触れるもの皆殺すマン (アストラ9)
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第一話 始まりは墜落現場で。
どうも。作者です。
あらすじとか後から見てみると、結構酷いですね。なんだろう、疲れていたのかな……。
それはともかく、本作を読むにあたって注意点があります。
・俺TUEEEE!! 的な要素。
・無双状態。ライバル? そんなもん存在せんよ。
・孤独の主人公。ヒロインなんているのか?
・人が頻繁に死ぬ。
・文章が多分おかしい。怪文になる可能性も。
・その他、欠点が判明しだい、追加します。
……以上となります。
あ、それと中傷だけはおやめください。結構ヘコみますんで。
それじゃこんなくだらない話はここら辺で。
本編、どうぞ。
始まりは唐突だった。
目が覚めたら何処だか知らない森の中に居たんだ。
ジャングルみたいに、つる草や大木が育ちきった植物がそこら中を埋め尽くし、太陽の光が所々からしか差し込まないような場所。
此処が日本だなんて、到底思えなかった。
意味が分からない。
そもそも何故、自分がこんな所にいるのか。
自分は根っからの地元派だ。外国には絶対いかねえ、日本に永住するんだと、ずっと思って居た。
それがどうして、7◯時間極サバの収録地的な場所に来なきゃいけないんだ。
まさか俺にサバイバルでもしろと言うのか? インドア派のこの俺に?
頭が痛くなってきた。
この意味不な現状が理解できず、頭を抱え込む。
ああ、これが夢ならいいのに。そんな事を思っても、コレは夢ではない。
その証拠に、先ほど鉄塊にぶつけた足の小指は未だにヒリヒリしている。
そこで気が付いた。
鉄塊? コレはつまり、文明品ではないか?
よく見てみれば、それは何かの破片に見える。先が尖っていて、とても危なそうだ。
これが指に刺さっていたと思うと、震えが止まらない。
それはともかく。
こんな文明品(の残骸)があるという事は、文明人がいるという事だ。俺のような遭難者を受け入れてくれるかもしれない。
そして俺は、周りをキョロキョロと見渡してみる。
前。居ない。
右。居ない。
左。テントとそれの何十倍ほどの
一瞬だけ、救いが見えた気がした。
テントがある。それは化学繊維的な素材でできていそうな青色のテントだった。
だから俺は思った。俺と同じ日本人がいるのではないか、と。
すぐに向かおうと思った。
思ったが……その横にあるガレキを見て、驚愕してしまった。
それは大きな板にタルのような物を二つ付けた物体……詰まる所、飛行機の翼に非常に類似していたのだ。
コレを見た瞬間、嫌な冷や汗が身体中を巡る。
まさか、俺は……、と最悪のビジョンが脳裏に映る。
それと同時に、自分も真下にある一際大きな影にも気が付いてしまう。
大木によって出来ていたと思っていたその影には、木の葉の隙間が見えない。
これが意味する事とは——!!
嫌な不安を抱きながら、180度回転する。
後ろを向いてはいけない、立ち直れなくなってしまう。
そんな脳信号を無視して、振り返る。
出来れば、俺の予想が外れてほしい。そう思っていた。
決死の覚悟で振り返ると、そこにあったものは……頭と胴が分裂した、飛行機の残骸だった。
……なんだコレはドッキリなのか。
そう思う程に、俺の思考はストップした。
現状を確認しよう。
俺が目を覚めると見知らぬ森の中にいた。
周りに人はいない。
真後ろにはぶっ壊れた飛行機がある。
その周辺には乗客のものであろうキャリーバックなどが沢山落ちている。
コレはつまり……飛行機が落ちて、遭難したという事か?
いや、だとしたら他の乗客は何処へ行った?
見た感じ、人らしい人は見かけなかった。誰かが張ったであろうテントも、同様だ。
勿論、飛行機の中も探した。胴体も、頭部の方も。
その結果分かったのは、客も、客室乗務員も、
客や乗務員が居ないのも意味が分からないが、パイロットすら居ないというのも意味が分からない。
仮に生きている全員が逃げたとしても、少なからず死体があるはずではないか?
見た感じ、飛行機は不時着でもしたんだろうし……そのせいで頭と胴が割れたんだろ?
そんな衝撃があって死傷者ゼロはあり得ないのだが……ダメだ。考えてもラチがあかない。
とりあえずこの件は保留にしよう。
今は生き残る事が先決だろう。
逃げるは恥だがなんとやら、ドラマでもやっていたことだが、地を這い蹲り廻ってでも生きる事が第一なのだ。
武士道のような、戦いの中なら死ぬのは名誉なのだ! 的思想に囚われてはならない。
第一、俺は死にたくない。仮に死ぬとしても、日本で死にたい。まあ生き延びるのが一番だがな。
さて、という訳で早速、物資を漁ってきた。
そこら辺に転がっていた木の棒やキャリーバック、機首にあった小品など、様々だ。
数が多いので、全部とは行かなかったが。
物資集めはバックなどを集めるだけだから順調に進んだ……と、言いたいところだが。
そこで事件が起こった。
いや、事件と言うよりは現象だが。
順を追って説明しよう。
まず俺は手始めに、キャリーバックを集めようと思った。
ピンクや黒、青など、色様々だ。大きさも違う。
よりどりみどりだぜ! と、息込んで近場のキャリーの取っ手に手を掛けたのだが……なんだかとても、軽かった。
で、最初に俺が立っていた場所にキャリーバックを投げ捨てた。
するとそこには先ほど拾ったピンクのキャリーが落ちて……はおらず、キャリーの取っ手のみが落ちていた。
は⁉︎ って思ったね。ネタ的に言うならば、なんとかかんとか〜ちゃちなもんじゃねえ、か?
