blaine・stop (cl.)
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帰還-Return-

俺の名は倉部涼太(クラベ リョウタ)東京都にある中学校に通う2年生だ。

 

なんの力もない、ただの中学生だ。

 

そう、なんの力もない...と言うよりは、捨てたって行ったほうが正しいかな。

 

俺は昔、ブレイン・バーストの世界で戦う、1人の戦士だった。

 

名は《Clarinet・clock》レベルは5だった。

 

クラリネット。そう、楽器のクラリネット。

 

まぁクラリネットとは名ばかりな物で木っぽさもなく、実際は普通のアバターだ。

 

黒色に手の甲や足が銀のノーマルカラーとメタルカラーの両方を持ち合わせた割と珍しいアバターだ。

 

その他にも腕や首等に銀の装飾が施されていている。

 

フォルムも普通の人型で、珍しい以外に特に特徴はなく、武器も何も持たなかった。まぁ手の甲が銀だから多少攻撃力は高いが。

 

俺は“親”にコピーインストールして貰ってからたった半年程度で5レベルに成れた。

 

その理由は、俺のアバターが持つアビリティ《The world》時間停止アビリティと、現実で培った空手スキルだった。

 

時間停止アビリティは必殺技ゲージを消費しつつ時を止める。という代物で、使い方としては、相手からの避けきれないような攻撃の回避、攻撃を避けられないように相手に当たる寸前まで回し蹴りをし、時間を動かし始めたら即相手に当たるなど、とても便利なその能力で、俺は勝ち星をあげ続けていた。

 

必殺技は特に無く、武器も無いので、それが1番の弱点だった。

 

俺は“親”がマスターを務めるレギオン《イクシオン》という10人弱のレギオンに所属し、決まって土曜日には無制限中立フィールドで談笑をしていた。

 

あの頃はこの世界で皆といる事がとても楽しくて仕方なかった。

 

だがしかし、幸せは、長くは続かなかった。

 

レベル5になって間もなく、世間は夏休みを迎えた

 

家族旅行で三泊四日の旅行をして、東京に戻り、“親”である親友に電話をした時の事だった。

 

「よう、これから上にダイブしないか?」

 

俺が明るい声で話しかけると、彼は不思議そうな声で、「上?」と言った。

 

「無制限中立フィールドだよ、エネミーでも狩ろうぜ?」

 

俺はそれを気にせず親友を誘うと、彼は更に「無制限...?エネミー...?」と呟いていた。

 

「訳のわからない事言うのやめろよ、俺はゲームしないぞ」

 

と言って彼は電話をブチッと切った。

 

俺はそれが何なのか理解出来ず、咄嗟に一つのコマンドを呟いた。

 

「アンリミテッド・バースト」

 

周囲がビシッと青い空間...初期加速空間に入り、次に通常アバターがバトルアバターに変身する。

 

そして降り立った自分の家のフィールドの壁を正拳突きで突き破り、俺は外を走った。

 

5分位走ると、そこには交流のある大レギオン所属の知り合いがいた。

 

そのアバターはコチラに気づくと、哀しそうな声で俺に話しかけてきた。

 

「おう、その、気の毒だったな...」

 

彼が何故自分を慰めてくれるのかが理解出来ず、俺は彼に問いかける。

 

「おい、何で慰めるんだよ?」

 

俺の言葉に彼は驚いた仕草をみせる。

 

「お前、二日前の話、知らないのか!?」

 

彼のその驚きようは、更に俺の謎を深めた。

 

「?あぁ、あまり言わない方が良いと思うが、昨日まで旅行してたんだ」

 

その言葉に「あぁ、そうか...」とまた声が低い哀しそうな声になった。

 

「実はな...」

 

「お前のレギオンメンバーはお前以外全員、全損したんだ。目の利く奴がそれを見て、その場にいたヤツが応援に行ったが...ついた頃には、皆、やられてたよ」

 

衝撃の事実に、頭が真っ白になる。

 

「...俺はその場にいなかったし、応援に行った時には誰もいなかったらしいが、目の利く奴の話だと、やられては直ぐに蘇生され、殺され、蘇生されを繰り返してたらしい...」

 

そこで目の前も真っ白になり、次にふと気づくと、俺は自分のベッドの上で寝ていた。

 

恐らくあの後無意識にポータルへ行ったらしい。

 

...その後、俺はブレイン・バーストで対戦及び上にも行っていない、たまにカンニングする為に初期加速空間には行くけど...

 

その事件があったのが2042年だったから...もう5年もダイブしてないのか...

 

普通ならアプリをアンインストールしたりするが、俺はブレイン・バースト自体が彼らの形見と思っているので、大切に残してある。

 

が、乱入等はされたくないため、自分の家や学校以外はグローバルネットワークに接続していない。

 

そのため、今加速世界がどんか事になっているのかもさっぱりだった。

 

そして、ふと対戦してみようかな、と思った俺は、今日が日曜日という事を利用し、青のレギオン『レオニーズ』の領土の新宿エリアに向った。

 

久々にグローバルネットワークに接続し、乱入待ちをしていると、急に加速し、アバターに変身する。

 

これは乱入された証だ。

 

アバターに変身すると、ステージに降り立ち、相手と自分の名前とゲージが出現する。

 

相手の名前は...《cobalt・blade》青のレギオン、レオニーズの幹部《二剣《デュアリス》》の片方だ。

 

彼女とは昔よく対戦した。

 

あの時も凄まじい刀捌きだったが、5年たった今ではどうなったのかと考えていると、目の前にコバルトが歩いてきた。

 

「貴様、生きていたんだな。5年間噂すら聞か無かったから全損したのかと思ったぞ」

 

青銀の装甲を持つ女武者は、以外にも話をかけてきた。

 

「まぁ、事情があったんだよ。それよりも、5年降りの対戦なんだから、いい勝負にしたいな」

 

俺の陽気な言葉を言い終わると、彼女は抜刀の準備を、俺は空手のフットワークを刻み始めた。

 

彼女を登録しているのであろうギャラリーも、シン...と静まる。

 

そして静寂を切り裂くかの如く飛びだし、勝負が始まった。

 

戦闘の感はあまり鈍ってなかったらしく、避けては攻撃、相手もそれを避けては攻撃の戦闘が行われた。

 

 




どうも、うp主のCl.と申します。

この作品は、脳内で思いついた事を色々変えて出来た作品です。

まぁ大体が主人公の所属先なんですが、オリジネーターだったり、無所属だったり、紫の王が親だったーてのを最初は各予定だったんですが、それだと黒のレギオンと接触が出来ませんし...で、まぁ色々考えていたらこんな形になってました。

あとチート気味の主人公の能力を如何に弱くするか...

