ物をする。

 

緑谷(さっきのオレンジ髪の人…カッコよかったな)

 

緑谷(恥ずかしい所見られちゃったなぁ…)

 

緑谷「…ヒーローか」

 

その単語を口にする度、学校にいた時の事がフラッシュバックする。

 

 

『てめぇが何をやれるんだ!?』

 

 

緑谷「……」

 

一旦立ち止まり俯いてしまう。

 

目の前にあるのは小さなトンネル。そこはとても暗く一筋の光も見れやしない。

 

今の僕の状況とぴったり一致する。

 

緑谷「何やってんだろ…」

 

下を向いたままとぼとぼ歩いていく。

 

緑谷(……誰が何目指したってその人の自由だろ…)

 

緑谷(別に()()()()()()()なれない職業って訳じゃないんだし)

 

緑谷(……でも)

 

頭の中で色々考えている内にいつの間にかトンネルを抜けてたらしい。

 

日が眩しい。

 

まるで四面楚歌の僕を照らしているかの様に太陽は輝いていた。

 

緑谷「……そうだよな」

 

緑谷「()()()決めたもんな」

 

緑谷「周りの言う事なんか気にすんな!!」

 

緑谷「グイッと上見て突き進め!」

 

そう言うと元気を取り戻したのか僕は少しにんまりと笑った。

 

…ただのその場凌ぎの戯言だってのに…

 

そう思いながら。

 

ズズ…

 

緑谷「?」

 

微かにトンネルから発生した音を感知した僕は後ろを振り向いた。

 

すると……

 

 

 

 

敵「Mサイズの…隠れミノ」

 

緑谷「え」

 

グオッ…

 

いきなりマンホールから出てきたヘドロの様な化物が僕を襲った。

 

いや、化物と言うのはおかしいか。

 

普通こういう奴らの事を(ヴィラン)と総称する。

 

って呑気に脳内解説してる暇無ぇ

 

緑谷「ぶっ!?」

 

敵は僕の身体に触れ、体内に侵入しようとする。

 

何が起こったか訳も分からず数秒呆然としてた。

 

そして数秒経った結果僕はこういう結論を出す

 

緑谷(こっ…殺され…!?)

 

敵「大丈夫ー。身体を乗っ取るだけさ」

 

敵「苦しいのは約45秒。直ぐに楽になる」

 

あ、乗っ取るだけですか。なら安心………

 

緑谷(楽になるってそれ死ぬぅぅぅっ!?)

 

本能的に生命の危機を察した僕はひたすら抵抗し始めた。

 

チャプチャプ…

 

緑谷「!?」

 

敵「掴めるわけないだろ!流動的なんだから!!」

 

何とか敵から離れようとするが触れられない以上逃げられない。

 

次第に身体の力が抜けていく。

 

緑谷(息…がっ…)

 

呼吸が出来ず、視力も低下していく。

 

緑谷(死ぬ……)

 

こんな人気のない路地で助けが駆けつける筈もなく…

 

あぁ…こんな事もあったなぁ…

 

と今までの人生を走馬灯の様に振り返り始めていたその瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

「波ぁぁあああっっ!!」

 

誰かの声が聞こえた。

 

聞き覚えのない声だ。

 

はぁぁぁ?なら幾らでも聞いた事あるが

 

僕の知ってるそれとは全くイントネーションが違っていて…

 

 

ボオオオオッッ!!!

 

 

緑谷(へ)

 

急に僕の目の前に見た事ない物質が現れた。

 

いや見た事はあるけどまだ科学的に作れる様な代物かというと微妙なところであ、でもそういう部類の人なのか?確かその類のヒーロー数人見かけたなぁ。ってか意外とあったかい。

 

その間1.2秒。

 

敵「ぐああああっ!?」

 

ゴオオオッ

 

敵「私はトリよぉぉぉっ!?」

 

緑谷「………………は?」

 

敵は突然姿を現したビーム砲的な何かに吹っ飛ばされ空の彼方に飛んで行った。

 

……最後の台詞なんなんだよ。

 

「ひっえぇ…ちっと気入れすぎちまったか…でも死んでねぇよな」

 

緑谷「……え」

 

数秒前まで最低でも数m離れていた筈の人物がいつ移動したのか僕の目の前に立っていた。

 

「大丈夫か、おめぇ。怪我ねぇよな?」

 

緑谷「貴方は…」

 

ツンツンした頭に、背中に亀と書かれた道着を着ている。

 

身長170cm代後半位の男の人

 

「?オラか?オラは……」

 

 

 

悟空「オラは孫悟空だ!」

 

緑谷「孫…悟空……」

 

悟空「少し聞きてぇ事があるんだけど…」

 

悟空「でぇじょうぶか?」

 

緑谷「…………」

 

 

 

 

 

 

因みに…この後トンネルから移動した数秒後

 

 

 

オールマイト「もう大丈夫だ少年!!」

 

ドガァッ!

 

突如マンホールが吹っ飛ぶ。

 

オールマイト「私が来……」

 

オールマイト「私が…」

 

オールマイト「わた………………」

 

オールマイト「Noooooooo!!!」

 

 

 

 

………別の世界では僕はここでまた別の運命的な出会いをするのだが……

 

それはまた今度ゆっくり話すとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「ここはいってぇ何処なんだ?」

 

緑谷「………」

 

数秒程質問の意図を考えてしまった。

 

ただ1つ理解できたのはこの人はここの街の住民じゃない事……

 

あ、後滅茶苦茶強そう

 

先程の出来事の一部始終がまだ整理出来ず戸惑ってしまっている。

 

果たしてこのおじさんは誰なのか?ヒーローとして助けたのか?いや、或いは敵なんじゃ…

 

頭の中で様々な考えが巡りに巡って混乱している。

 

緑谷「こ、ここは…と…東京の…」

 

悟空「……トーキョー?」

 

悟空「随分遠い場所まで飛んでったって事かぁ?」

 

悟空「知らねぇぞそんな街」

 

緑谷「!?」

 

更に驚かされた。このご時世に東京を知らない日本人(日本語ペラペラ…後方言みたいな感じするし)が居るなんて…

 

緑谷「あの…悟空さんは何処から来たんですか?」

 

悟空「え…そうだな…オラはパオズ山ってとこに住んでた!」

 

緑谷「パオズ山…?」

 

悟空「スッゲェ田舎だから多分知らねぇと思うけど」

 

緑谷「そんな所あるのか…?」

 

全く聞いた事の無い場所だったので急いで検索してみるが…

 

緑谷「駄目だ…ヒットしない」

 

悟空「……何だそれ?薄っぺれぇ板だなぁ」

 

緑谷「え…………」

 

緑谷(………携帯も知らないのかこの人)

 

悟空「オラ機械の事とか良く分からねぇからな」

 

悟空「はははっ」

 

緑谷(笑い事じゃねぇよ)

 

話していく毎に怪しさが増していくアブナイおじさん。

 

この時点では僕はこういう印象しか受けなかった。

 

結局…一刻も早く交番に連れて行こう、そして家に帰ろう。という考えに至った。

 

次第に交番まで後どの位だろう……という事しか考えられなくなっていった。

 

……ある話題が出るまでは。

 

悟空「…っにしてもさっきの襲ってた奴はいってぇ何なんだ?」

 

悟空「見た感じ人間じゃなかったぞ」

 

緑谷「多分…そういう【個性】を持ってるから…じゃないですかね」

 

緑谷「流動的な身体になるっていう…」

 

悟空「………」

 

悟空「こせー?りゅーどーてき?」

 

悟空「オラにゃさっぱりだ」

 

緑谷「…」

 

ここまで来ると呆れて物も言えなくなる。

 

緑谷(流動的はともかく個性も分からないのか……)

 

今思えば個性を知らないのは当たり前なんだよなぁ…

 

だって個性ってこの世界でしか通用しない呼称なのだから。

 

緑谷「…【個性】っていうのは数十年前から起こった人間の突然変異です」

 

緑谷「火を吹いたり身体が木とか…鉄になったり……」

 

緑谷「その効果は様々ですけど……通常の人間ではあり得ない能力・性質を持ってしまう」

 

緑谷「それを個性って言うんです」

 

悟空「へぇ!そりゃスゲェ!」

 

悟空「道理でオラん所よか強ぇ気がわんさかいるってこった!」

 

悟空「オラうずうずしてきた…!」

 

緑谷(気…?うずうず…?)

 

やはりこの人の言っている意味が理解できず困惑してしまう。

 

田舎者とかそういうレベルじゃないだろ…………

 

………あれ……じゃあ…

 

 

緑谷「悟空さんって…個性持ってないんですか?」

 

悟空「ん?オラそんなの知らねぇし持った覚えもねぇよ」

 

緑谷「……………」

 

緑谷「えええええええっ!??」

 

悟空「え、そんな驚く程の事なんか?」

 

緑谷「そりゃ驚きますよ!じゃあさっきのビームはどう説明するんですか!?」

 

悟空「んー………」

 

悟空「ガキの時に修行したら出てきた」

 

緑谷「……かか……か」

 

個性も無い人がビームを出す……

 

そんな前代未聞な事態を目の当たりにしていたのかと口を大きく開いて静止してしまった。

 

悟空「どした?そんな口開けっと顎外れっぞ」

 

緑谷(誰のせいだよ!!)

 

緑谷「んな馬鹿な…どんなに過酷な修行したって人間からビームなんて…」

 

悟空「ビームじゃねえぞ?」

 

悟空「気功波!!!」

 

緑谷(そんな事聞いてんじゃねぇよ )

 

悟空「出るモンは出るんだって」

 

悟空「オラの知ってる奴じゃ出してるの2、30人はいっぞ?多分」

 

緑谷(あんたの知り合いどうなってんだよ!!)

 

ツッコミ所満載で何処から言えばいいか分からないぞこれ

 

緑谷「……悟空さんってどれ位強いんですか?」

 

悟空「さぁ…?オラ自身この身体に戻ってから闘ってねぇからなぁ」

 

悟空「惑星ぐれぇは壊せるんじゃねぇかな」

 

緑谷「」

 

一瞬証明してくださいって言おうとしたがやりかねそうだから止めておいた。

 

緑谷「ど…どうしたらそんなに強くなれるんですか?」

 

悟空「んー……」

 

悟空「とにかく修行したって事しかねぇな」

 

悟空「ガキの頃からオラやる事それしか無かったからな」

 

緑谷「え」

 

悟空「じっちゃんと2人暮らしだったんだけど…………途中でじっちゃん死んじまったからな」

 

悟空「そん後は何もする事無くて暇だったからただ修行してたんだ」

 

悟空「ま、まだそん時はかめはめ波なんて撃てなかったけど」

 

緑谷「………」

 

緑谷(あれ…もしかしてこれって聞いちゃいけなかったんじゃ…)

 

予想以上に悲しい生い立ちだったにも関わらず平然と明るく喋る悟空さん。

 

緑谷(無個性でこんなにも強くなれるのかぁ)

 

緑谷(……羨ましいな)

 

緑谷(………待てよ……あ)

 

緑谷「ごっ悟空さん!まさかヒーロー免許持ってたりとかは…」

 

悟空「……?オラ免許は運転のヤツしかねえぞ」

 

緑谷(やっぱりぃぃいっ!?)

 

読み通りの展開だったので然程驚きはしなかった……

 

訳でもない

 

緑谷「悟空さん!ヒーローでも無いのに敵をやっつけちゃ駄目じゃないですか!!」

 

悟空「ひ、ヒーロー?びらん?」

 

緑谷「この時代その個性を使って悪い事を企んでいる輩が沢山いるんです!それが(ヴィラン)!!」

 

緑谷「で!それを退治するべく誕生した職業がヒーロー!」

 

緑谷「普通敵を倒す為に個性……いやまぁ悟空さんは無いかもしれませんけどそれを使って武力行使しちゃいけないんですよ!!」

 

悟空「…………」

 

悟空「よく分からねぇけどなんで悪い奴倒しちゃいけねぇんだよ?」

 

緑谷「ーっっ!」

 

説明しなかったのは確かに僕のミスだが流石にここまでボケられては流石の僕もキレそうになる。

 

緑谷「さっきも言いましたよね!?個性ってのは様々な種類があるって!」

 

緑谷「場合によっては簡単に人を殺められる力になるんです!!」

 

緑谷「だから公共の場での個性の使用は禁じられてるんです!!分かりましたか!?」

 

悟空「お…おう。多分…わかった、と思う」

 

不幸中の幸い。この会話は他の人に聞かれなかったらしい。

 

人前でこんな事話せたもんじゃない。

 

悟空「つまり!その個性っちゅーもんを使って悪い奴を懲らしめていいのはグレートサイヤマン?みたいな感じの奴だけなんだな?」

 

緑谷「ぐ、グレートサイヤマンっていうヒーローは知りませんけど大方…」

 

悟空「へー…悪者退治しただけで働いた事になんのか。そんな仕事ならオラにだってできっぞ?」

 

緑谷「でもその為の免許を取るのが難しいんですよ」

 

緑谷「ただ強ければいいってだけじゃないですし」

 

悟空「そうなんか…オラも働けるかもしれねぇって思ったんだけどなぁ」

 

緑谷(あ、無職なんだ)

 

もはや反応する気も失せてきていた。

 

悟空「……そういや気になってたんだけど緑谷はどんな個性持ってんだ?」

 

悟空「さっきそれ使わなかったから少し不思議に思ったんだ」

 

緑谷「…………」

 

緑谷「僕は……その」

 

悟空「?」

 

 

 

 

 

緑谷「無個性…なんですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

運が良かったのか悪かったのか…

 

僕はこの世代じゃ珍しい何の個性も持ってない人間だ。

 

大分前に流行ってたらしい情報だが…

 

個性の有無の判断をする時に用いる根拠が足の小指に関節があるか無いかっていう研究結果がある。

 

僕には関節が2本あった。

 

まぁ実際個性が発現してる理由等は判明してはいないんだが………

 

『諦めた方が良いね』

 

5、6歳の時に医師にイイのを1発貰ってしまった。

 

 

 

 

 

悟空「?皆持ってんじゃなかったのか?個性って…」

 

緑谷「正しくはほぼ全員…ですけどね」

 

緑谷「10人に8人の割合で個性が発生するので…」

 

緑谷「何も無いって人は稀にしか無い事なんですよ…」

 

悟空「そうなんか…」

 

緑谷「…」

 

また……今日の記憶が蘇る。

 

 

 

『可哀想に。中3になってもまだ彼は現実が見えていないのです』

 

『そんなにヒーローに就きてんなら効率良い方法があるぜ』

 

『来世は個性が宿ると信じて…屋上からのワンチャンダイブ!!!』

 

 

 

緑谷「………」

 

緑谷(そう…だよなぁ)

 

緑谷(この人も現に努力して才能が開花したからこんな力がついた訳で…)

 

緑谷(僕なんかと違って…やれば出来るタイプの天才なんだろうなぁ……)

 

緑谷(………)

 

悟空「緑谷?どうした…そんな顔暗くして」

 

緑谷「っい、いいえいいえ!何でも…」

 

急に声をかけられたので焦って返事をしてしまった。

 

緑谷(そんなに顔に出てたのか…)

 

ポトッ…

 

驚いた拍子に持っていたノートを落としていたみたいだ。

 

悟空「お、なんか落ちたぞ」

 

緑谷「あっご…ごめんなさ…」

 

悟空さんは落ちたノートを手に取って中身を見る。

 

悟空「……??オールマイト?」

 

緑谷「ちょっ!かっ返して下さいよ!」

 

悟空「え…わ、悪りぃ…」

 

悟空さんがノートを差し出すと僕は乱暴に取り返す。

 

あまりにも恥ずかしい内容だったからだ。

 

緑谷「はぁ…はぁ」

 

悟空「……誰なんだ?オールマイトって」

 

緑谷「………オールマイトは…僕の憧れのヒーローなんです」

 

緑谷「オールマイトは…No.1ヒーローとして世間で注目されていて救った人間の数は計り知れないとされています」

 

緑谷「彼が活動し始めてから、年々敵の発生率が低下し存在そのものが悪の抑止力となっているんです」

 

緑谷「世界中の人間にとってオールマイトという人物は【平和の象徴】そのものなんです」

 

悟空「…」

 

悟空「とりあえずオールマイトっちゅーのがなんかスゲェ奴だってのはよく分かったぞ?」

 

緑谷(うんもう黙って)

 

緑谷「…僕は将来ヒーロー目指してるんです」

 

緑谷「オールマイトみたいにどんな危険な状況下でも…困ってる人達を笑って救けられる…」

 

緑谷「そんな英雄(ヒーロー)に…」

 

悟空「………」

 

淡々と話していく内に空気が淀んでいった。

 

自分で言っといて何だが馬鹿らしく感じてきた。

 

こんな事言ったところで何も変わらないのに。

 

緑谷「でも…その為には皆より強くなくちゃいけないし…」

 

緑谷「何より…人一倍勇気がいる」

 

緑谷「人並みの事もこなせないようじゃ…そんなモノになれる訳ない…」

 

更に追い討ちをかけるかの様に嫌な思い出が頭の中をよぎる。

 

『お母さん…』

 

『どんなに困ってる人でも笑顔で救けちゃうんだよ…』

 

緑谷「いや…そもそもなる資格すらないんだ」

 

『超カッコいいヒーローさ…』

 

『僕も…なれるかなぁ』

 

緑谷「無個性なんだから…」

 

自分でも理解していた。

 

周りが正しいんだ。そもそもこんな疑問が出る事自体おかしな話なんだ。

 

自分には出来ない事なんだってそう思っていた。

 

でも何故か話せずにはいられなかった…。

 

1回でもいい、なれるって答えが欲しかったんだ。

 

悟空「………」

 

悟空さんは数秒黙り込むとまた話し始めた。

 

悟空「…なんか勘違いしてっから言っとくけどオラは…」

 

ドオオオンッッ…

 

悟空「いっ!?」

 

緑谷「今のは…!」

 

かなり大きな爆発音が僕らの耳に入ってきた。

 

音がした方向を見ると商店街に人だかりが出来ている事に気付いた。

 

悟空「なんだありゃ…」

 

緑谷(……おいおい)

 

緑谷(つい癖で来ちまったてか…)

 

緑谷(止めとけ今は…虚しくなるだけだって)

 

心の中でそう言い続けながらも身体がそれに抵抗する様にその人混みに近づいていった。

 

悟空「もしかしてまたヴィランっちゅうヤツか?色々出てきて物騒な街だぞ…」

 

緑谷「……あ」

 

目を凝らしてよく見てみるとそこにいるのはさっきのヘドロ敵ではないか…

 

悟空「あ!?あいつまだ動けたんかぁ?」

 

悟空「むー…逆に軽くやりすぎちまったのか?」

 

緑谷(軽くやっといてよかったな…)

 

緑谷「あの…一体何が」

 

見に来た市民に声をかけるとこう返事が返ってきた。

 

「中学生が敵に捕まってんだと」

 

「んでその中学生が抵抗してんだけど誰も手ェつけらんねー状態って訳よ」

 

緑谷「!?」

 

悟空「何だかよく分からねぇけど行った方が良さそうだな…」

 

緑谷「ちょっ…悟空さん!」

 

悟空「何だよ緑谷…早くしねぇと」

 

緑谷「さっきの話聞いてたんですか!?ヒーロー免許持ってない人が敵倒すと警察に捕まるんですよ!」

 

悟空「っんでだよ…オラの技は個性ってのじゃねぇしいいんじゃねぇのか?」

 

緑谷「だとしても暴行罪…いや最悪殺人で…」

 

悟空「ちゃんと手加減すっしでぇじょうぶだって…」

 

緑谷「大丈夫じゃない!!」

 

悟空「じゃあ今襲われてる奴はどうすんだ!?見過ごせってのか?」

 

緑谷「……有利な個性を持っているヒーローがきっとすぐ来ます…」

 

緑谷「耐えてもらうしかない…あの人に」

 

悟空「……でもよ…」

 

悟空「おめぇさっきあいつに殺されかけたろ…」

 

緑谷「……」

 

悟空「自分が助かりゃ結果オーライだってのか?」

 

緑谷「……そういう…訳じゃ…」

 

本当は助けたい…でもまだ僕にはそんな力も権利も無い…

 

だからこれは仕方ない事なんだ。

 

ただ無事を祈って待つ…これが最善なんだ。

 

緑谷(ごめん…ごめんよ…)

 

緑谷(誰かが…すぐ助けに来てくれる…)

 

緑谷(だから…………)

 

 

 

 

「………!!!」

 

緑谷「………」

 

その時僕の目に映ったのは…1人の男の子の顔だった。

 

今にも泣きそうでとても苦しそうな顔だった。

 

こいつがこんな表情をしたのを僕は見た事が無い。

 

 

 

 

 

僕には1人の幼馴染が居た。

 

僕と正反対でどんな事でもやらせたら何でもこなしてしまうそんな天才だった。

 

個性もとびきり汎用性あって…運動神経抜群で…そんでもって頭も良い……

 

でも性格の悪さはピカイチだ。人のノートを勝手に焼いたり知人を死ねと軽く言える位に。

 

ただ感じの悪い奴という印象が強かったがそれは自分が嫉妬していたからかもしれない…

 

 

 

 

 

 

 

ってそんなの今はどうでも良いか

 

緑谷「っっ!!!」

 

ダダッ…

 

気が付けば敵の所に向かって全速力で走っていた。

 

悟空「!?おい…緑谷!」

 

市民「なっ……!」

 

周りの発している言葉が聞こえず【助けないと】それしか考える事ができなかった。

 

敵「あいつっ…」

 

「デクッ…」

 

緑谷(どうするどうするどうする…!)

 

敵の撃退方法やら被害者の救出方法やらをノートを眺めながら考察し始めた……。

 

が何も思いつかない。

 

緑谷「てぇい!!」ブンッ

 

時間稼ぎになればと持っていた荷物を敵に向かって思い切り投げつけた。

 

敵「ちっ…!」

 

緑谷(()()()()()に当たったか…!?)

 

緑谷(っそ…当たって砕けろだ!!)

 

僕は直様敵に突っ込んでいく。

 

緑谷「かっちゃん!?」

 

「何…でテ……メェが!?」

 

緑谷「足が勝手に!」バシャバシャ…

 

喋りながら焦って手探りする。

 

敵「だから触れねえって言ってんだろ!!」

 

緑谷「っ…」

 

緑谷「何でって…分からないけど…」

 

色々理屈はあったと思う。

 

でも頭の中にずっとあったのはこの事だけだった。

 

 

 

 

 

緑谷「君が助けを求める顔してたっ……!!」

 

「っっっ!!?」

 

悟空「………」

 

敵「後少しなんだから…」

 

緑谷「!?」

 

敵「邪魔すんなぁぁあっ!!」

 

敵の痺れも切れたのか僕を殺そうと襲いかかってくる。

 

ヒーロー「ちぃっ!!」

 

ヒーロー「何やってんだ自殺志願者かよ!!!」

 

慌ててヒーロー達が僕の所に向かおうとする。

 

まぁ数m離れてるから無理なんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

1人を除いて。

 

ガシッ…

 

敵「!?」

 

悟空「いっや…危ねぇ危ねぇ…」

 

悟空「何とか間に合ったみてぇだ」

 

間一髪悟空さんは僕とかっちゃんの手を掴み敵の攻撃を停止させた。

 

緑谷「悟っ…空……」

 

振り返って僕の方を向く悟空さん。

 

悟空「………オラ頭悪くて…馬鹿だから…」

 

悟空「法律だとか…個性だとか…全然良く分からねぇけどよ」

 

悟空「困ってる奴は放っておけねぇ…そこだけはおめぇと似てる所かな」

 

緑谷「………」

 

悟空「ったく行くなとか行けとか忙しい奴だなおめぇは……」

 

敵「誰だテメェェ!!」

 

再び敵は攻撃を図ろうとする。

 

緑谷「ご、悟空さん!後ろ後ろっっ!!」

 

悟空「安心しろ。オラ強ぇから」

 

そう言うと手をぎゅっと握りしめ前の方を向く。

 

悟空「………見てな」

 

風が次第に強くなり…大地も揺れ始めた。

 

ヒーロー「これは……!?」ズズッ…

 

市民「何だこりゃ…」

 

悟空「………」

 

悟空「龍拳ッッッ!!!」

 

ドオオオオッッッ…

 

緑谷「ぐあっ…」

 

たった1発のパンチとは思えない衝撃に今にも吹っ飛ばされそうになる。

 

緑谷(こんなに…!?)

 

市民「おい…アレ見ろよ」

 

緑谷「……え………」

 

目の前に映っていたのは破片となり飛び散る敵……

 

 

では無く1頭の龍の姿だった………

 

緑谷(これは幻……なのか?)

 

ゴオオオッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

シュゥゥ…

 

悟空「……っと………いけねえいけねぇ力出しすぎた…!」

 

緑谷「あ……ああ……」

 

市民「………」

 

ヒーロー「…………」

 

突如謎の男が敵を一撃で撃退した…

 

何より

 

オレンジ髪の少女「?」

 

ポタポタ……

 

オレンジ髪の少女「………うっわ…雨降ってきた」ザァァ……

 

今起こった風圧で上昇気流が発生し……快晴だった天気が雨に変わった事…

 

たった一振りで天候を変えてしまった事に誰もが驚きを隠せずにいた…

 

 

 

この後散ったベトベトはヒーロー達に回収され無事事件解決。

 

結局僕はヒーロー達に説教三昧。

 

逆にかっちゃんは称賛された。

 

肝心の悟空さんはというと…

 

悟空「だ…だからオラは……」

 

市民「アンタどこの事務所所属してんだ?」

 

市民「え?さっきの個性じゃねーの!?」

 

市民「ってかこの人自衛団(ヴィジランテ)じゃ…」

 

警察「いたぞ!!敵を倒したっていうツンツン頭の男だ!!」

 

悟空「いいっ!?」

 

見事に尋問攻めを受けていた。

 

緑谷(け、結局何だったんだろあの人…)

 

緑谷(でも…カッコよかったな)

 

そう思いながら今の内と言わんばかりに人混みから離れていった。

 

商店街を出て難を逃れた僕は直ぐに帰ろうとしたが……

 

「デク!!!」

 

緑谷「?」

 

「…テメェに救けを求めてなんかねぇぞ…救けられてもねぇ!!」

 

「あぁ!?なぁ!!1人でやれたんだ!!」

 

「無個性の出来損ないが見下すんじゃねえぞ…恩売ろうってか?」

 

「見下すな!!!俺を!」

 

「クソナードが!!」クルッ

 

そう言うと180°回転し走り去って行った。

 

緑谷(……タフネス)

 

緑谷(でも…良かった。救かって)

 

緑谷(これからは身の丈に合った将来を…)

悟空「危ねぇ危ねぇ」フッ

 

またお前か

 

何処からかいきなり再登場した道着男。

 

緑谷「悟空さん!?さっきまで集団に…」

 

悟空「いっやぁぁ…何とかおめぇの気探ってギリギリ瞬間移動できたぞ…」

 

悟空「おったまげた…捕まりそうだったぞ」

 

緑谷「……テレポート?」

 

緑谷(この人怪力だけじゃ無く超能力も使えんの…?)

 

緑谷(そういうのって修行云々でどうにか出来るモンなのか?)

 

悟空「すまねぇな…道案内してもらったらあんなのに巻き込んじまって…」

 

緑谷「いえ僕こそ…救けられた身だし…何よりあそこに居た友達まで救ってくれたんだから…」

 

悟空「え、さっきの友達なんか?」

 

緑谷「はい」

 

悟空「だからさっき焦って走り出したのかー納得納得」

 

緑谷「…ごめんなさい。僕が出張ったせいで何度も迷惑かけてしまって」

 

緑谷「偉そうにあんな事言ってたのに…」

 

悟空「……ん…でもよ?おめぇが行かなかったら多分オラも行ってなかったぞ?」

 

緑谷「え……」

 

悟空「おめぇが動いたからオラも動かされたんだよ」

 

悟空「さっきおめぇは力が無ぇから助けらんねぇっつったろ」

 

悟空「それでもおめぇは飛び出してった」

 

悟空「本気でそいつを救けてぇって思うんならそういう風に無意識に身体が動くのが当たり前なんだよ」

 

悟空「あん時のおめぇはあの場にいた誰よりも()()()()

 

緑谷「………」

 

緑谷「でも……僕は」

 

悟空「オラはな、赤ん坊の頃親に捨てられてじっちゃんに拾われたんだ」

 

悟空「出来損ないのクズだったから」

 

緑谷「え………」

 

悟空「落ちこぼれだって努力すりゃエリートを超えられる事だってあるんだ」

 

悟空「実際オラが経験してる」

 

悟空「おめぇが今どれだけ弱くたって修行すりゃオラと同じくれぇ強くなれるし…」

 

悟空「さっきみたいな事だっておめぇにも出来るはずだ」

 

そんな言葉をかけられたのは生まれて初めてだった。

 

僕にも誰かが救える…そんな力があるなんて。

 

心の奥底からある感情が込み上げてきて、つい涙が出そうになった。

 

緑谷「…………そう…なんですかね」

 

緑谷「僕…みたいな人でも……」

 

緑谷「こんな無個性な人でも…救けられるんですかね…?」

 

悟空「………あのな、緑谷」

 

悟空「【個性】ってのは元々出来る出来ねぇってモンじゃねえんだ」

 

悟空「おめぇが個性欲しいってんなら1ついい方法がある」

 

 

 

 

 

悟空「【個性が無くても強えヒーローになれる】……そんな個性を作りゃいいんだ」

 

とても…眩しい笑顔でそう口にした。

 

冗談でも…何でもない…

 

本気で僕の問いかけに答えてくれたんだ。

 

緑谷「………くっ……」

 

緑谷「ううっ……」

 

今まで長い間遠回りしてきたみたいだ。

 

そうだ…なれるとかなれないとか…そんなの関係ないじゃないか。

 

自分自身で確かめればいい……。それが僕の出した答えだった。

 

悟空「お…おいいきなり泣いてどうしたんか…」

 

緑谷「いえ………すっごい……嬉しくて…」

 

緑谷「僕の事…こんなにちゃんと見てくれる人なんて…居なくて」

 

あまりの衝撃に思わず感涙を流してしまった。

 

悟空「……そっか」

 

悟空「でも、今のはあくまでおめぇの努力次第ってだけだかんな?」

 

悟空「これからおめぇを徹底的に鍛えてく……」

 

悟空「オラの修行…ついていけっか?」

 

「架空」(ゆめ)は「現実」に…

 

緑谷「………っ……」

 

緑谷「はいっっっ!!!」

 

言い忘れてたけど…これは僕が最高のヒーローになる迄の物語だ。

 




どうも須井化です。とりあえずあけましておめでとうございます(?)

第1話いかがでしたか?

最初は全部名前表記しようかと思ったけど書いてる途中で断念しました…

原作の大幅コピーは厳禁なので1話丸ごとそのままって訳にも行かなかったけど……

あまりにも中途半端になってしまったァァァ

これ大丈夫だったか?

一応何方かしか見てない人でも楽しめる様に書いていくつもりですが2つとも原作を読んだ方が設定とか理解し易いかも…

何より説明の手間がはぶしょん。

最近寒いですね(棒)

次回の投稿は近日行う予定です。

皆さん過度に期待せずに待つ様に。

2017年、これからよろしくお願いします。




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第2話

前回までのあらすじ(的なヤツ!)

モテないイケない無個性のどこにでもいる駄目学生緑谷出久!!

突如敵に襲われる彼だが孫悟空という謎の男に救われる!!

なんやかんやあって孫悟空に修行させてもらう事になった緑谷少年!

ん?あらすじが雑すぎる?

初回だから許してくれ!!

更に向こうへ!Plus Ultra!!!



陽が沈み始め空も紅くなっていた…

 

何の変哲も無かった筈の僕の日常がこの日この瞬間に…この物語が始まった………

 

 

 

 

 

ついでだが…

 

その日僕の家族が1人増えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

デク母「………え」

 

悟空「おねげぇだ!オラをここに住ませてくれぇぇ…」ペコッ

 

緑谷(どう考えても無理がありますありがとうございました)

 

 

話を簡潔にまとめるとこういう事だ。

 

悟空さんは僕を強くする為に稽古をつけてくれるそうだ。

 

だが生憎悟空さんには住む家も食べる食料も着る服も無い。

 

何より()()()()()()()によりブラックリストに載られたであろう命の恩人を匿わない訳にもいかず…

 

修行に付き合う代わりに【その間の衣食住を保証する】という条件を付けた。

 

因みにその日母に僕andかっちゃんを助けてくれたヒーローと伝えて(誤魔化して)土下座させて頼んだ結果

 

デク母「OK!!!」グッ

 

即決してくれた。緩い流石母さん緩い。

 

…?ヒーロー免許はどうしたって?

 

それよりも僕の事を心配する事に必死だったよ 

 

……それ程愛されてるって証拠だけどさ…

 

 

 

 

 

 

 

それから数日経ち…とある山奥にてとうとう悟空さんによる超超ハードな特訓が始まった。

 

 

悟空「まず…これからおめぇにはオラの技を使える様な体になるまで自分で鍛えてもらっぞ」

 

緑谷「あ…悟空さん直々じゃないんですね」

 

悟空「あったりめぇだ。今のお前じゃまだ気は使いこなせねぇ」

 

悟空「だからまずそれに見合う【身体】を作り上げる」

 

緑谷「鍛えるっ……てのは具体的に言うと?」

 

悟空「筋トレ」

 

緑谷「………」

 

余りにも単純且つ噛み砕いた内容で拍子抜けしてしまった。

 

そりゃま近道なんて無いと思ってたけどさ…

 

なんかこう…力を宿すぞー的なヤツを想像してしまった。

 

僕のイメージが一瞬にして崩れ去った。

 

…だがこの修行の真の恐ろしさはその量にある。

 

悟空「基本毎日腹筋1000回、腕立て伏せ500回、逆立ち100秒10回…あ、こん時にも腕立て伏せ10秒に一回出来たらいいな…後…」

 

緑谷(多い多い多いぃぃぃ)

 

常人には到底無理なハードトレーニングだよこれ!

 

1つ目でギブだわ!!

 

無理に決まってんだろと一時は唸るものの…

 

緑谷(…っでもこれ位しないとオールマイトに……)

 

緑谷(それどころか皆にも追いつけない…)

 

緑谷(弱気になるな!)

 

そう自分に言い聞かせた。

 

……が僕に降りかかる絶望はこんなもんじゃ収まらない。

 

まず先程の平日含めた7日間に()()行うトレーニングが7種類。

 

そして

 

悟空「休日はランニング1時間……」

 

悟空「を休憩挟んで3回」

 

緑谷「……」

 

悟空「後さっきのメニュー2倍にすっからな?」

 

緑谷「……」

 

悟空「……後」ズッシリ…

 

何やら重たそうな服を抱えてこちらに渡した。

 

緑谷「重っっ!!!???」

 

持った瞬間腕が垂れ下がる。

 

それ程尋常じゃない重量だったのだ。

 

悟空「そいつは10kgある」

 

悟空「これから着る服はそれにしな」

 

緑谷「………」

 

緑谷「えええええっ!?」

 

もう耐え切れなかった。

 

そりゃそうだ。今までの生活を10kgの重りを担ぎながら送れって言ってる様なものだ。

 

それに加えてさっきのトレーニング。

 

幾ら何でも無茶苦茶だ。

 

緑谷「流石に無理がありますよそりゃ!!」

 

緑谷「そんな負荷があったら命が幾つあっても足りませんよ!!」

 

悟空「そんな事言うなよ…」

 

悟空「今おめぇ上着だけかもしれねぇけど昔オラなんか靴もこのリストバンドも全部重くしてたんだからな?」

 

悟空「全部で100kgは軽く超えてた!」

 

逆に建物とか周りの物体に影響来ないのそれ!?

 

悟空「それと…慣れてきたら10kgずつ上げてくぞ」

 

悟空「何とか30、40kgまで耐えられる身体に仕上げるつもりだ!」

 

緑谷「はぁぁぁあぃいいいい!?」

 

とてつもなく理不尽な修行内容だった為とうとう痺れを切らしてしまう。

 

緑谷「そんな…もう後1年ないんですよ試験まで!!」

 

緑谷「この短期間でそんな事…」

 

悟空「1()()()()()から言ってんだ」

 

緑谷「!?」

 

悟空「…確かに…オラは数年、数十年かけて今みてぇな強さになった」

 

悟空「1からおめぇを鍛えるにはこの特訓は厳ししいかもしれねぇ」

 

悟空「多分オラもおめぇの状況だったら似た様な反応をする」

 

悟空「でも…おめぇは数ヶ月でオラみてぇに強くなりてぇって言ったんだ」

 

悟空「それなりの覚悟をしてオラにそう言った筈だ。これ位して当然だし……」

 

悟空「オラがガキの頃やった修行で一番効果があったのはこれだ」

 

悟空「これをこなせれば確実に今の数倍、数十倍は強くなれる…」

 

悟空「それは確かだ」

 

緑谷「……」

 

緑谷(そうだよな…オールマイト(あの人)みたいに強くなりたいなら…)

 

緑谷(この位の事でへこたれてる場合じゃないよな…)

 

さっきまで弱々しかった顔もいつしかにっと笑っていた。

 

こんな壁位乗り越えてやる、そう思って。

 

悟空「ま、あくまで似た様な方法ってだけだけどな」

 

悟空「辛ぇか?」

 

緑谷「まさか」ニッ

 

悟空「即答か…えらく張り切ってんなぁ…」

 

悟空「早速始めっか」

 

 

 

 

 

だがこの修行は予想よりも遥かに過酷なものだった。

 

 

緑谷「っ…!」

 

緑谷「687…688…6……」

 

緑谷「っ…やり直し!」

 

腹筋を上げることに集中してしまい、途中で数を数えられなくなってしまう。

 

それ程までに疲労が溜まっていく。

 

 

 

緑谷「はぁ…はぁ…」ダダッ…

 

悟空「ふぁい、おー、ふぁい、おー」

 

元々スタミナが無いもんだった為無理に身体を動かすと…

 

緑谷「うっ……っおぼ」

 

悟空「お……!緑谷!」

 

 

吐く(こうなる)

 

 

 

日常生活にも影響は出てくる。

 

緑谷「今日も疲れた……」

 

椅子に座ろうとすると…

 

バキッバキッ…

 

緑谷「……」

 

椅子が壊れるし…

 

緑谷「…えっとここはこうで…」カリカリ…

 

ズキッ

 

緑谷「いっだっ!?」

 

勉強する時間だけ身体に苦痛を与える。

 

様々な辛労辛苦を耐え凌ぎ約7ヶ月間この特訓に明け暮れた…

 

 

 

 

 

そして時は流れ11月上旬…

 

また…あの山奥にて。

 

 

チュンチュン…

 

鳥の囀りがこんなに心地よく聞こえるのはいつ振りだろうか…

 

とても清々しい気分だ。

 

悟空「…よくやったな、緑谷」

 

悟空「まさか半年で50kgに慣れるとは思わなかったぞー!」

 

悟空「やりゃ出来んじゃねぇかおめぇも!!」

 

緑谷「へへ…へ」

 

悟空「……そんじゃ()()()()()()()

 

悟空「とりあえずその服脱いでみろ」

 

緑谷「はい」ヌギヌギ…

 

悟空「…」

 

50kgの衣服も今となっては脱ぐ事位造作も無い作業となっていた。

 

自分でも信じられない事実だが…

 

もっと信じられない事と言えば……

 

悟空「よし。じゃ、緑谷」

 

悟空「1回思いっきし飛んでみろ」

 

緑谷「思いっきり……ですか?」

 

悟空「ああ。多分びっくりすると思うぞ?」

 

緑谷「分かりました」

 

そう言うと静かに目を瞑り…脚に力を込めて…

 

腕を大きく振った。

 

そのまま地面を強く蹴り踏み切ると……

 

 

ゴオオオッ

 

緑谷「…へ」

 

開いた目の先には澄み切った蒼色の空が広がっていた。

 

つい数秒前まで周りにあった木々はいつの間にか見えなくなっていた。

 

いや………

 

光景そのものが別世界だった。

 

緑谷(え…これ…僕って…)

 

緑谷(今飛んでる…?)

 

普段オールマイトが翔んでいる大空を……

 

今彼と同じ場所を同じ様に羽ばたいているのか…自分は…

 

感動モノってレベルじゃなかった

 

唯の空想が現実になってるんだ。

 

皆より高い所歩いてるんだ。

 

そういう実感が湧いてきた。

 

………が、感傷に浸ってるのも束の間。

 

緑谷(あれ…待て)

 

緑谷(これどう着地すんの)ヒュゥゥ…

 

そんな疑問が心の中で過ぎった時、身体が落ちていく様な感覚があった。

 

ってか絶賛落下中です。

 

緑谷「ぎゃあああああっ!!?」ヒュゥゥ…

 

緑谷(落ちる落ちる落ちるぅぅぅう!?)

 

どんどん加速していき地面に急接近する。

 

まるで天国から地獄に真っ逆様みたいな状況だ。

 

このままではかっちゃん曰くワンチャンダイブで第二の人生を送る事になってしまう。

 

悟空さんは

 

悟空「慌てんな緑谷!普通に着地すりゃ問題ねえ」

 

悟空「やってみろ!」

 

とアドバイスするんだが…

 

緑谷(普通にってどうだよぉおおおっ!?)

 

無論こんなの初経験なので対応のしようがない。

 

緑谷(くそったれぇぇえっ!?)

 

目の前に迫ってくる地面。

 

後1、2秒で衝突という所で僕はある違和感を覚えた。

 

前言撤回する様だが、今の状況と似た様な経験はした事がある。

 

その時とは明らかに違う点が1つあった。

 

 

 

 

 

 

心の中では……これっぽっちも死の危険を感じられなかった。

 

ダンッッ!!!

 

無意識の内に着地していたらしい。

 

自然と脚が下に向き、態勢を整えられていた。

 

因みに脚は痺れるくらいで特にこれといった外傷は見当たらなかった。

 

緑谷(これ…今僕がやったのか…?)

 

自分が今何をしたのかまだ理解出来ず、呆然としている。

 

悟空「…身体が反射的に反応したな」

 

悟空「ま、半分くれぇは今まで貯めてきた予備知識の効果もありそうだけど」

 

緑谷「……?」

 

緑谷「あ……」

 

緑谷(そうだ…今まで僕は何度もオールマイトを見てきた)

 

緑谷(だから頭ですぐに着地のイメージが出来ていたのか…)

 

緑谷(………)

 

……そう。たった数秒…

 

当事者にしてみれば一瞬の出来事だ。

 

だけど…その一瞬……僕はオールマイトになれたんだ。

 

緑谷「…はは…何だかなぁ…」

 

悟空「?」

 

緑谷「今まで悩んでたのが馬鹿らしいや」

 

ポタポタ…

 

緑谷「…僕にも…こんな才能があるんだ……」

 

緑谷「そう…思っ………て……」

 

今までの()()が全て報われたと思うと涙を流さずにはいられなかった。

 

なり得もしない筈だった…あの英雄(ヒーロー)になれたんだ。

 

そう思うと歓喜に満ち溢れた。

 

悟空「……ったく…泣くのは高校合格してからにしろよ…」

 

悟空「その泣き虫も残った時間で直さねぇとな」

 

緑谷「は…はひ……」

 

悟空「……今やってみた通りおめぇは4月の頃と比べもんにならねぇくれぇ強くなった」

 

悟空「軽く100mは飛んでたぞ」

 

緑谷「ひゃっ100!?」

 

緑谷(ただのジャンプ1回でそこまで高く飛べるのか…)

 

悟空「これで()()は整ったな」

 

緑谷「条件?」

 

悟空「ああ」

 

悟空「今11月に入ったばっかだ」

 

悟空「おめぇの言っていた学校の試験までに後3ヶ月余裕がある」

 

悟空「だからそれまで毎日オラがここでみっちり稽古をつけるって訳だ!」

 

緑谷「おおーっ!…って事は…」

 

悟空「勿論、目標は技の伝授!」

 

緑谷「や…やたーーっ!必殺技ーー!」

 

素直に喜ばずにはいられなかった。

 

何しろ1度はやってみたかった、あの必殺光線が撃てるようになるのだ。

 

これが完成できればウルト○マンも顔負けの超絶ヒーローの誕生だろう。

 

悟空「つっても気功波だけじゃねえけどな」

 

悟空「他にも教えてぇ技があるし…そもそもおめぇには気の概念が無ぇ」

 

悟空「そこら辺を1から教える!」

 

悟空「オラも3ヶ月じゃそんなゆっくり説明する余裕も無ぇ」

 

悟空「かなりきつい修行になる……」

 

悟空「心してかかれよ!!」

 

緑谷「……っ……」ウズウズ…

 

緑谷「はい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして3ヶ月後…試験まで残り1週間を切ろうとしていた…

 

その頃

 

 

 

シュゥゥ…

 

休日AM.5:30

 

 

悟空「……マジかよ。やってのけやがった」

 

悟空(オラも正直()()()()使いこなせるとは思わなかったぞ…)

 

悟空(気のコントロールが上手ぇ所はクリリン似か…)

 

悟空(成長幅が半端ねえ!!)

 

緑谷「はぁ…はぁ…」

 

悟空「……改めて見ると…」

 

緑谷「?」

 

そう言うと悟空さんは大きな鏡を僕の前に置いて、僕の身体を見せる。

 

緑谷「………わ…わぁ…」

 

悟空「おめぇすっげえ変わり様だなぁ…」

 

悟空「1年前とは別人だぞ…」

 

悟空さんと出会う前は背が小さくおまけに痩せ細っていて弱々しかった身体も…

 

気づけば筋肉モリモリ…とまでとは言わないがかなり筋肉が付きそれなりに逞しい身体になっていた。

 

緑谷「……確かに」クスッ

 

今となっては懐かしい姿だった。

 

1年前の写真を見て思わずほくそ笑む。

 

 

悟空「とりあえず、これで教えたやつ3つ共使える筈だ!」

 

悟空「まぁ応用は教えきれなかったけど…これだけ出来てりゃ十分だ」

 

緑谷「…」

 

悟空「……つー訳で一旦オラとの修行はこれで終了!」

 

悟空「試験まで後ちょっと期間あるけど」

 

悟空「それは自主的にトレーニングしてもいいし、リラックスしてもいい」

 

悟空「オラが教えられんのはここまでだ」ポンッ

 

そう言うと悟空さんは僕の頭に手をそっと乗せた。

 

悟空「……よく頑張った」

 

悟空「後はおめぇ次第だ」

 

悟空「思いっきりやれよ、試験」

 

緑谷「………はい!」

 

悟空「いい返事だ!少しは心も成長してんな」

 

悟空「合格して、ちゃんと行きてえ学校受かれよ?」

 

悟空「おめぇの母ちゃんも心配してんだからな?」

 

緑谷「ええ、勿論」

 

悟空「………そんじゃ、今日はさっさと帰って母ちゃんの朝飯食いにいっか!」

 

緑谷「はい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「」ガツガツ…

 

悟空「」ガツガツ…

 

母の愛情たっぷりな手料理を掻き込んで頬張る。

 

我ながら何ともマナー知らずの雑な食べ方だ。

 

デク母「それにしても…」

 

デク母「出久もよく食べる様になったわね」

 

デク母「今なんか5、6回は白米おかわりしてる」

 

緑谷「む…そほかは…」

 

食べ物を口に放り込みながら喋り出す。

 

ちゃんと飲み込んでから喋れ。

 

緑谷「」ゴクッ

 

……料理は飲む物。

 

緑谷「悟空さんに比べたらよっぽどだと思うけど…」

 

デク母「そりゃまぁ…10倍位差があるけど」

 

悟空「おかわり!」

 

デク母「はーい」

 

そう言うと大量にある炊飯器の1つを開けてご飯をよそり始めた。

 

緑谷「………ねぇ母さん」

 

デク母「ん?」

 

緑谷「そのお金どこから出てるの?」

 

デク母「………ー」

 

デク母「企業秘密」

 

聞かなきゃ良かったと今更ながらに後悔した。

 

デク母「そんな事は気にしなくていいから。さ、どんどん食べて」

 

デク母「育ち盛りなんだから」

 

緑谷「はいはい」

 

4月からこんな調子だ。

 

大体服の重さに比例してご飯の量も増えてる気がする。

 

3人で食卓を囲むのはかなり久しぶりだ。

 

今じゃ悟空さんは僕のお義父さんみたいな感じになってる。

 

まぁ…お義父さんは食べる事に夢中で普段食事中に喋るって事は無いけど。

 

それでも3人で朝昼晩一緒にご飯を食べられるの僕にとってはとても幸せな事だったのだ。

 

緑谷「……」

 

デク母「出久?箸止まってるわよ」

 

緑谷「え…あ、ああごめん…」

 

デク母「孫さんも……?」

 

緑谷「ん?」

 

悟空「………」

 

悟空さんが食べている時に手を止める所を見るのは今までで初めてだった。

 

母さんは再度呼びかけたが反応をしなかった。

 

 

 

 

帰り道に聞いた話だ。

 

とても不思議で仕方なかったので1度聞いてみたかったのだ。

 

何故悟空さんはあんな重いシャツを作れたのか?と。

 

というかそもそも作る材料とか技術無いよねこの人

 

悟空『……うーん……』

 

悟空『なんかやったら作れた』

 

答えが曖昧過ぎて理解に苦しんだ。

 

結局有耶無耶にしてその話題を切ったのだが…

 

悟空「…」

 

 

 

 

悟空『………っとは言ったものの…』

 

悟空『どう修行させよう…』

 

悟空『できりゃ亀仙人のじっちゃんや神様がやってたみてぇなやり方にしてぇけど…』

 

悟空『オラにゃあんなの作れねぇしなぁ…』

 

悟空『うーん……』

 

ブゥゥ…

 

悟空『お?』

 

突如謎の光に覆われる。

 

悟空『眩………ん?』

 

悟空『こ…こりゃ緑谷の制服…なんでここに』

 

悟空さんの手に突然僕の制服が現れたのだ。

 

しかも…

 

悟空『なんか重ぇな…』

 

悟空『………大体10kgぐれぇか……』

 

悟空『どういう事だ…?』

 

悟空『……………あん時…』

 

悟空『神龍が居なくなっちまってたけど…』

 

悟空『実はオラが気付いてないだけで本当は近くにいるんじゃ…』

 

悟空『……もしくはオラが吸収したとか…?』

 

悟空『って事は願いを叶えられる力が手に入ったって事かぁ!?』

 

悟空『バンザーイ!バンザーイ!つまりオラが欲しいって念じたらそれが手に入んだな!?』

 

悟空『早速飯頼もっと!』

 

悟空『肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉……』

 

シーン…

 

悟空『……………あれ』

 

 

 

 

悟空(結局…あれ以来やってみたものの…)

 

悟空(修行で使わせた重い服しか成功しなかったぞ…)

 

悟空(よっぽど強く念じねぇと駄目なんかなぁ…それとも…?)

 

悟空(何にせよオラも修行だなこりゃ)

 

悟空「……」

 

悟空(……神龍………)

 

悟空(おめぇはいってぇどこ行っちまったんだ?)

 

悟空(聞きてぇ事たんまりあんのに……)

 

緑谷「悟空さん?」

 

悟空「………」

 

悟空「?ど、どした緑谷」

 

緑谷「こっちの台詞ですよ…いきなりぼぉっとしちゃって」

 

デク母「折角作ったご飯も冷めちゃうわよ?」

 

悟空「す…すまねぇ。ちょっと考え事してて」

 

緑谷 デク母「「………」」

 

食べている間にも考え事をしているのかぁと僕と母さんはそろって驚いた。

 

悟空「あ、ヤッベご飯粒落ちた」

 

緑谷「あっ」

 

デク母「ヒャァーーッ!?」

 

バタッ

 

母さんは唐突に悲鳴をあげ、そのまま床に倒れてしまった。

 

悟空「…お……おいでぇじょうぶ…か?」

 

デク母「……」ピクピク…

 

緑谷「悟空さん…この時期に落ちる(それ)は禁句ですよ」

 

悟空「あ、すまねぇ」

 

とは言え、母さんは母さんで過剰に反応し過ぎ。

 

試験間近に控えている息子がいるんだから無理も無いけど。

 

数秒経てばすぐに意識も戻るので大丈夫だろう。

 

デク母「あ、そうだ」スクッ

 

ほらね、すぐに態勢を立て直す。

 

悟空「うおっ…おでれぇた」

 

デク母「出久、ちょっとおつかい行ってくれる?」

 

緑谷「え」

 

デク母「受験の準備とかで私手が離せないから」

 

デク母「今日1日空いてるでしょ?」

 

緑谷「構わないよ。食べ終わった後行くから」

 

デク母「ありがとー」

 

会話を一旦切ると再度豪快に食べ始める。

 

緑谷「」ガツガツ…

 

悟空「」ガツガツ…

 

デク母「」モグモグ…

 

 

 

 

 

 

 

だがこのおつかいが後に()()()()()()()()を築くきっかけとなろうとは…

 

この時はまだ知る由もなかった。

 

 

 

 




今回は修行回でした。ただただほのぼの(?)してただけだね。

2次元の世界だから実際いきなり1000回できんの?とか聞くのは野暮だぞ…?(震え声)

次回は皆大好きあの娘がやって来るよ。お楽しみに。




…ヤベェよあらすじより短いよヤベェよ…何か手抜き感あるよ。どうし…………




……………あああああっ!!忘れてたぁぁああっ!!?

SA・SHI・EEEEE!!!!!

超朗報です!!なんと開始1週間足らずで挿絵を描いて下さった方がいました!!
(2ch含めたら半年とか言っちゃダメよ)

まぁタグを見た方はご存知でしょうけど!

で、肝心の絵の内容はと言いますと!

緑谷出久!道着(緑谷オリジン)ver!!

【挿絵表示】


作画した方はさいころソード様です!!
一応その方のマイページのリンクも貼っておきます!↓
http://syosetu.org/?mode=user&uid=175541

このマイページにも載っていますが念の為補足を付け加えておきます。

さいころソード「胸のマークはオールマイトに影響されて縫い付けた物」

さいころソード「V(victory)や∀(ターンA:「全て」という意味を表し、allmightと掛けている)に見えるそのマークはギニュー特選隊のそれと酷似している」


……すっごい凝ってる(泣)
言われてみればギニュー達もそういうマーク付けてましたねー…戦闘服に
私とっても感激です(大号泣)

他の絵の方も随時公開していくつもりです。
乞うご期待!!そしてありがとうございましたさいころソード様!!



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
次回は1週間以内に投稿できるかと思います。
また見てね。







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第3話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

突如敵に襲われる彼だが孫悟空という謎の男に救われる!

緑谷少年は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

孫悟空の協力もあり約10ヶ月後、遂に3つの技を会得する!!

ってか3つの技って一体何なんだ?

もったいぶらずに教えてくれよ!

更に向こうへ!PlusUltra!!!



人間には不完全と完全の2種類が存在する。

 

私はそれの中では完全な人間の部類に入るのでしょう。

 

 

「…ふぅ」

 

椅子に腰掛け、温かい紅茶をゆっくり味わう。

 

私にとっては心安らぐ一時です。

 

爺やが淹れてくれるこの紅茶の味は絶品で毎度舌鼓を打つ程だ。

 

飲み終わるとすぐに立ち上がり別の部屋へ移動します。

 

執事「お嬢様。今日は何処かお出掛けへ?」

 

「ええ。少し服が窮屈になってきたので新しい物を」

 

執事「成る程」

 

たわいもない話をしていると衣類が収納されている部屋の1つに到着しました。

 

「…今日はここでいいかしら」

 

ガチャ…

 

 

 

私の家には約300種類の衣服が存在します。

 

無論、爺やに頼めば10分程度で5着10着はすぐに購入できますが…

 

「……爺や、わざわざここまでボディガードせずとも…」

 

執事「いえいえ…お嬢様の身嗜みのチェックも私の仕事でございます」

 

「私ももうお子様ではないのですよ?」

 

執事「いえいえ…お歳が変わろうと私が行わなければならない事に変わりはございません」

 

「お父様とお母様にご報告しますわよ」ギロッ

 

睨みつけながらそう言い放つと…

 

執事「失礼致しました」ガチャ

 

バタン

 

即座に部屋から退散しました。

 

「…… 」

 

この通り、筋金入りの破廉恥。

 

余程私の事を愛してると見れますが…

 

度が過ぎると恐ろしいものです。

 

「全く……さてと」

 

「何にしようかな」

 

 

 

 

 

 

私の名前は八百万百。

 

どこにでもいるしがない中学生…

 

という訳ではありません。

 

才色兼備・文武両道・富貴栄華…

 

俗に言う【エリート】の様な人間です。

 

……自画自賛?いえいえ…

 

これは確たる事実です。

 

現に今…

 

 

八百万「……」スタスタ…

 

<うひょー可愛い…

 

<何アレデカイ

 

 

街の外を歩くだけで人々の注目を浴びていますし…

 

そしてこれからも完璧(そう)であり続けなければならない。

 

そういう使()()があるのだから。

 

 

 

 

私の家系は代々ヒーローとして社会であらゆる活躍をしてきました。

 

この様な財閥にまで昇りつめたのも初代のお陰だとか。

 

(まぁ名前は度々変わっていますけど)

 

私のお父様とお母様もヒーローに就き、世の為人の為活動しております。

 

……他にも様々なお仕事をなさっている様ですが。

 

ですので私も八百万の名に恥じぬ様、2人のような立派なヒーローになるべく日々精進しているのです。

 

……戦って退治するだけなのにそんな大変なの?とお思いでしょう?

 

そんな簡単な職業では無いのです。

 

そもそもヒーローとは【超常】が起こった数年後、それを好機とし個性を悪用する犯罪者が後を絶たなくなるという非常事態が発生した際、政府が苦肉の策として個性の限定的使用を認めた事が起源と言われています。

 

ですので当初はあまり受け入れ難い職業でした。

 

時が流れ今では人々に愛される存在にまでとなりましたが…

 

実際世界の何処かでヒーローを否定し続ける人達は数知れぬ程居ます。

 

勿論誰もがなろうと思えばすぐなれるようなシステムにはなっていません。

 

ヒーロー科専門の学校に通い、ヒーローたるものを学び終えた後、プロヒーロー免許を取得しなければなりません。

 

これが無ければ個性の使用も出来ませんし、無断に敵を攻撃するのも犯罪となります。正当防衛として考えると話は違ってきますが…

 

…これ以上突っ込むと収集がつかなくなりそうなのでやめておきましょうか…

 

同時にヒーローはあらゆるスキルを必要とされます。

 

特に多才な知能、強靭たる強さ、揺るがぬ勇気…

 

知・力・心の三大要素が不可欠と言えましょう。

 

世間で最も人気のある職業であると同時に…最も就職するのが難しい職業です。

 

例え1度はプロになれたとしても、収入が不安定なこの仕事では挫折する人が多数派。

 

結局プロとして長年活動する人は40人中1人だとか……

 

ヒーローになるという事はそれ程過酷な道を進むという意味を示しているのです。

 

 

 

と…まぁ簡易的ではありますが解説させて頂きました。ご静聴ありがとうございました。

 

……あ、そうこうしてる間に…

 

八百万「着きましたわね」

 

 

 

店員「いらっしゃいませ」

 

八百万「…」

 

ここは最近よく私の服を仕入れている高級ブランドショップ。

 

折角だから幾つかまとめて買っておきましょう。

 

八百万「うーん……」

 

八百万「あの…恐れ入りますが…」

 

店員「はい、どういったご用件でしょう?」

 

私は2つの服を指差しながらこう言いました。

 

八百万「ここからあちらまでの(50着)を頂けないでしょうか」

 

店員「」

 

大富豪と庶民の金銭感覚はこうも違うのかと言わんばかりに唖然としてしまう。

 

私、然程買った様な気はしませんが…

 

店員「9,800,000円となります……」

 

八百万「小切手でもよろしいですか?」

 

店員「小切手……………!」

 

 

 

 

 

 

八百万「帰ったら早速試着してみましょう」

 

大量の手提げ袋を両手に持ち歩きながらそんな事を考えていました。

 

?50着もの服を持ち歩く事が不可能?

 

私の体はそんな柔じゃなくてよ。

 

とはいえ時折周りの目線が気になる事もありますが…

 

「スゲー…10は軽く超えてるぞあの袋」

 

「1本につき1つとか指千切れん?」

 

八百万(ご心配なく)

 

それからしばらく歩いていると…

 

 

スタスタ…

 

「…うぇぇ…」

 

八百万「…」スタスタ…

 

「ぇっく…」

 

八百万「……」スタスタ…

 

「びえええええ」

 

八百万「…」スタスタ…

 

「ええええっ!」

 

突如5、6歳程度の子供が泣き出したのです。

 

まぁ気にもならずにそのまま歩き続けましたが。

 

…………?どうなさいました?何か言いたげですね…

 

あ、子供?

 

…質問を返す様ですが…

 

私が助けなければならない義理があるのでしょうか?

 

例えば街角でティッシュを販売している人が居るでしょう?

 

貴方は呼びかけられずともそれを貰いに行きますか?

 

恐らく大半の方はノーと答えるでしょう。

 

また…例えば貴方が水泳が苦手な方と仮定しましょう。

 

人通りの少ない河川敷で誰かが溺れていた時貴方はどうしますか?

 

恐らく殆どが【助けを呼ぶ】までに収まるでしょう。

 

この様に人間というのは本能的に自己利害を第1に考える生命なのです。

 

その人に自覚が無くとも脳がそう判断せざるを得ないのです。

 

不必要なティッシュをわざわざ自分から貰いに行くメリットは無いし…

 

幾ら他人が死の危機に直面していようと自ら命を張ってまでその人を助けようとは到底思えられません。

 

増してや身内でも知り合いでも無い人を…

 

予め言っておきますが私の【完璧】の定義とは自分がどれ程優秀であるか…この一点に尽きます。

 

ですから赤の他人の心配をする程私もお人好しではありません。

 

今この買い物も休日の貴重な空き時間を使って行っている事であって…

 

みすみすそれを潰しに行く様な事は致しません。

 

ただ…場合にもよりますが。

 

結局皆自分の事しか考慮していないのです。

 

ヒーローになった方の中ではきっと()()()()だとか()()()()()()()()()()()

とか…

 

自分の利益の為という動機の人も0では無いのでしょう。

 

……勿論その逆も然りですが…

 

 

 

八百万『………』

 

子供の頃、PCの画面に映っていたその姿は今も決して忘れられません。

 

あるヒーローのデビュー動画を見ていた時でした。

 

 

<スゲー……もう100人は助けてるよ!

 

<マジで!これマジでヤベーッて!!

 

『もう大丈夫!何故かって?』

 

『私が来た!!!』

 

 

八百万『わぁ……』

 

その人はとても輝いていて見た瞬間忽ち惹かれてしまいました、

 

 

 

世の中にはどんな馬鹿らしい様な事でも平気に命懸けでやって退けてしまう不思議な人間もいるのです。

 

 

 

 

ダンッ

 

そんな事を思い返していると勢い良く地面を蹴り飛ばす音が後ろから聞こえて来ました。

 

「よっと」パシッ

 

子供「ぇ…?」

 

「はい。風船」

 

「今度は無くしちゃダメだよ?」

 

子供「うん」

 

ほら、こんな感じに。

 

この会話で私はようやくさっきの状況を理解できました。

 

さっきの号泣は【風船が飛んで行ったので誰か取ってくれ】というメッセージだったのです。

 

どうやら通りかかった男性が取った様ですが。

 

放っておいてもこういう【お節介馬鹿】が助けてくれるだろう…

 

面倒事を避ける為にそうやって全員他人をアテにしています。

 

言ってしまえばまず自分がどんな状況でも対応できる様な完璧な人間ならば気遣い云々を考える必要は無いのです。

 

皆が皆そうであれば互いに気を遣わずに済みますし……

 

…え…ヒーローにそぐわない人物像ですって?

 

私がヒーローになるのはあくまで反社会的な悪を粛正する為であって…

 

ただ奉仕活動をする便利屋になりたい訳じゃありませんのよ?

 

勘違いなさらない様に。

 

おっと…長話し過ぎたようですね…

 

八百万「…ふぅ…」

 

流石に両手に大量の荷物を抱えて2、30分も歩き続けるのは一苦労だったのか…

 

人気の無い路地裏で荷物を一旦置き小休憩を取る事にしました。

 

ため息をつきながら私は携帯電話を取り出し爺やと連絡を取ります。

 

この際あった通知の数は10。

 

八百万「… 」

 

八百万「…もうすぐ帰ります…と」ピッ…

 

執事<左様ですか!

 

執事<何度も送信しても既読が付かないものでしたからお嬢様の身に何かあったのかと…

 

執事<お怪我はございませんね?

 

執事<そうそう。今日のお夕

八百万「」ピッ

 

全く関係の無いトークが始まる様な気がしたので直様電源を切りました。

 

八百万「なんで態々私がこんな事をしているか存じて言っているのでしょうかね…」

 

八百万「本気で相手にしていたら1、2時間は削られてしまいますわ」

 

八百万「さてと…」

 

そろそろ歩き始めようかと荷物を持とうとした途端、前方ある会話が耳に入りました。

 

チンピラα「っかー最近溜まってきとるわー」

 

チンピラβ「うわ…またヤろうとしてら」

 

チンピラα「うっせ悪りぃか」

 

チンピラα「漢は皆変態上等」

 

チンピラγ「流石はあんちゃん変態の鑑」

 

チンピラα「とりあえず俺の事変態変態言うの止めよ?な?」

 

八百万「…」

 

八百万(柄の悪い不良…といったところですか…)

 

八百万(関わらないのが得策ですわね)

 

そう思い、荷物を手に取りすぐにその場から離れようと急いで歩き出しました。

 

八百万「…」スタスタ…

 

チンピラ「……」スタスタ…

 

ドッ

 

チンピラα「うっお」

 

八百万「っ!」ドサッ

 

焦るあまり先程の3人組とぶつかってしまいました。

 

勢い良く衝突した為にそのまま転倒してしまい…

 

八百万「痛……」

 

チンピラα「ってて…何しちゃってくれ…」

 

チンピラγ「……あんちゃんこりゃ…」

 

八百万「し…失礼致しました。ご機…」

 

一言謝罪を言って一刻も早く立ち去ろうとしますが…

 

ガシッ

 

逃走を察知した不良の1人に左腕を掴まれてしまいます。

 

八百万「ひっ…」

 

チンピラα「よう嬢ちゃん。アンタのせいで服汚れちゃったんだけど」

 

チンピラα「詫びと言っちゃなんだかちょいと俺らと付き合えよ」

 

八百万「わ…私今急いでいるので…」

 

チンピラα「すぐに済むからよぉ…な?」グイッ

 

そう言うと相手は腕をこっちに引っ張ります。

 

チンピラγ「うひょー最近の学生はけしからんねー!」

 

チンピラγ「全員こんなエロいのかよ」

 

チンピラβ「お…おいここで?流石にそれはやばくね…」

 

チンピラα「ダイジョーブ。この時間帯は殆ど誰も通らねぇ」

 

チンピラα「最悪サツじゃなけりゃ…なぁ?」ゴソゴソ…

 

そう言いながらポケットの中に手を入れると中からある物を出してきました。

 

チンピラα「拳銃(こいつ)でイチコロよ」

 

チンピラα「指紋軽く拭き取ってトンズラしてこいつを犯人に仕立て上げりゃいいさね」

 

八百万「っ…!」

 

チンピラβ「あ、ナルー」

 

チンピラα「つー訳だ。君に拒否権無いから、な?」

 

八百万「!?」

 

とんでもない奴と絡んでしまった…そう思うと同時に身震いする程の恐怖を感じた。

 

今すぐにでも逃げなければ…頭で考えていた事はそれだけでした。

 

八百万(とっ…とにかく爺やに連絡を……)

 

自由だった右腕でポケットから携帯を取り出そうとしますが…

 

ガシッ

 

八百万「!」

 

チンピラγ「…ーっとそいつはいけねーよネーチャン」

 

そう言うと不良は突っ込んでいた私の右腕をポケットから思い切り引っ張ります。

 

ドッ

 

勢いのあまり、携帯を掴んでいた手が開いてしまい落としてしまいました。

 

八百万(しまっ…)

 

チンピラγ「チッ。割れりゃしなかったか、運のいい奴」スタスタ…

 

チンピラγ「ま、念の為回収しとくよっと」パシッ

 

チンピラα「…今何しようとしたのかなぁ…?お嬢ちゃん」

 

八百万「…」

 

遂に八方塞がりになって黙りこんでしまいました。

 

チンピラα「救援呼ぼうってか?アアン゛!?」

 

チンピラα「君この状況分かってる?相手銃持ってんのよ?ピ・ス・ト・ル!」

 

助けを呼ぼうにもこの状況では来るまでに撃たれて場所によっては死ぬ可能性もあり得る…

 

かと言ってこのまま抵抗しなければロクな事をされない…

 

考えれば考える程冷静にはいられませんでした。

 

八百万(どうする…どうする…)

 

八百万(このままじゃ…私…………)

 

八百万(……一か八か……)

 

八百万「……っ最低」

 

チンピラα「あ?」

 

八百万「この汚らわしい最低のクズ野郎って言いましたのよ!!」

 

チンピラα「……は?」

 

八百万「集団がかりで未成年を銃で脅迫するなんてろくでなししか行わない所業ですわよ?」

 

八百万「しかも女性を」

 

八百万「所詮警察やヒーローが怖いからこうやって密かに犯罪を犯すただの臆病者に過ぎませんわ!」

 

八百万「まだ堂々と悪事を働く敵の方が勇敢ですわね!!」

 

チンピラα「ッテメコラ誰に口を聞いて…」ジャキ…

 

頭に血が上り銃を構える不良。

 

チンピラγ「バッカ!!銃で撃っちまったら俺らしか犯人いねぇだろ!」

 

八百万「自分で墓穴を掘りますか、これだから庶民は恐ろしいですわ」

 

チンピラα「………ッッッ!!」

 

チンピラα「このアマ…好きに言わせておきゃ…!!」

 

チンピラα「それだけされたきゃお望み通り丸腰でリンチしてやるよ!!!」バッ

 

痺れを切らした不良は掴んでいた手を放し私に殴りかかってきました。

 

チンピラγ「ちょっおま!!」

 

八百万(やった…離れた!)

 

八百万(このまま後ろに走って…)

 

チンピラβ「っと逃げちゃダメだよ逃げちゃ」ガシッ

 

すぐに振り返ろうとすると後ろにいた1人の不良に組みつかれて身動きが取れなくなってしまいます。

 

八百万(こっの……!)

 

チンピラα「死ねクソガキィッ!!」

 

不良の拳が私の方に伸び頭に激突するまで後数cmまでと迫っていました。

 

八百万「きゃっ……!」

 

もう殴られる……そう諦めかけていました。

 

 

 

 

 

 

ある言葉が聞こえるまでは…

 

 

 

「いけないな…」

 

チンピラα「!?」クルッ

 

突然後ろから声がするものですから反射的に不良は腕を振り上げたまま停止させそのまま後ろを振り向きました。

 

「女の子を殴るのはいけない」

 

チンピラα「…っだお前…」

 

八百万(今の声……さっきの風船の…?)

 

声が聞こえた方向を目を凝らして見ると…

 

 

そこに居たのは緑髪でそばかすがある…私よりも小さい1人の少年でした。

 

八百万「………!?」

 

チンピラα「次から次へと…めんどくせーなあーもう!」ガシッ

 

そう言うと不良は私の胸ぐらを掴み空中に持ち上げます。

 

八百万「っ…!」

 

チンピラα「チビの分際で何偉そうにしちゃってんですかねぇ…ええ!?」

 

チンピラα「最近の若者は目上に対する態度ってのがなってないんじゃないかな!?」ジャキ…

 

「…」

 

チンピラα「こうやって銃口向けられたら怯えて何もできやしねぇじゃねえかよ!」グイッ

 

八百万「うあっ…」

 

チンピラα「ヒーロー気取りかなぁ?ご大層なこった!!」

 

チンピラα「立場をわきまえろっての」

 

「…これ位でいいかな」ガシッ

 

チンピラα「俺はそういう偽善者が1番見てて腹立つんだよ!!!」

 

「……」スッ…

 

チンピラα「………何だ」

 

チンピラβ「石…か?」

 

少年は地面に落ちていた握り拳1個分程度の石を拾いそれを私達に見せつけるかの様にこちらに向けてきました。

 

その直後…

 

「っと」ピンッ

 

軽く指を1回弾いて石に当てたのです。

 

すると…

 

ピキピキ…

 

チンピラα「んあー?」

 

グシャ

 

八百万「!?」

 

チンピラβ「いいいー!?」

 

チンピラγ「少し指が触れただけだってのに…」

 

そう。1回指が接触した…その瞬間に石は粉々に砕けたのです。

 

チンピラα「…た、ただの個性だろ…ビビる必要は…」

 

「次」

 

チンピラ「?」

 

少年は自分の頭に指をトントンと指しながら再度こう発言しました。

 

「次やられたい人」

 

チンピラα「え………」

 

「…退く事をお薦めします」

 

チンピラβ「…」

 

チンピラγ「…」

 

チンピラα「…………に…」

 

チンピラα「逃げるだぁああっ!?」ダダッ

 

チンピラβ γ「「合点承知ノ助ーーー!?」」ダダダダッ

 

少年を見るなり不良達は瞬く間に退散していきました。

 

ドサッ

 

同時に掴んだ手も離されたのでようやく身動きが取れる状況になりました。

 

持ち上げられていたのでその拍子に地面に倒れこんでしまいましたけどね….

 

さりげなく携帯を置いていってるあたり間の抜けている人というか何というか…

 

八百万「痛たた…」

 

八百万(何とか撒けましたわね…一時はどうなるかと…)

 

スッ……

 

八百万「え」

 

 

「怪我無い?大丈夫?」

 

八百万「………」

 

彼はそう言って私に優しく手を差し伸べてくれました。

 

さっき殺されそうになったにも関わらず何も動じずただ笑顔で…

 

八百万「……は…はい」

 

返事を返した後私は彼の手を掴みゆっくりと立ち上がります。

 

「そっか。なら良かった」

 

「それじゃ!」

 

と挨拶をすると即座に少年は走り去っていきました。

 

八百万「……あ…ちょっと…」

 

八百万「行っちゃった…」

 

八百万「お礼位言わせて貰いたいものですわ」

 

八百万「…」

 

やはり理解し難い。

 

何故無関係な人間もああに命を張ってまで助けようとするのか…

 

何故そんな馬鹿げた事がを平然とできるのか…

 

まるでそう…()()()の様に……

 

私はその答えを知る為にも前に進まなければならない。

 

憧れの学校で…憧れの人に…なる為に。

 

 

 

 

 

ふと…走り去っていく少年の姿を見ながら…

 

 

八百万「……また会えるかな」

 

いつの間にか…そんな事を呟いていたようです。

 

 

 

 

 

 

 

因みに…言い忘れてましたけど…

 

緑谷「はぁ…はぁ…!」

 

緑谷(やばい女の子と喋っちゃったしかも手握っちゃった畜生くっそ恥ずかしいもしかして引かれたかなああどうしようモチベーション下がったー!何やたらカッコつけてんだこれじゃただのキザな奴にしか思われねぇじゃねえかァァァァ)グシャグシャ…

 

市民「何あれ怖い」

 

これが後に()()()()()()()を築くきっかけとなるのですが…

 

さてさてこの先どうなります事やら…

 

 

 




今回は皆大好き八百万回でした。

あ、ウラビティさんは試験であるから、ね?(震え声)

思ったより文章構成に悩まされた…オリストって難しいね!

今回の長ったらしい熱弁(解説)ご苦労様ですヤオヨロッパイ。

まぁ40人に1人は単なる作者の直感で付けた設定ですが…

後執事さんも勝手に作ったオリキャラです。まぁどんな姿かは皆様のご想像にお任せしますが…





(あまり重要なキャラじゃねぇしなぁ…)

多分誰かしらボディガードの1人か2人はいますよね…よね?

意外と茶番が面白くなりそうだったので付けてみましたけどいかかでしたか?

それにしてもこの娘よく紅茶飲むなぁ…どこの生徒会長だよ<ジュンケツ「呼んだ?」

呼んでねぇし…八百万の眉毛が太くなる…

何か違うクロスが始まりそうだからこのネタ止めよう…(分かる人居るのか?)

次回からまた原作通り進行するのでお楽しみに。

そしてまたもや挿絵を描いてくださった方が!

内容は八百万 in砂漠ーー(ブルマスーツ)


【挿絵表示】



あーありましたねこんなスーツなっつかし!

あれ…というかこれブルマよりデカイんじゃ…(チラッチラッ

なんてけしからん!おのれさいころソード(褒め言葉)

というわけで今回描いてくれたのもさいころソード様です!一応その方のマイページのリンクも貼っておきます!↓
http://syosetu.org/?mode=user&uid=175541

例の如く補足を付け加えておきます!

さいころソード「フィギュアでのブルマの衣装を参考に書いてみた」

さいころソード「乳を垂らさないように最大限の注意を払った」

さいころソード「………砂漠が【desert】、デザートは【dessert】」

さいころソード「くれぐれも間違えないように」


………皆さんの今夜のデザートって何ですか?

多分満場一致で…おっと誰か来たようだ。

挿絵投稿ありがとうございました!


何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
次回も1週間以内に投稿出来ればと思っております。
第4話もよろしくお願いします!











うっうわ何をする!にゃ、ニャメロ
(ピチューン

残機
530000→529999


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第4話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

突如敵に襲われる彼だが孫悟空という謎の男に救われる!

緑谷少年は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

そして猛特訓開始から約10ヶ月後、とうとう雄英高校入試当日を迎えるのであった!!

…第3話のあらすじしてない???

だってあれただ緑谷少年が少女の手握っただけじゃん!

更に向こうへ!PlusUltra!!!



2月下旬…

 

風が冷たいこの寒い冬もラストスパートを切っていたこの時期……

 

って季節の話をしてる余裕は無い!!!

 

緑谷「……はぁ…はぁ…!」

 

ダダッ

 

緑谷(やっば…予定よりも遅く起きちまった!!)

 

緑谷(急げ急げ!!)ダダッ…

 

何を隠そう今日は僕にとってとても重要な日……

 

雄英高校の一般入試の実技試験があるのだ。

 

 

 

 

………あ、そもそも雄英高校が分からない?それじゃ軽く説明しておこう。

 

雄英高校ヒーロー科…それはプロヒーローの養成校である。

 

全国のヒーロー科の中で最も人気のある学校だ。

 

国民的No.1ヒーロー【オールマイト】を始め…

 

No.2ヒーロー【エンデヴァー】

 

No.4ヒーロー【ベストジーニスト】など…

 

雄英の卒業生で世間に出てからその名を轟かせた英雄達は数知れない。

 

雄英卒業という資格だけでその後の人生に多大なアドバンデージが付く。

 

ヒーロー志望者にとっては正に理想の学園なのだ。

 

…が勿論並の人間じゃこの高校に入学するのは到底叶わない。

 

倍率が毎度300越え………今年の偏差値なんか79だぞおい。

 

日本の中で1番入るのが難しい学校は?と言われると

 

皆口をそろえて雄英と叫ぶのだ。

 

超人気故に超難関……

 

それが雄英高校である。

 

 

 

緑谷「な…なんとか間に合った……!」

 

無我夢中に走り続け数分……

 

ようやく雄英の正門まで辿りついた。

 

緑谷「……遂に来たのか……」

 

大きなUの中にアルファベットのA……

 

雄英のシンボルマークが僕の目に確かに映っていた。

 

まさか()()()()で拝む事になるとは予想だにしてなかったからなぁ…

 

緑谷(やれるだけの事はやった……後は実践のみか…)

 

緑谷(果たして1人で乗り切れるのかどうか…)

 

歩きながら考え詰めていた所…

 

「どけデク」

 

緑谷「!」

 

こんな喧嘩腰でしかもあだ名で呼ぶ奴は1人しかいない。

 

緑谷「か、かっちゃん…!」

 

知る人ぞ知る(元)ガキ大将、爆豪勝己15歳。

 

以前も話したように生まれてこの方非の打ち所がない天才児。

 

あ、性格悪いのは弱点か。

 

事ある毎に何かと僕を弄ぶ幼馴染……要は腐れ縁だ。

 

爆豪「俺の前に立つな殺すぞ」

 

緑谷「お…おはよ……頑張ろうねお互」

 

それだけ言うとかっちゃんは僕が喋り終わる前にその場を去っていった。

 

緑谷「………いに……」

 

ヘドロ事件以来僕とは極力接触しない様になった。

 

「あれバクゴーじゃね?ヘドロん時の」

 

「わっ本物や」

 

今となってはこの通りすっかり有名人だ。

 

敵に向かって一直線に走り出した大馬鹿な一市民と知り合いだなんて思われたくないのか…

 

或いは他の理由かは定かではないが…

 

あの日からかっちゃんは僕にちょっかいを出さなくなっていた。

 

緑谷「………」

 

緑谷「っとと…何してんだ…僕も急がなきゃ…」

 

緑谷「」ガタガタ…

 

そう言いつつ脚を前に踏み出そうとするも余りにも緊張して震えが止まらない…

 

緑谷(弱気になるなー…見せてやるんだこの1年間の特訓の成果を…)

 

緑谷(踏み出せ!目標への第一歩を!!)

 

ガッ

 

勢い余って両足とも蹴り出しちゃった。

 

緑谷(ですよね!!)

 

そのまま地面に倒れこむ………

 

 

 

フワッ

 

緑谷「おっ?」フワフワ…

 

かと思いきや体が宙に浮いてるではないか…

 

緑谷(あれ…今僕使()()()覚え無いんだけど…)

 

「…大丈夫?」

 

緑谷「え」チラッ

 

声のした方向を向くと…

 

なんと茶髪の少女が僕の隣に立っているではないか。

 

茶髪の少女「よっと」グイッ

 

ストッ

 

浮いていた僕の体を空中から引きずり下ろして地面に着地させてくれた。

 

茶髪の少女「ごめんごめん。今の私の個性」

 

茶髪の少女「転んじゃったら縁起悪いもんね」

 

緑谷「え…あ…は…」

 

茶髪の少女「いやー緊張するよねぇ」

 

緑谷「へ…う…うん」

 

茶髪の少女「それじゃお互い頑張ろね」<じゃ

 

緑谷「………」

 

緑谷(また女子と喋っちゃった!!!)

 

正直会話になったかどうか分からないレベルという事は黙っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんやあって何とか試験の説明会場まで来れた僕。

 

偶然にも座った席の隣にかっちゃんが居た。

 

緑谷「……… 」

 

爆豪「チッ…」

 

緑谷(声もロクに掛けないから尚更怖いよぉぉ…)

 

「ヒュゥゥゥウウッッッ!!!」

 

緑谷「!試験官さん来た……!?」

 

「今日は俺のライブにようこそ!!!」

 

「エビィバディセイヘイ!!」

 

シーン…

 

受験生に対する接し方がハイテンション過ぎてどう反応すればいいか皆困ってしまう。

 

「コイツァシヴィーーー!受験生のリスナー!!!」

 

「実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!」

 

「アーユーレディー!?」

 

シーン……

 

「YEAHHHHH!!!!!」

 

このサングラスをかけたDJの様な人が雄英に勤めているプロヒーロー兼教師の1人…

 

プレゼント・マイクだ。

 

緑谷「うわぁぁラジオ毎週聞いてるよ感激だなぁ雄英の先生は全員プロヒーローだから興奮するぞぉぉお」ブツブツ…

 

爆豪「るせ」

 

マイク「資料をご覧の通り!この後リスナーには10分間【模擬市街地演習】をしてもらうぜ!!」

 

マイク「道具の持ち込みなどは自由!このプレゼン後各自準備し指定の演習会場に向かう事!」

 

爆豪「…」チラッ

 

かっちゃんがこちらの受験番号の書いてある用紙に目を向ける。

 

爆豪(連番なのに場所が違ぇ…)

 

爆豪(同校同士で協力させねぇってか)

 

爆豪(…潰せねぇか…)

 

緑谷「…?」

 

マイク「各演習場には3種の仮想敵が多数用意されている」

 

マイク「その仮想敵を行動不能にするのがリスナーの役目だ!」

 

マイク「それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けている」

 

マイク「あくまで動けなくなればOKだから一々ぶっ壊す必要ねぇからな?」

 

マイク「無論!他人への攻撃等々アンチヒーローな行為はご法度だぜ?」

 

マイク「何か質問のある奴は?」

 

そう言うなり1人の男性が即座に手を挙げる。

 

身長がかなり高く、眼鏡をかけておりザ・優等生って感じの少年だ。

 

眼鏡少年「少しよろしいでしょうか」

 

マイク「お」

 

眼鏡少年「プリントには3種ではなく4種類の敵が記載されております!」

 

眼鏡少年「誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!」

 

眼鏡少年「我々受験生は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」

 

眼鏡少年「ついでに。そこの縮毛の君」ギロッ

 

そう言い放つと僕の方に顔をを向け強く睨みつける。

 

緑谷「…え…僕?」

 

眼鏡少年「先程からボソボソと…気が散る!」

 

眼鏡少年「物見遊山のつもりなら即刻雄英から去りたまえ!」

 

緑谷「す…すみま…せん」

 

同期にキツイ恐喝を食らって思わず口を覆う。

 

そんなブツブツ言った覚えないんだけど…

 

「」クスクス…

 

お陰で皆の笑い者になってしまった…恥ずかしっ…

 

マイク「OKOKナイスなお便りサンキュー!」

 

マイク「プリントに載っているこの4種類目の敵は言わばお邪魔虫!」

 

マイク「行動不能にしようが壊そうが0P!」

 

マイク「マリオブラザーズやった事ある?」

 

マイク「そこで言うところのドッスン的な奴さ!」

 

マイク「こいつに限っちゃ各会場に1体しか出現しねぇギミック……」

 

マイク「だけど真面目に相手するのはあまり賢い判断とは言えないぜ?」

 

「なんだそりゃ…」

 

「とりあえずそのギミックとやらに気をつけりゃいいのか」

 

眼鏡少年「ありがとうございます!失礼いたしました!」

 

マイク「…とまぁ、俺からは以上だ」

 

マイク「最後にリスナーに我が校【校訓】をプレゼントしよう!」

 

マイク「かの有名なナポレオン=ボナパルトは言った!!」

 

マイク「【真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者】と!」

 

マイク「Plus Ultra(プルス ウルトラ)(更に向こうへ)!!!」

 

緑谷「…!!」プルプル…

 

Plus Ultra……この学校の代名詞と言っても過言じゃない決まり文句だ。

 

それを生で聴けるなんて……興奮モノだぞ畜生!

 

 

 

 

 

 

 

そして数分後…ジャージに着替え演習場に到着した。

 

緑谷「広」

 

とにかくこの一言に尽きるのだ。

 

パッと見ただけでもおおよそ4、500×4、500mだ。

 

どんだけ敷地広いんだここ。

 

それに建物が模型ってレベルじゃない造形なのだこれが。

 

下手すれば本当に街だと勘違いする位忠実に再現してくれている。

 

緑谷「…すっご…」

 

緑谷「…」キョロキョロ…

 

街を暫く眺めると、今度は他の受験生達を見回し始めた。

 

緑谷「……ん…」

 

緑谷「僕より大きい気の反応は無しと…」

 

緑谷「というか皆緊張してないんだな…」

 

緑谷「あ」

 

茶髪の少女「ふぅ…」トントン

 

そこで僕の目に止まったものはさっきの茶髪の少女。

 

何やら緊張をほぐす為に手をトントンと叩いている。

 

緑谷「そうだ。さっきのお礼言わなきゃ…」スタスタ…

 

「…」

 

スッ…

 

少女に近づこうとすると背後から何者かの手が僕に押し寄せてきた。

 

ガシッ

 

緑谷「いっ!?」ビクッ

 

突然掴まれたのでビビって身体が震えてしまう。

 

ゆっくりと後ろを向くとそこにはさっきの眼鏡君がまたもやこちらを睨みつけながら佇んでいた。

 

眼鏡少年「あの人は精神統一を図ってるんじゃないのか?」

 

眼鏡少年「君は何だ?」

 

眼鏡少年「妨害目的で受験しているのか?」

 

緑谷(ひぃぃ!こちらも!)

 

「あいつ校門前で転けそうになった奴じゃ…」

 

「注意されて萎縮しちゃったの」

 

「少なくともライバル1人は減ったんじゃね?」

 

皆の視線が僕に集まってくる。

 

緑谷「…………」

 

(ラッキーーー)

 

緑谷(って思ってるんだろうな皆…)

マイク「んじゃスタート」

 

「………」

 

緑谷「え?」

 

マイク「何やってんだー!もう開始の合図したろ!?」

 

マイク「実戦じゃカウントもクソもねぇだろよ!」

 

マイク「賽はもう投げられてんぞ!?」

 

緑谷「なっ…!?」

 

何が起こっているのか分からず混乱していた僕だが……

 

「うおおおおっ」ダダダ…

 

緑谷「…っば!」

 

開始直後に出鼻を挫かれてしまった。

 

マイクが発言を終えたと同時に一斉に走り出した。

 

皆より出遅れてしまった。

 

緑谷「ちょっ…ど…どうし…」

 

緑谷「……ってどうするも何も…」

 

ようやく冷静さを取り戻した僕はしゃがみこみクラウチングスタートの構えをする。

 

緑谷(行くしか無いだろ…っ!!!)

 

 

ゴオッ…

 

眼鏡少年「…なっ…」

 

茶髪の少女「速い!?」

 

緑谷「…………!?」

 

 

気づけば脚は踏み切り身体が自然に動いていた。

 

さっきまで数m離れていた筈の受験生らを直ぐに通り越してしまった。

 

まるで風のように…爽やかと…

 

緑谷(我ながらおっそろしいスピードだ…)

 

緑谷(これ最悪止まり切らず仮想敵と衝突するんじゃ…)ダダッ…

 

ドガァァッ!

 

緑谷(ぎゃあああ!?やっぱりぃぃぃ!?)

 

突如隣の建物の壁から仮想敵が乱入してきた。

 

壁がぁぁぁ

 

仮想敵「標的捕捉!ブッ殺ス!!」

 

そう片言で喋ると僕に目掛けてライトアームを伸ばして来た。

 

ゴオッッ…

 

緑谷「来る…!」

 

緑谷(避けろ避けろ避けろ避けろ避けろぉおおおっっ!!!)ダンッ!

 

ズドオオッ!

 

仮想敵「……ン?」

 

ビュオオオッ…

 

緑谷「……っと……!」

 

間一髪敵の攻撃が当たる寸前に空中に逃げる事が出来た。

 

仮想敵「空身動き不可能!」ジャキッ…

 

もう片方の腕を伸ばそうと敵が構えてくる。

 

緑谷「させるかよっ……!」ゴオオオッ…

 

僕は仮想敵に向かって急降下する。

 

右の拳を固く握り締め腕を後ろに弾きながら。

 

仮想敵「……?」

 

手が十分届く距離にまで達した時…こう叫んだ。

 

緑谷「ジャン拳………」

 

緑谷「グーーッッッ!!!」

 

ドガァァッ!!

 

仮想敵のヘッドパーツを思い切り強くパンチを打ち込んだ。

 

緑谷「……っ!」グシャッ

 

ピシピシ…

 

仮想敵「……アガ…」ピシュゥゥ…

 

ドオオオンッッ!!

 

仮想敵から火花が散り…爆発して粉々に砕けた。

 

「嘘だろっ……」

 

「爆破!?」

 

緑谷「……よし。ポイント先制!」

 

 

 

 

 

 

 

【審査室】

 

<ギャァァァ!

 

<だだだだだっ!!

 

「おーおー結構派手にやってくれてんじゃないの」

 

「今回も面白そうな個性が幾つかあるわね」

 

「さて誰が合格するかね…」

 

「……この入試は敵の総数も配置も一切伝えてない」

 

「だから全てが己がスキル頼りだ」

 

「限られた時間と広大な敷地…」

 

「そこからあぶり出されるのさ」

 

「状況をいち早く把握する為の情報力」

 

「遅れて登場じゃ話にならない…機動力」

 

「どんな状況でも冷静にいられるか…判断力」

 

「そして純然たる戦闘力!」

 

「市井の平和を守る為の基礎能力がP(ポイント)数という形でね」

 

「今年は中々豊作じゃない?」

 

「さーどだろ…」

 

「真価が問われるのはここからさ」ポチッ

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「はああっ!!」

 

仮想敵「!?」

 

バキィッッ!!

 

敵に向かって勢い良く強い蹴りを決めた。

 

その直後ショートし、敵は機能を停止する。

 

緑谷「っし…また1体撃破…これで37!」

 

緑谷(大分貯まってきたな…後1、20取れりゃ上等か?)

 

緑谷(………あれ、これってもしかしなくともいい調子じゃ…)

 

そんな事を考えている内に辺りを見回しているとまたまた茶髪の方と遭遇した。

 

茶髪の少女「うっ…」

 

だが彼女は先程までと様子が完全におかしかった。

 

顔は真っ青で口を手で抑えていた。

 

緑谷「………?」

 

緑谷(なんだろ…吐きそうなのかな)

 

緑谷(……って他人の心配してる場合

ドッッ!!!

 

緑谷「………か?」

 

尋常じゃない程にデカイ衝撃音が聞こえたのでそちらを向いてみると…

 

 

 

 

ロボ・インフェルノ「………!!!」

 

そこには周辺の建造物と同等の大きさを誇る巨大なロボットの姿があった。

 

緑谷「いいい……!?」

 

眼鏡少年(馬鹿な…さっきまで精々僕らより一回り大きい程の仮想敵しか居なかったはず…!!)

 

眼鏡少年「まさかあれが…」

 

「0Pかよ……!!」

 

ウィィン…

 

ドッッ!!!

 

緑谷「うわっ…」グラッ

 

ドサッ…

 

地面を踏んだ時の衝撃は半端なくデカイもので思わず倒れ込んでしまう。

 

緑谷「っそ…あんな化け物もこの試験に出るのかよ…!」

 

緑谷「なんでもありか…!!」

 

「あんなの相手にしてられっか!!」<シャレにならん!

 

眼鏡少年「今は他の場所を…」ダダッ

 

緑谷(別に倒せない事もないけど…)

 

緑谷(そろそろタイムリミットだ。これ以上時間は無駄にできない)

 

緑谷「ここは大人しく引き下が……」スクッ…

 

身体を起こし、0P敵がいる向きとは逆方向に駆け出そうとしたその瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「ぅぅ…」

 

緑谷「………!」

 

緑谷「今のは…」クルッ

 

振り返ってインフェルノの下をよく見てみるとさっきの女の子が倒れて身動きが取れなくなっているじゃないか…

 

茶髪の少女「……い…たた……っ」

 

緑谷「……」

 

マイク「オラ〜!後50秒で終了だぞーっ!?」

 

緑谷「っ…………!!!」

 

 

 

茶髪の少女『ごめんごめん。今の私の個性』

 

茶髪の少女『転んじゃったら縁起悪いもんね』

 

緑谷「……自分の阿保……」

 

ダダッ!!

 

眼鏡少年「……そういえばさっきの少年…まだこっちに…」クルッ

 

眼鏡少年「!?」

 

 

 

 

【審査室】

 

「お、オイオイ…マジかよ」

 

「緑の奴0Pに向かって…」

 

?「………」

 

 

 

 

 

 

緑谷(自分で言ってた癖に……)ダダッ…

 

緑谷(相手の心配してる暇があるなら自分の事気をつけてろよ…!)

 

緑谷(馬鹿野郎!!)

 

何時ぞやの時の様に僕はまた敵に向かって猛ダッシュしていた。

 

でも()()とは違う。

 

ちゃんとやるべき事が頭の中で解っていたから…

 

 

 

?「……あの敵を倒しても一切のメリットも無い」

 

 

 

ズザザ…

 

茶髪の少女「…う……ん?」

 

緑谷「……」

 

茶髪の少女「君……なんで…?

 

緑谷「転んだら縁起悪いでしょ」

 

緑谷「…間に合ってよかった」ニッ

 

今回は…絶対に救けられる自信があった。

 

 

 

?「だからこそ色濃く…浮かび上がるものがある」

 

 

 

インフェルノ「ーーーッッ!!!」ゴオオオッ…

 

敵は僕らに向かって襲いかかってきた。

 

茶髪の少女「駄…め…逃げ…って!!」

 

緑谷「………はぁぁ…」

 

 

 

 

悟空『いいか?気功波ってのは手に気を集中させて戦闘力を瞬間的に上げるもんなんだ』

 

悟空『ま、ある方法を使えば常時それを維持し続ける事も出来っけど…』

 

悟空『そうだなぁ…気功波で最初に教えておきてぇものと言や…』スッ…

 

 

 

 

両手首を合わせ手を開き腰に置く。

 

そして身体中の気を手の一点に集中させる。

 

緑谷 悟空「『か………め……』」

 

緑谷 悟空「『は………め……』」ギュルルッ…

 

するとどうだろう…

 

手と手の間に球状のエネルギー弾が発生する。

 

それを握る様にして両手を後ろに持っていき…

 

 

 

 

 

腕を上に思い切り伸ばし気功波を放つ。

 

緑谷「波ぁぁああああッッッ!!!!」

 

ボオオオオッッ!!!

 

茶髪の少女「きゃっ!?」

 

眼鏡少年「ぐおっ…」ゴオオオッ!!

 

とてつもなく強い衝撃波が演習場全体に影響を及ぼす。

 

マイク「ぐばばば!?」ゴオッッ!!

 

インフェルノ「!!??」

 

やがてインフェルノは一筋の光に貫かれ

 

 

 

 

ドオオオオンッッッ!!!

 

大爆発を起こし木っ端微塵となる。

 

ズドッドッッ…

 

茶髪の少女「………嘘…やろ……」

 

眼鏡少年「あの敵が……一撃で…?」

 

緑谷「………」

 

ズドドッッッ!

 

「…………ええええええええええええっっっ!?」

 

 

 

 

 

?「ヒーローの大前提」

 

?「自己犠牲の精神ってやつが!」

 




………え?更新ペース早くないかって?

気のせいです気のせい。

第4話は入試編でしたけどどうでしたか?

今回はちょい短めだったかも…まぁ平均文字数的にここら辺で切り上げるのが丁度いいんですが。

名前をあえて書かないのはなんかネタバレみたいになって嫌だから…まぁ分かりにくいって意見があれば変えますが……

(…眼鏡かけてる1-Aの生徒と茶髪の1-Aの少女って多分他に該当しないはずなんだよなぁ)

とりあえずウラビティちゃんヒロイン回ですた。……段々ハーレム化してきたぞ。


何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください
次回の投稿も1週間以内に投稿できると思いま…

いや流石にもう翌日投稿ってのは無いと思います…ええ…

多分…多分

第5話もお楽しみに





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第5話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

雄英高校の入試を受ける事になった緑谷少年だが様々な困難が待ち受ける!

実技試験の最中とある受験生を救ける為奮闘するのだが…

というかもう時間無い!

残り時間僅か…急いで緑谷少年!!

更に向こうへ!PlusUltra!!!



()()()と状況は一緒だった。

 

でも違う。今度は…

 

 

 

 

受験生等「…………ええええええええええええっっっ!?」

 

職員等「…………ええええええええええええっっっ!?」

 

?「………bravoo…」

 

ズドッッッ!!

 

今起きた爆発で砕けたインフェルノの破片が幾度となく落下していく。

 

茶髪の少女「………」

 

緑谷「……ふぅ」

 

「………か…かか…」

 

「なんっつー……」

 

マイク「…3ー2ー1ー…」

 

マイク「終了ーーーー!!!」

 

「はっ…!」

 

「やっば!ぼうっとしちまった!!」

 

「ぐおおおあああっ試験終わったァァァァ!!」

 

 

 

 

 

【審査室】

 

「…まさかこれ程までに驚かされるとは…」

 

「あれワンパンする奴初めて見たー」

 

「それ所かあの仮想敵ぶっ壊されるとこ見る事すら滅多にねぇわけだが…」

 

「あっちゃ…被害総額がえらいことになりそうなこった」

 

「今のは….ビーム………発動系の個性かしら」

 

「何にせよとんでもない奴だって事は確かだな」

 

?「……」

 

?(…最後の数十秒…誰もが彼から目を離す事なくその勇姿を見続けていた)

 

?(彼はあの場にいた受験生全員の心を揺るがせた…!)

 

?「何ともまぁ…」

 

?「オーマイグッネス………!!!」

 

 

 

 

 

 

試験が終了し、移動を始めた受験生達。

 

「な…何だったんださっきの…」

 

「さぁ?急ににギミックに飛び出していって…」

 

「目立ちたかったりなー」<がははは

 

眼鏡少年(……そこじゃないだろ…肝心な所は)

 

眼鏡少年(見ていなかったのか!?奴はあの少女を救わん飛び出だしたんだ!!)

 

眼鏡少年(残り時間…己の身の安全…合格に必要な要素を天秤にかけ…)

 

眼鏡少年(それでも尚一切の躊躇なく…!)

 

眼鏡少年(試験という場でなかったら当然僕もそのようにしたさ!!!)

 

眼鏡少年(…あれ?)

 

その時ふと眼鏡の人はある疑問を浮かべる。

眼鏡少年(………当然………試験……)

 

眼鏡少年「ああああああああっ!?」

 

眼鏡少年(この試験が…そういう構造であるなら…)

 

眼鏡少年(奴は………)ギリッ…

 

ギリッと歯を食い縛る。

 

 

 

緑谷「……」

 

緑谷(あの巨大敵を…僕がやったのか?)

 

終わって尚未だに信じられない出来事だった。

 

今回は正真正銘自分の力で人を助けられたんだ。

 

だが素直に喜べる結果では無かった。

 

緑谷(さっきのあの数秒…)

 

緑谷(多分他の皆はポイントを取りまくってたんだろうな…)

 

緑谷(結構高く保持してた方だと思うけど…)

 

もし今の救助で取れた筈の合格をみすみす捨てたと思うと…

 

とても悔しい。

 

折角鍛えてもらってつけた力だったのに…

 

緑谷(いや…まだ不合格って決まった訳じゃない)

 

緑谷(今はこの子が助かったから結果オーライか)

 

「はい皆お疲れー」

 

試験終了から間も無く1人の老婆が颯爽と現れた。

 

緑谷「!」

 

「ハリボーだよ。ハリボーをお食べ」スッ…

 

彼女はそう言うと僕にお菓子を差し出す。

 

緑谷「ありがとうございます!」

 

「怪我人はいるかい?ちゃっちゃと治していくよー」スタスタ…

 

緑谷「…あの方は…」

 

この小柄なおばあさんは妙齢ヒロイン【リカバリーガール】。

 

リカバリーガールの個性は治癒力を活性化させるもので対象者の傷をみるみる治していく。

 

まぁ実際治しているのは自分なんだけどね。

 

 

 

 

ブチュゥゥ…

 

<ギャァァァ!!

 

因みに活性化させる方法は口付けだ。

 

これより精神的ダメージを負う者も後をたたない。

 

緑谷「さてと…着替えてさっさと帰るか…」

 

茶髪の少女「待って!」

 

演習場を抜けようとするも先程助けた娘に呼び止められる。

 

緑谷「どうしました?」

 

茶髪の少女「…あ…ありがと……さっきは」

 

茶髪の少女「お陰で助かったよ」

 

緑谷「あ、き…気にしなくてもいいよ…校門の時の恩返しみたいなものだからさ…」アセアセ…

 

知り合いでもない女の子と戯れている為パニクり中。

 

緑谷「それにしても…怪我が無くて良かったよ」

 

茶髪の少女「………なんで…あの時私を?」

 

茶髪の少女「もしかしたら…私のせいで……」

 

緑谷「……?」

 

緑谷「困ってる時はお互い様。当然じゃないか」

 

茶髪の少女「……………」

 

緑谷「それじゃ…合格祈ってるよ」

 

そう言うと僕は直様出口に向かって走っていった。

 

緑谷「……」ダダッ…

 

緑谷「ああもうクソッちっとも反省してないじゃないか何無駄にカッコつけようとするんだ恥ずかしい女の子に免疫付けないとこれじゃコミュニケーション成り立たないぞおい!」ボソボソ…

 

赤面になりながらも絶賛後悔中である。

 

緑谷「…でも…ありがとう、かぁ」ダダッ…

 

緑谷「………僕も誰かの役には立てるんだな」ニッ…

 

試験の結果はもうどうでも良かった。

 

この時はただ、彼女を救けられた。

 

本当にそれが嬉しかったんだ。

 

小さく微笑みながらそのまま走り去っていった。

 

 

 

「…お?…」スタスタ…

 

緑谷「ははっ」ダダッ…

 

「………」

 

ある1人の少女に見つめられながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1週間後…無事筆記試験も終わり合否を待つのみとなっていた。

 

悟空「」ガツガツ…

 

デク母「………出久?」

 

緑谷「……」ジィィ…

 

あれから数日経った。

 

筆記の方は自己採点でギリギリ合格ラインを通過していたので然程心配していない。

 

唯一の不安要素はやはり実技試験だった。

 

最後の1分近くが大きなタイムロスになっている為正直期待できなかった。

 

試験中は敵のポイント稼ぐのに必死で周りの状況を把握するのもままならなかったのだ。

 

もしかしたら皆100近く軽く行っているかもしれないし…

 

或いは意外と低い結果で甘んじているかもしれない…

 

最悪の可能性として最下位が38Pの人で合格ならずってのも考えられる。

 

考えれば考える程あらゆるケースが思い浮かぶ。

 

ただただその事に一日中うなされていた。

 

終いには魚の頭とにらめっこしながら考え込むに至る。

 

デク母「出久っ!?」

 

緑谷「え…あ…何?母さん」

 

デク母「こっちの台詞よ…魚持ち上げてずっとフリーズしてるんだから」

 

緑谷「ごめん…ちょっと考え事してた…」

 

デク母「…」

 

悟空「」ガツガツガツガツ…

 

 

 

 

 

悟空「ひぃー…いい湯だった」

 

悟空「そんじゃ緑谷の様子でも見てくっか…」スタスタ…

 

ガチャ…

 

悟空「緑谷〜」

 

ビュオオッ…

 

悟空「?」

 

扉を開けると廊下に強い風が吹いてきた。

 

中を覗くと窓を開けてベランダで黄昏ている僕の姿が見えた。

 

悟空「…星でも見てるんかぁ?」

 

悟空「外出たら寒いだろ…」スタスタ…

 

話しながら悟空さんは僕に近づいてくる。

 

緑谷「……いえ…別に」

 

悟空「もしかして…試験の事か?」

 

緑谷「……」

 

緑谷「多分、明日くらいに結果が通達されると思います」

 

緑谷「正直…やっても無駄かなって思ってたんです」

 

緑谷「どうせ何もできずに終わるから」

 

緑谷「でも……そんな事無かった」

 

緑谷「ちゃんと試験に合格出来るレベルの実力も持ってるし…」

 

緑谷「僕にも人を救けられる位の力もあるんだって分かったし」

 

緑谷「最善を尽くした…正しいと思う事をした」

 

緑谷「だからこれで十分なんです…」

 

悟空「…」

 

緑谷「これで…」

 

悟空「……………おめぇは……努力もいっぺぇしてきたし…素質だってあった」

 

悟空「もしこれで落ちるんだったら…それはオラの力不足だ」

 

悟空「そうだったら…オラはここを出て行く」

 

緑谷「!?」

 

悟空「おめぇが強くなりてぇって言ったからあんだけ無理やりずっとやらせてきたんだ」

 

悟空「オラが…ここに居座っていいわけねぇ」

 

緑谷「………そう…ですか」

 

悟空「…それじゃオラは自分の部屋戻ってるぞ」クルッ

 

悟空さんは後ろを向いて部屋の扉に歩き出した。

 

悟空「外出たままだと風邪引いちまうからな」スタスタ…

 

緑谷「はい…」

 

悟空「…」スタスタ…

 

悟空「………ごめんな、オラが馬鹿だから…」

 

バタン…

 

それだけ言うと開けていた扉を閉じて部屋を出て行った。

 

緑谷「………………」

 

…受験前、母と交渉して悟空さんをここに住めるように頼みこんだ。

 

母には多少事情を伝えてはある。

 

僕の為に修行につきあってくれた。だからこの家に居るのを許可してくれと…

 

母は快く了承してくれた。

 

 

……それでもさっきのに反対しなかったのは悟空さん自身が望んでいたからである。

 

元々この異世界に迷い込んでしまったが故にここに居候させている訳だが…

 

そもそもここに居たって何も状況は変わらないのだ。

 

僕もこの1年間何も手をつけなかった訳じゃない。

 

ネットを使って色んな情報を調べまくってた。

 

でも……一般人の僕や母じゃ手に負えない問題だ。

 

残されてしまった家族や仲間の心配もあるだろう。

 

一刻も早く帰らねば…そう焦っているに違いない。

 

だからここにずっと住む必要も無いし…

 

それに…僕にそれを止める権利も無い。

 

 

 

緑谷「……なんで…だよ…」

 

緑谷「この1年間…全部割かせたのは…無駄にさせたのは……僕だってのに」

 

緑谷「何も自分の所為にする事ないだろ…っ」ググ…

 

あの人の期待に応えられなかった…

 

僕は恩を仇で返してしまったのだ。

 

その事が何より悔しくて悲しかった…

 

手を強く握りしめ必死に感情を抑えようとする。

 

緑谷「……っ…」

 

 

 

ドタドタドタ…!

 

緑谷「ん」

 

いきなり階段から大きな足音が聞こえたので我に返る僕。

 

すると母が僕の名前を連呼してくるではないか。

 

デク母「いずくいずいずずく出っずく」

 

デク母「出久!!!」ガチャッ!!

 

息を粗くしながらドアを乱暴に開けてきた。

 

緑谷「ど…どしたの…?」

 

デク母「キタ!来てた!来てたの!来たのよ!」

 

デク母「来たんだよ!!!」スッ…

 

僕に向かって思い切り伸ばしていた手にあったものは…

 

雄英高校から僕宛の封筒だった。

 

 

 

 

 

 

緑谷「……」

 

緑谷「見なきゃ始まらないもんなぁ…」

 

母さんから貰った封筒を少しの間眺めていた。

 

まだ開ける勇気が出ていなかった。

 

あ、母さんは廊下でそわそわしながら待ってるよ。

 

緑谷「…よし」

 

ビリリィッ

 

ようやく意志を固めた僕は封筒をビリビリに破った。

 

なんて雑な…

 

緑谷「これは…」ガシッ

 

中に入っていたのは。幾つかの資料と小型の円形プロジェクターだった。

 

机に置き、そっとボタンを押すと…

 

ピッ…

 

 

 

ブゥゥン…

 

?「ンンンン……」

 

緑谷「ん?」

 

空中に流れていたその映像には…

 

 

 

オールマイト「私が投影されたっ!!!」クワッ

 

緑谷「わっわわあっ!?」

 

なんとオールマイトが映っていた。

 

緑谷「うっそ…これ…雄英から…だよな?」

 

緑谷「なんで!?」

 

オールマイトが何故雄英に関与しているのか…訳も分からず混乱していた。

 

と同時にオールマイトが僕の為にこのビデオを撮ってくれたという事実にかなり感動した。

 

オールマイト<いやーすまないすまない。ンンッ!

 

オールマイト<諸々手続きに時間がかかってね

 

緑谷(すごっ…世界に1つしかない僕専用のオールマイトのムービーだ…)

 

とりあえず話聞こ

 

オールマイト<私が今ここにいるのは他でもない

 

オールマイト<来年度…つまり君達が入学する年から私がこの高校に勤める事になったからなんだよ

 

緑谷「マジっすか!!!」バンッ!

 

まさかの急展開に興奮せずにはいられなかった。

 

つい机を強く叩いてしまった。

 

緑谷(あっ………ぶな…机壊れるわ)ミシミシ…

 

デク母「」ガタガタ…

 

お母さんが怯えてるじゃないか。

 

とりあえず話聞こ

 

オールマイト<ん?…ええ!?巻きで?彼には話したい事がたんまり…

 

オールマイト<後がつかえてる?…分かったOKOK

 

オールマイト<そんじゃ入試の合否を発表しようか

 

オールマイト<筆記試験は合格ラインちゃんと取れてたよ

 

オールマイト<……実技の結果は37P……10875人中37位

 

オールマイト<今回の定員の枠は36人。よって君は不合格だ

 

緑谷「…………」

 

不合格……その言葉だけが僕の脳に深く刻まれた。

 

駄目だったんだ、結局取れなかったんだ。

 

薄々分かってた…こんな事になるなんてもうとっくに予想ついてた!

 

でも…

 

緑谷「…………こ…んな…事って…ない……っだろ…」

 

緑谷「何か…何か間違った事をしたのか…?道を誤ったのか?」

 

緑谷「あんまりじゃねぇかよ……!」

 

すごくショックだった。

 

十分合格できる試験だった。

 

なのに自らそれを拒んでしまった。

 

手を震えさせ歯を食い縛り泣きそうになるのを精一杯堪える。

 

もう嫌だ……そう諦めかけた時だった。

 

オールマイト<37P(それ)だけなら………ね

 

緑谷「!?」

 

再び発した言葉に耳を疑った。

 

緑谷(()()()()?だけも何もその結果が全てじゃないか…)

 

緑谷(どういう事だ?)

 

オールマイト<私もまたエンターティナー!こちらのVTRをどうぞ!!

 

そう言うと液晶テレビのリモコンを操作し、起動させた。

 

すると…ある動画が映され始めた。

 

 

 

 

 

マイク「ヘイヘイどうした今日の試験内容は全て終了したぜリスナー?」

 

マイク「俺に何か用でも?」

 

茶髪の少女「すみません…あのぉ……」

 

茶髪の少女「髪緑でもさもさの…そばかすある……ええーっと…地味めの…」

 

茶髪の少女「分かりますか?」

 

マイク「……ああ。ドッスンぶっ飛ばしたヤツ?そいつがどした」

 

茶髪の少女「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

マイク「………MA・ZI・DE?」

 

茶髪の少女「はいMAZIDE」

 

茶髪の少女「私…あの人のポイント知らなくて…」

 

茶髪の少女「彼、助けてくれたんですよ」

 

茶髪の少女「もしかしたら…ウチが手を煩わせたせいで落ちちゃうかもって思って…」

 

茶髪の少女「せめて…私のせいでロスした分だけでも……!!」

 

茶髪の少女「彼にクリアしてほしいから………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「…………」

 

『てめぇが何をやれるんだ!?』

 

今まで散々否定されてきた。

 

能無しだの役立たずだの言われ続け…

 

夢を諦めるまで後一歩という所まで追い詰められていた。

 

でも……でも…

 

心の底から僕の事を応援してくれる…

 

そんな人が居てくれたんだ。

 

そう思うと……泣かずにはいられなかった。

 

 

 

緑谷「っ……ぐぁっ……ぅ…」

 

緑谷「僕の……事こんっ…なふに…」

 

緑谷「思てくれだ人が……」

 

緑谷「……ぅ……っぇ…」

 

緑谷「よ……っが…た」

 

 

 

 

 

緑谷「生きててくれて…良かった…!」ポタポタ…

 

オールマイト<…………

 

オールマイト<試験の後すぐ直談しに行ったらしい

 

オールマイト<君は少女を救って尚…人を動かした

 

<「分けらんねぇし…そもそも…」

 

<「分ける必要がねぇと思うぜ女子リスナー!」ナデナデ…

 

緑谷「…?」

 

オールマイト<先の入試!!見ていたのは敵Pのみにあらず!

 

オールマイト<人助け(正しい事)した人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ!!

 

オールマイト<綺麗事!?上等さ!

 

オールマイト<命を賭して綺麗事実践するお仕事だ!!

 

緑谷「!?」ガタッ!

 

言っている言葉の意味が全く理解できなかった。

 

ただ1つ…確信した事がある。

 

まだ僕には希望があったんだ!

 

そう思いながら、椅子から勢いよく立ち上がる。

 

オールマイト<救助活動(レスキュー)ポイントーーーッッッ!!!

 

オールマイト<しかも審査制!我々雄英が見ていたもう1つの基礎能力!!

 

オールマイト<緑谷出久!救助活動P70!!

 

オールマイト<よって合計107P!!!

 

緑谷「むっちゃ…くちゃだもう…!!」

 

オールマイト<合格だってさ(スッ…

 

そう言うとオールマイトはこちらに向けて手を伸ばす。

 

オールマイト「来いよ緑谷少年!!」

 

オールマイト「雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!!!!!」

 

緑谷「…………っっ!」ゴシゴシ…

 

こんな事あり得るか!?

 

今までの人生で最も刺激的な思い出になりそうだよ畜生!

 

様々な感情が僕に表れまだ混乱しているが……

 

 

 

 

 

緑谷「はいっ!!!」

 

自分の夢が自分で拓けた…

 

確かにそれは実感できた事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「…というわけで合格しましたー」

 

悟空「……」プルプル…

 

悟空「うあああああ…」ドバァァ…

 

悟空さんはその朗報を聞くなり僕に泣きついてきた。

 

いやこれ涙じゃなくて滝だわ。

 

悟空「うぅっ…てっきりオラ…オラ…」

 

悟空「1人でロクな飯食えずに野宿するかとおもっだぞぉぉぉ」ドバババ…

 

緑谷「……」

 

あれ…この人昔山の中でサバイバルしてたんじゃ…

 

そんな疑問を抱きつつ僕は悟空さんを何とか落ち着かせようとする。

 

緑谷「おーよしよし」ナデナデ…

 

何より…絶対合格する自信があってこそ言えた冗談だったので

 

僕はとても嬉しかったんだ。こんなに信頼してくれたから。

 

 

 

悟空「いっやぁ…良かった良かった…」

 

悟空「悟飯だったらチチにどやされっとこだったぞー」

 

緑谷「そっか…悟空さんってもう子持ちなんですね」

 

緑谷「お歳はいくつで?」

 

悟空「歳?もうおめぇの倍はあったはずだぞ…」

 

緑谷「え」<確か30……

 

驚愕の事実だった。

 

もう子供三十路過ぎてたのかよ。

 

え…つまり逆算すると悟空さんって…

 

悟空「因みにオラの年齢は5s

緑谷「ダメェェェ!!!」

 

悟空「っだよ…おめぇが聞き始めた癖にー」

 

聞いてはいけないような気がしたのですぐに妨害した。

 

この見た目で50代ってどうなの…

 

見ただけでは20〜30位の男性にしか見えない。

 

悟空「()()()()は戦闘民族だから若い期間が長ぇってベジータが言ってたぞ」

 

緑谷「は…はぁ…」

 

 

【サイヤ人】…どうやら悟空さんの世界では宇宙人が実在するらしい。

 

彼によればサイヤ人とは尻尾がある種族で満月を見ると大猿に変化する……らしい。

 

元々星々を襲ってはそれを売却する地上げ屋…っていうのを盛んに行っていたけど…

 

ある日…とある宇宙人にその母星ごと消されてしまった……らしい。

 

その生き残りの人が孫悟空(この方)という事だ。

 

勿論実際に僕が他のサイヤ人と遭遇した訳でもないし、真実かどうか正直イマイチ信憑性に欠ける話だ。

 

まぁ…そもそもまだこの人の得体が知れないのは確かなんだけど。

 

 

 

 

緑谷「…悟空さん…元の世界に未練ってあるんですか?」

 

緑谷「もうお子さん?も独立したみたいですし…」

 

悟空「………あるぞ、いっぱい」

 

悟空「ヤムチャと一緒に野球やりてぇし」

 

悟空「天津飯や餃子と技見せ合ったり」

 

悟空「ブルマいねぇとドラゴンボールも探せねぇしな」

 

悟空「悟天とトランクスはまだまだ危なっかしいし」

 

悟空「亀仙人のじっちゃんやクリリンと話してぇ事たんまりある」

 

悟空「悟飯も最近なまってきてっから鍛えてやりてぇし」

 

悟空「ベジータとの決闘もまだケリがついてねぇ」

 

悟空「早く帰らねぇとチチやパンにも叱られる」

 

悟空「…それに…すぐ戻るって約束しちまった」

 

悟空「帰らねぇ訳にもいかねぇよ」

 

緑谷「…そうですよね」

 

緑谷「それじゃ僕も頑張らないと」

 

緑谷「そうでもしないとこの御恩は返し切れない」

 

悟空「………でもよ、オラ別にこの世界が嫌いって事ねぇし」

 

悟空「1つ、やらなきゃならねぇ仕事が見つかったからなぁ」ポンッ

 

そう言うと悟空さんは僕の頭を撫で始めた。

 

悟空「…オラ、2回死んじまってな」ナデナデ…

 

悟空「1回目は割とすぐ生き返ったんだけど…もう1回はしばらくあの世に留まっててな」

 

悟空「チチを大分悲しくさせちまった」

 

悟空「オラ教育とかは全部チチに任せっきりで悟飯に父ちゃんらしい事ができたって言やぁ数えられる位しかねぇ」

 

悟空「…だからその分、おめぇが立派な大人になっまで見届ける」

 

悟空「それが…帰るまでのオラの役目だから」

 

緑谷「……」

 

緑谷「掴みます…いや、嫌でも掴んでやる」

 

緑谷「だから…ヒーローになるまで…」

 

緑谷「まだまだ未熟者な僕ですが…」

 

緑谷「よろしくお願いします」

 

悟空「…ああ。よろしくな、緑谷!」

 

 

 

 

多くの救けを受けて…僕の人生は変わってゆく。

 

1つの大きな誓いを胸に…

 

夢の高校生活が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【雄英高校職員会議室】

 

「……レスキュー無しで77…」

 

「こりゃかなりの好成績だ」

 

「知ってるか?筆記満点2教科あったんだぜこいつ…」

 

「入試成績1位爆豪勝己…恐ろしい男よ」

 

「…こいつだけじゃねえさ」

 

「実技試験107P通過…」

 

「こんな事過去に一度でもあったか?」

 

「3桁越えとか……」

 

「今年は異形なルーキー達が続出ねー」

 

ガヤガヤ…

 

(……ったくワイワイと…)

 

(気楽なもんだ)ピラッ…

 

「…これは実に…」

 

 

「実に非合理的な試験結果だな」

 

 

 

 

 




3日連続で投稿はしないと言ったな…

全て嘘です!これはパラガスが仕k
ドアラッ!!!



はいはい。第5話書き終わりましたよー。

意外と内容はそんな多くない気がすんのに前回より文字数多かったw

本当はイレイ何とかヘッドさん登場までやりたかったけど量がえらい事になりそうなんでやめました。

いかがでしたか。

何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください

次回はようやく雄英高校編スタート…長い前振りだった。

ヤオヨロと愉快な仲間達が登場乞うご期待。

第6話は1週間以内に投稿します…ええ…1週間以内に。

お楽しみに。




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ChapterⅠ-episode2 雄英高校入学編
第6話


前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

様々な苦難を乗り越え遂に念願の雄英入試合格を達成する!!

今まさに彼のヒーローアカデミアが始まろうとしていた!

さて緑谷少年はどんな高校生活を送るのか?

そしてどんな仲間と出逢うのか?

更に向こうへ!PlusUltra!!!



……リリ…

 

…リリリリッ…

 

緑谷「……」ジリリリリッ

 

大きな目覚ましのアラーム音が僕の耳元で鳴り響く。

 

朝の来訪だ。

 

緑谷「」ジリ

 

ピッ

 

起きるとすぐにアラームを止めベッドから起き上がる。

 

緑谷「……」ボーッ……

 

緑谷「今日から学校か…」

 

春休みも終わり、また新しい1年がスタートする。

 

これといって何の変化も見られない僕の普通な1日の始まりだ。

 

…ってそういえば中学卒業したから正確には春休みじゃないな

 

緑谷「…春休み……」

 

緑谷「……………あ」

 

緑谷「ああああああああっっ!?」

 

起床から1分後…寝惚けていた僕の目がようやく覚めた。

 

そうだ。すっかり忘れてた。

 

今日は記念すべき雄英の初登校日だったのだ。

 

 

 

 

 

 

緑谷「かぁっ…結構ギリだっ!!」ギュッ…

 

いそいそと試験合格の余韻に浸る暇も無く、初日は朝からドタバタしていた。

 

急いで靴紐を結び玄関から出ようとする。

 

デク母「出久!ティッシュ持った!?」

 

緑谷「うん!」シュルッ…

 

悟空「弁当持ったんか?」

 

緑谷「今日は入学式とかだけで午前中で終わりだから必要ないんです!!」

 

緑谷(飯関連の事に関しては抜かりないな)

 

デク母「ハンカチも!?ハンカチは!?ケチーフ!!!」

 

緑谷「うん!!!持ったよ!」ギュッ!

 

ただでさえ焦っている時に何度も尋問されるのでそろそろうんざりしてくるぞ…

 

緑谷「時間無いんだ!急がないと…」ダダッ…

 

両足共に靴を履き終えたので立ち上がり走り出そうとするが…

 

デク母「出久!!」

緑谷「」ピタッ

 

呼び止められた。もうやめてくれよ…

 

緑谷「なぁにぃっ!?」

 

デク母「………」

 

母さんはモジモジしながらも一言こう言った。

 

 

デク母「超カッコいいよ」

 

 

緑谷「……!」

 

ガチャ…

 

緑谷「…行ってきますっ」

 

僕もそれに答えるように笑いながら2人に挨拶し、直様ドアを開け出発した。

 

ダダダ…

 

悟空「……」

 

悟空「頑張れよー緑谷」

 

 

 

 

緑谷「………」

 

無事学校に着き玄関で上履きに履き替えて残るは教室に向かうのみとなったのだが…

 

緑谷(広い)

 

廊下で立ち止まってしまう。

 

緑谷(どんだけ体積でかいんだここの学校は…!)

 

緑谷(ええっと地図によると…現在地が……ここ…だよな?)ピラッ

 

緑谷(だからここを右に曲がってその後…………)

 

緑谷「だぁぁぁーっ!!」

 

緑谷「そもそもいくら何でも教室多過ぎなんだよーーっ!」

 

チャイムが鳴るまでのタイムリミットも刻一刻と迫ってきた。

 

いくら探しても教室が見つからず彷徨い続けていた。

 

地図を辿ってもいつになっても辿り着かない為嘆きだした。

 

緑谷「どうするどうするどうするよ僕ぅぅぅっ!!」

 

そんな事を言っていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

 

「…全く…一体誰ですの?廊下でこんな大声で喚いている方は……」スタスタ…

 

 

 

緑谷「…!」

 

その声の主は徐々に僕に近づいてくる。

 

緑谷(……この声…それに喋り方…)

 

緑谷(僕知ってるぞ…この人!)クルッ

 

即座に反応し、後ろに振り返った。

 

そこには雄英の制服を着ている1人の少女の姿が。

 

というか可愛い…

 

「………貴方は………」

 

緑谷「君…知ってる!確か……」

 

緑谷「試験の前に会ったよね?僕等!」

 

()()()の…?」

 

緑谷「やっぱりそうか!」

 

 

あの時…とは前にも言っていた例のおつかいの事である。

 

帰りの途中、路地裏でチンピラ(?)複数に絡まれてた所を見かけて助けたんだ。

 

ただばったり会っただけなので特にこれといった親交も無く別れたのだが…

 

正に空前絶後。また……しかもこんな形で会う事になろうとは思いもしなかった。

 

人生って何起こるか分からないね。

 

 

「…っ…せ、先日は見ず知らずの私を助けて頂き…ありがとうございます」ペコッ

 

緑谷「え…ぁ…ぃ…ども」

 

どうやら相手もその事に気付いたらしく僕にお辞儀をすると自己紹介をし始めた。

 

「申し遅れました。私は八百万百」

 

八百万「1年A組の生徒ですわ」

 

緑谷「八百万さん…ね」

 

緑谷「ぼ…僕は緑谷出久。君と同じ1-Aに所属してるよ」

 

八百万「あら…偶然」

 

緑谷「偶然も何も…まず君がここの試験を受けていたなんて…」

 

八百万「まぁ驚くのも無理ありませんわね」

 

八百万「私貴方方とは違って推薦でここの学校を志望していましたもの」

 

緑谷「すっ推薦!?ひぇぇ…」

 

緑谷「確か4人しか採用されないんだろ?すごいじゃないか」

 

八百万「上を目指す者であれば当然の結果ですわ」

 

八百万「……もしや教室の場所をご存知では無いのですか?」

 

勘が鋭く、出逢って数秒の僕の状況をすぐ呑み込めたようだ。

 

緑谷「あ…そ、そそそうだ!」

 

緑谷「実は…ここの構造把握し切れて無くて廊下で迷ってね」

 

緑谷「良ければ教えてもらえないかな?」

 

八百万「ええ。勿論結構ですわよ」ニコッ

 

八百万「この前のお礼…と言うほど大それた事ではありませんが」

 

八百万「私で良ければ」

 

緑谷(ぐはぁっ!?)キュンッ!!!

 

彼女は眩しい笑顔で快く了解してくれた。

 

しかもこんな可愛い女子とこんな会話弾んで…しかもお礼まで言われるとは……

 

あまりに感激してしまい、心を打たれてしまう。

 

緑谷「あ…今なら死んでもいいかも」

 

八百万「え」

 

 

 

 

 

 

 

 

スタスタ…

 

八百万「着きましたわ。ここが1-Aの教室」

 

緑谷「ドアでっか!?」<バリアフリー?

 

八百万「然程時間も残っていません。早く席について準備しませんと」

 

緑谷「そうだね」スッ…

 

僕はドアの取っ手を手で握り、そのままドアをゆっくり開けた。

 

意外と重量自体は軽い。

 

ガラッ…

 

緑谷「」

 

その瞬間僕の目に映ってきたのはとんでもない光景だった。

 

 

 

 

眼鏡少年「君!机に足をかけるんじゃない!」

 

眼鏡少年「我々の先輩方やこの机の製作者の方々に申し訳ないと思わないのか!?」

 

爆豪「あぁあん!?微塵も思わねーよつーか思えね」

 

爆豪「テッメェどこ中だ!」

 

眼鏡少年「ぼ…んんっ…俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ!」

 

爆豪「聡明ー!?エリ中じゃねぇか」

 

爆豪「そりゃブッ殺し甲斐ありありだなオイ」ガタッ

 

飯田「君酷いなっ!本当にヒーロー志望か!?」<ブッコロシガイ!?

 

緑谷「…………」

 

八百万「…どうなさいましたの?」ヒョコッ

 

あの2人を見ていると何時ぞやのトラウマが掘り起こされる。

 

 

飯田『物見遊山のつもりなら即刻雄英から去りたまえ!』

 

 

爆豪『俺の前に立つな殺すぞ』

 

 

 

緑谷「… 」

 

正直この2人とは当たりたくなかった。

 

決してクラス分けで恵まれていたわけでもない…か。

 

飯田「ん?」

 

お…どうやら飯田君はこちらに気付いたようだ。

 

僕の方向に向かって進んできた。

 

飯田「…やぁ、久しぶり」

 

飯田「自己紹介がまだだったね。俺は私立…」

 

緑谷「あ…大丈夫大丈夫。かっちゃんと話してた所見てたから」

 

飯田「む、そうか……」

 

飯田「かっちゃん?」

 

緑谷「あ…ああ爆豪君の事…うん」

 

飯田「む、そうか」

 

緑谷「僕は緑谷出久。よろしくね飯田君」

 

飯田「ああ、よろしく」ゴゴゴ…

 

さっきの延長か…若しくはまだ僕に悪いイメージがあるのか…

 

飯田君は僕を睨みながらそう言った。

 

歓迎する顔じゃないよそれ

 

飯田「緑谷君…君はあの実技試験の構造に気付いていたのだな?」

 

飯田「俺は…気付けなかったよ」

 

飯田「君を見誤っていたよ!悔しいが君の方が上手だったようだ…」ギリッ

 

と…何とも悔しそうな顔で歯を食い縛った。

 

……これ気付いてないって言ったら殺されそうだなぁ。

 

でも飯田君は思っていた以上に穏やかでいい人そうだから良かった。

 

すぐに打ち解けそうだ。

 

「あ!地味めの人だ!」

 

これまた聞いた事のある声が僕の耳に入って着た。

 

その方向を向くと試験で会った茶髪の女の子が。

 

茶髪の少女「良かったー受かったんだね!」

 

茶髪の少女「マイクの言った通りだったよ!」

 

茶髪の少女「すごいカッコよかったし!」<はぁーって!

 

緑谷「そ…それ程でも」

 

緑谷「君も、直談のお礼言えずにそのまま別れたら嫌だったし…」

 

緑谷「き…君がさあんな事言ってくれたから僕もこうしているわけで…」

 

茶髪の少女「え?何で知ってるの?」

 

緑谷(あ)

 

しまった。緊張して口走っちまった…

 

緑谷「え…えと…それは…」

 

そんな会話をしているとかっちゃんとがこちらを見つめてきた。

 

まぁ話に夢中で僕自身は気付いてないのだが。

 

爆豪「…」

 

 

 

爆豪『どういう事だぁああんっ!?』ガシッ

 

緑谷『った…』グイッ

 

かっちゃんに襟首を掴まれ空中に持ち上げられる。

 

爆豪『どんな汚ぇ手使えばテメェが受かるんだ!』

 

爆豪『史上初!唯一の雄英進学者!!!』

 

爆豪「俺の将来設計が早速ズタボロだよっ!!』

 

爆豪『他行けっつったろーがぁっ!!』

 

ガシッ

 

かっちゃんの腕を両手で強くグッと掴んだ。

 

ミシ…

 

爆豪(んだ……ってぇ…)

 

緑谷『……僕だって生半可な覚悟でこんな事してるんじゃないんだ』

 

緑谷『小細工だとか…そんなの元からクソ食らえだ』

 

緑谷『僕は…自分自身で…勝ち取ったんだっ……この力!』

 

爆豪『……!?』

 

 

 

 

爆豪(…….なんで無個性のデクが合格できんだよ…)

 

爆豪(反抗なんかしやがって…ぜってー何かウラがあるはずだ)

 

爆豪「クソナードが…」

 

しばらく話しているとHRの開始のチャイムが鳴り始めた。

 

だが先生がまだ来てない為会話を呑気に続けていた。

 

 

茶髪の少女「緊張するよねー…あ、今日は入学式とかガイダンスだけかな?」

 

緑谷「え…ま、まぁ…そうなんじゃないかなぁ…」

 

緑谷(顔近ぇぇ…ってか皆制服姿やっべぇ…)

 

緑谷(最近ようやくまともに話せるようになったってのに…)

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」

 

突如廊下から誰かの声がした。

 

皆は気になって廊下をそろ〜と見ると…

 

爆豪「…」ジィ…

 

八百万「…」ジィ…

 

「ここは…」

 

ヂュッ

 

「ヒーロー科だぞ」

 

緑谷「…」

 

A組(誰?)

 

なんと廊下に寝袋に包まれて横たわっている変なおじさんがいるではないか。

 

どう見ても不審者です。うん。

 

何やら手には既に飲み終わったゼリー飲料が…

 

信じられるか?一口で飲み干したんだぜ?

 

誰もがその光景に衝撃し数秒前の歓声が一気に静まった。

 

「ハイ。静かになるまで8秒かかりました」

 

「時間は有限。君達は合理性に欠くね」モゾモゾ…

 

そう言うと男性は寝袋から出てようやくその姿を露わにした。

 

一見ただ草臥れている人としか思えない程身体はガリガリしていた。

 

だが一応この学校にいるという事はここの教師なんだろうか…

 

とても現役プロヒーローには見えない体型だったが。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

緑谷(このクラスの担任…?)

 

相澤「早速だが……」ゴソゴソ…

 

自己紹介を軽く済ませると寝袋からある物を取り出した。

 

相澤「体操服(これ)着てグラウンドに出ろ」

 

 

 

 

 

 

数分後、体操服に着替え全員グラウンドに集結した。

 

入学式始まるまでもう残り時間は僅かだった。

 

こんな時に何をするのだろう。

 

誰もが同じ事を考えていた筈だ。

 

緑谷「あの…これから何を?」

 

相澤「今から個性把握テストを行う」

 

A組「!!??」

 

皆が皆その発言に驚きを隠せなかった。

 

何しろ初日から授業をするなど普通あり得ないし聞いてもいなかった。

 

茶髪の少女「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

相澤「ヒーローになるんだったらそんな悠長な行事出る時間なんて無いよ」

 

茶髪の少女「!」

 

相澤「雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り」

 

緑谷「…」

 

相澤「中学までやってたろ?()()()()の体力テスト」

 

相澤「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている」

 

相澤「実に合理的じゃない…ま、文部科学省の怠慢だな」

 

相澤「おい爆豪、ちょいこっち来い」

 

爆豪「?」スタスタ…

 

相澤先生に近付き、目の前である物を渡される。

 

爆豪「こりゃ……ハンドボール?」

 

相澤「好きに個性使っていいから早よ」

 

緑谷(!)

 

八百万(個性は…使用できるの?)

 

爆豪「あ…ああ」

 

爆豪(好きにねぇ…)ググ…

 

爆豪(んじゃ思いっきし……)

 

ハンドボールを強く握って大きく振りかぶる。

 

爆豪「死ねえええっっ!!!」ボオオッッ!!

 

緑谷(……死ね?)

 

ボールを投げると同時に手を爆発させ、その爆風でボールを遥か彼方へ吹っ飛ばす。

 

相澤(球威を爆風に…面白い奴だ)ピピッ

 

相澤「…ほう。700超えか中々…」スッ…

 

相澤先生は僕らにその数値が書かれているタイマーを見せる。

 

緑谷「な…705.2……」

 

3桁超え…ましてや百台後半の記録など見た事も聞いた事もない。

 

個性有無でこれ程差が着くのか…

 

相澤「まずは自分の【最大限】を知る」

 

相澤「それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」

 

個性使用可…要するにこれは自分の個性を皆に披露しアピールできる場だと皆は解釈した。

 

初めて本当に全力で計測できるので思わずはしゃいでしまう人も中にはいた。

 

「すっげー!()()()()!!」

 

「個性思いっきり使えるのか…!」

 

……これが火に油を注ぐ結果となった。

 

相澤「……面白そう…か」

 

相澤「君達はヒーローになる為のこの3年間を」

 

相澤「そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」ギロッ

 

緑谷「!?」

 

さっきまでの様子とは全く違い、身体の覇気を剥き出しにして僕らを強く睨みつけた。

 

その顔からは何か恐ろしいようなものを感じ取れる。

 

そして衝撃の言葉を言い放つ。

 

相澤「よし。8種目トータルで最下位の者は除籍処分としよう」

 

A組「はあああああっ!?」

 

なんと生徒の1人を退学させようとしているのだ。

 

先程まで安楽的な高校生活を堪能していた筈がいつの間にか最大の危機に陥れられる。

 

勿論これに全員納得いく訳がない

 

茶髪の少女「そ、そんな!?入学初日に…いや…」

 

茶髪の少女「そうでなくても理不尽すぎる…!」

 

相澤「常日頃から理不尽は潜んでいる。いつどこで敵が襲ってきてもおかしく無い世の中だ」

 

緑谷「…!」.

 

緑谷(ヘドロの時だってそうだった…)

 

相澤「そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーローなんだよ」

 

相澤「Plus Ultra(更に向こうへ)さ…全力で乗り越えろ」

 

「んなアホな…」

 

飯田(これが最高峰…予想はしていたがこれ程とは…) チュー…

 

八百万(……恐らく私達の活力を出す為のご冗談でしょうが…)

 

八百万(そうだろうとそうでなかろうと私のやる事は変わりませんわ)

 

八百万(むしろこれは好機)

 

八百万(入試では見せられませんでしたが…)

 

八百万(私の実力を見せつける絶好の機会ですわ)

 

クラスの空気が困惑や戸惑いで覆い尽くされる。

 

入学初日からこんな大試練を受けなければならないのだ。

 

拒否権もない。助かる道は1つ。

 

相澤「放課後マックで団欒したかったのならお生憎」

 

相澤「雄英高校は3年間君達に苦難を与え続ける」

 

緑谷(マジかよ…!)

 

相澤「生徒の如何は俺達の自由」

 

相澤「ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」

 

上に昇りつめる。ただそれだけだ。

 

 

 

オールマイト「…」

 

オールマイト「雄英のシステムは常軌を逸する」

 

オールマイト「教師によっちゃ初日なんて事も…」ペラ…

 

オールマイト「……相澤消太…除籍回数154…」

 

オールマイト「去年に至っちゃ1クラスまとめて送り還しやがってる…」

 

オールマイト「……〜」

 

オールマイト(こりゃいきなりどデカイ受難…)

 

 

 

 

第1種目50m走

 

 

ドォッ!!

 

トラック周辺に激しくエンジンの振動音が鳴り響く。

 

飯田君の個性だ。

 

飯田「っ」キキーッ…

 

飯田(50mじゃ3速までしか入らんな…)

 

相澤「3秒04ー」

 

飯田天哉。個性【エンジン】

 

足にエンジンみたいな器官がついていて滅茶苦茶早い。

 

因みにさっき飲んでいたのは燃料となる100%オレンジジュース(ガソリン)である。

 

相澤(ま…水を得た魚)

 

相澤(他がどうすんのかが見物だな)

 

「5:58…まずまずね」<ケロケロ

 

蛙吹梅雨。個性【蛙】

 

舌を伸ばしたり高くジャンプできたり……とにかく蛙三昧。

 

本人曰く蛙っぽい事なら大体できる。

 

 

 

 

茶髪の少女「…」ポン…

 

彼女は自分の身に着けている物や衣服などに軽く触れた。

 

これもまた個性を発動させる為。

 

ダダッ…

 

茶髪の少女「ひぃぃ…」

 

一見普通に走っているのと何の変わりもしない走り方だが…

 

相澤「7秒15」

 

茶髪の少女(あ、中学の時より速なった)

 

麗日お茶子。個性【無重力(ゼログラビティ)

 

触れた物の引力を無効化する。

 

要は物を軽くしていた訳だ。

 

 

「うーん」

 

クルッ

 

こちらの方は何故か進行方向と逆の向きになり立ったままスタート地点についた。

 

「ふっ…皆工夫が足りないよ」

 

相澤「はいスタート」

 

「個性を使っていいってのは…」ダンッ

 

開始の合図と共に上空へジャンプした。

 

そして…

 

ゴオオオッ…

 

麗日「わっ…速!」

 

彼のお腹から何とレーザーが発射された。

 

その反動でゴールに急接近する…

 

「おっと」ドサッ

 

も倒れてしまう。

 

立ち上がり、再度レーザーを噴出する。

 

相澤「5秒51」

 

「1秒以上出しちゃうとお腹壊しちゃうんだよね」<フフフ

 

A組(何だこいつ)

 

青山優雅。個性【ネビルレーザー】

 

へそからレーザービームを出す。僕と被ってるなんて言っちゃいけない。

 

持続時間がネック。長い時間は出せない。

 

 

八百万「」ブロロロ…

 

中には自分の足で走らない人もいる。

 

相澤「3秒01」

 

「ちょっと待った!原チャリは無しだろ!」

 

相澤「あり」

 

八百万「危ない危ない…越される所でしたわ」

 

八百万百。個性【創造】

 

様々な物体を作りだす。

 

でも分子構造まで理解しないと出来ないので扱うのは至難の業……

 

緑谷(というか…すっごいなぁ八百万さん)

 

相澤「おい次、緑谷と爆豪さっさと整列」

 

相澤「時間がもったいない」

 

緑谷「あ…はい」

 

相澤(個性を最大限使い各記録の伸び代を見れば()()()()()()()()()()()()()…)

 

相澤(はっきり表れる)

 

相澤(それは己を活かす創意工夫につながる)

 

緑谷「…」ザッ…

 

爆豪「…」ザッ…

 

緑谷 爆豪((何でペアがこうなった…))

 

相澤「ほれスタート」

 

ダダッ!!

 

お互いに相手と距離を取ろうとしているかの様にスタートダッシュから全力疾走…

 

「はっええ…」

 

「あれ個性使ってねーじゃんどっちも…」

 

だがどちらも速さが一歩も劣らない為平行に走っていた。

 

爆豪(嘘だろ…デクの奴なんでこんな速…)

 

緑谷「青山君のやってみるか…」クルッ

 

そう言って後ろを振り返る。

 

かめはめ波の態勢に入った。

 

緑谷「か…め…は…め…」ギュルル…

 

爆豪「なっ…テ」

 

緑谷「波ぁあああっっ!!!」ボボオオッ

 

前に向かって勢いよく発射した。

 

あまりに衝撃が強かったのかかっちゃんはコースから吹っ飛ばされる…

 

爆豪「ぐっ…」ズザザ…

 

キキーッ…

 

相澤「3秒99」

 

緑谷「よしっ」

 

相澤「よしじゃない。お前の所為で爆豪計り直し」ゴゴゴ…

 

緑谷「あ、すみません……」

 

爆豪「………」

 

爆豪(そんな…そんな馬鹿な…)

 

爆豪(個性の発現はもれなく4歳まで…)

 

爆豪(なんであいつに個性があるんだよ…ッッ!!)ギロッ…

 

 

 

 

その後も全員が様々な種目で超人的な記録を更新していった。

 

第2種目握力

 

ピピッ

 

「540キロか…」

 

「500ておま…!ゴリラか!?いやタコか…」<タコってエロいよね

 

「…」

 

障子目蔵。個性【複製腕】

 

肩から出ている触手の先端に自分の器官を複製する事ができる。

 

……待った待った。これって手複製しても10倍近くの力は出せないよね。

 

元々の腕力も相当なモノそうだ…

 

 

 

第3種目立ち幅跳び

 

緑谷「…」ピョン…

 

フワフワ…

 

「……え」

 

僕は軽くジャンプしてそのまま宙に浮き続けた。

 

飯田「光線に飛行…複合的個性…?」

 

麗日「万能だね…」

 

蛙吹「極端に身体能力高める個性かもしれないわね」

 

爆豪(違う…デクの親父とお袋は…そんな個性は持ってなかった……!)

 

爆豪(訳がさっぱり分からねぇ…どうなってやがる!?)

 

相澤「…」ピピッ

 

相澤「∞」

 

A組「……え」

 

相澤「これ一生足着かないだろ?」

 

A組「そんなのありかよっ!?」

 

相澤「あり」

 

緑谷(あっ…そうだ…無闇矢鱈に技を使ったら怪しまれる…)

 

緑谷(後で何とかして誤魔化すか…)

 

爆豪(また越しやがった……っ!)

 

 

この技は【舞空術】

 

悟空さんが話していた例の3つの技の1つだ。

 

その名の通り体内の気を放出して空中を浮遊する。

 

空を飛べるので色々応用が利くし便利な技だ。

 

因みにかめはめ波とか…そういう気功波の類も教えてもらった3つの内の1つ。

 

?もう1つ?

 

それはまだ内緒。

 

 

 

第4種目反復横跳び

 

「ひゅぅう」ブヨンブヨンブヨン

 

何やら両側の線に謎の黒い物体が置いてある。

 

とてもブヨブヨしてて弾力がある。

 

その弾力を利用して押して跳ね返されを繰り返す。

 

相澤「92回」

 

「っしょーーっ!!」

 

峰田実。個性【もぎもぎ】

 

頭から球状の物体を自由に生み出せる。

 

触れると体が跳ねるのはあくまで彼だけの話であり…

 

個性の発動者以外に触れるとその物体にくっつく。

 

彼が快調ならば1日離れない程の粘着力を持つ。

 

 

 

 

 

そんなこんなで無事に体力テストは終了した。

 

え?残り半分?元々これ4種目だよ(惚け)

 

まだ紹介しきれてないが…他の人はまた別の機会にしよう。

 

目薬を点けながら相澤先生は説明を始めた。

 

相澤「そんじゃ計測結果を参考に総合順位を付けたんで発表する」ポタ…

 

相澤「詳細は面倒なので省き」<後で俺に声かけろ

 

緑谷「」ドキドキ…

 

…結構高い方狙ったつもりだがそれでも緊張する。

 

最下位になればここまでの努力が全て水の泡になるのだ。

 

そんな事誰が許せる

 

緑谷(とはいえ…1つは∞だし…大抵どこも上位半分には入ってた)

 

緑谷(多分大丈…)

 

ピッ

 

スマホを操作して空中にトータルが書いてある映像が映し出された。

 

なんとそこには…

 

緑谷「……え…い…ち…い?」

 

麗日「やったじゃん!トップだよトップ!」ユサユサ…

 

嬉しさのあまりか麗日さんは激しく僕を揺らす。

 

信じられなかった。まさかかっちゃんや八百万さんを抜いて1位なんて…

 

緑谷(なんせ八百万さんは殆ど道具駆使してたからなぁ…)

 

緑谷(流石に勝てる訳がないと思ってたよ)

 

八百万「……」

 

八百万(2位…か)

 

八百万(勿論本望は1位だったのですが…)

 

八百万「…っ……」

 

爆豪「なんでデクがトップなんだよ……っ!」

 

青山「ふむふむ……で気になる…」

 

蛙吹「最下位は…」

 

全員1番下に書いてある名前に目を向ける。

 

そこに書いてあった人物は…

 

 

 

峰田「………う……ウソ…」

 

峰田「オイ…ラ?」

 

相澤「という訳だ。本日をもって峰田実は退学とする」

 

緑谷(峰田君…か)

 

緑谷(確か反復横跳びで飛び抜けてた人の筈)

 

相澤「要はまだ個性を使い切れなかったって事だ」

 

相澤「他の奴等は大記録を2つ、3つは取っている」

 

相澤「大してお前は突出した記録が1つしかなく更に身体能力もガタガタと来た」

 

相澤「……肉体的な鍛錬は果たして行ってきたのか?」

 

峰田「や…やった!出来る限りやったさ!」

 

峰田「毎日必死にトレーニングし…」

 

相澤「じゃあこれはなんだ」ピピッ

 

そう言うと相澤先生は峰田君の計測記録の表を見せる。

 

相澤「他の奴らは大記録とは言わずともそれなりに特訓を積み重ねているからそこらの高1よりかはいい結果を残している」

 

相澤「だがお前は反復以外の7つはドベだ。他校でもこれ位しか出せないのはそうそう居ない」

 

相澤「自分がどれだけ過程の中で努力していようが、世の中は結果が全て」

 

相澤「【命懸けで頑張りましたが無理でした】なんて通じねぇんだよ」

 

相澤「それは本来隠されている実力を持っているにも関わらずそれを見ようともしない意志の低い様な馬鹿がする言い分なんだよ」

 

相澤「物事の苦楽で行動を決めて今の自分に甘んじているような……な」

 

峰田「…っ……!」

 

相澤「つくづくあの入試は合理性に欠くよ」

 

相澤「お前の様な奴まで受かってしまう」

 

相澤「個性把握テスト(これ)がその事を全て物語っている」

 

峰田「ふっ…ふざけんな!こんなん認められるか!」

 

峰田「訴えて裁判を起こし…」

 

相澤「おーおー…法律に逃げるか。大層な事で」

 

相澤「言っておくが過去そんな事例が無かった訳じゃない」

 

相澤「だが全部撤回されてる」

 

相澤「この学校では教師の行う事は全て正当な行為と見なされる」

 

相澤「生徒の有無は全て教師の判断に委ねられる」

 

相澤「【駄目な奴はすぐ切り捨てる】……ウチに()()()()()()()()()()()…!」

 

緑谷「……」

 

相澤「法だの人権だのそんな達者な事言うのはせめて仮免許取ってからにしな」

 

峰田「ぃっ……か…」

 

相澤「反論も出来ないか。怠惰な英雄(ヒーロー)だ…いや」

 

相澤「()()()()()()()()()()()()

 

麗日(ちょっ…い…いくら何でもいいす…)

 

スタスタ…

 

麗日「…え……」

 

飯田「き…君!何を馬鹿な…」ヒソヒソ…

 

相澤「良かったじゃないか。スタートラインには立てたんだ」

 

相澤「誇っていい事だ…だが舐めすぎた」

 

相澤「これの反省を踏まえ…来年またここに来る事を心から願うよ…」

 

峰田「そんっな…そんな事…できねぇよ……」ポロポロ…

 

峰田「頼むよ……やめてくれ…」

 

相澤「何を泣いてる。校門はあっちだ」

 

相澤「早く立ってここから立ち去れ。授業の邪魔だ」

 

八百万「……っ!?」

 

爆豪(はぁ…?)

 

スタスタ…

 

峰田「たのむ゛よぉぉ…!!」

 

峰田「嫌だ…んな事…!」

 

相澤「…そろそろいい加減に…」

 

ザッ…

 

相澤先生の背後まで近付きそのまま静止した。

 

自分の頭の中に潜んでいたある感情を抑え込みながら…

 

相澤「………何の用だ。まだ話の途…」クルッ

 

ブオッ

 

青山「マジ?」

 

蛙吹「嘘でしょ」

 

ガシッ!!

 

 

先生が後ろに振り返った瞬間…生徒の1人が殴りかかってきたのだ。

 

間一髪で手で掴んで防いだ相澤先生だが…

 

 

 

 

相澤「……これは一体…どういうつもりだ……?」ググ…

 

相澤「…緑谷……!」

 

緑谷「っっ……!」ググ…

 

僕は腕に更に力を加えて先生を押し返しそうとする。

 

だが相澤先生の腕力も侮れず、どちらの身体も動かない。

 

緑谷「彼だって必死になって入学した…!」

 

緑谷「確かに…敵は気付かぬ内に奇襲してくる時もある!」

 

緑谷「だけど…流石に今回のは例外だろ!」

 

相澤「……ほほう。クラス1位なら俺に勝てると思ったか」

 

相澤「俺も舐められたもんだ」

 

緑谷「………8種目だけで人の真価が出るかなんて分かる訳ないだろっ!」ググッ…

 

そう言い放つと再度拳にかける力を強くする。

 

相澤「ぐ…」

 

ズズッ…

 

八百万(押されてる…?)

 

少しは応えたのか、後ろに引きずる相澤先生。

 

相澤「それは8種目もの間違いだ」

 

相澤「お前は100回に1回出るものを真価と言うのか?」

 

緑谷「……」

 

 

こんな事してただじゃ済まなくなる…そんな事は分かってた。

 

ただ…許せなかった。

 

人の事も知らない癖に…役立たずだの無能だのと決めつける。

 

僕は今までそれに苦しんできた。

 

だから…黙っていられなかった。

 

自分が1番嫌いな事がその存在自体否定される事だったから…。

 

 

 

緑谷「確かに最初から上手くは行かないかもしれない…」

 

緑谷「けど…」

 

緑谷「皆ヒーローになりたい一心でここに来てるんだ!」

 

緑谷「それを…その覚悟をお前1人で勝手に踏みにじるのは許せないぞ……」

 

緑谷「イレイザーヘッドッッッ!!!」

 

ゴォッッ…!! !

 

互いの力がぶつかり合い、大きな衝撃波を生み出した。

 

地面には小さなヒビが1つ入り、木々が激しく揺れてざわついていた。

 

 

 

入学初日の大試練……

 

果たして僕は無事に何事も無く家に帰れるのか…?

 

………いやちょっと手遅れかな。

 




須井化ーです…はい。

第6話いかがでしたでしょうか?
原作じゃ出久ピンチの所ですがまぁここは安泰……

てしたら誰か犠牲になるじゃろが(後つまんね)
というわけで次回は相澤先生とガチンコバトルです。
地味にこの形式で真面目な戦闘シーン書くの初かも…
ちゃんと表現できるかどうか心配ですが頑張ってまります。



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください
第7話の投稿は17日(火)までには完了させる予定です(とうとう曜日まで決めやがった…)
お楽しみに。


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第7話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

様々な苦難を乗り越え遂に念願の雄英入試合格を達成するも…

なんと入学初日に除籍を賭けた最悪の体力テストがスタートする。

緑谷少年は最下位になってしまった峰田少年の為に一肌脱ぐのだが…

というかなんで担任殴ってるの緑谷少年!

相澤君短気だからブチ切れちゃうよ!どうするの!?<なんか言いました?

更に向こうへ!PlusUltra!!!

<あらすじにまで出しゃ張るな!





