ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結> (MS-Type-GUNDAM_Frame)
しおりを挟む

旧シリーズ(書き直し前)
1話:イノベイターは修理工


小説書くのって初めてですね。
微かな緊張がある。
まあダメなところはおいおい直していきます。
そういう点では感想は欲しいですね。
あまり直球だと心折れそうですが。
続けられそうは1週間以上一か月以内の感覚でやりたい。

では一話から。


7/21追記
それも好きだという奇特な方がいらっしゃったので消さずにとっておくことになった旧一話です。
(再筆版が完璧とは言いませんが)作者的にはちょっとなー・・・
となる出来なので、こちらに関してのクレームは遠慮して頂きたかったり・・・


「久しぶりに地球に帰るのもいいかもしれないな」

 

始まりはとても単純な一言のつぶやきだった。

どうやら人類には進化しても郷愁という感情があるようだ。

 

「外宇宙にでてから何年が経過している?」

 

「15年と6か月になる」

 

彼の相棒の一人ティエリア・アーデは、巨大宇宙船・ソレスタルビーイング号の内部に搭載された超高性能量子演算コンピュータ「ヴェーダ」に存在する人格データだ。

彼の意識は量子通信によって外宇宙のMS、クアンタと中継されている。

 

「確かに、一度顔を見せた方がいいかもしれないな。特にフェルトが心配していることだろう。」

 

ティエリア。彼は変わった。刹那と初めて顔を合わせたあのころでは信じられないほど人間臭い。

 

「そうだな。しかしなぜそこで彼女の名前が出てくる?」

 

イノベイターに変革しても変わらない者もいるが。

 

「刹那、君はその鈍感さは何とかならないものか?それでもイノベイターか?」

「わからない。気に障ったのなら謝罪しよう。だが、(みんな)を心配させているのは確かだろう。ティエリア」

「ああ、わかっている。クアンタ、ソードビットを展開・・・量子ゲートの生成に成功した。」

 

刹那・F・セイエイの現在の愛機、クアンタから射出された6つのソードビットが、幻想的な翠色をしたGN粒子を振りまきながら円環を生成している。

 

 

「感謝する。刹那・F・セイエイ、クアンタ、地球へ帰還する。」

 

 

この時を境に、刹那・F・セイエイは世界からロストした。

 

 

<side_OUT>

 

 

<side_CE(コズミックイラ)

 

中立国、オーブ首長国連邦資源採掘コロニー・ヘリオポリス工業カレッジ内にて

 

カレッジのカトーゼミ所属の青年、キラ・ヤマト(16)は片思い、あるいは横恋慕をしていた。

東屋の中で、彼が作業をこなすPCからは、戦争に関するニュースが流されている。

 

「キラー、そんなとこにいたのかよ。カトー教授が、お前のこと探してたぜ」

 

声をかけてきたのは有名な二人組(バカップル)

 

 

「また―!?」

よほど嫌なのか、キラの声は裏返っている。

 

「見かけたらすぐ引っ張って来いって。なぁに?また何か手伝わされてるの?」

 

「ったくぅ、昨日渡されたのだってまだ終わってないのに・・」

心底疲れたような顔をしているキラにはお構いなしに、トールがPCを覗く。

 

「おっ、なんか新しいニュースか?」

「ああ、高雄(カオシュン)が攻められてるんだって。」

 

ニュース画面には鈍色のMS、ジンが映っている。男性リポーターは、かなり緊張した表情で中継をしている。

かなりの惨事で、しかもこれは先週のニュース。それを二人組(バカップル)の男の方、トール・ケーニヒがつつく。

 

「先週でこれじゃあ、カオシュンはもう落ちちゃってんじゃないのか?」

「カオシュンて、結構近いじゃない。大丈夫かな、本土の方。」

「うちは中立国だぜ?オーブが戦場になるなんてことは、まずないって。」

「そう、ならいいけど。」

 

二人組(バカップル)の女の方、ミリアリア・ハウは心配そうだが、トールは元気づけているのか楽観的なのか、そんなことを言っている。

 

だが挟まれたキラは上の空だ。彼は月のスクールで別れた親友、アスラン・ザラのことを思い出していた。

戦争なんて、ほんとになることはない。そう言っていたが、現実には戦争になってしまった。

プラントでは15歳から成人だ。つまり、アスラン・ザラはプラントの防衛軍・ZAFTに所属しているのかもしれない。

だが一瞬そう考えてキラは心の中で首を振った。彼は厭戦派だった。そんな彼がZAFTに所属しているわけがない。

少なくとも、そう信じたい。厭戦派なのは自分も同じだ。だからプラントへの誘いを断ってこの国、オーブにいる。

 

だがそこでキラの思考は一瞬停止する。

 

その視線の先にいたのがキラの片思いの相手、フレイ・アルスターだったからだ。

 

しかし色恋の渦中にいる者たちは()()()()()()()に大変目ざとかった。

 

「キラー、お前どこ見てる?」

 

かなり()()()()でトールがキラに声をかける。

純情で純粋で奥手な少年キラは、こういったことに耐性がなく、非常に面白い反応を返す。

 

「ど、どこってそんな・・・」

 

「あら、そんな言われて困るようなとこ見てたの?」

 

「そんな馬鹿な・・・」

 

「どうせ、ほら、あっちの方だろ?」

 

「フレイの方なんてみてないk」

 

「「フレイとは言ってない」」

 

「」

 

今作の主人公とは思えない扱いを受けている。

だが思わぬ救世主の登場でこの主人公にあるまじき扱いは終わる。

 

「あ、ソランさん」

「え、ソランさんてトールがよくレポートのことで質問に行く?」

「そう。あの人、工学めちゃくちゃ詳しくてさ、MSのことまで知っててすげえんだぜ?ソランさーんこっちこっち」

 

そこにいたのは、青いツナギを着て、中東風の見た目をした長身の、おそらく20歳前後であろう青年。

 

「トールと・・・そちらは友人達か?」

「そう、こっちが彼女のミリアリア。で、こっちが我らが同じゼミのキラ。」

「なるほど、話に時々出ていたな。改めて自己紹介をしよう。修理工のソラン・イブラヒムだ。よろしく頼む。」

「ミリアリアです。」

「キラ・ヤマトと言います。」

「キラ・ヤマト、君のことはトールからよく聴いていた。プログラミングに長けているらしいな?」

「は、はい、それと、僕のことはキラと呼んでもらえれば・・」

「了解した。それでキラ、見たところPCを持っているようだがもしかして何かプログラムを?」

「ええまあ・・・」

「それを見せてもらうことは可能か?」

「な、なんでですか?」

「話に聞いていた君のプログラミング能力を見せてもらいたい。もちろん、何らかの研究上の機密があるというのなら構わないが・・・」

 

フレイはとっくに友人たちとどこかへ行ってしまっていたが、キラの頭は既に現状でいっぱいいっぱいだ。このトールの友人という男性、いきなり自分の腕を見せてほしいという。だが、キラには一つ、目の前の人物へ心理的に借りがあった。

自分を挟む二人から救ってくれたこと。

はたしてキラの頭の中の天秤は、恩の方に傾いたのだった。

 

「一応、中身については他で言いふらさないようにお願いします。」

「感謝する。これは・・・二足歩行ロボットのオートバランサーか?」

「中身がわかったんですか!?」

「ああ、聞いていた以上の腕だ。この部分など・・・」

「ああそこは・・・」

 

必然、この専門家による会話についていけない人間たちは弾き出される。

 

「キラそんなすごいことしてたのか・・・」

 

「何言ってるかわからないわ・・・」

 

二人は熱く、二人は冷めたように語り続ける。

 

 

<side_OUT>

 

 

<side_SpacePort>

 

中立国オーブの港には、太平洋連合の戦艦が停泊していた。中立地帯であることを利用し、ZAFTに対抗すべく秘密裏にMSを作るためだ。

その情報がZAFTに流れていることは誰も知らない。

 

船の中では、太平洋連合のエース、エンデュミオンの鷹ことムウ・ラ・フラガが、二つの違和感を感じていた。

 

一つは外から。戦場で感じたあの感じ。あの白いジンの野郎の感覚。

もう一つはコロニーの中から。今まで感じたことのない感覚。

 

クルーゼの野郎が近くにいるのか?野郎が偶然ここにいるとは考え難い。一応パイロットスーツに着替えておくか。

だが解せないのはもう一つのコロニーの中からの()()

 

自分の勘違いか?現にクルーゼの野郎の感覚はまだ微妙にあるが、既にコロニーの中からは何も感じない。

とにかく、索敵の依頼と自分が発進する時のため、パイロットスーツを着て艦橋へ急いだ。

 

依頼後、艦長たちと軽いジョークをかわしながら退出し、格納庫へ赴く。周りの整備班の人間たちにジョークを飛ばしながら、彼は愛機、メビウスゼロに搭乗する。

 

確実に何かある。あのクルーゼのことだ。

 

ゆっくりと神経を戦闘の方へ高めていく。そして、思っていたより少し遅く()()は訪れた。

 

「大尉!」

「来ましたか。」

「ああ。君の勘は素晴らしいな。」

「そりゃどうも。では、ムウ・ラ・フラガ、メビウス・ゼロ発進する!」

「この艦と連合の未来、頼んだぞ。」

 

艦長のつぶやきは、しっかりと全員が拾っていた。

 

to be continue




刹那さんフレンドリーすぎでは・・・
フラガ大尉の描写少なすぎ?
思っていたよりは難しかったのは確かですね。
自分の構成力と文章力の無さには笑いが来ました。
ここまで頑張っては見たがこれで1000文字ちょっととは。

あと、アスランザラでアスラン皿と変換されたのはかなり笑った。
次回は戦闘が入りますがうまく書けるでしょうか。

感想があると嬉しいです。

追記
修正を加えました。クアンタのソードビットは六本ですね。まだELS以外の異星体とは融合してない設定で、ELSクアンタと普通のクアンタを足して2で割ったような機体をイメージしてください。

追記
サブタイ変更しました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話:イノベイターは共闘するか

UAが1000超えてますやん・・・ありがとうございます。
これからも頑張って文章力を磨いていく所存です。

よし、このまま強奪場面まで書ききるぜ、・・・と思ったところで入力フォームが消えました。
心折れそうや・・

原作ではカレッジに入る人間はモルゲンレーテがチェックしているようですが、刹那はオーブの市民権を持っているので入れる設定です。

では、第二話:イノベイターは共闘するか
張り切ってどうぞ!


他愛のない時間は他愛のない一言で脆く崩れた。それは本当に簡単に崩れた。

 

「そういえばキラ、呼ばれてなかったっけ」

 

キラは凍結した。

 

「む、呼ばれていたのか?カレッジの中なら、俺はその図書館に行く途中でな、よければ送っていくぞ。」

 

再起動したキラは是非もなく刹那の話に乗り、ここに奇妙な四人組が結成されカレッジを目指すのだった。

 

移動中、目立ったことと言えば、すれ違う車に乗っていた青いショートカットの美女を偶然見たトールがミリアリアから冷たく当たられたくらいの物だった。

 

カレッジに到着して、刹那はキラと連絡先を交換させられ、そのまま図書館へ向かった。キラは何とか五分遅れ程度でゼミ室へ到着し、自動ドア開き中へ入った。

 

「キラ、遅かったじゃないか。」

 

入って初め、デスクやモニターの間から声をかけてきたサイ・アーガイルは、フレイの婚約者だ。キラは彼のことを悪からず思っており、また彼からもそうだろうとキラは思っていた。

キラは遅れた理由をなんと説明しようかと考えながら歩を進め、ふと人の気配を感じて、腕を組んで壁によりかかる人物を発見した。

茶色のコートを着ていて、金髪に金色の目に、形の整った中性的な顔をしている。

しかしキラはそこで自分の無遠慮さに気恥ずかしさを覚え、目線をその人物からそらした。

金髪の人物は、目線に反応し少し見返していたが、視線を気にした風もなく顔を元の向きへ戻し、また最初のように腕を組んだ待ちの姿勢へと戻った。

 

「だれ?」

「教授のお客さん。ここで待ってろって」

「ふーん・・」

 

トールと研究室で作業をしていた青年カズィ・バスカークが小声で会議をしている横で、キラがこの場所に呼ばれた理由が現れた。

 

「これ追加の分だってさ。何なんだ?まあどうせモルゲンレーテの仕事なんだろうけど」

「興味ないよ。どうせやることは一緒。フレーム接地モジュールの解析さ。」

 

サイから渡されたチップを受け取り、キラは自分のために用意されていたデスクに自分で持ち歩いているPCをのせ、作業を開始した。

五分ほど経過したところで、トールが「フレイ・・・」と切り出してキラの作業効率を極端に低下させたり、その隙に客人が[KATO]とネームプレートを張られた扉を開けようと試みて失敗したりとしたことがあったが、おおむねそれはいつものカトーゼミの光景であった。

 

その日常は近く、音を立てて崩れるものではあるのだが。

 

<side_OUT>

 

<side_Space Ship>

 

ムウ・ラ・フラガは、自身の愛機、メビウス・ゼロで補給の終了を待ちながら、思考の海に沈んでいた。

クルーゼは本気ではない。自分の消耗からもそれは明らかだ。しかし、倒そうという意思が見えないわけでもない。本気ではないというべきか。周りをうろちょろしていた取り巻き共を二機ほど撤退させてからも、クルーゼの動きは余裕のある落ち着いたものだった。どうにも臭い。()()()()()()()()()()()()()()()()・・・?

 

ここでムウの頭に電撃が走った。

これだ!ヤロウは裏で何らかの作戦を進める陽動役に違いない。恐らく、新兵器の強奪を行うつもりだ・・・これを知らせなければ・・・

 

ムウの脳裏を過った予想は、ほとんどクルーゼの描いた絵と同じものだった。だが、気づくのが少し遅かった。アラートが整備ドックに響き渡る。

今度は恐らくクルーゼ機を含めて四機が襲ってきたようだ。恐らくこちらがあちら(ZAFT)の作戦に気付くことを見越してのこの布陣、ムウは連合艦の最高戦力であるがために、艦の守りをやめるわけにはいかない。事ここに至ってムウに出来る反抗は、発進前に艦長に敵の狙いと思われる新兵器強奪という目的を伝えることだけだった。

顔を見たことはないが、ムウはクルーゼが薄く笑う顔を幻視しながらカタパルトへと向かった。

 

<side_OUT>

 

<side_Coordinater sneaker>

 

潜入した面々は、ハンドサインで合図をしながらあらかじめ決まっていた作戦の決行場所へ散開していった。

この作戦の根幹を担うメンバーの、赤い宇宙服を着た五人は、イメージトレーニングを繰り返していた。実際、イメージトレーニングの有無で作戦の成功率は雲泥の差だ。だが過度の緊張も失敗の要因となる。そう思ったかはさておき、五人の中で最も口数の多い茶色い肌の男、ディアッカ・エルスマンは先ほど戦闘宙域で見た戦いのことを口に出していた。

 

「しっかし、あのメビウスゼロ、エンデュミオンの鷹って言ったっけ。あのクルーゼ隊長とまともにやりあうとは、あれほんとにナチュラルか?」

「あまり無駄口を・・・」

 

今は作戦中だと、ディアッカの私語を注意しようとしたアスランだったが、それは銀髪の男にさえぎられた。

 

「どうせあっちに投降したコーディネーターに決まっている。出なければあのクルーゼ隊長とやりあえるかよ」

 

気の強いこの男の名はイザーク・ジュール。なかなかのコーディネーター至上主義者で、この五人の中では二番目にMSの操縦が上手い。余談だが、17歳になった今でも母親と同衾している生粋のマザコンでもあり、そしてそのことはそれなりに周りに知られている。

 

「私語は慎め」

 

アスランは今度こそ注意をしたが、二人は不服そうな顔を向けた。しかし、続く四人目の一言で顔を引き締めた。

 

「あと1分で作戦開始時刻です」

 

二人を精神的に黙らせたのは、緑の髪と中性的な顔をした少年、ニコル・アマルフィだ。

全員がカウントを心の中で数え上げる。

 

3,2,1・・・0!

 

各所に仕掛けられた爆薬が火を噴き、アークエンジェルが格納されたドックはその全てが爆炎に蹂躙された。

それと同時に、アスラン達五人はコロニー内の指定ポイントへ侵入した。慌てて輸送を試みる連合の士官たちとその荷物を、スコープで素早く発見し、コロニーへの侵入部隊へ座標を伝達する。

 

「グゥレイト!突けば巣穴から出てくるってね」

「クルーゼ隊長のおっしゃった通りだ。やはりナチュラルなんて間抜けなもんだな。」

 

ディアッカとイザークは軽口をたたくが、五人は一様に真剣な顔で後備を引き連れ輸送部隊への強襲を開始した。

 

<side_OUT>

 

<side_Porter>

 

「ラミアス大尉!艦との通信が!」

作業員の報告に息を詰まらせるが、すぐさまその元凶が姿を現した。ZAFTのジンは、爆撃を行ってトレーラーの群れを足止めする。

かろうじて伏せによって攻撃をかわしたラミアスは、周りの作業員へ指示を飛ばす。

 

「X-105と303を起動して!とにかく工区から出すわ!」

「了解しました!」

 

しかし、ジンは移動先へ陣取って威嚇射撃―被害側からすれば威嚇では済まないが―を加えている。

怯んだ連合の隙をついて、ZAFTの工作班が降下し、携行火器で陣形の崩れた連合の部隊を制圧していく。

戦車や戦闘車両が出撃するが、MSを前に碌な反撃も出来ず沈黙していく。

 

そのときマリューは、工廠の内部から走ってきた二人の人物に威嚇射撃をおこなっていた。

一人は茫然とこちらを見下ろし、もう一人はそばで膝を崩している。戦場の空気に当てられて敏感になっていたマリューは、躊躇なく二人へ発砲する。二人は碌な火器も持っていないのか、すぐに逃走に移った。

そこでマリューは驚愕する。

「子供!?」

だが状況は彼女をそのままにさせない。動いている新兵器が彼女の視界に映る。当然、こちらのパイロットであるはずがない。彼女は慌てるが、銃撃が迅速な回避を優先させた。目の前で仲間が倒されたが、その飛び散った血の方向から相手の方向を特定し、相手を撃ち殺す。

 

一息つこうとしたその時、上から声がかかった。

 

「あぶない後!」

 

とっさに伏せると、背後の装甲板に銃弾が当たる音が響いた。スナイパーを片付けてから思わず声がした方向を見た彼女は、見覚えがある姿をその目に捉えた。

 

「さっきの子供!?」

 

それは先ほど逃げた二人組の子供の片割れだった。




こんなに頑張っても振り返ると三千文字・・・
まだまだですね。平均一万文字越えとか人外としか今の僕には思えない・・・

次回はキラサイドからこの場面の繰り返しとストライク起動までやりたい。
一週間でやれるといいな!

感想・誤字報告あると嬉しいです。

追記
改行など一部変更を加えました。
戦闘って難しい・・
緊張感でないなぁ・・・

追記
タイトル変更しました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話:イノベイターの仲間意識は

7/22追記
先の話とはあまりつながりがありません

今回は仕組みがわかり難く議論が紛糾しているPS装甲を使う(予定)ので、PS装甲の原理について自己解釈を書き添えて始めたいと思います。


PS装甲:電流の流れる量に応じて硬化する装甲材から作られる。
    装甲に高周波電流を流すことにより、外側と内部で断面積あたりの電流量に差が発生す
    る。電流の分布から、外側は堅く内側は柔らかい状態となり、堅く砕け難い丈夫な装甲
    となる。
    素材が相転移を起こすため、変形や耐久力がある程度回復するが、電力の消費が多い。
    実弾攻撃でバッテリーの消費が激しいのはこの修復機能が自動で働くため。

今回は刹那さんの心の中から始まります。
それでは本編どうぞー


刹那・F・セイエイは、本質的には争いは好まない性格だと言えるだろう。

実際、アリー・アル・サーシェスの洗脳から解放された彼は、自身の親を殺したという記憶にひどく苦しめられていた。

 

一方で、彼が必要な時に躊躇なく人を撃てるというのもまた事実である。

イノベイターとして完全に覚醒しても、分り合えないと悟ったリボンズ・アルマークを、刹那は討ち取った。

 

ここで言いたいことを単純にまとめてしまえば、

 

「刹那・F・セイエイは、やるときはやるイノベイター(ニンゲン)である」

 

ということだ。

 

そして今現在、つまりCE71年1月25日、刹那は、決断を迫られていた。

 

場所はヘリオポリスカレッジの避難通路だ。

 

現在、刹那やその知り合いの住んでいたコロニー、ヘリオポリスは、ZAFT軍の襲来によって未曾有の危機を迎えている。

また、つい1時間ほど前に会ったばかりとはいえ、自身の見知った人間が危ないということも彼は認識している。

ここで普通の人間なら、避難艇でコロニーからの脱出を図るだろう。

しかし刹那は一般人ではない。

 

恐らく彼が鹵獲されたMSを奪うか、説得して借り受けて操縦すれば、戦況が傾き避難時間を稼ぐことができるかもしれない。

 

イノベイターという存在は、コーディネーターなどとは比べ物にならない戦力である。

しかしそんな刹那が紛争で一勢力に味方すれば、最悪の場合ワンサイドゲームとなりかねない。

 

それは刹那が最も望まないことであるが、彼は知り合いの危機に何もしないほど冷徹に他人を見れなかった。

 

刹那は決断に踏み切れないでいた。

 

そして、キラのことが彼を悩ませている。

キラは他の学生と共に避難せず、同じく避難通路から脱出艇でない方向へ走って行ってしまった女性について行ってしまった。刹那の方向感覚からすると、あの先はモルゲンレーテの工廠だ。ほぼ間違いなくZAFTから苛烈な攻撃を受けている真っ最中だろう。

 

キラはなぜあの女性について行ってしまったのか。

実際、キラを追って自分も走れば、ほぼ間違いなく戦いに参加してしまうだろう。

今の刹那にとって、キラを助けに行くことは連合への肩入れに等しかった。

 

このような事態となった直接の原因はつい5分前のことだった

1分前に何があったかと言えばだ。

 

 

<1分前より~>

 

カトー教授のゼミ室で、キラとその友人たちはどうやらコロニーに何らかの異変が起きているらしいことに気づいた。

 

ここで、当然キラたち一般人は避難を試みる。

 

カトーゼミから出てすぐのところに、避難艇へ通じる避難通路がある。

急いでドアを開けると、既に大勢の人が階下に向けて避難していた。

急いで自分たちも続こうとした矢先に、聞き覚えのある声がキラたちの鼓膜を揺すった。

 

「トール!キラ!無事か?」

「ソランさん!一体何が・・・」

「ZAFTのMSが攻撃してきているらしい。ここはモルゲンレーテの工廠から近い。あまり時間は無いだろう。早く避難を・・・」

 

ZAFTのMSが攻撃して来ている。その一言で、客人の目の色が変わった。

ゼミの客人は避難先の階段ではなく、カレッジから工廠へ抜ける連絡通路に向けて走り始めたのだ。

その目には、必死さが浮かんでいた。

一刻も早く避難せねばならない学生たち走ろうとしていたその人物の服の袖をつかんで、必死の説得を試みていた。

 

二人を除いて。

 

キラは、階の上部から響く鈍い音聞き、その真下にいる人物をみて、とっさに客人に向けて突進した。

同じく音を聞いていた刹那が、二人をさらに通路側へと押し込んだ。

  ――追加の一押しで、キラは客人の上に倒れこんだ。

 

数舜遅れて階段と連絡通路の間の天井が崩落し、階段と工廠側への連絡通路は寸断された。

 

土煙はすでに晴れようとしている。

 

一瞬意識がブラックアウトしていたキラは、自分の体がやけに暖かく、そして柔らかいことに気づく。

次第にはっきりする意識の中で、キラは最初に一面の金色を視界に収めていた。

目に続いて機能を取り戻した耳が、キラの左側からの音を拾う

 

  ――もい、重い!」

 

ここでキラは、自分があの客人を押し倒していたことに気づいて、慌てて立ち上がった。

そして謝ろうとしたのだが――

 

「女の子!?」

「今まで何だと思ってたんだ!」

 

自分が押し倒していたのが女性と知ったキラは、顔を熟れたトマトのように真っ赤にした。

目深にかぶっていた帽子を脱いだ彼女は、今までなぜ気づかなかったのかという程度には女性らしかった。

 

極まりの悪そうな顔で目線を下に向け座っていた彼女は、はっとした顔ではじかれたように走り出した。

キラは、大声で階段側の友人たちに無事であることと後で合流する旨を伝え、彼女を追って走り出した。

 

刹那は、一瞬で前置きの考えに思い至り、キラを追うか否かで考えを巡らせていた。

 

<~現在へ>

 

結局、自分は目の前の知り合いを見捨てることはできない。

 

短いが確かに考え出した結論を噛みしめ、まだ瓦礫の向こうで他でもない自分の心配をしているであろう学生たちに、不安を感じさせない力強い声で、キラを連れ戻すことを約束し、刹那は出口へと駆け出した。

 

刹那はおよそ2分遅れで出口にたどり着いた。

その時、危ない!というキラの声が響いた。

とっさに通路の壁に身を隠すが、自分へ敵意は向いていないことが感じられる。

どうやら下の作業ブロックで戦っていた作業員に向けての声だったようだ。

刹那は懐から拳銃を抜き、キラのもとへと駆け寄った。

 

「キラ!」

「ソランさん!」

「彼女はどこに?」

「向こうのシェルターに行かせました」

 

そこへ、下からの声が響いた。

 

「来い!!」

 

キラは、鳴り響く戦場の音に負けないように大きく叫び返す。

 

「左ブロックのシェルターにいきます!お構いなく!!」

 

どうやら、キラはちゃんと先のことを考えて行動していたようだ。

刹那はキラを逃がし、自分は工業区の女性にMSが無いか交渉をする腹積もりだった。

 

だが、その予定は続く女性の返答でその予定は崩れた。

 

「あそこはもうドアしかない!」

 

女性の言葉に気を取られ、茫然としているキラに対して、刹那の行動は素早かった。

いま自分が走ってきた通路からは、爆発音が響いている。つまり、もうここにいるわけにはいかない。

刹那は、左手でキラの手を取り、右手で拳銃を構えて走り出した。

だが、女性が呼んでいる場所へは少し遠い。そこで刹那は、キラへ確認を取ることにした。

 

「キラ! ここからいけるか?」

「・・・はいっ!」

 

少しの迷いも見せず、キラは返答した。普通の人間には少し高いことから、疑問に思う気持ちも湧いたが、刹那はその考えを胸の内にしまい、欄干を超えて飛び降た。キラはそのあとに続いた。

 

女性は少し驚いたように見ていたが、刹那とキラをまだ安全な地帯へと誘導した。そして、移動してきた刹那に向けて、交渉を始めた。

 

「見たところ従軍経験があるようだけど」

「確かにあるが、それよりもMSはないか。俺が少しなら操縦できる」

「それじゃああなた・・・!」

「いや、俺はコーディネーターではない。少し器用なだけのナチュラルだ」

「この状況じゃ信用するしかないわね・・・向こうの倉庫に鹵獲したジンがあるわ」

「そうか。それと、こっちのキラを頼みたいのだが」

「この機体に乗せるわ。そのつもりで下に呼んだのよ」

 

彼女が指し示したそれは、連合とオーブが開発し、まだZAFTに奪取されていない2体の内の1つ、開発コード名「ストライク」だった。

 

「ここからだとコクピットへ行けない。だから、あなたがあのジンが収納されている倉庫から援護して頂戴」

「了解した」

 

刹那は、50メートルほど離れた倉庫へと走った。30メートルほど走ったところで、荷物の影から飛び出してきた赤服の男を、肩を打ち抜いて突破した。

確実に両肩を潰していたため、振り返らずに倉庫へとたどり着き、ジンを発見した。

 

入口の方から、連続した発砲音が鳴り響いている。

 

キラたちの方を見ると、違う赤服の男が、機銃を掃射しながらキラたちの行く予定の方向へ走っている。刹那は舌打ちを一つ鳴らすと、男の足元の地面へ発砲し、行き先をけん制した。

 

男は、開発されていたもう一つの機体の影へと隠れた。

 

 

 

一方キラたちは、ソランが配置につくのを待っていた。

 

何回か銃声が響いてから、倉庫から掛け声が届いた。

 

「今だ!」

 

その声を聞いて、まずマリューが先行した。だが、コクピットハッチを開けようとしたその瞬間、マリューが肩から赤い線を引かせながら倒れた。

 

キラは居ても立ってもいられずにマリューへ向けて走り出した。追撃をかけようとした男に倉庫から銃弾が飛びけん制する。

男が舌打ちをして、倉庫から影になるよう隠れた。

機を逃さずマリューのもとに走りついたキラを、信じられないものを見るような目で見る人間がいた。

 

「キラ・・・・?」

 

そのここで聞くはずのないこえを聞いたキラもまた、男の隠れている方向を見た。

 

「・・・・アスラン?」

 

続く声は同じことを同時に叫んだ。

 

「「なんでここにいるんだ!?」」

 

つかの間、戦場の空気は凍ったようだった。

だが、キラの足元のマリューが、発砲したことでアスランは再び隠れた。

その隙にマリューはコクピットハッチへキラを引きこんだ。

 

相手がMSへ乗り込んだことを確認したアスランは、足元のハッチから同様に乗り込んだ。

 

そして、牽制が不要になったことを悟った刹那もまた、MSへと乗り込むのだった。




戦闘までなかなかいけません・・・
PS装甲の設定は次回戦闘に入る以外に選択肢が無さげなので、確実に使うことでしょう。

評価の方ですが、自分の作品をお気に入り登録してくださる方々には頭が下がるばかりです。
先週は刹那さん空気やったからなんとなく物足りなかった・・・?
今週の話でアニメ1話が大体収まってますが、三話でアニメ1話分てことはこれ完結まで150話必要?

先行きに不安を覚えますが頑張る所存であります。
来週は忙しいので更新しない(つもり)です。

感想お待ちしております。

追伸
鉄血のオルフェンズ、リアルタイム視聴逃した(涙)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話:イノベイターと量産機

先週、次回は休みといったな、あれは嘘だ。

フラストレーションで書きなぐった作ですが、整合性が取れてるといいな。

サイドの切り替えを、<side_OUT>から
◇◇◇◇◇◇◇
に変更しました。
わかりやすいかと思って。

オリキャラというか、モブに外部作品の輩がいます。

では、四話:イノベイターと量産機
どうぞー


戦場から少し離れた暗い倉庫の中で、一つ目の巨人が目を爛々と光らせていた。

それは久方ぶりの目覚めであり、目覚めさせたのは異世界からの来訪者だった。

試験用の機体は、バッテリーこそ高性能な新型が積まれているが、あまり充電されておらず、推進用のスラスターガスもあまり多くはない。

それでも、ほぼ同じ条件で戦う敵を散らすには、この男には十分すぎる。

 

 

「…刹那・F・セイエイ、ジン、目標を駆逐する」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

戦場は混沌としていた。

まず戦力の把握から行けば、ZAFT側は連合軍の牽制にジンが二機、新型MSの奪取の補助にジンが一機、加えて、制圧に成功した四機の新型MSが奪われている。

一方連合はと言えば、かろうじて奪われなかった新型が一機のみだが、まだまともに動かせるような調整はされていない。もう一機、試験用の重斬刀のみを装備したジンがある。

正味の戦力比は実に1対3、しかも相手は一騎当千を謳うZAFTの中でも精鋭、クルーゼ隊のメンバーである。

普通に考えれば、命を捨てに行くと言っても過言ではないこの状況。

しかし挑むのは、かつてたった四機のMSで世界を相手取った稀代のテロリスト、ソレスタルビーイングのメンバー、刹那・F・セイエイである。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

突然立ち上がった連合の新型MSに、三機のうち二機が警戒のため向き直り、構えた。

新型は、黄色いデュアルアイを輝かせ、沈黙を保っている。

ナチュラルに何を脅えることがあるのかと、まさに一機が仕掛けようとしたそのとき、ZAFT側が思いも寄らなかった方向からアラートが鳴った。

同時に、拡声器からの声も響いた。

 

「無事か、キラ!」

「ソランさん!」

 

にらみ合いをしていた三機のMSの間に、新しくジンが割り込んできた。

 

「キラ、その機体は動けるのか?」

 

自分が時間を稼ぎ、その間にキラを安全域まで逃がす算段をしていた刹那は、最悪を敢えて想定し、接触回線でそう聞いた。

キラからの答えは、その最悪を証明した。

 

「この機体、制御系がメチャクチャで…動かせません!」

 

コクピットの中でわずかに顔を歪ませながら、刹那は相手を撤退させるため、戦闘思考に頭を切り替え始めた。

 

「仕方がない!」

 

刹那の乗るジンが重斬刀を構え、二機の敵へ向き直る。

しかしその行動が、コーディネーターのパイロットの琴線に触れた。

 

「ナチュラルごときが一丁前に戦えるつもりかよ!」

 

わざわざ拡声器で声を響かせ、こちらも重斬刀を構えて、スラスターを噴かし急速接近してくる。

対する刹那は、重斬刀の切っ先を突進してくる機体から外し、腰を落とした。

その僅かな動作で、反応出来ていないと判断したパイロットは、狂喜に顔を歪ませた。

 

「やはりナチュラルなどは!俺達の敵ではない!」

 

更にスラスター出力を上昇させ、一息にコクピットを潰そうと加速する。

 

勝った!と、確信したパイロットは、突然前後に大きく揺さぶられ、なにがなんだか分からないまま意識を失った。

 

後ろから見ていた黄昏の魔弾ことミゲル・アイマンは、顔を驚愕に引きつらせ、一部始終を反芻していた。

 

(あの機体、膝で重斬刀の柄を蹴り上げて、背中を柄で殴ってゲティを落としやがった!

間違いない、あの機体に乗ってやがるのは俺達の裏切り者だ!)

 

少なくとも、ZAFTでも優秀な部類に入る自分には不可能なMS捌きに、ミゲルの脳は相手をコーディネーターだと判断した。

 

これで戦力差は五分、と判断したミゲルは、先ほどまでナチュラルと甘く考えていた自分を戒め、刹那の乗るジンの隙を窺い始めた。

 

しかしキラを庇える位置まで後退した刹那は、拡声器で告げた。

 

「撤退するのなら追いはしない。そこの仲間を連れていけ」

 

その後ろの新型から、何を!、という声が漏れていたが、ジンが手を挙げて制した。

 

(あの機体には一機では確実には落とせないか…)

 

先ほどの光景で戦場の熱からすっかり頭が冷め切っていたミゲルは、潔く撤退を選択し、もう一機のジンを牽引していった。

通信を受け取ったのか、連合の基地を警戒していたもう一機も撤退し、後には新型とジンが残された。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

先ほどまでの戦闘の残り火が揺らめく中で、鎮座しているMSと寝かされたMSがあった。

鎮座している方のMS、ジンから、降下用ロープでキラと女性士官の様子を見に刹那は降下していた。

新型MSのコクピットへ走り寄った刹那は、声に静止された。

 

「動かないで!」

 

見れば、肩から血を流す件の女性が刹那へ銃を向けていた。

肩で息をしながらも、強い目線で刹那の方をにらみつけている。

 

「あなた、コーディネーターではないと言っていたじゃない!」

 

 

マリューは混乱の最中にいた。

 

(この男は自分たちを助けてくれた・・・。けれど!