クオリティのとても低いssですが、どうぞよろしくお願いします。


あと、緊張誘うような終わり方してますがタダのコピーミスです。


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再開-Resumption-

戦闘開始から15分が経ち、両者の体力はどちらも5割削られ、必殺技ゲージはどちらもMAXに達していた。

 

そして彼女が下がり刀を鞘に戻し必殺技の名前をコールする。

 

「レンジレス・シージオン!」

 

そして放たれた刀から高威力の斬撃が繰り出される。

 

だが、必殺技を放った後の大きな隙を見せたとこを俺は見逃さなかった。

 

俺は此処でクラリネット・クロック最大のポテンシャルでもある時間停止アビリティを発動させた。

 

必殺技ゲージがMAXだから、大体10秒間連続して止められる。

 

ギャラリーを含め全てが静止した世界の中、俺は必殺技の斬撃をヒョイっと避けるとそのままコバルト・ブレードの所まで走り、跳躍した。

 

そして、彼女に向け飛び回し蹴りをし、当たる寸前でアビリティを解除、俺の蹴りは彼女の首にクリティカルヒットし、彼女は体力ゲージの残り5割中3割が吹き飛び、彼女自身も左へ吹き飛んで、壁に激突する。

 

そこでまた体力ゲージが削られ、もう普通のパンチでなくなるくらい体力になっていた。

 

そして最後のパンチを繰りだした瞬間、目にも止まらぬ速さで女武者が動き、俺の右腕が切断され、体力が残り2割を残して吹き飛んだ。

 

そして刀の先は俺の首筋に向けられ、必殺技ゲージは空っぽの状態だった。

 

「降参、負けたよ」

 

俺が両手を挙げて負けを認めると、彼女は刀を下ろし、顔を俺の耳に近づけた。

 

「貴様、加速世界に復帰するのか?」

 

と尋ねてきたので、俺は戸惑いつつも「あぁ」と応える。

 

「お前はこの5年の出来事を全く知らぬであろう?」

 

俺はそれにも「あぁ」と応えると、彼女は驚きの提案をしてきた。

 

「では新宿駅近くの喫茶店に来い」

 

「ちょ...それって...」

 

俺の発言を遮って彼女は俺の腹に刀を刺し、対戦は終了し、俺は現実世界に戻った。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

対戦が終わり、新宿駅近くにの喫茶店にやって来た。

 

だが、俺は此処で5分程入るかどうか迷っていた。

 

何故なら、ブレイン・バーストを含む全てのゲームで、リアル割れは最大の禁忌とされている。

 

通常ゲームは、女アバターにホイホイついて行ったら不良でカツアゲされたりだが、ブレイン・バーストの場合は、自身のトラウマ等で自動的に生成されたアバターなので、その様なことはないが、人気の無い所に連れ込まれ『リアルアタック』をされる確率がある。

 

《リアルアタック》...いわゆるPKは、直結対戦で、ギャラリーも無くグローバル接続を切ることも、プラグを外すことを出来ない。

 

それはそれを実行する前に、対戦が始まるからだ。

 

それで全損した人も少なくは無い。

 

だが、誘われたら以上、行かなければ彼女はずっとこの喫茶店で待ち続ける事になる。

 

それに、彼女の性格的にそんな事は無いだろうし、俺に姿を見せるということは、彼女にも同じ危険があるので、これは信用してもいいのだろうか?

 

決意を固め喫茶店のドアを開けるとカランコロンっと懐かしい音が響いているのを聴きつつ、俺は彼女のいる席を探した。

 

店内に入り、周りをキョロキョロと見回して見ると、私服姿のツインテールの美少女が1人で座っている姿が目についた。

 

これは安直過ぎないでしょうか。

 

確かにコバルト・ブレード

 

ホントにこれ?ねぇこれどう見分けるの?

 

とどうするか悩んでいると、彼女はクラリネットのストラップを机に置いていた。

 

多分あれだ。とりあえず俺に場所を知らせる為のあれか。

 

俺は彼女の反対側の席に何気ない顔で座ると彼女は一瞬驚いた顔をみせ、直ぐに冷静を取り戻す。

 

そして彼女は直ぐに長めな直結用ケーブルを取り出し、自分のニューロリンカーに刺すと、片方のケーブルを俺に手渡した。

 

恐らくじゃなくとも、これは刺せという事なのだろうが、異性の直結って普通交際相手とかとやる奴なんすが。

 

ほら!周りの女性達がコチラをみてざわざわしてる!

 

まぁ堪忍して刺す訳だけど...

 

カチッと音がし、視界内に警告が出た後、彼女は思考発声で俺に話しかけてきた。

 

『貴方がクラリネット クロックですね?』

 

彼女の問いにこくりと頷くと、彼女は自己紹介を始めた。

 

『私の名前は高野内 琴、中3 、知っての通りコバルト・ブレードです。』

 

彼女は言い終えると、にこっと微笑む。

 

彼女の印象としては、なんかもっとお固い人なのかと思ったが、以外にも彼女のリアルは清楚という言葉の似合う大人しそうな女性だった。

 

それと装甲凄いっすね。

 

思考発声しないよう気をつけつつ考えたその思考を振り払い、俺も自己紹介を始めた。

 

『俺は倉部 涼太、同じく中3。それと、リアルまで晒したんだからちゃんと答えて貰いますよ、この5年間に起こった出来事を』

 

『はい、では何処から話しましょうか』

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

それから彼女から聞いた出来事はあまりに衝撃的だった。

 

レベル9、《王》の誕生。

 

サドンデスルール。

 

赤の王レッド・ライダーの退場に《ネガ・ネビュラス》の解散、及び黒の王ブラック・ロータスの失踪。

 

そして、《新生ネガ・ネビュラス》の誕生に、黒の王の子の飛行アビリティ持ちのシルバー・クロウに擬似ヒーラーのライム・ベル。

 

6代目災禍の鎧事件に、突如現れたメタトロン。

 

計4時間に及ぶ説明が終わる頃には、もう4時半になっていた。

 

『なぁ、最後に聞かせて欲しいんだが』

 

『何ですか?』

 

この3年間の出来事は良くわかったが、それなら何故わざわざリアルを割ったのかが疑問に残った俺は彼女に聞いてみた。ちなみに、話の途中で加速世界と同じ感じで喋って欲しいそうだ。

 

『なんでわざわざこんな事したんだ?上でも良かっただろ』

 

『えぇと...』

 

?何故か分からないが慌ててる。

 

『それは...あっあれです!』

 

『あれ?』

 

俺が更に首を傾げると、彼女は慌てながらに説明する。

 

『貴方をレギオンに誘おうと思ったんです!』

 

いや、それも上とかでいくない?