シュゥゥ……

 

緑谷「はぁ…はぁ…」

 

相澤「…ふぅ……」

 

その2人の手から何か白い煙の様なものが立ち上っていた。

 

どれ程()()()()衝撃が強大な物か…

 

それを物語っている。

 

飯田「なんてパワーだ…入試の時といい今といい……」

 

麗日「わっわわ…デデッデックククッ!?…」

 

クラスの皆も相当びっくりしている。

 

まさか飛び出して先生に殴りかかるとは誰も思わないだろう。

 

…だがそれだけじゃなかった。

 

峰田「お…おい…イレイザーヘッドって…?」

 

青山「ダレダッケ」

 

蛙吹「聞いた事あるわ」

 

蛙吹「滅多にメディアに顔は出さないけど…」

 

蛙吹「ネットとかの噂話だと()()()()()()()()()()()個性を持っているとか…」

 

障子「素顔を見た奴は数人ぽっち」

 

障子「巷じゃミステリアスヒーローだとかの話で持ちきりだ」

 

飯田「まさかこんな場で出くわす事になるとはな…」

 

プロヒーローである全ての人間が名声を求めている訳ではない。

 

逆にそれでちやほやされたり、個人情報やプライパシーが漏れるのが嫌で取材を拒む様なケースも少なくは無い。

 

爆豪「何を血迷ったかは知らねぇけど…」

 

爆豪「好都合だ」ニヤッ

 

かっちゃんはさり気無くあざ笑う。

 

その理由は明確だ。

 

相澤「……」シュゥゥ…

 

相澤「!」ギロッ

 

たった15の子供がプロヒーローに喧嘩を売った為。

 

先生は先程皆にやった様に僕を睨み、怒りを露わにする。

 

緑谷「…っ」ゾッ…

 

それは狂気に満ちた様な顔だった…

 

あまりの威圧感に僕は少し怯えてしまった。

 

暫く沈黙の時間が続き、A組全員の緊張感が最高潮に達しようとしている。

 

…ようやく相澤先生は僕に声をかける。

 

相澤「……一応聞くがその根拠はなんだ…」

 

緑谷「……………」

 

緑谷「な、なんとなく雰囲気で… 」

 

A組「………!?」

 

ごめん。今の冗談。

 

緑谷「…さっき目薬してましたよね?」

 

緑谷「貴方の個性は見た相手の個性を消す能力」

 

緑谷「それで確信がつきました」

 

相澤「無駄に推理力は高いな」

 

相澤「じゃあ…なんで俺に攻撃を仕掛けてきたのか…説明してもらおうか…」

 

緑谷「……」

 

緑谷「勝てるから…」

 

相澤「?」

 

緑谷「()()()()()()()()()()

 

相澤「…」

 

「そのままの意味って………」

 

八百万「どういう…!?」

 

その場に居た誰もが僕が発した言葉の意図を理解できていなかった。

 

…ただ1人を除いて…

 

相澤「……ククッ…」

 

緑谷「?」

 

相澤「ハハハハハハ…ッ!」

 

相澤先生は急に哄笑し始めた。

 

勿論この言葉の意味を分かっていてそうしているのだろうが…

 

いや…まぁ普通の反応だろうなこれが…

 

相澤「…すまないすまない。冗談が過ぎていたもので…」

 

相澤「つまり…俺に挑戦状を出すって事か」

 

飯田「……まさか緑谷君……」

 

緑谷「…」

 

要はこういう事だ。

 

僕が相澤先生に1vs1(タイマン)を挑む。

 

もしこれに勝ったのなら峰田君の退学処分を免除してもらう。

 

そうすれば初日は乗り越えられる。

 

緑谷「ただし、僕がこの決闘で勝てなかった場合…」

 

相澤「自分が道連れも厭わない…と。なるほどね……」

 

 

 

 

 

 

相澤「何も知らねぇヒヨッコがデケェ面してんじゃねえよ」ニコ…

 

満面の笑みでそんな恐ろしい言葉を発した。

 

正直1番相澤先生が怖かった所はここだと思う。

 

無論僕は反応に困るわけだが。

 

相澤「も少し立場ってのを弁えてから発言しろ」

 

相澤「いいか。お前達が今まで生きてきた十数年……どんな思いやきっかけでここに来たのかなんて知らないし興味も無い」

 

相澤「ただ1つ言いたいのは…素人であるお前らが…」

 

相澤「自分達の何倍も過酷な修羅場を自分達の何倍も多く経験しているプロヒーロー(俺達)に…」

 

相澤「意見できる筈ねぇだろって事だよッ!!!」

 

緑谷「!!」ビリッ…

 

…僕等とプロヒーロー(彼等)の決定的な違い……

 

それは【重み】だろう。

 

1つ1つの言葉の重みが僕達が発しているそれとは全くもって本質が違う。

 

恐喝に怯えた訳でもないし、はたまた興奮した訳でもない。

 

ただ…頭の中で認識せずとも本能的に体が震えてしまう…

 

緑谷(これが上の世界の人達との…)

 

緑谷(差………!)ゴクッ…

 

そう考えながら思わず息を飲んでしまう。

 

 

相澤「………ま、俺には拒否する理由も無ぇし…」

 

相澤「何より俺に勝てるって自信を持っているお前に興味が湧いた」

 

相澤「いい。その話乗った」

 

緑谷「!」

 

相澤「だが…」

 

相澤「………生徒が教師に手を出したんだ…」

 

相澤「それなりのペナルティーを期待してたんだが…」スッ…

 

そう言うと相澤先生は僕………

 

では無く、僕の後ろに居たA組の面々を指差しながらこう言った。

 

相澤「1年A組(お前ら全員)の首まとめて飛ばす」

 

相澤「それに変更しろ。異論は認めない」

 

「………」

 

 

A組「はあああああっ!???」

 

「ふざけんな!なんで俺達までとばっちり食らわなきゃいけねぇんだよ!」

 

「そうだそうだー!」

 

相澤「あ?連帯責任だろうが」ギロッ

 

突如巻き起こったブーイングはまたしてもこの男の眼差し1つで撃沈してしまった。

 

もはや反論する気力も残ってない。

 

相澤「それに…まだ決まった訳じゃない」

 

相澤「緑谷が気分変えてやっぱり撤回って可能性も」

緑谷「勿論やります」

 

相澤「ごめんなかったわー…」ポリポリ

 

呑気に頭をかきながらそんな台詞を言っていた。

 

流石にここまでくると皆の怒りも爆発する。

 

A組「ふざけんなあああっ!!!」

 

「おい!1位だからって何粋がってんだ!!」ガヤガヤ…

 

「おかげでこっちまで悪影響及んでんじゃねえかよ!!」ガヤガヤ…

 

相澤「……はぁぁもー…」

 

一斉にクラスの大半が僕の事を囃し立てる。

 

この若干崩壊気味のHRも流石の相澤先生じゃ収集つかなくなるようだ。

 

だが…

 

八百万「………」

 

八百万「お静まりなさい!貴方達!!!」

 

A組「………」

 

緑谷「…八百万…さん?」

 

相澤「………」

 

八百万さんの一言により再びクラスのざわめきが静止する。

 

そして数秒後…八百万さんは僕にこう話しかけてきた。

 

八百万「………いいですか…緑谷さん」

 

八百万「貴方の身がどうなろうと私達にとっては然程重要な問題ではありません…」

 

八百万「……が貴方の身勝手で夢を掴める筈だった方々を断念させるのは…」

 

八百万「余りにも理不尽過ぎますわ」

 

八百万「それでも貴方がメリットが何も無いただ無謀な賭けに走るのであれば…」

 

八百万「私の見込み違いですわね…失望しましたわ」

 

八百万さんの言っている事はまさしく正論だ。

 

他の人にとっちゃこんなに不合理な話は無いだろう。

 

選択の余地も与えられず、最悪退学へ真っ逆さまなのだから。

 

キレて当然だ。

 

でも…それでも…

 

峰田「……」

 

自分には見捨てる事は出来なかった。

 

緑谷「………僕は……」

 

緑谷「()()()()()()()()()を安全なルートだとは思えない」

 

緑谷「可能性が1割でも1%でもあるなら、最善の術を使う」

 

八百万「………」

 

麗日「…私は…構わない」

 

八百万「!?」

 

麗日「そりゃまぁ…デク君の言う事は最もだし……」

 

麗日「そもそも…ウチはデク君に助けられへんかったら…」

 

麗日「こ…こんなとこおらんし…」

 

緑谷「…麗日さん……」

 

飯田「………僕も同意見だ」

 

飯田「僕には君にどうこうしろと言う権利は無い…それに」

 

飯田「否定する材料が無い」

 

A組「……」

 

相澤「決まりだな」

 

 

 

 

 

緑谷「……」

 

相澤「……」

 

グラウンドの中心に相手の正面を向く様に立ち並ぶ。

 

2人は臨戦態勢に入り、それぞれ体を構える。

 

爆豪「………」

 

八百万「…」

 

A組「……………」

 

他の傍観客はただ、その光景を大人しく見る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

オールマイト「」ヒョコッ

 

どさくさに紛れて校舎の建物の影に隠れている。

 

どうやら相澤先生のことが気になって仕方が無かった様だ。

 

居ても立っても居られず僕等の様子を見にきてくれた、

 

オールマイト(どうなっているか気になり来たものの…)

 

オールマイト(何をしているんだ緑谷少年!正気の沙汰じゃないぞ)

 

オールマイト(何とかフォローしてやりたいが…)

 

オールマイト(『仕事に差し支える』と彼は頑なに取材を断っている……)

 

オールマイト(私とウマが合わないぞ!?)

 

 

 

 

 

構えてから数十秒経ち、とうとう痺れを切らしたのか…

 

相澤「…来ないならこっちから行くぞ」

 

ダッ!!

 

先攻は先生の方だった。

 

僕の所へ颯爽と走り出していく。

 

緑谷「……」

 

それに全く動じず構えたままで静止し続ける。

 

相澤(考えが読めん…一体何をしようとしているのか)

 

相澤(だがこの際どうでもいい!!)プンッ!

 

僕に向かって拳を振り下ろす。

 

麗日「っ…デク君…!」

 

その手が当たる寸前、先生はある違和感を覚えた。

 

相澤(…姿が…歪んで…?)

 

 

 

スカッ…

 

突如相澤先生の腕が僕の体をすり抜けた。

 

A組「!?」

 

拳は確実に僕の姿を捉えていた…

 

が実体ではない。あくまで幻影だそれは。

 

緑谷「っ!」ズザザ…

 

ダンッ

 

相澤(いつの間に後ろに…)

 

僕は背後に回り先生に飛びかかる。

 

強烈な飛び蹴りを喰らわせようとするが…

 

緑谷「!?」スカッ

 

緑谷「消えた…!」ザザッ…

 

彼もまた、幻影を残し攻撃を避けた。

 

峰田「さっきから何が起こってんだおい…」

 

峰田「攻撃しようとしても当たらない…って」

 

 

相澤「残像。極端に言えば超高速での移動だな」

 

緑谷「!」クルッ

 

お返しと言わんばかりに僕の背後に迫ってくる。

 

声が聞こえ、振り向きながら焦って距離を取ろうとするが…

 

相澤「生徒にできて、先生に出来ない物があると思うか」シュルッ…

 

緑谷「んなっ…」ギュッ…

 

先生が体に巻きつけていたロープの様な物が両腕に絡まる。

 

相澤先生がロープを投げつけ、僕を捕らえたのだ。

 

緑谷「硬っ……だこれ…」ギチギチッ

 

相澤「捕まえた」グイッ…

 

相澤先生がロープを強く引っ張りこちらに近づけようとする。

 

抵抗しようとするも身動きが取れない。

 

相澤「無駄だ。これは炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ捕縛武器…」

 

相澤「容易く切れたりはしない」

 

緑谷「くっ…」ズザザ…

 

完全に動きが封じられた。

 

ただただ引きずられる事しかままならなかった。

 

…だが対処する手はあった。

 

緑谷(手から気功波を出せば…)

 

寧ろこれはチャンスだった。外見では焦っているように装っているが、内心は相手の虚を突けると考えていた。

 

まぁ勿論そんな自由にさせる訳でも無く…

 

相澤「させるかよ」ギンッ!

 

緑谷(まずっ…!)

 

相澤先生の髪が激しく逆立つ。

 

彼が個性を発動させたのだ。

 

つまり……

 

蛙吹「面倒な事になったわね」

 

飯田「個性を消された…あの妙なレーザービームも飛行能力も使えない…」

 

青山「ツンダネ」

 

緑谷(やばっ…行動が制限されたぞこれで…)

 

個性が消えた事により今まで使っていた技が使えなくなった。

 

いや、厳密に言うと使えるのだがそうしてしまうと今までのが全て個性で無いと判断されてしまう。

 

…?それだと何が困るのかって?

 

もう学校側に個性届は提出済なんだ。

 

もしこれがバレれば情報を隠蔽しているとされて冗談無しに放校処分を食らう可能性がある。

 

お陰で気功波と舞空術縛りで相澤先生と戦わざるを得なくなった。

 

緑谷「…マジかよ」

 

ズザザ…

 

何とか対策を練ろうとするが勿論そんな時間を与えてくれる訳がない。

 

相手の射程範囲に入ってしまえば確実に負ける。

 

つまり今行わなければならない事はこの捕縛武器を壊す事だ。

 

だが考えが及ばない。

 

緑谷(どうする…どうする……!)

 

緑谷「イレイザーヘッド…個性を消す…恐らくその解除法もあるはずだ多分条件的には視界に入った人とかだろじゃなきゃゴーグルとか付けないしでもだからって…」ブツブツ…

 

ブツブツと独り言を発しながらイレイザーヘッドを分析する。

 

その途中ある事を思い出した。

 

緑谷「………目薬……」

 

相澤「!!」

 

相澤の目つきが変わった。

 

どうやらこっちの考えに気づいたらしい。

 

今の動揺で確信した。

 

緑谷「…っ……!!」ググッ…

 

そう思うと僕は両手を強く引っ張って顔の横にやり、親指以外の4本を広げた。

 

周りの見ている人にとってはただ変なポーズをしているようにしか見えないだろう。

 

だがこの特徴的なポーズがこの技のミソである。

 

相澤「…何だ」

 

A組「…」ジィィ…

 

オールマイト「……?」

 

誰もが僕に目を向け、顔に注目していた。

 

まさにその時…

 

 

緑谷「太陽拳っっ!!!」

 

カッッ…

 

相澤「ぐあっ…」

 

突然グラウンドが眩い光に包まれた。

 

諸に直視したせいで皆の視力が一時的に奪われた。

 

飯田「くっ……」

 

麗日「何…?」

 

八百万「太陽光の反射か何かでしょうか」

 

障子「お前は平気…なのか?」

 

八百万「こんな事もあろうとサングラスを持参して正解でしたわ」スチャ…

 

A組「…どんな事想定してんの…?」

 

相澤「っ…お前まさか…」

 

相澤「ドライアイを見抜いたか」

 

緑谷「へへ…」

 

強烈な光を目に浴びせる事により視界を無くした。

 

これによりしばらくは僕の動きが分からなくなる。

 

相澤「だがそれがどうした。こうして捕らえられている以上お前のいる位置は判定できる」

 

相澤「まずこの捕縛武器を取る事は不可能だ」

 

緑谷「……10…いや…20かな」

 

相澤「?」

 

緑谷「20秒(これ)位なら耐えられるか…」

 

そう言うと腕を曲げ、体を力み始めた。

 

緑谷「はああああ………」ゴオオッ…

 

するとどうだ。

 

風が激しく吹き、またもや木が揺れ始めているではないか。

 

髪は逆立ち、周りの小石等々が強い衝撃波のあまり宙に浮いてしまっている。

 

闘気を剥き出しにし、徐々に体の周りに赤いオーラの様な物が見えてきた。

 

八百万「あれは…?」

 

爆豪「チッ…まだ目が朦朧と…」

 

 

 

 

悟空『コレが試験までにおめぇに教える最後の技だ』

 

緑谷『……』ゴクリ…

 

悟空『いいか?この技はえれぇ負担がかかっちまう』

 

悟空『余程の事がねぇ限り使うな、特に3倍以上は…』

 

悟空『場合によっちゃ命に関わってくる』

 

悟空『本来()()()()()で習得させる様なもんじゃねえしな』

 

悟空『……気を何倍にも上昇させ、色んな身体能力を飛躍的に上げる』

 

悟空『その名も…』

 

 

 

 

 

 

緑谷「界王拳だぁああああっ!!!」ボボボ…

 

ゴオオオッッ!!

 

激しく赤いオーラが迸る。

 

八百万(な…なんて気迫…)

 

相澤「ぐっ…!?」ズザザ…

 

捕縛武器を持っている筈の相澤先生が逆に引っ張られる。

 

僕は左腕を縛っているその布に右腕を近づけ…

 

緑谷「はぁっ!!」ガッッ!!

 

手刀を浴びせる。

 

だが勿論傷などつく訳がない。

 

相澤「こんな代物が素手で切れるはずが…」

 

緑谷「はっ!だっ!っだ!!」ガッガッ…

 

そんな事御構い無しに何発も捕縛武器に手刀を繰り出す。

 

すると、ある効果音を耳にする。

 

ピリッ…

 

相澤(何…千切れ…)

 

緑谷「………だりゃあっ!!」ガ…

 

ビリィッッ!!

 

手刀の威力に耐えきれず捕縛武器が破れてしまう。

 

相澤「馬鹿な…!」

 

緑谷「っ!」ガシッ!

 

自由になった左腕で右腕に巻きついている布を掴み思い切り引っ張る。

 

緑谷「ぐおおおっ……」ググッ…

 

緑谷「らあっ!!!」ブチブチイッ!!

 

こちらも腕力には敵わず無残に千切れた。

 

相澤(まずい…これで自由に…!)

 

緑谷「さっさと決めるぞ…」ボボ…

 

フッ…

 

八百万(き…消えた…?)

 

消えたのではない。相澤先生の所へ移動しているだけだ。

 

緑谷「…ジャン拳…」スッ…

 

相澤「!?」

 

緑谷「グーーッッ!!」プンッ…

 

ドボオオッ!!

 

相澤「がっ……」

 

先生は腹部に強烈な正拳突きをモロに食らってしまう。

 

相澤「舐めっ…」ブオッ…

 

先生はカウンターを狙って攻撃を仕掛けてくるが…

 

緑谷「チョキ」ガッ…

 

相澤「何…!?」

 

その手刀も人差し指と中指のたった2本で防がれる。

 

緑谷「パァァァアアッッッ!!!」ゴッッ!!

 

相澤「ぐあっ…」

 

バキッ…

 

右手を大きく開き顔面めがけビンタを食らわせる。

 

その衝撃により顎の骨からある不快音が発生する。

 

相澤(こいつ…骨を…?)ヒュゥゥ…

 

ズドオオッ!!

 

勢いよく吹っ飛び校舎に衝突する。

 

その際、校舎の壁に小さなクレーターが出来てしまった。

 

後で弁償とかすんのかなこれ

 

緑谷「…ふぅ」

 

動きが止まると、オーラがふっと消え先程までの姿に戻っていった。

 

飯田「終わった…のか?」

 

麗日「うっ…そ……」

 

オールマイト「…なんと…」

 

皆が皆この決闘に終止符が打たれたのかと感じた。

 

だがその予想とは裏腹に……

 

グラッ…

 

緑谷「?」

 

「……この位で倒したと思われちゃ困るな」スタスタ…

 

相澤「言っただろ…プロはお前らより遥かに過酷な修羅場をくぐり抜けてるって…」

 

平然とした表情で相澤先生は僕らの方へ戻ってきた。

 

障子「あれ受けて無傷なのかよ…!」

 

八百万「流石…雄英教師の名は伊達じゃありませんわね…」

 

相澤(いや正直言うとメッチャクチャ痛いけど…)ズキズキ…

 

痛めた体の箇所をさすりながら相澤先生は僕の様子を伺った。

 

緑谷「…ハァ…ハァ…」

 

相澤(小さな息切れを起こしているな…)

 

相澤(さっきの技にそれ程の負担が…?)

 

緑谷「まぁ…効きませんよね」

 

相澤「いや……普通に効いてる効いてる」

 

緑谷「…でも手は抜いていますよね」

 

緑谷「手を抜いて負ける様な人ではないはずだ…貴方は」

 

相澤「…どうだろうな」

 

混沌とした空気がA組に漂ってくる。

 

このままでは大変なことになる。

 

それだけは確信できた。

 

障子「いつまで続くんだこれ…」

 

青山「これヤバいね」

 

峰田「キリっねぇぇ!誰かぁぁあっ!!」

 

そう喚き始めた時…

 

ある人がやって来た。

 

「キリはある。何故かって…?」

 

緑谷「!?」クルッ

 

声の主が誰かは分かりきっていた。

 

だが生で聴くのは初めてだったものだから…

 

興奮して反射的に彼の方を向いてしまった。

 

そこに居たのは……

 

 

 

オールマイト「私がスーツで来た!!!」

 

緑谷「キタァァァ…っ!!」

 

緑谷(まさか生の姿を拝められる日が来るとは…)

 

緑谷(すっげぇ!やっぱり画風が違いすぎる!)

 

緑谷(今すぐサイン貰いたいーーでも紙が無いーー…)

 

相澤「喜怒哀楽激しいなぁ…オイ」

 

決闘の事などそっちのけでオールマイトとの出会いを存分に堪能しようとするが…

 

まぁそんな事してる場合じゃ無いよね

 

オールマイト「一部始終見させてもらった」

 

オールマイト「相澤君、緑谷少年…」スッ…

 

僕が作ったクレーターを指差しながらこう言い放つ。

 

オールマイト「これ以上被害が出れば君達は確実に退学・退職だが?」

 

相澤「…不満でも?」

 

オールマイト「HAHAHA!あるわけないだろう!君の担当のクラスは君に委ねられたんだ!」

 

オールマイト「僕は君の提案に不服はないよ」

 

A組「!?」

 

オールマイト「だが緑谷少年の言う通り峰田少年は入試の時よりも更に逞しくなったと見る」

 

オールマイト「そのガッツは評価できないかい?」

 

相澤「……」

 

少し考え込んでしまう相澤先生。

 

やがて顔を上げて戸惑いながらもこう言った。

 

相澤「いいでしょう…」

 

相澤「今回の除籍処分…無しだ」

 

緑谷「え……ってことは……」

 

皆「や、やったぁぁぁっ!」

 

八百万「嘘…」

 

グラウンドから絶え間ない歓声が巻き起こる。

 

オールマイトの説得もあり、全員ここの学校に在学する事を認められたのだ。

 

峰田「よ…よかった…」ドサッ…

 

終始ヒヤヒヤしながら戦いを見ていた峰田君もようやく解放された。

 

緊張が一気に解された為か地面に倒れ込む。

 

緑谷「ありがとうございます…オールマイト!」

 

緑谷「後サインください!後握手してください!後写真撮らせてください!後…」

 

オールマイト「分かった分かった…全く…はしゃいじゃって…」

 

オールマイト「……」

 

オールマイト(危なかったな…)

 

オールマイト(後ちょっとで病院行きだったぞ?)

 

オールマイト(相澤君…)

 

彼が考える事が何となく分かったのか相澤先生はぶっきらぼうに

 

相澤「……分かってますよそんな事…」

 

と答えた。

 

 

 

 

 

その後、着替えて教室に戻り軽くHRを行い、すぐ解散となった。

 

校内の施設の概要や各教室の配置…

 

後ついでに入学証書授与……ついでに。

 

相澤「…では各自解散とする」

 

相澤「明日から通常授業だ。くれぐれも…」

 

相澤「今日みたいな事が起こらない様……」ニヤァァ…

 

相澤「武運を祈る」スタスタ…

 

ガラッ

 

悪魔の微笑みと言わんばかりの怖い笑顔にしながら僕等を脅しつつ教室を出て行った。

 

ドアが完全にしまったと確認し終わった瞬間…

 

A組「……はぁ……」

 

全員で同時に大きなため息をついた。

 

無理もない。初日にこんな命懸けの授業を受けたのだ。

 

精神が病む。

 

麗日「ウチ…この後B組のとこに挨拶しようかと思たけど…」

 

麗日「やめようかなぁ…」

 

障子「やめとけ。ロクな事にならん!」

 

蛙吹「多分入学式のヤツでネタにされて笑い者になるだけよ」

 

緑谷「本当大変だった…」

 

A組「誰のせいじゃゴラァァッ!?」

 

緑谷「え」

 

いきなりまた口を揃えて大声で叫ばれたのでビビった。

 

僕何したっけ

 

「ったくよ…一時はどうなるかと思ったぜ」

 

「皆まとめて放校行きかと…」ピロピロ…

 

「測定のお陰でかなり()()()()()()()

 

瀬呂範太。個性【テープ】

 

セロハンを腕から伸ばす!かなりの強度を持つ。

 

これを建物とかに引っ掛けてスパイ○ーマ○的な事もできるぞ

 

「でも男らしかったぜー!誰お前!」ポンポン…

 

緑谷「え…み、緑谷出久…だよ?」

 

「緑谷かー…よろしくな!俺ァ切島!」

 

切島鋭次郎。個性【硬化】

 

用途によっちゃ最強の盾にも矛にもなる万能個性。

 

でも本人曰く地味らしい。

 

ご覧の通り性格は暑苦しい。

 

「よく勝ったよー!凄い凄い!」

 

「あたし芦戸ー」

 

芦戸三奈。個性【酸】

 

溶解度を調整可能で物を溶かすだけじゃなく、床にかけて滑走したりとか汎用性ある。

 

一歩使い方を間違えたら服が溶けるらしい。

 

……今なんか変な妄想した?

 

「ねぇねぇさっきのカイオーケンって何何?」ズイッ

 

空中に浮いて喋っている制服が僕の目に映った。

 

緑谷「っふ!ふふふ服!?」

 

「あっははは。違う違う。これ私の個性」

 

「葉隠透。よろしくね緑谷君」

 

葉隠透。個性【透明】

 

文字通り透明化の個性。

 

個性のON・OFFは切り替えられない。その為いつも透明化してる。

 

素顔とかどうなってるんだろ。

 

隠密行動とかめっちゃ向いている。戦闘は未知数…?

 

「疲れたろ、皆糖分補給するか?」スッ…

 

砂藤力道。個性【シュガードープ】

 

糖分10gで3分間5倍のパワーを発揮する。

 

でもやりすぎると脳機能が低下するとかのデメリットも。

 

チョコありがたくいただきます。

 

「フン。騒々しい」

 

飯田「常闇君!机は腰掛けじゃないぞ!今すぐやめよう!」

 

「人の勝手だ」

 

常闇踏陰。個性【黒影(ダークシャドウ)

 

あらゆる攻撃を無効化できる。チートか。

 

個性発動時は相棒の黒影が現れる。なんかちっちゃいカラス。

 

闇が強ければ黒影の力も強くなるけど明るい場所は不得意手。

 

麗日「もふもふやー」フワフワ…

 

「…これ触り物じゃないからね?」

 

尾白猿夫。個性【尻尾】

 

尻尾が生えてる。以上。

 

でも頑丈。人1人位なら持ち上げられる。

 

この人も素の身体能力がありそうだ。

 

「………」

 

口田甲司。個性【生き物ボイス】

 

声で動物にあらゆる命令を出して操る事が可能。

 

…?なんで台詞が無いかって?

 

無口故。

 

緑谷(…改めて見ると…)

 

緑谷(色んな人がいるな…まさに個性的だー)

 

まぁまだ全員は紹介しきれてないが。

 

一気にクラスの注目の的になった。

 

今の自分からしてもあれは馬鹿馬鹿しい事やったなって思う。

 

でも…結果論になっちゃうけど…これで本当に良かったなぁって思う。

 

麗日「デク君ー!一緒に帰ろ」

 

緑谷「え…い、いいよ…」

 

飯田「お、∞組は帰るのか?」

 

緑谷 麗日「∞組……」

 

八百万「…」

 

爆豪「…」

 

 

 

 

 

 

ようやく体力テストから解放され、肩を荷が下りた。

 

色々麗日さんや飯田君と喋りながら一緒に下校道を歩いていた。

 

……いつの間にか仲良くなってる!

 

飯田「…それにしてもまさか個性無しでも戦えるよう訓練していたとは…」

 

飯田「君には毎回驚かされるよ…」

 

緑谷「そんな事ないよ…ちょっとトレーニングしただけ…」

 

麗日「いやいや!初めから分かってたよ?デク君なら勝てるって!」

 

緑谷「…あれ…そういえば麗日さん。なんでデクって…」

 

麗日「え?ああ。爆豪君と幼馴染なんでしょ?爆豪君がそう呼んでて…」

 

緑谷(そういえばかっちゃん…)

 

緑谷(相当混乱してるはずだよな…いきなりあんな事になってて…)

 

そんな不安をよそに麗日さんはこんな事を言い出した。

 

麗日「なんか私好きだ(響きが)」

 

緑谷「ハイッ!デクです!」プシュゥゥ

 

顔を真っ赤に染め上げながらそう答えた。

 

チョロい。流石僕チョロい。

 

飯田「緑谷君!?」

 

 

まだまだ出来ない事だらけだし…

 

色々頑張らなきゃならない。

 

でも悟空さん…友達が出来た事位は…

 

喜んでもいいですよね。

 

 

 

悟空「……ひひ」ニッ

 

デク母「ど…どうしたの?いきなり笑っちゃって」

 

悟空「いや…ちょっと……」

 

悟空「でぇしょうぶだ」ニコッ

 

デク母「…?」

 

 

 

 

 

緑谷(……)

 

緑谷「……」

 

麗日「?どしたの?デク君…」

 

緑谷「いや…なんでも…」

 

緑谷(気のせいか…オールマイトが居るような気がしたが…)

 

お見事大正解。

 

オールマイト「……危ない危ない。見られそうでscared……」ガタガタ…

 

僕らの帰宅を何故か電柱に隠れながら監視しているオールマイト…

 

だいたいそんな目立つ様な格好したら皆にバレると思うけどなぁ

 

オールマイト「……あの子は確か1年前私が追いかけていた敵に襲われた少年…」 ヒョコッ

 

オールマイト「爆豪少年を助けた時あんな個性使わなかったが…」

 

オールマイト「うーむ…」

 

オールマイト「wonderful」

 

オールマイト「…」

 

 

 

 

 

それは数分前…僕等が丁度教室で騒いでいた時まで遡る。

 

職員室にて

 

オールマイト『まったく!ヒヤヒヤさせて!』

 

オールマイト『私が来ていなかったらどうなってた!?』

 

オールマイト『相澤君!ただでさえ君は去年の高1一クラス丸ごと除籍にしちゃってる!』

 

オールマイト『おまけに今回は校舎に被害が出た!』

 

オールマイト『メディアを避けたいならそんな派手な行為を慎みなよ!』

 

オールマイト『去年だって皆大変だって言ってたぞ!?』

 

相澤『それとこれとは話が別です。私のクラスの存亡は私が決める』

 

相澤『貴方が言ったんでしょ』

 

オールマイト『ぐ…反論はしないが…』

 

相澤『一応、私も先輩側なので言っておきますが…』

 

相澤『生徒を甘やかすような教師はこの学校では通用しませんよ』

 

オールマイト『…そういう訳じゃ…』

 

相澤『…緑谷出久』

 

オールマイト『』ビクッ!

 

図星だったのかオールマイトは体が激しく震え、冷や汗をかいてしまう。

 

相澤『気に入ってるんでしょう?あの少年』

 

オールマイト『………さ、さぁ?』

 

相澤『……誰をどうしようが貴方の自由ですけど…』

 

相澤『あいつらを棚にあげる事だけはしないで下さいよ』

 

相澤『本来ヒーローにならなければもっと有意義に人生を送れた筈の銀メダリスト達が泣いている現場を…』

 

相澤『俺は見た事があるし、実経験でもある』

 

オールマイト『……』

 

相澤『中途半端な力を身につけた者はかえって早死にする…』

 

相澤『昔のお偉いさんの一言ですよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイト「…君なりの優しさって事かい…でも…」

 

オールマイト「やっぱりウマが合わない!」

 

オールマイト「…一難去って又百難……」

 

オールマイト「まだまだ…雄英生活は始まったばかりだぞ…少年少女!!」

 

 

 




うぃー…体調悪い須井化ですー…

眠いだるいそして疲れた…

あと危ない!後数分!!

(17日までだと16日23:59みたいな感じになるけど正確には17日以内です)

(紛らわしい様な事を言ってすみません)

今日は緑谷 vs相澤先生ですた!

どうかな…戦闘上手く作れたか…

見てると同じ単語を連続で何度も使っている様な所をチラホラ…

まぁぼちぼち直していきます。

界王拳については後々補足等を加えていきます。

ちょっとドラゴンボールの【界王拳】とは定義が違ってきちゃいますから…

(話の展開・設定上これはしゃーんなろ…)

あと後回しにすると面倒くさいのである程度は自己紹介させました。

これで台詞言えるキャラが増えるよ!やったね井化ちゃん。

…口田?手話するじゃん(惚け)

さてと…余談は此れくらいにして…

恐らく皆待ち望んでいたであろう挿絵紹介をするぜよー!!(パフパフ

作者は毎度お馴染みさいころソードさん!!ありがとうございます!
一応その方のマイページのリンクも貼っておきます!↓
http://syosetu.org/?mode=user&uid=175541

え?そろそろこの下りくどくなってきた?
仕方ないだろ!初見の人もいるかもしれないんだから!!

今回描いてくださったのはお餅大好きお餅子……じゃなかった。

麗日お茶子(初期ベジータ戦闘服)!!

【挿絵表示】


けろっとしてる反面吐きそうになってるその姿がまた愛らしい!

スカウターは置いてきた。はっきり言って(ry

因みにフリーザ様曰くうららカップは○○○○

おっとこれ位にしないとまた粛清されちゃう(残機529999)

では解説の某ソードさんお願いします!

さいころソード「宇宙感がほしかったので、初期ベジータの戦闘服を着せてみた」

さいころソード「それなりにしっくりくる」

ウラビティやからな!

ゴムみたいだけど軽いってどん位の重さなん?

結論→スパッツってエロいよね。


何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。

次回は1/22(日)以内に投稿します。
ちょっと遅いかもだけど私の体に免じて許してやってくだせぇ。
ヒーロー基礎学&八百万緑谷に急接近ー
まぁ程々に期待しやがれ!!(汗)

お楽しみに。



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第8話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

入学初日に除籍を賭けた体力測定を行うが、最下位になった峰田少年の為に一肌脱ぐ緑谷少年。

相澤君と対峙するもオールマイトの乱入により戦いは痛み分けとなる。

1日乗り越えたくらいで安心してる余裕は無いぞ少年少女!

ここからが本番だ!

更に向こうへ!PlusUltra!!!


ザワザワ…

 

教室中に何十人もの話し声が響き渡る。

 

ここはヒーロー科1年B組だ。

 

「昨日見た?A組の」

 

「見た見たーなんでも1人の生徒が担任に喧嘩売ってバトったんだってねー」

 

「ははっその後どうなったんだろなー!」

 

ガヤガヤ…

 

「……」ピッピッ…

 

そんな中1人少女は携帯で撮った写真を眺めながらこう呟く。

 

「…面白そーじゃん…」ボソッ

 

 

 

 

 

 

とうとう雄英高校生活2日目だ。

 

今日から本格的に授業が始まる。

 

午前中は至って普通の教科の授業…

 

英・公・数・国

 

いわゆる主要科目5教科だ。(理科?なにそれおいしいの?)

 

因みに今は公民を受けている。

 

先生「えー…最近世界で騒がれている事件を挙げればキリが無い訳だが…」

 

先生「例えば緑谷、どんなのがある?」

 

緑谷「…え…ぁぁ…」

 

緑谷「僕らに身近な事って言えばやっぱり…連続爆破テロ…ですかね」

 

先生「成る程な」

 

緑谷「いつも被害を受けるのは決まって病院で…」

 

緑谷「犯人の足取りもままならないとか」

 

先生「…この様に、ヒーローが世界に浸透されても尚事件・事故は絶えない」

 

先生「それを未然に防ぐ為に我々が一刻も早く動かなければならない」

 

先生「ヒーロー社会になった影響で。利得を得た者、奈落の人生を歩んだ者…」

 

先生「様々な変化が表れた」

 

先生「今の社会の理解を深める事が出来ればこういう犯罪も減少させる事も可能…」

 

先生「……っていう俺個人の見解ではあるが語らせてもらった」

 

先生「これから1年間この学習方針に基づいてお前達にビシバシ社会情勢を教えていくつもりだ」

 

先生「そういう意識を持って公民の勉学に励むように!」

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン…

 

4時間目の終わりを告げるチャイムが学校中に鳴り響く。

 

授業を終えると皆が真っ先に向かって走っていく場所は大食堂。

 

クックヒーロー【ランチラッシュ】が作る一流料理を安価で頂く。

 

午前中の授業で疲れた体に染み渡って一層より美味となる。

 

八百万「」モグモグ…

 

緑谷「すみませーん。おかわりくださーい」

 

ランチラッシュ「よく食べるね…もう6人分はいってるよ」

 

爆豪「!?」ガツガツ…

 

 

 

 

 

 

だがここまでは序の口だ。

 

午後の授業は2時間続き。

 

僕らはこの教科の授業を受ける為に今日ここに来ていると言っても過言ではない。

 

その名も【ヒーロー基礎学】!!

 

 

 

「わーたーしーがー!!!」

 

緑谷「来

オールマイト「普通にドアから来た!!!」ガラッ

 

廊下から声がしたし、気で探ったりもしたから分かってたんだけどさ…うん。

 

この間はスーツ姿での初対面だったが今回は正真正銘コスチュームを着た【ヒーローとしてのオールマイト】だ。

 

昨日以上の迫力・インパクトで皆気をそそられる。

 

尾白「銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ」

 

切島「画風が違いすぎて鳥肌が…」ピクピクッ

 

オールマイト「さぁ諸君!!この時間は何の科目か分かるかな?」

 

オールマイト「そう!皆が待ち望んでいたであろう【ヒーロー基礎学】だ!!!」

 

オールマイト「ヒーローの素地を作る為様々な訓練を行う科目だ!!」

 

オールマイト「単位数も最も多いぞ!!」

 

オールマイト「早速だが今日はコレ!」バンッ!

 

そう言うと英語のある単語が書かれてあるカードを僕らに突き出した。

 

葉隠「battle…」

 

緑谷「って事は……戦闘訓練!?」

 

オールマイト「そのとーり!!」

 

オールマイト「そしてそいつに伴ってこちら!!」ピッ

 

リモコンのスイッチを押すと教室の壁の一部が飛び出し棚のようなものが出て着た。

 

そこに収納されていた物は…

 

緑谷「戦闘服(コスチューム)…!」

 

オールマイト「それぞれ入学前に送ってもらった個性届や要望等に合わせてある!」

 

オールマイト「今からそいつに着替えて10分後グラウンドβに集合!」

 

オールマイト「格好から入るってのも大切な事だぜ少年少女!!」

 

オールマイト「自覚するのだ!」

 

オールマイト「今日から自分は…」

 

オールマイト「ヒーローなんだとっ!!!」

 

 

 

 

被服控除。

 

入学前に【個性届】【身体情報】を提出すると学校専属のサポート会社がコスチュームを提供してくれるという親切設計。

 

更に要望を入れる事で自分に合った最新鋭のコスチュームを手に入る。

 

……まぁ無論僕は無しだった訳だが…

 

一応個性届は更新が認められているんだ。

 

体内の水を噴出する個性かと思ったら空気中の水分を液体に変換してた……

 

そんな事例がごく稀にあるので1、2回の変更は認められる。

 

3週間前……

 

 

 

緑谷「……とは言え」

 

緑谷「何も無かった筈なのにいきなり発現したってそもそも受理されるような内容じゃ…」

 

緑谷「後僕の場合何だ…?」

 

緑谷「かめはめ波…は多分ビームとかで片付くんだろうけど…」

 

緑谷「飛行だとかは流石に修行したから〜じゃ通らないよな…」

 

個性届にどう記入すればいいか悩んでいた。

 

あまりにも能力の範囲が広すぎる為だ。

 

勿論普通人間が持てる個性は1つだけで複数などあり得ない。

 

なので全ての技がこの1つで説明つくような個性を考えている……

 

が全く思いつかない。

 

緑谷「…気を使ってあーだこーだしてるんだから…」

 

緑谷「生体エネルギーの制御……?」

 

緑谷「いやだからって舞空術とかかめはめ波に辿り着くのかそれ…」

 

そんな風に思い詰めていた所、母が買い物から帰ってきた。

 

ガチャ…

 

デク母「ただいまー」

 

緑谷「お帰り、お母さん」

 

デク母「出久出久ー」ゴソゴソ…

 

緑谷「?」

 

デク母「これなーんだ」スッ…

 

母は手探りしてトートバッグからある物を手に取った。

 

ジャンプスーツだ。

 

緑谷「な…なんでそれ…」

 

デク母「入学祝いー早とちりかもだけど」

 

デク母「このままじゃ様にならないしね」

 

デク母「いやー出久が勉強寝落ちしてる時にノートが目に入っちゃってね」

 

思春期の息子の私有物に手は出さないでくれ…

 

デク母「……前…酷い事言っちゃったって引きずってたのよこれ」

 

 

 

緑谷『お母さん…』

 

緑谷『どんなに困ってる人でも笑顔で救けちゃうんだよ…』

 

緑谷『超カッコいいヒーローさ…』

 

緑谷『僕も…なれるかなぁ』

 

デク母『…!』

 

母は幼子の僕を抱いて泣きついた。

 

デク母『ごめんねぇ出久…ごめんね……!!』プルプル…

 

その時は震えながら僕に謝る事しか出来なかった。

 

違う。僕が求めているのはそんなんじゃない。

 

当時の僕はそんな事しか考えられなかった。

 

 

 

 

この数年間母を苦しめ続けたのは他でもない僕なのだ。

 

学校などのゴタゴタで四六時中心配させ続けた。

 

悟空さんと出会うまで僕が精神的に病まなかったのもこの人の存在が大きい。

 

だがその分、母には随分な負担と迷惑をかけてしまっている。

 

 

 

デク母「……()()()、私は勝手に自分で諦めてた…」

 

デク母「貴方はいつまでも夢を諦めず、追い続けてたのに…」

 

緑谷「お母さん……」

 

デク母「ごめんね。出久」

 

デク母「これからは手放し全力で応援するからね!」

 

 

 

 

 

そして現在…

 

あれから…個性届も身体情報も提出はした。

 

だがコスチュームの製作は頼んでない。

 

オールマイトの髪をオマージュした突起がついているヘルメット。

 

他は特異点も無くどこにでもある様な感じの服で…

 

見栄えが決していいとも言えないコスチュームだった。

 

緑谷(…母の気持ちだ)

 

緑谷(これを着ずして何を着る)

 

緑谷(便利じゃなかろうと最新鋭じゃなかろうとそんなの問題じゃない)

 

緑谷「これが僕のコスチューム…!」

 

 

 

 

 

緑谷「皆…早い早い」ダダッ

 

更衣室を出る頃には既に生徒は全員グラウンドに到着してた。

 

それ程凝ってる訳でもないしすぐに着替えられると思ったんだけどなぁ…

 

…僕がトロいだけか。

 

着替え終わった後直ぐに急ぎ足でグラウンドβに向かう。

 

 

幸いまだ指定された時間まで3分残ってた。

 

何とか授業間に合った……

 

緑谷「皆すごいの着てるなぁ…」キョロキョロ…

 

ある人は全身をコスチュームで覆って板金鎧みたいになってるし…

 

ある人は手袋とブーツだけ…みたいな感じで制服より寧ろ無防備になってるし…

 

これまた各々の性格や個性が表れて目を惹かれる。

 

そうして皆のコスチュームを観察していると麗日さんが声をかけてきた。

 

麗日「おーデク君かっこいいね!」

 

麗日「地に足着いた感じで!」

 

緑谷「う…麗日さん…それは…」

 

麗日「うへへ…要望ちゃんと書けば良かったよー」

 

麗日「パツパツスーツんなった…恥ずかし」

 

麗日さんは照れながらもそう話していた……

 

がまぁこれがまた色んな意味ですごい。

 

腕とか足がムチムチしてて胸が物凄く強調されてる…

 

どんな意図でこんなコスチューム作ったんだサポート会社…

 

いやそもそもそんな着眼点を作っている自分が情けないわ!

 

因みに要望は【首や手首等に酔いを抑える為のツボ押し機能】……

 

お、おう…

 

峰田「ヒーロー科最高」グッ

 

緑谷(何グッジョブしてるんだ峰田君!!)

 

そうこうしている内にオールマイトも現れ戦闘訓練の説明が始まった。

 

オールマイト「よーし揃ったな!」

 

オールマイト「さぁ始めようか有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!!」

 

オールマイト「ンンーー…皆良いじゃないか」

 

オールマイト「カッコいいぜ!!」

 

オールマイト「?」

 

どうやらオールマイトは僕のヘルメットの突起部分に気付いたようだ。

 

オールマイト(分かりやすっ!!)ププッ

 

全面的にオールマイト感出している服には流石の彼も失笑か。

 

そんな露骨に笑わずとも…

 

飯田「先生!ここは入試時の演習場だと思われますが…」

 

飯田「また市街地演習を行うのでしょうか」

 

さっき言ったプレートアーマー男の正体は飯田君だったのか。

 

中々カッコいいデザイン!

 

オールマイト「いや!もう二歩先に踏み込む!」

 

オールマイト「屋内での対人戦闘訓練だ!!」

 

A組「屋内?」

 

オールマイト「敵退治といえば大半が屋外での事をイメージしがちだが…」

 

オールマイト「統計で言えば逆に屋内の方が凶悪敵出現率が高いのさ」

 

オールマイト「監禁・軟禁・裏商売……」

 

オールマイト「このヒーロー飽和社会において真に賢しい敵は屋内(やみ)にひそむ!」

 

オールマイト「君らにはこれからは【ヒーロー組】と【敵組】に分かれて2vs2の屋内戦を行ってもらう」

 

蛙吹さんは首を傾げながら

 

蛙吹「基礎訓練も無しにいきなり?」

 

オールマイト「その基礎を知る為の戦闘訓練だ!」

 

オールマイト「ただし!今回は入試の様なただぶっ壊せばオッケーってのじゃない所がミソだ」

 

八百万「勝敗のシステムはどうなりますか?」

爆豪「ぶっ飛ばしてもいいんすか?」

麗日「また相澤先生みたく除籍とかってあるんですか?」

飯田「分かれるとはどの様に分かれればよろしいのでしょうか!?」

青山「このマントヤバくない?」

 

蛙吹さんを先頭に怒涛の質問攻めが巻き起こる。

 

これでは説明出来ないし収集つかないぞ…

 

オールマイト「ンンー聖徳太子ィィ!!」

 

オールマイト「とりあえず1回この訓練の概要話すから質問ならその後!な?」

 

オールマイト「まず状況設定」ピラッ

 

カンペを取り出し再び話し始める。

 

オールマイト「敵がアジトに核兵器を隠している!」

 

オールマイト「そしてヒーローはその核兵器を処理するべくアジトの侵入を試みるって感じだ!」

 

A組(設定アメリカン)

 

オールマイト「そんでもって勝敗条件だが…」

 

オールマイト「ヒーローは制限時間までに核兵器を回収(1タッチ)する或いは敵を全員捕まえればその時点でクリア」

 

オールマイト「逆に敵は制限時間までに核兵器を守り抜く或いはヒーローを全員捕まえればその時点でクリア」

 

オールマイト「敵を捕まえる時は確保証明としてこのテープを使って相手を拘束する」

 

オールマイト「コンビ及び対決相手は…」

 

オールマイト「くじで決める!」

 

飯田「ええ!?て、適当なのですか!?」

 

緑谷「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップすることも多いしそういう事じゃいかな…」

 

飯田「そうか…先を見据えた計らい!」

 

飯田「失礼致しました!!」

 

オールマイト「いいよ!早くやろ!!」

 

 

 

そしてくじ引きの結果…

 

緑谷「……お?」←Aチーム

 

八百万「……あら」←Aチーム

 

こうなった。

 

緑谷「驚いた…まさか2トップがコンビになるとは…」

 

八百万「よろしくお願いします。緑谷さん」

 

緑谷「あ…う、うん」

 

軽く挨拶しようと思ったが喋っている内に自然と視線を下に向けてしまった、

 

またもや派手なコスチュームに目が留まってしまう。

 

何が驚きかと言われればそう…

 

露出度。

 

彼女の個性は創った物質を体内から放出するので性質上仕方ないのだが…

 

胸元から臍までかけてパックリ開けたレオタード…

 

更にその上袖なしで下半身はブーツとベルトのみという代物である。

 

半分以上身体丸見えなのだ。

 

緑谷(あ…後む)

 

緑谷(って何言おうとしたんだ自分ーー!?///)

 

見れば見る程顔が赤く染まっていった。

 

し…仕方ない。思春期だもの。

 

八百万「どうなされました?」

 

緑谷「い…いやっ!?別に!?」

 

緑谷「そ、そーいえば今から対戦チームも決めるんだっけ!?」チラッチラッ

 

何とか気を紛らわせる為に話題を変えようと必死に抵抗する。

 

でもやっぱり服気になる!!!

 

オールマイト「さてと…では最初の対戦カードはこちら!!」ゴソゴソ…

 

2つの箱にそれぞれ手を突っ込み1つずつコンビの名称が書かれているボールを取り出す。

 

オールマイトが最初に選んだ2つのチームは…

 

オールマイト「Aコンビ VS Dコンビ!!!」バッ!

 

オールマイト「緑谷少年…八百万少女と飯田・爆豪少年だな!」

 

緑谷(かっちゃん…!)

 

爆豪(デク…!)

 

オールマイト「敵チームは先にアジト(仮)に入ってセッティングを!」

 

オールマイト「5分後…ヒーローチームが潜入して演習スタートだ」

 

オールマイト「他の者は地下に行ってモニターで観察するよ!」

 

オールマイト「飯田少年と爆豪少年は敵側の思考をよく学ぶように!」

 

オールマイト「とりあえずこれほぼ実戦形式だから怪我とか恐れず思いっきり!」

 

オールマイト「あ、でも度が過ぎだら中断するらかもしれないから良識の範囲内でな」

 

緑谷 爆豪((………))

 

 

 

かっちゃん達がセッティング…他の皆が地下のモニタールームに向かっている間に…

 

僕らは敵コンビのアジトに行かなければならない。

 

多少会話しながらアジトと指定されたビルに移動していた。

 

八百万「…成る程。大体把握できましたわ」

 

緑谷「ええ!?早っ!」

 

緑谷「ビルの見取り図渡されてから1分経ってないよ!?」

 

八百万「この程度の情報量なら30秒で暗記できますわ」

 

緑谷「流石は八百万さん…頭脳派だー」

 

八百万「お世辞は結構。緑谷さんも早く覚えてください」

 

八百万「それと……」

 

緑谷「」ガタガタガタ…

 

身体をガクガク震わせながら僕は見取り図をひたすら眺める。

 

世間で言うところのマナーモードか。

 

八百万「何故震えていますの?」

 

緑谷「いっいや…き、緊張とか…そういうのじゃなくて…」

 

緑谷「相手…かっちゃんだからさ」

 

八百万「…かっ…ああ…爆豪さんですか?」

 

八百万「あの方は体力テストで4位…一般入試で総合成績ぶっちぎりの1位でしたわね」

 

八百万「確か貴方と幼馴染だとか…貴方によく絡んできますわね」

 

緑谷「……まぁ…幼馴染…というか腐れ縁というか」

 

緑谷「目標も…自信も…体力も…個性も…」

 

緑谷「僕なんかより何倍も凄いんだ」

 

緑谷「ただ…」

 

八百万「?」

 

緑谷「…だから今は負けたくないなって」

 

八百万「………1つ言わせていただきますが…」

 

八百万「任務に私情は厳禁ですわよ」

 

緑谷「…!」

 

八百万「貴方はどうも感情的に動いてしまう節があります」

 

八百万「そこで冷静さが欠けてしまう」

 

八百万「私が先頭を歩きますわ。くれぐれも出張らないように」

 

緑谷「は…はい」

 

初めての戦闘訓練……僕が緊張し過ぎってのもあるかもしれないけど…

 

八百万さんっていつも冷静だなって思う。

 

昨日の体力テストで除籍の話を聞いても顔色1つ変えず動じていなかった。

 

それ程好成績になる自信があったんだろう。

 

全員除籍はいくら何でも納得出来なかったみたいだが。

 

()()()()()()()も個性は必ず使おうとはしなかった。

 

正当防衛で無い限り公共での個性の使用は禁止されている。

 

だから無闇矢鱈に武力行使は行わなかった。

 

ザ・優等生って感じがする。

 

緑谷(流石は推薦合格者…)

 

緑谷(場に応じての対応・処理能力が半端ない)

 

緑谷(…かっちゃんとはまた別の天才か…)

 

緑谷(すごいなぁ…皆)

 

 

 

 

一方その頃かっちゃんグループは先駆けてアジトでスタンバイしていた。

 

飯田「訓練とはいえ敵になるのは心苦しいな」

 

飯田「…」コンコン…

 

何やら小型ロケットミサイルのようなハリボテを触ったり、それがある部屋の詳しい状況を確認したりなど行っていた。

 

…飯田君は。

 

爆豪「…おい」

 

いつもより数倍の殺気が込められた声で飯田君に話しかけるかっちゃん。

 

それを必死に抑え込みながらもこう問いかけてきた。

 

爆豪「デクは…個性……あるんだな?」

 

飯田「…?昨日の見たろう」

 

飯田「何やら個性の特定までは出来ないようだが様々な効果があるようだ」

 

飯田「しかし、君は事ある毎に緑谷君につっかかるな」

 

爆豪「おう….…そうか」

 

かっちゃんは静かに相槌を打って会話を終了させた。

 

飯田君は作業を再開する。

 

肝心のかっちゃんはというと…

 

爆豪(……ハハハハ)

 

爆豪(そういう事か…つまりぃ…あいつは今までぇ…)

 

爆豪(ずっとこの俺を騙してたのか!!??)

 

顔面に血管が浮き上がる位滅茶苦茶切れていた。

 

無理もない。僕と10年以上の付き合いだ。いきなり個性ができたなんてまず信じられないし…

 

何よりあいつは…僕の性格を誰よりも分かっている。

 

だから尚更許せなかったんだ。僕が欺いていた事に…

 

爆豪「クソナードが……!」

 

 

 

 

 

【同ビル地下モニタールーム】

 

瀬呂「これまたすっげぇの搭載されてんなぁ…」

 

何十もの監視カメラの映像を見ながら皆はそんな感想を述べる。

 

各階にそれぞれ20のカメラが設置してある。

 

何処にいようが行動は全て筒抜けだ。

 

麗日(うう…デク君大丈夫かな…爆豪君ともし喧嘩しちゃったら…)アセアセ…

 

麗日(で…でも体力テスト1位だったし後組んでる人もその時の成績優秀だった筈…)アセアセ…

 

どうやら麗日さんは僕の心配で観察どころでは無いらしい。

 

余程僕を思っての事だから僕自身嬉しいのだが…

 

麗日(最悪さっき触ったから危ない時はウチが浮かし)

 

それだけはやめてくれ。

 

オールマイト「さあ!皆も考えて見るんだぞ!!」

 

オールマイト(緑谷少年…見せてもらおうじゃないか…)

 

オールマイト(君の実力がどれ程か…確とこの目で!)キッ

 

クリップボードとペンを持って気合を入れているオールマイト。

 

皆が皆張り切ってるな。

 

 

 

 

 

オールマイト<皆所定の位置に着いたな!!

 

街の中心部にあるメガホンから放送が流れ始める。

 

スタートの合図だ。

 

オールマイト<それではこれよりAコンビとDコンビによる…

 

オールマイト<屋内対人戦闘訓練スタート!!!

 

緑谷「お…始まった…」

 

緑谷「早速中に…」ダダッ

 

と馬鹿みたいに正面の入り口に向かって突っ走ってしまう人が一名。

 

八百万「お待ちなさい!」ガシッ

 

緑谷「いったた…!な、何さ…」

 

ほっぺを抓って僕を連れ戻しながら説明をする。

 

八百万「敵前で正面突破する人が居ますか!!」

 

八百万「それにあれ程私の前に出るなと釘刺しましたわよね!?私!!」グイッ

 

緑谷「は…はひ!」

 

観察組(何やってんのあいつら…)

 

 

 

 

 

フワフワ…

 

とりあえず僕達は核兵器がある部屋が存在すると思わしき階層……

 

より1F下の所侵入する事にした。

 

直接行ってしまえば不意打ちにあうかもしれないし不確定要素が多すぎる。

 

そこまでの移動法は勿論舞空術(これ)

 

緑谷「……し、しっかり掴んでて…ね?」

 

八百万「ええ」

 

八百万さんの脚が垂れ下がりプラプラ浮いてる。

 

足が着かないって今でこそ何ともないが慣れなきゃトラウマもんじゃないのかこれ…

 

おまけに唯一頼りなのは今掴んでいる僕の脚だからなぁ…

 

そんなこんなで難無くその階に到着。

 

窓から潜入する。

 

鍵は八百万さんがキーピックでさくっと開けてくれた。

 

八百万『…』カチャ

 

八百万『開きましたわ』

 

緑谷『まだ1分経ってないよ!?』

 

八百万『この程度のロックなら30秒で解けますわ』

 

緑谷(ピッキング技術も半端じゃねー…)

 

何かこの会話何処かで見た事ある。

 

 

 

緑谷「よーし侵入成功」

 

緑谷「早速行こう」

 

八百万「…はい」

 

足音を立てないように静かに移動する。

 

ビルの中は迷路のような配置になってて曲がり角が幾つもある。

 

見取り図が読めなかったら真っ先に右往左往しそうな道のりだ。

 

勿論、訓練の途中で見取り図を見る事は可能っちゃ可能なんだが…

 

奇襲等も考えられる為そんな悠長な事はしてらんない。

 

ゆっくり慎重に…上の階に繋がる階段へと向かっていった。

 

八百万(……この方の気が知れませんわ)

 

八百万(初対面の時はもう少し真面目で凛々しい方かと買い被っていましたが…)

 

八百万(結局ただ成績が良ろしいだけで間が抜けている人じゃない!!)

 

八百万(いやそれも相まって私は救われたのかもしれませんが!?)

 

八百万(兎に角…また無茶な行為をされては堪ったものじゃありませんわ)

 

八百万(私の評価にも影響を受ける…)

 

八百万(何としても私が先導切ってこの訓練を成功させなければ…!!)ググッ

 

彼女には八百万家としてのプライドと己の野心がかかっていた。

 

失敗は許されなかった。

 

八百万さんは強く拳を握り締め粛然と覚悟を決める。

 

それが無意識の内に彼女を焦らせてしまったのか…

 

段々八百万さんの歩くスピードが早くなっていく。

 

緑谷「ちょ…待ってよ」

 

八百万「待てませんわ。少々動きが鈍くなくって?」

 

緑谷「そんな事ないよー…!寧ろこれさっきよりペース上げてる…」

 

八百万「早く着いて来なさい!」スタスタ…

 

とうとう率直に命令系になった!!

 

緑谷(というかそんな大声出しちゃ…)

 

緑谷(あ)

 

八百万(全く…こちらの身がもたないですわ)

 

八百万(さっさとこの様な訓練終わらせま…)クルッ

 

次の曲がり角を曲がろうと右を向いたその瞬間……

 

 

 

 

 

爆豪「……」バッ

 

八百万「……え」

 

かっちゃんが八百万さんに襲いかかってくる。

 

爆豪(チッ…!デクじゃなかったか!!)

 

爆豪(まぁいいこの際…)

 

爆豪(どっちでもいい!!!)ブンッ!!

 

八百万さんの顔面に向かって殴りかかろうとする。

 

右腕を力の限り勢いよく振り下ろす。

 

八百万(しまっ…)

 

唐突の出来事に彼女も対処しきれなかった。

 

顔と拳の距離はもう1、2cm程度しか無かった。

 

 

 

ドオオオオンッッ!!!

 

大きな爆発音がこのフロア全体に反響する。

 

壁は見事に破壊されその瓦礫が散乱する。

 

八百万さんはというと…

 

 

 

緑谷「危なっ…掠った!」

 

寸での所で救出した。

 

前へ飛び出して彼女を抱き抱えそのまま転げ落ちた。

 

その間1秒。

 

お陰でヘルメットの左半分焼かれた(持ってかれた)

 

八百万「………な…」

 

緑谷「怪我無い?八百万さん」

 

八百万「貴方また……何故…」

 

緑谷「…()()()()()()()()()…」

 

八百万「え…」

 

気を探っていたのでかっちゃんがこのフロアに降りてきていたのも既に知っていた。

 

だが侵入した後の話だったので迂闊にその話題は出来なかったし他の階になんて移れなかった。

 

何よりここで…ケリをつけたかったから…

 

緑谷「…かっちゃん」

 

緑谷「僕を殴るのは勝手だけど他の人を巻き添えにするなよ…!」

 

僕の不注意で八百万さんに怪我を負わせる所だった。

 

自分の不甲斐なさに怒るとともに躊躇なく攻撃を仕掛けてきたかっちゃんを強く睨みつけた。

 

爆豪「…いつから俺に…」

 

爆豪「そんな口聞ける様になったぁああんっ!?」ダダッ…

 

かっちゃんも同様に怒りを露わにし再攻撃を図る。

 

こちらに向かって一直線に走ってきた。

 

 

 

【地下モニタールーム】

 

切島「うわあぁ…爆豪ズッケェェ」

 

切島「奇襲なんざ男らしくねぇよ!」

 

芦戸「よく避けたねー緑谷!」

 

麗日「」ピクピク…

 

麗日さんは緊張のあまりとうとう静止してしまった。

 

青山君はフォローに入ろうとするが…

 

青山「君彼の事心配?」

 

ってフォローになってねぇ。

 

オールマイト「いいや。反則でもなんでもないぞ奇襲は」

 

オールマイト「彼らは今実戦の最中なんだぜ!」

 

オールマイト(……それに大変なのはこれから…だろ?)

 

オールマイト(緑谷少年…)

 

 

 

 

 

 

緑谷「…!」

 

…驚いた。

 

以前まで見えなかった筈のかっちゃんの動きが全て捉えられていた。

 

何より…

 

爆豪「ぐぉらぁぁぁっ!!!」ブオッ…

 

ガシッ…

 

爆豪「何っ…」

 

その感傷に浸れる程の空白の時間がある事に…驚きを隠せなかった。

 

緑谷「っ……」

 

緑谷「ああ!!!」ドッ!!!

 

かっちゃんのパンチを難無く受け流し、見事に背負い投げを決めた。

 

爆豪「がっ…!?」

 

瞬時に大きな衝撃が背中を襲ってきたので思わず咳を出してしまう。

 

まさに【何が起こったんだ】みたいな顔しか出来ずかっちゃんはただ呆然とする事しか出来なかった。

 

それから数秒後ようやく意識を取り戻し起き上がる。

 

爆豪「……っ……んだ…!」

 

フラフラと態勢を立て直しながら僕はこう呟いた。

 

緑谷「…大抵1発目は右の大振り」

 

爆豪「!?」

 

緑谷「どれだけ見てきたと思ってる…」

 

緑谷「凄いと思ったヒーローの分析は…全部ノートにまとめてるんだ!!」

 

緑谷「君が1年前…爆破して捨てたノートに!!」

 

爆豪「……!!」

 

緑谷「かっちゃん…」

 

緑谷「僕はもうただの()()()()じゃないんだぞ…!!」

 

大きく息を吸って手にグッと力を入れこう叫ぶ。

 

 

 

緑谷「僕は……俺はヒーロー科1年緑谷出久だっっ!!!」

 

 

 

爆豪「…内心ビビりながら…そんな風に図に乗る所が…」

 

ビキビキ…

 

爆豪「ムカつくなぁ……!!!」

 

 




体調不良で更新が遅れると言ったな。

モ○「はい…期限が過ぎても一生懸命に…」

あれは嘘だ(デッドパニッシャー!

○ア「ウ、ウワァァァァァァ!!」




この俺が病感染位で死ぬと思っていたのか?

ヘェハハハ!インフルが感染したとて、予防接種を超える事は出来ぬぅ!!

流石は須井化と褒めてやりたい所だぁ…

(実は診察してもらってない事は内緒だZE)

(家で寝込んでた所3日程度で回復。お陰で咳も無くなったお)

さーてとこの口調やめやめ。<ヘェアッ!?

挨拶遅れました。須井化ですよ。

第8話いかがでしたか。

今回はデクVSかっちゃん突入まで。
相方が八百万ってとこ以外は大体原作通り…
かと思いきや所々変わってるな。
…いい加減【ヒロインは八百万】タグはつけないのかって?
いんだよ!この後ヒロイン出てくんだからもう1人(汗)!!

?時々出てる緑谷のストーカー?<ストーカー言うなし!

あの子を正式に登場させるまでもう少し時間かかります。もうちっとだけ続報を待つんじゃ。

(因みに私の治りが早かった要因の1つもこの人)
(え?訳わかめ?ならヒロアカのアニメHPチェック!)





<いやー最初にあの子んとこの枠決める辺りスタッフ有能マジ有能

<画像見た瞬間ぶっ倒れそうになったってマジで!

おっと余談が過ぎた。まぁその子の登場も待ち遠しいですねぇ!

次回の緑谷VSかっちゃんも目が離せませんぞ!あ、飯田君と八百万も、ね?


何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
1月24日(火)以内に第9話の投稿を予定しております。
アニメ第2期も近づいて参りました!
始まるまでにUSJ終わらすぞー

お楽しみにー
皆様方体調を崩されない様お気をつけて過ごしてください!病は気からですぞー!




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第9話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

初のヒーロー基礎学で対人戦闘訓練を行う事になった緑谷少年。

なんと対戦相手は爆豪・飯田少年ペア!

八百万少女と共に協力し見事クリアなるか!

そして前回の冒頭の少女誰!?

更に向こうへ!PlusUltra!!!


爆豪「ムカつくなぁっっ!!!」

 

かっちゃんの怒りも限界に達し大きな怒声を僕等に浴びせた。

 

こうなると見境がつかなくなるぞ…

 

ツーツー…

 

爆豪「…何だ」ピッ

 

飯田君に無線で呼ばれたようだ。

 

声を荒げながら応答する。

 

飯田<爆豪君!状況を教えたまえ!どうなっている!?

 

爆豪「黙って守備してろ…ムカついてんだよ俺ァ今!!」

 

飯田<きっ…気分を聞い

プツ…

 

飯田君が話し終わる前に無線を切ってしまう。

 

今は戦闘訓練とかそれ所じゃなさそうだ。

 

爆豪「デクテメェ…」

 

緑谷「……」

 

 

 

【地下モニタールーム】

 

切島「何話してたんだアイツ?」

 

切島「定点カメラで音声ないと分からねぇな」

 

どうやら映像は上手くキャッチできてるようだが声は言うほど拾えてないらしい。

 

会話の内容までは聞き取れてない。

 

よかったねかっちゃん…

 

オールマイト「コンビと小型無線で話してるんだろう」

 

オールマイト(まぁ大方予想はつくが…)

 

葉隠「持ち物は無線と見取り図…後さっきのテープ」

 

葉隠「制限時間15分で核の場所は【ヒーローチーム】には教えられないんですよね」

 

尾白「ヒーロー側が不利なルールだこりゃ」

 

オールマイト「そこはPlus Ultraさ!限界超えてけ!」

 

流石にこの無茶振りには対応しきれない。

 

観察組「お…おおー」

 

 

 

 

え?じゃあなんで核の場所が分かったって?

 

2人の気を探っていたからに決まってるじゃないか。

 

 

 

 

 

八百万「み…緑谷さん!ここは一旦…」

 

緑谷「いや、かっちゃんは僕を逃がす気は更々無い!」

 

緑谷「ここで足止めする!八百万さんはその間に()()()()()!!」

 

爆豪「シカトかおい!?」バッ

 

再びかっちゃんは僕に向かって飛び出した。

 

完全に標的扱いだ。

 

緑谷(見極めろ…右腕か?左腕か?右脚か?それとも…)

 

爆豪「っらあっ!!!」プンッ!

 

こっちの思惑通り上段回し蹴りを繰り出しに来てくれた。

 

それに応えるようひょいとしゃがんで軽く避ける

 

爆豪「テッメェ…!!」

 

緑谷「へ…っ」ニッ

 

八百万「……」

 

八百万「止むを得ませんわね…」ダダッ…

 

事態の収束がつかないと判断した八百万さんは直様階段の方に走り去る。

 

勿論かっちゃんはそんな事に気付かない。

 

緑谷(よっしゃ…後は彼女次第…!)

 

爆豪「っ!!!」

 

かっちゃんはそのまま攻撃を続ける。

 

右腕を振り上げ構え……

 

緑谷「っと!!」ダンッ

 

ドゴオオッ!!

 

左腕で殴りかかる。

 

勿論右腕はフェイクだと分かっていたのでこれを避けるのも簡単だった。

 

僕はしゃがんだまま後退して態勢を立て直す。

 

緑谷(読める!大体!)キキーッ…

 

緑谷(相手がかっちゃんだってのもあるかもだけど…)

 

緑谷(頭に血昇ってるから挙動が激しい!!)

 

緑谷(だけどクソ真面目に相手してたらキリないな!)ダダッ…

 

そう思うと後ろを振り返り走っていった。

 

死角を利用して身を隠す為だ。

 

爆豪「あ゛?逃げんのかデク!!!」

 

緑谷「…!」ダダ…

 

角を4、5回曲がった所で止まって息を潜めた。

 

緑谷「よ…し……」

 

緑谷(多分ここなら少し時間稼げる…多分)

 

緑谷(…八百万さんは眼中に無いってか…完全に僕しか狙ってきてない…)

 

緑谷(かっちゃんが暴れてるな…)

 

緑谷(本来尖兵出すなら機動力高の飯田君だしどっちもそんな事理解してる筈だ)

 

緑谷(即突入で2人同時に相手するってのも1つの手だったんだけど…)

 

緑谷(かなりのリスクも伴う)

 

緑谷(かと言ってここで2人共足止めくらったら効率悪過ぎる)

 

緑谷(1番理想的なのはかっちゃんをここで押さえて八百万さんが核を奪取する!!)

 

緑谷(彼女の個性は【創造】だ!余程の事が無い限り問題は無い!)

 

緑谷(んでもって僕も後から加勢すれば最悪カバーできる!)

 

緑谷「…その場合僕がかっちゃんに勝つ前提の話になるけど…」

 

緑谷(被害の事を考えればかめはめ波は使えない…)

 

緑谷(だとしても…今の実力なら格闘戦だって…)

 

緑谷(八百万さんには場所も伝えてある…!)

 

緑谷(大丈夫…行けるぞ!)

 

今までかっちゃんに勝とうだなんて到底考えられなかった。

 

無個性でひ弱な自分にそんな力は無いと思ったから…

 

今でも無個性なのに変わりないが…あの1年で僕は確実に強くなったんだ!

 

その内自分でも皆と同じ位の土俵に立てるだけの力という自信が出てきたと共に…

 

心の中でかっちゃんを見返してやる…負かしてやるという小さな灯火(闘志)が密かに燃え上がっていた。

 

 

 

 

爆豪「……石ッコロ…」

 

一方かっちゃんはとぼとぼとゆっくり前に進んでいた。

 

だが着実に僕の所へと近づいている。

 

爆豪(ただの石コロだ…アイツは…!)

 

爆豪(俺を誰だと思ってる!?)

 

 

ドボン!!

 

『かっちゃん川に落ちたー』

 

『早く上がってこいよ!』

 

 

爆豪(俺は優秀なんだ!強ぇんだ!)

 

爆豪(他人の救けなんざ要らなかったんだ!!)

 

 

緑谷『大丈夫?』

 

緑谷『頭打ってたら大変だよ…』

 

 

爆豪(だからそんな顔で俺を見るな!!)

 

爆豪(そんな顔で俺を見下すな!!)

 

爆豪(俺の方が上なんだ………!!!)

 

 

 

 

隠れてから1分とも経たない内に八百万さんから連絡が入った。

 

ツーツー…

 

緑谷「…八百万さん。どう?見つけた…?」ピッ

 

八百万<……驚きましたわね

 

八百万<地図に記されている所とぴったり一致しています

 

緑谷「……いける?」

 

八百万<既に作戦は考案済みです

 

八百万<緑谷さんも直ぐに合流してください!

 

緑谷「うん、分かった」

 

それだけ言うと僕は無線を切って大きなため息をつく。

 

何故かって?

 

緑谷(…八百万さん…悪いけどちょっと直ぐには加勢できる状況じゃないかも……)クルッ

 

爆豪「……なんで使わねぇ…個性」

 

爆豪「舐めてんのか?デク…」

 

かっちゃん(ヤツ)が来た…

 

かっちゃんはこちらを向くなり不気味な笑顔で僕を迎えた。

 

先程とは別の意味で恐ろしい形相に変わっていた。

 

緑谷「…もう君を恐がるもんか」

 

緑谷(ここだけは…ここだけは負けたくない…!)

 

爆豪「テメェのストーキングならもう知ってるんだろうがよ…」

 

爆豪「俺の爆破は掌の汗腺からニトロみてぇなモン出して爆発させてる」スッ…

 

緑谷「…?」

 

かっちゃんは急に淡々と喋りながら右腕の籠手をこちらに向けた。

 

一体何をしようとしてるのか見当もつかなかった。

 

爆豪「【要望】通りの設計なら…籠手(こいつ)にそれを内部に溜めて…」ガコ…

 

そう言いながら籠手の突起部分?みたいな所を掴んでスライドさせた。

 

すると手榴弾のピンみたいなのが出てきた…

 

…手榴弾?

 

オールマイト<ちよ…爆豪少年!ストップ!!

 

今の放送で大体理解した。

 

ヤバい。

 

オールマイト<殺す気

爆豪「当たらなきゃ死なねぇよ…!!」ピンッ

 

緑谷(あ。ピン抜け…)

 

 

 

 

 

ボオオオオッッ!!!

 

その瞬間巨大な爆発が起こった。

 

手榴弾とか…そんなレベルじゃない。

 

一瞬にしてビルを半壊させる程の……

 

緑谷「……っそだろ…」

 

直前でデカイのが来ると予測できた為何とか避けられたものの…

 

その衝撃は並の爆破の比ではなかった。

 

緑谷「こんなのありかよ……」

 

爆豪「個性使えよデク……」

 

爆豪「全力のテメェをねじ伏せる」ニタァ

 

かっちゃんのその笑顔は正に敵そのものだった。

 

彼はこちらに向かって嘲笑いながら…

 

再度僕に強い恐怖(トラウマ)を植え付け蘇らせた。

 

 

爆豪勝己。個性【爆破】

 

掌の汗腺からニトロの様なものを出し爆発させる!

 

溜まれば溜まる程その威力は増していく!!

 

 

 

 

 

 

飯田「さっきの…揺れは…」

 

飯田(一旦下の様子を見に行くか?万が一の事態があれば…)

 

飯田(いや…余計な事は考えるな…今は核を死守…)

 

飯田「核か…爆轟君はナチュラルに悪いが今回の訓練では的に射ている訳だ」

 

飯田「ふむ…ならば僕も敵に徹するべきなのだ」

 

飯田「これも飯田家の名に恥じぬ立派な人間となるための試練!」

 

飯田「なりきれ!ヒーローになる為に悪に染まれ!!」

 

飯田「俺は至極悪いゾォ~」

 

いかにもワルそうな顔になって敵を演じる飯田君。

 

下が激戦なだけにここは平和……

 

 

 

バァンッ!

 

 

 

という訳でもなかった。

 

突然部屋の中から銃撃音がした。

 

咄嗟にその方を向くと…

 

一台のラジコンカーがある物体を乗せて走っていた。

 

飯田「…」ブルルル…

 

飯田「何だ…ただのラジコンか…」

 

飯田「……ラジコン!?」

 

カッッ…

 

飯田「ぐおっ……」

 

ラジコンから眩い光が発せられた。

 

強烈な閃光が飯田君を襲う。

 

八百万(計画通り…!このまま核に1タッチ…)ダダッ…

 

好機と言わんばかりに八百万さんは核の方にむかって走り出す。

 

ラジコンもそれに乗せていた閃光手榴弾も全部彼女の作戦だったのだ。

 

飯田「っく…目が……見…え…」

 

八百万(貰っ…)

 

彼女の指が核のハリボテに触れる…

 

飯田「なんちゃってっ!」ガシッ

 

ダッ!

 

八百万「なっ…」

 

かと思いきや的確にキャッチし八百万さんから核を遠ざける飯田君。

 

どうやら直射光は防いだようだ。

 

八百万「貴方…どうやって」

 

飯田「八百万君か……爆豪君が離脱してしまった以上君が来る事は想定済みだ…」

 

飯田「何しろ彼の狙いは恐らく緑谷…」

 

飯田「貴様と奴のお陰でイレイザーヘッドの二の舞にならずに済んだよ」

 

八百万「……まさか貴方!!」

 

飯田「そう!!ついさっきかけていた眼鏡をサングラスに変えたんだ!こんな事もあろうかとなぁ!!」

 

飯田「さぁどうする!!ヒーロー!」

 

サングラスをかけている事により尚一層その微笑みの怖さを増していく。

 

…無論ヘルメットに隠れて実際には見えていないんだけどね。

 

じりじりと八百万さんも追い詰められていく。

 

八百万「……っ……」

 

 

 

 

 

 

緑谷「……っぶ…ねぇっ!」

 

かっちゃんの最大火力は凄まじいもので…

 

撃たれた方向を向くとそこにあった筈の建物の壁は階数関係無く跡形もなくふっとばされてる。

 

緑谷(…1つ上の真ん中フロアだぞ?)

 

緑谷(僕が左端に移動してなかったらどうなってた今頃…!!)

 

爆豪「ハハ…すげぇ…」

 

爆豪「なぁ?どうしたデク?」

 

爆豪「来いよ…まだ動けんだろ?」

 

緑谷(せめて確認だけでも…!)

 

かっちゃんの質問に応える余裕も時間も無かった。

 

兎に角核周辺にいるであろう2人の安否が気になっていたので直ぐに連絡を取る。

 

緑谷「八百万さん…そっちの状況は?」ピッ

 

これで更にかっちゃんの怒りを買う事になってしまう。

 

爆豪「おう無視かよスッゲェな」ビキビキ…

 

 

 

 

【地下モニタールーム】

 

麗日「…あ、あばばばば……!!」

 

一方地下で観察していた者達はビルの被害を目の当たりにしどよめき始めていた。

 

切島「お、おい先生!止めた方がいいってこれ!」

 

切島「あいつ相当クレイジーだ!緑谷殺しちまう!!」

 

オールマイト「いや…」

 

 

爆豪『当たらなきゃ死なねぇよ…!!』

 

 

オールマイト(妙な部分で冷静ではある…みみっちいというか…何というか…)

 

 

 

 

 

 

オールマイト<爆豪少年。次それ撃ったら強制終了で君らの負けとする

 

緑谷「!」

 

またもやオールマイトからの放送が入った。

 

やはり過度に強烈な技は減点対象だったか…

 

イエローカードを言い渡される。

 

オールマイト<屋内戦に於いて大規模な攻撃は守るべき牙城の損害を招く!

 

オールマイト<ヒーロー・敵関係なくそいつは愚策だ!大幅減点だからな!

 

爆豪「っあー…じゃあもう…」バッ…

 

かっちゃんは呆れながらも即座に態勢を整える。

 

両腕を思い切り上げ脚に力を入れる。

 

緑谷「窓側柱に…また……!」

 

爆豪「殴り合いだぁあっ!!」

 

ボオオッ!!

 

持ち上げた腕を勢いよく振り下ろし、地面に着く寸前に同時に爆発させる。

 

その反動を利用して僕の方に向かって非常に高いジャンプをしてきた。

 

一気にこちらとの距離を縮める。

 

緑谷「くっ…」

 

動揺を隠せず焦りながら構える。

 

次の攻撃のタイミングを伺いつつ両腕を前に突き出した。

 

緑谷「っりゃ…」グオッ

 

ボオッ!!

 

緑谷「まぶっちぃっ!」ヒリヒリ…

 

だがかっちゃんは触れる寸前で爆発を起こし上空に逃げる。

 

そして僕の背後に回り込み…

 

緑谷(やば…がら空

 

ボボオッ!!

 

緑谷「ぎっ…!」ズドオッ!!

 

再度【爆破】を起こし軌道を僕の方に直して強力な爆発を僕に浴びせる。

 

着地して間もなく攻撃態勢に入る。

 

休む暇も与えない。

 

爆豪「ホラ…テメェの大好きな右の大振り!!」ブンッ…

 

緑谷(避けな…)

 

ドゴッッ!

 

右腕に手刀が1発諸に入った。

 

身体中に激痛が走る。

 

緑谷「…った…!!」ビリッ…

 

だが怒涛の猛攻は終わらない。

 

右腕を掴み僕の体を持ち上げる。

 

爆豪「テメェは俺より……」ボボオッ…

 

すると空いている手を連続で何度も爆発させながら体を180°回転する。

 

その爆風によって出来た強い遠心力を利用し僕を床に思い切り叩きつけ、回し投げを決める。

 

ドッッ!

 

爆豪「下だ!!!」

 

緑谷「っは……!」

 

先程の痛みに加え床との衝突による衝撃は僕の身体にかなりのダメージを与えた。

 

 

 

 

 

【地下モニタールーム】

 

瀬呂「目眩しを兼ねた爆破で軌道変更…」

 

瀬呂「そして即座にもう1発」

 

障子「考えるタイプには見えないが意外と繊細だな」

 

蛙吹「慣性を殺しつつ有効打を加えるには左右の手の爆発力を微調整しなきゃならないしね」

 

峰田「才能マンか!才能マンヤダヤダ」

 

尾白「というかコレもうリンチだろ…!テープ巻きつければ捕らえた事になるのに…」

 

常闇「ヒーローの所業に非ず」

 

切島「緑谷もすげぇと思ったけどよ…戦闘能力においちゃ爆豪は間違いなく…」

 

切島「センスの塊だぜ…!」

 

 

 

 

 

 

緑谷「ひっ…」

 

爆豪「どうした…俺とやり合うんじゃなかったのか…?」

 

爆豪「ああん!?」

 

緑谷「っそ!」ダダッ…

 

さっきまでの威勢はどこに行ってしまったのやら…

 

僕は尻尾をまいて逃げる事しか出来なかった。

 

緑谷(無理だ!やっぱかっちゃんに勝てるだなんて馬鹿な事考えてたぞ自分!)

 

緑谷(身の程を弁えろ!!)ダダッ…

 

数秒前までの自分の強がりを相当後悔している。

 

僕みたいな底辺がかっちゃんみたいな優秀な奴とは…やっぱり張り合えない。

 

そんな結論に至る所だった。

 

爆豪「ハハッ。そうだ。そうさ…そうじゃなきゃなぁ?デク…」

 

疲労からか走るスピードが遅くなってしまい、段々かっちゃんに追いつかれてきた。

 

爆豪「テメェはいつもそうだった」

 

爆豪「地面に這いつくばって他人の害にしかならねぇ…」

 

爆豪「ただの()()()()()だったんだテメェは!!!」

 

緑谷「………!」

 

 

悟空『落ちこぼれだって努力すりゃエリートを超えられる事だってあるんだ』

 

 

その言葉を聞いて…ようやく思い出した。

 

そうだ。僕はただの落ちこぼれなんだ。道端に落ちているただの石ッコロ…

 

だから…君に勝ちたかったんじゃないか…爆豪勝己(エリート)に……!!!

 

 

緑谷「……っっ!!」キキィッッ

 

()()()()に辿り着くと走っていた脚を止めその場に留まった。

 

爆豪「…なんでぇ…止まった…!!」

 

緑谷「…」

 

爆豪「ガキの頃からずっと…そうやって!」

 

爆豪「俺を舐めてたんかテメェは!!?」

緑谷「違うよ」

 

爆豪「あ゛!?」

 

緑谷「君が…優秀なんだから……」

 

緑谷「君が凄い人だから…勝ちたいんじゃないか!!」

 

恐喝にビビって泣きそうになりながらもかっちゃんに反論する。

 

緑谷「勝って!!君を超えたいんじゃないかバカヤロォォオッッッ!!!」

 

爆豪「その面ヤメロやクソナードッッ!!!」

 

ブンッ!!

 

かっちゃんは僕の顔面めがけ右腕で襲いかかる。

 

僕はそれに動じずただ立ち尽くすだけだった。

 

 

 

 

切島「ちょ!先生!マジで!やばそうだって先生!!!」

 

オールマイト「……いや…まだ……っ!」

 

<ボオオッッ!!

 

切島「!!」

 

オールマイト「…!?」

 

麗日「ひっ……」

 

 

 

 

シュゥゥ……

 

爆豪「………テ……ンメ……ェッ!!」

 

頭から煙が立ち昇ってきた。

 

顔にはあざが出来、鼻は出血してしまってる。

 

だが……

 

そこまでの痛みじゃない…!!

 

緑谷「…へへ」ニッ…

 

僕はかっちゃんに余裕の笑みを見せる。

 

膨らみ上がって一気に萎んでしまった筈の自信がまた湧き上がってきた。

 

彼の頭にの攻撃を…爆破を正面から受け切ったのだ…!

 

爆豪「……こっ…んのっ!!!」

 

緑谷「…ありがと…かっちゃん」

 

緑谷「()()()()()()()()()

 

爆豪「……は」ブオッ

 

次の瞬間ボキッという衝撃音がかっちゃんの脳内に響いた。

 

身体は宙に浮き気が付けば天井を向いていたという。

 

 

 

 

 

 

八百万「く…」

 

飯田「ふはは…」

 

飯田(手荒な真似はしたくない…このまま角まで追い詰めて…)

 

ツー…

 

八百万「どうなさいました?緑谷さ…」ピッ

 

緑谷<そこから動くな八百万さん!!

 

八百万「は、はぁ?言っている意味が理解でき…」

 

ピシッ…

 

床に小さな亀裂が入る。

 

飯田 八百万「……え」

 

…ズドォォオッッッ!!

 

突如2人の間の地面からかっちゃんが4Fの天井を突き破って現れた。

 

爆豪「……かっ……」

 

飯田「ばっ…ば…爆豪君ーーー!?」

 

八百万「そんな…まさか…」

 

ダンッ

 

それに便乗するように僕も開いた穴から5Fへと飛び移る。

 

緑谷「八百万さん!!テープ!」

 

八百万「え…はい!!」ブンッ

 

そそくさに投げられたテープを右手でキャッチする。

 

緑谷「ありがと…」グッ…

 

飯田「な…何が起こった?爆豪君!おい!?」

 

緑谷「はああっ!!」ヒュッ!!

 

相手が焦っている隙に両手に持った2つのテープを同時に敵チームに巻きつける。

 

飯田「なっ!?」ギュッ

 

爆豪「っ…」ギュッ

 

かっちゃんと飯田君拘束完了だ。

 

オールマイト<……ヒーローチームWINNNNN!!!

 

 

 

 

 

 

その後皆と合流し僕達の演習の講評が行われた。

 

指摘されたのはやはり僕とかっちゃんの方で私怨丸出しの勝手な行為・建物への多大な損害がかなり問題視された。

 

核周辺の2人は特に目立って悪い点は無く、結果的に適切な行動だったと判断づけられた。

 

ただしかっちゃんがこの話を聞いたのは授業を終えた後の話だ。

 

あの時のアッパーカットが思ったよりもいい所に入ってしまったらしく暫く気絶していたのだ。

 

 

 

 

放課後念の為傷の手当をする為に保健室に向かった。

 

今はリカバリーガールに治癒してもらってる。

 

リカバリーガール「…こん位の傷ならすぐ治る筈さね」

 

緑谷「あ…ありがとうございます」

 

リカバリーガール「爆豪も大した怪我じゃ無いから後数分で目覚めるか…」

 

緑谷「そうですか…」

 

緑谷「…失礼しました」

 

ガラッ

 

退室しようと保健室のドアを開けた途端目の前に八百万さんが現れた。

 

八百万「…」

 

緑谷「あ…ど…ども」バタン…

 

静かにドアを閉めながらもぞもぞと挨拶する。

 

八百万「……あれ程無茶な行為はしないよう念を入れましたのに…」

 

八百万「どうしたらビルがあんな廃墟と化しますの!?」

 

緑谷「いや…これには…事情?がありまして…」

 

八百万「任務に私情挟むなって私それも貴方に忠告していましたわよね!?」

 

緑谷「し…私情じゃ無くて…なんだ…その…」

 

八百万「昨日も今日も!!貴方はそうやって自分から面倒な事態に発展させてしまっている!」

 

八百万「少しは反省の顔色を見せたらいかがですかね!?」グィー…

 

頰を強く引っ張りながら僕に喝を入れる。

 

緑谷「ぶ…ぶびばせんーー!」

 

八百万「……まぁ、その不条理で2回助けられている私が偉そうに言える立場ではありませんが」パッ

 

緑谷「痛っ!?」バチッ!

 

急に離さないで八百万さん。めっちゃ痛い!

 

八百万「今回は…私も少々早とちりしてしまった箇所が幾らかありました」

 

八百万「申し訳ございません」

 

緑谷「いやいやっ…む、むしろ飯田君と善戦してたっぽいし僕なんかよりは…」

 

八百万「……貴方の個性、便利ですわよね」

 

緑谷「え…」

 

八百万「人間の位置を特定できますし、多種多様な光線を撃てる…」

 

八百万「空中浮遊だってお手の物」

 

八百万「今日の演習…貴方の方が私よりもよっぽど活躍できていたと見受けられますが」スタスタ…

 

それだけ言うと彼女は1人教室に戻っていった。

 

緑谷「……」

 

緑谷(…なんで保健室の前で待ってたんだろ…)

 

緑谷「て…あっ!ちょっと待ってよ!」

 

素朴な疑問を抱えながら僕は彼女を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

爆豪「……」

 

 

 

 

 

『勝って!!君を超えたいんじゃないかバカヤロォォオッッッ!!!』

 

爆豪「っああ…!!!」ガバッ

 

意識を取り戻し慌ててベッドから跳ね起きる。

 

爆豪「はぁ…はぁ…」

 

爆豪「ここは…何処だ……!?」

 

爆豪(さっきまでビルん中いた…はず)

 

どうやら状況が把握出来ず混乱しているようだ。

 

リカバリーガール「お…どうやら起きたみたいだねぇ」

 

爆豪「どうして俺は…ここに!?」

 

リカバリーガール「何故も何も…あんたが気絶したんだからここに連れてきたんじゃないか」

 

爆豪「はぁ?そ…それって…つま…」

 

オールマイト「さっきの演習…ヒーローチームの勝利だ」

 

爆豪「………は…」

 

オールマイトに肩を両手で掴まれながらそう告げられた。

 

オールマイト「君もよく頑張っていたんだがな!ちと積極的に行動し過ぎだ!」

 

オールマイト「他の組の結果もビデオに収録してある。この後時間が合えば…」

 

かっちゃんの頭の中には何の言葉も入らなかった。

 

嘘としか思えなかった。思いたくなかった。

 

爆豪(俺…デクに攻撃入れようとしたら…いきなり…気失って…)

 

爆豪(デクのパンチ…分からなかった…?)

 

爆豪(そりゃ…つまりガチでやり合っても…俺 完 全 に デ ク に )

 

爆豪「っ…がぁぁっ!!」ダダッ…

 

オールマイト「とわわっ…ま、待て!爆豪少年!!」

 

ドアを乱暴に開閉してそのまま彼は保健室から飛び出していってしまった。

 

リカバリー「あらま」

 

オールマイト「……っかぁぁ…自尊心の塊……」

 

オールマイト「手懐けられん…」

 

オールマイト「せっかく犬と一緒にジョギングしながら連想ゲームして遊んであげたかったのに…」<ワンワン!

 

オールマイト「後サボテンも台無しだ…」

 

リカバリーガール「……この教師にしてこの生徒ありだねぇ」

 

オールマイト「ぬ?」

 

 

 

すぐに着替え教室に戻り荷物を持って下駄箱に走っていった。

 

その間誰とも会話を交えなかった。

 

それ程切羽詰まった状況だった。

 

爆豪「っの野郎……」

 

爆豪「……!!!」

 

 

緑谷『いいなぁかっちゃん個性かっこいいもんなぁ』

 

緑谷『僕も早く出ないかなぁ』

 

爆豪『デクがどんな個性でも俺にはいっしょーかなわねーっつーの!』

 

幼少時の記憶が蘇る。

 

今となっては思い出したくもない過去だ。

 

爆豪「クソ…クソ…!!」

 

バタン!!

 

下駄箱の扉を乱暴に閉めて急いで靴を履き替える。

 

一刻も早く帰ってすぐにでも頭を冷やしたかった。

 

外靴に履き終えた後出口に走り出した。

 

その時向こうに誰かがいる事に気がついた。

 

 

 

緑谷「……」

 

僕だ。あの後かっちゃんにどうしても話したい事があったので校門で待ち伏せしていた。

 

かっちゃんはとぼとぼと歩きゆっくりこちらに近づいてきた。

 

通りかかってきたので1回話しかけると…

 

緑谷「よ…ようかっちゃん…」

 

爆豪「あ?殺すぞ…」ギロッ

 

こちらを見るなりこれだ。ガン飛ばしてきやがった……

 

いつも通りで何よりではあったが。

 

緑谷「…いや…今の内に…話しときたい事があって…さ」

 

緑谷「昨日のアレとか…ホント個性でも何でも無くて……」

 

緑谷「この1年間…ずっと修行してきたんだ。毎日重りつけながら学校行ったし休日にはある人から技の伝授もしてもらった…」

 

緑谷「だから…決してかっちゃんを騙した訳じゃない…」

 

緑谷「……よ?」

 

爆豪「ああそうかいそうかい」

 

爆豪「わざわざそれだけを言いにここで待っていてくれたなんてご苦労なこった」

 

緑谷「それだけって…」

 

ガシッ

 

かっちゃんに襟を強く掴まれる。

 

爆豪「テメェは今日俺に勝った。それでいいよ、な?」

 

爆豪「そういうお世辞とかどうでもいいから、マジで」

 

爆豪「分かったなら…」

 

緑谷「お世辞じゃない!!!」

 

爆豪「………は?」

 

緑谷「僕は無個性だ…それに変わりはない」

 

緑谷「まだ教わった技とか使いこなせ切れてないし…結局その力も今日出し惜しみしちゃった…」

 

緑谷「だから今度は…いつか…」

 

緑谷「僕は…全力で…君を越えていく」

 

爆豪「………」

 

緑谷(……あれー…なんか言いたい事まとめられてない感が…)

 

バッ!

 

緑谷「うわっ…たっ!?」

 

かっちゃんは持っていた襟から手を離しながら僕を強く突き飛ばす。

 

爆豪「…うるせぇ」

 

緑谷「?」

 

爆豪「無個性?技?言っている意味が理解できねぇよ…」

 

爆豪「これ以上コケにしてどうするつもりだ?なぁ…」

 

爆豪「だから何なんだよっ!!」

 

顔を手で覆って隠すようにして話を続けた。

 

爆豪「氷の…後ポニーテールの奴…昨日の見て敵わねぇんじゃって思っちまった!」

 

爆豪「クソッ!!」

 

爆豪「おまけにオールマイトに慰めかけられちまったじゃねえかよ!」

 

爆豪「クソッ!クソが!!!」

 

爆豪「なぁ!!デク!」

 

爆豪「テメェもだ!!」

 

爆豪「こっからだ…!!俺は…!」

 

爆豪「こっから…いいか!?」

 

爆豪「俺はここで1()()()()()()()()!!!」

 

緑谷「……」

 

大声で叫んでいるかっちゃんのその顔は涙ぐんでいた。

 

こんな顔を僕は見た事が無い。

 

後にも先にもこれっきりだろう。

 

爆豪「俺に勝つなんて2度と無ぇからな!!!」

 

爆豪「クソが!!」

 

緑谷「……かっちゃん…」

 

かっちゃんの導火線に火がついた。

 

ようやく同じスタートラインに立てたんだ。

 

何より遠回しではあるものの…

 

初めて僕の実力を認めてもらえた事には喜びを感じずにはいられなかった。

 

僕のやる事は依然として変わらない。

 

でもかっちゃん…次も僕が勝つよ…絶対に…!

 

 

 

 

 

 

 

 

ダダダ…

 

オールマイト<おーい爆豪少年!!一緒に犬と散歩して連想ゲームしながらサボテンの鑑賞しないかい!?

 

緑谷 爆豪<<……は?

 

息よく声を合わせられたなオイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この数日後、僕らは知る事になる。

 

オールマイトが言っていた()()()()()()()を……

 

 

【神奈川県神野市某バー】

 

その男はある新聞のゴシップ記事を読んでいた。

 

そこに記されていた題名は…【オールマイト 雄英の教師に!!】

 

オールマイトに関する内容だった。

 

読み終えた新聞をテーブルに静かに置く。

 

「見たかコレ…教師だってさぁ」ポプ…

 

「なぁ……どうなると思う?」

 

 

 

 

「平和の象徴が敵に殺されたら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




須井化ですよ。(ごはんですよみてぇな言い方だなこれ)

第9話いかがでしたか?急ピッチで仕上げたからもしかすると文章滅茶苦茶かも…

前回に至ってはなんか名前が融合してたし……(訂正済)

すまっしゅ!ネタは入れたくて入れたんだ!後悔はしていない。

気になる人はジャンプ+をダウンロードしよー!(宣伝臭)

とりあえず戦闘描写が分かってくれりゃええですよ…うん。

次回は皆大好き委員長決めダァァァァ!!(ほのぼの〜!)

果たしてその座を奪るのは誰ダァァァァ!?


何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
1月27日(金)以内に第10話の投稿を予定しております。

お楽しみに!


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第10話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

初のヒーロー基礎学で対人戦闘訓練を行う事になった緑谷少年。

爆豪・飯田少年ペアに苦戦を強いられるも何とか勝利を収めた!

…え?今回は飯田少年の話?

前回最後に盛大な前振りしたのに!?

更に向こうへ!PlusUltra!!!


レポーター(♀)「……」

 

私は通りすがりの取材記者。

 

歳20代後半、身長180cm位、体重はひ・み・つ

 

バストは聞いたら○す

 

今日は一大スクープを狙って雄英高校にやって来たの。

 

ネタは勿論!言わずと知れたオールマイト就任!!!

 

今回彼に生でインタビューする予定なの〜

 

くぉぉ…長年(?)のレポーター魂が疼くぞコレぇぇ…

 

お、早速生徒達が来た♪授業受けてる子達にも聞いてみよっと…

 

 

Q.オールマイトの授業はどのような感じですか?

 

緑谷「あいたた…お腹が…すみません保険室に…」

 

レポーター「えー…」

 

 

 

Q.平和の象徴が教卓に立っている様子を聞かせて!

 

麗日「え、えーっと…」

 

麗日「筋骨隆々です!」

 

レポーター「な、成る程…」

 

 

 

Q.教師オールマイトについてどう思ってます?

 

飯田「最高峰の教育機関に自分は在籍しているという事実をことさら意識させられますね。威厳や風格はもちろんですが他にもユーモラスな部分など我々学生は常にその姿を拝見できるわけですからトップヒーローとは何をもってしてトップヒーローなのかを直に学べるまたとないk

レポーター「次次」

 

飯田<ハアッ☆

 

 

 

Q.オールマイト……

 

レポーター「あれ!?君【ヘドロ】の時の…」

 

爆豪「うっせ」

 

 

 

Q.オールマイトの…って小汚っ!

 

レポーター「なんですか貴方は!」

 

相澤「彼は今日非番です。授業の妨げになるんでお引き取りください」

 

「オールマイトに直接お話伺いたいのですが!」

「なんか見たことあるようなないような…」

「あなた小汚すぎませんか!」

「消え失せろ!二度とその面見せるな!」

 

相澤(見れなくしてやろうか)

 

レポーター「少しでいいのでオールマイトに…!!」

 

私は戻ろうとする小汚い教師を追いかけるが…

 

後ろに居た先輩に突然呼び止められる。

 

「ちょ…バカ!!」

 

ガゴゴゴッ!

 

その瞬間私の目の前にあったゲートが突如地面から現れた鉄の壁により封鎖されてしまう,

 

レポーター「ぅえっ!?ナニコレ!!」

 

「雄英バリアー。俺らはそう呼んでる」

 

レポーター「ダサッ!?何スかそれ!」

 

「学生証とかさ…通行許可IDを身につけていない輩が門を潜ろうとするとそこを閉鎖するってセキュリティ」

 

「校内の至るところにそのセンサーがあるらしーぜ」

 

レポーター「な、何それー!お高くとまっちゃって!」

 

レポーター「一言位くれてもいいのにさー!」

 

「ったく本当によー!2日も粘ってんのにウンともすんとも言わねぇぇ!」

 

正に鋼のような防衛セキュリティで八方塞りであった。

 

…まぁ薄々気づいてはいたんだけどさこの結果…

 

………だけどこの日は違った。

 

?「……」

 

ある事が起きて…事態は変わっていった。

 

思えばこの日を境に社会に変化が現れていたのかもしれない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体力テスト…対人戦闘訓練…様々な事を通してようやく学校にも慣れ始めた今日この頃…

 

って言ってもまだ3日目だけどね。

 

今日は…とある1人の男子の小さな物語を話そうか。

 

飯田「……?」

 

 

 

 

 

 

相澤「皆おはよう」

 

<オハヨウゴザイマス

 

朝。いつも通りSHRが始まった。

 

初日の反省もあってチャイムが鳴って2秒後には着席しているようになっていた。

 

流石雄英。迅速な行動を心がけさせているなぁ。

 

相澤先生が手に持っている資料は…どうやら昨日のヒーロー基礎学の成績表みたいだ。

 

早速その事について話し出す。

 

相澤「昨日の戦闘訓練お疲れ様」

 

相澤「Vと成績見させてもらった」

 

相澤「…ま、各々に指摘したい点とかは色々あった訳だが…」

 

相澤「俺から言いてえのは2つ」

 

相澤「爆豪」

 

爆豪「!」

 

相澤「もうガキみてぇな真似すんな。能力あるんだから」

 

まだかっちゃんは昨日の事引きずっていそうだ。

 

一応立ち直りはしたんだが…

 

小さくボソッと呟いて返事した。

 

爆豪「……分かってる」

 

相澤「…んで緑谷はまた買ったのか」

 

緑谷「!!」

 

相澤「いや…まぁ俺としては積極的な所はよろしいと見てはいるんだが…」

 

相澤「こうやって毎日喧嘩沙汰なのは如何なモンかと思うぞ」<俺が言えた台詞じゃねぇけど

 

相澤「実力行使も程々にな、実績あるんだからお前」

 

単身0Pに突っ込む。

 

初日に担任とタイマン。

 

翌日はクラスメイトに売られた喧嘩買う。

 

側から見れば危なっかしい行動しかしてないな僕…確かに。

 

個性の件もある…目立った行動は控えた方がいいな。

 

緑谷「はい…肝に銘じてます」

 

相澤「んで…今日の本題。時間無いし急で悪いと思ってるんだが…」

 

急な用…相澤先生…皆この組み合わせには頭痛を感じざるを得なかった。

 

峰田(なんだぁぁまた臨時テスト!?)

 

麗日(除籍除籍除籍除籍除籍…)ガタガタ…

 

 

 

…で肝心の内容はというと

 

相澤「学級委員長を決めてもらう」

 

A組「学校ぽいの来たぁぁあああっ!!!」

 

普通に平和的なやつでした。

 

相澤「いや〜初日に決める筈だったんだが体力測定に気取られてな」

 

相澤「という訳でやってくれる奴挙手」

 

切島「俺俺!!俺やるっす!!」

尾白「僕も立候補します!」

峰田「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!」

青山「僕の為にあるヤツ☆」

芦戸「リーダー!やるやる!!」

 

緑谷「皆すっご」スッ…

 

クラスの大半が挙手をしていた。

 

普通科とかなら皆面倒くさがってこんな事態は起きないがヒーロー科では【集団を導く】っていうトップヒーローの素地を鍛えられる役なんだ。

 

僕らにとってはかなり重要な役割だ。

 

かく言う僕も手挙げてるし。

 

だが自己主張の嵐でざわついててこれじゃ話が一向に進まんぞ…

 

飯田「静粛にしたまえ!!!」

 

ナイスツッコミ飯田君。

 

飯田「多をけん引する責任重大な仕事だぞ…!」

 

飯田「【やりたい者】がやれるようなモノでは無いだろう!!」

 

飯田「周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら…」

 

飯田「これは投票で決めるべき議案!!!」プルプル…

 

緑谷「…」

 

とても正論でいい感じにまとめられてるけどさ……

 

手挙げてたら説得力無いよ飯田君…

 

蛙吹「日も浅いのに信頼もクソも無いわ飯田ちゃん」

 

切島「皆自分に入れるに決まってらぁ!!」

 

ぞろぞろと反論が立ち並んでいく。

 

だが飯田君も意地を見せる。

 

飯田「だからこそだ!この状況下で複数票を獲った者こそが真に相応しい人間という事にならないか?」

 

蛙吹「2票が最大で他18人が反対意見なのにそれは民主主義に則っていると言えるのかしら…」

 

A組「…………」

 

痛い所突くなぁ蛙吹さんは。

 

相澤「何でも良いけど時間厳守だからな」モゾモゾ…

 

相澤先生は寝袋に入らないでください。

 

 

 

 

 

結局話し合いの結果多数決となった。

 

クラスで投票を行った所やはり自分に挙げる人が多数派だった。

 

ただし、2票入っていた人が2人存在していた。

 

飯田「俺が…2票」

 

八百万「私もありますわね」

 

切島「なんだかんだ言って昨日も好評だったからなぁ…」

 

障子「大体読めてはいたがな」

 

緑谷「…?」

 

瀬呂「どした?緑谷」

 

緑谷「いや僕の所に1票あったから…」

 

瀬呂「え?あれお前入れたんじゃねえの?」

 

麗日(えーーデク君推薦しちゃったん?)

 

麗日(さっき手挙げてたのに…)

 

爆豪「」ギリギリギリギリ…

 

歯ぎしり立てながら納得していない者約1名。

 

麗日(爆豪君にバレなかったからええか)

 

飯田「だがこれでは同票だから決められないな」

 

葉隠「2人で決選投票だねー!」

 

相澤「zzz」

 

寝ないで下さい相澤先生。

 

 

そして2度の多数決の結果…

 

飯田君 11票

八百万さん 9票

 

よって飯田君が学級委員長を務める事になった。

 

飯田「い…いざやるとなると務まるか不安だな…」

 

麗日「ツトマル!!」

 

切島「メガネだしザ・委員長って感じだしな!!」

 

それは理由としてざっくりし過ぎだと思うんだ。

 

緑谷「頑張りなよ飯田君!」

 

飯田「…ああ」

 

学級委員になった2人をクラス総出の盛大な拍手で迎える。

 

ようやくその音で相澤先生も起きたようだ。

 

寝袋からモゾモゾと出てくる。

 

相澤「……む…じゃあ委員長飯田の副八百万だな…書いておく」

 

飯田「よろしくお願いします!」

 

八百万「……」

 

 

 

 

 

お昼休み…メシ処(食堂)

 

麗日「お米が…うまい!」

 

この時間帯は人混みが凄い。

 

ヒーロー科は勿論、サポート科経営科…様々な人が行き交う場となっている。

 

昼飯時には食堂全体に賑やかな会話が響き渡る。

 

緑谷「」ガツガツ…

 

麗日「デク君がっつくねぇ」

 

緑谷「腹が減っては戦はできないからね」

 

緑谷「それにしても良かったじゃないか飯田君」

 

緑谷「委員長になれて」

 

飯田君の方を振り向くと…

 

飯田「……」ズゥゥン

 

緑谷「……ふぁ?」

 

予想とは裏腹にすっごい落ち込んでいるよ委員長。

 

自分の所に票を入れた事が未だに気掛かりで仕方ないらしい。

 

元々多数決の発案者だったから思い詰めるのも無理はない。

 

飯田「やめてくれ…自ら言っておきながら自分に入れた僕をこれ以上責めるのはやめてくれ」

 

緑谷「いっいや責めてないし責めるつもりもないんだからね!?」

 

緑谷「別にいいと思うよ?八百万さんだって自分に入れていたかもしれないし」

 

緑谷「少なくとも1票は誰かが飯田君を推薦した事には変わりないし」モグモグ…

 

緑谷「どんな時でも冷静に分析して判断するのに長けているから僕は適役だと思うけどな…」

 

飯田「そ、そうか…?」

 

麗日(あー…デク君飯田君に入れたんだ…)

 

麗日(…あれ?)

 

麗日「そういえば飯田君…今僕って…」

 

飯田「?」

 

麗日「もしかして…坊ちゃん?」

 

緑谷「坊!?」

 

飯田「……そう言われるのが嫌で一人称を変えていたんだが…」

 

 

 

飯田君の家系は代々ヒーローを継いでいて、ターボヒーロー【インゲニウム】の実の弟がこの飯田天哉その人である。

 

インゲニウムは東京の事務所に65人もの相棒を雇っている大人気ヒーローだ。

 

規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー!

 

 

 

飯田「…そんな兄に憧れ俺はヒーローを目指した」

 

麗日「おおおー凄い経緯ー」

 

飯田「しかし……」

 

何か言いたげな顔だったが一旦黙り込んでまた喋り出す。

 

飯田「いや、何でもない」

 

何かを見透かしたのか微笑みながらそう言った。

 

麗日「む。飯田君もしかして初めて笑ったんじゃない!?今!」

 

飯田「そうだったか?笑うぞ俺は!」

 

緑谷「……」ガツガツ…

 

緑谷(僕にとってのオールマイトが…)

 

緑谷(飯田君にはインゲニウムなんだね)

 

麗日「デク君顔リスみたいになっとる」

 

緑谷「ぼぶ?」

 

<ハハハハ…

 

 

たわいもない会話をしながらご飯を頬張る。

 

いつの間にか学校での密かな楽しみの1つとなっていた。

 

中学校の時は1人で過ごす時が殆どだったので尚更嬉しかったんだ。

 

クラスの皆ともすぐに馴染めたし……

 

本当に雄英に受かって良かったなぁって実感する。

 

 

緑谷(…悟空さん今頃何してるんだろーな)ガツガツ

 

緑谷(山奥で修行でもしてるのかな?若しくはゴロゴロ…)ガツガツ…

 

緑谷(…)ガツガツ…

 

 

 

 

だがその休息は突然終わりを告げられる。

 

 

ウウーー…

 

緑谷「ぶ?」

 

校舎全域に警報サイレンが鳴り響く。

 

異常事態が発生した様だ。

 

それに伴い次の様な放送が流れた。

 

<セキュリティ3が突破されました

 

<生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください

 

<繰り返します……

 

飯田「セキュリティ3!?」

 

麗日「3!?ランク分けされてるの!?」

 

緑谷「あの…これってつまりどういう…」

 

先輩方にセキュリティ3の概要を聞いてみると…

 

「校舎内に誰かが侵入してきたって事!」

 

「3年間でこんなん初めてだ!君らも早く!!」

 

緑谷「マジかよ……」

 

たった3分で食堂内は大混乱。

 

先程も触れた通り何百もの人間が通行するので渋滞発生は避けられない。

 

大勢の生徒が慌てふためき出口へ大行列で全速前進する。

 

麗日「痛たた!押さっ…」

 

緑谷「ぐおお…」ギュゥゥ…

 

飯田「流石最高峰!危機への対応が迅速だ!!」

 

迅速過ぎてたった今パニクり中です。

 

あっという間に通路に人だかりが出来てしまい、おしくらまんじゅう的な状況に…

 

周りの人に圧縮されて今にも押し潰されそうだ…

 

緑谷「ってどわぁぁぁ!しまったぁぁあ!!!」

 

呑気に解説している間に2人とはぐれてしまった!

 

飯田君!麗日さーん!!

 

緑谷(むぐぅぅ…かくなる上は…使いたくはなかったが…)

 

 

麗日「デク君どこー!?」

 

飯田「これでは避難もままならん!一体何が侵入してきて…」

 

飯田「はべぶ!?」ベタッ!!

 

麗日「飯田君!?」

 

人混みに押されて窓とぶつかってしまった。

 

見事に生徒達に押し込まれてしまう。

 

飯田「だ…大丈夫だ麗あた!?」ギュゥゥ…

 

麗日「大丈夫じゃなさそうだよね!?」

 

飯田「くっ……だがこれで外の様子も…」

 

飯田「!?」

 

 

 

飯田君の目に真っ先に映った物は…先程の報道陣だ。

 

何かの拍子にゲートが開いてしまったのか…

 

学校内へと侵入してしまっている。

 

何とか追っ払おうと職員達は奮闘するも…

 

 

「オールマイト出してくださいよ!いるんでしょう!?」パシャパシャ…

 

「一言コメント頂いたら帰りますから!」パシャパシャ…

 

カメラで連写しながら問答無用に質問と要求を繰り返す。

 

流石にこの人数では教師達も対応しきれない。

 

マイク「だから非番だっての!」

 

相澤「一言録ったら二言欲しがるのがあんたらだろ…」

 

記者達を説得しながらマイクが相澤先生に耳打ちする。

 

マイク<なぁもう不法侵入だよこれ

 

マイク<敵だよ敵ぶっ飛ばしゃ駄目かな

 

相澤<やめとけマイク。ある事ない事書かれるぞ

 

相澤<警察来るまで待つしかない

 

マイク<ゑゑゑゑゑゑ!!

 

 

 

 

飯田(何かと思えばマスコミか!迷惑な事この上ない!!)

 

飯田「み…皆さっ…落ちつ」

 

飯田「いぶ!?」バンッ

 

「人倒れたって!」

 

「押すな!押すなって!!」

 

逃げる生徒達が固まって窓から身動きが取れなくなってしまう。

 

飯田(先生方はこの対処に追われているのか?)

 

飯田(この場で大丈夫な事を知っている者は!?いや…気付いていればこんなパニックになっていない!)

 

飯田(どうする…どうする……!!)

 

この事態の打開策を必死に練り続ける。

 

余計な事はせずまずこの行列に乗って食堂を出るべきか…

 

或いは大声で叫んで校内の安全を知らせるべきなのか…

 

考えが右往左往していた。

 

飯田(こんな時…緑谷君なら……)

 

飯田(兄ならば…!!)

 

麗日「飯っ…田君!!」

 

飯田「!う…麗日君!」

 

流れに逆らって飯田君の所へ近づこうとする麗日さん。

 

だが後一歩という所で飯田君には届かない。

 

飯田(…そうだ!非常口!)

 

飯田(麗日君の個性で浮いて彼処に移動すれば…)

 

飯田(目立つ場所で尚且つ確実性がある!)

 

飯田「麗日っ…君!こっちに手を…!」

 

麗日さんに向かって手を伸ばしていく。

 

麗日さんも同様に手を出すがまだ届かない。

 

後2、3cmという所だった。

 

麗日「うっ…うー……!」

 

飯田「後…すこ……」

 

ドッ!

 

飯田「うわっ!!」

 

また人混みが前に進んでしまい距離が離れてしまう。

 

依然として移動できずに窓にへばりついたままとなってしまう。

 

飯田(くそっ!まずい…これは……!!)

 

 

 

 

その時突如頭の中にある人物の声が流れ出す。

 

《皆さん!落ち着いてっ!!》

 

飯田「え?」

 

麗日「これって…」

 

《侵入したのはただのマスコミです!何もパニックになる事はありません!》

 

《ここは最高峰の人間に相応しい対応をしましょう!》

 

「……」

 

ついさっきまで騒いでいた生徒達が一瞬にして静まりかえった。

 

「なぁおい今のって…」

 

「幻聴…?」

 

「おい…あれ見ろ!」

 

1人の生徒が窓を指差すと皆が皆外の状況をその目で確かめる。

 

「ほ、本当だ!報道陣じゃねえか!」

 

「何だ…ビビらせんじゃねぇよ……」

 

現状把握をし、事無きを得たと分かり皆は一安心した。

 

慌てて避難していた人達は其々さっきまで居た場所へと戻っていく。

 

飯田「……な…何とかなった…な」

 

麗日「そ…そうだね」

 

緑谷「う…麗…麗日さん…飯田君…」

 

飯田「緑谷君!大丈夫だったか!?」

 

緑谷「うー…多分うん」

 

麗日「デ、デク君…」

 

緑谷「?」

 

麗日「()()()()…何したの?」

 

麗日「皆聞こえてたっぽいけど…」

 

緑谷「…ああ!あれ?」

 

 

 

 

ここまで言われたら多分皆気付いただろうけど…

 

先程起こった現象のタネは僕のテレパシー。

 

飯田君同様にマスコミの事を知った僕は空かさずその場に居た人達の頭に僕の声を流したんだ。

 

念の為悟空さんから教わっておいて良かった……

 

 

 

 

 

 

慌ただしい昼休みがようやく終わり午後の授業。

 

今日はHRだから気を楽にして授業を受けられる……

 

筈だった。

 

 

飯田「えー…では他の委員の執り決めを行いたいと思います」

 

飯田「その前に…」

 

飯田君はこちらをチラッと覗きながら話し始めた。

 

何が何だか訳も分からず話を聞いていると…

 

彼の口から思わぬ言葉が発せられる。

 

飯田「委員長は緑谷君の方が相応しいと思う」

 

緑谷「え」

 

葉隠「えええ!?飯田君あんなに委員長やりたがってたじゃん!」

 

切島「まだ司会1、2回しかやってねぇのに…」

 

飯田「…さっきのトラブルを見れば一目瞭然」

 

飯田「たかがクラスメイト数人さえも守れない俺にやる資格は無い」

 

緑谷「でも…」

 

飯田「それに人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う」

 

飯田「俺と違って実技入試の構造に気付いていた上手の彼が就任するのが正しい」

 

飯田「…駄目か?」

 

これは歯剥きとかそういうのじゃなくて彼の誠意だ。

 

それを踏み躙る訳にもいかない…か。

 

元々僕もやりたかったし…

 

緑谷「…委員長からのご指名だ」

 

緑谷「断るわけにもいかないじゃないか」

 

瀬呂「いーんじゃね?緑谷派手でカッコつくし」

 

麗日「わ、私も別に構いません!」

 

相澤「何でもいいから早くしろ時間が勿体無い」ギロッ

 

緑谷 飯田「ひぃぃっ!?」

 

寝袋の中から相澤先生が睨んできた。

 

起きてたのかあんた…

 

爆豪「」ギリギリギリギリ…

 

賛否両論あったが結局僕が委員長になる形で収まった。

 

高校生活始まって3日経たずでどデカイ役を買って出てしまった。

 

果たして僕にこんな職務が務まるのか…?

 

別世界では飯田君が委員長になるとかならないとか…

 

その話はまた今度…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「…という訳で今回のHRの議題は以上となります」

 

緑谷「相澤先生、何か諸連絡は?」

 

相澤「無い。解散」

 

A組(締め雑…)

 

HRも終わり今日1日の授業が全て終了した。

 

帰りの支度をする者、部活の見学に行く者…

 

クラスの人等が取る行動は様々だった。

 

相澤「おい緑谷、八百万」

 

身支度を済ますと相澤先生から声を掛けられる。

 

何やら山積みの資料を両手に抱えている。

 

相澤「これ掲示板に貼っとけ」

 

緑谷「あっ…掲示物ですか全部…これ」

 

緑谷(軽く30はあるぞおい…)

 

相澤「重要なモンばっかりだ。しっかりやれよ学級委員」

 

乱雑に教卓にプリントをドサッと置くとそのまま教室から立ち去っていった。

 

緑谷「っかぁ……こりゃとんだ仕事に駆り出されたな…」

 

八百万「常に下学上達。何事も一意専心に励まねばトップヒーローになどなれませんわ」

 

八百万「それとも…そんなに嫌ならば今すぐ辞めたら如何でしょう?」

 

緑谷「っい…いや別にそういうつもりで言った訳じゃ…」

 

八百万「なら…さっさと貼り出す。時間は有限ですわよ」

 

無愛想にそう言うと彼女は先程の資料を手に取り壁に貼り始めた。

 

その凛々しい姿はまさにリーダーそのものだった。

 

緑谷(真面目でしっかり者の優等生…か)

 

緑谷(僕と対照的だな)

 

緑谷「…っと僕もやらないとな」

 

 

 

 

 

 

【雄英高校 セキュリティゲート前】

 

校長「…うーむ…これは…」

 

リカバリーガール「こりゃまた派手にやられたねぇ」

 

マイク「というか……ただのマスコミに()()()()出来んの?」

 

相澤「できる訳ないだろ…個性使わん限りまず」

 

 

 

授業終了後…先生達は雄英バリアーの様子を見に来ていた。

 

マスコミが侵入した原因を探る為だ。

 

不具合が生じたのか?はたまた通行許可IDを持っている者が居たのか?

 

否……

 

 

 

 

職員達が目にしたのは…

 

 

粉々に破壊されたゲートの残骸だった。

 

 

校長「唆した者がいるね」

 

校長「邪な者が入り込んだか…」

 

校長「或いは宣戦布告の腹づもりか…」

 

校長「……いずれにせよ悪い予感しかしないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、八百万邸…

 

 

 

シャー…

 

八百万「……」

 

八百万「っ…」ドッ

 

八百万「はぁ…はぁ…」

 

広々とした浴場で八百万さんは1人入浴していた。

 

今日1日の疲れを取る為にシャワーを浴びているのだ。

 

だが疲労は一向に抜けず寧ろ水に当たる時間が長くなるにつれて身体が重くなる。

 

頭痛に悩まされ壁に手をやり身体を支える程までとなっていた。

 

八百万「…駄目……」

 

八百万「あの男……!」

 

八百万「何かにつけて毎度私の前に立ち塞がる…!」

 

八百万「体力測定も…対人戦闘訓練も…今日だって……!」

 

八百万「教室に戻れば皆が皆口を揃えて緑谷緑谷と言葉にする!」

 

八百万「しかも学級委員の時なんか…指名?」

 

八百万「私の事を何だと思ってるのかしら…!?」

 

八百万「…あの方を見ていると調子が狂う!」ドンッ

 

怒りの衝動に耐え切れず壁を強く叩いてしまう。

 

同時にギリッと鋭く歯ぎしりが起こる。

 

普段感情を表に出さない彼女だが今日は違うようだ。

 

僕に対する敵対心が剥き出しとなっていた。

 

八百万「くっ…これ以上ここにいると気絶してしまいそう…」

 

八百万「倒れる前に出てしまいましょう」

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻ると執事の爺が彼女を温かく迎えてくれた。

 

椅子に座ると執事が静かにティーカップを机の上に置く。

 

執事「……お嬢様、ご所望通りの紅茶でございます」

 

八百万「ありがとう…」カチャ…

 

八百万「…っ」ズズ…

 

八百万さんはカップを顔に近づけゆっくりと紅茶を口にする。

 

疲労困憊の彼女の身体に染み渡り、温める。

 

心安らぐ一口だった。

 

八百万「…やはり、貴方の紅茶を飲むと落ち着くわ」

 

執事「左様ですか…嬉しき限りでございます」

 

執事「して…お嬢様何か考え事をなさってはいませんか?」

 

八百万「考え事…というかまぁちょっとした悩みよ」

 

執事「悩みで…ございますか」

 

八百万「…」ズズ…

 

執事「むー…

 

執事は少し黙って考え込むと1つの答えにたどり着く。

 

執事「……あ!もしや恋ばなでは!?」

 

八百万「」ププー!

 

余りにも突然な出来事だったので八百万さんは口に含んでいた液体を一気に吹き出してしまった。

 

どストレートに突っ込んでいくなぁこのおじいさん…

 

飲んでいた紅茶が器官に入り咳き込んでしまう。

 

八百万「げっほげほっ!」

 

執事「い…如何なさいました!?お嬢様!」

 

八百万「誰のせいよ!!」

 

執事「………」

 

執事「私…でございますか?」

 

八百万「貴方以外にいる訳ないでしょ!!」

 

八百万「全く…私にとって恋色沙汰なんて断じてあり得ませんから…!」

 

八百万「変な事言わないでください」

 

執事「こ、これは誠ながら申し訳ございません…」

 

八百万「……あの、1つ聞きたいのですけど」

 

執事「え?」

 

八百万「どうしていきなりその話題を出したのですか?」

 

執事「……え…ええと…」

 

何か隠し事があるのか…

 

もじもじしながら執事はこう答えた。

 

執事「お嬢様の服を回収して臭いの確認をしていた所…浴場から何やら大きな声がしたのでドアをほんの少し開けて中の様子を…」

 

八百万「……」

 

執事「……あ」

 

八百万さんは無言で何かを創造し始めた。

 

あ、マシンガン。

 

八百万「何さらっと覗いているのよ爺やぁぁあっっ!!!」ガシャッ

 

執事「し、失礼致しましたお嬢様ぁぁっっ!?」ズドドッ

 

その日八百万邸から多大なる銃撃音が鳴り止まなかったという。

 

今日も八百万家は平和でした。

 

 

 

 

 

 

 




須井化です…はい…

ようやく二桁突入したよ…
いやはや長かった長かったw

第10話いかがでしたか?

原作では緑谷→飯田でしたが今回は飯田→緑谷でデク君が委員長に返り咲いてます。

(八百万との)絡みが多くなるよ!やったね出久ちゃん!

個人的に偶に出るポニーのレポーターさんは好み!!

これまたびっくり原作のコマで背を反らしている時胸囲が平らなんスよ……

……え、いや…なんだもないっスうん…

次回はUSJに大突入ノ巻〜心して待てぃ!

皆大好き13号(人造人間13号<呼んだ?

ブ<オヨビデナイ!!(ボーピー
13<ヌアアア!!

※人造人間13号とここでいう13号は別々の人物です。くれぐれも間違えないように!!




…皆大好き13号も出てくるよぃ…




何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
1月30日(月)以内に第11話の投稿を予定しております。

お楽しみに!


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ChapterⅠ-episode3 USJ強襲編
第11話


前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

ひょんな事から学級委員長に就く事になった緑谷少年!

果たして彼はうまくクラスをまとめ上げる事が出来るのか?

?なんで前回クラスの皆(飯田・麗日除く)がテレパシーを不思議がらなかったかって?

しゅ…主人公補正に決まってるだろ言わせんな恥ずかしい!!

更に向こうへ!PlusUltra!!!



雄英高校に入学してから数日経った。

 

マスコミ騒動から目立った事件も起こらずそれなりに平和な生活を送っていた。

 

だがこの日を折に…

 

僕の身の周りの環境が少しずつ変化していった。

 

 

 

 

AM 7:35 水曜日

 

とあるビル街にて…

 

 

 

 

 

「いいかぁ俺を追うなよヒーロー共!!」

 

「追ってきたらこの裕福な家族ぶっ壊してやるからな!」

 

常人よりも一回りも二回りもでかい巨人が出現した。

 

連続強盗殺人犯【僧帽ヘッドギア】だ。

 

奴は3人の家族を人質にとり強盗を図っていたのだ。

 

巨大な腕でその一家を軽々と抱え今にも圧死させようとしている所であった。

 

この状況には流石のヒーロー達も応戦出来ず言う事を聞く他なかった…

 

Mtレディ「姑息な手を…!」

 

シンリンカムイ「単純な戦闘力も只者ではないぞ…!」

 

子供「うあああっ!助けてぇえっ!」

 

恐ろしい敵に怯え号泣してしまう女の子。

 

その子の両親も死の危機を目前にして冷静でいられる筈がなかった。

 

必死にヒーローに助けを求める事位しか彼らには出来なかった。

 

父「ヒーロー!お願いだ…娘だけでもっ!!」

 

ヘッドギアはそんな事御構い無しに少しずつヒーロー達との距離を離していく。

 

殺ろうと思えば1秒足らずで人質の命を容易に奪える状況だった。

 

迂闊に手出しは出来ず棒立ちのまま敵が逃げるのを待つしかなかった。

 

ヘッドギア「このまま逃げおおせたらあ!!」

 

シンリンカムイ「くっ…」

 

敵が勝利を確信した正にその時だった。

 

 

 

「もう大丈夫だファミリー!!!」

 

 

ある1人の男が駆けつけた。

 

勿論……

 

 

 

MISSORI(ミズーリー)……」

 

ゴオッ…

 

ヘッドギア「へっ?」

 

SMASH(スマッシュ)!!!」ガッ!!

 

ヘッドギア「ぐは……お……」

 

ドサッ

 

Mtレディ「あ、あれは…」

 

 

 

オールマイト「私が通勤がてら来た!!!」

 

誰もが知るあのトップヒーロー【オールマイト】だ。

 

敵の後方から猛ダッシュで接近し後頭部に強烈な手刀を浴びせる。必殺技超カッコいー!

 

かくしてヘッドギアは一撃粉砕された…ワンパン○ンとはこれいかに…

 

まぁただ…

 

シンリンカムイ「手助けしていただくのは結構なのだが…」

 

Mtレディ「私達の立場どうなんの…これ」

 

働き過ぎると失業してしまう人も出てくるので程々にねオールマイト。

 

警察官「ご協力感謝いたします!オールマイト!」

 

敵退治に尽力してくれたオールマイトに敬礼する警察一同。

 

それに応えるようにジェスチャーしながら…

 

オールマイト「力になれて光栄だ!」

 

オールマイト「んじゃ遅刻するとアレなんでおいとませていただくよ!」

 

そう言ってその場を去ろうとする彼にまたもや誰かの悲鳴が耳に入ってくる。

 

<誰かー轢き逃げよー!

 

オールマイト「ンンー…」

 

オールマイト「遅刻するとやばいんだけど……」グッ…

 

オールマイト「ナッーーーー!!!」ゴォウッ!

 

地面を強く踏み蹴り空高く飛び上がる。

 

困り果てながらも空飛んで助けに行くあたり我らが平和の象徴って感じだよね。

 

 

 

 

 

 

だが彼には【通勤】以外の問題も抱えていた。

 

オールマイト「…」

 

オールマイト(以前よりも速度が落ちた…また衰えたか…)

 

オールマイト(まだ()()を行ってないとは言えやはり後遺症はデカかったか…)

 

オールマイト(……これは急を要するようなモノではない…いや寧ろ焦って決めるべきではない)

 

オールマイト(だが…そろそろ決定させて接触だけでもせねば……)

 

オールマイト(……緑谷出久…か…或いは………)

 

 

 

 

 

PM0:00

 

所変わって僕の自宅にて…

 

悟空「………」

 

悟空「ヒマだぁぁ…」

 

最近出番が少ないこの男…

 

僕の師匠の孫悟空さんだ。

 

僕につけていた稽古も終わってしまいやる事が無い彼はただただ途方に暮れていた。

 

悟空「……修行してもベジータとかがいねぇから組手できねぇし…」

 

悟空「緑谷の母ちゃんに話しかけようとも思ったけど家事とかで忙しそうだしなぁ…」

 

悟空「…すっげぇ暇だぁ…」

 

なんなら働けと一体読者の何割がツッコミを入れたのだろうか…

 

悟空「……思えばチチは悟飯とか悟天の時とかもずうっとやり続けてたんか…」

 

悟空「申し訳なぇな……今会えねぇけど」

 

 

 

彼は2度死んでいる。

 

1度目は修行の件も兼ねて1年後に生き返らせてもらった。

 

まぁこれでも長い期間だと思うけど…(というか生き返る事自体信じられない)

 

2度目の時もすぐに復活出来る状態だったんだが悟空さんは一旦拒んだんだ。

 

自分がいると地球に敵がやってくる。だからあの世にとどまるって…

 

何とも自分勝手な旦那さん…だが100%否定しきれないという所があれだが。

 

そんなこんなで7年間ずっと生き返らずに死んだままでいたらしい。

 

奥さんもさぞや悲しんだだろう。愛する人がこの世から永遠に消える事を自ら望んだんだから…

 

……何やかんやあってその後成り行きでこの世に帰って来たみたいだけど…

 

生死ってこんな軽いものなのか

 

 

 

勿論、この世界でそんなホイホイ復活出来るような便利な()()()()は存在しないが。

 

あるんならとっくに……

 

いや…この話はやめておこう。気分が悪くなる。

 

……っと少し脱線したね。

 

 

 

悟空「……フリーザとかセルとか居ねぇし…それなりに平和だからいいんかな?」

 

悟空「久々に昼寝でもすっか……」

 

悟空(……)

 

悟空(まさか……な)

 

悟空(でぇじょうぶでぇじょうぶ…そん位で死ぬ様な柔な修行は

悟空「zzz」

 

台詞言い切ってから寝ろよ。

 

……この人も…ある1つの悩みを抱えていた。

 

今回直接関わるのはこっちの方の問題だ。

 

 

 

 

 

 

 

PM0:50

 

雄英高校1-Aホームルーム…

 

今日の5・6時間目は皆お待ちかねのヒーロー基礎学!

 

何やら今回はちょっと特別らしい。

 

 

相澤「えー本日行う内容としてまず…オールマイト・俺…そしてもう1人の3人体制で授業を進める」

 

緑谷「もう1人…?しかも3って」

 

瀬呂「へいへーい!何するんですか?」

 

相澤「災害水難なんでもござれ」

 

相澤「人命救助(レスキュー)訓練だ!」

 

またもやRESCUEと書かれたカードをバンッと僕らに突き出しながら説明していく。

 

緑谷「レスキュー…」

 

瀬呂「っわぉ…これまた大変そうなの来たな」

 

芦戸「ねー」

 

切島「バカおめー!これこそヒーローの本分だぜ!?」

 

切島「鳴るぜ!!腕が!」

 

蛙吹「水難なら私の独壇場」<ケロケロ…

 

今回は校舎とは少し離れた場所にある大きな訓練場で行うらしい。

 

特別授業な事もあり皆期待を膨らませる。

 

まぁ勿論ワイワイ雑談を挟めば…

 

相澤「おいまだ途中」ギロッ

 

A組「」

 

こうなる(睨まれる)

 

相澤「今回のコスチュームの有無は各自の自由でいい」

 

相澤「場合によっちゃ活動に制限がかかるモノも出てくるだろ」

 

相澤「はい準備始めて。校庭集合バスもう待ってる」

 

相澤「7分以内にね」

 

A組「はぃぃぃ急げぇぇえっ!!」

 

タイムリミットを告げられるとそそくさに教室から駆け出す生徒達。

 

僕特にやべぇぇぇえええっ!!!

 

緑谷(救助訓練…)

 

緑谷(憧れの…最高のヒーローに近づく為の訓練だ!)

 

緑谷(頑張るぞ!!)

 

そう意気込みながら更衣室に走っていく。

 

……廊下は走っち(ry

 

 

 

 

 

 

 

着替え終わり僕等はすぐにバスが停まっているという校庭に集合した。

 

なんだかんだ言って皆コスチューム着用してるなぁ

 

ん?僕はどうなんだって?

 

麗日「あれ…デク君体操服なんだ」

 

緑谷「この間の戦闘訓練でボロボロんなっちゃってね」<たはは

 

緑谷「修復待ち」

 

コスチュームが壊れてもサポート会社が修繕してくれるから安心。

 

まぁ所によっちゃ買い直しの部分も出てくるけどね。

 

ベルトやヘルメット(首部分…ヘルメットって言うのか?)は体操服に装着してる。

 

バスに乗る前に飯田君がとある提案をして来た。

 

飯田「委員長!バス内での混乱を防ぐ為に番号順で2列に並ぶのはどうだろうか!?」

 

緑谷「……」

 

八百万「貴方でしょ」

 

あ、そうだ。僕委員長だったな。

 

緑谷「そ、そうだね…そうしよっか」

 

飯田「ほら皆!委員長の指示に従って並ぶんだ!!」

 

学級委員よりも積極的に指揮をとる飯田君

 

…委員長してるなぁ

 

 

 

 

 

で生憎三方シートだったバスにぞろぞろと乗車していった。

 

結局ごちゃ混ぜか。

 

飯田「こっちのタイプかよ……」

 

芦戸「イミなかったなー」

 

緑谷(なんだか可哀想だな)

 

相澤「んじゃ行くぞ。10分位で到着するからな」グッ

 

アクセルを踏みバスを発進させる。

 

…バスで10分かかるなんて台詞が言えるくらいの敷地面積を持ってる事にツッコミを入れないあたり

 

僕等も成長したなぁ…いや慣れただけだが。

 

バスで移動している間何もしないという訳にもいかない。

 

クラスの皆とのトークタイムだ。

 

早速隣に座っていた蛙吹さんに声をかけられる。

 

蛙吹「ねぇ緑谷ちゃん」

 

緑谷「あ、ハイ…どしたの?蛙吹さん…」

 

蛙吹「梅雨ちゃんと呼んで」

 

呼び方指定かよ。

 

蛙吹「貴方の個性…」

 

蛙吹「オールマイトに似てる」

 

緑谷「…………ぶあ?」

 

緑谷「えええええ!?」

 

緑谷「い…いや…そんな滅相な…」

 

緑谷「僕の個性はあれ…気…とか何かああしてこうするやつだから」

 

個性の話をする時はろくな事が無い。

 

テレパシー、空中浮遊、そして光線。

 

あまりにも用途がバラバラすぎて説明がつかない。

 

実際やろうと思えば皆にも習得出来る個性だからなぁ。

 

今もほら、口滑って【気】ってワード出しちゃった。

 

蛙吹「気?」

 

緑谷「ええっといやこのそのあの…」

 

必死に誤魔化そうとしていると便乗して蛙吹さんの隣の席にいた切島君が話しかけてきた。

 

切島「違うぜ梅雨ちゃん。オールマイトはビームなんて撃てねぇしテレパスだって出来ねぇ」

 

切島「似て非なるアレだぜ」

 

いや言っちゃうと似てないです。オールマイトみたいって言われるのは嬉しいけど…

 

切島「確か生体エネルギーを云々って感じだったよな…()()()の個性な感じか?」

 

切島「あの系統はシンプル且つ派手で出来る事が多い!」

 

個性にはそれぞれ型があって…

 

生誕時から身体の構造が変化している異形型…

 

自分の意思でその効果を発する事が可能な発動型…

 

身体のあらゆる部分を変形させる事が出来る変形型…

 

主にこの3つに区分される。

 

まぁそもそも【個性】っていう概念が一体どういうモノなのか定義すら曖昧なもんだから…

 

厳密にどんな種類があるかと言われると不明と言わざるを得ない。

 

どうやら変形型の【硬化】である切島君はそれに不満らしい。

 

切島「俺の個性って対人じゃ滅茶強ぇけどいかんせん地味なんだよなこれが」

 

切島「ただ硬くなっただけじゃナニソレ?って周りから見られるからな」

 

緑谷「見た目は確かに変わらないかもしれないけど僕的にはかっこいいと思うけどな」

 

緑谷「プロにも十分通用する個性だしね」

 

切島「プロなー!でもヒーローって結構人気商売みてぇなとこあるぜ!?」

 

切島「オールマイトとかその象徴だろ!」

 

常闇「一理ある」

 

青山「僕のネビルレーザーは強さも派手さもプロ並み」

 

芦戸「でもお腹壊しちゃうのはヨクナイね!」

 

A組「……」

 

水差しちゃダメ、ゼッタイ。

 

このクラスの女の子ってさらっと棘刺してくるよなぁ。

 

切島「いや派手で強えっつったらやっぱしおめぇとか爆豪…後轟とかじゃね?」

 

さりげなくかっちゃんと同列に並べられた事に驚きを隠せない自分がいる。

 

爆豪「けっ」

 

対してかっちゃんは同格にされた事が気に食わないのか冷たい反応をした。

 

……いやあいつの事だから僕が先に挙げられた事にムカついているとかありそう…

 

?…轟って誰?

 

ああ…今かっちゃんの後ろに座っている男子生徒。

 

オッドアイで左右の髪が白髪と赤髪になっているのが特徴的の生徒だ。

 

轟「……」

 

彼の紹介はもうじきするからもうちょっとだけ待ってくれ。

 

蛙吹「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」

 

爆豪「んだとコラ出すわ!!!」バンッ!

 

なんと蛙吹さんがかっちゃんで遊び始めた。

 

その挑発にすぐ乗ってしまいかっちゃんは座席から立ち上がってしまう。

 

だから火に油はいけないと…

 

蛙吹「ホラ」ビロビロ…

 

ホラじゃないよ…しかも舌出して馬鹿にしてる…

 

…あれだ、人気投票で1(ゲホンゲホン

何でもないです。

 

上鳴「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだ性格と認識されるって逆にすげえよおい」

 

爆豪「テメェのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」

 

段々皆がかっちゃんをからかって面白がってきてるぞ…

 

信じられない光景だ。

 

今までは力でクラスどころか学年さえもねじ伏せてきたあのかっちゃんだぞ…?

 

流石雄英…レベルが違いすぎる。

 

……どんなレベルの話してんだろ自分。

 

あ、上鳴君も紹介し損ねてたな。

 

轟君同様にもう少しだけ待っててくれ。

 

こんな馬鹿げた会話に中には呆れる人も。

 

八百万「低俗な会話ですこと…」

 

八百万「子供でもありませんのに…黙って待つ事もできないのかしら」

 

麗日「でもこういうの好きだ私!」

 

飯田「爆豪君、君本当に口悪いな!」

 

爆豪(クソはセーフなのかよクソは!!)

 

<あはははは!

 

 

 

バスでの待ち時間の間…1-Aは歓楽と笑いで溢れていた。

 

新たな体験に皆期待に胸を膨らませていたんだ。

 

僕も勿論楽しみだったし、ワクワクしていた。

 

……だけど頭の片隅である不安がよぎっていた。

 

 

それは何時ぞやのマスコミ騒動の日の夜であった。

 

悟空さんと一緒に軽い筋トレをしていた時だった。

 

 

悟空『ふぅ…大分汗かいたぞ』

 

緑谷『じゃあそろそろお湯入れてきましょうか』

 

悟空『あ、悪り…頼むぞ』

 

緑谷『はーい』ガチャ

 

ドアを開けて風呂場に向かおうとすると急に悟空さんに呼び止められる。

 

悟空『ああっ!緑谷!ちょっと待て!』

 

緑谷『?どうしました?』

 

振り返って悟空さんの顔を覗くと…彼は少し険しい表情になりながらこちらを向いていた。

 

いつも大らかなあの人が一体どうしたのか不思議に思いながら近づくと悟空さんは話し出した。

 

悟空『…緑谷…今日学校で何かあったか』

 

緑谷『……?あ…いやちょっとしたゴタゴタはありましたけど…』

 

緑谷『特にその…問題は…』

 

悟空『そっか…』

 

悟空『………一瞬…まぁ2、3分ぐれぇの事なんだけどよ』

 

悟空『おめぇの学校に馬鹿デケェ気を感じた』

 

緑谷『!?』

 

悟空『まぁ言っちまえばオラにとっちゃ大した事ねぇ程度だったんだけどよ…』

 

悟空『……緑谷…彼奴らはおめぇよりも強い…そう断言できる』

 

緑谷『断言て…』

 

悟空『普通の人間の10倍じゃすまねぇくれぇの気のデカさ…そして何より』

 

悟空『()()()()()()()…その場にふっと』

 

緑谷『それって…つまり瞬間移動?』

 

悟空『ああ…消える時も同じ風にな』

 

悟空『オラと同じ風にヤードラット星人から習った猛者なのか…それともヤードラット星人自体が来たのか…』

 

緑谷『若しくは…それに似た個性を持ってる人…ですか』

 

緑谷『僕は少しバタバタしてたんで感じる余裕は無かったんですけど…』

 

悟空『とにかく…オラから言いてぇのは1つだけだ』

 

 

 

 

 

緑谷「……」<あははは!

 

 

悟空『無茶だけはすんな…ぜってぇに』

 

 

緑谷(……界王拳…僕が使える許容範囲は2倍まで…)

 

緑谷(3倍は発動した時はあったけど…10秒で立っていられなくなった)

 

緑谷(恐らく悟空さんはそれの事も含んで言っていた)

 

緑谷(もし3倍の界王拳でもどうにもならない相手だとしたら……)

 

緑谷(オールマイトと悟空さん以外…誰も太刀打ちできない敵って事になる)

 

緑谷(万が一何かあっても僕のテレパシーはまだ遠距離にまでは使用できない)

 

緑谷(精々1km程度…訓練場からじゃ校舎には届かない)

 

緑谷(……何も起こらなきゃいいんだけど…)

 

相澤「もう着くぞ…いい加減にしとけよ」

 

A組「ハイッ!!!」

 

相澤先生の一言によりクラスの会話が一斉に止む。

 

沈黙の間もその不安が消える事は無く、最悪の可能性を憂虞し1人汗を垂らしていた。

 

奇襲でも起こるんじゃないのか、それとも何かしらのテロでも起きやしないか…

 

何事も無く無事に教室に戻れる事を祈る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

だが…僕の願いも虚しく数分後、予期していたであろう最悪の事態が起こってしまう。

 

皆はそれも知らずにいそいそとバスの中で授業の始まりを待ち続けていた……

 

 

 

 

キキーッ

 

相澤「到着」

 

ブレーキを強く踏みバスを停車させる。

 

バスからぞろぞろと降りていった僕達の目に映ったのは……

 

 

けわしく聳え立つ崖や激しく流れ落ちる滝…燃えさかる火の海

 

広大な自然の数々であった。

 

その光景はまるでそう…1つのテーマパークに足を踏み入れるような感覚であった。

 

誰もがこの壮大さに息を飲む他無かった。

 

切島「すげぇ…」

 

切島「USJみてぇだ」

 

飯田「ここさえも所有地の一部でしか無いと言うのか…」

 

飯田「恐ろしいな…最高峰」

 

「1年A組の皆様ですね〜。よくぞおいでになりました」

 

入り口に入るとそこにはある1人の男性が僕らを待ち構えていた。

 

例のもう1人の担当教師だろう。

 

彼は僕らに話しかけ、挨拶をし始める。

 

「水難事故・土砂災害・火事…etc.」

 

「あらゆる事故や災害を想定し、僕がつくった演習場です」

 

「その名も…」

 

 

 

 

13号「U(嘘の)S(災害や)J(事故ルーム)!!」

 

A組(USJでしたぁぁぁ)

 

スペースヒーロー【13号】だ。

 

災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的ヒーロー!

 

まぁ当の本人は宇宙服に身を包ませているから素顔を見た人は指折り数えられる位しか居ないらしいけどね。

 

初対面で興奮の余りピョンピョン飛び跳ねてしまう麗日さん。

 

どうやら熱狂的なファンみたいだ。

 

麗日「うおおおっ13号先生だ!!」

 

麗日「私滅茶苦茶好きなんよー!」

 

相澤先生は13号先生に近付いて小声だ何か喋り出した。

 

聞かれたらまずい事でもあったのか…

 

耳を澄ませてよく聞いてみると…

 

 

 

 

相澤<……13号、オールマイトはどこにいる?

 

相澤<ここで落ち合う予定なのだが

 

13号<せ…先輩それが……

 

13号<どうやら()()()()()()まで活動してしまったらしく…(スッ…

 

13号<仮眠室で休んでます

 

オールマイト『すまん!!終わりがけに少しなら顔出せるから…ホント申し訳ない!』

 

相澤<不合理の極みだなオイ

 

 

 

 

緑谷「……?」

 

緑谷(限界ギリギリ?何の話だ…)

 

話の途中、13号先生は右手で小さくジェスチャーしていた。

 

人差し指中指薬指を立ててた……あれはどう見ても【3】のサインだ。

 

もしかしてオールマイトにも活動制限がかかっているのだろうか…

 

でもまさかウル○○マンみたいに3分が限度とかな訳無いし…

 

3時間限定とか……今までのを見る限りそんな感じしないけど。

 

さっきの話題でも出ていたがオールマイトの個性は正体不明。

 

テレビでは【怪力】や【ブースト】などなど…様々な冗談でお茶を濁していた。

 

ただ単にプライパシー的に知られたくなかったのでは無くそういう理由もあって黙っていたのかもしれないな。

 

結局謎が深まるまま…オールマイト抜きという形でヒーロー基礎学はスタートした。

 

オールマイト居ないのは悲しいなぁ……

 

13号「えー始める前に僕からお小言を1つ2つ…」

 

13号「あいや3つ………4つ…」

 

13号「…あー5つ程」

 

どんどん増えてます先生。

 

13号「皆さんご存知だとは思いますが僕の個性は【ブラックホール】」

 

13号「どんな物も吸い込んでチリにしてしまいます」

 

多分これを読んでいる人は初めて……いやもう止めよ。

 

13号さんは先述の通り、火や岩石…ありとあらゆる物を吸収する。

 

だから火事も火を吸い込み被害の拡大を防いだり…

 

或いは残骸の下敷きになった人間も瓦礫などの障害物を全て吸い込み救出したりする事ができる。

 

そうやってどんな災害からも多くの人達をすくいあげてきた。

 

13号「一見僕の個性が便利だなって思うでしょ?」

 

13号「ですがこの個性…裏を返せばどんな人間でも一瞬にして粉々に消す事が可能なのです」

 

13号「皆の中にもそういう…()()()()()()()()()()ような個性を持っている生徒もいるでしょう」

 

緑谷「……」

 

13号「今あるこの超人社会は何年、何十年と膨大な時間をかけ作り上げてきたものです」

 

13号「個性の使用を資格制にし厳しく規制する事で一応成り立ってはいます」

 

13号「ですが一歩使い方を間違えれば容易に人を殺せる【いきすぎた個性(ちから)】を個々が持っている事を決して忘れないでください」

 

13号「相澤さんの体力テストで自分の秘めたる力の可能性を知り」

 

13号「オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体感したかと思います」

 

13号「この授業では心機一転!」

 

13号「人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう!」

 

13号「君たちのその力は人を傷つける為にあるのではない」

 

13号「助ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」

 

…すっごい感動した。13号の熱弁に。

 

こんな先生とこれから2時間…この広い土地を利用して様々な演習をするのかと思うと…

 

楽しみで仕方ない!!まぁ楽しむもんじゃないけどサ!!

 

13号さんの弁論が大きな拍手で称えられる。

 

飯田「ブラボー!ブラーボー!!」パチパチ…

 

麗日「ステキーー!」

 

緑谷「13号…すっごくカッコいい…!!」

 

13号「えー以上です!ご静聴ありがとうございました」

 

拍手に応えるよう13号先生も僕らにペコッと一礼する。

 

さぁ救助訓練の始まりだ!

 

話し終えたのを見計らって相澤先生が訓練の説明をし始めようとする。

 

相澤「よし…そんじゃあまず施設の概要をサクッと……」

 

ズズ…

 

奇妙な音が後ろから聞こえた。

 

演習場内で何か起こったのか?

 

振り向いてその先を見ると…

 

 

 

 

 

 

空間に歪みが発生しその中からある人物の顔が出てきた。

 

間違いない。敵の襲来だった。

 

他の奴等もその歪みから出現し演習場にその姿を現す。

 

「………」ゴオッ…

 

相澤「!!」

 

それに気づかない筈が無かった。

 

僕も複数の気を感じ取り探っていた。

 

その中には僕や相澤先生よりも…遥かに大きい気を持つ者が居た。

 

緑谷(……嘘だろ…このタイミングで!?)

 

緑谷(これが悟空さんが言っていた……?)

 

相澤「一かたまりになって動くな!!!」

 

飯田「え?」

 

相澤「13号!!生徒守っとけ!!」

 

生徒や13号に向かって大きく叫ぶ。

 

切島「なーんだありゃ色々出てきたぞ?」

 

切島「もしかしてまた入試ん時みてぇなもう始まってんぞパターン?」

 

首にかけていたゴーグルを目に装着しながらこう言い放つ。

 

相澤「動くなっ!!あれは……」

 

相澤「敵だ!!!」

 

予測していた最悪の事態が発生してしまった。

 

奇しくも…命を救える訓練時間に()()()()は現れた。

 

黒い敵「13号に…イレイザーヘッドですか」

 

黒い敵「先日頂いたカリキュラムによればオールマイトもこの場にいる筈なのですが…」

 

相澤「やはりゲートのアレはクソ共の仕業だったか…!」

 

ボス?「……どこだよー……せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ」

 

ボス?「オールマイト…平和の象徴…いないなんて…」

 

緑谷「…………これは……」

 

プロが一体何と戦っているのか

 

何と向き合っているのか…

 

 

 

 

ボス?「子どもを殺せば来るのかな?」

 

 

それは途方もない悪意

 

 

 

 

 

 

緑谷(本格的にやばい……!!)

 

 

 




須井化です…はい…

敵連合出現エマージェーシーエマージェーシー!
果たして多少強くなってニューゲームした緑谷君に奴等に勝つ術はあるのか?
とりあえず今回はキリいいのでここまで。いかがでしたか?

とうとうアニメ一期の山場に到達しましたねー!
まぁ11話は蛇足的な部分が大半だったけど。
チートは寝かせておきました。はっきり言ってバランスブレーカーだからねあいつは。


何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月2日(木)以内に第12話の投稿を予定しております。

お楽しみに!





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第12話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJ(※嘘の災害や事故ルーム)にて救助訓練最中になんと敵が出現!

緑谷少年達はこのピンチの乗り越えられるのか!?

え?1人は私並に強いって?

ちょっとそれはヤバくね?

更に向こうへ!PlusUltra!!!



正義の大砦…雄英高校に突如正体不明の敵が襲来した。

 

どうやら今回ばかりは……

 

無傷で生還できるようには行かなそうだ。

 

 

 

 

 

瀬呂「敵ンンンッ!?バカだろ!?」

 

上鳴「ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホ過ぎるぞ!?」

 

予想だにもしてなかった事態が起こりクラスに異様な空気が流れる。

 

何十もの敵の軍団を引き連れ僕等を皆殺しにやってきた…

 

何より()()()()()での敵の出現には驚きを隠せなかった。

 

八百万「13号先生!侵入者用センサーは…」

 

13号「勿論あります…ですが………」

 

作動していれば13号先生が真っ先に気づくだろ。

 

見た所ワープ…みたいな個性でここのセキュリティを難無く回避したようだし…

 

更に言ってしまえばセンサーが無反応って所を見ればそういう事が可能な個性(ヤツ)がいる筈…

 

轟「校舎と離れた隔離空間」

 

轟「そこに少人数(俺等)が入る時間割…」

 

轟「()()()()()()()()()()

 

轟「これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

 

確かに轟君の言う通りだった。

 

先日のマスコミ乱入も敵達が情報入手の為に仕組んだと考えれば合点も行く。

 

一見抜かりの無い完璧な策略と見れるが…

 

1つだけ腑に落ちない事がある。

 

緑谷(……さっき…敵の1人がオールマイトの事を呟いてた…)

 

緑谷(奴等の中じゃオールマイトがここに居るのは想定内の出来事だったのか?)

 

緑谷(いや…カリキュラムが割れてる以上知らない方がおかしい)

 

緑谷(じゃあ…なんで…)

 

緑谷(なんでわざわざオールマイトが現れるこの時間帯に攻めてきた?)

 

不思議に思いながらそんな事を考えていると相澤先生は僕等に指示を出してきた。

 

相澤「13号!生徒と避難を!」

 

相澤「センサーの対策も頭にある敵だ」

 

相澤「救援呼べない様に電波系の個性で妨害している可能性が高い!」

 

相澤「上鳴!お前も()()で連絡試せ」

 

上鳴「っス!」

 

先生…まさか1人で戦いに…?

 

緑谷「無茶だ!イレイザーヘッドの戦法は個性を消してからの捕縛…」

 

緑谷「多人数との正面戦闘は…」

 

相澤「緑谷」

 

緑谷「!」

 

相澤「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

相澤「13号…任せたぞ!」

 

13号「はい」

 

ダッ

 

緑谷「相澤先生っ!!」

 

呼び掛けにも答えずに相澤先生は単身敵の所へ飛び出していってしまう。

 

非常にまずい展開だ。

 

ただでさえ1vs数十人の上…僕でも太刀打ちできないような相手がいる…

 

また敵達の個性も全く分からないこの状況でとても時間稼ぎができるとは思えない。

 

最悪…相澤先生が死ぬケースだって100%あり得ないとは言い切れない。

 

敵「射撃隊行くぞぉ!」

 

とうとう敵達も動き出した。

 

身体の一部を銃に変えたり髪を触手にしたりして戦闘態勢を整える。

 

標的を定め、攻撃の姿勢を構える。

 

敵1「見ねぇ顔だな…あれが例のイレイザーヘッドか!」

 

敵2「何の個性持ちかは知らねぇが、一人で正面突っ込んでくるたぁ…」

 

敵「「大間抜け!!」」ガシャッ…

 

シーン…

 

敵1「…ありゃりゃ?」

 

だが幾ら力を入れても銃弾が放てない。

 

呆然としている敵の隙を見逃す訳もなく…

 

シュルルッ…

 

敵2「お?」ギュッ

 

グイッグイッ

 

敵「「っおおああっ!?」」ドゴッ!!

 

相澤「…」

 

2人の敵を炭素繊維で縛りつける。

 

捕縛武器を両手で交差させ、敵を引っ張りそれぞれの頭部を衝突させる。

 

敵3「思い出したぜ!あいつの個性は確か…」

 

敵3「見ただけで個性を消すヤツだ!」

 

敵4「個性が個性無効化させてどうすんだよそれ…」

 

敵5「消すぅ〜!?へへへ…」

 

敵5「俺等みたいな異形型も消してくれんのかぁ?」

 

如何にも強そうなゴツい男が前に出る。

 

余程の自信があるのかイレイザーヘッドに対して全く動じていない…

 

 

相澤「いや無理だ」バキッ

 

敵5「ぶっ!?」

 

敵の顔面に強くパンチをめり込ませる。

 

余りの威力にその敵は大きく吹っ飛んでしまう。

 

だが逃すまいと思わんばかりに相澤先生は敵の足に捕縛武器を巻きつけた。

 

相澤「発動型や変形型に限る」シュルッ

 

敵6「くっ…」ブンッ

 

相澤「でも」スカッ

 

敵6「んなっ…!!」

 

相澤「お前らみたいな奴の旨みは統計的に近接戦闘で発揮される事が多い」グイッ

 

背後からの不意打ちも軽くしゃがんで回避する。

 

そして敵が怯んだ隙に先程の敵に絡ませた炭素繊維を引っ張り…

 

敵5「バッカ避け…」

 

敵6「へ?」ゴオッ

 

ズドォッ!!

 

敵の1人を他の敵達に叩きつける。

 

強靭な身体を持つ敵5に多数の敵が圧しつぶされる。

 

相澤「…そこら辺の対策はしてる」

 

黒い敵「…!」

 

個性の能力だけでなく肉弾戦も長けておりゴーグルで目線を隠しているので()()()()()()()()相手が判定できない。

 

集団戦では敵達の連携を崩しつつ自分が有利に戦いを行える。

 

多対1こそ先生の真骨頂なのか…

 

緑谷「流石プロ…伊達じゃない……!」

 

飯田「分析してる場合じゃないだろ!早く逃げよう委員長!!」

 

緑谷「あ…うん!」

 

ボス?「うーん…成る程。嫌だなプロヒーロー」

 

ボス?「有象無象じゃ歯が立たない」

 

ボス?「おい黒霧、(あれ)

 

黒い敵(黒霧)「……分かってますよ」

 

相澤「…っ!!」バキッ!!

 

こちらが優勢に戦いを進めているかと思いきや…

 

どうやら敵が相澤先生の個性の性質に気づいたらしい。

 

大量の敵の部下達に応戦している間ずっと個性を消すという事は不可能だ。

 

定期的に瞬きを2回する必要があるだろう。

 

個性を発動する際、相澤先生の髪は逆立っている。

 

逆に髪が垂れ下がっていれば……

 

 

 

 

ゴォウッ

 

緑谷「!?」

 

目の前に先程の歪みが出現した。

 

歪みは形を変え、人のような姿に変貌を遂げる。

 

黒霧「させませんよ」

 

入り口に向かおうとする僕達は敵の1人に行く手を阻まれる。

 

気の感知していた場所が突然離れた場所に移った。

 

恐らく悟空さんも言っていたワープ系統の個性を持っている奴だろう。

 

上鳴「さっきの黒い奴…!!」

 

相澤(チッ…瞬きしている間に厄介そうな輩を…)

 

相澤(しかも見る限りあいつらもう気づいたのか……)

 

相澤(髪が下がっている時に個性は発動しねぇって)

 

黒霧「お初にお目にかかります。雄英生の皆様…」

 

黒霧「我々は【敵連合】」

 

黒霧「せんえつながらこの度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは…」

 

 

 

黒霧「平和の象徴…オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして…」

 

 

 

 

 

 

緑谷「………は……?」

 

 

黒霧「本来ならオールマイトはこの場にいらっしゃる筈ですが…」

 

黒霧「何か変更があったのでしょうか?」

 

 

 

こいつらの言葉の意味が理解できなかった…

 

いや…正確には意味は分かったが…

 

つまりこいつらは僕等生徒を拉致する為でも殺害する為でも無く…

 

あくまで()()()()()()()()()()()()()ここにやって来たという訳なのだ。

 

が、ここで様々な疑問点が生じる。

 

何故オールマイトを殺しに来たのか?何故尚更攻めにくいこの時期にやって来たのか?

 

そして1番不可解なのは……

 

 

 

 

こいつらにオールマイトを倒せるという確信をもっている事…

 

 

 

黒霧「まぁそれとは関係なく…」ユラァ…

 

敵は再び個性を使いワープホールのように変わっていく。

 

黒霧「私は戦闘要員ではありませんからね」

 

黒霧「あくまで役目は貴方方を…」

 

シャッ

 

黒霧「!?」

 

切島 爆豪「「ッラァッ!!!」」ドゴオッッ!

