ラブライブ!サンシャイン!!~未来への架け橋~ (大天使)
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一章 始まりの季節
第1話 始まりの場所


こんにちは大天使です。

更新は不定期なのでよろしくお願いします。

それではどうぞ!



目が覚めて、俺はすぐに窓から景色を眺めてみた。

そこにはいつもと変わらない綺麗な海が広がっていた。

 

俺、海藤龍吾は数年前から生徒減少に伴い、共学化した浦の星学院に通っている。幼馴染みの高海千歌、渡辺曜、松浦果南と同じ学校だ。部活は今はやっていない…

前まではバスケ部だったんだけどね…

 

一階から母親の声が聞こえてくる。どうやら朝早くから客人がきているらしい。こんな時間に俺の家に来るやつは1人しかいない。俺はキッチンに立っている母親に挨拶を済ませ、すぐに玄関から外にでる。そこにいたのはやはり…

 

「龍くん!おはヨーソロー!」

 

「曜、おはよう!」

 

彼女は俺の幼馴染みの渡辺曜だ。明るくて元気で誰からも好かれる女の子だ。

 

「ほんとに曜は朝から元気だな」

 

「龍くんは大人しすぎるんだよ~!」

 

いつも通り他愛のない話をしていると、母親が俺を呼びにきた。

 

「龍吾!ご飯できたわよ!」

 

「おう ありがとう。」

 

「あら!曜ちゃんおはよう!朝ご飯まだでしょ?よかったら一緒にどう?」

 

「ありがとうございます!ご一緒させて頂きます!」

 

二人一緒に朝食を食べる。これもいつも通りの朝の様子なのだが、何故か曜の顔は険しかった。俺は、そのことに気づいていたが聞き出す気にならなかった。無理やり聞くのはよくない。俺はそう思って聞かないでいた。誰にでも聞かれたくないことはあるのだから…

 

「ねぇ…龍くん…」

 

そんなことを考えていたら曜が話しかけてきた。

 

「何だ?」

 

「昨日 千歌ちゃんから誘われたの」

 

「千歌から…?」

 

曜の口から出てきたのは、俺達のもう一人の幼馴染みの名前だった。

 

高海千歌 俺のもう一人の幼馴染みだ。俺には三人の幼馴染みがいるんだけどその中で一番子供っぽいやつで妹のような存在だ。一番年下なのは俺なんだけどね…

 

「千歌から何に誘われたんだ?」

 

「ん~私より本人に聞いた方がいいかな?」

 

曜は自分より千歌に聞いた方が良いと言ってきた。確かに本人に聞いた方が確実だからな。

 

「そっか。じゃあ後で聞いてみるよ」

 

「うん…それがいいと思うよ!」

 

そんな会話をしているうちに朝食を食べ終えて、学校に行く準備を進めた。学校指定のブレザーに身を包み、俺は母親に行ってくると言い曜の元へ向かった。彼女は俺の家の前で待っていた。

 

「遅いよ!龍くん!」

 

「毎朝お前が来るのが早すぎるだけだ。俺にとっちゃこれが普通なんだよ…」

 

「準備なんて前日に済ませればいいじゃん!」

 

「わかったわかった…お前は俺の母親かよ」

 

俺が遅いことに曜が文句を言い俺が言葉を返す。朝のやり取りはいつもと変わらない。この毎朝の会話が本当に楽しいから、俺達はいつまでも変わらないでいたいと思っていた。

 

「さてと行きますか!」

 

浦の星学院ではバイク通学が許可されているので、俺は毎朝バイクで登校していた。幼馴染み二人を後ろに乗せてだ。

 

「うん!全速前進ヨーソロー!」

 

曜の合図とともに俺はハンドルを握り、千歌の家に向かって出発した。

 

──────────────────────

 

五分後、俺達は千歌の実家である十千万に来ていた。

 

「志満姉!おはよう!」

 

俺は千歌の姉である志満さんに挨拶をした。

 

「海藤くん!曜ちゃん!おはよう!」

 

「千歌はどこですか?」

 

「まだ寝てるわよ」

 

「「やっぱりか…」」

 

俺は呆れ、曜は苦笑いをしていた。当然だ。毎朝千歌は寝坊して俺達を困らせているからだ。まぁいつものことだからもう慣れたがね…

 

「起こしに行ってくるか…」

 

「行ってらっしゃい!」

 

お前はこないのかよ…心の中で曜にツッコミをいれながら、俺は千歌のいる部屋に向かった。志満姉の言う通り千歌はまだ寝ていた。

 

「おい!千歌!起きろ!」

 

俺は布団を剥ぎ取りながら言う。千歌は流石に起きたが、せっかくの快眠を俺に邪魔されたので、不機嫌のようだ。

 

「もう!龍ちゃん酷いよ!」

 

「やかましい!何時までも寝てる方が悪いわ!」

 

正論を叩き込まれ千歌は何も言い返せなくなる。千歌はついに実力行使にでたが全く痛くない。

 

「とっとと準備しろよ…曜も待ってるぞ。」

 

「はーい…」

 

ようやく大人しくなったか。千歌が制服に着替えるので、俺は部屋を出ていった。

 

(そういえば千歌のやりたいことって何なんだ?)

 

そんなことを考えていると千歌が準備を終えて、部屋から出てきた。

 

「おまたせ!」

 

「はいよ んじゃ行くか!」

 

俺は千歌と曜を後ろに乗せてバイクを走らせた。その途中で俺は千歌にあることを尋ねた。

 

「千歌?お前、曜を何かに誘ったらしいな」

 

「うん!それがどうしたの?」

 

「何となく気になってさ。何かやりたいことでもあるのか?」

 

「これだよ!」

 

千歌は鞄から雑誌を取り出して言った。それは俺が今までに見たことのない物だった。

 

「私!これからスクールアイドル始めるんだ!」

 

To be continued…

 




それでは始めに主人公のプロフィールを

名前 海藤 龍吾(かいどう りゅうご)

年齢 高校二年の16歳

誕生日 11月30日

身長 178cm 体重 70kg

趣味 アニメ鑑賞 ゲーム 釣り

特技 バスケ 料理

好きな食べ物 肉類 辛い物

これからよろしくお願いします!



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第2話 一つになる心

こんにちは大天使です。

ラブライブサンシャインの福袋買いました!
とても可愛いですね。
買ってきてよかったなぁ…

それでは本編をどうぞ!



「スクールアイドル?」

 

俺は千歌の発言が信じられなかった。いや 悪い意味ではない。千歌は自分で自分のことを地味だと言ってしまうような子だ。応援してやりたい気持ちもあったが、それよりも不安だった。

 

「出来るのか?本当に?」

 

「私、できるもん!やるったらやる!」

 

俺が尋ねるとどっかで聞いたことがあるような…そひて、千歌は俺にこう返してきた。

 

「でも何で急に…」

 

俺の後ろで曜も頷いている。今まで熱中した物がなかった千歌が、突然スクールアイドルを始めようとしている。何か理由があるのではないか…すると千歌はこう言った。

 

「うーん…やりたかったから!それじゃ…ダメ?」

 

千歌は俯きながら俺にそう言った。多分千歌は俺が反対するのではと思っているんだろう。

 

「大丈夫だ。俺はお前を応援するよ!」

 

「私も!千歌ちゃんを応援する!」

 

曜も俺と同じ考えだった。自分の幼馴染みが新しいことを始めようとしているのだ。応援するのが自分の務めだと俺は思った。

 

「龍ちゃん…」

 

「千歌、お前なら絶対出来るよ」

 

千歌は目をうるうるさせていた。目には涙も溜まっている。

 

「龍ちゃーーーん!」

 

「グハッ!千歌…痛いよ…」

 

千歌に突然抱きつかれ(というより突進され)俺は大ダメージを受けた。だが、自分が倒れると千歌も転んでしまうから、俺は倒れないように必死に耐えた。

 

「あっ…ごめん…痛かったよね…」

 

「うぐ!別に気にしなくていいからな…」

 

俺は腹を抑えながら言う。自分のしたことに少しは罪悪感があるのか、千歌は珍しく謝ってきた。その顔は僅かに曇っていた。

 

「本当に大丈夫だからな。ほら」

 

そう言って俺は千歌の頭を撫でてあげた。嬉しそうに彼女のアホ毛が動いていたのが見えた。

 

「えへへー…龍ちゃん擽ったいよ~」

 

(やっぱり千歌には笑顔が一番だな…)

 

「ううう…千歌ちゃんばっかりずるいよ!私も!」

 

今度は曜が俺に抱きついてきた。そして頭を撫でるようせがんできた。

 

「えへへ、龍ちゃんの腕、暖かいよ…」

 

「…龍くん、いつもありがと」

 

「あはは 二人とも甘えん坊だなぁ…」

 

俺は二人を抱きしめ、頭を撫でた。

 

それから数分たった頃だろうか。俺は今の時刻を確認した。

 

「やばい!8時半だ!急がないと遅刻だ!」

 

「ええっ!龍ちゃん急いで!」

 

「龍くん!はやく!」

 

「全く…誰のせいだと思ってんだよ…」

 

少し厳しめの口調で言うが文句を言っても仕方がない。しかも、今日は新一年生の入学式なのだ。遅刻をするのは幾ら何でもまずい。

 

「スピード上げるぞ!しっかり掴まってろ!」

 

「はーい!」

 

「ヨーソロー!」

 

俺はバイクのスピードを制限速度ギリギリまで上げて、全速力で走り出した。そのお陰か学校には遅刻せずにすんだが、朝からエンジン音が煩いとの苦情が入り、先生に怒られるのであった。

 

To be continued…

 




まだAqoursのメンバーが二人しか登場してない…
まぁ最初だし仕方ないですよね?
そろそろ他のメンバーも登場させたいと思います。

それではまた。


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第3話 心の波

こんにちは大天使です。
ようやくアニメの一話の部分に入ります。
前半はアニメの部分、後半はオリジナルの部分です。

ここから少しずつオリキャラも入ってくるので
よろしくお願いします。


「スクールアイドル部でーす!」

 

「浦の星スクールアイドル部でーす!」

 

「私達と一緒に輝いてみませんか?」

 

…………………ヒュー ガサガサ

 

ここは浦の星学院の正門前。今は新入生の部活動への勧誘をしている。人数が少ないからどの部活も必死で勧誘を行っている。

 

「ダメだぁ……」

 

「まぁそう簡単にはいかないよな」

 

「あはは…そうだね…」

 

千歌はガッカリしているが、上手くいかなくて当然だ。

何故ならここは全校生徒が100人位しかいない。田舎の高校だからだ。千歌もそのことには薄々気づいていたが、やはり諦めきれないようだ。

 

「ううう…今…大人気の…スクールアイドルでぇーす!!!」

 

────────────────────

 

放課後

 

「えっと…ここをこうして…こうだ!」

 

千歌はダンスの練習をしていた。結果的に今日の勧誘は失敗してしまった。そこで今度はダンスを披露して注目を集めようという作戦のようだ。

 

「本当に始めるつもりなの?」

 

「うん!明日こそ部活を立ちあげるつもり!曜ちゃんも水泳部の活動がなければ誘ってたけど」

 

なお、ここに龍吾はいない。彼は急用があると言い、ここには遅れて来るのだ。

 

「それにしても龍ちゃんはどうしたんだろうね?」

 

「うーん…いつも暇人の龍くんが急用なんて珍しいね」

 

「私達を置いてくなんて酷くない?」

 

「龍くんには龍くんの事情があるから仕方ないよ」

 

「ちぇっ…仕方ないなぁ~」

 

「でも確かに気になるねぇ…」

 

「まさか!女の子とデート!?」

 

「それはない!」

 

「だよねぇ。」

 

────────────────────

 

「へっくしょい!…風邪かな?」

 

俺はある人物に呼び出され、浜辺でその人物のことを待っていた。

 

「待たせたね」

 

「全く…呼び出しといて遅刻かよ…」

 

「悪いな」

 

「そんで…要件はなんだよ…孝至?」

 

こいつは小川 孝至。俺の中学時代のチームメイトだ。

 

「ん~簡潔に言うわ……バスケ部に戻る気はないか?」

 

────────────────────

 

そのころ十千万では…

 

「そういえば…龍くんはなんでバスケ部を辞めちゃったんだろう…」

 

「ほんとにねー!勿体ないよ!」

 

部活勧誘についての相談はどこへやら、二人の話題は龍吾へと移っていたのであった。

 

────────────────────

 

再び龍吾サイドへ

 

「………………………」

 

「どうした?戻る気はないのか?」

 

「悪いが…今はバスケ部に戻るつもりはない…」

 

「まさかまだあのことを引きずってるのか?」

 

「……あぁ…そうだよ…」

 

「お前は気にしすぎだよ。もう誰もお前のことは責めてないぞ」

 

「お前らが気にしてなくても俺は気にしてるんだ。それにこんな中途半端な気持ちで再開してもお前らに失礼だろ」

 

「…そうか。いつでも戻ってこいよ…みんな待ってるからな…」

 

「……あぁ…ありがとよ…」

 

そういうと孝至は去っていった。あいつには悪いが今はバスケ部に戻るつもりはない。自分の中でケジメを付けなければならないからだ。

 

本心を言えばまたあいつらとバスケがしたい。だがさっき言った通りこんな中途半端な気持ちでバスケを再開してもあいつらに失礼だ。それに俺は一度あいつらを裏切っているのだ。そんな最低な人間の俺が再びバスケ部に戻って活動することは自分のプライドが許さなかった。

 

「…ダメなヤツだな俺は…へんなプライドなんか持っちまってよ…あいつらのこと…なんもわかってやれないくせに…」

 

────────────────────

 

孝至との話を終えた俺は十千万へ向かった。

 

「あいつら怒ってるだろうな…こんなに遅れちまってるからなぁ…」

 

元はと言えば遅れたのはあいつだが…それでもあの二人を待たせてしまっているのは事実だ。それから十分後、俺は十千万へ到着した。

 

「千歌!曜!待たせて悪かったな!」

 

俺は千歌の部屋に入って、二人に謝罪をした。しかし返事はない…

 

「もう帰っちまったのか?でも千歌がいないのはおかしいな…」

 

すると布団の方から寝息が聞こえてきた。俺がそっちへ目を向けると二人は寝息をたてて熟睡していた。

 

「全く…しょうがない奴らだな…まぁ悪いのは俺なんだけどね」

 

あいつらが起きるまで待っててやるか…そう思い俺はベットに腰を掛けた。

 

数十分後、起きた二人に怒られてアイスを奢らされたのは別のお話だ。

 

To be continued…

 




いかがだったでしょうか?
この物語はAqoursのメンバーだけではなく
オリ主の成長の物語でもあるのでオリジナルの展開に
入ることがあります。

それではまた。


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第4話 出会いは選べない

こんにちは大天使です。
今回からAqoursの他のメンバーが登場します。
お待たせしました。

それではどうぞ!


翌日、俺達は再び部活の勧誘をしていた。

 

「スクールアイドル部でぇす…」

 

「よろしくお願いしまーす…」

 

千歌も曜も流石に疲れていた。朝から必死に勧誘をしているのに少しも見向きもされていないのだから当然だろう。

 

「どーすればいいんだろう…ん?」

 

千歌は二人の生徒を見つめていた。栗色の髪の子と赤髪の子だ。リボンの色が黄色なので新入生だろう。

 

「あの!一緒にスクールアイドルやりませんか?」

 

「ずら!?」

 

ずら?…栗色の髪の生徒の一言には俺も少し驚いた。この辺でそのような言葉使いをする人は見たことがないからだ。

 

「大丈夫!悪いようにはしないから!」

 

「おいおい…そんな誘い方じゃダメじゃないか?」

 

「いや…オラ…じゃなくてマルはそういうの向いてないずら…」

 

マルという子にはあっさりと断られてしまったが、赤髪の子はチラシをじっと見つめていた。

 

「ラ…ライブとかあるんですか?」

 

「ううん…これから始めるところなの!だからあなたみたいな可愛い子にはぜひ!」

 

千歌は赤髪の子の手を取りながら言った。相手の子もスクールアイドルに興味がある様子だったので一人目の勧誘には成功したと俺達は思った。

 

しかし…

 

「ぴっ…」

 

ぴっ?何のことだと思ったが本脳的に何かを察した俺はすぐに自分の耳を塞いだ。マルという子も自分の耳を塞いでいた。

 

「ぴぎゃあああああ!!!」

 

(ぐっ…なんだ…この高音は…?)

 

凄い声だった。耳を塞いでいても聞こえるぐらいの大音量で鼓膜が破れそうになった。

 

「ルビィちゃんはとっても人見知りなんだずら」

 

千歌と曜も耳を抑えて屈んでいた。すると何故か木の上から女性の声が聞こえてきた。

 

「わあああああああ!!!」

 

「なんだ?」

 

上から女子生徒が落ちてきた。どうやら彼女も新入生のようだ。

 

「あ…足が…ぐぇっ!」

 

どうやら着地の衝撃で足を痛めたようだ。更に頭上から彼女の物と思われる鞄も落ちてきた。この子は相当運が悪いようだな。

 

「ちょっ…大丈夫か?」

 

何故木の上にいたのかという疑問はあったがあえてそれには触れずに聞いてみた。

 

「いてててて…ハッ…もしかして此処は地上?」

 

その場にいた全員が固まった。俺には彼女が何を言っているのかよくわからなかった。ここは地上?どういう意味だ?

 

「ということは此処にいる貴方達は下劣で下等な人間ということなのですか?」

 

(この人は…俺の苦手な種類の人間だな…)

 

俺にはどう答えればよいのかわからなかった。そんな彼女に千歌が声をかけた。

 

「足大丈夫?怪我してない?」

 

さっきのことには一切触れずに千歌は尋ねた。

 

「い…痛いわけないでしょ…この身体は単なる器なのだから!」

 

「えっ…ええっ?」

 

「龍くん!なんとか出来る?」

 

「なんとかって…そんな言い方はないだろ…いくらなんでも可哀想じゃないか…」

 

「あなたたちもヨハネのリトルデーモンになりたいのかしら?」

 

(ヨハネって…何のことだよ…?)

 

ダメだ…この子と話していると頭痛がしてくる。何かいい話題はないのか…と思ったとき。

 

「もしかして…善子ちゃん?」

 

「えっ?」

 

「やっぱり善子ちゃんずら!オラだよ!花丸だよ!幼稚園で一緒だったよね?」

 

「ずっ…ず…ら…ま…るぅ?」

 

この善子という子と花丸という子はどうやら幼馴染だったらしい。それよりもこの善子ってやつ、よく見てみると意外と美人だし表情豊かで面白いな…

 

「にっ…人間風情が何を言って…」

 

「じゃーんけーん ホイ!」

 

善子が出したのはグーでもチョキでもパーでもない不思議な形だった。なんだっけこれ…フレミングの法則だったかな?いや、でも何かが違う気がする…

 

「そのチョキ!やっぱり善子ちゃんずら!」

 

成程。あの不思議な形は彼女流のチョキだったのか。納得したな。

 

「わっ…私はヨハネなんだからねぇ~!」

 

「善子ちゃん!待ってずら!」

 

「ついてくるなぁ!」

 

「二人とも待ってぇ~!」

 

俺達はあの三人が駆けてゆくのを見届けていた。

 

「よし!後であの子達の勧誘に行こう!」

 

「千歌ちゃん…」

 

「おいおい…」

 

あの子達はまぁ…悪い子ではないということはわかった。三人とも普通に可愛いと思うし…

 

「貴方達ですの?このチラシを配っていたのは。」

 

「そうですけど…もしかしてあなたも新入生?スクールアイドルに興味ありますか?」

 

「ちょっと千歌ちゃん!この人は浦の星学院の生徒会長の黒澤ダイヤさんだよ!」

 

「ええええええ!」

 

コイツは…自分の学校の生徒会長のことも忘れていたのか…真面目に千歌の将来が不安になってきたな…

 

「この学校にいつスクールアイドル部が出来たのですか?今すぐ生徒会室に来てください!」

 

千歌のやつ…スクールアイドル部はまだ未承認だったのかよ…こりゃ生徒会長が怒るのも無理はないな。

 

「龍ちゃん!曜ちゃん!助けて!」

 

「千歌ちゃん…頑張ってね…」

 

「千歌…俺はお前のことを決して忘れないぞ…」

 

「そんなぁ~!」

 

「何を言っているのですか?貴方達もですわよ!」

 

こうして千歌と一緒に俺と曜まで生徒会室に連れていかれるのであった。

 

To be continued…

 

 




いかがだったでしょうか?

これからは少し投稿のペースが遅れますので
把握の方をよろしくお願いします。


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第5話 渚を滑る船

こんにちは大天使です。
今回でやっと三人目の幼馴染みが出てきます。
そしてあの人も漸く登場します。

それではどうぞ!




「設立の許可どころか申請もしていない内に、勝手に部員集めをしていたというわけですか?」

 

俺達は生徒会室に呼び出され、生徒会長からのお叱りを受けていた。

 

「本当に悪気はなかったんですよ!」

 

「千歌…お前反省してないだろ」

 

千歌は悪びれもせずに言った。少し生徒会長の方を見てみるとさっきと全く変わらない仏頂面で俺達を見つめていた。

 

「……部員は何人いるんですの?」

 

「今のところは…一人です!」

 

どうやら俺と曜は部員には含まれてなかったようだ。俺はそういえばと部活の設立の条件を思い出した。たしか…

 

「たしか…部の申請には最低五人は必要ですよね?」

 

「その通りですわよ」

 

「はい。生徒手帳にも載っていますよね」

 

千歌の変わりに俺と曜が答えた。千歌に答えさせると突拍子もない答えが返ってくるような気がしたからだ。

俺達が答えると、少し生徒会長の機嫌が直ってきたように見えた。

 

しかし、千歌はとんでもないことを言いやがった。

 

「だーかーらー!そのために勧誘をしていたんじゃないですかー!」

 

さっきの俺と曜からのフォローが無駄になった。そして、その場の空気が一瞬で凍りついた。

 

そもそも部活勧誘は生徒会から正式に承認された部活動が部員を集めるために行うことなのだ。まだ生徒会から正式に承認されていないスクールアイドル部が勝手に勧誘をしていたから、俺達は生徒会室に連行されているのだ。どうやら千歌は自分たちが生徒会室に呼び出された理由が分かっていないようだ。

 

バン!!!

 

生徒会長は申請書を机に叩きつけた。まずい、相当ご立腹のようだ。しかし、俺達に怒りを爆発させることはなく、静かに立ち上がって、俺達に言い放った。

 

「とにかく!こんな不備だらけの申請書を受け取るわけにはいきませんわ!」

 

生徒会長は俺達を指さして言った。

 

「千歌。取り敢えず一旦戻ろうぜ」

 

「うう…わかりました。部員を五人集めてくればいいんですね?」

 

「…たとえそれでも承認は致しかねますがね…」

 

生徒会長は俺達に背を向け、そう言った。だが、部員を集めても承認は致しかねない?どういうことなのだ…

 

「えっ!なんでですか?」

 

「それは…私が生徒会長でいる限り、スクールアイドル部は認めないからです!」

 

「ええっ!?そんなぁー!」

 

生徒会長にそんな権限はあるのだろうかと俺は少し疑問に思った。そして、ガックリと項垂れている千歌を連れて、俺達は生徒会室をあとにしたのだった。

 

──────────────────────

 

「どうしてスクールアイドル部はダメだって言うんだろう…」

 

場所は変わってここは船の上。俺達三人はとある人物に会いにいくために淡島へと向かっていた。

 

「嫌いみたい…クラスの子が前に作りたいって言った時も断わられたみたいだよ。」

 

「ええっ!曜ちゃん!知ってたんだったら教えてよ~!」

 

「ご、ごめん…」

 

「これからどうするんだ?あの生徒会長が承認してくれないとスクールアイドル部の活動は出来ないんだぞ」

 

「今考えてるんだよ!」

 

どうやら生徒会長はスクールアイドルが嫌いなようだ。

しかし、あの生徒会長がただ嫌いだという理由だけで承認を断るとは思えない…何か事情があるのだろうか。

 

「生徒会長の家ってたしか古風な家らしくて…ああゆうチャラチャラした感じのものは嫌っているんじゃないかっていう噂もあるし…」

 

「チャラチャラじゃないのに…どうすれば…」

 

──────────────────────

 

数分後、俺達は淡島に到着した。千歌の様子を見るといつの間にか元気を取り戻しているようだった。そして俺達は目的の人物がいる場所へと向かった。

 

「あっ!果南ちゃん!」

 

「千歌!いらっしゃい!」

 

俺達の目的の人物は俺達のもう一人の幼馴染みの果南姉さんだ。年齢は俺達の一個上だが、昔から俺達四人で遊んでいた。今日は姉さんに学校であったことを伝えに来たのだ。

 

「遅かったね。今日は入学式だけでしょ?」

 

「うん!これお土産!」

 

千歌は姉さんにみかんの入った袋を差し出した。

 

「またみかん?」

 

「文句ならお母さんに言ってよ~!」

 

そんないつもと変わらない会話をしていると自然と頬が緩んでくる。そんな俺に気づいたのか姉さんは俺に質問をしてきた。

 

「どうしたの龍吾?あっ…もしかして、久しぶりに私に会えて嬉しいの?」

 

「べっ…別にそんなんじゃないよ…」

 

姉さんは少し俺をからかってきた。確かに久しぶりに姉さんに会うことができて嬉しいのは事実なのだが…

 

「あー!龍ちゃん照れてる!少し顔赤いよ!」

 

「ほうほう…意外とピュアなのですなぁ…」

 

「うるさい…馬鹿…」

 

千歌と曜が、姉さんの言葉に便乗して俺のことをからかってきた。姉さんは優しい笑みを浮かべて、俺達のことを見つめていた。この人達は本当に昔から変わらないな…

 

──────────────────────

 

俺達が他愛のない会話を続けていると、あっという間に夕暮れは訪れた。姉さんはショップの後片付けを始めていた。そんな彼女に千歌は尋ねた。

 

「果南ちゃんは新学期から学校に来れそう?」

 

「うーん…まだ父さんの怪我が治ってないし、家の手伝いもあるからなぁ…」

 

姉さんは親父さんの怪我の影響で学校を休学して、家のダイバーショップの手伝いをしている。親父さんの怪我はなかなか良くならないようで、姉さんは当分学校には来れないそうだ。

 

「残念だったなぁ…新学期が始まったら果南ちゃんもスクールアイドルに誘おうと思ったのに」

 

「……まぁ私は千歌達と違って三年生だからね…」

 

姉さんは少し声のトーンを下げて答えた。

 

「スクールアイドルって知ってる?すごいんだ…ぐぇっ!」

 

「はい!お返し!」

 

「んっ…えー!また干物!?」

 

「文句なら母さんに言ってよ!曜と龍吾にもあげるね」

 

みかんのお返しに姉さんが差し出してきたのは…やっぱり干物だった。またか…美味いけど飽きるんだよなぁ…

 

「果南ちゃん!いつもありがとう!」

 

「サンキューな!」

 

「どういたしまして。もうちょっと休学続くから何かあったら教えてね!」

 

俺達はさっきの船に乗り込み、帰ろうとした。すると空からヘリの音が聞こえてきた。

 

「なに?あのヘリ?」

 

「……小原家でしょ…」

 

──────────────────────

 

「曜ちゃんバイバイ!また明日ね!」

 

「じゃあな!」

 

「龍くん、送ってくれてありがとう!千歌ちゃん、また明日!」

 

俺は曜を家まで送ってやった。方向は真反対なのに千歌がここまでついてきたのはちょっと意外だった。

 

「どうにかしなくちゃなぁ…」

 

「なんとかして生徒会長を説得しないとダメだな」

 

俺と千歌は砂浜で海を見ながら話し合っていた。もう日が落ち始めていて、夕焼けが広がっていた。早めに家に帰らなくてはならないのだが、千歌はまだ帰りたくないらしい。

 

「千歌、なんで帰りたくないんだ?」

 

「それは…龍ちゃんに…色々と聞きたいことがあったからだよ!」

 

「そうか。で、聞きたいことってなんなんだ?」

 

「え?えっと…そ…その…あれ?何だったっけ?」

 

どうやら千歌は俺に聞きたいことがあったらしい。内容については忘れてしまったようだが…まぁ仕方がない。話そうとしたことを忘れることなんてよくあることだからな。

 

ふと千歌の顔を見ると頬が微かに赤くなっているのが見えた。そんな彼女のことをじっと見つめていて、気がついたら俺の頬も赤くなっていた。うん、これは夕焼けのせいだろうな…

 

その後、俺と千歌は話し合いを再開したが、なかなかいい考えが浮かばないでいた。

 

「うーん…どうすればいいんだろう…あれ?」

 

「どうした?何かいい案が浮かんだのか?」

 

「違う…龍ちゃん!アレを見て!」

 

千歌が指さした方を見ると一人の女子生徒がいた。おそらく年齢は俺達と同じ位だが、見たことがない制服を来ていた。

 

「あんなところで何をしているんだろう…ええっ!?」

 

「千歌!?どうしたんだ?」

 

女子生徒の方を見てみるとブレザーを脱ぎ始めていた。

Yシャツも脱ぐと、彼女は水着姿になった。どうやら彼女はこれから海に飛び込むつもりのようだ。

 

「うそでしょ?…まだ四月だよ…」

 

「まずい…この時期じゃまだ水温は低い…体が冷えて溺れてしまうかもしれないぞ!」

 

女子生徒は今にも海へと飛び込もうとしていた。俺は隣にいる千歌を見た。しかし、そこに彼女の姿は無かった。

 

「千歌?…まさか!」

 

千歌はもう女子生徒の元へと駆け出していた。

 

「…ったく…アイツは!」

 

俺もすぐに千歌のことを追いかけた。

 

すでに千歌は女子生徒を取り押さえて必死に説得をしていた。どうやら彼女のことを自殺願望者だと思っているらしい。

 

「ダメ!ダメだよ!ホントに死んじゃうから!」

 

「離して!私は行かなくちゃいけないの!」

 

「絶対にダメだってばー!」

 

すでに二人とも体勢が崩れていた。このままじゃいつ海に落ちてもおかしくない…

 

