結月ゆかりがISの世界で仮面ライダーになるようです。 (海棠)
しおりを挟む

1学期編
1話『変身』


皆様、こんにちわ。結月ゆかりです。今は晴れて中学1年生です。

 

皆さまは【IS】、通称【インフィニット・ストラトス】をご存知でしょうか?

 

知らない方もいらっしゃると思うので説明いたしましょう。

 

 

 

 

【インフィニット・ストラトス】とは、かの大天災、【篠ノ之束】がつくりだしたまあ、アーマーと呼べばいいですかね。どうやら宇宙まで行ける代物みたいです。すごいですよね、宇宙服なしで宇宙に行けるなんて。これ使えば月面旅行や月面探査も夢じゃないと思うんですよ。

 

ですけど、現実はそういかないのも事実。なぜか日本に向けて世界中から発射されたミサイルは一基のISによってすべて撃ち落とされました。この事件は通称、【白騎士事件】と呼ばれています。

 

・・・よく考えたらそんなことしなくてもよかったと思います。なぜかって?そんな不思議な代物を急にポンと出されてはい信じろというのが無茶というものです。篠ノ之束はよほど非常識だったのでしょう。もしくはバカだったか。

 

 

天才は意外とバカだって相場が決まっていますからね。アハハ。

 

 

・・・失礼、脱線しました。とにかく、この事件からISは急速に広まり、全世界でISが侵食し始めました。結果、女尊男卑の風潮が生まれてそのままかと思われました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、大企業【ZECT】がそれに代わる新たなシステムを開発したのです。

 

・・・ああ、失礼。ZECTとは一体何か、ですって?これも説明いたしましょう。

 

ZECTとは先ほども申しましたように巨大企業です。車や建築、日常用品から薬品まで私たちの生活には絶対にこの企業が絡んでいるほどの巨大企業です。

 

『つまようじからロケットまで』。この言葉がよくZECTのフレーズで使われています。

 

・・・とにかく話を戻しましょう。先ほど申しましたようにその大企業ZECTがISに対抗するために作り出したシステムがありました。その名前は【MASKED_RIDER_SYSTEM】通称【M.R.S】です。ちなみにこれは男性しか扱えない仕様になっています。

 

これを発明したのは結城博士という博士でして、瞬く間に世界に広まりました。なぜかって?現実味があったからです。

 

このシステムによってISによるテロ事件が急激に減ったことは皆さま周知の事実なのです。それに、今こうして男女平等にほとんど戻ってきていることも実績の一つですかね。

 

さて、無駄話はここまでにしといて・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイ!早くこれを運べ!』

『こいつを何とか食い止めろ!』

『ウワァアア!!』

・・・これはいったいどういう状況なのでしょうか?私がお気に入りの風景が見える港まで来たらこんな光景が目の前にありました。

 

化け物を4人のM.R.Sをまとった人たちが相手してます。あ、一人はなんかアタッシュケースを持ってますね。あれを狙ってるんでしょうか?

 

私はぼーっとそれを見ていました。なぜかというと、目の前の光景が現実とは思えなかったからです。

 

『グワァアア!!』ポーイ

あ、アタッシュケースを持ってた人が攻撃されてアタッシュケースを宙にほっちゃいましたね。そして吸い込まれるように私の手元に飛んできました。わお、なんて狙ったように飛んでくるんでしょうか。私はそれを両手でキャッチしました。

 

・・・ん?これってまずくないですか?あ、化け物こっち向いた。

 

すると化け物がとびかかってきました。・・・え?

 

「キャアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~☆~

 

 

彼女は間一髪でよけると全力で走り出した。・・・なぜかアタッシュケースを抱えながら。

 

「なんでこんな目に合わなきゃいけないんですかぁああああ!!!!」

彼女は半泣きになりながら叫ぶ。しかし、それを聞いてくれるのは化け物だけである。しかも化け物には言葉なんか通じやしない。

するとアタッシュケースがガタガタし始める。

 

「ウェ?!ナ、ナンディスカ?!!ナズェアタッジュケースガガタガタシテルンディスカー?!!」

もはや何を言ってるかよくわからないくらいひどい滑舌になっている彼女。

 

「ガァ!!」ドガッ

「きゃああ!!」

化け物に攻撃されて思い切り吹っ飛ばされる結月。その拍子にアタッシュケースを落としてしまった。それと同時に留め金が外れて急に何かが中から飛び出してきた。

それは化け物を吹っ飛ばすと結月にぴょんぴょんと跳んできた。

 

「ふぇぇ・・・。なんで私今日こんなについてないんでしょうか・・・」

≪ソコノ君!≫

「え?だ、誰ですか?」

≪ココダヨ、ココ。君ノ目ノ前ニイルジャナイカ≫

結月が少し下を向くと機械のウサギがぴょんぴょんと跳ねていた。

 

「え?!この子ですか?」

≪ウン。トリアエズ君ニヒカレタカラサ、サッサトべるとヲ付ケテホシインダヨ≫

「え?!でも・・・」

≪死ニタクナインデショ?≫

「は、はい!」

彼女はまだまだやりたいことがたくさんある。ここで死ぬのはまっぴらごめんである。だから彼女は頷いたのだ。

 

≪ダッタラ方法ハ一ツ。変身スルシカナイヨ!ササ、あったしゅけーすノ中ニべるとが多分マダアルハズダカラ腰ニツケテヨ!ソノ間僕ハ・・・≫

 

バシィン!

その機械のウサギはぴょーんと勢いよく跳ねて化け物を弾き飛ばす。

 

≪コイツヲクイ止メル!サア、早ク!≫

「は、はぃいい!!」

ゆかりは転びながらもアタッシュケースまでたどり着くとベルトを取り出した。そして腰に巻く。

 

「こ、こうですか?!」

≪ソウ!ソシテべるとニアルぼたんヲ押シテ≫

「こ、これですか?!」カチッ

するとふたが開く。

 

≪キミ勘ガ鋭イネ!ソコニ僕ヲせってぃんぐスルンダ!!今カラ行クカラ!≫

「は、はい!おいで!」

≪ウン!≫ピョーンピョーン

するとその機械は彼女の右手の平に乗る。

 

≪言ットクケド頭ガ右ニ来ルヨウニせっとシテヨ!≫

「わ、わかりました!えい!」

≪痛イ痛イ!ソンナニ勢イヨク入レレバイイッテモンジャナイヨ?≫

「す、すいません!」

≪・・・マ、次カラ気ヲ付ケテヨ?≫

「は、はい!(・・・あれ?私がまた変身すること前提ですか?)」

≪サア、【変身】ッテ言ッテ!≫

「え?!」

≪【変身】ッテ言ッテ!!≫

「ヘ、ヘシン!!」

 

【HENSHIN】

そんな音声が鳴ると彼女の体の周りを何かが急に包んでいく。

 

『え?!なんですか?!これ!!』

彼女はうろたえる。そうしている間にも彼女をアーマーは包んでいく。

そしてアーマーが彼女を包み切ると再び音声が鳴り響いた。

 

【CHENGE! HASE!】

紺色の装甲に青く光る発光部分。今ここに次世代ライダー「仮面ライダーハーゼ(P)」が参上した。

 

『・・・?』

彼女は信じられないように自分の手を見た後、顔をペタペタと触る。そして叫んだ。

 

『エェ?!私、変わってるぅ?!!』

≪ダカラ【変身】ナンダヨ!!≫

彼女に突っ込む機械のウサギ。

 

≪トニカク、サッサト倒シチャッテ!≫

『えぇ?!どうやってですか?!!』

≪殴ッテ蹴ッテヲ繰リ返セバ倒セルンジャナイ?≫(適当)

『よぉし!!』

彼女は構えると走り出した。

 

 

 

 

 

 

≪・・・エ?≫

『とりあえず殴ればいいんですよね!!』

≪ウン、ソウダネ!ソノ通リダケドソノママ殴リニ行ク?!普通?!≫

『こういうのはノリのいい方が勝つんですよぉ!てぇええい!!』

彼女の繰り出した拳は化け物の腹に思いきりめり込んで吹き飛ばした。

 

「?!!」

『おお!効いてるみたいですよ?!』

≪ウン、ソウダネ!ソノ調子!≫

『よし!うぉおお!!』

そしてそのまま倒れこんでいる化け物に一気に突っ込んでいく。

 

『えーーーい!!』

「ガァッ?!!」

『やっぱり効いてるみたいですよ!このままいけば!』

≪倒セルカモシレナイネ!≫

『よぉし!頑張っちゃいますよー!!』

そしてそのまま突っかかっていく。

 

しばらくそのまま殴る蹴るを繰り返していると化け物の動きが鈍くなっていく。

 

≪トドメダ!≫

『え?どうやってです?!』

≪トリアエズ僕ノ足ヲ折リ曲ゲテ≫

『こ、こうですか?』

 

【Rider_Jump!】

 

『へ?』

すると急に足にエネルギーがたまり、そのまま跳躍した。

 

『ひゃああああ?!!』

≪ソシテ元ニ戻シテ!!≫

『は、はいいいい!!!』

 

【Rider_Kick!】

 

そしてさらに左足がエネルギーを帯び、そのまま重力に従って降下していく。そして左足が化け物に激突するとその化け物は吹っ飛ばされた。

 

そして化け物は一回起き上がったが緑色の炎に包まれて絶命した。

 

『も、燃えました・・・』

≪オメデトウ!君ハコレデ化ケ物ヲ倒シタンダ!≫

『す、すごいですね。コレ』

≪デショデショ?モットホメテモイインダヨ?≫

『すごいです!』

 

『動くな!』

 

≪『ヒャッ?!!』≫

ゆかりはびっくりしてあたりを見渡した。すると3人のZECT戦闘員に囲まれていた。

 

『お前!そのゼクターをこちらに渡せ!』

『すぐに渡してくれればこれ以上の危害は加えないと約束しよう!』

『・・・これどうやって外すんです?』

≪変身シタ時トハギャクニ引キ抜ケバイインダヨ≫

『こ、こうですか・・・?』ガチャガチャ

するとゼクターが抜けて装甲が解除された。

 

『なっ・・・?!』

『女?!』

『ありえない・・・』

「え、えっと・・・」

驚愕するZECT戦闘員とは裏腹にゼクターをそのうちの一人に手渡す結月ゆかり。

 

「こ、これ、お返しします」

『は、はい』

「す」

『す?』

「すみませんでしたぁああああああ!!!!!!」

そう叫びながら彼女は全力疾走でどっかへ走って行ってしまった。

 

 

続く




この世界のゼクターはしゃべります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話『決意』

前回のあらすじ
なぜか女の子なのに変身してしまった結月ゆかり。見事に化け物を屠った彼女はゼクターを返還して猛スピードで帰って行ったのだった。







「はぁ・・・、どうしましょう・・・」

私はため息をついてぼやきながら植物にぞうさんじょうろで水やりをしていた。

 

あの後走って帰ってきたのはよかったのですが、帰りが遅かったのでマキさんとずん子さんから怒られてしまいました。私は黙ってそれを受け入れました。二人が心配して怒ったのは理解できますし、何よりさっきの出来事なんか信じてくれとなんか言えませんしね。あまりにもばかばかしい話ですしおすし。

 

ですがそんなことは私のこんなため息にはつながる原因にもなりません。私のため息の原因は他にあるのです。

 

「鞄、あそこに置いて行っちゃいました・・・」

 

どうしましょう、あの中に財布とか学生手帳とかいろいろ入ってるのに・・・。こうなったら夜二人が寝静まった後に窓から脱出して取りに行くしか方法がなさそうです。

 

「今日はなんでこんなについてないんでしょうか・・・」

 

私は少し泣きそうに泣きそうになりましたがぐっとこらえて水やりを続行します。こんなとこで泣いても仕方ありません!

 

「アンタが結月ゆかりだな?」

「ひゅい?!!」

急に誰かに話しかけられました。その声の方を向いてみるとそこにはネクタイをきちんと締めた男の人がいました。

 

「だ、誰ですか?警察呼びますよ?」

「あなたがハーゼに変身した子ですね?」

「な、なんのことでしょうか?」

すると男の人は鞄を突き出してきました。

 

「ああ!あの時おいてった私のカバン!」

「何の時です?」

「化け物に追いかけられた時の・・・!・・・あ」

「・・・」

「・・・」

「「・・・」」

気まずい雰囲気がその場を支配しました。私たちは気まずそうに黙りこくってしまいます。

 

「・・・す」

「?」

「すいませんでしたぁああああああ!!!!」

私は思わずその場に土下座してしまいました。いや、ホントに勘弁してくださいお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~☆~

 

「え~と、つまり・・・」

「ゆかりちゃんが本来男の人しか使えないはずのM.R.Sを動かしてしまった、ということですか?」

「ええ。こちらがその記録映像です」

そう言われてパソコンの画面をこちらに向けてきた。そこには変身を解除する私の姿が映っていた。・・・ばっちり撮られてるじゃないですかやだー。

 

「で、どうしたらいいんでしょうか?」

「実を言うと、あなたたちのことを保護しようとこちらでは動いてるんですよ。」

「「「へ?」」」

つまり・・・。

 

「え?!つまり私たちがZECTの保護下に置かれるということですか?!!」

「ええ、そうなります」

「な、なんでですか?」

ずん子さんが驚きと疑問が混じったような顔で質問する。

 

「理由を説明しましょう。

 まず一つ目。女性でM.R.Sを使えるとなるとどこかの研究機関に君の身柄を渡せと勧告してくるんです。今はまだですがね。それが起こる前に事前にこちらで引き取ろうというわけなんです。」

「だったら、マキさんやずん子さんも保護してもらう理由にはならないんじゃないんですか?」

「・・・なるんですよ、それが。それが今から話す二つ目にあたることなんです。

 二つ目。君だけを保護したら次に狙われるのは弦巻さんと東北さんなんですよ。」

「なんでですか?!」

「二人をダシにするんです。君の身柄を渡させるための、ね」

「そ、そんな・・・」

「結月ちゃん、君はまだ子供だからわからないかもしれないけど、人間って生き物は目的のためならどこまでも汚くなれるんです。・・・私も今まで戦ってきましたが、人間の汚さというのはかなり見てきましたから」

「・・・だったら」

「?」

「だったらなんで戦えるんですか?!」

私はつい叫んでしまった。自分がM.R.Sを使えるのは目の前にいる人のせいじゃないのに。慌てて止めようとするが口は独自の意思を持ったかのように叫び続けた。

 

「そんなに人間が汚いんだったら、なんで人のために戦うんですか?!!嫌ならやめればいいじゃないですか!!なんで私がそんなにつらいことをしなきゃいけないんですか!!」

私の目からぽろぽろと涙がこぼれ堕ち始めました。・・・ああ、目の前の人は何も悪くないのに。

 

「・・・それが私の信念だから、ですかね?」

それでも目の前の男の人は少し困ったように笑いながら言いました。

 

「私は下っ端の社員で友人にもよくバカとか言われることは多いですが、私はそれでもいいと思ってるんです。私が正しいと言えることを私はやっている。今はそれで十分なんです。それがたまたま"人を守る"だった。ただそれだけでいいんですよ。少なくとも私にとっては、ですがね」

「・・・」

「結月さん、あなたに戦えとは言いません。ですが、いつか戦わなくちゃいけなくなります。・・・その時はめげずに頑張ってほしいんです」

「・・・決めました、私」

私は立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~☆~

 

「・・・決めました、私」

その時の彼女の目には力強い炎がともっているようにその場にいた全員が感じた。

 

 

 

 

 

「戦います、私」

 

 

 

 

 

「「へ?!」」

「だめだ!」

男が真剣な顔で忠告した。

 

「君はまだ中学1年だぞ?! 君にはまだ早すぎる! それに君にはまだ社会の裏の汚さなんて知ってほしくない! いや、知るべきじゃない!」

「そうだよゆかりちゃん! ゆかりちゃんが無理することないよ!」「(コクコク)」

男の発言にマキとずん子は心から同意していた。自分たちのかわいい結月ゆかりに社会の裏なんて知ってほしくなかったのだ。

彼女たちには男が言う社会の裏がどれだけ汚いのかは知らない。しかし、知ったらろくな目に合わないということだけはわかった。

 

「私がわがままを言って戦わなかった分、誰かが泣くぐらいだったら!」

彼女は3人の願いを受け入れなかった。いや、受け入れることはできたかもしれない。しかし、彼女の心の奥底にあった信念はそれを良しとしなかった。

 

「私が無理をします!」

「だからそれはだめだ! 君は二度とまともな人生を送れなくなるんだぞ?!!」

「それでも! 誰かが泣くぐらいだったら!」

 

 

 

 

 

 

 

「私がその分戦います! そして笑顔にしてみせます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸か不幸か。彼女は小さいころから正義感がすさまじく強かった。ほかの誰よりも悪いことを良しとしなかった。そして今の彼女の叫びはそんな性格の代名詞でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが彼女のその後の人生を大きく狂わすことも知らずに・・・。

 

続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話『入学』

前回のあらすじ
ZECTの保護下に置かれることになった結月一同。そして彼女は戦う決意をしたのだ。

・・・前回でゆかりさんの活躍を期待した皆様、すいません。一気に時間が飛びます。そして一気にゆかりさんの性格が変わっています。


そこのところをご了承の上、ご観覧ください。








・・・あれからいろんなことがありました。

 

 

 

 

 

あの後、感銘を受けた男の人はそのまま立ち去りました。そして次の日、ZECTの皆様が家に訪問していろいろと説明を受けました。そしてさらに次の日にはなんか髪のぼさっとした男の人が来て私をZECTの本社まで連れて行きました。ちなみにその男の人は天道総司という人でした。

そこで私は訓練を受けました。といっても先輩方からタコ殴りにされるという簡単で地獄のようなやり方でしたが。

 

そのあともいろんなことを学びました。

 

 

 

 

 

「つまりだ。自分が正しいと自慢して言えることを一つでもいいから持っておけば自信喪失なんかしなくなるぞ」

「なるほど・・・」

加賀美さんからは自信の持ち方。

 

 

 

 

 

「いや、もっとこう、かかげるように、だ」

「こ、こうですか?」

「そんなにおずおずではなく、もっと堂々と」

「・・・これ、本当にためになるんですか?」

「いずれためになる」

「さいですか・・・」

天道さんからはためになる語録の数々。

 

 

 

 

 

「いいよなぁ、お前は。地獄のような下っ端時代を味合わないでよぉ・・・」

「そ、そんなこと言われてもぉ・・・」アセアセ

「兄貴、ゆかりちゃん困ってるよ。はい、1、2!」

「ワンツー!」

「・・・もっと腰を入れろ。それじゃあ倒せないぞ」

「はい!」

矢車さんや影山さんからは蹴り技や格闘スタイルを教えてもらったり。

 

 

 

 

 

「女性というのは髪の毛にまで気を付けないと意味がないんだよ」クシトカシー

「そ、そうなんですか?」

なぜか風間さんからはおしゃれの仕方を教えてもらったり。

 

 

 

 

 

「ユ・カーリ!僕が君に剣術を教えてあげよう!」

「私の名前はゆかりです」

「ユ・カーリ?」

「ゆ・か・り・です!」

「ゆか、ゆ、ゆゆ、ゆ・・・」

「・・・もうユ・カーリでいいです」グスッ

神代さんからは剣術を教えてもらったり。

 

 

 

 

 

「これが君専用のゼクターだ」

「へ?!」

結城博士から直々に専用のゼクター、【ハーゼクター】をもらったり。

 

 

 

 

 

「と、いうわけで結月君にはIS学園に行ってもらいたい」

「・・・は?なんでですか?」

急にIS学園に行けとか命令されたり。

 

 

・・・あれから3年間、本当にいろんなことがありました。

 

 

 

 

 

『私がその分戦います! そして笑顔にしてみせます!』

 

 

 

 

 

・・・私の信念はどこ行ったんでしょうか。もう、どっかに消え去ったんでしょうか。様々な仕事とかの関係上、外国にも行きました。社会の裏がどれだけ汚いかを思い知らされました。だからなんでしょう。

 

 

私の目が死んだのは。私がかなりひねくれたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして私は今、人工島の上に建っているIS学園のざわざわと騒がしい教室にいました。幸いなことに席は窓際の一番後ろ。この席だったら教室の皆さんを一望できます。

ちなみに私の服装はスカートではなくズボンでその上にパーカーを羽織っています。・・・なんでこんなに白いんでしょう。汚れとか目立っちゃうじゃないですか。

そしてさっきから皆さんは一人の男子生徒に集中しています。

 

彼の名前は織斑・・・だれでしたっけ?まあ、いいや。

 

とにかく珍しいんでしょう。当然です。今まで女子にしか使えなかったIS。つまりここIS学園には女子生徒しかいなかったわけですが、そこに急に男子生徒が入ってくるわけですからさぞみな興味もひかれることでしょう。

しかもなぜか教卓の目の前の席という拷問にしか思えないような配置ですしね。

そんなことを考えていると、この教室を出入り出来る扉が自動で開き、全員が一斉に扉の方に顔を向けました。

・・・自動ドアって、よく考えたら学園にしちゃあ豪華すぎると思うんですが・・・。

まあ、そんなことはどうでもいい。問題は入ってきた人です。

 

「・・・中学生?」

私は思わずつぶやいた。幸いなことに皆には聞こえていなかったようだが。

だってよく考えてみてくださいよ。

中学生ぐらいしかない身長の黄緑色の髪をした人がどことなく大人っぽい恰好をしてきたんですよ?というよりあの髪はなんですか。染めてるんですか。というより胸でかいですね。なんだあのグラスマスボディー。卑怯じゃないんですか。私なんか身長172㎝はあるのに胸は一向に成長しないんですよ?!どうなってるんですか神様!

私がそんなことを思ってると女性は黒板前にある教卓の前に立つと振り向いて黒板の近くにあるチョークを手に取って何かを書き始めました。

そして終わった時には黒板にこう書かれていました。そして彼女は口を開きました。

 

 

 

【山田真耶】

「今日からこのクラスで貴女達に勉強を教える事になった山田真耶です。よろしくお願いします。」

 

 

 

・・・え?! 先生なんですか?! あんなにちっこいのに先生?!

うーむ・・・、人は見た目で判断していけないとか言いますがその通りですね。見た目にすっかり騙されてしまいました。とにかく目上の人には常に礼儀が基本です。そこんとこの常識はまだ残っていますからね。

 

「よろしくお願いします」

・・・あれ? なんで私以外誰も言わないんですか?!

・・・ああ、あの男子生徒に気が散ってるから誰もしゃべらないんですね。

というか一応あれでも先生なんですから皆さんもうちょっと敬意とか払ったらどうですか?! ホラ!泣きそうになってますよあの人?!

 

「そ、それよりもクラスの皆さんも自己紹介して下さい! 勿論、この教卓の前に立って、それとあいうえお順でお願いします!」

 山田先生がそう言うとさすがにクラスのみんなは反応したようで頷きました。すると、一人の女の子が立ち上がって教卓の前に立つと、自分の胸に手を当てながら自己紹介をし始める。その子は赤髪掛かった紫色のショートカットに琥珀色の瞳が特徴的だった。だからなんで髪染めてるんですか。私ですか?今の私の髪って真っ白なんです。どうやら過度のストレスで白くなっちゃったみたいですね。

 

「相川清香です。得意な事は……」

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

「え~っと、お、織斑君!」

「は、はい! な、なんですか?」

「ゴメンね、大きな声を出しちゃって。次は織斑君の番ですよ。だから自己紹介してください」

そう言われると織斑さんはしぶしぶと教卓の前に立ちました。クラスの皆が彼をじーっと見つめています。いったい彼に何を期待してるんでしょうか?

 

「織斑、一夏、です。よろしくお願いします」

『『『(wkwk)』』』

「い、以上です」

コミュ障か!

 

ズココッ

そしてそんな効果音が鳴りそうなほど皆様綺麗に転びました。

すると教室に入ってきたスーツを着た女の人が出席簿で織斑さんの頭をたたきました。

 

「げぇっ?! 関羽!?」

何言ってるんでしょう、この人。急に三国志の英雄の名前出すとか頭おかしい。

で、スーツ姿の女の人はもう一回織斑さんの頭をたたくと教卓に立ちました。

・・・ふむ、目が釣り目できつい印象を与えますが怖いと言うよりもかっこいいと印象のほうが近いですね。黒髪を後ろで1つに束ね降ろしていますがそれがなんとなく綺麗にまとめられている印象を受けます。

まあ、わりとそんなことはどうでもいいですけどね。

 

「諸君、私が織斑千冬だ! 私の質問には『ハイ』か『『イエス』かで答えろ! いいな!」

あんたはどこの独裁者だ。いや、今時こんな独裁者もはやらないけど。かの有名なヒトラーでもさすがにこんなことしませんでしたよ。・・・よく考えたら彼は民衆の心をつかむのが相当うまかったんですねぇ。そこは見習わないといけないかもしれませんね。

 

 

「キャァ――――――! 千冬様よ! 最強のヴァルキリー『ブリュンヒルデ』!」

「生まれたときからファンでした!」

「私はテレビを見てて一目ぼれしました!」

「私、御姉様に憧れて猛勉強してきました! 北九州から!」

「不束者でございますが私に夜の勉強会を開いてください!」

「私、御姉様のためなら死ねます! 御姉様がアブノーマルな性癖でも耐えます! 例え調教でも! いいえむしろ調教して!」

 

 

どうやらクラスの皆さまには受けたようですがなかなかにうるさいです。というよりみんなMなんですかどうなんですか。

ですが、世界最強は彼女ではありません。天道さんにかかれば簡単に負けるはずです、たぶん。

 

「・・・なんで私が受け持つクラスにはバカしか集まらないんだ・・・」

それに私も含まれているのなら今すぐ訂正してください。私はバカじゃないですから、たぶん。

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

「では結月さ~ん?自己紹介してくださ~い?」

「・・・わかりました。」

ついに来ましたか・・・。さすがにちょっと緊張しますね。

私は教壇に上がり教卓の上に立つ。・・・うわ、こっちみんな。

しかし今は自己紹介。皆に見られるのは仕方のないことなのでとりあえず天道さんがやっていたように天に向かって人差し指を突き上げる。そして言った。

 

 

 

「全てを結ぶ月とかいて『結月』。そして『ゆかりの色』の『ゆかり』。私の名前は『結月ゆかり』です」

 

 

 

フフフ、皆ぽかんとしてますね。・・・あと何個か付け足しときますか。

 

「趣味はトレーニング。好きなものはウサギ、嫌いなものは女尊男卑にこだわるボンクラ共。よろしくお願いします」

刹那殺気を感じたので首を傾ける。すると私の頭の上を出席簿がかすめた。そしてそのまま飛んで行った出席簿は窓ガラスをつき破って外へ飛んで行ってしまった。

 

「・・・自己紹介で暴力とは先生のやることじゃあないですねぇ」

私は少し口端をニヤリとゆがめながら言う。訴えたらこっちの方が勝つんだぞ、わかってんのか。

 

「お前がふざけているからだ」

「こういうのはノリのいい方がいいんですよ。かたいのは嫌いですしね~。自己紹介くらい個性見せてもいいでしょう?」

すると織斑先生は納得したように黙った。私はすたすたと席に戻るとドカッと座った。

そして少しため息をはくと背もたれにもたれかかる。あ~、疲れた。

それと同時に授業の終了を知らせるチャイムが鳴った。

 

 

 

割愛。&視点変更

 

 

 

今は授業でISの基本的なことを習っていた。といっても結月ゆかりは一応大まかなことは頭の中に叩き込んでいるので大丈夫だが、織斑一夏、彼はそうもいかないみたいだ。

そりゃそうだ。そもそも男子なのに頭の中に叩き込んでいるわけがない。いるとしたら性同一性障害者だけではなかろうか。とかゆかりは鉛筆を回しながら思っていた。

 

「織斑君、何かわからないことはありますか?」

「ぜ、全部です」

「え?全部、ですか?」

「はい、全部です」

「おい、織斑。入学前に渡した参考書はどうした?」

「電話帳と間違えて捨てました・・・」

全員ずっこけた。ゆかりはあくびをした。そして織斑千冬が出席簿で彼をたたく音がした。

・・・電話帳と間違えて捨てるって完全に興味ない証拠じゃないですか。勉強なめてんのか。とゆかりは思った。

 

「放課後参考書を渡すから1週間以内に覚えろ」

「え、でも・・・」

「いいな?」

「・・・はい」

自業自得とはまさにこのことだと結月は思った。

 

「ほかの皆様は何かわからないことはありますか?」

「(スッ)」

ゆかりは手をあげた。

 

「はい、なんでしょう?」

「はい。元々ISは宇宙に飛び立つために篠ノ之博士が開発したパワードスーツですよね?」

「はい、そうですね」

「だったらなぜ競技や軍とかに使われているのか説明してもらえますか?」

「えっとそれは・・・」

山田は困ってしまった。なぜなら、彼女は今までそんなことを一度も考えたことがなかったからだ。

すると突然出席簿が飛んだ。ゆかりが再び首をかしげてよけると出席簿はそのまま後ろのロッカーに突き刺さった。

 

(どう考えても人間じゃないでしょ。人間に擬態してるワームじゃないんですかあれ?)

「おい、結月。お前今失礼なことを考えてなかったか?」

「気のせいですよ」

どうやら読心術も使えるらしい。織斑先生はなるべく敵にしないでおこうとその時彼女は思った。

 

 

続く






次回の、「結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。」は!


「少しよろしくて?」
「ん?」


「まぁまぁ、落ち着いてください二人とも。見苦しいですよ」


「天道さんが言っていました…。」


4話『英国』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話『英国』

前回のあらすじ
女性でありながらM.R.Sを使うことができる結月ゆかり。彼女はIS学園に入学した。そこにも唯一の存在がいた。

ごめん。少し前回のあらすじ書くの面倒になった。

次回からはもう少し頑張る。








「ちょっとよろしくて?」

「ん?」

ん? なんか織斑さんに金髪縦ロールが話しかけてきましたね。なんか高圧的な感じがひしひしと伝わってきますが・・・。

 

「なんですの?! その態度は?! 私が代表候補生だということを知っての態度ですの?!!」

間違いないです。今ので確信できました。あの人は女尊男卑の考えを掲げたボンクラですね。はっきり言って私が一番嫌いなタイプですね。

 

「な、なぁ・・・?」

「なんですの?」

「代表候補生ってなんだ?」

全員がずっこけました。私もこけそうになりました。

え? 代表候補生を知らない? いや、漢字見ればわかると思うんですが・・・。・・・まさか漢字を読めないってことはありませんよね・・・?

 

「・・・(ワナワナ」

「???」

仕方がないですね。嫌ですが、助け舟を出してあげますか・・・。

 

「代表候補生。それははっきり言って国を巻き込んでの大会の時に代表となることができる可能性が有力な、はっきり言って卵ですね。と言っても並の方々よりかは強いことに間違いないと思いますよ」

「そうですわ!エリートですわ!」

「誰がそう言いましたかね・・・(ボソッ」

自分の都合のいいように曲解しましたね。正直いって少し面倒なタイプです。ま、私も生きるために曲解して切り抜けたこともありましたし、人のことは言えませんがね。

 

「ふん、まぁよくってよ。知識だけはあるようですが所詮あなた達は素人でしょう? 泣いて頼まれれば、入試首席にして教官を倒した二人のうち一人である私が直々に指導してあげてもよろしくってよ?」

「俺も倒したぞ?」

コラ、空気読んでくださいよ。というより二人のうち一人ってそこまで大したことないですよね?

 

「わ、わたくしともう一人だけと聞いていましたが?」

「女子だけってオチじゃないか?」

「あ、あなたはどうなんですの?!」

「・・・」

やっぱりこっちに振ってきますか・・・。正直に答えるべきでしょうね。

 

「蹴り倒しました」

「「え?」」

「蹴り倒しました」

別に間違いは言ってません。ハーゼちゃんを装備して蹴り飛ばしただけ。ただそれだけです。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

お、チャイム鳴りましたね。

 

「クッ、覚えておいてくださいまし!」

覚えておけと言われて覚えているバカがどこにいるんですかねぇ・・・。

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

「そういえば、クラス代表を決めないといけないんだったな」

織斑先生が急にそんなことを言い出しました。先に言ってくださいよ、そんな重要なことは。

 

「自薦、推薦どちらでも構わん。だれに投票したいか手をあげろ」

すると多くの人が手をあげました。そして口々に言い始めました。

 

「織斑君がいいと思いまーす!」

「賛成!!」

「いいです!!」

 

・・・半分興味本位で推薦してるんでしょう。はっきり言えばパンダみたいな役割を彼にさせようとしているわけですね。

 

「じゃあ~わたしはゆずゆずをすいせんするね~?」

「ん?」

なんか袖をダブダブさせたのほほんとしてる子が手をあげてそう言いました。

 

「ゆずゆずって?」

「ゆづきちゃんのことだよ~?」

「わ、私ですか?」

「そだよ~?」

参りましたね。『我、我関セズ』を貫き通したかったのに推薦されるとは・・・。というよりあの袖がだぼだぼの子は誰ですか? 小学生か何かですか?

 

「いや、私は「ついでに言っておくが降りることはできないぞ」なんでだよ、くそったれ」

私はあまりの理不尽に思わず敬語を忘れてしまった。

 

「お待ちなさい!!」

すると例の金髪縦ロールが立ち上がって叫んだ。うるさい。

 

「そのような推薦は納得いきませんわ! だいたい、男とどこの馬の骨かよくわからない人がクラス代表だなんて恥曝しもいいところですわ! このわたくしに、そのような屈辱をこの先一年間味わって生活しろとおっしゃるのですか!?」

・・・屈辱かぁ。私も随分となめられたもんですねぇ・・・。

 

「だったらあなたが自薦すればいいじゃないですか」

「わかりましたわ! このセシリア・オルコット、自薦しますわ!」

よし、これで一件落着かな?

 

「そもそも実力からいけばこの わ た く し がクラス代表になるのは必然のことですわ! それを物珍しさを理由に極東の猿ごときにトップを任せるのは愚の骨頂! わたくしはこのような島国までIS技術を修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」 

そうでもないみたいですね。というより何ですか猿って。今は第二次世界大戦中じゃないんですよ?

 

「いいですか!? クラス代表とは実力トップがなるべき、そしてそれはこの わ た く し ですわ! だいたい、文化としても後進的なこの国で暮らさなくてはならないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で「イギリスだって対したお国自慢ないだろ。世界一不味いメシで何年覇者だよ」な、なんですってぇ?!!」

・・・おーい、これ以上火に油注ぐのはやめてくれませんかねー。

 

「私の祖国を侮辱しますの?!!」

「先に侮辱してきたのはそっちだぞ!!」

すると二人はギャーギャーとくだらない論争を始めた。・・・ここはひとまず止めるべきですかね。

 

「まぁまぁ二人とも落ち着いてください。・・・見苦しいですしね(ボソッ」

 

 

 

 

視点変更

 

 

 

 

その時、クラスがシーンとなった。

 

「なんですの?」「なんだよ」

「天道さんが言っていました…。」

不機嫌そうな二人をガン無視して彼女は右手の人差し指を天に突き上げながら言った。

 

「『本質を知らずに何かをバカにするのは二流の証、それに対してバカにし返すのは三流の証だ』ってね」

「「なっ・・・?!!」」

二人は言葉を詰まらせる。

 

「あ、あなたも祖国を侮辱しますの?!!」

「まさか。そこの男性とは違いますよ。私が言いたいのはあなたのその態度は代表候補生としての意識が足りてないのでは?と思ってるわけですよ」

結月ゆかりは目つきを鋭くさせながら言った。

 

「そもそも代表候補生とは国にとって誇れる存在であるべきです。しかし、今のあなたは誇れるどころか汚点になってしまう可能性のほうが高い。そして織斑さん」

「お、俺もか?!」

「当たり前です。天道さんが言っていました…。『料理とはもともと神聖なもの。それを喧嘩の場に持ち込むのは論外である』ってね」

「なっ・・・?!!」

「あなたもあんな悪口に軽々とのるもんじゃありませんよ。いずれ大事なものを失いますよ?あなたみたいなことをして大事なものを失った人を何回も私は見ていますからね」

そして彼女はセシリアに視線を向けて言った。その視線は憐みの感情も含めていた。イギリスはこんな人が代表候補生なのか、と。

 

「そしてさっきあなたは日本のことを極東の猿と言いましたね?」

「ええ」

「じゃあ、そこにいる織斑先生やISをつくりだした篠ノ之博士も猿だと言いたいんですか?」

「っ・・・」

「ハァ・・・、悪口を言うにしてももう少し考えてから悪口を言うべきだと思いますよ?その愚直な行為はいずれあなたの身を滅ぼします。私はあなたのような人が殺されるのを何回も見ましたからね」

彼女のその言動には少しおかしな部分があった。が、誰も指摘しなかった。いや、誰も指摘できなかったのかもしれない。

 

 

その時の彼女はとても遠い目をしていたから。

 

 

「・・・・ですわ」

「?」

「決闘ですわ!」

「お断りします」

即答。この間、わずか0.1秒。

 

「あら?怖いんですの?」

「ええ。面倒ごとには巻き込まれたくないんで」

「あんなことを言う割には軟弱ですのね」

「ええ。それで面倒なことに巻き込まれなければ万々歳です」

「・・・悔しくありませんの?」

「別に」

「おかしいですわよ?」

「よく言われますよ」

だんだんと真顔になっていくセシリアとだんだんとニヤニヤし始める結月。この対比が何となく皆にとって面白かったのはここだけの話。

 

「おい、織斑にオルコット、そして結月。1週間後に決闘だ。」

「は?だから私は」

「降りることは許さないと言ったはずだが?」

「ちくしょう、なんなんだこの学園は。子供の自由はどこ行った」

そう言いながら明らかに不機嫌になる結月を無視して織斑千冬はしゃべる。

 

「一週間後に決闘だ。場所は第3アリーナだ。それまでしっかりと練習しておけ、いいな」

「「・・・はい」」「・・・」

「おい、結月。返事は?」

「チッ。・・・なら、徹底的にやってもかまいませんね?」

「ああ、ほどほどにな」

「わかりました。それだけ聞ければ十分です」

そういうと結月は席に座った。そしてそれに続いて二人も座った。

 

「さぁ、授業を始めるぞ」

この間、セシリアがずっと結月をにらんでいて出席簿アタックを喰らうのはまた別の話。そしてその間結月はペン回しをずっと続けてたのはさらにまた別の話。

そして織斑一夏はずっとうんうんとうなっていたのもまたまた別の話である。

 

 

続く





次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!