 

13号「っ…君達…!」

 

敵が淡々と話している内にどうやら2人の痺れが切れたらしい。

 

ここぞとばかりに敵に接近し爆撃と打撃の不意打ちを喰らわせる。

 

切島「へっ!ベラベラ喋ってる間に俺等にやられる事は考えなかったのか!?」

 

爆豪「おま邪魔」

 

切島「酷ぇなおい!」

 

ユラァ…

 

13号「!」

 

だが…2人の攻撃が全く効いてないようだ。

 

ただ殴られた顔面が歪んだだけに過ぎず、すぐに元の形に戻っていく。

 

黒霧「…いやはや危ない危ない」

 

黒霧「そう…生徒といえど優秀な金の卵」

 

13号「駄目だ!退きなさい2人共!!」

 

黒霧「……」

 

黒霧「散らして嬲り殺す」ユラ…

 

ゴォォッ!!

 

切島「うおっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒霧の如く巨大な闇に覆い尽くされる。

 

身体がその霧に包まれ、視覚を奪われる。

 

それから間も無くして霧が薄れていき、視界が腫れて来た頃…

 

 

 

 

ズズッ…

 

緑谷「……っ…」

 

緑谷「!?」

 

 

先程までいた場所とは全く違う風景だった。

 

辺りは海とそこに浮かんでいる船しか見えず一緒にいた筈の人達もいつの間にか消えていた。

 

そして数秒経ってようやく気づいた。

 

あ、今空中にいる。

 

緑谷「ぎゃああああっ!?水難!?」ヒュゥゥ…

 

緑谷「落ちるぅぅぅうううっ」

 

緑谷「なんちゃって」キキーッ

 

水に触れるギリギリ手前で舞空術を発動させた。

 

馬鹿め。僕は飛べるんだ…海だろうが何処だろうが関係ないぞ。

 

緑谷「舞空術を使っているとは到底思わないだろうな……」

 

緑谷「あいや…そもそも舞空術自体知らないか」バシャッ!

 

緑谷「…?」

 

そんな事を言っていると近くで水の跳ねる音が耳に入って来た。

 

その方向を向くと……

 

 

 

 

蛙吹「ふぅ…他にここにいる人は居ないかしら」

 

峰田「う、うう…カエルの割に…なかなかどうして…おっぱいが…くっ…」 ベタッ

 

梅雨「黙れしばくぞ」

 

峰田「サーセンw」

 

 

 

 

 

峰田君と蛙吹さんじゃないか!

 

良かった…2人は無事だったのか。

 

…いや蛙吹さんは無事じゃなさそうだ

 

抱えられている峰田君の顔が胸部に押し付けられてる…顔真っ赤にするなよ…

 

どうやら気を探ってみた所他の人達はいないみたい…

 

だけど散らばっている。さっきの敵の個性か…!

 

緑谷「ん……」

 

緑谷「あっ……蛙吹さんっ!!」ゴオッ!!

 

蛙吹「あ!緑谷ちゃん奇遇ね…それと梅雨ちゃんと…」

 

大きい声で叫んだのですぐ気づいてくれたようだ…こっち向いた。

 

でも蛙吹さん後ろ後ろ後ろおおっ!!

 

バシャッ!!

 

蛙吹「へ?」クルッ…

 

振り返ると背後から敵が水中から現れた。

 

手を伸ばせばすぐ届く程相手との距離は短かった。

 

敵を見つけていた時には既に相手が拳を頭に向けて振り下ろし始めていた。

 

敵「うおおっ!!」ブンッ

 

蛙吹「ケロッ…!」

 

ドゴォッ!!

 

敵「ぐほぉぉっ!?」

 

緑谷「うちの友達に手ェ出すなぁぁあっ!!」

 

気を感知して何とか間一髪蛙吹さんの所まで辿り着いた…

 

殴られる寸前で敵をパンチで吹っ飛ばす。

 

お、勢いよく真っ直ぐ壁に当たった。

ドガッッ!

 

敵「」

 

すごく…めり込んでます。

 

緑谷「船に行こう!ここよりかは安全な筈だ!」ガシッ

 

蛙吹「え…ええ!」

 

峰田「ちょっ…速ぇえっ!?」ゴォォッ

 

蛙吹さんの手を掴み空かさず全速力の舞空術で船に向かう。

 

滞空していてもいいけどずっと2人を持ち上げながら庇うのは辛い…

 

2人と話したい事もあったしね。

 

敵「おい!逃げるぞ!」

 

敵「捕まえろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

無事船に乗り一時的に敵の攻撃から逃れた。

 

さてと…問題は今の状況だが…

 

緑谷「何とか…隠れはしたけど…」

 

緑谷「また襲撃されるのも時間の問題だ」

 

蛙吹「ありがとう緑谷ちゃん。お陰で助かったわ」

 

緑谷「いいさ。とりあえず2人に怪我なさそうだし」

 

峰田「物理的には怪我してねぇけど精神的にはもう逝きそうだわ!!」

 

峰田「いや割とマジで気絶2、3回しそうになったんだからな!?」

 

峰田君はまだ相当混乱しているようだ。

 

無理もない。いきなりの奇襲でまさかのオールマイト殺害予告と来たもんだ。

 

驚かない方がおか…

 

蛙吹「だから黙りなさいクズ」

 

峰田「ダニィ!?」

 

峰田「おい緑谷!!い…い今こいつ俺の事クズって!!」

 

…蛙吹さんかなり冷静だな…顔色1つ変わってない。

 

怖いとか思わないのか普通…

 

いや……僕らの為か…

 

緑谷(後峰田君…多分それ違う意味)

 

峰田「あっ!緑谷いんじゃん!!」

 

峰田「よがっだぁぁあっ…みどりや゛だああっ!!」

 

峰田「もう゛何も゛怖ぐない゛ぃぃ…」

 

その理には触れない方がいいよ

 

でもどうやら峰田君も段々落ち着きを取り戻してきたみたいだ。

 

よし。兎に角2人と話し合おう。

 

蛙吹「しかし…大変な事になったわね」

 

蛙吹「まさか相手がオールマイトを殺しに態々こんな所に…」

 

緑谷「通常まずここの学校のセキュリティ破るだけでも至難の技の筈…」

 

緑谷「マスコミの時から…オールマイトの人気を逆手にとってかなりの情報を奪っていった筈だ」

 

緑谷「そんじょそこらの敵とは格が違う。轟君が言ったように…」

 

緑谷「虎視たんたんと…準備を進めていた!」

 

峰田「で、でもよ!オールマイトは今来てないだけで…」

 

峰田「すぐに駆けつけてくるさ!そんであんな奴ら3秒でケッチョンチョンに…」

 

蛙吹「峰田ちゃん……分からないわよそれは」

 

峰田「へ」

 

蛙吹「殺せる算段が整ってるから連中こんな馬鹿げたような事仕出かしてるんじゃないの?」

 

蛙吹「そんな奴らに私達嬲り殺すって言われたのよ?」

 

蛙吹「第一オールマイトと連絡が取れない今いつ来るかも分からないし…」

 

峰田「え…あ…お……い?」

 

蛙吹「私達オールマイトが来るまで持ち堪えられるかしら…」

 

蛙吹「例えオールマイトが来た所で私達…無事に済むかしら」

 

峰田「……っう……」

 

恐ろしい現実を叩きつけられ倒れこみ、四つん這いとなる。

 

蛙吹さん…結構容赦無いな。

 

またもやクレイジーモードに戻ってしまう峰田君。

 

峰田「…もう駄目だ…おしまいだぁ…」

 

峰田「勝てっこない…奴らは伝説の超敵なんだ…」

 

ガシッ

 

蛙吹「何寝言言っているの。ふてくされている暇があるなら生き抜く方法を考えなさい」グイッ

 

峰田「駄目だぁ…貴様らには分からないのか…」

 

蛙吹「分かるわよ…現状がまずい事位」

 

峰田「まずいってレベルじゃねぇよな!?おい!!」

 

峰田「俺等皆殺しにされんだぞ!?皆殺し!!」

 

峰田「お前なんでそんなケロッとしてられんだよ!?」

 

蛙吹「ケロケロ言うのは蛙だから当たり前でしょ」

 

峰田「そういう話してんじゃねーよ!!」

 

緑谷「ちょ…2人とも落ち着いて…」

 

2人の口論を必死に止めようとするが全く耳にしてくれない…

 

こんな時に言い合ってる暇なんて無いのに…

 

なんか前半が聞いた事あるような無いような台詞なのは置いておこう。

 

峰田 蛙吹「「〜」」

 

緑谷「………」

 

緑谷(だけど蛙吹さんの言う通りだ。殺す算段はある)

 

緑谷(ここからでも真っ先に感知できてしまうような大きい気が何よりの証拠…)

 

緑谷(恐らくそいつが敵の主戦力…)

 

緑谷「それ以外考えられない…」ブツブツ…

 

頭の中で考えがまとまらず口から呟き始める。

 

緑谷「なんで殺したい?1人で平和の象徴と呼ばれる人だから?敵…悪への抑止力となったから?やっぱり単純に過去に何かしらあってその恨みを晴らす為…?その為だけに普通ここに攻め込むか?考えればきりがない理由なんていくらでもつけられる……………」ブツブツ…

 

緑谷「いや…て言うか今…理由なんて…」

 

緑谷「理由……」

 

 

 

 

 

 

<スゲー……もう100人は助けてるよ!

 

<マジで!これマジでヤベーッて!!

 

『もう大丈夫!何故かって?』

 

『私が来た!!!』

 

 

 

 

 

緑谷「…………………」

 

峰田 蛙吹「「〜!!」」

 

緑谷「……今は…」

 

緑谷「今は喧嘩してる場合じゃないでしょ2人共」

 

峰田 蛙吹「「………!」」

 

蛙吹「…ごめんなさい…少しふざけ過ぎたわね」

 

峰田「す…すまねぇまたカッてなっちまって…」

 

そんな風に呑気に喋っていると水難エリアの敵達にも動きが。

 

海に目をやると敵の片手に鉄砲やら銃やらが握られていた。

 

勿論…船の上にいる僕らを攻撃する為だ。

 

敵「撃てぇぇっ!蜂の巣にしてやれっ!!」バンバンッ

 

峰田「ひぃぃっ!?銃弾!?」

 

峰田「もう嫌だァァッッ!!」

 

蛙吹「…」

 

峰田「殺される…皆殺される…」ガタガタガタ…

 

峰田「オールマイトも…相澤先生も…皆…」ガタガタ…

 

恐怖のあまりしゃがんで床に蹲ってしまう。

 

身体は震え、自由がきかなくなる。

 

実際今命を狙われている。いつ殺されてもおかしくない状況だ。

 

怯えるのは当然の事だ。

 

 

 

オールマイト『綺麗事!?上等さ!』

 

オールマイト『()()()()()綺麗事実践するお仕事だ!!』

 

 

相澤『自分達の何倍も過酷な修羅場を自分達の何倍も多く経験している』

 

相澤『そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーローなんだよ』

 

 

 

 

だけど……こんな理不尽(ピンチ)を先生達は幾多も乗り越えてきた。

 

今僕らは下を向いて立ち止まる訳にはいかない。

 

前に向かって進むしかないんだ。

 

 

 

 

 

緑谷「……正直な所敵連合がどういう集団でどういう意図でこんな事をしているか…疑問点が幾つも残るけど」

 

緑谷「…オールマイトを殺せる……それは最もな意見だろう」

 

緑谷「じゃなきゃ奴らがここまで大胆且つ無茶な強襲は行わない筈だ」

 

緑谷「……なら…尚更僕らのやるべき事は決まってくる」

 

峰田 蛙吹「!?」

 

緑谷「それは敵の正体を知る事でも…オールマイトや僕達を殺す理由を探る事でも無い」

 

 

 

 

 

 

 

 

【入口前】

 

僕達全員がワープにかかった訳では無い。

 

中によっては運良くその場に留まった人達もいる。

 

13号「障子君!皆USJ内にいるか確認できますか!?」

 

障子「散り散りになってはいますが…ええ全員無事です」

 

13号「委員長!……は飛ばされてしまいましたか…」

 

13号(今居るのは飯田・麗日・障子・砂藤・瀬呂……)

 

13号「そうだ!副委員長!!」

 

八百万「……」

 

麗日「八百万…さん?」

 

八百万(なんで…なんで…あの男は…)

 

 

 

 

 

八百万『…くっ…霧が…一体何…』

 

ドンッ

 

八百万『きゃっ…』ドサッ

 

突然前から強く手で体を押される。

 

後ろに吹っ飛びその拍子に地面に倒れてしまう。

 

視界が閉ざされている為誰が前に居るのか分からない。

 

八百万『痛たた…だ…誰…』

 

その時、耳を澄ますとある声が聞こえてきた。

 

『……さん……八……万さん!!』

 

八百万『……!?』

 

 

 

緑谷『八百万さん……頼んだよ』

 

 

 

 

 

八百万「………」

 

八百万(全く…相変わらず貴方の思考は理解に苦しむ…)

 

八百万(頼まれずとも…私達が今すべき事はもう決まっていますわ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷 八百万「(あいつらに勝って進撃を阻止する事…!!)」

 

 

 

 

峰田「え…!?」

 

蛙吹「……緑谷ちゃんそれ本気?」

 

緑谷「…逃げる事も出来ない。救援も呼べない」

 

緑谷「オールマイトを殺す術がある位なんだ。相澤先生や13号先生だっていつまで抵抗できるか…」

 

緑谷「何より僕らはまずこの四面楚歌の状況を突破しなきゃならない」

 

緑谷「奴らから吹っかけてきたんだ。こっちも黙っちゃいれないよ」

 

緑谷「タマゴならタマゴらしく足掻けるだけ足掻いてやるさ」

 

緑谷「敵連合だか敵連盟だか知らないが…上等だ!」

 

緑谷「他の皆を救けて無事生還し、馬鹿みたいに笑いながらオールマイトと再会する」

 

緑谷「それが救助訓練…最初にして最大のミッションだ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方前回の2人はというと…

 

 

 

オールマイト「……」prrrr…

 

オールマイト「…彼等…マナーモードにでもしてるのか?」prrrr…

 

オールマイト<困ったな

 

 

 

悟空「zzzz…」

 

悟空「へへぇ…メシィ……」

 

悟空「…zzzzz」

 

 

………

 

早く起きてぇぇぇぇぇ!!!




遅くなってしまい申し訳ございません。須井化です…はい…

今回は相澤vs愉快な雑魚共〜ワープで転送までてすた!いかがでしたか!?

切る所を悩みに悩み続けた挙句第2話並に量が少なくなってしもたぁぁ>_<

次回はその分多くするつもりなんでご了承ください!

次辺りで残った3人も紹介できるかな…結構場面変化が激しくなるなぁ。

(この時点で名前出てないのは耳郎だけなんだよなぁ)

戦闘パート多めでお送りしますぞ過度に(以下略


何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月6日(月)以内に第13話の投稿を予定しております。

お楽しみに!







※前回閲覧なさった方は、設定を拗らせて話を煩わしくさせてしまいすみませんでした。

?何の事かなという人は活動報告チェック……あ、無視ってもいいですよ!?うん!


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第13話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJにて救助訓練最中になんと敵が出現!

更に敵の個性により生徒達が散り散りになってしまった!

さぁ反撃の時間だ敵共!!!

後悟空!早く来てくれぇぇえええっ!!

更に向こうへ!PlusUltra!!!

相澤<とりあえずお前も早よ来い…な?
<すみませんでした。



僕らがUSJで敵と遭遇していた頃…

 

オールマイトは13号先生や相澤先生に連絡を取っていた。

 

まぁ当然電波が遮断されて繋がらないわけだが…

 

オールマイト「……うーむ」

 

オールマイト「結局どっちも応答無しか…」

 

オールマイト「相澤君の合理的理論からすれば前回のオチみたいにはしないはずだからなぁ」

 

前回のオチ…

 

オールマイト「いや彼の事だからオールマイト、ウザいとか言ってマナーモードにしてるとか…」

 

オールマイト「…何にせよそろそろ向かわねばな」

 

オールマイト「勤務時間外の都合で教鞭を放りだす…我ながら愚かしい事をしたものだ」

 

オールマイト「とりあえず()()の方は2、30分維持できるし…」

 

オールマイト「 私が行

オールマイト「がぼぉっ!?」ドバッ

 

ソファから立ち上がってみれば身体の負担の影響で吐血してしまう。

 

普段から彼は相当な無理を重ねている。

 

今日は特に出勤時に張り切ってしまった為制限時間ギリギリまで活動してしまったのだ。

 

咳きをしながら再びソファに座り込む。

 

オールマイト「これは…あれかい?歳か?歳なのかい?」

 

オールマイト「そりゃもう確かにいい歳してヒーローやってるおじさんだぞ!?」

 

オールマイト「だからといっておじさんだぞ!?お爺ちゃんじゃないんだぞ!?」

 

オールマイト「40未満だぞ!?」(コンコン…

 

愚痴愚痴言いながら嘆いているオールマイト。

 

まだ若いし現役ですよ…

 

オールマイト「…歳か…」(ガチャ…

 

オールマイト「はぁ……」ピッピッ…

 

ため息をつきながら何やら携帯を操作し始める。

 

アルバムの中の1枚の写真に目が止まった。

 

ある1人の女性(ヒーロー)の画像だ。

 

オールマイト「あれからもう5年も経つのか…」

 

オールマイト「あの方は元気にしてらっしゃるのだろうか…」

 

オールマイト「あの世に元気もクソもないか」

 

オールマイト「………いつも笑顔…か」

 

女性の写真を眺めながらルーキー時代を振り返り懐かしむ。

 

いや…正確に言うと………

 

いずれこの女性とオールマイトの関係については話される事だろう。

 

今はまだその時じゃあ無い。

 

根津「おや、昼間から何とも楽しそうな事をしているねオールマイト」

 

オールマイト「…………」クルッ

 

オールマイト「こここここっここっ校長ぉぉっ!?」

 

根津校長唐突に乱入。

 

オールマイトのスマホに写っている画像をニヤニヤしながら背中から覗いていた。

 

オールマイト「せ、せめてノックぐらいはお願いしますよ!!先生!」

 

根津「え…したけど」

 

オールマイト「嘘っ!?」

 

根津「あれれ〜君この間『仕事に追われてるから恋愛とか興味ない』とか言ってなかったっけー」

 

オールマイト「ち、違います!断じて想像しているような事はしていません!私!!」

 

根津「No.1ヒーローはやはりヒーローフェチと」カキカキ…

 

空かさず貴重なオールマイト情報をメモしていく。

 

オールマイトの好みはすごいレアだぞ…(カキカキ…

 

オールマイト「記録しないで!お願い!!」

 

根津「冗談だよ冗談」

 

根津「でもこの娘が好きな事には変わりないんだろ?」

 

根津「じゃなきゃ頰赤くして慌ててないぜ今頃」

 

オールマイト「ぐぼあ!?」

 

根津「……例の…6年前亡くなった方なんだろう?」

 

オールマイト「……」

 

根津「今更見返してどういう心境の変化だい?」

 

オールマイト「何となく…そろそろ潮時かなぁと思いましてね」

 

根津「おいおいまだ退職するのは早すぎるぜ?」ピッピッ…

 

根津「君の朝の行動を見る限りそんな気はさらさらないって感じだったしね」スッ…

 

iPadの電源を入れオールマイトにある画面を見せた。

 

開いていたサイトには今朝のパトロールについての記事が載っていた。

 

『オールマイトたった1時間で3件解決!』

 

あのゴツい人以外に2人も成敗してたんだね。

 

根津「君が来たにも関わらず未だこの街で犯罪を起こす輩共も大概っちゃ大概だが」

 

根津「事件が起これば反射的に動く君も君さ!」

 

オールマイト「あ…はい。その件に関しては誠に申し訳ございませんでした」

 

根津「昔っから変わってないよね。ほんと」

 

根津「君がここに来た理由、分かってるよね?」

 

根津「怪我と後遺症によるヒーロー活動の限界」

 

根津「それを見計らって()()()を探しに来たんだろ?」

 

根津「だからと言って平和の象徴に固執している君が今にでも倒れそうなんですよなんて伝えられるもんじゃない」

 

根津「個性の件にせよ今の話にせよ世間に知られまいとする君が安全に活動できる場所としてはうってつけだろうと思って僕が推薦したんだ」

 

根津「も少し腰落ち着かせてもいいんじゃないかな」

 

オールマイト「…………」

 

オールマイトは嫌な予感がした。

 

僕らの身の心配ではない。寧ろ自分の事だ。

 

根津校長は反対側のソファに腰掛けて続けて話し始める。

 

根津「現に今回だって最後の十数分しか出れないんだろ?」

 

根津「こっちから薦めたからあれこれ言う訳にもいかないけどさ」

 

根津「引き受けた以上は教職優先で動いて欲しいんだよ学校側からすればね」

 

根津「この街にも何十ものヒーロー事務所がある」

 

根津「手柄を一人占めにしちゃ皆から嫌な目で見られるぞ?」

 

オールマイト「そ…そもそもヒーローは利益目的で活動してる訳ではありませんし…」

 

オールマイト「だからこそ…今USJに向かおうとですね…」

 

切磋琢磨に弁解し説得しようとするが…

 

肝心の校長はお茶を淹れ始める。

 

これは……

 

根津「今行ったってすぐ戻る羽目になるだろう?」

 

根津「だったらここで私の教師論を聞いて今後の糧としたまえよ」

 

根津「そちらの方がいい時間の費やし方だと思うよ僕は」

 

オールマイト(ムムム…校長は一度話し始めると2、30分は解放してくれないぞ?)

 

オールマイト(……まぁあっちには相澤君や13号君がいる)

 

オールマイト(少し聴いたらすぐ向かおう)

 

今すっごいピンチなんですが。

 

まさか敵が雄英に襲来してきたとは予想だにもせず…

 

渋々校長のお話を聞く事にしたオールマイト

 

根津「えーまずヒーローと教師という関係の脆弱性と負担について」

 

オールマイト「…お変わりありませんね、先生も」

 

根津<80大先輩って凄いと思うだろ?

 

オールマイト<80?

 

 

 

 

 

 

【入口前】

 

入口付近に取り残された生徒と13号さんはワープホールの敵と再び対峙していた。

 

黒霧「……」

 

13号(物理攻撃無効のワープか)

 

13号(厄介な奴を手懐けたもんだ…)

 

13号「…副委員長」

 

八百万「何でしょう」

 

13号「……万に1つ…我々に希望があると言えば…?」

 

八百万「…………そう…ですね」

 

返事をした後数秒考え込む。

 

少し間を空けてから1人の生徒の名前を呼んだ。

 

八百万「飯田さん」

 

飯田「俺…か?」

 

八百万「貴方、入口(あそこ)まで真っ直ぐ走ってどれぐらいで着きますか?」

 

飯田「……」

 

飯田「10…いや、8秒あれば…」

 

八百万「ではそちらに賭けた方がいいですわね……」

 

飯田君の言葉を聞くや1つの決断を下す。

 

周りの生徒全員に聞こえるように大きくはっきりとした声でこう伝える。

 

八百万「副委員長指示です!!飯田さんはUSJから出てすぐに先生方に救援を!」

 

八百万「他の方々は入口までへの誘導andサポート!!」

 

A組「承知!!」

 

飯田「お…おい待て!何故クラスメイトを置いて1人でなど…」

 

13号「警報も鳴らず、電話も圏外になっていました」

 

13号「ここの警報は赤外線式です」

 

13号「下で先輩…イレイザーヘッドが個性を消し回っているにもかかわらず無作動…」

 

13号「これは恐らく誰かそれらを妨害可能な個性が居て、即座に隠したのでしょう」

 

13号「それらを見つけ出して倒す…という方法にはかなりのリスクがかかる」

 

13号「八百万さんの作戦が一番最善な策だと思います」

 

飯田「し、しかし…」

 

砂藤「早く行け!外には警報がある!だからこいつら中だけで事を起こしてんだろう!?」

 

瀬呂「逃げ切れりゃこっちのもんだ!お前の脚でモヤを振り切れ!」

 

13号「救う為に…個性を使ってください!」

 

飯田「!……」

 

麗日「私達…サポートなら出来るから…!する!から!!」

 

麗日「お願いね元委員長!!!」

 

飯田「っ!!」

 

 

そうだ。元々飯田君が委員長になる筈だったのだ。

 

それ程クラスからの信頼が厚かった。

 

だからこそ…この危機的状況において皆から命運を託された…

 

その事をようやく理解し、飯田君は頷きながら静かに覚悟を決める。

 

 

飯田「……分かった」

 

黒霧「手段が無いとはいえ…」

 

黒霧「敵前で策を語る阿保が居ますか!!?」ゴオオッ

 

敵は再度身体を霧にしてこちらに襲い掛かる。

 

13号先生は指先にあるフタを開けブラックホールの態勢に入った。

 

13号「バレても問題ないから…」ボコッ…

 

シュゴォォッ……!

 

13号「語ったんでしょうが!阿保っ!!!」ゴオッ!!

 

 

 

 

 

 

 

【水難ゾーン】

 

戦わなきゃ生き残れない。

 

とにかく作戦を模索して早く相澤先生に合流しないと…

 

最低でも僕と蛙吹はそう感じていた。

 

 

 

 

が、まぁ皆が皆納得するはずが無く…

 

峰田「何が戦うだよバカかよぉめぇら!!」

 

峰田「オールマイトブッ倒せるかもしれねー奴らなんだろ!?」

 

峰田「矛盾が生じてんぞ緑谷ぁ!!!」

 

峰田「雄英ヒーローが助けに来てくれるまで大人しくが得策に決まってらいっ!!」

 

緑谷「峰田君あの敵達明らかに水中戦想定してるよね」

 

峰田「ムシしやがった……」

 

峰田(くそ…2人相手とはいえこれじゃプライドが傷ついたぜ…」

 

蛙吹「そもそもプライドあるの貴方」

 

峰田「お?」

 

心の声漏れてる漏れてる。

 

蛙吹「これを見る限りじゃ敵達はこの施設の設計も把握して人員を集めたって事になるわね」

 

蛙吹「ここまで周到に準備してる連中にしちゃ少し謎な所があるわね」

 

緑谷「…気づいた?」

 

峰田(勝手に話進めてやがる…しかもついていけねぇ…)

 

峰田(完全に赤ん坊扱いしてやがる!!)

 

蛙吹「生徒の事も知ってるなら勿論相手が有利になる様な場所には転送しないでしょうね」

 

緑谷「ああ。本人曰く水難の独壇場だ」

 

緑谷「態々味方がやられる様な事はしない筈…」

 

峰田「だからつまりどういう事なんだよお!!」

 

緑谷「つまり…僕らの個性までは把握出来てないって事だ」

 

緑谷「だからこうしてバラバラにして数で攻め落とす作戦にしたんだろう」

 

峰田「…!成る程」

 

緑谷「数も経験も劣る…勝利の鍵は1つだ」

 

緑谷「奴らにとって僕らの個性と実力は未知数だって事……!!」

 

 

 

 

 

 

とりあえず軽く僕らの個性についての情報を交換した。

 

まだ初めて会ってから数日しか経ってないからね。

 

全員の個性を覚えている訳じゃない。

 

蛙吹さんの個性は以前にも言った通り舌を伸ばしたり壁に張り付く…後跳躍。

 

僕はビーム、飛行……後その他。

 

そして峰田君は……

 

ブチッ

 

ペタッ

 

緑谷 蛙吹「「……」」

 

峰田「くっつく。俺が触ると跳ねる」

 

峰田「もぎ取りすぎると血出る以上」

 

緑谷 蛙吹「「…………」」

 

前の話で解説してるからって反応に困ってしまうから雑に概要言うのはやめてくれ…

 

僕と蛙吹さんはお互いを見つめながら掛ける言葉を探していた。

 

峰田「だから言ってんだろ大人しく助けを待とうってよお!!オイラの個性はバリバリ戦闘に不向きなーーーー」ドバババ…

 

時間切れでした。

 

泣き喚きながら挫折する峰田君。

 

何とか誤魔化して機嫌を取ろうとするが…

 

緑谷「いっいやすごい個性だから今活用法を…」

 

ガギッ!!!

 

緑谷 蛙吹 峰田「「「…へ」」」ゴオオオッ!!!

 

突如載っていた船に大きな亀裂が入る。

 

敵の個性だ。水を操って大きな刃にしたんだ。

 

敵「じれったいだけだ。ちゃちゃっと終わらそう」

 

蛙吹「なんて奴…船が割れた」

 

緑谷「くそ…もうここには留まれ…」

 

峰田「……ぅ…ぅ」

 

緑谷「峰田…君?」

 

峰田「うわあああああっ!!!」ブチブチッ!

 

ブンブンッ

 

蛙吹「っ峰田ちゃん!」

 

とうとう気が狂ってしまったのかヤケクソになって頭のブヨブヨを大量に千切って海に投げつける。

 

呼びかけても反応してくれない…まずい発狂してる。

 

必死に泣きながらこっちを振り向く。

 

峰田「うわああああっ!!」

 

緑谷「ちょ…峰田君!とりあえず落ち着いて!」

 

緑谷(やばい…敵に個性がバレる!)

 

直様海の方に振り向くと…

 

敵「かっ…きもちわり」バシャバシャ…

 

プカプカと浮かんできた黒い球体が身体に触れない様に水で距離を置く。

 

緑谷(……警戒してる…触ってないぞ!)

 

緑谷(……)

 

敵「へっ。船は1分と持たねぇ」

 

敵「水中に入りゃ100パー俺らの勝ちよ」

 

峰田「ごもっともでございます魚人様!!」ガシッ!

 

手すりを両手で掴み船にしがみつく。

 

またスランプにはまってしまう。

 

流石の梅雨ちゃんもここまで来ると呆れ果てて反応し切れない。

 

蛙吹「峰田ちゃん…本当にヒーロー志望で雄英来たの?」

 

峰田「うっせぇぇっ!!!」

 

峰田「怖くない方がおかしいだろーがよ!ついこの間まで義務教育受けてた中坊だったんだぞ!?入学してすぐ殺されそうになるとは思わねぇだろ!?いやまぁ実際何度か死にそうになった時とかあるけどさぁ!ああ!せめてヤオヨロッパイぱふぱふしてから

「『敵が勝利を確信した時が大きなチャンス』」

 

 

 

 

峰田「……へ?」

 

緑谷「昔…情熱大陸でオールマイトが言ってたよ」

 

峰田「…だから何だって…」

 

緑谷「そうだよな。僕は委員長だ」

 

緑谷「なら…ちゃんと()()()を誘導させないと…な」

 

緑谷「峰田君」

 

峰田「……俺?」

 

 

 

 

 

 

敵「ピーピー喚いて…やっぱガキだな」

 

敵「油断だけはするなと死柄木さんが言ってただろが」

 

敵「歳で判断すんじゃねぇ…個性を見ろ。常識だろ」

 

敵「水中じゃ俺達の個性が確実に有利なんだからよぉ」チャプチャプ…

 

敵「違いねぇ」

 

敵達は僕らの潜水を今か今かと待ち構えていた。

 

水をチャプチャプ言わせながら直ぐにでも攻撃できる様態勢を構える。

 

緑谷「……」

 

ダンッ

 

敵「飛んだ!」

 

敵「そばかすの野郎か!」

 

僕は手すりを勢いよく踏み切る。

 

そのまま舞空術で空を飛び円陣になっている敵達の中心のほぼ真上まで来た。

 

緑谷(ここら辺か…)

 

敵「ちっ…あいつ飛ぶから水中に落とせねぇじゃねぇか」

 

敵「なぁに…遠距離で攻撃すりゃいい話よ」

 

緑谷「…」バッ

 

敵「…?んだあの構え」

 

緑谷「か…め…」

 

敵「何か言ってるぞ」

 

緑谷「は…め……!」

 

ギュルルッ!

 

敵「!?」

 

驚くのも無理はない。手と手の間から謎の光が現れたんだからな。

 

両手に気を集中させかめはめ波の態勢を整える。

 

蛙吹「行くわよ緑谷ちゃん!」ダンッ!

 

峰田「うごあっ!?」

 

僕がかめはめ波を撃つすんでのところで峰田君を抱えながら高く飛び上がる。

 

流石蛙。ジャンプ力がえげつない。

 

っとと。そんな事してる場合じゃないな。

 

緑谷「波ぁぁああああっっ!!!」ボオオッッ!!

 

ザバァァッ!!

 

敵「うおおっ!?」

 

海のほぼど真ん中にかめはめ波を撃ち込む。

 

その強い衝撃により巨大な波が起こる。

 

蛙吹「……わお」

 

峰田(……)

 

峰田(なんでだよ…おめぇ…)

 

峰田(初日の時からずっと……)

 

峰田(なんでそんな笑ってられんだよ…怖くねぇのかよ…)

 

峰田(まるでオールマイトじゃねぇかよ…)ブチブチッ…

 

緑谷「峰田君っっ!!今だ!」

 

峰田(……カッケェ事ばかりしやがってぇぇぇっっ!!)ボボボボ…

 

敵「!?」

 

峰田「だだだだだだだだっっっ!!!」

 

峰田(俺だって…俺だってぇぇっ!)

 

再び頭のブヨブヨを水中にいる敵達に向かって投げまくる。

 

千切りすぎて次第にマスクの中から流血してきた。

 

だがそんな事は気にせず千切まくってひたすら球体を落とし続ける。

 

次第にブヨブヨは敵達の身体にくっついていき…

 

敵「…っだこれ取れねえ!」ベタッ…

 

ベタッ!

 

敵「お、おいくっついちまったよ!」

 

敵「ダメだ!身動き取れねぇから離れられんねぇ!!」

 

終いには水難ゾーンにいた全ての敵がブヨブヨによって1つの巨大な塊と化した。

 

無論こんな状態で泳げる訳もなく…

 

ゴオオッ…

 

敵「やべえ!中心の穴に…」

 

蛙吹「水面に強い衝撃を与えたら広がってまた中心に収束するから…」

 

ザバァァッ!!!

 

敵達「うおおおああああっ!!??」

 

蛙吹「一網打尽って訳ね」

 

バシャァッ!!!

 

波に引きずり込まれた敵達はやがて中心に流され高く跳ね上がる。

 

そのまま落下していき思い切り強く水面に叩きつけられた。

 

コレでしばらくは追ってこれまい。

 

蛙吹「第1関門突破って感じね。凄いわ2人とも」ダキッ

 

蛙吹「……え?」

 

緑谷「大丈夫?蛙吹さん」ゴオオッ…

 

蛙吹さんの飛行はあくまで跳躍だ。落ちる前に掴まないと…

 

そう思い蛙吹さんを抱きかかえた。

 

…最悪のやり方で

 

峰田「…ぁぁ…ぁ…っ」

 

緑谷「?どうしたの?峰田君…まだ敵でも…」

 

蛙吹「緑谷ちゃん…お姫様抱っことは積極的ね」

 

緑谷「わわわっ!?ご…ごめん!!」

 

蛙吹「……ありがと」

 

ニッコリと笑いながらそう言ってくれた。

 

ったく…礼を言うべきなのはどっちだって話だ。

 

君がいなかったら峰田君は今頃魚の餌になってたよ。

 

…でも…

 

緑谷(嬉しいよ、そう言ってくれると)

 

峰田(後でぶっ殺してやる!)

 

緑谷「……さてと…」

 

峰田「今朝快便だったし1日以上はくっついたまんまだぜ奴ら」

 

峰田「ザマァねぇな」

 

蛙吹「でも一息つく暇はないわよ」

 

緑谷「ああ。とにかく今は助けを呼ぶのが最優先だ」

 

緑谷「広間を避けて水辺に沿って入口に向かえばすぐに出れるはずだ」

 

緑谷「敵達とも鉢合わせせずに済む」

 

峰田「まずそもそも空中だから攻撃できないwwファーww」

 

蛙吹「黙れ小僧」

 

峰田「ダニィ!?」

 

緑谷「いや…」ヒュゥゥ…

 

チャポン…

 

足がつく程度の深さの場所の海で静かに着地した。

 

抱えていた2人を下ろし、ゆっくりと歩き始めた。

 

緑谷「ここからは歩いていく」

 

蛙吹 峰田「「え?」」

 

緑谷「空に誰も居ないって事は逆にバレやすいって事だ」

 

緑谷「何より黒い敵の個性を考えると怖い点もある」

 

緑谷「ここは素直に歩いて入口まで行こう」

 

蛙吹「……まさか緑谷ちゃん…」

 

峰田「おいおいおい!?そりゃねぇぜ?なぁ」

 

2人とも鋭いな。勿論目立つっていうデメリットもあるけど何より僕が心配しているのは…

 

相澤先生だ。広間で大勢敵を引きつけてくれてはいるが…そろそろスタミナ的にも危ない。

 

あの大きい気を持っている奴がそこにいる以上僕が対峙して時間稼ぎをする他ない。

 

緑谷「邪魔になる様な事は考えていないよ」

 

緑谷「ただ…先生は制圧するつもりで突っ込んだんだろうけど…僕達を守る為に無理通してると思うんだ」

 

緑谷「少しでも負担減らせれば……」

 

蛙吹「……」

 

初戦闘にして…初勝利。

 

これが勘違いだった。

 

僕達の力が敵にも通用するんだと……

 

そう錯覚してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【土砂ゾーン】

 

轟「……おいおい。子供1人に情けねえな」

 

轟「しっかりしろよ、大人だろ?」

 

土砂ゾーンとは言うものの…

 

轟君が転送されて数秒後には全く別の地帯になってしまっていた。

 

周りの土は全て氷漬けにされ、敵達はあっという間に動けなくなってしまった。

 

流石は体力テスト3位…推薦入試で上がってきた事だけある生徒だ。

 

 

轟焦凍。個性【半冷半燃】

 

身体の左半分で相手を燃やし、右半分で相手を凍らせる。

 

ご覧の通り個性の速効性といい、汎用性といいチートじみた能力だ。

 

…左はまだ氷溶かす時しか見た事ないけどね。

 

 

敵「こいつ…移動してきた途端に…いってて」

 

敵「15のガキなのかねホント…」

 

身動きは取れないもののまだ口を開ける程度の気力は残っていた。

 

まぁその程度で済む様に轟君がコントロールしただけなんだけどね。

 

轟君は敵のあまりのあっけなさに呆れてしまう。

 

轟「散らして殺すか…」

 

轟「言っちゃ悪いがあんたらどう見ても…」(ダダッ

 

敵「うおおっ!」プンッ

 

スカッ

 

轟「【個性を持て余した輩】以上には見受けられねぇな」ガシッ

 

敵(気づいただとぉぉ!?)パキパキ…

 

背後からの不意打ちを軽々と避けて持っていた武器を掴んで同時に敵の身体を凍らせた。

 

どうやら崩壊しているビルに1人隠れていたらしい。

 

その努力も虚しく今度こそ土砂ゾーンの敵達が全滅する。

 

轟(オールマイトを殺す…ねぇ)

 

轟(初見じゃ精鋭揃えて数で押さえるのかとおもいきやフタを開けりゃこのざまだ)

 

轟(ただの三下、生徒用のコマじゃねぇか)

 

敵(見た限りじゃ本当にやばそうなのは3〜5人程度…)

 

轟「なぁ…敵さん」

 

今さっき凍らせた敵に話しかける。

 

まぁ反応する筈がないが。

 

敵「………」

 

轟「このままじゃあんたら数分後には壊死していく訳だが…」

 

轟「俺もヒーロー志望。()()()()そういう酷ぇ事は避けたい」

 

敵「!?」

 

できれば…この4文字の言葉が強調され、敵全員がゾッとした。

 

無表情で冷たい眼差しで話していた彼だからこそやりかねんと思ったからだ。

 

轟「あのオールマイトを殺すっつう根拠…策って何だ?」

 

 

 

 

 

 

【山岳ゾーン】

 

ここでは土砂ゾーンとは全く反対の展開が勃発していた。

 

3vs多…人数で言えば轟君よりかは有利に戦いを進められそうだけど……

 

敵「オラァッ!」プンッ!

 

スカッ

 

上鳴「わっとと…危ねぇ!」

 

敵のパンチを間一髪しゃがんで回避した。

 

尚敵はまだ10人以上いる模様。

 

上鳴「怖えええ!!マジ!!今見えた!三途見えたマジ!!!」

 

上鳴「何なんだよこいつらは!!どうなってんだよ!!!」

 

「そういうの後にしよ。今はこの数どう乗り切るか」

 

芦戸「まだ沢山いるぞー…」

 

「つーかあんた電気男でしょ!?バリバリッて一掃しなよ!」

 

上鳴「んだーーもう!戦闘訓練の時も言ったろ!?ペアだったろ耳郎!?」

 

上鳴「俺ァ電気を纏うだけだ!放電出来るけど操れる訳じゃねー!」

 

上鳴「おめえらも巻き込ん仕舞うのよ!あれ!轟と似た様な感じ!!」

 

上鳴「助け呼ぼうにも今特別電子変換無線(こいつ)ジャミングやべえしよ!」

 

上鳴「つーワケで現在俺は頼りになんねー!頼りにしてるぜ耳郎!芦戸!」

 

耳郎「っまぁ男の癖にウダウダと…」

 

耳郎「んじゃ人間スタンガンッ!」ドガッ

 

そう言うと上鳴君に近づき強く敵の方に蹴り飛ばす。

 

上鳴「マジかバッ…」ペタッ

 

バチィッッ!!

 

敵「ぐああああっ!?」

 

上鳴「へ?」

 

敵「」ドサッ

 

芦戸「わ…真っ黒だ」

 

触れた瞬間敵に高圧電流が襲いかかる。

 

たちまち電撃を受けた敵は真っ黒焦げとなり、そのまま倒れた。

 

上鳴「あ、通用するわコレ…」

 

上鳴「俺強い!!」

 

上鳴「よし2人共!!俺を頼れ!」

 

耳郎(軽いなおい)

 

敵「調子乗ってんじゃねぇぞクソガキがぁっ!」ブオッ

 

喜ぶのも束の間。今度は横から敵が攻撃を仕掛けてきた。

 

拳を巨大な岩石にし、上鳴君の顔面めがけ腕を振り下ろす。

 

もうその時点で至近距離に敵が迫っていたので避けられる筈もなく…

 

上鳴(やべっ…顔粉々ん…)

 

耳郎「っ!!」ブゥゥン…

 

ビキキッ…

 

敵「ん?」バカッ!

 

敵「…なぁぁあっ!?」

 

耳郎さんのコスチュームのスピーカーから出た音波で手の岩を破壊する事に成功。

 

何とか紙一重で攻撃を避け

上鳴「ひでぶ!」ドゴッ

 

れなかったよ。顔面に10のダメージ。

 

たがただのパンチなので大した傷は負っていない。

 

勿論この隙だらけの瞬間を逃す訳も無く相手の腕を掴み感電させる。

 

ガシッ

 

上鳴「よくもやりやがったなぁオラァァッ!!」バチィッッ!!

 

敵「うおああああっ!!!」

 

シュゥゥ…

 

敵「けぽ…」ドサッ

 

黒い煙を口から排出しながら先程の敵と同様に地面に倒れ込んだ。

 

上鳴「ってぇぇ…けどナイス耳郎!助かったわ!」

 

耳郎「頼りになるんじゃなかったの?」

 

上鳴「ま、お互い様っつー事で」

 

耳郎「何処がだよ」

 

芦戸「仲良いねー2人共」

 

耳郎「生理的に無理だわあんなの」

 

上鳴「酷くありませんかねぇ!?」

 

上鳴「っにしてもキリ無ぇ!どうにかできねぇもんか…」

 

耳郎「酸…電気……」

 

そこで耳郎さんはある方法をひらめく。

 

耳郎「芦戸!あんた周りに酸撒き散らして!強度はどうでもいい!!」

 

芦戸「アイアイサー!」

 

ドバドバ…

 

言われるがままに芦戸さんは上鳴君と耳郎さんにかからないよう周辺に大量の酸をかけた。

 

敵「うっわ!きしょ!」

 

敵「んだこれ…」

 

耳郎「あたしは芦戸のすぐ隣にいる」

 

耳郎「これなら電撃は当たらない」

 

上鳴「…あーなる」バチバチッ

 

どうやら耳郎さんの意図に気づいたらしい。

 

上鳴君は目一杯できるだけの電流を全身に纏わせた。

 

敵「何企んでんのか知ったこっちゃねぇが!!」

 

敵「やっちまえ!!」ダダッ…

 

上鳴「これなら俺は…」

 

上鳴「クソ強ええっ!!」バヂィッッ!!!

 

近距離から遠距離まで広範囲の敵にフルパワーの放電を浴びせる。

 

その強烈な電流は凄まじい閃光が激しく迸っていた。

 

一瞬にして数十もの敵を焼き焦がしてみせた。

 

耳郎「【酸】は電解質…」

 

耳郎「中学のテスト受けてなかったのかい?」

 

 

 

数秒後…

 

耳郎「…うわ」

 

芦戸「めっちゃ綺麗」

 

先程まで存在していた崖などが全て粉々に砕け、山岳ゾーンは見事綺麗な平地に整地されていた。

 

一方上鳴君はというと…

 

上鳴「ウェーイウェイウェイッ!」ブンブン…

 

耳郎 芦戸「「」」

 

芦戸(駄目だこいつ…早くなんとかしないと)

 

口は開きっぱなしで目が宙を泳ぎ更には両腕共に前後にブンブン振っていた。

 

いわゆるアヘ顏的なヤツ(?)だ。

 

これは個性の性質上の問題なのでいきなりイかれたとかじゃないからご心配なく

 

上鳴「ウェーイッ!?」

 

 

上鳴電気。個性【帯電】

 

電気を纏う!感電・放電可能!

 

ただし上限オーバーすると脳がショートする!

 

上記の様になるのでご注意!!

 

 

耳郎「……ぷぷぷ」プルプル…

 

笑ってあげるな耳郎さん…

 

 

耳郎響香。個性【イヤホンジャック】

 

プラグを挿して自分の心音を相手に爆音ボリュームでお届け。

 

だけどまともに食らうと鼓膜が破けたり物体が壊れたりするから注意しよう!

 

後聴力もいい。

 

 

 

 

 

 

 

【広間】

 

こちらの戦況にも変化が表れてきた。

 

ワープホールから最初に出てきたボスらしき人物が突然相澤先生に接近してきた。

 

…何やらボソボソと数字を呟きながら…

 

ダダダ…

 

ボス?「27秒……26秒…」

 

相澤「ようやく本命か」ビュッ

 

ボス?「24秒」

 

相澤「なっ…!!」

 

空かさずその敵に炭素繊維を投げつけるがあっさりと掴まれてしまった。

 

捕縛できなければと接近戦に持ち込もうとする相澤先生。

 

ボス?「20秒」

 

相澤「さっきからボソボソと…」ダダッ…

 

グイッ

 

相手の攻撃の間合いに入り、持っていた捕縛武器を引っ張り敵を近づけさせる。

 

零距離まで接近させ、右肘で凄烈なエルボーを敵の腹部に直撃させる。

 

ボス?「17秒」

 

相澤「気が散る!!!」ズドッッ!!

 

ボス?「……っ…」

 

 

 

…筈がなんとギリギリの所で左手でガードをされていたらしい。

 

相澤先生の攻撃に全く動じていない。

 

目を休める為一回瞬きする。

 

相澤(ちっ…効果無しか)

 

ボス?「動き回るので分かりづらいけど髪が下がる瞬間があるね」

 

ボス?「1アクション終える毎にだ。そしてその間隔は段々短くなっている」

 

相澤(こいつ…まさかさっき口に出していたのはその時間…!?)

 

ボス?「無理をするなよイレイザーヘッド」

 

相澤「ぐお…っあ!?」ボロボロ…

 

ボス?に触れている身体の部分がヒビが入り次第に崩壊していく。

 

この個性に気づくや否や空いていた左腕で敵の顔面を殴り距離を置く。

 

ドゴッッ!

 

ボス?「いってぇ…」ドサッ

 

相澤(右肘が…崩れた!?)

 

敵は相澤先生を見るなり嘲笑いながらゆっくりと立ち上がる。

 

ボス?「ははは…相澤先生…だったっけか?」

 

ボス?「その個性じゃ()()()()()()()()は向いてなくないか?」

 

ボス?「普段の仕事と勝手が違うんじゃあないかい?」

 

ボス?「君が得意なのは恐らく…あくまで【奇襲からの短期決戦】だろ」

 

ボス?「それでも単身立ち向かったのは生徒に安心を与える為か?それとも本気で俺らに勝とうとしてたの?」

 

相澤「……」

 

ボス?「かっこいいなぁかっこいいなぁ」

 

ボス?「ところで…ヒーロー」

 

ズド…

 

相澤「!?」クルッ

 

後ろから重く大きい足音が聞こえてきた。

 

反射的に後ろを振り返るとそこには…

 

 

 

 

 

「ァァッ…」

 

 

 

 

常人よりも遥かにデカイ巨体…

 

石の様に鋭く角ばってしまった歯々…

 

そして脳が剥き出しになっている奇妙な頭部…

 

さしずめ【怪物】と称するべきか。

 

相澤先生はただならぬ怨念のようなものを感知し後ずさりする。

 

その瞬間…

 

 

 

 

 

ドバッッ!

 

 

死柄木(ボス)「本命は…俺じゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…いつの間にか僕達は奴等に舐めてかかってしまっていたらしい。

 

敵の全貌。プロの世界。

 

僕らは何も見えちゃいなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




須井化です…はい。

今回は意外と文字数食って行きたいところまで行けんかった…

飯田君と愉快な仲間達のレースまで進めたかった。

まぁ次回がキリよくなりそうだから結果オーライか。

いかがでしたか。13話は地の文少なかったなぁ…次回からがんばるゾイ。

14話は飯田君が黒霧と仲良く鬼ごっこする回です。

まぁね!原作的に考えれば飯田君が逃げ切れないなんて結末あり得ないからね!

次回は大体原作のコピペかぁぁ!はぁぁ!つまらないなぁ(真顔)!!

…数話振りに挿絵が投稿できそうでオラワクワクすっぞ。

とりあえず14話は須井化的にも楽しみにしてる回なので乞うご期待!

八百万ちゃんも地味に活躍しますぞー(地味というかこっちメインなんやけど…)
飯田<ハァッ☆



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月9日(木)以内に第14話の投稿を予定しております。

お楽しみに!










ブロリー「親父ぃ…」(須井化)

<ブロリー…一体、どうしたと言うんだ

ブロリー「上げるといっておきながら2/6に上げないのはなんなんだぁい?」

<…?2月6日がどう……

<あ、ブロ……

ブロリー「忘れてたんですか?」

<………

<ひ、避難ダァ!(ウィィーン
ブロリー<スローイングブラスター!!(ボーピー

<あーう☆

デデーン…






529999→529998




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第14話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJにて救助訓練最中になんと敵が出現!

生徒達が各ゾーンに散らばってしまうが戦力差を実力で補い見事に敵の猛攻を掻い潜る。

半ば追い詰めたと思いきや敵連合が遂に奥の手出して来やがった!

ってか相澤君!?死んでないよね!?嫌な音したけど!!

更に向こうへ!PlusUltra!!!






13号「今回は結構キツめの暴力表現となっております!閲覧にはちょい注意!」

13号「後入口から芦戸outしてます!訳分からneeeeって方は活動報告をチェック!」

13号「後途中で語り手変わってます!緑→八です!!」

13号「では第14話とくとご堪能ください!」

蛇足多…


【倒壊ゾーン】

 

 

ここでもまた、一方的な戦闘が繰り広げられていた。

 

時折響く爆発音が戦況の激しさを伺わせる。

 

…3分後には決着着いてたんだけどね。

 

 

 

切島「っふぅ……」

 

切島「これで全部か」

 

爆豪「随分呆気ねぇな?おい」

 

 

数十人いた戦闘部隊をあっという間に蹴散らした。

 

元々建物が倒壊していたとはいえ壁にヒビが入ったり穴が空いたりと…

 

この戦いの影響は凄まじいものであった。

 

切島「っしゃ!ひとまず皆の所向かおうぜ」

 

切島「俺達がここに転送されたっつー事は他の奴らも同じくUSJ内にいるはずだ!」

 

切島「攻撃手段持ってねえのが何より心配だ」

 

切島「俺らが先走っちまったせいで13号先生に迷惑かけちまった」

 

切島「じゃなきゃ先生がモヤ吸ってて万事解決だったのによ」(ペタペタ…

 

切島「男として責任取らなきゃ」

 

隙あらばとさっき攻撃を仕掛けた事を負い目に感じているらしい。

 

まぁかっちゃんは何食わぬ顔で話しており反省の色が全く見当たらないんだが。

 

現状を見ると切島君の判断が正しいとは思うけど…

 

爆豪「行きてぇなら勝手に1人でやっとけ」

 

爆豪「俺ァあのワープゲートぶっ殺す」(トトッ

 

切島「はぁ!?此の期に及んでんなガキみてぇな…」

 

切島「それにあいつに攻撃は…」

 

爆豪「うっせ!敵の出入口だぞ」

 

爆豪「いざって時に逃げられたらどうすんだ。今の内に元を締めたらぁ」

 

爆豪「それにあのモヤの対策も無い訳じゃねぇ…」

 

 

 

敵(…あの野郎…)

 

悠々と話している間に敵がかっちゃんの背後まで迫っていた。

 

体色変化の個性であたかもカメレオンかの様に簡単に近づけてしまったのだ。

 

短剣を片手に一気に距離を詰める。

 

敵(さっきからウダウダダベりやがって…!!)ダダッ!

 

敵(その油断がっ)ブンッ

 

爆豪「つーか」ヒョイッ

 

敵「へ」ガシッ

 

ドゴオオッッ!!

 

不意打ち位じゃかっちゃんにかすり傷も与えられないぞ…

 

刃物での刺撃をあっさりかわし敵の頭を地面に叩きつける。

 

更に零距離の爆発のおまけ付きだ。こりゃ痛い。

 

爆豪「俺等に充てられたのがこんな雑魚なら大概大丈夫だろ」ボボッ

 

切島(……は…反応速度速ぇぇ…)

 

切島「そ、そんな冷静な感じだったっけ?お前…」

 

爆豪「俺は常時冷静だクソ髪野郎!!」

 

切島「あーそれそれ安心したわ」

 

爆豪「じゃあな、行っちまえ。後は俺が片付けてやるよ」

 

切島「待て待て待て……ダチを信じる」

 

切島「男らしいぜ!爆豪!!」

 

切島「ノったよおめぇに!!!」

 

 

 

 

 

【入口前】

 

ゴォォッ…

 

13号「っが……」

 

麗日「…じゅ…13号ぉぉっっ!!」

 

瀬呂「っそだろ…」

 

黒霧「13号…災害救助で活躍するヒーロー…」

 

黒霧「やはり戦闘経験では一般ヒーローに比べ半歩劣る」

 

ブラックホールの先にワープゲートを作り、13号先生の真後ろに移動させる。

 

皮肉にもそれにより己の個性の矛先が向いた。

 

宇宙服ごと、肉体がバラバラに分解されその破片がブラックホールに吸収されていく。

 

咄嗟にフタを閉め、個性の発動を停止したが時既に遅し。

 

そのまま前に倒れて気絶する。

 

13号(しくじっ…た)

 

ドサッ

 

黒霧「まず1人目…」

 

飯田「くそっ…」

 

黒霧「では…他の方々も私直々に殺して差し上げましょうか」

 

八百万「…っすみません。13号先生……!!」ズズッ

 

黒霧「む」

 

何やら八百万さんが創造したみたいだ。

 

ある物を掌から出現させる。

 

八百万「これ…何だか分かるかしら」ピッ

 

黒霧「手榴弾…でしょうか」

 

八百万「ご名答っ!!」ブンッ!!

 

ピンを外し敵に投げつける。

 

爆発など効かない…そう思い黒霧は平然としていた。

 

八百万さんが狙っていたのはこの隙だ。

 

手榴弾は敵にギリギリ当たらず真下の地面に落下する。

 

黒霧「……何を…」

 

敵の頭の中である違和感を感じていた。

 

その途端、手榴弾から煙幕が噴き出してきた。

 

爆発はフェイクだったのだ。

 

黒霧「ごほっごほっ…」

 

黒霧「何が狙いかは知りませんが」

 

黒霧「煙など一瞬で…」ズズッ

 

そう言って煙幕をワープで取り込み視界を取り戻す。

 

よく目を凝らして1-Aの生徒達を見ると…

 

すぐ数秒前の様子と違う事に気がついた。

 

生徒が1人足りない。

 

直様後ろを振り返れば疾走している飯田君の姿が…

 

飯田「くそっ…!」ブロロ…

 

黒霧(喰らいもらした子供…速い個性の奴を行かせるために視界を!?)

 

八百万「ふっ…」

 

黒霧「待つべきはあくまでオールマイト」

 

ゴォォッ!

 

飯田「なっ…!」

 

ワープに距離も時間も関係ない。

 

1秒足らずで飯田君の目の前に移動する。

 

黒霧「他の教師の方々も呼ばれてはこちらも大変ですので」ゴオオッ…

 

飯田(駄目だ…ワープにはまる!!)

 

飯田(皆を!僕が!任された!!)

 

 

緑谷『どんな時でも冷静に分析して判断するのに長けているから僕は適役だと思うけどな…』

 

 

飯田(クラスを!!僕が!!!)

 

ワープに吸い込まれる……

 

 

 

 

その寸前で障子君が駆けつけた。

 

翼の様に大きく広げた両手で敵の闇を覆い尽くす。

 

障子「ぐっ…」ガバッ

 

飯田「しょ…障子君…!」

 

障子「早く……行け!!」

 

飯田「すまない!!」ダダッ

 

味方の協力を得て、再び走り出す飯田君。

 

だがこの時間稼ぎも長くは続かなかった。

 

僅かな腕と腕の隙間から霧が表れる。

 

逆に障子君がその闇に包まれてしまった。

 

障子「ぐおっ!?」

 

黒霧「ちょこざいな…外には出させない!!」ゴォォッ

 

無事抜け出せた敵は飯田君の元へ急いで行く。

 

時間稼ぎもままならない現状では敵の個性に

対処しようがない。

 

皆はただ捕まらない事を祈って待つ事しかできなかった。

 

八百万(まずい…追いつかれる!)

 

八百万(せ、せめて…せめて一瞬でも隙を作れたら…)

 

麗日「…」チラッ

 

13号「」

 

麗日「13号………」

 

地面に倒れ込んでいる13号先生を数秒見つめると…

 

ある決意をする。

 

麗日「っ!!!」ダダッ

 

八百万「!?」

 

突然敵と飯田君に向かって走り出した。

 

今更追いかけても無駄なのに…誰もがそう思っていた。

 

だが…

 

瀬呂「おい!麗日どこに…」

 

麗日「皆!!アレ見て!!」

 

敵の方を指差しながらそう叫ぶ。

 

砂藤「見てって…ありゃただの…」

 

八百万「……服!?」

 

…ようやく全員おかしな点に気がついた。

 

そう。彼はワープゲートを作りながらも服を身につけている。

 

当然の事かもしれないが…単純に考えれば普通個性発動時には着用出来ないはずなのだ。

 

つまり…

 

 

 

飯田「…自動ドア!!」

 

とうとう残す所10m程となった。

 

目の前に巨大な自動ドアが立ち塞がる。

 

勿論悠長に開くのを待つ時間など無い。

 

飯田(蹴破るか!!…蹴破れる厚さなのか!?)

 

飯田(ええい!当たって砕けろだ!!!)ダダッ

 

ドアに向かって一直線に走って行く。

 

が、目前で敵に追いつかれてしまった!

 

飯田「!!しまっ…」

 

黒霧「往生際が悪いぞメガネ」

 

黒霧「終わりだ!!」ゴオッ…

 

振り切れる訳も無くただ敵のワープホールに突っ込んでいくが…

 

グオッ…

 

飯田「っ!?」

 

黒霧「な…まさか!!」

 

突如敵の身体が上空に舞い上がる。

 

麗日さんが敵の身体に触れて無重力にさせたのだ。

 

そう……こいつ実体はあるのだ。ならそこを狙えばいい。

 

麗日「理屈は知らへんけど…」

 

麗日「こんなん着とるなら実体あるって事じゃないかなぁぁあああっ!!」

 

大きく叫ぶと同時に両腕を上げ敵を遥か上空にへと吹っ飛ばす。

 

追い討ちをかけるかの様に瀬呂君は隙を見て敵の服に自分のテープを貼り付けた。

 

瀬呂「これなら逃げらんねぇだろ?」ブチッ!

 

テープをある程度伸ばした瀬呂君は砂藤君にそれを手渡す。

 

さぁ糖分の力を思い知れ、

 

テープを強く振り回し思い切り振り回す。

 

そして勢いよくぶん投げる。

 

砂藤「うおおおっ!!」ブオッ!!

 

黒霧(まずい…今からワープしても…!)

 

黒霧(逃げられる!!)

 

八百万「行ける…行けますわ!!」

 

瀬呂「行ったれ飯田ぁぁあああっ!!」

 

飯田(後数m……)

 

飯田(間に合うぞ!!)ダダッ

 

麗日「よ、よかった……」

 

誰もが勝利を確信していた。

 

先生達が来る…助かるんだ。

 

僅かではあるが絶望が小さな希望へと変わっていったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

だが、それは単なる馬鹿げた幻想に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

シャッ

 

麗日「…っ…あっあかん!離れて飯田君!!」

 

飯田「?」クルッ

 

急に大きな声で麗日さんに呼ばれたので反射的に後ろを振り向いた。

 

するとそこには……

 

 

バギイッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

【暴風・大雨ゾーン】

 

ここでは常闇・口田ペアが多数の敵達と対峙していた。

 

このゾーンは他の所よりも特異で大きな1つの室内となっている。

 

頭上の屋根からは激しい豪雨が降り注ぎ、壁からは強い狂飆が吹いている。

 

 

 

敵「っんだあいつ…」

 

敵「あれだけ攻撃したってのにノーダメージて…」

 

常闇「はぁ…はぁ…」

 

口田(大丈夫?常闇君)ススッ

 

個性の黒影(ダークシャドウ)を駆使し、圧倒的な力で敵達を薙ぎ払う。

 

だが体力の消耗からか息切れを起こしている常闇君。

 

手話で話しながら口田君が心配するが…

 

常闇「長時間個性を使ってきた作用か…」

 

常闇「静まれ…黒影!!」

 

黒影<ジレッタイ!ミナゴロシニスレバスムハナシダ!

 

常闇(天候が…最悪だ!)

 

常闇(こんな暗い場所じゃ長期戦は禁物だというのに…!!)

 

常闇「言う事を…っ!!」

 

敵「何だか知らねぇが怯んでる!」

 

敵「好機っっ!!!」ダダッ

 

隙あらばと敵が大勢で迫ってきた。

 

どうやら黒影のコントロールが効かなくなったらしい。

 

常闇君はその場に立ち竦んだまま動けなくなってしまう。

 

常闇「くっ…」

 

口田「……っ!」

 

口田(間に合って…!!)

 

……ビキ

 

ズドォッ!!

 

敵「な、なんだ!?」

 

壁にヒビが出き、巨大な穴が開く。

 

なんとそこから何十羽もの鳥の大群が敵に襲い掛かる。

 

敵「ビビんな!!ただのチキンだ!」

 

敵「3秒で丸焼きにしてやるよ!!」ジャキ…

 

銃など遠距離攻撃で迎撃しようとするが…

 

敵「っ!!」バンッ

 

スカッ…

 

敵「チッ!」

 

敵(数の多さとすばしっこいので標的が定まらねぇ!!)バサバサッ…

 

敵「ん」

 

ズッ!!

 

敵「痛ええっ!!?」

 

攻撃に物ともせず敵の頭を強く突いていく。

 

鳥に気を取られている内に口田君は常闇君を抱え先程開いた穴へと走り出す。

 

常闇「す…すまない」

 

口田(それはこっちの台詞だよ)ススッ

 

口田(君が鳥達が来るまでの時間を死にものぐるいで稼いでくれたんだ)ススッ

 

口田(僕にも少しは協力させておくれ)ススッ

 

常闇「助かる……」

 

 

 

 

 

 

 

 

【火災ゾーン】

 

尾白「はぁっ!!」バキッ!!

 

敵「がっ」

 

敵の後頭部に尾白君の蹴りがクリーンヒットする。

 

急所を的確に狙い大抵の敵はたった1発でKOされる。

 

尾白「ふぅ…」

 

尾白「粗方片付いたかな」

 

尾白(くっそ…他の皆とは違って僕の個性戦闘向きじゃないからなぁ)

 

尾白(だから空手とか習ってるわけなんですが)

 

尾白「兎に角先生達と合流しよう」(ボコボコ…

 

尾白「確かうろ覚えだけど地図だとここは…」ゴッ…

 

尾白「っと!!」スカッ

 

敵「お」バチバチッ…

 

数m離れた後ろの地面から大柄な敵が現れた。

 

電気系統の個性を使うマスク男だ。

 

攻撃に当たる寸前で気配に気付き受け流す。

 

尾白「まだ居たのか…」

 

敵「そんじょそこらの愚図供じゃ相手にならんかったか」

 

敵「いいさ俺が相手してやるよ」

 

尾白「これまた強そうなのが来なすった…」

 

敵「2つ…いい事を教えてやる」

 

尾白「?」

 

敵「1つ…」

 

敵「俺はバナナが大っ嫌いだ」

 

 

 

尾白「……」

 

尾白「は…はぁ」

 

わざとボケて相手の隙をつきたかったのか…或いは元々天然(そう)なのか…

 

ある意味衝撃的な台詞に尾白君は反応に困った。

 

だが重要な情報は2つ目のいい事。

 

敵「2つ……この襲撃はオールマイト殺害だけが目的じゃない」

 

敵「長には[お前の確保】も命じられている」

 

尾白「!?」

 

そう…中には僕達が知らない間に狙われていた生徒も存在している。

 

どうやら敵連合は生徒の情報が()()()()という訳ではないらしい。

 

まぁこのフォーメーションを見る限りじゃ個性や特徴を把握し切れていてはいないという点には変わりないのだが…

 

様々な疑問が残るが1つ確信できる事はあった。

 

目の前にいる敵は二流三流の相手では無いという事…

 

尾白(僕が狙われる理由を知りたいがそれ所じゃない)

 

尾白(ターゲットである自分に向けられた刺客だ…)

 

尾白(一筋縄じゃ行かない……)

 

敵「言い残す言葉はあるか」

 

尾白「そっくりそのまま返すね」

 

敵「そうか」

 

敵「なら逝け」ダダッ…

 

尾白「…!!」

 

 

戦って勝つしか…道は無い

 

そう覚悟を決め敵に勇敢に闘いを挑んでいった。

 

 

 

 

 

【入口前】

 

 

 

 

 

 

 

飯田「……ぁ…っ」

 

 

 

 

 

「……」

 

八百万「……ぅ…そ……」

 

一体何が起こったのか…

 

全員が呆然とする他なかった。

 

つい数秒前まで自動ドアにいた筈の飯田君がいきなり消えたと見るや右を向くと…

 

壁に深くめり込みコスチュームの一部が凹み損傷している…飯田君の無惨な姿が目に入った。

 

そして再び入口を見ると…

 

巨大な【怪物】がそこに仁王立ちしていた。

 

全身が真っ黒に染まっていたり眼がギョロッと飛び出ていたりなど…

 

もはやそれは【人】の()()とは遠くかけ離れていた。

 

敵連合ではこいつらの事をこう呼称する。

 

 

 

 

死柄木「対平和の象徴」

 

死柄木「改人【脳無】」

 

 

 

 

 

 

八百万(おかしい…おかしいおかしいおかしい!!)

 

八百万(確かに他の敵達は全員相澤先生が…)

 

八百万(見過ごす筈が無い…つ…つまり……相澤先生は……!!)

 

八百万(いえ…今はそんな事を考えている暇は…)

 

八百万「皆さっ」

 

焦燥感に駆られながらも指示を出そうと口を開いた……

 

その瞬間

 

 

 

シャッ

 

麗日「へ」

 

脳無「ッ」ブンッ

 

ズドォォッ!!

 

八百万「……ん………」

 

ミシミシ…

 

麗日「うっ…かはっ………」

 

麗日「っえ…!」ドバッ

 

ドサッ

 

 

 

麗日さんは脳無の攻撃を諸に食らってしまう。

 

その拳は麗日さんの腹部に極限までめり込み、容赦無く臓器を押し潰す。

 

酔いとか…そんなレベルじゃない。

 

今までの比にもならない程の吐き気に襲われ地面に激しく嘔吐する。

 

そのまま倒れすぐに動きが停止された。

 

 

八百万(…そんな…馬鹿な事…)

 

八百万(私…これじゃ…殺され……)

 

八百万(って何言ってるの!私は…ほ、他の人達を…)

 

死ぬ…そんな恐怖に怯えながらもまだ副委員長のプライドは捨ててはおらず一刻も早く行動を起こす様自分に言い聞かせる。

 

だが…足が動かない。

 

頭の中で理解はしていても身体が言う事を聞いてくれない。

 

 

 

 

 

 

 

バギィッッ!!

 

八百万「!!」

 

バリィッ

 

瀬呂「ぐぁ…っ」

 

脳無「……」

 

 

そうこうしている間に次の標的を定める。

 

瀬呂君だ。

 

1秒足らずで彼の目の前に移動し、強力な蹴りを彼の顔面にお見舞いする。

 

ヘルメットは一瞬にして粉砕され、シールドの破片が地面に飛び散る。

 

無論その破片は瀬呂君の顔にも降り注ぐ。

 

顔に切り傷をつけながらとてつもない速さで吹っ飛ばされる。

 

瀬呂「っ…」ヒュゥゥ

 

ズザザ…!

 

そのまま地面に落下しても尚勢いは殺されず地面を滑っていく。

 

動きが止まった頃には既に敵の攻撃のダメージと地面との摩擦で生じた高熱に耐えきれず意識がなくなってしまっていた。

 

砂藤「っ野郎!」

 

障子「お、おい待て砂藤……」

 

脳無に向かって走り出す砂藤君を必死に呼び止めようとするが…

 

シャッ

 

脳無「……」

 

砂藤「な…」ガシッ

 

走って間も無く脳無との距離を詰められる。

 

気づけば彼の腕は脳無の餌食となっていた。

 

右手首を掴まれ、強く圧縮し始めた。

 

ギュゥゥゥゥ

 

砂藤「ぐっ…ぉぉああっ!?」

 

その潰れる音はいつしか折れる音と化し…

 

バキバキと痛々しい音を響かせながら脳無は砂藤君の身体を徹底的に破壊していく。

 

…気が済んだのか突然握力を弱めていく。

 

砂藤「ぅぅっ…あ…めぇ……!!!」

 

脳無「…」グオッ

 

砂藤「うぉっ!?」

 

ブンッ!!

 

身体を回転させ壁に向かって砂藤君を投げ飛ばす。

 

ガッッ!!!

 

砂藤「……ぉあっ…」ヒュゥゥ…

 

ドサッ

 

壁に思い切り叩きつけられ、静かに地面へ落下していく。

 

その時に衝突した際に起きた衝撃も尋常ではない強さだが…

 

最も大きい傷を負ったのは先程の手首だろう。

 

骨は完全に折れておりプラプラと垂れ下がってもはや手は機能しなくなってしまっていた。

 

障子「くそ…どうにかして入口まで…」

 

ゴオッ

 

障子「ぶっ…!!」ズドォォッ!!

 

脳無「…」

 

死柄木「顔面がミンチになったよやったねモブちゃん」

 

今度は障子君の顔に強烈なエルボーが炸裂する。

 

鼻や口から出血し、頭蓋骨にヒビが入る様な音がする。

 

更にその衝撃は脳にまで響きいとも簡単に彼の意識をシャットダウンしてみせた。

 

気絶しその場に倒れ地面に横たわってしまう。

 

………たった1分で生徒が5人もやられてしまった。

 

しかも…ほぼ一発で。

 

 

 

 

 

死柄木「ったく…危ねぇじゃねぇかよ黒霧」

 

死柄木「後ちょっとで逃げられるとこだったぞ子どもに」

 

黒霧がワープゲートを使いこちらに戻ってきた。

 

黒霧「すみません…油断していました」

 

黒霧「あんな餓鬼共に不覚を…」

 

死柄木「ん…まぁ結果オーライだ」

 

死柄木「お前が時間稼ぎしてくれたお陰でこんな殺せた」

 

死柄木「さっきのしくじりはチャラにしてやるよ」

 

黒霧「…まだ殺してませんよね」

 

死柄木「冗談だって冗談」

 

死柄木「殺す訳ねぇだろ」

 

死柄木「貴重なおもちゃだ…もっと脳無に遊ばせねぇとなぁ……!」

 

 

 

 

八百万「………………」

 

…敵の会話など…もう耳の中には入ってこなかった。

 

彼女はただ…ポロポロに傷ついた仲間達を眺める事しかままならなかった。

 

八百万「飯田さん…麗日さん…」

 

八百万「瀬呂さん…砂藤さんに…障子さんまで……」

 

さっきまでの威勢は何処へ行ったのかと言わんばかりの表情だ。

 

敵達に対する闘争心・怒りが徐々に恐怖へと形を変え八百万さんの精神を蝕んでいった。

 

 

 

 

死柄木「…それじゃ最後の奴も軽く殴っとくか」

 

黒霧「死柄木弔…先に13号にトドメを刺すのはいかがでしょうか」

 

死柄木「何?お前が殺ったんじゃねえのかよ」

 

黒霧「ブラックホールでチリにしようとしたのですが途中で個性を停止させましてね…」

 

黒霧「生徒に夢中になってて生死の確認はしていなかったのです」

 

黒霧「奴は戦闘に長けている訳ではありませんが個性が脅威」

 

黒霧「もし万が一個性を使われれば脳無だろうが誰だろうが吸われてしまうでしょう」

 

死柄木「……そうだな」

 

死柄木「じゃあまずは先生から息の根止めるか」ニィィ……

 

嘲笑いながら脳無にそう指示を出す。

 

それに反応し脳無はゆっくりと13号先生へ近づいていく。

 

八百万「せ…先生……」

 

八百万(まずい…次の1発で確実に殺される!)

 

八百万(早く助けに………)

 

八百万(でも…そんな事したら絶対に…)

 

八百万(だからといって見殺しにするのは…!!)

 

先生を助けに死にに行くのか…脳無を見過ごして少しでも生き長らえるか…

 

究極の2択…だが選びようがなかった。

 

何しろどちらの未来も死ぬのが見え見えだったのだから。

 

先生2人もやられた。例えここに残っている生徒集めたとしても奴を倒すのは不可能。

 

今から逃げようとしても敵のボス、ワープゲートの男、そして脳無…

 

足掻きようがなかった。絶望しかなかった。

 

もはや行動を起こす気すら失ってしまう。

 

八百万(…そうだ。何もしなければいいんだ)

 

八百万(私が余計な事をするから皆に迷惑がかかってしまうもの…)

 

八百万(なら…このまま待てばいいじゃない)

 

八百万(それが1番得策………)

 

 

緑谷『()()()()()()()()()を安全なルートだとは思えない』

 

緑谷『可能性が1割でも1%でもあるなら、最善の術を使う』

 

 

八百万「……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

バンッッ!!

 

死柄木「!?」

 

黒霧「何だ?」

 

脳無「…」シュゥゥ…

 

八百万「はぁ…はぁ…」

 

[創造】で創った拳銃で脳無の頭部を狙撃する。

 

だが怯む様子は全く見られない。

 

八百万さんは大きく息を吸って敵達にこう叫んだ。

 

八百万「…っ今すぐやめなさい!さもないと撃ちますわよ!!」

 

死柄木「さもないとて……既に撃ってんじゃねぇかよ」

 

黒霧「まだ生徒が…奴は……」

 

死柄木「やめとけやめとけ黒霧。ああいう馬鹿には何言っても理解してくれない」

 

死柄木「身を以て味わってもらおうか」

 

死柄木「脳無あれ…破れ」クイッ

 

そんな風に八百万さんを指差すと脳無は指示に従って進行方向を彼女に変え少しずつ近づいていった。

 

だがそれに動じず抵抗を続ける八百万さん。

 

八百万「動くなって言ってるじゃない…!!」バンッバンッ!

 

脳無「…」メリ…メリ…

 

銃を何発も発砲するが当たっても多少筋肉が捻れるだけですぐに身体に埋まってしまう。

 

撃つごとに距離を詰められてしまうので足を引きずったりして間をキープする。

 

……がそれも長くは持たず数歩歩いた所で後ろにあった壁が背中とぶつかる。

 

もう後が無かった。

 

ありったけの弾丸を敵に撃ち続けるが、物ともせず彼女に接近していく。

 

残り10m弱になったという所で弾切れが起こった。

 

八百万(創造して…リロードを……)

 

…隙を見計らい、軽く地面を踏み切り脳無は八百万さんの目先にまで移動する。

 

そして腕を勢いよく振り下ろす

 

八百万「……あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか?百は個性も凄いしヒーローになる素質も十分ある」

 

「だから誠心誠意勉学に励むんだぞー?」

 

「後運動もね貴方」

 

「あ、そりゃそっか」

 

 

 

何度も繰り返すようですが…

 

私の家庭では世界の中でも選りすぐりの人材を作るべく…

 

通常、一般的な人達の何倍もの先を行く教育を行っています。

 

歳問わず一族は頂点に立つものでなれなければならないのです。

 

 

 

 

 

4歳の時でした。

 

一般の中学入試を解いていた時の事です。

 

国・算・英・理・社の5教科で…

 

全て90点を超える結果となりました。

 

その際の両親の反応は…………

 

 

 

 

「90点なんて…誰でもとるだろこんなの」

 

「いけないなぁ…百。いけない」

 

「優秀じゃない子はいらないんだ」

 

 

 

 

 

 

齢4歳にして知った世界の現実。

 

2度と同じ事を繰り返さぬよう日夜勉学・稽古に励み、お父様やお母様のご期待に応えられるような人間を目指していった。

 

…娯楽も趣味も特に興味もありませんでした。

 

周りに合わせる必要性だって感じられなかった。

 

なので自分から騒がしいクラスの輪に入るような事は控えていました。

 

私にそんな事をしている余裕なんて無いから。

 

そんな事が楽しいだなんてとても思えられなかったから。

 

 

 

 

 

ああ。ごめんなさいごめんなさい。

 

結局私は親不孝の酷い娘だ。

 

何の名誉も得られずただ1人で惨めに死んでいくだけなんだ。

 

こんな馬鹿で出来損ないの娘に成長してごめんなさい。

 

せめて来世ではもう少し立派な……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴッッ!!

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

八百万「!?」

 

脳無「ッッッ!!!」ヒュゥゥ…

 

ズザザ…

 

八百万「………だ……だれ?」

 

つぶっていた目をゆっくりと開いていく。

 

その目に真っ先に映ったものは………

 

 

 

 

 

 

 

「だから、何度も言ってんだろ…」

 

 

 

緑谷「ウチの友達に…手ェ出すなって!!!」

 

 

 

 

颯爽と救けに駆けつけた…

 

私の最高の英雄(ヒーロー)の姿であった。

 

 




8日中に投稿などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ(ToT)

須井化です…はい。

今回オリジナル成分たっぷりやったなぁ。

特に出番が見当たらなかった3人も一応活躍させときたかったからなぁ

個人的にあそこ暗いんじゃ…って感じたのでああいう戦闘(?)シーンになりました。

(鳥達強杉とか言っちゃいけない)

何か尾白がキーキャラと化していくのだがどーいう事だい(惚け)

ヤオヨロッパイさんの回想も自身的には上手く書けたつもりなんですがねぇ

いかがでしたか?

次回は緑谷vs脳無…

遂にデク君本領発揮です!

乞うご期待!



あ。そうだそうだ。今回の挿絵はどうでしたか?

本格的に本編に導入したのは今回が初めてなのですが…

今回の挿絵を描いて下さったのはさいころソード様です!
一応その方のマイページのリンクも貼っておきます!↓
http://syosetu.org/?mode=user&uid=175541

某ソード「構図は七つの大罪22巻p23を参考に描きました」

×→某ソード「絵師の力量不足をお許し下さい」

○→めっちゃうめぇ。<チョーイイネ!サイコー!

………とは言えあくまでこれは私の主観的なものなので一概には言えないんですけどね。

挿絵についての評価もよろしくお願いします。今後の参考にしてもらえると思うからね。

最後におまけとして緑谷ズームverも上げますぞい。作者曰くデクのそばかす観察にどうぞ。


【挿絵表示】






何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月13日(月)以内に第15話の投稿を予定しております。

お楽しみに!


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第15話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJにて救助訓練最中になんと敵が出現!

生徒達が各ゾーンに散らばってしまうが戦力差を実力で補い見事に敵の猛攻を掻い潜る。

決死の脱出作戦も失敗に終わり次々と生徒が倒れていく中八百万少女は単身脳無に立ち向かう!

そこへ駆けつけたのは我らが英雄緑谷少年!!!

更に向こうへ!PlusUltra!!!







身体からボボッと紅いオーラが迸る。体内のあらゆる部分が激しい痛みに襲われる。

 

脳裏によぎった。真正面から突っ込んでっても勝てる訳が無い、慎重に作戦を立てるべきだった。だがそんな事この際どうでも良かった。

 

 

 

 

 

こんなに怒りを覚えたのは生まれて初めてだったから。

 

緑谷「………」

 

 

 

脳無「…」

 

吹っ飛ばされた脳無はゆっくりと立ち上がる。成る程、カスったどころか応えずケロッとしている。

 

緑谷「…飯田君…麗日さん」

 

…情けない。もっと早くここに来ていれば少しは負傷者を減らせていたかもしれないのに。

 

僕はクラス委員を全うできなかった…何人もの仲間を見殺しにしてしまった。

 

 

 

なら…せめて…せめて八百万さんだけでも…死守してみせる!!

 

 

 

 

八百万「…緑谷…さん」

 

緑谷「……ごめん。辛かった、よね」

 

緑谷「でも…もう怯えさせない」

 

緑谷「僕には皆を助ける義務があるから…っ!!」

 

 

 

死柄木「…」

 

黒霧「あの子ども…」

 

突然の生徒乱入には流石の敵達もおったまげる。……がそれよりも驚いたのは僕が発している紅いオーラである。ハッキリと目に移るその魂には鬼気迫るモノを感じ取った。

 

黒霧「個性…でしょうか」

 

黒霧「増強系…」

 

死柄木「か弱い乙女の危機に颯爽と現れ敵を退ける…」

 

死柄木「かっこいー…まるで」

 

 

死柄木「オールマイトじゃないか」

 

 

 

 

 

仮に…脳無が今の僕の実力で渡り合える程度の奴だとしても…ワープホールとあのボスもまとめて相手っていうのは無理がある。

 

僕が今取るべき最善の手は……

 

緑谷「…八百万さん、ちょっと頼みがあるんだ」

 

八百万「は…はい」

 

緑谷「今すぐ入口に向かってここを出てくれ」

 

緑谷「君が先生達を呼んでいる間…なんとか時間稼ぎしておく!」

 

八百万「で…でも…」

 

緑谷「【創造】を使って乗り物か何かを作ればすぐ行けるはずだ」

 

緑谷「今はこれしか…手立てが無い!!」

 

八百万「………」

 

何か言いたげな顔でこちらを見つめている。なんとなく言いたい事は分かる。相澤先生が瞬殺されるような相手にどう足掻いたって殺されるに決まってる。

 

僕だって怖いんだ。今すぐ逃げたい。確実に負けると分かっている闘いに身を投じるなんて絶対に御免だね。

 

って言ってただろうなぁ昔なら。

 

 

緑谷「安心して。誰も殺させはしない」ニコッ

 

緑谷「必ず…皆生還させる」

 

緑谷「だから…お願い副委員長!」

 

八百万「!!………」

 

八百万「…分かりましたわ。絶対に…絶対に間に合わせます!!」

 

そう言うと出口の自動ドアに向かって一直線に走っていった。

 

 

 

……また無駄にカッコつけちまったよ。心配させない様に咄嗟に笑顔作って送り出しちゃったけど…

 

正直勝てる気がしねぇぇぇ!!

 

心の中で数秒前の自分の行動に後悔しながら嘆いていた。

 

死柄木「おい脳無。女追いかけろ」

 

脳無「!!」シャッ

 

目にも留まらぬ速さで彼女に接近する。

 

おっとそいつは…

 

 

 

緑谷「いけないなぁっ……!!!」シャッ

 

黒霧(速い!)

 

緑谷「ジャン拳…」

 

 

脳無「ッ!!?」ドッッ!!!

 

緑谷「グゥゥウッッッ!!!」

 

脳無の腹部に強烈な右ナックルを繰り出す。そのまま脳無は吹っ飛び地面と衝突する。

 

これで一旦脳無との距離は取れたかな…

 

と安心するのも束の間。今度はワープゲートの奴が動き出す。

 

黒霧「行かせませんよ!!!」ズズッ…

 

緑谷「やっば…」

 

敵との距離がかなりある!ここからじゃ追い付けない!!今にもワープしようとする敵だったが…

 

 

 

ギュッ!!

 

 

黒霧「ぐっ…これは…」

 

緑谷「舌!?」

 

 

蛙吹「先走り過ぎよ緑谷ちゃん…」

 

蛙吹「まぁそのお陰で百ちゃんは助かった訳だけど」

 

蛙吹さんだ!移動する寸前に本体を狙って舌で拘束したんだ…というか蛙吹さんも気づいてたんだなあの違和感に。

 

緑谷「梅雨ちゃん!相澤先生は!?」

 

蛙吹「とりあえず避難させといたわ。広間の奴等も大体片付いたし」

 

 

 

麗日さん達がどんどんやられていっていた事は気を探っていて分かっていた。

 

相澤先生を発見した後峰田君・蛙吹さんと二手に分かれてすぐにここに向かってきたという訳だ。

 

……その時の先生の姿はもう言うまでも無いだろう。生きているのが不思議な位の身体にはなってたよ。

 

これで敵の1人は行動不能にできた。問題は…

 

 

死柄木「おいおいとりあえずその触手は離そう、な?」スッ

 

敵のボスが蛙吹さんの舌に触れようとする。自分で八百万さんを追いかけるよりもテレポートの方が確実性があるからな。

 

…勿論これも黙って見てる僕等ではない。

 

前方から無数の球体が飛んでくる事に気付く。

 

死柄木「次から次へと何だおい…」ビュンビュン…

 

ベタッ

 

死柄木「何?」

 

峰田君のブヨブヨだ。両足と地面が見事にくっつき更に両手、敵の周りの地面に多数のブヨブヨが接着する。

 

これで動きが封じられる。

 

緑谷「ナイス…峰田君!」

 

峰田「ひゅ…ひゅぅう…」

 

手をブルブル震わせながら冷や汗をかいている。2人とも…無理言ってごめん!

 

そうこうしている内に自動ドアの開扉音が聞こえてくる。

 

八百万さんが無事着いたんだ!

 

黒霧「ぐっ…」

 

死柄木「おっおい脳…」

 

 

ウィィ…

 

八百万「皆様…行って参ります……!!」

 

ダダッ

 

 

 

無事USJから抜け出せた彼女はそのまま学校に向かって走っていく。

 

敵の包囲網を掻い潜り等々脱出できたのだ。

 

後は頼んだよ…八百万さん。

 

 

 

 

死柄木「あーー」

 

死柄木「あーーー……」ポリポリ…

 

ボロボロ…

 

死柄木「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」ポリポリポリポリポリポリ

 

生徒を取り逃がし、計画が崩れた為かいきなり両手で頭をかきながら敵が発狂する。その間に個性を発動し手についていたブヨブヨを壊していった。

 

峰田「ギャァァァ!俺の髪がぁぁあっ!?」

 

死柄木「……油断した」

 

死柄木「さっき…あのガキ殺しときゃ」

 

死柄木「こんな事にはならなかったよなぁぁあ!?黒霧!!!」

 

黒霧「……」

 

何やら仲間割れが始まったのか部下に対して激しく怒りを露わにする。黒い敵は表情を変えず黙りとしていた。

 

ボスの敵はしばらく頭を掻き回しながら考え込む。それから数秒後、奴は思わぬ言葉を口にする。

 

 

死柄木「…あーあもういいや」

 

死柄木「今回はゲームオーバーだ」

 

 

緑谷「!?」

 

死柄木「雄英の奴等勢揃いじゃ流石に劣勢だ」

 

死柄木「今回は大人しく引き下がろか」

 

死柄木「今度また攻めよう」

 

自分達で何言っているのか分かるのか?

 

オールマイトを殺す算段があるにも関わらずここで引き下がるんだぞ?それではだだ雄英のこいつらに対する危険度を上げるだけだ。

 

奴等の行動の意味が読めない…

 

だけどまぁ帰ってくれるなら帰って欲しいんだけどさこっちは。

 

その方が穏便に解決す

死柄木「ただし…この糞餓鬼共にはそれ相応の落とし前をつけて貰わねぇとなぁ…!!」ビキビキ…

 

死柄木「そうでもしねぇと治まらねぇよこの腹の虫…」

 

 

あ、はい。分かってました。

 

 

僕達の行動が奴等の逆鱗に触れてしまった。顔の形相が激しく変わり、殺気剥き出しの表情であった。

 

おお…まずいまずい。

 

蛙吹「峰田ちゃん!ブヨブヨあいつに投げ続けて!!」

 

蛙吹「早く入口の皆を助けに行くわよ」

 

峰田「はぁぁぁぁ!?相性最悪だって!触れたら即粉砕だぜおい!!」

 

蛙吹「それでも時間稼ぎにはなるでしょ…ほら早く!!」

 

峰田「へ、へい…」ブチブチ…

 

渋々髪を千切っていき、再び敵達に投げつけていく。足止めをしながらこちらに走っていき、僕の方へ近づいていった。

 

…が敵達の中でもまだ動ける奴が1人だけいた。

 

 

死柄木「おい脳無。餓鬼3人とも血祭りに上げろ」

 

脳無「ッッッ!!」ダダッ

 

脳無だ。こちらに向かって急接近してくる。

 

…ん、待てよ。

 

その前に前方にいる2人がやられるじゃないか!!

 

 

緑谷「くっそ…!!」ダダッ

 

 

急いで2人の所へ駆け出すが…駄目だ!距離と速さが違いすぎる!!

 

間に合わない!!

 

脳無が彼らの所へ辿り着くまで数m程しかなかったその時だ。

 

 

 

 

パキパキィィッ

 

 

緑谷「…へ」

 

蛙吹「ケロ…」

 

死柄木「氷…?」

 

峰田「お前……!!」

 

 

峰田「轟!?」

 

 

轟「危ねぇ危ねぇ…何とか間に合ったみてぇだな」

 

間一髪轟君が僕達の窮地に駆けつけた。脳無が動けなくなるよう、下半身を氷結させる。

 

これで3人とも身動きが取れなくなった。

 

 

 

だがやって来たのは轟君だけではない。

 

 

 

「蛙!!舌離せェェッ!!」

 

蛙吹「!?」

 

「ファインプレーだぜ峰田!お陰で…」

 

 

爆豪 切島「「()りやすい!!!」」

 

ドゴォッッ!!ボオオッッ!!

 

 

 

爆撃、正拳…猛烈な二連撃を残りの2人の敵に浴びせる。

 

黒霧「ぐぅっ…」

 

爆豪「おっと…」ドッ

 

拘束を解かれた途端爆発の不意打ちを諸に受け後ろに倒れこむ。その際敵はかっちゃんに地面に強く押さえつけられ、動けなくなってしまう。

 

爆豪「はっ。タネが分かりゃ大した事ねぇ能力だなぁオイ?」

 

 

爆豪「要はテメェの個性は()()()()()()()()()()()()()()()()()…そうだろ?」

 

黒霧「な…」

 

爆豪「でなきゃあ物理無効人間の口から『危ねぇ』なんて発言出る訳ねぇからな」

 

爆豪「実体部分はそのモヤで覆ってたとすりゃ合点がいく」

 

驚いた……かっちゃんあそこの会話でそこまで推測できたのか。服の時点で触れられる事くらいは僕も分かってたけど…

 

流石、雄英筆記入試で1位ぶん奪っただけあるなぁ。

 

て…関心してる場合じゃないだろ…!

 

爆豪「動くんじゃねえよ…もし怪しい動きをした」

 

爆豪「と俺が判断したら即爆破だからな?お前」ニヤァァ

 

まぁ何ともいいゲス顔で恐ろしい事言ってるんだこの人。すぐにでも殺る気満々だよ…

 

かっちゃんもう敵でいいんじゃないかな。

 

この脅迫には流石の敵連合も恐怖を感じてしまう。

 

黒霧「っ…!」

 

死柄木「ってぇぇ…ははマジかよ」

 

死柄木「攻略された上に全員ほぼ無傷とか…」

 

死柄木「最近の子どもは恐ろしいねぇ」

 

轟「…テメェらが何企んでんのか…どんな奴なのかは知らねぇが」

 

轟「生半可な試みで落とせる程甘くはねぇぞ」

 

轟「雄英(ここ)はよ」

 

切島「……」

 

切島(え!?俺台詞無し!?)

 

別世界と違ってちゃんと敵殴れたから良かったじゃないか。

 

 

 

 

 

死柄木「いけない…いけないなぁこういうの」

 

死柄木「思い通りに行かない…」

 

死柄木「1番腹立つ」

 

バギィッッ!!

 

脳無は無理やり脚を動かそうとするが無論、そんな事できる筈も無く無残に下半身がボロボロと崩れていった。

 

これだけ見ればただ自爆したとしか思えないが…こいつにとって身体の一部などどうでも良かった。

 

脚が壊れ倒れた脳無に皆目をやると…

 

脳無「…」ズズ…

 

緑谷「嘘…だろ」

 

蛙吹「脚が……再生されていく?」

 

たった10秒足らずで新しい脚が生えてくる。まるで何事も無かったかのように平然と立ち上がってしまう。

 

何よりこいつ…体を千切ろうか何だろうが出血しない。尚更気味が悪いのだ。

 

切島「へっ…超怪力の上に超再生かよバケモンか」

 

切島「何度蘇ろうが何度もぶっ潰すだけだぜ!」

 

切島「6vs3!皆でまとめてかかりゃ何とか勝てるさ!」

 

切島「なぁ!委員長!!」

 

緑谷「…………」

 

 

委員長…か。何ともまぁ…軽い気持ちじゃ務まらん仕事なんだか。

 

 

 

 

緑谷「いや、皆は怪我人引き連れて早く行ってくれ」

 

切島「…え?」

 

緑谷「あいつとは…1vs1でやりたい」

 

緑谷「ああ…違うな。()()()()()()()()()()()

 

切島「んなっ…今回は流石に俺肯定できねぇよ!」

 

切島「ただでさえワープホール野郎と個性不明のボスがいるってのによ!!」

 

緑谷「だったら尚更だ。クラスの皆を危ない目に合わせる訳にはいかない」

 

緑谷「それに多分あの2人は僕に近づけない」

 

切島「…?」

 

 

そうだ。これ以上皆を傷つけさせる訳には行かない。クラスを守り抜く…それが僕の義務なのだから。

 

 

緑谷「頼む…行ってくれ」

 

緑谷「こっから先は僕の仕事だ」ニッ

 

 

 

脳無「……」

 

死柄木「ぁぁ…そうだな…誰から殺そう」

 

死柄木「女の子から痛めつけるか…いや、それを妨害した氷野郎にするか…」

 

死柄木「……まず厄介そうなのから始末するか」

 

死柄木「脳無、爆発小僧殺せ」

 

死柄木「出入口の奪還だ」

 

爆豪「あ?」

 

シャッ

 

敵の方を振り向いた瞬間目の前に脳無が現れた。一瞬でかっちゃんの所へ…さっきよりも速度が段違いだ。

 

 

 

 

ドゴッッ!!

 

鋭い衝撃音がその場にいた人全員の耳に走る。反射的に音のした方向を見ると…

 

 

 

緑谷「ぐっ…ぅぁあっ!」ググッ

 

脳無「……」

 

爆豪「は……」

 

辛うじて脳無の正拳突きがかっちゃんに直撃するのを防いだ。ガードも完璧だ….

 

だが重い!たった1発のパンチで押し潰されそうだ!ただでさえ咄嗟に界王拳2倍まで跳ね上げたってのに……

 

敵の攻撃に耐えながら皆を広間に移動する様必死に説得する。

 

緑谷「今の僕じゃあ…精々できる事と言ったらこの怪物を足止めする事位だ…!」

 

緑谷「増してや先生達がいちゃ戦い辛い…」

 

緑谷「皆は…早く広間に…!!」

 

切島「で…でもよぉ緑

 

切島「やぁっ!?」グイッ

 

どうしても納得いかない切島君に轟が肩を引っ張りながら声をかける。

 

轟「委員長命令だ。黙って言う事聞け」

 

切島「命令って…おま仲間見殺しにするってのかよ!」

 

轟「違ぇよ」

 

切島「じゃあなんだってん…」

 

轟「あそこまでご丁寧に遠回しに言ってくれてんだ。察してやれ」

 

切島「はぁ!?」

 

轟君の発言の意味が理解できず混乱してしまう。どうやら蛙吹さんは分かっているようだが…

 

蛙吹「……轟ちゃん…」

 

 

暫く沈黙の時間が続きよく惟た結果…

 

()()()()()()()()()()()解釈に至ってしまう。

 

切島「………っ……」

 

切島「そっ…か。そりゃ…それなら…」

 

切島「仕方ねぇ…よな」

 

峰田「え?なんだ?つまり?え?」

 

峰田「と、兎に角早く行こうぜ!殺される!」

 

訳も分からず話を聞いていた峰田君だが彼にとってはそんな事よりも命の方がよっぽど大事だった。

 

ボスについていたブヨブヨもとうとう無くなってしまう。

 

死柄木「さぁて…暴れるぞ」

 

切島「………分かった。行こうぜ皆」

 

切島「爆豪!!おめぇもだ!早よ!!」

 

爆豪「……」

 

緑谷「かっちゃん…早く!!!」ググッ

 

すぐ避難するようかっちゃんを急かすが反応が一切無かった。

 

 

あいつはそんな事どうでも良かったんだ。

 

……デクが見えなかった。またデクに助けられた。

 

あらゆる思考が脳内に張り巡り、平常心を保ってはいられなかった。

 

 

 

 

ガシッ

 

切島「爆豪!!!」

 

爆豪「…!」

 

手を掴まれ大きく名前を叫ばれてようやく我に返った。だが依然として状況把握がままならないでいる。

 

爆豪「テッメ…何……」

 

切島「いいからこっち来い!!」グイッ

 

かっちゃんが必死に抵抗しようとするが否応無しに無理やり彼の腕を引っ張る。

 

良かった。これなら思いっきり闘え

切島「緑谷」

 

 

 

緑谷「?」

 

 

 

 

 

切島「…悪かったな」

 

小さくボソッと…それだけ呟くと切島君はかっちゃんを連れて広間へと走り去っていった。

 

…なんで…

 

 

なんで今謝ったんだ?

 

 

 

 

何はともあれ…これでようやく準備が整った。

 

 

 

ババッ

 

緑谷「…」ボボボ…

 

脳無「……」

 

脳無は一旦攻撃を中断し後ろに下がった。とうとうこいつも…臨戦態勢に入るのだ。

 

というか2倍界王拳と互角のパワーで手抜いてるってどうなのさ……もう本当勘弁して下さい。

 

 

死柄木「はぁぁ…いいねぇいいねぇ」

 

死柄木「仲間の為に命張って……」

 

死柄木「憎たらしい!腹立だしい!!」

 

死柄木「実に不愉快だ!!!」

 

死柄木「俺は子どもを追う。黒霧は脳無のサポートしろ」

 

黒霧「御意」

 

死柄木「帰ろうぜぇ…こんな下らねぇ()()()()クリアして」

 

 

 

 

 

その時頭の中にあったある糸がぷつんと切れたような感覚がした。

 

そうか。奴らは…今さっきまで僕達の命を使ってゲームをしていたのか。

 

こんな大胆に奇襲を仕掛けてきて…

 

友達や先生を沢山傷つけて…

 

遊び感覚で人々を殺そうといたのか。

 

 

 

 

 

緑谷「……」

 

緑谷「1つだけ…言っておくよ」

 

死柄木「ああ?」

 

俯いていた顔を上げ敵に向けた。

 

僕はどんな顔をしていた?怒っていた?悲しんでいた?それとも笑っていた?

 

…いや、多分……

 

 

無表情だったと思う。

 

 

緑谷「現実に残機なんてモノは存在しない」

 

緑谷「今あるこれが全てだ」

 

死柄木「……はぁ?何言ってんの?」

 

緑谷「お前らは命をぞんざいに扱い過ぎた」

 

緑谷「教えてやるよ。生命の重さ…そして…」

 

緑谷「ヒーローの真価を……!!」

 

 

 

そう言うと静かに体を力み始める。次第に纏っていたオーラは烈度を増していき、身体全体に圧がかかっていく。

 

今にもこの圧力で押し潰されそうだ…身体のあちこちが痛い…

 

だけど……

 

これ以上皆が傷めつけられるのに比べれば十分マシだ!!!

 

緑谷「体もってくれよ!!!」

 

 

緑谷「3倍界王拳だぁぁあああっ!!!」ボボオオオッ!!!

 

 

 

 

ゴォォッ

 

黒霧「くっ…近づけん…」

 

切島「す…すっけぇ風圧だ!」

 

轟「これがあいつのフルパワー…なのか?」

 

 

体温が異常なまでに高くなり激しく風が吹き荒れる。

 

その衝撃は脳無を除き誰もが一瞬でも気を緩めれば吹き飛ばされるほどの強烈さだった。

 

界王拳の倍率1つ上げるだけでこうも違ってくるものか……

 

緑谷「さっさと始めようか」ボボボ…

 

脳無「…」

 

シャッ

 

脳無「?」

 

 

 

ドッッ!!!

 

脳無「ッッ!」ビュンッ!!

 

緑谷「…」

 

黒霧「な……」

 

峰田「ななな何だ今の!触れずに吹っ飛んでったぞ!!」

 

全員が目を疑っただろう。いきなり姿が消え、気づけば敵の至近距離に移動しておりいつの間にか脳無が独りでに吹っ飛んでいった。

 

だがこれはただ単に僕の動きが捉えられなかっただけに過ぎない。

 

正確には素早く移動し打撃を2、3発腹に入れてアッパーカットで空中に浮かせた。

 

な?単純だろ?

 

死柄木「おいおい…トータル0.5秒でんな事できる訳ねぇだろ…」

 

壁の方に飛んでいった脳無に追撃を図る為僕も軽く地面を踏み蹴り、飛んで行く。

 

シャッ

 

緑谷「せーの…」

 

脳無「!?」

 

黒霧「脳無が飛んでいった先に…一瞬で?」

 

 

 

緑谷「っああっっ!!」ドガッッ!

 

脳無「!!?」ゴォッ…

 

脳無の背後に回り込み後頭部に蹴りを入れ、元いた入口の方へ再び吹き飛ばす。

 

そのまま勢いよく自動ドアと衝突…

 

 

 

ズドッ!!

 

脳無「…」

 

緑谷「へっ…」

 

蛙吹「壁に着地したですって…」

 

 

 

とは行かず余勢を殺し上手くドアに着地した。

 

グッと腰に力を入れてこちらに勢いよくジャンプして接近してくる。

 

 

ダンッ!!

 

緑谷「来た来た…!」

 

タイミングを見計らい、敵に右ストレートを食らわせようとするが…

 

あっさりと掴まれる。

 

 

ガシッ

 

緑谷「やば…」

 

脳無「!!」ブンッ

 

お返しと言わんばかりに脳無ももう片方の腕で僕に殴りかかる…

 

が勿論これを阻止。

 

 

緑谷「っとと」ガシッ

 

脳無「ーーッッ」ミシミシ…

 

緑谷「うぉぉっああぁぁあ…!!」ミシミシ…

 

お互い両手を防がれた、ここからは力比べだ。

 

相手の右手と左手を強く握り、両腕を押し付け合う。互いに一歩も引かず徐々に腕骨にひびが入っていくのが効果音ではっきり分かる。

 

なんっつう腕力…こりゃ腕何本あっても足りないよ。

 

 

キリがないと見たか双方共に掴んでいた両手を離し少々距離を取る。

 

今度は真っ向正面からの殴り合いだ!!

 

緑谷「だぁああっ!!」

 

脳無「ッッッ!!!」

 

ズドドドドッ…

 

その連打はマシンガンの如くUSJ内に鳴り響く。正拳と正拳がぶつかり合い1発1発が強い衝撃を生み出す。

 

もはやこの闘いに迂闊に手を出せる者など到底いなかった。敵連合もかっちゃん達もただ呆然と僕らの戦いを眺める事しかできなかった。

 

緑谷(ただ…そんな馬鹿正直に付き合うと思うなよ!!)

 

激しい空中戦の最中、攻撃を止め敵の攻撃を避けながら脳無の足下に近づいていく。

 

足下がお留守だよ…っ!!

 

 

ガシッ

 

脳無「!?」

 

緑谷「っらぁぁぁあああっっ!!!」ブンブンブンッ…

 

左足を掴み過激に旋転する。

 

入口付近にいた敵達2人に向かって思い切り投げつけた。敵達への直撃は避けたが今回ばかりは地面との衝突は免れなかったらしい。

 

 

 

 

 

ドォオオンッ…

 

コンクリートに大きなクレーターが出来てしまった。肝心の脳無はというと…

 

 

 

 

脳無「…」ゴキッゴキッ

 

無傷。僕の攻撃を何発食らったはずが全くもって応えていない。

 

首の骨をポキポキ折って正に『その程度か』と言わんばかりのアピールであった。

 

呆れるというか…ムカつくというか…色々思う節があったがこちとらそれ所ではなかった。

 

めっちゃ身体痛い。

 

緑谷(くっそ…3倍だ。相当の負担かかるとは思ってたが…)

 

緑谷(今にも気絶しそうだ…まだ戦って1分しか経ってないのにこれだけの負荷………!)

 

緑谷(早めに蹴りつけたい…けど)ボボボ…

 

 

 

 

何処かが引っかかる。

 

如何に強く床に叩きつけようと強力な攻撃をあびせようとも全く怯まない……

 

不自然すぎる。しかもさっきは剥き出しにされている脳に蹴りを直撃させたのだ。

 

何が一体どうなっている……

 

 

 

そんな僕の疑義に気がついたのかボスの敵が喋り出す。

 

死柄木「ははは。ガキのヘナチョコパンチが効く訳ないだろ」

 

死柄木「こいつはオールマイトの100%パワーにも耐えうる超高性能サンドバックさ」

 

死柄木「あらゆる衝撃を軽減する…いわゆる【ショック吸収】だ」

 

緑谷(こいつ…再生能力だけじゃなくてダメージまで吸収して無くすのかよ…!)

 

緑谷(しかも本気のオールマイトの技まで耐えるだって…!?)

 

ちまちま攻めたって効きはしない。かと言って一部一部壊そうとしたって再生される。これを見る限りタフって所のスタミナじゃ済まなそうだしな…

 

とすると攻略法は1つ。かめはめ波で細胞レベルにまで粉々にしてしまえばいい。

 

……いや…まぁ分かったのはいいけどさ。

 

緑谷(実際そんな事出来るのか…?)

 

300%のパワーですら敵わない相手をかめはめ波で消滅できるのか…そもそも奴にそんな悠長に撃たせてくれる隙があるのか…

 

不安と恐怖で頭がいっぱいだった。正直この勝敗は最初から見え据えていたようなものだったのだから。

 

オールマイト級の奴にたかが15の少年が勝てるなんて自分だって思っていなかった。せめて時間稼ぎ…とは言うものの勝率1%の博打に賭けたってそりゃ見込みがある訳ない。

 

 

 

…何今更弱音吐いてんだ自分…

 

そう言い聞かせて再び士気を取り戻す。

 

 

脳無の所へ急降下し、傍の地面で着陸する。

 

さぁ戦闘続行だ!

 

 

脳無「ッ!!」ブンッ

 

緑谷(敵が現れたら即殴る…)

 

緑谷(思考が単純すぎる!)スカッ

 

脳無のパンチを頭を伏せて回避する。慣れてくれば避けるの簡単だ!挙動が激しいし。

 

ブスッ!!

 

かわした直後、脳無の両眼に右人差し指と右中指を突き刺す!

 

ラビットピース的なアレだ。

 

死柄木(そもそもラビットピースは叩く技なんだが)

 

無駄に心読まなくていいです。

 

 

緑谷(兎に角これで視覚は失った…!)

 

緑谷(1秒でもいい!反応を遅らせろ…命懸けの戦いでその一瞬が…)バッ

 

脳無「?」クルッ

 

緑谷「命取りぃっっ!!!」ズドッッ!!

 

脳無「ッッ!?」

 

眼は失えど聴力はまだ生きている。後ろに足音が来たら普通反射的に振り向くだろ。それを利用して不意打ちを仕掛けた。見事に鳩尾にエルボーがハマってくれた。

 

休む間も与えず猛攻を続ける。次は…

 

 

緑谷「かかと落としっ!!」ドッ!!

 

脳無「!!」

 

脳無の頭部に踵を強く打ち下ろす。諸にキック入れられた!

 

緑谷「背すじぴーんと!!!」ドガッッ!!

 

脳無「……ッ」ゴッ

 

態勢を崩した所に今度は真下からの右アッパー。見事に顎にクリーンヒット。

 

そして身体が空中に浮いた所を狙って…

 

 

 

緑谷「はあああっっ!!」バギィッッ!!

 

ビュンッ!!

 

脳無「ーー!!?」ドガァッ!!

 

 

腹に後ろ蹴りを喰らわせる。

 

脳無はそのまま吹っ飛び、壁と激突する。少しは効いたのか地面に膝をつけしばらく静止した。

 

ドサッ

 

緑谷(お…効果アリアリか?攻撃受けすぎて吸収も追いつけ…)

 

シャッ

 

緑谷「え」

 

脳無「!!」ブンッ

 

 

 

不覚を取った…!いつの間にか脳無が射程距離内に入っているじゃないか!

 

脳無は左腕を大きく振りこちらに攻撃を図ろうとする。咄嗟に僕も正拳突きで相殺しようとするが…

 

緑谷「ぐっ…!」

 

ガッッ!

 

脳無「……」ググッ

 

緑谷「っだ…!!」ズキズキッ…

 

…さっきより力が入らない。徐々に脳無に押されていく。身体が悲鳴を上げている。ダメだ…とうとう限界か!!

 

緑谷「んああっ!!」ゴッ!!

 

何とか押し返し脳無の腕を弾いて意地を見せる。……がその際に身体が前に傾いてしまう。

 

どうにか態勢を立て直そうとするが…

 

緑谷「とと…っ!!」

 

脳無「ッッッ!!!」ゴッッ!!

 

ギュルッ…

 

緑谷「っぶねぇ!」キキィッ

 

同じく右脚のかかと落としで僕の頭部を狙ってくるがギリギリ回避成功。

 

……だけど掠ってはいる。

 

 

緑谷「はぁ…はぁ…」

 

心臓が痛い…筋肉痛も…酷い…

 

段々脳無の速さについていけなくなる。

 

 

緑谷(だからって…)

 

緑谷(こんな所でくたばっ)ブンッ

 

脳無「」ガシッ

 

緑谷「っ!!」

 

背後に回り直様攻撃を仕掛けるが…

 

まずい。捕らえられた。

 

掴まれた右腕は徐々に上がっていき僕の身体は吊り上げられる。左手で脳無の腕を剥がそうとするがビクともしない。

くそ…身体が自由に…

 

 

 

 

死柄木「壊せ」

 

 

 

ズドドドドッ!!

 

緑谷「ぐっ…がはっ!」ドガッ!

 

顔面…腹…ありとあらゆる部位に何十発もの打撃が打ち込まれる。

 

臓器は勿論、骨までもが砕けていってるのではないのかというえげつない衝撃音が僕の耳に入ってくる。

 

唾液はおろか口から吐血してまう程の威力であった。

 

峰田「ひっ…ひぇぇぇえっ!!」

 

 

 

数秒間殴り続けた脳無は気が済んだのか僕を軽くひょいっと放り投げる。

 

 

ドサッ

 

 

緑谷「ぅ…ぉぁ…」

 

脳無「……」

 

 

尋常じゃない痛みだった。今にも気絶しそうな位…滅茶苦茶痛かった。身体中が痺れ言う事を聞いてくれない。万事休すだ。

 

そして、オーラの色が段々薄くなっていきとうとう消えてしまう。

 

死柄木「…ふむふむ。3分程度か」

 

死柄木「餓鬼にしちゃ手こずっちまったな」

 

黒霧「死柄木弔、早速他の生徒達の始末に向かいましょう」

 

死柄木「そだな。おーい脳無」

 

死柄木「そいつはもういい。今度はこっちだ、ついて来い」

 

脳無「…」ズドッズドッ…

 

敵の言うがままに僕から離れ広間に歩いていく脳無。

 

……や、やった。距離ができた。

 

このまま…死んだフリ…しとけ…ば……

 

オー………

 

 

 

 

オールマイト『人助け(正しい事)した人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ!!』

 

オールマイト『綺麗事!?上等さ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ!

 

脳無「ー?」

 

死柄木「…お前なー…」

 

 

 

 

緑谷「はぁ…!はぁ…!!」

 

満身創痍になりながらも脳無の左脚に掴みかかる。脳無が歩こうとしても床に這い蹲り無理にでも進行を妨害しようとする。

 

切島「緑谷……」

 

轟「野郎…!」

 

焦ったくなったか……脳無は僕の顔面を思い切り蹴り飛ばす。

 

 

バギィッッ!!!

 

爆豪「…!」

 

受け身なしで食らったもんだから身体が勢いよく上に吹き飛び、空高く舞い上がってしまう。

 

2、3回転した所で地面に強く叩きつけられる。

 

 

 

ドサッ……

 

 

死柄木「…今度こそ倒れたか」

 

死柄木「ちっ…手間掛けさせやがって…」

 

緑谷「て…よ」

 

死柄木「?」

 

 

 

 

緑谷「待てって……言ってんだろ……!」

 

 

 

 

全身ボロボロで立つのがやっとの状態だ。出血が酷く、軽く触れただけでも倒れふような重傷だった。

 

 

 

 

死柄木「……なのに…なのに」

 

死柄木「なんで…立ち上がる……!」

 

緑谷「はぁ………はぁ…」

 

蛙吹「緑谷ちゃん…もう……もう貴方…」

 

 

 

 

………ばっかみたいだな

 

1人のこのこと逃げようとして

 

先生達は何してた?敵に怯えて逃げてたか?恐ろしくてビビってたか?

 

いいや…違う。

 

そうだよなぁ…ヒーローはいつも命懸けなんだから。

 

ヒーローってのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷 オールマイト「『命を賭して綺麗事実践するお仕事だ!!』」

 

緑谷「界王拳4倍だぁあああああっっ!!!」

 

 

ゴオオオオオッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 




日曜夜投稿→月朝wktkしながら感想返信

がいつの間にか(いい?悪い?)習慣となってきた。

須井化です…はい。
(これもう定期更新でいいんじゃないかな)

今回は轟・爆豪・切島の三強怒涛の参戦!!すぐ退場したけどね!!

うぅむ…やっぱりかっちゃん不遇やなぁ。台詞少ない。地味にケロインがケロインしてて可愛いんですがそれは。

とりあえずヤオヨロッパイが脱出成功したんでどうにかしてくれるでしょう!(適当)

……いや間に合わねぇなこれ

いかがでしたか?

次回はとうとうUSJ編クライマックス!!

緑谷達の運命は!?敵達との闘いの行方は!?そして悟空さとオールマイト!

早く来てくれぇぇぇぇ!!!

何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月16日(木)以内に第16話の投稿を予定しております。

お楽しみに!



…多少レイアウト変えたけどどうかな?

<そんな事知るか

ヘェアッ!?


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第16話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJにて救助訓練最中になんと敵が出現!

更に敵連合の秘密兵器【脳無】も現れ、続々と仲間が倒れていく中緑谷少年が駆けつける!

脳無と奮闘するかと思いきやあまりの戦闘力の差は最早絶望!!

最後の力を振り絞り400%の超パワーの賭けに出るが…?

更に向こうへ!PlusUltra!!!


つい先程まで出ていたモノよりも激しく、大きく…そして凄まじいオーラが身体を包んでいく。

 

度重なるダメージの蓄積によりとうとう痛覚さえ麻痺してしまった。

 

 

 

痛いと感じられない。身体の限界はとっくに越えていたんだ。

 

使っている自分だから分かる。多分…後10秒以上闘ったらもう2度と立ち上がれなくなる。

 

だから頼む……

 

 

 

 

 

緑谷(この4倍界王拳でカタをつけさせてくれ…!!!)ボボオッ!!

 

 

 

 

 

 

死柄木「……うーん」ポリポリ

 

死柄木「面倒だなぁ…一刻も早く帰りたいって時に」

 

黒霧「ならば私がゲートで奴を…」

 

死柄木「多分ゲート現れた瞬間抜けるぜそりゃ」

 

黒霧「左様ですか」

 

死柄木「でもまぁ…」

 

死柄木「足掻けば足掻いてくれる程こちらとしては見ものなんで構わないんだがさぁぁ」ニィィ

 

 

嘲笑いながら敵がこちらを向いてきた。そして再び濃霧に指示を出す。

 

 

死柄木「そばかす殺せ、脳無」

 

 

 

 

ダダッ!!

 

緑谷(はっええ…)

 

さっきよりも段違いの速度でこちらに向かって走ってきた。まだこいつ本気じゃなかったのかよ…!

 

打撃が効かない…んな事は分かってる。

 

でもあいつの個性は【ショック()()】だ………ならば限度があるはず。

 

チャンスは 一回……

 

 

奴が怯んだ隙に…

 

 

 

 

緑谷「っっ!。ドガァッッ!!

 

脳無「!!??」

 

脳無の顔面に右ストレートを炸裂させる。メリメリッとめり込みそのまま真後に吹っ飛んでいく。

 

攻撃を終えた吹っ飛ぶ脳無を通り越し背後で待ち構える。

 

 

緑谷「だぁりゃぁあっっ!!!」バギィッッ!!!

 

脳無「…ッッ」

 

ビュン!

 

 

こっちへ接近した矢先に脳無に強烈な上段蹴りを浴びせる。その反動で脳無は空高く吹き飛んでしまう。

 

死柄木「あのガキ…まだあんな力が…」

 

黒霧「……ですが…」

 

 

緑谷「く……そ」

 

身体が上手く動かない。ピクピク震えるだけで全く言う事を聞いてくれない。

 

4倍だ…負荷を感じる間もなく倒れてしまうだろう。もう意識保ってるだけで精一杯だ。というか眠い、怠いやば…死ぬ。

 

 

でも……でも……

 

敵1人位片付けないとカッコつかんだろうに…!!

 

緑谷「かぁぁぁ!めぇぇぇ!!!」

 

死柄木「亀?」

 

緑谷「はああっ!!めぇぇええ……!!!」ギュルル…

 

黒霧「羽目?」

 

切島「あいつっ…!」

 

 

緑谷「波ぁぁああああっっっ!!!!」ボボオオオッ!!!

 

上空…脳無目掛け全力のかめはめ波を放つ。その衝撃の影響で地面は凹み大きなヒビが入ってしまう。

 

ごめんなさい13号!でもこれしかない!

 

空中なら自由も利かない!再生しようが一気に身体が吹っ飛べば問題無い!!

 

緑谷「行けぇぇっっ!!」

 

脳無「……!!」

 

 

 

 

 

ズッッ!!

 

死柄木「……」

 

黒霧「あ…………」

 

爆豪「な……」

 

バリィッ!

 

緑谷「……」

 

 

 

 

ドサッ!!

 

 

 

気功波は脳無の上半身を見事に貫通しそのまま天上の窓ガラスを割って遥か彼方に飛び去っていく。

 

皮肉にも先程再生された下半身だけが無惨にも残り真下の地面に落下。

 

そのまま身体は横たわり静止する。

 

 

 

緑谷「はぁ…はぁ…っ…」シュンッ

 

ドサッ

 

界王拳の長時間使用…そして脳無から受けた傷の深さ…それに伴う肉体的苦痛は想像以上に恐ろしい物だ。

 

界王拳を解除した直後前に倒れ込み活動が停止される。もう身体が動くような力も気も微塵に残っちゃいなかった。

 

さてと…問題はあの2人なんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛙吹「み、緑谷ちゃんがあの怪物倒したわよ」

 

蛙吹「早く救けに…私達なら残りの2人も…」

 

切島「そ…そうだな」

 

2人は即座に僕の所へ駆け寄ろうとするが…

 

轟「………」

 

 

 

 

轟「いや、見ろ」

 

轟君に呼び止められてしまう。

 

切島「え」

 

轟「あいつ…やり損ねやがった」

 

 

 

 

 

 

突然、脳無の両足がその場に立ち上がった。腰辺りの部位から急激に細胞が増殖していく。

 

緑谷「……あ」

 

脳無「」ズズッ…

 

次第に胴体、両腕、頭部と新たな身体が構成されていく。

 

たった数秒で上半身が再生されてしまった。

 

 

 

 

 

死柄木「いつ頭部を壊せば機能停止するって言った?」

 

 

 

あ、はい…分かってました。

 

脳を破壊すれば必然的に…って思ったけどやっぱ無理だったか…あはは。

 

全部消滅させる余裕は無かった…

 

…駄目だ。身体がピクリともしない。界王拳ももう使えない。

 

チェックメイト…こりゃもう万策尽きたかな……

 

緑谷「はは…お母さん。ごめん」

 

緑谷「もう家に帰れないわ……僕」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切島「っにゃろぉぉ…しぶてぇ奴!!」

 

切島「俺だけでも救けに…」スタスタ…

 

ガシッ

 

切島「っ…!」

 

 

救助に向かおうとする切島君の腕に峰田君が掴みかかる。

 

峰田「何やってんだよ切島ぁ!!」

 

峰田「態々殺されに行くのか!?」

 

切島「んな事しねぇよ!緑谷救けてすぐ逃げりゃ…」

 

轟「できる訳ねぇだろ」

 

間髪入れずに台詞が言い終わる前に口を挟む轟君。

 

切島「なんでそんな事断言出来んだよ!!」

 

轟「お前さっきみてぇなバトル繰り広げられんのか?」

 

切島「…」

 

轟「無理だろ…多分10秒耐えりゃ良い方」

 

轟「それにあいつと一騎打ちするってあっちから言い出したんだ」

 

轟「俺らみてぇな()()()が委員長の妨害する訳にゃいかねぇだろ」

 

切島「…っ…緑谷はそんなつもりで言ったとは限ら…」

 

ガシッ…

 

轟「…」ググッ…

 

 

 

爆豪「今…何つった…ああ?」

 

いきなりかっちゃんが轟君の襟を掴んできた。さっきまでただ突っ立ってて僕の闘い見てただけだけど…

 

どうやら轟君の発した言葉でようやく目が覚めたみたいだ。

 

爆豪「なんで俺まで除け者扱いなんだぁ?オイ!」

 

爆豪「しかもよりにもよってクソナードによ!!」

 

轟「…」

 

爆豪「……っ……」

 

 

 

緑谷『いいなぁかっちゃん個性かっこいいもんなぁ』

 

 

緑谷『君が…優秀なんだから……』

 

緑谷『君が凄い人だから…勝ちたいんじゃないか!!』

 

 

 

爆豪「あの野郎がっ…()()()()する訳ねぇだろ……!!!」

 

轟「……じゃあなんで今こうしてんだよ…お前は」

 

爆豪「っ!?」

 

轟「行きてぇなら勝手に1人で行ってろ。俺ァそれで命落とすなんて懲り懲りだ」

 

轟「怖気ついて本当は足が動かねぇだけだろ?」

 

轟「この間ボロクソに負けてしかもさっき救けられたばっかの癖して…偉そうなご身分で」

 

爆豪「……」

 

その言葉を聞いた途端額に青筋が大きく浮かんでくる。…やばい。感情が抑えきれずに右腕上がり始めてるよかっちゃん。

 

 

 

爆豪「もういっぺん言ってみらあああっっ!!」ボオオッッ

 

激しく爆発させながら握ったその拳を轟君に振り下ろす。

 

これには流石の轟君も呆れながら…

 

轟「っるせぇな…少し黙ってろ」スッ

 

右腕で迎撃し(凍らせ)ようとする。

 

このままでは小競り合いが始まると見た切島島君は必死に説得しようとするが……

 

切島「ちょ…馬鹿!そんな事してる場合か!」

 

切島「ほ、ほら!梅雨ちゃんとか峰田からもなんか言って……」

 

ダダダ…

 

 

 

切島「……え?峰田…おま…」

 

峰田「……」

 

切島「まさか……行かせたのか!!?」

 

 

切島「梅雨ちゃんを!!!」

 

轟 爆豪「「!?」」

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「…」

 

脳無「………」

 

死柄木「さってとそれじゃ四肢でも捥いで首だけでも持って帰って標本にでもしてやろうじゃないか」

 

死柄木「先生の最高傑作とも言えるこいつをダウンさせたんだからな」

 

死柄木「せめて安らかに眠らせてやるよ」

 

果たして四肢もいで首を千切るのが安らかな殺し方なんだか…

 

いや…もうこの際どうなっても構わないや。

 

 

でもまだ希望は残ってる。今ようやく八百万さんが学校に着いたようだが少し前にオールマイトが学校から出発していたんだ。

 

この速さならば後3分もしない内に着くだろう。

 

まぁ…要は…なんだ。

 

 

 

無駄死にじゃ無かっただけマシだねって事なんだけどさ。

 

 

 

 

 

……ダダダ…

 

緑谷「……」

 

何だろう。気のせいだとは思うんだけど誰かがこっちに走ってくる音が聞こえる。何故かその人の気も段々近づいていってるんだよなぁきっとこれは身体の感覚が全部狂っ

黒霧「死柄木弔。何やら向こうから生徒が向かってきていますが」

 

死柄木「……ん。ありゃ蛙の小娘じゃねぇか」

 

 

蛙の小娘……?

 

 

 

緑谷「あ…蛙吹さん!!?」

 

 

 

 

 

 

蛙吹「はぁ…はぁ…」ダダッ…

 

蛙吹(私…本当に駄目な子だ…)

 

 

緑谷『邪魔になる様な事は考えていないよ』

 

緑谷『少しでも負担減らせれば……』

 

蛙吹『……』

 

 

蛙吹(あの時!私がちゃんと止めてあげていればこんな事にはならなかった!)

 

蛙吹(でもまた彼なら何とかしてくれるって放ったらかしにした!!)

 

蛙吹(馬鹿!馬鹿!自分の馬鹿!)

 

蛙吹(勇気出して立ち向かっていた緑谷ちゃんや峰田ちゃんの方がよっぽど立派よ!!)

 

蛙吹(このまま見過ごせば…)

 

 

 

 

緑谷『うちの()()に手ェ出すなぁぁあっ!!』

 

 

 

 

 

蛙吹(羽生子(あの子)にもう2度と顔向け出来ないじゃない!!)

 

 

 

 

 

蛙吹「緑谷ちゃんっっ!!!」

 

大きな声で僕の名前を叫ぶ蛙吹さん。

 

馬っ鹿…なんでここに来るんだよ!!

 

緑谷「蛙…つ、梅雨ちゃん!!早く逃げて!!」

 

掠れた声で何とか蛙吹さんを広間に行く様指示するが…

 

 

彼女は一切動揺せずにこちらに走り続けていた。

 

 

 

蛙吹「無理よ!!放っておけない!!」

 

緑谷「…うすぐっ…!オールマイト…来るんだ!!」

 

緑谷「頼む!!もう少しだけ耐え…」

 

蛙吹「嫌!!!」

 

 

 

 

蛙吹「友達が死ぬのを見るなんて…」

 

蛙吹「私には無理よ!!」

 

ポタポタ…

 

峰田「……蛙吹……」

 

 

 

 

 

…やめてくれ。今すぐ…戻ってくれ。

 

そんな…泣きながらこっち向かれたら…

 

 

死ぬの怖くなっちゃうだろ……

 

緑谷「……蛙吹…さん……」

 

死柄木「…」

 

死柄木「いいねぇ…すっごいうん…感動的」

 

 

 

 

死柄木「だからどうした」

 

 

 

 

ブオッ!!!

 

構わず脳無は手と手を固く握り締め、そのまま両腕を僕の頭目掛けて振り下ろす。

 

どうやら頭蓋骨を粉砕しようとする気らしい。

 

それ所じゃ無いんですが。

 

緑谷(な…何とかしないと…このままじゃ蛙吹さんが殺され…)

 

緑谷(くそ…せめて舞空術さえ使えれば…)

 

緑谷(動け…数秒だけでいいから彼女を……!!)

 

蛙吹さんは徐々に僕との距離を詰めていく。

 

だが逆に言えば脳無に接近しているのと同じ事…!

 

とても3分も逃げられるような力は無い!!

 

緑谷(神様仏様うんたらかんたら様……)

 

緑谷(誰でもいいから…!!)

 

脳無の拳が髪の毛に触れるまでに近づいてしまう。

 

あ、これ死ぬ。

 

緑谷(………)

 

 

 

 

 

緑谷(悟空さん…助けて…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

あれ…痛く…ない。

 

というか攻撃して…いない?

 

不思議に思いながら上を眺めてみると……

 

 

 

 

 

ググッ…

 

脳無「……!!?」

 

「……とりあえずおめぇは…」

 

「緑谷から離れろぉっ!!!」プンッ!!!

 

ビュンッ!!!

 

死柄木「……は?」

 

ズドオオッッ!!

 

緑谷「………」

 

 

 

 

 

誰かが当たる寸前に脳無の腕を掴んで攻撃を阻止してくれたらしい。

 

その男は脳無を片手で軽々と投げ軽くあしらう。

 

すごいや…脳無が壁にめり込んでる。

 

 

 

 

 

こんな事できる人なんて1人しか居ないよなぁ。

 

 

 

 

「すまねぇ緑谷…」

 

「おめぇの気探すのに5秒もかかっちまった」

 

「でも安心しろ?」

 

 

 

悟空「オラが来たっ!!…てな」

 

 

緑谷「く…来るの遅すぎですよ…悟空さん」

 

 

 

唐突の市民の乱入に誰もが呆然とする他無かった。

 

いやそもそもこいつはただの一般人なのか?

 

どうやってここに侵入したのか?何故脳無をあんな簡単に力押しできるのか?

 

疑問点は挙げればキリが無かった。

 

 

 

蛙吹「…あ、貴方は一体…何者なの?」

 

慎重に近づきながら悟空さんに話しかけた。そりゃ怪しむか…こんな登場じゃ。

 

悟空さんはにっこり笑いながら…

 

悟空「オラか?オラは孫悟空だ!」

 

蛙吹「孫悟空?……西遊記の?」

 

悟空「うーん…ちょっと違ぇかな…後オラそいつ知らねぇし」

 

緑谷「悟空…さん…あっちに僕の友達が…いるんですけど」

 

緑谷「まだこの施設内に散らばっているんです…分かりますか?」

 

言葉が途切れ途切れになりながらも悟空さんに話しかける。

 

問いかけられた後すぐに気を探り始める。

 

悟空「………………」

 

悟空「うん。8人くれぇかな…向こうの奴ら除いてだろ?」

 

蛙吹「なんで人数が…」

 

悟空「何となく分かんだよ……後6、7人は怪我人か?」

 

悟空「すっげぇ気が小せぇ」

 

緑谷「ええ…おおよそそんな感じ」

 

悟空「よし。まずあいつらん所に散らばってる奴らを連れてこよう」

 

そう言って額に指を当てるとフッと姿を消していく。

 

 

 

 

 

 

 

切島「あ?なんかあのおっさん消えたぞ?」

 

峰田「一体何

上鳴「ウェーーーイッッ!?」

 

峰田「ぎゃああああっっ!!!」

 

背後から急に呻き声(?)が聞こえて絶叫してしまう峰田君。

 

ただそりゃいきなりオン○○ル語が聞こえたらぞっとするわ。

 

峰田「上鳴かよ!!何驚かせ…」

 

峰田「…え?上鳴?」

 

 

 

 

そう、彼はたった3秒で各ゾーンに居た8人を連れ戻してしまったのだ。

 

 

切島「あ!芦戸!常闇も!!皆!!」

 

耳郎「な…何が起こったの今…」

 

口田「??????」

 

あまりの出来事に皆驚きを隠せない。当然だ。気がつけば別の場所へ自動的にテレポートしたんだから。

 

しかも当の本人はいつの間にか元の位置に戻ってるし。

 

轟(あのおっさん…今何しやがった…)

 

 

 

 

 

悟空「……事情は何となく想像ついたぞ」

 

悟空「奴らが襲って来たんだな」

 

死柄木「おいおい何なんだこれは?」

 

死柄木「どうしてこういつも邪魔が入って来る!」ガリガリ…

 

死柄木「しかも今度は生徒でも教師でもオールマイトでもないじゃないか!!」

 

死柄木「どうやれば一瞬で大勢の生徒を集められるんだ!?」

 

相当苛立っているようだ。両手でガリガリと強く顔をかいていく。いや寧ろこれ傷つけてるんじゃ…って思う位に出血してしまっている。

 

落ち着かせようと説得をする部下の敵。

 

黒霧「気を確かに…死柄木弔」

 

黒霧「あの男についての情報も少なからず入手しております」

 

死柄木「じゃあ何だって言うんだよ」

 

黒霧「個人情報はどれも不明なのですが…丁度1年前ヘドロの事件があったのを覚えていますか?」

 

死柄木「ヘドロ…?ああ。先生も言ってた爆発小僧が襲われてたやつ?」

 

死柄木「それと何の…」

 

黒霧「その敵は突如現れた謎のツンツン頭の男によってバラバラに粉砕された……丁度あんな感じの輩です」

 

黒霧「たった1発…しかもその拳1つで天候まで変えてしまったとの事です」

 

死柄木「何だそりゃ…オールマイトですらできるか怪しい所業じゃねぇかよ」

 

死柄木「何故それをあんな男が…」

 

 

 

悟空「……なぁ、()()

 

蛙吹「!?」

 

悟空「危ねぇからこいつを皆の所に連れてってくれねぇか?」

 

……なんで悟空さん蛙吹さんの事知ってるんだ?もしかして知り合い?いや…でも蛙吹さんの驚きようからしてそれは…

 

悟空「ちょーーっとおめぇの頭ん中見させてもらっただけだよ、緑谷」

 

緑谷「頭の中…?記憶?」

 

悟空「ほら、さっさと行った!あいつ来るぞ」

 

 

 

会話の最中、脳無が埋まっていた壁から再び姿を現わす。

 

そしてゆっくりとこちらに近づいていった。

 

 

死柄木「相手がオールマイト級なら今の内に始末しておいて損はねぇだろ」

 

死柄木「とりあえずあいつからやってしまおうか」

 

黒霧「ええ」

 

悟空「うっへー…あいつまるで効いてねぇな」

 

緑谷「悟空さん!そいつはショック吸収と再生能力を持ち合わせています!」

 

悟空「再生?セルかなんかかよあいつ…」

 

悟空「分かった!あんがとな緑谷」

 

悟空「後は全部オラに任せとけ」

 

そう言うと僕の頭を2、3回ポンポンと叩いてそのまま立ち去っていく僕達を見送った。

 

…まぁ個性(?)を知ってようが知ってまいがあの人には関係ないかもしれないけど一応…ね?

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「…」

 

蛙吹「……」テクテク…

 

 

歩いて暫くして蛙吹さんが僕に話しかけてきた。

 

蛙吹「ごめんなさい。緑谷ちゃん」

 

緑谷「え」

 

蛙吹「私のせいで貴方を危険な目に合わせた」

 

蛙吹「貴方にさっき救けてもらったばかりなのに…仇で返す所だったわ」

 

蛙吹「ごめんなさい…本当にごめんなさい」

 

緑谷「……」

 

彼女の話を聞き終わると僕は照れ臭そうにこう返事する。

 

緑谷「……いや…その…うーん…」

 

緑谷「正直……君には感謝しかないんだけど」

 

蛙吹「?」

 

緑谷「……もし…今の……あの数秒が無かったら」

 

緑谷「多分僕は殺されてた」

 

緑谷「君がやった事は全部正しかった」

 

緑谷「じゃなきゃ…全員生きてるなんて結末にはならないよ」

 

蛙吹「緑谷ちゃん……」

 

蛙吹「…でもあの人が脳無?を倒せるとは…」

 

緑谷「大丈夫大丈夫。あの人は負けないよ」

 

 

 

 

緑谷「世界で2番目に強い人間だからね」

 

僕は微笑みながらすかさずそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

悟空「…おめぇらがどうしてこんな事してんのか知らねぇけど」

 

悟空「よくもオラの家族をいたぶってくれたな!!」

 

死柄木「家族…?お前はあの地味な奴の父親なのか?」

 

悟空「似たようなもんだ」

 

黒霧「気をつけてください死柄木」

 

黒霧「奴……こんな遠くからでもかなりの威圧を感じる」

 

死柄木「分かってら。さっさとケリつけようぜこんなミニゲーム」

 

死柄木「行け、脳無。あの脳筋男をぶちのめせ」

 

指示を出されるや否や脳無はすぐに走り出す。

 

僕が戦った時の速度とは桁違いのスピードだった。

 

緑谷(うっそ…ギリギリ見えるかどうかだ!)

 

緑谷(あいつはまだ全然本領発揮してなかった!あんなのと渡り合おうとしてたのか僕は!?)

 

同時に悟空さんの方を振り向くと…

 

 

 

 

悟空「……っ」

 

 

あれ…なんか…

 

緑谷(滅茶苦茶怒ってる…?)

 

 

 

 

爪が食い込む程に強く拳を握りしめ髪が揺れ今にも逆立ちそうだ。

 

表情が崩れていない所を見る限りこれはどちらかと言うと怒りを抑えてる感じか?

 

あんな所…見た事ない。

 

それは襲来してきた敵や無茶をし続けた僕に対しての怒りでは無かった。

 

 

 

悟空(情けねぇ情けねぇ…!!)

 

悟空(何が暇だ退屈だ!)

 

悟空(もしなんかあった時にって思ってたっちゅうのに何呑気に寝てんだオラは…!)

 

 

悟空『おめぇが立派な大人になっまで見届ける』

 

悟空『それが…帰るまでのオラの役目だから』

 

 

 

悟空(あんな事言っておいて…)

 

悟空(オラは緑谷と他の皆も傷つけさせちまった!)

 

悟空(不甲斐ねぇ!!!)キッ…

 

 

 

 

 

 

少し冷静さが欠けてしまったようだ。

 

気がつけば脳無を強く睨みつけていた。

 

そう…ただ少し感情を高ぶらせただけだった筈が…

 

 

 

脳無「!!!???」ピタッ

 

 

 

一瞬…コンマ1秒の事だが……

 

脳無は翻弄されてしまったのだ。彼の怒りに。

 

それが野生の本能故なのかはたまた前世の人間の理性が微かに目覚めた故か…理由は定かではないが…

 

感情の無い筈の脳無に一つの【戸惑い】が生まれていた。

 

 

 

 

だがそれもあくまで寸秒の事だった。脳無は意に介さずにそのまま走り続ける。

 

ダダッ!!

 

悟空「……」

 

悟空さんは構えずそのまま静止していた。相手からすればただ無防備な姿としか捉えられない。

 

彼の胴体に向けて脳無は右ストレートを仕掛ける……

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「よっと」ガッ!!

 

脳無「!!?」

 

つもりがなんと軽く打ったパンチであっさりと弾かれてしまう。再び攻撃を仕掛ける脳無だったが…

 

脳無「ッッ!!」ブンッ!!

 

悟空「よっ」ガッッ!

 

脳無「ーーッ!!」ブォォッ!

 

悟空「ほっ」ガッッ!

 

いくら打ち込んでもただただすぐに相殺されるだけだった。

 

1発1発が駄目ならと闇雲に連続で殴り続けようとするが……

 

 

 

 

 

 

 

ガガガガガガッッ!!

 

悟空「うひょー…速ぇ速ぇ!」ガガガガ

 

脳無「!?」ガガガガ…

 

 

脳無の猛撃を物ともせず全ての攻撃を確実に弾き返している。

 

いや…これ…

 

悟空さん段々速くなってるよね

 

 

 

 

悟空「凄ぇじゃねぇかおめぇ!この速さでもついていけんのか!?」

 

脳無「…ッッ!!」ドッ!!…

 

ドッ!!

 

 

 

蛙吹「激し過ぎて何しているか見れたものじゃないわ…」

 

緑谷「………」

 

蛙吹「流石にあんな戦いされちゃ緑谷ちゃんも……」

 

緑谷「凄い」

 

蛙吹「え…」

 

蛙吹「……いやまぁ確かに凄いものではあるけど」

 

緑谷「……脳無の奴…追いつけなくなってる」

 

緑谷「もう10発以上モロに食らってるよ」

 

蛙吹「!?」

 

蛙吹「み、緑谷ちゃん、あのパンチ見えるの?」

 

緑谷「うん。分かる…少しだけだけどね」

 

 

 

 

徐々に脳無の身体が仰け反っていく。次第に押され始め劣勢になっていくが尚一切攻撃をやめる気配は無い。

 

その屈しない精神自体は賞賛に値するべきモノであると言えよう。

 

 

 

だがこの男の前でそんな悪足掻きは無に等しい。

 

 

 

悟空「おめぇよりかは兄ちゃんと戦った方がまだ面白かったかもな」ガガガッ…

 

脳無「……?」ガガガッ

 

悟空「このままじゃキリねぇな…なら……」

 

 

 

悟空「10倍だ」

 

 

 

 

 

 

ガガガガガガッッ!!!

 

脳無「!!!!!?????」ガガガガガガッッ!!

 

悟空「だだだだだだだだぁぁっ!!!」

 

脳無の身体に何十発、何百発ものパンチが降り注ぐ。あまりの拳速に抵抗もままならなかった。

 

こんなのショック吸収も超再生も意味ないだろ…

 

 

攻撃ををありったけ叩き込み、一旦中断する悟空さん。

 

すっかり身体中に打撲の後が出き、歯が殆どボロボロに砕け散っていた。

 

…?再生しないのかって?

 

 

黒霧「…し、死柄木…弔」

 

黒霧「脳無が動きを停止しました」

 

死柄木「………なんで?」

 

黒霧「恐らく…奴の攻撃のダメージが脳無の能力を遥かに凌駕したかと…!」

 

死柄木「んな…んな馬鹿なっっ!!!」

 

 

 

もはや脳無の意識は途絶え動かぬ巨大な像と化した。しかし一時的な事なので暫くすれば脳無は再び動き出すだろう。

 

形勢逆転だ。もう遅い。

 

 

 

悟空「おめぇは強えよ…すっげえ楽しかったぜ?」

 

悟空「だからもう次は悪い事すんじゃねぇぞ」グッ…

 

右拳をギュッと握りって腰に添えた。

 

……この構え…僕は知っている。

 

いや…後もう1人目の前で見ていた奴もいたか。

 

 

 

爆豪「…ありゃ…まさか………」

 

爆豪(あのおっさんは……)

 

 

 

 

 

悟空「龍拳」

 

ズドォオオオッッ!!!

 

脳無「ーーッォォ……」

 

ビュンッ!!

 

バリィィッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

眩い一筋の光が脳無の身を包んでゆく。

 

その光は天上のガラスを突き破りあたかも流星群かの様に華麗に上空へ飛び去っていった。

 

何枚ものガラスが割れた影響により他にも天上に存在していた筈のガラスが連なって全て木っ端微塵に砕け散っていく。

 

そんな事はどうでも良かった。彼から放たれた光について皆は口々にこう呟く事しか出来なかった。

 

 

 

 

蛙吹「今の……龍?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死柄木「………」

 

死柄木「おいおいおいおいおい!!!」

 

死柄木「今の見たか?ショック吸収無効にしちまいやがった!!」

 

死柄木「真正面から馬鹿みたいに殴り合ったら脳無があっさり倒されちまっただろ!!」

 

死柄木「しかも!!あんな!!一般市民に!!!」

 

死柄木「先生の最高傑作だ…そんな簡単に壊せる訳ないだろ…!!」

 

黒霧「む…むぅ………」

 

とうとう敵連合も後が無くなった。最終兵器の脳無も無くなり、残っていた部下達も悟空さんが連れきがてら首トンして気絶させている。

 

完全に気圧された。そりゃそうだ…こんなチートキャラ誰も勝てる訳ないだろ。

 

…まぁオールマイトなら何とも言い難いけど。

 

立ち尽くしていた2人の敵に悟空さんが話しかける。

 

悟空「今の見たろ?おめぇらの負けだ!さっさと家に(けぇ)れ!!」

 

死柄木「ふっざけんな!ここまで来ておいて平和の象徴の顔も拝めずにトンズラできるか!!」

 

黒霧「しかし…死柄木。今の我々の戦力では奴には敵いません」

 

死柄木「レベルが低いから倒し甲斐があるってもんだろ!お前の個性であいつの足掴めば俺らの勝ちだ!」

 

黒霧「だとしても他の生徒や職員が…」

 

死柄木「ごちゃごちゃ言わず早く手伝えっ!!!」

ドガァァアアアッッ!!!

 

 

死柄木 黒霧「「!!?」」

 

悟空「なんだぁ?」

 

緑谷「……」チラッ

 

入口から凄まじい衝撃音が響いてきた。

 

自動ドアが誰かに破壊されたらしい。

 

思わずその方向を向くと………

 

 

 

 

 

オールマイト「はぁ…はぁ…」

 

遅れて登場、我らがNo.1ヒーロー。まぁヒーローは遅れて登場するから仕方ないね。

 

良かったじゃないか。逃げる前に顔は拝めたぞ?

 

 

 

 

 

最早怒る気も失せたらしく大きくため息をつきながら再び話し始める。

 

死柄木「……はぁ……」

 

死柄木「出てくるの遅ぇよ平和の象徴…」

 

死柄木「時ある毎に目障りな奴がやってくるもんだ……」

 

死柄木「もういいや黒霧、帰ろうアジトに」

 

黒霧「……はい」

 

 

 

 

 

逃走を図ろうとしているのが一目で分かった。

 

悟空さんに捕らえるよう指示を出そうとするが……

 

緑谷「悟空さん!!!そいつらは…」

ゴオッッ!!

 

緑谷「っわぁ!?」

 

突如発生した強風で今にも身体が吹っ飛びそうだ……

 

オールマイトが全速力で敵連合に接近しているんだろう。

 

 

 

オールマイト「貴様らぁあああっ!!!」ダダダ…

 

ズズ…

 

死柄木「今回…君が相手でも同じ結末……だったかなぁ」

 

死柄木「何にせよ敗けは敗けだ。大人しく引き下がるよ」

 

 

 

 

 

死柄木「だけど今度は必ず殺すよ…オールマイト」

 

オールマイト「FUCK!!!」

 

 

 

 

 

 

ドゴオオッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトが繰り出したスマッシュにより新たな亀裂が地面に現れる。

 

だがそこには敵の姿も血も見えず……

 

後に残ったのは僕らの無念と…屈辱感のみだった。

 

 

 

 

 

 

 

ようやく悟空さんとオールマイトが来た。

 

敵も殆ど退治した。後は八百万がプロヒーローを連れてくるからもう問題ないだろう。

 

皆…助かったんだ。

 

 

 

…………ふぁぁ…安心したら……眠くなっ

 

 

 

 

 

 

 

 

蛙吹「皆!!!」

 

切島「梅雨ちゃん!!」

 

峰田「無事か…良かった良かった」

 

切島「良かねぇよ!」

 

切島「危うく死ぬ所だったじゃねぇかよ!!」

 

切島「なんでさっき飛び出していったんだ!?」

 

蛙吹「ご…ごめんなさい…緑谷ちゃんを救けたかったから」

 

耳郎「まーま、そこまでにしときなよ」

 

耳郎「梅雨ちゃんが命張ってくれたお陰で緑谷逃げられたんだからさ」

 

尾白「寧ろ誇らしい事だと思うよ」

 

上鳴「ウェーーーイッッ!!」

 

芦戸「剣崎は黙ろっか」

 

切島「……まぁ…それもそっ…」

 

切島「あれ…緑谷?」

 

緑谷「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロの世界。その脅威と立ち向かうにはまだ僕らには早すぎた。

 

各々が自力の限界を痛感し、良い意味でも悪い意味でも僕達にとって重要な経験となった。

 

 

 

 

だけど…この襲撃はあくまでも後に起きる大事件の前兆にしか過ぎない。

 

…まぁ……今はそんな事…誰も知る由も無かった訳ですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイト「くそ…くそ!!」

 

オールマイト「逃げられた……っ!」

 

オールマイト「私は何て事をっ……」

 

悟空「……おめぇが…オールマイトなんかぁ?」

 

オールマイト「はっ!!見知らぬ顔だな!もしや貴様も敵連合……」

 

悟空「い、いや違ぇけど…」

 

オールマイト「………むむ…そのチョンチョンヘアーは……」

 

悟空「あれ……オラ達ってもしかして…」

 

 

 

悟空 オールマイト「「何処かで会った事ある?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ワイにとっての夕方は日が変わるまでなんだよぉう!!(惚け)

須井化です…はい。

今回は悟空さバリバリ活躍回っすた。4倍界王拳?何それ痛そう。

ライ○ーネタが多いのは気のせいかな?うん。きっと錯覚だろ。

今回特筆すべきはやはりケロインですなぁ。書いてて割とマジで

<やべ可愛い

とか思いましたわ。

……こんな低レベルな文章で果たして可愛いと感じるのは何人なのだろうか。

番外編のお陰で尚更キャラ立ちましたわ!ありがとう!堀越先生!!


次回は反省会的なアレです。緑谷出るかなぁ…

……ん?悟空さ敵倒してるとこ見られたじゃん。これ詰んだんじゃね?

………

か、過度に期待せずに待てぃ……

<下級戦士が…無様なm
ウァァァァァァァァ!?(チュドォッッ!!!

<クズロットは帰ってどーぞ

流石ロコリーと褒めてやりたい所だぁ…





何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月20日(月)以内に第17話の投稿を予定しております。

お楽しみに!



ところで俺の袋を見てくれ。こいつをどう思う?

<すごく…少ないです…はい。

<ってか0個だロット…

全てはお前の言う通りだ。

ファッハッハッハッハァーッ!(泣



皆さんは何個貰えました?チョコ。





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第17話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

敵連合の秘密兵器【脳無】が現れ絶対絶命の窮地に立たされた1-Aだったが…

駆けつけた孫悟空により難を逃れる!!

更にオールマイトの登場により不利と見た敵連合は自ら身を引いていく。

辛くも痛み分けという決着でこの闘いは終焉を迎えたが……

更に向こうへ!PlusUltra!!!


悟空さん、オールマイトが来てから数分後…八百万さんと教員達がUSJに辿り着く。

 

それから間も無くして警察も現場に到着した。

 

だが時既に遅し、

 

彼らが見たものは無惨に崩壊した施設と泣き崩れる生徒達の姿だけであった。

 

 

 

 

 

 

スナイプ「………」

 

スナイプ「なんてこった。してやられたってやつか」

 

ミッドナイト「これだけ派手に侵入されて逃げられちゃうなんてね…」

 

根津「完全に虚を突かれたね」

 

根津「だが今は生徒の安否が第一優先だ」

 

根津「後は警察(彼ら)に任せようじゃあないか」

 

 

 

 

 

「随分と酷い有様じゃないかオールマイト」

 

「君が担当の筈じゃなかったのか?」

 

薄茶色のコートを着た刑事がオールマイトに話しかけてきた。他の人達とは違いやたら親しく接してるなぁ。

 

それもその筈。この人は彼の旧友…数少ないオールマイトの素性を知る男…

 

オールマイト「久しぶりだな!塚内君!!」

 

 

塚内直正警部その人だ。

 

塚内「見た所今回は遅れて登場したってパターンか?」

 

塚内「場の荒れようにしては闘いの傷痕がこれっぽっちもないじゃないか」

 

オールマイト「はぁ…何ともまぁ……」

 

オールマイト「面目無い」

 

オールマイト「こんな惰弱な姿晒してしまって」

 

オールマイト「残念ながら今回私の出番は無かったぜ」クイクイッ…

 

塚内「どういう事…」

 

オールマイトが指差す方を見るとそこには見覚えのある顔が…

 

その人物は照れ臭そうにしながらこちらに手を振りアピールしている。

 

 

悟空「へ、へへへ……へ」

 

オールマイト「君が1年間探していたヘドロ事件の解決者……その張本人さ」

 

塚内「………写真と完全に一致してるなありゃ」

 

オールマイト「…少し彼と話したい。気になる事がいくつかある」

 

塚内「正気か?君の話が本当なら奴は無免許で敵を2回も…」

 

オールマイト「塚内君、君も来るんだ」

 

塚内「な…」

 

オールマイト「あの方の話を聞いてからでも逮捕するのは遅くない」

 

オールマイト「ダメか?」

 

塚内「………ここの収束がついたらな?」

 

オールマイト「感謝する…!」ペコッ

 

 

オールマイトは深くお辞儀をし、僕を含めた負傷者8人を引き連れ病院へと飛び立っていった。

 

その際悟空さんも彼に同行していったという。

 

他の生徒達は皆ゲート前に集まりそれぞれ点呼を取ってもらった。先程悟空さんが他のゾーンで彷徨っていた人等も集めてくれたので比較的すぐに安否確認を終えられた。

 

……まぁ数人居なかったんだけどさ。

 

 

 

塚内「20人中14人確認」

 

塚内「重傷者の6人を除き全員揃ってるな」

 

ひとまず闘いが終息した事により一安心。

 

指示を待っている間皆はクラスの人と対話を行っていた。

 

葉隠「いやー大変だったね尾白君!」

 

葉隠「君今日燃えてたんだって?よく1人で撃破できたね!!」ポンポン…

 

肩を軽く叩きながら尾白君に話しかける。ってか手袋とブーツだけってあんた全裸でいたのかよ…

 

尾白「何そんな楽しそうに話してんの葉隠さん…」

 

尾白「こっちはこっちで色々苦労したんだから」

 

尾白(結局…あの電気男はあの道着の人が首トン1発で気絶させちゃった)

 

尾白(殆ど互角でケリがつかなかったんだよね)

 

尾白(そりゃ倒してくれたあの男性も気にはなるんだが…)

 

葉隠「私は土砂のとこいたんだ!轟君クソ強くてびっくりしちゃった!!」

 

轟「……」

 

尾白「危ないじゃないか…きっと一瞬で辺り氷漬けにしたんだろ?」

 

葉隠「うん!危うく巻き添え食らうとこだったよー」

 

轟(……葉隠もあの場に…?)

 

轟(フィールド全域を完全に凍らせた訳じゃねぇ…が)

 

轟(傍観できるって距離にしちゃ回避したってのは無理ねぇか?)

 

轟君は不自然に感じながら2人の会話をこっそり聞き耳を立てていた。

 

 

 

 

一方こちらはというと…

 

青山「僕がいた所はね…」

 

青山「どこだと思う!?」ビシッ!

 

青山君が突然皆に問いかける。身振り手振りが大げさなしぐさはその重要性を強調する為なのか…

 

だがしかし誰も耳にしてくれない。

 

常闇「そうか。やはり皆のとこもチンピラ同然だったか」

 

切島「ガキだからって舐めてかかってきやがった」

 

青山「…」

 

青山「どこだと思う!?」ビシッ

 

蛙吹「どこ?」

 

聞こえなかったと思い再度ジェスチャーをしながら皆に訊ねてみる。

 

無視するのも可哀想なので蛙吹さんが返事をするのだが…

 

 

 

青山「秘密さ!!!」

 

じゃあ言うなよ。

 

 

塚内「そうだな…一旦生徒は教室に戻ってもらおうか」

 

塚内「そこで暫く待機。程なくして怪我人の詳細も明らかになるだろう」

 

塚内「校長先生。よろしければ校内も巡回したいのですが…」

 

根津「問題ないさ!権限は君達が上なんだもの」

 

根津「一部じゃとやかく言われちゃいるが捜査は君達の分野だしね」

 

根津「よしなに頼むよ」

 

「塚内警部!!」ダダッ

 

塚内「ん?」

 

話を終えると部下の1人が深刻そうな顔をしながら塚内さんに駆け寄ってきた。

 

「報告致します!現場を捜査した所何やら動物の脚…のような破片が散らばっているのを発見しました」

 

塚内「それは一体…」

 

「とは言うものの全て氷漬けにされており調査もままならない状況でして…」

 

塚内「やむを得んな。全て回収し、科捜研に引き渡せ!」

 

塚内「何らかの情報がつかめるかもしれん」

 

「了解しました!」

 

会話した後すぐに部下はその場を立ち去る。

 

塚内さんは相方の犬…ではなく猫のお巡りさん(二足歩行)に声をかけ…

 

塚内「さてと…三茶」

 

三茶「はい?」

 

塚内「俺はこれから学校で少し野暮用がある」

 

塚内「それが終えるまで、指揮は任せるぞ」

 

三茶「了解」

 

八百万「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後…

 

【対面室】

 

 

 

ガチャ…

 

 

 

 

悟空「おっ邪魔しまーす…」

 

そっと静かにドアを開け小さな声で挨拶しながら部屋に入っていく。

 

既にオールマイトと塚内警部はソファに腰掛けて彼が来るのを今か今かと待ち侘びていた所だった。

 

悟空「…」ジィ…

 

オールマイト「どうぞこちらへ」

 

悟空「お…おう」

 

そそくさに言葉を返し、彼らとは向こう側のソファにポフッと座り込む。

 

いわゆる事情聴取だ。悟空さんに限ってはそれだけでは無さそうだが。

 

塚内「お手数おかけして申し訳ございません」

 

塚内「ご協力感謝致します」

 

悟空「いやぁ…オラにできっ事があんなら喜んで手伝わさせてもらうぞ」ジィ……

 

塚内「では早速幾つかの質問に答えていただきます」

 

塚内「まず身元の確認ですが…」

ポタポタポタポタ…

 

塚内「……」

 

オールマイト「……あの……」

 

 

オールマイト「お茶菓子よかったらどうぞ?」

 

悟空「え?いいんかぁ?」ダラダラ……

 

 

 

ソファとソファに挟まれているテーブルの上にはお菓子の山が。

 

成る程。悟空さんなら涎が溢れ出る訳だ。

 

テーブルに置かれている食べ物を一生懸命観察している事に気付き、彼に薦めた。

 

 

オールマイト「え、ええ…ご自由に」

悟空「分かった」パクッ

 

オールマイト 塚内「「……」」

 

悟空「うめぇぇっ!」モグモグ……

 

 

 

 

ご覧いただけただろうか。

 

オールマイトが喋り終えた瞬間、悟空さんの頰がいきなり膨らんだのだ。必死に顎を上下に振動させ、何を食べているかとテーブルの上の皿に目をやると…

 

あら不思議。お菓子が消滅している。

 

しかもこの手品の一番のミソはこのお菓子が小包装されていたという点だ。なんとこの方袋を開けず中身だけ食べたのだ。

 

これが世に言うトリックというやつなのか…2人は困惑しながらその光景を見る事しか出来なかった。

 

 

 

お菓子を5秒足らずで食べ終わった悟空さんに驚きながらも3人は再び話し始めた。

 

塚内「えー…では最初に身元情報の確認をお願いしたいのですが…」

 

悟空「……」

 

悟空「みもとぉ?」

 

駄目だ。悟空さんの知識じゃ質問の理解すら難解だぞ…流石の彼らも唖然としてしまう。

 

仕方ないので究極的に噛み砕いて説明する事にした。

 

塚内「そうですね…貴方の名前…住んでいる場所…後職業を教えてください」

 

悟空「あーそれなら何とか言えそうだ」

 

悟空「オラは孫悟空…んでこの間までパオズ山に住んでた」

 

悟空「今は……ここら辺ぶらぶらしてる」

 

塚内(住所も分からんのか住所も…)

 

悟空「仕事は…………」

 

悟空「さ、探し中…だぞ」

 

つまり無職ですね、分かります。

 

こんな曖昧な情報だけでは大して参考になる筈が無い。塚内さんは調査の難航さに頭を抱えてしまう。

 

唯一使えそうな物として【パオズ山】というキーワードが出てきていたが勿論知っている訳も無くこれ以上の聞き取りは無意味と判断する。

 

険しい表情になりながら塚内さんは悟空さんにこう言い放つ。

 

塚内「…孫さん。単刀直入に言います」

 

 

 

塚内「貴方は現在3つの罪に問われている」

 

悟空「?」

 

塚内「1つ、個性の無断使用」

 

塚内「聞く所…貴方の個性は不明ですが常人を遥かに凌ぐ身体能力があるようですね」

 

塚内「敵連合の部下の1人も倒しただとか…」

 

悟空「ああ…オラがぶっ飛ばした」

 

塚内「まぁ貴方の個性が断定できない以上これは何とも言えないんですが問題は後の2つ」

 

塚内「不法侵入……そして殺人の罪」

 

悟空「!!」

 

塚内「特に後者の方は一つ目の個性濫用と大きく関わってくる」

 

塚内「しかも貴方の場合今回だけでなく1年前にも似たような事案を起こしてしまってる」

 

塚内「以上の事から…死刑は無いにせよ其れ相応の判決は下る筈だ」

 

悟空「………」

 

悟空「つ、つまりオラはお巡りさんに捕まらねぇといけねぇのか?」

 

オールマイト 塚内「「うん、だいたい合ってる」」

 

塚内「とは言えあくまでこれは僕の主観的理論……ってもほぼ警察の希望に近い」

 

塚内「本題はこれからです」

 

塚内「オールマイトはご存知…でしょうか?」

 

悟空「ああ。知ってっぞ!」

 

悟空「地球で1番強ぇ男なんだろ?一度でいいから会ってみてぇと思ってたんだー!」

 

両手をブンブン振りながら彼との出会いに感動している。興奮し過ぎだ…僕が言えないか。

 

 

 

 

 

 

ガタッ

 

悟空「ん?」

 

 

 

それを見るなりオールマイトは突然立ち上がり彼に深く額ずく。

 

 

 

 

 

 

 

オールマイト「先の敵の撃退……」

 

オールマイト「我が校の生徒(あの子達)を命懸けでお護りくださって誠にありがとうございます…」

 

オールマイト「全校生徒一同…並びに職員を代表し…」

 

オールマイト「深く……深く御礼申し上げますっ」

 

悟空「……」

 

 

 

果たして平和の象徴が地に伏せ誰かに土下座をするという光景を見た事があるだろうか?