「「あっ」」

 

そのまま二人は足を滑らせ、海へと真っ逆さまに落ちてしまった。

 

「やばい…このままじゃあの二人は…急がないと!」

 

俺は制服を脱ぎ捨ててたまたま近くに置いてあった浮き輪とロープを手に持ち、二人の元へと駆け出した。

 

To be continued…

 




今回はここまでです。
今まで文字数が少なかったので増やしてみました。
前の話もこれから加筆していくつもりです。

それではまた。


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第6話 ワインレッドとの遭逢

こんにちは、大天使です。自分の中でオリ主の声は何故かCV 中村悠一で脳内再生されています。



千歌と女子生徒は海に真っ逆さまに落ちてしまった。俺は二人を助けている最中だ。

 

「龍ちゃん!助けて!」

 

「誰か…誰か助けてください!」

 

「千歌!これに掴まれ!」

 

俺は浮き輪をロープに結んで千歌へ投げた。千歌は女子生徒の肩を持ち、浮き輪に掴まった。よし、これで二人を助けることができた。

 

そう思ったのも束の間だった。浮き輪の強度が低いからなのか、二人分の重さが耐えられなかったのからなのかはわからなかったが、浮き輪は少しずつ沈んでいっていた。

 

「くそっ…仕方ねーな…千歌!お前はそのまま掴まってろよ!その子は俺が助けるから!」

 

千歌に浮き輪を渡して俺は海に飛び込んだ。四月の海はやはりまだ冷たかったがそのまま女子生徒を抱きかかえ砂浜へと戻った。

 

──────────────────────

 

「へっ…へっくしょい!」

 

「大丈夫か千歌?君も風邪とかひいてないか?」

 

砂浜へと戻った俺達はドラム缶に火をつけて、暖をとっていた。タオルは千歌がすぐに家からとって来てくれたのだ。

 

「寒いだろ?俺ので良ければ貸すよ。あとこれ、コーヒーだけど飲む?」

 

俺は海に飛び込む前に脱いでおいた制服を女子生徒の肩に掛けてあげた。それと一緒に、さっき自動販売機で買ってきた缶コーヒーを差し出した。

 

「はい…色々とありがとうございます」

 

「千歌、お前も飲むか?」

 

「うえ…嬉しいけど私コーヒーは…」

 

「そう言うと思ったからお前のはココアにしておいたよ」

 

千歌は平然としていたが、女子生徒は寒そうにしていた。やはりこの辺に住んでいる人ではないようだ。

 

「千歌、人助けをするのはいいけど、無理はするんじゃないぞ。体を壊したら大変だろ」

 

「…うん。心配かけてゴメンね…」

 

「いや、お前が無事ならいいんだよ」

 

千歌はココアの蓋を開けながら俺に謝ってきた。二人とも無事で本当によかった。

 

「君もだぞ。この時期にウェットスーツも着ないで海に飛び込むのは危険すぎるぞ」

 

「沖縄じゃないんだから…海に入りたいんだったらダイビングショップだってあるのに…」

 

「ごめんなさい…」

 

二人とも反省していた。女子生徒の顔をよく見てみるととても綺麗な顔つきをしていた。それにけっこう大人しい性格のようだな。俺の好みかもしれん。

 

「なんで海に入ろうとしたんだ?」

 

「…海の音が聞きたいの…私、ピアノで曲を作っているの。でも、海の曲のイメージが浮かばなくて…」

 

「作曲出来るなんてすごいね!この辺の学校?」

 

「……東京…」

 

「東京?わざわざここまで来たのか?」

 

「わざわざっていうか…」

 

この子は海の曲を作るために東京から来たようだ。それにしてもわざわざ東京からか…相当な情熱の持ち主なんだな。

 

「じゃあスクールアイドル知ってる?ほら東京では有名なグループ沢山いるでしょ?」

 

「何の話?」

 

どうやら彼女はスクールアイドルが何かを知らないらしい。

 

「本当に知らないの?学校でアイドル活動をしていて…ドーム大会が開かれたこともあるくらい、超人気なんだよ!」

 

「ごめんなさい…ずっとピアノばかりをやってきたから、そういうのに疎くて…」

 

「じゃあ見てみる?なんじゃこりゃーってなるから!」

 

千歌は彼女にケータイの画面を見せた。これは確かスクールアイドルの人気に火をつけたμ'sというグループだったかな。

 

「これは…」

 

「どう?すごいでしょ?」

 

俺も千歌に見せてもらったことがあるが、あれは本当にすごかった。俺はすごく感動した。

 

「なんていうか…普通?アイドルっていうから、もっと芸能人みたいなのかと思ったっていうか…」

 

「…だよね。だから衝撃的だったんだ…私は、普通星に生まれた普通星人なんだって…」

 

千歌は昔から俺や曜、果南姉さんと自分を比べてそう言っていた。はっきり言って俺も普通なんだけどね。

 

「普通星人はどんなに変身しても普通なんだって。それでも、いつか何かあるんじゃないかって思ってたんだけど…なーんも無くていつの間にか高ニになってた」

 

知らなかった…千歌がこんなことを考えていたなんて… いつも自分のことを普通だと言っていたのは知っていたけど、そこまで考えていたとは思わなかったな。

 

「…そんな時、出会ったんだ。あの人達に!」

 

千歌はμ'sの曲を流し始めた。この曲は…確かμ'sのSTART:DASH!だったかな?

 

「みんな私と同じような、どこにでもいる普通の高校生なのにキラキラしてた…」

 

憧れを語る千歌の目は何よりも輝いていた。本気でスクールアイドルをやりたいという気持ちが俺にも伝わってきた。

 

「それで思ったの。一生懸命練習して、みんなで心を一つにしてステージに立つと、こんなにもカッコよくて、感動できて、素敵になれるんだって!スクールアイドルって…こんなにもキラキラ輝けるんだって!」

 

俺と女子生徒は一言も発さずに千歌の言葉を聞いていた。不思議と引き込まれる気持ちになった。

 

「気付いたら全部の曲を聞いてた。毎日動画を見て…そして思ったの。私も仲間と一緒に頑張ってみたいって。私も…輝きたいって!」

 

千歌の言葉を聞いた俺には一つの思いが生まれた。俺は何があっても千歌の応援をしたい。何かがあったら手助けしてやりたい。

 

「ふふっ…あなたって面白い人ね。スクールアイドル、なれるといいわね」

 

「千歌…俺は何があってもお前の味方になるよ。約束だ。スクールアイドル部、手伝うよ!」

 

「龍ちゃん…ありがとう!」

 

千歌はそう言って俺に抱きついてきた。やめろ、彼女が見てるだろ…

 

「私、高海千歌!あそこにある浦の星学院の二年生!」

 

「俺は海藤龍吾。こいつと同じで浦の星学院の二年生だ!」

 

「私は桜内梨子。高校は…音ノ木坂学院!」

 

──────────────────────

 

梨子さんと別れた俺と千歌は駐車場に止めておいたバイクに乗って帰路を急いでいた。

 

「桜内梨子ちゃんかぁ…可愛い名前だったね!」

 

「可愛いの基準はよくわからないけど…確かにいい名前だったな」

 

「また会えるといいね!」

 

「ああ。そうだな!」

 

俺と千歌は今日出会った梨子さんについて話していた。

 

俺には可愛いの基準についてはよくわからないと千歌には言ったが、梨子さんは俺から見たらとても可愛くて、いい子で…心の底からまた会いたいと思った。

 

(アドレス…交換しとけばよかったかもな。)

 

「ああっ!お母さんに旅館の手伝いを頼まれてたんだった!龍ちゃん!急いで!」

 

「ああ!わかったから!しっかり掴まってろよ!」

 

俺は少しバイクの速度をあげ、千歌の家へと急いだ。全く…毎日のように俺のことをこき使いやがって。今度アイスでも奢ってもらうか…

 

──────────────────────

 

(海の声、聞こえなかったな…)

 

その頃、自分の家に到着した梨子は、今日の出来事を思い返していた。

 

(今日は本当に色んなことがあったな…海に入って溺れそうになって、千歌ちゃんと海藤くんに出会って…)

 

梨子は自分が溺れかけた時に、龍吾に助けてもらったことを思い出して、微かに頬を赤く染めた。それは完璧に恋する少女の表情だった。

 

(あの時、腕から伝わってきた海藤くんの温もり…すごくよかったな…海藤くん…すごくカッコよかったな…また会いたいな…)

 

梨子の胸の中は動き始めた恋心に満たされていた。

 

To be continued…

 




自分でも主人公の性格を完璧には把握出来てないです。
まだ人物像が纏まってないんですよね。
頑張らなくては…

それではまた。



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第7話 Gold experience

こんにちは。大天使です。
今回は少し本編から外れます。

それではどうぞ。



今日は日曜日。俺は買い物をするために沼津に来ていた。

 

「沼津に行くのも久しぶりだな…ん?あの制服は…」

 

俺の目に入ってきたのは浦の星学院の制服を着た、ブロンドヘアの女子生徒だった。どうやら三年生のようだ。その生徒は高身長の男三人組に囲まれていた。

 

「お嬢ちゃん、俺達と遊ばないか?」

 

「遊ぼうぜ~きっと楽しいよ~」

 

「大丈夫だって、悪いようにはしないからよぉ?」

 

「Sorry。私はこれから大切な用事があるんデース」

 

どうやら彼女は男達にナンパされているようだ。やれやれ、困っている女の子を放って行くわけにはいかないな…

 

「やぁ。待ったかい?」

 

俺は平然と彼女に話しかけた。彼女は一瞬キョトンとしたが、すぐに俺に合わせて返してきた。

 

「ダーリン!遅かったじゃない!」

 

「チッ…彼氏持ちかよ…」

 

「なんだし…残念だわ~」

 

「さっさと帰ろうぜ…」

 

男達はすぐに立ち去っていった。暴力沙汰にならなくてよかった。問題なんて起こしたくないし…

 

「すみません。馴れ馴れしく話しかけてしまって…」

 

「ぜーんぜんOKよ!ホントにありがとうね!」

 

「あっ…浦の星の生徒ですよね?それに三年生の…」

 

「YES!もしかしてあなたも?」

 

「はい!俺、海藤龍吾っていいます。浦の星学院の二年生です」

 

「私は小原鞠莉よ!よろしくね!」

 

これが、俺と鞠莉さんとの出会いだった。

 

──────────────────────

 

「本当にいいんですか?俺はお礼なんていりませんよ。」

 

「いいのよ!私がお礼をしたいだけだから!」

 

俺と鞠莉さんはショッピングモールにある喫茶店に来ていた。さっき助けてくれたお礼にと鞠莉さんが連れてきてくれたからだ。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「何を頼んでもいいのよ。私が奢るから!」

 

「それじゃ、アイスコーヒーとワッフルでお願いします」

 

「私はホットコーヒーとシフォンケーキで!」

 

「はい、かしこまりました」

 

店員さんは俺達の注文を聞いた後、何故か俺達の方を見つめてきた。そして、静かに微笑むとすぐに厨房へと戻っていった。

 

「本当にこれだけでよかったの?」

 

「いいんですよ。俺みたいな庶民にはこれ位が丁度いいんです」

 

いくら奢ってくれるからといって、あまり高いものを注文してはいけないからな。それが最低限のマナーだ。

 

「リューゴって~結構イケメンなのね!女子にモテモテなんじゃないのかしら?」

 

「別にモテてないですし、イケメンなんかじゃないですよ…」

 

俺は所謂普通の顔つきだ。今まで彼女がいた事なんて一度もない。それに、俺がイケメンだったら、この世にいる男性の殆どがイケメンということになるじゃないか。

 

「私、もっとあなたのことを知りたいわ!沢山お話しましょ!」

 

「いいですよ。俺もあなたのこと知りたいですしね」

 

──────────────────────

 

「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」

 

俺と鞠莉さんが話し始めて暫くたったら、さっきの店員さんが、コーヒーを運んできた。なんかまた俺達の方を見て笑っている気がするんだが…

 

「それじゃあ、頂きましょうか」

 

「そうね!」

 

俺はまず、コーヒーの香りを楽しんだ。そして、ゆっくりと口に運んだ。

 

「……美味い」

 

「でっしょー!ここのコーヒー美味しいのよ!」

 

俺はもう半分も飲んでしまった。この店のコーヒーは本当に美味かった。

 

「リューゴのワッフル美味しそう!少し貰っていいかしら?」

 

「ええ、いいですよ」

 

俺はワッフルを一口サイズに切り、彼女に差し出した。

 

「ん~せっかくだから食べさせてちょうだい!」

 

「ええっ?そこまでするんですか?」

 

鞠莉さんは俺にワッフルを食べさせるようにせがんできた。やめてください…周りからの目線が痛いです…

 

「はやく食べさせて!」

 

「…仕方ないですね…」

 

俺はフォークでワッフルを鞠莉さんの口に運んであげた。

 

「ん~!美味しいわ!ありがとうリューゴ!」

 

「ど、どういたしまして…」

 

少し周りを見てみると、俺達に好奇の目を向けてくるおじさん、こちらを睨みつけている男だけの大学生達。その他諸々がこちらを注目するように見ていた。俺は早くここから逃げ出したくなっていた。まぁ、彼女の笑顔が見られたから別にいいか。

 

「リューゴ!はい、あーん!」

 

「えっ…いや…俺は別にいいですよ!」

 

鞠莉さんは今度は俺に自分の食べていたシフォンケーキを差し出してきた。いや、これ以上は本当にやばい。さっきの大学生達が俺に殺気を向けてきているのがわかった。

 

「いいから!ほら、口を開けて!」

 

「はぁ…わかりましたよ…」

 

俺は渋々、彼女の差し出したシフォンケーキを食べた。

 

「どう?美味しいかしら?」

 

「ま…まぁ…美味しいですよ…」

 

正直、シフォンケーキの味は殆どわからなかった。多分俺の顔は真っ赤になっているはずだ。うん、これも全部鞠莉さんのせいだな。

 

「さあ、そろそろ出ましょ!これから行くところがたくさんあるのよ!リューゴも付いてきてくれるかしら?」

 

「ええ、俺は大丈夫ですよ。」

 

俺と鞠莉さんは会計を済ますと、すぐに店に後にした。ずっとあの空間にいるのは耐えられなかったから早く店から出ることが出来て良かった。

 

─────────────────────

 

「うーん!楽しかったわね!今日はありがとう!」

 

「はい!俺は鞠莉さんに振り回されていただけのような気がしますが…」

 

「細かい事は気にしないの!」

 

店を出た後、俺と鞠莉さんは色々な場所にいった。(主に鞠莉さんの用事)俺は散々振りまわされただけだが、けっこう楽しかった。

 

「そういえば…」

 

「ん?どうしたのリューゴ?」

 

俺は鞠莉さんと出会った時からずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。

 

「何で鞠莉さんは制服を来ているんですか?今日は日曜日で学校は無いはずですけど…」

 

「ああ、そんなことね。理由は簡単よ!それはね……あら?電話だわ。ちょっと出てもいいかしら?」

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

会話の途中、急に鞠莉さんの電話がなった。相手は親父さんのようだ。

 

「うんうん…リョーカイ!すぐに戻るわ!」

 

「どうしたんですか?」

 

「パパからよ!用事があるからすぐに帰ってこいだって。それに、ヘリを待たせているの。」

 

「えっ?ヘリですか?」

 

なんでも、鞠莉さんの家は淡島にあるホテルを経営しているらしい。場所は果南姉さんの家の近くだった。

 

「それじゃあね!これ、私のアドレスよ!また遊びましょうね!」

 

「はい!また会いましょう!」

 

鞠莉さんは自分のヘリが止めてある場所に向かって走っていった。俺は彼女の後ろ姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。

 

「俺…とんでもない人と友達になったんじゃ…」

 

これから鞠莉さんに会うことがあっても無礼なことは出来ないことと思った。

 

─────────────────────

 

「リューゴねぇ…やっぱりカッコイイじゃない!」

 

その頃、鞠莉はヘリコプターに乗り込み、ホテルに戻る途中だった。彼女の持っているケータイにはさっき龍吾と撮った写真が写っていた。

 

「鞠莉様、今日はいつもより元気がありますね」

 

「やっぱりそう思う?」

 

ヘリの運転手は鞠莉の様子が普段と違うことにすぐに気づいた。いつも以上に元気がいいからという理由らしい。

 

「はい、今日の相手はかなり手ごわいようです。あまり浮かれないようにしてくださいね」

 

「OK!わかったわ!」

 

「この契約が取れれば、あの学校への寄付もより沢山出来るようになりますよ」

 

「リョーカイ!あっ、リューゴにあのこと(・・・・)を伝えるのをすっかり忘れてたわ。まいっか!またすぐに会えるしね!」

 

この後、鞠莉はすぐに龍吾と再開することになるのだが、あのことを彼に伝えるのはまだ先の話しである。

 

To be continued…

 




本編から外れた理由ですか?鞠莉ちゃんを出したかったからですよ。今まで出番がなかった上に、ヘタしたら当分登場しない可能性だってあるんですから…

それではまた。



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第8話 小さな奇跡

こんにちは、大天使です。
まだまだ若いけど、最近腰痛が酷いです。
悪化させないようにしなくては…



月曜日、俺は曜と珍しく早起きした千歌と共に学校へと向かっていた。

 

「本当に今日も持っていくの?」

 

「うん!ダイヤさんにもう一回お願いしてみる!諦めちゃダメなんだよ。あの人達も歌ってた。その日は絶対に来るって!」

 

千歌は今日もダイヤさんのところに申請用紙を持っていくつもりらしい。部員はまだ揃ってないんだけどな。その時、俺は千歌との約束を思い出した。

 

(千歌…俺は何があってもお前の味方になってやる…)

 

そうだ。あの時千歌と約束したんだ…スクールアイドル、手伝うってな。

 

「千歌、その紙とペンを貸してくれ」

 

「えっ?どうするの?」

 

「…こうするんだよ!」

 

俺は名前の欄の二行目のところにに自分の名前を書いた。よし、これでいいだろう。

 

「ほらよ!これで二人目だな…」

 

「龍ちゃん…ホントにいいの?」

 

「いいんだよ。この前君と約束したでしょ?スクールアイドル手伝うって!」

 

「龍ちゃん…」

 

千歌は目に涙を浮かべていた。相当嬉しかったようだ。

すると曜も千歌にこう告げた。

 

「私ね、ずっと思ってたんだ。千歌ちゃんと一緒に、夢中で何かやりたいってね」

 

曜は俺の手から申請用紙とペンを受け取ると三行目の欄に自分の名前を書いた。

 

「だから…水泳部と掛け持ちだけど!」

 

曜は千歌にニッコリと微笑みかけると、千歌に申請用紙を手渡した。

 

「龍ちゃん…曜ちゃん…」

 

「これからもよろしくな、千歌」

 

「千歌ちゃん、よろしく!」

 

「二人目とも…本当にありがとう!」

 

千歌は俺と曜に抱きついてきた。俺はそのまま千歌の頭を優しく撫でてやった。

 

「よーしー!絶対にすごいスクールアイドルになろうね!」

 

「おう!」

 

「ヨーソロー!」

 

会話に夢中になっていた俺達は気づかなかった。大切な申請用紙が千歌の手から水たまりに落ちてたことに。

 

「「「あー!」」」

 

時すでに遅し。気づいた時には申請用紙はもうボロボロになってしまっていたのだった。

 

─────────────────────

 

「よくこの状態で持ってこようと思いましたね。」

 

俺達はダイヤさんのいる生徒会室に来ていた。当然、申請用紙は受け取ってもらえなかった。

 

「やっぱり、駄目なんですか?」

 

「一人が三人になっただけですわよ」

 

理由は部員の数が足りないからのようだ。やはり部員を五人集めてこないと駄目みたいだな。

 

「やっぱり!簡単には引き下がってはいけないと思ったんです!きっと、生徒会長は私達のことを試しているんじゃないかって」

 

「違いますわ!それより何度来ても同じとあの時も言ったはずですわ!」

 

「どうしてですか!」

 

「それは…この学校にはスクールアイドルは必要ないからですわ!」

 

「なんでです!」

 

「あなたに言う必要はありませんわ!」

 

千歌とダイヤさんはお互いに一歩も引かなかった。それよりスクールアイドルが必要ないと言うのにその理由を言わないのは少し理不尽な気がする。そう思ったからダイヤさんに一つ質問をしてみた。

 

「部員以外に何か必要なものでもあるんですか?」

 

「そうですわね…ラブライブの本戦に出場するためには、オリジナルの曲が必要になるのです。スクールアイドルを始める時に、最初の難関になるポイントですわ」

 

「そうだったんですか…」

 

「東京の高校ならともかくうちのような高校だとそのような事が出来る生徒は……」

 

何でそんなにラブライブについて詳しいのかという疑問はこの際置いておこう。確かにこの学校には作曲が出来る生徒はいない。ダイヤさんがスクールアイドル部の活動に反対するのも無理はないのだ。

 

「千歌、お前は作曲とか出来るのか?」

 

「出来ない!」

 

「やっぱりか…」

 

聞くまでも無かったな。俺も作曲は出来ないから人のことは言えないのだが。

 

「でも…探してみる!」

 

「ちょっ、千歌ちゃん?」

 

「おい!千歌!ダイヤさん、失礼しました!」

 

俺達は生徒会室を後にして千歌のことを追いかけた。今は自分達の教室へと戻っている途中だ。その間も千歌はずっと悩んでいた。

 

「うう…生徒会室の言う通りだった…この学校に作曲出来る生徒なんか一人もいないよ…」

 

「うーん作曲ねぇ…やったことないけど出来るのかな?」

 

「難しいと思うぞ、ピアノとかでもやってない限りは作曲なんてすることないからな」

 

「あーあ、タイミング良く作曲出来る人が転校してきたりとかしないかなぁ…」

 

「流石にそれはないだろ…」

 

俺達はまだ知る由もなかった。この後本当に奇跡が起こるということに…

 

─────────────────────

 

「スクールアイドル始めるのも大変だなんだねぇ…」

 

教室に戻ってきた俺達は千歌の席で話し合いをしていた。まだ作曲については考え中なのだ。

 

「一から始めるのは何だって大変だよ」

 

「作曲どうしようかな~?こうなったら私が!」

 

千歌は机の中から音楽の教科書を取り出した。どうやらこれを見ながら作曲をするらしい。それだけで曲が作れるんだったら誰も苦労はしないのだが。

 

「出来る頃には卒業してる気がするぞ」

 

「だよねぇ…」

 

「というか作曲だけじゃない。作詞をしたり衣装を作ったりする人もスクールアイドルには必要らしいぞ」

 

「そうだった~!」

 

千歌はやはり作詞や衣装のことも忘れていたようだ。こんな調子で本当に大丈夫なのだろうか。

 

「うーん、衣装だったら作れないことはないけど…」

 

「曜ちゃん!ホント?」

 

「う、うん」

 

「じゃあ、頼んでも大丈夫?」

 

「うん、私はいいよ」

 

「ありがとう!曜ちゃん!」

 

曜は衣装を作ることは得意らしい。確かに今まで色々な制服を俺や千歌に見せてきていたけどあれが全て手作りだったとはな。

 

「はーい!皆さん席についてください!」

 

しばらくすると俺達の担任の先生が教室に入ってきた。俺と曜はすぐに自分の席に戻った。

 

「今日は突然ですが、皆さんに転校生を紹介します!」

 

クラスは一瞬でざわめき始めた。この学校は生徒の数が減っていく一方だったので転校生が来ることなどは今まで一度も無かったのだ。

 

「転校生?誰なんだろうね?」

 

「この学校に転校生か…珍しいこともあるもんだなぁ」

 

俺と曜がそんな会話をしていると先生が話を進め始めた。

 

「皆さん静かに!じゃあ、入ってきていいわよ」

 

ガラッと教室の扉が開く音がした。そこから入ってきたのはロングヘアでワインレッドの髪色をした女子生徒だった。あれ?どっかで見覚えが…

 

「今日からこの学校に編入することになりました。桜内梨子です。東京の音ノ木坂学院という高校から転校して来ました。よろしくお願いします」

 

なんと転校してきたのは俺と千歌が数日前に浜辺で出会った桜内梨子さんだった。俺は後ろの席にいる千歌の顔を少し見てみた。俺と同じで驚いた顔をしていた。

 

「奇跡だよ!」

 

「あ…あなたは…」

 

千歌は急に立ち上がって梨子さんのところまで向かっていった。

 

「あれ?千歌ちゃん、知り合いなの?」

 

曜は千歌が梨子さんと知り合いだったことに驚いたようだ。そういえばあの時のことはまだ曜に話してなかったな。そして千歌は梨子さんにあることを言った。

 

「桜内梨子さん、私達と一緒に…スクールアイドル、始めませんか?」

 

それは当然スクールアイドルへの勧誘だった。梨子さんは自分でピアノの曲を作れるほどの腕前らしい。彼女が入ってくれるのは、本当に心強い。

 

「ふふっ…」

 

梨子さんはそんな千歌のことを見て静かに微笑んだ。これは彼女がスクールアイドル部に入ってくれるのではないか、そう思っていた。しかし…

 

「……ごめんなさい!」

 

「え…えええええっ!」

 

俺達の予想に反してあっさりと断られてしまうのであった。

 

To be continued…

 




今回でやっとアニメの一話が終わりました。これからも少し短編などを挟みつつ進めていきたいと思います。

それではまた。


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第9話 メモリーズ

こんにちは、大天使です。
今回はオリキャラが多く登場します。
そして、後半からオリジナルの話になります。

それではどうぞ。



「だからね、スクールアイドルっているのは…」

 

「…ごめんなさい」

 

梨子さんが転校してきて数日がたった。千歌は未だに彼女のスクールアイドルへの勧誘を続けていた。

 

「学校を救うこともできてね…」

 

「…ごめんなさい」

 

「どうしても、作曲する人が必要でね…」

 

「……ごめんなさい」

 

千歌は何度も梨子さんのことをスクールアイドルに誘い続けているが一向に入ってくれる気配は無かった。無理に誘うのも良くないのだが千歌はどうしても彼女をスクールアイドル部に入れたいようだ。

 

「うん、あと一歩だね!」

 

「そうなの?」

 

「いや、そんな風には見えないが…」

 

「だって前までは、『ごめんなさい。』だったのに、今では『ごめんなさい…』ってなってるんだよ!」

 

「それ、完璧に嫌がってるじゃん…」

 

「千歌、梨子さんを誘いたいのは俺と曜も同じ気持ちだ。だけど梨子さんの気持ちも考えてあげないと駄目だと思う」

 

「うーん、そうだね…」

 

千歌は漸く納得してくれた。

 

「いざとなったら、何とかするし!」

 

どこから取り出したのだろうか。千歌は音楽の教科書を手に取って言った。それでは作曲が出来ないのは俺も曜もわかっているつもりなのだが。

 

「千歌ちゃん、龍くん、ステージの衣装を考えてみたよ。どうかな?」

 

曜はスケッチブックを俺と千歌に見せた。そこには、ステージ衣装を来ている千歌が描かれていた。なかなか上手いな。

 

「うーん…悪くないんだけど、制服っぽいな」

 

「アイドルって感じはしないね…」

 

「そっかー、せっかく考えたんだけどなぁ…」

 

確かにアイデアとしてはとても良いと思う。だがどうしてもアイドルという感じはしなかった。

 

「スカートとかはないの?アイドルっぽいよ!」

 

「それじゃあ…こんなんは?」

 

「これって、警察官じゃん!コスプレ大会になっちゃってるよ!」

 

「じゃあ…ほい!」

 

「武器持っちまったな。戦場にでも行くのか?」

 

「うーん、こんなのはどうかな?」

 

「おお、いいじゃん!」

 

「可愛い!いいと思うよ!」

 

曜がスケッチブックに描いたのは黄色のノースリーブにスカートだった。とてもシンプルなデザインで可愛らしく俺も千歌もすごく気に入った。

 

「よーし!挫けてるわけにはいかないね!」

 

「千歌?どこに行くんだ?」

 

「生徒会長にところだよ!」

 

「ええ…まだ人数集まってないよ」

 

「う…や…やってみなきゃわかんないよ!」

 

そんな感じで俺達三人は再び生徒会室に行き生徒会長と話をすることにしたのだった。

 

─────────────────────

 

放課後。俺達は生徒会室に行きダイヤさんと話をしていた。

 

「お断りしますわ」

 

結果から言うと見事に玉砕された。衣装のデザインが決まったくらいで実際は殆ど何も決まっていなかったから当然と言えば当然だろう。

 

「やっぱり、ダメですか?」

 

「何度も言いますけど、部員は最低五人は必要ですわよ。それに、作曲はどうなったのですか?」

 

「それは…可能性は無限大!」

 

ダイヤさんは何も言わず、ずっと俺達のことを見つめていたがやがて俺の方を向くとこう尋ねてきた。

 

「海藤さん、少しいいですか?」

 

「はい?いいですけど。」

 

ダイヤさんはいきなり俺の名前を呼んだ。そして、話を続けた。

 

「海藤さん、貴方は私の言いたいことは殆どわかっていますよね?」

 

「はい、大体はわかりますね。まだスクールアイドル部を立ち上げられない理由も…」

 

「わかっているのなら、貴方が引っ張っていかないと駄目なのではないですか?」

 

「そうですね…返す言葉もございません」

 

今までダイヤさんが言っていたことは正論だった。それをわかっていたにも拘らず俺は千歌と曜に正確なアドバイスをすることが出来なかった。

 

「貴方にはしっかりしてもらわないと困りますわよ」

 

「え?ええ?」

 

俺には少し不思議だった。なぜダイヤさんは俺にしっかりしてほしいと言うのか。すると、ダイヤさんは俺に耳打ちをした。

 

「貴方達には、少しは期待しているのですよ。特に、海藤さん、貴方には…」

 

期待。俺はその言葉が好きではない。誰かに期待されることは嬉しいことだ。しかし期待されすぎるとかえってストレスになって空回りしやすくなる。俺は経験者だから本当によくわかる。

 

「ダイヤさん…ありがとうございます」

 

「ふふ、どういたしましてです」

 

ここで俺はあることを思い出した。俺はアイツらから呼び出されているのだ。放課後に来てくれと。

 

「ダイヤさん。用事があるので俺はこれで失礼します。お前らは話の続きをしていてくれ。終わったら先に帰っていいからよ」

 

「ええ?龍ちゃんどこ行くの?」

 

「ああ、ちょっとな」

 

「気をつけてくださいね」

 

俺は生徒会室を出るとすぐに待ち合わせの場所へと向かった。

 

─────────────────────

 

五分後、俺は待ち合わせ場所の屋上に着いた。途中、ダイヤさんと千歌が言い合いをしているのが校内放送で聞こえたが、あれはなんだったんだ?

