NARUTO 竜宮伝 (スマート)
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序章 「研究室」

 『母なる海に眠る姫、それは得も言はれぬ程の美しさなりき。全てに優しく平等なりし姫はある時、一人の男に恋をす。その時より運命の歯車は狂ひ始めき』

 

 

 

 

 

 小国『田の国』、『火』『水』『湯』の国々に囲まれたその場所は、互いを牽制し合う大国のおかげか、国民の殆どが戦とは縁遠い生活を送っている比較的争いごとの置きにくい国だった。だが近年になって、大名が実体に合わない軍備増強を目論み、圧力をかけてくる大国と張り合う為ある一つの忍び里を設立させた。それが『音隠れの里』。小規模な集団でありながら多数の希少な血継限界を保有し、周囲各国の牽制に耐え抜いた事から戦力面においては他国から警戒される程の里である。だが、その実態は木の葉の抜け忍『大蛇丸』の巨大な実験場であり、自らの研究を推し進めるための重要な拠点だった。

 

 大名の思惑を利用し、実験体を里の民として養う事で、実質的な研究施設兼アジトとして機能していた其処は、

その頭目として君臨した大蛇丸が木の葉崩しに失敗し姿を消すと、見る見るうちに衰退していった。当然と言えば当然だった、もともと実験場としての機能を優先して作られた其処は、力を持った管理者が消えた時有事を支える機能が何ら残されていなかったのだ。木の葉を襲った逆賊として周囲の忍び里からは敵視され、一度は同盟を組んだ砂にまで見放されてしまった音隠れは、最早里として機能しなくなっている……と、

 

「思われているんでしょうね」

 

 薄暗く均一の間隔に置かれた燭台の灯が照らすだけの、蛇の鱗の様なタイルが敷き詰められた細長い廊下。無数に壁へと配置された蛇を模した置物には、製作者の蛇に対する強い思い入れを感じることが出来る。私はこの悪趣味な廊下を作った人物の事を思い浮かべ、今は何をしているのだろうと思いをはせてみる。大方何処か無数に点在するアジトの中で、眼鏡の青年と共に研究に精を出しているのだろう。

 

 ならば放置された、見捨てられた里はどうなってしまうのか。それは当然、寂れて消滅してしまうか他里の侵略を受けて壊滅するかだろう。元来この里は急増で新設された里であり、弱小も良いところの大名が作った里だ。影が居なくなった今は横やりを入れられれば簡単に曲がるし、崩れるだろう。

 もっともそれは本当にこの里が見捨てられている場合の話であり、この私がいる限り『音隠れ』の里が本当の意味で消滅することはあり得ない。

 

「他里の皆さんには悪いですが、此処は廃れていると思われている方が何かと都合がいいのです」

 

 妙に反響する鴬張りの廊下を歩きながら、巨大な試験官が安置された薄暗い部屋、無数の死骸がホルマリン漬けにされている部屋、血の匂いが染みついた手術室など各所に点在する部屋を巡り、メモに異常がないか書き込んでいく。遺産というべき無数に置かれた未だ稼働する器具の管理、そしてその器具を使われるべき貴重な実験体の育成こそが今の私に課せられた役目だった。この施設を維持することは、いずれ彼の役に立つ。

 

「大罪人となった彼の元には幾人もの刺客が行くでしょう、必然的にアジトも変えねばならず満足に研究も出来ないはずです。でも、此処なら別です。まさか渦中の『音隠れ』の地下で、未だに研究を続けているとは誰も思わないでしょうからね。」

 

 第一に疑われそうな場所をあえて選ぶことで、私はまんまとこの研究施設を隠す事に成功している。流石に感知系の忍を複数送り込まれれば、違和感に気づかれるだろうが『まさかこの里の研究施設がそのまま稼働しているわけがない』という先入観があるからこそ、この里に送られてくる忍びの数もごく少数、里の希少な感知系忍者など送られてすら来ない。その程度なら私一人でどうとでも対処できる。

 

……どうとでも対処できる、筈なのだが、今回ばかりは違ったらしい。先ほどから私のものではない足音が聞こえる。私が廊下を進む足取り歩調を合わせているようだが、私の耳は誤魔化せない。どうやら一人……この結界を突破されてしまったらしい。彼の残した技術を使って作り出した高度な明細設備、そして探知系忍術を妨害する結界を無数に張り巡らされたそこは、感知系でないのなら違和感さえも感じないものの筈だった。

 

なら、感知系の忍がやってきたのだろうか?

