脇谷九基の日常 (ラーカー)
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脇谷久喜と天使ヶ原桜の関係

書きたくなって書いた反省はしていない(他に書いてる人もほぼいないし


 たぶん俺は転校初日の自己紹介でそんなアホなことを言った人間をたぶん一生忘れないだろう。

 

「初めまして!左門召介(さもん しょうすけ)です。召喚術師(サモナー)やってます!趣味は悪魔の召喚です!」

 

 その転校生はいい笑顔でそう言いきった。

 その時の俺――脇谷九基(わきや くき)――は単純に(変な奴が来た)程度に思っていたが、後日聞いた所によるとクラスの人間――例外を除いて――関わりあいたくないと思ったらしい。

 その結果、一瞬にして私立算文(ソロモン)高校2年B組で彼は”孤立”することになった。

 

「触らぬ厨二に祟りなし」

 

 とクラスの誰かが言ったが、これ以上に的を射た発言はないだろう。

 当たり前だが厨二病も妄想癖も悪いことではない。

 ただ、真っ当に成長して夢や希望(ファンタジー)から足を洗って、現実に生きるようになった普通の人間からすれば悪魔だの召喚術師(サモナー)だのは異端でしかないわけだ。

 

 真っ当に成長したならばであるが

 

「左門くん?私、学級委員長の天使ヶ原(てしがわら)だけど」

 

 物事には大体例外というものが存在する。

 速攻で関わりたくないという共通認識を抱かれた左門に義務感なのか良い人なのか彼女――天使ヶ原桜は(左門)に話しかけていた。

 

 天使ヶ原桜(てしがわら さくら)・通称てっしー(その他には天使・仏など)

 

 あだ名で大体わかるだろうが良い人である。

 具体的に言うとバスに酔って吐いた下呂のゲロを素手でキャッチして「下呂くん大丈夫?」と気遣いをしたほどの変人――違った聖人である。

 なんか非公式にファンクラブが出来てたり、先生からも超高評価されてたり学校中に頼りにされたり、良い格好しようとする先輩が良くいるほどの優等生である。

 なんかエ〇ゲで出てきそうなキャラだな。今気づいたけど。いや出てこねーか。

 

 我ら(笑)がてっしーが転校生(左門)に部活関連の話を振っているところで眠気がピークに達したのでそのままフェードアウトすることにする。

 ちなみに俺の席は一番後ろの窓側端っこの左門の右斜め前兼天使ヶ原(てっしー)の前の席である。

 ・・・・・・微妙な位置だな。授業中に寝てるとてっしーに鉛筆でツンツンされて起こされるため個人的には最悪の席だったりする。以上お休mZZZZZzzzzz

 

 

   ☆   ★   ☆

 

 

「カロリーを取れ」

「あ~・・・・・・眠い」

「脇谷君は下校時間ギリギリまでよく寝れるね」

「カロリーを取れ」

「夜寝ないからな」

「夜はちゃんと寝ようよ」

「やなこった」

「カロリーを取れ」

 

 転校生が来てから数日、教室で爆睡して居た所てっしーに起こされたためうだうだと一緒に帰っていた。

 

「そういや。てっしーにちょっと聞きたいんだけど」

「え?なに?」

「さっきからてっしーの後ろにいる象みたいなの(それ)なに?」

「え?」

「飯屋とか出店の前を通るたびにカロリーを取れと言ってるそれ」

「え?脇谷君悪魔(これ)が見えるの!?」

 

 どうやら見えてはいけないものだったらしい。

 俺って霊感等が強かったっけ?幽霊とか見たことないけど。

 

「普通に見えるけど何そいつ?悪魔っぽいけど」

「え~っと実は・・・・・・」

 

 そこからてっしーによる話を聞くと

 

「転校生に告白されると思ったら、悪魔で嫌がらせされるようになったのね」

「うん」

「小腹がすいたな。クレープぐらいだったら奢るぞ」

「え?「カロリーを取れ」いやいいよ」

 

 割とどうでもいいことだが、なんか寝てる間にてっしーは左門に気に入られたらしく事あるごとにてっしーを『良い人』だと言っているのを見るようになった。

 てっしーは褒められたとでも思っているのか照れているが左門の言う『良い人』はニュアンス的には『良い人(反吐が出る)』みたいな感じだ。あれほっといたら面倒なことになりそうだな。もうなってる気がするがどうでもいいや。俺に害はなさそうだし。

