兎に優しいIS世界 (R.H.N)
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~兎に優しいISキャラクター設定1~

キャラ設定に関しての項目です。

一夏やセシリアといった本作未登場キャラはまだ未筆の状態となっております。

キャラが登場して暫くしたら加筆の予定ですので、暫くお待ち下さい。

今更考えるとキャラが相当多かったので幾つかに別けて執筆致します。



 

 

 

 

「原作キャラ」

 

 

 

 

 

《篠ノ之 束》

 

原作において、白騎士事件引き起こしたり、福音の暴走に関わってるらしき発言が千冬から出てるなど、作中における大体の元凶、二次創作でもアンチ、ヘイトを集めやすいマッドな兎さん。

 

 

だがしかし、本作ではISが認められてJAXAで開発することとなり、白騎士事件を引き起こす理由が無くなった他、正晴、義照、みとり達JAXA職員とIS開発過程で交流していくなかで性格が非常に丸くなっている。

 

 

正晴が実は自分と同い年で、自分以上に《認められなかった》存在でありながらも精神的にめげずにあり続けてJAXA理事長に至った所や、ごく普通に彼と非常に良く気が合う点もあり、ISの開発を続ける中で段々と正晴に惹かれつつあった。

 

 

段々と想いが強くなる中、白騎士事件が発生、千冬の偉業を見届けたあと、訳あって、護衛艦「いずも」艦上で正晴に勢いのまま告白、正晴がコレに応え指輪を渡されたとき、自分の恋心に始めて気づくこととなる。

 

 

現在は自宅近くに建てられているJAXAの専用工廠(白騎士製造元である)に自宅通いで勤務中、ISがなぜ女性にしか適正を持たないのかを調べる傍ら、同地に設立されたISの専用機開発を行う国営メーカー「篠ノ瀬製作所」の所長として、半年毎に2~3人分の個人専用機開発を行っている。

 

 

原作と比べると随分大人しく、また正晴と言うストッパーがいるので生活に乱れが発生しておらず、政府の保護プログラムも無いため世界中を逃げ回るようなこともしていないし、家族仲も随分良くなっている。

 

 

やっぱりIS開発の第一人者であるが故、世界各地で行われるIS関連の講演会に正晴共々引っ張りだこであり、忙しいながらも充実した日々を過ごしていると言える。

 

 

 

 

 

 

 

《織斑 千冬》

 

ちーちゃん、ブリュンヒルデ、チッフ等々の呼称で呼ばれている世界で最初のIS登乗者、原作でも束同様理不尽な強さを誇っていたが今作でもそれは健在。

 

 

白騎士事件で自己防衛機能持ちが多少混じっているミサイル群をISで大量に撃墜し、英雄扱いの存在なのだが、白騎士に乗るために着用したISスーツがフルフェイスだったのと、本人が恥ずかしさで顔出しNGになったので、表面上では事件時の、白騎士パイロットは不明扱いだったが、すぐにJAXAでISを運用したことがあるのが当時テストパイロットを勤めた彼女だけだったのがバレてしまい、現在では千冬のプライバシーも鑑み、暗黙の了解じみた事になっている。

 

 

原作において、公人としては非常にしっかりとしているが、多少(?)のブラコン気味と結構暴力的な所のある人物であり、私人としてはかなりズボラなダメダメ人間・・・・・・

 

 

なのだが、本作ではことあるごとにその辺りをみとりにチクチク突かれ、煽られてはみとりとの壮絶な追いかけっこを繰り広げ、その事を聞いた一夏が「・・・みっともないよ、千冬姉(要約)」と呟いてクリティカルヒットしたらしく、自身のズボラな部分を直そうと奮闘中である。

 

 

 

 

 

 

 

《カレン・オルコット、チャールズ・オルコット夫妻》

 

 

原作では既に故人であり、原作での名前が不明なため作者が名付けた名称だが、一応ヒロインの両親として原作にて言及されているので此方に記す。

 

 

原作では単なる列車事故での他界となっていたが、本作では「英国陸軍が間接的に関与している日本首相暗殺未遂に巻き込まれる」形でレール爆発による列車事故に遭遇、しかし首相のファインプレーにより難を逃れ、共に生存することとなる。

 

 

元々オルコット家は英国でも有数の貴族で、第一次世界大戦前後の時期には当時最新鋭の戦艦の建造費用を丸々一隻分負担することがあったなど恐ろしい財力を有していた。

 

 

・・・が、二次大戦後の英国貴族への反動で一時没落、夫妻が事故に遭遇したのは、現代になって、カレン夫人の奮闘で劇的な復帰を果たしたばかりの時期であった。

 

 

尚、白騎士で大量のミサイルが放たれたのにも関わらず、あろうことか迎撃を疎かにし、(列車事故時に、軍が付近一帯に警戒網張るため人員を割いたのが一因)おまけに軍の人間が間接的にとはいえ首相を暗殺しようとした事が世間に知られ、日本からのヘイトがMAXになっていた時期に事件の後始末に奔走して平穏のうちに処理して見せたのはジェームズ公である。

 

 

(メタ的な話、実はさりげなくブルー・ティアーズがセシリアの機体じゃ無くなりかけているのだが、それは内緒である。)

 

 

 

 

 

 

「オリキャラ」

 

 

 

 

 

村ノ瀬 正晴(むらのせ まさはる)

 

 

JAXAの(元)理事長。

 

 

束のISに関する論文発表をみて、あの場においてただ唯一内容を完全に理解し「多少の設計変更は否めないが、実現可能ではある」と言う事実と、ISに注ぎ込まれた束の夢を真っ先に察知し、発表後、しょぼくれる束と千冬の元へやって来た人物。

 

 

後に自身が総責任者となってISの開発を行うのだが、初期の頃は束のコミュ障を矯正するところから始める必要があったなど、苦労することが多かった。

 

 

んで、開発を進めるなかで丸くなった束の性格と彼女のISへの情熱に惹かれ、ひっそりと恋心を抱くこととなる。

 

 

一応、婚約指輪を購入しいつでも渡せるように持ち歩き続けていたが、束の初期の性格から鑑みて恋の成就は殆どあり得ないだろうとも思っていた。

 

 

・・・が、そこで白騎士事件が発生、「いずも」艦上での束の告白を聞き、内心大慌てしながらも思いの丈をぶつけ、無事婚約へと至った。

 

 

立場はJAXAの理事長であるが、本来の専門分野はコンピューター、ロボット工学、生物工学などであり、更に言えば、「機械で人と同じ存在を生み出す」事を研究していた。

 

 

ただ、その目標に関した論文他、彼が世に送り出した論文のおおよそ九割五分が学会に黙殺されており(認められた残りの五分が宇宙開発関連だった。)、その中には後にISに必要と判断され開発されたハイパーセンサーや、白騎士のレールガンに使われた合金のベースとなった合金など、後々になって必要性と実用性が実証された物もあり、特にハイパーセンサーに関しては完全に彼に特許があったため、使用料の関係で一財産を構築している。

 

 

現在はJAXA理事長の座を任期満了に伴い勇退、束と同じく「篠ノ瀬製作所」の副所長としてIS適性の分析と専用機の受注生産を行う傍ら第3~5世代辺りを目指した新世代のISを研究している。

 

 

 

 

 

 

 

《槇田 義照》(まきた よしてる)

 

 

日本国(元)首相。

 

 

無学(中卒)、ノンキャリア(昔は広島で刑事をやっていた)、無経験(首相になるまでの下積み一切ナシ)のトリプルパンチでお飾りであると言う評価から名宰相へワープ進化した変わり者の日本国首相。

 

 

昔から広島で刑事を目指しており、中卒で刑事になることができた(恐らく)類い希な人物である。

 

 

刑事時代は銭○警部並みの腕を発揮しており、「割とどうでも良い所が気になってプライベートで深く調べてみたらとんでもない事件を引っ張り出してしまった」事が良くあった。

 

 

・・・が、その度に第一線で事件解決に貢献し、特に「原爆ドーム立てこもり事件」はAKで武装した10名前後のテロリストを単独かつ竹刀一本で無傷制圧したり、国会議員の汚職事件では議員の巧妙な隠蔽により他が成果を挙げられない中、彼一人で議員をチェックメイトに追い込むだけの証拠を発見し続け、議員を失職に追い込むなど「もう全部こいつひとりでいいんじゃないかな」と言われる八面六臂の活躍をしていた。

 

 

んで、地元広島で大人気となった結果、票集めの為に現在の所属政党から出馬要請が入り、最初これを渋るも地元民の応援もあり出馬、地元で現職に圧倒的大差を付けて当選、そのまま「こいつ人気あるしついでに首相に据え付けようぜ」と言う流れのままに首相に就任することとなる、酷い。

 

 

首相就任後は自分じゃ政治の前線は無理と判断してマジで御輿役に撤し、内閣内部の人間関係の調整に奔走、政務を自分より有能なのに大体任せ、基本的には国民の人気取りに徹していた。

 

 

ただ、首相として筋は通せるだけ通す主義であり、自身に意見する能力がないのを良いことに、住民と首相に事前説明ナシでダムの建造計画の発表と建造予定地の住民立ち退き交渉を始めた時は、その話を聞いた直後に激怒、国土交通大臣、財務大臣、農林水産大臣、環境大臣、計画関係者全員を怒鳴り付けて呼び出し、丸四時間に及ぶ有無を言わせぬ説教の後、上記大臣全員を即時罷免して建設予定地周辺の住民とダムの必要性云々で討議し、結局要らないことがわかり計画をおじゃんにするなど、完全に仕事をやってないわけではない。

 

 

束のIS発表の時、実は元から出席予定のつもりが交通渋滞に巻き込まれ大遅刻をかまし、やって来たのは発表も殆ど終わりの頃であった。

 

 

 

だが、そこで参加者向けに配られていたISに関するパンフレットを見て、「コレスゴいやん!、JAXAに招聘して早速開発だ!」と発表を殆ど見ずに束のIS開発に力を貸すことを決めてしまっていた。

 

 

直後にJAXAへIS開発費を回すため、補正予算案を通そうと奮闘するのだが、後に彼はこの時の事を振り返り、「関係各所を説得するときに、この点(発表を殆ど見ていない事)を突かれ、3日以内で予算案成立のつもりな行程の筈が、三倍ちょいに伸びて十日もかけてしまった。」と語っている。

 

 

この時、最後の壁として立ちはだかり、予算を出し渋る財務大臣を38時間に渡って説得し続け、根勝ちして予算案の承認を得たことと、開発中、彼が訪問する度に毎度毎度、束と正晴の両人から互いの惚気話を聞かされていた事は、後にISが世界に広がるにつれて、知る人ぞ知るIS誕生における秘話として語り草となる。

 

 

原作キャラとの遭遇が一人突出して多い人物であり、原作ブレイクの功績をもっとも大きく残している人物でもある、具体的に挙げれば。

 

 

1、束のIS開発を公的に認め、JAXAで白騎士を開発することで束の手による白騎士事件を未然に阻止、ISの宇宙開発用としての道を生存させる。

 

 

 

2、セシリアの両親を列車事故(と見せかけたテロ)から逃れさせ生存させる。

 

 

3、一夏の鈍感、箒の暴力要素を(ある程度)修正、二人を引き合わせ婚約仲にまで発展させる。

 

4、白騎士事件後の篠ノ之家離散を未然に阻止序でにJAXAの協力を得て束の白騎士事件における無実を証明、束の国際指名手配を未然に阻止する。

 

 

 

そんな原作ブレイカーな人物であるが、白騎士事件後、アラスカ条約締結のタイミングにて列車事故時の後遺症を理由に内閣を総辞職し、後任として天ヶ瀬深那を指名し、惜しまれつつも政界を去り、自由気ままな旅をし始める。

 

 

あるときはオルコット家へ、あるときはJAXAを顔パスし、あるときはをフランスのブレスト港を観光していたりと、ISによって変化する世界を正しく謳歌している模様。

 

(尚、たま~に、はっちゃけすぎてアホをやらかし、折檻されたり物理的報復を食らっていたりする)

 

 

現在、右目をほぼ失明、右足に軽度の障害が残り、左腕は無理矢理くっ付けられてて動かない状態であり、見た目に反して不自由な状態である。

 

(その状態で、何処からともなく竹刀を取り出してセシリアに突きつけたり、いつの間にか剣道大会の会場にやって来ていたりと、人外疑惑が出かねないスペックを有する)

 

 

 

 

 

 

 

《川城 みとり》(かわしろ みとり)

 

インフィニット・ストラトス開発に直接関わったJAXA職員の一人で、主に機体制御の関係を担当した。

 

 

PICと呼ばれる機体制御システム産みの親であり、「彼女とPICが無ければ、ISの乗り手を育成するのは、宇宙飛行士を生み出すのとそう変わらない物であっただろう」と言われている。

 

 

お調子者な面が強く、良く千冬をからかっては半ば命がけの追いかけっこを始め、大体デカいたんこぶを6つぐらいつけられて3時間ぐらいぶっ倒れるのがIS工廠での日常風景であった。

 

 

昔から機械いじりが好きで、子供の頃その知識を活用して自宅にやって来た強盗をトラップの数々で撃破するリアルホーム○ローンをやらかしたことがある。

 

 

現在はJAXAからの派遣として篠ノ瀬製作所に出向している扱いで、分析中に判明したISが有している独自の相互情報網の解析とISに関するデータを集積するデータベースの設営を行っているほか、たまに専用機開発の方を手伝っている事がある。

 

 

実は願掛けに篠ノ之神社を利用することを提案したのは束ではなく彼女、一夏や箒とも良く会っている。

 

 

一文字違いの東方二次創作キャラ、《河城 みとり》をベースにしており、外見は彼女に準じている。

 

 

(メタ的な話をすれば、本当はそのまんま流用の筈が、名字を間違えたまま通していたことに今更気づき、一文字違いを表記することとなった。)

 

 

《上田 行信》(うえだ ゆきのぶ)

 

 

ISを飛ばす上で、航空法などの既存の法律との兼ね合い問題の解決のため、外部から呼び出された法律家。

 

 

本来、法律家関係は沢山いる法律家の内、信用できるのからテキトーにと言う流れで招聘されようとしていたのだが、たまたま彼が航空評論家も兼ねていることを理由に、正晴の父経由で正晴から紹介され、実質的にIS開発チームの顧問弁護士兼ISの評価要員として招聘された。

 

 

顧問弁護士としては彼を経由してIS関連の法整備が進められたり、白騎士事件直後、警察が航空法違反でJAXAを起訴した時も、白騎士事件当時の状況の不味さを利用して、正当防衛と緊急避難を適用するように法廷を誘導、あっさり無罪を勝ち取ったりした。

 

 

航空評論家としては、束の理論を見て、設計段階での不備を即座に見抜き、特に「なるべく機体を垂直に飛ばす」事と「大気圏突入後の機体制御」が極端に困難であることを指摘、ハイパーセンサーとPIC導入のきっかけを作った。

 

 

現在はJAXA顧問弁護士と篠ノ瀬製作所の顧問弁護士を兼任、ついでに世界各地で開発されている色んなISの性能評価を束達と共に行っている。

 

 

 

 

 



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~兎に優しいISキャラクター設定2~

今回は日本人以外のオリキャラの解説です。


「アルバン・ラインラント」

 

 

ドイツ連邦共和国海軍元帥。

 

 

ドイツ海軍の海洋海軍化を強力に推し進め、ドイツ初の航空母艦「グラーフ・ツェッペリン二世」級を設計したりと、前線よりかは後方での精力的な活動が有名だが、彼自身の本業は沿岸部における陸戦である。

 

スニーキング能力が異常で、ゲーム、リアル関係なく恐ろしいステルスぶりを発揮出来るため、義照並みの行動力と合わさって個人で恐れられている人物でもある。

 

 

後述するこの世界における歴史上の人物「ウォーダン・ラインラント」のひ孫であり、親子孫ひ孫と四代に渡ってドイツ軍元帥の座に居続けるドイツにおいて「例の一族」扱いされている「ラインラント家」の現当主。

 

 

趣味が歴史研究なせいで置いて曾祖父ウォーダンのの異常性を最もよく知り、また、よくも悪くも曾祖父の影響を一番受けている人物でもある。

 

 

ISが兵器化した際、もっとも早期にISへの対抗策を模索、発見し、ISの兵器としての有用性に疑問符を投げ掛けているが、腐れ縁の上司であるオーレンドルフと、IS開発関係者、日本の天ヶ瀬深那現首相を除くと殆ど見向きされていない。

 

 

ドイツ国内のIS研究所でデザインベイビーを生み出していたことを、独自の諜報網(ウォーダンに関係あるので彼の項目において後述)にて把握、直ぐ様行動を起こし、「オージェ事件」を発生させ、海兵隊を率いて、ラウラ、クラリッサ達を救助する。

 

 

ラウラ、クラリッサ達の居場所をどうにかするため、「遺産の使いどころだな」と、ラインラント家の遺産を全部食い潰す親不孝を覚悟でオージェ事件の被害者であるラウラ達を全員引き取った

 

 

(20名近くいる全員を、である。)

 

現在、ラウラたちの義父として奮闘中。

 

因みに既婚者であり、娘が一人いる、そのせいでラウラ達を引き取った時に、娘と大喧嘩になりかけた。

 

 

余談ではあるが、彼はオーレンドルフ、義照共々IS/VS(インフィニット・ストラトス/ヴァーサス・スカイ)で数少ないの生身ユニットとして専用データを有しており、3人が揃った時は試合がカオスの海に沈むことで有名である。

 

どうでもいいことだが、日本にて剣道7段を有している。

 

 

 

「ウォーダン・ラインラント」

 

第二次世界大戦期にて、山本五十六やチェスター・ニミッツ、ハインツ・グデーリアン等の高名な軍人を全部ぶち破って圧倒的な知名度をいまなお誇るドイツ第三帝国海軍軍人。

 

最終階級は元帥。

 

 

「シャルンホルストの悪魔」は彼の代名詞であり、シャルンホルストとグナイゼナウを交互に乗り換えながら、大戦中終始ドイツ海軍の最前線にいた男、シャルンホルストで英国のリヴェンジ級を全部沈めたり、ロドネーを一方的に撃沈したりと武勇伝が絶えず。

 

 

あまりの恐ろしさに連合国側からは人外扱いで、連合国軍側の宣伝ビラでは、極端に醜い不定形の怪物扱いで描かれていた。

 

 

「世界で最も多く船を沈めた軍人」としてギネスブックに載っており、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルと並んでドイツ最大のリアルチート扱いである。

 

 

(こいつのせいでこの世界の《旭日の艦隊》はラスボスがシャルンホルストである、しかも新日本武尊相手に旧式も良いとこのシャルンホルストで新日本武尊を()()()()に追い込んでいた。)

 

 

シャルンホルストの砲撃を彼の一存でタイミングを計って行うことがあり(資料曰く、《タイミング合わせ!》と叫ぶのが常だったらしい)、これの後に放たれた砲弾は確実に敵艦船に命中し、格に関わらず致命傷を与えていた。

(リヴェンジは煙筒に砲弾が侵入して爆発四散、ロドネーは舵とスクリューと副砲を粉砕されて行動不能に等々)

 

 

アドルフ・ヒトラーの事はドイツ国民に選ばれた以上特に大きく話はしないと言っていたが、最期の出撃間際、ホロコーストを知った時、今までに受け取っていた全ての勲章をヒトラーの顔面に投げつけ、「祖国には心底失望した」と一言発した事が知られている。

 

バミューダで千冬+白騎士を落としたのは紛れもないこいつ、砲撃精度が頭おかしい。

 

 

 

この世界の史実にて、英国海軍が主力の空母2隻を丸ごと囮にしたシャルンホルストとグナイゼナウを沈めるためだけの作戦、《エクソシスト作戦》の意図を事前に察知する。

 

 

・・・が、このタイミングにてホロコーストを察知、抗議の意味も含め、ホロコースト察知前に放たれたヒトラーによる空母撃沈の命令をバカ正直に遵守した。

 

 

結果、空母を沈めるも横合いからウォースパイトの砲撃を受けシャルンホルストが大破、最期の砲撃で同じく殴り付けてきたヴァンガードとウォースパイトのスクリューを吹き飛ばし、満身創痍の中北海へと逃げ込み、グナイゼナウを撃沈して追いかけてきたフランス戦艦「リシュリュー」に見送られてシャルンホルストは自沈、彼も船と運命を共にした。

 

 

ルーデルと同じく、極度のアカ嫌いで有名である。

 

大戦初頭、彼が活躍する遥か前に「今生の別れ」として自身の遺産と妻と共にスイス経由で中立国に逃していた息子が家を継ぎ、ウォーダンはヒトラーから送られ、彼に叩きつけた黄金柏葉剣ダイヤモンド付騎士鉄十字勲章と共に、「ラインラント家」の始まりとしてその名声を確固足るものとするのであった。

 

 

そんな彼の経歴もあって、ネオナチからは彼は「ヒトラーの特別な敵対者」として特別視されており、ドイツを良くするためにと代々、ラインラント家には()()()()()()()ネオナチが後ろ楯となっている。

 

(因みに、アカンのにまとわり付かれて可愛そう、が人々のラインラント家とネオナチの関係人関する見方である。)

 

ここまで来れば察しがつくかもしれないが、アルバン元帥の「独自の諜報網」とは、よりにもよってネオナチが有している情報網のことである

 

 

 

 

「マインラート・オーレンドルフ」

 

 

ドイツ連邦共和国首相、アルバンとは幼少期からの腐れ縁であり、日本文化好きのおっさん、表には出ないが日本の文化に染まっており、白騎士事件時、真っ先に動いていたのは、どのように行動すれば日本への自国の評判と信用が低下するのを防げるかを熟知していたから、だがしかし、その染まりっぷりが裏目に出て、大事とはまるで無縁なところでろくでもない影響を与えることとなる。

 

 

女性だらけの先進国首脳陣のメンツの中、英国首相ハロルドと共にただ唯一の男性首脳であり、そのことでハロルド共々胃を痛める苦労人。

 

 

ほとんどの人間が知らないが、日本文化に染まりすぎて、剣道、柔道、合気道、果てには関係ないジークンドー、ムエタイ、ブラジリアン柔術などの武道を粗方修めきった生粋のファイターであり。

 

 

生身+素手でただ唯一「暮桜」搭乗の千冬と渡り合える化け物。

 

普段はファイターとしての彼を拝むことはほとんど不可能、ただし、IS/VS(インフィニット・ストラトス/ヴァーサス・スカイ)で、ISをちぎっては投げちぎっては投げする彼の姿が散見される。

 

 

「オージェ事件」後責任を取って首相の座を退こうとしたが、閣僚の強硬的な反対意見と、彼に続投を要請する署名運動の高まりを見受けて断念。

 

現在は、オージェ事件の後始末に奔走している。

 

 

 

 

 

「ハロルド・バーミンガム」

 

 

「英国史上最も運のない首相」と呼ばれるかわいそうな人。

 

 

白騎士事件時、政争真っ只中で首相に就任したばかりで、まともに政府が機能しない状態での義照暗殺未遂のダブルパンチを受け、アラスカ条約で英国だけ軍用枠ナシの鬼畜制限などの超絶に不利な条件を飲むことになった。

 

 

現在、ISの宇宙開発を最も真剣に推し進めている西洋人で、軍用にほとんど使えないISの使い道として、宇宙開発を指定して出遅れている宇宙開発を一気に推し進めたい方針。

 

 

その一方で、宇宙開発用じゃないIS開発には宇宙用での真剣さが薄れ逆にアホみたいな凄まじいこだわりを見せており、「IS開発界隈のフイッシャー提督」とあだ名されている。

 

 

 

 

 



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~第一章、「白き騎士と兎を支えた男達」~
兎さんと二人の男


 

 

 

・・・・・・この日、一人の少女がとある発明品を学会にて発表、提唱した。

 

 

 

宇宙のあらゆる環境で動くことが可能な宇宙服・・・・・・の代わりとして考案された操縦者の体を覆うパワードスーツ状の宇宙空間用作業機械。

 

 

通称、「インフィニット・ストラトス」

 

略称「IS」

 

宇宙空間での活動に関して革新的な機構が多数搭載された新時代の宇宙服として提唱されたのだが、余りに革新的すぎて実現性が薄いと思われたのか、或いは他に理由があるのか、発表は成功したとは到底言えず、殆どの人はこのISの存在に対して見向きすることさえなかった。

 

 

・・・・・・そう、()()()()である。

 

 

 

そんなことも露知らず、IS開発者、篠ノ之 束(しののの たばね)は自分の産み出したISが認められなかった事に対し、悔し涙を浮かべていた。

 

 

「束・・・・・・・・・」

 

 

IS開発の協力者で、ただ一人束の追いかけた「夢」を知る同行者、織斑 千冬(おりむら ちふゆ)も束へとかける言葉がなく、二人して黙々と片付け作業をしていたその時、二人の目の前に声をかける人の姿があった。

 

 

「えーっと・・・君が束さんであっているのかな?」

 

「っ!?」

 

突然束に話しかけた若い白衣の男性、となりには正装した40半ば頃と思われる男の姿があった。

 

 

突然話しかけてきた人物を確認した千冬は驚きのあまり硬直するのだが、当の束の方は興味無さげに男を見ると、「・・・何?わざわざ束さんを笑いに来たの?」といわせんばかりの視線を向ける。

 

 

「あ、ヤバイやっぱ第一印象ミスったっぽい」

 

 

「だからこのタイプの子はコミュ障でFAだからさっさと話し切り出した方が良いと言ったんじゃ無いかぁ!!」

 

 

「いゃなに、まーさか私のネームバリューガン無視されるとは思わなくって・・・・・・しかも見た感じ付き添いの人はともかく当の本人はオマエの事も知らないパティーンくせえぞ。」

 

 

「ファーwwwwwwww」

 

 

「なにやってんの?どうでも良いから束さんさっさと二人に消えてほしいんだけど。」

 

 

「Oh・・・・・・」

 

 

二人組は元から束に用があったようで、話しかけに対してセメントで対応されたことにショックを受けたようだが、んなことどうでもいい束は更なるセメント発言を繰り返す。

 

 

「ねえねえ、話聞いてる?さっさと消えてほしいんだけど。」

 

 

「・・・・・・たば」

 

 

「・・・ふざけすぎたか、そこまでセメントされる精神状態の悪さからすると、流石に出直す必要がありそうだな、第一印象最悪にしちまったから次会えるかどうかわからんが。」

 

 

「やっぱりベタな挨拶するよりJAXA理事長と総理大臣のネーム使う方がよかったか・・・申し訳無い、適当なタイミングで出直すので、持ち直されたらまたお会いできればと思っています、篠ノ之 束さん、」

 

 

このセメント対応ではまともに話に持っていくのは厳しいと判断した二人は、普通出しちゃいけない身分を示しつつ、出直しとばかりにその場を去ろうとした、

 

 

「・・・・・・・・・待って!!!」

 

 

「!!!」

 

次の瞬間には束が二人を()()()()()、突然の来訪者に固まっていた千冬がフォローを入れようとして起こったその出来事は、かつて自分がぶん殴ってまである程度修正する必要があった彼女のコミュ障ぶりからは、到底考えられないものであった。

 

 

「・・・・・・今の言葉は、本当?」

 

 

束は非常に恐る恐る彼に聞き出した、彼女の言うことは半ば尤もなことである、凄まじいご身分の人が身バラシしてきたのだ、本当かどうか疑いたくなるのはよく理解できる。

 

 

ただ、メタ視点的に言えばせめて自分の住んでる国の政治首班と自分の夢にもっとも近いお偉いさんの名前と顔くらいは知ってた方が良いのではないか、とかは思ってしまうが。

 

 

「束・・・・・・私が保証しよう、そちらの二人は間違いなく、日本国総理大臣、 槇田 義照(まきた よしてる)氏と、JAXAの理事長、村之瀬 正晴(むらのせ まさはる)氏だ・・・多分束の夢を叶えるのに一番近い人物だと思う。」

 

 

「ちーちゃん・・・・・・。」

 

 

千冬のフォローが入る、流石に二人が首相とJAXAの理事長ともなれば、一般人(なおその後)の千冬ならば顔と名前くらいは知っている、まぁそこはむしろ、知っていたからこそ出会い頭に硬直してしまったわけでもあるのだが。

 

 

「束さん、貴方の夢その宇宙服……ISで宇宙へと行きたいと言う思い、私と彼と、この目でしっかりと拝見させていただきました。」

 

 

「つきましては貴方と話をさせてほしい、その純粋な夢を叶えるのに必要な()()()()()()………そのためのな。」

 

 

「「この通り、宜しく頼めないだろうか?」」

 

 

槇田は深いお辞儀をして束に頼み込んだ、正行もまた、槇田と同じく一礼している。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

束は一瞬、自分の身に何が起きたのか理解できなかった、だがしかし理解するにつれ、徐々に感情が噴出し始めるようになる。

 

 

 

「・・・はい・・・此方の方ごそ・・・よろしくお願いじまず・・・・・・!!」

 

 

「束・・・・・、よかったな。」

 

 

この時、束の顔から流れていた涙は、その時までのISが()()()()()()()()()()()()()()によるでなく、ISを()()()()()()()()()()()()()によるものへと変化していた。

 

 

自分の夢を追い求める一番のチャンスがやって来たのだ、束は嬉し涙で顔を綻ばせながら、二人の男の頼みに答えることとした。

 

 

それから数日の後、JAXAはこれまでの宇宙船による宇宙開発の他に、新たな予算を組むことで新しい有人宇宙開発プラットホームとして、インフィニット・ストラトス、ISの研究を開始すると発表、JAXA理事長が研究の総責任者となり、ISの提唱者、篠ノ之 束を開発における責任者として招聘するなどの大胆な新時代宇宙開発計画を発表した。

 

 

それからわずか10日足らずでIS開発のための補正予算案が成立し、開発責任者として束が招聘、早くも新時代へのプロジェクトはスタートすることとなり、宇宙開発における新しい風として全世界の注目を浴びるようになる。

 

 

新機構の数々が技術的に困難な代物があったこと、予算は割けたが人員は本人の束の意向もあり志願制でそれほど集まらなかったり、そもそも束が当時中学生であったが故の勤務における法律上の問題もあり、開発は順調とは言えなかった。

 

 

それでも、後に天才と称される束と、槇田首相、正晴理事長が自身の伝で招聘した何人かの技術者の協力もあり、理論構築が済んでいて試作品を製造する所からであったISは、試作品の完成までにそう長く掛かるものではなかった・・・・・

 

 

 

 

そして、試作の試行錯誤の末、ISが開発開始されてからちょうど2年後のとある日の事である・・・。

 

 

 

「起動確認、PIC、絶対防御、コア、その他もろもろ、システムオールグリーン。」

 

 

「束さん、これは・・・・・・」

 

 

「・・・・・・まだわからないよ、関節とかを含めて何度も何度も動かしてみないと。」

 

 

「だな、首相到着にはまだまだ時間はあるし、細かい動作確認も済ませてしまおう、千冬さん、引き続きお願いします」

 

 

 

「了解した、取り敢えず動かせるだけ動かしてみるぞ。」

 

 

 

 

 

 

数十分後・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・どうだ?」

 

 

「・・・・・・うん!!」

 

 

「・・・・・・そうか!!」

 

 

「本検査をもって《白騎士》計画は完遂されたと見て大丈夫だよ!」

 

 

 

「「「・・・・・・ついに完成したぁーーー!!」」」

 

 

 

 

 

 

提唱者、篠ノ之 束とJAXA職員達の意地と執念、そして国から提供された資金などの援護により、インフィニット・ストラトス第一号、後に「白騎士」と呼ばれるソレは、JAXAに成された小さな専用工廠において、ついに産声を上げたのであった。

 

 








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首相災難と「事件」

スタートダッシュの第二話です、取り敢えずスタートダッシュで本編直前まで高速更新していく予定。



 

 

JAXAにて二年の月日を掛けたIS、インフィニット・ストラトス一号機が完成した頃、英国、ニューカッスル国際空港へと向かうとある高速鉄道の車内にて。

 

 

 

「それにしても、わざわざお見送りありがとうございます、こんな不出来な身の私をわざわざ空港まで。」

 

 

「いえいえ、義照さん程の貴人とお話しする機会など、我が国では女王陛下とハロルド首相以外ではほとんどないので此方こそ光栄なものです。」

 

 

「28の若さで日本の首相に至ったMr.義照とこれだけの対話ができる機会など我々には殆ど回ってきませんから、幸運でしたわ。」

 

 

「まぁそんな私も実際のところはお飾りです、国民からの受けが良いからって首相の椅子に据えられたわけで、基本的に仕事は大臣達任せでトップのわりには全然仕事してないし、出来ることと言えば任せられる人材に任せて責任とることくらいで・・・・・・。」

 

 

「それが出来れば上に立つ者としては十二分ですよ、ハロルド首相も思いきりの良さは羨ましがってましたからね。」

 

 

「そうだったんですか?、ハロルド首相も苦労してますなぁ・・・・・・」

 

 

槇田 義照首相はこの日予定していた英国首相との会談を済ませ、高速鉄道にて帰路の途に着く車中の人であった。

 

 

彼が乗る車両はニューカッスル国際空港行きクラス390電車、9両編成の二等車である。

(尚、安全性を考慮して最後尾丸々一両を貸し切りにしており、車両内には下記の夫妻を除くと首相と護衛のSP9名しか乗っていない。)

 

先程から彼と話をしているのは会談先を地元とする有力貴族、オルコット家家長のチャールズ・オルコット氏と、カレン・オルコット夫人の二人であり、今回わざわざ女王の気配りにより義照を空港まで見送る役を担った夫妻である。

 

 

「そういえばオルコット公の所はセシリア嬢がもうすぐ誕生日でしたよね?」

 

 

「ええ、今年で5歳になります、あの子は私と違って妻に似た元気な子に育ってくれてて振り回されてばかりですよ。」

 

 

「オルコット公はそうやって毎度卑屈すぎますよ、立場の厳しさはご理解できますが、少しは元気だして積極的に動くのも良いもんですよ?、セシリア嬢の顔を私は見たことがないので御披露目あるかなとか思っていたのですが、」

 

 

「今回は流石に家に置いて来ましたよ、五歳の子供に貴族の世界はちょっと早い、もう少し純真に育ってからでも遅くはない。」

 

 

「セシリアはしきりに会いたがってましたが、私も夫も今は忙しい身、あまり時間をかけられないからってチャールズがしきりに止めたんですの。」

 

 

「そうでしたか、じゃあ次来れたらついでにそちらの方へお邪魔させていただきますよ、セシリアちゃんも他所でやるよりやりやすいんじゃないかな?」

 

 

「わざわざどうもありがとうございます、セシリアへの土産話にさせていただきますわね。」

 

 

話の直後、アナウンスが目的地が目前に迫っていることを告げる、そろそろ空港へと到着するのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、直後・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!」

 

 

「何があった!?」

 

 

「いったい何がどうしたんですの??」

 

 

突然車内にて非常時を伝えるベルが鳴った、

突然の事態にパニックになる乗客たち、

 

直後、急ブレーキが作動する。

 

 

オルコット夫妻は何が起こったか理解できていない、しかしその時、

 

 

「オルコット公ォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

「「え?」」

 

 

開いていた列車のドア、

 

 

突き飛ばされるオルコット夫妻、

 

 

オルコット夫妻は列車から突き落とされる、

 

 

直後、空港へと列車が突っ込む、

 

 

そして・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・っ!いたたた・・・カレン、大丈夫か?」

 

 

「ええ、なんとか落ちたところが良かったから・・・・・・」

 

 

夫妻が突き落とされたのは、たまたまそこにゴミとして積まれていた大量の柔らかいクッションの上に、ギリギリで受け身を取れたのも功を奏して二人は軽い怪我で済んでいる状態であった。

 

 

「それにしてもいったい・・・・・・!!!」

 

 

「あれ・・・はっ!!」

 

 

 

 

 

「「・・・槇田首相!!!!!」」

 

 

 

 

起き上がった夫妻が目にしたのは、本来の線路を大きく脱線し、他の車両ともみくちゃになりながら空港施設内部へと突っ込んでしまっている、先程乗っていた列車の姿であった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に時期を同じくして、ドイツ連邦共和国、ヴィルヘルムスハーフェン港、ドイツ連邦共和国海軍所属正規航空母艦「グラーフ・ツエッペリン二世」艦上。

 

 

 

「閣下ァァァァァァ!!ラインラント元帥閣下ァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

「どうした艦長?、そんないきなり血相を真っ青に代えて?」

 

 

《アルバン・ラインラント》ドイツ連邦共和国海軍元帥の随伴の下、ヴィルヘルムスハーフェン港にて観艦式の準備をしていた正規航空母艦「グラーフ・ツエッペリン二世」の元に前代未聞にして空前絶後の大凶報が飛び込んできた。

 

 

「そ・・・・・・それが・・・ッ!!」

 

 

「・・・どうした?よほどの事か?取り敢えず報告してくれ、でなければ何も始まらん。」

 

 

(ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ)

 

 

報告を持ってきた若手士官を宥めた45歳の元帥は、取り敢えず報告を聞こうとする。

 

 

「・・・・・・これから言うことをよく聞いてください、」

 

 

「ああ、して用件は?」

 

「・・・・・・マインラート・オーレンドルフ首相より緊急の連絡です!!!」

 

 

《超弩級非常事態発生、超弩級非常事態発生!!我が軍が所蔵している弾道ミサイル計300発含め、世界中から凡そ2500発の戦略兵器搭載の弾道ミサイルが目標を日本国の各地に指定して発射された!!》

 

 

《繰り返す!、我が軍が所蔵している弾道ミサイル計300発含め、世界中から凡そ2500発の戦略兵器搭載の弾道ミサイルが目標を日本国の各地に指定して発射された!!》

 

 

《原因は完全に不明!!一番早い弾頭はこのままだと今から2時間後に福岡県に着弾する模様!!》

 

 

《命令は以下の通りとなる、まもなく国内外問わず発射された弾道ミサイルの一部が群れを成してヴィルヘルムスハーフェン上空を通りすぎる頃合いである、海軍はグラーフツエッペリン二世以下、全戦力をもってして此の迎撃に当たれ!!》

 

 

《尚同時に陸空にも命令は伝達済みである、本国政府は駐日大使を中継して情報を伝達後、副首相と軍大臣を除く首脳陣総動員で日本へと向かう、軍はこれより各員、与えられた命令と軍人としての本分を全うせよ、以上である。》

 

 

「閣下!弾道ミサイルと思われる飛翔物体を確認!!数が多すぎます!!ご指示を!!」

 

 

アルバン元帥は空と海原を仰いだ、これ程までにクソッタレなリアルなど他にあるだろうか?いや、このクソッタレさは後にも先にも無いだろう、しかしながら、それでも表面上は冷静であった元帥の口から出た言葉は、この1つ以外存在しなかった。

 

 

「・・・・・・全艦艇戦闘体制に移れ!目標は空を飛んでいる弾道ミサイルだ!!!なんとしてでも全弾撃墜しきるんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして「目覚める」時は来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・続く。

 

 

 

 

 

 

 

 



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動き出す現場と起動する「白騎士」

ミサイル発射から5分後・・・日本国防衛省

 

 

 

「いったい何がどうすればこの有り様になるのよ!!外国の弾頭ミサイルは簡単には発射できないとかいってたが、全部嘘とか聞いて無いわよぉ・・・・・・」

 

 

 

 

「防衛大臣!言いたいことは判りますが取り敢えず指示を!!」

 

 

「わかってるわよ!全軍に伝達!!なんとしてでも本土に落とさせないで!!迎撃に関しての一切はこの際現場に一任するからやれるだけのことはやって!!」

 

 

防衛大臣、天ヶ瀬 深那(あまがせ みな)は嘆いていた。

 

日本に向かって凡そ2500発前後もの戦略弾頭ミサイルが放たれたのだ、ワケがわからないし何でこうなったのか理解したくもない、やれることも少ない(日本全土を目標にしているため、住民への避難誘導も意味を成さない。)

だが、やれるだけのことはやりきらねばならない。

 

 

これだけの弾頭が放たれた時点で日本が核の炎に包まれるのはほぼ確実、独国から連絡が入ったのはいいが、亡国になるのが確定したようなこの状況下ではヤケクソにもなりたいものである。

 

更に何がヤバイって首相と連絡がつかない、今頃ニューカッスルで機を待っている頃の筈なのに、(ってかこの状況で日本行きの機が飛ぶとは到底考えられない。)

 

首相の身に何かあったのだろうか?だとしたら最悪とか言うレベルを越えている、この時点で首相が海外で遭難とかまったくもって笑えない。

 

「防衛大臣!首相と電話が繋がりましたが・・・・・・」

 

「本当!急いで代わって!」

 

「そ・・・それが・・・」

 

「いいから早く!!」

 

首相と電話が繋がったと言う事実に気を取られ、部下の晴れない顔に気づかず電話を取る深那、しかし電話先の音は凄まじいものであった。

 

 

 

(ウーウーーーーーーピーポーピーポーピーポーピーポーウーウーゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!ピーポーピーポーピーポーピーポー)

 

「私だ、防衛大臣!状況を報告せよ!」

 

「えっちょっ!首相、そちらはいったいどういう・・・!!」

 

「さっさとしろ!!」

 

「はっはい!!」

 

通話先のイギリスは間違いなく修羅場である、救急車、消防車、警察のパトカーが大量に入り乱れているのが分かる。

 

だが、そんな事どうでもいいと言わせんばかりの槇田の剣幕に押され、深那は急いで状況を報告する。

 

「・・・・・・話はわかった。」

 

「・・・首相?」

 

「全国民をできるだけ幾つかの箇所に誘導して集め、その周辺地点に弾着予定のミサイルを迎撃すればあるいはと言った所だ(チッ,シカイガカスンデキヤガッタ)、」

 

「・・・義照首相?」

 

「こうなれば法律も糞もない、防衛大臣、すまんがわたしの代わりを頼む、私はこのタイミングだと他のことをやらざるを得んのでな(ヒダリウデノカンカクモカ…)」

 

 

「・・・了解致しました、やれるだけのことはやります。」

 

 

「・・・スマン、後事を託す。」(ガチャリ)

 

こうして電話は切れた、

 

「・・・・・・防衛大臣、南丞 純香(なんじょう すみか)幕僚総長が勝手に艦隊の方へ・・・」

 

 

「黙認しなさい、先程首相から代行を依頼されました、今さらではありますが、此れからわたしの指示のとおりにお願いします。」

 

 

「義照首相から・・・!、了解しました!!」

 

 

(無事でいてくださいよ・・・首相)

 

いまの深那には、首相に関しては出来る精一杯のことをしながら、彼女は指示を次々と送りだす・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな・・・こんなのって・・・」

 

「・・・とちくるったのか?」

 

 

一方此方はJAXAの工廠、ミサイルの件が速報され、束共々インフィニット・プロジェクトチームのメンバー全員がその場で固まっている。

 

辛うじてしゃべることだけ出来る束と正晴も、どう表現すべきかあまりにも困る表情を浮かべ、呟くのが精一杯である。

 

「・・・自衛隊や太平洋艦隊とかでどうにかなりませんかね?」

 

職員の一人が恐る恐る聞くが、当然束と正晴博士の答えは、

 

 

「「うん、無理」」

 

「「ですよねぇぇぇぇぇぇぇ~!!!」」

 

返答は非情であった。

 

 

「いくら自衛隊と在日米軍に強力な弾頭ミサイル迎撃能力があるからって、2500発とか無理ゲーにも程があるよ~」

 

 

「イージス艦、PAC3、スクランブルによる航空迎撃・・・全力で迎撃しても全体の45%・・・いや、海外で迎撃してるところもあるから累計でも80%ぐらいの迎撃が限界だろうな。」

 

「そして、残った二割でも元の数が元だから日本を吹き飛ばすのには十分・・・さすがの私でもどうにもならないよ・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

現場を重苦しい雰囲気が包む、だが・・・これをぶち破った人物がいた。

 

 

「なぁ束・・・・・・ISなら…出来たばかりのコレなら出来るんじゃないか?ミサイルの迎撃。」

 

千冬である、彼女はよりにもよってISでのミサイル迎撃を提案したのである。

 

 

「無茶だ!ISの飛行機能は大気圏離脱しか基本的には考えられてない!宇宙空間を飛ぶのと空中を飛ぶのとだと話が全然違うよ!!」

 

 

真っ先に反論するのは義照がIS開発に置いて特別に招聘した航空学者、川城 みとり(かわしろ みとり)博士である。

 

 

「・・・・・・それだ、」

 

 

「え?」

 

 

「川城さん、ISが大気圏に突入するときにISの飛行能力じゃ降下地点をミスした時に燃料が足りずに海に落っこちる可能性があるからって、ISで持ち上げられる滑空用のフライングボード作ってたよね?」

 

 

「ああ、一応できてるけど・・・・・・そう言う事か!」

 

 

みとりの言葉が引き金になったのか、束は一連の流れで「何が出来るか」を掴んだようだ。

 

 

「なるほど、大気圏ギリギリまでISで上昇して、そこからフライングボードで滑空しながら迎撃か、だが、そんなことやれるのか?」

 

 

「大丈夫だ、コイツには隕石迎撃用のレールガンがある、攻撃に関しては問題ない、」

 

 

「当てるかどうかだが・・・・・・私がやって見せよう。」

 

 

「ちーちゃん!?」

 

 

「ちょっと待った!!、一応、確認だけとらせてくれ。」

 

 

「なんだ?」

 

 

ここで千冬を止めたのは、国から正晴理事長の紹介で航空法等との折衝を任された上田 行信(うえだ ゆきのぶ)氏、IS開発における法律上の問題をクリアーしてきた人物である。

 

 

「あまり言いたくはないが念押しの確認だ、もしもコレが成功したら・・・ISは兵器扱いされかねないが・・・、いいんだな?」

 

 

「!!!」

 

 

彼はここに来て特大の指摘をした、

もしもここでミサイルの迎撃に成功すれば、世界はこぞってISを新しい軍事兵器として求めるだろう、そんなことになれば肝心の宇宙開発はどうなるか?自明の理と言うものである。

 

 

だが、千冬は迷うことなくこう答えた。

 

 

「私には守りたいものが沢山ある、守る為の力があるのならば、周りにどう言われようが、構わんさ。」

 

 

「千冬さん・・・・・・」

 

 

「私も・・・ISが軍事用にされるのは嫌だけど・・・此を見逃したらそれ以前の問題になっちゃうから・・・だから・・・・・・」

 

「束・・・・・・、」

 

やはりISが軍事用にされるのを恐れているのかはっきりと言えない束、その時、正晴が彼女の肩をぽんっ、と叩いた。

 

 

「取り敢えずさ、コレが片付いたらみんなで元凶探してフルボッコに仕立て上げようや、俺達の怒りをありったけ込めて・・・な?」

 

 

「・・・はるるん?」

 

 

「日本を救うにはISが軍事用に転用される危険性を甘受しなければならない、ならいっそやり過ぎなくらいやっちゃって、軍事的に危険物扱いにしてスポーツ専用とかに仕立て上げちまうんだよ、別段、軍事用になっても採算取ろうとしなくなれば宇宙開発用としての研究は続けられるだろうし。」

 

 

「んでスポーツ用に仕立て上げたら俺らが好き勝手いじくったやつで後進をボコボコにしてやるんだよ、悔しかったら俺らを越えて見せろ!とか大言してみたり。」

 

 

「まぁ要するに何が言いたいのかって言うと、使い方が変わっちまうんならソレなりに新しい《楽しさ》を見つけようぜ、ってとこ。」

 

 

「はるるん・・・フフフフ・・・・・・」

 

 

「ISの今後云々はともかくとしておいても元凶をタコ殴りにするのには大賛成ですね、こんなことされてキレない理由がない。」

 

 

「はっ!まてよまさか今回のミサイルはISを世の中に間違った認識で出すために仕組まれたものである可能性が微レ存・・・。」

 

「流石にそれはないでしょ、まぁ複数人か単独かどうかはわかりませんが何者かが意図的にやらないとこんなことにはならないでしょうね、」

 

 

「ッてか冷静に考えたら能力的に真っ先に疑われるの束さんじゃないかな?」

 

 

「みとりん、それはないよ~何で束さんが疑われなきゃならないの~~」

 

 

「いやだって束さんのクラッキング能力凄まじいし・・・・・・」

 

 

「それはイカンな、神社の篠ノ之さんの所の神社は願掛けでお世話になったし、たしか妹さん含めて四人家族だったろ?」

 

 

「弁護しなきゃ(使命感)」

 

 

「そういや千冬さんのところは、今いるの弟君だけなんだっけ・・・・・・」

 

 

「・・・・・・(´;ω;`)ブワッ」

 

 

「やべえ、ワイその話知らんかった・・・道理で話聞くたびブラコン拗らせとるなぁ・・・と……」

 

 

「助けなきゃ(使命感)」

 

 

「ストーップ!!ストップストップストーップ!お前らいきなり話がずれてるぞオイ!!」

 

 

「意外といつもの事だからね、仕方ないね。」

 

 

自分が話始めたのに他の職員達が騒ぎだし途中から脱線したので話を戻した正晴理事長、実は開発中の頃の会議とかでも、話が壮大にそれて理事長に引き戻されると言った事はわりと日常茶飯事であったりする。

 

 

ただ、この場ではミサイル迎撃に赴く千冬、自分の夢をこんな形でぶち壊しされた束、そして何より自分達の総力をかけても産み出したISのことを案じているのは確かであった。

 

 

「・・・そうだ!ちーちゃん、私もISでミサイル迎撃するの手伝わせてくれない?」

 

 

「?、どう言うことだ?」

 

何が思い付いたらしく同行を提案する束、

 

 

「ジャジャジャーン!IS用バックパック~!、ISの背中に装着することで後ろに人を3人はのせられるスペースが出来るのだぁ!!空気抵抗はIS本体のシールドで防げるし、私もコレでちーちゃんについていこうかなって!!」

 

束がドラ○もんのごとく取り出した装置をみて更に話は加速する。

 

 

「んじゃぁせっかくですしそこにレールガンの予備弾薬を仕舞っときましょう、人一人分ぐらいのサイズ使っちゃいますが。」

 

 

「んじゃ後一人正晴理事長で、」

 

 

「ファッ!?」

 

 

「この中で軍事知識に一番聡明なの理事長じゃないですか、軍事関係の知識を講座出来るレベルなんですからもしもに備えて着いていってください。」

 

 

「それやったら逆にISやられたときの損失が恐ろしい事になるんだけど!?」

 

 

「責任重大だな・・・フッ、任せてもらおう。」

 

 

「いや私はいかない方が・・・「じゃけん束さんと一緒に理事長をしまっちゃおうねー「ちょwwwwおまwwww」

 

 

「さっさとゲートを開けろぉぉぉぉぉ!!IS一号機がまもなく発進するぞーー!!」

 

抵抗するまもなく束と他職員たちに連れていかれIS用のバックパックに詰め込まれる正晴とレールガンの予備弾層、束も乗り込み、燃料補給を済ませ、発進する準備が整ったと同時にゲートが開き終わる。

 

 

「・・・・・・インフィニット・ストラトス、織斑 千冬、発進するッ!!」

 

 

「いけいけゴーゴー♪」

 

 

「こうなりゃヤケだ!!!やってやらぁ!!」

 

こうしてJAXAの工廠から遂に1つの機体が飛び立った、そしてこの日、後まで語り継がれる壮大な伝説が生まれることとなる・・・

 

 

紫髪の兎耳少女の願った「夢」は、形を変えて、極東と呼ばれた小さな島国を救う「白き騎士」となる・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・続く。



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「白騎士」事件

 

千冬、束、正晴が乗るISはあっという間に成層圏に達し、用意されたフライングボード(Zガンダムのフライングアーマーみたいな物)で滑空体勢に入り、あっという間に多数の弾道ミサイルが飛ぶ地点へと到達することが出来た。

 

 

「確認できたぞ・・・凄いな、ここにあるだけで千と数百発と言ったところか」

 

 

「はるるん、後どのくらいで到達する?」

 

 

「えーっとGPS機能が示す現在位置と、ミサイルの目測距離からすると・・・後15分で本土上空に到達するね」

 

 

正晴がケータイのGPSと飛んでいる弾道ミサイルを確認しながら呟くと同時に、幾つかの発砲音、爆発音と共に凡そ30発前後の弾頭が撃墜される。

 

 

「撃ち落とされている?下が海上と言うことは・・・」

 

 

「砲弾の炸裂音・・・えーっとあそこ辺りから・・・・・・見えた、やはり自衛艦隊か」

 

 

バックパックから頭を出しながら空の上から海上を見る正晴達に見えるのは夥しい数のミサイルの他、多数の護衛艦とヘリコプター護衛艦などで全力での迎撃を行っている海上自衛隊の主力、自衛艦隊の姿もあった。

 

 

その全力っぷりたるや凄まじく、総勢100隻近くを展開しているのだが、その割りには迎撃できていない。

 

 

「可笑しいなこれだけの艦艇があるのに何で全然迎撃できていないんだ?」

 

 

「いくらなんでも可笑しいよ~、イージス艦とか沢山あるんでしょ?」

 

 

「う~ん、考えられる理由は多分・・・・・・あーあった、あれを見ろ」

 

 

「ん?」

 

 

正晴が束と千冬に見るよう促したのは他よりも少しだけサイズの大きいミサイルであり、よく見ると海自艦船から放たれたミサイルに反応して、ミサイルの胴体部分から金属片のようなものや、火の玉と思われる物体を大量にばら蒔いているのが見えた。

 

 

「アメリカが最近更新した弾道ミサイル、トライデントXだな、自分にミサイルが接近するとフレアとチャフを自動で盛大にばら蒔いて自衛するやつだ、こいつが妨害しているせいで迎撃効率が落ちているわけだな」

 

 

「じゃあアレを最初の目標にするか・・・よし、いくぞ」

 

 

「え?ちーちゃん、それ射撃武器なんだけど?」

 

 

「何で急降下して接近する必要があるんですかねぇ?」

 

 

正晴の解説を受けた千冬は機体を急降下させ、どんどんミサイルへと近づく、そしてレールガンを突然おもいっきり降り下ろしたかと思うと、そこには真っ二つにされたミサイルが出来上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、千冬達の眼下にいる海自自衛艦隊の臨時旗艦(本来、自衛艦隊は旗艦を有していない)

「いずも」艦橋にて。

 

 

 

 

「ダメです、トライデントの妨害が激しく迎撃が間に合いません!!」

 

 

「クソッタレが!一ヶ所に集まって迎撃しやすくなったと思ったら今度はミサイルの自衛機能か!!」

 

 

「不味いわね・・・このペースじゃあ800発前後は本土に到達することになるわね・・・・、どう考えても間に合わない」

 

 

「後ここにあるのを落とすだけで日本は救われるって言うのに、コレじゃあどうしようもねぇ!!」

 

 

配備されて半年も経ってないらしいのに、こんな形で噂に聞いた「トライデントX」の実力を見ることになるなんてね・・・さすがの私もお手上げかしら・・・・・・。

 

 

「いずも」艦橋にて怒りをぶちまける自衛艦隊司令官、早川 重造(はやかわ じゅうぞう)と対照的に状況を絶望視している南丞 純香(なんじょう すみか)統合幕僚長。

 

 

この時、実は日本海側の艦隊、日本各地の自衛隊、他国への領空侵犯を辞さずにミサイル迎撃を行った独軍、旗艦「ジェラルド・R・フォード」艦載機や他の米軍第七太平洋艦隊等の奮戦あってここにある弾頭が今日本に向かっているすべてになっていた。

 

 

だが太平洋艦隊は先に300発前後を迎撃して弾薬が底をつき、自衛艦隊も半年前にアメリカで配備されたばかりの新型弾道ミサイル「トライデントXの熾烈な妨害ににっちもさっちもいかない状況であり、このままだと弾薬が底をつき迎撃が間に合わなくなってしまう確率が高かった。

 

 

(残っているトライデントXは30発前後・・・此を何とかしないと・・・)

 

 

「・・・・・・何だアレ?幕僚総長、あれを見てください」

 

 

若くして統合幕僚総長に至った秀才である南丞は、持てる頭脳をフル活用して光明を探すが見当たらない、だがそんなとき、突然上空を飛んでいたトライデントXのうち1つが、真っ二つになって撃墜される光景を、重造共々目撃することとなる。

 

 

「・・・何?あの白銀のロボットみたいなのは?」

 

 

「白銀の・・・騎士・・・か?アレはまさかミサイルをぶった切っているのか?」

 

 

「幕僚総長!詳細不明の飛翔物体の反応がレーダーに!!その物体によって次々とミサイルが撃墜されています!!」

 

 

「何で気づけなかったの!!どう言うことよ!?」

 

 

「申し訳ありません・・・ミサイルの方に気を取られていて完全に見落としていたようで・・・」

 

 

「それは・・・・・・仕方ないわね」

 

 

「それと・・・破壊された弾頭の破片が大量に・・・・・・」

 

 

「あっ」

 

 

「たっ、退避ぃぃぃぃィィィィィィ!!!」

 

 

見えた謎の飛翔物体は白銀の騎士のような姿に見えたのだが、物凄いスピードで次々とミサイルを真っ二つにしていっており、そのせいで下の艦艇群は落下する破片から必死になって逃げ回る羽目になっていた。

 

 

幸いにも謎の機体が、落下する破片から逃げ回る艦艇に代わってミサイルを処理してくれているので迎撃に問題はないのだが、プライド的にはクるものがある。

 

 

 

それはともかくとして、白銀のロボットと思われる飛翔物体の登場により、あれほど沢山あったミサイルは、必死になって避けた自衛艦隊の奮闘もあり、すべてにおいて無事に迎撃され切ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チーチャン…アッ…コレハマズイ…スゴクキモチワルイ」

 

 

「ダイジョウブカタバネ……オレモアカンジョウタイダケド…アトチフユサンムチャシスギ……」

 

 

「二人とも大丈夫か!?」

 

 

一方こちらは千冬達「自分は撃つよりも切る方が性に合うからな」と言う一言でレールガン(束特製の合金製)を刀代わりにすると言う無茶苦茶をしながら(たまにレールガンをまともに使って撃ち落としてはいたが、殆どレールガンを刀みたいに使っていた)ミサイルの迎撃が完了した。

 

 

だがバックパックにいた二人は千冬がミサイルを切るために(レールガンでミサイルを切ること事態がおかしい話なのだが)到底人間業とは思えない変態機動に振り回されたせいで完全に乗り物酔いを起こしていたのである。

 

 

「さて、他の所のミサイルは?」

 

 

「束さんふっかーつ!えーどれどれ・・・・・・残って…無いね、いつの間にか全弾迎撃されていたみたい」

 

 

「・・・・・・束、正晴、私は・・・・・・守れたんだな……日本を……みんなを・・・・・・」

 

 

「・・・・・・うん!ちーちゃんのお陰だよ!!」

 

 

「ああ!!・・・ありがとう!千冬!!」

 

 

束が開いたパソコンでは速報でミサイル全弾撃墜と千冬の活躍が謎の白銀の機体の活躍としてこれ以上に無いくらい大々的に報道されており、歓喜に沸き立つ人々のネット上のやりとりで溢れかえっている。

 

 

千冬達の登場については、ミサイル迎撃の途中で、ミサイルの破片を必死こいて避けてる「いずも」から統合幕僚総長と自衛艦隊司令官の実況つきで、千冬の活躍や、破片を避けながら迎撃ミサイルを打ち上げる自衛隊の護衛艦の勇姿、「いずも」の真後ろをミサイルの破片が落ちて行く様などを生放送していたらしく、

 

 

「守護神降臨(赤太文字)」だとか、「自衛隊の新兵器宣伝だ」とか「仕事しろよ統合幕僚総長」(放送中でも一応ちゃんと命令は出していた)だとか「白銀さん(某動画サイトで付いた仮称)破片に関しては考慮してあげてwwww」だとか、なかには「これJAXAが二年前から特別予算で作ってたやつじゃねーかなぁ?」だとか?「あの機体が振り回してるの銃器っぽいんですけど・・・」だとか「今一瞬、凄い顔してる篠ノ之束博士と村ノ瀬正晴理事長が見えたんだけど」等、おもいっきり正体をある程度察した凄まじく聡明なコメントまで確認することができた。

 

 

だがそんなことはどうでもいい三人にとっては、日本を、自分の家族を、守りたいものを護り通せた事に喜び合うことが先であった。

(なお、見られないように雲に隠れている)

 

 

「んでさ、千冬、あれ見える?」

 

 

「一応見えるが・・・・・・」

 

 

「んー?モールス信号かな?」

 

 

感動の分かち合いもひとまずとして気を取り直した千冬達だが、ここで「いずも」からモールスが千冬達に向かって放たれる。

 

 

「えーっと、内容はどうなんだ?」

 

 

「ハクギンノエイユウヨ、ワレライチドウ、キコウヲカンゲイシタクオモフ、ツキマシテハホンカンニチャッカンシテクダサイオネガイシマスナンデモシマスカラ! だって」

 

 

「うわぁ・・・物凄い数の人が船の上で敬礼している・・・・・・」

 

 

「・・・・・・ちょっと恥ずかしいな(/-\*)」

 

「ねぇねぇはるるん、超恥ずかしいから逃げない?」

 

 

「・・・・・・それは無理そうだ、燃料を見ろ」

 

 

 

「「・・・・・・・・・・・・あ゛っ」」

 

 

正晴に促されるまま二人は燃料メーターを見る・・・・・・・・殆ど残ってない!!!

 

 

「・・・・・・降りよっか?」

 

「・・・・・・・・・だね」

 

「・・・・・・・・・だな」

 

 

こうして半ば嫌々ながらも、三人をのせたISは、ゆーっくりと「いずも」甲板へと降りたって行くのであった。

 

 




原作からの変更点。

白騎士の武装変化&同行者追加。

この世界ではISは普通に宇宙開発用なので、武器も対隕石用のレールガンになって、近接武器は不自然なので削除、バックパック足して束と正晴を白騎士事件に直接的関わらせるのは突然の思い付きです。



白騎士「事件」での千冬の活躍が減少。

今作では白騎士事件が比較的穏当に解決される予定なので、原作に出てたミサイル以外の被害はこちらでは発生しない予定です、また、ミサイルそのものも自衛隊とかが頑張ってある程度迎撃したので撃墜数が減っています、まぁそれでも英雄扱いされるだろう事に代わりはありませんが。


最後にこの世界での白騎士のデータ張っときます。

「白騎士」

ISの存在を認められ、首相、槇田義照と、JAXAの理事長、村ノ瀬正晴が集めた人材達と提唱者である束、協力者の千冬を含めた開発チームの手による二年の月日を掛けた共同開発でもって完成した世界で最初のインフィニット・ストラトス。

(正式にいえば義照は開発チームの人員ではないが、自身に仕事が殆ど回ってこないので理由をつけて束達に様子見序でに良く会いに行っていたので、開発にある意味大きく関わっている。)

ISの基礎となる機構が多数盛り込まれており、
実はPIC等一部は理論段階では盛り込まれておらず、後に必要に迫られ開発、登載された物もあった。


機体カラーは白銀、これは千冬が好みとしているカラーリングであり、彼女をテストパイロットとしてるわけだしと言う理由でカラーリングされたものである。


実は本機が完成し、白騎士事件を解決したタイミングでは核となるISのコアの特徴と問題点を把握しておらず、コアその物も

「何故かサイダーで酔っぱらった束と正晴理事長が深夜テンションで何か作り出したと思ったら完成していた」

などと言うふざけた代物であるため、いろんな意味で危うい代物であったりする。


(注、二人は未成年です、そして当然二人が酔っぱらった時に飲んだこのサイダーにアルコールは一切ありません、)」


なお、作者は燃料周りの設定を一切合切思い付かなかったので、燃料に関しては「一応必要である」と言った程度で、これ以上深く掘り下げずご都合主義で通す予定なので注意。


武装、

隕石迎撃用レールガン

「打鉄」、「蝉時雨」

隕石迎撃用として開発されたレールガン、後の世代のISと比べると随分と普通な性能のレールガンなのだが隕石迎撃用なため射程は40㎞越えで、隕石と衝突しても耐えられるように凄まじく硬い合金で作られたため、千冬はコレを二刀流して弾道ミサイルをぶった切っていた。


大型バックパック「箱庭」

高校生くらいの少年少女を3人ほど乗せられるようにした大型バックパック、宇宙空間に物資を持ち込むときに使う予定であり、間違っても人をのせる予定は無かったのだが、今回束と正晴が乗り込み、千冬の為した偉業を見届けることとなった。


フライングボード「銀幕」

大気圏突入時、落下軌道を違えた時用に空中を高速で滑空するために用意された、が、途中で操作のコツを掴んだ千冬は途中から使わなくなっていた。(それで燃料を余分に使った結果が燃料切れである。)





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列車事故の行方



今回は感想の方にて心配されている人がいた槇田首相のその後です。

R15の範疇で済むのかR18(Gになるっぽかったら修正致します)になってしまうのかわかりませんが、今回かなり残酷な描写がなされます、ご注意下さい。


視点は移り変わってニューカッスル国際空港、事故現場付近。

 

 

 

 

けたたましいサイレンの音が鳴り続ける、「白騎士」事件解決から数十分が経とうとしているのに、まだ本格的な救助作業はスタートさせることができていなかった。

 

 

そんななか、一人の男が現場付近に急途設立された災害対策本部へと入ってきた。

 

 

「対策本部長、被害はどのようになっている?」

 

 

「ハロルド閣下!?」

 

 

やって来たのは時の英国首相、ハロルド・バーミンガム氏、先程まで事故とミサイルの両件を一度にまとめて聞かされて、半狂乱になりかけながらも大使を通じての謝罪等、宰相としてやるべきことはやっておいて、ミサイル事件解決と共に急ぎでこっちの現場にやって来たのだ。

 

 

「状況に関しては最悪の一言を優に越えています」

 

 

以下、ハロルドが聞き上げた現場の状態を纏めてしまうと、まず一番最初に話に挙がったのが鉄道車両の行方である。

 

 

ニューカッスル国際空港へと入る高速鉄道の駅は普通に地上にあり、鉄道も普通に地上にあったのが脱線して事故を起こした結果、列車の連結部分が一部破壊されてしまった。

 

 

そして計9両の車両の内、先頭の2両が道をそれて空港内部に突入、火災を起こしており、1両は市街地を暴走、民家に突入して大惨事、更に1両は空港駐車場に突入して多数の死傷者を発生させていると言う未曾有の大被害がまず最初に話に挙がった。

 

 

次に不味いのが槇田義照首相の安否が不明なことである。

 

 

同乗していたオルコット夫妻は無事に災害対策本部へと到達したのだが、何故か車内に残った(何で夫妻共々車内から飛び降りなかったのか?)槇田首相の安否が解らない。

 

 

首相が乗っていた最後尾車両を含む前述されていない列車の残り鉄道5両はお団子状態で駅近くの線路で横転しているために、市街地と空港駐車場の2両、撥ね飛ばされた車や建物の瓦礫、空港火災が道の邪魔をして人員輸送車両を近づけることが出来ず、途中から徒歩で向かっているのでまだ救助隊が現場に到着できていないのだ。

 

 

そして何よりも・・・・・・

 

 

「・・・・・・それは本当かね?」

 

 

「ええ・・・間違いありません、事実、先程警察が駅から300m程手前の地点から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を、()()()で確認しました」

 

 

「そんな・・・・・・じゃあ今回の出来事は・・・・・・」

 

 

「今回の出来事は決して事故ではなく、オルコット両公、或いは首相の《暗殺》を狙った()()の可能性が高いと思われます、又、爆発の規模と現場に残っていた物証からして使用された爆弾は《PE4》・・・・・・軍用の・・・()()()()()()()()と思われます……」

 

 

「……事件に我が英国の軍が関わっている可能性があるのか・・・・、最悪と言える要素の詰め合わせだな、この件の後始末のことを考えると人目を無視して泣き出したくなってしまうよ」

 

 

「ハロルド首相・・・・・・」

 

 

ハロルドは聞き出した内容の酷さに思わず天を仰ぎ見る、ちょうどその頃本部に人がやって来て、とある報告を為した。

 

 

「首相!お待たせいたしました、救助隊が現地に到着し、間もなく槇田首相のいる列車で救助作業が開始されます」

 

 

「よし、なるべく急がせてくれ。」

 

 

「間もなく救助隊との通信がつきます」

 

 

ここでやっと、救助隊が現地へと到着し、車内へと突入して行く、その様子は救助隊員の一人に渡されたカメラで鮮明に写し出される。

 

・・・が、そこに写し出された映像は……

 

「これは・・・・・・首相だ!!首相がいたぞ・・・っ!?うわあああああああああああああああああああ!!」

 

 

「おい、どうした、なにがあった!?」

 

 

この時、カメラ持ちの男に先行して救助隊員が二人が入っていったのだが、その二人は首相視認直後に何を見たのか、発狂して車内を飛び出してそこで泡を吹いて失神してしまった。

 

 

慌てて中に入るカメラと別の救助隊員、そこでカメラが写したものは・・・・・・

 

 

 

 

 

「・・・Jesus‼ fucking‼ christ‼」

 

 

「・・・はぁっ(ドサッ)」

 

 

「ウッ・・・カレン?大丈夫かカレン?、カレン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視点は移り変わり、少し前の車内へと視点は変化する。

 

 

 

「はぁ……はぁ……疲れた~。アイタタタタ!!・・・マジでそろそろ体が限界だな……左腕が取れかかってやがる、マジで不味いな」

 

 

列車事故にて生存していた槇田は、防衛大臣にミサイルの件を託してからこの時まで、他の車両に残っていた人々を自身のいた最後尾車両へと運び込んでいた。

 

 

「・・・・・・まさか人生でこんな大量の仏さんを見る羽目になるとは思わなんだなぁオルコット夫妻は大丈夫かなぁ?」

 

 

なるべく生存者を優先して運び込んでいるのだが、事故の死体がそのままと言うのは彼自身到底見過ごせることではないので、綺麗に身だしなみを整えて安置したりしているのだが、いかんせん人が足りない。

 

 

事故の影響で自分の車内にいたSPは全滅、かろうじて繋がっていた他の車両も生存者がいれば気楽な方であり、表現のしようがない惨状を呈している車両もあった。

 

 

序でに、意識があり、まともに立って体を動かせるのは一貫して義照のみ、そんな自分自身も両足は何ヵ所かを骨折し、左腕は潰れかけ、右目は完全に失明、服も合わせて身体中血まみれと言う酷い状況もあり、救助隊が来るまで彼は孤独な戦いを強いられる事となった。

 

 

「一人しかおらんのは寂しいもんだが、本国にはもっと厳しい状態のあいつらがいるんだし、私も頑張らなくてはな・・・・・・」

 

 

・・・何人もの人の最期を見届けた。

 

 

 

何人もの死者の前で、霞んだ目を酷使してでも十字を切って冥福を祈った。

 

 

 

車内の、地獄すら生ぬるく感じるその惨状を孤独にあり続けるのは、恐らく普通の人間には到底耐えられないものであろう。

 

 

だが、そんな孤独の中でも、彼は狂うことなく、ただひたすら霞んだ目とマトモに動かぬ四肢を酷使し、動き続けた。

 

 

そうしている内に時間が経過し、外から救助隊のものと思われる声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ・・・・・・救助隊が来たか・・・おーいこっちだこっち(ボトッ)・・・・・・あ」

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・・・・首相だ!!首相がいたぞ・・・っ!?うわあああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは起こった。

 

 

 

 

 

 

救助隊がやって来て安心し、居場所を知らせるため左腕を降る義照、だが、ここで彼の左腕が

限界を迎えたのか、()()()

 

 

そして救助隊員はよりにもよってその瞬間を目撃してしまったのだ。

 

続け様にカメラを持ったのと先程のとは別の救助隊員が直ぐに中に入ってくるが、その二人もこちらを見たまま固まっている、そりゃあ確かに片腕がすぐそばに落ちている満身創痍の国賓なんか見た暁にはそうなるのも無理はないが。

 

 

「おおう、すまんな・・・・・・こっちもそろそろ限界で・・・・・・あっそうそう、一番奥と三番目に生存者が何人か残っている、早く助けてやってくれ・・・・・・仏さんを供養するのも忘れずに・・・な…………(ドサリ)」

 

 

「・・・はっ!首相だ!!此方救助隊、槇田首相と何名かの生存者を確認、首相は意識不明の重体です!!」

 

 

「応急手当急げ!!おい!早く担架に乗せて首相を!!」

 

 

 

「槇田首相・・・槇田さん!!」

 

「落ち着けカレン!画面からでは何をいってもどうにもならん!!」

 

 

(生き残ってくれ槇田首相・・・貴公にこれ以上があればオルコット夫人が保たん・・・・)

 

 

後に、「ニューカッスル高速鉄道脱線、首相爆殺未遂事件」として歴史の教科書に記載される事となるこの事件、この事件において、事故車両にて一人救助隊が活動しやすいように列車内を動き回った日本国首相、槇田 義照は心の内で母国の事を案じながら、救助隊到着直後に意識不明の重体になる。

 

結果として懸命の救急措置のため一命を取り留める物の、彼が目を覚ますのはそれから凡そ一ヶ月も後の事なのであった・・・・・・

 

 

 

 

~続く~

 

 

 




原作からの変更点。

セシリア両親生存&鉄道事故が鉄道爆破事件に。


原作にて鉄道事故にて死亡したセシリアのご両親を生存させ、ついでに鉄道事故は何者かが仕組んだ大事件になりました、セシリアの両親を生存させる代わりかの如く、(一応の)主人公格で用意されたオリキャラが大変なことになっています。



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「白騎士」編終節、首相へのお見舞いと衝撃の告白、


早めで申し訳ありませんが、本話で時系列的に行われる白騎士事件の後始末で一区切りとし、原作キャラが出てくるようになる本編開始直前までの時間軸を次回より執筆して行きたいと思います。

オリキャラ含めたキャラ設定公開は近日行う予定。


 

英国、ロンドンは聖バーソロミュー病院

 

義照の病室。

 

「義照!」

 

「首相!」

 

「よっしー!」

 

「義照首相!」

 

「槇田さん!」

 

「槇田ァ!」

 

「槇田首相!」

 

「・・・義照首相」

 

 

「白騎士」事件から、凡そ一ヶ月・・・症状が重たく、ニューカッスルからロンドンの病院に移されていた槇田の元に多数の見舞人が現れた。

 

 

あの二大事件(白騎士と爆殺未遂)から十数日、事前に上田が危惧したとおり、徐々に軍事兵器として注目されるようになってしまったIS、眠りにつく槇田は知らぬことだが、ISの今後の扱いに関して、束や深那首相代行は正しく佳境に入ろうとしている所であり、参加者は色々な形でコレに関わり、これから暫く会えそうになくなるとの事なので、白騎士事件の対処も含めててんてこまいの時期の来訪であった。

 

 

因みにオルコット家の邸宅と病院付近含めたロンドン一帯は、共に英国王室の取り計らい(事件を知った英国女王が激怒、首相とオルコット侯を保護する名目)で周辺一帯に本土の陸軍の2割と近衛兵が総集結しており、病院などの公共施設の機能阻害を防ぐ調整はしてあるとはいえ厳戒体制が敷かれていた。

 

尚、冒頭の呼び掛けは上から順番に正晴、千冬、束、みとり、チャールズ、重造、純香、深那である。

 

他にもハロルド首相、ラインラント元帥などがやってきている

 

 

「みなさーん、ちょっと呼び掛けが硬いよ~」

 

 

「・・・と言われても私は公人としてここに来てるわけだし・・・・・・」

 

 

「首相は元々堅苦しいの嫌いでしたから別段いいのでは?」

 

 

「そんなことは後だ幕僚総長、今回は色々伝えたい事あるんだろ?」

 

 

「その通り!・・・まぁせっかくだし、先に束さんたちお願いしますね」

 

 

 

「・・・・・・そうだな、まず最初に束、正晴、二人は伝えたいことがあるんじゃないのか?」

 

 

「え゛っ、それ一番最初なんか!?」

 

 

「ちょっと待って私心の準備出来てない!!」

 

 

「お?お?、いっちゃういっちゃう~??」

 

 

「「「?????」」」

 

 

千冬からいきなり話を振られた束と正晴、正晴は困惑しており束はめっちゃ恥ずかしがっている。

 

 

その他、みとりが二人を煽ってたりするがこの場にいるのは他に重造と純香が何かを察した以外は訳が解らず首をかしげるばかりである。

 

 

「・・・んじゃまぁ、言うか?」

 

「・・・・・・言っちゃおっか!」

 

「????」

 

 

「「首相、報告です、私たち、婚約しました!!!」」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

場が完全に沈黙した、そして・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「嘘だあああああああァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」」」

 

 

「予想してたけど酷いwwww」

 

 

「だから言いたくなかったのにぃ~(ノ◇≦。)」

 

 

「・・・今さら考えると、束と正晴ももうその段階かぁ・・・両親への挨拶は済ませたのか?」

 

 

「そりゃもうバッチリ!!・・・ってアレ?」

 

 

「・・・首相?」

 

 

知らなかった組は超のつく大声で全員叫んだ、正直言って、「白騎士」事件後一躍有名人になった二人にそんな話があったとは思っていなかったし、信じられなかった、元から仲が良いと話には聞いていたが、まさか二人の仲がそこまで進んでいたとは。

 

 

コレには流石の義照首相もビックリ!思わず飛び起きて他の皆と同じようにって・・・アララ?