「初めまして」
「・・・初めまして」

「何故一人で作ることに拘るんですか?」

「・・・頼っても、いいの?」
「私でよければ、喜んで」


次回『更識』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話『更識』

前回のあらすじ
イギリスからの代表候補生、セシリア・オルコット。彼女の高慢的な言葉に対して売り言葉に買い言葉。織斑一夏と彼女は論争にまで発展するがそれを止めたのは結月ゆかりだった。

そして、結月ゆかりの意思をガン無視したまま1週間後クラス代表決定戦に巻き込まれる羽目になったのだ。








放課後、私は教室でぼーっとしながら外を見ていた。

すごく夕焼けがきれいで目がまぶしい。

 

「夕焼けか・・・。私にはまぶしすぎる・・・」

そんな矢車さんみたいなことを言いながら私は荷物を持って教室を出ようとする。

 

「あ、いましたいました。結月さ~ん」

「ん?」

すると山田先生が胸を揺らしながら教室の中へ入ってきた。

何だ、そのけしからん胸は。体と胸のサイズがあってないんですよ。もげろ、ちくしょう。

 

「山田先生、どうしたんです?」

「ああ、部屋の合いかぎを渡してなかったな~と思いまして急いでわたしに来たんです~」

「そうですか、お疲れ様です」

「いえいえ、私は教師ですからこれぐらいは当然です」

そう言ってエッヘンと胸を張る山田先生。おう、胸はるなや、もぐぞ。・・・やっぱり年上には見えないんですよね。というより・・・。

 

「山田先生」

「? なんですか?」

「その髪の毛って染めてるんですか?」

「? 地毛ですよ?」

「・・・そうですか。ありがとうございます」

「? なんかよくわからないですけどどういたしまして」

あれ地毛なのか・・・。少し信じられないですけど先生本人が言ってることだしこれ以上効くのは野暮ってもんです。・・・で、部屋番号は・・・

 

「1030号室、か・・・」

 

私は部屋カギを握りしめて教室から出ていった。

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

「ここか」

私はまずドアノブを回してみる。すると予想以上にぐるりと回って少しびっくりした。どうやら開いているようだ。

そして足元や靴箱を確認する。・・・どうやら先客がいるようだ。と言っても同居人だろう。

私はそう思いながら奥に進んでいく。するとそこにはパソコンに向かって一心不乱にキーボードをたたき続ける水色の髪をした女の子がいた。・・・この学校は意外と不良の集まりなんでしょうか?というより水色の髪っておかしいでしょう。・・・そういや私の以前の髪の色もだいぶおかしかったですけど・・・。

今はそんなことはどうでもいい。

ちょっと話しかけて見ましょう。

 

「すいません」

「っ!!」

あ、ビクンってなりましたね。

 

「だ、誰?」

と言いながらその子はこちらを振り返りました。あ、眼鏡かけてたんですね。

 

「はじめまして。今日から同居することになりました、結月ゆかりです。あなたは?」

「更識、簪・・・」

「そうですか。なかなかいい名前ですね」

「お世辞なんていらない…」

「お世辞じゃないですよ」

「・・・///」

あ、赤くなった。少し無愛想ですが根っこは悪い子ではないみたいですね。

 

「・・・何してるんです?」

「・・・あなたには関係ない」

「そういうと思いましたので勝手に見させてもらいます」

「あ、ちょっと…!」

私は更識さんを押しのけてみようとしましたが彼女の必死の抵抗により結局見ることができませんでした。ちくせう。

そのあとは特に何もすることがなかったので着替えて寝ました。

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

しばらくするとふと目が覚めました。そして時計を確認しますとなんと1時でした。結構寝てましたね、自分。

そして彼女のことがふと気になったのでソコンのあったほうをのぞくとそこには寝る前と変わらず一心不乱にキーボードを打ち込んでいる更識さんの姿が!

・・・寝ないんでしょうか?少しイタズラ心がうずいたので気づかれぬよう2年間で培ってきたスニーキング技術でこっそりと彼女の後ろに近づきました。

 

「あれ?寝ないんですか?」

「?!?!?!」

あ、椅子から落ちた。

 

「いいいいいいいつの間に?!」

「さっきです」

「そ、そう…」

「で、寝ないんですか?」

「うん。そんなヒマない」

彼女はいきなりのアクシデントに驚いたのか完全に周りに気がいってませんでした。私はここぞとばかりにモニターをチラ見します。・・・ふむ、コレの組み立てをしてたのですか。

 

「・・・そのモニターに映ってるものですか?」

「! ・・・そう」

「そこまで一人でやったんですか?」

「(コクリ)」

「へぇ、すごいですね」

「・・・だからお世辞はいらない」

「いえいえ、お世辞ではありませんよ」

「・・・そう」

「早めに寝てくださいね。朝起きれなくなったら大変ですよ」

私はそう言うと部屋に戻りました。

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

「更識さん、起きてください。朝ですよ」

「うぅ~ん・・・」

「まさかあの後もいじってたんですか?」

「・・・」

「だから言ったじゃないですか。朝起きれなくなりますよって」

私は布団から出てこない更識さんを揺さぶりながら言います。

 

「朝ごはん冷めちゃいますよ?」

「・・・チケット買えばもらえるもん」

「そうなんですか?それは知らなかったです。・・・で、今日は私が作ったのでさっさと起きて食べましょう。『一緒に食べるごはんほどおいしいものはない』と天道さんも言ってましたし」

「・・・うん」

「よし」

更識さんが布団からもぞもぞと出てくる様子を私は満足な気持ちで頷くとすぐに台所に戻った。

そしてしばらくしてから更識さんも出てきた。

 

「「いただきまーす」」

二人で手を合わせてそう言うとカチャカチャと音を立てながらご飯を食べ始める。

 

「・・・おいしい」

「そうですか? これでもうまくできなかった方なんですが」

「・・・最近カロリーメイトしか食べてなかったから」

そう言いながら彼女は少し微笑む。・・・よし、今かな。

 

「・・・そう言えばあなたに会った時からずっと気になっていたんですが」

「・・・?」

「何故ISを一人で作ることに拘るんです? 誰かの手を借りればいいじゃないですか」

「・・・それじゃ、ダメ」

「?」

「お姉ちゃんは自分のISを一人で作ったの。・・・だから、私にもできると証明したいの!」

・・・ハハーン、なるほど。

 

「お姉ちゃんに昔何か言われたんですね?」

「!」

図星ですかー。

 

「だったら私に話してみてください。・・・何か役に立てるかもしれませんよ?」

「・・・じゃあ愚痴になるけど、いい?」

「ええ。ですがご飯を食べながらでお願いします」

「実は…」

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

「・・・ということなの」

「・・・成程ねぇ」

成程、大体わかりました。

彼女の話によれば彼女の姉は自分たちが代々受け継いできた名前を継いだ時、更識さんに「あなたは無能のままでいい」と言ったそうです。それが彼女にとって結構傷ついたみたいで今は関係がぎくしゃくしているようです。

・・・どっちもコミュ障か。

 

「あのですね、更識さん」

「?」

あーあ、なんでこんな面倒なことに私はいっつも自分から首を突っ込んじゃうんでしょうか。

 

「この世の中に一人で何でもできる人間なんて存在しないんですよ」

「・・・え?」

「だってそうじゃないですか。よく考えてみてください。今日食べた朝ご飯は私が作りましたが、その食材は誰が作ってますか?」

「・・・農家の、人?」

「ええ、その通りです。そしてISのコアは誰が作りましたか?」

「・・・篠ノ之、博士」

「ホラ。一人ではできないでしょう?」

「・・・あ」

「たぶんあなたのお姉さんもいろいろな人の助けを借りてISを作ったんだと思いますよ?一匹狼とかほざいてる奴らもどこかで人の助けを借りているんです。そう考えたら、今まで自分がやっていたことは、まあ、無駄とは言いませんが少し頑固だったと思いませんか?」

「・・・確かに」

私は手を差し伸べます。

 

「・・・何か、手助けできることはありますか?」

「・・・手伝ってくれるの?」

そう言いながら彼女は手をつないできました。

 

「ええ、喜んで」

私は微笑みながら言った。

 

「・・・これからよろしくね、結月さん」

「おっと、そんな堅苦しい呼び方は無しでお願いしますよ。ゆかりでいいです」

「・・・じゃあ、ゆかりさん」

「はい、更識s「名前で呼んで」・・・簪ちゃん、でいいですか?」

「うん」

私たち二人は笑いあった。

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

ところ変わってここは教室。オルコット嬢と織斑さんは少しギスギスしております。で、私はいつもと同じようにだらんとしております。

 

「そういえば、織斑には専用機が届くんだったな」

「専用機?」

「すごーい!」

「よかったじゃん、織斑君!」

「いいな~」

皆さんは口々にすごいと言いますがどうせ作る側としてはデータとりでしょう。私はそんなことを思いながらため息をついた。

 

「え?専用機ってそんなすごいことなのか?」

全員がずっこけました。昨日も見ましたよ、こんな光景。

 

「ああ、すごいことだぞ。結月」

「ああん?」

「・・・この際その態度は無しにしてやる。専用機とはどんなものか、説明しろ」

「チッ。・・・政府からの贔屓。以上」

すると出席簿が飛んできたので首をかしげてよけると後ろのガラスを突き破って外へ飛んで行った。

 

「・・・いきなり暴力とは先生のやることじゃあないですねぇ」

「お前があまりにもふざけているからだ」

「え? 違うんですか?」

後、暴力未遂だぞ、わかってんのか。訴えたらこっちが勝つんだぞ。

 

「・・・まあ、いい。専用機というのは選ばれたものが手にすることができる自分用の機体だな。代表例だったら代表候補生だな」

「じゃあ、俺って代表候補生?」

「なわけないでしょ織斑さん。あなたは唯一ISを使える男性なんですからどうせデータ取りの為ですよ」

「そ、そうか・・・」

「おい、言い方というものがあるだろ」

「何か間違ったことを言ってますか?ふつうド素人には訓練用の機体を使わせるんです。それなのに専用機なんてデータ取り以外の何があるというんです?」

そういうと織斑先生は黙った。フフ、勝ったぜ。

 

「あら、ということはアンフェアにならずに済みますわね」

どっから出てきたイギリスお嬢。貴様はお呼びじゃない。

 

「で、そこのお方の専用機は?」

「・・・どこからも報告がない」

まあ、当然でしょうね。

 

「あら。ということは」

なんだ、そのいい獲物を見つけたみたいな表情は。

 

「あなたにはハンデをつけてあげましょうか?」

「・・・ハァ」

私はうんざりして思わずため息をついてしまいました。

 

「なんですの?!昨日から思っていましたがその態度は少し見余るものがありますわよ?!!」

「黙ってろ」

『『『?!』』』

むかついた、さすがの私でもむかついた。もう我慢ならん。といっても試合で発散するわけじゃないけどね。

 

「黙れ、オルコット嬢。今までお前がどんな育て方されたかこっちは知らないし、知りたくもないが、貴様が培ってきた努力を自ら無下にしたいのならそのまま罵倒でもなんでも続けてろ。それが嫌なら今すぐ黙れ」

「な、なにを・・・」

「そもそもてめぇは何のためにここに来た?私たちをバカにするためか?それとも男子をバカにするためか?なんだ?あぁ?答えろや」

「う・・・うぅ・・・」

「なんだ?不利になった途端黙んのか?なめんじゃねぇぞゴラ」

「おい、やめろよ!」

なんか織斑さんが入ってきました。何してんだ、この人。

 

「なんですか?織斑さん。今こいつに尋問かけてる最中なんです。邪魔しないでくれますか?」

「やめろよ!泣いてんだろうが!」

「私にとっては関係ありません。言質さえ取れれば十分です」

「だからって泣かすことないだろ!」

「この人が勝手に泣きました。私は泣かしてませんよ」

「だからって・・・!」

「うるさいですね。やめればいいんでしょう?やめれば」

私はそう言いながら席に着いた。そのあとのクラスの空気は最悪だった。・・・やりすぎたかな。

 

 

続く




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!

「俺は最高の姉を持ったよ」

「簪ちゃん、ここで見ていてね」

「変身」

「ライダー、キック…!」

次回、『黒兎』!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話『黒兎』

前回のあらすじ
更識簪と出会い、そして打ち解けた結月ゆかり。
そして彼女はあまりのセシリアの高慢さに少し切れてしまったのだ。




今回はセシリアファンの皆様には少し不快と思われる描写があります。それでもよろしければそのままスクロールバーを下に回してください。


あれから1週間たちまして、私と簪ちゃんの関係は良好でした。セシリア・オルコットのISを調べあげて対策をたてたりして有意義な時間を過ごしました。

 

「・・・なあ、箒」

「・・・何だ一夏」

「・・・俺たち1週間何してた?」

「・・・剣道、してたな」

「・・・ISについて教えてくれることはどこ行った?」

「・・・(プイッ」

「目そらすな」

それに代わってこの人たちは1週間剣道しかしてなかったそうです。バカか、あなたたちは。

 

「し、仕方ないだろう。お前のISが届いてないんだから」

「それでも知識とか基本的なこととか他にあっただろ!?」

「・・・・・・」

「・・・で、結月さんはこの1週間何してたんだ?」

「・・・あなた方に教える必要があるんですか?」

そう言っている私の隣には簪ちゃんがいますが、彼女はとても不機嫌そうです。

彼女は彼のISのせいで自分のISが途中放棄されたようです。

まあ、わかりますよその気持ち。誰だって途中放棄されたらその原因を恨むのが筋合いってもんです。

 

「はぁ、やるしかないか」

「それしかないだろうな」

ああ、さっさと終わらせて最近買ったウルトラマングレート見たい。

 

「織斑君織斑君織斑君!」

「「「「ん?」」」」

声のする方を見てみるとやはりあのくそでかい胸を揺らしながら走り寄ってくる山田先生の姿が。・・・やっぱりもげろ。

 

「山田先生落ち着いてください。はい深呼吸。」

「はーふーはーふー」

「はい、そこで止める」

「っ・・・・・・」

素直かどうかは知りませんが本当に息を止めて徐々に赤くなっていく山田先生。・・・って。

 

「なんで先生本気で息止めてるんですか?」

「ぷはぁあっ! え? 止めなくていいんですか?」

「コラ、先生をからかうもんじゃないですよ」

「その通りだ」

「ブベラァッ?!!」

あ、織斑先生が放った出席簿が頭に突き刺さった。

 

「・・・」

コラ、簪ちゃん。うれしそうな顔をするんじゃありません。

 

「あ、えっと、織斑君の専用機が届いたんです!今すぐ準備してください!」

「あ、はい」

「行ってらっしゃーい」

「え? こねぇの?」

「行く理由がないです」

「(コクコク)」

簪ちゃん、いくら織斑さんが嫌いだからって私の後ろに隠れるもんじゃありませんよ。

 

「それと言い忘れていたが織斑」

「?」

「アリーナの使用できる時間は限られている。慣らし運転させておきたいところだがぶっつけ本番でものにしろ」

「一夏、男なら障害ぐらいぶち壊せ」

「見てください簪ちゃん。あれが教育者(独裁者)幼馴染(バカ)のやることですよ。あなたはあんな人にならないようにしてくださいね」

「・・・うん、わかった」

見てください、織斑さんがあたふたしてますよ。見てる分にはすごく面白いですが本人からしたらたまったもんじゃないでしょう。

するとビットの搬入口が開き重い扉の向こう側から彼の専用機が現れました。

 

「・・・簪ちゃん」

「・・・なに?」

さりげなく腕を組むんじゃないですよ。しかも体まで預けちゃって。

 

「・・・あれ、なんですかね?」

「・・・ガラクタ」

本人の前でガラクタ扱いとは、たまげたなぁ・・・。聞こえてないみたいだからよかったけど。

 

「こ、これが・・・!」

「はい! 織斑君の専用IS『白式』です! さ、早く搭乗口に乗ってください!」

「簪ちゃん」

「なに?」

「名前の割には白くないですね」

「うん」

そうなんです。『白式』とかたいそうな名前つけてもらってるくせに白くないんです。どちらかというとくすんだ銀色なんですよ。いや、くすんでるから灰色のほうが近いかも。

 

「ISのハイパーセンサーは問題なく動いているな。機体の不具合もこちらでは確認できないがどうだ一夏、気分は悪くないか?」

「大丈夫、千冬ねぇ。いけるさ。・・・箒」

「な、なんだ?」

「行ってくる」

「ああ。勝ってこい」

そう言いながら彼は飛ぶ準備をし始めました。私と簪ちゃんはそれを尻目に控室から出ていきました。

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

『こ、これは・・・!』

あ、なんか真っ白になった。どうやら簪ちゃんによると一次移行(ファースト・シフト)とか言うそうです。

ちなみに私たちは歩きながら簪ちゃんが用意してくれた小型モニターで中継を見ています。

 

『あなた、一次移行もしてなかったのですの?!』

『こ、これは・・・千冬姉の・・・?』

なんかたいそうな剣が出てきましたね。しかもなんかオーラまとっていますし。

 

『俺は最高の姉を持ったよ。そしてこの力で皆を守る!!』

『くっ・・・!』

『うぉおおおおおおおお!!!!!』

そう叫びながら織斑さんは一気にオルコットさんに突っ込んでいきます。

すると天井のスピーカーから音声が流れました。

 

 

『試合終了。勝者:セシリア・オルコット』

 

 

「「・・・」」

私たちは気まずくなって黙ってしまいました。どうやらエネルギー切れを起こしたようです。

そんなことをしているうちにアリーナの入り口にたどり着きました。

 

「簪ちゃん」

「うん」

そう返事すると簪ちゃんは二つあるアタッシュケースのうち一つを開けてベルトを渡してきました。

私はそれを受け取ると腰に巻き付けます。

 

「簪ちゃん、そこで見ていてください」

「うん。頑張って」

「ええ、言われずとも」

私はサムズアップしながらアリーナに入って行きます。そこにはたくさんの観客がいました。皆様私が入り口から入ってきたことに驚きを隠せないようです。

 

「あら!なんですの?!ISスーツも着ないで堂々と入ってくるなんて!わたくしをバカにしていらっしゃいますの?!」

「そちらのご想像にお任せします」

「・・・まあ、いいですわ。このイギリス代表候補生を前によくも逃げずに…誉めて差し上げますわ!」

「・・・」

「逃げなかった事に免じて、あなたに最後のチャンスを差し上げますわ!」

「・・・」

「今この場で土下座の一つでもしてくれれば、あなたの犯した非礼の数々、許して差し上げてもよろしくてよ?」

「・・・ハァ」

私は舌がよく回るオルコットさんにある意味感心しながらベルトのボタンを押すとぱかっとふたが開きました。

 

「そんなこと言ってる暇があるんなら自分の罪でも数えておくことですね」

「な、なんですってー?!」

「天道さんが言っていました…」

すると私の相棒であるハーゼクター、【ハーゼちゃん】はどっからともなくぴょーんぴょーんとこっちに跳んできた。

 

「『実力がない奴ほど大口をたたく』ってね。変身」

私はそれを掴むとベルトのふたを開けて差し込みました。

 

【HENSHIN】

 

するとベルトを中心にしてアーマーが私の体を覆っていきます。観客が騒ぎ始めますが知ったことではありません。

 

【CHENGE! HASE!】

 

『はぁー……』

そして私を覆い終わるとどこからともなく音声が鳴りました。それと同時に私は力を抜くためにため息をつきました。

 

『な、なんだあれは?!』

織斑さんたちは目に見えて驚愕しています。全身装甲だけでも驚きなのに飛ぶための機能が一切ないからでしょうね。M.R.Sにとってはこれが普通ですがね。

 

「な、なんですの?! その不気味な機体は!」

オルコットは声をあげる。実際彼女の言う通りでしょう。ほとんどが黒でまとめられており、発光部分は赤紫色に光っていますからね。確かに不気味に見えるかもしれませんね。

 

『・・・』

私は応えません。いや、応える必要がない。

 

「まあいいですわ。先手必勝ですわ!」

そう言いながら彼女はライフルを打ち込んでくる。

 

『・・・』

私はそれを半歩ずれてよけると壁に沿って走り出した。

 

「なっ!待ちなさい!」

そう叫びながら彼女はバカスカとこっちに打ち込んでくる。私はしゃがんだりジャンプしたりしてよけながら走り続ける。

 

「くっ・・・!止まりなさい!」

彼女は何かを展開した。・・・あれが自立起動兵器、ブルー・ティアーズですか。なるほど、なかなかに厄介そうですね。だが・・・

 

『・・・天道さんや矢車さん達の比ではないですね』

甘い。確かに狙いはいいが単調すぎる。・・・今か。

 

私が急に立ち止まると彼女は好機と見たのかブルー・ティアーズを一斉に私を包囲するように展開した。

 

「これで終わりですわ!」

私はそんな声を聴きながら兎の足に位置するレバーを折り曲げてつぶやいた。

 

『・・・ライダー、ジャンプ』

【Rider_Jump!】

 

「一斉射撃!」

次の瞬間、私は一気に跳躍した。そして見事ブルー・ティアーズの一斉射撃を避けると今度はレバーを元に戻す。

 

『ライダー、キック…!』

【Rider_Kick!】

『ハァッ!』

そしてブルー・ティアーズを次々と蹴り飛ばしていく。そして最後の一つを利用して彼女との距離を一気に詰める。

 

「なっ・・・!」

『終わりだ』

私は彼女を連続で蹴りつけながらつぶやいた。

そして蹴り終わると彼女は地面に落下していく。そしてそのまま地面に激突した。私も地面に着地すると彼女に近寄っていく。

 

『どうしました?オルコット嬢。あんなことを言っておいて負けるんですか?』

「くっ・・・!」

『おっと危ない』

「ああ・・・!」

私は彼女の構えていたライフルを横に蹴り飛ばすとそのままライフルは地面をすべって壁に当たって止まった。

 

『・・・で、覚悟はできてるんですか?』

「なにの・・・」

『負ける覚悟ですよ。・・・いや、死ぬ覚悟のほうが正しいかもしれませんね』

「えっ・・・」

『この試合でもしかしたら死ぬかもしれないとか思ってなかったんですか? それくらいは普通想像するものですよ』

「それは無理ですわよ! これで死ぬことなんてありえませんわ!」

『じゃあそのありえないはどこから来るものですか?もしかしたらシールドを無視してあなたの肉体が裂かれるかもしれないのに』

「・・・!」

私は胸倉をつかみながら言う。ちなみにISのシールドは致命傷になるようなダメージじゃなければ普通に触れる仕様になっているのです。

 

『それに、あなたは今の状況わかってるんですか?』

「なにを・・・」

『あなた、1週間前クラスであんなこと言いましたよね? あれ、IS協会に報告すればあなた一発で代表候補生から引きづり落とされますよ? そしてそのまま闇の中へさようならです』

「あ・・・」

『その時はあなたはどんな顔するでしょうね~。絶望に打ちひしがれてるでしょうか。アッハッハッハ』

するとオルコットはそのまま気絶しました。根性ないですね。しかも漏らしてるじゃないですか。

ブザーが鳴る。音声が流れる。

 

 

 

『試合終了。勝者:結月ゆかり』

 

 

 

私はそれを聞くと簪ちゃんのいる方へ歩いていきました。途中で変身は解除しました。

 

 

続く




おまけ
仮面ライダーハーゼ
身長:186㎝
体重:不明
必殺技:ライダーキック【威力:22t】※本気でやった場合
    ライダーパンチ【威力:20t】※本気でやった場合
・頭には申し訳程度のうさ耳が生えている。
・両腕両足にアンカージャッキがついている。




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「今度はこっちで行きますか」

「セシリアに何したんだよ!」

「変身」

『剣で、勝負してあげますよ』

『もういいです。ここで終わらせますから』


次回、『一夏』!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話『一夏』

前回のあらすじ
第一試合で見事に醜態をさらして敗北した織斑一夏に対して、圧倒的な実力で相手をたたきのめした結月ゆかり。

そして彼女の精神攻撃によりセシリア・オルコットは気絶してしまったのだ。







今回は一夏ファンの皆様には不快に思われる描写が多々存在します。それが嫌な方は今すぐブラウザバックをお願いします。それでもいいという方はどうぞそのまま下へ。


「帰りましたよ、簪ちゃん」

結月がそう言うとなぜか彼女は目をキラキラさせながら待っていた。

 

「・・・どうしたんですか?」

「ゆかりさんって、"仮面ライダー"なの?」

「かめんらいだー? なんですか?それ」

「都市伝説で有名なの。人知れずいろんな悪の秘密結社から人々を守る存在なの!」

すると結月少しは顔を伏せた後、再びあげて言った。

 

「・・・私はたぶん違いますよ。」

「そうなの?」

「私は自分を守るのが精一杯です。そんなすごい称号は私にとってまぶしすぎます」

「そう・・・」

「ですが」

「?」

「あなたの味方であることは間違いないですよ」

「・・・そっか」

すると彼女はベルトを取り外して簪に預けるともう一つのアタッシュケースからもう一個のベルトを取り出した。

 

「あれ? これで行かないの?」

「まさか。もしそれで行くんだったら変身なんて解除してませんよ」

「それもそっか」

「じゃあ再び行ってきますね」

「うん、勝ってきてね」

「言われなくとも」

そして結月は再びアリーナの中へ入って行った。

 

「おい! あんたどういうことだ?!」

するとすでに準備していた織斑から声をかけられる。その声はどことなく彼女を非難するような声だった。

 

「へ? なにがです?」

「セシリアに何したんだよ!」

「ちょっと現実突き付けただけですよ。あれぐらいなら気絶しないと思ったんですよ。思ってたんですよ。・・・まあ、耐えられなかったようですがね。・・・こんな説明で満足ですか? 理想主義のお坊ちゃん」

「なんだと?!」

「だって、そうじゃないですか。『皆を守る』? バカなことを言わないでくださいよ。あなたみたいなド素人が何で人を守れるんですか? 冗談もほどほどにしてくださいよ」

「これからうまくなればいいだろ!」

「いいわけないですよ。バカですか?」

「なっ!!」

「そうしている間に世界で何人の人が死んでるか知ってるんですか? ISを使ったテロなんて今になってもなくならないんですよ? それなのに皆を守る(笑)? ハッ、寝言は寝てから言ってくださいよ」

「てめぇ・・・!」

「ま、茶番もここまでにしときましょうか。今は」

そう言いながら彼女はポケットからデッキを取り出して顔付近に構える。

 

「変身」

そう言いながら彼女はデッキをベルトを差し込んだ。

 

【HENSHIN】

 

するとベルトから体にかけてアーマーが展開されていく。そして頭の先からつま先まで展開し終わるとどこからともなく女声の音声が流れる。

 

 

 

【CHENGE! ALTERNATIVE!】

 

 

 

今の彼女は先ほどと違ってコオロギをほうふつとさせるような姿のアーマーを着こんでいた。

『ここであなた()現実を教える(倒す)ことが先決ですからね』

「う、うぉおおおおおおおお!!!!!」

織斑は叫びながら突っ込んでくる。

 

『・・・天道さんは言ってました。"何も警戒せずに突っ込んでいくのは愚の骨頂だ"と』

そう言いながら彼女はデッキからカードを一枚引き抜いて右腕に装着されているバイザーに読み込ませる。

 

【Tiger】

 

すると巨大な大砲が上から落下してきた。彼女はそれを掴むと一夏に向けて発射した。

 

弾丸はまっすぐ一夏に向かっていった。ここで一夏が止まっていたらかろうじてよけれたかもしれない。しかし、彼は刀を構えて突っ込んでいる最中であった。そして彼には弾丸を刀ではじくという芸当は身に着けていなかった。

 

・・・もう言いたいことはお分かりだろう。弾丸は一夏に直撃し、爆発を起こした。その衝撃で彼は壁にたたきつけられる。

 

『これやっぱりいいですねぇ~』

彼女はうれしそうな声でつぶやいた。そして一夏が起き上がった途端、もう一回発射した。今度の彼は止まってはいたが、構えていなかったので完全なる不意打ちに近い状況であった。故に再び直撃してまた壁にたたきつけられる。

 

「おい! 飛び道具なんて卑怯だぞ!」

箒が叫んだ。しかし結月ゆかりにとっては関係のない話であった。

そして観客の多くからブーイングが起こる。『卑怯だ』とか『正々堂々と戦え』とか。中には彼女を応援する声もあったが、彼女にとっては割と些細なことであった。

そんな中起き上がった一夏が叫んだ。

 

「てめぇ! 卑怯だぞ!」

『卑怯じゃないですよ。戦術ですよ戦術。天道さんが言っていました。"やるときは徹底的にやった方が後で後悔しない"って』

「お前皆から卑怯者とか言われて悔しくねぇのかよ!」

するとゆかりは首をかしげた。まるで『何言ってんだこいつ』と思っているようだった。

 

『確かに、今見ています大衆の皆様は私のことを"卑怯者"とののしるでしょうね』

「だったら・・・!」

『だけどそれが何の問題だというのです?』

「・・・!」

『私は自分が正しいと思った行動をしています。はっきり言ってそちらの事情なんて知ったこっちゃあないんですよ。剣に対して剣で返す必要はこちらには一切ないわけですしね。

・・・どうですか? 私おかしなこと言ってますか?』

「てめぇ・・・!」

『そんな憎々しげな顔をされてもねぇ・・・。で、さっさとやられてくれません? もうですね、面倒くさくなりました』

「お前、それでさ、悔しくねぇのかよ! 恥ずかしくねぇのかよ!」

『? 何がです?』

「こんな勝ち方で本当にうれしいのかよ!」

『ええ』

「これは試合だぞ?! お互い正々堂々とするのがルールってもんだろ?!」

『そっちが勝手に思ってるだけでしょ? ここは剣道とは違うんですよ? 戦って相手を負かした方が生き残る。それが戦いというものです。敗者が褒められるのはその時だけです。しかもそれは純粋にほめてるんじゃない。同情も混ぜてほめてるんです。それぐらいだったら勝ってののしられる方を選びますよ。惨めな思いなんてしたくないですしね』

「こっちは剣だけなんだぞ?!」

『知るかそんなこと。文句はそのISを作った方々に言ってください。私に言われてもこm『ねーねー私にもやらせてよー』・・・あー、わかりましたよ』

すると彼女は大砲を地面に落とした。

 

『『『?』』』「?」

その突然の行動に観客も一夏も不思議そうな顔で彼女を見た。

 

『今日は特別です』

そう言いながら彼女は2枚カードを取り出した。

 

『剣で、勝負してあげますよ』

そう言いながら彼女はそのうち一枚をスキャンした。

 

【Simulation Fox】

 

すると彼は狐に包まれたような感覚にかられた。そしてハッとして彼女を見ると

 

 

 

 

 

彼女の右手には雪片弍型(・・・・)が握られていた。

 

 

 

 

 

『(ブンブンッ)・・・案外悪くないですね。ですがそんなに良くもない。これは使ってる人次第ですね』

皆がぽかんとしている中、彼女はそれを2,3回振るとそんな辛口な評価を口にした。

 

「てめぇ・・・!なんで千冬姉の武器をもってやがる!」

『コピーしたんですから持ってて当然ですよね? あとコレもともとは織斑先生の武器だったんですか? ・・・ああ、だからか』

(だからこんなに)

すると彼女は納得したように少しため息をつくともう一枚のカードをスキャンした。

 

「それは千冬姉の武器だ!! かえせぇえええ!!!」

 

完全に頭に血が上った彼は彼女に突っ込んでいく。

 

(だからこんなに弱いのか)

『・・・天道さんが言っていました。"感情に任せて動くのは獣以下だ"と。そして』

次の瞬間、一夏は横に吹っ飛ばされた。そして壁にたたきつけられる。いったい何事か、と起き上がってみるとそこには

 

 

 

 

【Cricket】 『あなたの相手はこの子です』

 

 

 

 

穴の開いた白い仮面をつけたような怪物がたたずんでいた。

 

すると観客側が騒然となる。

 

 

『何アレ?!!』『なんか急に出てきたよ?!』『自分が戦わないなんて卑怯だぞー!!』『正々堂々と戦えー!!』『すごーい!』『いろんなもの呼び出せるんだー!!』『なんかあれかっこよくない?!ヤバイ!!』『よく見るとあの化け物なかなかいい体してるわよ?!』『あら~^』

 

 

先ほどとは違い、予想外の出来事が起こったのでなんとなく楽しそうな感じだった。

 

「おい! なんだソレ?!!」

『私のもう一人の相棒です。"ろーちゃん"』

『・・・?』

『これで戦って』

そう言いながら彼女は雪片弍型を怪物こと"ろーちゃん"に手渡す。

 

『(コクリ)』

『じゃ、後はよろしく』

そう言われると怪物は雪片弍型を構えて彼に襲い掛かった。彼も応戦するが元々パワーに大きな差があるため壁に押さえつけられる。

 

「ぐっ・・・! おい!」

『?』

「卑怯だぞ! お前が戦え!!」

『別に私が相手をするとは一言も言ってませんよ? 望み通りにしてあげたじゃないですか。それに』

「なんだよ?!」

『ろーちゃんがあなたと戦いたいと言ってきたんですよ、私に。そしてろーちゃんは接近戦が得意です。そしてあなたは剣で戦えと要求してきた。だから私はあなたの武器をコピーしてろーちゃんに渡したんですよ。お互い願いかなったりで Win-Win じゃないですか。で、そんなに私と話してていいんですか?』

「あぁ?!」

『ろーちゃん、結構強いですよ?』

次の瞬間、彼は腕を掴まれて投げ飛ばされた。そのまま落下して地面をゴロゴロと転がる。

 

「くっ・・・!」

『・・・!』ブォンッ

「うわ!」

彼がかろうじてよけるとろーちゃんの振り下ろした剣が地面をえぐった。怪物はそれをすぐに引っこ抜くとすぐに彼に肉薄する。

 

「うおっ!こいつ意外とはえぇ!!」

『どうです? 手応えあるでしょ?』

「うっせぇ!!」

『ハハハ。これはお厳しい』

彼女は壁にもたれかかりながらケラケラと笑った。その間も怪物は一夏に肉薄し続ける。

 

(・・・スラスターを余分に噴かしすぎてますね。スロットルワークも甘いですし。これじゃあエネルギーもすぐに減りますよ。)

彼女は背を壁にもたれて腕組みをしながらマスクごしにボーッと考えていた。

 

