C.E転生 (asterism)
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phase1 転生

初投稿です。



ピピピピピ…

 

…、目覚ましが鳴っている、起きて朝飯作って食って学校に…って、俺の目覚ましってこんな無機質なアラームじゃなかったはず。起きてアラームを止めようとすると、いつもの場所にない。というか部屋が違う。

 

「どこだここ…」

 

ふと、目に入った鏡を見て目を見開く。

 

「誰…?いや俺なんだけどさ。」

 

鏡に写ったのはいつも見ている自分のかおではなかった、なんというか平井顔っぽ…。

カレンダーとかないかな…?まさかとは思うけど、西暦2146年とかだったらちょっと自殺してくるわ。どうせ死ぬ。どうせみんないなくなる

「C.E65…、コズミック・イラ65ってことはガンダムSEEDか」

 

 

信じたくはない、信じたくはないがどうも違う世界に来てしまったというやつか?あれか?寝てる時に心臓麻痺で死にましたとかなのか?まぁ、夢であることを祈ろう…。たぶん寝れば目覚める。

 

 

 

//////

 

 

「夢じゃなかった…」

 

うん、夢じゃありませんでした。乗り移った人物の名前は鶴野 正史(ツルノマサフミ)、月の表側、アサダクレーターに存在する月面都市「白兎」の工業カレッジに通う大学生らしい。MSの設計とかに携われるのだろうか…。

 

「そして…いろいろと違うところがあるなぁ…」

 

原作だとプラントの理事国で地球連合軍を構成する国であった大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国。それ以外のオーブ首長国連邦、スカンジナビア王国、南アフリカ統一共同体、アフリカ共同体、汎ムスリム会議、大洋州連合、赤道連合、南アメリカ合衆国…という国が存在したはずなのだが、ユーラシア連邦や東アジア共和国に台湾と日本が組み込まれていないし赤道連合、大洋連合は存在していない…、代わりに二つの国のあった領域に、日本と台湾を合わせた位置にアジア・オセアニア共同体という国家が存在している。

 

「で…だ、確実に言えることがある。絶対に同類がいる」

 

いま持っているのは模型誌、趣味は同じだったらしい。そこに出ているのはMSIGLOOのオッゴである。こっちでの名称は「59式宇宙用戦闘ポッド」というらしい、ついでに空軍の主力戦闘機はコスモファルコンだ、名称までおんなじ、性能も近い、ついでに製造企業がジオニック社、コスモファルコンのほうはフジヤマ社…これは関係ないかな…原作にもあった企業だし、ツィマッド社とかもあるみたいだ…航宙艦作ってる。誰だよアルゼブラとかムラクモとかキサラギ作ったやつ。乾いた笑いしか出てこないぞ。問題はこれからどうするかだ、変に吹聴しても黄色い救急車呼ばれるし…どうやって存在を認知された場合の対応も怖い、人体実験とかないよな。

 

「悩んでいても始まらんな、カレッジの課題を済ませよう…何々…低G下におけるパワードスーツの望ましい形状とその利用について…戦術機のもととなったハーディマンみたいなやつでいいのかな?」

 

こうして特に何も考えずにアニメやゲームに登場してきた機体や道具を課題で提出するくらいには、危機感を持っているわりに不用意な行動しかしていなかったので、当然というかなんというかばれてしまったのだった。

 

////////

 

「…で、だ、まぁここまで不用心な奴は初めて見たね」

 

「あははは…」

 

目の前では担当教授があきれたような表情で僕のレポートを片手に座っている。

 

「ハーディマンは偶然だと思ったけど、ガザシリーズにドラッツェ、ピグロ、ルナタンク…またジオニストか」

 

「あ、いえ、課題に合うのがそれかなーって思っただけで別にボールでも何でもよかったんですよね…」

 

必要なら光武だってイングラムだってファフナーだって提案するさ。ファフナーはちょっと…採用されたら後悔しそうだけど。

 

「…課題の再考が必要だな、で?君はどうするね?このまま進むなら技術者として活動してもらうわけで、僕らの派閥に属してもらえば働き口とかそういうのは世話できる。…まぁ、偉い人にあいさつしに行かなければならないがね」

 

一応政界とか官僚とかそういうところにも食い込んでる連中がいるし、そういう人への顔見せが必要らしい。転生者はそう多いものでもないので、互いの補助をつつがなく行えるようつながりの強い組織を作りたいのだそうだ。世界情勢への対応はそういう偉い人の仕事で教授は技術者兼「同類の捜索」が仕事らしい。

 

「それでお願いします。」

 

なんにせよいい仕事に就けるだろうし、そのほうがいいだろう。

 

「わかった、まぁ、挨拶に行くのは次の会合の時だろう、それまでは私の仕事に協力してもらうぞ」

 

教授はそういうと数枚の書類を渡してきた。

 

「はい…キマイラ級…ですか?」

 

「そうだ、現在、150m駆逐艦こと吹雪級とムサイ級相当の青葉級航宙巡洋艦とチベ級相当のアチェ級戦艦がこの国の航宙艦隊の主力だ、だがまぁ…新たな旗艦として新型艦が求められている。…マゼラン級がいいというように意見を述べたいのだがね…君はどう思うかね?」

 

あくまで個人的に意見を聞きたいだけだろう、たかがカレッジ生の意見などこの教授なら思いつくはずだし。

 

「いくら現在の主力がMAとはいえMA運用能力乏しいマゼラン級はどうかと思うという意見には一定の賛意を示しますが。かといってキマイラ級ほどの高性能艦を作ってしまえば周辺諸国にあらぬ疑いをかけられるでしょう、というより大気圏、宇宙両用艦って今作る必要ないのではないでしょうか?詳しい情勢は把握していませんが原作通りならばザフトが今年に成立、L5事変への対応は我が国の艦隊がプラントに置いている戦力では駐在民の保護が限度でしょうし、どうせそれ以上戦力を置く気はないはずです。それにニュースとかを確認する限りウザい国が二か国ほど周りにいることもあります。マゼラン級でいいのではないでしょうか?現状の宇宙戦ドクトリンから判断するに、マゼラン級を旗艦として採用し、別途MA母艦を用意していたほうが有用ではないかと。」

 

基本的に、ウチの国の宇宙軍はド派手な大規模侵攻戦などを想定した軍備をしていない、衛星軌道上の拠点菩提樹、L4宙域のコロニー群「ムーア」と資源採掘用小惑星兼軍事拠点のコンペイトウ、月の表側のアサダクレーターの「白兎」、サヘキ(グリマルディβ)クレーターの「かぐや」と裏側のイジャーククレーターの「チャンタブーン」の各月面都市群の防衛と、いざという時の通商護衛だ。護衛船団にイチイチ戦艦級など投入するのは割に合わない、吹雪級駆逐艦と青葉級の艦隊指揮能力強化で対応できるだろう、そこにコロンブス級とかヨーツンヘイム級みたいな輸送船改造の護衛空母的な船があればいい…と思う。MS母艦に改造するにもそのほうが手間がかからないだろう。

 

「ふむ…なるほどな…通商護衛戦再びというやつか。MS母艦への改造も考えているな。まぁ航宙艦の性能はいいがそのせいで高額になったため数が少なく完全な防衛型宇宙軍であることは確かなのだし、一応理論としては通るだろう、合格だ。よし、次回の会合でその意見を使うぞ」

 

 

なんでも上司の無茶ぶりだったらしい、MAの技術者に艦艇のことを聞くのはどうなんだ…と苦笑しながら教授は言う。

 

「にしてもジオニストが多いんですね…あの形状が面白いのは同意しますが…」

 

採用されている兵器のほとんどがジオン系だ、地球連邦系とか宇宙戦艦ヤマトとかの兵器も混ざっているけど。ムサイ級は将来アレキサンドリア級やエンドラ級、ムサカ級に発展するのだからそれでもいいか?見た目はクラップ級のほうが好きだけどMS運用を考えたらムサカ級のほうがいい気がする。アレキサンドリア級はMS運用能力が高いし。

 

「だろう?MAに関してはボールは却下というのは理解できるんだ、オッゴのほうがいいだろう、航宙艦はほとんどジオン系なのはその影響だな、確かに連邦系に比べて無駄な空間がないという話は聞いたことがあるがそんなものこちらで作るときに改良すればいい話なのだがな」

 

現にムサイ級は青葉級になる際、対空火器の増設が行われているらしい。本来は搭載されていなかったのだから当然の話である。しかしビーム連装砲三基六門の巡洋艦って…レーザー核融合が動力だし、動かす分には問題ないみたいだけど、他国の戦艦に匹敵する火力なんじゃなかろうか。これが主力艦というのは結構贅沢だ。

 

「まぁ…そんなところだな、あぁ、何かあれば呼び出すから端末のアドレスを教えてくれ」

 

自分の端末のアドレスを教授に教えて研究室を退出する。

 

「やらかしたなぁ…割とクリーン?な組織で助かったのか?まぁ人体実験とかはしたくないか。とりあえずそういうのとは縁遠いところで生活してた人がすべてだろうし」

 

日本で人体実験とかやらかしてる連中がいたらドン引きである、非人道性とかもろもろ含めて。




ご意見誤字報告がありましたら報告お願いします。


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phase2 会合

「そう緊張することはないぞ、その…確かに皆個性的な連中だがな、皆気のいい奴らだ」

 

そう教授に言われても落ち着けない。現在僕は、会合に参加するために黒塗りの高級セダンタイプのエレカに乗って、アジア・オセアニア共同体の首都、スラバヤを走っている。シートが明らかに高そうな革張りで落ち着かない。

 

なぜスラバヤが首都か?まぁ位置的に都合がよかったらしい、大体領域の真ん中、脅威ととれる敵対する国家…東アジア共和国があまり近くない、同じ条件だったジャカルタはこれ以上の拡張が難しかったらしい、今でもインドネシア州の州都ではあるんだけど。

 

「ここが会合の会場だ」

 

エレカの止まった場所は高級料亭だった。こういう店って密談の場所を提供する役割もあるんだっけ…と思いながら教授の後をついて暖簾をくぐり指定された部屋へと入るとそこには15人ほどの人がいた。皆仕立てのいいスーツや高い階級章を付けた軍服を着ている。

 

「湯野君、彼がそうかね?」

 

「えぇ、ほら、挨拶を」

 

「白兎工業カレッジ宇宙用作業機械設計研究室所属、鶴野正史です。」

 

「ふむ、話は聞いている、私はタクシン、名前は長いし覚えてもらわんでも構わん、一応まとめ役を務めている」

 

「財務大臣ですよね…?」

 

「そうだぞ、まぁ気にするな。なぁ、アティ?ケン?」

 

「そうですね、気にしてもらわなくて結構です」

 

そう答えた女性は確か大統領補佐官だ。

 

「そうだな、大体此処じゃ部下も俺のことを官職や階級名なんかじゃ呼ばん」

 

そう答えたのは第1航宙艦隊司令だ。ほかにも大企業の重役や官僚、何度も名前と顔を見たことがある技術者などが会合のメンバーだったなんかすごい人ばかりじゃないですかね…。何気にうちの教授も「フィールドモーターシステムの権威」って呼ばれているし…。

 

「大体私たちなど先人の守ったものを受け継いだだけだ、たいしたことなどしちゃいないさ。」

 

再構築戦争では大変だったらしい、特に日本にいた7人の転生者は伝説だそうだ、それからカシミール地方への「最後の核」も落とさせなかったらしい。と長々と続く首都大の教授の話を要約するとそんな感じだ。話が長いことで有名ってのは本当だったんだな。

 

「さて…まぁ鶴野君はこのまま技術開発部に所属してもらうということで」

 

いい加減長い話を切りタクシンさんが言う。

 

「いや、ちょっと我々から頼みたいことがある」

 

そう答えたのは国防省の次官を務めている人だ。

 

「なんだね?湯野君からの情報では成績などが非常に優秀なのだがね…発想もいい」

 

技術部の重鎮と言われているコンペイトウの造船工廠長が顔を顰めながら聞く。この人か、教授に変なこと聞いたの。

 

「技術者になるのを止める気はない、だがこちらでMAとワークローダー、パワードスーツ関連の訓練を受けていただきたい、白兎基地に話は通す。」

 

要はMAを操縦できるようになれということか

 

「パイロットエンジニアというやつか…役に立つのかそれは?」

 

「コートニー・ヒエロニムスとかいたし大丈夫だろう。何より黎明期の兵器などそうでもしなきゃうまいことフィードバックができん。テスパイはリーカ・シェダーをこちらで確保できたが彼女はまだプラントの学生だ、大体ナチュラルのテスパイも必要だしな」

 

アジア・オセオニア共同体はコーディネイター自体を否定しているわけじゃないし受け入れもしているのだそうだ。だから白兎のカレッジではでは普通にコーディネイターの同級生がいたし教師もいた。どこでも同じなのだろう。一方でブルーコスモスの活動も「他者の生活を害せず、良俗に反しない限り」認めてるあたりいろいろ生臭いけど。

 

「待った、そんな話聞いてないぞ…」

 

工廠長が話を止める

 

「あぁ、そういえば技術畑の奴らに知らせてなかったな、プラントでうちが運営してる学園に入学してきたんで、せっかくだからひも付き奨学生にしておいた、これでうちの系列企業に奨学金返済まで勤めてもらうことになったのさ。」

 

たしかフジヤマ社の専務だと言っていた男が言う。

 

「頼むから報告はしてくれ…テスパイはうちにもかかわってくるんだから。というかそのえげつない制度まだ続けてたのか…」

 

「原作の人材が網にかかればめっけもんだろ?現に今役に立った。」

 

「確かにそうだがなぁ…もう少しやり方ってもんが…」

 

確かにネームドが一人いなくなるのはザフトだと結構痛い気がする…設定上操縦技能高かったはずだし。まぁ同情なんかしないけどな。

 

「まぁいいじゃないか。彼女はあと二年で卒業なんでそのあとは白兎の宇宙本社に引き抜く予定だ。それから今年からプラント工場の設備更新を打ち切る、前々から決まっていた方針通り我が国のプラントへの対応は『我が国のプラントへの投資総額を返済するのならば独立を許可する』ということでいいのだろう?連中おそらく工場の接収とか考えてるだろうし最新設備をくれてやる必要はない。」

 

「あ…あぁ、そのつもりだがね、いいのかね?」

 

タクシンさんがあっけにとられたような感じで答える。プラントの工場は確かフジヤマ社最大だったはずだ。

 

「もとより損切り前提で作った工場だ、広さだけはあるが、広さしかない、生産能力はムーアや白兎の拠点のほうが高いんだよ。大体最近ストライキが増えてロクに生産もできやしない、待遇は気を使ってるんだがな、報酬も他の企業より高いはずだし」

 

「そうか、なら問題はない、では次はMSについてだが、プラントにてプロトジンの開発完了が確認された、性能に関してはおおむね、我々が推測したとおりとの見通しだ…それで、技術者たちに聞きたいのだがMSを開発するのにどれだけかかる?」

 

タクシンさんが話題を変える、MS開発か…オッゴやワークローダーなんかのデータって役に立つのだろうか…。

 

「一応、現在ある技術を組み合わせれば開発できるようになってはいる…が、いろいろな研究を隠れ蓑として極秘裏に進めていたからそれを結合した場合どのような問題が出るのかは不明だ、ヤキン・ドゥーエ戦役までに量産体制に入ることは可能だろうが、C.E69年を目途に量産型の開発が完了すると考えてくれると助かる」

 

…なるほど、他国に感づかれないように極秘で開発していたということか。

 

「OSも一応β版の完成には至っている。シミュレータでは問題ないが、あとは実際に動かしてみてどうかだな。…それにしても便利だよな、知識や能力は乗り移る前のやつのものが引き継がれてるってのは、一応元々システムエンジニアだったが、自分があんなプログラム作れたのが信じらんねぇ…」

 

 

「それは言わない約束だろ、というかそうじゃなきゃ俺なんかMAの開発なんかできっこない、生前はただの土建屋だぞ」

 

教授ってこっち来る前の職業建築業だったのか…。まぁ、僕だってただの大学生だ、それも工業系の学部じゃない。なのにMAとかワークローダーの知識があるのだから乗り移る前の彼に感謝だろう。

 

「それは気にしたら負けだと前々から結論が出ていただろう…では議題だが…」

 

この後かなり重要な話がされており「俺、こんなところにいていいのか…?」と思いながら、料理をぱくついていたら会合が終わった。MA関連のところ以外は意図的に話は聞かないようにしておいた。どっかで漏らしたら怖いし。

 

/////////

 

「…今日は比較的おとなしかったな…、まぁ会合とはこんな感じだ、お前はまだ何かなければ呼ばれないから安心していいが」

 

要職についている人以外はあまり呼ばれることがないらしい、転生者は全体で500人ちょっとらしいが、その人数で会合をしようとなるとどうしても難しいだろうし、防諜にもよろしくないか。

 

「僕はこれから当分は白兎でパイロット訓練と工業カレッジ生の二足の草鞋ってことですね。」

 

「そうだ、会合でも決まった通りMS開発プロジェクトを開始する、報告にもあったがプラントにてプロトジンの開発完了が確認された、量産体制に入るのも時間の問題だろう。当面の計画としてはまず、MS開発は私とパワードスーツやワークローダーを扱っている研究者の合同プロジェクトとしてスタートするからな、聞いていたと思うがC.E69までに量産体制に入ることを目標に開発を開始する。もちろん、君にも働いてもらうぞ」

 

「はい」

 

教授の考えとしてはこちらの技術でまず最初にガンキャノン最初期型のようなMSを作るらしい。オリジンでは散々なことになってたMSだけど初めてのMSとしてはいいのではないだろうか?ちなみにジオニストな技術者たちがザクⅠやヅダを推していたのだが「モノアイじゃザフトと紛らわしくて誤射されたら敵わん」と言われて黙らされていた…性能は悪くないと思うよ、今回は見た目が問題になっただけで。




二話をお送りしました、初めて作ったにしては悪くないと思うんですよね…ガンキャノン最初期型、まぁ性能とか抜きにしてあの見た目が大好きなので出すことにしました、ザフトにつく予定はないのでモノアイの機体はUCで連邦がやったと書かれていたようにようにゴーグルアイにする必要がありますね。バイアランカスタムとかみたいに…もしかしたらスクウェア型(リーオー等)とか、X字型(ジンクス等)になるかもしれませんがね。まだ量産機何にするか決めていないんです。ジム系統ばかりでもつまらないですし…主力をUC系統に決めてもアジアオセオニア共同体の立地的にどうしても必要な水泳部と空中戦機が不足していますから必然的に別作品の機体も出さなければなりませんし


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phase3 試作MS

設定集買っちまった…中古だけど。


「以上で今日の訓練を終わりにする。思っていたより筋はいい、このまま頑張ってもらうぞ」

 

59式宇宙用戦闘ポッド『オッゴ』での初訓練が終わった…なかなか思ったようには動かせなかったな…。当然の話だが。

 

「まぁ面倒な事情に巻き込まれたのは聞いている、だからと言って手加減するつもりはないが」

 

と言っていた教官の羽切中佐の指導は容赦はなかったがわかりやすかったし、オッゴ自体の操作も「動かすだけ」ならば簡単だった、思った通りにとなると相当難しかったが。現在我が国の主力MAであるオッゴは手堅く、古い技術を持って作られた機体で整備性や生産性も良好、値段も「アジアオセオニア共同体の兵器としては」抑えられえている、他国の主力MAであるミストラルに対して性能的に優勢であり、会合内では「メビウスじゃなくてオッゴのままでいいんじゃね?」という声もあるらしい、しかし、会合内ではメビウス、およびメビウス・ゼロの採用はほぼ決定事項らしい。というか共同開発に参加してガンバレルのデータがほしいらしい。おかしな話だがこの世界、『各国の融和と平和の象徴』として兵器の共通規格化が進んでいるのだ、兵器が融和の象徴とはおかしな話だと思う、でもよく考えたらあの世界、三つの大国が同じ兵器を使っているんだものな…しかも旧世紀には自力で兵器を開発していた国、メタ的なことを考えなければそんな事情でもなきゃそうはならないか…。

 

まともにMAやワークローダーを動かせるようになるには3か月ほどかかったがMSがまだ完成しないので特に問題はなかった。

 

/////////

 

「…機体も完成した、OSの搭載も終わった。銃火器は…その、まぁまだ代用品のみだが、ありあわせで用意した。とりあえずMS1号実験機、完成だ」

 

大体半年…MSの実験機が完成した、完成した機体はガンキャノン初期型に近いが肩のキャノン砲はなく両肩に75㎜対空砲イーゲルシュテルンが取り付けられた状態で、駆逐艦用の127㎜速射砲を流用したキャノン砲かオッゴ用の57㎜連装機銃が装備できるようになっている機体だ。完成度はまだ高くないと思う。

 

「とりあえずやりましたね…なんというか…結構あり合わせですけど」

 

「前にも言ったがMS開発を念頭に技術開発してたからな、これから稼働テストを繰り返してMS自体のデータを蓄積する必要があるがな。予算さえどうにかなってくれるならムーバブルフレームに一足飛びに行きたいくらいだ。それくらいの技術蓄積はある」

 

なるほど、確かにそのほうが高性能機が作れるし、整備性もよくなるはずだ、損傷した装甲を取り換えればいいのだからな、それに装甲のアップデートも簡単になる。

 

「OSは俺の5年の集大成だ、まぁ、まだ問題のほうが多いとは思うがとりあえず動かしてみてくれ、前後左右、上下に動くくらいなら問題ないはずだ。」

 

システムを開発していたエンジニア、石井さんが言う、普段はワークローダーのシステム開発をしているそうだ。よく考えればワークローダーのシステムってMSに応用が利くのかな?簡易マニュピレータの二本腕で三本足のローラーダッシュで移動する重機だし。

 

「わかりました…でも期待しないでくださいよ?まだ操縦技術に関してはケツの殻の取れていないひよこなんで。」

 

「動かしてデータが取れたらそれでいいんだ、大体実戦でMS動かすのは最初はそんな連中だ、そいつらを対象にしている機体なのだからそういうやつがやるべきだ、大体いまMSに精通したパイロットなどいないだろう。早速だが動かしてみてくれ。」

 

教授に言われてコックピットに乗り込むみ機体を立ち上げる。

 

「さて…我が国初のMSパイロットは僕か…」

 

アニメで見ていたMSとは少し違うが、それでもMSを動かせるというのは気持ちが昂るな…。

 

 




今回は短いですがこれで終わりです。同時に設定的なものを投稿します

ワークローダーは00に出てきたやつです。一期でロックオンが気だるそうに相手をしていた奴らです。


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設定①

アジア・オセアニア共同体

大洋州連邦と赤道連合、日本、台湾を領域とする国家共同体、首都はスラバヤ。公用語は特に決まっていないが、共同体議会では英語が使われる。理事国内での国力は3位(一位大西洋、二位ユーラシア、三位アジアオセアニア、四位東アジア)。しかし人口は1位。宇宙開発に積極的であり月面都市を三つにL4宙域にコロニー群「ムーア」を所持するほか、マスドライバーを二つ所有する他、現在軌道エレベーターの開発を進めている。半面プラントへの投資へは消極的であり、理事国の中で出資額が最も低く、工業依存度も低い、ここで作れるものは大体ムーアで作れる。基本的に全方位外交を旨としており、おおむね他の理事国との関係は良好、東アジア共和国ともしがらみはあるが、ビジネスライクな関係を押し通している。大体どちらの国も戦争なんかしたら共倒れ必至なので上層部は絶対に戦争なんかしたくない…一部の馬鹿を除いて。実は最も関係の悪い国はオーブ、理由は後述。

 

宇宙開発

地球上には台湾、高雄の「昇龍」モルディブの「インドラ」の二つのマスドライバー施設を所有。しかしどちらのマスドライバーも天候の影響で夏季に使用できなくなることがあるが二つあるので問題はない。現在スリランカに軌道エレベーター『アダムの橋』を建造中、静止衛星軌道ステーションの名前は『ランカー』現在宇宙ステーションとして建造中。計画されている太陽光発電施設『ラーマ』と地上のマイクロウェーブ受信施設『シータ』の建造も進んでいる。月面都市は月の表側、アサダクレーターの「白兎」とサヘキ(グリマルディβ)クレーターの「かぐや」、裏側のイジャーククレーターの「チャンタブーン」の三都市があり、どの都市でも工業が盛んで、月の資源採掘も進んでいる。特に白兎は宇宙軍の月の整備拠点と、宇宙軍の兵器開発拠点としての機能も兼ねており、出入りに制限がかけられている。L4コロニー群「ムーア」はシリンダータイプの密閉型コロニーで現在24バンチ目が建造中、コロニーの名称は各国の神話からとっている。それとは別に総合観光型コロニーや、海産物生産コロニーも建造中。近隣に資源採掘用小惑星兼軍事要塞のコンペイトウを備える、コンペイトウは大型建造ドックや工業プラントも備えており、宇宙における一大軍事拠点として機能している。プラントへの出資、軍駐留は理事国中最低水準、原作を知っているので付き合いで出しただけであり、『L5事変の際の邦人保護、退避』が可能な戦力しかない。

 

エネルギー関係

核融合発電施設の開発が完了し現在転換中、また、太陽光発電にも力を入れており、00に出てきたような軌道エレベーターとマイクロウェーブ送電システムの採用も視野に入れている。

 

軍備

基本的に防衛型、しかし外征ができないわけではないし敵には容赦がない、現在の主力戦車はリニアガンタンク、主力戦闘機はコスモファルコン、主力MAはオッゴ。航宙艦は比較的重武装な傾向が強く、MA運用は気休め程度のため、来るべき戦争に備えMA、MS母艦の開発を進めている。軍服は地球連合の制服の色違い。宇宙世紀の地球連邦軍の軍服のような色合いになっている

 

国際関係

 

旧世紀に同盟を組んでいた国がある都合で、大西洋連邦とは比較的良好な関係である、大西洋連邦はユーラシアとの関係があまりよくないため、こちらを敵にしないように行動している。宇宙開発を独自に進めていたアジアオセアニア共同体のL4コロニー群の工業プラントがプラントへの強硬姿勢を崩さない理由だったりする。アジアオセアニア共同体は「またあいつら都合のいい仮定で物事進めてる…」とあきれ顔ではあるが、倒れられるといろいろ面倒なので支援はする予定。

 

ユーラシア連邦

再構築戦争で多少衝突があったが、東アジア共和国のほうが印象に残るものが多かったため可もなく不可もなく、オホーツク海の漁業協定等でもめることはあるがどちらも進んで対立しようとはしないし、必要以上に関係を深めようとも思っていない。国力は大西洋連邦と自分に次ぐ国であるくせにアジアオセアニア共同体のプラントへの出資が少ないのを訝しんでいるが、「あのゲテモノ喰い共の頭の中を推測するほうが無駄」という認識があるため深く考えていない。

 

東アジア共和国

理事国内では一番関係の悪い国、再構築戦争でかなり強く激突した記憶は消えていない。実は最もアジアオセアニア共同体構築の影響を受けている国であり、首都は台北に代わりチベットのラサ、マスドライバーは高雄に代わり四川省の西昌の『航天』が存在している。民衆にせっつかれて海南島に一大軍事拠点を備えてはいるがアジアオセアニア共同体との衝突は考えていない、というか考えたくない。しかし、民衆はそんなことお構いなしに「恨みは石に刻め」状態のため、何かあると一言言わねばならない、なお受け手は季節のあいさつ程度にしか思っていない。原作で空気だった国だが、この作品では結構出てくる予定。上層部が頭抱えたくなるようなバカもいるがきちんと有能な人も出てくる。

 

オーブ首長国連邦

再構築戦争時に、当時の反社会勢力や、平和団体が複数の国家より離脱してソロモン諸島沖合の海底火山の噴火により生まれた新島、ヤラファス島を中心に誕生した国家、当時大西洋側にかかりきりであった旧アメリカの目を盗んでグアムまで勢力圏に組み込んでいる。ハワイ、ミッドウェー、ジョンストン島を除くグアム、北マリアナ諸島からピトケアン諸島の南太平洋の島々を領有している。ウズミ政権になった後、平和主義をどこか勘違いしているような言動が多くなっているため関係が悪化している。

 

スカンジナビア王国

良好な関係を維持している、中立の保障をユーラシアとともに行っており、現在大西洋連邦にも承認を要請している。

 

プラント

そもそもそこまで金をかけているわけじゃないが、今までにかかった費用を払うのならば独立を認めるというスタンス、ただしほかの理事国の説得はそちらがやれ。話は聞く(要求に答えるとは言ってない)、正直ヤキンドゥーエ戦役には関わりたくないが、エイプリルフールクライシスをやられたらいくら核融合炉に転換中とはいえ被害を受けないわけじゃないので武力を含めた制裁も辞さない予定だが、「どうせカナーバが奇跡か何か起こして独立するんだから被害も出費も最小限にすむ方法で行きたいなぁ…」というのが会合内の意見である。

 

登場兵器

ワークローダー

簡易マニピュレータ×2

ローラーダッシュ

 

コロニー開発や月面都市開発で使用された重機。様々な作業に対応できる。いざというときには重機関銃等を持たせることも可能。

 

MS1号実験機

25㎜機関砲×4(頭部、左腕に2門ずつ)

75㎜機関砲システムイーゲルシュテルン×2

127㎜キャノン砲

57㎜連装機銃

360㎜無反動砲

 

装甲材:超硬スチール合金、硬質セラミック複合装甲

 

見た目はオリジンのガンキャノン機動試験型に近いがV字アンテナは無い、必要以上に堅牢に作られており、127㎜砲の直撃に耐えるが、機動性は低い。白兎の研究室で開発され現在試験中。

 

オッゴ

簡易マニピュレータ×2

 

360㎜無反動砲

57㎜連装機銃

360㎜六連装無反動砲

十八連装機雷ポッド

三連装ミサイルポッド

大型対艦ミサイル

 

アジア・オセアニア連邦の主力MA兼無重力環境用作業ポッド。射撃武装は選択式であり、状況に応じて様々な武装を装備できる。見た目はMSIGLOOのオッゴだが武装はMSのものを流用したわけではないため形状が違うし、技術の都合で口径や性能も違う。しかし宇宙での機動性はミストラルなどよりも上である。

 

 

コスモファルコン

30㎜機関砲×2

各種ミサイル

 

アジア・オセアニア共同体の主力戦闘機、見た目は宇宙戦艦ヤマトのコスモファルコン、原作でももともと地上運用の機体であったために空軍の主力戦闘機として採用されているが、もしもオッゴの生産が追い付かなければエンジンを換装し宇宙にも対応できるよう作られている。

 

 

吹雪級駆逐艦

75㎜対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』×6

回転式三連装大型対艦ミサイルランチャー×2

対空ミサイルランチャー×12

 

競合相手のドレイク級より一回り大きく、ドレイク級ではむき出しであった燃料タンクが内部に格納されているような見た目でアジアオセアニア連邦の主力航宙艦、小回りに優れるがMAの運用は考慮していないし、MSと比べると機動性は落ちる。

 

 

青葉級巡洋艦(ムサイ級相当)

150cm連装ビーム砲×3

75㎜対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』×8

六連装多目的ミサイルランチャー×2

ミサイルシステム『ヘルダート』×2

多目的射出機×6

 

MA搭載機数6機

 

見た目は機動戦士ガンダム、ジオン公国軍のムサイ級巡洋艦に近い、しかし武装がコズミック・イラのものに変わっていたり増設されているため多数の差異がある。ネルソン級より一回り小さいが、火力的にはほぼ同等であり、真正面を向いた際の砲戦では優勢に立つことができる。

 

アチェ級戦艦(チベ改級相当)

225㎝収束火線砲『ゴットフリートMk62』×2

75㎜対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』×18

大型対艦ミサイル発射管12門

250㎜単装速射砲4門

八連装対空ミサイルシステム『ヘルダート』

多目的射出機×6

 

MA搭載機数12機

 

見た目は機動戦士ガンダムのチベ級重巡洋艦、戦艦となったため多少サイズが大型化しているが武装は据え置きのためMA搭載スペースや推進剤の搭載スペースに余裕がある、しかし重武装のためMA搭載能力はアガメムノン級に劣る。ゴットフリートは専用の三連装型である。現在旧式化のため代替艦の建造計画が進行中。

 

伊勢級戦艦(マゼラン級相当)

 

225㎝収束火線砲ゴットフリートMk71×6

75㎜対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』×14

対空ミサイルシステム『ヘルダート』×2

八連装ミサイルランチャー×6

 

マゼラン級相当の新型主力宇宙戦艦。マゼラン級は改めて設定を確認すると大艦巨砲主義の権化である。他国の戦艦を凌駕する火力を持ち、高い対空能力を誇るが、MAの搭載を全く考えていないため、随伴空母を伴っての行動が原則である。現在1,2番艦が就役している。

 

アユタヤ級戦艦(バーミンガム級相当)

225㎝収束火線砲『ゴットフリートMk71』×5

150㎝単装ビーム砲×8

試製410㎝大型収束火線砲×1

十二連装多目的ミサイルランチャー×2

75㎜対空自動バルカン砲塔システム×12

 

マゼラン級でハイになったアジアオセアニア共同体の宇宙戦艦閥が計画した『旗艦型戦艦』である、ゴットフリートの門数が減ったが代わりに、高い艦隊旗艦能力を有し、アジアオセアニア共同体技術部の作った試製410㎝大型収束火線砲を搭載している、しかし、他国が同口径の収束火線砲を作った場合もっと出力が高くなる。もとよりMAの搭載など考えていない設計は伊勢級と同じであり随伴空母を伴う必要がある。現在コンペイトウにて建造中。

 

パプアニューギニア級MA母艦(パプア級相当)

 

MA搭載機数36機(三個中隊)緊急時には48機収容可能

75㎜対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』×2

 

戦闘艦のMA運用能力が低いアジア・オセアニア共同体が使用するMA母艦。三個中隊の運用が可能。MAの輸送や僚艦が撃沈された場合などに備えて、一個大隊の収容は可能であるが、運用に支障が出てしまう。急ごしらえの艦であり、輸送艦を改造したため武装は気休め程度だが、軍用であったため船速や装甲はそれなりに高い。この艦でデータを取り本格的なMA運用母艦を建造する予定である。

 

パラオ級MA母艦(ヨーツンヘイム級相当)

 

MA搭載機数54機(二個大隊)緊急時には66機収容可能。

75㎜対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」

 

商船改造型のMA母艦。安くて簡単な改造で済むことが売りだが、船速が遅く、装甲も非常に薄く、武装もないよりはまし程度の物しか施せない。しかし、民間で使用される大型輸送船を改造した当級はMA搭載数に優れており、船団護衛などで活躍することが期待される。

 

改アガメムノン級MA母艦「ヤマモト・イソロク」

 

アガメムノン級のゴットフリートを撤去しMA運用能力を上げたもの。高いMA搭載能力を持つが対艦攻撃能力に乏しく、ミストラルしか運用できない。プラント駐留艦隊の旗艦として建造された艦で、データの収集と、他理事国と装備を共通化させるための艦である。同型艦の予定がなく、プラント撤退後の解体が決まっている。

 




一応の設定集です。もしかしたら変更するかもしれません。

地球連合軍の軍服ってよく見るとユーラシアと大西洋の色使い違うんですよね。というわけでアジアオセオニア共同体の軍服は地球連邦軍カラーです。

オーブって現在の地図見ると海なんですよね…というわけで西之島新島方式です。環太平洋火山帯が通ってる辺りですし、問題はない…はずです。



17/2/11 数字のミスを修正

17/2/23 単位ミス修正


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phase4 プラント

早く本編に入りたいため少し駆け足で進みます。


プラント、アプリリウスⅠ、アジア・オセオニア共同体高等弁務官事務所

 

「ですから、我が国はこの条件ならば独立を認めると言っているのです。これ以上はまけることはできませんね。」

 

何度も言わせるな、と思いながら駐プラント高等弁務官、野村裕一郎は目の前に座る黄道同盟のシーゲル・クラインを見据える、所詮、活動家か…、穏健派だというが全く交渉にならない、これで強硬派だったらどうなるんだ。

 

「我々としてはこのまま即時独立させてほしいのです。もう投資額分は回収できたでしょう?」

 

できているできていないの問題ではないのだ、独立時にインフラを金で買い取るのはよくあることだ、我が国を構成する州となった国々でもそんな歴史がある。政府はもう損切りを行うことを前提に動いているようだが、それにしたって「国民を納得させるための利益」は必要だ、結構高い金を払っているのだ、こんな非効率なコロニーを作るために、我々のコロニー計画は結構な遅れを余儀なくされている。プラントがなければ、L4宙域のコロニーはもっと充実していただろうし、現在建造中の総合観光コロニーもとっくの昔に完成していただろう。

 

「いや、そういう問題ではないのですよ、プラントを国家として独立させるには国民を納得させねばなりません」

 

「そのために金が必要…と?今まで大量の資源や機械をそちらに納入してきたではないですか」

 

…こいつ、自分の住んでる地域の貿易額すら把握していないのか?我が国はベースマテリアルや各種希少資源はプラントから輸入していない。機械はエレカなど誰が作っても大体同じなもののみだ。正直取引額も微々たるものだ。

 

「そもそも以前お話しした通り、ユーラシアや大西洋の承認は取ってきたのですか?正直、我々と交渉しても意味がないでしょう、最大出資国の意見のほうが重要ですよ?」

 

そもそもウチに独立交渉に来る方が間違っている、ウチが独立交渉に比較的温情なのは出資額が低く、『無くなったら無くなったで代替施設の準備が整っているから』だ、トカゲの尻尾なのだから惜しくない。それだけの話なのだ。こいつら最近秘密裏に兵器開発をしていると聞く、先ごろ情報省の連中が本国とと連絡を取っていた話を聞くに、モビルスーツなる兵器の開発が進んでいるらしい、ドデカイ花火でも打ち上げる気なのか…。

 

「…いえ、まだです」

 

「話になりませんね、我々と交渉しても無駄でしょう、彼らが納得せねばプラントの独立など夢のまた夢です」

 

優秀なコーディネイター様()とはいえ政治は素人か…と思いながら野村はシーゲルに帰宅を促す。まぁ確かに無駄にストライキの頻発しているこの情勢では購入費用を捻出するのも大変だろう、ストライキを主導しているのが黄道同盟というのは何のジョークだろうか。そもそも大西洋連邦やユーラシアでは機動隊を投入して鎮圧にかかっていると聞くし、東アジアは軍を投入したと聞く。ただでさえコーディネイターは減りやすいのに6000万ぽっちの国で余計な流血は控えるべきだろう。支配者側の理屈だろうがまじめに働いていたほうが話も聞いてくれるだろうな。支配者側の理屈だが。

 

「なんにせよ軽挙妄動は控えてほしいな、戦争など損しかない」

 

人種対立…と言っていいのかわからないがナチュラルとコーディネイター…理事国とプラントの対立は深刻さを増している、国によってはブルーコスモスが大っぴらに闊歩し、コーディネイターへの襲撃行為をしていると聞く。ジョージ・グレンも余計なことをしてくれたものだ、黙っていればよかったものを。と思いながら野村は書類仕事を再開するのだった。

 

 

/////////

 

一方そのころ…白兎のMS研究室では…

 

「90㎜ブルパップマシンガンが完成したぜ!!」

 

研究室の扉を蹴破り突入してきたのは、火器開発担当を統括しているの南部さんだ。

 

「早速テストだ、鶴野!!」

 

「はい」

 

90㎜ブルパップマシンガン、一年戦争後期の連邦軍の主力マシンガン。オリジンでは鉄騎中隊のガンキャノン最初期型も装備していた武装だ。MS一号実験機でテストした57㎜連装機銃は使えないこともないが、やはりジンは防ぐのではないかという意見が強いため、専用の火器開発が急がれたのである。127㎜キャノンは…127㎜自体が旧式なので採用が見送られることになった。

 

「それと、保険用の90㎜マグナムライフルも完成したから現在開発中の機体が完成したら使ってみてくれ、たぶん今の機体じゃ関節が持たん。」

 

万が一に、ジンが90㎜機銃を防ぐような機体ならば装薬の強化を行った特殊弾を使ったライフルを採用するらしい。見た目的にはジムライフルみたいな感じだ。普通の90㎜弾も使えるのでマグナム弾が無駄になってもこのライフルは無駄にならないらしい。ドラムマガジンをつけて分隊支援火器化しようという計画もあるとか。120㎜バトルライフルという保険もあるらしいがこれは弾薬をスナイパーライフルとかと共用するらしい、あとは高級機用の装備とかとしても考えられているみたいだ。

 

「そこまで威力を上げたのか?一応ショックアブソーバーなしでの120㎜の使用も考慮して作ったのだが」

 

MS一号実験機は必要以上に堅牢に作られている、その分機動性が落ちているけど計算の範囲内だそうだ。そんなものスラスターの変更でどうにでもなるらしい。冶金技術は優れている国なのでその手の頑丈な合金は多いそうだ。

 

「あ、それなら大丈夫だな。あと120㎜バトルライフル、バズーカ、携行レールガンはちょっと待ってくれ、担当の連中も努力しているが…」

 

申し訳なさそうに南雲さんが言う、が、正直90㎜マシンガンと75㎜ガトリングでもジンを落とせないことはないだろう、イーゲルシュテルンで墜ちてる描写あるし。だからなのか、バッテリーに不安があるからなのかビーム兵器の開発はまだ進んでいないし、最初期の量産型に搭載する予定はないらしい

 

「気にするな、5年以内に完成させれば問題はない。こっちもこの実験機の開発が終わればジムクゥエル相当の実験機…いや試作機を開発する予定だ、おそらくそいつがヤキン・ドゥーエ戦役時の主力MSとなるだろう」

 

現在、MS開発チームはムーバブルフレーム実験機の名称でガンダムMk2相当の機体を製作中てある。と言っても核融合炉を搭載していないし、ビーム兵器がまだ開発されていないので実弾兵器を積んだバッテリー駆動のガンダムMk2もどきというのが正しいのだが、今はまだ構想段階なのだがフレームだけでも結構高額になってしまうことが分かったのでムーバブルフレームを腕部などに利用した機体を量産型とする予定だ。

 

/////////

 

アジアオセオニア共同体 スラバヤ 行政府

 

「はぁ…またか、あのコロニーは変わらんな」

 

アジアオセオニア共同体大統領、ラーフル・ボースはある書類を片手に呟く。周りにいる閣僚も曖昧な表情で沈黙している。

 

「聞けば兵器開発をしているという噂まである、そこはどうなのだ?国防大臣」

 

「現在白兎にて検証中です。無重力下ではかなりの機動性を有するのではないかというレポートも上がっています」

 

「なるほどな、ではムーアや月面都市群の防衛は大丈夫かね?」

 

「問題がない…とは言えないでしょう、このモビルスーツと呼ばれる兵器をわが国でも戦力化する必要があると考えます」

 

「目には目を…といったところか?まぁいい、予算に関しては任せる」

 

「承知しました。」

 

「いい、私は軍事に関しては素人だからな」

 

大統領はそう言うと次の議題に入る。

 

「ムーア建造に使っているコロニービルダーだが、確か三機目が就役するはずだったな、我が国は人口問題を抱えているからな、コロニーの建造が早まることは喜ばしいのだが資源はどうなっている?」

 

混乱した地域はあったものの、大西洋連邦に次ぐくらいの速度で統制を取り戻したアジアオセオニア共同体は現在人口が増えすぎている。食料は食糧生産コロニーやオーストラリア、インド、メコンデルタなどの大規模農業で問題ないのだが、土地が足りないのだ、そのため宇宙進出が加速化している、アジアオセオニア共同体のコロニーが密閉型な理由も居住可能スペースの問題である。

 

「現在、コンペイトウ及び月面都市群の資源採掘施設は平常通り稼働、それからアステロイドベルトより新たな小惑星を引っ張ってくる計画です」

 

「そうか、わかった、コロニー公社の予算には口出ししないが、その小惑星もコンペイトウのように?」

 

軍事要塞にするのか?ということだろう。コンペイトウはコロニー公社というコロニーを建造している国営企業と軍の共同管理である。資源採掘スペースをコロニー公社が、港湾部や軍事施設を軍が管轄している。

 

「現状未定です。ただ、コンペイトウに近い大きさのものを持ってくる予定ですので、そうなる可能性が高いかと。」

 

「そうか、まあ、いい…それでは次は、まぁご存じのとおり、再来年、C.E68年には私の任期が終わるわけだが、来年行われる大統領選挙で我が党はタクシン財務大臣を代表として指名したい。異論のあるものは居るか?」

 

その問いに誰も手を上げない、タクシン本人は困惑している。

 

「そうか、ではタクシン、よろしく頼むぞ」

 

そう言って大統領はタクシンの肩をたたきながら会議室を後にする。

 

 

このあと行きつけの居酒屋でヤケ酒をしているタクシンが目撃されたという。

 

 

 

 




年表を見ていたらふと気づいたのですが、メビウスって意外と新しいんですよね…公式年表だと血のバレンタイン後に急遽量産開始らしいです。ユニウス7に核を撃ち込んだメビウスは先行量産型とか、試作型だったのでしょうかね?

さて…新たに引っ張ってくる小惑星はア・バオア・クーにするかア・バオ・ア・クゥー(おそらく元ネタ)のほうにするかそれとも別の名前にするか…。ちなみにソロモンではなくコンペイトウな理由はおそらくザフトがプラントをソロモン王の神殿に例えて要塞を名付けているんじゃないか?という個人的な考察からです。(ソロモン王が神殿の前に建てた柱の名前がボアズとヤキン)さすがにソロモンなんてものがあれば(アジアオセオニア共同体にある限りソロモン諸島が由来だと思いますが)ボアズとヤキン・ドゥーエの名称が変わってしまうのではないか?と思い、コンペイトウとすることにしました。


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phase5 ガンダム(Mk2)、大地に立つ。

「ガンダムMk2、もとい、ムーバブルフレーム技術試験実証MS完成だ。名称は現在会議中なので省略とする。」

 

「…マジで半年でできちゃったよ」

 

教授ほか開発チームの目の前にはガンダムMk2が屹立していた。とはいってもカラーリングは赤と白、自衛隊の実験機でよく使われていた色でで頭部はV字アンテナはなく、目のくぼみのところを覆ったゴーグルアイだ。パッと見ゴツいジムである。武装もビーム兵器はなく、新開発の120㎜バトルライフル『八咫烏』や360㎜無反動砲『グプ』、単分子ロングブレードの『同田貫』と『バロング』対装甲ナイフ『マキリ』などを装備している。なぜ装備に名前が付きだしたのかというと「SEED世界なんだから装備に厨二病な名前がないと」という声が開発チーム内で強かったためである。名前なんてどうでもいい気がするのだが…。ついでにムーバブルフレーム技術試験実証MSの名称も決まらなかった、一部では殴り合いのケンカになったそうだ、僕はとにかく1分でも長く動かせと言われていたので、操縦訓練でその場にいなかったのだが。おかげでMS1号実験機は現在関節がヘタって改修中だ、量産試作機で使う技術を試すらしい。

 

「さぁ、さっそくデータ取りだ、鶴野!!」

 

「はい」

 

とにかく今はムーバブルフレームのデータを取るしかないだろう、名称とかそういうのはほかの人が決めればいい。MSを動かすのは楽しいし、日々完成度が高くなっているという実感もある。このMSがなんと呼ばれるのかはわからないけど、僕は作って動かせればそれでいいのだ。と結論をつけ、試験場へとMSを動かすためにコックピットへと移動するのだった。

 

 

//////////

 

白兎、月面試験場

 

≪これよりムーバブルフレーム技術試験実証機の性能試験を始める、試験プログラムに従い、機体を動かしてくれ。≫

 

「了解」

 

白兎実験場、周囲に月面都市がなく、白兎自体に入市制限がかけられているためこういう極秘の研究の成果を極秘裏にテストすることを、作られた実験場。結構な広さがとられており、常に警備部隊が周囲を警備している。そんな中でテストを開始する。

 

「まずは射撃プログラムか」

 

ランダムに出てくる様々な的を120㎜バトルライフルを使い指定された条件で撃ち落とす。月面で、空中で、止まった的を、動く的を、指示通りに撃ち落としていく。動く的も決まったパターンにしか動かない上に、FCSが大方完成しているためので外すことはもうほとんどない。

 

「次は!!」

 

新型の携行レールガン『大蛇』を使いもっと遠い目標を狙っていく…性能はいいのだが、なぜ見た目をYWH16HR-PYTHON(ハンデレールガン)にした…。

 

「よし、次!!」

 

しかし性能は良好である。それこそ悔しいくらいに。次は近接武器のテストである、ロングブレード『同田貫』に持ち替えるとテスト用の切断目標が試験場に投下される。鉄柱に様々なセンサーのついたものや、鉄板などである。

 

「よし」

 

 

ブレードを使い目標を切り裂いていく、問題なく切れる。ビームサーベルには劣るのだろうけど。

 

≪試験プログラム終了、帰投してください≫

 

試験プログラムが終わったのでブレードを腰部のラックに収める。ブレードは日本刀のような形をしている、この形状も、結構な議論の末決まったそうだ…俺、あまり開発陣の会議に参加できてない…まだ学生なのもあるかもしれないけど、開発者っていうよりテストパイロットだな…開発の手伝いはしているけど。ほかにテストパイロットがいれば…もっと開発に参加できるのだろうか。

 

帰投し、着替えて湯野教授の研究室へと入るとそこには正座させられている技術者が数名いた。皆湯野教授の研究室の先輩たちだ。

 

「…で?あなた方がこの素晴らしき無駄機能の宝庫を作りやがった訳を教えていただけるかな?」

 

事務員さんの声にはどこか底冷えするような雰囲気がした、あ、これ先輩たち(バカ)が何かやらかしたんだろうな。

 

「そ…それは、リニアシートはパイロットへのストレスを考えるとだな…」

 

「全周天モニターはこの時代のMSならば標準装備だろう」

 

「サイコフレームの理論はすでに完成している、最も同じ効果を発揮するかは不明だが、だからこそ実験のための機体は必要だ」

 

「それこの機体でやる意味ありますか?」

 

穏やかな口調なのに怖い…というか、ガンダムMk2にこの機能は当たり前だと思って何の違和感もなく乗っていたけど、確かに新技術のオンパレードだったな…今回のコクピット。

 

「テスト機だからこそだ、教授にも了承を取った。」

 

 

「教授…?」

 

 

「実証機は長く使えるものがいいだろう、各部の換装が容易にできるようになっているのはこのためだ、いいじゃないか、再現に走ったって。」

 

「よくありませんよ、無駄遣いです。特にサイコフレーム用ソケットは」

 

確かに、フラガ家の血縁でも連れてこないといけないんじゃないか?もしくはガンバレル適正持ち…前に検査した時僕のガンバレルの適正は使えないわけじゃない、ただそれに回す労力を別のことにつぎ込むべきなだけで。ということらしい、インテンション・オートマチックシステムみたいなシステムが開発されればそれは僕に最適なシステムなのだろう。僕は戦場に出ないし、そんな高級なシステムを使うことはないだろうけど。

 

「これらの機能オミットすれば量産型へのムーバブルフレームの採用も可能じゃないですか!!」

 

「それは…そうだがな…」

 

「それZAFTは知りませんけど連合は初期GATシリーズからムーバブルフレームに近しきものを採用しているような表現が存在しているんですから、こちらもそうできるのならばできるに越したことはないではないですか!!」

 

「…まぁそうだな…」

 

この後事務員さんによるコストカットが行われ、ムーバブルフレームが量産型にも採用されることになった。




ちなみに出てこなかった武装の名称は
90㎜ブルパップマシンガン『水破』
90㎜マグナムライフル『兵破』
となります。
伝説の武器とか史実の有名な武器とか当たって考えたのですが。なんかSEEDっぽくない…カタカナで表記すればそれっぽいのでしょうか?ちなみに『同田貫』はキマリスヴィダールのサーベル、『バロング』はグフカスタムのヒートブレード(ヒート機能なし)「マキリ」の形はドイツ軍のKM2000みたいな感じです。…こういうのって設定考えるの楽しいですよね…傍から見たら刃物の画像見ながらニヤニヤしてる危険人物かもしれませんけど。

キマリスヴィダールはバンダイホビーサイトで見て一目ぼれしちゃいました、なんか不穏な、というかエグそうな武装積んでるところが最高ですね。これからどんな話になるのか楽しみです。


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specialphase① 会議?