 

 

「槇田お前いつの間に起きてたんだよ!」

 

 

「今さっきだよ!!耳になんか聞こえるなーとか思ってたらまさかの婚約宣言で思わず飛び起きたわ!!」

 

 

「首相が起きたぞーーー!!」

 

 

「えらいこっちゃえらいこっちゃ!!」

 

 

「ちょっと私は首相が起きたことを女王陛下に連絡してくる」

 

 

「私は妻とセシリアに・・・」

 

 

「バーミンガム首相!?、チャールズ侯!?」

 

 

 

「全治半年とか言われてたんですが体の方は大丈夫なんですか!?急なことなんでなんにも言えない!!」

 

 

「「「「ここは病院です!!、他の患者様もいらっしゃいますので静かにしてください!!!!!!」」」」

 

 

首相復活による大パニックで騒ぎすぎた束達、この後まず付近の看護師達に声を揃えて一喝された後、やって来た首相の主治医、早川 癒希(はやかわ ゆき)氏に全員揃って丸3時間ほど説教を食らうこととなる。

 

 

(この時、有名人が勢揃いして正座で説教を受けている光景を主治医が有無を言わせず撮影しており、貴重映像として保管されることとなるのだがそれはまた別のお話)

 

 

 

 

「・・・はぁ、復帰早々酷い目に遭った・・・あ、二人とも婚約おめでとさん、俺から言わせれば、やっとかってところだがな」

 

 

院長の説教が終わって暫く、皆一様に足をしびれさせながら槇田は二人を祝福する。

 

だが、槇田の発言の最後に気になること場があったので、追及は続くこととなる。

 

 

「「やっと?」」

 

「ん?千冬は聞いてただろ?二人の惚気話、IS開発がスタートした辺りからJAXAに来る度ちょくちょく聞くようになってなぁ・・・・・」

 

「いや、確かに束からしょっちゅう正晴の話を聞いていたが・・・結構な年の差だろう?」

 

「え!?・・・・・・千冬、束と正晴は同い年だぞ・・・・・・」

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・え?」」」

 

再び場に衝撃の事実が放たれる。

 

 

正晴は束と同い年・・・それはつまり千冬とも同い年であるわけで、此方は千冬やみとりの様なIS開発で彼と日常的に出会う人物や、ラインラント元帥、ハロルド首相のようなISを開発する前の頃から彼をよく調べ、知っていた人物達も知らない驚きの話であった(外見的には20代後半辺りに見えるので、だれも年齢を疑わなかったのもある。)

 

 

「……私もはるるんに直接教えてもらうまで気づかなかったんだよねー」

 

 

「絶望した!!JAXAのホームページに明記されてるのに本当の年齢を知らない人が多過ぎて絶望した!!」

 

(ホントに明記されてるから質が悪い。)

 

 

 

「はるるん、たぶんそのネタ知ってる人そんないないと思うよ?私も原作に関しては殆ど知らないもん」

 

 

「と言うか、ちふーは束の惚気話を惚気話と認識してなかったの?私が一度聞いたときは余りの甘さにM○Xコーヒー頼んだくらいなんだけど?、鈍感なの?」

 

「ちょっみとり!だからそのあだ名は恥ずかしいからやめろとあれほど!」

 

 

「ちふーももうちょっと乙女しようよー、弟君に全任せでアレな事になっている部屋とかさ~」

 

 

「……覚悟はいいか?みとり?」

 

 

「捕まえられるなら捕まえてごらーん!!」

 

 

「あっ待て!!」

 

みとりは千冬を散々煽って病室から逃走、煽りに負けた千冬はそれを追いかけるのだが。

 

 

「・・・二人とも!!いい加減に!!してください!!」

 

 

「ヘブッ!」

 

「オウフッ!」

 

「「バタンキュー」」

 

直後、病室を千冬とみとりの比にならない速さで飛び出した早川医師、千冬とみとりは二人揃って速攻で鎮圧されてしまう。

 

 

「良いですか御二人とも、先程も口酸っぱくして病院には他の患者さんがいらっしゃると、そこで走る暴れる大声を出す、そういった迷惑行為は許されざる事だとお伝えしましたよね?」

 

 

「Oh……みとりんとちーちゃんが一瞬で……JAXAのみんなのなかだと最速と最強の二人なのに・・・・・・」

 

 

「誰か、手が空いている人で構いませんのでまたカメラの方をお願いしますね、それと束さん」

 

「はぃい!?どうされましたか!?」

 

千冬とみとりを再び正座させながら説教の準備を始める早川医師であったが、それとは別に、急途病室から顔出しで様子を見ていた束達の方に振り返る。

 

 

「今度、私の都合とそちらの都合が合えばの段階で構いませんので私にもISの適性検査を受けさせてくださいませんか?」

 

「えっ?ちょっと待って何で?どこで其の話聞き付けたの?」

 

「いえ、私もたまたま一月前の()()()()()を拝見させて頂いていましたので。」

 

 

「・・・・・・()()()()()見てる?」

 

束と正晴の二人から滝のように汗が流れる。

 

「そりゃもう当然の如く、まぁ、御二人が将来的におめでたになったとしても私は産婦人科は専門外なので関われそうにありませんがね。」

 

「ーーーーーーーッ!!(キュボン‼)」

 

「ん?束、ISの適性検査云々とあのシーンってなんぞ?」

 

「束さんは・・・恥ずかしさで倒れてますね、正晴さんも空仰いで現実逃避してますし、ここからは当事者の一人である私が説明します。」

 

 

その後、槇田に対しての純香の説明が入った。

 

純香によると首相が倒れていた頃、ミサイルは全て撃墜されており、その時ミサイル撃墜に一番貢献したのが、当時完成したばかりで、現場にて隕石破壊用のレールガンで刀のごとく隕石を切断しまくった、千冬の乗るインフィニット・ストラトス1号機であった。

 

ミサイル撃墜後、当時は正体を知らなかった純香が日本を救った英雄たる1号機を「いずも」に招待、1号機側もホントは逃げたかったが燃料切れには勝てず着艦する・・・・・・

 

 

ここまではよかったのだが、この時千冬へのアドバイスの為、1号機に拡張装備を付けて束と正晴がいたのが原因となり、自衛隊側に目の前の英雄がJAXAで開発していたISであることが即座に露見する。

 

 

海岸近くに艦隊が停船していたのが運の尽きで、この少し前のタイミングで日本の放送局や新聞社などの取材ヘリが総集結、偶々世界へ同時生中継していたテレビ局のカメラとマイクが一連の流れを拾っていたのもあって、ISの軍事兵器としての存在価値が世界に知れ渡ってしまった。

 

 

義照と千冬のコンビで相当矯正されていたが、元々はかなりのコミュ障だった束、状況が状況な為の非常に強く取り乱し、何を思ったのか正晴にその場で正晴と結婚したいとダイレクト告白する。

 

 

正晴、「まだ結婚できる年じゃねーから!!」と錯乱する束を落ちつかせるものの、直後にどこから取り出したのか「婚約はできるから数年はこれで勘弁して待ってくれ」と婚約指輪を束にプレゼント、お前も随分錯乱してるよ。

 

 

で、ここからが重要な話であるのだが、この時、「折角だから私たちにも触らせて!」となり、何人かが乗ってみたのだが、この時、ISに「適性」があることが始めて発見されたのだ。

 

 

女性に関しては統合幕僚総長である純香や「いずも」乗組員にいた数十名のなかでも3割りくらいが動かせたのに対し、男性は重造含めた「いずも」乗組員どころか偶発的とはいえ束と共にコアの開発に関わった正晴にでさえ起動出来ないと言う事態に陥ったのだ。

 

 

更に動かせる女性の方も、上陸して燃料補給を済ませた後の試験運転で、幕僚総長の如く千冬とまではいかずとも軽快に動かせたり、別の隊員のごとくまともに動かすのが精一杯だったりと差があることが判明、後のJAXAによる解析によってISに「適性」が必要であることが判明したのである。

 

 

「ふーん、ISに適性ねぇ・・・まぁためんどくさそうな・・・」

 

 

「で、今、深那首相代理を中心にアラスカでミサイル事件の首相爆殺未遂の賠償とISの扱いに関しての条約を締結するところなんです」

 

「ここ一連の流れを体験してない俺には実感の湧かない話だな・・・そうだ!」

 

槇田、一連の流れを聞きなにかを思い付く。

 

 

「深那首相代行、私は今日以降もリハビリ関連で首相業務が困難なのはわかるな?」

 

「はぁ・・・辞任して私へ引き継ぎですね・・・わかりました、ですが閣僚の説得は槇田首相も援護してください、辞任したあとはどちらへ?」

 

 

「そうだね・・・取りあえず議席も返上するし・・・貯金凄まじいし世界中を旅するか!」

 

 

「・・・だと思った、取りあえず元気にしろよ?」

 

 

「重造も元気でな」

 

 

「槇田さん、都合がよければでいいですから、セシリアに会ってやってください、セシリアは首相に強く会いたがってましたよ?」

 

 

「時期が合ったら来るとするよ!それまで待っててくれるように頼む!」

 

 

首相復活もあり、取りあえずその場はお開きとなったお見舞いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

槇田首相復活から一か月後、アメリカ・アラスカ州にてISの運用に関する条約として、累計凡そ二ヶ月の論争の果てに「アラスカ条約」が締結される。

 

 

それと同時に、槇田義照は身体状況の変化による政務再開困難を理由に内閣を総辞職させ、後任として天ヶ瀬 深那が首相に就任、女性初の首相として新政権(とは言えど槇田政権から人事はまるで変わってないが)が発足された。

 

 

 

そしてそれから凡そ10年、世界は大きな変化の波に晒されてゆく。

 

その影に不穏なものが付きまとっているとは知らずに・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~兎に優しいIS世界第一章、「白き騎士と兎を支えた男達」、ここに完結と記す~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次章予告

 

 

世界を股に駆ける風のような男がいる。

 

 

「・・・やっと来てくださったのですね?ずぅーっと、お待ちしておりました、義照さん」

 

「へぇ・・・・・・貴方があの義照さん・・・なんですね・・・」

 

「そうは見えないって?まぁ、片目は実質動いてないしそう思うのも仕方ないか」

 

 

 

 

 

 

 

ラブコメ作品でも有数の鈍感青年がいる。

 

 

「なぁなぁ正晴さん、最近箒の様子がおかしい気がするんだけど、なにか知らないか?」

 

(あっこれアカンやつや)

 

「もうだめだよはるるん、いっくんをどうにかするにはもうこうするしかないって!」

 

「落ち着け束ぇ!それはマジでアカンやつだぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼等は変化した世界の中に適応して順応していくのだが、その変化の影で動く()()()・・・

 

 

 

 

 

 

「霧の中に見えるあの()()は一体・・・?」

 

「え?なんですって!?ブリュンヒルデがバミューダ諸島で消息を絶った!?どういう事よ!!」

 

「・・・間違いないよ、その艦型ならシャルンホルスト級だ!!!!二隻あったとなると・・・・・・あの()()()()()()()が海の底から・・・・・・《シャルンホルストの悪魔》が霧の中でよみがえったんだ!!」

 

「・・・・・・荒唐無稽だがブリュンヒルデが撃墜されている以上否定しきれん・・・なにより《シャルンホルストの悪魔》はそもそもをして実績そのものが荒唐無稽な男だ・・・・」

 

「もう一人の・・・ですもんね、取りあえず千冬さんが無事で良かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・これ・・・は・・・・・・、貴様ら!!!私や首相に黙っておいて、ISに乗せるためだけに彼女達を()()()、とはどういう事だ!!コレが倫理的に許されると思っているのか!!」

 

 

「吐け!!彼女達の()()が誰に当たるのかを今すぐ吐けぇ!!」

 

「どうするんだ?ラインラント元帥、このまま彼女達を見捨てるわけにもいかんぞ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何!?JAXAの研究室で火災!?・・・今行く!」

 

「はるるん?はるるん!!!」

 

「・・・・・・予想できたが、当たって欲しくなかった最悪の状態で間違っていないらしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「え!!?織斑君がISを起動させたァ!!?」

 

「どういう事!?IS適正はY染色体関連が原因だったんじゃないの!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして物語は《始まり》へ・・・・・・

 

 

 

 

次章、~兎に優しいIS世界、第二章、「流浪首相と優しくなった白兎」~

 

 

以上続話へと続く・・・・・・

 

 

 

 





原作からの変更点。

《(原)束さん、白騎士事件を引き起こす。》

→真っ白な束さん、白騎士事件の実質的被害者に。

ISが認められてるので引き起こす意味無しで計画されることもなかった。

ついでに束さんの事件元凶へのヘイトがMAXになった、首謀者はご愁傷さまである。


《(原)箒、政府の保護プログラムとやらで一夏と離ればなれに。》

→JAXA職員が事前にフォロー、政府の保護プログラムなんてなかった。


能力的に束が疑われると察したJAXA職員達が、束の無実を証明する証拠を大量に集めていたため、束を起訴しようが無く、政府の保護プログラムに関してもISのことは束、正晴や他のJAXA職員から聞き出せば良いのでフラグ壊滅、変わりにJAXA職員達は以後長期に渡って世界各国に引っ張りだこに。


《(原)IS規定数は467個が絶対数》

→絶対数は大体1200個ぐらい、

本編上での理由は後話にて述懐しますが制限数467個は個人的に話膨らませる上で邪魔だったのでざっくばらんと設定し直されました。






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~第二章、「流浪元首相と優しくなった白兎」~
~束の独白と流浪の元首相~


第二章の始まりです、ようやく原作キャラが関わってくるようになります。



《Side、束》

 

 

 

白騎士事件が終結してから数年が経過した。

 

 

ISの管理を行うための条約として「アラスカ条約」が締結され、国連内部にISの管理に関する主要機関として「国際IS委員会」が設立されてから、世界中は()()が生み出したISの話題で一色となった。

 

 

ISが女性にしか乗れない代物であると判明してから、世の中がかなりの女尊男卑へと傾いていってしまったが、これは元々女性と男性が名実共に対等に近かった社会であったが故の一時的な物だと私は見ている。

 

 

元々、ISが世の中に出回るまでに、女性が男性と同じように働ける社会の構築がほぼ完全に済み、結婚した女性が正社員で働くのに支障が無い程度には改善されていたのだ。

 

 

女性の社会的地位がこれまでになく高まっていた頃のIS出現・・・これこそ、メーターが振り切るかのように、かつて男尊女卑であった社会は女尊男卑へと早変わりした理由なのだろう。

 

 

私自身が発案した発明品がこんなことの引き金になってしまうとは、正直思わなかった。

 

 

そして、「もしもこの世界に、はるるんとよっしーがいなかったら・・・」そんな事を想像して、白騎士事件の事を思い浮かべては恐怖で泣き出しそうになってしまう。

 

 

あの事件、恐らくISに誰も見向きしてくれなかったら・・・恐らく実行者は()()()()()()()()、ISを認めてほしい私は《白騎士》を何とかして独力で完成させて・・・ちーちゃんを利用して・・・マッチポンプを・・・・。

 

 

でもそれは・・・その行為は「私の夢」を()()()()()()へと導いてしまう。

 

 

確かに、その方法ならISの存在を認めさせることができるだろう、だけどそれは()()()()()()()()()()()()()としてじゃなくて、あくまで()()()()()()としてだ。

 

 

宇宙へ行くために開発したのに、誰も本来の用途では使おうとしなくなる・・・・・・そんな事になったら、ちーちゃんの存在があるとしても、私の心はそこで()()()()()()()()

 

・・・・・・()()()()の私自身に関しては・・・・・・想像したくもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、束、どうした?」

 

 

・・・まずい!考え事が長すぎてボーッとしていた様だ、何とかして取り繕わないと!

 

 

「・・・はるるん!?、いや、何でもないよ!、ちょっと眠気がね・・・」

 

 

「束、今は真っ昼間の午後一時だぞ?、それに・・・涙声で言われても説得力皆無だ、どうした?顔に涙浮かべて、また怖いこと想像しちまったのか?」

 

 

「・・・そ……、それは・・・・・・」

 

 

「・・・たーばーねぇー?」(ムギュッ!)

 

 

「わっわっわっ!はるるん!?」

 

 

・・・取り繕うのに()()失敗しちゃった、これで何度目だろうか。

 

 

私がたまに()()()()()を想像して恐怖で怯えては、その度にはるるんに気づかれ、こうして慰めてくれるのだ。

 

 

「・・・・・・良くなったか?」

 

「・・・・・・うん、毎度毎度、本当にありがとう、こうして慰めてくれて」

 

 

ホント、この点でははるるんに敵わないや。

 

 

「気にするなって、それよりも、サクッと第二世代機の性能評価とモンド・グロッソのリプレイ鑑賞を始めようや」

 

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ束、ひとつ聞きたいんだが、いいか?」

 

 

「ん?なになに?何を聞きたいの?」

 

 

「束は今、幸せか?」

 

 

「・・・・・・そんなの聞かれるまでも無いけど・・・、とっても幸せだよ!!、はるるんはどうなの?」

 

 

「それこそ愚問だろ!?、・・・これ以上に無いであろう幸せを感じているよ。」

 

 

「そっか、……良かった!はるるんも幸せで!」

 

 

願わくば、この幸せが長く、永く続きますように・・・・・・

 

 

 

 

《side out》

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・《Side 義照》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはフランスのブレスト港、突然の大雨に降られ、町外れの軒先にて雨宿りをする男が一人いた。

 

 

 

「・・・・・・ふいーっ、まさかこんな時に雨とはなぁ、後、やはり雨が降っても傘を使う人少ないのな、」

 

 

男は日本人であり、たまたま傘もレインコートも有していない状況で雨に遭遇したために軒先にて雨宿りしていたのだが、小雨であるからか、他の観光客や住民と思われる人々は殆ど気にせずに歩いていっているのが伺え、男が異文化を目で見て取る貴重な光景となっていた。

 

 

 

「中々日本じゃ見ない光景だよなぁ・・・ん?・・・またトラブルですか(達観)」

 

 

男は暫しフランスの異文化に見とれていたが、直ぐ様に現実へ引き戻されるように近くの道を見る。

 

 

そこは裏路地に繋がる道であり、そこでは髪を後ろで束ねたスリム体型の金髪美少女が、いかにもチンピラな男3人ほどに今にも連れ去られようとしていたのだ。

 

 

そんな危険が危ない光景を見た男は1つため息をつくと、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()軒先を颯爽と去って行く・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方裏路地、先程の少女は三人組のチンピラ男に口を塞がれ、なにもできないままに裏路地へと連れていかれていた。

 

 

 

「~~~~~っ!~~~~~ッ!!」

 

(・・・・・・何?どうして私こんな目に遭っているの?怖い・・・苦しい)

 

 

「へへへ・・・この嬢ちゃんを誘拐すればデュノアの社長からたんまり・・・」

 

 

(・・・デュノアの社長?それってお父さんのこと?でもどうして・・・私はお父さんの顔を直接見たことさえ無いのに・・・・・・?)

 

 

「おい、折角だからよ、此処等で()()()()といかないか?」

 

 

不意に男の一人がこう呟く

 

 

「そうだなァ・・・・・・せっかくのパツキン美少女だし・・・アリだなぁ」

 

 

(え?何?この男たち何を話しているの?、私、どうなっちゃうの?)

 

 

「「「ぐへへへへへへ」」」

 

 

少女は自分の身になにをされようとしているのかが分からない、抜け出そうにも、拘束自体は素手で行われている簡易的なものながら、男女比の筋力に差がついていて抜け出せない、これから何をされるか分からない故に、よりいっそう恐怖は増し、それがピークに達そうとしていた時の事である。

 

 

「・・・やれやれ、さらった少女に対してゲスな思考働かせる割には、連れさらう時まともに回りも見ようとしないのか、人間の産業廃棄物らしく、素人未満の注意力だな。」

 

 

(・・・・・・え?)

 

 

直後に、少女を拘束していた三人組のチンピラは、一人が背中を蹴飛ばされ、一人は背中を棒のような物でド突かれ、一人は棒のようなものを脳天に思いっきり叩き込まれて失神してしまう結果となった。

 

 

「へぶっ!!」

 

「ぐはぁ!!」

 

「あべしっ!!」

 

 

 

 

「・・・・・・えっ?、えっ??」

 

 

当然、少女と距離が離れ、少女の拘束も解ける、その時少女が見たのは、右手に竹刀を携え、左手をズボンのポケットにいれっぱにしている、ずぶ濡れの男性の姿であった。

 

 

「・・・テメェ、何しやがる!!」

 

「・・・ハァ、そっちの方こそ()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「俺達の邪魔をするってか?ならばテメェを血祭りにあげてやる!!」

 

 

「・・・・・・ハァァ……」

 

チンピラと竹刀の男が多少の問答(とは言っても竹刀の男はため息をついてばかりだが、)をした後、チンピラ二人が懐からナイフを取り出した。

 

 

 

 

「・・・ちょっと危ないから少しだけ後ろに下がってな?」

 

「・・・・・・わかりました。」

 

 

 

「覚悟しやがれ!」

 

 

「・・・それは誰に対していっているのかね?」(ゲシッ)

 

 

チンピラ二人が同時に竹刀の男へと襲いかかる、対する男は、そのままの体勢で少女に呼び掛けて少女を下がらせた後、気絶しているもう一人の男をチンピラの方へ蹴り転がして少女から距離を取らせた後・・・・・・

 

 

「当てる気あるのか?」(ベチーン!!)

 

 

「あ゛いだっ!」

 

 

「そっちは取り合えず気に入らんから寝てろ」 (ベチベチベチベチベチベチベチーン!!)

 

 

ナイフのリーチに入る前に一人の顔面の顎を竹刀で突いた後、もう一人のナイフをさらりと避けて、そのまま顔面を竹刀で連続殴打した。

 

 

「これで二人目ッと、」

 

 

「テメェ・・・いったい何者・・・ヒッ!!」

 

 

顔面を竹刀で連続で殴られてチンピラが無事なはずもなく、二人目は顔面がボコボコになってその場で失神、残った一人も竹刀の男の顔を見て突然萎縮し始めた。

 

 

「そんなことよりも良いのか?さっさとしないと警察来るよ?」

 

 

「何だと!?」

 

 

「・・・ホントだ!!」

一連の流れで気づかなかったが、警察のパトカーが数台こちらに来ているようで、けたたましいサイレンがなっている。

 

 

「ひ・・・ヒィィィィィィィィッ!」

 

 

「・・・・・・() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() () ()() ()() () ()

 

 

チンピラは錯乱して逃げようとするが、男に胸ぐらを捕まれナイフを取られて捨てられた挙げ句、マウントポジションで一方的に殴られる羽目になる。

 

 

そして、警察が到着した頃には完全に失神しているチンピラ三人、竹刀を入れ物に仕舞った男、それと先程多少離れてから動けなくなった状態の少女がいるだけの状態となっていた・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()貴方ですか、フランスにプライベートで来ては問題に首突っ込みすぎですよ・・・・・・」

 

 

「すまんねぇ警官さん、此方もこういった出来事は見逃せる性分じゃないし・・・・・・、あ、産業廃棄物処理三人前で」

 

 

「ですよねー・・・まぁ今回は何が起きたのか殆ど明白だし、あなたもそこのお嬢さんもずぶ濡れだし、お嬢さんのご両親も心配してるだろうから、特別に二人とも事情聴取ナシで良いですよ、次は無いことを願いますね。」

 

 

警官はそう告げるとチンピラ三人組を連行して帰っていったのだが・・・・・・

 

 

「あの・・・・・・さっきはどうもありがとうございます!」

 

 

「あぁ、あのチンピラの件はあんま気にしないほうが良いよ、それよりも嬢ちゃんの方は大丈夫か?」

 

「は・・・・・・はいっ!」

 

 

少女が男の方を見ると、彼は他の人と比べると随分と特徴的な姿をしていた。

 

 

よくよく観察すれば男の左腕はポケットに入れたままで動いておらず、また右目を失明していると思われる状態であったのは、すぐ見て取れる程である。

 

 

「あの・・・その左腕と右目は・・・」

 

 

「気になったかね?左腕は動かなくて、右目はほぼ失明してるんだよ、見苦しい姿見せてるようで申し訳ないね。」

 

 

「いえっ、そんなこと無いです・・・こちらこそデリカシーの無い質問を・・・・・・」

 

 

少女は後悔した、いくら自分を助けてくれた人の事が気になったとはいえ、相手のいやがりそうな質問をしてしまった事に、そこで彼女は別の質問へと角度を変える。

 

 

「あの・・・・・・お名前を教えてくれませんか、お礼をしたいので。」

 

 

「ああ私、話せばどんな人か直ぐわかるから、先に嬢ちゃんの名前を教えてほしいな、何時までも嬢ちゃん呼ばわりするのもいかんと思っててな」

 

 

「ええっ!?」

 

少女は一瞬、彼の返答に驚いた様子ではあったが、直ぐにこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャルロット・・・私の名前はシャルロット・デュノアと言います。」

 

 

 

男はそれを聞いて簡単に一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャルロットか・・・良い名だ、申し遅れたな、私の名前は義照、日本元首相、槇田義照その人さ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここにまた、奇妙な出会いがまた1つ………。

 

 

 

 

 

 

 

~続く~

 



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シャルと「刑事」としての槇田義照。


前回から引き続いて義照とシャルロットのお話です。

「刑事」としての義照元首相が描かれます。

それにしても最近の元首相の主役ムーブが凄い・・・正直ここまで活躍する予定なかったのに。


 

 

義照とシャルロットの遭遇から数十分後。

 

 

 

義照はシャルロットに連れられ、彼女の家へとやって来ていた。

 

 

 

 

「あ、どうぞ、粗茶ですけど」

 

 

「お、どうもすまないね、」

 

 

シャルロットから茶を出され、取り合えずすする義照。

 

 

「・・・・・・んで、シャルロットちゃん、」

 

 

「シャルで良いです、呼ぶ時わざわざ略せず呼んでいたら話に時間をかけてしまいますから。」

 

 

「んじゃあシャル嬢ちゃん、単刀直入に聞こう、()()()()()()()()()()()()()()()()()事は何かね?」

 

 

「・・・・・・やっぱり気づいてました?」

 

「色々と理由はあるが・・・・・・聞きたいか?」

 

「教えて頂けますか?」

 

短いながらに何かが凝縮されている一連のやり取りの後、義照が口を開いた。

 

 

「1つ目、さっきのチンピラがほざいてた言葉と嬢ちゃんの名字だ、デュノアって聞けば、真っ先に挙がるのこそ、IS第二世代機シェア三位のデュノア社だからな、聞いた感じさっきのチンピラはシャル嬢ちゃんを誘拐して身代金ふんだくろうとしたんだろう。」

 

 

義照が話した理由の1つ目は、考えられ売る予想のなかではもっともあり得ると考えた物であった。

 

 

自分は父の事をよく知らないが、それでもデュノア社社長の血を引いているのは確か、自身を誘拐して身代金を手に入れようとする輩は、動くかどうかは別として、確実に存在するだろう。

 

 

「二つ目は、シャル嬢ちゃんがさっきっから一貫してかなり思い詰めてる表情をしていた点だ。」

 

 

「話せるかどうかは別として、せっかくの偉い人と出会えたんだし、相談したい事があるけどするべきか否か」といった感じの雰囲気が、特に目から漂っていた、後、お茶淹れるときに随分暗い表情をしていたのも見逃せなかったな」

 

 

「そ、そこまで…………」

 

 

二つ目も予想の範疇ではあったが、簡単に断言する材料となるとは思いもよらず、自分で意識していない変化にまで気づく洞察力の高さに驚いて言葉を失ってしまう。

 

 

「そして三つ目だが・・・・・・正直言いたくない、普通に考えれば、根拠としては余りにも弱い代物だからだ」

 

 

「?」

 

 

槇田は三つ目の理由を話そうとして、右手で顔を覆って明確に拒否の姿勢を見せた。

 

 

「そんなこと言わずに、教えて頂けませんか?、私はまだ納得できてないんです」

 

 

「・・・・・・納得しといた方が嬢ちゃんの精神衛生的には良い、それにもし……だからな」

 

 

「もしって何ですかもしって!!そんな曖昧な表現で隠そうとしないでください!!私は理由が知りたいんです!!どうしても!なんとしてでも!!!」

 

 

この時、シャルの心には何かのスイッチが点いていた。

 

 

「私は()()()()()()貴方の大ファンなんです!!、どんな困難があっても、どんなに大きな壁が立ちはだかっても、それでもなお()()()()()()()()貴方の事を!!」

 

 

 

 

 

 

「私は断言します!貴方は()()()()()!!一介の小娘でしかない私に恐怖して()()()()()!!」

 

 

 

 

 

「私はそんな貴方を見たくない!!()()()()()()()()()()!!!!」

 

 

シャルロットは怒りの赴くままに思いの丈をぶつけた。

 

 

原作でもお分かりの通り、シャルロットはフランスのIS製造メーカー、「デュノア社」の社長とその()との間に生まれた子である。

 

 

そのため、諸般の事情があって、シャルロットは父親に今だ一度も会えておらず、「父親」と言うのがどのような存在なのか理解することはできなかった。

 

 

そんな幼い頃のシャルロットが「父親代わり」のように憧れていた人物こそ、まだ槇田が首相になる前…………「伝説」とまで呼ばれた刑事時代の頃の彼だったのである。

 

 

だからこそ認めたくなかった、己の見ていた「伝説」と目の前の「現実」を、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……覚悟はできてるんだな?」

 

 

「……………………え?」

 

 

急に義照の顔つきが変わったかと思うとシャルロットの熱意の発言で上がっていた部屋の空気が一気に氷点下へと下がる。

 

 

「……()()()()()()()なんだ、久方ぶりにあの頃の気分で話をするとしよう。」

 

 

(・・・・・・まるで違う……)

 

 

(そうだ、違いない、この姿こそが伝説だ、刑事時代に幾多もの事件を解決し、竹刀一本で原爆ドームに立てこもったテロリストを潰した男・・・・・・)

 

 

槇田の眼付きは真剣その物であり、いつの間にか竹刀を手入れしていたと思いきや、いつの間にか竹刀が仕舞われ、温くなったお茶を啜る。

 

 

「三つ目の理由を話す前に、こんな話をしよう」

 

 

「むかしむかし、あるところに、まさしく《死》を見続けてきた少年がいた。」

 

 

「《死》と言っても人の死ばっかり見てきた訳じゃあ無い、人の《死》を見るのは稀だったが、よく他の動物や植物の《死》を見てきたってだけの事だ、」

 

 

「その少年は日常的に《死》を見続けていく内に、《生》を成すのには《死》が前提条件であることに気がついた、まだガキンチョだったのにも関わらずだ、」

 

 

「中略するが、男は夢を叶えていく内に、いつの間にか《人の死》に《匂い》があることに気がついたんだ。」

 

 

(・・・・・・何の話?昔のおとぎ話かなぁ?)

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

シャルロットはただ黙って話を聞き続ける。

 

 

「せっかくのファンなんだ、私の行動の中で謎とされていることから真実話を1つ、私がニューカッスルで爆発事故に巻き込まれたとき、実は私は()()()()()()()()()()()()()、本来はオルコット夫妻共々難を逃れられたんだけどな」

 

 

「えっ!そうなんd」

 

 

「・・・・・・ぴったり二週間前」

 

 

「・・・・・・・・・へ?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・違うかね?」

 

 

「!!?」

 

 

(・・・・・・嘘!・・・・・・うそうそ嘘嘘ウソウソ嘘!なんで、何で!!、どうして!!?)

 

 

「そして今、()()()()()()()()()()()()()()()、・・・・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()か、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うシンプルな2択のね、」

 

 

「あ・・・・・・あ・・・ぁぁぁぁああああ嗚呼呼呼呼呼呼ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 

「《死の匂い》は君が使ってるベッドから、《選択の起点》は机の上の手紙から、そんなところだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・話を聞いたとき、シャルは彼の()()()()()()()()()()を思い知った。

 

それこそ後々までこの時の事を後悔しそうになる程にである。

 

 

義照は既に気づいていたのだ、

 

 

「自分の母がちょうど二週間前に亡くなり、顔も知らぬ自分の父の要望に沿って、デュノア社で今後を過ごすべきか否か迷っている。」

 

 

上記の通りそのままの、彼女が、元首相であった義照に相談しようとしていた事の()()を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで答えなんだけどさー、まず最初に正直シャルはどうしたいよ?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」

 

 

先程までの壮絶に真剣な話から一転、凄まじくのんびりした口調でシャルに聞く義照。

 

 

余りの態度の変化ぶりに驚いたシャルは、しばらく呆然としながらも、さっきまでの自分を一時的にぶん投げてこう答える。

 

 

「・・・・・・デュノア社に行きたい、と思ってます、私は父の顔を知らないけど、妾でも良いからと私を生む程に父さんを愛していたのは、お母さんだし、お父さんも、私とお母さんの生活に必要な費用は惜しまず与えてくれてたから・・・・・・お父さんを信じたいんです」

 

 

「そうか・・・・・・と、すれば必要なのは・・・あ、紙とペン貸してくれる?」

 

 

「あ、はいっ!」

 

 

シャルロットの答えを聞いた槇田は、その場で紙とペンを借りて何かを書いたあと、シャルに渡してきた。

 

 

「なんかとんでもなくヤバイことになったらそこの電話番号に電話してくれ、」

 

 

槇田が用意したのは、二つの電話番号が書かれた紙である、「通常用」「緊急用」と書かれた二種類の電話番号が書かれている以外にはなんの変哲も無い代物である。

 

 

「あの、これって?」

 

 

「私の予測が正しければ、()()()()()使うタイミングが出てくる代物だ、折角だしと思って私が使う普通のケータイ電話番号の方も書いておいた、暇してたら出られると思う」

 

 

「こんなのを私がもらっちゃって良いんですか?」

 

 

「構わんよ、余りにもアレなら電話番号変える予定だし、公人としてもよく使うメルアドは書いてないし」

 

槇田の立場を考えれば当然であるシャルの質問に平然と問い返す義照、そして彼は話を切り替える。

 

 

「さて、そうとなれば《善は急げ》じゃないのかね?シャルロット嬢ちゃん?」

 

 

「それもそうですね、槇田さん、ちょっと席はずしますね」

 

 

「ああ、私もちょっと外に居させて貰うよ、電話内容の盗み聞きとか好みじゃないんでね」

 

 

そして、シャルロットは電話のために部屋の奥へ、槇田は盗聴を避けるために外へと行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数分後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・槇田さーん?電話終わりましたよ・・・ってあれ?」

 

 

もう夜も更けてきた頃の事だ、父へ決意の電話を済ませたシャルロットは、槇田を呼ぼうと外に出たが、そこには槇田はおらず、ドアの所に書き置きがひとつあるだけであった。

 

 

シャルは取り合えずその書き置きを読むのだが、そこにはこう書かれていた。

 

 

「申し訳ないが、私は10代の少女と二人きりで一晩を過ごすとかは社会的に耐えられる立場じゃなくてね、パパラッチとかに後つけられてる可能性を考慮してあの場でおいとまさせてもらうことにした」

 

 

「ものすっごく失礼な事ではあるんだが、あのあと《折角ですし、私からのお礼も兼ねて一晩ここでお休みになってください》とか言われたら断れる性分でもないので三十六計逃げるに如かず、去ったと言う訳だ」

 

 

「その他、色々と書きたいことはあったが、速筆する必要があったから最後にこれだけは言わせて貰おう・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・また会おう!!」

 

 

 

「・・・フフフフフ、ハハハハハ!()()()らしいや」

 

 

「風のようにいきなり現れて、風のようにいきなり去って行ったなぁ・・・私も頑張らなきゃ」

 

 

シャルロットは書き置きを読んだ後、小さく呟いて、後は()()()()()()()()()()()日常へと戻って行った。

 

 

その翌日、シャルロットはデュノア社の社員に迎えられ、デュノア社へと至ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして槇田はと言うと・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶえっくしゅ!、こらアカンやつだわ寒すぎて震えてまうさっさと何処か行って療養しようっと」

 

 

義照はこの時、港の埠頭近くで野宿して風邪をひいていた、そして・・・・・・

 

 

「いたぞ!槇田元首相だ!!」

 

「長らく行方がわからなくなっていたんだ!今日こそはこれまでに何があったか聞き出してやる!!」

 

「囲め!囲むんだ!なんとしてでも捕まえろ!」

 

「生中継入るぞ!今日こそはなんとしてでもインタビューを成功させるんだ!!」

 

 

「・・・・・・げぇっ!!テレビと新聞記者!!」

 

 

「「「「捕まえろ~~~~~!!!!」」」」

 

 

「捕まってたまるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迎えの車にて

 

 

「・・・シャルロット様、あれを」

 

「?」

 

 

 

 

「「「待てえええええぇぇぇぇぇぇ!!」」」

 

 

「誰が待つかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「誰かは解りませんがかなりの人数に追いかけられてますな」

 

「あ、あはははは・・・・・・(滝汗)」

 

(あの人はあれを危惧していたんだな・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

埠頭なんて目立つところで一晩明かしていたのが運の尽き、風邪を引いた挙げ句に追っかけに見つかり、その後丸一週間にわたって、出発点はブレスト、終点はそこから遥かジブラルタル海峡の空港までの不眠不休の大逃走劇が始まるのだが、それはまた別のお話である・・・・・・

 

 

 

 

 

~続く~

 

 







書いてていつの間にか槇田のスペックが大変な事になってる件、この元首相、原作キャラに変化を生み出す要員として便利すぎる。


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~篠ノ瀬製作所と「バミューダの魔」~



束達のサイドです、


 

 

 

 

 

「・・・・・・ねぇはるるん、正直に話して良いかな?」

 

 

「ん?なんだ?」

 

 

「・・・・・・人増やせないの?」

 

 

ここは日本国の某所、通称「篠ノ瀬製作所」と呼ばれる日本国が管轄するIS開発やISに関する技術と利権を取り扱う専用のメーカーである。

 

 

本製作所は、主な人員として

 

 

所長にISの提唱者たる束を、

 

 

副所長にJAXAが産み出した世界初のIS「白騎士」の開発計画総責任者であった正晴を、

 

 

顧問弁護士にJAXAIS開発部門顧問弁護士の行信を、

 

 

とそれぞれ据えた世界最強のIS開発メーカーなのだが、人員は上記三人に加えるのが川城と専属テストパイロットの千冬のみと言う総人員数5名の超小規模企業であると言うのが祟り、冒頭の束の発言へと繋がっていた。

 

 

「無理だろうなぁ、仮にも国営企業だから変なの呼び込めないし、IS開発の中枢とも言える超豪華メンバーしか居ないから使える伝はJAXAしか無いし、肝心のJAXAもまだIS宇宙開発計画のための技術者育成途中だから引き抜き出来ないし」

 

 

「詰んでるー!!?」

 

 

「お陰さまで人手不足が露骨だからねー、ハァ、さっさと仕事終わらせてIS解析の方に注力したいな~」

 

 

「私が《モンド・グロッソ》に出て優勝してから講演依頼がひっきりなしなんだろう?やっぱり私あのときわざと負けた方が良かったんじゃないのか?」

 

 

「「その選択肢は無いっ!」」

 

 

「ですよねー、まぁ、私も本気を出したかったからあれで良かったんだが・・・やっぱりな?」

 

 

ISを使っての世界大会、「第1回モンドグロッソ」に当製作所謹製IS、「暮桜」で千冬が優勝してから早一年。

 

 

現在、篠ノ瀬製作所には各国で開発された「第二世代インフィニット・ストラトス」の性能評価とISにおける幾つもの技術の使用契約や千冬を指名してでの模擬戦依頼などの依頼がひっきりなしであり、契約の対応や予定の擦り合わせなどで常在戦場のブラックっぷりを発揮していた。

 

 

こうなるのは目に見えていたので千冬がわざと負けることも考えたのだが、「自分達がISの起点であり最先端だ!」と見栄を張りたい束と正晴の二人の心情も鑑みての優勝であったが、「暮桜」が完全な近接専用機であったことを鑑みれば、もう少し「暮桜」の仕様どうにかならなかったの?とか思えてしまうのはご愛嬌なのだろう。

 

 

そんなわけで現在絶賛労働中の束達の元に、とある興味深い依頼が舞い込んできたのである。

 

 

「・・・・・・ん?束、日本政府からの依頼だぞ・・・なんだこれ?」

 

「どうしたの?はるるん?」

 

そこには「外務大臣から緊急の依頼」と言う件名で、とある変わった依頼が書き込まれていた。

 

「緊急性が高いもの以外は持ってこないでと頼んだんだが・・・どうやら貿易関連らしい。」

 

 

「えーなになに、《バミューダトライアングルの調査依頼?》何これ?」

 

 

そこには大まかに書いて、以下の通りの事が記されていた。

 

 

 

 

 

 

・最近、イギリスやアフリカ諸国からフロリダ半島経由でパナマ運河へ行き、そこから日本へ行くといった感じで、バミューダ・トライアングル上を航行する船舶の燃料が異常に減少し、航海途中で燃料が切れて漂流する羽目になる船舶がちらほら報告されるようになっている。

 

 

・これに対し、アメリカとパナマ共和国が合同で調査チームや軍等を展開して調査を行ったのだが、調査に同行した米軍の原子力空母「カール・ヴィンソン」の原子炉がなんの脈絡も無しに停止したりするなど、船舶を利用した調査ではまるで成果を挙げられないどころか、木乃伊取りが木乃伊になっている有り様で、このままだとねずみ溝的に燃料切れ→漂流コンボを引き起こす船舶が続出しかねず、船舶による海域調査が出来ない。

 

 

・次に航空機と、途中調査に協力することになったキューバを加えた三か国のISによる調査も行ったが、航空機による調査ではまるで成果が出ず、ISによる調査の場合、ISの飛行距離の限界による捜索範囲の限界があり、一部海域の調査が出来ていない。

 

 

 

・そこで、宇宙開発用の機体として開発され、突出した航続距離を有する「白騎士」で、同海域の調査を行って欲しいとアメリカ、キューバ、パナマ等の複数ヵ国政府より要請が入り、日本としても「白騎士」をJAXAから引き継いだ篠ノ瀬製作所に連絡と依頼せざるを得ず、メールを回すこととなった、協力を頼めないだろうか?

 

 

・調査費用は米国が、報酬はパナマとキューバ政府が主に負担する事となっている。

 

 

・ついでとして、各国の調査結果を翻訳して添付しておく、参考にするように。

 

 

 

 

 

「ふーん、バミューダ海域の謎ねぇ・・・」

 

 

「常識的には船舶の運航会社を疑いたくなるが・・・・・・」

 

 

「しかしその・・・なんだ、心惹かれるなぁ、こういうのは」

 

 

「ちーちゃんもそう思う?、私もこう言う非科学的なの気になるんだよねぇ・・・・・・」

 

 

「三人とも!準備はできてるよ、さあ行こう!!今すぐ行こう!!」

 

 

みとりが束、千冬、正晴の三人を急かす、

 

 

「ちょっと待って、ゆっきーに電話・・・あ、もしもしゆっきー?国からの依頼でこれからバミューダにいくんだけど、一緒に来ない?」

 

 

(ギュウンッ!!)

 

 

「話は聞いたぞ!今すぐ出発だ!!」

 

 

「お前らノリノリだなオイ!!」

 

 

束が行信を電話で誘った直後、直ぐ近くにいたのかダッシュでやって来てさらに急かす行信、流石の正晴もこの有り様には突っ込まざるを得なかった。

 

 

「ところで人員どうするの?、白騎士には千冬が乗るの前提で、拡張装備のバックパック3人しか乗れないけど?」

 

 

「そこは大丈夫だよ、両肩に二人乗りのショルダーバッグを追加したからねー、両肩に1人づつ、バックパックに二人乗れば完璧さ!」

 

 

「なら余ったスペースにテキトーなもの乗っけて行くか!!」

 

 

 

「「おー!!」」

 

 

 

 

それから数分後、製作所全職員を乗せた「白騎士」は、現地到達のため、まず宇宙へと上がる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・着いたぞ、宇宙空間だ・・・綺麗なものだな」

 

 

「・・・・・・これが宇宙から見た地球かぁ」

 

 

「白騎士のバリア範囲を広げるだけでこれだけの人数が宇宙空間にいることができるんだもんなぁ、ホント革新的だよ」

 

 

「やっぱりいつ見ても、地球は青くて丸くて綺麗なものだなぁ・・・・・・」

 

 

「まさか宇宙飛行士でもない私が宇宙空間に出れるとは思いもよらなかったけど、やっぱり凄いなぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

束達は今、地球を離れて宇宙空間にいる。

 

 

宇宙飛行士でもない彼女達が、である。

 

 

やはり人が宇宙から見る地球の姿は美しく、誰もが見とれてしまうものである。

 

 

この光景を見るためにISを産み出した束達からすれば、其は特別な想いであり、そして其は、何時までも此処にいたくなってしまう程の物であった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・見納めは済んだか?」

 

 

「うん、今は依頼の途中だしね、」

 

 

「次は大気圏突入か、突入用のフライング・ボードを使用する、揺れに気を付けろよ。」

 

 

「はいはいっと、それじゃま急ぎますかね」

 

 

「また見る機会はいくらでもあるしな、」

 

 

「それじゃあ出発進行!!」

 

しばらく地球を眺めた後、彼女達を乗せた「白騎士」は大気圏へと至る・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ザザーーーッ、ザザーーーッ、)

 

 

 

「ブォォォォォォォン!、ブォォォォォォォン!、」

 

 

「--・-・ ・-- -・--・ ・-・-・ -・・ -・--・ ---・- ・・-・・ ・-・・ ・・・ ・・・- ・・ ・-・ ・- ・---・ ・・ ・-・ ・・- ・ ・-・-・- --・-・ ・-- -・--・ ・-・-・ -・・ -・--・ ---・- ・・-・・ ・-・・ ・・・ ・・・- ・・ ・-・ ・- ・---・ ・・ ・-・ ・・- ・」

 

 

 

「---- ・・- ・---・ ・-・-・ -・ ・- --・-・ -- ・・- -・・・ --・-・ ・-・- ・- -・-・・ --・-・ ・-・-- ・・ --・-- -・--・ ・-・-・- - --・ -・-- ・・ ・--・- ・-・・ ・・ -- ---・ ・・- -・-・- --- -・--・ ・-・・ ・・ -・ ・- ・・-・- ・-・-・ ・・・- ・・ ・--- -・・・ ・-・・ --- -・・・ ・・ ・-・-・- -・-- ・・ -・-・・ -・・・ -・・・ ・-・・ ・・-- ・・- ・-・-- ・・ --・-- -・--・」

 

 

 

「-・-・- ・・・- ・---・ ・-・-・ -・・・ -・-・- ・- --・-・ ・・- -・ ・・ ・-・-・ ・-・・ ・- ・-・-- ・・ --・-- -・--・ ・-・・ ・・ ・-・-・- --・-- ・---・ --・ -・・・ -・-・・ ・-・-・ -・・-・ ・--・ ・-・-- ・・ --・-- -・--・ ・-・-・- -・-・- ・- ---- ・・ -・-・ --・・- ・・-・・ ---- ・・-・・ ・-・-・- ・-・・ ・--・ ・-・-- ・・-- -- ・・- ・-・ --・・ ・-・-・ ・・-・・ ・・- ・--- -・-・・ -・ ・- ---・- -・--・」

 

 

「ブォォォォォォォン!、ブォォォォォン!!」

 

 

実はこの時、バミューダ・トライアングル一帯の海域が非常に濃い霧に包まれてだしていたのだが、その時それを千冬達が知っている訳は無く、ましてや、その霧の中に()()が潜んでいたことなど、この時は誰も知る由は無かったのである・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~続く~

 

 






最後の点と線の羅列はモールス信号です、元の文章をネットで変換して張り付けました、多分ちゃんと貼り付けられている・・・筈・・・・・・

読みづらいことこの上ありませんが、表現上モールスを使うのが一番雰囲気あるかなと感じ使用を決断しました。


見辛いとか、その他何かあったら修正します。


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~悪魔と白騎士~

 

 

 

 

「もうすぐ現場海域だよ、ちーちゃん」

 

「ちふー、現場付近に展開している米軍空母、《ジェラルド・R・フォード》から暗号通信来たよ、《此方フォード、白騎士の現場海域への侵入を確認、大過無く調査が終了することを願う、米海軍第七艦隊司令長官、アイリーン・アークライト》だってさ」

 

「《カール・ヴィンソン》が機関停止のトラブル抱えたから急途応援に行ったと資料にあったが・・・本当だったのか」

 

「在日米軍に米国のISの六割が配備されていると言う話だし、旗艦業務をブルーリッジに引き継いで短期間限定で来たんだろうなぁ」

 

 

「在日米軍を引っ張り出すとか米軍も本気だねー」

 

 

依頼の海域に到着した千冬達は、海域到着直後に届いた在日米海軍第七艦隊旗艦《ジェラルド・R・フォード》からの暗号を受け取りつつ、調査を始める。

 

 

「・・・・・・う~ん、水温、気温、気流とかに特に異常無し・・・・・・変わってることと言うと霧が深いくらい?」

 

 

「サーモグラフィーでの周辺観察において、異常な熱源反応無し、平々凡々だな」

 

 

「ねぇはるるん、他におかしいところあった?いくら調べても異常が見つからないんだけど」

 

 

 

「うーん・・・・・・水中が原因かなぁ?それなら現状だと調べようがないし・・・・・・」

 

 

 

 

 

調査開始から凡そ2時間が経過したが、海域中を調べてもまるでもって異常が見付からない、消去法的に考えれば(他の海域が海中含めて異常が無かったことを鑑みると)、間違いなく此処には()()()()ある筈なのだが・・・少なくとも海上においては異常が見受けられない。

 

 

「うむむむむむ、海上に異常が無いことを考慮すると、念押しの予備パーツと工具の代わりに白騎士で潜行艇を運んで来るべきだったか?」

 

 

「折角来たのに何の成果も無いとなるとなぁ・・・・・・しかし、()()()()()()()のも随分奇妙な話だな」

 

 

 

「・・・・・・はるるん!逆探に反応!!」

 

 

 

海上の調査ではまるで成果が出ず、皆が一旦引き返すことを視野に入れ始めたその時、《白騎士》に正晴の趣味で拡張装備されていた逆探知機(レーダー波を探知するやつ)が異常を捉えた。

 

 

 

 

「距離・・・400!?近すぎるわボケ!何で海面すれすれを浮遊し続けてレーダーとソナー使ってるのに両方に反応してないんだ!!」

 

 

「レーダーって本来こう言う状況でこそ使用される代物なのに・・・・・・」

 

 

「どうするはるるん!この霧じゃ100メートル先も怪しいよ!?」

 

 

「・・・まずいな、正晴、此処では視界が悪い、一旦離れた方が良さそうだ!」

 

 

(ドォドォドォドォドォドォドォドォドォ‼)

 

 

「・・・!ちふー!この場を離れて!!」

 

 

「・・・・・・ッ!!!!」

 

 

「うわわわわっ!!?」

 

 

みとりは霧の中から放たれた()を聞き逃さなかった、咄嗟に《白騎士》を動かす千冬、離れて直ぐに、元々千冬達がいた直ぐ近くに()()が着水し、巨大な1つの水柱を上げる。

 

 

「・・・- ・・ ・-・ ・- ・---・ ・・ ・-・ ・・- -- --・ --・-・ ・-- -・--・ ・-・-・ -・・ -・--・ ---・- ・・-・・ ・ ・-・-・- ・---・ ・・ ・-・-・ ・・-・・ ・---・ ・- --・-・ ・-- -・・・ --・-・ -・-・・ ・-・-・ -・ ・・ ・-・-・ ・-・-・- - --・ -・-- ・・ ・--・- --・-- ・- ・-・-- ・・-- --・-- ・- ・-・・ -・- ・・・ ---・- ・・ ・・-- ・・- ・-・-- ・・ -・・- -・--- ・-・-・- ・-・・・ ・・-・- ---- ・・ ・・-・・ ・-・-- ・・ --・-- -・--・ 」

 

 

「・・・・・・発光信号?モールスか?」

 

 

千冬も先程の水柱を避けた直後に、霧の奥深くから放たれた発光信号に気づけただけファインプレーだろう。

 

 

だがしかし、そんなことを悠長に考えるまもなく、《白騎士》に先程と同じものが襲いかかる。

 

 

今度も白騎士はその巧みな操縦で回避を試みるが・・・・・・一発被弾した!!?

 

 

 

「--・-・ ・-- -・--・ ・-・-・ -・・ -・--・ ---・- ・・-・・ -- --・ ・・・- ・・ ・-・ ・- ・---・ ・・ ・-・ ・・- ・ ・-・-・- --・-・ ・-- -・--・ ・-・-・ -・・ -・--・ ---・- ・・-・・ -- --・ ・-・-・- ・・・- ・・ ・-・ ・- ・---・ ・・ ・-・ ・・- ・ ・-・-・- -・・ ・・- -・ ・・ ・-・-・ ・・-- -・・・- ・- ・・-・ -・・-- ・・- ・--- ・-・・ ・・・- -・-・ ・-・-・ ・-・-・- --・-・ ・・ ・---・ ・- --・-・ ・-- ・-・-- ・・ -・・- ・・・- --・・- -・-・・ ・・-・・ ---・- -・--・ ・-・-・- ・--・ ・・- --・-・ ・・ -- ・・- ・ ・- -・-・・ ・・- ・-・-・ -- ・・- ・・-- -・-・・ ・・・- ・・-・ ・・-- ・・-・ ・-・・ ・・・ ・-・-・- ・・-・・ ・・・- ・・-・・ ---- ・・ ・・・ ・-・-・ --・-- --- 」

 

 

 

「くっ・・・・・・!」

 

 

「ちーちゃん!?大丈夫!!?」

 

 

「大丈夫だ・・・だが、シールドが相当量削られた、後2、3発貰うと保たないな。」

 

 

「マジか!?」

 

 

「・・・・・・もっとヤバイことがわかった、」

 

 

「ゆっきー!?」

 

 

被弾した白騎士、損害は深くはないが威力が大きかったらしく、シールドが大量に削れたのだが、行信が何かに気づいたらしく、非常に青ざめた様子で告げる。

 

 

「まず俺たちに飛んできたブツだが・・・・・・()()だ」

 

 

「へ?」

 

「え?」

 

「ふぁっ!?」

 

「なっ!!?」

 

 

「しかも恐らく艦砲のサイズに換算して20サンチ以上・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 

「更にいってしまえば、最初の巨大な水柱、あれは()()()()()()()()6()()()()()()()()()()()()()()()ものだッ!!!」

 

 

 

「「「「・・・・・・なっ・・・なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーー!?!?!?!?」」」」

 

 

千冬は回避するとき、かつての白騎士事件の時よりもさらに凄まじい変態機動を行っていたのだが(同乗者達はしょっちゅう付き添って慣れた)、()()()()()()()()()()()()()、しかも現代の艦砲よりも更に大きな砲弾を!、()()()()()()()()

 

(最初のは千冬の発言と合わせれば避けなかったら即撃墜などと言うまるで笑えない代物だとも言っている訳なのだ!!)

 

 

「ちょちょちょちょ待った待った待った待った!!!いくらなんでもおかしすぎるよ!現代の艦砲でさえ完璧な代物じゃ無いんだよ!?どうすればこんな神業じみたことが出来るの!?」

 

 

「・・・荒唐無稽が過ぎる・・・と言いたかったがそうもいかないみたいだ・・・アレを見ろ・・・・・・」

 

 

「ちーちゃん!?」

 

 

千冬は霧の中から現れた艦影に気がついた、それは明らかに()()()()()()()()()姿()()()()()、その姿は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「正晴、ひとつ聞いていいか?」

 

 

「な・・・・・・何だ?」

 

 

・・・・・・皆一様に()()()()()()、《嘘だッ!!!》と叫びたくなるのを我慢した結果であるのだが、そんなこと関係無しに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、五人に驚きと恐怖をプレゼントするのには十分すぎた。

 

 

そして、千冬がその状態のまま、正晴におそるおそる問いただす。

 

 

「霧の中に見えるあの()()は一体・・・?」

 

 

(ドォドォドォドォドォドォドォドォドォ!!!)