その助け方が問題だ!

あんな動きはナチュラルにできるはずがない!)

 

返答は、落ち着いた声だった。

 

 

「俺は、コーディネーターではない。本当だ。」

「でも!」

 

どうしても、軍人としてコーディネーターと戦ってきた経験が、この男の言うことを信じさせてくれない。

 

「信じられないなら、検査をしても構わない。だが、今はそれよりもすることがあるだろう」

「・・・すること?」

「今、ヘリオポリスの宙域にはZAFTの艦がいる。恐らくまた仕掛けてくるだろう。その対策に、そのMSを動けるようにする必要がある」

「できるわけがない!私たちが何年かかって開発してきたと!」

「ああ、俺では無理だ。だが、キラならできる」

「キラってまさかそこの・・・」

「ああ、そうだ。キラのプログラミング能力は俺とは比べ物にならない。実際、カレッジの研究室でロボットのバランサーの研究もしていたようだしな。」

「軍事機密よ!中身を見せるわけには・・・」

「ちがう、よく考えろ。ここで負ければ連合は中立国にMS開発をさせていたという汚名が残るだけだ・・・」

「でも、彼ができるという保証は・・・」

「あの・・・」

 

――ここで、キラが初めて口を開く。

 

「なにかしら」

「多分、できると思います」

「何の確証もなしにそんな・・・」

「ニューラルリンケージ・ネットワークの接続と分子イオンポンプと制御モジュールの結合、その他何か所かですけど、たぶん1時間もあればできます」

 

この子・・・

 

「あなた・・・コーディネーター、なの?」

「・・・はい」

「じゃあ機体に触らせるわけには・・・」

「友達を助けたいんです!」

「ともだち?」

「ゼミのみんなは、僕がコーディネーターって知っても仲良くしてくれました、だから!」

 

キラの一押しで、マリューの判断は傾いた。

 

「緊急事態の特例として処理するわ。ただし、OSの内容に関しては秘匿義務を課させてもらう」

「じゃあ・・・」

「ええ、すぐにでもお願い」

「わかりました!」

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

俺一人では説得できなかっただろうな、と刹那は考えていた。

 

現在、倉庫にて作戦会議と新型MS、通称ストライクの調整を行っている。

 

決定事項としては、他のドックで作られている連合の新型艦、アークエンジェルを目指すということだ。

 

「それでは、よろしく頼むわ。ソラン・イブラヒム」

「ああ、マリュー・ラミアス大尉」

 

開発基地での作戦会議は、来るであろうZAFTのMSの接近を前に作戦を固めつつあり、ストライクのOS開発も当初の予定以上の進捗を見せていた。




なんかGレコ語しゃべってる・・・

今回のゲスト出演は、Gのレコンギスタから、ロックパイ・ゲティさんでした。
本来の搭乗機だと刹那&ジンなら完封できそうな高性能機に乗ってますが、一瞬で気絶しました。
哀れ。

詳しく知りたい人は
ガイトラッシュ
でググりましょう。

来週こそは休むかもしれません。

感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Extra:Setting
Extra01:世界観編


投稿しなくちゃという義務感と何にもしたくないという倦怠感と論文のストレスから生み出された番外編です。
自分が考えている西暦世界とCE世界の差、技術の原理などを一部載せます。

9の評価をくださったいたまえさん。自分、目から塩水がわきました。
これからも精進する所存であります。ありがとうございました。


パイロットの性能ランキング(種族?人種?分け)SEED Destiney含む

1.純粋種イノベイター

2.覚醒イノベイド(上位種)

3.超兵(覚醒)

4.SEED発動時のスーパーコーディネーター

5.イノベイド(マイスター型)

6.スーパーコーディネーター

7.アル・ダ・フラガ

8.戦闘調整型コーディネーター

9.ムウ・ラ・フラガ

10.一般コーディネーター

 

ぶっちぎりで純粋種のイノベイター(該当:刹那・F・セイエイ、デカルト・シャーマン)

二位が該当者一名の上位種の覚醒イノベイド(該当:お察し)

三位はこれまた該当者が一人(二人?)

四位はやっとSEED勢でしかし該当者一名(主人公)

五位は、西暦世界の方が遺伝子操作技術は確実に上と思われることから。作者はヒリングが好きです(性別無し?偽乳?そんなことは百も承知です)

六位は通常状態のスーパーコーディネーター。これは、スーパーコーディネーター並みのコーディネートが施され、成功した者も含みます(該当者:アスラン・ザラ、シン・アスカ)

七位はナチュラルチートことフラガ父。実は脳量子波が使えます。(該当者:ご本人、クローンの強い方)

八位は戦闘型のコーディネートが施されたコーディネーター。叢雲劾さんは変態仮面を上回るかもしれませんが、ソキウスシリーズやサハク姉弟、全部で平均を取ると微妙なラインなので括りとしては八位となりました。

九位は個人での登録をされた不可能を可能にする男。空間認識能力と脳量子波が使える(イノベイドよりは弱い)

十位はここでやっとモブがたくさん出てきました、一般コーディネーター。戦闘向きでなくても反射神経の強化だけで一般人よりは強そうです。

 

コーディネーターには空間認識能力を持つ人が一人だけいますが、戦わないと思われるので除外、レッドフレームのロウさんはキャプテンGG曰く真のコーディネーターらしいですがAIハチが強いと言えなくもなさそうなので除外(作者はあまりアストレイに詳しくありません)、切り裂きエドなどの連合のエースはこれまたよくわからなかったので除外、また、同じくらい強いということでいくつかランクに個人名を入れてみると、

 

四位 <- グラハム・エーカー

五位 <- アリー・アル・サーシェス、一般的超兵(普段のアレルヤ、ソーマ・ピーリス)

      セルゲイ・スミルノフ

七位 <- エクステンド三人組、ハイネ・ヴェステンフルス、叢雲劾

八位 <ー マルコ・モラシム、イザーク・ジュール、ミゲル・アイマン

九位 <- レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク(近接戦闘)、ディアッカ・エルスマン、

      ニコル・アマルフィ

 

この中で誰がおかしいかと言えば確実にミスターブシドーです(確信)

さすが阿修羅をも凌駕する存在だ

次点でノイマン曹長くらいですかね

 

脳量子波とは・・・

・全ての人間が脳から発している、量子的関係性を相互につなげるための状態信号

・この脳量子波は、ある程度以上の出力になると、人体外部に量子脳という器官が形成される

・量子脳は拡張された脳として扱えるため、脳の処理速度、キャパシティーが上昇する

・脳量子波を使うことで交感(テレパシー)、索敵が行える

・量子状態の変位が伝搬しているので、基本的にはノータイムで信号が拡散する

・脳が量子脳のおかげで機能が向上するため、扱える人間は勘が鋭い、空間認識能力に優れるなどの能力を持つ

・一定以上のレベルに達していないと存在に気づけない

・純度の高いGN粒子によって強力に増幅される

・実は最も使いこなせるのはアレルヤ&ハレルヤ

 

モビルスーツのOS(CE世界)・・・

コーディネーター仕様

最初期では完全マニュアル動作

ある程度自分で動きを設定し、プリセットされた動きの繰り返しで戦ったりする

操作から動作までのラグがある

G兵器の奪取から、回避パターンに対ビーム兵器用のものが加わっている

乗っている人の技量でモロに性能が変わる

 

ナチュラル仕様

試作兵器Gのものは最初期コーディネーター仕様と全く同じ。

キラがオーブで作るアストレイのOSは、伝達系の制御プログラムの改良による更なるラグの解消と、プリセットされた動きの簡易化でナチュラルの神経伝達速度に合わせた

※フラガさんは努力すればコーディネーター仕様のOSでも操縦できる(潜在能力がある)。

キラの戦闘データのフィードバックがあるのでかなり高性能

補助が強いのであまり個人差が出ない(人外は除く)

 

スーパーコーディネーター仕様

ストライクに施された改造はどう考えても魔改造(オーブでオーバーホールを受ける必要があるほど)

キラの反射神経に対応できるように限界までキラが自分の動きとすり合わせながら改造を繰り返したもの。上のランキングで七位以下の人物たちは確実に操作をミスする。

それ以上の人々でも、キラに合わせてフォーマットされたOSのため本来の性能が発揮できない。




とりあえず2000文字弱で・・・

今日は叫びたいことが一つだけあります。

シノォーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
死ぬなぁぁぁぁぁぁぁ!
一期は何とか生きてたじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!!
ラスタルてめぇーーーーー!!
ダインスレイブ使うとか何考えとんじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

以上です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Extra02:MS設定編

バイトが忙しすぎて本編が書けなかった・・・(4/2まで)
というわけでまたもや時間稼ぎの番外編です。
今回は今後出すMSの設定を開示しておきたいと思います。
なぜなら筆者は本編に絡めて設定を開示していくという器用なことはできないからです。
よって、いきなり新型が説明なしに出てきた!って状況で、あああんな機体出すって言ってたなぁ・・・
と思っていただけるようにMS設定編です。
大体どこで機体が変更されるのかなあという疑問は、まあ、ストーリーのネタバレは無しの方向で・・・
来週はまじめにやります!

※ヒロイン物の番外編は休みです


キラ・ヤマト乗機

ストライクカスタム

電源:パワーエクステンダー

装甲:VPS装甲

フレーム:X-100フレーム+アストレイフレーム(関節のみ)

 

武装:改良型エールストライカーパック

  :ランチャーストライカーパック

  :ソードストライカーパック

  :武器、盾についてはほぼ改良無し

 

説明

本編に比べて身体、精神的に余裕のあるキラが思いつき、マリューと相談して発案、地球で設備の整った工場と協力し、数日で魔改造された結果、時代を先取りしすぎたVPS装甲となっている。

また、ストライクの関節部部分の消耗がある時点で限界に近かったため、横流しされたアストレイフレームの関節部分が移植されている。また、フレームの変化に対応して運動制御系のソフトも改良されているため、より人間に近い動きが可能になっている。

バッテリーは、新規に開発された従来型よりも非常に大容量なもの。

どのくらいヤバいかというと、パワーエクステンダー搭載型のストライクルージュは常時PS装甲レッドでストライクより余裕で稼働時間が長い、詳しくはwiki等を見て頂きたい。

エールストライカーは、発砲金属装甲部材による軽量化と、ガスタンク、スラスターノズルの改良による出力向上により、大気圏内での単機飛行が可能。

フリーダム並み、とはいかないが、白兵戦能力と空戦能力の強化具合が著しい。

 

 

刹那・F・セイエイ乗機

M1アストレイカスタム

電源:パワーエクステンダー

装甲:発砲金属装甲

武装:グランドスラム×2

  :アーマーシュナイダー×4

  :改良型シュベルトゲベール

  :エールストライカー用シールド(小型に改良したもの)

  :ミラージュコロイド散布機能

 

説明

本作では、PS装甲材に対し発砲金属装甲は非常に軽い設定。

その軽量と、アストレイフレームの優れた設計、専用機としてのパワーエクステンダー、本人の希望での実体剣多数装備と、ストライク用のビームライフルを装備している。

シュベルトゲーベルは改良されてコンパクトに収納が可能になっており、主に右腕にマウントされている。

畳んでいるときはショートバレル、展開しているときはロングバレルのビームライフルにもなっている。別に謎のバリアーを斬れたりとかそんなことはない。

当たらなければどうということはない発想で制作されており、シールドも腕にマウントしただけのもの。

ミラージュコロイドは姿を隠すこともできなくはないが、どちらかという戦闘時のレーダー攪乱用(ディスティニーっぽい運用方法、ただし粒子は緑。緑色をしている。)

アーマーシュナイダーはほぼ消耗品設定。

キラが三徹した結果、ほぼ刹那が生身で戦っているような変態機動が可能。

PS装甲ではないので徹甲弾に弱いと思いきや、刹那さんは関節でショックを吸収するという人外技(地球限定)で対抗してくるので弾幕で徹甲弾を打ち込む必要がある。

正直アストレイの皮をかぶったエクシアと言えなくもない(慣性制御の問題で空中運動性は格段に劣る)

何よりジャンプしかできない。(改造してエールストライカーを装備すれば飛行可能)

 

ちなみに装甲強度は、物理耐性では

PS装甲レッド>PS装甲ホワイト>発砲金属装甲>その他>ラミネート装甲

ビーム耐性では

でかいラミネート装甲>シールドサイズラミネート装甲≧耐ビーム加工シールド>PS装甲ホワイト>発砲金属装甲>PS装甲レッド>その他

 

あくまでここの作品での設定であり、SEED本編ではPS装甲レッドはPS装甲の中では一番ビーム耐性が高い。らしい。

個人的には、PS装甲レッドは既に装甲のエネルギー許容量が限界まで来てるイメージなので逆にビームみたいなエネルギー兵器に弱いと思っている。ので、この順位。

実はイージスが一番エネルギー効率悪い説ありますね(装甲のせい)




ネタバレに近い気もするが気にするな!
SEEDファンの皆さんは今後の展開の一部がわかったかもしれませんが。
個人的に刹那さんは、どんなピーキー機体も乗りこなしそうなので、堅気職人連中に好かれそうなイメージ。
どうしてこんな魔改造がまかり通ったのか、どうやってアストレイを一機調達したのかは本編で。(しばらくかかるね)

来週は
頑張ります!

※そのうち設定編に移します

4/3 修正
三馬鹿機体はパワーエクステンダーの搭載は明記されておりませんので、ストライクルージュを引用させていただきました。
モルゲンレーテ開発とのことなので恐らく積んでいないんでしょう。
感想でのご指摘ありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Extra03:刹那専用ジンオーカーという魔改造MSについて

ネタバレ注意!!

このページは7/9更新の24話の内容が含まれます。

一応オリジナル武器が出てくるので解説します。
イメージイラストも上げられるといいなぁ・・・
ジンオーカーとは書いていますがストライクについても触れられています。

ネタバレになるので、嫌な人は先に7/9更新の24話を読んでください。

※来週の話更新時に上の方に移します。


刹那専用ジンオーカー

 

マリューが刹那の操縦に負けない機体を目指した結果、魔改造されたジンオーカー。

ある意味合理的だがある意味ロマンの塊でもあり作者の趣味も含まれたカオスの権化。

コー○ギアスの設定らしきものも流用されている。

砂漠をバクゥの二倍以上の速度で移動し、遠距離では投げナイフとレールガン(命中99.98%)

近距離では達人級重斬刀とパイルバンカーという隙の無さ。

SEED状態アスランがジャスティスを使いこなせば対応できる?かもしれない。

一応PS装甲持ちは近距離に入らなければ問題ないが、投げナイフが関節に刺さり接近、からの失神という恐怖のパターン持ちであることを留意されたし。

背中には小型化された元メビウス用スラスターが配置されている。

 

武装

対PS装甲用パイルバンカー:Gイーター

ジンのフレーム材を加工し、メビウスのレールガン用のリニアレールを高出力型に改造、高硬度のフレーム材を高速で打ち出し、衝撃でコクピットを揺らす。

三連装レールガンもメビウス用の物が移植されており、何発か発射可能。

元々のジンオーカーのバッテリーが動力源として使われており、ジンオーカー本体と電源リソースを食い合わない方式。

ジンオーカーの腕とはリニアレールと粘性流体で作られたシリンダーで接続されており、ジンのコクピットが潰れる程度まで衝撃を緩和している。

それでもコーディネーターが失神するには十分な威力である。

 

挿絵↓

 

【挿絵表示】

 

 

重斬刀

元からジンに搭載されていた重斬刀に、焼き入れをして硬度を増したもの。

本来はミサイルの弾幕を凌いだりすることは想定されていない。

峰の部分に耐ビームコーティングが施されている。

 

アーマーシュナイダー

投擲用。

振動しているので、通常の装甲を持ったMSにはよく刺さる。

 

移動用クローラー

バクゥのものを脚部に横付けし、砂漠での平面機動性を確保する為の物。

倒した二機のバッテリーをそれぞれ内蔵しており、ジンオーカー本体と電源リソースを食い合わない方式。

ぶっちゃけギアスのランドスピナーみたいなもの。

ランスロットくらいを想定してもらえるとよし。

バクゥと違ってバッテリーの全てを機動力に回し、キラが制御用OSを組んでいるため非常に高速。

速度差は、直線でバクゥの約二倍、曲線軌道ではバクゥの約三倍を発揮する。

この装備の命は下半身とクローラーのバランスのため、脚部の装甲が一部オミットされ、動きやすくしてある。

なお、接地しないように持ち上げることが出来る。

消耗品。

 

 

砂漠用ストライク

PS装甲に流す電流を変化させることで砂漠迷彩のような色をしている。

エールストライカーがデフォルト装備で、こちらはペイントされている。

砂漠をウサギか何かのように踏みしめ、飛び跳ねて移動できるが、ZAFTがここまで達成するのにあと4~5年はかかる模様。

エールストライカーは防塵対策済み。

 

武装は本編のエールストライカー準拠




刹那専用機の情報も新しいのひらめいたので、Extra02近々編集するかと思います。
いろんな世界から技術流入・・・・ロマンやろ?

7/3追記
Gイーターを少し改良
重斬刀は堅くてビームが防げます。

7/7追記
G-Eater画像を投稿
鉛筆絵で見難くてごめんなさい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Extra04:1周年企画・人の軌跡

なんと本日で連載開始一周年。永らくご愛顧ありがとうございます。
本編が実に良いところで中断していますが、現在作者の将来も良いところ(白目)なので少々お待ちください。
今回の番外編では2018/1/28時点での最新話までの設定や作者からのコメントをいくつかを出しておこうかと思います。

来週までにExtra:Settingに移します。


キラ・ヤマト

言わずと知れた主人公。宇宙コロニー・ヘリオポリスで普通のキャンパスライフを送っていたが、世界戦争に巻き込まれた友人を救いたいと参戦。地球連合軍の秘密兵器ストライクのパイロットになる。

第一世代型のコーディネーターでありかなりの能力は持っているが、周りに自分では敵わない技能の人間がちらほらと存在しているため、あまりコーディネーター優勢論には共感できない。

ここ数か月で特殊部隊並みのトレーニングを続け、自主的にも特訓しており、加えて成長性が凄まじいコーディネーターの体を持っているため原作と比べ物にならないほど強い(多分原作キラと生身で喧嘩すると数秒でKOできる)。

彼女が出来かかったり色々あったが、親友を殺してしまった(と思っている)ため絶賛精神崩壊進行中。

 

刹那・F・セイエイ

ヘリオポリスで生活していた自動車修理工。コードネームを名乗る意味がないと考えているので、本名のソラン・イブラヒムで通している。

この世界最強のモビルスーツパイロットであり、本人もそれは認知している。

争いを好む性格ではないが、力が必要な時もあるとも考えている。

実は、未だマリナ・イスマイールの言葉について考え続けているが・・・

 

ムウ・ラ・フラガ

SEED世界のニュータイプ。人間をやめたボディーを持っているうえ、割と不可能を可能にする男。グラハム・マニューバを耐Gシステム無しで余裕で扱える(フラガ一族ボディのおかげ)事に加え弱いながらも脳量子波を持っている(ドラグーン・ファンネル・ファング適正を持つ)が、経験値の差で戦闘では勝てないと思われる。

本作では準主人公・・・のはずだったがキラが目立ちすぎているような気がする。

 

アスラン・ザラ

母親の敵と軍へ入ったが途中どう考えても父親の方がやばいと気づき生体ユニット化してしまった挙句狂い、最終的に親友の精神に多大なるダメージを与えた悲劇の男。

恐らく全敵キャラクターの中で最もキラにダメージを与えている。

親の期待に応えるために全力で何でも取り組むが、何をやってもコーディネーターなら当然なのではないかという諦念を抱いてもいる。

最近地球連合軍に拾われた。

 

イザーク・ディアッカ・ニコル

そういう名前ではなくアスランの悪友&友人の三人組。みんな親はお偉いさんだが、ちゃんと努力で正当な評価をもらっている。

作者の着けたあだ名はそれぞれのファンに怒られそうなので非公開だが、多分同じように思っている人もいると信じてる。

一番アスランと仲が悪いのはイザークだが、一番アスランのことを分かっているのも多分イザーク。作者はニコルがお気に入りキャラです。

アラスカ基地でγ線レーザーに吹き飛ばされた・・・と思わせておいて三人とも生きてる。現在はパナマ基地で労役をしており最初は三人とも同じ牢屋だったが、現在では

イザーク :元の部屋

ニコル  :個室(囚人的にはVIP)

ディアッカ:独房

となっている。食事で顔を合わせるたびにディアッカがなじられるが誰も仲間をしない。なにがあったのかはお察しください。

 

ナタル・バジルール

最近は艦長と略して読んでいたことが多い気がする。軍人の名門・バジルール家の出身で、本人の資質もあって出世コースを超えた出世スライダーに乗っている。多分将来的には大将まで行くが、行き遅れないと思う。(主にノイマン)

ガンダム00視聴者的にはマネキンさんのようなものだと思って欲しい。

射撃管制の指示に定評があり、ミサイルでマルチロックオンを指示するだけで行える実は人外である。

 

カガリ・ユラ・アスハ

主人公(偽)。キラより男らしいが、微妙に羞恥心はある。

ほぼ姫に相当する身分だが、確実に護衛にキレさせるタイプ。

パイロット適性は高いが、そそっかしいので向いていない。でも作者は刹那の戦闘データが移植された核動力型アカツキに乗って戦場で無双するところまでは想像した。

作者は余裕でラクスザーさんよりかわいいだろJKと思ってる。いや確信してる。砂漠の虎編でのドレス姿とかSEEDDestinyのジューンブライト花嫁姿とか最高だったろうg・・・

失礼しました。

キラと同じ超辛党で、多分家でステーキにデスソースとかかけていたと思う。キラもそうする。確実に現代日本にいたら週刊少年ジャンプ読んでると思う。バトル物が好きそう。

最新話ではキラをメンタルヘルスケアするために戦艦クサナギで指揮をしながら待ってる。かわいい。

 

トール・ケーニッヒ

実はニコル最初に死ぬあたりで最低でも片腕は吹き飛ぶ予定だったが、アスランがぼろ負けしたので無事だった。

いわゆるパリピだが、マナーは守るハイブリッド型。もてる。

ミリアリアは好きだが、健全な男児の習性として美人を見てしまう。わかるぞ。

最新話では裏方で射撃管制を担当しており、アークエンジェルを不沈艦足らしめている要因の一つである。最近は若干空気。

 

サイ・アーガイル

完全なる空気。霊圧が消えるまでもなく最初から存在していないレベルだと思う。フレイが痴女にならなかったせいだが、可愛い彼女がずっといてくれるだろうということで我慢してほしい。

最新話では作者にどこで何をしているかさえ考えてもらえていなかった。多分整備班で修行中とかそのへんだと思う。数合わせで出して本当にすまない。

 

パトリック・ザラ

諸悪の根源と化している作者の被害者。ネタ最終話枠として

 

「あなたが・・・」

「お前が・・・キラ・ヤマトか」

「投降してください!」

「ふっ、笑止!」

 

四股を踏んだパトリック・ザラの体に、みるみる電気らしき緑色の光が集まっていく。

 

「ふぅぅぅー・・・俺の政治について教えてやろう。気に入らん奴は・・・この拳でぶん殴る!」

「がはっ!?そんな・・・モビルスーツを投げ飛ばすなんて!?」

「ナチュラルも!軟弱なコーディネーターも!みんな、俺が個人の闘争で引き上げてやるのさ!これが、俺の政治だぁ!」

 

があった。多分ガンダムファイターに近い強さ。

妻を溺愛していたがゆえに闇落ちしたうちはマダラのような悪役だが、今のところ隕石を落としたり木遁忍術を使ったりスタンドを召喚して無双する予定はない。

現在はγ線レーザー発射機(試作型ジェネシス)のサブプランを動かすために暗躍している。

 

ラウ・ル・クルーゼ

戦闘面ラスボス。細胞分裂を抑制する薬を常用しているが、多分傍からその様子を見ると完全な薬厨。地球に仮面状態で降りて通報されたことがある。

バグレベルのアル・ダ・フラガの資質を完全に受け継いではいるが、純粋なモビルスーツパイロットしての才能はたゆまぬ努力によるもの。

外伝が出ると完全にダークヒーロー系の主人公だと思う。

作者に舌戦が書ききれるのかそこはかとない不安を植え付けてくるある意味での第四の壁の破壊者でもある。

 

ミリアリア・ハウ

ヤンデレ。トールがおとなしければ可愛い彼女だが、怒るとかなり怖い。

トールとの馴れ初めは無く、幼馴染を死ぬ気で仕留めた生粋のハンターである。モビルスーツの発進時のオペレートを務めるため、定期的に役が回ってくる。

 

フレイ・アルスター

原作における全自動人間関係炎上装置。アルスターと付くくらいなのでメイヴの生まれ変わりかもしれない。あるいはフレイヤ。

作者もこんな人にだけは引っ掛かりたくないが、多分実際に近くにいると耐えられないと思う。最近はサイと並んで空気。多分医療系の下働きをしているが、想像と違っていて後悔していると思う。

 

ムルタ・アズラエル

本編と完全に乖離したかもしれない別人。でも本編も落ち着けばこんなものかもしれない。なぜこんな性格になったのかは先日番外編で投稿した「番外編:アズラエル(魔人)の生まれた日」を見ていただきたい。

執務室には日本語の旗が飾ってあり、「人類皆顧客」と書いてある。

アメリカ人なので、と言ってコーヒーを出すが、いつか砂漠の虎とコーヒーについて話したいと思っている。

 

アンドリュー・バルトフェルド

イケメン中年。ケバブについて並々ならぬこだわりを持っており、頑としてチリソースを使い続けるダゴスタと時々ジハードと称して殴り合っている。ただしコーヒーの趣味は合う。

基地内でも布教活動をしていたため大半がヨーグルトソース派だが、この世から異教徒(チリソース派)が消えるまで戦い続ける所存である。

現在パナマの牢役を終えコーヒー販売を行っているが、最終的にアズラエルの御用達コーヒーショップ兼軍事顧問になる。

頭の中の3割はアイシャ、3割はプラントの将来、残りの2割ずつでコーヒーとヨーグルトソースについて考えているが、いざ戦いとなるとプラントの将来が戦略に変わる。

 

アイシャ

バルトフェルドの実質妻。射撃がとてもうまく、軍属ではないのにモビルスーツに乗っている。

バルトフェルドと共に連合軍の留置所から出所し、コーヒーショップを経営している。

ちなみにコーヒーショップは、厳選された豆と異次元の抽出技術による天上の味、そして砂糖が要らないことで有名である。

現在妊娠3か月。

 

サイーブ・アシュマン

北アフリカ国立大学の元教授。ラグビーよクリケットの選手で、アマチュアでは世界クラスだが地元の危機に立ち上がった。

現在は連合と独立した政治形態について交渉しており、最終的にそれは成功する。

後のアフリカ連合大統領。かもしれない。

 

マリュー・ラミアス

技術班の元締め。変形しない装甲という完全なオーバーテクノロジーをゼロから開発したガンダム世界屈指の技術屋。ムウが軽く思いを寄せていることには気づいているが、今のところその気はない仕事の妻。

多分そのうちEカーボンとか作る。すごい。

 

コジロー・マードック

技術班副長。世界的な溶接、切削加工、電子工作のスペシャリストであり、マリューが計画系ならこちらは実働部隊の頭。

みんなにおやっさんと慕われているが、実は息子がいる。

連合の機械整備マニュアルがこの人を基準に作られると、ギャグマンガのように一日経ったら全部元通りレベルか、職場が崩壊する。

アークエンジェルの整備班は世界でも群を抜いたレベルなのだが、この目標のせいで宇宙が広がるように技術を伸ばし続けている。

ご利用は計画的に。

 

ウズミ・ナラ・アスハ

オーブ代表首長。国で一番偉いが、国一番の親バカである。(政治に影響しない範囲での)身内びいきはシン・アスカと並ぶが、実力行使力という点で買っている。

紛争を嫌うが、国民を守るためなら同盟でもなんでも道理にもとらなければやる。

オーブ一の雀士でもあり、セイラン家の秘儀・コンビ打ちに単独で挑める世界で五指に入る実力者。

現在執務室で挙動不審になり仕事が滞っているため、シモンズ主任に机に監禁されている。

 

ウナト・エマ・セイラン

オーブ宰相。国で二番目に偉いが、息子の教育には失敗していない自信がある。国の財政を支える一方で、息子とコンビ打ちを編み出すほどの麻雀好き。

支持率は低いが、この人がいないとオーブの経済は北朝鮮みたいなことになる。

 

ユウナ・ロマ・セイラン

オーブ宰相・セイランの跡取り息子。物腰の柔らかいイケメンなためマダムに絶大な人気を誇り、行き先の空港にはすさまじい数の女性が集う。

カガリが恐怖の対象であり、キラとの仲に気づいて将来的にカガリが(味覚的な意味で)丸くなる事を願っているが、確実により尖る。哀れ。

 

エリカ・シモンズ

オーブ軍需企業・モルゲンレーテの技術主任。

オーブ行政府の秘書も兼任しているため、とても忙しいがかなりお金をもらっている。夫とはかなり仲が良く、現在二人目を狙っている。

ウズミに強硬手段に出られるため、行政府のかなりの人間から姐さんと慕われているが本人は昔を思い出すのであまりよく思っていない。

 

アサギ・マユラ・ジュリ

オーブモビルスーツ部隊のトップ3。かなりのミーハーだが、ギリギリ頭も伴っているので尻軽というわけではないが、多分モルゲンレーテに現れたのがロックオン(弟)ならあっという間に三人まとめて(以下自主規制)

最新話では、プロヴィデンスにはやられなかったので震えながらクサナギに帰投していると思う。

 

クロト・シャニ・オルガ

アズラエル私兵の最高戦力。最新話に出演したもののあまり活躍している気がしない。描画されてないところで頑張ってます。

連合最新型のGATシリーズは思考操縦型のため、もしかしたら最終回で

 

「お前にこの力が分かるか!」

 

とかクルーゼにやるかもしれないが、三人並んでこのセリフはもはやギャグなので多分やらない。

 

 

真面目な話:新型モビルスーツ・ゲイツPについて

洗脳され、脳とモビルスーツ制御システムが直結された兵士が入っている。使用はほぼゲイツそのままだが、プロヴィデンスからの指令でクルーゼの戦闘パターンを流し込むことができ、短い間ながらかなり強化される。

ただし、パトリック・ザラとラウ・ル・クルーゼという二人分の情報が脳へ流れ込むため負荷が大きく、あまり長く続けると使い物にならなくなる。




小さくない小ネタ

楽屋にて

「ねえ、ギルバート」
「何かなミーア」
「いつまで私デスメタル歌手なのかしら」
「この戦争の終わりまで、かな」
「チクショー!!!!!!!」
「そうだミーア!その思いをデスメタルにぶつけるんだ!」
「F〇ckin Plant's Council!!!!!!」

「うぉぉぉぉぉ!ミーア様サイコォォォォッ!」
「もっと詰ってくれぇ!」

ライブ後

「も、もう嫌よ・・・・」
「ははは、あれだけの才能を発揮して何を言っているんだい、なあタリア」
「まあ、そうね。そんなことよりレイの晩御飯はどうしたらいいかしら」
「そんなこと!?私の悩みそんなこと!?」
「レイなら『ギルはサプリだけで体に悪そうだから俺が作る』って晩御飯作ってるらしいわよ?」
「おお・・・それは楽しみだね。今日は何を作っているんだい?」

ちゃんこ鍋、そこまで聞いたミーアの顔はかなり引きつっていた。

こいつら全然人の話聞かないし・・・

悲しみのあまり、ミーアは最近開いたバーでやけ酒をしていた。

「マスター、あいつら酷いのよぉ・・・」
「どうしたんだ、今に始まったことじゃないだろう?」

マスターは、いつもサングラスを掛けている。

「まあ、その辺にしておけ。あまり飲むと体に障る」
「マスター優しい・・・びぇぇぇぇぇえん」

ミーアは、飲むと泣き上戸だった。

「よし、タクシーを呼んでやる。信用があるやつだからとっとと帰って泣いて、全部忘れてしまえよ。ほら、餞別だ」

タクシーに乗ったミーアに、マスターは小さなボトルを一つ渡した。

「俺が作ったオリジナルってわけじゃないがな。おっと、ツケだから金はしっかりもらうぞ?」
「はぁい・・・」

顔なじみのタクシー運転手に、目配せする。

「頼んだぞ、イライジャ・キール」
「任せな、劾」

翌日

「昨日はありがとうございました・・・」
「気にするな。それより、明日のライブは気をつけな?」
「えっ?」

マスターは、時々どこで仕入れてきたのかというような情報を持っている。

「明日、クライン派とザラ派の工作員がひと悶着起こすらしい」
「そんなことが」

現在、ザラ派の構成員たちは言論統制を厳しく敷いており、ミーアたちのライブもあまり大っぴらには行っていない。

「まあ、気を付けることだな」
「はい、重ね重ねありがとうございます」

礼儀正しく礼をして、ミーアは店を後にした。

「劾、争いって本当なの?」
「ああ、ライブ会場にラクス・クラインのファンが500人単位で来るらしくてな、あいつのファンと荒れそうだからああ言っておいたんだが・・・」
「怖がらせて警戒させた、ってことで良いの?」
「まあそんなことだ」

翌日のライブでは、始めこそ険悪な空気が流れていたものの、最終的にはアルバム売上が500枚増えた。

「やっぱり君は天才だ」
「う・れ・し・く・な・い!」
「今度レイも連れて」
「やめてください!」

補足・サーペントテールはアズラエルからの依頼でプラントの情報収集、内部かく乱のために潜入しています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1st:Drift for C.E. to Inovaiter
再筆版 一話:異聞の漂流者


ちょっとあんまりな部分がたくさんあるので一話からいくつか書き直してみようと思ったり。
ちょくちょくこちらも改良入れたいと思います。


「もう彼らが争うこともないだろう」

 

もう何度目になるだろうか。

あの機体とよく似たコクピットを眺めながら、達成感が形になったようなつぶやきを漏らす。

地球を立ってはや5年。刹那に郷愁という感情は湧かなかったし、常にすべての情報を見ているティエリアは猶の事だ。

地球に金属生命体ELSが現れ、誤解から生まれたELSと地球人類との争いは刹那とクアンタによる対話で終結した。

それからというもの、こうして刹那はELSと共に外宇宙を巡っている。

 