 

「遅かったじゃねーか」

 

「…すまねぇな。色々忙しくてな」

 

俺のことを呼び出した相手は孝至だった。そこには孝至の他にも何人かの男子生徒がいた。

 

「んで、話ってなんだよ」

 

「とぼけんなよ。言わなくてもわかってんだろ」

 

俺が尋ねると、高身長のやつが俺に突っかかってきた。

 

咲也(さくや)か。久しぶりだな」

 

「…そうだな」

 

こいつは源朔也。悪いやつではないんだけど俺はこいつのことが苦手だ。

 

「なんで逃げたんだよ」

 

「…逃げたか…お前の言う通りだよ」

 

「……おい、よせ朔也。龍吾は逃げた訳じゃねーんだからよ」

 

「真一…俺を庇わなくてもいいからよ。朔也の言う通りだ。俺は逃げたんだからよ」

 

こいつは桧山真一。無口で無愛想なやつだが、根はいいやつだ。

 

「龍吾、俺達はお前に戻ってきて欲しいんだよ」

 

「琉空、俺はお前らのことを裏切ったんだぞ」

 

こいつは坂本琉空。裏表の無い性格で、チームメイトから信頼されているやつだ。

 

「お前ら、龍吾の意見も聞かねーと駄目じゃねーかよ」

 

漸く孝至が仕切り始めた。

 

「龍吾、裏切ったってまさかお前が部活を去ったことなのか?そんなことはもう気にしてない。それに、裏切った内には入らない」

 

「…そうだよ。お前らがまた俺のことをバスケ部に誘ってくれるのはありがたいよ。本音を言ったら俺は、お前らとまたバスケがしたい」

 

「だったら…」

 

「…すまないけど俺に少し時間をくれないか?真剣に考えるからよ。答えが出たらまたお前らと…」

 

「そうか…わかった。ずっと待ってるからな」

 

「…俺は正直、お前がいないと寂しいからな」

 

「……期待している」

 

「出来るだけ早くしてくれよ。俺はお前とバスケしたくてウズウズしてんだからよ」

 

「お前ら…ありがとよ」

 

話は終わった。孝至達はすぐに屋上から去っていったが、俺はこの場を動かなかった。動けなかった。

 

─────────────────────

 

半年前…

 

「残り二点差で二十秒だぞ、まだまだいけるぞ」

 

「ああ、みんなで行こうぜ、全国へ!」

 

俺達は全国大会出場を目指して戦っていた。俺達は二点リードしている。あと一つ勝てば目標である全国大会へ行けるのだ。

 

「凌ちゃん!みんな!頑張れ!」

 

「龍吾、彼女ちゃんもこう言ってるし頑張んなきゃ駄目だよねぇ」

 

「琉空…彼女じゃねーよ。こんな状況で何言ってやがる」

 

観客席には千歌と曜と果南姉さんがいた。三人とも俺達の応援に来てくれたのだ。

 

「お前ら集中しろ。ここを守り抜けば全国だ…よし!行くぞ!」

 

「「「「おお!」」」」

 

試合が再開した。相手は県内でも有名な超強豪校だ。無名の俺達がここまで善戦しているのを見て、観客達もテンションが最高に上がっていた。

 

「どっちも頑張れ!」

 

「勝てるぞ!踏ん張るんだ!」

 

そんな観客の期待の声が聞こえた。

 

「龍吾!行ったぞ!スリーだけは打たせるな!」

 

「…まずい!」

 

孝至が俺に声を掛ける。しかし、気づいた時にはもう遅かった。その時には、相手のシュートが俺達の守るゴールをすでに射抜いていた。

 

(スリーポイント…しまった…やられた…)

 

土壇場で、相手の逆転シュートが決まってしまった。相手の応援席は大盛り上がりだ。このままでは流れが持って行かれる…それだけは避けなければ。

 

「ドンマイ!気にすんな!」

 

「おい!まだ十秒あるぞ!諦めんな!」

 

「…わかってる!勝つぞ、みんなで!」

 

孝至からのパスが俺に渡る、相手もオールコートでディフェンスをしてくるけどここは逃げちゃダメだ。絶対に切り抜けてやる!

 

「龍吾!落ち着け!焦るんじゃねえ!」

 

「うおおおおお!」

 

よし!相手を抜いた!このままシュートを打てば…俺はミドルシュートの構えに入った。あれだけ練習してきたシュートだ。外す気がしなかった。しかし

 

「龍吾!まだ打つな!待て!」

 

孝至の声が聞こえる。たしかに俺の周りには相手のディフェンスが二人いた。だが外す気がしなかった俺はそのまま強引にシュートを打った。

 

(よし!入った!勝ったぞ!)

 

そう思ったのもつかの間だった。本心ではわかっていたはずだった。あんなに強引に打ったシュートが入るはずないことに。

 

ガコン!

 

(…何やってんだよ…入るわけないのに…)

 

「外れたぞ!リバウンド!」

 

朔也が叫ぶ。

 

(しまった…ボックスアウトを…)

 

俺がマークしていた相手は、そのままリバウンドをもぎ取った。真一と琉空がボールを取り返そうとする。しかし、俺達を待つのは無情のブザーだけだった。

 

俺達の全国大会への夢はここで潰えた。俺は崩れ落ちるチームメイトを尻目に喜びを爆発させている相手チームのことを遠くからずっと見つめていた。

 

数日後、俺はバスケ部を去った。信頼していた仲間達に何も告げずに。

 

─────────────────────

 

気づけば時間は夜の七時を過ぎていた。随分長い時間物思いに耽っていたようだ。

 

俺のせいで試合に負けた。それは明らかだ。孝至達は気にしなくていいと言っていたが、俺は自分勝手にプレーをして最低限の仕事も出来なかったのだ。

 

(原因は…俺が精神的に未熟だったからだ。それから俺はずっと自分を鍛えてきた。特に精神力をだ。孝至のように大変な時でも冷静に物事を見れるように)

 

俺はその特訓のお陰で人間的にも成長できたと感じている。そろそろ戻っていいのかもな…

 

(戻ったとしたら俺は限られた時間でもアイツらの倍は練習する。そして俺がアイツらを全国に連れて行く。それがせめてもの罪滅ぼしに…)

 

俺は一つの覚悟を決めた。そんな俺のことを月の光が、優しく照らしていた。

 

「答え、早めに出さなきゃな。アイツらのためにも。そして…自分のためにも」

 

一人の男の呟きは風となって消えていった。

 

To be continued…

 




ここでバスケ用語の説明をします。

バスケの試合は4クォーター制で行われる。1クォーターの間は2分間だが2クォーターと3クォーターの間には10分間のハーフタイムがある。4クォーターまでやっても決着がつかない時は延長戦になる。引き分けになることはない。

3Pシュートは3Pラインの外から打つシュートのこと。普通のシュートは2点。フリースローは1点

リバウンドはゴールに弾かれたボールを手で弾いて取ること。またはそのボール。

ボックスアウトはリバウンドを取る時に相手を自分の背中で押し出してポジション取りをすること。バスケの試合では特に重要になる。

以上です。それではまた。


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第10話 波乱と再会

こんにちは、大天使です。
今回は前回の千歌サイドの話です。
ちなみに今回は、オリ主は名前しか出てきません。



「あーあ、やっぱりダメだったね…」

 

「それにしてもあの生徒会長は凄かったね。」

 

生徒会長との話を終えた私は、曜ちゃんと帰っている途中だ。結局、スクールアイドル部の設立は認めてもらえなかった。

 

─────────────────────

 

数十分前…

 

「それで、あなた達はどうしたいのですか?」

 

「やっぱり…やりたいです。u'sも最初は三人で大変だったんですよね?」

 

やっぱり、絶対に諦めたくない。私もu'sのように輝きたいんだ!

 

「u's?」

 

「知ってるんですか?第二回ラブライブの優勝!音ノ木坂学院のu's!」

 

「それって…もしかして…μ'sのことではないのですか?」

 

「えっ…曜ちゃん、あれμ'sって読むの…?」

 

「ちょっ…私に聞かないでよ」

 

私は知らなかった…あの難しい字はμ'sと読むことを。それに生徒会長の様子が少し変だ。どうしたんだろう?

 

「その…もしかして…あれってμ'sって読むんですか?」

 

「おだまらっしゃい!名前を間違えるですって!?」

 

なんかμ'sの名前を間違えたことが生徒会長の逆鱗に触れたみたい…それにしても、すごい剣幕だ…

 

「μ'sはスクールアイドルにとっての伝説。憧れのようなもので生命の源のような存在ですわよ!名前を間違えるなんて片腹痛いですわ!」

 

私は何も言い返せなかった。名前を間違えていたことはμ'sに申し訳ないし何より生徒会長の剣幕がすごかったからだ。

 

「そのような浅い知識だと軽い気持ちで真似をしようと思っていたのではないですか?」

 

「ち、違いますよ!」

 

「でしたらμ'sが最初に九人で歌った曲は…当然わかりますよね?」

 

μ'sが最初に九人で歌った曲?START DASHだったっけ?

 

「え、えーと…」

 

「ぶっぶーですわ!僕らのLIVE 君とのLIFE、通称ぼらららですわ!次!第二回ラブライブ予選で、μ'sがA-RISEとともにライブ場所に選んだ場所は?」

 

「え、えええ…」

 

「ぶっぶーですわ!秋葉原UTX学園の屋上ですわ!」

 

その後も、生徒会長からの問題は続いたが、私は一つも答えられなかった。

 

「あの…生徒会長って、もしかしてμ'sのファンですか?」

 

「あ、当たり前ですわ!一般教養ですわよ!」

 

「そ、そうですか」

 

「と…とにかく、スクールアイドル部は認めませんわ!」

 

色々あったけど、やっぱりスクールアイドル部の設立は許可されなかった。

 

─────────────────────

 

帰り道、私と曜ちゃんはスクールアイドルの活動について話し合っていたけどやらなくちゃいけないことはとても多かった。

 

「前途多難すぎるよ…どうしよう!」

 

「じゃあ…やめる?」

 

「やめない!」

 

曜ちゃんは私にちょっと厳しめなことを言ってきた。でも絶対にやめない!諦めたくない!

 

「千歌ちゃん、あの子はたしか…」

 

「あっ!花丸ちゃん!」

 

「あ、こんにちは」

 

「あ!ルビィちゃんもいる!」

 

「うぇぇ…」

 

帰り道の途中で花丸ちゃんとルビィちゃんに会った。私と曜ちゃんは二人と同じバスに乗って他愛のない会話をしていた。

 

「千歌さん、その…さっきのやつ…聞きましたよ」

 

「えっ?なんで知ってるの?」

 

「さっき校内放送で流れてたずら」

 

さっきの生徒会室での出来事は校内で放送されていたらしい。私は特に問題はないけど生徒会長は後々大変そうだなぁ…

 

「そうだ!二人もスクールアイドルやってみない?」

 

「スクールアイドル?」

 

「すっごく楽しいよ!興味無い?」

 

「ルビィは…お姉ちゃんが…」

 

「お姉ちゃんかどうかしたの?」

 

「ルビィちゃんは、生徒会長…ダイヤさんの妹ずら」

 

「えっ?そうなの?」

 

どうやら、ルビィちゃんはダイヤさんの妹らしい。たしかに瞳の色は同じだ。

 

「生徒会長、なんでだか嫌いだもんね。スクールアイドルのこと」

 

「はい…」

 

「それより、作曲のことを考えようよ!」

 

「そうだね!そういえば、二人はどこで降りるの?」

 

「沼津ずら。善子ちゃんにノートを届けに行くずら」

 

「善子ちゃん?あの堕天使の子?」

 

「そうずら、入学式の日に…」

 

─────────────────────

 

「ハァイ…貴方達も堕天使ヨハネと契約してリトルデーモンになってみない?」

 

「…………………………」

 

「げっ…ピーンチ!」

 

─────────────────────

 

「とか言って学校に来なくなっちゃったずら」

 

「あはは…」

 

善子ちゃんとかいう子、大丈夫かな?まぁうちの学校は優しい人達ばっかりだから気にしないでくれると思うんだけどね。

 

「それじゃマル達はここで降りるずら」

 

「さようなら」

 

「花丸ちゃん!ルビィちゃん、じゃあね!」

 

「それじゃあ、私も降りるね」

 

「曜ちゃん!またね!」

 

三人はバスを降りていった。私は自分がバスを降りるまでスクールアイドルの活動について考え続けていた。

 

─────────────────────

 

「あっ、梨子ちゃんだ!」

 

「はぁ…あれ?千歌ちゃん、どうしたの?」

 

バスを降りて家までの道を歩いていると梨子ちゃんに出会った。一人で何をしているんだろう?

 

「まさか、また海に入るつもりなの?」

 

「入りません!」

 

よかった。今日は海には入らないみたい。また溺れかけたりしたら大変だからね。

 

「そういえば、海藤くんは?」

 

「龍ちゃん?なんか用事があるって言ってたよ。多分まだ学校にいるはずだね」

 

「……そう。ちょっと、残念かな」

 

龍ちゃんがいないことを告げると梨子ちゃんは少し残念そうな顔をした。正直、私も龍ちゃんがいないと寂しいかな…

 

「そうだ!海の音は聞けた?」

 

「ううん、まだだよ」

 

「だったら今度の日曜空いてる?海の音、聞こえるかもしれないよ」

 

この前は自分が梨子ちゃんの邪魔をしてしまった。その代わりと言ってはなんだけど海の音を聞けるように手伝いをしてあげたかった。

 

「海の音が聞こえたらスクールアイドルになってって言うつもりなんでしょ?」

 

「ううん、言わないよ。ただ、手伝いたいだけ。だけどその前に聞いて欲しいの。μ'sの歌を。梨子ちゃんはスクールアイドルのこと何も知らないでしょ?だから知ってもらいたいの」

 

梨子ちゃんは私が海の音が聞こえたらスクールアイドルになってって言うと思ってたみたい。たしかに梨子ちゃんにはスクールアイドルになってほしいけどそれよりも優先することがあるからね。

 

「私、ピアノをやっているって言ったでしょ?でも最近は全然上達しなくて…だけど、海の音が聞けたら何か変わるのかなって思って」

 

「変わるよ。そんな気がする!」

 

私は梨子ちゃんを信じる!龍ちゃんが私のことを信じてくれたみたいに…

 

「だから…スクールアイドルをやっている時間はないの」

 

「…わかった。海の音だけ聞きに行ってみようよ。スクールアイドル関係なしに」

 

「…本当に変な。」

 

正直、残念だけど梨子ちゃんがそう言うのなら仕方がない。

 

「そういえば日曜日って何人で海の音を聞きに?」

 

「うーん、私と梨子ちゃんと…曜ちゃんと龍ちゃんも呼んでみよっかな?二人とも来てくれるといいな!」

 

「…そうだね。来てくれるといいね…それじゃ、私は帰るから。また日曜にね」

 

「うん、梨子ちゃんまたね!」

 

前から思ってたけど龍ちゃんの名前を出すと、梨子ちゃんはいつも嬉しそうな顔をする。もしかして…いや、そんなことはないな。あのヘタレな龍ちゃんがそんなことを…まさかね…

 

─────────────────────

 

「海の音か…」

 

私は千歌ちゃんと別れた後、自分の家までの帰り道を一人で歩いていた。

 

「今度の日曜ね、少し楽しみだな…」

 

念願だった海の音がやっと聞ける。それが嬉しくて、私は鼻歌を歌いながら帰っている途中だった。

 

「海藤くん…来てくれるといいな…」

 

本音を言えば、日曜日に海藤くんにも会いたい。だけど、彼にも都合があるのだから無理に誘うのは良くないと思うけど…

 

「まあ、千歌ちゃんが誘ってくれるって言ってたし、来てくれることを信じようかな」

 

今は千歌ちゃんに頼るしかないけど、いつか私から海藤くんを遊びに誘うことが出来ればいいなと思った。

 

「よし、もう暗いから急ごう!」

 

私は家まで一気に駆け出した。ほんのちょっぴりだけ頬が緩んでいてしまったことは内緒です!

 

To be continued…

 




それではまた


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第11話 女神と堕天使と

こんにちは、大天使です。
今回は少し本編から外れます。



「明後日だな。暇だし行けるぞ」

 

「ホントに?ありがとう!じゃあ日曜にね!」

 

孝至達との話を終えて家に帰ってしばらくたった時に千歌からの電話がかかってきた。日曜日に梨子さんと海の音を聞きに行くから一緒に来てほしいらしい。

 

「よし、明日は暇だし買い物でも行くか」

 

約束の日曜は明後日だ。暇な明日は久しぶりに買い物をしに沼津へと行く事にした。すると、俺のケータイにもう一本の電話がかかってきた。

 

「もしもし」

 

「ハァイ!私よ!元気かしら?」

 

「鞠莉さんか。俺は元気ですよ」

 

俺に電話をかけてきたのは鞠莉さんだった。彼女とはこの前会ったときにお互いの連絡先を交換していたのだが電話をかけてくるのは初めてだった。

 

「それで、何か用ですか?」

 

「そうそう!明日は空いてるかしら?ヒマだったら私とショッピングに行ってほしいのよ!」

 

鞠莉さんからのお誘いだった。俺はもともと買い物に行く予定だったので、すぐに返事をした。

 

「はい、いいですよ。俺はもともと買い物に行くつもりでしたし」

 

「サンキュー!それじゃ九時に沼津駅で会いましょ!また明日ね。」

 

そう言うと、鞠莉さんは電話を切った。明日は早起きをしなければならないな。そう思いながら俺は少し早めに床に入った。

 

────────────────────

 

朝の九時、沼津駅前。

 

(眠い…それにしても九時って早くないか?)

 

そんなことを考えながら俺は鞠莉さんのことを待っていた。俺は朝は得意ではない。寧ろ苦手だ…

 

(もうちょっと集合時間を遅くしてくれると助かったんだけどな…ん?あの顔…見覚えがあるな…)

 

俺の目線の先には厚手のコートに身を包んでいる青みがかった黒髪の女性がいた。あの顔は…もしかして…

 

「おい、もしかして善子か?」

 

「……何者ッ?それに善子じゃなくてヨハネ!ってあなたは確か…」

 

やっぱりだ。こいつは津島善子。入学式の日に出会った子だ。そういえば、学校では見なかったけど何をしていたんだろう…

 

「久しぶりだな。元気だったか?」

 

「うん…元気だったわよ…」

 

「学校ではお前に会わなかったけど何をしてたんだ?」

 

「そ…それは…実は色々あって学校には行ってないのよ…でも、大丈夫よ!」

 

そうだったのか…何か複雑な事情がありそうだけど、本人が大丈夫そうなら心配はいらないな。

 

「あなたは何をしにここまで来たのかしら?」

 

「ああ、実は…「シャイニー!」

 

俺の言葉は何者かに掻き消された。何者かって?シャイニーなんて言葉を使う人は俺の知り合いには一人しかいない。鞠莉さんだ。

 

「鞠莉さん、遅いですよ」

 

「ゴメン!色々あってね…あら、その子は?」

 

「ああ、こいつは津島善子、浦の星学院の一年。」

 

「だからヨハネ!あっ…よろしくお願いします…」

 

「Oh、とっても可愛いじゃない!よろしくね!」

 

善子はまた自分がヨハネとか言っていたが、鞠莉さんはあまり気にしていないようだ。

 

「それじゃ、行きましょ!ヨハネちゃんも一緒に行くかしら?」

 

「…行ってもいいですよ。貴方も!このヨハネがせっかく付き合ってあげるんだから、もっと嬉しそうにしなさい!」

 

鞠莉さんはむしろ楽しそうに見えた。善子もなんだか安心した表情をしていた。

 

「行くわよ!ついてきなさい!」

 

「フッ…このヨハネから逃げられると思っているのかしら?哀れな子羊ちゃんね…」

 

「ちょ…待ってください!」

 

俺と善子は鞠莉さんの合図とともにショッピングモールへ向かって走りだした。今日は騒がしい一日になりそうだな。

 

─────────────────────

 

「ついたわ!ここに行きたかったのよ!」

 

「ここは…ジュエリーショップですか?」

 

俺達は鞠莉さんが行きたいという店にやってきた。見た感じジュエリーショップのようだ。

 

「何か買いに来たんですか?」

 

「そうよ!パパの誕生日にブレスレットをプレゼントしたいの!よかったら選ぶのを手伝ってもらえないかしら?」

 

「もちろんいいですよ。善子はどうする?」

 

「私は…もう善子でいいわ…私も手伝うわよ」

 

「嬉しいわ!それじゃこんなのはどうかしら?」

 

「シンプルでいいですね。あ、この色はどうでしょうか?」

 

そんな感じで俺達は鞠莉さんのプレゼント探しを手伝った。最終的には銀色のブレスレットを渡すことに決めたようだ。

 

「これにするわ!二人ともありがとう!」

 

「どういたしまして」

 

「気にしなくていいですよ」

 

「さてと、善子は行きたい所とかあるのか?」

 

「わ、私は別に…」

 

「遠慮しなくていいのよ!」

 

「それじゃあ、ちょっとあの店まで…」

 

善子は自分が行きたいという店に向かっていった。俺と鞠莉さんも善子の後に続いていった。

 

─────────────────────

 

「…ここよ」

 

「アニメショップか。ここには俺もよく行くな」

 

善子が行きたかったという店はアニメショップだった。この店は色々な種類のグッズを取り扱っているのだ。

 

「え、そうだったの?」

 

善子は少し驚いた表情をしていた。俺はアニメとかは好きなのでこの店には普通に行くけど…

 

「そんなに以外だったか?」

 

「そりゃそうよ。こんなところに来るのなんて私ぐらいしかいないと思ってたし…」

 

「そんなことはないぞ。俺だけじゃないし全然気にする必要はないぞ」

 

「…そうね!ありがと!」

 

「おう、どういたしまして」

 

善子には笑顔が戻っていた。元気になったようで本当に安心したよ。

 

「ちょっと!マリーのことを放っておくつもりなの?」

 

「あ、なんかすみません…」

 

「もう!まったく仕方ないわね…」

 

ずっと善子と会話をしていたので、鞠莉さんは退屈そうにしていた。悪いことをしちゃったな…

 

「それじゃ、入るわよ」

 

「はいよ。鞠莉さんも行きましょう!」

 

「ええ!」

 

俺と鞠莉さんは善子に続いて店に入った。善子はなんだか楽しそうだ。やっぱり連れてきて本当によかったな。

 

─────────────────────

 

鞠莉さんと善子の買い物は終わり、次は俺の行きたい店に行く番になった。俺の行きたい店はあそこだ。

 

「リューゴの行きたいところはどこなのかしら?」

 

「あの店ですよ。」

 

「あれは、スポーツショップかしら?」

 

俺の行きたかったのはスポーツショップだ。久しぶりにシューズとかTシャツを見たくなったからなのだ。

 

「リューゴってスポーツやってたの?」

 

「はい。バスケを少々…」

 

「そうなの?確かうちのバスケ部は去年の県大会で準優勝だったわよね?」

 

「……そうですよ」

 

あの試合のことはもう忘れたい。出来れば掘り返したくはないのだが…

 

「それで、あなたは何を買いに来たの?」

 

「うーん…特にアテはないな」

 

「じゃあアレをやりましょ!」

 

善子が指さしたのは3on3用のコートだった。久しぶりにバスケをやるのも悪くないかもな。

 

「…いいぜ。やってやるよ!」

 

「そう来なくっちゃ!それじゃ、行きましょ!」

 

俺達はコートに行き、入口でボールを借りた。すると、すぐに背の高い男性達が声をかけてきた。

 

「そこの兄ちゃん、ちょっと俺達の相手をしてくれないか?お嬢ちゃん達も一緒によ」

 

「いいですよ。やりましょう!」

 

そして試合は始まった。ルールは簡単だ。最初に俺達がオフェンスをしてシュートが決まればディフェンスと交代。外してもリバウンドを取れればもう一度オフェンスが出来る。

 

「いくぞ。善子!」

 

「わかったわ!」

 

「善子ちゃん!こっちよ!」

 

まずはパス回しから始める。相手の様子を見ながら隙があればすぐに攻めるのだ。

 

「鞠莉さん!」

 

「ええ!」

 

俺の手にボールが渡る。相手との距離は充分にある。これなら確実に狙える!

 

「させるか!」

 

相手のディフェンスが手を伸ばしてくる。でも、届かない。俺はそのままシュートを打った。

 

(この手首のかかりに縫い目の角度…外す気がしねぇ!)

 

俺の手から離れたボールは綺麗な弧を描いてゴールへ吸い込まれていった。

 

「よし!」

 

「ナイスシュートよ!」

 

「やるじゃない!」

 

それからの試合展開は一方的だった。そして、相手チームに一本もシュートを決めさせずに俺達は勝利した。

 

─────────────────────

 

「ありがとうございました!」

 

試合が終わり、お互いに礼を言った後に相手の男性達が俺に声をかけてきた。

 

「そういや少し気になったんだが、兄ちゃんは浦の星学院のプレイヤーじゃないか?」

 

「…なんでそれを?」

 

「あの試合見てたぞ。惜しかったな…」

 

「そ、そうでしたか。ありがとうございます」

 

「次は勝てるぞ。頑張れ!」

 

そう言うと男性達は去っていった。なんだかあの人達に勇気づけられたような気がする。

 

「お疲れ様!カッコよかったわよ!」

 

「鞠莉さんも善子もお疲れ様」

 

「お疲れさん」

 

鞠莉さんと善子はドリンクを飲みながら疲れを癒していた。俺も二人のとともに休養をとることにした。俺は明日も用事があるから疲れを残すのはよくない。

 

「楽しかったわね。そういえば思ったんだけど、リューゴはバスケ部なのかしら?」

 

「いえ、今はバスケ部ではないですよ。色々あって今はやってないんですよ」

 

「色々ねぇ…でも、もう一回やってみたらどうかしら?絶対に活躍できるわよ!このマリーが言うんだから間違いはないわ!」

 

「このヨハネもそう思うわ。あなたがバスケしている姿はカッコイイし…」

 

俺はまだバスケを再開するかどうかで悩んでいたけど少し悩みが軽くなった気がする。それにバスケはやっぱり楽しいな!

 

「二人ともありがとう!もう少し考えてみるわ」

 

「どういたしまして!」

 

「気にしなくていいわよ…」

 

─────────────────────

 

俺達がコートを後にすると日は殆ど沈んでいた。遠くには星空も見える。

 

「だいぶ暗くなってきたわね」

 

「そろそろ帰るか」

 

「そうしましょ」

 

「それじゃ、二人ともまたね!」

 

「またな!」

 

「また会いましょう!」

 

俺は二人に別れを告げると帰り道を急いだ。既に空には月が浮かんでいる。明日も早いからすぐに帰らなくてはな。

 

「今日は少し騒がしかったけど、楽しかったな」

 

また三人で集まりたい。俺はそう思っていた。すごく居心地がよかったからかな。

 

「よし、明日に備えて早く帰るか!」

 

俺は明日のことを思い浮かべながら家まで走り始めた。心地よい海の風に吹かれながら…

 

To be continued…

 




鞠莉は善子のことをなんて呼んでたのかわからなかったので、自分が予想したのを使いました。

それではまた。


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第12話 海の音

こんにちは、大天使です。
やっと執筆の時間が作れました。
それではどうぞ。



鞠莉さんと善子と三人で買い物に行った翌日、俺は千歌達と海の音を聞きに行くために海に潜ることになっていた。

 

「えっと…九時に千歌の家の前の船着き場に行けばいいんだよな。三十分後か、やっぱり早いな」

 

集合時間は九時だ。少し早いような気がするが遅いよりはいいんじゃないかという千歌の意見により、この時間になったのだ。言い出しっぺのやつが遅刻しなければいいんだけどな。

 

「よし!そろそろ行くか!」

 

俺は簡単に身支度を済ませ、待ち合わせ場所の船着き場へと向かうために家を出た。

 

─────────────────────

 

「あっ!龍ちゃん、おはよう!」

 

「龍くん、おはヨーソロー!」

 

「海藤くん、おはよう!」

 

「おはよう!みんな早いな。まだ集合時間まで十分もあるのに」

 

「うん!楽しみだったからね!」

 

千歌は珍しく早く来ていた。他の二人も既にそこにいたからどうやら俺が一番最後だったみたいだな。

 

「龍ちゃん、今日もカッコイイね!」

 

「え?お、おう、ありがとな。」

 

千歌は俺の方を見つめながら言った。服とか髪型はいつもとあまり変わらないのだが。

 

「おやおや?龍くん、顔が赤くなってますねぇ」

 

「べ…別になってねーし…」

 

「うふふ、海藤くん可愛い!」

 

「梨子さんまで?」

 

なんかさっきからみんなにからかわれている気がする。

梨子さんまで言ってくるのは少し意外だったが。

 

「そ…それじゃ行くぞ。果南姉さんを待たせたら悪いからな」

 

「あ!龍ちゃん、ちょっと待って」

 

「なんだ?忘れ物か?」

 

「ううん、違うよ…えい!」

 

千歌は急に俺の腕に抱きついてきた。今までよくわからなかったが、こいつの胸は意外と…って俺は何を考えているんだ!

 

「ちょ、離せって!重いから!」

 

「ダーメ!このまま行くの!」

 

「曜!梨子さん!助けてくれ!」

 

「……ヨーソロー!」

 

「あべし!」

 

俺は二人に助けを求めたはずなのだが…曜まで俺の空いている腕に飛びついてくる…というより激突してきやがった。つーかマジで痛いわ!