(・・・というより、あれってそもそも上級者用の武装じゃないんですか。何ですか、剣一本って。今頃の量産型でももう少しまともな武装もらえますよ。そもそもなんでセッティングもしてない機体にド素人をのせてなんで勝てると思ったんでしょう? いや、その前になんで織斑さんの指導役が同じクラスの篠ノ之さんだけだったんでしょうか? 調べたところによると彼女、適性Cでしたよね? しかも剣道しか頭に入ってないような頑固者ですし・・・。・・・なんで一夏さんや周りの人たちは止めなかったんでしょう? "篠ノ之博士の妹だし大丈夫"とか思ってたんでしょうか? そうなるとかなりのバカしか集まってませんよね。しかも1週間も猶予があったんですからその間に止めるとかどうとかすればいいじゃないですか。だから一回戦であんな恥ずかしい負け方をした挙句、今はこうやってろーちゃんにボコボコにされてるわけですし。・・・というより織斑先生と彼は違うんですから、あんな武装を持たせて"さあ、行ってこい"なんて愚の骨頂ですよ。織斑先生も何考えてんだか・・・。あ、叩きのめされてる。あ、蹴られた。しかも空中コンボくらってるし。あ、落ちた)

そんなことを考えながら結月ゆかりはテクテクと怪物こと"ろーちゃん"の隣に来た。

 

『よくやりましたね。えらいえらい』ナデナデ

『♪』

「ガハッ・・・!」

『・・・ろーちゃん。あれやるよ』

『(コクリ)』

『・・・さて』

彼女はスッと構える。そして化け物はなぜか雪片弐型を地面に突き刺した。

 

『来てくださいよ、一夏さん。私を倒すんじゃなかったんですか?』

「くそっ・・・!」

彼はその言葉に反応してふらふらと立ち上がった。

 

『・・・というよりろーちゃんに勝てないくせしてよく私を倒そうとか思いましたよね?逆にびっくりしましたよ』

「・・・」

彼からの返事はない。肩を上下させて荒く空気を吸っていた。

 

『織斑さん。私はあなたがなんであろうがどうでもいいんです。織斑千冬(ブリュンヒルデ)の弟さんだからどうしたんです? それは殺してはいけない理由にはならないわけですよ、常識的に考えて』

「・・・っ!」

『あなたは言いましたよね? 【皆を守る】って。その腕っぷしでどうやって守るんです? そして何があなたをそこまで奮い立たせるんです? そんなかなうはずがない理想をどうやったら抱けるんです?』

「・・・お前は」

『?』

「お前はいったい何なんだよ!」

『結月ゆかりですが?』

「そういう意味じゃねぇよ!」

『は?』

 

「お前はなんでそんなに残酷になれるんだよ?!!」

 

すると彼女はやれやれと首を振った。

『なんだ、そんなことですか。理由を説明しましょうか?』

「ああ!」

『"友達"じゃないからです。あと、助けを求めている人じゃないからです』

「は?」

『友達だったらさすがに私もここまで残酷にはなりませんよ。ですが他人となると別です。助けを求めていない人となるとなおさらです』

「だけど、俺たちクラスメートだろ?!」

『は? それがなぜ友達と結びつくんです? クラスメートでも嫌いな人は出てきますよ。いや、クラスメートだからこそ、かもしれませんがね』

「な、なにを・・・」

『もういいです。ここで終わらせますから』

そう言いながら彼女はカードを1枚引き抜いて読み込ませる。

 

 

【Cockroach】

 

 

すると突然彼女が彼の眼前から消えた。

「?!」

 

『10秒間私は高速で動き回ります』ビュンッ

 

「っ!」

 

『その間に』ビュンッ

 

「くっ!」

 

『私に攻撃を当てて見せてくださいよ』ビュンッ

 

「このっ!」

 

『・・・ま』ビュンッ

彼女はバッタが描かれているカードを取り出すとスキャンした。

 

 

【Grasshopper】

 

 

すると彼女の足に緑色の電流が走った。

そして彼の後ろに回り込むと背中を蹴飛ばして怪物のほうに飛ばす。

すると怪物は少しジャンプすると彼を地面にたたきつけた。

彼のシールドエネルギーはゼロになった。

 

『10秒待ってやるとは一言も言ってませんけどねぇ』

 

笛が鳴る。音声が響く。

 

 

 

 

 

『試合終了。勝者:結月ゆかり』

 

 

 

 

 

『ハッハッハッハッハッハッ!織斑一夏の華麗なるFinish(フィニッシュ)Death(デース)!』

この時の結月ゆかりは(簪ちゃん以外にとっては)完全に悪役のそれであった。が、一部の人たちは彼女を面白そうに見つめていた。

 

 

続く




おまけ
オルタナティブ(ゼクトルーパーⅡ型)
身長:186cm
体重:不明
パンチ力:2t
キック力:2.5t
結城博士がもしも彼女がはーぜの変身機能を失った時のための予備として作ったもの。
いわゆるゼクトルーパーの強化改造なので決定打と呼べる攻撃はできないがその代わりにカードを使って様々な武器を召喚できる。
次回のあとがきからはそのカードの紹介をおまけに書くつもりです。




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


『『『織斑君、クラス代表おめでとー!!』』』

「・・・そこにいる人、さっさと出てきたらどうですか?」

「最強さんと戦う趣味は持ち合わせていませんよ」

「その情報、古いわよ!」


次回、『祝杯』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話『祝杯』

前回のあらすじ
見事にセシリアに勝利した結月を待っていたのは一夏であった。
彼の夢を空想だと言って鼻で笑った結月に対して猛然と攻撃を仕掛ける一夏。
そして彼女は彼に現実を教えるために様々な武器で応戦して勝利をもぎ取ったのであった。








「ただいま、簪ちゃん」

「おかえり」

変身を解除した結月は簪を抱きしめる。そしてそのまま頭をなでる。

 

「おい、結月」

「・・・なんですか?今いいところなんですから邪魔しないでください」

「(コクコク)」

そこに織斑先生がやってきた。しかも少し厳しい表情をしている。それに対して二人の少女はいいところを邪魔されたのですごく憎々しげな表情をしていた。

 

「お前の機体は危険だ。こちらで預かさせてもらう」

「お断りです。そもそも危険以外の理由を聞かされてないのにどうして渡すと思ったんですか?いや、そもそもどういう風に危険なんですか?」

「オルコットの時に使った機体はまだいい。しかし、織斑の時に使った機体はあの人型の化け物まで召喚できるではないか」

「そんなに親の仇みたいに言わなくてもいいじゃないですか。ろーちゃんに罪はありませんよ」

「とにかくだ。あの化け物を召喚できるとなるとお前が何をしでかすかわからないのでな、こちらで預からせてもらう」

すると結月はニヤァと笑った。まるで今の状況を少し楽しんでいるみたいに。それに対して簪は親の仇のように織斑千冬をにらみつけていた。

 

「・・・それ用の書類は用意してますか?というよりそもそも学園長からの許可は取ってるんですか?というより本人の意向を無視してやろうとするのは教師としてどうなんですかねぇ?」

「・・・」

「言い返せないみたいですねぇ。今から訴えればこっちの勝ちですよ?あなたが今やっているのは職権乱用ですからねぇ」

すると結月は急に真顔になって言った。

 

 

「ブリュンヒルデだからって調子乗ってんじゃねーぞ」

 

 

「・・・っ!」ゾクッ

するとその場の気温が急激に下がったような気がした。織斑千冬は背筋に氷を入れられたような感覚にかられた。そして恐ろしいほどの殺気を感じた。彼女が今まで感じたことがないようなほどの濃密な殺気だった。彼女が昔出場したモント・ブロッソでもここまでの殺気は味わったことがなかった。

それもそのはずである。

 

 

彼女、結月ゆかりは実際に戦争を経験しているのだから。

 

 

「じゃあ私たちはこれで。ああ、そうそう」

「?」

「クラス代表の座は他の二人に渡しますよ。よかったですねぇ、自分の弟がクラス代表になれる確率が高くなって。じゃあ今度こそまた明日」

そう言って結月は立ち去った。ちなみに簪は彼女の腕に抱き着いていた。

 

 

 

その日の夜&視点変更

 

 

 

「ゆかりさん」

私が寝転んでいると簪ちゃんが急に声をかけてきました。

 

「どうしました?簪ちゃん」

「今日はありがとね」

「え? なにがです?」

「織斑一夏を倒してくれて」

なんだ、そんなことですか。私は体を起こすと簪ちゃんの方へ向く。水色の髪と赤い目がきれいだったとだけ言っておきましょう。

 

私は微笑みながら言った。

「別にあれぐらい大したことありませんよ。それに私も気に入らなかったですし」

「そう、なんだ。一緒だね」

「ええ、そうですね」

・・・この子のために戦うのも、悪くないかもしれませんね。

私はそんなことを思いながら再び寝転ぶと目を閉じた。そしてそのまま意識は闇の中へ落ちた。

 

 

 

次の日

 

 

 

『『『織斑君、クラス代表おめでとー!!!』』』

「え?え?え?」

次の日、織斑さんが教室に入るとクラッカーとともにお祝いの言葉が飛びかいました。

 

「ど、どういうことだ?」

「織斑くん、君クラス代表になったんだよー?」

「よかったね~」

「な、なんで俺なんだよ。あの試合だったらセシリアとか結月のほうが適任じゃねぇのか?」

すると私とオルコットさんは目線があい、そして言った。

 

「「辞退したんです(よ)」」

「な、なんでだよ」

「・・・じゃあ、えーと、パルキアさんからでいいや」

「セシリアですわ!・・・コホン。わたくしが辞退したのは今までの行いを自分で見直して反省したからですわ。そしてみなさま」

『?』

「今までの無礼な発言、申し訳ございませんでした!!」

するとクラスの皆は顔を合わせると口々に言った。

 

「大丈夫だよ~」

「気にしてないって」

「そうそう」

「皆さん、ありがとうございます!」

私はそれを聞くと笑顔のオルコットさんに笑顔で近づいていく。クラス全体が少し緊張し始めた。何ですか、人を化け物みたいに。

 

「コルセットさん、いいことを教えましょう」

「オルコットですわ」

「天道さんが言っていました。「無視ですのね」『人に謝ることができる人は将来のびる人だ』と。そして、先日は怖がらせてすいませんでした」

そして頭を下げると急にクラスが騒然となった。横目で見たら織斑先生ややっぱり体とアンバランスな胸をお持ちな山田先生も驚いていた。・・・なんですか、そんなに私が謝るのが意外ですかコノヤロー。

 

「いえいえ、私があんな態度をしたのが元々の原因ですわ。こちらこそごめんなさい」

「じゃあ、仲直りの握手」

「はい」

私たちは笑顔で握手した。

 

「・・・で、なんで結月さんはクラス代表の座を降りたの?」

そうでした。その説明をすっかり忘れていました。いや~、私ってば忘れん坊なんですから~。

 

「・・・面倒だからですよ。クラス代表になって行動が制限されたらたまったもんじゃないですからね」

「アハハ、ゆづゆづらしいね~」

袖のだぶだぶな子がやっぱり袖を揺らしながらのほほんとつぶやいた。・・・やっぱり何ですか、あの子。狙ってああいう格好してるんでしょうか?ああいう子ほど裏で何考えてるかわからないので用心するに越したことはないでしょうね。あー、帰ったら何作ろ。

 

 

 

割愛。

 

 

 

「おい、結月!」

全ての授業が終わり、私が帰る準備をしていると織斑さんが声をかけてきた。

 

「・・・なんですか?私は今忙しいんです。他をあたることですね」

 

 

「そんなこと言うなって。・・・今日の夜、開いてるか?」

 

 

少し脳が震えた気がした。

 

「・・・」

私はポケットからケータイを取り出すと番号を打ち始める。

 

「・・・なにしてんだ?」

「今から通報を」

「待って! なんでそんなことすんだよ?!!」

織斑さんがケータイを取ろうとしたので私はその腕を逆にひねる。

 

「イテテテテテテテ!!!!」

「え、だって、『今日の夜開いてるか』って完全にナンパのそれじゃないですか」

「知らねぇよそんなこと!」

「じゃあ今覚えてください」

「ところでこの状況はいつまで続くんだ?!!」

私は腕をひねるのをやめるとケータイをポケットの中に突っ込んだ。

 

「今終わりましたよ」

「あ、そうだな・・・」

「? なんか疲れてます?」

「誰のせいだ誰の」

「?」

「・・・まあ、いいや。でさ、今日の夜にクラス代表になったということでお祝いすることになったんだ」

「へぇ、よかったですね」

「他人事だな」

「他人ですし。で、それで?」

「あ、ああ。それでさ、結月にも参加してほしいんだけど・・・」

「お断りします」

そう言いながら私はすたすたと廊下に出ていく。後ろから織斑さんが追いかけてくる音が聞こえました。こっち来んな。

 

「なんでだよ」

「面倒だからです」

「ケーキ食えるんだぞ?」

「私がものにつられる性格だとでも? ああ、あと」

「?」

私は織斑さんのほうへ振り返りながら言いました。

 

 

「さんをつけろよでこすけ野郎」

 

 

「・・・え」

「じゃあ私はこれで」

少し呆然としている織斑さんをほうって私は帰りを急ぎました。

 

 

 

割愛。

 

 

 

「・・・」

私がしばらく廊下を歩いていると視線を感じました。最初は気のせいではないかと思っていましたがどうやらそうではないみたいですね。

私は少し立ち止まると視線の感じる方を向いて言いました。

 

「・・・で、さっきからじろじろと見ているそこの人、さっさと出てきたらどうですか?」

すると角っこからセンスを持った水色の髪をした女の子と名前も知らない袖がだぶだぶなクラスメートがいた。

 

「良く気付いたわね」

そう言いながら水色の髪の女はセンスをパッと開いた。そこには筆で『これはびっくり!』と書かれていた。意外と達筆ですねぇ。

 

「ええ。気配とかを感じたので。人の尾行をするときはもっと気配を殺さないとばれますよ?」

私は肩をすくめてにやけながら言った。

 

「・・・で、あなた簪ちゃんに似ていますがお姉さんですか?」

「あら、なぜそう思うのかしら?」

「リボンの色が黄色なのと顔の骨格が似ていること、さらには髪の毛と瞳の色が同じなこと、ですかね」

「・・・完璧ね。じゃあ自己紹介するわ」

すると彼女はセンスを閉じてまたパッと開く。そこには『楯無』と書かれていた。

 

 

「私の名前は更識楯無。この学園の生徒会長よ。そして隣のこの子は私の家に代々仕える布仏家の娘、布仏本音よ」

「あらためてよろしくね~」

ああ、【のほとけほんね】というんですか、この子。

 

「・・・で、その生徒会長さんが一般生徒である私に何の御用で?」

「あの機体に乗ってて一般生徒を名乗るのね」

「ええ。面倒ごとには極力巻き込まれたくないので」

「・・・簪ちゃんをご存知かしら?」

急に話飛ぶな、この人。

 

「ええ、簪ちゃんがどうしたんです?」

「・・・どういう関係なのかしら?」

「どういう関係ってルームメイト兼親友ですよ。それ以上でもそれ以下でもない」

「そう」

「で、そろそろ帰りたいんですが」

「私と戦ってみない?」

「ハハハ、ご冗談を。最強さんと戦う趣味は持ち合わせていませんよ」

「・・・なんで最強だと知ってるのかしら?」

「そんなに目を鋭くしなくてもいいじゃないですか。簪ちゃんが教えてくれたんですよ。『お姉ちゃんはこの学園で最強だから気を付けて』って」

「あら、そう」

その時の会長さんの顔は少しすねたような表情をしていた。大方、私と簪ちゃんが仲がいいことがうらやましいんでしょう。しかし、私はそれに対して手助けするつもりは今のところ一切ありません。自分から進もうとしない人に手を差し伸べても無意味ですからね。

 

「じゃ、そういうことで」

私は横を通り抜けて走った。簪ちゃんが部屋でおなかすかせてるだろうから早くいかないと。

 

その後、なんか新聞部の先輩が来ましたが玄関前でご退場してもらったのはここだけの話です。私はマスコミが嫌いですからね。

 

 

 

次の日

 

 

 

教室に入るとなぜかざわざわとしていました。少し眉をひそめていると一人の女子生徒が声をかけてきました。この私に声をかけてくるとは、とんだもの好きですね。

「結月さん結月さん!」

「?」

「聞いた?今日転校生が来るんだって!」

「転校生?」

 

この微妙な時期に転校生?なんか妙というかなんというか・・・。

 

「で、どこからです?」

「えーと、確か中国の代表候補生だって!」

今度こそ雲行きが怪しくなってきました。この時期に爆発専門国(中国)から代表候補生が来るのはなんか策略を感じます。

 

「おりむーが勝ったらみんなが幸せになれるんだよ~?」

布仏さんがニコニコしながら織斑さんに近づいて言った。・・・彼女の目が薄く開いていたことに気づいたのはどうやら私だけのようでしたが。

 

「え?なんで?」

「クラス対抗戦の優勝クラスには、食堂のデザートのフリーパスが贈呈されるんだよ~?」

もので釣るとは汚いですね。そしてつられる側もどうかと思いますが。

 

「でも大丈夫だよ!」

「そうそう! 織斑君なら大丈夫だよ!」

「大丈夫!織斑君なら勝てるよ!専用機持ちのクラスはウチだけなんだから!」

クラスの人たちが口々に言う。・・・あのペースだとクラス代表戦までには間に合いそうですね、簪ちゃんの専用機。そういやあの子は4組か。

 

 

 

「その情報、古いよ!」

 

 

 

・・・なんか面倒くさいことに巻き込まれる気がしました。

 

 

続く




おまけ≪カード編≫
【Tiger】
虎が描かれているカード。これをスキャンすることで大砲を召喚することができる。
何故虎かというと【大砲➡アハトアハト➡ティーガー➡虎】という作者の連想によるもの。




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「お前、鈴か?」

「なんで肩出してるんですかあの人」

「酢豚って何ですか酢豚って・・・」

「衝撃砲、ねぇ・・・」


次回、『酢豚』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話『酢豚』

前回のあらすじ
クラス代表に(ある意味)押し付けられた形で選ばれた一夏。
彼がクラス代表に選ばれたお祝いの誘いに対して結月はいつも通りそっけない態度で返した。
そして彼女は生徒会長と遭遇することとなった。






「その情報、古いよ!」

 

全員がその方向を見るとそこには黄色のリボンで髪をツインテールでまとめている女の子がいた。

・・・というより。

 

「なんで肩出してるんですかあの人」

『『『うんうん』』』

ホントになんで肩出してるんですかあの人。制服は多少改造してもいいと確かに書いてありましたけどさすがにあれはないですよ。何ですかあれ。制服をファッションか何かと勘違いしてるんじゃないんですかあれ?というより冬は寒いのでは?

 

「お前、鈴か?」

あれ?知り合いなんですか?あんな肩出してる女の人と?

 

「ええ! 私はこうして帰ってきたわ! そして私は今や代表候補生でありながらクラス代表・・・。だからこうして宣戦布告しに来たのよ!」

「そ、そうなのか」

「そんなことはどうでもいいですけど」

私は二人の間に割り込む。彼女はどうやら死期が近いようです。

ほぉら、音もなくひしひしと近づいてきていらっしゃる。

 

「なによ、アンタ」

「あなた、そこでじっとしてていいんですか?」

ああ、彼女はどうやらここで死ぬみたいだ。いや、半殺しで済むのかな? いや、わりとそんなことはどうでもいいんです。今は彼女の後ろを指さしながらそんなことを言うしかやることがないわけです。

 

「おい」

「何よ!今取り込んで…」

あぁ、無常かな。あぁ、無常かな。

今彼女の頭の上から落ちてくる出席簿が命を刈り取る形をしていらっしゃる。

そしてそのまま彼女の頭に一直線で振り下ろされていく。

 

バァアアン!!

「ち、千冬さん・・・」

「織斑先生だ。さっさと戻らんか小娘」

「イエスマム!」

そのまま小娘はそそくさと二組に入って行った。・・・ああ、二組なんですか、あの人。

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

「IS、インフィニット・ストラトスは操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアーで包んでいます。また、生体機能も補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィンなどがあげられますね」

山田先生の授業ってやっぱりわかりやすいと思うんです。わからないところがあれば丁寧に答えてくれるますしおすし。

 

「せんせー」

「はい、なんでしょう」

「先生、それって大丈夫なんですか?」

「なんか、体の中をいじられているみたいでちょっと怖いんですけど・・・・・・」

「わたしはいじってほしいかなぁ・・・・・・」

「体をいじくられるのね! 嫌いじゃないわ!」

クラスの多くが不安げな声を出しています。まあ、勝手にしかも機械に体をいじくられるのはあまりいい気はしないでしょうね。・・・私は体の一部を改造しているので何とも思わないんですけどね。・・・もっとも私の知らないところでまさか自分の体が改造されているとは思いもしませんでしたが。

しかし、変態もいるようですね。はっきり言って猛者ですね。怖い怖い。

 

「ISにも意識に似たようなものがあり、操縦者の意識――つまり一緒に過ごした時間で分かり合うというか、ええと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」

・・・ふむ、一応人格っぽいのがあるのかな?もっとも、ハーゼちゃんやろーちゃんと比べたら相互理解しあうのは難しいと思いますが・・・。

 

「先生ー、それって彼氏彼女のような感じですかー?」

「彼氏できたことない女が何言ってるのさ」

「それは言わんといてー!」

オイコラ、そんなこと言うもんじゃないですよ。見てくださいよ。見る見るうちに山田先生が赤くなってますよ。まるでトマトみたいに。ちなみに私はプチトマトが嫌いです。

 

「ふぇ?!そっ、それは、その・・・どうなんでしょうか? 私には経験がないのでわかりませんが・・・」

「あ、そういや織斑君って彼女とかいるのかな?」

「いたら面白くない?」

「私はそうは思わないなー」

「イケメンなのね! 嫌いじゃないわ!」

「そういや織斑先生って彼氏いるのかなー?」

「いるでしょ。だって千冬様なんだよ?」

「それもそっかー」

『『『アハハハハハ』』』

「お腹すいたー」

この時私は見てしまった。織斑先生の口元がかすかに震えていたのを。しかも悔しそうに眉間を微妙にゆがめていたのを。皆様は気づいてなかったし、私も殺されたくないですからここは黙っておきましょう。お口チャックです。

・・・というよりさっきから妙にテンション高い人はいったい誰なんでしょうか?

 

 

 

 

割愛。

 

 

 

 

昼休み、簪ちゃんと一緒に食堂に来てみると何やら叫んでるポニテとそれに対応しているチャイナ娘を見つけました。

 

「なにがあったんですか?」

私は近くにいた布仏さんに訊いてみた。なぜか簪ちゃんが後ろに隠れてしまいました。

 

「どうしたんですか?」

「・・・」

いや、黙られても困るんですがそれは。

 

「あのね~」

「ああ、はい」

「なんか~幼馴染でお互いのこと知らないからもめてるらしいよ~」

「・・・へぇ」

・・・そういやイアちゃん、元気でしょうか。私はずいぶんと変わってしまいました。今の私を見たらあなたはなんていうんでしょうか?

 

「で? それでなんで篠ノ之さんは怒ってるんです?」

「・・・さぁ」

そういいながら布仏さんは肩をすくめた。やはりこの子からはなんか裏を感じるんですよね。しかも会長さんのメイドさんらしいですし、下手な動きしたら生徒会室に連行されそうですし・・・。さっさとご飯食べて教室に戻りましょう。・・・あ、教室一緒だったんだ。

 

 

 

割愛。

 

 

 

放課後、私は寮に戻っている最中なぜかベンチでしくしく泣いているチャイナ娘を見つけました。

すると私に気づいたのかじっとこっちを見つめてきました。こっち見んな。そんな捨てられた子犬のような目で私を見るな!

 

「・・・」

「・・・」

「「・・・」」

私たちは目線を合わせていました。といっても声をかけるつもりも助けるつもりも話を聞くつもりも一切ないのでそのまま寮に帰ろうと足を動かすことにしました。

なんか後ろから「待ちなさいよ!」とか聞こえてきますけど無視です。あれは空耳です。気のせいです。今日は早めに寝て明日に備えましょう。

・・・と、その前に調べなきゃいけないことがあるんでした。

 

 

 

その日の夜

 

 

 

「検索を始めましょう」

私が言うと簪ちゃんはグーグルを開いてキーボードを打ち込む用意をする。

 

「まず一つ目は【中華人民共和国】」

「なんでフルネーム?」

「気分です」

「そう」

そう言いながら簪ちゃんはキーボードを打ち始める。

 

「二つ目は【代表候補生】」

「うん」

「・・・どうですか?」

「でたよ」

そう言いながらモニターをこっちに向けてくる。するとそこには【凰鈴音】と名前がでていた。

 

「じゃあキーワードを追加です。【凰鈴音】」

「うん」

「次に【専用機】」

「出たよ」

私たちがモニターをのぞき込むとそこには【甲龍】と出ていた。

 

「どんな武装が?」

「待ってね。・・・出た」

「どれどれ」

 

 

 

しばらくして

 

 

 

「なるほど、第3世代ですか・・・」

「しかも遠距離近距離どちらもこなせる万能型を目指して設計してるようだし、戦うとなると難しいよ?」

「その前に問題なのが衝撃砲です。弾が見えないほど面倒なものはありません」

「確かに」

「しかもようは空気砲じゃないですか」

「うん」

「弾けないんですよ、弾丸を」

「・・・ああ、成程」

私たちは真剣に討論した。

 

 

 

次の日。

 

 

 

教室に入ると織斑さんが座っていました。珍しいですね、ISの参考書を開いてますよ。

・・・なんで頬にもみじができているのかは謎ですが。

 

「・・・何があったんです?」

私は近くにいた女子生徒に声をかけた。

 

「あら? あなた中々の美人じゃない。だけど、私のほうがおっぱい大きわ」

「・・・質問に答えてください」

かなりむかついたので胸にくっついている余計な脂肪にビンタをくらわしておきます。女子同士ならこれくらい許されるでしょう、たぶん。

 

「あはん♡ ・・・ええ、教えてあげるわ! なぜ織斑君が頬をぶたれたか!」

「はい」

「・・・昨日の二組の子、いたでしょ?」

「ええ、いましたね」

「その子の昔の愛の告白を勘違いしてとらえたみたいなのよ」

「・・・」

ああ、だからか。昨日あそこで泣いていたのは。

 

「・・・で、どんな告白をしてたんですか?」

「えっとね・・・

 

『日本に帰って来たら毎日酢豚食べさしてあげる』

 

らしいのよ」

「・・・」

あまりにもバカすぎる告白で私は思わず絶句してしまいました。そしてそれを勘違いしてとらえる織斑さんに対しても絶句しました。

そしてなによりも・・・。

 

「酢豚って何ですか酢豚って・・・」

ホントになんで酢豚なんでしょう? これがお味噌汁だったらなんとなくわかりますよ? ですがなんで酢豚なんでしょう?

 

「酢豚って食べ物でしょ?」

「知ってますよ、そんなこと。私が言いたいのはなんで味噌汁じゃなくて酢豚にしたのかということですよ」

「さぁ、知らないわ。若気の至りってやつかしらね」

「それでも頭おかしいと思います。というより若気の至りって言葉だけですべてが済まされると思うなよ。・・・ところで、あなたの名前は?」

「あら? 私に興味があるのかしら?」

「そちらのご想像にお任せします」

すると彼女は胸を堂々と張って言った。

 

 

「私の名前は月影京水よ。覚えておきなさい!」

 

 

・・・どことなくオカマっぽい名前ですが気にしないでおきましょう。今はそれよりも聞きたいことがたくさんありますからね。

 

「で、結局どうなったんです?」

「なんかクラス対抗戦で決着するらしいわ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゑ?

 

 

 

しばらくして。

 

 

 

ハイ、今日はクラス対抗戦でございます。そしてなぜか私たちは強制的にアリーナに行くことになりました。いや、ホント勘弁してください。なんで無関係な私たちまで巻き込まれなきゃいけないんですか。

 

「ホント、やってられっかってんだ。ケッ」

「ゆかりさん、気持ちはわかるけど我慢して? 私も断腸の思いでここに来てるんだから」

「あー、さっさと終わってくれませんかねー?」

「それだったらなるべく相手のほうが勝ってほしいかも」

「まあ、その気持ちは私にもあります」

もう、ね。ホントこちらの負けでいいですからさっさと終わってほしいです。

ちなみにアタッシュケースは持ち歩いてます。

 

『覚悟しなさいよ一夏!』

『ああもう!鈴!俺が勝ったら約束の意味、教えてもらうからな!』

 

「あれ、どう思う?」

「戦いに私事を持ち込むな、と言いたいですね」

「そうだよね。クラスがかかってるのに私事で勝負するっておかしいよね」

「はい、そもそも凰さんもきちんと説明すればこういうことにはならなかったはずなんですよ。それなのにこういう風に決闘することになるのは明らかなる説明不足です。ああいう人に期待する方が間違ってるんですよ。察しろという方が無理です。あ、吹っ飛ばされましたよ」

「すごい! あれが衝撃砲なんだ!」

「あれが衝撃砲、ねぇ・・・」

ホントに厄介そうです。弾が見えないこともそうですが何より始めないのが大問題です。

 

私が顎に指を当てながらそう考えていると急に天井のシールドが叩き破られ何かが着地しました。

簪ちゃんはびっくりしたように目を見開き、私は少し目を細くしました、

 

 

続く




おまけ≪カード編≫
【Simulation Fox】
狐が複数描かれているカード。これをスキャンすることで相手の武器をコピーすることができる。



次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「な、なんだあれ?!」

『一夏、男ならそれくらいやれないでどうする!』

「なんで平然とそんなこと言えるんだよ!」

「あなたいったいどういうつもりなんです?」


次回、『襲来』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話『襲来』

前回のあらすじ
告白を勘違いして思いきり頬にビンタされていた一夏!そして告白の行方はクラス対抗戦まで持ち越されることになった。
そして戦っている最中、急になにかがシールドをたたき割って入ってきた。






急に天井のシールドが叩き破られ何かが地面に着地しました。それと同時に土煙が起こって煙が晴れるとそこには黒い影がありました。

 

「な、なんだあれ?!」

「あ、ISよね?」

二人は戸惑いを隠せていないようです。ま、当然でしょうね。実をいうと私も少し困惑していますし。

 

「・・・あれ、なに?」

「IS、ですよね?」

「だけどあんなに素肌を見せないISなんて初めて見た」

「私も初めて見ましたよ。顔を隠してるISは見たことありましたけど全身を包むようなISなんて今まで見たことありませんから。・・・というよりアレ、人は入ってるんでしょうか?」

「え? なんでそう思うの?」

「なんか生きてるって感じがしないんですよ。ホントになんとなくですけど」

「・・・そうかな?」

私たちがそう会話していたら急にその黒いISがビームを二人に向けて撃ちました。二人がよけるとビームは後ろのアリーナのシールドに直撃して、貫通しました。

 

「い、いやぁああああああああああああ!!!!!」

「出して!出してくれえええええええええええええ!!」

「いやだ!嫌だぁあああああああああああ!!」

ビームがシールドを貫通するのを見てしまった観客である生徒の皆さんはパニックに落ちいってしまいました。

 

「え?!なんで開かないの?!!」

「閉じ込められちゃったの?!!」

「出して!出してよぉおおおおおおお!!!!」

「いやだぁあああああああああああ!!」

出口が開かない?! さすがにこれはまずい! 私は簪ちゃんに指示を飛ばします。

 

「簪ちゃん」

「なに?!」

「避難指示を出してください!」

「ゆかりさんはどうするの?!」

「その間にあいつを片付けます!」

私はそう言いながらベルトを腰に巻き付けます。そしてふたを開けてハーゼちゃんを呼び出すと差し込みました。

 

「変身!」【HENSHIN】

 

私は走りながらシールドに突っ込んでいきます。その間にもアーマーは私の体を包んでいくのがわかります。

 

【CHANGE! HAZE!】

 

そして変身し終わるとシールドをつき破って侵入しました。

 

「一夏ばかっ!ちゃんと狙いなさいよ!これで4回目じゃない!」

「狙ってるつーの!」

「もうどうするのよ!」

そして入った時にはなんか全然連携ができていない二人の姿がありました。

 

『なにしてるんですか?』

「え?! 結月さん?!」

『あ、ちゃんとさん付けしてくれましたね。で、こいつはなんなんです?』

「ISよ! 見ればわかるでしょ!」

『知ってますよ、今更何言ってるんですかw』

「腹立つぅ!」

なんかむきーっとなっている凰さんを無視してハーゼちゃんに声をかけます。

 

『ハーゼちゃん』

≪ハイハ~イ、何カナ~?≫

『あのISに人が入ってるかどうか確かめること、できます?』

≪デキルヨ~。すきゃんシタラ全部丸見エダヨ~≫

『何秒かかります?』

≪5秒。ソノ間ハ目ヲ放サナイデネ≫

『任せてください。それくらいお安い御用です』

≪ジャア始メルネ≫

『ええ』

私は少し楽に構えます。すると黒いISがビームを打ってきました。

私はそれを半歩ずれてよけると同時に一気に距離を詰めて顔面を思いきり一発殴っておきます。そしてのけぞったと同時にもう一発叩き込みました。

 

『・・・やっぱり固いですね』

≪当タリ前デショ。装甲部分殴ッテンダヨ?≫

『だろう、ねっ・・・!』

私は敵の横なぎなパンチをよけると半歩下がって顔を思いきり蹴り上げます。

その時、後ろでチャイナ娘の声がしました。

 

「どきなさい!」

やれやれ。人使いが荒い中華娘だこと。

私が一発おまけに殴ってどいた瞬間、黒いISは吹っ飛ばされました。

おお、怖い怖い。ちなみに私は今まで頭しか攻撃しておりません。

 

「そこをどいてくれ!」

織斑さんが叫びました。ここでもめ事を起こすのは得策ではありませんので私は素直に譲っておきます。すると彼の刀が黒いISに傷をつけました。・・・と言っても中身にまで達していないみたいですが。多分人が入ってると思ってるのでしょう。

 

≪出タヨ≫

お、スキャンが完了したようですね。

 

『どうでした?』

≪無人機、ダネ≫

『やっぱりですか』

≪予想シテタンダ≫

『そりゃああれだけ頭殴っておいてふらふらしないのはおかしいですしね』

≪ウン、ソウダネ≫

『よし。じゃあ手加減しなくて済みますね』

≪元々手加減スル気ナンテナカッタ癖ニ≫

『さぁ、なんのことやら』

私は飛んでくるビームをよけながら一気に詰め寄ると膝小僧を思いきり踏みつけるように蹴りつけます。

するとグラッと黒いISは体勢が崩れます。

私はそれを見ると兎の耳部分に当たるレバー、【ゼクターレバーP】を倒してすぐに戻します。

 

「ライダーパンチ…!」【Rider_Punch!】

 

音声が流れると右腕を紫色の電流がまといました。私はそれを見ると思いきり殴りつけるます

すると腕についているアンカージャッキが作動して折りたたまれるとその黒いISは壁際まで吹っ飛ばされました。

 

『さーて、もういっちょ行きますか』

私がそう言いながら兎の足に当たるレバー、【ゼクターレバーK】を作動させようとした瞬間、怒号が聞こえました。

 

 

 

『一夏、男ならそれくらい倒せないでどうする!』

 

 

 

チッ・・・!余計なことを・・・!

すると黒いISは砲身を放送室の方へ向けました。

 

「箒! 危ない!」

そう叫びながら一気に飛んでISと放送室の間に割り込んでくる織斑さん。

次の瞬間、ビームが発射された。織斑さんは持っていた刀で防ごうとするも大爆発を起こしました。

 

「一夏!」

凰さんが落ちていく織斑さんにすぐに飛んで近づいていきました。・・・彼のシールドエネルギー残量はわずかですか。

私は後であの掃除用具みたいな名前の剣道女をしばくと心の中で決めてゼクターレバーKを作動させます。

 

【Rider_Jump!】

 

私は思い切り跳びあがり両足を黒いISに向けました。

そしてレバーを戻しました。

 

「ライダーキック…!」【Rider_Kick!】

 

すると両足に紫色の電流が走ります。そして黒いISに直撃すると両足のアンカージャッキが作動しました。

私が着地すると同時に蓄積したダメージの影響か、はたまたさっきの一撃が重たかったか知りませんが少しバチバチと火花が飛び散った後、地面に倒れこみ、爆発を起こしました。

 

『ふぅ~、一件落着ってところですかね』

そうつぶやきながら私が帰ろうとしたとき、私に向かって叫ぶ声が聞こえました。

私がその方を向くとそこには凰さんに肩を貸してもらっている織斑さんの姿が!

 

「ちょっとあんた!なにやってるのよ!?」

「お前、あのISの操縦者を殺したんだぞ!?」

・・・あれ? 気づいてないんですか?