 

現在彼の脳内は恐らく混沌とした状況となっているだろう。敵に出し抜かれた悔しさ、己の不甲斐なさ、襲来した敵連合の謎…疑問。

 

様々な感情が行き交う中全て底に押さえ込み、恩人に対し全身全霊の感謝の意を示した。

 

 

 

 

悟空「顔上げてくれ」

 

悟空「オラは大した事をした訳じゃねぇ」

 

悟空「寧ろ謝るべきなのはこっちの方だ」

 

悟空「もう少し…早く動けてりゃ…」

 

悟空「他の奴も助けられてたかもしれねぇのに…」

 

 

悟空「すまねぇ…ホント」ペコッ

 

同様に悟空さんも2人に一礼する。

 

 

 

 

数秒間沈黙の時間が続き暫くしてオールマイトは再びソファにゆっくり座り込んでいく。

 

 

オールマイト「さっき…貴方は私と会いたかった…と仰ってましたね?」

 

悟空「おう」

 

オールマイト「……でも実際…貴方とUSJで顔を合わせた時は…」

 

悟空「……」

 

悟空「どうやらオラ達はすれ違いでお(たげ)ぇ見た事がありそうだな」

 

その驚愕の事実に塚内さんは驚きを隠せなかった。

 

きょとんとした表情でオールマイトに聞き返す。

 

塚内「ほ、本当なのかいオールマイト…」

 

オールマイト「ああ…間違いない。忘れもしない」

 

オールマイト「まさか天高く翔けていくあの巨大な龍を2度も目撃するとはな…」

 

オールマイト「我ながら恐ろしい強運よ」

 

悟空「…やっぱりそうだったんか」

 

悟空「こんな()()もあんだなぁ…」

 

オールマイト「?偶然?」

 

悟空「ああ。オラどうやら異世界…ってとこから来ちまったようでよ」

 

悟空「訳も分からずフラフラそこらへん歩いてたらデケェ気配を見つけたんだ」

 

悟空「そこを向いたらびっくらこいた!緑谷が怪物に襲われ…」

 

悟空「あ」

 

 

 

 

遅いよぉぉ!何バラしちゃってるの悟空さん!!

 

警察に生徒との関係性を大胆カミングアウトしてしまった。

 

汗をかきながら見事にやっちまったと口を開けて暫く静止してしまう悟空さん。

 

 

塚内「……一応…嘘をついていた自覚はあったようだね」

 

塚内「さっきの情報、訂正しときますよ」カキカキ…

 

悟空「わ、悪い。悪気があった訳じゃねぇんだよ…」

 

悟空(すまねぇぇぇぇ緑谷ーー!)

 

悟空(おめぇの事バラしちまった!やべえ!)

 

悟空(このままじゃオラや緑谷どころか…)

 

悟空(おめぇの母ちゃんまで捕まっちまう!)

 

これに対してオールマイトは…

 

 

 

オールマイト「……」

 

オールマイト「成る程。これでようやく…」

 

 

 

 

オールマイト「全てのロジックがつながった」ニッ

 

にやけながらそう答えた。

 

 

 

悟空「?」

 

オールマイト「貴方は1年前…飛び出していった緑谷少年()を救ける為に民衆の前へ颯爽と現れた…」

 

オールマイト「そうでしょう?」

 

悟空「…ま、まぁ合ってるぞ…分かんねぇ言葉あっけど」

 

オールマイト「彼のかめはめ波…というのは」

 

オールマイト「その後ろの【亀】という字に何か関係あるのでしょうか?」

 

悟空「……」

 

ヌギヌギ…

 

悟空「あ!!書いてんな確かに!」

 

今更かよ!

 

道着の後ろに大きく亀と書かれている事に気づいた悟空さん。態々服脱いで確認しなくてもいいです。

 

塚内「……これは詳しく……」

 

塚内「話を聞く必要があるな、オールマイト」

 

オールマイト「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15:00

 

【1-A教室】

 

教室に帰り小一時間が経とうとしていた。

 

長い時間が過ぎて尚クラスの殺伐とした空気は解消せず、皆とても落ち着いてなどいられなかった。

 

慌ただしい雰囲気の中ドアのノック音が聞こえてくる。

 

 

 

コンコン…

 

ガララッ…

 

 

 

入ってきたのは相澤先生…ではなく

 

1-B担任【ブラドキング】先生である。

 

 

ブラドキング「遅くなって申し訳ない」

 

ブラドキング「他の者を速やかに帰らせていた」

 

ブラドキング「その他諸々の事もありかなり手間取っていた所だ」

 

ブラドキング「色々話したいのも山々なんだが今回は急を要する」

 

ブラドキング「簡潔に最小限伝えるべき事を伝え終えた後お前らもすぐに下校してもらう」

 

「…」コクコク…

 

皆は小さく首を振り頷いた。そりゃあんな事があったら返事する気力も失せるわな…

 

ブラドキング「まずは負傷者の症状について軽く触れておく」

 

ブラドキング「生徒の方から…」

 

ブラドキング「6人中5人が打撲擦り傷…」

 

ブラドキング「とは言え他の者と比べれば軽傷に済んだ方だ」

 

ブラドキング「ついさっき目覚めたとの報告を受けた」

 

蛙吹「み…緑谷ちゃん…緑谷ちゃんはどうなの先生!!」

 

声を荒げながら先生に話しかける。

 

まだ残りの1人が僕と決まった訳じゃないっていうのに……あり得ないか他の人じゃ…

 

ブラドキング「落ち着け。今から説明する」

 

ブラドキング「結論から言うと彼も同じような感じだ」

 

ブラドキング「命に別状はない」

 

それを聞くと深呼吸してほっとする蛙吹さん。

 

蛙吹「…っ……よ…よかった……」

 

ブラドキング「ただ箇所が多過ぎるのと傷が深いとの事なので多分1日は寝っきりだそうだ」

 

ブラドキング「問題は教師の方だ」

 

ブラドキング「13号は背中から上腕にかけての裂傷が酷いがこちらも命に関わるような事は無かった」

 

ブラドキング「それに対し相澤…イレイザーヘッドは……」

 

ブラドキング「両腕両脚粉砕骨折、顔面骨折…」

 

ブラドキング「加えて全身に及ぶ打撲多…」

 

ブラドキング「しかも眼窩底骨が粉々になり、何かしら眼の後遺症が出るかもしれない…」

 

ブラドキング「今分かるのはこれだけだ」

 

ブラドキング「現在集中治療で何とか奮闘してくれてはいるが」

 

ブラドキング「一命を取りとめたとして意識が戻るのはいつになるやら…」

 

 

ブラドキング「…というのが怪我人の現状だ」

 

ブラドキング「何か質問ある者は」

 

 

 

上鳴「すんません…少しいいっスか?」

 

 

 

そっと挙手し、ブラドキング先生に声をかける。

 

っていつの間にか戻ってたんだね上鳴君

 

上鳴「その…こんなタイミングで言うのはおかしいと思うけど…」

 

上鳴「相澤先生の復帰の見通し…ってのはもう立てられたりとかは…」

 

ブラドキング「……勿論それにはどうともコメントできん」

 

ブラドキング「ただ明日、明後日と臨時休校にはするが…」

 

ブラドキング「その間に傷が癒えた所で奴はどの道すぐには戻れんさ」

 

爆豪「すぐには…?」

 

ブラドキング「………」

 

ブラドキング「恐らく奴に20人の能力違法行使の責任が問われる」

 

 

冷めていたクラスの空気が突然熱される。

 

敵が先に攻撃を仕掛けておいて【正当防衛】が効かない…こんな理不尽な事あってたまるか。

 

この発言には黙っていられず反論をまくし立て、教室中がざわつき始めた。

 

切島「ちょ…そりゃねぇっすよ!先生!」

 

峰田「俺らは戦わず死にゃよかったって事かよ!!」

 

常闇「あまりに滑稽な…」

 

尾白「今回のこれとそれでは話が別でしょう!?」

 

芦戸「そーだそーだ!」ブーブー

 

ブラドキング「……」ザワザワ…

 

 

 

ブラドキング「喧しいっ!!!静粛に!」

 

大声で先生は嘯いた。

 

身体が痺れる程の喝を入れられ、一瞬でまたもやクラスが静まり返る。

 

……再びブラドキング先生が話し始めた。

 

ブラドキング「いいか。ここでハッキリさせておく」

 

ブラドキング「【正当防衛】と【個性使用の了承】は別物で考えろ」

 

「!?」

 

ブラドキング「正当防衛というのはあくまで個性外で適用されるものだ」

 

ブラドキング「特例であるものを除きだがな」

 

ブラドキング「分かりやすく説明してやる」

 

 

 

 

ブラドキング「例えばある夫婦がいたとする」

 

ブラドキング「その女房が保険金を手に入れたいと考えた」

 

ブラドキング「もしそいつの個性が【洗脳】でその男性を自分に襲わせ、あたかも仕方なく殺害したと見させたとしたら…」

 

 

 

 

 

 

ブラドキング「こんなの正当もクソもないだろ?」

 

ブラドキング「実際今話したのと似たような案件が昔は軽く2、30起きていた」

 

ブラドキング「事態を重く見た政府は直ちに改正し…正当防衛として判断されるのはあくまで個性無使用の時とした」

 

ブラドキング「個性を使っての手口なんざ思いつけばキリ無くなるからな」

 

ブラドキング「現にお前らは敵とは言え何十人もの人間を傷つけ…更にはUSJに多大なる被害を加えた」

 

ブラドキング「これが保証人の許可無しと来るもんだ」

 

ブラドキング「状況が状況にしてもだ…これは見過ごせん。相澤には何かしらの形で処置が下されるだろう」

 

 

 

 

葉隠「そんな…」

 

 

 

ブラドキング「それに準じてのカリキュラム変更…副担からの本担任選出等は…」

 

ブラドキング「今後検討していくつもりだ」

 

ブラドキング「家に帰って今日はとりあえずゆっくり身体を休ませろ」

 

ブラドキング「まぁ…そうは言っても気が気でないかもしれんが」

 

ブラドキング「大きな怪我が無かった分お前らには精神的に傷を負っただろうからな」

 

ブラドキング「一旦頭冷やしてこい…親御さんも心配している」スタスタ…

 

話し終えると彼はその教室から立ち去ろうとする。

 

誰1人としてうんともすんとも反応できる様な情況では無かった。

 

知ってしまった敵の恐怖…プロの世界…子どもの僕等ではとても太刀打ちなどできなかった。

 

そりゃ15の身空じゃ、大人の事情に首を突っ込むなど出来る訳がない。

 

 

 

 

そんな事は分かってた。

 

 

 

 

 

 

 

「悔しい」

 

ブラドキング「?」

 

誰かがボソッと呟くのを聞いたブラドキングは直様後ろを振り向いた。

 

その声の主は……

 

 

 

 

切島「悔しいっすよ…こんなの……」

 

切島「先生や…ダチに護られてばっかで」

 

切島「結局俺らはただ突っ立ってる事しかできなかった!!」

 

切島「俺達ァ何も出来やしなかった!!」

 

切島「あの時勇気振り絞って立ち上がってりゃ……他の奴らだって……!」ブルブル…

 

 

両手は強く握りしめられ、身体が激しく震えていた。歯ぎしりを立て歪んだその顔は強い当惑感を表していた。

 

おおよそその場にいた全員が同じ様に悔やんでいた筈だ。

 

仲間が…師が瀕死にまで追いつめられたんだ。無念や屈辱しか感じられなかっただろう。

 

その感情を…堪える事はできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ブラドキング「……こんな所に襲撃しに来た敵も馬鹿だが…」

 

ブラドキング「それに立ち向かっていったお前らは相当の大馬鹿者だ」

 

切島「…!」

 

ブラドキング「入学後1ヶ月足らずで実践を経験し生き残ったクラスなど…」

 

ブラドキング「少なくとも俺の記憶じゃ過去に一度たりともいなかった」

 

ブラドキング「恥じるな」

 

ブラドキング「お前らはこの闘いの勝利を勝ち取ったんだ」

 

ブラドキング「悔やんでいる暇があるならそれバネにして少しでも強くなるよう努力してみせろ」

 

切島「………」

 

彼のアドバイスを聞いた切島君に普段の笑顔が戻ってきた。

 

自信を取り戻し力強く返事をする。

 

切島「はいっ!!」

 

ブラドキング「では」ガラッ…

 

切島君の返事を聞くなり扉を開けて教室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

ブラドキング「今日の戦闘で確固たるものが1つ…」

 

「?」

 

ブラドキング「お前らは確実に強くなった…」

 

ブラドキング「それだけは自負しておけ」スタスタ…

 

 

 

そう言い放ちながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【対面室】

 

オールマイト「umm…」

 

オールマイト「どんな願いも叶えてしまうボール…か」

 

オールマイト「にわかには信じ難いですな」

 

悟空「こう!こーんなデケェ龍が空に現れんだよ!」グオッ

 

必死に全身を使ってジェスチャーする。

 

説明が抽象的過ぎて分かりませんよ、悟空さん…

 

最早塚内さんは失笑してる始末だぞおい。

 

塚内警部は小声でオールマイトにボソボソと話しかける。

 

塚内<お、オールマイト…

 

塚内<本当に君は奴の言う事を信じるのか?

 

悟空「?」

 

オールマイト<当然だ…彼の龍拳が神龍リスペクトなら合点がいくし…

 

オールマイト<何より瞬間移動する所見てるんだから嘘だなんて思えやしないだろう

 

塚内<だが……

 

悟空「どうかしたんか?」

 

オールマイト「い、いえ…なんでも…」

 

悟空「???」

 

オールマイト「ええっと…それで確か就職先をお探ししていたのですよね?」

 

悟空「ま…まぁ一応…うん」

 

オールマイト「ならば私に1ついい提案があります」

 

悟空「え?」

 

塚内「……オールマイト…まさかお前…」

 

オールマイト「どの道空いた穴は埋めなきゃいけない…」

 

オールマイト「多分この人が1番適任だと思うんだ」

 

塚内「だが…それってつまり…」

 

オールマイト「まー……ちょっと法を破る事にはなるが」

 

塚内「………それを僕達に見逃せと?その為に連れて来たんじゃあるまいな…」

 

オールマイト「そ、そこに関しては後生の頼みだ!」

 

オールマイト「何より過去私も似た様な経験をしているからな…」

 

オールマイト「今度は私が許す番だ」

 

塚内「…似たような……?」

 

オールマイト「塚内君には縁の無い話さ。随分昔の事だし」

 

オールマイト「……ですがその前に…」

 

悟空「?」

 

オールマイト「折角貴方が色々とお話ししてくださった」

 

オールマイト「ならば私からも少々語らねばなるまいな…」シュゥゥ…

 

突如オールマイトの身体からモクモクと煙の様なモノが噴き出てくる。

 

悟空「うっお…なんだそりゃ…」

 

オールマイト「そうですね………まずは何処から話そう」

 

 

 

 

 

 

オールマイト「OFA(ワン・フォー・オール)についてでも話してみるか…」

 




須井化です…はい。

主人公不在の回ですた!意外と長くなってしまった!

オールマイト曰くいい職場があるっぽい。とうとう働く時が来たようだなぁ…!<ハタラキタクナイデゴザルッ

実際原作じゃ責任云々の言及はされなかったけど校内だからって暴れたら如何なものなのか…

というわけで今回の話でした。

次回はデク君in病院回です。

って言っても入院生活1日ちょいなんですぐ退院するんですが…

それから学校復帰までいけるといいなぁ…



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月23日(木)以内に第18話の投稿を予定しております。

お楽しみに!


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第18話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJにて激戦を繰り広げ何とか敵連合の撃退に成功する1-A生徒達!!

だがその代償も大きく心体共に大きな傷を負ってしまう。

あの後緑谷少年は……?

そして悟空さんの初就職や如何に…

更に向こうへ!PlusUltra!!!


USJ襲撃翌日…木曜日

 

【某病院:とある一室】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体中が痺れる。

 

頭痛も酷い。

 

意識が戻ってから最初に感じた事はこの2つだった。

 

そしてフワフワとしたベッドの感触でここが先程まで居たUSJとは別の場所だという事まではすぐに分かった。

 

……それで何してたっけかなぁ…

 

確かUSJで………

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お………て」

 

 

 

 

???

 

誰かの声が聞こえてくる。しかもこれ聞き覚えあるぞ…

 

八百万さん?…いや違うなぁ。蛙吹さん……でも無いし。

 

「……てよ」

 

うむむ…

 

聞く限り何かを頼んでいるみたいだな…でも要求されている内容が分からない。

 

……待てよ。このまま目を開けて誰か確認すりゃいいじゃん。

 

 

 

 

 

 

少しずつ目を開いていくと……その先には見知らぬ天井。そしてすぐ横から誰かの声が聞こえてくる。

 

 

「起きてってば」

 

 

えっと……ここはどこで今どういう状況なんだ?

 

意識が朦朧とする中ゆっくり視線を下げていく。

 

 

 

 

 

 

麗日「起き……あ、起きた、デク君」

 

 

声の主は麗日さんだったのか……なんか少し違和感覚えたけど。

 

僕を起こす為ユサユサと身体を揺らしてたらしい。

 

その拍子に目覚めたんだろう。

 

これで1つ謎が解けた…けどまだ色々と疑問は残るんですが……

 

緑谷「えー……と…」

 

緑谷「麗日さん……ここって…」

 

麗日「学校近くの病院。デク君1日寝たっきりだったんだよ?」

 

麗日「もうすぐ目ぇ覚めるかなって思ったらいきなり唸り出したし」

 

唸る?僕さっきなんか苦しんでたっけ…

 

駄目だ。益々不可思議な点が出てくる……

 

病院?寝たっきり?1日?

 

……って事は…

 

 

 

あれ、これ寝過ごしてしまったのでは。

 

 

 

緑谷「ううらっらうらっ麗日さんっ!?」パサッ

 

布団を乱暴に身体から退かしてベッドから飛び起きた。麗日さんの肩に両手をやり、今度はこっちがブンブン身体を激しく揺らし始めた。

 

麗日「ぅぉおっっいなんでっすぅっか!?」ユサユサユサユサ!

 

緑谷「道着の人!あ…あの髪黒くて長い人どこいるの!?」

 

麗日「え?道……ダレソレ?」

 

緑谷「ややややややばばばば…」

 

しまった!敵連合が逃げてったからぐっすり安眠しちまった!!!

 

よくよく考えればあれは最悪中の最悪の展開!!

 

オールマイトが来た事で悟空さんがそのまま逮捕されちゃうじゃん!しかも大勢の生徒達が目撃してるから運良くヒーロー達が見てなかったとしても言い訳できない!!しかもヘドロと脳無で計2回!!って…

 

 

 

 

 

緑谷(あの人まじで脳無殺しやがったぁぁぁぁっ!!?)ガリガリガリ…!!

 

現在とてつもなく深刻な事態に陥ってる事をようやく理解したか。

 

ただでさえ寝癖で乱れていたていた髪型が強く頭を掻かれる事によりさらにグチャグチャになってしまう。

 

何か敵にもいましたねこんなボス。

 

ってそんな事は正味どうでもいい!

 

只今の状況を5文字以内で説明しろと言うものなら正に【いとやばし】!!

 

緑谷(1日…確かにもう14時過ぎ…!!)

 

緑谷(恐らくというか…絶対悟空さんの取り締まり終わっちゃってるよなぁ!うん!!)

 

緑谷(呑気に病院で休んでる暇無いよ!!!)バッ

 

ベッドから立ち上がって即座に走り出し部屋から出ようとするが…

 

 

ピキッ

 

緑谷「っだぁぁああっ!?」ドサッ

 

 

嫌な効果音が聞こえたと同時に全身に激しい電流が流れ出す。

 

少しの衝撃で身体がぶっ壊れそうだ……

 

そういえば4倍まで跳ね上げてたね僕。

 

麗日「ああ…デク君どこ行くの!?」

 

緑谷「い…いやあの…ちょっと…手洗い…」

 

麗日「安静にしなきゃ駄目だよ。もうすぐリカバリーガール来るから」

 

緑谷「リカバリー…?だってもう治癒は……」

 

緑谷「あ」

 

 

 

 

 

 

彼女曰く、治癒は結構体力削るらしい。

 

大怪我もすぐ治る…とは言うものの、前も言った通りリカバリーガールの個性は【怪我人の治癒力活性化】なので…

 

傷が深ければ深い程その人の負担はグッと上がる。ましてや意識が無い人に使えば最悪死んでしまう。

 

だからいつどんな時でもホイホイ使えるような個性では無い。重傷者は予め傷が癒え始めてきてから一気に治してしまうのが定石。

 

という訳で起きてから数分後、リカバリーガールが病室に訪れて治療を施してくれた。

 

その間麗日さんにあの後何が起こったのか一部始終を話してもらった。

 

あの後無事生徒達は皆治療を終え退院している事。

 

今は臨時休校で来週の月曜まで授業は無い事。

 

…1番驚きだったのは相澤先生だ……いや…あんなボロボロだったらすぐ治らないとは思ったけどさ。それだけが問題じゃなかったのが何ともね…腹ただしいというか…何というか。

 

起きたばっかりだってのと治癒で体力使ってた事もあって驚く気力も殆ど残っちゃいなかった。

 

肝心の悟空さんの現状聞けなかったしなぁ。まぁ麗日さんは気絶してて顔すら合わせてないから仕方ないんだけど。

 

 

 

……そういえば今気づいたんだが…

 

 

緑谷「なんで麗日さんは帰ってないの?」

 

麗日「ふぇ!?」

 

麗日「い、いいいいや!べっ別にデク君心配だからここでずっと見張っ…守ってたとか…そんな事じゃなっくてね!?」

 

図星でしたぁぁぁ分かりやす!!

 

真剣に弁解しようとしてるが心の声がダダ漏れでございます麗日さん。取り乱しすぎ!!

 

…え?僕の為に態々…?

 

麗日「皆昨日すぐに怪我治ったけどさ!ウチはなんか打ち所悪くてまだ病院に居たいなぁぁみたいな!?そ、そんな…」

 

緑谷「……優しいね、麗日さんは」

 

麗日「え?」

 

緑谷「入試の時も…赤の他人だったのに転びそうになったとこ助けてくれたりとかさ」

 

緑谷「その…なんだ…恥ずいや。成長してない」

 

赤面になりながらも苦笑した。

 

そうだ。今回麗日さんが傷負ったのも僕に責任がある。

 

彼女にはずっと借りを作りっぱなし…な気がする。何とも情けない。

 

そんな僕を見ながら麗日さんは…

 

 

麗日「……そうかもね」

 

麗日「変わりようがないもんデク君…………」

 

麗日「凄いから」ニッ

 

にっこりと笑いながらそう言い放った。

 

緑谷「…」

 

麗日「初めて会った時から思ってたもん!この人絶対やるなーって!尊敬した!」

 

麗日「あーっ…尊敬!なるほど、私はデク君を尊敬していたのか…」

 

麗日「新たな語彙増えた!これは使える!ふむふむ」

 

 

 

 

尊敬…そんな風に僕の事を称賛されるなんて生まれて初めてだと思う。

 

衝撃的というか…何というか……

 

嬉しい。

 

 

 

 

緑谷「…尊敬…か」

 

緑谷「だったら僕も君を尊敬しているって事になるな」

 

麗日「ひゃい!?」

 

緑谷「だって自分のP分けてまで他の受験生助けたいなんて普通できないよ」

 

緑谷「そこら辺…見習わなきゃって思った」

 

麗日「で…デク君…前も思ったけど……」カァァ…

 

麗日「なんでその事知ってるの?」

 

緑谷「え…ぁ…ああ。せ、先生が…さ、話してくれたんだよ…うん」

 

麗日「〜っ///」プシュゥ…

 

直談の事がバレてて恥ずかしくなったのか突然顔を真っ赤に染めあがる麗日さん。

 

…面映いにしてはなんかニヤついてるけど。

 

緑谷「麗日さん…?」

 

麗日(かぁぁぁぁっのDJティーチャーあれ程他言すんなっっつったのにぃぃっ!?)

 

麗日(普通にバレとるやないかい!!メッチャハズイわ…)

 

麗日(いや〜でもデク君から褒められたし…ってかめっさ嬉し!!)

 

表情の喜怒哀楽を激しく変化させながら脳内処理をするのが精一杯みたいだな。

 

喋りかけても反応しないや。

 

兎に角一旦落ち着かせて、何とか平常心を保たせる。

 

 

麗日「ぅぅ…デク君だけには知られたくなかったのにぃ」

 

と思ったら肩落としてかなり落ち込み始めたよ今度は…

 

は、話しづらい。

 

緑谷「ごめんごめん…からかうつもりで言った訳じゃないんだ」

 

麗日「そんな事分かってるけどさぁ…」

 

麗日「……ウチ、そんな大した事もやってないもん」

 

麗日「確かに試験の時は少しは手貸せたかもしれないけど…」

 

麗日「入学してから何にもデク君にやってあげれてない」

 

麗日「デク君みたいに成績バリバリ優秀な訳じゃないし…」

 

麗日「ちゃんと…自分の言った事貫き通してる……あれ、有言実行ってるよ…デク君は」

 

麗日「ウチなんか父ちゃん母ちゃんに迷惑かけてばっかだし………」

 

緑谷「そっそんな事無いよ…麗日さん明るくてムードメーカー?…だし!義理堅いし!」

 

緑谷「後ほら…ぇぇっと……か」

 

 

 

 

 

緑谷「可愛い…し?」

 

麗日「………」

 

麗日「え、ごめん。デク君聞こえんかった、わんもあぷりぃず」

 

緑谷「…麗日さん…か、かわわ…可愛いし…」

 

麗日「ごめんごめん。聞こえんかった。わんもあぷりぃずぷりぃず」

 

緑谷「いやっ…だから…可愛っ…いい…って」

 

何度も言わせないでくれぇぇ…こちとら恥ずかしい

ドサッ

 

緑谷「…へ?」

 

麗日「」ブクブク…

 

緑谷「………」

 

緑谷「ぎゃああああっ!?」

 

急に麗日さんが泡吹いて倒れタァァア!?

 

何!?何何!?何が起きた!?

 

僕別に変な事…ま、まさか…

 

脳内再生

麗日『うっわデクに可愛いって言われた…』

 

麗日『やば…吐き気が…おろろろ』

脳内再生終了

 

 

緑谷(僕どんな風に見られてんの!?)

 

安心しろ。真反対の事考えてるから彼女。

 

 

麗日(へへぇええへへへへ…デぇくクンにかわわわいぃぃって3回も…)

 

 

…寧ろ知らぬが仏か…?

 

何はともあれ気絶してしまっては仕方ない。

 

よっこらせと麗日さんを持ち上げてベッドに横たわらせる。

 

別にその後如何わしい事とかはしてないんで期待しなくていいです。

 

さてと…僕の寝る場所が無くなってしまったのはいいのだが…

 

緑谷「……」

 

 

緑谷「屋上に誰かいるな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【神奈川県神野市某バー】

 

別称:【敵連合アジト】

 

 

 

敵連合…現在2名。

 

こちらはほとんど無傷で帰ってきたが襲撃に伴う勢力の犠牲が甚大であった。

 

今では幹部1人と頭しか所属していない組織となっていた。

 

 

死柄木「……くっそ…完全にやられた…!」

 

黒霧「まさか…単なるガセ情報として無視してはいたが……」

 

黒霧「実際に正拳1発であんな幻影が表れるとは…」

 

死柄木「それだけじゃねえっ…!」

 

死柄木「ガキ共もチンピラ数十人じゃ手に負えねぇっ!」

 

死柄木「何より……あのそばかすの餓鬼ぃぃぃいいっっ!!!」

 

死柄木「あいつさえ居なけりゃ少なくとも生徒は殺害可能だった!!」

 

死柄木「聞いてねぇよ!!先生!!!」

 

死柄木「この脳無がただの学生1人に手こずるなんてよぉ!!」ガシッ!

 

黒霧「死柄木っ…」

 

死柄木は荒々しく近くにあった液晶に向かって怒鳴りつける。それと同時にそのテレビに両手で掴みかかった。

 

手は激しく震え徐々に握力が強くなっていき今にも個性で液晶を粉々にしてしまうような所であった。

 

黒霧が慌てて止めようとすると…

 

 

 

 

「やれやれ…勘違いはいけないな。弔」

 

「僕はあくまで【平和の象徴用殺戮兵器】を作り上げただけだ」

 

「君達が言うそのゴクウとかいう奴の強さなんて考慮してる訳ないじゃないか」

 

「全く…情けない姿だの」

 

 

 

 

液晶から誰かの声が流れ出す。

 

依然として画面が暗い為その人物の姿ははっきり目視はできない。

 

だが、1人は30〜40代程度の男性、もう1人は老人のような声だという事は分かった。

 

 

「無論、流石に加減はしていたとはいえあそこまで生徒に足止めされるとは思ってなかったけどね」

 

「脳無が弱かったんじゃあない。奴らがやたら強かっただけさ」

 

「正直舐めてかかったのが敗因だね、これは」

 

「ハッ。敵連合なんてチープな名前で良かったわい」

 

「折角ワシが3時間もかけて作った高性能脳無に泥を塗られたぞ」

 

「ははっ!聞いたか弔」

 

「この方僕が3日間でようやく作れるようなモンを制作時間24分の1に収縮して作ってやがる」

 

笑いながら上辺を取り繕うとする謎の2人。

 

まぁこんな状況で笑える筈もなく…逆に更に目つきが酷く鋭くなり液晶に向かって大声で叫ぶ。

 

死柄木「フザケてる場合じゃねえっつってんだろうがっっ!!!」

 

「まぁまぁ落ち着け弔…興奮し過ぎだ」

 

「大体お前さんが効率悪すぎなんじゃ。普通の個体なんか1時間ありゃ十分だわい」

 

「今回だってわざわざ脳無を送るよりかはあい

死柄木「嫌に決まってんだろ」

 

死柄木「()()()()()野郎に頼らずともオールマイトはやれていた……!!」

 

「………脳無の力は借りてる癖にのぉ」

 

死柄木「今何つったじじい!!」ピキッ

 

黒霧「気を沈めてください!死柄木弔!!」

 

 

テレビのある箇所にヒビが割れるような音がした。そろそろ痺れが切れそうだこりゃ。

 

黒霧は死柄木を押さえつけるだけで精一杯。

 

そんな事はお構いなしに話を続ける2人組。

 

 

「まぁまぁそう言ってやさんな先生」

 

「弔は弔なりの考え方があるし…それに僕もその意見には賛成できない」

 

「何故じゃ?」

 

「そうあっさりと一思いに殺しちゃったら意味が無い」

 

「僕が敵連合を作ったのは憎っくき平和の象徴ができるだけ醜く死んで欲しいからだ」

 

「彼だってオールマイトに対する執念なら僕に負けないさ」

 

「ああそうかいそうかい。そりゃさぞいい志しなんじゃろうな」

 

「オールマイトが死のうが死まいがワシには関係ない」

 

「じゃが…今回ワシも何の収穫も得れなかったワケじゃないからのぉ」

 

「へえ…」

 

「ま、とりあえず話も区切りがついた事じゃし」

 

「ぼちぼち行動に移し始めるとしようじゃあないか」

 

「…無理に口調変えなくても良かったんですよ?大先輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【某病院:屋上】

 

 

 

 

ピッ

 

「……」

 

少女は携帯の電源を入れ、今の時間を確認する。

 

…どうやらいつの間にか夕方になっていたらしい。もう16:00をとっくに過ぎている。

 

(……結局顔合わせられなかったな…)

 

(日を改めて今度会いに行こう)ピッ

 

時刻を見た後また直ぐ電源を切り、スマホをポケットにしまう。

 

果たしてこの作業を何度繰り返した事か……本人曰く最低でも10回以上だとか。

 

そのまま彼女はドアに向かって静かに歩き始めた……

 

 

 

 

 

 

ので空かさず後ろから声かけました。

 

緑谷「八百万さーん?どうしたの?」

 

八百万「」ビクッッ!!

 

…そりゃ柵の外から声がしたら驚くわな。反射的に身体が振動してしまった八百万さん。

 

後ろを振り向き、ようやく僕を認識してくれた。

 

八百万「……ど、どこから来ましたの…緑谷さん」

 

緑谷「窓」

 

八百万「…………」

 

言われたら意外と納得するだろ?棟内駆け回るよりかは直接飛んでいった方がはやいしね。

 

緑谷「看護師さんから聞いたんだよ。何か女子高校生が朝から来ていたって」

 

緑谷「誰かと思ったら八百万さんだったんだ」シュタッ

 

……本当は八百万さんって分かってたからここに来たんだけどさ。

 

そう思いながら柵を跨いで地面に着地した、

 

八百万「…え…っええ…まぁ」

 

緑谷「ごめんね…さっき起きたばっかりで相手できなくて…」

 

緑谷「どれ位待たせちゃった?」

 

八百万「う…あ……えーっと…」

 

……なんか八百万さんいつもと様子が違うな。もじもじしてるぞ……緊張?なんで?

 

 

八百万「…じゅ……」

 

 

10時?10時から6時間もここに居たのか…それは悪……ってそんな問題じゃないんじゃ…

 

八百万「10時間程は…」

 

 

 

 

緑谷「………………へ?」

 

待て待て待て……今から10時間前を逆算すると……

 

6時過ぎですね、うん。

 

緑谷「6時から…ここにずっと?」

 

八百万「」コクコク…

 

静かに数回頷いた。

 

 

 

マジかよ。八百万さん10時間も屋上に居たの!?食わず飲まずに!?ケータイたまに開くだけで!?

 

あれ…それ程重要な用事って結構やばいんじゃ…

 

 

八百万「」ダダ…

 

緑谷「へぇあっ!?」

 

唐突に八百万さんが走り出す。

 

 

あ…大体読めましたわ。これ多分

 

(1)包丁等の刃物類でグサグサ

(2)銃火器類で蜂の巣

(3)とりあえず顔面パンチ10発

 

のどれかだよね!?oh…

 

 

 

ダダダ…

 

徐々に走るスピードが速くなってくる。

 

ひぃっ!?頼むからお助けぇぇっ!!

 

わ、悪気があって建物壊したんじゃないんですよ!!相手オールマイト級だから周りの影響とか考えられなかったし!!

 

それともあの時来るの遅かったからか!?いや勿論行こうと思えばもう少し早く行けたけどさ!!でも広間にまだ敵うじゃうじゃ居たかもしれなかったしさ!!迂闊に走れなかったし!?

 

それとも何だ!?胸!?やっぱり胸ガン見してたから!?

 

緑谷「おおおおぱっぱぱ…」ギュッ

 

緑谷「………え?」

 

八百万「…………」

 

 

 

 

近づいてきたと思えば…彼女がいきなり抱きついてきた。胴回りを両腕で抱き込まれ、強く締め付けられた。

 

後1つ…

 

胸が当たってます!もの凄く密着してます!八百万さん!!

 

緑谷「や、八百万さん…どしたの……?」

 

八百万「……」

 

何事かと不思議に思い聞いても何も反応してくれない。

 

どういう事なの……

 

…あ!成る程!ベアハッグ!あったなプロレスでそんなの!あー…だからこんな風に抱き締め……

 

八百万「ごめんなさい」

 

 

 

 

 

緑谷「…?」

 

とても八百万さんとは思えない弱々しい声だった。肩に彼女の顔が乗っている為直接表情は確認できなかった。

 

肩の方に目をやろうとするが…その必要も無かった。

 

 

声を聞いて間もなく、服が湿っていく事に気がついた。

 

 

つまり…これって…

 

 

 

 

 

 

八百万「……ごめんなさい…緑谷さん」

 

緑谷「………やっ…よろ…さん?」

 

 

ポロポロと涙を零しながら僕に語りかける。彼女の身体は強く震え、悴んでいた。

 

…なんで泣いてるの……?

 

 

 

八百万「私……クラス委員失格…です」

 

八百万「あんなに…貴方の事散々馬鹿にして……偉そうな態度を取ってて…」

 

八百万「皆必死に闘ってたのに…」

 

八百万「自分はただ…安全圏で…遠くから皆を見守っていただけだった…」

 

八百万「私がもっと早く適切な指示を送れていたら飯田さんはゲートを抜けられていた!」

 

八百万「私がもっとしっかりしていれば…貴方も他の人も危険な目に遭わせずに済んだ!」

 

八百万「なのにっ…なのに私は何も出来ずに…増してや無傷で生還してきた」

 

八百万「貴方は入試で自分の利害関係なく麗日さんを救けた!!」

 

 

『私の見込み違いですわね…失望しましたわ』

 

 

八百万「初日だって相澤先生の脅迫に物怖じせずちゃんと峰田さんを救い出した!!」

 

 

『そんなに嫌ならば今すぐ辞めたら如何でしょう?』

 

 

八百万「結局…あんな事言っておきながら私は貴方に…3回も……救けられた……!」

 

八百万「所詮私は怠惰で無能な劣等生の1人でしか無かった!!」

 

八百万「()()()()…そもそも委員長なんて務まらなかったんです…いえ…資格だって無かった…!」

 

緑谷「…」

 

八百万「冷静に指揮を取れる飯田さんや…危険を顧みず貴方を救けに行った蛙吹さんの方がよっぽどふさわしかった!」

 

八百万「私なんかっ!!!」

緑谷「駄目」ギュッ

 

 

八百万「………?」

 

緑谷「【私なんて】、なんて言っちゃ駄目だよ八百万さん」

 

 

両腕を広げ彼女の身体を抱き締める。

 

落ち着かせようと、優しく背中を摩り始めた。

 

 

緑谷「……確かに今回…犠牲が出たのは100%君のせいじゃないとは僕は言い切れない」

 

緑谷「僕はさっき意識戻ったばっかりであまり状況とかは把握してないし…さ」

 

緑谷「でも…だからって一概に君()()のせいとも言えないと思うんだ」

 

八百万「私…以外ですか?」

 

緑谷「うん。僕だってもう少し奮闘出来てればこんな結果にはならなかった」

 

緑谷「あんな台詞吐いといてこのザマだ。恥ずかしいや…自信満々に言っちゃってさ」

 

緑谷「それに…もっと早く動いてれば麗日さんとか…他の人達も救けられた筈だ」

 

緑谷「僕にも責任はあるし、皆にだって思う節が幾つがある筈だ」

 

緑谷「言っちゃうと校長先生がオールマイトと対談してなかったらもう10、20分早く来れたしさぁ……ね?」

 

八百万「え…えぇ…間違っては…いませんわね」

 

緑谷「………でもね、これは逆に言えば皆のお陰であるとも言えるんだ」

 

八百万「私達の…?」

 

緑谷「そう…本当、今回ばかりは死ぬかと思ったよ。髪の毛にトドメの一撃触れかかってたからね。これぞまさに間一髪!ってヤツかな」

 

緑谷「皆が体張って作ってくれた1秒が僕らの命を繋いだんだ」

 

緑谷「勿論、八百万さんもね」

 

八百万「………私…ですか?」

 

緑谷「遠くからだからはっきりとは視認できなかった…けど大体分かる」

 

緑谷「八百万さんは…13号先生が殺されそうになったから戦ったんだろ?」

 

緑谷「そうじゃなきゃ今頃死者が出てた」

 

緑谷「君のほんの少しの【勇気】が大きな【希望】に変えてくれたんだよ」

 

八百万「…でもっ…私は…そんな……大それた事は…」

 

緑谷「自分を卑下しちゃいけないよ」

 

緑谷「副委員長が()()()()()()、今こうして皆助かってるんじゃないか」

 

緑谷「今回、改めて実感した」

 

 

 

 

 

 

緑谷「君が僕のパートナーで本当に良かったと思ってる」

 

緑谷「()()()()()、八百万さん」ニコッ

 

八百万「…」

 

僕は満面の笑みで彼女にそう言い放った。

 

…彼女の気持ちは辛い程分かってた。僕も1年前…同じ様な事をしたからだ。

 

自分が弱いから…出来損ないだから…救けられなかった。

 

 

でも悟空さん(あの人)はそんな僕を強い人間だって認めてくれた。

 

それがとても嬉しくって仕方がなかった。初めてだから…そんな事人に言われたのは。

 

彼女も…僕みたいに悲しい思いはさせたくない。

 

少しでも励ましになるように話したつもりが…逆効果だったのか…

 

 

 

 

八百万「………ぅぅ…」

 

八百万「ぅぅ……っ……ぅぅぅ……」ポロポロ…

 

緑谷「え…あ……や、八百万さん?」

 

緑谷「なにかしたっ!?僕何かした!?ねぇ!?」

 

 

 

さっきよりも激しく号泣してしまった…とほほ。

 

……まぁ感涙だったからいいんだけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後…すぐに八百万さんと麗日さんは帰っていき、僕もその日の夜中に無事退院できた。

 

2日ぶりの我が家…かと思いきや、やはり1名足りない。

 

お母さんに聞いてみた所、ただ首を横に振るだけだった。

 

…悟空さんは何処へ………

 

不安が頭の中を過ぎりながら休日3日間が過ぎていった。

 

そして…月曜。久々の学校だ。

 

 

 

 

【1-A教室前】

 

緑谷「……」

 

めっちゃ緊張してます。ロクに連絡も取れなかったから皆どうしてるのだろうか。

 

麗日さんと…八百万さんも元気にはしてそうだが。

 

緑谷(…まぁいつも通りに話せば調子も戻ってくる…か)ガシッ

 

ガララッ…

 

ドアの取っ手を掴んで横にスライドさせる。それと同時に教室にいたクラスメイトに微笑みながら挨拶する。

 

緑谷「オハヨー!皆!!」ドーン

 

緑谷「………?」

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

だが、期待とは裏腹の反応をしてくる。

 

皆静かに自分の机に黙ったまま着席していたいつもならばそれぞれ群がって教室が騒がしくなっている筈なのだが…

 

それだけじゃない。

 

何か……顔がそっぽ向いてない?かなり大きな声で喋った筈が誰もこちらを振り向かない。

 

何だろう…も、もしかして避けられている?なんで?

 

 

 

 

……思い当たる所はあった。

 

 

 

切島『…悪かったな』

 

 

 

この言葉が何日経ってもずっと引っかかっている。

 

なんで切島君は謝ったのだろうか?別に僕は特別何もされた覚えないしなぁ…

 

 

不思議にそう思いながら自分の机に向かって歩き出していた。念の為隣の席に居る瀬呂君に再び話しかけてみる。

 

緑谷「おはよ、瀬呂君」

 

瀬呂「ん…ぁ、ぁあ…よう緑谷」

 

緑谷「???」

 

やっぱり怪しい…というか皆の様子がおかしい。オロオロとした喋り方で違和感丸出しだ。

 

皆何があったんだ。そんな事を考えていく内に1日の始まりのチャイムが鳴り響く。

 

キーンコーンカーンコーン

 

キーン…

 

ガララッ

 

緑谷「?」

 

それとほぼ同時にドアが開くような音がする。教室に入ってきたのは……

 

 

オールマイトだ。

 

オールマイト「おはよう、皆!週末ゆっくり休めたか…」

 

「」ゴゴゴ…

 

オールマイト「What!?」

 

彼もこの異様な空気に気づいたようだ。あまりの空気の重たさに驚いてしまっている。

 

オールマイト「そ…その様子を見る限りじゃまだ疲れが残ったままみたいだな…」

 

オールマイト「無理もないか…」

 

………ん、待てよ…普通に流してしまってはいるが…

 

なんでオールマイトがここにいるの?

 

オールマイト「ええっと…まずHRを始める前に重大発表がある」

 

オールマイト「先日ブラドキングも言っていたと思うが相澤君はしばらく停職となった」

 

緑谷「て、停職…って事は怪我云々じゃなくて…」

 

オールマイト「ああ。恐らくもう一方の理由が決定的になったんだろう」

 

オールマイト「まだ詳しい情報は判明してはいないが…」

 

オールマイト「少なくとも前期一杯は学校に来れるような状況では無い…らしい」

 

緑谷「そんな……」

 

前期って…つまり10月まで相澤先生とは会えないのかよ……

 

まさかとは思ったがこんな不条理な処分が下されるとは……大人の事情に首を突っ込む訳にはいかないがこれはあまりに酷すぎるのでは…?

 

オールマイト「…という事なんで1-Aの新担任を早速決めてきた!!」

 

緑谷(あ、オールマイトじゃないんですね、やっぱり)

 

オールマイト「因みに…その先生は」

 

 

オールマイト「()()が初出勤の教員の為皆…お手柔らかに頼むよ」

 

緑谷「…………」

 

緑谷(え)

 

オールマイト「では先生!こちらへどうぞ!」

 

 

 

 

初出勤?初日なのに担任務まるの?

 

自由な校風が売りとは言うがあまりにも緩すぎやしませんかね。

 

色々と疑問点が残りはするが…雄英教師だ。きっと凄い人に決まって…(ガララッ

 

 

 

 

 

「いやぁ…いざこんな人いっぺぇいる前で話すとなるとすっげぇ緊張するぞ…」

 

緑谷「……………」

 

 

 

1-A「え」

 

今日聞いた皆の第一声がこれである。(瀬呂君除き)

 

さっきの緊張感はどこに行ったのやら皆口を大きく開けたまま停止し、呆然としていた。

 

それもその筈…

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空「オッス!オラ悟空だ!」

 

悟空「えっと……とりあえずおめぇら全員と仲良くしていきてぇな!って思ってる!」

 

悟空「よろしく!!」ニッ

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷(なんで悟空さん釈放されてんの……)

 

緑谷(……え?教師?仕事してるの?)

 

緑谷(え?え?え?)

 

 

 

頼む、状況呑み込めないから誰か説明してくれ。

 

 

 

 

 

 




危ねぇぇぇぇぇっ!ギリッギリ間に合った!!後数分かよ!!!

須井化です…はい。

今回はウラビティとクリエティをとにかくデクに絡めただけです。

ヤオヨロッパイの所の文章構成に手間取った…畜生!

あ、後なんか悟空さが働き始めましたね(悲報)

お前だけは自宅警備員予備軍だと信じてたのにぃっ!!

いかがでしたか?


次回は体育祭…は入らんわ。

とりあえず悟空さが1-Aいじめる回かな。

20話までは体育祭の前振り的な感じにするつもりです。

まぁ気長に待ってくだサイヤ。





何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
2月27日(月)以内に第19話の投稿を予定しております。

お楽しみに!


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第19話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJにて激戦を繰り広げ何とか敵連合の撃退に成功する1-A生徒達!!

だがその代償も大きく心体共に大きな傷を負ってしまう。

数日後緑谷少年は思わぬ形で孫悟空と再会する!!

……え?教師?

更に向こうへ!PlusUltra!!!


1890年 4月末…

 

孫悟空…雄英高校体育・ヒーロー基礎学(実技)()()教員就任。

 

その真相を知るには2日前…USJ襲撃から3日経った土曜日にまで遡る必要がある。

 

 

 

 

 

 

【雄英高校;議会室】

 

その日、雄英では緊急集会が行われていた。

 

警察関係者数名も巻き込んだ大規模な会議だ。

 

議題は勿論、敵連合に関する内容だ。

 

 

 

 

塚内「死柄木弔…触れた物を粉々にする個性」

 

塚内「黒霧…ワープゲートの個性…」

 

塚内「20代〜30代の個性登録を詮索しましたがいずれも該当するような者はおらず」

 

塚内「現在、行方を調査しております」

 

根津「戸籍、個性届…共に無しか」

 

根津「裏社会の人間か…これまた煩雑な輩が出てきたね」

 

スナイプ「結局手掛かりはゼロか…」

 

スナイプ「事態は一刻も争う。何としても主犯を畳み掛けねぇとな」

 

オールマイト「()()…か」

 

 

オールマイトはその言葉を口にすると資料を眺めながら首を傾げる。

 

不思議に思い根津校長が声をかける。

 

 

根津「どうしたんだい?オールマイト」

 

オールマイト「いえ……生徒の証言からするにこの敵連合という組織の長が【死柄木弔】という男で間違いないのですが」

 

オールマイト「不可解な点が多過ぎる」

 

セメントス「不可解…?」

 

オールマイト「私が来た時には既にほぼ決着が着いていた状態で実際に相見えたのはほんの数秒の事」

 

オールマイト「私自身は何とも言えません…が」

 

オールマイト「奴の意図…というか人格が読み取れない」

 

ミッドナイト「生徒からの情報じゃ貴方の殺害を目的にこに侵入して来たのよね」

 

ミッドナイト「確かにそれにしては諦めが早すぎるというか…何というか」

 

オールマイト「そう!そこが解せん」

 

エクトプラズム「恐ラク奴ラノ勝テル算段トイウノガ脳無ダッタノナラバ…」

 

エクトプラズム「敵ガ逃走スルノモ妥当ナ選択ナノデハ?」

 

オールマイト「それもあるだろうが……あの言い方ではマジで殺害対象を私のみに限定していた」

 

オールマイト「そして奴らはあたかもゲームをプレイするかの様に遊び感覚で雄英を襲いに来た」

 

根津「思い通り事が運ばぬとすぐ取り乱し…」

 

根津「更には悠々と生徒に脳無の情報などを与え寧ろ自分を不利にさせていく」

 

セメントス「【個性不明】…このアドバンテージを自ら捨てるのは何か目的があるのか…」

 

ブラドキング「ただ教えた所で状況変わらずって予想したんだろ…」

 

ブラドキング「正直知っていようがそうでなかろうが戦況は変化しなかったと思うぜ」

 

オールマイト「だとしてもだ…これだけ用意周到に準備されていたにも関わらず大胆な奇襲を仕掛けてきた」

 

オールマイト「奴らにあれ程の戦力があるのならばもっと私を殺すのにいい方法だってあった筈だ」

 

オールマイト「根津校長の指摘した通り、最もらしい稚拙な言論…自己中心的な思考」

 

オールマイト「ここから導き出される死柄木の本質はいわば()()()()()……とでも言うべきか」

 

塚内「問題はそこなんです」

 

塚内「今回検挙した敵の数72名…どれもよく見るチンピラ…一般の敵でしたが」

 

塚内「その子ども大人に少なくともこの数十人もの人間が賛同していたという事実…」

 

根津「…数十年…抑圧されていた悪が暴走を始めたか」

 

根津「今の時代、こういった無邪気な邪悪に皆惹かれているのかもしれない」

 

「……」

 

その場にいた教員は一斉に黙りこく。

 

敵の話題という事もあるだろうが今を生きている若者がこうして悪に感化していると聞けば教師としてはさぞ複雑な気分なのだろう。

 

先日から騒がれている()()()()()()()()()についても言える事だが行動を実際に起こしているのは本人でもその思想を作り上げた原因は自分達にもある。

 

一概に責任は無いとも言い切れない。タダでさえこの間生徒達を見殺しにしかけたのもあってとてもやるせなかった。

 

 

塚内「…まぁヒーロー達のお陰で我々も地道な捜査を行える」

 

塚内「捜査網を拡大し引き続き犯人逮捕に尽力して参ります」

 

根津「ああ、助かります」

 

マイク「力を持った子ども…か」

 

マイク「言い方変えりゃまだ成長できる余地があるってこった」

 

オールマイト「もし優秀な指導者もついていたりでもすれば…」

 

オールマイト「いや…考え過ぎか」

 

根津「さてと。じゃあその話は一旦切って……」

 

オールマイト「…アレですか」

 

塚内「……はぁっ…」

 

いきなり頭痛が始まったのかと言わんばかりに頭を抱え愕然とする。

 

その様子を見て殆どの教員は不思議がる。

 

だって書類に書いてある内容はさっきの話題に比べれば特に問題のあるようなモノじゃないんですもん。

 

ミッドナイト「え、ええと…次の話題…というのは1-Aの学級担任についてですよね」

 

ミッドナイト「引き続き相澤先生となってはいるけど…」

 

オールマイト「あ、ゴメ。それ誤載」

 

「………え?」

 

まぁ違うんですよこれが…

 

資料には5月からの復帰の見通しだとか何とか書いてある。

 

実際可能と言えば可能なのだが…

 

根津「まぁまぁ…とりあえず話を聞いてくれ」

 

根津「おーい、もう入っていいよ」

 

ドアに向かって外にいる誰かに呼びかける。皆視線をそこに集中させるのだが…

 

何秒経ってもドアが開くような気配が無い。

 

当たり前だ。使う必要無いのだから。

 

 

 

 

悟空「いんやこりゃすげぇ!」

 

悟空「ここにいんのがこの学校の先生全員なんか!!」

 

「………」

 

聞き覚えの無い声だと思えば振り返った先にはスーツを着た見知らぬ男がポツンと立っていた。

 

いつ侵入したんだと言わんばかりに皆唖然としていた。

 

根津「紹介しよう!!彼が来週からここに就く&1-Aの担任となった!!」

 

根津「孫悟空君さ!!!」

 

悟空「…まぁなんだ…よろしくっ!」

 

 

 

 

 

スナイプ「…つ、つまり…」

 

マイク「Doooo…you事だってば・YO!?」

 

流石の先生達もこの無茶振りにはコメント困る。

 

ヒーローでも何でもないただの一般人がここの教師に普通選ばれるものか。フリーダムにも限度ってものがあるでしょう。

 

なんかマイクだけはノリノリで楽しそう。

 

オールマイト「今回の事件…これにより恐らく殆どの人間が雄英の監視体制に疑問を抱いた事だろう」

 

オールマイト「特に1年生の各生徒の保護者様」

 

オールマイト「自分の子等が敵に殺される危険性があるような高校に通わせまいと思うのが多数派だと思う」

 

オールマイト「5月に行われる行事にも関わってくる…その為この方を1-A専属の特別教員に任命する事に決定した!!」

 

オールマイト(一方的に!!)

 

そこは強調しなくていいです…オールマイト。

 

エクトプラズム「ナ、ナントイウ急展開…」

 

スナイプ「相澤にはちゃんと許可を得たのか?」

 

 

 

オールマイト『ほ、ほら…君が了承するだけで今回の生徒20人の個性行使ってのはチャラにしてくれるみたいだしさ?」

 

オールマイト『此間の緑谷少年とのイザコザの件もあるし?ね?』

 

相澤『解せぬ』

 

 

 

オールマイト「……ま、まぁ一応…」

 

これは………良くないなぁ…うん。

 

というか意識戻ったみたいで安心しましたよ、相澤先生…

 

根津「悟空君の戦闘力は僕とオールマイトが保証するよ」

 

根津「脳無を殺…倒したのも彼だからね」

 

根津「彼曰くオラなら日本を3秒で更地に出来るそうだ」

 

「………」

 

皆が皆根津校長の言葉を疑った。

 

新手のジャパニーズジョークじゃないのか?気でも狂ったのか?

 

いや、根津先生に限ってそりゃ無いという結論に至った。

 

オールマイト「敵連合にとっては最大最強の障害だ」

 

オールマイト「まず間違いなく悟空さんが居る限りは迂闊に生徒達に手は出せまい」

 

オールマイト(そしてそれは…()()も然り)

 

オールマイト「後これは全員周知していて欲しいのだが…」

 

オールマイト「クラスに関わる業務は全力を持って協力してくれ」

 

オールマイト「も、もしだ……もしも放置などして彼1人に任せたとしたら…」

 

根津「」ガタガタ…

 

 

オールマイトと根津先生の身体が激しく震える…念の為と適正検査でもしてとんでもない事が起こったのか…

 

まぁ予想はつくが…

 

大方パソコンを操作させたら一瞬でぶっ壊れたり10秒でデータが吹っ飛んだりしたんだろうなぁ…10台位。そもそもあの人のIQを期待するのが間違いだ。

 

 

悟空「ま、そーゆー事だからこれから仲良くやってこうぜ皆!」

 

「………よろしくお願い…します」

 

 

 

 

余談だが…

 

塚内さんはその日から度々胃痛が起こるようになったらしい。

 

こうして波乱万丈な雄英高校生活が再びスタートする…

 

以前より更にヒートアップして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝のHRも無事?…に終わり

 

そして現在に至る訳ですが…

 

 

【更衣室】

 

緑谷「」ヌギヌギ…

 

切島「びっくりだぜ…先週の話からして暫く相澤先生が来れないのは予想してたけど」

 

尾白「まさか新しく就任した先生にいきなりこのクラスを任せるなんてね…」

 

飯田「ネットにも一切【カカロット】なんていうヒーローの情報は載っていないしな…」

 

砂藤「確か噂じゃあんな格好の男が1年前のヘドロん時に居たとか何とか…」

 

爆豪「知らねぇよあんなカス頭」

 

飯田「こっ…爆豪君!職員の方になんて失礼な!!」

 

飯田「委員長からも…」

轟「飯田」

 

飯田君は僕を呼ぼうとするが轟君に睨まれすぐに口を閉じる。

 

 

飯田「……す、すまない」

 

緑谷「……」

 

緑谷「はぁ」

 

 

 

 

孫悟空。ヒーロー名【カカロット】…と称されているが勿論そんなヒーローは存在しない。

 

以前、2学期から就く事が決定しておりたまたま先駆けにここを見学していたら…という形で何とか誤魔化そうとはしていたが…

 

正直言って無理がある。なんで学校側は了承したんだ…?失礼な事言うけどこんな見るからに怪しい化物男普通採用する訳ないだろ!?お巡りさんちゃんと事情聴取しました!?

 

全く…朝から変な事ばかり起こってる。クラスからは何か距離が置かれている様な気がするし、何処に行ったかと思えば悟空さんはいきなり教師になったりとか…

 

…そして今いる場所を見れば分かると思うが…

 

次の授業は体育である。勿論担当は…

 

 

 

 

 

悟空「えーそんじゃ改めてよろしく!」

 

悟空「たい…たいい…えーっと…」

 

悟空「特訓の授業早速始めっぞ!」

 

 

 

この人であった。

 

 

 

 

 

唐突に授業を始めようとするモンだから皆驚いた。何の前振りも無くそのまま特訓開始かよ…

 

何も疑問に思わない筈がない。瀬呂君が空かさずツッコミを入れる。

 

瀬呂「あーっとすんません…先生」

 

瀬呂「とりあえず俺ら初対面だし軽く自己紹介とかしといた方が…」

 

悟空「今回はそれを知る為の運動だ!」

 

悟空「言葉で直接話されっよりも体動かしながらの方が楽しいし分かりやすいだろ!」

 

瀬呂「はぁ…?」

 

とりあえず返事はするものの納得するような素振りは見えない。

 

無論僕もだよ。

 

自己紹介しながらの運動?悟空さんの事だ…ロクな遊びじゃ…

 

悟空「今日やんのはこれ!しっぽ鬼ーー!」スッ…

 

あ、普通のレクでした。

 

 

 

彼の右手に握られているのは一巻のスズランテープであった。

 

それを15cm程度に人数分切り、それぞれ渡していく。貰った生徒達は服の下に入れ込み尻尾を作る。

 

…大体5cm位しか出てないぞおい…マジかよ。

 

峰田「ま、まさか先生…アンタァ…」

 

悟空「?」

 

峰田「女子と男子チームに分かれ互いの尻と尻をぶつけ合ういわばお尻合いゲェェ

悟空「違ぇよ?全然」

 

峰田 上鳴「「」」

 

膝を地面につけてガッカリする程でも無いだろうに…何気に上鳴君もちゃっかり便乗してるし…

 

まぁ大体内容は予測できるが…

 

悟空「今からオラが鬼になる。おめぇらはそのしっぽが取られねぇように逃げりゃいい」

 

悟空「簡単だろ?」

 

上鳴「さては…先生1人で女子6人の尻独…」

 

耳郎「どうやら死にたいようだなぁ…ああ!?」キィィ…

 

峰田 上鳴「「耳耳!!耳がああああっ!?」」

 

懲りない2人に心音の鉄槌を。ナイスフォローです耳郎さん。

 

悟空「後これはオラが勝手に作ったルールだけどよ…」

 

 

 

 

 

 

悟空「オラが誰かの身体に触れた瞬間おめぇ達の勝ちにする」

 

「!?」

 

麗日「そ、それってつまり…誤って身体を触った場合は…」

 

悟空「勿論、その時はオラの負けだ!かんたんだろ?」

 

飯田「果たしてそれが自己紹介とどう関わっているのでしょうか!?先生!」

 

悟空「おめぇらの走り方とか…後はどういう戦法使うかでそいつの性格も分かるし」

 

悟空「ま、色々」

 

飯田「成る程!」

 

葉隠「うひゃー!なんか楽しそ!!」

 

口田(それって僕の場合脚とかに蝶でも触れさせたらOKなのかな?)

 

飛び跳ねてはしゃぎ始める者もいれば余りにも無茶苦茶なルールに困惑する者も居た。

 

どういう形にせよ皆は悟空さんの授業にある程度の関心と期待は持ち始めていたのはいい事なのだろうが…

 

 

正直僕としては皆受け入れるの早くね?という疑問と不安しか思えなかった。間違えて気功波出しちゃったとか舞空術使っちゃったとかならないだろうか?

 

でもこれ以上緩くしようが無いんですよね…確かに。?何故難しいのかって?

 

 

 

 

だってあの人地球上で2番目に強い生物だもの。彼の身体を触れるだけでも至難の業だ。

 

そんな事かっちゃんだって分かっている筈なのだが…

 

爆豪「ハッ…なんでそんなガキみてぇな遊びしねえといけねぇのか…」

 

完全に舐め切ってますねこりゃ…幼稚過ぎる内容に呆れるのも無理は無いが…

 

悟空「そんな固え事言うなよー…オラ皆と仲良くやりてぇだけだってのに」

 

爆豪「っからなんで馴れ合いしなきゃいけねぇんだよ!!早く授業進めやがれ!!!」

 

悟空「おめぇが文句言うから進まねぇんじゃねぇかー」

 

爆豪「揚げ足取んなァアンッ!?」

 

悟空「足は上げてねぇし揚げてもねぇぞ」

 

爆豪「」ブヂブヂッ…

 

あ、青筋立った。

 

 

 

 

爆豪「んだとテメェェッ!!!」ボボボオッ!!

 

切島「バッ…おま爆豪!!」

 

突如かっちゃんが悟空先生に駆け出した。

 

両方の掌を後ろに構え同時に爆発させ加速する。めちゃんこ速度が増す技…なのだが

 

 

 

 

 

 

悟空「待った待った…」ピラピラ…

 

悟空「まだスタートなんて言ってねぇだろ?」

 

 

爆豪「は………っ!?」ボボボッ…

 

 

 

 

近づいている途中である違和感に気づく。今さっきつけた筈のスズランが無い…何処に落としたかと探してみると

 

悟空さんの右手にそれらしき物がプラプラと垂れ下がっていた。

 

 

 

 

悟空「でもこんなんじゃちょっとおめぇにゃオラの身体触れねぇかな…」

 

悟空「ベジータでもこんな軽い挑発乗らねぇぞ」

 

爆豪「なっ…ふざけんな!!」

 

怒り心頭に発するかっちゃんだがそれを気にも留めずに悟空さんは再び話し始める。

 

悟空「今の見りゃ分かると思うけどこれは1vs1じゃねぇんだぞ?」

 

 

 

 

悟空「()()でかかってこなきゃオラには勝てねぇよ」

 

 

「…っ…」

 

 

思わず息を呑んでしまった。それ程までに鋭い眼光だった。

 

当然だ。今目の前にいるのは世界最強に最も近い男なんだ。以前敵連合も言っていた通りだ。

 

威圧感が半端無い…

 

 

 

 

 

悟空「んじゃ始め!!」

 

緑谷「!?」

 

ヤバい!ぼっとしてた!!急に開始の合図をされたので一瞬戸惑ってしまう。

 

だがやる事は分かってる!まずは…

 

緑谷「皆!!少…」

ダダダダ……!

 

緑谷「ちょ、ちょっと!?待ってよ!!」

 

合図が聞こえた途端皆が一斉に走り出す。バラバラに挑んだって無理なのに…ってか極端に私を避けるが故にやってません!?皆さん!!

 

とうとう置いてけぼりされてしまった…1人かよ。

 

緑谷「……どうしよう…絶対敵う訳ないんだけど」

 

緑谷「せめて誰か1、2人でいいから協力しできないか…?」キョロキョロ…

 

周りを見渡すがやはり誰にも僕の声が届いて……

 

緑谷「……あ」

 

「あ…」

 

いたよ、1人だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切島「っぬぉぉぉっ!!!」ダダッ…

 

悟空「うおっ…一気に来たな…」

 

切島「強行突破じゃああああっっ!!!」

 

気高い雄叫びを上げながら駆けていく切島君。それを先頭に1-Aほぼ総出で悟空さんに襲いかかる。

 

成る程。集団で固まれば否が応でも取った拍子に誰かに当たる筈だもんな。がむしゃらに走っていった訳じゃなさそうだ。

 

遥か上空に聳え立つ高い壁に果敢に挑むそのPlusUltraの精神は評するべき物だろう。

 

 

 

 

 

だがこの男にそんな想いとか…気持ちだけじゃ通じない。

 

 

 

 

ビュゥゥ…

 

飯田「……」

 

麗日「え…」

 

 

 

 

途中、そよ風のようなモノが通り抜けるのを感じた。しかし()()()()()()()である。

 

かっちゃんがさっき感じた違和感とほぼ同じ感覚であった。一瞬…されど永遠のように感じるその一瞬はまるで時が止まったかのように皆はただ立ち尽くす事しか出来なかった。

 

皆考える事は同じだった。ゆっくりと後ろを振り返ってみると…

 

 

 

 

 

 

悟空「ひぃふぅ…えっと…」

 

悟空「これで14個だな!」

 

 

束になったスズランの枚数を数える悟空さんの姿が。

 

反応すらままならなかった。何せスズランを取られた事に気付いたのはこれを見た後だからな。

 

無くなったという感覚が取られている訳が無いという錯覚に敗ける程の速度だった訳だ。どの位か具体的に言ってあげようか?

 

00.01.59

 

その間に彼は14人の生徒の背中を取った事になる。そして尚且つ脳内では…

 

 

 

悟空(飯田は速ぇな…そういう個性持ちなんか?それにしてもいいポージングだ。後筋肉とかもいい感じについてら。筋肉って言えばえーっとあいつは…芦戸とか砂藤辺りも結構な脚力あるなぁ。お、本物のしっぽ生えてる奴もいるな!!確かあいつは尾白…だっけか。他の奴よりも気が大きめだな毎日修行とかトレーニングとか欠かしてねぇ感じだな後(ry

 

 

みたいな感じで生徒達を観察してる。瞬間的にこんな分析できるもんなのか?これもっと応用すればもっと別の事に活かせるんじゃ…

 

 

 

…けど、あくまで14人だけだ。まだ全員は捕まってはいない。

 

ほら、早速先手仕掛けられた。

 

 

 

 

パキパキ…

 

悟空「おおっ!?こ、凍っちまったぞ…」

 

轟「俺達はそこの奴等みてぇに馬鹿正直に突っ込んだりはしねぇんでね」

 

 

USJの時と同様に彼の下半身を凍結させる轟君。一人称が複数形に変わっている事に気付き悟空さんは即座に後ろを振り向いた。

 

2人の生徒が迎撃を狙いに来たのだ。1人は腕からテープを、1人は自分の影を伸ばして徐々悟空さんの身体に近づけていく。

 

瀬呂君と常闇君だ。いつの間に3人で作戦立ててたのかよ…

 

瀬呂「悪いけど先生…レクリエーションの時間は10秒しか取れねぇみたいだぜ?」ギュオッ…

 

常闇「行け!黒影!!」

 

悟空「ひー…やべぇやべえ!!」

 

ああは言ってるけど全く焦ってるような様子は伺えない。寧ろ不利な状況になって楽しみ出したよこの人。

 

そんな中そっと氷を指で叩く。

 

するとどうだろうか…

 

 

 

 

ビキビキ…

 

轟「…!?」

 

身体の周りに張られた氷にヒビが入っていくではないか。しかも何ヶ所も、その音が止む事無く。

 

次第に効果音は大きくなっていき…

 

 

バリィッ!!

 

瀬呂「んな阿保な…」

 

常闇「割れた!?」

 

 

 

見事に振動を氷のみに伝えバラバラに破壊したのだ。どうしたらそんな曲芸ができるんだよ…

 

これで身動きが取れるようになった。間髪入れずに再び氷結の体勢を取るが…

 

轟「ちっ…」パキパキ…

 

ビュゥッ…

 

轟「っ!?」

 

悟空「よーし。これでまた3本ー」ピラ…

 

気付かぬ内に彼の手にはテープが3本新たに握られていた。腰回りを確認するが当然スズランテープは見当たらない。

 

瀬呂「う、嘘!?取られた!?」

 

常闇「不覚…!!」

 

これで20人中18人やられてしまった…残るチャレンジャーは2人のみ。

 

 

 

 

悟空「後は…緑谷と………えっと…」

 

悟空「ヤオローズ?だっけか」

 

八百万「八百万(やおよろず)ですわ」

 

八百万「以後お見知り置きを」

 

さっき僕の呼びかけに真っ先に気付いてくれたのは紛れも無い彼女だ。本当ありがとう副委員長(泣)

 

悟空「あっという間におめぇらだけになっちまったなぁ」

 

悟空「どうする?」

 

緑谷「どうするも何も…足掻くしか無いでしょう」

 

とは言うものの打開策だって思いつかないし増してや勝てるような節なんて全くもって見当たらない。

 

でも今まで何十回も組手やって来てずっと連敗記録更新してるんだ。一回位…一矢報いさせてくれたっていいじゃないか。

 

八百万「…緑谷さん、本当にさっきの作戦通りで…?」

 

緑谷「うん。多分行ける…多分」

 

八百万「……」

 

困惑しながらもやむなくとある物を創造し始める。

 

何を創り出したかと言うと…

 

八百万「孫先生!!これをご覧なさい!!」ブンッ!!

 

悟空「?……ああっ!?」

 

悟空「メシッッ!?」ダンッ!!

 

骨つき肉だ。八百万さんはその骨を手に取り上空に勢いよく投げつけた。このお肉により悟空さんは完全に目を奪われてしまう事となる。

 

反射的に彼の身体が真上に飛んで行ってしまう。

 

?…生物は作られないんじゃなかったのかって?

 

悟空「腹減ってたんだよー!ラッキー!」

 

悟空「いっただきますーー!」

 

だってこれ…

 

 

 

バリッ…

 

悟空「ぶぼ…?なんばぼれかぺぇな…」

 

悟空「それに鉄の味……?」カッッ

 

 

ドオオオンッ!!!

 

 

骨つき肉(の形をした時限爆弾)なのだから。よくこんな無茶苦茶な要望答えてくれたね八百万さん…

 

噛み付いた瞬間、悟空さんの身体は白い光に包まれ間も無く爆弾が爆破する。

 

勿論当の被害者は無傷なのですが。

 

 

 

悟空「げほっげほっ…」

 

悟空「かぁっー…おでれぇた。いきなり肉が爆発するもんだからよぉ…」

 

爆発に巻き込まれてしまった為周りに煙幕が発生し周辺の状況が視認できなくなった。

 

何が何やら…今何が起こったのか分からず、悟空さんは煙が消えるまでおとなしくする他なかった。

 

こんな隙だらけで狙わない方がおかしいじゃないですか…

 

 

 

 

緑谷(ねぇ!?悟空さん!!)ゴオッ…

 

爆弾起動後すぐ上に飛んでいって彼に接近していたんだ。距離はもう1m未満!真後ろに回り込んだ!!

 

悟空さんの背中に腕を思い切り伸ばしていく。

 

よっしゃ…敵将討ち取った

悟空「よっと」スカッ

 

 

 

りはできませんよね!分かってました!ええ!!当たる寸前に横に避けられましたよ!

 

お陰で前に傾いて体勢崩れちゃったよ……ああっとこれはあれか。

 

 

ガッ

 

緑谷「っ…」

 

綺麗に首部に手刀がクリーンヒットしました。弱めたとはいえそれなりの威力があったからすぐ気絶してしまったよ。

 

悟空「っとと」ガシッ

 

落下しそうになる僕の身体を抱き抱える悟空さん。どうやら攻撃する前にしっぽは取っていたようだ。つけていたはずのスズランはどこにも見当たらない。

 

悟空「よーし。これで緑谷のも取れたし全員……」

 

八百万「………」

 

悟空「………」

 

八百万「…」チョンチョン

 

自分を指差しながら必死に【まだ取られていない】アピールをする。

 

悟空「あ」

 

今更遅い!!!

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで悟空さんのドジ?によりこのゲームは僕達が勝利した。一応見返り無いのもアレだったので個性(仮)をお披露目してくれた。

 

瞬間移動の証明としてオールマイトのコスチュームを部屋からこっそり取って来てもらった。勿論体育の後こっ酷くオールマイトに怒られたが。

 

先が思いやられるなぁ…

 

 

 

 

 

【食堂:メシ処】

 

 

 

 

 

緑谷「…」モグモグ…

 

昼休み、1人で静かに食事中です。飯田君と麗日さんを誘おうとしたけどなんというか…気分的に乗らなかった。

 

どうして皆は僕を避けているんだ…?切島君に至っては謝罪されたにも関わらずだ。

 

全く理由が思いつかず唸りながらカツ丼を頬張っていた時だった。

 

後ろから誰かに声を掛けられたのだ。

 

 

 

 

蛙吹「ねぇ、緑谷ちゃん…隣いいかしら」

 

緑谷「…?蛙吹さん?」

 

蛙吹「少し話したい事があるの」

 

蛙吹「体育祭の事も兼ねて」

 

緑谷「…………!」

 

 

 

 

 

 

あったな、5月に体育祭(そんな行事)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近はドタバタする事多いなぁ…

須井化です…はい。

今回は悟空さ初めての授業だお!

というか時間が無かったから今回文章が雑になってるかも…何かおかしな点があればすぐに修正致します!

…え?これ年代設定とか決まってたん(惚け)

いかがでしたか?

次回は体育祭の開始前までです。

今回スルーした朝のHRについても次回触れますよ。

ちょっと量多くなるかも…はは(泣)



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
3月2日(木)以内に第20話の投稿を予定しております。

お楽しみに!





<親父ぃ…ギリギリ間に合わなかったようだなぁ

や、やめろブロリー!落ち着…


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第20話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJ襲撃から数日後孫悟空はなんと雄英の教師となり1-Aの前に姿を現した!!

生徒20人をまとめて相手にし、指一本も触れさせずにその圧倒的な力を見せつける!

一方緑谷少年はクラスメイトの取る態度の変化に苦悩していたのだが…

というか緑谷少年…盗人は犯罪だぞ………

更に向こうへ!PlusUltra!!!


【職員室】

 

 

 

プルルルル…

 

 

 

プッ

 

相澤<はい、相澤です

 

悟空「オッス!オラだオラ!」

 

相澤<オラて…オラオラ詐欺じゃあるまいしちゃんと名乗ってくださいよ

 

悟空「いや悪り悪り…電話で話すのなんか久々だからよー」

 

相澤<その様子じゃちゃんとスマートフォンも扱いこなしてるみたいですね。安心しましたよ

 

悟空「ははは!たまに力入れすぎて割れそうになる事あっけどな!!」

 

悟空「っとと…話逸らしちまったな」

 

相澤<…でどうでした?初授業

 

悟空「んー?それなりにって感じだぞ。皆オラが思ってたより強かったしめっちゃ楽しかったしよ!」

 

悟空「ただなんちゅうか…うーん、言いづれえな」

 

相澤<…?どうしました?うちの生徒が何か…

 

悟空「いや、別にそういう事じゃねぇんだけどよ……あれだ」

 

悟空「ほとんどの奴の気が乱れてた」

 

相澤<というと…?

 

悟空「血が上ってるっちゅーか、興奮してるっちゅーか……」

 

悟空「兎に角焦ってたって感じだったぞ」

 

相澤<………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【食堂:メシ処】

 

 

 

 

丁度僕が座っていたテーブルは他が全て空席だった。蛙吹さんは食器が乗っているトレイをそっと置き僕の右隣の席に静かに腰掛けた。

 

今日の彼女の昼ご飯はざるそばみたいだ。麺をつゆをよく染み込ませてツルツルと啜って食べていく。

 

…つゆ?

 

蛙吹「ここの麺汁がたまらないのよね」

 

蛙吹「コシもいい感じだし」

 

緑谷「そ、そうだね…梅雨…ちゃん……」

 

蛙吹「…」ズルル…

 

緑谷「…」ガツガツ…

 

会話がうまく弾まず暫く沈黙の時間が続いていく。くそぅ…更に空気を悪くさせてしまった。

 

蛙吹さんが態々僕の為にメニューまで決めてくれたってのに…無反応はやばい。

 

2、3分位経った後彼女は再び話を切り出した。

 

蛙吹「……怖かった…わよね、緑谷ちゃん」

 

緑谷「…」ガツガツ…

 

蛙吹「皆突然貴方を無視したりしてきて…」

 

蛙吹「でも悪気があってしてるんじゃないのよ…だから許して頂戴」

 

緑谷「………」

 

進んでいた箸が急に止まる。

 

いじめだとかそんなんじゃないのは僕だってちゃんと理解している。だから悩んでいるんじゃないか。

 

緑谷「別に君が僕に謝る必要なんてないじゃないか…確かにそりゃ…傷ついてないって言ったら嘘になるかもだけど」

 

緑谷「だけど…僕が何かしたっていうならハッキリ言ってほしいんだ。場合によっちゃそれこそ僕が皆に謝罪する必要がある」

 

蛙吹「…………」

 

 

 

 

緑谷『あいつとは…1vs1でやりたい』

 

緑谷『ああ…違うな。()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

緑谷『だったら尚更だ。クラスの皆を危ない目に合わせる訳にはいかない』

 

 

 

蛙吹「緑谷ちゃん…ほら、USJで私達を逃がしてくれたじゃない?」

 

蛙吹「それに皆納得がいかなかったの」

 

蛙吹「私自身は貴方は凄く強いし逆に人質とかにされるよりかはよっぽどいい判断をしたと思うのよ」

 

蛙吹「でもね…」

 

 

 

 

 

轟『俺達が束でかかりゃもっといい戦法だってあっただろ』

 

轟『あいつがあの化け物の強さを把握してたなら尚更そんな事分かってた筈だ』

 

轟『それを承知の上で俺等の手を拒んだってんなら…』

 

 

轟『緑谷にとって俺達はその程度の奴っていう認識しかされてないんじゃねぇのか』

 

 

 

 

 

緑谷「…」

 

蛙吹「それで……それに全員賛同して…」

 

蛙吹「最初は体育祭の時にギャフンって言わせてやろうって…皆奮起してたの」

 

蛙吹「でも段々それが悪い方に火ついちゃって……こんなギクシャクして……」

 

蛙吹「こう…なっちゃって……」

 

緑谷「…………さん」

 

蛙吹「私も止めようとしたけど…逆に闘争心煽ちゃって…」

 

緑谷「蛙吹さん…」

 

蛙吹「で、でも…!」

緑谷「蛙吹さんっ!!」バンッッ!!!

 

蛙吹「……っ……」ビクッ

 

 

テーブルを思い切り両手で叩きつけ、大声で彼女の名前を叫んだ、その強烈な効果音は食堂中に響き渡る。あまりに力を入れてしまったが故にその衝撃で蛙吹さんの身体が激しく振動する。

 

数秒静止した後、僕はその場に立ち上がり彼女にこう言い放つ。

 

 

 

緑谷「…もう、大丈夫。分かったよ蛙吹さん」

 

蛙吹「…や…だから……緑谷ちゃんね…」

 

緑谷「大丈夫、大丈夫だから…もう、うん」

 

緑谷「食べ終わったからもう僕行くね」ニッ

 

蛙吹「だ…その…っと…」

 

緑谷「…」スタスタ…

 

蛙吹「待って!!緑谷ちゃんっ!!!」

 

 

 

 

 

誰かに呼び止めららた気がした……がそんな場合ではなかった。

 

一刻も早く食堂から立ち去りたい。

一先ずどこか静かな所で頭を冷やしたい。

 

そう思った。

 

今の僕にはせいぜい、作り笑いで明るく振る舞ってその場から離れる事位しか出来なかった。

 

 

 

 

 

【1-A教室】

 

この部屋にも大きな変化が表れていた。何やら麗日さんは教室中を右往左往しており何やら慌ただしい様子。

 

 

麗日「むぅ…」スタスタ…

 

麗日「むぅぅ……!」スタスタ…

 

麗日「やっぱりデク君に話しに行った方がいいかな!?」ズイッ!

 

飯田「うおっ!?」

 

いきなり顔突き出すモンだから飯田君は驚倒してしまう。フラフラと立ち上がりながら麗日さんに話しかけた。

 

飯田「話…というのは今朝の事か?」

 

麗日「」コクコクコク

 

飯田「俺は別に構わないと思うぞ?寧ろこのまま話が拗れたままだと面倒な事になりかねない」

 

飯田「今の内に誤解は解いておいた方が懸命だ」

 

麗日「でも飯田君は行かんでしょ?」

 

飯田「それとこれとは話が別になる」

 

飯田「俺だって彼に説得しに行きたいのは山々だ…が………」

 

麗日「???」

 

 

 

飯田君はそれを言ったっきりで顔を俯き喋るのを中断した。彼はある事が気にかかっていたのだ。

 

 

飯田(…これは言い訳にもなるかもしれん…が)

 

飯田(今僕が緑谷君の所に行く訳にはいかないんだ)

 

飯田(君の事だ…きっと事情を知れば委員の事に関しても負い目を感じてしまうだろう)

 

飯田(突き詰めればその原因は僕にだってある筈だ)

 

飯田(自分から出しゃ張る訳にもいかんだろう…麗日君)

 

 

 

 

そうこうしていると教室の外が騒がしい事に気が付く。疑問に思いドアを開け様子を見てみると……

 

 

 

ザワザワ…

 

麗日「な、ななな…」

 

麗日「何事だあ!?」

 

 

他のクラスの大勢の生徒が教室付近に集まっているではないか。通路を塞ぐ程の人混みが出来ており思わず皆は腰を抜かしてしまう。

 

峰田「な、何だよこれ…出れねぇじゃん!」

 

爆豪「敵情視察だろザコ」

 

峰田「ふぉおっ!?」

 

峰田「ふざけやがって…ぶっ殺(スパァン

蛙吹「お呼びでない」

 

峰田(帰ってくんの早くね!?)

 

爆豪「敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭(戦い)の前に一目見ておきてぇんだろ」

 

爆豪「それ意味ねぇから退けやモブ共」

 

飯田「とりあえず知らない人モブって言うのやめよう?」

 

「どんなもんかと見に来たが随分偉そうだなぁ」

 

「ヒーロー科に在籍するのはこんな奴らばかりなのかい?」

 

爆豪「ああ?」

 

かっちゃんの暴言に食いつき大行列を押しのけて1人の男子生徒が僕らの前に姿を現した。

 

どうやら普通科の生徒のようだ。

 

普通科生徒「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」

 

普通科生徒「普通科とか他の科の人達ってヒーロー科落ちたから入ったって奴結構いるんだ…知ってた?」

 

普通科生徒「体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって」

 

普通科生徒「()()()もまた然りらしいよ」

 

峰田「…!?」

 

普通科生徒「敵情視察?少なくとも普通科()は『調子のってっと足元ごっそり掬っちゃうぞ』っつー」

 

普通科生徒「宣戦布告しに来たつもり」クルッ

 

それだけ言うと彼はすぐ自分の教室へ戻っていった。大胆不敵な果たし状ありがとうございました。

 

切島「おいコラ爆豪!どーしてくれんだ!」

 

切島「おめーのお陰でヘイトが集まってきちまってるじゃねぇかよ!!」

 

爆豪「関係ねぇよ」

 

切島「はぁ!?」

 

 

 

 

爆豪「()()()()()()()()()()

 

轟「………」

 

爆豪「一々こんな小競り合いに付き合ってる余裕なんて無ぇよ」

 

爆豪「目指す場所はこの底辺共の更に遥か先にある」

 

爆豪「俺達が今相手にしなきゃいけねぇのはあのクソナードだろうが」

 

常闇「上…か。一理ある」

 

切島「くぅっー…1番!」

 

切島「シンプルで男らしい事言ってくれるじゃねーかよ!!」

 

上鳴「バッカ!!あいつ無駄に敵増やしただけだぞ!」

 

八百万「……」

 

 

 

 

 

 

 

【WC】

 

 

バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ

 

 

 

 

 

両手で水道の水を掬い顔面に勢いよくかける。その度に顔全体に水が広がるよう手を擦り付けた。強く擦りすぎたせいか頰がひりひりと痛みを感じてしまう。

 

何分これやってんだろ…

 

 

 

キュッ…

 

緑谷「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

ようやく懲りたのか蛇口を止め洗顔を中断した。長らく息を止め続けていた為に苦しそうに呼吸を行う。

 

 

 

いや…それだけじゃないな。何だろう…

 

 

 

麗日『初めて会った時から思ってたもん!この人絶対やるなーって!尊敬した!』

 

麗日『あーっ…尊敬!なるほど、私はデク君を尊敬していたのか…』

 

 

 

胸が痛い。めっちゃ痛い。

 

 

 

麗日『……ウチ、そんな大した事もやってないもん』

 

麗日『デク君みたいに成績バリバリ優秀な訳じゃないし…』

 

麗日『ウチなんか父ちゃん母ちゃんに迷惑かけてばっかだし………』

 

 

 

 

 

言われた瞬間はあの言葉が心の底から嬉しく感じられた。本心から僕の事を快く思ってるんだってとても安心した。

 

今はどうだ?

 

 

緑谷「…くそっ!」バンッ

 

 

なんでこんな悲しそうな顔してんだよ

なんでいらついて壁殴りつけてんだよ

 

 

 

緑谷『僕より大きい気の反応は無しと…』

 

 

思えば最初から感じていたのだろうか?

 

初日から…高い所で僕はずっと皆を見下ろしていたのだろうか?

 

 

緑谷『こっから先は僕の仕事だ』

 

 

何が自分の仕事だ…だよ。僕は周りの事なんか見えちゃいなかったのか?気にも留めていなかったのか?

 

いつの間に自分はこんな優越感に浸ってたんだよ…

 

皆にだって戦える力は十分あった…それどころか助けられただろ、何度も。不意打ちとか…協力して立ち向かえば撃退する方法なんていくらでも考えついた筈だ!!

 

いつから皆を【助けるべき人達】として見てたんだ!!いつから皆を戦力外として考えていたんだ!!彼らは【一緒に護り合う仲間】じゃなかったのか!?

 

 

 

そうだ。

僕はいつも自分の力1つで何とかしようとしていた。

他人の力を借りようなんてこれっぽっちも思っちゃいなかった。

 

僕は無意識の内に心の何処かで皆を軽蔑していたんだ。

 

いや…無意識ってのも本当は自分にそう言い聞かせ正当化させる為の口実に過ぎなかったのではないか?

 

緑谷「…………」キーンコーンカーンコーン…

 

緑谷「やば…HR……」

 

 

 

 

 

 

自分の胸中とは到底向き合えられなかった。

 

教室に戻れば再び陰鬱な雰囲気に満ちあふれていた。皆とどう接せばいいのだろう。

 

あれ程期待させておきながらこんな失態を犯してしまった。最低だ。こんな身勝手な奴が委員長に適任者である訳が無い。飯田君が継続すればよかったと心底後悔しているよ。若しくは繰り上がりで八百万さんとか。……まぁ副だろうが何だろうが僕には荷が重い仕事だが。

 

 

 

 

駄目だ。キリないや。

 

もう考えるのは止そう。そうすればいつもの調子に戻る筈だ。

 

 

 

 

 

 

数日後…

 

【とある山奥】

 

山…って言ったらまぁ1年間特訓したのでお馴染みのあそこですよ、あそこ。

 

放課後は偶にここで組手してくれる時もある。

 

丁度今も修行の真っ最中だ。

 

 

 

緑谷「だぁぁっ!!!」ダダッ

 

悟空「……」

 

悟空さんに向かって一直線に駆けていく。勿論

ただがむしゃらに突っ込みに行く訳じゃないぞ。

 

悟空「ほっ」ブンッ

 

悟空さんは右脚を振り上げ僕に蹴りをお見舞いしようとするが…

 

緑谷「」ブゥゥ…

 

悟空「お」

 

ザザッ…

 

 

残像拳で見事に回避成功。背後に回って攻撃を仕掛けようとする。

 

緑谷「はあっ!!」ゴオッ

 

悟空「……」

 

クルッ

 

悟空「だっ!!!」ブオッ

 

蹴りが失敗した後即座に身体を180°回転し今度は正拳突きをこちらに繰り出す

 

 

 

 

スカッ

 

悟空「い!?」

 

が当たらない。

 

 

緑谷(裏の裏を読んでやったぞ…!)ダンッ!

 

あの直後また残像拳を使って体勢を崩させたんだ。こんな隙だらけなら飛び蹴りの1発や2

ドッ!!!

 

悟空「……」

 

緑谷「っは…?」

 

ドサッ

 

 

無理でした。こっちに身体向けずに後ろに肘打ちしやがった…もろに顎に食らってしまいそのまま倒れ込んでしまう。

 

悟空「オラ位の格闘家なら相手の5手先は読んでおかねぇとな」

 

悟空「もう40分はぶっ続けでやってっぞ?そろそろ休…」

 

スクッ…

 

悟空「……」

 

緑谷「はぁ…はぁ…」

 

しかし手で痛みを抑えながらすぐ立ち上がり再び構え直す。

 

止まったら駄目なんだ。ずっと動かないとまたあの事を考え出しそうだ。

 

緑谷「はぁっ…はぁ…」

 

悟空「……動きが徐々に雑になってる」

 

悟空「おめぇ、なんかヤケ起こしてんじゃねぇのか?」

 

緑谷「……」

 

悟空「最近ピリピリしてっぞ何だか」

 

悟空「オラ学校行き始めたのはつい3日前だから何とも言えねぇけどよ」

 

悟空「言う程あまりクラスの奴らと馴染めてねぇんじゃねぇんか?」

 

緑谷「今は……っそんな事は…どうでも…」

 

悟空「どうでも良くなんかねぇよ…」

 

悟空「オラはおめぇの師匠だし先生なんだ」

 

悟空「悩んでんのをほっとける訳ねぇ」

 

悟空「来週体育祭があるから張り切ってんのは分かっけどあまり切り詰め過ぎっ

緑谷「大丈夫です…!平気ですから」

 

 

悟空「…」

 

緑谷「はぁ…はぁ…」

 

悟空「…何が大丈夫なんか…?」

 

緑谷「…………ーっ」

 

緑谷「…すみません。今日ちょっと疲れたのでこれ位でお開きにさせてください」

 

悟空「………その方がオラもいいと思うぞ。無理は体に毒だからな」

 

緑谷「…………」スタスタ…

 

 

 

話したって理解も解決もできない癖に。

 

そう思いながら聞こえない程度に舌打ちして歩き去っていく。

 

 

 

 

 

【雄英:屋上】

 

緑谷「」モグモグ…

 

緑谷「カツサンド最高ー」

 

緑谷「……」

 

ガブッ

 

緑谷「」モシャモシャ…

 

その翌日も僕は適当に選んだパンを適当に外の景色を眺めながら適当に食べていた。

 

今日で4回目…あ、金曜だから一週間もう終わるのか。早いなぁ。特に今週はやたら早く時間が過ぎていった気がする。

 

…?なんで食堂で食べてないのかって?

 

察してくれ。1人の方が気楽に食えるだろ。

 

緑谷「空が青いなぁ…」

 

緑谷「………関係ないけど」モグモグ…

 

 

 

 

何やってんだろ。自分…

 

これじゃ前の生活に逆戻りしてるだけじゃないか。中学の時も確かこういう風に隅っこで1人弁当食ってたっけ。

 

皆とどう接すればいいか分からない。どう向き合えばいいか分からない。

 

考えている内に面倒になってきて『なら自分も関わらなきゃいい』って自分から皆を避けるようにしてしまった。

 

何も…何も変わって無いだろ今までと。

 

こんなんじゃなかった筈だ。

 

僕がやりたかったのは…高校生活はこんな…

「あ…居た」

 

ダダッ…

 

 

緑谷「…?」

 

後ろから誰かの声がした。僕を見つけて何か独り言をボソッと呟いてたな。まさか態々屋上まで僕を探しに来る人なんている訳ないし…

 

僕と同じでハブられ者か?気が合うじゃないか。1人で食えないかもしれないが僕等は同志だ。2人で仲良く楽しもうじゃないか。

 

まぁ1番理想なのは今のが幻聴だったって事だけど。

 

緑谷「」ポン…

 

どうやらその可能性はなくなったらしい。僕の肩に声の主であろう人物の片手が置かれる。でも悪いな。出来れば今は1人で…

 

 

そう思いながら声がした方向を振り向く。

 

すると…

 

 

 

 

八百万「やっと見つけた…緑谷さん」

 

緑谷「………は?」

 

 

 

なんで…なんで八百万さんがここにいるんだよ。

 

その答えは全身汗だくの姿と息が荒々しい様子を見れば一目瞭然だった。だがそのお陰でまた新たな疑問が生まれた。

 

何故僕を探してた。

 

八百万「ここ一週間ずっと休み時間の間教室に姿が見当たらないと思えば…」

 

八百万「どうしてこんな所で黄昏れていますの?」

 

緑谷「………」

 

緑谷「君が…知る必要は無いだろ」

 

緑谷「関係ない」

 

八百万「大ありですわよ。友人が困っている所を放ってはおけませんわ」

 

八百万「それに委員長なれどクラスメイトを助けるのは学級委員の役目……」

 

八百万「…というか…その…あの…」

 

 

 

 

八百万「私は…貴方のパートナーですし…」

 

 

 

緑谷「………先週あんな偉そうに口叩いてたのになぁ」

 

緑谷「今だってそうだよな」

 

緑谷「僕は自分自身の力だけで全て丸く収めようとしてる」

 

緑谷「相澤先生の時だって皆の事を考えずただ1人で突っ込んでいっただけだし」

 

緑谷「私怨を訓練に持ちかけて皆に迷惑かけるし」

 

緑谷「…っとに……とんだ仕事が課せられたと思うよ…」

 

緑谷「飯田君に…申し訳ないや」

 

八百万「………一応、言っておきますが」

 

八百万「私は貴方を見損なったとか…決してそんな事は思ってないですわよ」

 

緑谷「?」

 

八百万「…」

 

 

緑谷『八百万さん……頼んだよ』

 

 

八百万「……あの時…咄嗟に私を逃がしてくれたのは…」

 

八百万「私なら、その場に残った人達を守ってくれる…」

 

八百万「そう信じてくれたからでしょう?」

 

緑谷「…………」

 

八百万「そういう無駄に視野が広い所、嫌いじゃありません」

 

 

 

 

 

無駄って何だよ無駄って。

 

慰めてるのか褒めてるのか罵ってるのか分からないじゃないかよ。

 

下っ手くそ………

 

 

 

緑谷「っぶぷ」

 

八百万「?」

 

緑谷「ははははははっ!!」

 

八百万「………」

 

緑谷「はは…は…げほ、っ!ごほっ!」

 

やばい。腹痛い!笑いすぎて咳出しちまった。クッソ…!

 

 

固く握り締めていた手の力が何時しか緩み始めてた。気付けば両腕で腹を抱えて笑いを抑えてさえいた。

 

 

八百万「え…私何か変な事…」

 

緑谷「ご、ごめん…いや、なんでも…」

 

緑谷「…何というか…少し頭ん中の靄が晴れたかも」

 

緑谷「ありがと、八百万さん」

 

八百万「そう…ですか」

 

八百万「それなら幸いです」ニコッ

 

緑谷「…」

 

緑谷「あの。さ…八百万さん」

 

八百万「はい」

 

緑谷「僕…皆とすれ違っちゃった…というかすれ違っていた。ずっと」

 

緑谷「どうすれば……解るのかな」

 

緑谷「どうすれば今みたいに笑い合えるのかな」

 

八百万「……言ってましたわよね、他の科の方」

 

八百万「足元掬うぞって…体育祭の事色々」

 

緑谷「……」

 

八百万「こんな所で油を売ってる場合ではなくって?」

 

 

 

 

『時間は有限。君達は合理性に欠くね』

 

『そんな兄に憧れ俺はヒーローを目指した』

 

『俺はここで1()()()()()()()()!!!』

 

 

 

 

 

馬鹿か…自分は……

 

なんでこんな事すぐに気付かなかったんだ?

 

やるべき事なんか…何ヶ月も前から決まっていたじゃないか!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………雄英体育祭………

 

散々説明してきたので最早お約束だろうがここの学校の体育祭は他校に比べ遥かに規模がデカイ。

 

競技の様子は全国へと発信され、毎年日本各地で話題となっているすごい行事だ。

 

どの位すごいかと言うと…

 

 

 

 

 

数日前…悟空初出勤の月曜

 

【1-A教室】

 

オールマイト「さて…余興(悟空さんの紹介)はこれ位にして」

 

オールマイト「とうとう雄英体育祭も残り2週間を切った訳だが」

 

(クソ学校ぽいの来たぁぁあ!!)

 

オールマイト「ウチの体育祭のシステム、皆把握してるかな?」

 

緑谷「確か…ヒーロー科・普通科・サポート科・経営科がごった煮になってまとめて行われる…」

 

緑谷「いわゆる学年別総当たり?」

 

オールマイト「そう!!つまり全力で自己アピールできる!」

 

オールマイト「雄英来たなら外しちゃならんよこの行事は!!」

 

芦戸「待って待って!敵に侵入されたばっかなのにそれって大丈夫なの!?」

 

オールマイト「逆に開催する事で雄英の危機管理体制の盤石を示す…」

 

オールマイト「て考えらしいな」

 

オールマイト「警備は例年の5倍まで強化するとの事」

 

オールマイト「何よりウチの体育祭は最大のチャンス」

 

オールマイト「敵ごときで中止していい催しじゃあない!」

 

峰田「いやそこは中止しよ?」

 

瀬呂「え?峰田…お前雄英体育祭見た事ねぇの?」

 

峰田「あるに決まってんだろ…そういう事じゃなくてよ~…」

 

オールマイト「ウチの体育祭は日本のビッグイベントの一つ!」

 

オールマイト「かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した」

 

オールマイト「今は知っての通り規模も人口も縮小し形骸化した…」

 

オールマイト「そして日本に於いて今()()()()()()()()()()に代わるのが雄英体育祭だ!!!」

 

八百万「全国のトップヒーローも観ますのよ!」

 

八百万「勿論スカウト目的でね」

 

上鳴「卒業後はプロ事務所にサイドキック入りがセオリーだからな」

 

耳郎「そっから独立しそびれて万年サイドキックも多いんだよね」

 

耳郎「上鳴あんたそーなりそうアホだし」

 

上鳴「くっ!!」

 

オールマイト「当然名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる」

 

オールマイト「プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ!」

 

オールマイト「年に一度…計3回だけのチャンス」

 

オールマイト「ヒーロー志すなら絶対外せないイベントだ!!!」

 

 

 

 

 

 

と言った感じ。皆さん概要説明ありがとう。

 

5月の始まり…入学してから1ヶ月後、いきなりこんなどデカい行事が始まるのだ。

 

しかも生の観客数がえげつない。100万人は軽く超えるらしい。ひぇぇぇ…

 

日が近づくにつれ、プログラムの決定、装飾の張り付け等々準備は着実に進められていった。

 

それは生徒も同然。

 

 

 

 

 

切島「93…94…95!」グッ…

 

切島(俺達が…強くならなきゃ…)

 

切島(あいつに迷惑かかっちまうから…!!)

 

切島(あいつの足手まといになっちまうから…!!)

 

切島(そんなんクソ喰らえだ…!!)ピタッ

 

切島「………腕立て100回じゃ全然足りなぇ…」

 

切島「あいつを越せねぇよっ」

 

切島「+100回だ…!」

 

切島「101…102っ!!」グッ

 

 

 

 

 

 

バチバチッ…

 

上鳴「…はぁ…はぁ……」

 

上鳴(こんなんじゃまだ駄目だ…追いつけねぇ!)

 

上鳴(もっと強くならなきゃ…あいつをっ…助けられねぇ…!!)

 

上鳴(今のままじゃ…駄目なんだ!!)

 

上鳴「耐えろ…耐えれ俺っち…」

 

上鳴「もうちょいで超必完成しそうだからよ…!!」バチバチ…

 

上鳴「もってくれや俺の身体っ!」

 

 

 

 

 

 

 

八百万「……」

 

ギュッ

 

八百万(靴紐…両方共OK)

 

八百万(時間は後30分。十分余裕ですわね)

 

執事「百お嬢様…この時間にお出かけですか?」

 

八百万「ええ…ちょっと」

 

八百万「散歩がてら()()()()()()を」

 

執事「……ほえ?」

 

 

 

 

体育祭開催に伴い、各々が参加種目に備え奮闘していた。

 

そんな感じで約2週間…あっという間に過ぎていき…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当日、雄英体育祭開催。

 

【ゲート前】

 

ザワザワ…

 

マイク「群がれ!!マスメディア!」

 

マイク「今年もお前らが大好きな高校生達の青春暴れ馬」

 

マイク「雄英体育祭が始まディエビバディアァユウレディ!!?」

 

バンッバンッ…

 

 

 

 

校内入場可能時間の1時間前から100m近くもの大行列ができていた。

 

開始の合図と共にその人々を何十発もの雷が快く出迎える。

 

この日は雄英生・プロヒーロー・オールマイト…いずれも撮り放題!誰にも文句言われない!

 

マスコミにとっても今日はネタ満載のビッグチャンスなのだ!

 

 

 

レポーター「うーん…並び始めてから早2時間」

 

レポーター「まだかかんの?入場検査なっがいねぇ」

 

あ、貴方は何時ぞやの通りすがりの記者さんじゃないですか。流石に2時間以上も待たされちゃうんざりするか。

 

そんな彼女をカメラマンの方があれこれと宥め始める。

 

「しゃあねぇしゃあねぇ。何時もこんくれぇかかるよ」

 

「敵の襲撃受けたしなぁ。厳重にするわなそりゃ」

 

「今年に限っちゃ開催に批判的な声も上がってるぜ」

 

レポーター「まぁそーなんですけどね!」

 

レポーター「物議をかもす=数字がとれる!」

 

レポーター「今回の注目はやっぱり1年A組と言った所ね!!」

 

「敵を撃退した連中だからなぁ」

 

「優勝者は恐らくそいつらの誰かだろうな…実力にしろ経験にしろどちらも優ってる」

 

 

 

 

 

 

 

同じく全国からのプロヒーローも続々と雄英高校へと集結していた。

 

雄英生へのスカウトや観戦目的で来た者もいれば警備依頼が出されて招集された者も少なくはない。

 

この3人もどうやら今日は後者の理由で来ているらしい。

 

デステゴロ「ラストチャンスに懸ける熱と経験値から成る戦略等で例年メインは3年ステージだけど」

 

デステゴロ「今年に限っちゃ1年ステージ大注目だな」

 

シンリンカムイ「我らもスカウトに遅しみたいとこだが」

 

デステゴロ「警備依頼が来た以上仕方ねえよ」

 

Mt.レディ「なんか今年は全国からプロヒーロー呼んだらしいですね」

 

シンリンカムイ「……」<クチャクチャ…

 

デステゴロ「……」<クチャクチャ…

 

たこ焼きを不穏な効果音を発しながら粗暴に頬張る。年頃の女性とは思えない汚い食べ方に2人は絶句した。

 

Mt.レディ「うめえ 」

 

シンリンカムイ「……タダでもらったたこ焼きがか? 」

 

 

 

 

 

『お、Mt.レディじゃん!1人500円よ!』

 

Mt.レディ『今持ち合わせが無いの…』スリスリ…

 

『下半身!エッロ!!半額!!!』

Mt.レディ『ありがとーーー!!』<後青のり抜きな!!!

 

 

 

 

 

シンリンカムイ(外道が)

 

外道ですね、これは。

 

 

 

 

 

 

【1-A控え室】

 

入場予定時刻まで残り10分を切っていた。

 

今か今かと開始を待ち構えている人

限界まで高まった緊張感を何とか解そうとする人

どの決めポーズがキマッているのか苦悩している人(約1名)

 

残り少ない時間を皆それぞれ1秒1秒噛み締めていた。

 

 

葉隠「はぁぁ…コスチューム着たかったなぁ」

 

尾白「公平を期す為に着用不可なんだよ」

 

尾白「…って葉隠さんは逆効果なんじゃ…」

 

峰田「王子王子オウジベジータ」

 

蛙吹「何書いてんの峰田ちゃん…」

 

緑谷「……」

 

 

緑谷(滅茶苦茶緊張するぅぅぅっ!!)ドキドキ…

 

緑谷(だってこれ…あれだろ!?保護者とか知り合いどころか…)

 

緑谷(全世界に僕の恥ずかしい姿が晒されるんだろ!?死ぬわ!!)

 

緑谷(こんな心臓苦しいのっていつ以来だ!?入試とか、後入学初日位じゃない!?)

 

緑谷(すんごい臓器バクバクするよ!)

 

八百万「緑谷さん。そろそろお時間ですわ」

 

緑谷「ひゃ、ひゃい!!!」

 

皆に部屋から出る体制を取るよう大声出して指示を伝えようとするが…

 

緑谷「そっ…そろそ…りょ!入場時間だ…っから!みみみみ皆じゅじゅっんびぃを…」

 

全く言えてない。

 

八百万「全く言えてませんわ」

 

緑谷「ご…ごめ…生中継されてると思うとついつい……」

 

「……」

 

緑谷「……」

 

八百万「…はぁ…」

 

いつもならノリに乗ってツッコミをする場面なんだが…そんな気分な訳ないか。

 

 

 

 

 

「おい、緑谷」

 

緑谷「ふぁいっ!?」ビクッ

 

だが最も意外な人が僕に話しかけてきた。

 

轟君だ。

 

 

 

轟「ちょっといいか」

 

緑谷「え…ああ。構わないよ」

 

轟「客観的に見ても実力はお前の方が上だったと思う」

 

緑谷「うん………え?」

 

轟「……蛙吹から聞いたぞ、お前…」

 

轟「悟空先生の事前から知ってたんだってな」

 

緑谷「!?」

 

轟「ここ最近カカロットに目ぇかけられてるよな」

 

轟「事情を知る気もねぇし詮索するつもりも全くねぇが……」

 

 

 

 

 

 

轟「お前には勝つぞ」

 

 

 

 

 

 

その瞬間皆の目線が一斉にこちらに集中してきた。考える事は全員同じか。轟君は一種の代表者…みたいな感じだな。

 

切島「………」

 

上鳴「………」

 

蛙吹「………」

 

爆豪「野郎……」

 

 

 

緑谷「…轟君が…何を思って僕に勝つって言ってんのか…は分からないけど…」

 

緑谷「確かに僕の方が上…だったかもしれない。大半の人は敵わない位…客観的に見ても」

 

A組「……」

 

緑谷「でも…()はどうかな…」

 

緑谷「皆…他の科の人達が本気でトップを狙ってくる」

 

緑谷「だから…僕も遅れをとる訳には行かない!!」

 

 

 

緑谷「僕も()()で…獲りに行く!!!」

 

 

 

 

八百万「…ふふ」

 

轟「……おお」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【敵連合アジト】

 

 

ここにもまた、僕達の活躍を陰ながらモニターで覗きこんでいる者がいた。

 

 

 

死柄木「ちっ…なんで俺がこんなガキの下らねぇ遊びに付き合わなきゃならんのだ」

 

<まぁそう言うな。これも特訓だよ、死柄木

 

<奴らがどれ程の力を持っているのか、どういう弱点を持っているのか

 

<洗いざらい調べる事ができる

 

<それに君のお仲間さんもそこにいるはずだろ?

 

死柄木「……知らねぇよ」

 

<後先生ー。いいのかな?尻尾の奴は見なくても?

 

<この間仕留め損ねた猿人間か?…別にいい。

 

<興味本位で実験体(モルモット)にしようかなと考えていただけだ。そこまで欲しい訳じゃないさ。

 

死柄木「……」

 

 

 

 

 

 

 

【緑谷自宅】

 

デク母「うう…うう…」スタスタ…

 

デク母「出久大丈夫かな…今頃緊張高まり過ぎてブッ倒れたりしてないかな」

 

デク母「考えたら余計怖くなってきたぁぁ!?」スタスタスタスタ

 

どうやらこちらは心配し過ぎて居ても立っても居られないようだ。入学後1ヶ月足らずでし入院なんていう偉業を成し遂げたからな。そりゃ恐ろしいわ。

 

お、そんな事言ってたら…

 

デク母「…?」<ワーワー!!

 

マイク<さぁ!お待たせお前ら!!それじゃ早速選手入場と行ってみようか!!

 

マイク<では1年ステージ生徒出て来やがれえええっ!!!

 

デク母「は、始まった…!」

 

デク母(出久…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷『オールマイトみたいにどんな危険な状況下でも…困ってる人達を笑って救けられる…』

 

緑谷『そんな英雄(ヒーロー)に』

 

 

 

 

緑谷(お母さん、悟空さん。そしてオールマイト…)

 

緑谷(見ててくれ…僕が1年培ってきた力を…)

 

 

 

緑谷(僕が来たってトコを!!!)

 

 

 




さらばUSJ編!!よろしく体育祭!!

須井化です…はい。

今回は予告通り、〜体育祭開始まで行けました。

場面変化が激しくてかなり苦労させられましたね。でも今回は結構力作。

そういえばママンは悟空さが先生になった事驚いてませんでしたね。

(実は事前に伝えていてデクには誤魔化してたんですよねー…描写入れる隙が無かった。じゃなきゃ今頃発狂してるよなママン、うん)






そして!!3月25日(土)から僕のヒーローアカデミア(二期)放送決定!こりゃ見逃せませんわ!!

こちらでは先駆けして次回から体育祭編突入しますぞい!!展開違うけどねーちょっと!!

って事はあの娘も登場なんか!?そうなんか!?オラwktk止まらねーぞ!!

とにかく乞うご期待!!うおおおっ!早速次話書き始めるぜぇぇ!!!



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
3月6日(月)以内に第21話の投稿を予定しております。

お楽しみに!









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第20.5話

正直間に挟もうとしてはいなかった。最新話の間に入れても関係無いし、然程重要なお話でも無いのでキリがいい20話と21話の間に差し込みました。
内容や会話は敢えて分かりにくくしました。まぁ1人名前が出てきてますし、多少はね?
因みに今回出た設定はちゃんと原作でも出ています。じゃけんジャンプ+ダウンロードしましょうね。





※今回のお話は本編の出来事とあまり関係無いので無視してもいいです。
ただ、予備知識として知っててもいいかも。主に私なりの【GTの最終回】の解釈についてかかれています。


「………ふぅ」

 

「ここ数年、しばらく下界が荒れていたが…ようやく一息つけそうだわい」

 

「最悪の事態の時の()()()()も無くなってしまったからのぅ…今度はワシらがこの未来を支えにゃならん」

 

「これから忙しくなるぞぉ〜ヤジ…

「zzz…〜…」

 

「こいつ…食うだけ食ってすぐ眠りにつきおった!」

 

「全く…少しは使える奴かと思うたが、所詮ワシより強いだけの脳筋じゃったか…」

 

……ォォォ……ォォ…

 

「…ん?何かここにやってくる…というより降りてきてる」

 

「という事は…」

 

 

シュタッ

 

 

「こんにちは!ご無沙汰してます!」

 

「何だ…やっぱり()()じゃったか」

 

「いきなり猛スピードでこっちに接近してきたから何事かと思ったわい」

 

「で、用件は何じゃ?急ぎの用事か?」

 

「いえ…特別そんな事では……」

 

「神殿を放棄して()()に任せっきりにしてる時点で、あまり重要な件では無いとは思えんがなぁ…」

 

「あ…」

 

「身分的には神様が上なんじゃからいつでも気軽に呼べばええというのに…」

 

「神殿が実体化されてあるんだから放ったらかしにしたら尚更危険じゃろ」

 

「す、すみません…以後気をつけます」

 

「…で、その別に重要でない案件とは何じゃ?」

 

「その…端的に申し上げますと、少々お聞きしたい事がありまして…」

 

「聞きたい事?そりゃワシよりもお前の相方の方が適任じゃあるまいか?」

 

「あやつはワシよりこの現世に精通していると見えるが…」ジョボボ…

 

「それが…同じ事を聞いてはみましたが…」

 

「知らない、分からない…の一点張りで…」

 

「………むぅ。正直ワシに答えられるようなモノなのか見当も付かんが…」

 

「ま、茶でも飲みながらゆっくり話そうぞ」コト…

 

「ありがとうございます…」ズズッ

 

「…うま…」

 

「そりゃそうじゃ。ワシが淹れたのだから当然」

 

「へぇ…」ズズ…

 

「こうして落ち着いて茶を飲み交わせるのも、久しぶりじゃなぁ…」

 

「ようやく下界が穏やかになった証拠とも言えるのう。いい事じゃ」

 

「………………」

 

 

 

 

「悟空さんが死んだから……ですか」

 

「………まぁ悪く言ってしまえばそう」

 

「というか、そもそも悟空が死んだとはまだ限らんがな」

 

「だけど、消えてからもう3年。あれから何一つ連絡もよこさん」

 

「この間はタイミング良く魔人ブウが攻めてきたからたった7年で済んだが…」ズズッ…

 

「果たして次帰ってくるのはいつになるのやら…」

 

「……やっぱり、貴方は…」

 

「もう言わんでええ。大方予想はできた」

 

「!?」

 

「お前さんが急に悟空を話題に出したからピンと来たわい」

 

「も、モロでバラすつもりは無かったんですけどねぇ…」

 

「形式的には神様だが、話術がまだまだじゃなぁ。鍛えろ鍛えろ」

 

「「……」」ズズッ…

 

「…そうじゃなぁ。どこから話すか」コト…

 

「まず、お主は【魔族】という種族が居たのを知っておるか?」

 

「…はい。確か、以前先代の神が己に潜む邪を取り除く為」

 

「ある日、善と悪の2人に分裂したと…」

 

「そして善の方がその先代の神、もう一方が下界に逃げ延び、大魔王となった」

 

「その時も()()()()()特有の卵を生み出す事に成功はしましたが、波長に歪みが生じ、異形の怪物が誕生した」

 

「その生みの親を含めた怪物達の総称を、魔族…と言った感じでしょうか」

 

「うむ。大方合っとる」

 

「して…恐らくお主が聞こうとしているのは恐らく」

 

「【魔族に殺された者の魂の行方】…こんなモノかのぅ」

 

「………」

 

「図星…という解釈で良さそうじゃな」

 

「コレもまた、お主らが想像している事と何ら変わらん答えじゃ」

 

「…では…やはり?」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

「魔族に殺された者はあの世にも行けんし、この世に戻る事もできん」

 

「ただただ、宙を漂い続けるしかない」

 

 

 

「そうだったん…ですね」

 

「ああ。元々ワシもお前のトコの相方も、あの世から現世(ココ)にやって来たのだが…」

 

「大魔王達に殺された武道家、そして武泰斗の姿さえあの世には無かった」

 

「だからワシらはその事実を知ってるし、実際にそうなった者の末路を見た事もある」

 

「そ、そうなった者の…?」

 

「ああ。直接ワシの口からは出したくないがのぅ…」

 

「…そう、ですか」

 

「あの、それを認識した上で貴方にご質問しますが…」

 

「ぬ?」

 

 

 

 

「つまるところ、悟空さんはどうなったと、貴方は見ていますか?」

 

「………悟空がどうなったか…ねぇ」ズズ…

 

「それもまた、多くの者が思っている通りじゃよ」

 

「……あの時、確かに悟空さんは一星龍に殺された。しかし、最後まで倒れる事も無く戦い続ける事ができた理由というのは…」

 

魔族(かみ)から生まれた魔族(さんぶつ)…神龍に殺されたから、なのでしょうか」

 

「………まぁ、実際の所は半信半疑止まりなんじゃがなぁ」

 

「過去に一度だけ、大魔王が封印から解かれた事があって…活動を再開した事もあったが」

 

「やはりその時も身体から魂が分離し、ただただ浮遊しとるだけじゃった」

 

「悟空の様に最後まで肉体が動き続けたケースはとても珍しい…というか初めての出来事じゃったの」

 

「もしかすると、あの時から既に神龍が仕込みを始めていたのかもしれんのぅ」

 

「仕込み…?」

 

「悟空はこの世にもあの世にも存在しない、かと言って、今言った様に魂が空中に舞っているのなら今頃ワシらが見つけておる」

 

「存在を消す事も、作る事も最早不可能ではあるが…」

 

 

()()()()()()()()()()()ならば可能かもしれん」

 

「生や死に…限りなく近い事?」

 

「うむ。あくまでもワシの推測だが……」

 

 

 

 

 

 

「悟空はワシらの知らないどこかで、今も元気にやっとるんじゃないかのぅ……」

 

「神龍とともに…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ChapterⅠ-episode4 雄英体育祭編
第21話


前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

USJの一件で皆とすれ違ってしまった緑谷少年。

八百万少女の説得もあり全力で向き合おうと改めて決意を固める!!

悟空担任を新たに加え1-Aは次なるステージへ進んでいく。

遂に雄英高校体育祭の始まりだ!!!

更に向こうへ!PlusUltra!!!


マイク「雄英体育祭!!!」

 

マイク「それはヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトルの事である!!」

 

マイク「ってかてめーら今日ここに来たのってアレだろ!?どうせこいつら目当てだろ!?」

 

マイク「敵の襲撃を受けたにも関わらず!鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!」

 

 

 

 

 

マイク「ヒーロー科1年A組だろぉおおおっ!?」

 

ワァァ…!

 

 

 

マイクの咆哮と同時に600を超える雄英1年の生徒達が颯爽と入場ゲートから姿を現す。

 

勿論順番はA〜KなのでA組(僕ら)が初陣である。めちゃ緊張するっ!!心臓がバクバクと揺れ動き少しでも緊張を抑えようと胸を右手で押さえる。

 

緑谷「うっわ…人すんご…」ドキドキ…

 

気で感じてはいたものの生で見るとこれまた無数にいるような大民衆よ。これを世間でいう星の数だけって規模かよ。

 

しかもこれは生で観戦してる人のみでの話だ。実際には全国で放送され、終いにはYo○tubeとか…世界共通の動画投稿サイトに載せられる。

 

……ここまで言えば分かるだろ?

 

緑谷(世界中にいる数十億の人間に自分達の勇姿晒されながら競えって事かよ…)

 

緑谷(ハードル高すぎ…)

 

飯田「大人数に見られながら最高のパフォーマンスを発揮できるか…」

 

飯田「これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」

 

USJでの敵の出現は瞬く間に世界中へと伝わり世間で大分騒がれていた。

 

何せ無敵の壁と呼ばれた雄英のセキュリティを掻い潜り職員・生徒を共に瀕死にまで追い詰めたのだ。本来真っ先に敵達が上手と考えるべきなのだろうが襲われた生徒の保護者や周辺地域の人達からすれば雄英の監視体制を疑うのも無理は無い。

 

だがその一方では勇敢に敵に立ち向かったA組への期待を大きく膨らませる結果となった。1-Aの活躍を一目見る為だけに遥々世界の果てから日本にやって来たという者も少なくは無い。

 

1-Aが登場すると共にスタジアムに観客の壮大な歓声が湧き上がる。待ってました!!と言わんばかりにだ。

 

切島「うっおおお…すっげ持ちあげられてんなおい!!」

 

切島「なんか緊張するな!!なぁ爆豪!!」

 

爆豪「しねぇよ。ただただアガるわ」ウズウズ…

 

あ、普通に軽い興奮状態になってますね。あれか。コレが例の超サイヤ人ですか。

 

A組・B組とまずヒーロー科が入場し、それに連なり…

普通科のC・D・E。

サポート科のF・G・H

経営科のI・J・K

と合計11クラスの生徒が競技場中央部に有るステージに集まってくる。

 

この体育祭は如何に我が校のヒーロー科が優れているかを世に発信するいわば宣伝である。

 

普通科生徒の中には扱いの明らかな違いに愚痴をこぼす者も。

 

「ただの引き立て役じゃん俺らー」

 

「たるー!休日返せやボケ」

 

普通科生徒「……」

 

 

 

 

「生徒一同!!整列!」

 

全員スタジアムの中心に集まるとステージの上にいた人物が生徒達に指示を出し始める。手に持った鞭を振りピシャッといい音を響かせながら…

 

 

 

 

ミッドナイト「これより1890年度雄英体育祭の開催をここに宣言する!!」ビシャッ!!

 

ワァァ…

 

 

お察しの通り。今回の1年主審は18禁ヒーロー【ミッドナイト】!!…?何処がどうイケないのかって?………うん。そう…露出度。これ以上言うと殺されそうだから黙っておくよ。

 

常闇「18禁なのに高校に居てもいいのか」

 

峰田「当然だ」

 

ミッドナイト「静かにしなさい!!そこ!」

 

ミッドナイト「ではまず選手宣誓。選手代表…」

 

 

 

 

ミッドナイト「1-A爆豪勝己!!!」

 

緑谷「」

 

爆豪「お。俺か」

 

…選ばれたのはかっちゃんだった。正気ですか、先生。確かに彼入試成績総合で1位だったけど…ロクな事したもんじゃないぞ。

 

どうせ

 

「俺が1番だ」

 

とか!

 

「お前ら格下。よって俺優勝。OK?」

 

とか!やりかねんぞおい!!

 

そうこうしている内にかっちゃんがステージに上がりもうマイクの前で仁王立ちをしていた。よくもまぁこんな場面でポケットに両手突っ込めるなぁ。

 

そして深呼吸してからこう言い放った。

 

爆豪「せんせー」

 

 

 

 

 

 

爆豪「俺が一位になる」

 

はいはい。予想通りでしたよ畜生!!!

 

「おいーー!調子乗んなやA組オラァ!!」

 

「ヘドロ野郎ーー!」

 

飯田「何故品位を貶めるような事をするんだ君は!!」

 

周りの生徒や観客からはブーイングの嵐。それどころかA組にも引かれてる始末だぞかっちゃん。それらに対し彼は…

 

爆豪「せめて跳ねのいい踏み台くらいにはなってくれたまへ」クイッ

 

顎を前に突き出し指で首を横一文字に切るようにスライドさせたぁああっ!!完全に舐めきってますよこのひ……

 

……んー……?

 

「どんだけ自信過剰だよ!!」

 

「俺が潰したるわ!」

 

爆豪「…」スタスタ…

 

緑谷「……」ドッ

 

いや…自信とか…全然そんなんじゃなかった。前までのかっちゃんならああいうのは笑って言ってた。

 

 

敢えてああいう図太い宣言しておいて自分を追い詰めているんだ。

 

まぁクラスを巻き込んでるのはかっちゃんらしいけど…

 

かっちゃんがこちらに歩いて戻ってくる時僕の肩とぶつかってしまう。あっと…ぶつけてきたの間違いか。あいつが意味もなくこちらに寄ってくる訳が無い。

 

宣誓が終わった所でいよいよ競技開始だ。開会式なんて無かったんだよ、うん。ミッドナイトの横にヴンとモニターが現れた。

 

ミッドナイト「んじゃ、早速第1種目行きましょう!」

 

麗日「雄英ってなんでも早速だね」

 

耳郎「早速ではないよね」

 

ミッドナイト「いわゆる予選!毎年多くの者がここで涙を飲む(ティアドリンク)!!」ドゥルルル…

 

ミッドナイト「さて運命の第1種目…今年は……」ドゥルルル

 

ミッドナイト「コレ!!!」バンッ

 

モニターにはある言葉が表示されていた。気になる第1予選の内容は…

 

 

 

緑谷「障害物競走……」

 

ミッドナイト「皆にはこのスタジアムの外周4kmを走り切ってもらうわ」

 

ミッドナイト「ほら…位置につきまくりなさい。ゲートが開いたと同時にカウントは始まるわよ?」

 

ガァァ…

 

そう言うと後ろからゲートの開扉音が聞こえてくる。10mは軽く超える巨大なゲートだ。3つランプがついているが恐らくそれが全部点滅したと同時にレースが始まるんだろう。

 

皆ぞろぞろとゲート前に並び始めた。とはいえ数百人。前に好んで行く者も後ろに好んで行く者も居ないだろう。何よりこれはコースを出なければ()()()()()O()K()。お互いの個性の情報が全く掴めてない上にこれは競走ではない。障害物を避けながら走らなければならないのだ。

 

先陣切って走ればいきなりの障害物との衝突も免れないし後ろから個性の追撃を受ける可能性もある。かと言えば最後尾が良いかと言えば早いモン勝ちになってしまう…

 

というとキリないな。

 

とりあえず僕は1番後ろを選ばせてもらうぜ。

 

緑谷「……」

 

ミッドナイト「それじゃ…3カウントどうぞ!」

 

プッ…

 

横に並んでいるランプの内右の1つが光り出した。後2秒…だけど緊張感が高まってるせいか物凄く長く感じられる。人生の中で最も長い3秒かも…

 

 

 

正直言うと僕は体育祭とか興味は特に無かったんだ。今はオールマイトとか…悟空さんに見てもらえてるし自分から目立つメリットとか…モチベーション無かったし敵襲撃の直後だったからイマイチ乗り切れなかったりとか…別に最強を目指してる訳じゃ無いし。

 

 

プッ

 

 

……って…

なんだかんだ言っても全員本気で頂点奪ろうって奮闘してるんだ。僕だってそれ相応の応え方しなきゃならんだろって話だよ。

 

そうさ。皆と本気でぶつかり合えば、きっと前以上に…本気で接し合えると思うんだ。

 

だから…だから……

 

 

 

プーーッ!!

 

ミッドナイト「スタートッッ!!!」

 

緑谷(全力で優勝かっさらってやるよっ!!!)

 

ダダダダダッ…

 

 

スタートの合図が出た瞬間一斉にゲートに向かい走り出した。4kmって結構長距離だと思うんですよ…でも皆最初から割と本気で駆けていくなぁ。

 

しかし、そうする理由もすぐに分かった。

 

 

このゲート異様に狭いのだ。なので…

 

 

「ぐおおお…つ、潰され…」ギュゥゥ…

 

「狭ぇぇぇぇっ!?」

 

 

早めに抜けないとこの大行列から抜けられない。忘れてしまっているかもしれないから言っとくがここにいるのは1m強の者しかいる訳ではない。異形系の個性でかなり身体体積を取ってしまっている人も中にはいる。

 

だから尚更横幅が狭いと上手くスタートダッシュを決められない。

 

 

そんでもって…溜まり場が出来ると都合良かったりするんですよ。なんでかって?

 

 

轟(ゲート内で人混みを作るなんざ格好の餌だぞそりゃ…)

 

轟「主に俺のだが」パキパキィッ!!

 

「ぐあああっ!?あ、脚がぁぁっ!?」

 

こんな事(氷結)できちゃうもん。

 

百単位の生徒達が下半身のほとんどを凍らされ、動けなくなってしまう。え?もうこれ最初から詰みなんじゃ…って思うでしょう?

 

 

 

八百万「甘いわ!!轟さん!」グオッ…

 

轟「お…」

 

爆豪「簡単に行かせるかよ半分野郎!!!」ボオッッ!!

 

 

皆ちゃんとタイミングを見計らって飛び上がっていた。八百万さんの場合は手から棒を創造する反動を使ってかっちゃんは爆風を利用して…などなど。

 

芦戸さんは酸で…みたいにそもそも氷を消滅させる方法もあるが…

 

何はともあれ1-Aは()()()全員第一難関突破したぞ。

 

緑谷「……」

 

緑谷(皆頑張れー)ピタァァ…

 

レースが始まって1分と経たない内に早速スピーカーからマイク先生の声が流れてくる。

 

選手達にも中継が聞こえるようにコース全域に付いているんだな。

 

マイク「さぁ!こっからの実況解説はこの俺プレゼント・マイクと1-A担任のカカロットでお送りするぜ!!」

 

 

………突っ込んだら負けだ。

 

悟空「いやぁ…オラこういう……司会すんのとか初めてで緊張すっぞ…」

 

マイク「まぁ固くならずに行ってくれや!お前のバックにゃ元担の相澤がついてるからな!」

 

マイク「最悪モニター越しにアドバイス頼んだらいいぜ!!」

 

なんだろう…実際聞こえなくとも「投げやりにするな」ってツッコミが頭に浮かんでくるんだが…

 

さてさて…A組や他の人達が無事ゲートの氷結を回避し終えた頃…

 

 

轟「クラスの奴等は当然にしろ…意外と残っちまったな」

 

先頭を1人走り去ろうとするがそうは行くまいと言わんばかりに峰田君が走り寄ってくる。

 

峰田「馬鹿め!!裏の裏を読んでやったわ!!!」ダダッ…

 

轟「?」クルッ

 

峰田「喰らえぇぇ!俺の新必殺技っ!」ブヂッ!!

 

丸い髪を千切り掴んで轟君を標的に定めた。大きく振りかぶりその投擲を狙うが…

 

峰田「ビックバンア

 

峰田「ダァァアッ!?」ドガッッ!!!

 

突然横から鉄のような物体と衝突する。…よく見れば腕みたいな形してるな…というかどっかでみた事あるメカメカしさ……

 

あ。

 

轟「…ありゃ…入試ん時の仮想敵か!?」

 

仮想敵「ターゲット…確認!」

 

ご名答。随分前僕がジャン拳で粉砕したあの量産型敵だ。成る程、この程度の障害物ならお茶の子さいさい……

 

 

って思うじゃん。

 

マイク「ほんじゃま障害物その①と行こうじゃねーか!!」

 

 

 

ズシン…!!

 

 

その強靭かつ巨大な足音に皆驚きその音が発生したと思われる前方を確認する。彼らが目にしたのは最早ロボットなんていう可愛げのあるような物などではなかった。

 

ビルなどの高層建築物と同等の高さを誇る巨大な二足歩行の殺戮兵器の群れが立ち並んでいた。

 

だがこれも皆見覚えがあるだろう。ヒーロー科の実技試験を受けた人ならば…

 

麗日「き…聞いてないわ…こんなん」

 

上鳴「改めて見るとでっけー…」

 

 

 

 

マイク「第1関門!その名も【ロボ・インフェルノ】!!!」

 

インフェルノ「ー…!!」

 

そう、入試の0P敵…別称【ドッスン】。

 

しかも今回は一体だけではない。フィールド内に10体近くもそんな化け物がうろちょろしているのだ。なんてこったい

 

「あれ!!試験の時のドッスン!!」

 

「え!?あんなんと戦ってたの!?ヒーロー科!」

 

八百万「どこからこんなお金出てくるのかしら」

 

正確には逃げたんだがな。後自分の所の会場の奴は僕が倒したんだが。

 

今回はそう簡単に逃がしてはくれなさそうだな。

 

 

 

 

……因みに。1体につき総工費2400億円、国の軍事費の約5%を占める代物と知ったのは大分後の話だ。しばらく固まっちゃったよそれを耳にした時は…ははは。

 

……2400億円破り捨てたのかぁ…僕は。

 

 

まぁそんな突っ込みをする暇も与えず攻撃を仕掛けようとするドッスンなのだが…

 

インフェルノ「……」ゴオオッ…

 

「あばばばっ!?腕下ろしてきたぁぁっ!?」

 

 

轟(がっかりだな…折角ならもっとスゲーのを期待してたんだが)

 

轟「クソ親父が見てるんだからよ」ブンッ

 

そう呟いて右腕を振り上げた。

 

その際生じた弱風がインフェルノに当たった途端…

 

 

 

ビキィィッ!!

 

「ああっ……」

 

「嘘……一瞬で……」

 

 

 

たちまちその個体の全身が凍りついた。機能は停止し、腕を振り下ろすポーズのまま静止し続ける。

 

 

轟「いっちょあがり」ダダッ

 

「よっしゃ!デカブツ凍りやがった!」

 

「今の内や!!」ダダダ…

 

轟君に続き隙あらばと仮想敵の下を走り抜けようとする生徒達だったが…

 

轟「あーやめとけ体勢悪い時に凍らせたから…」

 

グラッ…

 

「ん?」

 

 

 

 

轟「崩れるぞ」ズドオオオッッ!!!

 

轟「…って遅かったか」ダダッ…

 

凍った仮想敵がグラグラと体勢を傾き始めそのまま前に倒れ込んでしまう。

 

強大さ故にその衝撃は半端じゃない。スタート地点にいる僕の耳にさえ響いてきたんだから。

 

……え?さっさと走れって?

 

 

 

 

 

倒れたインフェルノの周りに生徒達が集まってくる。どうやら数人程倒れた仮想敵の下敷きになってしまったようだ。

 

「お、おい…大丈夫か?」

 

「んなわきゃないだろ」

 

「え、死んだ?これって死ぬん?」

 

 

 

 

「死ぬかあああああっ!!!」ボコォォオッッ!!

 

2400億円だとかお構い無しに1人の生徒が豪快に装甲を突き破って立ち上がる。

 

予算が…雄英財そのものがぁ…

 

勿論その姿に皆びっくり仰天。

 

「うがぁぁぁっ!?ゾンビィィッッ!!?」

 

切島「誰が死体だ!!」

 

切島「ったく轟の奴…ワザと倒れるタイミングでやりやがったな!!」

 

切島「俺じゃなけりゃ死んでたぞ…」

 

はい。こんな事できるのは精々【硬化】を持っている切島君ぐら…

ボコッッ!!

 

切島「!?」

 

「A組はホント嫌な奴ばっかだな!!ったくよ…」

 

「俺じゃなけりゃ死んでたぞ…」

 

 

 

いじゃなかったね。連鎖して誰かがまた出てきたぞ。でも見覚えないな。

 

マイク「おおーっ!!B組鉄哲も潰されてた!ウケるーー!!」

 

悟空「B組っちゅうと確か…」

 

相澤<もう1つのヒーロー科組ですね。

 

相澤<私自身接触したのは2、3回の事なんで詳しい事は知りませんが。

 

何これチャットか。そういえば初日からB組B組言っといて保留にしたままだったな。

 

この人も紹介しておこう。

 

鉄哲徹鐡……てつ×4ですね。個性【スティール】

 

身体が鋼の様に固くなる。最強の矛にも盾にもなるぞ!

 

まぁなんだ…一言で言うと…

 

切島「個性ダダ被りかよ!畜生!!!」

 

ですね、代弁ありがと。涙目になりながらも先を急ぐ切島君。鉄哲君も彼を走って追いかける。

 

切島「ただでさえ地味なのに!」ダダッ…

 

鉄哲「ちょっ…待ちやがれ!」ダダッ…

 

上鳴「いいよなぁ。あいつら…潰される心配しなくて」

 

嫉妬してる場合じゃないぞ、上鳴君。敵はまだわんさかいる。とは言え轟君レベルでもない限り1人で撃退というのはほぼ不可能に近い。普通なら…

 

「俺達は一先ず協力して道拓くぜ!!」

 

「おう!!」

 

というのが妥当な策だが。

 

爆豪「そう簡単に一抜けさせるかボケぇっ!!」ボボオッ!

 

かっちゃんが爆速【ターボ】を使い一気に敵との距離を詰める。

 

そのまま手を下にし爆発を連続で行いその衝撃を利用し上空に飛び上がる。

 

マイク「1-A爆豪!下が駄目なら上行くか!?クレバー!」

 

「マジかよ!登りやがった!!?」

 

爆豪(すんなり先行かれてたまるかよ!)シュタッ…

 

とうとうドッスンの頭上に到達。一旦着地し再度爆発で移動を繰り返す。無論飛び越えるという選択をする者は1人とは限らない。

 

「おめーこういうの正面突破しそうだけど…意外だわ」

 

「便乗させてもらうぞ」

 

シュタッシュタッ…

 

爆豪「…?」

 

後ろから2人の生徒が同様にドッスンの頭に着地する。

 

瀬呂君と常闇君だ。瀬呂君はテープをロープの様に伝って、常闇君は影を伸ばし黒影(ダークシャドウ)に運んでもらいながら。

 

瀬呂「へへ…」

 

常闇「ご苦労」

 

黒影<アイヨ!

 

 

 

 

【観客席】

 

ここではオールマイトをはじめとする様々な教員が生徒達の雄姿を見守っていた。

 

ポップコーンを頬張りながらも先生達A組の講評を行う。

 

 

 

13号「むぅ…やはり一足先に行くのはA組が多いですね」↑完治した。

 

オールマイト「他の科やB組も悪くはない!だが…」ボリボリ…

 

オールマイト「A組(彼ら)は立ち止まる時間が短い」

 

オールマイト「上の世界を肌で感じた者…」

 

オールマイト「恐怖を植え付けられた者…」

 

オールマイト「対処し凌いだ者…」

 

オールマイト「それぞれが経験を糧とし迷いを打ち消している」

 

スナイプ「それにヒーロー科はあれを一目見た事がある。だいたい()()()()()で闘りゃ叩き潰せるか予測つくだろ」

 

スナイプ「丁度あんな感じだ」

 

そう言ってスナイプは八百万さんの方を指差した。

 

 

 

 

 

【コース内】

 

八百万「くらいなさいっ!!」ドンッ…

 

ドオンッッ!!

 

「すっげ…あのデケーの1発で…」

 

「ってバズーカはズルくね!?」

 

八百万さんは大砲を創り出して一気にカタをつける作戦に出たようだ。

 

見事に一撃で1体インフェルノを粉砕する事に成功する。

 

八百万「チョロいですわ!」

 

お嬢様がチョロいって…今日日聞かないな。

 

 

 

 

【観客席】

 

スナイプ「入試の時は合否のポイントとの兼ね合いもあった。【避けるもの】として見るへきだったが…」

 

スナイプ「【倒すもの】として見りゃただの鈍臭い鉄の塊よ」

 

スナイプ「突ける隙も見えてくらぁ」

 

オールマイト「……だな」ボリボリ…

 

オールマイト(緑谷少年…何故スタート地点から一歩も動かん……)

 

 

 

 

【コース内】

 

マイク「聞いたかオイ!インフェルノチョロいってよ!」

 

マイク「ならこいつはどうよ!!落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!!!」

 

マイク「第2関門【ザ・フォール】!!!」

 

ロボの大群を抜けた先には小さな崖の数々。穴の底が全く見えない。こりゃ怖い。

 

崖と崖には一本ロープが繋がっているだけ。ここを綱渡りしろというモノだ。なんて鬼畜な…

 

 

 

蛙吹「大げさな綱渡りね」<ケロケロ

 

テクテクテク…

 

麗日「……」

 

そんな風に四つん這いで歩いて行けるの…君だけだよ、蛙吹さん。

 

楽々と進んでいく彼女の姿には周りの生徒達も呆然。

 

 

 

なのだが1名だけめっちゃ微笑んでるんですが。

 

「ウフフフフ!来ました!来ましたよアピールチャンス!」

 

「私のサポートアイテムが脚光を浴びる時!!」グオッ…

 

「見よ!全国のサポート会社!!!【ザ・ワイヤーアロウ】&【ホバーソール】!!」ガギィッ!

 

サポート科の女性だと一目見てすぐ分かる。服に色々便利そうな装備が装着されている。

 

胸部の所の機械からワイヤーを伸ばして遠くにある崖の地面に先に搭載されている矢を引っ掛ける。

 

そのままワイヤーを縮ませ、その反動で自分の身体を崖へと引っ張る。

 

「さぁ見て出来るだけデカイ企業!!!」ゴオッ

 

「私のドッ可愛い…」

 

「ベイビーを!!!」シュタッ…

 

脚部に装備しているツールを使って空気を噴射し崖との衝突を避け、尚且つ衝撃を減らした。

 

側面にポフッと着地し、そのまま崖を登っていった。

 

サポート科にとって体育祭は己の発想・開発技術を様々な企業にアピールする場でもある。

 

だから公平を期す為にも彼女等は自分で開発したアイテム・コスチュームに限り持ち込み可なんだ。

 

「フフフフ!バッチリ決まりました!」<フフフフ!

 

笑いすぎだろ。

 

 

 

マイク「さーて!色んな方がチャンスを掴もうと励んでいますが!カカロットさん?」

 

悟空「おう!皆頑張ってんな!」

 

マイク「アバウト過ぎなのも嫌いじゃないぜ俺!!」

 

悟空(なんでこう…メガネとかサングラスかけた奴が司会すんの多いんだろーな)

 

悟空(天下一武道会とかセルゲームもそうだった気が…)

 

マイク「先頭()の方は難なく一抜けしてるぞ!!」

 

悟空「スゲーな。轟トップをキープしてっぞ」

 

悟空「個性もそうだけど戦闘力や判断力も他に比べっと圧倒してら」

 

マイク「そらお前…轟はフレイムヒーロー【エンデヴァー】の息子さんだからな!」

 

悟空「えんでゔぁー?」

 

 

エンデヴァーは以前も触れた通り、事件解決数ではオールマイトを見事に上回っている。オールマイトと同様に国民問わずして世界から絶大な人気を誇る。

 

オールマイトの次に偉大なヒーローと呼べるであろう彼はNo.2として世の人々に称えられている。

 

 

マイク「……っていう感じ」

 

悟空「おお!なんとなくスゲーってのは分かったぞ!」

 

それは分かってないって言うんだが…

 

マイク「さぁ!先頭が一足第2関門突破し、下はダンゴ状態だ!」

 

マイク「上位何名が通過するかは発表しねぇから安心せずに突き進め!!」

 

マイク「早くも轟選手、最終関門突入!!気になる障害物その③とは…?」

 

 

 

轟「…」ダダッ…

 

轟「こりゃ…」

 

轟君が目にしたのはただの平原。特にこれといった障害物は見当たらない。だが目を凝らして見ると所々凸凹がある事に気付く。

 

これは……

 

轟「そういう系統か…!!」

 

マイク「一面地雷原!!【怒りのアフガン】だーーっっ!!」

 

地面の中に幾多の地雷が埋め込まれているそう。恐らく先程行った凸凹を踏んだ瞬間ドカン!なのだろう。確かに親切な設計ではあるが彼方此方に地雷を発見してしまうのでスムーズに走るのは難しい。

 

マイク「因みに!威力は大した事ねぇが音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!」

 

悟空「失禁ってなんだ?」

 

マイク「」

 

何でもいいからフォローしてあげてください。

 

 

特に最初にここに足を踏み入れてしまった轟君は緻密に避けながら進まなければならない。慎重に進んでいくが…

 

轟(こりゃ先頭程不利なコースだな…)

 

轟(エンターテイメントしやがる)

 

爆豪「はっはーー!俺に爆発なんざ…」

 

轟「!?」

 

爆豪「カンケーーねぇぇ!!!」ボオォッ!!

 

そうだ。かっちゃん爆発効かないな。お陰で躊躇なく駆け抜けられる訳だ。加えて爆速【ターボ】…

 

あっという間に1位を通り越す。

 

爆豪「テメェ!宣戦布告する相手間違えてんだろ!!」

 

轟「……」

 

だが黙って先行かせる程彼は甘くない。

 

 

ガシッ

 

爆豪「アア!?」

 

轟「邪魔だ!!」グイッ

 

爆豪「てっめ…!!」ガシッ…

 

すれ違いざまに手を掴んでおり、抜ける前にかっちゃんを引っ張り後ろに寄せた。

 

だが負けじとかっちゃんも抵抗する。

 

 

マイク「ここでトップが変わったぁぁあっ!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だぞ!!」

 

マイク「後続もスパート掛けてきた!!」

 

マイク「とは言うものの、引っ張り合いながらも……」

 

マイク「やはり轟・爆豪がリードかぁ!?」

 

とうとう第1・第2関門の突破者がほぼ出揃ってきた。地雷に気をつけながらも温存していた体力をフルに使い上位との差を縮めていく。

 

皆あれでスロースタートだったのかよ…はは。

 

 

 

 

負けてらんねぇな。

 

 

 

 

 

 

 

ドオオオオンッッッ!!!

 

 

 

 

 

突然巨大な爆発音がスタジアム中に鳴り響く。

 

一体幾つの地雷を爆破させたのかと思う程の音量であった。

 

皆気に留め少し後ろを振り向いて覗いてみると……

 

 

 

轟「!?」

 

爆豪「!?」

 

オールマイト「マジか…!!」

 

マイク「……あれ、君……いつから……」

 

悟空「………」ニッ……

 

 

 

 

 

 

僕がわざと爆発させたんだよ!かっちゃん方式でな!!!

 

 

緑谷「へへっ!」

 

マイク「1-A緑谷出久!!!ここに来てまさかの怒涛の猛追かぁぁぁぁっっ!?」

 

マイク「ってかいつから君走ってた!!?」

 

 

 

 

 

 




相変わらず時間ギリギリで申し訳ございません。

須井化です…はい。

今回少ないかもだけど展開的には丁度いいので決着は次回までのお楽しみ。

かっちゃん伏線〜障害物競走まででした。

時間の都合上飯田っちのカッコ悪い場面は抜かしました。単行本見てとくと目視せよ(適当)!!!

いかがでしたか?

次回は第2次予選開始まで…

つまりだ……………





とうとうあの娘が登場するんすよ…ええ

お楽しみに!!!





何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
3月9日(木)以内に第22話の投稿を予定しております。

お楽しみに!
(大事な事だから2回言った…え?前者の方がビックリマーク多い?………知らんな)







※前回から章区切りしてますが今までのを1つと括ると大雑把すぎるので分けてみました。
第0話がプロローグじゃねぇのとかそういうツッコミは求めてないっス


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第22話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!まず初めに行われる競技は障害物競走!

多種多様なトラップを掻い潜り皆が皆着々とゴールへ近づいていたが…

満を持して緑谷少年が立ち上がる!!

ってあれ!?緑谷少年ってスタート地点で棒立ちしてた筈…え!?

更に向こうへ!PlusUltra!!!


さてと…全国のここの閲覧者の今の心境を前回のあらすじで代弁してもらった所で…

 

時間をええっと…たしかあれは轟君がアフガン入ったか入ってないかくらいの…

 

……まぁそこら辺まで巻き戻してみよう。

 

 

 

 

 

 

障害物競走の展開がヒートアップし、熱く繰り広げられていた一方、観客席ではどよめきが漂ってくる。

 

実はまだスタートしていない選手がいるのだ。ゲート前で突っ立ってる。?誰だって?

 

勿論僕さ!……………

 

 

 

そんな蔑んだ目でこっち見ないでくれ…

 

 

 

「何あいつ…ずっと棒立ち状態だけど」

 

「体育祭やる気ねーのか?早よしろよ!!」

 

緑谷「……」

 

先程から今のようなブーイングが巻き起こってるが正直そんな事はどうでもいい。

 

今重要な点はそこではない。

 

ボソボソと呟きながら情報処理中です。

 

緑谷「大体の人等がザ・フォールの所に来たな…これまでの距離間隔と総距離4kmからするに恐らく障害は後1つ、2つ…そろそろ轟君とかかっちゃん辺りが第2関門突破すると思うんだよね…1番理想的なのは最後の障害物が分かっている段階でそこに足を踏み入れているって事なんだが…早過ぎれば真っ先に引っかかる対象だし遅ければ言うまでもない…」ブツブツ…

 

暫くの間唸っていたが次第に背中を曲げ、腰を下ろし始めた。完全にクラウチングスタートの体勢が整った時、息を1回大きく吸ってから…

 

 

 

 

緑谷「…よし、走るか」

 

 

ダダッッ!!!

 

「おおっ!?速ぇ!?」

 

「今更スタート!?」

 

 

地面を踏込む音を強く響かせながら走り出す。不思議な事にその衝撃はまるで観客席にも伝わるようだったという。

 

ゲートに出来ていた人混みを軽くピョンと飛び越し早速仮想敵エリアに到着する。

 

…なのだが…

 

「待て…あれ見ろ!」

 

「そうだ…先駆者か先に殆ど撃退しちまったから敵が全然残ってねぇ!!」

 

緑谷「っしゃ…」ダダダ…

 

既に残るロボットはインフェルノ1、2体と他の仮想敵4、5体のみ。最もそれらのいずれも破損等で動けない状態だったのが多数な訳だが。

 

親切な事に第2関門へと続く一本道が出来上がっていた。そのまま敵の破片を避けつつコースを駆け抜ける。

 

緑谷(一々相手するのは面倒だったからな)

 

緑谷(障害無しで気楽に走れる!)ダダッ…

 

という感じで1分足らずで第2関門突入。崖を渡らなければならないので綱渡り必須……

 

だけど時間ロスが大きくなるなそりゃ。

 

緑谷「はっ!!」ダダンッ

 

思い切り高く跳躍し、崖と崖を行き来する。偶に思いの外大きく飛びすぎて2、3先の崖に着地する事もあるが。

 

あれ…意外と仮想敵のトコより時間かからんかったか?ジャンプを7回程繰り返した頃にはもうアフガンが視界の中に入っていた。

 

緑谷「…確か次は地雷んとこ!」シュタッ

 

緑谷「あれが最後か…」ダダッ…

 

無事第2関門も完走し、残る障害は怒りのアフガンのみ。ラストスパートという事もあって激しい混戦状態にあった。

 

特に先頭。かっちゃんと轟君が互いを押しのけて激しい順位変動が展開されていた。丁度ここの半分過ぎた辺りのトコか…

 

さぁどう抜けようか……

 

緑谷「予選なんかで界王拳なんてリスク付きの大技出す訳にゃいかない…そこら辺も考慮して今1番成功率が高いと思われる打開策は…」

 

一旦立ち止まって再び作戦を練り始めた矢先かっちゃんの走姿が僕の目に入った。

 

緑谷「…爆発…ターボ…!」

 

緑谷(威力は弱め!だけどアレと組み合わせれば或いは…!!)

 

そう思いながら周りを見渡し地雷のある場所を確認する。丁度3m先に大きめの凸凹を発見。

 

緑谷(あたかも踏まないでくださいと言わんばかりの分かりやす過ぎる構造!)

 

緑谷(もしかすると…)ダダッ

 

即座にそこの地面に向かっていき、地面を掘り始める。対人用の地雷のなんてせいぜい深くしても14〜15cm程度。これならすぐ掘り返せる。

 

ザクザク…

 

緑谷「…!!」

 

中から出て来たのは大量の地雷。やった!予想通り!

 

直後にすぐ両手を腰に添えかめはめ波の体勢に入る。

 

緑谷(…軽めの気功波を地面に発射して……」

 

緑谷(そんでもって爆風に乗せる!!!)ギュルル…

 

緑谷(名付けて…)

 

 

 

 

 

 

 

緑谷(超爆速ターボ!!!)ボオッ!

 

ドオオオオオンッッッ!!!

 

気功波が地雷と衝突した瞬間巨大な爆発音が鳴り響く。あの…うん。この音からして普通に強いですよね!?威力!

 

その衝撃+かめはめ波の反動で一気に差を縮める!!

 

 

 

轟「!?」

 

爆豪「!?」

 

オールマイト「マジか…!!」

 

マイク「……あれ、君……いつから……」

 

悟空「………」ニッ……

 

 

 

 

 

こんな風に今に至る感じですぅぅぅっ!?

 

マイク「1-A緑谷出久!!!ここに来てまさかの怒涛の猛追かぁぁぁぁっっ!?」

 

マイク「つーか……ん?」

 

緑谷(速速速っ速ぁぁあああっ!?)ゴオオッ

 

ジェットコースターかの如く加速していってますよ!?これ!!そりゃまぁ計算じゃなくて憶測とか勘で切り抜けようとは思ったけどさぁ!!

 

だが飛距離は申し分ない!!このまま…

 

 

 

 

爆豪 轟「「!?」」ゴォウッ!!

 

緑谷「ひぃぃっ!?」

 

マイク「ぬっ…抜いたぁぁぁあああっ!?」

 

マイク「一気に戦況がひっくり返った!!現在1位は轟でも爆豪でも無い!!」

 

マイク「緑谷!!!」

 

身体が2人の数cm真上を通過し、やっとこさ1位に返り咲く。だがまだ窮地は続く。あれだ…うん、もう地面と衝突しそう。

 

 

着地とか考えてなかったよ。咄嗟に考えた策だったから降下時間とか考慮してないんだってばぁ!?

 

緑谷(どうするどうするどうする!?)

 

今から飛べて…10〜20mが限度!後ろは今越えたばっか…体勢を立て直す時間も合わせるとかなりのタイムロス!加えてすぐ後ろに居んのが…

 

 

爆豪「デクぁああっ!!」ボオオッッ!!

 

緑谷「いっ…」

 

爆豪「俺の前を行くなぁあっ!!!」

 

爆速ターボで激走してくるヤツ(かっちゃん)と…

 

 

パキパキ…

 

轟(後続に道作っちまうが…)

 

轟(気にしてる暇ねぇ!!!)

 

ダダダッ…

 

地面凍らせて滑走してくるヤツ(轟君)が急接近してくる。

 

そもそもこの速さでは落ちてくる前に追いつかれてしまうのでは…?それに凍らされたからもう地雷は利用できない!!

 

 

 

オールマイト「緑谷少年…!」

 

マイク「元・先頭の2人は足の引っ張り合いをやめ、緑谷を襲う!!」

 

マイク「共通の敵が現れれば人は争いを止める!!」

 

相澤<争いは止まってないがな。

 

悟空「……」

 

 

 

 

 

緑谷「っ…が!!」グオッ

 

軌道を修正しようと身体を傾けるが前のめりになってしまいクルッと一回転する。

 

爆豪「がぁあっ!!!」ボオオッッ!

 

轟「…っ!!」ダダッ…

 

気が付けば3人一直線に並んでしまっていた。やばい!着地する頃にはまた90°回転して地面と仲良く顔面直撃…

 

最低でもこの2人は越せない!!

 

 

緑谷「……」ヒュゥゥ…

 

 

 

 

 

緑谷(駄目だ!行かせるか!!)ギュルル…

 

爆豪「あ!?」

 

緑谷(2人の前に出られた一瞬のチャンス!!)

 

轟「っ…!?」

 

緑谷(追い越し無理なら…………)

 

聞き覚えのある効果音と突如下から発生した光に気が付き、顔を下に向けた。

 

その瞬間…

 

 

 

 

緑谷「抜かせるかあああっ!!!」ボオオオッッ!!!

 

爆豪「っ!?」ゴオオッ!!

 

轟「……!」ズズ…

 

 

 

誰が()()()()()気功波は撃てないと言った?

 

 

着地する手前膝を曲げ両足首を合わせかめはめ波のような姿勢を取った。そして真下に発射する!

 

これなら背後の選手も妨害する事ができる且つ再び距離を置ける!!

 

これがベスト!!よっしゃ…もうゲートは目と鼻の先!

 

 

かめはめ波の衝撃に耐えきれず思わず2人は後退してしまう。すぐに前を振り向き再び走り出すが……?

 

 

 

 

 

あまりにも激しい場面展開で会場が混沌と化してしまう。

 

さっきまでノリノリで実況していたマイク先生も冷や汗をかきながら画面越しに相澤先生に問いかける。

 

マイク「な、なぁ…なんか障害が全く仕事なさってくださらないんですが…」

 

マイク「お前どういう教育してんの?イレイザーヘッド」

 

相澤<何もしてねぇ、奴らが勝手に火ぃ付けあってんだろ。後今俺担任じゃない。

 

マイク「………お、おう」

 

あまりにも冷静に的を射ている正論(コメント)に最早ツッコミする気も失せた。

 

気を取り直しゲート前の状況の中継を行い始める。

 

 

マイク「さぁ…序盤の展開から誰が予想できた!?」

 

マイク「今1番にスタジアムに還ってきたその男…」

 

 

 

 

 

キキーッ!