いやだってキャリーバックを投げ捨てたと思ったら取ってしかないんだもん。
慌てて付近を探してみるも、何処にもない。
あれ? と思いキャリーを拾った場所に戻ると……あった。
キャリーの取っ手から下半分
これだけなら、なんだ、取っ手との接合部が壊れてたのかな、とか思うけど。残念ながら俺には、そうは思えなかった。
だってキャリーが
外殻は真っ二つにされていて、中身は全部外に出ていた。
その中身も中身で、袋から出されていたり、フード付きの服は服とフードが別れていたり……etc。
キャリーがポンコツ性能だったとか、そんなレベルじゃなかった。
逆になんで此処までの惨状に出来るんだと、文句を言いたいくらいだった。
フラッと、頭を抑えながら倒れそうになる。
もうイロイロと分からない事、特に意味不明な事が多過ぎる。正直、この現状にイヤイヤしていた。
そんな時、フラッとしていた時に近くの大木に寄りかかったのだが……浮遊感を感じた。
その次に見えたものは……所々から太陽の光が見える、木の葉の大群だった。
寄りかかったと思ったら地面にベットイン。
ふざけている。そうとしか思えない。
イライラしながらも、立ち上がって後ろを振り向いてみる。
ムカつく事には変わりないが、何が原因なのか調べたくなるのが、人間である。それは俺も同じ事。
で、後ろを振り向けば原因が分かったのだが……これまた意味不現象。
3本に均等カットされたいる丸太が並んでいたんだ。
しかもそれら全てを合わせた長さと、俺が寄りかかった木の高さは全く同じではない。と言うか増えていた。
ここで俺の中で一つ、仮定が生まれた。
つまり、これらは俺が起こしたものなのだと。
勿論、理由もある。
大木も、キャリーも、どちらも見た感じではしっかりしたつくりだった。それは倒れた大木の断面図をみれば、一目瞭然だ。
それなのに、あんなにも脆く壊れるとは、考えられない。何か、アクシデントが起こらなければ、なるはずがない。
しかし、そのアクシデントはあったのだ。俺がこれらの素材に触ると言う、アクシデントが、な!
どちらも、俺が触って、ぶっ壊れたのだ。まあそれ以外に原因が見つからない、と言うのが最もな理由だが。
あ、質量が増えた原因? そんなもん知らんよ。この意味不パワーを俺に与えた奴にでも聞いてくれ。
と言うわけで、俺は軽く実験してみた。
大木を手当たり次第にタッチしていったのだ。
もしの俺の仮定が外れているならば、それで良し。俺が解体マスターの道に入っていない事が証明される。原因も解明されないが。
逆に当たっている場合は……お察しください。
で、気になっている結果だが。
残念ながら、当たっちゃった。
俺が触れた大木全部がバッキバキに折れて、綺麗にカットされた丸太に早変わりしていった。しかも大木の時よりも質量が明らかに増えて。
……俺、マジで何かに取り憑かれてるんじゃないかな。
ただの一般人であった俺にこんな事、出来る芸当じゃない。というか人間には出来ないだろう。10秒掛からずに大木5本を丸太にするなんて。
と言うわけで、俺には仮称、『解体マスター』という力が備わっている事が分かった。
……なんかダサいな。『エキストリーム・解体』とか『出張! 解体王』とかの方が良かったか?
まあいいや。
とにかく、俺には物を解体する力が備わっている事が分かった。理由は分からんが。
この力があれば夢の、俺TUEEEE!! が出来る!! ……訳ではない。
まあ力だけみればできそうなんだけどね。だがこの意味不パワーには、欠点が二つある。
その一。動物には多分効かないこと。
まだ動物に触れていないから分からないが、多分効かないだろう。動物を解体って、どんな力だよ。目の前で解体された動物見たくねえよ。
その二。これが所謂『パッシブスキル』だと言うこと。
木の実を掴めば即破裂。大木に寄りかかれば即解体。
ああ、そう言えばちょっと前に飛行機の中を探したと言っていたよな? あの時にも
そしてこの意味不パワーが切れる事はない。つまり、俺はある意味危険人物だと言う訳だ。
……なんか泣けてきたわ。こんな意味不パワー貰っても、全然嬉しくないんだもん。
だってあれだよ、俺家にすら入れないって事だかんね。解体しちゃうからさ。
あ、でも解体しないで物を運ぶ方法を二つ見つけたよ。
まず一つ目。解体した物を触る。
俺の意味不パワーで解体された物は、何故かさらに解体される事は無かった。
一回だけ解体するのか、これがギリギリの解体なのか、そこはよく分からん。
なんで、丸太や木の枝とか、そう言うのなら運べた。
次。間接的に持ち運ぶ。
先ほど解体した木の枝なら持てると、そう言った。
なら、それを使って持つのなら、どうだろうか?