月面都市『白兎』白兎工業カレッジ、小会議室

 

「それでは、会議をはじめる」

 

薄暗い部屋の中で椅子に座った20人から30人の男たちがゲン〇ウポーズで向かい合っている。皆、MS開発チームに参加する技術者(転生者)たちだ。

 

「皆さんもご存じのとおり、もう少しでムーバブルフレームの試験を目的とした実験機が完成する。武装も、ビーム兵器はまだ研究段階であるが多くが完成してきている。さて、今回集まっていただいたのは重要な議題があるからだが…何かわかっていない者はいるかね?」

 

その中で最も年配の技術者が会議の進行役らしい、推進機器の担当をしているものだ。その人の発言に手をあげる者はいない。

 

「ふむ…みなわかっているようだ。では『仮称ムーバブルフレーム技術試験実証機』のペットネームを何にするか決めたいと思う!!」

 

高らかに進行役が宣言をすると、様々な声が上がる

 

「素直にガンダムでいいんじゃね?」

 

「そうするとストライクがキラにガンダムって呼ばれない可能性があるだろ!!大体この世界のガンダムの定義をこの機体は満たしていない」

 

「この世界のガンダムの定義ってあのOSか?あれ国によって違うぞ、よってこの世界にガンダムは存在しない」

 

「ライゴウ!!」

 

「いや…あのデザインかっこ悪くね?大体来迎とかMSにつける名前か!!」

 

「雷轟だ思うんだがなぁ…あとデザインは関係なくね?轟雷で」

 

「いやそれは重火力な機体につけるべきだろ…というわけで百式で」

 

「C.Eどころか西暦も皇紀も100なんかひとっつも絡んでねーじゃん!!」

 

「エク・ハザール!!」

 

「1000なんてもっと関係ないだろ、え?お宅のもととなったACの企業の標準機なの?」

 

「てかなんでお前ヒンディー語詳しいの?あ、そいつは逆関につけるべき名前だ。」

 

「お前この国インドあるんだからさぁ…てかなんでアルゼブラなんだ、有澤があっただろうに…」

 

「インドならアルゼブラだろ」

 

「アルゼブラって…中東なんじゃ…?」

 

「ハイハイ、ずれてるぞ、やっぱライゴウだろ!!この世界じゃ絶対生まれないし」

 

「だからそんな名前つけるなって」

 

「うるせぇ!!」

 

ドカッ

 

「なんでそこで手が出る…」

 

(この後収集のつかない議論という名の殴り合いが展開されます。少々お待ちください)

 

「決まらないので保留ということで。」

 

荒れた会議室で、湯野教授が宣言した時立っているのは当初の半分にも満たない研究者のみであった。

 

「…なぁ、これ量産機決めるときとかもやるんだよな…?」

 

そう言い出したのは財務省より派遣された事務員の男である。財務省はMS開発計画の承認に事務員(監査役)の派遣と『量産機の機体コンペ』を会合で行うことを条件に了承したのだった。

 

「この数倍の人数でな…」

 

湯野教授が何が起こるか悟ったような目で言う。

 

「もう一般からのコンペにしねぇ?」

 

技術者の一人がそういうと。

 

「それもありだがそうするとMSの存在がいろんな所にばれるからなぁ…最悪、グリマルディ戦線までは秘匿しておきたい」

 

今度は軍から参加していた連絡係の一人が反論する。

 

「確かアラスカ宣言には乗らないんだっけ?」

 

「大体そのつもりらしいな、こちらとしてはコペルニクスの悲劇が起こるのは織り込み済みだし『そういう人物』を送るらしい。最後の花道が飾れて遺族にも恩給が支給される。みんな得するな」

 

財務省の事務員が答える、財務大臣の息のかかった人だから政治にも詳しいようだ。

 

「うわぁ…、まぁ確かに量産開始がC.E69年1月だとしても大体一年後の開戦にはちょっと間に合わんな。何もかも都合よくいって1200機だったか?戦力になるのは訓練期間を考えると…よくて1000、まぁ800と考えておこう。おそらくザフト連中よりも足りん、カーペンタリアと宇宙の拠点の防衛で手いっぱいだな。カーペンタリアは攻めてくるか怪しいが…。まぁ連中の戦力に関しては資料が少ないが、一応ジオンの半分程度であると計算している。つまり開戦時のMSは1500機程度だな。本来なら3分の1強だが、ザフトという組織の性質上、多少増えると考えられる。…そもそもあんな武装組織が成り立つのが不思議なんだがな…軍人としては。」

 

軍人の連絡係が言う。

 

「研究費とか軍事費も…あんなものを作る予算どっから出てるんだろうな…うらやましい」

 

あのコロニー群のどこにそんな生産力と予算が…、と続けながら財務省から派遣された事務員が遠い目をしながら呟く。

 

「気にしたら負けだ…あぁうらやましいな畜生」

 

湯野教授も気にしたら負けだといいつつ同じことを口にする。

 

「いや…極秘で月産100機近くMSを生産できる我が国も大概だと思うが…。ガンダムって恐ろしい」

 

その軍人のつぶやきは誰も聞いておらず、皆「ザフトのわけのわからないくらい潤沢な予算」を羨むのであった。

 

 




ジオン公国ってザクだけで8000も生産したって無茶苦茶な説もありますが…今回はMS総生産数5000機説をとりたいと思います。この説だと開戦時で3000機保有していて、戦時中に2000機製造したらしいですね。



ゴットフリートの口径225㎝、バリアントの口径110㎝…
( ゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)デカスギジャ…

ずっと㎜だと思ってました…


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phase6 ビーム兵器

「やっぱでかいっすね…」

 

「とりあえず現段階ではこれが限界だった、まぁ、メビウスのほうに期待しよう、確かあれロングレンジビームキャノンも試作してたはずだ。」

 

少し前にメビウス・ゼロの開発が完了し、各国の投入した技術を公開したらしい、MS開発のせいであまり資料を読めていないのだが。ガンバレル以外にビーム兵器やバッテリー技術を習得したそうだ。こちらは超硬スチール合金と超自己修復セラミックスを公開したからトントンだとか…。

 

「遅くないですか?」

 

「ザフトのジンはイーゲルシュテルンでも墜ちる描写があった、90㎜で対応可能だろう」

 

ビーム兵器の試作品ができたらしく、搬入されたるので見に来たのだが、そこにはかなり大きなバックパック接続型のビームキャノンがあった、これもそこまで威力は高くないらしい。

 

「出力は高くないし冷却機構もMS搭載のため小型化して性能が低いから速射も利かん…実弾のほうがましだな」

 

ビーム兵器の開発担当である篠田さんも、ビーム兵器というだけしか特筆すべきところがないと言う。

 

「…これ本来は航宙駆逐艦とか海上艦艇用の試験型の流用かね?」

 

どこかで見たことのある形状だと思っていたら湯野教授が答えを言ってくれた。

 

「そうだ、恨むべきは予算だ」

 

「…あいつら…」

 

他に必要なところもあるのもわかるし、この計画は極秘なのでそこまで予算が回せないのもわかる。がどうにかならなかったのだろうか。

 

「まぁとりあえず、『ビーム兵器使用による稼働時間の変化』を見たいだけだから好き勝手撃ってみてくれ」

 

「了解」

 

まぁ、これは試験用の兵器であって実戦用ではないのだ。何かの流用品でも問題ないだろう。

 

/////////

 

「やはり、バッテリー技術の無さは痛いか…」

 

この後試製ビームキャノンを搭載して射撃訓練をしたら稼働時間が三分の一も減った。装備の軽量化で対応できるであろうが結構深刻である。バッテリー技術に関しては大西洋やユーラシアに劣るので仕方ないのだが。

 

「せっかくUC系の見た目なのだから、バッテリーをエネルギーカートリッジのように使い捨てるのはどうでしょうか?」

 

「それはコスト的に…、そうするのもいいかもしれんがバッテリーパックは回収だな」

 

篠田さんがコストを理由にその案を却下する。

 

「というか量産機に関してはまだどんな見た目にするか決まっていないしな、私はこのままUC系でいいと思うが…ジム・クウェルは嫌だという声も強い…まぁティターンズだしな、まぁUC系はUC系で結構分裂しているんだ。ほかにもX系やW系、00系、あと少数だがフレームということで鉄血系、はたまたガンダム以外のロボアニメの機体を推す連中もいる。まぁ、基本の形を逸脱してなきゃフレームに装甲くっつけるだけだから形はある程度どうにでもなるがな」

 

「要するにアルケーなんかは専用のフレームがいると。」

 

まぁアルケーなんて乗ってもこっちが扱える気がしないが。

 

「技術の蓄積は終わって、フレームも大体完成しているが…、頭部とか脚部とかの形状が決まってしまう前だから言えることだ。…あ、来週の会合は全員参加でその『量産機を何にするか』を決めるそうだ」

 

財務省から派遣されてきた役員のお怒りにより大幅に機能をオミットし、ガンダムMk2擬きを使って収集したデータをもとに主力機用のムーバブルフレームが完成した、乗り心地は悪くなったが、扱いやすさは変わらない、宇宙ならそこまで変わらないだろうし問題はない。あとは外装を決めるだけなのだ。

 

「それ…荒れませんか…」

 

「わかっているが…まぁ、いろいろ思うところのある作品があるやつもいるが、基本的に皆ガノタだ、こういうのは皆で決めないと、後で文句が出る」

 

「今確信しました。絶対に一日や二日じゃ決まらないじゃないですか」

 

愛が深いというのも考え物だ、長く続いたシリーズほど「どの作品が最高か?」とか「どの作品が最もつまらないか?」とか「どの機体が最高か?」みたいな議論は絶対にするべきではない。不毛だ、争いしか起こらない。量産型を決める議論はそれと似たようなものだ。

 

「だろうな…この間あのガンダムMk2モドキの機体名決めるのだけで殴り合いになった挙句何も決まらなかったし。」

 

「そういえばまだ決まってませんよね…」

 

「まぁ実験機なんで機体コードだけあればいいんだがな、MSA-X02ってのがあるし。」

 

「初めて知ったんですけど…」

 

「誰も使ってないからな、一応意味を説明しとくとXは実験機につけるやつだ、アジアオセオニア共同体のモビルスーツって意味になるな、正式採用機には主力機にはM、水陸両用機にはN、空戦型にはF、陸戦型にはG、支援型にはS、練習機にはT…まだ検討中の機体区分があるから変動する可能性はあるが、以下の文字がXの位置に入ることになる」

 

なんだかこんがらがりそうな機体コードである。補給担当者は大変だろうな。

 

「…そういえばお前は乗ってみたい機体とかないのか?余裕があれば戦後再現してやらんこともないぞ、せっかくMSに乗れるんだからな」

 

教授が興味津々という顔で聞いてくる。そういえばこれと言って…好きな機体はあるけど「絶対に乗ってみたい」って機体はないなぁ…。でもしいて言うなら…。

 

「ケルディムガンダムサーガ…とジェスタ、あと可変機全般ですかね…」

 

「多いわ!!可変機全般っていくつ作らせる気だよ…」

 

「可変機は計画あるじゃないですか、それに乗ってみたい機体はいっぱいありますよ、基本全シリーズ好きですし。」

 

ほかにもラスヴェートとかビルゴとか…あとMk-Ⅲとかスモーも迷う…。とりあえず主力機はジェガンがいいと思うんだ…ビーム兵器とジェネレーター以外は再現できる。

 

「…そりゃあ…現在主力機と並行して実験機のメタス擬きとキュリオス擬きが開発中だが…。可変機ってのはそれぞれ変形機構があってだな…」

 

当然、ガンプラが趣味だったから覚えている、可変機はいいものだ…何もしないでもある程度売れるという理由で不遇な扱い受けることもあるけど。メタスとキュリオスか…。

 

「確かどちらも『シンプルな可変機構』と言われていましたよね」

 

「まぁ、そうだな、さすがに可変機はあまりにもあんまりなの提案されると困るからこちらで選択肢を限定させてもらった。…どこから予算をとってきたのか知らんが、趣味人どもが00のユニオン系変形機構の試験をしているが…まぁ形にはなりそうだと聞いている。」

 

スーパー系を推す空気の読めない…技術者の苦悩を理解しない阿呆がいたら困るしな、と教授が言う、さすがに…スーパー系を出す人たちはいないと思うけど…。ユニオン系の変形機構って…ブレイブを作るつもりなのだろうか…。

 

 

/////////

 

アジアオセオニア共同体 スラバヤ 国防省統合参謀本部 小会議室

 

「そういえばさ…ザフトの連中がグアムに降下することってありえないか?」

 

「はぁ…?何を言っているんだ?確かにグアムは敵に取られたらまずいがオーブ領だろう?」

 

オーブは潜在的に敵国扱いだが、こちらを攻めてくるような国でもない。何を言っているんだ?という雰囲気が、軍内部の転生者の会合に集まった人々の中に広まる。ここには宇宙軍を除く陸海空の転生者が集っている、ZAFTからの防衛で協調するので皆で話し合っているのだ。

 

「いやさ…ほら、連中ヘリオポリスが『ザフトと連合の戦闘』により崩壊しても何も言わなかったじゃん?普通抗議の二三じゃ足りないくらいのアクションは起こすと思うんだけど、というか、連合と連携して殴りかかるね、俺なら。中立国とはいえ兵器の共同開発は普通にあり得ることなんだし。中立ということは潜在的にザフトも連合も『侵略者()』として捉えなければならないのだからザフトに備え対抗するための兵器を開発するのは当然だし、それに大西洋連邦が乗るのもあり得ない話じゃあないだろう。…というか中立国の領地で戦闘して中立国民殺すって常識的に考えて『その国を敵に回したい』ってことでいいんじゃねーの?仮にプラントからオーブに何かするにしたって軍事的オプションではなく政治、経済方面からだろ、普通。」

 

「「「…」」」

 

あ…、そういえばしょっぱなから謎ムーブの宝庫だったあの国…。会議室の中にいる人物たちの心中はこんなところであろうか。

 

「ま…まぁ、さすがに、奴らといえど、「地球における重要軍事拠点の一つ」を好きにされちゃ黙っちゃいないだろう…多分。」

 

「そ…そうだよな、あいつら経済水域内で戦闘してても何も言わなかったけどさすがに侵略されたらなんか言うだろ、ほら他国の侵略を許さず、他国を侵略せず、他国の争いに介入しないだっけ?順番間違ってるかもしれないけどオーブって確かこんな理念だろ?」

 

 

「ザフトもザフトでいろいろトチ狂っている連中がいるが、さすがに中立国を敵に回すような行動はしないだろ」

 

「というか、カナーバみたいな奇跡を起こせる外交官がいて、こんな俺らの元いた世界の政治かぶれの青臭いガキみたいな行動起こすってどう言うことなんだよ…。」

 

「破壊活動やらかしてたらそいつらはもうテロリストだろ、というかユウキの野郎、マジで何やってるんだ…?」

 

「お前同期だっけ?」

 

ザフトの特務隊隊長は実はアジアオセオニア共同体出身である、以前は軍に勤務していたが辞め、プラントに移住している。

 

「タカオ・シュライバーも知ってるしな~…レイ・ユウキって学年三席だぞ…うちに残ってりゃ今頃艦隊副指令くらいにはなれただろうに…。」

 

「特務隊隊長のほうがおいしいんじゃね?そういやパトリック・ザラに請われたとか言ってたな…」

 

「あぁ、俺にも来たな、コーディネイター全員に送っとるんだろ、多分、俺…というかこの国にいるコーディネイターのほとんどが「先天性疾患の治療」のためのコーディネイターだから能力的には大したことないんだがな」

 

コーディネイターになっていた海軍の士官の一人が言う。

 

「そもそも軍人にするためにコーディネイター作るほうが稀有だろ、オーブの氏族くらいじゃねーの?」

 

確かに、せっかくなのだから政治家とか、研究者になるようコーディネートするだろう。皆、何とも言えないような顔をし、向き合っている。

 

「グアムよか海南島のが危ないと思うがね俺は」

 

「あそこはウチが奪還作戦の中心になることはないだろ、常識的に考えて。」

 

「東アジアも苦労してるなぁ…人口ウチより少ないのになんであんな教育失敗みたいなやつが多いんだか。」

 

「人類は歴史の奴隷さ」

 

「かっこよくそれっぽいこと言いたかっただけだろ」

 

「あ、ばれた?」

 

「ゴホン、話を戻そうか、まぁ、初手カーペンタリアというのは原作知識からの予測だが…正直モルディブや高雄、ディエゴガルシアも危ないと思っている。正直カーペンタリアは重要拠点でも何でもないが…もしそちらのほうに軌道降下されたらどうするかだな。まぁ備えておくことに越したことはないだろう…MSもいいが支援車両関係はどうなっている?」

 

「あー、アルゼブラ…を構成している有澤から新型偵察用戦車と新型兵器MTの試作型、銭がめの試作品が届いてます。あと強襲型ガンタンク相当のMTも開発中らしいです。」

 

社名こそアルゼブラグループだが中にはGAやBFF、ローゼンタール、オーメル、インテリオルを愛好していたものもいて、それぞれのそれぞれがグループ構成企業として活動している。アクアビット、およびトーラス愛好家はキサラギに行ってしまったが。なぜアルゼブラなのか?というと、本社がインドだからだそうだ。おそらく中東系の企業ではないかと思うのだが…。

 

「あぁ、話は聞いている、ただなぜ強襲型なんだ…」

 

別に量産型でもガンタンク2でもよかっただろうに…と陸軍の将官を務める男がつぶやく。ぶっちゃけ強襲型はロマンの塊だが生産性とかの点では劣悪の一言だと思う。

 

「最もロマンを感じるのが強襲型だったそうです。あ、腕は換装可能に改良してあるらしいですよ。まぁAC好きが集まってるんでその辺はACっぽくしたかったんでしょう。」

 

「あぁ、まぁ、グレネードランチャーやボッブガンじゃないほうがいいこともあるからな、それはうれしいんだが…まぁ、強襲型でいいか。」

 

確かに可変機構とかカッコいいよね、ガチタンにもろくなりそうな機構はいらないけど。そしてガンタンク系列の機体で何気に最も主砲の口径が大きいんだよなアレ、一門に減ってるからだろうけど。

 

「まぁ、MSだけで対抗するわけではないからな、確かに我が国は人海戦術の可能な物量がある、が、人海戦術ができるほど人命が安いわけじゃない。当然軍に来ない人員は物資の製造に回されるわけだ。それに月資源プラント、コンペイトウに加え、海底資源の採掘も順調だ、我が国の領海、および経済水域にはそういうものが多々眠っているからな。つまりは火力の勝利ということだ、地上ではMSの機動性など大幅に減退するからな、ついでに、ホバー技術のリーディングカンパニーはウチのツィマッド、そういうMSも作るらしいし、バクゥこそ注意すべきだが、まぁ早く動くのならその動ける範囲すべて焼き尽くせばいいだけだ。カーペンタリア周辺ならいくら焼き払おうと…まぁムーアの食糧生産コロニーで大丈夫だろ、食料自給率150%だし」

 

海軍軍人の一人がそう言うと。

 

「あまりやりすぎると弾薬費で財務省の連中がキレるぞ…、それにあの周辺に大規模食糧プラントはない、大丈夫だ。なんのために転生者(俺ら)がいると思ってるんだ、戦場になりそうなところは、そういう場所になっている。まぁ最悪、ベルカ式国防術やっても問題ない程度には物がない場所になっている。」

 

もっとも季節風の影響は無視できないし、どうせNJが散布されててできやしないがなと、陸軍軍人の一人が言う。

 

「そうだっけ?まあいいや」

 

この後も対策会議は夜遅くまで続き、多くのことが決められるのであった。




さりげなくメビウスの装甲が強化されました、当たり所にもよりますがたぶんジンの突撃機銃ならば2,3発は耐えるんじゃないでしょうか…(適当)さすがに無反動砲とか重粒子砲は耐えられませんし、熟練のパイロットを相手にすれば「機銃」を数発耐えるからなんなんだってことになりますが。

登場兵器

AMT-01『銭がめ』

380㎜グレネードランチャー『倉真』×2
四連装ミサイルポッド

有澤重工が開発したMT(モビルタンク)、実験機としての意味合いも込められている、とにかく頑丈で装甲が厚く、量産性が高い上、一機辺りの費用はリニアガンタンクよりも抑えられている。操作方式はモビルワーカーのものと同じ方式を採用しているため訓練期間も短縮できる。中距離からの支援車両として期待されており。ミサイルは宇宙艦艇用のものの流用であり様々な弾頭が搭載可能。モデルはAC4に出てきた同名のノーマル。一応腕部換装が可能になっているが現時点では他の装備が開発されていない。乗員も一名で済み大口径のグレネードランチャーを二門そろえるその火力はコストパフォーマンスに優れ、支援車両として量産中である。余談だが有澤製の装備は原作に敬意を表して温泉の名前がついている。

AMT-02『鐘釣』
固定
220㎜キャノン砲『皆生』×1

腕部選択
三連装76㎜グレネードガン『濁河』
380㎜グレネードランチャー『倉真』
120㎜四連装機関砲『サンパギータ』
90㎜ガトリングガン『プルメリア』
火炎放射器『逆流』
簡易マニピュレータ

ショベル

オプション
40連装ロケットポッド
対MS用機雷
ドーザー
リアクティブアーマー

陸戦強襲型ガンタンクをモデルにした大型MT(モビルタンク)、ネーミングは富山県の鐘釣温泉から、支援火器に加えキサラギ製の対PS装甲用の火炎放射器『逆流(ギャクル)』を装備可能であったり、近接武装を装備可能であったりする突撃用重MTである。装軌駆動を用いた限界の機動性をコンセプトに開発されたこの機体の機動性はリニアガンタンクを凌駕するものであり、重い質量も相まって強襲時にはこの機体自体が質量兵器と化す。まぁ火薬満載の機体でタックルしたいってバカはなかなかいないが。ちなみに逆流とは仏教用語で輪廻転生の道に逆らい解脱へと向かうことである。やはりというか当然、キサラギ製である。

AC4よりノーマルのZENIGAMEにご登場願いました。ゲーム本編ではそんなに苦戦したイメージのない敵ですけど、個人的に見た目の好きなノーマルでしたので。GA系列のノーマルっていいですよね。いかにも量産型って見た目が。


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phase7 量産型決定会議

C.E68年 11月某日 アジアオセオニア共同体首都、スラバヤ郊外 ホテル『マリス・ステラ』大会議室

 

「では、会議を始める。」

 

去年の大統領選挙で大統領となったタクシンさんが会議の開会を宣言する。今日は量産型の形状を決定する会議だ。

 

「先ごろMSの開発が完了した、ここで形状を決め、来月には試作機のロールアウト、再来月から隠ぺいの利く白兎とコンペイトウで本格的な量産体制に入る。月産100機、開戦までに1200機の主力型MSが生産されることになる。各種局地戦機の開発は開戦後となるがここで決まったものは作るので安心してくれ…注意点を述べると残念だがモノアイのMSは改造する必要がある、それが嫌ならあきらめてくれ。それから申し訳ないが空軍主力の空中戦型は事前に技術部と空軍の連中で決めてしまった。可変機となるとフレームを新造しなければならないから開発の時間が取れないからあきらめてくれ。」

 

『ガンダムキュリオス(命名:ブラスト)』『ユニオンフラッグ(命名:フラッグ)』の文字が会議室の前のスクリーンに上がる。結局フラッグが採用されるのか…。多分、空軍内部にハワードとかグラハム並みにフラッグを愛している人がいるんだろう。

 

/////////

 

「ジェガンだ!!UC120年代まで運用された基礎設計の優秀さは他にはないだろう」

 

「いや、それ何も起こらなかっただけの話だよな、コスモバビロニア紛争ででいいことなかったじゃないか、グレイズだろう、あの汎用性のありそうな多数の武装ラックは素晴らしい。」

 

「ネモだろ。あれ、ろくに訓練していないようなカツですら動かせたんだから、最初のMSとしてはこれ以上なく優秀だ」

 

「いやデナン・ゾンだ、あのSFっぽい見た目素晴らしくない?」

 

「おいおい、リーオーを忘れんなよ、そして隊長機としてエレガントなトールギスをだな…」

 

「パイロット殺す気かよ…、というかトレーズ閣下以外が乗っても全然エレガントになんかなんねーよ。ドートレスで、あの荒廃した世界でもとりあえず動く整備性は最高だろ。」

 

「重厚さにおいてティエレンに勝てる機体はない、よってティエレンを…」

 

「さすがにとろ過ぎだろ、ジェノアスで…あれの拡張性はジェガン以上だろ」

 

あの…いくら原作の性能を自慢しようが、同じフレームを使ってつくるから同じ性能にしかならないんですが…。というのは無粋な意見なのだろうか。

 

「落ち着け、お前ら、ここはウーンド・ウォートだ、順当に開発してインレを作れば負けないだろ!!」

 

馬鹿がおった…、インレなんか作れるか!!国家予算が吹っ飛ぶわ。 たぶんハミングバードとかほしいとかディープストライカーがほしいって考えてるんだろうなぁ…。

 

「そもそもMSではない機体がいいのではないか?クレスト強襲型だろ、あのイケメン機体にぜひ乗りたい!!」

 

「重量過多乙、アンファングだろ、機体名的に」

 

「おめーも重量過多じゃねーか!!ナインボール行こうぜ!!」

 

「それはネタ的にちょっと…俺らの存在がイレギュラーじゃん…、あ、ブレイズ・レイヴンで」

 

「アジャイルスラスタなんて今から作ってらんねーんで却下、というかアークジェットの開発からやらないといけないじゃないか…電気推進はアポジモーター用のイオンエンジンしかないぞ。ホワイトグリントで。」

 

「アレ変形機体じゃん。」

 

「じゃあオーギル」

 

「そもそもネクストは飛べないしQBが再現できないからヤダ、ファフナーメガセリオンモデルとかどうよ?」

 

「ファフナーはイメージが…」

 

「フェストゥムいなきゃ大丈夫だろ、まぁ私は反対だがな。スコープドッグだ、最低野郎になろうぜ」

 

「紙装甲どころじゃないティッシュ装甲乙、まぁ嫌いじゃないけど。あ、希望はトビカゲ=サンで」

 

「アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

 

「いや確かに忍者だけどさぁ…。」

 

/////////

 

「はじめからこうするべきだったな…すまん。」

 

あの後寝不足とかもいろいろ相まってやばいテンションで議論が進んでいたのだが、タクシンさんの鶴の一声で希望のMSを一機書いていく投票が行われることになった。最後のほうは勇者王とかほざいたアホがいた。ちなみに僕はジェガンに投票した。

 

「集計の結果、ネモとジンクスで決戦投票だ」

 

…ネモか…確かロザミアに「シンプル」とまで言われてるくらい操縦が簡単なんだっけ?いや、フレームが別だから参考にならないけど、というかどうしてネモが残ったんだろう…ジムとかじゃないのか…。まぁ、せっかく宇宙世紀系が残っているのだからそっちに投票しよう。何よりアナハイム系量産型の始祖だ、次の量産型はジェガンになるんじゃないか?

 

 

「集計の結果主力機はネモに決定だ…それでは次に局地戦型の投票に移る」

 

量産機はネモに決定、ビームライフルは再現できないので90㎜ブルパップマシンガンか90㎜マグナムライフルを装備してもらうことになるが。次は局地戦型の投票らしい。

 

 

/////////

 

投票の結果は。

 

主力

『ネモ』

 

陸戦型

『ドートレスHM ファイアーワラビー(X)』

『ジムストライカー』

(中身はネモとほぼ共通)

 

支援型

『ガンキャノン』

『サーペント(WEW)』

 

水陸両用

『ドーシード(X)』

『スペルビアジンクス(00)』

 

空戦型

『フラッグ(00)』

ブラスト(キュリオス)はハイエンド機

 

宇宙軍用可変機

『リゼル』

 

教導型

『ジムカナール(エコール・デュ・シエル)』

 

となった。…これフレームから新造しないといけない機体が少しある…まぁこれまでの蓄積があれば…でも控えめに言ってデスマーチだな。非転生者の研究者を総動員したところで足りないだろう。まぁ黎明期の兵器なんて「最適解」がすぐにわかるほうがおかしいか、動かしてはいるが実際に戦わせたわけじゃないしな。

 

「あぁ、そういえば…皆疲れているところ申し訳ないが、シーゲル・クラインがプラント評議会議長に選出された、わかっているとは思うが、原作通りに進めば、あと一年ちょっとで開戦だ、そのことを念頭に入れてほしい。それと、技術部のみなには申し訳ないが、各局地戦型一タイプは開戦までに開発完了してほしい」

 

ん…各局地戦型一タイプ…?

 

「ちょっと待ってください!!」

 

さすがに声をあげてしまう。

 

「鶴野君?どうしたのだね?」

 

「テストパイロットが絶対に足りなくなります。せめて二個小隊分…八人はパイロットが欲しいです。」

 

一機開発するにも何か月かかけて諸々の試験の試験と問題点の改善を行うのだ、開発が予定通り進んでも絶対に間に合わない。

 

「確かに足らんな、来年からリーカ・シェダーの参加が見込めるが、そもそもいろいろ起こりすぎて試験が行えるかも怪しい、そもそも技術者の増員もほしいな。」

 

湯野教授が肯定する。

 

「…わかった、正式採用後の教導役は必要だしな、パイロットは宇宙軍(ウチ)から出す。転生者を送るつもりだ教導は任せた。」

 

「おっと、陸軍からも出すぞ、一番最初に矢面に立つ可能性があるしな」

 

「海軍は戦闘も特殊になりますからね…海軍からも出しましょう」

 

「…うーん、ここまで言われると空軍(ウチ)も出したいが今回は見送りだな、都合のいい奴がおらん」

 

空軍以外の軍がパイロットを出すという

 

「一個中隊分…12名派遣でいいか?8名じゃ割り切れんし。」

 

国防長官に上がった国防次官の人が言う。

 

「構わんぞ、あ、レポートとか書き慣れてる連中を頼む。」

 

「その辺は心得ている、大体転生者の就く仕事など大体レポートの山だ」

 

とりあえずデスマーチは多少緩和されたと思う、多少だけど。

 

/////////

 

一週間後

 

「一番最初に出来上がったのがこれですか。」

 

「主力機より先に必要になるからな、大体装甲を設計して各種スラスターやバーニアをデチューンしただけの機体なのだからすぐにできて当然だろう?それに現在白兎内の試験施設はすべてこいつらの製造に注力している、一週間あれば装甲とバーニア類くらいは準備できる。」

 

次の週、可変機試作チームの機体が出来上がるまでは僕は技術者の仕事ができていた、本当にしばらくぶりに純粋に技術者の仕事をした。その中で出来上がったのが、訓練用モビルスーツ『藤花』だ、エコール・デュ・シエルという漫画に登場した『ジムカナール』がモデルになっている、確かに、頑丈な出来だし、センサー類の保護もされているから練習機としてもいい機体だろう、十二分にそのまま実戦に投入できる性能だと思うが。フレームは試験してた主力機用フレームほぼそのままだし。頭がないせいで不格好だけど。

 

「そういえば…、今度水陸両用機の試験でムーアに行くんですけど、なんでムーアなんですか?L4のコロニーっつったらサイド2のハッテかサイド6のリーアでしょうに…」

 

「イオ・フレミングとかいないかなー…って思ったそうだ」

 

今日からテストパイロットとして仕事をする陸軍の尾崎良和(おざきよしかず)中佐が話しかけてきた。階級が一番上なので便宜上『MS試験中隊』の隊長となっている。

 

「中佐、なんでそう思ったんですか…」

 

だったらサイド7、ノアだろ…そっちならアムロだ。。

 

「ほら、ガンダムって最終的にはすべて∀につながるって設定あるだろ?だったら発見されないだけでほかの世界のものが存在してるんじゃないかってことで、ミノ粉とかGN粒子とかも探したらしいぞ、ここがガンダムSEEDの世界だと気づいた時点で。」

 

「で結果は…?」

 

ミノ粉についてはわかり切ってるけど。

 

「いませんし、見つかりませんでした。まぁ合金関係は再現できなくとも様々な成果があったらしいし、もともとこの世界のMSって神経接続、おそらく思考制御を一部使用していることがOSから推測されていたからな、サイコミュ関連は意味あるっぽいぞ、実際その辺OSに生かされてるんだろ?まぁプラントいられると困るキャラがいるし、ガンダニュウムとかナノラミネートアーマーは存在していたらいたで困るがな。」

 

敵に使われたら困る、とあっけらかんとした様子で尾崎中佐が言う。彼もあてにはしていなかったようだ。

 

「OSに関しては僕らは間接部の開発なのでよくわかりません。ミノ粉あったらもっと楽でしょうに…GNドライブとかフォトンバッテリーとか贅沢言わないけどミノフスキー/イヨネスコ型核融合炉があるだけでこの世界じゃどれだけチートか…」

 

「まぁ、バッテリー動力の中に、核動力機をぶち込んだ結果ってのはなぁ…、あれはパイロットとかいろいろ異常だろうけど…それより、お前さんは今日から新型のテストなんだっけ?」

 

フリーダムとジャスティスは…うん、考えないようにしよう、人類史でイレギュラーとかドミナントが生まれるのはよくあることだ。特に戦争中なら。

 

「えぇ、可変機の試作型のテストですね」

 

フラッグのフレームが完成し、試験用の機体が出来上がっている。…メタス、キュリオスに関しては苦戦中らしい。

 

「フラッグみたいなやつなんだっけ?」

 

「原型機という意味ではそうですね」

 

 「なるほどね…初のビーム兵器搭載型だっけ?」

 

メビウスのデータが完全公開されビーム兵器関係の技術が伝わってきたために、ビーム兵器の本格的な小型化が始まった。ビーム兵器関係の技術は大西洋やユーラシアの技術に少し近づけたと思う。が、しかし。

 

「ビームじゃなくてレーザーなんです。」

 

まだビーム兵器関係の技術はフィードバックが終わっていないのだ、そのせいでレーザー兵器を搭載している。

 

「面白そうな機体だけどなんか世知辛いものを感じるな…おっと、そうだった、湯野教授、これ、MS試験中隊からの要請です。」

 

尾崎中佐が紙の束を教授に渡す。

 

「ん…?パーソナルカラー申請…いや訓練機まで塗る必要ないだろ」

 

…確かにまだ必要ないだろう、というかテスト機ってのは目立つ塗装を…パーソナルカラーが目立つ奴ならいいのか?

 

「雰囲気ですよ雰囲気、というか、軍に戻ったらある程度活躍しないともらえないと思うんでここくらいふざけてもいいじゃないですか。」

 

「いや予算だって有限でな…」

 

「あー…やっぱ無理ですかね?」

 

軍用塗料は結構特殊なものを使っていたりするのだ、それなりに高い。

 

「白兎でやり取りする分には都合がつくだろうが…、はぁ…わかった、塗装はそっちでやってくれよ。でもこんな融通利かすのは試験中だけだからな、原隊に復帰したら活躍してからやってくれ」

 

「それはわかってますって、じゃあ、これ、よろしくお願いします。」

 

そう言うと、尾崎中佐は待機室に戻っていく。藤花の機体数がまだ十分にそろっていないため訓練はローテーションで行われてるのだ、確か来週末にでも全員分そろうのだったかな?

 

「…まさかお前もパーソナルカラーがほしいとは言わないよな?」

 

教授がジト目でにらんでくる。…そういうのはかわいい女の子にやってほしいかな。

 

「憧れがないとは言いませんけど、僕はあくまでテストパイロットですよ、テスト機カラー、赤と白が地味にパーソナルカラーみたいなもんですが、彼らとは違います。そういうのは戦後教授の作ってくれた僕の乗りたい機体でやりますよ。」

 

そう、僕は戦場に出ないテストパイロットなのだ、もしかしたら、序盤に教官くらいはやるかもしれないが、あくまで技術者なのだ。

 

「…そうだな、その約束は作業用フレームになるから覚悟はしとけよ。おっと、そろそろ試験場のほうへ行く時間だろう。」

 

教授が時計を見ながらいう。確かにそんな時間だ。

 

「では、行ってきます。」

 

僕は、事前に荷物を詰めておいた鞄を取り試験場へ移動するためエレカの集積場へと移動するのだった。

 

 

/////////

 

静止衛星軌道上、アジアオセオニア連邦宇宙軍、新型航宙巡洋艦カイラス級一番艦「カイラス」

 

「…ふむ…MA運用能力に問題はなし…と、この艦はなかなかいいが、なんだかきな臭い世の中だな副長」

 

「そうですね、青葉級に近い感覚で操舵手からの評判も上々です。でも、最近L4のほうでもブルーコスモスの連中が騒いでいるそうで警備部隊が何度か出撃しているそうです。」

 

「こんな職業についていて臆病だと思われるかもしれんが、戦争は勘弁してほしいのだがな…最近プラントや我が国以外の理事国の動向はどうも…」

 

「そんなの誰だって同じですよ。」

 

カイラス級巡洋艦、アジアオセオニア共同体が青葉級の後継艦として建造した巡洋艦である。この艦長や副長は知らないことだが、機動戦士Zガンダムで「アレキサンドリア級」と呼ばれた巡洋艦である。

 

「艦長前方で砲撃と思しき発光を確認!!」

 

観測班から報告が上がる。戦闘だと!?

 

「状況確認、レーダー、何がいる!!」

 

「ネルソン級1隻にドレイク級が三隻、それと…輸送艦?中型の宇宙船が一隻です。」

 

国籍は不明だが正規軍…では相手にしているのは海賊か?しかしこの辺りは世界樹の警戒網に引っかかっている、わざわざ「こんなところ」で仕事をする海賊などいないだろう。

 

「ネルソン級に通信をつなげ、戦闘は…終わったようだな。」

 

艦橋からも確認できるような爆発があった。おそらく中型の輸送船が沈んだのだろう。

 

「こちら、訓練中のアジアオセオニア共同体軍所属巡洋艦、カイラス、先の戦闘は何があった?」

 

艦長がシートについている受話器を取ってネルソン級へ呼びかける。

 

《こちら大西洋連邦所属、戦艦オーリック、先の戦闘は国籍不明の不審船が停船命令を無視したためやむなく撃沈したものである。》

 

国籍不明の不審船…?こんな宙域にか?珍しいこともあるものだ。共同使用の宇宙ステーションなので大西洋連邦が顔に泥を塗らないよう懸命に警備していたはずだ。

 

「了解した、なかなか珍しいものが見れたようだな。」

 

《まぁ、こんなこともあるさ、そっちは新型艦だな、今日寄港するというのは聞いている。基地までのエスコートはいるか?》

 

なかなか砕けた様子でオーリックの艦長が効いてくる。こちらの艦長も中佐だからだろうか。

 

「せっかくだ、お願いしよう。」

 

《了解した。》

 

のちにプラントから、南アメリカから食料を輸送中だった輸送船が大西洋連邦軍によって撃沈されたと報道された。「マンデルブロー号事件」である。この後、プラントにあった政治結社、ZAFTは組織改編し軍事組織となり、プラントは独立を明確に主張していくこととなる。

 

/////////

 

白兎、特殊試験区域、飛行場

 

「これが、フラッグ…」

 

目の前にはMA形態に変形したMSがあった。画像では何度も見たことがあるが実物大の立体物を見るのは初めてなのでやはり普通のMSと違うところに驚く。

 

「えぇ、といってもSEED世界の技術で再現した機体なので純粋には違いますが…結構気を使っていたりもしますが」

 

「それは今更でしょう。」

 

 

MS母艦に改造してあるパラオ級の格納庫はカタパルトと何の仕切りもなく直結しているためすでにノーマルスーツを着ていなければ行動できない。なのでそのままフラッグのコクピットへと入る。

 

《武装はリニアライフルと、レーザーライフル、300㎜小型バズーカを持たせることができます、こちらも試験中ですので試してみてください》

 

「了解」

 

とりあえず原作再現ということでリニアライフルを選択する、するとライフルが機首に懸架される。リニアライフルはトライデントストライカーに似ているが、やはり口径が下がっている。まぁ200㎜とか無理か、105㎜リニアライフルと25㎜機関砲を搭載したライフルだ。結構強力なライフルなのではないだろうか。

 

《とりあえず今日は存分に飛ばしてみてください。月面ではあまり有効なデータは取れないかもしれませんが…》

 

「地上でも飛ばしている実験機があるのでしょう?」

 

《えぇ、そちらは空軍のほうで》

 

なるほど、テストパイロットに空きがいないというのはこういうことか。確か新型の戦闘機や爆撃機の開発も並行して行っていたはずだ。

 

「わかりました、とりあえず、鶴野正史、フラッグ行きます!!」

 

月の重力は地球よりも軽い、そんなところで飛行機を飛ばす感覚というのは、なかなか面白いものがあった。

 

 




主力機はネモになりました。で実はネモになった理由は、ジムは…普通すぎるし(理不尽)、ジェガンはなんか初期量産型として使いたくない(我儘)からです。あとネモってじっくり見てるとなんだかアジアで作られそうなデザインしてませんか?(偏見)…一応真面目っぽい理由をでっちあげるとすれば、HGUCジェガンって簡単にバックパックの換装ができるんです。互換性を持つのはジェガンシリーズの機体のみですかというわけでストライカーパックの装備できる、後期量産型機体として考えています。でもまだストライクが生まれていないのでストライカーパックの規格が存在しないためにアナハイム製初代量産型GM系列のネモです。中盤以降ハイエンド機としてジェガンが出てくるという認識でお願いします。話は変わりますけど、量産機は多々買ってカスタムしてブンドドが楽しいですよね、多々買うのには高すぎる量産型も増えてますが…。…書けるかはわかりませんけどDestiny、ユニウス戦役になったらジェガンが主力張ることになるでしょう。そしてハイエンド機としてスタークジェガンやジェスタ、グスタフ・カールあたりが出る…のかな?