 

 

「・・・・・・ッ!!!」

 

 

「ねぇはるるん?コレ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「・・・・・・かもな?」

 

 

「ちふー!レールガンとボードを盾がわりに!!!」

 

 

「・・・ダメだ!!!!!防ぎきれない!」

 

 

 

・・・・・・直後、9()()()()()()連続して白騎士を襲う。

 

 

 

流石の白騎士も()()を防ぎきる道理は無く、炸裂した砲弾の威力は盾にしたボードとレールガン、そして残っていたシールドが塞ぎきったものの、その衝撃までは防ぎきれず、衝撃は5人の意識を一気に刈り取り、《白騎士》はその場でふよふよと降下し、()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白騎士と千冬達を乗せた()()・・・・・・シャルンホルスト級二番艦、《グナイゼナウ》は深い霧の中、白騎士を受け止めた直後に、とある一隻の船と合流していた。

 

 

以下、二隻の船の間で交わされた発光信号の翻訳である。

 

 

 

 

「グナイゼナウよりシャルンホルストヘ、グナイゼナウより白騎士、搭乗パイロット、それと四名の同乗員の保護に無事成功、失神しているものの目立った外傷は無し、作戦は完全に成功である、《シャルンホルストの悪魔》の指揮、見事であった」

 

 

 

「シャルンホルストよりグナイゼナウへ、シャルンホルストよりグナイゼナウへ、作戦の最終段階は完了、以降、手筈通りに白い騎士を簡易的に分析し、乗員は治療した上で麻酔で寝かせておいて、バミューダ島海岸部の適当な所に安直するように、作戦の囮兼回収役、ご苦労であった」

 

 

 

 

グナイゼナウと合流したのはシャルンホルスト級戦艦、《シャルンホルスト》、この世界ではグナイゼナウ共々、英国にビスマルク以上の壮絶なトラウマを植え付けた《悪魔》の戦艦であった。

 

 

 

そして二隻は霧の中をバミューダまで進み行く・・・・・・

 

 

その艦首には、あの忌まわしき戦争を物語る、()()()が意匠された、()()()()()()()()()()()が掲げられていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・続く。

 



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~バミューダ島にて~

前回からの続きです、


 

 

 

バミューダ諸島沖のとある地点、戦艦《グナイゼナウ》艦上。

 

 

「おう、ウォーダン、お疲れさん、」

 

 

「そっちもお疲れさんだな、解析どうなっている?」

 

 

「・・・やっぱりというかなんか、コアは完全にブラックボックスだな、この俺をもってしてもそんな有り様だ。」

 

 

「そうか・・・・・・お前でも無理だとすれば後は、()()()()()()ほかは無いのだろうな。」

 

 

千冬達を安置した後、グナイゼナウ艦上では二人の男が白騎士の真ん前で話をしていた。

 

 

その二人は、ウォーダンと呼ばれている男と、見た目が正晴に酷似している科学者の男で、どうやら《白騎士》のコアを調査していたが、碌な結果にならなかったらしい。

 

 

「それにしても、ブリュンヒルデ撃墜とかあんなアカンことして大丈夫だったのか?」

 

 

「無茶苦茶染みてはいるが、これで当初の目的は達成されるだろうからな、」

 

 

「《現在と未来は過去をねじ曲げる事が出来るが、過去は現在と未来を傍観することしか出来ない》か、お前が昔発言したんだっけ?」

 

 

「そ、せっかくこんな形で()()()()()()()()()()()()()()、現在に一言もの申したって良いだろうと思ってな。」

 

 

「でもお前、()()()()()()()()()()()()()、子孫達が盛大なコンプレックス抱える原因作っちゃってるじゃん?」

 

 

「そ・・・それはノーカンでお願いしてくれ……(汗)」

 

ウォーダンと呼ばれた男は科学者の指摘に滝汗を流しつつも、直ぐに立ち直って話を続けた。

 

 

「なぁ、()()()()にどれだけの人間が気付けると思う?」

 

 

「現実は非常である、誰も気がつかずただの怪事件扱いで終了と見る」

 

 

「辛辣だなおい!?」

 

 

「おめーのやり方が回りくどい+やり方が無茶苦茶すぎるんだよ!!、第三者的に説明しようとしたら荒唐無稽な事実が多過ぎて誰も信じねぇよこんなの!!」

 

 

「《お前のネームバリュー使えば楽勝じゃね?》とかほざいて俺にこの作戦決行させたのお前だろ!!」

 

 

「だーれがこんな無茶苦茶な事考えるんだバカヤロウ!!生前のお前が荒唐無稽過ぎることリアルでやらかしたからって、ISを艦砲射撃で落とすのと戦艦に射撃当てるのじゃあ難易度は天と地ほどの差があるんだぞ!!」

 

 

「両方ともどこかしら一ヶ所にピンポイントで連続命中させるってだけだから難易度は元が高すぎるだけで一緒だわボケ!」

 

 

「ISは空飛んでただろーが!!、ジェット戦闘機を徹甲弾装填した戦艦大和の主砲で打ち落とすのと同じくらいムリゲーだわアホ!」

 

 

「「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!!!」」

 

 

 

二隻の船は、相変わらずバミューダ諸島へと向かっているのだが、その甲板上では、この後も、暫くの間、二人の男の下らない罵倒合戦が続くのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?なんですって!?ブリュンヒルデがバミューダ諸島で消息を絶った!?どういう事よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、白騎士が行方不明になって大慌ての日本国、在日米軍の伝達ミスにより真っ先に事態を知った統合幕僚総長の純香、大慌てで喚き散らす彼女と相対的に、凄まじく気楽な状態で事の流れを聞く重造、自衛隊のトップと海上自衛隊の艦隊司令との温度差に周囲は困惑する。

 

 

「重造!あなたも少しは焦りなさいよ!!」

 

 

「まぁまぁ落ち着け統合幕僚総長、少し落ち着け、大体あのブリュンヒルデがそう簡単にやられるような奴じゃないのは、モンド・グロッソで一戦交えてるから知ってるだろう?」

 

 

「うぐっ・・・・・・確かにそうだけど・・・」

 

 

「それに・・・・・・バミューダってことは俺の予測が正しければ()()()がいるところだし・・・・・・」

 

 

「アイツ?、誰のこと?」

 

 

 

「直にアイツから電話来ると思うから、バミューダでマスコミに追われてるって」

 

 

 

「マスコミ?追われてる?あっ、ふーん(察し)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで時が過ぎ、シャルンホルストとグナイゼナウはバミューダ諸島はバミューダ島、この二隻はバミューダ諸島を含めた周辺海域一帯に立ち込める霧を利用してバレること無くバミューダ島外れの岸部にやって来れていた。

 

 

「・・・はぁ、全く、シャルンやグナウ、私を含めた全部が()()でなかったら、今頃座礁してただろうなぁ、」

 

 

「あー、バミューダって近海は岩礁や浅瀬が多いから、船が岩礁に接触したり衝突したりで沈没事故が起きやすい場所となっているんだったな」

 

 

「そうそう、バミューダ・トライアングルはパチの伝説だが、バミューダ諸島が船舶交通における難所なのは史実なんだよなぁ、っと、ここいらへんで良いか」

 

 

ウォーダンともう1人の男は、バミューダ島の岸辺に千冬達を安置し、ゆっくりと寝かしつける。

 

その寝顔は皆一様にしてやけに安らかで、幸せそうな物であった。

 

 

「さて、我々も()()か・・・、」

 

 

「そうだな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「さて、もしも次世があるならば、あの二隻と再び、相見える事を願うか」

 

 

もう1人の男が告げる、どうやらもう1人の男はウォーダンの親友のようだ、

 

 

「シャルン!錨を上げろ!()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 

「グナウ!我々も出発だ!!・・・()()()()()()()()ゆっくりと眠ろうじゃないか・・・」

 

 

「「そして最後に、そこの漢よ、彼女達の後事を託す、さらばよ!」」

 

 

ウォーダンと呼ばれた男ともう1人の男は、シャルンホルストとグナイゼナウへ分乗し、バミューダの海を颯爽と去って行く・・・

 

 

 

「・・・あの船、それに乗っていた二人の男・・・・・・マスコミから逃げ回っていたら、誰だかは解らんが、いつのまにかすごい人物と遭遇してたみたいだなぁ」

 

 

「っと、取り会えず千冬達を・・・・・・って、良い寝顔してやがる・・・・・・」

 

 

 

二人の男に千冬達の事を託されたのは、ジブラルタルから遥々此処バミューダまで逃げてきていた日本国元首相、槇田義照であった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・しかし、こうも良い寝顔をしているとリア充爆発しろ的な意味でイタズラしたくなるな・・・・・・確か千冬の白騎士の荷物入れが拡張されてた筈、何か良いのは・・・・・・お?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・槇田が何かを見つけて数十分後・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こち亀のオチのBGM♪)

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・で、俺に助けを求めたと、バッカじゃねえのwwwwwwwwwwww」

 

 

「だってさホントに良い寝顔してたんだぜ、こっちは追っかけから逃げるのに必死こいて、丸5日も飲ます食わずの寝ずなのにさ!、だからむしゃくしゃしてやった、反省はしているが後悔はしていない」

 

 

「だからって寝顔にそのピンポイントな落書きはねえだろwwwwwwww自業自得だわwwwwwwwwワロスwwww」

 

 

「重造、スピーカーで聞こえてるんだけど、一連の話、」

 

 

「ま゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁて゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

「束!いい加減レールガンを使わせろ!!あのバカに一発ぶちかまさないと気が済まん!!」

 

 

「ちーちゃん落ち着いて!私もよっしーを一度ボコボコにしないと気が済まないけど、ちーちゃんのそれは巻き添え出たら大変なことになるから!!」

 

 

「おのれ元首相・・・ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

 

 

「あなたって人はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「こりゃあ凄い画だ!生中継と録画絶やすなよ!」

 

 

「此処までひどい逃走劇は見たこと無いぞwwww」

 

 

 

槇田元首相は追いかけられていた、千冬達にである。

 

 

原因は簡単、この元首相、ぐっすりすやすや寝ている千冬達の寝顔にムダに綺麗な字で落書きをしたのである。

 

それも油性ペンで。

 

 

寝顔にそれぞれ

 

 

千冬「ズボラ13」

束「むらさき、う☆さ☆ぎ!」

みとり「貧乳は(ry」

正晴「リア充」(大文字)

行信「ヤムチャしやがって・・・」(寝てた時の体勢のせい)

 

 

 

 

 

と書かれ、起きたと同時に槇田を追いかけて来たパパラッチのカメラの餌食に・・・・・・

 

 

 

 

 

キレない理由がない、それでもって今に至るのである。

 

 

「重造!出来ればでいいから助けて!!あれ全部のお仕置き食らったらマジで死ぬ!特に千冬さんの!!」

 

 

「こうなるのは予測できてただろwwwwwwwwダイジョーブダイジョーブ、科学ノ進歩、発展ニ犠牲ハツキモノデース」

 

 

「ちょwwwwダ○ジョーブ博士wwwwwwww」

 

 

「いまだ!取り押さえろ!!」

 

 

「あっちょっまっ、謀ったな!重造!!」

 

 

(ムンズッ)

 

 

「覚悟は良いよね?よっしー?」

 

 

「何をがたがた震えているんだ?もうすでにOHANASHIとOSHIOKIの準備は終えているぞ?」

 

 

「小便はすませたか? 神様にお祈りは? 部屋のスミでガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?」

 

 

「もしもし?私みとりちゃん、いまあなたの後ろにいるの?」

 

 

「ユルサナイ・・・・・・ユルサナイ・・・・・・」

 

 

 

 

 

「ちくしょおおおおおお!!パパラッチなんて、 大っ嫌いだぁーー!!!ぴょげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

槇田がボコボコにされ、ぼろ雑巾のごとき状況で日本に連れてかれたのは、それからそう遠くない時間のことであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

~続く~




本話は全編シリアスに纏めるつもりだったのに、どうしてこうなった。


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~「悪魔」の正体と悪魔の贈り物~


前回の補足的お話です、次話辺りが原作的には重要な話になる予定なので、バミューダのお話はちょっと無理矢理ですがここら辺で切り上げさせて頂きます。


 

「・・・・・・と、言うわけで昨日の出来事をまとめちゃおうか」

 

 

「だな、あれから私も色々考えることがあった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

槇田元首相をフルボッコにした後、ぼろ雑巾と化した元首相をバックパックに詰めて篠ノ瀬製作所に帰還してきた束達、

 

 

当然の如く、最初の話題は霧のなかで見た、「白騎士を撃墜した戦艦」のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

「まずさ・・・アレの正体として一番考えられるのって何よ?」

 

 

「それはもうみんな決まった答えがあるんじゃない?」

 

 

「じゃあいっせーのーせする?」

 

 

「・・・だな、どうせ一致するだろうが」

 

「じゃあ行くよ?、いっせーのーせ!!」

 

 

「「「「「シャルンホルスト!!」」」」」

 

 

白騎士の撃墜した戦艦の正体に対しての見解が一致した、以降、シャルンホルストを説明するかのように話が流れていく・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間違いないよ!!あの艦型ならシャルンホルスト級だって!!!それはつまり、《悪魔》が霧の中でよみがえったんだ!!」

 

 

 

 

「・・・・・・荒唐無稽だがブリュンヒルデが撃墜されている以上まるで否定しきれん・・・なによりシャルンホルストはそもそもをして恐ろしい戦艦だしな・・・・」

 

 

 

「座乗司令官はもう1人の黄金柏葉剣ダイヤモンド付騎士鉄十字勲章受賞者だもんねー・・・・・・取りあえずみんなが無事で良かったよ。」

 

 

「えーっと、私は歴史は詳しくないがシャルンホルストとなると()()()()の逸話で壮絶に有名なやつだよな?」

 

 

「あってるよー、ダイナモ作戦の妨害のためにダンケルク港に突入して当時未成の状態でやって来たフランス戦艦「リシュリュー」と交戦したのがシャルンホルストVS格上の始まりだねー」

 

 

「確かビスマルクが沈められた後《覚醒》したかのように次々にと英国の戦艦を沈めていったんだよな?」

 

 

「《ビスマルクの敵討ち》と言わせんばかりにロドネーを血祭りに上げたあと、次々に格上と遭遇しては撃沈していったからね、輸送船に目もくれず格上を葬っていったから、《通商破壊の在り方を履き違えた船》とまで呼ばれる始末だし・・・・・・」

 

 

「これと同型艦のグナイゼナウを沈めるため()()()英国は空母2隻(ヴィクトリアス、フォーミダブル、)を終戦間際に捨て駒だもんなぁ・・・」

 

 

「対独戦線最後の最後に小規模とは言え艦隊決戦があったのは何の皮肉か・・・」

 

 

「第二次ユトランド沖海戦はいまでも伝説扱いだからねぇ・・・・・・」

 

 

(シャルンホルストとグナイゼナウを沈めるためだけに英国と自由フランスが総力を挙げて行った作戦の結果発生した海戦、作戦は成功し二隻の正規空母と多数の輸送艦を犠牲に、リシュリュー、ヴァンガード《急造に成功》、ウォースパイト、レナウンの4隻でシャルンホルストとグナイゼナウを大破に大破に追い込み、両艦は10日後、バルト海にて自沈することとなる)

 

 

 

 

 

「でもさー、何であんなところにいたんだろうね?」

 

 

「・・・全く理由が思い付かないな」

 

 

「(カタカタカタカタ、ターン!!)・・・なるほど、あの男、アルバン元帥の・・・で、Wikipedia準拠だと・・・・・・なるほどな、そう言うことか。」

 

 

「「えっ?」」

 

 

「はるるん、何かわかったの?」

 

 

シャルンホルストがあの場にいた理由がまるでわからない束達、そんな折、いつのまにか復帰していた義照がインターネットで何かしらを検索し何かに気づいて結論付けたらしく束から尋ねられる。

 

 

 

 

「自信は無いが・・・予測される中ではコレが一番だろうな、って言うのがあるな」

 

 

「本当か?ひとつ聞かせてくれないか?」

 

 

「良いだろう、まぁ刑事時代の勘が頼りだから、余り期待はするなよ?」

 

 

 

 

かなり真剣な表情の義照は、先程までのぼろ雑巾の如き姿を整え、話始める。

 

 

「まず・・・事前に話忘れていたことがある実はお前らがバミューダについていたのには理由があってな、二隻の戦艦に運ばれていたんだよ、千冬達は」

 

 

「・・・それはつまり、私たちはあの場で撃墜された後、何らかの形で救助され、あの船でバミューダまで運ばれたと言うことか・・・」

 

 

「いや?たぶん千冬達の目の前に姿を表した戦艦が白騎士を()()()()()んだと思うよ?、軽く白騎士を調べたとき何かが擦った後があったもん、それに私が見た戦艦は同じ姿のが二隻だからね、一隻を回収要員にしてたっておかしくはない」

 

 

「シャルンホルストとグナイゼナウも来ていたのか・・・それでもって私達は二隻にうまく翻弄されてしまったと。」

 

 

「じゃあ何で自分達が撃墜したのをわざわざバミューダまで?」

 

 

「それは多分・・・彼の性格が影響してるんだろうねぇ・・・・・・」

 

 

そう言って見せたのは、彼が見た二人の男の内の一人、独海軍の元帥で、シャルンホルストに座乗し指揮を行っていた男、「ウォーダン・ラインラント」のWiki○edia項目であった。

 

 

「・・・《シャルンホルストの悪魔》か、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がどうかしたのか?」

 

 

「いやさ?俺は元首相だけど無学の身だから彼が残した功績を見てもそれがどれだけ凄いのかよくわからないが、彼は大戦中一貫してシャルンホルストにいたと記されていたんだよ。」

 

 

「黄金柏葉剣ダイヤモンド付騎士鉄十字勲章を受け取るとき、先に受け取ったルーデルにあやかって《自分をシャルンホルストから外さないこと》とかを条件に組み込んだくらいだからねー、シャルンホルストに愛着沸いてたのは事実だろうね」

 

 

「んで、彼が残した実績とバミューダで起きたらしい事に共通点を見いだしたんだよ。」

 

 

義照はあのときウォーダン元帥がシャルンホルストで()()()()()()()()を彼なりに考えたらしく、それを続けて行く・・・・・・

 

 

「シャルンホルストは・・・・・・、シャルンホルストとウォーダン元帥達は()()()()()()んだと思うよ?」

 

 

「・・・・・・何をだ?」

 

 

「《彼の()()()()()()()一目瞭然だよ》とか、そんな事を言いたくなってしまう私の予想が正しければ、()()I()S()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、単純にね」

 

 

「「「・・・・・・え?」」」

 

槇田の放った言葉には、幾つもの疑問点が存在した、だが槇田はそれに一つずつ答えて行く・・・

 

 

「・・・在り方をといっていたが、具体的には?」

 

 

「シャルンホルストで格上を沈め続けたことそのものだよ、相手がほとんど純粋な格上でもやりようはある、って事だよ、シャルンホルストは純粋な主砲だけでもバーラムって言う戦艦を沈めているらしいしね」

 

 

 

「多分だけど、昨今ISが軍事兵器として発展して行く中で証明されるようになって来た、《ISはISのみでしか勝つことは出来ない》を間接的に破壊しようとしたんだろうなぁ」

 

 

「だったらバミューダに展開したISとかを狙えばそれで済んだんじゃ?」

 

 

「シャルンホルストだよ?沈んでる筈の船でそんな事になっても不思議体験扱いされるだけだよ、だから多分、フィールドにバミューダを選んだんだろうね、調べた感じ、一部海域はISの航続距離限界になるらしいし、宇宙開発用だからってやけに突出した航続距離と、最強とも呼ばれている千冬を専属パイロットに持つ白騎士だけをおびき寄せたんだろう、現場の都合の良い霧に関しては知らん、さすがにこれは原因を掴めないね。」

 

 

「それならば私に《暮桜》を使わせてそれを撃墜した方が・・・・・・」

 

 

「正直に聞くけどさ?モンド・グロッソの時手加減してたでしょ?」

 

 

「そ・・・それは・・・」

 

 

千冬がモンド・グロッソで手加減をしていたのは事実なので彼女は何も返すことが出来ない。

 

 

「まぁ、IS開発してから暫くしかたってない段階だと一番強いのが千冬なのは一目瞭然だから、パフォーマンス混ぜないと試合がつまらなくなるだろうからって言う配慮があったのだろうとも予測できるけど、千冬さん多分《白騎士》じゃ無いと本気出せないでしょ?」

 

 

「モンド・グロッソの決勝戦、こっそり観戦してたけど、千冬さんの《暮桜》、一度も大したダメージは受けてないのに機体がギシギシ言ってたもん、はっきり言って《暮桜》じゃ千冬さんが出せる限界の機動に機体が耐えられないと見ているんだけど?」

 

 

「・・・凄いな、確かに私が一番本気を出せるのは《白騎士》の時だ・・・あれはもうすっかりと私の愛機になってしまってな、《暮桜》では私の戦いを完璧に出来ないのもその通りだ」

 

 

「・・・凄いよよっしー!《暮桜》のことはよっしーには伝えていなかったことなのに、自力で答えにたどり着くなんて」

 

 

千冬と、《白騎士》《暮桜》それぞれの相性の事について、ついでながらにして出てきた義照の推理に千冬と束は感嘆せざるを得なかった。

 

 

「まぁつまり何を言いたいのかと言うと、《ウォーダンは、白騎士に乗った千冬こそISにおける現在の最強であると何かしらの手法で確信し、白騎士を撃墜してISが単独で最強と言うわけではなく、既存の兵器でもISを倒すことができる》と自らの手で証明して見せたんだよ」

 

 

「ついでに・・・多分ウォーダン氏はこの作戦が成功しても大きな影響があるとは考えてないだろうね・・・・・・いかんせんチート人間と第二次世界大戦時の兵器での証明だ、現代とは何もかもが違う中では余り効果は期待できないだろうし、何人かに認識させられれば良かった程度なんじゃないかな?」

 

 

 

「最後にひとつ聞いて良いか?」

 

 

「ん?」

 

 

大方彼の予測を話終え、千冬の最後の質問へと話が移って行く・・・・・・

 

 

 

「確か、《彼らは墓標へ帰還する》だとか《亡霊は亡霊らしく》だとかいっていたんだよな?

 

 

「だね、俺の聞き間違いがなければそんな感じのだよ」

 

 

「じゃあ何で彼らは()()()()()()()()()()()、甦った時間をそんな事に使って還っていったんだ?」

 

 

「・・・・・・Wikipediaの語録に良い言葉が載っていたよ、」

 

 

「どんなのだ?」

 

 

「彼が残した《死》に関する一言だ」

 

 

「「私は、生涯にて、ただ唯一愛した艦の為だけに、《強大な戦艦が格下の戦艦には強い》だとか《ヒトラーはドイツを救う英雄である》だとかそう言った、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()身だ、もしも私が死後に()()()()()()()()()()()()()()、そんな機会は恐らく、私がやったことと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」」

 

 

 

 

「・・・・・・そうか、私は彼を単純な《強者》として見ていたが・・・・・・その認識は間違っていたようだな。」

 

 

「ちーちゃん?」

 

 

「ありがとう、義照元首相、お陰で私も新しく()()()()()が1つ出来たよ」

 

 

 

「そうか・・・・・・あ、そうそう、私はそろそろ此処を発たねばならない、イギリスに約束を残していてな・・・後処理を頼めるか?」

 

 

 

 

「・・・はいはい、了解了解っと、千冬にどんな変化があったのかはよく解らんが凄い体験をしたのは確かだと解った、義照元首相、またどこかで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

槇田の推理が終わった後、足早に空港へと向かう義照、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・実はこの時、日本からはるかドイツではこの時、世間を揺るがす大事件が今まさに始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし、私だ、アルバンだ・・・・・・・・・何?どういう事だ!」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()我が国ではそのような行為は倫理的に許せるものではないと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろう!!一体全体どういうことだ!!!」

 

 

「今すぐデザインベイビーで実験を行っている所を教えろ!こうとなっては問答無用だ!!」

 

 

「あ、首相ですか!!私です!!アルバンです!!緊急事態のため、これよりヴィルヘルムスハーフェンの連邦IS研究所に軍を突入させます、大騒ぎになるのが目に見えてますので鎮静化よろしくお願いします!!」

 

 

「何故ですかって!!作られたとは言え人の命がかかっているんです!!急ぎよろしくお願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、ドイツに長年潜んでいた《闇》が1つ、暴かれようとしていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

~続く~

 

 




以下、参考資料として、彼らの会話にて出てきた《シャルンホルストの格上殺し》の実例を一部状況説明つきで解説。


《以下、シャルンホルストの格上戦果》

シャルンホルストの被害者リストとも言う(戦艦限定)

英国

QE級戦艦

「クイーン・エリザベス 」

シャルンホルストの魚雷により大破、後に自沈処分


「バーラム 」

シャルンホルストの主砲が直角に近い状態で放った弾が、偶然煙突内部に入り込み、機関部直撃、燃料と弾薬に引火して爆発四散


「ヴァリアント」


「マレーヤ」



R級戦艦


「リヴェンジ 」

船団護衛中にUボートの雷撃を受け大破、直後にシャルンホルストがやって来たため応戦するも大破した部分から次第に浸水、シャルンホルストの砲弾が搭載水上機の燃料庫に命中したのが致命傷となり、大傾斜の後沈没



「レゾリューション 」


「ラミリーズ」

シャルンホルストの魚雷により沈没、同行していた英国空母イラストリアスもまとめて撃沈させられる


「ロイヤル・サブリン」

同級の中では本艦の沈没が時系列的には一番最後、この船の沈没によりR級は全てシャルンホルストによって沈められたことに・・・


「ロイヤル・オーク 」


ネルソン級戦艦


「ネルソン」

正確にはティルピッツの魚雷が成した成果、シャルンホルストはティルピッツとの交戦で大きく消耗していたところを突いただけ、

「ロドネー」

艦尾部分に主砲弾と魚雷が合計12連続命中し、副砲全滅、スクリューが爆散、航行不能になったところを後ろに回られビスマルクの敵討ちと言わせんばかりに一方的に嬲り殺しに会い、艦尾から沈没


KGV級戦艦


「キング・ジョージ5世」

魚雷を片舷に集中投射され沈没、コレを見てお分かりの通り、英国戦艦のネームシップは大体シャルンホルストの手にかかって戦没している。


「ハウ」

正確には沈没しておらず、直接的な沈没理由はUボートの魚雷だが、それとは別にシャルンホルストに艦橋を3回全損、艦橋要員全滅の憂き目にさせられている、人材的な意味では最大の被害者


「デューク・オブ・ヨーク」

戦艦の中では一番最後の被害艦、チャーチルは本艦が沈められた時、《シャルンホルストは英国貴族に恨みでもあるのか!》と叫んで3日間寝込んだとか、尚、史実ではこの船にシャルンホルストは撃沈させられている。



その他被害者


「ブルターニュ」


「ダンケルク撤退」で有名なダイナモ作戦の後に史実で行われた撤退作戦、「エアリアル作戦」の支援のためブレストを守備していたが、作戦妨害のためにやって来たシャルンホルストと交戦し、シャルンホルストの前部主砲を一時機能停止に追い込むも、残っていた後部主砲弾が「バーラム」と同じように煙突内部に入り込み、機関部直撃からの爆発炎上の後沈没。


しかし、シャルンホルストは主砲修理のため帰投せざるを得ず、エアリアル作戦は成功する。
























《メタ話》

シャルンホルストは、こうして見ると凄まじいですね、「千冬+束に勝てる」って言う設定にするためだからってこれは強すぎな設定になってしまった。

どうしてこうなった


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ISの成した《闇》

ここから、チラホラ原作キャラが出現するようになります。

今回はドイツのターンです。


ヴィルヘルムスハーフェン郊外、独国連邦IS研究所入り口付近、

 

 

此処は、ドイツ陸軍が使っているIS研究のための施設である。

 

 

今現在、独海軍海兵隊による制圧作戦が開始されており、順調に作戦は進み、そしてそんなタイミングでやって来た1人の男がいた。

 

 

 

「元帥閣下!」

 

 

「戦況はどうなっている?」

 

 

海兵隊を緊急で派遣することとなった元凶であり、キール軍港を本拠地とするドイツ本国艦隊の総司令長官でもある、アルバン・ラインラント元帥である。

 

 

「作戦は順調に進んでいます、研究所内部のISに抵抗されるような事もなく、このままなら制圧は時間の問題でしょう、」

 

 

「そうか・・・もしもを考え一応IS部隊も準備していたが、必要無さげか」

 

 

「建物内でISの戦闘は危険を通り越していますからね、使わなくてすむならそれで良いといったところです」

 

 

「そうか・・・一応、私が現場の指揮を取る、入り口の制圧は任せた、」

 

 

「ハッ!!(`・ω・´)ゞ」

 

 

入り口を部下に任せ、アルバンは元帥なのに最前線へと行く・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ハッ!!」

 

 

「これは・・・酷いな・・・ご苦労様、気楽にしてくれ、」

 

 

「閣下、最悪の報告が1つ・・・・・・」

 

 

「なんだね?」

 

 

アルバンが中に入ってまず最初に見たのはISに関する資料を一纏めにしていた資料庫なのだが、現在は証拠隠蔽の為なのか何なのか非常に荒らされており、何処を歩くにしても散らばった資料が邪魔で、資料を避けながら進むのは困難になっていた。

 

 

そして、アルバンはそこにいた部下の海兵隊員より、出来ることならば聞きたくなかった報告を聞き出す。

 

 

 

「陸軍の大将が・・・・・・今回の件の主導者だと押収した資料により判明しました・・・」

 

 

「・・・・・・・・・・・・そうか、その資料を一応、確認させてくれ」

 

 

「はっ、此方に・・・・・・」

 

 

部下の報告の後、渡された資料には、確かにデザインベイビーの()()に関して、陸軍の大将が主導で行っており、他の資料には、計画の目的が()()()I()S()()()()()()()にあることを記したものもあった。

 

 

「・・・・・・ふざけやがって!!」

 

確かにドイツでは今「高いIS適性を持つ人物の不足」はドイツ軍内部では大きな問題となっていた。

 

 

 

・・・と、言うのも、アラスカ条約で国別のIS保有枠についても取り決めがあったのだが、この時、ドイツはミサイル撃墜に多大な功績を残していたとして、軍用、民間用、研究用の三種類に別れた保有枠の全てにおいて、かなり多くの保有枠を認められたのである。

 

 

特に、軍用IS枠は他国が多くても10機前後、二番目に軍用枠が多いアメリカとロシアでさえ其々17機が軍用枠なのに対して、ドイツは単独で25機もの枠を手にいれたと言えば、如何にこのタイミングでドイツが贔屓されたのかがご理解いただけるだろう。

 

 

 

このため、早急な実践配備の為に適性検査が行われたのだが・・・研究枠、民間用枠の二つはすぐに埋まったのに対し、軍用枠は半分しか埋まらなかったのである。

 

 

「人材が足りないだぁ?それは貴様ら陸が採用条件を厳しくしたからだろうが!!」

 

 

・・・が、埋まらなかった事自体は、割り振られた枠が一番多かった陸軍(25機中15機をかっさらっていった)が、

 

《適性A未満お断り(要約)》

 

したのが原因であり、海軍は割り振られた5機を、

 

《適性Cありゃ予備人員としての採用は最低限考慮》

 

としてあっという間に枠を埋め、念押しでIS一機に対しての数人のパイロットを確保した海軍や、

 

《適性Bあれば、基本は採用》

 

 

として、5機中4機の枠を埋めた空軍との比較もあり、「陸軍のISについては採用条件が厳しすぎる!!」として、最近は議会でも批判される始末、そんな中でこの事件である。

 

 

《自業自得染みた事やって都合が悪くなったからっていくらなんでもこれは無いだろう!!》

 

 

とか色々言われて陸軍に非難が集中するのは目に見えていた。

 

 

「もう我慢ならん!!私は最前線へと行く!後は任せる!!」

 

 

「え?、お待ち下さい閣下!?閣下ァー!!?」

 

 

資料を確認したアルバンは、部下の制止も聞かず研究所の奥へと向かった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが最奥か、後ろは部下に任せてあるし、急いで突入するか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルバン元帥は、突入しているのがバレないように慎重に制圧する海兵隊をよそに、一人だけ伝説の傭兵張りスニーキングを無駄に発揮して、施設最奥地の秘匿施設へとたどり着いた。

 

 

そして、中に突入するのだが・・・・・・

 

 

 

 

「これは・・・これ・・・は・・・・・・、貴様ら!!!私や首相に黙っておいて、ISに乗せるためだけに彼女達を作った、とはどういう事だ!!この行為が倫理的に許されると思っているのか!!」

 

 

 

「なっ!アルバン元帥!?」

 

 

 

彼が中で見たのは《虚ろな目をした10数人程の少女達》と、《彼女達に対して何かしらを行おうとしている科学者達》、そして《先程話にあった陸軍大将の姿》であった。

 

 

「どうして貴様にここが・・・・・・がっ!!!」

 

 

「吐け!!()()()の両親が誰に当たるのかを今すぐ吐け!!」

 

 

陸軍大将はアルバンを見て驚くが、そんな暇さえ与えるつもりは無いと言わせんばかりにアルバンは大将に掴みかかり、マウントを取って一方的に大将をぶん殴りながら、怒気を放ちつつ大将に問い質す。

 

 

「わ、私は知らない!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事しか私は知らないんだ!!」

 

 

 

「・・・・・・じゃあ聞こう?彼女達のあの異質な()()はなんだ?」

 

 

アルバンは、大将の迫真の返答に嘘がないと結論付けると、ふと、彼が気になった事を問い質す事にした。

 

 

「あ・・ISの適合性向上のために行われる処置で・・・・・・。」

 

 

「どんなのだ?」

 

 

 

「ウォーダン・オージェ・・・《擬似ハイパーセンサー》と呼ぶべきか・・・・・・脳への視覚信号伝達の爆発的速度向上と超高速戦闘状況下における動体反射の強化を目的して理論付けられ施された、肉眼へのナノマシン移植処理のことを指すのだ。」

 

 

「自身の意思で使用のオン、オフを変えることができ、使用すれば視覚能力(動体視力、視覚解像度等)を数倍に跳ね上げることができる。」

 

 

「ISを展開していない状態でも、最高で2キロ先の目標を狙うことが可能・・・と言うものだったんだが・・・・・・」

 

 

「失敗して制御不能になったと?」

 

 

「何故それを!?」

 

 

大将は彼女達に施された()()の解説の後、自分が言おうとしたことを先に言われて驚きのあまり声をあげてしまう。

 

 

「《疑似ハイパーセンサー》か・・・・・・随分とな代物じゃあないか・・・・・・ウォーダン・オージェねぇ・・・・・・」

 

 

「そうだ、第二次世界大戦期にて名を馳せた《ウォーダン・ラインラント元帥》・・・彼と同等の能力を手に入れる事を目的として、この処置は施された・・・・・・だが・・・彼女達は()()()になってしまった・・・」

 

 

「自分達が生んだ子供を失敗作扱いか・・・つくづくどうしようもないな、」

 

 

アルバンは話を聞きつつ、心の内側で呆れ返っていた。

 

 

ウォーダン・ラインラントは《紛れもなく自分の曾祖父》、自分の曾祖父の名前をそんな大層な計画につけられても怒りしか沸いてこない。

 

 

「・・・・・・そうか、なら幾つか言っておこう、まず私が貴様らに気づけた理由だが・・・・・私には()()()()()()()()()()()()()()()がある、もっとも、私はそれを使うのは嫌いだがね」

 

 

「二つ目に貴様らの処遇だ・・・・・・軍事法廷で会おう。」

 

 

「ヒッ・・・ヒイィィィ!!」

 

 

マウントが解かれ、アルバンの語りを無視して逃走しようとする大将、だが一瞬で誰かに鳩尾へ蹴りを加えられ、声を上げる間もなくその場に崩れ落ちる。

 

 

「オーレンドルフ首相!?」

 

 

「おう、ラインラント元帥、無茶やらかしたと聞いて飛んでやってきたぞ、取り合えず、この場の処理は任せてくれ、そこのお嬢さん達を頼むぞ?」

 

 

「・・・ハッ!」

 

 

状況整理の役目を引き受けたオーレンドルフ首相、アルバンに追いついた海兵隊員達の指揮を彼から引き継ぎ、淡々と処理をこなして行く、そしてアルバンは、少女達の元へと行く。

 

 

 

 

「おい、嬢ちゃん!大丈夫か!?」

 

 

「・・・・・・あ・・・・・・あ・・・・・・」

 

まず最初にアルバンは近くの青髪の少女に声をかける、だが反応が薄い。

 

 

「・・・ほら嬢ちゃん、私が見えるかね?」

 

 

「・・・・・・え?貴方は・・・・・・?」

 

「ドイツ海軍の者だ、色々事情があってね、取り合えず嬢ちゃん達は暫く海軍の預かりとなる。」

 

 

「・・・私達は()()()()ですか?」

 

 

「!!!」

 

 

アルバンは愕然とした・・・・・・青髪の少女が言った一言はアルバンにある1つの可能性を

思い起こさせた。

 

 

「・・・大丈夫だ、嬢ちゃん達がお払い箱になるなんて事は()()()()()よ・・・」

 

 

「・・・よかったぁ」

 

 

アルバンは彼女の疑問をその場で否定する、少女はその一言で随分と安心したのか、穏やかな表情に変化する。

 

 

「誰か、彼女を頼む。」

 

 

「了解しました。」

 

 

 

 

「そこのお嬢ちゃんも大丈夫か?」

 

 

 

青髪の少女の様子が安定したのを確認したアルバンは少女を部下に託し、すぐ近くにいた銀髪ロングの少女に声をかける。

 

 

「いやだ・・・・・・」

 

「?」

 

だが、銀髪の少女のアルバンの呼び掛けへの反応は、彼にとって衝撃的なものだった。

 

「いやだ!嫌だ!イヤダ!イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ!!」

 

 

「私ハ()()()ナンカジャナイ!!、モウアンナコトシタクナイ!ステナイデ!ステナイデ!コワイコワイコワイコワイ・・・・・・」

 

 

「!!!」

 

 

彼は他の少女の存在もあるのに、一人確信する。

 

 

(この子が一番の重症だ・・・・・・)

 

 

 

咄嗟に彼は銀髪の少女に抱きつく。

 

 

 

 

「ア゛ア゛ア゛アアアァァァ!!!ウガァ!!ウガァ゛ァ゛ァ゛ァァァ!!」

 

 

少女は抱きついた彼に容赦なく抵抗する。

 

 

 

肩を思いっきり噛まれ、何回も何回も膝や足を蹴られ、顔面に拳や引っ掻きを何度も受ける。

 

 

「アルバン元帥!?」

 

 

肩と顔から大量の血が溢れる、それでも彼は抱きつくのをやめない。

 

 

「ア゛ア゛ア゛ァァァァァ・・・・・・・・・・・・あれ?・・・・・・あなたはいったい?」

 

 

 

 

「やっと落ち着いたか、全く、落ち着かせるのに時間をかけてしまった。」

 

 

アルバンが激しい抵抗を受けながら少女を抱きつづけていると、いつの間にか少女は落ち着き、気付けは目の前のアルバンの惨状に青ざめている。

 

 

「ごっ・・・ごめんなさい!!、ごめんなさいごめんなさいゴメンナ・・・ふぐっ!!」

 

 

「この傷は私が自業自得で得た傷だ、嬢ちゃんが自分を責める理由は存在しない」

 

 

「で・・・・・・でも………」

 

 

少女は何度も謝ろうとしてアルバンに遮られた、本当はアルバンが状況を放置するとループに陥ると判断しての行動であったが、少女は申し訳なさで切羽つまっているようにも見えた。

 

それとほとんど同時期に他の少女達も救助が完了し、オーレンドルフ首相がアルバンに話しかける。

 

 

「大丈夫かね?随分ダメージを負ったようだが」

 

「こんなもん()()()()()()()()()()()()()()()()と比べたらかわいいもんです。」

 

 

「どうするんだ?ラインラント元帥、このまま彼女達を見捨てるわけにもいかんぞ・・・」

 

 

「そりゃ当たり前でしょう?それよりも嬢ちゃん・・・名前は何て言うんだい?」

 

 

「・・・・・・それが…………」

 

 

「私達には・・・名前は・・・・・・」

 

 

「んなっ!?それは本当か?」

 

 

「それは・・・不味いな・・・」

 

 

アルバンの問いに銀髪の少女は吃り、青髪の少女は答え辛そうに話した、どうやら此処では彼女達は徹底的にモノ扱いされたらしい・・・・・

 

 

「不味いな・・・戸籍を、つくって誤魔化した形跡も無い可能性濃厚だぞ・・・」

 

 

「あの・・・その戸籍と言うのがないとどうなるんです?」

 

 

「非常に言いづらく、私自身必要が無ければ言いたくはないが・・・酷い言い方をすれば()()()()()()()扱いだ」

 

 

「そんな!!」

 

 

アルバンの返答に黒髪の少女が叫ぶ、だがアルバンは何かを決意したかのように、こう言った。

 

 

「大丈夫だ、我々が戸籍を作成するとしよう」

 

「「え?」」

 

「ちょっ、アルバン元帥!?」

 

 

アルバンの答えに二人の少女は困惑し、オーレンドルフ首相はこれからの自分の仕事を想像して思わず突っ込みを入れてしまう。

 

 

「今回の件を公にすれば、彼女達を国が保護することも可能です、保護責任者としての責務は私が担います、幸い生まれのお陰で資産には困りませんからね、妻と娘を説得する必要がありますが・・・・・・」

 

 

「だが大丈夫かね?確かに事を公にすればキミが彼女達を保護することに問題は起きないが・・・軍の肩身が、」

 

 

「軍の威信暴落は何れ起こりうる物です、被害がマシな内の方がいい、陸軍のIS部隊には暫く冷飯を食って貰う羽目になりますがそこで恨まれてもどうしようもないです。」

 

 

「それに・・・私は彼女達の()()()()()()()()()()以上、()()()()()()を少しでも良い方に導けるよう動く義務があると思っています。」

 

 

アルバンの意思は固い、オーレンドルフは最期の確認を取る。

 

 

「やれるかね?アルバン元帥?」

 

 

「やれます、()()()()()()()

 

 

「そうか・・・・・・アルバン元帥!!本件の被害者たる彼女達の養育を頼む、幸い、元帥の指揮下についている海兵隊は元帥を慕っている連中だ、彼らも補助に回れるように動く、この少女達を・・・・・・頼む!!」

 

 

「了解しました、この件に関しましては、わが誇り高きラインラント家の・・・・・・曾祖父、ウォーダン・ラインラントの名に掛けてでも成し遂げて見せます」

 

 

「あの・・・・・・アルバンさん、オーレンドルフさん、」

 

「ん?」

 

 

アルバンとオーレンドルフの一連の話の後、青髪の少女が話しかけてくる。

 

 

「お二人の名前を改めて教えていただけませんか?」

 

 

「私からもお願いします。」

 

 

銀髪の少女も追随する辺り、二人は自己紹介をすっかりと忘れていたようだ。

 

 

「あ、自己紹介がまだだったな、私はアルバン・ラインラント、《悪魔》と呼ばれた戦艦乗り、ウォーダン・ラインラントは私の曾祖父だ」

 

 

「私はマインラート・オーレンドルフ、一応この国の首相だよ、まぁすぐに引責辞任になりそうだが。」

 

 

「そうだ、二人に名前を付けなくては」

 

「それもそうだなじゃあ私が青髪の子につけて上げるから、アルバン元帥は、銀髪の子に頼む、」

 

 

「・・・・・・下心ありませんよね?」

 

 

「あっ、あるわけないぞい!!」

 

 

(((怪しい・・・・・・・・・)))

 

 

アルバンの問いかけをムキになって否定するオーレンドルフ首相、この時、アルバンと二人の少女だけでなく、この場にいた海兵隊員や他の少女達も含めて、オーレンドルフへ抱いた心情は一致していた・・・・・・

 

 

 

 

「・・・ウォッフォン!アルバン元帥は思い付いたかね。」

 

 

「ええ、何とか」

 

 

「じゃあワシからだな、今日からお嬢ちゃんの名前は・・・クラリッサだ!」

 

 

「首相が私に名前を・・・ありがとうございます!!」

 

 

「・・・・・・ラウラ」

 

 

「え?」

 

 

「ラウラ、それが、私がお嬢さんに贈る名前だ。」

 

 

「ラウラ・・・・・・それが・・・・・・私の名前・・・・・・」

 

 

「よかったね!ラウラ!!」

 

 

「ああ・・・・・・うんっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元帥閣下!他の嬢ちゃん達には我々が名前をつけてあげて良いでしょうか?彼女達がそう希望しているので」

 

(コソコソコソコソゴニョゴニョゴニョゴニョ)

 

「構わんよ、但しキラキラネームは禁止な!心の傷になるぞ!!」

 

 

 

「ラウラ、いくよ?」

 

「「せーのっ!!」」

 

「?」

 

()()()()!!ありがとう!!」

 

 

「・ ・ ・ ・ ・ ・ 、ファーwwwwwww 」

 

 

「リア充爆発しろおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、1人の元帥と、後に「黒ウサギ隊

」と呼ばれる特殊部隊に所属する事となる少女達の出会いの物語は終わりを告げた。

 

 

この時「ラウラ」や「クラリッサ」と、呼ばれた少女達に()()、と呼べる人々がいることは、後々の彼女達に大きな影響を与えるのだが、それはまた別のお話し・・・・・・

 

 

 




原作からの変更点。


ラウラに親代わりとなる人物が表れる。

→作中半ば空気だったアルバン元帥が保護者に、

→黒ウサギ隊のバックに海兵隊とドイツ軍元帥が付いた。






~訂正~

作中、クラリッサの髪色を青なのに黒だと盛大に勘違いしておりました。

今は既に修正されておりますが、もしも修正前のを読んで違和感を覚えてしまっていたら、それは私のミスです、申し訳ありません。


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1人の「刑事」と1人の「貴族」


今回、薄目ですが喫煙描写がなされています。
ご注意下さい



 

 

イギリス、オルコット家邸宅

 

 

 

 

 

「・・・・・・此処がオルコット邸か……中々に大層な邸宅じゃないか」

 

 

イギリスを代表する貴族の1つ、オルコット家の邸宅前、広大な土地を有するオルコット邸の門に、1人の男がやって来ていた。

 

 

「さて・・・・・・そろそろか」

 

 

 

 

 

「失礼します、槇田 義照氏で間違いございませんね?」

 

 

「ん、一応身分証明も用意したよ、」

 

 

「必要ありません、変装かどうかは見破る事ぐらいできますので、主人が邸宅にてお待ちです、こちらへどうぞ」

 

 

屋敷の使用人につれられ、彼はオルコット邸の中へと入って行く・・・・・・

 

 

 

 

 

「・・・こーりゃまた凄いもんで」

 

 

中に入った義照を待っていたのは、凄まじい広さを誇る建物の内部であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・やっと来てくださったのですね?ずぅーっと、お待ちしておりました、義照さん」

 

 

 

「・・・初めましてですね、セシリア・オルコット嬢」

 

 

 

内部に入った直後出迎えたのは1人の少女、非常に長い金髪と碧眼であるその少女は、名をセシリア・オルコットと言った。

 

「・・・ご両親はどちらに?」

 

 

 

「部屋の奥で待って貰っていますわ、義照さんについては私一人で出迎え致したかったので・・・立ち話も何ですし、どうぞこちらへ」

 

 

セシリアに連れられ、槇田は部屋へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお!義照さん!ようこそお越しくださいました!」

 

 

「あの件はどうもありがとうございます、あの事故に巻き込まれていたらと思うと・・・」

 

 

「カレンさん、お気になさらず、こうして貴方は生きているんですから、あのときの事を引きずってもどうしようもありませんよ」

 

 

義照はセシリアによって部屋へと通された。

 

 

そこにはチャールズ夫妻が待っており、早速歓待を受けることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・どうもすいませんね、わざわざ風呂まで貸して頂くことになるとは」

 

 

「いえいえ、このくらいは、それよりも槇田さん、1つ宜しいですか?、娘が槇田さんと一人でお話ししたいそうなので」

 

 

「ほう?」

 

 

 

オルコット家からの歓待を受けた義照、風呂まで貸して貰った後、セシリアが二人きりで話がしたいとチャールズから言われ、思わずセシリアの方をみる。

 

 

「折角の娘のお願いですし、お願いできますか?」

 

 

「まぁ構いませんよ」

 

 

「ありがとうございます、ではお手数お掛けするのですけど、此方へ宜しいですか?」

 

 

「ああ、はいはい、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

槇田が再びセシリアに連れられやって来たのは書斎と思われる部屋であった。

 

 

 

「何でまたこんなところで?」

 

 

「私が槇田さんに個人的にお伺いしたいことばかりなので・・・」

 

 

そういうとセシリアは部屋の鍵を閉めおもむろに本棚を漁り初める。

 

 

「セシリアさん?」

 

 

「・・・・・・父からお話を伺った時、()()()()()()()()()()()()として、槇田さんの事が気になったんです」

 

 

「それで、槇田さんと会えた今日この日までの数年間、私は一人、槇田さんがどのようなお方かを知るため、ありといろいろな手を尽くして槇田さんの事を「刑事時代」を中心に調べたんですの」

 

 

「・・・・・・それで?」

 

 

槇田の目が急に真剣なものへと切り替わる。

 

 

「・・・・・・最初こそ、単に私の恩人がどのような人物かを知るための物だったんですが・・・・・・だんだん()()()()()が出始めてきたんですの」

 

 

「・・・・・・その様子だと、私に聞きたいのはおよそ3()()か、私の経歴において何処が疑問になったんだ?」

 

 

「どうして数を正確に!?」

 

 

「・・・・・・ただの勘だ、私も今当たるとは思わず軽く驚いているよ……」

 

 

 

セシリアは己の思惑の一端を把握されていたことに驚くが、槇田自身も、自分の勘が当たっていたことに自ら驚く。

 

「・・・・・・勘だとしたら、恐ろしい物ですわね、あっさりと正確な疑問数を当てられるとなると」

 

 

「私はこういうのあまりアテにしない方だからなぁ、あたってたらいいやぐらいの感覚で」

 

 

「・・・コホン、槇田さん、お話の続きをしても宜しいですか?」

 

 

「…ああ、済まない、本題を忘れていたねそれじゃあまぁ聞くが、私に質問したいことはなんだね?」

 

 

「1つ目は簡単です、貴方は何故、()()()()()()()()()()()()()それでもなおあの事故の時、何故列車の中に()()()()()()残ったんですか?」

 

 

「おいおい、冗談は止してくれ、単純に私はあのとき()()()()()()()()()()()だけだぞ?」

 

 

「白々しいですわよ?あの時()()()()()()()()()()()()()()()のは私も把握住みです、抱えて一緒に飛べば貴方も難を逃れられたのでは無いのですか?」

 

 

槇田はセシリアの問いに何か反論しようとした様子だったが、セシリアが今の自分と同じくらいに真剣になっているのを確認し、そのまま目を瞑って言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

「・・・理由はただ1つ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・・・・そんなところだ」

 

 

「あの時、()()()()()()()()()()()を見捨てたくないが為に()()()()()()()()()()()?・・・・・・随分無茶をなさるのですね?」

 

 

セシリアは槇田の返答に多少呆れ返る、だがすぐに顔をもとに戻し、次の質問へと移る・・・

 

 

「二つ目なのですけど・・・・・・バミューダでは何であんな馬鹿な事をしたんですの?後、凄まじい面子の顔に書いていた落書きの数々は何を理由に・・・・・・」

 

 

「・・・それは聞かないでくれー!!!」

 

 

二つ目の質問を聞いた槇田、その場で椅子から転げ落ち恥ずかしさで悶絶する。

 

 

どうやら、彼にとってバミューダで千冬達に追いかけ回されたあの日の事は、思いっきり黒歴史になっているらしい。

 

 

 

「私、あの時の生中継を見て軽く失望しかけたのですよ?私の両親を助けた恩人はこんな阿呆だったのかと・・・・・・」

 

 

「裏話をすれば、あの日はフランスのブレスト港の埠頭から始まり、ジブラルタルから飛行機でバミューダへ落ち延びるまで、ひたすら続いた追っかけとの逃走劇で、丸5日間飲まず食わず寝ずの修羅場潜った直後に等しかったからさ・・・・・・」

 

 

 

「成る程・・・・・・どうりでニコ○コ生放送でも義照さんに対しての同情的だったんですね・・・・・・」

 

 

 

 

セシリアの言葉にちらりと出ていたが、普通だったら色々と大変なことになるであろう槇田が千冬達の顔に油性ペンで落書きしたあの事件も、前日まで、しかも5日間ぶっ続けの生放送で、ブレストからはるばるジブラルタルまで追いかけられているシーンが流れ続けていたために、評判を大きく削ぐ事はなかったのである。

 

 

「あと、割りと謎にされているどうでも良いことのネタバレとして、あのときの女性陣の落書き(ズボラ13と、むらさき、う☆さ☆ぎ、と、貧乳は(ry)に関しては、最近流行りのゲーム、IS/VS(インフィニット・ストラトス/ヴァーサス・スカイ)《以後、ヴァーサス・スカイかIS/VSで表記》でのハンドルネームだな、千冬が個人専用データで、束とみとりが管理人データのだ」

 

「ああ・・・あの《一周回った神ゲー》と評判のですか・・・・・・」

 

 

さて、話がそれるが此処でヴァーサス・スカイについての軽い解説を加えよう。

 

 

 

この世界での本ゲームは、篠之瀬製作所の人員の趣味で、主に二つのテーマをベースに作成されている全世界同時オンライン型で、専用のデータカードを使用するアーケードゲームである。

 

本ゲームが神ゲーとされる由縁は、「ゲームの中なので男でもISが操縦出来る」ことと、「《IS対通常兵器をリアルに再現している》《ISが弱体化して戦場に投入されたらこうなる》を割りとリアルにプレイする事が可能できる」事にある。

 

 

・・・と言うのも、本ゲームでプレイヤーが操作できるのはISだけでなく、

 

戦車(現代から補正のかかった第二次世界大戦期のまで様々)

 

軍艦(護衛艦から大幅補正のかかった戦艦、航空母艦に潜水艦まで)

 

航空機(現代の戦闘機や補正のかかった第二次世界大戦期の戦闘機、爆撃機や、高性能CPUの兵士やプレイヤー操作の空挺戦車などを空挺投下出来る輸送機など)

 

架空兵器(スーパーロボットとかは無理だが、鋼鉄の咆哮の超兵器とか、エスコンに出てきた架空の戦闘機とかを一挙収録、神ゲーと呼ばれる由縁の1つ)

 

等々、実に数千を越える兵器数を収録し、操作可能性にしており、(ウィキペディアに載っているのは大体収録されてる、戦艦とかも艦名別にステータスが多少変化している)とまで言わせしめるほどの操作可能兵器数を誇り、更に使用兵器を自分向けにカスタマイズして専用としてデータカードに保存、登録することが出来るのである。

 

(その代わり、兵士として参戦することは不可能であり、それを考慮して行動不能やそこからの復帰に関してはファンタジー染みることとなっている。)

 

 

次点の凄いこととして、物凄い数の家庭用ゲーム機コントローラーに対応している点が挙げられる。

 

 

つまり、ゲーム○ューブコントローラーやプ○イ○テーションのコントローラーとかで本ゲームをプレイすることが可能と言うわけである。

 

 

その他、マップは(世界地図の一部分を丸々持ってきたかのような広さ)と、(このデータだけで古いゲーム機の容量全部食いそうなレベルの豊富さ)と言われたり、挙げ句の果てに一部では《ISをダシに開発されたリアル戦場シミュレーターゲーム》とまで呼ばれる始末、それがここで話題に上がった《インフィニット・ストラトス、ヴァーサス・スカイ》なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、二つ目の返答としてはそんなところかな、3つめは何だ?」

 

 

さっきの質問ですっかりと気の抜けてしまった義照、三つ目の質問が何かを聞くのだが、聞かれているセシリアはさっきよりも更に真剣な眼差しで槇田を見ていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「槇田さん、これは私の思い過ごしかも知れないのですが・・・・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「・・・・・・へ?」

 

 

セシリアが凄まじく思い詰めた表情で放った言葉は、義照を困惑させるに十分な代物であった。

 

 

「・・・いやー何、ISの登場で変化した世界を見て回るのも良いかと思ってな、政界から引き下がった訳だし、なら世界中を巡るのも有りかなと」

 

 

「・・・・・・それ、()()()()()()()()()()()

 

 

「なっ!!!」

 

 

「だってそうじゃないですか!確かにISによって世界は変化しましたが、それは()()()()()()()()()()()()()1()()()()()()()()()()

 

 

「なのになんで義照さんはアラスカ条約締結()()の、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

「…………・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

セシリアの指摘は、よほど槇田の響いたようで、一瞬、観念したかのように話をし初める。

 

 

「・・・・・・今から()()()()()を話してやるから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、理解したな?」

 

 

「なっ!それはいった」

 

 

「・・・・・・(スッ)OK?」

 

 

「・・・解りましたわ、」

 

 

義照の口調が急に悪くなる、セシリアが驚いて反論しようとするが、聞く耳持たぬと言わせんばかりに、義照はセシリアの目の前にいつの間にか竹刀を突きつけていた。

 

 

 

義照らしからぬ脅迫を受け、セシリアの混乱は一瞬加速しかけたが、義照の顔を見て引き下がることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、義照の左目は()()()()()()()()()、それ以上に、()()()()()()()()()()()()()()()顔こそが、この時の彼の精神状態を物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()・・・・・・許せないんだよ…………」

 

 

「へ?」

 

 

「・・・場所を変えよう、何処か空を見上げるのに良い場所はないか?」

 

 

「・・・でしたら此方に…………」

 

 

 

セシリアに連れられた義照がやって来たのは邸宅のバルコニーで、この時、この地域では珍しく、星の輝く夜になっていた。

 

 

槇田は到着すると、懐から何かを取り出して口にくわえた。

 

 

「……電子タバコさ、23の頃からこうして()()()()()()()()()()()時、希に使うようになったブツでな、当時は葉巻を使っていたが……コレは最近、千冬に健康を心配されて千冬の世話で束に特注してくれたモノなんだよ、ニコチンとか健康にアカンやつ徹底排除の仕様でなぁ……気ィ紛らわせる時には多分一番使えるやつじゃ無いかなぁ……何てな」

 

 

 

「義照さん、確か貴方は……」

 

 

()()()()()()は使わない質だな、()()()()()使()()()()人間は、キミを除けば、今は亡き両親と、刑事時代に対決した沢越 止くらいなもんだ、両親の時は死んだ悲しさを紛らわして、沢越の時はアレの所業に湧いた怒りを抑えるのに使ったもんだよ、ハハハハ、懐かしい」

 

 

(タバコは吸わない御方でしたよね?)と聞こうとして、セシリアは槇田に先手を取られてしまった。

 

義照は自身の過去を懐かしむ位には落ち着いたらしいが、未だに左目は血に染まったままだ。

 

 

 

「さて、話を戻そう、私が何故、世界を巡っているかだが…………簡単だ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「やはりでしたか…………でもどうして?」

 

 

セシリアが何故にどうしてと言うのかと言えば、白騎士事件の真相解明等は、ICPO、国際刑事警察機構(現実のではなく、ル○ン○世の奴を想像すればOK)がいまなお捜査し続けている事である、彼がわざわざ個人的に世界巡りに扮してまでやる必要性が無いように思えるからだ。

 

 

「確かに、ICPOに丸投げしといても良いんだが……それだと私の腹の虫が収まらんのでね、捕まえるまでのお膳立て位はしたくなると言う物だ・・・・・・それに」

 

 

「それに?」

 

 

 

 

「殆どそいつらと言う方が正しいと思うが、そいつ、あるいはそいつらのせいで、()()()()()()()()()()()()()()()()()が、()()()()()()()()()()()になってしまったからな、()()()()()()()()()()()()身としては()()()()を付けないと気が済まないんだよ」

 

 

「義照さん・・・」

 

 

セシリアは何も返すことが出来なかった。

 

 

ISは元々宇宙開発の為に産み出された代物である。

 

 

それが、白騎士事件によって兵器に仕立て上げられた経緯を考えると、彼の怒りも理解できる・・・出来てしまうからだ。

 

 

「・・・・・・そこのメイドの嬢ちゃんも、盗み聞きしたのは見逃してやるから、オルコット夫妻以外には口外しないでくれよ?相手がどう動くかわかったもんじゃない」

 

 

「・・・・・・気づかれていましたか……お客様のご厚意に感謝します。」

 

 

「チェルシー!?」

 

 

「申し訳ありませんお嬢様、様子がおかしいと感じ、後をつけさせて頂きました」

 

 

槇田に呼び掛けられ姿を表したのは、セシリアの幼馴染で、彼女専属のメイドであるチェルシー・ブランケットであり、彼女はさっきから変わっていない槇田の表情に多少取り乱しつつも、基本的には冷静な様子で彼に応対していた。

 

 

「話の秘匿に関しては、遵守させて頂きます、お嬢様の大事な客人からの信用を裏切るわけにはいきませんので」

 

 

「私も、今回の件については秘めさせて頂きますわ」

 

 

「すまないね・・・今日はもう遅いし、寝るとしますか」

 

 

「あっ・・・確かにもうこんな時間、チェルシー、悪いのですけど、義照さんを寝室まで連れていってくださいませんか?」

 

 

「了解いたしました、では義照様、此方へ」

 

 

チェルシーに寝床まで案内される義照、最後に彼はセシリアに一枚の紙を渡し、こう言った。

 

 

 

「セシリア、もしも私の事をこれ以上知りたいと言うのであれば、その電話番号にかけると良い、その電話番号で出てくる私の親友は、()()()()()()()()()()事も色々教えてくれる筈だからな、ただ、()()()()()()()()()()()

 

 

 

「解りましたわ、そして、()()()()()()()事を、私は切に願います・・・」

 

 

 

「・・・・・・そうしといてくれ」

 

 

 

 

 

(・・・・・・すまんな、流石にもう1つの目的は言えんからな、この辺で勘弁してくれ)

 

 

 

 

この後、義照は寝室に連れられ、セシリアは自分の寝床に戻ることとなる。

 

 

 

 

 

 

こうして、1人の元首相は1人の貴族の家にて、夜を明かすこととなったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、波乱が巻き起こるとも知らずに・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~続く~

 

 

 





タバコ描写は不味かったら消して修正します。


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闇払いと託された設計図



今回、義照がセシリアから設計図を託されるのですが、これに関係した今後に関する募集を、1つ後々行います。

詳しくは活動報告の更新をお待ち下さい。


 

 

 

 

 

 

義照がオルコット邸に到着した翌日、英国から離れてドイツでは、先日までの平穏が嘘だったかのように、どこもかしこも荒れに荒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・では首相、今回のデザインベイビーの件、軍や首脳陣はその少女達の両親に当たる人物には全く心当たりが無いわけですね?」

 

 

「誠に残念ながら、デザインベイビーの計画そのものが研究所とーー陸軍大将の独断であり、尚且つ陸軍大将の発言が正確であったとするならば、その見解の通りになると答えざるを得ません」

 

 

「その少女達の今後は?事件時、海兵隊が保護したと話にはありましたが・・・・・・」

 

 

「それについては、詳細をお答えすることはできません、ただ、本件の詳細を説明された人が()()()()()()()とはお伝えすることができます」

 

 

「現在IS委員会から猛抗議が来ているとの事ですが・・・・・・」

 

 

「10日前に研究所に監査を入れておいて、本件を見落としスルーしてしまっている段階で、委員会の事は当てにしない事にしています、ただ、本件が発生してしまった以上、アラスカ条約の「不当な手法によるIS適性者の確保」の条項に基づいたIS枠没収処分等の罰則は甘んじて受けるつもりですし、本件の終息後、内閣を総辞職する用意もしてあります」

 

 

「《ウォーダン・オージェ》の手術処置の内容が正しければ、此方は此方でISのハイパーセンサーに関する特許契約に反しているものでは無いのでしょうか?」

 

 

「その通りです、現在、特許の持ち主である村ノ瀬博士に連絡を取り、対応を急いでいるところです」

 

 

 

 

槇田がセシリアと話をしている頃に起こった《オージェ事件》のほぼ全容を公開し、謝罪会見に望んでいるマインラート・オーレンドルフドイツ首相、

 

 

事件の公表に伴い集ってきた記者の集団への応対にただ1人追われており、その心中は決して穏やかなものではなかった。

 

 

(大将め・・・やってくれたな、これで更に女尊男卑が加速するな・・・・・・全く、相変わらず男性に優しくない世の中だ)

 

 

オーレンドルフは今回の件で、まず最初に、現状ただでさえ良くない男性への視点が更に悪くなることを危惧していた。

 

 

(私の次が・・・まぁ、状況的にほぼ間違いなく女性になることを考えると・・・・・・残った先進国の宰相クラスの男性はハロルドの奴だけか・・・幸い、日本はMs.深那がマトモだから大丈夫だろうが・・・・・・このままだと男性の雇用や学業に非常に大きな支障が発生しかねん・・・・・・)

 

 

 

オーレンドルフは心の内で、英国首相、ハロルド・バーミンガムの事を心配した、

 

 

日本、フランス、アメリカ、ロシア、中国、オーストラリア、と言った先進国諸国の首相、あるいは大統領と言ったトップの職務は今や殆どが女性の物と化してしまった。

 

 

この事は地味に大きく、女尊男卑に悪い意味で一役買ってしまっており、現状でも男性の日常生活に支障が出ている程なのだ、このまま放置しておけばどうなるか解ったものではない。

 

 

特に、現在いまなお英国首相の座に立ち続けているハロルドの立場が更にキツくなることを考えると、とても彼が安心して首相の座を離れる事が出来る状態では無かったのである。

 

 

(先進国首脳会談とかが女性に囲まれて一人突っ立つ男性の図になるのだ、ハロルドの精神的キツさは推して知るべしである)

 

 

「さて、まだまだやることは残ってるからな、辞任するにしてもなんにしても、とりあえずやるべき事は完遂しなくてはなぁ・・・」

 

 

(ハロルド卿、暫く厳しい立場になるけど大丈夫かなぁ?)

 

オーレンドルフはマスコミに対応しつつ、将来的なハロルドの立場を心配し続ける・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・でさぁ、私だけ何でこんな首相業務ハードモードなのかなぁ?、オーレンドルフが首相辞任とか今の私へのダメージでかすぎるんだけどさぁ………………」

 

 

「ハロルド首相・・・・・・お気持ちはわかりますが、朝から一介の貴族の邸宅にやって来てヤケ食いとか止していただけませんか?」

 

 

「今日ぐらいは勘弁してくれカレンさん……にしたってこのままだとマジで先進国首脳会談とかが女だらけの中男一人で凌がなければならんようになるとか本当に地獄だなオイ……」

 

 

ちょうどそのころ、英国首相ハロルド・バーミンガムは朝早くからオルコット家にやって来ていた、ついでに自前で用意した食べ物をヤケ食いしていた。

 

 

「バーミンガム卿、お気持ちはご理解出来ますが、ヤケ食いなら別の所でも出来るじゃ無いですか」

 

 

「槇田元首相がここに来たと女王陛下より話を聞いてな、槇田と相談したいこともあるし、と思ってな」

 

 

 

「私に相談事とは何事ですかな?」

 

 

「ブーッ!!」

 

 

ハロルドは元々槇田に用事があったようだが、その槇田が後ろにいると気づいてハロルドは思わず飲んでいた紅茶を吹き出す、

 

 

「ビックリした!義照元首相いたんですか!?」

 

「来たばっかだ・・・っと、とりあえず机拭いてな?」

 

「あ、ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー数分後ー

 

 

「で、話ですが・・・・・・ってか左腕動くようになってたのな」

 

 

「まぁ、リハビリしてたらいつの間にかな、まだ世間には公表してないけど」

 

 

「やっぱり・・・・・・まぁいいや、それよりもです、あの爆破事件に関して、最近やっと捜査に進展があったんだ」

 

 

「ほう?」

 

 

ハロルドから聞かされたのは、あの鉄道爆破事件にて、新たに判明した事実の事であった。

 

 

「・・・・・・横流しにおいて、陸軍から放出されたC4が犯行に使われるまでに、1度アメリカに渡っていたことが判明した」

 

 

「はぁ?アメリカに?」

 

 

それは、槇田とオルコット夫妻の暗殺未遂にて使われた爆弾が、イギリス陸軍から何者かへと渡り、事件に使用される前に、1度米国に渡っていたことが判明した、と言うものだった。

 

「何でアメリカに?」

 

 

「わからない、ただ、普通に考えれば爆弾の横流し先として、警察の捜査を恐れて逃げるとしても、EU圏内→ロシアとかのルートの方が合理的で、普通なら爆弾を持ったままアメリカ何かに行ったら検問やらなんやらでバレて大惨事になるのが目に見えている、だが、アメリカに渡っていたことが事実として判明した以上・・・・・・」

 

 

「アメリカ国内でテロリストに取引された可能性があるのか・・・・・・痕跡追うのが途端に辛くなったな」

 

 

「それでも、引き続き捜査は続けさせますがね、まぁ伝えたかったのはこんなところです」

 

 

「すまんな、しかしこの様子だと、今度はアメリカを巡る必要があるか」

 

 

「それじゃあ私は伝えたいこと伝えたし、ヤケ食いもすんだしで長居は不要で帰路につくので」

 

 

「おう、気をつけてな」

 

 

 

 

 

 

 

短い話の後、ハロルド首相は去っていった。

 

 

「さて、私もそろそろ一旦帰路につくかぁ・・・」

 

 

「義照さん、最後に1つ宜しいでしょうか?」

 

 

「何だ?」

 

 

ハロルドが去ったあと、槇田も帰ろうとしたのだが、ここでセシリアに呼び止められる

 

 

「あの・・・義照さんは篠ノ之さんたち、JAXAの人と知り合いなんですよね?」

 

 

「知り合いもなにも、彼女の発明に援助したのは私と彼だからね、彼女に愛称呼びされてるよ?」

 

 

「でしたら・・・こちらを束さんにお渡ししてくれませんか?」

 

 

「ん?設計図?」

 

 

「英国空軍、英国宇宙局、英国海軍の三ヶ所がそれぞれ設計した第三世代インフィニット・ストラトスの設計図ですわ」

 

 

「ほほう、こんな軍機に近しい代物を私に渡すとは・・・余程束と接触したいようだな」

 

 

義照がセシリアから受け取ったのは、4つのIS設計図であり、説明によればそれぞれ、英国空軍、英国宇宙局、英国海軍、民間の4ヵ所からの物であった。

 

 

「篠ノ瀬製作所と直接アポを取ろうと首相を経由して話をつけようとしたんですけど、3年待ちとか言われたらしくて・・・・・・」

 

 

「・・・知らんのか?篠ノ瀬製作所、あそこ民間人向け、或いは専用機中心の製造メーカーだから、公的機関からの依頼製造は基本後回しなんだよ・・・・・・最近の例だと医師向けに医療機械満載したISだとか、後は適性Aあった女性の消防士個人の依頼で、その人専用の災害救助用ISの試作型を製造していたな」

 

 

「そ、そうだったんですの・・・・・・」

 

 

「まぁ私を経由するんだ、近いうちに三機とも製造されるだろうなぁ、所でこの三機どんなのよ?」

 

 

篠ノ瀬製作所の仕事を聞かされたセシリア、続け様の質問に多少戸惑いながらも説明を加える。

 

 

 

「まず空軍のですが・・・まぁはっきり言って試作機ですわね・・・・・・《ブルー・ティアーズ》と呼ばれる機体で、名前を冠した遠隔操作式兵器、ブルー・ティアーズ・システム、通常BTシステム、或いはBT兵器と言うのを有する第三世代機ですの」

 

 

「何々・・・ビット・・・!?モロにガ○ダムじゃないですかやだー!!、ってかミサイルビットとか何処のペーネロペー?」

 

 

「(ペーネロペー?)・・・・・・で、海軍設計のは第二次世界大戦時、第二次ユトランド沖海戦にて《悪魔》と称された《ウォーダン・ラインラント》氏座乗の戦艦《シャルンホルスト》を撃破し、デヴォンポート港にいまなお記念館として保存されている栄誉艦、《ウォースパイト》を模して、重武装かつ、飛行能力のほかに水上での滑走機能を搭載した第三世代のコンセプト機として開発された《ウォースパイト》ですわ、ウォースパイトは此所、オルコット家が建造費用を全額負担したことでも知られているので、完成の暁には此所で披露する予定なんですの」

 

 

「ヤバイ・・・これだけ露骨に熱が入っている・・・・・・」

 

 

「序でに言いますと、これら三機の内、一機が母に、一機が私の物になる予定ですわ」

 

 

「・・・・・・何故に?」

 

 

「各国に遅れて、第1回モンド・グロッソの後に、第二回へ向けて行われたISの適性検査で、私がA、母がSを記録したんですの、だからだと思いますわ」

 

 

「えぇ・・・・・・(困惑)、チャールズさん、貴方が萎縮してしまう理由を悟ったよ、コレはチャールズさんが弱いんじゃない、カレンさんが強すぎるんだよ・・・・・・」

 

 

設計図を見ながら交わしたセシリアとの会話で、槇田はチャールズが萎縮してしまう理由を何となく察してしまった、適性Sと言えば、それだけを形式的に比較すれば千冬と同等である。

 

 

単純な習熟度に近く、鍛えれば変動する信頼性の薄い適性ではあるが、採用条件がヤケに厳しいと非難轟々であったドイツ陸軍のIS部隊でも適性だけなら確実に通るレベルの逸材である、槇田は、セシリアにそんな恐ろしい人物の血が確かに流れていることをその場で感じとる事となった。

 

 

 

「それで、宇宙局の機体なのですが・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数分後~

 

 

 

 

「・・・成る程、熱意は解った、これを束たちに見せればいいんだな?」

 

 

「はい、評価して頂くだけでも十分ですので」

 

 

「解った、あとで渡しておくよ、それじゃあオルコット家の皆さん又、機会があれば会おう」

 

「はい・・・・・・またお会いしましょう!!」

 

「お気をつけて~」

 

「また、お会いできるのを楽しみにしてますわ」

 

「またのご来邸をお待ちしております」

 

 

設計図の説明を粗方聞いた後、オルコット家の人々に見送られ、日本への帰路の途につく義照。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・きゅぴーん!!面白いISがやって来る予感!!」

 

 

「束・・・・・・この時期にまたISの製造依頼が来る感じか?」

 

 

「そうみたいだね~、この感じだとよっしーから数機分の設計図が来る感じかな~?」

 

 

「ホントにそんな数依頼されるか?専用機は基本個人向けだからそんなに依頼来ないぞ?普通はだけど」

 

 

「でもさ~はるるんにもよさげな設計図が来るみたいだしさ~取り合えずいっくんと箒の剣道大会見てから作ろうかな~って、」

 

 

「そういや、明日一夏と箒が出る剣道の大会だっけか、束のカンの通りなら明日義照氏が設計図持ってくるらしいし、そっちも準備済ませとくか」

 

 

 

一方、日本の篠ノ瀬製作所では、槇田の襲来を予測した束によって、IS製造のための準備が着々と進められていくのであった・・・・・・

 

 






折角なのでオリジナルのISを幾つか募集します、詳しくは後々更新予定の活動報告にて


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剣道大会とIS評論、前編

ようやっと原作主人公とファースト幼馴染の登場です。

序でに色んなキャラが大集結!(予定)

そして、毎度毎度の誤字報告どうもありがとうございます!