具体的には、キャリーの取っ手の部分の木の枝を突き刺す。
結果から言うと、出来た。
木の枝を引っ張ってならば、出来たのだ。
理由は分からないが、木の枝ならば出来た。つまり、解体品ならば、持つ事もでき、俺の意味不パワーも貫通しない。
この方法を駆使すれば、キャリーを集めるのも不可能ではない。
という方針の元、1時間近くキャリーとか漁っていました。
2、30個あつまったから、満足です。
だが……
「このあとやる事、何もねえ」
いや、結構マジで話で。
人里の方に行ったら俺は村の施設とか解体しちゃうだろうし。
かと言ってここに居ても何にもならない。
何をすれば分からない。自由系RPGとかでよく起こる、何すればストーリー進むんだ? 状態だ。
俺の苦難の日々は、ここから始まるのであった……。
「いや、始まんないけどね!」
■
さて、あれから1日が回った。
昨日の夜食は飛行機内にあった機内食を物色しました。ちょっと不味かったのは内緒である。
で、今日の朝食を調達しようと思って飛行機内を捜索して居たところ、面白い物を発見しました。
「俺のiPh◯ne5sが見つかったぜ」
柔らかいプラスチックみたいなカバーに入った、裏面に斜めの傷が入ったスマホ。
これはまさしく俺のスマホだった。
何故機内食の横に置かれてるのか分からなかったが、恐らく俺はこの席に座って居たんじゃないかと思う。……普通はテーブルから滑り落ちるとは思うが。
とりあえず電源をつけ、パスコードを入れる。
6075。俺が自分のスマホに設定したパスコードだ。
これを入力すればスマホは開くはずである。
で、予測通りちゃんと開いた。このパスコードで開いたのだから俺のスマホという可能性は高くなった訳だ。
訳だが。
残念ながら中身はほぼ全て消え去って居た。A◯Pストアは無ければ、ゲームは無い。ようつべもないし、ニコニコもない。
奇跡的に残って居たのは、カメラや時計、ミュージックなど最初から入っている物を始め、入れた事の無いいくつかのアプリのみだった。
ゲームを消されたのは、自分的にはかなりショックだ。アプリを消した奴の顔、是非とも殴って踏ん付けてやりたい。
この意味不な現状の中、更に意味不なアプリなど、碌なものではないだろう。
とりあえず、そのほかのアプリに不具合がないか確認する。
カメラ……映り・シャッターに問題なし。動画もちゃんと撮れる。
ボイスメモ……正常に起動。
ミュージック……全音楽、破損なし。
時計……合っているか分からないが、等間隔で時は刻めているようだ。
マップ……自分の周辺しか表示されない。
天気……情報なし。
コンパス……正常に起動。木の輪郭からもおおよそ合っていると判明。
メモ……文字化けなし。日本語で書ける。
Safari……ネットに繋がらず使用不可。
設定……正常に起動。
計算機……正常に起動。
一通り起動してみて分かったのは、これだけだ。
一部以外はちゃんと使えるようで、安心した。
それよりも問題なのは、コッチだ。
『破壊レベル』と『レギュレーション』という謎のアプリ。
レギュレーションとは、アップデートのデータみたいなものだ。ゲームで言えば難易度調整とかがされたファイルの事だな。
で、このアプリにあった『レギュレーション』というアプリ。コレは意味不明なものだった。まあこの森に来てから意味不現象ばっか起こってるから、いい加減慣れたが。
で、何がおかしかったかと言えばだな……いや、言葉で伝えるより、実際に見せた方が早いな。
このレギュレーションというアプリの中には『ver1.0.0』という謎のファイルがあって、それを開くと、こんなものが出てくる。
『ver1.0.0 内容
・主人の触れるもの全てを
・常時使用します。
・一定のレベルに達したものの破壊を禁じます。』
『解体マスター』の元凶、お前かよッ!
みた瞬間、マジでそう叫んだからね。
この意味不パワーの元凶が、この変なアプリなんだから、俺、結構イラっと来たよ。
しかも何故か消せない。このアプリ、消去不可だったんだよ。
で、これはレギュレーションである。つまり、更にヘンテコパワーが追加されるかもしれないのだ。
勘弁してほしいね、全く。
勘弁してほしいといえば、『破壊レベル』の方もそうだ。
これは一言で言えば、"カウンター"だ。
あ、敵の攻撃避けてからパンチしたりするアレでは無いぞ。測る方だからな?