結局…MSの枠出れなかったな…ふざけるのって難しい。


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phase8 戦争に向けて

C.E68年年末 アジアオセオニア共同体、会合

 

「んで…どうするんです?」

 

「どうするも何もだな…、付き合いでもなんでもやるしかなかろう。」

 

少し間の抜けたような問いにタクシンが答える。

 

「ですよねぇ…」

 

現在の会合ではマンデルブロー号事件の後、ついに独立の姿勢を明確にしてきたプラントへの対応が話し合われている。

 

「必要最低限以外の食料の輸出制限でいいか…、向こうもユニウス7~10を食糧生産プラントに変えている最中だから人道上も問題はないだろ。どうせ一基減るがな。」

 

タクシンの意見に反対する人はいない。

 

「そもそも戦争中に海鮮鍋が流行ってたなんて話もあるくらいだ、さぞ食糧生産には余裕があるだろうさ。」

 

「待て待て…確かプラントに海産物養殖設備はないだろう。そもそも食料生産に大分制限かけられてただろ?作れてチョコバーだ。」

 

「淡水魚化とか使ったんじゃないの?」

 

「それ海鮮って言っていいのかなぁ…」

 

「どちらにせよ大洋州連合からの食糧輸入が初期からないのだから苦しいことに変わりはないだろう、特に怖いのが水だな。原作と比較してアフリカ共同体がプラント寄りの姿勢を見せているが、アフリカ共同体に水を期待するのは筋違いだしな。」

 

商務大臣を務めている男が言う。確かにプラントは地球から水などを輸入していたはずだ。

 

「そりゃ怖いな人が生きる上で重要なもんだし、あ、そういえば、同じL4にあるコロニーのメンデルでバイオハザードだとさ」

 

厚生労働省に務める官僚の一人が報告する。

 

「…あぁ、あそこか周回軌道が違うから心配はないだろう?」

 

「放置で構いませんよね、もともとムーアってそこそこ入る基準厳しいですし。」

 

「そりゃコロニーみたいな閉鎖空間でバイオハザードとか地獄だからな。」

 

ムーアに限らずアジアオセオニア共同体の宇宙施設に移住したい際には厳しい審査がかけられており、ある程度の思想審査もされる…のだが、入ったあとで何かに感化されるものもいるので完全に危険思想はシャットアウトできていない。だからまれにブルーコスモスのテロがあるのだ。日本みたいな銃器規制があってもそのあたりは変わらない。もとは領域内の増えすぎた人口対策だが、別に棄民がしたいわけでもない。ムーアの1バンチ、『ヴィシュヌ』には副首都機能もあるし、コロニーの居留民の権利は地球に住まう人と同じだし、移動だって自由だ、地球観光も船のグレードさえ拘らなければ格安でできる。もちろん地球に住まう人々だって同じだ。残念ながらプラントに関してはいろいろ法的に複雑な部分があってそうではないが、その辺を協議しようという話にはならないし、仕事以外でこちらからプラントに移住する人が少ないので問題として扱うには弱いのだ。

 

「そういやキラがヘリオポリスに移住するのも今年だったな…。」

 

「あー…まぁ関係なくね?オーブ国民だし」

 

「そうなんだがな…ほら、原作に対する感慨というか…」

 

「ありもしない国家ぶち上げといてそりゃないだろ」

 

「返す言葉もございません…。」

 

「そういう話題は後でだ、さて次に起こることといえばL5事変…と一応呼んでいる小規模衝突なんだが、どうする?」

 

「どうするも何もだな…宇宙軍としてはプラントにはそこまで大規模な戦力はなくて、具体的には第二七護衛戦隊しかおいていないわけで…。何もできないよりマシだが、退避する理事国民と、弁務官および総督の避難しか責任が持てんぞ。」

 

古賀参謀総長がタクシンの問いに答える。

 

「一応買ったアガメムノン級は?第二七護衛戦隊は護衛戦隊としては重装備気味なはずだが。」

 

「大西洋製MAしか運用できない完全な員数外装備だ、オッゴですら戦術を考えねばMSに対抗すらできず狩られるのにそれ以下のミストラルでどうなる相手でもないだろ?」

 

あれを買わなきゃもっと他にいい装備をそろえられたのにとでも言いたげに古賀参謀総長が言う。

 

「まぁその辺は仕方ないとしてだ、行動方針としては退避でいいんだな?」

 

「それしかできん、…そうだな、でも一応の備えだ、第3巡航戦隊をコンペイトウ守備艦隊から回航させるか…」

 

「まだアチェ級と青葉級が主力の艦隊だったな…旧式とはいえ少々過剰じゃないか?」

 

「一応事前通告も済ますし、迅速に退避する予定だが向こうの純粋培養されたコーディネイター至上主義者が何をしでかすかわからん。いや、大体向こうからすれば軍艦を攻撃するのに良いも悪いもないさ。」

 

武装解除して白旗揚げても撃沈されそうだしなと古賀は言う。

 

「大体向こうの士官学校って何を教えてるんだ…?ザフト兵はみな卒業生らしいが…原作ではひいき目に見ても国際条約その他を理解しているとは思えんぞ…」

 

それは連合もだがと続けながら古賀は頭を抱える。

 

「戦いの技能だけなんじゃないか?」

 

「おいおい…ウチからも何人か若手の佐官クラスが移住してたりするんだぞ…その辺みっちり叩き込んだつもりだったんだが…あまりやりすぎるとこちらも連中のことを『民兵組織(ゲリラ)』として扱わなきゃならなくなる、それは戦後を考えるとよろしくないんだが…」

 

どうせスーパーコーディーWith単機で戦略を左右するモビルスーツと愉快な仲間達のせいで勝敗うやむやになるし。と誰かが愚痴る、画面越しに見ている分にはカッコいいが、自分達が敵対せねばならない可能性を考えると傍迷惑な存在である。

 

「えー…まぁうちもブルーコスモスの活動許してたからなぁ…」

 

「思想信条の自由とか主義主張の自由は重要だからな、言動と行動に相応の責任は取ってもらうが」

 

「プラント独立もホントなぁ…金払えばいいと言っておろうに…」

 

「他が許してねーじゃん、まぁ工業コロニーが独立とか叫ぶなんて思えないし、というかなぁ…あのコロニーが素晴らしいとは思えんのよ俺。大きさの割に居住可能範囲狭すぎじゃね?環境はいいらしいけど。」

 

「まぁ無重力地帯があるから無重力下で精製される合金の生産量はなかなかだぞ」

 

「それうちのインダストリアルタイプのコロニーの前でもいえんの?」

 

早い話がユニコーンに出てきたインダストリアル7の完成型のようなものである。無重力工業地帯では宇宙でのみ精製できる合金が大量に精製されている。

 

「…すまん」

 

「はいはい…今日は話がよく脱線するなぁ…とにかく、戦力に関しては宇宙軍に任せる。それと核融合炉への移行率だが…」

 

タクシンがまたそれた話題を元に戻す。今回の会合はどこか危機感なく続いていくのであった。

 

 

/////////

そのころ…

 

「アジアオセオニア共同体に新兵器開発の兆候あり…ですか?」

 

執務室でアズラエルは産業スパイの仕入れた資料に目を通す。

 

「はい、アズラエル様」

 

「彼らはこんなワークローダー擬きが本当に役に立つと?」

 

写真に写っているのはモビルスーツ…のフレームである。どうやら動いているところを記録した映像もあるようだ。

 

「手に入れた映像を見る限りでは様々な検証を繰り返しているようです。」

 

「…あぁ、そういえば似たよなものを空のバケモノ共が作っていましたね。彼らなりに真似てどのような特性を持つものか検証しているのでしょう、彼ららしいといえばらしいですね。」

 

ついでに旧世紀に流行っていたカートゥーンやゲームの真似事でもするんじゃないか。とアズラエルは考えもしたが関係のないことだと頭からその考えを消す。

 

「うーん…まぁ彼らはプラントへの出資は消極的ですし、ZAFTとかいう連中と積極的に交流しているという話も聞きませんから、空のバケモノ共とは関係ないでしょうね。できればデータがほしいところですが…」

 

ロゴスにいるアジアオセオニア共同体のメンバーたちを思い出し首を振る。彼らとの交渉などという「心の折れそうな仕事」をこんなもののためにしたくはない。

 

「やめておきましょう…」

 

これ以上仕事が増えては倒れてしまう、もともと「労働基準法?なにそれおいしいの?」レベルで激務をこなしているのに、さらに厄介な交渉事など増やせない。父はいまだに健在だが事業に関してはノータッチだ、引き継ぎもなしに私が倒れてはいけない。

 

/////////

 

L4コロニー群『ムーア』食糧海洋生物養殖試験プラントコロニー『君手磨』

 

「で…なんであなたがここにいるんです?」

 

「そんな露骨に嫌な顔しなくても…」

 

ムーアに存在する食糧生産プラント『君手磨』、地球の海とほぼ同じ環境を再現し宇宙での海洋生物の養殖実験をしているという、「そこまでして新鮮な魚介が食いたいのか…」と他国からは狂気の産物扱いされている代物だ、ちなみに深海の環境を再現したカプセルがコロニー外縁に存在しており、深海に生息する食用魚の養殖研究もおこなっている。まぁ、今回使用するのはそのコロニー内の大きな養殖用大規模海水貯蔵池、通称『海』だ、何のひねりもないがこんなものの名称をいちいちかっこつける必要もないだろう。まぁそんなことは問題はない、どうして会計監査役の財務省の役人、伊沢がここにいるのだ…。

 

「私も仕事ですよ、ここで開発をしているジオニスト最後の砦(水陸両用MS開発チーム)の連中、やたら部品の規格落ちやらが多くて…何かやってるんじゃないかと…」

 

監査役というのも大変なのだろう、皆から嫌われるのは当然だがな。実は水陸両用MS開発チームにはジオニスト以外存在しないのだ、そもそも地味…失敬、独特のテンポや間合いの存在する水中戦は描写が難しいのだろう、知識と文章力、表現力がなければ面白いものはかけないのだろう。主人公機が汎用型というのもあるのかもしれないが。というわけでモノアイ禁止令に最も落胆していたのがこの部署だ、X好きはGシリーズ開発かドートレスHMファイア―ワラビーモデルの『カンガルー』開発のほうに行っている。つまりドーシードを開発しているのは全員ジオニストなのだ。

 

「そもそも水陸両用MSの開発自体どうかと思いますがね私は、ドン・エスカルゴとデフ・ロックを統合したPB-4ドン・エスカルゴでいいじゃないですか、対潜兵器は」

 

「水陸両用MSの場合仮想敵は大西洋のディープフォビドゥンやフォビドゥンヴォーテクスらしいですよ、あの機体狂気の産物ですからね。今からノウハウを積んでレオパルド水中仕様やガンダムアスクプレオスを開発し、それをフィードバックした量産機をC.E72年までに開発する予定らしいです。」

 

少数量産でギリギリなのに狂っている…確かに局地戦型は量産型よりも生産数少ないだろうけど。そういえばムラサメって安くないはずなのに主力みたいな扱いだったよな…経理と整備兵の苦悩が手にとれるようにわかるんだが…。

 

「…狂気には狂気ですか…あ、ここですね。」

 

伊沢さんは呆れたようにそう言い、ある倉庫の前で止まる。結構広いな、ここが水陸両用MSの開発拠点か…。あ、一人こちらに来る、案内かな?

 

「あ、鶴野君ですね、話は聞いています。こちらです」

 

案内の人に導かれて格納庫まで行くとそこにはすでに十機近いMSが並んでいた…ドーシード、ドーシード、ドーシード、ペスカトーレ、ドーシード、アッガイ、アッガイ、アッガイ、アッガイ、アッガイ(体育座り)…

 

「…え?」

「…は?」

 

アッガイ…だと…。ついでにペスカトーレも居やがる。…誰だGガンの機体再現した奴。

 

「どうしてアッガイが…」

 

「かわいいから」

 

「は?」

 

「かわいいから」

 

うんうん、アッガイはかわいい…じゃない。

 

「あの…開発していたのはドーシードでは…?」

 

「あぁ、あるじゃないか、別に試験中なのにこんなにあったって仕方ないだろ?別の機体があっても我々は気にしない、ちなみにアッガイのパーツの費用はは我々の給料でできている、それ以外は規格落ちのパーツだ。」

 

気にしないって…完全に趣味じゃないか…というか規格落ちとはいえパーツの横領じゃ…。

 

ゾクッ

 

あ、寒気を感じる、これはニュータイプとかそういうのじゃなくても解る、この殺気と怒りの感情は…。

 

「鶴野君…ちょっと外に出ていてくれます、ハイこれ、これでおいしいコーヒーでも…、そうそう、このコロニーの名物は和風アヒバーガーです、養殖もので油の多いマグロをさっぱりとしたソースでいただくらしいです。ぜひ食べてきてください、二時間くらい帰って来ないほうがいいですよ」

 

ものすごくいい笑顔(目が笑っていない)で伊沢さんが言う、渡されたお金は一万円的な奴だ。ハンバーガーを食べるとしたらかなり余るだろう…。迷惑料かな?とにかくここにいたらよくないことが起こりそうなので逃げよう。アッガイ(体育座り)の前でテンションを上げている開発班の人々に少し黙祷してから鶴野は格納庫から逃げるのであった。

 

 




L4宙域に宇宙要塞多すぎィ!!(アルテミスもL4)一応軌道は違います。ちなみに周回軌道が一番プラントに近いのは新星、最も遠いのはアルテミスです。

大西洋にはMS開発がばれました、まぁ彼らあの英国と米国の複合体ですし油断していなければそういう方面も強い国でしょう。

プラントって海鮮ジョンゴル鍋なるものが流行っていたらしいですね。海産物は輸入品だったのかもしれませんが、それでも中々に余裕のある話ですね。


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phase9 L5事変

酷いことしてる自覚はあります、まぁ、やっていることは全く擁護できませんけどね。ガンダムシリーズのお約束というやつでしょうか、まぁ、初め書いたプロットではまんま「あくのそしき(笑)」だったのでその名残でしょうか。


C.E69年後半

 

L4宙域、新星 指令室

 

「プラント駐留艦隊のの董提督はなんと?」

 

「我らだけでも問題なし、空のバケモノどもへの折檻は任されたしと」

 

…毎度のことながら認識が甘いなぁ…と思いながら新星指令、青磁釉色の軍服に身を包んだ、陳于建中将は部下の報告に耳を傾ける。わかってはいたが艦隊の派遣は断られてしまった。司令部も政府も認識が甘い。メビウスは完成したがまだ各国併せて一個大隊がいいところだし。そのうち一個小隊、アジアオセオニア共同体の取り分は戦力としてカウントできないだろう。ほかならぬ彼らの方針上、民間人の安全確保にのみ走るはずだ。それが間違いだとは思わん。軍とは国民の守護のために存在するのだ。それに「奴らは何を隠しているかわからない」、何を頼りにあれほど明確に独立を叫びだしたかはわからないが、何か不気味なものを感じる。もしかしたら『世界を敵に回しても勝てる何か』を持っているかもしれないのだ。人口たかが6000万のコロニーに対して過大評価かもしれないが、そうでもなければここまで強硬姿勢を貫ける理由がわからない。希少資源の精製など、アジアオセオニアがやっているように自前でやりだせば連中など用済みなのだ、そうしないのはひとえに金の都合に他ならない、必要ならばやる。が、せっかく作った工場を使わない手はないのだ。ついでに今はコロニーを作っている時間も余裕もないのだ。

 

/////////

 

そのころ…

 

L5宙域、プラント近隣宙域、プラント駐留艦隊旗艦『李舜臣』

 

「これであの空のバケモノ共もおとなしくなるだろう!!」

 

「この艦隊の威を見ればおとなしく跪いて許しを請うに違いない!!」

 

 

無駄に気勢を上げる艦長や司令を見ながらやれやれ…どうしてそうお気楽なんだ…と思いながら東アジア共和国軍少佐、楊文成は溜息を吐く。

 

「そもそも普段から駐留している艦隊を見ていないわけがない。連中はこれを覆しうる何かを持っているはずだ。」

 

その何かがわからないのが歯がゆいが、そこを気にするのは踏ん反り返っている彼らの仕事だろう。

 

参謀の一人である彼が気にすることでもあるのだがそんなことを思いながら楊少佐は窓から宇宙を見る。我が国は資源や工業製品の多くをこのプラントに依存している、だからこそ今回のプラントの行為は非常に都合が悪いのだ、しかし、いきなりこのような示威行為に出るのは間違いではないだろうか。

 

「アジアオセオニア艦隊が離脱します。」

 

…そういう意味ならば彼らは賢い選択をしたのではないだろうか。彼らの艦隊が護衛している輸送船や貨客船には我が国や大西洋連邦、ユーラシアを含めた民間人が乗っている。とりあえず民間人の犠牲者が出ることはないのだろう。我々の不運は、この艦に座上している董提督が持ち回りの艦隊司令となっていたことであろうか…。国連からの「プラントの事態の鎮静化に努めよ」という指令を誇大解釈しこのような示威行為に出るのは現状悪手ではないだろうか。何より相手がわからない。

 

「フン、腰抜けどもが」

 

「東夷や南蛮の末裔どもに勇気などあるわけがないでしょう」

 

…いったい何を根拠にしている自信なのだろうか。自分が間違っているとは思わないのだろうか。先の第三次世界大戦、再構築戦争で散々痛い目にあわされたのを忘れたのかどうなのかは知らないが彼らを侮るのは間違っている。幸か不幸か我が国の拡張は海洋方面でかの国に止められた。個人的には良かったと思う。我が国もそうだが、アジアオセオニア共同体の抱える地域は人口密集地帯だ、戦争で荒らされればそれだけ難民が出る、我が国にそんなものを養う余裕はなかったのだ。だから再構築戦争後の国家復興で出遅れ、よりプラントへの依存が高まってしまった。日本や台湾、インドなどを抱えていた未来を考えると寒気がする。…彼らは食糧生産拠点としてオーストラリアがあったからよかったがもしわれわれがオーストラリアを手にしていたらそのような施設は使い物にならなくなっていた。激しい戦いが展開されただろうし。

 

「プラントより反応、…これは、大型のMA?」

 

来たか…彼らの反抗の根拠が何かはわからないが用心すべきだろう。

 

 

この後理事国艦隊はMS部隊の攻撃を受け董中将以下司令部要員の多くが重症(奇跡的に楊少佐は被害を免れ、臨時に李舜臣を指揮)、指揮を引き継いだ大西洋連邦のデュエイン・ハルバートン大佐の元艦隊は退却することとなり理事国艦隊は事実上の敗北を喫した。

 

/////////

 

アジアオセオニア共同体プラント駐留艦隊旗艦『ヤマモト・イソロク』

 

「敗北…だろうな」

 

その場にいなかったことを喜ぶべきか…それともその場にいればこうはならなかったと嘆くべきか。アジアオセオニア共同体プラント駐留艦隊指揮官であったアーロン・マクレガー少将は重い溜息を吐く。手には先ほど終わったプラントでの戦闘の記録がある。

 

「上層部が用心していた理由はこれか…」

 

高々民間人の避難程度、元のプラント駐留艦隊でも行えたはずなのに司令部は私にもう一つ戦隊を預けてきた。それもこれもこの人型兵器のせいなのだろう。

 

「なんにせよ我々は任は果たした、あとは政治家の仕事だろう…。」

 

今更彼らの救援に動いてももはや時機を逸している。戦略的にも戦術的にもなんの意味もないだろう。何より我々に与えられた任務は民間人の避難だ。それを放棄するわけにはいかない。

 

「マーク32オレンジαより熱源接近!!先ほどのプラントの兵器です!!」

 

「チィ!!こちとら護衛対象がいるってのに、全艦対空戦闘用意、イーゲルシュテルンは弾幕を絶やすな!!それから艦隊を密集させろ!!護衛対象は陣形の中心に、砲火を密にするんだ、MA隊は出すな!!退避を優先するぞ!!ヘルダート照準、ミサイル発射管コリントス装填、発射タイミングは第一斉射後、各個に任せる、撃ち方始め!!」

 

先の戦闘ではMA隊はいいように翻弄されていた、おそらく出しても気休めにもならないだろう、有効な戦術として一撃離脱が考えられるが、それを行うには現在開発中の新型が必要だろう、ミストラルでは最高速はどうにかなっても、機動性が足りない。どのような動力機関を積んでいるのかわからないが核ということはないだろう、反応炉であれ、融合炉であれ、あのような兵器に搭載できるほどの『信頼性のある小型化』は不可能だったはずだ。いかにプラントとはいえそのようなことはしないだろう。ならばバッテリー切れまで耐え切ればいい。

 

/////////

 

ZAFT スティーブンソン隊

 

≪敵艦発見!!ナチュラルめ、こんなところに隠れていたか!!≫

 

「よく見つけた、各員対艦攻撃用意」

 

自機のシグーを敵艦隊へと突撃させる、部下のジンのパルデュス3連装短距離誘導弾発射筒しか有効な対艦攻撃手段がないがそれでも対艦攻撃は可能だろう。ナチュラルめ、逃げられると思うな!!

 

≪スティーブンソン隊、帰還しろ!!こちらの観測ではエネルギーゲージゲージイエローだぞ!!、深追いはするブチッ!!≫

 

うるさい通信を切る、こんな連中を倒すのに五分とかからないだろう、エネルギーゲージも推進剤もまだあるのだ、何の問題がある。

 

「全機、突げ…なっ!?」

 

襲い掛かってきたミサイルをよけ、フレアやジャマーを展開する、敵艦隊を見ると濃密な対空射撃が上がっている。これでは時間がかかりすぎてしまうだろう

 

「えぇい!!退却する!!」

 

とにかく、ナチュラルの艦隊は追い払ったのだ、これでいい、と自分を納得させ部下に退却の指示を出す、この屈辱はいつか晴らしてみせる。

 

 

//////

 

C.E69年12月初旬 アジアオセオニア共同体 会合

 

「さてと…連中、原作通りの手段をとって来たが…理事国の会議のほうはどうなんだ?」

 

古賀参謀総長がタクシンに聞く。

 

「はっはっはっ…独立なんぞ認めるわけがなかろう、もともとウチ以外の連中は強硬姿勢だ、ウチだって融和姿勢って訳でもないがな、ついでに国内でもかなり強烈なキャンペーンを実行してやがる、文字通り戦争秒読みだ」

 

最近業務が立て込んでいたタクシンのテンションがおかしなことになっている。これはまずい。

 

「国連は?」

 

「あんなとこのいうことを誰が聞くと?旧世紀の昔から肝心な時に役に立ったためしがないだろう。」

 

ついでにオルバーニーの野郎は余計なことしかしねーし、マルキオとなんか企んでる疑惑まであるし…、とタクシンは溜め息をはく。

 

「そりゃお疲れさん、んで…確かその重要な回答期限である来年の元旦にテロでプラント評議会員の一人が死ぬんだっけ?」

 

「おう、ブルコスの連中のテロでな。…ってよく考えるとよく連中入国できたな…今のプラントって侵入制限かかってるはずなんだが…」

 

「まぁ、不法入国の手段なんてコロニーでも腐るほどありますし、もしかしたら反独立運動派なんてのもいるのかもな。」

 

「普通評議会がその筆頭にならんかね?うまい汁吸ってるだろうし。」

 

「…というか連中兵器とか作ってるからブラック勤務になってるんじゃねーの?ほかの国のノルマは知らねーが。」

 

「諸悪の根源評議会ってか?…ありえなくもないから困るな。」

 

「んで…さ、誰か経済関係者(あいつら)に触れないの?」

 

いままで政治家や技術者たちが触れないようにしていたいかにも悪役、といったような笑みを浮かべている経済関係者達に誰かが言及する。

 

「ふふふ…他国から資源の売却要請がこんなに…どれほど値段を釣り上げてやりましょうか…」

 

「アズラエルコロニービルダーズ?ほう、うちのハヌマーン級コロニービルダーを買いたいと、最重要機密なんですがねぇ…どうしましょうかねぇ…」

 

「我が世の春が来たァァァァー!!」

 

こんなものを持ち出していいのか不安になってくる資料を読みながら不気味な雰囲気を醸し出しているため誰も触れたくないのだろう。

 

「いや…だってな…」

 

「まぁ、あいつらはここから戦争中ずっと大儲けできるってことで。軍のほうは大丈夫か?確かMS運用前提の新型艦の就役ラッシュが始まってるだろ?」

 

「あぁ、宇宙軍はアレキサンドリア級モデルの『カイラス級巡洋艦』、コロンブス級モデルの『セレベス級MS母艦』新型駆逐艦『陽炎級』が現在急ピッチで増産中だ。ネェル・アーガマ級相当の『アーガマ級強襲巡洋艦』は一番艦と二番艦が建造中、まぁ艦隊としてそろうには多少時間がかかるが、MS部隊の錬成は順調だ、拠点防衛と船団護衛は可能だ。。」

 

「海軍もギャロップ相当の『六九式強襲揚陸艇』、ジュットランド級戦艦相当の『やまと型戦艦』、ベーリング級(ガンダム00)相当の『たいほう型航空母艦』、ユーコン級相当の『R-400型潜水艦』の建造も完了した。だが、融合炉の製造は約束通り続けている、MS部隊こそまだだがドン・エスカルゴはかなり充実しているし、ジンワスプには負けないだろう。」

 

「陸軍はMS部隊の錬成はすでに完了、それからリジーナを真似た『六三式対艦対戦車誘導弾』も腐るほど溜まっている。リニアガンタンクこそかなり減ったが、各種支援車両部隊やMT部隊はかなりの充実を見せているな。それと、一応ビックトレーやヘヴィーフォーク級相当の兵器ももう少しで就役する予定だ。」

 

「空軍は迎撃機のコスモファルコンのほかに戦闘機のワイバーンと、戦闘爆撃機の先行量産型のジェットコアブースター相当の機体、レイヴンソード先行量産型が充実してきたな。あとレイヴンソードのビーム兵器搭載型が試験中だ、ドン・エスカルゴも海軍ほどじゃないがそろっている。とりあえず初戦は空戦型MSが敵にいないみたいだし空爆やら対地攻撃が仕事だ。問題はない。MS部隊は基地で待機だな」

 

「…なんというか、かなりの充実具合だな…というかジュットランド級結局作ったのか…」

 

「当然だ、六一糎自動砲搭載型戦艦、浪漫じゃないか」

 

「ロマンしかねぇじゃねーか…NJ状況下なら役に立つかもしれんがなぁ…」

 

「MS自体がそのNJを想定した兵器だ、そして地球にNJが展開されるのはほぼ確定だろう。」

 

おそらく今の世論ならばプラントの核攻撃はほぼ確実であろうし、そもそも戦争が起こらないということはあり得ない、これで戦争にならなかったら暴動祭りだろう。ついでに現政権は次の選挙で大敗、次はブルーコスモスそのものが政界に進出してが政権を握るだろうな。そして戦争が起こればおそらくプラントはNJを展開する。国力が違うのだ、スタートダッシュにいくら成功しようが長期戦になればなるほど状況は理事国側、連合に傾く。それはいくら何でも分かっているのだろう。

 

「まぁ、戦争は不可避、これは確定事項だ、だが我々は当面、なるべく消極的な姿勢を貫いてほしい、今我々に前面に出る力はない、そもそも思いっきり装備更新のタイミングぶつけてるしな。順次就役艦が戦列に加わるが、それでも宇宙軍が全力を出せるようになるのは早くて再来年五月頃だ」

 

国防長官が軍の状況をまとめて言う。

 

「再来年五月頃…というとオペレーション・スピットブレイク頃か、割とギリギリだな…というか大丈夫なのか?古賀さん、それまでに失う艦もあるだろう?」

 

タクシンが古賀宇宙軍参謀総長に聞く。

 

「それを計算に入れて…といってもあまり大きな損害が出ると修正を余儀なくされるが、まぁそれでも、ほかの理事国連中はそれまで主力張ってたんだ、ウチに主導権握られたくないだろうからあまり口うるさくは言わんだろうさ、戦後プラントへの発言力は低下するが…まぁ正直あんなところの利権なんぞ捨てる、完全にムーアの工業プラントに移行するんだろう?そういえば万が一のためにジェネシス対策でコロニーレーザーも準備しているが…、これ使うのかね?」

 

「隕石破砕用だからいいんだよ、兵器として使えるけど、隕石破砕用だから。ほら、いざというときあった方がいいじゃん、ベースマテリアルを使った収束機構のおかげで高威力を実現、炭酸ガスレーザーだから地球に撃っても安全だよ。やったね!!」

 

「よくねぇわ!!というかあんなの地球に撃って安全な訳がねぇだろ。」

 

「まぁ、用心というものは必要だろう、再構築戦争のときに劣化版アサルトセルをばらまく計画もあったくらいだ、使わないに越したことはないが、最悪の切り札というのは必要だろうな」

 

「あ、そのことで報告なんですが、環境破壊兵器(アスタロス)完成しましたー」

 

「とんでもねぇもん軽く報告すんじゃねぇ!!ブルーコスモスに渡ってプラントテロで使用されたら文字通りプラントが死ぬぞ!!つーかよくできたな、あんなデタラメ…」

 

「いやぁ…ほら、キサラギですからバイオ関連には強いっすよ」

 

「…AMIDAとか作ってないよな…?」

 

タクシンがキサラギの代表、アミダをにらみながら聞く。タチの悪いことに本名だ。

 

「はっはっは、まっさかー、作れるもんなら作ってみたいっすけど」

 

「絶対作るな!!…そういえばお前ら、なんかヒビキ博士の遺体を回収したらしいが…」

 

ヒビキ博士の安否は書かれていないが、少なくともこの次元ではテロで死亡している。こいつらは絶対に好き勝手させてはいけないと思いながら古賀が聞く。この世界GGユニットなる脳髄でやらかしてる技術があるので「ヒビキ博士の意識を再現」とかできてしまうかもしれないのだ。

 

「あぁ、結論から言えばヒビキ博士の意識の再現には成功しました、現在はムラサメ研にてその頭脳を奮って頂いていますよ」

 

真面目な話だがジョークか何かに聞こえてしまう。ムラサメ研はガンダムで日本ならコレがないと、という意見のもと作られた研究施設だ、遺伝子や医療についての研究を行っており、最近は医療用義肢の開発で有名になっている。

 

「ソキウスシリーズ擬きか?」

 

「いえ、キラのクローンなどは作らせていません、キラ・ヒビキに関する遺伝子データのレポートを現在書かせています」

 

「つまりはスーパーコーディネーターの遺伝子データか、まぁ、役に立つだろうな、研究には」

 

「クローニングは当然犯罪ですからね。尤も、スーパーコーディネーター量産などしても最早遅いのですが。」

 

「だな、戦闘用に調整して産み出されたとは言えガキを戦場に送り出す気にはならん。というかその手の研究ってガンダムだと大して役に立たんだろ、無駄に深刻な欠点抱えてる連中が多すぎる、マトモに運用できそうなのって超兵位じゃないか」

 

クスリ漬けにしたり洗脳したりするのだから当たり前だがと誰かが続ける。

 

「どちらかというとこの手の兵器って、何から何まで金のかかる人間より、AIや疑似人格コンピュータとかバイオ脳とかのほうがユニットコスト安いですからねぇ。ただ戦わせるためだけの存在ならそちらのほうがいいですよね。最終的にモビルドール的なものを投入するとして、初期段階として教育型コンピュータを応用した疑似人格コンピュータtypeK.Yの制作ができればいいんですけど…、まぁ、それでも倒しちゃうのがイレギュラーなのでしょうけどね。」

 

アミダの言っていることは大概だが、この世界、無駄にコンピュータ関連と遺伝子関連の技術が発展しているのだ、そのようなものをある程度研究しておかないとほかの理事国と戦争状態になった場合対応できない可能性がある。

 

「気に入らんな、人形に兵士のかわりができるとも思えん、何よりそのような戦場は悲しいよ」

 

「西村大佐「トレーズだ」…いやにしむ「トレーズだ」…、はぁ…、トレーズ大佐、そうはいってもだな」

 

転生者の中には極稀にソウルネームを名乗りたがる人がいる、西村大佐、否、トレーズ・クシュリナーダ大佐もその一人だ、…しかし典型的な醬油顔でその名前はないと思うのだ、無駄に声が似ているのが何故か腹立たしい。

 

「無論、私とてわかっている、だが、やはり人形は好きになれんよ、アレはあっていいものではない、兵士の死なぬ戦争、聞こえはいいが実現してしまえばその先にあるのはくだらぬ争いの繰り返しだろう、尤もこの世界はそのようなものがなくとも際限なく争い続けそうだが」

 

「まぁ、無人機に関して忌避感のあるやつがいるのは仕方ないとして、疑似人格コンピュータtypeK.Yに関して言えば、ストライクの稼働データがあれば可能だな。万が一…というか二三度連中とは敵対するし必要だろう、そうだな、オデュッセウス計画とかどうだ?ラクスという怪物(セイレーン)とその眷属を倒す計画だしな。」

 

「カッコつけすぎじゃないか?というかオデュッセウスはセイレーンを倒したわけじゃ…まぁ、いいけど、そうだな、オーブ解放作戦には参加しないとマズい立地だし、ヤキンは文字通り総力戦になるだろうしな、二度は敵対の可能性があるんだ、ユニウス戦役はなぁ…あの狂信者(ジブリール)が余計な事しなきゃ参加なんぞしたくないなぁ…」

 

「デスティニープランを認めるか、と言われれば別の次元の話だがな、というか、あんなもんいきなりあんな場所で言われて即導入できる連中のほうがおかしいだろ、憲法とか法整備とか…関連施設の整備とか、初期導入に最低数年はいるぞ…、そっから完全に導入できるまでは十年以上かけなきゃいけないだろうし…性急に導入するなら完全に社会体制ぶち壊さなきゃ…だからロゴスを敵にしたのか、納得。」

 

「むしろロゴスを倒した後の社会保障的な意味でデュランダル議長はアレを推し進めたんじゃないか?まぁ、起こりもしてないことを論じるだけ無駄だな、むしろ直前まで敵だった国の指導者の言葉であそこまで暴れる連中に不安を覚えるな俺は」

 

「サクラだろ…というかこの手の話は議論しだすと答えが出ないぞ…、そうそう、諜報部から報告なんだが、コペルニクスでコトをしでかそうとしている連中はこいつらだった。」

 

「コペルニクス独立会議…?なんだそいつらは?」

 

聞いたことのない組織である。

 

「どうもコペルニクスの独立を狙っている組織の一つらしい、あまりに活動規模が小さいんで公安もマークしていなかった、ほら、こないだ、よりにもよってキサラギの資源採掘プラントを襲った連中のお仲間だ…ちなみに、ユーラシアから相応額の支援があったことが判明している、まぁ、意図は不明だが何か陰謀があるのか…まぁ戦争がしたいらしいな。」

 

「あー、今頃キサラギの研究施設で人間ドック受けてる奴らな、まぁ、思い当たるやつらが多すぎて困るな、…ふむ、で、こちらが会議に送り込むのは外務大臣でいいんだよな、後任は野村君だっけ?」

 

「あぁ、叩けばホコリしか出ない奴を今まで飼っておいた上、ほんの二週間とはいえ外務大臣の椅子をくれてやったんだ、本人も文句はないだろうさ。」

 

「うん、まあいいや、あいつ何かと問題ばかりだし、よし、次の議題は…」

 

よくもそんな人物を外務大臣にしたものである、とタクシンは思いながら会合の議題を次に進めるのであった。

 

 




コズミックイラの世界ってたぶん、デスティニー終了後も割とすぐ戦争は起こるし、ナチュラル、コーディネイター間の対立は続いていくんでしょうね、おそらくは戦後こそ難しい舵取りが要求されます。果たしてどのような世界となったのでしょうか?…ってカズィが老人になるまで平和にならなかったっていう資料があるんですよね…SEEDのころの設定らしいのでデスティニーで変わっているかもしれませんが。まぁ、ユニウス戦役もその、ずっと続く戦争の一つと考えればわりとしっくりは来ますね。あと戦闘描写って難しい。

TWILIGHTAXISアニメ化…、マジか。Arkさんの作品好きなのでうれしいですね。

3/25 改変しました。


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設定②

いきなりですがアジアオセオニア共同体の略称としてAOC(Asia and Oceania community)を使いたいと思います。なんでこんな長い名称にしたんだろ俺…。


国際関係その②

 

南アメリカ合衆国

良くもなく悪くもなく、緩衝材としてオーブがいるので領土問題もなし。

 

 

南アフリカ統一機構

関係の良好な国、というか様々な国から支援を引き出す外交お化け、アフリカ共同体とは緊張が絶えないが、ぶっちゃけこいつらが理事国からの投資で発展しているのをみてアフリカ共同体が荒んでいるのもあるんじゃないか?

 

汎ムスリム会議

統一国家…?な状態の続く混乱の絶えない地域が多く、扱いに困る。そもそも宗派間の対立とか激しかったのにどうしてムスリムでまとまれると思ったんだ。最近旧パキスタンが仲間になりたそうにこちらを見ているが、こちらから何か言いだすことはない。

 

アフリカ共同体

輪にかけて荒れている、もういくつかに分裂したほうが平和なんじゃないの?最近指導者が不満をそらすために膨張志向。

 

 

装備

 

 

カイラス級巡洋艦

 

150㎝連装ビーム砲×4

120㎜対空ビームシステム×4

『イーゲルシュテルン』×6

 

MS搭載数12機

 

宇宙世紀のアレキサンドリア級を模して造られた宇宙巡洋艦、対ナスカ級を念頭に置いた設計であり、火力、MS搭載能力の向上も図られている。現在主力艦として多数建造中。

 

アーガマ級特殊戦艦(ネェル・アーガマ相当)

 

『ゴットフリートMk71』×4

陽電子破城砲『ローエングリン』

150㎝単装ビーム砲×2

41㎝連装レールガン×2(側舷のドームに格納)

『イーゲルシュテルン』×24

MS搭載数12機(16機)

 

宇宙世紀のネェルアーガマ級を模して造られた新型艦、特殊戦艦の名に偽りはなく、精鋭部隊や特殊部隊の旗艦用の船として建造されている。しかし名称はアーガマ級である。大西洋連邦で新規開発されたローエングリンを試験搭載した艦で謂わば『AOC版アークエンジェル級』である、格納レールガンについては最初はバリアントを搭載しようという話であったが、用兵側から「射角が狭い」と不満が出たため自主開発の41㎝連装レールガンを搭載している。艦名は宗教用語から。

 

陽炎級駆逐艦(180m型駆逐艦)

 

120㎜単装対空ビーム砲×4

『イーゲルシュテルン』×4

対空ミサイル『ヘルダート』×4

 

さらに大型化したAOCの航宙駆逐艦、空母や戦艦の護衛として考えられており、武装のほぼすべてが対MSを意識して作られている。代わりに対艦攻撃能力を持たない。

 

綾波型駆逐艦(200m級駆逐艦)

 

三連装回転式大型ミサイル発射管×4

『イーゲルシュテルン』×2

120㎜単装対空ビームシステム×1

ミラージュコロイド発生装置

追加ブースター

 

ついに巡洋艦に近いサイズまで巨大化した駆逐艦、『航宙艦でドックファイト』することを真剣に考えて作られており、軍内部からも「お前ら頭おかしいんじゃねぇの?」という声が噴出したがミラージュコロイドが大西洋よりもたらされたことで、とりあえず試験用として二個駆逐隊8隻が建造されることになった。艦名にかつて水雷戦で活躍した駆逐艦からとられていることからも、この艦の建造を進めた派閥がこの駆逐艦に何をやらせようとしているのかが伺える。尚、ほぼ同じコンセプトで計画が進められていた巡洋艦は没になった。

 

 

セレベス級MS母艦(コロンブス級相当)

 

『イーゲルシュテルン』×4

 

MS搭載数54

 

宇宙軍の開発したMS母艦、現在存在するMS母艦の中でも最大の搭載数を誇るが、艦隊に随伴できるだけの速度を誇る。輸送艦や工作艦、病院船と部品の共通化が図られている。

 

海軍

 

やまと型戦艦(ジュットランド級戦艦相当)

61㎝三連装自動砲3基9門

12㎝連装対空ビームシステムビーム6基12門

25㎜ガトリング砲6基

VLS 18セル

 

NJ(ニュートロンジャマー)下では誘導兵器が使用できないことから開き直ったAOC海軍により建造された戦艦、自動化により乗員数の削減に成功しており、主力イージス艦と同数の人員で運用できる。装甲にはラミネート装甲を使用。またこの戦艦のために開発された61㎝自動砲は1分に6発の砲弾を発射可能であり、60㎞先の目標を砲撃可能である。さらに敵基地攻略作戦の作戦本部として陸海空すべてを統括して指揮できるような指揮機能を持っており、また居住性も高く長期の作戦航海に耐える。通称動く参謀本部。

 

たいほう型航空母艦(ベーリング級相当)

25㎜ガトリング砲3基

12㎝連装対空ビームシステム3基

(標準装備)

MS搭載数24(露天係駐含む)

航空機搭載数12(汎用機8、対潜哨戒機4)

ヘリ搭載数4

 

AOCの開発した新型空母、双胴の船体にMS用甲板1つと航空機用飛行甲板二つを備える。モデルはガンダム002ndシーズンに出てきたベーリング級空母

 

よしの型イージス艦

 

250㎜速射砲1門(もしくは12㎝連装対空ビームシステム)

25㎜ガトリング砲×2

対空ミサイルランチャー 48セル

連装対艦ミサイルランチャー3基

 

AOCのイージス艦、アーカンソー級に比べ対艦攻撃能力で劣るが、対空能力を重視している。

 

あきぐも型駆逐艦

 

127㎜速射砲2門

25㎜ガトリング砲×4

多目的VLS 24セル

 

AOCの旧式駆逐艦、フレーザー級やクラオカミ級と比較して対艦攻撃能力に劣るが、対空能力で勝る。

 

 

六九式強襲揚陸艇(ギャロップ級相当)

 

155㎜連装砲1基

連装対空機銃×2

 

MS搭載数2

もしくは

戦車搭載数3

 

敵拠点に揚陸するために作られた強襲揚陸用の装備、最悪カーペンタリアや高雄が占領された際に先陣を切るための装備。領域内に占領された地域が出なければたぶん出番はない。武装をウィンチやクレーンに換装した非武装型が中東やアフリカ北部で活動するジャンク屋に販売されている。

 

陸軍

 

五七式自動小銃

 

口径6.8mmの自動小銃、大西洋連邦の開発したライフルのマイナーチェンジ、大西洋連邦の物よりも銃身を切り詰めている。

 

9mm拳銃

 

他の理事国と同じ装備。これと言って特筆するものはないが信頼性の高い拳銃。

 

六三式対艦対戦車誘導弾

 

歩兵が運搬することも可能な大型ミサイル、MSIGLOOⅡ重力戦線のリジーナがモデル、対MSに関しては数発当てねばいけないと推測されているが、機動性や隠密性が高いので効果的な運用が可能と考えられている。発射筒を分隊で運搬し使用するほか、ジープや装甲車、ワークローダーなどに搭載して運用することも可能。製造が簡単なので戦争が始まったらアフリカ共同体の反政府組織にばら撒く予定である。

 

七〇式ホバートラック『オポッサム』

 

25㎜ガトリング砲一基

 

モデルは宇宙世紀に出てきたホバートラック、MS小隊に一台索敵などの補助車両として配備される予定だが、生産が間に合っていないので十分な数か行き渡るには時間がかかると推測される。原作同様、アンダーグラウンドソナーを装備しており、ニュートロンジャマーの影響を受けない音での索敵が可能である。

 

 

メラティ級陸上戦艦(ビッグトレー相当)

 

61㎝三連装砲×3

 

ザフトの陸上戦艦に対抗するために作られた陸上戦艦、どちらかというと移動式陸上指揮拠点という意味合いが強い。土地は広いが、人口の少なく、警戒網の薄いオーストラリア地域で活用する予定だが、一応海上走行も可能なため他の地域へと移動することも可能。ちなみに陸上戦艦の名称は花の名前である。

 

ニル・マーネル級陸上戦艦(ヘヴィーフォーク級相当)

 

61㎝三連装砲×3

VLS 24セル×2

連装機銃座×12

 

ビッグトレーとペアで活動させる予定の砲撃特化型陸上戦艦、主砲の門数は据え置きだが投射火力はビッグトレーに勝っている。こちらもオーストラリア地域で運用する予定だがホバー動力のため他の地域への移動も可能。

 

 

 

 

MS

MSA-M03疾風(モデルはネモ)

頭部25㎜機関砲

 

90㎜ブルパップマシンガン『水破』

90㎜マグナムライフル『兵破』

120㎜バトルライフル『八咫烏』

120㎜スナイパーライフル『キムクイ』

携行レールガン『大蛇』

380㎜無反動砲「グプ」(見た目はハイパーバズーカ:ガンダムUC量産機Ver)

単分子ブレード『同田貫』『バロング』

対装甲ナイフ『マキリ』

シールド(ジムコマンドのもの)

スパイクシールド(陸戦型ガンダムのもの)

 

アジアオセオニア共同体の開発したMS、宇宙世紀のネモをモデルに作られているが、ビーム兵器は現在搭載していないが、搭載する予定はある。現在白兎やコンペイトウにおいて大量生産中。

 

 

MSA-G04カンガルー(モデルはドートレスHM ファイアーワラビー)

武装

疾風と同じ

防塵型レールガン

対MS用火炎放射器『巡流』

 

ガンダムXのドートレスファイアーワラビーをモデルに作られている。ホバー用の新型フレームの採用により原型と同様ホバー移動が可能であり、ザフト軍のバクゥを想定したMSである。また通信能力の強化も行われており、指揮官機的な役割もこなせる。また砂漠戦を想定したリボルビングランチャー付きレールガン(デザートジムのもの)を試験的に装備している機体や原作(ザコット隊)の再現で火炎放射器を装備した機体も存在する、現在オーストラリアのトリントンにて量産中。

 

MSA-G05勇虎(ヨンフー)(モデルはジムストライカー)

 

装備

疾風と共通

グラップシールド

バルチザン

 

モデルは宇宙世紀のジムストライカー、陸戦を意識した機体であり、装甲の全体的な強化と近接戦闘に最適化された調整がなされている。ツインビームスピアは間に合わなかったがパルチザン(鉄血)を装備している。機体色は原作準拠、現在トリントンで試験中。

 

MSA-S06迅雷(モデルはサーペント)

 

90㎜連装ガトリングガン『プルメリアⅡ』

8連装ミサイルポッド

380㎜無反動砲「グプ」

試製105㎜重粒子砲『ミカハヤヒ』

 

 

アジアオセオニア共同体の開発した支援型MS、新型フレームに大容量のバッテリーを搭載しているためビーム兵器の搭載を可能にしている。機動性についてもホバー移動が可能であり良好な機動性を確保している。半面継戦能力は低く、特に弾薬と推進剤の消耗が早い。現在白兎、およびトリントンで量産ライン設営中、機体色はオリーブドラブ

 

MSA-S07紫電(モデルはガンキャノン)

武装

頭部25㎜機関砲

300㎜グレネードガン

8連装スプレーミサイルランチャー

ASROCKユニット(300㎜対潜ロケット砲+対潜ミサイル×8 08MS小隊に出てきた港湾防衛型がモデル)

 

疾風と共通

ニードルガン

ハープーンガン

 

ガンキャノンをモデルに作られた砲戦型MS、アニメ版というよりサンダーボルト版である。バックパック交換により様々な砲撃装備を装備可能である反面、近接武装を使用するためのプログラムが組み込まれておらず近接戦は殴る蹴るの格闘戦しかできない。また口径が増しているが、射程はガンダムの設定よりも完全に短くなっており、ロケットアシストを使用して30㎞がいいところ。港湾防衛タイプも製造されているが、やはり港湾防衛の主力は水陸両用型になると思われる。あくまでサポート役。現在コンペイトウとスリランカにて試験中。機体色はグリーン(連ジのジオンカラー)

 

 

MSA-N08ソードフィッシュ(モデルはドーシード)

 

フォノンメーザー砲×2

ハイパーキャビテーション魚雷発射管×8

クロー

背部水中推進ユニット

 

 

アジアオセオニア連邦で主力を担うことになるであろう水陸両用型MSモデルはガンダムXのドーシード、原作ではドートレスが原型だったがこちらでは疾風が原型。背部のスクリューで海中を移動する。陸地に上陸する際は背部水中推進ユニットをパージしなければならない。現在君手磨での試験が終了し神戸にて量産準備中。

 

MSA-F09フラッグ

 

リニアライフル『トリシューラ』

300㎜小型無反動砲『ブルパ』

レーザーライフル

12.7㎜連装機銃

ディフェンスロッド

高性能高周波振動対装甲ナイフ『マカミ』

 

もはや00のユニオンフラッグそのままの見た目、趣味人達が予算を勝ち取り好き勝手やった結果であり、飛行させるために素材から何から軽量化を図った関係で、ビーム兵器の搭載が不可能であったり、バッテリーも出力の低いものが搭載されていたりするが、無駄に機能再現も頑張っており、推進機関として水素プラズマジェットエンジンも再現されており、「燃料である水素をフレームに浸透させる」という機能も再現している。レールガンではなくリニアライフルなのは再現のため、また対装甲ナイフも、数分間のプラズマブレード化が可能な機能を有している。ただしナイフを使った時点で腕の重整備が必要となる。またクレイバズーカのような見た目の300㎜小型無反動砲の装備も可能であり、主に散弾を装備している。

 

AOU版Gシリーズ

形式番号はRX-G-(量産型と同じ)である、ファーストガンダムへの敬意をこめてRXナンバーを使っている。主にエース用の機体として開発が進められているが、兵装実験機としての側面も持っており、様々な試作武装を装備する機体でもある。

 

RX-G-X78ガンダム(モデルはファーストガンダム)

頭部25㎜機関砲

 

疾風と共通

 

専用ビームガン(ガンダムのビームライフルがモデル)

専用シールド(ガンダムのもの)

試製ビームサーベル『小鴉丸』

 

ビーム兵器の実験用に開発された最初のGシリーズ、PS装甲を装備していないが、コスト度外視の新型合金の使われた複合装甲により高い防御力を誇る、装備している専用ビームガンは、CEの機体の多くが採用している、手のひらのコネクタからエネルギーを供給するものだったが、稼働時間の低下が問題になったため、AOCのビームライフルは、エネルギーパック方式が採用されることになった。ちなみに、形式番号の78は本来欠番にする予定であったが、「最初に作るGシリーズだし、こいつだろ!!」と技術者が珍しく意見を合わせたため、何もかもファーストガンダムのオマージュである。(MK-Ⅱは量産型の祖になったからいいのである。)

 

 

 

 

SFS 七〇式MS用長距離補助飛行体(モデルはベースジャバー)

 

選択式オプション

ミサイルポッド

ビームガン

 

 

アジアオセオニア共同体の開発したサブフライトシステム。ZAFTのグゥルよりやや大型なMSを迅速に長距離移動させるための高速飛翔体。ジェットストライカーほど小回りは効かないが燃費や航続距離で勝る。また補助バッテリーを搭載しており、機上のMSへ充電することも可能。エンジンを換装することで宇宙、地上双方に対応することができる。

 

 

尚、各機体に専用装備のようなものがあるが、別に他の機体に装備できないというわけではなく、プログラムをインストールすれば使用可能である。

 

MSの武装

 

 

試製57㎜高エネルギービームライフル1型『雷上動』

現在試作中のアジアオセオニア共同体MS用ビームライフル。エネルギーパック式で一つのカートリッジに20発分のエネルギーが込められている。見た目はアレックスのビームライフル。

 

試製57㎜高エネルギービームライフル2型『シューラ・ヴァラ』

主に可変MSのために開発されたビームライフル、可変機構に干渉しないような形状を目指している。モデルはリゼルのビームライフル、エネルギーパックは甲型と共通。ただしフラッグには装備できないため、リゼル、キュリオスの開発が遅れている今、宙に浮いている

 

試製105㎜重粒子砲『ミカハヤヒ』

高出力のビームキャノン。Eパックの消費は早いが高い射程と威力を誇る。モデルガンダム試作4号機のビームキャノン。ただし後方にEパックを装填する仕様になっている。

 

 

 

アジアオセオニア共同体軍のモビルスーツ編成

小隊は四機編成、常にエレメントを組んで行動することを想定している、ザフト軍のパイロット達にポテンシャルでは勝てないので連携で対抗する計画。しかしまだ数がそろっていないので序盤は苦戦すると予想されている。

 

航空機

 

FF-7F ワイバーン

25㎜機関砲×4

75㎜機関砲×2

各種ミサイル

 

アジアオセオニア共同体の開発した新型戦闘機、コクピットを共通化し、整備性と量産性の向上を図るという『コアファイター構想』により生み出された機体の一つ。コンセプトは、高い機動性を確保した汎用戦闘機、可変翼機。モデルはセンチネルに出てきた同名の戦闘機

 

FF-7FB-Pレイヴンソード先行量産型

25㎜機関砲×4

75㎜機関砲×2

大型ウェポンベイ(各種ミサイル、爆弾)

 

モデルは08小隊のジェットコアブースター、コアファイター構想により生まれた戦闘爆撃機。本来はビーム兵器を搭載する予定だったが、ビーム砲の完成が遅れたため機関砲を搭載している。名称は宇宙世紀に出てきた戦闘機から。

 

FF-7FBレイヴンソード

25㎜機関砲×4

ビーム砲×2

大型ウェポンベイ(各種ミサイル、爆弾)

 

ジェットコアブースターの武装をコアブースターレベルまで引き上げた戦闘爆撃機、ビーム砲を搭載しPS装甲を持つMSにも有効打が与えられると期待されている。

 

PB-4 ドン・エスカルゴ

対潜魚雷

対MS拡散機雷

各種爆弾、ミサイル

 

AOUの新型主力対潜哨戒機兼爆撃機、機動戦士ガンダムのドン・エスカルゴがモデルだが自衛用の機銃はオミットされている。陸上からの運用しかできないが領海の広いAOUではかなりの数か量産されている。

 

 

 

 




何故ビームライフルがアレックスのものかというと、若干大き目なビームライフルだからです。ビーム兵器に関しては、いろいろブーストが掛かりますが、それでもまだ技術的に遅れています。

AOCのMSのカラーリングはユニコーン、ダカール守備隊配備のネモを基調に考えています。局地戦部隊、例えばオーストラリアやカシミール地方などの砂漠に配備される部隊はサンドピンク等、違う色を使った部隊も存在するつもりです。


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phase10 血のバレンタイン

CE70年2月6日 アラスカ

 

「確かに国連に代わる国際機関が必要であろうという意見には賛同します。ですが、先のコペルニクスの悲劇をプラントの犯行というにはあまりに短絡的ではないでしょうか?我が国は理事国合同での調査が必要かと思います。」

 

元駐プラント高等弁務官にして現アジアオセオニア共同体外務大臣の野村雄一郎はそう発言する。これが我が国の見解だ、少なくとも先のテロの犯行がプラントのものだとは思っていない。彼らの政治的感覚が非常に稚拙なものであることは理解しているが、それにしてもあのような場所で、「わざと」プラント側の代表が遅れてまでテロで代表団を殺した意味が分からない。ブルーコスモスの犯行といったほうがまだ理解できる。

 

「…もうすでに賽は投げられたのですよミスター野村。犯人など関係がない。あなた方ならおわかりでしょう。我々理事国はプラント相手に鎮圧行為を仕掛けます。あなた方が乗りたくないというのならそれでも結構。しかし…ん?なんだね?今は重要な会議中だ…は?いまなんと?…えぇ。」

 

大西洋連邦の代表に対して通信が入る、今この場でとらなければならないような重要なものなのだろうか?まさかプラントが軍事力の行使でもしたか?