 

『・・・アレ、無人機ですよ? 気づかなかったんですか?』

「「え?!」」

『じゃ、私はこれで』クルッ

「オイ、待てよ!」

『?』

まだ何かあるんですか。そう思いながら私は後ろを振り返る。

 

「今回は無人機だったらよかったけどよ! もしも人が乗っていたらどうしてたんだよ!」

『やることに変更はありません』

「殺すのかよ?!」

『まっさかー。さすがに全力で殺しにかかりはしませんよ。もしかしたら不慮の事故で死ぬかもしれないですけど。あ、そうそう』

「「?」」

私は黒いISの残骸に歩いていきます。そして残骸の中で光っているコア(らしきもの)を拾い上げます。

 

『操縦者は二の次三の次。ほしいのはこれです』

「それは・・・」

『おそらくこのISのコアじゃないですかね? ま、解析すればわかることです』

「・・・おい」

『なんですか?』

「さっき操縦者は二の次三の次って言ったよな?」

『ええ、言いましたけど、それがどうかしました?』

「なんで平然とそんなこと言えるんだよ!」

『侵入者にかける情けを私が持ってるとでも?』

「同じ人間だろ?!」

『? それがどうかしたんですか?』

「なっ・・・!」

絶句した織斑さん達を置いて私は変身を解除しました。

 

「ふぅ~」

「おい、結月」

「・・・今更何ですか? 生徒が危険なのに入ってこなかったくせに」

「しまってたから仕方ないだろう!」

「あれ、途中で開きましたよね? 篠ノ之さんがなんか余計なことしてましたから」

「・・・」

「ま、このコアらしきものは渡しますよ。今から私は篠ノ之さんに用があるんですから」

「何をするつもりだ」

「なーに、大したことじゃありませんよ」

私はニヤニヤしながらそう言うと中継室に足を運びました。

その途中で篠ノ之さんと鉢合わせしたので彼女の道をふさぐように陣取りました。

 

「・・・なんのつもりだ。結月」

「あなたこそ一体どういうつもりですか?」

「なんのことだ」

・・・ハァ、この人自覚ないのか。余計たちが悪いですね。

 

「中継室にいた子たちを気絶させてまであんな余計な騒音を出す必要性があったんですか?」

「そ、それは一夏の為だ!」

「ふぅーん・・・。織斑さん、あなたが余計なことしてくれたおかげで余計なダメージを負う羽目になったんですよ?」

「そ、それはあいつが私を守るのはt「もういい。黙れ」・・・っ!」

「あんたとまともに話そうと思った私がバカでした」

私はため息を吐きながら篠ノ之さんを見ます。

 

「あなた、事の重大さがわかってないでしょ? 織斑さんはもしかしたらあなたのせいで死ぬかもしれなかったんですよ? あなたが余計なことしてくれたおかげでね」

「し、しかし「しかもあのISは無人機でした。この学園に急に攻め込んでくるような機械に手加減できるほどの知能があるとでも?」・・・っ」

「あなたが余計なことをした時、あの無人機はあなたに砲身の銃口を向けたんですよ? あなた見てましたよね? それから織斑さんはあなたをかばったんですよ? それなのにあなたはなんも悪びれずにのうのうと歩いてて・・・、恥ずかしくないんですか?」

「…きさまぁ」

「おっと、逆ギレはなしでお願いしますよ? これ以上手を汚したくないですし」

「貴様ぁ!」

「どっから竹刀出したんですかあなた」

私は彼女の一振りを回し蹴りではじくとそのまま拳を目の前で寸止めした。

 

「・・・っ!」

「自分が不利になったら暴力ですか。見苦しいですね。あ、あと」

「?」

「今は男女平等の社会です。男だからやらなければならないという理由にはならないんですよね」

「えっ・・・」

「じゃ、私はこれで」

私はすたすたとその場を後にしました。

 

 

続く

 




実をいうと今回の一夏と鈴がゆかりさんを責めるシーンは4個くらい下書きがあってそのうちの一つだったりします。



おまけ≪カード編≫
【Cricket】
 コオロギが描かれているカード。これをスキャンすることでサイコローグを召喚することができる。

サイコローグ
 もしものためにゆかりさんをサポートするコオロギをベースとした人造モンスター。と言ってもどう見てもコオロギには見えない。見た目の割に素早い。
武器は怪力と目(?)から発射するビーム。
実をいうと変身してなくても召喚することができるが時間がかかるためあまり多用しない。しゃべれる。




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「もしかしたら私の所属してる企業なら手伝ってくれるかもしれません」

「なんか変形しそうだよね」

「はろはろ~」

「デモンストレーションがへたくそでしたね」


次回、『遭遇』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話『遭遇』

前回のあらすじ
 侵入してきた黒いIS。それは何と無人機であった。それをハーゼのスキャンで知った結月ゆかりは容赦ない一撃を叩き込んでいく。その時、篠ノ之箒が余計な騒音を起こしたおかげで織斑一夏はシールドエネルギーを削られてしまう。そして破壊した結月ゆかりは篠ノ之箒を責め上げるのであった。



「IS適性【B】なのにM.R.Sに乗る子か~。ンフフフフ、束さん興味持っちゃったな~」


「え? このままじゃ学年対抗トーナメント戦に間に合わない、ですか?」

「うん、このままじゃぎりぎり間に合わないの・・・。どうすればいいと思う?」

「どうすればいいと思うって言われましてもねぇ・・・、私は技術者じゃないですからホントはどうしようもないんですけど、友達ですからねぇ。手ぐらいはあなたに差し伸べたいんですよ」

「その気持ちはすごくうれしいよ」

私たちは腕組みしながら話し合います。

 

「・・・あれ? そういやクラス対抗戦までには間に合う計算でしたよね」

「・・・そうだったね」

「・・・ところで」

「?」

「・・・今どこまで進んでるんです?」

「・・・一から作り直してるから一応骨組みまでは・・・」

「ちょっと待ってください。今すごく聞き捨てならない言葉が出ましたけど」

すると簪ちゃんは申し訳なさそうに笑うと舌を出して呟いた。

 

 

 

「・・・てへっ」

 

 

 

どうしましょう。すごく今ビンタしたくなりました。

 

「なんで作り直してるんですか?」

「・・・ゆかりさんを見てたら全身装甲(フルスキン)のほうが安全かなーと思って・・・」

「あ、これ私のせいなんですか?」

「ほかにも理由はあるよ? シールドエネルギーを無視する攻撃を防げるんじゃないかなーと思って」

「あー、それには一理ありますね。・・・で、作れるんですか?」

「間違いなく機動力は下がるけどなんとか・・・」

「機動力下がるのはだめですよ。確かに守りを固めることは大事ですが動きが遅かったらいい的ですからね」

「う、うん。そうだよね・・・」

「で、もう骨組みまではできてるんですよね?」

「うん」

「少し見せてくれませんか?」

「いいよ」

そう言いながら簪ちゃんはPCにディスクを入れた。

 

 

 

割愛。

 

 

 

「あー・・・、これくらいはできてるんですか」

「うん。一応装甲をつけたらこんな感じになるというプロットはできてるの。だけど、このまま組み立てたら間違いなく機動力は劣悪になるし…」

「・・・ところで」

「?」

「なんか変形しそうな造形ですよね」

「バイクとかに?」

「電人ザボーガーですか?」

「むしろ宇宙鉄人キョーダインとか?」

「ろーちゃんもバイクに変形できますよ」

「ホント?!」

「あるカード使えば、ですが。ところであなたのISって今はどこに所属しています?」

「前は持倉技研だったんだけど、私から願い下げたから今は多分どこの企業にも属してないはずだよ」

「なんで願い下げを?」

「私のISを途中放棄してそのまんまだもん」

「ああ、成程」

・・・ん? 待ってくださいよ? それなら・・・。

 

「それなら逆に好都合ですね」

「なんで?」

「もしかしたら事情を話したら私の所属している企業なら手伝ってくれるかもしれません」

「ホント?! ・・・あれ?」

「ん? どうしました?」

「・・・さっき、企業に所属してるって言ったよね?」

「ええ、言いましたね」

「・・・どこに所属してるの?」

「・・・」

痛いとこ突かれましたね・・・。

 

「・・・さすが簪ちゃんですね。そこに気づくとは・・・」

「で、どこの企業なの?」

「ZECT」

「え? でも…」

「ZECT」

「あそこISじゃなくてM.R.S・・・」

「私のあれ、ISじゃないですもん」

「・・・え?」

簪ちゃんは目を丸くしながら口をぱっくりと開けていた。

 

・・・あー、説明してなかった私が悪かったかなぁ。

 

 

 

 

次の日。

 

 

 

 

今日は休日です。そして私たちは街の郊外を歩いております。

「・・・で、どこ行くの?」

「ZECT本社」

「え」

「なんで『なんで?』みたいな顔してるんですか? 昨日『もしかしたら事情話したら手伝ってくれるかもしれない』って言ったじゃないですか」

「え? それって前日に言うものじゃないの?」

「そんなこと私が知るか」

「なんで?! なんでひらきなったの?!」

そんな会話をしながら途中で私たちはとある大きなビルの前で立ち止りました。

 

「? どうしたの?」

「着きましたよ」

「ウェ?」

「はい、ここです」

私が上を指さすとそこには【ZECT】と書かれた看板が!

 

「入りますよ」

「ゑ」

「着いてきてください」

「いやちょっと待って事前に連絡入れとかないとダメじゃないいやその前にこんな見切り発車みたいな状態で何で今まで生きてこれたのいや昔はそうじゃなかったかもしれなかったかもしれないけどなんでそんなにフリーダムなの」

「すいませーん。結月ゆかりでーす」

「話聞いてよ」

「やあ、久しぶりだね。結月君」

するとロビーの奥から見たところ40代の男性がやってきた。

 

「あ、お久しぶりです。結城さん」

「うん、いつも通り目が死んでるね。ところで、後ろの子は?」

「ああ、この子のISを作ってほしいんです」

「いや、その前に名前をだね・・・」

「ああ、そういうことですか。ほら、簪ちゃん。自己紹介」

「フリすごく雑じゃない? まあ、いいけど。・・・更識簪。結月さんのクラスメートしてます」

「ああ、初めまして。僕の名前は結城丈二。M.R.Sの開発者さ」

「あ、あなたが・・・M.R.Sの、開発者…」

「そんなにかしこまらなくても」

「というわけで結城さん」

「?」

「この子のISを作ってほしいんです」

「うん、何がどうしてそうなっちゃったかな?」

「実は・・・」

 

 

 

事情説明中…

 

 

 

「…ということでして」

「なるほど。で、そのISのデータは?」

「・・・ここにあります」

「ああ、これかい。わかった。ついてきてくれ」

「はい」

 

 

 

しばらくして。

 

 

 

「なるほど、ねぇ…」

モニターにうつされた情報を見ながら結城さんはつぶやいた。

 

「で、結城さん」

「あぁ。できるかどうか、だね?」

「はい」

「できるよ」

「「ホントですか?!」」

私たち二人は少し身を乗り出して大きな声で言った。

 

「ああ。この子の作ったデータが非常に完成度が高くてね、実を言えばこのまま組み立ててもいいくらいなんだ」

「ですけど・・・」

「機動力や燃費の問題がある、だね?」

「はい」

「安心してくれてかまわない。装甲はZECT製のものを使うし出力や機動力は昔私が開発していた特性ブースターを改造して取り付けよう。それだと燃費も格段に良くなるはずだ」

「…何日くらいかかりますか?」

恐る恐るという風に簪ちゃんは結城さんに訊いた。

 

「さっき言った機材は全て手元にあるから今日中に完成するよ。なんならデータにある武器もこちらが作って装備させてもいいけど」

「い、いいんですか?」

「結月君の友達だからね。これくらいはしてもいいかな、って」

「…じゃあお願いします」

そう言いながらも簪ちゃんの顔はすごくうれしそうに輝いていた。

 

「結月さん」

「なんですか? 簪ちゃん」

「遊びに行こう」

「急にシフト転換しないでくれます?」

「ちょっと待ってくれ」

「?」

「これ持っていきなさい」

そう言いながら結城さんはケータイを簪ちゃんに渡しました。

 

「…ケータイ?」

「完成したらそのケータイに連絡するから」

「ああ、はい」

「じゃあしばらく遊んできていいよ」

「「はーい」」

そう言いながら私たちは出ていきました。

 

 

 

しばらくして。

 

 

 

「どこ行きましょうか」

「私g「チョーっとそこのチミ!」・・・」

私たちが奇声が聞こえたほうを向くと

 

 

 

なんかおかしな格好をした危ない女がいました。

 

 

 

「「・・・」」

私たちは思わず絶句してしまいました。

 

「はろはろ~」

そう言いながらその女は近づいてきました。私たちは思わず距離を保ちます。

 

「・・・誰、あの人? 知り合い?」

「あんな知り合いいたらもうすでに絶交してますよ。というより今すぐ通報したいですよ」

「というよりなんであんなにやたらとなれなれしいんだろ…」

「服装もおかしいですよ。見てください、あのメカのうさ耳。あんなもの見るのは初めてですよ」

「なにあの『不思議の国のアリス』から出てきたような恰好…。さすがの私でも少しひいちゃうよ・・・」

「(さすがの私でも?)ああいうのはシカトするのが一番いいんです。Let’s say あれは幻覚」

「Yes,あれは幻覚」

「よし、じゃあどこ行きますか?」

「ゲームセンター行きたい」

「よし、じゃあ行きましょうか」

「ちょいちょいちょーい! 君たちなんでこの束さんを確認したうえで無視するの? しかも幻覚扱いってなんだよふざけんな」

うわ、幻覚じゃなかった。そして簪ちゃんを見るとすごく嫌そうな顔をしていました。

 

「うわ・・・」「・・・チッ」

「その露骨に嫌そうな反応するのやめてくれない? さすがの束さんでも割と傷つくんだけど」

「勝手に傷ついといてください」「そうだそうだ」

「うわ、この子たち冷たい」

「暖かくする理由がないですからね」「うんうん」

「ちょっと君たちなんなの? まず『誰?』とか聞かないの?」

「ま、とりあえず通報ですね」

「うん」

「ストーーーーーップ! 君たち束さんを知らないね?!」

「知ってるわけないじゃないですかあなたみたいな変質者」

「へ、変質っ・・・!」

「ねぇ、さっさと通報してよ」

「はいはい、わかってます」

「だから待ってってば!」

「・・・うるさいな、コイツ」

「さっさとここを離れようよ」

そう言いながら私たちはすたすたと早歩きをし始める。

 

「ちょっと待って! うわ! 意外と速いね君たち!」

「あれは空耳です。気のせいです」

「うん、そうだね。・・・結月さん」

「なんですか?」

「たぶん私たち疲れてるんだよ。だからあんな変なものが見えちゃうんだ」

「そうですね。あんなおかしな格好している危ない女なんていまどきいるわけないですよね。口裂け女でもまだまともな服装してますよ」

「「アハハハハハハハハハハ」」

 

 

 

しばらくして。&視点変更

 

 

 

「ここなら追いつかれませんね」「うん」

そう言いながら結月ゆかりと更識簪は公園までたどり着いた。

 

「ちょっと・・・まっ、て・・・くる・・・しい・・・」

そして篠ノ之束にすぐに追いつかれてた。

 

「「チッ」」

「だからそんなに露骨に嫌そうな顔するの本当にやめてくれない? ガチで傷つくんだけど」

「人違いじゃないですか?」

「いーや! 束さんは君に用があるんだ!」

「・・・ゆかりさん」

「?」

「この人ニートなんだよ。だから服装も前時代的な服装になっちゃうんだよ」

「・・・あっ(察し)」

「違うよ! そんな憐れんだ目でこっちを見るな! これが正装だよ!」

「そんなにいい年こいて中二病患者とか、引くわ・・・」

「どうあがいても私はおかしな人扱いかな?!」

「いやなら服装かえてからこればいいじゃないですか」「うんうん」

「ぐぬぬ・・・、じゃあ質問していい?」

「・・・それくらいなら」

「(コクコク」

「ISのこと、どう思ってる?」

「・・・無限の可能性、ですかね? 人によって殺戮兵器にもなるし、宇宙に行くための翼にもなるし、競技用の道具にもなる」

「そうだね、そのt「ですが」え?」

「【IS】自体の紹介の仕方が仕方ですけどねぇ。はっきり言ってデモンストレーションがへたくそです」

「え?」

「そもそも【白騎士事件】自体間違いだったんですよ。・・・【篠ノ之束】さん」

「え?!」

「・・・いつ気づいてたの?」

「あなたに会った時から。私って意外と情報通ですからね。あなたのことも知ってるんですよ」

「そうなんだ。で、あの事件の何が間違いだって言うんだい?」

「じゃあよく聞いといてください。そもそもあなたは宇宙に行くためだけにISを開発した。それは私は知ってますし、その夢自体は認めましょう。だが、そんな夢は皆に理解されなかった。逆に鼻で笑われた。むかついたあなたは軍のミサイルをすべてハッキングして日本の空ですべて撃ち落とさせた。それが【白騎士事件】の真相だ。」

「そう、だったんだ・・・」

「・・・」

更識簪が呆然としたようにつぶやく。そして篠ノ之束本人はにらみつけるように結月ゆかりを見ていた。

 

「ですが、犠牲者0というのは大嘘です」

「「え?」」

「実際にはミサイルの破片でたくさんの人が大けがしたり、死んだりした。家族を失った人もいた。そんな情報すべてを政府が握りつぶしただけで。そしてさらには織斑千冬をモンド・グロッソから引きずり落とす、・・・いや、勝たせないようにするために織斑一夏は誘拐された。あの時、ドイツZECT第3部隊がもう少し遅れていたら死んでいたかもしれないんですよ。

・・・あなたは、何を思ってあの時ミサイルをすべて撃ち落とさせたのか、今、説明してもらえますか?」

「・・・許せなかったんだ」

「聞こえませんよ」

「許せなかったんだよ!」

束が叫んだ瞬間、雨が降り始めた。

 

「私の夢を鼻で笑ったやつが許せなかったんだよ! 自分たちだけじゃ何にもできないくせして! 私の世紀の発明を理解せずに鼻で笑うやつらが!」

「だったら理解されるまで言い続ければいいじゃないですか」

「そんなことしてて何になる! 結局無駄なんだよ!」

「じゃあ、あなたの培ってきた努力も無駄なんですか?」

「・・・それは」

「・・・あなたにも理解者がいたから理解されないことに余計にむかついたんじゃないんですか?」

「・・・」

「少なくとも私は理解してますよ」

「え・・・」

「私は理解してますよ。あなたの【夢】」

そう言いながら彼女はフッと笑って雨が降る空を見上げた。

 

「不思議ですよね、【夢】って」

「?」

「追っかけてる間はすっごく熱くて、終わったら急に冷めちゃうんですから」

そう言いながら彼女は束を見た。その目に光はともっていなかったが驚くほどまっすぐで、さすがの束もたじろいでしまった。

 

「質問、していいかな?」

「どうぞ」

「なんでM.R.Sを使ってるの? あなたの適正ならISに乗っても大丈夫じゃん」

「・・・嫌なんですよ」

「え?」

「嫌な思い出がよみがえるんです。それにISはもともと宇宙に飛ぶための翼です。そんなものを戦いに使いたくないんですよ。・・・ま、結局は私の一人よがりみたいなところはありますけど」

「そう、なん、だ・・・」

そう言いながら束がうつむくと同時に誰かのケータイが鳴った。

すると更識簪が先ほど結城丈二からケータイを取り出すと応答する。

 

「あ、はい。もしもし」

『ああ、簪君。君のISが完成したんだ。早く帰ってきてくれ』

「ああ、はい。わかりました。帰ろう、結月さん」

「え? ・・・ああ、そういうことですか。ハイ、簪ちゃん」

「・・・」

結月ゆかりは更識簪に手をつながれてその場を後にした。そんな光景を一人寂しそうに篠ノ之束は見ていた。

天気はいつの間にか雨がやみ、空には虹がかかっていた。

 

 

続く




おまけ≪カード編≫
【Cockroach】
10秒間加速するカード。要するにアクセルフォーム。




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「シャルル・デュノアです」
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「認めんぞ、お前が教官の弟など!」

「わが魂はぁああああああああ!!!!」

「こっち来ないでください」


次回、『疑惑』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話『疑惑』

前回のあらすじ
一から作り直した結果、トーナメント戦に間に合わないとわかった簪のIS。しかし、M.R.Sの開発者、結城丈二に開発を頼んだ結果、完成することになった。
その間に町でぶらぶらしていた二人はISの開発者、篠ノ之束博士と遭遇したのだ。






あの後、簪ちゃんは完成したISに乗り一次移行と搭乗者登録をし終えてシミュレーションの敵を倒しまわっていた。そして帰ってきたときの顔はすごくうれしそうな笑顔だった。

そして次の日の今日、教室に入るとまたもや何か騒がしかった。

 

「月影さん」

「あら、なにかしら?」

「なんでこんなに騒がしいんです?」

「どうやらね、転校生がまた二人来るみたいなのよ」

「また?」

こんな時期に転校生ですか・・・。何か陰謀を感じます。

そんなことをしているうちに織斑先生がやってきたので私たちは席に着きました。

 

「今日は新しいお友達が増えますよー。さ、中に入ってください」

そう言って山田先生は顔を廊下に向ける。それにつられてクラスメイト全員がドアに顔を向けた。

 

「・・・男子?」

そうつぶやいたのは誰でしょうか。入ってきたのは金髪の・・・男、でいいのかな?

 

「き、」

『『『キャァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』』』

クラス全体が叫び声に包まれました。とてもうるさいです。というより…

 

「あれ、絶対男じゃないでしょう・・・」

よく見たら男じゃないですよ、アレ。確かにスポブラでごまかしてますけど・・・。絶対B以上胸ありますよあれ。それにもう少し態度かえたらどうですかね。あれじゃあ女だって言ってるようなものじゃないですか。

 

「静かにしろ」

鶴の一声とでもいうのでしょうか。織斑先生がそう言うと皆一気に黙りました。さすがは腐ってもブリュンヒルデというところでしょうか。

 

「自己紹介だ。デュノアから」

「はい。初めまして、僕の名前はシャルル・デュノア。これからよろしくね」

動作の一部一部が女性のそれですが皆様は全然気づいていないようです。というよりなんで男装する必要があったんでしょうか・・・。ちょっと後で調べてみましょうか・・・。

 

「ラウラ」

「ハイ、教官」

ん? 名前呼び? ということは何か以前に交友があったのでしょうか。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。以上」

短いですね。友達ができなさそうな性格してると一目でわかります。それにあの眼帯は何のためにつけてるんでしょうか。

すると彼女はとことこと歩き始めました。そして織斑さんの前で立ち止まりました。

 

「な、なんd「ふん!」げぶぅ?!!」

おお、胴と腰が入ったいいビンタですね。見事に紅葉のマークができてますよ。

 

「な、なにすんだよ!」

「認めんぞ、お前が教官の弟など!」

・・・まためんどくさいことが起こりそうな予感がしました。

 

 

 

 

しばらくして。

 

 

 

 

着替えをしなくてもいい私はいち早く教室から出ていった。途中で織斑さんとデュノアさんが追いかけられているのを見かけましたが割とどうでもよかったのでスルーしました。そして今はグラウンドで体をのばしていました。

 

「お前か」

そう言いながら織斑先生はグラウンドに参上しました。

 

「・・・」

「・・・」

お互い話すことがないので黙りこくっています。沈黙がこの場に降りかかりました。

 

「・・・なぁ、結月」

「・・・なんでしょう?」

そんな沈黙を振り払うように織斑先生が声をかけてきました。私としてはこの沈黙の居心地が悪いというわけではないのですが返事しなかったらまた後で何を言われるかわかったものじゃないので一応返事しておきます。

 

「お前の機体についてなんだが・・・」

「答える気は一切ありませんよ」

「そうか・・・」

再び沈黙がその場を覆いました。太陽が照ってきてますが私にとっては曇りでも晴天でもそんなに変わらないです。

いやー、それにしても・・・。

 

「いい天気ですねぇ・・・」

「・・・この空気でよくそんなこと言えるな」

そりゃあ、慣れてますから。ただ、こんな晴天は私にはまぶしすぎますがね。

 

「おや、皆様来てるみたいですよ」

「知ってると思うが、今日は1組と2組の合同授業だぞ」

「え?」

「え?」

ま、冗談ですけど。私は少しにやりと笑う。

 

「そういえば、山田先生の姿が見えませんねぇ・・・」

「・・・そういやそうだな」

 

 

「どいてくださいぃいいいいいいいいい!!!」

 

 

『『『え?』』』

全員が声のした方向を向きました。そこには

 

 

 

 

「ひ、ひゃあああああああ」

 

 

 

 

なぜか操縦不能になって落ちてくる山田先生の姿が!

そしてそのまんま織斑さんのほうへ落ちていきます。

 

「え?! こっち来てる?!」

「わが魂はぁああああああああ!!!! IS学園とともにありぃいいいいいいいいい!!!!」

 

ドガーンッ

 

「ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

あ、織斑さんが失恋した矢車さんのように吹っ飛ばされた。

 

「織斑君――――?!」

「一夏ー!」

「ぐぅううう・・・! 笑え、笑えよ…!」

「アッハッハッハッハッw」

「ホントに笑うやつがあるかよ!」

「笑えと言ったのはそっちの方じゃないですかw」

「そりゃあそうだけどよ・・・」

ま、これくらいにしときましょう。

私はそう思いながらベルトのふたを開けてハーゼちゃんを呼び出すとそれを掴みます。

 

「変身」【HENSHIN】

 

そうつぶやいてベルトに差し込むと音声が流れて装甲が展開される。

そして展開し終わると音声が流れました。

 

【CHANGE! HAZE!】

 

『フー・・・』

私は少し息をつくと腕をぶらぶらさせる。

するとデュノアさんとボーデヴィッヒさんの目が少し興味深そうな色になったのを感じた。・・・まずいな、興味持たれちゃったか。

 

「おい織斑、凰、デュノア、飛んでみろ。そして一気に降りてみろ。10cmが限度だからな」

「「「はい」」」

そう言われて3人は返事すると上空に浮き始めた。

・・・うん、普通に飛んでいればただの空を飛べる安全なパワードスーツですよね、ISって。

 

「おい、織斑! 白式は他のISより性能がいいからすぐに追いつけるだろ!」

『まだ慣れてない人に無茶なことを言うもんですねぇ(ボソッ』

「よし、降りて来い!」

そう言われると2人は徐々に降りてきた。ただ織斑さんがすごい勢いで落下してきました。

 

「ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 

 

ドガーンッ

 

 

・・・あーあ、でっかい大穴が開いちゃいましたね。

 

「後で埋めておけよ、織斑」

「はい・・・」

「さて、今からグループを組んでもらう。皆好きなやつと組め」

そう言われると皆さんは好きな人たちと組み始めました。私は誰と組みたいというのはありませんので少しぶらぶらしていたら織斑さんとデュノアさんがやってきました。

 

「おい、結月さん」

『・・・なんですか?』

「一緒に組もうぜ」

『・・・理由は?』

「デュノアがあんたと組みたいんだってさ」

私がデュノアさんの方に目を向けるとどう見ても女性の動きをしている彼女の姿がありました。だから演技をもう少しまともにしたらどうですか。そんなんじゃいずれ近いうちにばれますよ。私にとっては知ったこっちゃあありませんけど。

ま、とりあえず・・・。

 

『こっちから願い下げです』

「「は?」」

『とにかくこっち来ないでください』

そう言いながら私は少し距離を取ります。すると織斑さんが少し怒ったような表情になって私に詰め寄ってきました。

 

「なんでだよ!」

『なんか嫌なんですよ。あと、あなた方そうのんきにしてていいんですか?』

「「え?」」

私が二人の後ろを指さすとそこには鋭い眼光をして今にもとびかかりそうな雰囲気をまとっている1、2組の人たちが!

 

『じゃあ頑張ってくださいね』

「え?! ちょ、助けて!」

『嫌です。どうも、月影さん』

女子たちにもみくちゃにされている二人から離れながら私はぽつんと立っている月影さんのそばによって声をかけます。

すると月影さんはじっとこちらを見つめてきました。

 

『・・・どうしたんですか?』

「・・・あなたの機体、結構年期はいっているように見えるわね・・・」

『気のせいじゃないですか?』

そりゃあ3年間使ってたら傷も入りますって。・・・そういやこの機体も3年使ってるんですよねぇ。

 

「それにしても、織斑君達も災難ね・・・」

『ええ、そうですね』

「ま、私たちは今のうちに訓練しましょうか」

『そうですね。ああ、そういえば』

「?」

『私のルームメイトのISが完成したんです。それで実践的なことをしたいのですが、協力してくれますか?』

「ええ、いいわよ。友人の頼みだから」

『そう言ってくれてありがとうございます』

私はそう言って握手しました。多分その時の私の表情は笑顔だったと思います。しかし、仮面のせいで相手には見えなかったでしょうけど。

 

「おい、貴様」

するとボーデヴィッヒさんが声をかけてきました。

 

「『?』」

「私と戦え」

『お断りします』

訓練するならまだしも戦えとなると話は別です。

 

「何故断る」

『戦う理由がないです』

「貴様にはなくとも私にはある」

うわ、すごくめんどくさいタイプだ、こいつ。

 

『じゃあ理由は何ですか? 内容によっては断りますよ』

「お前の機体には興味がある。だから私と戦え」

『では断ります』

「何故だ」

『そんな理由で戦うほど、私は戦闘狂じゃないですよ。そんなに戦いたいんだったらSSにでも戻ってろ』

「なんだと?」

うわ、なんか沸点低すぎません? たかがナチスネタもってきただけじゃないですか。

 

「貴様、もう一回言ってみろ」

『戦いたいんだったらアルゲマイネSSにでも戻ってろ。ハッ』

「貴様ぁ!」

『おっと、ここで暴れてもいいんですか? 織斑先生の目があるここで』

「くっ・・・!」

「人をおちょくってその上で周りを利用して難を逃れる・・・。嫌いじゃないわよ、そのやり方」

『月影さん、行きましょう。こういうのはほっとくのが一番です』

そう言って私は月影さんを連れてその場を離れました。

 

その後、布仏さんとゆかいなお友達が入ってきて訓練はすごく有意義だったということだけ言っておきます。

 

 

 

続く




おまけ≪カード編≫
【Grasshopper】
使うと一定時間脚力が強くなる。




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「何してるんです?」

『…クロックアップ』

『お前みたいなやつがISを使うから・・・!』

「私のレーゲン、返してくれよぉ!」

「おい、やめてやれよ!」

「何故です教官!?」

「話は聞かせてもらったぞぉ!!」


次回、『独逸』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13話『独逸』

前回のあらすじ
1組に突如入ってきたドイツとフランスの代表候補生。二人とも何かわけありのようだった。
そして1,2組の合同授業でラウラにケンカを吹っ掛けられたが、見事にバカにした上で難を逃れたのであった。






「何してるんです?」

 

 

声が響いた。しかしその声はあまりにも冷たく、背筋に寒気が走るどころか底冷えするような感覚に陥った。

ラウラ以外の全員が頭の中で危険信号が鳴り響いていた。

しかし当のラウラは声のしたほうを向くとニヤリと笑って言った。

 

「何をしているか、だと? 見てわからないか? 今はふぬけているこいつらに心構えの違いを教えてやっていたところだ」

彼女はそれを聞くと無言でベルトを腰に巻き付けた。そしてどっからともなく跳んできたゼクターを掴むとつぶやいた。

 

「変身」

そしてベルトのふたを開けると差し込んだ。それと同時に音声が鳴り響く。

 

 

【HENSHIN】

 

 

するとベルトから体にかけて装甲が展開されていった。そして展開し終わるとまた音声が鳴り響く。

 

 

【CHANGE! HAZE!】

 

 

すると彼女はベルトの左についているボタンに手を伸ばすとつぶやいた。

 

『…クロックアップ』

 

そしてボタンを押した。

次の瞬間、ラウラは壁にたたきつけられていた。

ラウラは何が起こったのか理解できなかった。ただ叫んだ。

 

「な、なんなんだ貴様は!」

困惑と焦燥が同時に頭の中に混在していた。彼女は自分と同じ代表候補生を二人同時に相手して叩きのめしたところだった。そして()が来た。

彼女は軍人だった。よって誰よりもISに特別な思い入れがあった。自分は誇り高きドイツ軍人だ。そう思っていたし、自負もしていた。

しかし、その思いは、プライドは見事に打ち砕かれた。

たった一人(・・)の手によって。

 

 

『・・・』

 

 

彼女は表情が変わることのない仮面の下からじっと彼女を見つめていた。ただ雰囲気は怒っているように感じられた。

なぜこんなに結月ゆかりは怒っている(・・・・・)のか、それを知るには少し時間をさかのぼることになる。

 

 

 

 

 

時間さかのぼり。&視点変更。

 

 

 

 

 

放課後、教科書を整理して廊下を出るとゆかりさんが壁にもたれて待っていた。

 

「お疲れ様です、簪ちゃん」

「うん、お疲れ様」

「というわけでアリーナで実践的なことをしましょう。ホログラムの敵を倒すだけじゃわからないこともありますからね。そのために友達に協力を取り付けました」

「うん、いつもありがとね」

「いえいえ、いいんですよ。だって"友達"じゃないですか」

そう言うゆかりさんの顔には笑顔があった。皆から「怖い」とかなんとかかんとか言われてるゆかりさんだけど根っこはすごく優しくて気の回る人だと思う。

 

「で、その友達ってどんな人なの?」

「すごくいい人ですよ。それn「結月ちゃん!結月ちゃん!」どうしたんですか? 月影さん」

すると向こうから黒くて長い髪に黄色のメッシュが入った人がやってきた。・・・なんだ、あの胸は。

というよりあの人がゆかりさんが言っていた"友達"なのかな?

 

「大変なの! 第3アリーナでボーデヴィッヒちゃんと凰ちゃんがケンカしててそれをオルコットちゃんが止めに入ってもう大騒動なの!」

「なんですって?」

「それでもう収拾がつかなくなっちゃってるの! どうすればいいと思う?!」

「・・・なんでこうも面倒ごとが舞い込んでくるんでしょうね、私たちは」

そう言いながらゆかりさんはため息をつきながら頭に手を置いた。

 

「・・・で、どこなんですか? 第3アリーナは」

「あら、止めに行くの?」

「そのまま放っておくわけにもいかないでしょう? 本当は首を突っ込みたくないですが周りに被害が出るのであれば話は別ですから」

「わかったわ! ついてきて!」

「行きますよ、簪ちゃん」

「う、うん」

この時、私は予想だにしていなかった。まさかあんなことになるなんて。

 

 

 

 

しばらくして。

 

 

 

 

「ここよ!」

「そうですか」

そう言いながら二人はアリーナへ入って行く。私も後ろについて行った。

そこには・・・

 

「ぐっ・・・!」

「この程度、か・・・」

 

生身のオルコットさんを掴んでいるISをまとった・・・誰だあの人?

 

「えっと・・・月影、さん?」

「何かしら?」

「あれ、誰ですか?」

「あれがさっき言ってたラウラ・ボーデヴィッヒよ。あれでもドイツの代表候補生らしいわ」

「そう、なんだ・・・」

なんかイメージしてたのと全然違うなー。

そして私たちはふとさっきから全然言葉を発しないゆかりさんを見た。

私たちは絶句した。なぜなら

 

「・・・」

 

ゆかりさんの顔から表情が抜け落ちていたからだ。

 

「何してるんです?」

その声を聴いた瞬間、私たちは凍えるような感覚に襲われた。そして理解した。

 

ゆかりさんは今怒っている、と。

 

そんなことも多分理解できてないであろうボーデヴィッヒはこちらをくるりと向くとなぜかにやりと笑って言った。

 

「何をしているか、だと? 見てわからないか? 今はふぬけているこいつらに心構えの違いを教えてやっていたところだ」

するとゆかりさんは無言でベルトを腰に巻き付けた。そしてハーゼちゃんを呼び出してつかむとつぶやいた。

 

「変身」

そしてベルトに差し込んだ。ただその声は怒りを抑え込んでいるように感じた。

 

 

【HENSHIN】

 

 

ベルトから体にかけて装甲が展開されていく。そして装甲が展開し終わるとおなじみの音声が流れた。

 

 

【CHANGE! HAZE!】

 

 

するとゆかりさんは左側についているボタンに手を伸ばすとつぶやいた。

 

『…クロックアップ』

そしてボタンを押した。

次の瞬間、ボーデヴィッヒは壁にたたきつけられていた。そしてボーデヴィッヒのいたところにゆかりさんがたっていた。

ボーデヴィッヒは起き上がった。しかし、何が起こったのか理解できていないような表情で叫んだ。私たちも理解できていないけど。

 

「な、なんなんだ貴様は!」

『・・・』

ゆかりさんはそれに答えない。ただじっと彼女を見つめていた。

するとゆかりさんは彼女に向かってゆっくりと歩き始めた。まるで今からどうやって相手を殺そうか、算段を立てているようだった。その姿はさながら"死神"のようだった。

 

「クッ・・・!」

恐怖心からなのだろう。彼女は大砲をゆかりさんに向けた。

 

【Rider_Kick!】

 

すると音声が鳴り響き、ゆかりさんの左足が赤紫色の電流を帯び始めた。

 

「くたばれぇ!」

そう叫びながら彼女は砲弾を発射した。するとゆかりさんは少し構えると砲弾を回し蹴りではじき返した。赤紫色の電流を帯びた砲弾はそのまま彼女に向かっていき、直撃した。そして彼女は爆発に巻き込まれた。

横に吹っ飛ばされた彼女は地面に這いつくばる。そして強制的に待機状態になった彼女のISはゆかりさんの足元に転がった。ゆかりさんはそれを拾うと憎々しげにつぶやいた。

 

『・・・お前みたいなやつがISを使うから』

そう言って待機状態のISを握る手に力が入ったように見えた。

 

『お前みたいなやつがISを使うから・・・!』

さっきより少し大きな声で言うとISの握る手が少し震え始めた。

・・・もしや。

 

「やめて、ゆかりさん! 壊そうとしないで!」

ゆかりさんはもしかしたら彼女のISを破壊しようとしているのかもしれない。だが、それをしてはいけない。それをしたらゆかりさんはIS学園をやめさせられるかもしれない。せっかくの友達をここで失うのは嫌だ!