それでこのカウンターは一体何を測るのか、というとだな。読んで字の如く、破壊したもの全てだ。俺が破壊したもの全部。
大木、キャリーバック、つる草、飛行機、……etc。
俺が今まで解体して来た全てのものが載っていた。しかもご丁寧に解体した数もそれぞれカウントしてな。
これが意味する事はつまり……俺、監視されてね? って事だ。
機械が勝手にカウントしているという可能性もあるが、それでも他者が俺の行動を見張っていることに変わらない。
俺の行動は全てこのアプリを開発した奴に筒抜けの可能性があるのだ。
それはそれで、最悪である。まあMだったら話は変わるかもしれんが。
と言うわけで、俺は意味不パワーの根源であろうアプリを発見した。ついでにそれに関係するアプリも。
他にも色々探って行きたいところだが……
——ぐぅぅ〜〜
……残念ながら、腹の虫が収まりそうに無い。
とりあえずは、朝食の探索に戻るとしよう。
飛行機内での捜査を再開した。
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第二話 鳥そぼろご飯弁当
朝食を飛行機内から物色した俺は、大量のキャリーバックの山付近で、せっせと丸太を運んでいた。
それを今度は地面に突き立てて、何本も並べる。
丸太は結構重いが、引きずってから片端を持って持ち上げれば、無理という訳もない。
またその際に上手く立てれるよう事前に穴を掘り、その上にもう片端を浮かせれば、ちょっとしたテコの原理で簡単に立てれる。
その後に土を埋めて固めれば、とりあえずはOKである。
この作業を、先程立てた丸太に接する形で再度行う。
その後も、もう一度。
もう一度。
もう一度。
この作業を何度も何度も俺は繰り返す。
時折接する方向を90度回転させて、丸太を立てていく。
完成した今からみると、頭上からは"口"の形に見える。
「さて、完成だな」
聳え立つ丸太を一本蹴飛ばして、真四角防壁を一部崩壊させる。
これで中に入ることが出来る。
今俺が作ったこれは、家だ。
いや、家というよりは小屋……粗製小屋、というか現状ではまだ防壁でしかないけど。
最初に言っておくが、俺は人間である。
食べなければ腹減りで蹲るし、眠らなければ意識はすぐに刈り取られる。服が無ければ風邪をひくだろう。
そんな俺が、放浪者暮らしのサバイバルを、出来るはずが無い。
村などを見つけるというのも一つの案ではあるが、現状ではそれを行うのは躊躇われる。
何しろ、『解体マスター』という呪いのパッシブスキルが付き纏っているのだ。
俺が村に入った暁には漏れなく、村中の家が丸太と化す事だろう。
それはそれで面白そうな光景ではあるが、相手側からすれば迷惑以外の何者でもない。
故に、村の探索を行うのは得策ではないのだ。
……まあ、村がそもそも付近に無いっていう可能性もあるけど。
「あとは、これを被せて……っと」
先程作った丸太防壁の上に、そこら辺で拾ってきた大きめの葉っぱをいくつか被せ、その端に石ころを乗せる。
超脆性能屋根の完成だ。
葉っぱは、手をいっぱいに広げても足りないくらいの大きさであり、1㎡はくだらない面積がある。日本の百均で見た資料にあったが、外国のジャングルにあるような、なんとかイモの葉に似た見た目だった。
葉っぱも石ころも、俺の『解体マスター』の影響は受けないようで、普通に持てた。
普通って、ありがたいことなんだな。
さて、とりあえず家(とは呼べない屋根付き防壁)は完成した。
次作るべきなのは、やはり熱源だろう。
と言っても、やれる事と言ったら原始的な、摩擦によって火をつけるアレな訳だが。
正直言って、やれる自信がない。
だが、やるしかない。偉い人も言っていた、やるんじゃ無い、やりなさい! と。
「それじゃあ火付け用の道具はこれとこれと……これでいいか」
キャリーの山の隣に広げられた数々の(拾った)物品の中から、剥がれた木の表面のようなものと、丈夫そう枝、それと長めのつる草を手に取る。
向きを180度回転させ、目の前の落ち葉を見る。
自分が先程かき集めてきた、木の葉である。全て若干腐っているので、燃えやすいだろう。
勿論、外に燃え葉が広がらないように、石ころで囲んでいる。これには厚く葉っぱを敷き詰められるように、大きめの物を選んで使った。
「それじゃ早速、やりますか」
俺の高速回転術が、今こそ真価を発揮しようとしていた。
——衛生兵! 衛生兵ぇぇえええ!!
そんな音が、自分のポケットから鳴り響いた。
ポケットの中をのぞいて見ると、そこには自分のスマホがある。
どうやらスマホの着信音のようだ。
「んん? 誰だろうか、電話やメールと言った基本機能が消えた、このスマホに連絡を入れてくる奴は」
いや、連絡機能が消えたこのスマホはもはや、スマホと言えるのだろうか?