 

「………」

 

「梨子さん?」

 

「私も…二人みたいに…ダメ?」

 

梨子さんは捨てられた子犬のような目でこちらを見つめてきた。辞めてくれ。俺はその目に弱いんだ。

 

「…仕方ないな。ほら、おいで」

 

「…ありがと」

 

そのまま俺は梨子さんを抱きしめてやった。女の子特有の甘い香りが鼻を擽ってきた。千歌ほどではないが梨子ちゃんも意外と…

 

「早く行くぞ!道草食ってる訳にはいかないぞ!」

 

「はーい!」

 

「しゅっぱーつ!」

 

「うん!」

 

俺は三人の美少女を両手に抱えて、船へ乗り込み、果南姉さんの実家のダイビングショップへと向かった。なんかもう疲れたな…

 

─────────────────────

 

「おっ、来たか」

 

「おはよう。朝早くから悪いね」

 

「気にしなくていいよ。私は普段から早いからね」

 

果南姉さんは既に準備を終えて俺達のことを待っていてくれていた。

 

「果南ちゃん、今日はよろしく!」

 

「誘ってくれてありがと!」

 

「今日はよろしくお願いします」

 

「みんなよろしく!それじゃ梨子ちゃんはウェットスーツのサイズを測るから水着に着替えてきてね。三人は前のやつを着てね」

 

「あ、はい」

 

海に潜るためにはウェットスーツが必要になる。最初はサイズを測ったりするので時間がかかるが、安全のためだから仕方がない。しばらくすると梨子ちゃんが水着姿になって出てきた。

 

「お…お待たせしました…」

 

「おお!梨子ちゃん可愛いねぇー」

 

「うーん、似合ってるぅー」

 

「ちょ、ちょっと二人とも!恥ずかしいよ…」

 

水着姿になるのが慣れてないのか彼女は恥ずかしそうにしていた。そんな姿も悪くないかもな。

 

「ねえねえ、凌ちゃんも梨子ちゃんの水着姿いいと思うでしょ?」

 

「なんで俺に聞くんだよ…でも、俺はとても可愛いと思うぞ」

 

「ううう…」

 

梨子さんは急に顔が真っ赤になった。やっぱりこういう仕草も可愛いなぁ…

 

「はーい。終わったよ!それじゃあなたはこれを着て」

 

「ありがとうございます」

 

梨子ちゃんの採寸が終わって彼女もウェットスーツに着替えてきた。これで最初の準備は終わり。あとは海に出るだけだ。

 

「それじゃあ行くよ!忘れ物はないよね?」

 

「はいよ。みんな行くぞ!」

 

「「「うん!」」」

 

俺達は果南姉さんの操縦するボートに乗って、海に潜れる場所へと向かった。

 

─────────────────────

 

十数分後、俺達は果南姉さんオススメのダイビングスポットに到着した。これから海へと入るのだ。

 

「水中では音は届きにくいからね。でも景色はこことは違うから、イメージすることは出来ると思うよ」

 

「はい、わかりました」

 

「梨子ちゃん!行くよ!」

 

「うん!それじゃ行ってきます」

 

「はいよ。気をつけてね」

 

俺達はゆっくりと海に入った。最初は海水の冷たさが身に染みたがしばらくすると慣れて心地よく感じた。

 

「みんな、耳をすませてみて」

 

曜の声が聞こえる。俺は海の音は聞いたことがないからよくわからないが何も聞こえてこないので、おそらくここでは聞こえないのだろう。

 

「聞こえないな。場所を変えるか」

 

「そうだね」

 

俺達は移動を開始した。移動とは言ってもあまり遠くには行かない。

 

「…やっぱり聞こえないね」

 

「そうだな」

 

結果としてここでも音は聞こえなかった。海の音を聞くのはかなり難しいようだ。少し梨子ちゃんの顔を見てみると、彼女は俯いていてどんな表情をしているのかはわからなかったが多分残念に思っているのだろう。

 

「梨子さん、どうしたんだ?」

 

「…あっ、ごめんなさい。少し考え事してて…」

 

「何か悩みでもあるのか?」

 

「まあ、そんな感じだけど…」

 

「いや、無理に話さなくていいからな。強引に聞き出すつもりもないし」

 

梨子さんに何か悩みがあるということはすぐにわかったけどはそれ以上は何も聞こうとしなかった。無理に聞き出すのは良くないし何より後味が悪いからな。

 

「海藤くん、心配してくれてありがとう!」

 

「ああ、どういたしまして!」

 

「あ…でも一個だけお願いがあるんだ…」

 

「なんだい?」

 

「私のこと…さん付けじゃなくて名前で呼んで欲しいなって。千歌ちゃんや曜ちゃんみたいに…!」

 

お願いって言うから何かと思ったよ。そんくらいならお易い御用だ。

 

「わかったよ。梨子」

 

「えへへ…ありがと!」

 

そう言って笑う梨子は本当に可愛かった。

 

「二人とも!あれを見て!」

 

急に千歌の声が聞こえた。千歌のいる方を見てみると海面から日の光が射し込んでいるのが見えた。

 

「それがどうしたんだ?」

 

「それだけじゃないよ。何か聞こえない?」

 

俺達は耳をすませてみた。すると微かにピアノのメロディーのような音が聞こえてくるのがわかった。もしかして…これが海の音?

 

「何か聞こえたよね?」

 

「聞こえた!」

 

「私も!」

 

「俺もだ!」

 

俺達は水面から顔を上げ、互いが聞いた音がどんなのだったかを確かめている最中だ。全員が同じ感想だった。みんなが聞いていたのは同じ音だったのだ。

 

「聞こえたね!海の音!」

 

「目的達成であります!」

 

「本当によかったな。おめでとう!」

 

「みんな…ありがとう!」

 

この海での出来事を通して俺達の絆は更に深まった気がした。いや、深まったに違いない。

 

─────────────────────

 

「聞こえたって?海の音」

 

「ああ、聞こえたよ」

 

果南姉さんは俺達がボートに戻るとすぐに出発させた。あの三人は疲れが出たのかボートが出てからすぐに寝てしまった。

 

「お疲れ様。大変だったでしょ?」

 

「まあな。でも楽しかったよ。それに…」

 

「それに?」

 

「…いや、何でもない。気にしないで」

 

「ふーん…わかった」

 

俺は何か心に暖かいものが生まれたのがわかった。果南姉さんには恥ずかしくて言えなかったけど。俺はこの暖かさを感じながら三人と同じように心地よく眠りにつくのだった。

 

To be continued…

 




出来れば評価等をよろしくお願いします。

それではまた。


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第13話 Let's make song!

こんにちは、大天使です。
最近は暖かったり寒かったり大変ですね。
皆様も風邪とかを引かないようにしてくださいね。




月曜日

 

「え?本当にいいの?」

 

「うん。海の音を聞かせてくれたお礼。スクールアイドルの曲作り、手伝うよ!」

 

梨子の口から出たのは意外な言葉だった。今までスクールアイドルを始める気がなかった梨子が曲作りを手伝ってくれるというのだ。とてもありがたい。

 

「梨子ちゃーん!スクールアイドルになってくれてありがとー!」

 

「何か勘違いしてない?私は曲作りを手伝うだけ。スクールアイドルにはならないよ」

 

「ええ!でもしょうがないか!梨子ちゃんにも都合があるんだからね」

 

とりあえず梨子が俺達の曲作りを手伝ってくれることになった。

 

「それじゃあ、詩を頂戴!」

 

「「「詩?」」」

 

俺達三人声が見事に被った。確かに曲を作るには詩が必要になるな。

 

「龍ちゃん、詩作った?」

 

「作ってねーよ。千歌は?」

 

「作ってなーい!曜ちゃんは?」

 

「私もやってないよ」

 

三人とも作詞をやっていなかった。まぁ誰が作るとか決めてなかったから仕方ないか。

 

「よし!今日家でやろう!」

 

「本当にやるのか?」

 

「やるしかないよ!梨子ちゃんと曜ちゃんも放課後に私の家に来て!」

 

「うん!」

 

「わかった。」

 

俺達は放課後に千歌の家に集まって、みんなで作詞をすることになった。

 

─────────────────────

 

「ここ…旅館でしょ?」

 

「ここは私の家だし、時間を気にせずに考えることが出来るよ!」

 

初めて千歌の家に来た梨子は驚いていた。そりゃ友達の家が旅館だったら誰でもびっくりするよね。

 

「ワンワン!」

 

「おお!しいたけか。久しぶりだな!」

 

千歌の家にはしいたけという犬がいる。しいたけとも昔からよく遊んでいたものだ。

 

「しいたけも久しぶりに龍ちゃんに会えて嬉しいと思うよ!」

 

「よしよし」

 

俺が頭を撫でると、しいたけは嬉しそうな表情をした。やっぱり毛がモフモフで可愛いな。

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「あの…私、実は犬が苦手で…」

 

どうやら梨子は犬が苦手らしい。しいたけは大きいけど大人しい犬だから大丈夫だと思うけど。

 

「ワン!」

 

「きゃ!」

 

「ちょ!梨子!?」

 

急にしいたけに吠えられてびっくりしたのか梨子は俺の背中に抱きついてきた。やっぱり千歌達ほどではないけど梨子もなかなか…

 

「お願い、このままでいて…」

 

「…はいよ。それじゃ千歌の部屋に行こうか」

 

「むー、龍ちゃんは梨子ちゃんには甘い…」

 

「龍くんのえっち!」

 

「酷くね?俺は何もしてねーぞ!」

 

幼馴染み二人に冷たい目線を送られながら俺は千歌の部屋へと向かって行ったのであった。

 

─────────────────────

 

「ここはこうした方がいいかな?」

 

「そうだな。それでこの文をここに入れてみたらどうだ?」

 

俺達は千歌の部屋に行き、作詞を始めていた。千歌はさっきから何かブツブツ言っていたが。

 

「うう…酷いよ!せっかく志満姉が東京で買ってきてくれた限定プリンなのに!」

 

「限定プリン?」

 

「いつまでも取っとく方が悪いんです!」

 

「もぉー!うるさい!とりゃ!」

 

千歌と美渡姉はぬいぐるみや浮き輪を投げ始めていた。どこから取り出したかのかはわからないが俺達も巻き込まれそうだから気をつけないと…

 

「これでも喰らえ!」

 

「甘い!」

 

「ちょっと、二人とも…ぶっ!」

 

二人が投げたエビのぬいぐるみと浮き輪が梨子の顔面にクリーンヒットした。

 

「げっ、退散!」

 

美渡姉はすぐに逃げやがった。まぁそれはいいとして作詞の続きを…

 

「そ、それじゃあみんな…」

 

「あ!曜ちゃん、スマホ変えた?」

 

「うん!進級祝い!」

 

「お、なかなかいいじゃん!」

 

「…………」

 

この時、俺達は気づかなかった。背後から何かが迫り来ていることに。

 

「……ちょっと」

 

「あっ、梨子ちゃんも見る?すごいんだ…あれ?」

 

その刹那、俺の背中に悪感が走った。千歌と曜も同じようなものを感じているようたった。

 

「り…梨子ちゃん?」

 

「は・じ・め・る・わ・よ。」

 

「「「……はい」」」

 

俺達はこの瞬間に悟った。梨子を絶対に怒らせてはいけないことを。

 

─────────────────────

 

それから先は順調に進んでいる…ように見えた。

 

「千歌ちゃん、まだ出来ないの?」

 

「もう別のでいいんじゃないのか?」

 

「ダメ!絶対にμ'sのスノハレみたいな曲を作るの!」

 

制作は難航していた。作詞なんてしたことがない普通の高校生が急にやろうとしてもすぐには浮かばないのは当然のことだが、幾ら何でも時間がかかりすぎだ。

 

「だけどよ、千歌は恋愛経験とか無いだろ?」

 

「うーんよくわかんないなぁ…それより龍ちゃんは?恋愛経験とか無いの?」

 

「龍くんにある訳ないじゃん!だって今まで彼女とかいた事ないでしょ?」

 

「オイ!まぁそうだけどよ…」

 

千歌と曜に何も言い返せなかったことが俺は純粋に悔しかった。ってお前らも彼氏いたことないだろ!

 

「そういう曜はどうなんだ?」

 

「わ、私?ないない!」

 

「えっと…梨子は?」

 

「……ないです」

 

質問したけど全員恋愛経験ないみたい。こりゃ作詞は難航するぞ…

 

「でも、μ'sがこの曲を作った時に、恋をしていた人がいたってこと?」

 

「どうだろうな。いくらスクールアイドルって言っても女子高校生なんだから恋愛とかしててもおかしくない気もするなぁ」

 

「たしかに…ちょっと調べてみる!」

 

俺達はパソコンでμ'sの恋愛事情について調べてみたけど何一つわからなかった。

 

「でも、なんでここまでやるの?成功するかなんてわからないのに…」

 

「さあね。だけど千歌ちゃんはスクールアイドルに恋しているから」

 

なるほど、そういう考え方もあるのか。だったら千歌が諦めずにスクールアイドルをやろうとしているのにも辻褄が合うかもしれないな。

 

「それだったら書ける気がしない?スクールアイドルが大好きっていう気持ちを込めれば!」

 

「うん!それならいくらでも書けるよ!」

 

千歌は机に広げたルーズリーフに自分がスクールアイドルをやってみて思ったこと、スクールアイドルが大好きだという想いを一つ一つ書き始めた。

 

「スノハレみたいな曲は書けそうか?」

 

「ううん、恋愛ソングもいいけど、やっぱりこんな曲を作ってみたい」

 

「これは…」

 

「えっと…ユメノトビラ?」

 

千歌が書いていたのはユメノトビラという曲の歌詞だった。俺も前に千歌とこの曲を聞いたけど、とても良い曲だった。

 

「私はこの曲を聞いて、本気でスクールアイドルをやりたいって、μ'sみたいになりたいって思ったの!」

 

「千歌ちゃん…」

 

「頑張って、努力して、力を合わせて奇跡を起こしていく。私にも出来るんじゃないかって今の私から変われるんじゃないかってそう思ったの!」

 

俺達は黙って千歌の話を聞いていたが、やがて梨子が口を開いた。

 

「本当に好きなのね…スクールアイドルが!」

 

「うん!大好きだよ!」

 

「ふふ、それじゃ作詞の続きをしましょう。作るんでしょ?この曲みたいに」

 

「千歌ちゃん、やろう!」

 

「俺も最後まで付き合うよ」

 

「みんな…よし、続けよう!最後まで!」

 

俺達は曲作りを再開した。ふと千歌の方を見てみると千歌は今までに無いぐらいの真剣な表情で机に向かっていた。俺も負けていられない。そんな千歌に対抗するかのように俺も机に向かって作詞に取り組んだ。

 

To be continued…

 




少しキリが悪いですが、今回はここまでです。

それではまた。



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第14話 決意

こんにちは、大天使です。
健康には気を使っていたのですがインフルエンザになってしまいました…これからはもっと体調に気をつけます。




「さて、俺もそろそろ決めなきゃな」

 

もう暗いということで今日の話し合いはここらでお開きとなった。だけど龍吾はまだ家には帰らずに千歌の家の前の砂浜で一人夜風に吹かれていた。

 

「あいつが決心したんだ。俺だって出来るさ」

 

龍吾は千歌がスクールアイドルを本気でやりたい理由がわかった。今まではなんとなくやりたいのではないのかと思っていたが彼は千歌の言葉を聞いてその考えを改めた。

 

「それよりも…梨子が心配だな…」

 

彼が気になったのは梨子のことだった。話し合いの時にふと思ったことだが、彼女には何か悩みがあるような気がしていた。その場で尋ねることはなかったが。

 

「…今度会える日に聞いてみるか」

 

龍吾は再び視線を海へと戻す。この広い海を見ていると自分の考えていることがちっぽけに見えてしまう。彼がそんなことを思っているとどこからかピアノの音が聞こえてきた。

 

「んっ…この音はなんだろう?」

 

千歌の家にはピアノが無い。ではどこから?彼にはその答えはすぐにわかった。千歌の隣の家から聞き覚えのある声が聞こえてきたからだ。

 

「この声は…」

 

─────────────────────

 

「ユメノトビラか…」

 

千歌の家での話し合いを終え、梨子も自分の家へと戻っていた。

 

「たしかにいい曲だけど…」

 

梨子はずっとピアノのことで悩んでいた。ピアノが嫌いだからではない。ピアノが心の底から好きだからこそ彼女は長い間悩み続けていたのだ。

 

(みんな、私と同じ普通の高校生なのにキラキラしてた!スクールアイドルってこんなにもキラキラ輝けるんだって!)

 

梨子は千歌が言っていたことを思い出した。梨子は千歌の言葉に勇気づけられていたのだ。

 

「…ううん、ずっと悩んでるだけじゃ駄目なんだ。少しだけ弾いてみようかな?」

 

梨子は静かにピアノの原盤の蓋を開くと、ゆっくりと丁寧に弾き始めた。

 

「……ユメノトビラ~ずっと探し続けた~君と僕との~繋がりを探してた~」

 

「……わぁ」

 

梨子はある人物の声にやっと気がついた。その人物は数時間前まで一緒に作業をしていた千歌だった。

 

「え?」

 

実は千歌と梨子の家はお隣さんだった。梨子はピアノの演奏に集中していたので千歌の存在に気づかなかったのだが、千歌は最初から梨子の演奏を聞いていたのだ。

 

「そこ梨子ちゃんの部屋だったんだね!」

 

「そ、そうだね。引っ越してきたばっかりで全然気がつかなかったよ」

 

「今の、ユメノトビラだよね!歌ってたよね!」

 

千歌は矢継ぎ早に梨子に尋ねた。しかし、梨子は何も答えずに俯いていた。

 

「私、どうしたらいいんだろう…何やっても楽しくなくて変われなくて…」

 

「だったらやってみない?スクールアイドル。」

 

何をやっても上手くいかない。そんな梨子に千歌が勧めたのはスクールアイドルだった。

 

「…駄目だよ。ピアノを諦めるわけにはいかないし…」

 

「やってみて、笑顔になれたら…変われたらまた弾いてみればいいと思うよ」

 

「…そんなの失礼だよ。本気でスクールアイドルをやろうとしているみんなに…」

 

「梨子ちゃんの力になれたら私は嬉しいよ。だって…みんなを笑顔にするのがスクールアイドルなんだから」

 

「千歌ちゃん!」

 

千歌は窓から身を乗り出して、梨子へと手を伸ばした。

 

「それって…すっごくステキなことだよ!」

 

「千歌ちゃん…」

 

梨子もベランダから少し身を乗り出して、千歌の手を取ろうとした。だがまだ届かない。

 

「流石に届かないね」

 

「待って!諦めちゃダメ!」

 

「でも…この距離じゃ…」

 

「初めから届かないって決めきゃダメ!まずは手を伸ばしてみて、悩むのはそれからでもいいんだから!」

 

千歌は更に窓から身を乗り出した。梨子も千歌の声を聞き、勇気を出して更に手を伸ばした。

 

「「あっ!」」

 

二人とも諦めずに手を伸ばし続け、ようやく手と手が届いた。

 

「千歌ちゃん!」

 

「梨子ちゃん…ようこそ!スクールアイドルへ!」

 

梨子はまだ涙を流していたが、その心の霧は既に晴れていた。その証拠に梨子の顔にさっきのような悲しい表情はもうなかった。

 

─────────────────────

 

「どうやら吹っ切れたみたいだな。本当によかったな…梨子」

 

龍吾は遠くから二人の様子をそっと見守っていた。この距離では二人が何を話しているかはわからないが、彼には伝わっていた。言葉なんていらない。二人の動作だけで十分だったのだ。

 

「よし、俺もあいつに伝えなきゃな」

 

そして龍吾はとある人物に電話をかけた。彼が出した結論を伝えるために。

 

「もしもし」

 

「もしもし、孝至か?」

 

「ああ、なんだ?」

 

「まず一言お前に言いたいことがある。今まですまなかったな」

 

「なんだ?別に何もしてないだろ」

 

「…やっと答えが出たよ。俺……お前達とバスケがしたい。後であいつらもにちゃんと謝ってもう一度。今度こそみんなで…仲間達と一緒に戦いたい!」

 

「……待っていたぜ。その言葉」

 

一人の少女がスクールアイドルになる決意をしたのとほぼ同時に一人の少年も大きな決心をしたのであった。

 

To be continued…

 




今回から少し書き方を変えてみます。
それではまた。


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第15話 Start line

こんにちは大天使です。
やっとアニメの3話目に入ります。このままのペースで2期まで持てば良いけどな。



「そうか。やっと戻るんだな」

 

「まぁな」

 

隣にいるのは俺の兄の海藤蓮だ。俺より2個年上の大学生だ。実は高校時代にバスケで国体の選手にも選ばれたことがあるほどのプレイヤーだ。

 

「だけどな、俺はバスケだけじゃない。スクールアイドルの手伝いもしなくちゃならないんだ。あいつらと約束したからな」

 

「お前がスクールアイドルの手伝い?人が変わったみてーだな!」

 

「なんだよ!悪いかよ!」

 

「悪くなんかねーよ。なんかあったら俺を呼べや。すぐに駆けつけてやるからよ」

 

兄貴とは軽口を叩き合う仲だ。周りの人達によく兄弟仲がいいと言われるがそれはあってるのかもしれない。兄貴は俺のことを昔から可愛がってくれたし、俺も何だかんだで兄貴のことは頼りにしている。

 

「…ありがとな兄貴。それじゃ俺はこれから学校だから」

 

「おう、気いつけてな」

 

─────────────────────

 

「ワン、ツー、スリー、フォー」

 

千歌達は砂浜でダンスの練習をしている。曜は運動の経験があるので上達は早い。梨子も最近ダンスを始めたにしてはなかなかセンスがある。

 

「お待たせ」

 

「あっ!やっときた!」

 

「遅いよ龍くん!」

 

「おはよう♪」

 

「千歌、曜、梨子、待たせたな」

 

何だかんだで毎日千歌達の練習に顔を出してしまう。梨子は俺が色々と忙しくなったから毎日は来なくていいとよ言ってくれた。その親切心には感謝しているけど俺はやっぱりみんなの様子が気になるのだ。

 

「曜、ダンスの調子はどうなんだ?」

 

「うーん、ここの盛り上げがみんな弱いね。あとここの動きも!」

 

「曜ちゃんすごいね!なんでこんな細かいところまで分かるの?」

 

「高飛び込みやってたからフォームの確認は得意なんだ!」

 

昔からのことだけど曜はかなりのハイスペック少女だ。スポーツ万能だし裁縫も得意なのだ。

 

「特に千歌ちゃんが遅れてるね」

 

「あー、私かー!」

 

「千歌ちゃん、頑張ろう!」

 

「うん!…あれ?なんだろう…」

 

俺達の頭上には一台のヘリコプターが飛んでいた。なんかどっかで見覚えがあるような…

 

「小原家のヘリだね。たしか浦の星の新しい理事長もそこの人らしいよ」

 

「小原家!?」

 

「海藤くん、どうしたの?」

 

「……まさか」

 

小原家という名前を聞いて俺はある人のことを思い出した。そう、あの人のことだ。

 

「なんか…近づいてきてない?」

 

「気のせいだよ」

 

「だけど…」

 

千歌の言う通りだ。たしかにヘリは少しずつ近づいてきている。それも俺達のいる方向にだ。

 

「うわぁ!」

 

「うぉ?危ねぇ!」

 

「なになに?」

 

ヘリは俺達三人の頭上すれすれを通過してきた。その時に巻き起こった砂埃が俺達に襲いかかってくる。

 

やがてヘリは俺達の目の前に着陸した。そして俺達の目の前にある人物が現れた。あのブロンドヘアーは間違いなく…

 

「チャオ!」

 

「鞠莉さん!?」

 

─────────────────────

 

「「「「新理事長?」」」」

 

「イエース!でもあまり気にしないで気軽にマリーって呼んでほしいの!」

 

俺達は鞠莉さんに呼び出されて浦の星学院の理事長室に来ていた。俺達が聞いていた新理事長は鞠莉さんのことだったようだ。

 

「この学校の生徒兼理事長!カレー牛丼みたいなものね!」

 

「例えがよくわからないんですけど…」

 

「わからないの?」

 

「わからないに決まってますわ!」

 

俺達の後ろで静かに話を聞いていたダイヤさんが鞠莉さんに突っかかっていった。

 

「oh!ダイヤ久しぶり!こんなに大きくなって!」

 

「あまり触らないでもらえますか?」

 

「胸の方も相変わらずねぇ…」

 

「や…やかましいですわ!」

 

鞠莉さんはダイヤさんと知り合いでかなり仲が良いらしい。鞠莉さんがふざけてダイヤさんの胸を触るぐらいには…

 

「龍ちゃん…」

 

「な、なんだよ…別に見てねーからな。」

 

「私はまだなーんにも言ってないけど…」

 

「う…」

 

本当にじっとは見てないんだ。頼む信じてくれ。俺にそんな勇気はないから。

 

「まったく。一年の時に急にいなくなったと思ったら、こんな時に帰ってくるなんて…」

 

「シャイニー!!!」

 

「…人の話を聞かないのは相変わらずのようですわね?」

 

「イッツジョーク!」

 

鞠莉さんとダイヤさんは二人だけで話を進めてしまっている。ぶっちゃけ俺らがここにいる意味無くない?

 

「とにかく高校生が理事長だなんて冗談が過ぎますわ!」

 

「それはホントよ。ほら!」

 

鞠莉さんが手に持っているのは理事長の任命状だった。浦の星学院の印もあるので本当に鞠莉さんが理事長に認められたということなのだろう。

 

「鞠莉さん。そろそろ俺達がここに呼び出された意味を聞いてもいいですか?」

 

「あっ!忘れてたわ!」

 

「忘れてたんかい!」

 

どうやら俺達を呼んだ理由を忘れていたようだ。先に言っておく。大事な用事じゃなかったら俺は速攻で帰るぞ。

 

「実はこの学校にスクールアイドルが出来たって噂を聞いてね、ダイヤに邪魔されちゃ可哀想なので応援しに来たのです!」

 

「本当ですか!?」

 

「イエス!」

 

千歌は本当に嬉しそうにしていた。やっと自分達のことを認めてくれる人が現れたのだから当然だろう。それに俺も嬉しい。

 

「デビューライブはアキバドームを用意しておいたわよ!」

 

「き…奇跡だよ!」

 

アキバドームはスクールアイドルの甲子園的な場所らしい。いきなりそんな場所を使えるようにするなんて鞠莉さんは本当にすごい…

 

「イッツジョーク!」

 

「…そんな期待させるようなジョークは言わないでくださいよ…」

 

どうやらジョークだったようだ。千歌は心の底から期待していただけあって本当に残念そうにしていた。

 

「実際はあそこでやるのよ!ついてきて!」

 

俺達が鞠莉さんに連れてこられたのは学院の体育館だった。

 

「ここを満員にできたら、人数に関係なく部活として認めてあげるわ!」

 

鞠莉さんは俺達がこの体育館を満員にすることが出来ればスクールアイドル部として承認してくれるということだ。

 

「でも満員にできなければ?」

 

「その時は解散して貰うしかありませんね」

 

「そんなぁー…」

 

「たしかに、この体育館を満員にできるようじゃなければスクールアイドルとしてはやっていけないってことなのかな」

 

「そっか。やるしかないね!」

 

「そういうことね!健闘を祈るわ!」

 

鞠莉さんは理事長室に戻っていった。そして残った俺達はライブについて話し合っていた。

 

「体育館は結構広いからな。どうしたらいいかね?」

 

「うーん、そうだね」

 

「…ねぇ、海藤くん。この学校の全校生徒って何人ぐらいだっけ?」

 

「たしか…あ!そういうことか!」

 

「どういうこと?」

 

「考えてみたらすぐわかることだったな。この学校の全校生徒だけじゃこの体育館は満員にはならないってことだ!」

 

「まさか…鞠莉さんはそれをわかってて…」

 

それから俺達はお互いにアイデアを交換したが、いい考えは浮かばなかった。そのまま最終下校時間になり、俺達は学校を後にしたのだった。

 

To be continued…

 

 




これからしばらく投稿できなくなるので把握をよろしくお願いします。

それではまた。


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第16話 砂の記憶

こんにちは大天使です。
やっと執筆の時間が取れました。試験とか色々あって忙しかったので…

昨日の海未ちゃん限定勧誘はすごく良かったです。補助チケットを含めてUR二枚、SSRも一枚引くことが出来ました。本当に嬉しかったです。

それではどうぞ。



「どーすればいいんだろう…」

 

「でも鞠莉さんの言うこともわかる。そのくらい出来なきゃこれからもやっていけないってことでしょ?」

 

「そうなるな…」

 

部活が設立できなくて困っていた俺たちのもとに理事長になった鞠莉さんが来てスクールアイドル部としての設立がついに許可された!と思いきや部の設立のためには体育館を満員にしなければならないという条件を出されてしまった。

 

「でも、やっと曲が出来たばかりなんだよ!ダンスもまだまだだし…」

 

「じゃあ諦める?」

 

「諦めない!」

 

「ねぇ、どうしてそんな言い方をするの?」

 

「千歌ちゃんはこうすると昔から燃えるタイプなんだよ。そうでしょ?龍くん」

 

「そうだな。だから大丈夫だ!」

 

梨子は少し不安に思っていたようだけど、曜は千歌の性格をよく理解してやる気を出させていた。さすが幼馴染だな。

 

「あ、そうだ!」

 

─────────────────────

 

とりあえず俺達は千歌の家に集まってこれからの事について話し合っていたのだが…

 

「おかしい!完璧な作戦のはずだったのに!」

 

「千歌、その額の文字は何なんだ?」

 

「お姉ちゃんに書かれたの!酷くない?」

 

「一体何をしたの?」

 

千歌はプリンを使って美渡姉を買収しようとしたらしい。内容はともかくプリンで買収って…

 

「お姉さんの気持ちもわかるけどね…」

 

「曜ちゃんお姉ちゃん派?」

 

「美渡姉だっていきなりライブやるって言われても困るんじゃないのか?」

 

「そうだね…そういえば梨子ちゃんは?」

 