 

「私のレーゲン、返してくれよ!」

そう叫びながらゆかりさんに縋りつくボーデヴィッヒ。さっきまでの威勢はなく、今はただただ懇願する女の子と化していた。ゆかりさんはそんな彼女をじっと見つめる。

 

『・・・自分のISがなくなったら惜しげもなく敵に対して懇願か。軍人もここまで来たらおしまいだな』

そうつぶやいたゆかりさんの言葉には皮肉は含まれていなかった。ただ、失望したような感じの声だった。そしてあまりにも冷たかった。

 

「おい、やめてやれよ!」

そこに織斑一夏が入ってきた。そして後ろには・・・誰だあの人?

 

「月影さん」

「ええ、わかってるわ。織斑君の後ろに入る子は誰?って聞きたいんでしょう」

「はい」

「あの子はシャルル・デュノア。最近1組に入ってきた二人目の男性操縦者兼フランス代表候補生とはあの子のことよ」

「へぇ」

私はそう返事しながらじろじろとデュノアさんを見る。

 

「・・・男には見えませんね」

「あなたもそう思う? 実をいうと私もなのよ」

「なんでそう思うんです?」

「だって、男性操縦者と言ったら織斑君の例もあるからもっと騒がしくなるはずでしょう?」

「・・・ああ、確かにあまり騒がれませんでしたね」

「そしてもう一つはあの態度と動きよ。見なさい、あれを」

「?」

「男性にしてはあまりにもくねくねしすぎでしょう?」

「・・・オカマじゃないんですか?」

「私もその線は考えたわ。だけどそれにしては股間の盛り上がりがあまりないのよ」

「どこ見てんですか?!」

私は思わず突っ込んだ。

 

「男装してるんじゃないかしら?」

「じゃあなんで男装してるんですか?」

「性同一性障害でもなさそうだし、何か家族の方で事情があるんじゃないかしら?」

「ああ、あまり深入りしないほうがいい奴ですか・・・」

「ええ」

そんなことを話してる間にも私たちの周りのことは進んでいた。

 

『・・・なんだ貴様』

「そいつ泣いてるだろ?! なんでそんなことすんだよ!」

『・・・こいつが間違った使い方をしていたからだ。それで生身の人間に詰め寄った。そんな人間に同情の余地なんてないだろう』

そう言いながらゆかりさんは織斑一夏を仮面の下から見た。二人の間に嫌な空気が漂う。

 

「とにかく! 人を泣かすのはだめだ!」

『こいつも人を泣かしたんだぞ。それ相応の報いを受けるのが筋合いというものだろう』

「それでもだめだ! それでもそいつのISを離さねぇのなら…」

そう言いながら織斑一夏はISを展開した。

 

「俺がお前を止める!」

『その実力でか?』

「ああ!」

『やれるもんならやってみろ』

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

そう叫びながら突っ込んでいく織斑一夏。するとゆかりさんはボーデヴィッヒを突き放してハーゼちゃんをいじる。

 

【Rider_Jump!】

 

するとゆかりさんは思い切り跳びあがって一閃をよけると足を思いきり上下に開脚する。・・・関節柔らかいね、ゆかりさん。

そしてそのまま右足のかかとが織斑一夏の肩に直撃する。

 

「えっ?!」

びっくりしている織斑一夏をよそにさらにハーゼちゃんをいじるゆかりさん。するとさらに音声が流れた。

 

【Rider_Kick!】

 

『オラァ!』

するともう片方の足で思い切り蹴り飛ばす。そして織斑一夏は壁にたたきつけられた。

 

「がはっ・・・!」

『邪魔をするな』

ゆかりさんは痛みで悶絶している織斑一夏に対して吐き捨てるように言った。

 

 

「何をしている」

 

 

するとそこに天下の織斑先生がやってきた。どうやら誰かが呼びに行ったらしい。というより来るのが遅いですよ、先生。

 

「何をしている」

『・・・』

するとゆかりさんは持っていた待機状態のISを織斑一夏に投げつける。そして言った。

 

『だったらあんたが返せ。この優柔不断野郎』

そう言いながら彼女はこっちに向かって歩いてきた。仮面のせいで表情は全く分からなかったけれど、私にはゆかりさんが泣いている(・・・・・)ように見えた。

 

「おい、結月。一体何があった? お前達とラウラとの間に何が・・・」

『・・・』

ゆかりさんは織斑先生にも目をくれず通り過ぎた。

 

『・・・」

「「・・・」」

ゆかりさんは途中で変身を解除したけど、フードをかぶっていたせいで表情は全く読み取ることはできなかった。

 

「・・・あの、ゆかりさん」

「結月ちゃん・・・」

「ごめんなさい、二人とも。言いたいことがあるのはわかるんですけど、今は一人にしてくれませんか?」

そう言ってゆかりさんはとぼとぼと歩いて行った。私たちはその哀愁漂う背中を見つめることしかできなかった。

 

 

 

 

しばらくして。&視点変更。

 

 

 

 

私はクロックアップを使ってしまったという自責の念に駆られながら歩いていました。すると角から何やら大きな声が聞こえてきたのですぐに壁際によってじりじりと近づきます。そしてそっと覗くとそこには何か言い争いをしているボーデヴィッヒさんと織斑先生がいました。・・・保健室に行かなかったんでしょうか?

 

「何故です教官!? なんでこんなところにいるのですか!」

・・・何か知れるいい機会かもしれませんね。

 

「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ…」

「こんな極東の地で何の役目があると言うのですか!? お願いです教官! 我がドイツで再びご指導を!!」

・・・なるほど、そういうことか。つまり、織斑先生はドイツで彼女の教官をしていた時期があったと・・・。おそらく第2回モント・ブロッソの後のことでしょう。

 

「大体ッ!この学園の生徒など、教官が教えるに足る人間ではありません!! 危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている! その様な者達に教官が時間を割かれるなどッ!!」

なんだと貴様。貴様こそISを本当に理解してないではないか。ISは戦争の道具じゃないんだぞわかってんのか。

 

「そこまでにしとけよ小娘」

「ッ?!」

「少し見ない間に偉くなったな。十五歳でもう選ばれた人間気取りとは、恐れ入る」

「そ、それは」

「確かにお前から見れば、この学園の生徒は下に見えるだろうな。だがな、お前はなめすぎだ。ここでは最低でも何人か、お前以上に教える価値のある奴らが存在する。結月ゆかりがいい例だ」

・・・ん?

 

「なっ! あんな奴のどこに強さがあるのですか! 人をバカにするような奴が!」

「あの時のことか。その時の話は聞いている。お前はバカにされる前に勝負を振ったそうではないか」

「うっ・・・!」

「それに、ここではある意味でドイツ以上に力を出せるからな。気楽でいいものだ」

「なっ・・・! 我々のどこに不満があったのですか?! 教えていただければすぐに・・・!」

「何もお前らに不満があったわけではない。・・・気に入ったのだ、ここの生徒をな」

「・・・!」

「もう寮に戻れ。私は忙しい」

「・・・失礼しました」

そう言って一礼するとボーデヴィッヒさんはこちらに走ってきた。そして私と鉢合わせした。

 

「貴様!」

「やぁ、どうも。奇遇ですねぇ」

「聞いていたのか」

「・・・」

「聞いていたのかと聞いている!」

「・・・その質問に素直に答えるとでも?」

「なっ・・・!」

「で、もうそろそろ帰ったらどうですか? 織斑先生の言うことは絶対なんですよね?」

そう言いながら私は口元を手で隠しながらクククと笑う。

 

「くっ・・・! 覚えていろ!」

「いやですよめんどくさい」

「その減らず口をいつか叩き潰してやる!」

「やれるもんならやってみろ。"誇り高き"ドイツ軍人」

「・・・!」

彼女はきっと睨みつけながらそのまま走って帰って行った。

 

「・・・さて、と」

「そこの女子生徒、盗み聞きとは感心せんな」

「やっぱりばれてますよね。あんなに大きな声であの人騒ぐんですもん」

「なんのつもりだ」

「いや、特に何も。あなた方二人の関係を知りたかっただけですよ」

「・・・そうか。早く帰れ。もうすぐ時間だぞ」

「その前に一つ言っておきましょう」

「?」

「ボーデヴィッヒさんはあなたにある意味とらわれてますね」

「・・・なんだと?」

「あなたにあこがれているあまり、彼女の中であなたが足枷になっている可能性が非常に高いと私は見ました」

「・・・もしそうだとすれば、私はどうすればいい?」

「知りませんよそんなこと。自分で考えてください」

「・・・」

「自分で考えてこそ前に進めるんです。人に教えられてばっかりだと脳みそ腐りますからね」

「・・・そうか、そうだな」

「じゃあ私はこれで」

私は織斑先生に背中を向けて去って行った。

私が寮に帰る途中、顔にガーゼを貼っているオルコットさんと凰さんを見つけました。

 

「どうも、お二人方。調子はどうですか?」

「最悪よ! あいつったら急に吹っ掛けてきたと思ったら私たちのISボコボコにしたのよ?! マジ信じらんない! ・・・後、助けてくれてありがと」

「あまりよろしくはないですわね。あの時結月さんが来てくれなかったら更にまずい状況になっていたと思いますわ。ここでお礼を言わさせてもらいますわ」

「代表候補生に礼を言われるとは光栄ですね。めったにない機会じゃないですかこれ?」

「「・・・そう(かしら)?」」」

「そうですよ。あなた方はもうちょっと自分が代表候補生であることに誇りを持つべきですよ」

私はそう言いながら二人の背中をさする。

 

「ところで質問はよろしくて?」

「? 答えれる範囲なら」

「なら聞きますわ。あの時ボーデヴィッヒ嬢を懲らしめたときのあれはいったいなんですの?」

「それ私も聞きたかった!」

「・・・それに関しては今は答えれません」

「そうですの・・・」

「でもいつかは答えますよ。・・・その時が来たら、ですが」

「ではその時が来るまで待ちますわ」

「ハハハ、できれば忘れてくれればうれしいですね。じゃあまた明日」

「「バイバイ(ごきげんよう)」」

私は二人と別れました。そしてまたしばらく歩いているとデュノアさんと鉢合わせしました。

 

「あれ? デュノアさん何してるんですか?」

「ウェ?! い、いや、ちょっと飲み物を買いに行ってたとこだよ」

「ふーん・・・」

私はデュノアさんの耳元に口を寄せてボソッとつぶやきました。

 

「・・・ばれないといいですねぇ、特に織斑一夏に」

「?!」

「じゃあ私はこれで」

そう言って私はそそくさとその場を離れました。

そして私は部屋にたどり着きました。

 

「お帰り、ゆかりさん」

「・・・ただいま、簪ちゃん」

私はようやく簪ちゃんと目線を合わせることができました。

 

「アリーナ、大会まで使えなくなったって」

「そう、ですか・・・」

私は簪ちゃんの横に座りながらぼやきます。

 

「じゃあどうやって訓練するんですか」

「さあ・・・。もう祈るしかないんじゃないかな?」

「う~ん、困りましたね」

私たちはハァとため息をつきました。その次の瞬間、

 

 

 

「話は聞かせてもらったぞぉおおおお!!!」

 

 

 

「「ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア?!!!!!!!」」

「ゲブゥ?!」

あ、びっくりして思わずふんじゃった。で、何がベッドの下から出てきたんだろう。・・・って。

 

「「篠ノ之博士(束さん)?!」」

「何ちゃっかり束さんって言ってるの結月ちゃん。まあ、別にいいけどさ・・・」

そう言いながらよいしょとベッドの下から下半身を出してきた。

 

 

 

 

しばらくして。

 

 

 

 

「うん、私が悪かったよ。さすがにお茶目が過ぎちゃったかなーって反省してるよ。だけどね?」

「・・・(ツーン」

「けがに対する処置がすごく雑じゃない? 私これ全然見えないんだけど。ねぇ、そこの水色の子」

「簪です」

「じゃあかんちゃん。私今どうなってる?」

「みかんみたいです」

「それ絶対ぐるぐる巻きって意味だよね? 絶対オブラートに包んで言ってるよね」

「・・・プフッ」

「笑ってんじゃねぇぞコラ」

「で、なんで篠ノ之博士が来たんですか?」

「ああ、そのことね。じゃあ教えて進ぜよう」

「お願いします」

「訓練したいんだよね?」

「ええ」

「その場所、私が確保してあげてもいいよ~」

「「ホントですか?!!」」

「ただし」

「「?」」

「あの時の瞬間移動、説明してくれたらね~」

「・・・その技術、盗用したりしませんよね?」

「できると思う?」

「ええ、思いますよ」

「残念ながらできないんだな~これが」

「何故です? あなたぐらいの技術者だったらできるでしょうに」

「そもそも土台が違うからね~、できないよ」

「・・・今回はその言葉を信じますよ。もしも盗用したらどんな手を使ってでもあなたを殺しに行きますからね、覚悟してくださいよ」

「君の場合本気で殺しに来そうだから少し怖いんだけど」

「そうですか。じゃあ説明させてもらいます。あの時のあなた方にとっては瞬間移動に見えたあの現象」

「「ゴクリ」」

「・・・クロックアップです」

「「くろっくあっぷ?」」

「・・・説明すればすごく長くなりますし面倒なんですが、それでも聞きたいですか?」

「「うん」」

「・・・タキオン粒子ってご存知ですか?」

「うん、知ってるよ。光以上の速さで動く粒子のことでしょ?」

「ええ。すごく簡略化して尚且つわかりやすく言うとするならクロックアップはそれをまとって10秒間高速移動するギミックなんです。使用している間は周りの者が何もかもすごく遅く動いているように見えるんです」

「じゃあものすごい高速移動ってこと?」

「いや、違いますよ」

「「え」」

「それだったらものすごく頑張れば見えるじゃないですか」

「確かに、カメラの映像をハッキングしてスローモーションで再生しても見えなかった・・・」

「・・・その言葉は聞かなかったことにしておきますよ。で、高速移動とはまた違うんです」

「じゃあ、どういうことなの?」

「私が考えるに"周りとは違う時間軸に移動する"と言った方が正しいと思うんです」

「じゃあ、時間軸を移動するってどういうことなの?」

「・・・すみません」

「「え?」」

「実をいうと私もよくわからないんです。このギミック」

そういうと二人ともずっこけた。

そしていち早く起き上がった束さんは言った。

 

「と、とにかく、それを使えば目にもとまらぬ速さで動けるわけだ」

「はい、そういうことになりますね」

「反則じゃん、それ・・・」

「だからあの時、ボーデヴィッヒさんが急に吹っ飛ばされたわけだ・・・」

「だったらなんでいつも使わないのさ」

「・・・ダメなんですよ」

「「え?」」

頭の中でここ3年間の思い出がよみがえる。私は震えだす手を必死に抑えながら言う。

 

「それをやたらむやみに使えば、聞かなければいけない声も聞き逃してしまう・・・! 全てを置き去りにしてしまうんですよ・・・!」

「お、落ち着いて」

「ご、ごめんね。なんか嫌な思い出を思い出させちゃったみたいで・・・」

「い、いえ、大丈夫です・・・」

私は荒くなった息を落ち着けるために息を深く吸い込みました。その間、簪ちゃんは私の背中をさすり、いつの間にか頭にぐるぐる巻きにしておいた包帯をほどいた束さんは頭をなでていました。

 

 

続く




まさかの8000字オーバー。
そして小説内で初クロックアップ使用。
今回は詰め込みすぎてすごく疲れました。
ですが同時にすごく楽しかったです。





次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「ついに来ましたね。タッグトーナメント」

「あら、珍しいコンビね」
「見ててくださいよ。あれ絶対連携できませんから」

「これで終わりだぁあああああ!!」

「う、うわぁああああああ!!!!!」


次回、『大会』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14話『大会』

前回のあらすじ
 鈴にケンカを売ったらしいラウラ。彼女たちを止めるために割り込んだセシリアも鈴とともにラウラに敗北した。

 しかし、その後のラウラの"生身の人間に対してISをまとって詰め寄る"という行為によって駆け付けた結月ゆかりの逆鱗に触れ、クロックアップによって叩きのめされた。

 彼女のISを取り上げた結月と縋りつくラウラ。そして結月を止めようとする一夏。結月と一夏の戦いは結月の勝利によって終わった。その時織斑千冬が参上する。

 待機状態になっているラウラのISを一夏に投げつけた彼女はクロックアップを使ってしまったという自責の念に駆られながらその場を後にしたのだった。








あれから数日たちまして、大会当日がやってきてまいりました。

 

 

「ついに来ましたね。タッグトーナメント」

「そうだね」

「そうね」

私たちはおなじみの第3アリーナで観戦していました。ちなみに私のペアは簪ちゃんです。

 

 

「…おっっしゃああぁああぁああぁあ!!!」「ついにこの日がきたぞぉおおおおおおお!!!」「あぁ、待っていてください織斑先生! 今私が先生の為に勝利を勝ち取ってみせます! そしてあなたのハートをつかんで見せます!!」「フフフ、私はこの時のために6ヶ月前から練習してきた!!! そしてその成果を見せる時が来たぁあああああああ!!!」「【規制音】してやらぁああああああああああああっ!!!」「【P―――――――――――】!!!」

私はそっと簪ちゃんの耳をふさぎました。なんでこんなに殺気わいてんだよこの人たち。すごく怖いよ。

 

 

『皆さん、こんにちわ。この第3アリーナでは実況は私、山田真耶と』

『解説の織斑千冬だ』

『この二人でお送りします。今日は改めてよろしくお願いします』

『ああ。こちらこそよろしく頼む』

 

「あ、織斑先生と山田先生がやるのね」

「そもそも山田先生はともかくとしてあの人(織斑先生)解説できるんですか?」

「ゆかりさん今結構失礼なこと言ったよね?」

さて、なんのことやら。

 

 

『さて、織斑先生。今年の試合は中々に期待できると思いますがどうですか?』

『ああ、確かに今年の1年には専用機持ちが多いからな』

 

「そういう風に持ち込んだのはどこのどいつだ」

「ゆかりさん、そういうのは思ってても言っちゃだめだよ」

あら、ついうっかり口が滑っちゃいました。

 

 

『それに3年は企業や団体からのスカウト、2年は去年から学んできたことの確認でそれぞれ人が来ているからな。まぁ、1年の諸君にはあまり関係ないだろうが上位を目指して頑張ってくれ』

 

「そういや優勝したら織斑さんと付き合えるとか噂が流れてますね」

「・・・確かにそうだね」

「私辞退していいですか?」

「やめて」

「まぁ、たかだか噂よ。気にしないほうがいいわ」

「もしも本当だったら舌を嚙み切って死んでやる」

「「そこまで?!」」

 

『なお、各学年の一位ペアは今大会のラストイベントとしてサバイバルマッチに参加していただきます』

 

「ほう、つまり1年は死ねと・・・」

「どうやったらそういう結論に至るの?!」

「だって経験の差が段違いじゃないですかマジでふざけんな」

「結月ちゃんなら3年生と2年生の先輩も蹴り倒しそうよね・・・」

「・・・」

「否定しないんだ・・・」

「・・・ところで、大会っていつもこんな感じなんですか?」

「さぁ、わからないわ・・・。だけど、そうなんじゃないかしら」

「私お姉ちゃんいるから去年の話は聞いたことあるよ。去年は実況がすごく激しかったらしいんだって」

「へぇ・・・」

私のイメージしてたのと全然違いますねぇ・・・。

 

 

「私はもう少し静かだと思ってたんですが・・・」

「それはもう昔のことよ。私、ISの大会を見に行ったことあったんだけどすごくにぎやかだったわよ?」

「そうですか・・・」

私もまだまだそういうことに関しては疎いということですか・・・。

 

 

「結月ちゃん! あなた体中の穴という穴から黒いもやが出てきてるけど、大丈夫?!」

「大丈夫でしょう。今ちょっと自己嫌悪に陥ってただけですから」

「自己嫌悪に陥ったらそんなになるの?!」

「今回は偶然ですよ」

「「なにが?!」」

すると待合室のほうから声が聞こえてきました。

 

 

「ヒィイイイイイイイハァアアアアアアアアアア!!!!」「っしゃああああああああああああああ!!!!」「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」「震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒートォ!」「ただ優勝あるのみ! それ以外は全てビリィイイイイイイイイイ!!!」「キェエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO↑↑↑!!!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

「私本格的に帰っていいですか?」

「やめて! さすがに私もすごく引いたけどやめて! 簪ちゃんの為にもやめたげて!!」

「放してください! さすがの私でもあんな正気の沙汰とは思えないような狂った空間にいれる自信がありません! というよりあんなに(いろんな意味で)狂った空間見るの初めて見ました!」

実際私の言葉に嘘はありません。昔試験管ベビーの製造&実験場を壊しに行ったことはありましたがそこのリーダーはここまで狂ってはいませんでした。というよりあそこまでヒートアップして狂った人を見るのは今回が初めてです。

 

 

「で、最初は誰と誰のぺアが戦うんでしたっけ?」

「急に話し変えないでよ・・・。えっと確か・・・」

「あ、来たよ!」

私たちはパンフレットから顔をあげるとそこには織斑・デュノアさんペアと篠ノ之・ボーデヴィッヒさんペアがいました。・・・えぇ(困惑)

 

 

「あら、珍しいペアね」

「見ててくださいよ。あれ絶対連携できませんから」

「どうしてそう思うの?」

「あんなお互い自分のことしか考えれない上に引くことを知らないような人間同士がペアを組んでもろくなことにならなかったのを私見たことありますから」

「そうなんだ」

「あ、始まったよ!」

「あ、急に突っ込みましたね」

「しかもそのうえで捕まってるわ。あれ、なかなか厄介だと思わない?」

「思いますよ。何ですかあのチェーン。」

「たぶんあれ1対1を目的としてないんだと思うよ」

「確かボーデヴィッヒさんって軍所属でしたよね。多分、というよりそれが確実に関係してますよね」

「どうしてそんなことが言えるの?」

「良く考えてみてくださいよ。軍隊で隊列組んで敵と戦ってるときに1対1で戦う状況って意外とないでしょ?」

「「・・・あー」」

「たぶん多数対1を目的として作られてるISだと思います。だから拘束するためのチェーンがあるんでしょう。おそらくですが凰さんやオルコットさんもあれでやられた可能性があります」

「なるほど・・・」

「お、そんなこと言ってる間にも進展があったようですよ」

「あ、デュノアちゃんが助けに行ったわよ」

「あれ、もしかしてわざとだったんですかね」

「もしかしたらこれも作戦の内・・・?」

「そもそも剣一本しかないのが最大の問題よね」

「せめて拳銃位は持たせてやってもよかったんじゃないでしょうか・・・」

「・・・持つとしたらどんな拳銃?」

「装甲を破壊するような「はいアウト」なんでですか」

「それ試合で使ったら退場どころじゃ絶対済まないから」

「むぅ・・・」

「そんなふくれっ面してもだめなものはだめだよ・・・」

「ところで破壊って言ってもいろいろあるじゃない」

「そうですね」

「どんなものを想像してたの?」

「まず弾が装甲に突き刺さるじゃないですか」

「「うん(ええ)」」

 

「そして0.3秒くらい経ったら爆発するような…」

 

「「・・・」」

「なんですか、その顔」

私はすごく嫌そうな顔をする二人に突っ込んだ。

 

 

「いや、だって、それ、確実に破壊すること前提じゃない…」

「だから言ったじゃないですか。"破壊する"って」

「そこまで徹底すると逆に引くよ・・・」

「そ、そんなことより試合見ましょうよ。お、篠ノ之さん退場しましたよ」

「いや、あれ、ボーデヴィッヒちゃんからも攻撃受けてるように見えたんだけど・・・」

「おそらく彼女にとっては邪魔だったんでしょうねぇ・・・」

「私、ああいう人嫌い」

簪ちゃんは嫌そうな顔をしながらそう言った。

 

 

「私もあまり好きじゃないですね。目的が一緒の人がいたら何がともあれ手を組んで協力するのが筋合いってものです」

「「え」」

「・・・何ですかその顔」

「いや、だって、ゆかりさんどんな状況でもスタンドプレーしそうなイメージあったし」

「右に同じく」

「私だってさすがに協力はしますよ。いざというときは織斑さんとも組むと思いますよ?」

「・・・(ムスー」

「なんでそんなにふてくされた顔するんですか……」

私はなんでかふてくされている簪ちゃんをなでなでします。するとにへらと表情が緩みました。あらかわいい。

 

 

「これで終わりだぁあああああ!!」

 

「おお!」

「あれが零落白夜、なのね。やはりきれいだわ」

「戦いに下手な綺麗事なんていらないと思いますけどね」

「・・・そういうものかしら」

「そういうものですよ。あ、やられましたね」

「これで終わりね」

「さーて、準備しまs「う、うわぁああああああ!!!!!」な、なんですか?」

私と簪ちゃんが立ち上がろうとした瞬間、急に叫び声が上がりました。

見ると、ボーデヴィッヒさんから青い電流が流れていました。そして急に彼女のISが黒くドロドロしたものになったかと思うとそのまま彼女を包み込みました。そして人型になりました。

・・・もしやあれって。

 

 

「VTシステム…?! クソッ、なくなってなかったのか・・・!」

「なに、VTシステムって?!」

「VTシステム・・・、それは悪魔のシステムと言っても過言ではありません。あれを使うことによって織斑千冬と同じくらいの力を手に入れることができるんです」

「そ、それって・・・」

「ええ、はっきり言えば量産型織斑千冬(ブリュンヒルデ)軍団が作れるわけです。ですがその分、欠点が存在します」

「ど、どんな・・・?」

「使用者の意思、肉体をガン無視することです。そして最終的には使用者を"死"に至らしめます」

「そ、それって!」

「ええ、だからアラスカ条約で"一応"使うことは禁止されてるんですが・・・。どっかの女尊男卑主義者(ボンクラ)もしくは織斑千冬妄信者(能無し)の連中がこっそりと彼女の深層心理に付け込んで搭載したのでしょう。だからみてくださいよ、あそこにいる役人の顔。真っ青ですよ」

私が指さしたそこには顔を真っ青にしてあわあわしている外国人がいた。おそらくドイツのお偉いさんだろう。ざまぁみやがれってんだ。

 

 

「わたしはどうすればいい?」

「月影さんは避難誘導をお願いします。簪ちゃん」

「なに?」

「覚悟できてますか?」

「ここ1年分なら」

「よし、行きますよ」

私は月影さんが避難誘導しに行くのを確認するとベルトを腰に装着する。そしてハーゼちゃんを呼び出す。

簪ちゃんはポーズを決める。

そして私はベルトにハーゼちゃんを差し込みながら、簪ちゃんはポーズを決めながら叫んだ。

 

 

「「変身!」」

 

 

すると私はベルトから体にかけて、簪ちゃんは左手首から全身にかけて装甲が展開されていく。そして展開し終わると私たちは仲良くそろってシールドを突き破って中へ侵入した。

 

 

 

続く




おまけ≪簪ちゃんの変身順序≫
①まず両手を握りしめて合わせる。ちょうどライダーマンがヘルメットを召喚する前動作をイメージしていただければ。
その時に肩幅より少し広げて足は構えておくと尚良し。別に閉じててもかまわないけど。

②次に左腕を右斜め前に突き出す。それと同時に右手首を左ひじの下に添える。ちなみにここで左手の甲は下に、右手の甲は上を向ける。
この時右手首と左ひじはくっつけておいた方が後が楽。

③そしてそのまま左手を右から左へスライドさせるように動かす。その時にひじはそのまま固定しておく。

④そしてそのまま動かしきったら「変身!」と叫ぶ。ちなみに左腕を動かしている最中に「変…身!」と言ってもオールOK。

⑤すると左手首に装備されている腕輪から装甲が展開されていき、展開し終わると変身完了。




ちなみにラウラ&モッピーVS一夏&シャルの描写も書こうかな、と思ったけどやめた。




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「放せ! 俺がやるんだ!」

『そんな理想とかかかげてるから弱いままなんですよ。この理想主義のおぼっちゃまくん』

『やっぱり織斑先生は伊達じゃないね・・・!』

『生きたいか?』
「生き・・・たい・・・!」

『私は弱い者の味方ではありません。生きたいと願う者の味方です』


次回、『模倣』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

15話『模倣』『真実』

前回のあらすじ
 始まったタッグトーナメント戦。その第一試合でラウラ・箒ペアと一夏・デュノアペアは勝負することとなった。
 そしてとどめの一発を叩き込まれた時、ラウラのISは黒く溶解し、彼女を飲み込んでいった。
そしてそれは、禁断のシステム、"VTシステム"だったのだ。










前回、次回予告を『模倣』だけにしていたのですが、それだけだとあまりにも短かったので続けて書くことにしました。そこのところをご了承ください。
では、始まります。





『模倣』

 

 

 

「放せ! 俺がやるんだ!」

「だめだよ! 今のシールドの残量で何ができるのさ!」

 

私たちがシールドを突き破って中へ侵入するとそこにはなぜか雪片弐型をもって生身で突撃しようとしている織斑さん(バカ)とそれを必死になって羽交い絞めして止めているデュノアさん(男装スパイ)がいました。

 

『…何してるんですか?』

「ああ、聞いてよ結月さん! 織斑君がボーデヴィッヒさんが急に変形したと思ったら狂ったように攻撃しようとするんだよ?! そして僕たち解除されちゃったんだけど、それでも話聞かなくて…!」

『・・・ふーん』

「興味なさげ?! まるで他人みたいに!」

『他人事ですからね。・・・デュノアさん』

「な、なに?」

『そのまま羽交い絞めしていてください』

「う、うん」

『・・・フン!』

「ゲブゥ?!!」

「え?!」

私は軽めに(力入れたら首の骨が折れる可能性があるため)織斑さんを気絶させるためにビンタしておきます。

 

「な、なにするんだよ!」

『あら、気絶しなかった。意外と頑丈ですね。・・・まぁ、一つ言わさせてもらいますがあなたの今の状態で何ができるんです? ISもろくに展開できないような状態のあなたで一体何ができるんです?』

「それでも俺がやるんだ! あの武器は千冬姉ぇのものだ! 俺がやらなきゃダメなんだ!」

『そんな理想をかかかげてるから弱いままなんですよ。理想主義のおぼっちゃまくん』

「なんだと?!」

『お前たちはそこで黙って見てろ。デュノアさんはそのまま抑えててくださいよ。邪魔されても困りますし』

私は二人にそう言うと簪ちゃんの隣に立ちます。どうやらまだ攻撃はされていないみたいです。

 

『簪ちゃん』

『なに?』

『やりますよ』

『うん』

すると簪ちゃんは右手に持っているZECT製マシンガンを構える。

 

『簪ちゃんは後方から援護をお願いします』

『うん』

『私が近距離を務めますから。・・・というわけでちょっと借りますよ』

「あ、ちょ!」

私はそう言いながら織斑さんから雪片弐型をパクると一気に詰め寄った。

 

「俺の武器勝手にとるなよ!」

『武器を召喚していた、お前が悪い・・・。よっと』

そんなことを言いながら攻撃をよける。そして切り付けると普通に防がれた。・・・なるほど。

 

『やっぱり織斑先生は伊達じゃないね・・・!』

『そういうことです』

簪ちゃんが言いたいことを言ってくれたので私は剣でお互いを押さえつけながらそれに同意しておきます。

・・・ま。

 

『剣だけで勝負するとも言ってませんけど、ね・・・!』

私はそう言いながら思い切りどてっ腹に蹴りを入れておく。すると少しのけぞった。

 

『やっぱりこれくらいじゃくたばらないですね』

『ゆかりさんは織斑先生を何だと思ってるの?』ズダダダッ

『その質問はしないでください』

『ああ、うん・・・』

そんなことを話しながらも簪ちゃんは空を飛びながらマシンガンで完璧なサポートをし、私は肉薄し続けていた。

 

『・・・クソが』

私は思わず悪態をつく。

 

『どうしたの?』

『こいつハーゼちゃんをいじらせてくれないんですよ』

『じゃあ、必殺技発動できないの?』

『ええ、結構面倒な動きしますね。こいつ』

そう言いながら私は軽く舌打ちする。

何故必殺技が発動できないのか。ハーゼちゃんをいじろうとしたら思いきり踏み込んで斬りかかってくるので発動しようにも発動できないのが現状ということです。こいつ、わかってやがる・・・!