 

「…わかりました、今回の作戦に参加したくないというのならそれでもいいでしょう。連合には加盟してくださるのでしょう」

 

「え…えぇ、連合、地球連合には参加します。」

 

「わかりました。それでは先に賛同してくださったユーラシア連邦、東アジア共和国とともに我らは地球連合軍宣言を発布します。あなた方は署名こそしていただきますが、宣戦布告、いや、鎮圧宣言には加わらなくても結構です。」

 

何があったのだ?

 

/////////

同じころ、カリフォルニア アズラエル・カントリークラブ

 

 

「…ほう?アズラエル理事、珍しくゴルフのお誘いが来たと思ったらこういうことですか…さすがですな。」

 

うん、やはり大西洋連邦の情報部は優秀だ、と思いながらジオニック社社長、藤田誠治はアズラエルに言う。基本的に、この人はゴルフなどはあまりやらなかったはずだ。

 

「えぇ、業腹ですが今回、国の計画しているプラント鎮圧作戦、『バレンタイン作戦』は失敗するでしょう。そして、奴らに勝つにはあなた方の開発しているMSが必要です。もちろん、そのものを輸入しようってんじゃありません。できれば研究用に何機か、それとOSや稼働データがほしいんです。もちろんタダとは言いませんよ。」

 

忌々しいことにその開発計画は我らの手の届かないところで遂行されていますが、まぁ量産するとなると我らがいなければ話にならないでしょう、とアズラエルは続ける。

 

そういってアズラエルは一枚のPDAを誠治に渡す。低電力高出力ジェネレータ、小型ビーム兵器、PS装甲などのデータである。

 

「ほう…ここまでしてそのデータが欲しいと?」

 

「勿論、我々の味方として戦っていただく必要もあります。ですがまぁ、あなた方がいてAOCが戦争に参加しないということもないでしょう?」

 

「まぁそれはそうですが…」

 

「こちらとしても概ね把握しています、アジアオセオニア共同体が大規模作戦行動を実行するためには来年の春ごろまで時間が必要だということも。それは黙認しましょう、それに、それまでに彼らがこちらに攻めてくるというのであれば好都合です。あの連中が何を考えているのか知りませんが、彼らにとって戦線拡大は死刑執行書へのサインにほかなりませんし、息切れも早くなるでしょう。まぁ、核のつるべ撃ちであの不細工な砂時計を消し飛ばそうと叫んでいるのがブルーコスモスにいますが、あの砂時計には少なくない投資をしているのでそれは却下です。」

 

金の卵を産むガチョウを絞めるバカはいませんからね。と続けながらアズラエルは疲れた顔をする。

 

「なるほど、つまりタイミングを合わせて一大反抗作戦に出るために協力しろと。その為ならば我々だけ参戦のタイミングを遅らせても構わないのですな?」

 

「えぇ、そういうことです。長期戦になればこちらが優位になることは自明の理ですが、いつまでもダラダラと続けられては民生部門が停滞します。それは我々の望むところではない、そうでしょう?」

 

「そうですな、戦争は掻き入れ時です。しかし、そればかりに頼っては戦争で儲からなくなってしまう。なにせ戦争は国家にとって一大消費行為ですから、商売相手を貧乏にしてしまっては商売が成り立たなくなってしまいます。」

 

ついでに国にお金がないと作りたいものも作れないしネ!!と藤田は心の中でつぶやく。キサラギの連中ほどじゃないが、こっちだってアプサラス、シャンブロとかを作ってみたいのだ。…さすがに生体兵器はアレだと思うが、まぁヒトに手を出さなきゃ構わないだろう。無人機だっていいのだ、生体ユニットとか使っていなければ。

 

「当然、国だって都合が悪ければ私たちの言うことなんか聞きやしませんからね。いくら煽ったところで、討つ準備が整っていないければ意味がありません。ですので初手は…まぁそういうことです。」

 

「いいのですかな?」

 

「都合のいいことにジブリール君が気勢を上げてユーラシアや東アジアを煽っています、バレンタイン作戦の主力は彼らですよ。勿論我々も第3艦隊…連合になれば第5艦隊を付けますが…まぁ、先陣を切るのはユーラシアと東アジアです。最悪、大西洋とアジアオセオニアの全力、7個艦隊が彼らご自慢のMSを装備して殴り掛かれば押しつぶせますしね」

 

宇宙艦隊は大西洋連邦が4個艦隊アジアオセオニア共同体が3個艦隊、ユーラシアと東アジアが2個艦隊持っている。普通なら使いつぶせば関係悪化は避けられないが、盲目的な反コーディネイター状態に陥った民衆ならば、怒りはコーディネイターに向くだろう、とアズラエルの言い分を要約するのならその通りだ。

 

「そのために、東アジアとユーラシアの四個艦隊は犠牲になってもらう…と。そういえば新星やアルテミスに駐留している戦力はどれほどなのですか?」

 

「なんだかんだでそこそこはいますよ。それにアルテミスの戦略的価値は相当低いはずです…新星はムーア侵攻の拠点にされそうですが…」

 

「まぁムーアの防衛は任せて大丈夫かと。あそこは新型が優先的に配備されていますし。」

 

「えぇ、アーガマクラスに至ってはこちらで購入しようかなどという声があったくらいです。どうせ売ってくれないと諭したり、こちらも新型戦艦の設計出して黙らせましたが」

 

 

「確かにカイラス級はともかくそのあたりは難しいですな」

 

「カイラスクラスは売ってくれるんですね…あれでもなかなか高性能だというのに…」

 

「所詮青葉級の改良型ですから。」

 

「改良で片付けられるほどのものでもないでしょうに…私だって一応エンジニアとして働ける程度の知識はあるんですよ?」

 

勿論経営が本職ですが、と言いながらアズラエルは苦笑する。

 

「まぁ、OSに関しては大丈夫でしょう。実機は、おそらく遅れるか間に合いませんが。それから、稼働データはある程度まででしょうな。そこまでしか軍が頷かないでしょう」

 

「というと?」

 

「さすがに稼働データまで引き抜くのを納得させるのは難しいということです。開発は軍が主導ですので…。」

 

「…まぁ仕方ないとしましょう、要はMSが作れて、ZAFTに対抗できればそれでいいのですからね。」

 

「えぇ、それで…ところで理事、やはりゴルフはあまりなさらないので?」

 

「ははは…慣れない事はするもんじゃありませんね、映画とかにあるこういうシーンはカッコいいんですけど…」

 

開始早々OBを出したアズラエルは苦笑いをするのであった。

 

 

/////////

 

2月14日 大統領府 地下作戦会議室 バレンタイン作戦対応会合

 

「ルーズべルトが参加していない…だと」

 

「あれ?これ地味に歴史変わっちゃうやつ?」

 

「安心しろ、シャルル・ドゴールに核が搭載されているのを確認した。しかも公には記録されていない。ここは原作通りだな。」

 

「アズラエルがブチギレてロゴスのユーラシアの連中に招集かけてる。でもジブリールの野郎が拒否しやがったらしいぞ…」

 

「最悪は内戦やりながらザフトと戦争するパターン!?」

 

「いや、たぶんそれはない。というか、ここでボコられれば連中にそんな余力はない。もちろんうちにも、大西洋にもだが」

 

「ったく…持ってるおもちゃの管理もできない軍隊なんぞテロ組織以下じゃねぇか!!」

 

政治家と軍人、それから財界人の集ったバレンタイン作戦への対応を話し合う会議では混乱が続いている。観戦武官の派遣はしていないが、情報収集は怠ってはいないのだ。ムーアから観測している情報と地球連合から来るしかないが。

 

≪極軌道方面よりアガメムノン級を旗艦とした別動隊が侵攻…これは…核攻撃隊です!!≫

 

趨勢が決し、もはや地球連合軍の撤退しかないだろうというところで極軌道方面からの核攻撃、原作の再現か。しかし、何故見落としたのか…一応、スペースコロニーというものはデブリ迎撃用の高性能レーダーを備えているのだから、それを転用すればかなり高性能な索敵装置になるはずなのだ。確かにデブリ帯の敵を発見するのは困難ではあるが、ここまで気づかないのもアレだろう。NJなどはまだ展開されていないはずだ。

 

「…ここでか?タイミングが遅いな、もう退くしかないだろうに」

 

「いや…ZAFTの連中、功を焦って前に出すぎだ。防衛戦でそこまで前に出る必要ないだろうに…こういう時に対応できん。ほら見ろ」

 

古賀参謀長官と、阿部宇宙軍大将が冗談を言い合うように軽く話しているが、プラントに核攻撃が成功した。

 

≪ユニウスセブンに核弾頭が命中!!崩壊します!!≫

 

「原作通り、と。で?この後は何だっけ?」

 

「クラインの積極的中立勧告だな、もちろん無視を決め込む。はっきり言って、連中は友好国を友好国と思っていない。召使か奴隷だとでも思っている節がある。じゃなきゃNJなんか投下しないさ。そんなことをしてもエイプリルフールクライシスはほぼ確定となったのだから、正直言って中立の旨味が我々にはない。大体プラントは我々には必要ないのだからな。南アメリカ侵攻も大西洋だけで済むだろう。んで、問題はその次、22日の世界樹攻防戦だ。我々の月艦隊、地球連合に組み込まれた後の名前は第三艦隊の三分の一が駐留しているんだ。どうするんだ?」

 

「意図的に、というか防諜のため更新が遅らされている戦隊が多かったな?退却させたいが…」

 

古賀参謀長官が言いよどむ。いい理由が思いつかないらしい。

 

「都合のいいことに東アジア、ユーラシア連名で退去要請が来てるぞ。酷いことに装備置いてけとさ。乗る?」

 

「なりふり構わずといったところか?反コーディも極まると見てて哀れだな。まぁ、そんなことは知ったこっちゃない。しかし都合がいいな。まぁ、装備に関してはと割り切ろう。どうせ次がもうできてる、残ってる青葉級とアチェ級もそこの艦隊だけだしな。アーヴィング大統領には私から言っておく。藤田さん、アズラエルにも言っておいてくれ」

 

「了解した」

 

アジアオセオニア共同体はこの勧告を受諾し、世界樹より一切の人員を引き、月面都市に籠ることとなる。そしてプラントは2月18日、独立宣言をし、地球連合との戦闘状態に突入していくこととなる。

 

//////////

 

 

そのころ…

 

白兎、MS試験場

 

「…えー…これで迅雷の開発が終了して…あと90㎜マシンガン弾の生産ラインを増設…まぁ、主兵装だしな、それから、PS装甲などの新技術を使った新規Gの設計に試作Gの試験に…」

 

MS開発部門のトップとなった湯野教授は忙しい日々を送っていた。

 

「ふぅ…あ、教授、お疲れ様です。」

 

曲がり角で鶴野に出くわす、この先にあるのは更衣室とシャワールーム、試験が終わったので着替えてきたのか。

 

「おう、鶴野、お疲れ、これで取り敢えず、お前がやらなきゃならない試験は終了だ。お前は3日ほど休暇が貰えるな。」

 

俺はまだ仕事があるがな、と教授は言う。

 

「Gの試験は…?あ、別の人の仕事でしたか…」

 

「そうだ、まぁ、よく働いてくれたし、こんなもんでいいだろう。それに、お前、今年の春卒業だろ?就職先に関しては…済まん、上のほうで勝手に決められてた」

 

「あー…なんとなく察してました、確かADTRD、先進防衛技術研究部でしたっけ?あの白兎の中心部のでっかい建物。そこの人たちが教えてくれましたよ」

 

「ここもそこ関連の施設だがな、まぁ、そういうことだ。お前は、エンジニアとしてそこに入ることになった。アクチュエータ以外のことも勉強はしてたんだろ?」

 

確かにMS開発部署に入ってから、もともと期待されていた通りパイロットエンジニアとして働けるよう、多くの人に教えを乞うていた。ソフト関連に関してはまだまだと聞いているが、そのあたりは他人に任せればいいのだろう。当然の話だが、MSの開発など一人でやることでもない。

 

「ええ、まぁMSエンジニアとして最低限の知識は持っていると思います。」

 

「まぁ、そういうこった。MSの民生利用…レイスタみたいなものを開発するのは戦後になるだろうし、当面は軍にしかMSの需要はないからな。就職先も自ずと軍か軍需企業になるわけだ」

 

「まぁ、そうですよね、…教授」

 

ある部屋から光が漏れているのを見て二人は表情を険しくする。その部屋は、AOCのMS開発の中枢ともいえる部屋であり、開発中のMSなどのデータを記録しているメインコンピュータがある。幹部スタッフの同伴がなければ入ることすら許されず、そして、その幹部スタッフは現在湯野教授以外出払っている。

 

「あぁ…」

 

教授が、支給品の端末を操作すると、警備スタッフが来て部屋に突入する。捕まったのは最近入ってきた男だった。もちろん、最重要データへのアクセス権など持っていない。最初期からかかわっているスタッフの中でも持っていない者もいるのだ。鶴野も持っていない。だからこの部屋に入るしかなかったのだろうが、ただの興味で片付けられる問題でもない。急いで鶴野に入室、データ閲覧を許可し、確認作業を手伝わせる。

 

「やられた…」

 

新型Gシリーズ、最初に方針の決まっていたRX-G-01アージュンのデータが情報端末にコピーされ、持ち出されていたのであった。

 

「Mk-Ⅲ…って…まさか!?」

 

「どうした?」

 

「犯人オーブなんじゃないですかね?あの背中のスラスター」

 

ガンダムMk-Ⅲの見た目が微妙にアストレイに似ているんじゃないか?と鶴野が言う、正直、二本角があればガンダムだろと言っているように聞こえるが、機能面ではそう違いはないのではないか?

 

「いや、それは確かエールストライカーを参考に…大体そんなロクでもないバタフライエフェクトがあって堪るか!!…と言いたいところだが…技術者の流出をできるだけ…というかほぼ阻止したからな、原作に比べてオーブの技術レベルは下がっているのではと思われている。というかオーブ自体の成り立ちがなぁ…」

 

オーブ連合首長国。できたはいいが、まだ火山ガスが噴出する部分の多かった新島群その他にできた国家。その実態は、東アジア、大西洋、AOCの再構築戦争時の反統合主義者や平和主義者、反戦論者などの集まりが、いまだ領有権の定まっていなかった島々を占拠して建国した国家に過ぎない。五大氏族とやらも、その際に集った団体たちのリーダらしい。AOCとしては国防上、非常によろしくない位置にあるので関係には気を使っていた、まかり間違って東アジアの軍事拠点でもできたらそれこそ脅威だったし、何より、曲がりなりにも国を立ち上げた彼らは、こちらの苦悩を少しなりともわかってくれていたため、建設的な付き合いができた。技術流出その他にはかなり気を使っていたが。しかしウズミ・ナラ・アスハが代表になってからその状態も崩れつつある。何より、アイツ確かオーブへの留学経験があったはずだ…。

 

「ありえない話じゃあない。まぁ、その辺は、調査部にまかせるとしよう」

 

技術屋風情がスパイの目的やら何やらを探ったって答えが出るわけないさ、ということだ。考えたって仕方がない。ただ、判明したことを上に報告して、あとは任せればいい。

 




ちなみに盗まれた機体はこんな感じです。
RX-G-X01アージュン(モデルはガンダムMk-Ⅲ)

疾風と共通。

25㎜頭部機関砲
57㎜高エネルギービームライフル『雷上動』
ビームサーベル『小鴉丸』×2
背部ビームキャノン



OSの提供やフレーム技術の提供などを引き換えに大西洋連邦よりもたらされたPS装甲などの実験用に開発されたアジアオセオニア共同体版Gシリーズ、良好な機動性を発揮したムーバブルフレーム実験機のデータが活用されており、PS装甲により間接が強化されたためより高負荷に耐える。背中の可変スラスターバインダーは、カタログ上の出力はエールストライカーに劣り、最高速度では勝てないと推測されるが、軽量であり、機動性は勝ると考えられる。高機動を誇る白兵戦型、ちなみにモデルがMk-Ⅲなのは、「Mk-Ⅱのデータ使ってるし、あいつもGに関係させてやりたいからMk-Ⅲだろ」という技術者たちのノリから。



代表首長は個人の判断で任意の国民に各種罪状を適用し、逮捕令状無しに口頭のみでその逮捕を軍・警察に命じ即時実行させることができる

国民から一般選挙によって選出される立法機関である議会も存在し、五大氏族と対峙させることで政治システムを成立させている。(ただし、アスハ家の政策を議会側が妄信している事から、このシステムは形骸化している)

オーブの設定って、いろんな意味でアカン国なんじゃないか…って思ってしまうようなところが多々あるように感じてしまいます。事実国が回るからこれでいいのでしょうけど…もしロクデナシが連合首長になった場合が怖すぎます。


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phase11 次の作戦に向けて

鉄血が終わりましたね。想像できていたとは言え、少しもやっとする終わりではありましたが、物語として見るのであればこんな結末もアリだろうと思います。何が悪いかといえば鉄華団の皆があのような生き方しかできなかったという事実なのではないでしょうか。…もちろん、ハッピーエンドは好きですし、彼らには幸せになってほしかったですけどね。


2月20日 アジアオセオニア共同体 スラバヤ 大統領府。

 

さて…私はなぜこの宗教家をここに引き入れたのだろうか…確かに評価の高い人物であるが、原作を知っていれば『危険人物』だの『要注意人物』だと思えてしまう。

 

目の前でご高説を垂れ流す盲目の宗教家を眺めるタクシンの心境はこんなところだろうか。

 

「マルキオ導師、あなたの戦争を厭うお気持ちは良くわかりました。しかし、残念ながら、我々には取れる手段がありません。」

 

「いえ…そういうことを望んでいるのではありません。ただ、時代を任せることのできる人のため…」

 

「ですから、それが無理だと言っているのです。わが国では思想信条の自由が保障されています。当然、あなたの新興宗教が何を言おうが自由です。しかし、我々が武力や資金を貸すわけにはいかんのです。国家が一宗教と結託して武力や金を融通してしまったら我が国の建国の精神に悖る可能性があります。要約すれば、『私の思う救世主のために力を貸せ』。確かに救世主とは聞こえがいいですが、宗教にとっての救世主とは他の宗教にとっては悪魔と同義になることがあります。そのような目的のために我が国の力を貸すことはできません。それが、我々が我々の力に対して負う責任です。」

 

 

まぁあんな荒んだ世界ではこのような人物の耳障りの良い言葉がウケるのだろう。それは仕方のないことだ。我が国は「多様性の容認」が国是だ。アホみたいにカオスな地域をまとめているのでそれが当然なのだが、そのおかげというかそのせいというか、非理事国との関係もほかの理事国より比較的良好である。もちろん「比較的」なので、関係の悪い国は存在するのだが。

 

「そうですか…ではクライン議長の積極的中立勧告には…」

 

「聞かないようにしていたのですが…あなたはプラントの特使かスパイですか?あのような一方的な宣言、乗る乗らない以前の話でしょう。あんなものに乗らずとも、我々は我々に不利益がない限り厳正中立を貫きますよ。それに、我々にとってプラントは必要ない。そうなるように国を作ってきたのですから。お引き取り願えますか?これ以上執務がたまっては国の運営に差し支える。」

 

嘘だ、私が二週間ほど休んだところでこの国は何の問題もなく回り続けるだろう。平時ならば私が裁可しなければならない書類というのは意外と少ない。そうでなければこのような巨大な国は回らない。ただ嘘でもなんでも、この宗教家と同じ空間から離れたかっただけだ。まぁ、「我が国に不利益がない」限りは中立でいてやる、戦略というものをよく考えるのだな。いや、戦術レベルでもマズいことがわかるか、アレは。通信能力の喪失など悪いことしか起こらない。占領地のインフラ利用すらできなくなるだろうに。

 

「あぁ、一つ言っておきますが、SEEDなるものが人類に存在するとして、話を聞く限りでは、とても世の中を導く程のものとは思えませんな、大体」

 

 

『そんな古の英雄のようなものが現代に生まれてたまるか』

 

 

これは、我々会合の総意である。キラやアスラン、シンのような人材の戦闘能力「は」素晴らしいしラクスやアスハのもはや洗脳クラスのカリスマも素晴らしいだろう。が、そんなものは国家運営に必要ないのだ。幾多の秀才、凡人によって運営され、万が一誰かが欠けても替えが効く国家。もちろん、命自体はかけがえのない、代わりの利かないものであるのは当然だ。しかし、国家元首や指揮官は代わりがいなければならないのだ。一個人に依存する社会など恐ろしくてたまらない。…そういえばなんか冊子置いてったけど何が書いてあるんだ…?新興宗教に有りがちなヤツだな、ハードカバーのきっちりした本だが。まぁ、笑い話にできるだろうし読んで…ん?

 

「宇宙空間に適応した人類進化の可能性…ニュータイプ論とイノベイター論?著者ジオン・ズム・ダイクン、イオリア・シュヘンベルグって…大先輩じゃねぇか!?」

 

たしか中身はニュータイプとイノベイターを混ぜたような話が展開されていたはずだ。こいつらは確かC.E初期の航空宇宙学者と文化人類学者兼心理学者だったはずだ…まさかコレやるためにそんな職業に就いたのか!?…考えないようにしよう、そして次の会合ではっちゃけてるバカをどう抑制するか話し合おう。マジで。どんな錆が出るかわからない。西村大佐みたいなのならまだマシだが。…なんだかんだで、MS運用論に多大な影響を与えているらしいし。

 

 

/////////

 

2月23日、アジアオセオニア共同体 チャンタブーン 宇宙軍月艦隊司令部

 

 

「世界樹は崩壊…どうすんのこれ…」

 

「どうするって言われてもなぁ…まぁ中継点は中継点だったが無くてもかまわんだろう。完全にとは言わんがランカーで代用も効く」

 

「そのことなのですが、他の理事国から民間船のランカー使用許可要請が…」

 

「民間のことは文民に任せとけ、外務省あたりの領分だろ。中立国に、他国の艦船が入港することに何の問題もないんだがな。それにあの辺の守備は第10艦隊の領分だ」

 

阿部月艦隊司令が言う。ここでは先日起こった世界樹攻防戦の対応について話し合われていた。会合ではないので転生者でないものもいる。

 

「しかしMSでしたっけ?ここまで強力なものだとは…」

 

「オイオイ…訓練で使っといてそりゃないんじゃないの?」

 

「いやぁ…まぁ強力な兵器だってのはわかってたけどさ…ここまで一方的になるようなもんでもないと思ってたんだよ。」

 

「おそらくは戦術だろうね、なんだい、みんな好き勝手ドッグファイトやりやがって。MSの真価は無重力環境下での機動性にあるのだから、悪手にもほどがあるだろう。」

 

「対応策がまだ確立されてないからな、こっちも運用法が確立できてないせいでいろいろ煩雑になってるけど、とりあえず対MS戦術研究のレポートを大西洋に送っといた。早いとこ戦争終わらせてほしいし。」

 

まぁあの書き方だとカッカきてそうだけど、と笑いながら一人が言う。

 

「同感、さすがに偶発的な戦闘は望まんな、この戦争、敵の落としどころが不明瞭だ。現にZAFTに大規模作戦の兆候あり…、攻め込む先はどこだか分らんがな。」

 

奴らの言を信じるのなら独立だが、連中宇宙の確保狙ってそうだぞと、誰かが呟く。

 

「順当に行くなら新星だろう、もしくはプトレマイオスか…」

 

「まぁその辺が順当だろうな」

 

「いや地球侵攻という事もあり得るぞ、親プラント国家、アフリカ共同体に基地を建造する可能性だってある。もしかしたらウチに来るかもしれんぞ」

 

正確には次はヴィクトリア侵攻なので正解は地球侵攻である。

 

「…あのコロニー群でそこまでは無理だろ?正直、というか連中を「普通の軍隊」として考えるのなら国防でギリだぞ…、どうもそうじゃないらしいが」

 

「わからんぞ…世界樹ぶち壊した時点でな。あれじゃ無秩序に戦線拡大することもあり得る。月の自治都市群とウチ、あとスカンジナビア連名で抗議文書を送ったみたいだ。あそこを利用しているのはプラントと戦争している国だけじゃないからな。」

 

世界樹を利用しているのは理事国だけではないのだ、軍こそ駐留していたが、基本的に自由都市扱いであったのだ。特に月の自治都市郡はある意味死活問題だ、物資の輸入が大変になるのだから。

 

「あぁ、そういやそうか、まぁ中立化してなかったのが悪いといえばそこまでだが、まぁ、せめて崩壊は勘弁してほしかったな。」

 

「まったくだ、使いようがあるだろうに。」

 

「孫少佐、周辺警戒はどうなっている?」

 

阿部指令が黒髪の女性士官に聞く。

 

「問題はないさ、最新兵器を与えてくれたもの感謝してるよ。ただウチの荒くれ共に警戒任務なんか任せて大丈夫なのかい?」

 

孫少佐、軍人なんかより女海賊の首領のほうがよほど似合いそうな人だ、優秀ではあるが。シーマみたいなもんか。

 

「海兵ってのは動かしてこそ海兵だ、尤も宇宙で海兵というのもおかしな話だが」

 

「違いないね、まぁ名前なんてどうでもいいのさ。じゃ、私は任務に戻らせてもらうよ」

 

「あぁ、頼んだ。」

 

孫少佐が退出すると次の議題に移る。基本的に彼女は現場第一でこういう会議には出たがらない、なんで少佐にまで上がったんだろうか?

 

「問題は世界樹で使用された誘導兵器を無効化する装備だ。尤も完全な無効化とまではいかないらしいが」

 

「まぁ、近接信管で構わんだろうさ。要は損害を与えればいいのだ。それで帰ってくれるならラッキー、向かってくるならバカが冥土に行くだけだ。」

 

「そういえばコンペイトウのボース提督からムーアへのザフトの偵察行動が活発化しているとの報告がありますね…。」

 

「まぁ、あそこは、プラントに足りん物が多いからなぁ…、食糧生産コロニーに人口、取られたら厄介だな。だがそのためのコンペイトウだ。それにあそこのMS配備数はうちより多い、大丈夫だろう」

 

「しかしまぁ…なんとも挑発的なもんだ。ウチがMSを出していないせいもあるのか、割と我が物顔で警戒圏に入ってきやがる。」

 

「出せばいいのか?と言われると微妙だがな。プラント撤退戦の時の連中の行動からして、どうもZAFTという組織は独断専行の多いきらいがある。ヘタに対応すれば即戦闘じゃないか?」

 

独断専行は厳にこれを戒めるべき。AOCの軍人は独断専行をとても嫌う。人命最優先ではあるが。

 

「かかってくるのなら対応するだけの話だ。連中の寿命を縮めるだけだがな。こちらの防衛部隊の訓練は?」

 

「月全体で疾風3個大隊に迅雷3個中隊、銭がめの一個旅団が配備されている。各種自走砲や固定砲台も充実しているな。弾薬も規定通りなら五会戦分は確保できてるぞ」

 

「各都市MS一個大隊と一個中隊にMTの二個大隊か…弾薬はまぁ…3会戦と考えておけば間違いはないか?MS相手では消費が増えそうだ。月面ならば宇宙ほどではないにしろさぞ高速で動くことだろう。まぁもっとあればいいのだが贅沢は言えんな。」

 

まぁ、そう何回も同じような突撃を短期間で繰り返せるようなものでもないだろう。砲弾を浴びせ掛けることはできるし、既存の自走砲や砲台でも用は足りるのだ。気分的に新型があったほうがいいなとは思うが、戦争とは気分でやるものではない。一番危険なのはかぐやだな、グリマルディ戦線で巻き込まれかねない。と思いながら阿部指令は会議を続けるのであった。

 

 

/////////

3月9日

 

プラント アプリリウス1 評議会

 

「ヴィクトリア攻略は失敗、降下部隊の殆どは上空で迎撃され、降下に成功した部隊も攻略には至らず大損害を被りました。残存兵力はアフリカ共同体のアディスアベバへと撤退しました。」

 

レイ・ユウキはほら見ろ、言った通りじゃないか。と思いながらも感情を押し殺して発言する。

 

「敵にも大損害を与えられたのが救いだな。補給物資は?」

 

「アディスアベバ近郊へ投下しましたが連合により迎撃されすべて撃墜されました」

 

もとより高々二個大隊規模の戦力で落とせる重要拠点などないのだ。MSというのは無重力下では起動性の高く汎用性の高い兵器だが、重力下では現状機動性が足りないのだ。軌道降下という奇策も、MSという新兵器も、地上では現状大部隊の火力に押しつぶされるだろう。だから反対したのだ。攻め込むならばプトレマイオスだったであろう。そして、月のマスドライバーから敵対勢力のマスドライバー施設を飛翔体で高速爆撃すればよかったのだ。そして悠々と、補給の切れた敵の拠点を落とせばいい。AOCのムーアがあるが、連中は中立状態だから食料などは『人道的見地』から送るかもしれないが、武器弾薬の類は送らないだろう。世界樹では彼らの艦隊が接収されたらしいし、他の理事国に持っている感情もいいものではないのではないだろうか。

 

「アフリカ共同体も不甲斐ない…どうして自国の主要都市上空を他国に抑えられているのか…」

 

「弾道弾迎撃システムとはそういうものです。第一、艦隊が展開すれば良いのですから、特に位置など関係ないのですよ。これでも、安全に投下できる可能性の高い内陸部の都市を選んだのですが、やはりスエズを押えられているのはいろいろな意味で辛いですね。」

 

「ならばスエズを攻略すればよかろう、ナチュラルの兵器など物の数ではあるまい?弾薬さえあれば可能ではないか?」

 

好き勝手言ってくれる…、というか、その弾薬を十分に届ける手段がないのにどうするんだ。大体なんで私がここに説明に来ているんだ。私は特務隊の隊長だ、本部のスタッフは何をしているんだ?重力下でのMSの運用試験は不十分だろう。プラントでは十分な試験など不可能だし、そうそう地球であんなものをばれずに試験する方法もない。

 

「無理です、ヴィクトリア降下作戦でも問題点が分かったように、連合の迎撃能力は非常に高いです。降下時の損耗率が50%などという作戦は兵を殺すようなものです」

 

「ではどうすればいいのだね?」

 

「高機動な地上戦用兵器の開発を…そうですね、バクゥの開発を急がせてください、あとは目標の変更を考えるべきですね」

 

現状地上で役に立つのはあれくらいだろう。ザウートだって使い方を間違わなければ有用である…間違った使い方をするやつしかいないが。ディンは正直考えたやつの気が知れない。一般書籍に載っている理事国が運用している戦闘機のスペックを叩きつけてきたがそれで学習しただろうか。それでもどうやって下すのか?という問題が付きまとうが。しかしバクゥだって我が国…プラントの生産能力では厳しいものがあるが…全力でバクゥの生産に振り向けて月産70機…。万全の状況ならば100機は作れただろうがあいにくとそうではない。もとよりギリギリまで効率化していたところから、一定数作業員を入れ替えたのだから効率の向上など不可能なのだ。まぁ、全生産をバクゥに振り分けるなど不可能だ。宇宙でも戦いは続いている。これでは十分な兵力が揃うまで半年はかかる。その間に地上の友軍は駆逐されているだろうな。

 

「ふむ…ユウキ君、その迎撃システムとやらを麻痺させれば問題はないのかね?」

 

シーゲル・クライン議長がおもむろに問う、確かにそうではあるが…。

 

「は…それはそうですが…まさかニュートロンジャマーを!?」

 

それこそ悪手だ、下手をすれば中立国の対プラント参戦を助長する。

 

「正気かシーゲル!!」

 

ザラ国防委員長が声を荒らげる。

 

「正気だとも、もとより連中は核を使ってきたのだ、今はそれを再び我が国へと撃たれることを阻止せねば…」

 

と、事も無げな顔で言う。『大丈夫かコイツ…』その瞬間に抱いた感情は間違っていないと思う。

 

「ではこれより、本部より立案されていた対地球侵攻作戦、『オペレーション・ウロボロス』を発動する。」

 

おい、本部、出てこねぇクセになんてもんを提出してたんだ…終わった、本格的に、もとよりこの戦争はどう負けるかであったのに下手をすれば生存競争になりかねないところまで来てしまった。と。クライン議長を称賛する評議員たちを見ながらユウキは絶望する。

 

「ユウキ、こっちへ来い」

 

ザラ国防委員長が私を出口から連れ出す。

 

「端的に言ってどうなる?」

 

もはや何もかもわかりきっているような顔で聞いてくる。

 

「どうなるも何も、敵が増えるだけですよ。最悪、AOCの参戦も予想されます。ついでに、ただでさえよくなかった我々への感情が氷点下、いや絶対零度まで冷え込みますね。最悪は降伏すら受け入れるか怪しいでしょう」

 

「やはり…か」

 

「まぁ、負けないための作戦計画や兵器開発計画は進めていますが、絶対ではないことを理解してください。理事国は核を撃ってしまったのだから引き金が軽くなっている、というのはおそらく違うでしょう。それなのに、あのようなものを撃ち込むことは反対ですね。ザラ委員長の心中はお察ししますが、復讐の念などに囚われてプラントの独立、という本分を見失っては元も子もありません」

 

あの、ユニウス7崩壊後の各国のちぐはぐ対応を見るに、あの核はおそらくユーラシア系の部隊の独断専行であった可能性が高い。何より『プラントの自演』とまで言い切った大西洋や、『情報が錯綜しており、判断を下す段階にない。現在ユーラシア、プラント双方により詳しい情報を求めている』と反応を保留にしたAOC、多少焦ったように『当然の報いだ』と言い切ったユーラシア。部隊単位で持ち出せるものではないのでもっと上層部が絡んでいるだろうが、少なくとも、国の総意ではないのだろう、今はもっと管理を厳重にしているはずだ。「命令にない核を撃った」という事態は軍として大問題だろう。核爆弾は、宇宙ではただの強い爆弾程度のものだが、それでも戦略兵器だ。

いまだに扱いは大きい。

 

「そうか、施政者とは辛いな、レノア…すまない。わかった、レイ、苦労を掛けると思うが頼む…」

 

「尤も、手遅れかもしれませんけどね…」

 

「そうではないと思いたいものだな…」

 

どこか遠い目をしているパトリック・ザラ国防委員長のつぶやきにユウキは何も言えなかった。

 

/////////

大西洋連邦 アズラエルグループ ムルタ・アズラエルオフィス

 

 

「ハルバートンの馬鹿野郎めぇ!!今は派閥争いなんぞやってる時か!!」

 

「アズラエル理事落ち着いてください!!」

 

アズラエルはマカボニー製の高そうな机に拳を叩きつけながら叫ぶ。それを秘書が慌てた様子で諫める。

 

「コホン…取り乱しました。しかし、予想外の事態です。どうしましょうか、アームストロング大将」

 

本当に困った、モビルスーツの開発計画に参加できない。軍産複合体を嫌う派閥が軍内にいることは知っていたが、ここまで嫌われているとは思わなかった。ジブリール並みに話が通用しない。どうして将官になれたんだ。

 

「どう…と言われましても、何もできませんな。ご丁寧に国内ではなくオーブを巻き込んでヘリオポリスで開発しています。おまけにオーブの長はあの狂犬です。どのようなオプションも『大国の圧力に屈しない』でおしまいでしょうね」

 

国民より理念の大切なあの狂犬相手に政治屋が取れる手段などありません。アームストロング大将は言う。

 

「ですよねぇ…しかし問題ですよこれ、MS開発計画を進めるのはいいのですが、見てくださいよ、この参加企業を、どこもそんなもの作れる技術はあっても量産化する体力はないじゃないですか。唯一モルゲンレーテだけですよ…これではオーブのほうが先にMSを量産化しかねないし、AOCとの規格も合わせられない…何よりOSを貰ったは良いにせよ使えない…と、まぁ控えめに言ってMSの投入が遅れそうなんですよねぇ…ここまでやられて、相応の対価を払って貰ったものをタダで差し出したくはありませんし、何よりオーブです。あいつらやらかしてくれました。」

 

非ロゴス企業のみが参加しているため、企業としての力など無きに等しいものだ、正直これらの企業が開発が完了するころにはモルゲンレーテに買収されていても驚かない、それくらいには、我が国にとって取るに足らない企業だ。国の掲げる技術協定のせいでわが社の技術が使われているのが腹立たしい。

 

「仕方がない…あまり褒められた方法ではありませんが、こちらも勝手に進めさせていただきますか」

 

 

「ハルバートンは腐っても艦隊司令です。潰れると地味に困りますから、まぁ、それが妥当でしょう。」

 

宇宙では士官がポコポコ死にすぎだ。まぁ、私のようなモグラには関係のない話ですが。とアームストロング大将が言う。

 

「デトロイトの私の企業を使いましょう、メビウス・ゼロの生産を行っている所ですが、まぁ、アレはもう十分でしょう。AOUからもたらされた設計図を我々なりにアレンジしたものは既に完成していますし、幸いにも、コネクターその他の規格は従来のものを使用していましたからね。多少新規格のものが含まれていますが、そのあたりはうまく折り合いをつけるしかないでしょう」

 

「仕事が早いですな」

 

「当然、今は戦時ですよ、エド・ハイネマンのように一晩で傑作機の線を引く天才は生憎といませんが、数週間あれば我々なりにアレンジする事位はできます。」

 

まぁ、デスマーチにはなったので相応にボーナスを支給させておきましたが、とアズラエルは続け、苦笑する。

 

「なるほど、やはり、頼りになりますな。そういえば最近甥っ子はどうですか?」

 

「元気にしていますよ、あなたに似て事務処理能力が非常に高いので重宝しています。」

 

よくあるコネ入社というやつである。アームストロング大将はコネはコネでも使える奴しか送ってこないのが救いだが。

 

「それはよかった、いやはや、軍には向かない性格だったのでどうしたものかと…」

 

「確かに、穏やかすぎますからねぇ…まぁ、あなたも軍に向いているとは思えないですが」

 

 

「ハハハ、よく言われますよ。ではこれで、開発の件についてはお願いしますよ」

 

「えぇ、こちらとしても、負けられては困るので、全力を尽くさせていただきます。」

 

アームストロング大将が部屋を出たことを確認し、アズラエルは仕事に戻るのであった。

 

 

/////////

 

 

 

「…マジかよ…」

 

「あー…因みにだが、向こうの反応は知らぬ存ぜぬだ。ある意味当然だがな。むしろこっちが逮捕した工作員どもを開放しろとさ」

 

「…こっちもこっちで公開したら恥だしなぁ…なんで入れたんだ?」

 

「オーブに理想持っちゃった連中は稀にいる。国籍離脱とかは構わない、むしろ歓迎なんだが国内で活動している連中もいるからな。迷惑なことに今回のような隠れもいる。見たところオーブへの留学経験があるみたいだ、洗脳されたか?」

 

「そんな大それたことはしてないんじゃないかなぁ…感化されたくらいじゃねぇの?で、とりあえず、大規模サイバー攻撃仕掛けといた。こんなところの脆さまで日本っぽいとか…」

 

「やめて、なんか悲しくなってくる」

 

あのスパイの飼い主は、オーブだった、なんでもアスハ家直属の影集団…の駒らしい、取り調べでも「あんな強大な力を持つ国は周囲を侵略しだすに違いない」とか「オーブ侵略の意思を見せているAOCの企みを事前に阻止しただけだ」という香ばしい発言を頂いている。まぁ、関係を洗って、オーブの諜報網の一部なりとも壊せたのはいいのだが、まさか白兎にまで根を張っているとは…というか誰がいるか、あんな扱い辛い民衆。

 

「力は力でしかないだろうに、使い道さえ間違わなきゃ良いんだよ。第一、うちの軍備って防衛特化…じゃ、なくなってたな。うん、外征の可能な軍備にはなっている、表面上はな。」

 

運用してみないと子細なところまでわからん。あと、扱う弾薬増えて補給担当者増やす羽目になったと防衛長官が言う。

 

「それでG01のデータを盗む…と?G01ってあれただの高機動型だろ?Gシリーズなら水中での戦闘を考慮したG02アスクレプオス(仮)か空戦型のG04ブラストじゃないのか?オーブ侵略するんなら、G01よりフラッグやドー…ソードフィッシュのほうが活躍するだろうさ」

 

「ツリー的に言えばムーバブルフレーム実験実証機から伸びているが、コンセプトとしては疾風を順当に高性能化しただけの機体だからな。七〇式のようなオプションもなしに空も飛べないし、海に落ちても、パイロットが整備班に恨み言吐かれながらデッキ掃除するくらいで済むだろうが…水中戦を想定しているわけでもない。やったらどんな不具合があるかわからんな。それとG02は火照(ホアカリ)に決定したぞ、詳しくは後で言う」

 

 

機能停止するとかそういうわけでもないが、水中戦をやらせる指揮官がいたら俺はそいつの指揮能力を疑う、と湯野教授は続ける。

 

「まぁ、専門の機体があるんだからそれに任せるさ。…で?これどうすんのさ?あまり大々的に追及するわけにもいかんし…」

 

スパイに侵入されたのは完全にこちらの落ち度だし、大々的に報道するわけにもいかない、正直手詰まりである。

 

「なんなんだろうなぁ…ホント…まぁ、向こうの要求に応えるのはナシだがな、これを機に大掃除と洒落込むか?」

 

「言われなくとも掃除中だ。というかオーブって防諜ザルな割にスパイだけ素晴らしいから謎…」

 

一人がある資料を皆に回す。

 

「オーブ・プラント秘密貿易協定…?あぁ、アレか。中立国だから表向きは交易していないことになっているけど、プラントの製品をラベル変えて売ってたとかそういう設定があったっけ…」

 

「文書にされてるんだな…そしてそれが漏れ出してるって…」

 

「秘密()」

 

「それ俺らが言ってもブーメランにしかならんぞ。まぁ、この情報は大規模サイバー攻撃仕掛けたその恩恵みたいなもんだ、取りあえずの行動だったが、まぁ、そこそこ使えそうなもんが拾えたもんだ。」

 

「…まぁ中立だし、いいんじゃねーの?兵器融通してるとかそういう話じゃないんだし。」

 

ナチに協力してたアメリカのいくつかの企業なんかよりは可愛いもんだろ、と誰かが言う。

 

「ある意味ウチも融通しているがな、ま、ほぼ強奪なんでプラント側も理解してくれているがな、むしろ向こうさんに勧誘されたぜ」

 

世界樹において兵器が接収された件について話しているのだろう。

 

「検討の価値すらないな、こちらのことを獣程度にしか思っていなくとも驚けないだけの行動をしてくれているだけに」

 

「だよなぁ…」

 

会議の面々は何とも言えないような顔でため息を吐くと、話題を切り替え、新たなGシリーズの情報でテンションを上げるのであった。




正直、宇宙線が飛び交う宇宙で核爆弾ってただの強い爆弾…まぁ、EMPは発生しますけどね。ついでに、核分裂を封じても、純粋水爆があるじゃない(据わった目)。レーザー核融合炉が実用化されているのにどうしてSF御用達のレーザー水爆が無いのか…。仮に条約などで装備が禁止されていたとしても、あの世界の振り切れた連中を見ているとニュートロンジャマーなんか投下されたら作っちゃうと思うんですけど…。小型化の問題かな…?