「マリナ・イスマイールやフェルト・グレイスが会いたがっていたぞ」

 

逆に、地球のソレスタルビーイングのメンバーは、刹那に会いたがっているようだ。

 

「少なくともフェルトとは音声通話は時々行っているはずだが」

「恐らく、直に会いたいということだろう」

 

刹那はティエリアの考えに首をかしげる。なぜ音声通話ではダメなのだろうか。音声通話と直に会うことに何の違いがあるというのか。

 

「僕もうまく説明は出来ないが・・・」

 

ホログラムのティエリアも、説明を試みはしたのだろうが、結局首をかしげている。

つまり、このクアンタのコクピットにいるメンバーでその答えを持っているものはいなかった。

 

「まあいい。次の音声通話で彼女に理由を聞けばわかるはずだ。今はそれよりも」

「ああ。次の星系へ向かう」

 

今、刹那の体は金属生命体ELSと融合し、どんな環境でも生きていけるようになっている。

特に、地球どころではない多様さの生態系を持つ別の惑星の生物と対話するためには、必須の能力と言えるだろう。

 

「む・・・少し待ってくれ、刹那」

「何かあったのか?」

 

もう何度も繰り返した事。クアンタのビットを使った量子ワープゲートを展開しようとして、ティエリアがストップをかける。

 

「ELSが脳量子波で呼んでいる地点なんだが・・・」

 

ティエリアは考える人のように顎に手を当てて思案している。

実際には、月の量子演算型コンピュータ、ヴェーダの処理能力をフルに使って目的地の解析を行っているのだろうが・・・

 

「アンカーの打ち込みは完了した。行く分には問題は無いんだが、あちら側からこちら側へは情報が帰ってこない」

「どういうことだ?」

 

今まで、このような事は無かった。

 

「このままでは、あちらからこちらへ帰ってこれないかもしれない」

「問題ない。そこに争いがあるなら、俺が破壊する」

 

帰ってこれないかもしれない事を、おそらく普通の人間は気にするのだろうな、とティエリアは、目の前の男を見て嘆息する。

 

「そうだったな。お前は・・・」

「ああ。俺がガンダムだ」

 

止めても止まらないとは正にこの事か。諦めに近い感情で、ティエリアはワープの準備を再開する。

 

「恐らくこちらと通信もできないだろう。だが、必ず帰ってこい」

 

クアンタに表示されるティエリアは、ヴェーダとのラグの無い量子通信に依るものであるため、当然通信が断絶すればクアンタには表示されない。

 

「もちろんだ」

「お前が帰ってこないと・・・」

「・・・?どうかしたのか」

 

突然お茶を濁したティエリアを、刹那はよくわからない物を見る目で見ている。

流石にミッション前に疑問を残すのもどうかと説明を試みるが、どうも上手く言語化できない。

 

「僕にもよくわからない。ただ、君が帰ってこないかもしれんない思うと、先ほどの二人のことが頭に浮かんできた」

「それは、俺にもよくわからないな。ロックオンならこんな時良い考えをくれるのだろうが・・・」

 

二人の脳裏に、あの軽薄で、芯のある、同じコードネームだが違う二人の男の顔が浮かぶ。

 

「僕らの成長のためにも、この答えは君が帰ってきてから二人で答え合わせをすることにしよう」

「了解した」

 

我ながら、まだまだ人間らしいとは言い難いかな。

そう呟いて笑うティエリアは、まさに人間だと、あの時のロックオンならそう言うのだろう。少なくとも刹那はそう思った。

 

「刹那・F・セイエイ。対話を開始する」

 

銀色のELSを纏い、緑色の光を振りまいて、クアンタは虚空へ消えた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「トール、まだ着かないの?」

「まだそんなに進んでないだろ?」

 

まあ自分がきついのはこのPCが入ったリュックを背負っているからなのだろうが。疑問に疑問で答えるな。そう言っていたのは誰だっただろうか。少なくともトールでは無かっただろうとキラは考える。

四六時中彼女の事しか考えていないと言われてもしっくりくるのだが・・・

 

「今失礼な事考えてただろ」

「いや全然?」

 

少なくとも勘が良いことは確かだ。人が考えていることは大抵感づくし、じゃんけんをしても勝ったことがない。

今こうして町はずれの工場(こうば)に向かっているのも、トールが「めちゃくちゃ歌が上手な人が・・・」と知り合いの話をしていて、どんな人なのかと思っていたら「気になるんだろ?」と言われて今に至る。

 

「そもそもどうして歌のうまさなんか知ってるのさ」

 

話を聞いていてまず疑問に思ったのはそこだった。普通、出会ってすぐの人の歌のうまさなんて知らないだろう。

 

「ツーリングしてたらバイクの電源切れちゃってさ」

 

泣く泣くバイクを転がしていたら、偶々休憩時間だったその人が、歌を歌いながら座っていたらしい。

バイクを充電させてもらっている間に、仲良くなって歌を教えてもらったり、逆に普段あった何でもないことを話したりして、しかもその人はそんな話に驚異的に食いつきが良いらしい。

 

「面白い人だから紹介しようと思ってさ。他に友達いないだろ?」

 

流石に肯定しかねるので苦笑いを顔に張り付ける。

ちなみに僕がその人に興味を持ったのは、機械の分解がすごく上手くて、しかも割と機械工学にも詳しい。

という部分だった。

最近カトー教授から出された課題が、どうしてももっと改良できる点があるような気がするけど、どうしてもその点が思い浮かばないからだ。

そんな時は他人に話を聞くに限る。

トールはそういう面では役に立たないし、先輩のサイでも駄目だ。

その点、今から会いに行く人は、トールの話しぶりだと機械系への造詣は相当だし、プログラムばかり作ってきた僕にはない視点があるんじゃないか。

そう思っての事だった。

 

「そういえば」

「なんだ?」

 

今ふと思ったんだけど

 

「その人今日暇があるの?」

「そこは抜かりない」

 

きっと将来は出世するんだろうなあ。

どこかの秘書にでもなれるんじゃないかと思いながら、平坦な。故に苦しい道を自転車でこぎ続ける。

なぜ今日に限ってトールの車の免許が没収されているのか。多分ミリアリアが何かやってたんだろう。

だってこの前も・・・

 

「着いたぞ」

 

ミリアリアが運転中にも関わらずトールに必要以上に抱き着き、事故を起こしかけた時のことを思い出していた途中で、到着が知らされる。

 

「あれ?工場(こうば)じゃなかったの?」

 

何も考えずにトールに着いてきたけれど、そういえば途中から道が違ったような気がする。

 

「うん、次は家に来て良いって言ってたから・・・」

 

普通の家だ。

ガレージみたいなものはあるが、小さい。家の前の駐車場には、四人乗りの車が一台止めてある。全体的に四角形で、多分一人で暮らすには丁度いいんだろう。

トールは躊躇なく呼び鈴を押した。すぐに、扉の向こうで少し音がして、中から人が出てくる。

 

「トールか。そっちは・・・」

「キラですよ。ほら、フレイに」

「ちょっと!」

 

どうやらとんでもないことを吹き込んでいるらしい。あれはタイプの話だった筈なのにいつの間にか僕がフレイを好きだった事になっているのは許しがたい。

トールとは後で話をする必要がありそうだ。

 

「キラ・ヤマトです」

「ソラン・イブラヒムだ」

 

差し出された手を握って、ようやくはっきり顔を見た。

中東系の顔立ちと褐色の肌をしていて、髪はくせ毛。瞳は昔見た宝石のタイガーアイのような金に近い褐色だ。思ってたよりずっと整った顔をしている。長身で細見だけど、手からは力づよさが伝わってくるようだ。

多分そんなに歳は変わらないと思うけれど、見た目とは違う年季の入り方を感じる。

 

「家に入ってもいいですか?」

「ああ」

 

そう言われると、トールはお邪魔しまーすと言って部屋に上がった。

僕も、お邪魔します。そう言って上がらせてもらう。

 

部屋には、冷蔵庫とシンクとベッドがあって、小さい箪笥と、机と・・・ああ、窓際に花が飾ってある。小さいけれどきれいな花が一輪あって・・・

それで部屋にあるものは全部だった。

 

「生活感無いなー」

 

無遠慮な感想だとは思うけど、言われてみればその通り。

一応PCと端末は持ってるらしいけど、必要最低限の物しかなくて・・・

 

「来客があればお茶を出した方が良いらしいな」

 

冷蔵庫から出したらしい、緑色の飲み物が机に置かれた。オーブではよく飲まれてる緑茶だ。

 

「昨日はミリアリアがですねー」

 

遠慮と言うものが無いのか、トールはすぐにお茶を飲んで昨日ミリアリアが車の運転中に猫を見つけて・・・と、猫は助かったが免許が没収された顛末を話していた。

ソランさんはお茶を飲みながら穏やかに話を聞いているので、多分楽しんでいるんだろう。

流石に飲まないのも失礼かな、と一口飲んでみる。苦みが無くてすっきりしてて・・・飲みやすい。

自転車を運転した疲れもあってかすぐに一杯を飲み干してしまった。

丁度飲み終わったところで、トールがこちらへ話を振ってきた。

 

「キラ、なんか用事あるんだろ?」

 

まあこんな大きなリュックを背負ってくれば何か用事があるんだろうとは思うよね。

 

「実はこれを見て欲しいんですけど・・・」

 

立ち上げたPCの画面には、今教授から出されている課題が映る。

二足歩行系ロボットの制御プログラムだ。ソランさんは数分このプログラムを眺めていたが、ぽつりとつぶやいた。

 

「MSの制御プログラムか?」

 

カトー教授がモルゲンレーテのMS開発部と連携してるってことはあり得るかな?

中立国と言っても自衛の力は必要だろう。

 

「MSかは聞いてませんけど・・・一応二足歩行ロボットを制御するプログラムです」

「基礎からすべて作ったのか?」

「いえ、基礎はうちの教授からもらったものです」

 

そう言うと、すぐにPCの画面をスクロールしてある部分を指す。

 

「ここなんだが、おそらく元々上半身があることを想定した設計だ。

多分、上半身でバランスをとれる分、下半身の設定が今一つだったのを、そうと知らず下半身だけで成立するように書き換えたからシミュレーションが上手くいかないんだ」

 

納得がいく答えだった。

けれど、一つ疑問が立ち上がる。

 

「ソランさんはコーディネーターなんですか?」

 

どう考えても普通の人間にしては情報の処理が早すぎる。

4×4の運動関数の行列型パラメータを一瞬で読み取れるのは普通コーディネーターだと思う。

 

「いや。俺はナチュラルだ」

 

しかし本人によると違うらしい。

今まで出会った人の中では一番すごい人なんだけど、本当にナチュラルなんだろうか?

 

「別に、コーディネーターがすべてのナチュラルより優れているわけじゃない。何か一つくらい、コーディネーターより優れたナチュラルがいてもおかしくはない」

 

まあ、確かジョージ・グレンも銀メダリストだし、言われてみればその通りだ。

ここで、冷蔵庫を(許可を得て)漁っていたトールが奇声を上げる。

 

「どうしたの?」

「レポート今日の4時までじゃん」

 

今の時間は3時30分。もっと言うなら、教授は四時から出かける予定があるとか。

まあ1時間はかけて来ているから、トールがレポートを提出するのは難しいだろう。

僕は冷たく来年は後輩だねと言ったが、顔が青くなっていくトールを見かねたのか、ソランさんが車で送ろうと言ってくれた。

僕も載せてくれると言うから、トールと一緒に車に乗り込んだ。

いい人だな、と僕の中では印象が固まった。




元一話と入れ替わりました

7/21追記
心情が増えた代わりに環境の描写の少なさが目立つような・・・
続きは再筆版二話としてお読みください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再筆版 二話:転換点

再筆版の方が捗り過ぎて困るなぁと。


とりあえず、電話でゲート通過の予約をしておく事にした。

ヘリオポリス・カレッジは本国オーブの軍需企業、モルゲンレーテと提携している。

自分とトールは在籍している学生なので全く問題ないが、今車を運転しているソランは違う。

予約をしておかないと区画を区切るゲートで呼び止められてしまうだろう。

 

「すみません、トールを送る以外に用事ってありますか?」

 

多分、用事か何かあった方が予約の申請がすんなり通るだろう。

最近は何故かゲートの検閲が厳しいらしいが、国外の人間に限った事のようなので、今回は問題にはならない。

 

「学内の図書館を利用する」

「分かりました」

 

欲しい情報は聞けたので電話を掛ける。

ありきたりな理由だが、なんとなく前々から考えていたんだろうなとは思った。

多分答えるまで考えるような素振りが無かったからだろう。

 

もしもし?と携帯電話にお決まりのセリフを吹き込むと、女性が応対してくれた。

ゲート通過の予約がしたいと言うと、証明書は有るかと聞かれたので、有りますと答えておいた。

運転しているのだから持っていなければいろいろと不味い。

15番ゲートに来てくれと言われたので、ありがとうございますとお礼を述べてからソランさんに道の指示を出す。

トールは間に合わないかもしれないと情けない声を出しているけれど、自業自得とは考えられないのだろうか?

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

驚いたことに、守衛の人とソランさんは顔見知りだった。

曰く車の修理をしてもらい、仕事ぶりが素晴らしかったとか。

 

図書館と研究棟の丁度中間にある駐車場に車を止め、ソランさんと別れてゼミの研究室へ向かう。

トールには置いて行かれたがまあ目的地は同じなんだから問題はない。

 

多分トールから1分遅れ位でゼミの自動ドアを通り抜ける。

室内では、タッチの差だったのか本当に間に合わなかったのかトールの頭が地面とくっついていた。

まだ時間は来てないはずなんだけど・・・

トールばかり眺めていても仕方がないので、研究室の中を探してみた。

サイにカズィ、トールを慰めてるミリアリアと・・・誰だろう?

コートとお揃いの色のキャスケットをかぶった人がいた。

僕が見たのと同時にその人も僕の方を見た。

 

目が合った・・・

 

俯いていたさっきよりも顔がよく見えて・・・

第一印象は中性的で整った顔だな、ということだ。

兎に角美形だと思う。

ソランさんは女性にもてそうだけど、こっちは男女問わず好かれそうな気がする。

 

少しの間目は合っていたけれど、すぐに視線を外されてしまった。

なんだかきまりが悪くて僕も眼を逸らす。

 

「キラ」

 

呼ばれたので振り返ると、サイが手招きしていた。

 

「どうしたの?」

 

多分あの人の事なんだろう。

 

「教授のお客さんなんだけど、失礼が無いようにってさ」

 

えらい人なんだろうか。

あまり年は変わらない気がするが、まあそういう事もあるだろう。

顔じろじろと見たのは不味かっただろうか。

後から留年は嫌だと泣き声が聞こえてくるので、どうせデータなんだからメールで送れば時間の証明ができると言ったら、飛び起きてPCでメールを打ち込み始めた。

わが友人ながら現金だ。

 

さて何をしようか、としたところで再びサイが袖をつかんだ。

 

「離してくれよ」

 

足早にその場から離れようとしたが、一歩遅かったようだ。

 

「察したか・・・まあ、想像通り教授からの」

「嫌だ!」

 

なぜ課題が終わったばかりで僕ばかりがこんな目に合うのか。

 

「・・・新しい課題さ。明日までだって」

 

光栄だろ?と言ってくるが、正直逃げたい。

逃走は許されなかったけど。

教授は自分で仕事をして欲しい。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

仕事は大体一時間で終わった。

まあ僕はコーディネーターの中でもそこそこのスペックでコーディネートされているらしいし、多分それは誇れることでもない。

すごいのは僕をコーディネートした技術者だ。

 

そういえば、ソランさんはどうしてるんだろう。

普通、図書館に用事がある人は一時間やそこらでは帰らないだろう。

 

あの人は本物の才能が有ったな、と思う。

勉強して、経験を積んでああまでなったんだろう。

ああいう人こそ本当に称賛されるべきだ。

 

「そこ、座っていいか?」

 

お客さんが隣の来客用のソファを指さしていた。

はい、どうぞと答えてから、トールにお茶を出さなきゃと伝える。

ゼミのメンバーの中ではぶっちぎりに家事が上手いし、トールがいれるお茶はなかなかおいしい。

トールは、しかたねぇな、と僕の肩を叩いてお湯を沸かしに行った。

今のうちに教授のデスクから良さそうなお茶菓子を(勝手に)出しておく。

仕事代と思えば罪悪感も無い。

 

丁度、トールが戻ってきてお茶を入れたので、湯飲みに入れてコースターを敷き、お茶菓子を木細工の籠に盛ってどうぞ、と差し出した。

 

お客さんはありがとう、と言って辛口の柿の種をつまみながらお茶を一口飲んだ。

お菓子の趣味は僕と一致するらしい。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

オーブ港の外側に、つい半年前に新造された最新鋭の高速艦、ナスカ級ヴェサリウスが停泊している。

潜水艦が構想の根本にあるために艦内はあまり広くないが、機能性は十分だ。

今、艦橋では作戦会議が行われていた。

 

「諸君は、これよりヘリオポリス内で連合が開発している新型MSの奪取作戦を行ってもらう」

 

マスクで顔を覆ったこの男は隊長、ラウ・ル・クルーゼは、昨年の「世界樹」攻防戦で多大な戦績を上げ、実力で隊長まで上り詰めた男である。

 

「中立を隠れ蓑にしているような連中だ。あまり罪悪感を感じることもないだろう?」

 

作戦説明を聞いていたメンバーから嘲笑が上がる。

ユニウスセブンで家族を失った者もいるこの隊には、中立国を隠れ蓑くらいにしか思っていない風潮がある。

 

「さて、今回の主役は君たちだ」

 

仮面が赤い服を着た四人の方を向く。

この赤い服は、コーディネーターの国、プラントの士官学校を優秀な成績で卒業した者に送られる、通称「ZAFTレッド」で、エリートの証である。

 

「アスラン、イザーク、ディアッカ、ニコル、ラスティ。君たち五人は、五機あるという連合の新型の奪取を、一人一台担当してもらう」

 

続いて、五人の通常の宇宙服を着たメンバーを見る。

 

「君たちだが、ジンで彼らがMSに取り付くための援護をしてもらう。ミゲル、ロックパイは先行、残りは後詰めだ」

 

ZAFTの制式量産機、ジンは宇宙で航空機以上の機動性と戦車以上の装甲、人間並みの汎用性を発揮し、連合の主力であるMA、メビウスに大きく水をあけている。

 

「アスランたちは、ブースターを装着後、新型艦が泊められている宇宙港を爆破。そののち、作戦行動へ移れ」

 

では、戦果を期待する。そう締めくくったクルーゼに、全員がハイ!と大きな声で返事をし、キビキビと行動に移る。

クルーゼは、ある程度の成功を確信していた。

 

「アスラン」

 

ラスティが、宇宙服のヘルメットを被る前にアスランに話しかけてきた。

 

「なんだ?」

 

ラスティは、苦笑いしながら懐から写真を取り出す。

 

「俺が失敗したら、弟にこの遺書を届けて欲しいんだ」

 

そう言って、ロッカーから今時珍しい紙の手紙を取り出す。

宛先には、弟へと短く書かれていた。

 

「今回の作戦は失敗すると悲惨だからな。お前ならきっと成功するだろうが・・・」

 

赤服ではあるが、ラスティはアスランたち5人の中で最も成績が下だった。

 

「何弱気になってるんだ!」

 

だが、アスランはそんなラスティが許せなかった。

 

「弟が心配してるなら生きて帰らなきゃダメだろ!」

 

死ぬ気で参加するようでは帰れるものも帰れなくなる。

母を亡くしたアスランは、家族を蔑ろにしないで欲しかった。

 

「そっか」

 

さすがに思うところがあったのか、ラスティは手紙をロッカーに戻した。

 

「悪かったな、変なこと言っちまって」

「いや、こっちもムキになって悪かったよ・・・」

 

さ、急ごうと笑いながら言うラスティを、アスランは複雑な表情で見ていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「こんなところで会うとは、これも運命と言う奴かな」

 

ラウ・ル・クルーゼの眼前には一隻の地球軍船があった。

この頭のどこかが鳴るような感覚は間違いようがない。

恐らく、あの男もこちらに気が付いただろう。

だが・・・

 

「一歩遅かったな、ムウ・ラ・フラガ」

 

ヴェサリウスから、クルーゼが乗ったシグーと、その他三機のジンが出撃している。

連合艦からはムウ・ラ・フラガのメビウス・ゼロのみが出撃した。

 

後続がないのを見て取ったクルーゼが、口の端を釣り上げてほくそ笑む。

 

「フランシス!艦橋を狙え!」

 

スクランブルと言って勝手に出撃したフラガ大尉ほどの動きは、一つの艦にさせるには厳しかっただろうか。

碌に回避行動もとれない連合艦は、数発は外れたもののすぐに艦橋を打ち抜かれ停止してしまった。

後は・・・

 

『隊長、予定通り作戦が開始されました』

「ご苦労。我々は目の前の敵を叩くぞ。エンデュミオンの鷹を倒したとなれば、本国の覚えもいいだろう」

 

画面に映る部下たちの顔が凶暴に歪んだのを確認し、シグーがアサルトライフルで牽制射撃をかける。

ちらりと見たコロニーの入り口からは、煙が漏れ出している。

コロニーの構造図を頭に収めているクルーゼは、作戦が上手くいっていると知りにやりと笑った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「そっちじゃない!」

 

頭が混乱しているけど、これだけは確かだ。

そっちに行ったら危ない。

 

目の前の人物はまず冷静ではない。

何しろ、大きな揺れが走り避難が開始されるなり、猛然と避難経路と逆の方向に走り始めたのだ。

しかし、冷静さと言う点では僕もどっこいだ。

みんなに先に行ってて!と言ってお客様を追いかけているのだから。

だが、とてもではないが目の前の人物に追いつけない。

でも、言わなくては。

 

「天井が!」

 

走って向こう側に押してやりたいが、ああ、景色がゆっくり流れる。

このままでは僕もあの人も押しつぶされてしまう。

感覚が外へ発散していくような気持ち悪さを覚えながら、どうにか足に力を込めてみる。

もう一歩足りない。

 

そう思った瞬間、背中が押された。

否、背中を腕で掴まれて押されている。

そのまま前に加速させられて、前を走っていたお客さんとまとめられる。

さっきまで同様にゆっくりと時間が流れるが、後へ流れていく瓦礫を見て助かるであろうことは確信できた。

 

崩落する瓦礫は、ゆっくりに見えてもなお恐ろしい。

ようやく不自然なほどゆっくりだった時間が正常に流れ始め、瓦礫は数メートル後ろで大きな音を立てて積み立てられていく。

 

押された勢いがなくなってきて、その速度を維持できない僕は足をもつれさせて、前のお客さんを巻き込んで転んだ。

流石に潰すのは不味いと思って、とっさに手を突っ張る。

なんとか体で押しつぶさずには済んだけど・・・

 

「お、女の子・・・?」

 

キャスケットが脱げた()()は、確かに中性的ではあるけど女性にしか見えなかった。

ということは

 

「ご、ごめんなさい!」

 

周りに知り合いはいないが変態扱いは困る。

お客さんはほんのり羞恥からか頬を染めて、なんで疑問形なんだ!なんて呟きながら立ち上がった。

まあ疑問形であったことに怒りは感じているようなので女の子で合っていたんだろう。

 

「大丈夫そうだな」

 

そういえば後ろから押されたんだった。

そしてこの声は・・・

 

「ソランさんですか?」

「ああ。天井の崩落に巻き込まれそうなのを偶然後ろで見た」

 

他にありえないけど、やっぱりこの人に助けられたらしい。

しかし安心したのも束の間だ。

 

「ちょっと君!」

 

お客さんはまた走り出してしまった。

追いかけようとソランさんを見ると、足に包帯を巻いている。

出口はあちらにしかないわけで・・・

 

「先に行きます!」

 

お客さんを追いかける。

先ほど同様、追いつくことはできないが差がつくほど長い距離ではなかった。

 

・・・真っ白にしか見えなかった外は、赤に染まっていた。

銃声と爆発音が鳴り響く非日常の風景。

 

すぐ足元には、人型の灰色の機械があった。

これって・・・

 

「モビルスーツ!?」

 

僕は驚きから思わず声を上げてしまったが、お客さんはもっと反応が激しかった。

膝から崩れ落ちて、震えている。

 

「お父様の・・・お父様の裏切りもの!」

 

・・・?お父様って誰の事だろう。

でもそんなことより、今の叫びで下の一人に気が付かれてしまった。

不味い、拳銃を構えている。

さめざめと泣いているお客さんの腕をつかんで、全速力でその場から離れる。

早くシェルターに向かわないと!

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「X-105と303を起動して!とにかく工区から出すわ!」

「了解しました!」

 

戦況は混迷を極めるが、敵の狙いはただ一つ。

新兵器の奪取だ。

この五機がすべて奪われれば、連合は終わる。

計画の立案者である彼女の上司同様、彼女もまたそう信じていた。

指示を出しながらも、敵が次に隠れそうな地点へ手榴弾を投擲する。

 

先ほど突然上に現れた二人組の少年は何だったのだろうか。

こんな状況では全てが疑わしい。拳銃を向けただけで逃げたのだから、敵ではなかったのかもしれない。

でも、今は過ぎたことより早くGをアークエンジェルに運んで離脱しなくては!

 

目の前に現れた赤服の敵に、拳銃の弾を叩きこむ。

逆に不意打ちを決められた敵は、その場に倒れこんだ。

本来なら近くに寄って無力化するべきなのだが、敵方から叫び声が上がって、アサルトライフルで弾幕を張りながら別の赤服が突っ込んできた。

舌打ちをして、横張の金属コンテナに身を隠す。

 

丁度装弾数も心許なかったので、マガジンを交換する。

入れ終わって、アサルトライフルの敵をどう対処するか考えたところで上から叫び声が聞こえた。

 

「危ない!後!」

 

考えるよりも先に後ろの高台を見た。

今まさに、スナイパーライフルで狙いをつけようとする敵がいた。

ウィーバースタンスへすぐに構えなおし、体のどこかに当てるつもりで数発発射する。

運よく頭に当たったようで、がくりと崩れ落ちた。

こちらも生死の確認は困難だ。

一応射線から身を隠し、声がした方を見ると、黒い服を着た少年が手すりから身を乗り出さんばかりに立っていた。

 

「さっきの子供!?」

 

今日は良いことにしろ悪いことにしろ、驚きばかりだ。




再筆版でもフラグは立っててほしい(願望)

ちなみに教授はモルゲンレーテの技術者と話が合って早退、キラはお客さんに話しかけようと心を決めた時点で襲撃がありました。
トールもキラも間が悪い・・・

これから先と話の連続性が無いですが、いずれ全部再筆版にしますのでご容赦ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再筆版 三話:決断と走り

今回は仕組みがわかり難く議論が紛糾しているPS装甲を使う(予定)ので、PS装甲の原理について自己解釈を書き添えて始めたいと思います。(元三話からの一部コピペ)


PS装甲:電流の流れる量に応じて硬化する装甲材から作られる。
    装甲に高周波電流を流すことにより、外側と内部で断面積あたりの電流量に差が発生す
    る。電流の分布から、外側は堅く内側は柔らかい状態となり、堅く砕け難い丈夫な装甲
    となる。
    硬化は相転移に依るものであるため、変形や内部応力がある程度回復するが、電力の消費
    が多い。
    実弾攻撃でバッテリーの消費が激しいのはこの修復機能が自動で働くため。

旧版から大きめの変更が入ってます。


先ほどの天井の崩落で出来た足の傷は既に包帯を巻き、E()L()S()()()()()()治療を終えた。

脳量子波で、キラがあの女性を無事シェルターまで運ぶことが出来たのが分かる。

だが、肝心のキラが避難できるシェルターが既に残っていないことも分かる。

 

俺は、今クアンタを持っていない。GN粒子が薄いこの世界では、脳量子波で多数の人間と対話を行うのも難しい。

ならば、選ばなくてはならない。このまま傍観を貫くのか、それとも知った人間を守るのか。

 

中立国の立場を利用して連合のMSを開発していたオーブにも責任はあるが、民間人がいると知って攻めてきているZAFTもZAFTだ。

MS強奪でトールやキラは故郷を失うのだろうか。国家同士の理不尽に巻き込まれ、住んでいた土地を追われるのだろうか。

その確率は高いだろう。何といっても、連合は現在ZAFTのMSに対抗できる戦力を保持していない。

 

俺がMSに乗れば・・・

戦火が広がるかもしれない。10年以上もMSに乗り続けた俺の技量はこの世界では目を引くだろう。俺自身が新たな争いの火種になることすらあるかもしれない。

だが、救える命があるかもしれない。何よりも、理不尽に潰されてしまいそうな命を見捨てることを、二度としないと俺は決めた。

 

だから、選んだ。一線を越えて干渉するか、ここで退くかを。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

僕はその女性士官に呼ばれて下に降りた。降りる前に、叫ばれて分かってしまったことが一つ。

僕にはもう逃げ場がない。

 

「こっちよ!」

 

引っ張られて物陰に引き込まれると同時に、銃弾の発射される音が響く。

この機体は執拗に狙われているらしい。

機体を見た時にあの子は慟哭していたが、僕にも激情が湧きつつあった。

 

「どうして中立国でこんなものを作っているんですか!」

 

女性士官は答えない。

でも、その表情が今はそんなことを紛糾すべき時ではないと物語っている。

言葉による答えが無かったことで、むしろ冷静になれた。だから、どうやって脱出すればいいのかを考えなくてはならない。

頭を必死に回し始めた僕の目の前で、女性士官が再び発砲する。だが、今度は肩を打ち抜かれてしまった。女性士官は衝撃で倒れ、拳銃を取り落とす。

女性士官の発砲した弾も、壁や床以外の何かには当たったらしい。先ほどまでより鈍い弾着の音がした。

これ以上この人がやられたら、僕も助からない。そう頭が結論を出してしまったその時には、体が動いて女性士官を庇うように目の前に落とされた拳銃をつかんで立ちふさがっていた。

 

でも、体を銃弾とは違う衝撃が打ち貫いた。

 

「キラ・・・キラ・ヤマトか?」

「アスラン・ザラ・・・」

 

眼下のかつての親友は、明らかにヘリオポリスに攻め込んできている。

戦争になんてならないって言ってたのに。

二人とも考えたことは一緒だったらしい。だからだろうか。叫んだ言葉も同じだった。

 

「「どうしてここにいるんだ!」」

 

興奮もあってか、その緊張感は先ほどまでとは比べ物にはならない。何か小さなきっかけでも、拳銃の引き金を引いてしまいそうだ。

だが、僕が耐え切れなくなって引き金を引いてしまう前に、アスランの右膝から血が噴き出した。

同時に、さっき肩を打ち抜かれたショックから回復したのか、女性士官が僕から拳銃を奪い返し、アスランの足元に数発発射する。先のスナイパーを撃った時のことを考えれば、まだ撃たれた傷のせいで上手く体が動かないらしい。

どこかへ退避していくアスランを見て、僕にはどうしてという困惑と、死んでいないことへの安堵が残った。

 

さっきアスランはどこから撃たれたのかと辺りを見回すと、さっきまでいた欄干の上にソランさんがいた。手には、拳銃が握られている。

立ち昇る硝煙を見て、撃ったのはソランさんだと直感した。

一瞬親友を撃たれたことに怒りが湧いてくるが、少し考えなおしてみればあの状況では敵が撃たれるのは普通だ。

ソランさんは周りを見渡すこともせず、地面へと飛び降りてゴロゴロと転がりながら着地した。

 

「キラ、無事か」

「はい、ありがとうございます」

 

今日知り合ったばかりの人が拳銃で躊躇いなく人を撃ったというのは流石にびっくりだが、僕を助けるためと思うと何とも言えない気持ちになる。そもそも、拳銃は素人が扱ってもあんな風に当たるものなんだろうか?

さっきの威嚇射撃が限界だったらしい女性士官は、壁にもたれかかってソランさんを見ていたが、唐突に口を開いた。

 

「あなた、退役軍人か何かかしら」

「まあそんなところだ」

 

これはトールも知るまいと仰天しながらも考えてしまう。

ここから脱出したら教えるべきかと。だが、逆に発想から気が付いた。早く脱出しなくては。

 

「もうシェルターは無いんですよね」

 

ヘリオポリスのシェルターは、緊急時には脱出ポッドとして機能する。

だが、この女性士官の話によるとそのシェルターはもうこの辺りには無いらしい。

しかし、状況は僕たちを待ってはくれない。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「こんなOSでMSを動かそうとするなんて」

 

現実逃避気味に独り言をつぶやいて、ナチュラルの低脳さを罵ってはみるが、先ほどの光景が頭を離れない。キラがヘリオポリスへ引っ越していたことは聞いていたが、まさかこんな戦場で出会うとはだれが想像できただろうか。

罵った通りに動かしにくい新型MSが、むしろ感情よりも手を動かすことを優先させ、普段通りの働きが出来ているようにも感じる。

 

『どうやら無事に機体を確保できたらしいな』

 

後詰めとしてジンに乗り込んでいるミゲルが、オープンチャンネルで話しかけてくる。

さっと動揺を顔の奥に隠し、普段通りの冷静なアスラン・ザラを演じる。

 

「ああ。このまま帰投する」

『あれ、おい、ラスティはまだか』

 

この問いには一瞬顔が強張った。この動揺は隠しきれなかったらしく、ミゲルも苦い顔をした。

 

『・・・今はとにかく帰るんだ』

 

あの時、何故俺はラスティの遺書を受け取らなかったのか。

人が死んだときは、もうどうしようもないことばかりが頭を巡るとミゲルも言っていたっけ。

ミゲルが帰れと言ったのも、そういう精神衛生的な配慮だったんだろうか。

スラスターに点火し、コロニーの地平から飛び立つとき、ちらりと見てしまった工廠では、ラスティが奪うはずだった最後の一機の新型MSが立ち上がるのが見えた。

あれがキラなら鹵獲すればまた会えるだろうか?