 

『簪ちゃん』

『なに?』

『数秒間でいいですから何かこいつの気を散らすこととかできません?』

『一応できるよ』

『じゃあお願いします』

私がそう言うと簪ちゃんはボーデヴィッヒさんの後ろに回り込んでマシンガンと左腰に装備していたクナイガンを持って構えるとすごい勢いで撃ち始めた。

するとさすがにうっとおしかったのだろうか。簪ちゃんの方を向くとそっちに突っ込もうとした。

 

『させるか』

私はそう言いながら雪片弐型をボーデヴィッヒさんに投げつける。彼女はそれを振り向きざまにはじくと今度はこっちに突っ込んできた。ちなみにはじかれた雪片弐型は壁に突き刺さりました。

 

「おれの雪片がぁ!」

なにか織斑さんがわめいていますが無視です。

 

『この時を待っていた』

私はそうつぶやくとゼクターレバーPを倒してすぐに戻すと走り出します。

 

【Rider_Punch!】

 

私は一閃をジャンプしてよけると飛び込みざまに顔面にパンチをくらわした。

すると顔面の部分が欠けてそこからボーデヴィッヒさんの顔がのぞいた。

 

「ラウラ!」

「ボーデヴィッヒさん!」

「あ・・・」

『おい、貴様』

私はボーデヴィッヒさんに問う。

 

『生きたいか?』

するとボーデヴィッヒさんは泣きながら言う。

 

 

 

「生き・・・たい・・・!」

 

 

 

よし、なら話は決まりだ。

 

「たす・・・けて・・・」

『任せろ。今から助けてやる』

私は再び黒いものに飲み込まれるボーデヴィッヒさんの腹に思いきり蹴りを入れる。

そして彼女が後ろにのけぞったのと同時にゼクターレバーKを作動させる。

 

『ライダージャンプ・・・』【Rider_Jump!】

 

私は跳びあがると再びレバーを作動させる。

 

『ライダーキック・・・!』【Rider_Kick!】

 

私は彼女が振り回している剣を蹴りはじくともう片方の足で彼女自体を蹴り飛ばした。

すると彼女はごろごろと地面を転がった。そして再び立ち上がったその時、黒い外殻がひび割れてボロボロと崩れ始めた。

その外殻が完全に崩れ去ると意識を失ったボーデヴィッヒさんがその場に倒れました。・・・ふぅ。

 

『一件落着ですね』

『そうだね』

「オイ待てよ!」

私たちが立ち去ろうとしたその時、織斑さんが声をかけてきました。なんか怒ったような感じですが、どうしたんでしょう。というより簪ちゃんがすごく機嫌が悪いですね。全身装甲からでも機嫌の悪さがわかります

 

『どうしたんですか?』

「もしもあの時ラウラが"助けて"って言わなかったらお前どうしてたんだよ?!」

『殺していたでしょうね、あのVTシステムもろとも』

「なんでそんなことできるんだよ! 同じ人間だろ?!」

『生きる気力がないやつを助けても、仕方がないだろう』

「で、でもよ・・・!」

『そもそも』

そう言いながら私は少しため息をついて言った。

 

 

『私は弱い者の味方ではありません。生きたいと願う者の味方です』

 

 

「ど、どういうことだ?」

『・・・この世界で最もしてはいけないことはなんだと思いますか?』

「・・・殺人、か?」

『いえ、違います。それよりもっと単純なことです』

すると全員が押し黙った。

 

『・・・こんなこともわからないんですか』

私はあきれたようにつぶやくとマスク越しに頭に手を当ててやれやれというポーズをとった。

 

 

 

 

『生きることをあきらめることです。そんな人間は生きてても死んでいることと変わらない』

 

 

 

 

すると織斑さんは叫びました。

「そんなことねぇ!」

『じゃあお前は家族を失って生きることに絶望し、あきらめた人に生きろというのか。それがどれだけ残酷かも知らずに…!』

「・・・!」

『私はボーデヴィッヒさんがあの時"生きたい"と言ったから助けた。ただそれだけです。あと』

「?」

『もう少し考えてからものを言え。・・・帰りますよ、簪ちゃん」

『うん」

私たちは変身を解除しながらその場を後にしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『真実』

 

 

 

「・・・で、話してくれませんか?」

私たちは織斑先生に詰め寄っていた。

 

「・・・なんのことだ」

「ボーデヴィッヒさんのことです。あそこまであなたに執着していたのには何か理由があるからです。それに」

「?」

私は一拍おいて言った。

 

「・・・あの子、普通の子じゃないですよね?」

「・・・なぜそう思う」

「あの眼帯です。何かけがを隠しているようには見えませんでしたから」

「・・・わかった。話そう」

すると織斑先生は何か覚悟したような目つきになって言った。

 

「・・・ラウラは、試験管ベビーなんだ」

・・・やっぱりか。

 

「・・・それで、なぜあなたに執着する理由になるんですか? ・・・まぁ、なんとなく予想できてますけど」

「ラウラは生まれてから様々な実験につき合わされた。そこまではよかったんだ」

良くねぇだろ何言ってんだコイツ。

 

「・・・ISが生まれるまでは」

またか、またこのパターンか。もううんざりだ。

私はこめかみが痛くなったような感覚に襲われた。私は少しこめかみ部分をおさえる。多分私は今すごく嫌そうな顔をしているんだろう。

 

「ISがあいつを変えたんだ。いや、変えられたんだ。あいつはそれで"落ちこぼれ"の各印を押されたんだ」

「そんなときにあなたが来た、と…?」

「ああ、その通りだ。私はラウラに様々なことを教えた」

「・・・」

「だが、今回のようなことが起こってしまった・・・」

そして織斑先生はつらそうな顔をする。それがあの雨の中自分の思いを吐露した束さんと重なって見えた。

だからこそ、私はこう言おう。

 

「あなたのやったことは間違いではありませんよ、織斑先生」

「・・・なに?」

「あなたのおかげでボーデヴィッヒさんは救われたんでしょう。ですが、あの時言ったように先生の存在があなたの中で大きすぎたんではないでしょうか?」

「・・・」

「それはあなたのせいではありません。あなたを目標にして振り切れなかった彼女が悪い。ですが、それでもあの出来事はあの子のせいじゃない」

私はそこでいったん言葉を切って、再度口を開く。

 

「"力こそがすべて"、"完璧こそが至高"という強迫観念めいたものを彼女に押し付けた上にあまつさえ彼女の心に付け込んでVTシステムを勝手に搭載した女尊男卑主義者(ボンクラ)及び織斑先生妄信者(能無し)の連中が悪いんです」

「・・・」

「じゃあ私たちはこれで」

そう言いながら私たちはその場を去ろうとする。

 

「待ってくれ」

「なんでしょう?」

「私は、どうすればいい?」

「自分で考えてください、と言いたいですが」

「え」

なんですか、簪ちゃん。そんな意外そうな顔して。

 

「ここまで来たら乗り掛かった舟です。それにここで帰ったら後味が悪いですからね」

私はそう言いながら少し微笑む。

 

「キッカケを作ってあげればいいんです。それさえあれば彼女は変われるでしょう」

「そういうものなのか?」

「いつもの先生はどうしたんですか? そんなに自信なさげな先生なんて私初めて見ましたけど。ま、変われますよ。彼女がそれなりの努力をしたら、ですが」

「・・・」

「彼女はとても幸運です。彼女が変わろうと思えば変われる環境がここには存在します。世界中でも彼女と同じような境遇に置かれた人が多数います。その中でも彼女は幸せ者です。なぜなら、再度言いますが彼女には変われる環境がすぐ目の前にありますからね。変わるかどうかは彼女次第、ですが。じゃ、今度こそ私たちはこれで」

そう言いながら今度こそ私たちはその場を後にしました。

 

「ゆかりさん、今日の晩御飯は何にするの?」

「今日は野菜中心にしますよ」

「えー」

「好き嫌いはだめですよ」

 

 

 

 

視点変更。

 

 

 

 

「はっ!」

「目が覚めたか?」

ラウラ・ボーデヴィッヒは、保健室のベッドで目覚めた。

 

「きょ、教官?!」

「ああ、今来たところだ」

織斑千冬はラウラのいるベッドのふちに腰かけながらそう答えた。

 

「お前のISからVTシステムが検出された。そして作動した。その時のことを覚えているか?」

「・・・はい、覚えています」

そう言いながらラウラはうつむいた。

 

「私が、望んだからですね・・・」

「ラウラ、お前はいったい、何のために生きている?」

「え?」

「お前は何のために生きている」

「私は…」

彼女は困惑した。今まで力のために生きてきたつもりだった。しかし、その力の末がVTシステムだというのなら、その力は否定されたことになる。なぜなら、それを打ち破った人物がいるからだ。

 

結月ゆかり。

 

彼女は強かった。自分よりも強い"何か"を持っていた。だが、その"何か"が彼女にとっては未知のものであった。

 

「なら、ヒントを教えてやる。お前はラウラ・ボーデヴィッヒだ。違うか?」

「いえ、違いません!」

「私にはなれない。いいな?」

「は、はい!」

「生きる意味を持ちたいか?」

「はい!」

この時、彼女の脳裏にあの時の光景が思い出された。

 

 

 

『生きたいか?』

 

 

 

あの全身装甲をまとった彼女が自分にそう質問してきた。そして自分は

 

 

 

『生き・・・たい・・・!』

 

 

 

そう答えた。その言葉に嘘は一切ない。あの時、本当に"生きたい"と願ったのだから。

今考えてみればこのことも含めて自分に訊いてきたのかもしれない、とラウラ・ボーデヴィッヒは人知れず思った。

 

「だったら、私以外の誰かに自分からついていったらどうだ」

「え・・・?」

「結月ゆかり。あいつは誰も追いかけてないが、強いぞ。ある意味では私よりも強い」

「教官、よりも、ですか・・・?」

「ああ。私が導き出せなかった答えをもう見つけていた」

「・・・」

「ま、少なくともこれは助言だ。鵜呑みにはするな」

「・・・はい」

そう返事するのを聞くと織斑千冬は満足そうにうなずいてそのまま出ていった。

 

 

 

 

視点変更。

 

 

 

 

「お疲れー」

「なんでいるんですか・・・」

私たちが部屋に戻るといつの間にか束さんが居座っていました。そしてボーデヴィッヒさん似の人も。

 

「で、こちらの方は?」

「あ、そうだったそうだった。さ、くーちゃん自己紹介して」

「はじめまして、クロエ・クロニクルです。よろしくお願いします」

「・・・試験管ベビーですか?」

「ご名答。あの子と同じ試験管ベビーだよ」

「どこで手に入れたんですか?」

「・・・今から数年前の話なんだけどね。試験管ベビーを製造している工場があったんだ。そこをつぶすために私は乗り込んだんだよ。・・・だけど遅かった」

「遅かった、とは?」

「中がずたずたに壊されてたんだよ」

「・・・どんな風に、ですか?」

「保護液が床にまき散ってて、ほとんどの赤ちゃんが床に投げ出されていた。中にはそうじゃなかったのもあったけど、何か撃ち抜かれたようにぐしゃぐしゃになっていたよ」

「・・・そんなこと、いったい誰が」

「監視カメラの映像も見ようとしたけど全部データが破損してて見れなかったよ。そして研究員も全員殺されてた。この子の仲間もいたんだけど、この子を残して全員殺されちゃったみたいで」

「なんでその子だけ生き残ってたの?」

「隠れてたんだよ。・・・再度聞くことになるけどどんな姿の奴か、覚えてないの?」

束さんがクロエさんに尋ねる。

 

「覚えてません・・・。私もあの時の記憶があいまいで・・・」

クロエさんは少しつらそうに答えた。

 

「じゃあ、私たちも自己紹介しましょうか」

「うん」

「私の名前は結月ゆかりです」

「更識簪、です」

「そしてこの子が」

私はそう言いながらデッキからカードを一枚抜いて床に投げる。するとそこからろーちゃんが召喚された。

 

「ろーちゃんです」

「「?!」」

「ろーちゃん」

『?』

「今から晩御飯作りますから手伝ってください」

『…(コクッ』

「ゆかりさん、私も手伝う」

「あ、はい。ありがとうございます」

「え?! なんでかんちゃんびっくりしてないの?!」

「慣れたから」

「慣れちゃったの?!」

そんなことを言いながら作った晩御飯はすごくおいしかった。

 

 

 

 

次の日。

 

 

 

 

次の日の朝、教室に入るといの一番に月影さんが話しかけてきた。

「結月ちゃん、大変だったらしいじゃない! デュノアちゃんから聞いたわ!」

「ああ、大丈夫でしたよ。簪ちゃんのおかげです」

「なら、今度3人で出かけないかしら。私から日頃のお礼がしたいわ」

「いいんですか?」

「ええ、友達じゃない」

「じゃあお言葉に甘えて」

そんなことを話してるうちにいつも通り織斑先生と山田先生が入ってきた。私たちはいつも通り席に座った。

 

「……えっと…今日も皆さんに、嬉しいお知らせがあります…」

なんか歯切れが悪そうに山田先生は言った。

 

(ああ、成程。そういうことか)

(結月ちゃん、察したのね。私もだわ)

(こいつ、直接脳内に…!)

私が月影さんを見ると月影さんはこっちを見てピースサインをした。この人も気づいてたのかな。ちなみに月影さんは私の隣です。

すると廊下からデュノアさんが入ってきました。スカートをはいて(・・・・・・・・)

 

「シャルロット・デュノアです。改めて皆さん、よろしくお願いします!」

『『『え?』』』

全員の目が点になりました。いや、皆さん気づいてなかったんですか・・・。

 

「え? え? どういうこと?」

「つまり…デュノアさんは、実は女の子で…」

困惑する皆さんに対して山田先生は歯切れが悪そうに言った。

 

「えッ!? それってつまりデュノアくんは今まで男のフリをしていたって事ですか!?」

この発言を皮切りにして教室が騒がしくなった。

 

「お、織斑くんは知ってたの!? デュノアくんの正体についてッ!」

「そ、それは・・・」

おい、もたもたせずにはっきり言えや。もう弁解の余地もないだろうが。

 

「……あれ? そう言えばおとといって、確か大浴場は男子が貸し切りで使ってたわよね?!」

「えッ!? じゃあもしかしてデュノアくんが、織斑くんと一緒のお風呂に入ったりなんて事が!?」

『『『キャーーーーーッ!!!』』』

沸き立つ教室。するとその時、廊下に続くドアがぴしゃんと開いた。

全員がドアの方を見る。するとそこにはものすごく不機嫌そうな顔をした凰さんがいた。どうやら話をかぎつけてきたようですね。・・・あれ?

 

「今って、ホームルームでしたよね・・・?」

私のそんな言葉をよそに彼女は織斑さんの席までずかずかと歩いていきます。そして彼の席の前に立つと不機嫌そうな顔と声で言いました。

 

「たって」

「え?」

「たって」

「え、でも」

「たて」

「あ、はい」

そして彼がたったのを確認すると一歩踏み込んで思いきり頬にビンタしました。

 

「げぼぉ?!!」

「このド変態!!」

そう叫ぶと彼女はそのままずかずかと歩いて出ていきました。季節外れの紅葉が彼の頬に出来上がりました。

 

「いいビンタだ、感動的だな。しかも有意義だ」(^U^)

「俺にとっては有意義じゃねぇよ!」

私がとてもいい笑顔でそう言うと織斑さんはそう言い返してきました。

 

するとボーデヴィッヒさんが入ってきました。そして私の席にまで歩いてきました。

「なんですか? 仕返しなら受け付けませんよ」

 

 

 

Mutter(おかーさん)

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?

思わず硬直している私をよそに周りは話し始めます。

「今、ラウラさんなんて言ったの?」

「確か、今の聞き間違いじゃなかったら今ラウラさん、ゆかりさんのことを"お母さん"って」

「ええ?!」

「・・・ハァ?!」

私は思わず立ち上がりました。

 

「なんで私が"おかーさん"なんですか?!」

「我がシュヴァルツェ・ハーゼの副隊長から聞きました! 自分の目標にしている女性のことを"おかーさん"って日本では言うと聞きました!」

「副隊長さん何教えてるんですか?!」

「というわけでおかーさん!」

「わたしはおかーさんじゃありません。結月ゆかりです」

「え・・・」

「・・・あーもう見るな! そんな捨てられた子犬みたいな目でこっちみんな! そして周りもニヤニヤしてこっち見るな! 月影さんも何にやついてるんですか!」

「いや、結月ちゃん」

「なんですか?」

「顔、紅くなってる上ににやついてるわよ?」

「は、はぁ?! あ、紅くなってませんしにやついてませんよ!」

「おかーさん、どうしたんですか?」

「だから・・・あーもう!」

私は髪をガシガシして荒いため息をつくと言います。

 

「あーもう、なんでこんな面倒なことに巻き込まれるんですかね、私は」

「・・・で、おかーさん。ダメでしたか?」

「まだ引きずるかソレ。・・・あー、いいですよ」

「え?」

「おかーさんって呼んでいいですよ! 言わせんな恥ずかしい!」

「はい! おかーさん!」

すると周りがヒューヒュー言い始めた。ああ、もう、やかましい!

 

 

続く




試験管ベビーを壊滅させた犯人は今までをしっかりと呼んでたら大体わかると思います。





次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「そういえば近いうちに臨海学校がありましたね」

「水着買いに行こうよ」

「アレ? デートしてたんじゃなかったんですか?」

「天道さんが言っていた・・・」


次回、『買物』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

16話『買物』

前回のあらすじ
 VTシステムに飲み込まれたラウラを助けるためにバリアを破って侵入したゆかりと簪。ゆかりはそこで自分は"生きたいと願う者の味方"であると発言した。

 そしてラウラの真実を知り、織斑千冬にアドバイスを送ったゆかりは次の日、ラウラに"おかーさん"と呼ばれることとなったのだ。






「そういえば近いうちに臨海学校がありましたね」

 

ゆかりさんが部屋で本を読みながら突然ぼやいた。私たちは思わずゆかりさんの方を向いた。ちなみに月影さんとラウラさん(本人がそう呼べと言ってきた)はなんか上がってきて一緒に本を読んでいた。・・・ラウラさんに関してはすごく納得がいかないけど。

私はその時の会話を思い出す。

 

 

 

 

『なんでおかーさんって呼んでるの?!』

『え、おかーさんがおかーさんって呼んでもいいって言ったから・・・』

『ゆかりさん!』

『はい?』

『なんで止めなかったの!』

『そう言わないと話が終わらなかったから』

『なんで月影さんも止めなかったの!』

『え、私も?! えーと・・・』

『えっと・・・』

『なに? 私今すごく『おねーちゃん』・・・ゑ』

『な、なんで簪ちゃんが"おねーちゃん"なのかしら?』

『目標にしてる人と親しい女の人は"おねーちゃん"と呼ぶと副隊長から聞きました』

『それ、だまされてるわよ』

『そんなことないです! 副隊長が嘘をつくはずがありません!』

『あ、ダメだわ。この子話聞くタイプじゃないわ。簪ちゃんも何か言いなさい』

『おねーちゃん・・・。おねーちゃんかぁ~』(∀`*ゞ)エヘヘ

『あ、この子もダメなパターンだったわ』

『で、えーと…おねーちゃん』

『あら、私も?』

『はい!』

『・・・まあ、悪い気分じゃないわね』(∀`*ゞ)テヘッ

 

 

 

 

・・・アレ? 私たちうまいこと丸められてね? というより自分納得いってるじゃん。

ま、そんなことは今はおいとこう。今はそんなことは重要じゃな、・・・いや、重要なのかな?

 

「じゃあ水着買いに行こうよ」

なんか私の口が勝手に動いたんだけど。

 

「そうね、そうしましょう。結月ちゃん、いいでしょう?」

「おかーさん! 買いに行こう!」

するとゆかりさんはすごく嫌そうな顔になった。

 

「えー・・・」

「なんでゆかりちゃんそんなに嫌そうなの?」

「だって、素肌見せるってなんか嫌じゃないですか」

「私はそんなことないけど・・・」

「私もそこまで嫌じゃないかな」

「私は祖国でいつも仲間と一緒に着替えてたので平気です」

「・・・私は嫌なんですよ」

私たちは不思議に感じて顔を合わせる。ここまでゆかりさんが拒絶するのは珍しいと思う。

 

「そんなこと言わずに、ね?」

「とにかく、私は嫌なんですよ」

「なんで嫌なんですか?」

「それは・・・」

するとゆかりさんは言葉を詰まらせた。ここまでうろたえるゆかりさんも珍しいと思う。

 

「思ったんだけど結月ちゃんって素肌ほとんど見せないわよね。学校生活でも手袋付けてるし、下はズボンだし、上にブレザーの代わりにパーカーはおってるし」

「・・・」

するとゆかりさんはバツが悪そうに顔ごと目線をそらした。

 

「深くは詮索しないけれど、いずれ説明してよね」

「・・・考えておきますよ」

そう言ってゆかりさんは再び本を読み始めた。

 

「おかーさん、買い物に付き合ってください!」

「ん、いいですよ」

「「「?!」」」

「? どうしたんですか?」

「いや、すぐに返事したのが意外だったから・・・」

「私ってそこまで疑い深い性格だって思われてます?」

私がそう言うと3人とも首を縦に振った。マジか。

その後、全員のスケジュールを確認して待ち合わせ場所をどこにするか決めてからその日は解散となった。

 

 

 

 

休日。&視点変更。

 

 

 

 

休日ということでゆかりさんよりも早く来てしまった。

私、今すごく緊張してる。

 

「待ったかしら?」

そこに月影さんがやってきた。結構カジュアルな服装だった。普段真面目だから意外だった。

 

「おねーちゃん!」

さらにまたラウラさんもやってきた。多分月影さんにコーディネートしてもらったのだろう。すごく似合っていた。

 

「で、結月ちゃんは?」

「まだ来てないよ」

「おかーさん、水着買うことにあまり乗り気じゃなかったから・・・」

そうなのだ。ゆかりさんはつい前の日にスケジュールを確認して何を買うか決めるときに水着を買うことにあまり乗り気じゃなかったのだ。

もしかしたら来ないかもしれない。そんな不安が私たちの上を渦巻いた時、声がした。

 

「待たせましたか?」

まるで鶴の一声だった。私たち全員がその方を見る。そして絶句した。

 

 

 

ゆかりさんの服装が黒一色でまとめられていたのだ。

 

 

 

いや、黒一色で服の色がまとめられているだけ(・・)ならまだいい。

 

 

 

黒いソフト帽に黒いサングラス、そして黒いシャツに黒いネクタイ、さらには黒いズボンに黒い上着、そして黒いブーツとなると話は別だろう。 

 

 

 

「あの、結月ちゃん・・・?」

「なんですか?」

「その恰好、なんなのかしら?」

「気合い入れてきました」

いや、気合入れるとかそんな次元じゃないと思う。

 

「・・・」

するとゆかりさんはサングラスを外して胸ポケットにしまった。かっこいいね、片手で折りたたむなんて。

 

「さすがにサングラスはまずかったですかね・・・」

違う、そうじゃない。

 

「いや、全部まずいわよ」

結構容赦ないよね、月影さん。

 

「ま、そんなことはいいんです。問題は買い物でしたよね」

「なんか話そらされたけどまあいいわ。その通り。私たちの水着を決めるのよ。そんなに脱ぎづらい恰好はいただけないわ」

するとゆかりさんはしゅんっとしながらつぶやいた。

 

「私的にはすごく気に入ってるんですけど・・・」

「まるでメンインブラックじゃない」

「懐かしいもの引っ張り出してきましたね。私あの映画好きなんですよ」

そんなことを言いながらゆかりさんソフト帽の中に息を"ふっ"と吐いた。

 

「で、買い物に行くんですか? 行くんですよね?」

「ええ、行くわ。そんなにせかさなくてもいいじゃない」

「私的には早く終わらせてご飯食べて寝たいんですよ」

「今日はすごく欲望に忠実だね、ゆかりさん」

そう言いながら私たちは歩き始める。

 

「ところで結月ちゃん」

「なんです?」

「今までずっと疑問に思ってたんだけど」

「はい」

「あそこまでの戦闘技術、どこで身につけたの?」

「それは私も気になってました!」

「それは私も疑問だった」

嘘は言ってない。実際すごく疑問に思ってた。なんであそこまで戦闘慣れしてるのか。

 

「・・・あー」

するとゆかりさんは身が無視をかみつぶしたような顔をして遠い目をした。

 

「後、武器持ってないの? 普通の機体は武器持ってるものよ?」

「一つなくしました」

「え?」

「正確に言うと壊れました」

「それじゃあ、遠距離はどうするのよ」

「相手の弾丸を跳ね返すか落ちてる物体を相手に向かって蹴り飛ばすしかないですね。ハハッ」

「いや、割と本気で笑い事じゃないから」

そんな会話をしながら歩いていると偶然にも凰さんとセシリアさんに遭遇した。

 

「あら、ごきげんよう」

「どもども~」

「あなたたちも買い物?」

「ええ、そんなところです」

「しかし、豪華な連れね」

「むしろ私がつき合わされてる方が状況的に近いですかね。ところで、何してるんですか?」

「見ての通り、買い物よ。あとアレ」

「ん?」

私たちは凰さんが指さした方を見る。するとそこには篠ノ之さんとデュノアさんに挟まれてる織斑一夏の姿が!

 

「なんだ、あのメンツ・・・」

ゆかりさんが少しびっくりしたような表情をしながら言った。うん、実際その通りだから困るね。

 

「しかし、うまくいくのかしら?」

「私はうまくいくとは思いませんわ」

「その心は?」

「あの人、鈍感ですもの」

「左様で」

「で、ついていってるんですか?」

「ええ、そうね」

「なんでそんなことを?」

「"人の振り見て我が振り直せ"ってことわざ知ってる?」

「ええ、もちろん」

「だったらあの子たちの行為を見て自分で当てはまるところを改善すればいいんじゃないかって思ったのよ!」

「なるほど。だからストーカーまがいのことを」

「そうよ。だからお先に失礼させてもらうわ」

「で、セシリアさんはなんでいるんですか?」

「面白そうだったからですわ」

「恋愛感情とかは」

「ないですわね」

「そうですか」

「じゃわたくしは鈴さんを追いかけるので」

「じゃまたどっかでお会いしましょう」

「またどこかですぐに会いそうですわね」

そう言いながらセシリアさんは凰さんを追ってどこかへ行ってしまった。

 

「さて」

そう言いながらゆかりさんは帽子を深くかぶりなおした。やっぱり似合うね、その恰好。

 

「行きますか」

「ストーカーしに?」

「買い物に」

「ああ、よかったわ。さすがにそういうことはしないわよね」

「・・・なんとなくあなたの中での私のポジションがわかった気がしましたよ」

そう言いながらゆかりさんはとことこと歩き始めました。そして私たちはその後ろについていきました。

すごく周りからの視線を受けてるけど全然気にしないのはさすがだと思う。

 

「しかし、どんな水着を買うつもりなんですか?」

「おしゃれなものがいいわ」

「かわいいものがいいです!」

「私もかわいい系がいいかな。ゆかりさんは?」

「さっぱりした系がいいです」

「「「さっぱり?!!」」」

なんか今日ゆかりさん発言がフリーダム過ぎない?!

そんなことを話したり思ったりするうちに水着コーナーにたどり着きました。

 

「…しかし、何年ぶりですかね。水着買いに行くの」

すると急にゆかりさんはそうつぶやいた。帽子のせいで目元がよく見えなかったけどなんか雰囲気はしんみりとした感じだった。

 

 

 

 

しばらくして。&視点変更。

 

 

 

 

「ねぇねぇ、ゆかりさん」

「なんですか? 簪ちゃん」

「これ、似合うと思う?」

「ちょっと試着したらどうですか?」

「うん、行ってくるね」

そう言って簪ちゃんは試着室へ入って行きました。ちなみに月影さんとラウラさんは二人で試着しあっています。

するとそこにデュノアさんがやってきました。

 

「あれ? 結月さん」

「どうも」

「1人?」

「いや、4人ですよ」

「誰がいるの?」

「私に簪ちゃんにラウラさんに月影さん」

「そうなんだ」

「ところで、織斑さんはどうしたんですか? デートしてたんですよね?」

「あ、聞いてよ結月さん!」

「はい、なんでしょう?」

「一夏ったらホント甲斐性無しな上にすごい鈍感なんだよ!」

「へぇ、それで?」

「1回でいいから結月さんからガツンと言ってやってよ」

「いやですよめんどくさい」

「そこを何とか…」

「自分から言ってください。私はそういうのには首を突っ込まないと決めてるんです」

そう言いながら私はデュノアさんの後方を指さしました。

 

「それに、迎えに来てるじゃないですか。アレ」

「え?」

「おい、シャル! 急にどっかいくから心配したんだぞ!」

「一夏こそ、なんであそこで買い物とか言えるのさ!」

「え? 違うのか?」

「それは、えっと・・・」

そんな会話を見ていたら急に織斑さんがこっちを見て言いました。

 

「あんた誰だ?」

「声を聞いてわからないか」

「・・・?」

「・・・鈍感もここまで行くと一種の才能ですね」

私はそう言いながらハァとため息をついた。なんとなくだがデュノアさんの気持ちがわかる気がする。

 

「ああ、結月さんか!」

「あなたは何で私を判断した」

「でさ、結月さん。訊いてくれよ」

「あぁ?」

「なんか買い物に付き合ったらさ、途中で箒が怒り出してさ、困ってんだよ」

「なんか悪いことしたんじゃないですか?」

「いや、心当たりがねぇんだよ・・・」

「だったら聞けばいいだろうがこの愚図」

「さりげなくバカにするのやめろ。あと聞いたらなんかキレられるから無理なんだよ」

「だったらこの人に訊けばいいじゃないですか」

「だからさっきから聞いてるんだけど答えてくれねぇんだよ・・・」

「・・・」

もうここまで鈍感だと二人も浮かばれないですね・・・。仕方ないですから助け舟でも出しましょうか。私も結構な甘ちゃんですね。

私は右人差し指を天に向かって突き上げながら言った。

 

「天道さんが言っていた・・・」

「え?」

 

 

「"人の恋心を理解できないやつは馬に蹴られるべきだ"ってね」

 

 

「え? 俺に恋してる? 誰が?」

「二人が。いや、もう少しいるかな」

「え? ありえねぇだろ。なんで俺なんかに惚れるんだよ」(ヾノ・∀・`)ナイナイ

やばい。今一瞬このアホみたいにぽかんとした顔にこぶしをぶつけたくなった。

拳を握りしめてそう思った私を責める人は多分いないだろうと自分で思う。

 

「もうこいつ救いようがないな・・・」

「・・・うん、僕もそう思うよ」

「え? どうしたんだよ?」

「もうあっち行け。この野郎」

「さ、行くよ」

「え、ちょっ」

そのまま織斑さんはデュノアさんに引きずられてあっちに行きました。

 

「やぁやぁ」

すると入れ違いのごとく誰かが声をかけてきました。私は声をかけられた方を向きます。

 

「誰だ。・・・ってなんだ束さんか」

「そだよ~人気者の束さんだよ~」

「( ^ω^)・・・」

「笑顔で、しかも無言で押し通すのやめてくれない?」

「ああ、すいません。どう反応すればわからなかったので」

「あ、篠ノ之博士」

私たちが話していると着替えを終えた簪ちゃんが入ってきました。

 

「はろはろ~簪ちゃん」

「どうしてここに来たんですか?」

「暇だったから」

「結構普通の理由だった」

「いや~なんかゆかりちゃんがおもしろい格好してたからさ~」

「そういうあなたの服装もなかなかにふざけているようで」

束さんの衣装は以前出会った時よりかマシになったがそれでも中々に派手な服装であることに間違いなかった。というより指名手配されている自覚はあるんだろうか。

 

「いや~、これでも自重したほうなんだよ?」

「もっと自重したほうがいいですよ。逃亡生活を続けたいならね」

そう言いながら私はソフト帽を束さんの頭の上にのせる。

 

「なにさ」

「それあげますよ。かぶってた方がまだましですからね」

そう言いながら私は代わりにサングラスをかける。

 

「で、これからどうします?」

「近いうちにまた会うだろうけど、今はサヨナラだよ~じゃあね~」

そう言いながら束さんはどっかへ行ってしまいました。

 

「・・・ところでさ」

「なんですか?」

「私の水着、似合ってる?」

私は簪ちゃんを見る。彼女は水色のビキニを着ていた。・・・ふむ。

 

「なかなか似合ってますよ」

「ホント?! よかった~、悩んだかいがあった~」

そう言いながら簪ちゃんははにかんだ。するとそこに月影さんとラウラさんがやってきた。

 

「あら、終わった?」

「ええ、これに決めたそうです」

「・・・あれ?」

「どうしたんですか? 月影さん」

「あなたの帽子、どこ行ったの?」

「あれ? いつの間になくなったんでしょう?」

私はしらを切った。

 

 

続く




帰宅後

「ところで帽子あげてもよかったの?」
「あれの予備はまだありますから一個ぐらいは大丈夫ですよ」




おまけ≪簪ちゃんのIS≫
打鉄弐式
・名前こそ打鉄だが、実態はISとM.R.Sのハイブリッド。容姿は仮面ライダー555に出てくるバイク、"オートバジン・バトルモード"を想像してくれれば。
・装甲がZECT製でしかも全身装甲で守りが従来のISよりもすごく頑丈。しかも重さも(ISと比べれば)だいぶ軽い。
・武器は剣にもランチャーにもなる専用火器とZECT製マシンガンにクナイガン。ちなみに専用火器は"ファイズブラスター"を想像していただければ。ちなみにその専用火器は右腕に内蔵されている数字パネルに"555"と入力し、Enterを押せば召喚される。
・ちなみにクロックアップも使えるが元のベースがM.R.Sではないため、1回発動につき6秒しか続かない。





次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「ゴミ一つもないなんて今頃じゃ珍しいですね。とてもきれいです」

「コラ、日焼け止め塗ってからですよ」

「だから素肌を見せるのは嫌いなんですよ・・・」

「うめぇ!」


次回、『臨海』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

17話『臨海』

前回のあらすじ
 近いとこ臨海学校があるため、水着を買うことになったゆかり一行。そしてそこでまたもやゆかりさんと簪ちゃんは束さんとエンカウントした。そしてゆかりさんは束さんにソフト帽をあげた。







私たちはバスに乗ってごとごとと揺られていました。

向かう先は臨海学校。どうやら何日間の泊まりのようです。

そして私はぼーっとしながら外の風景を眺めてるわけです。

 

「・・・」

「・・・」

あ、ちなみに隣は月影さんです。そしてなぜか彼女は私の方にもたれかかっています。

 

「結月ちゃん」

「なんですか?」

「呼んでみただけ」

「そうですか」

「ええ」

「「エヘヘ」」

私は再び窓の方へ視線を向けました。

いや~、しかしいい眺めですねぇ。見事な晴天で見事なほど美しい海。

そんな景色を見てると昔あった人たちを思い出しました。・・・あ、そうだ。

 

「そうそう」

「なにかしら?」

「私、昔世界中を旅してたんです。そこでサムズアップと笑顔がすごく似合う人がいたんですよ。・・・あの人はすごかった」

私はその時の光景を思い出す。

 

「その時私はものすごく暗い気持ちで砂浜をとぼとぼと歩いてたんです。そしたらその人は急に話しかけてきて、私にサムズアップを見せながらこう言ったんです」

私はサムズアップを見せながら言った。

 

「"気分が落ち込んだ時は青空を見たらどう? そうすれば気分はだいぶ良くなるよ"って。そう教えられたから、アドバイスされたから、私は青空が好きなんです」

そう言いながら私は自然と笑顔になった。

 

「私は超人じゃありません。ショックを受けるときもあります。だけど、それでも前に進むのはそこで止まってても仕方がないからです」

私がそう言うと月影さんはしんみりとした顔で言った。

 

「そうなの・・・。でも、今は止まっててもいいんじゃないかしら」

「え?」

「今は学園にいるじゃない。だから、少しくらいは休んでててもいいんじゃないかしら」

「・・・」

その言葉に私は答えなかった。

 

 

 

 

 

しばらくして。

 

 

 

 

 

「着きましたね」

「ええ、着いたわね」

「ゴミ一つ落ちてないなんて今時すごく珍しいです。とてもきれいですね」

「ええ、私もそう思うわ」

「おかーさん!」

「なんですか?」

「早く海に行きましょう!」

そう言いながらラウラさんは私の腕を引っ張ってくる。

 

「コラ、ダメですよ。日焼け止めを塗ってからです」

「なんで塗るんですか?」

「白い肌を守るためですよ」

私はそう言いながらバッグから日焼け止めクリームを取り出して見せる。

 

「風間さんが言っていました、"女の子の肌は宝石である"ってね」

「その人、浮気性じゃない?」

「なんでわかるんですか、月影さん。その通りですよ」

「その通りなのね・・・」

「浮気性というか、女に目がないといううか・・・美人を追い求めてるっていうか・・・」

ああ、ダメだ。これ以上言うと風間さんのイメージ像が下がってしまう。なんとかしないと。

 

「私に銃撃を教えてくれた人でもあるんですよ」

「あなた今銃持ってないけどね」

「痛いとこ突っ込みますね、月影さんも」

そう言いながら私たちは宿泊施設に入って行った。

 

「で、私は誰と一緒なんですかね、織斑先生」

「お前は簪と一緒だ」

「ウェイ」

私はそう返事するとそのまま簪ちゃんのところまで歩いていくと声をかける。

 

「簪ちゃん」

「うん、なに?」

「一緒の部屋ですよ」

「・・・へ?! なんで?!」

「そんなこと、私が知るか」

「なんで開き直ってるの・・・」

 

 

 

 

中略。

 

 

 

 

「海、キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!」

「テンション高いですね、簪ちゃん」

私はあまりにもテンションが高い簪ちゃんをなだめながらラウラさんに日焼け止めクリームを塗っていた。

 

「テンション低いわね、結月ちゃん」

「ええ。この美しい砂浜は私にとってはまぶしすぎますからね・・・」

「本気でまぶしいわね」

「というわけで」

私はラウラさんに日焼け止めクリームを塗り終わると砂浜にピーチパラソルをさしながら言う。

 

「私はここで皆さんを眺めてますからどうぞ泳いできてください」

「ちょっと待ちなさい」

「なんですか、今から日陰にこもるんですから邪魔しないでください」

「だったら別にそこまで肌を見せてなくてもいいじゃない」

月影さんがそう言うのはもっともだと思います。なんたって今の服装は長ズボンに長袖のパーカーを着てるんですからそういうのもホントに仕方ないことだと思います。ちなみに下にはきちんと水着を着ています。

 

「いいから脱ぎなさい」

「お断りします」

「あ、UFO!」

「その手にはひっかかりませんよ」

「今よ、簪ちゃん!」

「え」

「えい!」

「え」

急に後ろから羽交い絞めにされた。横目で見るとそこには一生懸命な表情をしている簪ちゃんの姿が!