 

日本国、とある武道館。

 

 

「此所が今回の会場か、」

 

 

「ずいぶん広いねー、いっくんや箒も此所が晴れ舞台だと考えると緊張しそう・・・」

 

 

「束、お前が緊張する事は無いだろう・・・」

 

 

「まぁ、束のコミュ障は大方直ったとはいえ、今現在でもこう言う所にくるのは緊張するものだからな」

 

 

「ちょっとちーちゃん!?」

 

 

「それにしても、会場此方であってるっけ?」

 

 

今現在、束、正晴、千冬の三人は何人かの同行者と共に、とある武道館にて束の妹、篠ノ之 箒(しののの ほうき)と、千冬の弟、織斑 一夏(おりむら いちか)の二人が出場する全国中学校剣道大会の見学にやって来ていた。

 

 

「千冬姉!こっちこっち!」

 

 

「姉さん、それに正晴さんもこんなところでなにやってるんだ?会場はこっち側だぞ」

 

 

「ああ、すまんな一夏、今向かうぞ!」

 

 

「ちょっと待ってよ箒~」

 

 

「会場はそっちか、今いくぞ!」

 

 

試合に出る準備のため、一足先に現地入りしていた一夏と箒に誘導され、彼女達は会場へと入っていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「これが会場かぁ~すごく広いなぁ・・・うぅ~緊張する~」

 

 

「姉さん……緊張しすぎだ・・・まぁ、まだ正晴さんたちと出会った頃の感覚が抜けきって無いだけだから大丈夫だとは思うが」

 

 

会場の観客席へとやって来た束達、その中、束は回りの人の多さについ緊張してしまう。

 

 

「(ギュッ)ほらほら、俺が側に居るからそんな緊張するなって、可愛らしい顔が強ばってるぞ?」

 

 

「・・・はーるーるんっ!」

 

 

「おわっ!たっ、束!?」

 

 

「試合までこのままでいい?」

 

 

「・・・はぁ、しょうがないなぁ、」

 

 

緊張している束を正晴は馴れた手つきで自分の真横へと手繰り寄せる。

 

 

束はされるがままに正晴の横に密着するが、直ぐ様横になってちゃっかりと膝枕の体勢へと入っており、そのあと交わされたやり取りは、甘える子共とそれをあやす父親のようにも見えた。

 

 

「はいはい、甘いのをご馳走さま、だ、私はそろそろ試合だからもう控え室にいくぞ」

 

 

「頑張ってね!箒!!・・・あと、いっくんはもうすぐ試合じゃないの?」

 

 

「うぉっやべぇ!?ゴメン千冬姉!急いで行かなきゃ!!」

 

 

「やれやれ、大丈夫か一夏?そんなに焦ると碌な事にならないぞ?」

 

 

「大丈夫大丈夫!それじゃあいってくる!」

 

 

「頑張れよ!一夏!!」

 

 

まもなく試合が始まるため、選手控え室へと向かう一夏と箒、

 

 

 

千冬、束、正晴の三人はそれを微笑ましく見送る・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと確か話の通りだと此方に・・・・・・あっ!いたいた!千冬さん!束さん!」

 

 

「ん?誰かと思えば、凰じゃないか、」

 

 

「ん?鈴音ちゃんも来たのか」

 

 

「正晴さんもいたんですね、いつもお世話になってます!」

 

 

「束、会場は此所であっておるのか?」

 

 

「大丈夫だよー!ほらほらお母さんもこっちこっち!」

 

 

「束・・・(ホロリ)」

 

 

「正晴、お前もちゃんといたか」

 

「此所が箒ちゃんと一夏君の試合会場なのね~」

 

「父さんに母さん!?」

 

 

箒と一夏が控え室へ向かった後、遅れてやって来たのは一夏と箒の親友で、束達が常連である中華料理屋の看板娘である中国人の凰 鈴音(ファン・リンイン)と、束の両親である篠ノ之 柳韻(しののの りゅういん)、篠ノ之 結(しののの ゆい)、そして正晴の両親である、村ノ瀬 正儀(むらのせ まさのり)、村ノ瀬 幽子(むらのせ ゆうこ)氏の五名であった。

 

 

「あら~千冬ちゃんじゃない、いつも息子が世話になってるわ~」

 

 

「幽子さん・・・此方も一夏が世話になってます」

 

 

「そこら辺は気にしちゃダメよ~、千冬ちゃんは色々と心労溜め込む子なんだから~」

 

 

「柳韻さん、一夏君と箒ちゃん・・・どこまで行けますかね?」

 

 

「今の娘と一夏君の実力なら、十分優勝は狙える、とだけは言えるな」

 

 

「成る程・・・・・・あ、試合始まりますね、」

 

五人が到着し、暫くの会話の後、箒と一夏の一回戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一回戦、結果

 

 

《箒》

 

優勝候補とかち合うも、危なげなく二本先取し勝利。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《一夏》

 

初動、開始1秒足らずで面に一撃を加え、あっさり一本、試合開始10秒足らずで二本目も先取し、勝利。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・いっくんスゴすぎない?」

 

 

「凄まじい速攻だなオイ・・・」

 

 

「私でも動きが見えなかった・・・・・・」

 

 

「千冬さんの目でも追えないって、一夏君、凄いことになっちゃってるわね・・・」

 

 

 

 

ついに全国中学校剣道大会が始まったのだが、一夏の初戦が凄まじく、開始直後に俊足で近づいて一太刀で終わらせるその速攻ぶりに、正晴達は愚か、千冬でさえ、思わず目を見張る結果になっていた。

 

 

「凄いなー、あんなスピードで一閃する事が出来る人間、私は他に一人しか知らないぞ・・・・・・」

 

 

「箒ちゃんの試合が地味に写ってしまったな・・・・・・一夏君、恐ろしいポテンシャル秘めてるんじゃ無いのか?」

 

 

「あははは・・・一夏との付き合いはそれ並と思ってたけど、あそこまで凄かったなんて・・・」

 

 

皆一様に彼の剣筋に驚いている、最初は目の錯覚かと感じていた会場の他の観客も、試合結果を見て大騒ぎである。

 

 

だが、たった二人、まるでそんなことも関係なしに一夏をずっと見続け、一言発した男がいた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、一坊には()()()()()を真似させるのが一番だったようだな~、あそこまで()()()()()()()()()()()()()優勝も夢ではないか」

 

 

「そりゃあお前、お前の剣筋コピれれば、中学の大会ぐらい余裕だろうよ、()()()1()0()()()()()()()()復活したのって()()()()()()()()()()()

 

 

「よっしー!?それに自衛隊の重造さん!!?」

 

 

「えっ?いつの間に此所に来たんですか?」

 

 

「・・・はぁ、相変わらず、風のような男だな」

 

 

束が見つけたのは、()()()()()()()()()()()()()()()義照と重造であった、

 

 

いきなり目の前に出現したも同義な状態である二人の存在に、千冬以外は全員一様に驚きの表情を見せるが、千冬だけは、彼の行動っぷりを見て、あきれ果てていた。

 

 

「義照さん!?一体いつの間に!?」

 

 

「一坊の試合開始時にはいたぞ?重造は試合終了直後に来たが」

 

 

「何で教えてくれなかったの!、突然現れたから私ビックリしちゃったよ!!」

 

 

「すまんすまん(汗)、一坊と直後にあった箒ちゃんの試合を見るのに集中しててな・・・話すのをすっかり忘れていた」

 

 

「全く・・・そうやっていつも突然現れては・・・だからな、で、用は何だ?多分束に対してだろうが」

 

 

「よく私が束に用があると解ったな?」

 

 

「お前の行動原理をある程度理解しておけばこのくらいは解る」

 

 

「え゛っ゛、ちーちゃん、よっしーが次に何処に行くとか解るの!?」

 

 

「まぁある程度は、だな・・・懐をチラチラ見てるのを鑑みるに、何処からか設計図でも貰ったのか?」

 

 

「な ぜ ば れ た し」

 

 

先程は束達が面食らっていたが、今度は義照が面食らう番であった。

 

 

正儀や柳韻達に至っては、驚愕の事実が多過ぎて、口を開けたままポカーンとしている。

 

 

 

「・・・その通りだ、取り合えず・・・あっ、一坊の次戦が始まるな、」

 

 

話をしようとした瞬間に一夏の次戦が始まる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・が、やはり二回戦目も一夏が対戦相手を一閃×2し、続いた箒もあっさり勝利して次戦へと続く。

 

 

 

 

「・・・束、英国のオルコット家からIS設計図の評価依頼だ、」

 

 

 

「・・・成る程、よっしーを中継するなんて、オルコットさんも考えたね、」

 

 

 

「成る程、槇田に直接頼み込んだか、折角だし私も評価して構わないだろうか?、こう見えて私も技術者だからね」

 

 

「構わんよ、折角だし後で一夏たちも加えて評価して見よう」

 

 

こうして、剣道会場にて、プライバシーガバガバのIS設計図評価が始まる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・後編へ続く。

 






剣道の公式戦は三本勝負であるとの指摘を受け、内容を一部修正しました。


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剣道大会とIS評論、中編



今回、登場人物過多の為、台本形式を取り入れています、悪しからず。


それと、今回からとあるゲームの要素をクロスしてゆきます、完全に露出してからタグが増えますのでご注意下さい。



それとオリISのご応募有難う御座います!

基本的にはall採用の方針ですので、応募してくださった方々は登場の機会をお待ち下さい。


それと、特に反対意見が無かったので、セシリアにはウォースパイトを託すことにしました、ブルー・ティアーズは別のところでの出番となります。




 

 

時間は少しとんで、一夏と箒が、決勝へと進んだ頃。

 

 

 

先程、評価をしようとしたところ、箒と一夏の第三試合が始まってしまったので、

 

 

「取り合えず、一夏達の試合を見終えてからにしようか」

 

 

 

 

となり、現在に至る。

 

 

 

束「・・・それにしても、いっくん、凄まじい剣筋だね」

 

 

正儀「剣筋がまるで見えん、フォームを参考に新しいISを開発したかったんだが・・・これだと参考にするのは無理だな。」

 

 

千冬「私でも見切れないんだぞ?、見えなくて当然、と言いたいな」

 

 

正晴「箒ちゃんの方もおっそろしい上達ぶりだ、篠ノ之流は基本的に二刀流を前提としているのに、竹刀一本であれだからなぁ」

 

 

結「本当に二人とも凄まじい勢いで成長しているのを肌で感じますよ」

 

 

幽子「あっという間に決勝だものね~、周りももう大騒ぎじゃない~」

 

 

 

あの後、特に試合内容に代わり映えの無いまま決勝へと進んだ箒と一夏の二人。

 

 

(代わり映えが無いと言うことは、二人ともあっさりと決勝まで勝ち続けたと言うことだ、特に一夏は一回戦で成した速攻を継続している訳である)

 

 

 

二人の試合展開のすさまじさに会場一帯がもはや収集のつけようがないほどの騒ぎとなっており、どこから話を聞き付けてきたのか、最初とは比べ物にならない数の報道陣が会場を囲むようにして決勝の舞台を待ちわびていた。

 

 

リポーター「こちら決勝の会場に来ています、ご覧下さいこの会場の様子を、破竹の勢いで決勝まで進んだ二人組の姿を一目見ようと、ものすごい数の人々が会場に押し寄せています」

 

 

 

リポーター「あっ!あちらをご覧下さい、あそこに篠ノ瀬夫妻と・・・そのご親族の方達でしょうか?その他にも海上自衛隊の重造さんの姿も見えますねぇ、揃って話の二人組の関係者なのでしょうか?」

 

 

リポーター「此処は是非とも突撃インタビューと行きたいところですが、警備員が多数張っていて行けそうにありませんね・・・あっ、間もなく決勝が始まると言うことでカメラをそちらの方に回しますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

柳韻「うーむ、ワシらのいるところを完全に囲まれたのぅ・・・・・・これでは御手洗いに行くのも困難だと言うのにのう・・・・・・」

 

 

鈴音「高名な剣道の師範である柳韻さん、ISの開発者である束さん正晴さんに槇田さんですからねぇ・・・ってかさりげに軍人としては有名な早川さんもいるから、ここら辺は注目度が凄いことになってますよ・・・・・・正直私この場にいて良いのかどうか・・・」

 

 

結「そこは大丈夫ですよ、鈴さん、友人として応援に来てるのを邪魔するなんて許されざる行為ですからね、警備の人が頑張ってくれてますからゆっくり二人の決勝を待ちましょう?」

 

 

鈴音「・・・・・・ですよね!わざわざお気遣い有難うございます!」

 

 

正晴「・・・それにしたって凄まじい報道陣の数だなぁ、只でさえ全国大会だからって大きかった報道陣の規模がこの短時間で数倍近くに膨れ上がったぞ・・・」

 

 

 

束「それだけ箒ちゃんといっくんに注目が集まってるって事だよ、・・・あれ?ちーちゃんとよっしーは?」

 

 

会場の盛り上がりの変化に目のいっていた束達は、千冬と義照がいつの間にかその場を去っていた事に今更気づいた、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏「千冬姉!?師匠!?、わざわざ此処に来てまで応援してくれるだなんて、何かすいません、ホント」

 

 

箒「む?先生と千冬さん・・・か、その様子だと、姉さん達は報道陣に囲まれた感じか?」

 

 

義照「大当たり、束達は話の途中だったからな、間に合わなくなる前に私と千冬の二人でこっそり此処に来たんだよ」

 

 

千冬「警備の人間がブロックしているが、二人のいる場所周辺は有名人が揃ってたからって騒然としててな、一歩遅れてたら此処には誰も来れなかった所だ。」

 

 

 

箒「ってか千冬さんも先生も形式上大会の部外者な訳だが・・・・・・此処に来て大丈夫なのか?」

 

 

一夏「そうそう、俺も気になってるんだよそれ、千冬姉、そこんところどうなの?」

 

 

 

千冬「弟に会いたいと言ったら通してくれた」

 

 

義照「千冬の同伴だって言い張ったら通してくれた」

 

 

 

一夏&箒「(アカン)」

 

 

 

 

束が二人が居ないことに気づいたその頃、義照と千冬の二人は選手控え室で一夏と箒に会いに行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・当然の話、本来、選手と直接の大会関係者以外控え室は立ち入り禁止である。

 

 

なのだが、いかんせん相手が世界最強と名高いブリュンヒルデと、現在は放浪者染みているとはいえ、有名な日本の元首相である。

 

 

 

相手からしたら、「下手な対応をすれば物理的にヤバイのと、社会的にヤバイのと」が揃ってやって来た訳で、あまり宜しくないのだが選手控えに通さざるを得なかった、という経緯がある。

 

 

 

 

 

 

一夏「千冬姉?」

 

 

千冬「な、なんだ一夏?」

 

 

一夏「俺、千冬姉には日頃から、あんまり周りの人に迷惑かけないでって、言ってるよね?」

 

 

千冬「ヒッ・・・・・・い・・・一夏、これはその・・・話したら普通に通してくれたのであってだな・・・」

 

 

一夏は姉が何をやらかしたのかを悟ると、とたんに真顔になって千冬に詰め寄る。

 

 

 

余程怒っているのだろう、あのブリュンヒルデが戦慄して思いっきり言い訳に走っているのだ、この場では力関係が一夏>千冬になっているのが周りにもはっきりと解るレベルである。

 

 

一夏「決勝が終わったら、後でOHANASHIしようね?千冬姉?」

 

 

千冬「待って!一夏お願いだからそれだけはやめて、やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

笑顔で一夏に宣告された千冬は、試合に赴く一夏に半泣きの状態ですがりついてまで赦しを乞うが、相手にされない、人類最強とまで言われ、女性の尊敬の対象にまでされているブリュンヒルデ、そのあまりにもダメダメな側面がこの短いやり取りに垣間見えていた。

 

 

 

箒「さて、義照先生、」

 

 

義照「ハ,ハイ」

 

 

箒「先生は昔、まだ私が一夏に出会ってすぐだった頃、《気持ちの伝え方》を教えてくれましたね?」

 

 

義照「ウ,ウン,ソウダネ…」

 

 

箒「この想いを伝えきれず、よりにもよって一夏に暴力を振るってしまっていたあの頃、見るに見かねて大人気ない事をしてまで私を修正してくれた事は、今でも感謝しています」

 

 

一夏の無慈悲な宣告により千冬がノックアウトした頃、義照もまた箒に笑顔で詰め寄られてたじたじになっていた。

 

 

箒「姉さんがISの開発者として有名になった頃も、姉さんやISの事を聞き出そうとやって来たマスコミの群れに対処するために、先生が裏から手を回してくれたお陰で、《IS開発者の妹》として知られるようになってしまった今も、こうして至極平穏に過ごせています」

 

 

淡々と話が進んで行くその風景は、みっともない姿を晒したブリュンヒルデと対比すると非常にシュールなものである。

 

 

義照も箒から溢れる威圧感に押し負け完全に身動きができてない。

 

 

箒「義照さんがこれだけの事をしてくれたお陰で、私は一夏にそれまでの行いをきちんと謝罪出来たし、この恋心を伝えきることが出来ました、お陰さまで今では一夏とは千冬さんと私の家族公認の()()()になるまでに至っています、正直、先生から受けた恩は、それこそどう頑張っても返しきれないのでは、と思ってしまうほどです。」

 

 

義照「ダッタラ,スコシデモソノオンヲカエスカンジデコンカイノコトハミノガシテ……」

 

 

 

箒「だがそれとこれとは別です、今回の件は母さんと幽子さんに報告しておきます、神妙に二人からの折檻をお待ち下さい、あ、序でに重造さんにもお話ししときますので、」

 

義照「ヤメテー!ユルシテー!」

 

 

一夏と同じように無慈悲に宣告した後試合のため控え室を後にする箒と、千冬と同じように顔を真っ青にした状態で箒にすがり付くが、同じく相手にされない。

 

 

義照「お願いだからその二人からの折檻は許してェー!」

 

 

 

箒「くどいっ!!」(ゲシッ)

 

 

義照「アバーッ!」

 

 

なおもすがりつく義照を払って試合に赴く箒、二人が出た後の控え室には、クッソ情けない姿を晒しながら無様に横たわるブリュンヒルデと元首相が残り、一連の光景を目撃していた運営側の人々は、しばらくの間、それを見なかったことにするのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正晴「・・・んで、現在この有り様と言うわけか、なんと言う自業自得……あ、二人とも優勝おめでとう、やはり最後も凄いものだったよ」

 

 

箒「有難うございます、あの二人はまぁそう言う訳で・・・まぁ仕方無いよね、という事で」

 

 

束「ちーちゃんによっしー、どこにもいないと思ったらそんなことやってたんだね・・・まぁ弁護しようが無いかな~」

 

 

鈴音「アレ?話を聞く限り千冬さんは一夏とOHANASHIするのがお仕置きだと思ってたんだけど何で義照さんの折檻に巻き込まれてるの?」

 

 

一夏「流石にココでOHANASHIは俺には恥ずかしいし、家に帰ってからじゃタイミング的に遅いしさ、OHANASHI免除の代わりに折檻を受けてもらうことにしたんだ」

 

 

鈴音「なるほどね、あ、遅れたけど一夏、箒、優勝おめでとう!二人なら優勝出来るって信じてたわよ!」

 

 

一夏「サンキュー鈴音、これで何とか目標に一歩近づけたよ」

 

 

箒「私からもありがとう、やっぱり親友に祝福されるのは良いものだな」

 

 

鈴音「あ、そうそう、五反田君たちに見せる用のビデオもバッチリとっておいたよ!」

 

 

柳韻「よし!、それじゃあ後で観賞会と行こうかのう!・・・・・・にしても、あっちの二人は大丈夫かのう?正直心配なんじゃが・・・」

 

 

 

正儀「結さーん、幽子ー場所が場所だから手加減してやれよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結「良いですか御二人とも!貴殿方は私的には兎も角、公的にはブリュンヒルデと元首相と言う凄まじい肩書きがあるんです!!貴殿方にそのつもりがなくても、無理を通そうとするとその肩書きが脅迫材料になってしまいかねないんですよ!!ってかこの事は前の時にも話しましたよね!?」

 

 

 

幽子「千冬ちゃんは弟君に会いたいのはわかるけど、だからと言ってやっちゃいけないことをする理由にはならないわよね~?義照さんも二人の成長を間近で見たいのは分かるけど、仮にも元首相ともあろうものがあの行為は流石に頂けないわね~」

 

 

 

千冬&義照「ハイ……返す言葉も御座いません・・・」

 

 

 

 

 

 

 

あの後の決勝戦にて一夏と箒が見事優勝を飾り、無事に大会は閉会したわけなのだが、大会後、観客席の片隅では篠ノ之、村ノ瀬両夫人による千冬、義照への折檻が衆目を憚らずに始まっていた。

 

 

 

リポーター「え~あの~重造さん、あの光景は一体・・・?映っている光景をそのまま表すのならブリュンヒルデと槇田元首相が説教されている訳なのですが・・・・・・」

 

 

 

重造「まんまの光景だな、さっき圧倒的な強さで大会優勝した男女がいたろ?あいつらその子達が気になったからって揃って大会決勝直前に控え室に凸したらしくてな、今、篠ノ之剣道9段の奥さんと、仲の良い正晴元JAXA理事長の母の二人に折檻食らっとるのよ、あの二人折檻は容赦ないからね、さすがの元首相とブリュンヒルデも形無しと言った所か、」

 

 

リポーター「Oh……」

 

 

 

 

 

 

 

 

重造に説明を受けたリポーターも思わず絶句である、そんな中、一夏達の話題は束が持っている多数の書類に話が移っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴音「何か凄いことになっちゃってるわね」

 

 

箒「千冬さんは確かモンド・グロッソが間近に控えているのだろう?大丈夫なのか、一夏?」

 

 

一夏「大丈夫、姉さん、ああ見えて立ち直りは早い部類だから、大会当日までには復活してるよ、それよりも束さん、その書類なんです?」

 

 

 

束「ああコレ?いくつかの国のISの設計図と仕様書だね、イギリスだとかフランスだとか、意外なところだとトルコからもISの評価を頼まれててね、さっきよっしーから貰ったのも含めて纏めて評価しちゃおうと思ったんだ」

 

 

正晴「なんなら一夏君達も見るかい?、外部に口止め前提で評価を手伝ってもらう可能性については事前に各国に伝えてあるからね、」

 

 

鈴音「良いんですか?結構機密的な話の匂いが・・・・・・」

 

 

束「ダイジョーブダイジョーブ!!そこら辺はどうとでもなるからね、三人ともヴァーサス・スカイのネームドプレイヤーだから誤魔化しが効くし」

 

 

箒「大丈夫なのかなぁ?まぁ、私もISの設計図は気になるけど」

 

 

柳韻「と、すればそろそろ退散の頃合いじゃな、結、そろそろ終いにしてあげなさい」

 

 

正儀「幽子~此方も退散するぞ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

結「・・・今回はこのくらいにしておきますが、次は今回出来なかった分も含めて説教致しますので、二人とも覚悟しといてくださいね?」

 

 

 

 

幽子「そう言う事だから、以降気を付けるのよ~?」

 

 

 

義照&千冬「はい・・・・・・」

 

 

いい加減遅くなるので早急に帰路の途につく束達、その帰路は、折檻時に正座させられていた千冬と義照の足がしびれて余りに歩きが遅かったため、結局、篠ノ瀬研究所から行信とみとり、海自から重造の部下の車で迎えに来てもらうこととなったのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わってドイツの某所

 

 

此処では、幾つものトラックによってとある物が何処かしらへと運び込まれていた・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

???1「・・・・・・しかし、こんなのが効果あるのかねぇ?上は本当にこんなのを使うつもりなのかい?」

 

 

???2「こんなもの扱いするにはスゴ過ぎる物だけどね、ISより先に世間に認められていたら、今ごろ世界はこいつとISで完全に住み分けされてただろうレベルだし・・・・・・それにしても、《誰にも知られぬ神才》か、成る程()()()が超絶骨董品だと知れば上もそんな評価をするものなのね」

 

 

???1「んで?モンド・グロッソの時にこいつらを暴れさせた後はどうするんだい?ネオナチ如きに怪しい行動してるのバレたからって、ブリュンヒルデの弟を誘拐するのは止めにしたんだろう?」

 

 

 

???2「上はこう言ってたよ、《人形都市を探せ》ってさ」

 

 

 

???1「人形都市?なんだいそれは?」

 

 

 

???2「誰にも知られぬ所にたどり着いた神才が、そこで己の技術の全てを出し尽くして産み出した《生きている都市》らしいよ?何でも彼の残した記録が正しいんならそこには《人形の王様》がいるんだってさ」

 

 

 

 

???1「はは~ん、上はそこを制圧してより高性能なコイツらを自分のものにしたいわけだ」

 

 

???2「ま、自律してるらしいけど、所詮人形だからねぇ、ISが群になればどうとでもなるから、戦力強化には丁度良いってわけよ何れにせよ、コイツらは数十年モノの骨董品だから、ソイツら《王》つったって大したもんじゃないでしょ」

 

 

???1「そりゃそうね、んじゃあまあ、せいぜいコイツらには暴れ尽くして貰いますかっと、モンド・グロッソの会場が火の海になる姿が楽しみだねぇ・・・フフフフフフ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余りに不穏な会話をする二人の人物、そして二人が率いる幾つものトラックの中には、何やら緑色のデカいロボットみたいなのの足やら腕やら、さらには青くて小さい魚みたいな機械までもが、ひっそりと横たわっていたのである・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~続く~







最後の何かの元ネタがわかった人は某CMが脳内再生された筈、







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剣道大会とIS評論、後編その1



今回は後々出てくる予定のISの紹介回です。

紹介が長くなるので、後編なのに二つに分離しました。


~所変わって篠ノ瀬製作所~束達はこの世界のISを評価するようです~

 

 

 

 

 

 

正晴「・・・という訳で始まりました第1回インフィニット・ストラトス大評論会!この企画は、今の世界にて多数製作されている新しいIS、それらを設計段階の代物含めて纏めて評価しちゃおうと言う企画だー!」

 

 

束「司会は私、篠ノ之束と、夫の村ノ瀬正晴が執り行っちゃうぞ~!」

 

 

義照「(テンション高いな~)・・・えー、今回幾つものISを評価するのは此方の方々です、重造、よろしく頼む」

 

 

重造「はいはい、それじゃあ紹介しますよっと」

 

 

重造「今回、数々のIS評価を行うのは、世界初のIS《白騎士》製作の中枢メンバーである篠ノ瀬製作所の全職員と、元日本首相、槇田義照、現海上自衛隊、自衛艦隊の司令官である私、早川重造、千冬さんの弟の一夏君、束さんの妹の箒ちゃん、二人の親友の鈴音ちゃん、あと正晴博士の父親である村ノ瀬正儀技師です。」

 

 

千冬「柳韻さん達はどうしたんだ?」

 

 

重造「束さん家で晩飯の料理作ってる」

 

(現在夕方)

 

千冬「成る程・・・・・・」

 

 

束「それじゃま張り切っていってみよー!」

 

 

みとり「おー!!」

 

 

行信(大丈夫かなぁ・・・?)

 

 

大会が終わり、帰宅がてらにIS製作の最前線である篠ノ瀬製作所で評価をやることとなった束達、何人かがハイテンションになりながら評価はいよいよ始まる。

 

 

 

 

《名称》打鉄(うちがね)

 

 

《分類》多用途機、汎用機、量産機

 

 

《製造元》倉持技研(但し、設計全般は正晴の父でフリーの技術屋である村ノ瀬 正儀博士が全て担っている)

 

 

 

《世代》第二世代機

 

 

 

《特徴》非常に多彩な装備のパッケージシステム、純日本産、装甲重視型

 

 

 

《武装》

 

(標準装備)

 

近接用ブレード「葵(あおい)」

 

とアサルトライフル「焔備(ほむらび)」

 

(その他)

 

災害時救助用パッケージ「命鉄」、遠距離戦闘用パッケージ「撃鉄」、被災地食事支援用パッケージ「糧鉄」など計25種類の兵装パッケージに対応。

 

 

 

《解説》

 

 

日本がJAXAから提供された白騎士の予備パーツとデータを元に試作型IS《零鉄》を間に挟み込んで開発された純国産のインフィニット・ストラトス

 

 

打鉄と言う機体名は、白騎士が固有装備として有し、白騎士事件の際に弾道ミサイル迎撃に活躍したレールガン「打鉄(うちてつ、と読む、紛らわしいので注意)」に因む。

 

 

当初日本はISを宇宙開発用と割り切っていた事から、それ以外の用途でのIS開発に難色を示していたのが、ISの能力を間近に見た海上自衛隊が、

 

 

「非常に不本意ながら、ISの戦争兵器としてのポテンシャルは凄まじいもので、既存の戦力では対抗不可能と考えられる」

 

 

「敵にISが出現した場合、既存の兵力では迎撃するのは困難を極める、そして、本質的に宇宙開発用である白騎士に本土防衛を託すわけにもいかない」

 

 

などなど理由をかこつけて軍用ISの開発、配備を強く要請、当時JAXAを除けばISの研究が一番進んでいて、試しにと技術研究の過程としてIS製作を行っていた倉持技研に開発を依頼し、これを受けた倉持技研側が多忙な正晴博士の代理として招聘した正晴博士の父、正儀博士に基礎設計を丸投げした結果産み出されたインフィニット・ストラトスである。

 

 

機体防御力の向上を目的とし、両肩部に大型の楯を一枚ずつ計二枚装備、装甲マシマシにした防御型の機体で、標準装備は近接用の刀とアサルトライフルのみと言う超絶シンプルなものに仕上がっている。

 

 

 

 

・・・が、本機の真骨頂は、他の第二世代の機体と比べるとかなり小柄で機体操作が非常に楽な点と、換装可能な装備のパッケージ種類数が非常に多く、災害時や軍事施設の警備任務、逃走する犯罪者の捕獲任務にクマ等の害獣駆除等々、ありとあらゆる状況に対応可能な点に存在する。

 

 

現在、自衛隊は配備ISの凡そ7割が本機であり、なんと、少数ながら輸出仕様の物が練習機としてトルコとドイツ、アメリカ等に輸出までされ、トルコに至ってはライセンス生産まで行われている。

 

 

裏話として、元々は機動特化にしようとしたが、その仕様で話が進んでいた頃、NATOの軍事演習にて、イタリア製で一足早く就役し、演習に参加していた機動特化のISである「テンペスタ」全15機が、独国のアルバン・ラインラント元帥の発案によって急造されたハイパーセンサー搭載の改修型ゲパルト対空戦車3輛にまさかの完敗を喫すると言う大事件が発生し、この影響で機動特化にする案がボシャったと言う話がある。

 

 

 

 

さりげない話だが、アーケードゲーム「インフィニット・ストラトス・ヴァーサス・スカイ」においての箒と一夏の愛機でもある。

 

 

 

 

《参加者からの評価》

 

 

 

束「純粋に凄い、って言う機体だよね、何でもかんでも出来るようになってるって言う、操作もしやすいから訓練機にぴったりって言う」

 

 

正晴「そうか?俺はコレ見たとき防衛省が戦闘用のIS開発する気殆ど無いのを察したぞ?」

 

 

一夏「えっ?標準装備からしてバリバリの戦闘用ですよねコレ?」

 

 

正晴「本機の最大のウリは装備のパッケージ化による多用途化だ、だが其を逆にみれば、打鉄の本体と言えるのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

一夏「あっ・・・・・・成る程・・・」

 

 

 

正晴「パッケージの方を本体として考えるのならば、こいつが換装可能な装備パッケージの実に8割が戦闘を想定してない非武装パッケージだ、あんまり言いたくは無いが、コイツの戦闘能力は運用用途を考えるとオマケなのだろう」

 

 

重造(ギクッ)←本機開発の要求項目作成に関係してる人

 

 

正儀(バレたか・・・まぁ天ヶ瀬首相も余りISに戦闘力求めてるタイプじゃないからなぁ・・・序でに追加パッケージの種類を作りすぎたのと、あまりの多用途仕様のせいで第二世代量産機ダントツの製造費用開発費用で防衛予算を圧迫してるし、今のところ日本だと倉持しか製造してないから全体の需要と比べて供給ラインが圧倒的に足りてないし・・・・・・)

 

鈴音「何か重造さんと正儀さんが固まってますし、次いきません?」

 

 

 

 

 

 

《名称》轟天(ごうてん)

 

《分類》専用機、軍用機、試作機

 

《製造元》防衛装備庁の艦艇装備研究所、海上自衛隊の一部

 

《搭乗者》南丞 純香

 

《世代》第3世代テストヘッド

 

《特徴》超絶近接特化仕様、ホバー移動、ドリル、超機動、重装甲型、水中航行機能有

 

《武装》

 

 

 

右腕部武装付きドリルユニット「荒覇吐」

 

 

左腕部サーキュラソー搭載ユニット「緑神」

 

 

後部、脚部加速用超大型ロケットブースター四基

 

 

腰部50連装ロケット砲×2

 

 

《解説》

 

 

防衛装備庁の艦艇装備研究所が、来るべき第1回モンド・グロッソに向けて、「打倒!千冬+白騎士!」を目標に海上自衛隊と防衛庁の装備開発研究所が、当時完成したばかりの「打鉄」や、白騎士事件後に提供された「白騎士」等のデータ等を活用し、己の持ち合わせる全てを出し尽くして完成した、技術者達の血と汗と涙の結晶といっても良い世界初の第三世代機。

 

(篠ノ瀬製作所、国に最初の第三世代機製造をかっさらわれる)

 

 

ロケットブースターと本体の方向転換スラスター、右腕部のドリルによって、超高速で突撃してドリルで一撃必殺すると言う端から見れば超絶リスキーな戦法を主戦法とする近接特化機体である。

 

 

右腕にある三連装荷電粒子砲二基を有する上部構造物と、専用の砲塔に納められた魚雷発射管と40mm連装ガトリング砲を三基とを有する下部構造物と、先端についている超強力なドリルとの3つで構成される武装ユニット《荒覇吐》や、予備で内蔵されてる二つを含めた四つの回転ソーを有し、コレで切り付けたり、ソーを飛ばしたりと、凄まじく物騒な攻撃をしてくる左腕部の「緑神」が目につくが、本機の恐ろしいところは先述したロケットブースターによる超高速での「右ストレートでぶっ飛ばす」戦法であり、一番遅い海中でさえ、本気だとノット換算で実に180ノットのスピードで強力なドリルが迫ってくるのだからたまったものではない。

 

 

腰部の噴進砲は、よーするにロケランな為に精度はお察しなのだが、威力はあるので牽制に使われる。

 

 

本機を駆るのは海上自衛隊の南丞 純香海将であり、本機を駆って出場した第1回モンド・グロッソでは、その圧倒的戦闘能力と彼女の非常に高い戦闘センスとがマッチし、モンド・グロッソのトーナメント戦では他の代表を次々と撃破して、準決勝で千冬と相対、撃破寸前にまで追い詰めるも一歩及ばず敗退した。

 

 

 

本機は本来他の人物も搭乗可能な代物なのだが、余りにもピーキーな機体の仕様と、純香本人が非常に気に入っている点から、千冬の白騎士と同じく実質的な彼女専用機と化している。

 

 

待機形態は純香の薬指に嵌められている指輪、右、左のどっちにあるかはその時々で、どうあがいても彼女の元を離れようしない。

 

 

事実、彼女がモンド・グロッソの後に統合幕僚長の任期満了で自衛隊を退官するから回収する、と言う時も彼女の元から離れず、無理矢理はずそうと政府側がありとあらゆる手を弄しても彼女から離れなかった。

 

 

結局は政府側が根負けし、純香が統合幕僚長としてはかなり若年での退官である事を利用して、IS運用データ採取する部隊を云々かんぬんで再度彼女に海自に所属してもらう事で決着したのは有名な話。

 

 

(尚、機体の基礎設計は重造が担当しているのだが、一連の話は重造と純香が恋仲であるとの情報から、その事が関係しているのではと推測する者もいる。)

 

 

 

 

《参加者からの評価》

 

 

正晴「米国も真っ青の圧倒的なパワープレイを基本とする機体だな、モンド・グロッソの国家代表決めの時、千冬の暮桜がシード入りで、決定戦に出場してないのを良いことに大暴れしたことで有名だ」

 

 

束「代表決定戦、モンド・グロッソ共々、ちーちゃんと相対するまで対戦相手を蹂躙してきた規格外クラスだからねー、純香さんがデフォルトでちーちゃんと同じレベルのIS適正持ってたのも影響しているのかなぁ?」

 

 

千冬「さぁな、だがモンド・グロッソの時は決勝で戦ったアリーシャと殆ど変わらない強敵だった、それこそ、《暮桜》の《零落白夜》が無ければ・・・モンド・グロッソの開催があと少し遅れていたら・・・恐らく確実に負けていただろう程にはな」

 

 

一夏「千冬姉をしてそう評価するものなの!?」

 

 

重造「暮桜や、モンド・グロッソファイナリストのテンペスタは単一仕様能力(その機体専用の能力、固有スキルみたいなもん)を有し、また使用していたが、轟天は今もそういったのが発現してないからなぁ、オマケに言えば、コイツの完成モンド・グロッソ直前でぶっつけ本番の運用だったし・・・・・・」

 

 

 

鈴音「えぇ・・・・・・そうだとしたら流石に強すぎない?」

 

 

束「ちーちゃんの暮桜は武器が刀一本だけだし、相性の問題もあるからねー、まぁでも、次もちーちゃんならいけると思うよ?」

 

 

 

重造「まぁ今回の代表決定戦もまたアイツがドリルで他の候補生ねじ伏せたからなぁ、アリーシャもまた出場すると言うし、決勝が何か4機によるバトルロイヤルになるとかあるからおもしろい試合が期待できそうではあるな」

 

 

千冬「そうか・・・上手く勝ち進めば決勝の4人の内3人は私とアリーシャ、純香が埋めるのか・・・フフフフ、今から決勝が楽しみだ」

 

 

みとり「珍しくちふーがやる気だねぇ!よし!折角だし後で暮桜の調整をもう一度やっておこう、念押しは多いに越したとはないからね」

 

 

 

行信「さて・・・・次いってみよう!」

 

 

 

 

 

《名称》ウォースパイト

 

 

《分類》専用機

 

 

《製造元》イギリス、デヴォンポート海軍工廠及び

 

 

《搭乗者》セシリア・オルコット(予定)

 

 

《世代》第3世代機

 

 

《特徴》英国紳士特有の無茶な要求仕様、この世界での「10代目ウォースパイト」、英国海軍鳴り物入りの機体、装甲重視型、海上航行機能有

 

 

《武装》

 

意思連動型弾幕展開システム、「ドレッドノート」

 

 

システム連動型連装大口径主砲4基8門(4.5インチ 55口径 マーク 8 艦砲の魔改造品 )

 

 

システム連動型弾幕展開連装小型複合種機銃群「ポンポン砲」多数

 

 

システム連動型近接防御用火炎放射機「ザ・シング」4基

 

 

銃剣付き大型対艦ライフル銃「フューリアス」

 

 

水中魚雷発射管型多目的ミサイル発射装置「ロドネイ」

 

 

近接戦闘用大型トマホーク

 

 

 

 

《解説》

 

ISシェアで覇権を握ろうとしたイギリスが自国産のIS「メールシュトローム」の大失敗と、先に開発された第三世代試験機、「ブルー・ティアーズ」の数少ない運用データを糧に開発中の第3世代IS。

 

 

英国は白騎士事件時の対応遅れが目立ったことでアラスカ条約にて軍用ISの保有を禁止されたのだが、ハロルドが「BTシステムの派生であるドレッドノートの運用試験機だからセーフ」と言い張り開発を続投させている。

 

 

先に開発され、試験機としての任務に就いている「ブルー・ティアーズ」のBTシステムのデータを元に、「軍用枠云々は何とかするから、BTシステムとは別の何かで新しいガチの第三世代機作って」と英国首相、ハロルド・バーミンガムに無茶振りされ、これを海軍によるIS売り込みのチャンス、と捉えたロイヤルネイビーの主導で開発がスタートした。

 

 

 

まず、あれこれ考えた末に、BTシステムに使われている「イメージインターフェースによる武装操作能力」を、使いこなせば強力だが、根本的に扱いづらい遠隔操作兵器の操作ではなく、単純なISの火器管制に転用することを発想、それを元手に開発したのがこの意思連動型武装運用システム「ドレッドノート」である。

 

 

開発が完了したのでさぁどんなのに載せるべきかと考えていた頃、ここでハロルドから二度目にして最大級の無茶振りが降りかかって来たのである。

 

 

「おっ、いいもんあるじゃーん、じゃあコレ使って名誉4艦(鬼畜戦艦シャルンホルスト級撃沈に貢献した戦艦ウォースパイト、ヴァンガード、レナウン、リシュリューの四隻、どれも記念艦として保存中)のどれかの再現を今回の第三世代機計画としてお願いね(意訳)」

 

 

結果、有無を言わさず軍艦型のISとしての開発が決定付けられ、海軍内でリシュリュー以外(仏戦艦だから)のどれをベースにするか散々に揉めた結果ウォースパイトをベースに、ハロルド首相の鳴り物入りで開発されているのが本ISである。

 

 

(どことなく武装とその名称に英国面を感じるのは恐らく勘違いではないだろう)

 

 

本機はまだ開発段階のため、武装の解説は不可、ご了承下さい。

 

 

 

《参加者からの評価》

 

 

鈴音「コレが束さん達に評価を依頼された機体の1つですか、こっちは随分と射撃戦に偏ってますね」

 

 

正晴「軍艦を発展させる感じなのならこのコンセプトで正しいけど火炎放射機って・・・」

 

 

 

みとり「あと何でか武装名称が英国面まみれだよ?何でこんなネーミングにしたんだろ?」

 

 

行信「何でや!ロドネイはビスマルク狩りで活躍したやろ!」

 

 

みとり「なおその後、マッチング的には更なる格下のシャルンホルストに一方的にボコボコにされた模様」

 

 

正儀「武装にトマホークは予想外だったな、正直近接武器としては英国的な意味でレイピアを持ってくるかと思ったんだが・・・」

 

 

束「うーん、英国の機体の割には私のイメージと比べて何か足りない気がするんだけどな~まっ、いいっか、取り合えず良さげなスペックしてるし、完成するのを楽しみにしておこうっと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正儀「取り合えずはこんなところか?」

 

 

 

正晴「まぁあと二つほどあるが、それは軽く休憩してからでいいだろ」

 

 

 

束「って言うか話に全然参加してないと思ったらまたよっしーがいないんだけど」

 

 

重造「アイツなら回復した後、邪魔しちゃ悪いからと先に帰ったぞ?」

 

 

千冬「・・・またか、開発の頃から相変わらず何時の間に現れてはあっという間に去っていくな、流石にもう慣れてしまったぞ」

 

 

 

一夏「まぁ・・・それなら仕方ないか、じゃあ休憩挟んだら続きで、」

 

 

箒「だな、後の二つはどんな機体なんだろうか?」

 

 

鈴音「面白い機体があるといいんだけどね、まっ、取り合えず休憩挟んじゃおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして残りの評価の間に休憩に入る評価社達、そんな一方、製作所近くの小さな公園には、義照がただ一人、ケータイで会話をしながら衝撃の会話を耳にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それは本当か?アルバン元帥」

 

 

()()()()()()()信用出来る所からの情報だ、間違いない、何処のアホかは解らんが、何者かが今度のモンド・グロッソの時に、ブリュンヒルデの弟・・・一夏君を拐おうと()()()()ようだ」

 

 

この時、彼はアルバン元帥から何者かがモンド・グロッソの時に一夏を誘拐しようと言う計画を準備していたらしいとの話がやって来たのだ。

 

 

 

「・・・決勝戦の妨害か?だが、気づかれるなりなんなりしたら意味がないだろう?」

 

 

「まぁ・・・ブリュンヒルデにボコボコにされ、ウチに引き渡されて終わりだな・・・いや、待てよ・・・・・・」

 

 

その場で考えられた誘拐の理由に納得いかずにいた義照だったが、ここでアルバンが何かに気づき、口を開く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・もしかするとだが、前回大会のファイナリスト、アリーシャ・ジョゼスターフに対する妨害かもしれん」

 

 

「・・・なんだって!?」

 

 

 

元帥の口から発せられた「推測」は彼を驚かせるには十分なものだったのである。

 

 

 

 

 

・・・・・・その2へ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 







ウォースパイトを見た束さんが「イメージと比べて足りない物」が何なのかを当てられたらたぶん凄いです。


一応、ヒントは出すと即バレ必死なので出しません、とだけ




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剣道大会とIS評論、後編その2


前回の続きです、今回、前の活動報告で応募頂いたISの採用が決定しましたので、その話を盛り込ませて頂きました。

次話が長くなるのが見えているので、次話は更なる分割数になると思います。


どうでも良いことですが、作中での疑問点等は感想等にていつでも募集してる(はっきりと回答出来るとは言っていない)ので、何か気になる点がありましたらどうぞ。





 

 

 

束「それじゃーま休憩も終わったし次いってみよー!」

 

 

正晴「次は・・・・・・ああ、こいつか・・・・・・」

 

 

 

 

箒「?、どんな機体だ?正晴さんが何か達観したような表情をするのは珍しいから気になるぞ・・・」

 

 

正晴「まぁ・・・なんだ、凄いISだとは言っておこう」

 

 

 

 

ひとまずの休憩を終わらせ評価を再開する束達、次に評価する機体をみた正晴の表情を珍しがる箒の姿がそこにはあった。

 

 

 

そして、正晴を達観したような顔にした異色のISの評価が始まる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《名称》ティラノプテルス(活動報告に応募されたIS、ティラノプテルス・ホンネイにて指摘されている量産機の存在から、のほほんさん登場まで応募してくださったホンネイの方は出せないので代わりに表記)

 

 

《分類》量産機

 

《製造元》レイヴン・インダストリー社(トルコ企業)

 

《世代》第二世代

 

《特徴》産業用等の民間技術を軍事転用したIS

 

《武装》対IS用空間障壁『アパトペルタ』(「惑わす盾」の意)

    全方位攻撃サラウンドスピーカー『ディノプス』(「恐ろしげな顔」の意)

    腕部一体型ビームキャノン『タルボグナトゥス』(「警告する顎」の意)

    対IS用大型チェーンソー『バリオドン』(「重々しい歯」の意)

    拡張現実装置『プラティオフタルムス』(「広い眼」の意)

 

《解説》

 

近年、各国が活発に独自のIS開発を行っていく中、政治的に対立の深く、最近経済が奇跡のV字回復を果たした隣国ギリシャや、長年の宿敵ロシアが自国産のIS開発に成功したとの報を受け、自国産のISを持ってないことに危機感を抱いたトルコが、国内に存在する複数の民間企業に目を付け、そこで「ISが使うことを想定していた」技術の賜物を買収、改造し、開発途中だったISに纏めて取り付けたもの。当初はガラクタの寄せ集めだと笑われたものの、意外にもテスト段階から良好な性能を発揮し、殆ど仕様変更を経ることなく量産が決定した異色のIS。

 

 

紫と黄緑という補色を使ったどぎつい色彩、ありとあらゆる所から使えそうなものを継ぎはぎして産み出された経緯、ただ唯一、日本がライセンス生産を行っている海外製ISである事などから色々と注目されている最近話題のISである。

 

 

 

(日本でライセンス生産を行っているのは能登重工と言う企業なのだが、この企業、日本国内にある《暗部》と大きく関わりを有しているらしいとその筋では有名な企業で、本機のライセンス生産も「とある出来事」で政府関係者、特に槇田元首相、天ヶ瀬現首相と《暗部》との関係が急速に大きく悪化したらしい事が遠因だとも言われている)

 

日本国内では配備機の2割が本機なのだが、実は自衛隊内部では本機を本格的に実戦配備するか、基本的に後方支援に回すかで地味に揉めており、また主力機としては汎用性が非常に高い「打鉄」が存在してることから、本機を不要と考える自衛隊幹部も多少は居て、本機の運用体制がまだ未確定であると言う問題点を指摘されている。

 

 

武装解説

 

 

・対IS用空間障壁『アパトペルタ』

 

 爆発物処理に使う防爆スーツの代わりのシールドとして開発されていたもの。

 

「出力を向上させればミサイル攻撃等に対する防御装置として非常に有用である」とされ本機に搭載されたのだが、ISに搭載する際、エネルギー配分の関係で逆に出力が低下してしまっている、その為現状では攻撃の余波を防ぐ程度の効果しか期待されていないが、工作任務等には運用可能であるし、後述するタルボグナトゥスとの併用による運用法があるため、そのままにされている。

 

 

 

・全方位攻撃サラウンドスピーカー『ディノプス』

 

 反響定位及び収束音波による物体の破砕用として開発されていたもの。翼型の非固定浮遊部位全体が巨大なスピーカーとして機能し、どんな方向にも音波(衝撃波)を発射、対象を共振により疲労破壊させることができる。

 

 

普通のアンプとしても役立つ模様であり、実は最近、篠ノ瀬製作所が本武装に関する使用、改造権利をわざわざトルコ政府と交渉してまで購入した数少ない武装の一つである。

 

 

現在、篠ノ瀬製作所によって本武装を超高性能音楽スピーカーに魔改造した物などを搭載した「音楽演奏用IS」複数機がとある日本の超人気音楽ユニットとそのグループユニット向けに開発、引き渡しが行われているとのこと。

 

 

 

・腕部一体型ビームキャノン『タルボグナトゥス』

 

 唯一始めから軍事目的で作られた武装。

 

般的なISと比して異様に長い腕は、上腕の三分の二近くまで二つに分割、鋏状に変形し、内蔵されたビームキャノンを発射可能になる。またアパトペルタと併用すれば、腕形態のまま掌部分にビームを出力、それを特定領域内に閉じ込め続けることでビームサーベルを形成できる。

 

(何となくZZガンダムのハンマ・ハンマを思い浮かべたのは作者だけだろうか?)

 

 

・対IS用大型チェーンソー『バリオドン』

 

 森林伐採用のチェーンソーとして開発されていたもの。

 

軍事用に改造された際、アームで繋がった後背部の箱型の鞘の下部にバーナーが追加されている。それぞれが高周波振動する刃をバーナーで加熱、対象を切削・溶断する。

 

 

・拡張現実装置『プラティオフタルムス』

 ISの扱いに不慣れな者を教導・補助する目的で開発されていたもの。能登重工の改良で、頭全体を覆うヘルメット型で、ハイパーセンサーと連動した強力な操縦者補助機能を持ち、素人でもマトモなIS操縦が出来るようになる、と言うもの。

 

(このことから「補助輪」と揶揄されることもある)

 

 

トルコ政府は否定しているが、設定によっては現実の風景に重ね合わせて「偽の情報」を表示することができる為、それを利用して軍が操縦者を騙し汚れ仕事に当てさせている等の黒い噂が絶えず、自衛隊が運用している機体は束と正成の調整で意図的に本機能をオミットしている。

 

又、噂の払拭のためトルコは定期的に国際IS委員会の調査を受けるなどの「潔白の証明」に躍起になっている節がある。

 

 

(尚、噂が本当でトルコ政府軍が真っ黒だった場合、ハイパーセンサーの特許を有する正晴がハイパーセンサーを各国がライセンス生産するときに共通して提示しているハイパーセンサーの共通特許契約の条件にある「ハイパーセンサーを利用したIS技術の悪用の禁止」の条項に抵触し、正晴達の怒りを買った挙げ句、契約を一方的に打ち切られて日土間の国際問題へと一気に発展する模様)

 

 

 

《参加者からの評価》

 

 

重造「出たな超絶カラーリングの異色機!」

 

 

束「単純な戦闘力だけならラファールや打鉄、テンペスタとかを抜いてトップクラスなんだけど、いかんせん見た目がね~」

 

 

行信「コイツのスピーカーが地味に優秀だったもんだから、民間機向けに改造したりな、カラーリングに目が行きがちだけど、武装は優秀なのが揃ってるから結構使えるって言うね」

 

 

箒「それにしても・・・その・・・凄く特徴的なカラーリングをしているのだな」

 

 

一夏「正直キツいというか・・・何でこんなカラーリングに・・・」

 

 

重造「実際、自衛隊の機体は、素体のカラーリングがキツ過ぎるって大不評で、結果各々でカラーリングが変更させられているし・・・」

 

 

鈴音「でも、機体的には近接中心にかなり強い機体だから使って見たくなるんだよね~、IS/VSだとカラーリングが超絶目立つから、対空戦車にカモにされてるのをよく見るけど」

 

 

千冬「私も見かけるが、やはり鍛練が足りんように見えるな、機体を十全に動かせるようになればカラーリングなぞ単なる趣味になると思うのだがな」

 

 

正晴&束<それは千冬(ちーちゃん)が異常過ぎるだけなんじゃないかなぁ?>

 

 

重造「しかしながら、鈴音ちゃんの言う通りの話、カラーリングが超目立つことを除けば本機は補助輪を有してるから、かなり運用しやすい練習機にピッタリな一品ではあるんだよな~」

 

 

 

一夏「ところで、この拡張現実装置?って言うのの調査はどうなってるんです?」

 

 

重造「今のところは白らしいんだが、なーんか最近トルコ軍に配備されてた内の何機かが強奪されたとか言う話があってな~、やっぱりトルコ政府は否定してるんだが、怪しさバリバリなのと、《打鉄》も強奪されてるんじゃないかって可能性の話になって、今情報省が調査に乗り出した所だな」

 

 

一夏「国が調査に乗り出してるんですか、割りと早いんですね」

 

 

重造「盗まれて無いことをトルコは証明したいそうだからな、あっさり許可が降りた、そのうち結果は出るだろうね」

 

(情報省とは、槇田政権時代に設立された省庁で、特許、免許等のデータ管理を主業務とする、他の各省庁が保有する多種多様な情報の予備データバンクとしても機能しており、束と正晴開発のセキュリティシステムのお陰で米ペンタゴンも真っ青の対サイバー攻撃能力を有する。)

 

 

(当然、防衛省から打鉄に関するデータも予備としての保管目的で受け取っており、今回、打鉄が盗まれてないかどうかの調査とは言えおおっぴらに公的に防衛省の人間を送るのはヤバイので、代わりとして派遣されている。)

 

 

 

正儀「そこら辺は続報を待て・・・って所だね、んじゃま、次がラスト・・・・・・なんだこれ?」

 

 

箒「正儀さん、どうしましたって・・・・・・・・・」

 

 

鈴音「箒までどうしたの?」

 

 

重造「何だ何だ?正儀博士が言葉を失うってどんな機体だ?」

 

 

千冬「・・・・・・なんだこの機体、束、何時の間にこんなのを作ってたんだ?」

 

 

 

束(やっば!英国のと間違えてはるるんにも隠してた機体のデータ出しちゃった!どうする私!?どうやってごまかす!)

 

 

 

 

最後に評価する機体を見て言葉を失う正儀と箒、気になって他の面子が見る中、束は一人己の失策に気づき、千冬はコレが束謹製の代物であることに気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

《名称》無銘<ノーネーム>

 

(活動報告に応募されたISをちょっとだけ設定を弄くって採用させて頂きました。です、ご応募ありがとうございます!)

 

(設定弄くりに関しては申し訳ありません・・・)

 

 

《分類》専用機

 

《製造元》不明(となってるが、束個人の開発)

 

《搭乗者》鳳 志乃(女)

 

《世代》第三世代(?)

 

《特徴》白を中心とした青、

 

《武装》対IS刀《月影》《斬月》

 

   ツインバスターソードライフル×2

 

《解説》

 

「ISの生みの親」篠ノ之束が個人で開発していた第三世代IS

 

 

実は元々は箒の誕生日祝いとして夫(まだ婚約中です)正晴にさえ内緒で去年から開発していた代物で、完成の暁には箒の専用機として世に出る予定であった。

 

 

しかし3ヶ月ほど前の試験段階中、なぜか機体が突如起動しなくなったために、どうすることも出来ずに開発が一時ストップしてしまったのである。

 

 

その後、束は開発再開のための機体分析を行いながら篠ノ瀬製作所の倉庫にこっそり保管していたのだが、箒の友達で篠ノ瀬製作所によく遊びに来る鳳 志乃(おおとり しの)と言う少女が束に会いに来た時、解析中の本機に触れた所、なぜか起動しなかった本機が起動、彼女に装着され、なぜか彼女使用時のみ普通に稼働するようになってしまったのだ。

 

 

で、そのまま彼女の専用機としてこっそり開発が継続されることが決定し、志乃は束にたまーに会いに来ては、こっそり二人で本機を試験運用している。

 

(箒の専用機はこの機体から得られたデータを元に新しく作ることにした)

 

現在、既に一次移行を済ませており、近接特化と射撃特化、二つの形態に変化する機能を手にしている。

 

待機形態は彼女が身に付けているペンダント。

 

 

 

武装解説

 

 

《月影》・・・近接特化形態専用武器、白色の刀で、斬撃そのものをエネルギー刃として放出できると言う特徴をゆうする。

 

 

《斬月》・・・近接特化形態専用武器、黒色の刀で、刺突時にレーザーを放出する機能を持つ。

 

 

《ツインバスターソードライフル》・・・射撃特化形態専用武器、高出力のエネルギーを一気に放射する。だが出力が大きすぎるために三発が限界。

 

ソードモードとライフルモードとに変形が出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《参加者からのコメント》

 

 

正晴「・・・色々と言いたいことがあるが、機体自体は二種類の形態に即座に変形できる可変型ISと言ったところか。」

 

 

正儀「武装は少ないが汎用性が高く、決め手となりうる武装も有している、近接中心だが、戦闘面ではかなり優れた機体だな」

 

 

みとり「ねぇちょっと待って、何か機体最高速と加速の数値が白騎士と同じなんだけどどう言う事!?普通のISじゃ出せないんだよアレ!?」

 

 

束「そりゃあ私が白騎士をベースに開発した機体なんだもん、ズバリ開発コンセプトは《戦闘用改修型白騎士》だしね!超高速で攪乱しながら攻撃するのを目的としているよ!」

 

 

箒「成る程・・・志乃をたまに見かけないと思ったら姉さんとそんなことをやっていたのか・・・・・・」

 

 

一夏「それにしてもすっごいなー、志乃がこんな機体を動かしてたなんて、後で、志乃に話聞いてみたいなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機体を1通り見終えた束達、まぁ、この直後に千冬が束の方を向いて一言発するのを、他の面子は予測できていた。

 

 

 

千冬「其よりも束、私が言いたいことはわかるよな?」

 

 

 

束「・・・ハイ、チーチャンタチニダマッテテゴメンナサイ」

 

 

千冬「それがわかってるのなら宜しい、全く、正晴も束も独断でとんでもないもの作ってたりするから困った物だな・・・」

 

 

正晴「さりげにdisられた!?」

 

 

鈴音「束さんにまで黙って例の医療用IS、《ナイチンゲール》を個人で製造してたの誰でしたっけ?」

 

 

正晴「むむむむむ・・・・・・」

 

 

他のメンバーに無断でIS開発していたことを咎める千冬、ついでに正晴も束と揃って「困り者」扱いされてしまうが、正晴にも前科があるので人の事を言えず、鈴音に指摘されてぐうの音も返せないのであった。

 

 

 

一夏「ところで気になったんですけど、志乃ってIS適性どうなってたんです?」

 

 

束「あ、志乃ちゃんのIS適性の事?凄いよ~簡易検査したけど、もうこの時点で疑いようもなく適性Sを叩き出したんだもん」

 

 

他「・・・・・・え?」

 

 

 

一同はその場で一時の間沈黙した。

 

 

 

一夏達からすれば自分達の友達が、正晴達からすればよく製作所にやって来る一夏達の友達が、まさか()()()5()()()()()()()IS適性Sの6人目だとは思いもよらなかったからである。

 

 

行信「ファーwwwwwww」

 

 

みとり「えらいこっちゃえらいこっちゃ!」

 

 

正晴「ちょちょちょちょおまっ!適性S!?マジだとしたら国に報告案件じゃん!何で隠してたの!?」

 

 

束「いや何、志乃ちゃんが適性であーだこーだ言われるのは好きじゃないからってはるるん達以外への口外はやめてって言ってたからね、」

 

 

行信「適性Aでさえ警護体制しっかりしてないと拉致られるとか言われてるのにSを放置するのはマズイ!急いで彼女と連絡をとらないとって流石に連絡先なんか知らんぞ!?」

 

 

一夏「それなら俺のケータイを・・・って家に置いて来たままだった!!」

 

 

 

 

一夏の一言が引き金となって騒然とする場、そんな中、重造が千冬にこっそりと話し掛けてきた。

 

 

 

千冬「重造さん?一体何だ?」

 

 

重造「・・・スマン、モンド・グロッソに向けた純香の機体調整があるからそろそろ退散するわ」

 

 

千冬「・・・わかった、束達には落ち着いたら伝えとく」

 

 

重造「スマンね、あと頼むわ」

 

 

 

重造は申し訳なさそうに千冬と話すと颯爽とその場を去ってしまったのであった。

 

 

(それにしてもまさかあの志乃がな・・・世の中よく解らないものだ、さて、取り合えず場を黙らせるのを優先させるか)

 

 

 

千冬は自分の教え子である志乃の話題で絶賛混乱中の場を静めるため動き出すのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義照「一夏君の誘拐がアリーシャ氏への妨害行為・・・・・・それまたなんでそのように予測したんだ?」

 

 

 

一方その頃、槇田は先程のアルバン元帥からの話で、アリーシャ・ジョゼスターフへの妨害行為として千冬の弟、一夏を誘拐しようと準備していたのでは?と言う彼の推論の真意を聞こうとしていた。

 

 

 

 

アルバン「昨年起こった《テンペスタⅡ》の稼働実験事故の話は知っているな?」

 

 

義照「ああ、彼女は機体に乗り込んでたから、一度生死の境を彷徨い、結局生き残ったは良いが右腕と右目を喪ったと話に聞いているが・・・」

 

 

まず、彼の推論の引き合いに出されたのは、アリーシャが遭遇したISの稼働実験事故の話であった。

 

 

この稼働実験事故と言うのは、3年ほど前に提案された、欧州連合の次世代機選定計画「イグニッション・プラン」の候補機として開発中の第三世代量産型IS、「テンペスタⅡ」の試作機が去年完成し、その稼働実験の際に、機体が突然コントロール不能の暴走を起こし、実験した空軍基地に配備、駐機されていた伊空軍のC-27J スパルタン輸送機に突っ込んで爆散したと言うものである。

 

 

この事故でアリーシャは右腕と右目を喪い(死んでないのが不思議なくらいの怪我だった)、機体は爆散、おまけに機体に使われていたコアまで行方不明(爆発の影響で消失したと考えられる)になると言う大惨事となったのだが、この事故に()があることをアルバンは伊軍から聞き出すことに成功していた。

 

 

 

アルバン「まず1つ目に、この事故、実は仕組まれたものである可能性が高いことがわかった」

 

 

義照「何ッ!?」

 

 

アルバン「爆散した機体を解析した所、つい最近になってどうやら試験中、いつの間にかコンピュータウイルスのようなものに機体のスラスター部の操作を乗っ取られていたと言う事が判明したんだよ」

 

 

 

義照「そりゃまたマズイこったで・・・同様のウイルスは他のISにも効く可能性があるのか・・・」

 

 

アルバン「発見がつい最近だからウイルスの詳細と感染経路がまだ特定出来てないが、アリーシャとテンペスタⅡを狙った工作行為なのは殆ど確定した、今、イタリアは本件をイグニッション・プランに向けた開発の妨害を主目的とした工作事件として捜査の仕切り直しをしている所だ」

 

 

義照「なるほどね・・・・・・で?二つ目は何だ?」

 

 

アルバン「・・・こっちは伊軍から聞いただけで確認が取れてない話なんだがな?その事件でアリーシャが失ったとされる右腕と右目が何者かによる手術の結果、およそ2ヶ月ほど前に()()()()()と言う話があるんだよ」

 

 

二つ目の話の内容は、バッサリいえば腕と目を失った国家代表が誰かの手術を受ける事で完全復活を遂げたと言う、余りにも信憑性が薄く、その話を聞いたアルバンを疑いたくなるような内容であった。

 

 

 

 

 

義照「ファッ!?そんな事普通じゃできんぞ!?デマじゃないのか?」

 

 

 

アルバン「こればっかりは私も解らん、だが、引退も考えてた彼女はコレで大喜びでモンド・グロッソへ向けた調整中だとも聞く、大会をみれば真偽はわかるだろう」

 

 

 

義照「それもそうか・・・と、すると一夏君をさらおうとしたのは千冬が一夏救出の為に棄権することを目論んでた訳だ、ともすれば捜査範囲はイ タリア軍と「テンペスタ」製造メーカー関係か・・・」

 

 

 

アルバン「前回大会のリベンジマッチを次でしたいと散々公言してたからな、大事故を引き起こしてまで行った妨害をほぼ無意味な結果にさせられたから、また妨害する腹積もりだったんだろう。」

 

 

 

 

 

義照「成る程なぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

アルバン「まぁ今のところは問題無さそうなんだが、こっちはコレが原因で念押しで警備を強化することになった、大会当日、警備が相当物騒になる、来るときはくれぐれも注意してくれ」

 

 

 

義照「わかった、こっちはテンペスタの件が気になったから、モンド・グロッソが終わったらイタリアを探ってみることにするよ、それじゃ」

 

 

 

アルバン「気を付けてな」

 

 

(ピッ、ツー、ツー、ツー、ツー、)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(義照、煙草を取り出して一服し始める)

 

 

義照「・・・・・・ハァ、モンド・グロッソ、無事に終わればいいんだがねぇ・・・・・・終わるわけがないと()()()()()()のに、そう願ってしまう、・・・・・・俺も人として老いたなぁ・・・・・・」

 

 

 

アルバンとの会話を終え、一服しながらぼやく義照、彼は一言ぼやきながらも尚、千冬達の行くモンド・グロッソが無事に終わることを願い続けるのであった・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・続く

 



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モンド・グロッソ決勝直前

 

 

一夏と箒の剣道大会、その数日後のことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

~ドイツ、モンド・グロッソ会場にて~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはドイツのとある町にある競技アリーナ、今ここら一帯は大きな歓声と熱狂に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイハイ、こちらは引き続き実況のハロルドと」

 

 

 

「解説のオーレンドルフでお送りする、第二回モンド・グロッソ、バトルトーナメント中継です。」

 

 

 

「と言っても、もう決勝だけどな!それにしてもまさか俺ら首相二人組が実況解説をやることになるとは思いもよらんかったわ!」

 

 

 

そう、国際的なISの世界大会、通称「モンド・グロッソ」そこで行われているバトルトーナメントの決勝戦が行われようとしているのである。

 

 

この決勝戦を今か今かと待ち望むのは何もここの観衆だけではなく、この大会の中継を見ている世界中が同様である。

 

 

 

と、言うのも、今年のモンド・グロッソ、大方の予想では今年も「暮桜」に乗った千冬が総合優勝を難なく勝ち取るだろうと思われていたのだが、その予想を大きく裏切って、前回大会の時はそのとき既に総合優勝者が決まっていたこの試合の勝者が、そのまま本大会総合優勝者「ブリュンヒルデ」の称号を得ると言う大舞台になったからでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、とんでもない大舞台になりましたバトルトーナメント決勝戦!決勝戦へとコマを進めた今回のファイナリスト四人は、何れも本試合に勝利すれば、そのままブリュンヒルデの栄誉をてにすると言う大変な名誉が待ち受けておると言う強者揃いです!」

 

 

「前回大会は初代ブリュンヒルデが機体の特性上参加できない射撃部門以外を総取りして優勝を果たしましたが、今大会はこのトーナメント以外で行われた格闘、近接、射撃、機動の4部門を一つずつファイナリストが持っていくと言う事態になったからなぁ~、面白いことになりそうなのは目に見えておるのぉ~!」

 

 

 

「それでは各ファイナリストが入場するまでしばらくお待ち下さい!とは言っても、もう数分はかかるらしいけどな!」

 

 

首相とは到底思えないテンションの高さと口の悪さで実況を進めるハロルドとオーレンドルフの姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わってとある控え室、そこには今回もファイナリストとしてここにやって来た千冬と、束、正晴、みとり、一夏の姿があった。

 

 

 

「・・・さっ、いよいよ決勝だね!ちーちゃん!」

 

 

「・・・と言っても今大会の千冬姉の相手はすごすぎるのが多すぎるんだけどなぁ~」

 

 

「確かに凄いのが多いけど大丈夫だよ、この決勝が4機のISによるバトルロイヤルなのは知ってるけど、別段他の3機を纏めて相手しても勝てそうなくらいちふーは強いからね!」

 

 

「そう言うことだ、だから一夏は安心して試合を見守っててくれ、みとりは・・・まぁ、もうその呼び名も慣れてしまったし、良しとするか・・・」

 

 

「・・・・・・」

 

 

決勝の控えでも緊張感の薄い状態でいる千冬達、そんな中、正晴のみが無言で《暮桜》の確認を行いながら不安そうな表情を崩せずにいた。

 

 

 

「・・・千冬」

 

 

「・・・正晴?」

 

 

「・・・・・・《暮桜》は持ちそうか?」

 

 

「・・・まぁ、この試合が終わるくらいまでは持つだろうな、それ以降は解らんが」

 

 

「そうか、今回大会のファイナリスト達の攻撃は前回大会の全般的なものよりも遥かに多彩な攻撃を仕掛けてくるぞ、行けるんだな?」

 

 

 

正晴が指摘している通り、実は今、千冬と「暮桜」は二つの不安点を抱えていた。

 

 

一つ目は、他の相手と比べての武装の少なさ、これは非常に単純な話、前回大会と比べると他の選手の機体も順調に強くなって攻撃手法も多彩になっており、第一世代かつ武装が刀一本の《暮桜》では手数に差が出てきている事で、もう一つは、《暮桜》の機体にガタが来はじめていた事であった。

 

 

と、言うのも、タダでさえ人外レベルであった千冬が、近頃の更なる成長に対して《暮桜》の機体動作速度が追い付かなくなり、それでも千冬が機体の限界以上の機動をし続けながら酷使していたツケが回って、束達の整備にも関わらず機体が限界を迎えようとしていたのだ。

 

(因みに、《暮桜》の機体強度は武装が刀一本であると言う代償の代わりに非常に強固なものになっており、《白騎士》より圧倒的に、現在の第三世代機では一番の機体強度を誇る《轟天》とでさえ機体強度だけなら本機は上である、それをそこまでボロボロにしてしまう程に、今の千冬のIS操縦者としての実力が凄まじい物になっていたのである。)

 

 

 

「大丈夫だ、ドリル戦艦が相手ならそのドリルを叩き切れば良い、旋風が相手ならば風を切り払ってしまえば良い、遠隔操作兵器が相手ならやられる前にそのすべてを切り落としてしまえば良い、だから何も問題は無い」

 

 

 

 

しかし、正晴の指摘に対する千冬の返しは明るく、非常に余裕のあるものであった。

 

 

 

 

 

 

「さて、そろそろ試合だな、では行ってくる」

 

 

「・・・そうか、千冬がそう言うのならば大丈夫なのだろうな、よし!頑張って来い!」

 

 

「ちーちゃん!頑張ってね!!」

 

 

「ちふー!頑張りなさいよ!」

 

 

「・・・千冬姉!」

 

 

「一夏?」

 

 

試合に出ようとしたその時、不意に一夏が千冬を呼び止めた。

 

だが、緊張からなのか、上手く言いたいことを言おうとすることができない。

 

そんな一夏に、千冬は優しく語りかけた。

 

 

 

「一夏」

 

 

「千冬姉?」

 

 

「私は、ダメダメな人間だ・・・・・」

 

「みとりにしょっちゅう煽られて、何度か一夏に言われてしまったが、自分のズボラな部分は相変わらず抜けていないし、料理もやっと最近マトモになってきたばっかりだ」

 

 

 

「千冬姉・・・・・・・・・」

 

 

 

「だが、そんな私にも尊敬されている部分はある」

 

「だから一夏、これから見せる、そんな《お姉ちゃんのかっこいいところ》を見ていてくれないか?」

 

 

「・・・・・・わかった!」

 

 

 

 

「ありがとう、一夏、・・・では、行ってくる」

 

 

 

 

一夏の返事を聞いた千冬は、《暮桜》と共に

決勝の大舞台へと臨む・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・お待たせいたしました!さぁ~いよいよ、決勝戦のファイナリスト達の入場です!」

 

ハロルドの言葉を引き金に、会場は更なる歓声と熱狂に包まれる、そのすさまじさたるや入場の為に流れたドイツ軍の音楽隊の演奏が意味をなしてないほどである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、行って来ますわ」

 

 

「お母様、御武運を」

 

 

「カレン、無理だけはするなよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初に入場してきたのは、本大会初出場であっという間に射撃部門を制してこの舞台にやって参りました、英国国家代表、カレン・オルコット夫人と《ブルー・ティアーズ》です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さぁ、私の実力がブリュンヒルデや他の猛者達にどこまで通用するか・・・試させて頂きますわよ!)