アームストロングさんはオリキャラです、ハルバートン准将のの対立派閥の長的な感じですね。原作では、MSの有用性を上層部が認めない云々がありましたがこちらでは半信半疑とはいえこの時期で認めているので、ちなみにアームストロング大将のイメージはゴップですw全然ストロングじゃねぇw

Gシリーズ

RX-G-02 火照(モデルはガンダムアスクレプオス)

武装
アイアンネイル
(内臓選択式武装)
90㎜機関砲
フォノンメーザー
ビームガン

ビームサーベル『小鴉丸』

ガンダムWデュアルストーリー、G-unitに登場したガンダムアスクレプオスをモデルにしたAOCのGシリーズ二番機、近接戦闘モードへの変形機構を備えており近接戦モードには水中戦闘能力もあるが、浅瀬での活動しかできない。

RX-G-04ブラスト(モデルはガンダムキュリオス)

57㎜高エネルギービームライフル『シューラ・ヴァラ』
ビームサブマシンガン『雷神』
ビームサーベル『小鴉丸』
クローシールド

各種オプションパック

ガンダム00に登場したガンダムキュリオスがモデルのGシリーズ三番機、GNドライブは再現されていない。現行の規格を採用した初の可変機であり、可変機用装備のテストヘッドとして作れらている。MS形態でも大気圏内での飛行は可能だが、推進剤を大量に消費するため推奨されない。


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phase12 降り落ちる厄災

誤字多すぎるなぁ…句読点とかも気を付けないと…。

これからリアルが忙しくなりますが、慌てず、エタらないよう頑張っていきたいと思います。


アジアオセオニア共同体軍第603技術試験大隊 旗艦対馬

 

うん、なんとなく理解できるぞ。技術試験大隊、原作で出てたのこれくらいだし、名前を使いたいってのは何となくわかる。MS他いろいろな兵器を利用するから、大容量のセレベス級とセレベス級改造の工作艦がつくというのもわかる。

 

「で…なんで俺がオリヴァーポジなんだ…」

 

私鶴野正史は今技術中尉として軍艦に乗っています。世話された就職先が軍の技術廠だったのだ。士官教育を一応受けたが部下を持つのは慣れない。技官は皆士官待遇だけど整備士とかを部下に持っているのだ。

 

「どうしたんだ?鶴野中尉」

 

「クリーブス少佐、いえ、今回テストする兵器の資料です。」

 

普段は格納庫周辺にしかいないのに士官の遊戯室まで足を運んだのは、試験大隊の隊長へと資料を渡すためだ。あとはブリーフィングの時間とか聞きだして戻ればいい。

 

「疾風用のビームライフルであっていたな?」

 

「えぇ、敵MSを撃墜するのに十分な火力を有しているはずです。」

 

「あぁ、そこんところは心配してないんだ。稼働時間は?」

 

「エネルギーパック方式を採用しているので稼働時間に影響はありません。緊急時用に本体からの電力供給で発射可能ではありますが、稼働時間への影響からあくまで緊急時用であることを忘れず、撃ちすぎないようお願いします。」

 

「了解した。ところで、君の機体だが、少し私が乗ってみても構わんかね?」

 

僕の機体、というのはムーバブルフレーム技術試験実証機である。一応、MSを与えられている。アーガマ級は規定では中隊規模のMSを搭載しているが、それで二機分の余裕がある。本来は予備機体用のハンガーだが、そこに置いてもらっているのだ。パイロットとしては予備人員となっているので、万が一の場合は出撃しなければならないだろう。そんなことがあるとは思いたくないが。

 

「え…、あぁ、構いませんよ、疾風と大して性能差はありませんが。」

 

変わっているのはマグネットコーティングとかコクピット周りだ。そして、マグネットコーティングなんか使わなきゃいけないほど頭のオカシイ機動をする人間を今まで見たことがない。疾風で事足りるのだ。まぁ、乗り心地はいいんだけど、それは陸上でしか影響しないだろう。

 

「それでも乗ってみたいもんさ。一応、疾風はあれのダウングレード版なんだろ?」

 

「ダウングレードという表現は正しくないですね。あまり必要のないと判断された機能を削っただけですから、フレームの性能自体は低下していません。むしろ出力重量比の関係で機動性は向上しています」

 

「なるほどな、まぁ乗ってみたい気持ちは変わらんが。それにこれのフレーム、ハイエンド機シリーズのベースになってるんだろ?」

 

大西洋連邦よりもたらされたG兵器関連の技術。それを使って、今AOC版Gシリーズが開発されている。何かとケチのついてしまった機体ではあるが、一番機がそろそろロールアウトするのだったか?早すぎる気もするが、元々試験機として遊びを持たせて作ってあったフレームに、それなりの期間ハイエンド機に対抗しうる機体として改修の余裕をもって作られた設計だ。PS装甲は重いから高機動型に使うには厳しいものがある気がするが、「当たらなければどうということはない」なんて言うのは簡単だが、最低でもエースと呼ばれるパイロットでもなければ実行できないだろう。僕は多分無理だ。

 

「確かに、この機体のデータが使用されていますが、それは疾風も同じことです。まぁ、あちらは限界まで性能を高め、エース用のピーキーな機体になるらしいですが…」

 

「俺に回ってこねぇかなぁ…娘に自慢できる。」

 

クリーブス隊長、技量も高く、指揮官としては理想だけど。…その、親バカだ。娘が二人、ムーアにいるらしく、よく自慢話をしてくる。

 

「モビルスーツの差や、パイロットの差が決定的な戦力差にはなりませんよ。疾風でもジンには十分に対抗可能です。重要なのは戦術と連携、それと指揮官の腕ですね。だからと言って奢るのは駄目でしょうけど。何もエース機に乗らなくったって大丈夫ですよ。」

 

「モビルスーツの差が戦力の決定的差ではない」このセリフって地味にフラグだよね、一矢報いたの一人しかいない。シャアは性能のせいでとどめをさせないし、いつの間にか情けなくなってるし。スティングに至っては量産機に落とされてやんの。あ、自分が負けることで証明したのか、盲点だった。

 

「言ってくれるじゃないの…。ま、そうだな。でも今こいつら情報封鎖中だがな」

 

一応、我が国がMSを開発しているというのは機密中の機密である、人の出入りが制限できる拠点でしか開発していないのだ。

 

「それは仕方ないということで。」

 

「だな」

 

お互い苦笑していると突然放送が入る。

 

《艦橋より各員。地球において大規模な通信障害が発生した模様。当戦隊は至急、コンペイトウまで帰還する。パイロットは総員、第二戦闘配置。ブリーフィングルームにて待機せよ》

 

あぁ、今日はエイプリルフールだったか。

 

「エイプリルフール…ってわけじゃなさそうだな。急ぐぞ、中尉」

 

「はい」

 

ブリーフィングルームへ行くと、副長が壇上に上がっていた。

 

「クリーブス少佐、鶴野中尉、遅いぞ。」

 

「すみません副長。で、何があったんです?」

 

「プラントの連中、世界樹で使った大規模通信阻害兵器を地球に投下したらしい。鶴野中尉、アレが何か技術部は把握しているのかね?」

 

「おそらく通信阻害機能は副次的なものであり、本命は核分裂反応を抑制するものではないか、と推測されています。原理や構造は全くわかりません」

 

はっきり言って、ニュートロンジャマーの機能はオカルトじみていたのだ。どんな物を使えば良いのかさえ判明していない。

 

「それは…マズいんじゃないか?」

 

「えぇ、マズいですね。我が国の国土も気候はともかく、核融合炉に転換できていない主要都市以外のインフラのストップは免れません」

 

核融合炉へと転換中、これだけ聞くと損害は出ないように思えるが、核融合炉に転換できている地域など主要都市とその周辺の人口密集地帯程度である。多くが核分裂炉を使用しているのだ。

 

「…前々から思っていたがあのZAFTという集団は正気なのか?戦争などもとから狂気の産物だと言えるだろうが、だからこそ理性的に行わねばならぬのに…これでは…」

 

「下手をしなくとも生存競争になるだろうな。連中よほど死ぬのも殺すのも好きと見える。圏外圏ででも勝手にやってくれると助かるのだがな」

 

「全くだ。戦争だってやっていいことと悪いことがある。少なくとも建前上はその方が都合が良い。味方にとってもな。」

 

「ま、連中の場合、条約に加盟していないし、忠実に守っていたとしても戦後色々難癖つけられそうだがな。」

 

「勝つしかないにしたってこれじゃあなあ…、正直引くわ。つーかコレ、ウチも参戦する可能性あんじゃねーの?」

 

各艦の艦長や副長たちが砕けた様子で会話する、転生者がいる影響の一つらしい、あまりよくないのではないだろうか?

 

「鶴野技術中尉、で?これへの対処方法はないのか?」

 

「現状ありません、そもそも理論すらわかっていない代物です。開発するにしてもこれからです。」

 

「あー…では…」

 

「はい、少なくとも、億単位の死者が出ることが推測されます。わが国でも動力の移行の済んでいない病院などに入院している患者などに犠牲者が出るでしょう。」

 

石油、石炭の枯渇はコズミック・イラに入る前の出来事だ。恐ろしいことに、病院などの予備電源にすら原子炉が使われている。核の恐ろしさが知れる前の人達が想像していた未来社会だな、CEって…。水素燃料を使った発電機や燃料電池もあるが、インフラの関係で十分な水素が行きわたるのは難しいだろう。

 

「ふむ…これは、ウチも巻き込まれる…か?」

 

「ないと思いたいなぁ…、終わりかけとはいえ装備更新中だし…最悪秋まで待ってって感じだなぁ…反攻が可能なのは来春だし」

 

「戦えんわけではないぞ。というか、何らかの報復措置は取ると思われるな…」

 

「まずは復興だろ、宇宙から物資の降下をさせるべきだ」

 

「すでにムーアの第4艦隊が積めるだけ物資を積み、できる限りの民間船を伴って急行中だ。発電機や毛布、衣料品などを降下させる算段らしい。支援要請を受けて大西洋連邦の西海岸地域にも落とすらしいな」

 

既に多くの艦隊が、地球の救援に動いているらしい。ムーアやコンペイトウでは、当初の予定通り、燃料電池や水素内燃機関工場、水素工場などが全力活動しているようだ。

 

「動きが早いな…、大西洋も。あの国、本気モードか?」

 

「ま、こんなことやられて本気にならないわけがないだろ。あのべいてーさまだぜ?」

 

「リメンバーエイプリルフールってか?確実なエネルギー生産拠点はうちのムーアとコンペイトウ、あとヘリオポリス…はなんかオーブが勘違いしているから使えんか。兵器を売ったりしなきゃいいのにさ」

 

「まぁ、勘違いしてくれていたほうがいいだろう。うちの儲けが減る。というか俺らは関係ないさ、ただ任務をこなせばいい。今の段階ではそれでいいはずだ。では解散、みな業務に戻れ。」

 

艦隊司令がそう纏め、緊急ブリーフィングは終了する。参戦のタイミング…教わってなかったな…。たぶんそのうちするだろうけど。

 

/////////

 

4月14日 大西洋連邦 ムルタ・アズラエルのオフィス

 

「何とか一息つけましたか…」

 

彼の机の周りには、エナジードリンクの缶や書類が散乱している。アズラエルの顔も色濃く隈が浮かんでいる。彼はこの二週間、ほぼ不眠不休…厳密には1時間くらいの仮眠や食事を何回か挟んでいるが…で国の産業が受けた被害を処理していた。

 

「しかし、AOCからの支援がありがたいですね…この発電船はかなり便利です。彼らの国は災害が多いですからこの手の装備が充実しているのはうらやましい…。先ほどの報告では融合炉も重水素生産設備も複製可能とのことですし、ライセンスも契約しました。急いで増産しましょう。先ずはインフラの復興です。武器が無ければ勝てるものも勝てません。」

 

各部署にメールで指示を飛ばしながら。他の企業が受けた損害の書類に目を通す。

 

「あ…こいつらつぶれてやがるじゃありませんか。ハルバートンざまぁ…、じゃあ済みませんよねぇ…」

 

MS開発に関わっていた非ロゴス系の企業がいくつかつぶれていた。元々企業体力のない企業だったのでさもありなんである。

 

「こちらでも、試作機が地上試験中。パナマは動かしている余裕がないから…昇竜で宇宙に上げて…まぁAOCに見られても大した問題はないでしょう、大体渡したものしか使っていませんし…それで宇宙試験は…。それから…ダメだ…まともに頭が働か…ない…」

 

アズラエルが机に突っ伏し動かなくなる…。秘書は何かが倒れた音がしたので、アズラエルの執務室に入ると「あぁ、ついにか…」とでも言いたげな顔をして、どこかへ連絡し、彼を運ばせるのであった。

 

 

 




王大人「アズラエル、死亡確認」

レーザー通信は使えるというのは独自解釈です電波ではありませんしニュートロンジャマーは妨害電波のようなもので、可視光線を阻害するようなものではないと解釈しています。


実際ニュートロンジャマー投下って最悪に近い悪手ですよね、奇襲効果こそ絶大でしょうけど。エネルギー危機だけではありません。食糧輸送の混乱や、各種インフラの停止は免れません。ヘタに長く続く分、感情もそれはそれは悪化するでしょうね。ちなみに、勝手に考えたパトリック・ザラの想定していた作戦だと「物凄く都合のいい想定で、グロス単位で奇跡を起こさないとならないけど。敵の宇宙拠点を制圧、または遊兵化して主要都市や生産施設を軌道爆撃。ジェネシスの完成をもって公表し、それをタネに独立を認めさせる。分取った宇宙拠点は維持できないので適切な値段で返却。できることなら戦力の制限、最悪でも通告義務くらいは欲しい。払いたくないが、施設代を払うのも仕方ないかもしれない。独立すれば取り返せるはずだ」です。突っ込みどころは多々ありますが、とりあえず死人はシーゲル案より少ない。といった感じでしょうか。


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phase13 クライシスの影響

CE70年5月14日 AOC首都スラバヤ 会合

 

「うわぁ…。これどうすんよ?」

 

「覚悟決めるしかなかろうに」

 

「あー、その話題は後だ。既に答えが出かけてるし。まずはエイプリルフールクライシスの損害についてだな。頼む」

 

官僚の一人が席を立ち、スクリーンの前に来る。彼の部署が今回の損害のデータをまとめていたのだ。

 

「まず、直接的な被害についてですが。落下したニュートロンジャマーの影響により、各国で243名の死者が出ています。そして、その後の電波障害、エネルギー供給の停止などにより、現在わかっているだけで約69億3000万、我が国の領内では13億4000万人がいまだエネルギーの行き届いていない生活を余儀なくされています。いまだ把握のできていない地域やそもそも把握の不可能な地域のこと、二次災害も考えると地球人口の一割が死亡、という原作の数字が現実味を帯びてきましたね」

 

地球人口は原作では100億強、なので約10億が死んだことになっている、この世界でも全体人口は増えているが地球人口はほぼ変わらないので同じだけの死者が出てもおかしくはないだろう。

 

「そうか。で、現在の対応は?」

 

「物資は十分な量がありますが、交通機関の乱れなどにより十分に行き届いていないのが現状です。」

 

「開戦までだが海軍の艦船をエネルギー供給に回している。尤も、新型の大型艦艇にしか核融合炉は積んでいないから使える船は限られるが…あと重水素生産施設付き発電所船はいいアイデアだった。尤も数は少ないがね。政治的取引で三隻、我が国じゃ使えなくなったし」

 

「陸軍からは水素火力発電式の発電機を供出している。まぁ…避難所一つに何機か置かなきゃ賄えないだろうし数も足らんがな、燃料輸送の問題もある。思っていたより統制は保たれているが…。まぁ、どうしても無理な地域には陸上戦艦ごと行ったりもしている。威圧効果抜群だからな、暴動鎮圧に役に立つぞ…コスト的に割に合わんが。」

 

「空軍は物資輸送をやっているが、輸送機が足らん。幸いにも、熱核ジェットエンジンの普及率は理事国中ワーストだったが、それでも足らん。運べる量も気休めでしかない。大型飛行艇や大型輸送機もあったが数は少なかったしな。ガルダやガウとは言わんが…ミデアくらい作っても良かったんじゃないのか?」

 

「宇宙軍は現在物資を降下ポッドにより降下中。まぁ、食料品や医療品が中心だな。水素工場、宇宙じゃ意外と少ないし。内燃機関は当然ご法度だし、排出物の水が馬鹿にならんってんでコロニーじゃエレカしか使えんし。宇宙作業用のポッドやオッゴにしか使わんからな。重水素工場に設備更新をほぼ完了しているのがな…。各軍事拠点は重水素の貯蔵に入っているし。すまんが無理だ。しかし、かぐやからのヘリウム3輸出は継続して行う。木星船団はせめてあと一国理事国クラスを巻き込まんといけないしな。当分は月からの補充になる。」

 

「要するにさっさと核融合炉を配置しろということだな。予定通り、海軍艦艇用として作っておいた核融合炉を民間に回すぞ。それから輸送機の件は了承した、後々検討しよう。導入は先になるだろうが。」

 

戦争が起こりそうな時に何かをやろうとすれば、軍事費に紛れ込ませるのが一番いいのだと言って、タクシンは海軍艦艇用の核融合炉を必要以上に生産し、エイプリルフールクライシス後の救援に回す計画を立てていた。

 

「その辺は了承している。大型艦艇の建造計画はしばらくないし、しばらくは内燃機関を使用した小型艦艇の充実を図るつもりだ。重水素工場、水素工場の稼働具合は?」

 

「問題なく稼働中だ。大体、発電所とセットだしな。石油石炭天然ガスが枯渇し、内燃機関の規制が厳しく発電所に使えないとはいえ、水素燃料を使用した内燃機関はいまだに多く利用されているし、燃料電池にも使うからな。」

 

「…さすがに表立って行動するわけにはいかなかったし、これが限界か。これからもできる限り損害の軽減に努めてくれ」

 

「でだ…さすがに世論が沸騰してるんだよねぇ…はぁ…、このタイミングで参戦か?」

 

まぁ、億単位で人が死ねば世論の一つや二つ沸騰するだろう。いかに情報統制をしようと思ってもそこらへんは生活に直結するし抑えきれない。

 

「なんだかなぁ…戦争できないわけじゃないが…、もう少し間を置きたいな。というか連中マジで生存競争でもする気か?勝っても先がないだろうに…」

 

コーディネイターは製造を禁止して放っておけば種として立ち行かなくなる、これがAOCの見解だ。いかに優秀であろうが、そのうち子供が生まれなくなってしまう。それで終わりなのだ。もちろん、その辺の遺伝子をコーディネイトする方法とかが発見されれば話は変わるが。

 

「そのくせ連中ハーフとかも差別してるしなぁ…最後は鉄の子宮から延々とクローンを生み出すのか?SFだな」

 

「そもそも人間が宇宙に進出している時点でSFだろうに。軍としては地球連合軍に参加するのは構わんが、足並みをそろえられるのかね?特に東アジア。」

 

「普段のアレはプロレスみたいなもんだし、こんな事態になっては足並み揃えられないと…いやこんな事態だからこそ足並みがそろわんか…」

 

タクシンが頭を抱え溜息を吐く。統制を取り戻すとともに、1も2もなくプラントへの報復を叫んだ東アジア共和国のことは伝わっているのだ。まぁ、殴られすぎててそうでもしなきゃ国が危ないのだが。

 

「まぁ、そうなるな。連中、メンツを大切にするところは旧時代から変わらん。こんな強烈に殴り返されたら、それこそ足腰立たなくなるまで殴り倒さないと国民が納得しない。まぁ、熱核ジェットエンジン普及率ナンバーワンで、まともに飛べる航空戦力が導入したてで1個航空団しかないスピアヘッド。という時点でマズいを通り越しているんだが…」

 

「VTOL機は離陸場所を選ばないのがいいけど燃料バカ食いだしな。」

 

「だからプラントすべて吹っ飛ばしても大損だろうに…、あー。この戦争ホントふざけてる…敵も味方もろくなのがいねぇ…」

 

「参加者が誰一人理性的じゃないからな。原作に比すると、大西洋が比較的冷静だな。うちの救援物資が効いたか?ともかく、外から見てると普段じゃ考えられないくらい冷静になれるな、」

 

「まぁ予測してたけど東アジア、ユーラシア連名での参戦要請だ。よほど堪えたらしいな、航天降下作戦とアレクサンドリア基地が」

 

「そのまま冷静になってくれればいいものを。どうしてそう熱くなるかねぇ…」

 

4月2日、原作ならばカーペンタリア制圧作戦が行われた日だが、この世界では、チベットにザフトが降下したのだ、同時多発的に数か所に降下した部隊により、四川、雲南がザフトに占拠されてしまった。アレクサンドリアは元々ZAFT寄りだったアフリカ共同体がザフトに基地を提供、現在潜水艦部隊などの錬成が行われている。

 

「不甲斐無さすぎやしませんかねぇ…。混乱していたとはいえマスドライバー押さえられたとか…」

 

「ZAFTもなかなか本気っぽかったしな。推定MS400機、戦闘機150機、現在予想されているザフトの戦力の2割を投入した一大作戦だ。混乱のさなかでは厳しいものがあったんだろう。これ防げてたら後々楽になったんだろうけどなぁ…」

 

「作戦によるZAFTの損害は不明、か。偵察衛星じゃそこまで把握できんしな、降下物資だって、中身が見れるわけじゃないし…。まぁ、降ろしてる数的にあんまり損害はなさそうだ。不甲斐ないったらありゃしない」

 

「制空権すら覚束ない上、兵器の性能で上回られちゃあなぁ…。仕方のない結果だろうさ。まだ空取れてりゃどうにかなるんだが。で?ZAFTの動きは?」

 

「アフリカのZAFTは当面はジブラルタルとビクトリアを目標にするようだな。中国の方はおそらく海南島への進出を狙うものと思われる。あそこ落せば華南地域に有力な拠点はないしな。」

 

「…アフリカはともかく、中国はまずいな」

 

「ま、止められなきゃうちの領土が接するからな。とりあえず六三式のセールスしてきた、かなり売れたぜ」

 

「あれ実際どうなの?原作でもあまりいいイメージないんだが…」

 

「恐らくは数発当てれば確実、一発でも当てりゃ小破判定は確定だな。関節部なんかを狙えば一発で擱座させることも可能だろう。もとより他国や反政府勢力への供給がメインになるはずだった武器だ、そこまで威力を高くはしないさ」

 

「うわ、微妙…。でも一応歩兵の使える武装としては破格…か?ジンにはSマインや対人機銃もないしな。76㎜じゃ厳しいものがあるだろ、なんで対人火器つけなかったんだか…。12.7㎜でもあるとないとじゃ結構違うんだぞ」

 

「ジンオーカー用に37.5㎜突撃機銃が開発されているのでそのあたりも考えていたのではないでしょうか?」

 

「結局手持ちじゃないか…。というか、口径的に対人ではないだろ…。てか威力的に対戦車とか大丈夫なのかそれ」

 

「さぁ…?トップアタックが可能なのは変わらないので大丈夫なのでは?」

 

未だ登場すらしていない兵器の性能を考えても無駄である。ジンに関してはある程度推測をしていたが、それでも予想通りとは限らない。

 

「まぁ、国力差の都合上、歩兵なんか溶かされるだけだし…。、まぁ、ZAFTがMS偏重主義の軍だということはわかっている。歩兵の携行火器は最近は携行対戦車ミサイルあたりが最高だったしな。それが防げればいいという計算だったんだろうさ。でも航空戦力はもうちょっと頑張ってもよかったんじゃねぇ?」

 

「スピアヘッドって知っての通り新型なんだよ、スカイグラスパーもな、東アジアじゃ海南島にしかまだ配備されてない、こっちのコスモファルコンやワイバーンは売れなかったしな、ついでにメディアでガンファイターで水素ジェットとか旧時代の遺物と馬鹿にされてたし…。」

 

「うーん…。部品の規格は合わせているから、今からくれと言われても問題はないとは思いたいが…。売るのに抵抗あるわぁ」

 

「完全に統一しているわけじゃないから一から導入となると厳しいもんがあるだろうな、それでもNJのせいで必然的にガンファイトが復活しちまったんだから旧来のミサイルキャリアーじゃ厳しいもんがあるんだろ?そもそも飛べない熱核ジェット機は考慮に入れずとも。」

 

「だからスピアヘッドなんだが…大西洋ではスカイグラスパーの生産も順調と聞くしこちらに来ることはないだろ?」

 

「あー、まぁ六三式が売れただけ良しとするか…」

 

「六三式のセールスはマジで順調だな。あんなの、使う方の気が知れんのだが…」

 

「カーペンタリアに奇襲降下されたら使う羽目になってたんだぞ…。それがなかったせいで、ニル・マーネルもメラティもやまとも宙に浮いちまったんだが…。クソ…、俺たちのヤマト計画が…。南アフリカにでも売る?」

 

「まだ、カーペンタリア降下がないとは限らんし、南アフリカには運用できんだろアレは…。うーん…まぁ、後で考えればいいや、まさかアフリカの砂漠で陸上戦艦同士殴り合おうなんてのも…」

 

「61㎝砲を運べると考えればいいだろ」

 

「どこを砲撃するんですかねぇ…」

 

「アレクサンドリアじゃないの?」

 

「いや、戦闘に耐えうる物資積んだらスエズマックス超えてるから、喜望峰回して運ぶほどのもんじゃないだろ。陸上戦艦は使えるかもしれんけど」

 

「…じゃあオーブ…しかないじゃん。万が一関門に直撃でもしたら笑えないから、まっさかパナマで使うわけにもいかんし。アラスカはサイクロプスだし…。終わったら記念艦にでもする?」

 

「ずいぶんと働いてない記念艦だな…。というか、こいつらを普通に作って運用できる辺り恐ろしいんだが…」

 

「ガンダム時空の軍隊の謎の生産力と後方の能力なめんな。あのオーブですら防衛なら地球連合に短期間とはいえ対抗できたんだぞ。そもそもが我らがAOCは宙地合わせて人口約40億の高度に工業化された国家だ、まぁ今好き勝手できるのは先人のおかげだ、感謝だな」

 

「いや、その辺投げ捨てられても困るんだが…」

 

「事実回っているからいいじゃないか。というか、そうでもなきゃザフトのほうが説明つかないんだよ、いくらコーディネイターが優秀でもな…すでに特定業種についていない15歳から40歳まで男女かかわらず動員?戦争する前に国が亡びるだろ普通。しかもたった開戦5か月でだ。」

 

深淵を除くような目でタクシンが言うと、会合の皆が少し引く。経済の専門家を謳う彼にとって、ZAFTという存在はなかなか堪えるらしい。

 

「…深く考えないようにしておこう」

 

「そうだな、アニメだもんな」

 

「俺らにとっては現実なんだが…まぁ、考えたら負けだろうな、事実社会は回っている、それでいいじゃないか」

 

多分これは触れちゃいけないことなんだろうなぁ…。と皆思いながら強引に自分を納得させる。

 

「うん、触れちゃいけないことってあるよね…」

 

そういった古賀宇宙軍司令長官のつぶやきに皆、深くうなづくのであった。

 

/////////

 

アズラエル財団 理事代理オフィス

 

「まったく…あのバカ息子はどこまで抱え込んでいるんだ…」

 

死にそうな顔で、ブルーノ・アズラエル理事代理は呟く。頼りになりすぎる息子に事業を譲って隠居して早5年。フロリダで悠々自適の隠居生活を送っていた身にこのデスクワークの量は堪えるのだろう。

 

「スターリング・オードナンス社より、試作型MS用携行火器の完成報告…こちらはAOCの主力火器と規格を合わせているのか…ふむ、威力は現在試験されている52㎜よりも強力。海兵隊に気に入るやつが多そうだ…。これはアバティーンに送っておこう。ヴィッカース・フェランティ社より新型MAの提案…なんだこれは、私の処理する仕事ではないだろう。…技術部署に回しておけ」

 

まぁ、頼りになりすぎるせいなのか、何もかも抱え込んで倒れた時には、各方面から怒られた。それに関しては、あいつの秘書にナタリー(あいつの妻)を置けば大丈夫だろう。あのバカ息子はナタリーと娘のゾーイに頭が上がらんし。そのことを告げたら顔を真っ青にして拒否していたがいい気味だ。部下を信用しないで仕事抱え込んでぶっ倒れる経営者なんて、それくらいの措置があって然るべきだ。大体、かわいいかわいい孫に「パパ…いつ帰ってくるの?」なんて言わせるバカ息子なんて思春期の娘に「パパなんて大っ嫌い!!」って言われて自殺したくなればいいのだ。…疲れているのかな…。そろそろ休憩するか…と思い、コーヒーを頼もうとすると電話がかかってくる。

 

「私だ」

 

「あー…父さん?」

 

「ムルタ、お前…」

 

あれほど休めと言われてまだ仕事の心配か…。旧世紀の企業戦士というやつなのかお前は…。まぁ、後ろで小鳥のさえずりや川のせせらぎが聞こえているあたり、きっちり強制的に連れていかれた保養地にはいるのだろう。

 

「妻や娘には言わないでくださいよ…。どうしても気になることがあったので…」

 

「…はぁ…わかった。何が気になるのだ?」

 

「試作MSを昇竜で上げる計画を立てていたのですが、どうなりました?確か途中で気を失ったと思ったんですけど…。」

 

「あぁ、それなら、ドクトリンの変更により小規模改修が加えられることとなって先送りになったぞ。パイロットだけはAOCの世話になっているがな」

 

現在、AOCのトウカを使って訓練中らしい。ああいうMS、こちらでも作るべきだろうか…。いや、戦争が終わってからだな。様々な機種を作る実験はAOCがやってくれている。こちらでもする必要はあるだろうが、戦争中にそんな余裕はない。あれはあちらが初動が早かったからできた行為だ。もちろん、戦後は機種をいくつかに収束させていくのだろう。尤もそのあたりを考えるのは軍の仕事か。

 

「わかりました…。それで…何もしないというのはかえって苦痛なのですがどうすればいいのでしょうか?」

 

学生時代から勉強一本、就職しても仕事人間だったからそりゃそうだろうな…。ある意味私の責任なのだろうか。

 

「知るか…と言いたいところだが、休ませないといろいろなところに怒られるのは私なのでな…。そうだな…保養地にとどまるのが嫌ならば旅行でもすればどうだ?AOCの日本州にある温泉施設などは、疲れた時にいいはずだぞ?フジタあたりに話せばいいところを取ってくれるんじゃないか?…というかゾーイをどこかに連れて行ってやったらどうだ。せっかく休みが長期間とれたんだ。普段一緒にいてやれないんだから、こんな時くらいしっかり構ってやらんと嫌われるぞ…。まぁ現状、テーマパークなんかは動いていないがな。」

 

「そうですね、生憎とキャンプなんかもやったことがありませんし…うーん、旅行しかないですね。フジタさんにいいホテルをとってもらいましょう。AOCは、大都市付近ならば比較的余裕があるでしょうし」

 

「そうするといい。戦争中だが、まぁ、休養は必要だ。もとよりお前は働きすぎなんだ、多少のバカンスをしたってバチは当たらん。」

 

「働きすぎって…、何を言ってるんです父さん。僕は「いいから休め!!倒れられるほうが迷惑だ」…わかりました。」

 

多少強く言い含めて電話を切る。まったく…、成人してからのほうが手のかかる息子だ。…あまり構ってやらなかったせいもあるのかもしれんが。子供時代にちゃんと向き合っていれば、ここまでワーカーホリックになることもなかったのだろうか?

 

/////////

603技術試験大隊 旗艦対馬

 

 

「試験結果は良好、課題とされていた冷却性能もラジエータの換装により解決。…とりあえずデータの収集は完了、あとは量産に向けての細部の調整と、シミュレータへのデータ実装…は、別部署の仕事か」

 

第603技術試験大隊は、ビームライフル及びその他ビーム兵器の試験を完了。AOCはMS用携行ビーム兵器の量産化に一歩進んだ。…いや、ホント、原作の603みたいにあまり期待していない兵器を与えられるよりもかなりマシだ。…忙しいのが難点だが。

 

「で、現在予定されているタイムテーブルだと…、ビーム兵器を参戦直後から部隊単位試験配備して行き…。完全実戦配備は来年3月、原作ではモラシム隊とアークエンジェルがやりあっている頃か…。早いな」

 

まぁ、戦争に参戦すれば、全力とはいかないまでも軍の物資にかなりのウェイトが置かれるのだ。ありえない話じゃない…のか?まぁ、一通り手は出せるとはいえ、どちらかというとMSのフレームのほうが専門なので詳しいことはわからない。

 

「ま、反抗作戦には間に合うのなら良いのか…」

 

戦略とか政治とか、最低限レベルならわからないわけじゃないけど、関わる話でもないし…。とりあえず目の前の仕事をこなせばいいのである。まぁ作りたいMSの案を温めていたりもするのだが。




どうしてMGジェガンはいつになっても出ないんだ(血涙)。出たら一個小隊分くらい買うのに…。

なんというかその…東アジアが貧乏くじを引きました…。と、いうかZAFTにとってユーラシアと東アジアのマスドライバーの制圧は急務だったりします。地上に保管してある純粋水爆が宇宙に上がってきちゃうので…。しかし、雲南、四川の地形ではバクゥよりもディンが活躍しそうです…森林地帯ならともかく。岩山ではバクゥの機動性は死ぬでしょうし。まぁ、制空権があるのなら。の話ですが。原作では理事国で国土への侵攻を許していたのはユーラシアのみですが、本作では東アジアもそうなります。というか、現状AOCが厳正中立(水面下で地球連合寄り)の時点でカーペンタリア制圧はあり得ないのです。何もない場所だとは言え国土を侵略されて黙っている国などありませんしね、普通。


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phase14かぐや襲撃事件

シャア専用ロードバイク…?…なんだって赤くすればいいわけじゃないでしょう!!

まぁさすがに35万は無理だ、自転車の趣味もないし。

HGUCイフリートシュナイド…だと…。MGアドヴァンスド・ジンクスは00 10周年企画の一環でしょうね……できればジンクスⅣを…。獅電系はお手頃で見た目も好みで買いすぎてしまって…でも雷電号は欲しいような…。



6月1日 かぐや外縁 ヘリウム3採集施設付近

 

「こちらウォッチャー4、定時報告。戦闘の光絶えず。流れ弾は5キロ以内に着弾なし。オクレ」

 

「ウォッチャー0了解。引き続き監視を続行せよ。通信オワリ」

 

よりにもよってこんな近くで戦闘しないでもいいだろう。月は地球より小さいとはいえ広いのに。と思いながら、ホァン軍曹はムーンRCVの見張り用ドームから顔を出す。強化ガラス製の保護ドームがくっついているもので見張りに用いられるものだ。それでヘルメットなしでも見張りが可能だ。規則上、ノーマルスーツの着用は義務付けられているが、彼はそれが好きだった。時折、宇宙が青く見える気がして。上司に話すと、なにやら慌てたような反応をされ、なんだか上の人に報告されたり、ムラサメ研を名乗る軍内の研究施設に連れていかれもした。きっと厄介なものなのだろうが、それでもこれは止められない。一度見てしまえばあの青に心を奪われてしまう…。何を言っているのだろうか、私は。

とにかく、現在我々のほぼ50㎞程先では戦闘が行われている。ZAFT軍がローレンツクレーターに拠点を作り、プトレマイオスクレーターへと侵攻、それを防ぐために月面で戦闘が行われている。…月の基地を陥落させたいというのなら間違いではない。防衛火器がその面にあるものしか使えなくなるから。しかし、月都市群は基本的に地球の国家に自治区として所属するが、国際法上は中立地帯ということになっており、普通ならばこの方法が実行されることはないのだ。まぁ、攻略方法を研究していない国はいないし、軍事拠点の無い月面都市はないから有名無実化されているといえばそうなのかもしれないが。

 

「軍曹、何が見えます?」

 

「戦闘の光」

 

「ですよねぇ…」

 

運転席にいる二等兵が残念そうに呟く。

 

「あぁ、防衛部隊とは言ってもこんな哨戒任務だなんて聞いてませんよ‼モビルアーマーや戦車、最近話題の新兵器に乗りたいのに…」

 

「そうは言ってもだな、普段使ってたドローンがオシャカなんだから仕方なかろうに。それから、これだって重要な任務だ。その内オッゴが配備されると言う話もある。そう気を落とすものでもない。戦争というのは、前線にいる何倍もの人間が後方にいる。我々はそういう役割を与えられた。それだけだ」

 

新兵にありがちな英雄症候群か。と、ホァンは二等兵の状態を結論付ける。そうそう英雄に成れてたまるか。新兵の時に、事故でおなじ班の一人が死んだとき感じた感覚から、ホァンは前線に出たくなかった。あの形容し難い感覚を二度と味わいたくなかった。尤も、事故の救助でその感覚を感じかけた時は、要救助者を見つけることができてそれに感謝もしたが。第一、機動兵器に乗りたいのなら士官学校に行けばよかったのだ。士官でも無ければ任されて戦車だ。それも、装填手から。一人で操作する以上、そいつにかなりの判断能力の要求される機動兵器は士官の乗り物だ。

 

「ん?こちらに近づく推進光を確認、パターン照合…。ザフト軍のモビルスーツ?故障か?二等兵、運転代わるぞ。お前はウォッチャー0に通信、応援を呼べ」

 

と、言っても来るのは哨戒部隊では無いだろう。ヘルメットを被る嫌な予感がする。

 

「あー、接近中のZAFT軍、こちら、かぐや所属、哨戒部隊。貴官は我が軍の哨戒範囲に進入している。退去されたし」

 

返答がない。つまり、通信器機や誘導関係の故障か? いや。

 

「二等兵、舌噛むなよ!!」

 

ムーンRCVを急発進させるとその位置に敵モビルスーツ…ジンだったか?が持っていた機銃が着弾する。撃ってきやがった!!

 

《ヒャハハハッ!!死ねぇ!!ナチュラル!!リーナの仇だ!!》

 

「っ誰だよそれ!?知るか!!」

 

「おい二等兵!!ふざけてる暇があったら本部に応援を催促しろ!!」

 

おそらく全周波数でこんな感じの呪詛をばら撒いているのだろう敵パイロットの発言に突っ込んだ二等兵にさっさと応援を催促するよう指示する。というか、その返しは火に油だ。

 

「よりにもよってヘリウム3採集施設のそばで…っ!?」

 

敵…襲ってきたジンの弾が付近に着弾する。幸いにも、命中こそしていないが、損傷で気密が怪しくなっている。施設の方向には逃げていないし、流れ弾が着弾した様子も確認できない。が、ほぼ装甲のない施設への着弾は最悪だ。

 

 

≪ウォッチャー4!!第一防衛中隊到着まで500秒、こちらに停泊中の603試験大隊到着まで600秒だ!!それまで何とか耐えろ!!≫

 

「400秒で来い!!と言っておけ!!」

 

ウオッチャー0からの通信にほぼ罵声で返す。たかが100秒というが、早いに越したことはない。というか早く来い、死ぬぅぅぅっ!!

 

ジンの脚部に搭載されたポッドからミサイルが発射されるが、それを何か巨大な影が盾となって防ぐ。

 

「あれは…、わが軍のモビルスーツか!!」

 

4つの遠隔操作砲を持つ赤と白で塗装された機体が、我々を追いかけていたジンを見下ろしていた。

 

―――――――

 

ガンバレルの機関砲が火を噴くが、その弾丸がジンを捉えることはなく、少しずれたところに着弾する。またずれた。

 

「えぇい!!まだズレるか!!」

 

ヘルメットではなく特殊ヘッドギアを使ってコクピットに乗っている鶴野は悪態をつく。頭を締め付けるような頭痛がする。ほぼ無理やりガンバレルを使っているための副作用だろう。

 

かぐやにある企業のプラントでビーム兵器の量産に関する打ち合わせを終わらせ、さらにムラサメ研の連中から新型兵器の受領をしたと思ったらこれだ。お陰でいきなり新型兵器の実戦テストをやらされるハメになった。外付け型のガンバレルと、補助飛翔体だ。おかげで現場に急行はできたが、補助飛翔体を盾にして壊してしまった。まだ代わりはあるからいいのだが。

 

「やっぱずれるし、当たらんし、妙な声まで聞こえてきやがる!!」

 

空間認知能力強化用特殊ヘッドセット。試作型MS用ガンバレルのテスト用のついでにと渡されたものだが、絶対欠陥品だろこれ。余計なものまで感じてしまう。それに効果もいまいちだ、さっき使って分かったが、微妙に意識のずれを感じる。

 

4基のガンバレルを操作するのは、メビウスゼロ隊にいるパイロットならば余裕でこなすのだろう。しかし、子供だましくらいの適正しかない僕は、そもそも動かせるのが奇跡なのだ。いかに特殊な仕込みがしてあろうと。

 

「中尉!!下がれ!!なんかおかしいぞお前!!」

 

「わかっています!!こいつを消せばぁ!!」

 

わかってねぇだろ!!というクリーブス少佐の声が聞こえる。わかっている、この声のもとを消せばこの頭痛も消える。

 

「行けよ!!」

 

僕の指示を受け付けたガンバレルがその刃を剥き敵のジンに突き刺さる。

 

(ナチュラルごときに…)

 

コクピットを貫いた瞬間、そんな声が聞こえた気がした。

 

「戦場で驕るから…そうなっちゃうんでしょう…」

 

その瞬間、視界が暗くなる。思わずそんな言葉がでた。どうしてもそう吐き捨てずにはいられなかった

 

―――――――――

 

直後、603技術試験大隊内、医務室

 

「ッつぅ…」

 

薬品の臭いにつられて目を覚ます。

 

「お、目が覚めたか?」

 

「マルティン少佐…ということは医務室か」

 

対馬の医務室勤務の医官が話しかけてくる。

 

「そうだ、あのヘッドギアの効果は知らんが。中尉、医者としてあれを継続使用することは認められんな」

 

「技術者としても同じ結論です。ガンバレルや操作プログラムのほうを改良すべきでしょう。現状では欠陥品です」

 

記録を見ないでもわかる。というか自分の行動なのに覚えていないわけがない。なんだあの強化人間みたいな言動。

 

「そのように報告するといい。被験者データが必要なら言ってくれ。わかっているとは思うが、一応そういうものも含めてバイタルデータは私が管理する規則だからな」

 

「了解です。あ、撃墜した機体は?」

 

ベットから起き上がり、たたまれていた上着を引っ掴んで羽織る。少し腹が減った。何か食べに行こうか。いや食堂は空いていないし、売店は停泊中だとやってない。基地の売店は遠すぎるな。まだ勤務時間中だ。基地の外へ出るわけにもいかない。我慢だな。

 

「現在お前さんの部下ができる範囲で検証中。とっとと行ってやれ。もう脳波やバイタルに異常はない」

 

さっさと行けとでも言わんばかりにマルティン少佐は僕を軽くあしらう。僕は敬礼をして医務室を出て、格納庫へと急ぐのであった。

 

―――――――――

 

6月5日 スラバヤ 大統領府

 

「プラントは何と言ってきたのだ?」

 

「一兵士の暴走であるが、こちらの落ち度であり、そちらの求める賠償に応じる用意がある。だそうです」

 

「ふむ…まぁそりゃ当然か。国内世論は?」

 

対プラントを担当していた外務官僚の報告にタクシンは頷くと、また別の官僚の報告を聞く。

 

「ただ、こちらの回収したMSの残骸に関しては返還を求めています。国内に関しては報道機関も面白おかしく騒ぎ立てていますし、国民世論も反プラントへと動いています。大規模な暴動やデモこそありませんけど、コーディネイターへの襲撃行為もあったようです」

 

今朝確認した数社の新聞では、まぁ面白おかしく書かれていた。防衛隊に負傷者こそ出たものの、生命線であるヘリウム3採集施設には大した損害がなくてよかった。もしあったら、ちょっと面倒だっただろう。MSも撃墜されたやつ以外には見られていないらしい。レコーダーには通信機器を切った形跡があった。知っている者はいないだろう。変な話だが、完全な命令無視の単独行動だったのが幸いした。襲撃がなければもっとよかったが。撃破されたMSの返還要求はきたが無視だ。こんなちょうどいいものを返す意味がない。

 

「返還要求は無視。襲撃行為をした犯人はさっさと捕まえて法に則って処遇を決めろ、他国の反応は?」

 

「月面都市群の自治市長たちは混乱している者が多いですね。連合軍の追い出しに動く市長もいるかもしれません。大西洋はそんなことより、2日に起こったサイクロプス使用で混乱中。ユーラシア、東アジアの反応は…まぁ予想の通りです。中立国家でもプラントに対する疑念が高まっているようです。明確なアクションを起こす訳ではないようですが」

 

外務官僚は、それ以外の国の反応も併せて伝える。…まぁ大体どこも同じか、月都市群の施政者たちは腹黒い。この状況で最大限、自分たちが利益を得るよう動いているが、このような事故が起こればそりゃ動揺もするだろう。ユーラシアは、この間カサブランカで敗北したのが効いているな。ジブラルタルの陥落が現実味を帯びてきた。東アジアは雲南、四川が膠着状態だから、か。長期戦になってあまり弱られても困るしな。国家の統制が怪しくなっての難民爆弾は勘弁だ。大西洋は結局、サイクロプスを使用した…。どうも現場の独断臭いが、アレは戦略兵器ではなく採掘機械だしな。危険なものではあるが、使用も比較的自由なのだろう。

 

「参戦の判断はせめてプラントが「何を求めていて」、「どうそれを実現するのか」を知ってからでも遅くはないと思うのだ。と、いうより落としどころのない戦争なんぞに首を突っ込みたくはない。落としどころがわかり、それが我が国にとって害となるのであれば早急に終わらせるよう動くがね」

 

勿論、おそらくは参戦することになるのでは。という会合内の大方の予想の通りになるだろうが。そもそもNJ投下の時点で我が国は「無差別攻撃を受けた」のだ。言い訳はあるだろうが、その事実だけは変わらない。今は準備期間だ。悟られないようゆっくりだがね。

 

「プラントの独立」。彼らはそう謳っているが、行動がそれに一致しているとは到底思えない。怨念返しというか、優秀な我らを支配するのは許せない的な感情が根底にあるんじゃないか?だとすればたとえプラントが勝とうが延々と革命まがいの武力蜂起が続くだけだ。認めさせるのであればかかる火の粉を追い払い、「こいつらに首輪を嵌めるのは割に合わない」と思わせるだけでいいはずなのだ。

 

―――――――

 

6月5日夜 プラント アプリリウス1 パトリック・ザラ邸

 

「何とか説得は成った…か。アイリーンやユーリも協力してくれたのが大きかったな」

 

パトリックは、書斎の椅子に座りそうつぶやく。今日、先日起こったAOCのかぐやへの襲撃に対する回答テキストを、彼らに向けて送信した。確かに一部の悲しみにとらわれた兵士の暴走ではあったが、事故と片付けることはできない。謝罪も、賠償も必要な事件だった。普段ザラ派と目されている連中にとっては気に入らない事件だったのだろうが、その分、中立派やクライン派と目されている連中が協調してくれた。相手の反応が、世論に比べて淡白なのが気になるが。重要施設に損害がなかったのだし早く終わらせたいのだろう。もとより彼らは、我々の行動に関してどうでもいいとみている所がある。さすがに世界樹やNJに関しては非難してきたが。だからと言って戦争に参加する気配はない。戦力の増産にこそ務めているが。こちらへの敵対の意思はとりあえず無い。裏で何をやっているかは知らんが。

 

「そういえば…今日はアスランが帰ってくる日だったか…?いかんな、コーディネイターも加齢による記憶力の低下には勝てんか…」

 

ふと、書斎に置かれた息子の写真が目に入り、そんなことを思い出す。確かこの写真はコペルニクスでレノアが撮ったものだったか?この時期の子供というものは数年で見違えるものである。随分と背が伸びているし、顔立ちも変わっているように感じる。なぜこんな古い写真しかないのだったか…。

 

「…そういえば、アスランが帰ってきてから家族写真など撮っていなかったな…。撮っておくのも悪くはないか。…私にとっては最後になるかもしれんからな」

 

忙しさにかまけて、そんなことも忘れていたのか…と自嘲する。コーディネイターも万能ではないな、こんな風に、大切なことを忘れてしまう。どうせなら、もう少し前に気づきたかった。そうすれば、レノアもいたのに。




そういえば、よくジオンをナチスドイツっぽいとかドイツモデルとかいう人いますけど、プラントはというとソ連っぽいんですよね。設計局とか、階級がない(すぐやめたけど)とか。○○隊っていうのはイスラエルかららしいですけど。


ニュータイプっぽい描写をしたつもりなホァン軍曹ですが、本作ではニュータイプなど他のガンダムの概念は根幹に関わってきません。もしいたらいろいろとアイデンティティがクライシスする人たちがいるのでそれもまた見ものかもしれませんがね。しかし、さらっとそれっぽいことを言ったりやったりする人は出てきます。「人類が宇宙に適応するための戸口に立っている人」といったところでしょうか?どのように適応し、どのように進むか、ニュータイプやイノベイターというのはその世界の宇宙に適応した進化の収束点であって、コズミックイラの宇宙に適合した進化の形はまた別のもの。と考えているので。SEEDだって戸口の一つなんですよ。その戸口の先にあるものが望んだ、望まれた結果とは限りませんけどね。撃墜王とほぼ同義になってしまっていったニュータイプのように。



登場兵器 

試作ウェポンラック搭載型ガンバレル
90㎜機関砲
単分子ブレード

AOC開発のMSに装備できるガンバレル。オプション式になっており、ストライカーパックとはまた別である。ブレードを搭載しているのは適性の低いパイロットでは射撃を命中させることが難しいのでは?と懸念されたため。しかし、ガンバレル自体を当てるほうが難しかった。速度的な問題で当たり前であるが。

空間認知能力強化用特殊ヘッドギア(モデルはガンコレでプルツーが付けているもの)

ガンバレル適性の低いものの適性を上げるために開発された特殊装備、実験装備なので、ヘルメットとのマッチングを全く考えていない。性能自体は満足のいくものであったが被験者の思考能力に重篤な副作用をもたらす例が報告されており、採用はひとまず中止となった。…そういえば本編で見た記憶がないがプルツーは本当にこれ使ったっけ?それとも忘れているだけ?