 

「ちょ、放してください」

「やだ! ゆかりさんが上着脱ぐまで放さない!」

「だから日陰にこもってるんですから邪魔しないでください」

「それでもやだ!」

「いい加減にしてください。怒りますよ」

「・・・本気で怒る?」

「・・・いえ」

「はーい、隙ありー」

「あ」

私が簪ちゃんに集中しているといつの間にか目の前まで来た月影さんがパーカーのチャックを下におろしました。そして私の肌があらわになりました。

 

「え・・・?」

「どうしたの? 月影さん」

「ちょっとこっちに回って来て」

「へ? なんです・・・か・・・?」

二人は絶句してしまいました。そして私を見ていた周りの人も絶句していました。そうでしょうね、だって私の体には

 

 

 

 

大小さまざまな傷が刻まれているのですから。

 

 

 

 

「・・・」

私は上着を脱ぎすてて下のズボンも脱ぎ捨てました。そして言い放ちます。

 

「わかりましたか? これが私が肌をほとんど見せなかった理由です」

すると皆気まずそうに黙り込んでしまいました。・・・ったく。

 

「だから素肌を見せるのは嫌いなんですよ・・・」

そう言いながら私は体を伸ばすと海の方へ歩いていきます。

すると誰かが私の手を掴みました。私が後ろを見るとそこには簪ちゃんがいました。

 

「なんですか?」

「ごめんなさい」

「? なにがです?」

「さっきびっくりしちゃって」

「いいんですよ。もう慣れました」

「だけど、今、ゆかりさん」

「私の顔がどうかしましたか?」

すると簪ちゃんはものすごくまっすぐな目で私を見て言いました。

 

 

 

「すごくつらそうな顔してる」

 

 

 

それを聞いて私は思わず顔をそむけてしまいました。

「私、頑張るから」

「・・・」

「あたし、頑張ってゆかりさんの隣に立てるように頑張るから!」

「・・・知ってますか?」

「へ?」

「これは昔、私があった人が言ったんですが」

私は簪ちゃんを見ながら、皆さんを見ながら言います。

 

「夢っていうのは呪いとおんなじなんです。かなえれなかった人はずっとその夢で苦しむことになる。だから夢を持ってる皆さん」

『『『・・・』』』

「夢をかなえれるよう努力してください。そしてもしも無理だと思ってしまったときは、あきらめたりするのも策の一つだということを忘れないでください」

そう言って私は手をぱんっとたたいて大きな声で言う。

 

「さて、なーに辛気臭そうな顔してるんですか!! 今から遊ぶんでしょう?! そんなに暗かったらだめですよ!!」

「・・・うん、そうだ。そうだね! ゆかりさん!」

「そうね! 結月ちゃんの言う通りだわ! ほら、あなたたち! はりきって遊ぶわよ!!」

 

「そうだね! 月影さんや結月さんの言う通りだよ!」「うんうん!」「ビーチバレーしようよー!」「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!↑↑↑」「イェエエエエエエエエエエエイ!!!!」「スイカわりも忘れちゃだめだよ~」「泳ごう?」「うん!」

そう言いながら皆さんはそのまま海に突撃していきました。

 

「さて、私たちも行くわよ!」

「おかーさん!」「ゆかりさん!」

「はいはい、わかってますから。そんなに手を引っ張らなくても私も行きますから」

そのあとの海水浴はすごく楽しかったとだけ言っておきましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜

 

「うめぇ!」

晩御飯で織斑さんが大きな声を出しました。

 

「おかーさん」

「ん? なんですか?」

「これ、何のお肉ですか?」

「クジラ」

「え」

「クジラですよ」

私はそう言いながらクジラの刺身をもぐもぐと食べる。うん、おいしい。

 

「これ、クジラだったのかよ・・・」

「クジラだったんだ・・・」

「ク、クジラ…」

「へー、クジラっておいしいんですね!」

なんか織斑さんとデュノアさんとセシリアさんがショックを受けていました。そしてラウラさんは天真爛漫な笑みをしてそう言いながら再び口に運び始めました。

 

「ゆかりさん」

「簪ちゃん、なんですか?」

「はい、あーん」

「ゑ」

「あーん」

「あーん」

うん、おいしい。

 

そして織斑さんのほうはなんか一悶着あるみたいですがスルーしておきましょう。

 

 

続く




おまけ≪世界観≫
カブト・響鬼・平成二期がつながっており、つながっていないライダーたちは"結城丈二"みたいに名前は同じだけど別人の人なら存在するというちょっと文章にするとややこしい設定。




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


ひと段落着いたということで・・・





入れそびれたシーン&没シーン・設定もろもろ集!




次回、18話番外編『入れそびれたシーン&没シーン・設定もろもろ集①』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

18話番外編『入れそびれたシーン&没シーン・設定もろもろ集①』

今回はストーリーは進めずに今までの入れそびれたシーンや没シーン・没設定を集めた話(?)となっております。
そのようなものが嫌いな方は今すぐブラウザバックしてください。







『生・徒・会・長』(会長と接触して、かつクラス対抗戦より前の話。作者自身が忘れてて入れそびれたシーン)

 

 

私たちはいつも通り寮に戻って自室のドアを開けた。

 

 

 

「お帰りなさいませ。お風呂にしますか? ごはんにしますか? それとも、わ・た・s「行け」え?!」

 

 

 

なんか裸エプロンの変態がいたのでろーちゃんを召喚して拘束させる。・・・って。

「なんだ、会長さんか」

「うん、それを先に気づいてほしかったかな?!」

「ろーちゃん」

『・・・?』

「とりあえずそのまま拘束しといてくださいね」

「え、ちょ」

『(コクッ』

「私はその間に通報しますから」

「え?! やだ! 見逃して!」

「不法侵入者に慈悲はありません。そのまま通報されて地獄の底に落ちろ」

「風当たりきついね!」

「あ、ゆかりさん。って、何してるの?」

「あ、簪ちゃん。聞いてくださいよ。この人勝手に私たちの部屋に侵入してたんですよ」

「・・・おねーちゃん」

「違うの! 簪ちゃん! これは違うの!」

「すいません。私たちの部屋に生徒会長が不法侵入しているので回収してください。あ、1030号室です」

「もう通報した?!」

「そのまま絶望に埋まれてしまえ」

「イヤァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

うるさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Aのカード/効果はなんだ』(クラス代表戦後かつ鈴登場の間の話。元々このシーンを入れる予定だったけど一気に説明するより一つずつ出した方がわかりやすいと判断、さらにその後の話と矛盾が生じるため没にした)

 

 

「そういえばゆかりさん」

「なんですか? 簪ちゃん」

「あのコウロギみたいな機体あるじゃん」

「ああ、あれですか」

「あれ、カードを使って武器出してるの?」

「ええ、だったら今から紹介しましょうか?」

「ホント?!」

「まずはこのカード」

そう言いながらゆかりさんは一枚カードを引き抜いた。

 

「虎?」

「ええ。これは大砲を召喚するカードです」

「なんで大砲なの?」

「昔ティーガー戦車ってのがありまして」

「・・・あぁ」

「理解できたら次行きますよ」

「なんかテンポ早くない?」

「気のせいです。で、次はこのカード」

「・・・コオロギ?」

「ええ。これが私の相棒ろーちゃん、サイコローグを召喚するカードです。これだけは」

そう言いながらゆかりさんは床にそのカードを投げつける。

するとカードが光ってあの時の怪物が出現した。

 

「唯一バイザーで読み込まなくても使用できるカードでもあります」

「?! ・・・?!」

私が驚いている間にゆかりさんはもう一枚カードを取り出した。

 

「そしてこのカード」

「・・・狐?」

取り出したカードにはキツネが描かれていました。といっても二体くらいに分身していますが。

 

「これが前に織斑さんの武器をコピーしたカードですよ」

「ああ、これが」

「今のところコピーできるのは武器だけですね」

そう言いながらまたカードを取り出した。

 

「これはろーちゃんをバイクにするカードですね。直接バイク状態で召喚することもできます」

「なにそれすごい」

「といってもろーちゃんには変形するときにかなりの激痛が走るみたいですけど」

「それ大丈夫?!」

「あくまで変形(・・)で激痛が走るので使わなきゃいい話です」

「そうなの?」

「最終手段で使っていたことはありましたが」

「あくまで最終なんだ」

「ええ、最終です」

そう言いながらゆかりさんはさらにカードを取り出した。

 

「で、これが足を強化するカードです」

「バッタ?」

「ええ。で、さらにこれが腕力を強化するカードです」

「ゴリラ?」

「はい。さらにさらにこれが」

そして取り出されたカードを見て私は絶句した。なぜなら

 

 

 

ゴキブリが描かれていたからだ。

 

 

 

「ああ、これ高速移動できるカードなんですよ」

「・・・もっとどうにかならなかったの?」

「いつか結城博士に言ってみます」

そう言いながらハハッとゆかりさんは笑った。

 

「そしてこのカード」

「・・・剣、だね」

「文字通り剣を召喚します」

「そのまんま!」

 

 

 

 

 

 

 

 

4話『英国』より没になったシーン(どこの没シーンかわかりやすくするため直前の文も載せておきます。ちなみに没になった理由はこの文章では織斑一夏やオルコットと戦う理由が発生しないというのが理由です)

 

 

「おい、織斑にオルコット、そして結月。1週間後に決闘だ。」

「は?だから私は」

「降りることは許さないと言ったはずだが?」

すると彼女は真顔になった。

 

「だから嫌と言ってるじゃないですか。私はやりませんよ」

そう言ってどかっと席に座った。

 

「ほかの生徒の気持ちを無下にするつもりか?」

「別に。無下にしてもいいのでは? 本人がやりたくないんですから」

「結月・・・」

「ここは学校です。独裁国家ではないんです。生徒の自由の尊重が先でしょう?」

そう言って彼女はニヤニヤしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『襲来』より没シーン。同じところでなんと2つも没シーンが存在します。

 

 

「今回は無人機だったらよかったけどよ! もしも人が乗っていたらどうしてたんだよ!」

『やることに変更はありません』

「それって、殺すってことか?!」

『ご想像にお任せします』

「なんでそんなことできるんだよ! 同じ人間だろ?!」

『侵入者にかける情けなんて私は持ち合わせていません』

「侵入者も同じ人間だろ?! 死ねっていうのかよ!」

『死ねばいいと思います』

「な、なんで・・・!」

『人を害するやつはなんであろうと私は容赦しません。それが"友達"だったとしても』

理由:これだとゆかりさんがあまりにも残酷すぎるので没。

 

 

「今回は無人機だったらよかったけどよ! もしも人が乗っていたらどうしてたんだよ!」

『やることに変更はありません』

「殺すのかよ?!」

『そこまで入ってません。無人機ならそのまま破壊する。人が乗ってたらISから引きずり落としてそのまま尋問にかけますよ、吐くまで』

理由:ここまで書いたけどその後の展開が思いつかず没に。

 

 

 

 

 

 

 

 

『折れたぁ?!』(『一夏』で没ったシーン。『雪片弐型そんなに簡単に折れねぇだろ(自論)』というのが理由)

 

 

「うぉおおおおおお!!!!」

彼は私に向かって馬鹿正直に突っ込んできました。

 

『・・・馬鹿正直すぎるんですよ、あなたは』

そう言いながら私は一枚のカードを引き抜いてバイザーに読み込ませる。ちなみに

 

 

 

【Cricket】

 

 

 

そのカードにはコオロギが描かれていた。

私の後ろからサイコローグ、"ろーちゃん"が飛び出してきた。そして振り上げられた剣に向かって肩のアーマーを外してナックルにすると前に突き出した。

すると剣がボキッと折れた。

 

「折れたぁ?!」

彼が叫んだ瞬間、ろーちゃんに思いきり吹っ飛ばされていた。

 

 

 

 

 

 

 

『彼女の安眠を守ったのは誰か』(『独逸』と『大会』の間の話。一応書いたけど入れるところがなかったのでカット)

 

 

私は夜中に突然目覚めた。そして起き上がると隣にはものすごく汗をかいていてうなされているゆかりさんがいた。そしてそのそばには心配そうにゆかりさんを見つめている束さんの姿が。

 

「束さん」

「あ、起きたんだ。かんちゃん、ゆかりちゃんが・・・」

「ええ、状況は理解しました。ですが、なんでこんなにうなされてるんでしょう?」

「わからないよ。私でも人の夢にまで入り込めないから・・・」

そう言いながら束さんは落ち込み始めた。多分助けになれないことをすごく悔しがっているのだろう。

するとゆかりさんから寝言が聞こえた。その声はすごく苦しそうだった。

 

 

 

「いま、たすけ・・・ますよ・・・」

 

 

 

「「・・・・・・・」」

私は何を思ったのか知らないがギュッとゆかりさんの手を握った。

 

「かんちゃん?」

「私にもこの状況に対する最善の行動なんて知りません。ですけど、効果がないわけじゃないと思うんです。ホラ」

私がゆかりさんの顔を見ると先ほどよりか幾分穏やかな顔になった。そしてだんだんとほほ笑みながら寝言がまた口から洩れた。

 

「よかった・・・こんどはたすけれた・・・」

そう言ってすぅすぅと息をたてた。

私と束さんは顔を見合わせると二へへと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その他没案&没設定もろもろ

・最初は主人公がアマゾンオメガかアルファに変身する設定を考えていたけど没った。理由はカブトに浮気したのが理由。そして物語展開がうまくいかなかったのが原因。

 

・初期段階ではマスクドフォームを用意する予定だった。だが「ウサギってそもそも脱皮しねぇだろ」という理由で没に。

 

・最初、主人公はオリ主の予定だった。だけどどんな容姿にするか悩んだ上に作者自身がイメージしづらかったため没に。さらに結月ゆかりのほうが適役と思ったのも理由の内に含まれてたりする。

 

・最初ゆかりさんには味方は学園では一人もいないという設定でした。そうするとあまりにもハードになる上に作者自身が耐えれないので没に。

 

・最初の設定では昭和~アギト、そこからとんでカブト・響鬼となって平成二期につながっているという設定でした。でもそれだとあまりにもややこしいので昭和~アギトまでを消しました。

 

・もともとゆかりさんはすごくやさぐれてる設定だった。だけどやさぐれてるのは矢車さんや影山さんで十分なので没。

 

 

 











次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!



「おひさ~」

「これが私のIS・・・」

「え、でも・・・」

「俺が、俺たちがやらなきゃ・・・」

「あなたのそのヒーロー面にはもううんざりだ」

「「「一夏(さん)!!」」」

「なんで先生の方々が行かないんですか」

「天道さんが言っていました」



次回、『福音』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

19話『福音』

前回のあらすじ
 臨海学校に訪れた一同。そして月影京水と更識簪が手を組んで結月ゆかりを脱がせると彼女の服の下は傷だらけだった。
そして夕食でクジラの肉を食べたのであった。






次の日、私たちは収集させられていた。といっても専用機持ちのみ集合だった。

・・・というより。

 

「なんで私も?」

「お前のそれは専用機ではないとでも?」

それもそうか。・・・まあ、これISじゃないですけど。

 

「まあ、それはいいとしまして・・・なんで篠ノ之さんもいるんですか?」

「わ、私がいたら悪いのか!?」

「あなた専用機持ってないじゃないですか」

「くっ・・・!」

「私はさっさと終わらせたいんですからさっさとどっか行ってくださいよ。それにホラ、見てくださいよ、織斑先生の顔。今にもキレそうですよ?」

「いや、あれキレてるだろ」

「いや、キレる寸前ですよ」

「もうすぐキレそうなんだが」

やれやれ。

 

「先生、牛乳飲みましょうよ」

「フン!」

「あぶねっ!」

「げぶぅ!」

なんかアドバイス送ったら急に殴りかかってきたので近くにいた織斑さんを掴んで引き寄せると盾にしました。

 

「なにすんだよ!」

「近くにいた、お前が悪い」

「いや、そんなこt「おひさ~」・・・誰だ、あんた」

全員が声のしたほうを向くと、そこには黒いソフト帽をかぶった青色の上着にピンク色のシャツを着た女の人がいた。・・・って。

 

「なんだ、束さんじゃないですか」

「「「「「「え?!!」」」」」」

「篠ノ之博士、お久しぶりです」

「いや~、お久しぶりだね~。あ、そうでもないか~。ニャハハ~」

そう笑いながら束さんは私と簪ちゃんを抱きしめてくる。

 

「おい、どういうことだ! 説明しろ!」

「ちょっとぉ?! ちーちゃん、帽子ごとアイアンクローはやめてよ! これゆかりちゃんからもらったものなんだよ?!!」

「おい! どういうことだ!!」

なんか篠ノ之さんが私に詰め寄ってきました。そして胸ぐらをつかんでそう叫んできました。とてもうるさいです。

 

「どうせあなたに何を言っても同じでしょう?」

私はそう返してへらへらと笑います。

 

「貴様っ・・・!」

「ちょーっと箒ちゃん」

さらに力が入った篠ノ之さんの腕をいつの間にか織斑先生の拘束から逃れた束さんがつかんだ。そして恐ろしく平坦なトーンと真顔で言った。

 

 

 

 

「それ以上力を入れてみろ。さすがの箒ちゃんでも怒るよ」

 

 

 

 

わーお。いつも何かしらの表情をしてる人が真顔になるほど怖いものはないって聞くけどまさにその通りですね。

 

「くっ・・・!」

するとしぶしぶと篠ノ之さんは私から手を放しました。

 

「・・・で、貴様が何の用だ」

「あー、そうだったそうだった! すっかり忘れるところだったよ!」

手をパンパンたたきながら束さんはそう言うとポケットからケータイを取り出して連絡し始めた。

 

「ああ、くーちゃん? もういいよ。降ろして」

どうやらクロエさんに連絡しているようです。すると上から何かが落ちてくる音が聞こえてきました。

 

「あ、ゆかりちゃんとかんちゃんはこっちね」

「ああ、はい」「?」

私と簪ちゃんは束さんに手を引かれて少し離れました。すると砂浜に巨大なコンテナが落ちてきました。

 

 

「ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

あ、また織斑さんが吹っ飛ばされた。

 

「あ、いーくん飛ばされちゃった。まあ、いいや」

「で、この中には何が入ってるんです?」

「箒ちゃんの誕生日プレゼント」

「・・・まさかISとかいいませんよね?」

「・・・やっぱりわかっちゃう?」

「まぁ、なんとなく察しはしてましたよ」

「やっぱり、反対する?」

「理由に納得がいかなかったら反対しますよ。今は中立ってところです。さ、話してくださいよ」

「・・・うれしそうな顔を見たかったから、かな?」

「・・・あー、なるほど」

私はそう言いながら篠ノ之さんを見ました。なぜか頭から砂に埋まっている織斑さんを助けようと躍起になっています。

・・・・・・。

 

「別にいいんじゃないですかね?」

「なんでそう思うの?」

「それで物事が吉と出るか凶と出るかは与えられた彼女次第ですから。それにそんな理由であげるとなるとあなたにとっては吉ですから」

「・・・そっか」

「さ、行ってあげたらどうですか?」

「うん!」

束さんは頷くとそのまま篠ノ之さんに突撃していきました。

 

「箒ちゃーん!」

「な、なんですか?」

「箒ちゃんに誕生日プレゼントがあるんだよー!!」

「は、はぁ?」

「じゃあコンテナ、オープン!」

束さんがそう叫ぶとコンテナのドアが開いて真っ赤なISがその顔をのぞかせた。

へぇ、なかなかにかっこいいじゃないですか。

 

「ずいぶんと大層な誕生日プレゼントですね」

「でしょでしょ? 箒ちゃんもそう思うでしょ?」

「で、このISの名前は何て言うんです?」

「"紅椿(あかつばき)"だよ! いい名前でしょ?」

「・・・ええ。いいと思いますよ。その外見にあった名前をしてますし」

「さ、箒ちゃん」

「え、あ、はい」

「乗って乗って。セッティングするからさ」

「お、おお」

そんな光景を私と簪ちゃんは遠目で見ていた。

 

「・・・簪ちゃん、あれ見てくださいよ。あの締まらない顔」

「見る面影がないね・・・」

「たぶんろくなことが起こりませんよ」

「だけど篠ノ之博士、すごくうれしそうだね」

「そりゃそうですよ。家族と触れ合うことができるほどうれしいものはありません。それが普段じゃ会えないような状態であればなおさらです」

そう言いながら私は昔の光景を思いだした。

 

「これが私のIS・・・」

「そうだよ! これが箒ちゃんのISだよ!」

「そ、そうか。エヘヘ・・・」

「よかったぁ」

「? なにがです?」

「箒ちゃん、私のこと怖がってるからもらってくれないかと思ってたよ。箒ちゃんも私の夢、わかってくれるよね?」

「夢・・・?」

 

 

 

 

「うん! 昔言ってたじゃん! "みんなで宇宙行こう"って!」

 

 

 

 

そのときの束さんの目はすごく純粋だった。・・・ああ、そうか。

 

「あの人、純粋なんだ」

「え?」

「純粋だから、夢をあきらめきれないんだ」

「ゆかりさん的にどう?」

「・・・まぁ、何とも言えませんよね」

「・・・そっか」

すると急に山田先生が慌てたように走ってきた。

 

「お、織斑先生! た、大変ですぅ!」

「なに、どうした?」

「実は…」

すると織斑先生の耳元に山田先生がこそこそと話しかけました。すると、織斑先生の顔が見る見るうちに緊張したような感じになっていきました。

そして山田先生の口元から離れると私たちに呼びかけました。

 

「おい、貴様ら。緊急事態だ。今から会議室に集合しろ」

「は?」

「お前らの力が必要なんだ」

私と簪ちゃんといつの間にか隣にいたラウラさんは顔を見合わせました。

 

 

 

 

中略。

 

 

 

 

私たちは今、会議室に集合していた。そしてとりあえずの説明を受けた後全員が黙りこくっている。

だが、私にとっては関係ない。状況を完全に把握するために再度確認しよう。

「で、つまり"銀の福音"っていう軍事用のISがなんか暴走してこっちに突っ込んできてるからアメリカ軍から緊急要請が来たんですよね」

「ああ、そうだな」

「なんで受け取ったんですか?」

「このままでは危険だろう! わからないか!」

「わかってますよ。私が訊きたいのはそれで私たちを集合させる意味はあるのかと聞いてるんです」

「ここに集めた理由か。そう言えば説明してなかったな」

「それが第一だろうがこの野郎」

「今のため口は無しにしてやる。で、だ。なぜ私が貴様らを集合させたかというと」

全員が息をのむ。

 

 

 

「貴様たちにこのISを迎撃してもらいたいのだ」

 

 

 

「「「ハァ?!/さよなら/お疲れ様でした」」」

私と簪ちゃんと私たちにつられたラウラさんは席から立ち上がり、束さんは驚愕した顔で織斑先生に詰め寄った。

 

「ちーちゃん何言ってるの?! いや、ほんとに何言ってるの?!」

「何を言ってるって、その言葉通りの意味だろう」

「いや、わかるよ?! その言葉の意味自体は分かるよ?! だけどさ、いっくんたちにやらせるってのはどうかと思うよ?!」

「こいつらならできる。私は信じてる」

「それですべて済むと思ったら大間違いだよちーちゃん。相手は軍所属のISだよ? 競技用のとは全く違うんだよ? わかってるの?」

論争を続ける二人。すると、織斑さんが声をあげた。

 

「俺、やります」

「え?!」

すると織斑先生は満足そうな顔になり、束さんは驚いた顔をして織斑さんに詰め寄って言った。

 

「わかってるの?! 相手は軍用だよ?! いっくんたちの実力じゃ勝てないような武装と運動性能してるんだよ?!」

「それでも!」

束さんは急に大声を出されて少しひるんだ。

 

「俺が、俺たちがやらなきゃ・・・、ほかの子たちが危険にさらされちまうんだろ?」

「いっくん・・・」

「だったら俺がやってやる!」

「だったら手伝おう」

「箒ちゃん?!」

「一夏いるところに私ありだ。それにこのISは次世代機のはずだ」

「そ、そうだけど・・・」

「だったら迎撃できるはずだ。私と一夏が手を合わせればな」

「で、でも・・・」

「決まりだ。織斑、篠ノ之とともに出撃しろ。そして迎撃してこい」

「ああ! みんな!」

織斑さんはこっちを向いた。そして言った。

 

「俺に力を貸してくれるか?」

そして手を突き出してきた。

 

「ええ!」(凰さん)

「うん!」(デュノアさん)

「ああ!」(篠ノ之さん)

私はため息をつきました。

 

「おい、結月」

「なんですか」

「お前も力を貸してやれ」

「は?」

私は久々にカチンと来ました。

 

「やですよ。バカバカしい」

「なに?」

「そもそも」

私は織斑さんに人差し指を突き付けてきっぱりと言いました。

 

 

 

「お前のそのヒーロー面にはもううんざりだ」

 

 

 

すると周りから抗議の声が聞こえてきた。

「なっ! 貴様、一夏の気持ちを侮辱する気か!」

「一夏は皆のためを思ってやってるんだよ?!」

「あなたねぇ! あの時から思ってたけどここぞというときに薄情なのよ!」

「貴様、仲間たちが危険にさらされようとしているんだぞ! 何とも思わないのか!」

「そこまで言うならお前らで勝手にやってろ。私は、いや」

私は簪ちゃんとラウラさんを見る。すると二人とも頷いた。

 

「私たちは一切かかわる気はありませんので」

そう言って私たちは立ち去ろうとする。すると織斑さんが胸倉をつかんできた。

 

「なんでそんなことが言えるんだよ!」

「ああ、簪ちゃん? ラウラさんを連れて退出しててください。すぐに終わらせますので」

そう言うと簪ちゃんは頷いてラウラさんの手を引いて退出した。その時のラウラさんはすごく複雑そうな顔をしていた。

 

「なぁ、答えろ!」

「あーあーうるさいです。そんな大きな声で言わなくても聞こえてますから」

「じゃあ答えろ!」

「日本語って通じます? まぁ、いいや。で、なんでしたっけ?」

「なんでそんなことが言えるんだよ!」

「なにがですか?」

「その"かかわる気はない"だよ!」

「ああ、そのことですか」

私はへらへらと笑いながら言った。

 

「面倒だし、私たちがやる必要性がないからですよ」

「なんでやる必要性がないんだよ! やらなかったらこっちがやられるんだぞ?!」

「そもそも」

私はそこで区切って再び口を開いた。

 

「IS学園はどこからも干渉されないって国際ルールで決まってるんですよ? それを無視した緊急要請なんて国際違反もいいところです。それに」

「それに?」

「お前に協力する気は一切ない」

私はそう言い切ると胸倉をつかんでいる腕を払いのけました。

 

「ヒーローごっこなら勝手にやってろ」

そう言うと再び織斑さんは胸倉をつかんできた。

 

「ごっこじゃねぇ! 俺は本k「それ以上掴むなよいっくん。君のその腕が切り取られたくなければ」・・・はい」

「束さん、ありがとうございます」

私はそう言って席に座った。

 

「退出するんじゃなかったのか」

「気分が変わりました。どうなるか見てみようと思いまして」

「興味本位か」

「だめですか?」

私がニヤニヤしながらそう言うと織斑先生はバツが悪そうに頭をかいた。

 

「しかしな・・・」

「いいじゃん、入れても。そもそもわたしみたいな部外者がいるわけだしさ。その代り何もしないってことでいいじゃん」

「・・・お前はよくあいつの肩を持つな。他人に興味を持たないお前が一体どうしてそいつに執着する」

「フッフッフ、なんでだろうね~?」

二人の間に険悪なムードが流れる。

 

「まぁまぁ、さっさと出撃してくださいよ。このままじゃ大変なことになりますよ?」

「・・・そうだな。よし、織斑に篠ノ之ついてこい」

「「ああ/はい」」

そして3人は出て行った。

 

 

 

 

しばらくして。

 

 

 

 

『一夏! なぜ、あの密漁船を守る!?』

『確かにあれは密漁船だ。だからって見殺しにしていいわけ・・・』

『あいつらは犯罪者だ! 死んで当然だ!』

『死んでいい命なんて・・・ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』

『い、一夏ー!!』

「「「一夏(さん)!!」」」

堕ちてゆく織斑さんの映像を私はコーヒーを飲みながら見ていました。

 

結果的に作戦は最悪の形で失敗しました。調子乗った篠ノ之さんが油断したせいで織斑さんを攻撃してしまい、さらには追い打ちを喰らったことで墜落してしまいました。

そして私は頬杖をつきながら織斑先生をにらみつけて言いました。

 

「なんで先生の方々が行かないんですか」

すると皆がこちらを見てきました。

 

「どういうことだ」

「言葉通りの意味ですよ」

私は立ち上がりながら次の言葉をつなげます。

 

「あなた方は何のために存在してるんですか? 生徒を守るのが先生の義務ではないんですか? あなたは何を思って先生をやってるんですか?」

「な、なにを」

「そもそも、いくら織斑さんが活躍してるところを見たいとか思ってるのは別にいいです。それは姉弟として普通のことでしょう。ですが今は状況が状況です。相手は暴走してますから止まってはくれません。はっきり言って戦争と同じようなものです。モンド・グロッソみたいなスポーツとは違うんですよ? 生半可な覚悟でできるわけないでしょ。戦争を知らない人なんかに戦争の何がわかるというのですか」

私はそれだけ言うと満足したので部屋から出て行こうとします。すると腕を掴まれました。

見ると凰さんが真剣な顔をこちらを見ていました。

 

「なんですか?」

「あなたにいったい何がわかるのよ」

「?」

「あいつはとことんお人よしなのよ! だから密漁船にも甘いの! だけd「それがどうかしましたか?」っ・・・!」

「私にとっては関係ないことです」

私は腕を振り払うと言葉をつづけた。

 

「篠ノ之さんの行動は褒めたものじゃありませんが、あの時言ったことには賛同しますよ」

「な、なんでよ」

「何かを守るためには何かが犠牲になるんです。時にはそれが自分だったりします」

「それだったら・・・」

「私が怒ってるのはあんなに大口をたたいておいて全然成果をたたき出せていない二人に対して怒ってるんです。実力が伴わないくせに大口たたくなって話です。じゃあ」

そう言い切って私は今度こそ出て行った。すると束さんが待ち構えていました。

 

「・・・悪い方に傾きましたね」

「うん・・・」

「なんか浮かない顔してますね」

「うん、だって、私がもうちょっといえばこんなことは怒らなかったかもしれないと思ったらすごく悔しくて、こんなんだったら人なんて愛さなかったらよかった。愛なんて知らなきゃよかった」

そう言うと束さんはずりずりと壁に背中を押し付けながら体育座りした。そして顔を膝にうずめた。その背中は少し震えていた。

私はそれに対して右手の人差し指を上に突き上げながら言いました。

 

「天道さんが言っていました・・・」

「え・・・?」

束さんが顔をあげます。その顔は涙でぐしょぐしょになっていました。

 

「"人は人を愛すると弱くなる。だけど、恥ずかしがる事はない。それは本当の弱さじゃないから。弱さを知ってる人間だけが本当に強くなれるんだ"ってね」

「・・・」

「あなたはもっと強くなれるはずです。なぜかって? あなたは弱さを知っているから」

「ねえ、ゆかりちゃん」

「なんですか?」

「胸、かりてもいい?」

「貸すほどありませんがどうぞ」

「うん・・・」

すると束さんは私の胸に顔をうずめると嗚咽の声をだし始めた。

私はそれを聞くと頭をなで始めた。

 

 

続く







次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「僕たちの実力じゃ難しいよ!」

「どうやら私も、だいぶ甘い人間みたいです」

「アァアアアアアアアアア!!!!』」

「力がなくて泣いている人たちを全て救える力、私はそれがほしい・・・!」



次回、『決戦』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

20話『決戦』

前回のあらすじ
専用機もちだけが集められた次の日、そこに篠ノ之束がやってきた。そして彼女は誕生日プレゼントということで自身の妹、篠ノ之箒にISを贈る。

しかその時、アメリカ軍の保有しているIS、『銀の福音』が暴走を起こし、こちらに向かってくる情報を受け取り、作戦会議をすることとなった。

そこで戦うと豪語した一夏に対して「お前のそのヒーロー面にはもううんざりだ」と言い切り、共に戦うことを拒否した結月ゆかり。

その後、作戦は決行されたが大失敗。織斑一夏は意識を失うという重体になったのであった。








最初に言っておく。

割ととどめと戦闘シーンがあっけないうえにしょぼい!

期待してくれていた皆様には本当にお詫び申し上げます。


夜、私と簪ちゃんは自分の部屋で夜景を眺めていました。とてもいい眺めです。

・・・銀の福音があそこでじっとしてなければもっといい眺めになっていたでしょうけど。

 

「動かないね」

「動きませんねぇ」

「動かないのが逆に不気味だよね」

そして私たちの部屋にはなぜか束さんが居座っていた。

 

「ところでなんで束さんがここに?」

「この騒動が終わるまではここにいるよ」

「そうですか」

そんなことを話してると廊下が少し騒がしくなってきました。

少し聞くことに集中すると会話が聞こえてきました。

 

 

『僕たちの実力じゃ難しいよ!』

『ええい、うるさい! お前は一夏がやられたことが悔しくないのか!』

『そりゃあ、悔しいけど・・・』

『それにあいつは気に食わないが実力は本物だ。戦力になれば心強いだろう』

『でも、話聞いてくれるかな?』

『聞いてくれないかもしれないがまずは交渉からだろう!』

 

 

すると部屋に人がなだれ込んできました。

よく見るとなだれ込んできたのは織斑さんLoversでした。

私は少しため息をつきながら声をかけます。

 

「どうしたんですか?」

「頼みがあるんだ」

私は少し顔をしかめました。

 

「で、なんなの? 頼みたいことって」

そんな私の代わりに簪ちゃんが尋ねました。

 

「これからリベンジしに行こうと思うんだ」

「やめといたほうがいいですよ。どうせろくなことになりませんから」

「話は最後まで聞け。それで、だ。あの時は慢心していたから負けてしまったんだ。だが、今は違う。だから私たちでやろうと考えているんだ」

「はーん・・・」

「なんだその態度は」

「いや、よくそんな馬鹿なことが言ってられるなって」

「なんだと?!」

「リベンジってバカですか? あんなのアメリカ軍か先生に任せればいいんですよ。なんであなたがやる必要があるんですか? ・・・どうですか? 私、おかしなこと言ってますか?」

「貴様・・・!」

「だから言ったじゃんか。話聞いてくれないって」

・・・はぁ。

 

「まさかそれだけでここに来たわけじゃありませんよね?」

すると全員が沈黙した。・・・まったく。

 

「あそこにいますね」

私は外にいる福音を指さしました。そして私はニヤニヤしながら言葉を続けます。

 

「で、行かないんですか? どうなんですか? 私は知りませんけど」

そういうと篠ノ之さんは急に立ち上がるとずかずかと出て行きました。

 

「あ、箒ちゃん・・・」

「ほっときましょう。ああいうのはほっとくのが一番です。少々痛い目にあっとけばいいんですよ」

「そうなのかな・・・」

「なんだかんだで痛い目にあった方が人間成長するんですよ?」

「・・・よくわかんないや」

そう言うと束さんは外を見た。

 

「・・・で、行かないんですか? あなた方は」

「止めないの?」

「ホントは止めたいですよ。ですけどね、あの人一人だと危ないでしょう? あなた方が守ってあげないと。今はあの人よりあなた方のほうが判断力があるんですから」

「・・・そうかしら」

「そうですよ。ほら、いったいった」

「あ、ちょっと押さないで」

私は廊下まで二人を押すとそのままドアを閉めました。

 

「・・・やっぱり、行くのかな?」

「じゃあ私たちはその結末をここで見届けましょう」

「・・・もしも負けたらどうするの?」

「その時はその時です」

「・・・そんなこと言っておきながら助けに行くんでしょ?」

「さぁ、どうだか」

私はそうはぐらかすと窓の方を向きました。ドアをノックする音が聞こえました。

 

「どうぞ」

私がそう答えるとドアが開いてラウラさんとセシリアさんと月影さんが入ってきました。

 

「あら、どうしたんですか?」

「ラウラちゃんが結月ちゃんと一緒じゃないと嫌だってダダこねて・・・」

「・・・(グスン」

「こらこらラウラさん。今は状況が状況なんですから、ね?」

「でも、おかーさんが心配だったんだもん」

「・・・」

私は少し頭をかきました。

 

「あ、戦闘始めたよ」

束さんがそうつぶやくと全員が窓付近に集まりました。

そこには銀の福音に立ち向かう4人の姿が!