混乱した今の頭では、あの瞬間が本当だったのかすらよくわからなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

マリュー・ラミアス技術大尉は、先ほどまでの自分の決定を自嘲気味に振り返る。頭がどうかしてたかもしれないとすら思う。あんな民間人の男を信用して試験機を預け、今はカレッジの学生と一緒に新型MS、コードネーム・ストライクに乗り込んでいる。

だが、あの男の真摯な言葉と目だけには不思議な説得力があった。いくら合理性に優れる回答を持っていたとしても、言葉を聞いたものに試験機を預けてさせてしまえるくらいには。

 

コマンド入力で、ストライクを起動する。姿勢に合わせて回転するコクピットは、常に私たちを水平に保つ。立ち上がったストライクは、当然相手から見つかる。すぐに撃たれると判断し、私の技術の粋、PS装甲を起動する。

今、外から見ればストライクの装甲は灰色から白赤青のトリコロールに変わっているはずだ。

 

すぐに、コクピットを衝撃が襲うがパラメーターから機体に異常は見られない。

更にコマンドを入力し、重斬刀を振りかざして上から攻撃してきたジンの斬撃を交差した腕で受け止める。

有効打が与えられないことに驚いたのか、敵のMSは動きが止まった。

妙な達成感を覚えたが、今は敵を叩かねばならない。だが、コマンドを入力し歩こうとした次の瞬間、ストライクは座り込んでしまった。

原因を探してコンソールを操作しようとするが、肩の痛みで上手く頭も腕も動かない。肩をがしっとつかまれて、私は意識が朦朧としていたことに気が付いた。

 

「どいてください!」

 

命が懸かっている者の目と言うのか。学生君の目は断固として譲らないという意思が見えるようだ。軍事機密だとか、学生に、なんて頭の中で弱々しい考えている私は、強引に席を交代させられる。

学生くんは、コンソールを引っ張り出すと、猛烈な勢いで操作を始めた。

 

「運動関数パラメータ、不全!メタ関数アルゴリズムから各モータの制御ボックスを随時更新、伝達式のエラー、分子モジュール接続で高速化、身体上部と下部のバランサーを分離!センサの値をパラメータへフィードバック!システムリブート!・・・ガン、ダム?」

 

私たちが数か月かけて進めてきたことを、まるで魔法のように書き換えていく。

再起動されたコンソールに、

 

General

Unilateral

Neuro-Link

Dispersive

Autonomic

Maneuver

Synthesis System

 

と、OSのタイトルが表示される。同時に、起動を確認した少年がフットペダルを押し込むと、先ほどとは比べ物にならない滑らかさで、地表を滑るように敵に接近する。そのまま、レバーを押し出し、敵のジンを殴りつける。

呆気に取られているのか、敵は中々立ち上がってこない。だが、立ち上がると猛然と重斬刀を振り回してきた。

この少年には喧嘩の経験が無いのか、なかなか近づくことが出来ない。

武器は!?と聞かれたので、もうどうにでもなれとナイフ状の武器、アーマーシュナイダーの場所を教える。

だが、この状況では武器の相性が悪すぎた。ナイフのような刃渡りの短い武器は、達人が使って初めて効果が出るものだ。あっという間に手首を叩かれてアーマシュナイダーは弾き落され、コクピットにアサルトライフルを突きつけられてしまった。

 

試験から接射にも耐えられるとはわかっていても、コクピットにこうして銃を突きつけられると動くことが出来ない。

ああ、この最後の希望も持って行かれるのか。目の前の少年の事も忘れて自爆コマンドを打ち込もうとしたが、いきなり大きな金属音がしてジンが数歩後退する。

後ろには、白く塗装されたジンが死神のように起立していた。




戦闘に刹那が乱入するタイミングが変わりました。
それと、説得のシーンを回想少しに変更。
なんだか思い返すと説得力無くて・・・

戦闘シーンはまだまだうまく書ける気がする。

もしかしすると最新話の方は更新できないかもしれません。すいません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再筆版 四話:天上人、又の名をテロリスト

なかなか良い出来にならないので難航する再筆版。
納得がいくまで文章を考えることが難しい難しい


コーディネーターとして強化された聴覚が、背後の収音マイクが拾った足音を脳へ送る。

型は味方機だが、この認識番号は・・・

 

「MIA・・・はっ!ナチュラルの鹵獲機体ってか!操縦もできないくせに!」

 

崩れ落ちた新型を前にして、ミゲルのジンはゆっくりと向き直った。

何を思って背後にいきなり出てきたのかは知らないが、黄昏の魔弾の二つ名は伊達でないことを教えてやる必要がある。

 

「不意打ちの一つもできないとはたかが知れるなぁ!」

 

ジンは、通常スラスターで回避飛行を行いながら銃撃をかわし、モビルアーマーメビウスよりもはるかに射角の広い銃撃で敵機を沈めるのが基本戦術だ。だが、この敵機は立ち止まっている。満足に動かせもしない機体をここまで引っ張ってきた努力は認めないでもないが、今ここで無駄になる。

こちらがアサルトライフルを構えると、敵機と思しいジンは重斬刀を引き抜き、熱源反応から判断するにスラスターをチャージしている。

 

「ナチュラルがコーディネーターに勝てるかよ!」

 

ジンの装甲はアサルトライフルの数発には耐えるが、連続で当たれば衝撃や装甲強度の限界でコーディネーターでもダウンする。ダウンさせた後は、接射を行うなり鹵獲するなりすればいい。

その初撃の命中率こそが、黄昏の魔弾の由来だ。

相手が予想より少し早く動き始めた時点で、右手が正確にレバーを動かし偏差を修正。親指のトリガーをいつも通りレバーが微動だにしないように固定してから押し込む。

勝った!

発砲よりも先に、ミゲルの頭には蹂躙の暴力的快感が満たされつつあった。しかし、目の前の光景の異常に頭が急速に切り替わる。

今敵は、重斬刀の腹で誰もいない方向に銃弾を流した!いくらコーディネーターでも直接銃弾が目でとらえられるわけではないが、トリガーを押した直後の火花と無傷でこちらへ突進するジンがそれを証明していた。先ほどまでの勝利の予感は消え去り、背筋を濡らす冷たい汗が手を震えさせる。

 

「なんだよ・・・何者だよてめぇは!」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

発砲の意志は相手のパイロットから鮮烈に放たれていたため、狙いを発射前の数瞬に予想し射線を脳内から現実に仮想的に投影する。後は、発砲タイミングから予想される弾道の位置に重斬刀を、現在乗っている機体の反応速度を考慮しながら置いておくだけでいい。銃弾を逸らす方向は発射される弾丸の一つ一つに合わせて変えれば良い。

その程度の演算は、純粋種の力に加えELSと融合した刹那ならまだまだ余裕がある。

 

無事に弾丸が人間が存在しない方向に流れたことを確認し、歩いて突進していた機体をスラスター出力で一気に押し込む。狙いはコクピットではない。重斬刀を構えてチャージし、コクピット狙いだと判断したのだろうか。相手はAMBACで腕を振り子にし、本体を重斬刀が刺さらない方向へ持っていこうとするが、狙いはその右手に持っているアサルトライフルだ。

これ以上周囲に被害を出すわけにもいかないため、アサルトライフルの銃身を突進の威力で砕き、停止のために踏ん張った左足を軸に残った勢いを乗せた右足で足払いをかける。急な回避で崩れていた姿勢は、体重の乗った回し蹴りで勢いよく倒れた。一般の人間ならここで気絶するはずなのだが、相手はアレルヤのように遺伝子調整で身体強化されている。

はたして、コクピットがゆっくり開いたと思えば勢いよく中からパイロットが飛び出し、小型のブースターで離脱していった。これは、おそらく証拠隠滅用の自爆だと当たりをつけ、急いで後退しながらキラたちの乗る新型へオープンチャンネルで連絡を入れる。

 

「キラ!衝撃に備えろ!爆発するぞ!」

 

ジンの装甲に使われている材質と電子機器から、爆弾の規模を大まかに想定し足を止める。数秒後、爆炎が上がり辺りにはジンの残骸が散らばった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「キラ、無事か?」

 

倒れ伏したストライクをジンでゆっくりあお向けに転がし、コクピットを開けさせる。コクピットを開ける直前に女性の声が響いた。

 

『装甲は・・・まだ・・・電流が・・』

 

先に装甲が灰色になり、キラのどうぞ、という声が聞こえると改めてストライクのコクピット前に降りた。

 

『今開けます・・・』

 

キラを連れて一緒に新型へ乗り込んだ女性は、過度の疲労とストレスからか水分不足に陥っているらしい。キラに抱えられ、発熱して唸っていた。

 

「水を飲ませろ。それと、医療用パックのようなものはないか?」

 

少なくとも元居た世界では、コクピットの中に最低限物資を積み込んでおくのは常識だった。キラは自分の上着を枕にして女性を寝かせ、コクピットの中を漁る。

どうやらすぐに見つかったらしく、飲料の入ったパウチと赤い十字の書かれた箱を持って出てきた。

女性を起こして水を飲ませる。それと同時に、肩の治療の許可を取る。

上着を脱がせ、下に来ていたシャツを肩の部分で切り取る。少し肩を持ち上げて銃弾が貫通していることを確認し、消毒と圧迫止血をしてから包帯を巻く。最後に解熱剤と鎮痛剤を飲ませて一旦治療を打ち切り、上着をもう一度着せる。

本当なら病院に連れていくべきだが、現在コロニーは危険度が最大に設定され住民の全てがシェルターに避難している。ここも、今が静かなだけだ。

一息ついた俺に話しかけにくいのか、キラは沈黙している。だが、意を決したように口を開いた。

 

「ソランさんは」

「キラ!ここにいたのか!」

 

丁度良いタイミングで駆けてきたのは、トールと本人の口から出た特徴と照らし合わせれば恐らくミリアリア、そしてよく知らない誰かだった。

 

「みんなどうして・・・」

 

当然だがキラはかなり驚いている。面識のない男性から質問を受け、今までのことをかみ砕いて説明する。話の途中の紹介によると、同じゼミの先輩なのだそうだ。元傭兵だということや、戦闘でジンを使いこなしたという客観的に見れば怪しいことこの上ないであろう俺に握手を持ちかけてくるあたり、このサイという人間は良い人物なのだろう。逆にトールのこの状況で質問攻めというのもどうなのか。

一般的な生活を送れていなかった俺には判断がつかない。常識の有る無いで言えばティエリアといい勝負だ。

 

説明の終わったキラに、なぜという言葉の返事は心配だったから。

それは中立国で戦争の現実を知らない人間だからこそだろうか?それとも純粋にリスクよりも友人を取ったのか?論理的に考えれば前者なのだろうが、後者であってほしいというのが感情的には思ってしまう。

 

ここで、先ほどの女性士官が目を覚ました。

最初との人数の違いに驚き、戦場の認識が甘いなどと怒るあたりは軍人らしいが、そこで無事でよかったと溢すあたりは人間らしさが見える。

女性士官、マリュー・ラミアス大尉によると、ストライクには追加武装があるらしく、それをもって同時に開発していた新型戦艦まで行けば友軍と通信をつなぐなりの試みができると言う。

また、この新型機体の成果をもって可能ならアラスカの連合軍本部へと向かわなければならないという。

 

「では、キラはどうする?ストライクはキラがいなければ動かせない。だが、モビルスーツなしで地球までというのは・・・」

「ええ、自殺行為ね。だから私はキラ君。あなたをスカウトするわ」

 

キラの驚いた表情を見ながら、それは機密保持のためにと銃を突き付けて脅すよりは良い判断だと感じた。

キラは、ラミアスを助けたとはいえ勝手にストライクの内部を書き換えたことで機密保持から逃げられないと心の内では理解している。

だから、下手に出られれば心が揺れてしまう。戦争を垣間見てしかいないのも大きい。そして、俺はキラを止めるわけにはいかない。俺ができるのはキラに戦場の悲惨さを伝えることだけで、機密保持という道理からは逃げられないからだ。だが、責任は取る。キラが行くというのなら・・・

 

「僕は・・・コーディネーターですよ?」

「さっきのでわかったわ」

「訓練も受けてません」

「ストライクで戦えれば十分よ」

「友達が・・・トールたちが・・・」

「ストライクが守る最新戦艦ならそこらのコロニーより安全なはずよ」

 

キラは、断る理由を探していくうちに気が付いてしまった。この女性は、なにがなんでも自分を陣営に引き込みたい。おそらく、今思いつくような材料では断るだけの答えが出せないのだ。なにより、ZAFTが兵器開発をしていたとはいえ中立国のコロニーを襲うのを見てしまったのだ。

今はシェルターに住民が避難しているが、もしコロニーが壊滅的な被害を受けていればシェルターは射出され、暗い宇宙を本国の避難船が来るまで待ち続けなくてはならなかった。この人の話では、ZAFTはもう一度攻めてくる。

ソランさんもその意見には肯定的だった。トールたちをこの事実を知ってしまってからでもシェルターに押し込めるか?そもそもシェルターはまだ空いているのか?

 

わからないことが多すぎる

 

確実なことを考えよう。ZAFTが来たということは外に母艦がいる。ソランさんが敵機を撃破したので、当然残った新型をどうにかしようとするだろう。もう一度モビルスーツか?戦艦でコロニーを砲撃してすべて抹消するか?

シェルターは役に立つのか?

戦闘宙域はシェルターが漂う場所になる確率が高い。ああ、そういえばあの子もシェルターにいるんだ。

今になって後悔するが今更どうしようもない。僕が今から戦争に行って発生するメリットデメリットだけを抽出するんだ。

 

メリット、シェルターよりも安全な場所にトールたちを連れて行ける。ただししばらく戦闘にさらされる。

デメリット、人を殺してしまうかもしれない。敵にアスランがいる、きっと強い。

 

ああ、どうにもこれでは、友人と一緒に座って死を待つか、友人と一緒に九死に一生を得るかだ。それではもう答えは決まってるようなものだ。戦場を走って探してくれた友人を見殺しにする?()()()()()()()()

ならやることは一つ。

 

「やります。僕がパイロットになります」

「では、俺も同行しよう」

 

キラが行くなら、俺も同行しよう。おそらく力になれる。冷静に戦力評価すれば、先ほどの敵が末端レベルとして二個小隊くらいまでならキラがいなくても問題ない。キラが驚いた顔をしている。

 

「意外か?」

「あんまり戦いが好きな人には見えなかったので」

 

知った人間に死んでほしくない。それだけでも戦う理由には十分だ。

 

「俺も戦いが好きなわけではない。だが、戦わねばどうにもならない時があるのも確かだ」

「まあ機体がある以上パイロットが多いに越したことはないけど」

 

キラの友人たちが勝手に決めるな等と言って頭をぽかぽかと叩いているが、大尉に急かされて残された物資の積まれたトレーラーを前方から運転してきた。このままトレーラーで宇宙港まで荷物を運べればよかったのだが、うまくいかないものだ。急いでジンのコクピットへ戻る。ジンのスピーカーがつぶやきを拡大して外へ流す。

 

「敵だ。強いな」

 

上方には、ZAFTの最新鋭機、シグーが浮かんでいた。




なんとか完成4話。
なんとなくキラが戦争に参加する理由が自主では難しい。
刹那も同様。
今回は道理に合わないことができない二人の倫理に訴える感じで考えてはみましたが説得力があるかは・・・うーん。

ともかく、これで旧版の4話までは来ましたね。
圧倒的に文字数が違って・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話:イノベイターはコーディネーターを倒すか

時間があまりに余ったので事前に書いてみることとなり、今回初めて予約投稿機能のお世話になります。
(いつもは鉄血のオルフェンズ見てから2~3時間ほどで書いてました)

設定編でなかなか受けがよかったですね。
ヒリング派がいると睨みました。感想にある程度要望とか来るのならヒリングがいる番外編を書いてみてもいいかなーと思っています。

活動報告にアンケートを置いていますので回答して頂けると嬉しく思います。

初めの終わりに・・・
10の評価をくだすったELS刹那さん、ワタシ、がんばります!


~ヘリオポリス宙域にて~

 

「くそっ!止まりやがれぇ!」

フラガ大尉は焦っていた。

大尉の進言で、彼の乗っていた母艦はヘリオポリス内の工廠地帯へ援護するために撤退しようとしており、大尉はその殿だった。

だが、内部ですでに戦闘が始まっており、ZAFT艦から追加で四機ものジンが発進してきたのだ。

しかもその装備は要塞攻略用の超大火力スタイルだ。

おそらく、あの肩に装着されたミサイルは、直撃すれば戦艦どころかヘリオポリスの宇宙港すら無事でいられるか怪しいだろう。

カタパルトでの加速をすべて母艦への突撃に充てている四機のうち、二機は後ろからスラスターを打ち抜いて停止させ、ミサイルをガンバレルで狙撃し、行動不能にした。

 

だが、あと二機。

 

このままでは、と、加速しようとしたフラガ大尉はメビウス・ゼロのコクピット内に響くアラート音と、身を貫く危機感から反射的に回避行動をとった。

頭上方向に回避したメビウス・ゼロの真下を、戦艦の緑のビーム砲が貫いていた。

そして、回避したことで加速が及ばなくなったフラガ大尉の眼前で、ミサイルが発射された・・・

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!」

 

ガガッ・・・

と、ノイズがフラガ大尉のパイロットスーツの中で響いた

 

「・・・フラガ大尉!」

「艦長!?」

「連合の未来を・・・彼女のMSを・・・頼む!」

「艦長ォォ!」

 

母艦は、薄紫の煙を流し始め、その巨体を少し泳がせ・・・数瞬の後に、オレンジの閃光と共に砕け散った。

だが、もう一機の、ミサイルを発射していなかった方のジンが、宇宙港のゲートにアサルトライフルを撃っていた。

空いた穴から、七機のMSが飛び出してきた。三機はさっきまでと同じジンだが、四機は・・・

 

「遅かったか・・・!」

 

連合の新型五機のうち、四機が盗まれている。だが一機足りない。

若いパイロット候補生たちの顔や艦長のことを少しだけ思い出していたフラガ大尉は、ここで艦長の遺言を思い出した。

 

(おれは、新型を、連合の未来を託されたんだ!)

 

「一機でも無事なら・・・!」

 

フラガ大尉は、七機のMSを突破し、宇宙港の中へと侵入する手段を考え始めた。

 

あの中で、ジン一機が動かない・・・おそらく負傷している。

いくらコーディネーターといっても、さっきまで動かすこともままならなかった新型MSをいきなり実戦レベルで動かせるはずはない。

 

だとすれば

 

「突破するのは二機で良い!」

 

決断すると同時に、フラガ大尉はスラスターの灯を最大に入れた。

当然、眼前の内六機が反応する。ここで、フラガ大尉は作戦の成功を確信する。

 

「やはり動かない!」

 

ガンバレル三機を先行させ、メビウス・ゼロのリニアライフルをより近いターゲットに打ち込む。

目の前からの攻撃を、当然ジンはよけるが

 

「そこぉ!」

 

避けたジンの前後に、ガンバレルが回り込み、スラスターとアサルトライフルを寸分の狂い無く打ち抜いた。アサルトライフルとスラスターの推進ガスが大きく煙を上げ、相手側で煙幕が発生したような状態になる。

ここまで全くスラスターの出力を落とさず、凄まじい速度になっていたメビウス・ゼロは、煙幕のすぐ横を颯爽と走り抜け、宇宙港の中への侵入に成功した。

 

「っ、これは・・・・」

 

だが、宇宙港からつながるアークエンジェルの収容ドックに辿り着き、ムウは絶句した。

ドック内部は、爆弾が爆発でもしたかのような、実際、爆発したであろう状態で、たくさんの人の死体も浮いていた。

 

アークエンジェルの近くにメビウス・ゼロをケーブルで係留し、ムウはアークエンジェルの周囲へ、拳銃を構えて生存者を探しはじめた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「とりあえず、私たちはアークエンジェル・・・連合の新型艦を目指す必要があるわ。」

 

マリュー・ラミアス技術大尉のこの一言で、作戦会議が始まっていた。

 

「できれば、先にアークエンジェルに連絡を取って迅速に収容、補給と繋ぎたかったけれど、あっちもなにかがあったようね。連絡が取れなかった。だから、アークエンジェルに辿り着いてもそのまま戦闘に入る可能性もあるわ」

「俺が先行する」

「ええ、この中ではあなたしかできない。あなたの腕があるからできる作戦ともいえるわね」

「では、俺が安全確認をしてから合図をし、近くまで来ているお前たちを呼ぶ・・・これでいいな?」

「あとはキラ君の方だけ・・・」

「そういえば、さっき彼らに取りに行かせたもの、あれはなんだ?」

「彼ら?キラ君の同級生たちのことね、あれは・・・」

 

倉庫内に、トレーラーが入ってきた。

 

「おねーさーん、これでいいんですかー?」

「それよー、ありがとう」

「トール・・・外の様子は?」

「ZAFTのやつら・・・酷いことになってました。もうここじゃ暮らせないかもしれません・・・」

「・・・そうか」

 

帰ってくるなり突然暗くなった空気を察したマリューがここで空気をかえるため口をはさんだ。

 

「これはね、ストライクの換装ユニットなの。全部で三機あるんだけど、偶然全部無事ね。よかったわ」

「しかしトール、いつの間にトレーラーの運転免許を?」

「いやー、教授の手伝いしてたらいつの間にかねー・・・それよりもソランさん、キラは?」

「今は、ストライクのOSを改良している」

「あと何分くらいかかりそうなんですか?」

「多分、後五分もすれば終わるわ」

「そうですかー、しっかしキラの奴すげーなー」

「君は・・・彼がコーディネーターだと知っていたの?」

「ええ、でも、キラはいいやつですよ」

 

せっかくのフォローを流されたマリューが再挑戦してかけた声に、今度こそトールが返事をしたが、トールの後ろ側から強い視線を感じ、そちらを見ると・・・

 

黒い視線をマリューに向けるミリアリアの姿があった。

 

(私はあんまり彼に話しかけない方がいいかしらね・・・)

 

心の中で冷や汗を流しながら、マリューは踵を返してキラのもとへ向かった。

 

「キラ君、準備はいい?」

「はい!もう大丈夫です」

 

振り返ってソランを見ると、彼もこちらを見ており、視線に気づくと頷いた。

 

「キラ君、ストライクを待機状態にして、これを読んでおいて」

「これは・・・」

「とりあえず脱出するために、戦艦『アークエンジェル』まで行かなきゃいけないの。彼が先行して安全確認をするから、私たちはそれについていく・・・まだその機体で実践をさせるには君の友達にもってきてもらった追加パックとの調整をする必要があるの。でも・・・本当によかったの?」

「?・・・・なにがですか?」

「これでパックと調整ができたら多分・・・あなたはこれから降りられなくなるわ。いくら緊急時とはいえ、あなたは軍事機密に触れすぎている。連合に協力的なコーディネーターも貴重だわ。状況に流されるままにあなたをストライクに縛り付けるなんて、その、申し訳ないのよ・・・」

「・・・僕は、ここにきて最初のころ、コーディネーターだと知られていじめられていました。でも、トールやミリアリアたちが僕を助けてくれた。だから、今度は僕が守ります。」

「じゃああなたは、軍をやめられなくなってもいいというのね?」

「ここでトールたちを見捨てていくくらいなら、死んだ方がましですよ」

「そう・・・ありがとうね」

「いえ・・・」

 

少し離れてキラとマリューのやり取りをイノベイターの聴力で聞いていた刹那は、心を決めた。

 

実をいうと、刹那はこの世界についてすぐ、どうしていいかわからないでいた。ふらふらと元の世界に帰る手段を探して世界各地を放浪し、ヘリオポリスで仕事を探していた時、仕事を紹介してくれたのがトールだった。

 

だが、それだけでなく、刹那が手に入れることのできなかったもの、

 

『何の変哲のもない生活』

 

それをくれたのもトールだった。刹那が望んで手に入れようとしたものではなかったが、それでも刹那が体験したことのなかった日常は、刹那の人生に色を付けた。

 

(これは、恩返し、というやつなのかもしれない。本来、この世界の住人でない俺が、世界を二分するような大きな戦いへ出るべきではないかもしれない。だが、俺はトールやキラ、ミリアリアに少し、救われた。その恩は返さなくてはな)

 

補給がされたジンに乗り込みながら、刹那はひっそりと心の中でこちら側(連合軍側)あちら側(ZAFT側)と戦う決意を固めた。

 

それは、世界の平和のために戦い続けた男の初めての私闘だった。




トールいい人すぎぃ!
コミュ力の化け物ってやつですかね。
ムードメーカーではないですがムードメイカーならこんな感じかなぁと想像しながら書きました。

トール君のおかげでキラは少し性格が表向き、外向きになっています。
刹那は今までと打って変わって特定の誰か(仲間?)のために戦います(サーシェスの時と同じ私闘と言えるかも)。
タイトルに返答するなら、割と刹那は容赦なくコーディネーターを倒すでしょう。
なぜなら仏心を加えた敵がいかに危険か知っているからです。

正直、刹那さんがこのSEED世界に平和を作るってそれこそソレスタルビーイング結成くらいしか浮かばないです。
ならむしろ、世界平和を考えない人にしました。

ここのトール君は、マギのアリババくんとか、ドリフターズの島津豊久とか、あんな感じのほっとけない&そこにいるだけで周りを変えていく主人公っぽい気質の持ち主です。


現在の主要人物度ランキング(嘘)
1.キラ(主人公です)
2.刹那(アドバイザー)
3.トール(メンタルヘルスケア役)
4.ムウさん(不可能を以下略)
5.アスラン(SEEDのキラは辛い物が好きっていう設定並みの重要度)

いまだかつてここまでアスランの重要度が低いSEED二次創作があっただろうか?
いや、ない。(強い否定)
こんな刹那はいやだ!と思った方はごめんなさい、すいませんでした。

今回はかなりの対話回でした(一人盗み聞きですが)
次回はムウさんと刹那、キラの掛け合い、そしてみんなお待ちの戦闘回(に入れたらいいなー)です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話:イノベイターは軍に所属

バイトが忙しくてなかなか話が思いつかない・・・

並列思考をする訓練だと思うことにします。


刹那の駆るジンが、斥候としてアークエンジェル格納庫へと侵入を試みていた。

刹那のジンは連合の識別色で塗装されているが、基本的にMSはコーディネーターにしか乗りこなせないものであるし、連合の中にはわざと()()する兵士もいる。

そういう意味ではキラの乗るストライクの方が斥候に向いているのだが、実戦経験があまりに違うために、あえて刹那が斥候として先行することとなっていた。

 

刹那が索敵を行い、安全が確認されたところで一つづつブロックを進めていく。

アークエンジェルの格納庫に近づくにつれて、マリューは格納庫が襲撃を受けたことを確信しつつあった。

漂ってきた死体を見て、流石に学生たちはたじろいだが、現状では一秒ですら惜しく、一行は粛々と歩を進めていった。

 

「!・・・止まれ」

 

刹那からの通信で、全員がさっと止まった。

 

「あのオレンジ色のMA・・・マリュー、あれは連合軍機か?」

「もしかして、後部にポッドを装備しているかしら」

「ああ」

「ならそれは連合軍機よ。連合のエース、エンデュミオンの鷹ことムウ・ラ・フラガ大尉の乗騎、メビウス・ゼロね」

 

その言葉で周囲の索敵を始め、すぐに終えた刹那は、MSのハンドサインでマリューに前進するよう指示した。

 

「周囲に敵影無し、アークエンジェルに到着した」

「キラ君、ストライクの手でアークエンジェルに触れて」

 

キラの操作で、ストライクはアークエンジェルに接触し、マリューの打ち込んだコードで内部へ通信を開始した。

 

「こちら連合軍技術大尉、マリュー・ラミアス、聞こえますか、フラガ大尉」

 

すると、少しノイズが鳴った後、返答が帰ってきた。

 

「こちら連合軍大尉、ムウ・ラ・フラガ。エンデュミオンの鷹って言った方がわかりやすいか?」

「フラガ大尉、あなたは今日Gのパイロットを連れてくる予定だったはずですが、・・・その、母艦は・・・」

「ああ、守り切れなかった・・・。だが、艦長からアンタのことを頼まれたんだ。連合の未来、彼女を頼む、ってな。

・・・まあ積もる話は後だ。今からハッチを開けるから、俺のメビウス・ゼロも持ち込んでくれ。そっちのジンのパイロット、そっちに頼むぜ」

 

すぐに、アークエンジェルの前方、足のように見える部分が開いた。

言われた通り、刹那がメビウス・ゼロの係留ワイヤーを外し、アークエンジェル艦内へと収容した。

キラが、ストライクで運んでいたコンテナから、非戦闘員のトールたちが出てきたところで、フラガ大尉がMSハンガーに姿を現した。

 

「初めまして。ムウ・ラ・フラガ大尉だ。あんたがジンのパイロットだろ?」

「・・・なぜわかる?」

「いや、なんとなく、ジンから漂ってくる雰囲気があんたに似てたからな。しかしアンタまさかとは思うがナチュラルか?」

「ああ、確かに俺はナチュラルだが、なぜそう思ったんだ?」

「あんた中東出身だろ?あっちの方はコーディネーター技術が公表された当初から紛争続きで、コーディネーターなんてなれっこないからな。後は勘さ」

 

なぜ中東人という理由でナチュラルの可能性を考えなかったのだろうかと少しマリューが目線を下にやる横で、今度はキラに声をかけた。

 

「ボウズは、コーディネーターだろ?」

「・・・っな、なんで・・・」

「俺はここに来るまでの間、そいつ(ストライク)のパイロット候補生の面倒を見てたんだが・・・酷いもんだったぜ?それを易々と動かしてるんだ。コーディネーターだと思うさ」

 

刹那は、目の前のフラガ大尉に、周囲の人間と違ったことを考えていた。

 

(この男、脳量子波を発している・・・超兵ほどではないが、勘の良さはそのせいか?)

 

フラガ大尉は、刹那にだけははっきりと感じ取れていたが脳量子波を発していた。刹那がこの世界にきて初めて会った脳量子波の使い手だった。

だが、刹那が今まで見知った中では、この世界では脳量子波の存在は認知されていないようだった。

しかし、エンデュミオンの鷹の名は、刹那の耳にも入っていた。

 

「連合の名高いエンデュミオンの鷹と会えるとは光栄だな」

「よせよ。さっきは判りやすいように名乗ったけどよ、プロパガンダってやつだ。なんていうか、気恥ずかしいんだよ」

 

実は刹那には、少しその感覚がわかった。それは外宇宙を航行中、ティエリアが地球で面白いものを見つけたと言って送ってきた一本の映画を見たときに持った感覚に少し似ているように思えたのだった。

 

(・・・いくらなんでもあれはない)

 

なぜアレハンドロだけがあんなに似ていたのか、なぜアレルヤ役が女だったのか、なぜあんな映画が作られたのか、映画は刹那に少なからず混乱を与えたのだった。

思考の海に少しだけ浸かった刹那と、どんな状況だったかを簡単に話していたマリューたちの頭をブザー音が叩いた。

 

『生存者はいるか!自分は連合軍中尉、ナタル・バジルールである。生存者がいるのなら応答せよ!』

 

「生き残りがいたか!」

フラガ大尉は近くのボタンを押してマイクを起動した。

 

『連合軍大尉、ムウ・ラ・フラガだ!民間人を収容している』

『はっ!フラガ大尉、こちらも生き残りを収容しています。ハッチの解放をお願いします』

『了解した』

 

返事をした大尉は、ブリッジへと昇って行った。

残ったメンバーは、ここにいるのが見つかると面倒だというマリューの言で、居住区にある休憩スペースへと送られた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

艦内へ到着したバジルール中尉とマリュー大尉、フラガ大尉は現在までの話をしたところで議論になっていた。

 

「一般人に軍事機密を見せるなど、正気ですか!」

「状況的にしょうがなかったのよ」

「ですが!スパイであることも考えられるのに!」

「あいつらがいないとこの宙域が脱出できねぇだろ」

 

議論は十分ほど続いたが、最終的に、

・現宙域を離脱後、二人に尋問を行う

・スパイではないと思われる場合には階級を臨時的に与える

・ユーラシアのアルテミス要塞を目指す

・艦長はナタル・バジルール少尉とする

以上が決定された。

 

ナタル中尉はキラと刹那をMSに乗せることを最後までためらったが、アークエンジェルがまだ進水式も済ませていない新造艦で、オペレーターの数も足りないことから、渋々とMSの操縦を任せることを承認した。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

休憩スペースで刹那とキラは他の二人と話していたが、迎えに来たフラガ大尉に連れられて、ブリッジへとやってきた。

二人を出迎えたのは、ナタル・バジルールの一声だった。

 

「ソラン・イブラヒム、キラ・ヤマトに告ぐ。これより、作戦の説明を行う。準備はいいな?」

「ああ」

「・・・はい!」

 

ここに、アークエンジェルのヘリオポリス脱出計画の説明が開始された。




流石に出来が悪い気がするんじゃー

マリュー×刹那 と ヒリング×刹那 の番外編書かにゃあならんのじゃー

バイト、就活、事務仕事・・・・

きついー!
でも来週も頑張りたいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話:陽動ーイノベイターの囮ー

勢いでやらかしてる気もしなくはない・・・
まあ最悪後でやり直せるからね!(やり直すとは言ってない)

なんだか疲れていてやる気があまり湧かないなーと思っていたらネタが降ってきたので設定編から本編に予定変更しました。
来週も降りてくるといいなー


「ソラン・イブラヒム、ジン、発進する」

 

白塗りの識別色に塗装されたMSが、同じように白い戦艦の脚部からゆったりと歩を進めていく。

現在地はヘリオポリスの宇宙港桟橋と居住部の中間にあるアークエンジェルの建造ドッグだ。

 

ジンは腰にストライクの装備、アーマーシュナイダーをいくつか佩びている。

アーマーシュナイダーの柄には、回収が可能なように細いワイヤーが巻かれている。。

そして右手には、最初から装備している重斬刀が握られている。

射撃兵装は装備していない。

これは刹那が、自分はこの方が良いと主張し、MSへの搭乗経験が無い周囲を無理に納得させて実現した装備内容で、もしZAFTなら絶対に止められていただろう。

刹那は熱源反応を極力発生させないため、歩いてヘリオポリス宇宙港の出口へと向かっていた。

 

刹那が士官たちから聞かされた作戦は以下のようなものだった。

 

「ZAFTのMSの注意を惹き、戦力を削れるだけ削ってから高速離脱するアークエンジェルに合流し、離脱」

 

簡単に言ってしまえば、アークエンジェルが脱出する時間を稼ぐ囮が刹那の仕事だった。

だが、この戦術は先ほどムウがZAFTの包囲を突破するために一度使用しているため、ZAFTに見破られる可能性があった。そこで作戦にはもう一手追加があった。

それは、ヘリオポリスを盾にすることだ。

先ほどムウが囮作戦を行ったときはヘリオポリスに向かっていたため意味がなかったが、ヘリオポリスからの脱出では、ZAFT艦とヘリオポリスの間に入ってしまえば、ZAFT艦が砲撃を外した時のことを考える必要があり、アークエンジェルがヘリオポリスから出航する時は砲撃することができない。

また最終的には脱出のため、ZAFT艦の射線が通る場所を動く必要がある。その時、相手のMSを誘導することでZAFT艦に砲撃を撃たせないようにできると刹那が発言し、マリューとムウの同意でその発言に賭けることをバジルール艦長が決定した結果、作戦の概要が決定されたのだ。

 