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phase15 予定調和

RGユニコーン!?…また、技術力が素材強度を追い越しそうな物を…。完全変形は…MGですらアレなんだし…初めて変形させたとき感動したけど。

時間、4か月飛びました。


10月14日、スカンジナビア王国首都ストックホルム。ストックホルム公会堂。AOC大西洋連邦首脳会談

 

「ふむ、では、準備が終わった。という認識でよろしいのか?タクシン大統領」

 

なるほど、ついにか、といった様子でアーヴィング大統領がタクシンに言う。

 

「えぇ。まぁ、反攻に出るのはそちらとほぼ同時期としても、今くらいから戦闘慣れしていなければなりませんから。現状、戦闘経験は特殊部隊ばかりですし」

 

まぁ、いざ戦場に出てポンポン落とされるような連中でもないと思うが、それでも、訓練だけじゃ何かあったときに困る。とタクシンは心の中で呟きながら答える。プラント独立はほぼ決定としても。だからと言って、無差別攻撃にさらされて黙っているほど寛容でもない。「一発だけなら誤射かもしれない」など、平和ボケの戯れ言に過ぎないのだ。今回の場合受けた被害も洒落にならない。融合炉があるとはいえ、軌道爆撃と何ら変わらんのだ、アレは。開戦時期が遅れたのは、国内の復興を優先したからだし、軍の装備更新を済ませておきたかったからだ。

 

「そうですな。やはり経験は必要だろう。我々も漸くモビルスーツを投入する目処が立った。そろそろ訓練を開始したいが、生憎と軍部からプトレマイオスだけでは足りないと言われていてな。コンペイトウをもっと大規模に使わせてもらえると助かるのだが…」

 

「問題ありませんよ。お望みとあらば教官の派遣なども検討いたします。盟友の頼みとあらば無下には断れませんしね」

 

最近はやりのワンアースだのなんだの騒ぐ気もないが、一応、友好国だしこいつらおだてといたほうがこっちにかかる火の粉が少なくていい。大西洋連邦は、世界の警察を自認していた国家の後継国家だけあって、国力相応に「主役になりたがる」国家だ。勝手に主役を張ってくれるのなら、そのための手助けはする。なし崩し的に統合した国家で明確なリーダーが存在していなかっただけあって、国内の統治だけでもなかなか骨なのだ。これ以上の面倒は抱えたくない。リーダーなどやりたい奴がやればいい。なったからには柱に括り付けてでもやり通してもらうが。

 

「おぉ、それは助かる。無論データを頂いてはいるし、こちらでも研究はしているが。新兵器だからな。あまり芳しくはないようだ。そちらの研究成果も加味して…、いや、いっそ共同研究ができると嬉しい。現在考えられているのが開けた場所での並んで弾幕という、まぁ、どう考えてもMSを使う意味のない戦術でな。色々なところから突っ込みが来たのだよ」

 

疲れたような顔でアーヴィング大統領が言う。この人はオーバーリアクション気味だな。とタクシンは思う。

 

「確かに、モビルスーツは機動兵器ですから、動いてこそ真価を発揮する兵器です。戦車からの発展のようですが、どちらかと言えば戦闘機やMAのドクトリンをベースに考える方がよろしいでしょう。尤も、報告書からの受け売りですけどね。」

 

まぁ、この会談に至るまでで決まったことを喋っているだけなのだが。首脳の会談というやつは以外に面倒だ、それまでの調整が。

 

「まぁ、これで連合は勝利できる。しかし、問題はオルバーニーだ、本当に余計なことをしてくれた」

 

オルバーニー連合事務総長は連合の外交特権をマルキオ導師に与えているのだ。一宗教家に、外交特権を与えるなどあり得ない。決して我々の利益のために動くとは限らないのだし。

 

「罷免、しかないでしょうね。ユーラシアや東アジアは?」

 

「そちらも同意見だ、AOC参戦についても同意してくれている。まぁ、どの戦線にどの部隊を送るかで一悶着あったがな、その辺は、連合軍内で決める」

 

手元の資料をタクシンに渡しながらアーヴィング大統領は言う。渡してきた資料はオルバーニーの罷免状だ。あとはAOC代表ののサインだけか。

 

「まだMSは展開能力が低いですからね、あまり大規模な投入は難しいのですが。」

 

「それは我らも変わらない。まぁ、船運くらいしか多数を運ぶ術がないからな」

 

「まぁ、一応、輸送機擬きは開発してありますが、運べて二機です。そう数があるわけでもありませんし、あまり期待されても困ります。」

 

「あぁ、サブフライトシステムというやつか。こちらでも似たようなものを作らせているが、やはり輸送でなければ一機ごとで使うのがよさそうだな。さながら騎兵隊だ。私は旧世紀のアメリカ映画が好きでね。ピンチに颯爽と現れる騎兵隊というのは心が踊る」

 

アーヴィング大統領はそう言うと、朗らかに笑っていた顔を真顔に戻す。真面目な話をする。という合図だろうか。

 

「所で…、だ。マルキオの坊主が提案してきたジャンク屋条約というやつだが」

 

「このまま、と言うわけにはいかないでしょう。あまりにも穴が多すぎる。これでは現代に蘇った私略免許ですね」

 

「同意だ。大体、そのようなことを行っている企業は既にあるだろう。そちらのブッホ社などな。まぁ、大抵の企業は、社会貢献活動の一環として行っていたのだから、他人がやってくれるというのならば喜んで任せるだろうが…」

 

「まぁ、ユーラシアや東アジアはジンの部品を回収していますし。必要ないといえばそうでしょう。しかし、合法的にプラントに進入できることはなかなか便利でしょう。マルキオの顔のおかげというのが若干気に入りませんが」

 

タクシンが悪い笑顔でアーヴィング大統領に言う。

 

「やはり君もそう思うかね。いや、貴国がアフリカのジャンク屋にそういう人員を潜り込ませたのは知っていたが。まさか予見していたのかね?」

 

同じくニヤリと笑ってアーヴィング大統領が言う。

 

「いえ、仮想敵の情報が欲しかっただけですよ。集めたパーツでリバースエンジニアリングしたものが現在実験中です」

 

やはり、バレてるか。流れ者などに扮して情報収集をしているスパイなどいて当然だろう。というか、連中って国籍とかどうなっているんだ?誰も身分保障していない気がするんだが…。ZAFTのMSに関しては、ジンがほぼそのまま一機手に入ったことが大きかった。コクピットは潰れていたが、奇跡的にデータに損傷はなかったらしい。まぁコクピットを入れ替えれば動かせるそうだ。ちなみにだが、企業の連中もアフリカなどで現地の傭兵を雇用してMSの情報収集を行っているらしい。まぁ、何か不都合があれば伝統の「騙して悪いが」である。

 

「ふむ、思いの外、ユーラシアは健闘しているようだな。損害の桁を見て呆れていたが。しかし、こちらが使える手は奴等も使える。まぁ、諜報戦で負ける気はせんがね…おっと油断は禁物か。現状は我々の油断が招いたといっても過言ではないのだしな」

 

自分を戒めるようにアーヴィング大統領は言う、MSの性能を低く見積もりすぎていた。ということだろう。いくらなんでも、連合軍の艦隊が5つも溶けたのは無視できる損害じゃない。

 

「現状は、ジャンク屋に偽装した人員を侵入させても一般メディアからの情報収集や、一般人への聴取しかできませんしね」

 

実際問題、手の込んだヒューミントを行うには一度に送り込める人員も、道具も足りない。まぁ、聞いてもいないこと喋ってくれる連中が多くて楽だ。といった報告は上がっているが。それでも、核心的な情報に触れることは難しい。「必要ないことは知らせない」初歩的な防諜方法だな。

 

「サイバー攻撃は返り討ちにされた。ネットに関してはそこそこ優秀な門番はいるようだな」

 

アーヴィング大統領が忌々しげに言う。そりゃあそうだろう。相手は伊達にコーディネイターじゃない。政治の世界にいると、あまりの稚拙さに言葉を失うことはあるが、地頭はいいのだ。馬鹿にしてかかれば痛い目を見る。

 

「こちらは一応、そういうことをやっていなかったのですが。やはりといったところでしょうか。伊達にコーディネイターではありませんね」

 

「伊達に、確かにな。尤も、調整された方向以外には非常に弱いようだがな」

 

確かに、そう感じることもある。「政治家になれる遺伝子」なるものが発見されていないのは救いだな。あるとも思えんが。プラントの評議員選出システムは、記録されている限りの理事国の政治家の遺伝子データを利用しているらしい。そのようなことをしても「よい政治家」が選出されるとは思えない。大体、政治家なんて玉石混交、ひどい話だが石のほうが多い。まぁ、これ以上よくしたいというのなら。『今すぐ愚民共全てに叡智を授けて見せろ』ってやつだな。使い古されたネタで返すと「うん、それ無理」。そんなんだから、ありもしない政治家に向いている遺伝子データの平均値を取って評議員を選んだところで、いい議員が生まれる訳ではないのだ。

 

「おっと…話が逸れた、では、ジャンク屋条約に関して、我々の意見をまとめようか。もう少しで、ユーラシアや東アジアの代表も到着する」

 

『地球連合』。国連に代わる新たな国際組織として産声を上げた組織だが、現状組織構成は流動的なのである。そもそも、準備してできた組織ではなく、旧国連職員や、各国の官僚、知識人を寄せ集めて作った組織なのだ。未だ、本格的には機能しているのは軍部くらいなのだ。それも、主導権争いで指揮系統の混乱が見られる。ZAFTの攻勢限界点に近いこの状況で、整理する必要があるだろう。これでは反抗作戦など不可能だ。それなので、こういう会議はいまだ各国首脳が集まって会議をせねばならないだろう。しかしやけにタイミングがいいな。まぁ、控室などいくらでもある。そこで待っていたのだろう。

 

―――――――――

10月15日 白兎 ADTRD 所長室

 

「これ、前渡しってやつですか?」

 

「断じて違う、箔付けというやつだ。喜べ栄転だぞ」

 

そんな胡散臭い笑顔で栄転と言われて喜べるか。と呼び出されていきなり渡された大尉の階級章を受け取りながら思う。こんな時でも一定の礼儀を払えるのだから軍人教育とは凄い。ありえないだろ、任官半年で昇進とか。戦時中じゃないんだぞ。

 

「さて、鶴野大尉。会合からの情報だが、開戦が決定した。十月会談にて我が国の対プラント参戦布告をすることが決定した。まぁ、その影響なんだが、現行の3技術試験大隊を改変し、ほぼ同様の任務を行う技術試験大隊と、より実戦的な、というより実戦においてパイロットの意見を収集し、その場での改修を可能とする試験戦闘大隊の2隊とすることになった。君には501試験戦闘大隊。鵺部隊のエンジニアを務めてもらう。パイロットも試験結果優秀者のみ。艦のほうもなんとアーガマ級が回されているぞ。三番艦、『ズルフィカール』、出来立てほやほやだ。まぁ君の勤務艦は工廠艦『パゴタ』で、整備班長兼予備MSパイロットを務めてもらう」

 

「予備パイからは外れられない運命なんですね…」

 

MSパイロットは続々と訓練が完了し、配属されてはいるが、まだ足りてはいないのだ。だからこそ、予備パイロットは貴重である。なのでMSが操作できるだけに近いテストパイロットも予備人員として充てられている。

 

「そうそう、パゴタの整備班長ってエンジニア冥利に尽きる仕事だから楽しんで来いよ。何せ動く工廠を任されているんだからな」

 

パゴタは、ハイエンド機を運用する精鋭部隊用に開発された特殊艦で、速い話が現地改修装備を生み出す工廠である。パイロットの要求にこたえ。様々なパーツを試作し、MSをカスタムしていく。将来的には同型艦がGシリーズを運用する部隊すべてに配備される計画だとか。今回はG01、アージュンを小隊規模で運用している部隊らしい。疾風も高機動化が図られているようだ。…これ以上の改修…いるのかな?エースってのは凄いものだ。

 

――――――

 

10月16日 スカンジナビア王国 ストックホルム公会堂

 

10月会談と後に言われる会談は、オルバーニー事務総長の罷免という波乱からの幕開けとなった。空席となる議長役は、オブザーバーとして参加していたスカンジナビア王国首相、アルヴィド・グスタフ・マンネルハイムが引き継ぎ行うこととなり、会議は始まった。

 

「この会談で我々が聞きたいことは一つです。カナーバ議員、あなた方プラントはこの争いの幕引きを何とお考えか?」

 

まぁ、纏まるわけのない戦争当事国間の意見交換に痺れを切らした風を装ってタクシンが聞く。言葉に詰まったようだが知ったことか。彼女自身も、疑問に思っているのだろう。軍事的な知識がどれほどかは知らないが、彼女の政治感覚ならば「今のプラント」のマズさを理解しているはずだ。

 

「…プラントの独立…です」

 

「その割には中々に無軌道な運びですな。特にNJやかぐやの件は非常に遺憾だ。いや、遺憾では済まされない。あなた方の現在占領している地域の混乱は看過できないし、これ以上の地球圏の混乱を我々は望まない。しかし、落とし所が作れないと言うのであれば。申し訳ないが、我々はあなた方を敵とするしかない」

 

まぁ、まったく申し訳ないとなんて思っていないし、当然の結果だがね。こういう時は、残念そうに見せるほうが良い。向こうの反応が面白いし。プラント占領地域の混乱は目も当てられない。味方であると宣言した組織すべてに支援するなどバカじゃないか。結果、タダでさえ武器が溢れ殺伐としていた地域が余計混乱した。誰が片付けるんだ…。放置しかないな。

 

「そっそれは!?」

 

カナーバ議員の顔色が変わり立ち上がる。理事国連中はしたり顔だ。お前らのためじゃないんだが。

 

「まぁ、これを戦争だというのなら宣戦布告になるのでしょうな。あぁ、正式な文書などない。ただの反乱組織に手交しなければならない文書などないからな」

 

どうもプラントでは、わが国には勝ったことになっていたらしい。「独立を勝ち取った」的な意味で。別に権利を放棄したわけじゃないし。設備の賠償権などを放棄したわけでもないのにご機嫌なことだ。折角なので面白おかしく騒ぎ立ててやったら、メディアが食いつく食いつく。それにしても、戦ってもいないのに勝利宣言とは…。変な国だ。

 

「まあ、そういうことだ。AOCは、連合軍へ本格参入する」

 

「歓迎します」

 

「だいぶ遅かったな」

 

アーヴィング大統領がそう宣言すると、ユーラシアや東アジアの大統領や国家主席がそんな言葉を述べる。もはや戦勝ムードか。そりゃジェネシス知らないし、戦争自体はプラントの攻勢限界点を超えて膠着状態なのだから当然か。そしてこれからはこちらは戦力が増え、質も向上するが、向こうはどちらも下がる一方だ。終わりは見えた。そう思っているのだろう。認識が甘いことを教えるのは少し早いがな。




ミッションを説明しましょう

依頼主はアルゼブラ社、目的はダジュラ淡水化プラントを占拠したテロ組織の排除となります。敵の主戦力は装甲車と歩兵戦力です。少なくとも傭兵として名の通った人物の参加は認められませんが、それなりの規模のようです。こちらも相応の部隊で臨むことをお勧めします。また、淡水化プラントは現地住民の生命線であり、被害が大きくなることは、ジブチ地区が深刻な水不足に陥る可能性があります。当然、依頼主はそれを望みません。施設の被害にはくれぐれも注意してください。

説明は以上です。

アルゼブラ社とのつながりを強くする好機です。そちらにとっても悪い話ではないと思いますが?


企業の依頼とはこんな感じでしょうか。うまくできた気がしない。

さて、参戦しました。正直、理由が微妙かな。とかタイミング的におかしくないかな。とか思ったのですが、これ以上事件起こすのも無いなと思ったのでこんな感じに…。


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phase16 開戦:補給基地強襲作戦

やってしまった…製作途中のものが投稿されてしまったため、一度削除して修正版をあげました。こまめに保存、大事ですね


AOC スラバヤ 会合

 

「ところでさ、ストックホルム戦時協定って、あれ履行されんのかね?」

 

「されないならされないでもいいさ。世論に対する格好のエサだ」

 

「軍人だと深刻な問題なんだが…」

 

10月会談で決まったことは、AOCの参戦、それから戦時協定の策定、ジャンク屋条約の調印、ジャンク屋ギルドの設立だった。今までそんなものはなく戦っていたため、必要以上に死者が出たし、ゴミも多く出た。主要航路上で起こった戦闘もあったため、デブリの除去は急務で、それも第三者機関にやってもらう必要があった。あまりに互いに信用が無さ過ぎたのである。ジャンク屋ギルドは、便宜上、月自由都市「コペルニクス」自治政府と赤十字社の管轄下に置かれ、デブリの除去、要救助者の救助、最低限の治療などを受け持つこととなった。装備品に関しては、武器の装備は認められず、非武装型のMAや作業用ポッドが一般企業より販売される手筈となっている。プラントなどからは、作業用MSなども販売されるようだ…そんなもの作ってる余裕あるのかあの連中。万が一海賊や、軍事物資の輸送などをした場合のペナルティは強いものとなっているし、臨検は断れないといった条項も組み込んだ。できることなら傭兵にも首輪をはめたかったが。利権関係で無理だった。ストックホルム戦時協定は、捕虜の扱いや中立地帯の策定などを盛り込んだ協定である。プラント側は核、ユーラシアや東アジアはMSの使用禁止を盛り込もうとしたが、議論が平行線だったため、協定に盛り込まれることはなかった。

 

「まぁ、なんにせよだ、明朝、連合初のMSを用いた軍事作戦が実行されるわけだが、抜かりはないな?」

 

「そこはもちろん、大西洋の連中も、大体は疾風で出ることになっているがな。コクピットは変わらん、感覚は変わるだろうが。こちらのほうがどちらかというと機動性重視だ。出だしやら、なんやら変わるだろうさ」

 

「それは後で転換訓練でもしてもらうしかないだろう。というか、我々の感知するところではないはずだ」

 

 

 

―――――――――

 

CE70年 10月下旬 東アジア共和国 雲南戦線 第43対MS特技中隊

 

 

「各班、お客さんだ。各砲手、照準器起こせ。有線無人砲台起動準備。敵を前から標的甲、乙、丙と仮称する」

 

ドーランを顔に塗った男たちが一斉に動き出す。今日の狩場と定めた渓谷にMS隊が侵入してくる。ジン1、最近確認された陸戦型が2。おそらく後ろの2機は素人だ。モノアイセンサの動きが無い。少なくとも、この戦線にいたパイロットではないのだろう。そうでなければ、こんな「どこから噛みつかれるかわからない場所」で注意を払わない理由がない。

 

「無人砲台起動!!敵を分断しろ、後ろの2機は後回しでいい。先頭の標的甲をやる、頭をつぶすぞ」

 

脅威度としては、先ほどから周囲の警戒を怠っていなかった先頭のジンが最大だ。確か持っている携行火器も最近確認された小口径で速射性と貫通性に優れたものと、盾に爆発反応装甲を付けた即席の対人装備だ。脚部のロケットポッドも対人を意識したものに変わっている。おそらくはこのような状況を想定したものなのだろう。先頭のジンと、後方の陸戦型2機を分断するように弾幕が上がり、敵をかく乱する

 

「各班撃て!!」

 

合図とともに70式180㎜ロケット砲と63式対MS誘導弾が発射され、目標1の脚部関節を砕き、コクピット部に誘導弾が命中する。

 

「次弾装填後、各班に攻撃のタイミングを任せる。撃ちまくれ!!」

 

その後あてずっぽうの射撃が飛んで、無人砲台や襲撃班がいくつか食われたが二機とも撃退に成功する。

 

「ふぅ…陣地転換を急げ、敵の攻撃機が飛んでくるぞ。それと、回収班に連絡。最悪破片だけでも回収しておけ」

 

犠牲は多いが、開けた土地でバクゥとかいう高速型を相手にしているユーラシアよりはマシらしい。急いで退避しなければ飛行型と砲撃型によるこのあたりの制圧射撃が始まってしまう。…毎度思うが、どうして連携して攻めてこないんだ?何かあればすぐ対地攻撃機や砲弾が飛んでくるのは普通だろうに…。いつも砲撃や対地攻撃機が来るのが遅いし。ひどいときは砲撃も飛行型も来ないのだから何かがおかしい。まぁ、楽だからいいか。

 

――――――

同日

AOCミャンマー州、東アジア国境地帯 AOC第1空挺団第1MS中隊、大西洋連邦第7騎兵連隊B大隊A中隊 AOC空軍第二航空団第3、第8飛行隊…敵補給基地強襲作戦実行チーム

 

24機のSFSと数十の航空機が空を駆ける。AOC、大西洋連合の奇襲部隊だ。この隊は戦線の形成される前…というより、横断山脈で戦線の形成が難しいとされるエリアを飛行し、敵の後方補給拠点を叩くという目的のために行動している部隊だ。そしてこの部隊が、公式記録上の「初めて連合でMSを用いた作戦を行った部隊」となる。今まで連合側のコーディネイターが乗る鹵獲ジンを用いることがあったがそれは記録には残っていない。というよりも記録に残してはいけないということになっていた。大体連合側のコーディネイターを兵士として扱ってすらいなかったのだ。許されることではないが、それが横行していた。しかしAOC軍に多くのコーディネイターが軍に在籍していたため、待遇の改善を求めたのだ。もちろん反発はあったし。AOCを特例として、他国のコーディネイターへの扱いは変えないという話になりかけたが。「適当に褒美を与えてやれば、コーディネイター同士がつぶしあうなんて最高じゃないか」というアズラエルの一言で当のブルーコスモスが乗り気になったことが大きかった。尚、この発言の後アズラエルは頭を抱えて転げまわっていたという。

 

《隊長機から各機、間もなく作戦エリアへ到達する。目標は敵補給物資集積拠点、護衛は汎用型3、砲撃型6、それから飛行型が3機確認されている。だが、我々の任務は拠点の破壊だ。MSなど補給がなければただの木偶だからな。最悪は無視だ。まぁ、この数で掛かれば全機排除でも問題はないと思うが、あくまで目標は敵基地の破壊だ。そこを忘れるなよ》

 

「まぁ、簡単な任務だ、君たちならできると私は確信している」

System battle mode

 

NEw generation type

Mobile weapon

Operation system

 

using unilateral nerve connection

 

―NEMO―

ギャリー・オーウェン重サブフライトシステムに乗るトリコロールカラーの機体、105ダガー先行量産型を操作し、OSを戦闘モードに、武装のセーフティを解除しながらエマ・カスター中佐はAOC指揮官の任務確認の後にそう続ける。皆私なんかよりもリラックスしているとは思うが、まぁ軽い冗談の一つも必要だろうか?…そうだ。

 

「キャリー少尉、君の境遇や覚悟は理解しているつもりだ。だからこそ、重ねて言う。死ぬな、そして躊躇うなよ。憎しみを終わらせたいのならこんなつまらん戦場で死んでいいほど暇じゃないぞ。憎しみの連鎖が断ち切れるとしたら、戦って戦って、戦い倒して、その結果だ。お互い、無意味だって解るまで殺しあわなきゃいけないところまで来ているからこの現状なんだ。思うところはあるにせよ、今は未来を信じて戦うしかない」

 

まぁ、見え透いたプロパガンダで指揮官に据えられたお人形の言うことなど話し半分でしか聞いてもらえないだろうが。と、思いながら自分よりも随分と歳上な、白い疾風に乗った部下に個人回線で通信を送る。ジャン・キャリー少尉。この隊に配属されるような奴に、敵と仲間の区別もつかない奴はいないと信じているし、いれば修正だが、それでも窮屈な思いはしているだろう。

 

「了解」

 

味気ない返事だ。まぁ当然か、あんな環境にいたら私だって人間不信くらいにはなる。

Soundonlyの文字を確認して、顔を顰める。誰だ、こんなになるまでやってくれた阿呆は。

 

―――――――――

 

物量(こういうの)は俺らの専売特許だと思うんだがなぁ!!」

 

「特許料でも請求するか!?」

 

「下らん事言ってる暇があったら退避壕へ急げバカ共!!」

 

砲兵レーダーや誘導砲弾が使えないのだから、当然砲撃はこうなるのはわかっているが。それでも歩兵にとって敵の砲撃とは悪夢だ。第43対MS特技中隊の頭上には砲弾が降り注いでいる。敵の砲撃型、ザウートの砲撃だろう。単純に砲を4門も搭載している。このような局面で役に立つであろうMSだ。そう、どこにいるのかわからないネズミを周囲の地形ごと吹き飛ばすには。

 

「うっそだろおい…」

 

退避壕の入り口は土砂と瓦礫で埋まっていた。

 

「騎兵隊でも呼びます?」

 

「ははは…山の中じゃ役立たずだな」

 

これじゃ神に祈りでもするしかないな。古典映画のようなネタを引っ張り出してきた部下の発言になんとなくまじめに返したとき。上空を何かが飛び、砲撃が止んだ。

 

―――――――――

敵補給基地強襲作戦実行チーム 隊長 トゥラ・タン・セイン大佐

 

《命中、全機機動停止を確認…クリア》

 

「ナイスショット」

 

侵入した地点の近くでザウートが砲撃を行っていた。そのため、部下が120㎜を使い狙撃をした。よく考えるとすごいことだが、非常識なことが起こるのは空挺の日常なので気にしてはいけない。レーダーが役に立たないのは周知の事実だが、目視で確認されないとも限らない。排除は早いに越したことはない。増援が来たら面倒だ。ここまで進出していた理由は、おそらくは東アジアの襲撃部隊でもいたのだろう。事実、MSの残骸を確認した。なかなかすごいな。

 

《mark78ゴルフに敵MS二機確認、陸戦汎用型です》

 

《おいおい、手負いじゃないか…、カモだな》

 

部下たちが敵のMSを確認する。確かに、多少の損害は負っているようだ。

 

「油断するなよ、空戦型はまだ確認されていないし、砲撃型もまだ3機いるのだからな」

 

《大佐、言ってるそばから空戦型、ディンのお出ましです》

 

AEWが伝えてくる、レーダーは使えない。と言っても、短距離ならばなんとかなるらしい。そうでなければFCSすらまともに機能しないのだから当然といえばそうだが。やはりあると役には立つか。

 

「レイヴンソード隊、相手をしてやれ、露払いは任せた」

 

《了解》

 

レイヴンソードは、火力だけなら汎用MS以上といってもいいものを持っている。最高速度も空戦型MSよりも早い。そして、ベテランが検証し、訓練してきた対MS戦術を実行するのだ。成果を出すと期待できる。

 

《こちら、ブラボー隊、現在敵の砲戦型と交戦中。どうも改修型の対空仕様らしい。弾幕はうるさいが、どうもFCSの範囲外らしく、ロックオンはされていない》

 

大西洋の指揮官から通信が入る。対空仕様ね、そりゃ作るだろう。技術者というのはいろいろなものを作りたがるものだ。ウチの技術部もいろいろこさえているが、現在現場に回されているのが、疾風含め5タイプ程、最終的には数タイプ増えるとのことだが。まぁ試験隊を通しているのだし、選別はしているのだろう。

 

「うおっと!?…危ない危ない、各機油断するなよ?」

 

陸戦型汎用機の放った無反動砲に当たりそうになり避ける。

 

《自分が油断しといてそりゃないですぜ隊長?》

 

全16機の攻撃が、残りの陸戦汎用型2機に集中する…袋叩きだ。その後、爆装したレイヴンソードが補給基地を爆撃、残った目標をMSで叩く。

 

「全目標の破壊を確認」

 

何というか、締まりのない終わり方だったが、一応は勝利した。いい戦意高揚のプロパガンダにはなるだろう。

 

―――――――――

 

第501試験戦闘大隊 工廠艦パゴタ

 

「すまんな、大尉。私個人のわがままのようなものを作らせて」

 

「いえ、少佐、大した苦労はありませんよ。それに、こういうのは大切にしましょうって決まりですしね」

 

大体、ブレード用の鋼材から打ち出して研磨するだけだ。この船の設備でどうにかなる。形は少々独特だが、まぁ、問題はないだろう。『MS用ククリナイフ』、グルカ族出身で、この隊のMS隊隊長であるディプラサット・シュレスタ少佐用に開発された専用装備だ。単分子ブレードの柄に装着すれば完成である。本来のククリナイフの製法とは違うかもしれないが、そこは許してほしい。一応、他民族、多文化共生を意識せざるを得ないAOCにとって、各地の民族に存在するアイコンというものは極めて重要だ。すぐとは言わないが、まぁどうにかなる。…あまり増えても困りそうだが。ブレード用の鋼材打ち出して研磨するだけの設備なら、そこそこ大きな艦には積めるだろう。ビームサーベルに移行をした後にも必要なのか?とも思うが。グルカの名前がコーディネイターに通用するかはわからないが。他勢力には有効だし。

 

「とりあえずは完成したのですが…、何かご不満な点はありますか?」

 

「ふむ…、まぁ、生身で使うわけではないし、現行のブレードの切れ味に不満がある訳でもなかったからな。私の乗機はビームサーベルを装備しているし、私のわがままで作らせたものに不満など言えんさ。強いて言えば、グルカ兵のために制式化してほしいが」

 

「それを判断するのは上なので…」

 

MSグルカ連隊とか作るのだろうか?だとすればこのような装備も必要だろうが。まぁ、この艦で作ったもののデータは逐次月のTDARD本部に送信されているのだから、だれか検討するだろう。陸軍あたりか?本気で検討するのは。

 

「そうそう、君の機体、組みあがったのでこっちに運ぶと向こうの整備長が言っていた…が、こちらに空きハンガーはあるのか?」

 

「そうそう機体本体の改修依頼が来るわけでもなく、細々とした装備品を作るのが主な任務なので、大丈夫でしょうと言ってあります。あのタイプを扱えるかは疑問なのですけどね」

 

僕に渡される機体は、ネモ・ディフェンサーをモデルに開発された機体で、便宜上疾風火力試験型と呼ばれている機体だ。火力支援型G用の火器テスト用として開発された機体で。NJ環境下での高精度長距離射撃用レドームと、高出力収束プラズマ砲その他高出力の火器を搭載するために、SFS流用の大容量のバッテリーを搭載したバックユニットを背負っている。ちなみに、ミサイルポッドの追加やらで原形をとどめていないのだが、一応SFSとしても使用可能である。そういえば、この装備を受け取ったとき、プラズマ砲の開発者たちが「この世界に、神はいない」とかつぶやいていたが…。何か悲しいことでもあったのだろうか?この機体は技術試験大隊でテスト用として使用されていたのだが、テストが終了して宙に浮いたところを、僕にあてがわれたということだ。今まで使っていた機体は、ガンバレル運用大隊へと送られそちらでテストをしている。この大隊に配備されている、ネモ・ハイマニューバをベースとした『疾風改』は、現在他の精鋭部隊に向けて増産中で数がないため、また試験用を回されたのだ。まぁ、重火器の試験は疾風改よりこちらが良いのだろう。戦場に出なければならないことが問題だが。

 

「大丈夫ではないか?私はあんな長物ほしいとも思わんが、大尉の射撃成績はなかなかだろう?」

 

シュレスタ少佐は完全に白兵戦タイプの人間なので、高火力の兵器よりは、本体の機動性を上げてほしいという意見が強い。現状でもリミッターをぎりぎりまで外してスラスターの出力を上げているし、武装に関しての要求もどちらかというとクロスレンジに対応するものが多い。背部ビームキャノンをビームサブマシンガンを流用したものに変えたり、ビームサーベルの出力向上などを既に実行している。

 

「他が平均レベルだから際立っているだけでもっとすごい人なんて一杯いるじゃないですか」

 

へっぽことまでは言わないが、僕はテストパイロットだ、パイロットとは違う。偶然にも実戦経験があり、撃墜記録も持っているが、やはり、戦闘技術という意味では劣っていると言わざるを得ない。その辺は、まぁ、軍人としての教育の差なのだろう。「技術士官促成過程を出た技術士官」と「士官学校を出た上にMS教導大隊を出た少尉」じゃそのあたりの差が大きい。いくらMSに触れていた時間が長いとはいえ。

 

「ふむ、君の場合、もっと実戦に出ればその辺も改善されるだろう。センスは悪くないはずだ」

 

「この大隊の人たちに比べれば悲しいものですけどね…」

 

「そう卑屈になるな。現状、撃墜数トップだろう?」

 

確かにそうだ。撃墜数1だが。

 

「開戦したのですから、今日あたり抜かれるんじゃないですかね?」

 

未だ、戦闘は起こっていない、先ごろのビクトリアでプラントは攻勢限界点を超えたというのが理事国間の認識だ。宇宙でも小規模艦隊による奇襲くらいあっていいと思うがそれすらない。戦力再編と戦略の見直しで忙しいのか?

 

「違いない…が、まぁ、自信を持てということだ。相手もMS戦は初めてだったとはいえ、我らもそうだった。それで敵を撃墜したのだ、誇っていい」

 

シュレスタ少佐の言葉に曖昧に頷く、あまり誇る気にはなれなかった。大したことではないのだから。

 

―――――――――

 

「ですから、我々の生産能力では足りないと言っているのです。というかなんですか、いきなり5万も作れって!!」

 

生前勤めてたブラック企業でもそんな無茶言わんレベルだ!!と心の中で叫びながら藤田は電話相手に絶叫する。というか5万も作ってどうする?誰が乗る。

 

「ですよねぇ…我々香港重工公司でも、無茶をして1年半はかかります。そちらは…そちらの軍部を無視すれば半年…いや9ヶ月ほどでしょうか?」

 

何かをあきらめたような顔で、テレビ会談の相手は、溜息を吐きながら言う。

 

(ウォン)さん、さすがにそれは無理です…。というか、無茶以上の地獄でしょうそれは、いやライセンスなどは認めても良いのですがね…。ちょーっと、この値段は厳しいかなと…」

 

ちょっとどころではない。大西洋が売り込み攻勢をかけているストライクダガーの三分の二の値段で疾風を売れというのは不可能だ。ストライカーパック分を抜いた素体では105ダガー以上の性能があるんだぞ。値段もそれなりにはするし、相応の値段で売り込みたい。

 

黄文禧、香港重工公司の重役の一人だ。主に対AOC販売戦略担当らしい。つまり、メンツと実利のはざまで胃と頭髪を犠牲にしながら、古狸と交渉をするという素晴らしくやりがいのある仕事を任されている苦労人である。就任当初は豊かだった頭髪は今や見る影もない。…上層部になればなるほど、「敵対する不毛さ」を知っているのに下々のせいで敵対せざるを得ないというなんだかかわいそうな連中だが、この人はその中でもダントツだ。

 

「当然ですね。まぁ、我が国も、わが企業も一枚岩ではないのです。それはそちらも同じでしょうが…、ぜひ、うまくいく秘訣をお教え願いたいものですね」

 

「互いが互いを理解し、尊重しあうことですよ。尤もこのような月並みな言葉を求めているわけではないのでしょうけど」

 

 

月並みな言葉だが、本当にこれしかない。皆生き残るために諦めと妥協で乗り切ったのだ。もちろん安定したのちに、不満が噴出したりもしたが、うまいこと折り合いはつけている。

 

「うん、われらには不可能だ。わかりきっていたことですがね。やはり、大西洋の安物…という表現は不適当でしょうが、簡易量産型にしますか。安い割に、ジンには対抗できそうですしね」

 

「そういう値下げの手段は聞きませんよ?特許関連に関してはウチも持っている部分があるので、アレが採用されてもウチは儲かるのです」

 

ご不満なら他社へ、どうせ関節とOS、コンピュータ関係はウチの特許だ。売れればそれなりに金は入る。というか、ストライクダガーが売れればいいんじゃね?というのが本音である。大西洋が計画したハイローミックスのローとして開発された機体だが、別に、戦えないわけじゃない。MSは機密の塊だ、売りつけるなら廉価版でいい。

 

「なるほど、この手段は使えないと」

 

「まぁ、そりゃ、疾風が売れるに越したことはありませんけどね。無理に値下げしてまで売るもんじゃありません」

 

本音を言うと、戦後は緩やかな冷戦機構の構築を目指している。各国の関係は、ジブリールの影響の強いユーラシアを隔離が可能な程度には緊張させたい。東アジアは、最悪切り捨てるが、まぁ大西洋は大丈夫だろう。あのアズラエルが前線に出ていくことが想像できないし。と、つい最近、温泉で会った奥方に尻に敷かれていたアズラエルを思い出しながら考える。原作を知るものとしては中々、…面白いというか、シュールな光景だった。

 

「ふむ…まぁ、なぁなぁとはいえ潜在的に敵国…というのは変わりませんからね、わかりました。そのように。あぁ、雲南戦線の補給基地強襲作戦は感謝していますよ。ありがとうございます」

 

「それはまぁ、友軍ですから。ではこれで」

 

「えぇ、勝利のために」

 

そう言って黄は通信を切った。さて、こちらも、仕事の続きをしないと。

 




登場した兵器などは折を見て設定で紹介したいと思います。


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phase17 コンペイトウ奇襲

更新が遅れ申し訳ありません。リアルのほうが忙しくなかなか時間が取れませんでした(言い訳)。

原作キャラの親族なキャラ出してしまいましたけど…書ききれるかなぁ…これ。書きたいことを書いていたら読みづらい文章に…。



コンペイトウ 近隣宙域 ZAFT ホーク隊旗艦 キュリー

 

「無理だろこれ…」

 

「新星はこの戦力で攻略しました」

 

バカか?こいつ…。と思いながら、マクシミリアン・ホークは、今回本部より預けられた作戦参謀を見る。どうしてこう頭が固いのだ。いくらなんでもナスカ級9隻、ローラシア級12隻でコンペイトウを攻略しろ?冗談も休み休み言え。「まったく損耗していない上にMSを保持した艦隊と要塞戦力」を相手にどうしろというのだ?というか、新星を攻略した損害を誰でもいいからまともに検証したのか?消耗戦になって軽くはない損害が出ていただろうに。…多分やっていないんだろうな、戦果に目がくらんで。平均5対1、MS対MAの戦力差はこの程度だ。こちらの損害は0じゃない。奇跡的に艦船にこそ損害がなかったが、MSは何機か撃墜されているし、パイロットの損耗も馬鹿にならない。

 

「…新星とは規模も、練度も装備も違う。その前提は間違いだな」

 

「ナチュラルのMSなど恐るるに足りません!!ここは攻略を!!」

 

「馬鹿かね、貴官は?現状、情報が少なすぎる。敵など恐れないという雄弁は買うが、無謀な作戦、多くの損害は我々の首を絞める。臆病なくらいが丁度良いのだよ、戦場は」

 

ただでさえ、気の遠くなるような国力差があるのだ。人死には敗北に直結する。…よく考えると酷い状態だな今のZAFTは…。出世の目が消えたからと言って、安易にこちらに移住したあの頃の私を殴りたい。

 

「とにかく、敵MSの情報がない状態での攻略など賛同できん。最悪、無為に屍を晒すだけだ」

 

ジンに対抗できないものを実戦に投入するはずがない。勝てるから投入するのだ。数で押すのか、単体が強いのかはわからないが。…せめてカメラの映像くらい持ち帰れよ、生き残りども。そこからわかることもあっただろうに…極限状態だったのだから責めることはできないが。

 

「とにかく、攻略など無理だとは思うがね、勿論あなたも出るのでしょう?MSの搬入は確認していますし、何より、その自信だ。さぞ素晴らしい技量をお持ちのことでしょう」

 

死んでくれればうるさくなくて助かるしなと、ある意味最悪なことを考えながら黒服に言う。そういえば名前なんだっけコイツ…、覚えてないや。兎に角、黒服とはいえ能力だけなら前線に出れるだけの訓練はしていると聞いている。厄介払いではないが。とりあえずどこかに行ってくれたほうが助かるので出撃を促す。案の定乗ってくれたので助かった。

 

―――――――――

 

コンペイトウ 演習宙域 第501試験戦闘大隊

 

プラズマ砲の輝きが宇宙を駆ける…また外れた。

 

「はっ…やい!?」

 

高機動型とはいえここまで機体を手足のごとく動かしてもらうのは開発者冥利に尽きる。と思いながら鶴野はプラズマ砲のゲージに目を向ける。チャージ率5%。これではあたっても有効打にはならないだろう。というか実戦なら装備の選択ミスだな。あくまで対艦装備だ。と思いながら左腕に保持したビームサブマシンガンのトリガーを引く。

 

《そいつは見切ったぞ!!》

 

そんな通信が聞こえて弾幕の中を一機の疾風改が単分子ブレード『バロング』を構えながら突撃してくる…ビームを斬った!?

 

「ならっ!!」

 

ブレードが迫る瞬間に背中のスラスターを最大出力に、思い切り上にずれながらミサイルを撃つ。攪乱目的のスモーク弾だ。

 

「これで!!」

 

チャージ率30%、一応、MSを撃墜するには十分な威力を持ったプラズマが発射されるはずだ。しかし、トリガーを引く前に視界が黒く染まった。

 

「胸部にビームが命中…撃墜判定。状況終了」

 

コンソールに赤く光る文字を確認し、結果を呟く。悪くはなかったと思うのだが、まだ及ばなかったようだ。

 

《お疲れ様、大尉。悪くはなかったが…、やはり懐に入られてはそいつの相手は難しいか?》

 

視界が紺色の宇宙に戻るとともにシュレスタ少佐から通信が入ってくる。ズルフィカールのCICにて今回の演習を監督していたはずだ。

 

「単純に機体用途の違いではないかと思います。私の機体は、謂わば対艦攻撃機です。収束プラズマ砲も、MSのような小さな目標を撃つための兵器ではありません」

 

ディフェンサーユニットの火器のほとんどは対艦を目的に作られている。もちろん、拡散ビームキャノンやビームマシンガン、試作型ビームガトリングガン、120㎜ガトリングガンなど、取り回しによってはMSとも戦える装備もあるが…、敵艦隊への攻撃任務をこなすほうが効果を発揮するだろう。というかこれ全部一応試験は終わっているんだよな…試験配備とはいえ今ここにあるんだから。180㎜対艦多薬室砲とか…文字から犇々とロマンの漂ってくるヤバい奴もあるが…、こいつは運用に難がありすぎる。標的艦をチクワにするくらいの威力はある。しかし、冷却性能とか、消費エネルギーとかが酷過ぎる。大容量バッテリーを複数搭載したこの機体が一発でエネルギーエンプティとか…。そんなもの作っているからADTRDが「変態の巣窟」とかって言われるんだ。…なんでも大口径化、地上配備型にして基地防空と軌道爆撃の戦域高高度迎撃のために量産するらしい…。ストーンヘンジかよ…。そりゃ…射程は異常と言ってもいいくらいだ。しかし特殊合金を採用した弾薬が高い。しかし、ミサイルが誘導効かなくなったのでそのようなものも必要…ということだろうか?正直火砲の開発部署は浪漫に生きている連中が多すぎて困る…。運用試験をする側の身にもなれって話だ。オーバーロードとか怖すぎる…。

 

《各員、第二戦闘配置、接近する所属不明の艦影21、付近の哨戒部隊は現地へ急行せよ》

 

戻ろうとするといきなり、司令部からの緊急通信が入る。

 

「ッ!?少佐!!」

 

《演習中の各機に通達、直ちに帰還、戦闘装備に換装の後、コクピットにて待機せよ。》

 

少佐は僕たちに命令を出す。おそらくは自分もMSデッキへ向かうのだろう。

 

《「了解!!」》

 

―――――――――

ZAFT ホーク隊

 

「うん、知ってた」

 

NJの効果範囲であろうと、レーダーが完全に使えないというわけではない。1960年代前半くらいの精度はあるし、当たり前だが、こちらがレーザー照準器を使っているのだから、逆探は問題なく作動するのでロックオンすればこちらの位置はバレる。そして未だに、理事国が削減こそすれ、完全に廃止していない見張り員を「旧時代の遺物」などと揶揄している連中にはわからないだろうが、目視とは案外馬鹿にできないものだ。熟練の見張り員に性能のいい双眼鏡の一つでもあれば、この距離だろうと捕捉されるだろう。

 

「各機散開、砲撃とは当たらないもの…という時代に逆戻りはしているが、砲撃の中を密集していいことはないしな」

 

部下12機に散開命令を出す、ほかの隊にまで忠告を飛ばす時間はない。砲撃が始まるだろう。

 

――――――――――――

 

《セキ、ホイヘンス、ベルヌーイ中破!!クーロン轟沈!!MS14機喪失!!》

 

「言わんこっちゃない!!」

 

キュリーのオペレーターから伝わってくる悲鳴のような叫びに思わずそう吐き捨てる。隊の母艦に被害がないのが救いだが、ローラシア級2撃沈、ナスカ級1ローラシア級1中破…、いくら沈んでも代わりのあるような国ではないので、ZAFTにとっては痛い損害だ。…というか、どうして白服が功に焦って撃墜されてるんだよコンチクショウ、クルーゼが無駄に活躍したからか?それとも戦争の認識が、英雄が生息していたころの認識なのか?残っている白は俺と…フーリエのグラディス艦長だけか…。とにかく連合のMSの性能は脅威だと結論付け、ライフルを乱射しながら突っ込んできたライトグリーンとネイビーで塗装された機体に無反動砲をぶち込む。まだまだ対MS戦術は未熟…なのはこちらもだな。当たり前だが。

 

「あー…もう、残存兵力はポイントA-23に集結、撤退だ!!一転突破を図る。押っ取り刀で押しかけてきた連中をぶち抜くぞ!!」

 

既に包囲状態ではあるが、まだ戦力の薄い地点を突破、撤退するように指示をする。

 

《了解。ホーク隊長、MS隊の指揮は任せます》

 

「こちらも艦隊の指揮は任せるぞグラディス艦長」

 

―――――――――

 

第501試験戦闘大隊

 

《一機特務仕様がいるな…まぁ、いい。各機、深追いはするな、しかし損害は与えろ。ここで与えた損害が後々多くの味方の命を救う》

 

「了解!!」

 

《了解!!》

 

48機、大隊に所属するすべての機体からの返信が聞こえる中、試作型精密照準バイザーを作動させる。砲撃型や支援型、電子戦用に開発されている装備の試験型だ。頭部ごと換装する必要があり、頭部機銃がオミットされている事が欠点といえば欠点か?

 

「逸っている奴がいる…」

 

一機、突出している機体がある。おそらく、隊長機と思われるシグーが止めようとしている気があるが、聞く耳を持たないようだ。狙撃してみよう。使うものは高出力化を施しただけのビームライフルだが、別に狙撃ができないわけでもない。

 

「こちらから狙撃して敵の勢いを挫きます。鶴野機の射線上に入らないでください」

 

《わかった。大尉、しっかりやれよ》

 

少佐からの通信を聞き、狙撃に集中する。

 

「そこっ!!」

 

照準の中央に敵の胸部が入った瞬間、引き金を引いた。

 

「あ…当たった?」

 

狙いからは少しずれたが、敵MSの腹部を打ち抜き爆散させる。…照準器の問題ではない。搭乗者の技量の問題だな。

 

《ナイスショット、大尉。そのまま支援を…という装備ではなさそうだな。無茶はするなよ》

 

「了解」

 

余裕、といった感じの少佐の声に反応し、右のハードポイントに搭載していたビームマシンガンを装備する。今回は試作した大型マガジンを装着しているため、使用時間は長くなっていると思う。

 

「無理はせず…、慎重に」

 

そう言い聞かせるようにつぶやきながら近くにいたジンに向かい引き金を引く。

 

《ナイス援護!!》

 

結果的に撃墜には至らなかったが、味方パイロットの援護につながった。

 

《大尉、特務仕様がそちらに向かっている!!》

 

「は?ってアブねっ!?」

 

少佐の警告を受けるとほぼ同時に、ミサイルが数発、先ほどまでいた場所を通り抜ける。赤と黒で塗られたシグーが無反動砲と重粒子砲を構え突撃してくる。

 

「鷹?」

 

肩に描かれたエンブレムが目に入りつぶやく。

 

《よう、いい機体に乗っているじゃないか》

 

敵からの通信が入ってくる、周波数を合わせたのか?

 

「お褒めの言葉どうもっ!!」

 

背部ミサイルを発射しながらバイザーを上げ、左でビームサーベルを抜刀。弾切れなのか無反動砲を捨て、ミサイルを躱し突っ込んでくるシグーに叩きつけようとするが、敵の腕に阻まれる。

 

「ガントレットかよ!?」

 

《いい趣味しているだろう?対ビームコーティング付きだ》

 

左腕には小型の盾が装着してあり、それで防がれる。よく見るとシールド裏に刃物が仕込まれているようだと認識したところで、右腕のガントレットの刃でビームマシンガンを切り裂かれる。いつの間にか重粒子砲も捨てていたようだ。

 

「ニャロ!?」

 

咄嗟に肩部に搭載された閃光弾を発射し距離をとる。ビームライフルを再び装備しようとする…いや、時間がない!!と判断し対装甲ナイフを抜く。

 

《身持ちが固いな…うらやましいよ》

 

左手にライフル。右はガントレットのままで突撃してくるシグーを何とかいなし、周りを見る。ZAFTはほぼ撤退を成功させたか。こちらに隊の仲間たちが近づいてきている。すると、赤黒のシグーは撤退しようとする。おそらくシグーのスピードならば、追撃は振り切れるだろう。

 

《おい背負子付き、その命、預けとく》

 

赤黒のシグーのパイロットがそう吐き捨て、シグーを加速させる。

 

「は?」

 

去り際にいきなり何を言ってくるんだこいつは?というか背負子付き?もう少しいいネーミングがあったんじゃ…。まぁ、敵につける異名なんぞ皮肉か忌み名のどちらかか。忌み名なんぞつけられる技量がないのなら、間の抜けた名前にもなるか…。

 

《大尉、よく生き残った。帰艦するぞ》

 

少佐から通信が入り、ズルフィカールとパゴタが目に入る。…なんとか生き残ったが、いつ死んでもおかしくなかった。戦場では当たり前のことではあるし、覚悟はしているが。やはり、技量はまだまだ…か。




シグー(マクシミリアン・ホーク機)

M68キャットゥス 500mm無反動砲
M69バルルス改 特火重粒子砲
M68パルデュス 3連装短距離誘導弾発射筒×2
小型ブレードガントレット×2

ホーク隊隊長、マクシミリアン・ホークの乗機であるシグー。パーソナルカラーのメインを赤、ところどころに黒を配置した配色で塗装されているほか、装甲が追加されている。ホーク隊長の戦闘スタイルは砲撃寄りであり、ジン用の大型武装を好んで使用している他、重斬刀と専用シールドが重量の都合で装備できなくなったことを補うために、近接用として現地改修装備のブレードガントレットを装備する。



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phase18 アフリカ解放作戦開始

ちょっと薬物描写とかいろいろ出てきます。…ここまでロクデナシ書く必要あったかなぁ…。とも思いますが、ぶっちゃけ、割と抑圧された場所からアフリカに放り出されたらこうなるよ(白眼)だと思います。まぁとにかく、薬物ダメ、絶対


CE70 11月24日 アフリカ ZAFT ザンジバル基地

 

「ふあ~ぁ…眠…」

 

緑のパイロットスーツを纏った青年がジンのコクピットで欠伸をする。立哨任務など退屈なだけで何もないじゃないか。目の前が海なのは救い…か?と思いながら、基地近くの商店で買ったお菓子の入っている袋に手を伸ばす。確か眠気覚ましのタブレット菓子が入っていたはずだ

 

《気を抜くなよ…》

 

ジン・フェムウスに乗る同僚が、あきれたような声でこちらに話しかける。

 

「そうはいってもさぁ…、暇、それに昨日街のカワイ子ちゃんとさぁ…ってわけで寝不足なんよ」

 

コーディネイターは、見た目のいい連中が多い。わざわざ「作る」のだから当然といえば当然だが、ついでに言うと、既に婚姻統制を敷いているプラントの住民は、こちらに来てから、街に出てそういう遊びを覚えてしまい、ハマる連中も多いらしい。

 

《大丈夫なのかそれ?病気とかドラッグとか》

 

アフリカ北部は現状無法地帯に近い。理事国が触れたがらない理由も、ユーラシアがわざわざ南アフリカを焚きつけて、マスドライバー向けの土地を確保したのも、治安の悪さ、無駄にメンドクサイ部族間対立が原因だ。まとまっているのが不思議な国でしかない…。

 

「問題ないんじゃねーの?対策はしてるし、なんか渡されて吸ったけどアフリカ共同体じゃ合法らしいし」

 

120%アウトである。と通信相手の同僚は思う、彼は薬品関係の仕事についていたのだが、…まぁその手の薬でアウトでないものはない。プラントでは間違いなくアウトだろう

 

《…アウトだろそれ。というかまぁ…この辺での抜き方なんて酒かソレくらいだろうけど…自重はしろよ。帰った時医療機関のお世話になるぞ》

 

医者にかかった程度で依存症が抜けるわけではないのだが。薬物所持などの再犯率は高いと聞く。プラント自体がけっこう抑圧された空間のため、自由な場所に放り出されれば、乱れもするだろうが、倫理観とかどこに行ったんだろうなぁ…。と同僚は思う。

 

《ん?》

 

「どうしたんだ?」

 

《いや…なんか変な音が…ウッ!?》

 

「おい?どうした!?ってウオッ!?」

 

海面から複数のミサイルが上がる。敵の奇襲か?