とりあえず、スマホを取り出して電源をつける。
電源がつくとすかさずパスコードを入れ、上から下へとスクロールする。
「でもまあ、この着信音は通知の奴だから、何かお知らせでも届いたのかもしれないな」
アンテナが一本も立っていないのに、通知が来るなんて、不思議な事もあるもんだと、嫌な予感に敢えて気付かないフリをする。
自分だって、なんとなく分かったのだ。通知を入れて来るであろう、相手が。
いやな予感を抱きながら、スマホの画面を覗きこむ。そして一番上のお知らせを見て……固まってしまった。
自分の予想通り、来てしまったのだ。
「……やっぱり届いたのか。新レギュレーション」
そこには、『
無言でアプリ、『レギュレーション』を開いて中身を確認する。
以前であれば中には一つのファイルしかないはずであった。が、今のファイル数は……2。
通知通り、新レギュレーションがインストールされていたのだった。
自らの携帯を地面に叩きつけたいものの、それをしてしまえば起動する最後の現代文明が消え失せる事になる。
イライラするのをなんとか抑えて、新レギュを確認しようと、新しいファイルを開く。
『ver1.0.1 内容
・主人の触れるもの全てを
・常時使用します。
・一定のレベルに達したものの破壊を禁じます。
・主人の身体能力を、二倍に増加させます。』
……なんか増えた。
いや、なんとなく俺を手助けしようとしているのは分かるよ。身体能力二倍、凄く有難い。
「いや手助けする気あるんだったら解体マスター削除しろよッ⁉︎」
まずサバイバルするって言うのにこの呪いの意味不パワーのせいでかなり辛い生活してんだよ。
道具つくれないし、家だって簡易的なものじゃないと住めないし。そもそも食料ですら解体(粉砕)するこの力、マジで邪魔過ぎるんだって。
身体能力二倍ってサバイバルする上でかなり有難い事だけどさ、その前にまず、この解体マスターを削除しろよ。
「ま、文句言っててもレギュは変えるけど」
レギュレーションの選択項目で、ver1.0.1を選択する。
どうせレギュレーションは二つしかないし、使うんだったら機能充実していた方が、俺的には有難い。
それに、この身体能力二倍と言うのだけ見れば、かなり魅力的な機能だからな。
「さてと、それじゃあ作業を再開するとしよう」
俺は再び回転摩擦の作業に戻った。
■
時間は過ぎ去って、深夜10時前。
現在辺りは暗くなってしまい、近場の様子以外はよく見えない。
が、自分のいる家(壁)の近くに焚き火がある為、全く見えないと言うわけではない。
それに、自分の視力が幾分か良くなったようにも思える。
「これが、"身体能力二倍"の力なのかなぁ……」
ポロリと、誰もいない空間で呟く。
身体能力と言われたら、自分がすぐ思いついたのは握力や脚力など、力に関係するものだけだと思っていた。
が、まさか内面まで強化されるとは、思ってもみなかったのである。
まあ自分の先入観による思い込みの可能性もあるが。
「そんな事よりも、これからのことを考えよう」
四分割された飛行機を見て、そう呟く。
今の自身の生活は、キャリーバックや機内食を漁って生活しているようなものである。
目が覚めたのが昨日ではあるが、機内食の消費期限がいつかはわからない。と言うよりも、もう切れているんじゃないかと言わんばかりである。
なにせ、自身の知らない所でかなりの時間が立っているかもしれないのだから。
となると、当然、自給自足の生活をする事になる。
最初の内は、果物を回収して食べるのも良いかもしれない。木の枝や葉っぱを駆使すれば、粉砕せずに回収は可能である。
が、時間が経つにつれ、それでは無理が出てくる。
肉や魚などに含まれる栄養を補給出来なければ、俺はこのまま死んでいくのみだ。
集めた機内食が食べれている内に、果物、動物を狩るサイクルを確立しなければならない。
また、水資源も必要だ。
現在はペットボトルのものと、果物の水分をとって生きているが、ペットボトルのものはいつか切れるし、果物の物では甘みの方が強い。口の中を綺麗にする事は難しいだろう。
そうなると虫歯やのどがやられるなどの症状が出て来るかもしれない。医者や医療知識のないこの場では極めて危険な状態だ。
となると必要なのは、水場と果物の木の確保と、動物を獲る為の道具、か。
前者二つは歩き回って探すことになるだけだろうが、後者のは難しいかもしれない。
ちゃんとした道具は解体マスターによってぶっ壊されるので、作れないからだ。
それに、戦い反対流血反対の俺に、動物を狩る、捌くことは難しいだろう。
となると必然的に簡易的な罠を使って捕まえ、簡単な血抜きをして放置、丸ごと干し肉にでもするしかない、か……。
それか俺が殺害や死体に慣れる事だろうな。
「うーん、やる事多すぎて頭が痛くなってきた……」
サバイバルではなくて、現代日本で普通に暮らしたいと、心からそう思った。
朝になった。
遭難三日目の朝である。
「さーて、早速やっていきますかー!」
軽く背伸びをして、身体をほぐす。
今日行うのは、付近の安全の確保だ。
現在、墜落した飛行機の近くに簡易的な小屋と焚き火を建て、なんとかギリギリの生活拠点を確保した。
だが、外装が出来ても内装が無ければ、動けなくなって死ぬだけである。
だが、今はそれより先にやる事がある。
つまり、外敵からの防衛策である。
周りを見渡してみる。
四方八方、見る限りの、木 木 木。
草が伸びきっていて、まさに自然の権威がむき出しだった。
植物天国のようだ、この森は。
そして、植物と言う名の餌があれば、当然草食動物もいる。
餌を求めて、この森に根付いているはずだ。
さらに、これだけの食料があれば草食動物だって、かなり繁殖しているものとみられる。
ここは、肉の資源庫でもある可能性が、極めて高いのだ。
その肉の資源を求めて、今度は肉食動物もがやってくる。
そして草食動物を喰らって、こっちも繁殖していく。
その際に残った食べ残しは土に還って、また栄養となって植物に回収される。
なんて良い食物連鎖なのだろう。
人の手が入ってないから、各勢力が超拡大しているのだろうな。
——だが、その食物連鎖の中に、自分が入る事にはなりたくない。
死にたくなんか、ないのだ。
それでも、それも何もしないままだと、叶わないだろう。
人間であるから、動物に比べて身体能力は良くない。
更に人間の特権である、道具というチートも解体マスターによってキャンセルされている。
詰まる所、弱者なのだ。今の自分は。
——しかし、何もしない訳ではない。
「とりあえず範囲はこのくらいでいいかな」
そう言いながら、淡々と木の枝を等間隔で地面に突き刺していく。
その枝は大小細太様々だが、どれも先端は尖っている。それを2列、隣同士で重ならないように並べている。
踏んでしまったら、実に痛そうだ。
「これを後、何十分とやるのかぁ……」
そう言いながら1人涙を流す。
ソロプレイだから、当然全て1人でやらなくてはならない。更に、道具使用禁止という縛りプレイでもある為、疲労は半端ないのだ。
因みに、今やっているのは、動物避けの罠である。
刺されば痛い事ぐらいは動物でも分かるので、とりあえずこれを拠点を中心に一周させ、安全を確保しようというものである。
まあ知能があるものだと飛び越えてきそうではあるが。
そんなでも、何もしないよりはマシなのである。
深夜になった。
今日の昼に行えるものは、全て行った。
トゲトゲの防衛線を張り、動物に進入を防ぎ、そこを突破された事を考えて、その内側に丸太を横向きに配置した第二の防衛線を張る。
正直無駄に思える作業だが、一定の安全ぐらいは確保しなければいけないだろう。
それでも時間が余ったので、付近の森の探索がてら、片っ端の大木を丸太にしてきた。
これは自分があっちに行ったという道しるべでもあり、材料集めでもあり、見晴らしをよくする為でもある。
そのせいか、何となく墜落現場付近の空間が広くなった気がする。
まあ実際に広くなっているんだけどね!