 

「結月さん、あなたはあの方々が勝てると思いますの?」

「正直言って無理だと思いますよ」

「なんでですの?」

「そもそもISのコアにも自我があるらしいじゃないですか」

「ええ」

「それが正しければ操縦者の動きも記憶すると思うんですよ」

「ええ、確かに」

「それに軍となるとさらに訓練時間は私たちより多いわけですから」

「・・・あ」

「わかりましたか? 経験値が生きるんです。それはもう機体の性能以上をたたき出すくらいには」

「それに軍のものとなると・・・」

「元々の性能がいいですからね。並大抵の競技用のISじゃあ太刀打ちできないんじゃないですかね」

「あ、向こうの方へ行っちゃった。・・・あっちって小島以外なかったような」

「・・・」

私は無言で立ち上がるとベルトを腰に巻き付けてドアの方へ向かいます。

 

「どこへ行くのかしら?」

「・・・どうやら私も、私が思っていた以上にだいぶ甘い人間みたいです」

「ということは・・・」

「行きますよ、助けに」

「だめだよ!」

束さんはそう言うと手を握りしめてきました。

 

「・・・この手を放してください」

「ヤダ! 私の夢を理解してくれる人を、私は失いたくない! お願いだよ! 行かないでよ!」

そう叫ぶと束さんの目から涙がこぼれ堕ちました。全員がぎょっとしました。

 

「・・・束さん」

「なに・・・?」

「私はあの人たちのことがはっきり言って好きじゃありません。ですが、こうなったら好きとか、好きじゃないとかそんなこと言ってられないんですよ」

「なんで・・・?」

「あの人たちも、一応これから生活を共にする同士です。ここで助けずに、見殺しにしたらものすごく後味が悪い。その後の学園生活に支障が出る。だから助けるんです」

「・・・うん、わかった。だけど、やくそくして?」

「なんですか?」

「ぜったいに、ほうきちゃんをたすけて。そしてかえってきて」

私は束さんの言葉に対して束さんの手を取り、そして笑顔で言った。

 

「ええ、帰ってきますとも」

 

 

 

 

しばらくして。&視点変更。

 

 

 

 

「ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

叫びながら砂浜に墜落する箒。そして離れたところには彼女とともに戦いを挑んだ2人も砂浜に打ち付けられていた。

 

「つ、強すぎる・・・」

「こんなの歯が立たないよ・・・」

「なんなのよ、あいつ・・・!」

3人は口々に言う。そして上空に浮いて月の光を背中に受けている福音はさながら悪魔のようだった。

そして福音は砲を3人に向けた。

全員が死を覚悟した。

次の瞬間、チェーンが福音の体を縛り付けた。

 

【Rider_Jump!】

 

そんな音声が鳴り響いた瞬間、何かが上空に出現した。

 

【Rider_Kick!】

 

するとその影はチェーンごと福音を蹴り飛ばした。

そして福音は海面に激突し、影は水上に浮いてるバイクに着地すると前進して砂浜に乗りあがった。

 

『大丈夫ですか』

「結月・・・! お前・・・!」

『おっと勘違いしないでくださいよ』

ゆかりは何か驚いたような目をしている箒にぴしっと指をさして言った。

 

『私はあなたが気になって来たわけじゃありませんからね。あなたのお姉さんがあなたを助けてあげてと言ったからここに来ただけですからね』

彼女はそのあとの会話を思い出す。

 

 

 

『セシリアさんはここに残ってください』

『理由をうかがっても?』

『いざというときの、ね?』

『私では少し頼りないと思いますが?』

『誰もいないよりかはマシです。それに』

『?』

『どうしてそんなに弱気なんですか? あの時の英国淑女はどこ行きましたか?』

『・・・あれは黒歴史ですわ』

『そうですか』

 

 

 

『・・・で』

ゆかりは海上を見る。そこには火花を散らしながらゆっくりと体勢を戻している福音の姿があった。

 

『簪ちゃん、ラウラさん』

「『なに?/なんですか?』」

『あそこの3人をよろしくお願いします』

彼女はそう言うとエンジンをふかして一気に突っ込んでいった。

すると福音は砲を構えると発射した。

 

『とぅ!』

彼女は掛け声をあげて跳びあがった。次の瞬間、バイクが火を噴いた。

 

『あ』

彼女は少しあっけにとられながらもレバーをいじる。

 

【Rider_Kick!】

 

彼女は左足に電流をまとうと砲を連続で蹴りつける。

そして最後に本体を蹴り飛ばそうとした。

しかし、福音は彼女のゼクターを思いきり殴りつけて吹っ飛ばした。

 

『っ?!』

彼女は波打ち際まで吹っ飛ばされて地面を転がる。

 

『ハーゼちゃん!』

≪ダ、ダイジョ、ザザッ・・・ダイジョゥブ・・・ザザッ≫

『あの野郎、やりやがったな・・・!』

彼女はそう言って軽く舌打ちすると構えなおす。

すると次の瞬間、福音が急接近して剣で肉薄してきた。

 

『うぉ?!』

ゆかりは体をひねるも避けきれず胸の装甲に切り傷が入った。

もしももう少し胸が大きかったら刃は深く入っていたかもしれない。この時ばかりは自分の胸のなさに感謝した。

 

『・・・!』ブンッ

『ぐはっ!』

しかし、そう悠長にしていられない。さらに猛攻を加えてくる。

そして何発も蹴られたり切られたりした後思いきり吹っ飛ばされた。全身に痛みが走る。

すると突然ゆかりの変身が解除された。

 

「なっ・・・!」

彼女はベルトに装着しているハーゼクターを見る。するとゼクターは火花を散らしていた。

 

「ハーゼちゃん!」

『チョッ・・・ザザッ・・・ト、マッ・・・テ・・・』

『・・・!』

「うおっ?!」

彼女に福音は容赦なく攻撃を加えようとする。しかし、彼女は必死になってよける。

 

「おかーさんに近づくな!」

そう叫んだラウラは砲の発射口を福音に向けた。そして発射した。

そして着弾する直前、福音は振り向きざまに刀を振り回してはじいた。

 

「なっ・・・!」

『ラウラちゃん、危ない!』

簪が間一髪にラウラを横から抱きしめつつそのまま飛ぶとその場所に福音が斬りかかってきた。

 

「くそっ! こういう時に変身ができれば・・・!」

『ユ・・・カ・・リリ・・チャン』

「なんですか?!」

『ワタシガ・・・ザザッ・・・イマ、ザザッ緊急あっぷでーとヲカケタ、カラ』

「ええ、それで?!」

『完了スルマデ・・・耐エテ』

「お安い御用で!」

そう叫んだ瞬間、福音が襲い掛かってきた。

 

「くっ!」

『・・・!』ブンッ

「その手に乗るかよ!」

『・・・!!』ブォンッ

「しまっ・・・!」

彼女は後ろに跳んだがよけきれず左腕を浅く切られる。そして彼女はさらに全身の痛みを感じ、ひざまずいてしまった。

 

「ぐぅ・・・!」

『終ワッタヨ!』

「へ、変身!」

 

【HENSHIN】

 

次の瞬間、福音は斬りかかった。

 

「うぉおおおおおお!!!!」

すると右腕を装甲が覆い、剣撃を防いだ。

 

「変わった!! っらぁ!!!!」

彼女はそれを見ると空いている左腕で奴の腹部を思い切り殴った時、その腕はすでに装甲に包まれていた。

 

「アァアアアアアアアアア!!!!』

そして痛みが走る全身を奮い立たせて無理やり立ち上がった時、体中を装甲が覆っていった。そして顔を覆いきると全身から蒸気と熱風が噴射される。

 

 

 

【CHANGE! ※※※※!】

 

 

 

音の途中でノイズが走って最後まで聞こえなかったがそれでも彼女は感じた。今、自分とゼクターは完全に一心同体だと。

 

『行くよ、ハーゼちゃん!』

『ゥん・・・ザザッ・・・イクョ・・・!』

『『私たちは一心同体だ!』』

 

福音は確認すると剣を構えて襲い掛かってきた。

しかし、それよりも早く彼女は懐に飛び込むと思いきり殴りつける。次の瞬間、殴った腕にすさまじい衝撃が走った。

 

『ぐっ・・・』

『ダイジョ・・・ザザッ・・・ブ?』

『これくらいどうってことないです・・・よ・・・ハァ・・・ハァ・・・ゴホッ』

彼女は肩で息をしながら構える。

次の瞬間、彼女は殴りつけられた。

 

『ガッ・・・!』

彼女は背中を打ち付ける。そこに覆いかぶさるように福音が殴りかかる。

そして何回も殴られているうちにマスクが割れた。

そこから血を流している彼女の顔がのぞいた。

 

「おかーさん!」『ゆかりさん!』

『この・・・!』

ゆかりは左足を福音に突き刺すように蹴りこんですぐにゼクターをいじる。

次の瞬間、福音は上空に吹っ飛ばされた。

そして彼女は痛みが走る全身を奮い立たせて立ち上がるともう一回ゼクターをいじった。

 

『はぁああああああああ・・・とう!』

彼女は左腕を右斜め上に突きあげながら息を吐くと跳びあがった。

そして足を福音に向けると叫んだ。

 

『これが! 私の! いや、私たちの!』

『『力だぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!』』

そして直撃した。そのまま二つの影はそのまま落下していく。

 

「『ゆかりさん!』」

簪とラウラが二つの影をキャッチする。

するとそこに人参型のロケットが飛んできた。

そして砂浜に着地すると中から篠ノ之束が出てきた。

 

「箒ちゃん! 大丈夫?!」

「あ、ああ! ですがその前に!」

「ああ、うん! そうだね! ゆかりちゃん!」

「ああ、たばねさん・・・」

ゆかりは頭から血を流していた。そして体の各部分にやけどや切り傷があった。

 

「た・・・たばねさん・・・ハァ・・・ハァ・・・」

「今はしゃべっちゃダメ! しゃべったら悪化するかもしれないから!」

「きいてください・・・。ハァ・・・ハァ・・・わたし、ほしいものがあるんです・・・ゴホッ」

「なに? ほしいものってなに?」

ゆかりは束の腕をつかんで言った。

 

 

 

「力がなくて、ハァ・・・ハァ・・・泣いている人たちを、・・・ハァ・・・ハァ・・・全て救える力・・・! ハァ・・・ハァ・・・私は、私はそれがほしい・・・!」

 

 

 

彼女はそう言うと気を失った。

 

「ゆかりちゃん! ゆかりちゃん!」

束は彼女を泣きながらゆすった。

 

 

続く




おまけ
仮面ライダーハーゼ緊急アップデート
・ハーゼクターが銀の福音を倒すために急場しのぎでアップデートをかけた姿。
・体のいたるところから機械パーツが露出している。イメージとしては仮面ライダー超デッドヒートドライブ。
・装甲が不完全のため防御力は低くなっているがその分パワーが大幅に上がっており、普通のパンチやキックでもすさまじいパワーをたたき出す。その分、負担が普通の比ではないことが欠点。
・ゼクターを作動させても音声が鳴らないので変身者は少し構えて一拍おく必要がある。
・必殺技は【ライダージャンプ】からの【ライダーキック】。威力は50t。ライダーキックの発動前には左腕を右斜め上に突きあげる動作をとる。





次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「その間はもう一つのあれで頑張ってくれないか?」

「ゆかりちゃん! あなたものすごく大変だったらしいじゃない!」

「風都、キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!」

「おかーさん! 見てください! いっぱい風車がありますよ!」

「銀色のカニに金色のサイだぁ?!!」
「逆です! 金色のカニに銀色のサイです!」

「変身!」


21話『ようこそFへ/町の名は風都』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

21話『文化祭とは生徒全員が主体で楽しむものであり先生が主導で行うものではもちろんないし3時間で終わるものでもないしましてや一日で終わったらそれはただの学芸会であって文化祭ではないと思う』

実を言うと結月ゆかりを書いたのはあまりにも久しぶりなため、作者自身がキャラを少し忘れています。そのことを頭の中に置いたうえでご観覧ください。






 

風都の観光や様々な夏の思い出が過去の輝かしい記憶となりつつあるこの季節、最近学校はある一つの出来事で騒がしくなっていました。

 

『『『文化祭、キタ――――――――――ッ!!!』』』

 

そう、文化祭です。私としてはどうでもいいですけれどこううるさいと面倒な気持ちになるものです。

 

「うるさいぞ! 静かにしろ!」

するとシンッ…と静まり返りました。

さすがは織斑先生、黙らすことだけは得意のようだ。

 

「まずは出し物を決めるべきだ。これについては私からは何も言わん。好きに決めてくれ」

当たり前だろ。なに脳みそが腐ったようなことを言ってるんだ、このおばさん(BBA)は。いずれなるだろうなとは思ってたけどついに脳みそまで筋肉になったのか、可哀そうに。

するとチョークが飛んできたので私は手ではじいておく。

 

「・・・あまり失礼なことを考えるなよ? 結月」

「すいませんが…、その失礼なこととは、一体具体的にどういうことなのでしょうか?」

(あお)ることは忘れないでおきます。煽るべきところできっちり煽っておかないといざというときに煽れなくなりますからね。

 

「・・・なんでもない、どうやら私の気のせいだったみたいだ」

「ないんだったら最初から話しかけてくるなよ」

「なんか言ったか?」

「空耳ですよ、織斑せーんせい♡」

面倒なのでそういうことにしておいてください。そんな意味も声と目線に込めて言う。

 

「・・・はぁ」

どうやら(まぬが)れることができたようです。やったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

~少しして~

 

「やっぱり織斑君のプロマイド写真とか売りだしたらどうかな?!」

 

「いやいや、ここは織斑君の執事喫茶でどうよ!」

 

「織斑君の女装メイド喫茶も捨てがたいと思います!!」

 

なんだこれ。

いつの間にか黒板にはすごいカオスなものが書かれまくっていた。例を上げたら

 

・織斑君のヒーロー劇

・織斑君による大人のご奉仕♡

 

その他もろもろetc...

もう一回言おう。

 

なんだこれ。

 

すると何か視線を感じたので視線の方向を見るとなんかぐったりした感じで真っ白に燃え尽きている織斑先生の姿が!と言ってもそこまで同情はしないですけど。

・・・まぁ、でも、ねぇ。

 

「すいません。少し話の腰を折るようで悪いのですが…」

「ん、なになに?」

「さすがに織斑さんをこれ以上パンダにするのはちょっとどうかと・・・」

「珍しいね。結月さんがそんなこと言うなんて」

「まぁ、確かにそうですね。ですが、ひとこと言わさせてもらいましょう。・・・あなた方は織斑さんを使わなきゃまともに文化祭をできないんですか?」

するとクラスがシンッ・・・となった。

 

「・・・どういう意味よ?」

「言葉の通りですよ。あなた方はさっきから織斑さんを利用して稼ごうとしか考えていないじゃないですか。確かに彼はネームバリューはありますし、客寄せ効果もあると思いますよ?思うんですがね?じゃああなたたちは彼が頑張っているときになにしてるんです?まさか高みの見物とは言いませんよね?」

『『『・・・』』』

「・・・言い返すぐらいしてくださいよ。そして織斑さん」

「え、俺?!」

「あなたも同罪ですよ。何流されてるんですか。自分をしっかりしないとだめですよ。それだから童貞なんですよ、全く」

「ど、どどどどど童貞ちゃうわ!」

「え?非処女?」(突発性難聴)

「まだ菊は散ってねぇ!!」

「切り落とすぞ」

「なにを??!」

「言わせんな恥ずかしい」

「恥ずかしいって感情あったんだ・・・」

「おい誰ですか今さっき言ったやつ。怒ってないから素直にこっち来てくださいな」

そう言った直後チャイムが鳴り、クラスメイトの方々は皆思い思いの方へばらばらに分かれていきます。

 

これは余談ですがあとで来た人にはデコピンをくらわしておきました。

 

 

 

 

そしてすべての授業が終わり、放課後になりました。

え?展開があほみたいに早いですって?

作者が感覚取り戻そうと頑張っている最中ですから仕方ありませんね。

 

「ゆかりさん・・・?」

おっといけない。簪ちゃんを待たせていたのを忘れかけていました。危ない危ない。

 

「えぇ、今日はどうしましょうか?」

「・・・」

「・・・?」

なんか今日は少し元気がないように見えます。朝までは普通だったので恐らく授業中のどこかか昼休みで何かあったに違いありません。

 

「簪ちゃん」

「?」

「何があったのかは聞きません。ですがあなたが何か悩んでいるのであれば、私は最善の努力を尽くしてあなたの問題を解決することを自身に誓っています。・・・こんな私でも、頼りないでしょうか?」

「・・・い、いや、ゆかりさんのことはすごく頼りにしてるよ・・・。だけど・・・」

「・・・?」

「これ以上困らせたくないっていうか…うぅ・・・///」

「―――――――――――」

何ですか、これ。尊すぎでしょう?こんなことがあっていいんですか?!え、マジで?嘘ぉ?

 

「オ、オホン。い、いえ、私は別に迷惑とも思ってないですし、困ったと感じたこともないですよ?」

「・・・ホント?」

「えぇ、ホントです。ささ、話してくださいな」

「うん、実はね…」

 

 

 

~事情説明中~

 

 

 

「で?お姉さんが私と付き合うなって言ったんですか?」

「うん。だけど、そんなの無理だよ・・・。私、ゆかりさんにたくさん助けてもらったのに・・・まだ・・・何も返せてないのに・・・」

そう言った簪ちゃんの目はうるんでいました。

 

「ッ・・・簪ちゃん」ギュッ

「・・・?」

「そんなやつの言葉、無視すればいいんです」

「え・・・?」

「簪ちゃんを悲しませる奴は全員無視すればいいんです。それに」

「?」

「私は貴方を絶対に守り抜きます。周りを信じられなくなったとしても、それだけは、信じてください」

「・・・ひどいこと、言わない?」

「いわないですよ。なんで言わなくちゃいけないんですか」

私は微笑みながら簪ちゃんの涙をぬぐってあげます。

 

「さぁ、今日は腕によりをかけちゃいましょうかね。食材買ってきてくださいませんか?」

「うん、月影さんも誘ってきていい?」

「どうぞどうぞ。誘ってあげてください。あの人も喜ぶでしょう」

私がそういうと簪ちゃんはにこにこしながらその場を離れていった。

・・・さて。

 

「そこの陰で見ているんでしょう。更識楯無」

「・・・」

返事はない。だけど気配はします。わざと気配を出しているんでしょうねぇ。

ま、言いたいこともありますしこっちの方が好都合でしょう。

 

「その場にいるんでしたら話が早い。更識楯無。私はここで宣言します。簪ちゃんは私が世話をします。姉としての責務さえ果たせなかったあなたに、簪ちゃんは救えない」

「・・・ッ!!!!」

「私だけが簪ちゃんを救えるとは絶対に思わない。・・・だが、それでもあなたよりかは絶対にマシだと、私は信じたい」

「・・・」

「つまり何が言いたいかと言うとですね?私はあなたたちに宣戦布告するということです。簪ちゃんは、もうあなたを必要としていないんですよ。なぜかって?」

「・・・」

 

すべてあなたたちの自業自得だ。ということです」

 

私は言いたいことを全部言った後、簪ちゃんを追いかけるようにその場から離れました。




こっからある意味ラストスパート。
プロットはできているのでそれを文章化するだけなのですがなかなか練れずに困りどころ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

風都観光編
風都編①『ようこそFへ/町の名は風都』


前回のあらすじ
 夜中にリベンジしに行くことを決意した篠ノ之箒。それについていくことになった凰鈴音とシャルロット・デュノア。
そしてその誘いを断っておきながら二人を送り出した結月ゆかり。しかし彼女も篠ノ之箒のことを少し心配しており、出撃することを決定する。しかし、行ってほしくないと懇願する篠ノ之束。結月は束を説得し、ラウラ・ボーデヴィッヒと更識簪を引き連れて出撃した。
そこでピンチにもなったが見事に福音を撃破。結月は気を失った。






親に言われるまで今日が誕生日だということを忘れていました。

ハッピーバースデー、自分。


あの後、私はどうやら気を失ったらしく、気が付いた時には病院のベッドで寝ていました。そしたらラウラさんと簪ちゃんが泣きわめいて大変大変。なだめるのにすごく手間がかかりました。

そしてハーゼちゃんを修理に出すことにしました。

 

 

 

「・・・直りますか?」

「あー、コアに結構深くまでひび入ってるね。これ予備のコアを使えば修理自体はすぐにできるけどデータが破損している可能性があるからその点検もしないといけないから、まあ、結局時間かかるよ」

「どれくらいかかりますか?」

「少なくとも夏休みは丸ごと使うことになるね」

「ゑ」

「その間はもう一つのあれで頑張ってくれないか?」

「はーい」

 

 

 

そしてついでにデッキの方にアップデートをかけてもらうと私はけがを治療するため少し学校を休み、その後普通に学校に登校しました。すると皆さんからすごく驚かれました。

何ですか? 私が死んだと思ってたんですか? というより先生の話とか聞いてないのかよ。

そんなことを思っていると月影さんに話しかけられました。

 

 

 

「ゆかりちゃん! あなたものすごく大変だったらしいじゃない!」

「そうなんですよ。あの福音の奴、結構強めに殴ってきましたから・・・」

「あなた、入院したらしいじゃない。体に支障はない?」ペタペタ

「大丈夫ですよ。大丈夫ですって。ああ、触んな! うっとぉしい!」

「ホントに大丈夫?」

「ほんとですって!」

 

 

 

そんな会話もありましたが今日で晴れて一学期は終了。明日からは夏休みです。皆さん思い思いの日々を過ごすに違いないでしょう。

そしてほかの生徒たちが期待を膨らます一方、私の心はあまりにも静かだということもここで言っておきましょう。

そして先生からの注意事項も終わったところで私たちは解散。そして今は寮の部屋にいます。

 

「で、簪ちゃん」

「なに?」

「なんか夏休みとか予定あります? 私はないですけど」

「私? 私は少し観光したいところがあるの」

「どこですか?」

私がそう訊くと簪ちゃんはポケットからパンフレットを取り出して見せてきました。

 

「ここ!」

「・・・"風都"、ですか?」

「うん、みんなで行こう!」

その時の簪ちゃんはすごく素敵な笑顔でした。うわ、まぶし。

 

 

 

 

 

後日。

 

 

 

 

 

「風都、キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!」

「テンション高いですね、簪ちゃん」

「そりゃそうだよ! 私がずっと行きたかったところだもん!」

「おかーさん! 見てください! いっぱい風車がありますよ!」

私たちは風都に着きました。そして周りの景色を眺めていました。ちなみに月影さんは電話してみたところ家の用事があるということで一緒に行けないという返事だったそうです。

 

「しかし、なんでこんなところに行ってみたかったんです?」

「ここには風都タワーが観光スポットなの! それにそれに」

「それに?」

 

 

「ここには"仮面ライダー"がいるらしいの!」

 

 

「・・・へぇ、どんな人たちなんでしょう?」

「たぶんすごく正義感にあふれてる人たちだと思うよ!」

「そりゃあ町や人々を守るんですからそれなりの正義感はあるでしょうね」

そんなことを話しながら私たちは風都のとあるカフェ(?)によりました。

 

「いや~、ここのコーヒーおいしいですね」

「私コーヒー苦いから嫌い」

「まぁ、万人受けはしないですよね」

「私は部隊にいたときは砂糖をいっぱい入れて飲んでました!」

「今は飲んでないんですか?」

「今も飲んでますよ!」

すると一陣の風が吹きました。

私は目を細めながら言います。

 

「・・・さすが風の街、といったところでしょうか。いい風が吹きますね」

「そうだね」

その時、悲鳴が聞こえてきました。

私たちはその悲鳴が上がった方向を見ます。そこには金色のカニに銀色のサイが!

 

「ぎ、ぎぎぎ銀色のカニに、ききき金色のサイだぁ?!!」

「逆です! 金色のカニに銀色のサイです!」

私はてんぱっている簪ちゃんにそう言うとバッグからベルトを取り出して腰に巻き付けます。そしてポケットからデッキを取り出します。

 

「簪ちゃん! ラウラさんを連れてここから離れてください!」

「ゆかりさんはどうするの?!」

「ここであの怪物と戦います! あいつらを野放しにはできません!!」

「だったらISで対抗しても…!」

「ここでISを動かしたら後がうるさいでしょう?!」

「あ、そっか・・・」

「だから早く!」

「うん!」

「さて…」

私は怪物二匹の前に立ちふさがるように立つ。

 

「さぁ、やりますか。変身!」

そう言って私はデッキをベルトに差し込んだ。

 

【HENSHIN】

 

するとベルトからアーマーが全身にかけて展開される。

そして頭のてっぺんやつま先まで展開し終わると女声の音声が流れる。

 

【CHENGE! ALTERNATIVE!】

 

そして私はデッキから2枚カードを引き抜くと右腕にあるバイザーに読み込ませる。するとカードは青い炎となって消えた。そして音声がまた流れる。

 

【ADVENT】【SWORD VENT】

 

あれ? 音声が変わってますね。

すると窓ガラスからろーちゃんが出現した。おい、そっから出てくんのかよ。私聞いてないよ。

それと同時に空から剣が落ちてきたので私はそれをキャッチします。

 

『さぁ、行くよ』

『・・・!』

私たちは構えると怪物に突っ込んでいきます。カニには私がサイにはろーちゃんが。

私はカニの斬撃を剣でさばくとがら空きの胸元に切りつけます。すると火花が飛び散りました。

いや、おかしいだろ。そこは血だろ。ま、いいか。

そしてろーちゃんの方を見ると肩のアーマーを外してナックルみたくサイに殴りつけていました。

次の瞬間、背中を切り付けられました。

 

『?!』

私が驚いて後ろを見るとそこには大柄な、なんだこいつ?!!

 

「おねーちゃん! あれなに?!」

「たぶんトラ、かな?」

こっから少し離れた物陰から見ているそう二人が言ってる間にも長い鉤爪が振り下ろされた。

私は剣で防ぐ。しかし、横からカニに吹っ飛ばされた。

私がごろごろ転がっているときにろーちゃんがこっちに駆け付けようとしているのが見えた。

 

『ろーちゃん! だめだ!』

『・・・!!』

次の瞬間、トラに攻撃されていた。そしてそのままサイのタックルを背中に食らって吹っ飛ばされる。

あいつら、連携してやがる…!

 

「「おかーさん!/ゆかりさん!」」

『来るな!』

二人が物陰から出てきて叫んだので私は叫び返す。

とはいったものの、この状況をどうするか…。

私が思考を巡らしている間にも3匹はじわじわと近づいてくる。

 

 

 

「「変身!」」

 

 

 

その時、声が聞こえた。私がその方向を見ると・・・

 

『・・・キカイダー?』

左右で色が別々な怪人がいた。

 

 

続く




おまけ
風都
・風の街。その名前の通り電機の大半は風力発電によってまかなわれている。
・ガイアメモリの犯罪率が他と比べて異様に高い。
・仮面ライダーがいる(らしい)。




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


【Cyclone】
【Joker】
「「変身!」」

「「は、半分こ怪人だぁ!!」」

「「い、色が変わったぁ!!」」

『『ジョーカーエクストリーム!!』』

「「わ、われたぁ?!!」」

『・・・メモリ?』



次回、『Fを守るハンカチ/彼らの名はダブル』

これで決まりだ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

風都編②『Fを守るハンカチ/彼らの名はダブル』

前回のあらすじ
 一学期も終わり、夏休みに突入。そして結月ゆかりたちは更識簪の提案により、風の街、風都に観光旅行することとなった。
そこで遭遇したのはカニとサイの怪物だった。結月はオルタナティブに変身するとサイコローグを召喚して立ち向かう。しかし敵の増援として虎の怪物が出現。
絶体絶命かと思われたその時、現れたのは二色で真っ二つに分かれている半分こ怪人だった。






自分の勝手なイメージですが、ここのゆかりさんは将来ホンダワルキューレかホンダシャドウ〈750〉とかホンダシャドウファントム750とかホンダゴールドウィングC6Fとかのどっかり座るタイプのバイクに乗りそう。

ちなみに自分は腰に当てたらベルト部分が出現するタイプじゃなくてもとから555やイクサのようなタイプのベルトの方が好きです。

まあ、ライダーは全部好きなんですけどね。





「ど、どうしよう! お、おかーさんがやられちゃう!」

「で、でも、ゆかりさんが"来るな!"って言ったし…」

私たちは何もできずに歯がゆい思いをしながらあわあわしていた。

 

「おい、嬢ちゃんたち、危ないぞ! こっから逃げな!」

すると向こうからソフト帽をかぶった男の人となぜか紙をとめるクリップを髪につけている人がやってきた。

 

「だ、だけど、友達が…」

「え? もしかしてあのコオロギみたいなやつ、お嬢ちゃんたちの友達か?」

「はい! それであのジェイソンみたいな顔のモンスターが仲間なんです! あなた方の方こそ逃げないんですか?」

するとソフト帽をかぶってる人がほほ笑んで言った。

 

「ああ。嬢ちゃんたち、下がってろ。行くぜ、フィリップ」

「ああ、翔太郎」

二人は懐からベルトとメモリを取り出すとベルトを腰に巻き付けてメモリのスイッチ(?)を押した。

 

【CYCLONE】

【JOKER】

「「変身!」」

音声が鳴った後、片方が差し込んだ。するともう片方にワープしてもう一人が差し込みなおしてもう一つのメモリを差し込む。そして開いた。

するともう一人が倒れてもう一人が変身していく。

 

【CYCLONE JOKER】

音声が流れると二色で真っ二つに分かれている怪人が出現した。

 

   \。/

  (0||0 )

  ((=||=(V) ←絵にするとこんな感じ。

 (/ロ=W==ヽ)

  (_)⌒(_)

 

「「は、半分こ怪人だぁ!」」

私たちはお互いを抱きしめながら叫んだ。

 

|/o)『ちげーよ! 俺たちの名前は"ダブル"だ!』

(o\|『翔太郎、そんなこと言ってる余裕はないよ。早く参加してあの子たちの友達を救おう』

|/o)『ああ、そうだな』

「ひ、一人で、しゃ、しゃべってるよ。ラウラさん・・・」

「(絶句)」

ラウラさんは目を見開いたまま絶句してしちゃった。その間にも半分こ怪人はゆかりさんとこに向かっていく。そしてトラの怪物を蹴り飛ばした。

 

|/o)『ってコイツ鉤爪あんのかよ! あぶねぇな!』

(o\|『翔太郎、メモリチェンジだ』

|/o)『ああ、言われなくても!』

なんか独りで言うとどっから取り出したか知らないメモリをさしなおした。

 

【CYCLONE METAL】

「「色が変わったぁ!!」」

私たちはまたまた思わず叫んだ。

 

『ッラァ!』

色が変わった半分こ怪人はなんかいつの間にか手にしていたロッドでトラの怪物の鉤爪を集中的にバシバシ殴りつけていた。

そして鉤爪をたたき割るとメモリを抜いて棒の部分に誘うとした次の瞬間、ろーさんとの戦闘から離脱したサイの怪物が半分こ怪人を吹っ飛ばした。その拍子に半分こ怪人は棒を落としてしまった。

 

|/o)『しまった!』

(o\|『翔太郎、ジョーカーのメモリだ!』

|/o)『ああ!』

そしてまた黒いメモリを取り出すとさしなおした。あれどっから取り出すんだろう。

 

【CYCLONE JOKER】

そして寝そべりながら襲い掛かってきたトラの怪物を蹴ってのけぞらせるとその隙に立ち上がる。

 

|/o)『行くぞ、フィリップ。メモリブレイクだ!』

(o\|『ああ、翔太郎!』

そしてメモリを一つ抜いて右腰にさすと叩いた。すると音声が流れる。

 

【JOKER MAXIMUMDRIVE】

すると猛烈な風が吹き始めた。そして半分こ怪人の体がふわーっと浮き上がる。・・・え。

 

「「う、浮いたぁーー?!!」」

私たちが叫んでいる間にも半分こ怪人は両足をトラに向けていた。そして突っ込んでいきながら叫んだ。

 

『『ジョーカーエクストリーム!!』』

そして途中で真っ二つに分かれた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・え。

 

「「わ、われたあああああああああ?!!」」

思考が追い付かない間にも目まぐるしく場面は転換した。そのままトラの怪物は攻撃を喰らって爆散。半分こ怪人は元通り体がくっついていた。

そして爆発したところには人が倒れていた。

その間にゆかりさんも状況を逆転できているようだった。カニの怪物を吹っ飛ばして転がした後ベルトから一枚カードを取り出すとスキャンした。

 

【WHEEL VENT】

するとろーさんがバイクに変形した。・・・って。

 

「で、電人ザボーガーだぁ!」

私は思わず叫んだ。

その間にもゆかりさんはろーさんに乗り込むと一気に突っ込んでいく。その途中で回転し始めた。そしてそのままコマのように高速で回転しながらカニの怪物に突っ込んでいった。そしてカニの怪物と激突すると怪物が吹っ飛ばされて地面を転がるとそのまま爆散した。・・・って。

 

「「こ、交通事故だぁ?!」」

私たちは率直に思ったことを叫んだ。思ったことを叫んで何が悪い。

ゆかりさんは方向転換するとサイの怪物に向かって突っ込んでいく。すると思い切り飛び上がって勢いよく蹴りを入れた。そしてすかさずそこにろーさんが突っ込んで行ってサイの怪物を撥ね飛ばした。そしてサイの怪物も地面をゴロゴロと転がると爆散した。

そしてゆかりさんは着地すると半分こ怪人の方を向きました。ちなみにろーさんはそのままどっかに消えていきました。

ゆかりさんはじぃっと半分こ怪人を仮面の下から見つめるといいます。

 

『助けてくれてありがとうございます』

|/o)『いや、礼には及ばねぇぜ。俺たちは俺たちの仕事をこなしただけだ』

(o\|『それより・・・、君たち変身を解除した方がいいんじゃないのかい? このままじゃいろいろとシュールなことになるよ?』

|/o)『確かにフィリップの言う通りだな。おい、アンタ』

『なんでしょう?』

|/o)『お互い変身を解除しようぜ』

『ええ、わかりました』

すると二人の姿が崩れて素肌が姿を現しました。

 

「え?! 女かよ?!」

あれ? 気づかなかったんですか?

 

「女の子が仮面ライダーとは、実に興味深い・・・」

「いつの間に?!」

そして倒れていた人はいつの間にか目を覚まして私たちの隣まで来るとそうつぶやきました。その眼には好奇心が映っていました。

 

「…ん?」

ゆかりさんは何かに気が付くと地面に落ちてる何かを拾い上げました。そしてじろじろと見るとつぶやきました。

 

「メモリ…?」

するとゆかりさんはソフト帽をかぶった人をちらりと見ると言います。

 

「そこの、えーと・・・」

「ああ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は左翔太郎。ハードボイルドな、探偵さ」

「そして僕がフィリップ。よろしくね、君たち」

「ああ、はい」

「・・・」

「こら、どんなに怪しくても私の後ろに隠れないでよ。ラウラさん」

「で、探偵さん」

「なんだい、お嬢ちゃん」

「このメモリ、さっきの化け物と関係がありますよね?」

「・・・」

「沈黙は肯定ととりますよ?」

「・・・ああ、わかった。説明するから俺んとこの事務所に来い。・・・ま、まずはこいつらを警察に渡してからだけどな」

「ここではそれがルールですか」

そう言いながらゆかりさんはデッキをポケットにしまった。

 

 

 

 

 

しばらくして。&視点変更

 

 

 

 

「で、そのガイアメモリというのが人をあんな化け物に変える元凶というわけですか」

「そうだな。そういう認識で構わないぜ」

私たちは鳴海探偵事務所というところにいました。どうやらお二人方の拠点はここのようです。

 

「しかしメモリで変身、ですか。コンパクトでなかなかいいと思いますが、なくしたりしたら大変ですね」

「ああ、そうかもな」

「今までなくしたこととかなかったんですか?」

「戦ってる最中にとられたことならあるけど、取り返したぜ」

「ふむ・・・」

私はなんとなく考え込むようなしぐさを取りました。

 

「しかし、ISか・・・。すごく興味深い。もっともっと、僕に話してくれないかな?」

「ええ・・・」

「もう無理・・・」

そして私の隣ではフィリップさんがラウラさんと簪ちゃんにISのことを聞いていました。その眼は好奇心旺盛な少年のような目でした。

 

「しっかし・・・」

私はちらりとテーブルを見ます。

するとそこには機械の動物っぽいのがわちゃわちゃしてました。

そして私の方を向くと私の周りをくるくると回り始めました。

・・・。

 

「なんですか? この子達」

「メモリガジェットだ。俺たちの事件捜査に一役買ってくれるんだ」

「なかなかかわいらしいですね」

私はそう言いながらピョンピョン跳んでるカエルをキャッチする。

 

「ん?」

そしてなんかメモリが刺さっていたので抜くと急に動かなくなった。

 

「あれ? あれ?」

「ああ、それはギジメモリっつってガジェットを動かすキーみたいなもんだ」

「なるほどなるほど」

メモリをぶっさすと起動するとは、なかなかに興味深い。

そう言いながら私たちの夜は更けていった。

 

 

続く




次回の『結月ゆかりはISの世界で仮面ライダーになるようです。』は!


「依頼、ですか?」

「俺に質問をするな」

「んー、なーんか引っかかるんですよねぇ~」

「なるほど、そういうことか」

『私たちはこの世界を変える!』


次回、『Mと調べろ/復讐者』

これで決まりだ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。