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「ある朝起きたら巨大な虫になっていた」
という文章がある。
「カフカ」の「変身」の冒頭である。
我ながらかなりアバウトな略だと思うが、今言いたいのはそこではない。
俺の場合は、朝起きたら…というか、「目が覚めたら」目の前は真っ白な天井だった。
俺の部屋の天井が白だったという記憶はない。
いや、もしかしたら目がおかしくなっているのか?
そう思った俺は起きる体勢をとった。
が、起きれなかった。
「体が動かない」とか「体が痛い」とか、そんな感じではない。
明らかに「なにかに繋がれている」のだ。
手に違和感を感じ、俺は初めて首を動かした。
その瞬間。
俺は何に繋がれていたかがわかった。
明らかに手(というか肘の裏のところ)に、管が繋がっていたのだ。
俗に言う「点滴」というやつである。
こんなありえない状況になればなるほど、以外にも人間というものは冷静になるらしい。
(うーん…俺なんで病院にいるんだろ…?
えっと…確か昨日は珍しく土曜なのに部活なくって、友達と遊びに行って…家帰ってから疲れて寝たよな…。)
…考えれば考えるほど、意味不明な状況である。
そんな感じでモヤモヤしていた時、誰か人が入ってきた。
運がいいのか悪いのか、ちょうどその人物──45歳前後の女の人──と目が合った。
瞬間
「え……優…?」
は?優?
口に出なかったのが奇跡レベルの疑問を感じたその時、
「先生!!優が!優がっ!目を…!!」
…ええと…優って…まさか…
俺…今…
誰かと入れ替わってたりする?
いやいや…まさかそんなマンガみたいな…
そんなことを考えつつも、両手共に手が塞がっている(っていうか点滴で繋がれている)ので、確認のしようがない。
───今考えると、ほんとにこの時点滴で繋がれていてよかったと思う。
もし繋がれてなければ…どういう行動をしていたことやら…
今なら容易に想像がつく。
そんな「お母さん」の言葉を聞きつけ、医者が来た。
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医者いわく俺(というかこの子)は、1週間ほど前に坂道で自転車を走行中にトラックと接触事故をしたらしい。
外傷はなかったものの、意識が戻ってこなかったようで…
「本当に心配させて…!突然家出ていって、電話入ったと思ったら『娘さんが事故にあいました』よ!」
…とりあえず…『優』はかなり手のかかる子らしい。
そしてもう1個。
………この子……女なんだ………。
いや、なんとなく分かってたけどね。うん。
そんな『お母さん』を、医者が「まぁまぁ」となだめる。
「幸い目立った外傷もありませんし。あと2・3日の検査入院が終わったら帰れますよ。」
「ほんとですか…?」
「ええ。じゃあ今から少し検査をしますので…」
そしてその医者は「じゃ、佐伯さん。」と言って、俺の手を引いた。
うーん…この子は『佐伯 優』って名前なのか…
結局その日は、なんかよくわからない機械の上に乗せられて終わった。
が………問題は次の日に起こったのだ………
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