 

鋭く激しい摩擦音が生じる。

 

今両足でブレーキ掛け、一足先に戻ったのは…

 

 

 

 

 

緑谷「はぁ…はぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

マイク「緑谷出久の存在をっっ!!!!!」

 

 

ワァァァア!!!

 

緑谷「っ…ひゅー!」

 

 

 

僕でした。結構フルスピードで駆け回ってたからめっさ息切れしてしまった…

 

前半ただゲート前で他の者を傍観していた生徒が1番早くに戻ってきた…誰もがその事実に驚愕し、そして壮大な拍手と大歓声で出迎える。

 

何処だ何処だと悟空を探そうとキョロキョロと会場を見回した所司会席に目が止まった。

 

 

 

 

そこには僕に向かってサムズアップしている悟空さんの姿が…!

 

悟空「ナイスー!」

 

マイク「??」

 

 

緑谷「……」ゴシゴシ…

 

緑谷「っい!!」グッ

 

僕も親指を立てそのサインに返事する。いかんいかん。涙ぐんでしまった…!!慌てて目を擦って波を拭き取った。

 

到着してから間も無く続々と後続がゴールしてくる。おおよそA組は50位以内には皆入っているから大丈夫そうだ。

 

麗日「ぜぇ…はぁ…」

 

麗日「やっぱし…デク君スゴイ…いつの間にか抜かれてた!」

 

そんな独り言をしていると深刻そうな顔になりながら飯田君が話しかけてきた。

 

飯田「……なぁ麗日君」

 

麗日「?…どしたの」

 

飯田「彼は…緑谷君は……」

 

 

 

 

飯田「()()()()()()()()()()()()()()

 

麗日「い、いつって…私も()()()()()抜かされてたから何とも…」

 

麗日「……あれ…というか…」

 

麗日「ゲート前にも見かけてなかったけど……あれ?あれ?」

 

麗日「……いつから障害物競走参加していたん…?」

 

 

 

これだけ見るとただただ僕の影が薄かっただけという印象に捉えられてしまうが…

 

よく考えてほしい。他の課やB組が気付かないのは無理ないが…

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()僕を警戒しない者はいるのだろうか?確実に皆僕がいるかどうか目を凝らして一回確認する筈なんだ。

 

だがどうだ。前回、果たして僕が登場するまで僕の存在に触れていた者はいるのだろうか?

 

 

 

いないじゃん。

 

 

 

 

悟空(……)

 

悟空(あいつ…気を消しやがったな)

 

悟空(始まって走らねぇ時はどうしたかと思ったけどよ…)

 

悟空(あいつの気が感じられねぇと分かってからはすぐ合点がいったぞ)

 

悟空(先走っても最前列にいちゃトラップに必ず引っかかちまう。だからある程度状況把握してから出発したんだな?)

 

悟空(おまけに気を探って誰が今何処にいるかも一瞬で分かる。好きなタイミングで走れっからな)

 

悟空(あのかめはめ波の応用は初めの頃の体力テストで実践済み…)

 

 

緑谷『か…め…は…め…』ギュルル…

 

爆豪『なっ…テ』

 

緑谷『波ぁあああっっ!!!』ボボオオッ

 

 

悟空(気を消す技術はこないだオラが稽古した時の失敗をちゃんと克服してら)

 

 

悟空『よっと』スカッ

 

ガッ

 

緑谷『っ…』

 

 

 

 

悟空(オラが教えた覚えはねぇのによ…)

 

悟空(先週、あいつがギクシャクしてて心配したけど…なんだ)

 

悟空「やりゃできんじゃねぇか…はは」

 

マイク「いきなりどした?カカロット」

 

悟空「え…いや!なんでもねぇ…」

 

悟空(……)

 

悟空(…後で()()()に礼言わねぇとなぁ…)

 

 

 

といった按配だ。これで前回走らなかった理由が分かったろ?

 

彼の考察通り、僕はただ出るタイミングを見計らっていただけだ。何もボーッと突っ立ってた訳じゃない。

 

…とはいえだ。

 

これの方が効率がいいと高を括ってはいたものの…正直馬鹿馬鹿しい博打を賭けているとは自覚していた。

 

もしこれで先頭程有利な障害物ならば1位どころか合格圏内に入らない可能性だってあった。

 

だからと言って先頭を走っていても先程述べた通り未知なるトラップ&後続からの妨害が立ちはだかる。そう、まるでマリオ○ートのような修羅場だ。

 

…まぁ、結果的には成功したのでとりあえず良しとするか。

 

 

そう結論を下し一気に肩の力を落とす…

 

ズコッ

 

緑谷「痛!?」ガン!

 

とか思ったら動作が激しかったもんだから尻もちついちまった!逆に力んじまったじゃねえか!くそ!

 

緑谷「ってて…」グッ

 

スッ…

 

緑谷「ん?」

 

ひとまず立ちはだかろうと腰に力を入れようとした時…僕の目の前に誰かが手を差し伸ばしてきた。

 

 

 

 

 

八百万「…っと…大丈夫です…の?」

 

緑谷「あ、ああ…」ガシッ

 

 

八百万さんだ。ズッコケてしまった僕の手を掴み引っ張ってくれた。やはり病院の時同様、緊張しているのか何かもぞもぞと喋っていた。

 

まぁ…なんだ。可愛いけど。

 

緑谷「八百万さんは…どうだった?」

 

八百万「私は…多分8、9位辺りで1桁台ではあるかと」

 

緑谷「そっか!良かったね」

 

八百万「え、ええ…」

 

会話を続けようとするとマイク先生から諸連絡のアナウンスが入る。

 

マイク「これから順位結果を集計し始める!10分後発表だからそれまで自由に休憩してくれYo!」

 

マイク「その後すぐ本選開始だー!リスナー達も始まる前に便所走っとけ!」

 

緑谷「べん……兎に角戻ろっか、控え室」

 

八百万「そうですわね」

 

 

緑谷「あの…それと……お尻にくっついてるのは…?」

 

峰田「なんだその下品な胸は…偽乳か何かか?」

 

八百万「」

 

 

 

蛙吹<カエルがなんですって?

峰田<ギャース!それ違う!それタイチョーのほう!

緑谷 八百万<<……

 

 

※峰田君は無事蛙吹さんに捕縛されました。

 

 

 

 

 

 

 

…とまぁ色々ありはしたが無事に第1種目終了。

 

再びスタジアム中央のステージに集合し、モニターにて結果発表。

 

A組は無事全員予選通過だ。…?他の順位?原作を………っと暗黙の了解で。

 

ミッドナイト「……という訳で本選進出したのは以上42名!!」

 

ミッドナイト「落ちちゃった人も安心なさい!まだ見せ場は用意されてるわ!」

 

ミッドナイト「さぁ…本選の開幕よ!」

 

ミッドナイト「ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバりなさい!」

 

ミッドナイト「さーて!第2種目よ!私はもう知ってるんだけどねー」ドゥルルル…

 

来た…2種目目の競技!またモニターに競技名が映し出されるのか…

 

緑谷(頼む…出来れば個人のにしてくれ…!)

 

緑谷(現状団体戦にされちゃ皆と組めるような状況じゃな

ミッドナイト「騎馬戦(コレ)!!!」

 

 

 

緑谷「……………」

 

デスヨネェェ…

 

そんな1人無双してりゃ優勝できるような訳ないとは腹括っていたけどさ…

 

騎馬戦て……こりゃ…

 

ミッドナイト「この42人の内から2〜4人のチームを作って貰うわ!」

 

ミッドナイト「基本のルールは普通の騎馬戦と考えてもらっていいのだけれど…」

 

ミッドナイト「特異的な点が2つ程存在するわ…まず」

 

ミッドナイト「①予選の順位によってそれ相応のPが振り分けられる」

 

ミッドナイト「さっきの障害物競走の結果に準じてそれぞれ初期所持P(ポイント)が割り当てられるわ」

 

ミッドナイト「そんでもってチームを組んだ所には人数分の合計したP分のハチマキプレゼント!」

 

ミッドナイト「それを首から上につけて制限時間15分間奪い合ってもらうわ」

 

砂藤「それで最終的な持ち点で次の進出の有無を決めると」

 

砂藤「入試みてぇなP形式か。分かりやすいぜ」

 

ミッドナイト「そして次に重要な所は」

 

ミッドナイト「②ハチマキが全て取られるor騎馬が崩れるとなってもアウトにならないって事!」

 

ミッドナイト「つまりは余程の反則が無い限り10以上の全組がフィールド内に存在する訳」

 

ミッドナイト「だからハチマキが多ければ多い程管理が大変になるわよ!気をつけて!」

 

青山「シンド☆」

 

芦戸「一旦取られて身軽になるってのもアリかもね!」

 

蛙吹「それに関しては全体のPの分かれ方見ないと判断しかねないわね…三奈ちゃん」

 

皆が所々補足入れてくれるのはありがたいけどさ…

 

 

ミッドナイト「あんたら、今私お話中なんですけどよく喋るねぇ…!?」グイィィ…!

 

「」

 

 

 

鞭引っ張りながらキレているんで一旦黙ろう。

 

って言う前に静止してるわな、うん。

 

 

ミッドナイト「個性発動ありの【残虐ファイト】よ!」

 

ミッドナイト「でもあくまで騎馬戦!悪質な崩し目的での攻撃はレッドカード!一発退場とします!」

 

ミッドナイト「質問ある人いる?」

 

切島「ちょっとイイすか?」

 

ミッドナイト「何かしら」

 

切島「Pの付け方とかってどうなってるんスか?」

 

ミッドナイト「ああ…ごめんなさい。言い忘れてたわね」

 

ミッドナイト「Pは()()順位が1つ高くなるにつれ5P追加としているわ」

 

ミッドナイト「42位が5、41位が10Pって感じに」

 

成る程成る程、5Pずつ増えていくのか。その場合だと僕はどうなるんだ?42×5=210…?多いなぁ。210Pも…

 

そんな呑気に計算していると更に彼女から思わぬ発言が……

 

 

 

ミッドナイト「上を行く者には更なる受難を」

 

ミッドナイト「雄英に在籍する以上何度も聞かされるよ」

 

ミッドナイト「これぞPlus Ultra(更に向こうへ)!」

 

緑谷「…………?」

 

上に行く者?何の事言ってるんだ?もしかして僕の事指してる?1位だから…え?そういえばさっき()()()とか言ってたなオイ!ま、まさかさ、最初の持ち点無しとか言わないよな!?やめてくれよ!?タダでさえ今絶体絶命

ミッドナイト「予選通過1位緑谷君!!!」

 

 

ミッドナイト「持ちP1()0()0()0()()!!!!!」

 

 

 

 

クルッ…

 

「………」

 

緑谷「………は?」

 

緑谷(せ……ん…まん?)

 

 

 

 

 

その言葉が聞こえた瞬間41人の生徒はこちらに一斉に視線を向ける。大量の人間の視線が集中するというのは初経験の事では無い。

 

寧ろ慣れっこの方だ。

 

 

 

 

 

『テメェが何をやれるんだ!?』

 

 

 

 

皆そう嘲笑いながら僕の方を見つめていた。今となっては懐かしい程度の昔の悪夢のようなモノだった。

 

 

 

あの時とは全く違う周りの目…

 

あくまで刹那的に立ったトップの座。

 

 

 

その筈だ。たったそれだけなのになんだ!何なんだ!?この胸騒ぎは!?

 

心臓がドクンドクンと激しく鼓動する。滅茶苦茶苦しいぞコレ…

 

 

 

 

緑谷(No.1とはこれ程重いのか…!?)

 

緑谷(オールマイト……!!!)ドクンッ

 

 

 

 

 

オールマイト(この体育祭は【人を助ける】というヒーローの主義と相反する【他を蹴落として】競う場だ)

 

オールマイト(現代商売等の面が大きく関わるこのヒーロー社会にとって【他人より上】という貪欲さは)

 

オールマイト(君だからこその注目すべき点だが同時に君故の欠点とも言えよう。緑谷少年)

 

オールマイト「これからが見所だな」

 

 

 

 

 

 

ルール説明後すぐに15分間のチーム編成時間。長いなぁ…いや正直…

 

緑谷(この状況で僕誰と組めます?)

 

という一言に尽きると思うんだ。

 

まず普通考えるのが同じ組で組もうという事だと思うんだ。だって他の組の個性なんて把握してないもん。意思疎通を図れるって点でもそっちの方がやりやすい。

 

だけど生憎今僕はクラスメイトと絶賛絶交中なのだ。話しかける事もままならない状況。加えて誤魔化しで通してるから個性についての不確定要素が多すぎる。

 

USJのゴタゴタが無かったにせよ元々の信用性を考えれば避けられるのは必至と言えよう。

 

なら他組と組めばいいじゃないとなるがこれは言うまでもない。無理。個性を互いに把握してない上にほぼ初対面に近い形だ。信用もクソもない。

 

負ければそのチーム全員が失格だ。チーム編成も慎重に決めなければならない。

 

更に追い討ちをかけるかのように強大な1000万P。他の生徒にとっちゃ千載一遇の逆転チャンスだろうが皆にターゲット対象にされるとなると15分間約40人の猛者からハチマキを死守しなければならない。

 

どう考えても保持し続けるより終盤で稼ぐ方が戦法として理に適っているからな。

 

 

 

 

ここから導き出される答えは

 

こんなリスクありまくりな奴のチームになれる訳ありません。

 

って事だ。

 

実際3分間歩きまくってるがだーれも近づいてくれない。

 

緑谷「あ、おっ尾白君…僕…」

 

尾白「」スタスタスタスタ…

 

緑谷「あ…うん……ごめん」

 

 

むしろ離れていくんですが。

 

緑谷(どうしよ…このままじゃ作戦立てる間も無くスタートしちゃう!)

 

緑谷(誰でもいいから僕と一緒に騎馬……!)スタスタ…

 

 

緑谷「!?」

 

麗日「〜」

 

飯田「…〜」

 

 

…とそんなこんなで彷徨っていると数m先に麗日さんと飯田君発見!何か誰かと喋ってるな。

 

ダメ元で頼みに行くしかない!!2人に駆け寄って交渉をしてみようと試みる。

 

 

ダダダ…

 

緑谷「麗日さん!飯田君!!」

 

飯田「…緑谷君?」

 

麗日「デク…君……」

 

緑谷「騎馬…僕と組んでくれないかな…」

 

緑谷「出来れば意思疎通がスムーズに出来る人と組みたいんだ。現状それに最適なのはまず君達2人だ!」

 

緑谷「ちゃんと策も考えたんだよ」

 

緑谷「飯田君を先頭に僕と麗日さんで馬を作る!」

 

緑谷「事前に僕と飯田君を麗日さんの個性で軽くすれば機動性は抜群だ!」

 

緑谷「騎手は……まだ決めかねてるけどフィジカルいい人」

 

緑谷「これ位しか今の所逃げ切りを可能とする方法は…」

 

飯田「……」

 

麗日「……ぅ……っ…」

 

 

2人は暫く黙り込むと顔を下に背けた。

 

この時点でどういう結果になるかは大体察せてはいたが敢えて何も反応せずにただだだ答えを待ち続けた。

 

 

まず話し始めたのは飯田君。

 

 

 

飯田「………成る程。流石だ、緑谷君」

 

飯田「だがすまない」

 

 

 

 

飯田「断る」

 

 

緑谷「………」

 

麗日「飯田君……」

 

飯田「少し…訂正しておくぞ」

 

飯田「僕は君を見限っちゃいないからな」

 

飯田「()()()だ」

 

緑谷「?」

 

飯田「君は強者だ。確かに君についていくのが得策には変わりないが…」

 

飯田「いつまでもそう縋っていては僕はただの未熟者だ」

 

飯田「僕は……俺は君に挑戦する!!」

 

そう言って後ろに振り返って歩き出した。彼の脇をチラッと覗いてみるとその先に居たのは上鳴君と轟君。

 

 

 

 

なんだ。

 

 

丁度4人いるじゃん。

 

 

 

 

今度はボソボソっと麗日さんが喋り始めた。

 

麗日「…ッ…デク…君……さ」

 

麗日「ウチ…皆待ってる…」

 

麗日「だからその………」

 

麗日「ほんっと……ゴメン……!」

 

ダダダ…

 

緑谷「……」

 

それだけ言うと彼女は飯田君と同様に走り去っていく。

 

 

……だから…だからなんで謝るんだよ…皆。

 

 

緑谷「……はぁ」

 

大きくため息をつきながら再び歩き始める。周りを見てみればチームが出来ている所がチラホラ…早いなぁ。

 

 

 

 

相澤先生も言っていた。

 

【友達ごっこじゃいられない】

 

僕は今1位。周りは全員敵なんだ

 

そんな事は分かり切っていた……つもりだよ。

 

 

 

じゃあどうしろってんだよ…

 

 

 

 

 

次第に残り時間が少なくなっていき後が無くなっていく。最早考える気すら失せて呆然と途方に暮れるのが精一杯だった。

 

もう組めなかった人同士でも…というか誰でもいいや。どうせ他の人となった所で…………

 

 

 

 

 

 

ポンポン…

 

っとと…いつの間にかネガティブスイッチがONになっていたようだ。後ろから突然肩を叩かれたもんだからハッと我に返った。

 

一体誰だろ…まず気は感じた事ないからきっとA組以外の生徒だって事は分かるけど……

 

恐る恐る後ろを振り向いてみると……………

 

 

 

 

ん?……

 

 

 

ん?…………

 

 

 

 

 

 

 

「よっ…1位クン」

 

「私と組まない?」

 

緑谷「…………」

 

 

 

 

気は…感じた事が無かった。

 

だがその声と姿はハッキリと脳裏に刻まれていた。

 

 

『はい。今度は離すんじゃないぞ?風船』

 

女の子『うん!』

 

緑谷『………』

 

 

 

オレンジ色の髪の毛…キラキラと輝いた眼…とても優しい眼差しであった。

 

 

 

 

 

緑谷「君……は?」

 

「あ、私?私はな…」

 

 

 

 

 

拳藤「拳藤、拳藤一佳ってんだ」

 

拳藤「よろしくな?」

 

 

緑谷「……」

 

 

 

 

 

これを境に僕等の運命の歯車が狂い始めた……と思う。

 

その果てに待っているのは幸せな結末なのか、はたまた最悪の未来なのか……

 

 

 

まぁ…大分後に語られる事なんだけどね

 




見事に締め切りをオーバーしてしまった須井化です…はい。

ここ最近多忙の身でして(言い訳)。

とりあえずさぁ……


流石に今日の朝から書こうとしても間に合わないと思うんだ。

気力は十分あるんですがやはり時間が上手く取れなくてですねトホホ…

まぁその分次回はお詫びも兼ねて少し早めに投稿しようかなと思っております。

出来ればいいなぁ……





とまぁ前振りはこの程度にしておいて…

キマシタワー!!!

拳藤ちゃんキマシタワー!!

今か今かと待ち望んでいた方大変お待たせしました!

やって来ましたよ!俺の嫁(本気)

これから色々と活躍させるつもりなのでお楽しみに!

ええっと…後あ、緑谷君予選通過おめです。以上。


いかがでしたか?



次回は騎馬戦突入…終わりまでは無理だわ。

果たしてデク騎馬はどんなメンバーが揃うんでしょうねぇ。

乞うご期待ー!



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
3月12日(日)以内に第23話の投稿を予定しております。

お楽しみにー

<よし今日は半分書こ…オールマイトならぬオールnightじゃー








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第23話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!まず初めに行われた競技は障害物競走!

機転を活かした戦法で見事ぶっちぎりの1位で予選通過の緑谷少年だったが…

第2種目の騎馬戦で1000万Pという破格の持ち点が彼に課せられてしまう!

窮地に立たされたと思いきや謎の少女、拳藤一佳が現れて…?

更に向こうへ!PlusUltra!!!


聞き覚えのある声…左肩まで垂れ下がったサイドテール。

 

気は分からずともどことなく妙に懐かしい感覚を覚えた。

 

 

 

間違いない。この娘は1年前…風船の時の。

 

緑谷「あっと………」

 

拳藤「……?」

 

一瞬喋りかけたがすぐに口を閉じ俯きっぱなしとなってしまう。

 

待て待て待て。これはつまりどういう事なんだ…なんであの娘がここにいるの?え?彼女もヒーロー志望だったの?

 

 

拳藤「どした?黙りして」

 

首を傾げながら僕に問いかける。

 

聞きたいのはこっちでございます、拳藤さん。パッと見僕を覚えていないような接し方だが…

 

いや…そういうのは今は関係無しにせよこの娘の目的が分からない。何故同じ組でもない僕と組もうとしているんだ?必然的に僕の騎馬は四六時中狙われるんだぞ?

 

全くもってして彼女にとってのメリットを感じられない。

 

 

緑谷「ええっと…僕…今1000万所持してるが故に高確率で襲われると思うけど…」

 

緑谷「いいの?」

 

拳藤「いい!」

 

拳藤「逆に放ってたら勝ち逃げされそーだし」

 

拳藤「それにしてもあんた滅茶強いねー。ビビッタ!」

 

……はい?

 

この人は僕がこの種目勝てるっていう見込みで来ているのか?ロクに個性把握できなかったのに!?今トップってだけで!?

 

緑谷「…あの…それって過信してるんじゃ…」

 

拳藤「するさ。何より…」

 

 

 

拳藤「強い人と組むに越した事ないじゃん?」ニッ

 

優しく微笑みながら彼女は僕にそう言った。

 

まずい!眩しい!太陽かの如くまばゆく光るその笑顔に謎の罪悪感を感じる!!

 

緑谷「っ!!」キュン…

 

口を窄めてムッと軽く顔面崩壊が起こってしまった。あーうんそうか…この娘ピュアだ。

 

あまりにも綺麗なガラスの(ハート)に僕の理性が彼女の直視を許さなかった。

 

拳藤「えっと……顔大変な事になってるよ」

 

緑谷「っとと…不意に感動してしまった……!」

 

拳藤「カンドー……」

 

緑谷「君がそう言ってくれるのなら大歓迎!というか寧ろ土下座モンだ!」

 

緑谷「是非僕と組んでくれ!」

 

拳藤「OKOK…任された!」

 

やった…ようやく1人確保!しかもまさかこんな形でこの娘と再会を果たすとは…

 

人生何起こるか分かんないね。

 

そういえば肝心な事を聞き忘れていたな。

 

緑谷「僕はA組緑谷出久…個性はあれ、ビーム出す」<カメハメハー

 

緑谷「君の個性は?」

 

拳藤「私は【大拳】だ」

 

拳藤「手を自由自在に大きくできる……つっても限度あるけどね」

 

緑谷「手のサイズね………」

 

どうやら前回の時のように巨大化を可能とする所は手部のみと限られているみたいだ。騎手にせよ何にせよこれを発動しても視界が狭まるだけ…か。

 

緑谷(どうにかして利用できないか………)

 

少し考え込むが、程なくしてその個性の応用策を閃いた。

 

緑谷(………待てよ。手が大きいのならばつまり………!)

 

緑谷(という事は()()()が必須だな…何とかして捕まえよう…)

 

拳藤「ん?何案じてんの?」

 

そりゃ内容バレないように言っているんですから答えられる訳ないじゃないですか、拳藤さん。

 

緑谷「いや……少し君の個性を利用して策を考えてたんだけどさ、組んでほしい人が出て来たんだよ。1人」

 

緑谷「探しに行かないとなーって」

 

拳藤「お…私も手伝う手伝う」

 

人物特定されているなら5秒で見つけられるなんて言える訳無いです。すぐに2人でその例の1人の元へと急ぐ。

 

早歩きしながらふと残りの1人を誰にするかを惟ていた。正直この子が来てくれた事自体奇跡的なんだよなぁ…この流れに乗って4人組めればいいけど。今の状況で僕とやってくれる人なんてい……

 

 

 

八百万「…あ…」

 

緑谷「あ…」ピタッ…

 

拳藤「おー」ピタッ…

 

…居たかも。

 

歩いている途中に八百万さんと遭遇。彼女もこちらに気づいたようで僕等の方に顔を向けていた。今日は悪運が強いというか何というか……

 

八百万さんは確か【創造】の個性だった筈…。半数以上の個性が不明という点を考慮すれば汎用性高いぞ!?

 

とはいえ…勿論パーティ候補に入れてはいたものの、今言った様な強み故にすぐに誰かのチームに入ってしまうだろう、というのと彼女だからこそ僕のチームに入った時の利害を1番に考えるだろうという憶測から半ば諦めてはいたんだが。

 

悟空さんの初授業の時もいつも通り僕と接してくれた。まだ決まってないのならば今の内に…

 

八百万「あの…緑谷さん」

 

緑谷「はっはい!?」ビクッ

 

突然彼女から話しかけられたので少々動揺しながらも返事をする。

 

え?これはもしや…もしや?

 

八百万「貴方は…その……もう組む方を全員決めてしまった…のかしら?」

 

緑谷「あー…うん。1人だけだけど…えー…?」

 

拳藤「言うの忘れてたな、あたしB組B組」

 

緑谷「こちらB組の拳藤さん」

 

緑谷「それで今後2人探してるんだけどさ…」

 

それを聞くと八百万さんは数秒逡巡するも、はにかみを見せながら僕にこう言い放った。

 

八百万「……っ……と……」カァァ…

 

 

 

 

八百万「で…出来れば私を貴方のチームに入れてくださりませんか?」

 

緑谷「………あ」

 

緑谷「い、いいよ!僕も丁度君と組みたいと思ってたんだ!」

 

緑谷「頼むよ」

 

八百万「よ、よろしいですのね!感謝しますわ…」ニコッ

 

緑谷「う……う…ん…?」

 

意外すぎる発言に暫く言葉を失った…まさか彼女から申し出てくるとは思いもよらなかったぞ。まさか八百万さんも単純に僕が1位だったから?いやいや…んなアホな……

 

後笑顔はやめてくれって。色々と反応に困るからさ……褒め言葉的な意味で。

 

緑谷(八百万さんが来てくれた!これはかなりデカイ。色々と()()()()があったからな)

 

緑谷(後は……彼次第…何とか頼んでみるか)

 

 

 

 

 

 

 

八百万(…………ところで)

 

拳藤「んー?」

 

八百万(あの後ろの方は何故緑谷さんと一緒にいるのでしょう)ニコニコ…

 

何だろう。あの笑顔から段々殺意が感じてくるんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃他の皆はというと……

 

爆豪「…………???」

 

 

砂藤「俺と組め!」

 

芦戸「えー爆豪私と組も!?」

 

青山「僕でしょ?ねぇ?」

 

 

かっちゃんの周りが異様に騒がしいんですが。

 

A組を中心に大きな人だかりがそこには出来ていた。我こそはと言わんばかりに皆かっちゃんを仲間に入れようと奮闘している。

 

……まぁ…

 

爆豪「………」

 

爆豪「テメェらの個性なんだ?俺ァ知らねぇ」

 

芦戸「ゑゑゑゑゑっ!?」

 

砂藤「B組ならまだしも!!お前ホント周り見てねーんだな!!」

 

まるでモブの様な扱い。僕とか轟君以外は眼中に無いってか…というか僕も入れないでください。

 

大した捻くれ様だがこれでも予選では3位・200P。見た目とは裏腹のトリッキーさと万能な個性を考慮すれば人気が高いのも頷ける。

 

手の付けようもなく全員茫然となってしまうが…また1人、かっちゃんへ駆け寄る生徒が現れた。

 

 

切島君だ。

 

切島「おーい!爆豪!俺と組もう!!」ダダッ…

 

切島「轟の奴ソッコーチーム決めやがった!」

 

爆豪「クソ髪か」

 

切島「切島!!いい加減覚えろや!!」

 

切島「つーかおめーの頭とあんまし変わらねぇよ!」

 

一理あります。

 

切島「おめぇどうせ騎手しかやらねぇだろ!ならお前の爆発に耐えられる前騎馬は誰だ!?」

 

爆豪「…………根性ある奴」

 

無理あります。

 

切島「違うけどそう!!硬化の俺さ!」

 

切島「ぜっってぇぇぇブレねぇ馬だ!保証するぜ」

 

切島「奪るんだろ!?緑谷(1000万)!!!」

 

 

 

その言葉を聞くなり、かっちゃんは微笑を浮かばせながら静かに頷く。

 

爆豪「………」

 

ニィィ…

 

切島「……決まりだな」

 

あ、これは殺る気スイッチ入りましたわ。

 

 

 

一方先程見かけた轟君チームはというと…

 

 

轟「お前らを選んだのはこれが最も安定した布陣だと思うからだ」

 

轟「上鳴は左翼で発電し近づけるな」

 

轟「麗日は右翼…防御・移動の補助」

 

轟「飯田は先頭で機動力源もといフィジカルを生かした防御」

 

飯田「それで轟君は氷と熱で攻撃・けん制というわけか」

 

轟「いや…」クルッ

 

飯田「?」

 

轟「右だけだ。いいのは」

 

そう言うと轟君は後ろを向き観客席をキョロキョロと見回した。()()()を探していたのだ。

 

それと思わしき人物を見つけたと思うと即座に睨みを利かせある宣戦布告をする。その人もまた轟君を見つけるなり重く鋭い眼光を放ってこちらを向いていた。

 

轟君が探していたのは……

 

 

 

 

 

 

エンデヴァー「…」

 

彼の父親(エンデヴァー)である。

 

 

轟「戦闘に於いて()は絶対使わねえ」

 

轟「絶対にだ」

 

 

 

 

そんな中B組からも不穏な動きが表れる。予選を通過したB組の生徒()()が集合し、作戦を練っていた。

 

 

「……ここにいる客のほとんどの狙いはA組だ。何故だ?」

 

「そして鉄哲が前述した通りA組の連中も調子づいてる」

 

「おかしいよね…彼等と僕等の違いは?【会敵したか否か】…これだけじゃん」

 

 

 

 

物間「ヒーロー科B組(僕達)が何故予選で中下位に甘んじたか…」

 

物間「調子づいたA組に知らしめてやろう皆」

 

 

 

物間「…って時になんで拳藤が居ないんだい?」

 

円場「そんな事知るか」

 

 

 

【警備員及びプロヒーロー控室】

 

 

デステゴロ「この雄英体育祭ってヒーローとしての気構え云々より…」スゥゥ…

 

デステゴロ「ヒーロー社会に出てからの生存競争をシミュレーションしてるな」

 

煙草を一本口に咥え、吸いながら連れのプロヒーロー達と会話しているデステゴロ。

 

長らく堪能していたのか…持っていた煙草をグリグリと灰皿に擦り付け火を消した。その直後すぐにまた新しく1本取ったんだけどね。

 

デステゴロ「ヒーロー事務所がひしめく中、おまんま食ってくにゃ…」カチカチッ

 

ボオゥッ

 

デステゴロ「時に他を蹴落としてでも活躍見せなきゃなんねーってのが障害物競走(あの予選)だろ?」スゥゥ…

 

ライターで煙草に小さな火を灯し、再び喫煙し始める。どうやらMt.レディは煙草が苦手なようで渋々手で煙をはらう。

 

Mt.レディ「アレ心苦しいですよねー」<後タバコやめろ

 

シンリンカムイ「貴様…!!」

 

プルプル震えながら激情を必死に抑え込むシンリンカムイ。何って……彼も経験者だからだよ。

 

あくまでシラを切るつもりだが、以前Mt.レディはシンリンカムイが撃退寸前だった敵を不意打ちで倒し手柄を分捕った事がある。

 

詳しくはヒロアカの第1話を見て欲しい。

って何故宣伝している自分……

 

デステゴロ「その一方、商売敵とは言えど協力していかなきゃ解決できねー事案も腐る程ある」

 

デステゴロ「ヘドロん時みてぇな風にな」

 

Mt.レディ「あー…それで騎馬戦がもってこいだと!そっか」

 

Mt.レディ「自分の勝利=チームメイトの勝利ですもんね。後々結構響いてくる」

 

Mt.レディ「相性やら他人の個性把握……持ちつ持たれつ!」

 

シンリンカムイ「相棒(サイドキック)との連携」

 

シンリンカムイ「他事務所との合同個性訓練」

 

デステゴロ「プロになれば当たり前の生きる術を子どもが今からやってんだなぁ」

 

Mt.レディ「大変ですね……」

 

 

 

 

 

因みに3人はモニターに映った解説のツンツン頭の男(悟空さん)を見てこう話していたとか何とか…

 

Mt.レディ「そう言えばあの司会の派手な髪型の男性…」

 

シンリンカムイ「何処かで見た事ある顔だな……」

 

デステゴロ「言われてみればそんな気もするようなせんような…」

 

3人「むー………」

 

 

 

 

デステゴロ「……監視に集中しよ、な?」

 

Mt.レディ「そーですね」

 

シンリンカムイ「異議なし」

 

……ヘドロ事件自体は覚えてんのになんで肝心な事は覚えてないの…?この人等……

 

好都合だから構わないんだけどさぁ

 

 

 

 

 

 

 

とまぁそんなこんなで15分にかけての天下分け目の交渉時間は終了した。

 

とうとう騎馬戦の始まりだ!!

 

【競技場】

 

 

グイグイッ…

 

ミッドナイト「そろそろ15分ねぇ…んじゃぼちぼち始めるとしますか!」

 

腕を腕で抱え込み肩のストレッチを行いながら気合いを入れるミッドナイト。

 

司会席の仲良し3人トリオ※は開始のナレーションを入れ始める。

 

※細かく言えば1人は病院のベッドの上にいるのだが…

 

 

マイク「おーい!ナースさん!」

 

マイク「呑気に寝てるその陰気野郎起こして下さい!」

 

冗談半分でスマホ越しに相澤先生を茶化しているが…

 

相澤<誰が陰気野郎だって?

 

マイク「ファッ!?」

 

なんだ、起きていらしたのですね先生…

 

スピーカーから発せられた音声には尋常じゃない程の鬱々たるオーラを漂っていた。あながち陰気というのは間違ってはないぞ、うん。

 

恐ろしい相澤先生からの返信に内心ビビりながらも悟空さんと共に解説を再開する。

 

マイク「と、とうとう15分に渡り行ってきたチーム決め兼作戦タイムも終了!!」

 

マイク「フィールド内に12組の騎馬が出揃った!!」

 

悟空「…中々面白ぇのが見れそうだ」

 

マイク「さぁ上げてけ鬨の声!!」

 

マイク「血で血を洗う雄英の合戦が今!」

 

マイク「狼煙を上げる!!!」

 

それを聞くと生徒達は立ち上がり、騎馬の体勢を整える。先頭の右肩、左肩にそれぞれ右翼、左翼の人の腕が乗っかり、その二本の腕に跨ぐように騎手が座り込む。

 

前騎馬の両手に空いたもう一方の手をそれぞれつなぎ……っと待った待った。

 

緑谷「拳藤さん」

 

拳藤「…()()、だろ?」

 

緑谷「任せたよ…!」

 

 

 

もう準備万端だ。いつでも走れる。

 

 

物間「鉄哲ー恨みっこなしだぞ」

 

鉄哲「おう!」

 

マイク「よおおおし!組み終わったな!?準備はいいかなんて聞かねえぞ!!」

 

マイク「いくぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!」

 

爆豪「狙いは……」

 

かっちゃんチーム

爆轟(騎手) 200P

切島(前騎馬) 160P

芦戸(右翼) 120P

瀬呂(左翼) 175P

TOTAL 655P

 

 

轟「一つ」

 

轟君チーム

轟(騎手) 205P

飯田(前騎馬) 185P

麗日(右翼) 125P

上鳴(左翼) 95P

TOTAL 610P

 

 

カウントダウンが始まる瞬間、会場は巨大な緊迫感に包まれ、観客の誰もが息を飲みこんだ。開始まで…後3秒……!

 

僕はハチマキをギュッと締めながらチームの点呼を取り始める。

 

 

 

マイク「3!」

 

緑谷「八百万さん!」

 

八百万「っはい!!」

 

 

マイク「2!!」

 

緑谷「拳藤さん!」

 

拳藤「はいよっ!!」

 

 

マイク「1!!!」

 

緑谷「常闇君!」

 

常闇「ああ…!」

 

 

 

 

緑谷「よろしくっ!!!」

 

常闇(前騎馬) 180P

拳藤(右翼) 75P

八百万(左翼) 170P

僕(騎手)……10000000P

 

緑谷チーム

TOTAL 10000425P!!!

 

 

 

マイク「START!!!」

 

 

マイクの合図と共に戦い(騎馬戦)の火蓋が切って落とされた!

 

それを聞くと直様近くにいた騎馬がこちらに向かって走り出してきた!ですよねぇぇぇ!?

 

えっと何々…

 

鉄哲「実質それ(1000万)の争奪戦だ!!」

 

葉隠「はっはっはー!緑谷君!いただくよー!!」

 

葉隠さんのチーム、砂藤君と口田君。後耳郎さん居んなぁ……ともう1つの方は………誰あの人…B組かな。

 

前回解説してただろ。

と言うかもしれないがあれはあくまで実際の僕では無い僕…ややこしくなるなぁ、もう。

 

ナレデクの説明の為僕は知らない。予選ほぼほぼ道中見てなかったからなぁ…っとそんな場合じゃないな。

 

常闇「まず2組…開始早々襲撃か!」

 

常闇「追われし者の使命(定め)……選択しろ緑谷!!」

 

緑谷「勿論逃げの一手!!!」

 

常闇「ああ………?」

 

指示を送りすぐに騎馬を後退させようとするが…おかしい。下の3人が動かないぞ。

 

緑谷「ど、どうしたの!?」

 

八百万「あ、足が動きませんわ…と言うより…」

 

八百万「沈んでる!?」

 

緑谷「えっ!?」チラッ

 

下を覗いてみると、何と3人の脚が地中に埋まっていく。……いや、よく見てみれば地面に波が発生している!?

 

緑谷「どういう…!」

 

拳藤「……骨抜か…!」

 

緑谷「B組の生徒!?地面を沼にする個性か!?」

 

拳藤「違う。地面を()()()()したんだ」

 

鉄哲「動き封じれた!でかした骨抜!!」

 

骨抜「ケケッ」

 

 

骨抜柔造。個性【柔化】

 

どんな物も極限まで柔らかくするぞ!!というかコレ液状化ってレベルじゃねぇぞ。

 

…思ったけど人に使ったらどうなるんだろ。

 

 

緑谷「八百万さん!拳藤さん!!しっかり掴まってて!」ガシッ

 

両手で常闇君の腕を掴み、勢いよく持ち上げる。それならこっちは空飛んで強行突破だ!!!

 

 

ドッッ!!

 

バシャッと大きな波音を立てながら3人を抱え空高く宙を舞う。総重量150kg以上か…結構重っ!

 

砂藤「飛んだっ!」

 

鉄哲「野郎、個性はビームじゃなかったのか!?」

 

骨抜「…つーかなんで拳藤はあれ……」

 

緑谷(やっべ…【気】を使うのも程々にしないと面倒な事になる…!)

 

緑谷(気をつけないとな!)

 

難を逃れたと思うのも束の間。先程の2チームが後ろから追撃してくる。

 

 

葉隠「耳郎ちゃん!」

 

耳郎「わってる」ギュルッ!!

 

耳郎さんは両耳からコードを伸ばし、フラグを突き立て…

 

 

鉄哲「塩崎後ろだ!!」

 

塩崎「承りました…!」グオッ!

 

塩崎さんは頭髪の茨のつるを僕らに向かって放つ。

 

 

塩崎茨。個性【ツル】

 

頭部の髪をツルと化し触手のように操り戦うぞ!

 

伸縮自在!後切り離しも可能だ!

 

 

 

常闇「黒影(ダークシャドウ)!!」

 

黒影<リョウカイ!

 

バシバシッ!

 

常闇君の呼びかけと同時に黒影は空かさず後方のツルとコードを払いおとす。

 

耳郎「チッ…!」

 

塩崎「ああ…私はなんて過ちを……!」ガクッ

 

そこまで深刻に見なくていいです、塩崎さん。

 

常闇「よし…いいぞ!黒影」

 

常闇「常に俺達の死角を見張れ」

 

黒影<アイヨ!

 

緑谷「すごい…すごいよ!かっこいい!」

 

緑谷「僕らに足りなかった防御力…それを補って余りある全方位中距離防御!」

 

緑谷「すごいよ常闇君!!!」

 

常闇「選んだのはお前だ……」

 

 

常闇「それと、俺の活かし方がなってるな」

 

緑谷「やっぱり…さっきより調子いい?」

 

常闇「ああ…すこぶる快調だ」

 

 

 

 

数分前…

 

緑谷『そう…防御に徹してほしい…』

 

常闇『……いいが…厳しいぞ?』

 

常闇『俺の個性は闇が深い程力を増すが…どう猛になり制御が難しい』

 

常闇『逆にこの日光下は制御はできるものの攻撃力は中の下といったところか…』

 

常闇『保持する為とはいえそれだけで俺を誘うのはハイリスクじゃないか?』

 

緑谷『いいや…君にいい事を教える』

 

緑谷『実は僕のチームに体の一部を巨大化させる個性の人がいるんだよ』<B組で

 

緑谷『だから君が前騎馬になれば常にその人の陰でその黒影を強力にしてもらう!』

 

緑谷『真っ暗って程じゃないからコントロールも出来るはずだ!』

 

常闇『…フッ。面白い』

 

常闇『お前の頭脳と戦闘力があるのは()()()しな』

 

緑谷『…常闇君……』

 

常闇『そこまで言うなら乗るぞ、その話』

 

常闇『俺を使ってみろ、緑谷』

 

常闇『託したぞ』

 

 

 

 

当然気を探れば相手が攻撃してくるか探る位僕にとっちゃ造作の無い事ではあるが、他チームの個性なども考えると防御面じゃ僕だけではカバーしきれない。常闇君にうってつけだった訳だ。

 

交渉に応じてくれたのはホント不幸中の幸いだった。信じてくれてありがとう、常闇君。

 

 

ただ……1つ問題なのは

 

拳藤「……」プルプル…

 

緑谷「………むむ」

 

拳藤さんがいつまで右腕上げられるかなんだよなぁ。

 

2組の騎馬から十分距離を置けたと思うとゆっくりと落下していき、地面に着地する。

 

シュタッ

 

緑谷「よし!とりあえず走って!僕達は所持P上これを保持すれば確実に上がれる筈だ!」

 

葉隠「緑谷君とこ追うよ!さぁ耳郎ちゃんリベンジ!」

 

砂藤「ってかおい…葉隠お前……」

 

葉隠「ん?」

 

砂藤「何いつの間にハチマキ奪られてんの!?」

 

葉隠「……え」

 

葉隠さんは額にある筈のハチマキを手探りして触ろうと試みるが…

 

 

 

ホントだ。無くなっちゃってますね。

 

葉隠「にゃああにぃぃっ!?」

 

葉隠「なんで!?いつ!?どこで!?誰が!?どのように!?」

 

口田(4W1H…)

 

 

同じ時、後ろにはさりげなく取った葉隠さんのハチマキをクルクル回しながら悠々と歩いている騎馬が1組…

 

物真「漁夫の利ー」

 

 

マイク「おおっ!まだ2分も経ってねぇが早くも混戦混戦!!」

 

マイク「各所でハチマキ奪い合い!!!」

 

悟空「他の奴らに狙われる事考えっと無理に1000万取らずに地道に2〜4位目指すのもアリだな」

 

マイク「お前戦略とかそういうとこの知識はピカイチなんね」

 

 

峰田「奪い合い?違うぜこれは…」

 

峰田「一方的な略奪よ!!」

 

緑谷「!?」クルッ

 

マイクの発言に反応するかの様に突然背後から峰田君が喋り出した。焦って後ろを振り向くがどこにも彼の姿は見当たらない……

 

が、代わりに無言で突っ込んでくる障子君の走姿が見えた。何やら背中を両腕で覆ってる様だが…

 

障子「…」ダダダ…

 

緑谷「あれ!障子君1人!?」

 

緑谷「これ騎馬戦だよ…?」

 

常闇「兎に角逃げろ!!複数相手に立ち止まってはいかん!」

 

拳藤「心得た!」

 

一旦距離を置く為再び走ろうと足を踏み出すが、その瞬間地面の感触に違和感を覚えた。

 

ブニッ

 

八百万「きゃっ!……な、何これ…」

 

左脚で何か柔らかい球体の様なものを思うと八百万は驚き、その物体を確認する。

 

すると地面には峰田君のもぎもぎ髪が…

 

緑谷「何処から投げてきた!?確かにいるみたいだけど…」

 

不思議に思い峰田君の気を探ると何と障子君の上に彼の気が……

 

まさか……

 

 

 

峰田「ここからだよぉ…緑谷ぁぁ…」チラッ

 

なんと障子君の腕の腕の隙間から恐ろしげな表情でこちらを覗いてきた。お前は貞子か!!?

 

緑谷「ええっ!?あれアリなのかよっ!?」

 

ミッドナイト<アリ!

緑谷<嘘ぉぉっ!?

 

ギュオッ!!

 

緑谷「んなっ!?」ヒョイッ

 

更にその隙間から長い触手のようなものが襲ってきた!何とか紙一重でかわしたけど!!

 

緑谷「何だよさっきから…!!」

 

蛙吹「流石ね緑谷ちゃん」チラッ

 

緑谷「蛙吹さん!?君もか!」

 

峰田君の隣に舌を伸ばした蛙吹さんの姿が。お前は…貞子か。

 

というか2人共翼の様に広げた障子君の腕に覆い被さってたのかよ!?すげぇな複製腕!!

 

蛙吹「梅雨ちゃんと呼んで…」

 

蛙吹「ケロ」ギュオッ!

 

再び舌をこちらに伸ばしハチマキを奪い取ろうとする。逃げたいのは山々なんだけど峰田君のブヨブヨのせいで身動き出来ない!

 

常闇「万事休すか…!?」

 

拳藤「緑谷…っ!!」

 

緑谷「……」

 

 

 

 

八百万「お待たせしました!緑谷さん!!」スッ

 

緑谷「ありがと…八百万さん!」パシッ

 

どうやら間に合ったようだな…八百万さんにある物を創造させて、こちらに渡してもらった。それは何かというと…

 

 

 

 

バヂィッッ!!!

 

蛙吹「う……そ……」

 

ドサッ

 

僕が手に取った物に触れた瞬間、蛙吹さんの全身に電流が走る。感電してしまい、そのまま気絶する。

 

峰田「ぎ、偽乳隊長おおおっっ!?」

 

常闇「間一髪…か」

 

八百万「ですが脚にまだ峰田さんの髪が……」

 

緑谷「それは任せて。ちょっとじっとしてなよ…」

 

そう言うと僕は片腕から小さな氣功波をポゥッ放ち彼女の脚にくっついたブヨブヨを焼滅させる。危ない…あと少し気入れてたら八百万さんの靴燃やすとこだった…

 

ジュゥゥ…

 

拳藤「お、おぉ…すごいじゃん?」ピクピク…

 

八百万 常闇「「………」」

 

八百万(き、気のせいかしら…今……)

 

常闇(ビームが…曲がった……ような…?)

 

気のせいです…はい。?どうやったらまっすぐ撃って靴に当たらないんだって?

 

…………???(惚け)

 

緑谷「電圧低いから軽めな麻痺の筈だ」

 

緑谷「すぐに起きるさ、1、2分寝ててくれ」ダダッ…

 

使い捨てのスタンガン(それ)を地面に放り投げ、僕達はその場から走り去っていく。

 

 

 

 

ボボオッッ!!

 

一難去ったらまた一難かよ!!すぐ左上から爆発音が聞こえてくる。爆発てまさか……そそくさとその方向を確認してみると

 

 

爆豪「調子乗ってんじゃねぇぞクソが!!!」

 

緑谷(やっぱりかっちゃんですたぁぁぁっ!?)

 

かっちゃんがなんと単独でこっちに飛びかかってきた!?マジかよ!!

 

緑谷「黒影!!!」

 

黒影<アラヨット

 

ボオンッッ!!

 

右腕で爆破狙いで殴りに来たかっちゃんだが…黒影に当たった瞬間爆発が遮られてしまう。

 

爆豪「っんだこいつ…火が消えた!?」ピタッ

 

驚く間も無くかっちゃんの身体にセロハンがくっつき、彼の身体を引っ張り上げる。そのままかっちゃんは組んでいた騎馬の上へ着地する。

 

そうか…瀬呂君がテープ伸ばして引き戻したのか。

 

瀬呂「っと…」シュルルッ…

 

切島「ナイキャッチ!!」

 

ボフッ

 

爆豪「っの野郎…!!」

 

 

マイク「おおおおいっ!?今騎馬から離れたけどセーフなの!?」

 

ミッドナイト「テクニカルなのでOKよ!地面に脚付いていたらダメだったけど!」

 

「皆面白れぇな!個性フル活用してらぁ」

 

「客の俺らからしても楽しいやなー!」

 

「敵と戦ったってだけでこうも差が出るかねぇ!!」

 

マイク「やはり狙われまくる1位と猛追を仕掛けるA組の面々共に実力者揃い!」

 

マイク「果たして現在の所持Pはどうなっているのか!?」

 

マイク「7分経過した現在のランクを見てみよう!」

 

するとスタジアムに大きなモニターが出現し、騎馬戦の中間結果が表示される。ってかもう半分かよ。

 

Pの分かれ方も気になったのでモニターに目を運ぶ……も。

 

 

緑谷「あ…れ?」

 

マイク「あら?あらら!?」

 

マイク「A組緑谷以外パッとしねぇ…ってかえ?爆ご…」

 

 

 

なんと僕と轟君のチーム以外、A組の生徒は皆ハチマキは0であった……

 

え?かっちゃんのとこも0P!?

 

 

 

 

 

 

 

 

物間「単純なんだよ。A組」

 

ガシュッ…

 

爆豪「…!?」

 

なんとB組の騎馬の1組がすれ違い様にかっちゃんのハチマキをいとも簡単に奪い去ってしまう。何とかその騎手の身体を掴もうと手を伸ばすが間に合わない。

 

爆豪「んだテメェコラ返せ!!殺すぞ!」

 

芦戸「や、やられた!!」

 

物間「…君等さ、少し落ち着いてごらんよ」

 

物間「ミッドナイトが()1()()()と言った時点で予選段階から極端に数を減らすとは考えにくいと思わないかい?」

 

騎手の生徒は騎馬を止めて淡々と話し始めてしまう。そんなペラペラ喋ってるような余裕無いと思うんだが…?

 

物間「だからおおよその目安を仮定し、その順位以下にならないよう予選を走ってさ」<大体40位位じゃね!?みたいな感じで

 

物間「後方からライバルになるであろう生徒等の個性や性格を観察させてもらった」

 

物間「【その場限りの優位】に執着したって仕方ないだろう?」

 

切島「っ…クラスぐるみかよ」

 

物間「ま、全員の総意ってワケじゃないけど良い案だろ?」

 

物間「()()()()()()()馬みたいに仮初の頂点狙うよりかはさ」

 

爆豪「………!」

 

かっちゃんはすぐにそれが遠回しに放った自分に対する軽蔑の言葉である事に気がつく。

 

ああ〜やばいぞ。物間君、今の内に謝…

物間「あ。あとついでに君、有名人だよねー」

 

物間「ヘドロ事件の被害者!!今度参考に聞かせてよ」

 

物間「年に一度敵に襲われる者の気持ちってのをさっ!」ニコッ

 

満面の笑みを見せながらそう言った。

 

 

これは……洒落にならん。

 

爆豪「」ブチブチブチィッッ!

 

 

 

 

爆豪「おい切島…予定変更だ」

 

切島「は?」

 

 

爆豪「デクの前にこいつら全員、殺そう…」ゴゴゴ…

 

血管が切れる程、青筋を立てながら激怒のオーラを周囲に露わにする。

 

かっちゃんストレートに言うより遠回しに馬鹿にされる方がキレるからなぁ…

 

どうする、物間君。

 

物間「……」

 

 

 

 

とりあえずこの光景を見て言えるのは必ずしもB組の狙いが(1000万)という訳ではない事だ。

 

B組は予選を捨てた長期スパンの策に出た。確かに体育祭開始前からA組が食っていた空気を覆せばより強い印象を与られる。ただ…

 

 

ならなんで拳藤さんはここにいるって話だが…

 

拳藤「〜っ」ピクピク…

 

兎も角……これは発想からするに僕を狙う事に必ずしも固執していない。僕達にとっちゃ絶好のチャンスだ!

 

緑谷「皆!逃げ切りやす…」

 

 

 

 

下にいる3人に声をかけようとしたが途中で口が止まってしまう。

 

 

 

来てしまったのだ。1番厄介な相手が…こんな早く…

 

緑谷「……ははっ」

 

緑谷「そう上手く、行く訳ないよね……」

 

 

 

轟「そろそろ…奪るぞ」

 

飯田「…ああ」

 

麗日「うんっ」

 

上鳴「………」

 

 

 

緑谷(轟君……!!!)

 

 

マイク「残り時間半分切ったぁっ!」

 

マイク「B組隆盛の中…」

 

マイク「果たして1000万は誰の頭に垂れるのか!!!???」




須井化です…はい。

何とか日曜に投稿完了!!ハッハー見たかこの野郎!気力さえありゃざっとこんなモンよ!ふぁーはっはっはっ!!

<でもぉ、お前この間気力はあるって言ってただロット……

え?


『気力は十分あるんですがやはり時間が上手く取れなくてですねトホホ…』


………何のことかなww?

<……

<どうやら死にたいようだな。

ニャ、ニャメロ…

<イレイザーキャノン!!(ボーピー


デデーン…






529998→529997











須井化です…はい。

?もう挨拶はしたって?何ご冗談を…

今回は拳藤さんと八百万さん初対面〜騎馬戦途中までっすたな。

もう修羅場モード入ってるね、どうしようもないね。

とりあえず原作とポイント違うのは気にしないでくだサイヤ。

いかがでしたか?




そして!前回時間が無く紹介し損ねた!拳藤の挿絵公開しますぞ!!!

久々だーい!例の如く作者はさいころソード様でございます!一応その方のマイページのリンクも貼っておきます!↓
http://syosetu.org/?mode=user&uid=175541

内容は拳藤!桃白白風チャイナドレスver


【挿絵表示】


ではでは補足頼みますよぅ!

さいころソード「あくまで桃白白「風」なのであしからず」

さいころソード(彼女の元々のコスチュームとさしたる変化がない。腰のたれ位かな。)

さいころソード「桃白白そのままの長袖にすると、彼女の個性「大拳」を使用する度に袖が破れるという不具合が発生するのでオミットした次第」




<嘘です!奴は拳藤たんの生腕・生足を描きたいがために修正したんです!

さいころソード「…まあへそ出しは完全に遊び心ですが」




今回も可愛い挿絵ありがとうございます!ははぁ…実はこれは2、3ヶ月も前に既に貰ってたんだよなぁ…ようやく紹介できたぞコレ!

めっちゃ可愛いんで見てください!てかバッチリーミロー!

最後に上半身ズームver


【挿絵表示】






何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
3月16日(木)以内に第24話の投稿を予定しております。

お楽しみにー


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第24話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!第1種目の障害物競走もぶっちぎりの1位で予選通過!

第2種目の騎馬戦では1000万という膨大なP所持を課せられ多チームから襲われる羽目となる。

八百万・拳藤少女、常闇少年と騎馬を組み何とか多くの刺客を退けていく緑谷少年だったが…

残り時間7分で早くも轟少年達と対峙する!

更に向こうへ!PlusUltra!!!


円場「あんまし煽んなよ物間…同じ土俵だぞそれ」

 

物間「ああ…そうだね。ヒーローらしくない」

 

物間「それによく聞くもんね…ほら」

 

物間「恨みを買ってしまったヒーローが敵に仕返しされるって話」

 

 

 

流石に焚き付けすぎたかと思ったB組のチームメイトは物間君に大概にする様説得するがそれを逆手にとって更に煽らせる結果となってしまう。

 

かっちゃんは身体をプルプル震えさせながら小さく、おおっ……おォォ…と鰻り始める。何とか彼の頭を冷やそうと切島君はフォローするが…

 

切島「落ち着け爆豪!冷静になんねぇとP取り返せねぇよ!!」

 

爆豪「おおおおお…っ!」プルプル

 

ボオオオッッ!!!

 

芦戸「へあっ!?」

 

右手を広げ、そこに握り左拳を強く叩きつけ爆発を起こす。右手に爆炎が発生しそれが消えた直後モクモクと黒煙を上げながら

 

 

 

シュゥゥ…

 

爆豪「っし進めぇ…切島」

 

爆豪「俺ァ今すこぶる冷静だ…!!!」ニヤァァ

 

苦笑いしながら前進する様前騎馬に指示を出す。口の端を大きく歪め眼から黒目は無くなっている。

 

もうどっち応援すりゃいいんだコレ

 

切島「いや割と本気で頼むぞ…」

 

 

 

 

 

 

 

遂に轟君と当たってしまった…正直今僕が思う中で1番厄介だと思われるチーム。やっぱり組んだのは飯田君と上鳴君…後は麗日さんだ。騎馬の配置も予想していたのと全く同じ。しかもまだ7分も残ってるってのに…

 

常闇「もう少々終盤で相対するのではと踏んではいたが…」

 

常闇「随分買われたな緑谷」

 

緑谷「……まぁね」

 

常闇君は平然としているようだが本人が1番理解している筈だ。きっと内心冷や汗かいてる。

 

だってあそこのチームには…

 

 

 

轟「麗日、回避・()()の準備」

 

麗日「5秒位しか耐えられへんよ…」ピト…

 

轟君はチーム内の3人に指示をかける。目をつむりながら組んでいた右腕を離し、嫌々手と手を合わせる麗日さん。

 

轟「飯田、着地後すぐ前進」

 

飯田「ああ!」

 

轟「上鳴は…」

 

上鳴「いいよわってる!!ちゃんと離れてろよ!?」バチバチッ

 

轟君が喋りかけた所を間髪入れずに左翼の彼が直様放電体勢に入る。やっぱり最初にそう来るか…!

 

緑谷「常闇君!!防いでくれ!」

 

常闇「無論そのつもりだ!!」

 

黒影(ダークシャドウ)を大きくし巨大な壁を作る。本当は絶縁体シートを作っても良かったんだけど時間が無い!

 

A組でまだハチマキが残されている2チームに目がつき、周辺から数体の騎馬がこちらに駆けて近づいて来る。

 

勿論ハチマキを取られたA組のチームも然り。

 

蛙吹「いつハチマキ失ったの…いい策だったから貴方でも組んだのに!」

 

峰田「分からねぇよ!でもこれで失うモンはねぇ!」

 

峰田「障子、駆け抜けろ!!全力であの2組のPかすめ取ったる!」ダダダ…

 

葉隠「ここで会ったが百年目…緑谷君!さっきの復讐今こそ果たしてやる!!」

 

耳郎(途轍もなく下らない因縁…)ダダダ…

 

峰田組と耳郎組がこちらに向かって走って来る。そうだよ、仕掛けて来るのは1チームだけじゃない。だから…

 

麗日「皆飛ぶよ!!!」

 

轟「ああ…」グオッ…

 

そう言うと麗日さんは個性を発動し、自分含む上鳴君を除いた3人を空高く空中に浮かばせる。?なんで上鳴君は1人地上に残っているかって?

 

上鳴「無差別放電……」

 

 

 

上鳴「130万V!!!!!」バヂィッッ!!!

 

放電(こう)するから。

 

 

耳郎「上…鳴……」

 

峰田「あばばばば!?」

 

緑谷「ぐあっ…」カッッ

 

周辺にいたA組・B組の騎馬に瞬時に強い電流が流れて来る。気絶する程の威力とまではいかないが無防備の状態で食らってしまった。麻痺して数秒は動けない。

 

幸い僕等は黒影を盾にして防ぐ事は出来たが…何よりこれと同時に迸る閃光がとても眩しい。()()()のが僕達にとってまずい状況なのだ。

 

麗日「解……除!!」フワフワ…

 

シュタッ

 

放電が終わると共に麗日さんはゆっくり降下しながら個性を解除し、轟・飯田君と一緒に地面に着地。めっちゃ気持ち悪そうな顔してますよ、麗日さん。

 

だが彼等は感電を避ける為だけに避けたのでは無い。轟君の手には氷で出来た棒のような物が。

 

3人は空中にいる間何かを凍らせていたのだ。

 

 

 

轟「残り6分弱。後は引かねぇよ」ズザザ…

 

パキパキィッッ!!!

 

葉隠「んなぁぁっ!?」

 

障子「チィッ!」

 

僕達の所へ走って向かいながら手に持っていた棒状の氷で地面を削っていく。味方が巻き添えを喰らわない様周りにいる生徒等の脚を凍結させ一掃する。

 

ビリッ

 

「うおおお!?俺らのPー!」

 

轟「悪いがそこでじっとしててくれ。すぐ終わる」ダダッ

 

轟君がすれ違い様にB組のチームのハチマキを奪っていく。脚が凍らされ身動きも取れない為彼等はみすみすそれを見逃す事しか出来なかった。

 

 

マイク「おー!凍結して轟組他チームを一蹴!」

 

マイク「…ってなんで放電させてからって面倒な事してんの?」

 

悟空「考えたな〜!障害物競走(さっきの)で大分皆に避けられてたかんな」

 

悟空「電気で動きを一旦止めてから確実に凍らせに行ったんだ」

 

マイク「ナイス解説!」

 

八百万「どうしますの!?このままでは追いつかれてしまいますわ!」

 

轟君のチームの前騎馬は飯田君、故にかなり早い移動速度を有する。今から逃げたって振り切れない。1番無難な対応策は……

 

 

緑谷 常闇「「牽制する!!!」」

 

黒影<リョウカイ……

 

緑谷「……!」

 

常闇君と共に黒影に指示を出し、左腕で迎撃を狙おうとする。その時、黒影の声が少々弱々しくなっていることに気が付く。少しひっかかりながらも攻撃を仕掛けるが…

 

轟「壁…作るか」バッ

 

先程から握りっぱなしだった左手を前に突き出し広げた。その中から何か粉末の様な物体が空中にばら撒かれた。そう、さっきの棒を作る為に凍らせたのもコレ。

 

 

緑谷「か、髪の毛…?」

 

轟「ご名答」

 

パキパキ…

 

冷たい吐息を口から吹き千切って空中に散乱させた髪を凍らせる。四方八方に広がったので数cmもの厚い巨大なな壁となる。

 

ガッッ!

 

常闇「チッ…ガードされた!」

 

黒影<ナンテヒドイコトスルンダ!

 

麗日「よっと…!」ピトッ

 

作った氷壁により見事黒影の攻撃を防ぐ事に成功した。途端に麗日さんが氷にタッチし間一髪飯田君の頭部との衝突は免れた。

 

麗日「はぁ…はぁ…」

 

だが先程から過度の重量を操っている為か強く喘いでしまう。

 

飯田「大丈夫か!?麗日君!」

 

麗日「ふへ…だ、大丈夫大丈夫。この位」

 

緑谷「……予想以上に凄いな。無重力(ゼログラビティ)…」

 

緑谷「主に人を浮かす為だとかそんな活用法しか思い付かなかったけど…」

 

緑谷「いざ何かしらの物体があればいくらでも応用が利く」

 

常闇「いや…それよりも上鳴がこの上なく厄介だ」

 

常闇「今程の装甲ならば()()()()()()()十分破壊可能だった…」

 

緑谷「……黒影…」

 

前騎馬の方を向くと常闇の隣に目が潤んでいる黒影がポツンと。さっきの上鳴君の電光の影響で萎縮してしまっている。

 

黒影<アクマタン…

 

上鳴君が放電する事により黒影を弱めれば反応等も鈍くなり戦況にかなりの影響を及ぼす。何とか拳藤さんの大拳で対処していきたいのだが…

 

拳藤「…」プルプル…

 

緑谷「………だ、大丈夫?拳藤さん」

 

拳藤「こ、こんなのいつもの10倍キツイ筋トレよ…!」

 

拳藤「へっちゃらへっちゃら…」プルプル…

 

顔真っ青にして戦慄いながら言う台詞じゃないよ拳藤さん……とまぁこんなギリギリの狭間を彷徨っている感じだ。

 

八百万さんに何か武器を出してもらうにせよ何を創ればいいか分からない。がむしゃらに出しまくった所で別チームの戦力を増やすだけだ。加えてここで気功波の類もあまり意味を成さない。

 

緑谷「………攻撃力低下…って一時的な物?」

 

常闇「まぁ…拳藤の陰もある。それを利用すればすぐにその闇に馴染む」

 

常闇「が…麗日がいる以上またいつ放電するか見当もつかん」

 

緑谷「相手はそれ…知ってると思う?というか…知ってる?」

 

常闇「無い、な。余程勘のいい奴でない限り」

 

常闇「この欠点を知っているのはUSJで口外した口田のみだ。そしてあいつは口が堅い」

 

緑谷「そっか……」

 

目を閉じ、一回深呼吸をしながら脳内に様々な情報を張り巡らせる。数秒後閉じていた目をゆっくりと開き始め僕は皆にこう言った。

 

 

緑谷「知られてないなら…牽制にはなる」

 

緑谷「大丈夫。何としても1000万は持ち続ける」

 

 

 

 

 

 

その頃かっちゃんチームはと言うと…

 

 

物間「ははっ…いい個性じゃないか」

 

 

 

 

物間「すごいや」ボォオンッ!!

 

爆豪「っ…!」

 

突如謎の爆発がかっちゃんを襲う。爆発自体は大して効かないが、その際の打撃を顔面に諸に食らってしまう。

 

自分と全く同じ個性を持っている事には流石に驚きを隠せずにはいられなかった。一旦後退し体勢を立て直す。

 

瀬呂「マジかよ…爆豪殴りやがった!?」

 

切島「爆豪!おめーも個性ダダ被りかよ!!」<つかいってー!

 

爆豪「っんの…」

 

爆豪「クソがっ!!!」ボオオッ!!

 

こなくそと騎馬を前進させ物間君の顔面に爆撃カウンターをお見舞いする

 

 

 

 

が。

 

 

 

物間「まぁ…」

 

爆豪「……!?」シュゥゥ…

 

物間「僕の方がいいんだけどさ」ガチガチ…

 

なんと左腕で軽くガードしてみせる。更に彼の身体の一部がゴツゴツと角ばっていく。まるでそう、切島君の硬化のように。

 

切島「なっ…!?俺の個せ…え?爆…?はぁ!?」

 

複合的個性でも無い限り2つ以上の個性は誰も持てないと言うのは以前も言った通り。だが物間君はさらっとそれをやってのけてしまっている。

 

突然の出来事に皆動揺するもただ1人かっちゃんだけはそれが可能な理由を理解していた。今出した個性の共通点は共に触れた者の能力である事。つまり……

 

 

爆豪「…こいつ…コピー持ちか」

 

物間「当たりー。まぁバカでも解かるよね」

 

 

物間寧人。個性【コピー】

 

触れた人物の個性を5分間使い放題。

 

だが同時に2つ発動とかは無理なのでご注意!

 

 

「物間!避けろ!!」

 

ビュルッ!!

 

物間「っと」

 

切島「わわっお!?」ベチャッ!

 

瀬呂「か、カタマターー!?」

 

B組の別チームの仲間が物間君達に加勢しに来た。ぶち撒けられた液体に脚が触れた瞬間地面としっかりくっ付いてしまい動けなくなってしまう。

 

芦戸「な、何これ…ボンド!?」

 

物間「仕掛けて来たか凡戸!!」

 

切島 瀬呂 芦戸(((まんまだったー!?)))

 

凡戸「ああ。このまま逃げ切るぞ!」

 

凡戸「このポイント数なら確実に合格圏内には入る!」

 

物間「ご苦労様」

 

 

凡戸固次郎。個性【セメダイン】

 

顔にある穴から瞬間接着剤のような液体を出し対象を固めてしまう。

 

好きなのはプラモ作りらしい。実に接着剤らしい趣味だ。

 

 

切島「クッソ…動かねぇ!」

 

芦戸「待って!今あたしの酸で溶かすから!」

 

瀬呂「ちょ…早よ!今0だぞ!?」

 

芦戸「分かってるてば!」

 

いそいそと脚に付着したボンドを除去しようと奮闘するもこれを好機と見計らい、B組の面々はその場を離れていく。

 

爆豪「……」ワナワナ…

 

物間「あ、怒らないでね?煽ったのは君なんだから」

 

物間「えーとホラ…宣誓で言ってたの……恥ずかしいヤツ」

 

物間「まぁいいや!お疲れ!」ボンッ

 

別れ際に手を爆発させながらそう捨て台詞を残して物真君は立ち去っていった。

 

爆豪「………」

 

 

 

 

爆豪( 俺 が 1 位 に な る )

 

ギリリッ…

 

 

 

小さく…されど出来る限り目一杯強く歯ぎしりを立てる。力を入れすぎた故か、歯茎から少し出血してしまう。

 

 

だがそんな事を考える暇など微塵も無かった。

 

彼の傷跡が再び悲鳴を上げる……いや、顔面のじゃなくて、アレ、

 

 

心の。

 

 

『でもこんなんじゃちょっとおめぇにゃオラの身体触れねぇかな…』

 

『ベジータでもこんな軽い挑発乗らねぇぞ』

 

 

爆豪「1位だ」

 

切島「は?」

 

爆豪「ただの1位じゃねえ」

 

 

『さっきの演習……ヒーローチームの勝利だ』

 

『君もよく頑張っていたんだがな!ちと積極的に行動し過ぎだ!』

 

 

爆豪「俺が奪るのは」

 

切島「え…ちょ…爆豪?おーい!」

 

芦戸 瀬呂「「うおぉぉっ!」」ドババ…

 

 

『だから今度は…いつか…』

 

『僕は…全力で…君を越えていく』

 

 

 

 

『俺はここで1()()()()()()()()!!!」

 

爆豪「完膚なきまでの1位だっ」

 

爆豪「半端な結果は要らねぇんだよ…っっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

残り時間約1分。

 

周りに氷の山を作り逃げ場を無くした事によりサシ仕様のフィールド完成。

 

あっという間に1000万奪取され……

 

 

マイク「…とか思ってたよ5分前までは!!」

 

マイク「なんと緑谷チームこの狭い空間で5分以上逃げ切っている!」

 

悟空「っひょぉぉ…よく緑谷堪えられたな!」

 

 

 

意外に思うかもしれないがこの5分間大して激しい攻防戦は行なっていない。何故なら轟組の攻略法は至って単純で地道な方法だから。

 

轟「……」

 

ザザッ

 

緑谷「キープ!」

 

常闇「ああ…」ザザッ…

 

轟「……っ……」

 

 

轟組が左に向かったら距離を置いてこちらも右に向かうだけ。簡単だろ?この作戦の1番のポイントは如何に相手の心理を読むかにある。

 

まず僕が不思議に思っていたのは左側…つまり半熱の個性を使ってない事。この前も言ったと思うが轟君はどういうこだわりからか左側の個性は極力収めている。そして今回の障害物競走の結果、騎馬戦の途中まで観察した感じ【炎熱は使わない】という意思が見えてくる。

 

では左翼付近は手薄の状態になっているのではないのか?それである程度距離が離れていれば轟君はどうも手出し出来ないのではないのか?

 

 

そしてそれは上鳴君にも言える事である。

 

前述した通り上鳴君は電気の放出量によって脳がショートするという欠点がある。ここ1、2ヶ月の特訓で多少はマシなモノになっているかもしれないが、黒影が無効化してしまう以上無闇に放てば相手の思う壺。

 

更に言ってしまえば自分ら3人を浮かす余裕があるという前提条件が関わってくる。麗日さんは今見ていただいた通り人3人分浮かすだけでも10秒と耐えられない。上鳴君で攻撃しようとすると二次災害が起き、最悪2人同時に気絶という事態も想定できる。

 

 

轟(最短で凍結させようとしてもどうしても間に飯田が挟まっちまう)

 

轟(麗日や上鳴にこれ以上負担かければ最悪アウトにもなりかねない)

 

轟(リスクを考えればここでの放電は無茶があり過ぎる)

 

轟(…野郎……っ!)

 

緑谷「……」

 

 

最終的にこういう結論に至るのだ。

 

勿論、そんな事は全く無い。寧ろ我々にとっては不都合極まりない。また2、3回放電の閃光を喰らえば黒影は戦力外となってしまう。

 

万が一の時の為、拳藤さんに巨大な右手を挙げ続けてもらってはいるが、もういつ挫折してもおかしくない状況だ。

 

拳藤「〜〜〜っ……」プルプル…

 

だからぶっちゃけると現在の戦況は五分五分と言ったところ、いつ奪われてもおかしくない状況だ。だが相手も攻める一歩手前で踏み出せないでいた。自分達にとって賭けるデメリットが大きすぎるから慎重に近づいていく他ない。

 

 

そんなこんなで5分も時間を稼げたというワケだ。正直ここまで上手い事逃げ続けられるとは思ってもいなかった。恐らく苦肉の策で炎を使って迎撃したりとか再度放電するとか色々予測はしたものの…

 

 

 

轟「……」ザザッ…

 

緑谷「……??…」

 

常闇(もう万策尽きた…か?)ザザッ…

 

 

半ば諦め状態か、移動して距離を置くの繰り返し。ここまで筋書き通りに話が進むと逆に気持ち悪いが。

 

残り1分。ラストスパートをかけ、皆の士気を奮い立たせる。

 

緑谷「後数十秒!このまま死守するぞ!!」

 

八百万 拳藤 常闇「「「御意!!!」」」

 

最初はそれこそ不安しか無かったが、次第にこの調子で行ければ、と自信や希望が心の中に芽生え始めていた。

 

 

 

 

とまぁ…もうシメに入ろうとしてるけどさ……

 

 

理不尽を覆すのがヒーローなんだよね、うん。

 

 

 

飯田「皆、聞いてくれ」

 

轟 上鳴 麗日「「「???」」」

 

飯田「()()()()()1()()()使()()()()()()

 

飯田「後は頼んだぞ」

 

轟「飯田…言っている意味が……」

 

飯田「しっかり掴まってろ」

 

 

 

飯田「絶対奪れよ…轟!!!」

 

轟「!?」

 

 

 

 

DRRRRR!!

 

轟「っぶな…!」ガシュッ

 

緑谷「は…?」

 

八百万「え……」

 

マイク「…………What?」

 

 

 

 

その瞬間、会場の溢れ出ていた活気が一気に静まり返ってしまう。

 

ほんの一瞬の出来事だ。脚部のエンジンから激しい爆煙を巻き上げながら轟組の騎馬が奇襲にかかってきた。

 

轟君は驚きながらも親譲りの反射神経で難なく1000万Pハチマキ奪取成功。

 

 

 

尋常じゃない速さだった。

 

いくら飯田君の個性が速さに特化したものであったとしても僕はちゃんと目で動きが追えたし、動きについて行ける程度のものだった筈だ。

 

 

それ所の話じゃない。

 

今、彼の気の感知すらままならなかったのだから。

 

 

 

飯田「トルクオーバー【レシプロバースト】」

 

飯田「トルクと回転数を無理矢理上げ爆発力を生んだのだ」

 

飯田「反動でしばらくするとエンストするがな」

 

飯田「クラスメイトには教えてない裏技さ」

 

緑谷「……っそだろ……」

 

飯田「言ったろ、緑谷君」

 

 

 

飯田「君に挑戦するとっ!!!」

 

ワァァァア!

 

マイク「ぬぁあああっ!?速っ速っはは速あああっ!?」

 

マイク「空前絶後!!飯田!君まだ必殺技隠し持ってたんかい!」

 

マイク「予選の時に出そ!?そーいうの!」

 

スタジアムには再び大歓声が巻き起こる。飯田君の見せた超加速のパフォーマンスは会場にいた観客全員の心を震わせた。

 

【インゲニウムの弟】という肩書きもあり開始前からある程度注目されてはいたものの、今の一連の場面により期待値はグッと急上昇した事だろう。

 

マイクも興奮のあまりテンパってます。

 

悟空「緑谷……!」

 

 

 

 

 

 

だからこそヤバイ。

 

後1分未満というこの土壇場の所で逆転劇が起こってしまった。

 

加えてこちらは防御に徹してたから他のハチマキに気を取る余裕も無し。

 

 

 

マイク「ここで轟チーム意地を見せるーー!!決死の1000万P獲得成功!!!」

 

マイク「そして緑谷!!急転直下の0Pーーー!!」

 

この状況でハチマキ取られるのは相当ヤバイ!!飯田君のレシプロにも勿論おったまげたがそんな場合じゃない!

 

このままだと皆…!!

 

緑谷「常闇君!突っ込むぞ!!」

 

常闇「上鳴がいる以上攻めでは不利だ!他のPを取りにいくのが堅実では…!?」

 

緑谷「…っ!」

 

迷ってる暇は無い、そんな事は分かってる。だけどなりふり構わず突進すれば自分の首を絞める結果となる。

 

選択肢1つで皆の命運が決定されてしまう。

 

失敗は許されない。

 

緑谷「考えろ…考えろ…確かに常闇君が言ってることは一理ある。だけど今更どこにどの位ポイントが持ってのかを把握してないこの状況で行くのは無謀!取れたとしても4位までにはいけない!それだったらもう飯田君が動けなくなった向こうを…でもまだ上鳴君と麗日さんがいる…それに無闇矢鱈に突っ込んでしまえば結果は言わずもがな…けど上鳴君と麗日さんも限」ブツブツ…

 

マイク「後30秒!!!」

 

考えれば考える程ジレンマが悪化していくだけで切羽詰まってしまう。

 

緑谷(落ち着け…冷静になれ……!必ずどこかに突破口は…)

 

緑谷(突破口は…)

 

 

 

後数十秒で見つかる訳ないだろ馬鹿野郎…

 

単独舞空術で狙いに行ったってハチマキを所持しているのがほぼA組以外のチームだ。個性によっちゃ詰んでしまう。

 

取り返しに行こうとしても轟君に瞬時に凍結され返り討ちに合うのが見え見えだ。

 

 

 

 

駄目だ…挽回できるような策も隙も見当たらない。

 

また皆を失望ささるのか…?USJと同じように?あんな結末を?

 

緑谷「……っそ……」グッ…

 

常闇「緑谷…」

 

八百万「緑谷さん…」

 

陰鬱な顔になりながら右拳を強く握りしまるも次第に緩まり、脱力していく。

 

 

やっぱり……最初から僕には無理だったのかな、リーダーなんて。

 

 

 

ごめんよ、皆…全員僕のせいで。

 

一瞬についてきてもらったのに

 

最っ低だ…自

 

 

拳藤「隙あり」ビシッ

 

緑谷「痛!?」

 

いきなり拳藤さんが大拳解除して右手で脛を殴ってきた。滅茶苦茶痛いです。

 

緑谷「な、何すんのよさ!?」ヒリヒリ…

 

拳藤「後ろ振り返んな!!」

 

 

 

拳藤「今はただ真っ直ぐ前向け()()()!!!」

 

 

緑谷「………」

 

 

『…それ過信してない?』

 

『するさ』

 

『強い人と組むに越した事ないじゃん?』

 

 

 

そうだ…こんな所で立ち止まる訳にはいかない。

 

八百万「……」

 

 

『私は…貴方のパートナーですし…』

 

『そういう無駄に視野が広い所、嫌いじゃありません』

 

 

常闇「…」

 

 

『俺を使ってみろ、緑谷』

 

常 『託したぞ』

 

 

皆僕を信じてきた。

 

僕も皆を信じてここまで来た、

 

僕は今3人の思い背負ってんだ…

 

 

 

緑谷「このまま…引き下がれるかよっ……!」

 

常闇「…決まりだな」

 

八百万「ええ!」

 

拳藤「へへ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって再びかっちゃんサイド。

 

見事かっちゃんのハチマキをかっさらい2位へと返り咲いたB組チーム。

 

物間「2位…結構出来すぎたな」

 

物間「ま、キープに専念しようか」

 

円場「観客うるせぇな」

 

既にかっちゃん達と別れてから数十秒経ち、最早彼等の存在など忘れ去りかけていた頃だ。

 

 

再び切島君の声が遠くから聞こえてくる。

 

切島「待てっ!待てっておい!!」

 

 

極度の追跡には流石に呆れてモノも言えない。

 

物間君は大きい溜め息を一つしてからまた喋り始めたが…

 

物間「しつこいなぁ。その粘着質はヒーロー以前に人として

切島「爆豪待て!!勝手すなああああっ!!!」

 

物間「は?」

 

 

その発言でようやく気づいた。

 

切島君が呼びかけているのは自分達ではない。

 

少し目線を上にすると…

 

 

爆豪「…っ!!」

 

ボオオッッ!

 

 

爆風で勢いよくこちらに向かって飛び上がっているかっちゃんの姿が…

 

 

物間「円場!防壁(ガード)!!」

 

円場「っしゃっ!」

 

動揺する間も無く空かさず前騎馬に指示を出す。円場君は大きく息を吸い空気を口内に溜め込み、放出すると…

 

ドガッ!

 

爆豪「っ…!」

 

かっちゃんが目視できない何かしらの障害物にぶつかってしまう。幸い淵に指が触れかかっていたのでそこを掴み空中に浮く事はできた。

 

円場「へっ!見えねー壁だ!ザマーミロ」

 

 

円場硬成。個性【空気凝固】

 

呼吸を行い、円形の空気の壁や足場を構成!

 

肺活量によって大きさは自由自在だ。

 

 

爆豪「こなクソ…」

 

ブンッ

 

爆豪「がっ!!!」バリッ!

 

負けじとかっちゃん右は腕を勢いよく振り下ろし壁を殴り壊して強行突破する。物間くんの首に巻いてあったハチマキを手にし…

 

 

ビリッ

 

物間「取られた!2本っ…」

 

マイク「爆豪チーム!ケツから堂々3位へのランクイン!!」

 

マイク「この終盤での順位変動激しい!若気の至りだー!」

 

 

奪う際、右腕を勢いよく後ろに運んだ為後ろに仰け反り落下しそうになるかっちゃんだが寸での所で瀬呂君がテープを伸ばしにキャッチに成功する。

 

伸ばしたテープを巻いて無事かっちゃんを騎馬の上に着地させる。

 

とうとうB組も追い込まれた。

 

Pが一気に減ってしまった為順位が下がってしまったのではないかと彼らは不安に駆られるがまだ4位、かっちゃん達から奪い取った持ち点655Pのハチマキを守ればと物間君が奮起させる。

 

瀬呂「飛ぶ時は言えったろ爆豪!」

 

切島「けどファインプレーだぜ!これで通過確実だ!」

 

芦戸「何とか逃げ切ろ!」

 

 

 

爆豪「まだだ!!!」

 

 

かっちゃんチームの方も同様で取った2本のハチマキを死守する様に徹底しようとするが、かっちゃんは相手の残り一本のハチマキももぎ取ろうと反論する。

 

切島君の頭をポカポカ殴りながら

 

瀬呂「はぁ!?んな事してる余裕は…」

 

爆豪「っるのは!!完膚なきまでの!1位なんだよ!!!」ガガガ…

 

切島「痛い!分かったから!痛い!!」

 

芦戸「ええーーやんの!?切島!」

 

切島「いやこいつ人の話聞かねえし…」ガガガ…

 

切島「……一理ある」

 

芦戸「はい!?」

 

 

切島「()()()()()()()()()()()()

 

切島「惚れたぜ。そこん所に関しちゃ」

 

瀬呂「……ったくよ。面倒な」

 

芦戸「あたし女だけど…ま。間違っちゃいない」

 

爆豪「さっきの俺単騎じゃ踏ん張りが効かねぇ!」

 

爆豪「行け!!全力でっ!!」

 

爆豪「俺達のP取り返して1000万も奪る!!!」

 

切島「へいへい…分かりやしたよ。リーダー!」

 

 

物間「早く走れ!あの爆発男は何仕出かすか分からない!」

 

物間「とにかく距離取ろう!」

 

円場「おう!」ダダッ…

 

物間組は再度奪取されないようかっちゃん達との距離を少しでも広げようと他チームの妨害を退けながら逃走を図っていた。

 

残り20秒ちょい。数十mも離れていれば流石に追ってこれまいと踏んでいたみたいだけどさ…

 

 

理不尽を覆すのがヒーローなんだよね、うん。

 

大事な事なので2回言いました、

 

 

爆豪「しょうゆ顔!!テープ!」

 

しょうゆ顔(瀬呂)「瀬呂なっと!!」シュッ!

 

 

後方からかっちゃん組の騎馬が追いかけてきた。何やら企んでいるようだがそんな事お構いなしに瀬呂君の伸ばしたテープを軽く避ける……?

 

円場「はっはー!外れだバァカ!」ピタッ

 

物間「…?」

 

物間(今あいつ…わざと僕等ではなく地面に?)

 

爆豪「黒目!!溶解液弱!」

 

黒目(芦戸)「あ・し・ど・み・な!!」ドバッ!

 

直様かっちゃんは芦戸さんに進行方向に溶解液を掛けるよう指示するが…

 

()()()当たらない。

 

 

物間(な、何をする気だ…A組!)

 

態々攻撃を外す意図が分からず次第に彼の心に困惑と焦りが生じてくる。観客席にいる人々も皆何をしているのかさっぱりという状況だったが…

 

 

ただ3人、A組の彼等の作戦に気づいた者がいる。

 

 

相澤(物間…B組の対応は合理的でとても良い)

 

相澤(ただ…痛いな。考慮し損ねたのは)

 

 

オールマイト(爆豪少年!)

 

オールマイト(君は言われずとも非常によく理解しているんだろう!?)

 

 

 

オールマイト 相澤((常にトップを狙う者とそうでない者の執念の差を…!!))

 

 

 

 

ふと身の危険を察知した物間君が後ろを振り向く。すると……

 

いつの間に移動したのか、目の前にはかっちゃん達が現れていた。

 

 

物間「なっ!?」

 

切島「俺これでもバランス感覚は鍛えてんだよなぁ」

 

物間「……まさかお前…!!」

 

そう。そのまさかだ。

 

切島君の個性を利用し、足を硬化させる事によってより早く滑走し急接近できたのだ。テープに伝って滑れば標準がズレることも無い。

 

 

悟空(軽い挑発に引っかかちまうのは良くも悪くもベジータ似か…)

 

悟空(でも…その分負けず嫌ぇだから失敗すりゃとことん何処が悪かったか探って特訓して力つけていく)

 

悟空(そこは緑谷にも無ぇ強みかもしれねぇな)

 

悟空(……試しに煽って正解だったぞ)

 

 

ここまでできれば後は簡単。奪い取るだけ。

 

 

 

 

 

 

爆豪「っしゃらぁっっ!!」ボォオッッ!!

 

ビリィッ

 

物間「っぁあ!?」

 

マイク「ヒューーッ!爆豪容赦なし!!やられたからやり返しましたってか!」

 

マイク「彼はアレだな完璧主義者!?」

 

マイク「さぁ時間ももう残り僅かだぜ!!」

 

物間君の首に付いていた最後のハチマキを無理やり彼の身体から引きちぎる。すれ違い際に強めの爆発を顔面に炸裂させた。

 

合計1000P以上。とうとう2位と轟組に次いでトップ。

 

だが満足するなどある筈も無く、残り20秒にも関わらず1000万P強奪を狙う。

 

爆豪「次ぃ!!デクと轟ん所だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「行けぇえええっ!!」

 

常闇「ああっ!」ダダ…

 

タイムリミットは20秒、これが本当に最後のチャンスだ。1000万Pのハチマキを奪い返すべく前へ突き進む。

 

飯田君はエンジンをエンストを起こし動けない状態だ。10、20mしか離れてない為すぐ逃げようとしてもすぐ追いつかれるだろう。

 

轟君が迎撃態勢に入る。

 

轟「上鳴、麗日…手出し無用で頼むからな」

 

上鳴「言われずとももうウィけるような状態じゃねぇよ…」

 

麗日「もう倒れそ…」

 

取れる確証なんて全く無い!でも今やらなきゃもうチャンスだって無い!!虚仮威し…出来れば使いたくなかったが…!

 

 

緑谷「界王拳!!!」ボォオッ!

 

轟「!?」

 

接近しながらも身体に紅いオーラを帯びせ、戦闘力を大幅に高める。1.5倍でも結構体力使うんだぞ!?

 

右腕を前へ突き出し轟君の首目掛けて伸ばしていく。それに対して轟君は左腕で顔を隠すようにして添え、ガードの構えをする。

 

来た所を右手で凍らせるって魂胆だろうがやらせるかよ!!

 

緑谷「あああああああっっ!!!」ゴオオッ!

 

轟「……っ!」

 

ボオオッ!!

 

間近で発せられた雄叫びと気迫に驚いた轟君は咄嗟に左手を開放し、炎を灯けてしまう。

 

ここだ!!!

 

 

シュンッ

 

緑谷「らあっっ!!」ガッ!!

 

轟「!!」

 

当たる寸前で空を切るように彼の左腕を右下へと弾いた。その衝撃でふと我に返り狼狽する。

 

轟(俺は何を…反射的に個性を……)

 

轟(っべぇ!)

 

遅い!左手に気を取られている間に肝心な場所を見落としていたな!

 

彼が自分の右腕の方から目を離している隙にハチマキを取ればいい!!

 

下か!?上か!?それとも真ん中!?最後に取ったのが上だからそこが無難だが轟君の事だ…シャッフルしてる可能性もある!

 

って拉致あかねぇ

 

 

 

 

緑谷「全取りだああああっ!」ビリィッッ!!

 

轟「!?」

 

ダダダ…

 

轟君の首部にあったハチマキ3本を左腕で掴み、破り取る。そのまま下げていた彼の左腕の方へと通り越した。右腕に触れて万が一凍ったら怖いからな…

 

マイク「おおおーーっと!残り十数秒で緑谷も怒りの奪還!!」

 

緑谷「取った!!取ったああっっ!!」

 

なんとかハチマキの奪取には成功したものの果たして1000万かどうかは定かではない。最悪彼等の初所持のハチマキとその他の合計Pが4位未満って可能性もある!だが確認している時間は無い!!

 

後はもう逃げるだけ!!

 

遂にマイクによる残り10秒のカウントダウンが始まる。

 

 

マイク「さぁタイムリミット10秒切るぜ!終了までの10カウント行くぞエヴィバディ!!」

 

マイク「10!」

 

轟「追え!!取り返す!」<9!

 

飯田「無茶だ!もう走れないと言っただろう!」<8! 7!

 

常闇「これは…」<6!

 

拳藤「行ける!」

 

爆豪「デクゴラァッ!!」ダダッ

 

マイク「5!!」

 

八百万「緑谷さん!爆豪さんがこっちに」

 

マイク「4!!」

 

緑谷「こんな時に!?」

 

マイク「3!!」

 

悟空「……」

 

マイク「2!!」

 

オールマイト「……これは……」

 

マイク「1!!!」

 

 

 

 

 

マイク「TIME UPPPP!!!」ピィィィ!!

 

スタジアム中に競技終了を知らせる笛が鳴り響く。とうとう騎馬戦は終戦したのだ。

 

その瞬間フィールド内の全騎馬が崩れ落ち、地面に倒れ込んでしまう。

 

芦戸「っそぉぉお!」

 

麗日「取り返せんかった…」

 

飯田「と、轟君…何をしているのだ…あれ程注意喚起したろう!?」

 

轟「……」

 

爆豪「クソがぁぁあああっ!!」

 

緑谷「はぁ…はぁ…」

 

拳藤「あ……ぶねぇっ…他の騎馬と激突しかけた…」

 

残り4、5秒の時にかっちゃん達がこっちに猛突進してきて一時はどうなるかと…後少しで衝突せざるを得ない状況だったぞ。

 

倒れた拍子にハチマキを落としてしまった。拾って確認しないと…

 

マイク「さーて!それじゃ上位4チームの発表行ってみよう!」

 

常闇「…緑谷」

 

緑谷「……?」スッ…

 

地面に落ちていたハチマキに手を伸ばすも常闇君が先に拾ってこちらに見せてきた。

 

 

 

 

そこには無数に書かれていた0の数々が並ばれていた。勿論左端は1になってます。

 

緑谷「……っ……」プルプル…

 

常闇「よくやった…お前が作った勝利だ…!!」

 

 

 

 

 

 

マイク「緑谷チーム!1000万保持達成1位ぃぃいいい!!!」

 

 

緑谷「いいいいい……」

 

緑谷 拳藤 八百万「よっしゃあああああ!!!!」

 

 

 

 

嬉しさの余り3人一斉に高く飛び跳ね、大きく歓喜の叫びを上げてしまう。

 

第2種目も…皆でクリアしたんだ。

 

それぞれ勝利の喜びを噛み締めながら、最終種目へとコマを進める事となる!!!

 

果たして1位を掴むのは…?

 

 

 

 

あ、2位以降は次回発表で




須井化です…はい。

大変投稿か遅れてしまい申し訳ございません…何度この謝罪をした事か…

いやその…うん。期間は長かったんですよね。いつもと比べると……

言い訳出来ませんわ…サボってた訳でも無いんですがねぇ…(惚け)←いや本当に

さて、今回は騎馬戦終了まで。もうちっとだけ書こうと思っていた俺の姿はお笑いだったぜ。

凡戸君の後ろにいたのが小大ちゃんと初めて知ったワイ、感激。

B組の皆もこれから色々と絡ませる予定なのでお楽しみに!

いかがでしたか?



次回は皆楽しみお昼休み!

色々とダベるだけなので平和です。

活動報告に書いてある例のアレは週末(日 23:59)までの記載をよろしくお願いします。

?アレって?まぁ見てからのお楽しみ。







何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。
3月21日(火)以内に()2()5()()()投稿を予定しております。

お楽しみにー……え?なんで傍点付いてんの?

(ガシッ

ファッ!?

八百万「話をしましょう」

………ゑゑゑゑ!?

〜続く…?〜


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第25話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!第1種目の障害物競走もぶっちぎりの1位で予選通過!

第2種目の騎馬戦では八百万・拳藤少女、常闇少年と共に数々の奇襲を退けた。

後1分と言う所で飯田少年の秘策【レシプロバースト】により轟少年に1000万Pが奪われてしまうが…

不屈の精神で持ちPを取り返し、見事最終種目へと足を入れる事となる。

更に向こうへ!PlusUltra!!!



騎手を胴上げしながら歓喜するチームも居れば

 

納得出来ない結果となり泣き崩れるチームも居た。

 

各々の所感に違いはあれどそれを胸に収め、午前の部のプログラムは全て終了した。

 

 

さて、ここで前回紹介しそびれた騎馬戦のリザルトを発表しようか。4位までだけど。

 

 

まず前回も発表された通り、1位は緑谷チーム。トータルは1000985P。元々の持ちPと轟君が最後所持していた70Pと490P、序でにいただきました。

 

2位はかっちゃんチーム。トータルは1350P。見事物真君からハチマキを奪い返したまでは良かったものの…僕達に追いつくまでには至らず時間切れ。

 

3位は……多分B組の誰かしらか轟君辺りかと予想するのだろうが、1番これが意外な結果だった。

 

 

心操チーム。因みに言っておくと心操という生徒はヒーロー科には在籍していない。彼は普通科の生徒。この間かっちゃん達に宣戦布告してきた男子だ。

 

トータル1105P。ついさっきまで鉄哲チームが所有していた得点とそっくりそのまま…というか彼らが持っていたハチマキ2本ですね。

 

僕自身あまり目をやる余裕は無かったが発表時のマイクの異様な驚き様を見る限りPを入手したのはタイムアップ寸前と考えるべきだが……果たしてどうやって彼らは鉄哲君達からハチマキを取ったのやら…

 

そして最後、4位でギリギリ通過したのは轟チーム。結局自分達の持ちPだけで騎馬戦が終了してしまうが、幸いな事に元々の所持Pが高かった為どうにか生き残る事だけには成功する。

 

以上が最終種目への出場可能チーム。出場可能チーム。

 

大事な事だから2回言った。

 

 

 

 

マイク「それでは1時間ほど昼休憩入れてから午後の部始めるぜ!じゃあな!!」

 

ガヤガヤ…

 

 

競技が一旦終わっても観客席の賑やかさは変わらず、寧ろ障害物競走や騎馬戦の観戦によりヒートアップしてきていた。

 

早速今生き残った16人から誰が優勝するのかとネットで議論の嵐が熱く繰り広げられていた。

 

逆に生徒の大半は午前の競技で疲れ果てており、とぼとぼと食堂へと向かっていく。今日は特に時間も少ないし混むだろうなぁ…

 

 

 

蛙吹「悔しいわ三奈ちゃん!おめでと」

 

芦戸「うーん…爆豪は轟対策で私入れただけだからなぁ」

 

芦戸「実力に見合ってんのか分かんないよー」

 

羨ましがる蛙吹さんに対して微妙な反応を示す芦戸さん。酸は汎用性あるしかっちゃんの判断合ってると思うけどな…案の定活躍しましたし。

 

羨ましいといえば麗日さんが飯田君に色々文句言ってたな。

 

麗日「飯田君ずるい!あんな超必隠してて!」

 

飯田「ずるいとは何だ。あれはただの【誤った使用法】だ!」

 

反論の仕方が飯田君っぽいな。一発逆転の起死回生を狙う技としちゃ上出来だし僕からすれば【立派な活用法】だ。

 

上鳴「ウェーーイ!」

訳:楽しかったアレ

 

そういえば上鳴君、電邪気になるんだったね。…デンジャキって誰だ。

 

飯田「どうにも緑谷君とは張り合いたくてな」

 

麗日「男のアレだな〜…っていうか」

 

麗日「その緑や…デク君は?」

 

飯田「そう言われてみれば轟君も居ないな…」

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「……」

 

緑谷「あのー…」

 

轟「…」

 

 

緑谷「話って何?」

 

 

 

一先ず先に控え室に戻っていた僕と轟君は人気の無い廊下で2人立ち並ぶ。彼に突然話がしたいと言われ流れで来てしまったが…

 

緑谷「えと…今話さないといけない事…なのかな?」

 

緑谷「早く行かないと食堂混んじゃうし、ね?」

 

という風に少し急かすように轟君に話しかけると、彼は先程よりも冷たい視線をこちらに向けてくる。

 

その表情はさっきより多少眉の角度を変えただけであくまで表向きに感情を剥き出しにしてはいなかったがその眼からは何か静かに燃ゆるようなモノを感じ取れた。

 

 

純粋に怒りを見せるかっちゃんとはまた違う冷たい威圧感…

 

 

轟「気圧された」

 

緑谷「?」

 

轟「自分(テメェ)の誓約を破っちまう程によ」

 

緑谷(誓約……?もしかして使ってなかった左側の事か?)

 

話したい内容はようやく理解し出してきたが今まで半熱を抑えてきた訳を今ここで話す理由なんて僕には思いつきもしなかった。

 

寧ろそこに何かしらのデメリットがあって使ってないとすると態々ここで相手に弱点を教えるのは危険なのでは…

 

轟「飯田も、上鳴も、麗日も、八百万も、常闇も……」

 

轟「全員が全員()()()何も感じ取っちゃいなかった」

 

轟「……何故だろうな」

 

緑谷「???」

 

あの時…というのは騎馬戦の際に界王拳を使ってすぐ解除した時の話か?確かに驚いた拍子に左を解放してはいたが…

 

緑谷「それは…つまりどういう……?」

 

轟「……脳無とカカロットが戦っていた時、俺の親父と似たような…というより」

 

轟「それ以上の気迫を感じていた」

 

轟「そう…まるでオールマイトみてぇな……そんな感覚だった」

 

緑谷「オールマイトみたいな…?」

 

轟「そしてそれは緑谷(お前)も然り」

 

轟「ガキの頃から肌で、直に親父と向き合っていた俺だから言えた事なんだろう」

 

轟「すぐにこの結論に辿り着いた」

 

轟「なぁ…緑谷」

 

 

 

 

轟「お前、孫先生の隠し子かなんかか?」

 

緑谷「……………」

 

あーそう来る?そうなる?

 

まさかの血縁関係説が出るとは。まぁ確かに言われてみればコネとか使って就職させたとかやたら戦闘スタイルが似てたりとか考えると成る程、結構いい線行ってんな…義父だからギリギリセーフ?

 

とりあえず誤解を解く為にあれこれと反論してみる。

 

緑谷「ちっ…違うよ。それは」

 

緑谷「って言ってもね!もももしそれが本当なら隠し子だから違うって言える訳ないじゃんとかそ、そそうなるけどさ!とにかくそんなんじゃなくて!あのそのこのどの?えと…」

 

緑谷「そ、その…逆に聞くけどさ、なんで君は僕をそんなに狙おうとしているの?」

 

轟「…そんなんじゃなくて…」

 

轟「つー事は何かしら言えない繋がりがあるのは確かだよな?」

 

的確なツッコミありがとうございます。急に悟空さん絡みの話をクラスメイトと話したからかなりキョドッてしまっている。つい口を滑らせ余計な情報を与えてしまった。

 

緑谷「……」

 

轟「俺の親父はエンデヴァーだって事は知ってるよな?」

 

轟「万年No.2のヒーローだ」

 

轟「敵連合(ヤツら)が言っていた対オールマイトの兵器…あの時オールマイトが来たとしてその勝敗は考えられねぇ…」

 

轟「が、()()()が親父以上……オールマイト級の何かを持っているのだとしたら」

 

 

 

轟「俺は尚更勝たなきゃならねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コツコツと静かに階段を下る音がする。顔面・肩部周辺を激しく燃え上げさせながらゆっくりと下階のトイレへと向かう1人の男性が居た。

 

それ室内燃えるんじゃねとか野暮な質問しちゃいけない。

 

「オッス……じゃなくて、よっ!」

 

「ここに居たのか!」

 

その男性を見つけたと思うともう1人、階段の前でその人を呼びかける男の人がいた。

 

髪はV字に大きくピョンっとはねている…皆よくご存知のあの人だ。

 

 

オールマイト「超久しぶり!お茶しよ!」

 

オールマイト「エンデヴァー!」

 

エンデヴァー「オールマイト……」ギロッ

 

後ろを振り向き、声の主を確認するや否やすぐにオールマイトを強く睨みつける。まぁいつもの事だと構わずオールマイトは話し続けるが。

 

オールマイト「超久しい!10年前の対談振りじゃあないか?」

 

オールマイト「君同窓会とか全く参加せんからな…」

 

オールマイト「見かけたから挨拶しとこって思ってさ」

 

エンデヴァー「そうか。ならもう済んだろう」

 

エンデヴァー「ならとっとと去れ」クルッ

 

おちゃらけすぎている挨拶にうんざりとするエンデヴァー。再び階段の方を向き、歩き出す。

 

エンデヴァー「茶など冗談じゃない….便所だ」スタスタ…

 

エンデヴァー「失せろ」

 

ダンッ

 

エンデヴァー「ぬっ」

 

オールマイト「HAHAHA!つれない事言うなよー!」

 

下に降りようとするエンデヴァーを飛び越え、前の段に着地し笑いながら通せんぼするオールマイト。今すぐ離れたい所だが力ずくでは通じないと察した彼は渋々オールマイトの話に付き合う事にした。

 

エンデヴァー「何の用だ」

 

オールマイト「君の息子さん、焦凍少年さ」

 

オールマイト「力の半分も使わず素晴らしい成績じゃないか」

 

オールマイト「教育がいいのかな」

 

オールマイトの含みのある意味深な発言に気になったエンデヴァーは途端に問いかけた。

 

エンデヴァー「貴様、何が言いたい」

 

オールマイト「いや、マジで。聞きたくてさ」

 

オールマイト「()()()()()()()()()()ってのをさ」

 

エンデヴァー「俺が?貴様に教えろと?」

 

エンデヴァー「相変わらずそのあっけからんとした態度が癪に触る」スタスタ…

 

ドッ

オールマイト<痛!

 

エンデヴァー「フン」

 

オールマイト「ご、ごめん」ショボン

 

少し会話するとすぐに去ろうと再び歩き出し、オールマイトを強く自分の肩で押し退けるエンデヴァー。流石にふざけ過ぎたかと思い、申し訳ないと謝りながら彼はしょぼくれてしまう。

 

階段を下りながらエンデヴァーはこんな台詞だけ残していき立ち去っていった。

 

 

 

エンデヴァー「これだけは覚えておけ」

 

エンデヴァー「アレはいずれ貴様をも超えるヒーローにする」

 

 

 

 

エンデヴァー「そうするべく、作った仔だ」ニィ…

 

オールマイト「……!」ゾッ…

 

 

彼のその顔は嘲笑っていた。

 

エンデヴァーの表情に一瞬動揺し、オールマイトはそれに対し何も答えられなかった。

 

オールマイト(………何を…?)

 

エンデヴァー(今は下らん反抗期だが…)

 

エンデヴァー(必ず超えるぞ)

 

エンデヴァー(超えさせる…!!)

 

 

 

 

 

 

 

エンデヴァーは非常に野心的な性格であった。ヒーローとして就職後、昇竜の勢いで名を馳せ、他を遥かに凌駕していった。

 

そんな彼にとって平和の象徴は正に最大の障害だった訳だ。

 

試行錯誤を繰り返し打開オールマイトを目指すエンデヴァーだったがとうとう断念。()()()()敵わないと判断し、苦肉の策に出た。

 

 

 

それが【個性婚】だ。

 

【超常】が起こってから第2〜3世代間で大きく騒がれた制度だ。最も、今となっちゃ法律で禁止されてはいるのだが。

 

自分の個性強化を図り子孫をより強力な人間にする事を目的に結婚を試みる、というか多くは強制させる…が正しいな。

 

色々と問題点有りまくりなこの結婚法だが実際昔には何十世帯もの人々がこれを行っていた。子を産むのではなく、作るのだ。何とも酷い話だと思わないか?

 

No.2と言えど世界で2番目の力を誇るエンデヴァー。実績と財産は腐る程存在していた彼は轟君の母親の親族を丸め込み今の冷凍能力を手に入れた。

 

 

 

要はオールマイト以上のヒーローを自身の手で作り上げ、自身の欲求を満たす為に自身の子を産ませた…という事だ。

 

 

 

 

勿論、妻…轟君の母親に全くもって愛など感じていなかったエンデヴァーは反抗しようとすると直様彼女に暴行を加えたり、恐喝したりなどして最早奴隷同然の扱いをしていた。

 

 

轟君曰く、「記憶の中の母はいつも泣いていた」。

 

度重なる苦痛や恐怖を味わう事により遂に発狂寸前にまで身体も精神も追い詰められていた。

 

 

 

10年前、母親は彼の頭部に煮え湯を浴びせてしまう。

 

 

 

言い忘れていた…というか敢えて言ってなかったというか、轟君には頭から左眼にかけ大きな火傷の跡があったのだ。

 

左は勿論、炎熱の方なので火傷をする理由が尚更考えられなかった。切島君みたいに目を擦ってる最中誤って個性発動して擦り傷を作ったとか…知らぬが仏として聞かないではいたが…

 

まさかそんな経緯が………

 

 

 

 

 

轟「……とまぁ、ざっと話はしたが俺がお前につっかかんのもあの屑野郎を見返す為の行為だ」

 

轟「あんなクソ親父の個性なんざ必要ねぇ」

 

 

 

轟「使わず【1番に上り詰める】」

 

轟「そして奴を完全否定する」

 

 

緑谷「…………………」

 

まるで何処ぞのコミック主人公ばりの背景ではないですか。聞いている半ばもう彼にかけられるような言葉は一切無くなってしまった。

 

あまりにも住んでいる世界が違いすぎた。目指す場所は同じでも、こんなに違うのかって正直ビビった。

 

そりゃまぁ…熱意だとか意気込みだとかなら皆と同じ位あるとは思うけどさ。僕の動機はただオールマイトに憧れたってだけで…

 

 

 

だけ…

 

 

だけ………なの……か?

 

 

 

轟「言えねぇなら別に構わねぇよ」

 

なんで僕はヒーローになりたいと思ったの?

 

轟「お前が孫先生の何であれオールマイトの何であれやる事は変わらねぇ」

 

なんで僕は人と戦おうと思ったの?

 

轟「最終種目で右だけを使ってお前の上を行くだけだ」

 

なんで僕は強くなりたいと思ったの?

 

轟「それだけだ。時間取らせたな」スタスタ…

 

 

 

なんでだろう。

 

 

 

 

 

 

緑谷「僕は…」

 

緑谷「僕はずうっと助けられてきた」

 

轟「…?」ピタッ

 

何か喋りかけたと思い動いていた脚を止め、離れようとした轟君はその場に立ち止まる。

 

 

 

緑谷「1年前も、入試の時も、入学式の日も、USJの時も…さっきだって」

 

緑谷「ここに来る前からだ。僕は今まで…」

 

 

緑谷「ずっと誰かに助けられて今、ここに立ってるんだ」

 

轟「……」

 

緑谷「オールマイト。彼のようになりたい」

 

緑谷「でもその為には1番になる位強くならなきゃいけない。君に比べれば些細な動機かもしれない」

 

緑谷「でも僕だって負けらんない」

 

緑谷「僕を助けてくれた人達に応える為にも…」

 

緑谷「さっき受けた宣戦布告、改めて僕からも」

 

 

 

 

 

 

緑谷「僕も君に勝つ…!!!」

 

ビュオオ…

 

轟「………」

 

 

 

強い風に吹かれ、髪や木々の葉は激しく揺れまるでこれから始まる激戦を示唆する前兆のようだった。それだけ轟君に言い放つと僕等はすぐ別れ其々の行動を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

爆豪「……」

 

その頃、壁の陰に隠れながら誰かが聞き耳を立てていた生徒が1人…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「…」

 

ワイワイ…

 

緑谷「むむむ…」

 

そして食堂に来たらこの有様よ。いつもの数倍騒がしい生徒達の嘶きが食堂全体に拡散されていく。めちゃうるせぇ!アイドルのライブか何かかここは!

 

何処でもいいから空いている席は無いかと辺りを歩き回ってみるもののどこも満席状態。そりゃまぁほぼ同時に全員食べに来ますわな…1時間しか昼休み無いし。

 

どこのテーブルも全部埋まってしまっている為仕方なく、外に出て1人で食べる事にした。

 

 

 

 

 

と食堂から出ようとした時だった。

 

 

 

「緑谷さーん!」

 

 

 

と遠くから僕を呼びかける声が聞こえた。

 

「こっち!こちらですわー!」

 

この口調…まさかと思いその方向を向くと……

 

 

なんと見事にA.組女子6人で固まっているテーブルがあるじゃないか。…って2つ席空いてんな。

 

八百万「緑谷さんが遅くなると思って皆でここを空けていましたのー!」

 

八百万「さっ…ご、ご遠慮なさらずー!」

 

なんと…僕の為に皆席をキープしていてくれたのか!?女子陣の配慮に感動するが……

 

 

クスクス…

 

緑谷「……」

 

 

頼む。食堂でそんな叫ばないで?

 

 

 

 

周りからクスクスと失笑を受けながら女子達が空けてくれた席によっこらせと着席する。午前中ほぼぶっ通しで気も体も休める間もなかったからなぁ。

 

疲労困ぱいだった精神・身体に熱々のとんかつは堪らない。席に座った途端7、8杯あるカツ丼に盛大に箸でがっつき始める。女子のいる前でなんてはしたない…

 

緑谷「」ガツガツ…

 

麗日「相変わらずすごいスピードで平らげるねぇ…デク君」ヒソヒソ…

 

蛙吹「男子の食欲って軒並みこんな感じなのかしらね…」ヒソヒソ…

 

ボソボソと呟きながら会話していく麗日さんと蛙吹さん。2人共話したいのは山々なのだが最近交えた会話が会話である為迂闊に話しかけれなかった。

 

一方僕の隣に座っていた八百万さんはというと…

 

八百万「」モグモグモグモグ…

 

三段重ねになっているハンバーグを淡々と食べていた。こちらもサラダ2皿と白米3杯、更にショートケーキ3個と豪華なラインナップとなっている…というかこっちよりも多くね?

 

蛙吹「いや…こっちもこっちで大概ね」

 

葉隠「あれだけ食べてあの体型維持してるもんね…」

 

耳郎(あれ位食べれば胸大きくなるモンか?)モミモミ…

 

この男女2人の常識を覆す食欲には女子5人も呆れ果て、たじろいでしまう。耳郎さん胸揉んで確かめなくてもいいです。

 

後中には…

 

 

麗日(いいなぁ…ちゃっかりデク君の隣座って…)

 

 

と嫉妬している人もいた。なんで麗日さん焼きもちやいてんだ?

 

結局お昼ご飯は僕と八百万さんはこんな膨大なら量であるにも関わらずたった7分で終了。

 

一応2人共皆よりよく食べているってのは自覚しています。一応…

 

満杯となったお腹を右手で撫りながらタイミングを見計らい、八百万さんがここぞとばかりにこちらに話しかけてきた。

 

八百万「緑谷さんは…また豚カツですの?」

 

八百万「この間もカツサンド食べてましたわよね?お好きなのですか?」

 

緑谷「あー…うん。カツ丼は大好物だね」

 

緑谷「何と言ってもあの肉汁が堪んないし、後ここの豚肉すごい柔らかいんだよね」

 

八百万「へー…私も今度食べてみようかしら…」

 

緑谷「是非食べてみなよ、おすすめするよ。特にカツ丼に乗っている卵も絶品だし…」

 

という風に今度は2人で仲良く食後のお話だ。またもや女子5人は置いてけぼりとされてしまう。特に麗日さんと蛙吹さんがこっち睨んでくるような気がしてきたが多分気のせいだろう。うん…多分。

 

 

会話が快調してきた今を好機とし、一気に話の主導権を握ろうとする彼女だったが…

 

八百万(よし…話の流れは完全に掴めましたわ!このまま…)

 

「おー良いとこに空き席発見」

 

芦戸「?」

 

「ちょっとお邪魔するよ」

 

緑谷「………ああ!」

 

 

 

僕の向かい側にあった空席に誰かが座りに来た。聞き覚えのある声だと気付き前を向くとそこにはなんと言わずと知れた拳藤さんの姿が。

 

 

拳藤「お、何処ぞのあーっとアレだ…うん」

 

拳藤「デクか!久方ぶりだー!」

 

緑谷「あ…はい。デクです」<ヒサカタ?

 

 

流石に今回は僕の事を忘れてはおらず誰だかちゃんと把握してはいたものの名前が不明である為呼ぶ事が出来なかった。…というか僕さらっと自己紹介し忘れていたな。

 

…そして出した驚愕の答えがまさかの【デク】だ。確かにかっちゃんが連呼してたからそれに気づいてもおかしくはないのだが…

 

まずその前に目に入ったのがプレートの上に乗っていた料理だ。なんとサラダ1皿のみ…

 

僕達とは真逆の昼食で思わずツッコミを入れてしまう。

 

緑谷「えっと……お昼ご飯はお金足りなかった…のかな?」

 

拳藤「あ…コレ?いや食欲無いとかそういう訳じゃ無いんだけどさ…」

 

拳藤「最近食べ過ぎてさぁ…少し減量中」プル…

 

耳郎「」

 

 

 

八百万さん並みの巨大なそのブツを1回揺らしながらそんな事を言っていた。女子6人の脳内にピシッと鋭く亀裂が走った。

 

そんな事お構いなしに僕は更に彼女達に苦しい追撃を仕掛けてしまう。

 

緑谷「そうだ…拳藤さん!B組の個性知ってる分できるだけ教えてくれない?」

 

拳藤「ん?いいけど…なんで?」

 

緑谷「なんで…というか一応…知っておいて損はないし」

 

緑谷「後最終種目で当たるB組の個性も把握しときたいし」

 

拳藤「先を見通した情報収集ね…いいじゃん。あたし協力したげるよ」

 

緑谷「ありがとう!ほんっと恩にきる!」

 

八百万「」ゴゴゴ…

 

麗日「」ゴゴゴ…

 

蛙吹「」ゴゴゴ…

 

芦戸「お、おーい…麗日…うららかじゃなくなってるよー?」

 

耳郎「今は放っておきなよ…刺激したら殺される」

 

耳郎「今回ばかりは同意するけど」

 

 

後から聞いた話だが僕の周りにいた3人の女子から殺気丸出しのオーラが漂っていたとか何とか…何故かは今でも定かではない。あくまで僕の中での話だが。

 

 

 

拳藤「……まぁこんな感じかな」

 

緑谷「うんうん…だいたい分かったよ。20人共把握できたと思う」

 

拳藤「そっか。なら良かった!」

 

拳藤「さてと…そんじゃ食い終わった事ですし」

 

拳藤「そろそろあたしは行きますか」スタッ…

 

緑谷「あ…」

 

一通り教えてもらった頃拳藤さんの食事も無事終わり、椅子から立ち上がり彼女は下膳をしに行った。

 

ようやくB組が消え、ほっとしたA組女子。主に八百万さんと麗日さんと蛙吹さんなのだが。再び話しかけようとする八百万さんだが…

 

八百万「み、緑谷さん…?今聞いたB組のデー

緑谷「っと…待った待った。まだ話したい事あるんだけど」スタッ

 

八百万「…緑……谷………さーん」スタスタ…

 

間髪入れずに席から外れすぐに僕は拳藤さんを追いかけてしまう。その場を離れてからも八百万さんは僕に呼びかけるが結局最後まで届がなかったと言う。

 

悪意があって無視した訳じゃ無いんです。本当なんですって…

 

八百万「私達もさっさと食べ終わらせてしまいましょう…」ズゥゥン…

 

麗日「うん…そだね」ズゥゥン…

 

蛙吹「午後の部の準備もしないといけないものね」ズゥゥン…

 

芦戸 耳郎 葉隠「「「………」」」

 

肩を落としながらやれやれと再び食事を開始するA組女子。無論八百万さんはもう食べ終わってるのでブツブツと呟く事しか出来なかったが。内容はあまり公にできるようなものじゃないらしいので今回は省き。

 

それから暫くそこのテーブルには不穏な空気と3人の女子の呻き声だけが流れ続けていたとか何とか…あくまで周りにいた生徒から聞いた話だから一概には言えない。

 

 

 

 

 

 

そんな状況になっているとも知らずに僕は呑気に拳藤さんの後を追っていた。下膳を済ませ、食堂の扉で彼女に追いつき直様呼び止めた。

 

緑谷「拳藤さん!」

 

拳藤「ん?なーにデク」クルッ

 

拳藤「もしかして聞き漏らし?さっき確認したじゃん」

 

呼ばれた事にすぐ気付き、後ろを振り向きそれに応じてくれた。対応迅速で助かります。

 

緑谷「いや…そういうのじゃなくて……さっき急に控え室戻っちゃって言えなかったんだけどさ…」

 

 

ペコッ

 

拳藤「……?」

 

彼女に対し深く一礼をし、尊敬・感謝の意を示した。

 

 

緑谷「騎馬戦…ありがとう。組んでくれて」

 

緑谷「終始君がいなければ危ない目に遭ってた所だった。最後決断出来たのも君のお陰だし…」

 

緑谷「ホント…感謝し切れない」

 

拳藤「あ…さっきの……え!?でも私そんな大した事は…」

 

緑谷「いや…最初誰も近寄りもしてくれなかったし、もし拳藤さんが僕に話しかけてくれなかったら……」

 

緑谷「…たら…」ウルウル…

 

 

 

緑谷「僕余った1人と組んで惨めに午前の部で体育祭終了する所だったよおおおおっ!」ドバババ…

 

拳藤「うわ冷たっ!?」

 

僕の両眼から突如として感涙の滝が流れ出す。抑えていた感情がとうとう我慢し切れず表面化してしまった。

 

流石に涙のシャワーは汚い&服が濡れるという恐ろしい問題点があったのですぐに僕に泣き止むよう拳藤さんが説得する。

 

緑谷「あ゛りがどぉぉおっ!!」ドバババ

 

拳藤「ちょ…落ち着け!私はそんなお前に貢献していないしそんな礼言われるような筋合いは…」

 

緑谷「あ…ご、ごめん。あまりにも…嬉しかったから、色々と。うん」

 

拳藤「そ、そうか?なら幸いだけどさ」

 

緑谷「今回はメッチャ助かった!この恩は一生忘れない!割と真面目に!」

 

拳藤「イッショウ…」

 

緑谷「……あ」

 

 

 

オーバーリアクション多発によってとうとう拳藤さんがドン引きし始めてきたぞ。気分を害したのではないかと心配になり僕は焦って対処しようとするも…

 

 

 

緑谷「ごっごめん!ついその…いや感謝の気持ちはホントそうなんだけどさ!興奮しちゃつて言葉上手くまとめられなくてさ!でも僕は

拳藤「ははははっ!一生てお前長すぎるにも程あるだろ!もー!」バンバンッ

 

緑谷「ひゃう!?」

 

逆にウケたらしい。大げさなお礼の言葉が見事ツボにはまり僕の背中を叩きながら必死に爆笑している拳藤さん。とりあえず痛いです。

 

拳藤「あー面白!お前本当面白い奴だよ!」

 

拳藤「……ま、だからお前と組んだんだけどさ」

 

緑谷「?」

 

拳藤「一生忘れない…ね。OKOK。んじゃ…」

 

 

 

 

拳藤「その言葉、私は一生忘れない」

 

緑谷「……」

 

拳藤「約束だ」ニコッ

 

満面の笑みで明るくそう答えると彼女は出入口の扉を開け、食堂から走り去っていった。

 

彼女の後ろ姿はやはり1年前と全く変わってはおらずしみじみと感激したと同時に少し心がモヤモヤしてしまう。その後顔真っ赤にして3分間棒立ち状態になってしまった事は今でも思い出せてしまう恥ずかしい出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分後、遂に午後の部開始!マイクによりDJ解説も再開し早速会場に熱気が戻り始める!

 

マイク「さぁ!なんか1人寂しく昼飯食ってた俺だが気を取り直して午後の部開始だぜぇぇっ!!!」

 

悟空「悪かったって…」ワァァァ…

 

マイク「そんじゃもう最終種目と行きてぇ所だが騎馬戦や障害物で落ちてしまったそこの君!」

 

マイク「あくまで体育祭だ!ちゃんと敗けちまった奴にも活躍の場は残ってるぞ!」

 

マイク「全員参加のレクリエーション企画だ!楽しく競えよ生徒諸君!!」

 

マイク「本場アメリカからはチアリーダーも呼んでいる!華麗な応援で一層種目を…」

 

マイク「……あーと?ありゃ?」

 

チアガールの集団を眺めていたマイクがふと口を止めてしまった。それもその筈、マイクの目の先にいた人物達に悟空さんが目をやると…

 

悟空「……何やってんだあいつら?」

 

マイク「な、なんとA組女子!!まさかの飛び入り参加!突然の乱入だーー!」

 

マイク「一体どーいう事だい!?」

 

八百万さんを始めとするヒーロー科A組の女子生徒6人が揃いもそろってポンポン両手に準備万端の体勢を取っているではないか。

 

まさかの事態に驚きの教員と生徒達だったのだがその様子を見て八百万さんがようやくある2人の策略にハマったと気付いた。

 

八百万「峰田さん!!上鳴さん!!騙しましたわね!」

 

峰田 上鳴「GJ!!」グッ

 

何グーサインしとるんだこの2人は。

 

 

 

 

これはほんの10分前の事。

 

峰田『午後は女子全員ああやってレクリエーションの時は応援合戦しねぇといけねーってよ!』

 

八百万『え?聞いてませんけど…』

 

上鳴『信じねぇのも勝手だけどよ……』

 

 

 

上鳴『悟空先生の言伝だからな』

 

 

 

 

 

あり得ないと思いません?そんな細かな連絡悟空さん自分からするなんて…

 

折角急いで作ったチアガールの服もポンポンも台無し且つ仇になってしまったと知ると八百万さんはすっかり脱力し落ち込んでしまう。

 

八百万「はぁ…どうしてこうも峰田さんの策略にハマってしまいますの…私」

 

麗日「百ちゃんのせいじゃないよ…落ち込まんで」

 

フォローすべく麗日さんは八百万さんに慰めていく。耳郎さんは彼等に怒りを覚え苛立ちながらポンポンを床に投げつける。

 

耳郎「アホだろあいつらっ…」

 

葉隠「まぁ…本戦まで時間空くし、張り詰めてもシンドイしさ!」

 

葉隠「いいんじゃない!?やったろ皆!」

 

逆に葉隠さんはやたら楽観的に捉えすぎな気がする。まぁ彼女自身がノリ気でやりたいのならいいのだろうけど…

 

蛙吹さんは落ち込んでしまった八百万さんの為にある話を持ちかけ説得に持ちかける。

 

蛙吹「逆に考えましょう。百ちゃん、お茶子ちゃん」

 

蛙吹「こんな恥ずかしい格好を晒されたとするならば、いっそここで緑谷ちゃんにアピールすれば…」

 

八百万「はっ!?」

 

八百万さんに電撃走る。

 

麗日「或いは…!」

 

麗日さんにも電撃走る。

 

さっきまで陰気ムードに包まれていた3人組だったがチアガールというビッグチャンスを手にした事により彼女達の冷やされていた熱が再び燃え上がり始める。

 

八百万「麗日さん!蛙吹さん!お互い、頑張りましょう」

 

麗日「うん!」

 

蛙吹「ええ!」

 

終いには意気投合しちゃったよおい。まぁ元気を取り戻してくれたならいいのだが。

 

芦戸「皆青春してるねぇ」

 

耳郎「青春って言うの?アレ」

 

葉隠「三奈ちゃんは青春してないの?」

 

芦戸「え、う、うーん…まぁぼちぼち」

 

耳郎 葉隠「「ぼちぼち!?」」

 

こちらはこちらで恋愛トーク1色になってしまっているではないか。本当に応援する気あるのか皆…

 

因みに僕は控え室で尾白君とお話し中なので実際に見てはいません。

 

そしてとうとう第3種目…本戦の種目内容発表だ。

 

マイク「何はともあれレクリエーション!こいつが居れば後は最終種目を残すのみ!」

 

マイク「本戦の内容!それは即ち…」

 

マイク「進出4チーム総勢16人の生徒による…」

 

 

マイク「ガチ1vs1(タイマン)トーナメントだぁあああっ!!!」

 

 

 




須井化です…はい。遅れに遅れてしまい申し訳ございません。

毎度見事にフラグ回収する事にそろそろ定評がつき始めるぞ…やばいよやばいよ。

お詫び程度におまけつけておきました。地の文つける暇無かったけど…(´;ω;`)

今回はなんか女子メインの回ですね。6割方台詞がヒロイン達のになってます。

轟君の出生云々も明かされましたな。意外とこの奥さん可愛いんですよ、ええ。

後後半雑気味になってない事を祈ろう(手遅れ)。アンケートにご希望に出来るだけ添えたつもりです…はい。

あ、そうそう番外編の女子指定もどしどしお待ちしておりまーす是非どうぞー

(多数決以前に票が集まらない事件が発生し暫く立ち直れない水メロン君がいたりとかいないとか)

いかがでしたか?



次回はとうとうトーナメント戦開始!緑谷君と最初に当たるのは誰でしょうか!?

次回だけで7戦進める可能性が微レ存…

まぁ期待は程々に。



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。

3月25日(土)18:00に第26話の投稿を予定しております。アニメが終わった瞬間始まるぞ!(現状を見て果たして誰が期待するのか)
お楽しみに!









〜おまけ:先生のお昼休み〜

①マイク先生の場合

マイク「…」モグモグ…

ワイワイガヤガヤ…

マイク「…」パクッ



マイク『おい!カカロット!一緒に飯食お
悟空『悪いけど急ぎの用事が出来ちまったんで…』フッ…

気づけば瞬間移動で居なくなっていたと言う。

マイク「悟空ーーー!早く来てくれええええっ!!」

マイク「寂しっ!」



②相澤先生の場合

【市内の病院にて】

マンダレイ「イレイザー。はい、あーん」

相澤「なんでこんな事されなきゃならんのだ」

マンダレイ「こんなて…私が可愛い可愛い弟置き去りにしてまで来てやったのにそりゃないでしょ!」

マンダレイ「貴方手どころか四肢全部やられてるじゃない!誰のお陰で飲み食い出来ると思ってるの!?」

マンダレイ「ほら文句言わず食べなさい!ほら!」

相澤「むごご…」



※マンダレイは大分後に出てくるキャラなので忘れても構いません。

マンダレイ<ハァ!?

相澤(悟空さん…早く来てくむごごご…)







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第26話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!第1種目の障害物競走もぶっちぎりの1位で予選通過!

第2種目の騎馬戦でも八百万・拳藤少女、常闇少年と共に数々の奇襲を退け、1000万P保持を達成。

見事1位で本選突破となり、本戦へとコマを進める事となる。

そして体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦である!

更に向こうへ!PlusUltra!!!



レクには参加せず神経を研ぎ澄ます者。

 

息抜きをしながら緊張を解きほぐそうとする者。

 

それぞれの思いを胸にあっという間に昼休憩+レクリエーションの時間も終了。とうとうお待ちかね?の最終種目の時がやって来た。

 

一部の先生方がせっせと会場設営をする中、トーナメント表を決めるべく本戦出場者の15人が入口付近に集結した。無論A組女子は体操服に着替え直して戻っていたが。

 

 

 

 

……15人?

 

ミッドナイト「レクリエーションも終わった事ですし…それじゃ早速くじ引きで組み合わせ決めてくわよー」

 

ミッドナイト「早く決めないと1回戦の人が急を要して負担が増えてしまうので騎馬戦1位チームからちゃっちゃか引いてってもらうわよ」

 

以前までテレビ等で観戦する側でしか無かった筈が今回はその大舞台での活躍の披露だ。汗を垂らし緊張しながらも期待を胸に膨らませワクワクしている切島君。

 

切島「トーナメント…毎年テレビで見てた舞台に俺等が立つのか!」

 

切島「腕が鳴るぜ!」

 

毎年が毎年こういう方式とは限らないが大抵最終種目はサシで競っているというのは恒例というかお約束というか。

 

まぁそんなこんなでくじを引こうとする訳なんですが勿論気になる事があったので今の内に突っ込んでおこう。

 

 

緑谷「あの…すみません。ミッドナイト」

 

ミッドナイト「何かしら?緑谷君」

 

緑谷「その…かっち……爆豪君はどこにいるんですかね…?」

 

 

そう、この場にいる筈のかっちゃんが居ないのだ。彼の事だから遅れるとか…そういうのはあり得ないと思うのだが。

 

ミッドナイト「あー……と」

 

ミッドナイト「少しゴタゴタがあって彼今気絶中」

 

ミッドナイト「現状参加できるような状態ではないので今回は棄権扱いとします」

 

緑谷「そうです……か」

 

数十分前かっちゃんの気が小さくなっていたからまさかと思ってはいたが…一体何をしでかしたんだかっちゃん。

 

 

不安と疑問が頭をよぎりながらも今は仕方ないと自分に言い聞かせすぐ納得させた。さぁ今度こそくじ引

尾白「あ、先生!俺からもお願いします」

 

今度は尾白君が手を挙げ発言し始める。コレは質問というより提案…意見に近いかな。

 

 

 

尾白「本戦、辞退させてください」

 

緑谷「!?」

 

 

まさか、2種目とも勝ち上がりここまで来ておいての棄権宣言。そんな事をする理由や原因など誰も思いつく訳もなく、皆は尾白君に今の発言を撤回するよう説得し出す。

 

麗日「お、尾白君!なんで!?」

 

麗日「折角プロに見てもらえる場なのに!」

 

尾白「騎馬戦の時の記憶…終盤までホントに微かに覚えている程度しか無い」

 

尾白「恐らく奴の個性が…」

 

そう言い放つと普通科のとある男子生徒を指差し、奴という人物を示唆する。

 

…そういえば居たね…心操君のチームに、尾白君。

 

尾白「ここが重要なチャンスの場だって事は重々承知している」

 

尾白「この機会をフイにするのがどれだけ愚かだってのもよく理解しているつもりさ」

 

 

 

尾白「でも皆力を出し合って争ってきたこそのこの座なんだ」

 

尾白「訳も分からないまま皆と同列に並ぶなんて俺には到底できない所業だ」

 

葉隠「き、気にしすぎだよ尾白君…!例え自分ではそう思っていたとしても、だったら本戦でそれ相応の成果出しにいけばいいじゃん!」

 

芦戸「そうだよ!そんな事言ったらあたしなんか全然…」

 

尾白「いや…だからそういう事じゃなくてさ……」

 

めげずにと尾白君をフォローするクラスメイト達だが…それでも彼は、自分は本戦から降りるのを希望すると強く主張する。

 

 

尾白「俺のプライドの話なんだ」

 

尾白「今ここで俺は本戦へ進むのは嫌なんだよ」ゴシ…

 

緑谷「尾白君……」

 

 

横から割り込むように同じく心操チーム内にいたB組の男子生徒が辞退希望を持ちかける。

 

「僕も同様の理由で棄権したい!」

 

「実力如何以前に()()()()()()()()が上がるのはこの体育祭の趣旨と相反するのではなかろうか!?」

 

切島「っんだよこいつら…さっきから!」

 

切島「くぅ〜!男らしいね!」

 

何だか悔しがっているご様子の切島君だが便乗して自分も〜なんてのはやめてくれよ…ややこしい事になりかねん。

 

 

 

とはいえ今の2人の意見は何も間違ってはいない。もっともな話だったと思われる。終わり良ければすべて良しでは済まないのだ。テストでカンニングしまくって100点取るのと同じような事。

 

自分の力で勝ち上がらなければ意味が無いのだ。勿論、騎馬戦などで言えば100%個々の力のみじゃどうにもできない問題が発生するだろうし、敵騎馬の戦力上味方の個性に頼らざるを得ない場合だってある。

 

 

だが終始自分達が行っていた行為すら把握していない始末では騎馬戦の目的でもある他者との連携力等の欠けらすら伺えないだろう。

 

尾白君は棄権をしていた時に涙が流れそうになったのを目を擦り必死に耐えていた。それ程本戦への進出に対する強い意欲はあったのだ。だが最終的に自分のプライドがそれに甘んじる事を許さなかった。

 

約2時間に渡り自分の精神と問いかけ、闘い続けた結果がこれなのだ。さぞ辛い決断であったのだろう。

 

 

で、問題は主審様がそれに許しを与えるのかどうかって事だが…

 

蔑むような眼で2人を見つめているミッドナイト。

 

ミッドナイト「そういうさ…青臭い話は……」

 

 

 

 

ミッドナイト「 好 み !」ビシャァッ

 

1回強く鞭を振り上げ、強い炸裂音を発生させながら了承してくれた。

 

軽。意外とあっさりだった。

 

後は空いた3つの穴をどう埋めるかって話で……

 

ミッドナイト「繰り上がりだとすると小森チームって事になるわね…どう?」

 

という話なのだが、そのチームメイトである女子4人が数秒黙りこく。4人共身振り手振りで軽く話し合いを交え10秒経たずにその答えが返ってきた。

 

「そーゆー話で来るんなら、私達より最後まで頑張った鉄君チームの方がふさわしいんじゃない?」

 

鉄哲「え?」

 

0Pであれば最早希望など無いだろうと結果を見え透いていた鉄哲チームに僅かながら一筋の光が差し込んでくる!

 

「いや….馴れ合いとかじゃなくてさ?」

 

「フツーに」

 

鉄哲「おめぇらぁぁぁぁ……」

 

 

 

 

 

 

こうして鉄哲君と骨抜君、塩崎さんを加えた16人によるガチンコトーナメント。

 

くじ引きにより決まった結果は…

 

 

第一試合 骨抜VS心操

第二試合 轟VS瀬呂

第三試合 塩崎VS上鳴

第四試合 飯田VS青山

第五試合 芦戸VS拳藤

第六試合 常闇VS八百万

第七試合 鉄哲VS切島

第八試合 麗日VS緑谷

 

 

かっちゃんや尾白君が居なくなった事によって更にまた戦況が読めなくなりそうな組み合わせだなこりゃ…

 

轟君と当たるのは決勝のみ。準決勝はなんと高確率でさっきのチームメイトと当たるじゃねぇか畜生。

 

初戦に至ってはなんと麗日さんだ。発表後、彼女数分間その場から動けず立ち竦んでいたのだが…

 

兎にも角にも轟君と会うためにもなんとしてでも決勝まで漕ぎ着かねば!幸い8番目、出番が来るまで結構時間が空いているから対策も立てておくか……

 

 

 

 

 

10分後、ついに本戦専用の巨大な闘技場は完成に至る。真っ平らなスタジアムの地面に液体状のコンクリートが流れ込み、瞬く間にそのステージの形を構成していった。

 

マイク「どうだセメントス!もうスタンバイOK!?」

 

セメントス「オーケーオーケー。もう完了したよ」

 

マイク「サンキュー!」

 

この直方体の体型をしたヒーローこそコンクリートでステージを作製していた張本人【セメントス】。その名の通りセメントの類を自由自在に操れるぞ。雄英教師の中じゃ若手の部類に入ってて人気も高い。

 

マイク「野郎共、準備はいいか(ヘイガイズ、アーユゥレディ)!?」

 

ワァァァア…

 

マイクの咆哮により、会場中の熱狂と興奮は最絶頂に達そうとしていた。悟空さん自身も今回1番の楽しみにしていた事もあり顔のにやけが暫くの間止まらなかった。

 

悟空「いんやー!オラんとこの天下一武道会の比じゃねぇ盛り上がりだぞ!」

 

悟空「オラもこんなデケェ舞台で闘ってみたかったなぁー!」

 

マイク「色々やっては来ましたが!結局コレだぜガチンコ勝負!!」

 

マイク「頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかだ!」

 

マイク「分かるよな!?」

 

マイク「心・技・体…そして知識知恵!」

 

マイク「総動員して命懸けで駆け上がれ!!!」ワァァァア……

 

 

 

ルールはいたってシンプル。

 

相手を場外に落とすか「参った」等の降参宣言をさせるかすればこちらの勝ち。第2回戦へと進められる。

 

リカバリーガール等の医療班も総出で全力対応して下さるので余程の怪我がない限り死ぬ事もない。道徳倫理は一旦捨ておけ。

 

まぁ万が一その余程の可能性があり得た場合クソなのですぐに教員達が止めに入るので注意せよ。

 

あくまでヒーローは敵を捕まえる為に拳を振るうのだ。相手を瀕死状態、ましてや死に追いやってしまっては逆にそいつが敵にになってしまうからな……

 

 

 

 

といった感じに軽くルール説明を終わらせるといよいよトーナメント開始。第1試合に出る選手達が闘技場に姿を現した。

 

マイク「それでは最初の生徒2人の入場だぁああっ!!」

 

マイク「まず一番手!推薦合格者+障害物競走ベスト5入りと結構好成績収めてるこの生徒!」

 

マイク「B組…骨抜柔造ぉおお!!」

 

骨抜「へへ…」スタスタ…

 

 

最初に現れたのは骨抜君だ。両手共に指を強く曲げパキポキッと関節部分を大きく鳴らしながらの登場。気合十分と言ったところか。

 

 

マイク「対するは…ごめん!特に目立つ活躍は無し!!でもヒーロー科を除けば唯一の進出者!」

 

マイク「普通科…心操人使ぃいい!!」

 

次に来たのは心操君。首に右手を添えながらこちらは対極的にだるそうに入場してくる。

 

砂藤「どっちもA組じゃない別の組だから何とも言えねぇ試合ではあるが…」

 

砂藤「注目すべきはやっぱり、あの普通科の奴か?」

 

砂藤「お前あいつのチーム内のメンバーだったのに記憶ほとんど無かったんだろ?尾白…」

 

尾白「………っ…」

 

砂藤「尾白…?」

 

 

問いかける砂藤君だったが尾白君の反応が全然見当たらない事を不思議がり、隣に座っていた彼の様子を見てみると両腕で頭を抱えている尾白君の姿が。

 

その顔はとても青ざめており、これから観戦しようという意思が全く見られない。いや寧ろ()()()()()()顔を下げているのではないだろうか。

 

恐らくその時は僕も同様の心境だっただろう。くじの時に言われたかっちゃんのいざこざの事もあり気づけば頭の中で胸騒ぎさえ起こっていた。

 

そんな重苦しい空気に僕等2人が見舞われながらも体育祭は進んでいくワケで…

 

 

マイク「それでは1回戦第1試合開始と行こか!!!双方準備いいな!?」

 

骨抜「へいへい」

 

心操「……()()()か」

 

心操「分かるかい、骨抜柔造。これは心の強さを問われる戦いだ」

 

骨抜「……?」

 

開始の合図がもう始まると言うのに突然心操君がこちらに喋りかけた。骨抜君は首を傾げながらも彼の方を向く。

 

心操「本来強く想う将来(ビジョン)があるのならなり振り構ってはいけないだろ」

 

骨抜「だから何を…」

 

マイク「レディィィィ……」

 

 

 

心操「あの豚は趣旨がどうのとか言っていたけど」

 

心操「チャンスをドブに捨てるなんて唯の間抜けだとは思わないかい?」

 

 

 

骨抜「……は?」

 

一瞬言葉の理解が出来ず戸惑ってしまったが直後に自分なりの解釈は出来ていた。

 

ああ、こいつはさっき棄権した自分のクラスメイトをコケにしたんだ。と

 

 

マイク「START!!!」

 

骨抜「テメェ!今の発言取り消せや!!」ダダッ…

 

友を侮辱されてしまった彼は激昂し、開戦した瞬間心操君に向かって駆け走る。頭に血が上り、顔面に一発食らわせてやろうとでも言いたい気分なのだろう。

 

 

 

 

 

残念ながらもうそれは叶わぬ夢となってしまった。

 

心操「俺の勝ちだ」

 

尾白「終わった…!」

 

芦戸「え?何?もう決着ついたの?なんで!?」

 

尾白「B組の方見てみろ…奴の個性は……」

 

周りにいたA組はその言葉通りにステージ上にいる骨抜君に皆焦点をあてた。すると……

 

 

ピタッ…

 

骨抜「……………???」

 

骨抜(あれ…動かね……)

 

骨抜(な、なんだ…段々…意識が朦朧と…)

 

 

 

なんと走り出していた彼の身体は急に動くのをやめてしまい、ただ呆然とたたずむだけであった。怒りに満ち溢れていた筈の彼の表情は無となり、最早感情が欠落しているという様子であった。

 

マイク「ほ、骨抜完全停止ーー!これは…心操の個性の影響か!?」

 

マイク「全っっっっっっ然目立ってなかったけどさ!もしや彼とんでもない猛者だったのか!?」

 

あまりにも不自然な挙動に理解不能な観客達はざわめき、実況もままならない状況となってしまう。

 

 

構わず心操君は再び骨抜君に語りかける。

 

心操「…お前も…恵まれてていいよなぁ」

 

心操「推薦で楽に上行けてよ…さぞ優越感に浸ってたんだろうよ」

 

心操「なぁ……骨抜柔造」

 

 

 

 

 

心操「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

骨抜「………」

 

クルッ

 

砂藤「なっ!?」

 

なんと骨抜君は彼の命令通り入口向かってとぼとぼと戻り始めたはないか…このままでは場外負けになってしまうぞ?

 

 

マイク「えっ…ちょ!?骨抜君ジュージュン!?」

 

マイク「これ大事な緒戦だよ!?盛り上げてくれよ!?なぁ!」

 

風呂敷が広がる前に畳みに行ってしまっているこの試合に誰もが慌てふためき、もう目もあてられもしない有様であった。

 

そんな混乱しているマイクに相澤先生が液晶越しに助言を与える。っていうか、あ…おはようございます。

 

 

相澤<だからあの入試は合理的じゃねぇって言ったんだ

 

マイク「うおおっ!?起きてるならさっさと反応してくれイレイザー!」

 

マイク「で?こりゃ一体何がどうなってんだば・YO!?」

 

テンションの高さにウザいウザいと呟きながらも悟空さんにある資料の提示を頼んできた。

 

悟空さんは隣席のマイクに十数枚あった紙資料を手渡した。

 

 

マイク「…ーんとナニコレ」

 

相澤<決戦進出の16人のメンバーの簡単な成績表(データ)だ。昼休みん時予め孫さんに渡しておいた。

 

相澤<参考程度に見るだろうと思ってな。急遽3人追加はエライ骨が折れる作業だったが。

 

マイク「さっきから喋らねーと思ってたらこんなん見てたのかよ」

 

悟空「へへ…つい見入っちまってよ」

 

照れ隠ししている彼の様子にやれやれと呆れるマイク。早速骨抜君と心操君のデータ2枚を取り出し比較をしてみる。

 

マイク「ええと…骨骨…あた」

 

マイク「骨抜は思った通り普通にいいって感じ成績だな。体力テストでも上位に挙がってる」

 

マイク「心操の方は……?」

 

あのー…マイク先生、そろそろ解説に戻ってくれないと何が何だか分からないんですが…

 

マイク「……普通科の中じゃ中位どころか…下から数えた方が早いじゃねぇかよ」

 

マイク「これなら言っちゃ悪いが…他の普通科とかサポート科の方がまだマシな能力じゃ…」

 

悟空「……マイクマイク」

 

資料に見るのに集中してしまっているマイクに悟空さんがトントンと右人差し指で彼の肩を叩いて目を覚ませる。

 

はっと我に返ったマイクは直様マイクロホンを片手に実況を再開しようとする。

 

マイク「さ、さぁ!少し中断しちまったけど命令忠実な骨抜選手に挽回のチャンスは……」

 

 

 

 

 

だが、その時にはもう既に試合は終了していた。

 

心操「お前らには分からないだろうね」

 

心操「けど、こんな個性でも夢見ちゃうんだよ」

 

心操「さぁ…負けてくれ」

 

 

ザザッ…

 

骨抜「…………!!」

 

ようやく意識が戻ったかと思うと周りが冷たい視線でこちらを向いているではないか。

 

何が起こったのかと思い、足元を見てみると…

 

 

 

 

左脚がしっかりとライン外の地面を強く踏みしめていた。その白線は生死の境界線。つまり……

 

彼は場外に出てしまった訳だ。

 

 

ミッドナイト「骨抜君場外!!」

 

ミッドナイト「勝者!心操君!」

 

 

その瞬間、その人に、その試合の勝敗の審判は下った。だが…待っていたのは観客の歓声ではなく、固まってしまった人々の姿だけであった。

 

骨抜「……な、何だよ…これって……つまり…」

 

心操「敗けだよ」

 

 

 

心操「君は敗けたんだ。底辺の俺に」

 

その一言でようやく彼は理解した。自分は為す術も無く…いや…為そうともせず敗北を喫したと。

 

そして…故意的では無いとはいえ、友が作ってくれた千載一遇のチャンスを一瞬にして蔑ろにしてしまったという事を。

 

 

 

骨抜「……う…っ…そだ……」

 

ドサッ…

 

 

自分が為損じてしまった過ちに沈鬱してしまった彼に立つ気力など残っておらず、その場に崩れ落ちた。気絶してしまった骨抜君は至急特別保健室へと運び込まれていく。

 

体育祭は年々基本的に校舎を完全閉鎖している為、スタジアム内にこうしてリカバリーガール出張所を置いている。普段に増して怪我人大量な事もあり通常の保健室よか広いんだってさ。

 

会場中の観客がどよめく中流石のマイクもこの急展開についていけず絶句してしまう。

 

マイク「い、一部始終、解説が追いつけやしなかった…!」

 

マイク「どういう…」

 

悟空「あいつの個性(能力)だよ」

 

マイク「!?」

 

悟空「心操…だっけか。多分、あいつは相手が強けりゃ強い程そいつが心操にとって格好の獲物なんじゃねぇんかな」

 

悟空「何たって心操の個性は………」

 

 

 

悟空「()()だかんなぁ…」

 

マイク「洗脳……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回も話した通り、昼休みの時に僕は一度尾白君に呼び出されている。彼もまたUSJ騒動の後から全く言葉を交えてなかった。轟君に続き一体何事かと冷や冷やして彼に会った所…

 

 

 

尾白「すまなかった!この間はお前の事を全く顧慮せずに…かなり悲しませてしまったと思っている!」ペコッ

 

尾白「俺からも一つ、お詫びを言わせてくれ!!」

 

いきなり土下座された。マジかよ。

 

まさか八百万さん以外にもこんなに僕を受け入れてくれている人達がいるとは思わず、相当仲間に恵まれている自分に至福を感じた。

 

その反面、度重なる謝罪に再び怒りを覚えつつもまた蛙吹さんの時みたいになりかねんと思いなんとか気持ちを押し殺す。

 

緑谷「い、いいんだよ…気にしなくても」

 

緑谷「僕自身皆の気持ちを理解し切れなかった所もあるしさ……」

 

緑谷「……ってあれ、今もしかして…俺も…て?」

 

彼の言葉に違和感を感じ取り、少し問いかけてみた。()()()…ってそれじゃまるで他に誰かが謝りに来たのを知ってるような言いぶり…

 

尾白「えっと…実を言うとね……」

 

尾白「大分前、お前食堂で何か怒鳴っていただろ?2週間位前だっけかな…」

 

尾白「そこ出くわしちゃってさ俺」

 

緑谷「!?」

 

尾白「最初は刺激せん方が良いだろと知らんぷりしていたんだけど」

 

尾白「その後下膳してる時に蛙吹さんが泣きついてきてね……」

 

 

『私……緑谷ちゃんに嫌われちゃった…』

 

『取り返しつかない……酷い事しちゃったよ…』

 

『どうすれば良いの!?尾白ちゃん!!』

 

 

緑谷「……」

 

予想していたよりも深刻な状況に陥ってたんだな…彼女。騎馬戦の時はいつも通り呼びかけていた感じだったけど…

 

そう言われてみればさっき八百万さん以外誰も僕に話しかけてなかったからなぁ…

 

尾白「多分敢えて俺に相談したとか…そんなんじゃなくて誰でも良いからすぐに助けてもらいたかったって気持ちが強かったんだと思うんだ」

 

尾白「蛙吹さん、お前に怒っていた所か、何を聞いても自分のせいだの一点張りで…」

 

尾白「相当思い詰めていたらしい」

 

ちゃんと彼女と話をしていれば…そう悔やむばかりだった。蛙吹さんの気を楽にしようとしたのが仇になってしまった…くそ……!

 

 

ただでさえ話すのは久しぶりだから気まずい上にこんな話ときたもんだ。何も考えずゆさぶって追求しようとした自分が馬鹿馬鹿しい…

 

殺伐とした空気になってしまった所を何とか切り替える為に話題を変えようとする尾白君。

 

 

尾白「っと…話が脱線したな。話したい事は他でもない」

 

尾白「お前も知りたいであろうあの普通科の奴の事だ」

 

緑谷「あ…騎馬戦の時一緒にいた男子だよね?あの人ってどういう……」

 

…と喋りかけたが待った、色々突っ込ませてくれ。何故態々戦う可能性のある相手にそんな貴重なネタを提供するのか…それじゃ自分が不利になるだけじゃないか。僕に話してどうしようと…

 

尾白「まぁ…話を聞いてくれ」

 

尾白「つまる所俺はお前に期待してるんだ」

 

緑谷「僕……に?」

 

尾白「ああ…轟とかはああ言ってて事実俺も否定し切れた訳じゃない」

 

尾白「だけど俺的にはお前が優勝するんじゃないかと踏んでいる…いや優勝してほしい。俺的にはな」

 

緑谷「……」

 

 

 

ええええ!?いや!お気持ちはありがたいんですが!尾白君だって優勝したい筈でしょ!?それに何か僕やたらと過大評価されてません!?ん!?

 

歎美の声はとても嬉しい限りだが非常に買い被っている為少し戸惑いさえ感じてしまう自分…

 

ただ……

 

尾白「緑谷のフォームってスゴイ綺麗なんだよな!何というか…型にとらわれ過ぎず!みたいな…」

 

尾白「ザ・緑谷流って感じで格闘派の俺としてはめっちゃ好感するんだよね」

 

緑谷「へ、へえ…」

 

理由が具体的だからというか抽象的だからというか…よく心には響いてこなかった。まぁ理由の1つは、なんだが。

 

尾白「でだ。要するにこれはお前を見込んでの話だ。これから言う奴に関する情報はお前以外…」

 

尾白「特に本戦に出る14人には一切口外しない」

 

尾白「お前もそうするつもりで話を聞いてくれ」

 

いつもの彼の様子から想像も出来ない程の悍ましげな表情で尾白君はこちらに釘を刺してくる。この時の彼の意図など分かる訳も無く、僕はただ彼の意思を尊重しようと静かに頷き、了解する他無かった。

 

 

 

尾白「いいか。例年通り行けばトーナメント形式のサシ仕様の勝負となる筈だ。まぁまだ発表されちゃいないが」

 

尾白「その場合………ほぼ確実に奴の勝ち試合となるだろう」

 

緑谷「な、なんで…?どういう確証を?」

 

尾白「俺、終盤ギリギリまで記憶がボンヤリとしかなかったんだ。騎馬戦」

 

緑谷「ええ!?それじゃ僕に与えられる情報なんて…」

 

尾白「()()()()って言ったろ。正確には意識はあった」

 

尾白「だけど奴の問いかけに答えた瞬間身体が麻痺したような感覚に襲われて…」

 

尾白「それからハチマキを取られて暫くしたら、鉄哲チームがこっちにハチマキ差し出して終了……」

 

尾白「こんな感じだ」

 

 

敢えてハチマキ取られて標的外になっておいて終盤で取りに行ったのか…って差し出した!?ハチマキを!?

 

尾白「廊下とかですれ違ってた時に耳に入った情報だが…」

 

尾白「『気づかぬ内に青髪で目の下にクマができている普通科の生徒を担いでいた…』とか」

 

尾白「午前中の奴の様子を喋っていたのを聞いてな」

 

尾白「……結論からするにあの普通科の生徒の個性は【洗脳】…だと思う」

 

緑谷「洗脳……」

 

尾白「ああ。あいつと話した瞬間あいつの射程距離圏内だ。すぐに操られる」

 

口を開いた瞬間詰みのバトルとかほぼ無理ゲーな気がします、尾白さん。明かせば明かしていく度に心操君の危険性が自ずと理解してくる。

 

緑谷「ね、ねぇ…それって攻略不可能じゃ…」

 

尾白「だろうな。ましてやタイマンじゃサポートも居ないし敗けたと思った方がいい」

 

尾白「だけど致命的とも言える欠点がこれには2つある」

 

尾白「1つはさっき言った自分の意識が残されている事……だから何だよって思うかもしれんがこれが2つ目に大きく関わってくる」

 

尾白「もう1つは…解除法だ」

 

緑谷「解除法…?」

 

 

 

先述もしたが尾白君は終盤ギリギリまでの記憶が曖昧となっている。逆に言えば何故か終盤の1、2分の間は騎馬戦の記憶がはっきりと脳裏に焼きついているのだ。

 

どうやらすれ違い様に別の騎馬と肩をぶつけてしまった拍子に意識が戻ったみたいなのだ。こうして尾白君はその事からこの洗脳の解除法は【何かしらの衝撃を与える】ではなかろうかという仮説を立てたらしい。

 

 

 

尾白「……とは言え、タイマンの時にその何かしらの外的障害が発生するとは思えないし」

 

尾白「正確にはどの程度の衝撃を与えれば解除できるかも判断できない」

 

尾白「何よりあれがコントロール可の個性なら奴の加減一つで今の前提は覆される」

 

尾白「要するに黙って勝負しろって事だよ」

 

緑谷「は、はぁ……」

 

尾白「……()()()()()()()()()

 

緑谷「……?」

 

何か意味深な台詞を吐いたような気がしたが気にしない方がいいだろうとこの時はそのまま流してしまった。尾白君の言っていたそれは正にこの第1回戦の事を指していたんだ。

 

 

ため息をつき、しばらく黙り込んだと思えば再び彼はこの前の蛙吹さんの事について話し始める。

 

 

尾白「蛙吹さん……彼女、途中で『また1人になっちゃう』とか『バラバラは嫌』だとか呟いてた」

 

緑谷「?……」

 

尾白「前に蛙吹さんに何があったのかは知らないが俺自身、こんな険悪な雰囲気のクラスの中授業受けるのは御免だ」

 

尾白「何たってこれは()()()()()()()()()()()()()じゃないんだからさ」

 

尾白「そうだろ?委員長」

 

緑谷「……ああ」

 

尾白「だったら最後まで勝ち上がって俺達に見せてくれよ」

 

尾白「あの時……お前の判断は全て正しかったって証明をよ」

 

尾白「俺の分も…頑張ってくれよ、緑谷」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に至る訳だが…

 

とっにかく衝撃的だった。嬉しいとか、驚いたとか…色々感じたけどさ。こうも人望が厚いと…どちらかというと嬉しさよりも怖さが増すけどね。あいや!自慢する訳じゃないんだけどさ…

 

こう、背負われているって実感が湧いてくる。蛙吹さんと尾白君と…2人の希い託されちゃったからなぁ。敗けてられないって緊張感が増しに増して胸がはち切れそう…というか。

 

オールマイトってこの何億倍もの圧力がかかっていると思うと改めて凄いなぁとも思ったよ、うん。言葉がうまくまとまらないけど。

 

 

けどさ……

 

 

『お前らには分からないだろうね』

 

『けど、こんな個性でも夢見ちゃうんだよ』

 

 

心操「……」ザワザワ…

 

緑谷「……夢か…」

 

 

満更他人事でも無かった。あの言葉…あの姿…まるで1年前の僕のようじゃないか。

 

僕には彼の想いが辛い程理解できてしまっていた。だが同情はただ当事者にとっての皮肉にしかならない。

 

…僕は彼とトーナメントで当たった場合どう接していけばいいのか……考える事などできなかった。

 

 

 

 

強く、されど小さい心操君の想いなど他の観客に届きなどせず、第1試合は一瞬にしてその終止符を打たれたのであった………

 

 

 

 




世界よ…

須井化(わたし)が(帰って)来た!!

須井化です…はい。

今回久々に時間通りに投稿する事が出来ました。因みにまだ2期1話見れてません…(´;ω;`)
あ、超もちょくちょく見てるよ(震え声)

後6、7試合分書くと言ったな、あれは嘘だ。

いや正直全部書けないにしても2、3試合分は書きたいと思ってたんですが…キャラの掘り下げにどうも手間取ってしまいまして…

まぁ尾白君の活躍増加に免じて許してくだせぇな。

後、心操君の個性って意識無くなるんじゃないのー?って言う人いると思うんですが。

バッチリ漫画では緑谷君記憶あるし、本人もそれに関して違和感感じてなかったので作者側のミスとして捉えてます。(ファンブック?知らんな)

何にせよオラアカとしての定義としては
【心操君レベルではまだ精神を完全に支配するにまでは至らない】
と言う風にさせていただきます。
(でもやっぱりあれってただのOFAが齎した効果ってだけなんかなぁ…心操君は()()()()()()効かないって言ってたけど)

後ケロインが1番ケロインしてる希ガス…ここら辺は。何か壊れかけてるですが大丈夫なんですかねぇ( ^∀^)

いかがでしたか?



次回は1回戦前半〜第5試合目位かなぁ。

デンジャキがウェイウェイ!する話なのでお楽しみに。

後拳藤さんも出るのらー!




何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。

3月29日(水)以内に第27話の投稿を予定しております。多分時間帯は夜なんじゃないかな!?
お楽しみに!