 

「あ、クレープ下さい。トッピングはチョコでお願い。てっしーは何を喰う?」

「いやいいよ!?さっき断ったよね!?」「イチゴで」

「彼女にはイチゴで」

 

 毎度毎度起こされるのも悪い(むかつく)し、ちょっとした恩返し(嫌がらせ)だ。

 

「はいよ色男!」

「話聞け!?ていうか悪魔!?勝手に意見を出すな!」

「はい彼女さんイチゴね」

「ナイスカロリー」

「あ、ありがとうござ――いや彼女じゃないです」

「そうですよ彼女は友達(迷惑な人)なだけです」

「ちょっと待て友達と書いて何て読んだお前」

 

 詰め寄ってくるてっしーをあしらいつつ近場の公園に移動して、てっしーとの雑談を再開する。

 

「しかし、悪魔に憑かれるとかてっしーは何目指してるの?」

「いや、自分の意志じゃないんだけど」

「あ、わかった。悟りを啓くためか」

「仏じゃねーよ」

 

 てっしーの否定に軽く首をかしげると

 

「え?悪魔の誘惑を耐えてるんでしょ?」

「うん。まあそうだけど」

 

 成り行きでとゴニョゴニョ言ってるてっしーを軽く流して

 

「どっかの開祖も悟りの途中でマーラとかいう悪魔が誘惑して邪魔してたらしいし。誘惑を耐えきったてっしーは悟りを啓くんじゃない?」

「眠気と食欲の誘惑でどう悟るだよ」

「・・・・・・そこはてっしーだし」

「そのよくわかんない信頼は何なの?」

「てっしーがどっかの開祖の生まれ変わりだったとしても嗤って納得するけど」

「今なんかおかしくなかった?」

「気のせい」

 

 てっしーは教祖の才能はなさそうだけど悟りの才能はありそうな気がするけどな。いやファンクラブも出来てるし、勝手に神格化されるかもしれんな。どっかの宗教家みたいだな。

 

「ま、頑張れや。欲望に耐えるのは心意気次第だろうからな」

「うん。頑張る」

負けるなよ(心折れればいいのに)。また明日」

「また明日」




先輩のキャラではありませんが初期は悪魔等のキャラがよくわからない感じなのでこれでいいと思う


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脇谷久喜と左門召介との関係

オリ主だって生きている


 大したことのない日常にも変化というものはよく起こるものだ。

 毎日が同じ一日だったら発狂してる自信があるね。似たような毎日は送れても同じ一日は送りたくないものである。どっかのエンドレスな夏休みが大不評だったように。なんかちがうか。

 

変化その一

 てっしーがギリギリに登校するようになった。いつもは30分前には登校しているのが「二度寝するでヤンス」と五月蠅い悪魔付きで眠いらしい。

 あと左門が謎の生物の背中に乗ってよく登校してくる。マジでなんだあれ?

 

変化その二

 てっしーが昼食や帰りの買い食いの誘惑のせいでなんか可哀想なことになりやすくなっている。あとビームをうつ「カロリーを取れ」という悪魔が原因らしいが女の子が人前でお腹の音響かせるのはどうかと思う。

 あと左門はかなりの偏食らしく昼に菓子パンかドーナツしか食っていない。早死にしそうだな。

 

変化その三

 最近、見たことない謎の生物?悪魔?がうろつくようになった。何を狙っているのか知らないけど怖いものだ。なんか目が合っただけでいきなり襲いかかってきたし、悪魔って誘惑担当じゃないのか?

 あと左門がそれとは別の悪魔とフットサル?してるのを見かけた。あいつは悪魔と友達なのだろうか?