 

口には出さないがそんな事を思いっていると、俺はその数秒後遅れて衝撃を受けた。

 

『えっ!?俺が!?レオ二に!?』

 

彼女はコホン、と言いつつやっと落ち着き、俺に説明を始めた。

 

『貴方は能力も腕っぷしも良いですし、他のレギオンに取られる前に誘おうと、どうですか?』

 

『うーん、確かに俺は無所属だし、昔はレギオンに入ってたから断ってたけど、今別に断る理由は無いし...』

 

すると彼女は、少し表情を明るくして

 

『本当ですか!?』

 

『うん、本当』

 

そうして俺はレオニーズに所属する事になった。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

そして、5時が過ぎ、そろそろお開きなった所で、俺はふと彼女に尋ねた。

 

「そう言えば、どこ中?」

 

これは流石に答えたくれないかなーと思っていると、

 

「中野です。〇〇中」

 

へぇ、〇〇中かぁ、知ってる知ってる、俺も通ってるもん。

 

...................................................ん?俺も?

 

「同じ中学!?」

 

こうして、俺のブレイン・バーストは再開したのだ。



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詰み-Checkmate-

今回は三人称視点で書いてみました。

どちらが見やすいか言って頂けると幸いです


涼太は悩んでいた。

 

そして悩んでいた理由は勉強でも部活でも、はたまたブレインバーストの事でもなかった。

 

厳密に言うとブレインバーストの事だったが。

 

それはさておき、それなら何故涼太は悩んでいるのか。

 

それは数分前にまでさかのぼる。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

4限の終わりを告げる鐘の音に耳をすませながら、涼太は今日の昼食に何を食べようかと悩んでいた。

 

カレーやラーメンなど、考えただけでもヨダレが止まらない定番メニューを頭に浮かべていると、ふと教室のドアがガラッと開いて、そこからツインテールの良く似合った巨乳美人が入ってきた。

 

その美人は周囲が騒めいているのに目もくれず、コツ、コツと音を立てながら涼太の席まで歩いてきた。

 

周囲はさらに騒めき、涼太は背中に冷や汗を流す。

 

彼女の名は『高野内 琴』青のレギオン、レオニーズの幹部の1人であるLv.7で青の王『ブルー・ナイト』の側近。

 

彼自身今日知ったのだが彼女はその容姿からリアルでは人気が高いらしい。

 

それと今更になるが、何故同じ学校にバーストリンカーが居たにも関わらず、何故彼はこの5年間対戦をふっかけられなかったのかと言うと、涼太は加速世界有数のプログラマーも生業としていた。

 

そして加速世界から引退する時に作った専用MOD『インビジブル』を作成した。

 

これは単純にClarinet・clockの名前を対戦リストから見えなくする物だった。

 

それだけ見ればとても便利かつ卑怯に思える代物だが、実際はそんな事は無く、使用する際にはそれなりに面倒くさい条件や弱点がある。

 

それは使用中、他のアプリケーション等の使用を殆ど制限される事や、リストに見えないだけで実際はリスト内に名前は存在し、それに気づかれたら終わり、という物だ。

 

そして今回のアップデートでインビジブルは完全に使用不可になり、前回の様な行動を取ったりした。

 

「涼太さん、一緒にお昼食べませんか?」

 

涼太は今気づいた様に振り向き、雪の目を見る。

 

「あ、あぁ高野内さん、こんにちは、俺が貴女と一緒にお昼だなんて、冗談がキツイですよ」

 

引き攣った笑を浮べながらタダの知り合いを装うが、雪はふっと微笑みながら玉砕する。

 

「冗談なんかじゃないですよ。それに私の事は琴って呼んでくださいって言いましたよね?」

 

その微笑みと発言は男共の嫉妬心を煽るには十分で、溢れ出る殺意と突き刺さる様な嫉妬の眼差しは涼太に一つの確信を知らしめた。

 

(俺は今日死ぬかもしれん)

 

「わかりました。で、何処で昼食を取るんですか?」

 

断れば琴が出ていった瞬間リンチになるので、少しでも生存時間を延ばすために大人しく着いて行く事にした。

 

「ラウンジです。そこでもう一人待っていますので早く行きましょうか」

 

俺は「さてと」と立ち上がると、彼女は涼太の手を握り、急かすかのように早足で涼太を引っ張った。

 

そして再び肥大化する殺意。

 

(よし、後で襲われたらフルバースト使お...)

 

そう心に決めた涼太は今はこの手の温かみを精一杯感じようと手をすこし強く握った。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

ラウンジに着き、「何か買ってきますか?」と言われた涼太はカウンターへ行き、醤油ラーメンを注文し、それを受け取るとすぐに周りをグルッと見渡すし彼女のいる席を探した。

 

すると奥の方の席に、雪と、雪にそっくりのポニーテールの女の子がいた。

 

(あっアレがマンガンかぁ...(察し))

 

片方の存在を知っていると、分からない方がおかしい程酷似しており、逆にこれ程の美人達の存在を気にとめていなかった自分にすこし心配になる。

 

そんな思考を振り払いながら2人の座ってる席に座ると、目の前に同じ弁当箱に混ぜるようにラーメンを置いた。

 

すると今度は琴が直結用ケーブルを差し出してきた。そしてよく見ると彼女等も直結をしている、

 

そして再び涼太は頭の中で頭を抱えた。

 

何故ならこんなのはたから見たら二股の現場だ。

 

こんなのした日には今まで特に目立たなく、それでいて平穏だった日々が一転、色んな奴から悪目立ちする挙句、毎日嫉妬に狂った奴らとの戦いの日々が始まってしまう。

 

だが、もしも繋がなかった場合は、恐らく加速世界でぶちのめされた後に無理矢理はめさせられるのだろう。

 

その瞬間涼太の頭によぎったのは、この状況を打破する妙案でも何でもなかった。

 

(────詰んだ)

 

今にも叫びたい衝動を抑えつつ、涼太は震える手でケーブルを嵌めたのだった。

 



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接触-contact-

雪と琴見分けるのむずすぎィ




俺は諦めてケーブルを自分のニューロリンカーにさし、目の前に現れた警告を払うと自分の手を合わせ、いただきますをする。

 

『へぇ〜この学校に私達以外のバーストリンカーがいたとわねー。しかもそれが『時を司るもの(クロノス)』だとわねー』

 

まずマンガン・ブレードであろう高野内 琴が俺に意外そうな目で見てきた。

 

え?てか俺ってばそんな二つ名あったの?