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第27話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!第1種目の障害物競走もぶっちぎりの1位で予選通過!

更に第2種目の騎馬戦でも八百万・拳藤少女、常闇少年と共に数々の奇襲を退け、1位で本選突破となる!!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

第1試合の骨抜少年vs心操少年ではなんと両者共に相手に触れる事無く決着が着いてしまうが…?

更に向こうへ!PlusUltra!!!



不穏な空気がスタジアム中に漂いながら、本戦トーナメント初戦は幕を閉じた。心操君は骨抜君が保健室に運ばれていくのを見送ると後ろを振り向き、すぐに入場してきた方へ戻っていった。

 

淀んだ空気に包まれた会場をマイクが実況で再び盛り上げようとするも…

 

 

マイク「ヘ、ヘイ!!第1試合は見事心操の策略勝ちだーーっ!!」

 

マイク「結構早くケリ着いたな!?コレ最速記録更新したんじゃね!?」

 

シーン…

 

マイク「………o、ohhh…」

 

 

よっぽど後味の悪い観戦だった為か誰も彼のノリに乗ってこない。ただでさえ先程急にかっちゃんが退場となってしまい、不平不満があったからなぁ。期待外れだって感想(クレーム)が今にも殺到しそうだ。

 

何とかカバーしてもらおうとマイクは隣にいる悟空さんにヘルプを求めるが…

 

マイク「か、カカロットもなんか…その…一言………」

 

悟空「………」

 

マイク「おーい…ちょっとー」

 

 

駄目だ。心操君の分析中で忙しい彼には相手をする余裕などある訳ない。黙まりとしたまま暫く固まってしまう。

 

相澤先生も同様にその場から立ち去っていく彼の後ろ姿をただただ静かに見届けるのみであった…

 

相澤<……

 

相澤(学力で言や爆豪にも劣らぬ実力は持っていた…)

 

相澤(無表情で退く辺りは相手に対する礼儀・尊敬か…)

 

心操「…」スタスタ…

 

 

相澤(ありゃ……まるで…)

 

相澤(昔の俺そっくりじゃねぇかよ)

 

 

歩き去っていく彼の背中とかつての頃の自分の雄姿を重ね合わせながら……

 

 

 

 

 

 

 

鬱屈としたムードの中、それでもプログラムは進行する。第2試合の選手2人にステージに入場するようマイクがアナウンスを流し、呼びかけた。

 

控え室で待機していた轟君は予想よりもかなり早く終わった事に驚きながらもすぐに退室し、闘技場に向かって歩き始める。

 

廊下には蛍光灯がいくつも搭載されてはいるものの、実際の光量は少なく、明るさで言えば少し薄暗い程度。

 

だがそれにも関わらず、一部の道は明るく照らされていた。気にしながらその道の角を曲がった先には……

 

 

 

 

轟「……邪魔だ」

 

轟「退け、親父」

 

エンデヴァー「…………」

 

 

エンデヴァーがステージまでへの進路の前に立ち塞がる。両腕を組み壁に寄りかかっており、いかにも待ち伏せしていたような様子であった。

 

 

エンデヴァー「醜態ばかりだな、焦凍」

 

エンデヴァー「左の力を使えば、障害物競争も騎馬戦も圧倒できたはずだろう」

 

轟「説教垂れは試合終わってからにしてくれ。後が支えてんだよ」

 

悠々と語りかけるエンデヴァーに嫌気がさし、そそくさとその横を通り過ぎようとする。

 

エンデヴァー「いい加減子どもじみた反抗をやめろ」

 

エンデヴァー「忘れたか?お前にはオールマイトを超えるという義務があるんだぞ」

 

轟「……」スタスタ…

 

話し続けても一向に足を止める気配が無い轟君。真面目に聞く気が無いと見るや、エンデヴァーは身体に取りまく炎の勢いを強くしながら怒鳴りつけるように大きな声で彼に話し始めた。

 

エンデヴァー「分かっているのか!?兄さんらはお前とは違うんだ!!!」

 

エンデヴァー「お前は俺にとっての…」

 

エンデヴァー「()()()()と言っているだろうっ!!!」

 

轟「うるせえ」

 

 

とうとう堪忍袋の緒が切れてしまったか。立ち止まり、普段よりも声のトーンを下げつつ反発する。

 

 

轟「それしか言えねぇのかテメェは」

 

轟「お母さんの力だけで勝ち上がる。戦いでテメェの力は使わねぇ」

 

轟「そんだけだ…」スタスタ…

 

 

それだけ言葉を吐くと彼は再び入口へと歩き出す。相変わらずの息子の様子には呆気にとられる父親だったが、彼も同じく一言…

 

 

エンデヴァー「学生の内()は通用したとしても、すぐ限界が来るぞ」スタスタ…

 

 

という捨て台詞だけ吐き、廊下の奥の方へ歩き出し立ち去っていった。

 

 

 

 

轟「……っ……」ググッ……

 

怒りが込み上がった故か……彼の顔は忌々しそうな目つきとなり、痛みを感じる程に強く両手をグッと握り締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マイク「レディィィィスァァエエエェンド!ジェントルメン!!」

 

マイク「おー待たせ致しました!!第1試合は何かアレだったけど気取り直して行ってみ・YO!!」

 

ワァァァア…

 

どこかで聞いた事ありげな仕切り直しでようやく会場に活気が戻ってきた頃、第2試合の選手2人が闘技場に登場する。

 

 

マイク「優秀!!優秀なのに拭いきれぬその地味さは何だ!?」

 

マイク「A組!瀬呂範太ぁぁあっ!!!」

 

瀬呂「ひっで」

 

雑すぎる紹介にしょんぼりする瀬呂君。両腕をグッと伸ばしストレッチしながらの入場だ。

 

マイク「対するは…一度は緑谷を追い詰めたこの男!その強さ、泣く子も黙る虎児の如し!!」

 

マイク「A組!轟焦凍ぉぉおおっ!!!」

 

轟「………チッ……」

 

一方こちらは小さな舌打ちをしながらステージ上に颯爽と現れた。エンデヴァーの子(虎児)とダメ押しに褒めた(煽った)結果、彼の怒りを増幅させてしまったのだろう。妙にいつもより足取りが荒い歩き方であった。

 

 

両者共に出揃い、会場も盛り上がっていく中遂に試合開始のゴングが鳴る!!

 

マイク「START!!!」

 

ワァァァア…

 

 

いかにも闘るのが嫌そうな顔を相手に向けながら瀬呂君はグッと伸びをする。何せマイク曰く虎の子だ。今回の有力な優勝候補者が相手じゃ相当部が悪いと感じているのだろう。

 

瀬呂「いや〜まぁ勝てる気しねー訳ですが」ググーッ…

 

 

 

瀬呂「つっといて…!」キッ…

 

そう呟くと突然彼の目つきが変わる。さも野生の猛獣()を狩るハンターのように、その眼光は確実に獲物を捉えていた。

 

狙いは…上半身と下半身。

 

 

 

シュルルッ…

 

轟「っ…!」ギュッ!

 

瀬呂「敗ける気もねぇぇぇ!!!」グオッ!!

 

両肘から素早くテープを発射し…右のテープは轟君の右腕から左腕にかけて、左のテープは両膝の箇所に二、三重に巻き付けた。

 

拘束されてしまった轟君。これでは身動きが取れない。絡まっては元も子もないので右肘のテープを千切って……

 

そのまま瀬呂君は残ったテープを左へ勢いよく引っ張る。成る程、場外狙いの速攻か。

 

マイク「おおおー!この選択は割と最善なんじゃね!?」

 

マイク「轟全く抵抗できずーっ!?どんどんラインに近づいていってるぞ!」

 

マイク「つーか正直やっちまえ瀬呂ぉおおっ!!」

 

悟空「………」

 

 

 

 

 

 

轟「悪りぃな」ギロッ

 

 

 

 

 

 

彼が強く睨みつけた瞬間、その場にいた観客は口を開けたまま凍りついたように静止した。

 

いや…だって読んで字の如く…

 

 

マイク「…………ぁぁ…あ?」

 

パキパキ…

 

瀬呂「はは…は」ピクピク…

 

瀬呂「でっすよねぇ」

 

 

 

 

一瞬にして瀬呂君を凍らせたのだから。

 

僅かながらに凍り切ってない箇所があった為、生死には関わらなかったがほぼ完全に氷漬けにされ、地面と接着してしまう。

 

後少しでも本気を出していたら冗談無しで心肺停止とかあり得たぞ。

 

あ……まぁ…うん。

 

 

 

緑谷「………こ、お…り?」

 

拳藤「う、うひょー…デカイデカイ」

 

ゴオオッ…

 

 

 

ドームの2倍近い高さの氷塊作られて加減してるって言われても説得力無いんですが。

 

特に瀬呂君がいる方向にいた観客達は目の前に巨大な氷塊が現れ、視界が封じられる始末であった。

 

観客席の設計のように斜め上に凍らせていかなければ今頃観客にも被害が及んでいただろう。これでもギリギリ氷塊に触れるか触れないかの瀬戸際なのだから。

 

 

轟「……」パキパキ…

 

バリッ!

 

巻き付いていたテープも凍ればただの薄い氷の板のようなもの。空中に浮いていた轟君は四肢を少し力み、いとも容易く二本のテープを粉々に粉砕。そのまま地面に着地した。

 

序でに凍らされた審判、ミッドナイトは瀬呂君にまだ試合は続行できるか確認をとるがこんな状態で動ける方がおかしい。

 

ミッドナイト「せ、瀬呂…く、ん。動…ける?」

 

瀬呂「んな…阿呆な……」

 

ミッドナイト「瀬呂君行動不能………と、轟君…2回戦進出…!」

 

 

 

こりゃアレだ。【凄い】を通り越して【とんでもない】だ。心操君の試合とは別の意味で腰を抜かされた観客達は再び反応に困りながら…

 

「ど、どんまい…」

 

「どんまーい」

 

「どーんまい!」

 

とただ慰めの言葉をかけることしかできなかった。

 

これじゃ試合続行もクソもないので左の炎熱で氷を溶かしていく。大きさが大きさなだけに数分かかったぞコレ…

 

瀬呂「や、やりすぎやしませんかね…」ボオオッ…

 

轟「…すまねぇ、イラついてた」

 

緑谷「……」<どーんまい!どーんまい!

 

 

自然と沸き起こったどんまいコールの中、自身が凍らせたのを左手で溶かしていく彼の姿が…

 

僕には酷く悲しく見えた。

 

まるで……父が母を嗾ける光景を再現しているかのような……

 

そんな感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷が溶け、大量の水でびしょ濡れになってしまったステージを乾かして10分後、続きましては第3試合。上鳴君と塩崎さんの対決だ。

 

 

マイク「まずは〜B組からの刺客!!キレイな華には何とやら!?」

 

マイク「塩崎茨ぁああっ!!」

 

塩崎「???」

 

マイク「続いて〜A組男子!通称【スパーキングキリングボーイ】!!」

 

マイク「上鳴電気ぃいいっ!」

 

上鳴「キリングって…殺人鬼かよ」

 

またもや…というか寧ろ酷さが増している雑な煽り紹介にはほとほと呆れてしまう上鳴君。塩崎さんに至っては…

 

塩崎「申し立て失礼いたします。刺客とはどういうことでしょうか。私はただ勝利を目指しここまで来ただけであり殺傷を目的にこの体育祭に参加しているのではないのです。つきましては今の解説に不適切な表現があるとして訂正していただきたいと私からお願

マイク「ゴメン!!訂正します!!ええ!喜んで!!」

 

隙あらば問答無しに教員に抗議してしまう程である。率直でド正論なツッコミである。反論した瞬間頭部のツルがこちらに襲いかかりそうだ。

 

上鳴(あー…B組にもこんな感じのいるのな…)

 

淡々と一方的な口論を繰り広げる塩崎さんの姿をじっと見つめていた。マイクが何度謝罪しようともこれでもかと論じ続ける彼女のその真剣な眼差しに魅了されながらも、彼は塩崎さんへの対策をたった今考案中なのである。

 

上鳴(どんぐりまなこでキレイな面してっけど実力はガチめっぽいなぁ…)

 

上鳴(さてどうしたもんか…いきなり放電すりゃ即死だしなぁ)

 

上鳴(にしてもあの位の悪ノリでも敏感に反応しちゃう娘か…いいじゃないの)

 

上鳴(これはアレだ…うん)

 

 

 

上鳴(ラッキースケベしても正当化したら許して貰えるんじゃね?)

 

上鳴(そんでもって恥じらってる隙にボカン!乳揉めるし一石二鳥だ)

 

上鳴(やべえ…俺天才)

 

とても天災的で個性的なアイデアだがそれだけはやめてくれよ!?何だか思考回路が随分と別の方向に行ってますけど大丈夫ですか?上鳴さん?

 

上鳴(B組にもあんなけしからん奴がいるのか…なんて羨ま)

 

上鳴(じゃねぇじゃねぇ…奴の身体能力を測る為にも今こそ我が体眼を使う時!!)

 

性的な目つきから一変し、彼女の体格の分析を開始。そうそう…そういう事をして欲しい。

 

上鳴(ス○ウター計測開始…)

 

 

上鳴(身長167cm…体重は53kgと見た。ほっそりとスリムな体型。肌めっちゃ綺麗ー…どっかの某郎さんとは大違いだな)

 

オイ。

 

 

上鳴(バストサイズはあれか。Eカップか。Eってデケェなぁ…あ、でも八百万よりかは1つ下か)

 

オイオイオイ!?

 

 

上鳴(さてさてお待ちかねの下着ターイム!きになる色

止めろ!落ち着け!!

 

 

直向きな目線からまたダメな方向に走ってしまった…つられて顔がにやけてるぞコラ。これ以上言うと彼女の個人情報以前に色々アウトなのでやめておこう。

 

……え?知りたい?丁重にお断りする。

 

 

上鳴(俺の嫁ランキングTOP17には入りそうな女子だぁ…!)

 

世界一更新早そうなランキングだねそれ!後17て何故微妙!?

 

彼女の美貌に完全に虜になってしまう上鳴君。とりあえず胸部に目線を集中するのはやめよう。

 

上鳴(滅茶糞可愛いんだよなぁ…ぁあ……これ負かしたら泣いちゃいそう…)

 

上鳴(敢えて敗けてあげようか!?可哀想だし!)

 

上鳴(よし!そうしよう!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチッ……バチッ…

 

上鳴「……って訳にもいかねぇんだよな…うん」

 

悪ふざけモードから突然の臨戦態勢突入。冴え冴えとした瞳で塩崎さんを正視する。ふと喋りかけられたと思った塩崎さんは抗議を中断し、後ろにいた彼に相槌を打つ。

 

塩崎「…?何でしょう」クルッ

 

迸りながらも彼は己が全身に激しい電光を纏わせる。その時点でA組の誰もが放電の態勢に入ったのだと察しただろう。

 

 

だが…おかしい。

 

放電にしてはいつもよりイナズマが小さい気がする。加減して弱めた…?何故そうする必要がある?

 

上鳴君はそのまま喋り続けていった。

 

上鳴「なぁ…今夜…飯でもどうよ」

 

上鳴「俺で良ければ奢るぜ?」

 

上鳴「あと()()()

 

いきなり食事のお誘いを受け、彼の発言の意図が読み取れず塩崎さんは困惑する。

 

塩崎「……何を…」

 

上鳴「多分この勝負………」

 

 

 

 

上鳴「3秒で終わっから」

 

マイク「START!!!」

 

右手首を上下に振りスナップを利かせながらそう言うと、試合開始の合図が出される。塩崎さんさんが静止したのに乗じてマイクが送ったのである。

 

マイク「さ、さぁ!全方位全距離可能なツルに対し上鳴どう対処スルー!?」

 

悟空「涙拭けよ」

 

開始早々塩崎さんは頭髪のツルで防御態勢に入る。髪を切り離し、僅か1秒足らずで身体の全部を覆う壁を作る。

 

塩崎(この方は確か電気系統の個性を持っていた筈です…)

 

塩崎(ならば壁で感電を防ぎながらツルで捕獲するのがベス…

 

上鳴「後ろ取〜った」ガシッ

 

 

 

 

 

 

塩崎「ハッ!?」

 

壁を作った直後、突如上鳴君が背後に回り、両手で塩崎さんの両肩に摑みかかる。

 

 

分かるか?壁を作っている間に移動したんだぞ?

 

1秒未満で10m以上もの距離を移動したのだ。

 

 

 

何より彼女が驚きだったのは前方に上鳴君が居たにも関わらず、後ろから彼の声がした事だ。彼を見失わないようツルとツルの間に隙間を作って動きを把握しようとした矢先これだ。

 

何が起こったと後ろを振り返って確認しようとすると…

 

 

 

 

 

 

 

ドサッ…

 

塩崎「……ぁ……れ……?」

 

上鳴「こーんにちわ」

 

確かに後方に上鳴君は居た。だが変だ…観客席が見当たらない。というかアレ…身体が何かと接触したような……

 

目線を前に戻してみると……

 

 

目の前にあったのはツルの壁ではなく、ただの地面。

 

塩崎(そんな…!?確かに私は個性を発動していた筈!)

 

そう思って周りを見渡すと…ありました。後ろにツル。

 

という事はだ。ツルが消えたのではなく正しくは()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 

後ろを振り向いたその瞬間にまた20数m移動したのか?そんな馬鹿な…

 

彼の行った行為は分かったが

何故それが彼に可能な所業だったのか、彼女には到底理解し難かった。

 

 

 

 

 

 

緑谷「………ぁぁ…!?」

 

麗日「うっそ…やろ?」

 

ただ1つ…観客達の反応から

 

 

マイク「ななな…!」

 

悟空「へぇぇ…」

 

確信できる事があった。

 

塩崎さんは顔を少しだけ上げ目線を下にして後ろの地面を覗くと……

 

 

一本の白い線が彼女の目に入った。

 

マイクの解説の時間、塩崎さんが壁を構成している時間、そして上鳴君が彼女を白線の場所まで移動させる時間。

 

 

宣言された通り、合計約3秒で場外に出されてしまったのだ。

 

ミッドナイト「し、塩崎さん場外!上鳴君2回戦進出!!」

 

ワァァァア…

 

 

観客席から大喝采が湧き上がる。

 

入試4位障害物競走4位とB組の中ではトップを独走していた塩崎さん。この試合が始まる直前までは彼女の話で持ちきりであった。

 

ましてや前半然程大きな活躍もしなかった上鳴君に期待していた者は数少なかったであろう。

 

 

だがその株をたった3秒によるどんでん返しで一気に急上昇させた。

 

マイク「マジで!マジでやりやがった!!」

 

マイク「正に刹那の瞬間!!呼吸する間も無く…」

 

マイク「奴は圧倒的速度で敵を叩き潰したぁああっ!!」

 

ワァァァア…

 

上鳴君は肩を押さえつけていた両腕を離し、解放させる。直様彼女は立ち上がり唖然としてしまう。

 

塩崎「な、何故…こんな事に……私は……!?」

 

上鳴「そんなにタネが聞きたきゃいつでも大歓迎だぜ?」

 

上鳴「あ。後飯の返事よろしくー」スタスタ…

 

ドサッ

 

それだけ言うと彼は入場口へと歩き去っていった。塩崎さんはそれを見届けながら地面に膝をつく。そして一言

 

 

 

塩崎「悔……っしぃ……」

 

 

と呟いた。

 

 

 

ワァァァア…

 

緑谷(驚いた…まさかこんな結果になるとは…)

 

峰田「なんてヤツだ…!上鳴め…ちゃっかり床ドンしやがって!」

 

そこじゃないよね。

 

耳郎「うわっ…あいつ初対面の人にセクハラしていったよ…」<ヒクワー

 

そこでもないよね。

 

上鳴君もB組と似たような作戦で観客の目を惹きつける作戦に出てたのか!しかも何なんだ、あの技は……

 

彼の個性はただ電流を纏うだけな筈……

 

 

 

「電流を流す時に自分毎移動させただけだっての」ポンポン…

 

緑谷「!?」

 

急に肩を叩かれたので焦ってすぐ後ろを振り向くと…

 

 

上鳴「まぁ10秒以上持続させると身体がバテてイかれちまうけど」

 

あれ!?上鳴君!?今ステージから丁度降りてきた筈…って居ねぇ!?

 

なんでもう観客席の所に戻ってきてるんだよ…!まさか今の技を使ってここまで来たのか!?

 

上鳴「隠し玉ってのは最後の最後に使うべきだとは思ったんだけどよ〜」

 

上鳴「ちょっと午前中の見ててそうも言えなくなったわ」

 

 

 

上鳴「期待外れにはなってくれんなよ?お前用の対抗兵器なんだからな」

 

そう言い放ち、僕の肩から手を離し自分の席へゆっくりと戻っていく。

 

緑谷「……」

 

麗日(デク君…黄昏とる?)

 

 

正直冷や汗かいたよ。

 

視認もできない、気も感じられない。いや…感じる暇も隙もあったもんじゃない。

 

轟君ばかりに目を行き過ぎていた。心操君も、上鳴君も…全員数百人の中から生き残った強豪選手達。油断すればすぐに落ちてもおかしくない状況だった。

 

こんな緊迫感入試以来だぞ……

 

 

緑谷「皆僕を本気で殺しにかかってきてるなぁ…はは」

 

 

そう苦笑しながら頭の中に驚愕の色を浮かべていた。

 

 

 

 

 

だが上鳴君。君の敵はすぐ目の前にもいるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

ステージに第4試合の選手2人が立ち並ぶ。

 

マイク「速さで言やぁこいつも劣らねぇ!今爆裂にポピュラーなあのインゲニウムの実の弟!!」

 

マイク「飯田天哉ぁああっ!!」

 

飯田「兄さん…更にプレッシャーがかかるな」ワァァァア…

 

マイク「予選42位と、ある意味偉業を成し遂げたこの男!!糞イケの我らがハクバ・プリンス!」

 

マイク「青山優雅ぁああっ!!」

 

青山「ふふ…」

 

 

インゲニウムの話題もあり人気が飯田君に偏りがちだが、同ビーム勢である青山君にも個人的には注目している。

 

マイク「START!!」

 

青山「フフフフ!」スッ…

 

試合が開始すると同時に彼は腰につけているベルトに手をやる。ベルトは事前にミッドナイトと交渉し持ち込みOKとされたらしい。あ、申請すれば行けたんだね…

 

そう言われてみれば体育もヒーロー基礎学もいつもベルトを装着して授業受けてたな…何か深い意味があるのか…いや無かったらそもそも通らないとは思うけどさ…

 

 

青山「悪いけど飯田君…この勝負頂いたよ☆」ゴオッ!

 

へそから巨大な1本のレーザーを射出する。そのビームは一瞬にして飯田君を貫……

 

 

 

飯田「」フッ

 

青山「!?」

 

 

いたが、当たっても飯田君はピクリとも動かなかった。というか…あれ…なんか歪んで見えてきたぞ。

 

 

 

 

飯田「こっちだ!」

 

青山「!?」

 

バギィッ!!

 

 

 

すぐ右から声をかけられたと思えば青山君の後頭部に彼の強烈な横蹴りが炸裂する。

 

そのまま青山君は強く吹っ飛び壁に衝突する。ピクピクと身体を震わせながら地面に落下し気絶する。

 

ミッドナイト「青山君場外!!飯田君2回戦進出!」

 

ワァァァア…

 

民衆から多いな称賛を受けながら見事に勝利し、よしっと両腕を上げガッツポーズを取る飯田君。ごめん、それ両手バンザイ。

 

悟空(オラや緑谷が見せたように残像を残して叩きに行ったんかー…)

 

悟空(今のもかなり速かったぞ…)

 

マイク「速い!!誰もが太刀打ちできない驚異のレシプロバースト!」

 

マイク「だが……お、おお!?次あいつと当たるのって…」

 

そう。準々決勝、上鳴君が相手するのは飯田君だ。どちらも1年の中で1、2を争う速さを持っている彼等だ。

 

その試合で潰し合ってもらってその中で突ける欠点を見出すしかない…!

 

マイク「2回戦第2試合は最速vs最速の夢の対決!!果たして高1一番のスピード王者の座はどちらに明け渡されるのか!?」

 

マイク「見逃せないぜ!!」

 

 

 

 

さてと…ここで丁度第1回戦の前半が終わったので一応伝えておこう。

 

 

ここまでの試合経過時間、合計して30秒未満。

 

なんてこった。つまり平均すれば1試合10秒もかからずケリが着いてしまったという計算になる。轟君、上鳴君、飯田君に関して言えば5秒も経ってない。

 

少なくとも1分は戦うのかなぁと思ってたら予想が361°ひっくり返された試合ばっかりでしたハイ。特に轟君のデカイ氷塊・上鳴君のフルスピードには度肝をぬかれてしまった。

 

 

 

いつか対決し得るであろう上鳴君の隠し玉に対抗すべく策を練る為にブツブツ呟きながらノートにメモをし始める。

 

麗日「…」チラッ

 

緑谷「…って事はもう初っ端から界王拳使うしかないかな…いやでも実際雷のスピードだったら界王拳だろうがオールマイトだろうが無理ゲーだ…あれこれって勝ち目ないんじゃいや、でもよく考えれば雷の速さで走ってたら多分一瞬にして塩崎さんバラバラになると思うんだよって事は雷の様な速さってだけで実際は結構遅かったり…ああでも加減してるって可能性もあーコントロール出来ないとか言ってなかったっけか」カリカリカリ…

 

麗日「…む、むむ…」

 

黙々(呟いているのですが)とノートに文章を書き出す僕の姿を2つ左の席にいる麗日さんがチラッと覗いてくる。

 

まぁ僕自身はせっせと書いてる事に夢中で気がつかなかったけどさ…

 

ふぅ…と相変わらずの様子に呆れながら彼女は立ち上がり席から離れていった……?8試合目までまだかなり時間はあるのだが…

 

そうこうしている内に第1回戦の後半戦が始まろうとしていた。

 

緑谷「…っとと…いけないいけない…別の人の試合も見ないと」

 

緑谷「次次…次は……」

 

一旦ペンを止め、第5試合目の対戦者を確認する。えー…芦戸さんと……

 

 

緑谷「拳藤さん……か」

 

マイク「さぁ!後半8人によるガチンコバトル!!先の4試合以上に熱い戦い、見してくれよ?」

 

 

 

拳藤「さてと…いよいよあたしの出番だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が終わった直後、飯田君は一先ず控え室に戻った。レシプロバーストによって消費してしまったガソリンの補給の為、荷物を取りに来たのだ。

 

リュックの中身をガサゴソと手探りし、中からオレンジジュース(紙パック)を取り出す。

 

差し込んだストローを口に咥えジュースを飲み始めた。椅子に座って一休憩。

 

飯田(次の相手は上鳴君か…)チュゥ…

 

飯田(ある意味緑谷君や轟君より厄介な相手と当たってしまったな)

 

飯田(……弱気になるな、飯田天哉。俺の背中(バック)には兄さんが付いている)

 

飯田(インゲニウムの名を恥にはさせまい…!)

 

燃料補給をしながらそんな風に上鳴君との闘争心に燃えていた飯田君。

 

そんな時、控え室のドアから誰かが入ってきた。

 

 

ガチャ…

 

飯田(む…?5試合目の選手か?いや…まだ始まっていない筈…)

 

 

 

 

 

 

麗日「あ、飯田君。いたんね」

 

飯田「…麗日君……!」

 

 




須井化です…はい。

今回は一回戦前半まで。結局拳藤ちゃん出オチだったorz…

申し上げます!塩崎さんの個性ダイレクトに間違えてましっタァ!第23話の紹介訂正しやしたよ!

うろ覚えで壁が身体から離れてたので何処からでも生やせるのかなぁと。原作のハゲ説明には大草原、ツル生やしたかった。

そしてなんか上鳴君が強キャラ化してきましたねー。ただのアク○ルフォームじゃねぇか。

……なんでこう…上鳴にライ○ー要素絡んでくるんだろ、作品と関係ないのに。

ん?10秒が限界なら4〜8秒何回も繰り返せばいいじゃないって?そんな甘々な設計ではないんですよ奥さん…

いかがでしたか?



次回は女子メインの回かな。

拳藤・八百万・麗日ってやたら豪華だなオイ。

まぁ麗日ちゃんはただ飯田君と団欒するだけですが。

CPネームがいい茶かだっちゃで迷ってます。麗日にラムちゃんスーツって似合うのかな……

あ、メイド服じゃないよ。




何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。か、風邪になったデク君の看病したい人募集中!15日までだから急いで書くべし!?

4月1日(土)18:00に第28話の投稿を予定しております。アニメが終わった瞬間始まるぞ!後アニメも麗回なそうな!?
お楽しみに!



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第28話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

心操少年の意外な個性、上鳴少年の新たな技術…

様々な強豪等が圧倒的な強さで勝ち進む中、第1回戦後半の部がスタートする!

更に向こうへ!PlusUltra!!!





1人控え室でジュースを飲んで休憩していた飯田君。ドアが開く音がしたと思いその方を振り向くと麗…

 

 

 

かじゃなく眉をひそめた麗日さんが中に入ってきた。空かさず飯田君はツッコミを入れる。

 

 

飯田「う、麗日君。うららかじゃなくなってるぞ…」

 

飯田「眉間にしわ…」

 

麗日「みけん?……ああ!」

 

表情の変化に気づいた麗日さんは深呼吸して自分の緊張をほぐす。顔がいつもの麗らかな表情へ戻り照れ隠しながら返事をする。

 

麗日「ご、ごめんごめん…緊張が高まてた…」

 

飯田(タカマテタ…)

 

飯田(緊張…か。そういえば彼女の次の相手は……)

 

麗日「いやー!しても飯田君決まってたねー!」

 

麗日「レジプロバースだっけ?アレめっちゃかっこよかった!」

 

彼女はキックのモーションを入れながら飯田君の【レシプロバースト】を称賛する。技名が間違えられた事に少しショックするも褒誉の声をくれた事に赤面しつつ照れる飯田君。

 

飯田「そ、そうか…嬉しい限りだ」

 

飯田「……」

 

麗日「…どしたの?飯田君」

 

 

だが、突然彼は俯いて考え込んでしまう。

 

麗日さんの初戦の相手…それは緑谷()であった。緊張の沙汰では無い。体育祭の手前、あんなに意気込んではいたが底知れぬその力には最早恐怖すら感じていた。

 

入試でのインフェルノ1撃撃破、入学初日にプロヒーローと互角以上に渡り合い、更にその教師ですら惨敗を喫したあの脳無(化け物)と数分間応戦したと言う。

 

結果だけ見れば同じ敗北ではあるが相澤先生以上に奮闘していた所を見ると、個性の相性はあれど並のプロヒーローかそれ以上の実力が窺える。

 

彼らにとって僕との対峙は1匹の蟻が1頭の恐竜と遭遇する事と何ら変わらない事である。住んでいる世界が違う、歴然の差であった。

 

何とかして彼女の気を少しでも紛らわせてあげたいと飯田君は話題を黙想していたのだ。

 

 

 

飯田「……あ」

 

麗日「い?」

 

そんな時ふと、ある事を思い起こす。前々から聞こうとは思ってはいたが気乗りせず保留にしていた話だ。静かに椅子に座り込む麗日さんに飯田君がその事について話し出した。

 

飯田「なぁ…麗日君」

 

飯田「少し問いても良いだろうか?」

 

麗日「う?」

 

 

飯田<……えお

 

麗日<ノリ良い!飯田君!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方スタジアム中央部では大盛況の中遂に2人の女子選手のお出ましだ。今まさに、第1回戦5試合目が始まろうとしていた…!

 

マイク「さぁ!お次は今大会、結構レアな女子同士のバトル(キャットファイト)!」

 

マイク「最初に名乗りを上げたのはA組女子!芦戸三奈ぁあっ!!」ワァァァア…

 

マイク「見た目の可愛さとは裏腹に個性の酸が恐ろしー!破茶滅茶女子高生!」

 

芦戸「破茶滅茶……」

 

マイク「お次はB組女子!地味に繰り上がり無しで来てるB組君だけか!?」

 

マイク「佳人!!拳藤一佳ぁぁあっ!!」ワァァァア…

 

拳藤「い、いやはや…そこまでおだて上げんでも」

 

 

午前中、障害物競走・騎馬戦共に彼女の活躍を見る間も無くプログラムは終了してしまった。騎馬戦に至ってはメンバー上やむ無しとは言え拳藤さんはただ手を上げ続けただけだからなぁ。

 

万一、準決勝で当たった時の事も考えて2人の対策を練らねば…

 

八百万「…緑谷さん?」

 

緑谷「ふあい!?」

 

後ろから今度は声がやって来たよ。やめてくれ…ただでさえさっきの上鳴君のでビビってるんだから!

 

八百万「突然にやついたりしてどうしましたの?この試合の方々が来てからずっとですわ」

 

緑谷「え…あ…ニヤついてた?僕?」

 

すぐに八百万さんはコクコクと頷いた。え…無意識の内かな……そんなつもりは無かったけど。

 

いや…まぁ確かに……目線は拳藤さんにずっと向けていた…というか集中していたというか。

 

何だろう。彼女と逢ってから大分調子が狂うな…そりゃ……あれだ。まさかまた会えるなんて思ってもいなかったからあの時嬉しいっちゃ嬉しかったけど…あーというかやっぱり綺麗だなあの娘。

 

じゃねぇよ!ってかどこに着眼点置いてるんだ自分は!これじゃただのド変態じゃん!!

 

 

緑谷(ああぁぁ!自分がムカつく〜!!)

 

八百万「……?」

 

 

顔を上下左右に振った挙句髪を搔き乱して混乱している僕を不思議そうに眺める八百万さん。彼女はふてくされた顔になりながら椅子から立ち上がりそのまま歩き出していく。

 

……今思ったけどさ、後ろなのにどうやったら表情見えるんだろうね。

 

 

 

 

試合開始前、気軽に対戦相手に話しかける拳藤さん。敵同士だがヒーロー科同士でもあるのであくまで仲良く精神。

 

拳藤「A組の人初めまして…てさっき食堂で会ったけか」

 

拳藤「うーんと…確かあ…あし……」

 

拳藤「芦○愛菜?」

 

芦戸「芦戸三奈だよ」

 

拳藤「あっ…ごめんごめん。さっきデクに()()()()紹介されてたからさぁ…」

 

悪気が無いってのは分かるんだけどさ…その言い方はまずいよ、拳藤さん。ほれ見ろ。コケにされた芦戸さんは…

 

芦戸「ん〜?あーダイジョブダイジョブ。気にしてない」ゴゴゴ…

 

拳藤「お、なら良かった良かった」

 

邪気を纏いながら満面の笑みで返事していますよ。そして案の定変化に気づいていないー!?

 

 

実は芦戸さん、始まる以前から彼女にかなり悪印象を抱いていた。?食堂では何も無かったろ、だって?

 

 

芦戸(何故だが知らんがウチの男子と数分間ウチらの前でイチャイチャしたのを見せびらかすのは確かにいただけん!)

 

芦戸(何より…あたしが1番ムカついたのはっ!)

 

芦戸(チアコスしたあたしらが応援してたのを見て!腹抱えて笑いながらレク楽しんでいた事!!)

 

芦戸(あたしにだってA組としての意地がある!負けてられっか!)

 

芦戸(後()()()も見てくれてるしーー!)

 

 

イラついてしかめっ面になったり興奮して赤面になったりと忙しい表情変化の中、静かに闘志を燃え上がらせる芦戸さん。…あの人って誰だ、凄く気になる。

 

 

そして、とうとうマイクによる試合開始のコールが鳴る!

 

マイク「START!!」

 

拳藤「早速で悪いけど、勝たせてもらうよ!!」

 

そう言うなり走り出した彼女は右拳を大きくし芦戸さんに向かってその握り拳を振り下ろす。

 

マイク「おー!開始早々拳藤が攻めに出た!不意のジャイアントブロー炸裂か!?」

 

悟空「思ったよりも速ぇな…」

 

 

 

芦戸「よっ」ダダンッ

 

拳藤「ぬおっ!?」

 

だがこの攻撃を先読みしていた芦戸さんはジャンプで軽く避けてみせた。

 

芦戸さん目掛けて放っていた拳は地面に激しく衝突する。地面にヒビが入るあたり威力は筋金入りと言った所か。

 

だが避けてしまえば問題は無い。

 

マイク「おーっと!芦戸上空に高く飛び上がるー!ってか高くね!?助走無しで10〜11m行ってるぞ!?」

 

相澤<大方孫さんの体育(遊び)が原因だろ

 

悟空「へへ〜」

 

 

 

この2週間の間に悟空さんは僕等A組に数々の無茶振りを仕掛けてきた。1vs20のサッカーやら1vs20の綱引きやら…

 

内容はどれもバカらしいお遊びであったがその難易度もある意味馬鹿馬鹿しい。百人力どころか万人力以上の超人に誰も敵うわけが無い。

 

それでは全て無駄だったのかと言うとそうでもない。この2週間の間その無茶振りに身体を酷使させる事で著しく身体能力を上げる事には成功した。

 

芦戸「バ〜カ!速攻勝負に出たんだろうけど、考えが単純なんだよ!」

 

芦戸「喰らえ!あたしの最高火力!!」ヒュゥゥ…

 

芦戸「超溶がばっ!?」ドゴオッッ!!

 

 

 

でもね芦戸さん。空中じゃ自由きかない。

 

今だと言わんばかりに溶解液(必殺技)を浴びせようとした芦戸さんだったが降下時間その他諸々を考慮し忘れてしまったようだ。

 

着地直前、拳藤さんの射程範囲まで近づいてしまった芦戸さん。勿論舞空術みたく避ける術などある筈もなく…

 

 

見事にフラグ回収し、彼女の顔面に飛び横蹴りがクリーンヒットした。

 

マイク「おぉっと技名言ってる途中で拳藤攻撃ーー!ヒーローのお約束そっちのけかい!!」

 

マイク「そしてー!?」

 

芦戸「ひゃふ!?」ガンッ!

 

身体は遠くまで吹っ飛び、後頭部を強く壁とぶつけてしまう。そのまま地面に倒れ、頭上に星を3つクルクルと回しながら気絶する。

 

 

芦戸「ふにゃぁ…」

 

ミッドナイト「芦戸さん場外!拳藤さん2回戦進出!!」

 

拳藤「っしゃあ!」ワァァァア…

 

無事芦戸さんに勝利した拳藤は両手を強く握ってガッツポーズ。ああ。それです、それ。

 

ここまであまり目立っていなかった彼女も第1回戦を制した事により一目置かれる存在となった事だろう。観客からの大歓声も止まない。

 

 

マイク「オウオウ!2回戦目のB組出場者が1人出たぞ!ここまで来れば否が応でも人気出るぞコレ!」

 

悟空「いや〜スゲーな今の奴…」

 

相澤<B組の方…ですか?

 

相澤<まぁ確かに個性が手に限定されているのに対して障害物競走もかなり応用してましたけど…

 

悟空「…そこじゃねえ。寧ろそのデケェ手を軽く振り回すぐれぇの筋力等がある事だ」

 

悟空「相当鍛えた結果だろうなぁ…昔のチチみてぇだ」

 

相澤<……と言うと…アレですか?

 

悟空「……緑谷と同じタイプだろーなぁ。多分」

 

マイク「拳藤の真価はいわば【その個性を自在に操る肉体】にあるってか」<まぁ発達いいけどさ

 

相澤<お前は一々余計な一言多い

 

 

 

上鳴「うひょーなんて素晴らしい蹴りだあ!俺もあの美脚で蹴られてえ!」

 

峰田「ふざけるな!八百万が…宇宙一なんだ…!」

 

峰田<でもあっちの方がデカイカモ…

上鳴<だろ?

 

緑谷「…っかぁ…」

 

改めて見ると本当に凄いと思うや…あの女の子はこうも強かったのかと驚かされる。個性使い慣れてるなぁ。動きにブレがない!反動でスピード遅くなるとか思ってたけど…

 

たった数秒なのにあの娘に見入ってしまった。

 

…い、言っとくがやましい気持ちがあって見てるんじゃないからな!?勘違いするなよ!?うん!?

 

 

 

拳藤「…あ」ワァァァア…

 

拳藤「ハハッ」

 

しばらく拳藤さんを見つめていると、どうやら彼女もこちらの目線に気づいたらしく笑顔でこちらに手を振って返してきた。

 

上鳴「うおおっ!俺に手振ってくれたぜ!おい!」

 

峰田「なんだと~!?勘違いするな!この俺に振っているんだ!」

 

どっちも違います。

 

それにしても…嬉しくてついこっちも手を振って返してしまったものの……

 

緑谷「…」

 

拳藤「デ〜クー」ゴゴゴ…

 

緑谷(何か彼女からスッゴイ威圧感を感じるのですが…)

 

あの笑顔は決して僕に対しての奉迎では無い。彼女のあの表情に込められたメッセージはいわば【首洗って待ってるからせいぜい勝ち進め】みたいな感じだろう。

 

紛れも無い、拳藤さんも強敵の1人だ。

 

 

拳藤一佳。個性【大拳】

 

左右の手を大きくする事が出来る。本人曰くズームには限界あるっぽい。

 

何故か僕の呼び方が【デク】。

 

 

 

緑谷(参ったなぁ…予想通り順当に行けばさっきの3人と準決勝当たるじゃないか)

 

緑谷(常闇君はほぼ物理攻撃無効にするし、八百万さんはその場に応じてアイテム出せるし…)

 

緑谷(味方として見りゃ申し分ないけどいざ相手するとなるとおっそろしい面子だなぁ…)

 

ノートに芦戸さんと拳藤さんのデータを書き留めながらそんな風に複雑な心境を抱いていた。改めて考えると騎馬の組み方は正解だったのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

その後、ステージから退場した拳藤さんは愚痴をこぼしながら廊下をとぼとぼと歩いていた。

 

拳藤「ったく…あんな呑気に解説してるからああなる…」

 

拳藤「空中は格好の的だっての」

 

という風に独り言をしていると前方に誰かの人影が目に入った。

 

 

 

 

 

八百万「……」

 

拳藤「…お。あんたは……そうそう、八百万」

 

 

 

八百万さんその人である。観客席から離れた後、すぐに試合が終わると悟っていたのか…既に闘技場に向かっていたようだ。

 

 

最初こそ硬い表情で相見えていたがすぐに微笑みながら返事をする。

 

八百万「まぁ…覚えていらしたのね」

 

八百万「意外でしたわ。芦戸さんの名も忘れていたので…てっきり分からないかと」

 

拳藤「いやいや!流石にあたしだってチームメイトの名前位覚えてるわー!」

 

拳藤「常闇でしょ?八百万でしょ?後デク!」

 

拳藤「全くさ…不運も良いところだよなぁウチら。何たって高確率でさっきのメンバーと当たるんだから」

 

拳藤「参っちゃうよ、なぁ?」

 

続けて喋ろうとする拳藤さんだったが話時間長くなると見た八百万さんは一旦話を切り、その場を去ろうとする。

 

八百万「別に私は構いませんわ」

 

八百万「相手が誰だろうと私は私なりのベストを尽くすだけですもの」スタスタ…

 

拳藤「ふーん…そう」

 

 

 

 

 

拳藤「あ、でもでも八百万」

 

八百万「…」

 

 

すれ違いざまに、拳藤さんが歩いていた彼女の耳元でささやく。

 

 

拳藤「…あんたもデクと戦いたいんだろ?」

 

八百万「っ!?」

 

拳藤「その様子じゃ図星ってトコかな?」

 

拳藤「もしそう思うんだったら頑張って勝ち続けな」

 

拳藤「そんで這い上がっていけ。準決勝まで」

 

八百万「…無論、そうさせてもらいますわ」

 

拳藤「…ま、何にせよ常闇勝ったら次はあたしだ」

 

拳藤「いい勝負になんの期待してるよっと」ドッ

 

八百万「きゃっ!?」

 

そう言うと拳藤さんは八百万さんの右肩を掴み、入場口の方向へ彼女身体を強く押した。

 

ふいに八百万さんは後ろに振り返るが、言葉を発す間も無く拳藤さんは走り去っていった。

 

呆れながらも八百万さんは彼女のその背中を満面の笑みで見送った。

 

八百万「…」ゴゴゴ…

 

 

もはや満面の笑みの使い方間違っているのでは……?

 

 

八百万さんの身体からは芦戸さん以上に強くはっきりとした殺気が漂っていた。

 

八百万(この私を差し置いてデクなんて呼ぶなんて!麗日さんですら【デク君】ですのよ!?今日初対面なのに爆豪さんや麗日さんみたいに付き合い長かったり別に仲良かったわけじゃありませんのよ!?なのになんで…緑谷さんも緑谷さんですわ!あの娘を見てニタニタと笑っていて!完全に骨抜きにされてますわ!!)

 

とりあえず落ち着いてください…八百万さん。

 

八百万「見てらっしゃい!言われずとも…」

 

八百万「常闇さんにも貴方にも……」

 

八百万「緑谷さんにも敗けるつもりはありませんわ!!」

 

そう宣すると同時に再び身体を入口の方へ向け、ステージに向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【控え室】

 

麗日「え?う、ウチの志望動機?」

 

飯田「ああ。以前、俺から君達に【兄に憧れたから】とは言っていたが…」

 

飯田「そういえば緑谷君と麗日君の()()()()()()()()()()()について知らないと思ってな」

 

麗日「……え……と…」

 

麗日「し、知りたい?」

 

飯田「」ブンブンブンブン

 

飯田君は身体毎上下に激しく振動させ頷いた。直後、言いにくい事情なのではないかと彼は一瞬後悔するが、自分から吹っかけた話な以上引き下がる訳にも行かなかった。

 

麗日「そーだなぁ…究極的に言えば……」

 

 

 

麗日「お、お金儲け?」

 

飯田「カネ…!」

 

 

 

 

麗日さんの両親はある建設会社を経営しているのだが仕事の依頼が少なく、安定した収入を得れていない。

 

このヒーロー社会、個性1つあれば家の1軒や2件誰でも手軽に作れるようになっていた。タダでさえこんな状況の中、態々小さな会社に頼む必要などある筈もなく便利な大手の会社に依頼が殺到していく。

 

そうやって他の建設会社は衰退していき、最終的に全て撤退するのだ。他が必要としなければそのモノは存在価値を無くし、気づかぬ内に消滅してしまうもの。

 

ある意味ではこういった問題はこのヒーロー社会の1つの課題とも言えるだろう。

 

 

麗日「なんかゴメンね…不純で」

 

麗日「飯田君は立派な動機なのに」

 

飯田「そんな事無かろう…生活の為に目標を掲げるのは恥ずべき事では無いぞ?」

 

飯田「しかし、ならば直接個性使用の許可を得てその建設会社に就職すればノーコストだし効率も良いのでは…?」

 

麗日「そう!ウチもそう思ったんよ!…でもね」

 

 

幼き頃、実際に両親に提案した事はあったがすぐにその話は撤回されてしまう。

 

彼女の父と母は自分らの経済を惜しんでも娘の夢を優先させたかったのだ。逆に家庭を裕福にさせる為にと麗日さんの手を煩わし、将来を奪う事こそ彼らにとって酷で不幸な事なのだ。

 

だがそうやって苦しむ父と母を見ていられなかった麗日さんはある決断を下す。

 

 

 

麗日「私は絶対、ヒーローになってお金稼いで…父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ」

 

飯田「……」

 

純粋になりたいという【憧れ】だけでなく、今置かれている状況…【現実】を加味した上での将来設計。

 

そんな彼女の発言に飯田君は何も答えられず唖然とする。かえって憧れが大半を占めている自分の動機の方が不純だと恥ずかしさまで感じてしまった。

 

麗日「ぅぅ…あんまし…こういうプライベートな話はしちゃいけない…とは思ったけどさ」

 

麗日「飯田君も言ってたし…」

 

麗日「……むぅ…」

 

少しの間沈黙の時間が続くが、暫くして再び飯田君が喋り出す。

 

飯田「……何処か、似てるよな。君と緑谷君」

 

麗日「ふぇ!?」

 

飯田「何だか…他人を放っておけない所とか」

 

飯田「思いやりがある所…とか」

 

麗日「ふ、ふぇ!?」ボッ

 

突然緑谷()と比較し始めた飯田君に赤面しながら異論を述べる麗日さん。

 

麗日「ん、ななななそんな事ないよ私!」

 

麗日「たっただのファザコン・マザコンみたいなものだし!?デク君の方がよっぽどしっかりしてるよ!」

 

飯田「む…そうか?す、すまない」

 

麗日「いや…別に謝る必要は無いんだけどさ……」

 

グッと肩を伸ばしながら麗日さんはそう言った。真っ赤に染め上がった彼女の顔は一変。表情は曇って晴れ晴れしていなかった。

 

飯田「…?」

 

麗日「そう。デク君はすごいよ」

 

麗日「だから……」

 

 

麗日「超恐い」

 

 

 

 

 

 

 

 

場面はステージ上へと戻り第1回戦6試合目。常闇君と八百万さんが壇上に上がってくる。

 

マイク「さぁ!お待ちかねの第6試合!」

 

マイク「攻撃無効のチーターこと常闇踏陰VS武器作成のチーターこと八百万百!!」

 

マイク「戦いの行く末、どちらのチート野郎に勝利は明け渡されるのか!?」

 

八百万「…よろしくお願いしますわ」

 

常闇「嗚呼」

 

 

 

緑谷(単純に考えればこの勝負最強の矛と盾を兼ね揃えている常闇君に勝機が見えるが…)

 

緑谷(既に黒影の致命的欠点はチーム内のメンバーには割れてる!)

 

緑谷(そこを上手く突ければ或いは…)

 

 

マイク「START!!!」

 

試合開始と共に早速職人、八百万さんは閃光手榴弾を創造し始める。

 

八百万「常闇さん!貴方の攻略法はもう織り込み済みですわ!」ガシッ

 

体内から出てきた手榴弾を掴み直様放とうとするも…

 

常闇「思考が単純すぎる!!黒影(ダークシャドウ)!!」グオッ

 

黒影<アイヨ!!

 

八百万「…っ!」ガァッ!

 

常闇君の命令に応じ、黒影は素早く八百万さんに接近し、勢いよく吹っ飛ばす。吹き飛ばされた八百万さんの先に待ち構えていたのは触れた瞬間即死(場外)の壁1枚。

 

マイク「うおおっ!!先手必勝!?常闇の相棒黒影が八百万に猛タックル!」

 

マイク「八百万が場外へ一直線!!」

 

「なーんかさっきからこの展開ばっかだなあ」

 

「ああ。吹っ飛ばして場外ハイおしまいって…」

 

「ワンパターンにも程が…」

 

一方が相手を吹っ飛ばし場外のお約束の展開に観客達もそろそろ飽きてきて嫌気が差してきた事だろう。

 

 

 

だが残念。今回のオチは場外()()()()

 

 

 

八百万「…」ピタッ

 

常闇「何っ!?」

 

緑谷「え…」

 

悟空「おっ!」

 

 

 

 

なんという事でしょう。

 

八百万さんが地面に背を向けたまま浮遊してるではないか。そう…まるで舞空術を使ってるかのように…

 

浮いたまま静止する彼女に常闇君を含めたその会場の観客は茫然としてしまう。

 

そんな時、スタジアム中に不気味な笑いが響き渡る。

 

 

八百万「ふふふふふふ…」

 

 

 

八百万「単純なのはどちらの方かしら!?」ピッ

 

常闇「しまっ…」ブンッ

 

 

 

ステージ外の空中から彼女はピンを抜いた閃光手榴弾を投げつける。

 

その瞬間会場が眩い閃光に包まれていく。

 

 

カッッ!

 

マイク「っあああ!マビィ!見えねぇぇ!!」

 

緑谷「くっ…」

 

常闇「黒影……!」

 

黒影<アクマタン…

 

黒影は強い光によって弱気になり身体を縮こませてしまう。回復させようと何とか時間を稼ごうとするが…

 

そんな隙を与えてくれる程彼女は甘くない。

 

 

ダダッ…

 

常闇「!?」

 

 

八百万さんは()()()()を片手にこよ隙に素早く常闇君の後ろに回り込む。

 

常闇「ま…さっ…」

 

八百万「遅い!!!」

 

バヂィッッ!!

 

 

彼女の右手に握っていた物体の先端に触れた瞬間、全身に激しい電流が流れてくる。

 

 

騎馬戦で使った時と同様のスタンガンだ。

 

常闇「な…るほ…ど…」

 

常闇(見事…)

 

 

 

常闇はその場に倒れ気絶する。個性が封じられちゃ攻撃の手段も防御の術も無い。

 

八百万さんの作戦勝ちだな。

 

ミッドナイト「常闇君行動不能!!八百万さん2回戦進出!」

 

八百万「よしっ」ワァァァア…

 

常闇君に見事勝利した八百万さん。顔に喜色を浮かべながらこちらもガッツポーズ。

 

安定の場外ー?からのまさかの大逆転を目撃した観客は半ば興奮気味に彼女に称賛の声を上げる。

 

だがしかし、A組一同はとても笑える状況では無かった。

 

 

なんで創造の個性なのに飛べるの!?という疑問しか思い浮かばなかっただろう。安心しろ。僕も似たような感じだ。

 

こんな事を可能とする方法は1つしか無い。

 

その元凶と思われる人物の方を向き、にっこりと微笑みを見せると、両手を合わせてお辞儀をしながら…

 

 

悟空「わ、悪い悪い…つい」

 

 

と謝罪してました。やっぱり悟空さんが稽古をつけて八百万さんに舞空術教えてたんだな〜?

 

 

でもなんで?

 

 

 

 

 

八百万『お願いいたします!私にどうか体育の補習を…!!』

 

八百万『今のままでは駄目なんです!特訓させてください!』

 

悟空『え、えぇ…困ったなぁ……』

 

悟空(意外と戦いのセンスもあっしこいつの頼みを聞きてぇのは山々だけど…)

 

悟空(緑谷が他の奴に気の事バレねぇ様に用心しろって言ってっからなぁ)

 

悟空(…でも……)

 

悟空『じゃあ分かった!少しだけ付き合ってやるよ』

 

八百万『本当ですか!?』

 

悟空『…ただし!条件として……』

 

 

 

悟空(緑谷の活もお陰で取り戻せたし、八百万も八百万でこの2週間の修行でかなり気が上がったぞー)

 

悟空(こりゃ期待大だな…)

 

悟空「ナイス!」

 

悟空さんは八百万さんに向かって親指を立ててジェスチャーをすると、彼女からもGJサインが返ってきた。

 

八百万「ふふ…」

 

彼女が喜んでいるなら何より何だがお陰で舞空術を使う奴が2人出てきた為話が拗れてしまうぞ……

 

僕は新たに湧き出た問題に頭を抱えながら肩を落とす。

 

緑谷「はぁ……」

 

緑谷「……あ。そうだ。8試合目…」

 

もうじき自分の番が回ってくる。そう思った僕は焦って席を立ち上がりステージへ歩き出した。

 

葉隠「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【控え室】

 

 

マイク<では!次の第七試合はー…

 

第7試合のアナウンスがスピーカーから流れ出す。麗日さんが出場する第8試合まで後数分程しか時間は残されていなかった。

 

 

麗日「そろそろ…来そうやな」

 

飯田「……正直な所緑谷君には突く隙はないからな」

 

飯田「恐らく君の個性も研究しているだろうし」

 

麗日「うん…初めて会った時もそうだったけど…改めてやるなあって思った」

 

麗日「だってちゃんとB組の個性もあの爆豪君やった人のもノートにとってる」

 

麗日「ちゃんと先見据えて行動してる」

 

麗日「どんどん凄い所見えてくる」

 

麗日「多分ウチは最初飯田君があんな事言ってなかったら騎馬戦でデク君と一緒になってたかもしれない」

 

麗日「恥ずかしくなった。あれ聞いてて」

 

飯田「……」

 

 

 

突然彼女は椅子から激しく立ち上がる。

 

 

麗日「皆将来に向けて頑張ってる!」ガタッ!

 

麗日「そんなら皆ライバルなんだよね…だったら…」

 

麗日「決勝で会おうぜ!」

 

そう意気込み飯田君にGJサインを送りながら、部屋から立ち去っていった。

 

 

飯田「……ああ。俺は…どちらも応援し…」 ガチャ…

 

飯田「…ている………」バタン

 

 

飯田「……あまり…かけられなかったな声…」

 

 

少しでも麗日さんに助言を与えたかった飯田君だったが、何も手助けできず見送ってしまった自分に彼は無慈悲を感じながら、ふうっとため息をつくしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1回戦第7試合、個性ダダ被りな切島君と鉄哲君は3分間に渡る激しい攻防戦を繰り広げていた。

 

切島「っらあ!!」

 

鉄哲「ぐおっ…!」バギィッッ!!

 

切島君の右ストレートが鉄哲君の顔面に直撃。

 

ならば倍返しにと鉄哲は強烈なボディーブローを切島君に浴びせる。

 

鉄哲「っめんな野郎!!」ズドォッ!

 

切島「ぐっ…ぉぁ…」

 

その鉄拳の威力に思わず嘔吐しそうになるが口をすぼめながら何とか耐える。

 

「個性もさる事ながら実力もほぼ互角…」

 

「いいねいいねぇ!こういう暑苦しいの見てるとこっちもハラハラする!!」

 

悟空「いっけぇぇ!切島!そこだーー!!」

 

彼らの繰り広げる白熱の試合に観客席から多数の嘶きが発生する。お、悟空さんも吠えてる吠えてる…

 

2人共もう既に極限状態だ。フラフラと身体がおぼつかず、小さな衝撃1つで気絶しそうな程身体のダメージは深刻であった。

 

 

それでも勝利を掴む為、最後の力を振り絞り彼らは互いに駆け寄りトドメの一撃を放つ。

 

切島「うおおおおっ!!」ダダダ…

 

鉄哲「ぐあああらっ!!」ダダダ…

 

 

 

 

バキドゴォッッ!!

 

 

 

切島「……おぼ…」

 

鉄哲「……が、がご…」

 

 

 

相手の強烈な正拳突きを両者共に己の顔面に諸に食らってしまう。一時頰にパンチをめり込ませたまま2人は停止するがやがて気を失い、その場に崩れ落ちた…

 

 

2人の元にミッドナイトが駆け寄りジャッジをする。

 

マイク「判定は!?ミッドナイト!」

 

ミッドナイト「……両者、気ぜ…」

 

 

勝利の執念故か…

 

気絶した筈の切島君は膝をガクガク震わせながらその場に立ち上がる。そして…

 

切島「こ…こんくれぇ…どって事ねぇ…スよ」

 

と自ら健全(?)をアピール。

 

ミッドナイトは小さく綻びながら…

 

 

ミッドナイト「鉄哲君行動不能!!切島君2回戦進出!!」

 

拳藤「あっちゃぁぁ…鉄哲も負けちゃった」ワァァァア

 

拳藤「惜しかったのにぃ…」

 

塩崎「でもA組の方も満身創痍でしたし…まさに紙一重といった所でしょうか…」

 

拳藤「むむ……という事はもしかしなくてもB組進出者って…」

 

小大「ん」チョンチョン

 

隣にいた女子生徒が拳藤を小さく指差しながらアピールする。

 

拳藤「やっぱりぃいい!?」

 

物間「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…第1回戦最終試合……

 

マイク「お待たせぇぇぇ!!第1回戦のラストを飾るのはこの2名!!」

 

マイク「予選・本選共に1位とか強すぎ君!!」

 

マイク「ヒーロー科緑谷出久!!対!」

 

マイク「俺こっち応援したい!!」

 

 

 

麗日「っし…」

 

マイク「ヒーロー科!!麗日お茶子ぉぉおおっ!!」

 

 

 

 

 

 




須井化です…はい。

今回は麗日の回想回&1回戦の後半戦。

相変わらず戦闘シーンが省かれる暑苦組てどーなの…まぁ文字数的には仕方がないのですが。

実は体育祭前にギクシャクさせたのも麗日さんの動機聞かせない為ってのもあったんですよねぇ。

アニメの麗回も楽しみにしておりますぞ!←まだ見てない

いかがでしたか?




っと…今回は少し尺が余ったのでQ&Aコーナーでも設けますか……?そんなコーナーあったっけか、だって?

自由な校風がウンヌンカンヌン。

Q1.なんで敵連合襲撃後の臨時休校が2日もあるの?

A.これは生徒の被害の拡大と急遽悟空さの就任が決定した事と関わってきますなぁ。

正味生徒の被害小だとしても1日しか休校にしないのはどうなのか…まぁフィクションだから何とも言えんか。

その代わり体育祭の日程もちょい変わってます。そもそも原作がいつ開催とか細かいのは決まってなかったと思うけど…


Q2.なんで体育祭のくじ引きの時間が違ってるの?

A.これは須井化としての何か変なこだわりにありますなぁ。

くじ引き後、原作じゃ尾白君がデク君にアドバイスしたじゃないですか?なんかああいうのは少し反則というか…尾白君自身プライド云々言ってた割には何故それに出た!?って感じでした。

いや…そういう情報戦の目論見も兼ねたプログラムの立て方とかだったらいいんですけど。やっぱり特定の人物に絞って第1回戦を想定するのは体育祭の根本の目的と少しズレてしまう気がします。後ズルのしようがある。

だったら極力ギリギリまで決めずに1回戦で当たるまでの時間短くした方がいいんじゃね?

という私の独断です。




Q3.エイプリル・フールのあれは何だったの?

A.(°U°)………


何なんだぁい?それはぁ…

知らないです…はい。








次回はお待ちかねデクvsウラビティ!

原作じゃ叶わなそうな寧ろ叶いそうなこのドリームバトルを見逃すな!

いつかは麗日ファン増えるといいなぁ…フフフ!







何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。か、風邪になったデク君の看病したい人募集中!4/15までだから急いで書くべし!?

4月5日(水)以内に第29話の投稿を予定しております。
お楽しみに!








<ふぁーふぁふぁふぁ!今回も無事18:00達成という訳だぁ!

<また遅れたwなどとその気になっていたお前の…

<ん?

予約 19:00

<……

現在時刻18:05

<ゑゑゑゑゑゑ!!!





下着<これも全部薄汚いパ○ガスの仕業なんです!

野王<何だと!?それは本当か!?

ご飯(どこかで見た事あるような…)


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第29話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

A組は轟少年を始めとする選りすぐりの5人が2回戦進出決定。負けじとB組から拳藤少女、普通科からは心操少年も勝ち上がっていく。

第1回戦もとうとう大詰め。最終試合、緑谷少年と麗日少女の対決が今始まろうとしていた…

更に向こうへ!PlusUltra!!!


マイク「さてさて…1回戦最後の組だなぁ!」

 

マイク「緑谷!麗日!ハリーアップ!!」

 

マイク「多数のリスナーがお前らを待ってるぞ!!」

 

ワァァァア…

 

 

 

 

観客の拍手喝采が止まない中、8試合目に出る生徒2人を呼集する為マイクが会場中にアナウンスをかける。

 

1年A組にとってもこの試合は良い意味でも悪い意味でも注目すべきバトルであった。

 

 

蛙吹「次…ある意味1番不穏な組ね」

 

蛙吹「緑谷ちゃんとお茶子ちゃん…かぁ」

 

耳郎「あたし見るのヤダなぁ…何か」

 

身震いが起こるのを両腕でさすって抑えながら耳郎さんが喋り出す。

 

耳郎「いずれ当たる事を考えれば…確かに体力フルの初戦からぶつかるのは万々歳かもだけどさ」

 

耳郎「実際の所勝ち目はどの位あるの…?麗日」

 

蛙吹「………」

 

彼女の素朴な疑問に蛙吹さんは右人差し指をかじりながらこう答える。

 

蛙吹「…ハッキリ言ってUSJの時の緑谷ちゃんを真近で見ていた私としては」

 

蛙吹「彼に分があるし、何より()()()()()()

 

耳郎「…?」

 

蛙吹「でも…緑谷ちゃんはまだ界王拳を出し惜しみしてる。多分轟君みたいなこだわりじゃないかしら」

 

 

 

蛙吹「お茶子ちゃんがそこをうまいこと突ければ…あるいはね」

 

 

 

 

鉄哲君との激しい死闘を制した切島君。ダメージは予想以上のモノだったがリカバリーガールに手当てしてもらいとりあえず次の試合にも出られる位の身体にはなった。

 

保健室で体力を回復した彼が観客席に戻ってきた。

 

切島「おいっつつ…」

 

葉隠「おー!お疲れ切島君!」

 

切島「まさか1回戦目であんなのと当たるとは…後少しでブッ倒れるとこだったぜ…」

 

傷がズキズキと痛むのを堪えながら切島君は椅子に静かに座り込む。

 

葉隠「治癒してもらったのにまだ痛いの!?相当ボロボロなったんだね」

 

切島「まぁスッゲェ漢らしい奴と熱いバトルできたから良いんだけどよ」

 

切島「次当たんのは緑谷かぁ…これまたドエれぇクジ運持っちまったもんだ」

 

葉隠「まぁ麗日ちゃんに緑谷君が勝ったらの話だけどねー」カキカキ…

 

ため息をつきながら悠々と葉隠さんと喋っていた切島君だったが…

 

ふと彼女が何かメモを記している事に気がつく。

 

待った。葉隠さん…そのノート……

 

切島「なぁ葉隠。お前それ何書いてんの?」

 

葉隠「え?ふへへー」

 

 

 

 

 

葉隠「緑谷君のクラスメイト研究ノート〜」

 

彼女はニコニコと可愛らしい表情でそう答えた。

 

 

いや葉隠さん!?何ちゃっかり持ってっちゃってるんですか!?ってかそう言われてみれば焦ってて無防備のまま放置してたなアレ!!

 

切島「おいおい…流石に他人の私物盗るのは犯罪…というか敵だぞ」

 

葉隠「ちっ違うよ!別に奪おうとしてた訳じゃなくて…ホラ!」

 

誤解を招いてしまった葉隠さんは冤罪である事を証明する為に切島君に僕のノート(証拠品)を提示した。

 

切島「……ん。うわっ汚っ!!」

 

字体が一定になってないゴチャゴチャとした文章の山を目視し、ドン引きする切島君。

 

え、そんな字汚いですか僕……

 

……いや、よく見てみれば僕が観戦していない切島君と鉄哲君の試合のデータじゃないか。ってまさか…

 

切島「コレ…お前が書いたの?」

 

葉隠「へへー。我ながら綺麗にまとめられた」

 

切島「あ、ぁぁ…そう?」

 

切島(1文字も読めないなんて言ったら殺されそうだな…)

 

切島「…それって緑谷に頼まれたのか?よく了承したな」

 

葉隠「ううん。一生懸命書いてる所見ててさ…」

 

 

葉隠「なんとなく、やってあげようかなって」ニッ

 

切島「……」

 

 

 

 

 

葉隠「後ホラ、ウチのクラスとかB組の人のデータ詰まってるし」

 

切島「……」

 

彼曰く、何故かその時の葉隠さんの笑顔がゲスく見えてしまったとか何とか。

※実際に顔は見えてません。

 

 

 

マイク「っにしても遅えな…緑谷達」

 

マイク「放送かけてからもう5分は経つっての」

 

相澤<時間厳守と言った筈だが(ゴゴゴ…

 

マイク「なぁカカロットー。おま2人の位置特定できんだろ?だった…」

 

話しかけながらマイクは隣を向く。

 

 

 

のだが。アラ…スマホを置いて何処かに消えてしまった。

 

マイク「あれ…カカロット?おーい」

 

相澤<……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【廊下】

 

 

入場口に入る手前、僕は数分間そこに立ち尽くしていた。何故かって?

 

 

 

 

緑谷(心臓が途轍もなくバクバクするのですが)ギュッ

 

鼓動が激しいというか痛いというか最早はち切れそうです。後頭痛もする。後吐き気もする。あ、やっぱ。手洗い行かなかったら途端に尿意が湧いてきた。

 

…とまぁ大袈裟な表現ではあるが、これ位の緊迫感は真面目に感じた。こんなんここの入試以来だぞ…というか下手しなくてもその比じゃない!

 

強い感情が高ぶり、締めつけられる胸をグッと力強く掴んだ。この状態でようやく立ってるのがやっとな状態だ。

 

緑谷(ヤバイヤバイ…もう呼び出しくらってから何分も経ってるぞ)

 

緑谷(くそ…動け我が右脚と左脚よ…今こそ出陣の時…)タタッ

 

緑谷「ん…」

 

後ろから小刻みに着地する音が聞こえた。このタイミングでここに来る人と言えば…

 

 

 

悟空「よっ。緑谷」

 

緑谷「ごっごご悟くくく空さんっ!!?」

 

ステージに現れる気配が無い僕を心配し、瞬間移動で悟空さんが現れた。いや…正確には上がる手前でおろおろしている様子が見えたから、なんだろうけど。

 

見慣れた筈の光景なのに不意に現れたがら久々に飛び跳ねて驚いてしまったよ。…リアクションが一々デカすぎ自分よ…

 

悟空「何やってんだー?客の皆も待ってっぞ?」

 

緑谷「い、いぇ…いっ急いで行こうとしてるんですけど…胸がドキドキのバクンバクンで!?」

 

悟空「バクンバ君?誰だそりゃ…」

 

態々手を煩わせて迷惑をかけてしまったと恥をかきながら、僕は更に声を荒げキョドッてしまう。

 

悟空「少しは自信持つようなったと思ったけどよー相変わらずだなぁおめえは」

 

緑谷「だだだだってこれ軽く億越える数の人達見てますし!?うん!」

 

悟空「だってもクソもねぇぞ…むしろオラこんな闘技場で戦えんの羨ましいし」<いいなぁ

 

そちらも相変わらずの戦闘脳で少し緊張和らげましたよハイ…

 

悟空「大体、大勢の奴らに見られながらってのならもう予選と本選通して大分慣れただろ?」

 

緑谷「いや…そりゃそうですけど」

 

緑谷「……まだ不安なんです。この間1年間修行した後に直に戦って…悟空さん以外に初めて負けて」

 

緑谷「午前中の競技は自分の技じゃなくて…どちらかと言うと他の力とか…後運頼みとか」

 

緑谷「本戦の1回戦も見てて…心操君や上鳴君、八百万さんも舞空術習得してたし」

 

悟空「ああっと…それはすまねぇ。頭何回も下げられちまって断るに断れなかったんだよ」

 

そう言って申し訳なさそうにペコペコと今度は自分の頭を下げる。

 

悟空「まぁでもあくまで【舞空術】とちょっとした体術を教えただけで気の概念自体は知らねぇ筈だ」

 

悟空「そこら辺は安心してくれ」

 

緑谷「は、はぁ」

 

緑谷「……敵襲撃から多少は界王拳の倍率も上げられましたけど」

 

緑谷「正直上鳴君の隠し玉や飯田君のレシプロに敵うかどうか」

 

悟空「……んまぁ…確かに飯田はまだしも上鳴の速さはえげつなかったなぁ」

 

悟空「界王拳をいくら無理やり上げても1()0()0()%()()()しか出せてねぇ現状じゃ2人より…てのはちっと無理あっかもな」

 

緑谷「……?」

 

今悟空さんの言葉にかなり違和感を感じたぞ。100%だけの力?100%ってマックスフルパワーじゃないの?

 

悟空「まっ!本当に桁違いにヤベェ奴と戦った時はオラもワクワクどころかビビってた時もあったけどよ」

 

 

 

悟空「どんな時も笑って挑め!モチベが下がりゃ気も小さくなる!」ニッ

 

悟空「結果がどうなろうが誰もおめぇのやった事に文句なんか言えねぇよ!」

 

悟空「オラが見込んだんだ!それなりの自信持って胸張っとけ!!」

 

緑谷「……っ……!」

 

 

いつの間にか服を掴んでいた手は大きく開き、胸からさっきとは別の感情が込み上げてきた。

 

そうだ、僕のバックには世界最強の男がついている。これ程安全な保証があったものか。1年というほんの短い期間だが彼の助言あっての今の結果さ。

 

悟空さんの言葉にはそれがどんな危なっかしい台詞だとしても妙に安心できてしまう。

 

いつも通りに…いつも通りに戦って勝てばそれでOKだ。簡単じゃないか。

 

緑谷「はい…行ってきます」

 

悟空「気ぃつけろよー」ダダッ…

 

悟空さんの励ましもあり、顔にいつもの明るさが戻ってきた。ニンマリとした半端な笑顔で一言挨拶すると僕はそのままステージの方へ駆けていった。

 

緑谷(今は何も気にするな!試合に集中集中!)

 

緑谷(ただ前に突き進め自分!)ダダッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…数分後……

 

僕に待っていたのは歓喜ではなく…

 

 

哀傷であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マイク「おおーっ!ようやく2人のお出ましだ!!」

 

マイク「一体何処で油売ってた!?」

 

マイク「何はともあれ、本戦出場者最後の2選手の登場だぁぁあっ!!」ワァァァア

 

マイク<あ、お帰り

悟空<おう

 

 

 

マイク「予選・本選共に1位とか強すぎ君!!」

 

マイク「ヒーロー科緑谷出久ぅううっ!」ワァァァア

 

緑谷「う、うおおっ…」

 

マイク「俺こっち応援したい!!」

 

マイク「ヒーロー科!!麗日お茶子ぉぉおおっ!!」

 

麗日「っし…」

 

改めて舞台に上がると熱気が違う…!まるで午前中は前座でしかないよっていう位の盛り上がり様だ。

 

それもその筈。今まで順調に行き過ぎただけだが本来の学年人数の事を考えればその内の16人に抜選されるなんて…どれだけ確率低い当たりくじを引いてんだ僕は。

 

プレッシャーが半端ないです。

 

 

麗日「…デク君…」

 

緑谷「……」ゴクッ

 

 

思わず息をのんだ。それ程彼女の眼差しはいつにも無く真剣であった。

 

試合が始まる直前、突然彼女に呼びかけられてしまった。午前中の会話の事もあり何と答えればいいか苦渋するも

 

緑谷「麗日さん……」

 

緑谷「まさか初戦で当たるとは、思っても無かった…けど…」

 

緑谷「戦う以上…手は抜かないから……ね」

 

 

途切れ途切れにそう声をかけた。それを聞いた途端彼女の顔は更に険しくなる。え?何か僕怒らせるような事言った?

 

麗日「カイオウケン…」

 

緑谷「?」

 

 

 

麗日「界王拳使ってない時点で手ェ抜いてるだろっ!!」

 

マイク「START!!」

 

語気を強めながらそう言い放ったと思うと、開始のコールが始まるや否や麗日さんがこちらに猛接近してくる。

 

界王拳…いや確かに午前中には使って無かったけどさ

 

緑谷「でっでもあれは負担デカイし…後無闇に使ったら自爆しちゃうし……」

 

的確な突っ込みに僕はおろおろと言い訳を呟く。というかそれに構ってる場合じゃねぇ!

 

 

悟空「緑谷ー!しっかりしろよ!!」

 

緑谷「ふあっ!?」

 

緑谷(いかんいかん…!今はこの試合の事だけ考えろ!)

 

師匠の声援によりハッと我にかえる。頰を両手で叩き朦朧としていた意識をやっとこさ臨戦態勢に持ち込んだ。

 

麗日「うおおっ…!」ダダッ…

 

緑谷(麗日さん…か)

 

緑谷(今思えば最初あたったのはラッキーというかアンラッキーというか…)

 

 

 

 

飯田君が前回(さっき)指摘していた僕と類似している点…あれは何も性格だけの話には止まらない。

 

彼女の十八番は見た目のほんわかさとは裏腹に()()()()()()()()()事だろう。

 

4月の最初の対人訓練では峰田君のもぎもぎと部屋にあった用具等を利用し、見事ヒーローチーム(蛙吹・常闇組)に勝利を収めており…

 

かっちゃん以外で唯一あの場で黒霧の弱点を見抜いた洞察力を持っている。

 

 

 

 

飯田(麗日君と緑谷君は同じタイプの人間だ)

 

飯田(つまりこれは如何に相手の想定の裏をかけるかで勝敗が変わってくる)

 

飯田(上手く緑谷君の【想定外】の場面をを生み出せればいいのだが…)

 

あ、飯田君…観客席戻ってたんだね。

 

 

 

 

さぁこっからは命懸けの心理戦のお時間だ…

 

僕の決まり手と考えられるのはやはり体術あたりだろうか…そこら辺の技術は人並み以上に体得してると自分でもそれなりの自信はある。

 

だが近接戦は絶対NG。

 

彼女の個性は【無重力(ゼログラビティ)】、触れたら浮かせて場外の即死技。打撃だろうが関節技だろうが事故だろうが麗日さんを触れば彼女が主導権を握る事となる。

 

ならばどうするか?逆に言えば触れずにダメージを与える方法と言うと【気功波】の類か。かめはめ波を適当に撃ち込めば勝てるのでは?

 

 

 

 

そんな単純にはいかない。

 

 

 

麗日さんは僕に近づいていくにつれ、何故か身体が前かがみになっていくのだ。

 

何故だと思う?

 

麗日「……」ダダッ…

 

緑谷「………!」

 

ポキッ

 

 

だらしなく垂れ下がっていた両腕から小さな効果音が発生する。僕が()()()指を曲げて骨を鳴らしたんだ。

 

麗日(今やっ!)

 

その瞬間、突如彼女は前に倒れこみこちらに向かってスライディングする。

 

 

見事に釣られてきたな!

 

緑谷「波ぁっ!!!」ボォオッ!!

 

麗日「うっ…!」

 

 

咄嗟に右腕を地面をかくように前に伸ばしながら麗日さんに気功波を放つ。その衝撃に耐えきれず彼女は後ろに吹き飛んでしまう。

 

ではここで先程の答え合わせと行こうか。

 

切島「ぐぁぁ…手が読まれたか!」

 

蛙吹「緑谷ちゃんはよくあの光線を人の上半身に撃つ癖があるわ」

 

蛙吹「タイミングを見計らって下に行って回避するのが1番利口な策だと思ったけど…」

 

常闇「今回はノーモーションで発動していたからな。更に午前中の様に脚でやる可能性もあった。致し方無しとすればそうだが…」

 

常闇「初手では緑谷に一本取られたか!」

 

 

 

 

そう。僕の実力じゃまだ悟空さんの様に人の身体を丸々覆うほどの気功波は放てない。まぁ界王拳を使えば話は別になるのかもしれないが…

 

だから速攻からの不意打ち…これが最も成功率が高かった。本来ならかめはめ波を放つ素振りが見えた直後に滑り込むつもりだったんだろう。

 

 

そこまで見え透いていたと考慮した上でさっきの指鳴らし(合図)を行ったのだからな。

 

簡単な話だ。かっちゃんとは全く逆のパターン…要は彼女のやり口は僕とかなり似ている。だから次にやるであろう行為が自ずと分かってくる。

 

 

まぁ…これは相手も然りなんだけどさ。

 

 

 

思ったよりも強めに撃って地面を巻き込んだ事により衝突の時に発生した爆煙が視界を防いでしまう。

 

緑谷(麗日さん何処だー…って気探れば分かるけど)

 

緑谷「おっ?」

 

目を凝らして前を覗くと煙から薄っすらと体操着のような服がこっちに近づくのが見えてくる。

 

敢えて相手の視界を封じる事で確実にタッチしにいく方法で来たか。こっちが本命…?だけど麗日さん、それじゃ自分の視野まで狭くするぞ?

 

一早く彼女の接近に近づいた僕は空かさずその体操服を右手で掴み床に叩きつける。

 

…体操服?

 

緑谷(やっべ…反射的に触っちまった!っと…焦るな!このまま投げ飛ば……)

 

緑谷(あれ…服……)

 

そう、掴んだのはあくまで体操服。麗日さんの姿はそこにはなかった。

 

 

 

 

麗日(引っかかった!!)ダダッ…

 

マイク「うおおおっ!!麗日好機とばかりに真後ろに回り込むーー!」

 

成る程…煙幕で視認できない内に直様上着を脱いで、それを浮かせて囮にしたって訳か。一瞬で思いつくような作戦かそれ!?

 

相澤<今度こそ…完全に不意を突けたか

 

悟空「……さぁ…?」

 

 

麗日(ここで浮かせば…!!)

 

そう思い、彼女は僕の身体に飛び込み腕を伸ばす。

 

 

だが悪いな麗日さん、全部お見通し。

 

 

ボォオッ!!

 

麗日「うっぁあ!?」

 

空いていた左手をクイッと後方上空に向け、再び彼女に気功波を浴びせる。さっきとは違いガードをする余裕も無く諸にかめはめ波を受けてしまう。

 

瀬呂「っかー…アレ見てから動いてんの?」

 

上鳴「見えようが見えまいがあの反射神経じゃ煙幕も何も関係ねぇな」

 

飯田(今の選択肢は悪くなかった…いや寧ろ最善だった筈)

 

飯田(やはりあの俊敏力相手に【触れなければ発動できない】麗日君の個性は不利か…)

 

飯田(考えろ…考えるんだ麗日君!!)

 

 

 

敢え無く転倒するも立ち上がり、何とか態勢を立て直そうとする麗日さん。

 

麗日「ならもっかい…!!」ダダッ…

 

マイク「間髪入れず麗日再突進!」

 

緑谷(そんな易々と隙与えるかよ!)ダッ!

 

麗日「!?はっや…」

 

今度はこっちが攻める番だ。急接近し彼女の顔面に右手を近づける。至近距離でかめはめ波を放ち、迎撃する。

 

 

ボォオッ!!

 

マイク「しかし緑谷!近づけさせない!」

 

マイク「つーか自分から距離詰めてレーザー直で食らわせてるよ!」

 

 

 

 

だが麗日さんは衝撃に耐え尚こちらに駆けてくる。

 

麗日「おらあああっ!!」ダダッ

 

緑谷「っそ…!!」

 

ボォオッ!!!ボボォオッ…

 

麗日「まだまだああっ!!」

 

マイク「休まず突撃を繰り返す麗日!!……」

 

マイク「…が…コレ……は…」ボォオオッッ!!

 

絶え間なく麗日さんは僕に突っ込んでいき、僕は麗日さんをビームで吹き飛ばす。

 

初手の数秒からは…ただただその繰り返しであった。

 

 

 

蛙吹「お茶子ちゃん!」

 

耳郎「う、ぅぅ…緑谷…アンタまさかそっち系の?」

 

峰田「え、緑谷のMって魔沿飛須斗のMじゃないの?」

 

違います。

 

 

「あいつ…さっきの変わり身通じずでヤケ起こしてるよ」

 

「止めなくていいのかぁ?もう差は明白だろ?」

 

「クソかな?ってかもうクソやろ」ガヤガヤ…

 

 

緑谷「…」

 

何やら外野が騒がしくなってきたな……観客がクレームをこぼし始めてる?

 

緑谷(いや、気にすんな!今は試合だけに集中しろ自分……)

 

拳藤「……阿っ呆だな、あいつ」

 

塩崎「確かに…見るに耐えませんね。この光景は」

 

円場「本当だぜ。女の子相手にフルボッ」

物間「黙れ」

 

円場「……はい?」

 

 

 

「もう…見てらんねぇ!!」ボォオッ…

 

「おい!そこのそばかす野郎!!いい加減早よケリつけろ!」

 

「女の子いたぶって遊んでんじゃねぇよ!それでもヒーロー志望生か!?」

 

「そーだそーだ!!」Booo…

 

 

 

緑谷「…っ……」ボォオッッ!!

 

とうとう痺れを切らした観客が暴言を吐き出していく。割と傷つくんですがそれは…

 

緑谷(っと…やめとけやめとけ!相手にするだけ無駄…)ボォオッ!!!

 

麗日「……チッ!」

 

や、ヤベェ…こっちも舌打ちしてキレ出した!?青筋立ってますよ麗日さん!!ヒィィ……

 

ん?今何か観客席の方チラッと見てませんでした…?え?…まさかな。

 

 

 

マイク「一部からブーイングの嵐!!って荒らしですねこれ!」

 

マイク「…でも正直僕もそう思いま

緑谷「何か言ったか?トランクス」

 

マイク「なっ何でもありませ…ってトランクスて誰!?」

 

相澤<おいマイク

 

マイク「What!?今取り込み…」

 

 

止めろと言われてもすぐ試合を終了する事などできるはずも無く、観客から湧き上がる罵声を多く浴びながら数分間戦い続ける。

 

麗日「うあああっ!!」ダダッ…

 

「あーダメだ。あいつらやめる気配一切見せね」ボォオッ!!

 

「雄英の面目まるつぶれじゃねえかよ。まぁまだ一坊(ガキ)やな」

 

緑谷「…!」ボボオッッ!!

 

「落ちぶれてんなぁ…どいつもこいつも」

 

悟空「……すまねぇ。ちょっと席外す」

 

マイク「あっちょ!馬鹿止め……」

 

 

 

相澤「今遊んでるっつったのプロか?何年目だお前?」

 

「!」

 

相澤「シラフで言ってんならもう意味ねぇから帰れ。家で転職サイトでも見とくんだな」

 

飯田「…相澤……先生?」

 

 

いきなり司会席から聞き覚えの無い音声が大音量で会場中に流れ出す。指摘されたプロヒーローどころか、その場にいた観客全員が憤懣やるかたない彼の発言に怖じけ、一瞬で騒然たる空気が一変する。

 

 

相澤「ここまで上がってきた奴の力を認めてんだから警戒してるんだろ」

 

相澤「本気で勝とうとしてんだから…」

 

相澤「尚更手加減も油断もできねぇんだろうが」

 

 

 

 

緑谷「……ふぅ…」

 

麗日「……っ…」

 

突進を繰り返していた麗日さんの動きが急に止まった。騒動が収まったからか?…まぁ何でもいい。

 

…いい空気だ。これでまた気が散らずに戦える。感謝の意も含めながら僕は大きく深呼吸を1回する。

 

緑谷(……そろそろ決着つきそーだな……)

 

何故そう思ったかは彼女の姿を一目見るだけで明らかだろう。がむしゃらに攻撃を受け続けて身体がもう言う事を聞かない状態

 

 

 

 

その筈なのに彼女の目から未だ熱は消えていなかった。まだ死んじゃいない。諦念を全く感じさせない表情だった。

 

麗日「はぁ…はぁ…」

 

緑谷(何か…別の超必出す気だな?)

 

正直僕が麗日さんならこの状況の打開策というのはあまり思いつかない。攻略法は依然としてたった1つ、触れる事のみ。

 

真っ平らで何も障害物となりそうな物体もない以上武器としての応用もできないしね…同じように気を扱えるようであるならばまだ勝機はあるかもしれないが。

 

 

ただ…1つだけ気になる事があった。彼女が避ける際にする行為だ。

 

麗日さんは突進を仕掛けている時…回避するギリギリ直前で地面から手を離している。と言うのも、さっきから麗日さんは最初のように前かがみで腕を下ろし、床に手をつけながら走りっている。

 

果たしてここのどこに床を触るメリットがあるのだろうか?ステージ毎浮かすなんて到底無理だろうし…かえって走りにくいだけじゃ…

 

そう思い、ただの過剰反応だと見過ごしていた。

 

 

 

だが、麗日さんに限ってそれはあり得ないのでは…?

 

麗日「…そろそろ……かな」

 

麗日「ありがとデク君」

 

 

 

 

麗日「()()()()()()()()()

 

緑谷「………え?」

 

 

彼女は両手の五指を合わせつつ、僕にそう話しかけた。突然お礼を言われても何が何だかさっぱりなのだが…

 

緑谷(油断しなくて…?じゃあさっきの攻防戦は何らかの意味があったのか?いやでもとてもそういう風には見受けられないけど…超必の時間稼ぎ?なら納得だけど今までの行為にその超必にどういう関係が…ってかそもそも超必があるかすら分からないし?えっと麗日さんの個性は物を浮かす………」ブツブツ…

 

 

【物を浮かす】…その言葉を発した途端僕は一瞬フリーズする。まさかと思い、微笑をこぼしながら上空を見上げた。

 

 

 

 

 

物間「緑谷の距離ならともかくとして…」

 

物間「客席にいるにも関わらず気づかなかった批判者(プロヒーロー)は恥ずかしいね」

 

物間「低姿勢の突進で緑谷の打点を下に集中し続けた」

 

物間「それでもって突進と爆煙で彼の視野を一定時間狭め」

 

 

 

 

 

 

物間「武器の創造を悟らせなかった」

 

 

 

 

 

緑谷「は…ははっ……ま、マジッすか……」

 

 

何と真上に無数の石の瓦礫がフワフワと浮いているではないか……というかアレステージの床か……

 

あっと…コレは……

 

 

 

麗日「勝ぁぁあああつっ!!!」

 

ゴオオッ…!

 

マイク「ぬおおっ!?突如タイルの流星群が会場に降り注ぐーー!?SUGEEEE!」

 

悟空「おめぇ気づかなかったんか…」

 

飯田「これだけの量…!迎撃だろうが回避だろうが隙が出来ない訳がない!!」

 

飯田「行ける…行けるぞ!」

 

やべぇええええっ!!?岩石の山ぁっ!?それアリかよ!?

 

驚いている暇は無い!こうしている間に麗日さんが自分浮かせてこっちやってくる!だけど今僕にこんな大量の物体吹き飛ばす程の気功波なんて出せねーー!やむを得ない…界王拳か?行っちゃうか?500%ここで……

 

 

 

 

いや待てよ…

 

 

緑谷「波ぁああっ!!!」

 

ボォオオッッ!

 

麗日「わぁっ!?」

 

 

 

右手を上空、左手は麗日さんの方に向けそれぞれの標的に目掛け気功波を放つ。

 

倒れるも麗日さんは直様態勢を立て直し、飛行して僕との距離を詰めようとする。

 

 

 

だが見上げてみろ。

 

武器が全て木っ端微塵に吹き飛ばされているでは無いか。

 

 

麗日「……うっそ…なん…で?」

 

緑谷「あっぶな…何とかセーフセーフ」

 

手をガクガク震わせ、僕は呼吸を止めた。急場凌ぎの策にしちゃ上出来な結果ではあるぞ…つん。

 

幸いにも瓦礫の大きさはどれも巨大とは言い難いサイズであった。多分どれも片手で持ち上げられるくらい(自分なら)。ならピンポイントに撃たなければいい。今撃ったのはただ1点に集中した気功波では無く、多の敵に対して放つ拡散弾だ。

 

ぶっつけ本番…つーか今さっき思いついたんだが……何とか堪えたか!

 

 

でも気功波の撃ちすぎでかなり体力消耗してます。

 

緑谷(くぅぅ…武器が無いなら作ればいいじゃないとは…麗日さんらしい!)

 

緑谷(段々なんか楽しくなってきたぞ…悟空さんの影響か?まぁどうでもいい!!)

 

緑谷(これ以上疲れるんならいっそ界王拳使った方が効率的か…?というかこのままじゃ決着着かねえ!)

 

緑谷「まだ行くよ…麗日さん!」

 

にやりと笑いながら両拳を腰に構え、界王拳の態勢に入る。それに応じるように彼女は再び突進を

 

 

 

 

 

麗日「あっ…」カクッ…

 

 

 

緑谷「界…?」ドサッ

 

 

 

……試みるも、脚を前に出そうとした瞬間麗日さんの体は前に傾き、そのまま前に倒れてしまった。

 

何とか立ち上がろうと踏ん張るも 身体は1mmたりとも動きはしなかった。

 

 

 

もう…とっくに許容重量(キャパ)はオーバーしてたんだ。

 

 

 

 

 

 

ミッドナイトが麗日さんに近寄り、ジャッジを取る。

 

ミッドナイト「……立てる?」

 

麗日「……っ〜…まだ……」

 

 

 

 

 

麗日「………とー………ぁちゃ……」

 

 

緑谷「!?」

 

 

 

 

父・母…そんな言葉が突然頭によぎってきた。

 

あれは確か…2週間くらい前の時の…

 

 

『ウチなんか父ちゃん母ちゃんに迷惑かけてばっかだし………』

 

 

緑谷「…っ麗ら…」

 

ミッドナイト「……」スッ

 

 

 

ミッドナイトは静かに右手をこちらに向けた。

 

馬鹿っ…自分は何を口走って……

 

 

 

 

 

ミッドナイト「……麗日さん行動不能」

 

ミッドナイト「緑谷君、2回戦進出」

 

 

 

マイク「……おおおおっ!?激しい攻防戦の最中、勝利の女神が微笑んだのは……」

 

マイク「ヒーロー科緑谷選手の方だぁぁあっ!!」ワァァァア…

 

緑谷「………」

 

 

 

さっきとは真逆に観客からは大きな喝采が湧き上がっていた。皆よほど最後の攻防戦が熱く感じられたのだろうな…

 

 

 

 

 

 

どうしよう。

 

女神様も微笑んでいらっしゃるのに…

 

 

なんで自分はこんなに顔が青ざめているのだろう。

 

 

 

 




須井化です…はい。

今回は緑谷と麗日の原作正夫婦(希望)の夢の対決!!

展開はほぼ爆豪の時と変わらなかったけど最後のあれは1発じゃなかったね。

言われてみれば原作でかっちゃんが麗日の服掴んだのはよく分からなかったりした。今回書いてて。

前振りが長かったな…1/3位取ったんとちゃう?コレは完全に私の計算ミスですねぇ。一部前回に入れるべきだったか…

だが私は謝らない。

あ、物間君の名前表記がいくら経っても直らなかったのは謝ります…はい。

いかがでしたか?



次回はお茶子見舞いと…飯田君トコまで行けるかな?

意外とウラビティのトコで長引きそうなんだよね…回想少し入るし。

まぁ長くなる分気合い入れて書くんですけどね、頑張るゾイ。




何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。か、風邪になったデク君の看病したい人募集中!4/15日までだから急いで書くべし!?

4月8日(土)18:00に第30話の投稿を予定しております。アニメが終わった瞬間始まるぞ!後アニメ次回も体育祭始まらんの!?マジで!?
お楽しみに!


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第30話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

1回戦第8試合、緑谷少年は麗日少女と激しい戦いを繰り広げる無事制する。

とうとう本戦トーナメントは2回戦が始まろうとしていた…!

更に向こうへ!PlusUltra!!!


無数の岩石の山々が上空から降り注ぐ。

 

空かさず彼女は手と手を合わせ自分の重力を無にする。落下すると同時に相手を場外負けにさせる魂胆だ。

 

(こんだけの量!!迎撃にしろ回避にしろ隙は必ずできる!)

 

(その瞬間に超必で距離つめる!!)

 

(私も…勝って……デク君みたいにっ!!!)

 

 

 

 

 

 

だがその後彼女の目に映ったのは無残に破壊し、塵と化される岩石の光景であった。

 

まだ相手はこれっぽっちも本気を出しちゃいなかった。それでも尚、自分が今可能な限りの最大限すら通じない。

 

もう立つ事さえも叶わぬ状態であった。試合など続行できるような気力など……

 

 

(それでも…っ!せめて1勝!!)

 

(デク君にだけでも!!)ダダッ

 

 

最早決勝云々の事などどうでもよかった。

 

もう再起不能になってもいい、家族にこの1勝を捧げたい。

 

そう思い相手に向かって走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

【父ちゃん、母ちゃん】

 

声が掠りつつあったものの、ミッドナイトは確かに彼女の口からそのフレーズがこぼれたのを聞き取った。

 

その一言で大よその彼女の心境を察する事は出来た。

 

 

もしこのまま彼女が試合を続行したら?

 

仮に戦えるような容態では無かったと判断すれば身を削ってでも両親に勝利を貢献したいという彼女の気持ちを踏みにじる事となる。

 

だが、まだ続けるという彼女の要望を聞けば、その娘にとっても、その周りに人等にとっても更に酷な結果が待ち受けるのは必至であった。

 

 

もう…感情論で進めてはならない話だった。

 

 

つぶっていた目を静かに開き、ミッドナイトは1つの決断(ジャッジ)を下す。

 

 

 

ミッドナイト「……麗日さん行動不能」

 

ミッドナイト「緑谷君、2回戦進出」

 

 

 

 

 

 

 

試合後、麗日さんはすぐにタンカに乗せられ保健室へと運ばれていった。

 

終了間近までは微かに意識があったのだが審判の指示を聞いた途端、表情が硬くなりそのまま気絶したのだ。

 

これで一通り1回戦の対戦は全て終了した。10分後再開次第、2回戦開始となる。

 

どれもこれも想定外の勝敗結果となり、観客は困惑する。これで更に今後の戦況が読みにくくなった為だ。

 

 

「こりゃどえれぇラインナップだな…確かにインゲニウムとイナズマンの対決もとんでもねぇけど」ザワザワ…

 

「正直常闇優勝はかなり有力説だったんだがなぁ」

 

「まぁ相手が相手だからしゃーなし。創造だろ?確か」

 

「そもそもヘドロん奴が出てこなかったのがなぁ…本選までかなり活躍してたし」

 

「なんだかんだ言って…やっぱりエンテヴァーの息子さんかそばかすの野郎が1番可能性高そうだよなぁ」ザワザワ…

 

 

 

彼等の話題はA組一色。他の科はおろかB組の生徒にさえ誰も期待など抱いていなかった。

 

散々な始末にB組の人等は皆呆れ果ててしまう。

 

円場「……何だかなぁ」

 

円場「俺等だって手を抜いていたつもりは無いんだがよ…どうしてこうも差がつくかね」

 

円場「鉄哲はまだA組と張り合ってたからそれ相応の実力はあるけど」

 

鉄哲「……おだてんなっつの。紙一重でも敗けは敗けだ」

 

鉄哲「俺の特訓が生半可だった証拠だよ」

 

拳藤「いやいや、どう考えてもあっちが強すぎるだけだと思うのですが」

 

鉄哲 円場「「………」」

 

彼女らしかぬ言動に一瞬きょとんとする2人。鉄哲君は間も無く拳藤にこう問いかける。

 

鉄哲「なんでお前はそう言い切れんだよ、拳藤」

 

鉄哲「ただの自己満じゃ何の意味も成さないんだぜ?」

 

拳藤「そりゃお前…下校時刻過ぎても運動場借りて自主練してる特訓バカのどこが生半可だよ」

 

拳藤「逆にアンタ怒られてんじゃん」

 

鉄哲「っ…んなするのA組の奴等なんかしょっちゅうだろ!!」

 

何故覗いていたんだという疑問が浮かんだと同時に気恥ずかしさまで覚えた鉄哲君は焦って反論する。

 

 

拳藤「そんな事無いさ。お前は誰よりも人一倍努力してる」

 

拳藤「お前の良い所だと踏んでるぞ?少なくともあたしは」

 

鉄哲「そっそんな事ねぇよ…」

 

拳藤さんの言葉を聞き、少し顔を赤らめつつ彼女の意見を否定する鉄哲君。素直に喜べば良いのに…自分が言っても説得力ありませんね。

 

鉄哲「きっとあいつらは俺達よりも過酷なトレーニングをしてるに違いねぇ」

 

鉄哲「俺はまだまだ努力不足だったって事だよ」

 

拳藤「……」

 

 

 

それを聞くと拳藤さんは席から立ち、鉄哲君の頭を撫でるように自分の手を添えた。

 

 

拳藤「だったら証明してみせるよ」

 

拳藤「努力の量ならB組(ウチら)の方が優ってるて…」

 

拳藤「あたしがA組(あいつら)に…鉄哲(お前)に教えてやるよ」

 

 

そう言い放つと拳藤さんは彼の頭から手を離し、何処かに向かって歩いていった。はて…まだ試合まで時間はかなり残っているが…

 

鉄哲「拳藤……」

 

不思議に思いながらも、鉄哲君はその何とも逞しい背中を見届けていき彼女の優勝を強く祈念する。

 

 

物間「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、リカバリーガールから麗日さんの手当てが終わった事を聞くとすぐに彼女がいると思われる控え室へ向かった。

 

 

今更ケリがついた勝負の事を精神的にも身体的にもボロボロな人に向かって掘り返すのはどうかと思う。

 

 

 

…いや……だからこそ行くんだろうが!

 

麗日さんは()()()、僕の事を気にかけて病院に留まってくれた。何時間もの間彼女は僕の隣で見守ってくれていた。

 

慰めが敗者にとって最大の侮辱だって事は重々理解している。

 

それでも……何かしら彼女に伝えられる言葉だってあるはずだ。

 

 

 

 

 

緑谷「…」ガタガタガタ…

 

とか意気込んでドアまで来た結果これだよ。麗日さんとは他の人等と比べてそこまで険悪な空気にはならなかったからそういう意味での安心感はあるけどさ!?

 

いざ喋ろうとすると話す話題が思いつかない。

 

緑谷(落ち着け…落ち着け)

 

緑谷(いつも通りなんとなく話せばペースも戻る……平常心平常心…)

 

という風に自分に暗示をかけて優しくドアノブを掴んだ。

 

 

 

 

 

 

ガチャ…

 

 

麗日「あ、デク君」

 

緑谷「…………………と」

 

 

 

扉を開くと麗日さんがにっこりとこちらに笑顔を見せながら僕を迎えてくれた。良かった…思ったよりも元気そうで。

 

何か話そうとするがやはり言葉が詰まってしまう。とりあえず何かしら喋らなければ…!

 

緑谷「うっ麗日さん…その、怪我は大丈夫?」

 

麗日「ん!リカバリーされた!」

 

麗日「体力削らんよう程々の回復だから多少の擦り傷とかは残ってるけどねー」

 

緑谷「そ…そう……」

 

麗日「かなり体にキタよ!?地味にあのビーム直撃したの初めてだったし!」

 

麗日「なんか高熱で身体が焼かれる〜とかそういう感じかと思ったけど、どちらかと言うと衝撃波に衝突したみたいな?」

 

麗日「青山君のレーザーもあんなものなんかなぁ」

 

緑谷「ご、ごめん…」

 

麗日「いっいや!別に謝罪とか求めてる訳じゃないしさ!?」

 

麗日「寧ろ私とそれだけ真剣に闘ってくれたのはウチとしても嬉しいし…後ビーム面白かったし」

 

緑谷「そう?かなぁ…」

 

 

 

やばい。会話が弾まない。

 

というより麗日さんに一方的に喋らせているようになってるぞコレ。

 

それに口を挟む度に逆に空気が悪化してるような気がするし…もー…

 

麗日「あ、そいえばデク君…爆豪君見た?」

 

緑谷「かっちゃん?……ああ」

 

何の話かと一瞬口が止まったがすぐに()()()()()()()()。何について聞いているのか理解すると僕はうん…とポソリと呟き、小さく頷いた。

 

 

 

 

 

かっちゃんはある理由でトーナメントを抜けたのはご存知であろう。恐らく皆はその原因について気になっていた筈だ。

 

僕から少し説明しよう。

 

 

保健室、リカバリーガールに麗日さんの事を聞くついでにかっちゃんの容態を見に行った。

 

どうやらお昼休憩の時に頭部を強く打撲して気絶してしまったらしい。先生が見つけた時には既に倒れていたらしく、今はベッドで安静中。とりあえず命に別状は無いし、言う程怪我も重傷では無いからホッとした。

 

 

では何故かっちゃんがそんな怪我を負ったのか?2つ目に思った事はこれだ。

 

まずかっちゃんレベルを相手にそんな傷をつけられる人物がいるのか、これが謎だった。性格はああでも実技試験の成績はピカ1の彼だ。上級生かプロヒーロー?多分大半の人はおっかないと思って近寄らないし、本人も気にすら留めない。

 

そしてこれに関連付いて次に不思議だったのは頭部にあるものが染みついていたからだ。

 

 

 

焦げ。

 

そう、爆破の際に生じる焦げが確かに彼の額にしっかりとついていたのである。かっちゃんには爆発は効かないし、あまり意味は無い。

 

だが考えて欲しい。

 

爆発を持っているのはかっちゃんだ。つまり殴ったのは……え?かっちゃん?と意味不明な事態に陥ってしまう。

 

では誰がこんな事を仕出かしたのか…

 

 

 

単純に考えれば物間君なのではなかろうか?コピーできるし、本選の時の復讐と考えれば動機も納得が行く。最初こそ、そうなのでは?と疑いはしたが……

 

いや、そういえば物間君ずっと観客席で頭抱えてたな。本選の敗北が予想よりも精神的に来てしまったようで騎馬戦終わった直後誰よりも早くベンチに戻っていた。1人寂しく菓子パンを食っている様子はマジで涙物でした…同志よ。

 

 

その為一度もかっちゃんと顔を合わせていない…とすると別の誰か?一体誰が?何の為に?

 

その答えは僕達が知らない所で、既に明らかになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場中央部、ステージの上ではいよいよ本戦第2回戦の幕が上がろうとしていた。

 

第1試合は普通科、心操君とヒーロー科轟君のバトルである。

 

マイク「皆お待たせーー!!それじゃ早速今大会トーナメント順々決勝!」

 

マイク「第1試合始めるぜ!FOOO!」ワァァァア…

 

マイク「地味にじわじわと株を上げていくこの男子!!普通科に隠れた天才現る!?」

 

マイク「普通科!!心操人使ぃぃっ!」

 

心操「……」ワァァァア…

 

マイク「対するこちらやたら人気のある天才!!有力な優勝候補者としても名乗りが上がってるぞ!」

 

マイク「ヒーロー科!!轟焦凍ぉぉっ!」

 

轟「……」ワァァァア…

 

 

両者共に真剣な面持ちで相手を見ていた。いや.どちらかというと…睨むの方が近いか。

 

これまで互いに様々な生徒を相手に圧勝してきた猛者同士、相手が一筋縄で行けないような実力者であるのを肌で実感しているのだ。

 

殺気……身体の周りにおどろおどろしい殺気を帯びているのが間近ではっきりと目に映っていた。

 

何より…この勝負に限ってはステージに上がった瞬間からもう試合は既に始まっているのだ。

 

まさに2人にとってこれは選手の心が問われる戦いなのである。

 

 

 

 

心操「…轟君」

 

心操「君、左使ってないでしょ」

 

 

やはり開始前に心操君が喋りかけてきた。1回戦で骨抜君にしたように、轟君も挑発し刺激させ洗脳しようとしているのだ。

 

 

轟「……」

 

心操「じゃなきゃあんな予選や本選で苦戦とかしてないよね?」

 

心操「なんで使わないのかな?なんでかな?」

 

心操「例えば…」

 

マイク「START!!!!!」

 

 

 

 

 

心操「エンデヴァーさんを恨んでたりとか?」

 

 

 

 

 

 

バキバキッ!!!

 

 

 

 

 

心操「…んな……」

 

気づけば全身が氷漬けにされていた。その間、僅か1秒足らず…刹那の瞬間であった。

 

彼は轟君の手によって一瞬で完封されてしまったのだ。

 

 

ミッドナイト「心操君行動不能!轟君3回戦進出!!」

 

マイク「え…」

 

悟空「うっへぇぇ…また一撃かぁ」

 

 

「結局…さっきと()()同じ結果じゃねぇか」

 

「芸無いねぇ…」ザワザワ…

 

一体何が起こったのか…いや、正確には何故こうなったのか訳がわからない観客達は次第にざわついていく。

 

心操君にとって観客や司会の事などはどうでもよかった。今彼が気がかりとしているのは何故轟君が速攻という選択をしたのか?という事だ。

 

第1回戦、轟君は直前にエンデヴァーとの小競り合いがあった事により半ばキレ気味で試合を行っていた。

 

こうした事もあり、【エンデヴァー】というフレーズを入れれば彼の怒りを買う事は十分可能であると考えたのだ。

 

…?そもそもなんでエンデヴァー絡みの事を知ってるのかって?まぁもう少し話を聞いてくれ。

 

もし怒って反射的に攻撃を狙ったとしてもだ…今回と1回戦の明らかな違い……

 

 

凍結範囲が狭い事に矛盾が生じる。今回は比較的被害が少なく、場外ラインから少し氷がはみ出る位なもので範囲を最低限までにおさえているのだ。

 

もし怒りに任せて個性を使用しているのならば1回戦のように巨大な氷塊が出来る程の規模となるはずだ。何故今回は控えめに凍らせたのだろうか…?

様々な疑惑が湧く内に轟君が彼の方へと近づいていく。

 

心操「くっ…」

 

轟「……お前、爆豪使って俺の事暴こうとしたんだろ」

 

心操「!?」

 

まさか…!怒らせるのが目的だと分かっていたというのだろうか?

 

いや、断じてあり得ない。この洗脳(ネタ)は司会の2人から何も発表されていないのだから。では何故?普通科のクラスメイトの誰かがバラしたのだろうか?こんな事をしても何のメリットも得れない彼らが?

 

待てよ…それどころじゃないな。

 

 

なんでかっちゃんが操られていたと彼は分かったのだろうか…?

 

轟「解説…いるか?」

 

心操「欲しいね」

 

轟「おかしいと思ったんだ。爆豪がその場にいるなら『死ねえ!』とか言って乱入して来ただろうけど」

 

轟「まさか壁に隠れて盗聴なんてあり得ねえって…」

 

心操「気づいてた…のか?」

 

轟「ああ」

 

轟(まぁ話している途中までは気付かなかったけどな)

 

轟「お前は恐らく…相手に挑発して乗ってきた相手が口を開けた時、初めて能力を発揮するんだろう」

 

轟「じゃなきゃああんな戦闘前に必死こいて相手を煽らねぇもんな?それで昼のと合点がいったんだよ」

 

心操「…っ……」

 

 

なんと…1回戦、彼の骨抜君に対する挑発とその後の口振りだけで心操君の個性を見抜いてしまったのだ。なんて鮮やかな名推理…

 

唇を噛み、歯を食いしばる。後ろめたさに強く胸を締め付けられてしまう。

 

 

 

轟「…まぁ、よかったな。煽る前に決着ついて」

 

轟「もし母さんを馬鹿にでもするんだったら…」

 

 

 

 

 

 

 

ガッ

 

轟「 こ れ 位 じ ゃ 済 ま な か っ た ぞ ? お 前 … 」

 

額に青筋を張らせ、目じりを吊り上げ、唇をひん曲げる。

 

恐ろしい表情であった。今やもう彼に怒りを抑え込むなどという気は一切無いだろう。

 

今にも氷毎その身体を壊すような勢いで彼は心操君の肩部を左手で強く掴みかかる。

 

心操「ひっ…!」

 

恐怖のあまり思わず悲鳴を上げてしまう。タダでさえ体温の低下により身体が凍えてしまっている上に無意識に激しく身体が振動し始める。

 

その怯えている様子を見ると余程強く睨んでしまったのかと思い、少し反省する。

 

轟「冗談だよ冗談。壊す訳ねぇよ」

 

轟「今から溶かすんだよ」ボォッ…

 

心操「…」ガタガタ…

 

轟(そんなに大きく血相変えてたのか?…1回戦から結構取り乱してるな)

 

轟(決勝までにモチベを整えねぇとな。焦りは支障を来す)

 

轟(……あいつの事だ。どうせ個性解除された瞬間に襲いかかったけど)ボォオ…

 

轟(また洗脳されてカウンターでも食らわされたってとこだろ)

 

 

 

 

 

 

 

轟(結局……爆豪自体には聞かれていんのか?それとも…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【控え室】

 

麗日「っにしてもやっぱデク君強いねー!」

 

麗日「完膚なかったよ!!もっと頑張らんといかんな私も!」

 

麗日「負けっぱなしはアカン!」

 

畳んでいた体操着をギュッと強く握りしめ、悔しがる麗日さん。あの…また畳み直し…

 

麗日「あ」

 

緑谷「…大丈夫?」

 

麗日「う、うん…また折り直せばええし…ダイジョブ」BBB…

 

発言にそぐわずしょぼくれた顔になりながら渋々畳み直し始める麗日さん。

 

麗日「うはは…私ったらまたドジしてしもた。こりゃ笑えん」

 

緑谷「…」

 

 

 

 

麗日「いっつもそう」

 

緑谷「…?」

 

急に麗日さんの声のトーンが下がってしまう。

 

麗日「自分がコケるの怖いから誰かに縋って…」

 

麗日「いざ1人になると頭抱え込んじゃって」

 

次第に首が下に曲がっていき、顔が俯く。

 

麗日「それに比べてデク君は凄いよね」

 

麗日「些細な事も見逃さないで物事見通し立てて計画性もちゃんとある」

 

麗日「後…アレ。有言実行ってる」

 

下凸のカーブを描いていた唇が平行線となり、やがて上凸の放物線へと変わっていく。

 

麗日「って…なんでウチ前とおんなじ事言っとるんやろ」

 

 

 

 

麗日「……馬っ鹿みたい、ウチ」

 

 

 

緑谷「麗日……さん…」

 

麗日「……あ、ああっ!ご、ごめ…いきなりシリアスムード作っちゃって…」

 

麗日「また…私が

緑谷「凄いよ」

 

 

麗日「え?」

 

緑谷「凄いと思う、麗日さん」

 

緑谷「ちゃんと自分の事とか、友達の性格とか分析して的確に読み取れてる」

 

緑谷「自分の悪い点を素直に認めるのって…かなり難しいと思う」

 

緑谷「つまり…それができる麗日さんは凄い人って事にならないかな?」

 

麗日「……デク…君?」

 

緑谷「今日だってそうだ。君は僕が界王拳を使わざるを得ない所まで追い詰めた」

 

緑谷「それは君が僕をよく観察して研究できたからこそだと思う」

 

緑谷「それにさ…………」

 

 

 

 

緑谷「多分、2()()を使おうとした生徒って麗日さんが初めてだと思う」

 

麗日「……」

 

緑谷「だから…さ……えと…あれだ」

 

ごめんね?お疲れ?惜しかったね?僕は一体どう声をかけたらいいのだろう…

 

緑谷「〜」

 

麗日「?」

 

 

 

 

緑谷「……()()()()()

 

麗日「…っ!」

 

緑谷「こうして麗日さんと本気で向き合える事無かった…」

 

緑谷「最後の技も正直ビビった…ハラハラドキドキした」

 

緑谷「何だろう…いつの間にかわくわくしてた…」

 

緑谷「だから………ありがとう、麗日さん」

 

麗日「……」

 

緑谷(うわぁぁぁまた滑っちまった畜生ぉぉぉ……)

 

元気付ける為にそれっぽい事言ったがコレは引かれるんじゃないのか?何カッコよさげにドヤ顔しながら正論みたいな迷言垂れ流してんじゃ自分この野郎ぉぉぉ!?

 

ごめんなさい麗日さん!悪気は無かったんです!だから許し

麗日「ウチも」

 

緑谷「…?」

 

 

 

麗日「ウチも楽しかった」

 

麗日「ありがと、デク君」スッ…

 

緑谷「……」

 

 

 

彼女は握った右拳をこちらに向かって差し出した。先程まで落ち込んでいた麗日さんに笑顔が戻ってきた。

 

 

そちらがそう来るなら…快く便乗させていただこうじゃないか。

 

緑谷「うんっ」

 

ガッ

 

 

僕はゆっくり右拳を近づけ、少し気持ち強めに彼女の右拳にぶつけた。

 

緑谷「…ひひ」

 

麗日「ははっ」

 

 

いつぶりか……僕等はいつの間にか笑い合っていた。

 

本当…さっきまでの暗さが嘘のように明るく接していた。

 

 

 

そんな時、マイクから次の試合のアナウンスが入ってきた。

 

 

マイク<ヘイ!トーナメント2回戦第2試合をこれから行うぜ!

 

マイク<史上最速のスピードバトルだ!見逃すんじゃねえよチェケラ!

 

話したい事はもう済んだしキリも良かったので観客席に戻る事にした。

 

それにしても…切島君達と轟君達の試合見れなかったのは痛いなぁ……いつの間にか第1試合終わってたんだ。

 

緑谷「っと…それじゃ僕この後も多分すぐ回ってくるからそろそろベンチ戻っとくよ」

 

麗日「うん!荷物整理終わったら私も見に行くから!」

 

麗日「ガンバ!」ガチャ…

 

麗日さんからの熱いコールに手を振り答えながら静かに控え室から出ていった。

 

麗日「……」

 

 

 

 

 

 

麗日「はぁ…」パカッ

 

 

足音が無くなるのを見計らい、麗日さんは先程鳴っていた携帯電話を取り出す。

 

携帯を開き、直様さっき無視してしまった発信主の電話番号にかけた。

 

麗日「…」プルルルル…

 

プッ

 

 

<おーお茶子!やっと繋がりはったわー!

 

麗日「父ちゃん…ごめんな。さっき話してて取れんかった」

 

<いやいや!こっちも忙しい時にすまんなー

 

<テレビ母ちゃんと見とったよ!ホンマ凄かったわー!

 

<惜しかったな!よう頑張った

 

麗日「惜しくなんかない。凄くもないよ」

 

麗日「最後焦りすぎたし、あそこからの打開策なんもあらへん状態やった」

 

麗日「最初から勝ち目の薄い戦いなのは変わりなかった」

 

<むぅ…父ちゃん難しい事よう分からんけどそうなんかぁ

 

<でもお茶子?別に今失敗したって取り返せるんやで?来年も再来年も体育祭ある筈やろ?

 

麗日「勝ち進めばそんだけ。色んなタイプへの対応とか見せられんねん」

 

麗日「一戦、しかもあんなボロ負けじゃスカウトされるかどうかも怪しいわ」

 

<……

 

<何を生き急いでんや?お茶子

 

麗日「…」

 

<お茶子?

 

 

 

 

 

 

 

 

幼き頃の小さな思い出だ。

 

『え?ウチの事務所に入る!?』

 

『うん!ウチ大っきくなったら父ちゃんと母ちゃんのお手伝いする!』

 

『ん〜…気持ちは嬉しいけどなお茶子』

 

(ウチら)としちゃ(お前)が自分の夢叶えてくれた方が何倍も嬉しいねん』

 

『んだらお茶子にハワイ連れてって貰えるしなー?』ナデナデ…

 

 

 

 

頭を優しく掻き撫でるその父の手は言葉では表せない程の温もりを少女に与えていた。

 

少女はこの時決心した。ほんの少しでもいい、両親にできるだけ多くの幸せを同じように与えてあげたい、と。

 

いつしか約束した父との()()()()()を1秒でも早く果たしてあげるべく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗日「ぅえっ……くっ……」

 

麗日「ウチ…ウチィ……」

 

麗日「父ちゃ……ぁちゃを…」

 

麗日「支えなきゃって……約束もしたのに…」

 

麗日「だめなこだ……うち…」

 

<まーたもう!お茶子は〜…身体張って無理せんでもええんやで!?

 

<そんななる位優しいお茶子は

 

 

<絶対に良いヒーローんなるって俺分かっとるもん

 

 

 

 

 

 

 

何だか胸騒ぎがすると思ってドアの横で待機してたのは正解だったかはたまた誤りだったのか…

 

緑谷「……」

 

 

「ひっく…っ…!」

 

<だから泣くなお茶子…な?

 

 

 

 

電話の内容は細かくは聞き取れなかった。

 

麗日さんが必死に涙をすすっている音だけが僕の耳に強く響いてくる。

 

 

 

 

駄目なのはどっちだよ。

 

結局僕は彼女の背中を押す事が出来なかった。

 

寧ろもっと苦しめる結果にさせたかもしれない。

 

 

自分が励まされておきながら…僕は麗日さんの心を傷つけ、極限にまで追い詰めてしまった。

 

もっと僕が彼女の事を考えてやれていれば……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他を蹴落としてでも這い上がらなければならない。

 

そりゃそうだ。多の競争を乗り越え、ようやく辿り着くのがNo.1ヒーロー…平和の象徴(オールマイト)なのだから。

 

 

 

 

でも…でも……

 

 

 

 

 

 

緑谷「勝てばそれが正しい…って理念は」

 

緑谷「結局、敵達のやっているそれらと何ら変わりの無い事じゃないのか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




須井化です…はい。

遅れてまさかの6時間後投稿。その代わり内容は厚く(なっている筈)となっておりますのでご了承を…

え?薄い方が良かった?…………(・U・)
※今更文字数見ると久々の8000字代だったり…

今回は麗日主軸の轟VS心操+α。

何か心操のバトルが雑臭かったかも…これの構成するの多分体育祭編で1番怠い作業だぞ?

何故かB組のシーンを作りたかった。前回はA組は出張るの多かったからね、しょうがないね。

こうして書いてるとさぁ…


麗日めっちゃ可愛ええなぁ。

ていうのが今回の8割方の感想。

いかがでしたか?



次回は飯田っちとデンジャキとのウェイウェイ!バトル。

八百万と拳藤は…どだろ?量的に中途半端になるの見え見えなんだよなぁ。

もし書かなかったら……あのお方で削るしか無いな。

<ダニィ!?で、伝説の…超ペロリスト……!




何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。か、風邪になったデク君の看病したい人募集中!4/15日までだから急いで書くべし!?

4月12日(水)以内にに第31話の投稿を予定しております。今回の件もあるからその分もしかしたらいつもより早く投稿するかもです。
お楽しみに!


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第31話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

2回戦第1試合は個性【洗脳】を見破った轟少年が見事勝利を収めた。

嘆き苦しむ少女の姿を目の当たりにし、緑谷少年は何を思う…

更に向こうへ!PlusUltra!!!


ちょっと話題が逸れるのだが…皆覚えているかな?

 

大分前に少し触れていた【連続ヒーロー殺人犯】。

 

第2試合を始める前にこの男の話をしよう。

 

 

 

 

 

【超常】発生後史上最も凄絶なこの(ヴィジランテ)を……

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴー…ヴー…

 

「お?」

 

 

身体が激しく振動する。服のポケットを手探りし、バイブが鳴っているスマホを取り出す。

 

どうやら兄弟から電話がかかってきたようだ。

 

……あ。予め言っておくけどこの人ヒーロー殺しじゃないよ。というかヒーローだよ。

 

 

ピッ

 

「あー…俺だけど」

 

<兄さん?良かった…無事つながったみたいだ

 

「なんだなんだ?お前今日体育祭の筈だろ?なんでかけてくる」

 

「大体俺、現在進行形でパトロール中だし」

 

仕事中に電話をかけてしまった事を申し訳なく思い、弟は物悲しい声で返事をする。

 

<む…そうか。ごめん

 

<兄さんに色々と報告したい事があったから伝えようかと思って…

 

「バッカ。そういう土産話は家に帰るまでのお楽しみにしとけ」

 

「割とマジでお前1位になるの期待してんだからよ俺は」

 

「後お袋が録画してるお前の活躍本人からネタバレされる訳にもいかねーし」

 

 

「ま、兎に角頑張れよ、天哉」

 

飯田<ああ。ありがとう、兄さん

 

 

兄からの後押しを受けた飯田君は嬉しそうに挨拶してから電話を切った。

 

…っと…この場合は飯田弟と言うべきか。

 

そう…何を隠そう、今唐突に出てきたこの人物は飯田君の実の兄。ターボヒーロー【インゲニウム】なのである。本名は【飯田天晴】。

 

飯田君の着用しているモノと同様のプレートアーマーのコスチューム装着し、只今街のパトロールで外を出歩いていたのだ。

 

因みに個性の能力自体は同じだがお兄さんの方は腕に排気筒が付いてます。

 

 

天晴「よーしよし、歩道異常なし。車道も問題ない!」

 

天晴「今日も平和だ天晴れ!天晴れ!」<俺だけに

 

 

インゲニウムはグッと背伸びをし、硬くなった身体をほぐす。多忙な身としてはのんびりと外の空気を吸うのはとても心地よい事だろう。

 

…まぁのんびりとするのがパトロールじゃないけどさ。

 

 

ひと気が無く、薄暗い路地裏を悠々と巡回する。こういう気づきにくい場所での犯罪って結構多いんだよね。

 

買い物帰りに3人組のチンピラに痴漢に遭う危険性もあるので皆も路地裏を通る時には気をつけよう。

 

天晴「ここは…不審者も誰も居なさそうだな」キョロキョロ…

 

見る限りこれといって怪しい箇所は見つけられなかった。ここも他の場所といたって変わらず難事は何1つ起こってなさそうだ。

 

 

だが念には念を。

 

彼は歩くのをやめ、道の真ん中に佇む。

 

耳を澄まして微かな音も漏らさず聞き取ろうとしているのだ。

 

天晴「…いい天気…だな」

 

東京という大都会ではあるものの、辺りの自然の豊かな恵みは依然として美しく、肌で感じとれる。

 

絶え間ない鳥のさえずり。優しく吹くそよ風の風音。

 

 

 

 

 

 

 

ダッ……

 

 

そして小刻み…されど重く、速く地面を踏み込む足音。

 

天晴「!?」

 

「ひとりめ」

 

グオッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって…雄英高校。

 

インゲニウム(お兄さん)への電話も済ませ、もうじき始まる2回戦第2試合……

 

上鳴君との対決に備えていた。

 

飯田「緑谷君と当たるとしたら決勝」

 

飯田「それまでに僕は上鳴君と轟君に勝ち続けなければなるまい…か」ギュッ

 

緩みかけていた靴紐を硬く縛る。心強い兄からの声援もあり、心体共に準備万端と言っていいいだろう。

 

 

だが彼には一抹の不安があった。勝てるイメージがいつになっても掴められない。

 

この学校に来るまで当然のように学年のトップの座に着き、ヒーロー家の恥にならぬよう日々精進してきた。

 

しかし蓋を開けばどうだ。皆のリードを引っ張るどころか足を引っ張るまでになってしまう。

 

USJで自分は何をした?ただ脳無に殺されかけ、気絶していただけ。友が、先生が死を賭して命を繋げてくれたその場面を自分は見る事すら叶わなかったのだ。

 

 

飯田(不甲斐ない…不甲斐ない)

 

飯田(自分がこの場に甘んじている間にも彼らはさらなる飛躍を遂げている)

 

飯田(自分は弱い……)

 

 

麗日『皆将来に向けて頑張ってる!』

 

麗日『そんなら皆ライバルなんだよね…だったら…』

 

麗日『決勝で会おうぜ!』

 

 

飯田(だが、今俺は家族と友の思いを背負っている)

 

飯田(ここまで来たんだ。兄の為にも…)

 

飯田「見事No.1になってみせよう…!」

 

ガチャ…

 

 

 

 

 

 

 

 

ワァァァア…

 

緑谷「……」スタスタ…

 

切島「お、緑谷帰っ…」

 

切島「ってなんか顔面崩壊してる!?」

 

とぼとぼとベンチに戻ってきた僕は目尻が下がり、眉毛や目が情けなく垂れていた。いつもの数倍陰気臭かったとか何とか…

 

前回の(あんな事あった)直後に席戻ってきたから仕方ないんだけどさ…

 

いや、いい加減この話はやめよう。ここ最近何故か頭痛に魘される事多いんだが…

 

緑谷「次の試合は…飯田君と上鳴君か」

 

緑谷「速度対決ね…………」

 

 

あ…という事は……

 

直様トーナメント表に目をやると、轟君の線が第3回戦の方にまで伸びていた。あ〜…もう轟君と心操君のは終わってしまったのか。

 

僕のと麗日さんのは把握しているからまだしも切島君と鉄哲君の試合と今の2人の試合を見過ごしたのは辛いな…

 

緑谷(まぁ後々VTR見てぼちぼち書いていけばいっか)ペラ…

 

少しがっかりしながらも渋々ノートを開き次の試合を書き取る準備を進めるが…

 

 

お?

 

緑谷(これは…見ていないはずの2試合分…というか僕と麗日さんのも?)

 

緑谷(なんで!?)

 

覚えの無い書き記しに混乱してしまうもその原因はすぐに分かった。

 

戻ってきたと見るや葉隠さんがこちらに手を振ってる事に気がついた。実際には短い袖を振っているようにしか見えないのでしばらくしてから気付いたんだけどね。

 

葉隠「…」フリフリ…

 

緑谷「……葉隠さん…か」

 

それを一目見て大体の事情は察せた。一体何故その行為をしたのか素朴な疑問も残ってはいたが善意あっての事であると解釈し、彼女にペコリと一礼した。

 

…何か字が独特的で解読するのに時間がかかりそうなのですが。

 

緑谷(先手必勝…恐らくどっちも始まる瞬間とっておきを使ってくる筈だ)

 

緑谷(とすると…勝敗を左右するのは……)

 

 

 

 

 

マイク「さぁ…集えよ速さを極めし戦士達よ!」

 

マイク「その速度、雷の如し!!」

 

マイク「ヒーロー科!上鳴電気!!」

 

上鳴「へへ…」ワァァァア…

 

 

マイク「その速度!…ええと………とにかく速えよ!」

 

マイク「同じくヒーロー科!飯田天哉!!」

 

飯田「よしっ」ワァァァア…

 

 

マイク「1年の最速決定戦と言っても過言じゃあねえこの戦い!」

 

マイク「さあ制するのはどっちだぁああ!?」

 

悟空「おめぇ今の轟と瀬呂ん時も使ったよな…」

 

想像の域を遥かに超えた2人の超スピード。この対決の結末など誰にも想定つかないモノで、本戦でも注目すべき名試合と言えるだろう。

 

まさかこの2人の直接対決が実現するとは…

 

 

上鳴「俺対策はバッチリしてきたか?飯田」

 

飯田「いいや…上鳴君は?レシプロ対策」

 

上鳴「まさか…」

 

飯田「だと思った」

 

マイク「START!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【東京都保須市:とある路地裏】

 

男は不思議に感じていた。

 

自分は路地裏に居た1人のヒーローに斬りかかってきた筈だ。刀と標的までの距離が10cmと無かった所までそのヒーローは確かに彼の目に映っていた。

 

 

だが刀を振り下ろしたと思うとなんとそのヒーローは視界から消えていたのだ。速度から考えれば捉えていた距離から彼に刃物が当たるまでの時間は実に0.1秒程。

 

つまり奴は0.1秒の間に攻撃を避けたと言うのか…まさか……

 

空を切る間に既にヒーローの姿は前方から消えていた。単純に考えればこの時間内に遠くまで逃げる事は不可能の筈だ。

 

という事は……

 

 

 

「…上か」

 

 

天晴「危な危な……コンマ1秒でも反応遅れてたら首斬られてたぞおい…」

 

 

 

男が上を向くと看板の上に先程のヒーローが居るではないか。間一髪インゲニウムは敵の気配を感じ、個性【エンジン】を使って攻撃を回避する事に成功したのだ。

 

「成る程。速い」

 

「流石に口だけでは無さそうだ」

 

天晴「おいおい…こう見えて10年近くはこの職就いてんだぞ」

 

天晴「そんじょそこらの新米さんと見くびられては困るな」

 

「見くびってなどいない」

 

「【ワンポイントの個性を拾い上げて適材適所に配置】」

 

「【チームの総合力で勝負】」

 

「チーム“IDATEN"…」

 

「代表、ターボヒーロー【インゲニウム】」

 

天晴「おー…そこまで調べてもらっているとは光栄光栄」

 

天晴「流石は暗殺のプロ。情報通だな」

 

「………」

 

天晴「まさかこんな所で貴様みたいな大物をお目にかかれるとは運がいいのか悪いのか…」

 

天晴「殺人・殺人未遂合わせてざっと40人」

 

天晴「S級凶悪犯…ヒーロー殺し」

 

 

 

 

天晴「通称【ステイン】」

 

ステイン「ハァ……」

 

ステイン「貴様…最初から気付いていたな……ハァ」

 

天晴「さぁ?なんとなく、()()()()()()()()()()()だよ」

 

ステイン「……」

 

天晴「言葉足らずだったかな?」

 

 

 

 

フッ…

 

天晴(消えっ…速!?)

 

淡々と喋っていたインゲニウムだったがその矢庭に今度はステインが消えてしまう。そして…

 

 

 

ステイン「ハァ……ァ」

 

天晴「っそだろ!?」

 

ステイン「下らん茶番をするつもりは無い」ジャキッ…

 

一瞬にしてステインはインゲニウムの顔先にまで接近する。助走無しの飛躍力といい、動きの素早さといい他の敵とは桁違いの身体能力だ。

 

右手に持った刀を再びインゲニウムに振り下ろすステイン。

 

咄嗟に後ろにジャンプして致命傷は避けたものの、攻撃自体は当たってしまい右足首を斬りつけられてしまう。

 

天晴「チッ…掠った」

 

ステイン「ハァ……ハァ……」

 

 

またもや攻撃を避けられてしまったステインだったが、どういう事か彼は不気味な笑みをこぼしながら……

 

 

 

 

 

 

ステイン「終わりだ」ペロッ

 

天晴「何…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【雄英高校:体育祭会場】

 

マイク「START!!」

 

飯田「はっ!!」DRRR…!

 

開始のゴングが鳴ると同時に飯田君がレシプロで勝負を賭けに出た。異常なまでの早さで上鳴君に接近する。

 

それに対し彼は微動だに動かない。

 

上鳴「…」

 

飯田(何故動かない?この速さなら君の隠し玉とやらを使わん限り対応できん筈…)

 

飯田(何にせよこの内に!)ダダッ…

 

黒煙を激しく巻き上げながら左脚を上げ、蹴りを浴びせる

 

 

 

 

 

が……

 

飯田「なっ!?」スカッ

 

飯田(消えた…?このタイミングで!?)キキーッ…

 

キックが触れる寸前に彼は上鳴君の姿を見失ってしまう。急停止して前後左右…ならば上下かと全方位確認して見てみるがやはりいない。

 

マイク「オッシー!後ちょいでイイダーキック決まったのに…」

 

マイク「て、ってかあれええ!?突如フィールド内から消えた上鳴!!」

 

マイク「何処いったあいつ!飯田完全に棒立ち状態!!」

 

悟空「消えてねぇよ」

 

マイク「Where!?」

 

悟空さんの言う通り、上鳴君は消えた訳ではない。凄い速さで彼の気が移動を繰り返している。何より……

 

 

 

ダダダ…

 

飯田「足音…!」

 

 

小刻みに地面を踏み付ける音が微かに耳に入ってくるのがその証拠。飯田君の周りを円を描くように走っているのだ。

 

飯田(だが…捉えられない…!)

 

ダダッダッ…

 

飯田(いや…こんな速さ視認できるわけないだろう!)

 

飯田(見るんじゃない!感じるんだ……) ダッダダダ…

 

目では追えないと見た彼は聴覚を研ぎ澄まし、精神統一を図ろうとする。

 

だがそう易々と攻撃させる隙など与える上鳴君では無かった。

 

緑谷「飯田君!!止まっちゃ駄目だ!動け!」

 

 

飯田「がっ…!」バキッ!!

 

 

 

彼はすれ違いざまに飯田君に強烈な蹴りを食らわせる。スピードが早ければキックの勢いも強くなる。相当な威力上昇となるだろう。

 

飯田「くっ…」

 

バキッ!!

 

飯田「うっ!?」

 

絶えず攻撃を続ける上鳴君。こんな状態で雷速の相手の動きを見切れる筈もなかった。

 

ミッドナイト「1度姿を見失えばまた捉えるのは至難の業ね」

 

ミッドナイト「更に彼は上鳴君より先に必殺技を使ってしまった…制限時間が同じ以上実質先にPPが尽きた方の負け」

 

ミッドナイト「焦りで尚更集中し辛いわ」バキッ!

 

緑谷「…飯田君」ドッ!!

 

 

 

ズドッッ!!

 

飯田「…ぁっ…!!」

 

ドサッ…

 

 

攻撃によるダメージは予想以上に深刻なものでとうとう膝をついてしまう。

 

咳き込みながらすぐに彼は態勢を立て直す。

 

飯田(レシプロを使って…5秒経った)

 

飯田(もう半分を切ってしまった…)フラフラ…

 

飯田(駄目…なのか?また俺は……)

 

上鳴「そろそろ…終いにするぜ!」ダンッ!

 

上鳴君はよろけながらも立ち上がった飯田君に向かって後ろから飛びかかる。トドメを刺すつもりだ。

 

 

狙いは…頭部。

 

緑谷「っ…飯田君!!う

 

そう喋りかけた時には既に彼の脚は飯田君の頭に触れていた。

 

 

 

ガッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【東京都保須市:とある路地裏】

 

 

 

 

ポタポタ…

 

天晴「はっ…はぁ…!」

 

ステイン「ハァ……所詮この程度か」

 

 

 

刀で脚に切り傷が出来て早3分、彼は最早瀕死寸前にまでに追い込まれていた。身体のあらゆる箇所が斬りつけられて出血しており、身体を動かす事さえままならなかった。

 

というか…

 

天晴「妙だ…な、なんで……」

 

天晴「こいつの攻撃受けた途端何故身体が動かない!?」

 

ドッ!

 

天晴「っあ…!」ドサッ

 

ステインの膝蹴りを顎に諸に食らってしまったインゲニウムはその場に倒れてしまう。

 

痛みに苦しめられながらも何とか立ち上がろうとするもやはり動かない。ステインが押さえつけるように脚で彼の顔を踏みつける。

 

ガッ

 

天晴「ぅ…かっ……」

 

天晴(個性…か?なんなんだこいつ)

 

ステイン「ハァ……適材適所…か」

 

ステイン「結局貴様らも何も理解していないようだな」

 

天晴「何…だと?」

 

ステイン「優位な場限りの強さの英雄(ヒーロー)など以ての外」

 

ステイン「敵は神出鬼没、闇に潜む…ハァ……いつ何処で現れるかなど分かったものではないだろう」

 

ステイン「適当な場を提供するのでは無い。その者が適応せねばならんのだ」

 

ステイン「貴様は……ハァ……自分が適応出来ない環境ならばやむを得ないとその場を去るのか?」

 

天晴「そんな事…一言も……言ってねぇだろ…っ!」

 

天晴「馬鹿正直に突っ込んだ所で犠牲者が増えるだけ…その人にはその人なりの最善の術を使えばいいんだよ……!」

 

ステイン「……ハァ…」

 

ステイン「愚策だな」

 

 

ステインは踏みつける脚の力を強くする。

 

ステイン「そんな意識の低いようなヒーローがこの世界にのさばってはならんのだ」ミシミシ…

 

天晴「っぁぁあ!」

 

ステイン「本当に人を救いたいのであれば己の欠けてるであろう点を何かしらで補うか消去できる」

 

ステイン「自分ではこれが限界だと諦め、ハァ……無理だと決めつけるような輩はただの半端者なのだ」

 

ステイン「貴様はそういう人間だ。ハァ……ただの偽善者」

 

天晴「っ………」

 

 

 

 

『兄さん、凄いや。かっこいい!』

 

『僕も兄さんと一緒に人を救ける仕事に就きたい!』

 

 

 

天晴「…………」

 

ステイン(…何だ?)

 

 

突然、インゲニウムは黙り込み静かに静止する。脚の力をいくら強めても微動だにしなくなってしまった。

 

叫ぶ気力も尽きたと見たステインは脚を顔から離し、刀を構える。

 

ステイン「英雄の最期だ。ハァ……遺言位は格好をつけたいだろう」ジャキッ

 

天晴「………」

 

 

天晴「お前の言っている事は理解したよ」

 

天晴「けど()()()()()()()

 

天晴「テメェの仁義だ正義だを武力を使って恐怖を染みつけ身を以て覚えさせる」

 

天晴「貴様のせいで何人の人々が怯えていると思う…?」

 

天晴「敵の癖に正義面してるお前の方がよっぽど偽善者だバカ」

 

ステイン「………ハァ…ハァ…」

 

ステイン「それだけか?」

 

天晴「……」

 

ステイン「多数の幸の為に少数の犠牲は必ず伴ってくる」

 

ステイン「せめて貴様も命を張って世界の手綱を引くがいい…!」グオッ…

 

ステインはインゲニウムの頭部目掛け刀を思い切り振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天晴(……そうだ。俺はまだまだ未熟者だ)

 

飯田(友を救うどころか、迷惑までも散々かけてしまっている)

 

天晴(今の自分の力じゃ乗り越えられねぇ壁も沢山ある)

 

飯田(今の自分の実力じゃ皆を助けることも守る事すら十分に出来ない)

 

 

 

飯田 天晴((…だけど……こんなザマじゃ))

 

 

 

天晴(天哉に)

 

飯田(兄さんに)

 

 

 

 

飯田 天晴「「顔向け出来ないだろっ!!!」」

 

 

 

 

 

ステイン「!?」ガッ!

 

DRRR!

 

天晴「ハッ!」

 

 

ステインの刀が地面に埋まってしまう。攻撃が当たる寸前、インゲニウムは後ろに回って紙一重で刀を避けたのだ。

 

そして瞬時に個性【エンジン】で距離を詰める。

 

怒りの鉄拳を食らうが良い。

 

天晴「うおおおっ!!!」ブンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

グルッ…

 

上鳴「…ジかよ」

 

飯田(ギリッギリ…避けれた!)

 

マイク「う、うおお…飯田…会心の一撃何とか回避ーー!!」

 

悟空「まぁ正確には避けたんじゃねぇけどな」

 

キックに擦りはしたものの蹴る方向に向かい蹴り以上の速さで回転し威力を相殺した。

 

さぁ、これで上鳴君は無防備状態だ。

 

上鳴「や、ヤバし……」

 

受け流した際の回転を利用に脚に残っている限りの力を込め、渾身の一撃を浴びせる。

 

飯田「トルクオーバー…」

 

 

 

飯田「レシプロバースト!!!」ブンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

…と思いきや

 

 

ブオッ…

 

飯田「何っ!?」

 

またもや回避されてしまう。崩れてしまった態勢を立て直そうとするが…

 

背後から上鳴君の声が聞こえる。

 

上鳴「俺はこっちだ」

 

飯田「しまっ…

 

 

 

上鳴「だりゃっ!」ズドッッ!!!

 

 

飯田君が振り返った途端、彼は顔面に勢いよく上段蹴りをお見舞いする。眼鏡は顔に強くめり込み、その圧力に遂には割れてしまう。

 

ステージ横の壁に向かって吹き飛んでしまう飯田君。

 

 

 

 

ドガァァッ!!

 

飯田「っぅあ……」

 

 

壁に強く衝突し、体力も時間も限界を超えてしまいその場に倒れ込む。

 

 

ミッドナイト「飯田君場外!!」

 

ミッドナイト「上鳴君3回戦進出!」

 

上鳴「っしゃあ!!」

 

マイク「あぁぁあっと!インゲニウムの弟、ここに崩れる!」

 

マイク「最速王に輝いたのは上鳴電気だぁぁぁっ!!!」ワァァァア…

 

悟空「…うーん…最後の不意のつき方は勝てると思ったんだけどよ…」

 

緑谷(速攻で焦りすぎたのは痛いにせよ飯田君は善戦してた)

 

緑谷(やっぱり元々の速さに差が表れてるのか…?)

 

緑谷(もしかすると轟君にも…)

 

轟「……」←いつの間にか席に戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪我をリカバリーしてもらい、試合を終えてから早10分が経過した。

 

飯田君は廊下をとぼとぼと歩きながらベンチに戻りつつあった。

 

飯田「くぅぅ…!後少しで勝てると思ったのだが…」

 

飯田「上鳴君…この1ヶ月で相当なパワーアップを果たしていた」

 

飯田「僕も負けてられん。明日明後日は休校だが休んでなどいられんな!」

 

負けてしまった事を悔やみつつも敗北も糧とし今後に生かそうと意気揚々としていた。反射的に動いたとはいえ上鳴君の動きについていけたのだ。特訓の成果が自ずと見えてくる。

 

そんな時ポケットに入れていた携帯が震え出す。飯田君も誰かからお電話が来ているようだ。

 

取り出して、早速電話する、

 

プッ

 

飯田「もしもし…ああ母さん」

 

飯田「すみません。負けてしまいました」

 

飯田「結果は…」

 

飯ママ<違うの!その事じゃなくて!!

 

飯田「?」

 

 

いつもより母の声が荒々しい…何かあったのだろうか。少し嫌な予感がしながらも話を続ける。

 

飯ママ<ごめんなさい…あの…天哉

 

飯ママ<落ち着いて聞いて

 

飯田「…はい」

 

飯ママ<…天晴が…天晴が……

 

 

 

 

 

飯ママ<兄さんが敵に…!!!

 

飯田「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステイン「……ハァ……ハァ…」

 

ステイン「名声…金…ハァ…」

 

ステイン「どいつも…こいつも…ヒーロー名乗りやがって…」

 

ステイン「ハァ……ハァ、テメェらは…ヒーローなんかじゃねぇ」

 

ステイン「彼だけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ステイン「俺を殺っていいのはオールマイトだけだ……」

 

天晴「…」

 

 

 

 

 

 

後に残ったのは

 

辺りに散らばった多量の血と

 

無惨な彼の姿だけであった。

 

 

 

 

 




須井化です…はい。

ここ最近遅れる事がお約束になってしまっている…無理なスケジュールにしているつもりは無いんですが…どうしても時間がねぇ…

まぁその分番外編を増やすだけです。




…え?そんな時間あるなら本編書く時間確保しろやだって?

本編のペース上げて息詰まるよりも番外編書いて息抜きした方がいいじゃないですかヤダー…



今回は飯田+天晴君のターンでしたね。

回を重ねる毎に量が減ってる…不思議。

感覚としてはいつもと同じ位なのに…(馬鹿)

まぁこの後拳藤さんと八百万さんと戦う事を考えると仕方ないっちゃ仕方ないですけどね。

なら天晴消せよなんて突っ込みはしちゃいけない。折角IDATEN出したんだから…ね?(震え声)

いかがでしたか?



次回は前述通り拳藤と八百万のキャットファイト。

多分4試合目も入るんじゃないかなぁ…って気はします。うん、多分。

4人の熱い戦いを見逃すな!!




何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください。か、風邪になったデク君の看病したい人募集中!4/15日までだから急いで書くべし!?締切間近!まぢか!








4月15日(土)18:00に第32話の投稿を予定しております。アニメが終わった瞬間始まるぞ!…で先週の分も見てないのですが…
お楽しみに!














<親父ぃ…どう考えても遅れるのにいいのか?

of course。やれば俺は出来る子なのだからなぁ!

ふーっふっふあーはぁーはぁーはーっうあぁ
<これ以上遅れない意思を見せなければ俺はペナルティを増やし続けるだけだぁ!

………



集中力ぅ…ですかね。
※もう何も言わない事にした。だってフラグが立ちそうですもの。


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第32話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

2回戦第2試合、レシプロとイナズマが激しく火花を散らす。奮闘するも圧倒的な速さには敵わず飯田少年は敗北をを喫してしまう。

そんな時、追い討ちをかけるかのように彼に衝撃の事実が言い渡される。


更に向こうへ!PlusUltra!!


東京都保須市…ある街。

 

そこでは敵出現を知らせる放送が街中に流れていた。ウ〜と強くサイレンが唸り、その周辺の区域にまでその警報が鳴り響く。

 

市民は皆、我を失い彼方此方に逃げ惑う。

 

 

 

 

「ヒーロー殺しが現れた!!」

 

 

そう口にしながら…

 

 

 

 

 

 

 

ヒーロー殺し、通称【ステイン】

 

本名は赤黒血染。

 

期待の超新星オールマイトの活躍に心打たれた彼はヒーローを志し、1度は私立のヒーロー科高校に進学するも…

 

【教育体制から見えるヒーロー観の根本的腐敗】に失望。結局半年も経たずに退学してしまう。

 

10代終盤まで【英雄回帰】を掲げ、幾度となく政府や街の人々に訴えかけ続けていたが賛同する者は数えられる程の人数しか増えなかった。

 

 

最早言葉に力など無い、そう断念しそれから10年に渡り独学で殺人術を研究・鍛錬。そして現在に至る。

 

ある雑誌なんかでは編集者が独自に解釈した彼の主張も載せられていた。

 

 

「ヒーローとは見返りを求めてはならない」

 

「自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない」

 

「現代のヒーローは英雄を騙るニセモノ。粛清を繰り返す事で世間にその事を気付かせる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の一角にある何の変哲も無い建造物…

 

その建物の屋上に設置されている貯水タンクの上でステインは1人、警察が事件現場(さっきの路地裏)を調査しているのを眺めていた。

 

 

ステイン「お前らは何も気付けやしない」

 

ステイン「この街が全て自分達の手で(けが)れている事……ハァ…」

 

ステイン「この社会が偽善と秩序で覆われた歪な物だという事…」

 

ステイン「英雄(ヒーロー)と称する者等が大きな過ちを起こしている事…ハァ」

 

ステイン「俺が気付かせてやる……」

 

ステイン「()()()()()()()()()()()()()()

 

 

じきに駆けつけてきた救急車にインゲニウムが運びこまれると負傷した右頬をさすりながら彼はその光景に呆れていた。

 

ステイン(チッ…悪運の良い奴め)

 

ステイン(予想以上に戦いが長引いた物だから援護に気を取られ、奴の生死の確認を取り損ねた)

 

ステイン(あの分だとまだ生きてる可能性もあるが…まぁ無事には済まない筈…)

 

 

 

 

 

 

ビュオオッ…

 

ステイン「…か」

 

 

忽然と先程より風力が強く、真反対の方向に吹き始める。

 

何かを予期させる、あるいは自分にその異変を伝えてくれたのであろうか。

 

あまりにも不自然な環境の変化に違和感を覚えたステインは途端に刀を後ろに構える。

 

 

 

 

すると背後から何者かが声を発してくる。

 

 

 

 

「返り血で紅く染まった布マスク。身体中に惜しみなく拵えた刃物の数々…」

 

「成る程。情報通りの形相だ」

 

ステイン「…何者だ貴様」

 

ステイン「返答によっては対応も変わってくるが…ハァ…」

 

 

 

黒霧「おっとと…落ち着いてください」

 

黒霧「何も私は貴方を殺しに来た訳じゃありません…そうですね。しいて言えば」

 

黒霧「貴方と同類の者でしょうか」

 

ステイン「同類?」

 

黒霧「敵連合…と言えば想像がつくでしょう」

 

ステイン「……」

 

黒霧「貴方のような悪名高い方を探していました」

 

黒霧「少々お時間よろしいでしょうか?」

 

ステインは数秒魔を空けて、刀を背中の鞘に納めながら…

 

ステイン「ハァ……好きにしろ…」

 

とだけ答える。

 

黒霧は微笑みながらワープゲートを開き、ステインを覆って敵連合アジトに2人で戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【雄英高校:体育祭会場】

 

 

 

準々決勝もとうとう残り2試合を残すのみとなった。2回戦第3試合は八百万さんvs拳藤さん。遂にこの女子2人の戦いの幕が切って落とされようとしていた…

 

マイク「よぉぉおし!第3試合始めるぜ!!」

 

マイク「ガールandガールの入場だぁあっ!」ワァァァア…

 

最初にステージに上がってきたのは拳藤さんだ。観客席に手を振りながらの登場で会場中から大きな歓呼の声が上げられる。

 

マイク「まずやってきたのはヒーロー科拳藤一佳!!」

 

マイク「華麗さじゃ誰にも劣らねぇ!今人気急上昇中のこの娘!」

 

マイク「俺結構好み!!」ワァァァア…

 

相澤<ロリコンが…

 

拳藤「……お。居た居た」

 

 

 

 

 

一方八百万さんはというと…

 

 

八百万「……ぅぅ…」ワァァァア…

 

中々出るタイミングが掴めなかった。まるで自分が登場するのが場の空気に水を差すように感じてしまいゲートの前でたじろいでいる。

 

八百万(何ですの…あの盛り上がりよう!)

 

八百万(アイドルでもありませんのにあんなちやほやされて…)

 

八百万(しかもまた緑谷さん探してますわね!?結局目当ては彼ですか!)

 

ギリッと歯をくいしばりながら彼女は拳藤さんを強く睨みつけた。その目からは熱く燃えたぎる闘争心がハッキリと見受けられる。

 

八百万「あの小娘…っ!」ゴゴゴ…

 

 

…とまぁそんな彼女の肩に指を突っつく人が1名…

 

緑谷「お、おーい…」トントン…

 

八百万「…」クルッ

 

緑谷「皆待ってるよ?もう」

 

 

 

 

後ろを振り向き、僕の姿を見た矢先顔を真っ赤にしてあたふたし始める。僕に会う度いつもこうなんだよなぁ…なんでだろ。

 

緑谷「ど、どしたの?八百万さん」

 

八百万「みっみみみ緑谷さん!?何故ここに!?」

 

八百万「貴方の試合はこの後の筈ですわよね!?」

 

緑谷「いや…念の為早く…というか何というか」

 

 

 

緑谷「折角だからさ、君の…間近で見たかったし」

 

八百万「…」

 

八百万「恐縮です」

 

緑谷「?」

 

 

 

八百万「そこまで買い被られては…私もそれに応えなければなりませんわね」

 

面映い表情で八百万さんはそう返してくれた。

 

とても…艶やかな…可愛らしい笑顔で。

 

緑谷「…そっか」

 

八百万「待っていてください」

 

八百万「貴方のいる場所まで…すぐ追いつきますから」

 

楚々とした顔をこちらに向けながら彼女は対戦相手(拳藤さん)が待つステージへ歩いていった。

 

緑谷「頑張ってね」

 

緑谷「…」フリフリ…

 

舞台に向かっていく八百万を手を小さく左右に振りながら僕は見送った。

 

さっきはああ言ったけど本心は少し違っていたと思う。彼女も僕と同じように入場口前で何分もあたふたしてたから、少し声をかけてあげたかったんだ。

 

麗日さんの時には結局何も言えなかったしな…せめて……

 

 

 

『勝てばそれが正しい…って理念は』

 

『結局、敵達のやっているそれらと何ら変わりの無い事じゃないのか…?』

 

 

 

緑谷(……せめて……)

 

まぁ悟空さん程の安心感が無いってのは否めないけどさ…

 

それにしても1回戦の時は平然としてたのになんで八百万さん、今になって急にどぎまぎし始めたんだ?

 

 

 

 

 

その理由は明白だった。

 

 

彼女の向かう先に居た少女がこちらに手を振ってくる。

 

拳藤さん…貴方僕がここにいる事いつ知ったんだよ

 

拳藤「…」ニコッ

 

緑谷「っの…」

 

こりゃ確かに八百万さんにとってはある意味1番不吉な相手と当たったか…

 

 

 

 

 

 

マイク「おおぉっ!ようやく来たぞ我らが万物チート!」

 

マイク「ヒーロー科A組八百万百ここに見参!!」

 

拳藤「おー…来た来た」

 

大勢の観客に見守られる中八百万さんが彼らの前に姿を現した。

 

依然として彼女は凛とした表情て拳藤さんを見つめる。

 

 

だが対して拳藤さんは顔色一つ変えない。それどころか逆に心待ちにしていたように微笑んでいる。

 

八百万「不思議を通り越して不気味ですわ…」

 

八百万「そんな遊び感覚で倒せると私を倒せると思わなくてよ」

 

拳藤「遊びって…別に蔑んでいる訳じゃないって!」

 

茶化すように彼女はけらけらと笑い出す。とてもこれから試合を始めるような雰囲気ではない。

 

拳藤「寧ろ圧巻の実力だったけどね〜。あたしにとっては」

 

拳藤「是非とも()()()とは一度手合わせ願いたかったからさ。嬉しかったんだよ」

 

八百万「お前…ら?」

 

 

あぁっと…目くばせしてこちらにアイコンタクト取っていたので多分僕に向けてだと思います…はい。

 

隙あらば宣戦布告していくスタイルかよ。妙に絡んでくるなぁ…あの娘。

 

 

マイク「えと…そろそろ初めてもいいかな?」

 

八百万 拳藤「「あ、はい。どうぞ」」

 

マイク「はい…」

 

マイク「それじゃ第3試合始めるぜ!レディィ…」

 

拳藤「あっと…そそ、言い忘れてた事あったわ」

 

八百万「言い忘れ…?」

 

拳藤「さっきはあたしに勝てとか自分から言ったけどさ」

 

 

 

 

拳藤「あたしも負ける気全っ然無いんだわ」

 

マイク「START!!」

 

途端に拳藤さんのシビアな表情に変わり駆け出した。ようやく本領発揮し始めたのか…1回戦とは大分動きの速さが違う。

 

常闇君との試合で場外は免れたものの、結局盲点はその時と変わらない。物の創造に時間がかかるからその間にケリを着けるってか…とすると……

 

 

拳藤「はっ!!」

 

八百万さんに向かって手刀を仕掛ける…

 

 

筈が攻撃が当たらない。正確には当たりはしたが……

 

 

 

 

スカッ

 

拳藤「うっ…すり抜けた!?」クルッ

 

緑谷「おお!アレは」

 

悟空「残像拳ちゃんと使えてんなぁ!八百万」

 

拳藤さんは振り返って背後に彼女が回避したのを確認する。今の僅か2、3秒で数十mは距離を置けたようだ。

 

拳藤「っわ…速い速い」

 

八百万「はぁ…はぁ…」

 

体を鍛えていた期間も合わせれば半年以上だ…それ程の時間を費やしてようやく身につけた技術をこの短期間で…

 

やっぱり八百万さんは凄いな。

 

 

だが残像拳はいわば異常なまでの脚力を得て初めて成す技だ。少し疲れが見えるあたりまだ完全にこなしている訳でも無さそうだ…そもそも格闘戦を想定した戦闘スタイルじゃないしな彼女。

 

さぁ、次は八百万さんの番だ。

 

体操着をめくり、腹部から何かを創造する………

 

 

えーと…それって……

 

 

 

八百万「…」ガシャ…

 

拳藤「へ?」

 

マイク「OH!や、八百万選手、何を取り出したかと思えば…」

 

マイク「マ、ママママ

相澤<機関銃(マシンガン)だな

 

悟空「あー見た事あっぞ。ガキの頃よく撃たれてたなアレ!」

 

マイク 相澤「「…」」

 

 

突如として会場の空気が一気に冷めてしまう。当然だ。生身の人間に銃て…敵うわけないでしょ。

 

八百万「安心なさい。玩具のモノよりも()()威力を強めただけですわ」

 

八百万「死ぬ事はありません」

 

でもそれってもし銃弾受けたら…

 

 

八百万「タダじゃ済みませんわよ!!」ズドドド…!

 

やっぱりー!?

 

拳藤「やっぱりー!?」

 

反応が完全一致したぞおい。

 

 

トリガーを強く引き、彼女は銃を撃ち始める。鷹のように鋭い目つきで拳藤さんを捉えるその姿はさしずめ猛獣を狩る狙撃手と言ったところか。

 

え?ヒーロー云々の前にこれ銃刀法違反とかしているんじゃないの、だって?大丈夫大丈夫。そういう個性の人の為に銃使用の資格とかあるから、うん。

 

 

拳藤「ひー!?」ダダ…

 

八百万「逃がしませんわよ…この女狐が!」

 

大丈夫…だよね?八百万さん…というか今女狐って言ったような……

 

 

 

 

…あれ?

 

拳藤「銃弾当たったら痛いって域じゃないわ!」

 

拳藤「シャレにならん!」ダダ…

 

小大「おー」

 

鉄哲「え…何…あいつ」

 

塩崎「全部避けて…ますね」

 

 

 

観客は2度仰天する。

 

なんと拳藤さん…見事に銃弾を全て回避しております。とにかくステージ内を走り回り、端にに来たら転がるか跳ぶかで弾を避けての繰り返し…

 

いやいやいや!?聞こえは簡単に思えるかもしれないけどさ!無理だよねそれ!?