 

 軽く思いつくだけでこれぐらいだろうか。てっしーは仏の修行してるからいいとして、最後のは普通にヤバくないか?物理攻撃してくる悪魔とかタチ悪すぎだろ。襲ってくる理由もよくわからないのに。俺以外だったら大変なことになってたぞ。

 

 今日も放課後の惰眠から嫌な気配を感じて目を覚ましたので、二秒ほど迷ったが帰ろうと思い屋上からの階段を下りてるところで

 

「——最近の左門くん一人でいる時より楽しそうだよ

 そこは少しよかったと思ってたんだ

 ・・・ちょっとだけね!」

「・・・・・・「良い人」だねぇ」

 

 なんか下校デートしているてっしーと左門がいた。

 あれ?まだ校内だから校内デートか?まあそこら辺はどうでもいいとして良い雰囲気だし気付かれないようにさっさと帰――ドン――なんか反転した瞬間に何かにぶつかった。

 よろけるように一歩下がるとそこには昨日、俺を追いかけまわした悪魔っぽいムキムキの筋肉がいた。

 

「脇谷くん!?」

「あ、見つかった」

「フシュー」

「・・・・・・」

 

 どうやらデート中の二人に見つかったらしい。てっしーは目を丸くしてるだけだけど左門の奴は別の意味で驚いているようだ。

 

「あー、デートの邪魔した?」

「いや違うよ!?それよりその悪魔なに?

 ・・・・・・もしかして脇谷くんも!?」

「いや、あれは彼が召喚した悪魔じゃないね――て言うか誰?」

「俺はてっしーの前の席の脇谷久喜だ。覚えなくてもいいぞ」

「いやそこは覚えてもらおうよ

 ――まあそれはそれでよかったよ」

 

 何が良かったのだろうか?あとなんか悪魔が異様にてっしーを見てんだけどなんなんだろうか?好みのタイプなんかな?

 

「で、左門くん。また悪魔で私への嫌がらせ?」

 

 あ、なんか悪魔が俺を通り越しててっしーに近づいて行く

 

「——天使ヶ原さんそいつ僕が召喚した悪魔じゃないよ」

「え~?なにそれ?左門くん以外に「ドゴォ」――だれ・・・が?」

「おー、ロッカーがくの字に曲がった。パネエな」

 

 流石、筋肉悪魔。筋肉は伊達じゃないって所か。

 

「ほら!人間への物理攻撃なんて下品なことさせないよ僕は」

「いや知らんけど

 どういうこと!?

 左門くんじゃないなら」

「ところで逃げなくていいのか?なんかてっしー狙ってるっぽいけど」

「え?―――のわあああ!?」

 

 なんか必死に避けてる。あ、鬼ごっこが始まった。また何かの修行か何かなんだろうか?

 

「いいのか?あの悪魔とやらてっしーを追いかけてったけど。助けなくていいの?」

「なんで僕が?別に仲がいいわけでもないのに」

「ふーん?つーか、あれホントにてっしー狙いか?なんか知能低そうだったけど」

 

 ついでに言うとそこまで賢くもなさそうだし、ザコに分類される奴なんだろう。

 

「あれの狙いは僕だよ。僕は偉い悪魔でもバンバン召喚するから悪魔とかに嫌われてるんだよね」

「へー。むしろ偉い悪魔が召喚したってだけで従う方が驚きだけど?

 なんか契約とかして魂を要求するイメージがあるし」

「そういうのもいるけど。召喚されたらある程度命令を聞くタイプもいるのさ。僕が主に召喚する(呼ぶ)のはそういうのさ」

「雑談してないで助けてよ!?」

 

 あ、てっしー帰ってきた。

 

「悪魔と鬼ごっこするなんててっしーも暇だね」

「鬼ごっこじゃないんだけど!?命狙われてたよね!?なに見てたの!?」

「てっしーの苦行?」

「いいんじゃない?天使ヶ原さんは完全にとばっちりだけど楽しそうだし」

「楽しくねーよ!」

 

 口調が崩れてるけどまあ、気にするだけ無駄だろうから流しておく

 

「さっきのは?撒いたの?」

「なんとかね・・・・・・

 それより左門くん!とばっちりってどういうこと!?」

「あーそれ?

 さっきも言ったけど僕は偉い悪魔でもバンバン召喚するから悪魔とかに嫌われてるんだよね。だからたまにああやって嫌がらせが来る」

「ある意味自業自得だな」

 

 というか偉い悪魔バンバン召喚するとか普通に考えたら自滅ルートだけど。それをしのげる程度には実力はあるんだろう。

 そう考えるとすげーなこいつ。ただの性格悪い奴にしか見えないのに。 

 

「じゃあなんで私が狙われたの!?」

「さあ?