「便所に行くって言ってたぞ」

 

「わかった…ってあれ?梨子ちゃん、何やってんの?」

 

千歌の声がした方を見ると梨子が襖と手すりに手と足をかけて移動しようとしているように見えた。その下ではしいたけが気持ちよさそうに寝ている。これは…そういうことか。

 

「そういや梨子は犬が苦手だったよな?」

 

「そうだったの?でもそこまでする必要無いんじゃない?しいたけは大人しい子だから大丈夫だと思うんだけど…」

 

「そういえばお客を集めることも考えないとダメだよね。町内放送とかで呼びかけてみる?」

 

曜が縫い物をしながら言った。どうやって客を集めるのかも考えなくちゃならなかったな。

 

「あとは沼津の方にも行ってみようよ。スクールアイドルを好きな人が大勢いるかもしれないからね」

 

「沼津は高校も多いからな」

 

「それより二人とも…早く助けて…」

 

「「あ」」

 

梨子の体は確実に限界に近づいていた。少しずつ手と足のかかりが悪くなり…

 

「きゃ!」

 

ついにしいたけ目掛けて落ちてしまった。細かいことは…説明するのはやめよう…

 

─────────────────────

 

数日後、俺達はお客さんを集めるために沼津駅の駅前に来ていた。ここなら色々な人が利用するから宣伝や客集めもしやすいと思う。

 

「あの!お願いします!」

 

「今度ライブをやります!」

 

人は多いけどスクールアイドルに興味がある人は少なかったようで千歌達が持っているチラシはなかなか減らなかった。俺はというと…

 

「あの…何を配っているんですか?」

 

「今度あの子達が学校でライブをやるのでその宣伝ですね。よかったら持っていきますか?」

 

「はい!」

 

「私にもください!」

 

「私にも!」

 

よくわからないけど学校帰りの人達が俺の近くへ何人もやって来た。男性もちらほらいるけど…なんか女子ばっかりだ。正直気まずい…

 

「海藤くんすごいね…」

 

「龍ちゃんってチラシ配るの上手いね!」

 

「でもなんか複雑…」

 

千歌達は俺の方に様々な視線をぶつけてきていた。頼む、少し手伝ってくれ…

 

「もっとあっちに行こうよ。こっちは全部龍くんに任せればいいし…」

 

「そうね…」

 

「あの…ちょっと皆さん?どちらへ?」

 

「龍くん!こっちは任せた!」

 

「おい!頼む、行かないでくれ!」

 

そのまま千歌達は別の場所へ行ってしまった。取り残された俺は…

 

「すいませーん。私にも一枚ください!」

 

「ちょっと!私が先だって!」

 

「私よ!」

 

「ハハハ…」

 

さっきよりも多くなった人達(殆ど女性)にチラシを配ったりなぜか写真を撮られたりと大忙しだった。

 

「何やってんだお前」

 

「あ!?」

 

「あ!?じゃねーよ!ちょうどお前を見つけたから話しかけただけじゃねーか!」

 

「…ってなんだ孝至かよ」

 

「俺らもいるけどな」

 

急に俺に話しかけてきたのは孝至達だった。つーかなんでこんな所に…

 

「チラシのこれ、高海達だよな?学校でなんかやるのか?」

 

「ああ、学校の体育館でライブやるんだよ。お前らもよかったら来てくれよ」

 

「りょーかい。それよりもありがとな…」

 

「なんだよ急に。気持ちわりぃな」

 

「るせー!部活に戻ってきてくれてありがとうって言ってんだよ!」

 

「あーあれか。こちらこそ」

 

よくわからないけど孝至達に礼を言われて何なんだと思ったけどそういうことだったのか。たまには感謝されるのも悪くないかな…

 

「俺達の頼みを聞き入れてくれたんだ。お前にはいつか恩返ししたいよ」

 

「んなもんいらねーよ。むしろこっちがお前らに礼をしたいぐらいだわ。そんじゃチラシ配りの続きやんなきゃいけねーから。待たな!」

 

「おう」

 

「さてと…なんかまた人増えてね?」

 

俺の戦いはまだまだ続きそうだった。

 

─────────────────────

 

「よし!私達も頑張ろう!」

 

「こういうのは気持ちが大事だよ!すみません。今度ライブをやるのでよかったら来てください!」

 

曜ちゃんは持ち前の明るさとコミュ力で次々とチラシを配っていった。

 

「よし!私だって!…ライブやります。是非!」

 

「あ、あの…」

 

「是非!」

 

「は、はい!どうも…」

 

「勝ったッ!チラシ配りこれにて終了!」

 

「勝負してどうするの?」

 

少し梨子ちゃんに怒られちゃった。なかなか上手くいかないな…

 

「次!梨子ちゃんだよ。」

 

「わかってるよ…こういうの苦手なのに…あの!ライブやります!来てね!」

 

「何やってんの?」

 

「練習よ!」

 

なんか…梨子ちゃんは広告に向かって宣伝をしていた。これじゃ意味無いのに…

 

「練習してる暇なんてないの!ほら!行ってきて!」

 

「えっ!千歌ちゃ…すみません!」

 

「……………」

 

梨子ちゃんはサングラスとコートを身につけた女性とぶつかりそうになってしまった。

 

「あの…お願いします!」

 

「……どうも。」

 

梨子ちゃんもチラシ配りに成功したみたい。それよりもあのサングラスとコートの人…どこかで見たことあるような…

 

「よし、お願いしまーす!あ、おーい!花丸ちゃん!」

 

「こんにちは!」

 

私の前に風呂敷を背負った花丸ちゃんが現れた。後ろにはルビィちゃんもいる。

 

「はい!ライブやるの!来てね!」

 

「ライブ?」

 

「やるんですか!?」

 

「ルビィちゃんも興味あるの?」

 

「あ…はい!」

 

「絶対満員にしたいんだ。だから来てね!」

 

「あの…」

 

「どうしたの?」

 

「グループ名はなんですか?」

 

「グループ名…?あぁ!!」

 

すっかり大事なことを忘れていた。忙しくてそこまで頭が回らなかったんだ!私としたことが…

 

「じゃあね!二人とも!」

 

そんなこんなでチラシ配りの初日は成功とは言えなかった…

 

─────────────────────

 

「グループ名ねぇ…」

 

「まさか決めてなかったなんて…」

 

「俺もすっかり忘れてたわ」

 

俺も含めて全員忘れていたようだ。忙しかったから仕方ないっちゃ仕方ないけど…

 

「とにかく早く決めなきゃね」

 

「学校の名前が入ってた方がいいよね。浦の星スクールガールズとか…」

 

「まんまじゃない…」

 

「じゃあ梨子が決めたら?都会の最先端の言葉とかないのか?」

 

「じゃあスリーマーメイドとか?」

 

梨子が自分のアイデアを発表してみたが…千歌も曜も完全に聞かなかったことにしているな。

 

「制服少女隊なんてどう?」

 

「ないかな…」

 

「えぇ!」

 

「海藤くんはどう?」

 

「うーん、シートロー…」

 

「龍ちゃんはダメだね!昔からネーミングセンス無いし!」

 

「オイ!」

 

それからは練習そっちのけでグループ名を考えていたのだが、なかなかいいアイデアが浮かばなかった。

 

「こういうのは言い出しっぺが決めるべきなんじゃないのか?」

 

「賛成!」

 

「うわ…戻ってきた…」

 

「じゃあ制服少女隊でいいの?」

 

「スリーマーメイドよりはいいな…」

 

「それはなし!」

 

「あれ?」

 

千歌の視線の方に目を向けると砂浜に一つの名前が書いてあるのが見えた。

 

「これなんて読むの?」

 

「アキュア?」

 

「アクオスじゃねーか?」

 

「もしかして…アクア?」

 

多分アクアと読むのだろう。誰もこんな名前は書いてないはずだけど…

 

「アクア…水かぁ。なんかよくない?グループ名に!」

 

「これを?誰が書いたかわからないのに?」

 

「だからいいんだよ!名前を決めようとしている時にこの名前に出会った。それってすごく大切だと思うの!だからこの出会いに感謝して…」

 

「そうだなぁ」

 

「このままじゃいつまでたっても決まらなそうだしね」

 

「よし!私達は今日からAqoursだ!」

 

もしかしたらこのAqoursという名前は海が付けてくれたのかもしれない。そうならばこの名前は大切にしなければならないなと俺達は思った。

 

To be continued…

 




読んでくださりありがとうございました!
感想とかいつでもお待ちしてます。

それではまた。


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第17話 動き始めた心

こんにちは大天使です。
いつか恋愛の話を入れようと思っていたのですが全く進まずにここまで来てしまいました。

ということで今回は少しストーリーから外れます。よろしくお願いします。



私が彼……海藤くんのことを意識し始めたのは…

 

 

 

彼との出会いは本当に偶然でした。海で溺れそうになったところを助けてもらって…今思うと私はその時から彼のことを意識していたのかもしれません。私達のことをいつも暖かく見守ってくれている海藤くん。何だかんだ言ってお人好しで困っている人を放っておけない海藤くん。

 

 

そんな優しい海藤くんだから私はいつの間にか彼に惹かれてしまっていたのかも…

 

 

私はこの気持ちを今すぐにでも彼に伝えたい。だけど今の関係が壊れてしまうかもしれないことが怖くて伝えることが出来ません。私は一体どうすればいいんだろう…

 

─────────────────────

 

グループの名前が決まった数日後、私達はAqoursのこれからの活動についてを話し合うためにとある喫茶店に集まっていました。ちなみに海藤くんは今日は部活でいません。

 

「チラシ配りはまた再開するとして、他はどうやって宣伝すればいいと思う?」

 

「町内放送で宣伝をするのもいいよね。許可取らないといけないけど」

 

千歌ちゃんと曜ちゃんの話は耳には入っていたけど、頭には少しも入ってきていなかった。

 

「梨子ちゃん!梨子ちゃんってば!」

 

「ひゃい!?」

 

「今の話聞いてた?」

 

「あ…頭には入ってなかった。」

 

「何か悩み事でもあるの?」

 

「ま…まぁ…」

 

今日はいつも自分の時間を割いて練習や話し合いに来てくれる彼がいない…今なら二人に相談が出来るかもしれない。

 

「ねぇ…千歌ちゃん、曜ちゃん。少しいいかな?」

 

「なになに?」

 

「どうしたの?」

 

「その…二人は海藤くんのことをどう思っているの?」

 

私は勇気を出して聞いてみた。二人が海藤くんのことをどう思っているのかを。

 

「龍ちゃんのこと?おバカさんだけど、優しくてバスケが上手くてとってもいい子だよ!」

 

「あとは昔からお人好し。困っている人を放っておけないし、自分のことなんかすぐに後回しにしちゃうし」

 

流石幼馴染。二人は海藤くんのことをとてもよく理解している。少し妬けちゃうかな。

 

「千歌ちゃんは知ってると思うけど海藤くんは私が海で溺れそうになったところを助けてくれたの。私はその時からずっと海藤くんのことが…」

 

「梨子ちゃん。それは恋だよね?」

 

「それはわかっているよ。だけど…」

 

「どうやって気持ちを伝えるか…なのかな?」

 

「うん…」

 

曜ちゃんは何だか鋭かった。まるで私の心を見抜いているみたいに。

 

「私はこれからどうすればいいの?このままじゃ何もわからないの。だってこんなに誰かを好きになる気持ちは初めてだし…」

 

「それは言えないね。その答えを見つけることが出来るのは梨子ちゃんだけなんだから。大丈夫!梨子ちゃんなら出来るよ!」

 

曜ちゃんは笑顔で私にそう言ってくれた。曜ちゃんの笑顔はとても優しくて安心した。

 

「曜ちゃん…ありがとう。少し気が楽になったよ!」

 

「どういたしまして。私も梨子ちゃんの力になれてよかったよ!」

 

「私は恋愛のことはよくわからないけど、梨子ちゃんのことを応援してるよ!だって梨子ちゃんは私の大切な友達なんだから!」

 

「千歌ちゃんもありがとう」

 

やっぱりこの二人に相談してよかったな。そう思いながら私はお茶を一口飲む。

 

「そういえばさ~梨子ちゃんは龍ちゃんのどこを好きになったの~?」

 

「んんっ!?」

 

「私も気になる!」

 

私はびっくりして口に含んでいたお茶を吹き出しそうになりました。私が海藤くんのどこを好きになったかなんて…

 

「さぁ、言うんだ!梨子ちゃん!」

 

「言わなきゃダメなの!?」

 

「相談に乗ってあげたでしょ?その代わり!」

 

二人ともすごい笑顔で私の方を見ている。これって言わなくちゃいけない流れじゃ…

 

「やっぱり誰に対しても優しいところかな?あとは海藤くんの包み込まれるような暖かさが……って曜ちゃん!?」

 

「聞いちゃいましたねぇ~」

 

「もうお腹いっぱいだよ~ご馳走様でした!」

 

「私はおかわり欲しいけどなぁ~」

 

千歌ちゃんと曜ちゃんは私の言ったことを全て録音していた。すごく恥ずかしいんだけど…

 

「今すぐに消して!お願い!みかんあげるから!」

 

「これを消せば…本当に私にみかんをくれるというのか?」

 

「約束するよ…だから早く消して!」

 

「だが断る」

 

「消してってば!」

 

「フッ…この渡辺曜が最も好きなことの一つは…」

 

「曜ちゃん!」

 

「ちょっ!最後まで言わせてよ!」

 

この後ちゃんと削除してもらったけど、このことで弱みを握られるんだろうなぁ…

 

─────────────────────

 

話し合いを終えて家に帰った私は曜ちゃんからのアドバイスを思い出していた。

 

「これからどうすればいいのかは教えられないって言ったけど一つだけ。それは無理に付き合い方を変えないってことだね。龍くんは梨子ちゃんのことを嫌っているわけじゃないんでしょ?だったらそのままでも大丈夫!」

 

私は今まで何かを変えることばかり考えてました。確かに変わることも大事。だけど無理に変えなくてもいいことだってあることを曜ちゃんは私に教えてくれました。

 

もう少したったら私のこの気持ちを貴方に伝えます。受け入れてもらえなくても構わない。私は貴方に出会えたことでこんなに成長することが出来たんだから。

 

To be continued…

 




というわけでヒロインについてはずっと悩んでいたのですが、梨子ということにしました!理由は自分の中で何となくですが、彼女がヒロインというイメージが出来たからです。特に他意はない…はずです。

それではまた。


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第18話 初ライブまでの道

こんにちは大天使です。
前回はあんな感じでしたけど今回はいつもの調子に戻します。続きはすぐにやりますので



「……何やってんだお前ら。」

 

「いや…そのね…町内放送で宣伝を…」

 

「ちゃんと話すことを考えてから放送すればよかったんじゃないか?俺は面白かったけどよ」

 

「面白かったじゃダメでしょ…」

 

「だってお前らなんて言ったんだよ?」

 

「普通に浦の星学院スクールアイドルのAqoursです。土曜日に学校でライブをやるので是非来てくださいって言ったよ」

 

「その他にも色々やってたけどな。ダイヤさんがあの放送を聞いてたらどう思うかね」

 

「絶対怒られるって…」

 

「でも私達はまだ学校から正式な許可を貰っていなかったし…」

 

「それがあったか。まぁ千歌の言った通りでよかったんじゃないか?他になんて説明すればいいのかもわからないしよ」

 

「それもそうだね!」

 

あの放送の評判はよくわからないが、効果があったかどうかはすぐにわかることだ。

 

─────────────────────

 

「お願いします!」

 

「ライブやります!」

 

翌日、俺達は一旦中止していたチラシ配りを再開していた。

 

「全速前進…」

 

「「「「「ヨーソロー!!!」」」」」

 

「曜ちゃんすごいね」

 

「流石だな」

 

曜は既にファンを獲得している様子だった。曜だけではなく千歌や梨子にも少しではあるが、応援をしてくれる人が増えていることがわかった。

 

「少しずつだけど結果出てきてるんじゃないか?応援してくれる人も増えてきてるし」

 

「ううん。まだまだだよ。もっともっと頑張って私達のことを知ってもらわなくっちゃ」

 

「そうね」

 

放送の効果は少なからずあったようで今日のチラシ配りはスムーズに進んでいった。

 

 

 

一時間後、チラシ配りを終えた俺達は千歌の家の旅館でダンスや曲の確認をしていた。

 

「ここでステップするよりこっちで動いた方がいいと思うよ!」

 

「だったらこの場所も…」

 

ライブを数日後に控えているのもあり、みんな気合が入っていた。

 

「俺もライブの準備頑張んないとな。絶対に成功させてやるんだからな」

 

「千歌ちゃんは友達にライブの手伝いを頼んでたよ。照明とか龍くんだけじゃ大変でしょ?」

 

「それはありがたいな!サンキュー千歌!」

 

千歌は俺が準備で大変な思いをすることも考えて自分の友達に手伝いを頼んでおいてくれていた。俺はその事に感謝して千歌に礼を言った。しかし千歌からの返事はなかった。

 

「千歌ちゃん!」

 

「おーい!千歌!」

 

千歌は机に突っ伏して気持ちよさそうに眠っていた。最近は練習で忙しくて疲れていたのだから無理はないか。

 

「今日はここまでにしないか?もう時間も遅いし。旅館の人にも迷惑がかかるし」

 

「そうね」

 

「でも終バスないし…」

 

「そうだったか…しゃーねー!俺のバイクで送ってやるよ!」

 

「それじゃ龍くんの親御さんにも迷惑がかかるよ…」

 

「いいよ。うちの親は帰り遅いとかそういうことは気にしないから」

 

「じゃあ送ってもらおうかな?」

 

「お安い御用だよ」

 

俺は曜を座席の後ろに乗せて、彼女の家まですぐに向かって行った。

 

─────────────────────

 

曜を家まで送っていった後、俺も自分の家に帰るために海沿いをバイクで走っていた。

 

「あれ?志満姉?」

 

「やっと戻って来たね」

 

俺は帰り道の途中で志満姉に会った。志満姉は縁に腰掛けながら海を見つめていた。

 

「何でこんなところに?」

 

「龍吾くんが心配になっちゃって…」

 

「こんな時間に女性が一人で歩いてる方が心配しますよ!」

 

「ありがとう。でも心配しなくても大丈夫よ。だって家のすぐ前だし」

 

「そうでしたね」

 

「さっき龍くんが送っていく前に曜ちゃんと少し話をしたの。千歌ちゃんがここまでスクールアイドルにのめり込むとは思わなかったってこと」

 

「千歌が…」

 

「ほら、あの子飽きっぽいところあるでしょ?」

 

「確かに…」

 

俺は苦笑いをしながら答えた。

 

「ライブは上手くいきそう?」

 

「まだわかりませんよ。でも…」

 

「でも?」

 

「あいつらなら絶対に出来ます。俺はそう信じていますから。」

 

あいつら…千歌に曜、梨子なら絶対にやることが出来る。心の底からそう信じているから、俺はここまであいつらのサポートをし続けることが出来たんだ。

 

「あの子達のことが本当に好きなのね。いや、少し間違いがあったかしら?あの子達じゃなくてあの子(・・・)が大好きなのね。」

 

「別にそういう訳じゃ…それにその言い方じゃ俺はあいつ以外はどうでもよかったってことになりますよ」

 

「それはごめんなさいね。でも龍吾くん…そろそろ自分に正直になってもいいのよ」

 

やっぱりこの人に隠し事は駄目だ。俺の思っていることが全て見通されてしまっている。

 

「まぁ…嫌いって言えば嘘になりますけど…」

 

「ふふ…そういうことにしてあげる」

 

「は、はぁ…」

 

「あなたは思い悩んでいるんでしょ?千歌ちゃん達には隠せても私には隠せないよ」

 

「まぁ…そんな感じになりますね。内容は詳しくは言えないんですけどね」

 

「その事も既にお見通しよ。でも安心していいわよ。この事は誰にも言わないから。龍吾くんが自分からあの子に伝えるまではね」

 

「そんなにバレバレだったんですか?自分ではよくわからないんですけど…」

 

「それは微妙だわ」

 

「そうですか」

 

どうやら志満姉が鋭いから俺の思っていることに気づいたらしい。普通の人は気づかないレベルらしく俺は少し安心した。

 

「龍吾くんはあの子が迷惑すると思っているから言ってないんでしょ?私から見たらあの子も龍吾くんのことをとても良く思っている気がするから、迷惑することなんてないと思うけどね」

 

とにかく志満姉には感謝しなければな。彼女と話したおかげで俺は気持ちがだいぶ楽になったような気がする。

 

「志満姉…ありがとうございます」

 

「いいのよ。それよりも昔みたいにお姉ちゃん!って甘えてこないのかしら?最近あんまり来なくなっちゃってたからお姉ちゃん寂しいよ…」

 

「いや、さすがに出来ませんって…」

 

その後は志満姉の他愛のない会話をしてからお互いの家に帰った。とにかく今はライブを成功させることを第一に考えなければ。あのこと(・・・・)は…ライブが終わってからでも遅くはないからな。

 

To be continued…

 




あと二回でアニメの三話を終わらせられるようにしたいと思います。

それではまた。


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第19話 初ライブ。そして…

こんにちは大天使です。今回でアニメの第三話は終わります。そして…



ライブ当日、天気は生憎の雨だった。

 

「なんか昨日から嫌な空模様だと思ったらよ。今はまだいいけどライブが始まる時間に本降りになったら色々と大変だな」

 

俺は朝早くから学校へ行き、千歌の友達とライブのステージの準備をしていた。

 

「チャオ!調子はどうかしら?」

 

「鞠莉さん…」

 

会場設営中の体育館に鞠莉さんがやってきた。鞠莉さんは学校の理事長として、このライブを最後まで見届けることが自分の役目であると前々から言っていた。

 

「まぁまぁですね。悪くは無いと思いますが…」

 

「そうね。期待しているわ」

 

「海藤くん。そろそろ千歌ちゃん達の所に行ってあげてよ。続きは私達がやっておくから」

 

「ありがとう、そうさせてもらうよ」

 

俺は千歌の友達三人組に礼を言って千歌達が準備をしている部屋に向かった。そしてドアの前に来た俺は軽くノックをして部屋に入った。

 

「俺だ。入るぞ」

 

「あ!龍ちゃん!」

 

「龍くん!」

 

「海藤くん…」

 

既に千歌達はステージ衣装に着替え終わっていて自分達の出番を待っていた。三人がこの衣装を着ているのを見たのは初めてだったが、彼女達それぞれのイメージにピッタリでとても似合っている。三人とも蝶のように綺麗だった。

 

「本当に曜はすごいな。こんなに綺麗な衣装を作れるとは思わなかったよ」

 

「へへん。もっと褒めるがいい!」

 

「お前ら…緊張してないか?」

 

「私達は大丈夫!もしかして…龍ちゃんは私達が緊張しまくってると思ってたの?そんなわけないよー。楽しみ過ぎるぐらいだし!」

 

「そんなことはわかってるよ。何年お前らと一緒に過ごしていると思ってるんだ?それじゃ、俺は準備に戻るから………頑張れよ」

 

「うん!」

 

「任せて!」

 

「龍くんも準備頑張れ!」

 

心配する必要もなかった。あの三人は大丈夫だ。俺はそう確信し、会場の準備を再開した。

 

「あれ?戻ってきちゃったの?」

 

「まだ時間もあるしな。あとお前らはあの三人を励ましてほしかったから俺を千歌達の元へ行かせたんだろ?」

 

「そうだよ。わかってたんだね」

 

「あいつらなら全然大丈夫だ。だから心配なんかしなくていいんだ」

 

「そっか。それは良かった」

 

彼女達も千歌達のことを心配してくれたのだろう。千歌は本当にいい友達を持ったな。

 

「ん?なんでこんなところにこれが?」

 

俺は入口の近くに謎の機械が置いてあるのを見つけた。見た感じモーターみたいだけど…

 

「あ、こんにちは」

 

「おお、確か…花丸ちゃんだったよね?」

 

「はい。ルビィちゃんもいるずら」

 

「ど…どうも…」

 

「そうか。来てくれてありがとな」

 

花丸ちゃんやルビィちゃん以外にもお客は入って来たが…俺と鞠莉さんを合わせても10人に満たなかった。

 

「そろそろ時間よ!幕を開けて!」

 

ステージの幕が上がり、千歌達がステージに立つ。一瞬悲しそうな目をしたように見えたが、来てくれた僅かな客を楽しませようとライブを実行した。

 

何度も何度も練習をしてきたのもあって彼女達の歌もダンスも素晴らしかった。俺を含めて全員がステージに夢中になっていた。そして、曲はサビに入る…

 

「えっ…」

 

「なんだ?」

 

その時、外に雷が落ちた。その影響で体育館の証明が全て消えてライブは中断してしまった。

 

「クソっ…復旧できるか?」

 

「ダメ…全然点かない…」

 

俺はステージの三人の様子を見た。千歌は照明が落ちても歌い続けていたが、その声は震えていた。曜と梨子も同じだ。もう見てられねぇ…

 

「ここまでかしら…」

 

鞠莉さんは少し残念そうな顔をしてステージを見つめていた。それは鞠莉さんだけではない。花丸ちゃんもルビィちゃんも。

 

「クソッ……ん?」

 

その刹那、俺は一つの物の存在を思い出した。入口近くの不自然な場所に何故か置いてあった物のことを。

 

「それだ!」

 

「リューゴ?どうしたの?」

 

「ちょっと行ってきます!」

 

「どこに行くずら?」

 

「すぐ戻る!」

 

俺はすぐに入口の近くに行った。しかしそこにあった筈の機械はなかった。代わりに謎のコードが一つの部屋に伸びていっているのが見えた。俺はコードの後を辿ってその部屋に入った。

 

「あなたは…」

 

「よう!」

 

「ダイヤさん…それに孝至達?」

 

その部屋にはダイヤさんと孝至達がいた。何故こんなところに…

 

「それは…」

 

ダイヤさんの手に発電機があった。さっき置いてあったのはこれだったのか。

 

「ダイヤさん…もしかして…」

 

「勘違いしないでください。私はただ、来てくださったお客様にこんな姿をお見せしたくないだけですわ」

 

「ほら、龍吾も生徒会長を手伝ってくれ」

 

「お、おう…」

 

俺とダイヤさんと孝至達で発電機を繋いで電源を復帰させた。すぐに照明が点き、俺はダイヤさん達に礼を言って体育館に戻ろうとした。

 

「おい、龍吾」

 

「なんだ?今忙しい…」

 

「あれ、見てみろって」

 

孝至が言う方を見てみるとそこには車が道路にはみ出るぐらいに渋滞していた。

 

「これは…」

 

「まだ終わってない。そうだろ?」

 

「………ありがとな!」

 

俺はすぐに体育館に戻った。そこには体育館から溢れるほどに人が集まっていた。

 

「バカ千歌!あんた開始時間間違えたでしょ!」

 

遠くから美渡姉の大きな声が聞こえる。あいつは開始時間を間違えていたのか。全く…こんなオチがあるのかよ…

 

─────────────────────

 

「お前ら…お疲れ様!」

 

「龍ちゃん…怖かったよ!」

 

「全く…お前にはいつも驚かされるよ…」

 

結果的にライブは大成功だった。ダイヤさんからの評価は厳しい物だったけど、最初はからこれだけ出来れば上出来だろう。

 

「龍くんもお疲れ様!」

 

「曜…ありがとな!ゆっくり休めよ!」

 

本来だったらこれから会場の後片付けがあるのだが、千歌の友達が代わりにやってくれると言ってくれた。俺も疲れていたからとてもありがたかった。後であの三人にも礼を言わなければな。

 

「ねぇ…海藤くん。」

 

「どうしたんだ?梨子…」

 

「ちょっと来てもらえるかしら…二人っきりになりたくて…」

 

「俺は構わないけどあいつらは?」

 

「許可は貰ったから大丈夫だよ!」

 

─────────────────────

 

俺と梨子は二人っきりで浜辺に来ていた。ライブからかなりの時間が経っており、夕日はもう沈みかけていた。

 

「懐かしいね…この場所」

 

「そうだ。ここだったよな、俺と梨子が初めて出会ったのは」

 

ここは俺と梨子が初めて出会った場所だった。今思うとあれからあっという間だったな…

 

「ライブ…成功してよかったな」

 

「うん。海藤くんのおかげだよ。ありがとう」

 

「いや、俺は何もしていない…結局また孝至達に借りを作っちまったから。それに成功したのはお前らの力じゃないか」

 

「確かにダイヤさん達が復旧作業をしてくれたからライブを続けることが出来た。でもね、海藤くんはもっと沢山の仕事とかやってくれたでしょ?貴方のサポートが無ければ私達がここまでやることは出来なかったと思うの」

 

「そっか。頑張った甲斐があったな」

 

「それに海藤くんだって大事なAqoursメンバーなんだから」

 

梨子は本当に優しい。俺をAqoursのメンバーの一員だと言ってくれたことが純粋に嬉しかった。

 

「ねぇ…海藤くん///」

 

「どうした?」

 

「貴方に伝えなければならないことがあるの…」

 

梨子は顔や頬だけでなく耳まで赤くしていた。そんな彼女の様子を見て俺は少しドキッとした。胸の鼓動が早くなっているのを感じる。俺はその事を梨子に悟られないようにしながら彼女の次の言葉を待っていた。

 

「私は…初めて出会った時からずっと…海藤くん、貴方のことが……好きです///」

 

─────────────────────

 

俺には梨子の言ったことが理解出来なかった。彼女が可笑しいことを言っている訳では無い。俺の頭が追いつかなかったのだ。

 

「えっ…ええ!」

 

「迷惑だったかしら…?」

 

「いや!そんなことはない!」

 

今までずっと隠し通してきたけど、俺は梨子のことが好きだった。気づいたのは最近だけど、多分出会った時から…

 

あの恥ずかしがり屋の梨子が勇気を出して俺に告白をしてくれた。俺も自分の気持ちを包み隠さず彼女に伝えよう…

 

「梨子…俺もお前のことが好きだ。信じられないかもしんないけど、これが俺の本心だ」

 

「えっ…嘘///」

 

「嘘を言っているように見えるか?」

 

後から言うことは何だって偽ることが出来る。だが俺は嘘は一つもつかなかった。これが俺の正直な気持ちだ。

 

「梨子………俺と付き合ってください」

 

「……………はい///」

 

俺は梨子のことを思いっきり抱きしめた。梨子も俺のことを優しく抱きしめ返してくれた。

 

「海藤くん…もう離さないでね…」

 

「例え梨子が俺のことを嫌いになってたとしても俺は絶対にお前を離したりはしない。誓うよ」

 

「じゃあ///キス…してくれる?海藤くんが私のことを好きっていう気持ちを全部私にぶつけて………一つ残さず受け止めるから///」

 

「えっ///」

 

「お願い…」

 

「いや…ここではちょっと…」

 

口では無理だとか言っていたけど、俺の足は自然と梨子のいる方向へと向かっていた。もうやることは一つしかない。

 

「大好きだよ。梨子」

 

「私も…海藤くんのことが大好き///」

 

「梨子…」

 

「海藤くん…」

 

二人の影は少しずつ、ゆっくりと近づき…そして静かに重なり合った。

 

この瞬間、二人の心は一つになった。これからはこの二人で新たな物語を築いていくのだろう。

 

To be continued…

 




あと二話で終わらせるつもりでしたが二話に分けると色々と不都合が生じるので一つにまとめました。

それではまた。


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外伝
外伝 金剛石の輝き


こんにちは大天使です。

これは本編よりも大分後の話になりますが、
外伝なので気楽に見ていただけると嬉しいです。

改めてダイヤさん誕生日おめでとう!