 

「こちら沿岸防衛部、敵の襲撃を確認!!クソ!!どこに隠れてやがった!!」

 

《こちら司令部、了解、スクランブル、スクランブル!!MS搭乗者は格納庫へ、待機組は即出撃!!》

 

「早くしてグギャ!?」

 

ジンに乗ったパイロットはソードフィッシュのメーザーを受けコクピットが爆発、絶命した。

 

―――――――――

 

AOC地上軍において、もっとも重要視されているのは海軍である。当たり前の話であるが、AOCは他の大国に比べ、領海面積、経済水域面積ともに大きい。なのでそれを守護する海軍に最も予算が振り分けられている。かといって陸軍や空軍が不遇なわけでもないが。なので、汎用型の次に制式化されたMSは水陸両用型であった。

 

「敵の排除を確認、揚陸地点確保。航空隊、爆撃を開始してくれ」

 

《こちら航空隊、了解、巻き込まれるなよ?》

 

「そっちが誤爆しなきゃな。それから、一応、アフリカ解放の橋頭保にする予定だからな?壊しすぎるなよ?」

 

解放、といえば聞こえはいいのだが…、その…ぶっちゃけ、「アフリカ共同体の崩壊は防げない」と理事国は結論付けている。なのでアフリカ東部沿岸地域、最悪ソマリア、エチオピア、ジブチ、欲を言えばエリトリアまで確保し、国家を立ち上げる。という風に動くことが確定している…エチオピア国だか、アクスム国だか、サアバ国だか知らんが、まぁ、国名は現地住民が決めればいいのである。裏に何がいようと、大国の思惑が絡んでいようと、建前上は民族自決に基づいた独立なのだから。幸い、ジブチやエチオピア、エリトリアなどの地域には、旧世紀から大西洋や我が国の経済圏の国家や企業が支援を行っているため、つながりがあり、根回しも開始している。ソマリアにも、漁業基地があったりするため、こちらの現地住民の懐柔も始まっているらしい。今回の戦争で閉鎖したのだが…その連中が海賊行為を行っているらしい…最悪、沈んでもらうしかないな。

 

「ま、しゃーないわな、プラントに付いちゃったんだから」

 

敵に容赦してもこちらの死人が増えるだけだ。恨むんなら自分の国の政府を恨め。とソードフィッシュ隊の隊長は結論付け、作戦行動を再開する。

 

この日、ZAFTはザンジバル島を失った。

 

―――――――――

オーガスタ アズラエル財団先進医療研究所

 

「『最も抵抗が少ない道は、敗者の道です』とはいいますがね…、さすがにこの抵抗、とやらは我々に相応しくありませんね」

 

目の笑っていない笑みでアズラエルは目の前に座る研究者を見る。そんなに怯えなくてもいいじゃないか。別に取って食ったりしないし、物理的に首が飛ぶこともない。

 

「で…ですが、コーディネイターの能力はきょう「そんなことは解っています。だからこそ我々は、我々の、ナチュラルの能力で奴らを打倒せねばならないのですよ」」

 

あ、詰んだ…と思いながら研究者は目を瞑る。彼は敬虔なブルーコスモスシンパであり、ブースデットマンの研究をしていた。現場の暴走で。アズラエルは一貫してその様な主張をしていたのだが、どうも、熱心なシンパを自称する連中は彼の主張を曲げ、自分の主張を通すための道具にしていたようだ。

 

「まぁ、貴方なりに空のバケモノ共に勝つために努力をしていたのは認めましょう。この研究を見逃してしまったことや、ここで使われたような困窮している孤児が生まれてしまったのは国の落ち度でもあります。あぁ、我々の落ち度でもありますね、資本家というのは寄付や慈善事業などで社会貢献しなければならないものですから。兎に角、この研究は中止してください…いや、できる限り、人間らしい生活が送れるだけの治療を施すための研究を継続してください。難しいのは理解していますが、ここまで弄れて戻せない。というのは無いでしょう?能力なんて気にせずやってください。それから未だ外科的措置や薬物投与を施していない子たちの施設は孤児院へ改組しましょう…あー…でも、ここまでの軍事訓練を施せるとなると…。アームストロング大将とも相談しないと、絶対軍内部に噛んでるやつがいる…、余計なことをしてくれる…」

 

アズラエルは爪を噛みながらぶつぶつと何かをつぶやく。

 

「ホイットニー少佐、アームストロング大将に連絡をお願いします。なるべく早く会談を行いたいと伝えてください」

 

アームストロング大将が連絡役として寄越した若手将校にそう伝える。連絡役にしておくには勿体ない能力の持ち主なので重宝している。

 

「はっ、あちらの予定に合わせる形でよろしいので?」

 

「現状、私の抱えている仕事はそう多くはありませんから…。部下も妻も過保護が過ぎます」

 

困ったような顔でアズラエルは言う。いや、あなた放っておいたら倒れるまで仕事するじゃないですか。と言うか本当にナチュラルなんですよね?と思いながらもホイットニー少佐は承諾する。

 

「了解しました。ではそのように伝えます」

 

「よろしくお願いしますよ?」

 

アズラエルの返答を聴くと、ホイットニーはアームストロング大将に連絡をつける為に部屋を出る。この日を境に、ブースデットマンの研究は中止されたのであった

 

―――――――――

 

CE70 年末 スラバヤ 会合

 

「…と、いうわけで、アフリカ解放の足掛かりとしてザンジバル島を確保、南アフリカには銭がめを供与、MSを運用できる金は無いらしいからな。兎に角、太平洋がほぼほぼフリーなのが効いてるな、オーブはでしゃばって来ないし、ウチの機体も、大西洋のスピアヘッドとスカイグラスパーの改良型も良い…というか、撃墜できるだけの火力積んでるなら航空機でもいいんだな…」

 

と古賀がAOC指揮の担当区域の戦況報告の締めくくりに言う。

 

「…そりゃそうだろ、速度が速いほうが強い等言うつもりはないが、まぁ、ディンなんぞ好きな方向に攻撃できる以外の利点なんぞないからな。戦術を構築してしまえば、MSの魔力は途端に消える」

 

何のためにMA形態のみとはいえ、フラッグやブラストを超音速飛行ができるよう作ったと思っているんだ、と湯野教授が返す。

 

「各国の戦線も戦況は順調…、というほどではないが、順調に敵戦力を消耗させているな。ウチと大西洋だけでなく、ユーラシアや東アジアもMS投入の目処がたった」

 

ストライクダガーだがな、と苦笑しながら連合司令部に詰めている軍人の一人が報告する。

 

「…そういやヘリオポリスってどうなってんの?」

 

官僚の一人が今思い出したと言わんばかりに質問をする。

 

「予算削られた状態で継続中だな…。名目上はハイエンド機開発となっているが、地球で開発された技術やデータも回されてないらしい、飼い殺しだな」

 

そもそも、ラミネート抜きの105ダガーが開発完了している時点であそこで開発している意味のある機体ってイージスとブリッツくらいだしな。続けてるのは予算かけすぎて引っ込みが付かなくなってるらしい、と大西洋連邦との技術交流を行っている部署にいる技術者が言う。

 

「うわヒッデェ…」

 

「仕方ないだろ?何せ組んだ相手がなに考えてるかわからんオーブだ。続けてるのは、むこうさん、オーブから取れるもん取れりゃ良いって判断らしい」

 

「オーブの技術って見るもんあるか?」

 

「何気に各国と共同開発しまくってたからな、まぁ、高い水準で纏まってはいる。バカにはできんぞ」

 

まぁ、ウチの技術は粗方古いものになっているがな、と工廠長が言う。

 

「バッテリーに関しては大西洋連邦に勝るし、ビーム兵器は少し劣るくらい。火器関係はユーラシアに微妙に勝り、電子機器は大西洋連邦と同等だ、金属加工や材質工学こそ大幅にウチに劣るが、MSの装甲ってどうしても限度があるからな」

 

その辺は関係あるまいよ、と湯野教授は続ける。

 

「成る程、貰えるもんは貰うべきだな。アストレイ自体、技術を盗んで作ったものなのだし、こちらが盗んでも文句は言えん、いや言わせんさ」

 

と、藤田が締めくくる。この日の会合はこれで終了した。

 

 

 




アズラエルの脳内コーディネーター平均値

キラ+鋼メンタル+コミュニケーション能力+アズラエル以上の事務処理能力

果たしてこのような怪物がこの世界に存在するのでしょうか?って感じですが。



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phase19 原作開始

HG鉄華団コンプリートセット…畜生バンダイめ、何てことしやがる。魅力的じゃないか…。でも値段的に多々買いに向いてなさすぎる…。


C.E.71 1月25日 大西洋連邦 アズラエル財団 オフィス

 

「…すいません、もう一回言ってくれますか?」

 

「うむ、頼む、どうも耳がおかしくなったようだ」

 

「はっ、ヘリオポリスをZAFT艦隊が襲撃、G4機が強奪されました」

 

「「「…」」」

 

オフィスは居心地の悪い沈黙に支配される。丁度、アームストロング大将と会談を行っていたアズラエルの元に凶報…、いや狂報がもたらされる。

 

「ちょっと待ってください、ヘリオポリスはオーブのコロニーですよね?」

 

「そうですな…、中立国のオーブのコロニーです」

 

「バカなんでしょうか?ZAFTって…」

 

これまでの行動すべて総合してみてもバカだろう。アームストロング大将はそう言いかけるが、言葉を飲み込む。なんだかかわいそうな気もするが、彼の中のコーディネイターへの誤解は誤解のままにしておく方が良い。少なくともこの戦争が終わるまでは。

 

「まぁ、間違っていない部分だけを切り抜くとすれば、あそこではハルバートン主導のMSが開発されていました。それを未然に防ごうとすることは間違いではないでしょう」

 

それ以外間違いしかありませんが。とアームストロング大将は言外に呟く。中立国には兵器輸出禁止の義務はあるが共同開発禁止などの義務はない。

 

「別に強奪されようと破壊されようとデータがあるのですが…」

 

「考えない方がよろしいかと、私もどうしてその様な行動に至ったのか判断がつかない。理由などより、奪われたことの方が深刻でしょうな」

理解不能の事態に混乱しているアズラエルを諭すようにアームストロング大将は言う。

 

「そういえばそうですね、どうしましょうか?」

 

「まぁ、フェイズシフト装甲もビーム兵器もZAFTを念頭に置いて開発されたもので、当のZAFTに渡っても、こちらが対応できないものではないのだが…」

 

技術がすべて取られた事が大問題だ。なんてことをしてれる。

 

「…取り敢えず、量産型アークエンジェル、スローンズ級の建造体勢は整いましたし、3月には1番艦、その後5月から月産1隻体勢で就役予定です。標準型主力戦闘艦統合計画、StMC71とStDE71はAOCと共に計画を進めていますし…、ご要望とあらばドミニオンとこちらのGのロールアウトを急かしますが…」

 

カイラス級巡洋艦は、あくまで旧式艦の改良型であり、発展性がすでに無い。間に合わせる為に既存の設備や、部品を使い回すための苦肉の策だったが、ここまで戦況に余裕があるのならばいいじゃないかということで、新規設計をする事になった。大西洋連邦を巻き込んで、「地球連合軍の新型主力艦」として計画する事になったのは予想外だったが、これは、大西洋連邦が既存艦の改装に見切りをつけたのが大きい、現存の艦艇では、MS運用艦として適する物がないとの結論が出たらしい。アガメムノンで12機、カイラス級と同等というのは非効率だということらしい。多くの艦艇を失ってしまったこともあってスムーズに進んだ。

 

「ふむ…、必要ないでしょう、今必要なのは強力なMSではなく、数か揃えられるそこそこのMS、ハイエンド機はそのあとで充分、極論無くても良い。エースに良いものと良い環境を与えたいというのは理解しますが、…実際の戦場は、誰でもないものが英雄を殺す。あのOSのネーミングは秀逸ですな」

 

「誰でもない」なんてネーミングは軍にぴったりだ。とアームストロング大将は続ける。

 

「成る程、わかりました。ではそのように」

 

と笑顔で言うと、アズラエルは、助かったアークエンジェルへの救援の話をつけるために作戦本部へ行こうとアームストロング大将を誘うのであった。

 

――――――――――

 

1月27日 スラバヤ 会合

 

「ついに原作開始、か」

 

「ヘリオポリスは崩壊、G4機の強奪、原作通りだな」

 

会合は、先ごろあったヘリオポリス崩壊に関しての対応を話しあうという名目で集まっていた。やることなどないのだが。

 

「ついでに言うと、オーブからの依頼でジャンク屋がヘリオポリスに仕事に行っているようだ、ユーラシアの依頼で傭兵も動いている。こちらも、原作通りでいいのか?」

 

「ロウと劾か?まぁ、気にすることでもないだろ、アストレイは」

 

ジャンク屋に関しては、時々臨検くらいはするが、それ以外ならば自由だし、入港税や防疫検査をきちんとしてくれれば進入禁止区域以外問題なく入港できる。基本的に、必要以上にかかわる気はない。

 

「プロトジンやそれを利用したワークスジンは既にジャンク屋持ってるしな、それよりも性能的には上だろうが、武装さえしてなければ文句は言わん、作業用にナイフや工具程度なら認めているのだし、サーベルラックにはビームサーベルではなくアーマーシュナイダーでも装備すれば良いのだろう、ウチが販売しているスコップやツルハシ、という手もある」

 

藤田の手に握られているのはGGジャーナルという、ジャンク屋ギルドの発行する刊行物だ。活動のアピールらしい、ほかにも、ジャンク屋への仕事の斡旋や装備の広告などが入っているが、本質はジャンク屋のイメージ改善だ。アウトロー集団のイメージが抜けていないので。そこそこ名の通ったフリージャーナリストを何人か専属契約して作っているようだ。表紙には、スコップやツルハシなどを使い、ドックを作っているワークスジンが写っている。

 

「あぁ、装備することを強いられているんだ!!ってCMのアレな、思い切り武器として使えそうなんだが…ってか、ジャンク屋には必要ないだろ、アレ」

 

スコップなんてどこで使うんだ?と言いたそうにタクシンが言う。

 

「ツルハシやエンピが武器として使えないわけ無いだろ、まんま武器として使えるぞ、バールのようなものも作りたかったが…」

 

陸軍工兵隊を統括している人物が言う。ちなみに彼らはそのCMの制作にジャンク屋とともに全面協力している。

 

「そこまでネタに走らんでも…、というかバールなんてどこで使うんだ。工具とかワイヤーガンとか、使いようによっては武器として使えるが、宇宙作業にも使うからな。ジャンク屋は大西洋連邦が掘り尽くした小型小惑星を改造して拠点に仕立てあげてるらしい、既に目ぼしいもんは取れんし、補給も大西洋連邦の民間輸送企業と専属契約って約束でかなり安く仕入れたらしい。といっても、鉱員の生活設備すら外で、完全に鉱山としてしか使っていなかった奴だし、ドックの新造や港湾設備と生活設備の拡充なんかでスコップやツルハシの需要もあるんだろう」

 

と湯野教授が締めくくる。この後、ユーラシアの要塞、アルテミスが襲撃された報告が入り、一同顔を顰めるのであった。

 

―――――――――

同日 ZAFT ホーク隊 キュリー 隊長室

 

 

「任務は了解した…だが、この補充要員って…」

 

《悪いな、使いづらい奴で》

 

ユウキが画面内で詫びてくる。

 

「腕は確かだ、そこまで不満もない」

 

通信が表示されている端末の右端に出ている機体と搭乗員のデータを見て顔をしかめる。問題児を二人も押し付けられた…。新装備も貰っているが、だからこそ指揮に穴が開かないようにせねば…。

 

「で?クルーゼへの援軍だ?あいつはさっさと本国に呼び戻して軍法会議…じゃなかった、査問会にかけるべきだと思うがね」

 

大西洋連邦軍が中にいたとはいえ、中立国のコロニーを襲撃、崩壊させたのだ。オーブは不気味なほどに沈黙しているが、普通ならば、抗議の二三飛んできているだろう。

 

《呼び出しはしたさ、まぁ、処罰などは与えない方向らしいがな、士気に関わるそうだ》

 

ザラ委員長含め反対意見も多かったようだが、結局は押し負けたようだ。とユウキは続ける。

 

「そんなこと言っている場合じゃないと思うがね。というか、悪例を作るだろそれは、これでオーブまで参戦したら戦犯だぞ戦犯。それに俺あいつ嫌いなんでな、何考えてんのかわからん、下手すりゃ活動家より性質悪いぞ」

 

何を考えているのかわならない、そして不気味だ。勝利にかける情熱は買うが、手法を問わないのは間違っている。それに、いちいち行動が怪しい。…そもそも、あの謎の情熱が向かっている方向は「プラントの独立」なのか?

 

《…、まぁ、私もいろいろ疑問には思っているがな、だからと言って証拠がないのに罪に問うわけにもいかない。評議会の連中も、処罰には反対しているしな》

 

ユウキも納得していないといった顔で言う。

 

「わかっているがね…まぁ、落ち着いたらちゃんと軍法くらい作れよ…未だZAFTすら掌握できていないのが実情だが、このまま戦争続けたら、俺らが終わる。城を枕に…、なんて趣味じゃないからな。娘のためにも死ぬわけにはいかん。ところで、そんなに急ぐって…、クルーゼは何を見つけたんだ?」

 

《大西洋製ハイエンドMSを鹵獲…したが、1機と、その搭載艦になる予定であった艦を逃したらしい、…長距離通信で虫食いだらけだが、こちらに伝わった情報はそちらに送った。確認したか?》

 

「あぁ、これクラスならコンペイトウにも小隊規模で居やがったぞ」

 

PS装甲とやらが採用されているのかわわからなかったが、これと同じような機体が三機も暴れていた。一機パーソナルカラーだったし、隊長機なのだろう。コンペイトウに三機ということは、月や地上の有力拠点にも数機配備されているということだ。

 

《…コンペイトウは新兵器の実験場としての側面もある。AOC製の実験機だったのだろうな、いや少数とはいえ配備されているのか?…マズいな》

 

「ああ、それに、露払いに汎用型の改修機も連れていた。そいつらでシグークラスの性能はあるんじゃないか?…というか、この装甲役に立つのか?向こうはMS携行型のビーム兵器を実用化しているんだぞ」

 

後ろにバインダーのついた汎用型や、特徴的なバックパックを装備した汎用型を思いだしながら言う。中身も精鋭ではあっただろうが、性能も高かった。

 

《本格的にマズいな…見たところオーソドックスな機体のようだが…、こちらはそれ以外にも新技術をいくつか採用しているらしい。ジンよりも大分進歩しているようだ》

 

「…それをおとなしく認めるのが何人いるかね…。まぁ、そっちは任すわ、頑張ってくれ」

 

政治的なことはあまり得意ではない。こういうのは適材適所だ、事務官僚や参謀をやるのはユウキでいい…。もう2,3人必要ではないかとも思うが、できないやつが言っても迷惑をかけるだけだ。

 

《マックス、本音を言うと君やタカオには戻ってきてほしいのだがね…》

 

「タカオ呼び戻せよ。俺、政治できないし」

 

俺と比べたらタカオのほうがそういう政局やらを見分ける力があるだろう。そう言うと、二、三意見交換して通信を終わらせた。

 

「ふぅ…、クルーゼ隊…ね」

 

手元の端末からクルーゼ隊のデータを探し出し顔を顰める。なんだこの人員は、面倒とかそういう次元じゃない。というか、英雄とはいえ、御曹司をあんな身元すら怪しいやつに任せるとか議員方は正気か?…ザラ議長もまだまだ勉強が足らんのだろうな。いや、政治家になるには人を信じすぎている…か。

 

「…とりあえず本人確認可能な写真の提出は義務付けるべきだろ…普通…」

 

クルーゼの個人情報にあった仮面付きの写真を見て思わずつぶやいた言葉は、あまり関係ないけど多分間違ってはいないだろう…。

 

―――――――――

 

コンペイトウ 密閉ドック 501試験戦闘大隊旗艦ズルフィカール

 

「新型CIWSへの換装作業は完了…なんだけど、こんなやっつけ仕事が高性能…大西洋連邦って…」

 

作業用のツナギの上からフライトジャケットを羽織った状態で作業の進行を確認する。所属部隊の艦とはいえ、MSエンジニアなのにどうして艦艇整備にまで駆り出されてるんだろうな…俺。人手が足りてないのは知ってるけど、ここには相応にADTRDの職員いるのに。

 

サージェントヨーク対空機関砲システム(連装型)、MS用の52㎜機関砲ポッドの機関部と砲身に索敵レーダーと追尾レーダーをそのままポン付けするというやっつけ仕事の割になかなかの高性能だ。オーブ製のイーゲルシュテルンは確かに高性能である。しかし、見てわかる通り大きすぎるため、その装備重量と必要容積上、小型艦艇、護衛艦や駆逐艦などに装備するにはどうしてもそれを前提とした設計が必要であり、他の装備を大幅に圧迫していた。そこでこれの出番である。確かに威力は下がるが、それ以上に省スペース化、軽量化の利点が勝ったことと、大西洋連邦とAOCは「兵器からオーブの関与を完全排除する」という方向で同意、つまりゴットフリート、ローエングリン、イーゲルシュテルンの排除を決定したためである。そういえば全く関係ないはずなのにどうしてドイツ語を使っていたのだろう…。そんな裏側もあって採用されたCIWSだが、なかなかに高性能だ。

 

「それから…明日の出航に向けて必要物資の積み込みも完了、次の航海は…護衛任務?…なんでアルスター連合事務次官がこっち来てるんだよ、あ…あのネルソン級はそれか」

 

ネルソン級がこんなところにいる時点でおかしいと思えよ俺…。というか、第8艦隊ではなく第7艦隊(コンペイトウ艦隊)がアルスター事務次官を護衛するのな…。本格的に「ハルバートンを信用していない」と見える。いや「まぁ…現状の第8艦隊にマトモな戦果を期待することが間違っている。ハルバートンは確かに名将だ。だが、ああも部下を艦隊再編の名目で引き抜かれ、新兵ばかりじゃ厳しい。部下が彼の指示についていけないだろう。彼の提出した戦術レポートは現状MA部隊に救世主扱いされているらしいが。おそらく死ぬ未来は変わらんだろうな」と、会合に行く前に報告書を提出したとき、阿部指令が話していた。

 

「まぁ…止められんもんはしゃーなしだ、そもそも、作っちゃった経済圏への責任を果たすだけだしな俺たちは。そうだ、明日の飯は…おっ、明日の昼はシャハン麺と棒棒鶏風サラダか…麺が古式ゆかしい宇宙食対応型じゃないともっと嬉しいんだがな…」

 

PDAの中に入っているパゴタ主計課の掲示板から、明日の昼食メニューがシャハン麺、海軍ラーメンであることを知り喜ぶ。麺こそ卵白でブロック状に固められたものだが、それは仕方のないことだ。ついでにハラル対応型メニューとかも貼ってあるが、お世話になることがないので放置である。

 

「よし、じゃあ寝ますか」

 

PDAをポケットにしまいそうつぶやく、もうやることもないので寝る。残念というかなんというか、停泊中でも届け出をしない限り、艦船勤務者は所属艦の自室で眠る必要がある。乗船用のタラップまでジャンプし、ズルフィカールの自室へ向かうのであった。




OS開発陣「え?(困惑)…ま、まぁ、そうですね、そんなこと考えて名づけました(嘘)」

StMC71とStDE71は新型の巡洋艦と護衛艦です。多分中盤から後半にかけて登場すると思います。


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phase20 デブリベルト

デブリベルト

 

「ホントにここを通るのか?」

 

「アルテミスで阿呆がやってくれたからな。コンペイトウを捜索拠点として使う腹積もりだったらしいが…」

 

虫のいい話だな、と笑いながら歩いていくズルフィカールの下士官達を尻目に鶴野は胃を押さえる。

 

チクショウ、パゴダにつめっばなしの俺をこっちに呼び戻したのはこれかよ。超高出力索敵レドームとリストマルチランチャー、ロングブレードライフルの試験データのまとめと対G用の小物の準備が…ってまぁ小物のほうはあとは弾薬装填したり、動作確認するだけなんだけど…。ほんとは一回くらい実際に使ってみたいが、時間がない。今夜は徹夜かな?

 

「アルスター事務次官を招待しての昼食会」にたかが大尉を呼び出すって相当だぞ、とも思ったが聞けば向こうのご希望らしい。こっちの経歴を知ってるみたいだ。…まぁ、今更驚くことでもないけどさ…。それに、一応マナー講習は受けた、宇宙軍は海軍を参考に作られている。その手の講習も欠かさない。失礼をすることもないだろう。

 

「よう、大尉、災難だな」

 

「シュレスタ少佐も…」

 

「あ、俺は出ないんだ」

 

あんな息の詰まる場所、指令と艦長がいりゃ十分だろ。と真顔で言うシュレスタ少佐が本気で恨めしい…。

 

「まぁ、上等な飯が食えるんだ、味なんかわからんだろうがな」

 

「今日のパゴタの昼食…シャハン麺なんですよ…」

 

「そりゃ災難、日系には人気のメニューだったな…って鶴野大尉は月居住者(ルナリアン)だろう?いろいろ食いなれてるんじゃないのか?」

 

確かに僕の出身はかぐやだが、だからと言って何か違うというわけでもない。

 

「それでも、行くのは日系の店とか多かったんですよね、日本式のラーメン屋もよく行きましたし」

 

月では今時珍しいが、両親がどちらも日系なのだから外食なんかもそんな感じだった。白兎のカレッジに進学してからもその傾向が強い、といっても記憶便りだが。乗り移った後も自分の好みの問題もあるのだろうが、そんな感じの食事が多かった。自分で作ったりもしたが。

 

「そうなのか?まぁ、そんなもんか…」

 

「ですね」

 

そこでシュレスタ少佐と別れ、僕は応接室へ向かう。…本気で帰りたい。

 

―――――――――

 

デブリベルト ザフト軍「足つき追撃艦隊」 旗艦ヴェサリウス 

 

「お初にお目にかかる、マクシミリアン・ホークだ」

 

「ようこそ、ホーク隊長、ラウ・ル・クルーゼだ」

 

隊長二人が握手をする。

 

「それで…こちらに来るまでにデータを確認していたのだが、これほどの戦力が必要なのかね?」

 

ナスカ級二隻、ローラシア級四隻、確かに性能は高いにしろ、船一隻にずいぶんと厳重なことで、…ここまで神経質になるのならコンペイトウにもっとよこせよ。

 

「あと少しで地球軍第8艦隊と合流すると予測されている、敵の先遣艦隊が合流していないとも限らん。用心に越したことはない」

 

「第8艦隊と合流していた場合どう立ち回る」

 

「グリマルディやヤキンと変わらんさ」

 

それをやって負けた戦いを経験した俺がここにいるんですが…。とマックスは思うが、言っても無駄である…多分。

 

「敵MSが増援に現れた場合は?」

 

「十分な数を準備できているのはAOCのみのようだ。大西洋の第8艦隊では碌な数はおるまいよ」

 

見積もりが甘いような気がする。確かに、大西洋連邦製と目されているMSは現在少数が確認されているのみである。しかしそれは重要拠点や大規模艦隊への襲撃を行っていないからかもしれない。艦隊としての基盤がガタガタであるといわれている第8艦隊だが、だからこそのハルバートンなのだろう、もしかしたらMSの一個大隊もいるかもしれん。指揮に兵がついてくるかは別物だが。

 

「…わかった、私はそちらの指揮で動くよう言われている。まぁ、従いはするさ」

 

俺は雇われの隊長、クルーゼはほぼフェイスに近い権力を持っている。こいつに『信頼』なんて言葉は縁遠いとは思うし、似合わないとも思うが。…というか階級の無いせいで意味不明なことになってやがる。

 

「よろしく頼む、設計局より送られた新型、当てにさせてもらおう」

 

シグーアサルト2型、シグーアサルトの火力向上型だ。レールガンシヴァを肩部大型シールド裏に装備し、さらに以前使っていた専用シグーでは装備の見送られたバルカンシステム内蔵防盾も両腕に装備している。戦闘が起これば、これに重粒子特火砲二つ抱えて出撃する予定だ。残念ながら、現状シグーで使える装備でGとやらに有効なのはこれだけだろう。話を聞く限りじゃ命中させることが難しいだろうが、そのあたりはほかの射撃武器による牽制でどうにかするしかない。

 

「…あまり期待はしないでほしいな」

 

押されっぱなしで部下を3人も失った。損耗率25%…とんだクソ指揮官だ。まぁ全滅どころか壊滅や殲滅しやがったほかの隊と比べればマシなのだろう

 

「では、共に来てもらおう」

 

意味深な笑みと共にそう告げられる。畜生、胡散臭すぎていかん…。

 

―――――――――

 

「しかし、AOC軍上層部の先見の明は素晴らしい、MSをこうも早く戦力化できるとは」

 

「いえ、最初は我々も懐疑的でしたが、次第に驚異的な性能を見せるようになり…」

 

「なるほど、偶然の産物と…、ということは研究者が優秀なのでしょうなぁ…」

 

探るような眼をこちらに向けてくる。俺はただのテスパイ兼手伝いだぞ。

 

「いえ…、私は乗って動かしていただけですよ…」

 

「はっはっは、ご謙遜を、娘の婚約者がオーブの工業カレッジに通っておりましてね。おそらく娘と共にアークエンジェルに乗っていると思いますが、君のような人材になってほしいですなぁ…」

 

か え り た い

 

何が楽しくておっさんたちと味もわからない肩肘張った料理を食わねばならんのだ。その辺でバロットとかカイモッデーンみたいなゲテモノ料理のフルコースでも喰わされた方がましだ。伝統的に食われているだけあって食えないものじゃないんだろうし。というか、サイはサイで優良物件だろ…。キラという冗談みたいな比較対象がいるだけで、17でカレッジにいる時点で存分に天才だ。俺、乗り移った時、3セメで20歳だぞ。飛び級なしで順当に進学しただけだが。師事する人間さえ間違わなきゃ、俺なんか早晩に超える人材だ。

 

「ははは…早晩、超えると思いますよ。自分はいい教授に師事できただけです」

 

転生者特典、もちろん既定の成績も満たしたが、で湯野教授の研究室へ入れた身としては、相応に結果を出さねば抽選漏れした人たちに申し訳が立たない。まぁ、研究室を選択する三年開始時に至るまで教授の研究室に入り浸って勉強していたのもあるのだろうが、特に変には思われていない。

 

「君はもう少し自分に自信を持った方がいい。ナチュラルでも使えるMSを作ったのは君の師やその仲間たちという認識なのだろうが、君は、それを動かしてきたのだ。君がいなければ、私たちのMSは形にならなかった、それは誇るべきことだ」

 

 

確かに、それはそうなのだろう、だがそれは誰にでもできることだ。誇ることじゃない。

 

「そう…なのでしょうか?」

 

「そうだとも」

 

そういうと、アルスター事務次官はコーヒーを飲む、こんな時に出される料理は、基本的には、地球や月で食べるコース料理と同じである。違いといえば、アルコールの類が出せないところだろうか?

 

「まぁ、もう少し自信を持ちなさい、嫌味にしか見えんのだよ」

 

確かに、関わってきたということは事実だ、けど、そんなに自慢するようなものでもないと思う。誰でもできたことだ。

 

 




アジアはゲテモノ料理の宝庫(白眼)。まぁ、日本が言えたことじゃないんだが。

対ミラージュコロイドとか考えていると結構楽しいですよね、果たしてこれが役に立つのか?とも考えてしまいますが。


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phase21 Thunder Bolt

タイトルは調子に乗った。合流まで書きたかったのですが無理でした。そして戦闘描写は一向に改善しない…。


MGガンダムVer0.3サクセスモデル、…なんか肩のサクセスのマークが地球連合軍のマークに見えた。配色は好きな奴なので今度作るガンプラの参考にしましょうか。で…、あの色紙は何だシャア。


C.E.71 第七艦隊、第一二分遣艦隊旗艦ズルフィカール 通路

 

「フリージャズが似合いそうな宙域だな」

 

MSデッキ近くの通路の窓の外を眺めながら呟く。ジャズはそんなに聞かないが、イオ・フレミングの言いたいことはなんとなくわかる。デブリベルトでの戦闘になるとのことで、様々な追加プログラムを実装する必要があり、しかしパゴダに全MSを収容する能力はなく、また人員も時間もないということで、必要部品をズルフィカールに移動させ作業していた。ほぼ徹夜で何とか作業を終わらせ、デブリの漂う宙域を眺めながらつぶやく。予定では、あと3時間ほどでアークエンジェルを捕捉できるはずだ。ネルソン級やパゴダに積みこんだ物資で補給を済ませ…アークエンジェルの戦力を考えると戦闘は6時間後くらいが望ましいな…仕方がないとはいえ練度が低いのに、これ以上お荷物になられるのは勘弁だ。敵はこちらの都合なんてお構いなしだろうが。

 

「これで雷が鳴ってたら余計にな」

 

「そうですね…って!?スハルト指令!?」

 

「敬礼は良い、当艦隊たった二人の転生者(お仲間)じゃないか。それに、面倒に巻き込んだ埋め合わせもな。といってもコンペイトウでうまい飯の一つも奢った方がいいのだろうが」

 

負担を掛けたし、労いもするさ。と言いながら、隣に来る。手に握られていたコーヒーをこちらに渡す。

 

「で…だ、流石に雷がなるほど帯電はしていないんだが、磁場には多少影響があるらしいな。ビーム兵器関係は大丈夫か?」

 

「修正プログラムは間に合いましたが…、急造品なので当てにされ過ぎても困るということで、最悪は切るよう伝えてあります」

 

デブリベルト用の射撃プログラムは間に合ったのだが、テストを済ませていないため、ぶっつけ本番となる。下手をすると、本来のプログラムより役に立たない可能性もある。修正すればいい話だが、戦闘中には不可能だ。終わった後に僕が修正するしかない。

 

「対PS装甲用や対ミラージュコロイド用の兵器も多数積み込まれていたが…、あれは役に立つのかね?」

 

懐疑的な目でスハルト指令が言う。確かに実弾兵器が多いしそのように思うのも理解できるが、あれはあれでPS装甲の弱点を突くだけの装備なのだ。使えるか使えないかは使ってみないとわからないが、ビームライフルを持っていけばいいだろう…あれ?必要なのかそれ?マイクロハイドロボンブ(拡散機雷)を外付けリストマルチランチャーに搭載してマッチングさせた俺の苦労は?対ミラージュコロイド用射撃プログラムを作った俺の苦悩は?…役に立つこと祈るしかないな。…うん、予算の中で好き勝手やってる連中の多い弊害だな。意見書を提出しよう。

 

「どちらかというと撃墜よりも、PS装甲やミラージュコロイドの弱点を突き隙を作るための装備なので…、この艦隊のMS隊の練度をもってすれば大丈夫かと思います」

 

「信頼しているな。君の方は大丈夫かね?下手をすれば君も戦闘に参加するのだろう?」

 

確かに、いざとなれば戦闘に参加するが、僕はR(ロメオ)、S(シエラ)、T(タンゴ)、U(ユニフォーム)どの中隊にも所属していないので、参加しなくとも迷惑はかけないし、本番でも直掩を担当することになっている。

 

「最悪は出ずとも大丈夫です…これから仮眠させてもらいますが」

 

と言いながらコーヒーを飲み干す。カフェインが眠気覚ましにならない体質なので十分に寝れるだろう。

 

「そうか、引き留めて悪かったな。早く寝るといい、鶴野大尉、君も大切なパイロットだ」

 

「了解、鶴野大尉、休息に入ります」

 

敬礼をしてMSデッキ近くの仮眠室へ行く。本来なら自室に戻るべきだが、そんなに長時間寝れるわけもないし、起き抜けに冷たい水でも飲んですぐ作業できる仮眠室のほうが長い時間眠れる。…はずである。

 

―――――――――

 

2時間後 ズルフィカール ブリッジ

 

 

《こちらアーモンド、LCとコンタクト》

 

アーモンドからアークエンジェル発見の報告が入る。

 

「ズルフィカール了解、アーモンドは通信を、貴艦の探し物は多少神経質になっていると思われる、あなた方が通信した方がいいだろう」

 

この場での最高階級者はスハルト准将で、艦隊の旗艦はズルフィカールだが、やはり大西洋連邦の船に通信を送るのならばアーモンドが行った方がいいだろう。と思いスハルトは言う。

 

《アーモンド了解、これより通信を開始します》

 

―――――――――

 

アークエンジェル ブリッジ

 

「第七艦隊が!?」

 

《正確には、第七艦隊、第一二分遣艦隊だ。こちらの事情は気にするな。余裕のある所に助力願っただけだ。よく耐えてくれたラミアス大尉》

 

アーモンドの艦長からの通信を聞きアークエンジェルのブリッジに活気が満ちる。救援が来てくれたのだ。それと同時にマリューは混乱する。受信した暗号パルスは第八艦隊のものであったし、通信を行ったのも第八艦隊だ。それに第七艦隊は大西洋所属ではなくAOCの艦隊だ。 どうして機密の塊であるアークエンジェルを見せるのか?

 

「そちらとは約二時間後に邂逅予定だ、貴艦は当艦隊と合流し、衛星軌道上の第八艦隊と合流まで当艦隊の護衛を受けてくれ。心ばかりではあるが物資も用意している。受け入れ準備を頼む」

 

「こちらはヘリオポリスの避難民を収容しています。そちらの受け入れは…」

 

《勿論把握している、アーモンドではないが、AOC艦隊に受け入れてもらえる算段は付いている。かぐやからの特別便も準備しているようだ》

 

オーブはアレだが民間人を受け入れないほど人でなしでもない。ヘリオポリスにいたのだから技術職も相応にいるだろうが、そのあたりは、部屋で管理して、備え付けの端末の回線を切っておけば良いだろう。ということで、避難民はこちらで受けることになっている。会合では「まさかキラが降りるとかないよな?」と戦々恐々な連中もいるが、降りるなら降りるで良いのでは?という意見も強い、自重をやめることができるのでむしろその方が良いなんて声もあるくらいだ。

 

《大西洋連邦事務次官、ジョージ・アルスターだ。まずは民間人の救助に尽力を尽くしてくれたことに礼を言いたい。》

 

ブリッジにいた背広の男が声を発したのを聞いてマリューは背筋をただす。

 

《あーそれとそのー…救助した民間人名簿の中に我が娘、フレイ・アルスターの名があったことに驚き、喜んでいる》

 

「えっ!?」

 

《出来れば顔を見せてもらえるとありがたいのだが…》

 

申し訳なさそうではあるが、割と空気の読めていない口調である。というかなんで外務事務次官がこんな最前線に来ているのだ。

 

《それは合流後にお願いしたい、積もる話もあるでしょうし、必要以上に長距離通信を使用するのは良くありません》

 

アーモンドの艦長がそうアルスター事務次官を制し、話を切る。

 

《兎に角、落ち着けんとは思うが、救援には変わりない。合流準備を頼む》

 

「了解!!」

 

ラミアス艦長がアーモンド艦長の敬礼に返礼をすると、通信が切られる

 

「どういうことなの…」

 

ラミアス艦長のつぶやきを耳に止めた人はいなかった。

 

―――――――――

 

数時間前 足つき追撃艦隊 旗艦ヴェサリウス ブリッジ

 

 

「どうした?」

 

索敵レーダーを見ていたレーダー手が何か見つけたようなしぐさをしたためクルーゼが聞く。

 

「地球軍の艦艇と思われます。こんなところで何を…」

 

レーダーには13隻の艦艇が写っている。

 

「ふむ…予測進路出せるか?」

 

クルーゼがそう聞くと、レーダー手は手元のキーボードを操作し、メインモニターに予測進路を出す作業をする。

 

「はい。……こちらです」

 

その進路はアークエンジェルとの合流を図る進路を描いていた。

 

「足つきとの合流を図る…、補給艦隊、か?」

 

「救援艦隊だと思いますがね」

 

サブモニターへホーク隊長が写る。

 

「何故そう思うのかね?」

 

「推進剤の発光パターンが、俺たちがコンペイトウでかち合った精鋭部隊の艦と一致した。一隻違うものが混じっているが、こんな連中をただの補給のために出すとは考えられん、これを機に大戦力であの船を護送する算段だろう。それよりも、そっちの坊主のフィアンセの捜索命令がこの付近の全艦艇に最優先で出ているだろう。そっちを優先すべきだ」

 

そして増援を要請しろ、戦力的に負けている。舐めてかかると痛い目見る敵だぞ。とホーク隊長がつづける。頭の中では「いかに国民的アイドル兼議長の娘とはいえヒデェ命令だ」とも思っているが。

 

「しかし我々は軍人だ、敵は倒せるときに倒さなくては後々面倒になる」

 

「そう、我々は軍人だ、優先すべきは敵を倒すことではなく、命令の遂行だ。それに、この程度の損害、大して面倒にもならん。特にナチュラル…いや、地球連合は我々に数で圧倒的に勝る。仮にあの艦隊をすべて沈めたところで半年後には次が出来上がってる。クルーゼ、君も見ただろう。大西洋連邦のプロパガンダニュースを」

 

核融合炉が稼働し、山のように作られる兵器群の写るニュースを地上派遣軍の兵士が回収して送ってきた。民間には流れていないが、隊長格ならば目を通しているはずだ。

 

「写っていたものは所詮旧時代の遺物だ…」

 

「甘い、機密を流す訳がないだろう。MSもほぼ同じペースで作られていると考えるのが自然だ」

 

今は協力しているが、理事国間に軋轢がないといえば嘘になる。今は協力できていても、柵がないわけではない。きっと水面下では暗闘が繰り広げられているはずだ。MSの製造工場なんか放送で流せるかという話だ。プラント戦が終われば軍拡競争の始まりだろう。色々な意味で笑えない。

 

「とにかく、救援だとしたらなおさら見逃すわけにもいかん。追撃するぞ、足つきに支援を送るわけにはいかん」

 

「…了解」

 

これ以上は無駄だと悟ったのかホークは通信を切る。

 

襲撃をするのは合流直前と決まり、足つき追撃艦隊は襲撃の準備を始めるのであった。

 

 

―――――――――

 

「あぁ、そういやそうでしたね!!」

 

敵襲の警報を耳にして叫びながら跳ね起きる。時計を見ると大体合流直前といったところか?原作ではZAFTの襲撃を食らうのはこちらだった。しかし戦力が4倍に増えているのによくやる。冷たい水の入った飲料ボトルを咥え、記憶が不確かであった部分を思い出しながらメカニック用仮眠室を出る。

 

「大尉!!出れるか!?」

 

「三分で出ます!!」

 

「二分でやれ!!」

 

シュレスタ少佐が通りかかり走りながら問いかけた問いに返す。

 

「了解!!」

 

もはや走り去った後だが癖というやつで敬礼をし、急いでノーマルスーツを着用しデッキへ出る。

 

「鶴野機出るぞ!!装備はショットキャノンを頼む!!」

 

《大尉、D(ディキシー)隊と合流、連中と共にネルソン級アーモンドの護衛を行ってくれ》

 

ブリッジから通信が入る。僕の任務は、大西洋連合のMS小隊と合流し護衛をすることのようだ。員数外の機体同士だ、うまく連携できるのか?というか、ネルソン級の名前アーモンドだったのか…。

 

「了解!!鶴野、V(ヴィクター)0出撃します!!」

 

員数外の僕の機体には中隊に使われていないコードが使われている。本来ならば0ではなくリーダーなのだが部下がいないので0と呼ぶ事になっている。試験の時は鶴野機で伝わっていたので不思議な気分だ。

 

宇宙空間に出て、D隊と合流する。未だ敵は艦隊外縁に展開した第501試験戦闘大隊本隊で防げている。

 

「こちらV0、援護する」

 

《Dリーダー了解、頼むぜ》

 

Dリーダーは中年の男だ、階級章を見ると中佐らしい。

 

《ネイビー23、マーク43にアークエンジェル!!》

 

「はぁ!?」

 

《おい、LCには退却するよう命令したんじゃないのか!?》

 

Dリーダーが悲鳴にも似た声で叫ぶ。LCは今回捜索していたアークエンジェルに与えられた符号だ。意味はロストチャイルド、皮肉だな、迷子って。戦闘に関して言えば、ハッキリ言って邪魔である。護衛対象が増えやがった、それも無駄に距離が離れてやがる。

 

「救援のつもりか…」

 

呻くように呟く。きっと今鏡を見たら、僕は苦虫をかみつぶしたような顔をしているのだろう。

 

《要らねぇっつの!!連戦に次ぐ連戦で碌な戦闘能力のこっちゃいないだろ連中!!クッソッ!!Rリーダー!!頼む!!》

 

《チィ!!S隊!!LCの守備に回れ、赤松!!ヘマすんなよ!!》

 

《Sリーダー了解、誰に言ってやがる!!》

 

《お前だから言っているんだ!!》

 

《言ってろ!!》

 

目まぐるしく隊長格が通信し、S隊がアークエンジェルの援護に向かうようだ。その分護衛に穴ができる、今までシャットアウトできていたものができなくなってくるかもしれない。

 

《S隊が抜ける穴はU隊とT隊で塞ぐ!!交代要員がいなくなった、気ぃ抜くんじゃないよ!!》

 

UリーダーがU隊とT隊を鼓舞する。だからと言って数が減ってはどうにかできるものでもないだろう。元より「連携で倒す」戦術を常に研究しているのだ。

 

《V!!すまない、そっちに三機!!》

 

U隊の機体からの通信もあったがこちらでも確認している。ジンが三機、Gはいない。…三隻の艦隊にしては数が多いぞ?増援がいる…?

 

「確認した、砲撃開始、D隊は注意してくれ」

 

ショットキャノンの収束率を調整し散弾モードへ、そのまま拡散ビームを放つ。一機撃墜、もう武装を失った機体が一機。

 

「帰っちまえよ!!戦えないだろ!!」

 

武器を失ったジンがまだ突っ込んでくる。スラスターに異常は見受けられない…って、まさか。

 

「死にたいなら一人で死にやがれ勘違い野郎!!」

 

突っ込んできたジンにリストランチャーのグレネードを撃つ。そんなに弾速の早いものでもないが、突っ込んできている相手ならよけるのも難しいだろう。特攻を否定するわけじゃない…が、やはりやられると精神にクるし、帰れる状況…じゃないかもしれないけど、帰れる状態の機体で、帰れるはずの命を無駄にするのは許容できない。

 

(…!!)

 

断末魔が聞こえたような気がして顔を顰める。ニュータイプなんかになったつもりはないんだがな…。そうしているうちにもう一機もD隊が撃墜したようだ。

 

《クソ!!V!!スナイパーだ!!そっちで探知できないか?》

 

「了解した!!」

 

ネルソン級にビームの閃光が突き刺さるが、この程度なら小破判定すら出ないだろう。そして、狙った方向がある程度わかれば、こちらだって狙える。

 

「向こうが狙えるなら!!」

 

ここで光でも走って見越し射撃ができればかっこいいのだろうが、あいにくそんなことはできないので、長距離狙撃用レドームを機体脇に展開し索敵をする。

 

「見つけたぞ!!」

 

あの時の赤い奴だ!!と確信じみた感覚を感じ狙撃する。多分撃墜には至ってないが損害は与えた…はずである。

 

―――――――――

 

同時刻 ヴェサリウス ブリッジ

 

「ふむ…精鋭というだけあってなかなかやる…」

 

私の計画の妨げとなるやもしれん…と考えながらクルーゼは考える。

 

「ホーク機、被弾、一度帰還し、アサルトを破棄してもう一度出るようです」

 

ホーク機がカウンタースナイプを食らい撤退してくる。左側の肩シールドを撃ち抜かれたようだ。これでも部隊の突撃を援護し、数機を撃墜しているのだから、侮れない。デブリ帯であれだけの長距離射撃をするホークも、敵もバケモノだ。

 

「そうだ…、キュリーに打電、ゲイボルグを使う」

 

《はぁ?あれをか?》

 

何かを報告しようとしたのかヴェサリウスに通信を行ったのだろうホークが画面へと移る。

 

「おや、いいタイミングだよマックス」

 

《ざまあ無い状態ですがね、そっちの赤共も大分遊ばれているようだな》

 

デュエルは遊ばれてもうすぐフェイズシフトダウン、バスターはは敵の白兵戦型に距離を詰められ苦戦。二コル機は敵の使っている拡散弾によりミラージュコロイドを封じられ苦戦中…、大規模な対MS戦の経験はないから仕方ないといえばそうだが、こうも連携して追い詰められている様を見せられるのは趣味ではない。

 

「忌々しいことにな。だからこそゲイボルグを使う」

 

《単純なだけに忌々しい奴ですからね、…撃沈できればめっけもんとして、退却前の目くらましにはちょうどいいか、なら足つきとあのネルソンを狙うべきだな》

 

マックスの脳内は「こんなものとっとと使って捨てたい。持ってると自分がバカになった気がしてくる」といった感じだが、実際この兵器は効果的だろう。作った奴は頭のいい馬鹿だ。

 

「そのようだ、どうも護衛対象らしいからな」

 

敵艦隊は、足つきとネルソン級を守るように展開している。先ほど数機がネルソン級に接近できたが、撃墜された。どうも内側に行くほど強固なようだ。

 

「ミサイル発射管1番2番、ゲイボルグ装填、目標足つきとネルソン級、撃て」

 

アデスがキュリーの艦長に命令し、ミサイルが発射される。

「対艦特殊ミサイルゲイボルグ」

ホーク隊長曰く「脳筋の馬鹿が考えたミサイル」ZAFTの新兵器がアーモンドとアークエンジェルへと向かっていった。




ゲイボルグは「やりたいことは解るがそこまでする意味が解らない」的なミサイルです。コンセプトは「迎撃されない最強のミサイル」ですね。…兵器に最強とか絶対ってとんでもない地雷臭しません?