 もしかしたら僕と天使ヶ原さんが友達だという不愉快な勘違いでもしたんじゃない?」

「それが理由!?」

「あ、やっぱ友達以上の関係なんだ」

「いや違うからね?ていうか友達以上の関係って何!?」

「そう言う不愉快な関係にしないでくれない?僕は天使ヶ原さんみたいな「良い人」が大っ嫌いでさ」

 

 じゃあ、なんなんだよお前らの関係は?

 と、適当な雑談していたのが悪かったのか、騒がしくしていたからかまたさっきの悪魔が出てきた。

 

「また出たな」

「左門くん!出番だよ!あれ倒して!」

 

 てっしーのセリフだけ聞くとヒロインみたいだな。てっしーは性格上主人公側なのにね。

 

「いやだよ」

「え?」

「あー、やっぱりか」

 

 そりゃ断るよねえ。堂々と嫌いって言いきるくらいには好感度低いみたいだし。

 

「それじゃあ俺帰るよ。無関係っぽいし」

「いや僕は天使ヶ原さんのこと嫌いだし」

「え?え?」

 

 てっしーは こんらん している!

 

「んじゃ帰るわ」

「僕も帰らせてもらうよ。それじゃ頑張ってね」

 

 わきやと さもんは にげだし た!

 

 てっしーは ぼうぜん としてい る!

 

「いやー!?」

 

 後ろから悲鳴が聞こえるけどてっしーなら大丈夫だろう。特に理由はないけど大丈夫だろう。

 

「左門もほどほどの時に助けてやれよ?」

「え?なんでだい?悪魔に殺されるなんてウケるじゃん」

「んー?お前なら暴力で「良い人」のままで死ぬことを許容するようには見えないけど

 そうでないなら悪魔でてっしーに嫌がらせしないと思うけど」

「・・・・・・」

 

 なんだこいつ急に黙り込んで

 

「そうだね

 天使ヶ原さんには地獄に落ちるような人間になってから死んで欲しいね」

 

 左門は急にすっげー邪悪な顔してどっかへ向かった。

 あの様子だと助けるんだろうな。嫌がらせの(玩具を守る)為にだろうけど。

 

「仲いいなあ」

 

 ついうっかりそんな言葉が漏れたが誰にも聞かれずに消えていった。

 帰るか。

 

 

 

 

 

 

 次の日、登校したら無事だったらしいてっしーに説教された。

 解せぬ。



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脇谷久喜と九頭竜芥の関係

個人的に好きなキャラですね
欲望に素直だし


 左門が転校してきてから早くも数週間。

 てっしーが泣きながら左門に抱き付くという謎の行動(なんか魂が云々言ってた)が起きてから約数日。

 

「天気のいい放課後は昼寝するに限るな」

 

 様々な昼寝スポットで放課後を過ごしている俺は今日は屋上で放課後の惰眠タイムを貪っていた。

 

ZZZZZZzzzzzz

 

「おい転校生!!お前やっぱり悪魔を召喚できるんだな!?」

 

 というバカでかい声で強制的に起こされた。

 

「うっさい」

「あだ!?」

 

 イライラしてたので枕にしていたカバンを扉の近く(足元)で騒いでたバカに投げつける。クリーンヒットして騒いでいたらしい九頭竜芥(くずりゅう かい)が倒れ込んだので、そのまま放置して扉の上の屋根から屋上に飛び降りる。

 

「脇谷くん!?帰ったんじゃなかったの!?」

「てっしーに起こされたくなかったから屋上の扉の屋根(そこ)で寝てた。ねみい・・・・・・」

「それどういう意味!?」

「そのまんまの意味だが?」

 

 そう言ったらてっしーがやかましくなったので適当にあしらうことにする。かったるいし。

 

 

   ☆  ★  ☆  ★

 

 

 てっしーがようやく落ち着いたので、ようやく本題に入ることになった。

 

「・・・で?誰なの彼?」

 

 そういえば左門の奴は速攻でクラスから孤立したからたまに話す程度の人間(俺とてっしー)ぐらいしか名前を知らないのだろう。

 とりあえず自己紹介からかな?覚える気なさそうけど。

 

「同じクラスの九頭竜くんだよ

 覚えなよクラスメイト」

「クラスメイト全員覚えてる奴も珍しい気がするが?