 

1月1日午前9時。俺はとある場所へ向かっていた。

 

(まずい、完全に遅刻した!きっと怒ってるだろうな…)

 

待ち合わせ場所まで全速力で走っていくとすでに彼女はそこにいた。

 

「海藤さん!遅いですわよ!」

 

「すみません…」

 

「もう!どれだけ待ったと思ってるのですか?」

 

「あれ?ダイヤさん。まだ待ち合わせ時間から五分しかたってませんけど…どういうことですか?」

 

「そっ//それはですね…そ…そうです!少し早くついてしまっただけですわ!」

 

「そうですか。では行きましょう」

 

「はい!」

 

 

────────────────────────

 

 

(無理ですわ…言える訳ないですわ…海藤さんとのデートが楽しみだからといって三十分も早くついてしまったことなんて!)

 

こんなことを考えていたダイヤさんであった。

 

(それにしても…お誘いを断わられなくて本当によかったですわ)

 

私、黒澤ダイヤは海藤さんとお付き合いをしているわけではありません。いずれはそうなって欲しいと願っているのですが…

 

何故この二人がデートをすることになったのか。時は数日前に遡る。

 

 

────────────────────────

 

 

(リラックスですわ…緊張していることを彼に悟られたら大変ですわ…)

 

「も、もしもし…海藤さんですか?もしよかったら元旦の日に一緒に初詣に行きたいのですが…」

 

「元旦の日ですか?予定は何もないので大丈夫ですよ」

 

「ほ…本当ですか?ありがとうございます!」

 

「では、元旦の日に会いましょう!楽しみにしていますよ!」

 

彼はそう言って電話を切った。ダイヤはしばらくの間受話器を置くことが出来なった。

 

(やりましたわ!海藤さんとのデートですわ!)

 

それからというもの何をするにも上機嫌なダイヤのことが気になったのかルビィがダイヤに尋ねてきた。

 

「~♪」

 

「お姉ちゃん?なんだか嬉しそうだね?何かいいことでもあったの?」

 

「まぁ そんな感じですわね♪」

 

「もしかして…」

 

ルビィはダイヤの元へ駆け寄ると小声で言った。

 

「もしかして海藤先輩とデート?」

 

それを聞いたダイヤの顔は一瞬で真っ赤になった。

 

「なっ//なななななんでそれが…」

 

「だってお姉ちゃん、海藤先輩の話をするときはいつも嬉しそうなんだもん♪」

 

(ふ…不覚ですわ…まさか妹に気づかれているなんて)

 

「大丈夫だよお姉ちゃん。デートの日の服は私が選んであげるね!とびっきり可愛いの!」

 

「うふふ…期待していますわよ」

 

ルビィは当日の服装に浴衣を選んだ。何故かと聞いてみると

 

「お姉ちゃんには浴衣が一番似合うからね!それに今日はお姉ちゃんにとって特別な日でしょ?」

 

「…ありがとうルビィ。本当に貴女は自慢の妹ですわ」

 

「えへへ…ありがとうお姉ちゃん!」

 

「それでは行ってきますわ!」

 

────────────────────────

 

「ダイヤさん」

 

「何ですか?海藤さん?」

 

「その…今日の服装…とても似合ってますよ//」

 

「あ、ありがとうございます//」

 

本当に海藤さんにはドキドキさせられっぱなしですわ。少し悔しいのでやり返してみることにしました。

 

「あの…海藤さん//」

 

「どうかしましたか?」

 

「その…手を繋ぎたいです…なんて//」

 

海藤さんの顔を見てみると今の私と同じぐらい顔を真っ赤にしていました。

 

「勿論…いいですよ//」

 

海藤さんの手が私の手に重なる…そして伝わってくる彼の手の温もり…それからはお互いに無言だった。やがて 神社に到着すると…

 

「海藤さん。御神籤を引きに行きませんか?」

 

「いいですよ」

 

「こっ…ここの神社の御神籤は…その…恋愛運を占ってくれるのですよ」

 

「そうなんですか!知らなかったですね」

 

「折角なので…引いてみませんか?」

 

「そっ…そうですね…俺も少し気になりますし…」

 

二人は恋愛の御神籤を引きに行った。勿論、手は繋いだままだったので周りからの目線がすごかったとかすごくなかったとか…

 

「海藤さん!私、大吉でしたよ!」

 

「よかったですね!俺は小吉でしたよ…」

 

「すみません…一人ではしゃいでしまって…」

 

「ダイヤさんってこういうのに興味のあったんですね。誰か好きな人でもいるんですか?」

 

海藤さんはとんでもないことを聞いてきました。そんなの言える訳ないじゃないですか…だって私の好きな人は…貴方なのですから…

 

「い…いませんわ…少し気になっただけですわ」

 

「そうなんですか…」

 

「そういう海藤さんは好きな人がいるんですか?」

 

「俺は…いますよ//」

 

「そ…そうですか」

 

海藤さんの好きな人…少しだけ気になりましたが聞かないでおきました。自分のことは話さないのに人のだけ聞くなんてずるすぎますし…聞いてしまうのが怖かったのです。

 

「ダイヤさん。少し移動しませんか?」

 

「はい?いいですわよ」

 

私には海藤さんの考えはわかりませんでしたが、彼からのお願いは断る訳がありません。

 

「それでは、行きましょうか」

 

「は…はい!」

 

私達は彼の目的の場所へと向かって歩き出しました。

 

 

──────────────────────

 

 

歩くこと五分、私と彼がいるのはいつも練習で使っている浦の星学院の屋上だった。

 

「やっと二人っきりになれましたね」

 

「……そ…そうですね//」

 

今日の海藤さんはいつもと違いますわ…なんか…いつもより格好いい気がします…そして、彼は私の方へ向き直って言った。

 

「ダイヤさん。誕生日おめでとうございます!」

 

正直、私は驚きましたわ。彼が私の誕生日を覚えているわけがないと思っていましたから…

 

「あ…ありがとうございます//」

 

「あの…これ…受け取って下さい//」

 

彼が差し出してきたのはダイヤのネックレスだった。

丁寧にカットされたダイヤの輝きはとても美しかった。

 

「あなたへのプレゼントですよ。ダイヤさん…いつもお世話になっています。本当にありがとうございます!」

 

「嬉しいです…海藤さん…ありがとうございます!」

 

私は彼に抱きつきながら言った。嬉しいのに涙が止まらない…きっとこれが本当の幸せというものなのだろうか。

 

「ダイヤさん…これからもよろしくお願いします!」

 

海藤さん…こちらこそよろしくお願いしますわ。今はまだ伝えられないけどいつかはこの気持ちを貴方に正直に伝えます。

 

それまで待っていてくださいね…

 

To be continued…

 

 




これからも誰かの誕生日にはこのような外伝を投稿しようと思います。遅刻はしないように頑張ります!

それではまた。


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外伝 Decades for years

こんにちは、大天使です。
この話の注意点です。

①浦の星学院は存続している。
②それぞれの進路は作者の想像。
③少しキャラ崩壊あり。
④全員未婚者。彼氏彼女もいない。
⑤勿論、本編とは関係無し。

これが注意点です。
それではどうぞ。



「あれから十年か…」

 

あの頃の俺達は輝いていた。いや、今も輝いている。

あれから十年、俺達はそれぞれの思い描く未来へと進んでいた。

 

「おっと、時間だ。急がなくてな」

 

俺、海藤龍吾は浦の星学院を卒業後、大学に進学。後に高校の教師になった。今は浦の星学院に勤務している。大変だけどとてもやりがいのある仕事だ。俺は教師になって本当に良かったと思っている。

 

「今日は久しぶりに全員揃うのか…楽しみだな!」

 

昔はちょくちょく会っていたが、何人かは遠方の大学に進学したので全員が集まるということはめったになかった。そして今日は五年ぶりにAqoursのメンバーの全員が集まることになっていたのだ。

 

「さてと、行くか!」

 

俺は同僚の人達に挨拶を済ませ、すぐに待ち合わせの場所へと向かった。

 

 

─────────────────────

 

「たしか、このホテルだったかな?」

 

俺は鞠莉さんが予約してくれていたパーティー会場に来ていた。このホテルのオーナーは鞠莉さんの会社にいつも世話になっているらしく鞠莉さんの頼みならと、格安で提供してくれたのだ。

 

「みんな!待たせたな!」

 

俺はすぐに会場に入った。すでに八人のメンバーがそこにはいた。

 

「もう!遅いよ龍くん!」

 

「悪い!さっきまで仕事だったもんで。それにしても久しぶりだな、曜」

 

「うん!久しぶり!」

 

曜は幼い頃からの夢であった船長になっていた。つい二日前に長い航海から帰ってきたばかりらしい。

 

「夢だった船長になった気分はどうだ?」

 

「最高だヨーソロー!」

 

船長といってもまだまだ勉強中なので、自分の船は無く今は親父さんの船に一緒に乗っているようだ。

 

「海藤くん!久しぶり。また会えて嬉しいよ!」

 

「梨子か…俺もまた会えて嬉しいぞ!」

 

梨子は東京の音楽学校に進学し、今では売れっ子のピアニストになっていた。来週から日本ツアーが始まるようで忙しいはずなのに俺達のためにわざわざ時間を作って会いにきてくれたのだ。

 

「梨子、来てくれてありがとうな!」

 

「ううん、大丈夫だよ!私も…海藤くんやみんなに会いたかったし…」

 

梨子と会うのは高校卒業以来だが、久しぶりに会って驚いた。本当に素敵な女性になっていた。

 

「リトルデーモン…地獄時間で言うところの五十年ぶりってとこだわね。」

 

「いや、普通に五年ぶりでいいだろ…」

 

善子は至って普通の一般企業に就職していた。美人で仕事が出来るということで男性にかなりモテるらしいが、彼女は興味ないらしい。ちなみに堕天使キャラとシニヨンは今でも健在のようだ。

 

「善子、お前モテるんだってな。早くいい人を見つけられるといいな!」

 

「だから私はヨハネ!それに余計なお世話よ!契約者すぐに出来るんだから見ときなさい!」

 

とりあえず善子が元気そうで何よりだった。

 

「龍吾先輩、来てくれてありがとうずら!」

 

「海藤先輩!お久しぶりです!」

 

今度は花丸ちゃんとルビィちゃんが俺のところに来た。花丸ちゃんは親の後を継いで実家のお寺の住職になっていた。身長は高校時代とあまり変わっていないが、他のところは成長していた。他のところって?色々だよ。

 

ルビィちゃんは東京でアイドルグループのマネージャーをやっている。マネージャーなので舞台に上がることはないが、彼女の隠れファンが多いらしい。ルビィちゃんは身長がかなり伸びて美人に成長していた。さらに高校の時に短かった髪を伸ばしていた。

 

「二人とも美人になったね。ルビィちゃんなんかダイヤさんにそっくりだ!」

 

「いやいや、そんなことはないずら…」

 

「えへへ、ありがとうございます!」

 

正直、今ルビィちゃんが髪を黒く染めたら俺はどちらがルビィちゃんなのかわからない気がする。それぐらいお姉さんにそっくりになっていた。

 

「海藤さん、私達のことを忘れてはいませんか?」

 

「やっほー!この前も会ったけどね」

 

「チャオ~!本当に久しぶりね!」

 

そして、三年生組がやってきた。ダイヤさんは実家で琴と華道の先生をやっている。彼女は教え方が良いと評判のようだ。

 

果南姉さんは実家のダイビングショップで働いている。今でも俺と家が近いのでしょっちゅう会っている仲だ。

 

鞠莉さんは高校卒業後にアメリカに行った。そして、アメリカの大学を出て、シリコンバレーで起業した。経営は順調で数年後には日本にも進出する予定らしい。

 

「忘れてなんかいないさ。姉さんとはしょっちゅう会ってるし、ダイヤさんともたまに仕事で一緒になるからね」

 

ダイヤさんは浦の星学院の華道部の顧問も兼任している。彼女は高校の教師では無いのだが、外部コーチということで部活にだけ顔を出している。

 

果南姉さんは今でも俺の相談相手になってくれている。本当に頼りになる姉さんだ。

 

「リューゴ!私のことは?」

 

「忘れるわけないじゃないですか。鞠莉さんも俺の大切な仲間なんですから」

 

鞠莉さんは高校時代のまだ幼さの残っていた顔に比べて大分成長していた。あの頃より更に美しく女性らしくなったと思う。

 

「それにしてもアイツはまた遅刻するのか。この前、俺とアイツと果南姉さんで食事に行った時も遅刻したんだだよなあ」

 

「あはは…」

 

俺達が他愛もない会話をしているうちに、やっとアイツが現れた。

 

「ごめーん!遅れちゃいました!」

 

「おせーぞ、千歌!毎回遅刻しやがって!」

 

「ごめんって言ってんじゃん!」

 

案の定千歌は今日も遅刻してきた。しかも悪びれるもせずに堂々と入ってきたのだ。

 

千歌は実家の旅館で働いている。最近、やっと経営が安定してきたらしい。

 

「まぁまぁ、折角集まったんだからみんなで楽しみましょうよ」

 

「千歌ちゃんが遅れてくるのはいつものことだしね」

 

「…そうだな」

 

梨子と曜に説得されて、俺は自分の席に戻った。俺は本当に千歌には甘いらしいな。

 

「ほらほら、梨子ちゃんと曜ちゃんもこう言ってるよ!」

 

「こら!開き直るんじゃない!」

 

俺は千歌の頭を軽く叩いた。いくら甘いといっても流石に、この態度には腹が立った。

 

「龍ちゃん!痛いよ!」

 

「自業自得だ」

 

「さあ!パーティーを始めましょ!」

 

鞠莉さんの合図で俺達はそれぞれグラスを持った。

 

「それじゃ、乾杯!」

 

「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」

 

この先、何度あるのかわからない、最高の宴が幕を開けた。

 

──────────────────────

 

「うゅ…もうだめ…」

 

「ちょ、ルビィちゃん?」

 

最初は積もる話もあるということでみんな酒は控えめにしてそれぞれの思い出話をしていた。しかし二時間が経過する頃、少しずつ酔い潰れる人が出てきた。ルビィちゃんはその一人だ。

 

「お兄ちゃん…抱っこして…」

 

「え?いや、俺はお兄ちゃんじゃないよ!」

 

「うう…お兄ちゃん酷いよ…」

 

ルビィちゃんは酔い潰れると周りにいる人のことを兄や姉だと思ってしまうらしい。ルビィちゃんは今まで殆どお酒は飲んでいなかったらしいので分量がわからなかったようだ。

 

「リューゴ!ルビィが可哀想でしょ!抱っこしてあげなさいよ!ほら、抱っこ!抱っこ!」

 

「わかりましたよ!ほら、ルビィちゃんおいで」

 

「えへへ、ありがとうお兄ちゃん」

 

「アタシも入っちゃおー!失礼するわよ!」

 

「ちょ?鞠莉さん!痛いですよ!」

 

鞠莉さんは酔っ払うと、とにかくハイテンションになるようだ。正直、一番厄介な存在だ。

 

「あはは、龍吾も大変だね。」

 

「龍吾先輩は本当に大変ずら。」

 

「果南姉さんと花丸ちゃんはもう飲まないのか?」

 

「うん。明日も店を開けるからね」

 

「マルも、明日は早いから…」

 

「そうか、俺も明日勤務だからな。二日酔いは禁物だ」

 

果南姉さんと花丸ちゃんは悪酔いすることはないようだ。よかった、安心したぞ。

 

「だけど…私も少し龍吾に甘えたいかな?だめ…?」

 

「マルも…先輩に甘えたいずら…」

 

「ダメなわけないよ。果南姉さんと花丸ちゃんだったらいつでも歓迎だよ」

 

「…うん、ありがとう」

 

「先輩…ありがとうずら」

 

果南姉さんは酔っ払っているわけではないのだが、俺に甘えてハグをしてきた上にそのまま眠ってしまった。本当は疲れてたみたいだな。それは花丸ちゃんも同じのようで、彼女は既に俺の膝の上で熟睡していた。

 

「龍ちゃん!私も抱っこして!」

 

「龍くん!果南ちゃんばっかりずるいよ!」

 

千歌と曜は酔ってもあまり変わらない。むしろそっちの方が俺としてはありがたい。

 

「ほら、二人ともおいで」

 

「ありがとう、龍ちゃん」

 

「龍くん…寂しかったよ…本当に会えて嬉しいよ…」

 

千歌はともかく曜はずっと船旅をしていたのだ。本当は寂しかったに違いない。

 

「よく頑張ったな。曜、お疲れさん」

 

「曜ちゃん、私にも甘えていいんだよ」

 

「うう…千歌ちゃん、龍くん…ありがとう…」

 

曜は目に涙を浮かべていたが、悲しい表情はしていなかった。寧ろ、少し嬉しそうだった。

 

「リトルデーモン…ヨハネを無視すると灼熱の焔で焼かれてしまうわよ…」

 

善子はさらに堕天使キャラに磨きがかかっていた。会社での飲み会は大丈夫なのだろうか。

 

「無視なんかしないさ、仲間なんだからな」

 

「ッ…と…当然だわ…しばらくはヨハネのことを構いなさいよ!な…仲間なんだから…」

 

こいつは昔と変わらない。今でも素直じゃないな…俺も人のことを言えんが。

 

「…海藤さん、まさか私のことを放っておくつもりなのですか?」

 

ダイヤさんはあまり酔っているようには見えなかった。しかしその顔は真っ赤に染まって捨てられた子犬のような目で俺の方を見つめていた。

 

「狡いですわ…海藤さんは…」

 

「わかってますよ。ダイヤさん、たまには思いっきり甘えてもいいんですよ」

 

「……はい」

 

ずっと我慢し続けて来たのだろうか。彼女は俺のスーツの裾を掴んだまま離さなかった。もうしばらくこのままでいるとするか。あくまでも彼女のためにだ。

 

「ねぇ…海藤くん、私って…やっぱり地味?」

 

今度は、梨子が俺のところにやってきた。まぁ、他の八人もここにいるのだから必然だろう。

 

「梨子、俺は一度もお前のことを地味だと思ったことはないよ。梨子は本当に可愛くていい子だからな」

 

「えへへ…海藤くん、ありがとう。」

 

「どういたしまして」

 

ふにゃりと笑った梨子の顔は、本当に魅力的だった。俺は少しドキッとした。

 

「ねぇ…海藤くん…」

 

「どうしたんだ?」

 

「あのね…お願いがあるんだけど…」

 

梨子は俺に頼みたいことがあるらしい。彼女にしては珍しいな。

 

「なんだ?出来ることならなんでも聞くぞ」

 

「それじゃぁ…私に…キスしてくれない…?」

 

梨子の口から出てきたのは意外な言葉だった。キスをして欲しい…?

 

「え?いや…ちょっと…それは…」

 

「…さっき出来ることならなんでもやるって言ったよね?嘘つきの海藤くんは嫌いだよ?」

 

「いや…しかし…」

 

「…もういいよ…」

 

しまった、彼女を怒らせてしまった…取り敢えず謝らなくては…

 

「ごめん、梨子…」

 

「海藤くんからしてくれないなら…私からしちゃうもんね♪」

 

梨子は怒ってはいなかった。そして俺は梨子に床に押し倒されてしまった。まずい…このままでは本当に彼女とキスをすることになってしまう…

 

「おい!千歌!曜!誰か助けてくれ!」

 

「わー!梨子ちゃんダイタン!やっちゃえ!」

 

「面白そう!龍くんにキスしちゃえ!」

 

この二人は酔ってもあまり変わらないと言ったけど前言撤回だ。コイツらは鞠莉さん以上に悪ノリをしてくることがわかった。

 

「海藤くん…」

 

「り、梨子…」

 

彼女の唇が俺の唇へと降りて来る…あと二十センチで本当に…俺はようやく覚悟を決めた。

 

「いくよ…海藤くん…」

 

「ああ…わかったよ…」

 

再び彼女の唇が下降を始めた。あと十センチ…あと五センチ…あと一センチ…梨子の唇が俺の唇がに触れる…

 

 

 

その時だった。

 

 

 

プルルルルルル!

 

部屋の電話がなった。どうやらフロントからのようだ。俺はすぐに受話器を手に取った。

 

「もしもし」

 

「もしもし、フロントです。そろそろ退室のお時間となりますので準備をお願いします」

 

時計を見てみると、退室の時間が近づいていた。ついでに梨子の様子を見てみると、彼女はぐっすりと眠っていた。他の九人も同じだった。

 

「仕方ないな…でも、さっきのはいったい…」

 

俺はさっきの出来事を思い出して、一人で顔を真っ赤にしていた。めちゃくちゃ恥ずかしかった。

 

「おっと、早くみんなを起こして、片付けをしなければな」

 

俺はすぐに千歌達を起こした。起きあがれない人はいないようで即座に全員で部屋の片付けを開始した。

 

─────────────────────

 

夜の十時、部屋の片付けを終えた俺達は店の外に出た。近くの海から吹いてきた風が火照った体には心地よかった。因みに梨子にさっきのことを聞いてみたが、覚えていないようだった。

 

「それじゃあな!みんな、また会おう!」

 

「元気でね!」

 

俺はみんなに別れを告げ、千歌と二人で帰り道を歩いていた。

 

「みんな変わってたね~」

 

「お前はあんまり変わってないけどな」

 

「なに!そう言う龍ちゃんも全然変わってないじゃん!」

 

まあ、千歌も少しは大人っぽくなっている。よく会っているからそこまで気にならないだけだ。

 

「次はいつみんなで集まれるかね?」

 

「そうだな…これからはもっと忙しくなるだろうけど、集まれるとしたら隔年おきぐらいじゃないか?」

 

「私は、あの時のように毎日会いたいけどなぁ…」

 

「俺もだ。みんなも、こんなに楽しい時間を過ごせるんだったら毎日でも集まると思うけどな…」

 

「龍ちゃん…絶対にまたみんなで集まろうね!」

 

「ああ、勿論だ!」

 

どんなに時が流れてもあの一年間は絶対に色褪せることはない。俺達十人の中で最も大切な記憶であり続けるからだ。そしてこれからも永遠に輝き続けることだろう。きっと。

 

To be continued…

 




いかがだったでいょうか?前書きにもあるように、この話は本編との関係はありません。これからの物語の展開によっては全く違う話になるかもしれないからです。
これからも頑張らねばな…

それではまた。



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外伝 漣と共に

こんにちは、大天使です。
今回の話は本編とは関係ありません。別の物語だと思ってくれるとありがたいです。
果南ちゃん誕生日おめでとう!



俺の初恋の人は幼なじみのお姉さんだった。それは今でも変わらない。

 

 

静岡でもまだまだ寒い2月某日、龍吾はとある人物に会いに行くために淡島へと向かっていた。

 

「それにしてもなんだろう?急に来てくれだなんて」

 

彼はその人物に急に呼び出されたのだ。普通だったら驚くだろう。だが彼の幼なじみは三人いて全員が用事を唐突に言うような性格をしているから彼は急に呼び出されることに対しては慣れっこだった。

 

「まぁ、会いに行くのは全然いいんだけどな。俺は毎日でも会いたいくらいだし…」

 

そんな淡い気持ちを抱えながら彼は目的の人物との待ち合わせ場所に向かって行ったのであった。

 

─────────────────────

 

「あっ、きたきた。おはよう龍吾!」

 

「おはよう!果南姉さん、それで用って何なんだ?」

 

十分後、俺は目的の人物と待ち合わせをしている場所に来た。俺の目的の人物というのは幼なじみである果南姉さんだ。

 

「ふっふっふ、よく聞いてくれたな」

 

「果南姉さんってそんなキャラだったっけ?」

 

「細かい事はいいの。これだよ!」

 

果南姉さんは懐から2枚のチケットを取り出した。

 

「これって…」

 

「淡島マリンパークのチケットだよ!龍吾と行きたいなって思ってね…」

 

それは淡島マリンパークのチケットだった。俺達が昔からよく行っていたお気に入りの場所の一つだ。

 

「なんでいきなり?」

 

「それは…だから龍吾と行きたかっただけだって!迷惑だった…?」

 

「そんな訳ない。俺だって果南姉さんと行きたいよ」

 

「……ほんとに?」

 

「もちろんだよ」

 

やっぱり俺はこの人には敵わないようだ。昔からそうだったな…

 

「それじゃ行きますか!」

 

「…そうだね!」

 

俺達は待ち合わせの場所から淡島マリンパークへと向かって行った。

 

─────────────────────

 

俺達がゲートを潜ると、イルカ達が出迎えてくれた。

 

「なんか懐かしいね…」

 

「そうだね。最後に行ったのいつだっけ?」

 

「この前PVの撮影で行ったじゃん!」

 

「ああ、そうだったな」

 

そんな思い出話を二人でしているうちに水族館の中に入っていっていた。

 

「わぁ、綺麗だね」

 

「…ほんとだな」

 

果南姉さんの方が綺麗だよと言いたかったのは内緒だ。俺にはキザなセリフを言えるだけの勇気は全くと言っていいほどないからな。

 

「うーん、龍吾はこういう時にお前の方が綺麗だよとか言えないの?ほんとにシャイだねー。」

 

「い、言えるか!」

 

表情にも出していなかったつもりだが、果南姉さんに心の中を読まれていた感じがした。これだから俺はこの人には敵わない。

 

「そ、それよりもさ、果南姉さんは他に行きたいとことかないの?」

 

「…私は龍吾と二人でここに来れただけで嬉しいよ。」

 

果南姉さんは俺が言いたかったようなことをさらっと言ってしまった。心なしか果南姉さんの顔が赤いような気がするが。

 

俺も果南姉さんに負けてはいられない。俺も勇気を出して言ってみた。

 

「あ、ありがとう…俺も果南姉さんと来れて本当によかったよ…」

 

「……うん」

 

そこからはお互いに無言になってしまった。やっぱり無理はするもんじゃなかったようだな。

 

しばらく水族館内を楽しんだ後、俺達はカエル館へと足を運んだ。ここは俺達が幼い頃に何度も訪れた思い出の場所だ。

 

「ここに来ると童心に返れるような気がするね」

 

「本当に懐かしいな。ここには沢山の思い出があるからな」

 

正直、俺は爬虫類は苦手だ。何を考えているのかわからない所が少し怖いからだ。でもカエルだけは大丈夫だった。それも幼い頃のここでの思い出が関係しているのかもしれない。

 

「私達はみんな変わっちゃったね。こんな感じにスクールアイドルをやることになるなんてあの頃には思いもしなかったよね」

 

「そうだな。しかも千歌と曜も一緒にだからな。俺もこんな感じにスクールアイドルに関わることになるとは思わなかったからな」

 

「龍吾、寂しいの?」

 

果南姉さんが俺に尋ねてきた。本音を言えば寂しい。ずっと一緒だと思っていた幼なじみ達が今では遠くに行ってしまった感覚がするからだ。

 

「…少しな。でも大丈夫だよ。今の俺には果南姉さんと千歌と曜だけじゃない。梨子やダイヤさん、花丸ちゃん、ルビィちゃんに善子、鞠莉さんもいる。俺は孤独なんかじゃない」

 

「…そうだよね。なんかごめんね?」

 

少し果南姉さんの表情が曇ってしまった。何だかこっちが申し訳ない気持ちになってしまった。

 

「果南姉さんは気にしなくていいよ。だからそんな顔しないで」

 

「ありがと。でもなんで龍吾はそんなに私のことを気にかけてくれるの?」

 

「それは果南姉さんは俺の大事な…」

 

「大事な?」

 

「お、俺の大事な幼なじみなんだからな!」

 

危なかった。まだ気持ちを伝えるには速すぎるからな。だけど、果南姉さんは少し残念そうな顔をしていた。

 

「そ、そうだね」

 

「だけど…少しだけ特別な存在だな…」

 

照れくさかったけど、少しだけ訂正した。うん、これ以上は無理だな。

 

「え!それって…」

 

「よし、次の場所に行こうぜ!」

 

「あ、ちょっと待ってよ!」

 

俺は果南姉さんの手を引いて次の場所へ向かって走り始めた。少し顔が赤いのは走っているせいだということにしておこう…

 

それから俺達は色々な場所を二人で見て回った。手は繋いだままでだ。だけど、その楽しい時間はあっという間に過ぎていってしまった。

 

時刻は六時を過ぎ、空も暗くなり始めた頃、俺達はマリンパークを後にした。

 

「うーん、楽しかったね!」

 

「久しぶりに来れて本当によかったな!」

 

やっぱり果南姉さんには笑顔が一番だ。二人で回って楽しんでいるうちに表情は元に戻っていた

 

「なぁ、果南姉さん」

 

「ん?どうしたの?」

 

「これからさ、時間ある?」

 

「全然余裕だよ。どうしたの?」

 

「ちょっと行きたいところがあるんだ…」

 

俺は再び果南姉さんの手を引き、俺がずっと二人で行きたかった場所へと向かって行った。

 

─────────────────────

 

「よし、ついたよ」

 

「ここって…」

 

俺が二人で来たかったのは、いつもAqoursの練習で使用している神社だった。

 

「ここに何かあるの?」

 

「何にも。あるとすればあれぐらいかな?」

 

俺は神社から見ることの出来る内浦の町並みを指さした。遠くには沼津の街の光が見える。その光の一つ一つが星のようでとても美しかった。

 

「…綺麗だね」

 

「そうだね。いや、果南姉さんの方が綺麗だよ…」

 

そう言うと果南姉さんはハッとした顔をしてこっちを向いた。さっきは恥ずかしくて言えなかった言葉だ。

 

「龍吾はずるいよ…言えないんじゃなかったの?」

 

「言えなかったよ。さっきまではね。でも、今なら言えるよ」

 

「…なーんか初めて龍吾に負けた気がするんだけど」

 

「あはは、俺も初めて勝てた気がするよ」

 

小さいことかもしれないけど、何だか誇らしい気持ちになった。初めて果南姉さんを手のひらの上で転がすことが出来た気がする。

 

「龍吾に言いたいこと色々あったけど、もう満足しちゃったよ」

 

「そうか?俺としてはまだ満足してもらっちゃ困るんだけどね」

 

「え?なに?」

 

「……果南姉さん、誕生日おめでとう!」

 

俺は密かに用意していた果南姉さんへのプレゼントを手渡した。果南姉さんはさっきよりも驚いた表情をしている。俺が本当に見たかったのはこの表情なんだよなぁ。

 

「…もう本当にずるいんだから。普段は隠し事なんて出来ないのに」

 

「それは褒め言葉として受け取っとくよ。隠し事が出来ないってことは正直ってことだろ?」

 

「はいはい。開けてもいい?」

 

「もちろん!」

 

果南姉さんは箱の包みを丁寧に開け始めた。その中には髪を結ぶためのシュシュとマリンブルーのイヤリングが入っている。

 

「龍吾…本当に嬉しいよ、ありがとう。今までで一番の誕生日だよ…!」

 

そう言って果南姉さんは俺のことを抱きしめてきた。久しぶりに感じる彼女の温もりはとても心地よかった。

 

「…そう言ってもらえて嬉しいよ」

 

俺もそんな彼女のことを抱き締め返した。微かに輝きだした星の光はそんな俺達のことを見守るように優しく照らしてくれていた。

 

時間がこのまま止まってくれたら…

 

To be continued…

 




果南ちゃんの口調がたまにわからなくなるな…気をつけなければ。

私は他にも色々な話を書いてみたいと思っているので何か意見があれば感想欄からお願いします!