 

因みにクロノスというのはギリシャ神話に出てくる時間を司る神な訳で。まぁ要するに時間停止アビリティ持ちの俺には丁度いい二つ名なのかな。

 

まぁそれはともかく、俺はラーメンを啜りながら訊ねる。

 

『それで、こんな所に呼び出して直結させた理由を教えてくれよ』

 

『それはレギオン加入についての話をしようかと』

 

琴がタコさんソーセージをパクッと食べながら話すと、俺は左手で仮想タップを操作する。

 

『なら加入手続きしたいから申請書くれよ。幹部なんだからもってるだろ?』

 

(オリ設定)レギオンに加入するためには現実及び仮想世界でレギオン加入申請書ウィンドウに記入、許可される必要があり、申請書を保有、スカウトを出来る者はレギオンマスター及びレギオンマスターが許可した者だけにその資格が得られるbyうp主

 

『その事なのですが、どうやらマスターが貴方と直接会いたいらしく…』

 

え?またリアル割れ?いいの?こんなリアル割れして。

 

まぁ、とりあえずコイツ等のマスターって事は『剣聖(ヴァンキッシュ)』か。アレはそういうの厳しそうだけどな。

 

『それに私達も貴方の能力とかに興味あるしね』

 

雪が手を合わせご馳走様をする。

 

『どうですか?加入手続きもそこですればいいかと』

 

俺は10秒程うーんと考え込むが、最強の近接『伝説殺し(レジェンドスレイヤー)』『剣聖(ヴァンキッシュ)』と様々な異名を思いのままにする青の王 ブルー・ナイトのリアルを見てみたい気持ちもあるし…

 

うーん。うーーーん…

 

考えに考えた結果、まぁ大丈夫だろう言うことで会うことにした。

 

最悪PKしに来ても逃げる事は割に容易だ。

 

ある意味回避に特化した能力だしな。

 

『まぁ…良いけど』

 

すると少し安心したような顔見せる雪。

 

『そうですか。では放課後に校門に来てくだい。それから集合場所に案内します』

 

彼女が微笑むとケーブルをニューロリンカーから外し、雑談をした後、午後の授業へ向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

危なかった…

 

HRが終わる嫉妬に狂った男共(百合の方も)が問いかけてきたりして俺は必死に逃げてきた。

ゼェー…ハー…と額の汗を拭いながら息を整えていると、琴と雪が俺に気づいたのかこちらに手を振ってきた。

 

「どうしたの?そんなに息乱しちゃって」

 

雪が不思議な顔をして訊ねてきたので、なんでもない。と返して目的地へ向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

それから俺等は学校から徒歩10分程度歩いた所へある喫茶店に入った。

 

「いらっしゃいませ」

 

入店するとウェイトレスさんが笑顔でお辞儀をしてきた。

 

「何名様でしょうか?」

 

「いえ、待ち合わせしていて」

 

「そうですか。ではごゆっくり」

 

ウェイトレスさんはパタパタと店の奥へ行き、俺達はブルー・ナイトを探す。

 

すると、雪が見つかたのか話をかける。

 

「あ〜先輩!」

 

雪が手を振る先には青髪の青少年がいた。

 

「おっ来たか。まぁ座れよ」

 

言葉に甘えて席に座り、メニューウィンドウを開く。

 

メニューの中には豊富なデザートがあるが、俺はせっかくだからこのガトーショコラとコーヒーを選ぶぜ!

 

俺がウィンドウを閉じて前に座っている2人に目を向けると、なにやら論争をしているようだった。

 

「私がショートケーキなするから琴ちゃん諦めてよ」

 

「前は私が変えたじゃないですか。今日は雪が変えてください」

 

女性って大変だなーと思いつつ見ていると、ウェイトレスさんが品を運んできた。

 

「お待たせしました。ガトーショコラとコーヒーと…チョコレートパフェとホットココアになります」

 

「ガトーショコラとコーヒーは俺です」

 

俺がその二つを受け取ると、次に青の王が品を受け取った。

 

しかも割と嬉しそうな表情で。

 

俺が意外そうに眺めていると、青の王が俺の視線に気づいたようだ。

 

「どうした?なにか可笑しいか?」

 

「いや…なんか…意外と甘党なんだなって…」

 

「…俺はどういうイメージなんだよ」

 

玄米茶とか好きそう…緑の王も含めて。

 

そんな話をしていると女性2人も決まっていたようで、オーダーの品が届いた。

 

「まぁじゃあ自己紹介しておこうか、俺は『青谷聖也(アオタニセイヤ)』だ。よろしく頼む」

 

「俺は倉部涼太です」

 

「先輩はうちの卒業生で、今は〇〇高校にいるんだよ」

 

自己紹介を終えると琴が先輩の現在を教えてくれる。

 

「じゃあ早速だがレギオン登録をしたいから加速するが…バトルロワイヤルでいいかな?」

 

「私は大丈夫ですよ」

 

「私も!」

 

「俺も問題ないですよ」

 

そう言うと俺はBBのアプリアイコンからバトルロワイヤル許可する。

 

それから直ぐに俺の周囲は蒼く硬直し、通常アバターはバトルアバターに変身した。




因みにこれもうちょい書こうかと思ったけど面倒くさくなった。


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加入-affiliation-

お久しぶりです。cl.です。今回は8月の初めに執筆開始したものなので比較的早い投稿ですね。

凄い、前投稿したのが四ヶ月前!?こんなに短いことがあったでしょうか(困惑)


無限の闇とも思える深夜の空に個々を主張し合う星達が輝き、建物はおとぎ話に出てくる様な西洋の城に変わり、あたり1面は花乱れる庭園が出現する。

 