アークエンジェルはヘリオポリスの周囲を、ヘリオポリスを盾にしながらスイングバイとスラスターによって加速し、ZAFT艦に突貫をかけると見せかけて中央突破をする。

 

刹那のジンは、アークエンジェルがヘリオポリスの影に隠れ始める瞬間と、ヘリオポリスの影から飛び出す瞬間に敵の注意を一身に引き受ける必要がある。

ゲートは、サブゲートが生きており、開閉が可能であったためアークエンジェルが砲撃をすることで目立つ心配がない。

もちろん熱源センサからは感知されるのだが。

 

刹那がZAFT側からはコーディネーターの裏切り者として見られ、強ければ強いほどに敵意を買うであろうことだけでも、囮としては最適だ。しかも、囮をやり遂げて生き延びるだけの技量もある。

 

キラは、アークエンジェルがヘリオポリスの影から飛び出し、奇襲をかけるとき艦上からランチャーパックの装備、超高インパルス砲、「アグニ」で弾幕を張る砲兵役だ。

 

現在ZAFT艦、ナスカ級(ヴェサリウス)はヘリオポリスに相対速度を合わせており、艦の前方はヘリオポリスを向いているため、中央突破が成功すれば方向を変える前に射程範囲外まで逃げることが可能だと計算結果では出ている。

 

後は・・・

 

「俺が敵戦力を削り、敵艦を押さえ続ければいい」

 

連合のどの兵士が言っても一笑に付されるだろうが、この男は口だけでなく、確実にやり遂げるだろう。

無茶だと思っていた士官たちも、彼の無表情な顔から溢れる謎の信頼感に、いつの間にか少しだけ希望を寄せていた。

 

ジンは浮遊物をキックして加速し、宇宙港のシャッターにZAFTが開けたらしい穴に敵から見つかることなく辿り着いていた。

穴からモノアイとトサカ型センサーを覗かせ、敵方の戦力把握を素早く行う。

発進し、ナスカ級の周りに展開しているジンが三機。

三機ともアサルトライフルと重斬刀を装備している。

ナスカ級は、ビームライフルらしき砲門が四つ確認できたがそれはヘリオポリスに当たる危険性がある間は使われないだろう。

ナスカ級の使うミサイルはアークエンジェルのCIWS「イーゲルシュテルン」で迎撃できるはずだ。

 

三機MSと一つの艦を相手にする算段を固めた刹那は、作戦の開始時刻になることを確認した。

 

「ジン、刹那・F・セイエイ、目標を駆逐する」

 

通信を切り、少しだけ口角をあげながら刹那はつぶやいたのだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

()()は、本当に突然訪れた。

 

「それにしても、ゲティがやられたとは本当か?」

「・・・・」

「おい、コレン?コレン・ナンダー?」

 

Nジャマーの影響が出るような距離でもないのに、返事が来ないことを訝しんだZAFT軍パイロットは、仲間のMSが突然動き始めたのを見た。

ヘリオポリスの方向に、、かなりの速度で動いていく。しかも、MSの腹部から引っ張られるように。

不審に思って画像を拡大すると、MSの腹部、もっと言うならコクピットのある部分から小さなワイヤーが伸びている。

このZAFTのパイロットは、コクピットの右下を注視していた。

しかし次の瞬間、いきなり凄まじい音がしたと思った瞬間に、真っ赤な視界を最後の光景として、彼の意識は永遠に途絶えた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

最後の一人は、オープン回線でのやり取りと続けて聞こえた破砕音で事態に気づき、急いで艦に緊急通信を入れた。

 

「敵襲を受けています!コレンとマシュマーがやられました!敵の数は不明!」

「!艦内のパイロットは緊急発進準備!索敵班、敵の居場所は!?」

 

熱反応が無いのにいきなり現れた敵に、索敵担当の兵士は一瞬動揺を見せたが、すぐに我に返り、他のセンサーで索敵を開始し、すぐに返事を返した。

 

「光学カメラに敵影を補足!敵はジンが一機です!」

「一機だと!?発進急がせろ!」

 

フレデリック・アデスは、ZAFTナスカ級、ヴェサリウスの艦長で、クルーゼ隊長の補佐として多くの経験を積んでいた。

だが、一機のジンに気づけば二機ものMSがやられていたというのは初めての経験だった。

どうやら相当優秀なコーディネーターが寝返っているらしい。

 

「裏切り者め・・・」

 

自分でも無意識のうちに、アデスはつぶやいていた。

もっとも、的外れな発言でもあるのだが、ZAFTにそれを確かめる術はなく、コーディネーターか?と疑う者もいなかったのだが。

 

「三機目がやられました!」

「なんだと・・!?くっ、CIWS起動!裏切り者を打ち落とせ!」

 

もちろん艦橋のメンバーに罪はないのだが、彼らの報告はアデスの怒りを募らせるばかりだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

ヘリオポリスの内部にいったん後退し、作戦の開始を宣言した刹那は、内部の瓦礫を蹴って加速を開始した。

十分に加速をつけた刹那のジンは、ZAFTのMSが開けた穴から、静かに飛び出していた。

そしてあらかじめ狙いをつけていた一機に、ワイヤー付きのアーマーシュナイダーを投擲した。

刹那の技量とMS自体の速度により、アーマーシュナイダーはコクピットへ正確に、深々と突き刺さった。

そのタイミング出で刹那はアーマーシュナイダーの振動を停止し、全力でワイヤーを引っ張った。さらに加速して撃破したMSに近づいた瞬間、今度は更にMSを蹴って二機目のMSに向かって重斬刀でチャージをかけ、こちらも正確にコクピットを貫いた。

三機目は動揺によって動きが鈍っており、左手でアーマーシュナイダーとワイヤーを使って腕を絡め捕り、今度はスラスターで加速してコクピットを貫いた。

 

三機目のコクピットを貫いたところで、熱源センサからアークエンジェルが無事ヘリオポリスの影に回ることに成功したことを確認した。

刹那は誰ともなしに呟いた。

 

「ファーストフェイズを予定通りに成功。作戦をセカンドフェイズに移行する」




赤い彗星とジェットストリームアタック破りを同時に行った作戦でした。

なんだか刹那さんが初期のただガンダムガンダム言ってた時期に戻ってる気が・・・
ちなみにこの世界でのGUNDAMは、OSの頭文字が
G
U
N
D
A
M
となっているもので、ジンがガンダムなのか私にはわかりません。
最終的にはGUNDAMに乗せるつもりではありますが。

モブにコレン・ナンダ―さんとグレミー・トトさんが登場しました。
同姓同名の顔が同じだけの他人です。

ロックパイ・ゲティ(設定)
年上で美人のスタイルがいい茶肌で髪が緑の彼女がいる。
地球の人間を見下している。

コレン・ナンダ―(設定)
冷凍睡眠実験の被験者。ラクス様万歳。

マシュマー(設定)
バラ大好き。ピンクの髪のショートカットでなんだかえらそうな女性に心酔している。
自称騎士。

た、他人だし(震え声)
強さは一緒じゃねえし(震え声)

追記 3/22
修正しました。
GANDAMではなくGUNDAMですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話:イノベイターへの対話

ひ、評価が平均6.8・・・?
あばばばばば・・・・
え、まじで?
ありがとうございます!がんばります!

番外編を書いてみました。話がいい感じに進んだところで更新していきたいなーと思います。
タイトルは
SEED×00:Extra_Contents~ヒロインは誰だ~
です。
一話では時系列の問題でヒリングがヒロインですが、無事アークエンジェルが出航すればマリュー版、救命ポッドを回収すればラクス版と、アンケートに要望のあった話も書けるかと思います。

では本編、クルーゼ視点からどうぞ。


ZAFT所属ナスカ級艦艇、ヴェサリウスは、クルーゼ隊所属だ。

つまり、艦長はアデスでも、最高指揮官は特務隊FAITHのクルーゼとなる。

基本的な指揮などはアデスが行うが、作戦の決定などはクルーゼが行っている。

またクルーゼはZAFTでも指折りのエースパイロットでもあるため、戦場で直接指揮を執ることもある。

 

先ほどの、ジンが瞬く間に3機落とされるという緊急事態に、クルーゼは無表情を貫いていた。

しかし、内心では口元を歪ませて笑っていた。

 

(あれは()()()()()()()()()()の相手ではないな)

 

クルーゼの知る限り、プラントのZAFTレッド、軍のアカデミー成績優秀者や、ZAFT所属のエースパイロットにもあれほどの動きができるパイロットが存在するかは怪しい。ならば、あれは非常に高度なコーディネートが施されたコーディネーターだと推論ができる。

 

(もしかしすると見つけたかもしれんな)

 

本当にクルーゼが探している()()なのかは分からないが、可能性があるというだけで探ってみる価値はあるだろう、クルーゼはそう判断した。

 

「アデス、艦の指揮は任せるぞ」

「隊長自ら出られるので?」

「ああ。MSの指揮は私が執る。帰る舟を無くしてくれるなよ?」

「了解しました!」

「・・・ふっ」

 

手早くノーマルスーツに着替えたクルーゼは、シグーのコクピットからMSパイロットに指示を飛ばしながら、カタパルトへと運ばれていく。

 

「ミゲル、出られるな?」

「は!他二名とすぐにでも!」

「よし、ラウ・ル・クルーゼ、シグー、出るぞ」

 

カタパルトのレールを照らす赤い光が青く変わり、電気の加速力で白いシグーが戦場に向けて射出される。

後からすぐに、アサルトライフルを装備した三機のジンが続いた。

 

「私が接近戦を行う。お前たちはアサルトライフルで圧力をかけろ」

「「「了解!」」」

 

敵のジンが、こちらに気づいた。センサーよりも全身に感じる殺気が、有弁に狙いをつけられていることを語っている。

これほどの緊張感はいつ振りかと口角を薄く釣り上げながら、右手に重斬刀を抜き放ち、相手に向けて構える。

 

「この裏切りモンがよぉ!」

 

後詰めのうち一人が叫びながら、他の二名は回線を開きはしているものの粛々と、アサルトライフルの引き金を引いた。

ここまでの連携は上々だ。対する相手の反応は・・・

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

(なかなかに練度が高いな)

 

三機のジンが放った銃弾を、あえて隊長機が接近しやすいように弾幕の内側へと避ける。

単純な釣りだが、ここでの刹那の役目は敵の目を引き付けること。相手がどう応じてこようと、ここからはなるべく敵を倒しすぎないように相手をする必要がある。

すると相手の隊長機は、左手に装備したアサルトライフルで単射を行い、攻めかかっては来ない。

 

(こちらの戦力を測っているのか?)

 

だが、刹那には時間制限があり、あまりにも長々と相手に距離を取られて戦うわけにもいかない。

そこで、刹那はの採った作戦は・・・

 

(アサルトライフルを破壊する)

 

決断してからの動きはさすがに早く、今度は銃弾を際どく躱しながら、隊長機を中心に散開して射撃を散発的に行っている三機のジンのうち、二機に狙いを定めてアーマーシュナイダーの投擲を行う。

 

これで残り二機も武器を破壊すれば、相手を補給に行かせて時間を稼ぎ、そろそろ加速の最終段階に入って離脱するアークエンジェルのために、敵艦の注意を引き付ける必要がある。

腰に佩いた残る二本のアーマーシュナイダーを投擲するが、残り一機のジンはアサルトライフルを破壊できたものの、隊長機にはすれすれで躱された。

 

(ならば!)

 

最後の一機のジンのアサルトライフルを破壊したアーマーシュナイダーは、ジンの装甲板に深々と刺さっている。

ワイヤーとスラスターで、奇襲をかけた時同様に加速し、隊長機にチャージをかける、が、こちらも重斬刀によって防がれる。

そのとき、接触回線で音声通信が入った。

 

「素晴らしい腕だ、連合のパイロットくん。君とはぜひ話がしたい」

 

見れば、重斬刀を構えていた腕を、逃すまいとマニピュレーターでつかまれている。

だが、

 

「残念だが、俺はコーディネーターではない!」

 

相手と自分の機体の内側に足を入れ込み、腕をつかんでいる方の胸部を強かに蹴りつけ、一気にスラスターで加速をつけ、かなりの速度で戦場に突っ込んできたアークエンジェルに掴まり、ナスカ級の対艦ミサイルやCIWS、ビームを打ち落とし、よけながら、戦場から急速に離脱していった。

 

「囮は成功だな」

 

作戦成功への安堵を、先ほどの戦場を振り返りながら、刹那は少しだけ口から漏らしたのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「コーディネーターではない・・・か」

 

武器を破壊された部下たちをヴェザリウスへ誘導しながら、クルーゼもまたコクピット内で独り言ちていた。

クルーゼは非常に勘が良い。相手の言うことを聞けば、嘘かどうかは大抵わかってしまう。

本人としては忌まわしい力でもあるのだが。

 

だが、先ほど戦った連合のパイロットの言葉は、判断がつかなかった。

なまじ相手のウソが普段わかるだけに、クルーゼには判断がつかないでいたのだ。

 

(あのパイロットがコーディネーターと知らされずに育った可能性もあるか?)

 

確かに、パイロットの技量は並みのコーディネートを凌駕してはいたが、クルーゼはその出自ゆえに、そのことを決定的な判断材料とすることができずにいた。

なにせ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだから。

 

(まあ、私を作った輩の最高傑作だ。私よりも強くあってもらわなくてはな)

 

スーパーコーディネーター「キラ・ヤマト」。

クルーゼはそれを作るための資金活動として作られた。

だが、当時の技術では細胞の寿命を司るテロメアを基になった人物以上に戻すことができず、クルーゼの寿命は赤ん坊の時点でクローン元の人物と同じしかなかった。

だから捨てられた。

自分は世界から爪弾きにされたのだ。

それでもクルーゼは迷っていた。

 

自分が世界を終わらせるべきか否かを。

 

(私の存在意義の間接的な証明、キラ・ヤマトを見つければあるいは・・・)

 

少なくとも、クルーゼは世界の全てを恨み切っているわけではなかった。

少なくとも、()()




アークエンジェルすれ違いで敵陣中央突破離脱作戦は、
関ケ原:島津の退き口
鉄血のオルフェンズ一期の火星上空戦バルバトス撤退シーン
を参考にして考えました。
ドリフターズとゴールデンカムイのせいで鹿児島が魔境にしか思えません。避ける以外の選択肢では死亡する(避けるのは非常に高い技能が必要)ってなんなんだ自顕流・・・
刹那さんが自顕流体得とかのフラグではないですからね?
(ロウ・ギュール、人間やめるの章はあるかもしれませんが)
薩摩隼人≒戦闘民族(隼人は差別用語として用いているわけではありません)


ラスボス候補が登場いたしました。候補ですが。
自分は、クルーゼはキラが割と完璧な人間でも世界を恨んでた気がしなくもないです。

つまり
キラが予想よりしょぼい⇒よし、世界滅ぼそう
キラが予想より強い  ⇒よし、世界滅ぼそう

なんだこのネガティブ野郎

実際、現在のキラは完璧な人間には程遠いモヤシですが、もしかしするとアークエンジェル搭乗中に鍛えられたりして・・・

ちなみに、今のキラが刹那さんと同じ機動をするとGで気絶します。
キラはあくまで限界点まで鍛えることが「可能な」「ただの人間」ですから。
まあ多少一般人よりは頑丈で、既知の病気には罹りませんが。

SEED最高の敵キャラは確実にクルーゼさんだと僕は思っています。
ドラグーンでビーム撃たせて網張ってミサイル弾幕防ぐってアンタ、ほんとに人間か?
まあ、ZAFTにエースとして所属しているクルーゼさんがコーディネーター(笑)と思ってるであろうことはかなり皮肉な設定だと思いますが。

STARGAZERを見ましたが・・・
神作やでぇ・・・
是非番外編とかにキャラを登場させたい。

3/27 追記
クルーゼノ乗機がジンハイマニューバ→シグー
ZAFTの艦長の名前はアデク→アデス
誤字報告ほんと助かります

9/8追記
ヴェザリウス→ヴェサリウス


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話:イノベイター脱出、これから

SEED三話を見直したのですが・・・
おめーら人の国のコロニーと思って壊しすぎだよ!

ちなみになぜ見直したのかというと、あれ、コロニー脱出後どんな進路採って何してたっけ?となったからです。

あと、オルフェンズ最終回も見ました。
そうか、やっぱり三日月は・・・
史上最高にヌルヌル動くガンダムだったのでは?と思ってます。
(AGE、ユニコーン未視聴)
個人的にはあの最終回、悲しいですが嫌いではない。

ではSEED本編を見直したところで、続き、書きます。
あと、一部オリジナル展開が入ってます(今更ですが)


「時限爆弾を?」

「はい、万が一のことがあった時に、と」

「そうか・・・」

「余計な手出しだったでしょうか?」

「いや、詳しく聴こうか、ミゲル」

「はっ!ヘリオポリスへの侵入時、敵戦艦の推進部に小型の時限爆弾を仕掛けました。携行型のものなので、威力はあまりないですが・・・」

「足止めには十分・・・か。ふっ、私も評議会から出頭命令を出されずに済みそうだ。よくやってくれた、ミゲル」

「はっ!光栄であります!」

「アデス!追撃を行う。進路は地球軍基地、アルテミスだ」

「先回りするのでありますか?」

「ああ、敵艦はスラスターが不調だ。このヴェサリウスなら先回りできる。」

「了解しました!」

「さて、アスラン。何か話があるのかね?」

「はい・・・」

 

それが世界を滅ぼしかねない出来事のトリガーとは、世界中の誰も知らない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「スラスターが?」

「はい、小型の爆弾が仕掛けてあったようで・・・」

「その他の被害は?」

「いえ、推力は低下しますが、他の部分には問題ありません。ですが・・・」

「どうした?」

「敵ナスカ級に追いつかれるかもしれません」

「!、そうか。では、前方と後方を常に索敵させろ。私なら速度が落ちているところを前後から挟む」

「了解しました」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

その頃、キラはヘリオポリスの友人たちと話をしていた。

 

「僕、戦うよ。戦って、みんなを守りたいんだ!」

「でも、相手はコーディネーターだろ?お前大丈夫なのかよ」

「生まれなんて関係ないって言ってくれたのはトールじゃないか。大丈夫だよ」

「キラ、ストライクの整備で話があると曹長が言っていた」

「ソランさん」

「覚悟は決めたか」

「はい!」

「では行ってこい。軍曹が呼んでいる」

「は、はい、行ってきます!」

「トール、キラは」

「大丈夫ですよ」

「そうか・・・。俺ももう一度ドックへ行く。・・・艦長に頼みごとがあるのだろう?」

「なんでわかったんです?」

「勘だ」

「勘が良いなぁ」

「もう行かなくては。またな」

「ええ、また」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

キラはドックで、ストライクについての詳しい説明を受け、また自分が作ったOSの説明をしていた。どうやらキラが作ったOSは整備班からしても驚嘆に値するものだったらしく、驚きの声を度々受けていた。

それは刹那も同様で、こちらはその操縦技術に対してのものだった。

ただし刹那は、注意も受けていた。

 

「良いですかい、こいつは確かに頑丈だが、限界ってもんがある。それに、ここで整備するにしてもそれにも限界があります。あんまり無茶な動きさせんでくださいよ?」

「すまない」

「分かってくれりゃあ良いんですよ」

 

ただ、刹那やキラは技術者からは親しみを持たれているようで、あまり険悪な様子ではなかったが。

 

「しっかしソランさんのMAの解体技術には驚かされましたよ」

「ああ、見る見るうちに解体されていくんだもんな」

「一度触ったことがあったからな」

「それにしてもですよ」

 

一方キラとマードック軍曹は、

 

「坊主、お前のOSの説明聞いてて思ったんだが、この部分の流体ソケットの許容量、だいぶ上げた方が良いかもしんねえなあ」

「慣性挙動をするときに許容量を超えちゃいますかね?」

「ああ、これならいざというときに動かねぇってこともないだろう」

 

実戦も一回目だというのに、ストライクはその全てを吸収するかのように強化されていた。

更に、刹那のジンもOSの最適化がなされていた。

ジンのフレームで限界まで人体の動きを再現するよう設定されていく。

ストライクの回避プログラムを移植しようかというキラの提案もあったが、刹那は断った。

 

そこへ、艦橋から戻ったマリューがやってきた。

 

「みんな、お疲れ様」

「「「おつかれさまでーす」」」

「ソラン曹長、ちょっと話が・・・」

「曹長?」

「ああ、ごめんなさい。さっきの話し合いで、流石に何の階級も持ってない人間がMSを操縦するのは不味いだろうって、二人に階級を臨時で設定することが決まったのよ」

「こっちの坊主はどうなんです?」

「キラ君は少尉よ。最新鋭機のパイロットですからね」

「俺は坊主より下ですかい」

「す、すみません」

「気にすんなって、しょ、う、い」

「嫌味だなぁ」

 

そうはいってもマードックの顔は嫌味など一切なしで笑っている。

 

「それよりも大尉、話とは?」

「ああそのことなんだけどね、あなたのジン、スラスターの増設をしてみない?」

「できるのか?」

「ええ、メビウスの予備パーツが余ってるから、そのメインスラスターを背部に、姿勢制御用スラスターを手足の裏側にって感じかしら」

「どのくらい時間がかかる?」

「余裕を見て5~6時間ってところね。もちろんキラ君が手伝ってくれれば、だけど」

「キラ」

「手伝いますよ。ソランさんも仲間なんだから、もっと頼ってくださいよ」

「ありがとう。俺も手伝おう。MAのことなら整備工をしていた時に一度横流し品を触ったことがある」

「その、言いづらいんだけど、多分アルテミスに到達する前にもう一度ZAFTと戦闘になるわ。その時のために、心の準備だけはしておいて欲しいの」

「追いつかれちゃうんですか?」

「スラスターに小型爆弾が仕掛けられていたらしいの。相手はかなりの高速艦だしね」

「そうですか・・・」

「それと、今度は多分奪われたMSも出てくるわ」

 

(一機にはアスランが乗ってるのかな)

後でトールと相談してみよう、そう思いながらも、キラは一応はい、と返事をして作業に取り掛かった。

 

ジンの改造は、整備班一同の技術向上にもつながるので、思い付きがあったらすぐに言って欲しいとマリューやマードックは語った。

その後、ジンの改良が終わった後に、ストライクのOSは更に改良され、PS装甲へ回される電力の制限でバッテリーの持ちが改良されたりした。

 

 

~7時間後~

 

 

「明日からは、敵艦との遭遇の可能性があるわ。しっかり休んで備えてね」

「「「「はい!」」」」

 

結局、半日近くドックで作業をして、刹那たちは新しく宛がわれた部屋に向かった。

現状水は貴重だが、現在必要最低限の人間しか乗っていないため、シャワーを浴びる程度の余裕はある。

キラはシャワーを浴びて、個室のベッドに横になっていた。

すると、ドアをノックする音が聞こえる。

 

「はい?」

「俺だよ!」

「トール!」

「どうしてちょっと話をしようと思ってな」

 

どうしてこの友人はこんなにタイミングが良いのだろうか。

もしかして心を読まれてるのかな、などと考えながら部屋のドアを開ける。

中に入ってきたトールが、機先を制して一声

 

「心でも読めるのかとか思ってるだろ?」

「えっ」

「ふふふ」

「まさかほんとに」

「バァーカ、お前が判りやすすぎるだけだよ。大方お前も話が有ったんだろ?」

「まあ、そうだけど」

「実は疲れてるだろうと思ってな、ちょっと美味しそうなもん作ってもらってきたんだ」

「ありがとう、トール」

「それで、何が話したかったんだ?」

「実は・・・」

 

幼馴染とは対照的に、こちらの打ち明け話は、周りの多くを救う選択であることを、この世界の誰も知らない。




アスランがやらかしました(白目)
いや、いつかは知ってたと思うよ?(汗)
でも本編、アスランに連れ去られてたら確実にキラは死んでましたな・・・

あとトール、お前が死んだらもうキラ使い物にならない気が・・・
地球降下前にイノベイターにでもしてしまうか?(錯乱)

実際、この作品中ではもうニュータイプに近いっていうか・・・

※俺の体をみんなに貸すぞぉ!とかは言いません

読者の皆さんに質問なのですが、キャラはソラン呼びで地の分では刹那。
地の分もソランに変えた方が読みやすいでしょうか?

予告
るろ剣×Fate/Zero書こうかなぁと思ってる(Fate/Zero小説版買ったら)
呼び出される鯖は雪代縁君でマスターは雁夜おじさんです。
もう一つ、ゼロの使い魔×AKABOSHIのクロスオーバーを書いてみようかとも思ってます。
タイトルは、ゼロの流星、みたいな?
しかしAKABOSHIを知ってる人はどれくらいいるのだろうか…

9/8追記
ヴェザリウス→ヴェサリウス

2018/3/19追記
ラスティ死んでました。ミゲルに変更。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話:イノベイターVSガンダム

ああああああああ

番外編のネタが浮かばねぇぇぇぇぇ

このところプロットだけは進めてまいりました。
現在17話まで完成しております。プロットが。
本文は、毎回約3000文字打ち込む度に語彙力が崩壊するので、毎週時間が空いた時に書いています。

話一つで10,000文字超えるとかどんだけ高性能なメモリー積んでやがるんだ・・・

前回はクルーゼさんラスボス化フラグをアスランが建設し、キラがトールとアスランのことを相談したところで終わったかと思います。

では続きいきまーす

※30分後に次話が投稿されます


「そっか、コペルニクスに居たころの親友か・・・」

「僕はどうしたらよかったのかな。アスランとは戦いたくないけど、アークエンジェルから離れてトールたちが死んじゃうのも嫌なんだ」

 

キラが沈んだ面持ちで打ち明けるのに対し、トールはどこか人を食ったような、でもどこか憎めないような顔をして言葉を返す。

 

「俺は、お前が選んでいいと思うけどな」

「僕が、ZAFTに行っても良いってこと?」

「ZAFTって言うよりはプラントかな。お前、戦いたくないんだろ?」

「実はプラントに行くのもちょっと嫌で・・・」

「はぁ?なんだよそりゃ」

「ナチュラルだから、とか、コーディネーターだから、とか。嫌なんだよね、そういうの」

「お前らしいな・・・。けどそれ、言っちまえばそのアスランってやつにこっちに来て欲しいってことになるぜ?」

 

少なくともコペルニクスのスクールに居たころ、アスランは戦争を嫌っていた。落ちこぼれとしていじめられていたキラを庇ってくれるくらい優しかったアスランの印象が、キラの中では強かった。

 

「でもアスランは良いやつで・・・」

「いや、どうかな。そんな良いやつが軍に入ってるんだろう?きっと何か理由がある」

「もしかしたら・・・」

「心当たりあるのか?」

「アスランのお母さん、農科学者だったんだけど、もしかしたらユニウスセブンで」

「核ミサイルに巻き込まれたかもしれない、か。ならナチュラルが許せないとか思ってるかもなぁ」

「アスラン・・・」

 

突然、トールは名案を思い付いたという顔をキラの方に向けた。

 

「なあ、キラ、お前、戦闘中にアスランと話してみろよ」

「ええ!?」

「なんとなくだけど、ZAFTが奪ったMS、4機あるんだろ?そろそろ使われそうな気がするんだよな。確かアスランはイージスを持ってったんだろ?」

「いや、そうだけど」

「なら多分また同じイージスに乗ってくるって。その時に接触回線でさ」

「や、やられちゃわないかなぁ」

「大丈夫だって!お前なんだかんだすげえじゃん!」

「やってはみるけどね・・・」

「あ、それとさ、俺アークエンジェルの副操舵手になったからさ。しっかりサポートしてやるよ、な!」

 

バンバンとキラの肩を叩きながらトールが椅子から立ち上がると、狙いすましたかのようなタイミングでアラートが鳴り響いた。

 

「第一種戦闘配置!第一種戦闘配置!パイロットは急いでMSへ!」

 

トールはニヤッと笑ってキラに言い放った。

 

「早速チャンス到来だな!」

「前向きすぎるよ!」

 

ヘリオポリスで長年鍛えられたキラの突込みは鋭かった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

クルーゼ隊では、作戦開始前のブリーフィングを行う。

 

「では、バスターは敵MS、敵新型艦、以降足付きをデブリベルトから狙撃、マ・クべはジンでスポッターと護衛だ。」

「了解」

「オーケェ」

 

ブリーフィング終了予定時刻から15分後に、足付きを撃墜するための作戦の開始が予定されており、アデスが配置を読み上げている。

 

「次、敵本体へ取り付くのはアスランのイージス、イザークのデュエル。サポートにニコルのブリッツ、オーリス、コーリスのジンが回れ」

「「「はっ!」」」

 

細かいフォーメーションの決定などは各自に任せ、ブリーフィングは終了した。発進の準備を整えようとするアスランを、クルーゼが呼び止めた。

 

「アスラン」

「何でしょうか?」

「キミの親友、連合に洗脳されているやもしれん。君の言うほど有能ならば是非我々の仲間に欲しい。アデスは裏切り者というかもしれんが、私はそういったことは気にしない質でね。可能ならここへ連れてきてくれたまえ」

「・・・はい」

 

クルーゼの薫陶を受けたアスランは、やや複雑そうな顔をしてMSへ乗り込んでいった。

各々が作戦の準備を進める中、クルーゼは薄い唇の端を僅かに釣り上げて、目標の推定進路を眺めていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

暗いZAFT製MSのコクピットの中で、刹那は静かに目を閉じて発進の時を待っていた。

既にジンの機体は大幅に改修が加わっており、正確には最早ZAFT製とは言えない代物だ。だがそんな改修も、コーディネーターとナチュラルが混ざったこの艦では似つかわしい物とも思える。

 

目を閉じたまま、前の世界からずっと、自分は仲間に恵まれているらしい、と刹那は考えていた。

 

自分が欲しい力を、形にしてくれる仲間がいる。

自分が体感したことのなかった日常を教えてくれた仲間がいる。

 

前に自分がいた世界とは大違いな仲間たちだが、比べられないくらいに大切な仲間だ。

故に、その障害となるものを、彼は全力で排除する。

 

「ソラン曹長、ジン・メビウス、発進どうぞ!」

 

「行くぞ、ジン・メビウス。此処には俺の仲間と、整備班の熱意と、そして俺がいる!!」

 

青い尾を引いて、アークエンジェルの脚部から姿を変えたジンが飛び出す。

続いてキラが、赤い翼のエールストライカーを装備させ、ストライクで発進する。

 

「キラ、お前はアークエンジェルを守れ」

「ソランさんはどうするんですか?」

「敵を駆逐する」

 

刹那は通信を切ると、一瞬だけスラスターを作動させ、小惑星帯に流されていった。

刹那から明確な決意を感じたキラもまた、今回自分がやることを頭の中で繰り返していた。

 

「ぼくだって・・・!」

 

アークエンジェルを背にしたキラの目の前には、四機のMSが展開していた。

二機はジンだが、残りの二機のうち一方には

 

「アスランか?」

 

前方の敵に牽制射撃をして相手を散らす。

アークエンジェルの上部は、艦橋があることもあって対空砲、ビーム火器が豊富だ。だが、下部にはあまり火器が無い。

よってキラは、心持下側で相手に牽制を加える。

 

だがそんな牽制射撃を搔い潜って、一機のMSが近づいてくる。

 

「ストライクゥー!」

 

無論、お互いの周波数を知らず宇宙のため空気もないのだから叫びが伝わるはずもない。だが、衝突の瞬間確かに気迫は伝わっていた。

デュエルが構えていたビームサーベルは、危ういところでストライクのシールドに受け止められる。

 

「この人・・・強い!」

 

引き剝がすために強引に三点射を放つも、巧みな機体さばきで躱される。

仕方なしに、一旦敵を取りつかせない仕事をアークエンジェルのCIWSに任せ、ビームサーベルを引き抜いてデュエルと相対する。

エースストライカーを装備している以上、機動性はストライクが格段に上だ。優位を生かそうとスラスターに灯を入れるが、相手の操縦技術も生易しいものではない。

 

「甘いんだよォ!」

 

加速しようとする前に、デュエルが再度ビームサーベルを構え、突進してくる。慌ててキラがアクセルをべた踏みにし、横にスライドして躱すが、ここで二人にとって想定外の出来事が起こる。完全に回避しきれなかったストライクが、持っていたビームサーベルの先端をデュエルに掠らせたのだ。

ナチュラルでは考えられないほどの反応速度に、まさか反撃を食らうとは思っていなかったイザークの油断と言えるだろう。しかも、当たり所が悪かったのか内部で一部部品が爆発を起こし、イザークの顔に一筋の傷をつけた。

 

「痛い痛い痛い!」

 

怯んだデュエルはストライクから後退する。そしてデュエルを守るようにイージスが近づいてくると、デュエルは帰投していった。

一方のキラは初めての接近戦に、肩で息をするほど疲労していた。

 

だが、向かい合うイージスからオープン回線で流された声を聞き、気を引き締め直した。

 

 

「キラ・・・キラ・ヤマトか?」

「アスラン・・・アスラン・ザラか!?」

 

 

その頃、狙撃を任されたディアッカは今までに体験したことのない恐怖を味わっていた。




タイトル詐欺だった・・・(刹那さん戦闘描写無し)

しかしこの作品での刹那さんはアサシン適性を獲得しつつあるような・・・

いや。まあ例のダブルオーガンダム起動シーンのセリフを言わせたかったんです。

はい、とりあえずアスランとキラが再開しました。まあ決裂は目に見えてるわけですが。

・・・彼女無しには恋愛系の話は辛かったか・・・(番外編)

次回は戦闘続き。頑張ります!

追記 4/15
調子がよかったので続きを書きました。これの30分後に更新します。

追記 7/21
コピペミスを修正しました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話:コーディネーターとコーディネーターの対話

二日空けて執筆・・・

まだ語彙力が回復してないか・・・?