それではまた。


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外伝 Valentine day

こんにちは、大天使です。

今回の話は本編とは特に関係ないです。別のお話としてお楽しみいただければ幸いです。




今日は2月14日。一般的に世の中ではバレンタインと呼ばれている日だ。日本では女性が男性にチョコレートを渡すことになっているが、実際には男性が女性に贈り物をする日なのだ。これテストに出るぞ。

 

とか何とか言ってみたけど本音はリア充とかいう人種に対する羨望に過ぎない。俺には彼女とかいないし。幼なじみは何人かいるけど、今まで渡してくれたことなんて一度もない。俺は母親にしかチョコレートを貰ったことがなかった。

 

「はぁ…」

 

「龍くん?何か元気ないね。どうしたの?」

 

「…いや、気にしなくていい」

 

俺の隣にいるのは幼なじみの一人の曜だ。毎朝家まで迎えに来てくれる健気なやつだ。

 

「そういえば千歌はどうした?」

 

「もう行っちゃったよ。今日は早起きしたって」

 

「なにィ!?今日は雨?それとも雪…」

 

「ちよ、大袈裟だよ!」

 

「いやいや!だってあの千歌が早起きだよ?季節外れの台風か?それとも猛吹雪?」

 

「龍くん!落ち着いて!」

 

曜に窘められて俺はようやく落ち着いた。本当にビックリしたな。

 

「はぁ、朝から大声出したから疲れたわ…」

 

「……だったらさ、これ食べてみない?」

 

そう言って曜が差し出してきたのは丁寧に包装された四角い箱だった。

 

「なにこれ?」

 

「チョ…チョコレートだよ!偶然鞄の中に入ってて…偶然なんだからね!」

 

明らかに動きが怪しいがそれにはまぁいいか。彼女が偶然と言うなら偶然なんだろう。

 

「まぁ、ありがとうな。一つ食べてみてもいいか?」

 

「…うん」

 

俺は箱の中からチョコレートを一粒取り出して口に運んだ。優しい甘さが特徴的でとても美味だった。

 

「…美味い」

 

「当然でしょ!だってこの私が今日のために手作りしたんだから!……あっ」

 

「なんだ?もしかして俺のために手作りしてくれたのか?」

 

「うっ…そうだよ!でも義理なんだからね!」

 

義理か。少し残念だったけど貰えただけで俺は本当に嬉しい。だって母親以外から貰った初めてのバレンタインチョコなんだからな。

 

「そ、それじゃ学校行こ!遅れちゃうよ!」

 

「あ!そうだな。残りは帰ってから頂くよ。本当にありがとな」

 

曜に礼を言い、龍吾は学校へ行く準備を始めた。そんな彼は気づかなかった。後ろで曜がこんなことを言っていたことに。

 

「ほんとは義理じゃないんだから……バカ」

 

そんなこんなで罪な鈍感男と肝心な時に素直になれない不器用な少女は準備を済ませ、学校へと向かって行った。

 

─────────────────────

 

学校についた俺は自分の席でHRが始まるのを待っていた。すると一人の人物が俺に近づいてきた。

 

「お…おはよう、海藤くん」

 

「梨子か、おはよう」

 

いつも通りの優しい笑顔で俺に挨拶をしてきたのは梨子だった。たがその様子はいつもと違った。俺には梨子が何だか緊張しているように見えた。

 

「なんだ?緊張しているのか?」

 

「えっ?ええ、まぁ…」

 

やっぱりそうだったが、俺は深くは聞かなかった。無理やり聞き出すのは気分が悪いからな。

 

「あの…海藤くん!」

 

「ん?どうした?」

 

「こっ…これ!」

 

梨子が手渡してきたのは袋に包まれたチョコレートだった。日付を考えてもそういう事だよな。

 

「その…頑張って作ってきたから…受け取ってくれると嬉しいな…」

 

「梨子…ありがとう。大事に食べるよ」

 

「大事に食べるって何?」

 

「あっ…確かに…」

 

「ふふっ変な海藤くん」

 

緊張も解けたのか梨子は自然体に戻っていた。やっぱり彼女は普段の姿が一番だな。

 

「だけど本当に貰えるとは思わなかったな。嬉しいよ。ありがとう、梨子」

 

「………うぅ…」

 

俺は梨子の頭を優しく撫でてやった。彼女は耳まで真っ赤にしていたが、しばらく経つと目を細めて心地よさそうな表情をしていた。

 

「海藤くん…やめてよ…恥ずかしいよ」

 

「やめてよって言うわりには嫌がってないよね?」

 

「うぅ…海藤くんの意地悪…」

 

やっぱり梨子の恥ずかしがってる姿は可愛いな。でもあんまり苛めると後々怖いからこのくらいにしておこう。

 

「冗談だって」

 

「わかってるよ。海藤くんはとっても優しい人だから…そんな貴方だから私は…」

 

梨子がそう言った途端にチャイムがなった。先生も教室に入ってきてHRを始めようとしていた。

 

「あ、先生来たね。それじゃまた後でな」

 

「え、ええ…」

 

梨子は自分の席に戻って行った。そういや梨子がさっき何か俺に対して言っていたけど何なんだろう?

 

それからの午前中の授業は特に何事も無く、普通に進んでいった。

 

─────────────────────

 

午前中の授業が終わって今は昼休み。さっきまでの授業はいつも以上に退屈だった気がする。

 

俺は普段は屋上で食事をとることが多いが今日は部室で食事をしていた。流石にこの時期の屋上は寒いすぎるからな。

 

「あ、海藤先輩!」

 

「え、なんでここに?」

 

「こんにちは!」

 

「なんだ君達か。いつもここで弁当食べてるの?」

 

部室に現れたのは一年生の三人だった。この三人は普段からこの部室で昼食をとっているらしい。

 

「そうだったのね」

 

「隣失礼するずら」

 

「どーぞ」

 

三人は俺の隣や前の席に座った。普段は少人数で昼食をとっているのだが、たまには大人数で食べるのもいいものだなと思った。

 

「そうだ!これあげるずら。バレンタインデーのチョコレート!」

 

「私も!海藤先輩、いつもありがとうございます!」

 

「このヨハネも貴方にこれを恵んであげるわよ。感謝しなさいね」

 

「お、おう。みんなありがとな」

 

今日だけで何個のチョコレートを貰ったのだろうか。そんなことを考えていたら、一つ気になることが出てきた。

 

「一つ気になったことがあるんだけど…聞いてもいいかな?」

 

「なんですか?」

 

「なんで三人ともタイミングよくこれを持ってるんだい?俺は普段はここには来ないのに」

 

「そ、それは」

 

「貴方のことを監視して…ってそうじゃないわ!貴方が部室に入っていくのが見えたから私達はわざわざ教室まで取りに行ってきたのよ!」

 

「そうか。わざわざありがとな」

 

理由はともかく俺のためにわざわざ持ってきてくれたことは純粋に嬉しい。

 

「よし、君達の頭を撫でてあげよう」

 

「ずら!?」

 

「うぅ…なんか癖になっちゃいそう…」

 

さっき梨子にやったのと同じように俺は花丸ちゃんとルビィちゃんの頭を撫でてやった。二人とも反応が新鮮で面白いな。

 

「ほら、善子もおいで」

 

「だから私はヨハネだって!ま、まぁ行ってあげてもいいわよ」

 

口ではこう言うが彼女の表情はかなりウキウキしているように見えた。まったく素直じゃないんだからな。

 

「三人とも、これからもよろしくな!」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いするずら!」

 

「貴方とは契約を結んでいるのよ。簡単に縁が切れると思ったら大間違いなんだから」

 

「そうか、俺は教室に戻るよ。じゃあな」

 

善子は何かよく分からないことを言っていたが、彼女がこれからもみんなで仲良くしていきたいと思っていることは伝わってきた。

 

そういやこれで今日貰ったのは五個目だな。これは他の人からも貰えるかもしれない。そんな淡い期待を胸に俺は眠たい午後の授業へと向かっていくのだった。

 

─────────────────────

 

一日ってのは気がつけば終わっているもので、もう放課後になっていた。普段ならAqoursの活動があるが、今まで何日も連続で練習に入れこみすぎていたことなどを考え、今日は完全にOFFということになっている。

 

でも俺には部活がある。あれから俺達は再び全国大会を目指して練習に励んでいる。今日のメニューも相当ハードなものらしい。

 

「あー、やっぱりメニューがキツい日は憂鬱だなー。ん?あれって…」

 

「だーかーらー私は今すぐに行きたいの!」

 

「あの人だって忙しいんですから私達の都合で会いに行っては迷惑になりますわよ」

 

「まぁまぁ」

 

俺が見つめる方には三年生の三人がいた。おそらくこれから帰るところなのだろう。

 

「皆さんお揃いで何やってんですか?」

 

「あら、海藤さんではありませんか。さっきから鞠莉さんが絶対に貴方に会いに行くんだって聞かなくて……って海藤さん!?」

 

「ダイヤさん?ビックリしましたよ!」

 

ダイヤさんは俺が急に現れたのだと思って驚いていた。俺ってそんなに影薄いのか?

 

「あ、リューゴじゃない!会いたかったわ!」

 

「ちょっ、鞠莉さん?」

 

そう言うと鞠莉さんは俺に抱きついてきた。二人が見てるから恥ずかしいのだが。

 

「鞠莉さん!何をやっているんですか!破廉恥ですわよ!」

 

「いいの!気にしない気にしない!」

 

「気にしますわよ!」

 

また鞠莉さんとダイヤさんの言い合いが始まってしまった。その途中で俺は果南姉さんがジト目でこっちを見ていることに気がついた。

 

「龍吾、なーんか鼻の下伸びてない?鞠莉に抱きつかれてそんなに嬉しいの?」

 

「えっ?いやそんなんじゃ…」

 

「問答無用!えいっ!」

 

俺が言うよりも先に果南姉さんも俺に抱きついてきた。そういえば二人ともAqoursのメンバーの中でも特に胸が大きい方だから俺の腕とか背中に柔らかい感触が…

 

「海藤さん?」

 

「…はい。何でしょうか?」

 

俺の後ろでダイヤさんがじっとこちらを見つめていた。なんか嫌な予感しかしないのだが。

 

「…仕方ないですわね。海藤さんはそういう人なんですから」

 

「ダイヤさん!あなたは俺のことをなんだと思ってるんですか!」

 

「普段はカッコつけてクールに振舞っているけど、本当は破廉恥な人ですわ」

 

「いや、俺は別にカッコつけているわけじゃないですからね?」

 

「本当にそうなのですか?」

 

「そうですよ!」

 

俺はカッコつけているわけではない。元々こんな感じなんだから仕方ないだろう。

 

「まぁ別にいいですわ。そんな貴方にはこれを差し上げます」

 

「へ?」

 

「私からもあげる。どうぞ!」

 

「これは私からよ。ハッピーバレンタイン!」

 

突然のことで驚いた。三人は何の前触れのなく俺にチョコレートを差し出してきた。

 

「さ、さっさと受け取ってください!渡すのって結構恥ずかしいのですね」

 

「うーん、私も初めてだからなぁ」

 

「私はもう慣れっこよ!」

 

「本当にありがとうございます。ちょっとだけ期待してたんですけど、やっぱり嬉しいですね」

 

急にこの三人にあった時には少し期待した所もあった。今まで色んな人にチョコを貰ったからな。

 

「…ってもうこんな時間!急がないと連続で始まっちまう!それじゃまた!」

 

「気をつけてくださいね。」

 

「頑張れー!」

 

「fight!ド根性よ!」

 

三人の後押しを受け、俺は体育館へと急いでいった。さっきまでの憂鬱な気分はいつの間にか消え去っていた。今日の練習は頑張れそうだな。

 

─────────────────────

 

時刻は午後の六時を回っていた。練習を終えた俺は着替えを済ませ、自分のバイクが停めてある駐車場へ向かおうとしていた。

 

「今日も疲れたな。あれ?あのアホ毛は…」

 

「ん?龍ちゃんだ。どうしたの?」

 

俺の前を歩いていたのは千歌だった。そういや今日は千歌とは会話をしてなかったな。

 

「俺は部活だけどお前は何なんだ?」

 

「わ、私は…その…」

 

「補習か?」

 

「う…そうだよ!悪い?」

 

練習がない日にはすぐに帰ってしまう千歌がこんな時間まで残っているのは確実に補習だったからだろう。俺じゃなくてもわかるな。

 

「なーにやってんだよ」

 

「龍ちゃんもそこまで成績良くないくせに…」

 

「まぁな。だが俺は補習に呼ばれたことは無い」

 

俺は確かに成績は良いとは言えない。だが補習に呼ばれたことは一度も無い。威張れるようなことじゃないけどな。

 

「よし一緒に帰るか。後ろ乗れよ」

 

「うん、ありがとう」

 

俺は千歌をバイクの後ろに乗せて走り出した。

 

「今日は色々な人にチョコを貰ったな」

 

「そうなの?」

 

親以外からバレンタインチョコを貰った。これは人生で初のことだ。みんなには本当に感謝している。

 

「ねぇ、龍ちゃん」

 

「どうした?」

 

「ちょっと寄り道しない?」

 

千歌は急に寄り道がしたいと言い出した。突然だけど断る理由なんかない。

 

「はいよ。どこに行きたいんだ?」

 

「海に行きたい。二人っきりでいつもの場所に」

 

「了解」

 

俺は近くの浜辺にバイクを停めた。元々海辺近くを通っていたのもあってすぐに目的の場所へは到着した。

 

「やっぱり海はいいな。夜風が心地いいし」

 

「…そうだね」

 

何かいつもの千歌と違う。何故か分からないけど俺にはそう感じた。

 

「龍ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「……私、変われたかな?スクールアイドルになって、みんなで頑張ってきて」

 

千歌は俺に今までの活動を通して自分が変われたのかどうかを尋ねてきた。そんなの決まっている。答えは一つしかない。

 

「千歌は変われてるし耀いてるよ。俺が保証するから大丈夫だ」

 

「…ありがと。それと龍ちゃん!これ、ハッピーバレンタイン!」

 

千歌は俺に一つの袋を差し出してきた。一日で何度も見てきた物だけど、とても新鮮な気がした。

 

「迷惑じゃなかったら…受け取ってほしいな」

 

「迷惑なわけないだろ。本当にありがとう」

 

「よかったらだけど、一つ食べてみてくれない?感想とか聞いてみたいし…」

 

「わかった。それじゃ頂くよ」

 

俺は包装を解き、袋の中からチョコレートを取り出して口に運んだ。優しい甘さの中にも微かな苦味があってとても舌触りが滑らかだった。

 

「とても美味いよ」

 

「えへへ、ありがと」

 

「千歌、何だかんだ君にはいつも感謝している。本当にありがとな」

 

「龍ちゃん…こちらこそ!」

 

こうして俺の人生初の濃い思い出となったバレンタインは終わりを告げた。一日という短い時間だったが、それを感じさせないほど素敵なものだった。俺はこの日をいつまでも忘れる事はないだろう。

 




疲れた…ギリギリまで書くかどうか悩んでいて昨日の夜に書き始めたけどよく間に合ったな。本当に頑張った俺!

それではまた。


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外伝 花丸笑顔の君に…

こんにちは大天使です。
時期が時期なんで卒業の話とかも出てきたりしていますが本編とは一切関係ないのでよろしくお願いします。

花丸ちゃん誕生日おめでとう!



三月某日、だんだん日も伸びてきて暖かくなり始めた頃。俺は一人の女の子とデートをする約束をしていた。

 

「あ!やっと来たずら!」

 

「待たせて悪かった。ちょっと立て込んでてな」

 

今日、俺と会う約束をしていた女の子は花丸ちゃんのことだ。最近はAqoursの活動が忙しかったりしたので二人で会うのはかなり久しぶりだ。

 

「ううん。マルは海藤さんと一緒にいられるだけで嬉しいです…」

 

少し胸がドキッとしたような気がした。急にそんなことを言われると心臓に悪い。

 

「と、とにかく早く行こうぜ!」

 

「行くってどこに行くずら?」

 

「そうだな。まずはあそこに行くか!」

 

「あ、あそこってどこずら~!」

 

俺は花丸ちゃんの手を握って、目的の場所へと向かっていくことにした。

 

俺達の様子を何も知らない人が見たら、俺達二人は付き合っているように見えるかもしれない。でもそんなことはない。二人の関係性が壊れてしまうような気がしてしまう。そう思っているから俺達の関係はあまり進歩していないのだ。

 

「ん、そうだ。花丸ちゃん、誕生日おめでとう!」

 

「覚えててくれたずら!」

 

「俺が花丸ちゃんの誕生日を忘れるわけないでしょ?」

 

「嬉しいずら!ありがとう…」

 

「どういたしまして。」

 

─────────────────────

 

「ここに来るのも久しぶりずら」

 

「そうだったんだ。俺は千歌達と来ることが多いなぁ…」

 

俺達が最近に訪れたのはショッピングモールだった。デートでここに来るのはどうかなと思ったが、花丸ちゃんが楽しそうだから良かった。

 

「ここに来るのはルビィちゃんと来た時以来ずら!」

 

「そうだったのか」

 

ルビィちゃんと花丸ちゃんが二人で仲良くショッピングモールで買い物をしている姿を想像するととても微笑ましかった。なんだか胸がほっこりしているような気がした。

 

「わぁーきれいずらぁ…」

 

花丸ちゃんはジュエリーショップのケースに入っている指輪をじっと見つめていた。

 

「これが欲しいのか?」

 

「えっ?いや、そんなんじゃないずら!」

 

「別に気にしなくていいんだぞ。すみません、この指輪をください」

 

俺は店員さんを呼んで、すぐに会計を済ませた。この買い物で俺の財布の中身の8割が消えたことは内緒だ。

 

「本当にいいの?こんなに高い物を…」

 

「いいんだよ。これは俺から君への誕生日プレゼントってことで。それに似合ってるよ。何だか新婚さんみたいだね」

 

「し、新婚さん!?」

 

「えっ、あっ…」

 

「うう、海藤さんのスカタンずらぁぁぁ!」

 

「ス、スカタン!?ちょっ、花丸ちゃん!」

 

そのまま花丸ちゃんは走り去ってしまった。この後、カフェでケーキを奢ったりして何とか花丸ちゃんの機嫌を直すことが出来たが、俺の財布の残高は10円になってしまった。

 

─────────────────────

 

「本当にここでよかったのか?」

 

「うん。マルは海藤さんとここに来たかったずら」

 

俺達が訪れたのは花丸ちゃん家のお寺だった。ここに来るのは本当に久しぶりだ。

 

「さ、お参りをするずら」

 

「そうだな」

 

「神様が見てるんだからちゃんとお参りしないと怒られちゃうから」

 

俺は賽銭箱へ向かい、財布に残っていた10円玉を放り込んだ。

 

「よかったの?これで一文無しだよ?」

 

「一文無しって…また貯めればいいんだよ。10円だけだっとしてもあげないと神様に失礼かなーって」

 

「…やっぱり海藤さんはいい人ずら」

 

「ありがとね」

 

俺は神様にお賽銭を渡して、願い事をした。正直俺に願いたいことは無かったけど少し考えてあることを願うことにした。

 

(これからもAqoursがメンバー同士で仲良くやっていけますように。)

 

これだけで十分だった。俺にはAqoursのメンバーがバラバラになるような状況は全く想像出来ない。あるとすれば…

 

「卒業か…」

 

今は三月。三年生が卒業してもAqoursの活動は続けていくことになっている。だけど果南姉さん、ダイヤさん、鞠莉さんがスクールアイドルとして活動出来るのはあと少しだけだ。悔いは絶対に残したくない。

 

「海藤さん?」

 

「…花丸ちゃんはさ、三年生が卒業したらどうするんだ?」

 

三年生の卒業について花丸ちゃんがどう思っているのかが気になってきた。

 

「もちろん、Aqoursの活動は頑張って続けていくよ。三年生のみんながいなくなっちゃうのは少し寂しいけど…」

 

花丸ちゃんは寂しそうな表情をしていた。俺はいてもたってもいられずに彼女のことを思いっきり抱きしめた。

 

「か、海藤さん!?」

 

「…俺だって寂しいよ。出来るんだったら卒業してほしくない。だけどそうはいかないってこともわかってる。だから…あと少しだけど、悔いを残さないように頑張ろうな!」

 

俺の目からは自然と涙が出てきていた。もう止まりそうもない。それは花丸ちゃんも同じだった。

 

「…うん!マルは頑張るずら!Aqoursのみんなと…海藤さんと一緒に!」

 

─────────────────────

 

しばらくして俺達はやっと落ち着きを取り戻した。こんなに泣いたのは久しぶりだな。

 

「ごめんずら…海藤さんの服、びしょ濡れにしちゃったね…」

 

「ううん、気にしなくていいよ」

 

花丸ちゃんの服はほとんど濡れてないが、俺の服は海に飛び込んだと言っても通じるほどびしょ濡れになっていた。

 

「やっぱり三年生がいなくなるのは…」

 

「今はそのことは考えないでおこう。Aqoursの活動に集中するんでしょ?」

 

どうしても卒業のことが頭に過ぎってしまうのは仕方がない。あまり深く考えない様にするしかないようだな。

 

「…そうだね。ありがとずら」

 

「どういたしまして」

 

その後は他愛のない話が続いた。その途中で俺の鞄の中にある物が入っている事を思い出した。やれやれ、これを忘れるとはな…

 

「そだ。これを渡すのをすっかり忘れてた」

 

「これは…」

 

「もう一つの誕生日プレゼントだな。手作りのマフラーだ。使う時期は過ぎちゃったけど受け取ってほしい」

 

それは俺が時間をかけてじっくり編んだマフラーだ。俺がこれを編むのが遅いせいで季節外れになってしまったけどね。

 

そして同時にあの事も言おう。今までずっと伝えることが出来なかったことを…

 

「花丸ちゃん、改めて誕生日おめでとう!これからもずっと俺と一緒にいてください!」

 

「…本当にありがとう。季節外れでもとっても嬉しいよ。それと…マルも海藤さんと一緒にいたいです。海藤さん、大好きずら!」

 

「どういたしまして。そして、ありがとな」

 

言葉は変わってしまったけど、彼女にはやっと自分の正直な気持ちを伝えることが出来た。これからもこの笑顔を決して曇らせないようにしよう。俺はそう固く誓ったのだった。

 

To be continued…

 




それではまた。


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外伝 未来への船出

こんにちは大天使です。

数日前に曜ちゃんの誕生日のことを思い出して急ピッチで作成しました。お見苦しい箇所もあるかと思いますが見てくれると嬉しいです!あといつも通り時系列とかは関係ないです。

曜ちゃん誕生日おめでとう!



「はい!今日の練習はここまで!明日は休みだからゆっくり休んでね!」

 

今日のAqoursの練習はこれで終わり。明日は久しぶりの休みだ。さて、俺は家に引きこもってゲームでも…

 

「ねぇねぇ龍くん!」

 

休日の過ごし方を考えていた俺の元にやってきたのは曜だった。

 

「曜か。どうした?」

 

「明日何か用事ある?暇だったら私と一緒に出かけてほしいんだけど」

 

「明日か?特に何も無いからいいぞ」

 

本当は一日中家でゲームするつもりだったんだけどね…まぁ久しぶりに外出するのも悪くない。

 

「ほんとに?ありがと!」

 

曜はいきなり俺に抱きついてきた。予定が決まったことがそんなに嬉しかったのかねぇ…

 

「曜!こんなところで抱きつくなって!俺達はもう高校生なんだぞ!」

 

「いいじゃん!私は久しぶりに龍くんに甘えたいの!」

 

確かに曜に抱きつかれるのは久しぶりだ。昔の曜はこんな感じで俺や果南姉さんに甘えていたものだ。まぁ、抱きつかれるのが嫌だという訳ではない。ただなんというか…昔よりも遥かに成長した曜のアレが俺の身体に当たってきて…って俺は何を考えているんだ!