いや、感知系の忍なら、それを護るように護衛の忍が複数人でいるのが常のはずだ。未知の場所に潜入する時一番失うと困るのは、医療忍者と感知忍者それはどの時代においても基本中の基本。そうでなくともスリーマンセルがメジャー化したこの時代、まかり間違っても大罪人の元アジトに感知忍者単数での潜入などあり得ない。

 

なら、余程腕に自信のある忍びがやってきたと考えるのが自然だが、それにしてはどうにも引っ掛かりを覚える。廃れたと思われていたはずのこの場所に、今になって凄腕の忍者が送り込まれてくるだろうか?しかし、彼の存在が別の国で確認されている現状、警戒度の下がり始めている此処へ貴重な人員を割く必要性がない。

 

……単独行動を得意とする抜け忍の組織か?最近その手の組織の暗躍が目立つようになってきている。彼の存在を気取った組織が、此処まで追いかけてきたのだとすれば納得がいく。

 

「さて、研究材料の個数確認もひと段落ついた事ですし、そろそろ出てきてはどうですか?」

 

 彼ほどそういった腹芸に突出しているわけでもないので、私は考えるのを早々に諦め攻勢に打って出ることにした。何、心配することは無い、この地下施設は言わば私の体の一部、いかに凄腕の忍者が相手だろうとそう簡単に私が負けることは無い。

 

「ふむ…ワシの気配に気付いておったか、お主その歳でかなり出来るのぅ…」

 

 人を拒むかのように長く伸びた廊下に、滲み出る光の様に忽然と招かれざる客人の姿が現れた。隠れる場所の無い廊下の何処にいたのかという程風景に溶け込んでいたそれは、私に向って笑みを作ると敵地だというのに、無造作にこちらに歩いてきた。

 

 背の半分を覆う程伸ばされた刺々しい白髪の初老の男、其れだけでは迷い込んでしまった民かとも思えるが、この男の異様さはここからだ。目元から伸ばされた赤い隈取りに、歌舞伎役者の様な奇抜な赤色の羽織と今時珍しい下駄をはいている、極め付きにその背に巻き付けられた大きな巻物だ、明らかに自分が忍者だと言っているような風貌に私は、呆れて開いた口がふさがらなかった。忍びは何時から忍ぶことを止めたのだろう。

 

 だが、それだけで理解できてしまう。確かにこの人物なら廃れたはずの『音隠れ』に単独で調査に訪れ、尚且つ感知系の忍並みにこの結界の存在に違和感を覚えることが出来るだろうと。

 

「ああ…貴方だったんですね…」

 

それならば仕方がない、単に運が悪かったと言うしかない。こんな大物が探しに来るとは流石に予想しては居なかった。一つ問題があったとすれば、彼が少し優秀なご友人を持っていたことくらいか。忍びは大物になればなるほどその行動は里に制限される、それはその人物一人の戦力が里にとって重要なものだからだ。だからこそ、大物一人が動くには上層部の許可が必要なはず。噂には聞いていたが、まさかこれほど行動力がある人物とは思いもしなかった。

 

「わしもこの目で見るまではにわかに信じられんかったわい、まさか音の地下にこんな施設があったとはのう」

「そうでしょうとも、私もまさか貴方自ら此処へいらっしゃるとは夢にも思いませんでした。お噂はかねがね聞き及んでいますよ、木の葉の三忍…自来也様?」

「おお!こんなに若いのにわしの事を知っとるのか、熱心だのう!お嬢ちゃん、もしかしてわしのファンかの?」

 

 此処まで露骨にふざけられると逆に相手を油断させるための手段なのかもしれないと思えてくる。いや実際そうなのだろう、『馬鹿そうでいて実際やる時はやる男』というのは彼の談だ。とっつきやすそうな風体を装って相手の警戒心を解そうとしているのだろうがそうはいかない。此処は私が守らなければならない場所、例え相手が彼と同じ伝説と謳われた三忍であろうともそれは変わらない。