 

 

愛する夫と娘に見送られ最初に入場してきたのは、なんとセシリアの母である、カレン・オルコット夫人と、完成して間もない最新鋭ISであり、原作ではセシリアが纏っていたあの「ブルー・ティアーズ」であった。

 

 

 

 

 

 

 

「完成したばかりの最新型と思われるISを使いこなしての決勝、他の選手が何れも歴戦の猛者達である中、実力をうかがい知れる機会が少なかった故に、未だに実力が未知数な状態じゃ」

 

 

 

「ハッハッハ!そりゃあそうだ!この機体が完成したのはつい数ヵ月前だからなぁ!、そこから数ヵ月の間秘匿するのは至難だったが・・・何とか成し遂げたと言うものだ」

 

 

「また、他は形は違えど接近戦を主体としているが、本機は遠距離戦主体機だ、それが試合にどう影響するかも見物・・・といったところじゃのう」

 

 

「お?そろそろ次のファイナリストが入場するぞ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「純香海将、行けますかい?」

 

 

「お陰様でコンディションは最高よ、後は実力をぶつけ合うだけ、なにも心配要らないわ」

 

 

「なら大丈夫だと信じさせてもらいましょう、海将、御武運を」

 

「任せなさい!それじゃ重造、いってくるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次のファイナリストは前回大会の射撃部門、今大会の機動部門覇者、南丞純香と《轟天》だぁーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

(千冬・・・今度は負けないわよ、コイツを十全に使えてなかったあの時とは違うからね、他の二人と一緒に突き倒してみせるわ・・・!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に入ってきたのは純香と乗機「轟天」、試合前なのでまだ本格稼働こそしてないものの、その巨大なドリルとソー、そして後部のロケットブースターに砲塔型の荷電粒子砲など、「艦」を感じさせるその威容は、見るものを圧倒するに足るものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず近付きたくない機体じゃのう・・・ドリルに回転ソーにガトリング・・・不用意に近づいたら穴だらけにされてしまうぞい、パイロットも前回大会では完成したばかりの本機であのブリュンヒルデと互角にやり合った純香海将じゃ、時の経った今大会なら前回大会のリベンジ達成もあり得そうじゃの」

 

 

「やはり右腕部のドリルと左の回転ソーが大きな威圧効果を有しています、彼女相手に接近戦を仕掛けるのは正直勇気が必要な所です」

 

 

 

「そいえば、誰も突っ込んでる様子がないけど、純香海将、前回は軍服そのままで来たけど今回は何故巫女服なんじゃ・・・・・・?」

 

 

「多分、あまり気にしてはいけないことなのでしょう、さて、三人目の入場です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ~てっと!ちょっくら行ってくるとしますかね!」

 

 

「姐さ~ん!今年こそブリュンヒルデをケチョンケチョンにしてくだせぇ!」

 

 

「姐さんの完全復活祝いのためにコンディションは最高に整えてあります!コレで他のやつらを薙ぎ倒してヘタリア言う奴等を見返してやってください!」

 

 

 

「わかってるわよ!ここまで支えてくれたアンタ達や、腕と目ェ治してくれた科学者さんのためにもやってやるからね!見てなさいよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三人目のファイナリストは前回大会ファイナリストにて、ブリュンヒルデにリベンジを誓った女性、彼女の駆る《テンペスタ》はいまなお風と共にあります!今大会格闘部門覇者、アリーシャ・ジョセスターフと《テンペスタ》、再び決勝の地へとやって参りました!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(千冬・・・前にアンタに敗れてから、私はこの腕と目を失っても止まることは無かった!親切してくれた科学者の為にも、ここでリベンジさせてもらうよ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《テンペスタ》と共に三人目として入ってきたのは前回大会のファイナリストであり、千冬と同じく機体に単一仕様能力を持つイタリア国家代表アリーシャ・ジョセスターフである。

 

 

《テンペスタⅡ》の事故で片腕と右目を喪失したと報道されていたが、本大会ではその報道が嘘だと思われる程に元気な姿を見せての出場であった。

 

 

なお、入場前に彼女に声援を送ったのは《テンペスタ》を整備するイタリア軍の男性整備士達である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女はテンペスタの事故で腕を失ったとの情報を聞き付けていたんじゃが、ありゃ誤報だったか、まぁ情報源のイタリア政府には後で事情を聞くとするかのぉ~」

 

 

「それはともかくとして、彼女のテンペスタは機体こそ、両手のクローとハンドガンのみで戦い、武装と装甲の問題点はその高速機動で補う機動特化の格闘機ですが、彼女の有する風の分身のようなものを作り上げる単一仕様能力はまさしく驚異の一言!技に磨きが掛かっているであろう事を考えると他の選手が彼女の分身にどう対応するかが試合の勝敗に大きな影響を与えるでしょう!」

 

 

 

「武装がシンプルな分、《どう使うか》がポイントになる機体じゃからのう・・・前述の二機と違って第一世代機だから基礎的な機体ステータスがネックになるかのう、あ、そうそう、次で選手入場はいよいよラストじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・いよいよやって参りました、最後のファイナリストにて前回大会優勝者、ブリュンヒルデ、織斑千冬と《暮桜》が入場致します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハロルドの実況に然り、回りの空気に然り、会場にて一瞬の静寂が訪れる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・行くぞ、」

 

 

短く一言、千冬は発した後に会場に入る。

 

 

会場は一瞬起こった静寂の後、入場してきた千冬を見てこれまでに無い歓声と熱狂に包まれてゆく・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で、入場の後、他の選手と向き合った千冬達の間では、今はただISを起動してるだけで、お互いの様子を伺いつつも非常に静かな状態で開始の時を待っていた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・語ることはないか、」

 

 

 

「もう後数時間もしないうちに決着がつくだろうしね、ここまで来たら余計な事を語る必要は無いのサ」

 

 

 

「まぁ、今此処にいるのは四人のIS乗り、ってだけだから当然の話ね」

 

 

 

「実力行使まで縺れ込んだ頂点決め・・・語る物がまだあったらそれはソレで問題でしょう?」

 

 

「フフフ・・・・・違いない」

 

 

 

 

 

小声で簡単にやり取りした千冬達そのやり取りの後、試合が始まるまで誰一人として話すことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まもなくオーレンドルフ首相の合図によって試合が開始されます、ファイナリストの方々は所定の位置に移動・・・・・・してるな、誘導の意味無いやん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあまぁ試合開始とするかのう・・・」

 

 

「合図の準備、完了しました!」

 

 

「ご苦労じゃ、」

 

 

「え?オーレンドルフ首相?信号拳銃は?そしてその銅鑼は・・・あっ(察し)」

 

 

ついに試合開始の時がやって来た、開始の合図をとるオーレンドルフの目の前にはいつの間にか用意された銅鑼の存在、

 

 

 

 

 

そして・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「試合開始ッ!」

 

 

 

 

ゴォォォォォォォォォン!!

 

 

 

 

 

オーレンドルフが銅鑼を思いっきり蹴り、ついに大会最後の闘いの幕があがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・続く

 



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決勝戦の外側で




モンド・グロッソ会場付近のとある居酒屋

 

 

 

決勝の幕が開けたその頃、モンド・グロッソの会場付近では、大会の観客席チケット抽選から溢れた人々が近くの飲食店に集まり、決勝戦の中継を見て大盛り上がりしていた。

 

 

 

「始まったな・・・おっ、偏差射撃かありゃ?えげつねぇな~オイ」

 

 

「何だあの機体、遠隔操作兵器飛ばしながら高速で移動して、おまけにビームをぐにゃぐにゃ曲げてるぞ、」

 

 

「ヤバイヤバイ!、スーの機体にビーム当たりまくってる!?」

 

 

 

 

 

そんなモンド・グロッソの中継で大盛り上がりする酒場の一つには、槇田元首相とアルバン元帥の他、純香の親友で若年ながらも在日米国軍司令兼、第七艦隊司令官と言うかなりの肩書きを持つ米国海軍ロレッタ・アークライト中将の姿があった。

 

 

 

 

彼らが見守る試合のスタートはと言うと、開幕と同時に《ブルー・ティアーズ》がビットを飛ばし巧みに操ることで、他の三機が動き出すと同時に全体に濃密なBT兵器の弾幕を張り出し、其への対応で行きなり戦況が動くこととなった。

 

 

《テンペスタ》と《轟天》が直ぐ様回避を行うのだが、ビットから放たれたビームが誘導兵器真っ青の速度でぐにゃぐにゃ曲がり、ホーミングしてくるせいで避けきれていない。

 

 

この中では比較的小柄で、機動力もあるテンペスタはそれほどダメージを負っていないのだが、武装が基本的に大型なせいで脚が早くても的のデカい轟天は持ち前の装甲で耐えるのに限界があり、早くも荷電粒子砲が一部使用不能になるダメージを受けるなど大きなハンデを背負うこととなってしまった。

 

 

その一方で、暮桜はと言うと、恐ろしい事に、ぐにゃぐにゃ誘導してくるレーザーを至極平然と避けていたのである。

 

 

「さすがはブリュンヒルデって所ね・・・・・・問題点の多いあの機体であそこまでの事をやってのけるんですもの」

 

 

「しかし、あの《ブルー・ティアーズ》、思念操作型の遠隔操作兵器とはいよいよガン○ム染みてきたな・・・・・・」

 

「軽傷で済むテンペスタもあれだけ貰っておいて武装の損傷で済む轟天も十分おかしいがね、それにしても、初動はイギリス代表が取ったのか、どう推移することやら」

 

 

 

三人はこうして戦況を見守るのだが、この後、不意に槇田が店の中から外の様子をチラ見した時、一瞬だけだが思いもよらないのを目にしたのである。

 

 

 

「・・・・・・!?」(ガタッ)

 

 

「ん、どうしました槇田さん?あっ、ちょっと待って!?」

 

 

槇田がいきなり席を立ち外へ向かう、店は前払いで丸一日分貸しきっているため、店の外へ出る行為自体は問題ないのだが、何分急すぎるのでアルバンも大急ぎで槇田を追いかけようとする。

 

 

「アルバン元帥!私は急な用事が出来た!暫く此処を離れる!!」

 

 

「ちょっと待って義照さん試合は!?」

 

 

()()()()()()()()、終わったら連絡をくれ、千冬に祝いの品でも用意しとくさ」

 

 

「ちょっと待ってください!槇田さん!槇田さん!?」

 

 

 

 

 

・・・・・・が、結局アルバンの引き止めにも関わらず義照は何処かへと向かってしまった。

 

 

 

「・・・はぁ、あの人は相変わらず、か…」

 

 

「いけー!スーやっちゃえー!!」

 

 

「ロレッタさん・・・」

 

 

「そのままブリュンヒルデをボコボコのギッタンギッタンにしちゃえー!アハハハハハハ!」

 

 

「・・・ダメだ、酒が入ってるわコリャ」

 

 

仕方なく、アルバンは槇田を追いかけるのを諦め、いつの間にか酔っていたロレッタと共に店に残ることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・こっちか?」

 

(あの時・・・あの時一瞬見えた男女、あれは間違いなく()()()()()()()()()だった)

 

 

(身長と髪の色に相違があったが・・・顔つきは完全に千冬と一夏君そのもの・・・)

 

 

(可能性的にはあり得ないと考えたい所が・・・・・・()()()の為にも、な)

 

 

義照が見かけた者は存外に重要な存在なのかもしれない・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで視点は会場へと移る。

 

 

 

 

「ッチ!またビットが・・・流石はファイナリストとして此処に来た猛者達、私の全力を以てしてもこれ、ですか」

 

 

「そこのアンタが分身を作ったそばから迎撃してくれるお陰さんで、此方はマトモに攻撃出来てないけどね!やっぱ世代の壁は大きいね~!」

 

 

「その割には余裕そうだな、まぁお前の事だからこれぐらいは想定してるのだろうが」

 

 

 

 

 

 

「戦闘はほぼ中盤に差し掛かった所でしょうか?ブルー・ティアーズは段々とビットの数が減り始めて来ました、轟天はあれからバカスカ打たれてますが、多少の損傷とドリルとソーの回転速度が遅くなったように見える以外は特に変化がありません、テンペスタはティアーズのビットに分身攻撃を阻害されて思うように動けていない、暮桜は現在最も余裕がある様子ですが、武装の関係上まだ相手に攻撃を行えていません、回避に専念してるのを見るに、まだ機を伺ってる状態でしょうか?そろそろ好機を見つけたい所です」

 

 

槇田が何処へと向かった頃、試合は早くも中盤へと移っていた。

 

 

現在の各機のSEは暮桜が多少余裕を残している程度で、他は既に残り半分を切っており、それでいてハロルドの言うように各機が決定打を与える事が出来てない状態にいた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・轟天、損傷率65%を超過、荒覇吐、緑神、出力低下、上部荷電粒子砲壊滅・・・・・・武装ユニット反転、戦闘方針変更、狂化状態へ移行、」

 

 

(来るか、純香・・・・・・ここからが本当の勝負所だな)

 

 

 

「ん、轟天の武装ユニットが全損したようじゃ・・・・・・いや・・・武装ユニットを反転させたぞ!?しかも何かごっついガトリングが見えとるぞ!?」

 

 

 

 

 

「・・・通常の戦法では勝利は不可能と判断、戦闘方針の変更を決定、緑神、最大展開」

 

 

 

 

「横向きの回転ソーが縦になって・・・?」

 

「ん?何であんなドリルを・・・まさか!?」

 

 

 

 

ここで武装を変化させた純香が、轟天のドリルを思いっきり天にかざした、その直後・・・

 

 

 

 

 

「・・・らああああああああああっ!」

 

 

 

 

ドガァ!

 

 

 

 

そのドリルは()()()()()()()()()降り下ろされ、地面をゴリゴリ削り取っていく。

 

 

 

 

 

「アーッ!、会場の地面を削らないでえええ!整備費用がアアアアアアア!!」

 

 

 

 

「何をするつもりかわからないけどやらせないよっ!」

 

 

 

「噴進砲掃射、ブースターへのエネルギー配分停止、荒覇吐、緑神へ再配分、」

 

 

 

純香による突然の凶行に実況のオーレンドルフが悲鳴をあげる、ドリルで何かしらのアクションを取ろうとしてる事を察したアリーシャと千冬が阻止行動に出るが、轟天から無軌道に放たれる大量のロケット弾幕と十文字上の縦向きに展開された四つの回転ソーに阻まれ接近出来ない。

 

 

 

 

「おわわわわっ!?まだこんな弾幕を張る能力がっ!?」

 

 

 

「やはり接近出来る状態じゃない・・・か」

 

 

 

 

 

 

 

「土竜戦法でも取るつもりなのでしょうか?しかし、だとすれば何でブースターを・・・・・・?掘るのが止まりました、こ、これは・・・・・・!」

 

 

 

「荒覇吐、機関砲射撃開始・・・ここからは耐久勝負よっ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程、その戦法をとって来たか・・・」

 

 

「純香さん、凄いことやってるね・・・・」

 

 

「え?機体が独楽みたいに回ってるんですけど、どう言うことだ?」

 

 

状況を観客席で見ていた束達、純香が何をしようとしているのかにすぐ気づいた束と正晴、流石に一夏にはこの状況がつかめず困惑しており、二人からの説明が入ることとなった。

 

 

 

「ねぇいっくん、創作でよく使われてるドリルって穴堀りには向いてないって知ってた?」

 

 

「え?そうなんですか!?」

 

 

「まず、創作物のドリルって聞いてなに思い浮かぶだろうか?」

 

 

 

「え~っと、ジェットモグラかな?」

 

 

 

「実は、構造上の話で言えば、一夏君の言うサンダーバードのジェットモグラやウルトラシリーズのペルシダー、マグマライザー、ゴジラシリーズのMOGERAと言った地底戦車とかに使われているようなドリルだけだと、穴を掘るには問題が多すぎるんだよ」

 

 

「細かいことは夢がなくなるからバッサリ切り捨てちゃうけど、ドリルって機体を固定する手段が弱いとドリルを回す反動で機体の方がぐるぐる回っちゃうって言う問題点があるんだよー、知ってた?」

 

 

「確かアン○ンマンに出てきた地底戦車がドリル部分掴まれてこの欠点を露呈してた筈だな、どうでもいいことだが、」

 

 

「そうなんですか・・・・・・ってそれだと轟天もその例に漏れず機体がぐるぐる回るって事ですか?」

 

 

 

「間違いなく、()()()()()()なんだろうね、見てよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の解説が終わった頃、轟天は地面に突き刺さって停止したままのしたドリルを基点に高速で独楽のように大回転しており、そこからロケット弾と大口径機関砲の弾幕が展開されていた。

 

 

しかもロケット砲が無軌道にばら蒔かれているのに対して、回転して狙いもつけられない筈の中でなお、轟天の機関砲は恐ろしい精度で他の三機を襲っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またビットが一基・・・回転してるからと精度を甘く見積もりすぎましたわね」

 

 

「ハハハハッ!流石は日本の国家代表、ここからが本番ってね!それじゃあ私も本気で行こうか!」

 

 

(・・・まだ動く時ではないか、()()()()がもう持ち堪えられない以上、決着は一撃でつけなければならん、漁夫の利を狙うようで悪いが、まだまだ耐える時だな)

 

 

 

「仕方ありませんわね、負担が凄まじいので余り使いたくは無かったのですが、この様子では私も本気を出さざるを得ない様子・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟天の変化に応じるかのように、テンペスタは分身の数を大幅に増やし始め、ティアーズは残っていた2基の他に、新たに8基ものビットを展開して来たのだ。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ~何だなんだナンダなんだぁ!?テンペスタの分身がいきなり多数出現しました!ティアーズもビットを新たに大量展開、ってコレ最初の状態より数多いやん!この三機まだ本気を出していなかったんかい!?」

 

 

「轟天の行動に触発されてテンペスタとティアーズが本気を出したと言った所かのう、コレだからファイナリスト陣は恐ろしい」

 

 

「他の機体が無茶苦茶をやりだし始めましたが、暮桜には大きな動きが見えません、この状況でもまだまだ余裕があると言えるのでしょうか?そうともなれば、やはりブリュンヒルデは凄まじいと言えますね・・・」

 

 

(ワシにはとてもそうには見えんがのう、千冬さんは()()()()()()()()()()()()様子じゃし・・・ワシの見間違いでもなければ、もしかしなくとも機体の方が限界なんじゃろうなぁ・・・)

 

 

 

 

 

「そろそろ終盤か・・・・・・」

 

 

「それじゃあ最終ラウンドと洒落込もうじゃない!!」

 

 

「さぁ!このティアーズのラストダンスを御照覧あれ!!」

 

 

「・・・荷電粒子砲の簡易修理完了、ロケットブースター使用待機へ移行、決戦へと移行する」

 

 

 

 

 

四人のファイナリストによる試合はいよいよ終盤へと移行しようとしていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が終盤に移行した頃、会場からかなり離れた地点にある廃ビルの中で・・・・・・

 

 

 

 

「・・・スコール、そろそろ頃合いかと」

 

 

 

 

「よし、さっさと起動させちゃいな」

 

 

 

「了解、B班から残りも順次起動させて行きます。」

 

 

 

試合会場から離れた所にいくつかあるとある廃ビル群では、スコールと呼ばれた金髪の女性の指示で、今までに見たことのない巨大な緑色の顔つき片腕二足歩行ロボットと、二つの巨大なキャタピラと蒸気船の外輪みたいなものを両サイドに取っつけた青色のロボット、そして青色の魚みたいなものが、今まさにその姿を衆目に晒されようとし始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしこんな骨董品、幾ら世界最強各のIS乗り達が消耗戦してるところに投入するとはいえ、他のISに瞬殺されそうですがねぇ、スコールは何でコレを此処に運び出すことに反対しなかったんですか?」

 

 

 

「オータム、確かにこれはそれなりに古い時期の代物よ?他の部下もコレを見て随分アレな反応するほどのね、だけどコレは《総帥》が直々に情報を探し出すレベルの代物で、良く良く調べると凄まじいオーバーテクノロジーがたくさん詰め込まれてるんだよ?」

 

 

 

動き出すロボットを辛口に評するオータムと言う女性に対し、スコールと呼ばれた女性は彼女の上司らしき人物を引き合いに出し反論する。

 

 

 

 

 

 

「スコール、相変わらずコレの話の時は良くコレを持ち上げますね?」

 

 

 

「・・・まっ、昔()()にいた頃にこう言う《ロマン》を語ってくれる親友がいてね、そいつと会うたびに持ってきてくれた土産話が当時の私の楽しみだったんだよ」

 

 

 

 

「ロマン・・・ですか、女性の私には縁遠い話ですね」

 

 

 

 

「オータム、それは同じ女性である私に喧嘩売ってるの?」

 

 

 

「いっいえ!決してそんなわけでは・・・」

 

 

「・・・・・・ハァ、それにしても、アイツは私の事覚えててくれてるかなぁ?、まっ今は作業に集中するべきだね、オータム、作業が完了し次第此処を離れるよ!」

 

 

「了解」

 

 

 

 

「まもなく起動します」

 

 

 

 

 

 

「さぁ!ISに対応することしか考えてないドイツの軍人どもに新しい脅威と言う奴を教えてやるんだよ!」

 

 

 

「・・・スコール、あれらは自立してるので命令は聞き付けないのですが・・・・・・」

 

 

 

「雰囲気よ雰囲気!やることはやったし、全員此処から退避!急ぎな!」

 

 

中が空っぽになった幾つもの廃ビルの中でこっそり組み立てられ起動した前述のロボット群が起き上がり動き始める・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今まさに、新しい脅威がモンド・グロッソの開かれてる町に解き放たれようとしていたのであった・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~続く~

 



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戒厳令とその頃の製作所

地味に投稿ペースが落ちてると感じてる今日この頃


本話はかなりの長丁場になるのが目に見えてるだけに更新速度を戻して行きたいところです。


 

 

場所は遥か離れて日本国は篠之瀬製作所。

 

 

「いけー!千冬さんガンバレー!」

 

 

「他の機体も随分頑張ってますね・・・」

 

 

「千冬さーん!負けないでー!」

 

 

「千冬さーん!ガンバレェェェェェェェェ!」

 

 

「オイ誰か大神のサントラ持ってきてる奴はいないか!太陽は昇る流したいんだが!」

 

 

「\此処にいるぞ!/」

 

 

「種子島や宇宙ステーション、相模原や筑波とかの中継陣も見えてるかー!千冬さんの決勝、そろそろ決着の時が来るぞー!」

 

 

「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

 

 

 

「おう、お前ら少しは落ち着けや!」

 

 

 

 

 

 

千冬達が決勝の終わりに入った頃、謎の機械がその目を覚ました頃、篠之瀬製作所ではメンバーのうちただ一人留守番を担った行信と、たまたま休暇であったJAXA職員20数名が、他のJAXA関係施設の人々とスカ○プ等を通して交流しながら製作所内部のテレビで決勝の様子を見守っていた。

 

 

 

「ん?全ての機体の動きがとまりましたね」

 

 

 

「・・・次の一撃でこの一戦の結末が決まるな」

 

 

 

 

決勝戦はといえば、その様子たるや最後の時が迫ってると言わんばかりで、本気を出して激しく砲火を交わしていた4機共に初期位置近くで停止し、

 

 

ティアーズは武器は手持ちの近接武器であるインターセプターのみ、

 

テンペスタは風の分身が全滅し武装も腕部のクローのみ、

 

轟天は全ての武器が機能を停止しており、ロケットブースターのみが稼働している様子、

 

暮桜は武器である刀はまだ健在だったが、機体自体からバチバチと漏電しており、「機体がこれ以上保たない」のが目に見えるようになっていた。

 

 

 

「暮桜が・・・・・・」

 

 

「各所にガタが来ているのが目に見えるように・・・・・・」

 

 

 

「行信さん、別の機体で出場できなかったんですか?暮桜には多数の予備パーツがあった筈」

 

 

 

「予備パーツは決勝に行くまでに全て損耗した、暮桜以外の機体では今の千冬の本気だと一試合分の時間ですら持たないだろうな」

 

 

「そもそも、暮桜のベースとなった白騎士は機動に関して言えば《一人乗りの人型宇宙ロケット》と言わんばかりに直進性を高くした設計の代物で、競技用ISの枠組みにブチ込む代物じゃあない、要するに、白騎士を競技向けに再設計して産み出されたのが暮桜だ」

 

 

「武装や装甲は貧弱どころではない代物だが、こと機動力は機動性重視型の第二世代機を軽く越えてるし、機体の強度に至れば各国で開発中の第三世代機が完成した程度ではどうあがいても越えることの出来ないレベルだ」

 

 

「要するに暮桜はAK-47みたいなものを目指して設計されたと?」

 

 

「単純な扱いやすさと頑丈さの面で言えばそれに近いな、しかし、問題はそれを以てしても暮桜は千冬さんの本気に()()()()()()()()()()()()()だ、もう長くは暮桜が保たない点から察するに、大会が終わったら千冬向けの機体をまた一から開発しなければならんかな~」

 

 

 

「その前にこの試合で保つかどうかさえ怪しいんですがそれは・・・」

 

 

 

「大丈夫だ、心配する要素は何一つ無い、千冬はこの戦いも制するさ」

 

 

 

試合中、千冬は大技である「零落白夜」を一度も使用してない等、この場で勝利を掴めるのか?とJAXA職員達が不安がる中、行信はその場ではただ一人、千冬の勝利を確信していた。

 

 

 

その確信が直後、純然たる《予想外》によって裏切られるとは思わずに・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、何です!?」

 

 

 

「警報!?会場で何かあったのか!?」

 

 

千冬達が決着をつけようとしたまさにその時、突然会場全体に大音量のサイレンが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「お知らせします、先程突如出現した謎の大型機械への対応の一環として、本地域全体に対して戒厳令が発令されました!、これによりモンド・グロッソを直ちに中止、ご来場の皆様方々は直ちに会場から地域郊外へと避難し、警備部隊は緊急時対策マニュアルタイプBの内容に従い一般市民その他の避難誘導を行うようお願いいたします!」

 

 

 

「繰り返します!先程、本地域に対して戒厳令が発令されました!・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

突然発令された戒厳令、余りに急な出来事は、試合がクライマックスへと入り、凄まじい熱狂に包まれていた会場の空気を一気に冷やし、先程までの熱狂に負けず劣らずの壮大なパニックを引き起こすには十分すぎた。

 

 

「・・・何が起こってるんだ?」

 

 

「・・・!、行信さん!このチャンネルに変えて見てください!」

 

 

 

「何だ・・・?何だこいつは!?

 

 

テレビ越しに起きた突然の出来事、訳がわからず呆然とする行信は、今見ているのとは別のテレビ局よる生中継も平行して視聴していたJAXA職員に促され、チャンネルを変える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、ISと言うには余りにも相違点の多すぎる、二足歩行で片腕を有する巨大な人形ロボットと、それに対峙する会場周辺をを警備していた独軍の姿があった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、会場近くの酒場にいたアルバン元帥とロレッタ中将は、酒場の人に避難するように話を通した後、近くに駐車していた軽装甲車に乗り込み、現在は緑の大型ロボットと同時に出現した青いキャタピラのロボットのすぐ近くにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルバン元帥、良かったの?大会に最大級の冷水ぶっかけた訳だけど」

 

 

 

「・・・こればっかりは仕方ないんだ、こればっかりは・・・・・・・・・」

 

 

 

青色のロボットに対峙するロレッタとアルバン、先程まで酔っていたロレッタは既に酔いを冷ましており、それとは別に、ロボットと対峙するアルバンの表情は非常に暗いものとなっていた。

 

 

 

 

「使うことは無いだろうと思っていた権限だったが、まさかこんな形で使用することになろうとはな・・・・・・」

 

 

 

「でも貴方の言う通りの性能ならば仕方のないことだと思うけど?」

 

 

 

「念を押しただけだ・・・・・・()()()()()()()()()この権限を発動しなければならなかった事が問題なのだ・・・・・・!」

 

 

 

「閣下!戦車隊が配置につきました、何時でも前方の青いのに斉射を浴びせられます!」

 

 

 

「よし、私が指示するまできっかり半数ずつ、奴の左右の回転機本体接続部分を照準して待機!、()()()()()()()()()()()

 

 

 

「了解!」

 

 

(・・・・・・たまたま見つけた妄想の産物かと思っていたものがまさか本当に出てくるとは・・・・・・!もしもあの記録の通りだとすると事態は既に深刻なことになっていると言うことにッ!)

 

 

「閣下、会場警備のIS部隊が本空域に出現した青い魚のような飛行物体との交戦を開始しました。」

 

 

「了解した、くれぐれも油断するなと部隊には念を押すように、不味くなったら対空戦車隊に任務を引き継いですぐに退却するんだ!いいな!」

 

 

「はっ!」

 

 

 

「アルバン元帥、大丈夫ですか?」

 

 

「心労がちとヤバイかな、サレナとラウラ達がこの場にいなくてホントよかったと言うべきか・・・」

 

 

実は、大会中止による批判、経済的損失、その他もろもろの予測可能な被害を全て考えた上で、先程戒厳令を敷き大会を中止に追い込んだ男こそ、目の前に展開する謎の大型ロボット群を見たアルバンであった。

 

 

 

彼は義照を見失った後、暫くは決勝を見ていたのだが、会場を巡回警備していた配下の警備部隊が発見し存在を報告された謎の大型ロボット群を見て、非常に強く戦慄した状態で戒厳を敷いたのである。

 

 

そして今、必死に部下との緊密な連携をもってパニックに陥った会場の防衛を行うところだったのだが、このとき既に彼の心労はピークに達していた。

 

 

と言うのもそもそもをして、この時巨大なロボット群は会場に向け動いてこそいるものの具体的な攻撃行為を行っておらず、戒厳を敷く要因としては不適切で、本来、この状況では戒厳を敷く事が出来ない状態だったのである。

 

 

アルバンは彼自身が有していたとある権限を行使して無理矢理戒厳を敷いた訳なのだが、後々に飛ばされる非難の嵐を想像すると、正直、ほぼ確実に巻き添えとなるオーレンドルフ首相の事もあり気が重たくなるのも仕方のないことであった。

 

 

 

 

 

 

 

(ピーピピガガガッ、フィッシュ325沈黙、コレヨリ周辺の軍事戦力ヲ全テ敵対認定、()()()()()()()(),本拠ヘノ帰還不可能、周辺ノ自軍戦力、敵戦力ノ撃滅ニルーチン変更、1,2,3、ガンナー58、目標、上空の最大脅威戦力,射撃開始)

 

 

 

 

 

 

 

「IS部隊が青い飛行物体を一機撃墜しました!」

 

 

 

 

 

「よし、よくやっ・・・・・・喋った!?

 

 

「元帥・・・不味いわ!!アレを見て!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場に迫る飛行物体の一機を撃墜したとの報告を受けたその時、アルバンとロレッタには青いキャタピラのロボットから()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・なんてこった」

 

 

「おい!すぐに束さん達に連絡だ!会場の様子を確認しろ!」

 

 

「ダメです!先程の映像で安否確認の電話が急増したからか回線が繋がりません!」

 

 

「独軍のIS部隊がものの数秒で・・・・・・」

 

 

「信じられん・・・あのデカブツ跳躍しやがった・・・・・・」

 

 

 

 

 

テレビを見ていた行信達は、テレビ越しの光景を最初信じることができなかった。

 

 

 

 

まず最初に、青いキャタピラロボットの側輪みたいなのが高速回転したかと思うと、その側輪の四方八方から超高速でミサイルが大量に放たれた。

 

 

目標は上空で青い魚に攻撃していた独軍のIS計8機で、突如大量に放たれたミサイルを避けきることができなかった4機がモロに喰らいSEを切らして撃墜、2機は幾つかを避けるが爆風で視界が悪くなったところを残っていた数機の青い魚に集中放火され同じく墜落、残った2機は巧みな機動でミサイルを避けきるも、()()()()()()()()()()()()飛びかかってきた緑のロボットの腕で薙ぎ払われ、地面に直接叩きつけられたのだ。

 

 

幸い、絶対防御が機能していた事と近くに独軍の部隊がいたことからパイロット達は無事に回収され退却したが、この事により独軍の現地防衛戦力のISは壊滅、残った通常兵器での迎撃を余儀なくされたのである。

 

 

 

 

 

しかも、出現していたロボット兵器(青いキャタピラが1、緑のロボットが2、詳細不明だが10機前後と思われる青い魚)は魚が一機撃墜されただけである、状況ははっきり言って最悪といってよかった。

 

 

 

 

 

 

「・・・どうなってやがるんだ!」

 

 

「中継ヘリも現場から退避するみたい・・・・・・本格的に大惨事になってきましたね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

中継カメラがロボット兵器から離れて行くのを見ている職員達、現地は一体何がどうなっているのか解らない状態に至っていたが、この直後に起こった出来事が製作所にいた行信とJAXA職員達の混乱を加速させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

!?、白騎士が何で動き出している!

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

ふと振り返った行信が見たのはスラスターを吹かして今まさに飛び立たんとする無人の白騎士の姿であった。

 

 

そして、職員の一人が行信の叫びに反応して白騎士の方を向いたと同時に、白騎士は製作所の天井を無理矢理ブチ抜き、そのまま何処かへと飛び去っていったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・、これは一体・・・・・・?」

 

 

「白騎士・・・・・・まさか!」

 

 

「でしょうね、何とも言いがたいですが、これでやるべき事が出現したと言えますね」

 

 

飛び去っていった白騎士を見た職員達は、このとき白騎士がどこに向かうのかを簡単に予測することが出来た。

 

 

 

 

「・・・・・・首相に緊急連絡だ!」

 

 

 

「急げー!可能な限り、白騎士をしっかりと送れるようにするんだ!」

 

 

「連絡しなきゃ(使命感)」

 

 

「IS委員会にも連絡!」

 

 

「此方も可能な限りのアシストを行います!」

 

 

行信の号令を起点にその場にいた職員のみならず中継で事の顛末を見ていた他の施設の職員達も一斉に動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その目的はただ1つ。

 

千冬の元へと向かった白騎士を無事に送り届けること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(暮桜があの状態である以上、無理をしたとしても千冬が本領を発揮できるのはもう白騎士のみ、頼む皆、無事でいてくれ・・・ッ!)

 

 

 

各国の防空網に掛からないようIS委員会を通して急ぎで連絡をいれようとする職員達。

 

 

白騎士が空けていった天井を眺めながら千冬達の無事を祈る行信。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼らを後に置き、白騎士はその進路を遥かドイツへと向けて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その身を流星のように光らせ、世界の空を駆けて行く・・・・・・・・・

 

 

 

 

~続く~



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束さんと一人の男

描写を細かくするとどうしても話が長くなりますね・・・・・・


 

side、千冬

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

試合が中止になった。

 

 

アリーシャ、純香、カレン、私と、それぞれの決着を意味した最後の一撃を遮ったのは独軍が出した戒厳令。

 

 

放送を聞けば、何でも会場の近くに突然巨大なロボットが出現したらしい。

 

 

正直な話、会場警備を統括していたのがオージェ事件のアルバン元帥で無ければ信じられない内容だが、かといって、一夏達の危険を放置してまで非常事態を無視するわけにもいかない。

 

 

 

だがその前に、私たちファイナリストの間に流れているこの沈黙を何とかしなければ

 

 

 

「・・・試合中止かぁ、こりゃ参ったねぇ」

 

 

「・・・緊急事態ねぇ、まさかこのタイミングで試合の流れがぶった切られるとはねぇ・・・・・・・・・」

 

 

「あらあら純香さん?怒りが顔にお見えですわよ?」

 

 

「そういうアンタもだけどね」

 

 

・・・と思っていたら揃って怒気を放ち始めた、まぁ正直私もこんな形で試合中止ともなれば怒りたくなるが。

 

 

「そんなことよりも取り合えずは避難が優先だろう?正直各々の機体がこの有り様ではどうにもならんだろうし」

 

 

「ですわね、試合の邪魔をされたことは業腹ですが、今は取り合えず身の安全を確保しませんと」

 

 

「仕方ないか・・・あ、そうだ、じゃあ後で機体がどうにかなったら今度元凶ボコしに行かない?決勝邪魔された腹いせになるけど」

 

 

避難優先でそのまま解散になろうとしたのだが、ここでアリーシャが元凶への応酬を提案してきた。

 

 

「・・・私は反対はしない、都合が会えば軍人として今回の件を見過ごすわけにもいかない」

 

 

「私も構いませんわ、機体がこんなでもなければこのまま外へ出て元凶のロボットとやらに一撃加えたいくらいですもの」

 

 

 

「私も可能であれば・・・だが賛成だ、こんな無粋なマネされたとなれば流石に腹の虫が収まらんからな」

 

 

 

・・・・・・まぁ、可能ならば賛成するしかないな、折角「暮桜」では最後かもしれない晴れ舞台を邪魔された上に、私だけでなく一夏や束達まで巻き添えにしてるのだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、私は三人と別れ束達のところへ戻るのだが、暮桜が正直もう保たない。

 

 

まぁなんだ、試合中、暮桜に無理をさせすぎてしまったなぁ・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

まぁまずは何が原因であれ、約束を果たせなかったんだ、一夏に謝っとかないとな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side、束

 

 

 

 

「はるるん!外で何が起こったの?何でこんなタイミングで大会中止になんてなるの!?」

 

 

「・・・・・・わからん、だが事態が事態だ、戒厳令が発令された以上、退避するしかあるまい」

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなっちゃんたんだろう?

 

 

ちーちゃんの試合に決着がつくと思われた、まさしくその瞬間の大会中止・・・・・・

 

 

正直何かの意図があったとしか思えないタイミングでの中止は、それと同時に会場に未曾有のパニックも引き起こした。

 

 

さっきまで熱狂に満ちていた会場は今や外へ出ようとする人で溢れ帰り、幾つもの出入り口は皆一様にして人が詰まっていた。

 

 

 

「戻ったぞ、皆、」

 

 

「千冬姉!」

 

 

「千冬、決勝は・・・」

 

 

「一夏」

 

 

「千冬姉・・・・・・」

 

 

「・・・・・・ごめんね、お姉ちゃんのカッコいいところ、見せてあげれなくて・・・」

 

 

 

「暮桜」で決勝に臨んでいたちーちゃんが戻って来た、その時のちーちゃんの表情は暗いものではなかったけど、ちーちゃんが原因じゃないのに、いっくんに抱きついて、泣きながら試合前のいっくんとの約束を破っちゃった事をいっくんに謝っていた。

 

 

 

 

 

「ちふー、大丈夫?」

 

 

 

「・・・まぁ、な、何が起きたのかはよくわからんが戒厳令が出たんだろう?、状況はともかく今は退避優先にしよう」

 

 

「だね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直したちーちゃん達と共に会場のゲートへと向かおうとした時、不意におかしな光景が目に映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついさっきまで実況席にいたオーレンドルフ首相が一人、誰もいないアリーナに佇んでいる姿、そしてそこからまるで私を呼んでるかのように手招きしている姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side、正晴

 

 

「束!そっちはアリーナだぞ!?」

 

 

「なんかオーレンドルフさんが呼んでる、もしかしたら何かあったのかもしれないから様子見てくる!はるるんはちーちゃん達の避難お願い!」

 

 

「オーレンドルフ首相が?・・・わかった、無理すんじゃねえぞ!」

 

 

「うん!」

 

 

 

 

あれからしばらくの後、オーレンドルフ氏との合流のため束と分かれた後、千冬達と共に避難路を駆けていた。

 

 

暮桜を台車で運びながらの避難だが、そこで私達はは信じられないものを見ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・なぁみとり、流石にこれは違和感すごいよな?」

 

 

 

「だね、さすがの私でも緊急時にこんな光景見れるとは思ってないよ」

 

 

 

 

 

「いったい何が起こってるんですかね?」

 

 

 

「一夏君、君割りと冷静だね?」

 

「まぁ、起こってる出来事自体は悪いことでは無いですからね、奇妙ではありますけど」

 

 

 

 

出入り口のゲートにたどり着いた私たちが見たのは戒厳令が発令されたパニックのさなか、軍楽隊の行進と同列かそれ以上の規則性をもって等間隔に並び、入り口へと向かう人々の姿だった

普通、こんなパニックの時はスタッフが主導しても出口はギュウギュウの雑多な詰め込み状態に至っているものなのだが・・・・・・ってか会場の軍やスタッフ達の誘導はテキトーにやってるような気がして機能してるように見えないぞ!?

 

 

 

 

「びっくりするくらいきれいな並びようだなオイ」

 

 

「順路に沿った並びでもここまできれいなのは早々ないんじゃないかなぁ?」

 

 

 

まぁしかし、それだけ規則的な行動のお陰で、自分達の予想よりも遥かに早くに避難が完了しそうなことに、1つの安堵を覚える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その人混みの中に、実況席ごと縛り付けられた状態で輸送されているハロルド首相と、そのすぐ近くで担架に抱えられて運ばれている爆睡中のオーレンドルフ首相を見つけたのは、それからすぐのことだった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side、束

 

 

 

「オーレンドルフさん、どうしたの?避難は?」

 

 

「ああ、実は束さんと急ぎで話したいことができてね、事態が一刻を要するから、避難が間に合わなくなったときのために設計上安全地帯になってるここで話すことにしたんだ」

 

 

「え?どんな話?ってかいずれにせよ避難のあとでもできそうなんだけどなー」

 

 

 

オーレンドルフさんからの大事な話の為にここに呼び出された私。

 

 

確かにアリーナの非常事態に備えて、フィールドの中央は建物の倒壊が起こっても、大型の輸送ヘリが安全に離着陸できる地帯となるように天井が無かったりするけど、いかなる理由とはいえ今話す理由にはならない・・・

 

 

と、すれば・・・・・・話が急すぎてまさかとは思うけど。

 

 

「まぁなんだ、必要な情報を伝えきるためにも取り合えずここら辺を静かにしようじゃないか?」

 

 

「・・・っ!貴方誰?オーレンドルフ首相じゃないのは確かにみたいだけど」

 

 

直後、本性の一部を表したオーレンドルフ首相の偽物が手を挙げると、アリーナへの出入り口が全て遮断されたのが見えた。

 

 

「それに、こんなことして何のつもり?まさかとは思うけどはるるん達にまで」

 

 

「それだった、既に会場内で事が起こっとるよ、まぁ、避難を迅速にする()()()()くらいはさせてもらったがね」

 

 

「・・・・・・くっ!」

 

 

 

「おわっと!?」

 

 

このままだと不味いと判断して一発殴りかかってみたけど、綺麗な身のこなしであっさりと避けられてしまう。

 

「ケータイもダメか・・・」

 

 

不味い、本当に不味い、はるるん達との連絡が遮断され、完全に孤立した。

 

 

「・・・・・・私をどうするつもり?、誘拐でもするの?」

 

 

「だから急ぎで話したいことがあると言ってるだろう!!、・・・・・・まぁいい、こうなるのは目に見えていたしな、ちと早いが・・・」

 

(ガサゴソガサゴソ)

 

 

 

私が出した質問に男はやけにめんどくさそうに答えた後、男はその変装?を解き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・え?、はるるん・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

そして、私が、変装を解いた彼がはるるんの姿にそっくりだと気づいて愕然とするのに、それほど時間はかからなかった・・・・・・

 

 

 

 

 

~続く~



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一人の男と義照の辿り着いた者

流石にモント・グロッソの話も終わりへと向かいたい所


side、正晴

 

 

 

 

 

「ハロルド首相!?オーレンドルフ首相!?」

 

 

「くそっ!離しやがれ!コンチクショウ!!」

 

 

「zzz.。o○」

 

 

 

出入り口へ向かう私たちが見たのは、抵抗むなしく独軍の屈強な警備部隊に連行されるかのごとく連れていかれるハロルド首相と、爆睡したまま担架で運ばれるオーレンドルフ氏だった。

 

 

また、私自身は専門外なので確信は無いが、ハロルド首相を除けば、拘束する警備部隊に限らず辺り一帯の人々をよくみると、皆一様にして()()()()()()動いている。

 

 

さっき束はオーレンドルフ首相に手招きされて彼処に向かった、と言うことはつまり・・・・・・

 

 

 

私は何が起きているのかをある程度察し、束の元へと引き返すことにした。

 

 

「みとり達は先に避難しててくれ!、俺は束のところへ行く!」

 

 

 

「正晴!?ちょっと!」

 

 

 

「話す余裕がない!」

 

 

 

束の身が危ない、今この場にいるのが本物のオーレンドルフ氏だとすれば、さっき束を手招きしたのはオーレンドルフ首相に変装した何者かと言う事になる。

 

 

しかも大会自体が長丁場にかつ昼休憩を挟んだものであった為、どのタイミングで入れ替わったのか?或いは最初から偽者だったのか?、それは解らないが、どれだけ短くとも、試合実況のため試合中大体は隣にいたハロルド氏が決勝戦開始から決勝が中止になる段階までは違和感を覚えなかったほどだ、その点も含めて非常に巧妙な変装能力がある。

 

・・・・・・もしかすれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性すらある。

 

 

こうしてはいられない、急いで戻らねば!

 

 

束、無事でいてくれよ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 束、

 

 

 

 

「始めまして、と言うべきか?まぁその様子だと私の遺伝子は恐ろしいほど仕事をしているようだが」

 

 

 

 

 

変装を解いて私の目の前に現れたのは、殆どはるるんと言っ良いほどに似た一人の男性だった。

 

(違う点を挙げるとすれば、目の色が日本人としてはごく普通の黒であるはるるんと違い、彼は灰色である点ぐらいだろうか)

 

 

 

「まぁ話を早くする必要があるし、取り合えず自己紹介と起点となる話をしよう」

 

 

その人物は今だ困惑する私を気にしつつも、放置するかのように話を続ける。

 

 

 

「私の名前は、村ノ瀬 正成(むらのせ まさしげ)、正晴は私の()()に当たる人物だ、そしてざっくり聞こう。」

 

 

 

「、話って言うのは、《私からの伝言》と・・・・・・《織斑姉弟の家族に関する話》な訳だけども、ぶっちゃけどっちからがいい?」

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・驚きがあっという間に一周回って逆に冷静になってしまった。

 

 

幾ら姿がはるるんそっくりだからと言えど、余りにも話すことがピンポイントだ、ちーちゃんの家族の件はJAXAではタブー視され口外禁止になるほどだったのに、どこからその情報を聞き付けたのか逆に知りたくなってしまった。

 

 

なんせ、ちーちゃんの家族の事を知ってるとまで言うのだ、とてもそうとは思えなかったが、この時、その胡散臭さが私が回答を躊躇わない理由にもなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん・・・それじゃあまず貴方からの伝言とやらからを聞こうかな?わざわざ私をここに閉じ込めておいてつまらない話は聞きたくないけど」

 

 

 

 

「だろうな、まず1つ、これは私のひ孫に当たる正晴へ、《私の真実は根元に眠る、そこに私の咎と共に眠る、パンドラの箱を開けたいのならば私にかかわる古業を知る覚悟をせよ》」

 

 

「二つ目はアンタと千冬さんへ、これはバミューダへの航路の最中解析した白騎士と、トルコから一時的にパクった打鉄、ティラノプテルスの解析からの結果だが、予想が正しければ《千冬さんの弟、一夏くんだっけ?、はISに関する適性を有している可能性が非常に高い》、今のうちにその事を想定して準備しとくと良いぞ。」

 

 

「3つ目は槇田元首相へこう送ってくれ、《親と同道はどうでもいいが、動きすぎると親と同じく早死にするぞ?》とね」

 

 

 

 

 

「・・・・・・え?」

 

 

 

 

正直、何を言ってるのか解らなかった。

 

最初の言葉はまるで意味が解らなかったし、白騎士が解析されてるなんていってるし、いっくんに適性があるってどうやって・・・

 

 

 

言いたいこと聞きたいことはたくさんあったが、続け様に彼は更なる話を続けてくる。

 

 

「・・・まぁ、幾ら天才と言えどもここまで来ると理解しきれんだろうし、今内容を纏めた紙ペラと()()()()()()を託しておくとしよう、ちょっと待っててくれ」

 

 

 

 

色々と聞きたいことができて混乱する中、彼は一番近くのドアを開き、そこから何かを抱えてやって来る・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?誰かを抱えて…!?、ちーちゃん!?」

 

 

 

 

 

そして、再びの衝撃が私を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side、義照、数か月前のとある日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モンド・グロッソの開催が近づき、世界中がにわかに沸き始めた数か月前のあの日、私は待ちに待った報告をとあるところから電話で受けることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・私だ」

 

 

「槇田首相、やっと件の情報を収集し終えました、今更ながらではありますがご報告させていただきます。」

 

 

「・・・私は元首相だぞ?」

 

 

「依頼時点では首相でしたので」

 

 

「はぁ・・・まぁいい、報告を続けてくれ。」

 

 

 

 

電話してきたのは日本の情報省の長官(つまり情報大臣)で、彼ら情報省の人員には、おおよそ10年近く前、まだ束や正晴が「白騎士」を開発していた初期の頃、日本の情報省に命じていた織斑千冬、一夏姉弟の家族構成、行方等に関する情報を調べさせていた。

 

 

 

そして、この日ついにそれに関する報告がでて来たのであった。

 

 

 

「・・・しかしここまでこだわるって、首相に何があったんですか?どれだけ時間がかかってもいいからと言われたんで確実を期すために結果10年近くかけてしまいましたが・・・」

 

 

 

「大臣、首相になる前の私の職は知ってるな?」

 

 

 

「・・・・・・ああ、成る程、首相は元々警察の方でしたっけ?」

 

 

 

「割りと一般人には忘れ去られている側面だがね」

 

 

「私刑は現代社会では論外ですよ?」

 

 

「只の人探しくらい大したことないだろう?それよりも報告を続けてくれ」

 

「はぁ・・・解りましたよ、」

 

 

一通り大臣とやり取りした後、彼からの報告を聞く。

 

 

「まず最初に、織斑氏の家族構成でしたが、予想に反して一夏君、千冬さん、ご両親の他にもう一人、織斑 円香(まどか)と言う名の一夏くんの()()()()に該当する女の子の()()()()であることを確認しました」

 

 

 

「五人家族!?んなバカな!?」

 

 

 

「・・・話は続いてます、問題はここからです」

 

 

「問題?」

 

 

「まず、織斑夫妻の行方不明の理由に関してなのですが・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・私の回想から語れるのはここまでである。

 

 

だがこれだけは言える。

 

 

あの日私はそれまでの奇妙な人生に、自分では予想だにしなかった()()()があったことだけは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、今日、私は見つけた。

 

 

 

 

 

 

「ゼェ・・・ハァ・・・ゼェ・・・ハァ・・・見つけた、やっと見つけたぞコンチクショウ・・・」

 

 

 

「・・・・・・見つかっちゃったか」

 

 

「・・・まぁ、こうなることは予想できてたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・一夏と千冬に・・・ゼェ・・・ゼェ・・・説明してもらうからな・・・・・・ハァ・・・ハァ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が店から飛び出してどれ程たったのだろうか?、私は偶然の発見を元に、やっと千冬の両親を見つけることができたのである・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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「マドカ」と二人

 

 

side、束

 

 

 

「ちーちゃん!?いや、にしては背が低いし、それに・・・・・・」

 

 

 

正成と言う男が抱えて連れてきたのはちーちゃんと瓜二つの少女、

 

 

正しく言えば身長の関係で昔のちーちゃんにそっくりだと言うのが正しいのだけど、とにかく目の前には凄まじい光景があるのは理解することができた。

 

 

 

「織斑マドカ・・・私の調べが間違いなければ、君の親友の妹で、その弟君とは双子の姉に当たる子だそうだ」

 

 

「数年がけの洗脳、監視用の脳破壊機構を有したナノマシン、よりにもよって京都のダミー企業に秘匿されていたその存在、お陰さんで探すのと治療するのとで10年近く期間を要したぞ、コンチクショウが」

 

 

 

「・・・・・・助けてくれたの?」

 

 

臆面もなくこの子がちーちゃんの()()だと言い切る男に、私は短く質問した。

 

 

 

「助けた?この状態で助けたと言えるか?私が助け出すのが遅いが故に()()()()、特に姉の方は「親無し」と言う実質的な孤独をこれでもかと言わせんばかりに味わってきた!この子もこの子で私と会うのがもっと早ければ、元来の優しさと洗脳による狂気の狭間で七年もの間苦しむことなどなかっただろうに!」

 

 

 

「・・・・・・優しいんですね、」

 

 

 

質問に答える男の声は怒りに震えていた、強い自己嫌悪と後悔に苛まれているのがそれだけでわかったほどだ。

 

 

 

だから私は、この時、後に続く一連の話の時も、この人の発言の一つ一つに潜んでいた「おかしさ」の殆どに私はついぞ気づけなかったのだ。

 

 

「・・・・・・はははは、借者とはいえあの()()()()()()()()()()()()()()()()()見たからなんだろうね、それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、本物はどうな行動をするか私でも予測がつかん」

 

 

 

 

 

「正成さん・・・・・・」

 

 

 

「・・・その子の後事を託す、こいつを持っていけ」

 

 

 

 

 

彼はそう言い放つと、私に1つのアタッシュケースが私の足元に置かれた 。

 

 

しかし当然ながら私の両手はマドカちゃんを抱えるのに使っているので、持っていきようがない

 

 

 

「ちょっ!持ちきれないよ!」

 

 

 

「もうすぐ人がやって来るから気にするな、あ、最後に警告を残しておく」

 

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《女性権利団体》、《亡国企業》、《村ノ瀬正成最大の業》、《流星宰相負の遺産》、ISを巡ってなされる咎は、まだまだ続いてしまう・・・・・・」

 

 

 

 

「絶対にとは言わんが、私のようにならんでくれよ?()()、篠ノ之 束さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぞくっ」っと私の背中が震えた、

 

 

この男は私たちのどこまでを知っているのだろう。

 

 

ISを開発していた頃から心の内で恐れていた「もしも」の私。

 

 

はるるん、よっしー、みとりん、行信さん、それにJAXAの人達、

 

それらの人々に()()()()()()世界の私の事を考えては未だに恐怖している。

 

 

その事を完全に見透かされたようで、怖かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではまた会おう、まぁ、そんな日が訪れなければいいのだがね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐怖でマドカちゃんを抱えたまま呆然とする私を尻目に彼は会場の自動ドアを1つ開けて去っていった。

 

 

 

そして、入れ替わるようにはるるんがここにやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「束!大丈夫か!?」

 

 

「う、うん・・・・・・、ちょっと話疲れちゃった」

 

 

「・・・・・・色々と聞く必要のあることがあるが、取り合えず避難しよう、体は大丈夫か?」

 

 

「まぁなんとかね、はるるん、ケースお願い、私はこの子をちーちゃんの元へと連れていかないといけないから」

 

 

 

「!?、そうか…無理はするなよ?」

 

 

はるるんはそう言うとケースを取り、私と足並みを揃えて歩くようにしてくれた。

 

 

 

「すぅ・・・・・・Zzz」

 

 

「良い寝顔してるなぁ・・・」

 

 

「・・・ふふふふっ、今ちーちゃんといっくんの所に連れていってあげるからね?」

 

 

私は安らかに眠るマドカちゃんを抱えながら、私は、はるるんにちーちゃんの所へと連れていってもらう事となった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side、義照

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分とあっさり付いて来ますね、私は公的な立場でもってあなた達を連れている訳では無いのに」

 

 

 

「・・・娘達が世話になってますから、まぁ、今の私たちに千冬と一夏を実子と言い張る資格は無いに等しいのですがね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ千冬が物心ついたばかりの頃に二人の元から去り、長らく行方不明となっていた千冬の両親が見つかった。

 

 

私が世界各地を旅して回った()()()()の理由であった《織斑夫妻の痕跡の捜索》は、あまりにも意外な形で達成されることとなったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「何故千冬達を捨てたのか?」

 

 

「何故今このタイミングでモンド・グロッソ会場付近にやって来たのか?」

 

 

千冬から両親の話を聞いた時から思っていた事や今さっき気になり始めた事を一旦胸の内に押さえ込み、今現在は二人を今頃決着をつけたであろう千冬とそれを祝ってるであろう一夏達に引き合わせる為、夫妻を発見した裏路地から会場へと向かっていた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・そう言えば名前を名乗ってませんでしたな」

 

 

「大丈夫ですよ、義照さん、イギリスのテロ事件の件とかで貴方の名前と顔はよく聞いてますので」

 

 

「それではお名前の方をお聞きしても?」

 

 

 

「・・・織斑 一春《おりむら かずはる》です」

 

 

「織斑 千秋《おりむら ちあき》と言います、」

 

 

 

 

・・・二人とも非常に表情が暗い。

 

 

余程後悔してるのだろうか?二人にはまず許され無いであろう行為をしたのを重く受け取っている分、私の想像した反応と比べてかなりマシではあるが。

 

 

 

其にしても、二人に振れそうな話題が殆ど無い、この様子だと喋ってくれそうな事は大体千冬達が揃っていることが前提になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを思いながら会場に向かっている時、私のケータイが不意に鳴ったのに気がついた。

 

 

 

(ピッ)「もしもし?」

 

 

「繋がった!槇田元首相!突然なのですが、今そちらで起こってることは把握できてますか!?」

 

 

 

 

「ん?何がだ?」

 

 

 

電話相手は母国の情報大臣、私に千冬の家族に関する報告をしてくれた人物だ、しかし一帯何故?モンド・グロッソの速報でも入ったか?。

 

 

 

「何がって・・・・・・先程モンド・グロッソ会場付近の廃ビル群から謎の巨大機械が多数出現して付近で大暴れしてるんです!」

 

 

「んなっ!?、防衛のIS部隊はどうしたんだ!結構な数いただろう!?」

 

 

「ミサイルを乱射するタイプの攻撃であっという間に壊滅状態です、幸い、アルバン元帥の指揮と戦車隊の奮闘あって何とか人死には出てないですけど、モンド・グロッソが戒厳令で中止に追い込まれたりで会場一帯は大混乱です!」

 

 

 

「なんてこった・・・・・・!」

 

 

 

「槇田さん、あの・・・何があったんです?」

 

 

 

「・・・少し待っててください」

 

 

話を遠くから聞いていた千秋さんが心配そうに話しかけてくれたが、話をまとめるため取り合えず返事をしといて引き続き、情報大臣の話を聞く。

 

 

 

「・・・・・・で?その様子だとまだ何かあるようだが」

 

 

「問題はここからです、今、そちらに()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「・・・人もいないのにか?」

 

 

 

「はい」

 

 

 

「嘘だと言いたいところだが・・・正直どうしようもないな、わかった、取り合えず先に千冬たちに合流する」

 

 

 

「了解です、取り合えず、混乱が混乱が酷い様子ですから、気を付けてください、では」

 

 

 

 

 

取り合えず千冬の両親の事を話すのは後回しにして電話を終える。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・不味いな、大会中止と言うことは、決勝の試合中に、つまり私がテレビから離れてから事は起こったわけで、ともなれば激しい戦闘の直後で千冬や他の参加者のISも動けない可能性が高い、情報大臣の話から察するにまだ会場には到達してない様子だが・・・・・・

 

 

しかし、白騎士は何故千冬の元に?、まぁそれを考えている場合ではないか。

 

 

「・・・改めてお聞きします、槇田さん、何があったんですか?」

 

 

 

「会場に向かって謎の大型のロボットが進撃してるようです、千冬達が危ないかもしれません」

 

 

 

一春さんが改めて電話内容を聞いてくる、情報大臣とのやり取りではあるが、別段内容は現状報告でしかないので、誰からかは伏せて簡潔に話したのだが、これがいけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことが!?、まずいッ!」

 

 

「一夏!、千冬!」

 

 

「ちょっお二人供!!」

 

 

 

あろうことか私を置いて二人が会場の方へと突貫していったのだ。

 

 

 

追いかけようにもさっき追いかけたのとは比にならない早さのため、直ぐに見失ってしまうこととなった。

 

 

 

 

 

「くそ!、無事でいてくれよ!!」

 

 

 

 

こうして、私は二人を気にかけながら大急ぎで会場へと向かうことになったのである。

 

 

 



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大会会場の片隅で・・・

やっとこさの投稿です。

こんなに遅れてしまい待たせた方々には誠に申し訳ございません。

久方ぶりの投稿です

今話でとうとう・・・・・・と言ったところでしょうか。

多少展開に無理がある気がしないでもないですが、とにかく兎に優しいIS世界、更新停止状態からやっとの復帰でございます。

ではあまり進んではいませんが本編の方をどうぞ。



~side千冬~

 

 

 

「ハロルド首相、いったい何があったんです?」

 

 

正晴がいきなりどこかへと去っていったあの後、私は急いで拘束されているハロルド首相を拘束している人物を引き離して開放し、他の人から離れたところに移って急いで事情を聴いていた。

 

 

 

 

 

 

「それが・・・私もさっき気づいたんだが・・・・・じつは決勝戦までにいつの間にか、オーレンドルフが偽物とすり替わっていたんだよ…」

 

 

 

「偽物!?じゃああの決勝戦実況は完全に偽物が行っていたということで?」

 

 

「突然湧いて出たジジイ口調がなければ偽物と判断するのは無理なほどに見た目も声もそっくりだった・・・、私も完全に油断していたよ、本物はどこかしらの休憩タイミングからずっとあのまんま、ってところだ。」

 

 

 

「ん?ちょっと待って、じゃあさっき正晴さんがどっかいったのって!」

 

 

「・・・・しまった!、束と正晴がいないのは偽物に・・・!」

 

 

一夏の一言で私はまずいことになったことを今更悟った、多分だが、束は偽物のオーレンドルフ首相におびき寄せられたのだ、正晴はそれに気づき一人で・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・大丈夫だよ、ちーちゃん」

 

 

「戻ったぞ千冬、とんでもない同行者が出来ちまったがな」

 

 

「束!正晴!」

 

 

 

「どこ行ってたのふた・・・ちふーがもう一人!?」

 

 

「千冬姉が増殖したあ!?」

 

 

言葉を続けようとした処で遮るかのように戻ってきた二人だったが、二人を心配したことだとか、どこに行っていただとかの疑問だとかは、束に抱きかかえられている私そっくりの少女によって全部吹っ飛んでしまった、当たり前だが一夏達も驚きのあまりその場で固まっている。

 

 

 

「・・・・・・ふぁぁ、なんだね、そこの皆一様に驚いて・・・千冬嬢が二人いる!?」

 

「あ、オーレンドルフ!キサマいつからのうのうと寝転んでいやがった!」

 

「いつからって?大会は今日の・・・今トーナメントはどのくらいまで進んでいる?」

 

「お前まさか最初から・・・ッ!」

 

「両人とも、その話は後にしてください、それにしても二人とも何処にいってたの?」

 

 

今更起きたオーレンドルフ首相と、ハロルド首相が話をしてる間に二人から事情を聞き出す。

 

「私はちょっと偽物に呼ばれてアリーナ中央へね・・・そこで偽物と話をしてたんだ」

 

「私は事が終わった後に追い付いたから、コレから話すことは、束からの伝え聞きだが・・・その子はその人物が保護していた子らしい」

 

 

二人から事情を聞くに辺り、当然ながら私そっくりの少女の話に移るのだが、その話は、私に衝撃を与えるには、あまりに十分すぎるものだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にわかには信じがたいが、一夏くんの双子の姉で、千冬、君の妹さんなんだそうだ」

 

 

 

 

その一言でまずその場が沈黙した。

 

そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・え?」

 

 

束と正晴を除いたこの場の人物全員(私も含む)が、呆然としながらこの一言を呟いた。

 

 

 

私の妹?、一夏以外に血の繋がった家族がいなかった私に、いきなり降って沸いて出た妹の存在。

 

 

幼い頃に私と一夏を捨てた両親ならばともかく、私に妹がいたなんて事は全く身に覚えがない。

 

しかし、目の前の少女は少なくとも私と姉妹かと言われたら誰もが頷くであろう程にそっくりであり、体格から見れば一夏の双子の姉と言うより明らかに一夏の妹に見える事を除けば、私とこの少女に血の繋がりがあるであろうとは簡単に予測が付く。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「ちーちゃん?、・・・完全に固まってるね」

 

 

 

 

・・・・・・なんと反応すれば良いのか、まさかこんなタイミングでこんな出会いが起きるとは夢にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりにも急すぎて思考がフリーズする、だが直後にもっと衝撃的な出会いがサプライズプレゼントかのように襲い掛かって来るのである・・・。

 

 

 

 

 

-side out-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side 束~

 

 

 

 

 

 

「・・・完全にちーちゃんといっくんが固まってるよー、はるるん、コレどうしよう?」

 

 

「どうしよう?って言われてもなぁ・・・早いとこ我に返させるか無理矢理連れていくかしないと・・・」

 

 

やっぱりと言うかなんと言うか、ちーちゃん達にマドカちゃんの話をしたら完全に固まっちゃった・・・移動しながら事の経緯を説明したはるるんはむしろ自分と同じ名字の人物が偽物の正体だったことに驚いていたけど、はるるんは「村ノ瀬 正成」と言う人物は知らなかった、自分の先祖に同名の人物がいるかもしれないが、ともいってたけど。

 

 

「・・・んでどうするの?まさかこのままちふーをほったらかしにするわけにもいかないでしょうし、オーレンドルフさんが運ばれてきた担架でも使う?」

 

「どうしよっかな、こう言うときのために鍛え上げた私ならマドカちゃんといっくんを担いで運ぶ位なら余裕だけど、ちーちゃんも固まってる訳だし・・・」

 

「その子はマドカって言うのか・・・ブリュンヒルデの妹と聞いただけで変な期待をしてしまうのは俺だけか?」

 

「安心しろ、私もだ」

 

マドカちゃんの名前を出したことに二人の首相が反応する、まぁ確かにちーちゃんの妹だからそういう期待したくなるのはわかるけど・・・

 

 

「千冬を担架で運ぶか?」

 

「そうしよっかな?」

 

結局オーレンドルフさんが載ってた担架を使うことで固まってるちーちゃんたちをどうにか運び出す算段がついたのだけど、この時、状況をすっかり忘れさせる出来事がすぐに起きるとは、流石の私も予想のしようが無かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏ああぁぁぁぁァァァァァ!!、千冬ううぅぅぅぅゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 

 

「そこを、退けェェェェェェェェ!」

 

 

 

「うっわあっぶなっ!」

 

 

 

突然遠くから叫び声がしたかと思うと、私とはるるんの目の前を二人の人物が物凄いスピードで通過していった。

 

そしてその直後、

 

 

「一夏!千冬!一夏千冬ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!一夏千冬一夏ぅううぁわぁああああ!!! ぶじでよがっだぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「円香!円香!円香!円香ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!円香円香円香ぅううぁわぁああああ!!!やっど会えだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

女性の方が固まってるちーちゃんといっくんを無理矢理抱き締めて脇目も降らず大泣きしながら叫び、男性の方も男性の方で、私からあっという間にマドカちゃんを奪い取るとマドカちゃんを抱き締めながら泣きじゃくり始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ、ふぁにふぉすふるぅ!」

 

 

「いきふぁりどうふぁってんふぁこふぇ!」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・うわぁ」

 

固まってた二人はいきなりの出来事に我に返るも、女の人にもみくちゃにされているし、マドカちゃんは目を覚ましてしまったけど目の前の男の人迫力に圧されて何も言えずにいるし・・・ってか二人とも、二人とも高身長かつ結構白髪が混じってるってだけで見た目はちーちゃんといっくんにコレまたそっくりだし・・・・・・。

 

 

「なぁ束、あの二人、もしかして・・・・・・」

 

「・・・だよね?絶対そうですよね?あの二人ちふー姉弟の・・・ですよね?」

 

「・・・・・・だと思う」

 

「なんと言うか、ここまで来るとクレイジーさを感じるな」

 

「また胃がいたくなりそうだ・・・・・・」

 

 

色々と言いたくなることが出てきたが、大の大人が目の前で見せる恥ずかしい光景を見て取り敢えず落ち着いた私達、ちーちゃん達は相変わらず二人にもみくちゃにされてるが、多分あの二人がちーちゃん達の両親なのだろう、胃を痛めるオーレンドルフ氏にしろクレイジーと言い放つハロルド首相にしろ私にしろ、その事はこの場にいた全員が確信した事だった。

 

 

「束!正晴!取り敢えずみんな無事か!?」

 

「義照さん!いらしてたんですね」

 

「よっしーがどうしてここに?」

 

「クッソ冷静だなオイ」

 

「正直あの二人を見ると、我々は焦ってるのがバカらしくなってね・・・・・・」

 

 

私達が冷静にあの光景を見つめていたら、よっしーがやって来た。

 

衝撃的な光景を見て冷静でいられる私達に真っ先に疑問を呈したが、オーレンドルフさんの一言がその答えの全てを物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・取り敢えず、あの二人を落ち着かせて状況を整理するのが優先かなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

-side out-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、しばらく前に篠ノ瀬製作所を飛び出した白騎士は、一路ドイツへ直行し、有人飛行では到底出せないであろう恐ろしい速度でもって、まもなくモンド・グロッソの会場に到着するかといったところまで迫っていた。

 

 

そして何よりも、その身を流星のように光らせ突き進む白騎士には、ある1つの大きな変化が起こっていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくて、日の本を救いし白き騎士は、その身を流星とし遥か西洋、ドイツのその地に再び舞い降りる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

~続く~



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再会、そして・・・・・・

微妙に歯切れが悪いかもしれない今話、次で長かったモンド・グロッソのお話はほぼ終わりとなります。


side 義照

 

 

 

 

 

「・・・・・・この感じだと、やっぱり二人は俺と千冬姉の両親で、円香は俺の姉さんってことなのか?」

 

 

「・・・両親に関しては私が保証しよう、この二人こそ、一夏と千冬のご両親、織斑 一春氏と、織斑 千秋氏だ」

 

「円香ちゃんに関しては・・・私が保証するよ、織斑 円香、長らく行方不明だったいっくんのお姉さんだよ」

 

「・・・・・・血筋に関しては後でDNA検査なりなんなりでほぼ結論がつけられるだろう、んで、そこのご夫妻、何か言いたいことはありますか?」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

モンド・グロッソ会場にたどり着いた私は、そこで束達と合流すると共に、長らくの間ほぼ離散状態であった織斑家の面々が全員揃った瞬間に出くわしたのだが、正直気まずい。

 

 

あれから暫くたって、ようやく一夏が絞り出した疑問も、私と束があっさりと答えてしまい、話が両親の方へと向かうのに対し、二人は非常に申し訳なさげにその場で正座して縮こまったまんま動こうともしゃべろうともしない。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・もう我慢ならん!!」

 

「おい、ハロルド!!」

 

長い沈黙が場を包む。

 

あまりにも長い沈黙に、ハロルド英国首相がたまらず二人の胸ぐらを掴む、オーレンドルフ独国首相が止めるが、それを無視してハロルドは二人に詰め寄る。

 