バトルアバターがそこへ現れると、花は風と共にブワッとたなびいた。

 

ここは《妖精郷》ステージ 。その名に相応しい美しさを持つかなりレアなステージだ。

 

ステージを見回しそれを確認すると、次に俺は対戦者をの大まかな位置を示すシステム《ガイドサークル》に従い、サークルが示す方向へ歩き始める。

 

少し歩くと、そこには既に全員集まっていた。

 

女武者の《コバルト・ブレード》に《マンガン・ ブレード》と俄然とした態度で王と呼ぶに相応しい風格を漂わし、腰には異様な存在感を現す、加速世界における最強の強化外装七星外装(セブン・アークス)の一つ、天枢《ジ・インパルス》を携えた男《ブルー・ナイト》が佇んでいた。

 

「やっと来たか…まぁ、こんな所で立ち話もなんだ。ここは建物の中に椅子とかあったし、とりあえずそこで話そう」

 

そう言うとブルー・ナイトとそれに付き添い(二剣)《デュアリス》も城の中に入っていき、俺も慌てて中に入った。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

城の中、西洋風の椅子にブルー・ナイトが腰を掛け口を開いた。

 

「さてと、まずはレギオン加入の事だ」

 

そう言うと、ブルー・ナイトは手元のウィンドウを操作する。

 

すると俺の目の前にレギオン加入書が転送された。

 

俺はサッと注意書きを流し読みし、《加入》をタップする。

 

この瞬間、俺は《無所属》から青のレギオン《レオニーズ》の一員となり、同時にレギオンマスターからの《断罪》が有効化された。

 

俺がゴクリと生唾を飲んでいると、彼が再び口を開く。

 

「所で、クラリネット・クロック。いきなりで悪いが、能力を明かしてもらえるか?」

 

…え?

 

なんか、凄い事が聞こえた気がしたぞ?

 

「えーと、今なんて?」

 

「能力を明かしてもらえるか?と言ったんだ。お前の能力は未知数だからな、まぁ彼女等からの信頼の厚いおまえさんだが、万が一裏切ったり不可侵条約を犯した時、俺はお前さんを《断罪》しなきゃならんからな。その時の為だ」

 

えー…生命線である能力の詳細を話す…かぁ…

 

話さなかったらあんまり信用されなさそうだよなぁ…まぁでも何処ぞのバナナと違って口固そうだし、何より王の信頼は何者にも代えがたい。

 

「分かりました」

 

了承し、俺は自分の能力を話し始める。

 

「まず、俺には見ての通り強化外装はありません。いわゆる徒手空拳ですね。リアルで空手をやってるので、それが俺の戦闘スタイルです。必殺技もありません」

 

「確かに、貴様とは何度も対戦しているが、武器はもちろん1度も必殺技は出されてないな」

 

話していると、昔の事を思い出すかの様にコバルト・ブレードが話す。

 

「あるのはアビリティだけ、アビリティ名は《The world》。皆さんご存知の通り、時を止める能力です。必殺技ゲージMAXで10秒程止める事が出来ます。時を止めている間はプレイヤーは《破壊不能》つまり攻撃が出来なくなる。だから俺は攻撃が当たる直前でアビリティを解除して攻撃を当てます」

 

興味津々で俺の能力を聞くブルー・ナイト。

 

「弱点はそれだけなのか?」

 

「いえ、ある程度実力のある者とかは、背後に移動しても読まれる事があります。話を聞く限りじゃ、殺気とか気配が移動したのを感じるとか」

 

ふぅ…あらかた話したなぁ…改めて自分の能力見ると、やっぱりチートだよ。

 

「すると、お前さんはレベルアップボーナスを全てアビリティにつぎ込んでいるようだな。初期が2秒で、強化事に2秒ずつ増えている感じか」

 

《レベルアップボーナス》その名の通りレベルアップ毎に設けられるもので、新アビリティや既存アビリティな強化、強化外装の入手及び強化、新必殺技等を手に入れれる素敵なイベント、かの緑の王や2代目赤の王はそれを一つにつぎ込み、とてつもない力を獲得してるだとか。

 

そんな俺が選んだボーナスとは…

 

ん?

 

あ、あれ?

 

俺、ボーナス取ってなくね?(汗)

 

「えーとですね、非常に言い難いのですが〜」

 

「なんだ、いきなり改まって?」

 

「レベルアップボーナス、取ってません」

 

は?その言葉と共に一瞬の静寂が訪れたあと、マンガンがそっと尋ねてくる。

 

「それは、Lv.5のボーナスと言うことだな?」

 

若干不安混じりのその声に、俺も震えた声で返す。

 

「いえ、レベルアップボーナスを一つも取ってません…」

 

そこから長い沈黙が訪れる。とても気不味い。

 

ヤバいよ、この空気もう耐えられない、穴があったら入って4泊位したいくらいだよ。

 

「だから貴様新手の事をしてこなかった訳か」

 

コバルトが今までの対戦を振り返りそう言う。

 

そういや俺の能力って強化しても解んないよね、時間止まるんだもん。

 

そんな事を考えていると、青の王が「とりあえず今どんなのあるか確認して見たらどうだ?」と言うのでレベルアップボーナスのウィンドウを開く。

 

「えーっとですね…」

 

Lv.2 レベルアップボーナス

 

時間停止アビリティ強化:留められる時間を10秒間伸ばす。

 

強化外装:elude・sword:敵の攻撃に対して受け流しをすることが出来る両刃剣。

 

必殺技:strength punch:相手に強いパンチを繰り出す技

 

「ですね」

 

ぶっちゃけアビリティ強化強すぎんだろよくとらなかったなレベルアップボーナス。

 

そんな事を考えているとコバルトに「結局どれを取るんだ?」と聞かれた。

 

んー。必殺技は論外として、強化外装の剣は結構良いなぁ。徒手空拳は高レベルになると辛い、その上高レベルによる察知からの反撃って結構怖いから受け流し能力は強い。

 

だが、時間停止アビリティ強化も良いんだよな。20秒も止められれば出来ることも増える。

 

だが、まぁここは無難に時間停止アビリティ強化かな。

 

と言うことで時間停止アビリティ強化を選択する。

 

「と言う事で、Lv.2のボーナスは取りました。けど、まぁ後のはまた後に」

 

てか、押しちゃったけど剣惜しかったなぁ…

 