守れたもの、守れなかったもの。
大人たちの事情。
少年たちの戸惑いを無視して船は進む。
悲劇を起こしたのは引き金を引いたものか、
守れなかった楯か。
事態は子供たちの仲に波紋を広げ、
純粋な心を裏切っていく
次回、『離別、合流』

流れた涙、取り戻せガンダム!!

次回予告風…になってるかな…。ノリと勢いで作ったが次回予告というわけではありません…多分。

射撃戦主体の機体で後方にいたというのもあるのかもしれないけど、戦闘シーンがうまく書けない…。次話はもう少し細かく戦闘書けるといいなぁ…。


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specialphase② ジャンク屋職員の日常

ごめんなさい。先週と今週は予想以上に忙しく、話が書き終わりませんでした。ということで保存していた番外編を投稿します。多分、次回も少し遅れます。

祝MG TR-1ヘイルズ!!いやもう…、待望というかなんというか…。


俺の名前はショーン・ミタデラ…、義手ではないが、本名だ。というわけで、こっちにきたときはだいぶ驚いた。光れェッ!!されるのか?それとも砂鼠か?砂鼠にならにゃいかんのか?と考えもしたが、当時は医学生だったので、医者になって、たまたま受けて採用されてしまった赤十字に入社したわけだ…が。

 

「それでジャンク屋ギルドに出向とか…人生わからんもんだな」

 

現在、ジャンク屋ギルドの管轄するラグランジュ4の小拠点、「ジャンク1」において医務室の番をしている。あぁ、MSには乗れない、小型宇宙船免許と小型無重力空間作業機械免許は取ったけどそれじゃMAすら動かせない。…何をトチ狂ったのか宇宙空間救命救急士免許という、レンジャーになる方が簡単なんじゃね?という免許を取らされかけたが、主に体力的な面でそんなものがとれるわけがないので全力でお断りさせていただいた。そもそも、一応コーディネイターではあるが、遺伝子疾患治療のためのものなのだから、多くを望むのは無理という話だ。

 

 

「しかしまぁ…よくも、こんな古い物をここまで復旧できたもんだ」

 

ジャンク1はAOCがムーアコロニー群を建設する際に作った、工員たちの生活施設だ。一定のレクリエーション施設や、緑地なども含んでいるため、民間企業製の浮きドックを近くに付ければ、それなりの拠点にはなるのだ。…港湾設備の許容量を超えた船舶の係留こそ、ワイヤーでつないでいるのみだが。

 

「医療設備は、最新とまでいかなくとも優良、…時々起こる患者同士のケンカの仲裁は警備の人に任せている。まぁ、いい職場だろうな。これで、コーヒー好きな医者の同僚がいれば面白いが…さすがにいたらビビるな」

 

とつぶやき、ZAFTへ送還する負傷者のカルテを入れたディスクを梱包して、コーラ缶を呷る。…このレトロフューチャーじみたコーラ缶はどうにかならなかったのだろうか?いくらなんでも、1985年に初めて宇宙で飲まれた缶そのままというのはどうなんだ。って、「復刻缶」と印字されてる。妙に高いと思ったらこれ缶の値段か…、輸送費だと思ってた。それにしても謎の企画である。

 

「しかし、最近ZAFT兵の患者増えたな…」

 

カルテに目を通しながら呟く。最近ZAFTの怪我人が増えた、怪我人は、完治とまでいかないにしろ、移動に耐えるようになったら所属国へ送還されることになっている。まぁ宇宙で拾った奴が重症のことの方が珍しいので、骨折の処置や、軽い酸欠などの治療を施して早々にお帰り願うのだが、ZAFT兵の相手は疲れる。コーディネイター至上主義…ではないな、プラント至上主義とでも言えばいいのだろうか?こちらがコーディネイターと知っても罵倒してくる。こちらとしても、仲間意識など持っていないし、的外れな罵倒など煩いだけで大したダメージはないのだが。

 

さて、仕事も終わったことだし、と傭兵への依頼が纏められたサイトのページを開く。登録をしていなくとも依頼だけを見る事ができ、暇潰しになる。たまに手の込んだムービーまで準備している依頼主がいて面白い。…もしかして同類がいるのでは?と思うようなムービーもあるが。

 

依頼:旧キサラギ特殊生物・遺伝子研究所探索

依頼主:キサラギ

報酬:120万E$(備考:全額先払い)

 

突っ込むのはダメなんだろうな…、いきなりヒデェのを引いた。と思いながら見なかったことにして長々と書かれている説明文には目を通さずにページを閉じる。なんだかAMIDA(ACのマスコット)でも出てきそうな依頼だ。居たら困るとかの騒ぎではないが。…そろそろ、食事を買いに行った同僚が帰ってくるだろう。

 

「おーい、飯だぞ~」

 

食事を買いに行っていた同僚が帰ってきた。大西洋資本のチャイニーズデリか…。ジャンク屋のステーションには、各国資本の外食産業の店が入っている。料理とかする方が珍しいので毎日賑わっている。

 

「何を買ってきたんだ?」

 

「ほれ、ジャンクまん」

 

「またかよ…」

 

最近、ジャンク屋の連中が名物を作ろうとして作っていた料理が出てきて溜息を吐く。安物菓子にでも使われていそうな謎のしつこいクリームの入った中華まんだ。…間違っても食事という感じではない。売り上げは芳しくないようだ。当然である。ジャンクと銘打つからと言って中身をジャンクフードにする必要はないのだ。…というか中身ジャンクフードでもほかに何かあっただろ…。

 

「あの店まで行ったんならもっとほかのあっただろ?上海風あんかけ焼きそばとか…エビチリ、排骨飯もいいな…」

 

大西洋資本だからなのか、それともその企業がとんでもなく節操なしなのか、台湾料理や日本生まれの中華料理なども取り入れている店なので天津飯などもある。中国生まれの人からすると物凄く邪道な店なんだろうな…。

 

「出てくるの早いし、安いからな」

 

確かに、カウンター横の蒸篭風保温ケースに入れられた中華まんは出てくるのが速い…。でも中華まんなら肉まんでもカレーまんでも変わらんじゃないか…。

 

「飯にはならん…」

 

「それもそうだな、でも俺トゥインキーとか好きだから」

 

「それはこれを買う理由になんねーよ」

 

笑いながら同僚が席に着くのを見ながら、ジャンクまんにかぶりつく。取り敢えず食材に罪はないし、無駄遣いはしたくない、メニューを指定しなかった自分の責任もある。

 

「そういえば港のほうが騒がしかったがなんかあったのか?」

 

怪我人がいたのなら今頃飯なんか食ってる場合じゃないのだから、何かすごい物でも見つかったのだろう。と思いながら、大体飯屋の類は港方面にあるので、何か知っているのではないかと同僚に聞く。

 

「あぁ、えっと…ホームだったか?の連中が、オーブだかの新型MSを拾ったらしいぞ」

 

「マジか?」

 

レッドフレームか…関わることはないと思っていたが、存外近くにいるものだな。と思いながら食事を終える。

 

「…そういやそろそろ交代時間じゃねーの?」

 

別にレッドフレームが見たいとかそういうんじゃない、時間外労働が嫌なだけだ。そう、さっさと帰りたいだけなのだ。居住区画へ行くのに少し港側を通って買い食いしていきたい気分だが気分なので仕方ないだろう。

 

「あー…、まぁ時間通り引継ぎが終わることのほうが珍しいし、待ってやろうぜ」

 

「ケッ!!時間にルーズな連中が多くて困るぜ」

 

「お前が細かすぎるんだ」

 

いや、せめてシフトは守れよ…。と思いながらも、グダグダなここの生活を心地いいものに感じている自分がいることに気づき苦笑する。集まった連中が連中だからか、堅苦しい枠が作られても中でみんな好き勝手に動いているのだ。「自由が減った」と不満に思う連中はいるが。今だって十分に自由だ。ついた管理者(すず)も余程じゃなければ鳴らないのだから別にそこまで気にならない。むしろ、あそこまで騒ぎを起こしていた原作側のほうが何か問題があったのだろう。と思いながらも暇な医務室で待ちぼうけを食らうのであった。




因みにショーンが転生者であることは、会合に気づかれていません。うまくやったというより、網が張られた場所通らなかっただけですが。


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phase22 アークエンジェル

結局一週間飛んでしまい申し訳ありません。

ベースマテリアルが万能素材化…実際Nジャマーキャンセラーの為だけの素材なら「ベースマテリアル」なんて呼ばれないんじゃないかなぁ…。と考えたからです。話は変わりますが、バイオベースマテリアルなる言葉は現実に存在しているみたいです。…ちょっと調べましたが、大まかには石油等に依存しない天然の再生可能資源を用いた新素材…でいいのかな?あまり理解できていない気がします。


アーモンド護衛部隊

 

「何だ…?って速い!?」

 

いきなりの警報にレーダーを見ると、ミサイルほどの大きさの物体が異常な速度で接近している…。取り敢えず記憶の中では見たことのない兵器だ。

 

「新兵器か?でもこれなら!!何!?」

 

ショットキャノンの拡散率を広げ撃つ。ミサイルならばこれでも落ちるはずであったが、当たっても落ちない。

 

「チィ!?」

 

充填は間に合わないと判断し、もう襲撃のないことを祈ってミサイルを撃ち尽くした背部ユニットをミサイルへ飛ばしぶつける、がそれでも多少軌道を変えただけである。

 

「なんつー推力だよ!?」

 

ミサイルは軌道を変え、機関部への直撃こそ避けられたがバイタルパートを貫通している。長くは持たないか。

 

「退艦は…持つのか?」

 

脱出ポッドやシャトルが出てくる姿を見ながら呟く。幸いにも、爆発するまでは時間があり多くの乗員が脱出できたが、バイタルパート貫通やミサイル命中時の衝撃により、約7割の乗員が戦死した。その際アークエンジェルにより「保護をした民間人を人質にとる行為」が行われZAFTが撤退し、それも含めて惨敗といってもいい結果に終わった。

 

―――――――――

翌日 ズルフィカール ブリーフィングルーム

 

「…それで、このデカブツの正体はなんだったのかね?」

 

「簡単に言えば、運動エネルギーを用いたミサイルです。とても強固な構造…というより金属塊をぶつけることで、敵艦を破壊します。ご丁寧なことに、対ビームコーティングを施してあることも確認されていますね。それから、推進力であるエンジンもベースマテリアルを使用した高性能固形ロケットエンジンです。推力はバカみたいに高いです。その気になれば外宇宙へ乗り出す推進力として使えますよこれ…」

 

エンジンに関しては燃料が切れたらそれで終わりだが、規模によっては、それほどの加速が可能だと思う。未だ火星のベースマテリアル鉱脈が見つかっていない状態でこんな使い方をするのは勿体無い。もしかすると自由と正義がリストラされるかもしれないじゃないか。産出量が少なくて、加工がめんどくさく、それでも製造業での需要は尽きることがない…。だから、“ベース”マテリアルなんて名前がついてるんだ、代替品の研究は常にされているがどれもパッとするものはない。ZAFT側にはボアズしか鉱床がないのだから不足気味だろうに。ミサイル自体は、恐らくは「迎撃されないこと」を目的に作られたミサイルだろう。ダインスレイブではないが、素直にレールガン撃てというのは甘えなのだろうか?と、思いながら、昨日ネルソン級を撃沈させたミサイルの検証結果を伝える。ぶっちゃけ外れれば地球の重力吹っ切るまで加速しそうだし、かなり頑丈に作られており、破壊することは至難の技だろう。誘導性能も酷いが、そのお陰でアークエンジェルを狙った一発が小惑星に突き刺さり確保できた。数が作れるようにも思えないが…。

 

「何とも手の込んだ品だな、が、それだけに強力でもある。しかし、そう数が作れるものでもなさそうだな」

 

「私ならば、手頃な大きさのデブリにでも適当なロケットエンジンつけて飛ばしますね。ほぼ同じことができますし、安いです」

 

耐ビームコーティングなんぞ使い捨てのミサイルに使う気にはなれないし、このロケットエンジンなんてもっと使う気にはなれないが、敵がビームシールドを装備しているというのなら話は別だが、ミサイルなんて数撃たなきゃ話にならない状況だし、なるべく手間を減らしてたくさん作って撃つべきなのだ。

 

「…まぁ、総合すると、アルスター事務次官他、三割の乗員の脱出時間があっただけ良かったということか、あの混乱の中、三割の乗員を救助してくれたことに感謝する」

 

艦長は間に合わなかったが、アルスター事務次官をシャトルに案内していた為生き残ったアーモンドの副長が口を開く。

 

「いえ、任務失敗というべき無様をさらしてしまい申し訳ない」

 

「命あっての物種だ。アルスター事務次官の怪我もそちらの集中医療設備のおかげで大事なかったのだ。そう悪いようにはならんさ…それよりも…だ。ラミアス副長…いや艦長代理、なぜ命令を無視した?」

 

スハルト指令が頭を下げ、その謝罪を副長が受け入れる。

 

「それは…」

 

「何故我々が情報流出の危険性を顧みずAOCを作戦に参加させたのか理解していなかったのかね?」

 

「その…AOC製のモビルスーツがこれほどとは…」

 

ラミアス艦長が取り繕うように発言する。実際、指揮をする人間ではないのだ。間違いをする可能性は多分にあるから仕方がないのだろうが、だからこそ、こちらの指示を聞いてほしかった。

 

「ふむ…成程、情報が限りなく少なかったのはあるが、前線に出してくる時点で使い物にならんわけがないだろう?まぁ、君に責を問うのは理不尽か。専門でないことをやらされているのだしな」

 

技術屋風情を副長とかふざけてんのか第8艦隊は。とでも言いたげにアーモンドの副長が言う。実際、どうしてなったのだろうか。

 

「そんな事より問題はアーモンドが沈んでしまい兵器類の補給ができない事だ。第7艦隊の物資残量は?」

 

アーモンドの副長がこちらに問う。

 

「あと2会戦分…といったところでしょうか?共通規格のものに関しては融通しましょう。ただMS用の部品は…」

 

物資管理の担当者が答える。ストライクとAOCのモビルスーツは規格が共通化されていない。全くの共通点もないのだから当たり前といえばそうなのだが。ただ、一から削り出したり、3Dプリンタで出力する事はできるが、時間がかかる。そして今は時間がない。

 

「それは助かるが…消費の激しい対空砲弾がどうにもならないのは痛いな…即席でCIWSを作るというのは…」

 

アーモンドの副長が鶴野に目を向ける。パゴダが使えないか?ということだろうか。

 

「ガワだけなら…しかしレーダーなどの基幹部品の数が足りません。交換部品もあるのである程度の数は作れるでしょうが…、これからのことを考えると…。それに数が数ですので時間もかかりますし、おすすめはできませんね」

 

パゴダ自体、工廠艦なんて大それたネーミングがされているが、実情は工作機械を積んだ輸送船に過ぎないのだ。意図的に重要部品の製造が不可能だったり、生産能力は限定されている。部品や細々としたオプションならともかく、一からの兵器製造など無理だ。と思いながら鶴野は答える。

 

「仕方ない、ならば渡せるものだけ渡して誤魔化すしかないな」

 

「えぇ、もう次があるとは思いたくありませんがね」

 

「全くだ。では艦長級以下は解散、各自通常業務へ戻れ…。あぁ、鶴野大尉は補給活動の指揮を頼む」

 

こんなんでも一応整備班の責任者だ。責任者が何最前線に出てるんだという突っ込みはしょっちゅうだが、実際、整備の実権を握っているのは古参の先任曹長だ。対馬の頃から付けてもらっているが、経験豊富で頼れる存在である。此方に非常に厳しいが。

 

「了解」

 

――――――――――

 

「さて、……しかし酷いな、厄介にも程がある」

 

「取り敢えず、アークエンジェルで軟禁状態にはしているが…」

 

「面倒というか…、どうするんです?」

 

「いやまぁ…、人質に取ったのは…、軍法会議を開いてやりたいが、第七艦隊が第八艦隊所属者を罰するのは無理だ。その辺まだなし崩し的な組織だからな。せめて俺にもっと権力がありゃ政治力でやりようはあるんだが…俺准将だし」

 

異なる艦隊なのだから管轄が違う。本来ならばそれでも可能ではあるのだが、所属国が違うので面倒だ。アーモンドも便宜上こちらの指揮下なのでそこは変わらない。

 

「ラクス・クライン…人質にしなければまだ穏便かつ秘密裏に処理できたものを…」

 

全員苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

「捕虜…ではないか、民間人なのだし。しかしどうしてこんな場所に…」

 

民間人だから捕虜ではない…はずだ。捕虜を人質にする以上に大問題である。

 

「血のバレンタイン一周年追悼式典の事前視察だそうだ」

 

呆れたような声で誰かが言う。

 

「余裕だな、前線ナメてやがる」

 

「向こうの報道からの情報だけなら圧勝してることになってるからな、民間人の認識なんぞそんなもんだろ」

 

戦争知らん奴が観光気分で前線に出てくるから…という誰かのつぶやきに全面的に同意したい。と思いながらスハルトが言う。

 

「しかし、彼女は議長の娘ですよ?そんな甘い認識ではないはずでしょう?」

 

艦長たちの口調に面食らっていたアーモンドの副長が言う。

 

「いやぁ…彼女、政治家じゃなくてアイドルだしなぁ…何故あのいたって普通の歌があそこまで流行るのか訳が分からんが」

 

「戦場のことなんぞ知らんだろうさ。アイドルなんて九割くらい見た目だし…好みじゃねぇけど」

 

「まぁ…見てくれは悪くないよな、でもピンク髪はなぁ…」

 

「アイドル談義は後でだ。で…当然ながら十中八九奪還に来るだろう、捕虜交換協定は締結されたが、守られているとは言い難いしな」

 

向こうが守ってねーんだ、こちらも守らないと仮定してくるだろう。現に破ってしまったしな。とスハルトは続ける。先ごろヴィクトリアが設定より陥落したが、その際捕虜虐殺が行われたことが判明している。AOCと南アフリカの戦線はバクゥの登場から膠着状態だ、解決には高機動型MSの本格的な実践投入が必要だろう。というのが大方の見解だ。

 

「兎に角、どうやって早急にお帰り願うかだ、持ってても良いことなんぞ何にもない。政治的カードにしようにも交渉の窓口がないのだからどうにもならん」

 

ZAFTと理事国間には交渉の窓口がない。戦争をやっている時点でアレだが、外交的に末期である。というか、知れてしまったら死に物狂いで奪還に来るだろ奴ら…。カードにする以前に俺らにとってとんでもない貧乏くじである。

 

艦長会議では現状維持で第八艦隊に押し付けるというだけで何も決まらなかった。

 

 

―――――――――

 

「やっぱり足りませんね…」

 

「そりゃ仕方ない、分けてくれるだけ感謝ってもんですよ」

 

鶴野はマードック曹長と補給物資の確認をしている。MA用の共通部品や、ミサイル類しか渡せないのだが、武器弾薬類は全般的に足りていない。しかし先任曹長ってのはどこも若手士官より偉いんだな。

 

「ストライク用の武装も、そちらの規格とはいえ融通してくれるんです。文句は言えんでしょう」

 

「でも誰かがいじる必要ありますよ」

 

そりゃマニピュレータの大きさは大して変わらないのだから実弾兵器持つことはできる。ビーム兵器に関しては十分な数があるようなのでそのままだが。

 

「その辺は坊主に任せましょうや」

 

「その坊主ってのは出てこないんですね…」

 

「あー…まぁ、ちょっといろいろありましてね」

 

マードック曹長が言い辛そうに言い淀む。

 

「深くは聞きませんよ」

 

この辺のキラの心情は理解しているが、自分に何ができるわけでもない。ノータッチである。というか、無関係な大人が、あの状態の子供にできることなど無いに等しい。無責任なことならいくらでも言えるが、そんなこと言っても反発されるだけである。無関係だから何とでも言えるとしか思われないだろうし、何より、そんな無責任なことはしたくない。これから先ずっと関わっていく訳でもないのだ。そういう役割は、アークエンジェルにいる大人の仕事だろう。

 

「しかし大尉殿はすごいですなぁ…、MSエンジニアにパイロットもこなせる」

 

「必要があっただけです。なれるのなら誰でもよかった」

 

まぁ、転生者であることも理由に含まれているとも思うが、非転生者でも画期的な意見を出す人物はいるのだしあまり考慮には入れられていないと思う。タイミングが良かっただけだ。

 

「大尉、食料品の積み込み、完了しました」

 

「おう、お疲れ。…じゃあ、民間人の受け入れ手続きに入ってくれ」

 

主計課の担当者が食料品の積み込みが終わったことを伝えてくる。

 

「ところで、ところどころ作業している青やピンクの軍服着てる連中っていったい何なんです?」

 

ところどころで作業しているとても軍人には思えない連中を見て聞く。知っているが、何も言わないのは不自然な気がする。

 

「あー…えっと…志願兵です」

 

「…、志願兵…ですか?」

 

「えぇ、ヘリオポリスが崩壊して、こちらの戦死者も多くどうにもならないからと…」

 

「成程、阿漕な話ですけど仕方ないといったところでしょうか…」

 

「ホントはとっとと降ろしてやりたいんですがね…」

 

無理だ。曲がりなりにも機密に触れてしまったのだから降ろすのは難しい。大西洋連邦の法ではどうなるかわからないが。うちの国なら、重要拠点に連行後、取り調べを経た後、監視付きで生活することになるだろう。見たものによっては、向こう五年は転居制限等の制限も加わるかもしれない。

 

「その辺は第八艦隊との合流後に相談してください。友軍とはいえ、管理国が違う艦隊ですので手が出せませんし」

 

「整備屋としては、その辺がもっと融通きくとやり易いんですけどね…今回の事だってもっとどうにかなったでしょうに」

 

兵器の採用すら理事国ごとに権限が分かれているのだ。ユーラシアも、東アジアもストライクダガーを購入する方向で話が進んでいるらしいが、自国製MSの開発も諦めてはいない。ユーラシアは自国製MSの開発を加速化、東アジアは雲南、四川戦線で鹵獲したジンをを積極的にリバースエンジニアリングしているらしい。彼らの製造するMSは他の連合とはまた違った形になるのかもしれない

 

「全くですが、できて数か月の烏合の衆にそれを求めるのは酷ですよ」

 

AOCと大西洋連合製MSのパーツの共有率は3割ほど、それほど高くはない。コンセプトの違いなんかが影響する部位の部品は共通性が低い。大西洋もOSやいくつかの部品をこちらに頼ってはいるが、それを良しとしない動きはあるらしい。当然か、同じ国ではないのだし。

 

「烏合の衆って…所属している人間がそれを…」

 

「事実ですから」

 

地球で暗闘繰り広げてるだけのモグラは「戦後いかに自国が主導権を握るか」しか考えていないだろう。それでも勝てるほどの国力差があるのが救いだが。そんなんだから戦争がなくならないんだろう。AOCはAOCで主導権を握る気はないが、国力的にはそれに参加しなければならなくなっている。貧乏クジは御免なのだ。戦争が終われば復興特需が待っている…、原作通りならば、一回戦争することになるが、それに参加する気は更々無いらしい。企業の連中も「復興で散々儲かるし、これ以上民生犠牲にすると経済がきつい。ロゴスでも俺たちはそう言っている」と言っているらしい。らしいらしいと伝聞ばかりだが、間にいる連中だって嘘を言って得をするわけでもない。間違いではないんだろう。

 

「まぁ、ここを切り抜けられればいいんです。頑張りましょう」

 

そういうと、物資の搬入の確認を終え、民間人を乗せた内火艇の護衛をしながら戻るために背部をパージしてしまった疾風に戻るのであった。

 

 




ゲイボルグの元ネタはLOSATやCKEM等の対戦車ミサイルです。速度によって回避困難にし、運動エネルギーと質量で破壊するミサイルです…レールガン使えば?って話ですね。同威力のレールガンと比べて発射機構が軽量なことがメリットといえばメリットですが。…冷静になって考えてみると…ショボい…。


意図していませんでしたが、兵器名称に関して言えば、AOCはインド神話やインドネシアの伝承ネタが使える分あと十年は戦える(違う)他にも琉球神話やアイヌ神話、アボリジニの伝承なんかもありますしね。文化文明のサラダボウルは名称ネタに困りません。…思うとこそこじゃない気がするけど…。


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phase23 ゾディアック・プラン

「A.O.Z Re-Boot」のアクアバーザムが好みにズドンと来ました…非常にたまらないデザインではありますが…改造は難しいだろうなぁ…作れたらうれしいけど。HGバーザムの出来が良いから夢が広がります。ゲイツの再販来た!!これ書き始めるときに買おうとして値段見て目を疑ったのはいい思い出ですw

レポート地獄()からやっと戻ってこれました。遅れてごめんなさい。


プラント マティウスⅠ 造船所

 

「これが…、ずいぶんと形が変わったな」

 

造船所のドックに鎮座するナスカ級の改造型を見てそう呟く。MS用のハッチがエターナル級の物と同型になり、カタパルトもついている。…見た目は…悪いが、使えればいいのだ、うん。

 

「MSの推進剤の消費を考えると旧態依然とした方式のほうが良いとの結果が出ています。特殊部隊用の艦、というのなら変な意地を張る必要もありませんし、上もそのつもりのようです」

 

成程、まぁ、旧世紀、第二次世界大戦後期から方式を変え、戦場を変えても、「カタパルト」というものが廃れないのだから、発艦に使う利点はあるのだろうと思いながらパトリックは隣に控えていた技術者に聞く。

 

「改ナスカ級…ナカダ級とでもしようか、一番艦の艦名はヒッパルコスだったな?他ナスカ級の特務仕様3隻が就役間近、ローラシア級の特務仕様9隻は改造が完了したと聞くが、何か問題はないかね?」

 

「はい、問題ありません。しかし、良いのですか?この艦はエターナル級の試験艦であって、あくまでナスカ級を改造しただけのものです。とてもではありませんが、実戦投入するものではありません」

 

技術者が、不服といった感じで言う。確かに満足のいくものではないのだろう。しかし、満足いくまでやらせていたら時間切れだ。重要なのは、今使える戦力なのだ。

 

「時間がないのだ、現在、我々と連合の戦争は膠着状態の消耗戦となっている…、その状況でどちらが先に音を上げるか、わかるな?」

 

「…我々…です」

 

「無論、エターナル級が使えることに越したことはない、搭載機数こそ不安があるが、高速戦艦であるエターナルはある意味でこの計画では理想だ。フリーダムやジャスティスを製造することが間違いとは言わん。むしろ一騎当千を標榜するあの機体があれば大分楽になる。しかし、兵器というのは必要な時にそこになければ意味がない。これらの艦も重要なのだ、現状、警備艇一つ無駄にできんのだよ。ただテスト艦と捨てることはできん。戦線を整理し、少ないなりの戦い方をするにはな」

 

ゾディアック・プランなどと、たいそうな名前を付けたが、やることはつまらない。伸びきった補給線を整理し、戦線を縮小、そこで防衛線を構築、時間稼ぎをしつつ、精鋭部隊による後方奇襲作戦で敵を混乱、損害を与え、戦意を削ぎ政治的妥協を図る。言ってしまえばご都合主義で後ろ向きな作戦だし、国力差の前に押しつぶされる可能性が高いが、この状況ではこれしかないのだと思う。可能なら地上軍を引き上げてしまいたいが、マスドライバー5基がフル稼働されてはこちらが困る。壊すにしても、壊すだけの決死隊を残すのももったいない。月だけでも気の遠くなるほどの艦艇を製造可能なのに、地上まで加わったら時間稼ぎすら不可能になる。マスドライバーと工廠はセットだ。我々も有効活用したかったが、損害が大きすぎた。あまり壊すなと言ったんだが…。まぁ、抵抗も激しかったようだし、仕方ないのだろう。兎に角、ジンの改造型や、新型の先行量産仕様を精鋭に与え、敵の後方を撹乱する。…本当ならばアスランたちもそこに入れるべき戦果は挙げているが、入れないことにした。こういう役割はあいつらのモノではない。彼らの役割は本来戦後のほうが大きいのだ。

 

「しかし、国民が妥協を受け入れるだろうか…。せめて…、いや、過ぎたことは言わん。後悔は終わってからだ」

 

コーディネイター優越主義の緩和はするべきだった。とは口が裂けても言えなかった。自分は建前上、そういう奴らのトップなのだから。

 

―――――――――

 

AOC 会合

 

「終わりが見えてるだけに…後味悪いなぁ…」

 

「はっはっは…、どうせいなくなろうと困るわけでもない。むしろAOC的にはハルバートンの死は喜ばしいぞ。政治力は将官としてはアレだが、軍人としての能力は高い。戦後あんまり弱体化されるのも困るが、必要以上に力を残されるのも困るんでな」

 

「ま、失敗しといてでかい顔もできんし…、ぶっちゃけ第八艦隊が壊滅してくれた方が政治的には…、でも困るな、戦力が減るのは…、計算に入ってはいるんだが」

 

阿部宇宙軍司令が真顔で言う。

 

「やめやめ!!後ろ暗い話禁止!!…は無理か…。まず現状を報告してくれ!!」

 

会合では、任務を終えた第501大隊のことについて話し合われていた。第八艦隊と合流すると同時に帰されてしまった。どうも親ブルーコスモス派閥との関係が気に入らなかったようだ。

 

「まー、しゃーないんじゃないの?ZAFTの新型ミサイルのせいで被害出ちゃったけど、アレそうそう準備できるもんじゃないだろ?」

 

びっくりドッキリメカじゃないんだしと、陸軍の高官を務めている人物がそう発言する。

 

「対艦ミサイルとしてじゃなく対要塞として使われるとちょっと困るがな、対象が要塞になると一発や二発じゃ足りんから…ミサイル自体を大型化されると困るが」

 

阿部宇宙軍司令がそう答える。

 

「兎に角だ、低軌道に第十艦隊を展開できるよう準備をしとけばいいだろ」

 

「もうやっているさ。大体、あと一か月で交代の予定だったんだ、準備が大方終わっていても不思議はないだろ?」

 

「そりゃそうだ。…まぁ、不足していてもどんどん就役するセレベス級の輸送船型で運べばいい話だが…陽炎級こそ前線に配備するだけしかまだ間に合ってないが、吹雪級でも護衛任務はこなせるし、青葉級だってこなせる。MS搭載艦はパラオ級のMS対応型でいいしな」

 

元より砲戦は戦艦、MS搭載は空母、巡洋艦には汎用性。そういう計画で伊勢やアユタヤが就役してるんだし。と古賀が締めくくる。

 

「じゃあ次だな、ユーラシアでハイペリオンのロールアウトを確認。何やら特務仕様とやらが数種あるらしいが…、ガルシアは結局変えんのな。まぁ、そんなところだな。東アジアも試作機…でいいのか?これ、兎に角こんなんが確認されたわ」

 

情報部のトップを務めている人物が次々と会議室にいる面々に資料を配っていく。そこにはユーラシアと東アジアのMSが写っていた。

 

「こんな情報どこから仕入れた…。気にするだけ無駄か。ハイペリオンの仕様は変わらず…特殊型というのが気になるが、まぁ、いずれわかるだろう」

 

阿部宇宙軍司令がそう答える。

 

「気にするまでも無いか。で?こっちは…ジンだな」

 

「あぁ、胸の部分とか思いっきりジンだな」

 

東アジアのMSとして写真に写っていたのはジンを「気持ちばかりカクカクさせました」といった感じのMSであった。

 

「SEED版ザニ―とでも言ったところか?で武装は…420㎜無反動砲に180㎜4連装無反動砲、75㎜機関砲に柳葉刀、偃月刀か、物理ブレなのはバッテリーの関係か?いや、ストライクダガーあるんだし…」

 

「雲南、四川戦線は森林地帯での戦闘が主だからな、ビームサーベルは気を付けないと山火事になるし、物理ブレードの出番は比較的多いさ…。前に介入したときは空からドカドカ撃ちまくって終わらせたけど、地を這って戦うんなら物理ブレードのほうが使いやすいこともある。それにビーム兵器を搭載できるからといっても、結局はバッテリー稼働なのだからな、節電できることに越したことはない」

 

「まぁ、繋ぎなんだろうさ、ジンの鹵獲、性能試験はこちらでもしているが、コーディネイターの陥りがちな技術的限界を攻めた設計や最新技術の濫用がないらしく、それなりには生産性なんかを意識した機体にはなっているようだ。何より「国産」ってのは割と重要だしな。こいつとストライクダガーで数を補って、技術を蓄積、そのうえで純東アジア製のMSを開発するつもりなんだろう」

 

東アジアはMS技術に最も出遅れている。そのため他の理事国へのスパイ活動などが盛んにおこなわれているが、それでも芳しくはないようだ。当然である、当たり前の話だが、嘘や失敗作を意図的に流されたりしているのだから。それなので、割と、この機体は正解なのではないだろうか。

 

――――――――

大西洋連邦 閣僚会議

 

 

「切り離しましょう」

 

「アレにこれ以上仕事を見つけられると倒れるまで働くので非常に面倒です。幸いにして、かの国は反大西洋派閥と同じくらい、親大西洋派閥に事欠きませんからな。治安の安定化は現地政権の仕事…でいいでしょう。こちらも兵器の供与や格安提供でどうにかなるでしょうし、ついでに利権の2、3でも鼻先にぶら下げてやればやる気も出してくれるでしょう」

 

大西洋連邦の議会では、占領してしまった南アメリカ合衆国への対応が協議されていた。しかし、占領地域の治安維持もバカにならないので、最低限の駐留部隊を置いてとっとと切り離すべきだという声が強くなっていた。電撃的に占領したため、インフラへのダメージも少ないため、頭だけ挿げ替えてあとはその国に任せた方が良さそうである。ZAFTの派兵前に占領できたのが幸運だった。

 

「ヘタに権益拡大しようとして反感情持たれても困るし、何よりこれからは宇宙開拓だ。戦後L2に我々独自のコロニー群を持とうという計画が進んでいる中、治安出動ばかりで金食い虫の南米なぞ即刻独立させればよかろうコロニー建造用の資源衛星もアステロイドベルトより適当なのを見繕って運ぶ計画だ。こちらはもう選定が住んでいる。一号の到着は半年後、そこから三か月毎に届くようになっている」

 

商務大臣がそう言ってコロニー開発計画の計画書を皆に配る。

 

「うん、その辺は把握している。しかし…まぁ、ずいぶんと大仰な名前だな。AOCのコロニーもたいそうな名前だがね」

 

一番資源衛星マーリン、二番資源衛星ヴィヴィアン、三番資源衛星エレイン、コロニー群がアヴァロン、最初のコロニーがキャメロットと資料には書いてある。アーサー王伝説に関連する用語を使っていくつもりなのだろう。

 

「あぁ、そういえば、アフリカのZAFTが戦線縮小を企んでいるようです。大地溝帯とナイル川で囲まれた地域、あぁ、エチオピア高原は捨てないようですが、に籠るようですね」

 

「そういえばで報告するような内容じゃないだろう。というか、撤退の話は聞いていたがどこから仕入れた…」

 

陸軍の高官が呆れたような口調で聞く。

 

「まぁ、設立5年、これでは組織として未熟なのは当然でしょうし。その手のノウハウなんて無きに等しい。ここ50年、多少の掃除はあっても、大規模な作戦行動を起こした国はありません。砂漠の虎が愛人を連れ込んでいるとか、職場でイチャイチャしててうざいとか、どうでもいい愚痴と共に重要な情報まで流してくれるのは非常にありがたいですし」

 

どうやら聞きもしないのに随分といろいろ喋ってくれているようです。防諜のかけらもありません。と情報部の職員が続ける。

 

「…まぁ、無能な敵には感謝しよう。アフリカはしばらくこのままでいいだろう。時は我らの味方だ。時間がたてばたつほど有利になる」

 

皆ジェネシスを知らないので、時間を掛ければ益々戦力的に優位に立つことを理由に、時間が味方だと思っていた。この後、第八艦隊が大損害を受け、アークエンジェルがアフリカ、ZAFT勢力圏に降下したという情報を聞いて一同は顔を顰めるのであった。

 

 

 

―――――――――

 

アズラエル財団 アズラエルのオフィス

 

「タンクダガー…IFVにしてはずいぶんと高価じゃありませんかね…?」

 

「理事、これはIFVではなくIFMTです。AOCの採用しているMTを参考に、複座にして戦車乗りをそのまま使える兵器を目指し開発しました。ついでと言っては何ですが、空いた車体のスペースに兵員輸送能力を持たせ、特殊部隊での運用も考えております」

 

技術者が自信アリといった表情でアズラエルへと意見する。

 

「成程、訓練機関の短縮が可能、ということですね。まぁ、火力もあることですし、既存兵器の部品を大量に流用しているため生産もしやすい。車体の輸送スペースも、兵員以外に経戦能力の増大や、他のMSへの電力補給へ活用することもできそうですね。何より数が余っているリニアガンタンクのパーツを片付けるには最適。ということですか。リニアガンだけでなく、空挺戦車用の175㎜多目的滑腔砲やバスターダガー用の94㎜収束火線砲の搭載も考えていると…」

 

アズラエルは仕様書を見ながら呟く。リニアガンタンクは主力をMSへと譲り現在配備数が減少しているが、補給パーツはちょっと始末に困りそうなくらい余っている。このようなもので消費できるのならばしてしまいたい。

 

「他にも4連装127㎜多目的ロケット発射機や120㎜機関砲の搭載も想定しています。何より、後れを取ったとはいえ、理事国筆頭である大西洋連邦がAOCに兵器で負けるわけにはいきません。鐘釣や銭がめなど目ではない兵器を投入しなくては!!」

 

技術者がアズラエルに詰め寄るより、訴える。なんというか…、熱気がすごいですねぇ…。とアズラエルはどうでもいいことを思ってしまった。差はそう簡単に埋められるものでもない。地力はあまり差がないのだ。むしろ向こうの方が上だろう。旧国家間の格差是正のためにさんざんスポイルされたAOCの経済規模は未だ三位だが、トップになってもおかしくないくらいの地力はある。遅れを取り返すのは容易ではないだろう。だからと言って諦めるわけでもないが。

 

「わかりました。では、アームストロング大将に提案しておきましょう」

 

私に提案されても採用を決めるのは軍人なのだ。兵器採用権を握っているアームストロング大将とは懇意にしているが、それでも私の言ったものが採用されるわけでもないし、向こうの都合もある。つい最近も、速射の可能である程度弾のばらける携行ビーム兵器の開発を依頼された。成程、確かに、一発必中の射撃のできるエースばかりではない。そのような武装も必要だろうと、現在研究中である。AOCにも似たような兵器があるが、そこまで頼る必要も無い。第一ビーム兵器関係はこちらの方が発達しているのだ。おなじものを作っても、こちらの方が性能がいいだろう。と考え、技術者が退出したことを確認すると、次の書類にアズラエルは目を通すのであった。




ナカダ級はナカダさんという学者が由来ではなく、古代エジプトに栄えた文化の一つです。ナスカ級が「ナスカ文化」が由来らしいので。…まぁWikiの「文化(考古学)」から名前引っ張ってきただけですが。

次回

phase25 MA復活

「生首がッ…!?」

「通り魔的にぶん殴って潜水艦を撃沈…これだ」



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phase25 MA復活

ジャン・キャリー

パーソナルカラー:白
CV:中田譲治

…うっ…頭が…(冗談)


遅く…ってレベルじゃないですね、ごめんなさい。



「ヒィッ!?」

 

「何なんだこいつは!!」

 

彼らの心境を推測すればこんなもんだろうか、ジン三機が突撃機銃を乱射しながら後退する。

 

《演習プログラム緊急停止、セーフティ解除、リアルビームへ移行します》

 

システムからの音声が聞こえ、HMDのビーム砲表示がすべて実戦モードになる。遭遇戦だが、大方の試験プログラムは終わっていた、ジェネレータ出力に若干のふらつきを認めるが、それはこちらが慣れていないせいだ。問題のない範囲には収まっている。あとは腕の問題、こちらは腕利き三人どうにかなるだろう。

 

《システム、戦闘モード》

 

「こちら機関管制、ジェネレータ出力問題なし。行けます」

 

「伊丹、ガンバレル、やれるな?ジョンは機体制御をこっちへ、火器管制任せる」

 

「行けます」

 

「アイハブ」

 

「では、ペナンガラン、対MS戦実戦テストを開始する」

 

遭遇戦ではあるが絶好のデータ収集の機会だと機長は判断し、自機のスラスター出力を上げる。

 

MAペナンガラン、初めて外見を見たときは何かの冗談かと思ったがなかなかどうして性能が高い。尤も核融合炉を搭載しているせいでMAとしては非常に大型であり、コストも高く、量産するものではないらしいが…そんなものを通商破壊…。即ちプラント地球間の輸送路破壊に投入しようというのだから、本気でZAFTを締め上げる気なのだろう。と思いながら口部に搭載されたスキュラを三本束ねたビーム砲を機動させ偵察型ジンを吹き飛ばす。対艦用ではあるが、核融合炉を使用している都合上冷却を無視すれば結構な時間照射できる。構造を考慮すれば三十秒が限界だろうが。元は搭載されていなかったガンバレルを含めて、有効な火力を多数搭載し、高出力、高機動、防御力も高いと来れば、MAでMSを撃墜することも難しくはない。そう思いながら両腕のビームナタでジンを十字に切り裂く。ヒートナタのレンジの狭さに改善要求を出したらこんなものになっていた。15メートルは伸びるだろうか?対艦にも使えそうである。本来想定されている用途からすれば、初めからついていてもおかしくはないのだが。

 

 

「ま、MSとかいうカトンボが飛び交ってお役御免になるかと思っていたが、まだまだMAも捨てたもんじゃないって上も思ってると知れただけ良しか」

 

もう30代後半という、いわゆる「ロートル」の位置におり、MSへの適正の低かった機長はそう呟く。ロートルはロートルらしく、消え去るのみと思っていたが、こんなこともあるのだろう。

 

「誰だよ、試作機とはいえ、よりにもよってザクレロなんか選んだやつ…、しかもブラレロ化してるし…。でも高出力で高火力の武装ブン回せば見た目なんぞ何でもいいのか…、あ、量産型はビグロ…、ザクレロにした意味…、あるのか?」

 

試験に同行して記録をとっている技術中尉は人知れず呟くのであった。

 

―――――――――

大西洋連邦 エドワーズ空軍基地

 

「計画を聞いたときは無茶苦茶だと思っていましたが…」

 

「案外悪くないもんだろ、巨人機ってのも」

 

「性能だけを見れば…ですけどね」

 

砂漠を走る一台のジープに乗ったアズラエルと、BRA社長ウィルソン・ルロップの目の前にはある大きな航空機が鎮座していた。全翼機で、滑走路に収まらないほど巨大なため、乾湖に置かれている。

 

「XNB-001、融合炉を搭載し、核熱ジェットエンジンで成層圏を飛行する巨大飛行機、運用コストは許容範囲とはいえ高い、しかし、展開速度は船舶と比べるまでもなく、積載量は今までの航空機を鼻で笑えるレベル…ですか」

 

逆にいえば一般的な輸送機より遅いし、船舶に積載量は劣る、言ってしまえば中途半端な代物ではあるのだが。MSを中隊規模で空輸できる。というのは魅力かもしれない。

 

「前々からこんな感じの機体をずっと計画してたんだがな、MSの登場でやっと作れた」

 

「まぁ、確かに、大きな戦争でもなきゃ作れないでしょうねこんな機体」

 

アズラエルは呆れたように言う。このところ、ストライクを量産しろとか、24in.六連装砲24門の戦艦だとか、射程120㎞のレールガンを搭載した陸上戦艦だとか、正気を疑いたくなる兵器を提案され続けていたからだろうか…。目の前にあるものも大概なのだが。

 

「MS12機を輸送可能、空挺作戦用と考えれば悪くないんじゃないか?」

 

「それを決めるのは私たちじゃないでしょうに…」

 

というか、この航空機をそんな単能機にしないでくれ…と思いながらアズラエルは言う…基地をユニット化して輸送することによる野営地の迅速な建造とか、空中からのロケットやALBMの発射拠点…は可能だろうか?兎に角使い道は無理やり作ればありそうではある。なくても困らないと言われてしまえばそれまでだが。

 

「護衛用のMS用飛行パックとセットで売り込んだらサザーランド君とアームストロング大将の賛同は取れた、ほぼOKが出るとみて間違いない」

 

 

「同期を利用しないでくださいよ…」

 

ウィルソンは一時期軍に所属するという、軍需企業の重役子息のよく通るルートを辿っており、軍への影響力も大きい。ついでに言えばサザーランド大佐、アラスカ基地司令と同期である。

 

「いやまぁ…専用飛行場が必要になるのが欠点ですが、インフラに関しては国内ならどうにでもなりますし、この機体比喩じゃなく地球一周できるみたいですし…、現実問題、無理がありますが」

 

流石に他国領空をバンバン飛ばすような雰囲気にはならないだろう。同盟国とはいえ、一定の線引きはある。と言うか潜在的に敵と言って良い。さすがにこんなものが自国の空を飛ぶといわれると渋い顔されるだろう。

 

「あ、そうそう、アークエンジェルだがな…大丈夫なのか」

 

ウィルソンが思い出したように言う。

 

「現地徴用兵が多いと聞きますが…、現時点で指揮をしているであろうバジル―ル中尉は優秀と聞いていますし、技術部の優秀な方が生き残っていると聞きます。かのエンデュミオンの鷹もいるらしいので。指揮、整備共に問題はないでしょう。何とか我々かAOC勢力圏までは逃げてほしいですね」

 

せめて我々のマスカット基地か、AOCのジプチ基地まで逃げてくれれば補給のしようがあると続ける。それ以外の大西洋連邦勢力圏へ行くには山地が邪魔していて遠回りになるとアズラエルは続ける。高高度飛行能力を持たせるべきだった…、テスト艦だからそこまで気が回らなかった。まぁ、スローンズ級にもAOCのアーガマ級にもない機能なのだが。

 

「まぁ、俺らにできるのは兵器を作って、送り出すことだけだ。あとは信じるしかないさ」

 

同期が何人か死んでいるのでウィルソンも心配なところがあるのだろう。

 

「幸いにして、副産物というかなんというか、優秀な社員をまとまった数獲得できたからな。性能では負けんさ、なら勝てる」

 

「えぇ、意図していたわけではないのですが、コーディネイターの保護を謳って優秀な社員をいくらか集められましたからね」

 

ブルーコスモスもスポンサーには強く出れませんしね。あぁ、空気の読めない自称の方々はいますが、そのうち自壊するでしょう。お金がなければなにもできませんから。とアズラエルは続ける

 

「問題はどうやって差別感情を取り除くかだな」

 

「広報とメディアに掛け合って情報操作してみます?」

 

「だとしたらまずは軍だな。軍人のほうが良いだろう。嫌な話だが、ナチュラル守って死んだ奴とか…」

 

兵器作っただけじゃちょっと弱いと言い、宣伝戦の内容を詰めていく、コーディネイターは確かに恐ろしい。ブースデットマンを研究していた研究者のように対抗手段を模索するのは当然のことだ。ただ、アレはばれたときがまずい。手段が手段だったから怒ったが、気持ちは理解できる。だからこそ、取り込んでこちらの力とするのだ。スパイに気を付ける必要はあるが、だからと言って遠ざけるだけでは、プラントの二の舞三の舞だ。そんな何度も同じような戦争をするほど、戦いに飢えてはいない。あとは、戦後に製造の禁止、段階的同化を図ればいい、どうせ、コーディネイターは単体では立ち行かない種なのだ。

 




多分AOCで一番早くMAが出回るのは海ですね…。その…、SEED以外の地球圏勢力(ジム頭勢力)の水泳部事情がお寒い限りですので…。


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