 俺も6割ぐらいしか覚えてねえし」

 

 覚えるとしたら目立つ奴と仲のいい奴くらいだ。

 

「脇谷くんは覚える気がないだけでしょ!?」

「そうとも言うな」

 

 俺の適当な態度にムッとしたらしいてっしーだったが話が進まないと判断したのか、スルーすることにしたらしい。ずっと俺のことスルーしてくれればいいのに。

 

「ま まあ話したことねえしな

 九頭竜だ

 よろしくな」

「んー

 よろしく」

 

 そこでてっしーが何かに気づいたのか妙に小声で左門に話しかける。

 

「っていうかいいの!?」ヒソヒソ

「ん?なにが?」

「何って・・・

 左門くんの正体がバレてるじゃん

 ちょっとこれマズいんじゃ・・・」ヒソヒソ

 

 普通に聞こえてるんだけど隠す気あるんだろうか?

 

「バレるも何も転校初日の自己紹介で言ってるし僕」

「あ」

 

 記憶が確かなら初っ端の自己紹介で趣味が悪魔召喚とか言ってたな。

 どうでもいいけど。

 

「隠す気まったくなかったよなあれ」

「俺もそん時は信じちゃいなかったよ」

 

 あー、見えないとそう思うわな。俺も悪魔が見えなかったら信じなかっただろうし、たまに話す左門も召喚する所を見るか偶然波長が合わない限り見えないらしいし。

 ちなみに俺は後者だ。召喚される所に立ち合わせたわけでもないのでぼんやりとしか見えないし、見たいとも思わない。ちなみに一番よく見えるのは「二度寝するでヤンス」の悪魔だ。なぜかあいつだけははっきり見える。

 

「でもこの前偶然見ちまったんだ・・・

 屋上まで悪魔を呼びだす左門(そいつ)の姿をな

 一目でわかったぜ・・・

 なにかとんでもないものを見ちまったって事を・・・」

 

 九頭竜はそんなこと言ってるが絶対大したことじゃねえと思うぞ?

 

「それ多分サルガタナスに屋上の鍵を開けて貰ってた時だね」

 

 ・・・・・・サルガタナスって結構偉い方の悪魔だったと思うけど召喚してやることピッキングかよ。

 なんか可哀想だな。

 つーか、俺は雨樋登って屋上侵入したのにそんな楽な方法で侵入してたのかこいつ。

 

「それで?

 結局何の用なの?」

「そりゃもちろん悪魔の力を借りてえんだ!」

 

 また破滅しそうなお願いを言うなあ。悪魔って基本危険なのに。

 

「なんか悪魔の力って凄そうじゃねえか

 ちょっとした小遣い稼ぎなんか簡単だろ!?

 なあ!?」

 

 すっごい邪悪な顔して喜んでる左門を見ると九頭竜の事を気に入ったらしい。こいつ欲望に素直なタイプとか好きそうだしな。

 

「や

 やめなよ九頭竜くん

 左門くんは役に立つ悪魔出さないから」

「え?」

「いや、サルがなんちゃらとか普通に便利じゃん」

「脇谷くんはちょっと黙ってて!」

 

 ・・・・・・俺はそんなにおかしなことを言ったのだろうか?言ってない気がするが。

 

「例えばほら!この大食いにさせられる悪魔!

 こんなのばかりだよ!?

 役に立たないでしょ!?」

 

 まだ嫌がらせされてるのか。てっしーも修行に余念がないな。

 

「大食い大会とかでは便利そうだな」

「そ、そうかもしれないけど!?」

 

 それを聞いて九頭竜は何か閃いたのか何かを検索し始めた。

 この周辺で大食い大会とかなかった気がするけど。なに調べてんだ?

 

「・・・・・・見ろ!

 今日の夕方静岡でホットドッグ大食い大会で優勝賞金30万!

 その悪魔がいれば楽勝だぜー!!」

 

 九頭竜芥(くずりゅう かい) 通称・クズ

 なんて言うかまあ。見たまんまの人間である。

 交友関係は結構広いがこういう性格なので友人はあまりいないらしい。

 ちなみに家庭科の成績のみ5だったらしい。

 

「逸材・・・・・・」

 

 左門は楽しそうだなー。俺帰っていいかな?なんか話に付き合ってるけど俺いる意味なくね?

 

「だ、大体静岡にどうやって行くの?

 今から行っても間に合わないでしょ」

「あ・・・・・・

 そうだな確かにそこは問題だ・・・・・・」

 

 てっしーも必死だなあ。大会開始まであと30分だし、どう考えても間に合わねえな普通の方法じゃ。

 

「けど静岡までワープできる悪魔とかいるんだろー!?