と思ったら意外といけたので、今回は二話連続投稿
実は夢だったんです



追記

ついでにもう一つ次の話を三十分後に投降します


「コーディネーターのお前が、なんで連合なんかに!」

「君こそ!どうしてZAFTなんかに!」

 

かつての親友は今、戦場で敵として再会していた。

二人はお互い、戦争を嫌っていた相手が軍に所属していることに驚きを感じていた。

加えてアスランは、どうして自分と同じコーディネーターが

―――しかも幼馴染が

連合に所属しているのかと、半信半疑だったことが事実とわかり、裏切られたかのようにも感じていた。

そんな二人の舌戦は、通信が繋がったことを皮切りに、ますますヒートアップしていく。

 

「状況もわからないナチュラル共がMSなんて作るから・・・!そもそもお前はこっち(ZAFT)側の人間だろ!?」

「どうしてそんなにナチュラルだからって拒絶するんだ!」

「・・・母はユニウスセブンで死んだ・・・そもそも!先に核ミサイルを撃ち込んで戦争を始めたのは連合の方じゃないか!」

「お母さんが・・・?」

 

やはり、トールの予想が当たっていたらしい。アスランは、母の復讐のためにZAFTに入隊したようだ。

 

「キラ!こちら側に来い!」

「できない!大体、ナチュラルとコーディネーターなんて何も違わない!同じ人間じゃないか!あの艦には僕の・・・僕の友達が乗ってるんだ!それを見捨てるなんて!」

 

残念ながら、今話をしただけでもアスランと元のように仲良くなるのは現時点では不可能だとわかる。なら、今はアークエンジェルを守るのが先決だ。

キラはビームサーベルをマウントさせ、ビームライフルの銃口を、話は終わりだと言わんばかりにイージスへ突き付ける。

 

「キラ・・・!」

 

アスランの方も、話し合いでは埒が明かないと判断したらしい。盾を構えて、ゆっくりとストライクから距離を取る。

 

どうやら、アスランのサポート部隊はなかなか厚い弾幕を掻い潜り、艦に取り付くことが出来ずにいるらしい。

 

イージスがじりじりとストライクと距離を取っていく。

後少しで、お互いの間合いから外れるというその時、イージスのコクピットの中でアラートが鳴り響いた。

反射的に、アスランがコンソールを確認する。

 

「バスターが!?」

 

アスランは驚愕していた。だが、体は訓練通りに動き、アスランはバスターがいる方に向けて離脱した。

艦の護衛をしなくてはならないキラは、唇をかみつつも、敵のけん制のためにアークエンジェルの上部に上がっていく。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

先ほどの舌戦から五分ほど前。

ディアッカ・エルスマンは人生最高の恐怖を味わっていた。

状況を整理しきれないでいるが、現状の打開策を探すために先ほどの出来事を回想する。

 

ヴェサリウスから発進し、デブリベルトで狙撃ポイントを見つけ、足付きのどこを狙おうか考えていた時だった。

ふと、コクピットのディスプレイに、ちらっとオレンジ色の光が見えた気がした。

 

「おい、クベ、さっきの見えたか?」

 

見間違いかもしれないが、戦場で敵のサインを見逃すことは死に直結する。

確認のため護衛のマ・クべに確認を求めるが・・・

 

「・・・?おい、クベ?」

 

返答がない。どうしたのかとジンの居る右下の前方を見てみると、そこには無残にコクピットを一突きにされたジンが、ゆらゆらと浮かんでいた。

 

絶句したディアッカは、敵がすぐ近くにいることにようやく気が付く。

 

「どこから現れやがった・・・!?」

 

熱源センサーに何の反応もなかった。恐らくは・・・

 

「あのジンか」

 

敵がジンだろうと思い当たったところで、ディアッカは少し安堵した。ジンは実体兵器しか装備しておらず、ビーム兵器もコネクタが合わないため装備することができない。

つまり、バスターのPS装甲を貫くことができない。

おそらく、PS装甲があるから一息にバスターまで仕留めようとしなかったのだろう。

 

勝機はある。

 

(接近してきたところを徹甲散弾でハチの巣にしてやるぜ!)

 

そうと決まれば、と、ディアッカはバスターの前面ディスプレイを、注意して監視する。

 

すると、遠くのデブリが不自然な動きをしていることに気づく。

 

(あれは・・・?)

 

目を凝らしてみると、不自然な動きをするデブリは、段々こちら側に向けて増えてきている。

 

まさかと思い、次に動くであろうデブリに当たりをつけ、その反対側を見てみると、そこにはデブリを蹴って移動する、少し姿が変わったジンがいた。

 

(見つけたぜ!)

 

その動きに少し驚きつつも、先に見つけた有利を潰すまいと散弾を装填する。

 

その動きを見たジンが、こちら側に向けて急加速してくる。

 

「グゥレイトォ!ハチの巣にしてやるぜ!」

 

口角を釣り上げながら、敵に向けて散弾を発射する。

これでたとえ破壊できなくても、動きは相当鈍くなる。

 

勝った・・・・!と、散弾の発射に伴う砲煙が晴れるのを見ながら確信する。

 

 

だが、そこにあったのは少し大きめの、穴だらけになったデブリだけだった。

驚きに目を見開くと同時に、ディアッカの体を凄まじい衝撃が襲った。

 

「が・・・・はっ・・・」

 

思わず意識を失いそうになるが、なんとか耐える。

すると、ガンガンと音がする耳に、熱源センサーのアラートが入ってくる。

 

熱源センサーの反応した場所を見ると

 

「う、しろ・・・?」

 

信じられない事実が、混乱に拍車をかける。すでに状況がどうなっているのかもわからなくなりつつあるディアッカの体を、再度、今度は小さい振動が揺らした。

 

その衝撃で少しだけ正気に返ったディアッカは、機体のダメージチェックをする。

 

「背部スラスター50%破損・・・右腕がない!?」

 

思わず自分の目で確認しようと、右側を見ると、ちょうど大きな足がこちらに向かってきているところだった。そして、やっと何をされていたのかを把握する。

 

(殴られてたのか・・・)

 

意識を落とす寸前のディアッカは、暗くなっていく視界のなかで浮かぶモノアイを定款の念を込めて眺めながら、捉えどころのない恐怖を感じていた。

 

(俺、死ぬのか・・・?)

 

目の前のジンは、右こぶしを構えている。もう一度殴られては、意識を保っては居られないだろう。

 

(ああ・・・走馬灯ってやつか)

 

先ほどの蹴りよりも、少し間延びした時間を感じながら、今度こそディアッカは意識を手放した。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

何があったのかと急いで駆け付けてみると、コクピットを一突きにされたジンと、ピクリとも動かないバスター、それの横に佇む白いジンがいた。

 

「ディアッカ?・・・ディアッカ!?」

 

まさか死んでいるのかと、最悪の想像をしてしまう。

 

(機体だけでも持って帰らなくては!)

 

アスランはビームライフルで牽制射撃をしてジンとバスターを引き離し、MA形態に変形してバスターを把持して、一気に戦闘宙域を離脱する。

 

MA形態のイージスは、すべての新型の中で、最も高い直線加速力を持っている。

ヴェザリウスへ戻る道中、足付きを攻める仲間に帰投の連絡を入れ、再びディアッカに声をかける。

 

すると、イージスで一気に加速した衝撃で目を覚ましたのか、ディアッカの返答が返ってきた。

 

「アス、ランか?」

「ディアッカ!気が付いたのか!何があったんだ!?」

 

ひとまず、安否の確認を急ぐとともに、状況の説明を求める。だが、再び返ってきた返答はアスランを驚かせるものだった。

 

「あいつは・・・あれは、バケモノだ」

 

(いつもイザークと並んで勝気なディアッカが、こんなセリフを吐くとは・・・)

 

実際、今回の戦闘ではイザークも負傷しているし、結局足付きにも大したダメージを与えることができなかった。

 

戦果を頭の中で考察したアスランは溜息を吐くと、敵戦力の評価を一段階上げた。




刹那さんがどんな変態機動したのかは次回。

二話連続投稿しましたが、来週もちゃんと更新します。
なぜなら毎週タイピング練習を兼ねているからなのです。

お楽しみにしてくださるとうれしいな!



追記

三十分後に更に次話を投稿します。
きっとイイもの食べたおかげだな・・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話:アルテミスの傘

今日は調子が良すぎる・・・・!!

このインスピレーションはきっと貴志祐介の新世界を読んだから。


刹那のジンは、先ほど仕留めたジンを予備パーツとして使うため、回収していた。

先ほどは、おそらく散弾を使うだろうと判断し、近くにあったデブリを囮に使って、自身は他のデブリを蹴って三角飛びの要領でバスターの背後へと回り、キックでの加速とスラスターでの加速を上乗せしたライダーキックをバスターへ見舞っていた。

PS装甲が衝撃を吸収できない欠点を見抜いていた刹那は、中のパイロットを気絶させるつもりで蹴りを二回、装甲の隙間を狙って腕を切断、とどめに一発殴ってコクピットを揺らし、見事パイロットを気絶させたのだ。

装甲の隙間さえ狙えば、フレームが切断できることは、刹那にとって大きな発見だった。

残念ながら邪魔が入ったのでバスターの鹵獲は叶わなかったが、これでほかの三機にも対応することが出来るだろう。

また、バスターの修復にはしばらくかかるはずだ。

 

それに、

 

「なかなかの使い心地だ。良いものを作ってもらったな」

 

ジン・メビウスも、十分にガンダムに対抗できることが分かった。

マリューへの報告を心の中でまとめながら、刹那はアークエンジェルへ戻っていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

アークエンジェルのドックは、戦闘終了後の喧騒に包まれていた。

そんな中、実働部隊の代表としてマードックがキラたちに近づいてくる。

 

「坊主!無事か!」

「やめてくださいよその呼び方」

「おっとこりゃ失礼、しょ、う、い」

「ボウズでいいです・・・」

 

そんなやり取りをしている内に、ムウと刹那が帰ってくる。

ムウは愚痴を溢していた。

 

「あーやりきれねー。逃げられちまったぜ」

「キラの活躍有ってのものだ。そういうな」

「お前はいいよなー、バスターの腕ぶった切ったんだろ?」

 

実はムウがZAFT艦に接近する間に撤退が始まってしまい、ムウは戦果を挙げることが出来なかったのだ。傍から見ればいい年した大人が拗ねているだけなのだが、刹那はそれをあやしている。

シュールさに輪をかけている・・・

 

「その・・・ごめんなさい・・・」

「いいって。無事か?」

「はい」

 

キラに声をかけられて、ムウが苦笑いになる。

しかし、急に真剣な顔になって刹那とキラに言った。

 

「おまえらの、特にストライクのOS、ロックかけとけ」

「アルテミスはユーラシアの所属、だったか」

「察しが早いねぇ」

「どういうことですか?」

 

キラは刹那ほど察しがよくない。そこで、ムウが補足を入れる。

 

「連合も一枚岩じゃないのさ。今連合は、MSが無いせいでZAFTに押されてる。そんなとこに、敵をバッタバッタ倒せる新型持って行ったら・・・わかるだろ?」

「急いでやります!」

「たのんだぜ・・・」

 

刹那に、自分がやろうか、と話しかけながらストライクの方へ行くキラを、ムウは何とも言えない目で見送っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

キラが刹那のジンと自分のストライクのOSにロック(ペンタゴンの十倍くらいの強度)をかけ終わった頃、二人をトールとミリアリア、サイ、カズィが訪ねてきた。

 

「キラ!どうだった?」

「うん、やっぱり、ユニウスセブンでお母さんが亡くなってたみたいで・・・」

「なんの話?」

「ああ、実はな・・・」

 

トールがアスランの話をして、みんながキラの心配をしたり、アスランを詰ったりしているのを、キラは嬉しそうに眺めていた。

少なくともここに、ナチュラルだから、コーディネーターだからと馬鹿なことを考える人はいない。

それどころか、なぜ自分たちには相談しなかったのかと怒り出す始末だ。

 

 

アルテミスに着くまで、キラは普通で、何よりうれしい時間を堪能した。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

戦闘から5時間ほどが経過した。

アークエンジェルは、アルテミスへ入港を完了した。しかし、問題が発生していた。

現在、アークエンジェルは銃を構えたアルテミスの兵士に包囲されている。

先ほど、代表としてバジルールが連行されていったが、身分の照会にしばらくはかかるだろう。

 

しかし、艦内ですべてのメンバーが銃を向けられ、動けなくされてしまっている。

そんな中、事件が起きた。

 

「おい、女がいるじゃねぇか」

「ちょっとこっち来いよ」

「いやよ!」

「ちっ、下手に出とけばよぉ!」

「なんだおまブッ」

「ミリーに触るな!」

 

ミリアリアが手を出されそうになり、トールがアルテミスの兵士を気絶させてしまったのだ。当然、他の兵士がトールに銃を向けるが、

 

「がっ・・」

 

その隙をついて、刹那が他の兵士を気絶させる。動揺する兵士たちを、監視されていたメンバーたちが、結局全員気絶させてしまった。

 

そこへ、一人の男が現れた。

 

「アルテミス所属、アレン中尉だ。抵抗をやめて欲しい。部下が勝手なことをしたことは謝ろう。だが、こちらとしても犠牲者が出ることは好ましくない」

「銃を向けられていては信用できないな」

「では、見張りをつけ、歩兵部隊には下がらせよう。気絶した連中をこっちに渡してくれないか」

「わかったよ・・・」

 

結局、待遇は少し改善されたが、見張りがついている。

銃を突きつけられているよりはマシだが。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

一時間ほど待っていると、艦長たちが帰ってきた。

 

「一騒ぎ起こしたらしいな?おかげで拘留時間が30分も伸びてしまったぞ」

「すいません・・・」

「まあ、全員無事ならいい。次から気を付けろ。それでは今から、今後の説明をする」

 

艦長と一緒に帰ってきたムウから、トールに向けてアイコンタクトが飛ばされ、トールもアイコンタクトで返していた。

 

「残念ながらここでは最低限の物資補給しかできない。それと、ストライクを調べさせろとのことだったが、問題ないか?」

「はい、ロックが掛けてあります。多分、クラッキングするのに一か月は掛かると思います」

「そうか。では、こちらのハンガーで調べさせて、向こうが根を上げたタイミングで交代し、なるべく時間を稼げ。本艦は第八艦隊と合流する必要がある」

 

詳しい説明を聞いてみると、どうやら艦長は、一先ず下手に出ておいて、油断させてからアルテミスを強引に脱出する作戦を採るようだ。

 

「そういえば、ZAFTはどうなんですか?」

「曹長がバスターの腕を切断したほか、少尉もデュエルに損傷を与えている。しばらく、およそ一週間は持つと考えていいだろう」

「じゃあ脱出は」

「ああ、5日後を予定している」

 

実際、まだアークエンジェルはミサイルなどの実体火器が足りなかったため、最低限でも補給はありがたい。

 

「では五日後、各自上手くやれ」

「「「「はい!」」」」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

時間は少し戻ってヴェサリウスでは、作戦会議が行われていた。

ただし、ディアッカとイザークは負傷のため欠席している。

 

「まさか取り逃がすとはな」

「「「「申し訳ありません」」」

 

アスランたちは、クルーゼへ一斉に頭を下げるが、クルーゼはそう怒っているようにも見えない。

 

「いや、ザフトレッドの君たちがしくじったのだ。誰も文句は言うまい。それだけ敵が強力だったということだ」

「しかし、敵はアルテミスへ入ってしまいましたが」

「僕に考えがあります」

 

そういって挙手をしたのはニコルだった。

 

「なにかな?」

「僕のブリッツ、面白い機能を持っています。それの実験にもなると思うのですが」

 

ニコルの解説を聞くと、なるほど、確かに面白い機能だ、とアスランも思った。

クルーゼも同様だったようで、おもしろい、やってみろと許可を出した。

 

決行は補給などの時間も考えて、二日後となった。

 

しかし、ブリーフィングが終わるとアスランは、キラのことで考え込んでしまっていた。

しかし、クルーゼが声をかけてくる。

 

「結局、鹵獲は失敗したか」

「俺は・・・撃てませんでした」

「ふっ、素直なのは君の美点だな、アスラン。しかし、撃たねば次撃たれるのは君かもしれんぞ」

 

そう言い残して、クルーゼは自分の部屋へと帰っていった。

 

クルーゼがいなくなってもしばらく、アスランは立ち尽くしていた。

別れ際に銃口を自分に向け、それでも撃つことを躊躇っていた元親友の姿を頭から振り払うことが出来なかった。




うーん出来てしまった連続三話

やっとアルテミス編まで参りました。
実はプロットが砂漠の虎編までは出来ているので、今後も可能な限りたくさん書けたらなぁと思います。

MHXXにハマっているんですが、こちらをおろそかにはしない・・・・つもりです

ISとガンダム00のクロスを読んでるんですが・・・
あれ?太陽炉って半永久機関だったような・・・
勝てなくね?

9/8追記
ヴェザリウス→ヴェサリウス


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13話:傘の内外

タイトルは「ないがい」ではなく「うちそと」のつもり・・・です

先週三話連続投稿したけど今週来週に取っとけばよかったなんて思ったり思わなかったり


アルテミスの傘にアークエンジェルが無事到着し、一夜が明けようとしていた。

 

今日から、ストライクはアルテミスのエンジニアに解析されることになっている。

ある意味、キラとユーラシア連合の一騎打ちと取ることもできるかもしれない。

少なくともキラは、自身の構築したプロテクトに絶対の自信を持っていた。

 

だが今日、そんなアークエンジェルの面々を予想だにしない出来事が襲う。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「・・・サイ・・・?」

「フレイ!」

 

アークエンジェルの碇泊している区画に、ヘリオポリス組の面々は見覚えのある、赤い髪の少女がいた。

 

「一体どうしてこんなところに・・・」

「こっちのセリフよ!」

 

フレイはサイへわき目も振らず駆け寄って抱きついた。

そんなフレイを、サイはぐっと抱きしめる。

 

「私、ヘリオポリスからパパがいるコロニーまでシャトルで移動してて・・・それでっ」

 

聞けば、突然襲ってきたZAFTの流れ弾で漂流し、偶然通りかかったアルテミスの艦艇が保護し、アルテミスに保護されていたのだという。

おそらく、大西洋連邦で理事をしているという彼女の父親の影響もあってか、アルテミスではVIPとして扱われているようだ。

しかし、宇宙で漂流させられるという恐怖は筆舌に尽くしがたく、彼女に鬱屈された暗い怒りは相当なものだ。

 

証拠に、フレイは端正な顔を歪ませて口からZAFTへの呪詛を漏らしている。

思わずサイが苦笑いを浮かべるほどだ。

 

「でも、サイはどうしてここにいるの?」

「それはな?・・・」

 

サイも、アルテミスへ至るまでの出来事を語る。

フレイは、久しぶりの恋人との時間を楽しむように聞いていたが、次第に顔が驚きの表情に染まっていく。

 

「じゃあそのキラって子・・・コーディネーターなの?」

「うん、そうだけど・・・」

 

当然、何も知らないものが聞けばそうそう判断するのは当然だが、

 

「スパイじゃないの?」

「そんなことはない!」

 

しかし、サイはそれを強く否定する。

 

「そう・・・でもどうしてそう言い切れるの?」

「あいつ、俺の一つ下なんだけど、ずっと近くに住んでてそんなZAFTのスパイなんてできっこなさそうなやつなんだ。俺のことは信じてくれるよな?」

「まあサイの言うことなら・・・でも、そのもう一人の人は・・・」

「ああ、ソランさん?」

「ええ、その人」

「あの人は、俺よりもっと人間見るのが上手いやつとすっごく仲がいいから、多分大丈夫だよ」

「そう・・・私も、そっちに乗れるかしら」

「え」

 

一瞬言葉に詰まるサイだが、少しだけ彼女の提案を思案する。

実際、さっきのサイの話を考えてみれば、ある意味アルテミスより安全なのはアークエンジェルかもしれない。

 

「アルテミスの偉い人と話した方が良いんじゃないか?俺も一応艦長に話しておいてはやるからさ」

「ほんとに!?じゃあ早速行ってくるわね!」

 

あれは確実に手段を択ばず目的を達成するだろう。

そう思わせるような()()()()()で、フレイはアルテミス司令官室へ駆けていった。

 

「どう切り出すかな・・・」

 

安請け合いしたサイは、どうにかしなければと思いつつ、肩を落としてしばらく立ち尽くしていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「そこぉ!」

「遅い!」

 

キラと刹那は、現在、汗を散らしてシミュレーターで戦闘訓練を行っていた。

現在、連続2時間で、戦績はキラの15敗0勝だ。

ストライクの解析担当がプライドをかけて挑戦しているのだが、結果は芳しくないらしく、暇を持て余したキラが、特訓を申し出て、シミュレーターでの訓練となった。

 

「少し休憩にするか・・・」

「ふぁい・・・」

 

刹那はまだまだ余裕があるが、キラは目に見えてヘロヘロだ。

過去に丸一日戦闘を行ったことさえある刹那と比べることは酷だが。

 

戦闘訓練の経過としては、最初の一戦でキラが一瞬で倒され、そこからキラが防戦に徹して戦闘時間を伸ばし、ようやく十分単位で持つようになってきた、といったところだ。

 

キラが集中力の限界が近いと判断した刹那は、休憩を申し出た。

 

(しかし、キラの成長には目を見張るものがあるな)

 

キラはほとんど初心者であっただけに、その成長ぶりは目を見張るものがある。

特に、飛び道具への反応と、姿勢の制御には天分があるようで、今まで見たどのコーディネーターよりも素晴らしいとさえ言えるだろう。

 

だがそれだけに、刹那は考え込んでもいた。

なぜ一般人であるキラを、親はこんな風に戦闘向きのコーディネートを施しているのか。

だが、それは今考えても仕方のないことだと、()()に関しては考えることを一旦止める。

現状優先されるべきは、キラが死なずに済むようにすることだ。

 

自分でも気づかぬ内に、いつもより少し憂いた表情でキラにドリンクを渡す。

 

「水分を摂取しろ」

「あ、ありがとうございます・・・どうかしたんですか?」

「なぜそう思う?」

「いえ、なんというか、そんな顔をしていて・・・」

「そうか・・・」

 

一瞬、動揺した刹那だったが、本題に入る。

 

「なぜ、俺に勝てないか・・・わかるか?」

「いえ・・・」

「お前に実際に生身で戦うイメージがないからだ」

「生身で、ですか?」

「ああ、そうだ。お前は見切りは上手いが、実際に切り込むイメージが出来ていないから、攻撃に転じた時に隙が生じ、其処を突かれて負けている」

 

そういう刹那は、ナイフ戦闘と射撃の達人である。

 

「だから、ムウに戦闘の手ほどきをしてもらうと良い。実際にMSだけでなく生身でも戦うのは、MSのプログラムを修正する時でも役に立つだろう」

「はい!」

「今日は昼まで休め。昼からムウに話をつけよう」

 

もっとも、ムウも暇を持て余しているので、頼みを聞いてくれるか出来レースではあるのだが。

 

「あ、ソランさん、一緒にお昼ご飯いきませんか?トールたちも誘って!」

「・・・ああ、行こう」

 

この後、フレイがいると聞いて動揺し、キラがいじられたことをここに記しておく。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ZAFT艦では、イザークとディアッカが治療を終え、作戦のあらましを聞いていた。

しかし、作戦の説明をしているZAFT兵は、今にも逃げ出したそうな顔をしていた。

 

(おっかねぇ~)

 

イザークとディアッカは、連合に負けたことがよほど悔しいのか、憤怒の表情を浮かべながら作戦の説明を聞いているのか、正直なところ怪しく思えた。

が、そこはZAFTレッドなだけはあり、一応頭には入っているようだが・・・

 

「ニコルが先行する、か」

「イザーク」

「ああ!隊長に上申に行くぞ!」

「ええ~・・・」

 

自分にとばっちりが来なくてよかった・・・と思うと同時に、彼の頭の中では連合の足付きの評価が上がっていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「では君たちには後備、というよりは鏖殺をしてもらおう。例の足付きのMSがいたら撃破してくれて構わん」

「「ありがとうございます!!」」

 

「よろしかったので?」

こうしてはいられないと作戦会議をしながら走り去っていく二人を見ながら、アデスがぽつりとつぶやいた。

「いいさ。彼らのやる気ならば、万が一ということもあるかもしれないだろう」

 

それは万が一でないと勝てないということか、と心の中で驚きを漏らすも、表情には出さず、そうですか、と答える。

そんなアデスの心情を見透かしたように、クルーゼはククッと笑って続けた。

 

「分の悪い賭け、というほどでもない。それに彼らも仮にも赤服だ。上手くやるさ」

「そうですか・・・」

 

どうも、心が見透かされているようで恐ろしい。

アデスは副官として長くクルーゼの下で働いているが、いつもこの恐怖のような畏怖のような感情を抱きながらだった。

しかし、これがクルーゼの強みでもあるのだろう。きっとこの恐ろしいまでの直感で相手の動きを先読みしたりしているに違いない。

 

(かわいそうに・・・)

 

崩壊は避けられないであろう眼下のアルテミスのホログラムに、アデスは憐みの視線を向けていた。




うーむアデス君、哀れなのはどちらかと言えばあの新人類超えて一属一種の新生物と正面切って戦う羽目になったイザーク君たちの方なのでは…

人間関係ブレイカーことフレイさんも登場いたしました。

そのうちキラ鍛えられるかなと思ったらこんなところでガチムチルート開いてしまった・・・
まあ見れる体格してる・・・くらいでやめとくように言っときます。


次回!
フラガ・ズ・ブートキャンプ!
お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14話:ブートキャンプ

よーし来週からはゴールデンウィーク!!
宴じゃあぁぁぁぁぁぁ!


「お願いします!」

「おうよ!任しときな!」

 

結果的に言えば、ムウは二つ返事で訓練を了承してくれた。

ただし・・・

 

「それで、俺でも操縦できるっていうシミュレーター、頼んだぜ」

「は、はい、もちろんです」

 

(一体何日かかるかなぁ・・・)

 

安請け合いしないことを学んだキラでもあった。

少し顔に影をかけているキラに、思い出したようにムウが声をかけた。

 

「あいつは参加しないのか?」

「あいつって・・・ソランさんですか?」

「ああ、あいつだ。あいつ強そうだから楽しみだったんだけどなぁ・・・」

 

そこへ、昼食の片づけをした刹那が入室してくる。

 

「参加するのは問題ない」

「ホントか!」

「ああ。確か、ニホンの剣道・・・だったか?」

 

刹那の宿敵であったあの男も、武士道、と言っていたか。

刹那自身の格闘術は、幼年期に仕込まれたナイフ術と青年期に身に着けたMS操縦術。加えて、外宇宙を巡っていた間に身に着けたそれらの技術の統合によって生み出された、刹那オリジナルのCQCである。

だが、こんな別世界にきてまであの男のことを思い出すとはな、と、懐かしさも覚える。

 

「俺は訓練用のナイフの方が合っている。それでもいいか?」

 

だが、ムウにとってはむしろ燃え上がる要素だったようで

 

「異種格闘戦か!楽しくなってきたぜ!」

「あんまり辛くないといいな・・・」

 

キラは半ば忘れられていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

所変わってアルテミス内訓練所(疑似重力有り)

 

「じゃあ、予定を話そう」

 

本来誰を鍛えるべきなのかを思い出すのに15分かかったムウは、具体的な指針を発表する。刹那の提案を組み込んで、ムウが発案した連合で唯一の、MSパイロット用ブートキャンプだ。

 

「まず、俺と戦ってもらう。使用するのは、訓練用サーベルとペイント弾入りのハンドガン。訓練用ナイフもアリだな。で、戦った結果でこの先の訓練内容を決める。何か質問あるか?」

「ないです」

「じゃあ早速行くか!」

 

審判に刹那が立ち、ボクシングリングのような格闘訓練場の両コーナーに両者が立つ。

お互いにプロテクターを装備し、キラは拳銃とサーベルを装備している。

対するムウは、サーベル二本のみだ。

キラは拳銃を右手に持ち、サーベルを左手に持っている。

ムウは、右手にサーベルを一本持ち、

向かい合う二人に確認を取り、スタートを切るのは審判の刹那の仕事だ。

 

「はじめ!」

 

まず、キラがペイント弾をムウに向けて発射する。

だが、ムウは一発も当たらない。

 

「甘い!」

 

むしろ掻い潜って、キラに接近してくる。

 

「くっ!」

 

だが、キラもサーベルを抜いて受け止めようとする。だが

 

「そこだ!」

 

ムウがサーベルをキラに向けて投げる。驚いたキラは、体を左に傾けて躱そうとするが、左手にもう一本のサーベルを装備したムウが、上段からサーベルを振り下ろしていた。

 

「一本だな」

 

一瞬、驚きと緊張で惚けていたキラだったが、すぐ再起動する。

 

「い、今・・・」

「ああ、思い付きだったけど、いい手だっただろ?」

 

しかし、一瞬で終わってしまったためさすがにまだいける、とキラがムウに何度か挑戦するも、堅実な、あるいは意表を突いた戦法で戦われ、結局勝てない。

 

「あ、ありがとうございました・・・」

「おう、お疲れさん」

 

キラは息も絶え絶えであるが、ムウは至極楽しそうに笑っている。

刹那は、まるでムウがキラから生気を吸い取っているようだな、などと非現実的なことを考えながら二人にタオルを渡す。

 

「ムウ、この後俺ともやるのか?」

「もちろん!」

 

輝かんばかりの笑顔で言われては断ることが出来ない。

仕方がないとばかりに、連合の制服の上着を脱いで、ズボンにタンクトップ姿になる。

 

訓練場近くに置かれた机から訓練用ナイフを手に取り、キラに交代するように指示を出す。

キラはよろよろと立ち上がって、リング近くのベンチにぐったりと(もた)れ掛かる。

とりあえず、勉強になるからと見学の態勢に入った。

 

「じゃあ行くか。くぅ~、わくわくするぜ!」

「そうか」

 

今度は、ムウが二本のサーベルをそれぞれの手に装備し、対する刹那が右手にナイフを、左手には何も装備せず、腰に何本かのナイフを佩いて半身になるように構えている。

ムウがキラに、合図を求めると、キラは大声が出せないからと、近くにあったゴングを鳴らせるように準備した。

 

「いきますよ?」

 

キラが掛けた一言で、場の空気が一気に()()()()

向かい合っていないキラですら、思わず息を止めて注目する。しかし自分の仕事を思い出して、慌ててゴングのボタンに手を伸ばす。

そして、甲高いゴングの音で模擬戦が始まる。

 

「オラ!」

 

ムウが、まず距離を詰めて右手のサーベルを上段から振るが、刹那はナイフの腹に添わせて危なげなく躱す。

其処に刹那が左手でナイフを投擲する。

だがそのナイフは、後退するムウに左手のサーベルで弾かれた。

 

しかし、そこですぐに体勢を戻せないムウに、今度は刹那が距離を詰める。

右手のナイフを構えて、ムウの首を狙ってナイフで斬りつける。

それを、ムウは防御のために体の近くに持っていたサーベルで防いだ。

防いだ、が

 

「っな!」

 

次の瞬間、刹那がムウの目の前からいなくなり、ムウの左手のサーベルが宙を舞っていた。

さらに、ムウの後ろからナイフが二本飛んでくる。

 

僅かにムウが体をひねり回避しようとするが、新たに投げられた三本目のナイフがムウの腰に当たった。

 

「勝負あり、だな」

「くあぁ~、負けちまったか」

 

負けてはいるものの、ムウは満面の笑みだ。

 

「今の、ナイフの鍔、ですか?」

 

外野から見ていたキラには、刹那が何をしたのかなんとか見えていた。

 

「ああそうだ。ナイフの鍔でムウのサーベルの柄を叩いたその後はナイフを飛ばしただけだ」

「昔傭兵でもやってたのか?」

「まあそんなところだ」

 

さすがに正確に答えるわけにもいかないので、お茶を濁す。正確には傭兵どころか世界に喧嘩を売ったテロリストなど、言えるはずもない。

 

「流石に今日はちょっときついな。模擬戦はここまでにしとこう。けど、キラの訓練メニューは大体固まったかな」

「ホントですか?」

 

キラは、少しドキドキしながらムウの返事を待った。

 

「ああ。まずは、俺と射撃の訓練だ。これはアークエンジェルの中に射撃訓練場があるからそっちでやる。次に、基礎体力をつけるためにランニング。これもアークエンジェルの中だ。幸い人間が全然いない割に艦が広いからな。思いっきり走れるぞ。で、最後に組手。こっちは俺の射撃訓練と一日交替で、ソランにやってもらうんだ。なんつってもあいつの方が強いからな」

「毎日・・・ですか?」

「いや、週4で休ませるぜ?いきなり運動したこともないやつが急に運動すると体壊すからな。最初は易しめだ」

 

もとがニートなので、少し辛い気もしたが、これもトールたちのためと割り切る。

おそらく、ムウのためにシミュレーターのプログラムを作らなくてはならないことはすっかり忘れているのだろう。

実はムウはそのプログラム完成のために4日の休みを設けたのだが、キラが気付いた様子は無さそうだった。

 

「明日から頑張ります!」

「おうがんばれ!」

 

三人は訓練場を片付け、揃ってシャワーを浴びに行った。

 

ちなみにトールはこの一連の流れを撮影しており、後でキラに渡して復習用にしていたが刹那にばれ、キラの訓練に付き合わされることとなった。

 

 

~シャワールーム~

 

 

「訓練上がりのシャワーは最高だねぇ」

 

ムウが楽しそうに、刹那は無表情に、キラは疲れた顔でシャワーを浴びている。

キラはシャワーから上がったらベッドに倒れこむ腹積もりだったが、ムウに悩みの種を植え付けられる。

 

「じゃ、シミュレーターの件、頼んだぜ?」

「そ、そうだった・・・」

 

実はそのシミュレーターで未来が変わるというのは、誰も知る由のないことである。




あれおかしいな、ガンダムなのに生身でガチファイトしてるぞ(Gガン?いえ、知らない名前ですね)

ムキムキまではいかないが一般兵士倒せるくらいまでは強化されると思われます。
あと、体格が少ししっかりしたらカガリとかフレイにモテそう(どちらも違う理由で)

来週はアルテミス崩壊します。お楽しみに!