「・・・改めて聞くが、あんたらは本当に、織斑千冬、一夏、円香、以上三名の両親で合ってるんだよな?」

 

「・・・はい、」

 

「だったらなぜ言葉の一つも発せんのだ!?そんなに我々が威圧感たっぷりだったか?」

 

「・・・いえ・・・そう言う訳では」

 

「だったら何で10年近くぶりの家族の再開の場面で自分達だけ悦に浸っておいて、状況に着いてこれずおいてけぼり食らってる実の子供たちに何の説明しようとせんのだ!謝罪はおろか、自分の息子から投げ掛けられた疑問に何かしらの反応を返すことすらも出来んのか!?それでも貴様ら人の親か!?」

 

「・・・・・・ッ!」

 

「・・・・・・俺を見ずともいいからせめて自分の娘達の方を見ろや!自分達のやらかしたことから全力で眼ェ逸らしてんじゃねぇよボケが!!」

 

「・・・・・・ハロルド卿!」

 

「黙っててくれオーレンドルフ!!俺は嫌々ながらでも10年以上祖国のトップの座に居座り続ける羽目になってるからな!ここまでの根性無し相手には我慢ならんのだ!!」

 

「ハロルド・・・・・・」

 

非常に流暢な日本語で、紳士の国と呼ばれる英国出身の人間らしからぬ直情的な行動理念のままに千秋と一春を攻め立てるハロルド、英国首相迫真の物言いに反論できず項垂れる二人に更なる罵倒を連続して加え続け、二人をボロクソに貶す。

 

余りに鬼気迫りすぎてて私でさえドン引きするレベルの罵倒である為に、オーレンドルフ首相が止めにかかるが言い切る前にハロルド首相からの反論を受ける。

 

正直、言ってることは間違って無いと言えるので止めに入りづらく(本来ならその怒りは千冬達がぶつけるべきなのだが)、前後の動きからして、ハロルドが動かなければ束と正晴が動いていたであろうと察せた為、回りも非常に止めづらい状況に陥っていたのである。

 

「ハロルドさん、お願いですからそれ以上はやめていただけませんか?」

 

「「!?」」

 

「・・・・・・円香嬢ちゃんか、まぁ良いだろう、まだ言いたいことはあるが、私の口からはこれまでにしておこう」

 

「ありがとうございます・・・・・・お父さん、お母さん、私は、まずは姉さんと一夏に思いの丈をぶつけてほしいの、二人が何で一夏達から離れていったか私は知ってるから」

 

 

「・・・・・・・・・一夏、千冬、これから言うことは、本当のところは低俗な言い訳にしかならないと言う事を念頭に入れておいてくれ」

 

「・・・・・・・・・・・・わかった」

 

 

直情的になっているハロルドに割って入り、夫妻が話すタイミングを生み出したのは、以外にも目覚めたばかりの円香ちゃんであった。

 

 

円香ちゃんに促された夫妻は意を決したのか、千冬と一夏に面を向け、事の真相を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず、私達が二人から離れたあの日の事を話すわ、あの日・・・・・・千冬が7才の頃で、二人が生まれて半年と経たない頃だったあの日、まだ赤ん坊だった円香は、私達が二人を生んだ病院の手によってとある人身売買組織に売り飛ばされてしまったの。」

 

「えっ!?」

 

「円香は産まれたときから体が弱くてね、出産直後から容態が良くなくて、元気だった一夏と違ってあの日までずうっと病院に入院することになっていたの」

 

「んで、円香の付き添いで入院が必要になるから、容態が安定するまで一夏と千冬を柳韻さんの所に預けていた訳だが・・・・・・その日の朝、二人して寝起きに円香を見ようとした・・・・・・そしたら円香がいつの間にかいなくなっていたんだ」

 

「当然、騒ぎになって警察沙汰になるわけだけど、場所があまりにも不味かった上に、警察が到着して本格捜査に乗り出す前に犯人が失言して、それを追及し続けたのもあって、犯人は逮捕されたんだけど、円香は既にその組織の手に渡っていたんだよ」

 

「その後、犯人から円香を拐った組織の本拠地を教えられて、円香を取り戻すべくそのまま現地へと向かった・・・・・・向かってしまったんだ、この時、残される身となる一夏と千冬の事を全く考えずにね」

 

「・・・・・・ちょっと待って、何でそんなことが起きるような病院を選んだの?そんなことが起きる病院なんて事前に悪評とか出回ってそうだけど?」

 

織斑夫妻から語られ始めた事の経緯、実のところを言えばこの辺の事情は私も情報大臣から受けた連絡などから既に知っている内容なのだが、束達には伝えてないので、当然話を聞けば疑問符が付くような内容も出てくる。

 

不本意ながら、その辺の説明は私でも可能な範疇なので補足的に話に割り込むこととする。

 

 

 

「・・・・・・【自衛隊中央病院】、よりにもよって防衛省の膝元近くの病院で就任僅か3ヶ月の新任院長がやらかした特大スキャンダルのことですな?」

 

「おいおいおいおい!そんなことがあったのかよ自衛隊、」

 

「自衛隊中央病院!?なんでそんなところで!?」

 

「・・・・・・ああ、あの件か、確か【彼】がこの世を去ってから2年だったかな?、【彼】が亡くなって前の政権から政権交代したけど、そんで生まれた新政権の雲行きが怪しくなった頃だな、そいえばあのスキャンダルがトドメになって政権が空中爆散かまして、翌年に義照が政権を打ち立てたんだっけな」

 

「・・・・・・やはり、其なりに有名でしたか」

 

「知った時は、まさかあの事件の関係者に貴方達が混ざっていたとは思いもよりませんでしたがね」

 

 

少し簡易的に話を纏めれば、織斑夫妻は円香ちゃんの付き添いで、よりにもよって自衛隊中央病院での大スキャンダル(自衛隊どころか国の面子にも大きく関わる大事件、国際的な信用の失墜にすら繋がりかねないレベルである)に巻き込まれ、まだ赤ん坊であった円香ちゃんを売り飛ばされてしまったのだ。

 

事件自体は有名すぎるので、英国人であるハロルド首相でさえ概要は知ってる程だが、事件自体があんまりにもあんまりな内容だったため、解決後に報道がタブー視する半ば黒歴史と化し、束のような若い世代の人物は有名な割にはこの事件自体を知らないことが多いのである。

 

 

 

「まぁ、その事件の話は置いておいて話を続けるが・・・私達が円香を追いかけて組織を追いかけていたとき、この時既に私達の頭の中には円香を取り戻す事しか無く、人身売買組織を物理で壊滅させた後も、組織を経由して何処かへ売られてしまった円香を探し求めて世界中を歩き回ってしまったんだよ・・・ただひたすらね、」

 

「ただただ、円香を取り戻すことが大事だと考え、その考えのままに何年も何年も【裏の世界】を渡り歩くことになったの、追いかけては離れて行く円香をただひたすら、ただひたすら追いかけて・・・・・・ね、」

 

「・・・・・・・・・気がついたのはそこから更に数年、ISの開発がJAXAで始まったことが英国で報道された時の事だった。」

 

 

 

本筋に話を戻せば、織斑夫妻は円香ちゃんを追いかけ何年もの間世界中の裏社会を渡り続けた、そして、その間に忘れていた一夏と千冬の存在を思いだしたのは、よりにもよってISの開発がスタートしたその日のことであった。

 

そして・・・夫妻は壊れたかのように己の心中を語り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新聞に載っていた記事と、そこにあった束さんと千冬とのツーショット写真こそが、私たちが捨ててしまった娘達の事を思い出させたの」

 

 

「奪われた円香を追いかけるあまり、円香と同じくらい大切な一夏と千冬を蔑ろにしてしまった、大切な娘と息子を二人だけにしてしまった・・・・・・それに気づくのと、柳韻さんの所が一夏と千冬の面倒を見てくれたのに気がついたのはほぼ同時だったんだよ」

 

 

「円香を見捨てたくない一心で動いていたこれまでの私達は、千冬達を見捨てていた・・・・・・自分のやった行いの罪深さを思い知らされた時だったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【死にたい】、あの時ほどそう思った時はないものだった、立派に成長していた千冬の姿を見た時、自分達が許されない存在だと気づいた、何故私達は二人を見捨てるような事をしてしまったんだ!、円香もそうだが、千冬と一夏も私達の子だろう?それを何故捨てた!・・・・・【私達はもう必要ないのだろうな】、・・・・・・心の内で悲鳴を上げた私達はそれから暫くの間、廃人のようになって宛もなく世界を巡る事になったんだ・・・」

 

 

「それから数年、廃人同然だった私達の元に、ある人が訪ねて来たの、そしてその人はこう言ったわ、【取り戻したい物があるのなら、失ったのは自業自得が原因だとしても取り返したい日常があるのなら、懺悔してでも迷惑をかける覚悟をしてでも、これまでにやらかしたことよりも遥かにすさまじい事をやらかす事となってでも、()()()()()】」

 

 

 

 

 

「【()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、】・・・・・・【()()()()()()()()()()()()()】・・・とね、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが私たちを拙いながら再び動かす原動力になった、もう過去の事をどうこうできる訳じゃない、だったら、進んできた道を突っ走っていくしかない、」

 

「廃人のようになってた頃に円香を探す手がかりは失ってたから、それも含めて一からの出直しになった、あれから私達は《円香を取り戻して一夏達の元に帰る》、ことを念頭に、犯罪組織を片っ端から潰しては円香の手がかりを探し求めた、円香を取り戻して帰った後、千冬達にそれが原因で迷惑ががかかるとも思ったけど、千冬達にありとあらゆる意味で恨まれるだろうとも思ったけど、そんな事は最早どうでも良いとすら思うほど、私達は狂い切ることにした」

 

 

「そして話はつい最近に戻る、大会開始前の第二回モンド・グロッソの会場、つまりココ付近に円香らしい子が若い男性に連れられて会場を下見していたと言う情報をつかんだ私達は、千冬達に会ってしまう危険を承知で、ココにやって来た・・・・・・のはよかったんだが、」

 

 

「義照さんに見つかって・・・今に至る、って所になるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「最後にこれだけは言わせて(言わせてくれ)・・・・・千冬、一夏、円香、三人とも本当にごめんね・・・・・ごめんね・・・・!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い長い二人の語りが終わった。

 

それから二人は感極まってとてもしゃべれる様子ではなくなり、それに合わせて千冬も夫妻と似た様子になる。

 

束と正晴は心中複雑なようで、なんと言えばいいのか困る表情のまま動こうとはせず、オーレンドルフ首相とハロルド首相は特に表情を崩さず様子を見守っているようだ。

 

 

(・・・・・・・・・まさか夫妻を訪ねたのは・・・・・・!?いや、まさかな、【彼】は俺の目の前で・・・・・・やはりあり得ん、)

 

 

私はと言えば、話の中にあった言葉を聞いて、とある人物を思い出していた・・・・・・心の片隅の中で【彼】なら事情を知ったと同時に()()()()だろうなと思いながら、されどそれはあり得ないだろうとも思いながら、脳裏にその人物を思い浮かべるのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 束

 

 

「・・・・・・ところでさ、千秋さん達が世界を回ってた頃、円香ちゃんはどうしてたの?」

 

「・・・俺もそれ気になった、父さんと母さんがどうしてたのかはわかったけど、円香姉さんはどうしていたのかは聞いてないし」

 

一春さんと千秋さんから話を聞いた、世界を巡る中で、裏社会とかいってたり犯罪組織を潰して回ってたとか色々と突っ込みたくなる物騒なワードが出てきたけど、取り敢えずそれは置いておいて、今度は円香ちゃんの方の事情も聞いておく事とする・・・ちょうどいっくんも話題に食いついてきてくれたしね。

 

 

 

「・・・・・・私はお父さん達から引き離された後、覚えている限りで一番古い記憶は【兵士】になるための厳しい訓練と、盲目的な兵士にするための洗脳を数年がかりで受けていました、私が助けられた?のはISが生まれて暫くたってで、もう洗脳の必要も無いほどに兵士として染まり、とある任務の為の準備に取りかかっていた頃です」

 

「任務?、テロの類いか?」

 

「いや、束、正晴両技師の暗殺かもしれん、」

 

「私は義照首相の暗殺かと思うんだが・・・」

 

「それよりもなんで助けられた?って疑問形なの?」

 

円香ちゃんの言った「任務」の内容が気になり予測しだすいっくんと両首相、ハロルドさん、オーレンドルフさんは本人の目の前で物騒な事言ってるなぁとか思いながら円香ちゃんに更に話を聞いてみる。

 

 

「・・・・・・命令の内容は【ニューヨークに再建された世界貿易センタービル、米国国防総省、ホワイトハウスの3箇所をISで襲撃することによる9.11の再来】、私はその中でも再建され、事件を忘れないようにと象徴的な姿へと変わった世界貿易センタービルへの攻撃を担当していました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっちょっまっ・・・(;゜∀゜)」

 

「ファーwwwwww」

 

 

ハロルド首相とオーレンドルフ首相が驚きのあまり露骨に焦り始める。

 

内容が内容なので無理もないけど、話を聞く限りは実行前に円香ちゃんは救出されたことになるわけで・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その頃です、正成博士が私を助けてくださったのは、あの人はたった一人で私がいた組織を物理的に潰して、私含めた少年少女の兵士達以外を血祭りにしたあと、私達を連れ去って行ったんです」

 

「その後・・・知り合いらしき人たちに他の子達を引き取ってもらってからは、長い間私の【治療】に付き添ってくださいました」

 

「正成って言うのはさっき話にあった科学者か・・・」

 

「一人でテロ組織をか・・・・・・下手すると戦闘能力はアルバン元帥と同等かそれ以上だなぁ」

 

「最初こそ当時の私からすれば仲間であった組織の人たちを子供以外血祭りに挙げた正成さんに反抗していたんですけど、長い付き合いになって行くにつれ、当時私の知らなかった姉さんや一夏の存在を教えてもらったり、洗脳から抜け出して、正成さんがお母さん達を探してる間に後に、一夏達の元に帰った時のために正成さんやその知り合いの方達から世間の事を教えてもらったり、日本の教育に合わせて勉強を教えてもらったり・・・・・・・・・」

 

「ん?ちょっとまった、正成氏が円香ちゃんに一夏君達との血縁関係を教えたとするなら千冬達の当時の状況を知っていたはず、なのに何故円香をそのまま彼の手元に留めたりしたんだ?」

 

「私が【まだ日本政府が織斑家に次女がいることを把握していない、DNA検査をすれば結果は自ずと、自然と答えは出るだろうが、結果が出るまでにマスコミに嗅ぎつけられて騒ぎになると面倒どっこではなくてな、マスメディアを甘く見ちゃいけない】って言ってました」

 

「【マスメディアは売り上げと大衆の関心を集めるためならどんな事実だって見つけて見せる、国家による統制だけが彼らに課せれる足枷であり、足枷が意味無かったり、足枷が弱かったりすれば、いかにせよ、最終的には国家はマスメディアによって亡びの道を行くことになる・・・もっとも、私の祖国はその真逆の例を突っ走って行ったのだがね】とも・・・・・・言葉の端々からマスメディアに良い印象を持ってない事がよく分かる人でした」

 

「それで、最近になってようやくマスメディアの動きが鈍ってきたからと私を姉さん達の元に連れて行ってくれると約束して頂いて・・・、嬉しくなって夜更かしして、早朝の5時頃に寝ついたら此処に・・・って所です、まさかお母さんとお父さんとも会えるだなんて思ってもいませんでしたけど」

 

「成る程、正成と言う男、国が円香ちゃんの戸籍を確認出来てなかった事を把握していたと見るべきだな」

 

「それどころか、あの人、槇田さんと情報大臣さんとのやり取りを逐次盗聴してましたよ?、10年がかりの捜索になったんでしたっけ?」

 

「・・・・・・・・・マジか、」

 

 

マスメディアの恐ろしさに関しては、私自身にも大いに覚えがある。

 

具体例を挙げようとすればキリが無いので省略するが、白騎士事件後のマスメディアの行動力にはうんざりさせられた記憶があった。

 

 

この時は義照首相から仕事を引き継いだ天ヶ瀬現首相が警察を動かしたり、関係各所に根回しを施して情報封鎖を行わなければ私だけでなく、白騎士の製造に関わった人たちにまで大きな被害が発生するところだったとはるるんから聞いているので、アレ以降、そもそも録にISに見向きもしてくれてなかった事とかも相まって、私もあまりメディアへの印象はよくなかったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、そんなわけで円香ちゃんの方も事情を話終えた訳だけど、改めて様子を見てみれば、いっくんと円香ちゃん達と、ちーちゃんとそのご両親との間に凄まじいギャップが形成されており、雰囲気の相違の激しさが目立っていた。

 

 

 

 

 

そんなわけでこの雰囲気どうしようか、何すべきかとか考えていたら、市街地の方から一台の装甲車がやって来た。

 

 

その装甲車は私達の付近に停車し、中からはアルバン元帥と在日米軍のロレッタさんが出てきたのである。

 

 

 

「束さん!、この状況は一体?」

 

「あー、ちーちゃんがやっと家族と会えてね、感動の再会してる所、」

 

「その割には雰囲気のギャップが・・・ってそれどころじゃない!今すぐ避難を!」

 

「・・・・・・おい束、あの空に見える光は一体なんだ?」

 

「光?・・・・・・アレかしら?」

 

アルバン元帥が避難を促すが、その話がはるるんの見た光によって中断される。

 

ロレッタさんも確認したその光を確認したとき、私はそれが何なのかを確信し、呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・白騎士?」

 

直後に発生する閃光、私達は抵抗する術もなくそれに包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして白騎士は主の元へと至り行く、大切な存在を守るため、主の願いを叶えるため・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、何処かで誰かがこう呟いた。

 

「【・・・・・・白き騎士よ、目覚めの時は今である、《遺志》を引き継ぎ至り行け、それが主の道である】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【・・・・・・・・・続く】



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白き騎士は主へ至る

今回はさりげなく準備してて出せないでいた、そして何より作者の出したかった千冬専用のIF機体の登場です!、IS募集をかける前から設定していたキャラと機体をようやく出せる・・・


 

 

~side、千冬~????~

 

 

 

「うう・・・・・・ん、ここは?」

 

 

「気がついたか、織斑千冬」

 

 

モンド・グロッソの会場付近で白騎士の光に飲まれた私は、気がつけば何がなんだかよくわからない真っ白な空間に横たわっていた。

 

目が覚めて起き上がってみれば目の前には科学者と思われる男の姿である、顔等の細かい部分はぼんやりとしか確認できないが、声からして恐らく男性で間違いないだろう。

 

 

「・・・・・・貴様は何者だ?、束や正晴達はどこだ?」

 

「此処か?単純に言えばISの・・・正確には白騎士のコア・ネットワークの内部だ」

 

「コア・ネットワークの?」

 

「【電脳ダイブ】・・・・・・川城みとり博士がISのコア・ネットワーク研究の一環で研究していた技術」

 

「確か・・・操縦者個人の意識をISの同調機能とナノマシンの信号伝達機能を利用し、IS操縦者の意識を保護神経バイパスを通して電脳世界へと仮想可視化して侵入させ、操縦者自身が直接ネットワーク上のシステムに干渉出来るようにする・・・だったかな?」

 

「・・・何故それを知っている?」

 

「私自身、訳あってずーっと白騎士のコア・ネットワークの中にいたからな、白騎士を通じて色々と話は聞かせてもらっていたよ」

 

「ああ、紹介が遅れたな、私はシステムM、故あって白騎士に紛れ込むこととなった古いシステムさ」

 

 

「システム?人じゃないのか?・・・まさか」

 

「・・・・・・確かに、白騎士も自らの意思を有するに至っているが、私の事ではないよ」

 

「・・・そうか、と言うかつまり貴様はここに居候してるわけか」

 

「それ白騎士も言ってたけど、地味に傷つくからやめてクレメンス・・・・・・」

 

 

 

 

目の前の男・・・システムMと名乗ったその男は自分が何者なのか、ここが一体どこなのか細かく教えてくれた。

 

 

ついでに一言加えてみたのだが、予想外に効いたらしい、と言うより白騎士に意識があると言う眉唾な話も地味に収穫であった

 

 

「・・・まぁ話を戻そう、君がここにやって来たのは【君が白騎士を求めた】のと同じくして、【白騎士も君を求めた】からだ」

 

「白騎士が私を求めた?」

 

「詳細は後で当人に聞くと良い、私はこの件に便乗して君を中継して人々に伝えておきたいことがあるんだよ。」

 

「伝えておきたいこと?」

 

「【会場を襲撃した二足歩行機械群】の事だ、タイムリーだろう?」

 

「・・・・・・続けてくれ」

 

始めに彼から伝えられた言葉は、何れも気になるものだった、白騎士のこと、あの機械の事・・・・・・・・・、白騎士の事については後で白騎士自身から語られるらしいから、私は男から会場を襲撃した機械の話を聞くこととした。

 

 

「あれの名前は【オートマン】、文字通り【自動で動く人形の機械】・・・・・・理由は私にはわからんが、結構昔から製造され続けているカラクリ人形の発展型だ」

 

 

「カラクリ人形・・・・・・?あれがか?」

 

 

「信じられんだろうが本当だ、しかも片腕しかない緑のやつは開発されたなかでも最初期の物で、一番古いやつは現在から遡って換算100年近く昔の代物だ」

 

 

「何だって!?」

 

 

100年・・・第二次世界大戦よりも前・・・まだコンピューターが本格的に生まれる前じゃないか、その頃に自律稼働機械・・・制作者は何者なんだ?

 

 

「んで、制作者は村之瀬 正成と言う、君なら名字で察しがつくか、すでに誰かから名前は聞いてるのではないだろうか?、ついでに言えば私と言うシステムを構築したのも彼だ。」

 

 

「正成!?さっき円香を束に引き渡してくれた・・・・・・!!」

 

 

「・・・その様子だと存命の可能性もあるか、とすれば年は・・・・・・今年の末で131か・・・」

 

 

村ノ瀬 正成、円香を助け出して私たちに引き合わせてくれた姿を知らぬ恩人・・・・・・名前からして正晴の遠い親族なのだろうが、いまだにどんな人物かよく分からなかったのだが、彼について一つ大きな情報を聞き出せた。

 

 

故に、正成と言う人物が非常に昔の人間であり、あの機械と目の前の男を文字通り【創って】見せたところから察するに、歴史に埋もれているだけで現代科学でさえ・・・ISの登場によって更に急速に発達した現代の科学の世界の視点でさえ、凄まじい人物であると見ることが出来たのだ。

 

「話を戻そう、さっき話にあった通りあの機械は時代を経て改良、改造されて今尚製造されづづけている、人々に知られずしてな」

 

「ちょっと待った、いくら自律してるからとはいえあれだけの大型ロボット、開発するのに多数の人員、資源が必要だろう?どうやってそれを・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・、【都市】があるのさ、オートマンのね

 

 

 

 

 

「都市!?人形の都市だと!?」

 

 

 

 

 

素朴な疑問への答えは私自身の予想の斜め上を行ったものであった。

 

 

あの大型機械・・・オートマンの為の都市があるのだと彼は言い切ったのだ、そして更に彼は言葉を続ける。

 

 

 

「その都市にはオートマンしか存在しない、正確に言えばいろんな姿をしているオートマンしかいないと言うのが正しいが・・・・・・ともかく、その都市には人は一切住んでいないのは確かだ」

 

 

「そこでは此処を襲撃した戦闘用のオートマンの他にも、オートマンを製造する工厰の役割をもった奴や、都市の維持を目的としたオートマンもいる筈だ。」

 

 

「ちょっと待った!さっきオートマンは今なお改良され続けているといった筈だな?」

 

 

その通り、オートマンの根本的特徴はISと同じく、自己進化にある

 

 

「・・・正確には自己改良、といった方が正しいがね」

 

 

「都市については・・・どこにあるかは私のデータベースには記録されていない、クソデカイ規模になってるだろうし、数には勝てんだろうから衛星やらなんやらで探して軍を動員すればすぐ解決するだろうが・・・」

 

 

「・・・そうか」

 

 

オートマンに自己改良能力があったことには驚かざるを得なかったが、あっさり解決できるだろうと言う彼の言葉に少しの安堵を覚える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《・・・ミスターM、長話が過ぎてて私たちの出番がなくなりそうなのだが?》

 

 

《本当のところ、話がしたかったのは私たちの方なんだけどな~居候さん?》

 

 

 

「ふぐばっ!?、あぼげっ!?」

 

 

 

「えぇ・・・・・・」

 

 

 

突然、話を切るように二人の女性の声がしたと思ったら、居候という言葉が再び来て精神的ダメージを負ったからか男がぶっ倒れる。

 

 

 

・・・と、同時に私の目の前、ぶっ倒れた彼の背中を踏んづけるように二人の女性が現れた。

 

「・・・・・・ワンピースの子に・・・私?」

 

 

《・・・・・・顔を隠していたのによくわかりましたね、Master》

 

 

《ほらね、だからいったじゃない、お姉様相手だと顔隠すだけじゃ無意味だよって》

 

 

「マスター?お姉様????」

 

片方は白いワンピースの少女、もう片方は白い鎧を着て鎧兜を被った女性。

 

なんとなく体つきが私自身に似ていたことから半ば疑問ながらに鎧の女性の素顔を推測してみたが、どうやら当たりだったようだ。

 

 

《・・・そうか、やはりMasterには敵わんか》

 

 

「お取り込み中すまんが流石に上に長時間乗っかられていると辛いことこの上ないから、私から降りてはくれんかねぇ・・・・・・?」

 

 

《ああ、そうだったな、スマン》

 

 

《ごめんなさい居候さん、すぐ降りるね》

 

 

「・・・・・・居候呼ばわりも勘弁願いたいのだがねぇ」

 

 

踏み台状態の男に促されて男から降りる二人、そして改まった状態で話は再開された。

 

 

《改めまして、はじめましてお姉様、私は白騎士》

 

《私は暮桜だ、マスター、改めてよろしく頼む》

 

 

「白騎士・・・暮桜・・・目の前の二人が・・・か、」

 

《これはコア・ネットワーク上における仮初めの姿なんです、本来は当然、いつもお姉さまが纏っているISの姿ですのでその辺は特に気にしなくて大丈夫ですよ?》

 

「ああ、そういえばここはコア・ネットワーク上なんだっけな、二人が人の姿をしていたからすっかりと忘れていた」

 

目の前の光景・・・ISである白騎士と暮桜が人の姿をしてる光景を一瞬信じられなかった私だが、すぐに白騎士を名乗る少女からフォローが入る。

 

話に気を取られて頭から離れかけていたが、そういえばここは現実世界ではなかったな、と思いながら話は続く。

 

「ところで何で暮桜もここに?ここは白騎士のネットワーク内なのだろう?」

 

 

《それは・・・・・・》

 

《私が暮桜を()()()()()からだよ・・・私もやりたくはなかったんだけどね》

 

「取り込んだ!?」

 

《白騎士を責めないで下さい、悪いのはMasterの力になりきれなかった私の不徳ですから》

 

「暮桜・・・・・・」

 

どうやって取り込んだだとか、色々と聞きたくなることはあったが、事実、暮桜は試合前に束や正晴に指摘された通り、機体が限界になってボロボロであったのだ、予備のパーツもすでに消耗しきっていたし、仮に再度組み立て直したとしてもすぐに限界が来るのは目に見えていた。

 

《私では最早マスターの役には立てない・・・あの決勝でそう自覚した私が、白騎士に頼み込んだんです、私の残ったすべてを託すから主の事を頼む・・・と、》

 

 

《だから私はお姉さまに許可をもらうことなく暮桜を取り込むことにしたの、ごめんなさい》

 

「・・・いや、気にかけることではないさ、束や気づいたら正晴も暮桜が無くなってる、何て事に気づくだろうが私が事情を話せば何とかなるだろうさ」

 

《・・・・・・いや、母上と父上に関しては特に気にしてないんだ、むしろ合体した後の姿を見てウキウキしながら私たちに色々とやらせて研究データを採取しようとする姿が見えるからな》

 

《だよねぇ、お父さんはともかくお母さんはデータ収集のためにお姉様をこき使いそうでねぇ・・・・・・》

 

 

「・・・・・・・・・・・・否定できんな」

 

 

暮桜に頼まれたから、とはいえ勝手に暮桜を取り込んだ事に負い目があったようで白騎士が謝ってくるが、暮桜が望んだのなら特に気にする必要もないので白騎士に自身の意思を伝え、序でに、事情を知らない筈の束達への対処は任せろと言っておく。

 

 

・・・・・・そうしたら上の言葉である。

 

二人ともある種の意味で信頼されているんだなと、さすがの私もこれには苦笑いをするしかなかった。

 

 

 

《それよりもお姉様、さっさと会場付近のロボットをサクッとフルボッコにして一夏様たちと共に日本に帰りましょう、行信おじさん達が日本で待っています》

 

「・・・・・・私が言うのもなんだが白騎士だけで大丈夫か?白騎士は宇宙空間へ向かうための存在だから最高速では旋回に支障がある筈だが?」

 

 

《マスターが不安を口にするとは珍しい、だがまぁ相手は完全に正体不明、それも仕方ないか・・・・・・だが案ずる必要はない》

 

 

「随分自信ありげだな?」

 

 

不安を口にするのは自分でも珍しいと思うが、何故かそれに対して暮桜がどや顔で返答を加える。

 

自分自身のどや顔を鏡写しに見たような気がしてなんとも言えない気分になったが、あまりの自身ぶりに根拠が聞きたくなってしまった。

 

 

《マスター、ISは基本的に自己進化をする度に形態変化をすることは覚えてますね?》

 

 

「ああ、アリーシャのテンペスタが二回、純香の轟天とカレン・オルコット夫人のブルー・ティアーズが一回だったか、」

 

《序でにに言えば、私が大会前に変化して零落白夜を完成させたのが最初の形態変化ですね、》

 

 

「懐かしい話だ、アリーシャとの決勝戦時にテンペスタが形態変化して、初見で分身戦法と戦う羽目になったんだったなぁ」

 

《出来たばっかのアビリティをあそこまで使いこなすとは思わず、結構熱い決勝になったんですよね、負けたらそれこそ総合優勝の座を渡すつもりだったほどに》

 

「結局は私の勝ちだったがな・・・・・・いかんな、大人げなく、あのときよりも熱くなれた今回の決勝をおもいっきり邪魔してくれたあのロボットに怒りがわいてきた」

 

今となっては懐かしい第1回大会の頃の思い出話に浸っていたら、さっきの決勝を邪魔された事に今更ながら怒りがわいてきた。

 

よし、潰そう、あのロボットとあれを動かした馬鹿を早急に叩きのめそう。

 

そう心に決めた瞬間、目の前の少女と騎士は姿を変え、そこには白騎士とボロボロの暮桜がいた。

 

 

《・・・・・・お姉様、準備はできております》

 

《私たちはマスターと共に有り続けていった中で疑問に思っていたことがありました》

 

「・・・・・・何故、稼働開始時期や実践訓練に標的としてしょっちゅう呼び出されていて、単純な経験、運用時間含めて圧倒的にアリーシャのテンペスタを越えていた暮桜が()()()()()()()()()()()()()()、そして、それ以外にISの基点でありスタートラインでもある()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()・・・だな?」

 

《 《Yes master》 》

 

白騎士達が抱えていた疑問は、私や束にも同様の事であった。

 

ISの自己進化機能がまるで機能してないように見える白騎士、形態変化に個体差があるからといって明らかに第二形態に移行しないことがおかしいと考えられるほどに経験を積んでいる暮桜。

 

この特に暮桜の方は形態変化が無かったからこそ機体にガタが来て結果的にボロボロになってしまったと言えるほどだ。

 

《先程、暮桜を取り込んでやっとわかったんです、お父さんお母さんでさえ分からなかった、私たちが形態変化しなかった理由を》

 

「・・・理由はなんだ?」

 

《元々私達は()()()()()になれるようにコアの時点で調整されていたんですよ》

 

「二つで一つ?」

 

《私たちの進化のシステムは少し特殊だったんです、二つのコアがそれぞれ別の方面の進化を司り、私達二人を合わせることで本来の進化システムを成立させられる》

 

《そして【その時】までに得た経験は()()()()()()()()()()()()んです、》

 

直後、二つの機体が光輝きながら私の目の前で融合し始めた、そして・・・・・・・・・

 

 

【・・・・・・さぁマスター、()()()目覚めのときは来た】

 

 

「・・・白騎士、暮桜」

 

 

【お姉様、お手を拝借、宜しいですか?】

 

 

「・・・・・・わかった。」

 

 

 

白騎士と暮桜は私の目の前で一つになり、そこには一機のISと、先程の二人がいた。

 

そして、白騎士に促されるままに、その機体を手でさわる。

 

白銀に輝く機械の翼。

 

暮桜や白騎士が使った大型の武器とは違う、人が普通に扱う程のサイズにまで小さくなった一つの剣。

 

 

「・・・フフフ、ブリュンヒルデの名にピッタリと言えるな、白騎士、暮桜二人とも私に合わせてこの姿になったのか?」

 

 

そして何よりも、白系統の色に統一され、人が着る鎧と殆ど差が無くなるほどにまで小型化し、ついでにどこから取って付けたのか白い羽で装飾され、おまけに千冬の体格にフィットするように出来た、最早ISと言うよりかは人が着る強力な鎧にしか見えないほどにまで変化した白騎士を見て、私は感慨深く呟いた。

 

 

「見た目は完全に戦乙女のそれだな・・・」

 

 

【どうですか、お姉様にピッタリでしょう?暮桜と一緒にいるとき、お父様、お母の考えていた案の他に、行信おじさんや義照先生、JAXAの皆さんの考えていた案、別途個人的に私たち二人のの間で考えていたパワーアップ案をまぜこぜにしたんです!】

 

興奮した様子で機体について私に説明してくれる白騎士。

 

暮桜もそのとなりで頷いてやっぱりどや顔をしている。

 

【・・・さてマスター、ついにこのときがやって来ました】

 

「・・・・・・?」

 

【マスターはその昔、私を纏ったまま、この力で一夏様達()()()()()とおっしゃられました。】

 

【そしてあの事件の時、白騎士を纏いながらこうもおっしゃられました、《私には守るべきものが多い》と】

 

「・・・・・・正確には守りたいものが沢山ある、だな」

 

【・・・・・・(ゴホン)失礼、訂正させていただきます、《私には守りたいものが沢山ある》でしたね】

 

 

白騎士事件の時の発言が間違っていたので訂正したら非常に恥ずかしそうに発言を訂正した。

 

しかし、こうして接してみると、白騎士は見た目にそぐわない程の明るい性格で、暮桜は基本真面目ながらそれとなく抜けているところがあるのが分かる。

 

 

【暮桜!細かいことは気にしないの!!さぁさぁお姉さま!サクッと装着してサクッと終わらせましょう!】

 

【えっちょっまっ(;゜∇゜)】

 

「・・・そうだな、サクッと終わらせて家族再会祝いでもするか、だから白騎士に暮桜、私に力を貸してくれ!」

 

 

【貸す?それだけじゃ飽き足りません!私たちの力、すべて千冬お姉さまに差し上げます!】

 

 

【(話をぶつ切りにされた・・・)もとよりこの力をマスターに捧げるのが我が願い!借りるなどと言わず、遠慮なく受け取って下さい!!】

 

暮桜と融合し新しくなった白騎士を纏い、意識を現実に引き戻す準備をする。

 

本来ならこの力は必要な時に借りる位で良いだろうと思っていたが、受け取って欲しいと言うので遠慮なく力を譲り受けることにした。

 

 

 

「わかった!・・・・・・白騎士起動!!いくぞ白騎士!暮桜!!」

 

 

【了解!】【Yes master!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【「【いざ行かん!無限の成層圏へ!(インフィニット・ストラトス!)】」】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ISのネットワーク内部で、ワンピースの少女と自分似の女性騎士と共に叫んだ私は、直後膨大な光に包まれる事になる。

 

その光の先に倒すべき敵を見据えつつ、私は無抵抗のまま光に包まれた・・・・・・。

 

 




次回はついに巨大ロボットとの交戦!(なお無双)其と後始末とを終わらせれば長かったモンド・グロッソでの出来事も終わりを迎えます!

次次回辺りに以外な新キャラを投入予定です。
お楽しみに。


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結末は呆気なく

やっとこさオートマンとの対決です。

(なお、超速で終わる模様)

ここに到達するまでにISのソシャゲやら最新刊やらで情報が増えましたが、それとは関係なしに超操縦要素が本格的に混ざり始めて来ました。


~side 正晴~

 

 

 

 

「・・・・・・何だ今の光は?ん?」

 

束、正晴、飛び乗れ!

 

「んなっ!?ちーちゃん!?ちょっと待って!」

 

「ぐずぐずしてる場合ではないか!」

 

白騎士がやって来たと同時に光に包まれた私達、光は直ぐに収まったのだが今度は千冬が見たことない機体に乗り込んで飛び乗れと叫んでいる。

 

千冬の機体にできている羽、その後ろにはIS本体とあまりにも不釣り合いな大きさのバックパックがあり、数人の人は余裕で乗れる位のサイズが確保されていた。

 

 

「こうなりゃヤケだ!俺も便乗するぞ!」

 

 

「私も乗るぞ!」

 

 

「私も乗るわよ!」

 

 

「えっ!?、一春さん!?オーレンドルフ首相にロレッタさんまで!?」

 

 

私と束が千冬に促されて乗り込むと同時に、一春さんとオーレンドルフ首相にロレッタ中将まで便乗してきたのだ。

 

「ちーちゃん大丈夫!?乗り込む人三人も増えちゃったけど?」

 

 

【大丈夫です!お母さん謹製のバックパックの改良品ですよ?この倍いても余裕です!】

 

 

ISがしゃべった!?

 

 

【細かいことは後です!マスター!】

 

 

「ああ!最初からフルスロットルでいくぞ!しっかり掴まれ!」

 

 

 

「千冬!」

 

「どうした義照!」

 

「一夏君達の避難は私に任せてくれ、だから千冬・・・無茶するんじゃねぇぞ!!」

 

「わかっているさ、やっと家族みんなが揃ったんだ、こんなとこで立ち止まるものか!」

 

 

 

 

「白騎士・・・・・・・・・?、出るぞ!!」

 

 

千冬のなんとなく歯切れの悪い一言を区切りに、私達は5人を乗せたバックパックごと、千冬のISは空を舞い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉっ!?早い!?ってか軌道が無茶苦茶だこりゃ!」

 

 

「・・・・・・ウェップ、コリャヤバイ、チーチャンカゲンシテ……」

 

 

「た、束さーん!?」

 

 

「イカンイカン、流石にこの老骨にこの変態機動はきつい・・・ヤバイワタシモオジョウサントオナジク・・・・・・」

 

 

「大丈夫ですかオーレンドルフ首相・・・」

 

 

機体は白騎士に勝るとも劣らぬ加速と最高速で空を舞い始めた。

 

 

・・・・・・のだが、状況説明のためここで簡単に解説を加える必要がある。

 

 

実のところ、白騎士は根本的にロケットの延長線で運用することを決めていた結果、基本的に一旦停止してから方向を定めて超加速で突進するスタイルをしていて、機動中の方向転換を無理なく行うには、白騎士事件の時に使ったフライングボードが必要だった、と言う側面がある。

 

 

 

・・・が、白騎士と違い、今千冬が纏っているこのISは、全速力で突っ走りながら急な方向転換やら急加速からの急速後退など、自由自在といって良いの程の機動性を備え白騎士と比べると特に小回りが良くなっていた。

 

(暮桜の機動に非常によく似ているが、仕様上あれには白騎士にあったバックパックが無いので千冬本人以外は体感できない)

 

そのため千冬が肩慣らしと言わんばかりの変態機動をしたことと相まってで束とオーレンドルフ首相が早くも酔い始めたのである。

 

 

「・・・にしてもお二人はISに初めて便乗された筈なのによく無事ですね…」

 

 

「私は基本、業務の都合でいつもは空母の上にいるからね、揺れには慣れっこなのよ」

 

 

「私は特にそうだからと言えるような要素は持ってないな・・・・・・」

 

 

「いや、一応仮にもブリュンヒルデの父親だしなぁ・・・と、外部からは見れる気もする」

 

 

「やれやれ、これでも私は肩慣らし運転でまだ本気じゃないんだぞ?」

 

 

「マジかよ・・・ほんと知らない間に恐ろしいスペックになっていたのな・・・」

 

 

「さて、まずは空をふよふよ浮いている魚みたいなのから片付けるか」

 

 

「・・・やっべ、取り敢えず便乗したけど特にやれることがないぞ」

 

 

「私は護身用の拳銃がありますが、正直このバカデカイの相手に通用するわけないですしねぇ」

 

 

【そんなご同乗の皆さんに朗報だ、今だけ特別に私達の武器をお貸しするので私達の力を見る序に是非ともその威力を自らの手で試してみて欲しい】

 

 

「うわわっ!なにこのゴツいの!」

 

「・・・コレは、成る程なぁ」

 

「コレを俺に渡すとは・・・・・・さては白騎士、私の本業を知っているな?」

 

「ねぇねぇ、何で俺はこんな薄っぺらい小冊子持つ羽目になったの!?」

 

「私に至っては何も貰ってないよ!?」

 

 

【ロレッタさんには元レールガンの遠近万能兵器(名称未定)を、オーレンドルフさんには運用しやすい短射程の大型ショットガンを、一春叔父様には暮桜が使っていたプラズマブレードの改良品を、お父様にはとある筋から送りつけられてきたあの機械に関する書籍をお渡しいたしました】

 

【父上と母上は本来戦うべき人ではないからな、父上には情報の引き出しと分析を、母上には機体の調整確認をお願いしたいのだ】

 

【それに、お父様とお母様は後でじっくりと私達のこと調べるだろうからね】

 

 

「「ムムムム・・・」」

 

 

 

白騎士(?)から中身の武装を供給されるロレッタ中将達、それと比肩して、私に渡されたのは何か薄っぺらい小冊子、束に至ってはなんもなしと言う格差が見られたので抗議しようとしたが、白騎士に難なく受け流されてしまった。

 

 

あと、さりげなく束とオーレンドルフ首相は酔いが収まったようだ、この状況下ではよかったと言うべきか、無理してないか心配すべきか。

 

 

 

「・・・にしても目の前のロボットに関する書籍か……なかなか興味深い代物だしなぁ、よし、ちょっと待ってろ一気に冊子から情報を集め込むから」

 

 

「あー、そういえばこの機体完成したばっかで誰の調整も受けてないんだっけ?なら私の出番だね!、でもさぁ、そう言うことなら先にいってよね~」

 

 

「……そういうことらしいですので、機体の援護は私たちに任せて篠ノ之ご夫妻は機体の方をよろしくお願いします」

 

 

「はいはい、任された、っと!やるよ!はるるん!」

 

 

「白騎士は任せたぞ束!早いとこ奴の弱点を調べあげてやる!」

 

 

「さて、白騎士、暮桜、私は先にどれからやっとくべきか・・・?」

 

【まずは制空権を確保するのが先決かと】

 

【下のロボット、ミサイル射つ奴は損傷してるし、片腕の奴は跳躍しないと対空は困難みたいだしね、取り敢えずお空のお魚さんを乱獲しちゃいましょう】

 

「よし、先に空を飛んでる奴を目標にするぞ!」

 

 

こうして私は目の前のぺら紙に集中し、千冬達が空の機械を攻撃し始めたのであった・・・。

 

 

 

~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side 義照~

 

「流石ちふー、機体強度の問題が解決されて本気出せればこんなもんだよね~」

 

 

「……凄まじいな、空を飛び回っていた青いのがあっという間に駆逐されていく、」

 

 

「千冬……私たちがいない間にそこまで・・・・・・」

 

 

「お二人とも何感慨深そうに見てるんですか!取り敢えず千冬さんに言われた通り、避難優先ですので急いでください!」

 

 

「凄い・・・あれが姉さんの力……!」

 

 

「・・・この様子なら千冬姉達は大丈夫か、円香、母さん、急ぐぞ!」

 

 

空へと上がった千冬さんと白騎士っぽい謎の小型ISは、ロレッタ中将や束さん達の助力を借りつつ、恐ろしい勢いで青い魚を撃墜していっていた。

 

 

(・・・・・・あの青い魚、大きく分散しつつ遅滞戦術に入っているのか、緑のも青いのも白騎士に対して遠巻きになるように移動している……予想以上に知力があるな)

 

 

「白騎士がやってくるまでに、独軍戦車隊は緑のと交戦してまともにダメージを与えられず弾薬を多数消耗、対空戦車隊は青いのに有効打を引き出すら困難で火力不足・・・根本的に対ISに振りすぎたのが裏目って完全に警備体制をミスった形になったなぁ、戦車隊も2個小隊しか用意してなかった様子だし、独軍は根本的にテロ関係はIS部隊に任せてISが沸いてきたら対空戦車で対処の方針だったからなぁ」

 

 

完全に千冬さん達に対して遠巻きになるように動き始めた大型ロボット群を見た私は、早くもロボット群が方針転換したのに気がつく。

 

そして、軍に一通りの命令を伝えて一息ついたアルバン元帥に気になったことを聞くことにする。

 

「・・・さて、と、アルバン元帥、少し話がある、しばらく良いか?」

 

 

「私からも元帥に聞きたいことがあるさね」

 

 

「・・・・・なんです?今回の失態についてですか?」

 

 

「んなわけないだろう、あんなもん予測しろと言う方が酷だ、後で元帥に関してあーだこーだいってくるやつらに関しては火消しを頼める奴に頼ってみるさ、私はこう見えてIS委員会にデカイ伝があるからな」

 

 

「・・・では何を「 ()()()()()()」」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

便乗したみとり技師の割り込み指摘にアルバン元帥が黙り混む。

 

 

「そもそも行動が早すぎるね、アルバンさん、あなたロボット出現から10分足らずで大会の中止を決めたでしょ?下手したら見た直後に様子を見るまでもなく決断してないかい?」

 

 

「・・・あれだけ巨大なロボットが出てくればそう判断するのは間違ってないと考えますが?」

 

 

「ちがうちがう、何で()()じゃなくて()()にしたの?って話、決勝だけ後日やり直しすることは出来た筈だよ?」

 

 

「・・・・・・そして何よりもさ、その目付きが気になるんだよね、アルバン元帥、あなたあのロボットに()()()覚えてない?」

 

 

「・・・・・・・・・まさか、何で誰が見ても初見であろうあんな物に既視感を覚えるんですか?アニメの見すぎじゃあるまいし」

 

 

「片手を懐に突っ込んでモゾモゾさせたまま言っても説得力が無いさね、」

 

 

「・・・・・・私の悪い癖が出ましたか」

 

 

私が指摘しようとしたところのだいたいをみとり技師に取られたが、アルバン元帥はなにか観念したかのように懐から一つの小さな本を取り出した。

 

「・・・・・・・・・ウォーダンの日誌?」

 

「【シャルンホルストの悪魔】となんの関係があるの?」

 

「この日誌に、私の曾祖父ウォーダンが()()、日本の親友にあの緑のと全く同じ形状のロボットを見せてもらった、と言う記述があります。」

 

「え?」

 

「・・・マジか」

 

彼が取り出したのは独語で書かれたウォーダン・ラインラントの日記。

 

彼の名を聞くのはバミューダの件以来だなと思っていたら予想外の繋がりを教えてもらうに至った。

 

「嘘だと考えるのなら後で確認してみてください、私もコレが本当だったとは思いもよりませんでしたが、お陰で対応は多少気楽に行えましたよ」

 

 

「・・・義照さん、」

 

 

「・・・だな、情報省に収集を依頼しとこう、失礼した元帥、情報提供感謝する」

 

 

「いえいえ、私も早いとここの謎の答えが知りたくなりました、真実の追求はお任せします」

 

 

「ところで元帥、展開していた部隊は?」

 

 

「今いる既存の部隊は郊外へ避難した人々の警護に回しました、IS部隊が壊滅状態なのが痛いですが、代わりに比較的近めの演習場で演習していた主力の機甲大隊を呼んでいます、最も、到着前に千冬さんが大体終わらせるだろうと踏んでますが」

 

 

「・・・・・・だろうな!」

 

 

「ですよねー、あっ魚が全滅した。」

 

 

 

予想外の情報を仕入れつつ、私達は先に避難している織斑夫人達の後を追いかけるのであった。

 

~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side 束~

 

 

「よしっ、これで空のは片付いたな」

 

 

「ううむ、この記述通り、あの青い魚が上への攻撃方法を有していなかったとはな・・・・・・」

 

 

はるるんと一緒にちーちゃんの機体の乗り込んでからしばらくが経った、ちーちゃんとはるるん、ショットがんで応戦したオーレンドルフさんのお陰で空の青いのが片付き、次の目標に狙いを定める。

 

 

「・・・と、言うよりあの緑の奴の腕固すぎないか!?、このロケランを何発も打ち込んだのに大した損傷を与えられてないぞ!?」

 

 

「ならばあの腕ごと切り落とすまでだ!」

 

 

【っち!まさかオートマンの腕があんなに固いとは思いもよりませんでしたね・・・少なくともこのロケラン、独軍の戦車砲よりも威力はあるんですがそれすら耐えるとは・・・】

 

 

白騎士(?)にとっても一春さんに渡された武器が緑色のロボット・・・・・・ちーちゃん曰くオートマンに通用しなかったのは意外だったようで、ちーちゃんは接近戦に切り替えようとする。

 

 

「ちょっと待ってくれないかしら?ほんの少しだけこの場に留まってくれる?」

 

 

「ロレッタ中将?」

 

 

「・・・・・・これでよし、かしら?、まあいいや」

 

 

緑のを切るために接近しようとしたちーちゃんを引き留めたのはロレッタさん、彼女は機体をこの場に引きとどめたあと、機体から提供された大型ライフルと思われるものを構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「3.2.1・・・・・・fire!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バックパックの構造上の関係で実質的な立射状態でライフルから放たれたビームは、近くにいた緑のロボットを貫き、そのまま奥にいた同じもう一機の胴体に直撃、両方とも大爆発して機体が爆散するに至った。

 

 

「・・・・・・ヒュー、汚い花火ね、ロマンに溢れてて良い武器じゃない」

 

 

「・・・凄まじい威力だな、この武器」

 

 

【ロレッタさん・・・CSモード最大チャージにしてたんですか?】

 

 

「いや、その辺よくわからなかったからテキトーに弄ってたんだけど、いざ構えて使ってみたら日本ゲームによくある溜めのモーションに入ったからね、千冬さん引きとどめて後は良い当たりになるようにスナイプしただけよ?」

 

 

「一撃って・・・恐ろしい威力してるなぁオイ・・・」

 

「間接部分が弱点と言おうとしたらそんなの関係なく瞬殺されてるじゃん・・・・・・」

 

「私の借りたロケランの意味・・・・・・」

 

 

「ねぇロレッタさんさりげなく怖いこといってると思うの私だけかな?」

 

 

「それはともかくとしましょ、後はあの青いのだけだし」

 

 

大型ライフルから放たれたビームの威力に驚きながら、ロレッタさんに促されて私達は残った最後のロボットの方向を向く。

 

そこには横にあったミサイル発射口をただひたすらくるくる回しながら後退する青いロボットの姿があった。

 

 

「あれ?ミサイル撃ってこないね」

 

 

「ああ、あれ弾切らしたんだわ多分、この冊子によるとあれこの場にない補給用のオートマン随伴が前提らしいし、多分白騎士が出てくる前に対IS用改修された対空戦車隊があれから放たれるミサイルを尽く打ち落としてたからそのタイミングで持ち合わせの大半を使っていたんだろうな」

 

言われてみればミサイルの保有量が無限なわけないし補給がないまま撃ち続けていればそうなるか・・・あれ?そうしたらこの機体・・・

 

「じゃあ要するに・・・・・・」

 

「煮るなり焼くなり・・・と言ったところですね、デカイだけの案山子みたいなもんです」

 

「・・・・・・白騎士!暮桜!」

 

 

「ちーちゃん?」

 

 

 

 

 

ちーちゃんはなにか思い付いたのか剣を構えて何かの体勢に入る。

 

 

【姉上、最終兵装の準備完了、いつでも行けるぞ】

 

 

【やっちゃってください!お姉様!】

 

「え?何々!?何が起こるの!?」

 

「剣身から・・・・・・極光!?ここは極地じゃないんだぞ!?」

 

「何か知らんがそれで決めてしまえ!千冬!」

 

「・・・オーレンドルフさん、私達はさりげなく飛んでもない光景を目の前で見てるのかもしれませんね」

 

「・・・のようだな、ロレッタ中将、」

 

 

白騎士がちーちゃんへ何かの準備が終わったことを告げる、直後、ちーちゃんの持つ剣から光がこぼれ始める。

 

 

 

そして・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・【夕凪極夜】!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・ちーちゃんがそう叫んだ直後、遠くに離れていた青いロボットを瞬時に通り抜けた。

 

 

「・・・・・・・・・我が剣、ここに至れり」

 

 

「・・・ちーちゃん?、うわわわわっ!?」

 

 

通り抜けた後、何処からともなく腰につけられていた鞘に剣を納めた直後、青い機体は縦に真っ二つの切れ目が入る。

 

 

(ガガ…ガ…最終通信…ガ…ガガガガ()()()()()()()()()()…最終通信……カン…リョ…)

 

 

真っ二つに切られ、崩壊を始めた青いロボットは最後に小さなアンテナを伸ばすと、そのまま光を放ちつつ、爆発四散していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千冬・・・・・・」

 

「・・・終わったね、ちーちゃん」

 

「ああ、やっと、やっと終わったんだ、一夏、束、正晴、義照・・・・・・私はやったぞ!」

 

はるるんと私がちーちゃんを呼ぶ、ちーちゃんは感慨深そうに剣を引き抜き、空に向かって掲げることでそれに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、モンド・グロッソで起こった巨大ロボットの事件は、この時、ちーちゃんの手で幕引きを迎えたのだ。

 

 

 

 

~続く~

 




次回、事件の後始末と新キャラ登場でモンド・グロッソの出来事は終わりを迎えます。


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IS委員会と一つになった二つのIS

なんだかんだでモンド・グロッソのその後について軽く触れる回です。

メインとしては暮桜と白騎士が合体したやつのスペックの説明回でもあります。


事件の3日後・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~独国首都、ベルリン郊外のとあるホテル~

 

 

 

・・・「モンド・グロッソ」が中止になって早3日、事件が起こってから多少時間が経ったものの、この頃も世界中はモンド・グロッソの事件の前後関係で持ちきりになっていた。

 

 

一つ目はモンド・グロッソ会場・・・・・・独国キール近隣の町で暴れたあの巨大なロボットのこと。

 

 

2つ目はその際に生まれた新たなIS・・・暮桜と融合した白騎士についての話。

 

 

3つ目は初代ブリュンヒルデである千冬が、長いこと会えずにいた両親と再会することが出来たこと・・・・・・。

 

ざっくり言えば話題は上述したこの辺りの話に集約されていたが、それとは話を別にこの日、事件の重要参考人としてベルリン郊外のホテルに警護付きで滞在することになっていた束達は、これからくる来客の事で話が持ちきりになっていた。

 

 

「ねーねー、このタイミングで言うのもアレだけど、この場にいる誰もIS委員会会長の事なにも知らないって色々と問題だよね?」

 

 

「・・・・・・ぶっちゃけ俺達は完全にIS関係の政治的話には関わらないようにしていたからなぁ、ISに関する政治的事情の調整を主に設立された委員会の事なんて知ったこっちゃないんだが・・・」

 

 

「義照がこの場にいればその辺の説明もしてくれたんだろうが、生憎のところ重要参考人として会場の調査隊に同行することになったからな、仕方ないだろう?」

 

 

今現在ホテルのVIP御用達な部屋であるこの場にいるのは、束、正晴、千冬(with白騎士+暮桜)、みとり、の4(+2)人だが、その誰もがこれから彼女達に会いに来る国際IS委員会の会長がいかなる人物なのかを知らなかったのである。

 

 

【国際IS委員会】

 

国家のIS保有数やISの開発に関しての世界各国の動向を監視する委員会。

 

IS運用規定に関する諸協定(アラスカ条約の事)基づいて設置された国際機関であり、各国のIS保有枠を種別毎に厳しく規定して監視、管理しており、その本部はギリシャのテッサロニキ。

 

 

 

 

原作と違って、この世界ではISに関する技術情報の公開は、日本が首相代行(当時)の天ヶ瀬深那の判断によって束達の同意を得た上で全世界にISに関する当時の情報の公開を約束。

 

 

約束通り当時持ち合わせられる殆どのデータを各国に提供、時には白騎士の予備パーツを各国に資料として提供したりした上で、(製造経緯が経緯のため)実質ブラックボックスであるコアの利権を束に、ISに使われる装甲材及びハイパーセンサーの技術利権を正晴に、機体制御システムであるPICの利権をみとりに集中させてライセンス制を取り、後の利権に関してはその一切を国際IS委員会の元で共同管理にすることで技術独占状態を実質回避しつつ利権の一部を手元に置く事にしたため、日本がアラスカ条約で不利になるのを回避しているのだ。

 

 

序でに、ISの開発関係で束達に口出し出来ないようになってたりするので、この世界での委員会の仕事と言えば、まさしくISに関する世界情勢の管制と各国(束達以外)が提出する新型機開発に関する認可の発行と、各国のIS保有数枠が増える事になった場合の追加のコア製造を日本政府仲介で束達に依頼することぐらいであった。

 

 

本当のところはISに関する事件の調査権限等もあるのだが、この世界ではまだISを使ったテロ等は起きていないし、ISの事故等に関しても現地政府機関がマトモに調査して報告するため、実働に関しては今回の事件で初めて本格的に捜査権限を振るう以前は表に出る大きな仕事がなく、影が薄い存在だったのである。

 

 

 

「早いとこ帰って所長達が溜め込むことになってる仕事片付けたいんだけどねぇ・・・」

 

 

「私たちがドイツに留まる羽目になってるからって行信とJAXAの人達が臨時で対応してくれてるが正直いつまでJAXAの人達が持つかだしな」

 

 

【まぁそもそもをしてオーレンドルフさんに頼み込まれなければ私達全員揃って日本に帰る気満々でしたからね】

 

 

【ほとぼりが冷めるまでアルバン元帥直属の海兵隊の警護付きでココに滞在することになったわけだが、半軟禁状態で今だ帰れそうに無いがな。】

 

 

実際問題、開発者である束達に委員長の名前と顔を認識されてないことや、帰国後の仕事の方を優先事項に据えられることが影の薄さを最も端的に表していた。

 

 

最も、束たちも事件の事情聴取のため委員長自らが赴くからそれまで此所にいてほしいとオーレンドルフ首相に言われるまでは後始末を国に丸投げして帰国、千冬の家族再会祝いのパーティの準備をする気満々であったのだ、少なくとも束達にとっての国際IS委員会がいかほどの立場なのかはコレだけでお察し頂けるだろう。

 

 

「・・・にしてもちーちゃん、さっきからずっと(元)白騎士纏いっぱなしだけど良いの?」

 

 

「いや・・・その・・・何だ、IS委員会の委員長がどんな人物か知らないから甘く見られないようにだな・・・・・・」

 

【第一印象は大事ですからね】

 

 

【と、言っても今のMasterの姿は一歩離れて見ると精巧な戦乙女のコスプレにしか見えないがな】

 

 

「僕も初めて見させてもらうけれども、兜の羽根とか白い翼のような動翼とか、鎧中心で露出がかなり抑えられてることを除けば姿がゲームやら何やらで描かれるヴァルキリーのイメージっぽく纏まっているって言うね」

 

 

「!!?」

 

 

「・・・・・・委員長さんよぉ、やっぱり不味くないか?」

 

 

「こういうのは第一印象が大事だから、ね?」

 

千冬がISをまとったままやってくる客人を出迎えようとしてることに対して言及してるうちにさらりと会話に入った人物の存在を関知し、束達は出迎え予定のドアの反対側、窓の方を見つめる。

 

そこには、メガネとテンガロンハットを足しただけといえるレベルで義照に似ている男性と、申し訳なさげな表情で日本の公務員と思われる男性が窓際に腰かけて佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「驚いた、まさか、IS委員会の委員長がこんな登場の仕方をするとは・・・」

 

 

「始めましてだね、織斑千冬さん、川城みとりさん、篠ノ之束さんに村ノ瀬正晴さんだね、僕の名は槇田 義秋(まきた よしあき)、こう見えて国際IS委員会の委員長さ、よろしく頼むよ」

 

 

「・・・・・・日本国情報省長官、正確には天ヶ瀬政権の情報大臣、天城 義成(あまぎ よしなり)だ、よろしく頼む」

 

 

束達のもとにやって来た国際IS委員会の委員長は、束達の想像とは遥かにかけ離れた人物であった、

 

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 

「義秋さん、よっしーにそっくりに見えるんだけど、ってか名字まで」

 

 

「・・・・・・アレ?もしかして兄さんからの紹介受けてない?」

 

 

「えっ(°Д°)?義照には弟がいたのか!?」

 

 

「私もそんな話知らんのだが・・・・・・」

 

 

「・・・・・・ああ、完全に兄さんが紹介し忘れてるね。」

 

 

「工工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工工」

 

義照とは長い付き合いになる束達だが、義照に弟がいたことなど知らなかった、ましてや彼が委員長を勤めてるなど思いもよらなかった。

 

 

「・・・・・・確かに元首相が委員長の事を紹介したと言う話は聞いてないな、おいおいマジかよあのボウズ、10年近く身内についての話してなかったのかよ」

 

 

「・・・やっぱり兄さんに内緒で委員長になったことが裏目っちゃったかのなぁ・・・」

 

 

「よっしーェ・・・・・・」

 

 

「まぁそれはおいておこう、千冬さんが報告にあった新しい白騎士を纏っているようだから話は早い、早速スペックを説明してくれないか?」

 

 

「え?義秋さんの聞きたいことってそれ?」

 

 

 

「だね、IS委員会としては新しく生まれたISのスペックは早いとこ確認したい物なんだ、だけど条約での規定の手前、篠ノ瀬制作所製のISに関しては他国は愚かIS委員会でもスペックに関しての仕様書の提出を請求できないんだ」

 

 

「だから、義照元首相の弟さんである義秋委員長を使ってスペックの確認だけでもできないかとなって直接会いに来たわけだ、私は義照元首相との関係で委員長と知り合いだからつれてこられたのと、情報省傘下の事件調査隊を率いてるから調査が一段落したついでの挨拶だな。」

 

 

「ああ、あなたが私の親族関係の調査を・・・有難うございます、お陰で私は会えないと思っていた両親と妹に・・・」

 

 

「ははははは、貴方からはそのお礼だけで十分ですよ、名高き初代ブリュンヒルデから頭を下げられるだけでも恐れ多くてね」

 

 

束が義秋から来訪の理由を聞いたり、千冬が義成に礼を言ったりするが話がそれだしたので、この後本題に移ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、千冬のIS・・・白騎士と暮桜の融合体について説明させていただきます、簡易的に判明したことに関しては、現状わかるだけで以下の通りです。」

 

 

「ふむ・・・・・・・・・・・・!?」

 

 

「どれ・・・・・・・・・!!?」

 

 

 

正晴の一言によって束から渡された資料を読んだ義秋と義成が声も発せず固まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《名称》戦乙女 白桜(いくさおとめ しろざくら)【束命名】

 

 

《分類》先進世代該当汎用機(専用機)

 

《製造元》篠ノ瀬制作所(正確には所属の機体の融合体だが、便宜上記載)

 

 

《搭乗者》織斑 千冬(実質専属パイロット)

 

 

《世代》第5~7世代に該当、現在何世代に該当するか検討中

 

 

《特徴》

 

展開装甲(元は第四世代向け技術)

 

高速変形機能(第4or5世代向け技術)

 

装備化機能(後述、第5世第以降向け)

 

最適化機能(後述、第5世第以降向け)

 

デュアルコア(特異部分1)

 

コア・ワールド(特異部分2)

 

フルシンクロ機能(特異部分3)

 

付喪神二人(特異部分4にして最大の特徴)

 

 

《武装》

 

固定武装である4つと展開装甲、装備化機能、のみ説明。

 

専用ロングソード【夕凪】(千冬命名)

 

本機体専用装備、千冬命名、刃渡り110㎝の美麗な剣。

 

明確に分類するとバスタードソードの系列といえる、(by正晴)

 

・・・のだが、千冬が軽く一振りしただけで固いものはダイヤモンド、柔らかいものならこんにゃくまで綺麗に真っ二つにしてしまう程の常軌を逸した切れ味を誇っている。

 

専用の鞘が用意されており、これと鞘のセットだけを単純に見れば比較的細身で軽いことを除けば中世ヨーロッパ製儀礼用もかくやと言わせんばかりの綺麗な見た目をしており、切れ味を無視しても英国王室や天皇家に永久保存したくなる一品。

 

(正直、総合的に見ても歴史さえあれば古今東西の聖剣、邪剣と並べても違和感のない代物である)

 

単純にスペックが馬鹿高いと言うタイプの代物なため、所有者が千冬でないと扱いきれない可能性大、むしろ剣に振り回されるやも。

 

 

 

 

専用突撃槍【ロンゴミニアド】(正晴命名)

 

事件後、固定装備として発見された大型の槍、見た目が某ゲームの白い槍そっくりとの事で命名。

 

こちらも夕凪と同等の鋼材が使われているらしく、おっそろしいことに騎馬槍のくせして大太刀みたいな運用も可能とか言う代物である。

 

(流石に切れ味は夕凪に劣るし、重いために機動力が落ちる欠点もあるし、どっちかと言えば鈍器扱いした方がよい構造だが。)

 

この他、槍本体を海自所属、轟天の「荒覇吐」の如く高速回転させることも可能であり、仕込まれた装置と合わさるとその場で槍を中心として前方に小型の帯電した竜巻を発生させることができるとかいう鬼性能を誇る。

 

 

(そのせいで、やっぱり千冬以外に扱えない)

 

 

夕凪との差別化で言うと、夕凪の方が完全近接特化かつ【切る】事を主体としてるのに対し、本槍は被害を考慮しなければ竜巻で遠距離戦をこなせる他、槍の本髄である突きに拘らず【破壊する】事を主体として産み出されたものと推測される点で差別化されていると思われる。

 

 

 

展開武装銃砲【ハルバード】(みとり命名)

 

変形させることで実弾兵装と光線兵装を状況に会わせて運用可能な大型ライフル。

 

変形すれば実弾は(サブ)マシンガン、ショットガン、レールガン、手持ち艦砲(護衛艦の並み)等の。

 

光線は照射型のレーザーや光体発射型のビーム砲、チャージ式のビームライフル等に変形させることができる。

 

形態ごとのサイズ差が激しいが、変形する武装の種類が多すぎる故と思われる。

 

この武装のみ、変形できなくなるなどの制約を受けるも、他の機体でも登録を行えば使用可能であることがわかっている。

 

 

 

専用輸送用超大型バックパック【オービタ】(行信命名)

 

 

超重量の荷物や多数の人々を仕舞い込めるバックパック。

 

通常は拡張領域に収納されているが、いざ出番となると搭載能力700t(スウェーデン製の最新鋭コルベット艦が満載で一隻ギリギリ入るレベル)とか言うふざけたレベルの恐ろしい搭載力を誇る収納として、後述する装備化機能との組み合わせで鬼も真っ青の猛威を振るう。

 

搭載された物は瞬間に専用の空間に放り込まれ、乗り込んだ人は驚くほどに大きくなっていくバックパックの中に佇むことになる。

 

人員は最大20数名同乗可能、満載したときは本体とあまりにも不釣り合いのバックパックを見ることができる。

 

基本的に本体に10人前後の人員と、専用空間へ乗組員が乗り移る宇宙船そのものを搭載、搭乗させて宇宙へ行き、現地宙域にて展開していくスタイルで使用することになると思われる。

 

・・・が、後述する装備化機能で装備になった代物が此所に保管されるため、実運用の能力は未知数。

 

因みに前述の3つの武器はこれの中とは別の場所に収納されるらしく重量換算されてない。

 

 

 

【展開装甲】《鎧》

 

白桜本体のこと、正しく言えば機体自体が展開装甲となっており、状態に会わせて形状を変えることが可能であることが判明している。

 

分かりやすく簡略化すれば、【白桜本体は全身が鎧であり、スラスターであり、姿勢制御装置であり、近接武器なのである】。

 

あまりにスペックが高いため、千冬がその気になれば機体が徒手空拳状態でも第三世代機を軽々とあしらうことが可能であると想定される。

 

序でにこの展開装甲こそが白桜の恐ろしい機動力の原点の一つであると考えられる。

 

 

 

 

 

【装備化機能】

 

本機の特異機能、兼本機の最も驚異的な機能。

 

普通、ISというのは使用装備には事前登録が必要であり、登録されてない装備や根本的にIS向けではない装備は使えないようになっている。

 

 

・・・が、本機は生物以外なら触れているものがいかなるものだとしても、本人の意思次第で本機の武装として即刻登録して、一時的に装備扱いにすることができる機能のこと。

 

やろうと思えば既存の拳銃だろうがRPGだろうが、核兵器だろうがゲーム機だろうが宇宙船だろうがなんだろうが、重量限界ギリギリまで装備扱いでオービタか本体の拡張領域にしまっていつでも取り出して装備できるようになる機能なのである。

 

この機能を持ってるだけで機体の汎用性が大幅に上がるため、一気に対策しづらくなる。

 

・・・が、問題はこいつが持つ副次機能の方で、原理不明ながら・・・

 

オービタに必要資材を用意しておけば、装備化指定した装備をそのまま()()()()()()()製造できる】のである。

 

(現状、制作所の面子をもってしても解析すら満足に出来ない本機の予備パーツは、この機能で用意することになる)

 

また、展開装甲が機体自体にダメージが入ると併せて機能が低下するのに対しての補填機能を有しており、この機能とオービタの大容量を元にすれば、損傷箇所を予備パーツと瞬時にすり替えなんて言う10式戦車も真っ青の芸当もできるようになっているため、実際のところ本機との相性が一番良い機能であったりする。

 

 

 

《解説》

 

 

最初のISである白騎士と二番目の機体である暮桜が融合し、一つとなった上で両機が抱えていた経験値を一気に自己進化に使った結果生まれた紛れもないオーパーツ機。

 

 

現在、白騎士及び暮桜の強力を得つつ、束達の手で持てる技能総動員して調査を行っているが未だにその全容が解っていない程の膨大な技術とデータが詰まった、間違いなく現行最強の汎用機である。

 

以下に詳述されてない機能を現段階でわかるまで記載しきっておくこととする。

 

 

【高速変形機能】

 

本機は現在の姿の他、機体そのものが気象衛星と観測衛星をかねる形態や、海中の深海潜航艇の役目を担う形態、挙げ句の果てにはマグマの中に飛び込んでも大丈夫になっている局地専用の形態等があることが判明している。

 

単純な変形だけなら第二世代以降機もパッケージ換装を行うことで基本的には可能だが、本機の場合展開装甲によって瞬時に行われるため、即応性が大幅に向上しているのが特徴である。

 

んで、この機能は、単純にそれらの形態へとあっという間に変形できるという事実を機能として扱っているだけの事である。

 

他の形態に関しては未調査の部分が多すぎるため、別の機会に記すとする。

 

 

 

【最適化機能】

 

機体の乗り手のニーズに併せて装備やら何やら(外見すら)を変化させる機能。

 

現在本機を扱えるのは千冬(適性S)と束(適性A)の二名のみだが、千冬と束とがそれぞれ纏った時点で全く姿や装備が違っていたと言うことがあった事から判明した機能。

 

誰が乗るかによって機体のコンセプトが大きく変化すると言うものである。

 

(書くと長くなるため未記載だが、束が纏った時は何故かメイド服状にISが展開され、ISの工厰の役割をもつための装備が多数展開された)

 

前述の装備化機能とはバッティングするところがあるらしく、装備化機能で装備扱いになった装備を最適化することは不可能。

 

(むしろ出来たらそれはそれで恐ろしいものである。)

 

 

【デュアルコア】

 

本機の特徴の一つ、単純に言えば暮桜のコアIN白騎士のコア。

 

本機は一つになったこのコアを使うことでのみ稼働する。

 

後述する付喪神二人が併存する理由と思われる。

 

 

 

【コア・ワールド】

 

コア・ネットワークの発展形。

 

 

実のところ、これについて語るにはその前にコア・ネットワークについて語らなければならない。

 

 

元々、ISのコアには元々広大な宇宙空間における相互位置情報交換のために設けられた専用ネットワークが存在しており、オープン・チャネルとプライベートチャネルによる操縦者会話などの通信手法に流用されていた。

 

(後に、この会話用ネットワークは【コミュニケート・ネットワーク】としてコア・ネットワークとは切り離されて考えられるようになる。)

 

 

・・・・・・・・・のだが、みとり技師がそれとは別に、上述の専用ネットワークとは別に、全てのコア同士が共有し、各自そこに其までに得たデータを送って共有することで、そのデータバンクを基点として様々な情報を入手、自己進化の糧として吸収していることを近年の研究で突き止めたのだ。

 

 

んで、みとり技師はこのISコア専用のネットワークの事を、【コア・ネットワーク】と名付け、そこへコアが個別にデータを送って他のコアと共有することを非限定情報共有(シェアリング)と命名していた。

 

 

やっとこさ、これまで発者達自身にもわからないことだらけだったISの進化に関する発見があったのだ、この発見によりISの進化過程に関しての研究に一定の定説が出るようになり、研究手法にも一定の方向性が出て来初めていた。

 

 

そんな中でのコア・ワールドの出現である。

 

その事実は、このコア・ネットワークでさえもがIS進化の対象になっていることが判明した瞬間であった。

 

そしてその次にISが()()()()()()()()ことがいかに大きな影響を与えているかを示したいたのである。

 

このコア・ワールドは、特に新しく機能が加わった訳ではない。

 

コア・ワールドとは、ISが新たに情報を収集してコア・ネットワークに放出するだけでなく、収集した情報を元にISが独自の意思で行動可能になったと言う事実を指摘するものである。

 

もっと単純に言えば、先の事件の際、白騎士がJAXAから独りでに千冬の元にたどり着いた事がコア・ワールドの存在を指し示している。

 

 

(IS初心者にも分かりやすいように更に噛み砕けば、【ISを動かすのに操縦者を必要とはしなくなった】のである。)

 

 

 

【フルシンクロ機能】

 

上述のコア・ワールドに続いて成立したと考えられる機能。

 

そっくりそのまんま操縦者とISがリンクする機能であり、操縦者が自身の体を動かしている感覚で操縦可能になると言うもの。

 

千冬曰く【機体と一体化する感覚】であり、操縦者本人の反応に併せて動かせるようになる。

 

 

・・・・・・がこれは千冬にとってのメイン機能らしく、本来は只でさえクソ高い本気のスペックを限界以上に引き出すための機能と思われる。

 

機能が適用されている間は、先の事件で見せた時よりも遥かに恐ろしいスペックとなる模様。

 

 

要はガン○ムのト○ンザムだと考えれば良いが、千冬はこの機能を使った状態でやっと全力を出しきれるらしく、本人の素のスペックが一番気になるところである。

 

 

 

 

 

 

 

 

単一仕様能力【夕凪極夜】

 

千冬が搭乗時にのみ繰り出せる単一仕様能力、

【零落白夜】の改良版といえるが、その効果は大会使用禁止レベルに至っている。

 

【夕凪】か、【ロンゴミニアド】のどちらかでのみ使用可能。

 

武器を構えて念じ、一瞬で相手の元へと急加速しつつ、すれ違い様に対象を切る(or対象に突き刺す)と言うもの。

 

対象ISのシールドエネルギーをダイレクトに削って来た零落白夜と違い、命中時点ではこちらは只の斬撃と言えると思われるが、直後に対象のシールドエネルギーを数十秒の間【×0】に固定するらしく、もしも斬撃とその効果の順序が逆だったりしたら、相手のIS乗りは命中したら絶対防御すら発動できずに即死がほぼ確定するとか言う代物と化すところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《以下、公的には秘匿することを強く推奨する。》

 

 

 

付喪神【白騎士】【暮桜】

 

 

【白騎士】と【暮桜】のコアに知らないうちに宿っていた()()

 

 

電子生命体と言うのが一番正しいといえるのかもしれないが、IS本体を物理的肉体と考えれば電子生命体と言うには問題があまりにも多くなるので、これまでの知識や常識とは分離して考えるべき存在。

 

形式上、他の電子機器(パソコン、スマホ、テレビの3種が主)に入り込んで岩男EXEのナビの如く姿を表せるため二人の特徴について記すが、自分達の自我を意識してから彼女たちの【生】は始まったそうなので、ISが女性にしか使えないなどの根本的要素の答えを知ってるわけでは無いことを念頭に願いたい。

 

本人たち曰く普段はコアの中にいるらしく、意思を伝えたい時のみ何かしらを経由して出現するとのこと。

 

(本人たち曰く、コアは人間で言う自宅なんだそうな)

 

元々は白騎士、暮桜それぞれにいて、融合の際にデュアルコアとなったために、1つの機体に二人の付喪神がそのまんま居着くようになったとだと思われる。

 

以下に本機にいる二名の付喪神について簡単に説明することとする。

 

 

 

 

【白騎士】

 

白いワンピースを着たロングヘアーの少女として現れる、元白騎士の人格。

 

言動はどことなく子供っぽく、幼さゆえの容赦なさも見受けられるとは千冬の談。

 

人格のベースはコア完成直後にすでに存在していたらしいが、人格として成立したのはバミューダの件以降の事だったらしい。

 

(みとりが神社で縁担ぎすることを提案した経緯や、ISスーツの開発過程の話など、訳アリで部外秘になっている情報も持っている。)

 

開発者の影響か、正晴と束をそれぞれ【お父さん】、【お母さん】と、行信とみとりをそれぞれ【叔父さん】【叔母さん】と言っており、千冬を【お姉さま】と呼ぶ。

 

【暮桜】

 

騎士の鎧を着た千冬、といった感じの姿で現れる元暮桜の人格。

 

機体完成直後ごろに人格ベースが成立し、大会直前、ファーストシフトによる【零落白夜】の完成とともに人格として成立したとのこと。

 

千冬に見た目も似ていれば性格もそっくりと言った感じであり、違うところと言えばれっきとした【主】を有する騎士と言った成りをしていることだろうか?