 なあ左門出してくれよ友達だろー!?」

「話すの今日が初めてじゃなかったのか?」

「友人になるのに時間は問題じゃないんだよ!

 なあ左門お願いだ!この通り!」

 

 清々しいくらい迷いのない土下座だな。プライド無いんかこいつ。

 

 

   ☆  ★  ☆  ★

 

 

~静岡県某所~

 

「んー

 着いたねー」

「え・・・・・・?

 もう静岡に着いてんの?」

「ワープとか初体験だな」

「なんで私まで連れてくの・・・・・・」

 

 そういや、なんで俺まで一緒に飛ばされたんだろうか?

 

「ちょうどガープが呼べる時間帯でよかった」

「呼ぶのに条件がある奴とかいるんだなー」

 

 見た所、どっかの公園らしい。

 ホットドッグの美味そうな匂いもするから本当に会場近くまでワープしたみたいだ。・・・・・・GPSで確認してみたが本当に静岡だ。

 悪魔便利すぎるだろ。

 

「あっちに受付があるな!

 よし行こうぜ!」

「迷いなしか。俺も行く」

「あ、九頭竜くんに脇谷くん!?」

 

 てっしーの呼び止める声が聞こえるが無視して、腹が減ってたので先に受付していた九頭竜の後に俺も登録する。親には食べて帰ると言っといたから思う存分食えるな。

 

 

   ☆  ★  ☆  ★

 

 

『・・・・・・さあさあやってまいりました!

 毎年恒例ホットドッグ大食い選手権!

 今年も名だたるフードファイターが優勝賞金30万円を求めてやってきました!』

 

 おー。よく見たら有名所のフードファイターばっかりじゃねーか。真面目に優勝は難しそうだな。

 そうなるとTV中継されてなかったのはよかったな。変に有名になりたくねえし。

 

『そんな中に勇気ある飛び入りの二人が参加!

 高校生の九頭竜くんと脇谷くんです!

 応援の同級生も一緒です!』

「(なんで脇谷くんも参加してるのー!?)」

 

 てっしーは俺も参加してた事に驚いているようだが。俺が受付してたの見てなかったのだろうか?

 なんか左門と話してたしそっちに気を取られてたのかもしれない。

 

「へ、負けないぜ!(ぐぅぅぅぅ)」

「こっちこそ?」

 

 九頭竜は左門に頼んでべヒモスとやらの食欲ブーストを頼んだらしい。腹の音五月蠅い。

 

『それではスタート!』

 

 合図とともにホットドッグを全員が食べ始める。

 九頭竜は先輩(べヒモス)のブーストのおかげか序盤から一気に詰め込んでいく。

 ちなみに俺は普通に食べたいので断った。腹いっぱいホットドッグが食いたいだけで元々優勝する気はないし。

 

『おーっと!?

 九頭竜選手苦しそうだ!

 ペース配分失敗か!?』

 

 なんで先輩(べヒモス)のブーストかけておいてすぐに限界が来てるんだろうか?

 もしかして空腹だと思わせるだけで容量(キャパ)は増えないのかもしれない。作戦失敗だな。

 つーか、左門知ってたなこれ。高笑いしてるし。

 

『おーっと!?

 九頭竜くんを同級生が止めに入る!』

 

 なんかてっしーが死ぬ気か!っと全力で止めているが、九頭竜は食うのを辞めない。

 あ、てっしーがぶん殴って九頭竜が倒れた。

 リタイアはえーなおい。

 

『同級生に止められた九頭竜選手!

 しかしどういう事だー!?

 倒れた九頭竜選手の口にホットドッグが吸い込まれていくー!?』

 

 ・・・・・・は?

 

 思わず食べる手を止めてそっちを見ると

 

 先輩(べヒモス)が九頭竜の口に黙々とホットドッグを詰め込んでいた。

 あれ殺す気だな。てっしーが欲に呑まれないから鬱憤を晴らしているのだろうか?

 あ、てっしーが九頭竜を抱えて逃げて行った。

 

『ここで九頭竜選手リタイアー!

 同級生が慌てて医務室の方へ連れていきます!』

 

 いや、あれ先輩(べヒモス)から逃げてるだけだ。あとホットドッグが浮いてることに霊感強めの奴が気づいてるけどほっといていいのかな?