 

オールマイト「umm…アクロバティックな娘だね」ズドドド…

 

13号「アクロバットとかそんなレベルでは…」

 

オールマイト「スナイプ。実際どうなんだ?避けれんの?」<銃弾

 

オールマイト「私自身当たった事無いからどの位の早さか実感湧かないんだよね」<HAHAHA!

 

スナイプ「八百万が創造した物にもよるが…常人じゃほぼ不可能な業と言っていい」

 

スナイプ「通常銃弾の速度ってのは音速以上で標的に接近する」

 

スナイプ「発射された!って音で判断した瞬間身体は蜂の巣さ」

 

スナイプ「とはいえ視認するにしても銃弾なんて小さな物体を見つけて、それから脚を動かすなんてどんなに反射神経良い奴でもそりゃ出来ねぇ」

 

スナイプ「まぁその場の状況や相手の個性によりけりだけどな。実際拳銃の攻撃避けてる奴いくらでも居るし」

 

 

スナイプ「あ、マシンガンの弾避けてる所見るのは初めてだぞ」ズドドド…

 

オールマイト「知ってた」

 

13号「知ってますね」

 

 

 

 

勿論銃弾が無限に湧き出てくる訳では無い。一定の間隔で弾の補充をしてはいるものの、3分間撃ち続けても戦況が変わる事は無かった。

 

これでは体力を無駄に消耗するだけだ。八百万さんはマシンガンの連射を止め、プランBに移る。

 

ようやく銃撃が収まり、一安心の拳藤さん。

 

拳藤「ふぅ〜。危ない危ない」

 

拳藤「後少しで風穴開くトコだった」

 

切島「本気かよ…」

 

葉隠「本当に1発も…かすりもしなかった!?」

 

ホッとするも束の間、八百万さんがまたもや何か武器を創造し始めた。

 

峰田「へそチラ万歳」

 

 

次に彼女がお腹から出してきたのは…

 

 

 

八百万「よいしょ」ガシャッ

 

拳藤「…」

 

緑谷「…」

 

マイク「え、…っと…あああっあれは…」

 

相澤「ロケットランチャーだな」

 

マイク「ですよねぇ」

 

 

銃火器…というかもう武器じゃなくてこれ兵器だよね。最早

 

どう解説すれば良いか分からず終いには司会(マイク)が苦笑する始末である。

 

そして観客席にいた誰もがある恐怖を覚えただろう…「あれ?これは自分も巻き添え食らうんじゃね?」と。安心して、かくいう私もそうですもん。

 

拳藤「じょ、冗談キツイよー八百万」

 

拳藤「それも玩具みたいに爆発とかはしないオチだった…り……」

 

八百万「…ふふふ……」

 

 

皆の心配をよそに彼女は冷ややかな、意地の悪い微笑みを口に浮かばせていた。これ、1番八百万さんが怖いと思った場面だなぁ…今でもこの顔ハッキリ覚えてる。

 

セメントス「ミッドナイト…これは止めた方が……」

 

ミッドナイト「ま、まぁ観客の方はあの人が何とかしてくれるし…いいんじゃないかしら?」

 

セメントス「そうですかね…」

 

問題ありありなんですがそれは…

 

そんなこんなしている間に創り出したそのロケットランチャーを肩に担ぎ、発射態勢を整えた八百万さん。

 

拳藤「ちょ、ちょっと待って!それ撃ったらスタジアム壊れ

八百万「問答無用!!」

 

ゴオッ!!

 

 

否応無しに彼女は容赦無くミサイルをぶっ放す。拳藤さんに向かって砲弾は一直線に進んでいく。ひぇぇ…

 

拳藤「危なっ!?」ヒョイッ

 

だが間一髪…幸いにも発射される寸前不意にしゃがんでいたので何とか回避に成功する。

 

拳藤「ぃぃ〜…あいつあたしを殺す気かよ!?怖いわ!」

 

拳藤「あ…そういえばこれって避けたら後ろの人等に被害与えるんじゃ…」クルッ

 

ふとミサイルの事が気になり、後ろを振り向くと…

 

 

 

グオオ…

 

拳藤「んな…!?」

 

壁にぶつかるどころか…急停止して軌道変更しているじゃないか!

 

八百万「マシンガンの弾も避ける人にタダの鉄の塊を放つ訳無いでしょう」

 

八百万「追尾弾ですわ。場外や降参でもしない限りずっと貴方を狙い続けます」

 

拳藤「嫌ぁぁぁっ!?」ダダ…

 

巨大な砲弾が再び拳藤さんに襲いかかってくる。左右前後にとステージ中を駆け巡り、ミサイルの弾道から外れようと奮闘するがそれでも尚ミサイルは彼女の追跡をやめない。

 

このままでは走り疲れて体力も持たなくなってしまうだろう。いやそりゃ…銃火器軽く避けてみせる人に言っても説得力無いけどさぁ。

 

地上が駄目なら空中だと地面を強く踏み蹴り、空高く宙に舞う。

 

 

ダンッ!

 

悟空「っひょー!結構高くまで飛んでんな!」

 

マイク「1回戦の芦戸並…ってかさ」

 

相澤<それ以上の跳躍力だなおい

 

悟空「ああ………」

 

だが勿論ミサイルが上空に向かうだけ。寧ろこの後落下する事を考えると寿命を短くしただけでは…?

 

八百万「どうしたのかしら?もう諦めましたの!?」

 

拳藤「………そだ」

 

何か閃いたのか拳藤さんはニヤリと笑った。距離を詰められミサイルに当たりそうになるが、彼女は膝と膝を両腕で抱え前宙返りを連続して繰り出す。

 

 

クルクル…

 

八百万「嘘…!」

 

マイク「おーー!拳藤選手!八百万の攻撃を次々に難なくかわすー!!」ワァァァア…

 

拳藤「っとと…」シュタッ

 

 

上空から急降下し着地を行ったので一旦停止し、ミサイルが再度軌道変更を試みる。

 

 

 

 

ダダッ!!

 

 

それを見計らって拳藤さんがある場所に向かって走り出す。一体何処に向かおうとしてるのかというと……?

 

 

八百万「こっちに走って…!?」

 

拳藤「へへ」

 

ゴオッ…!

 

方向転換も無事完了し、拳藤さん(標的)を捉え再び急接近する。

 

 

緑谷「…………!!」

 

緑谷「やっ八百万さん!!逃げて!」

 

八百万「え?」

 

キキーッ!

 

 

その時、拳藤さんが脚にブレーキをかけ急に八百万さんの目の前で動きを止めた。

 

八百万「…何を…」

 

拳藤「じゃ」ダダッ!

 

だが、何故か即座に拳藤さんは八百万さんから真横に離れていった。突然の出来事に面食らう彼女だったが1つだけハッキリとした事がある。

 

 

 

八百万(あ…ミサイ

 

 

 

ドオオオンッッ…

 

 

 

ミサイルが地面に衝突し、巨大な爆発を引き起こす。火薬の量が少なかったのが幸いし、ステージの一部の床にクレーターができる程度で済んだものの、壁と衝突していれば怪我人続出は必至だっただろう。

 

 

まぁ万が一の事があれば悟空さんが気のバリアを張ってくれるから問題無いっちゃ問題無いが…

 

ミサイルの墜落の衝撃で髪が波立ち、服が激しく揺れる。

 

ゴオオッ……

 

拳藤「…ぉー…並の破壊力じゃないなこりゃ」

 

拳藤「掠りでもしただけでお陀仏だ」

 

拳藤「それにしても…」

 

 

 

 

 

八百万「っぁ……はぁ…!」フワフワ…

 

拳藤「結構ギリまで堪えてたつもりだけどなぁ」

 

拳藤「やっぱり避けられるのな〜」ポリポリ…

 

八百万「そんな…小細工で倒せると思わないで…!」

 

 

どうやら反射的に舞空術を使ったようで飛んできたミサイルとの衝突は免れた。

 

追尾弾とは言ったものの、あくまで彼女が創った代物は【近くの人間をサーチしてそれに接近する】ロケットランチャー。わざわざ近づく必要だって無いし今の八百万さんの個性ではこれ位が限界の技術だろう。

 

だが当たる寸前に避けられてしまえばその前方にいる人を標的に変えるに決まってる。まぁもしあれが拳藤さんのみを探知していたとしても目前で回避されちゃ軌道変更もクソも無いんだがな。

 

とりあえず砲弾を受けなかっただけでも一安心だ。危うく重症じゃ済まないところだったぞ?

 

八百万(咄嗟に…緑谷さんの助言が無ければ今頃……)

 

八百万(感謝しますわ)

 

八百万「今のも駄目なら…!」シュタッ

 

そう言いながらステージに着地し、また武器を創造し始める

 

 

 

 

が…

 

 

拳藤「小細工ねぇ…じゃ」ダッ…

 

八百万「!?」

 

拳藤「小細工無しはどうかな?」

 

 

一瞬にして再び八百万さんは間合いを詰められてしまう。彼女の耳元で拳藤さんが今の言葉を囁いた瞬間……

 

 

 

ズドォッ…

 

 

それと同時に鋭い打撃音が八百万さんに襲いかかる。

 

 

八百万「ぐぅっ…」ズザザ…

 

八百万「はっ…ぁ…!」

 

拳藤さんの掌底打ちにより後ろに吹き飛ばされそうになる八百万さんだったが、必死に踵に力を入れ脚の動きを止める。何とか場外だけは回避した。

 

偶然にも前に出していた腕がクッションになり、ガードも成功した…

 

 

 

瀬呂「筈だろ?なんであんなに息荒れてんだ八百万…」

 

蛙吹「…さっきから銃やらミサイルやらの武器を大量生産して体力が大幅に減少しているのか…」

 

 

蛙吹「或いは単にガードを貫通する程の威力だったりね」

 

 

恐らく後者の説が有力だろう。タイミング、位置…僕からすればどれを取っても完璧な構えだった。それにも関わらず何故あれ程苦しんでいるのだろうか?

 

そりゃ拳藤さんがめっちゃ強いからに決まってる。

 

拳藤「はぁっ!」ダッ…

 

八百万「…っの…!」

 

拳藤さんは走り出し、再度攻撃を仕掛ける。今度は正拳突きをお見舞いしようとするが八百万さんは右に移動してこれを避ける。

 

八百万「そう何度も食らいませんわ!!」

 

お返しに右脚を勢いよく振り上げ、拳藤さんに頭部めがけ上段蹴りを仕掛ける。

 

 

 

スカッ…

 

八百万「っ…!?」

 

拳藤「へぇ。中々いい蹴りじゃん」

 

 

しかし、さっき攻撃を避けられてただでさえ姿勢が崩れていた筈も下にしゃがみキックを軽く避けてみせる。

 

やばい。まだ脚振り切ってないぞ彼女…

 

八百万(間に合わな…

 

拳藤「でもまだ…」

 

 

 

拳藤「遅いっ!!!」バキッッ!!

 

八百万「……っぁぁ…!」

 

 

 

ガラ空きになった彼女の腹部に拳藤さんの膝蹴りがクリーンヒット。さっきの衝撃以上の大きな効果音を放ちながらめりめりと拳藤さんの脚がお腹の筋肉に食い込んでいく。

 

諸に攻撃を食らってしまい、強く内臓を圧迫された為八百万さんは咳き込んでしまう。

 

八百万「ごほっ…はっ…」

 

拳藤「…言ってなかったかもだけど…」

 

拳藤「これでもあたしちょっと()()()()()()()()…知ってた?」

 

マイク「知らねえええ!?てかちょっと所じゃねええ!そこらのチンピラの1人や2人ぐらいは制裁出来るよねそれ!?」

 

拳藤「はっ!!」ダダッ…

 

八百万「ぐっ…!」

 

続けて拳藤さんが次々に拳打や蹴りを繰り出していく。八百万さんは防御を試みるもすぐに崩され、カウンターを狙おうとしても容易く受け流されてしまう。

 

 

先頃も言ったが悟空さんが教えていたのは舞空術だけではない。寧ろ、悟空さんは彼女の弱点である格闘技術を磨くのが特訓の目的であった。

 

八百万さんの個性の特筆すべき点はやはりその汎用性にあるだろう。その場に居る相手の個性に応じて様々な道具を駆使し、その相手の不利な状況を創り出す。

 

分子構造まで理解しないといけないこの個性を使いこなす彼女にとってはこれが理想的な戦法であると同時に得意な戦法であるのだ。

 

だが裏を返せば想定する場面が限定されていない前提の格闘選手には大抵の武器は弾かれる。目には目を、歯には歯を、拳には拳しか無い。

 

それが広範囲の視野を持つ彼女の中で唯一の死角と言えよう。

 

僕や尾白君のようなA組の生徒ならばこの1、2ヶ月で多少なりとも対策を立てる余裕はあっただろうが…

 

 

緑谷(そもそもいくら肉弾戦が得意だからって銃やミサイル避けるような人なんて見た事ないぞ…!?)

 

緑谷(彼女の個性が手の巨大化って分かってる以上あれは拳藤さんの身体能力の高さによるものでしかない!)

 

 

悟空「1、2週間つっても期待以上に八百万は鍛えられた方だ…」

 

悟空「けど…こいつは……」

 

悟空さんは親指を噛みながら深刻そうな顔つきで試合の様子を眺めていた。彼が冷や汗を垂らす所なんて考えられもしなかった。それ程彼女にとってこれは最悪の状況下なのか…!?

 

緑谷「八百万さん……」

 

 

 

バキッドゴッ!ガッ…

 

マイク「激しい攻防戦が繰り広げられる!!…つぅか……」

 

耳郎「一方的なフルボッコじゃん…」

 

芦戸「八百万〜頑張って……!」

 

 

 

 

 

ガッッ!!

 

 

胸部から背中にかけ、激しい衝撃が八百万さんに襲い掛かる。強烈な正拳突きを胸部に食らってしまい後ろに大きく吹っ飛んでいく。

 

数mもの距離を移動して地面に強く叩きつけられるが落下した時のダメージよりも今の拳藤さんの攻撃の方がよっぽどこたえるだろう。

 

心臓を強く打たれ、ズキズキと痛む胸を手で強く掴みながらフラフラと立ち上がる。

 

拳藤「もう何発も食らったから結構ボロボロだろ?」

 

拳藤「まぁ…まだ闘るってんなら付き合うけど」

 

八百万「……っ……!!」

 

緑谷(無茶だ…打撲何ヶ所つくったと思ってるんだ……!)

 

緑谷(これ以上続行すれば身体がイカれるぞ…)

 

緑谷(でも……棄権を催促する訳にも…!)

 

八百万「ぜぇ…ぜぇ……っ!」

 

緑谷「八百万さんっ…!!」

 

 

 

 

八百万(私は…未熟者だ)

 

八百万(何も努力しなかった訳じゃない。本戦にも出れたし結果はある意味実ったと思う)

 

八百万(でも…他の皆やB組の人達もきっと私以上に努力したり、才能があったりするんだろうな)

 

八百万(たった10日余りの特訓で飛躍的に強くなれるはずがない。1から始めたって追いつける訳ない……)

 

八百万(だけど……それでも……)

 

 

 

八百万「まだ……負けない…負けたくない!」

 

八百万「()()()を越えたいから…っ!!」

 

緑谷「…………」

 

拳藤「()()()…ね。誰に言ってるのか知らないけど」

 

拳藤「そこまで言うならつき合っ…」

 

マイク「……お?あのポージングは……」ザワザワ…

 

 

 

 

その光景を見た観客達はそれと同時に一斉にざわつき始めた。何故ならば…

 

 

 

八百万「…はぁ…はぁ…」スッ…

 

 

撃てる筈のないかめはめ波の構えをし出したのだから……

 

 

葉隠「あ、あれは…緑谷君の?」

 

障子「何故あいつが…?」

 

悟空(嘘だろ…あいつには何も気の事については触れてねぇ)

 

悟空(撃てる訳が……)

 

緑谷(でも…八百万さんなら或いは自分で編み出し……)

 

緑谷(…いや……気功波なんて技術独自で創り出すのはほぼ不可能じゃ…)

 

 

拳藤「…」ザワザワ…

 

 

拳藤さんは悩んでいた。果たして八百万さんにかめはめ波は撃てるのか?個性の性質上あくまで物体を創り出すだけ…ならばあり得ない筈だ。だが現に舞空術も使えたので物間君のようなコピー系の効果もあるのかもしれない。

 

相手が彼女だったからこそ尚の事警戒しなければならなかった。そう…優秀な彼女だからこそ……

 

拳藤(もう八百万には体力は残ってない)

 

拳藤(本当にビームが撃てようがただのハッタリだろうが…多分これがあいつの最後の策)

 

拳藤(どちらか判断がつかないのであれば先に攻めに行ってケリをつけるのが手取り早いけど…)

 

拳藤(もし八百万が実際に…その何とか波ってのが使えるのならあいつに近づいた瞬間撃たれて吹っ飛ばされるってオチが見え見えだ…)

 

八百万「か……め……」

 

 

とうとう気功波発射までのカウントダウンが始まってしまう。今までのように撃つならかめはめ【波】のところで気功波を放つのが定石だろう。

 

だが八百万さんの意図が判明していない以上、不意を狙って撃つ目的であればそれより前の字を言ったところで放つだろう。

 

逆に言えば態々最後まで言い切る理由が無いので4文字目まで言い終わった時点で撃ってこなければハッタリだと断定できる。

 

下手に動くのは危険と見て拳藤さんはガードの構えを取りながら彼女の様子を伺う事にした。

 

八百万「は……!」

 

悟空「八百万っ…!」

 

八百万「めっ……」

 

緑谷「…」

 

 

 

拳藤(…撃ってこない……か)

 

拳藤(やっぱり隙狙いのハッタリだったのかな?)

 

拳藤(まぁいいや…兎に角トドメを)

 

 

 

八百万「っ!!」キッ…!

 

拳藤「………!」

 

 

 

一瞬で疑惑は確信へと変わった。

 

【八百万さんはかめはめ波を使える】、そういう結論に至っただろう。

 

彼女の今までの戦い方からして本当にハッタリをかますだけの相手なのだろうか。どうしてもその一抹の不安を捨てきれずにいた。

 

だが、八百万さんの目つきが急に鋭くなったのを見てある試合の出来事を思い返す……

 

 

この眼は…1回戦の時の麗日さんのそれと全く同様のものだ。

 

 

ハッタリなんて曖昧な可能性を考慮する訳がない。恐らく何かしら勝てる確信を持って挑んでいる。

 

そう判断せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

ダンッ!

 

拳藤「くっ…!」

 

 

となれば今の表情の変化は言わばかめはめ波の撃つタイミングを知らせる合図のようなものだろう。

 

相手に「もうハッタリだな」と一旦油断させてからかめはめ波を撃ち込む…そういう作戦なのだろうと拳藤さんは予測した。

 

だが焦って急いで回避しようとしたせいで気功波が放たれる前にジャンプしてしまい、失策してしまう。

 

空中で身動きを取れないんじゃ、相手の格好の獲物だ。まるで芦戸さんと戦った時の結末を再現しているかのような…そんな感覚だった。

 

という事は…?

 

 

 

 

八百万「波ぁぁっ!!」

 

両腕を勢いよく斜め上に突き出す……も、やはり気功波は放たれない。

 

マイク「え…あれ、ビーム…撃ってな……」

 

悟空「撃たなかったんじゃなくて撃てなかったんだろ」

 

悟空「でも…これで隙ができたぞ」ニッ

 

マイク「あ…そういえば空中に行っちゃってたねあの娘……」

 

拳藤「やばっ……」

 

八百万「自由のきかない空中に飛んでいくとは…」

 

八百万「狙えと言っているようなものですわ!!」ダンッ!

 

高く飛び上がり、上空から落下してくる拳藤さんに向かって飛び蹴りを浴びせる…

 

上鳴「っしゃ!決まる!!」

 

緑谷「行けっ!!!」

 

 

 

 

 

 

ガシッ…

 

その筈が、突然彼女の目の前に人を覆える位の巨大な掌が現れる。慌てて態勢が崩れるとすぐさまその手に掴まれ、身動きが取れなくなってしまう。

 

何とか外そうと掴んでいる指を思い切り押すがビクともしない。

 

 

八百万「こ…これは……まさか貴方の個性……!?」

 

マイク「っかぁぁぁ!八百万!!拳藤の【大拳】に見事捕らえられてしまった!!」

 

拳藤「惜しかったね…上手い作戦だったけど…」

 

拳藤「…でも上に行きたいのはあんたらだけじゃないんだ」

 

バッ…

 

それだけ言うと拳藤さんは握っていた手を開き、八百万さんを離した。

 

八百万(ま…まず

拳藤「巨拳(ジャイアント・フィスト)…!」

 

 

ズドオオッッ!!

 

強大な拳藤さんの拳が八百万さんの全身に打ち付けられる。そのまま彼女の身体は押し飛ばされ、ステージ外の地面と激突する。

 

 

 

ドオオンッ!

 

大きな衝突音が観客の耳に響いてくる。背中を強く地面に打ってしまい、起き上がろうとしても身体はもう微塵も動けやしなかった。

 

八百万「…ぅ……」ピクピク…

 

戦いを続ける気力も体力も…彼女には全く残されていなかった。

 

 

 

あまりの傷の痛みに身体が耐えきれずとうとう気絶してしまう。

 

 

 

 

 

ミッドナイト「八百万さん!!場外!」

 

ミッドナイト「拳藤さん3回戦進出!!!」

 

ワァァァア…!

 

拳藤「やりぃ!」

 

無事に着地を終えた拳藤さんは観客等の多数の歓声に包まれながらその場を立ち去った。

 

 

緑谷「…っ……」

 

拳藤「…ふふ」ピッ…

 

 

こちらを向いて右手の二本指を頭の横で振りながら……

 

 

 

緑谷「……八百万さん……」

 

ミッドナイト「早く運んで!傷が思ったよりひどい!!」

 

 

 

ヒーロー科1年A組八百万百。

 

彼女の体育祭は悔しくもベスト8位内に収まり、一旦幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 




須井化です…はい。

今回はヤオヨロメイン。

容赦無く人に銃火器ぶっ放すヤオヨロッパイマジ姉貴。

まぁ避けた拳藤さんも拳藤さんでヤバイけど。

とりあえず今ば癒しが欲しい(ボソッ

いかがでしたか?



次回はデクVS切島君ですねぇ。

本当は今回に食い込むかと思いましたけど予想以上に字数を稼いでしまった…

この分だと次話も1戦かな…できれば轟&上鳴も入れるつもりです。

お楽しみに!














<親父ぃ…なんなんだいこれはぁ…

<なんで1週間以上も遅れているの!?

や、やめるんだブ○リー!落ち着けぇ!!

<できぬぅ!!

もはや何もかもおしまいだ…(ボーピー


デデーン…



529997→529996


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第33話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

2回戦第3試合は八百万少女と拳藤少女による激しい攻防戦が繰り広げられるも、惜しくも八百万少女は敗退してしまう。

準々決勝もいよいよ大詰め。緑谷少年と切島少年の対決だ…!

更に向こうへ!PlusUltra!!!


マイク「第2回戦もいよいよクライマックス!」

 

マイク「轟、上鳴に引き続き拳藤と3回戦の進出者が着々と集結してきている!!」

 

マイク「次の試合でとうとう上位4名の準決勝出場者が完全に決定するぞ!」

 

ワァァァア…

 

 

 

 

 

 

切島「そろそろ…始まるか」

 

マイクのアナウンスと観客達の歓声を聞きつけ、もうじき自分の出番が回ってくると感じた切島君は椅子からガタッと立ち上がり、両腕を上げて大きく身体を伸ばす。

 

葉隠「お、傷完治した?」

 

切島「んまー…痛みは引いたね」

 

葉隠「そっか!頑張がんば!!」

 

隣の席に座っていた葉隠さんからの声援に「おう」とだけ答えると、すぐに観客席から離れていった。

 

 

瀬呂「次は緑谷と切島かぁ…どーなんだろな」

 

青山「やっぱり緑谷君じゃあないかい?」

 

青山「戦い方がまさにビューティフルでエレガントでエクセレントだしさ」

 

上鳴「とりまお前が過大評価しているっつー事だけは分かった」

 

葉隠「………」

 

 

 

八百万さんがタンカに乗せられ保健室に運び込まれていく。1回戦でも同じような光景見たな…偶然にもこちらの入場口からタンカがやってきたので覗いてみると…

 

彼女の顔からは1片たりとも負の感情が感じ取れなかった。逆に曇りなく微笑んでいたのだ。

 

所詮この程度かと自分で納得してのこの表情なのか、本当は泣きたい位悔しいのを何とか堪えようとしているのか……

 

はたまた僕を不安にさせない為にー

 

 

緑谷(よそう。考え過ぎだな)

 

緑谷(何の得も無いし、必要性もない………)

 

 

八百万さんの様子も驚いたがもっとショックだったのは拳藤さんの方だ。何って……

 

あれだけ動いたのに疲労しているように見えないんだよ。

 

1度も息切れしなかったし、1つも汗を流してない。数十発の銃弾を避けてあれだけ激しくうごいたというのに試合後の彼女の姿から全く疲れが伺えない。

 

どういうスタミナしてるんだか…

 

色々と思う事はあったけど八百万さんを見送った後、すぐにステージに足を運ぶ事となった。

 

 

控え室での出来事を胸に留めながら………

 

 

 

 

 

マイク「2回戦第4試合!!」

 

マイク「ヒーロー科緑谷VS切島だぁあああっ!!」ワァァァア…

 

ステージに上がった途端そこら中の観客席から大喝采が湧き上がる。というか雄叫びだなこりゃ…1回戦の時よりも更に注目されてるよ。

 

そういえばこれ準々決勝だから人数的にはもう生徒1桁しか残ってないのかよ。

 

まぁさっきよりかは緊張しない…

 

緑谷「ぅ…ぉっぉぉ……」ガチガチ…

 

 

と思う。

 

悟空「緑谷の奴まだソワソワしてんなぁ」

 

悟空「アレで決勝まで行ってでぇじょうぶか…?試合前にぶっ倒れそーだ」

 

相澤<…緊張だけじゃないかもしれませんけどね

 

悟空「?」

 

相澤<いえ、こちらの話なので気にせずに

 

相澤先生の意味深なセリフに首を傾げる悟空さんだったが、ひとまずそれよりも弟子の試合の観戦に集中する事にした。

 

悟空「そか」

 

相澤<……

 

 

 

生徒や一般客が盛り上がる中、教師陣はどこか不穏そうな空気が漂っていた。

 

13号「…まずいですね。予想以上に」

 

スナイプ「盛り上がるのは大いに結構なんだがな」

 

オールマイト「……緑谷少年は緊張()()()だけまだマシかもしれんな」

 

オールマイト「周りを見てみな」

 

少しそばだてると歓声でも雄叫びでも無く、ある会話が耳に入ってきた。

 

 

 

「今度はあの硬くなる奴が相手かー楽しみ」

 

「でも近接戦がメインだろうから多分緑谷の出来レースに変わりはねーんじゃね?」

 

「俺あの暑苦しーのもいい線行ってると思うけどなぁ」

 

「無理無理。1回戦の見なかったのか?あんなレーザーバンバン撃ってる奴に勝てねぇって」

 

「それにしても次の拳藤との試合どうなるんだろうなぁ?」

 

 

試合の応援をするどころか、中には準決勝の話をする者もちらほらと居る。何故皆この試合を観戦しようとしていないのだろうか……

 

 

 

オールマイト(……緑谷少年。君は気付いていないかもしれないが)

 

オールマイト(君は午前中の障害物競走後から既に注目の的になっている)

 

オールマイト(あらゆる人に期待されているんだよ…多数の視聴者から優勝候補に選ばれる程に)

 

スナイプ「だがその分、当たった奴の言われようは皮肉なもんだ」

 

スナイプ「ここまで緑谷は予選、本選、そして1回戦にかけてあまりにも【強い】という大きな印象を与えてしまっている」

 

スナイプ「恐らく午前中にそのチーム内に居た拳藤や八百万が切島よりも注目されている起因の1つにもなっているだろう」

 

13号「決して活躍していない訳ではありません…彼は爆豪君のチームでもかなりの活躍も見せましたし、個人競技でも驚かされる場面は何度もありました」

 

13号「…しかし……少なくともあの8人の中で1番不運なのは」

 

13号「切島君、なのかもしれませんね」

 

 

 

 

 

…切島君のその時の様子は……あまり思い出せないけど、少なくとも笑っているような顔には見受けられなかった。

 

入場してきた時の顔は彼らしかぬとても固い表情であった。

 

少なくとも生徒の中で彼だけはこの空気の異変に気付いていただろう。

 

切島「……」ワァァァア…

 

 

 

(……別に今から始まった事じゃない)

 

(周りから圧力かかんのは珍しくなかった)

 

(何たって…初めてダチに個性見せた時の反応なんだと思う?)

 

 

『んー……』

 

『なんか地味っ!!!』

 

 

(満場一致で口揃えて言われたよ。結構心にグサッと来るぞ)

 

(…自分でも自覚してたからなぁ…かっこ悪いって)

 

(恥っずかしいわ)

 

 

 

 

 

 

 

切島「あー…胸糞悪ぃ」

 

緑谷「……」

 

 

『見た目は確かに変わらないかもしれないけど僕的にはかっこいいと思うけどな』

 

『プロにも十分通用する個性だしね』

 

 

切島(緑谷(お前)はああ言っていたけど…どう思ってんだ?)

 

切島(お前のその眼に俺の姿は映ってんのか?)

 

切島(轟の言葉を聞いてから少し考えちまったよ)

 

マイク「レディィ…」

 

切島(結局結論は出なかったけど…いや)

 

切島(だからこそ教えてくれよ…委員長)

 

 

切島(お前自身で答えを…)

 

 

 

マイク「START!!!」

 

ガッ!!

 

 

開始早々双方共に相手に突進を仕掛けた。腕と腕がぶつかり合い、互いに取っ組み合う。ミチミチと痛々しい音を立てながら徐々に手の力を強めていく。

 

緑谷「ぅぅぁぁあっ…!」

 

切島「ぉぉおおっ……」ミシッ…

 

マイク「おお!両者共に即突っ込んだ!」

 

マイク「最初は力比べかー!」

 

「おいおい…いくら個性的にも身体的にも攻撃型とは言え、そばかす君相手にそれは不利じゃ……」

 

「…い、いや見ろあれ!」

 

 

緑谷「くっぅ…!」ググ…

 

切島「っぁああ!!」

 

 

 

観客の予想とは裏腹に切島君の腕が僅かながらに伸び始めている。対して僕の腕は少しずつ押されてきているではないか…

 

ってか痛い。

 

切島(こちとら()()()()()()()()()()に日々弄ばれてんだよ…っ!)

 

切島(それに比べりゃ腕力比べだろーが握力比べだろーが屁でもねぇ!!)

 

然程彼が注目視されていなかった分、その光景に呆気からんとした表情で眺める客が大半だっただろう。

 

切島君本人もその1人であった。この短期間でそれ程飛躍的な身体能力向上を成し遂げたのかと驚きを隠せずにはいられなかった。

 

だがその反面、彼はただ1人ある違和感を覚えていた。

 

 

手応えが感じられないのだ。こちらが強く突き押せば突き押す程に逆に相手がかける力が弱まっていくような感じを受けた。

 

決して自分を過小評価している訳ではない。ただ余りにも容易に押し返せているのがかえって気味が悪いのである。

 

切島(…こいつ……まさか狙って!?)

 

だいたい合ってます。

 

 

 

緑谷「よっ」グラッ…

 

切島「っおお…!?」

 

 

僕は腕の力を緩めながら後ろに身体を傾ける。力み続けていた切島君は動きに釣られ前に倒れこんでくる。

 

マイク「おーっと!最初の突き合いは切島の勝…」

 

悟空「いや……ありゃ()()()退いたな?」

 

足が浮くのを見計らって掴んでいた切島君の腕をグイッと思いっきり引っ張り、手を離す。引っ張られた反動で後方に吹っ飛んでいく切島君。

 

 

切島(場外狙いの投げ飛ばしかよ…)

 

切島「上等じゃねぇか!」ズザザ…

 

ステージ外に吹っ飛ばされそうになる切島君だったが地面に急降下し、これを難なく回避。

 

直様こちらに飛びかかり攻撃を仕掛ける。

 

 

 

ガガガ…!!

 

切島「っらぁああ!!」ガガッ!

 

緑谷「…」ガッ…

 

掌拳、裏拳…様々な打撃を繰り出していく。()()()()()()()切島君の猛攻を何とか防御するので精一杯だった、

 

マイク「切島容赦無く殴る殴る殴る!!」

 

マイク「打撃のオンパレードだ!」

 

 

悟空「……」ガガガ…

 

悟空「なんか…緑谷の奴」

 

悟空「1回戦の時より動きのキレが無ぇな」

 

悟空「表情も生き生きしてねぇー…ってかなんちゅーか」

 

心配そうな顔で試合を眺める悟空さん。彼は密かに先週のようにまたスランプにはまってしまっているのではないかと危惧していたのだ。

 

それは相澤先生も同じだった。

 

相澤(…緑谷は他の奴らから避けられているのを自身のせいだと引け目を感じている)

 

相澤(要は解釈の違いなんだなこれが)

 

相澤(あいつは仲間(クラスメイト)を信じなかった事に嫌悪していると思い込んでいるんだろう)

 

相澤(入学前から成績は飛び抜け、何より危なっかしい行動を何度も起こしておきながら何度もその窮地を覆していった)

 

相澤(そんなに目立てば嫉妬する奴の1、2人は出る)

 

相澤(無意識の内に自分の心の中であの場に居た生徒をアテにする気も無いと勘違いしていたと悟ったんだ)

 

相澤(勿論完全に違うといえば話が変わるが…あいつらは緑谷(お前)を嫌悪していたんじゃないんだ)

 

相澤(寧ろ尊敬していたんだ。お前の強さと心意義に)

 

相澤(だからこそあの時USJで何の役にも立てなかった事に奴らが劣等感を感じていたんだ)

 

相澤(【緑谷に頼ってはいけない】今度は【緑谷を救ける側にならなければならない】」

 

相澤(緑谷との接触を避けていたのもお前に少しでも手を焼かせる訳にはいかなかったから…)

 

 

相澤「ま…そのほんのすれ違いがこの結果を生んだけどな」

 

相澤「これ位の難場…収められなきゃ委員長は務まらねえぞ?緑谷……」

 

 

 

 

 

『だったら最後まで勝ち上がって俺達に見せてくれよ』

 

『あの時……お前の判断は全て正しかったって証明をよ』

 

『俺の分も…頑張ってくれよ、緑谷』

 

 

尾白君にああは言われたけど…実際はどうなんだ?あれが本当に1番適切な判断だったのか、今でも僕には分からない。

 

やろうと思えば他の皆の個性を使えばもう少しマシな戦局になったんじゃないか?

 

それを分かっていて皆を遠ざけたのは故意的でなくとも自分が心のどこかで彼らを見限っていたからじゃないのか?

 

 

それに…ただこの体育祭を優勝しただけで現状が変わるのか?

 

やはり、歴然の差があったという事が明らかになるだけで寧ろ皆との溝が深くなってしまうのではなかろうか?

 

果たして右側(半冷)のみの轟君にただ勝つだけで彼を救ける事は出来るのか?

 

……否、出来る訳ない。

 

 

考えれば考える程ドツボにはまってしまう。勝ってはいけないのならば負ければいいのか?そんな馬鹿な事があるか。では如何にして勝つかが問題なのか?それとも如何にして負けるのが問題なのか?

 

様々な感情が頭の中で入り混じり、混沌とした状況に陥る。

 

 

 

切島「なんで攻めねぇんだよおい!!」ガガガ…

 

緑谷「…!」

 

切島「麗日ん時はもっと打ってただろ!!ぁあ!?」

 

切島「所詮俺は眼中に無いってのか!?緑谷!!」ブンッ

 

 

 

その一言でようやく目が覚めた。そうだ…今は試合中なんだ。他人との勝負に余計な感情を放り込むのは厳禁だ。

 

今は切島君に…

 

 

緑谷「集っ中……!!!」スカッ…

 

切島「!?外れっ……」

 

ドッッ!!

 

切島君の攻撃が空振りした隙に彼の胸部に強烈な右ストレートを食らわせる。ガードしていたならまだしも諸に攻撃を受けてしまった…凄まじい衝撃に為すすべ無く彼は吹っ飛んでしまう。

 

切島「…っぉ…!」

 

マイク「緑谷の渾身の一撃炸裂!これは決まったか!?」

 

悟空「おっ…飛ぶなぁ!」

 

 

切島(滅茶いってぇ…肝が冷える)

 

切島(いいパンチじゃねーか……つーかこんな硬くしても吹っ飛ぶってどんな威力だよ)

 

切島(凄ぇな…やっぱり凄いよ緑谷)

 

切島(プロヒーロー(相澤先生)をボコボコにした敵にもビビらねぇで戦い挑めるんだもんな…)

 

切島(勇敢っていうか…馬鹿げてるっていうか……)

 

 

 

切島(でもこんな晴れ舞台用意してくれたんだからこそ……)

 

切島(こんな余興程度で終わってたまるかよ!!)ズザッ!

 

ステージの端から落ちそうになるのをつま先で何とか踏み止まった。外見的にはほぼダメージは無いが、心臓を強く圧されてしまった為咳き込んでしまう。

 

切島「ごほっ…はっ……」

 

切島(あっぶねぇ…硬化発動してなけりゃ1発でおじゃんだぜ)

 

 

場外を逃れたとは言え、さっきとは違いステージの端に居るんだ。も少し押せば勝てる。

 

 

そう思って僕は彼に接近し、追撃を狙う。

 

緑谷「はぁっ!!」

 

切島「ほ…っと!」スカッ

 

 

だが再度打った右ストレートがしゃがんであっさりと避けられてしまう。身体がガラ空きになった所を切島君はアッパーカットでカウンターを繰り出す。

 

ガッ!!

 

緑谷「っが…!」

 

切島「へへ」

 

緑谷「にゃろっ…」

 

お返しに今度は左腕で正拳突きを彼の顔面にお見舞いした。

 

 

 

 

ガッッ!!

 

緑谷「……っ……」

 

切島「効かねぇよ」

 

 

だがパンチをまともに食らった筈の彼は一切それに動じてない。それどころか【待ってました】とでも言いたいかのように微笑ましい顔をしていた。

 

そう。ダメージを与えるどころか逆にパンチを打った自分の左腕を痛めてしまっただけだった。

 

パンチの衝撃の反動で痺れてしまった左腕をもう一方の腕で支える。

 

緑谷「いっでぇぇ!?」プルプル…

 

 

セメントス「へぇ…頑丈な岩石すら物ともせず粉々にするあの鉄腕を」

 

セメントス「今し方彼の拳打で吹き飛ばされた筈ですが」

 

ミッドナイト「不意に攻撃を放たれたからでしょう。防御に徹す(その気にな)れば鉄以上の硬度を形成できるって訳ね」

 

ミッドナイト「まぁ…そんな鉄の塊に思い切り攻撃入れて痺れる程度で済む緑谷君(あっち)の身体も異常だけど」

 

 

ズキズキと腕を痛めてる間にも切島君は襲いかかる。無傷の右腕で空かさずガードしようと顔の前に構えるが…

 

 

ドガッッ!!

 

緑谷「…っ強……!」ググッ…

 

切島「吹き飛っ」

 

 

 

切島「べっ!!!」バギッ!!

 

緑谷「ぅあ…!」

 

 

 

ガードを崩して顔面に猛烈な右ストレートを決める。あまりにもその衝撃は強く、彼の宣言通り後方へと吹き飛んでしまう。さっきの僕の攻撃の再現じゃねぇか。

 

右手を無理やり押し退けてそれ毎顔に打ち込みやがった!?またガード貫通する奴現れてきたよクッソ……

 

さっきまで受け流していた攻撃より2撃とも()()が比べもんにならない…硬度をかなり高めてきたな?

 

 

だが1つ誤算を生んでしまったな、切島君

 

 

地面に倒れ込むも、つい口から垂れた唾液を手の甲で拭き取りながら立ち上がる。

 

切島君がその間に僕との距離を詰めていく。ここまでは先の僕の戦闘シーンとほぼ一致してる。

 

だがそれと今の状況で決定的な違いが1つ存在する!!

 

 

緑谷「か…め…は…めぇぇ!!」

 

切島「!?」

 

緑谷「波ぁあああっ!!」

 

ボオオッ!!

 

マイク「緑谷のビームが近距離で切島に直撃ぃーー!痛そう!」

 

 

君は接近戦しか行えない以上相手に近づく必要がある。だが僕は君の間合いの外からでも攻撃が可能なんだよ。

 

近づいてくる切島君に容赦無くかめはめ波を撃ち込む。直撃した影響で発生した煙のせいで姿は確認できないがモロに食らったから無傷では済んでいな

切島「効かねぇって」

 

緑谷「!?」

 

 

切島「言ってんだろ!!」ズドッッ!

 

緑谷「っぁは…!?」

 

 

切島君の拳打が僕の腹部に深く突き刺さる。みぞおちに入った…痛ぇぇぇぇ……

 

思わず唾液を吹き出してしまった。

 

 

芦戸「ええー…あんなん直撃したのにノーダメなの!?」

 

常闇「騎馬戦の時の爆発…恐らく前騎馬の奴の位置なら騎手(爆豪)の爆発の巻き添えを食らう可能性は十分にあり得た」

 

常闇「それを食らってビクともしない硬さだぞ…?却ってダメージを受ける方がおかしい」

 

オールマイト「身体を硬くする…一言で表してもパッとせず強力な個性とは言い難いが」

 

オールマイト「鉄以上の硬度をほこるその攻撃力と防御力は彼の強みと言っていいだろう」

 

 

彼の攻撃より態勢が崩れ、無防備な状態となってしまう。ここにハマれば後は簡単、滅多打ちのお時間だ。

 

切島「ぅおらあああああっ!!」ガガガッッ…!

 

緑谷「くぅ゛っ…」

 

負傷した腹部を始め腕部、頭部、胸部など様々な身体の箇所を的確に攻撃を入れていく。何とかガードで対処しようとするが構えた部分にダメージが蓄積されるので結局意味がない。

 

ただただ殴られ、殴られ、殴られ続けるだけだ。倒れるまで…

 

 

 

切島(俺は特別学力がいい訳じゃねー)

 

切島(前の学校の奴らだってたまたま進路が違っただけで俺より賢い奴らや強い奴らだっていくらでも居た…!)

 

切島(ここに来ても同じだ!肝心な時に役に立てねぇし、活躍も出来ねえ)

 

切島(今の俺にとって誇れる物っつったら雄英高校に入学した事位だよ……)

 

 

 

切島(そんな半端者でいい訳ねぇだろ!!)

 

切島(確かに俺は頭も悪りぃし個性だってとりわけ派手な訳でもねぇ!)

 

切島(それでも……)

 

切島(飯田や轟みてぇに先代がスゲェヒーローじゃなくたって!)

 

切島(緑谷や爆豪みてぇに能力に恵まれてなくたって!!)

 

 

切島(1番になる!!地味でも努力して強くなって1番になりゃ、嫌でも皆俺の実力を認める…俺自身だって……)

 

切島(準々決勝だか準決勝だか決勝なんてもう関係ねぇ!!ここが俺の正念場!!)

 

切島(緑谷(お前)に勝って初めて俺は輝けんだよっ!!!)

 

切島「ぁああっっ!!!」ガガガ!!

 

緑谷「……っ!」

 

 

「一方的な戦いだ…!」

 

「嘘だろ…あいつあんな強かったのか!?」

 

「全然歯ァ立ってねぇじゃんかー!!」

 

試合の不穏な風向きに観客はどよめき始める。切島君に注目していなかった分、反動が大きいのだ。これ程までに強かったのか!?と…

 

切島君の猛ラッシュが開始して3分が経過する。もう身体を動かす気力さえ失っていた。抵抗する事なくひたすら攻撃を受け続けるだけであった。

 

マイク「切島の強連打!!流石の緑谷も最早お手上げかぁぁぁ!?」

 

たった1分弱で戦況が大きくひっくり返ったこの状況に僕の勝利への期待が一気に惨敗への疑惧へと変貌を遂げてしまう。A組を始め、多数の観客が顔に不安を募らせていた。

 

 

 

 

 

 

だがそんな中ただ1人この試合を笑顔で眺望する者が居た。

 

 

言うまでも無いだろ?勿論この人である。

 

 

 

 

 

相澤<……孫さん?愛弟子のピンチでしょう?

 

相澤<何故そんな笑って(顔して)られるんです?

 

悟空「……さぁ?なんでだろな」ニッ

 

 

緑谷「くっ……!」ドドドッ!

 

 

悟空(あいつはどんなピンチになっても最後の最後まで足掻き続ける)

 

悟空(最初会った時はいかにも()()()って感じの奴だったけどよ)

 

悟空(この1年間どんなつれぇ修行にもへこたれず緑谷はオラの特訓についてきた)

 

悟空(外から見りゃただの弱虫かもしれねぇが…

芯は太くて固ぇ強い奴さ)

 

悟空(昔の悟飯とそっくりだな。まぁオラとしちゃ芯の周りももっと強くさせてぇけど)

 

 

 

悟空(今だってそうだ。一見見りゃ絶対無理だって割り切るような所でだってあいつはしつこく考え続ける)

 

悟空(考えて、考えて…どうやったら自分が勝つか必死こいて探してんだよ)

 

 

悟空(決して倒れねぇ精神と身体が緑谷を勝利へ導いてくれんだ!)

 

 

 

ここまで追い詰められたのなら界王拳を使うべき…そう思った。だが考えてもみろ、この後1戦挟んで勝ち進むと仮定すれば2戦連続で試合が待っている。

 

できれば体力を温存しておきたい…まぁそんな余裕与えてくれる訳ないけども………

 

 

……いや、待て…

 

あったぞ、そんな余裕!?

 

 

 

 

ドッ!!

 

緑谷「が…!?」

 

顎に強烈な右アッパーが繰り出され、その衝撃で身体が宙に浮いてしまう。

 

ヤベェ…意識飛びそ……

 

切島君は右拳を固く握り締め、次の攻撃を備えていた。

 

ヤベェ…トドメ刺されるぞコレ……

 

 

 

ベスト8敗退…かぁ……それでも10本の指に入るから満足っちゃ満足か?

 

自分の身の丈にあった戦績

 

 

 

『皆…他の科の人達が()()でトップを狙ってくる』

 

『だから…僕も遅れをとる訳には行かない!!』

 

 

 

『僕も()()…で獲りに行く!!!』

 

 

 

…駄目だろ…そうだ。()()ベスト8じゃないか…

 

この先に僕の進出を待ち構えている人が何人、何十人といるんだ…!

 

 

それなのに…それなのに……こんな半端な結果で

 

 

 

緑谷「……ぉ…」

 

切島「?」

 

緑谷「っわれるかぁぁっ!!」ブンッ

 

ガッッ!!

 

 

 

 

マイク「な…ナンチューコッタイ」

 

マイク「切島の右ストレートを緑谷…まさかの頭突きで応戦ーー!?」

 

ワァァァア…

 

 

 

不意打ちを喰らい、咄嗟に切島君は2、3歩後退する。

 

切島君の正拳に自分の頭部を思い切りぶつけたのだ。衝撃が脳に響き、頭が悲鳴をあげている…下手したら気失うぞコレ。

 

まぁ…その代わり()()()()みたいだけどな……

 

 

 

 

瀬呂「うへー…ヘッドアタックでまさかのループ抜けか」

 

瀬呂「こりゃ硬化発動してる切島よりも緑谷の頭の方が先にイカれちまいそうだ」

 

蛙吹「緑谷ちゃんの頭から血が…」<ビロビロと

 

砂藤「だがこれで少し距離が離れただけで何も状況は……」

 

砂藤「………?」

 

 

 

思わぬファインプレーに驚きながらも、大方攻撃を受けた方のダメージは皆無であろう、そう見積もり切島君の方に目を向ける。

 

 

だが目の前に映っていたのはこれまた予想とは裏腹の光景だった。

 

 

 

切島「はぁ……はぁ…」

 

切島「っ…!」ズキッ

 

 

傷1つ無かった筈の彼の額からはポタポタと血が垂れており、頭痛を必死に堪えようと左手で頭部をを押さえている。その苦い顔からは今の頭突きがどれ程の威力かが見受けられよう。

 

葉隠「切島君…」

 

上鳴「っんだ…?切島の奴極めたら緑谷のも効かなかったんじゃねえの?」

 

上鳴「もしや緑谷め……この戦いの中で相当なパワーアップを……」

 

「んな訳ねぇだろアホ面が」

 

上鳴「AHODURA!?」クルッ

 

お?このケンカ腰の荒々しい声は……

 

 

 

爆豪「テメェだよビリビリ野郎」

 

麗日「ちょ…爆豪君言いすぎ……」

 

 

かっちゃん!かっちゃんじゃないか…本戦前からずっと寝っぱなしだったからいつ復帰するか冷や冷やしてたよ…

 

さりげなく麗日さんも帰ってきた。何かやたら遅かったような……

 

アホ面と称されかなりショックを受ける上鳴君だったがもうそんな事言わせないぞ…何せ彼はベスト4内に入るまでの実力者なのだから。

 

 

上鳴「へっ!何を偉そーに上から目線で言ってんだよおめーは!」

 

上鳴「お前本戦にも出れなかったくせに準決勝進出者に文句入れられんのか?お?お?おー?」

 

爆豪「誰がいつどこでどのようにしてお前が俺より強いっつったのか明確に答えもらおうかぁぁアンッ!?」

 

「…………………」

 

上鳴「………ぃぇ…その…」

 

 

敗けても尚ブレないかっちゃんの覇気と罵りように最早返す言葉が無くなりしょぼくれてしまう。

 

本人自身も本戦未進出(その事)については色々引け目を感じてるから触れない方が身の為だぞ上鳴君…

 

爆豪「ありゃデクがパワーアップしたんじゃねぇ。むしろ逆だ」

 

障子「…切島の防御力がダウンしてると言うのか?何故そんな事を……」

 

爆豪「黙って見てろ。習うより死ね」

 

障子<シネ……

 

 

 

緑谷「…切島君……」

 

切島「っ…んだよ……緑谷!」

 

緑谷「硬化(それ)…もしかしてかなり無理してない?」

 

切島「……!!」

 

切島「そんな訳っ!」

 

挑発され、今度こそケリをつけるべく右腕を構えながら切島君がこちらへと近づいてくる。

 

しかし今の攻撃でまた距離が出来た。ここは君の射程距離圏外だ!!

 

もう…君の攻撃は1発も受ける気は無い!

 

 

緑谷「君の技…借りるぞ峰田君」

 

切島「!?」

 

 

 

 

緑谷「だだだだだだっっ!!!」ボボボ…

 

切島「ぐぅおぁっ…!?」

 

 

右腕と左腕を交互に突き出し、両手から無数の気弾を撃ちまくる。さしずめ人間版機関銃と言ったところか。USJの時峰田君がもぎもぎを乱発していたのを思い出して閃いた。

 

気弾が放たれた途端、直様切島君は腕と腕をクロスさせ防御態勢に入る。流石は硬化…酷使しまってもその防御力は健在か!

 

峰田「でもやっぱおかしいぜ」

 

峰田「さっきまで攻撃食いながら平然と緑谷に攻めに行ってたのによ……」

 

峰田「いつの間にか防御に徹しちまってるよ」

 

爆豪「……」

 

 

 

緑谷「ぁあああっ!!」ボボボ…!

 

切島「ぅぉ…!」ガチガチ…

 

 

まだ硬度上げるか…体力化物かよ。

 

1発1発の威力はどーでもいい!とにかく連射し続けろ!!さすれば気弾(これ)も……

 

 

 

切島「っぁ゛からそいつは効かねぇって!!」ボォッ!!

 

切島(……おいおい)

 

 

切島「マジかよ…」ヒリヒリ…

 

 

 

必ず彼の芯に届き得る!!!

 

 

 

 

 

緑谷「うおおおっ!!」ボボボッ!!

 

切島「ぉっ……ぁあああ!?」

 

 

常闇「ガードが崩れた!?」

 

瀬呂「苦しんでる…モロ全部食らって今になって効き始めたのか?」

 

爆豪「あの野郎の個性は確か硬化だったな」

 

爆豪「試合中ずっと全身ガチガチに気張り続けたらそりゃどっかで綻ぶに決まってら」

 

爆豪「だから速攻で序盤にケリつけようとしてたのは懸命だったな」

 

 

 

 

 

無限に降り続ける気弾の雨がようやく収まった。高圧電流を流されたかのように激しく痺れる程彼の全身は傷ついていた。

 

気弾一撃一撃の威力はそれこそ小さかったものの当たった際に生じた小規模の爆発により僅かの間視界を封じられる。

 

切島(こ、こんにゃろ…耐え切ってや

 

ダダッ…

 

切島「…!」

 

 

 

緑谷「ジャン拳……」

 

切島(うっそだろ!?)

 

 

その一瞬…気を緩めた瞬間が僕にとって最大の好機(チャンス)だ!!!

 

 

 

 

爆豪「速攻だからって無闇に殴りゃ勝ちって訳じゃねぇだろ」

 

爆豪「見通し甘ぇよバーカ」

 

 

 

 

緑谷「グゥーッッ!!」ガッッ!!

 

切島「ぅおぁっ!?」

 

 

 

 

切島君の顔面に思い切り右拳をめり込ませる。感触はさっきよりかなり柔らかい。どうやら硬度を上げるのが間に合わなかったみたいだな…

 

 

首が右方へ回り、彼の身体が後ろへガクッと傾く。

 

マイク「FOOOO!?緑谷ダメ押しの超ストレート!これは決まりかーー!?」

 

切島「……っ…」

 

「す…凄かったな。あの硬ぇ奴」

 

「緑谷に血ィ流させやがった。1回戦時よか確実にダメージ与えとる!」

 

「やー期待を裏切るなぁ…よぅ頑張った!」

 

切島「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切島(ぁ…ぃてぇ……死ぬ程痛ぇ)

 

切島(結局こうなっちまったや……まぁ当然っちゃ当然だわな)

 

切島(客も驚かしてやれたし、麗日よりも善戦したっぽいし…これ位が上等かなぁ俺は)

 

切島(……でも…俺の時は緑谷)

 

切島(カイオウケン使おうとすらしてなかったな………)

 

 

 

 

 

 

 

(俺の1番の憧れはオールマイト……ではない)

 

(オールマイトやその世代よりも更に前に活躍していた1人のヒーローだ)

 

(決して個性は戦闘向けとも救助向けとも言えないモノだったが…)

 

(そんな()()()()()()ヒーローにガキの頃の俺はドップリとハマっていった)

 

 

 

 

『うぉぉぉ!カッキー〜!(クリムゾン)(ライ)(オッ)()ー!!』

 

『ジローはそれ本当好きだな』

 

『正悪平等パンチねぇ…なんというか暑苦しーつっかアレだよな』

 

『今時ねーよなぁ』ボソッ

 

『ぁぁ…なんかダセェし』ボソッ

 

 

(最初見た時は正直俺もそう思ったよ)

 

(つーか怖かった)

 

(睨み顔が通常だったし格好も荒々しくてヒーローてか暴走族に近かった)

 

 

 

 

 

(でもしばらくして気づいたよ)

 

(あぁ…これが本当に()()()()()()()()()なんだなって)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切島(……何やってんだ俺は…)

 

切島(自分で言ったじゃねぇか…緑谷(こいつ)に目にもの見せてやるって!)

 

切島(俺にも…お前を助けられる位の力があるって!)

 

切島(これで終わり…違う!ここからだろ!)

 

切島(ここで変わらなきゃ俺は……)

 

 

 

 

 

切島(漢じゃねえ!!)ガッ!!

 

 

 

倒れそうになるのを踵に全体重を乗せ、それを阻止する切島君。何とか態勢の立て直しに成功した。

 

 

緑谷(っぅおおっ!?)

 

緑谷(耐えたよ!?)

 

悟空「やべえ!?間合いどころかあれじゃ至近距離……!」

 

 

 

 

 

ズドッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

拳は身体の内深くまで突き刺さる。

 

今放ったのはただの正拳突き。どこからどう見てもその筈だった。

 

だが今までの拳打とは少々本質が異なる…いわば亜種なるものである。

 

 

 

その威力、まさに矢の如し…

 

 

 

緑谷「っ……」

 

緑谷「ぉばっ!?」ドバッ

 

麗日「デッ!?」

 

葉隠「吐血した!?」

 

爆豪「…野郎…」

 

 

緑谷(なっ……さっきとは…明らかに……っ)

 

 

切島(なぁ…おい……)

 

切島(お前にはちゃんと届いたか…俺の雄姿)

 

切島(緑谷よ………!!)

 

 

 

 

切島(観客(テメェら)全員!俺の姿!)

 

切島(目に焼き付けろ!!そして轟け!!)

 

切島(その名を心に刻み込め!!!)

 

 

 

 

 

切島「俺ァ!ヒーロー科1年A組8番!!切島鋭児郎だぁっ!!!」

 

ズドドドド……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





久方ぶりなのです…須井化なのです。結局あれから1週間経ってしもうた…申し訳ないでごわす。

まぁ今回は2ch版とかなり違っていますからねぇ…しゃーなろー!後番外編やってたし。

活動報告?何の話をしてるのだね君は(惚け)

切島殿も今回かなりの大出世ですね。いやそもそも出世させる為のUSJ編だったと言っても過言では無かったのですが。

ん?最後に出したのは一体何なのーだって?ホラ、アレだよアレ


フタエノキワミ、アッー!(´゚д゚`#)


的な…

本当は試合決着までやりたかったんですけどかなり字数食いそうだったのでやめました。多分切島サイド終わるまで3000字は使うかも……技の解説あるし。

(ただしぶっちゃけこんなに取り上げるつもりは無かったよ1週間前は……この技大分後に登場させる予定だったからなぁ)



次回はVS切島決着と準決勝第1試合…

果たして切島は主人公補正をぶち壊せるのか…やべぇよ、やべぇよ。

轟君に至ってはTAS版上鳴だからなぁ…

<ニャメロン!勝てる訳が無い!あいつは伝説の超アクセ○フォームなんだどー!

<トライ○ル!

それ555ちゃう…振り切る方や。
(相変わらずライ○ーネタを盛り込む水甜瓜氏…まぁヒーロー絡みのネタだから入れてるってのもあるのですが)

一体ベスト4最後の選手として選ばれるのは…?そして3回戦第1試合にて決勝に駒を進めるのは…?

お楽しみに!




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第34話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

準々決勝最終戦は緑谷少年と切島の少年の格闘対決。


切島少年の猛攻に苦しまれながらも弱点であるスタミナ切れを突き、1度は倒したかと思いきや…

更に向こうへ!PlusUltra!!!





会場中がどよめき、波紋を呼ぶ。

 

それ程までにこの試合に衝撃的な展開が巻き起こっていたのである。

 

下克上…まるで生命の危機に直面した小ぶりな蛇が突如本能的に精強な大蛇に進化したかのように…

 

虚弱な蛇が強壮な白虎を捕食するその瞬間を…

 

今まさに彼は目の当たりにしているのである。

 

 

 

 

 

 

切島「俺ァ!ヒーロー科1年A組8番!!切島鋭児郎だぁっ!!!」

 

 

ズドドドド……!

 

緑谷「ぅっ…ぁ゛ぁ゛!?」ドバッ…

 

マイク「ここでまさかの超どんでん返し!?緑谷が切島のペースを崩したかと思いきや…」

 

マイク「更に戦況が傾いてしまったぁぁっ!?」

 

 

13号「この土壇場で追い込み!?」

 

スナイプ「おいおい…さっきまで内臓エグって致命傷出させる程の威力は無かった筈だろ?」

 

スナイプ「今になってなんで…」

 

オールマイト「…拳…」

 

スナイプ「?」

 

13号「手がどうしたんですか?」

 

オールマイト「ここからでは微かにしか見えんが…切島少年の握り拳の形を良く見てみな」

 

13号「え……別に特別形が変………」

 

 

それを言ったきり、13号の言葉はぷつりと途切れた。恐らくこの時点で切島君の変化に気づき彼と同じように唖然とする者も居たたろう。

 

先程までの拳打と今打ち込んでいる拳打の決定的な相違点…それは……

 

 

スナイプ「………なんで…あいつ……」

 

スナイプ「()2()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

通常、正拳突きというのは握り方が多少違えど相手の身体にぶつけるのは手の第2関節から第3関節の間の部分である。

 

何故ならこの方法が相手により大きなダメージが与えられ、尚且つ当たった時の自分の拳の衝撃を最小限に抑えられる為だ。

 

だが触れた時の手の表面積が広ければ広い程、相手に与える総ダメージが大きくとも一部のダメージが広範囲に拡散し、思った通りの威力は出す事ができない。

 

一方切島君が打ち込んだパンチは第2関節のみが相手に当たるように拳が握られている。

 

そうする事によって触れる表面積は小さくなり周りに拡散する事なくピンポイントに大ダメージを通す事が出来るのだ。

 

 

13号「ま、待ってください…確かに当たる表面積とその攻撃の威力は反比例するかもしれませんが…」

 

13号「あんな強硬な身体に関節のみを集中してしまえば骨なんて当たった瞬間砕け…」

 

オールマイト「()()()()()()()だよ」

 

13号「え…」

 

オールマイト「硬化が使える切島少年だからこそ…」

 

オールマイト「あんな無茶な戦い方が彼にとって理にかなっている戦法なんだ…!!」

 

 

だが勿論、それを理解した上でも満身創痍の状態で急に攻撃の威力が格段に上がる訳など無いと観客は思いこんでいた。

 

それもその筈。これはあくまで体力がほぼ使い切って放っているパンチ。対してさっきはほぼ体力全快でガチガチに固めて打っていた攻撃だった。

 

いくらなんでも倍以上の威力が出る訳が無いのだ。常識的に考えればそうである。

 

 

 

 

ならば…逆に非常識に考えてみればどうだろうか,

 

例えば彼が……この死闘の最中無意識にパワーアップしていたとすれば?

 

果たしてそんな事があり得るのだろうか……

 

 

 

悟空「…」プルプル

 

マイク「ど…どしたカカロット…武者震いか?」

 

 

悟空「マッジかよっ…」

 

 

風向きが変わっても尚、彼は笑みを崩す事は無かった。

 

しかしマイクが見たのはとても喜びや快さを表す笑顔とは遠くかけ離れていた。

 

口の端を吊り上げ、眉毛は内側から外側へかけ下がり気味となり冷や汗をかいている。

 

 

 

悟空(……切島の奴……)

 

悟空(まだ気功波も撃ててすらいねぇのに)

 

悟空(いつの間に()()()()ができてんだよ…)

 

 

 

 

 

 

【気】…これは体内にある全エネルギーの総称を指す。

 

動物・植物…この世に生きる者であれば誰もが持つものであり、裏を返せば気がない者は少なくとも既に現世には魂が残っていないだろう。あ、機械生命体は除くらしい。

 

気というのはその生命の全エネルギーを表す…いわば象徴のようなもので体力が減ったり身体が傷つけば気は小さくなるし、体力が回復したり怪我等が治れば気も大きくなり元の状態に戻る。

 

だが気が全快の時から突然ふっと膨れ上がる事は無く、大きくする為には地道に鍛えて少しずつ強くなる他ないだろう。それでも多少の誤差範囲に過ぎないが…

 

 

 

しかし…全ての生物には普段纏っていない秘められたエネルギーが存在する。

 

そのリミッターを解除するのがこの気の集中・開放の技術である。

 

身体の一点に全エネルギー(仮)を集中させ、攻撃の際戦闘力を瞬間的に上げるのを【気の集中】、その集中した気を爆発させ、それと全く同量のエネルギーを全身に満遍なく張り巡らせるのを【気の開放】という。

 

いつも僕が放っている気功波というのは体内の気を具現化し、外に放出させる…いわゆる気の集中のファーストステップ。

 

これが上達すればかめはめ波の時のような溜めなしで攻撃・防御の際瞬時に気を集中させ、通常の2、3倍の戦闘力は出せると言われている。まぁ気の開放を習得しない限り、その瞬間にしか戦闘力は上がらないよって話だが。

 

 

 

 

 

それを今、奇しくも切島君が体現してしまっているのである。

 

 

悟空(なんてこった…信じられねぇが確かに攻撃の時、一瞬気が膨れ上がった!)

 

悟空(気を知ってんならともかく何の知識もねぇ奴がいきなり使うなんて見た事ねぇぞ…!?)

 

悟空(八百万や爆豪は特にずば抜けて気を操るセンスはあると見込んではいたけど…)

 

 

悟空(緑谷との戦いでいち早く切島がその潜在能力を発揮しやがった…!?)

 

 

無論全ての打撃がこの気の一点集中に成功している訳では無い。そもそも気の概念すら触れていない切島君がこの技の正体を理解できる筈も無く、その時点でこの技術を応用するのは不可能なのだ。

 

そう…()()()()()()……だが。

 

 

 

 

ズドドド…!

 

緑谷「ぐっぅ゛…!?」

 

緑谷「………」ドドド…

 

 

 

実質の詰みに追い込んだ途端に…この反撃だ。何とか応戦しようにもさっきの一撃が相当入ったのか中々ガードが固まらない。

 

切島君の急激な攻撃力の変化に僕は動揺はとても隠せずにはいれなかったが、それと同時に彼に対して素朴な疑問を抱いた。

 

 

1発1発の威力の変動が激しすぎるのだ。

 

先程のように遥かに高い破壊力を誇る正拳もあれば、中には先の一撃どころか今まで放っていた打撃より威力が著しく低下しているものも存在した。

 

今の技術(わざ)を完全にモノにできずとも、1度きっかけを掴めればその時の感覚が身体に直に刻み込まれる。

 

そして自ずと身体がその主に教えてくれるのだ…勝利への道しるべを。

 

彼の勝利の執念故に切島くんにこそ成せた技と言うべきか…或いは偶然の産物というべきか……

 

 

何にせよこの現状を見る限り僕に理解できる事はただ一つ。

 

切島君はこの試合の中で飛躍的な成長を遂げているという事だ…!

 

 

この恐ろしい所は彼が今、現在進行形で進化している事。ポテンシャルというのは心にも左右されやすく、気まぐれ一つでその才能を開花させる事がある。

 

この状況を打破する方法自体は簡単だ。まだ不完全な技ならば相手の様子を伺って拳打の本命か否かを見極めればいいだけの事なのだ。

 

だがその識別している時間が長くなるにつれ、本命の割合が増えていき終いにはワザを完全に会得してしまう。

 

もういっそ界王拳を使いたいのだが…ここまででかなりダメージを負ってしまってる。この後治癒する事を考えると結構な体力を削る事となる。

 

界王拳を多用する事自体が命取りという訳だが…

 

 

緑谷(出し惜しみしてたのが裏目に出ちまったよ…畜生……!)

 

緑谷「ぐ…ぉばっ!?」

 

何度も内臓が無理やり圧縮され、多量の血を吐いてしまう。いってぇぇ…多分コレ相当痣できてるぞ……

 

開始直前まで漂っていた軽視ムードが急変、誰も見向きをしなかったこの試合が一気に注目の的となる。

 

「攻防戦があっという間に一方的に……」

 

「み、緑谷ってやつすげえ強かったんじゃねぇのかよ!?」

 

「違う…私達が相手(切島)の方を見誤ってたのよ!」

 

「彼の異常なまでのタフネス、そして隠れ持つ天性が僅かながら緑谷を上回った…!」

 

 

 

「切島鋭児郎…1年の中でも優勝候補に選ばれるに相応しい強さを持ったヒーロー予備軍よ!」

 

 

 

皆、善戦を繰り広げる切島君に少しずつ感化されてきているのだ。彼に無関心だった客は試合が進むにつれ威容に興味が表れ始めていた。

 

 

 

「すげぇ…すげぇよあいつ」

 

()()()()()じゃねーか!」

 

鉄哲「……っ……」

 

 

 

 

ガタッ

 

塩崎「鉄哲…さん?」

 

 

鉄哲「……ぃぃ切島ぁああああっ!!!」

 

鉄哲「やぁれええええっっ!!」

 

 

 

じっとしていられず椅子から立ち上がり、鉄哲君がステージに向かって大きく叫び出す。彼の声援に続いて会場全体が次々と熱狂で溢れかえっていった、

 

「がんばれぇぇ!硬いのー!」

 

「切島ぁ!ファイトォ!」

 

ワァァァア…

 

 

 

切島(皆…俺の名前を歓呼している……)

 

切島(そうだ、それでいい。これが俺のベストシチュエーション!)

 

 

切島(もっとだ…もっと俺を熱くしろ…っ!!)ドドドド…!

 

 

緑谷「…!?」

 

ここに来て切島君の連打の速度が更に増してきた。真偽の差がつかない…全てに圧が込められている!

 

マイク「防戦一方どころか、最早ガードも崩れかけ防御もままならない状況だぁぁ!」

 

マイク「緑谷出久なす術無しかぁー!?」

 

切島「うらぁぁっ!!!」ゴオッ

 

緑谷「…!」

 

 

 

燃え盛る熱気は、肉体を熱くし…その血をたぎらせる。屈強な精神と鋼の身体…それらが何倍にも増幅し

 

 

彼を勝利へと誘う。

 

 

 

 

 

 

ズドォオッ!!!

 

 

 

マイク「…………」

 

悟空「……あいつ……」

 

 

 

大歓声が始まったかと思うや否や程なくして再び沈黙の空気が流れ出す。

 

 

麗日「ぅ…っぉお…」

 

爆豪「………あのバカ…」

 

 

かっちゃんが唐突に放った【バカ】という言葉…それは誰に向けて言ったものなのか…

 

 

 

 

 

 

 

ズキッ…

 

切島「…っ痛……」

 

緑谷「はぁ…はぁ…」ボボボ…

 

 

 

 

油断など微塵もしていなかった。決して大蛇は締め付けを緩めようとはしていなかった。そんな彼に死角などある筈が無かった…

 

しかし…だからこそその時に生じた焦りがこの試合の勝敗を決定的にした。

 

 

一見僕の周りに纏っている派手な紅いオーラに気を取られがちであるが、切島君の方に目を向けてみよう。

 

彼の左脚が地面から離れているのだ。

恐らく切島君自身も今の攻撃のメカニズムをなんとなく理解してきてはいたのだろう。()()()()()()()()()()()()()()のはその証拠だ。

 

だがそれ故に下半身にまでは注意が行き届かなかっだのだ。彼が出した攻撃は全てパンチ…逆に脚の方は全くの無防備状態だった訳だ。その事にさっきようやく気付いた僕は咄嗟に彼の左脚に蹴りを入れ込んだ。界王拳使ってね。

 

無論それでもさっきの正拳が使いこなせるようになれば速攻で倒しに行くという手も無かった……いや、切島君はその手の考えだっただろう。

 

 

 

常闇「…緑谷の方を見てみろ」

 

芦戸「あ、カイオーケン使ってる」

 

常闇「それもあるが…問題は奴の身体だ」

 

蛙吹「……あれだけ打たれた割には痣の数が少ないわね」

 

砂藤「って事はつまり…切島の攻撃力が著しく低下しているって事か?」

 

麗日「………」

 

 

1回戦、同じような末路を歩んだ麗日さんが1番彼の状況を理解していた。

 

長時間気張り続けた事により、切島君にはもう並の威力の拳打を打てるエネルギーすら残って無かったのだ。

 

左脚が後ろに反れ、身体が前へ傾く。

 

切島(た、おれ…!?)ググッ…

 

何とか右脚て踏ん張り態勢を立て直そうとする。

 

 

 

見逃す訳無ぇだろそんな隙!!

 

 

 

バヂィッッ!!

 

 

 

 

鋭い衝撃音が発生すると共に切島君が上空へ高く吹っ飛んでいく。

 

 

 

緑谷「威力2倍の…ジャン拳パーだ…!」

 

 

 

ズドォ!!

 

 

間もなくして切島君は急降下。勢いよく地面に衝突して、そのまま倒れ込む。

 

決着は着いたかに見えたがそれでも僕は戦闘態勢を崩さず構えていた。1回戦あんな極限状態の中でも立ち上がった底無しのタフネスだ。いくら界王拳を使っていたからと言って今ので倒れるとは限らんぞ……

 

緑谷「……」ボボボ…

 

 

 

ググッ…

 

切島「っぉ…」スクッ

 

 

盛大にジャン拳を食らった顎を押さえながらゆっくり立ち上がる。フラフラとよろめいている所を見る限り、こうかはばつぐんと言った所か。界王拳2倍の攻撃をモロに受けて尚立たれるだけでもこちらとしては大分ショックだけど…

 

その打たれ強さはかっちゃんと同等かそれ以上か。

 

緑谷(いっそ3倍にでも上げなきゃ気が済まなさそうだな…おい)

 

僕は両手をググッと握り締め、褌を締め直す。相手は切島君だ…ちょっとやそっとの攻撃じゃ倒れないとは思っていたがここまでタフとは…

 

 

リスク云々の話してる場合じゃねぇだろ。僕自身も腹括らねばならんぞこりゃ…

 

 

身体の周りに纏っているオーラは大きくなり、荒々しく迸る。倍数上げて第2ラウンド開

ドサッ

 

 

 

緑谷「……え?」ボボボ…

 

 

 

切島「悪り…ギブだわ俺」

 

ミッドナイト「…切島君降参。緑谷君3回戦進出!」

 

ワァァァア…

 

 

 

 

地面に臀部を打った彼から放たれた最後の言葉は、敗北宣言(ギブアップ)であった。

 

あそこまで粘ったにも関わらず、やけに諦めよく降参しあっけなく2回戦最終試合は幕を閉じた。

 

とは言ってもほとんどの観客にとっては結果こそ見れば想定内だったものの。終始予想をはるかに覆す試合内容だった模様。

 

個々の感想は違えど、恐らく彼の葛藤はこの試合を見た全ての観客に【切島鋭児郎という漢に対する評価】に大きな変化をもたらしたのは確かだろう。

 

それは生徒も然り、教師も然り。

 

瀬呂「あらら〜惜しかったなぁおい!」

 

砂藤「多分俺ら生徒で界王拳の攻撃まともに

食らったの切島が初めてだからな…」

 

砂藤「流石にあのタフネスでも応えたか…()()()()だけでもそりゃ賞賛に値するんだがよ」

 

麗日「……凄い…切島君」

 

麗日「ウチよりかなり善戦してた感じだぁ…!」

 

麗日「かっこよかったよね!透ちゃ…」

 

葉隠「……」

 

爆豪「…」プルプル…

 

麗日「えと……」

 

麗日「どしたん?2人共」

 

 

 

葉隠さんの表情はとても嬉しそうなものとも悲しそうなものとも感じられなかった。

 

彼女自身、結果は明白だったし僕にある程度の期待は抱いていたと言う。

 

だがその頭の片隅には【切島君に勝ってほしい】という密かな気持ちもあった。それは中学の頃から他の誰よりも切島君の様子を多く見てきた事がある彼女だからこそ感じられたものだろう。

 

 

一方でかっちゃんは両手を強く握り締めて、プルプル震わせながらただただ俯くだけだった。

 

自分ならばあそこまでやれたのか?自分が切島と当たったら果たして勝てていたのか?

 

もとより彼も僕の勝利を確信していたが今回の試合の大きな展開で最も衝撃的に感じたのは多分かっちゃんなのではなかろうか…

 

 

爆豪(クソッ…クソクソッ!!)

 

爆豪(切島も…轟も…っ!)

 

爆豪(あの野郎共(A組)…全員俺の予想以上に一皮も二皮も剥けやがって!!)

 

爆豪(っんだよ…これじゃ……)

 

 

爆豪「これじゃ俺が弱ぇみてぇじゃねぇかよ…!」

 

 

 

芦戸「そいえば次、上鳴の番じゃないの?早めに行っといた方が…」

 

芦戸「でぃだっ!?」バチッ

 

青山「な、何だい!?今確かに全身に何かしらの衝撃が……」

 

峰田「静かにしとけ」

 

蛙吹「あら…急に改まってどうしたの?峰田ちゃ…………」

 

 

 

 

上鳴「はぁ〜っ…面倒くせぇ面倒くせ…」バチバチ…

 

上鳴「ちょっくら行ってきますか」スタスタ……

 

蛙吹「……あらあら」

 

峰田「何だよおい…今の見て滾っちまったってか?」

 

峰田「あんな殺る気満々の顔初めて見たぜ…」

 

 

 

 

円場「むぅ…どっちが勝つにしろA組だったからどーでも良かったんだが」

 

円場「やっぱし緑谷の圧勝かよ〜」

 

 

A組だけでなくB組でも今の試合の話題で持ちきりだった。落胆している円場君に塩崎さんがさりげなく話しかける。

 

 

塩崎「今のは圧勝…では無いのではないでしょうか」

 

塩崎「実際切島君の猛攻で彼、危ない場面はいくつもありましたし」

 

円場「おいおい…あいつの情報何も知らねーのか?」

 

 

塩崎さんの発言にため息をついて、呆れながら返事をする円場君。

 

 

円場「あの野郎が今出した界王拳…ビームやら空を飛ぶやらただでさえ超人じみたチート能力者だけどよ」

 

円場「あれ、単純に使う倍率だけパワーとかスピードが上がったりするっぽいよ」

 

塩崎「え!?ではさっき言った2倍…というのは?」

 

円場「多分戦闘力が2倍になったんじゃね?」

 

塩崎「な…そんな武術があるのですか……?」

 

円場「こっちの方が聞きてぇよ」

 

円場「しかも聞いたところそいつは最大で4倍まで使ってたとか何とかだと」

 

円場「とどのつまり、あいつはまだ本領発揮なんかしてねぇってこった」

 

円場「こんな化け物に果たして拳藤が勝てるかっつぅと…いくらクラスメイト補正つきでも俺にはとても応援できねぇよ」

 

円場「あれだけ切島が奮闘した結果がこのザマじゃ…むしろ同情するぜ」

 

 

次々とまくしたてる円場君に思わず息をのむ塩崎さんだったが、だが彼の発言に懐疑する者も少なからずいた。

 

突然物間君が彼らの話に割り込んでくる。

 

 

物間「…何だよ。随分A組の肩を持つな、円場」

 

円場「持つっ…つったってよ」

 

円場「お前も見たろ?あいつらの実力」

 

円場「ただでさえトーナメント進出できんかった爆豪相手に惨敗だったんだぜ?俺達ァ」

 

円場「今更言うのも馬鹿らしいけどよ…とんでもない奴らに喧嘩売っちまったなと」

 

円場「あんなん同期でできる差とは思えねぇよ」

 

物間「………あのさ、円場」

 

物間「なんで僕があれだけ本選で拳藤の存在を危惧してたのか分かるか?」

 

円場「あ?」

 

円場「………」

 

円場「お前が拳藤の事g

物間「お前一片死ね」

 

塩崎「???」

 

物間「…拳藤はさ、良くも悪くもいつもいい加減なんだよ」

 

物間「訓練の時だろうが何だろうが、彼女はヘラヘラ笑いながら課せられた任務も難なくこなしてる」

 

物間「つかみどころが無いというか…なんというか」

 

円場「…何が言いてんだよ」

 

物間「お前は拳藤の()()を見た事があるのか?」

 

円場「……」

 

物間「銃弾を避けるだけのスピードが出せるなんて知ってたか?違うだろ」

 

物間「一度でも拳法をかじってるなんて台詞聞いた事があるか?無いだろ」

 

物間「僕達は今まで()()()()で拳藤に相手をされてたんだよ」

 

円場「あいつがそれだけ奮起してここ2週間で大分成長したって事じゃねーの?」

 

円場「なんで拳藤が今まで舐めプしてたなんて断言できんだよ」

 

物間「あのなぁ…円場」

 

物間「お前こそ情報網が狭いんじゃないのか?」

 

物間「拳藤がここの入試でどんな成績だったのか知らないのか?」

 

円場「はぁ?」

 

 

 

 

 

物間「筆記は合格最低点にドンピシャ。挙句実技は38P…35位の奴の成績より1Pだけ少ない結果になってる」

 

円場「………偶然じゃねぇのか?それ」

 

物間「もし最下位の奴と実技の成績が同じ38Pじゃ筆記の成績と比較された場合おじゃんだろ」

 

物間「まるでそう…最初から、最低でどの位のPを取れば合格できるかを知っていたみたいな……」

 

円場「んなアホな!受験生全員が1フロアで試験やっていたならまだしも何グループにも分かれてやったんだぞ?」

 

円場「あり得ねー!!」

 

物間「だからって偶然にしちゃ出来過ぎな成績だろ…とは言え、確かに普通に考えれば絶対に起こる訳がない事態なんだが」

 

円場「じゃあ一体何だって言んだよ…お前は」

 

物間「そんな事分かってたら苦労はしないさ。僕だって知りたい」

 

物間「だからこそだ…」

 

 

 

物間「…だからこそ、怖いんだ」

 

物間「常に何を考えているのか全く読めやしない…得体が知れないんだよ」

 

円場「……得体の知れない…ねぇ」

 

物間「今だってそうだ。3回戦まで大分時間があるってのに一向に戻ってくる気配が無い」

 

物間「試合も見れない程の用事があったのか…或いは()()()()()()()()()…」

 

物間「……ま、結果的に僕が言いたいのは」

 

物間「ベスト8進出者を相手に深傷を負われるようじゃまだ無傷の拳藤に勝てる訳が無いだろって話だよ」

 

塩崎「……」

 

 

 

塩崎(結局の所どちらもまだ全力を出していない以上、容易に予測できない試合内容となりそうですが…)

 

塩崎(勝敗の行方は神のみぞ知る…と言った所でしょうか?)

 

塩崎(…それにしても……)

 

塩崎「急にいなくなりましたが、鉄哲さんは一体どこへ…?」

 

 

 

 

 

こうして4戦に渡る本戦トーナメント3回戦は無事終了した。

 

幾多もの観客の胸を熱くしてきた雄英体育祭もとうとう準決勝戦2試合、決勝戦の1試合を残すのみとなった。

 

 

 

マイク「ヘイ!リスナー!いよいよこの体育祭も大詰めだ!!」

 

マイク「大波乱の準々決勝も全て決着し、遂にベスト4が出揃った!」

 

マイク「No.2ヒーロー【エンデヴァー】の実の息子!その肩書きに恥じぬクール&ホットヒーロー!」

 

マイク「轟焦凍ーーっ!!」

 

マイク「対するは1年の中でも随一の速さの持ち主!本戦から急激に株を上げてきたビリビリ野郎!!」

 

マイク「上鳴電気ーーっ!!!」

 

マイク「本戦から目立ってきたと言えばこいつも忘れちゃならねぇ!唯一B組で準決勝まで勝ち上がってきたこの少女!」

 

マイク「拳藤一佳ーーっ!!!!」

 

マイク「そして大トリを飾るのが我らが大本命!!緑谷出久DAAA!!!!!」

 

マイク「予想を外し、尚期待を裏切らない!この怒涛の進撃を果たして3人は止める事は出来るのか!?」

 

マイク「こりゃもう誰が優勝するか見当もつかないんじゃねーの?カカロット!」

 

悟空「……そうだな…確かに」

 

悟空「()()()が勝っても…おかしくねぇ戦況だ」

 

マイク「…え?」

 

相澤<……

 

 

 

 

 

 

マイクによる3回戦開始時刻の告知アナウンスが流れる中、入場口近くの廊下で立ちすくむ生徒が居た。

 

生徒は放送を聞き終えると同時に右拳を壁に思い切り叩きつける。

 

ドッ!!

 

 

 

「はぁ…はぁ……」

 

スタスタ…

 

「…?」

 

鉄哲「…おーおー」

 

鉄哲「どこにいるかと思ったらまだこんな所に居たのかよ」

 

鉄哲「情けねぇ面して戻ってきやがってよぉ。エリート様と存分に戦えた気分はどうだよ?」

 

 

 

 

 

 

鉄哲「切島」

 

切島「……誰かと思えばおめーかよ」

 

 

つい先程まで猛火の如く満ち溢れていた闘志も試合の敗北と共に燃え尽きてしまったのか、彼の悲愴な顔つきからは最早その面影すら見られなかった。

 

鉄哲君が目にしたのは、全身から覇気がすっぽり抜けだした弱々しい切島君の姿であった。

 

 

切島「感想?ぁぁ、最悪だよ。胸糞悪りぃ」

 

切島「あれだけ出しきっといて結局緑谷(あいつ)の本気出させずに終わっちまったからな」

 

切島「完敗だよ、今回も」

 

鉄哲「…」

 

鉄哲君は淡々と話し続ける切島君に少しずつ近づいていく。

 

切島「いやぁ…こりゃ鍛錬不足だな」

 

切島「もうちっと特訓気合い入れねぇとなぁ」

 

鉄哲「……ぉぃ」スタスタ…

 

切島「惜しいとこまでは行ったと思ったんだけどよ」

 

切島「何せ全身痺れるくらい酷使しちまってたからなぁ…参るぜ」

 

鉄哲「おい…」スタスタ…

 

切島「すまねぇな…お前から必死こいてもぎ取った一勝だったってのにな」

 

切島「……無駄にしちま

ガッ!

 

 

 

突然、近寄ってきた鉄哲君が切島君の顔面を思い切り殴りつける。

 

壁に強く衝突し、その衝撃で痛む傷を手で押さえながら切島君は殴りかかってきた彼を睨みつける。

 

切島「何してんだよ…っ!こちと」

 

そう言いかけた途端、鉄哲君が切島君の胸ぐらに強く掴みかかってきた。強引に引っ張られ首を痛めながらも話し続ける切島君。

 

 

切島「ってぇ…な…何を……」

 

 

鉄哲「ふざけんなよ…おい」

 

鉄哲「てめぇの武勇伝なんざ今はどうでもいいんだよ!」

 

切島「は…?じゃ一体何を……」

 

 

持ち上げている切島君の身体を激しく揺らしながら彼はこう言い放った。

 

鉄哲「なんでぇ…」

 

 

 

鉄哲「……なんで棄権したんだよ!!切島ァ!」

 

鉄哲「お前1回戦の最後、酷使して動かねぇ足腰を無理やり立たせたから勝てたんだろうが!!」

 

鉄哲「さっきギブした時だって、本当はまだ戦える気力は残ってた筈だろ!?」

 

鉄哲「なんであんな中途半端な結果で終わらせた!?」

 

鉄哲「なんで最後まで戦おうとしなかった!?」

 

鉄哲「なんでなんで…なんでだよっ!!」ググッ

 

服を握る力を徐々に強めていく。更に持ち上げる高さも段々高くなっていき、息が苦しくなる。

 

切島「っ……」

 

鉄哲「何だァ!?B組程度の雑魚には負けんのは死んでも御免だが、緑谷なら強ぇし仕方ねえと自己満で妥協でもしてたんか!?」

 

鉄哲「どうなんだっつってんだよ!!」

 

切島「……………」

 

 

 

髪を逆立てて、怒りを露わにする鉄哲君に切島君はボソッと呟き質問に返答した。

 

 

 

 

切島「……何も知らねぇくせに偉そうな事言うんじゃねぇよ…」

 

 

 

鉄哲「………は?」

 

 

彼の答えに一瞬頭をよぎってしまう。

 

自分が理解できないから聞いてるのであってそれを【分からない癖に】と難癖をつけられても本末転倒な話なのである。

 

訳も分からず鉄哲君の怒りは更に増していく。

 

 

鉄哲「知らねぇからテメェに聞いてるんだってんだろ!?」

 

鉄哲「意味わかんねーな本当!!」

 

切島「あー…悪い悪い」

 

切島「確かにこれじゃただ言い訳してるようにしか聞こえねーわな」

 

切島「でも実際、俺はおめーが凄く羨ましかった」

 

鉄哲「はぁ!?さっきからグダグダと長く駄弁りやがってよ!!」ググッ…

 

鉄哲「言いてぇ事があんならはっきり言え!漢だろが!!」

 

切島「…………あの時、もしお前が勝っていたら…」

 

切島「俺よりも緑谷に勝つ可能性は高かっただろうよ」

 

鉄哲「…?」

 

切島「俺が棄権したのは別に疲れたからとか、どうでも良くなったとかそういう訳じゃねぇよ」

 

切島「あの時点で既に……」

 

 

 

切島「棄権する前にもう俺は緑谷に負けてたんだからよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷『だぁああっ!!』

 

脳無『ッッッ!!!』

 

ズドドドドッ…

 

 

(入学式の日から、あいつからとてつもない異臭が漂っていた)

 

(何か、こう……こいつは他の奴よりもスゲェ才能がある…みたいな)

 

(胡散臭いなぁ…程度にしか思ってなかった)

 

 

 

(いや、おかしいだろ…何だよその姿)

 

(テレビでプロヒーローの活躍を遠くから眺めるのとは全く違う感覚だった)

 

(間近でだからこそ、身体(リアル)に感じ得た鬼のような気迫、威圧感、激情…)

 

(胡散臭ぇ?そんなレベルの話じゃねぇよ…本当に学生でたどり着ける次元の強さなのか?ありゃ…)

 

 

(あいつの烈烈たる闘姿からは圧巻どころか、恐怖…狂気すら感じていた)

 

 

 

『すげぇ…すげぇよあいつ』

 

()()()()()じゃねーか!』

 

 

『がんばれぇぇ!硬いのー!』

 

『切島ぁ!ファイトォ!』

 

ワァァァア…

 

 

 

(俺は内心ほくそ笑んだ)

 

(俺は今お前と同じ土俵に立ってるんだって)

 

(俺はようやく、お前と対等に渡り合ってるんだって)

 

(それだけで滅茶苦茶嬉しかったんだよ)

 

(どうだよ?お前も俺の事はちったぁ……)

 

 

 

緑谷『はぁ…ハァ…ッ!!』

 

 

切島『……っ!…』

 

 

 

(ギラついたその鋭い眼つき、血が出る程まで食いしばったそのボロボロな歯、ピリピリと震わせるその眉毛)

 

(完全に()()()の表情と一致していた)

 

(なんでだよ…脳無に比べりゃ俺なんて屁でもねぇのになんでそんな必死になっ………)

 

 

 

 

 

 

切島「その時に、もう勝負はついていた」

 

切島「最初から俺は緑谷に勝つ気なんて全く無かったんだよ」

 

切島「俺ァ…ただ緑谷と張り合いたかっただけなんだ」

 

切島「【緑谷は俺より圧倒的に強い】…その固定観念にまんまと惑わされちまって」

 

切島「ずっと俺はこの試合は負けるって決めつけてた…」

 

鉄哲「……」

 

切島「…緑谷はどんなに簡単な問題でも手を抜かねぇで全力で挑んでる」

 

切島「当たり前…だよな」

 

切島「その当たり前の事すら俺は出来なかった」

 

切島「負けても平然として【仕方ねえ】、【相手が強過ぎただけ】って…」

 

切島「それ所か…【予想以上に奮闘できた】とか、【俺は強くなった】なんて不確かな自分の成長だけ喜んで」

 

切島「結果は惨敗だったのに…試合自体には満足しちまってる」

 

 

 

 

ポタポタ…

 

 

切島「悔しいよ…」

 

切島「悔しいって…そう思えねぇ自分が……」

 

切島「超辛ぇよ!!」

 

 

 

切島君は高ぶる感情を抑えられず、思わず涙ぐむ。涙が垂れてしまった事に気付き焦って右腕で目を擦るが、拭き取るどころか更に興奮してしまい目から涙が溢れ出てきた。

 

 

切島「っの…畜生!」ゴシゴシ…

 

切島「くそっっ!!クソッ!くソっ!!クッッッそッ!!」

 

切島「はぁ…はっ…!」

 

鉄哲「……じゃあ何だよ」

 

鉄哲「次は負けても【悔しい】…そう思えられりゃお前は万々歳だってのかよ」

 

切島「…」ゴシゴシ…

 

切島「いい訳ねぇだろ」

 

切島「負けっぱなしは御免だな。あいつに作られた()()だって山程あんよ」

 

切島「今回は心技体…全てにおいで完敗だった」

 

切島「鍛えて鍛えて鍛えまくって…今よりもっと強くなってやるよ」

 

切島「精神も、肉体も…全部丸ごと限界を何度もぶち抜いてやらぁ」

 

 

 

 

 

切島「その()()()()緑谷を抜かしてやるだけよ」

 

切島「目標なんて最初から存在しなかった。今回の体育祭でようやく分かったよ」

 

切島「俺は()()()()()()を目指す。ただそれだけだ」ポンッ

 

 

彼は笑いながらそう言うと、鉄哲君の右肩に右手を静かに乗せすぐその場を離れていく。

 

鉄哲君は以前より何倍も大きく見えたその背中を確認し、ようやく一安心する。

 

 

 

鉄哲「…何でぃ…肝が座ってんじゃねぇか」

 

鉄哲「漢だねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

チュゥゥ…

 

 

 

緑谷「ぅぉっ…」スポッ

 

リカバリーガール「はいよ。とりあえずこれで治癒終了さね」

 

緑谷「ありがとうございます…」

 

 

流石にこの傷だらけの身体で3回戦に挑むのは辛いので、いつもの事ながら接吻タイム。今でもまだ慣れないんだよなぁ…これ。

 

効果音が生々しいというか…皮膚吸ってからのスポて……

 

リカバリーガール「打撲数か所…か」

 

リカバリーガール「あんたにしちゃ珍しくないかい?こんな傷負って帰ってくんのは」

 

緑谷「そ、そうですかね」

 

リカバリーガール「相当切島の攻撃が応えたみたいだねぇ」

 

リカバリーガール「これまでにあんたが来たのって対人戦闘とUSJの時位だと思うけど」

 

リカバリーガール「爆豪と闘り合った時はそんなに怪我は多くなかったような…」

 

まぁそもそも食らった数が文字通り桁違いだったからなぁ…あの時受けたのは4、5発程度だったし。

 

あ、かっちゃんと言えば…

 

緑谷「そういえば爆豪君は…」

 

リカバリーガール「確かあんたの試合が始まった直後にここから出てった筈だよ」

 

リカバリーガール「多分緑谷と切島の試合は見てたんじゃないのかねぇ」

 

緑谷「そうですか…なら良かった」

 

緑谷「あ、後それから…」

 

リカバリーガール「八百万でしょ?まだ眠ったままだよ」

 

リカバリーガール「あの娘の傷相当深かったし」

 

なんと喋り終わる前に僕の用件を言い当ててしまった。何故僕が八百万さんの容態を聞きたいって分かったんだ…?

 

リカバリーガール「…いや、さ。さっきまであの娘頭痛があったのか唸っててねぇ」

 

リカバリーガール「緑谷(あんた)の名前声に出して…それこそ助けを求めるみたいにね」

 

クスクスと薄笑いをしながらリカバリーガールは僕に説明する。いや…なんで笑ってんのアンタ…

 

リカバリーガール「意識無くなる寸前まで委員長の事を考えていたなんてねぇ…」

 

リカバリーガール「随分と良い信頼関係が築けてるじゃあないかい」

 

緑谷「…信頼関係…?」

 

リカバリーガール「…というかさぁ……」

 

リカバリーガール「もしかして緑谷、八百万と付き合ってたりとかは」

 

緑谷「そ、そそそそそんな滅相な!断じて違います!違いますから!!あり得ません!」

 

首を激しく横に振りながら必死に否定し続ける。興奮して露骨に顔を赤くしてるから尚のこと怪しく思われるんだなこれが…

 

突然何を言い出すんだリカバリーガール…まだ知り合ってから1ヶ月弱しか経ってないんだぞ!?いや確かに入試前にバッタリ会ったのもカウントするとざっと半年ぐらいは経ちますけれど!

 

リカバリーガール「どうだか…疑わしいねぇ」

 

リカバリーガール「それにしてもすぐ照れちゃって…」

 

リカバリーガール「ピュアだねあんた」

 

褒め言葉として受け取っておきますよ…一応。

 

緑谷「と、兎に角!僕この後またすぐ試合控えてるんで!お邪魔しました!」

 

コレ以上の長居は禁物だと判断した僕は座っていた丸椅子から立ち上がり、早歩きて出口へ向かった。

 

ペコっとお辞儀を済ませると粗暴にドアを開けて焦って保健室から去っていった。

 

リカバリーガール「あらら…どさくさに紛れて逃げちゃって」

 

リカバリーガール「これまた興味深いネタができたねぇ…ふふ」

 

リカバリーガール「それにしても重傷の方の切島はどこで道草食っているのやら…」

 

 

 

 

 

 

緑谷「…ふー…危ない危ない」

 

緑谷「全く、いきなり何を言い出すかと思ったら……」

 

緑谷「あんな事言われちゃ恥ずかしくて居ても立ってもいられないよ」

 

リカバリーガールのお茶目っぷりに少々落胆しながらも控え室へ向かって廊下をとぼとぼと歩いていた。

 

何度も言うが僕は彼女の事を性的な目でしか見ていない訳じゃないんだぞ。そりゃまぁなんか大分前にコスチュームの説明した時の、アレ欲望丸出しな文章だったかもしれないけどさ!?彼女賢いし?文武両道だし?IQ高いし?ってIQ高いのは賢いのと変わらんだろ!…ほら、だから…憧れとか、尊敬みたいな…?そういうイメージを持っている…的な、そういう………

 

 

だーもう!要するに言いたいのは僕は変態じゃないって事だよ!!

 

………あれ、今自分で取り返しのつかないような事を言った気が………

 

緑谷「付き合う…かぁ」

 

ただ1つ言っておくが僕は全く彼女に興味が無いという訳ではない。…あーうん。だから性的とかそういうのじゃなくて……

 

そりゃ…彼女は可愛いし…その上頭良いし…何でもこなせちゃうし………

 

好きか嫌いかどっちかと言うと……………

「なぁオイ。見たかさっきの」

 

「あー…()()緑の奴の圧勝だったな」

 

「当たった奴も可哀想だよなぁ。溝があり過ぎる」

 

「こりゃ準決勝も決勝も決まりかなぁ…」

 

 

 

緑谷「………」

 

 

 

「…?アレ、今誰か通らんかった?」

 

「気のせいじゃね?ほれ便所便所」

 

 

 

 

咄嗟に気を消して正解だったと思う。

 

……そう、だな。そんな事より今は…

 

 

『僕も()()で…獲りに行く!!!』

 

 

今は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

たまたま通りかかった2人の男性の口からこぼれた会話が僕の胸へ深く突き刺さる。

 

とてもじゃないが気休めできるような状況じゃないわな…

 

本気で皆と向き合おう…開始前まではそう張り切っていたのにこれじゃあな………

 

決勝…かぁ。順当に行けば轟君に当たる筈…いやでも上鳴君の隠し玉相当えげつないからなぁ……

 

 

 

いずれせよ、これじゃ何の進展も生まれそうに無いけどな。

 

 

 

 

界王拳を2度使った上に治癒を行なった為か少し頭がくらくらする。まぁ多分今してる頭痛は別の問題だと思うけど…

 

控え室のドアに頭をペタリとつけて思いふけるが頭痛は一向に治らない。ぐぬぬ…保健室出た途端にこれかよ…

 

…正確にはさっきの会話を聞いた後だが……

 

緑谷「仕方ない。とりあえず部屋に入って休むとするか…」

 

ため息を1回つくと僕はドアノブに手を伸ばし、控え室に入ろうとした。

 

ドアノブを手で握ったその瞬間だった。

 

なんと()()()()()()()()()()()が内側から開いたのだ。

 

ドアノブを掴んでいたものだから部屋に誰かがいるという驚きよりも先に引っ張られ前へ転びそうになるのを焦って阻止しようとするのに必死だった。

 

ドアが開いた拍子に身体が前へ傾き、部屋の中へ強制入室。やばいな…この勢いじゃ開けた人にぶつか………

 

 

 

 

 

 

 

ドサッ

 

緑谷「い、いて…てぇぇ」

 

緑谷「……?」

 

前方へ脚が傾いていた筈が、いつの間にか後ろの地面に尻もちをついていたらしい。少々痛むお尻をさすりながらゆっくり立ち上がろうとする。

 

「あ、ごめん…どこか怪我無……て」

 

緑谷「……え……」

 

 

 

 

ようやく直立したかと思うと再度後ろに倒れ込んでしまう。勢いよく地面と衝突したもんだから結構お尻にヒリヒリ来たが痛みとか、疲れとかそんな事を感じている余裕などなくなっていた。

 

だって……おかしいだろこんなの…奇遇とか偶然とかじゃねぇってこんなの…

 

 

なんでさっきから何度もこの娘と遭遇してんだよ……

 

 

 

 

 

 

緑谷「け、拳藤さん…?」

 

拳藤「おーまた会ったな少年君!つーかデク!」

 

拳藤「2時間ぶり?あいや……」

 

拳藤「()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 




はい。お久しぶりでございます皆様。1ヶ月ぶりの本編更新ですよ!

なんか月曜には上げられるでしょヘッヘッヘーみたいな事言っていたような気がしたが別にそんな事無かったぜ!(隠蔽)

ご心配をお掛けして申し訳ございません。展開が困ってた訳じゃありませんよぅ!

地の文作りに手間取ったとか!(の割には後半会話ばっか)

忙しかったとか!(聞き飽きた)

風邪引いたとか!(正味どーでもいい)

色々あったんだよっ!!(以上の事から須井化がサボリ魔である事が成り立つ)

<お陰でこっちもぉー暇だったYO

<という訳だぁ!

まぁそんなこんなでドタバタしてたので今回のは大目に見てくだサイヤ。

<できぬぅ!!

<後でペナルティ(血祭り)にあげてやるから待ってロット……

ぉぉぅ。





…とまぁいつまでもグダグダと謝罪をしてもうんざりするでしょうしお詫び自体は活動報告に載っているのでそっちを適当に流し見してくれると幸いです。

<いいぞぉ!…

<ってゑゑゑっ!?





さて、第34話いかがでしたか?

ちょいと切島君に重点を置いたおかげでかなり量を食ってしまいましたが、自分的には満足です。

体育祭以降も彼には色々とお世話になる場面が出てくるので少しは期待してもいいのよ。

そして今回は色々と重要な情報もわんさかと出ています。いつ順位は原作通りだと錯覚していた?(一応後付けではない)

リメイク前だと気の集中→爆発→開放と三段階踏みましたが、気の爆発の仕組みがちと分かりにくいかなぁと思って【気を爆発して開放させる】という風にミックスして簡易的に集中と開放の2種類のみにしました。

…え?そもそも気の云々自体が分からない?……………

知 ら ん な (ヤケクソ)

※真面目に意味不明という方がいらっしゃいましたらメッセージでクソボケナスとすぐにご連絡を




次回はオチの通りデッ君が拳藤さんと密室で2人きりです。

密室で2人きりです。

密 室 で
<うるさい!

多分準決勝第2試合開始まで…進められるかな?今回のを見る限り控え室での会話に時間食いそうだなぁ…

最低でも上鳴VS轟は書き切るつもりなのでよろしくお願いします!


できれば1週間以内に次回の投稿ができればいいと思います。アニメも結構進んでしまったからなぁ…追いつかねば……

あれ、もしかしてステ様kt?ってかん?もしかして体育祭で今期終わり?



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第35話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

準々決勝最終戦、緑谷少年は切島少年に苦戦を強いられるも何とか撃破。

とうとうベスト4が出揃った。

準決勝が迫る中緑谷少年は再び拳藤少女と遭遇するのだが…?

更に向こうへ!PlusUltra!!!






前のめりになって倒れそうになった…確かにその筈だったんだ。だが何故か身体はそれに逆らうように後ろに引っ張られた。いや…この場合…

 

【引っ張ってくれた】のか?

 

怯えるように身体がプルプルと静かに震えている。これは拒絶反応?生命の危機を感じたからなのか?或いはもっと()()()()が関わっている…?

 

 

 

 

地面にぺたんと座り込んだまま僕は呆然とするしかなかった。今何が起こったのか?そして何故こんな状況に陥ったのか不思議でならなかった。

 

試合の疲れからか頭が真っ白になり、しばらくポカンとしていたと思うと前から可愛らしい女の子の声が聞こえてくる。

 

 

拳藤「…大丈夫?」

 

 

意識が戻った瞬間、目の前にしゃがんでこちらの顔を見つめる彼女の姿があった。

 

間近で見てもやっぱり綺麗だな…髪サラサラ?だし肌に汚れの1つも見当たらない。純白かよ…あ。後顔も

 

 

って何の観察してんだ自分…!

 

気がつけば、顔と顔が至近距離まで近づいていたもんだからめちゃくちゃ動揺してます。ええ…

 

あーっと…それでなんて言ったっけ今この娘…

 

緑谷「…ぇっ…ぁぅ」

 

あまりにも唐突の事だったから焦って返事をしようとしても呂律が回らず、聞き取れない。めちゃくちゃ慌ててます。ええ…

 

拳藤「うん…」スリスリ…

 

緑谷「ひゃふっ!?」

 

ボソボソと呟く中、いきなり拳藤さんが僕の脚を触り出す。え…これボディタッチ!?え?これ普通ポジション的に真逆じゃないっすか拳藤さん!?

 

男性らしかぬ高い声で悲鳴をあげてしまう自分…恥ずかし。

 

拳藤「……怪我は無さそうだな」

 

拳藤「悪いね。驚かして」

 

緑谷「……ぇ……」

 

ようやく触り終わってほっとするのも束の間。なんと今度はこちらに手を差し伸べてきた。

 

え……っとこれあれか?つまり…

 

握れと?

 

緑谷「だだだだ大丈ぶヒトリでオき上がれっからううううん」

 

流石に同学年の女子の体を自分の手汗で汚す程の度胸は持っていません。すぐに拒否した。

 

拳藤「あ〜杞憂だったかな。すまんすまん」

 

緑谷「こちらこそ…心配かけちゃって」

 

緑谷「後少しでぶつかりそうだったし」

 

ふぅ…ようやく平静が戻ってきたぞ。いつもの調子で会話を続ける。顔は未だ紅いだろうがな。

 

緑谷「え、えっと…拳藤さん?一応確認だけどさ…」

 

緑谷「ここ、1の方なんだよね?…控え室」

 

拳藤「ん?」

 

今更だが解説しておくと基本、トーナメントのブロックで前半の方…いわゆるくじの番号で言う所の奇数側の人は1番の控え室&入場口を、後半の方(偶数側)の人は2番の控え室&入場口を利用する事になっている。

 

まぁ途中で1、2番入れ替わったりで面倒くさいけどねこの方式。

 

準々決勝の3回戦で勝った拳藤さんは準決勝の後半戦、つまり第2試合の1人目として選ばれた人だ。

 

故に彼女が使えるのは1番目の控え室の筈なのだが…

 

 

ドアの前に貼ってある張り紙に目をやるとそこには2という数字が…

 

拳藤「あれま…間違ってしまったか」

 

拳藤「誰もいないから違和感感じなかったわ」

 

頭を掻きながらキョトンとしている拳藤さん。可愛らしい格好で構わないのだが、先生方や観客の人達が混乱してしまう可能性があるからなぁ…

 

緑谷「あの…それで出来れば1の方の控え室に移動してくれないかな」

 

緑谷「ほら…ごちゃごちゃされると困るだろうし」

 

拳藤「ヤダ」<メンドクサイ

 

なんてワガママな!

 

…とは言え女子の手を煩わす訳にもいかないか。【ならば自分が】と仕方なく2番の控え室の方へ足を運

 

ガシッ

 

 

緑谷「……」

 

拳藤「…」グィィ…

 

緑谷「………」ギリギリギリ

 

拳藤「待て待て待て…別にあんたが別の控え室に移動する必要は無いだろ」

 

ハイ第2のボディタッチ発生ぇぇぇ!!ねぇ引き止めるの強引過ぎじゃないっすか!?呼び止めるならまだしも何故掴む!?今握手は頻度や拒否したばっかりですよ!?

 

緑谷(あ、でも手首だからセーフか…)

 

緑谷(………)

 

女子が自分の右手首を握っているという状況をようやく認識した僕は頬を真っ赤に染めあげる。急いで拳藤さんの手を振り払おうと必死に足を動かすが…

 

緑谷「ふんぬぐぐぐ……」ギリギリギリ

 

拳藤「ちょ痛…休憩しに来たんならこっちの部屋で一緒に休みゃいいだろ!」

 

 

腕を引っ張った事により僅かに彼女との距離が離れただけで身体はほとんど前に進めない。

 

こちらが拳藤さんとは真逆の方向に力を入れるとなると、当然(何故か)部屋に迎え入れようとする拳藤さんはこちらの力に反発して自分の方に腕を引っ張るだろう。

 

…何が言いたいかって……

 

 

 

界王拳使ってないとはいえ本気で相手の身体引っ張ってるんだぞ?なのに…

 

なんでビクともしない?

 

それだけじゃない。彼女の腕の力がいくら強かろうが上下左右に腕を振り回せばすぐに拳藤さんの手は外せる。

 

 

 

 

緑谷(……)ミシッ…

 

緑谷(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃっ!?)ギリギリギリギリ

 

緑谷(今ミシッつったぞミシって!!どんな握力だよ!)

 

緑谷(後腕引っ張ってるから尚更痛ぇええええああっ!!)

 

このままだと冗談無しに手首折れる、というか右手が引きちぎられます。壊れてしまいます。

 

それ位やばかった。女子に手を掴まれるという精神的ダメージもあったが何より驚いたのがその筋力。拳藤さん自身も痛いと言っていたから多分最低でも彼女は僕と同等のパワーの持ち主という事になるが……

 

 

参考に言っとこう…個性使った砂藤君と対人してた時にはこんな力出てませんでしたよ彼。

 

 

 

緑谷「…………ん?」

 

緑谷「ね、ねぇ…拳藤さん?」ギリギリギリ

 

拳藤「何?ってかメチャクチャ腕が痛いんですけど…」グィィ

 

緑谷「今なんて言った?」ギリギリギリ

 

拳藤「だっ…だから面倒くさいなら2人で一緒に控え室1に居たらいいだろって言ったの!」グィィ…

 

緑谷(………)

 

『面倒くさいなら2人で一緒に控え室1に居たらいいだろって言ったの!』

 

緑谷(……)

 

『2人で一緒に控え室1に居たら』

 

緑谷(?)

 

『 ふ た り で い っ し ょ に 』

 

 

 

拳藤「どうせ()()()次の観戦しないんだろ?だった……」

 

拳藤「…お?緩くなった」グイッ

 

拳藤「……んー……」

 

緑谷「」プスプス…

 

 

僕の頭から白い煙がモクモクと立ちのぼる。あー…こりゃショートしてますね、脳。

 

 

 

 

 

本戦トーナメント準決勝…

 

これに勝てば最終試合、決勝戦に進出し晴れて頂への道の第一歩を踏む事が出来る。

 

まぁ…その通りあくまで決勝の前座勝負…それに辿り着くまでの1ステップでしかない。

 

……そう。たかが1ステップだ。

 

 

 

 

マイク「っYAAAAAA!待たせたな野郎共!!」

 

マイク「気づけばこのガチンコトーナメントも3試合を残すのみとなった!!」

 

マイク「ほんじゃま早速!準決勝前半戦開始と行くぜ!!」

 

ワァァァア…

 

 

マイクの放送が開始したと同時に大勢の観客から嵐のような歓声が巻き起こる。

 

胸の鼓動が高鳴り、既に人々の血は騒ぎ出していた。

 

午前中の観戦よりも明らかに熱気が何倍も高まっていた。

 

 

 

悟空「なんかさっきより客増えてねーか?」

 

悟空「気の数が始めよりも大分多くなったぞ」

 

マイク「そだな。今年の1年は敵襲来にあったにも関わらず生き残った優秀な奴らって事もあって例年より期待値が高くなるのは当然さ」

 

マイク「ま、観客数の増加も想定内だけどよ…それにしてもこの増えようはおかしいだろうよ」

 

マイク「午前中の2倍にはなってるぜオイ」

 

悟空「ほー!すげぇなそりゃ!」

 

悟空「まぁこんなワクワクする戦い見せられて心動かされねぇ方がおかしいけどよ!」

 

悟空「あーー…オラも参加したかったなぁ体育祭」

 

マイク「お前がいるからひとまずOKとは言え、今回のレベルの高さから見りゃ冗談無しに巻き添え食らいそうでゾクゾクするのですが」

 

どうやら今年の体育祭は例年より生徒・バトル共に多数の人から高い評価を得られている様子。

 

成る程。道理で昼休み中に人の数が急激に増えた訳だ。まぁ全身プルプルと震わせてるマイク先生にとってはそれ所じゃないって感じだが。

 

開催中は会場への途中入場も勿論許されているので観客の中には最初自宅で様子を見て、気が向いたら雄英へ足を運ぶって人も多いらしい。その逆も然りなのだが珍しく今年はまだ途中退場した者は1名も居ないらしい。

 

それ程までに今回の体育祭は注目されているのだ。特に1年の部は…………

 

 

こんな風に

 

 

 

 

切島「っかぁぁクソ痛ぇぇええ!!」

 

全身を襲う痛みに耐えながらもゆっくりと椅子に腰を下ろす切島君。

 

僕が保健室から出てった後程なくして彼も治癒をしてもらいにやってきていたらしい。

 

葉隠「あ、お帰り〜切島」

 

麗日「す…すごかったよ切島君!メチャ熱かった!」

 

切島「すごいも何も…今回もあいつの圧勝だよ」

 

切島「今回は一泡吹かせたかったってのによぉ!畜生!」

 

切島君は左手をギュッと固く握りながら必死に悔しがる。麗日さんも似たような決着だったから無理に明るく振舞っているのが分かっていて尚のこと心苦しいんだよな…

 

麗日「…それにしても包帯の量多いねぇ」<半ミイラ

 

切島「これだけ派手に暴れられただけでも勲章物よ。正直もっとあっさり決着つくと思ったぜ」

 

切島「それなりの意地だけは見せたつもりだけどな」

 

芦戸「……」

 

芦戸(…そうかな…)

 

芦戸(多分、切島は…緑谷を一泡も二泡も吹かせたと思うよ)

 

葉隠「……」カキカキ…

 

葉隠「…お手洗い行ってこよ」ガタッ

 

薄っすらと笑いながら感傷にふけると、葉隠さんはさりげなくその場から立ち去っていった。

 

 

切島「とりあえず、今は観戦に集中だな!よく観察してあいつらにリトライだ!」

 

麗日「うん!リトラる!」

 

切島<リトラる…

 

 

 

「……あのぉ〜」

 

麗日「え?」

 

 

もうじき轟君と上鳴君が入場して準決勝が始まろうとしている中、突然麗日さんの横から見知らぬ男性が話しかけてきた。

 

5月というもう春とは言えない気温の高さに似合わない格好をしており、全身を灰色のコートで覆っており、顔もフードを頭に被せ隠している。

 

…要するに名状しがたい不審者のような者ですね分かります。

 

急に呼びかけられた麗日さんは思わず動揺するが構わず男は話し続ける。

 

「ここぉ…って…1年A組の生徒の方々のベンチ……ですよね?」

 

緊張しているのか途切れ途切れに言葉を放っているので聞き取りづらいが…どうやら彼は1年A組の雄英生に用事があって来たらしい。

 

ドギマギしながら麗日さんは心細く返事をする。

 

麗日「あ…はい。そうです…けど」

 

「あ!も、もももしかして隣にいる方は…」

 

切島「お…おお?」

 

隣にいる方…つまり切島君の姿を確認するや否や彼は身体を震わせながら指を差す。

 

切島君も男性が話している人物が自分である事だと理解するとその男のように自分の事を指差して反応する。

 

コートの男性は気弱な声色とは一変し、声を荒げながらこう言った。

 

「今し方活躍していた切島鋭児郎君ですか!?」

 

切島「…は…?」

 

「いやぁ!私貴方の厚い闘志と熱い闘姿に心が惹かれましてね!すごく興奮モノでしたよ!ええ!!なんせ優勝候補優勝候補と祭り上げられていたあの緑谷君をあそこまで追い詰めていたのですから!流石は障害物競争で10位、騎馬戦でも2位という好成績で這い上がってきたトップの実力者と言えましょう!あぁぁ…っと要は私は君に1度会ってみたかったのですよ!君を間近で見てみたかったのですよ!君と是非話してみたかったのですよ!!!」

 

切島「………」

 

 

この時、切島君は1つだけ察せた事がある。

 

こ い つ は や ば い

 

無論自分の活躍を賞賛されて素直に喜べない筈が無いのだが、それ以上に何かこう…褒め方?が何というか…

 

まるで緑谷(ぼく)のような喋り方なのである。間髪入れずにとにかくマシンガンを撃ちまくるようなトーク法…とにかく気味が悪かったのだ。存在自体も勿論の事、その性質も……

 

 

……ただ……

 

 

切島「あ…えっと…スね」

 

切島「う、嬉しい限りっス!ありがとうございます!!」

 

それらを差し引いても自分の戦績を称えてくれている男性に僕が言う程の抵抗感は感じていなかった。そもそもの話、僕のマシンガントークも然程気に障る事は無かったっぽいしね。

 

「終盤まで活躍する人程会い辛くなってしまいますからねぇ…急いで来てみて正解でした」

 

「あの拳打一つ一つに込められていた覇気!!遠くからですが私にはちゃんと伝わってましたよ!!」

 

切島「マジっスか!?きょ、恐縮スよ…」

 

「個性を使用しながらもあのシンプルな殴り合い!ーっっっごく感動しました!私感動いたしました!!」

 

「大事な事なので2回言わせていただきます!」

 

切島「いやいや!俺なんてまだまだ未熟者ーーー」

 

 

麗日「…」ワイワイ…

 

 

この時、麗日さんは1つだけ察せた事がある。

 

こ い つ ら は や ば い

 

会って1分足らずですぐに打ち解け会った男性2名。地味に包容力があるのもどこか僕に似てる所があるとか無いとか…

 

もはや拳銃一丁では二丁の機関銃の間に横槍ならぬ横銃は入れられないと判断した麗日さんは途方に暮れながらもその光景をただ呆然と眺めるしかなかった。

 

「それにしても試合が始まる前に来れてよかったです!楽しいお話になりました!」

 

切島「お…俺もっス!今後も応援よろしくお願いしますっ!!」

 

切島「ほれ!最後に、漢同士の誓いの握手!!」スッ…

 

「っはい!」ガシッ

 

フード男の去り際、互いに熱い握手を交えた2人は暑い陽射しに照らされながらも厚い友情を誓い合った。

 

たった2、3分でこんなドラマチックなシーンが展開されるとは…流石切島君。漢だね………

 

それ以外にも色々突っ込みたい所があるけどね。

 

麗日「……友情ってこんなホイホイ作るもんやったっけ」

 

耳郎「あらら。切島…()()から触れに行っちまったよ」

 

麗日「自分から…ってどゆ事?響香ちゃん」

 

耳郎「実は今のコートさん、昼休みん時も来てたんだよねぇ」

 

耳郎「ベンチ(ここ)に」

 

麗日「!?」

 

耳郎「そん時上鳴が声掛けられてさぁ…」

 

 

『わー…本戦進出した上鳴君ですね!』

 

『あ…握手お願いします!!』

 

 

耳郎「って言われたモンで…あいつすぐ調子乗るからノリでやっちゃったんだよね」

 

耳郎「熱狂的なファンなのは結構だけどさ」

 

耳郎「あんな見るからに胡散臭い若い兄ちゃんとって…なんか危険な香りがプンプンするけどなぁ」

 

麗日「…ま、まぁ否めん…けど」

 

麗日(……あれ…そいや…爆豪君?)

 

麗日(いつの間にか居なくなっとる……)

 

麗日「手洗い…かな?」

 

耳郎「……………」

 

 

 

 

 

マイク「さぁお前ら全員!KIIIIIIIIIIIIITE O・DO・RO・KEEEE!!!」

 

マイク「ここまでほぼ瞬殺で試合に決着(ケリ)をつけてきたこの2人組が…」

 

マイク「遂に今、相見えるーー!!!」ワァァァア…

 

マイク「1番ゲートからは轟選手」

 

マイク「2番ゲートからは上鳴選手の入場だぁぁあっ!」

 

 

前述した通り、会場の熱狂は最早最高潮に達していた。観客の誰もが残る4人の生徒に期待を抱き、残る3つの試合に胸を熱くしていた。

 

…この地の文を何回書いた事だろうか。正直な話、いい加減これ書いても凄みが伝わってこないだろうなぁ、うん。

 

期待してるも待望してたも何ももう彼らは始まる前から確信していたのだ。【今年の…特に1年の体育祭はとても劇的なモノになるであろう】…と。

 

今更発狂しただとか雄叫びを上げたとか言っても別に驚く要素は1個も無い筈だ。何故ならば()()()()()()()()()()()()()()()()のが前提だからな。

 

この学校特有の体育祭のプログラムの斬新さもさる事ながら、生徒一人一人の個性的なパフォーマンスが人々をあっと言わせる事など容易い話なのさ。

 

ここまで散々話を脱線してきたが、詰まるところ僕が言いたいのはこの試合も午前中や第1試合、第2試合以上の盛り上がりを見せてくれるだろうという話だ。

 

マイクが説明している通り、彼ら2人のこれまでの活躍ぶりは言うまでもない。こんな白熱する度120%の試合を無言で観るなど以ての外なの

 

 

 

 

ゴォォッ…

 

 

 

上鳴「…」

 

轟「…」

 

 

マイク「……っぁ…ohhh…?」

 

 

 

 

 

()()瞬間まで平然と口を大きく開き、大声を発していたであろう彼らは()()直後、一斉に固まってしまう。

 

両者共に、普段から出ているのと明らかにかけ離れている表情で眉をしかめ、尋常でない程険しい顔つきをしていた。

 

2人の選手が互いに近づいていき、ステージに上がる…たったそれだけの事なのに…

 

 

「…それだけの事でこうも唐突にどエライ緊迫感が生まれるもんかねぇ?」

 

「今あいつらが立っているのは準決勝(ベスト4)っつーとんでもねぇ高さの山だぞ?」

 

「元々本戦まで勝ち残った奴らでスカウトされない方が少数派だけどよ、ここまでやってきたら逆にスカウトを避ける方が難しいって!」

 

「表彰台に立つのも既に確定してる!負けたとしても4位か3位!!もう目的の大半は達成してると言っても過言じゃねぇ」

 

「それなのになんであいつらは…」

 

 

 

「なんであいつらは尚更必死になれんだよ」

 

 

 

 

 

相澤<……俺から見ての話だが、少なくともヒーロー科の中でスカウト獲得したら満足なんて寡欲な生徒は居ねぇよ。

 

相澤<各々、形は違えどオールマイトに憧れ、彼のように1番のヒーローになりたい…1位という頂を手にしたい…

 

相澤<そんな大きい思い背負ってんだ。()()()()方がそりゃおかしいわな。

 

マイク(……オールマイト…ねぇ……)

 

 

 

マイク(俺が雄英(ここ)に入ってきた頃はオールマイトは成り立てのルーキーで世間からの注目度は今に比べりゃ相当低かった)

 

マイク(とは言え、初レスキューの動画の件もあって比較的有名な方だったし、雄英始まって以来の天才児だって位の噂なら腐る程流れていた)

 

マイク(…あの頃…かぁ)

 

 

 

マイク「……改めて思うと…」

 

マイク「とにかく【スゲェ】の一点張りだな、オールマイト(平和の象徴)

 

悟空「…おう。そだな!」

 

マイク「……ぁ…」

 

 

 

実況そっちのけで盟友と雑談を交わしていたマイクだったが悟空さんの返事でようやく記憶の世界から脱出する。慌てて実況を再開しようとするも…

 

そうこうしている内に2人は既にセッティングを終えていたようだ。

 

轟君はミッドナイトに指定された位置にただ立ち尽くすのみである。

 

上鳴君の方はというと……

 

 

 

ミッドナイト「…確かに指定の距離よりは近づくなとは言ったけど…」

 

ミッドナイト「それはそれで危ないんじゃない?上鳴君」

 

上鳴「無論!問題無いっスよ!!」ググッ…

 

轟「……」

 

左脚は膝を直角に曲げ前方へ

 

右脚は対照的に後方へまっすぐ伸ばして試合開始時の構えをしている。

 

というか…

 

 

マイク「クラウチングスタートだなありゃ」

 

マイク「右脚がギリギリ白線に触れているかどうかってとこまで接近してる」

 

相澤<氷は基本電気を通さない…となると決定打はこれまた技の【速さ】によりけりか。

 

悟空「んじゃやっぱ正面突破かぁ?」

 

マイク「でもフェイクの可能性もあるぜ?じゃなきゃギリギリまで離れてる意味ねぇし」

 

悟空「だなぁ」

 

相澤<でもあいつの速さなら別に凍らされる前に場外行けるよな?

 

悟空「だなぁ!」

 

相澤 マイク「「………」」

 

悟空「どっちだろーな!!へへ…」

 

相澤 マイク((こいつムカつく…!))

 

 

 

 

「…勝負はたった数分」

 

「この子達の試合に関しては恐らく10秒も経たず決着するでしょう」

 

「そのたった一瞬の為に命を懸け、それ以上の価値を見出す…」

 

「これだから最近の若いのは怖いんだよねー。何仕出かすか分からないから」

 

「いやー青春って素晴らしー!」

 

()()()姿()に似つかわしくないコメントをしながら女性はランドセルの中からゴソゴソと手探りをし始める。

 

中から取り出したのはなんとタバコ。ポケットに入れていたライターを手にし、箱の中に入っていた一本の紙巻きタバコに火を灯す。

 

「……」カチッ…

 

ボォッ

 

一息吸って一息吐くと、彼女はタバコを口に咥えながら独り言を続ける。

 

 

「ふぅ。それにしても……」

 

「…本当…()()()がすごいわね、あの子羊ちゃん達は」

 

「それでこそ教え甲斐があるってもんじゃん♪」

 

 

そんな時、横(正確には上か?)から警備員の男性に呼びかけられる。

 

警備員「……あ、あの…お嬢ちゃん?」

 

「…え?あ、わたしのこと?」

 

警備員「君が今持っているそれって…」

 

「たばこ…だけど?」

 

「…あ。もしかしてここってきんえんでしたっけ」

 

警備員「ま…まぁそんな所」

 

「ごっごめんなさーい!いつものしゅーかん?クセで!」

 

「お、おトイレですってきます!」ダダッ…

 

注意された女性は直様椅子から離れ、W.Cへ走り去ってしまう。どちらかというと禁煙の事ではなく他の諸々のツッコミをしたかった警備員はその走り姿を後ろから眺める事しか出来なかった。

 

警備員「……いや……おトイレでも駄目なんだぜJS(女子小学生)よ」

 

警備員「つーか…今の……小学生?」

 

警備員「あれ?小学生ってたばこ吸って良かったんだっけか?」

 

警備員「あ、でも最近は身長云々で学生の見分けつかなくなってきてるからなぁ」

 

警備員「ランドセル所持の時点で9.99割方JS(女子小学生)なんだが…ワンチャンありゃJC(女子中学生)?ってか…何にせよ喫煙自体アウトなんだが…」

 

 

 

 

「ちがうちがう。わたしはJS(ジェイスターズ)でもJC(ジャンプコミックス)でもないって」ポンポン

 

JK(じょしこうれいしゃ)!」

 

警備員「…………………」

 

 

ついさっき聞いたばかりのある声、手で触った割には下半身に触れられたという謎の違和感を覚えた警備員はおずおずと後ろを振り向くと…

 

あら不思議。さっき確かに遠方にいた筈のJK(女子高齢者)が。

 

警備員「ひぃぃいっ!?」

 

「ひ…ってそんなおばけでもみたようなかおしないでよぅ」

 

「おばさん、はだはツヤツヤでもメンタルはしわくちゃなんだから」<キズツク!

 

「にしてもこまったなぁ…きつえんじょがないとしたら()()()()()()()そとにでてすってくるしかないや」

 

警備員「あっの!僕!仕事あるんで!失礼い

 

警備員「だっ!?」ガシッ

 

どさくさに紛れて去ろうとする警備員の脚を右手で強く握り、捕まえる。

 

「つれないこというね〜。せっかくキミをわたしのせかいへとくべつにごしょうたいしようとおもったやさきにさ!」ギリギリギリ…

 

警備員「あーいや!わ、ワタクシ生憎タバコ嫌いなモノですから!!」

 

「うそはいけないなぁ…そういうの」

 

「あ、たしかにJSじゃないとはいったけどさ!」

 

「私こう見えてSJではあるんだよなぁ」

 

警備員「えっ…?」

 

「一本イッとく?」

 

警備員「……………」

 

この時、警備員は1つだけ察せた事がある。

 

こ い つ は デ ビ ル や ば い

 

 

 

 

さて…長々と茶番を挟みはしたものの……

 

何はともあれ、準決勝…氷VS雷の夢の対決の幕開けだ!

 

マイクは試合開始の合図を始める。

 

マイク「よっしゃ両者共に準備はいいなぁ!?」

 

マイク「まぁ良くなくても始めるけどなぁぁ!!」

 

マイク「レディィィ…」

 

轟「……」

 

上鳴「………」

 

 

 

 

 

 

上鳴(……準備は万端か?)

 

上鳴(毎度思うけど一々その質問が余計なんだよなぁ)

 

上鳴(何度も何度もマメに確認してようやく完璧!っつー時に一抹不安が脳裏によぎる)

 

上鳴(何か忘れちゃいねーのか?何か見落としちゃいねーのか?…途端に怖くなっちまうよ)

 

上鳴(前もこんな事あったなぁ…確かあれは……)

 

 

 

電ママ『アンタ筆記の方も大事だけど、ちゃんと面接の模擬練もしときなさいよ』

 

上鳴『模擬練?』モグモグ…

 

電ママ『電気は重度のコミュ障だからちゃんと雄英の方と話せるか心配だわ…マジで』

 

電ママ『面接で落ちる人だっていない訳じゃないんだからね!?』

 

上鳴『大丈夫だっての!過保護だなぁおい!単なる大げさな自己紹介だろ?楽勝楽勝!』

 

 

上鳴『俺ァ上鳴電気!この雄英高校の頂点を奪りにはるばるやって来た1人の秀才だ!!』

 

上鳴『血液型はO型、埼玉県出身、身長は168cm!因みに誕生日は内緒!!趣味?読書(マンガ)だよ言わせんな恥ずかしい!』

 

上鳴『個性は【帯電】!この世に存在する電気を自在に操る事が可能!痺れるだろ?褒めてもいいんだぜ?お?お?』

 

 

上鳴『ざっとこんなもんよ』

 

電ママ『こいつをどう思う?』

 

電パパ『すごく…上げすぎです』

 

上鳴『まー今のはテキトーにやっただけで本番の時は多少アドリブ入れて対処するから安心なさいな』

 

上鳴『面接なんざ屁ッチャラチャラだっての!ひゃひゃひゃ!!』ガツガツガツ…

 

電パパ『爆笑しながら飯がっつくな…夕ご飯飛び散る』

 

上鳴『へいへいサーセンw』

 

電ママ『……ねぇ』

 

 

電ママ『本当にそのままで大丈夫なの?』

 

上鳴『……ん?』

 

 

 

 

 

回想シーンの所悪いが、もう開始してるぞ

 

マイク「START!!」

 

轟「その気になりゃこんな距離一瞬で凍らせられるよ」

 

 

試合が始まった瞬間、轟君はステージの地面を凍らせていく。いつもの攻め方だな。

 

肝心の上鳴君はというと試合など上の空で少し前の出来事を思い返していた。呑気に上の空眺めていらっしゃる。

 

 

耳郎「ちょ…上鳴!なんで動かないの!?」

 

マイク「なんだ?もう開戦してるのが分かってねぇのか?」

 

悟空「……()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

マイク「動けない…?」

 

上鳴「………」

 

 

 

 

 

『貴方の趣味はなんでしょうか?』

 

上鳴『えっ…読書……夏○(しょう)石の小説にハマっ…てます』

 

『個性は【帯電】…となっていますがこれは具体的にどのような事が可能な能力なのですか?』

 

上鳴『文字通り…電気を身体に……あ、後っ周りに放電位なら……』

 

上鳴(ヤベェェェ!?軽く10回は噛んじまってんよ!俺の初印象ダメダメじゃねーか!!)

 

上鳴(いやいや…落ち着け落ち着け上鳴電気!……テンパらず気楽にやりゃ問題ねぇし!?問題ねぇ!!)

 

上鳴(さぁ次来やがれ!!)

 

『貴方の志望動機は何ですか?』

 

上鳴『え…ど、ドーキ?』

 

上鳴(あー…理由の事ね、ここに希望する理由)

 

上鳴(マズッたなぁ…考えるのが()()()()()から保留にしてた項目だわソレ)

 

上鳴(テキトーにそれっぽい事言ってやり過ごそ)

 

上鳴『っ…とと…お、オールマイト…にその…憧れて……』

 

『何故ですか?』

 

上鳴『へ?』

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

上鳴『…』

 

 

 

上鳴(…いや何故って聞かれましてもね。なんとなくとしか言えませんわなそりゃ)

 

上鳴(特にヒーローが大好きな訳でも無ぇし、世界の平和を護りたいなんて大層なポリシーも無い)

 

上鳴(周りが行きたいって騒いでたから釣られて俺も来ただけだ。オールマイトとかに全く興味なしって訳でも無かったしな)

 

上鳴(俺がここで手に入れたいのは何だ…富か?名声か?力か?それとも……)

 

『…………

 

 

 

轟「……?」

 

上鳴(クソッ!やべぇ!やべぇ!何固まってんだよ俺!!)

 

上鳴(ビビるな!動け!じゃなきゃ落ちるだろ!?)

 

上鳴(動け動け動け動け動け動け動け動け動け

 

 

 

 

上鳴「動けやァアァアアアッ!!!」ガァッ!!

 

瀬呂「うっぉお!?」

 

口田(消えた!?)

 

突然雄叫びを上げたかと思うと大きな衝撃音が発生する。その途端上鳴君はいきなり姿を消してしまった。

 

気づいた時にはもう既にステージの地面は全て凍らされていた。しかし、試合開始時に上鳴君が居た地点に目をやるとそこだけ不自然にコンクリートが砕けた跡が残っていた。

 

どうやら凍結される寸前にどこかに避難していたらしい。

 

轟(つっても…フィールド内の地面は俺が全範囲凍らせた筈だ)

 

轟(もし単純に前後左右に走って動いたとしても凍結の速さからしてまず確実にコンクリと一緒にお陀仏だ)

 

轟「って事は上か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダダッ

 

上鳴「真後ろだバーカ」

 

轟「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非常に次の展開が気になる所悪いが少し時間を遡って場面を切り替えよう。

 

試合が始まる2、3分前の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さっきのオレンジ髪の人…カッコよかったな』

 

『恥ずかしい所見られちゃったなぁ…』

 

 

あの日から、ずっと考え続けていた事がある。

 

僕がこうして雄英に通えるのも…というか雄英生徒の一員として相応しい実力を身につけさせてくれたのは他でも無い孫悟空さんだ。

 

だが、悟空さんと会った事自体は単なる偶然。まぁ色々あっての巡り合わせだっただけかもしれないが。

 

ではどうして僕は悟空さんに会えたのだろう。どうして僕はあの時かっちゃんに駆け寄れたのだろう。というかそもそも…なんで()()()に全てが変わったんだ?

 

 

 

 

何を考えてもまず最初に拳藤(彼女)の存在を思い浮かべてしまう。

 

あの日、僕が風船を取らず彼女と会ってなかったら、時間差で悟空さんに会えずあのヘドロに殺されていたのかもしれない。いや、オールマイトに追いかけられて必死になって逃走していた筈だ。もしかすると何事も無くまたいつも通りの日常を迎えてそれでお終いだった可能性も高い。

 

ヘドロに突っ込んだ時咄嗟に思いついたのは【かっちゃんが苦しそう。助けなきゃ】それだけだった。だからあの時かっちゃんにもそう言ったのだが、何より僕の背中を押してくれたのはその直前の彼女との出会いだったと思う。【2度とあんな恥をかきたくない】…そんな気持ちが僕にあの時、あの場所で、あの決断をさせた要因だろう。

 

今思えば恥だとかそんなレベルの話じゃなかったし、無意識の内に悟空さんを信頼していたから出来ていたかもしれなかった行動だったが…それでも死にものぐるいで救けに行ったのは間違いじゃなかったと日々を重ねる毎にしみじみ感じてくる。

 

 

 

…とするとこの娘は僕に手綱を引いてくれていたのではないのか?大げさすぎるかもしれないが、ここまであった出来事は彼女の出会い無しに成り立つものではないんじゃないか?

 

数えられない程の多くの【もの】を与えてくれたのかと思うと、彼女には感謝してもし切れない。

 

もし…もしだ。もしももう一度だけあの娘と会えたとしたら…………

 

 

 

 

 

拳藤「おーい。デクー」

 

拳藤さんに肩をユサユサと揺らされ、ようやく目が覚めた。夢の国はもう終わりだよ!と言いたげな絶妙なタイミングであった。黒鼠恐ろしい。

 

とりあえず彼女の声がした右の方向を向くと何とも可愛いらしい笑顔で僕の目覚めを迎えてくれた。

 

お尻がペタンと何かしらの物体にくっついている事と起きた瞬間目の前に映ったのが控え室の壁であった事から、自分は数分失神していたという事がはっきり解った。

 

そしてつい先程まで楽しんでいた(?)夢の国の内容も相まって今自分がどんな状況に置かれてるか理解すると再び顔を赤らめ、動揺してしまう。

 

拳藤「良かったー。いきなり気絶するもんだから怪我させちゃったのかと思ったよ」

 

緑谷「い、いや…ホント、ゴメンね。何度も迷惑かけちゃってるよ今日」

 

拳藤「いいのいいの!1日動きっぱなしだし疲れるのは当然っしょ」

 

すごい説得力の無い台詞ありがとうございます。拳藤さんの陽気な様子からは全く疲労が見て取れませんよ。

 

拳藤「まぁ……」

 

 

 

 

 

 

拳藤「あんたは別でワケありな感じはするけどね」

 

緑谷「!?」

 

拳藤「午前中の時より動きにムラがある。障害物競争の時はもっとこう無駄が無かったていうかスムーズにアクションできてた。特に切島戦の時は受け身ばっか取っててデクずっと攻撃してなかったよね?多分やろうと思えばもっと早くケリはつけられたと私は思うよ。後表情が少し暗い感じだったし…入試とか相澤先生と戦ってた時の方がよっぽど生き生きしてたぞ。楽しめとまでは勿論言わないけどさ、も少し……何だろ、明るくいこう?ほらモチベとか結構影響するだろ?むすっとしたってそりゃ戦い辛いに決まってる。後これ関係ないかもしれないけど昼メシの時八百万以外とは全然話してなかったよね?」

 

拳藤「なんかあったのか?」

 

緑谷「………………」

 

緑谷「???」

 

 

えーっと…どうリアクションすればいいのかな?コレ。ってかウケ狙い?え?そりゃ内容はバッチリ聞き取れたが今の発言、ツッコミ所が1ヶ所2ヶ所が済まねえぞ?う、ううううう…

 

ひとまず途中の内容はすっ飛ばして最後に言っていた言葉だけに着目する。

 

確か昼ご飯の時に………

 

 

 

緑谷「…もしかして、席に困ってたんじゃなくてわざと僕達の所へ?」

 

拳藤「いや?」

 

拳藤「ちょっと野暮用があって遅くなった。それでたまたまデク達のテーブルを見つけただけだよ」

 

拳藤「昼休みの時のお前ら見てて…なんとなくさ、よそよそしい接し方だったから」

 

緑谷「…………」

 

 

大体あの場に拳藤さんがやって来た事自体僕は不自然に思っていた。なんで彼女があんな遅い時間帯に、しかも僕が丁度来たばかりのタイミングでだ。敵情視察だとか、そういう類の企みがあって僕達のテーブルに割り込んできたとばかり思っていた。

 

まぁそのお陰で約3名のSAN値をゴリゴリ削っていかれたなんて死んででも言えないが…

 

思えば騎馬戦の時も、僕が途方に暮れてる時に救いの手を差し伸べてくれたのも彼女だったな。

 

 

不思議な感じだ。

 

まるで拳藤さんがいつも僕の傍で見守ってくれているような……

 

 

 

拳藤「で?クラスの奴らとなんかあったの?デク」

 

緑谷「………あ…え、ん……」

 

しまった!気づかぬ内にボンヤリしてまた思考停止してたよ…この娘を前にするといつも気が動転するんだよなぁ。

 

それで…?何?何かあったって?

 

拳藤「悩みがあるなら私が聞いてやるよ」

 

緑谷「悩み…ね」

 

本当彼女には驚かされるな。洞察力凄い……ってか何でもお見通しというか…

 

見事なまでに図星を突かれるなぁ。

 

緑谷「う〜ん」

 

いざ聞かれると困ったような顔でしばらく黙り込んでしまった。確かに現状八百万さん以外とはまともに話せないとなると相談相手にはピッタリな人物ではあるのだが………

 

緑谷「………」

 

 

 

『僕は君を見限っちゃいないからな』

 

 

『お前の頭脳と戦闘力があるのは()()()しな』

 

 

『俺の分も…頑張ってくれよ、緑谷』

 

 

 

拳藤「どした?下向いて」

 

緑谷「…」

 

 

 

そうだ。別に皆が皆僕を遠ざけようとしていた訳じゃない…というよりもクラスの人達から聞く限り僕を嫌っているような人は1人も見当たらなかった。

 

ただ…日が経つにつれて少なからず変化していくモノもありはした。

 

 

 

意識し始めたのは入試が終わった頃だったと思う。あの位の時から僕は、自分は常人を…それどころか並の敵やヒーローを遥かに凌ぐ実力を得ていたというのを実感していた。

 

口で大きく言えた事じゃないし、自慢する気も全く無いが、これでも自分がこの学校の高1の中じゃ1番に強い生徒だという事ははっきり自覚している。

 

恐らく現在在籍している雄英生で僕と互角以上に渡り合える人と言えば高3の()()()3()位のものではなかろうか。

 

いずれにせよ自分が信じられない程強く成長した事は僕自身嬉しかったし、周りが自分の活躍を見て驚いたり称賛したりする所を実際目にするとかなりの爽快感を味わえていた。

 

 

これがエリートなのか。

 

これが優等生なのか。

 

これが天才って奴なのか。

 

 

 

 

でも……だから…

 

 

だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

雄英に入って実際に色々と奮闘してきたものの、最初は嬉しいと感じていた褒め言葉も次第に複雑な気持ちが入れ混ざってくる。

 

【すごい】だの【強過ぎる】だの…言えば言う程その称賛に価値は無くなっていってしまう。

 

それどころか…その言葉が称賛では無く選り分けているように聞こえてくるのだ。選り分けると言えば聞こえはいいかもしれないが、言うなればこれは自分達と同じ領域に居る筈の者をその分際(ニッチ)から除外しているようなものだ。

 

 

こいつは自分達と明らかに次元が違う。

 

こいつは自分達と圧倒的にレベルが違う。

 

こいつは自分達と何もかも違う。違い過ぎる。

 

 

まるで称えている筈の人物を自分等から遠ざけるように謙って喋っているのだ。

 

そんな言葉を何度も繰り返されたらそりゃ嫌気がさすに決まってる。頻繁に言われるようになれば決まって遠慮しがちに反応を示すのは当然だろ。

 

 

別に大した事じゃない。

 

ただ偶々ツキが良かっただけさ。

 

努力したから結果が実っただけさ。

 

 

他人からすればとんだ侮辱だろう。1年前の自分からしてみれば話し相手をコケにしてるようにも聞き取れる。

 

どうせそうやって心の中じゃ嫉妬している者や悔しがっている者を見て腹抱えて笑ってるんだろ?少し昔の自分だったらこんなの、容易に想像できる背景だった。

 

 

 

 

 

最初は…ただ皆と同じ場所に立ちたかっただけなんだ。

 

近づいていくにつれて皆と対等になれるのがとても嬉しかったんだ。

 

 

 

だけど…結局また皆と距離を作っただけだった。

 

気づけば前よりももっと悪化してるじゃないか。

 

 

『当たった奴も可哀想だよなぁ』

 

 

ふざけんな

 

 

『女の子いたぶって遊んでんじゃねぇよ!それでもヒーロー志望生か!?』

 

 

なんで自分の才能フル活用して頑張って戦ってんのになんで妬まれなきゃいけないんだよ

 

 

『落ちぶれてんなぁ…どいつもこいつも』

 

 

どう考えても理不尽だろうが、そんなの

 

 

 

 

…果たして1年前の自分がこんな感想を言えただろうか?

 

多分、そんな度胸は無い。

 

 

 

 

昔からかっちゃんが他人と距離を置いていたのも、他人に協力を求めなかったのも、他人を傷つていたのも、今ならなんとなく理解ができる気がする。

 

だってさ…

 

そもそもその言い方がおかしいんだよ。

 

 

他人がかっちゃんと隔たりを作っただけだし、

 

他人がかっちゃんを1人で大丈夫って信じ切って放置した訳だし、

 

そうやって他人から仲間外れにされているかっちゃんが1番の被害者じゃないか。

 

 

 

 

 

 

弱かった自分

 

今の自分

 

互いに正反対であるこの2つの立場を両方共に経験した事のある僕だったからこそ、感じる事が出来る1つのもどかしさであった。

 

 

 

 

 

…でだ。結論的に何が言いたかったて言うとなんかここ最近皆とギクシャクしてて、某男性曰く溝が出来ているので何とかしてください拳藤様……的な感じだった気がする。

 

さて、こんな質問を彼女に投げかけた所で一体なんと答えて下さるものか…つーか回答出来んのかコレ。ひとまず内容に少し引いてガンバの3文字で済まされるに100票入れさせていただきます。

 

緑谷(とは言えなぁ…自分1人で頭抱え込んでた所で何の進展も生まれないし)

 

緑谷(何よりこれは拳藤さんと会話ができる数少ない機会(チャンス)…)

 

緑谷(…ってまず【何より】って一体何を考えているんだ僕は!?お門違いな発言だぞ!)

 

緑谷(その言い方じゃまるで僕が彼女のことを………)

 

緑谷(……え……)

 

 

頭の中で色々考えている内に僕はある問題(カベ)にぶち当たる。いや…問題(カベ)というか……素朴な疑問というか。

 

僕は拳藤さんの事をどう思っているのか?否、拳藤一佳という少女は僕にとってどういう人間であるのか?

 

僕を雄英(ここ)へ導いてくれた大恩人か…そりゃそれに違いないけどさ、()()()()()んだよなぁ。もっとこう特別な…かけがえのないって言うの?大切な人みたいな…

 

 

…もしかして僕って拳藤さんの事好

拳藤「ところでさ、デク」

 

 

 

 

 

緑谷「………あ」

 

緑谷「はい。デクです」

 

何かを心の中で言いかけたようとしたその時、拳藤さんは再び僕を呼びかけた。自分の真意に迫ってく事もあってか緊張する余裕すら殆ど失っていた。ぶっきらぼうに返事をしてしまう、

 

 

おい!僕は今なんて言おうとしてたんだ。正気の沙汰じゃねぇよ。むむ…さっきリカバリーガールに妙な事吹き込まれたせいか?言ってる事と言いたい事と考える事と考えたい事が完全にごちゃ混ぜになっているのだが!?

 

そして数秒経って今更気づいた。

 

 

緑谷(相談持ちかけるタイミング無くしちまった畜生ォォオオッ!!)

 

 

【ところで】ってそりゃもしかしなくても話題を転換する気満々ですよね奥さん!?

 

アレか!?いくら待っても返事が無いから異常なしと判断した結果か!?

 

それとも何だ!?いつまで経ってもうー☆うー☆唸ってるだけでウジウジしてるだけのウジ虫だなコイツって見限られたパターンか!?

 

拳藤「赤くなったと思ったら今度は青ざめてんぞ」<信号機か

 

緑谷「ぉぅっ!?」

 

危ねぇ危ねぇ!さっきから脳内がショートしてるお陰で体外の情報が全く入ってこなかった!バッチリ会話放棄しちゃってたよ!

 

とととととにかくまずは拳藤さんが話したがってるから彼女の話を聞かなければ!

 

緑谷「ぇぇと…で、な、何を…だっけ?」

 

拳藤「デクって鉄道好き?」

 

緑谷「………???」

 

緑谷「い、いや…別に好きでも嫌いでも無いけど」

 

拳藤「私、路線図見ると混乱しちゃうんだよね〜。電車?の種類多いから」

 

拳藤「そもそもついこの間まで地元の電車すら殆ど乗ってなかったしさぁ?ウチはバスとか?そっちの方多く利用するし」

 

緑谷「へ、へぇ…」

 

さっきの緊張云々が嘘のように身体から抜け出し、ついつい棒読みで相づちをうってしまう。

 

いや…だってさ、ね?

 

拳藤「副都心線とか有楽町線とか言われても…どこ停まるのかとかどこの地域周ってんのかとかよく分からんのよ」

 

拳藤「駅の名前もパッと見ても分かりにくいしさ?ホラ、山手線ゲームやってる時にリアルに山手線答えてって言われたら困るタイプなの私」

 

拳藤「高田馬場ってなんで高田馬場なのかね」

 

僕に聞かれても困る

 

 

さっきから話の趣旨が理解出来ないぞ?拳藤さん……確かに君が鉄道に苦手意識が少なからずあるというのは分かったけど()()()()()()()()()()

 

なんで急に鉄道の話題を出した?

 

今この場で自分が嫌いだってアピールする必要が何かあったのか?

 

それともやっぱり【なんとなく思いついたから】なのか?この娘に限ってそんな事はしないと思うけどなぁ…

 

何だか興が削がれたような感覚を覚え、段々渋い顔になっていく。返事もポソリと呟くだけでそっけないような反応に変わっていった。

 

これじゃまるで初めて会った人と会話が弾まないコミュ障じゃねーかよ…いや全くもってして間違えた事は仰っていませんが……

 

 

 

 

緑谷(ん……キンチョー?)

 

 

 

拳藤「それにさぁ、停まる所が同じとかザラにあるじゃん。乗り換えとか色々面倒くさいんだよ〜」

 

拳藤「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

拳藤「訳分からんわ」

 

緑谷「い、いやいや…ルート云々の話は別にバスとか…他の車でも言える話だし」

 

緑谷「電車が嫌いって理由には繋がらないんじゃ…」

 

緑谷「…………」

 

 

 

 

電車……ルート…線路………

 

 

拳藤「……()()()()()()()()()()()

 

緑谷「…ぁ〜…」

 

 

なるほど。()()()()()()もあるのか…

 

 

 

 

緑谷「……まずね、拳藤さん」

 

緑谷「線路と駅の名前くらい、皆覚えてるよ?」

 

拳藤「はぐぅえ!?」

 

余程衝撃的な事実だったのか、驚きのあまり目を丸くする拳藤さん。それ程びっくりする事か?コレ…

 

緑谷「そりゃ…僕だって東京の駅名位全部覚えてるし、場所だって把握してるよ」

 

緑谷「学校関連の用事で交通機関フル活用する可能性だってあるからね、大都会だし」

 

拳藤「理解に苦しむわ!」

 

拳藤「私地理苦手なんだよ〜。地図出されると途端に目がくらくらに…」

 

緑谷「それとこれは関係ないでしょ……」

 

緑谷「だって拳藤さん?もし休日友達に遊びに誘われたとかで集合場所が知らない駅の名前だったらどうするの?」

 

拳藤「んな事グー○ル先生の手にかかればチョチョイのチョイよ」

 

緑谷「地図読めるの?地理苦手なのに」

 

拳藤「………」

 

拳藤「ほ、ほら…多少はね?」

 

駄目だコイツ早くなんとかしないと。

 

にしても驚いたな…一見八百万さんよろしくなんでもできる優等生みたいなイメージだったのに苦手な教科とかあったんだな。

 

後、拳藤さんって方向音痴なのね。

 

拳藤「…で、デク」

 

拳藤「さっきの答えは?」

 

緑谷「……」

 

 

 

 

緑谷「ご想像にお任せします」

 

照れ隠しで笑いながらそれだけ答えると、彼女もそれに釣られてニッコリと微笑んだ。

 

拳藤「ちぇっ〜」

 

拳藤「ま、いっか」

 

緑谷「…へへ」

 

 

全く、しらじらしいと言うか…いやらしい女の子だな。君は…

 

最初から理解(わか)ってんなら婉曲に答えなくたっていいだろうよ。

 

結局…そんな彼女のいやらしさにさえ感謝している自分がいる訳だが。

 

いつの間にか喋り方もいつも通りに戻ってるし……マジで不思議な娘だなぁ、拳藤さん。

 

 

 

いつ見てもカッコイイし、可愛いし……なんだろ

 

色々、【スゴイ!】ってなる。

 

たまげたなぁ。

 

 

 

 

 

 

…とまぁこんな風に長々と話していると部屋の片隅に設置されてあるスピーカーからマイクの放送が流れ出す。

 

どうやら準決勝…上鳴君と轟君の試合がとうとう始まるらしい。

 

マイク<っYAAAAAA!待たせたな野郎共!!

 

マイク<気づけばこのガチンコトーナメントも3試合を残すのみとなった!!

 

マイク<ほんじゃま早速!準決勝前半戦開始と行くぜ!!

 

緑谷「あ、前半戦とうとう始まるか」<ワァァァア…

 

拳藤「確かどっちもお前のクラスメイトだろ?」

 

拳藤「正直な所どっちの方が見込みあるよ?勝つの」

 

緑谷「え…ん〜と、そーだな」

 

緑谷「拳藤さんはどう思う?」

 

拳藤「ご妄想にお任せします」

 

緑谷「著作権侵害はいけないよ、拳藤さん」

 

拳藤「参考にしただけだし?つーか著作権あんのかよさっきの!」

 

緑谷「で、結局君的にはどっちを推すの?」

 

拳藤「まぁ今のは冗談なんだが……うーん」

 

 

 

拳藤「じゃあデクの思う方でいいや」

 

緑谷「…僕?」

 

拳藤「おう!あんたと同じ意見にするわ」

 

そう来たか…自分は決まらないから相手に判断を委ねると。困ったなぁ…僕自身確証がある訳じゃないし大した根拠も無いんだが………

 

 

緑谷「……上鳴君は強い。速さだけなら多分ここの学校の生徒でもピカイチだと思う」

 

緑谷「電撃が氷相手じゃ轟君には通じない。とするとやっぱり今まで使ってきた隠し玉で攻めていくんじゃないかな?」

 

拳藤「それって逆に言えばビリビリ君の取れる行動がその隠し玉しか無い以上幾らでも氷君は対策が取れるって事じゃないの?」

 

緑谷「そう。ここで彼の取るべき最善の行動はフィールド内の地面を全て凍らせる事」

 

緑谷「そうすれば上鳴君はたちまちカチンコチンだ」

 

拳藤「タチマチカチンコチン…って」

 

拳藤「でもビリビリ君って触れられたのにも気付かない位のスピードあるんだろ?だったら凍結される前に瞬殺される気がするけど」

 

緑谷「うん。もし開始直後に隠し玉が()()()()()()()完全に彼の出来レースだ」

 

拳藤「すぐに出せれば…?」

 

緑谷「…どうしてこんな事言うかっていうと、2回戦の時の上鳴君の様子がおかしかったからなんだ」

 

拳藤「ん?見たような見てなかったような…」

 

緑谷「彼は飯田君が蹴る寸前に隠し玉を発動させた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったにも関わらずだ」

 

拳藤「…あー。確かに」

 

緑谷「ここから導き出される答えは1つ…

 

 

緑谷「技の副作用だ」

 

拳藤「副作用?」

 

緑谷「ああ。恐らく上鳴君の隠し玉は【使えば使う程スタートダッシュが遅れる】…そういうデメリットがあるんだと思う」

 

緑谷「つまり、技の効果自体は変化が生じないけど脳が動けと命令を発して身体が反応する時間が1.0秒、1.5秒、2.0秒って感じに長くなってしまう」

 

拳藤「なるほど。発動に時間がかかると」

 

拳藤「でもなんでんな事分かったんだ?」

 

緑谷「…1回戦の直後、上鳴君突然消えたろ?」

 

拳藤「あー!確かフッと消えて2、3秒でお前らんとこの席戻ってきてたアレか!」

 

緑谷(なんで知ってるの!?)

 

拳藤「だったら尚更おかしくない?なんで彼自分の首を絞めるような事してるの?」

 

緑谷「………そう。そこだよ」

 

緑谷「【試合外で使う程の余裕がある】…つまりこの技にデメリットなんかありませんって偽りのメッセージを送ろうとしたんだよ」

 

緑谷「普通あんなチートじみた技使うなら何かしら弱点がある筈だ!って皆捜し始めるでしょ?」

 

緑谷「ああやってアピールすれば少なくとも、見た人は多用してもヘッチャラだって思うよ」

 

緑谷「実際拳藤さん今聞くまではあの技に弱点があるなんて思ってもみなかった事でしょ」

 

拳藤「ふむふむ」

 

緑谷(…あれ?そうでもなかったりする?)

 

拳藤「でももしエンジンがかかるの遅いんだってんなら早くかければいいだけじゃないの?」

 

拳藤「流石にスタートの【ス】が聞こえてから発動すりゃ試合開始前に動く事は無いんじゃね?」

 

緑谷「あのマイク先生だよ?気が変わって【STAAAAAAAART】とか【SUUTAAARTOOO】とか言うかもしれないじゃん」

 

拳藤「そりゃあり得な…くもないか」

 

緑谷(……そういう意味では成る程。ある意味マイク先生が適任だった訳だ、アレは)

 

緑谷「ま、出遅れるとは言うもののそれも1秒かそれ以下の誤差に過ぎない」

 

緑谷「なんせ飯田君のレシプロでケリをつける前に発動できてしまってる」

 

緑谷「それでまた時間が長くなったとしても、精々エンジンがかかるまで3秒かかるかかからないか…」

 

緑谷「それまでに轟君が凍結できるかがかなり鍵だよ」

 

拳藤「…………へぇ…………」

 

拳藤「もしさ、上鳴が轟の凍結避けたらどーすんの?」

 

拳藤「そん時は轟の負け?」

 

緑谷「……そうだね…」

 

緑谷「僕の読みが正しければ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴方の志望動機は何ですか?』

 

上鳴『………』

 

(……返答なし、と)

 

(見込みなしかな。動機でオールマイトが〜はもうかなり聞き飽きたよ。もう少し凝ったの考えな)

 

(まぁ面接がボロボロでも成績が良ければ或いは…)

 

上鳴『救けたい』

 

『?』

 

上鳴『救けたい…友達(ダチ)がいるんです!』

 

上鳴『そっ…そいつトラブル遭って今入院してるんスよ!』

 

上鳴『元々病弱?だったのか知らねぇけどなんだ…いわゆる植物状態で』

 

上鳴『何言ってもちっとも笑わねぇしちっとも悲しまねぇ…です』

 

上鳴『だから俺もオールマイトみたいになって…』

 

 

上鳴『()()()()()()()()()()()()()()……!!』

 

『……』

 

(今作ったアドリブジョークか?にしては出来すぎてるし……)

 

 

(随分と気が込もってるじゃないか…)

 

 

 

 

 

 

 

 

ダダンッ!!