 

正晴と束をそれぞれ【父上】【母上】と呼び、行信を【先生】みとりを【姉上】、乗り手の千冬のことは【Master】と呼ぶことにしているらしい。

 

(曰く、白騎士とは開発経緯が異なる故の呼称の相違なのだとか・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・マジか」

 

 

「・・・とんでもなくヤバい機体だとはわかったよ、アカンねこりゃ」

 

 

仕様を見終えた二人が言葉を絞り出すには、しばらく時間がかかったが、共にスペックに驚きを隠せないようであった。

 

 

「・・・束さんたちに依頼なんだが、まずは取り敢えず本機のスペックは基本的に部外秘としてくれ、私の方も委員会に関してはこのスペックを適当に劣化させたものを報告させてもらう、理由は色々あるけどこの機体、そもそも単純スペックの時点で色々と不味い代物だ」

 

 

【・・・・・・どういうことか、一応一例をあげて説明していただけませんか?委員長殿】

 

 

「各国が第三世代のコンセプト模索の佳境に入っているこの時期に本機体のスペックが露見すれば、機体の情報をもっと寄越せと各国がいってくる可能性が極端に高い、」

 

 

「第一世代の白騎士もそういった理由で資料用のパーツを各国にせがまれた訳だけど、白騎士自体が宇宙開発向けの機体を操縦者の超絶技量で実践に使えるようにしていたってだけで、すぐに各国が実践向けの機体開発に取りかかれたからこそ、白騎士の予備パーツをあーだこーだする必要がなかった。」

 

「しかし、白騎士でやったことと同じ事を今回やると、マシな想定でも提供した予備パーツが()()()()()()、と言う可能性が大きいと言う結論になる」

 

 

【IS委員会による各国への定期監査や各国諜報機関の相互監視網があるから難しいのでは?】

 

 

「よく相互監視網の存在を知っていたね……だけど・・・・・・」

 

機体スペックの確認を終えた義秋が要請したことに疑問符を投げ掛ける暮桜、簡単に説明し初めたが、白騎士がさりげなく機密に触れたのに気づくと、大きく頭を抱えながら話を続けた。

 

 

「残念だけど、委員会による監視網も、各国間の相互監視網にも限界はある」

 

 

「詳しくは別の機会にでも紹介させてもらうけど、IS委員会は一枚岩ではないし、スペックが完全に露見すれば各国にとってその機体は日本と戦争してでも欲しくなる代物になる・・・とは僕の口から先に言っておくよ」

 

【・・・わかりました、肝に銘じさせていただきます】

 

「わかったよ義秋さん、」

 

「私からも千冬さんたちに1つ、構いませんね?委員長、」

 

「ああ、構わない」

 

義秋が彼女たちにある程度話を通したところで、義成から話が続けられる。

 

 

「千冬さんたちも、この二人に関しては特に気を使うようにしておいてくれ、この二人は露見した場合、下手するとモルモット扱いになる可能性がある」

 

【モルモット・・・・・・】

 

 

「実感薄いだろうが、白騎士と暮桜の嬢ちゃんはそうなるだけの貴重性を持ち合わせている」

 

 

「もうちょい踏み込んだ話をしよう、もしも世界に最初の男性操縦者がいきなり沸いて出てくるような事態になったとしても、各国は【嬢 ちゃんたちの方を】モルモットとしては貴重と見なすだろう、ひどい話だけど嬢ちゃん達は単純なISの研究だけじゃなく、生物学的な、或いは人工知能とかの研究分野においても非常に有用な立場なんだ、サンプルとしてね、束さんたちもその辺は承知の話だろう」

 

 

「・・・・・・・・・ですね、」

 

 

「あまり言いたくはないけど義秋さんの言うとおりかな、白ちゃん暮ちゃん、両方とも貴重な存在だからその辺は笑えないね」

 

 

 

義秋の指摘は、束達が危惧しながらも言うのを躊躇っていたことそのままであった。

 

 

「部外秘の件に関しては了解しました、所でこの後はどちらへ?」

 

 

「ん?ああ、僕の紹介をしてくれてなかった件で兄さんに早いとこ会わないといけなくなったからね、事件現場へと向かう予定だよ」

 

 

「あ、そうそう、明日には帰国できるように調整しといたから、後はドイツを観光するなり何なりお好きにどうぞ」

 

 

「そうか、やっと先に帰国した父さん達に会えるのか・・・・・・」

 

「じゃあそういうことだから僕達ははこれで失礼するよ、義成さん、案内頼みます」

 

「了解した」

 

 

一通りの話を終えた義秋は千冬達に事情聴収(と言う名のスペック確認)が今日で終了することを告げ、部屋から去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、義成さん、兄が()()ぶっ倒れたって言うのは本当なのかい?」

 

 

「その通りだ、あのボウズ、調査の立ち会いやってる中過労でぶっ倒れたんだそうだ、近くの病院に秘密裏に入院してるらしいから向かうぞ」

 

 

 

部屋を去り、ホテルの道を歩く二人は、知らずのうちに入院していた義照の事を案じつつ、彼のいる病院へと向かうのであった・・・・・・

 

 

 



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兄弟+1の世間話 前編

本話は前後編共に比較的濃い成人の喫煙描写が入っています。

本とは一話で済ませる予定でしたが、長くなる様子だったので二つに分けました。

今回は前話に出てきた槇田元首相の弟と元首相の情勢に関する会話回となります。


~ドイツ、モンド・グロッソ会場近くの病院屋上にて~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・やっぱりココにいたのかい、兄さん」

 

「・・・義秋か、」

 

 

「珍しいね、話にあったタバコじゃなくて普通のタバコを吸ってるなんて」

 

「・・・・・・まぁいい、こっち来てテキトーに座れ」

 

「んじゃ邪魔するよ。」

 

 

千冬たちから白桜のスペックを見せられた義秋は、モンド・グロッソ会場近くの病院にやって来た後、病室から脱走して騒ぎを起こしていた兄を探し、通常の方法ではこれない病院の屋上へとやって来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・折角だし御相伴させてもらおうかな?一本とライターある?」

 

 

「ホレ」

 

 

「(火をつけつつ)・・・・・・ありがと。」

 

 

「おう」

 

 

義照からライターを借り、ついでにタバコを貰って、火をつけ吸い始める。

 

その後、話は義秋のぼやきから始まった。

 

「・・・兄さん酷いよ、何で千冬さんたちに僕の事紹介してなかったのさ?」

 

「すまんすまん、あの頃からずーっと他の事に気を使っていたからな、千冬の両親にしかり、束たちのIS研究に然り、お陰さんで会うことはないだろうからと紹介を忘れていてな、束たちの事だ、お前の事教えたら無理矢理にでも会いにいくだろうと思ってな」

 

「お前の事だ、会社の方が忙しいだろうし束達がアポ無し突撃噛ますかもとも思ってな、開発当初なんか飛び級で大学を卒業してた正晴はともかく、束と千冬は純正なギリギリ中学生だ、世の中のわずらわしい事情の類いは知らんだろうとも思ってたから先送りにしちまって・・・」

 

「んで、すっかり忘れてこの様と、知ってる前提で来ていた僕は良い面の皮だったよコンチクショウが、」

 

「・・・・・・会社の方はどうだ?、ISの影響を受けにくい業種でジブラルタルからバミューダに逃げるときに系列の会社の世話になったとはいえ、政治家引退後はそっちの動向をほとんど知らないから気になってたんだか」

 

 

「順調だよ、都合上、我が【明成通運】はISで代用しようとすると面倒なことこの上ない業務を取り仕切ってるからね、白騎士をデチューンしたようなのが沢山沸いてくると流石にアレだけど、今のところは問題ないよ」

 

 

「そうか、ならよかった、」

 

「兄さんの方も、古巣の民和党大丈夫なの?、その気になれば社を通して全面バックアップできるのにそういったことしないで正面勝負し続けて」

 

 

「むしろお前の会社のバックアップ受けた方が問題になるがな、親族経営の大企業のバックアップ受けて政治活動とか公平性欠きすぎてて大変なことになるのがオチだから、その辺を排除したかったって所がある」

 

 

「・・・ああ、道理で僕の会社関係だけやけに国の監査全般厳しいのか・・・・・・」

 

 

「まぁそうやって経済界からの影響をなるべく排除する調整がうまくいったからこそ、天ヶ瀬防衛大臣に後任を引き継げたし、彼女が国際情勢の激変に振り回されながらもうまく舵取り出来たわけだがね」

 

「なるほどね・・・ああそうそう、白桜のスペック確認させてもらったよ」

 

 

「・・・そうか、IS委員会委員長お前だからスペック確認に来たのお前ってことになるのか!」

 

「そうだよ!なんなのさあのチートスペック!」

 

「俺もあれ見たときはなぁ・・・・・・」

 

 

 

先ず、二人は互いの近況を話し合った、タバコを吸いながらの会話はどことなくしんみりとした物だったが、それと同時に何か懐かしそうな様子であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、兄さんが【遊星】・・・・・・この銘柄のを吸ってるってことは、よっぽどの何かがあったって訳で、病院で脱走騒ぎを引き起こしてまで二人だけでこうして話したいわけだよね?」

 

 

「・・・・・・情報大臣は?」

 

 

「兄さんが脱走したと聞いた辺りから察してたんだろうね、病院内の捜索引き受けて僕に病院の外を探してくれと言ってきたよ」

 

 

「・・・そうか」

 

義秋の一言から状況は一転、二人の目が真剣なものになる。

 

 

「・・・んで?兄さん、何を話そうとしてこんなことを?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・()が、」

 

 

「・・・兄さん?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

声を震えさせながら何かを言おうとする義照、怯えてる、と言うわけでは無いが感極まってるのを察した義秋が軽く声をかけるが、意に介してるようすがない。

 

 

「【流星宰相】が・・・・・・親父が生きている可能性がある

 

 

 

なっ・・・・・・!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双方、全く信じられないと言った表情であった。

 

 

 

 

 

ちょっと待ってくれ兄さん!父さんは()()()()確かに僕たちの目の前で米軍の原子力空母の上から母さんと一緒に・・・・・・

 

 

だが()()()()()()()()()()()・・・・・・そうだろう?義秋?

 

 

だけど!あのとき父さんも母さんも空母艦上で撃たれて・・・・・・明らかに致命傷で・・・っ!

 

 

俺だって信じられんわこんな話!だけどなっ!・・・だけどなぁ!!

 

 

義照の話にそんなのあり得ないと反駁する義秋、義照も反論するが、義秋は焦りを隠せずに持ってるタバコを握りつぶしてまでに義照に食いかかる。

 

義照も、義秋の反論内容そのものが自分が言った、そんなような事はあり得ない事だと証明している事には気づいていた・・・・・・・が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・止まった機関車に過去はあっても未来は無い

 

 

「!!!」

 

 

罪の清算は行動のみで行える

 

 

「・・・・・・・・・母さんと、父さんの」

 

 

不意に発した発した義照の二つの言葉が、反駁する義秋の行動を止めた。

 

 

「お前は覚えてるだろう?親父が良くも悪くも名高い政治家として生きていた頃、俺達兄弟がまだ右も左も分からない子供だったころ、母さんと父さんが常日頃から言っていた座右の銘だ」

 

 

「二人が座右の銘だとか言っておきながら、マスコミに聞かれるとずーっと暈し続けて、ついぞ世間に対して用いることのなかった言葉だね・・・・・・」

 

 

「俺達以外だと最も親父と交流の深かった義成情報大臣や重造()()()()()()()言葉だ、一般やマスメディアから言わしてみれば【永遠の謎】とすら言われた言葉だ」

 

 

「・・・でもこの言葉が何に?」

 

 

「・・・このテープレコーダーを聞け」

 

 

二人が落ち着きを取り戻した段階で、義照は義秋に小さなテープレコーダーを渡した。

 

「・・・コレは?」

 

「織斑夫妻を追いかけている間に俺がこっそりと起動させていたテープレコーダーで、モンド・グロッソ会場近くの裏路地で夫妻を追いかけている時から、あのロボット騒ぎが終わる辺りまでの音声をこっそり録音してたブツだ。」

 

「・・・中途半端な所から再生されるようになってるけど?」

 

 

「途中の所で関わってくるからな、あらかじめ早送りして準備しておいた」

 

 

「なるほどね、それじゃあ一つ・・・・・・」

 

 

義秋は義照に渡されたレコーダーを再生させる。

 

途中からの再生となっていたが、その部分には夫妻が一夏達へ事の経緯を話しているところが録音されていた。

 

【以下、録音】

 

 

・・・・・・「それから数年、廃人同然だった私達の元に、ある人が訪ねて来たの、そしてその人はこう言ったわ、【取り戻したい物があるのなら、失ったのは自業自得が原因だとしても取り返したい日常があるのなら、懺悔してでも迷惑をかける覚悟をしてでも、これまでにやらかしたことよりも遥かにすさまじい事をやらかす事となってでも、進み続けろ】」

 

 

 

 

 

「【止まった機関車に過去はあっても未来は無い、】・・・・・・【罪の清算は行動でのみ行える】・・・とね、」

 

 

【録音、ここまで】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ハハハハハハ!成る程、兄さんがタバコを吸いたくなるわけだ…やっば、さっきタバコ握りつぶしちゃってたなぁ…」

 

 

「・・・・・・ホレ」

 

 

「いや、良いやこっち使うよ」

 

 

録音内容を聞いた義秋は笑いながらタバコを吸い直そうとする。

 

 

・・・・・・が肝心のタバコは握りつぶしてしまっていたため、義照がライターを貸そうとするが、義秋はそれをやんわり断ると、潰したタバコの残骸を携帯灰皿にしまって懐から多少大きめの小箱を取り出しそこから一本の葉巻を取り出した。

 

 

その後ポケットからマッチ箱を取り出すとそこからマッチ一本を取りだし火をつけ、使い終えたマッチをさっきの灰皿に詰め、そのまま携帯灰皿をポケットにしまう。

 

 

「チャーチルサイズ…お前、相変わらずのヘビースモーカーなのな・・・・・・」

 

 

「現在大絶賛プーさん状態な兄さんと違って僕自身はなかなかストレスたまる職場にいるからね、こう言うのは外したくないんだよ」

 

 

「・・・水菜さんにまーた小言言われるぞ、」

 

 

「良いんだよ、水菜の目がないときぐらいこうするのも僕にとっては乙なものだからね。」

 

 

「それよりも兄さんもいい加減身を固めたらどうだい?一夏くんが高校に入る頃には40になるんでしょ?」

 

 

 

「んなっ!?ななななにおうっ!?」

 

 

義秋の喫煙に言及する義照だが、あっさりと受け流される。

 

それどころか自分がまだ独身なことをいきなりど突かれて思わず赤面し、加えていたタバコを落としそうになる。

 

 

「そ、それよりもだ、だいたい言いたいことがわかったか?」

 

(話題そらしたか・・・まあ今回は主題違うしこれで勘弁してあげるか・・・)

 

「・・・まあね、成る程確かに父さんが生きてる可能性を真面目に考えるわけだ、報告にあった織斑夫妻の事の経緯の通りなら、父さんは気づけば間違いなく夫妻にあの言葉を投げ掛けようとするだろうしね、さっきの言葉の前の言葉も正面突破思考の父さんらしい言葉だ。」

 

露骨な話題そらし(本題復帰)でなんとかしのいだ義照、話は再び真剣なものへと戻ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・限りなく確率は低いよ?」

 

「わかっている、しかし生きてるとなったら一大事だ、正直原状の世界情勢がまた激変しかねん」

 

 

「それをまるで否定できないのが父さんの恐ろしいところなんだけどね・・・」

 

 

 

 

「話は変わるけど・・・・・・兄さん、白騎士事件の調査は進んでるかい?」

 

 

「うんみゃ、全くだ」

 

 

「そう・・・まさかまさかの偶然なのかな?」

 

 

「あり得んな、あの事件から数ヵ月後のあの日に、私も天ヶ瀬首相もお前に指摘されて今更かのように気づいたが、今もあの事件に関しては同じ疑問符をなお残している」

 

 

何で全てのMARVが分離せずに直接本土へ向かったのか・・・だね

 

 

話が変わって、二人は今なお疑問符として残っていた白騎士事件に関するある1つのおかしい点に話題の中心は移りつつあった。

 

 

 

 

 

ココから話は一端解説にはいる。

 

 

本来、現代のICBMはMARV(マーヴ)と呼ばれる核弾頭を()()有し、ミサイル発射後、大気圏越えた辺りで分離することで、それぞれが違う目標に攻撃ができるようになっている弾頭搭載方式をかなり広範の国々で採用しており、当然、事件の時自衛隊を苦しめた【トライデントX】のようにそれらのタイプのミサイルも放たれたわけだが、それらのICBMは本来の大きく運用から外れ、弾頭が分離されることなく本来の運用を外れて単弾頭の旧式と同じように日本へと真っ直ぐ向かっていったのである。

 

 

実のところ、このために自衛隊や各国軍の奮闘と白騎士の活躍によってなんとか日本は滅亡への窮地を脱せた、と言う側面があった。

 

 

言ってしまえば、MARVが正常に起動していたのなら、一部でも稼働していたのなら、日本本土のいずこか、或いはそのすべてに再び広島と長崎の悲劇が舞い降り、最悪そのままなし崩しで第三次世界大戦もあり得たのである。

 

MARV無しでも白騎士が参戦しなければ同じ結末を迎えていたと言われているだけに、この事実は不思議といって仕方の無い代物だった訳であったのだ。

 

 

 

 

「弾頭の分離部分にに細工するなり、ミサイルのプログラミング書き換えるなりなんなりの工作を行うことでMARVが機能しないようにすること自体は可能だとは確証がついた、だがどれも時間がかかるし、何より非効率的だ、内部から準備するにしても、中東の核まで使われていた以上、コネクション作りやらなんやらでどうあがいても最低でも10数年は準備にかかる計算になる」

 

 

「日本を潰す気であればあれば弾頭に工作なんて必要ない、単純に日本を攻撃して第三次世界大戦の引き金を引きたいんならわざわざ世界中のミサイルを使う理由がない、1~2発本物を飛ばして自衛隊に迎撃させるだけでも十分、最悪ミリタリーバランスを考慮しても各国から数発ずつ飛ばすだけで十分な筈だ・・・・・・犯人はいったいなぜに?」

 

 

「まったくわからん、だが、現状では思い付きもしないような何かしらのデカイ目的があった可能性が高い」

 

 

話を戻せば、二人はこの原因をチマチマと情報を集めては捜査していたのだが、全く糸口がつかめずにいた。

 

 

事件から8年近くがたった今もなお犯人・・・いや規模からしておそらく組織ぐるみの犯行なので犯行組織とでも言うか、犯人達と言うべきか・・・とにかくそれがこの事件に関して、その原因、方法、目的、その他もろもろの一切が不明のままなのだ。

 

 

「・・・ダメだな、暫く前後関係の洗い直しからやってみるか」

 

 

「兄さん、すっかりやってることがジャーナリスト染みて・・・・・・」

 

「しゃーないだろ、プーさんは能動的に動かないとやることねーんだから」

 

 

「そもそも怪我で政界引退したのはともかくその後の無職状態で世界巡りって・・・」

 

 

「お前のところの飛行艇にはいっつも世話になっとるがな、お陰さまでマイレージが爆溜まりよ」

 

 

「はぁ・・・相変わらず父さんにそっくりな・・・」

 

 

「警官の頃と首相やってた頃の貯蓄があったからな、使い道ねーからって結構のこってたのの良い使い時だったよ」

 

 

「・・・・・・兄さん、残りの貯蓄は?」

 

 

 

 

「・・・・・・各国で指名手配犯を片っ端から豚箱に送ったから、その関係の報酬のせいで大して減ってないな。」

 

 

「・・・・・・兄さんはホントに過労死したいのかい?」

 

 

 

真面目な話からまたそれているが、義秋は義照が裏で色々とやってるのを察しきり、タバコの煙の混じった大きなため息をはいた。

 

 

 

「まぁ良いや最後の真面目な話に移ろう、兄さん」

 

 

「・・・・・・本国の()()か?」

 

 

・・・・・・再び二人の目は真剣なものへと戻っていた。

 



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兄弟+1の世間話、後編

後編です、今回でもってモンド・グロッソでのお話は一端終わり、舞台は篠ノ瀬研究所へと移ります。


二人の会話はこれまでちらりとすら話題に見られることのなかった日本の暗部へと移っていく。

 

話が真面目になったりそれたりする度に、タバコ(葉巻)を咥えたままに真剣な顔つきと緩い顔つきとをいったり来たりしている兄弟だが、この話の時はタバコ(葉巻)をわざわざ取り替えるなど、特に真剣な表情なのがうかがえた。

 

 

 

「・・・・・・私が政界を引き下がってから、暗部の各家の反応はどうなんだ?」

 

 

「・・・・・・ダメだね、懐柔策効果無しのようだよ」

 

「・・・・・・マジか、」

 

 

「やーっぱり父さんの時点で国が暗部と決定的に対立したのが効いてるみたいだ、天ヶ瀬首相に変わった後も、これまでの暗部と情報省による二頭並立対立構造は変わってないね」

 

「・・・・・・・・・親父ェ・・・・・・なんで俺が警官やってた頃によりにもよって暗部の大親玉、【更識家】と正面衝突したんかなぁ・・・・・・」

 

話の主題はなんと国の暗部についてであった。

 

正直あまり話したくないのか小声になる二人、しかし、病院の真上なんかで話してて良いのだろうか?

 

そんな疑問が浮かび上がってしまうほどに話す場所を間違えてるとしか言い様の無い内容であった。

 

 

「国の公的機関の裏側に暗い部分を任せるのはスペツナズの例があるから情報省に暗部の役割を任せるのは間違ってないんだ・・・・・・でもさぁ、だからってあんな強硬な事しなくても・・・」

 

 

「親父が更識に頼らずに独自ルートでロシアと膨大なチャンネル築けるチートスペックしてたのが裏目に出たからなぁ」

 

 

 

「どうするよ兄さん?実際問題、対ロシアと防諜関係で更識の力が必須な状況ってもうないよね?」

 

 

「平和条約と北方問題が一番の使いどころだったが、更識の力借りずに親父が亜光速で二島返還案ショルダースルーさせて条約成立からの国交完全回復コンボ噛ましたのが・・・・・・、おまけに情報省だからなぁ・・・今でもロシア関係のチャンネルの大半は更識だけど対露関係超絶に改善されてるからそこまでいるかと言うと・・・・・・欲しくはあるが必須ではないしなぁ・・・」

 

 

「他国へのチャンネルは父さんの代で義成さん頑張って情報省がだいたい掌握しちゃったし・・・・・・」

 

 

「・・・・・・このままガン放置はできないのか?」

 

 

「無理だね、天ヶ瀬さんの話によれば暗部が勢力を結集させて独自に戦力網を構築しようとしているらしい、今は傘下の会社がライセンス生産してる機体を独自改修し始めた位の初動と言ったところだけど、このままだと最悪内乱の疑いをかけないといけなくなる、ってかヤバイことに僕の系列会社の建物付近で一部の人間が不穏な動きしてるんだよ・・・・・・」

 

「・・・・・・不味いな、和解のための工作は?」

 

 

「同じく不調、情報省関係者は更識邸を門前払い、他のところを仲介させようにも更識と話をするときは情報省との件は話題に出させないよう更識から脅迫混じりに圧力がかけられてる、僕に至っては更識邸に近づくだけで足元に警告のメッセージカード飛ばされるからね」

 

「あまり使いたくない手だが、自衛隊の南条海将に仲介してもらえないのか?更識との交流があった筈」

 

「ダメだね、純香さんにによる仲介はクッソ丁寧に断られたそうだ、あんまりしつこく依頼するとまだ暗部と良好な状態を保ててる海自と、政府との仲まで悪化しかねない」

 

 

「・・・・・・八方塞がりか、どうにか打開策はないのだろうか…?」

 

 

 

 

二人の話は、主に日本国暗部の中枢、【更識家】の事である。

 

日本が裏の世界においての工作やらなんやらを賄うのが日本の暗部な訳だが、更識家はその中でも最たる大家なのだ。

 

んでもって、話の中心はその更識と対立している構図をどうにかしたいと言うものであった。

 

詳しいことは省略するが、今は亡き父の所業を原因として、更識家は今日の今日までずうっと対立したままなのである。

 

(正確には、現状更識が政府を一方的に敵視してるだけなのだが・・・政府としては困ったものなのであった。)

 

どーにかこーにか更識と和解の手だてを立てたい所ではあったが、暗部を相手取る関係上取れる手段は非常に限定されたものだし、余程父の事を恨んでいるのか和解のために人を送っても意に介さず、間接的に和解の場をセッティングしてもらおうと動くも経済界には圧力が入って事態に介入できず、軍部(自衛隊)は暗部と繋がりが残ってる所なせいで微妙に暗部よりな為、仲介は期待できない。

 

義秋が自ら赴いたが今度は警告を食らって更識邸に近づくこともできない有り様となっていた。

 

「もう俺がダイレクトに乗り込んだ方が手っ取り早いんじゃなかろうか?」

 

 

「父さんとそっくりの兄さんが向かうと逆に刺激しかねないから却下、ってか僕もそうだけど更識に下手な接触して兄さん死んで真相が露見したら国民と天ヶ瀬首相と自衛隊マジギレして鮮血の結末しか見えないから大却下、ついでにそんな無茶をしようとする元首相は出荷よー」

 

 

「(´・ω・`)そんなー」

 

 

あまりにも手だてが無さすぎてやる気が削がれ、放置してもout、自分達で対処しようにもやれることが無い八方塞がりのクソゲー状態に思わずネタに走ってしまうほどになってしまった二人、そんな時、義秋とともに病院にやって来ていた義成がこの場にたどり着いた。

 

 

「・・・・・・・・・地味に遅いなとか思ってたらボウズ、お前ら揃って病院の上でタバコとかなにやってんだよ・・・・・・」

 

 

「んー今?更識関係の対処で手詰まり起こしてるのを再認識して、おまけに更識が独自戦力持ち始めててオワタwww\(^o^)/ってなってるだけー」

 

 

「マジでどうしよって言う・・・・・・」

 

 

「・・・あー、更識の事かぁ、ウームムム・・・ボウズ共相手とは言えここまで長引くとは思わなかったなぁ」

 

 

「何か良い手無い?正直父さんの頃から丸30年近く情報大臣の座に居座ってる貴方ぐらいにしかこのクソゲーどうにもできなさげなんですが。」

 

 

(ダメだコリャ・・・完全にお手上げでやる気失ってテキトーになってやがる・・・)

 

完全にやる気を失ってタバコ(葉巻)を吸ったまんま普段の言動が崩れてきた二人を見て、義成は思わず頭を抱える。

 

更識がここまで頑なになった理由に、自分自身の頑張りすぎで更識から彼らお得意の海外の暗部へのカウンターパートとしての出番を完全に奪ってしまったのが一因にあることは彼が一番よく知っていたが、義成もここまで問題が長期化するとは予想していなかったのであった。

 

 

「・・・しゃーない、秘蔵の最終手段使うか、更識の方は俺が何とかするから取り敢えず他のことに集中しとけ、俺自身ではどうにもならんが、なんとかできる人がいるからその人に仲介を依頼しておく。」

 

 

「えっ!?まじで(;゜∇゜)!」

 

 

「さすが情報省大臣!頼みます!」

 

 

「・・・そろそろ真面目になってくれると嬉しいかなーって」

 

 

「「アッハイ」」

 

 

 

 

完全にヤル気失って気の抜けたモードに移行していた二人を引き締めると、義成は話を続けた。

 

更識に関しては彼に対応策があるみたいだ、秘蔵とか言い出す辺り、対応策あるんならさっさと使えよ、とかは言ってははならないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・更識は義成さんに任せることにしてと、義秋、国際IS委員長として聞きたいが、最近のIS関係における不穏な動きは?」

 

 

「・・・・・・特にはないかな、全般的に素で怪しげなところだったらいくつかあるけど」

 

 

「・・・どこだ?」

 

 

「一つ目はフランスの【デュノア社】、第二世代機ラファール・リヴァイヴ開発後あたりから、社長以外の経営陣が突然一新されたらしい、二つ目はドイツの【ベルソン重工】だ、何でも新型の二足歩行ロボット兵器の実験機を開発中だとか」

 

(デュノア社か・・・・・・あの嬢ちゃんが元気だと良いが・・・・・・・・・ベルソンは・・・よく知らんから情報省に任せよう)

 

最後に3人はここ最近のIS関連の産業の裏側について話し始めた。

 

「3つめは俺から言っとこうか、ついでだが、前述二社が既に怪しいとして情報省が遠回しに監視ながら詳細の調査をしてる所で、ここは現在軽い監視に留めているところだ」

 

「・・・義成さん、続けてください。」

 

「三つ目は能登重工だ、話の通り、更識傘下のあそこは自衛隊供給向けのトルコ製のIS、【ティラノプテルス】を量産している所だが、完成品の何機かが更識に流れて改修され始めていると言う話があった」

 

「改修内容を具体的に説明することは?」

 

「ヤバイことに、拡張現実装置【プラティオフタルムス】の仕様変更らしい」

 

「・・・・・・それモノ次第だとヤバイことになりますよね?」

 

「販売元のレイヴン・インダストリー社に動きが見られないのが更に不自然だ、更識相手だから下手には動かせんが・・・・・・なるべく早くに実態調査にこぎ着けるようにする」

 

 

「IS委員会の者としてお願いさせて頂きます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の真面目な話を終えた3人は、義照、義秋がタバコと葉巻を新しくしたところで、再びゆっくりと話が移り変わって行く。

 

 

「後は・・・特に今話すことは無いか、」

 

「あ、兄さん、そいえば過労でぶっ倒れたとか言ってたけど大丈夫?」

 

 

(何かが飛んでいる音)

 

 

「ダイジョーブダイジョーブ、早川医師に2日は絶対安静とか言われてたけどこの通りピンピンしてるからね」

 

 

「・・・・・・首相現役時代にそうやって数日働きづめになって、デカイ仕事と終えたらぶっ倒れるを繰り返してなかったっけ?」

 

 

「所でボウズ、何か変な音しないか?具体的にはエンジンの・・・うおおっ!?

 

 

「義成大臣!?」

 

やっとこさ真剣な話が終わったと思ったら、いきなり情報大臣が布にくるまれて簀巻きにされてしまったのであった。

 

 

医者の通告を完全無視して病院を脱走した挙げ句、院の屋上で呑気にご兄弟で喫煙とは大きく出ましたね、義照さん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・げえっ!?ナイチンゲール!!?

 

 

声のした方向を見て義照と義秋が目撃したのは、数少ない正晴博士製民間型であり、医療用のISである紅と黒を基調とした第三世代該当型機、【ナイチンゲール】に乗り込み、二人を恐ろしい剣幕で見つめている早川 癒希医師(英国での車輌事故で死にかけた義照の当時の主治医)であった。

 

「いったいいつのまに!?」

 

「ついさっき、です何を長々と話していたのかについては気にしないでおいておくとして、貴方が本来どうあるべきかはお分かりですよね?」

 

 

 

「いや、ちょっと待って、私は寝っぱなしはあれだからと気分転換を・・・・・・」

 

 

問☆答☆無☆用!!

 

 

「あっ!ちょっと待って・・・・・・!?、ピョゲェェェェェー!?」

 

 

「何で僕もー!?!?」

 

 

「タバコを止めさせるべき場所と対象なのに何で便乗してるんですか!貴方も同罪です!!」

 

 

「ちょっと待って!それには深いわけが!」

 

 

「仮にもIS委員会委員長が言い訳ですか、そうですか、これは覚悟を決めていただかねばならないようですね」

 

 

え?うわなにをするやめ・・・・・・・

 

 

「ナイチンゲール」の巧みな手さばきによって義照が即座に簀巻きにされ、なんとか逃れようとした義秋も、言い訳むなしく布団にくるまれる。

 

 

 

翌日、見舞いと称して義照達のもとに重造がやって来たのだが、その時簀巻きにされてベッドに転がされてる三人を見て大爆笑するのはまた別のお話である・・・・・・

 

 

 

~続く~

 




本作は名前関係を色んな所から引っ張ってきてます。

ベルソン重工と聞いて何を作ってるのかすぐに察せた貴方は間違いなく原作ゲームをやり込んでいる・・・筈かと。


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ある日の篠ノ瀬製作所

くーちゃん出したいのにまだ出番じゃないからって出せてない作者です。

ISのソシャゲーが配信開始されたので先にぶっちゃけておきますが、本作はその作品の要素はそんなに入る予定がないです。

本格的に関わってくるとしても、新しい代表候補生関連ぐらいですので悪しからず。


あと新作スパロボにナディア参戦てマジか。


~side束~

 

 

モンド・グロッソの件がどうにか片付き、束達が帰国して早数日・・・・・・

 

 

「・・・・・・・・・ねえはるるん、みとりん、ゆっきー、ちーちゃん」

(パソコンでデータ処理を亜光速で済ませながら)

 

「ん?どした束?」

(速度そのものは普通より多少早い程度なものの、下手な筆箱より小さい超小型キーボードで指一つにつき1つの、計10台のパソコンを操作するとか言う離れ業を披露しながら)

 

 

 

「・・・・・・そろそろ掃除が必要だよねコレ?」

 

 

「・・・そうさね」

 

 

私達の目線の先には、今にも中の物が溢れだしそうな勢いになっている倉庫のドア、

 

ドアの先にははるるん達が仕事をこなす上で出てきたゴミ(受注したISに塗装を施すためのペンキをいれてたゴミやら、仕事が忙しすぎで後回しにしていた家庭ゴミの袋の山やら)がぎゅうぎゅう詰めにされていたのであった。

 

 

「・・・完全に仕事優先で後回しになってたからなぁ、しかし今もコレ完成したらすぐ次のを受注しないと、だからなぁ、正直片付けてる時間があるのかと言う・・・・・・」

 

 

「だよねぇ・・・はるるん、受注機体用のプログラム組み終えた?」

 

 

「一応残ってた四機分全部終わったが、思えば受注したISを保管するための倉庫なのに全然使ってないな、あそこ」

 

「作業するのに都合良いからってこっちに機体置きっぱにしてるからね~、オフィス兼作業場だから広くスペースとられててIS置いときながら作業できるし」

 

 

「だからって10機同時受注はやっぱりやりすぎだったな」

 

「受注元が同じ職種のだったからなぁ、【ナイチンゲール】やら【レイバー】やらなんやら個別受注多すぎたからめんどくさいしと思って一気に受注しちまったわけだが。」

 

 

「要求仕様が細かいところで全部違ってたからプログラム共通させれなかった悲劇な」

 

 

倉庫がゴミ捨て場みたいになったのには、本来倉庫に保管しておく筈の製造中機体を作業しやすいからと全部広いオフィス兼作業場に持ってきていることにあった。

 

 

IS保管に使う予定の倉庫が使われなくなったので一時的なゴミ置きにしようとしてそのまま・・・・・・と言う有り様である。

 

 

更に、出来るからと言って総勢5(+2)名の製作所で10機も同時に受注したのが祟り、受注数が多過ぎて怠けると大惨事になると思った為に誰も殆ど休まずに製作し続けた為、まだまだ納期に余裕があるのに他のことに手をつける気力が起きないという事態に私達は陥っていたのだ。

 

最も、そもそもこんなことになった理由と言えば、この10機を完成させても、世界各地から寄せられた受注待ちの予約がまだまだ数十件も残っているほどの需要過多にあったわけだけど。

 

【んで、お母様どうします?あのゴミの山】

 

 

「んー、気分転換もかねてサクッと片しちゃおうか」

 

「そうしますか」

 

白ちゃん(白騎士の略称だ)に促されて、私達は早速、ゴミの山と化した倉庫の清掃を行うことにした。

 

 

それが大惨事の引き金になるとも知らずに・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ束、取り敢えずゴミ処理始める前にどっかに機体を避難させといた方がよくない?」

 

 

「しかし、待機形態にしとくと搭乗者登録してない物だから無くす可能性が・・・それに作業するならそのままの方がいいし・・・」

 

 

「それならカーゴの出番だな」

 

 

「・・・お?、【オメガ・カーゴ】竣工早々に本領発揮か、正晴?」

 

「そう言うことだ」

 

 

「よーし!じゃあ白ちゃん、暮ちゃん(暮桜のry)、機体のカーゴへの搬送お願いね!」

 

 

【了解しました!】

 

【了解した】

 

「どれ、私も手伝うか」

 

 

まず私たちが始めたのはオフィスに鎮座されていて邪魔になる11機のIS(10機が受注機体、残りの1機は製作所に保管している試作機)を、車庫にある私とはるるん設計の超大型IS運搬専用車輌【オメガ・カーゴ】に積むことから始まった。

 

 

この【オメガ・カーゴ】は民間用のISを現地に運び込む為に国とIS委員会に話を通し、内部にIS開発設備やキャンピングカーの性能を要求してまで製造された超大型の専用輸送車だ。

 

 

待機形態になってないISを5機ほど積みこめて、なおかつISの開発及び整備設備やキャンピングカーとしての性能を有している他、シュノーケルやら悪路走破性能やらスモークチャージャーやらレーダーやら何やら何でもかんでも詰め込んで、挙げ句の果てには専用モジュールを用意して色んな状況に対応できるようにするなど、天才たる私とはるるん、みとりんの三人を中心に色んな人の技術とアイデアのあらんかぎりを詰め込んだ代物となっている。

 

その代わり、特許関係で入る収入やらなんやらで金はあるからって金に糸目をつけずに技術を惜しげもなく投入し、日本特殊車輌製造メーカーの力も借りた一点物なため、他でも製造可能だがお値段は一輌で億単位とか言う末恐ろしい価格になったんたけどね。

 

「搬入口は開けとくから、半数はそのまま車内のスペース、半数は待機形態にした上で車内にあるガラスケースに入れておいてくれ、本人達へ引き渡すときはそれに入れておくからな」

 

「わかった、取り敢えず無銘と受注機体の内4人組の機体をそのままに、残りの6機を待機形態にしてから保管しておくぞ」

 

「了解」

 

【取り敢えず最初の一機をカーゴに積み込みまーす】

 

 

ちーちゃんが待機形態のISを、ちーちゃんとは別に独自に動けるようになった白桜がそのままの状態のISをカーゴに運び込んで行く。

 

 

 

【・・・・・・これでよし、と】

 

 

【Master、すべての機体をカーゴに乗せ終えました】

 

 

 

「了解した、束、終わったそうだ」

 

 

「了解だよー!んじゃ開けよっか、おーぷんせさみ~!うわわわっ!?」

 

 

ドバァァァァァッ!

 

 

 

 

機体を退かし終えた私達は早速、倉庫へのドアを開ける。

 

 

その直後、ドアの方から雪崩れ込んで来た物の数々によって私の視界は暗転したのであった。

 

 

~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side 箒~

 

 

「・・・・・・なぁ一夏、ここは確かに姉さん達のいる筈である製作所だったよな?」

 

 

「そのはずだけど・・・・・・」

 

 

今、私達の目の前にはゴミ屋敷、とでも言うべきほどにまでモノに溢れてしまった姉さん達の職場である筈の建物があった。

 

本来は私と一夏、友人の鈴音と同じく友人で千冬さんの教え子でもある赤と黒のオッドアイをした女性、鳳 志乃(おおとり しの)の四人で姉さんの職場にお邪魔する予定があって来たのだが、大変なことになっている姉さんの職場、篠ノ瀬製作所をみてそれどころではなくなってしまったのだ。

 

本当のところは母さんと、最近一夏達と再会した一夏の双子の姉、円香も一緒に来る予定だったのだが、帰還した際に色々とやらかしている一夏の両親、千秋さんと一春さんへの折檻とそのフォローのためにこれなくなった、という事情があった。

 

 

 

 

「・・・・・・イメチェン?」

 

 

「いやいや、コレ明らかに束さん達が何かやらかした後でしょ」

 

 

志乃が建物を見て一言、それに対する鈴の的確なツッコミ。

 

 

「それにしてもいったい何故・・・・・・」

 

 

「また千冬姉かな?いい加減にしてほしいんだけどなぁ・・・・・・」

 

 

「いくらししょ・・・千冬さんが実際のところズボラだからってここまでひどい事態になるとは思えないのですけど・・・?」

 

 

「志乃の言うとおりだ、確かに千冬さんは私生活で一夏に苦労を掛けてばかりだが、一夏がいないからとここまで酷い惨状を引き起こす人ではない筈だ」

 

 

「じゃあいったい誰が・・・?」

 

 

一夏がこれまでの実績(本人の生活力皆無)から千冬さんを疑うが、志乃の言う通りの話、いくら千冬さんが前まで私生活の殆どを一夏に頼りっぱなしだったとは言え、ここまでの惨状を一人で引き起こすことは無いだろうと考えられるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、あーだこーだと色々四人で原因を考えてみたが、結局あれこれこの場で考えるには情報が少なすぎたので、取り敢えず付近を調べてみることにした。

 

 

「・・・・・・うっわ臭い!コレもしかしてペンキの臭い?」

 

 

「くんくん・・・・・・確かに束さん達に【ナイチンゲール】の塗装工程を見学させてもらった時に嗅いだ臭いと一緒ですね、束さん達がIS塗装に使っている塗料と見て間違いないかと」

 

 

「なぁ箒、あっちの方に転がってるゴミ箱の中身って正晴さんが没にしたISの設計図じゃ?」

 

 

「・・・・・・本当だ、ここで今制作中の音楽演奏用IS群の1つの設計図だな、3つの音楽ユニット合計10名分の専用機設計を一度にこなしてて、ユニット別に機体に共通性持たせたいとか言ってたな、とすれば原因は・・・」

 

 

「束さんに限らない製作所全体になるのかな、これ?」

 

 

 

鈴が塗装に使われていたペンキ缶らしき物を発見したのを皮切りに、製作所敷地内のそこら中に溢れているゴミの正体が段々と掴めてきた。

 

 

見つかったゴミは悉く姉さん達がISを開発する際に使っていたものばっかりだった。

 

そこから推測すれば、出てきた廃棄物を仕事が押しているからと適当に一時保管し続けておいた結果、保管の限界を迎えて一気に溢れだしたのではないか、と推論できる。

 

千冬さんを除けば、姉さんを筆頭に自分の領域に関しては熱中し過ぎて時間を忘れてしまう人ばっかりなのが篠ノ瀬製作所の人達だ、比較的手の空いてるであろう千冬さんと行信さん、そして、姉さんの話で聞いた白騎士、暮桜の二人では正直姉さん達を止められそうもないし・・・・・・

 

 

「・・・・・・んで、どうするのコレ?このゴミの山から束さん達探すのはさすがにキツいってレベルじゃないわよ?」

 

 

「清掃業者さんでも呼んでゴミをまとめて取っ払って貰います?」

 

 

「正直志乃の言うとおり俺も業者さんを呼んで纏めてゴミ収集してもらった方がいいとは思うんだけど、そうするとゴミ回収の際に束さんたちも巻き添えにならないかな?」

 

 

「そうならないようにするためにゴミの撤去が遅れる可能性は大いにあるな、多分」

 

 

取り敢えず原因に見当がついたあたりで、次はどうするべきか考える必要性が出てきた。

 

鈴の言うとおり、このままこのゴミの山から姉さん達を探すのは困難を極める。

 

そもそものスペックが異常な千冬さんもそうだが、姉さん達も姉さん達で生身の千冬さん相手にタイマンで多少は戦える位には恐ろしい身体スペックをしている。

 

 

だから姉さん達がゴミに埋もれてあっさり圧死してるようなことは無いだろうが、製作所外の庭一帯と建物内のオフィス兼作業場及び倉庫におよぶ広さに渡ってゴミが散乱していたのでそこから探すとなると私たちだけではいつ終わるかわかったものではないのだ。

 

 

志乃の言うとおり業者に頼んで重機投入してゴミを一気に撤去してもらう手もあったが、その場合は一夏の懸念通り、重機械でゴミを動かすときに埋もれていた姉さん達を巻き込む可能性があるため、それを防ぐために作業が遅くなる可能性があった。

 

 

「・・・・・・箒、もう警察呼んじゃおうよ、冷静に考えたらコレフツーに警察案件だって」

 

 

「わ、私が呼ぶのか!?姉さん達がゴミの山に埋もれたからって!?」

 

 

「そうした方がいいかもしれませんね、いくら師匠といえどこの状態で身動きできるとはとても思えませんし、何よりこのままだと普通に近所迷惑ですし…」

 

 

「・・・・・・あっ、あんなところに全員いた!箒、鈴、志乃、あそこ!!」

 

 

「「「えっ?」」」

 

 

ここで、普通に考えて異常事態であるために警察の手を借りるべきだと言う鈴とそれに同調する志乃。

 

鈴の言うとおりにゴミに埋もれたと思われる姉を探すために警察の手を借りるべきなのか、って言うか理由が理由なのでそんなことしていいのか?

 

 

 

 

 

……などと考えて迷っていたところ、一夏がオフィスの隅っこにペンキまみれになってダウンしている姉さん達を見つけたのだった・・・・・・・

 

~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side 正晴~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鳳さん、本当に、本ッ当に申し訳ない!!」

(五体投置しながら)

 

「いえいえ正晴さん、何もそんなに畏まらなくても・・・・・・」

 

「いやしかしだね・・・あっやば肩が・・・」

 

「正晴さん!?」

 

 

私達が倉庫からのゴミの雪崩に巻き込まれ、オフィスの隅っこの方で使い残した塗料にまみれてぶっ倒れてから数時間が経った。

 

 

結局のところ私達は織斑君たちに助けられ、ゴミの方も箒ちゃんの通報でやって来た警察の人が文句を垂れつつも清掃業者の人を呼んでくれて一件落着へと至り、現在はシャワーを浴びて服を着替えることで体についたペンキを落として身だしなみを整え直した状態で、清掃業者の神業によって僅か数時間で元通り綺麗になった研究所の入口前で、見苦しい所を見せてしまった箒ちゃんたちに対して、全力で謝ることとなったのであった。

 

 

この件によってオフィスにあったパソコンがほぼ丸々全損、車庫にあったオメガ・カーゴもペンキまみれになり、更に【白桜】が軽く損傷して白騎士と暮桜から文句小言が暫く続くはめになった。

 

幸いオフィスのパソコンはデータのパックアップを残していたのでPCを新調し次第すぐに再開できる見通しだったし、受注していた機体と志乃さんの専用機【無銘】(ノーネーム、と読む)はカーゴに避難させていて無事でカーゴ自体も軽く洗車すればすむぐらいの被害だったのでPCが壊滅したこと以外で仕事に大きな支障のでる出来事はなかったのだが・・・・・・

 

 

「箒ちゃん、私怖かったよ~(ToT)」

 

「姉さん・・・・・・(姉さんが泣きつく姿なんて初めてみたな・・・)」

 

 

「ウーン、やっぱこうなるよね~」

 

【うっわぁとんでもない費用請求されてますねぇ・・・・・・】

 

【重機投入して一気にかたづけたからな、まぁ母上達にとっては良い薬になっただろう】

 

「姉さん?言いたいことはわかるよね」

 

「・・・・・ハイ、ホントウニモウシワケアリマセンデシタ…」

 

「はぁ・・・円香がこの光景みたら何て言うだろうなぁ・・・」

 

「アイダダダ・・・・・・やっば、腰逝った感があるわコレ・・・アイダダダダ・・・」

 

「行信さん大丈夫ですか?あまりに痛むんなら病院に向かったらどうです?」

 

「ああ、鈴ちゃん心配してくれてありがとう、あ、ヤバいこりゃマジで通院した方が良さげ・・・アイダダダ・・・・・・」

 

束は倉庫のドア手前にいたので真っ先に巻き込まれたのにも関わらず軽いけがですんだが精神的ダメージがでかく妹の箒ちゃん相手に泣きつくことになり、みとりと白騎士、暮桜は清掃業者からの請求書を見て唸り、千冬は一夏の形相を見て縮こまりながら謝罪している。

 

私と行信は不幸なことガチの大ケガをするに至り、私は右肩を骨折して全治1ヶ月、行信は全身打撲と腰痛で全治半月と後に診断され、入院する羽目になるのだがそれはまた別の話である・・・・・・・・・。

 

~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side ????~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スコール、偵察結果はどうでした?」

 

「ありゃダメだね、あのIS、自前で動くから手の付けようがないよ」

 

「じゃあ総帥閣下の予想通り、最早製作所を直接襲撃することは叶わないと、」

 

「はぁ・・・製作所からの技術奪取に躍起になってた上の方針が急に変わったから何事かと思ったけど、まさかあんなヤバいのがいたなんてね・・・」

 

 

製作所から少し離れた場所にある廃工場、ここに現れたのはモンド・グロッソ大会の際暴れたロボットを運送し、試合中に起動させて惨事を引き起こした二人の人物、オータムとスコールである。

 

 

 

「総帥閣下のお話によると白騎士と暮桜の融合体かつ、現行の数世代先を行くオーパーツ……でしたっけ?」

 

「委員会の公式発表では白騎士の予備パーツを流用して作った戦闘仕様の改修機だとの話だったけど、実際に調べてみたら公式発表と何もかも違ったわよ、総帥閣下はいつあんな情報を集めたのやら・・・・・・」

 

「それは気にすることではないでしょう、しかしこれからどうするのですか?」

 

「【都市】の捜索はまるで成果が挙がらないし、製作所からの技術奪取は諦めざるを得ないし・・・参ったねぇ実行部隊の出る幕が無い」

 

スコールは暫し考え込む・・・が、結局のところよい結論は出なかったようでため息をつきながらオータムに次の行動を伝える。

 

「一度総帥に報告するわ、元々【都市】の捜索を中断させてまで今回のことの調査を行わせたのは総帥だし、総帥からの情報が正しかったことを確認出来ただけでも収穫だからね」

 

「了解しました」

 

 

(・・・・・・それにしても、何故総帥は実行部隊の1つを束ねているだけの私にこんな重大情報を直接調べさせたのかしら?、総帥には直属の諜報部隊が別にいるのに)

 

「スコール?」

 

「・・・ああ、ご免なさいね、ちょっと考え事」

 

「いえ、それなら気にしませんが早く戻りましょう、総帥閣下に」

 

 

最後に、スコールは1つの疑問を心の内に秘めつつ、自身に指令を出した【総帥】のもとへと向かうために動き出す・・・・・・。

 

 

 

 

~続く~

 

 

 




そろそろ作中用語やらまだ解説されてない新登場のキャラやらなんやらの解説回を挟みたいと思っています。

次回はこれまで殆ど話にかかわってなかった例の組織の話になります。


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~亡国機業~ファントム・タスク、その1

やっとこさの亡国機業の出番です。

長くなる予定となったので幾つかに分けます。


・・・・・・・・・ここは、この広くて狭い、そんな世界の何処かにある小さな国。

 

 

 

特徴を一つあげるとすれば、白色、有色、黒色の人々が、もう少し分かりやすく言えば、まるでアメリカのような多種多様な人々が民族の違いによって起こるであろう数々の軋轢を起こさず至極平穏に暮らしていることだろうか?

 

 

そんな国のとある港町、このところ晴天続きのこの街の港には、非常に大きく、似たような規模の造船所が二つ存在していた。

 

 

冷戦の時代、東西両方の陣営から狙われたこの造船所は、片方の造船所で東側の艦艇を、もう片方の造船所で西側の艦艇を生産するという裏取引を行うことで、国レベルで掛かってきた双方からの圧力をいなしつつ、冷戦の終結まで母国の中立を守り切ったという逸話がある。

 

 

その二つの造船所の丁度中間辺りに位置する小さな波止場にある飛行艇乗り場に、とある1機の飛行艇がやって来ていた。

 

「・・・まもなく~~~、~~~でございます、本機はこれより着水の体勢に移ります、着水後乗り場に接岸するまでは席からお立ちになら無いようお願いいたします、本日は【明成通運水上輸送】をご利用頂き、誠に有難うございます。」

 

 

機長のアナウンスの後、飛行艇は着水、微速で乗り場に接岸すると、そこからは多数の観光客が降りて来ていた。

 

 

「・・・・・・機長、ここで会えるという訳で間違い無いのですか?」

 

「はい、本日はあそこの建物にてお二人をお待ちしております」

 

「・・・そう、お役目ご苦労様」

 

「いえいえ気になさらず、これにて私は()の業務に戻りますので後はお二人にお任せ致します、総帥閣下のこと、宜しく頼みます。」

 

「了解したわ」

 

先に降りて現地を巡り始める他の観光客を他所に、機長と最後に降りた二人の観光客が機長となにやら怪しい会話を交わし、飛行艇を後にする。

 

「このような所にも【同志】がいるものなのですね・・・まさか明成通運の系列に我々の手の者がいるとは思いもよりませんでした」

 

「あら?オータムはあの機長が総帥直属の部下なのを知らなかったの?」

 

「え?そうなのですか!?」

 

「基本的に総帥及び副総帥の元へ向かうための徒歩以外でのアクセスすべては、ああやって直接関連会社に潜む形で、総帥直属の部下か更にその部下の監視網が固めているのよ、二人に何かあったら事だからね、貴方もIS装備企業での【表の顔】があるでしょう?基本的にはそんなかんじよ」

 

「・・・・・・じゃあ私が気がつかなかっただけで町中にいる人々の中にも・・・・・・?」

 

「いるかもしれないわよ?」

 

 

機長と話をしたのはオータムとスコールの二人であった。

 

彼女達は総帥への報告の為、わざわざ総帥の元へとここまでやって来たわけだが、彼女達を送った飛行艇の機長・・・義照の弟、義秋が経営する会社の一角である飛行艇輸送会社の社員の一人が自分達と()()であったことにオータムは衝撃を受けていたのである。

 

と、言っても当のオータム自身、日本のとあるIS装備開発企業に表の身分を置いていたりするのだが。

 

 

「さてオータム、話にあった場所に向かうよ」

 

「了解」

 

話が長くなるといけないので早いとこ総帥へと会いに行かねばならない、二人は先の機長に示された建物に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人がたどり着いたのは小さな釣り具屋、住宅街の裏路地の一角にあるこの釣り具屋は、ちょうど先の話にあった二つの造船所の中間あたりに位置している。

 

「・・・・・・空いてませんね」

 

 

「いや?空いてるわよ?」

 

「え?しかしドアにclosedと確かに」

 

「お邪魔するわよ」

 

「ちょっ!スコール!!」

 

見つけた釣り具屋のドアに映る「closed」と書かれた看板、しかしスコールはその看板を無視すると勝手にドアを開けて中に入っていってしまう。

 

【・・・・・・店内のお二方はパスワードを述べてください】

 

 

 

「・・・【鉤十字の悪魔は霧の海原を漂い、科学者は罪の終着点を知る】」

 

「・・・っと、【覇者は無限の果てに消え、奇術女帝は永の眠りに耽る】」

 

「「【伝説の探偵は闇に至り、そして、終戦の亡霊は未だ消えず】」」

 

 

「【・・・・・・スコール・ミューゼル様、オータム・クラウディア様と認証いたしました、どうぞお入りください】」

 

 

二人がドアを開けて中に入り、再びドアを閉めると、突然、何処からともなく女性の声がし始める。

 

 

特に動ずる事もなくスコールが女性の問いに答え、オータムも一瞬戸惑いながらもそれに続くと、部屋の壁の一部が突然の襖のようにスライドし始め、そこから古いエレベーターが出現してドアが開く。

 

スコールは突然のことに戸惑うオータムを促しつつ、二人でそのエレベーターの中に入った。

 

(エレベーターの見た目は旧式のドア手動型エレベーターを思い浮かべれば良いだろう、ぶっちゃけて言えばアレを自動化させた物である。)

 

「・・・驚きました、まさかこんな仕掛けがあるだなんて」

 

「そういやオータムは総帥にお会いするのは初めてなんだっけ?まぁこのように総帥閣下は基本、会うときに第三者に自分達の所在に気づかれにくくなる場所にいるのよ、さっきあなたに教えたパスワードも総帥の所へとたどり着く為に必要なパスワードのパターンの一つよ」

 

「・・・あれ?前スコールはここに来るのは初めてと言いましたよね?」

 

「総帥閣下は長居しない主義らしくてねぇ、前は別のところで会合したのさ、ここも総帥が使っている拠点の一つらしいよ?」

 

二人はエレベーターがゆっくりと降りて行く最中、黙っているのも何なので立ち話に花を咲かせることにした。

 

実のところここにやって来るのははじめてとなる二人、スコールは前に別のところで自分達の組織のトップ、【総帥】と呼ばれる人物に会ったことがあるのだが、この組織の構成関係上、仮にも一部隊の隊長であるスコールと違って末端の部下に過ぎないオータムはこれまで【総帥】に会うことがなかったのである。

 

 

「何でも総帥直轄の秘匿戦力があるとか・・・・・・!!?」

 

「・・・・・・スコール、これ全部我々の戦力なのですか?」

 

「・・・私も予想外だったわ」

 

この時、スコールもオータムも、ここにはこの組織の秘匿戦力があるというだけで詳細は知らなかったのだが、ここに至ってコンクリートの壁ばかりが見えていた旧式のエレベーター特有の隙間から、驚くべき光景が映されたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザバーン、ざぶーん

 

 

ザブーン、ざばーん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザバーン、ざぶーん

 

 

ザブーン、ざばーん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこんな海軍戦力がいつの間に整えられていたなんてねぇ、総帥閣下はいったいどうやってこれだけの戦力を・・・?」

 

 

 

スコールが思わず唸るのも無理はない、エレベーターのある地点を中央とし、東西に別れて広がった視界の先には、ズラリと並び佇む凡そ25隻前後の軍艦の姿であった。

 

その殆どが紛れもなくここ数十年で設計された現代式の軍艦であり、冷戦期において建造された米ソの原子力潜水艦と思われる艦影に加え、現在においても最新鋭と言って等しいスウェーデンのコルベット艦《ヴィスビュー》級や、ドイツ海軍補給艦、《ベルリン》級と思われる船までもが見えたのである。

 

その質たるや恐ろしい物があり、現代日本の《あたご》型護衛艦やロシア海軍の《キーロフ》級原子力巡洋艦と思われる軍艦等、各国が現状主力としている戦力の一端が、そのままこの秘密ドックに集結していたと言える。

 

 

またそれらの主力艦の他にも、非武装ながら通信能力及び艦隊指揮能力に特化させた、いわば米太平洋艦隊所属揚陸指揮艦《ブルーリッジ》のような艦も佇んでいる他、挙げ句の果てにはアングルドデッキこそ無いものの、非常に巨大な緑色の航空母艦と思われる艦までもが、今すぐにでも出撃出来るであろう体勢でもってこの場に待機していたのだ、これだけの戦力をどうやってと言いたくなるのも当然の話であった。

 

 

「凄まじい戦力ですね、これだけで下手な小国とやりあえる位の戦力はある感じでしょうか?」

 

「しかし、当たり前の話とはいえ人が多いわね、総帥閣下はどちらにいらっしゃるのかしら?」

 

スコールの言うとおり、これだけの艦艇を維持するのには非常に多種にわたった技術を持つ人々が多数必要である。

 

当然、此所にはそのための人員が所狭しと活動しているわけだが、これだけ人が多いと肝心の総帥がどこにいるのかわからないのだ。

 

そんな事を言っていたら、エレベーターが降下を終え、ドアが開く。

 

 

「・・・・・・【第一実行部隊】隊長、スコール・ミューゼル様、及び同部隊所属、オータム・クラウディア様ですね」

 

「えっ!?今何処から!!?」

 

「・・・その通りよ、相変わらずヒヤヒヤさせるわね、フリージア」

 

「これも私の仕事ですので、ついででオータム様の疑問にお答えするならば、エレベーターのすぐ横に待機していただけ、とお答えさせていただきます。」

 

「ビックリした・・・脅かさないでくださいよ・・・・・・」

 

「これは失礼致しました、総帥閣下はこちらです、私にご同行願います」

 

エレベーターから降りた直後の二人の目の前にいきなり現れたのは、藍色の髪、透き通ったエメラルドに近い緑色の目をした軍服の女性であった。

 

スコールから【フリージア】と呼ばれた彼女は、二人に同行するように促すと、そのまま総帥の元へと二人を案内する。

 

 

二人がフリージアについて行くと、この秘密ドックの端の方に、他の人物が作業しているなかその作業風景を眺めながら絵を描いている明らかに場違いな人物が見えてきた。

 

「えっ?スコール、まさかあそこの絵描きが総帥閣下だったりしませんよね?」

 

残念ながらその予測の通りだよ、レディ

 

オータムが目の前の人物をみて疑惑の目線を向けつつスコールに訪ねる。

 

しかし、スコールがそれに答えようとする前に、目の前の人物はオータムの疑問に半ば自虐的に答えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長めの白髪、透き通った蒼色の瞳、そして明らかに場違いな釣り師の服装と絵具、そして頭にポンと置かれた船長帽子が特徴の、見た目的には初老と思われる男性こそが、スコールとオータムをこの場に呼び出した二人の組織の・・・【亡国機業】の総帥、つまりはトップなのであった・・・・・・

 

 

 

 








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~亡国機業~ファントム・タスク、その2

多少空いての投稿です。

そろそろいろいろな繋がりが見えてくる頃かと。


 

「3ヶ月ぶりと言ったところかねスコール、そっちの彼女が話に聞くオータム・クラウディアさんで間違いないね?」

 

「その通りです、私の自慢の部下ですよ」

 

「す、スコールっ?!」

 

「ふむ・・・なるほどなるほど・・・」

 

 

目の前の男性・・・亡国機業総帥は、スコールに一言だけ聞き、返答を受けると軽くオータムを眺めて呟く。

 

この時オータムはスコールから褒め言葉と言える評価を受け、軽く赤面していた。

 

 

「・・・おっと、オータムさんへの自己紹介がまだだったな」

 

「始めましてと言わせて頂こうか、私が一応君たちの背後にいることとなる秘密組織郡【亡国機業】の総帥に該当する者だ、生憎と形式上のコードネームは持っとらん、大抵は総帥で呼ばれてるからそうしてくれると助かる」

 

「・・・オータム・クラウディアだ、スコールの所で働かせてもらってる」

 

「・・・・・・コードネームは?」

 

「へ?」

 

「・・・・・・あっ」

 

総帥がオータムに自己紹介をし、オータムもそれに返して自己紹介をする。

 

実のところ自己紹介のタイミングでそれまでの態度と違った口調に変わっているのだが、総帥は気に留める事もなく彼女のコードネームについて訪ねた。

 

「・・・・・・スコール、あっ、って何だね?あっ、て?」

 

「・・・申し訳ありません総帥、私としたことが、コードネームを・・・・・・」

 

「スコール、君の話によれば彼女は此所で働くようになって10年近くにはなってる筈だが?」

 

「・・・・・・ああ、その事は気にしなくて大丈夫だぜ総帥さん」

 

 

 

スコールのミスでオータムはこれまでコードネーム無しで活動していたらしくその事実に気づいた総帥を困惑させる。

 

が、オータムは特に気にした様子もなく、女性らしさの無い口調で総帥に言い放った。

 

 

 

「しかし、活動中、本名で通信してるとそこから身バレする危険がだね」

 

「大した問題になりませんよ、この名前はスコールに拾われた時、付けてもらった名前ですから」

 

「・・・彼女にかい?」

 

「元々名前さえ付けてもらえずに捨てられた者でしてね、所謂ストリートチルドレンって奴です」

 

「ちょっと待った、まさか君が拾われたのって・・・」

 

「ブラジルです」

 

「当時、路地で生活してて、明らかにヤバイやつらから逃げてて、でも子供だった当時の私にはすぐ限界が来て、裏路地の袋小路に追い詰められて・・・《殺される》と思った時にスコールに助けられて、そのまま此所に拾われたのさ。」

 

「・・・・・・・・・幸運だったのだね、」

 

 

本名で活動している事を危険視する総帥は一度食い下がるが、オータムの出生と今に至るまでの経緯を聞き、小さく一言呟きながらオータムの頭を撫で始める。

 

 

「総帥閣下!?」

 

 

(・・・・・・あれ?私は男は嫌いな筈なのに・・・・・・何で?)