名残惜しそうな顔をしているとブルー・ナイトが思いついたように提案をする。

 

「ところでクラリネット・クロック」

 

一々長いアバター名言われるのもなと思い、「クラ」で良いですよ。という。

 

「クラ、折角青のレギオンに入ったんだから剣でも使ってみないか?」

 

「剣をですか?」

 

「あぁ、時間停止アビリティを持っているお前は通常対戦に出始めたら当然名が知れるだろう。腕は家の幹部と同レベルだしな。ウチの幹部は知っての通り剣を使うからな。幹部クラスの奴が徒手空拳じゃ示しもつかないし、どうだ?強制はしないが」

 

確かに、強化外装は欲しいけど、うーん、ボーナスで取るのもなぁ。

 

とか思ってるとコバルトが「なら我々の不必要な強化外装を譲渡するのは如何ですか?」

 

「そうだな。それでいいいか?」

 

俺は即決に「はい」と言うと三人それぞれが強化外装を実体化する。

 

「まず私からだな」

 

そう言うと、マンガン・ブレードが出してきたのは刀だった。

 

「固有名は《ムツキ》だ。我等が使う刀には及ばないが、それでも中々の名刀だ。」

 

次にコバルト・ブレード。出してきたのは両刃剣だ。

 

「固有名は《Brave・Sword》巨獣級のエネミーからのドロップ品だ」

 

最後にブルー・ナイト。出てきたのは黒く深みのある紫色の大剣だ。

 

「固有名《Twilight・Blade》新宿都庁のダンジョンを再攻略してる際に神獣級エネミーがレアドロップとして落とした剣だ。」

 

翻訳すると黄昏の剣。確かにその剣の鮮やかな黒紫色は夕暮れの終わりを想わせる。

 

それに、この剣が放つ圧は《二剣(デュアリス)》の刀にも勝るものだった。

 

「俺はもう既に《ジ・インパルス》持っていたから1度も使った事はないけどな」

 

「さぁ、どれを選ぶ?」

 

提示された3振りの剣。その中から俺が手に取ったのは────




何時になるかわかりませんが、皆様またいつかー


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過去-past-

ピピピピピ

 

カーテンの隙間から陽の光が差し込むなか、ニューロリンカーのアラーム音が俺の頭に鳴り響く。

 

目をこすりながら起き上がり、リビングに移動する途中に視界の左上に浮き上がるデジタル時計は土曜日の06:04 となっている。

 

「おはよ。母さん」

 

リビングに入ると、珍しく自分で起きた事を驚かれる。

 

俺は朝は弱いので基本的に6:30位に親に起こしてもらうのだが、今日はやりたい事があるので早起きをした。

 

椅子に座り、ぼぅ…TVの天気予報を横目に見ているいると親がイチゴジャムのトーストを2枚机に置く。

 

それを食べていると、次はドリップコーヒーを母親が入れてくれる。そこでようやく意識がハッキリし始めた。

 

昨日、あの後俺は結局《Twilight・Blade》を選んだ。

 

べ…別に神獣級エネミーからドロップしたからとかじゃないんだからね!

 

いや、まぁ性能も1番良かったし結構デザインも気に入ったのでこれにした。

 

それと、剣の扱いが全くと言うほど分からない俺は、師をつけることになったのだ。

 

それだけなら何も問題は無いのだが…

 

その師がレギオンマスターであり純色の七王の1人、近接最強ブルー・ナイトなのだ。

 

その師匠に今日から稽古をつけてもらうのだが…正直怖いしプレッシャーが凄い。

 

王に稽古をつけてもらえるバーストリンカーなんて、レギオン幹部や子位のモノだろう。

 

絶対に王の技をものにしなきゃな。なんて事を心の中で決意しつつ、食べ終わった食器を流しに入れ、俺は部屋に戻り、外出の準備をする。

 

稽古は無制限中立フィールドで行うらしいが、ブルー・ナイト曰く、俺は暫くの間表に出さないから過疎地まで行ってから加速するらしい。

 

それに加速中は幾ら思考が1000倍になるとはいえ、何か建物に入った方が良いので持ち合わせはいる。なので電子マネーがチャージしてある貯金額から幾らかニューロリンカーに移す。

 

そんな事をしていると時計は09:56になっていた。

 

「そろそろ行かなきゃな」

 

ワイシャツにジーパンという格好で、俺は待ち合わせの場所へと向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

夜の空に黒いビルが建ち並ぶ。

 

此処は魔都ステージ。建物がとてつもなく硬いステージだ。

 

あの後、俺は待ち合わせの北区に行き、そこからファミレスに入ってから加速した。

 

「じゃあ、始めるぞ」

 

一緒にダイブしたブルー・ナイトにそう言われると、俺はボイスコマンドを発する。

 

「こい。《トワイライト・ブレード》」

 

ボイスコマンドに従い空から一振りの大剣が落ちてくる。

 

それを手に取り、青の王ブルー・ナイト師匠の稽古が始まった。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

この日、俺が潜っていた時間は現実時間で約20分。加速世界では14日、2週間程度だ。

 

その間様々な事を教えて貰った。

 

剣の扱い方や防御、パリィ等や、バーストリンカーとの戦い方を10日間叩き込まれ、後の4日は実戦も兼ねたエネミー狩りをした。

 

それから後はファミレスで頼んだ物を食べ、その日の稽古は終わった。

 

次の稽古はまた1週間後だ。高校生はやはり中学生より忙しいものらしい。

 

11時30分位になると彼は「そういう事でそれまでは自主錬を怠るな」と釘を指し帰宅し、俺も家に帰った。

 

帰ってからは残りのレベルアップボーナスについて考え、結局は全部アビリティ強化に振った。

 

そんな感じで夕焼けが空を染める頃、俺はふと昔の事を考えた。

 

俺が旅行に行っている時にレギオンメンバー、レギオンマスターである親は全損し、加速世界を去った。

 

もしも、俺があの場に居たら何か変わったのだろうか?

 

皆を護ることは出来ただろうか?

 

いや、俺は護れはしなかっただろう。

 

俺は弱いから。

 

弱かったから。

 

あの場に居ても皆を助ける事など出来なかった。

 

きっと、仲間を見捨てて逃げただろう。

 

だけど、今は違う。

 

俺は剣を手に入れ、力も強化した。

 

昔は護ることは出来なかったが────

 

 

 

────今度は護る。仲間(レオニーズ)を、友人を、そして、何時か出逢う《子》を

 




どうも皆様cl.です!