「さーて、今日
今日の夜食は、鳥そぼろご飯弁当である。
鳥そぼろとそぼろ卵、ピンク色の奴がまぶされたご飯に、ちょっとした漬物、そしてわらび餅がついた、箱型弁当である。
機内食も美味しそうではあったが、それとは別の箱が落ちていたので拾ったら、これがあった。その中身が大層美味そうだったので、今日の夜食に決まった訳だ。
因みに昨日の夜食はハンバーグ弁当だ。
デミグラスソースが掛かったハンバーグやコリコリのブロッコリーがとても美味しかった。
ポテトは少しふやけていたが、範囲内である。
と言うよりも、このサバイバルの中、こんな贅沢が出来るなど、なんて運のいい奴なのだろうか、自分は。
「それじゃ、頂きま〜す!」
箸をそぼろ弁当へと近づけ、口に運ぶその直前、目の前に突如、影が出来た。
なんだなんだと思い、顔を上げる。
するとそこには、
「おいにいちゃん、随分美味そうなもん食ってんじゃねえか?」
片刃の剣を片手に持ちながらこっちを覗き込んでいる、ニヤニヤした男たちがいた。
……はい?
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第三話 スケルトン(物理)は突然に。
「おいにいちゃん、随分美味そうなもん食ってんじゃねえか?」
そう言う男は、笑いながら此方に刃物をこれでもかと言うくらいに見せつけてくる。
服装を見た感じ、どちらかと言えば華やかな暮らしはしていないらしい。毛皮の服に片刃剣、剃られていない豪毛と髭。
よくあるテンプレファンタジーに出てくる、山賊のような服装だった。若干、匂いもキツイ。
「おいおい、にいちゃん、そんなしかめっ面するこたぁねえだろう? 別に全部取ろうって訳じゃあねえんだ。ちょっとそこにあるもん持ってくだけなんだよ」
そうではない。お前が臭くて息が出来ないんだよ。
と言いたい所だが、そう言う訳にもいかない。
どうやら彼らは飛行機の物資を盗みに来たらしい。つまり、盗賊という線が強くなったので、逆らえば唯では済まないと言う事だ。
まあ飛行機は何気に大きいからな。見つかって当然だろう。
だが、だとしたらやばいかもしれないな。飛行機目掛けて人、特に盗賊がやって来るんじゃあ、こっちの身がもたない。
そんな事を考えていると、
「……どうやら抵抗する気はねえみてぇだな、お前」
などと山賊Aが呟く。
どうやら俺の沈黙を抵抗なしと受け取ったみたいだ。
「よぉし! お前ら、そこにあるもん片っ端から持っていけ!!」
「「了解っす、ネンダルさん!!」」
目の前の男の指示で、後続の二人がキャリーなどを漁りに行く。
デブの棍棒持ちは俺が作った山を、斧を持ったガッチリ系は飛行機の中に入って行った。
どうやら、目の前の男がこの集団にリーダーらしい。
なんとなく、チンピラっぽいから下っ端だと思っていたのだが。
それはそれで、別にどうでもいいだが。
ついでに言うならば食料さえ奪って行かなかったら全部持って行って貰っても構わないんだが。
だって俺、あの中身大して使えないし。道具すぐぶっ壊れるし。
だからどうぞ好きなものを持って行ってくれ。
「お、そうだ。お前それ寄越せよ。見た瞬間に食いたいと思っちゃったんだよね〜」
ニヤニヤしている男は手元にある鳥そぼろご飯弁当に向けて手を伸ばしてくる。
それを阻むようにして即座に弁当の蓋を閉じ、両手で包み込んで阻止した。
その俺の対抗策を見て男は、チッ、と舌打ちをして手に持つ剣を此方に向けてくる。
「おいおい、あんまり俺を怒らせるんじゃあ、ねえよ?