 

突然の行動にスコールが驚く、オータムは最初総帥の突然の行動に困惑したものの、暫くした後、次第に感じた安心感に包まれ、ゆっくりと目を閉じながら撫でられ続ける。

 

(あたたかい・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

「・・・オータム、此所は、【機業】は君の寝床に成り得ているかね?」

 

「・・・ああ、これ以上は求めたくないくらいの寝床さ、総帥」

 

「・・・ふふふ、そうか」

 

総帥からの質問に穏やかな表情で返事をするオータム、返事を聞いて穏やかな笑みを浮かべつつ、オータムから離れる総帥。

 

かたや20になるかならないかの女性、かたや白髪で初老の男性、その光景はまず早々見れるものでは無いだろうと言えるものだった。

 

 

 

「・・・一つ聞きたいことができちまった、総帥、良いか?」

 

「構わんよ、あ、今更だけどそこに椅子置いといたから、立ち話も何だし座ってくれたまえ」

 

「じゃあ遠慮なく・・・っと」

 

(オータムと総帥との会話になって完全に私の出る幕無いじゃない、そういえばフリージアは・・・いなくなってるわね)

 

すっかり素の口調で話すようになったオータム、二人だけの空間みたいな状況になり、スコールは完全に話からおいてけぼりにされている。

 

スコールは二人をつれてきたフリージアは、いつの間にやらこの場を去っていた。

 

 

「んじゃ聞きたいんだが、そもそも何で総帥はこの【亡国機業】を作ろうと考えたんだ?、第二次世界大戦前に機業は設立されて活動していたって話なんだが・・・・・・」

 

 

「ああその事か、まぁそれに関しては、この組織の()()の成立経緯から話をするのが一番だろうな、機業が機業として成立したのは存外近年の事なのだよ、まぁ長い長い話になるがね、」

 

オータムの質問を聞き受けて、総帥は絵具を一旦すぐ近くの木箱にしまった後、その隣にあった別の箱から写真立てに入った一枚の白黒写真を取り出す。

 

 

「見たまえ、【亡国機業】の前身となる組織の設立時の写真だ、一番右端にいるのが当時の私で、逆サイドの女性が今の副総帥だ」

 

「・・・・・・・・・おいおい、この写真」

 

「ウォーダン・ラインラント!?それに総帥の隣の人物は・・・・・・」

 

「村ノ瀬正成だ、私の数少ない親友の一人だった、ウォーダン共々大戦中にこの世を去ったのだがな」

 

写真に写るは一同に会した7人の男女、髪が黒く見えることを除けば本人そのままである当時の総帥の姿や、今の機業副総帥だと言う女性の姿の他、そこには副総帥の隣に写るウォーダン・ラインラントの姿や、総帥の隣に写る村ノ瀬正成の姿があった。

 

その他、服装と階級章から戦前の帝国陸軍近衛連隊長格と思われる人物、男物の分厚いコートを着てブラウンの帽子を被る女性、一人だけファンタジーから紛れ込んだ魔女じゃねえのかと言わせんばかりの服装で佇む女性の姿がその写真には写されていたのである。

 

「・・・これは合成ですか?」

 

「そんなわけなかろう、撮影が1924年だからカラーフィルムなにそれな時代の頃の写真だ」

 

「しかし、一人完全に場違いのが・・・」

 

「彼女は当時、マジシャンをやっててな、仕事衣装は目立つようにとわざとその服装にしていたんだよ」

 

「はぁ・・・・・・」

 

 

「話を戻そう、私と副総帥を含めた写真の7名がこの【亡国機業】を設立した頃、この写真に写っていた物達はとある共通した意識を持っていた」

 

「共通した意識?」

 

()()()()開戦のカウントダウンが近づいている、と言う意識だ」

 

「当時、イタリアでファシストが政権を握ったり、ヒトラーがミュンヘン一揆を起こしてランツベルクにブチ込まれていたり、排日移民法が成立して日米間の雰囲気が本格的に怪しくなり出した頃だった」

 

 

「この頃からヒトラーの躍進、日米間の仲の決裂、ファシズムと共産主義の激突を予想した私と副総帥含むこの写真の7人は、先の戦争・・・日本では第一次世界大戦と言われているあの戦争とは比較に出来ない程の規模の戦争が2()0()()()()()()()()と予測していた」

 

 

「7人組はその兆候を少しでも早く掴もうと、世界の情勢をなるべく客観的に見定められるようにする為の超国家組織を成立させたんだ、あわよくば入手した情報を上手く使って世界大戦が起こるのを阻止出来無いか?と言う思惑も含めてね」

 

 

「最初は初期のメンバーによる単純な情報交換の場に近いような組織だった、当時ウォーダンはまだ佐官だったし、正成も軍で艦船設計に望んでいた一介の技術者でしか無かったからね」

 

「しかし、時がたつにつれて、7人組と同じように世界大戦を回避しようと動く人々がこの組織に集結し、大戦回避のための努力を裏で続けたんだよ、有名どころだと、30年代中頃に一度だけ、後の英国首相チェンバレンがお忍びで会合場所にやって来たことがあった程だ」

 

「そうだったんですか・・・・・・」

 

「まぁ、こうした水面下の努力も空しく、結局のところ戦争は始まった、ウォーダンは軍人としての信念から軍務に集中して組織に殆ど顔を出さなくなったし、私も大東亜戦争の始まりごろは前線にいた都合上組織に顔を出すことが出来なかった」

 

 

「だが組織はその後も活動を続けた、回避できなかったのならば早くに終わらせる他無い、当時のメンバー達は日本とドイツ中心に裏で和平工作に乗り出したんだ、結局のところドイツではヒトラーが死ぬまで効果は無かったし、日本は日本で効果が出た頃には手遅れだったのだがね。」

 

 

 

「まぁ、その後は歴史の流れに流されて、結局は今に至ると言ったところさ、」

 

 

「なるほどなぁ・・・・・・道理で何処からともなく情報が集まってくる訳だ・・・」

 

「昔は私が一番実権握ってたけど、今は殆どを副総帥と後に出来た幹部会に渡しているからねぇ、直轄部隊のお陰でそれでも色々出来るが、実のところ私の権限は大したものじゃなくなっているのさ」

 

「・・・・・・まあそこら辺はおいておいて本題に戻るとするか」

 

 

「では報告させていただきます」

 

多少長い総帥の話を本人が切り上げたところで、スコールがすかさず報告に入る

 

総帥も又顔つきを真剣なものに変え、スコールの方へ耳を傾ける。

 

「やはりというかなんと言うか、IS委員会の公式発表と、実際の白騎士発展機とは見た目以外が余りにも大きく違いすぎました、正直、現行の機体相手ではまともに太刀打ちするのも困難ではないかと、此方が報告書です」

 

「・・・・・・」

 

スコールから報告と共に書類を受けとる総帥、内容を軽く流し読みすると、ため息を一つつきながら口を開いた。

 

 

「やはりIS委員会は爆弾を抱えていたということか・・・・・・」

 

「爆弾?どう言うことだ?」

 

「この白騎士の発展機・・・・・・白桜と言うのだが、既存の機体を遥かに凌駕する第5~7世代該当機という話を聞いていてね、まぁその確認のためにわざわざ二人を送っていたわけなんだが、まさかこうもそっくりそのまんま情報通りだったとはなぁ・・・・・・」

 

「とすると今回の任務は総帥にとっては単なる裏付け以外の何物でもなかった、と?」

 

「概ねその通りだよ、こう見えて()()()には存外と情報が集まってくるものでね、」

 

「成る程・・・・・・所で総帥、次は何をすれば良いんだ?幹部会からの指示待ちか?」

 

 

「いや、本日付でもって、正式に第一実行部隊は私の所管となる、幹部会は新設の部隊を統括することになっているのでね」

 

「・・・その関係もあって私達を此処へ?」

 

「その通りだ、まぁ暫くは休養してもらう事になるがね」

 

「それまたどうして?」

 

 

「今後、第一部隊には潜入工作を主として活動してもらう事にしたのでね、第三部隊と共同で長期的な任務に従事してもらう事になる、そのための準備と言うやつだ、それともう一つ、スコール、君の姪っ子がIS学園での潜入工作を志願してきたから一応親族である君の意見も聞いておきたくてね、」

 

 

「レインがねぇ・・・大丈夫なの?」

 

「少なくとも【亡国機業】の一因とはバレないであろう位には上手く隠蔽出来ている、米政府も事実を知ったら泡を吹くだろうなぁ、ハハハハハ!」

 

「・・・・・・話は了解したわ、あの子も自身の考えで動いてると言うのなら私からはそれ以上言うことはないわよ」

 

「そうか、なら私が彼女の任の裁可を出しておこう」

 

彼はスコールからの了解を得ると、遠くにいたフリージアに対して目配せをする、フリージアはそれだけで何が起こったかを理解し、すぐさま何処かへと去って行く。

 

 

「さて、二人に最後にいっておくことがある」

 

「何だ?」

 

「近いうちに第二、第四及び新設の第八部隊を担当部隊とし、日本で大規模なテロ活動を行うことになっている」

 

「ほう・・・目標は?」

 

「JAXA、首相私邸、槇田義照の別荘、そして国際IS委員会日本支部の四ヶ所だ、日本支部には国際IS委員会委員長が来訪してるタイミングでの行動となる」

 

 

「それはまた大層な・・・・・・」

 

「そのため、事件後は情報省や警察、特戦群等が総動員されるだろう、よって第一実行部隊の温存を図るためこの件への一切の介入を禁ずる、事件後巻き添えで第一部隊にも捜査の手が及ぶのを防ぐためだ、理解してくれ」

 

「了解、まぁ余り乗り気になれない仕事だしねぇ、援護要請が来たらどうします?」

 

「第一部隊は総帥直轄になるに当たっての再編及び配備戦力増設中、それとは別に第三部隊は別口での潜入任務を優先するため、と私からいっておく」

 

「了解しました」

 

「二人とも、無茶はせんようにな」

 

「有難うございます、ではこれで、オータム」

 

「わかってるわ、では総帥、失礼させてもらうぜ」

 

 

総帥は話を終えると去って行く二人を見送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「閣下、宜しかったのですか?」

 

「ん?何がだね?」

 

元来た道を戻って行く二人を見送った直後に総帥に話しかけるフリージア、投げ掛けられたのは疑問であった。

 

 

「何って閣下は前、二人に米国特殊部隊向けのIS、【アラクネ】と唯一の機業製新型ISを第一実行部隊に回すと仰っていたじゃないですか・・・・・・」

 

 

「ああ、あれの事か、あれは次の会合時にサプライズする予定でね、いい加減トルコの悪趣味カラーリング機の色違いばかりでは華が無かろうにとね、」

 

 

「はぁ・・・では【都市】の捜索の中断の理由を聞かれた場合どうなさる予定だったので?」

 

「ああ、それのことなんだがね、丁度ドイツのベルソン重工が少し前に【都市】を発見したことを掴んだんだよ」

 

「ベルソン重工が!?」

 

「ドイツで暴れさせたオートマン調査に一枚噛ませたのもその関係さ」

 

「【コマンドティーガー】だったかな?もう早速ISに代わる二足歩行兵器として設計段階に入ってるらしいよ?」

 

「うわぁ・・・・・・さらりととんでもないことを・・・・・・」

 

「まぁ【都市】にアイツの遺作があるのも確認できたし暫くしたら世界は混沌とするだろうねぇ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何もかもが表出した時、人々がどんな判断を下すのか今から楽しみだよ・・・・・・」

 

総帥はフリージアと会話後、佇む艦を見続けながら、小さく呟くのであった・・・

 



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別荘の元首相とひとつの日誌

すさまじく久しぶりの投稿です・・・ここのところはかなりスランプ気味です。

なんか息抜きで書こうかなぁ?

それはそうと、本編ではまた動きがあるようです。


~場所は変わって長野県 軽井沢町のある別荘~

 

 

(・・・ピンポーン!ピンポーン!)

「ほいほい、どちらさんで?」

 

「どうも、前に電話した内亞大の東と申します、槇田さんのお宅であってますでしょうか?」

 

「あってますよ、今開けます」

 

軽井沢の別荘地の一角、とある小さな別荘地にある一件の建物に、日本国元首相、槇田義照はいた。

 

 

「どうもはじめましてだね。内亞大学准教授、東 大河さんだね?」

 

「はい、内亞大の東です。本日は宜しくお願いします」

 

「宜しく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、義照は一人の人物と会っていた。名前は東 大河、僅か25歳で歴史学分野において大学の准教授になるまでに至り、新人気鋭と名高い女性歴史学者である。

 

「まぁ何です、話は中で。有り合わせですがお茶でも用意させていただきますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫く、元首相と若き歴史学者二人の茶会が続く。

 

と言うのも、単純に二人が本題の切り出し時に迷った故なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・義照さん、そろそろ本題よろしいですか?」

 

「どうぞ、まずは連絡の際にお話頂いた件からですかね」

 

 

暫く間が空き、それから東がここにやって来た本題へと話をシフトさせて行く。

 

 

 

「ええ、家庭内における義貞さんの立ち位置・・・についてのお話ですね、正直聞けるとは思ってなかったのですが・・・・・・」

 

「あのクソ親父の話なら幾らでも。何だかんだと誤解や親父が私にしか話してない話とかいくらでもありましてなぁ、まぁ義秋も義秋で別に話に成りそうな物は持ってるはずだがね」

 

「では早速・・・やはり義貞氏は【公人としてはともかく私人としては良くない】という評価は・・・・」

 

話というのは、義照の父、槇田義貞の評価についてであった。

 

話を聞いた直後、義照は多少顔つきが険しくなったが、そのまま口を開き始めた。

 

「まず根本の話をば。私の父が私人としてダメダメなら、首相を曲なりにも勤めあげた私は何なのだと言う話になると思うのだが?」

 

「反面教師、って言葉知らないわけでもないですよね?」

 

「知ってはいるが、親父には当てはまらんよ。公人としての仕事量が半端無さすぎただけだ。私の知る限り、数ヵ月単位で寝ないのは当たり前。ひどいときは一年中起きっぱ何て言う時期もあったと思われるほどのハードスケジュールだからな?」

 

「やはりあの情報量は寝ないで集め続けた結果でしたか」

 

「だろうね。まぁ自分の事をまるで考えない一点においてはあの評価は間違いなく正しいとは言えると思うぞ? 義秋の奴なんか親父のハードスケジュールに対する危機感が原因で何度も親父を幽閉しかけたからな」

 

「うっわ、またトンデモない話が・・・・話は移るのですが、義貞さんに関して個人的な印象のある出来事ってあります?」

 

「・・・個人的にか、とするなら日誌かな?」

 

「日誌?」

 

「ほい、あれ」

 

義照がさらりと指差すと、そこには小さな本棚とそこにただ唯一納められている古びた三冊のノートが目に入った。

 

「親父がたまに別荘に来ては書いていた日誌だ。内容は見てないが、何でも苦学生だった頃から、わりかし重要な事がある度に書いていたらしい。詳しく知ってるのはは親父と、同時に逝った母さん位だが、まぁまぁ良い資料にはなるんじゃないのか?」

 

「読んでもいいんですか?」

 

「親父の真意が詰まってるであろう代物だからな。息子の俺が読むのは無粋だろうと思って放置してたが、歴史家先生の目にとどまるんだ。大した問題じゃあるまい?」

 

「これは中々に光栄ですね、私なんかがあの【流星宰相】の日誌の最初の読者とは」

 

(ピンホーン!)

 

義貞の日誌を手に取った大河が感慨深そうにノート表紙を眺めていると、玄関のインターホンがなる。

 

「ん?客人か?義成の奴がまたお忍びで来たかな?すまない東さん、私は来客の対応をするので、そのノート読むなりして暫くお待ちいただけますかい?」

 

「ではお言葉に甘えて日誌を失礼しますね?」

 

東は日誌のページを開き、内容を読み進めて行く。

 

最初の一ページを開いたとき、彼女は急に顔色を変えたのだが、それに義照も、そして大河自信も気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside 義照ー

 

「お邪魔します~」

 

「・・・ここが師匠の別荘なのか、やはりというかなんと言うか、極端に質素だな」

 

「よっしーの自宅訪問!と言うわけで来たわけだけど、本当に何もないねぇ・・・」

 

「相も変わらず・・・ですなぁ」

 

「やぁ兄さん、僕共々、別荘に来たのは数年ぶりかな?」

 

「誰かと思えば束に正晴と箒ちゃん、そしてお前か義秋」

 

 

元から来訪予定だった東教授の来訪後にアポなしでやって来たのは、弟の義秋と束達であった。

 

「参ったなぁ~、今客人がいてな?」

 

「ん?その声は正晴博士ですか?」

 

「・・・客人と言うのは東さんでしたか」

 

「ん?はるるんあの人と知り合い?」

 

「東 大河、私の同期で専門は歴史・・・なのだが本質上は生物学の専門家に当たる奴でな、一応両分野での博士号を持ってる筈だ。みとりが行う、ISに関する研究においての交流先の一つでもある」

 

「久しぶりね、束さんとよろしくやってるようで何より」

 

「そっちも元気そうで何よりだ」

 

「そうなんだ・・・、あ、はじめまして、篠ノ束です。よろしくお願いしますね」

 

「妹の箒です、宜しくお願いします」

 

「二人とも宜しくね。そうそう!急に悪いけど3人ともこっち来てこれ読んでくれない!?ちょっとトンでもないもの見つけちゃったのよ!」

 

「ちょっ東さんここ私の別荘・・・」

 

「大河・・・お前がそういう時、基本ろくでもないことになってるんだけど・・・」

 

「そんなこといってる場合じゃないのよ!急いで!」

 

「はぁ・・・・?」

 

急かされるがままに東に見せられた日誌を見た3人、私は困惑しつつもいま暫く様子を見ることとした。

 

と、同時に4人の顔が著しい変化を見せるようになる。

 

 

最初は疑問符を、暫くした後に怒りを、その直後に恐怖で青ざめ、そのあとには困惑に戻る。その後も表情はコロコロ変わるが、あまりに変わりすぎていて面白くなりいつのまにやら一時間ほどが経過していた。

 

「・・・どうしたんだ?親父の日誌読んでそんなコロコロ表情を変えて」

 

「はるるん?これ本当に義貞さんの日誌?」

 

「・・・ふざけ話はそこまでにしとこうか?」

 

いきなり束に日誌にあらぬ疑いをかけられた。

 

日誌を書いたのは親父と母だけ、俺と義秋は触ってすらない、そんな代物を偽物扱いされかけてるのだ。束相手とは言えいい気になれる話ではない。

 

「・・・義貞氏の話になると口調が激変するとか言う噂話は本当だったと言うわけか」

 

「何となく、パンドラボックスをこじ開けてしまったような感覚を覚えるわ。なにこれ」

 

東さんと正晴の二人が呆然としながら呟く、ってかパンドラボックスとか親父に対して失礼だなオイ、おんどれは何様のつもりなのやら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を思っていたら、顔を青ざめさせた箒ちゃんから一言言われた。

 

「師匠、この日誌、読んだことないんでしたよね?だとしたら読んだ方がいいと思います」

 

「箒ちゃん?」

 

促されるままに、その日誌を斜め読みする。そして私は三人がこうなった理由に目星をつけた。

 

そして、私自身でさえ予想しなかった事実に気がつき思わず()()事になった。

 

そして、それと同時に・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――side 箒―――――

 

 

 

「・・・・・・・・・久しぶりだな、クソ親父ィィィィィィィィ!!

 

 

 

 

私が謎の日誌を読むように師匠に促した後、師匠は突然絶叫したかと思うと、振り向きざまのあらぬ方向に向けて胸ポケットにあったライターをものすごい勢いで放り投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそのライターは、その先にいた一人の男性に受け止められた。

 

「ねぇ、はるるん、あの人・・・・・」

 

「・・・まさか、な」

 

私は東さんと共に言葉を失った。

 

そこには、師匠と瓜二つな、黒いコートを羽織った男性と、目を疑わんばかりの美しい、桜色の和服を来た女性の夫婦がいた。

 

ライターを受け止めた男性は、そのライターをポケットにしまい、別のライターとタバコを一本、どこからともなく取り出して一服し始め、その光景をどことなく嬉しそうに女性は見つめていたのだ・・・・・・・

 

「待て!クソ親父!」

 

師匠が叫びながら夫婦を追いかける。しかし、その時まるで謀ったかのようなタイミングで辺りを強風が襲う。

 

「わわわっ!ちょっ風強っ!」

 

「アレ!?さっきの二人は??」

 

「チィ・・・逃げられたか・・・・」

 

「義照、アンタが言う親父って事は彼らは・・・・」

 

「お察しの通りさ」

 

 

この時、私は師匠と正晴さんが呟いたやり取りの意味に気づくことは出来なかった。

 

ただ、師匠がその時、どことなく嬉しそうにしていたことだけが、私の印象に残ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 



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番外編
番外編~《白騎士》誕生秘話~開発開始直前のお話



リアルがゴタゴタしたのと、活動報告のIS募集の方針転換でてんやわんやして遅れた番外編の投稿です。


この番外編は第一話でスルーされていた、「白騎士」の開発物語です。


今回はそのなかでも特に最初期、束さんの発明が認められて、今まさにJAXAで開発が始まろうとしている頃のお話です。






 

 

 

 

正晴と義照が束、千冬と出会った日から数日後。

 

 

 

「・・・・・・だから!もう既に他のところから補正予算の承認は取り付けてあると言ってるだろう!!後は君が承認してくれれば直ぐに衆議院に出して可決に持ち込めるんだって!」

 

 

 

「そんな無茶苦茶言わないでください!今年の予算案は既にキッツキツなんですよ!これだけの金額を補正予算として計上したら他の党が手のひら返して攻撃材料にするのが目に見えています!」

 

 

「新しい技術開発のための先行投資と見れば安い部類だろう!?」

 

 

「マトモに開発できそうにない夢物語に金を出す余裕なんぞありません!!」

 

 

「現実にできる代物だからこそ、こうして君をかれこれ丸一日と半日近くは説得してるんじゃないか!」

 

 

義照は束と千冬を連れて、ノンストップで各所の説得を行っていたのだが、財務大臣の説得に極端に時間をかけてしまっていた。

 

 

この財務大臣、他の大臣が義照の説得に同意して予算案の承認をしてくれたのに、一人だけ粘っているのである。

 

 

「そもそも、現実に出来ると言ったのは村ノ瀬とか言う若造でしょう?、正直信用なら無いですね。」

 

 

「おまっ、正晴氏が理事長としているのには若すぎると言うのはわからんでもないが、若いとはいえ、JAXAの理事長だぞ!JAXA全体を馬鹿にしているのか!?」

 

 

「あんな若造を理事長としている時点で馬鹿にしないわけないでしょう!!!JAXAは思考が幼稚園児になったんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・義照さん、随分と長いこと話し合っているね、」

 

 

「余程激しい口論をしてるのだろう、」

 

 

 

義照と財務大臣の話し合いを廊下で聞いている束と千冬の二人は、自然と顔に怒りを露にしていた。

 

 

千冬は、財務大臣が束の夢を「夢物語」と断じた事に、束はISを設計したこのタイミングでは、自分自身が天才であると自負していたがゆえに、誰にも理解されなかったISに理解を示してくれた二人の男を、間接、直接的に罵倒している財務大臣の言動に押さえきれない怒りが込み上がっていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そんな状況に大きな変化があった。

 

 

 

 

「財務大臣!さっきから好き勝手いっていますが、正晴博士を罵倒するのは防衛省の人間として大きく遺憾の意を示さざるを得ません!」

 

 

「どう言うことだ天ヶ瀬防衛大臣!軍が関わることではないだろう!!」

 

 

「大いに関係あります!最近、我が防衛省にて正式配備された新型の弾薬輸送車や、陸自内部で評判の新型調理器具を、専門家でも無いのに設計してくれたのは彼です!彼を侮辱するのならば、彼が設計した装備で活動している陸自隊員達の立つ瀬がありません!!」

 

 

「なっ!!」

 

 

「私もあーだこーだは言いたくなかったがもう限界だ、JAXAに対しての暴言はこれ以上聞き捨てならん、財務大臣が予算承認をしないのならば私は内閣から降りる!!」

 

 

「官房長官!?」

 

 

話が一気に傾きだした、財務大臣の失言にいい加減怒りのボルテージが限界突破した何人かの閣僚が首相への援護をしだしたのだ。

 

 

「ぐぐぐく・・・・・・仕方ありませんね、わかりました、先程の発言の撤回と、今年分の補正予算の承認を取り付けておきます・・・これ以上は無理ですからね?」

 

 

「そこは安心しとけ、内閣府とJAXAが合同で導き出した費用だ、これだけ出しつづければ3年以内には成果が出る。」

 

 

「はぁ・・・・・・大丈夫かなぁ・・・?」

 

 

さすがに官房長官の過激な援護には負けたのか予算案をしぶしぶ承認する財務大臣、一瞬だけガッツポーズをとる義照の姿がその手前にはあった。

 

 

財務大臣の心配するため息が木霊するなか、義照は廊下にいた千冬と束に会いに行く。

 

 

「義照さん、やっと終わったみたいだね、」

 

 

「本当に長かったな、これで予算はどうにかなるのか?」

 

 

「予算に関してはもう大丈夫だ、二人ともよく我慢できたな、財務大臣の言動には怒りを覚えただろうに」

 

義照が心配して二人に声をかける、事実、二人は今にも泣き出しそうになっていた。

 

 

「・・・大丈夫、義照さんがちゃんと教えてくれたからね、《立場の関係上、口が悪いから、話を聞こうとするんなら耐えてくれ》って」

 

 

「すまんなぁ、財務大臣が予算案における最期の壁だから、形はどうであれ納得せざるを得ない状況じゃないと、基本的に財務省の威厳に関わってしまうんだよ・・・」

 

 

「・・・まぁ、大事な話だから仕方無いな、」

 

 

「でも、悔しいなぁ、正晴さんや義照さんに認めてもらったのに、こんなに激しい罵倒を受けると、やっぱりなぁ・・・」

 

 

 

「ま、そこはもう気にするな、あ、そうそう予算案が通ったから、二人とも早速明日から調布のJAXA本部へ来てくれ、早速、開発メンバーと顔合わせ始めるから」

 

 

「え?」

 

 

「・・・・・・まさか、開発を2,3人程度で進めると思っていたのか!?安心してくれ、私と正晴理事長の推薦だ」

 

 

「いや・・・・・・あの・・・・・・その・・・」

 

 

束は言葉に詰まる、彼女はいかんせん他人に興味を持てない部類の子であったが故に、二人の推薦といえどもうまくやって行ける気がしなかったからだ。

 

 

「・・・・・・やはり、余程他人と接する機会がなかった感じだな、束さんは、折角だしこの機会にコミュ障を直しとくと良い、理事長が不和は抑えるらしいから、しっかりと今の自分と向き合うようにしてくれ。」

 

 

「・・・はい」

 

 

束は何も言い返せなかった、実際問題、冷静に自分の事を見つめれば相当なコミュ障である。

 

家族すら判別がギリギリで、千冬にそこを直せと鉄拳制裁されたこともある彼女の身からすれば、彼の言っていることは・・・・・・ISのプロジェクトがJAXAで開始されることが決定された以上、コミュニケーション能力の改善は今後の自分にとって必要になる事なのである。

 

「待ってくれ、私も一緒についてきて大丈夫なのか?、客観的に言えば私は単なる束の付き人だぞ?」

 

 

 

「・・・現状、束さんと、ISの事を一番よく知っているのは間違いなくそれらに一番近い存在である千冬さんだ・・・」

 

 

「そして何より、現状の束さんのコミュニケーション能力の限界の関係上、比較的マシな正晴と私がいるとしても、束さんが千冬さん無しで他の開発メンバーとうまくやって行けるかどうかは非常に大きな疑問点でもある、千冬さんには、開発に置いての主要人物でもある束さんのフォローをお願いしたいんだ」

 

 

「うっ・・・言われてみれば確かにちーちゃん無しだと現状の私ではキツいかも・・・」

 

 

(他人との会話で一人称に私を使えてるだけでもこの短い間で随分進歩したと思うが、言われてみれば現状の束には重荷か、)

 

 

「・・・了解した、どこまでやれるかは解らないが、束の夢が折角叶うのだ、やれるだけのことはやるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、すっぽかしてたけど、未成年すっ飛ばしてまだ中学生である二人を働かせるわけなんだから、二人のご両親に話通さないとなぁ・・・」

 

 

 

 

 

槇田がそんなことを話していると、不意に千冬と束の表情が暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ん?どうした?何でそんな暗くなってるの?特に千冬さん」

 

 

あまりにも露骨な反応のため、義照でなくとも直ぐに解るが、義照は千冬の方が若干暗い顔をしてるのを見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・そいえばさ、ちーちゃんには両親がいないんだったよね?」

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

 

「・・・私が物心ついたときに、弟を置き去りにして私の元を去ってっきりだな」

 

 

「・・・・・・それは本当か?、だとすれば、弟さんとたった二人でどうやって・・・」

 

 

「私が物心ついたときから親友でいたのが束だ、そんなわけで、束のご両親のご好意で色々援助してもらっててな……今のところは何とか二人で生活できている……と言ったところだ。」

 

 

余程言いたくはなかったのだろう、千冬の表情が極端に暗くなっている、だが、義照はこれに対し、簡単な質問を投げ掛けた。

 

 

 

「・・・千冬さん、束さん、()()()()って知ってる?」

 

 

「いや・・・なんだそれは?」

 

 

「いえ、全く・・・私、もともとそういうのにまるで興味ないし・・・」

 

 

 

「・・・・・・・・・マジかっ!!、二人とも!少し待っててくれ!!」

 

 

 

 

二人からの返答を受けた義照は突如ケータイを取り出すと、何処かに連絡を入れ始めた。

 

 

「もしもし?情報大臣?大至急調べてほしい事があるのだが。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そうそう、織斑千冬って子の家族構成その他()()()()、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でそんなピンポイントかって?その子の両親が行方不明なのと、その子が生活保護等のセーフティネット全ての()()にいたことが解った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・だから!この6年前に整備しなおした「最低限の文化的な生活」のためのセーフティネット群が全部効果発揮せずに大変な事になってるんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それもついでにやってくれるのか?……解った、よろしく頼む。」(ピッ)

 

 

 

 

「義照さん・・・?」

 

 

 

「ああ、気にしないでくれ、ちょっとゴタゴタが発生しただけだ」

 

 

 

 

 

 

電話を切った義照、束は義照の真剣な表情に心配するが、彼は特に大したこともないように話す。

 

 

「明らかに私の家族の件で気を使ってもらったようにしか見えんのだが・・・」

 

 

 

「ああ、何、本来千冬さんのような状況の人に対して国がするべきセーフティ発動してなかったから、大急ぎで発動させるのと、ついでで似たような事例が他に起きてないか緊急で全国調査するってだけだ、ここら辺は国規模がやることだからね、気にしないでくれ」

 

 

 

「あ、ああ・・・」

 

 

(・・・多分私では、関わりようがない部分だな……)

 

 

 

束と同い年である千冬は、この時まだ中学生である。

 

 

義照が言ったことがいまいち理解できる年齢ではなかったが、今の自分には関わりようがない部分だとは察し、それ以上の追求を止めた。

 

 

「じゃあ二人とも、明日、取り合えずさっき言った場所でな、千冬さんは心配だったら弟さん連れてきても良いからな、」

 

 

「ありがとう義照さん、ではまた」

 

 

「義照さん、また明日~」

 

 

それ以上は特に話すこともなかったので、この日はそこで解散、翌日の顔合わせにて、本格的なスタートを切ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~東京都調布市、JAXA本部建物にて~

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うわ~、やっぱり緊張するなぁ・・・・・・ちーちゃんは大丈夫?」

 

 

「何とかな・・・・・・束、逆にお前は緊張しすぎだ」

 

 

「あははははは・・・」

 

 

JAXA本部前にやって来た千冬と束は、非常に緊張していた、まぁ、これから彼女たちがやることを考えれば当然と言えば当然なのだが。

 

 

「・・・ようこそJAXAへ!、二人とも、私が案内するからついてきてくれ」

 

 

「ま、正晴さん!?……お、お出迎え有難うございます……」

 

 

「束、緊張しすぎで声が小さくなってるぞ?」

 

 

「あっ」

 

 

「まぁ、束さんと言えども流石に緊張するだろうなぁ、むしろ千冬さんはよく冷静でいられるなぁと言いたくなってしまう・・・っと話がずれたね、案内するから此方へと付いて来てくれ」

 

 

 

 

やって来た直後、理事長たる正晴直々の歓迎を受け、驚きのあまり声が小さくなった束、気づいた千冬に指摘されてはっと我に返るが、その様子を多少心配しながら、正晴は二人を案内する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ISで宇宙へ行くと言う束の抱いた夢、二人の男に見いだされたその夢が、遂に現実味を帯び始めようとしていた・・・・・・

 

 

 

 



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番外その2、北の海で・・・・・・

IS開発とは関係のない別の番外編です。

時系列上はセシリアが槇田に設計図を渡したあたりの出来事で、シャルンホルストが北海に帰還した話です。





 

 

 

~北海海上、戦艦「シャルンホルスト」沈没地点~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは大西洋の付属海である北海、油田・ガス田が多く存在する、ヨーロッパの貴重なエネルギー源と言ってもよい海域である、東はノルウェーとデンマーク、南はドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、西はイギリス、北はいくつかの諸島に囲まれたその生みのとある地点に、霧に包まれた二隻の大型船舶の姿があった。

 

 

その二隻の船は現代の船舶には見られない大型の3連装砲を3基有し、そして何より、現在のドイツでは禁忌と言って何ら差し支えない鉤十字、通称「ハーケンクロイツ」が意匠された、ドイツ国防軍海軍軍艦旗が掲げられていた。

 

 

 

 

「---- ・・-・ ・・・ ・・・- ・・ ・-・ ・- ・---・ ・・ ・-・ ・・-  -・・・ ・・ ・・-・- -・・-- ・--・- -・ ・・ ・-・-- ・・ ・・-- --・-・ ・-・- -・-・・ --・-・ -・-- ・・ -・-・・ -・・・  ・・-・- ---- ・・ ・・-・・ ・-・-- ・・ --・-- -・ ・-・-・- ---- --- -- --・  -・・ ・-・-・ ・-・・ ・-・-・ -・・・  -・・ ・・ ・・-・  ・ ・・-・・ -・-・・ ・-・・ ・-・-・ ---・- -・--・  -・・- -・ -・-・・ ・-・・ ・- ・-・・ ・・ --・-- --- -・・・ ・・  ・・- ・-・ -・・・ ・・ ・・・ -・-・ ・-・-- --・-- ・-・・・ ・・-   」

 

 

 

 

二隻のうち一隻がもう一隻に対し発光信号でモールスを放った後、いずこかへと去って行く・・・・・・・そしてモールスを受けたもう一隻には、モールスを放ち海域を後にする船を見送る二人の男の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グナイゼナウが遠ざかってゆく・・・」

 

 

 

 

「既に我々はこの世にいないはずの存在だからな、、《《還るべき》》ところに帰ったというだけさ、と言うよりも何だ、せっかくだしここで《《還るまで》》世間話でもしようじゃないか」

 

 

「他にやることもないし、そうしますか・・・・・」

 

 

 

二人の男は、去ってゆく船を見送ったのち何かを待つように、船の甲板に座り込み話し始める。

 

 

 

 

「・・・・・・それにしても、よかったのか?せっかく手にした余生みたいなもんをこんな形で過ごしちゃって」

 

 

 

「そういうお前こそよかったのか?お前科学者なんだろう?軍人でしかない私の挑戦の見届け人なんぞやらなくてもいいだろうに」

 

 

 

「何言ってんだ?歴史的に有名なあのウォーダン・ラインラント元帥が見せる神業を見れるんだぞ?見ないでどうする」

 

 

「荒れ技術じゃなくて、単純に生まれから私が持ってたチートだからなぁ・・・ハハハハ、それにしても、ホント私は気づかないうちに有名になってたんだなあ、現代の技術者がみんな土下座して謝るようなレベルの能力あるのに、生前も死後もほとんど無名なお前とは大違いだなぁ……」

 

 

 

最初、二人の会話は自分たちの行動に関してであったが、上記の彼の一言で、話は悪口も含めた自慢話へと、なぜかシフトしていくこととなる。

 

 

 

「米軍が開発してた自己防衛機能付き大陸間弾道ミサイル、トライデントXも発想があれば生前の私で開発可能だからね、まあ、趣味で戦中、理論と設計に私の研究はやりつくしたから、戦後元となるロケット開発などの宇宙開発からは完全に身を引いていたからそんな発想は出なかっただろうがね。」

 

 

 

「アドルフの大馬鹿野郎がベルリンでくたばってた頃にお前はスペースシャトルっぽいのを設計してたんだっけ?ホントお前、発想と技術力だけ未来逝ってるよな。」

 

 

 

「金と物資があれば技術を50年くらいは余裕で縮められたからな(ドヤア)」

 

 

 

「さすが《《核兵器を鼻で笑うような男》》はいうことが違うねー」

 

 

 

「アレの話は勘弁してくれ・・・・・・・偶然の産物とはいえ、《《あんなもの》》生み出したらそりゃ核を鼻で笑いたくなるようなものさ、核は兵器として見れば随分と暴力的だけど、《《アレ》》は数そろえるのが大変なだけで、数少なくても運用次第でユーラシアから人類だけ一掃するとか楽勝だからねぇ・・・・・・・・・アレ出来た時は真っ先に己の良心を疑ったもん」

 

 

 

「確かに、実演してもらった身としてはあんなもん出来上がったらふつう開発者の精神崩壊待ったなしとしか思えんしなあ・・・ってかあれはアレで一個人に対してはある種核兵器より強烈な暴力働いてると思うんだけどなー」

 

 

 

「致命的な欠陥が2つあったから多少気楽だったけど、完璧な物だったら初代ゴ○ラのあの博士と同じ末路をたどっていただろうね・・・・いや、下手しなくても狂って人類そのものを滅ぼしていたかも・・・・・」

 

 

 

「・・・・現代は例えられる物が豊富にあって便利だなあ、F○teとか、それらが存在しなくなる可能性を否定できないのは精神的にきついな。」

 

 

 

「ホント、亡霊の身ながら発明品を試せる身っていうのがなあ・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の男はそれきりしばらく黙ってしまった、しばらくののち、お互いにここ最近の気になるキーワードについて話あうことで、話が一致し沈黙が破れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず最初は・・・・・まあISだよなあ」

 

 

 

「もともと宇宙開発用何だっけ?科学者たるお前的にはどうなんだよ?」

 

 

 

「・・・・・・完敗」

 

 

 

「へ?」

 

 

 

「技術者として完敗だといったんだ、技術の方向性の関係上、俺は、発想、技術両方の面で開発できないであろう代物の一つだ、私はどうあがいてもパワードスーツ系の技術を習得できなくてなあ、ひ孫が引き継いだハイパーセンサーの技術を流用して{パワードスーツとして極まった}技術が生まれるとは思わなかったよ」

 

 

「もしも私が有名人だったら、開発したJAXAの人々のところに化けて出て敗北宣言しただろうなあ」

 

 

 

「お前がそれって・・・・・やはり世界を変えるだけのポテンシャルは余裕で有する代物だったんか」

 

 

 

「・・・・・つい対抗心を燃やして亡霊になった期間を利用して孫が引き継いだ自宅に隠し通路と、《《最高の存在》》を遺してきたが・・・まずかったかもしれない。」

 

 

 

 

「?、なんだそれ、どんなのだよ。」

 

 

 

「一言でいえば、進化の証明者・・・かな、この俺だからこそできたけど、普通にやったら動物愛護団体と人権団体から猛抗議まったなしな存在」

 

 

 

「・・・・・・あっ(察し)」

 

 

 

何かを心配するように話す科学者呼ばわりの男と、何かを察したウォーダンと呼ばれる男。

 

 

何か話題にしたくない方向に話がそれたのか、ここで話題が別のものへと移る。

 

 

 

 

 

「ウォーダン・オージェってお前からするとどうよ?」

 

 

 

「え?俺からするとがどうかって?・・・その前に科学者であるお前に逆に聞くけど、お前からすると?」

 

 

 

「根本的に破たんしているな、まず、あの技術のもととなったハイパーセンサー技術は《《人そのものに付与することを考慮してない》》代物だ、同じようにして技術が流用された例としては、最近対IS用兵器としてこれの技術を流用した改造が施された対空戦車群が模擬戦で猛威を振るっているが、技術流用先の対空戦車は兵器としてのISと同じく分類上は機械だ、機械用の技術を多少アレンジした程度で人間に適用するのでは、ロクでも無い事になるのが目に見えていたはずなのだが・・・・・・」

 

 

次は、ラウラやクラリッサに施されていた「ウォーダン・オージェ」の技術であった。

 

 

 

技術者呼びの男はこれを前述の言葉で否定するのだがそれに反応して述べられたウォーダン呼びの男は意外な反応をする。

 

 

 

 

「いやいや、あれ、意外だとは思うけど私の視点からすればほとんど完璧な代物だよ?」

 

 

 

「ファッ!?」

 

 

 

 

「名前と結末からしてIS適性を上げて人工的にデフォルトで厨キャラじみた俺のような存在を生み出したい目論見でミスった感があるけど、恐ろしいこったに、《《純粋に俺を量産したいんだったら》》あれは間違いなく最適解なんだよ?」

 

 

 

 

「でもハイパーセンサー技術を流用した専用ナノマシン移植手術の後に、被験者は目に見えて能力が落ちたと聞いたぞ?」

 

 

 

 

「パンピーに俺の能力制御しろとか無茶の極みだからな?俺は生まれ持ってから制御できてない時期挟んで使い慣れてるだけで、やってることは{ON、OFFを効かせられるだけのゼ○システム}だからな?ってか彼女の場合制御できてないだけだから、出来るようになったら悪魔の再来やぞ?」

 

 

 

 

「ファーwwwwww納得の強さですわwwwwってかあれってお前みたいなバケモンになるポテンシャルあるのが何人も人工的に生まれたんかい!」

 

 

 

「そうだよ(迫真)、自らの手で最適解を探し当てれるんだ、体に掛かる負荷は当然の代償と言ったところか、後、多分あの少女たち、機甲師団行けば即座にエースへ登れるよ?」

 

 

 

「うっわぁまじかよそれ笑えねえよ・・・・」

 

 

 

「因みに、私の曾孫も同じ事をやれるようだな、流石に遺伝しづらかったのか、随分と劣化してるが」

 

 

 

 

「やっぱお前の家系の人間はみんなすごいんだなって思った(小並感)」

 

 

 

「お前のところも、曾孫以外揃いも揃って無名なだけで十分頭おかしいからな?からくり人形だっけ?アレをあの技術まで発展させられるとかどんな発想しているの?」

 

 

 

「ああ、MGのことか?おれはあれの開発に後半生使ったし、派生研究は息子たちに引き継いでもらうことになったからなあ、そして何より、ISのせいでほとんど存在価値を喪失しちまったし‥‥」

 

 

 

「それな、だからこそ完敗なんだろうしな」

 

 

 

「一応、今でも孫たちがいくつものMGの設計、再設計を続けているらしいが、日の目を見そうにないんだよなあ・・・・・」

 

 

 

(・・・・・・・そういう言葉って、割と早いうちに日の目を見るフラグだったりするのかね?)

 

 

 

 

 

二人の男が再び話を止める、気が付けば、二人の男と乗っている船は、だんだんとまるで幽霊の如く透明になっているのが確認できていた。

 

 

 

「・・・・やっとお迎えか、遅かったな」

 

 

「相当待ったなあ、他にやり残すこともないし、ゆっくりと眠るか」

 

 

 

二人は己を幽霊だとでもいうのだろうか、この世を去るのが1度目ではないような、情人ではありえないような言葉を残しながら、北海の海に消える・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・事にはならなかったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁっ!!!?なんだこれは!?明らかに今までと様子が違うぞ!!」

 

 

 

「0と1・・・・・・まさか!、体がデータになっている!?」

 

 

「おいおいおいおいまじかよ、シャルンにまで侵食してるじゃねーか・・・・」

 

 

 

 

 

二人は愕然とした、このまま肉体が幽霊の如く普通に消えるのかと思いきや、突如自分達が0と1の羅列にその姿を変化させていったのだから、

 

 

 

「これはいったいどうなるんだ!?何がどうしてこうなった!!」

 

 

「どうしてかは見当がつかんが、どうなるかについては予測がつく、」

 

 

ウォーダン呼びの男が大慌てするなか、やけに冷静に、これからどうなるかをもう一人の男が予測する。

 

 

 

「・・・・・・・・ものすごーく嫌な予感がするんだけどさ、どうなるの?」

 

 

「・・・テキトーに英語で言うと」

 

 

「いうと?」

 

 

「We will make electronic life forms」

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくの沈黙が続いた・・・・・・んで、男が大きく反応しようとしたところを、いきなり現れた美少女が割って入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウソダド「閣下!!ご客人共々、大急ぎで()から離れてください!!」

 

 

 

「・・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

「「「・・・・・・・・・・・」」」

 

 

 

 

 

非常に気まずい雰囲気が流れる。

 

 

 

あまりの気まずさに、その場にいた3人ともが、しばらくの間、何も出来ずただ呆然と立ち尽くすこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・暫くの後、沈黙を破るようにウォーダン呼びの男が彼女に話しかける。

 

 

 

 

「・・・・・・・・色々言いたいことあるけどとりあえず一言、お嬢さん、何者?」

 

 

 

 

 

この一言が発せられた直後、突如降ってきた一筋の稲妻が男たちの乗る船の目の前に落ち、そこから発生した謎の竜巻に、船もろとも巻き込まれる。、

 

 

 

 

 

「なんでこうなるんやあああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 

 

「ほんとなにがどうなっているのおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

「だからはなれてといいましたのにいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」

 

 

 

 

暫くの後、竜巻に巻き込まれた突如現れた謎の美少女含める三人と、それを乗せた船は忽然とその姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがしかし、この出来事こそが、後の奇妙な遭遇の始まりであったとは、当然のごとく誰も知らなかったのである・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兎に優しいIS世界」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兎にやさしいIS世界、外伝」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兎に優しいIS世界外伝、織斑一夏のIS/VSヴァーサス・スカイ」へと続く・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




予告





・・・・・この世界には、とある兎の少女とその伴侶が趣味で生み出したとあるアーケードゲームが存在する。


その名は」「IS/VS」またの名を「インフィニット・ストラトス/ヴァーサス・スカイ」


モンド・グロッソと呼ばれるIS大会でのデータ、昔の兵器の実践運用データなど、果ての果てには一部の空想兵器のデーターなど、世界中からありとあらゆる兵器に関してのデーターを収集することで生み出された、まるで「戦争」を再現するかのような壮大さを誇る、アクションシューティングと戦略シミュレーションが合体したゲームである。





「・・・おーい、箒、準備はできたか?」


「ああ、何とか間に合わせたぞ・・・・で、今日はどの戦場へ行くんだ?」


「やっぱコンビナート群かなあ、あそこ、この時間だとやっぱりランカーとか有名人だとかがしょっちゅう入り乱れているし、ん?列島群で(やばいの出現中)・・・?」



「・・・姉さんや正晴義兄さんがいるな・・・一夏、ここにしないか?強い相手とやりあえる予感がする」



今、このアーケードゲームをプレイして話している二人の人物、一人の少女の名は「篠ノ之 箒」(しののの ほうき)と言い、もう一人の少年は「織斑 一夏」(おりむら いちか)と言う。


これは、この二人の視点の中心に据え綴られる、二人の本ゲームのプレイ記録のようなものである・・・・・









ウォーダン・ラインラント(自重ナシ)「ずっと決着をつけたかったぞ!!!!ウォースパイトォォォォォォォ!!」


いっちー(射撃訓練中)「ちょッ、aonamidaさん狙われてる狙われてる!!!」


aonamida(初心者)「ちょっと待ってくださいましィィ!!この相手は初心者でも容赦ナシなんですの!?」


・・・・プレイ記録のようなものである。



クロウサギ一号「進め!われら黒兎機甲師団はこの程度では負けはしない!!お父様の威光を全世界に知らしめるためにも、ここでやられる訳にはいかない!!」



クロウサギ2号「いけーどんどんぱふぱふー!!」


アルバン・ラインラント(娘は渡さん)「だからいつも言ってるけど私が死ねるほど恥ずかしいからそれ以上はやめてーーーーーー!!」


モッピー知ってるよ(二刀流訓練中)「うわあ・・・独逸の元帥さんも大変なことになっているな、っと言う事より、正直この軍団は相手にしたくないぞ・・・( ^ω^)」


すぶたそ「私もアレの相手は御免かなあ・・・・(´・ω・`)」


・・・・プレイ記録のようなものである!



いっちー(射撃訓練中)「・・・・・蜂型のヘリコプター?」


知名度/Zeroの科学者さん「ヘリコプターなどでは断じてなあぁぁぁァァァい!!」


知名度/Zeroの科学者さん「これは私の最高傑作の一つ(マリオネットビ-)だあぁぁぁ!!」


モッピー知ってるよ「マリオネットビ-?なんだそれは?」


砂漠の橙蜂「聞いたことない名前だけど・・・・」


ズボラ13「マリオネットビー?なんだそれは?随分と生物的な外見ではあるが・・・」


知名度/Zeroの科学者さん「全然知っている奴がいなくてワロタwwwwワロタ・・・・」


プレイ記録のようなものであると言ったらプレイ記録のようなものなのである!!!


近日執筆開始予定、あんまり期待せず待つべし。











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外伝【流星宰相】と呼ばれた男

過去を記す番外編です。

今回は散々話に出ている【流星宰相】についてのお話です。

(とはいっても、後半は彼に関するチャット形式の雑談みたいなものですが。)


ISが日の目を見る10年ほど前のとある日。

 

side【流星宰相】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「義照、義秋、今日は急がしい中すまんな」

 

「・・・どうした親父そんな神妙な顔しやがって、とうとうしっぽ掴まされたのか?」

 

「兄さん!・・・・・・いや、無駄か、何だい?父さん」

 

「私は多分、明日には死ぬ」

 

「「ハァ!?」」

 

 

息子たちに私の死期が目前に目前に迫っていることを告げた。

 

義照はふざけてんのかという顔で、義秋は信じられないと言った表情で私を見つめる、当然だ、これまでに何回も死にかけるような目に遭っているとはいえ、その全てを()()で凌いだ私がもうすぐ死ぬ何て言われたら、そうでなくとも、例え憎まれようとも尊敬されていようとも、肉親が何の前触れもなく自分の死期をカミングアウト何てして正気を疑われないほうがおかしいのだ。

 

それに・・・・・・

 

 

「・・・・・・ヤケにらしくねえ言葉だな親父、政治家として口を開けばやれ現実だのやれ真実だの・・・・・・過去と今の薄暗い事ばっかり話して、政治家のくせして未来のことなんざいい意味では一度も口にしなかったアンタが、何の風の吹き回しだ?」

 

 

「・・・・・・人間、下らん直感に囚われることなんざいくらでもあるということだ、散々政治・経済で暴れまわったから長くはないだろうとか思っていたのが早まっただけだ」

 

・・・・・・相変わらず義照からは嫌われてるな、私も知らない間に随分老いたもんだ。

 

「・・・・・・認めねぇぞ親父、最後の最後で逃げに走る何てのはよぉ」

 

「私が逃げていたかどうかは私の死後に放たれる情報を見てからにしておけ」

 

 

・・・・・・全く、義照も誰に似たのやら、我が息子ながらほんの数日前までの現役バリバリな私を見ているかのように、私に大して敵執心をむき出しにしてくる。

 

「必要だから」、「そうする方が良いから」、と無茶苦茶な量の裏付け資料と正論で他の意見を圧殺し続けて、国を少しでもマトモにしようと突っ走り過ぎたツケが息子に、義照にだけやけに重たくのしかかってるのだ、恨まれるのも当然か。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・この足で集めた情報と、この口先とで死に追いやった人の数は、最早数えきれない程になっている。

 

既存の政治機構、経済機構を蹂躙するだけならともかく、教育委員会や幾つもの宗教団体、果ては前の米合衆国大統領でさえ、私が用いた口先と資料とを用いた一方的かつ圧迫的な罵倒と非難に耐えきれなかったのだ。

 

お陰さまで教育制度や祖国の政治体制が文字通り木っ端微塵になって、言葉通りのリスタートとなったりしたわけだ、他国も一部そんな感じだから尚更の事である。

 

経済界もフルボッコに仕立てあげたせいで資本家と労働者の両方に大概恨まれたのだ、まぁ私の在任中に既存の企業が国籍業種大小一切関係なく30%も一気に破産に追い込まれて世界経済が死にかければ当然と言った所だろうか。

 

思えば私は政治家として動いた6年ほどの間に破壊と再生しかやってることがなかったりするなぁ・・・・・・

 

 

「・・・・・・親父の事だ、これ以上は無駄だな、まぁ死んだら葬式くらいは挙げてやるよ」

 

 

「本当は葬式すら不要・・・といいたいところだが法律があるしな、テキトーにやっといてくれ、ぶっちゃけ無縁仏扱いでも構わんけどな」

 

「・・・チッ、」

 

「ちょっ兄さん!」

 

 

自分の死後の始末を頼んだら舌打ちされて出ていかれてしまった。

 

 

・・・・・・まぁ仕方がないのだろう、義照にしてみれば私は・・・・・・・・・いや、それ以上は悲しくなるからやめるか・・・。

 

 

「義秋、私が死んだら義成情報大臣に会うようにしてくれ、彼に遺書を託してある」

 

「父さんも死ぬの確定みたいな雰囲気出さないでよ!兄さんを差し置いて僕が喪主やらなきゃならなくなる感じじゃないかこれ!」

 

「そうなっても構わん、あいつからしたら私の葬式の喪主なんて願い下げだろうしな」

 

「父さん!!いい加減にしてよ!!」

 

「さて、どうしたものかねぇ・・・・・・」

 

 

 

 

義秋にキレられるが無視する、はっきり言ってこの場で取る態度としては最悪の部類だが、私自身の目的の都合上仕方がない。

 

まぁ、ここまで冷たく扱っておけば、私が死んだ後、私の息子云々という理由だけで二人が憎まれることは無いだろう、まぁ、仮にそうでなかったとしても元からヘイトまみれの私に対して今更ヘイトためられようが大した問題ではない、あの二人なら乗り越えられると信じている。

 

 

何時のまにやら義秋が居なくなっていた、折角だ、義成のところで最後の別れを済ませるのも一興か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだかんだと6年間、よくも悪くも突っ走り過ぎたものだ」

 

懐からお気に入りのタバコを取りだしライターで火をつける、最近は自分で分煙とマナー問題への対応を進めてきたからか今の私のように歩きながらタバコ吸うような人間への目線は冷ややかなものだが、それでも喫煙は止まらないものだ。

 

 

「はぁ・・・・・・」

 

夜空を眺める、生憎と曇っていたが、それが私自身の心情を表しているようにも思えて、なんだが悲しくなった。

 

 

「孤児から苦学生へ、飛行艇輸送会社を立ち上げて政界入り、最終的には暴君か・・・・、私はただゆっくりと過ごしたかっただけだったのだがなぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、これでようやく()()()のだと思うと、そこはかとない達成感を感じるのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~時系列は最近まで戻って、とある匿名型チャット交流サイトのとあるチャット~

 

 

 

 

【21初頭の】流星宰相を語るチャット、part50【大妖怪】

 

 

 

 

1、:チャット管理人@流星宰相研究中。

 

ここは【流星宰相】、槇田義貞について議論と交流を行う公開チャットです、政権奪取と共に大暴れして今尚評価が極端に別れる彼についてトコトン語り合うと同時に、謎だらけの彼の人生について迫って行きます。

 

尚、記念すべき50茶目の模様

 

 

2、:名無しのなっさん

 

茶立て乙

 

 

3、:紫う☆さ☆ぎ

 

立て乙だよー、

 

 

4、:胃痛の元帥

 

立て乙、

 

しかし、こうして前スレから【4.2】の状況整理を続ければ続けるほど、死の間際に彼が()()()()()理由が分からないなぁ・・・・・・マジでどうしてだ?

 

 

 

5、:チャット管理人@流星宰相研究中

 

>> 4本当に謎ですよねー、彼自身が破壊しまくった世の中構造、その大方の再編は始まってて後は時間に任させればどうとでもなったとは言え、彼自身やろうとしてたと思われる事柄は他にも非常に多くあるのに後悔してる様子無いですもん・・・・・・

 

 

6、名無しのなっさん

 

義貞が何か小言を一つ発した直後に、突如発狂した米海軍女性士官の発砲から奥さん庇って至近距離から脳天に一発、心臓に二発直撃弾もらって【自主規制】が【自主規制】してるのにまだ動けてたからなぁ・・・・・・

 

 

7、名無しのなっさん

 

奥さんも心臓に一発致命的なの貰ってたけどな。

 

ってか映像そのまんまだとあのタイミングにはすぐ近くで目撃することになった一般の人達の他に、

 

当時刑事だった義照元首相、

 

義貞から会社引き継いでた義秋社長、

 

若手下士官で犯人の隣にいたアイリーン・アークライト現米太平洋方面艦隊総司令、

 

その他名のある人物沢山いるのに、誰もなにもしようとしてないというのがね・・・・・・

 

 

8、:名無しのなっさん

 

いやあれ無理だって、漏れもあのばでなにも出来なかったパンピーだけど、あれ完全に夫妻と犯人とのステージ見たいな雰囲気醸し出してたもん、義貞のあの笑顔絶対状況に介入させたくない感醸し出してたもん。

 

 

9、:胃痛の元帥

 

テレビ越しでリアルタイムで見てた私でさえその場の光景に釘付けになって動けなかったからね・・・・・・少し前に娘達に見せたんだけど、下の子がトラウマになっちゃって・・・

 

 

10、:紫う☆さ☆ぎ

 

私も映像見たけどあれはちょっと誰も手出しできないと思うよ?見方によっちゃ義貞さんゾンビ扱いされても仕方ないし・・・・・・

 

後胃痛さん子供に無茶させ過ぎ。

 

 

11、:名無しのなっさん

 

そう言えばあの事件の犯人どうなったんだろ、現地である日本で裁くか改正日米地位協定発行前なのを理由にアメリカで軍法会議にかけるかで大揉めしたって話は聞いてるけど。

 

 

12、:チャット管理人@流星宰相研究中

 

>>8確かにあの雰囲気は割りと本気で誰も近寄れなさそうな・・・私も同じ状況になったら足とめるでしょうし・・・・・・

 

 

>>11、確か結局は米軍に引き渡して軍法会議だったはずですが・・・・・・判決どうなってたっけなぁ?ちょっと資料漁り直してみます。

 

 

12、:胃痛の元帥

 

確か完全に秘密法廷扱いになって裁判結果は公開されてないはず。

 

ただ、その後件の女性士官を見た人物はいないから処刑された可能性大だったはず。

 

秘密裁判扱いになったのを受けて政府がマジギレして判決結果公開を再三要求したのに却下されてると言う。

 

その結果義貞政権下で冷え込んでた日米関係が修復不可能一歩手前に到達して後の政権の反米親露路線がほぼ確定したとか言う流れだったはず。

 

 

13、チャット管理人@流星宰相研究中

 

資料見つかりました、どうやら当時の米国軍法では、法律の不備の関係上、法律通りの場合犯人をどうあがいても死刑に出来なかった(終身刑が限界、しかもそれすら厳しい)らしく、只でさえ氷点下だった日米関係のさらなる悪化を恐れた米軍によって秘密裁判下で処刑してしまおうとしたのではと言う話がありましたね。

 

どうやら夫妻の最後の空母からの落下が自殺とも取れるらしく、そのせいで犯人の行動が【首相を殺した】のではなく【首相に大ケガを負わせた】に刷り代わる可能性が高かったとか。

 

 

完全に槇田政権を読み違えてますね、おかしいと感じたら法律を変えることから始めるタイプで、そうでなければあくまで法律順守の意向が強かった政権だから規定通りなら渋々納得してた可能性が高いのに無理矢理処刑とか大津事件の逆かと・・・・・・

 

 

14、:紫う☆さ☆ぎ

 

それが原因で今なお在日米軍は冷や飯喰らい扱いなんだ・・・・・・割りと自業自得感がするけど、現場の兵士と関係ない他の士官がかわいそうな気もする。

 

 

>>4案外彼自身も自己嫌悪してたのかもねー、前々から話題に上がっていた息子の扱いの悪さも、わざと自分と対立させてその様子を印象付けることで、自分の死後に二人に降りかかるであろう風評被害を押さえるためだったりするのかもしれないし、もしかすると彼の打ち出した数々の政策や行動は【必要だと感じだからやった、言った、行った】のであって、それと【やりたかった】かどうかは別なのかもねー

 

 

15、:名無しのなっさん

 

>>14それはねぇだろ・・・彼が政権取ってから、明らかに殆どの政策は彼主導で動いていたし、言動が過激すぎだと非難されても反省どころか非難してきたやつに自身の言動の正統性示す論文、資料を2桁単位で送り付けて、反論には更なる反論を重ねて・・・最終的には完全に黙らせてくるような奴がそんなネガティブ野郎だとは思えんがなぁ・・・・・・

 

それ以上に、【平成のヒトラー】、【世界一質の悪い男】【悪意と狂気の塊】、【生きた疫災】【血みどろの救世主】その他もろもろの称号で呼ばれるあの男が実は自己嫌悪の塊とか正直想像がつかん。

 

 

16、:チャット管理人@流星宰相研究中

 

当時の既存政権を与野党全部纏めて徹底的に非難して空中分解させてますからねぇ・・・無所属新人出馬ラッシュ引き起こした挙げ句新人勢力まとめあげて日本中引っ掻き回した結果衆参同時選挙で無所属新人()()議員になれなかったとか言うウルトラC見せつけられたら最早どうしようもないとしか。

 

>>15合法的に政権取って独裁体制に突入してる辺りヒトラーそっくりですからね、彼の場合は全権委任法に類似する法律をつくるとかで独裁状態を正当化せず、純正に彼個人への人気だけで実質的な独裁体制を維持し続けたことが相違点になりますが。

 

自分ageをしないで相手を徹底的にsageすることで相対的にマシ扱いまで持っていくとか言う恐ろしい戦法で最終的に首相にまで上り詰めてる辺りバケモノとしか言いようがない。

 

 

17、:胃痛の元帥

 

しかも、経歴を辿ると野宿者の孤児から人生スタートと言う難易度ルナティック というね。

 

 

オマケに、学歴上は高等学校卒業程度認定試験経て大学出てる苦学生って所だけど、孤児だった都合上()()()()()()()()()()()からね・・・天才とか言うレベルじゃねーから!

 

 

 

19、:名無しのなっさん

 

本当彼の人生に関しては突っ込みどころが多すぎる・・・・・・

 

やむを得ない理由あるとは言え義務教育ブッチして大卒まで至った挙げ句、沿岸地域向け飛行艇輸送会社で大成してから政界凸して35で首相になるとかいろいろと頭おかC。

 

それ以上に恐ろしいのは政策の必要性に関する裏付け資料をマシンガンの如く用意してから周到な準備して、反論を完全に圧殺して確実に通すその情報収集能力よ。

 

 

20、:紫う☆さ☆ぎ

 

・・・・それにしても不思議な人だよねぇ。

 

他人を卑下することはあるけれど、自画自賛は絶対にしない人で、他人を卑下するときもいちいち資料にして恐ろしいくらいはっきりとした理由付けを行うって、そこまでする必要性あるのかなぁ?

 

でも本当に何で最後の最後で笑顔になったんだろうね?

 

もしかしたら誰にもわからないような秘密があったのかなぁ・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だとしたら、彼は一体今の世界を見て何と言うのだろうね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





このチャット、名無しと管理人以外の同一HNは全て本作登場人物の書き込みだったりします。



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外伝資料、流星宰相の日記。

○○年×月△日

…………折角なので誰にも理解されない、私と妻の秘密的な内容として、色々ぶちまけつつ日記を記すことにした。

 

妻との結婚生活が10年を過ぎ、政権も安定期に入り、息子も生まれて幸せの絶頂期みたいなの状態の私だが、しかし本題はこれからになる。

 

前世でさらりと死んで、テンプレじみた故あって、記憶やら身体能力やらを得た上で孤児スタートとして転生したインフィニット・ストラトスの世界だが原作開始は21世紀初頭なのに私の生まれは20世紀半ばと言うハード仕様。

 

原作キャラもよほどのルートがない限り事前介入は困難を極める嫌がらせ仕様だ。

 

あれから主目標は変わってこそいないが、政界に携わったせいで副目標が生まれ、ついでに主目標達成のために博打を張る羽目になったのである。

 

まぁその辺は置いておくとしよう、

 

至近の問題は、前世より30年近い早さで、今起こったイラクの核兵器保有問題である。

 

イラク大統領に、これまで構築した秘密ルートを介してIAEAの査察を受け入れるようにかなり強硬に説得こそしてはいるが…………正直決断が正しいかは大博打になる。

 

この時の為に情報省は生まれたと言っても良いし、実際核の実在確認において裏で大活躍してくれてるのは嬉しい所である。

 

この賭けに勝てば、日本はそれまでの対米追従路線から完全に切り離される。

 

外務が掛け合ったのも効果があるし、憲法レベルからの大規模な法改正、それに伴う自衛隊への空母機動部隊導入、宇宙開発への追加投資、情報省への極秘調査依頼。

 

インフラ、教育、インターネット、その他ありとあらゆる予測されうる事象に対して、取り敢えずの所日本が対応可能な所に持ち込むことはできた。

 

インターネットは譲れど、コンピューターとソフトウェアならば戦えるところもある、コンピューター産業関連や大企業の抱える性は解決困難な道のりを歩むが、最悪息子の世代に引き継いでもタイムリミットは残っているはずである、どっかりと居座る勢いでやるしかない。

 

…………まだ現実の要素しか見えないこの世界だが、目的の為、前世知識を悪用出来ないレベルで世界を変えなくてはならない。

 

頑張らねば。

 

 

 

 

 

○×年○月□日

 

 

アレから賭けに勝てたのは良いが、冷戦が終わる前にアメリカの国威が暴落したのが悪影響してか、キューバ危機再来と言わせんばかりにキューバがまたアツくなってしまった。

 

ホットウォーは回避できたのでとりあえず安心だが、流石に前世の記憶が通用しなくなっている。

 

ここからが政治家としての本領になるだろう。

 

息子にはキツイものを見せることになるやも知れない。

 

 

 

□□年×月△日

広島でテロが起こった。

 

よりにもよって原爆の日にテロられた挙げ句原爆ドームに立て籠っての長期戦である。

 

幸い死者は出ずにすんだが、平和への道を祈る重要な時になんて事をやらかしてくれたのか、広島出身の刀夏に至っては怒りのあまり昔のように刀で突貫しようとしたほどだ。

 

まぁ、息子の成長を見れただけましとするべきか。

 

 

 

△□年□月×日

 

…………予想外の収穫だ!

 

宇宙開発の前線に正儀博士を起用したのと、情報省で網を張った影響だろうか?

 

本来千冬と一夏は「あの」おぞましい計画の産物として生まれてくるはずだったが、この世界では二人とも「人の子」として生まれてくる可能性がある。

 

事実となれば最大の原作ブレイクになるやも知れない。

 

マドカと呼ばれていたあの少女が「末の妹」として、姉弟と仲良く暮らす可能性も遠い夢では無くなってきたのかもしれない。

 

織斑一春、織斑千秋。

 

あの3人に才覚の似たこの夫妻が、「原作」を示す存在になるのかもしれない。

 

 

 

X年Y月Z日

 

…………よし!!これで原作の悲劇は避けられる筈だ!「あの二人」が同い年で生まれ、「理解者」になりうる人物にもアテが出来た!

 

バクチに勝ったぞ!、ざまーみろってんだ!

 

この事を話したら、久しぶりに妻と原作の事で盛り上がる事が出来た。

 

後は、状況に身を任せれば大丈夫だろう。

 

原作の状況になりうる要素のうち、国に関する要素はその殆ど潰せた。(代償として更識との関係が実質死んだのはノーカンで)

 

 

 

全く状況をつかめない「亡国」が気になるところではあるが、少なくとも大事故でも起こさない限りはキチウサ化に歯止めをかけられる筈…………後はもう賭けるしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??年?月?日。

 

明日、私は死ぬ。

 

これまで色々と頑張ったが、流石に強行策に度が過ぎたようだ、まぁ妻共々多方面に喧嘩を売った結果と言えるまぁ仕方ないだろう。

 

息子達にこの事を話したが、特に何か変わった反応が起きるわけでもなく、いつもの二人だった。良かった。

この様子なら死んでも問題はないだろう、立派になったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

死ぬ事自体の恐怖は薄れないものだが、しかし、故あって私と同じような生まれとなり、同じ道を歩み続けて来た妻共々死せるのだと考えれば、多少は気が楽にるものだ、これからは再来年に生まれるはずの双子のことくらいしか気がかりは無い。

 

やれることはやったのだ、目的は達したと言って良い。

 

明日は笑顔で死ねそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記。

 

 

織斑千冬よ、篠ノ之束よ、織斑一夏よ、織斑マドカよ。

 

・「インフィニット・ストラトス」を知る者として、君達の幸を願う。

 

日本国首相「槇田義貞」

 

 

・「織斑さん、篠ノ之さん、お幸せに」

 

日本国首相夫人「槇田刀夏」

 

 

 

 

 



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