 

 

   ☆  ★  ☆  ★

 

 

 大会も無事終了し、準優勝を果たした俺は副賞の10万円を受け取って(先輩に追い回されて大変だったらしく準優勝したことには誰にも気づかれてなかった。それはそれで悔しい)、左門が召喚した謎の生物(透明化して乗ってる俺らも見えないらしい)の背中に乗って空を飛んで帰っていた。

 

「あーひどい目に遭った」

「自業自得じゃねーか」

「本当に危なかったんだからね!?」

「あっはっはっはっは!」

 

 左門はさっきから笑ってるし、本当に楽しかったんだろうなー。

 

「ワープで帰れないのか?」

「ガマンガマン」

 

 九頭竜のアホが吐きそうなのでさりげなくてっしーが盾になるように場所を変える。てっしーも心配してるし押し付けるのは比較的楽だった。

 

「吐くなよ?」

「我慢できそうにねえ・・・・・・

 ・・・・・・なあてっしー」

「なに?」

「ゲロを手で受け止めてくれるんだろ?」

「それを期待しないで!?」

 

 なんだかんだでそこそこ楽しんだ日だったと思う。

 

 

 

 

 次の日、九頭竜が俺がネットニュースに準優勝した事が載ってたらしく、賞金の事がバレてなし崩し的に左門とてっしーを含めて奢る破目になった。

 ・・・・・・いや、別にいいんだけどね?




悪魔に恨まれるというデメリットを除けば召喚術便利すぎると思う。
俺がやっても下手したら死ぬし下手しなくても死ぬ未来しか見えないけど。

あと一旦更新は終了
要望があれば再開するかも


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脇谷久喜とアレな人達の関係

ちょっとした切っ掛けで
久々に読み返したので


「やっぱりドーナツはシンプルにクリームとチョコが入ってるのが最強なのでは?」

「シンプルって揚げドーナツとかじゃね?」

 

 購買に向かいながら九頭竜とどうでもいい雑談していると。

 

「<検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)><検閲(ピー)>」

 

 廊下を全速力疾走しながら隠語16連射する学級委員(てっしー)に追い抜かれた。

 

「え?何今の?」

 

 知り合いの奇行に咄嗟の反応ができなかった。

 くっそこのボイスレコーダー取り出すのが遅れたわ。

 

「すげーな何の名人だよ」

「名人か?咄嗟の事で録音し損ねたわ。ちょっと追いかけて録音してくる」

「実はお前が一番の邪悪じゃね?」

 

 あーあー、聞こえない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校舎裏まで来たが完全に見失った…。

 どうすっかなあ。腹減ったしやっぱり購買に向かおうかと考えていると

 

「…ではこれより天使ヶ原桜ファンクラブの定例会議を開催する!!」

 

 天使ヶ原桜ファンクラブ(バカの集い)に対面してしまった…。こいつらの温度苦手なんだよなあ。見つかる前に「そこにいるのは天使ヶ原桜に付きまとう悪魔(ファンクラブの天敵)!」 天使ヶ原桜ファンクラブ(バカ共)に見つかってしまったか。

 

「お前ら毎度毎度飽きないねえ。帰っていい?」

 

 

「駄目だ!いつもいつもてっしーのやさしさに付け込んでデートしやがって!」「この前下校中にクレープ食べてるの見たぞ!」「一緒に喫茶店でパフェ食ってた」「うらやましい!」

 

 見切りつけて戻ろうとしたら引き戻されて音の洪水が流れ出る。

 だから面倒なんだよなこいつら……。

 

「逆恨みじゃねーか。一応弁明するとちょくちょく写させて貰ってるノートの代金で奢ってんだよ。というかパフェの時は九頭竜と左門もいたろ」

 

「クズもサーモンも知らん!」

 

 シバいたろかこいつら。

 思考が物騒な方向に動いていくのを自覚しつつどう逃げようか考えていると。

 

「天使ヶ原だ!天使ヶ原が来たぞ!」

「てっしー!?てっしーが何故こんなところに!?」

「まさかこいつの為に!?」

 

「おい誰だ今不愉快な事言ったやつ?シバクぞ」

 

 ザワザワする天使ヶ原桜ファンクラブ(モブ共)は、さておきなんで物陰から覗いてるてっしーと合わせて二人のてっしーがいるんだ?