これでも俺様はここいらを根城にする山賊一味、『ベルガ一味』で上から23番目に偉いんだ。おめえなんか一撃なんだよ」
ニヤニヤ男はいきなり自己紹介を始める。
どうやら彼らは印象通り、山賊だったらしい。しかも一応有名な所の。(まあ自分はそれがどれ程の物か知らんが)
また、山賊一味の規模が分からないが、最低でも25人はいると見て良いだろう。仮に彼らを一番下っ端と見てだが。
そして、そんな規模の山賊に喧嘩を売るとどうなるか、そんな事は分かりきっている。
リンチされるに決まっているだろう。
リンチを回避するには彼らの言う事に従わなければならない。この場で言うなら、ここで彼に鳥そぼろご飯弁当を渡す事だ。
だが……
「だからどうしたって言うんだよ。俺はぜってぇお前なんかには渡さないからな、俺の鳥そぼろご飯弁当」
今現在、俺にとって鳥そぼろご飯は、数少ない贅沢品なのだ。
それを取り上げようとするのは、レストランでステーキ食べてる奴のを無理やりぶんどって食べるのと、大差ない。
それゆえに、俺は鳥そぼろご飯を死守した。
もしもご飯が無くなったら、俺は死んでしまうのだ。特に、精神的に。
「あぁん⁉︎ お前、良い度胸してんなぁ? 自分がどうなっても、知らないってか?」
予想通り、男は激情する。井の中の蛙の如く、自分が至上と考えている人種にとって、反抗というふた文字は、余程癪に触るものなのだろう。
故に、怒ることは容易く想像できた。勿論、
その上で言わせて貰おう。
「いえ、まだ僕は死にたくありません」
別に、やられたいから反抗した訳では無い。誰が、こんな何処とも知れない場所で死のうと思うのだ。
「今頃言ったっておせぇええんだよ!!」
しかし、そんな許し(笑)を乞う言葉は届けられない。
手に握る片刃剣を此方に向けて振るってきた。なかなかの速度が出ている。その速度は包丁を使う主婦達のソレを軽く超えていた。
当然である。質量も、リーチも違うのだ。包丁に刺された時よりも簡単に命を刈り取れるだろう。
つまり、このまま何もしなければ俺は死んでしまう。いい人生だったなぁ……と、言いたい所だが。
——残念ながら君の詰みであるよ。山賊君。
バギィン! という砕けるような快音が森の中を響く。さながらそれは、森の鼓動のようである。
そんな鼓動とは相対的に、目の前の男の顔は、驚愕の一文字で埋まっていた。
「……あぁ⁉︎ どうなってんだ、コイツ!!」
角材と、先の尖った金属に分裂してしまったものを見て、男が叫ぶ。唾が顔に掛かってしまったが、相手の立場になって考えれば、当然である。
なんせ、触れただけで武器が無力化されたのだから。
「てメェ、俺の愛刀に何しやがった!! ブッ殺されテェのか!!」
「フン、何を言っても無駄だ。俺の前ではお前は、全くの無力なのだ。何せ、俺には魔法が掛かっているのだからな!!」
そう、俺には、自他共に(道具を物理的に)殺す、最凶のチート能力があるのだ。自身の餓死の確率を上げる、設備を意味も無く解体するという謎の能力だが、こう言った場では非常に有用である。
故に、俺は男に対して大きく出れたのだ。
「ま、魔法だと!? まっ、まさかお前は……!!」
男が何やら呟き、一歩後ろに下がる。その顔はさっきよりも若干、青くなっているようだ。
どうしたのだろう、そう心配していると、
「くそ、流石に"国家の秘密兵器相手"にやるのはヤベぇとは思うがよ……このままで引き下がれるかってんだ!!
エンダル、ザルドゥ!!」
「「へい! 了解っす、ネンダルさん!!」」
意味不明な事を喋って、二人の配下を呼び寄せる山賊A、もとい男。
"国家の秘密兵器"というのが何か気になるが、今の状況で気にすることでは無いだろう。何しろ、今の自分に国家という存在は全く関係ない訳だし。余計な情報を仕入れて混乱するのは、無駄である。
今はこの場を逃げる事を一に考えるとしよう。
まあ実際相手の武器は全て無効化出来るので、俺は何もしなくていいのだが。パッシブスキル万歳である。
「おいお前ら、今すぐ武器をおけ!」
「「……なんでですか、ネンダルさん?」」
二人の疑問は最もである。何故そんな事をするのだろうか?