今回は早めに投稿してみました。

今回は早かっただけで次回は数ヶ月後になりそうです(白目)

剣を手に入れ、技を覚えたクラリネット・クロックは今度こそ大切な物を護れるのか。皆様また次回お会いしましょう


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試練- Trial-

砂嵐が吹き荒ぶ荒野、黒と青のアバターが対峙する。

 

誰もいない周りは静かで、強い風の音だけが響いている。

 

俺は黄昏の剣を両手で持ち、腰を低く構えを取る。対する王は剣を地面に突き刺し杖の用に扱っていた。

 

風が強く吹き、砂塵が舞い、相手の姿が見えなくなった瞬間、クラは砂を蹴り相手へとの距離を一気に詰め体を使い力一杯に大剣を振るった。

 

シッと息を鋭く吐き振るわれる黒紫の大剣は相手の首元に吸い込まれていく。

 

これは決まった。

 

そう思ったのも束の間、ブルー・ナイトは自分の大剣も片手でひょいと持ち上げ、クラの剣に向かい薙ぎ払う様にぶつけた。

 

衝撃で大きく仰け反る。それから体制を立て直す暇なく鋭い蹴りが腹に減り込む。食べたもの吐き出しそうな衝撃と痛みを伴いながら吹っ飛ばされた。1割程削れた体力を横目に体を捻じり、地面を転がりながら復帰する。

 

ナイトは立ち上がったクラに「能力を使え」とでも言いたげに指をクイっと挑発する。

 

その挑発に乗ってやろうじゃねぇか、ともう一度勢い良く飛び出して相手との距離を詰め、アビリティを発動させる。

 

(必殺技ゲージは3割程溜まってる。止めれて17秒か)

 

クラはあの後すべてのレベルアップボーナスをアビリティにつぎ込んだ。故に現在の最大停止時間は50秒に達した。そのため前までは3秒しか止められないレベルのゲージでも17秒近くの停止が可能になった。

 

時間を止め、もう一歩踏み出しナイトの横を抜け、背後に向けて左下から斜めに剣を振る。

 

タイミング良くアビリティを解除し、今度こそ当たったと思ったが、瞬間的に振り返ったナイトがまたもや剣をぶつけて弾き返す。

 

そこからはその繰り返しで、クラが何処からどう攻撃しようとナイトはそれらすべてを片手持ちの両手剣で防ぎ切った。

 

それを一時間程繰り返した後、ナイトはクラの大剣を弾き飛ばし「今日はここまでにしよう」と朗らかな声で手を叩いた。

 

クラはふーっと息をつきその場に座り込むと「どうでしたか?」と先ほどの戦いの感想をナイトに求める。

 

「動きも無駄が無くなっているし威力も申し分ない。この短期間で良くここまで出来るようになった物だよ」

 

「申し分ないって結局両手使ってる所見たことないんですけど…」

 

マジで言ってんの?みたいな目でナイトを見ると、彼は照れくさそうに頬を掻き始める。

 

「ははは...実は俺も少しムキになってね。実は少しズルをしたんだ」

 

「ズル...ズルするだけで俺の本気の一撃片手で防ぐ事出来るんですか!?教えて下さいよ!!」

 

その事実にクラは怒りではなく興味を示し、ナイトにグイグイと迫っていく。ナイトはそれを軽くいなし「これはお前さんにはまだ早い。いづれ来たるべき時に教えよう」と諭す。

 

師にその段階ではないと言われてしまえばそれ以上聞く事も出来ないクラは渋々それを了承した。

 

「その代わりと言ってはなんだが、そろそろ修行を次の段階へ進めようと思う」

 

「本当ですか!?」

 

リアルで一週間、加速時間で合計約60日。内5日は『大剣の基礎』残り55日は『青の王と打ち合いして大剣の感覚を掴もう』というメニューをしてきたので、次のステップに進めるというのはクラにとってはかなりの進展だ。

 

正直ずーっとこれなのかと思い始めていた位には

 

「...で、次は何するんですか?もう二時間ほど電車に乗ってますが」

 

今、彼らは加速世界で走る電車に揺られ、東京を離れ別の県へと移動していた。

 

「あぁ、説明しないとな。その前に...お前さん時間には余裕あるんだったな?」

 

「はい、リアルで今日一日潰しても大丈夫な位は暇ですよ」

 

「じゃあ大丈夫だな。これからお前さんには高レベルのバーストリンカーに必要なモノを身に着けて貰う。次の修行はそれだ」

 

「必要なモノ?」

 

「なんだと思う?」

 

ナイトの意地悪な問題に頭を回してみるが検討つかない。BPは必須だが今は関係ないし、戦闘能力は低レベル関係なく必要だ。となると今思いつくのは

 

「対バーストリンカー能力...?」

 

「残念ながら外れだ。それもバーストリンカー必要な事には変わりないがな」

 

指でバッテンを作りブッブーというナイトに少し強めの口調で「じゃあ何なんですか!!」と少し怒り気味にいうとナイトはクラをどうどうとたしなめながら説明を始める。

 

「まず高レベルのバーストリンカーは大半を無制限フィールドで過ごす事になる。そこで必要になるのが――――――」

 

無駄に重要な所を溜める目の前の王に不信感を抱いたクラは咄嗟に頭皮を試みたが、レベル9にそんなモノが通用するはずもなく掴まれる。

 

「対エネミー戦闘能力と生存力だ」

 

それを言い終わったと同時に電車が止まり、ナイトはクラを引きずり下ろす。そしてクラを歩させ二十分程歩いた先にはダンジョンと思わしきモノの入り口が佇んでいた。

 

「えっと...これは...」

 

「最近ウチのメンバーが見つけた未踏破ダンジョンだ。恐らく中級レベルだろうな。エネミーは一番強いので野獣級だろうと推測されている」

 

「へぇ...でこのダンジョンがどうしたんですか...?」

 

冷や汗をドバドバと流す位の気持ちでナイトに訪ねてみると、彼は残酷な程に爽やかな声で答えてくれた。

 

「お前にはこれから単独でこのダンジョンを踏破してもらう」

 

「もちろん、踏破するまで帰還は許さない」

 

断れない圧がクラに降りかかる。観念してもう一度ダンジョンの入り口を見てみるがこれはどう考えても一人じゃ...