 また左門の悪戯か?

 

「や やあ!天使ヶ原!どうしたんだ?

 珍しいじゃないかこんな校舎裏……」

「道端の馬糞の分際で誰に話しかけてんだタコ助が」

 

 ッダーン!!!

 

 話しかけたリーダー(ゲロ)含めて天使ヶ原桜ファンクラブ(メンタル弱者)がなぎ倒された。

 

「シンクロ率が高いな。だけど男ばかりで見苦しいから3点!」

 

「見世物ではない!」「……!?て 天使ヶ原!?どうした!?」「いったい何が!?」「そんな物言い天使ヶ原(我がエンジェル)らしくないじゃないか!」「どうしたっていうんだ てっしー!?」

 

「どうかしてんのはお前らだろストーカー集団が

 雁首並べて気持ち悪いんだよダニ共」

 

 ッダーーーン!!!

 

 気持ちはわかるが俺より口悪いなこの偽ヶ原。

 

「畜生!俺は悪い夢でも見てるのか!?」「いつもの天使ヶ原はどこに行っちまったんだ!?」「……これはこれで良くね?」「目を覚ませ!」「ぐはぁ!?」「錯乱した奴が出たぞ!?」

 

「うろたえるなお前ら!」

 

 阿鼻叫喚の事態にリーダー(モブ顔)が立ち上がる。

 

「こいつは天使ヶ原なんかじゃねえ!

 こいつは……

 

 悪魔だ!!

 

 おそらく正解である。

 偶然だろうが。

 

「俺たちの信仰を確かめるために遣わされた悪魔なんだよ!

 これは俺達に与えられた試練だ!

 揺らぐことのない天使ヶ原への信仰(おもい)を見せてやるんだ!」

 

「さすが下呂」「良い事言うぜ下呂!」「下呂の癖に良い事言うぜ!」「やってやろうぜ!」

 

 

 こいつらは誠実な信徒のつもりなのだろうか?

 過去の熱心な信徒も見苦しい存在(こんなん)だったのだろうか。

 比べるのも失礼だな……。

 

「ゲロくせえ口で長台詞しゃべんな」

 

  オ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ッ!!

 

 カッコイイ台詞から十秒しか持たなかったな……。

 

「下呂がゲロった!」「お前の信仰グラグラじぇねえか!」

 

「ま、まだだ……」

 

 不屈の闘志で再び立ち上がろうとする下呂(汚物)だったが

 

「あら?いま口から生み出したのはお子様ですか?

 お父様にそっくりの元気な汚物ですね?」

 

  オ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ッ!!

 

 追撃によってK.O.

 

「下呂が息してないぞ!?」「どうすんだこれ!?」「落ち着けこういう時は心臓マッサージを!?」

 

「落ち着けよ馬鹿共。とりあえず回復体位を取らせて気道を確保しろ!救急車呼べ!吐瀉物は適当に埋めろ」

 

「「「了解!ボス!」」」

 

「誰がボスだ」

 

 とりあえず救急車呼ぶか。

 

 脈測ったり救急隊員に引き継いだりと大騒ぎしている間に偽ヶ原はどっかに消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー凄かったよなこの間の……集団ヒステリー」「下呂しばらく入院だってさ」「そろって同じ幻覚見るなんてあるんだなー」「プラズマ的なアレか?」「すげーよなープラズマ的なアレ」

 

 

 

 

 プラズマ的なアレってなんだよ?

 と思ったので一応てっしーに確認とった所悪魔の仕業だったらしい。

 オカルト的な意味ではあっているのか?

 それはそれとして

 

 

「あ、ボス!お疲れ様です!」

「その呼び方やめろ」

 

 しばらく天使ヶ原桜ファンクラブ(烏合の衆)にボス呼ばわりされ、いつの間にか天使ヶ原桜ファンクラブの名誉顧問扱いになっていた。

 

 ……やっぱあいつら敵だ。




後日

「てっしー。これ聞いてみてー」
「なにこれ。音楽か何か?」
「まあまあ聞いてみて」

『道端の馬糞の分際で誰に話しかけてんだタコ助が』
『どうかしてんのはお前らだろストーカー集団が
 雁首並べて気持ち悪いんだよダニ共』

「ちょっと待て!お前何撮ってるの!?」

 しばき倒された。


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