 

役目を全うすることが使命などと心にもない事は言わない、だが此処を死守することで後々有利に事が進められるのは確かだ。死ぬのはもう慣れた、あとは覚悟を決めるだけ

 

「第三次忍界大戦の英雄様が何故ここに…という質問は野暮でしょうか?矢張りお目当ては彼の情報ですね?」

「ふむ、何から何までバレバレのようだの……ワシも歳を取ったか……」

「いえいえ、貴方の隠は完璧でしたよ、私もこの廊下に入られるまでは気付きませんでしたから」

「ふっ…それは、入った瞬間に気づかれておったということではないか」

 

 当然だ、、其処に誰か異物が紛れこめば、相手が幾ら伝説の三忍程の隠形を持ってしても感知する事は容易い。だがこの地下施設を難なく発見され、結界をくぐり抜けて侵入されたのには素直に感嘆する。並の忍びにできる技ではない。流石に忍界大戦を生き延びただけの忍だけはある。派手な外見とは裏腹に狡猾な側面を持ち合わせている。こういうタイプは普通の日常会話からでも機密情報を抜き取っていく。……油断はできない。

 

「さて、遊びは此処までじゃの、大蛇丸の居場所……知っておるんだろう、吐いてもらうぞ?」

 

 急に真剣なまなざしに変わり闘気をみなぎらせる自来也、その姿は五十近い年月を経たというには威圧感が凄まじい。滲み出るチャクラの圧力だけで此方が気おされてしまいそうになる。額に流れる汗をぬぐいながら私はそっと距離を取った。

 

「彼はここにはいません。といっても見逃しては…くれないんでしょうね」

「ま、そうだのォ、この施設が稼働していることが分かった以上『木の葉』としては捨ておくわけにはいかん。大人しく付いてきてもらうわけには…まぁいかんだろうがの。ふんじばってでもアヤツの居場所を吐かせてやるから覚悟するんだのォ!!」

 

 歌舞伎者の様に手のひらを此方に向けて忍びに似つかわしくない派手なポーズを決める自来也、だが其処は三忍私が一瞬あっけにとられた隙を付いて早々に仕掛けてきた。

 

「『土遁・黄泉沼』!!」

 

両手のひらから打ち出された練りこまれたチャクラは、廊下の床を侵食し黒茶色の泥沼へと変えていく。粘着質なトリモチのようなそれに足元をすくわれる前に私は即座に後退し、天井に張り付いた。先ずは有利な戦場を作って仕舞えば良い、自分のチャクラ量に物を言わせた強引なやり方だがこの狭い廊下内で使われれば厄介この上ない。全面に伸ばされた沼の道は、恐らく1kmは続いている脱出も困難を極めた。

 

これでは、いつまでも壁に張り付いているのもチャクラを無駄に使い消耗するだけ、私はいずれ身動きが取れなくなり敗北する。自来也が仕掛けたのは恐らく持久戦、私が女子供だと見て取って体力勝負に出るつもりだろう。

悔しいが相手の読み通り、今の私の体力では木の葉の三忍が相手では1時間程度しか持たないだろう。

 

 やはり予想通りの展開になったか、その可能性は三忍の一人に見つかった時点で予想していた。戦闘は避けられない。この研究棟を戦場に変えるのは心苦しいが、此処で私が負ければ『音隠れ』は本当に廃れてしまう。それに今この時期にこの場所を失うのは、本当にまずい。

 

「私も、覚悟を決めなければいけないようですね」

 

 正直に言えばまだ戦いたくないという気持ちの方が強い、何が悲しくて大戦を生き残った三忍と戦わなければならないのか。もし此処が音隠れの研究施設でなかったなら、私は自来也の顔を見た瞬間に何もかも投げ捨てて逃走していただろう。並みの上忍とは格が違う、一人でもアジト一つを潰す位はやってのける人物だ。口寄せ動物等を出されれば一瞬も持たずに敗北する未来だってありえる。

 

「なに、殺しはせん……ちと痛い目にあってもらうだけだのォ!!火遁『炎弾』」

 