 

「龍くん?どうしたの?」

 

「い…いや、何でもない。別に気になることなんて何もないし…」

 

「んー?変な龍くん」

 

少しでも自分の気を逸らすんだ。そうでなければ俺の下腹部が過剰に反応してしまう…この生き地獄はいつまで続くんだろうな…

 

─────────────────────

 

次の日のお昼前、俺は曜との待ち合わせ場所である船着場にやってきた。

 

「龍くん!おはヨーソロー!」

 

「曜は朝から元気だな。」

 

少し早めに家を出たつもりだったが、曜は既に待ち合わせ場所に来ていた。

 

「すまねぇ!待たせちまったか?」

 

「全然待ってないよ!大丈夫!」

 

口ではそう言っているが、本当はもっと早くから待っていたに違いない。多分曜は俺に気を使ってくれているのだろう。

 

「お詫びにジュースでも奢るよ。待たせてしまったことに変わりはないからな」

 

「えっ!いいの?」

 

「いいよ。気にすんなって」

 

「ありがとう!」

 

昔から親とかによく言われていた。俺が幼馴染に甘すぎるということを。確かにそうだったかもしれない。今も昔も変わらずに。

 

「それで今日は何をするんだ?まさか予定が何も無いなんて言わないよな?」

 

「無いよ!」

 

「帰る。今日はもう家から出ない」

 

「冗談だって!帰らないで!」

 

ちゃんと予定はあったみたいだ。まぁ、自分から呼び出しといて用事は何も無いなんてことは普通だったら有り得ないからな。

 

「今日は何をするんだ?今すぐに十七文字以内で説明しやがれ」

 

「十七文字以内?なんで?」

 

「なんとなくだ」

 

「まぁいいか。龍くん、私と一緒に船に乗ってくれない?」

 

「船?何でだ?」

 

曜とことだから買い物に付き合ってくれとでも言うのかと思っていた。俺と一緒に船に乗って欲しいと言われるとは少しも思わなかった。

 

「ちょっと遠くに行きたくてね。龍くんにも来て欲しかったんだ。ダメかな?」

 

「そんなことだったのか。お易い御用だよ。」

 

「ほんとに?」

 

「断る理由なんてないからね。ほら、さっさと行こうぜ」

 

「あ……うん!」

 

俺は曜に自分の右手を差し出してやった。曜は一瞬動揺しているように見えたが、すぐに俺の手を取った。

 

「それじゃあ出発!ヨーソロー!」

 

「あんまり走るんじゃねーぞ。転んで怪我でもしたら大変じゃねーか!」

 

「大丈夫だって!」

 

久しぶりに二人で出かけるんだ。楽しまなければ損になるな。でも本当に大丈夫なのかね…

 

─────────────────────

 

俺達はこの後すぐに船に乗った。と思いきや曜は何故か船着場とは真反対の方向に俺を無理やり連れていきやがった。

 

「オイ!」

 

「どうしたの?トイレにでも行きたいの?」

 

「な訳あるか。俺達はこれから船に乗るんじゃなかったのか?」

 

「それは夜からだよ!」

 

「それを先に言ってくれよ…」

 

俺達は船着場から遠く離れたショッピングモールに来ていた。船に乗るのが夜からなんだったらその時間に呼んでほしかったな…

 

「だってさ。久しぶりに龍くんと二人っきりで出かけるでしょ?だからもっと二人で遊びたかったんだ。」

 

「言ってくれたら付き合ったのに」

 

「だって買い物にも行くって言ったら龍くんは面倒くさがるでしょ?」

 

「それは否定しないな。今日は本当だったら一日中モンスターと戯れたり、天使を狩ったりする予定だったからな」

 

別に曜と出かけるのが嫌な訳では無い。単純に遠出するのが面倒なだけだ。

 

「えっ?天使を狩る?善子ちゃん逃げて!」

 

「あいつは堕天使だろ?俺が狩るのは天使だから心配ないよ。それにゲームの話だし」

 

「堕天使と天使って何が違うの?」

 

「いいやつか悪いやつかじゃね?」

 

いつの間にか話が訳の分からない方に向かって行ってしまっているな。そろそろ戻さなくちゃならないと思った瞬間に曜のケータイのアラームが鳴った。

 

「あっ!そろそろ時間!」

 

「おっと。急がなきゃな」

 

買い物をしながらそんな他愛のない話をしていると、すぐに船に乗る時間になってしまった。

 

─────────────────────

 

船の出航時間までギリギリだったが、俺達は何とか時間に間に合った。

 

「あれが俺達の乗る船なのか?」

 

「うん!あの船のチケットをお父さんから貰ったんだ。友達と行ってなさいって」

 

「………いいお父さんだな」

 

「うん!」

 

俺達がこれから乗る船はあまり大きくないが、とても綺麗で立派だった。今日は曜のお父さんに感謝をしなくてはならないな。

 

「それじゃ、行こっか」

 

「ああ!」

 

俺達はさっきと同じように手を繋いで船内へ入った。内装も豪華客船に引けを取らないほど綺麗だった。この船に乗るお客の気持ちもしっかり考えて準備や清掃をしてきたんだろうな。

 

その後、船内を一通り見て回った俺達は船の外に出て、甲板へ向かった。そこはかなりの人がいた。後から聞いた話だが、ここはカップルのデートスポットとしても有名らしい。

 

「龍くん、綺麗だね…」

 

「ああ、思ってたよりすごいや…」

 

船に乗って海に出たのは良いが、俺は夜なので暗くて何も見えないのではないかと思っていた。

 

だけど、そんなことはなかった。星や月の光が海に反射したりしてとても美しかった。こんな時間に船に乗るのは初めてだから俺は驚いた。

 

「綺麗でしょ?この景色を龍くんに見せたかったんだ!」

 

「そうだったの?」

 

「だって龍くんは綺麗な夜景を見るのが昔から好きだったでしょ?よく果南ちゃんと星を見に行ってたのを覚えてるもん!」

 

「よく覚えていたね。とても綺麗だし本当に来てよかった。誘ってくれてありがとう」

 

「どういたしまして!」

 

曜は本当にすごいな。俺が夜景を見ることが好きだということを未だに覚えてくれていた。とっくの昔に忘れたものだと思っていたから嬉しかったな。

「そうだ。龍くんは今日が何の日なのか覚えているよね?千歌ちゃんだって忘れたことが無かったから龍くんは当然わかるよね?」

 

「今日?4月17日、曜の誕生日だ。俺が幼馴染の誕生日を忘れるわけないじゃないか」

 

「心配する必要も無かったね」

 

俺が仲間達の誕生日を忘れるわけがない。心配する必要なんてないのにな。

 

「だったら用意してくれてるよね?私への誕生日プレゼント!」

 

「あるよ。でも、貰って当然みたいな顔してるやつにはあげたくないなぁ」

 

「そ、そんな顔してないよ!プレゼントを楽しみにしてたのは本当だけど…」

 

「ちゃんと渡してやるから大丈夫だ。曜の欲しがるものが分からなかったから俺の好きに選んだけど問題ないかな?」

 

「大丈夫だよ!」

 

「よかった…これだよ!」

 

俺は曜に隠し持っていた紙袋を手渡した。

 

「ありがとう…開けてもいい?」

 

「ああ」

 

曜は紙袋を丁寧に開ける。その中に入っていたのは船の船長の帽子だった。

 

「これって…」

 

「曜は昔から船の船長になるのが夢だっただろ?俺はその夢を応援する。曜が夢を叶えて船長になった時にその帽子を被って航海に出かけてくれたら嬉しいよ」

 

このプレゼントは曜にエールを送る意味でもある。そのために選んだからな。

 

「本当に嬉しいよ。ありがとう、この帽子は最初の航海で絶対に被っていくよ!」

 

「どういたしまして。曜、絶対に船長になれよ。応援しているからさ!」

 

「龍くんも。絶対に自分の夢を叶えてね!」

 

俺達はこの場所でお互いにエールを送った。曜は自分の夢に向かって進み始めている。俺も彼女に負けてはいられない。俺達の乗っている船はいつの間にか港に到着していた。

 

人生は船旅と同じでいつかは終わりを告げる。いつの日か俺達が離れ離れになる日が来ても、二人を繋ぐこの想いだけは決して離れることがありませんようにと強く願った。

 

To be continued…

 




投稿するのが少し遅くなってしまいましたね。(この前からずっと戦国BASARAをやってたからなんて言えない…)

それではまた。


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外伝 Shining road

お久しぶりです。

今回の話は完全に架空の設定ですのでよろしくお願いします。

鞠莉ちゃん誕生日おめでとう!




俺の彼女には笑顔が良く似合う。いや、暗い顔が似合わないと言ってもよいだろう。しかし彼女が留学していた時は両親ですらこんなに眩しい笑顔は一度も見なかったらしい。

 

 

理由はわかっている。仲間達との夢を諦め、半ば無理やり留学という道を選んだからだ。誰だって本気で目指していた夢や目標を諦めることになったら悔しいし当分立ち直れないだろう。しかし、彼女はそれでも笑っていた。いや、彼女のことだ。無理にでも笑顔を作っていたのだろう。

 

 

日本に帰ってきて理事長になり、ダイヤさんや果南姉さんとの衝突を乗り越えて今に至る。そして彼女が本当の笑顔を取り戻した日に俺達は恋人となった。

 

 

それからの彼女は心の底から笑うようになった。幼馴染み達と共に一度捨てた夢をもう一度追いかけられるのが嬉しかったのだろう。それは勿論良いことだ。だが、俺には満足出来ないことが一つだけある。

 

 

 

それは俺が彼女の力になれていないことだ。

 

 

 

ダイヤさん達と衝突した時もそれっぽい事を言っただけで殆ど役にはたっていないと思うし、そもそも自信を持って彼女の力になれてると言えない時点でダメだと思う。

 

 

早くこのモヤモヤした気持ちをどうにかしなければな…俺はそう思いながら眠りについた。

 

─────────────────────

 

次の日、俺は鞠莉とデートに行く約束をしていた。正直こんなにモヤモヤした気持ちで鞠莉と会うのは失礼だと思っていたが向こうが無理やり店やら何やらを予約してきたので行くことになってしまった。

 

「今日はリューゴとこうやってデート出来て嬉しいわ。貴方は楽しいかしら?」

 

「あぁ、楽しいよ」

 

こんな悩みは誰にも言えない。こんな時に人を頼ることが出来ないなんて俺はやっぱり弱い人間なのかもしれないな…

 

「リューゴ、貴方…悩み事があるのね?」

 

「なんでそれを…?」

 

「貴方はわかりやすいのよ。自分では全然気づかれてないと思っててもね。多分私以外でも気づいてる人はいたと思うわ」

 

「そ、そうなのか…」

 

鞠莉の言う通り、自分ではバレてないと思っていたけどそうはいかなかったらしい。ポーカーフェイスはもう少し鍛えないといけないみたいだな。

 

「そうだな…俺は本当に鞠莉の力になれているのかなって思っただけだよ。俺は鞠莉が留学していた時のことは殆ど知らない。そんな人間の意見が本当に鞠莉の役にたつのかなとか思ったんだ…」

 

「リューゴ…」

 

「鞠莉がどんなに悩んでたのかも知らずに変なアドバイスばっかりしててすまなかった。全く役にたたなかったよな…」

 

言ってしまった…このことを言うだけで俺達の関係はどう変わってしまうのだろうか。鞠莉だったら大丈夫。きっと心のどこかでそう思ってしまっていたのだろう。俺は最悪の事態を覚悟して鞠莉の次の言葉を待った。

 

「そんなことないわよ!」

 

「鞠莉…」

 

「貴方のアドバイスが間違っていたことなんて一度もなかった。私は貴方のおかげでいつも通りの日々を取り戻せたの。だからそんなことを言わないで!」

 

「だけど俺は…」

 

「自分では何も出来ないと思っているのでしょう?だけどそれは大間違いなのよ。私もダイヤも果南も貴方に救われたんだから!」

 

俺の言葉で鞠莉だけでなくダイヤさんや果南姉さんも救われていた…正直自分の言葉にここまで影響力があるとは思わなかったから驚いたな。それに鞠莉は俺のおかげでいつも通りの日々が取り戻せたと言ってくれた。それだけで俺の悩みとか苦労が報われたような気がした。ありがとうの一言だけで全てが報われるってのは本当だったようだな。

 

「そうか…それならよかったよ…」

 

「ふふ、本当に貴方は手が掛かる子ね。そんなに自己評価を低くすることなんてないのに」

 

鞠莉の言うことがごもっともすぎて俺には返す言葉もございません…

 

「うっ…ごめん…」

 

「まぁ貴方のそういう自分に正直なところが可愛いかったりするんだけどね♪」

 

「いや、俺は男だし可愛いって言われても全く嬉しくないよ。それに俺よりも鞠莉の方が何倍も可愛いんだからね」

 

「かわっ…貴方っていつも唐突にそういうことを言うのね。まぁ別にいいんだけど///」

 

「ところで…今日はどうする?鞠莉がよければこのあと俺の家で朝まで…」

 

「うっ…貴方からそんなことを言われる日が来るなんてね…私は別にいいわよ。今日は絶対に貴方のことをメロメロにしちゃうんだから!」

 

「望むところだ。その前に俺が鞠莉をトロトロにしゃうんだけどね。精神的にも物理的にも…」

 

「ッ…!リューゴのバカ!」

 

この後は俺の家でまぁ…そんな感じの展開になった。俺達の平和な日常はこれからも当分の間続きそうだ。

 

To be continued…

 




時間がない中で無理やり仕上げたせいでクオリティが大幅に下がっています。時間がある時に加筆修正するつもりなのでよろしくお願いします。

それではまた。


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外伝 Blood Lucifer

お久しぶりです。リアルで色々と忙しくあまり更新できない状態になっています。これから少しずつですが本編も進めていきたいと思っています。

善子ちゃん誕生日おめでとう!



「リュウ!早く来なさい!」

 

「ちょっ!早いって!」

 

7月某日、俺は堕天使ヨハネこと津島善子に呼び出され、どこかに連れていかれる途中だった。

 

「休みの日に呼び出すのは別にいいけどさ、少しはこっちの都合も考えてもほしかったよ。俺はさっきまで部活だったんだからなー」

 

「あら、それは悪いことをしたわね」

 

「まぁ気にしなくていいぞ。久しぶりに善子と遊ぶのも楽しみだったからさ」

 

そう言って善子の頭を撫でると善子は少し恥ずかしそうな表情をしているのが見えた。

 

「か、勝手に頭撫でるの辞めなさいよ!貴方は他の女の子にもそういうことをしているの?」

 

「まぁな、千歌とか曜とか…あ、俺も果南姉さんに撫でてもらったこととかもあるぞ」

 

「幼馴染みだからまだ良かったけど貴方のそういうところは少しずつでも直さなきゃダメよ。じゃないと貴方は将来女たらしの称号を得ることになるわよ」

 

「それは嫌だなぁ…気をつけるわ」

 

そう言いながらも俺の手は善子の頭を撫でることを辞めていなかった。

 

「だから!それを辞めなさいって言ってるのよ!」

 

「おっと、すまんすまん」

 

女たらしか、それは嫌だなぁ…

 

「ところで今日はどこに行くんだ?」

 

「今日は沼津から少し離れた場所でアニメのイベントがあるから一緒に行ってほしいの。貴方の好きなアニメでもあるから楽しめるはずよ」

 

「なるほど。それは楽しそうだな」

 

「あとは時間があればだけど私の家でゲームでもやりましょ。1人よりも2人の方が早く終わりそうなのよ」

 

「りょーかい。まだ早いけど来てよかったかもな。最初は断ろうとも思ってたし」

 

「まぁ断られても文句は言えないわね。距離もかなりあるしそもそも私が少し強引に誘ったからなんだし」

 

俺と善子が行く会場は沼津から電車で1時間ほどかかる場所だ。静岡は横に長いから県内を電車で移動するのも結構大変だ。

 

「ふぅ…今日の練習も大変だったよ。居眠りしないようにはするわ」

 

「女性とのデートで居眠りするとか非常識すぎるから気をつけなさいよ。移動中の電車で寝ちゃうのはまだ仕方ないとは思えるけど」

 

「りょーかい」

 

そんな他愛のない会話を続けているうちに電車がやってきた。乗ってる人はあまり多くなかったから少しは楽になったかな。

 

「それにしても善子もあのアニメが好きだったとは思わなかったな。俺は原作派だからアニメはそこまでがっつり見てないけど」

 

「あのアニメは原作がすごく人気じゃない。主人公達が成長して強大な敵に立ち向かうってのが王道だけどとても面白いのよ。布線もまだ沢山あるし、あの作者は天才だと思うわ」

 

「それはわかるわ。続きが気になって眠れなかったりするんだよなぁ…」

 

一時間も電車に乗るのは大変だと思っていたが、気づいたら目的地の最寄り駅に着いていた。善子との会話が途切れなかったおかげで退屈せずに過ごすことが出来た。

 

──────────────────────

 

一時間後、俺達はようやくイベントの会場にたどり着くことが出来た。

 

「移動だけでもかなり疲れるな」

 

「貴方は練習後だから仕方ないわよ。先に言っとくけど無理はしないでね」

 

「お気遣い感謝するよ」

 

会場の中に入ると大きなオブジェクトが沢山並んでいるのが見えた。主人公と強大な敵というシンプルなものであったが、クオリティがとても高かった。

 

「すげぇな…」

 

「でしょ?来てよかったわ」

 

その他にも様々なブースや露店があってとても楽しかった。イベントの中には原作のこれからを感じられるような部分もあり大盛況だった。

 

「やっぱ団長はカッコイイな。俺はあの人が死んだらショックでしばらく何も手につかなくなると思うわ」

 

「私はヒロインの子が好きね。主人公をどうにかして助けたい。守りたいっていう気持ちに憧れるわ」

 

「俺も大切な人を守れるような強い人間になりたいなぁ…」

 

「貴方ならきっとなれるわよ。現に私達は貴方に守ってもらってるようなものじゃない」

 

「そう言ってくれるのはありがたいよ。でも俺はそんな大層なことはできないと思うぞ。なぜなら昔に間違いを犯しちまったんだからな」

 

善子達を守ってやりたい。助けてやりたいと心の底から思っているのは本心だ。でも俺にそんな大きな力はない。俺が持っているのは他人ではなく自分を守れる力だけだ。それだけじゃ何の意味もない。

 

「貴方の過去は千歌さん達に少し聞いたわ。大変だったらしいね」

 

「全然大変じゃなかったさ。あれは俺が勝手にグレてただけだし。自分勝手に行動していただけさ。色々やらかしちゃったし千歌達にもこっぴどく怒られたり心配かけさせてしまったからなぁ…」

 

「過去は過去。悔やんだところで過去が変わるわけじゃないし今の貴方は私たちにとってかけがえのない存在になってるんだからそれで充分じゃない」

 

「けどさ、やっぱ完全にやり直すってのはなかなか厳しいものもあるよ。一度道を踏み外したらそのレールに沿って生きるしかないのかもな」

 

「それは違うと思うわ」

 

「善子…」

 

「貴方は昔のことなんか引きずる必要はないのよ。私はその頃のリュウのことなんて全然知らないわ。でも今ではこんなに立派になってるんだからね。絶対に成長はしてるわよ」

 

「お前は俺の母親かよ」

 

「うるさいわよ。このヨハネがせっかくいいことを言ってあげてるんだから感謝しなさいよ」

 

「お前達が俺に感謝してくれてるのと同じくらい…いやそれ以上に俺もお前達には感謝しているよ。本当にありがとな」

 

無意識のうちに俺と善子の手が繋がれていたことに気がついた。多分善子が俺を安心させるために握っていてくれたのだろう。

 

「あら、貴方が感謝の気持ちを伝えるなんて珍しいわね…明日は内浦に雪が降るのかしら…」

 

「うっせぇ」

 

俺と違って彼女達は決して道を間違えたりはしないだろう。いや、仮に間違いを犯したとしても俺が止める。それがやり直すことが出来た人間のやるべき事なのだと俺は思っているから。

 

To be continued…




それではまた。


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外伝 みかん色の夏

こんにちは大天使です。腕の負傷のため遅れてしまいました。申し訳ないございません。




「はぁ…」

 

俺、海藤龍吾は幼馴染みである高海千歌に散々振り回されている途中だった。

 

「龍ちゃん!何やってるの!こんなところでのんびりしてる暇なんてないんだよ!早く私についてきてよ!」

 

「へいへい…」

 

「返事はしっかり!」

 

長い時間俺のことを連れ回し続ける千歌はいつも以上に強引なように見えた。

 

「ど…どうしてこんなことに…」

 

──────────────────────

 

これは今日の朝のことだ。部活に行くための準備をしていた俺に千歌から電話がかかってきた。

 

「もしもし、龍ちゃん?」

 

「千歌か、どうしたんだ?」

 

「龍ちゃんはさ、これから時間あったりする?」

 

「時間?いや部活あるからそんなにとれない。すまねーな」

 

「そ、そう…龍ちゃんも忙しいんだからしょうがないよね。あはは…」

 

電話越しに聞こえる千歌の声は誘いを断られてとても残念だというように聞こえた。

 

「全くしょうがないな…練習終わったら連絡するからな。」

 

「え?どういうこと…?」

 

「千歌の用事に付き合ってやるってことだよ。あんまり長い時間はとれないと思うけどな」

 

「龍ちゃん…ありがとー!」

 

「いいってことよ。」

 

千歌にそれだけ言い残し俺は電話を切った。

 

「はぁ…付き合ってやるって言っちまったけど今日の練習はいつもよりハードなんだよなぁ…俺の体力が持つかだけが心配だわ…」

 

俺の頭の中は不安でいっぱいだった。

 

その日の練習は確かにハードだったら苦ではなかった。俺は全体での練習後の自主練も早めに切り上げ、千歌との待ち合わせ場所へと向かった。

 

「よぉ…待たせたな…」

 

「もう!遅いよ!」

 

「忙しい中で時間を割いて会いにきてくれた俺のことをほんの少しでも褒めて欲しいものだがな」

 

「ふぅん、それは感謝するよ」

 

「そうかい…」

 

「じゃあ早速行くよ!覚悟しといてね!」

 

「は?ちょっと待てって!」

 

そこから俺は千歌に散々振り回された。それは一日で回るのも辛いと思われるほどだった。そして今に至る。

 

─────────────────────

 

「つ、疲れた…」

 

「お疲れ様、大変だったね」

 

「誰のせいじゃい」

 

俺と千歌は海沿いの公園で少し休むことにした。俺達が幼い頃からよく来て遊んでいた場所だ。

 

「膝枕してあげるから横になって。龍ちゃんも部活とかで疲れてるでしょ?」

 

「ありがとな」

 

俺は千歌の言う通り膝の上で横になった。女子特有の甘い匂いが鼻をくすぐった。

 

「どう?」

 

「ああ、めっちゃ気持ちいいよ」

 

「えへへーありがと♪」

 

(やっべ…千歌の膝めっちゃ気持ちいい…なんだか急に眠くなってきたな…)

 

龍吾は当然襲ってきた睡魔に抗うことが出来ずにそのまま深い眠りへと落ちていってしまった。

 

─────────────────────

 

「あれ、寝ちゃってる」

 

私に膝枕をされたままの状態だった龍ちゃんはいつの間にか寝てしまっていた。龍ちゃんも疲れてるんだから仕方ないかな。

 

「龍ちゃん…」

 

千歌は自分勝手に龍吾のことを振り回している自分が好きではなかった。今日もそうだ。彼が忙しい中で急に呼び出して迷惑をかけてしまっている。

 

「龍ちゃんが忙しいことなんてわかってる。それでも今日は…今日だけはどうしても龍ちゃんと一緒に過ごしたかった…」

 

「龍ちゃん、私の気持ち…受け入れて…」

 

「………わかってたさ。そんなの…」

 

「り、龍ちゃん!?起きてたの?」

 

「今起きたばっかりなんだよ。それよりもよ…千歌」

 

「なに…?」

 

「…お前の膝さ、ちょっと硬くなってきてるな。Aqoursの練習頑張ってるんだな」

 

「え…?うん…」

 

龍ちゃんはなんか私のことをとてもよくわかってるみたいだったけどやっぱり違うような気もする…本当はどっちなんだろう…?

 

─────────────────────

 

気がつくと空は紅く染まっていた。随分長い時間寝てしまっていたようだ。

 

「そろそろ帰るか。俺は明日も部活あるし。千歌も練習あるでしょ?」

 

「うん。そうだね…」

 

そう答えた千歌は少し寂しそうに見えた。笑ったり怒ったり寂しがったりほんとに忙しいやつだな…

 

「そんな顔すんなって。また付き合ってやるからさ。今度はもう少しゆっくりしたいけどな」

 

「…うん!」

 

千歌の顔には笑顔が戻っていた。そして俺は鞄から箱を取り出し千歌に渡す。

 

「千歌…誕生日おめでとう!」

 

「…え?」

 

突然の事で驚いたのだろうか、千歌はその場で固まってしまった。

 

「おーいどうした?」

 

「…覚えててくれたんだね!」

 

「あたり前じゃないか。俺が千歌の誕生日を忘れるわけないし毎年祝ってたでしょ?」

 

「うぅ…そーだけど…」

 

千歌は目に涙を浮かべていた。でもそれは悲しくて流す涙じゃない。嬉しくて流す涙だった。

 

「全く…千歌は本当に忙しいやつだな…」

 

俺は千歌を抱きしめ、耳元でこう囁いた。

 

「これからもずっと俺の傍にいてください…」

 

千歌、誕生日おめでとう。

 

To be continued…

 




遅れましたが千歌ちゃん誕生日おめでとう!

それではまた。


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外伝 君と夢見る未来、永遠の輝き

私の推しキャラである梨子の誕生日小説となります。本当は作品別に違う話を投稿するはずでしたが、時間が無く同じ内容となってしまいました。あらかじめご了承ください。

梨子誕生日おめでとう!



まだ少し暑さの残る9月の後半。数人を除いた俺達はスクールアイドル部の部室に集合していた。

 

「さて、準備はいいかな?」

 

「オールオッケー!」

 

「大丈夫だよー!」

 

今日は9月19日。Aqoursのメンバーの1人で俺の大切な人である梨子の誕生日なのだ。それで他のメンバーにも梨子の誕生日を一緒に祝ってほしいと頼んだのだ。

 

「みんなありがとな。俺のわがままに付き合って貰っちゃってさ」

 

「龍吾は千歌とは違って普段からわがままなんて言わないからたまにはこういうのも新鮮だよ。それに梨子の誕生日を祝いたいっていう気持ちはみんな同じだからね」

 

その言葉を聞いただけで俺は本当にいい仲間に巡り会えたのだなと思う。

 

「今梨子はどうしているんだ?夕方には来てくれるように言ってあるけど」

 

「千歌と曜が連れ回してるよ。絶対に勘づかれないようにしてくれって念を入れといたから多分大丈夫だよ!」

 

「そっか。了解した」

 

「よし、こっちも早く終わらせちゃおうよ!」

 

「そうだな!」

 

そのまま俺達は準備を続行する。少しでも彼女を喜ばせたい。その一心で俺達は黙々と作業を続けるのであった。

 

─────────────────────

 

「…はぁ」

 

「梨子ちゃん?どうしたの?」

 

私と曜ちゃんは龍ちゃんに頼まれて学校へ行く時間まで梨子ちゃんを連れ回すことにしていた。でも梨子ちゃんはせっかくの誕生日だっていうのにずっと浮かない顔をしていた。

 

「彼だって忙しいし私のこともしっかり考えてくれてるってことはわかっているつもり。それでも最近はなかなか2人でゆっくりすることが出来ないから寂しいの」

 

「そっか…」

 

確かに最近は龍ちゃんと梨子ちゃんが2人で過ごしている姿を見ることが少なくなっていたような気がした。凌ちゃんは未だに梨子ちゃんにベタ惚れだってことは知ってるからあまり心配はしてなかったんだけどね。

 

「私って地味だから飽きられちゃったのかな…」

 

「そんなことないよ!」

 

「曜ちゃん?」

 

私の隣で黙って話を聞いていた曜ちゃんが声を上げた。そしてこう続ける。

 

「梨子ちゃんはいつも自分のことを地味だって言ってるけどそんなことはないと思うよ。それに龍くんは絶対に梨子ちゃんに飽きたりなんかしてない!それは私が保証するよ!」

 

曜ちゃんは私が思ってたことを全部言ってくれた。梨子ちゃんはこれでもう大丈夫。あとは龍ちゃんのことを信じよう。

 

「はい。ちょっと暗い話はここまでにしよう。今日は梨子ちゃんの誕生日なんだから楽しく過ごさなきゃね!」

 

「千歌ちゃんの言う通りだよ!夕方には学校に行かなくちゃならないけどそれまでは3人で遊ぼ!」

 

「千歌ちゃん…曜ちゃん…うん!」

 

それから私達3人は学校へ行く時間になるまで楽しい時間を過ごしたのでした。

 

──────────────────────

 

「結構リフレッシュ出来たでしょ?」

 

「うん、楽しかったよ」

 

「それじゃそろそろ学校へ行こうか。遅れたら怒られちゃうしね」

 

「そうだね」

 

千歌ちゃんと曜ちゃんと1日楽しく過ごした私は海藤くん達に言われた通りの時間にスクールアイドル部の部室に向かっている途中でした。

 

「梨子ちゃんも元気になってよかったよ!」

 

「これも2人のおかげだよ。ありがと♪」

 

「えへへ、どういたしまして」

 

その後も3人で色々な話をしている間に部室に到着していました。しかし…

 

「あれ?部屋の明かりついてないね」

 

「先に屋上にでも行っているんじゃないかな」

 

そう言いながら私がドアノブに手をかけた瞬間

 

「「誕生日おめでとう!」」

 

突然の海藤くん達の登場で私は頭の中が混乱していました。私は部屋の明かりがついてなかったからみんなは先に屋上にでも行っているのかと思ってました。

 

「え?あ、ありがとう…」

 

「あちゃーやっぱり混乱しちゃってるか。」

 

「少し説明してくれるとありがたいかな…」

 

私は海藤くん達から今日のことについて説明を受けました。千歌ちゃんと曜ちゃんがみんなとグルだったことも…2人ってどちらかと言えば考えがわかりやすい方だから気づけなくて結構悔しいかも。

 

「そういうことだったのね…」

 

「騙すつもりじゃなかったんだ。ごめんな」

 

「ううん。大丈夫だよ。むしろ嬉しい!」

 

みんなが私のことをとても大切に思っていてくれたことがわかってとても嬉しかった。やっぱり私はとても良い仲間に巡り会えたんだなぁ。

 

「改めて梨子。誕生日おめでとう」

 

「海藤くん…ありがとう!」

 

「チョットー!私達のことも忘れちゃダメよ!」

 

「今日は梨子さんにとって特別な日なのですからね。私達にもお祝いさせてくださいな」

 

それから私達は時間を忘れ、空に菫色の星が輝き始めるまで楽しい時間を過ごしていたのでした。

 

─────────────────────

 

「みんな、今日は本当にありがとう。気を付けて帰ってください!」

 

「龍ちゃんも梨子ちゃんのこと頼んだよ!」

 

「ああ!任せろ!」

 

楽しかった時間はあっという間に過ぎ、満天の星空が広がり始めた頃。俺達は学校を後にし、それぞれの帰路についていた。俺の隣には梨子も一緒にいる。

 

「海藤くん、今日は本当にありがとう」

 

「気にすんな。大好きな梨子のためならあんなのお安い御用だよ」

 

大好き。その言葉を伝えるだけで梨子の顔は真っ赤になってしまっている。俺達が付き合ってから結構経つが、彼女は未だにこういうのは苦手なようだ。

 

「これからどうすんだ?俺は帰るけどさ」

 

「お父さんとお母さんは今日はもう帰ってこないの。だから海藤くんの家に泊まってもいい?」

 

「ああ、大丈夫だよ」

 

今日は梨子と一緒に家に帰ることになった。だが、俺にはまだやらなきゃならないことがある。

 

「なぁ梨子、ちょっと寄り道してもいいか?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

俺達はそれからしばらく手を繋いだまま歩き、海の見える砂浜までやってきた。

 

 

ここは俺達にとって思い出の場所だ。

 

 

この場所で俺達は出会い、この場所で俺達は恋人同士になった。今となっては本当に懐かしい場所だ。

 

「やっぱりここは綺麗な場所ね」

 

「さて、君へのプレゼントをまだ渡してなかったね。少し待たせてしまったけど俺はどうしてもここで渡したかったんだ…」

 

俺は梨子に小さな箱を手渡す。中身はペアの指輪だ。鞠莉さんは梨子への贈り物に最適な物を紹介してくれると言ってくれたけど俺はどうしても自分で選びたかった。鞠莉さんには少し申し訳ないことをしてしまったな。

 

安物だけどこれで俺の所持金のほとんどが消えたことは彼女には内緒だ。

 

「綺麗…」

 

「今は安物の指輪しか渡すことは出来ないけどいつかもっと立派な物を君に渡す。約束するよ」

 

「海藤くん…嬉しい!」

 

「梨子、こんな俺と一緒にいてくれて…生まれてきてくれてありがとう。愛してるよ…」

 

「海藤くん…私も愛してる…」

 

2人の影は少しずつ近づいていき、そしてゆっくりと重なった。2人の手元には月と星の光を浴びて輝きを放つ指輪が見える。空に永遠と輝く星のように俺達の輝きが消えることは無い。いつまでも。ずっと。

 

To be continued…

 




ありがとうございました。

それではまた。


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