5/1追記
刹那のナイフ持ってる手を修正しました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

15話:アルテミス攻略戦

誤字報告を下さる皆さま、大変助かっております。
感想を寄せてくださる皆さま、評価をつけて下さる皆さま、大変身励みになります。ありがとうございます。

今週はゴールデンウィークでした。
ゴールデンウィーク、作品の執筆進まないね
遊んじゃうよね
是非もないよネ


アークエンジェルがアルテミスに寄港してから三日目。

 

アルテミス基地は、喧騒に包まれていた。

特に上層部は、ハチの巣を突いたような騒ぎだ。

 

「光波防御帯の発振器が破壊されだと!?」

「熱源センサーには何も反応していないというのか!」

「ZAFTめ、一体どこから・・・・」

 

光波防御帯によって難攻不落を誇るアルテミスは、謎の襲撃によって未曽有の危機にあった。

しかも、司令官は能力でなくゴマすりで就任した士官というおまけ付きだ。

 

現に、この事態を聞きつけたアークエンジェルのバジルール艦長は、如何にしてアルテミスの兵士を振り切って脱走するかを考えていた。

 

「やはり戦闘はこなさなくては不味いか」

 

本来、バジルール中尉は軍規を絶対の判断基準としているのだが、艦長という立場が考え方を少し変えさせていた。

そこへ、フラガ大尉が駆け込んでくる。

 

「艦長!大尉から連絡だ!」

「何ですか?」

「この襲撃、九割以上の確率でGの内の一機が噛んでいるそうだ」

 

詳しく情報の提示を求めると、Gの内の一機、コードネームブリッツには、ミラージュコロイドという光学迷彩と、グレイプニールという熱源センサーをかわすための移動手段が備わっているという。

 

「作戦は決まりそうかい?」

 

そう言うフラガ大尉は、わかりきったことを聞いているように笑っている。

 

「Gと交戦し、戦闘データを収集後、月の第八艦隊と合流すべく離脱します。幸い、物資の補給は先に済まさせてあります。予定を繰り上げるだけですから問題ないでしょう」

「ということは、俺たちは出撃ですか?艦長」

「ええ。他の二人にもそう伝えてください」

「可能なら鹵獲、又は撃破。不可なら戦闘データだけでも、ですね」

「話が早くて助かります」

 

早くもブリッジから退出を始めていたフラガ大尉に、ため息をつきながらバジルール艦長は姿勢を整え、敬礼でフラガ大尉を送る。

 

「行ってまいります」

 

フラガ大尉は敬礼を返し、パイロットたちを呼びに行った。

 

「ここからの脱出か。ノイマン曹長、期待しているぞ」

「りょ、了解!」

 

なんとなくノイマン曹長が顔を紅潮させているように感じたバジルール艦長は、席を立ってノイマンのそばに立つ。

 

「曹長、少し熱があるようだ。この際だから休めとは言えんが・・・軍人たるもの、体調管理はしっかりしておけ」

「はっ!ありがとうございます!」

 

返答を聞き、ふっと笑った艦長は再び席に戻る。

 

「後は、アルスター家のお嬢様がこちらに移ると言っていたか?」

「はい、一応士官相応の扱いでとのことですが」

「戦闘になるということは言い含めておけ。では、脱出経路の確保に移る。総員、配置に着け!」

「「「はっ!」」」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

パイロットの控室では、三人のパイロットがスーツに着替え、飲み物を飲んでいた。

 

「キラ、トレーニング明けで休みもなく残念だが、戦闘に入る。行けるか?」

「行けないって言ったらどうなるんです?」

「行くことになるな」

「じゃあ大丈夫です・・・」

 

実際は軽い筋肉痛なのだが、MSが操縦できないほどではない。

 

「帰ってきたら・・・おっと、死亡フラグ臭いからやめとこう」

「なんです?それ」

「ああ、それはな・・・」

 

ここで、艦長室から連絡が入った。

 

「諸君、準備は整っているな?現在確認されているMSは全部で6機だ。そのうち三機は、Gの内のイージスを除く三機だ。気を抜くなよ。いざとなったら宙域を離脱してかまわん。絶対に機体を失うな。いいな?」

「了解。そっちもよろしく頼みますよ?」

「当然だ。武運を祈る」

 

艦長からの通信が切れた。

ムウは二人の方を向くと笑いながら、

 

「おまえら、終わったら模擬戦してもらうからな?死ぬんじゃねえぞ?」

 

顔こそ笑っているものの、目は真剣そのものだ。

 

「はい」

「ああ」

 

だからこそ、しっかり返事をして三人ともMSへ向かう。

 

戦闘訓練は、時間の許す限りでは万全だ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「あいつはどこだ!」

 

戦闘宙域で、ひと際暴れ回っているMSが一機。

 

「撃ち落としてやるぜ!」

 

ひと際乱射しているMSが一機。

 

お分かりかと思うが、イザークとディアッカ。デュエルとバスターである。

 

二機とも、外付けの予備バッテリーまで持ってくるほどの力の入れっぷりである。

 

「二人とも素直に撤退してくれるでしょうか・・・」

 

あまりの熱の入り方に、ニコルは若干引いていた。

しかしジンのパイロット達はそうでもなかったらしく、一緒に猛々しく暴れている。

 

そこへ、熱源センサの警報が響く。

続けて、デュエルでロック警報が鳴ったため、急いで回避行動に移る。

そこにいたのは・・・

 

「ストライクー!!!!」

 

ビームをかわしたイザークは、ビームサーベルを抜刀しストライクへ斬りかかる。

改修によって、直線加速力は以前よりも向上している。

しかし

 

「なっ!」

 

ストライクは、ビームサーベルを持つ腕をつかみ、キックで体を入れ替えて躱した。

 

「生意気なぁー!」

 

奇麗に攻撃をかわされたことで一層怒りを深くしたのか、先ほどよりも更に勢いを増して突進するが、冷静に俯瞰しているニコルから見ればそれはたいへん危い。

 

「直線的すぎる!イザーク!もっと落ち着いて・・・」

 

しかし、忠告は遅すぎた。

 

「なにぃ!」

 

デュエルは、今度こそはと突き出したビームサーベルを、また腕ごとつかまれ、今度は切断されてしまったのだ。

更に、もう一度追撃の蹴りが入る。

 

「がはぁ!」

 

腕が一本無いせいで上手く慣性制御が出来なかったのか、コクピットハッチから煙が噴き出ている。

 

「イザーク!大丈夫ですか!?」

 

急いで近寄ったニコルは、接触回線での通信でコンタクトを試みるが

 

「ザザ・・・母上に合わせる顔が・・・・」

「よかった・・・」

 

生きてはいるようだが、PS装甲がダウンしてしまっている。

 

デュエルをヴェサリウスの方向へ流すと、ディアッカに通信を入れる。

 

「見たでしょう!?ディアッカも冷静になってください!頭が熱くなったままじゃ勝てるものも勝てませんよ!」

「わかったよ・・・。癪だけど、連携していく。ニコル、俺が散弾で動きを制限する。ランサーダートで関節を打ち抜け」

「了解です!」

 

基地防衛隊の相手はジンに任せ、ストライクを撃破しようと連携を取ろうとしたその瞬間。

 

「あいつは!」

 

連合のジン。本来の姿から変わっているその機体は、当然ディアッカの怒りの的で

 

「わりぃなニコル。やっぱりあいつを倒すぜ!」

「ディアッカ!?もう・・・サポートに回りますよ!」

 

以前、ディアッカはジンの人外染みた動きに翻弄され、結局一発の銃弾も当てることが出来なかった。

 

「ハチの巣にしてやるぜ!」

 

ならば今度こそはと、先ほど装填したばかりの散弾を速攻で発射する。

 

だが、ジンは尋常でない加速力で散弾の範囲から離脱、バスターへと接近し始める。

 

「ディアッカ!離れて!」

 

間一髪で、重斬刀に砲身が破壊されることを免れるが、ジンは振り切った反動を利用して、小型ナイフを投擲し、足を射抜かれる。

 

「俺の勝ちだ!」

 

だが、その隙に散弾の次弾装填を済ませたディアッカが砲身をジンに向ける。この距離でなら逃げられまいと、散弾を発射する。

ニコルは、胸を撫で下ろしかけた。

 

しかし、ジンのパイロットはディアッカ達の想像をはるかに上回る怪物である。

 

なんと今度は重斬刀を投げつけ、散弾が拡散する前に銃弾を弾いたのだ。

 

「やっぱりバケモンかよ・・・」

 

しかも重斬刀は角度を上手く調整されており、散弾の一部がディアッカに返ってきていた。

 

「ディアッカ!」

 

ニコルは、ディアッカを守るために機体をバスターのすぐ近くまで寄せる。

だが、ニコルには、正直に言うと、敵が小型ナイフしか装備していないとはいえ、勝利するビジョンが全く浮かんでこない。

 

「撤退します。ディアッカ、僕が殿を務めます。他のメンバーへも連絡を入れてください」

「・・・わかったよ」

 

何か思うところがあるのか、ディアッカは先ほどの猛りっぷりが嘘のように素直に撤退する。

 

「我ながら無謀なことを言ってしまったでしょうか・・・」

 

策がないわけではない。しかし、先ほど撤退していったストライクが控えている状況で、このジンに上手く撤退させるには。

 

「やるしかありませんね」

 

ブリッツのPS装甲が灰色に変わった。




やったねノイマン!ルート開いてるよ!多分!

そしてなぜかPS装甲がダウンしたブリッツ。一体何コロイドを使うつもりなんだ・・!

来週は、また名有りモブが出現します!(まだ考えてない)

果たして無事アークエンジェルは第八艦隊と合流できるのか。

次回、ステルス戦闘!お楽しみに!

追記 5/8
トリケロスではなくグレイプニールで移動しています。スパイダーマンごっこの要領です。
あと、「アルテミスのを」ではなく「アルテミスの兵士を」と変更いたしました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

16話:アルテミス脱出

感想欄で次回に盛り込みたい!とか言っておきながらすっかり忘れてた設定をいくつか盛り込んでみました。


刹那の駆るジンには、アルテミスでいくつかの修理を兼ねたアップグレードが施されていた。

 

◇回想◇

 

MSドックで、マードックが声を大にして叫んでいた。

 

「だから言っただろ!曹長の方が強いってよ!」

 

一方で、やらかした、と顔に書いてある作業員が口から生気を漏らしながら後悔の言葉をつぶやいている。

 

「大穴に目が眩んだおれがバカだった・・・・」

「じゃ、約束通り曹長のジンの改修頼んだぜ!」

「ちょっと部品変えるだけじゃないですか」

「お前の勉強になるだろう?頑張りな」

「はぁ~・・・。しかたねぇ、やるか」

 

ここでの改修とは、四肢をの動きを補助するスラスターの出力向上と、タンクの大型化だった。

作業員の男が取り付けを始めた所で、刹那がドックに顔を出す。

 

「作業の進捗を聞きに来たが・・・」

「おお!旦那!いまあいつにやらせてるとこだ。あと五時間ってとこでしょう」

 

マードックの声がよく通るためか、作業をしている本人からも返事が返る。

 

「三時間でいけます!」

「丁寧にやれよ!」

「・・・ありがとう」

「いいんですよ旦那!俺たちも勉強になるってもんです」

「そうか」

 

刹那の改良案で、ジンのフレームを強化する案は既に完了していた。

 

「魔改造ってこのことだな」

 

作業員のつぶやきは誰に聞こえることもなかったが。

 

◇回想終了◇

 

現在、刹那のジンは目標をロストしていた。

 

(レーダー、熱源センサにも反応なしか)

 

殿を買って出たと思われる黒いMS、おそらくはブリッツは、光学的に完全な迷彩であるミラージュコロイドでの迷彩を搭載している。音までは隠せないものの、宇宙では音は伝わらないため、実質は完全な隠蔽機能と言って差し支えない。

 

(戦闘機動中も隠れることができるとは大した技術だ)

 

かつて刹那が搭乗していたエクシアをはじめとするガンダムにも迷彩機能は搭載されていたが、戦闘中の展開は不可能だった。

 

(どう対応したものか・・・)

 

対抗手段が無いわけでもないが、それを手札として切るかどうかを迷っている。

結果的に、相手の出を待つことになった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

一方のニコルはというと、こちらは相手がかかってこないことに安堵していた。

撤退の指示を出した以上、あまり一人で戦場に留まるのは得策ではない。

 

「機を見て離脱しましょう・・・PS装甲を展開しても気絶して捕虜になったんじゃどうしようもありません」

 

おそらく、相手は自分にビームを打たせて位置を把握しようとしているのだろう。

本来、虚空から出てくるビームを避けるなど人間業ではないが、おそらくあのパイロットにはやってのける自信があるのだろう。

あまり長引かせてバッテリー切れになるのも不味い。

 

ニコルは、ランサーダートを一本、近場へ投擲した。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

(!)

 

刹那から見て左上の方向で小規模な爆発が発生した。

同時に、ブリッツが姿を現し、後方へ撤退していく。

 

(逃げられたか)

 

おそらく、後詰めにナスカ級が要塞の攻略にかかるだろう。

さすがの刹那にも、要塞一つを敵から守り切ることは難しい。

出来ることといえば避難を促すくらいだ。

 

自身も離脱しようとしたところで、アークエンジェルから通信が入った。

 

「曹長、無事ですか?」

「ミリアリアか?ああ。無事だ。今から帰投する」

「待て」

「なんだ、バジルール艦長?」

「馬鹿者!軍属なら目上には敬語を使え!」

「すまない、善処しよう。それで、話は?」

「まったく・・・曹長、当艦はこれより月基地へ向けて航行を開始する。指定のポイントへ移動し、回収する」

「了解した」

 

すぐに、座標データがジンのコントロールパネルへ送られてきた。

刹那のジンは、目標へ急行する。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

結果から言うと、脱出は上手くいった。

 

「サイ~、会いたかったわ~」

 

乗員が一人増えてはいるが。

 

「ちょ、よせよ、今みんな見てるから」

「じゃあ後で部屋に行くわ!また後でね!」

「はぁ」

 

また、そんな二人のやり取りを、キラは何とも言えない顔で見ていた。

 

「話しかけなくても良いのか?」

「トール・・・」

「略奪愛しなくてもいいのか~?」

「りゃ、僕はそんな・・」

「なに?キラのフレイが好きってその程度の気持ちだったの?」

「ミリアリアまで・・・」

 

実際、キラの心中は複雑だった。

確かに好きな女の子が楽しそうにしゃべっているのはショックだが思っていたほどではないし、サイのことも大切な友人だ。

それに、最近ちらちらと頭の隅でヘリオポリスで会ったあの金髪の女の子のことも浮かんでいる。

これがミリアリアの言う通りその程度しかフレイのことが好きではなかったのか、あの気持ちは偽物だったのか、自分が本当に好きなのはあの金髪の子なのか?

正しくキラの頭の中は混沌としている。

 

そこへ、トールが声をかける。

 

「ま、どれがホントかわからないなら一旦全部忘れて別のことやった方がいいぜ」

「な、なんで」

「勘だよ勘!行こうぜミリアリア。あっちで整備班の人が温泉作りたいとかなんか面白そうな話してたんだ」

「温泉!?艦の中に!?」

 

トールは一瞬だけキラの方を向いてウインクすると、ミリアリアと一緒に休憩スペースへ行ってしまった。

 

「もてるはずだよ・・・」

 

キラはトールの空気を読むスキルと気遣い能力の高さに舌を巻いていた。

そしてトールのアドバイスを思い出し、自分の頬を叩いた。

 

「ムウさんに言われてたナチュラル用シミュレーターのプログラム、作っちゃおう」

 

なんだかんだで立ち直ったキラは、自室に籠って作業を始めた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ブリッジでは、第八艦隊と偶然通信が取れ、ハルバートン准将と面識のあるマリューを折衝役に合流のポイントの話し合いをしようとしていた。

だが

 

「娘がそこにいるのか!」

 

突然一人の男性が声を上げた。

 

「失礼ですが、そちらは?」

「大西洋連邦理事のジョージ・アルスター氏です」

「!、これは失礼をいたしました。連合軍技術大尉、マリュー・ラミアスです」

「おお!君があのGシリーズの開発責任者の!一度会ってみたいと思っていたのだ!」

「恐縮です」

「よし、ここで待っていてもらちが明かない!私が直接会いに行きましょう」

「は?今、なんと」

「艦を一隻借りるよ、ハルバートン君。なに、心配はいらない。大西洋連邦の中でも第八艦隊の練度は指折りだ。おっとこうしてはいられないな。私も準備をしなくては。では諸君、次は直接お会いしよう」

 

画面からジョージ氏が消えると、ハルバートンが疲れ切った表情で頭を抱えていた。

 

「ずいぶん行動的な方だったんですね・・・」

「ああ、現場に出てきてくださるその心意気は素晴らしいの一言なんだがね・・・」

「こちらには二機のMSがありますので、なるべく早く到着して護衛いたします」

「ありがとう、バジルール艦長。彼は我々にとって欠かすことのできない人物だ。全力を尽くしてくれたまえ」

 

ここで、ハルバートン氏の近くにドリンクケースと薬包が持ってこられる。

 

「ああ、胃薬か、ありがとう。まったく君は優秀な副官だよ」

「お褒めにあずかり光栄です」

 

副官は笑みを浮かべながら敬礼し、画面にも一礼して去っていった。

 

「では改めて、頼んだぞ」

「「「はっ!」」」

 

ブリッジの三人には、これ以上ハルバートン准将の胃に負担を掛けるわけにはいかないという共通認識が生まれていた。

特に、士官学校で教え子だったマリューは、ハルバートン准将の人となりを知っているためにそれが顕著だ。

 

バジルール艦長がパイロットの部屋へ連絡を取る。

 

「曹長か?ちょっと頼みたいことが・・・」

 

トップの気味が悪いほどの連携の良さが、運命を変える。




ハルバートンさんは優秀でしかも快活な人当たりのいい人ですが軍人のため断れない無茶ぶりを受けて胃がリンチにあっています。

付録
トールの彼女倍率
一般的マンモス大学の女性の半分は狙ってるレベル

5/20追記
戦艦は一席ではなく一隻と数えます(修正しました)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

17話:ジョージ・アルスターという男<前編>

作者は麻婆豆腐のもとを自分で調合するのが趣味なのですが、この度黄金比を発見したことを祝し、ここに記したいと思います。

甜面醬:大匙1杯
豆板醬:大匙1杯(+3~4杯)
醤油 :大匙3杯
味醂 :大匙2杯
紹興酒:大匙1杯
黒胡椒:適量
花椒粉:大匙1杯(+1~2杯)
豆鼓 :5~6粒(潰す)
大蒜 :3欠
生姜 :20グラム磨り下ろし
豚挽肉:100グラム
辣油 :適量(+20ml)

豆板醤を四川豆板醤に変更し、()の内側をすべて適用すると
外道マーボー:初級編
が作れます。
またの名を泰山マーボー初級者用。(非公式)
(きっと生粋のFateファンならわかる)

この文章から何が言いたいかと言えば・・・
キラって辛いもの大好きだよね(種キャラ劇場参照のこと)


「では、俺はキラと共に先行してその艦の護衛を行えばいい。そうだな?」

「ああ、曹長の戦果は目を見張るものがある。どうか・・・・よろしく頼む!」

「了解した。キラには俺の方から伝えておく」

 

刹那にはナタルの言いようがいささか大仰に感じられたが、キラにもいい経験になるだろうと考えてもいた。

トレーニングルームで筋トレの休憩をしていた刹那は、脱出前から少し自室に籠り気味のキラを呼びに行く。

 

「キラ」

 

ドアをノックすると、すぐには返事がない。

少ししてから、ドアが開かれた。

 

「どうぞ」

「失礼する・・・どうした、体調が優れないようだが」

「いやぁ、ムウさんに頼まれたシミュレーターのプログラムがようやく終わったところなんです・・・」

 

つまり1日やそこらでくみ上げてしまったということだろうか。

内心感動を覚えながらも、用事を伝達しなくてはと思い出し、要件を告げる。

 

「今から艦の護衛を行うことになる。少しアークエンジェルから離れることになるが、ノイマンやトールたちは優秀なクルーだ。心配はいらないだろう」

「あ、はい。ところでその護衛する艦って、誰か乗ってるんですか?」

「大西洋連邦の理事が乗っているそうだ。何でも、娘に会うためにと第八艦隊から船を一隻徴発してきたようでな」

「それってフレイの・・・」

「理事の名前はジョージ・アルスターだそうだ」

「やっぱり・・・」

 

刹那の話を聞きながら、キラの顔は百面相をしている。

 

「どうかしたのか?」

 

鈍い刹那にも疑問に思われるほどに。

 

「いえ・・・準備しましょう」

「ああ、そうだな」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

はたしてキラは本当に何でもなかったのだろうか?

脳量子波を使って確認できればよかったが、どうやらムウは脳量子波が一般人よりも強いらしい。使えば気づかれてしまい面倒なことになるだろうな。

第一、他人の心を勝手に覗くのは人としてやるべきではない。

 

恐らく、航路を考えればあの俺たちを追っていた部隊と戦うことはないだろうな。

だが斥候と会敵する可能性はあるか。

さて、武器はどうしたものだろうか。

 

思えば、外宇宙を回っていたころはよくよくティエリアに助けてもらっていたようだな。

居なくなって初めてわかる

その感覚は知っているはずだが、こうも気づけないとは。

 

むっ、あちらにいるのは・・・

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「あら、ソラン曹長じゃない。考え事?」

「なぜわかった?技術大尉」

 

いくら刹那が仏頂面とはいえ、実は見る人が見れば表情は結構わかりやすい部類だ。

 

「顔に書いてあるもの」

「そうか」

「それで、考え事っていうのは?」

「ああ、ジン・メビウスの装備をどうしたものかと考えていてな」

「そんなに必要かしら?」

「これは勘だが、斥候かなにかと遭遇する可能性が高いと踏んでいる」

 

マリューは少しだけ思案顔をして、回答した。

 

「いつものでいいんじゃないかしら。」

「なぜそう思う?」

「だってあなたの装備、熱源反応から居場所が割れないステルス戦闘用みたいなものでしょ?斥候相手なら、あなたの技量も考えればそれがベストじゃないかしら。」

「そうか・・・感謝する、大尉」

「こういうことならいつでも相談に乗るわよ。なんて言っても技術大尉なんですからね」

「そうか」

 

それに、とマリューが付け加える。

 

「これ以上ハルバートン准将の胃に負担を掛けたくないもの」

「・・・それでか」

「何が?」

「いや、こっちの話だ。もう行く」

「じゃあ、キラ君もだけど、無事に帰ってくるのよ」

「ああ、わかっている」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

コクピットの中で、刹那とキラは準備を整える。

その間に、ミリアリアが合流ポイントの説明を行っている。

 

「以上で説明は終わりです。大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

「問題ない」

 

かなりアークエンジェルの近くまで来ているらしい。

 

「それでは、発進シークエンスへ」

「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」

「ソラン・イブラヒム、ジン・メビウス、発進する!」

 

電磁加速で二機のMSがアークエンジェルの足から飛び出し、うち一機は色が変わる。

目標ポイントまでの道のりで、二人は少しばかり話す。

 

「前と色が少し違うな。調整したのか?」

「はい、マードックさんたちと装甲の電圧を変えられるように。今はあまり効果がないですけど、最終的には自由にコントロールできるようになると思います」

「そういえば、ムウに頼まれていたシミュレーターのプログラム、あれを改造すればナチュラルでもMSに乗れるようになるんじゃないか?」

「あ、そういえばそうですね」

 

ここで、刹那が制動をかけた。

 

「だが、・・・・ここが合流ポイントだ。キラ、そちらのセンサーではどうだ?」

「おっきいのが12時の方向に一つ、多分戦艦だと思います」

「無事に来ることが出来たらしいな」

「あと五分くらいでつくと思いますけど・・・」

 

その時、アラートが鳴った。

 

「三時の方向に敵機・・・キラ、俺が行く。援護しろ」

「はい!」

 

刹那のジン・メビウスが近くのデブリを蹴って目標の居ると思われる方向へ進んでいく。

キラのストライクも、少しぎこちないがこれに続いた。

 

「目標を補足・・・キラ、見えるか?」

「はい・・・斥候でしょうか」

「アンテナの大きさからみてまず間違いないだろう」

 

刹那のジンが重斬刀を構えた。

 

「あそこまでは障害物がない。ジンを転進させる必要があるが、その瞬間にビームライフルで牽制してくれ。当てる必要はない」

「わかりました」

 

刹那のジン・メビウスのスラスターに灯が灯る。

 

「では、行くぞ」

「準備OKです!」

 

瞬間、刹那のジンがスラスターの残光を曳いて加速する。

 

そして、索敵型ジンとちょうど半分ほどの位置で制動をかける。

 

「今だ!」

 

ストライクのビームライフルが、索敵型ジンの後ろを掠めた。

その一瞬に気を取られたジンのパイロットを、刹那のジンがコクピットごと突き刺した。

 

 

「的確な援護だった。よくやったな、キラ」

「いえ・・・」

 

心なしか、キラの顔が沈んでいるのではないかと刹那は感じた。

 

 

『素晴らしい腕だ!』

 

突然、二人の耳に通信の音声が響く。

 

『ここまでの人材が今まで無名であったとは!採用部はいったい何をしておったのだ!』

 

刹那には心当たりがあった。

ジンのスラスターで、6時の方向へと向き直る。

 

「ジョージ・アルスター氏ですね?連合軍所属、ソラン・イブラヒム曹長です。少尉、挨拶を」

「キ、キラ・ヤマト少尉です。その、初めまして・・・」

 

『ほほう!君のようなまだ若い少年がパイロットとは驚いた!もしかしてコーディネーターかね?』

 

驚いたキラは固まる。

 

『安心したまえ。確かに私はブルーコスモスの会員だが、ブルーコスモスは本来コーディネーターを傷つけることは禁止している』

 

再び、キラが驚きで固まった。

 

『テロリスト共がブルーコスモスの名を騙るのは腹に据えかねておるのだ!まったく、盟主のあの頭の柔らかさを見習って欲しいものだよ。む?すまんすまん、こちらから一方的に喋りすぎてしまったな。

では・・・曹長!エスコートを頼んでもいいかね?』

 

「もちろんです。少尉、行きましょう。敵が来るといけない」

「・・・っは! はい!」

 

ようやくキラが再起動したところで、刹那達はアークエンジェルの方へ引き返し始めた。

帰り道では敵と遭遇することもなかったが、キラはジョージ・アルスター氏の質問にさらされ続けていた。

アークエンジェルと合流するころには、キラはコペルニクスでアスランと別れたところまで話してしまっていた。

 

『もしかしてそれはパトリック・ザラの息子、アスラン・ザラのことかね?』

「知っているんですか!?」

『今や、プラントはパトリック・ザラの支配する国に成りつつある、とのことだ』

 

二人の話を、刹那は興味深そうに聞いていた。




ブルーコスモスはテロ組織ではありません。
という設定を聞きました。
面白そうなので僕も流用しています。

盟主は頭が柔らかい人だと思うのです。
手段も選ばないですが。

後、最後の方、なんかもうプラントはパトリックさんの国になってましたよね。
実はプラントを乗っ取ったメンバーが宇宙開発を妨げた最悪のテロリストというのは皮肉だなあと思っています。
まあブルーコスモスを騙るテロリストについては、コーディネーターにNジャマ―で殺された人は多くても、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いは少し違うんじゃないかとも思うのです。(悲劇に会ったこともない人間の言ですが)

ちなみにプラントと連合の人口比は100億対1500万です。
リアル一騎当千が求められるとかジオンも真っ青ですわ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

18話:ジョージ・アルスターという男<中編>

ジョージ引っ張るなあと作者は思っています。


『大西洋連邦所属、ナタル・バジルール艦長であります。遠い中、このような遠い戦場の只中までお越しいただき・・・』

『ああ、艦長そのような堅苦しい挨拶は抜きでかまわんよ。そんなことより娘だ。私のかわいい一人娘と話をさせてくれるかね?』

『了解しました。少々お待ちください』

 

この間に、刹那とキラがアークエンジェルへ帰投する。

 

「凄い人でしたね、ジョージさん」

「ああ、戦場へ娘のために出てくるというのは素晴らしいことだ」

 

(あんな人に認められてるんだからサイってすごいよなぁ)

 

キラが久々にサイのすごさを実感しているところで、刹那がキラを呼んだ。

 

「キラ、俺はブリッジへ向かうが、お前はどうする?」

 

僕も、と言いかけたキラだったが、ドックでストライクの調整をしなくてはならないことを思い出す。そのまま刹那と別れ、ドックへ向かった。

 

「おう、ボウズ、お前さんが言ってた感圧センサ、使えそうなやつをいくつかピックアップしといたぜ」

「ありがとうございます、マードックさん」

「キラ君、圧力の伝わり方のシミュレーションをしたいんだけど、ストライクのコンソールから3Dデータを取り出してプログラムを組んでもらっていいかしら」

「わかりました。多分15分くらいでできると思います」

 

ストライクは現在、省エネを目指し一番バッテリーのリソースを食っているPS装甲の改良に取り組んでいた。

現在、装甲材の下に圧力センサを組み込む試みの最中で、キラがソフトウェアを、整備班のエースたちがハードウェアを担当し、急ピッチで作業が進行していた。

 

30分後、キラがシミュレーター用プログラムを完成させ、ストライクのコンピュータが演算を開始する。

 

「マリューさん、あと5分くらいで衝撃伝達のシミュレーション終わります」

「終わったら私の端末にデータを転送して頂戴」

「了解です」

 

五分後、整備班がセンサ設置場所のミーティングを開く。

 

「ほぼ決定でいいかしら」

「いいと思いますぜ。しかし、データ取る前に実戦で撃墜されちまわなきゃいいんですが・・・」

「シミュレーターを借りてもいいんだったら実戦のシミュレーション出来ますよ。ムウさんに作ったシミュレータの物理エンジンを流用すればいいですから・・・」

「そんなもん作ってたのか・・・」

「呆れるわね・・・」

 

驚きを通り越して呆れ顔の整備班の面々だが、それに気づかずキラが続ける。

 

「えっと、データ入力をすれば使えるはずなので、ムウさんの使用試験も兼ねてやっちゃおうと思うんですけど」

「いいわ、許可します。誰かフラガ大尉を呼んできて」

「ハイ!」

「キラ君、データ入力にかかる時間は?」

「15分くらいください」

 

一気に二つもの大きな実験が完成間近になり、整備班が俄かに慌ただしくなる。

 

キラがアークエンジェルに帰ってから約一時間が経過し、ムウがシミュレーション室へ現れた。

 

「俺もシミュレーションできるって本当か!」

「はい、僕の方がストライクの実験も兼ねてるのでちょっと動きが悪いかもしれませんけど・・・」

 

ムウは目を輝かせながら子供のような満面の笑みでキラを急かす。

 

「かまわねえって、さっそくやろうぜ!」

 

一応ムウの方はチュートリアルを終え、キラと対戦を始める。

 

「俺が乗ってるのって・・・」

「改良前のストライクにジンのマシンガンを持たせたやつです。対実弾のテストなのでそれで一旦我慢してください」

「しかたねえな・・・じゃ、始めるか!」

 

その日、ムウがシミュレーション室から出てくることはなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

時間と場所が少し変わり、ブリッジにて、親子が感動の対面を果たしていた。

 

「パパ!」

『おおフレイ!無事だったか!』

「大変だったのよ?」

『よしよしその話は直接あって聞くとしよう。艦長、乗艦の許可をもらえるかね?』

「了解です。そちらにドックの番号を・・・」

 

十五分後、ドックでは抱き合う親子の姿が見られた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「私も出資者として今のストライクを見ておきたいのだが」

 

アークエンジェルへ移ってきて、娘との対面を終え、最初に発した言葉がそれだった。

自室へ向かったフレイを尻目に、艦長はすぐにドックへ連絡を入れる。

 

「大尉、今ジョージ・アルスター氏が見学に行っても問題ありませんか?」

『ええ、大丈夫ですよ、艦長』

 

「問題ないそうですので、行きましょう。曹長、氏に同行してくれ」

「了解」

「ほほう、君はあのジンに乗っていたパイロットかね?」

「はい」

「君もコーディネーターかな?」

「いいえ、自分はナチュラルです」

 

嘘とは思わなかったようで、驚いたような顔をしている。

 

「ほう!」

「嘘と思われないので?」

「そんな嘘をついても意味はないだろう!ははは、ナチュラルがここまでやるとは、ZAFTの連中も思わないだろうな!」

 

ドックへ向かう間、ジョージ氏は刹那へキラ同様にヘリオポリスから、またヘリオポリスでの話を聞いた。

 

「君のような人間が中立国で暮らしているとは・・・世界は広いものだ・・・」

「ここがストライクの格納庫になります」

「おお!ここにわが軍の努力の結晶があるわけだね!?」

「ここからは自分、マリュー・ラミアス技術大尉が案内を担当させていただきます」

 

扉を前に止まっていた二人の前に、扉からマリューが出てきた。

 

「君があの!PS装甲の開発者というマリュー・ラミアスかね!ハルバートン准将がよく君のことをほめていたよ!」

「まあ、本当ですか?」

 

マリューは刹那の方へウインクをすると、ジョージ・アルスター氏を連れてドックの奥へと向かっていった。

 

おそらく自分に休めと言っているのだと察した刹那は、自室へ向かった。

途中通りがかったシミュレーション室から異様な熱気が外へ漏れ出していたように感じたが、気のせいということにして自室へ向かった。

 

刹那が自室の扉の前に着くと、トールがいた。

 

「どうした?」

「キラを知りませんか?」

「今はドックにいるだろう。しばらく待った方がいい」

「フレイのお父さんがいるんですか?」

「勘か?」

「勘です」

 

(もしや・・・)

 

変革しているのかとも思ったが、ティエリアがおらずヴェーダも無いため確かめようがない。

おそらく1時間ほどすれば大丈夫だろうと伝え、刹那は自室へ入った。

 

(あの時・・・)

 

刹那の攻撃をキラがサポートしたとき。

あの時キラから感じたものは、確かに脳量子波だった。

 

一度この世界に脳量子波という概念はないのではないかと考えた刹那だが、コーディネートを施されたキラが脳量子波を発しているとなると話は変わってくる。

 

キラの両親は脳量子波を知っているのだろうか。

 

それとも・・・

 

キラは()()()()()()()()

 

キラは、今まで戦ったコーディネーターよりも性能が高いように感じる。

それが一般家庭にいたのは、キラを調整した人物と育てた人物が違うということではないだろうか?

そうすれば、状況に添わない不自然なコーディネートにも納得はいくが・・・

 

だとすれば

 

(キラの親は余程良い人間か、あるいは悪人か・・・)

 

刹那の脳裏には、子供たちに歌を教える女性の姿と、自分に親を殺させた戦争狂の姿が浮かんでいた。

はたして後者だった時、自分はどうすべきなのだろうか。

 

自分のような人間には成ってほしくはない。

そのつらさは嫌というほど知っている。

 

だが、憶測だけで人を心配することもまた失礼ではないだろうか。

ゆえに・・・

 

(直接会って見極める・・・・しかない、か?)