 

「...無理だろ」

 

ボソッと呟いた弱音が誰に聞こえるでもなく消えていった。




どうもお久しぶりです皆様。覚えておられるでしょうかcl.です。

この度はまた気まぐれで続きを書いていこうと思っています。何話続くかわかりませんがね。

他の作品の催促はされても私が書く気起きなければどうにもならないのでアレですがね。感想くれるとやる気でるかもね!!!!

という事で次回があればダンジョン編です。皆様期待せずにお待ち下さい。


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攻略-Capture-

獣の咆哮が空気を震わし、それを止めるように獣の背中に大剣を叩き込む。

 

クラがダンジョンに入ってから加速世界では数日が経過した。

 

このダンジョンに存在するエネミーは今のところは小獣(レッサー)級のみを確認している。数も少ないが、クラはまだ最初の階層を突破出来ていない。

 

そもそもエネミーには例え小獣級であっても単独で討伐するのが難しい位には強い。

 

一般的にはレベル7の上位リンカーがようやく一人で小獣級を狩れるという位のモノで、クラリネット・クロックはレベル5で経験も上位ランカークラスにはまだまだ届かない。

 

そもそも何故時間停止アビリティ持ちの彼がエネミーと直接対決をしているのかと言うと、今戦闘しているのは次の階層への扉を守っているエネミーで、その他ダンジョン内で遭遇するエネミーは全て時間停止で無視できる彼も、扉を守られていては素通りが出来ない。

 

時間停止をすると扉を開けることが出来なくなってしまう。故に扉を開けるにはアビリティを解除する必要があるのだが、エネミーを倒さないと開ける時間すら貰えないのだ。

 

そんな理由もあり渋々戦っているのだが、実のところ既に20回程やれている。最初は手も足も出ずにやられるだけだったが、三回目辺りからは対エネミー戦にも慣れ始め、十回目辺りからは初期に比べ動きも飛躍的に良くなり、十八回目辺りには敵エネミーの体力ゲージを八割削る事にも成功した。

 

現在も敵のゲージを六割程度削っており、反面クラ自身は二割も食らってなく、今回は今までで一番調子が良い。

 

(必殺技ゲージも十分に溜まっている。このまま順調に行けば、今回は勝てるかもしれない。)

 

一瞬自分のゲージを確認して、また敵の姿を見据えると、アビリティを行使して時間を止める。

 

敵を踏み台にして大きく飛び上がり、時間停止の解除を共に大剣を相手の頭に体重を乗せ刺す。

 

深くめり込んだ大剣は二割の体力を敵から奪い、獣は咆哮のような悲鳴を上げる。

 

頭上の邪魔者を落とそうと、獣は壁に向かって走り出す。

 

自分の体が壁にぶつかる直前に大剣を抜き、時を止めて獣から離れる。

 

獣は自分の体を鋼の壁にぶつけ、クッションになるはずだったモノが消えていた為衝撃を全て受け、怯んだ。

 

今の属性は『鋼鉄ステージ』全てが硬いこのステージでは壁や床に叩きつけれるだけでもかなりダメージを喰らう。自身でつっこんだエネミーをその対象であり、自身の体力ゲージを減らす。

 

(今だ――――)

 

怯んだ隙を見逃さず、床を蹴って勢い良く敵に飛んで全力の一撃をぶち込む。

 

そこでようやく敵の体力ゲージを削り切り、獣の体は粒子となって消滅した。

 

「...やっと倒せた」

 

はーーーーーーと大きく息をつきその場に座り込む。

 

ステータスウィンドウを開き獲得BPを確認して、もう一度大きな、今度はため息をつく。

 

「あんな大変な思いしてこれだけかよ...」

 

今回の戦闘で獲得できたのはほんの数ポイントのBPと低レアアイテムだけ。先程のエネミーとの戦闘でトライ&エラーした分の賄にもならない

 

「まぁ...今回は対エネミー戦の動き方とかが学べた分が報酬って事にしとこう」

 

言い聞かせるようにしながら立ち上がり、ステータスウィンドウを閉じると、大きくて重そうな扉を押し開ける。

 

せっかく苦労して倒したのに、変遷が来て復活してしまったら水の泡もいいところだ。

 

さっさと次の階も攻略してしまおうと下層へと続く階段を下りていく。

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

そこから先は比較的スムーズに事が進んだ。

 

階層の攻略はそれなりに戦闘は全てアビリティを使って回避し、階層ボスも先程の経験も活かし、対したダメージも負う事無く進んでいった。

 

結局多少難易度は上がるものの、その辺のエネミーも階層ボスも小獣級で、内装や構造も大した変化も見受けられないような代り映えしない光景が下層14階に渡り続いた。

 

五階辺りからはダンジョンをうろついている小獣級達も相手にし始め、システム的なレベルはまだしばらく上げられる気配はないが、戦闘技術や戦況把握などのシステム外のスキルはグングン成長していった。

 

「オォラッ!!」

 

14階のボスにトドメの一撃をぶち込み、消滅を確認する。

 

ボスの後ろに隠れていた扉は今までもモノと異なり、仰々しいというか、これはボス部屋に繋がっているなと感じさせるモノだった。

 

「長かった...」と早めの感動に涙を流す。実際には流れてないが。

 

スムーズに進んだといってもソロでのダンジョン攻略は時間がかかり、今日はダンジョンに入ってから17日が経過している。

 

現実時間ではまだ30分も経ってはいないが、それでも体感時間は2週間以上変遷以外の変化を感じないダンジョンで武者修行なのだからやっと現実世界に帰れる兆しが見えてきたと思うのも仕方がないことだろう。

 

扉を開け、豪華な装飾の施された階段を下りていく。

 

体力ゲージは7割近くも残っており、必殺技ゲージはほぼ満タン。

 

階段を降り切り、目の前に現れる存在を見据えながら大剣を両手でしっかりと握り、大声を上げ飛び出す。

 

「行くぞォ!!!」

 

 

 

 

 




今回はかなり早く投稿しましたね。

ダンジョン攻略回です。

内容としては結構ペラペラですね。主人公全然喋ってないし、やっぱりソロだと喋んないんでしょうねきっと。

次回はボス戦です。クラ君は勝つことが、ダンジョンを攻略することができるのか

コメントは執筆の原動力になります。この作品を良いと思った皆様、是非コメントなどよろしくお願いします


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