 

 

轟君の頭上を飛び越え、即座に彼の背後に回り込む上鳴君。(じめん)に着地すると共に強く踏み込み、轟君の背中に飛びかかる、

 

轟(後ろ…!?)

 

耳郎「完全に意表を突いた…!」

 

芦戸「ファイト〜!上鳴やっちまEEE!!」

 

 

彼の足音でようやく轟君が後ろにいると気がついたが、時すでに遅し。もうその時には上鳴君は轟君の間近にまで迫っていており、右脚を後ろに振り上げ攻撃の態勢は完全に整えられていた。

 

 

上鳴(ありがとよ轟…お陰でスゲェ()()()()()()()思い出しちまったよ)

 

上鳴(お前とアイツに勝って、1番になれば…俺は少しだけ夢に近づける気がするよ!!)

 

 

 

上鳴(()()()を救ける…その道を1歩前進できる筈なんだ!!)

 

 

後頭部近くにまで上げていた右脚を勢いよく前へ蹴り上げる。轟君が上鳴君の位置を確認しようと首を左に回し振り返ったその瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

バギィッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(偶々、夜遅くに起きてしまったのだ)

 

(もう既に皆が寝静まっている筈の2時頃に)

 

(特別尿を足したかったわけでも無く、なんとなく起きてしまったのだ)

 

(今思えば、無意識に只ならぬ狂気を身体で感じ取っていたのかもしれない)

 

(隣にお母さんがいない。もうこんなに遅い時間なのにまだ寝ていないのか)

 

(ひとまず寝室を出て台所へ向かうと何やらやかんで水を沸く音が耳に入ってくる)

 

(この時間に誰が火を使っているのだろう。興味本位でそれを覗きに行くと……)

 

 

 

『お母さん…私ヘンなの…もうダメ』

 

『子供達が…日に日にあの人に似てくる…』

 

轟『?』

 

(お母さんがどうやらおばあちゃんと電話で話していたようだ)

 

(会話はボソボソと小さい声で呟いているだけで細かくは聞き取れなかったが……)

 

 

(…ひどく、悲しそうな声で喋っていた事だけはよく覚えてる)

 

 

『焦凍の…あの子の左側が…』

 

『時折醜く思えてしまうの』

 

ボコボコッ!

 

轟『!?』

 

 

(お母さんの精神とシンクロするかのように水が激しく噴き出していた)

 

(一瞬やかんの火が危ないよと言おうとしたが…)

 

(それよりもお母さんの言っている言葉の意味が気になって仕方がなかった)

 

 

『私…もう育てられない…』

 

『育てちゃ…ダメなの』

 

 

(育てちゃいけない?何を言っているんだ?自分達を見限るのか?)

 

(何があったかは分からない。でも心配だ。助けてあげたい)

 

(そう思ってお母さんに呼びかけた)

 

 

轟『お…母さん?』

 

『…』

 

クルッ

 

轟『っ!!』

 

 

(振り返ってお母さんが俺に見せたその顔は…)

 

(想像を絶するものだった)

 

 

 

ガシッ………

 

 

 

 

 

(翌日、気づけばお母さんは姿を消していた)

 

 

轟『お母さんは…?』

 

エンデヴァー『お前に危害を加えたので病院に入れた』

 

エンデヴァー『全く…大事な時だと言うのに…』

 

轟『……』

 

 

(大事な時?お前はお母さんの話を何も聞かずすぐに追い出したのか?)

 

(お前ににとってお母さんは何なんだ?)

 

(お母さんが壊れる事よりも打倒オールマイトの方が重要なのかよ)

 

 

 

(ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな)

 

 

(お前のせいだ…このクソ親父のせいで、俺の家庭は完全に崩壊した!)

 

(……いや……)

 

 

 

 

轟『う…ぁ…お゛え゛!!」ドバッ…

 

ドサッ

 

エンデヴァー『立て。こんなものではオールマイトはおろか雑魚敵にすら…』

 

『やめて下さい!まだ五つですよ…』

 

エンデヴァー『もう五つだ!邪魔するな!!』

 

バシィッ !

 

轟(お母さん……)

 

 

 

 

 

(俺に力が無いから)

 

(お母さんを護るだけの力も無い俺自身の責任なんだ)

 

(左眼の火傷(この傷)は…証だ)

 

(昨日までの自分の非力さをその眼に焼き付け、刻み込み)

 

(今日から俺はお母さんと共に、強くなる…っ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上鳴「……なん…で」

 

轟「……」

 

 

 

上鳴君の渾身の蹴りの一撃は確かに轟君の左頬にヒットした。

 

だがそれは轟君をダウンさせるには至らなかった。それどころか、轟君は立ったまま微動だにせず彼の態勢を崩す事すら上鳴君の攻撃ではままならなかったのである。

 

マイク「…な、何が起こった…」

 

マイク「なんで轟はあの蹴り食らって何ともねぇんだよ…モーションさえ見えないキックだってのに」

 

相澤<…ありゃ何ともないというより…()()()()が正しいわな

 

マイク「え?」

 

悟空「…轟の足元見てみな」

 

 

悟空さんの言う通り轟君の下半身に注目すると……

 

彼の両脚はステージと同様に凍らされており、見事に地面から離れないよう固定されている。

 

 

砂藤「…はは。そりゃコンクリと接着してたら吹っ飛びようが無ぇわな」

 

常闇「音速にも引けを取らない速度の蹴りの衝撃を食らって壊れない氷も中々だが」

 

常闇「諸に蹴りを受けた轟が顔色一つ変えないのが何より恐ろしいな」

 

耳郎「…か、上鳴…」

 

 

 

 

轟「…お前の技のデメリットは知ってたよ。それを誤魔化すために1回戦の後無駄に多く使用してたのもな」ガシッ

 

上鳴「っ…!?」

 

轟「お前の事だ。確実性を求める為に速さで挑もうとしたみてぇだが…仇になったな」

 

轟「無難に最大電流無差別放電を使ってりゃこんな事にはならなかったかもしれねぇけどな」

 

上鳴「おいおい…まだ5秒はコレ継続でき

轟「遅い」

 

 

今しがた轟君が右腕で捕らえた右脚首から上鳴君の身体を凍結し始める。勿論身動きが取れる訳も無く…

 

 

上鳴「は…はは……時間切れ(タイムアップ)、か…」バキバキ…

 

 

マイク「があああっ!最速王、遂に敗れる!!決勝戦への切符勝ち取ったのは…くぅぅうっ!!」

 

マイク「轟焦凍!!!!」

 

轟「…」ワァァァア…

 

完全に上鳴君を氷漬けにし、圧倒的な差を見せつけた轟君。

 

勝ちを手にしたにも関わらず無愛想な表情なのは彼にとってこの勝利は些細なものでしかない為か…

 

或いは……

 

 

 

 

 

轟(緑谷…折角ここまで来たんだ)

 

轟(こんなステージで負けちゃ承知しねえぞ?)

 

轟(首長くして待ってんぞ)

 

スタスタ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドナイト「とりあえずさぁ、轟君」

 

ミッドナイト「ステージの氷溶かそっか」

 

轟「あ、やば。上鳴スマン」ピタッ

 

上鳴(こいつ後でぶっ飛ばす…)




果たして首を長くして待ったのはどっちだよって話だよ。

ハイハイ、須井化ですよぅ!

久々に書いてみたらなんと22000字以上消費していたでござるの巻。

まぁ今回も今回で重要な場面ばっかなんでしゃーんなろー!

それにしてもランドセルJKと謎のフード男って誰なんですかねぇ。多分13割方ランドセルJKはオリキャラだと思いますが。

多分この期間にめだかの学校読んでたと言えば納得する人もいるでしょう。というかその人がモチーフだしね。後正確にはめだかの学校じゃなくてめだかの投書箱だがな。

え、じゃあフードの人誰かって?

<そんな事知るか
<宇宙の悪魔さ!

<シシャモは黙って働いてロット…
<お、俺たちサボってる訳じゃねぇぞ!じっちゃ(ry

何だか外が騒がしいが気にしないでおこう。

デンジャキ(以下{+0w0-])と轟っちとの戦闘シーンとかどうでしたか?複雑な所もあったりして分かりにくかったりしなかったり…

一応{+0w0-]の家族はまだ判明してませんよね?もし登場してて性格がかーなーりー違う!だったらご指摘の方よろしくお願いします。

本当はデクと拳藤さんの開始まで行きたかったけどここら辺がキリ良しかと思って切りました。後正直3万近くまで書く余力無いっす。

後……

鉄道無駄にdisって申し訳ありませんデシタァァァ!悪気があった訳じゃないんです!というか別に嫌いじゃないわ!!アレ!物語の都合上?だからしゃあなし!

<フゥ、シャザイオワタァ…(´・ω・`)

というか今回量多かった分雑になったとかありましたか?これ正直大部分訂正入れるとなるとかなり精神的にクル…



次回もそれなりに多くなるのが予想されますので気長にお待ちください。まぁ多分番外編挟んでだけどね。

後明日中言ってちゃんと期日から日が変わるまでに投稿できたよ。成長したんだよ褒めて褒めて(≧∇≦)




<まるで成長していない…
<という訳だぁ!






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第36話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

準決勝前半戦は轟少年の冷ややかな熱い闘志が僅かに上回り、見事彼は決勝戦へと駒を進める事となる。

一方、緑谷少年は拳藤少女の助言により、ある決意を固めるのだが…?

更に向こうへ!PlusUltra!!!



Yeahhhh!久しぶりのナレーションだったが失敗しなかったぜ!!
…え?まだ録音終わって無かったの?


マイク<決勝戦1人目に上がったのは轟焦凍ーー!!エンデヴァーの血筋を引くだけあってかなりの実力派!!

 

マイク<このまま体育祭優勝なるかぁああっ!?

 

 

部屋に設置されているスピーカーから流れてきたアナウンスは上鳴君と轟君の試合が終了したという内容であった。

 

まぁ、なんとなく予測はしてた。皆個性のインパクトで忘れがちだが凍結を使う際、轟君が個性を解除をしない限り彼の脚も地面と一緒に凍結している筈なのだ。そりゃ脚を千切れる位の力が無けりゃビクともしませんわ

 

大方後ろに回り込んでケリいれたけど効果無しで終了と言ったところだろう。上鳴君が全快の時か、或いは無差別放電を使ってたならまだ話は別なんだが…

 

さてと……ここでまた更に1つ問題が生じたぞ〜

 

 

 

拳藤「ほんじゃ、私等も一丁行きますか

緑谷「待った待った待った!」

 

緑谷「あれから結局どっちが1番のゲートを通るか決めてないじゃないか」

 

拳藤「え、決めるの面倒だから一緒のゲート通っちゃダメ?」

 

駄目に決まってるだろ。

 

 

困ったな。つい話に夢中になって部屋から出るタイミングを逃してしまった…とは言え試合が始まるのは今から10分近く後の話。歩いて第1ゲートに向かっても十分間に合う時間なのだ。

 

 

緑谷「い、いやぁ控え室はそりゃ供用してもギリギリセーフかもだけどね?」

 

緑谷「入場する時に同じゲートから2人同時に来られたらそれこそ面倒な状況になりかねんからさ…」

 

拳藤「別に時間内にステージ入場済ませりゃいい話だろ?」

 

拳藤「そんな小さな事気にする程雄英(ウチ)の先生はちゃっちい人達じゃないよ」

 

緑谷「だ、だとしてもね!?ぼ

ガシッ

 

 

話している途中で突然拳藤さんが僕の手を掴み、ドアの方へ身体をグイッと引っ張っていく。またもやボディタッチですか…三度目の正直は本当に嘘つきだよね。

 

 

拳藤「要は先生に怒られるのが怖いんだろ?心配すんなって!」

 

拳藤「いざとなったら私がかばってやるからよ」

 

緑谷「い、いやいや!?庇うとかそういう話をしてるんじゃ…」

 

拳藤「はいはいそれじゃ出発ー」ガチャ…

 

緑谷「ぃぇぅぇぁぉぇえええっ!?」ダダッ

 

決死の説得も虚しく、半ば強引的に拳藤さんに引き連れられ僕は控え室を後にした。もう抵抗する気力も起きないよくそったれ…

 

べ、別に手を繋いで歩くのが死ぬ程嫌って訳じゃないけどさ…てか寧ろ嬉しいんだけどさぁ…

 

…死ぬ程恥ずかしいです…

 

 

結局、拳藤さんに導かれるがまま大人しく彼女の後をついていく他無かった訳だが…

 

 

 

緑谷「あ、あのさ…せめて入場ゲートを通る時は手を離した方が…」ダダッ

 

拳藤「別に気にする事無いだろ?何だ?それとも私と手を繋ぐのが嫌

 

 

 

ドッ

 

 

 

 

ドサッ

 

拳藤「いったたた…」

 

緑谷「け、拳藤さん?大丈……?」

 

「あ、あのっすみません!け、怪我ぁあぁりませんか!?」

 

 

廊下の角を曲がった直後、どうやら今僕達にペコペコとお辞儀しながら謝罪している男性とぶつかってその拍子に拳藤さんが転んでしまったらしい。

 

後方へ倒れたので僕自身には何の影響も無かったが、急に崩れ落ちたもんだから慌てて彼女に近寄って負傷したかどうか、様子を確認した。

 

幸い怪我は無かったようで安心した。

 

…でだ。この喋り方といい、皆はこの男性をどこかで見覚えがあるんじゃないかと思う。

 

 

 

どう考えても前回のコートさんですね。

 

 

パッと見ての初印象は概ね前回の説明通り。全身灰色のコートで覆って暑そうだなぁというのと話し方がオドオドとしてて僕と似ているなぁ…位かな。

 

いやでも、その()()()()()()()っていうのはかなり的を射ているんだよなぁ。この約1年間、【気】に関する技術を習得してからそれなりに多くの人間の【気】を感じてきたし、自分自身もどういう感じの【気】を持っているのかも一応理解はしている。

 

 

この人から感じる【気】は今まで感じ取ってきた【気】の中で最も僕に近い。

 

表現が難しいし、僕の語彙力じゃとても説明できないがこの人の【気】を認知した瞬間僕が感じた事をあえて一言で言うのであれば……

 

 

()()()()()

 

 

 

そんな風にコート男の様子をじっくりうかがっていると、唐突に彼が喋り始める。

 

「え、ぇっと…貴方達は確か、B組の中で唯一ベスト4にまで上りつめた拳藤さん……と………」

 

「もももぉもっもも、もしかして君は緑谷出久君ですか!?」

 

緑谷「は?」

 

「いやはや!お初にお目にかかります!私あるヒーロー事務所に勤めている者なのですが、是非とも君と一度お話ししたいと思っていたのですよ!現在の所、午前中の予選・本選、そして午後のトーナメント戦3競技ともに全て圧勝で決めていて…あっ!特にさっきの切島君との闘いは胸熱でした!スゴイ迫力ありましたし、スゴイ白熱してましたし、えと……とにかく色々スゴかったです!」

 

緑谷「…ぇ…ぃは」

 

来ました、褒めづくし機関銃(マシンガン)。だが僕自身この速度には慣れてるから効果は無いし、後全ての競技で圧倒してるとか言ってるが危うい場面の方が多いからな?ほらもう1つツッコミが見つかった。

 

所詮子供だましの胡麻擂りだな。大方スカウトしたいから褒めに褒めまくってるんだろうが、そんなあからさまな煽て方じゃ僕の心はちっとも動かせないぞ。

 

 

 

 

 

「貴方の活躍は先生方からよく聞かせてもらっています!あのイレイザーヘッドさんと小競り合いを展開するも一歩も引けを取らなかったと言う噂では無いですか!プロ顔負けの高校生なんて居ませんよ普通!?しかもUSJで敵襲来があった時にはかなり奮闘していたと聞きます!様々な敵が数十人も一斉に襲ってきたにも関わらず、一寸も恐れずに立ち向かったそうじゃないですか!?いやぁ流石は今年の雄英入試で派手にロボ・インフェルノをワンパンした【0P殺し】の異名を持つだけあります!伊達に実技試験で100P以上の成績を残してませんね!感激です!」ペラペラ…

 

緑谷「い、いやいや!?過大評価ですよ〜。自分がした事は貴方が仰る程大した事ではありません!だだだだっだっってドッスン?0Pを倒したのは結果的にって話で仮想敵の真下にいた女の子が潰れそうになったから助けただけであって…そもそも担任と喧嘩したのは誇るべきような事ではありませんし、大体情けない事にUSJから帰ってきた時は即病院行きの重傷モノであったものですから、あまり活躍は出来ませんでしたし…寧ろ酷い事ばかりしてると言うかなんと言うか…」ペラペラ…

 

拳藤「……」

 

「そんな事ありませんよ。私は貴方のその常軌を逸する身体能力!個性の技術!!」ペラペラ…

 

「何より貴方のその正義に対する執念に心を揺るがされた!私は君の心技体全てにおいて買っているのですよ!」ペラペラ…

 

「非常に素晴らしい才能を持っている!貴方は!!」ペラペラ…

 

緑谷「そ、そんなぁ、恐縮ですよもうっ!」

 

 

くっ…見事に術中にはまってしまった。前回あんなシリアスな雰囲気出しながらグダグダと長話してたのに全くもって説得力が無いじゃねーか!ベタ惚れやないか!

 

で、でもよく考えてもみろ?この人入試とかUSJの事とか今までの出来事全て混ぜこぜでかつ簡潔にまとめて発言してるんだぞ!?こんなにたくさん褒め叩かれれば誰だって照れるって!

 

敢え無く彼の称賛責めに堕とされてしまった僕は完全にペースを取られ、ひたすら雑談をし続ける事に…トホホ。

 

 

「君には是が非でも職業体験で私達の事務所に来てもらいたいものです…」ペラペラ

 

緑谷「い、いやぁ…お気持ちはありがたいのですがその…まだスカウトさえ決まってないこの状況で一概には決めつけられないというかなんというか……」ペラペラ

 

拳藤「…おい、デク?」

 

「素晴らしい!他人の発言に流されず自分の意見を主張できるのは自己意識が高い証拠ですよ!益々君が事務所の相棒(サイドキック)として欲しくなりました!」ペラペラ

 

緑谷「え、試してたんですか?嫌だなぁ意地悪で…まぁ試される位の信頼があると思うと尚更嬉しいけど」ペラペラ

 

拳藤「おーい。デークー」

 

「あわよくば実際に君を一目見てみたいと思って控え室前に来た甲斐がありました。競技終わった後すぐにステージに行っても居なくなってたので今日1度も会えないかと思って冷や冷やしてましたよ〜」ペラペラ

 

緑谷「そ、そうなんですか?いやぁ光栄だなぁ…貴方のようなヒーローに認めてもらえるなんて………?」

 

 

 

夢中に話してる内に1つ、結構重要な事に気がついた。うっかりしてた、この人がどういうヒーローか知らないじゃん。そりゃ今の台詞に違和感感じるわな。

 

コートで全身覆ってるから特徴とかも分からないし、口調では流石に特定できない。せめてヒーロー名さえ分かれば脳内にヒットするかもしれないな…

 

………というかまずそもそも相手の名前聞かない時点で失礼極まりないな、おい。

 

今ならまだ遅くないと思い、コートの男性に名前を尋ねようとすると…

 

 

緑谷「あ、あの…そういえばあなt

「いえいえ!恐縮でございます!緑谷君のお陰で今日は有意義な時間が過ごせたというものです!あ、あの出来ればっ!私と握手して下さいませんか!?」

 

 

あーコレは普通に出遅れたパターンですわ。この手の会話は1度途切れると話が再開しづらいからなぁ。結局、僕の質問は勢いに流され名前を聞くタイミングを完全に失ってしまった。

 

まぁでも、別に握手した後聞いたって問題ないからな。少し大げさに考え過ぎたか。

 

コートの男性が右腕を伸ばしこちらに手を差し出すのを見計らうと、僕も左手を前方へゆっくりと伸ばしていく。

 

僕の手が彼の身体に触れる

 

 

 

 

 

まさにその寸前だった。

 

 

 

 

マイク<えー続きまして準決勝第2試合、緑谷vs拳藤の対決でございます

 

マイク<両者共にまだ来てねーから至急ステージにカモン!!!

 

マイク<試合開始まで残り3分切ったぞ!

 

 

廊下の壁にあるスピーカーからまたまたマイクの放送が…って何!?もう7分位話してたの!?いつまで経ってもやって来ない僕達に痺れを切らして招集をかけたのか……やばっ時間時間…

 

今の時刻を確認する為に前へ出していた左腕を自分の身体の方へ引き戻す。急いでポケットの中から携帯を取り出そうとすると

 

 

 

ガシッ

 

拳藤「すいません!自分等この後すぐに試合あるんでっ失礼します!!」

 

緑谷「うお!?」

 

「ぇ…ぁちょっと!?」

 

 

早口でコートの男性と挨拶を交わし、拳藤さんは僕の右腕を引っ張りながらその場を走り去っていった。

 

別れる祭にヒーローさんが何やら言いたげな様子をしていたが、まぁそんな事程気にする程の余裕は無い訳で気にも留めずそのまま入場ゲートへ駆けていった。

 

緑谷「ご、ごめんごめん…つい会話に没頭しちゃって」

 

拳藤「ごめんもへったくれも無ぇよ!デクが悠長に話しちゃってたからお客さん達待たせちゃったじゃんもう!」

 

緑谷「面目無い……」ダダッ…

 

拳藤「………」

 

拳藤「ま、いいよ。今回は何とか間に合ったし」

 

緑谷「う…ん」

 

 

 

さっき握られた時よりも掴み方がやけに乱暴だった事と、声が少々荒げていた事から僕は今、拳藤さんが苛立っているとなんとなく察した。

 

なんとなくも何もそりゃ何分間も棒立ちにされれば怒るのは当然だと思うのだが、さっきまで笑ってばかりだった彼女が突然感情を表に出したものだからつい驚いちゃって…

 

後さっきまで僕の顔をたまに覗きながら話しかけてたのに今は俯いて下を向いたままだからなぁ…相当機嫌損なわせちゃったのかな。

 

少し申し訳なさそうに思いながら入場ゲートへ急いで向かっていく。

 

 

 

 

 

今だからこそ、言える事だけどさ、

 

 

()()()()()()()()()()()()()()と思うよ。

 

 

 

 

コート男について、謎が深まるばかりだったが…結局今でもあの人が一体何者だったのか見当もつかない。

 

 

 

 

何故なら、再会の約束は果たされる事なく彼との会話はこれっきりに収まってしまったのだから。

 

 

 

 

別世界だと色々とこの方にお世話になるとかならないとかだが……

 

……まぁ、それももう少し後に話すとしよう。

 

 

 

 

 

「………チッ。プレゼント・マイクめ…」

 

「後少しだったのを妨害されてしまった」

 

「まぁ、また職業体験の時なり、インターンの時なりに見ればいい話…か」

 

「それよりも気になったのは…」

 

ヴー、ヴー、ヴー…

 

「ん、誰からか電話が…」ピッ

 

「……()()()から、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方観客席はというと、僕達が入場するのを今か今かと待ち構えている状況で周りの民衆は次の試合…つまり僕と拳藤さんの闘いについて議論し合っていた。

 

 

「第2試合楽しみやなぁ。確か緑谷クンと拳藤ちゃんなんやろ?」

 

「果たしてどっちが勝つのやら」

 

「正直さっきの前半戦が実質決勝戦みたいなもんだと俺は思うけどねー」

 

「瞬殺電気と瞬殺氷だろー?聞きゃこれから闘るのは両者とも格闘戦専門って言うじゃねぇか」

 

「近づいた途端試合しゅーりょーって…んなのただの詰みゲーじゃねぇかよ」

 

「でも緑谷クンやってよー分からんスペシウ○光線もどき使うやろ?」

 

「触れるのがアカンやったら距離取って叩けばええんとちゃうん?」

 

「馬ー鹿。そんな悠長に遠距離攻撃する余裕があるのなら1回戦でセロハンが場外勝ちに出来てたし、或いは2回戦でインゲニウムJrがトドメ刺してたろうよ」

 

「奴のおっそろしぃ所は何よりその個性の発動の()()にある。瞬きしたと思えば一面氷漬けだからな」

 

「余程鍛錬してきたと見える。あんなの一朝一夕にできる所業(ワザ)じゃねぇよ」

 

準決勝(ここ)でそばかすが勝とうとおっぱいが勝とうとどの道瞬殺されるだけ」

 

「こりゃ予想以上にあっけない結末になりそーだぜ。体育祭」

 

「せやろか…ウチにはとてもそうは思えへんけどなぁ…」

 

 

 

 

「……後拳藤ちゃんをおっぱい呼ばわりはやめときや」

 

「間違っちゃいねぇだろ間違

 

「ウオオオオッ!変わらずスゴイ熱気っス!!」

 

「男と女が小細工無しの正真正銘拳と拳のみでの語り合い!!」

 

「くぅぅ…これが青春っスか。熱すぎて火傷しそうっスよ!」

 

 

「………めっちゃ暑苦しいのが隣におるんやが」

 

「格好が制服だったし学生団体様か何かだろ。態々遠いところからご苦労な……」

 

「?どないしたん?」

 

「……いや、何でもねぇ」

 

 

 

「暑苦しー奴の被ってる帽子が()()()()()()()()()()()()()()()、ちぃと見とれちまっただけよ」

 

 

 

だが僕らの到着があまりにも遅いように感じていたA組・B組(クラスメイト)達はそんないそいそと待ってなどいられる筈がなかった。

 

ある人は地面に脚を踏み付けは離しを繰り返し、

 

ある人は髪の毛をグシャグシャにかき回し、

 

ある人は爪を口に咥えてカリカリとかじり、首を長くして待ち続けていた。

 

 

切島「おっせぇな緑谷…後1分で試合始まんぞ」

 

麗日「どしたのかな。もしかしてさっきの試合のオペまだ済んでないんじゃ…」

 

憂わしぎな表情で第2ゲートを見つめる麗日さん。そんな彼女をなだめるように切島君は話し続けた。

 

切島「んな事ねぇだろ。轟と上鳴の試合が早く終わったからって、あの程度の痣で治療に数十分かかるなんてなぁ…」

 

切島「あり得ねぇあり得ねぇ」

 

芦戸「分からないよー?もしかして見た目以上のダメージどころか、かなりの致命傷だったりして」

 

切島「おいおいそりゃお門違いだぜ。いくら何でも過大評価だ、俺ァそこまで健闘してねーよ」

 

笑いながら茶化す芦戸さんの様子に切島君は直様ツッコむ。芦戸さんなりのフォローと捉えた為かその時の彼はとても複雑な表情をしていた。

 

一向に来る気配が無い僕と拳藤さんを皆が皆不審がっていたが、それ以外にも不安要素かある生徒も中には居た。

 

常闇「…緑谷の奴、かなりの消耗戦になりそうだな」

 

尾白「ああ。ただでさえついさっき切島とあんなに激しい攻防戦を繰り広げたばかりだ」

 

尾白「これで勝ち進めば、すぐに決勝戦」

 

尾白「休憩時間があるにしろ、これじゃ2、3試合連続で闘ってるのと何ら変わりないぞ」

 

瀬呂「おいおい…16人中最悪のクジ運じゃねーかよあいつ」

 

緊張の余り、震えている肌身を優しく撫り、高ぶる感情を抑えようとする蛙吹さん。

 

蛙吹「緑谷ちゃん…」

 

マイク「来ねえなぁ…2人共。一体何道草食ってんだか」

 

悟空「道路に草なんて生えてねぇぞ。マイク」

 

マイク「お前はとりあえず義務教育を1度受けろ。話はそれからだ」

 

 

…とまぁこのような風にピリピリとした雰囲気が試合開始1分前まで展開されていた訳だが、とりあえずは第2ゲートの方に目を向けて欲しい。

 

<チョッ…たい!…って拳籐さん一旦ストップ!

<だーもう時間ギリギリで何の躊躇をしてるんだ己は!

 

よく耳を済ますと2人の生徒の話し声が聞こえてくる。何故会話が聞こえるかはひとまず置いといて、その場にいた観客は声のする方へ視線を変える。

 

「お、この声は…」

 

「ふぅ…どうやら間に合ったみたいやなぁ」

 

マイク「ウオオオオ!どれだけ待たせてくれりゃ気が済むんだこのお馬鹿さん's2人組は!!」

 

マイク「さぁスーパーお待たせいたしました!準決勝、熱い後半戦を繰り広げる2選手の登場……」

 

「……」

 

麗日「……ほえ?」

 

蛙吹「…げこ…」

 

 

 

 

 

緑谷「た、タンマタンマ!拳籐さん?まだ今なら間に合うから!離して!後痛い!!」ギリギリギリギリ…

 

拳籐「間に合うも何も無いわ!お陰で恥かいちゃったじゃんもう…こんな大民衆の中で」グイグイ…

 

緑谷「と、とりあえず腕引っ張るのは止めてええええ!?」

 

 

ここに来てようやく第2試合に出る2名の選手がステージにその姿を現した。

 

何とか開始前に間に合ってくれて良かった……そうホッとするのも束の間、この現状だ。

 

 

 

男女2人が手を取り合い、仲良さげに一緒のゲートから入ってくる始末である。しかも時間ギリギリになって来やがった。

 

 

 

今変な妄想をした人、先生怒らないから後で職員室ね。

 

 

 

マイク「えー。コホンコホン…」

 

マイク「ゲホッ!!!」

緑谷 拳籐「「」」ビクッ

 

マイク「ウェ…うん」

 

マイクは咳払いを2、3度しながら深刻な顔つきでこちらに問いかける。

 

マイク「あー、あのね。チミ達」

 

マイク「アレだ。俺…おじさん優しいからさ、遅れた理由とかは強要しないけどさ…これだけは言わせて」

 

マイク「そういうのは、せめて高卒なってからヤッて?」

 

緑谷「」

 

一気に会場の空気が冷たくなってしまった。アレ、やべえ…震えが止まらない。体感温度的には暑い位なのになんで身体が凍えてるんだろハハ。

 

何だろう。大して重大な事でも無いし、というか下らない事の筈なのに…

 

なんで敵連合襲撃(クラス)の危機に直面してるような感覚を持ってるんだろう自分は。

 

 

何でもいい。まずは一言お詫びを入れて、さっさと試合ムードに戻そう。

 

そうするべきだと僕の野生的本能が53回位叫びました。

 

なので僕が大声を出す為に口を開こうとした瞬間、

 

緑谷「え、あn」

 

拳籐「あの、少々お時間くれないでしょうか。マイク先生…」

 

拳籐さんが僕の口を手で塞ぎ、マイク先生に弁明する余地を与えてくれるよう要求してくれた。

 

 

 

 

まずい!やめてくれ!それ以上やると恐ろしい事態になりかね

マイク「ん、まぁいいよ。で?何の時間?」

 

拳籐「遅くなってしまった事について、少し理由を説明したいと思いまして」

 

マイク「…お、おー、けー…ぷぷっ」

 

 

 

ダァァァそれはアカンヤツだぁぁ!やめろおおおっ!!

 

マイクがあまりの出来事に現実受け入れてないよ!?スゴイ失笑してますよちょっと!?悟空さん!何とかしてくださいよ!

 

悟空「………」

 

 

 

 

悟空「なんだなんだ?あいつらエッチな事でもしてたんかぁ?」

 

アンタもかぁぁぁ!ってか悟空さんそっち方面の知識あんの!?なんで!?確かに息子とか孫とか居るとか聞いてたけどさ、そりゃ無いよ!!?

 

お陰で状況が悪化してるわ!!

 

緑谷「ね、ねぇ…このままだと試合どころの話じゃ……」

 

拳籐「まぁまぁ、元はと言えば私が部屋間違えたのがアレだったし」

 

拳籐「上手く誤魔化してやるよっ」

 

とても頼もしい位輝きのある笑顔になっていますがとても誤解を解けるとは思えないんですがそれは…

 

後誤魔化すって…何をどう誤魔化すんですか拳籐さん!?おーい!?

 

拳籐「…えーと?この度はステージ入場までの時間が長引き試合開始の時刻が遅れてしまった等で、観客や職員の皆様にご迷惑をおかけして申し訳ございません」

 

拳籐「実は私今し方廊下で転んで足首を挫き、歩けない所をデッ…緑谷君が控え室2の所まで運んで下さいました。一応今は治りましたが、念の為という事で私と一緒にここまで足を運ぶに至りました」

 

拳籐「なので緑谷君は悪くありません。遅れて来たのもすべて私のせいなのです。然るべき罰は私が受けます。私を責めてください」

 

マイク「…………」

 

悟空「……」

 

「………………」

 

 

 

マイク「…えっと……拳籐、sun?」

 

拳籐「はい、なんでしょうか」

 

マイク「ナンデホケンシツにイカナカタノカナー?」

 

拳籐「………………」

 

拳籐「ほ、保健室が遠かったから、です」

 

 

 

気がつけば観客席のあちらこちらからざわざわと嫌な会話が耳に入っていた。

 

 

「うわー…密室で男女2人ってコレは確定だゾ」

緑谷「」グサッ

 

 

「へー。やるじゃんあの根暗野郎、少し素質はあるって期待してたんだよなぁ」

 

「そないな訳無いやろ!いくら年頃の男の子や言うても緑谷クンはアブノーマルちゃうで!」

緑谷「」グサグサッッ

 

 

上鳴「流石兄貴!大衆の前でも破廉恥を平然とやってのける!」

 

峰田「そこにシビれる!あこがれるゥ!!」

 

耳郎「シビれねーし憧れねぇわ!!」

緑谷「」グサグサグサッッッ

 

 

ざわ…ざわ…

「…」ざわ… ざわ…

ざわ…

ざわ…

 

拳籐「……」

 

拳籐「ホラ、何とかなったろ」

 

緑谷「何とかなってないよっ!?」

 

緑谷「というか最悪だよ!!今の台詞聞いた人全員に変な誤解招いちゃってるよちょっと!?」

 

拳籐「誤解?何のだよ」

 

緑谷「ホラ…アレだよ……その」

 

そんな同学年の女子に堂々と言える事な訳ないだろ畜生…後何でこういう系統は鈍感なんだ拳籐さん!?

 

最早正常な判断などする余裕も無かった僕にできる事と言えば大声で何かを叫ぶ他ならなかった。

 

何とか拳籐さんの目を覚まそうと奮闘を試みる。

 

緑谷「とにかく変なモノは変なんだよ!!」

 

緑谷「Hが付くくらい変なモノだよ!」

 

拳籐「変ってそもそも最初のスペルHじゃん!」

 

緑谷「そーいう事話してるんじゃないんだよ!!」

 

拳籐「じゃあ何だよ!言いたい事あるならハッキリ言いなよ!」

 

緑谷(ハッキリ言えねぇから言ってねぇんじゃねぇかよォォッ!?)

 

この話の噛み合なさにはもう救いようが無かった。地味に大衆の話し声が段々と大きくなっているし…

 

まずいです。このままでは体育祭とかスカウトとかそんな場合ではありません。退学です。しかもドが付くほどの変態というレッテルを張られて追い出されてしまいます。将来的に死んでしまいます。

 

事態の収拾もつく気配すら感じられないこの状況を何をどうすれば凌げるのでしょうか。あ、よーし。こういう時には円周率を数えればでぇじょうぶだみたいな事をばっちゃが言ってた(気がする)から試してみよう

 

緑谷「えーと、π=3.14159265358979323846264…」ガシッ

拳籐「ゴチャゴチャ言わんで早よ位置につけぇぇえっ!!!」ブオッ

 

緑谷「ぅおあああいっ!?」

 

 

 

「え」

 

 

マイク「え」

 

 

オールマイト「おっ」

 

悟空「おー高ぇ高ぇ」

 

 

 

 

それぞれ雑談に勤しんでいた観客達は一斉に目線を選手の方へ戻していく。

 

 

いや…そりゃ……

 

 

いくら筋力があったって15の女子が同じ歳の男子を片手で軽々と数十m投げられる訳ありませんって……

 

 

 

 

緑谷「わぶ!?」

 

緑谷「…ーてて……?」

 

 

投げられて程なく、背中にドシンと大きな衝撃が走った。痺れる背中を摩りながら立ち上がって後ろを振り向くと……

 

 

緑谷「…あ、あれ……1番…ゲート?」

 

 

マイク「お、おいおい…ゲートからゲートまでどの位距離あると思ってんだよ…」

 

悟空「ざっと100」

 

相澤<惜しい90mです

 

 

 

拳籐「さっきから何だか浮かない顔だったりキョドッてたり…混乱してて」

 

拳籐「何があったのかさっぱり分からんけどさ」

 

拳籐「ま、こいつは()()()()()()試合(ゲーム)。一旦細かい事は退かして、気詰めず行おうや」

 

軽く肩や肘を伸ばしながら拳籐さんがゆっくりとステージへ上がっていく。

 

静まり返ったと共に何故か突然重苦しくなった空気にある違和感を感じながら僕も彼女の方へと近づいていった。

 

セメントス「さっきは選手間の距離がかなり長かったが…」

 

セメントス「今回は逆に狭くなってるな」

 

後ろに下がってると急接近した時逃げ場が無くなるからな…第一、この娘はまだこれっぽっちも本領発揮していない。距離を無駄に置いとくなら自分から攻撃受けに行った方が対処はしやすい。

 

まずは2、3…いや4、5発位攻撃流して対策を……

 

拳籐「アレ、結構前に出ちゃってるけどいいの?当てやすくなるぞ」

 

緑谷「…それは君だって同じじゃないか。相手との距離が短いって事は己敵双方が受ける影響は大きくなる」

 

緑谷「メリットも何も、+ーゼロだよ」

 

拳籐「ほーん」

 

マイク「……え、ナニコレ始めちゃってE感じの雰囲気?」

 

ミッドナイト「一応言うけど、開始予定時刻からもう2分」

 

相澤<早よ

 

悟空「って言ってっぞ」

 

マイク「な…何か重大な事柄をスルーされた気がするけど……」

 

マイク「…ま、いっか。それじゃ遅くなっちまったが始めるぜ準決勝後半戦!」

 

ワァァァア…

 

 

やれやれ、一時はどうなるかと思ったけど何とか紛らわせ…たって言うのかコレ。つーかさっきから妙な事が起こりまくってて反応に困ってるって感じですよね。(とりあえず盛り上がってはいるけど)

 

マイクも困惑気味ってかさっきの聞いて引いてんのか知らないけど少しテンション下がってますよ。

 

マイク「レディィィィ…」

 

全く恥晒しもいいトコだな。一先ず強姦容疑は晴れたような晴れてないようなグレー的な立ち位置だけど…あーっとさっきの諸々については一旦忘れよ。深く考えすぎると集中力切れるし、うん。

 

この後は轟君との決勝戦も控えてるんだ。何なら最初から界王、いやでもできるだけアレは終盤まで使いたくな

マイク「START!!!」

 

 

 

 

 

スッ…

 

拳藤「……」

 

緑谷「……………」

 

 

は…?

 

 

 

拳藤「だから言っただろ?」

 

 

拳藤「 ま え に で す ぎ だ っ て 」

 

緑谷「マジでs

ズドォォッッ!!!

 

 

 

 

 

 

ズズズ…

 

緑谷「……く…ぅおぉぉぉ…っ…」

 

ズズッ……

 

「………」

 

緑谷「…ひ、ひゅぅ…」ガクガク…

 

ドサッ

 

緑谷「.い、いーー…」

 

 

 

 

 

 

マイク「………な、なぁおい…なぁおいさっきから一体何が起きてんだよ…?」

 

悟空「掌底打ちだ…いいカタチだぞ」

 

マイク「そそ…そりゃ分かるけども…」

 

相澤<嘘付け。見えなかっただろうに

 

相澤<…それよりも驚くべきなのは……

 

 

オールマイト「前の試合では何発もの打撃のダメージが蓄積されたのも合間って…」

 

オールマイト「だからこそ切島少年の攻撃は緑谷少年の芯に届き得たのだ」

 

スナイプ「……そういう話じゃねぇだろうよ。そもそも切島の試合でも倒れるって場面だけなら幾らでもあった」

 

13号「開始した瞬間…彼女は攻撃に出ていった。観客も、私達教員もそれだけじゃない」

 

13号「1番近くに居た筈の緑谷君にまでそれを悟られないようなスピードで、尚且つ…」

 

13号「ガードをして和らげた筈の衝撃でステージの端まで彼を押し出し膝までつかせた」

 

オールマイト「……拳藤少女、か。緑谷少年がヒーロー科兼A組のジョーカーなら」

 

オールマイト「B組の方(もう一つ)のジョーカー的存在は彼女と言うべきか」

 

 

 

 

 

 

 

たった一瞬

 

そこで何が起こったのか。

 

そんなの答えはシンプルだ。彼女に()()()()()

 

 

自分の脚は未だにプルプルと震え続けている。だが脳無を目前にして感じたモノとは感覚。また違った…恐怖というよりはまた別の。

 

いつから動いていた?スタートした後一体コンマ何秒で僕に攻撃を繰り出していた?さっき開始の合図が聞こえた瞬間、攻撃する手前彼女の姿が見えたけど…

 

ってか耳元で何か呟いていたぞオイ。アレ無かったら構えなんて作れて無かったぞ?イヤそもそも今ガードできたのもほぼ反射神経のお陰だけれど!全然動きが目に追いつかなかった!なんで!?確かに僕の目には彼女を捉…

 

緑谷(あ、でもおっp……面と向かうの恥ずかったから逸らしてたかも…)

 

緑谷(…あれ、また顔熱くなってる?///)

ってそうじゃない!別の話だ!

 

拳打1発で2、30m吹っ飛ばすとか女子(おなご)にできるような大道芸じゃないだろ…!?

 

他の生徒とは全く違う!パワータイプとかそんな問題じゃない!拳藤さん……

 

 

 

た、多分B組の中だと1番ツヨイ…

 

 

 

拳藤「…どしたの。俯いて」

 

緑谷「…っ…」

 

拳藤「再度言っとくけど、私デクとの試合滅茶滅茶滅っ茶楽しみにしてたんだよね」

 

拳藤「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

拳藤「ね、今は私と戦うんだから私の事だけ考えろ。ゴチャゴチャしたモンは全部取っ払ってさ」

 

緑谷「………はっ。何だそりゃ」

 

緑谷「まるで…そんな余裕も与えないみたいな素振りですけど?」

 

拳藤「分かってんなら早く立ちな」

 

 

拳藤「さっきから身体がウズウズしてるんだよ。お前と闘りたくて」

 

緑谷「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ

 

「…もしもし」

 

<あーら!Mr.0げんきしてるー?あいかわらずあいそのないこえね。

 

<でもつーかそこが【萌え】?てきな!

 

「何の用ですか。頼みますから不必要な用件で私を呼ばないでください!今日でもう153回目ですよ!?」

 

<なにいってんの〜?それはわたしとたいざいした20かかんぜんぶふくめてのはなしでしょ?

 

「平均して7、8回は電話してんじゃねぇか!!」

 

<まぁまぁそんなあつくならずに。クールなふうかくがいっきにだいなしだゾ♡

 

「で、なんですか。またポップコーン買えだとか無茶な頼みはいたしませんよね?」

 

<あー。それはいいわ。さっきのそこの警備員(イケメン)クンにメロンソーダ奢ってもらったからじゅうぶん

 

<もんだいはそっちじゃなくて()()()のほう

 

<もうはじまっちゃってるけど、ちゃんと()()()()?クロコダイン、じゃなかったクロコダイルくん。

 

「……いえ、見れませんでした」

 

<え、マジで!?きみおとくいのアゲアゲからのアクシュしっぱいしちゃたの!?

 

「1人は話をしてる最中マイクの放送で…私とした事が、オールマイトの話題に夢中になって時間を忘れてしまいました」

 

<……あ、うん。そりゃシカタナイネ

 

「ガチ目に引いてもらうのやめてもらいません?」

 

<でももうひとり、カワイイこがいたでしょう?そのコとはせっしょくできたの?

 

「……ええ。直接触りはしました」

 

「…ただ…………」

 

<……ただ?おーい。けんしょうきん8100まんベリー?もしもーし

 

「いえ、なんでもありません」

 

<…そ。ならいいんだけど

 

<で、どうすんの?つぎの標的(ターゲット)

 

「…()()()()()()2()0()()()()()()()()

 

「ただ彼らは少しピンと来るものがあったので調べただけで、これ以上ここにのさばっては流石に怪しまれるかと…」

 

<さすがもなにも、もうけっこうなかずのヒトにあやしまれてるわよ。ワニ男クン

 

<ネヅくんにはもうきょかとってるんだからドウドウとすればいいのに〜

 

「潜入調査を堂々とやる馬鹿はいませんでしょうに……」

 

「それに、今回20回も周っておいてまだ手がかりの1つも掴めてない」

 

「ここは一旦退却すべきだと思います」

 

<……それでいいならわたしもかまわないけど?

 

<やろうとおもえばギョウレツむししてなんかいでも雄英(ココ)に入れるからねー

 

<でもそれじゃれいのソバカスクンはしらべられずじまいだけどいいの?サー・クロコダイル

 

「…………あの、先程から気になっていたのですが」

 

「その呼び方やめてくれません?」

 

<………あれ?キミの二つな【アラバ○タの英雄(笑)】とかじゃなかったっけ?

 

「……」

 

<ってジョ、ジョークだよジョーク。イマはやりのパイレーツジョーク!

 

<ま、きがすんだらいつでももどっておいで。あとでくわしくきかせてもらうんだから。調査報告

 

<楽しみにしてるよ。サー・黒子クン…じゃなかった。

 

 

 

<…悪夢君♡




………えーと…その…ども須井化d
ふぉおっ!?(ガシッ

<誰だお前は…死にたいのか?

めめ、め滅相もございません!伝説の超復帰をさせていただきたく参りました…

という訳だぁ!

<どうやら死にたいようだな…(ググググッ

や、やめるんだ!それ以上気を高めるなぁァァアァ!ってか許してくださいゴメンなさい別にめだかボッ○ス見返してたとか貧○神見返してたとかアホ○ール見てたとかそういうんじゃなくてそりゃスマッシュタップはしてましたけどね!?というかこの1ヶ月何も無かった訳じゃねえんだよイデェェエェ!!!

<クズがぁ…どの面下げて帰ってきてるんだぁい?

お助けください!!7月と8月の9月分の月初めのコーナー10月の初めにまとめて公開しますから許してくださいお願いしますからァ!後更新少しずつでも早くしますからァ!後々貯まってたメッセージ返しますからァ!後々後セイ○○○さんの作品もちゃんとm
<うるさい!(チュドーン









…という訳で7月と8月の活動報告でした。

<活動報告なら別の所でやればいいだロット…

イヤ、確かに報告も書くんだけどさ。最低限の事は必ず目につく所が良いかなと。重要事項だし多少はね?

随分長いことお待たせしてしまいました。オラのヒーローアカデミア第36話です…はい。

7月にも少しで投稿するよと言っときながら50日経過…あの時はよくも七夕企画やろうとかほざいてたなこの野郎。

正直ここまで更新無しだと見てる人ってほとんど残ってないよね?よね?(チラチラッ

まぁだからと言ってサボる訳には行きませんが…そもそもコレは私の独断と偏見で2chから移動してまで行ってきた作品!元より打ち切りにする予定は無いですよぅ!

…ただしこの2ヶ月で何も心変わりしてないかというと嘘。もしかするとリメイク前よりも予想以上に展開変わるかも。そういう意味では有意義に1ヶ月半過ごせたよな。ってかそういう事にしよう。うん、人生前向き大事、ポジティブポジティブー

………とまぁここまで言っておけば大体の人は安心してますよね?とりあえず夏休みの戦績は別の所で公開するとしてちゃっちゃとあとがき終わらせましょうか。

まぁ長い期間空いていたせいか色々とカオスな事になっています。カオスな事になっている分、前回と2話1セットで結構()()()()()()()。こ↑こ↓、後でテストで出るんでメモするように。

ただし鍋○先輩と○仙風紀委員長を出したのは反省している。ゴメン。なんとなくこの2人入れたかった。OPIって言わせたかったんじゃなかったんだからね?

さぁ次回もデク君と拳藤さんが2人揃ってイチャイチャする回だお楽しみに!!おや…病室のベッドの様子が…






ん?月初のリクエスト企画はどうしたって?腐☆腐。勿論出来てます。9割方は。
恐らく夜の間に投稿…出来るかなぁ。()()もやりたいし。



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第37話

前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

準決勝後半戦は緑谷少年VS拳藤少女。まだまだ未知数の彼女の実力や如何に!?

ああ、保健室?ごめん覚えていないや

更に向こうへ!PlusUltra!!!




リカバリーガール「…おーおー。お熱いねぇ」

 

リカバリーガール「思ったよりも女子にモテモテで驚いたよ。隅に置けない子さね、緑谷君も」

 

リカバリーガール「今の所、治療が必要な患者もいないし、私も観戦に勤しむとしようかn

ガバッ

 

八百万「ぜぇ…ぜぇ…」

 

リカバリーガール「…ん?何だい、百ちゃんもう起きたのか」

 

八百万「………」キョロキョロ

 

リカバリーガール(目が泳いでいるいる…まぁ試合中に気絶していきなり別の部屋に移動してて驚くのも無理はないねぇ)

 

八百万「…あの…リカバリーガール先生」

 

リカバリーガール「ん?」

 

 

八百万「先程、緑谷さんが女子の誰かとイチャイチャしているのを見かけませんでしたか」

 

リカバリーガール「………」

 

リカバリーガール「んん???」

 

 

 

 

 

 

 

拳藤「分かってんなら早く立ちな」

 

拳藤「さっきから身体がウズウズしてるんだよ。お前と()りたくて」

 

右腕をこちらに向けて伸ばしながら人差し指をクイクイッと上下させている。

 

相変わらず表情が笑顔のままブレなくて…彼女の発言は何処までが本気(マジ)で、何処までが冗談半分(おふざけ)なののかが全く判断がつかない。

 

気持ち悪いや。何考えてんのか見当もつかない。

 

 

ただ…それじゃ…

 

なんで僕もつられてニヤケそうになってるんだろうな。

 

 

緑谷「…やれやれ。今日は厄日か何かかい」

 

緑谷「何回蹴られ殴られを続ければいいんだか…」

 

僕はフラフラとよろけながらゆっくりと立ち上がる。拳藤さんは少しキョトンとした顔になりながら僕の独り言にツッコミを入れていく。

 

拳藤「驚いたのはこっちの方だぞ。景気付けに1発いいのを入れに行ってやったのに、ガードをするでも無くカウンターを狙う訳でもなく」

 

拳藤「ただモロにパンチ受けに行っただけだからビックリしたよ。反応に困るんだが…」

 

緑谷「け、景気付けにって…あんなフライング気味のスタートダッシュされても……」

 

拳藤「いやいやいや…さっきもそういうの多かったし、それに」

 

拳藤「無防備な格好で油断してたりボディーがら空きだったら誰だって空かさず攻撃しに行きたいもんだろ?」

 

緑谷「…じゃあなんで今僕が怯んでいる隙に追撃しなかったの?」

 

拳藤「これで場外にして後で【不意打ちしたから】なんて情けない言い訳されたくないからね」

 

拳藤「後なんとなく空気的に」

 

緑谷「クーキテキ…」

 

拳藤「あー…でも今は立ってる、かぁ」

 

 

拳藤「ならもう攻撃してもいいよな?」

 

彼女の膝が目前に迫ってきた時そんな台詞が聞こえてきた。

 

麗日「なっ…速!!」

 

蛙吹「あんなステージ端の近くじゃ…」

 

 

 

緑谷「よっと」

 

拳藤「おっ」スカッ

 

マイク「うおっ!?さ、サケタ!!!」

 

膝蹴りが顔に当たる寸前、咄嗟にしゃがんで彼女の攻撃を難なく回避した。つーかその手の攻撃が何度も通用すると思うなよ?拳藤さん!

 

さて、身体を支えている脚はコレで1本になった訳だが…

 

まぁ無難に蹴りますか。

 

緑谷「はっ!」

 

彼女の教え通り、下半身ががら空きだったので遠慮なくしゃがんだまま回し蹴りを繰り出した。

 

まぁまず彼女は僕が攻撃を避けた事に驚く事に必死で下に視界を向ける余裕など無く…

 

ガッ!

 

拳藤「わわっ…」ガクッ

 

両脚が地面から離れた事により後ろに倒れ込む拳藤さん。よっしゃ今度はこっちが攻撃を…

ガッ

 

ん、なんで同じSEが耳に入ってくるんだ?え?

 

 

拳藤「ひゅぅ…危ねぇ危ねぇ」ググッ

 

あ…片脚の次は片手で支えるんですか。すっごーい。

 

 

と感心してる間にまたもや拳藤さんの右脚が僕の顔に近づいてきた。今度は左頬ですか、そうですか。

 

緑谷「うおっ…!」ガシッ

 

拳藤「…マジか」

 

オールマイト「さっきの焦り様とは裏腹にちゃんと冷静に対処できてるじゃないか」

 

オールマイト「見事彼女の攻撃を防ぎ切っている。まぁ少女の方も大概だが…」

 

13号「僕のこんな格好じゃ転倒した時に咄嗟に逆立ちして回し蹴りなんてできないや…」

 

スナイプ「安心しろ。多分俺も今やれっつったら失敗すると思う」

 

頬に蹴りが当たる前に何とか彼女の動きを止める事に成功した。よし…距離を取るチャンス!

 

反射的に掴んだ彼女の右脚を後方に引っ張りながら立ち上がる。

 

まずはさっきのお返し1発目、360°回し投げだ!

 

拳藤「ちょ…わっ!?」グイッ

 

緑谷「どっこい…」

 

緑谷「しょぉっ!!」プンッ!!!

 

悟空「うひょぉ…これまた随分高く投げたなぁ!」

 

悟空「でもあんな高かったら場外出る前にステージに落っこちまうぞ」

 

相澤<それはそれで地面と衝突した時のダメージは大きくなりますけどね

 

悟空「それもそっか」

 

マイク「お前ら何平然と実況できんの?馬鹿なの?」

 

ズドンッ!!

 

マイク「What!?」

 

 

 

 

拳藤「ひー…投げ返された。危なっかしいったらありゃしねぇ」ズボッズボッ

 

拳藤「流石に私空を飛ぶのは無理だからな…場外になりかけたぞ」

 

マイク「」

 

強烈な衝撃音がしたと思えば、なんという事だろうか。2、30mはあったあの上空から()()()地面に着地したにも関わらず脚の痺れ1つ起こさず平然としているではないか。頑丈ってレベルじゃないよ。怖いよ拳藤さん。

 

因みにズボッというのは地面にめり込んだ脚を抜き取る時の効果音………あんたはウルト○マンか。

 

両手をパキポキ鳴らしながら再び彼女は攻撃態勢に入る。だけど拳藤さん、

 

緑谷「たまには僕にもさせてくれよ…!」

 

そう言うと僕は彼女の方へ向かい、走り始めた。彼女との距離は30m弱。こんなの2、3秒あれば追いつける。

 

拳藤「お、キタキタ!」

 

僕が攻めに行くと気づいた拳藤さんは急遽防御態勢に変更した。片腕は顔の手前に、もう片方は胴の手前に構え、どのような攻撃が来ても最低でも1本の手足でガードしカバーできる寸法だ。

 

…うーんと…この場合どうしよ。

 

 

 

 

 

それじゃ容赦無く顔面を

 

緑谷「よっ」バッ

 

軽く飛び上がり、拳藤さんの顔に向かって左脚を勢いよく伸ばしていく。いわゆる飛び横蹴りだ。

 

上鳴 峰田「「嫌ぁぁぁあ!美女の顔に傷はぁぁああ!!」」

 

蛙吹「つけてよし」

 

麗日「むしろつけろ」

 

耳郎「あー…結局そっち系なのね緑谷。察し」

 

尾白「なんなんだこいつらは…」

 

拳藤(来る…)スッ

 

勿論、僕の脚が顔に近づくと共に彼女も腹部辺りに添えていた腕を顔面の方へ上げていく。不安定なガードからようやく完全防御状態だ。

 

でもね、拳藤さん?流石に僕も女の子の顔を蹴るような大それた度胸は無い…

 

緑谷「よっ…」クルッ

 

拳藤「!?」

 

悟空「ははーん」

 

マイク「フェ、フェイント!?」

 

 

 

ガッ!!

 

 

拳藤「かはっ……」

 

シュタッ

 

緑谷「…」

 

攻撃を食らってから間も無くして、拳藤さんは咳き込みながらゆっくりと後退していく。

 

加減無しで鳩尾に蹴り入れたんだからな。そりゃまぁ効くに決まってる。

 

 

相澤<ふむ。相手の防御(ガード)を崩す為、極限まで相手の身体に近付き、当たるギリギリ手前の所で体を左に回転

 

相澤<更に右脚を上げる事により膝蹴りを相手の腹にモロに直撃させると。

 

悟空「回転の速度も相まって蹴りの威力も高まるっちゅう訳だ」

 

マイク(アレ…普通に解説してるよこの2人)

 

 

ガクッ

 

拳藤「けほっ…あぉっ…」

 

麗日「おお!膝ついた!」

 

口田(完全にさっきの再現だね…)ババッシュババッ

 

身体が地へ崩れ落ち、尚も咳をし続ける拳藤さん。アレ…そんな強めに打った覚え無いけど……

 

少し不安になったから恐る恐る近づいてみると…

 

拳藤「かはっ……ぁ…はっ…」

 

緑谷「………ん…?」

 

拳藤「はっ、ははっ…」

 

 

 

 

拳藤「あはははははっ!!」

 

緑谷「へ?」

 

「え?」

 

マイク「」

 

相澤<おい実況者。黙らずジョブしろ、ジョブを

 

 

思わずその場にいた人全員が目を大きく見開いた。そりゃそうだ。打撃で苦しんでるかと思ったらいつの間にか地面をバンバン叩いて、腹抱えて笑ってるんだから。

 

気でも狂ったのかと皆驚きを隠せなかった。

 

僕なんか心配して「大丈夫?」と声を掛けようと思った途端コレだ。反応に困る。

 

拳藤「くっははは…は、腹痛!笑いすぎて脇腹…ったはは…」

 

緑谷「…え、えっと…拳…藤さん?」

 

緑谷「僕、今何かおかしな事した?それとも変な事でも言った?」

 

ドギマギと戸惑いながら声を掛けると、ようやく彼女の馬鹿笑いも収まり、途切れ途切れながらも話し始める。

 

拳藤「いやっ…うん!おかしい!おかしいよお前!」

 

拳藤「()()()()()()()()()()!」

 

緑谷「………???」

 

【おかしい位に強い】…って…え?それってつまり、僕に好評価?高評価をくれているって事だよな?

 

それ自体は非常に嬉しいのだが…

 

緑谷「い、いやいやいや…タンマタンマ」

 

緑谷「すまないけど、それって今の行動と矛盾してるでしょ…」

 

緑谷「仮に戦っている相手が予想以上の強者だったら普通、警戒するか何かするでしょ…」

 

緑谷「なんで()()()()()笑っているんだい?」

 

拳藤「……」

 

 

 

拳藤「ぷっ」

 

緑谷「えちょっ!?」

 

 

僕の発言が不適切だったからか拳藤さんは思わず失笑してしまう。…今笑うような要素あったか?え?……

 

あーもう…さっきからこの人の思考回路が全く読めないぞクソ。

 

拳藤「ははっ…あー、そうだなぁ。つまり…」

 

 

 

拳藤さんはゆっくり両腕を顔の前に構え、一言

 

 

拳藤「こういう事だよ」

 

 

とだけ言った。

 

それを見るなり、僕も再び両手を構える。

 

緑谷(何だ…口じゃ伝えにくいので拳で語り合いましょ的な…?)

 

緑谷(実践するにしたって結果は同じ…)

 

緑谷「!」

 

 

 

 

拳藤「…」

 

 

先程までのご機嫌顔とは打って変わって彼女の眼光は鋭くなり、軽く睨むようにこちらを見つめていた。

 

本気で獲物を狩る目だなありゃ…

 

緑谷「…すぅ…はぁ……」

 

僕はまだ若干荒れていた呼吸を整える。

 

それでも尚、心臓はバクバク過剰に反応している。まだあの子には慣れないなぁ…さっきもちゃっかりボディタッチしたし…ぅぅ…

 

それにしても…さっき拳藤さんが笑ってたのはなんだ?()()()()()()()()()()()?全く訳分からん…………

 

 

 

…でも

 

そう不思議に思った事は過去に何度もあった気がする…

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「っ!」ダダッ

拳藤「っ!」ダダッ

 

マイク「同時…!?」

 

相澤<モーションまで同じだな

 

 

緑谷(いち…)グッ

 

拳藤(にの…)ゴォッ

 

 

緑谷 拳藤((さん!!))ガガァゥッ!!

 

芦戸「耳いった…」ビリビリ…

 

砂藤(パンチをぶつけ合うだけでこんな衝撃が普通来るかよ…)

 

悟空「…」

 

互いに相手から拳を離すと共にプンッと右脚を振り上げる。

 

緑谷「…だっ!!」

 

拳藤「ふっ!」

 

 

上段蹴り

 

 

バギィッッ!!

 

緑谷「…っ……」

 

拳藤「…へへ……」

 

ググッと脚と脚とを押し付け合い、相手を退けようとするがビクともしない。

 

 

…気が付けば双方同時に再び左腕を前方へ伸ばしていた。

 

緑谷 拳藤「「はっ!!」」

 

 

裏拳打ち

 

 

ガアッッ!!

 

 

緑谷「……」グ…ググッ…

 

拳藤「……」ググッ…

 

緑谷 拳藤「「はぁっ!!」」ブォッ…

 

バキッ!ドガッ!ズドッ!ガガンッ!!バゴッ!!ズドッ!バギッ!ガッッ………

 

 

無数の衝撃音が会場全体に鳴り響く。微塵もためらい無く()()()()()()()()()()()()()()僕らの姿に観客はとても目も頭も追いつかず、呆然と眺める事しか出来なかった。

 

あのおしゃべりな実況者、マイクでさえ感想を口にする余裕が無い。

 

マイク「………お、おお…すっごーい」

 

まともに解説出来そうなのはこの3人位だろう。

 

相澤<気持ち悪いくらいに仲良しですね。あの2人

 

悟空「ああ。すげぇ息が合ってるぞ」

 

オールマイト「…というか活き活きしてるじゃあないか!いつもよりも!」

 

 

そうして何秒、何十秒、何百秒もの間相手の攻撃を弾き返し合っていると…

 

 

 

緑谷「はぁっ!!」ブオッ!

 

拳藤「よっ…」スカッ…

 

緑谷「…!」

 

拳藤さんの顔面目掛けて正拳突きを繰り出すと、彼女はすぐにそれを察知。しゃがんで回避した。

 

死角となった真下の方からアッパーカットを仕掛けてくる。

 

拳藤「隙ありっ!」ゴォッ

 

緑谷「…」

 

 

クルッ

 

拳藤「!?」

 

緑谷(っぶねぇ…)ババッ

 

オールマイト「ナイス回避だ、緑谷少年!」

 

何とか顎に拳が当たる寸前にバック転で攻撃を避ける事ができた。急に攻め始めたからびっくりした…

 

拳藤「ふふ…!」ダダッ

 

…そろそろループは飽きたのかな?

 

拳藤「はっ!」プンッ!

 

緑谷「…!」

 

助走をつけてからの彼女の手刀を、僕は地面をダンッと踏み飛び空に逃避する。

 

そこで拳藤さんはこの試合初の個性発動を試みる。

 

プクッ…!

 

拳藤「骨風船?筋肉風船もどき!」

 

緑谷「げっ…まず…」

 

 

今急降下してるからこの速度で落ちると…

 

 

拳藤「ギガントブレス!!」ゴォッ

 

巨大化させた手を大きく開き、上空に向けて伸ばしていく。あー…ブレスって握り潰すって事ね。結構エグ…

 

緑谷(けどっ!)グオッ

 

拳藤「…?」

 

君がゴム人間で行くなら、こっちは人造人間で行かせてもらおう。確か悪○風脚(ディアブルジャンブ)だっけかな…

 

拳藤さんが僕の姿を捉え、指を動かした直後、僕は身体を横向きにして高速回転をかけた。そして次第に指が手のひらに近づいていき…

 

 

ガガッ!

 

拳藤「いっ…!」<シュタッ…

 

相澤<すれ違い様に蹴りを入れたな。確かに360°回転させときゃどこかしらに脚は当たる。

 

拳藤(逆に的がデカすぎたか…)シュン…

 

拳藤さんはすぐに個性を解除し、僕の姿を再び確認する。彼女の指を蹴ったついでに踏み台として利用させてもらった。お陰でかなり距離を置く事ができたよ。

 

さてと…

 

 

緑谷「…」クイクイッ

 

拳藤「…何だそりゃ。さっきまでの威勢はどうしたって顔だな」

 

ご名答。分かってるならさっさと来い。僕だって滾ってるんだから。

 

拳藤「へいへい、攻めりゃいんだろ……攻め

 

 

 

拳藤「りゃっ!!」ダダッ!!

 

オールマイト「さっきよりも更に早く…」

 

緑谷「………」

 

 

 

 

ドクン…

 

 

 

緑谷(そうだよ…()()()()()()()()()()()()()())

 

緑谷(もっと踏み込め、もっと乗り越えろ!)

 

走りながら拳藤さんは腰を捻り、右脚蹴りを繰り出す…

 

 

拳藤「ほっ…」グオッ…

 

緑谷「…」

 

 

……が………

 

 

ズザッ

 

 

拳藤「っと!?」スカッ

 

マイク(は、外れたぁ!?ほとんど動いてなかったじゃん!!)

 

悟空「攻撃ってのはただ相手に当たりゃいいってもんじゃねぇ」

 

悟空「相手の身体が自分の肌に触れるまでの緻密なやり取りが重要なんだ」

 

悟空「当たるかあたらねぇか際でぇ所で攻撃を放てば、()()()()()みてぇに避けずにみすみす攻撃当たりに行ってる…」

 

マイク「……!?」クルッ

 

マイク(え?俺の話?)

 

マイク(な、なんで俺の脳裏にまで語りかけてんだよコイツは…テレパシストかよ!?)

 

相澤<成る程、つまり奴は必要最低限(50mm)しか退いてねぇから…

 

 

緑谷「…」ゴォッ…

 

拳藤「っ!?」

 

相澤<至近距離で隙が狙えると

 

脚を振り上げているという状態で態勢が不安定な彼女の顔面に、僕は空かさずストレートパンチをお見舞いする…

 

 

グォッ…

 

峰田 上鳴((ヒィィァ!!今度こそ顔g

 

………が………

 

 

 

拳藤「よっ」フラッ…

 

緑谷「!?」

 

クルッ…

 

オールマイト「何と…わざと後ろに倒れかけ…」

 

オールマイト「どさくさに紛れて彼の腕に巻きつくようにバック転を!」

 

 

 

シュタッ

 

拳藤「……へへ〜」

 

緑谷「……へへっ」

 

 

 

 

緑谷 拳藤「「っ!」」ダダッ!!

 

先程までの攻防は、ただただお互いに相手の身体を殴り続けていただけだった。

 

だが今度は少し違う。

 

 

緑谷「ふっ!」プンッ

 

攻撃したら、

 

 

拳藤「おっ…と…」スカッ

 

避け、

 

 

拳藤「…ぉりゃ!!」グオッ

 

反撃して、

 

 

緑谷「ととっ…」

 

避けられて、

 

 

 

 

 

グオップンッゴォッズオッブォップンッ…

 

 

瀬呂(…なんてこった…今度は…)

 

麗日(攻撃が1発も当たっとらん!?)

 

常闇(しかも2人共、動きを最小限に抑えている…)

 

常闇(攻撃の当たる一歩手前で踏み止まっているぞ!)

 

 

 

相澤<……

 

相澤(()()()())

 

相澤(確かに熟練された格闘家同士が戦えば、両者共に実力で引けを取らず、中々決着を付けられずに戦いが長引く事もある…)

 

相澤(が、それはあくまで相手の隙などが捉えられず決定打が打てないからであって…)

 

相澤(こいつらのように全くジリ貧にならずに試合を長時間続けられるなんて()()は有り得ない)

 

相澤(孫さんは【息が合う】と評していたが、()()()()()()()()()()()()()…)

 

相澤(意思疎通だとか…以心伝心でもない……)

 

 

相澤(2人共、完全に思考回路が同じ構造でなきゃこんなモン説明のしようが無ぇよ…)

 

相澤<…ん。(チラッ

 

悟空「……」

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「はっ…はぁ…」ゴォッ…プンッ…

 

 

身体が熱い…もう何十分も動きっぱなしだったからか。蒸発するんじゃないかと自分でもビビる位に全身がヒリヒリする。

 

 

でも、何故か()()()()()()()

 

むしろ何だろう…さっきまでの疲れが取れたかのように身体がスルスル動いてしまう,

 

 

攻撃を打ち込む度に、

 

 

彼女の攻撃を防ぐ度に、

 

 

身体が読んで字の如く、ヒートアップしていくのだ。

 

 

 

 

…苦しくも無いのに、なんで僕の身体が徐々に紅く照っていくんだ?

 

 

 

もしかして、僕は無意識の内に体でこう感じているのか?

 

 

 

 

「…たのしい……」ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空『なぁー!緑谷ぁ!たまには相手してくれよー!』

 

悟空『稽古つけてやっから!ほら!!』

 

緑谷『や、やめて下さいよ悟空さん!テスト勉強もあるのに〜!』

 

悟空『ぶー!けちんぼ!たまに手合わせ位したっていいじゃんか!!』

 

緑谷(何ママに駄々こねるみたいに挑戦状叩きつけてんだこの人は…)

 

緑谷『大体…その、なんで悟空さんは戦いに意義を見出だすんですか!?』<前カラツッコミタカッタケド!

 

緑谷『しかも悟空さんの場合、山1つ潰れるのがザラだから尚更危なっかしいんですよ!!』

 

悟空『えー。コレでもまだ1億分の1も本気出してねぇぞ』

緑谷『その繊細さをもっと他に使え!!』

 

悟空『なんだ?緑谷は戦うのが嫌なんかぁ?』

 

緑谷『そりゃそうでしょ!あんな身体や精神をお互いに徹底的に痛めつけ合って…』

 

緑谷『…い、痛いじゃないですか!デメリットしか無いし…』

 

悟空『……そうかぁ?』

 

悟空『()()()()()()()()()()()ともオラは思うぞ』

 

緑谷『………???』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝負ってのはいわゆる弱肉強食だ。詰まる所、強い者が弱い者の全てを踏みにじり、虐げ、破壊する。

 

幼児の頃から散々僕はコレを受け続け、嫌という程身体に染み付いている。だから僕は全てを暴力で解決し、思い通りするこのやり方がとても気に食わなかった。

 

悟空さんに鍛えられてからも、特にその思いを変える事は無かった。

 

【俺は強い。だから相手が弱くて踏み台になるのは仕方ない】とは皆言うがそんなものくそったれだ。全員が全員、敗者の事なんて考えてないに決まってる。自分の主観でしか物を考えることなどできないのだ。

 

 

少なくとも、以上のように僕が自分の主観的理論でしか話していないのだからそういうのが多数派なんだろう。

 

 

 

 

 

 

なんて浅はかだったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷 ( 戦いってこんなに面白かったのか!?自分が以前よりどれ程成長していたのか、それと同時に相手がどれ程の強さを誇っているのか!?相手の性格、状態…様々な情報が挙動の1つ1つに込められている。攻撃というのはなんて情報量の多いデータだ!それで持って相手から頂いた数々のデータを分析し、相手が次何時何処でどのように攻撃するのか或いは防御するのか、ならば自分は次何時何処でどのように攻撃すればいいのか或いは防御すればいいのか…互いに相手の攻撃を押し退け、いかにして自分の攻撃を相手の芯に届けるか。このシノギの削り合いを例えるとすれば…そう!将棋!オセロ!チェス!……そうか!こういう格闘技って肉体ありきかと思ってたけど本当は違うんだ!どれだけ相手を負かせるかの頭脳戦・心理戦()()ある訳だ!試合に備えての修行や鍛錬は前座に過ぎなかった!問題は実際に合間見えてからのその場の対応能力!いかにして体格的不利を補うのが、どんな攻め方でいけばいいのか、etc……戦う場面毎に臨機応変に対応しなくちゃならない!そう考えると格闘戦っていうのはいわゆる【身体的能力】、【知的能力】…これらが複雑に絡み合う駆け引きがあってようやく戦闘が成り立つ訳だ!一種のギャンブルみたいな…そんな一面もあるのか…………………

 

 

 

 

 

緑谷( あ あ … … … バ ト ル っ て こ ん な に 楽 し い も の な の か … … )

 

 

 

 

悟空「……」

 

相澤<どうしたんです孫さん?()()()()()顔なんかして

 

悟空「…いや……」

 

 

悟空「あいつがあんな()()()()()戦ってる所見んの初めてだったもんだから…よ」

 

相澤<…?

 

 

ブオッゴォッグオッ…

 

緑谷「ーーっーーー」

 

拳藤「ーーー!ーー」

 

 

気づけば既に試合を始めてから15分は経っていたらしい。僕らは息切れの1つもせずに10分以上もこの攻防を続けていたというのだ。

 

個性無しでただただ殴り合うだけの何の面白みもない試合の筈が、観客等は飽きる事なく…

 

それ所か試合が長く続けば続くほど、お客さんの反応にもある変化が起こりつつあった。

 

 

「…脚、腕のみならず互いの身体全体が華麗に交差し合い、一つの美を生み出している…」

 

「こりゃもう格闘戦ってかダンスだな。ラテンか」

 

「しかも2人共ブレる事なく動き続け、別々のモーションであるにも関わらず…」

 

「コレまた2人の動きが絶妙にマッチしとる」

 

「すげぇ……やってる事は地味な筈なのに…」

 

 

 

「なんか…拳闘ってすげぇ」

 

 

 

オールマイト(開始前のギクシャクムードは何処へやら…)

 

オールマイト(皆もう君らの観戦に熱中してしまっているではないか)

 

「兄ちゃーん!頑張れー!!」

 

「そこだ!一佳ちゃん叩き込目!!」

 

「イケェェエそばかすぅう!!気合いじゃああっ!」

 

ワァァァ…

 

緑谷「っおおおおお!!」ゴォォ…

 

拳藤「はあああっっ!!」ブァッ!

 

マイク「ま、また同時攻撃!?」

 

相澤<いや、パンチとキックじゃ脚の方がリーチが長ぇ

 

オールマイト「拳藤少女の蹴りの方が先に決まる!」

 

悟空「………」

 

 

 

さーて3度目の正直だ。いい加減真面目に顔面狙わせてもらいましょう。

 

ゴォォ…

 

ついさっきまでこの娘と何分間も拳を交えていたが…1つ分かった事がある。

 

 

この娘は多分、僕と同じ思考を持っているんだろう。

 

 

ここまで試合を長く引きずっておいて僕も彼女も全く傷ついていない。ダメージがあったような攻撃も、互いにお腹を殴られor蹴られた時の攻撃のみ…

 

…ォォ…

 

攻撃パターンも、動作も、さらに威力も僕が出してるソレと全く性質が変わらない。

 

世界には自分にそっくりな人が3人いると言うがそんな次元の話じゃない。運命的というか…何というか…

 

矛盾するようだが、強いてコレを言葉で表すのであれば、【必然的偶然】とでも言えばいいのだろうか。

 

うーん…本当に不思議だ。

 

 

緑谷「……」ゴォォ…

 

麗日「ちょ…デク君!?何目ぇつぶっとるん!?」

 

尾白「あのままじゃ拳藤の蹴りモロに直撃だぞ…?」

 

拳藤「……」…ォォ…

 

 

 

そりゃ当たり前だろ。()()()()()()()()()()()()

 

緑谷「…っっ!!」ダダァッ…

 

拳藤「!」

 

マイク「また加速したぁ!?」

 

相澤<成る程。畳み掛けににいったな。

 

相澤<()()はくれてやるからこっちも殴らせろと。

 

悟空「…いや、()()()()譲る気はねぇみてぇだぞ?」

 

 

 

距離はもう5mを切っていた。きっと目を開ければ目の前に、僕の顔面目掛け左脚を振り上げている拳藤さんの姿を拝める事だろう。

 

それ程までに僕は彼女に迫っていた。

 

僕は構わず頭部を前に突き出す。

 

耳郎「…あいつ…もしかしてカウンター狙い?」

 

緑谷「………」

 

 

 

 

ドガッッ!!

 

 

 

左耳に強い炸裂音が響いてきた。

 

左方向から何かしら強い力が頭に加わったみたいだ。

 

身体がガクッと右に傾く。

 

 

 

緑谷(…アレ…?正面からじゃなくて…左から…?)

 

 

 

拳藤「あー…すまんすまん。脚が滑って上手く当たらなかったわ。途中で軌道変更したけど」

 

 

オールマイト(真っ正面から顔面にぶつけると見せかけて…)

 

オールマイト(ワザと外してかかと落としの要領で後頭部付近を狙ったのか!?)

 

相澤<モロに受けたな。コレ頭蓋骨にヒビ入ってんじゃねぇの?

 

マイク「何無表情で怖い事言ってんの担任教師さん!?」

 

悟空「……」

 

 

 

 

グラッ…

 

緑谷「……」

 

 

 

 

 

 

緑谷「……」ピタッ

 

拳藤(止まった…?脚が動かな

緑谷「好機(チャンス)いただきまぁぁすっ!!」バキィッッ!!!

 

 

 

拳藤「ぅあっ…」ドサッ

 

 

緑谷「……っひゅー…」

 

 

「お、おおお…」

 

「また…膝付かせた!?」

 

「しかも…」

 

 

拳藤「痛ってて…っ」

 

拳藤「今のは来たわ…」ゴシゴシ…

 

 

 

唇が切れたのか…口を腕で擦り、垂れてきた血を拭き取る拳藤さん。今までどんな攻撃も物ともしていなかった彼女だが、今年の体育祭で初めてまともに負傷した瞬間ではなかろうか…

 

彼女はズボンについた砂を払いながらゆっくり立ち上がった。

 

 

拳藤「…いやー驚いたわ。お前の事だから私の蹴りを頭突きでもして倍返しすんのかと思ったよ…」

 

拳藤「まぁそこまでは合ってたみたいなんだけどさ」

 

拳藤「割と本気で骨を砕きに言ったつもりが…あまり効いてないってのはちとショックかな(^∇^)」

 

緑谷「うん。とりあえずニコニコしながらえげつない事言うのやめよ?後ちょっとで首折れそうだったんだから」

 

拳藤「ちぇっ。折れれば良かったのに(・ω・)」

 

緑谷「も、もー!( ´∀`;)冗談キツイよ!」

 

拳藤「ははは!悪い悪い!()()()()()お前の顔見てたらちょっといじりたくなって…」

 

緑谷「……」

 

拳藤「…ちゃんと笑えんじゃん。あんたのそんな幸せそうな笑顔、()()()見るよ」

 

緑谷「初めてって…さっきも言ってたけど僕そんなに雰囲気暗そうだった僕?」

 

拳藤「暗かったし、さっきまでの笑いは何というか卑猥な感じのニヤけ方だった」

 

緑谷「ヒワイナ!?」

 

緑谷「そ、それに君は僕と今日会ったばかりなんだから別に目新しいも何も無いんじゃ…」

 

拳藤「………ん?何言ってんのデク」

 

 

 

 

拳藤「随分前に会ってんじゃん。ほら、木に絡まった風船取った時」<女の子の

 

緑谷「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だって、え…

 

 

 

拳藤さんは僕の事…

 

 

『午前中の時より動きにムラがある。障害物競争の時はもっとこう無駄が無かったていうかスムーズにアクションできてた。特に切島戦の時は受け身ばっか取っててデクずっと攻撃してなかったよね?多分やろうと思えばもっと早くケリはつけられたと私は思うよ。後表情が少し暗い感じだったし…入試とか相澤先生と戦ってた時の方がよっぽど生き生きしてたぞ。楽

 

 

 

『入試とか相澤先生と戦ってた時の方がよっぽど生き生きしてたぞ。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

緑谷「…」

 

拳藤「入試の時だって同じ会場だったし…」

 

緑谷「…いや…その

 

拳藤「体力測定だってHR中こっそり撮ってたんだぜ?お前の勇姿」

 

緑谷「え、ちょっ待っ

 

拳藤「後対人訓練も特別に許可貰って見せもらったんだぞー」<お前のだけだけど

 

拳藤「『勝って!勝って君を超えたいんじゃないかバカヤロー!』」ブンブンッ

 

拳藤「くぅぅ!アレは痺れたね!」

 

緑谷「あの…だっ待って

 

拳藤「後々…あ!そうだ!あん時テレパスかけたのもデ

緑谷「 だ か ら 待 っ て っ て ば ッ !!!」

 

拳藤「…ク……?」

 

 

緑谷「はぁ…はぁ……っ!」

 

緑谷「…何だ?つまり君は…えー」

 

緑谷「随分前から僕を見ていた…って事?」

 

拳藤「そ」

 

緑谷「どの位前から?」

 

拳藤「だから風船の時…確かヘドロのアレもあったよな」<お前の

 

緑谷「何故?ただ背伸びして風船取ろうとした姿だけじゃ全く今の話と繋げよ

拳藤「カッコよかったから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「…………???」

 

拳藤「だからさ、デクがカッコいいからって言ってんじゃん」

 

 

 

マイク「………」

 

相澤<………

 

オールマイト「………」

 

麗日「」

 

蛙吹「」

 

「………」

 

 

 

緑谷「…え、え?何それ…どういう」

 

拳藤「見知らぬ人でも困ってたら助けるって…」

 

拳藤「究極的にお人好しじゃん。普通にすごいと思うよ、それ」

 

拳藤「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

緑谷「…………」

 

悟空「……」

 

 

 

『…………そう…なんですかね』

 

『僕…みたいな人でも……』

 

『こんな無個性な人でも…救けられるんですかね…?』

 

 

悟空(…居たじゃねぇか。すぐ側に)

 

悟空(おめぇに応えてくれる奴が…)

 

 

緑谷「………」

 

『ヒーローみたいで私はカッコいいと思うけどな』

 

緑谷「……」

 

『ヒーローみたい』

 

緑谷「…」

 

『(デクが)カッコいい』

 

 

緑谷(今あの娘なんて言ったっ!?)

 

緑谷(え、ちょちょちょカカカカココカカカカ…)<カコカワ?

 

緑谷(今僕の事カッコいいって!?ヒーローみたいだって!?)

 

緑谷(一生あり得ない投げかけの台詞ぶっちぎり1位を今さらっと言われたぞおい!?か、カッコいいって…)

 

緑谷(あれ、カッコいいって意味何だっけ(困惑))

 

緑谷(しかも何…1年以上も前から見てたって……)

 

緑谷「……」

 

緑谷「…///…」

 

緑谷「…………( ・∇・)…………」

 

マイク「あ、ありゃ…緑谷構えていた両腕を突然下げて無防備状態…」

 

マイク「一体どうした!?コレも何かしらの策なのか?」

 

相澤<…いや

 

 

 

緑谷「( ・∇・)」プスプス…

 

マイク「」

 

 

 

相澤「ただ単にショートしてるだけですね」

 

麗日「デク君っ!!/」ブチブチ

蛙吹「緑谷ちゃん!!!」ブチィッ

 

芦戸「ひ、ヒィィ…がちぎれだぁ!」

 

葉隠「成る程…嫁候補1人追加と」カキカキ…

 

切島「…わわっ!?お、お前いつの間に帰って来てたのかよ!もう上鳴と轟の試合終わっちまったぞ?」

 

葉隠「デカイのしながら観戦してメモしてたから大丈夫大丈夫」

 

切島「ぁ…ぁぁそう?」<でかいの…

 

切島(……え、トイレにも液晶あんの?)

 

切島(あれ、肝心のツッコミ所を忘れてるような…まぁいいか)

 

尾白「お、おい緑谷っ!起きろ!!何やってんだ!!」

 

緑谷<ニョローン…( ・∇・)

 

拳藤「…おーい?デクー?まだ試合続いてるぞ?」

 

拳藤「……何だ?疲れて気絶しちゃったのかな?」<しかも立ったまま

 

麗日 蛙吹((誰のせいだと思ってるんだよ))ギリギリギリギリ…

 

芦戸<怖いよジロー…

耳郎<あーよしよし(ナデナデ

 

拳藤「しょうがねーなぁ」

 

 

 

 

 

拳藤「ほんじゃ眠気覚ましにイイもん食らわせてやるよ」

 

拳藤「最も、後味は悪そうだけど」

 

そう言うと拳藤さんは右拳を腰に添え、左腕を前に伸ばして狙いを定める。

 

標的()との距離はもう10mも無かった。外す事などあり得ないだろう。

 

 

試合開始時に放ったボディーブローを再び打ち込もうとしているのだ。

 

 

拳藤「まぁそれなりに楽しめたよ。ご苦労…」

 

拳藤「3」グッ

 

麗日「ヒィィ!」

蛙吹「緑谷ちゃん!」

 

拳藤「2」ググッ…

 

オールマイト「緑谷少年は一体何を…」

相澤<ゴクロー3…

 

相澤「1…!」ダダッ

 

悟空「…」

 

 

 

スドォッ!!

 

 

 

緑谷「っ…!」

 

拳藤「ふ〜…」グリッ…

 

 

 

最初に受けたものとは桁違いの拳打だった。

 

物凄くデカイ衝撃が僕のヘソ部から内臓を貫き、背中にかけて襲ってくる。コンクリートのように固く、それでいて綺麗な拳藤さんの右拳は僕のお腹へ見事にメリメリとめり込んでいく。

 

数秒して拳が腹部から抜かれると、僕は両手をお腹に抱え後ろによろめく。

 

 

緑谷「…」フラフラ…

 

拳藤「…」

 

麗日「デク君…」

 

蛙吹「緑谷ちゃん…」

 

 

 

緑谷「……プッ」

 

拳藤「?」

 

 

緑谷「プッハハハハハッ!!」

 

緑谷「ハハッ…ァァ…はッ…あは…」ドサッ

 

緑谷「やばっ…お腹…壊れる…はははっ!」バンバンッ!

 

「……???」

 

 

 

お 分 か り い た だ け た だ ろ う か

 

既視感ある光景に観客達は呆然とする他無かった。どういう事だ?何故この2人は揃いも揃って攻撃が直撃した途端、腹抱えて笑いだすのだろう…とでも言いたげな顔だな。

 

爆笑しながら転げ落ちる所を見ると、拳藤さんのパンチはノーダメージだったように思えるかもしれないが、実は結構効いている。というか滅茶苦茶痛い。つーか内臓抉られて嘔吐どころか吐血でもするかと思ったわ。さりげなく今唾吐いちゃってるし。

 

 

 

でもそんな事、今はどうでも良かった。

 

 

拳藤「…」<ハハハハ…

 

拳藤「何ぃ?()()私の真似でもしてるのか?」

 

拳藤「そんなに悦んで…そんなに私の攻撃が気持ちよかったの?」

 

緑谷「あ…ははっ…は…」

 

緑谷「そう…だね。気持ちいい、滅茶苦茶スッキリした」

 

緑谷「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

拳藤「モヤモヤ…したもの?」

 

緑谷「…そうだな……言うなれば()()ってトコかな」

 

拳藤「???」

 

 

1年間、激しい修行をし続けて僕は山1つなら吹き飛ばせる位まで強くなっていた…そう、十分すぎる程に。

 

だがその後いくら特訓しても今の今まで、自分が強くなったという実感が湧いたのかというと微妙な所だ。

 

気功波の修行で散々物を破壊し続けていったが『あ、壊れた、スゲー』としか思わないのである。頭の中で何か消化不良というか、違和感というか…

 

 

()()()()()()()とずっと突っかかっていた。

 

 

 

修行の出来には満足してるし、実際の所、それが学校で幾らでも応用できていた。入試の時も、体力テストの時も、対人訓練の時も、USJの時も————

 

 

 

何故か…いやだからこそなのかな

 

物寂しい気がしてならなかった

 

僕は心のどこかで淡い希望を抱いてたのかもしれない。

 

 

 

『もし…もしだ。もしももう一度だけあの娘と会えたとしたら…………』

 

 

 

緑谷(……彼女の瞳には、()()()がどんな風に映っているんだろう)

 

緑谷(拳藤さんは僕の事を【カッコよかった】と評してくれたが、あくまで1年前、初対面時の話)

 

緑谷(実際に僕と肌身を交えて…彼女はどんな人物像を思い浮かぶのだろうか)

 

緑谷(それを確かめるにはまだ情報不足だな———)

 

 

緑谷「…君には本当に、お世話になった」

 

緑谷「お陰で僕はここまで来れた」

 

拳藤「私の?お陰?」

 

緑谷「色々言いたい事は山程あるけど…まぁいいや」

 

緑谷「お礼も兼ねて教えてあげるよ。僕の今の限界、その一部…」

 

 

 

 

緑谷「1()()()()()()の修行の成果を————!」

 

 




どうも皆さん須井化ですよー。お久しプリーです…はい。

ようやく今日投稿できました。デク君対拳たん(勝手に命名)!
最初は8000字程度でいつもより少ない程度の量…
と想定してたら案の定軽く13000超えたよ。もうちょい頑張ったら14000行っちゃうよ
地の文が多く書けるようになったのはいいのですがこれからは節約が課題なのです。(とは言っても今回台詞多目にしたつもりではある)

37話(今回)も後々響きそうなパートでしたからね。かなり手がかかりまァスタ(謎のブラクロ便乗)
いかがだったでしょうか。とりあえず麗日さんと蛙吹さんが呼吸困難なので早く救助を…(使命感)
恐らくこの試合は次回でお終い?です。果てさて緑谷君はどんな技で戦うんでしょうかねぇ!?


あ、そうだ。この間Twitter始めました。(再開した?)
これから次話を投稿する毎にお知らせをしたいと思います。これで失踪しても炎上できるよ!やったねた○ちゃん!

ては皆さん、次回をお楽しみに!
じゃ!!













<オイ月初企画はどうしたんじゃゴラ…(八百万)
<E〜?nannokotokana〜?(ギリギリ


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番外編其の壱〜八百万「私達のヒロインアカデミア」緑谷「ブレイクタイム?」
No.0


内容が大分カオスな状態となっております。
不快になる可能性もございます。というか120%そうなる。
本編とは全く?関係の無いお話なのでスルーしてくれて構いません。





















いいですね?























「…ではこれより須井化氏の法廷を開始します」

裏日「検察側、準備完了しております」

下着「ハイッ!(弁護士側も)大丈夫です!!」

…………←須井馬化(被告人)

ちょ、ちょい待ち!!一体全体何故こうなった!?

「何って貴方を刑罰を決めるための裁判に決まってるでしょう」

ねぇ!?何言ってんの!?検事裁判って普通有罪か無罪か決めるんだよね!?何もう有罪になっちゃってんの僕!!

後さっきから語尾とかで誤魔化してるけど八百万と麗日だろ!!後ト○ンクスに至ってはなんで作品越えて参加してるの!?

下着「俺は云十年後からやってきたトラ

そういう事聞いてんじゃねえよ。

下着「ハァッ☆」

裏日「被告人の犯した罪は目に見えている」

裏日「度重なる作品投稿の遅れ、それにしてもやたら多い訂正部分、更には今回は二度に渡って予定時刻を過ぎるだと…」

裏日「こんな悪行を誰が許すものか!」

下着「僕もそう思います」

うららかじゃないよ麗日ちゃん!!いやまぁ正論なのですが!

つーかなんでお前は便乗してんだ弁護士だろうが!!

下着「そんな事知るか」

オンドゥルルラギッタンディスカー!?

裏日「そもそも、貴様は遅れる度に諸事情〜、忙しい〜などと言い訳にも程遠い発言をしている!」

裏日「謝ると詫びを実行するというのは全く別の話だ!」

下着「僕もそう思い(ry
言い訳じゃねーよ!第一この前小説が凍結してたのも忙しいからっつっただろうがぁああ!

こちとら24時間小説書く程暇じゃねーんだよ!!ニートじゃあるまいし!

裏日「無職の人を差別と…軽く罪の重さが3倍増えましたー」

余りにも理不尽な!?つーか重っ!?

「理不尽ではありません」

下着「僕もそう思います」

………はい……

「これらの情報から、貴方の有罪は確定と見て間違いないと思いますが…?」

………はい………というかもうどうでもよくなりました。

「では早速本題に入りましょう」

あー刑罰決める話し合いだったね、うん。

「本来ならば死刑または電気椅子(1000万V)1秒、酸(即死級)1滴が妥当なものですが」

3つとも死刑なのですがこれ如何に。

裏日「酸1滴では溶けるのに時間がかかるので5滴はいかがでしょう」

下着「僕もそう思います」

「異議なし」

お前ら人間じゃねぇ。

「……なのですが、寛大な方々による温かなご意見、多数寄せられたので1ペナルティのみとさせていただきます」

…法律って感情に揺さぶられて良かったんだっけ。

「何か言いました?」

1ペナルティーって何ですかヤオモモせんせー!!?

「ヤオモモではありません。裁判長と呼びなさい」

「えー…おほん。我々が提案する1ペナルティーとは……」














……(╹◡╹)

「……///」

裏日「///」

下着「???」

お前ら……

これやりたかっただけだろ。






「ぶぁっくしゅん!!」

 

 

 

 

 

大きく口を開けて盛大にくしゃみを放つ。

 

朝起きてみればこの調子だ。ここ最近疲れがたまってきてたのかなぁ。

 

熱は…

 

 

ピピ…

 

「……38度…」

 

「……」

 

体温計で測った結果がこれだよ。

 

言わずと知れた典型的な風邪の症状だ。鼻水も出るし、喉も痛い。ゴミ箱には山積みされたティッシュの数々…机の上には多数の飴等のお菓子が散乱されていた。そんなに食べれません。

 

生憎お母さんは今お買い物中…悟空さんは勿論雄英でのお仕事の最中だ。

 

結局1日学校休んじゃったなぁ…後で皆にノート見せてもらわないと…後課題もたんまり出てる筈だ。何としても終わらせないと…あ。HRあったなぁ何決定したかもちゃんと聞いておかないと…あー。今日のヒーロー基礎学はお預けかぁ……

 

憂鬱……

 

今は午後4時過ぎだ。今頃皆帰ってるか部活やってるかだよなぁ。そういえば今日部活のあった日じゃん、うひょー部長に怒られ…ってまぁ僕部長なんだけどさ。

 

……?何の話だって?いや…ほら、部活。え?何にも入ってない?嘘だぁ、僕確かに……あれ…何部だっけ…記憶にまで作用されるのかなんて恐ろしいんだMr.KAZE…

 

まぁ思い出したら言うよ、うん。1ヶ月位後のお話なんだけどさ…

 

あー…もう一旦この話やめよう。

 

「……横になって寝てるだけじゃ逆に不快になるだけだ」

 

「何か飲み物でも取りに行くか」

 

ヨロヨロと立ち上がりながらゆっくりと歩き出す。いつもなら10秒掛からず辿り着くはずの冷蔵庫にも2、30秒かかってしまった。とにかくだるい。

 

よっこらせと老爺かの様にプルプル手を震わせながら冷蔵庫の扉の淵に手をやろうとする。確か中にポカリか何かが入っていた筈…

 

 

 

 

ピンポーン

 

「………」

 

なんてタイミングだ。こんな時に宅配便?いやでもお母さん何もそれっぽい事言わなかったからなぁ。後ウチはそんなネット通販使わないし。

 

「気は…何か知ってる人だな」

 

「でも誰だっけ…気を感じた事がある者は母親、オールマイト、クラスメイト…その他諸々」

 

「分からん」

 

やむ無しと考え今度は玄関に向かってふらつきながら歩いていった。

 

全く…何処の馬の骨かは知らないがこんな病人に重労働させるとはなんてはた迷惑なお客様だ。序でに風邪うつらせて帰らせてやる。

 

途中苛立ちながらも感情を抑え、数十秒かけ玄関のドア前に到着。

 

ゆっくりとインターホンに指を近づけ外にいる人に返事をしようとすると……

 

 

 

 

ガチャ…

 

「……ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは…昔あったとかなかったとかの曖昧なお話。

 

しかしただ2人、その記憶を強く刻まれた者達がいた。

 

これはそんな1人の少年と少女達の【もしも】のお話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




緑谷「えーと…はい。急遽語り手が変わりました」

緑谷「み、緑谷と申します。緊張する…」

緑谷「ここでは特にこれといった話題も無いという事なので毎回一言感想を喋る……みたいな感じのスペースです」

緑谷「この領域は何か作者様でも干渉禁止だとか…何だかよく分かりませんが」

緑谷「何か僕の看病をするお話だとか…後女性限定?でした、聞いた話だと」

緑谷「なんででしょうね?」

緑谷「毎月の1日…最初の日に更新で確か看病する方のリクエストはその前の月の15日までとか…ややこしいですね」

緑谷「あぁ…という事は4月は無くて5月からの始動でいいのかこれ?あー多分そうです。ええ」

緑谷「とまぁこの作品についての説明は以上ですかね……」

緑谷「あ…長話するのもあれなので一言感想言って終わらせましょう。今度からはこんなグダグダじゃなく3、4行くらいで終わらせる予定ですので…」





〜プロローグの場合〜

緑谷「……えっと……」

緑谷「前書きが本編の小説見るの初めてでしたね、うん」

緑谷「……うん?」


<あ、これだけでいいの?速っ!


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No.1

キーンコーンカーンコーン…


緑谷「えー長らく皆様お待たせしました!誰得企画!僕の風邪を治そうの会ー!!」

麗日「いあーー!」

八百万「」パフパフ~

緑谷「最早存在すら忘れたよ!って人の為に一応説明しておきますと筆者さんがあまりにも投稿ペースが遅くなっている為ペナルティとして設けられたのがこの企画という訳です!」

緑谷「一言でこの内容を言うと僕の風邪菌を女性陣が駆除するといったお話です」

葉隠「クジョ…!」

蛙吹「物騒な言い方しないでちょうだい緑谷ちゃん」

緑谷「では早速第1話の主人公(ヒロイン)を発表していきたいと思います!」

緑谷「記念すべき初回に選ばれたヒロインは…」ドゥルルル…

八百万(まぁ最初はやはりメインヒロインである私が安定ですわ

デデン!
緑谷「麗日さんでーす!」

麗日「え?え!?う、ウチ!?ウチッ!?」

芦戸「おめっとさん麗日ー!」

葉隠「むむ…悔しい」

八百万「…」

蛙吹「百ちゃん…納得いかないって顔ね」

八百万「どういう…事ですの?これは…」

蛙吹「時期が時期だっただけに仕方ないわよ百ちゃん」

蛙吹「ちょうど期限内の時にお茶子ちゃんメインの話していたし」

八百万「」

緑谷「因みに八百万さんは4票中の2票入ってるね」

八百万「ちょ、ちょっとお待ちなさい!!どうしたら麗日さんになりますの!?半分以上私が占めていますわよね!?」

緑谷「いや…麗日さんの票も一緒に入ってた人もいるから…」

八百万「どう考えてもおかしいですわよ!?それは!」

緑谷「もしこれ0票としたら八百万さん1票だけになっちゃうよ?」

「…………………」



八百万「………もう…何でもいいですわ」






拳藤「……というか最早誰も突っ込まないのな、日付」

緑谷「作者さんの体感的にはまだ5/1だからね、仕方ないね(震え声)」

拳藤「仕方なくねぇだろ!」


 

「オッモチモチモチモッチモチー…」

 

「つやつや綺麗なモッチモチー」

 

「何でも合うよモッチモチー」

 

「喉に…」

 

 

 

口ずさんでいた歌詞が急に止まってしまった。あかん…つまったらただの殺人鬼や。

 

あ……っと私の説明がまだだったね。ウチの名前は麗日お茶子。何処にでもいるような普通の女子高校生(ヒーロー志望)。

 

今は訳あって下校中にある友達の家に寄ろうとしてるとこ。何故スキップしながら向かう程上機嫌なのかと言いますと……

 

 

 

 

それは1時間前に遡る。私が下校しようと廊下を通行していた時の事だった。

 

突然孫先生(私の担任)が声をかけてきたのだ。

 

「麗日〜悪りぃけど少し帰る前に緑谷ん家寄ってくんねぇか?」

 

「早めに渡してぇ紙?があんだけど…」

 

「え…私が……ですか?」

 

デク君…いわゆる緑谷君は今日風邪を拗らせて今は休養中なんだ。本当は今日渡す筈だった資料も渡せなくなったのでそれを届けに行けというなのだ。

 

USBなりメッセージなり使えばいいのでは無いかと先生に聞くと…

 

「いやぁ…うっかりまたすまほ壊しちまったし」

 

「オラパソコン使えねぇからな〜」

 

<後ゆーえすびぃってなんだ?

 

孫先生はぶっちぎりのスーパーパワーを持っているのだが何か抜けてる所が所々目立つんだよなぁ…

 

…?またって……何度も携帯壊してるの?

 

「駄目か?麗日〜」

 

「…………うーん……」

 

何を悩んでいるんだろう、私。デク君の家静岡でウチ全く別の県出身だよ!?寄り道じゃ無いよ!?デク君家行って私また東京戻ってくるんだよ!?

 

そんな労力削ってまで私が行くメリットなど鳴いだろう。こんな理不尽な用件誰が呑むのだろうか…

 

 

 

 

 

「はい。いいですよ?」

 

ごめん。私がいた。

 

 

 

 

 

 

これは…つまりアレだ。

 

風邪のデク君をお見舞いにという事を口実に彼の家に合理的に侵入できるってこった。

 

誰がこんな機会(チャンス)逃すものか。

 

なんて幸せな日なんだろう…まさかデク君家に遊びに行けるなんて……

 

ってウチは何言っとる!?そうだ…デク君は今体調崩してるんだから私がサポートせんと……

 

 

 

…とまぁ色々目論みつつ、目的地の自宅に到着した訳なのですが……

 

「ぅぅ…どう登場すればいいか分からん」

 

その場のノリで来てしまったとは言えほぼ無計画の状態で辿り着いてしまった…さぁどうする。

 

平常運転でおしとやか(?)に行こうか…それとも逆に破茶滅茶して楽しもうか…いや寧ろ押し倒すか?逆に襲おうか?

 

まずいまずい…思考回路が異常をきたしてる。これじゃアブノーマルやん。

 

「と、とりあえず入らなきゃ始まらんわ…」

 

指をプルプル震わせながらインターホンを鳴らす。確かにインターホンの音が家からしたが肝心の反応が無い。

 

「居ない…のかな?」

 

誰も返事をしないからもう一度インターホンに指を近づけるが寸での所で止めてしまう。

 

 

(待て待て待て…もし家に居るのがデク君だけやったらインターホン連打は危ないんじゃ…)

 

(ならいっそここは1回押して出なかったから潔く引い…)

 

(あっ…で、でももしこれで手が離せない用事があって出てなかっただけだったら……)

 

(ウチの第一印象まさかのピンポンダッシュ!?)

 

(それは嫌ぁぁ…)プルプル…

 

 

インターホンを鳴らすか否かで苦悩する。デク君やおばさんに迷惑はかけたくない…かと言ってこのまま引き下がるのも……

 

その時閃いた。そうだ…インターホンが使えないなら直接はいればいいじゃん。多分余程大きな声で呼ばない限りデク君起きないし…後家の中に誰か居るかどうかも1発で分かる。

 

そうと決まれば話は早い、善は急げだ。早速私は玄関のドアを開ける。

 

 

 

ガチャ…

 

「……ん?」ゴホッ…

 

なんとそこに立っていたのはゴホゴホと苦しそうに咳込みんでいるデク君の姿だった。

 

「…デ……ク……君?」

 

それを見て一瞬で状況を理解してしまった。

 

自分のせいで彼の睡眠を妨害してしまったのだと……

 

 

「……ぁ…」ドサッ

 

 

「え…麗っちょっ…麗日さん!!?」

 

 

 

 

 

少しの間気絶してしまった私だがベッドに運ばれて間もなく目を覚ましたらしい。それでも1、20分は寝ていたらしい。

 

まさか看病しにきた筈が逆に気を使わせる羽目になるとは…とほほ。

 

とりあえず起きた後、ある程度の事情を話して本来の目的であるプリント贈呈をすぐに済ませた。

 

「いやはや…ごめんねぇ。いきなり家に押しかけてきちゃって」

 

「そんな事ないよ。寧ろ助かったさ…わざわざこれを届けにきてくれて」

 

おだてちゃあかんよデク君…照れてまう。

 

「ひひ〜」

 

「悪かったね…手煩わせちゃって」

 

「そんな事ないよ!私が好きで来ただけだし…」

 

「でも風邪とかうつしたら迷惑だし、後もう外も大分暗くn

「いいのいいの!お母さんも居なさそうだから帰ってくるまで私が診とくよ」

 

「でも悪

「悪くないよ?」

 

「…そうかな?」

 

危ない危ない…折角デク君's roomにお呼ばれされたというのに手ぶらで家に帰るなんてそんな無下にするような真似はせんよ。

 

兎に角何でもいいからデク君の為になれるような事…

 

とは言ったものの果たしてほぼ完璧主義に近い彼にそうするべき事があるのだろうか…デク君の部屋をキョロキョロと見回してみるが……

 

部屋?

 

 

 

 

フキフキ…

 

「窓とかの溝は汚れやすいから定期的に拭いた方がいよデク君」

 

「う…うん」

 

まず身の回りの環境から改善すべし…かぁ

 

盲点だった…そもそものこの部屋自体を改善すれば万事解決やん。男子って結構ここら辺適当になりがちなんだよなぁ…

 

まぁウチもそうだけど。

 

とはいえ綺麗か汚いかと言われると何とも言えない微妙な部屋なあたりデク君らしいというか何というか…

 

でも男子で掃除欠かさないってかなり珍しいなぁ。ここおばさんの管轄じゃないって言うから自分で掃除してるっぽいし。

 

床拭き、掃除機…その他諸々完了!!

 

 

 

 

「さてと…一仕事終えた後はお楽しみ、おやつターイム」

 

「麗日さん…もう5時近く……」

 

「ツッコんではならんよデク君」

 

何気に楽しみにしてたお菓子タイム。ちゃんと風邪気味のデク君の為に奮発したんだからね!不味いとは言わせんよ。

 

「あーでも僕喉痛いしお菓子は…」

 

「つべこべ言わず食えー!」ズザザ…

 

 

菓子の袋を開け中のお菓子を全て口の中に流し込む。普通なら窒息死しそうだけどデク君ならすぐ飲み込むし大丈夫でしょ。

 

ゴクッ

 

「げほっ…げほ!何を…」

 

「……美味しい…」

 

「でしょ?風邪の時にマシュマロってかなり効果あるんだよね」

 

「確かに…他の食べ物と違って喉に引っかからずスゥ〜って飲み込める」

 

「これは病みつきになる」パクパク…

 

掴みは完璧!相変わらずがっつくなぁ…食べてる時1番幸せそうだし…

 

頰膨らませてるデク君可愛い。

 

「後クッキーとかも…」

 

「クッキー?これまた喉が痛くなりそうな…」パクッ

 

「…」ポリポリ…

 

「これは…ジンジャークッキー?」

 

「うん!生姜は風邪に効くからね」

 

「ただ生姜食べさせるだけのもアレだったし」

 

「この程よい甘さとピリ辛さがたまらない!」モグモグ…

 

「これまた美味しい美味しい」パクパク…

 

屈託のない笑みで口一杯にお菓子を頬張っているデク君。どうやらお気に召していただけようでこちらもこちらでとても満足だ。

 

それににしても…痛い出費やわ……しばらくはもやしかそうめんで耐え凌ぐ他ないか。ぅぅ…財布が軽くなった分ウチへの負担が急増してしもた。

 

「」バリバリムシャムシャモグモグ…

 

 

 

まぁデク君嬉しそうだから構わないけどさ…

 

食べカス盛大にこぼすデク君可愛い。

 

 

 

 

 

 

買ってきたお菓子をあっという間に平らげてしまったデク君…ぁぁ…10日分の食料がぁ…(菓子5袋)

 

本当はもっとお話したい所なんだけど無理に身体を起こせば悪化しかねんからな!デク君を寝かしてから帰ろう、そう決めた。

 

 

 

「……」

 

「…デク君、寝れる?」

 

「う、う〜ん……」

 

結局横になって早20分経過。寝る気配が一切見られない。無理もないか…同学年の女子が枕元に座ってたらそりゃ眠れんか。

 

だからと言ってこの場を離れる訳にはいかないからなぁ。デク君の身はこちらに委ねられた訳だからちゃんと安眠してるかどうか確認せんとアカンし……

 

……デク君の寝顔を真近で見たいなんて口裂けても言えんわ。

 

困ったなぁ…子守唄は…流石に馬鹿馬鹿しいにも程があるし。デク君の眠気を起こすには………

 

 

 

 

幼少期の頃の事を思い出した。確か怪談聞いた後怖くて練れなかった時父ちゃんがよく昔話を聞かせてくれたな…

 

これだ!

 

 

 

「そうだ!デク君…昔話聞かない?」

 

「え…昔話?」

 

「ウチも寝れんかった時よく父ちゃんに聞かされたんだ…童話」

 

「聞いてみる?」

 

「……うん。聞く聞く」

 

「そうたなぁ…まずはうその名人ってお話」

 

 

 

 

ー昔、嘘をつく名人で有名な子供が居て村人に大層人気があったそうなー

 

ーその子は大人になっても嘘をつき続けて、村人達を喜ばせたが考え詰めすぎて病気にかかって死んでしまったというー

 

ーお葬式を出すと実は【死んでいた振りをしていただけ】でまたもや村人達は彼の嘘に呆気に取られたそうなー

 

ーだがその名人も老いてしまいとうとう寿命が尽きるという時、名人は村人達に感謝を込めて【床下にある壺の中にお金が入っているから使ってくれ】と遺言を残したのだがー

 

ー調べてみるとこれまたびっくり。壺の中には【嘘のいいじまい】とだけ書かれた1枚だけ入ってただけだったとさー

 

 

 

 

「へぇ〜面白い!それって…麗日さんの地元の昔話なの?」

 

「ん…多分そう…だと思う」

 

「一生を嘘にかけるって…何か流儀通してるみたいでかっこいいね!」

 

「まぁ…ウチ的には死を装うってのはやりすぎな気もするけど……」

 

「他にどんな童話あるの?」

 

「え……そ、そうだね……」

 

 

 

 

「zzz…」

 

「ふ…ふぅ」

 

5、6種位話聞かせた所でようやく眠りについてくれた…予想以上に没頭してたなぁ。大分疲れてしまったよ。

 

……もう完全に寝入ったよね?

 

背を丸くし、彼の顔を覗き込み様子を確認する。鼻と鼻がギリギリ接触しない位にまで顔を近づけた。すご…呼吸音もハッキリ聞こえるよ。

 

「……何かこうして見ると…」

 

「何とも言えない感が半端じゃないなデク君」

 

「イケメンかと言われるとえらい凛としてる訳でもないし…」

 

「可愛い系かと言われるとそれ程チャームポイントは見つからない」

 

「あ…でもある意味このそばかすはある種のチャームポイントとして確立はしている」

 

「髪が緑色っていうのも何か爽やかボーイ的な…そんな象徴だよね」

 

「これらの1つ1つが調和しないと決して成り立つ事は無い傑作と言えよう…」

 

何故私は真面目に解説をしているのだろう。何故私は芸術鑑賞のレポート的な感覚でデク君の観察をしているのだろう。

 

色々とツッコミたい所があったが1つ…確信できた事がある。

 

(あれ…顔が勝手に近づ……)

 

(ぅぁ…何……これじゃ私……)

 

(デク君とキ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン…

 

麗日「………」ガバッ

 

麗日「…えーと……」ボーッ

 

鳥の囀りがこんなに心地悪いと思った事が初めてでは無いだろうか?見た事のある天井…グチャグチャに染み付いた寝癖……

 

時間を確認してみると…もう始業時刻はとっくに過ぎてた。

 

麗日「…けほけほ………」

 

 

 

あー…そういうパターン?

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、奇しくもデク君が申し訳なさそうにお見舞いに来る事になっちゃうんだけど……

 

それはまた別のお話…

 

 

 

 

 

 




〜麗日の場合〜

Q.マシュマロは?
緑谷「美味しかったです」

Q.クッキーは?
緑谷「滅茶美味かったです」

Q.口づけは?
緑谷「………///」

緑谷「ノーコメントで」


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No.2

緑谷「………」

「………………」

緑谷「ぇ…ぇぇと……」

緑谷「月初の恒例イベント…ブレイクタイム2時間目を始…め…ます」

八百万「………言いたい事は分かりますわね?緑谷さん」

緑谷「は、はぁ…」


八百万「作者のあまりに不適切な対応に閲覧者の方々の不満を解消すべく始まったこの特別企画……」

八百万「第1回目が始まってからここまでの期間の投稿が1話って一体どういう事てすの?」

耳郎「何の音沙汰も無く更新無しと来たらそりゃまぁ驚くわな」

葉隠「一体何人もの読者が失踪したと思って去っていったのか……」

芦戸「んまー、リアルで風邪引いたからっていうのは百歩譲って…いや無いわー」

蛙吹「よくもまぁ迷惑だから次回の更新予定日時を公開しないようになんて言えたものね」

麗日「公開しないのが仇になって後悔してるんですね分かります」


緑谷「………いや、あの…その…」

緑谷「僕に言われましても……なんとコメントしたらいいか…」

拳藤(これはひどい)<リンチェ…



キーンコーンカーンコーン…



緑谷「…………と、いう訳でですね」

緑谷「月初の恒例イベント…オラのヒーローアカデミア、ブレイクタイム2時間目始めたいと思います!」

麗日「いあーー!」

八百万「」パフパフ~

拳藤(なんだこのテンションの差は…)

緑谷「本編の投稿が滞る中、まさか再開するのが一ヶ月後などと誰が予想したのでしょうか!?」

緑谷「こんな悪空気をも必ずやこの企画でぶち壊してやりましょう!」

八百万「だからこそのブレイクタイムですし」

拳藤(ブレークタイムは休憩時間なんだよなぁ)

緑谷「さぁ!長々と前座を置きましたが2時間目の主人公(ヒロイン)を発表していきましょう!」ドゥルルル…

八百万(前回は番狂わせが起こってしまいましたが今回は違いますわよ!)

八百万(作者がロクに更新をしない事により本編の記憶が薄い&アンケートの票が少ない筈ですわ!)

八百万(と、いう事は否が応でも私に投票する他無いt
緑谷「蛙吹さんです!!」デデン!

八百万「……へ?」


耳郎「ま、まぁ…梅雨だし」

芦戸「梅雨だもんなー」

葉隠「梅雨だからね」

麗日「6月と言えば梅雨ちゃんやしね!」

蛙吹「ケロケロ…なんか安直すぎる理由な気もしなくは無いけど」

蛙吹「嬉しいわ、選ばれて」

八百万「いやいやいやいやいや!?」

緑谷「まぁ今回は更新が途絶えた都合上前回と同じ4票なんですけどねー」<蛙吹さん2票の耳郎さん1八百万さん1

拳藤「だとしても前回と同じ票数ってのはすごくね?」

拳藤「5/5で更新止まってただろ」

八百万「いっ異議ありですわ!」

麗日「却下」←前回当選済

八百万「えええええっ!?」

緑谷(あれ…八百万さんサイバンチョだった筈…)

耳郎「投票してくれた人ありがとねー」




ザァァァ…

 

 

 

今日この頃雨。かなり大降り。

 

春を通り越して最早季節が夏なのでは無いかと疑う程の蒸し暑さを耐え凌ぎ、ようやく6月がやって来た…

 

かと思いきやこの時期である。そう、梅雨だ。

 

天気が悪いわ、暑くてじめじめするわ、水泳始まるかと思いきや雨のせいで室内体育になるわ……

 

高校に入って早3ヶ月…ようやく生活に慣れ始めた高1にとっては尚更この【梅雨】というものは苦痛であり、憂鬱な時期なのだ。

 

 

 

でも私はそんな雨が好きだ。

 

特にこの【梅雨】の時期は私にとってのお気に入り…

 

 

 

「雨は楽しいな♪」ビチャビチャ…

 

 

 

 

 

…とは言えこんなに上機嫌にスキップしながら下校するのはかなり珍しいけど。

 

 

 

 

 

 

私の名前は蛙吹梅雨。雄英高校に通う1年生、ごく普通のヒーロー志望生よ。

 

くれぐれも呼ぶ時は苗字じゃなくて【梅雨ちゃん】と気軽に呼んでちょうだい。

 

今日はある事情で友達の家に寄らなければならなくなってしまったの…え?それじゃなんでそんな気分が良いか…ですって?

 

 

 

 

それはおよそ1時間前に遡る。私は傘を片手に帰宅しようと廊下を渡っていた。

 

そんな時、不意に後ろから孫先生(私の担任)に呼び止められたの。

 

 

「蛙吹〜悪りぃけど少し帰る前に緑谷ん家寄ってくんねぇか?」

 

「早めに渡してぇ紙?があんだけど…」

 

「え…私が……ですか?」

 

緑谷ちゃんは今日風邪を拗らせて今は休養中なの。要するに本当は今日渡す筈だった資料も渡せなくなったのでそれを届けに行けという話よ。

 

USBなりメッセージなり使えばいいのでは無いかと先生に聞くと…

 

「いやぁ…うっかりまたすまほ壊しちまったし」

 

「オラパソコン使えねぇからな〜」

 

<後ゆーえすびぃってなんだ?

 

孫先生はオールマイトに負けず劣らずの超人パワー持ちだけど少しおっちょこちょいな所が面白い。

 

…何かその言い方だと今まで何度も携帯を壊してきたように聞こえるわね……

 

「駄目かぁ?蛙吹〜」

 

「……うーん……」

 

 

 

緑谷ちゃんは静岡県出身。私はその隣の愛知県に住んでるから近いという理由で言うのならば百歩譲って納得しましょう。

 

だからと言ってこんな荒れている天候の中、わざわざ別県に住んでいるクラスメイのお家に寄ってこいと言うのは…いささか無理があるんじゃないかしら。

 

いくらお人好しな私でもそんな難しい要求をハイハイと呑む訳ないじゃない…………

 

 

 

 

 

 

とか思っていた時期が私にもありました。

 

 

「勿論、喜んでやらせてもらうわ」

 

 

 

一応言っておくけど緑谷ちゃんの私生活を覗くとかそんなやましい気持ちは全く無いわよ。

 

本当は面倒くさかったけど緑谷ちゃんには色々と助かってるし…日頃のお礼よ。

 

それに倒れている友達のお見舞いをするのだって当然じゃない?当然でしょう?

 

だから決して緑谷ちゃんの家に遊びに行きたいとかそういう事は微塵も思ってないから安心してちょうだい。

 

………大事な事だから2回言っただけよ?

 

 

 

 

 

 

「ようやく着いたわね…緑谷ちゃん家」

 

街の一角にポツンと建っているアパートの一室…そこが緑谷ちゃんのお家。

 

何の変哲もない普通の家なのにこんなに胸が踊るのは何故かしら…すごいドキドキする。

 

雨でずぶ濡れになった傘をバシャバシャとはたいた後階段を上っていき伝言されていた番号の部屋に辿り着く。

 

とりあえず友達の家に入る時は1P(ピンポン)が定石よね。

 

 

ピンポーン

 

 

「………けろ?」

 

ピンポンを鳴らしたが反応が無い。聞こえなかったのかしら…それとも手が離せなかったり……

 

念の為もう1回インターホン押しとこうかしら…あーでもしつこく押し続けても迷惑になるだけだし。

 

 

そうこうしている内にドアの向こう側から人の足音が聞こえてきた。良かった…ちゃんと気づいてたのね。

 

それにしては何か歩くスピードがやけにゆっくりだけど突っ込むのは野暮かしら。

 

念の為そっとドアを開けて中を確認してみると…

 

 

 

ガチャ…

 

「……ん?」ゴホッ…

 

「…」

 

 

なんとフラフラとドアにゆっくり歩いていたのは緑谷ちゃん本人だった。

 

ま…まずいわね。寝てる所を起こしちゃったのかしら……睡眠の邪魔をしてしまったのなら謝らないと…

 

い、いやいやその前にほら…いきなり家に侵入して来ちゃったし…えと、挨拶しなきゃ…

 

 

「お、おはよ…緑谷ちゃん」

 

「……えっと……」

 

「今…夕方だよ?梅雨ちゃん」

 

そういうツッコミ狙いじゃないのよね、うん…

 

 

 

 

 

ひとまず家の中に入らせてもらい、廊下を歩きながら簡単に事の経緯を話した。

 

「へー…それでわざわざ」

 

「ありがとうね…こんな天気の中手を煩わせちゃって」

 

「礼には及ばないわ。友達だもの」

 

「友達…ねぇ……」

 

「そういえば…こんなどしゃ降りの中じゃかなり制服濡れたでしょ?タオルで……」

 

そう言いながらこっちに振り向いた緑谷ちゃんだったが私を見た途端口を開けたまま固まってしまった。

 

何か変な虫でも付いているのかと思って確認してみると…

 

 

「…あちゃ…」ビチャビチャ

 

 

予想以上に濡れてたわね…うん。白い下着がはっきりと見える位透けてらっしゃる。

 

透ちゃんも驚きの透明度…って洒落にならないわ。

 

まぁそれを見ちゃ顔も赤くなるわね。

 

「……どうしたの?熱高そうじゃない?」

 

「顔が真っ赤よ緑谷ちゃん」

 

「いっ…いやっその…ふぁっ!」

 

慌てて必死に手で遮ろうとする緑谷ちゃんなんか可愛い。もうバッチリバレバレだからいくら見てもいいわよ。

 

…恥じらいが無いだとかそういうのは禁句(タブー)よ。

 

このまま反応を楽しむのも面白いけどそろそろ冗談無しに身体が冷えてこっちが風邪になりかねないから…

 

「緑谷ちゃん」

 

「ひゃい!?」

 

「シャワー借りてもいいかしら…」

 

「…………ぁ」

 

「ご、ご自由に」

 

 

 

 

シャワァァ…

 

思ったよりも反応が薄かったわね…あっさり了承されちゃった。まぁ体調が体調なだけに大きなリアクション出す気力も無いって所かしら…

 

いつ浴びてもやっぱりシャワーは慣れないわね。天然の雨を浴びたいわ…汚れちゃうけど。

 

勢いで入ってしまったものの…シャンプーとか何使えばいいのかしら?

 

「え、えーっと…」

 

「緑谷ちゃーん!貴方ってどのシャンプー使ってるの?」

 

何の洗剤を使えば良いのか私1人では判断できない為、緑谷ちゃんを呼び出すものの…

 

「んー?何使ってもいいよ!」ゴホゴホッ

 

その答えが1番困るのよ…緑谷ちゃん。

 

「ところで梅雨ちゃん、君のサイズってどの位?」

 

「」ブシャァァ

 

な、何を聞いてるの緑谷ちゃん!?さ、さ…ササささサイズッ!?

 

「い、いや……一応服用意する時にキツキツだったりとか、逆にブカブカだったりしたらアレかと思ってさ!?」

 

「け、ケシテそんな卑猥な事は!」

 

言ってる時点でアウトよ。

 

そ、そうよそうよ…今聞いているのはバストでもウエストでもヒップでも無いのよ!だからギリギリセーフ!聞かれても答えられ…

 

…下着用意する時聞くじゃん。

 

「あ、後そうそう…バスタオルとかは前のカゴに置いとい」ゴホゴホッ

 

「それとさっきまで着てた服は洗」ゴホゴホッ

 

「後は全部私がやっとくからあなたは寝なさい」

 

…何か今洗濯するって聞こえたような気がするけど気のせいよね、うん。気のせい。

 

 

 

 

 

身体を無事洗い終えた後、すぐに着替えてお粥を作る準備を始めた。どうやら私がやってくる直前に緑谷ちゃんのママが買い物に行ったらしくしばらく帰ってこないらしい。

 

何故か既に炊いてあったお米があったので小腹?が空いたという緑谷ちゃんの為にれっつくっきんぐ。勿論彼と彼のママからは了承は得たわよ。

 

因みに入浴後の服は勝手に色々と借りる訳にも行かなかったので緑谷ちゃんのママのある服を1枚だけ借りてます。

 

お粥は弟達が風邪になった時とかに何度も作った事があるのよね。何度もやれば慣れるものね。

 

グツグツ…

 

「よし…大分煮えてきたわね」

 

鍋からお粥のいい香りが漂ってくる。うんうん、見た目は上出来。後は味見を…

 

「…っ…へ…」

 

「っくちゅ!」

 

不意にくしゃみをしてしまった。お風呂から出た直後っていうのと()()()()()からかしら…まぁ鼻のムズムズで察知はしてたから口でおさえる&後ろを向くで間一髪鍋の中に体液が入るのは避けられたわ。

 

「危ない危ない…お客様(緑谷ちゃん)の料理に料理人()の汚い唾を入れるなんて失礼極まりないからね」

 

「さてと…味見味見」

 

おたまで少し汁をすくうと口にゆっくりそれを注いでいった。

 

ズズッ…

 

「…少し味が濃いかもしれないけど、緑谷ちゃんは多分こっちの味付けの方が好みだからこんな感じでいいわね」

 

出来栄えは良し!後は緑谷ちゃんの口に合うかどうかね…何かこれだけ見るとただ女房が旦那にご飯作ってるみたいね。

 

…あ、いや、何でもないわよ。

 

変な妄想をしながら焦っておたまを鍋の中に戻してしまった。

 

 

(唇をつけた)おたまを鍋の中に戻してしまった。

 

 

大事な事だから2回言ったわよ。

 

「ああっ!?」

 

その途端に自分の行ってしまった過ちに気づき、反射的に悲鳴をあげてしまう。まずいわ…大きな声で叫んだら緑谷ちゃんが安静にできない。

 

最後の最後でやってしまったわ…意識してはいたけれど……

 

「はぁ……」

 

ため息ついてても仕方ないわね、このまま出しましょう。もう一度作る時間も材料も無い。

 

それに………

 

いや、何でもないわ…だから何でもないですってば。

 

 

 

 

「お待ちどうさま」

 

内心冷や汗かきながらもニッコリと笑顔で緑谷ちゃんの部屋へお粥を運びに行った。

 

ドアを開けた瞬間、緑谷ちゃんはゴホゴホッと咳をしながらヒョイッとこちらの方を振り向いた。

 

余程お粥の完成が待ち遠しかったのね。まぁ…多分見た瞬間お粥よりも()()()の方に気を取られると思うけど。

 

「あ。ありがと梅…」

 

台詞が途中で途切れ、さっきの様に顔を紅く染めながら手で目を隠した。初心(うぷ)ねぇ。

 

「なっ!な、ななな…なんで蛙吹さん裸エプロンなの!?」

 

「緑谷ちゃん、焦りすぎて言い方戻っちゃってるわよ」<梅雨ちゃん梅雨ちゃん!

 

「それとなく話題逸らすのやめよ!?」

 

い、いやぁ…その……私のサイズに合う服探すのに緑谷ちゃん家のタンスをガサゴソ乱雑に探すのは如何なものかと思って……ね?

 

別にあんな目的そんな目的で着た訳じゃないのよ、信じてちょうだい。…あ、ここまで来たら言い訳にしか聞こえないと。

 

「さ、そ…そんな事よりお粥よ。緑谷ちゃん」

 

「あなたの口に合うかどうか分からないけど…」

 

そもそもこれでお粥(唾液)美味しいなんてコメントが出た日には私発狂するわよ。

 

「あ、美味しいそう…それじゃお言葉に甘えて!」

 

あーんと大きく口を開けながら数十の米粒の塊を無理やり口の中へ放り込む。体調が悪くとも食欲は健全ね。

 

「ふぁ、ふぁつ!」

 

「ふぁ…」

 

モグモグモグモグ…

 

頰を大きく膨らませて必死に噛んでるのがまんまリスの食事シーンね。これまたかわいい。

 

ゴクッ

 

「……っはぁ!美味しい!すごく美味しいよ梅雨ちゃん!」

 

「そそそっそれは良かったわ!」

 

お粥が美味しくできた事自体は嬉しいけど材料を知ってるこちらとしてはとても恥ずかしいわ!ええ!恥ずかしいですとも!

 

後【美味しいよ梅雨ちゃん】だと色々と誤解生むからやめなさい!

 

「それにしても…何か違和感があるな」

 

「独特の風味?……というか隠し味?」モグモグ

 

!!流石は緑谷ちゃんセンサー!微量の異物混入も彼の味覚には騙されないらしい。

 

…え、待って。隠し味……

 

「ふーむ…この味は…」モグモグ…

 

ゴクッ

 

「分かった!ごま油だ!微かにだけど感じられるこの香ばしさ…」

 

「すごい…お粥にごま油ってすごく合うね!」

 

「梅雨ちゃんって料理得意なんだ!」

 

 

「………ぇぇ、そぅょ…ぅん」

 

「え、あれ?梅雨ちゃん?おーい」

 

 

 

結局…彼の食レポでお粥がとても美味しいのコメントよりも私の唾液=ごま油という(一言)が私の心に深く突き刺さり、とても落ち込まずにはいられなかったという…

 

因果応報の結果で終わりました。トホホ…

 

 

 

 

 

料理で使った用具の片付けも無事終了し、ひと段落した所で緑谷ちゃんの様子を見に行った。

 

部屋を覗くとさっきよりも激しく咳をして、とても苦しそうな彼の姿があった。

 

 

 

「大丈夫?緑谷ちゃん」

 

「あ…梅雨ちゃん…大丈夫大丈」

 

「っぶほっごほっ!」

 

「その感じだとあまり大丈夫じゃなさそうね…眠れないの?」

 

「いや…雨が思ったよりも強くってさ…寝入らないんだ」

 

「……こんな雨の中じゃそれも仕方ないわね。音も激しいし」

 

「それにしてもこんな天気の中…あなたのお母さん、買い物しに行ったんでしょう?」

 

「怪我とかしていないかしらね」

 

「うーん…まぁ車で向かったし、さっきLINE見たらもう買い物自体は終わったって言ったから多分問題ないよ」

 

「さぞかし大変ねぇ」

 

「「………」」ザァァァ…

 

「…雨っていいよね」

 

「どこが?」

 

「ほら、雨粒そのものがまず綺麗だし」

 

「落ちる音も大小高低様々で…なんだ…風潮感じられるし」

 

「確かにじめじめしたりとか嫌な時もあるけど…」

 

 

「自分はなんか…雨が好きだ!」

 

 

「………そう、ね」

 

 

 

 

 

 

 

いつまで経っても眠れないというので仕方なく緑谷ちゃんの枕元に座りながら彼と話していた。

 

風邪が悪化する可能性もあるので何とかして寝かしつけないと、とどうすれば良いかと考えを巡らせていた。

 

結局、考えて考えた末に出した答えは…

 

 

 

「羊の数を数えましょう」

 

「…」ゴホゴホッ

 

そんな冷たい視線で私を見ないでちょうだい。

 

「なにゆえ?」

 

「数え続けたらその内疲れて寝るでしょ、多分」

 

「は、はぁ……」

 

「…………じゃ、じゃあさ、せめて…」

 

「蛙の数にしない?」

 

「……なにゆえ?」

 

「………梅雨ちゃんだから……?」

 

「そこで蛙吹さんと言わなかったのは意外だったわ」

 

「少しは悩んだけどさ、ははは…」ゴホゴホッ

 

「…じゃ、蛙の数を数えて寝ましょうか」

 

 

 

 

「えーっと蛙の数え方ってどうだったっけ?」

 

「普通に匹でいいんじゃない?」

 

「あ、それじゃ…………」

 

「…言わないの?緑谷ちゃん」

 

「いや、蛙吹さんが言うかなと…けほっ」

 

「ケロ…」

 

「「………」」

 

「「どうぞどうぞ」」

 

「……フフ、これじゃずっと寝れないじゃない」

 

「せ、せーので同時に言おっか」

 

「そうね」

 

「「……」」

 

「「せーの」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン…

 

蛙吹「………」ガバッ

 

蛙吹「…えーと……」ボーッ

 

鳥の囀りがこんなに心地悪いと思った事が初めてでは無いだろうか?見た事のある天井…グチャグチャに染み付いた寝癖……

 

時間を確認してみると…もう始業時刻はとっくに過ぎてた。

 

蛙吹「…けほけほ………」

 

 

 

あー…そういうパターン?

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、何故か緑谷ちゃんがお詫びを入れながら私の家にお見舞いをしにやって来るのだけれど…

 

それはまた別のお話…

 




〜蛙吹の場合〜

<ケロリーの〜は見たんだロットォォオッ!?

<どうだった?

緑谷「……」

緑谷「意外と…大きいです」

蛙吹「緑谷ちゃん?」

八百万「今なら私に清き1票を入れてもよろしくてよ!?期限は20日まで!」

耳郎「お願いしてるのか許可してるのかどっちなんだよ…」

麗日「涙拭けよ」

拳藤(一言じゃ無くなってるんだよなぁ…カオス)


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No.3

緑谷「6月も終わり、梅雨のピークも過ぎ去ろうとしている今日この頃」

緑谷「皆様猛暑には参っておられませんか?熱中症などにはくれぐれも注意を!」

緑谷「さぁそんな暑さも先月の疲れも今日でリセット(吹き飛ば)しましょう!」

緑谷「月初の恒例イベント…オラのヒーローアカデミア、ブレイクタイムーーー!」

麗日「いあーー!」

八百万「」パフパフ~

緑谷「はい!今回で3回目となる番外編!!」

緑谷「今回からなんと!特別ゲストとしてB組から拳藤さんが、その諸々からは発目さんがお見えになっております!」パチパチ…

発目「フフフ!まさか本編より先に名前付きで登場するとは思ってもみませんでしたよ!」

拳藤「そもそもあたしは初回から出てたよな?え、あの2回ノーカンなの?」

発目「私が選ばれた暁には!貴方の看病にうってつけな可愛いベイビー達を是非プレゼンいたしましょう!フフフフ…」

蛙吹「よろしく頼むわ、明ちゃん、一佳ちゃん」

麗日「一緒に企画盛り上げてこーー!」

↑以上2名は既に当選済

八百万「」ギリギリギリギリギリギリギリギリ

芦戸「すっごーい。何アレー」

葉隠「歯ぎしり鳴らすのが得意なフレンズさんなんだよ分かってあげなよ」

耳郎「お前ら…ちょっかい出すのも大概にしなよ」

耳郎(まぁ八百万の気持ちは分からんでもないよ)

耳郎(まだ風呂敷広げてない私達が出番来ないのはまだしもただでさえ本編で接点作りまくってる八百万がこうも票が少ないと…)

耳郎(いや投票自体はされているんだけどなぁ…何というか)

緑谷「ほんじゃま早速先月の投票結果発表していきましょう!」ドゥルルル…

緑谷「今回はメッセージボックスからかなり沢山の意見を貰いましたよ!早速統計結果を見てみましょう!」


緑谷「まず芦戸さん1票、塩崎さんも同じく1票!!」

緑谷「さらに小大さんは2票!」

拳藤「おー。唯中々人気あるじゃん」

蛙吹(というか作者が推してるは割には一佳ちゃんが1度も出てきてないわね)

麗日(9割方そのせいやないの?)

緑谷「そして八百万さん3票!!」デデン!

八百万「マジですのっ!?」クルッ

耳郎「や、やったじゃん八百万…!これで今回は安t
緑谷「そんでもって今回主人公(ヒロイン)を務めるのは見事4票を獲得しました耳郎さんです!」デデ−ン

緑谷「感想欄を独占していたにも関わらず、最後のダメ押し(メッセージ)で1位に食い込みました!」

緑谷「おめでとうございます!!」

耳郎「……………」

八百万「………………」



クルッ

八百万「じろう゛ざぁん…」ドバババ


耳郎「…えっと…その」

耳郎「なんかごめん、八百万………」





拳藤(…え、あ…コレ7月想定してるのね、うん)

拳藤(長い間、更新が滞ってしまい大変ご迷惑をおかけしました)

拳藤(作者に代わり、この場をもって謝罪させていただきます)ペコッ


拳藤(…あれ、昨日から私弁明してばっか…?)


 

 

 

 

 

ミーンミンミンミンミーン

 

 

「………」

 

ミーンミンミンミンミーン!

 

「……あt

ミーンミンミンミンミンミンミンミーン!!!

 

 

うるせぇ…

 

 

 

7月…夏真っ盛りの時期である。それを証拠に、只今の外の気温【34C°】。死ねます、こんがり焼けてしまいます。

 

日頃から通学している私達にとってはこの時間帯がどれだけ過酷なモノか…

 

何しろ日光の長時間吸収により温度が急激に高くなったこの灼熱の鉄板(コンクリート)の上を、コレまた高熱の陽射しを浴び続けながら優に1時間は下らない時間の間、歩いていかなければならないのだ。

 

更にそれに加えてこの煩わしい蝉の鳴き声と来たものだ。余計腹立だしい。まぁそもそも疲れが溜まってるせいで怒る気力も無いんだけど…

 

 

 

個性使用許可されてたら今頃会う度に粉々にしてるぞ?あ?

 

ミーンミンミン…

 

私の心の声に反応したのか周りで鳴いていた蝉共が急にその場から離れていった。おーおー虫の癖に利口じゃないか。次は最初からそうしてくれ給へ。

 

 

…とまぁグダグダと話はしたが実を言うと、今私がイラついているのは虫のせい…と言うわけではない。無論コレは【全てにおいて】という意味での話で、実際に蝉共に気分を害された事に変わりは無いが…

 

あ。ウチの紹介が遅れてたね。

 

私の名前は耳郎響香。どこにでもいる平凡なヒーロー志望生。

 

今回はそんな私とそんなクラスメイトとのお話である。

 

 

 

 

 

事の発端はおよそ1時間前に起きた出来事だ。猛暑には耐えながらも授業を受け続け、クタクタになった身体を引きずりながら私は廊下を歩いていた。

 

そんな時、不意に後ろから孫先生(私の担任)に呼び止められる。

 

 

「耳郎〜悪りぃけど少し帰る前に緑谷ん家寄ってくんねぇか?」

 

「早めに渡してぇ紙?があんだけど…」

 

「え…私が……ですか?」

 

緑谷……は確か今日風邪引いて欠席してたんじゃなかったっけかな。朝聞いた時にはびっくりしたよ。何たってあの超健康体が体調を崩すとはハッキリ言って誰も予想だにしてなかったもんなぁ。

 

成る程、それで今日渡す筈だった資料が緑谷に行き届いてないから私にこれを配達しろと……

 

 

 

 

ふざけんなぁぁっ!!?

 

確かに同県に住んでるし、他の奴らと比べて家が近いのは事実だけどさぁ!?それ考慮したとしてもバカみたいに距離あるだろ!?私が行く義理無いだろ!?

 

つかその前にUSBだとかメッセージで送ればいいのでは?と先生に聞くと…

 

「いやぁ…うっかりまたすまほ壊しちまったし」

 

「オラパソコン使えねぇからな〜」

 

<後ゆーえすびぃってなんだ?

 

孫先生はオールマイト顔負けの脳筋である為、力があまりに強い分知能はそれ程高くない。

 

 

…高くないってレベルじゃないような気がするがまぁ突っ込まないでおこう。

 

「駄目かぁ?耳郎〜」

 

「……うーん……」

 

さてとどう言い訳を考えたものか…ん?診てやるって選択肢は無いのかって?無い無い!

 

家までの距離で言うのなら爆豪に頼んだ方が絶対早いし、多分こんな話私の知ってる中じゃ少なくとも3人はすぐ食いついてきそうだけど。私より適任なんてわんさかいるぞ。

 

いや、無駄にこの人抜け目無いからなぁ。もしかしてそれを見計らって予め聞いてあって断られただけ……ってそんな訳無いか。

 

とにかく、然程仲のいい友人でもない奴の所にお見舞いなんて行くなんて糞食ら………

 

 

 

 

 

「分かりました、一走り行きますよ」

 

前言撤回。やっぱり行くわ。

 

 

 

 

 

 

さて…何故こんな面倒くさがり屋な私が孫先生の無理難題を了承したのかと言うと、案外単純な理由だったりする。

 

いや、その…さ。実は今更こう言うのもアレかもしれんが

 

 

私と緑谷ってまともに喋った事が無い!!!(迫真)

 

 

本編ではいざ知らず、2人で会話を交えた事なんてほんの数回!!1桁に収まってしまうぞ、すっごーい(本日2回目)

 

だがあの男一見地味に思えて、中々の強者だ。中間・期末共に筆記で5位以内の成績を収めており、実技系統に至っては言わずもがな。

 

そんな超優等生と何の友人関係も築かない手は無いだろう。今ここで恩を売っておけば後々の人生に大きく響く事間違い無しだろう。

 

…ま、すぐにでもこんなクソ暑い中行く程の価値が出てくるのかは別としてさ。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでようやくやって来ました、緑谷ん家。正確にはあるアパートの仲の1部屋に住んでる訳だが…この際どうでもいいか。

 

後は言われた所の部屋に向かって適当に資料渡して、適当に頼まれたの伝言して、適当に相槌をうてば私のミッションは終了だ。

 

……いやいやいやっ

 

折角緑谷とじっくり2人で話せる機会(チャンス)を自分から作ったんだ。友達の家に遊びに行くなんて高校に入ってからそうそう無かったし…決して遊びに来たくて態々ここまで足を運んだ訳じゃないけどさぁ…

 

 

………機会(チャンス)がある内に仲は進展しておきたいし

 

 

 

…みたいな。ぁあ〜うまく言葉がまとまらないぞー。

 

そうこうしている内に緑谷のいると噂のお部屋に到着。早速ピンポンでお呼び出ししますか。

 

 

ピンポーン

 

 

「……なぬ?」

 

どうした事か、インターホンを鳴らしても返事どころか人が動く気配も感じられない。何だ、もしかして留守なのか?いや…緑谷は家に居る筈。

 

はっ!?もしや、あ奴仮病!!?

 

 

……ってこいつに限ってあり得ないしなぁ。

 

 

とまぁ色々と想像したり妄想していたりすると中からのそっ、のそっと妙に気味悪い足音が聞こえてくる。

 

なんだ、ゾンビでも居るのか?と言う程重く遅い歩き方なモンだから尚更不安が頭を過る。もしかして敵でも侵入していやがるのだろうか。

 

恐る恐るドアを開けてみると…

 

 

 

ガチャ…

 

「……ん?」ゴホッ…

 

「…」

 

 

 

 

なんと目の前には苦しそうに咳き込みながら、ドアへ近づく緑谷の姿が…

 

驚きつつも、何故病人である筈の緑谷が態々出向いてくれたのか?とか聞こうとしたが

 

 

というか、緑谷本人が出て来てくれたお陰で大体の状況は察せた。

 

ひとまず挨拶だけ済ませ、早速部屋の中へお邪魔させてもらおう。

 

 

「よ、緑谷」

 

「お、おはよう」

 

「耳郎さん…こんな時間帯、ってかそもそもなんで僕ん家に?」

 

「いや〜それが孫先生にあんたの書類渡し頼まれちゃってさぁ」

 

「ま、外で長話もアレだし、部屋入らせてよ」

 

「あ、ど…どどぞ!少しばかり汚いかもだけど……」

 

 

 

 

出久's roomに案内してもらう途中、ここまでの経緯を緑谷に軽く話してもらった。どうやら私が来る直前にお母さんが買い物に行ってしまったらしく1人で出る他無かったらしい。

 

そりゃ迷惑かけてすまんかったな。サプライズ的な意味で連絡してなかったのが裏目に出たわ。

 

 

…つまり幸か不幸か今現在、見事にここは私と緑谷の2人きりの部屋になってしまっているという事か。ますます御三方が怒り出しそうなシチュエーションだ。

 

まぁ殺意の視線×3など気にせず、ちゃっちゃか看病していきましょうか。

 

 

 

「お」ガチャ

「う」ドッ

「ふ」ストン

「っ!?」ガバッ

 

「完了ー」

 

 

 

 

とは言えベッドに寝かせて、布団かけて、多少お話するだけなんだがな。勝ったッ!第3部完!

 

一々異性にアレコレ面倒見られるのもに精神的にクルだろうし、何より私が面倒くさい。さっさと寝てもらうのが1番だ。

 

後は横になりながら大人しく私の説明でも聞いてなさい。

 

 

「そ、それで耳郎さん、何の資料配られたの?」

 

「さっき廊下通る時にもも説明したっしょ?まず数の夏休みの宿題のプリ……」

 

「………」ダラダラ

 

私が緑谷の質問に答えようとした時、身体のある変化に気づく。

 

 

めっちゃくちゃ汗かくんですけどココ(出久's room)

 

おかしい。極め付け暑いぞココ、ヤバイぞココ。確かに真夏の外を何時間も出歩けばそら大量の汗流すのに不自然な事は無いが…

 

特に緑谷の家ん中入ってきてから汗の出方が尋常じゃなくなってきてる。シャワーでも浴びたのかってくらい髪がびしょ濡れだし、後多分服の背中部分全部シミできてる…

 

そりゃ風邪こじらせた奴の部屋にエアコンガンガンつけられ無いけどさぁ…

 

 

ってさり気なく冷房のリモコン見てみたら設定温度20C°だってさハハ。

 

「おま何自分で悪化させてんだよぉっ!?」

 

「……」

 

「冷房て!しかも20って低すぎだろお前夏風邪何だと思ってんの!?馬鹿なの!?」

 

「…」

 

「つかその割に室温35C°ってなんだよっ!?暑すぎだろ!?何!?アンタカップ麺でも作ってんのかオイ!?どしたらこんな暑くなるか逆に知りたいわ!!」

 

「」

 

「…………………???」

 

渾身のツッコミを緑谷にかますが、あれま…何も返ってこない。まさかと思いベッドに横たわっているそばかす少年の顔を覗くと…

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

あれ…もしや………

 

「……」スッ

「あっづッッ!?」ジュゥゥ…

 

「ゴホッ……ハッ…!」

 

「………つまり…さ」

 

 

 

「…原因お前か……」ヒリヒリ…

 

 

 

 

 

急いで台所へ向かい、そそくさに蛇口をひねる。小さめのタオルを濡らし、八つ当たりするように力を強く入れ絞っていく。

 

聞いてねーよ…何が軽い熱だ何だだぁ?結構な重症じゃないですかねぇ!?額に手ぇ当てただけで火傷しかける位の体温て!?

 

割と冗談では済まされないこの状況にようやく私は今回のミッションの重大さに気がついた。

 

 

これ…ウチに超責任負わされとる?

 

 

 

 

 

冷凍庫から氷を拝借させてもらい、袋に入れ、濡れタオルと共に緑谷の頭の上に乗っけた。

 

数分前までは環境の暑さと身体の熱さにかなり魘されていたものの、氷タオル(命名)を乗せてからしばらくすると少しは楽になったようで部屋の気温も大分落ち着いてきた。

 

ったく…ビビらせんなよ。熱中症にでもなったのかと思ってつい慌てちまったろ…

 

本人曰くさっき計って38°だとか言ってるけど本当なのかね…超ヒートアップしてらっしゃてましたぞ殿。

 

これでようやく資料の説明の続きができると思いきやここでさらなる問題発生。

 

 

「ご…ごめんね。耳郎さん。迷惑かけちゃって」

 

「いいって事よ。私も普段からアンタにゃ色々と助けてもらってるからね」

 

「んじゃ、多分長く聞いてんのもアレだから手短に話すな。まず数…」グゥゥ…

 

「………」

 

「……っっ…」グゥゥ…

 

「…えっと……緑谷、さん?」

 

「な、何?耳郎s(グギュルル…

 

 

「……腹、減った?」

 

 

 

 

何が食べるかと聞いてもNoとしか答えなかった緑谷だったがその反面、お腹が素直すぎるのでめちゃんこうるせぇ。

 

話に集中できないのも仕方ないので、私は冷蔵庫に封印されしOKAYUを取りに行く事にした。部屋の中にあったお菓子等を口の中に放り投げるという選択肢も無い訳じゃなかったが文字通り喉が通らないようなので物理的に食べられないらしい。流石に体温下がっただけで風邪の症状全てが良くなる訳じゃないか…

 

 

 

そして起き上がった後病態が悪化する可能性があるので、緑谷を横にさせながら喰わせるという寸法である。

 

コレはもう3人に殺されるの各停事項ですわ。

 

 

「ほ、ほれ…口開け!」

 

「あああっあーん」

 

 

 

スプーン片手に口を開けるよう催促すると、緑谷は顎を外す勢いで口を広げていく。なんか台詞だけ聞くとエ○い風に聞こえる奴は病院行っとけ、妄想症だ。

 

おお。よく麗日が緑谷の食べ姿が動物みたいでカワイイとか言ってたがアレだな

 

コレ猛獣が獲物食らう絵面だな。

 

とは言え今回は家族以外の異性に【あ〜ん】だ。年頃の男子高校生なんだから多少抵抗はあるか、顔が震えてて尚更怖いぞ。

 

おかゆをゆっくり緑谷の唇に近づけていき、口内に流し込む。緑谷の唇がスプーンに当たった瞬間ビクッと身体が震えてしまう。自分で言うのもアレなんだけど慣れてないつーか初の試みとは言え反応が過敏すぎやしませんか…

 

というか何だ?これって【初あ〜ん】なのか?【あ〜ん】って性的行為に入るのか?【あ〜ん】を奪われた所で支障出るのか?ヤバい。あんあん言ってる間に今度はウチの頭がoverheat。

 

 

クチャクチャ

 

「…?」

 

「うんうん」クチャクチャ

 

「美味しっ」クチャクチャクチャクチャ

 

「…………」

 

 

 

こいつの顔見たら…なんか考える気失せたな

 

 

 

 

「んん…そう、良かったじゃん」

 

 

 

「後くちゃくちゃうるさい」

 

「むご?」クチャクチャクチャクチャクチャクチャ

 

 

 

 

 

おやつ時間も終了し、ようやく資料の説明にまでこぎつく事が出来た。後はこいつに今日の連絡を伝えてさっさとこの部屋からトンズラすればいいだけの簡単作業だ。

 

ここまで長かった…熱は高過ぎだわ腹は減ったわでなかなり振り回されたものだ。今となってはいい思い出だ。

 

つーか結局何の進展も発見も無かったなぁ…なんで私今日ココにやってきたんだろ、そりゃ確かにこいつとイチャイチャする為にやってきた訳ではないがなんというか…消化不良感が半端ないね。

 

 

 

…ま、いいか。元々緑谷と仲良しこよししたいと思ってた訳でも無いし、どうでもいいっちゃどうでもいいけどさ。

 

 

 

 

「ねぇ、今日ってLHRあったよね?何したの?皆」

 

「…えーと、HR?まぁテキトーにいつも通り話したけど」

 

「あ、そういえば仮免の説明とかあったな。少し」

 

「え、それって僕出てないとヤバイ感じ?」

 

「いやいや、根本的に仮免ってなあに?みたいなさわりの部分しか話してないから聞いてなくても平気平気」

 

「そっか…話し合いとかはしたの?」

 

「んぁー…と。多少、夏季合宿についてぼちぼちと」

 

「ふーん……」

 

「で、どうだった?」

 

「……ど、ドーダッタて…」

 

話し合いにどうも何も無いような気がするが…これは一体私にどういう答えを求めているのだろうか?

 

次々に連鎖していく質問に少々戸惑いつつも私は答えていく。

 

「…夏季合宿で何かしらのレクリエーションをやるっぽくてその意見を徴集したんだけど

 

「キャンプファイヤーとか森林使って全力鬼ごっことか色々討論した所、肝試しに決まったと」

 

「ま、その間にかなり下らない茶番が入ったけど…」

 

「…とにかく色々大変だったわな、今日は」

 

「……そっか」

 

 

 

「ホント、()()()()()の皆で安心したよ」

 

「……」

 

 

 

…少し私は単純に考えていたみたいだな。そう、こんな超健康体野郎がたかが冷房の入れすぎで風邪を引くような輩では無いのだ。この期に及んで自分の体調より先にクラスメイトの心配をするのかよ。

 

 

風邪の原因、お節介(それ)じゃねーか。

 

 

緑谷は伊達にクラス委員長をやっているんじゃないと改めて認識をする事が出来た。この流れからじゃどちらかというと【認識させられた】が正しそうだが。

 

こいつはこいつで、人の倍以上の苦労をしているんだなぁ…

 

 

 

「…そういえばさっき下らない茶番とか言ったけど…何かあったの?今日のHR」

 

「あー。それなんだけどさ」

 

「どっかの馬鹿阿保頓珍漢の2人組が手ブ○ジーンズで水泳大会やろうだとか間抜けな事言い出してきたりとか」

 

「肝心な孫先生は面白そうだの一点張りでまさかの手○ラジーンズ勢力に入ったりとか」

 

「途中で轟が暴走しかけたりとかしてね」

 

「全くなぁ…毎度のごとくあいつらの変態発言には参っちゃうよ」

 

「軽く迷惑行為の度を越しちゃってる」

 

「は、はは…その2人組、分かったかも」

 

「この間なんかなぁ?授業中にあいつ…」

 

「うわっ…そりゃ大変だったね。ド直球に言うなぁ。上ゴホゴホッ」<ナイス咳

 

「だろ?しかも聞いてよ緑谷、一昨日なんて教室であいつとんでもない事しでかして…」

 

「ぷっ!?ま、本気で?それはやり過ぎたよ峰ゴホゴホッ」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

アレ、こいつと話すのこんな楽しかったっけ。

 

 

 

 

 

内容はともかく(卑猥な話題だけじゃないけどな)、緑谷と話していくと何かこう、安楽感つーか、何というか気が和らぐんだよな。

 

麗日とか、八百万が積極的に話しかけるのもなんとなく理解できた気がする。だって…

 

 

 

「…確かにね」クスッ

 

…じゃなきゃこんなに笑ってないもん。

 

 

 

ーーーーーー………………………ーーーーーーー

 

緑谷「それでね、かっちゃんがしつこく電話してきて…」

 

緑谷「………ん?」

 

耳郎「」グースピー<zzz

 

緑谷「あ、あらら…寝入ちゃったか。相当疲れてたのかなぁ」

 

緑谷「いくら真夏日でも冷房ガンガン効いてる部屋で腹出したまま寝たら風邪ひいちゃうよ…」

 

緑谷「まぁ人の事言えないけど」コホッコホッ

 

緑谷「僕の布団かけとこっと」ポフッ

 

耳郎「」グーグー<zzz

 

緑谷「………おやすみなさい、耳郎さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン…

 

耳郎「………」ガバッ

 

耳郎「…えーと……」ボーッ

 

鳥の囀りがこんなに心地悪いと思った事が初めてでは無いだろうか?見た事のある天井…グチャグチャに染み付いた寝癖……

 

時間を確認してみると…もう始業時刻はとっくに過ぎてた。

 

耳郎「…けほけほ………」

 

 

 

あー…そういうパターン?

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、何故か緑谷がペコペコ頭を下げながら私の家にやってくるのだけれど…

 

それはまた、別のお話…




〜耳郎の場合〜

拳藤「何、デクも【あーん】させてもらうの初めてだったのか?」

緑谷「……う、うん///」プシュゥゥ

拳藤「ご感想のほどは?」ゲスガオ

緑谷「……女子の…味がしました…」

麗日「がぁああああ!!私さえ躊躇っていた禁じ手をおおおおっ!?」ドバババ…

蛙吹「緑谷ちゃんの…緑谷ちゃんの童貞があああああっ!!」ドバババ…

発目「なんかここだけ見るとHな事をしただけにしか聞こえませんね」
耳郎「うるせぇ!!!///」

八百万「どなたでも構いませんから…私を…私を…」ブツブツ












<え、えーっとそろそろ入ってもいいですかぁ?

緑谷「あ、いいですよブロ○ーさん」

<一昨日話した件なんだけどもー

<コレェは一体何なんだぁ?(ピラッ

わあきかににこどはふ
にるかちさんわはりに
わなわにくぐすいじい
まといろおえざわにわ ヒント:10時
たまくにわさちはわさ
せまみにわかわさそま
あむわわめそほにるめ

八百万「…暗号…かしら。よく分かりませんが」

緑谷「ヒントが10時…か。今11時だし投稿時間は関係なさそうだけど…」ピラッ

緑谷「ん…裏になんか書いてますよ」

八百万「えっ!?」
<ヘェアッ!?




今回、8月と9月の分をまとめて次回回しにして10月にまとめて3回分を書き上げなければならない状況に陥ってしまった。私自身にかかる負担も大きくなるが、何より募集している時間が無い。そこで今回は八百万救済というのも兼ねて、読者の皆にちょっとしたなぞなぞを解いてもらおうと思う。

この暗号にはあるキャラクターの名前が書かれている。それらが一体誰の名前なのか、答えてもらおう。ただし、それぞれ()()()()()()()()()()()()()()()()()()成立していないものとする。

メッセージのみで答えを送ってもらいもし当たっているのであれば最も早く答えられた3人のリクエストをそれぞれ、8月、9月、10月の分として書き上げよう。今回は票数も関係ないから八百万や他のモブキャラも番外主人公の権限を取得できるチャンスとなるし、私自身集計する手間もかからないからwin-winな方法って訳だ。
え、ヒントがよく分からない?【10時】と出された暗号をよく見て、共通するものを探し出してくれ。掛け時計とか見たら分かるんじゃないかな?アレ、デジタルじゃなくて針の方の。

さて、私は別の仕事もあるのでここらでおいとまさせていただこう。あ、頼むから感想欄に書かないでね?答えバレたらこの企画丸潰れだから。頼むよ?頼むよ?


後、他の報告で載せた私の動g
<宣伝はどうでもいいだロット…

八百万「全くですわ。それにしても今回は得票数では無く、いかに早いかで次の看病役を決めるという事ですか」

緑谷「言うなれば、スピード勝負かな。後、1〜3位の人に選ばれるかどうかって運もかかってくるけど」

八百万「…………」

八百万(キマシタワーーーー!!コレ!こういうのをお待ちしておりましたのよ!!毎回毎回投票する人が少なくて、中々出番が回らないからこのままずっと役無しで終わるかと終わりかと思いましたわ!!)

八百万(行ける!私は本編でもそれなりに活躍してますし、何よりこの企画の最大の抜け目はリクエスト採用期間の長さ!)

八百万(昨日今日再開したばかりではここに戻ってきた人も少ない!という事は即ち、投票する人も少ない!まずそもそも3人揃うまでの時間が長すぎますのよ!!)

八百万「おーっほっほっ!!今回こそ!今回こそは必ず選ばれますわ!見てらっしゃい!!」

緑谷「……」<オーホッホッホッ!!

緑谷「ねぇ、八百万さんはなんであんなに高笑いしてるの?」

<俺に聞かれても〜分からぬぅ!!

<フリー○の真似でもしてるんじゃあないのかぁ?

緑谷「…うーん……掛け時計…か」

緑谷「!!!?ま、まさか…?」



《続く…?》









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