 まずは様子見か、相手の実力を見極める為なのか、自来也は素早く印を結んだあと頬を膨らませ、人の頭ほどもある火球を放ってきた。直線的に向かってくる攻撃、普通ならば下忍でも回避は可能な単純なもの。だが動きを制限された今、身を捻って回避する事さえ難しい。逆さまに天井に張り付いている状況で迂闊に回避行動に移れば、それは大きな隙に直結する。

 

 逆さにかかる重力を把握し肉体の動きに反映するのは意外に難しい、彼のような最早蛇と一体化しているような人間なら野生の勘で何とかなるかもしれないが、普通は特殊な訓練を積まない限りそんな状況で隙を作らず素早く動けない。

 

「はぁ、迎え撃つしか方法はなさそうですね」

 

 避けるのは無理、逃げるのは論外、と来れば方法は二つしかない。生きるか、死ぬかだ……

まとめた書類を懐に隠し、私は右腕にチャクラを収束させ素早く印を組むと蒼色の光が私の右腕を起点として、螺旋を描くように周囲に水滴を散らし始める。しっとりと水を吸い込み垂れ落ちる髪を払い、大きく息を吸い込んだ。喉奥で精製された大量の水が堰を切ったように溢れ出す。

 

『水遁 水陣壁』

 

 直後襲い来る複数の火炎弾が、廊下通路を塞ぐように伸ばされた水の壁に阻まれて消滅する。このまま地面の『黄泉沼』も洗い流せれば楽だったが、その可能性は自来也も考えていたのだろう。私の水陣壁の守りの薄い個所を的確に潜り抜ける形で起爆札付のクナイを数十本投げ飛ばしてきた。

 

「くっ……『水牢の術』」

 

 前後左右360度を水の壁で覆う『水陣壁』は外部に対する何物をも寄せ付けない堅牢性とは裏腹に、その内部に侵入されると極めて弱いという弱点を孕んでいる。発生している水の内側、つまり発動者のいる中心に攻撃が加えられると、発動者は自分の作った壁の所為で逃げることが困難になる。

 

 先ほどから手のひらで転がされているの様な気分だ。自分の放った技が的確に受け返され、逆に自分自身の首を絞め始めている。一つの術に対する対処法を知り尽くしている、この経験値の差は埋めようもない。私を包み込んだ水球の向こう側で無数に炸裂音が響き渡り、土煙が舞う。咄嗟に印を組み直し水陣壁の水を自分に集め直し、水牢をつくっていなければ私は一瞬にして起爆札の餌食になっていただろう。

 

爆破の衝撃で水分が飛び散った水球は多少小さくなったとはいえ、まだまだ形状を保てている。あと数発程度なら起爆札の攻撃を無傷で受け流すことが出来るだろう。それにこれなら、クナイを投擲してもチャクラを含んだ水に遮られ、私にまで札を届かせることが出来ないはずだ。

 

「水遁か、厄介だのォ、ワシの火遁が相殺される威力とは……その歳で身に合わん大技を使う。だが、本来その術は敵を閉じ込め溺死させるもの。それを防御に使うのは面白い……が、この場では失敗だぞ…さてその水牢の中で息がどこまで続くかのォ?」

 

 私の劣勢を見て取った自来也は、懐から起爆札の付いたクナイの束を取り出しそれを私めがけて投げ始めた。それも一度に沢山投げるのではなく緩急をつけて1本目、2本目、3本目といった具合に時間をかけて投げつけてくるのだ。立て続けに宙を舞う起爆札、衝撃自体は私に届かないとはいえ巻き上がる砂ぼこりは確実に私の視界を覆ってしまう。

 

葉の通り奴は私を殺すつもりはないのだろう、それが彼に甘いと言われるゆえんでもあるのだろうが、その技術は目を見張るものがある。私に起爆札という手札を見せ警戒心を抱かせ、水による黄泉沼の押し流しを阻止させた。そして絶えず攻撃を仕掛けてくることで体力の少ない私を防御に徹しさせ、チャクラ切れを狙っている。

 