なんでですか、ネンダルさん〜。
「武器がぶっ壊れちまう位だったら、素手で殴れば良いんだよ! 素手なら壊れる心配はねえからなぁ!!」
……あ。
「流石ネンダルさん! 頭の回転が早い〜!!」
「よっ、男前ぇ!!」
「へっへっへ、そう褒めんなって!」
そんな感じで、山賊Aの事を褒めまくる敵陣営。漫才を見ているようで、楽しい。
が、そんな事は言ってられない。対抗策を練られてしまったのだ。早急になんとかしなければ、殺され——
「……それじゃ、覚悟しろよ? 生きてる事を後悔させてやるからな」
——るのは確定のようだ。パッシブスキル万歳、アレは嘘だ。前言撤回である。あんなクソ能力、草の根を分ける程度にしか役に立たねえ。
無念執念失念である。何故自分はあんな行動をしてしまったのか。そんな言葉が自分の中で数多く生まれるが、それが声に出る事はない。
自分の喉は既に、恐怖に竦んでろくに動かないのだから。
時間が遅くなっていると感じる。周りがスローモーションになっていて、とても不思議な感覚だ。なんだか、昔見たアニメ『007』でこんなのを見た気がする。
そんな余裕な事が考えれている割には、心臓の鼓動はやけに速かった。少しでも動こうと、生き残る可能性をあげようと必死なのだろう。
だが、それも今で終わりだ。先ほどのようなパッシブスキルは、生き物には効かない。コレで俺は、ジ・エンドなのだ。
デブの拳が顔面に触れる。そう認識した。
——ああ、これで俺は死ぬのかぁ……。
なんて事を考えて、俺は死んだのであった——筈なのだが。
「え、エンダルぅぅ!!!」
そんな叫ぶ声が聞こえると同時に、俺は意識を戻した。
そして、そんな俺が意識を戻した先にあったもの。それは
——人間の頭蓋骨がよく目立つ、人骨と生肉の山だった。
「ファっ!?」
俺は、何度目か分からない、驚愕の事実に目を背けたくなった。
アレからは、非常に早く事が進んだ。
目の前のエンダル(仮)の姿を見て、残った二人は逃げてしまったのだ。
下っ端が逃げ出したのはまだ分かるが、リーダーである山賊Aが逃げるのはどうなのだろうか。流石にスケルトンとかした彼が可哀想である。
ま、俺を襲ったのだから自業自得だとは思うが。
「……」
改めて、出来立てホヤホヤのスケルトン(現実)と、肉塊の山を見る。
実に、生々しいグロ画像(目の前)である。こんな物をリンクに、ネットに上げるやつは、余程のサイコパスだろう。人骨を他人に見せようなんて、とてもじゃないが理解出来ない。
それはともかく、俺の『解体マスター』の守備範囲の広さには、酷く驚いた。まさか人間すら解体出来てしまうとは。
この分だと、他の動物も可能だろう。動物には使えないとは思っていたが、何故そんな勘違いをしていたのだろう。
「いや、そんな事は既に分かっているんだけどね」
動物を"解体"するというのはつまり、ぶっしゃぶっしゃババーン、が目の前で行われる訳である。
俺の意思なしでグロ映像を見せられるのだ。耐性が付いていないやつには地獄だろう。
まあ俺にもそんな耐性はないが。
という訳で勿論、胃の中をぶち撒けさせて頂きました。喉が大層痛いで御座います。
そんな訳で、山賊騒ぎは呆気ない結末を迎えて終わった。予想外にこの最凶チートが強すぎたせいだ。
流石に強すぎるのでは無いかと、今更ながらに思った。
そういう俺は今何をしているかと言うと。
「く、くせぇ……」
人肉人骨を掘ったばかりの土に埋葬する作業である。
流石に人肉は臭った為、放置ではまずい。かと言って、食べるのは論外だ。同種族の肉を食べる気にはならないし、そもそも美味しくないと友達に聞いた事がある。
ま、その友達も食べた事がないらしいので、実際どうかは知らんが。
割れている木の板をスコップがわりに掘り続ける事、数時間。
人肉と人骨をそこまで移動するのに1時間ちょい。
シャベルでまた埋め立てて、地を固めるのも1時間ちょい。
結局作業は朝まで続いてしまった。誰かが盗っ人に来たせいで、俺は徹夜である。どうしてくれるのだろうか?
しかし、山賊達は良いものを落としてくれた。
棍棒と金属片の事である。
今の俺にとって、唯一の武器と言えるのは、この
その程度の武器(物理的)しか、持っていない。武器(現象的)に護身の大部分を、頼っている状態なのだ。
そんな俺に、棍棒と金属片という、最強の素材が舞い降りて来た。これは誠に幸いである。誠氏ね。
棍棒を地面に半分埋めて、簡単な固定を掛ける。
足を棍棒の上に乗せて体重での固定底上げを施し、金属片で一部の表面をちょっと削る。削った跡は『1』の字そっくりである。
そして今削った穴に金属片の尖った所を押し付け、木の板でもう反対側を叩きつける。コレを何度も繰り返す。
暫くやって金属片がある程度埋まれば、棍棒の強化の完成である。飛び出る金属片によってその見た目はさながら、ハルバートのようだ。
棍棒なのでそうは見えないのが現実だが。
「はぁ〜、……眠い」
現在の時刻は、05:28。
もう朝である。肉の埋葬と近場の後片付け、ハルバ棍棒を作っていたらいつの間にか、時間が過ぎていたらしい。
時間が経つのは、実に早いものである。
「まだやる事はいっぱいあるけれど……ま、いいか」
眠気には勝てない。それがこの(サバイバル)世界での真実である。わざわざ睡眠を削ってまで仕事してふらっと来たら、体調崩して今度こそジ・エンドである。
この時俺は再び、敵は戦闘相手では無く、食生活に潜むのだと知った。
「……おやすみなさーい」
誰に掛けるわけでもない言葉を空虚に放ち、壁ハウスの壁に横になる。
今日は久方ぶりに、ゆっくり寝れそうだ……。
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