通路全体に土煙を巻き上げたのも自分に有利な戦場に持っていこうとしたのだろう。相手や自分の放った技が混ざり合い、次への布石になる……どこまで先の手を考えているのか、つくづく嫌になる相手だ、本当にやりづらい。私は殺意の無い戦いになれてはいないのだ。

 

 仕方がない……このまま長引けば負けるのは必至。情報を秘匿するのは忍びの美徳、手札を多く保有しておくことが勝利につながる近道と言われるが、手札を温存し過ぎて死んでしまったら本末転倒だ。本当に…不本意だが…使うしかない…

 

 

ゴボン…ゴボ…ゴボボボッ…

 

 

口から吐き出された空気が水球の中に気泡となって表れそして消える。肺の中に溜まった余分な空気をすべて吐き出した私は、空っぽになった肺の中へ水牢の水を一気に注ぎこんだ。

 




 久々の投稿です、スランプの中少しずつ調子を取り戻していこうと思うのでよろしくお願います。ご意見ご感想、どんな些細な事でもいいので、お待ちしています。


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2話

「なっ……まさか死ぬつもりか!!」

「とでもいうと思ったんですか?」

 

 私が死をもって彼へ繋がる情報を隠蔽しようとしているとでも勘違いしたのだろうか、自来也は見るからに慌てだし手に持っていた起爆札を素早く懐に戻すと私に向かって走り出す。つくづく甘い男だ、情報など死体からでも読み取れる時代に態々危険を冒して私を助けようとするとは、これが『火の意思』という奴なのだろうか、無用な殺生は望まない?それが次の火種になるとしても?まったくもって理解できない。

 

手のひらで組み合わされた印は『風遁』、私の水牢を風遁で吹き飛ばすつもりだろうか。もっとも、どちらにしても私は端から死ぬつもりなど無いので、それは無駄な行為だが。いや、起爆札での攻撃が止んだので、これで反撃のチャンスが出来たか。

 

「まさか、こんな所で死ぬわけにはいきませんよ」

「ぬぅ……その姿、霧隠れの忍を言うわけでもあるまい...お主、大蛇丸の実験体かなにかか?」

「ふふふ、其れはどうでしょうか、それも捉えた後に聞いて見れば良いのでは?勿論、この姿を見せた以上、私も捕まる気は一切ありませんが」

 

 肺呼吸からエラ呼吸へ、ゆっくりと酸素を吐き出し、チャクラを含んだ水で私の肺を満たし循環させていく。毎度の事ながら乾いたエラが急速に潤っていくこの瞬間だけは好きになれない。肩口に開いた刀傷の様な呼吸口から体内へ水を排出し取り入れるとまるでおぼれているような錯覚を感じるからだ。

 だがこの変化のおかげで私は水中でも問題なく活動することが出来る。徐々に手や足に水かきが発生しているのを確認した私は更に印を組んだ。

 

『水遁 豪水腕の術』

 

 体内に吸収した水牢の水を全身の筋肉に変換したことで私の両腕は見る見るうちに大人の男でも目を見張る様な剛腕へと姿を変えた。同じ要領で身体全体を一回り大きく変化させチャクラの吸収量を増していく。さながら今の私はいくらでも水を吸うスポンジに近い。私を護っていた水牢が完全に消滅したころには、私はその水分を余すところなく吸収し2mちかい巨漢へと姿を変える。

 

「ほぉ……これは見事なチャクラコントロールだのぉ、その歳で其処までの水遁使いは見たことがない」

「これは、伝説の三忍ともいえる忍に褒められるなんて光栄ですね。ですがこれはあくまで会得難易度Bクラス程度の技でしかない、お世辞では全くうれしくはありません、ねっ!!」

 

飛んできたクナイを私は右腕を軽くふるって弾き飛ばす、いわばチャクラの鎧を着込んだ私にとってこの程度の攻撃、いくら打っても傷一つ付かない……と言えればカッコよかったんですけど。正直この豪水腕も現状の私のチャクラ量を考えればもってあと15分が限界だろう。それまでに何としても決着を付けなければならない。

 

勝つことは不可能に近い。私がここで死ぬことを計算にいれて戦いを挑んでも自来也相手には簡単に返されてしまうだろう。

 



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