 

おそらく、退役を希望する学生たちを下すために一度オーブ本国へ寄港するだろう。

その時に、会ってみるべきか。

 

暗闇の中で、しばらく刹那は考え込んでいた。




キラが体力切れで倒れたところで訓練が終了しました。(6時間くらい)
これでMSパイロットが三人、まだクルーゼ隊の方が多いぞ!(白目)

これで噂のノイマン曹長もおるんやで・・・

・・・これは不沈艦とも言われますわ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

19話:ジョージ・アルスターという男<後編>

もうすぐ地球に着きます。
このやっと感すごい・・・

ここまでこれたのは一重に読者の皆様のおかげでございます。
ありがとうございます。


「そろそろ合流できるかね?」

「ええ、准将」

 

月軌道にて、世界にその練度の高さを知らしめる第八艦隊がその威容を示しながら続々と集結していた。

 

「ふふ、彼女と話すのも久しぶりだな」

 

ハルバートン准将は普段から温和な人物ではあるのだが、このときは普段よりも親しみに満ちた、父親のような顔をしていた。

 

「彼女もここまで心労もあっただろうが・・・よくここまで来てくれたものだ」

 

旗艦のブリッジのメンバー全員が、それはあなたもだろうと、うっすら目に涙を浮かべているあたり彼の人徳が窺える。

 

「さて、諸君、この付近の宙域にあのクルーゼ隊が接近しているとの情報がある。後一仕事で、我々は連合を大きく勝利へと近づけることが出来るわけだ。彼らを無事地球へと送り届けたら、基地でパーティーを開くとしよう!是非参加してくれたまえ!」

 

実は、現在連合の勝率は3割にも満たない。

メビウスとジンでは戦力が違いすぎるのだ。

そんな彼らにとって、Gは正に希望の星である。

しかも、それが全戦全勝の勝率を保っていると聞けば皆彼ら、アークエンジェルのクルーたちへ賭けたくもなるだろう。

 

「准将!アークエンジェルから入電です!」

「おお!それで、なんと?」

 

一瞬、通信担当の兵士の顔が青くなる。

 

「現在、クルーゼ隊と思しきZAFTの部隊と交戦中とのことです!」

 

ブリッジの間に緊張した空気が流れる。

 

「皆、覚悟はいいな?」

 

ハルバートンの問に、ブリッジの全員が強く頷く。

 

「では、全艦隊に艦長より通達!船腹を敵ナスカ級へ向けて回頭!ミサイルをすべて近接信管にセットして発射準備だ!」

「続いて副官から全ネルソン級に通達!全艦ビーム砲の発射準備!目標、敵ローラシア級!」

「アークエンジェル、及びバーナードへの通達完了しました!」

 

ラウ・ル・クルーゼの名前は、世界樹攻防戦において人間とは思えないその戦果から、連合、ZAFT問わずその名を知られている。

ましてや、自分たちの開発したGを四機も奪取されているのだから、その危険性は言うに及ばずだ。

だが、第八艦隊の士気は高い。

全員が目的を理解し、共有する第八艦隊は、必ずやアークエンジェルを地球へ送り届けるという意思をその全ての所属兵士が一丸となって動く、まさに軍隊の理想形と言えるものだろう。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

現在、ヴェサリウスはアークエンジェルに追撃をかけていた。

全員が、つい先日までプラントの歌姫救出という任務をこなしていたとは思えないほどの元気さだ。

 

それもそのはず、艦の乗員はラクス・クラインに声をかけられて皆有頂天だった。

 

イザークが普段見られないような笑顔だったこと、ニコルが完全に音楽家に戻っていたこと、ディアッカが部屋に誘ってリンチにあった事、アスランが嫉妬と羨望と憧れの視線を向けられ、かなりの居心地の悪さを味わっていたことをここに記しておく。

 

加えて、ラクスが宇宙で彷徨う羽目になったのは地球軍のせいだと知った時、彼らを止めるものはどこにもいなかった。

 

「諸君、これから第八艦隊と交戦するわけだが・・・」

「ええ、ナチュラル共に正義の鉄槌をくだしてやりましょう!!」

「そうだ!ラクス様をあんな目に合わせて!生かしておけん!」

 

正直クルーゼとしては、自分のような存在を生み出した要因であるコーディネーターが正義など・・・、と失笑モノなのだが、そこはあえて黙っている。

 

「ふむ、士気は十分なようだ。ここはZAFTらしく、パイロット諸君には個々の力を発揮して戦ってもらうとしよう」

 

イザーク、ディアッカは待ってました!と言わんばかりの顔で詳細を急かし、パイロットスーツに瞬く間に着替えて出撃していった。

ブリッジにまだ残っているニコルとアスランに、クルーゼが顔を近づけてささやく。

 

「君たちは彼らほど浮ついてはいないな?引き際を彼らにしっかりと知らせてやってくれ」

「了解」

「了解です。行きましょう、アスラン」

 

イザークとディアッカに続いて、アスランとニコルも出撃していった。

 

「隊長は出撃されなくてよろしいので?」

「彼らが危なくなったら出るさ」

 

ジンの部隊をメビウスの部隊にぶつけ、戦力を削るだけでも戦果としてはかなり美味しい。

メビウスは量産できてもパイロットの育成には時間がかかるからだ。

国力で大幅に劣るZAFTとしては、連合の戦力は削れるときに削っておきたい。

 

(彼らを焦らせた方が、こちらにも都合がいいからな・・・)

 

もちろん、クルーゼ本人にも得があるわけだが。

 

「後10分ほどで第八艦隊の射程に入ります」

「アデス、相手はあの知将ハルバートンだ。ゆめゆめ油断するなよ?」

「はっ!」

 

ヴェサリウスのモニターに、次々と発進していくジンが映っている。

クルーゼは、薄い唇を僅かに曲げて笑っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「キラ!準備は良いな!」

「ムウさんがあれほどやらせなければ・・・」

「なんか言ったかチャンドラー!」

 

アークエンジェルのブリッジでは、ムウとキラがハルバートン准将から伝達された作戦の説明を受けていた。

 

「そういやアイツは?」

「曹長ならもう準備を済ませているはずだが?」

「まじかよ・・・」

 

実際はムウとキラが寝坊しただけのことである。

 

「じゃあ俺が右翼で」

「僕が左翼ですね」

 

ちなみに刹那は右翼の守りである。ストライクは近接戦も遠距離戦闘もこなせるバランスの良い装備だが、刹那のジンは経戦能力が悪すぎて遠距離戦は不向きだし、ムウは近距離戦闘は不可能に近いため、バランスをとってこの配置である。

 

「ああ、速やかに行動しろ。速やかにな」

 

「はい!」

(大事なことだから二回言ったな・・・)

 

顔がくすくすと笑っていたフラガ大尉は頭をはたかれたが、その後は急いで準備を終えて発進準備を進めた。

 

『艦長』

「アルスター理事、何の御用でしょうか」

『見せてもらったストライク。素晴らしい出来だった。まだまだ改良を重ね続けているとは頭が下がる思いだよ。

連合の未来、君たちに預けたぞ』

「・・・!はっ!必ずや、アラスカ基地まで辿り着いて見せます!」

『いい返事だ。大尉には、追加の予算を組み込んでおくことを伝えておいてくれたまえ。

娘のこともよろしく頼むぞ。・・・その、私では連れて帰ることが出来なかったからな・・・』

「はっ。ご武運を祈ります」

『こちらこそ、だよ。頑張り給え』

 

「嵐のような人でしたね・・・」

「居なくなると寂しい気もします」

「そこ!私語は慎め!」

 

「「イエスマム!」」

 

余談だが、アークエンジェルの正規クルーの中で最も人気なのはマリュー・ラミアス大尉、次点はナタル・バジルール中尉である。

評価の声を聞くと・・・

「叱られたい」

が多数を占めているとかいないとか。

 

叱られて笑っているトールを、ミリアリアがすごい顔で見ていたのは偶然見てしまったキラしか知らないことであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「おう、遅くなってすまん!」

「昨日は訓練しすぎですよ・・・」

 

まだキラは体力があまりないため、先日の疲労から回復しきっていないようである。

 

「俺の方はいつでも大丈夫だ」

「こっちもだよ。そんじゃ行きますか」

 

刹那たちがMSへ乗り込もうとしたとき、キラは動けずにいた。

 

「僕は・・・」

「キラ」

「何ですか?ソランさん」

「殺人はヒトを変える。永遠にな。だから覚悟がないなら・・・お前は当てなくてもいい。

ただし、生きた敵がお前の周りをどうするかは忘れるな。

・・・俺からはそれだけだ」

「まあ、お前さんが逃げ回ってるだけでも周りからすれば大助かりだ。せいぜい上手くやりな」

 

刹那はキラをその瞳で一瞥してジンに。

ムウはキラの肩をポンと叩き、メビウス・ゼロにそれぞれ乗り込んでいった。

 

キラは、少しドックの中を漂っていたが、間もなくストライクに乗り込んだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ブリッジでミリアリアが声を響かせる。

「メビウス・ゼロ、ジン、ストライク、発進どうぞ!」

「ムウ・ラ・フラガ、メビウス・ゼロ、行くぜ!」

「キラ・ヤマト、ストライク、発進します!」

「ソラン・イブラヒム、ジン・メビウス、発進する」

 

三機は、それぞれの決められた方向へと飛び去って行った。




次回、キラはついに・・・

余談の女性士官人気ランキングは作者のねつ造です。

この19話が更新される頃、私は必死に翌日の面接の練習をしていることでしょう。
ちゃんと20話も更新するからね!

9/8追記
ヴェザリウス→ヴェサリウス


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

20話:地球降下作戦

なんでテストの前日が面接なんですかねぇ(移動時間:往復12時間)


戦況は、連合が不利と言えば不利だった。

だが、ほぼ拮抗していると言って良い。

 

つまり、アークエンジェルの働きがいかに大きなものかということがわかる。

故に、一人、また一人とメビウスのパイロットが減ってゆき、急ぎ編隊を組みなおしていても、連合の兵士たちは最後の瞬間まで前を向き、勇んで散っていった。

刹那とて、そんな状況に思うものがないわけではないが、この世界の両陣営の真偽を測るまでは純粋種の力を晒すことさえ大っぴらにはできない。

 

現在、メビウス部隊の損害は二割。

もう少しで、普通なら撤退を開始する損害率だ。

しかし、この戦闘はアークエンジェルが降下軌道に乗るか、アークエンジェル含む第八艦隊が全滅するまで終了することはない。

 

 

刹那が4機目のコクピットを潰した直後に、アークエンジェルから入電があった。

 

『曹長、本艦は作戦の変更により一時戦線から離脱します。至急帰投を』

「・・・了解。帰投する」

 

おそらくは・・・

今回の作戦の要旨を考えれば、自ずと答えは分かる。

刹那は暗澹たる気持ちを押さえつけながら、機体をアークエンジェルの方へと向ける。

すると、もう一通通信が入ってくる。

 

『曹長』

「あなたは?」

『自分は、第八艦隊所属、メビウス第08小隊隊長、シロー・アマダです。

今回は隊を代表してお礼を申し上げます。この度は、「エンデュミオンの鷹」殿共々、鬼神のごとき働きぶり、御見それしました。

あなた方なら、自分たちの・・・俺たちの未来を託すことが出来る!どうか!地球までご無事で!』

「・・・すまない。必ずアラスカまで到達すると誓う」

 

全員生きて帰るぞ!

銃身が焼け着くまで打ち続けるんだ!

 

そんな声が、回線を開きっぱなしの通信機から聞こえてくる。

刹那はムウと合流し、アークエンジェルへと向かう。

 

『おい・・・』

「なんだ?」

『任されちまったよ』

「俺もだ」

『そうか。そうだよな・・・』

 

託されたものの重さを実感しながら、ムウと刹那はアークエンジェルへ帰投した。

 

アークエンジェルでは、キラが体を丸めてドックを漂っていた。

 

「どうしたんだ?ボウズ」

「ムウさん・・・」

「メビウス部隊の連中に何か言われたのか?」

「・・・あの人たち、僕がいないと不味いのに、笑顔で頼んだぞって。

なんていうか、その、僕が思ってたよりストライクのパイロットは重いんだなって。

今更ですけど思い知ったというか・・・」

 

刹那はいつもの仏頂面だが、いつもより真剣な顔をしている。

 

「気持ちはヒトを強くする。だが、それに押しつぶされるようではいけない」

「ソランさん・・・」

「幸い、お前の友人たちは親身だ。きっと分り合える。分かち合ってくれる」

 

一方のムウは笑っているが、やはり目は真剣そのものだ。

 

「そうだな。頼れば、背負った物の大切さは消えなくても、押しつぶされないようになる。

昔の兵士さんも言ってるんだぜ?一本の矢より三本の矢、だっけな?」

「毛利元就だな」

「おまえ詳しいな!」

「以前滞在したことがある」

 

もはやキラそっちのけで煮物がおいしいだとかサブカルチャーがすごいだのと話している二人だが、そんな二人を見ているキラの心はとても楽になっていた。

 

「その、ありがとうございます。気が少し楽になりました」

「良いってことよ。とっくに戦友だからな!」

「艦長から作戦の説明があるはずだ。急ごう」

 

五分ほど遅刻した三人は少々怒られたが、作戦の伝達はつつがなく終わった。

 

「では、本艦は予定より早いが地球降下軌道へ入る。目標は北アフリカの砂漠地帯。ZAFT勢力圏真っただ中だ。」

「なぜそのような地点に?」

「こちらの資料に目を通してくれ」

「内が抜けた後の第八艦隊の被害予想と・・・レジスタンス?」

「現在降下することが可能なポイントのうち、陸上でありかつZAFTの包囲網を抜けることが可能で、陸上のために物資の補給もできる・・・そんなとこかい?艦長さん」

「そうです。連合があえて横流しということで物資を流している工廠が近くにあるため、そこから弾薬や各種機器の補給が出来ます」

「しかしこれはどうなんだい・・・「砂漠の虎」って・・・」

 

なんとなく答えは分かっているのであろうが、周りのためと思ったのかムウが質問を続ける。

 

「これは准将のお言葉になりますが・・・

『その先には「紅海の鯱」やジブラルタル基地など、障害が多数ある。口惜しいが、我々の戦力不足がアラスカまでの道のりを険しいものにしていることも確か。だが、「砂漠の虎」を破れぬようなら恐らくその先へ進むことも難しいだろう。君たちへの期待と、我々の力不足からそのような非常な決断をせざるを得なかったことを謝らせて欲しい。

だが、こちらも全力を尽くして君たちを地球へ送り届け、例え私たちが死ぬとしても現地で援護が受けられるように取り計らう。

地元の民衆からZAFT支配への反対の声が年々強まっているということもあって、砂漠の虎は倒さずには通れぬ敵なのだ。

よろしく頼む』

・・・以上、ビデオメッセージの音声です」

 

まず、元一般人のキラが声を上げる。

 

「砂漠の虎ってどんな人なんですか?」

「ZAFTきっての名将、アンドリュー・バルトフェルドという男のことだ。奴が北アフリカを制圧してから、アフリカ方面でわが軍の作戦は一度たりとも成功していない。元々は広告心理学者ということだが、そのせいなのかどうか、兵士の士気も練度も高いことで有名だ」

「そんなすごい人なんですか・・・」

 

次に、刹那が声を上げる。

 

「使用するMSは?」

「砂漠用に無限軌道を使った高機動型MS、バクゥだ。最近の話ではビームサーベルを装備しているらしい。また、隊長機らしき大型のバクゥも確認されており、こちらはビームライフル二門を所持。高速機動中でも一切ぶれない精密な射撃を行うとのことだ。MSパイロットとしても優秀なものがいるらしいな」

 

最後に、ムウの質問だ。

「おすすめの食べ物は?」

「大尉は後で懲罰房まで来てください」

 

ムウは、おそらくキラに気は楽になったかとアイコンタクトを飛ばしたが、目元の涙が彼が失った物の大きさを物語っていた。

 

「では、各自戦闘配置へ。本艦はこれより地球降下軌道へと移ります。砲座とレーダーは注意、ストライクとジンはアークエンジェル上部で近づく敵のけん制後、限界高度突入前に出来る限りドックへ帰投してください」

「「「了解!」」」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「すいません、マードックさん。コクピットの掃除までしてもらって・・・」

「いいってことよ!お前さんがコクピット汚いせいで全力が出せなくて死んだなんざ笑い話にもなりゃしねえからな」

「でも手が空いてるときは自分でするのよ?」

「もちろんです」

「で、ランチャーパックでいいのね?」

「はい、牽制だけなので」

「使わねぇ間に改良しといた。前より思った通り撃てるはずだ」

「ケーブルですか?」

「いや、ジェネレーターを並列につないでだな・・・おっといけねぇ。早く発進してもらわないとな」

「はい・・・・僕、頑張ります」

「おうおう、良い意気だ。気張りすぎるなよ?ボウズ」

「はい!ボウズなりに頑張ろうと思います!」

「ははは、そんだけ言えりゃあ十分だな。行ってこいキラ」

「!・・・はい!」

 

少しは認められたのか、名前を読んでもらえたキラはそのうれしさを少し噛みしめながら、しかし背負ったものの重さを実感しつつ、ストライクをアークエンジェルの上部甲板へと立たせる。

 

だが、接近してきた敵の姿を見て顔色を変える。

 

「・・・デュエル!?」




このあとシローさんはコロニー出身の女性と結婚して片足欠損で名誉除隊した後、
戦争終了後にも生き延びて末永く幸せに暮らしました。

キラの周りが大人すぎてメンタルヘルスケア要らない・・・

はたしてフレイは人間関係ブレイクできるのか!?

次回:赤い視界の中で

6/23追記
小変更しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

21話:赤い視界の中で

(一応作ってある)第一章最終話です。
キラのターニングポイントでもありますね。
ここでキラが闇墜ちするかどうか決まるわけで・・・

はい、おそらく闇墜ちするかの予想はついてらっしゃる方もおられるかと思いますが
「予想通りすぎるわ!」という突っ込みは感想欄へお願いいたします。

では全ガンダムシリーズで名シーンが量産される大気圏突入、始まります!

あと・・・伏線も何も無かった機能が登場しますが、作者の展開予想能力不足に拠るものです。
ご容赦ください。


「ストライクゥ!!この傷の恨み!今日こそ晴らす!」

 

「面倒くさいのが・・・!」

 

大気圏降下を目前に控え、アークエンジェル直上からデュエルがビームサーベルを抜刀し、襲い掛かってくる。

まさかいきなりデュエルが来るとは考えていなかったキラは、意表を突かれるもすぐにブリッジへ通信を入れる。

 

「艦長!デュエルです!」

『こちらでも確認している!地球降下まであと五分だ。五分以内に落とすか引き離すかするんだ』

「了解!」

 

状況が逼迫していることもあるだろうが、この数日で不幸の下限がかなり引き下がっているらしいキラは、まるで兵士のように二つ返事で肯定を告げる。

 

「練習の成果を見せてやる・・・!」

 

キラはコクピットの上部から照準器を引き下げる。

 

「一発目!」

 

「当たるかぁ!」

 

予備動作無しの見事なクイックドロウだったが、デュエルは恐ろしいまでの反応速度でバレルロールし、紙一重でビームをかわす。

 

「早い・・・!けど、ソランさんほどじゃない!!」

 

しかし、全身に目があるのではないかという程の回避を見せる刹那との練習を繰り返し、つい先日も連合のトップエース、エンデュミオンの鷹と戦っていたキラの成長は伊達ではなかった。

 

「これで!」

 

先ほどの射撃でわずかに体勢を崩したデュエルの足に、正確にアグニのビームを掠らせる。

 

「ぬぁにぃ!?」

 

刹那ならここからさらに加速してコクピットを串刺しにしているところなのだが、イザークではそうはいかなかった。

 

「くっ、この勝負、預けるぞ!ストライク!」

 

首尾よくデュエルは撤退したが、キラもこのままではいられない。

 

「ブリッジ!エールストライカーへの換装を!」

『少尉!?』

「お願いします!多分もう一機、二機は来る!ランチャーストライカーだといざというときに戻れません!」

『・・・わかった。なるべく単機での大気圏突入は控えろよ?』

「はい!」

 

エールストライカーは、カタパルトからリモートで発射され、キラの操縦で誘導され、わずか15秒ほどで換装された。

 

「アグニは持ったままで行きます!」

『キラ!無事か?』

「ソランさん!はい、なんとか」

 

刹那は先ほどまで三機のジンの相手をしていたのだが、流石と言ったところか疲労した様子もない。

 

『イージスとバスターか?』

「はい、多分来ると思って」

『恐らく正しい。なぜそう考えた?』

「いままでのあの部隊との戦闘から僕たちが狙われていることは分かります。

しかも、ここで降下するまでは地球のどこに降下するかもわからなかったはずです。

なら、ここで叩くのが相手にとっては一番都合が良いはずだと思ったので」

『・・・成長しているな、キラ』

「!・・・ありがとうございます!」

 

刹那としては、破壊者だった自分が誰かを育てられているという感慨を感じてしまったりもするが、教師をやりたがっていたかつての親友の姿も思い出した。

 

(彼女に習った歌はトールも驚いていたものだが・・・)

 

しかし、思い出を掘り返す前に接近警報が鳴り響く。

 

『キラ、お前はイージスに対応しろ。俺はバスターをどうにかしてくる』

「はい!」

 

はたして、キラの予想通り二機のMSがアークエンジェルを襲ってきた。

 

「・・・キラ・・・」

『アスラン?俺はあっちのジンもらうぜ?』

「ああ、やられるなよ」

『シャレになんねぇシャレは止めろ!』

 

奇しくも、というよりは必然的に両陣営はお互いの相手を選び、すぐに戦闘が開始される。

 

『キラ!バスターを狙え!』

「ライフルを狙います!」

 

キラは再び照準を素早く合わせ、バスターの砲塔を狙い、ビームを打ち込んだ。

 

「なっ!いつの間にあんな!」

 

前にキラと手合せしたアスランは、そのあまりの上達ぶりに空恐ろしいものを覚える。

 

(まさか、連合がキラに何らかの処置を施しているんじゃ・・・!)

 

同じコーディネーターであり、かつての親友であったキラが無理やり連合に言うことを聞かせているのではないかと疑った。

 

しかし、状況が深く考え込むことを許さない。

一発撃って内臓バッテリーが空になったアグニを捨て、ビームサーベルを抜いてストライクが斬りかかってくる。

 

・・・射撃が息をのむほどの上達ぶりなら、近接戦は呆れるほどの上達ぶりだった。

 

ビームライフルを背部にマウントし、ビームサーベルを抜き放とうとした次の瞬間、イージスの右手首が切断されていた。

ほとんど反射的に左足のビームサーベルを展開させ、切り上げるもシールドで受け流し、二の太刀を見舞ってくる。

 

今度はなんとかシールドで防ぐことが出来たものの、右手でサーベルを扱えない以上イージスが不利だ。

 

メインカメラを狙う突きを躱し、左足のビームサーベル発振器を破壊しようとする切り上げを避け、なんとか距離を取って体勢を立て直そうとするが、ストライクがシールドでチャージを掛け、衝撃がアスランを強烈に揺らす。

 

(おかしい!これがあの温厚なキラか!?)

 

まるで何十何百も繰り返してきたかのような性格で繋ぎ目の無い連撃に、アスランはかつての親友の面影を見出せずにいた。

 

(やはり連合が・・・!)

 

そう思考が至った瞬間、アスランの頭の中で何かがはじけたような感覚が広がっていく。

 

「俺は!お前を連合から取り戻す!」

 

そう叫んだアスランは、機体のスラスターを総動員してストライクへ向けて速する。

シールドの持ち手を狙った斬撃を、右手首で腕部分を殴りつけてずらす。

更に、ストライクのシールドに膝蹴りを当てて、その反動で左足のビームサーベルでストライクのビームサーベルを持った右手を切り裂く。

 

しかし、キラもただではやられない。

体を縦に回して斬撃を放ったイージスの背中に蹴りを入れて距離を取る。

更にシールドを右手にマウントし、左手にビームサーベルを構えなおした。

 

だが、イージスの猛攻は少しのことでは揺らがない。

蹴りの衝撃からすぐに体勢を立て直し、機体を一回転させてその勢いで今度はイージスがライダーキックを打ち込む。

ストライクはシールドに手を添えて防ごうとするが、イージスは足を曲げて軟着陸し、空いた左足を勢いよく回してストライクのシールドを切り裂いた。

衝撃からか一瞬ストライクの動きが止まったところを、イージスが左手でストライクの左手を抑え込んだ。

 

「キラ・・・!お前は、俺が必ず救い出す・・・!」

 

思いもしなかった言葉に今度こそキラの動きが止まった。

 

そのまま、イージスはストライクをスラスターの出力を全開にして押し込んでいく。

地球に引かれている今、ストライクの推力はイージスを押しのけるほどの力が出せなかった。

 

「このまま、お前をZAFTの勢力圏に落とせば・・・!」

 

二人の視界の端で、赤く染まったアークエンジェルが上へ流れていく。

慌てて機体を上へ戻そうとするキラの脳内で、声が鳴った。

 

今だ!

 

何のことかさっぱりわからなかったが、思わずキラはスラスターの出力を全開にする。

すると次の瞬間、イージスがよろめいてストライクの真上からずれた。

 

今度こそと、ストライクはイージスをくるりと回転させて、それぞれのスラスター出力で何とかアークエンジェルよりも上の地点へ戻る。

 

まだ追いすがろうとするアスランの耳朶を、オープン回線から放たれた言葉が打った。

 

『僕の友達を殺そうとするなら、君は僕の敵だ』

 

「っ、キラぁ!」

 

掴まれたままだった腕を引っ張って、再び蹴りでイージスから距離をとったストライクはアークエンジェルの甲板に着陸した。

 

仕方なしに、MA形態へ変形したイージスは宙域を離脱し、ヴェサリウスへと帰っていった。

 

「お前たちが・・・!」

 

帰投途中、連合の戦艦を見つけたアスランは、MA形態のクローを船腹へ向け、機体を加速させる。

ちらりと見えたブリッジの人間は、慌てることもせず避難指示を出し、おそらく旗艦がいるであろう方向へ敬礼するとすぐにブリッジから出ていった。

 

「っち、後味の悪い!」

 

そして、イージスが船腹を貫いて、戦艦が傾いた。

一隻の戦艦が倒れても、他の艦は隊列を組みなおして尚も抵抗を続ける。

 

「お前たちのような奴が・・・人を人とも思わないような奴らがいるからっ!」

 

ダメ押しにスキュラを放ち、戦艦は轟沈した。

しかし、アスランの心はいつもより更に重く曇っていた。




当初、キラは
ジンに内臓バッテリー分アグニ撃つ
⇒バルカンで牽制(必要に応じてアグニにエネルギー補給して牽制)
⇒Gも近づけない
みたいな戦法を考えてました。
けどビビらせる前にデュエルが来ちゃったので失敗しました。

今までで一番上手く戦闘書けた気がする・・・!

ここでSEED一の勘違い男ことアスラン・ザラさんが覚醒しました。
流石にキラより強いな・・・


次回!
第二章!
22話:砂の洗礼!

(まだ書いてないけど)来週更新!
お楽しみに!

6/20 追記
斬術→近接戦
ストライカーパック→エールストライカー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2nd:for Earth with Inovaiter
22話:砂の洗礼


やっと地球編だぁ!

大気圏突入が刹那と余裕で突入できるGシリーズが主な登場機体だったせいで初代やZほどの緊張感が出ませんでしたが、地球編ではZAFTの曲者たちとの戦闘を上手く書ければと思います。

では大気圏突入前のキラたちの様子から。


『キラ!聞こえるか?早く甲板に乗れ!』

 

ソラン・イブラヒムの、珍しく焦ったような声がスピーカーから響く。

現在、大気圏に突入して薄赤く染まったアークエンジェルのすぐ近くを、ストライクが飛んでいる。

地球の重力に引かれ、ストライクの装甲もまた赤い。

しかし、キラは落ち着いて姿勢を安定させ、ストライクはふわりと甲板に着陸した。

 

「大丈夫ですよ。いま着艦しました。」

 

ストライクが甲板に接触するとほぼ同時に、アークエンジェルのブリッジではシャッターが下りた。

そして、直前に着艦を確認したのか、艦長から通信が入る。

 

『聞こえるか、少尉』

「はい、なんとか突入前に着艦できました」

『ああ、指示通りだ。よくやった。現在、大気圏突入中で収容はできないが、降下が終わればすぐにでも戻ってこい』

 

既に刹那やムウは収容されており、キラだけがぎりぎりでアークエンジェルの外部に取り残されていた。

ストライクを残してハッチを閉じるというのは艦長としても苦肉の決断ではあったが、結果的に全員無事なのだから称賛されるべきだろう。

整備室では、あの状況で生還したキラに歓声が沸いているほどだ。

 

程無くして視界は赤から黒に変わり、夜の砂漠が視界に入る。

 

『よし、収容可能になった。すぐに戻って整備を受けろ』

「了解」

 

すぐに、ストライクは収容された。

 

コクピットから出ると、マードックが待ち構えていた。

 

「良く帰ってきたなキラ。勲章モンだぜ」

「はい、ありがとうございます・・・ソランさんたちはどこですか?」

 

コクピットから這い出ても、この状況で真っ先に出てきそうなムウやそれに続きそうな刹那がいない。

 

「ああ、あの二人ならブリッジだ。何でも着陸予想地点にZAFTが張ってるらしくてな」

「僕も呼ばれてますよね?」

「そういやぁそうだったな」

「早く言ってくださいよ!」

 

コクピットのロープを使って素早く降りたキラは、そのまま走ってブリッジへと向かった。

 

一方、マリューはジンの整備をしながら顔をしかめていた。

 

「フレームの負荷がそろそろ騙せなくなってきたわね・・・」

 

ジンのフレームはそこそこ丈夫に出来ているのだが、流石にコーディネーターを上回る反応速度で振り回されることは想定されていない。

しかも、整備班とキラの手によってソフトウェアから出力上限が限界まで引き出されているも同然なため、回路系の消耗も激しい。

新しく外付けされているスラスターの接合部の劣化も激しかった。

 

「地球での戦闘で不具合が起きるのは確実ね・・・」

 

新しく完全な状態のジンを鹵獲できればいいのだが、それは望み薄かもしれない。

とりあえず、整備長はどうやってジンを持たせればいいのか頭を捻るのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ブリッジでは、作戦会議が開かれていた。

というよりは、作戦が決まりつつあった。

 

「では、上空から奇襲を掛けるということで良いのか?」

「ああ。俺とキラでなるべく早く奇襲を掛ける。それで幾分か戦況を有利に働かせることが出来るはずだ」

 

遮蔽物が砂丘くらいしかない砂漠で奇襲をかけるには、想定外のことをやるしかない。

ZAFTはジンの性能を知っているからこそ、上空から襲ってくるとは思いもしないだろうということでこの作戦だ。

 

「では、直ちに発進しろ」

「了解」

 

結局キラが不在のまま作戦が決まってしまった。

作戦は、途中で刹那を見つけたキラが、パイロット控室で聞かされた。

 

「だ、大丈夫ですか、その作戦・・・」

「ああ、お前ならできる」

「そ、それならやってみますけど・・・」

 

憧れている人から認められるとなんとなくうれしくなってしまう。

現在大先輩としてキラから一身に尊敬を受けている刹那から言外に認めていると言われたキラは、あっさり納得してしまった。

 

「では、お前はまたランチャーパックで援護をしてくれ」

「分かりました。任せてください!」

 

こうして二人ともMSのコクピットへ入った。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

地上では、砂漠の虎のバクゥ部隊が小隊を組んで待っていた。

 

「隊長、到達予想時間まで後どれくらいですか?」

「そう焦るな、あと10分は・・・どうしたんだい、ダコスタ君」

「観測手から報告です。未確認機恐らく二機が飛んでいる、と」

 

その瞬間、バルトフェルドが表情を変える。

 

「どうやら先制攻撃をかけてきたようだな」

「しかし、連合の新兵器はともかく、一機はジンですよ?」

「いや、報告にあったパイロットの腕ならやりかねん。各機、戦闘配置につけ!」

 

疑問は持っていても練度は高い。

四人のパイロットはすぐにバクゥに乗り込み、起動させる。

次の瞬間、上空からロックされていると警報が鳴った。

 

四人とも一体どんな気狂いパイロットだと唸ったが、すぐに回避行動に入る。

すぐに、上空から青いビームが飛来する。

全機がビームを躱すと同時に、爆音が響いた。

 

「全員無事か?」

 

心のどこかであの程度の攻撃でやられるわけがないと確信しながらも、事務作業的に点呼を取る。

だが、一機からは返事がない。

恐る恐るその方向を見ると、一機のバクゥがジンに乗られている。

しかも、バクゥはモノアイが消灯しており、完全に沈黙している。

 

残る三機は、驚きつつも反射的に距離を取った。

 

『あの一瞬で!?』

『油断するな!かなりやるぞ!』

 

すると、ジンに続いて、データにあった連合の新兵器が砂地に着陸し・・・姿勢を崩した。

 

「!・・・奴らはまだ砂地で運動が出来ん!遠距離から叩くぞ!」

 

いち早く、ストライクが砂漠での戦闘が出来ないことに気づいた一人が、残りの二人に声をかける。

三機は三方からジンとストライクにミサイルを放った。

だが・・・

 

「・・・バケモノかよ・・・」

 

その言葉は、一体どちらに向けられたものだろうか。

煙が晴れた時、MSは二機とも健在だった。

一機は、先ほどよりも姿勢を崩しており、少し煤もついている。

もう一機は、被弾した跡すらない。

言うまでもないが、ジンはその狭い足場と重斬刀だけですべてのミサイルを凌いでいた。

 

効果がないとわかって怖気づいた三人の目の前で、今度はストライクが装甲の色を変化させる。

 

(資料にあったPS装甲のダウンか!)

 

「俺がストライクに接近戦をかける!お前たちはジンの動きを止めてくれ!」

「おう!」

 

突破口を見つけたと、口の部分のビームサーベルを展開し、突進する。

突進をかけるよりも先に、他の二機がミサイルの集中砲火をジンに浴びせている。

 

「さすがに、連続攻撃を受ければ援護に回れまい!」

 

そう確信し、一層加速したバクゥだったが、いきなりストライクが立ち上がった。

 

「なっ!」

 

バクゥの近接戦闘用OSは、急に立ち上がった目標を追尾して、体を持ち上げた。

 

「こうなれば!」

 

この至近距離では躱せまい。

そう続けようとした彼の言葉は、凄まじい衝撃に阻まれた。

 

一瞬の浮遊感の後、強い衝撃が走る。

いつもの状況確認で眼を遣った計器からは、ひっくり返ったことが伺える。

しかし、すでに脳が正常に働いていない。

通信用のスピーカーから、ぐわんぐわんと妙な音が響いている。

頭が下を向いているはずなのに、地面がはっきりわからない。

コクピットのディスプレイを赤い光が踊っている。

そして、次の衝撃が彼を体から引き離した。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「引いたか」

 

二機目をキラが肘打ちで吹き飛ばした時点で、撤退の指令が下ったのだろう。

 

「直接指揮を執っていたとすれば、厄介な相手だろうな」

 

しかし、相手が撤退したのは刹那にとっても助かった。

なぜなら、二機目のバクゥにとどめを刺してから、ジンは動かなくなっていたからだ。

これはマリューに叱られるな、と思ったが、今はキラだ。

 

「砂漠用のプログラムを組みなおしたのか?」

『はい、なんとか動けました』

 

これも、PS装甲の恩恵と言えるだろうか。

ミサイルの雨に晒されてもプログラムの書き換えを行えるとは、呆れるほどの耐久性だ。

しかも、OSの再起動によるストライクのPS装甲ダウンはフェイントとなって相手をひっかけた。

しかも最後のあの動きだ。

中国拳法の本でも読んでいるのだろうか。

 

『最後の動きも、ムウさんから借りた本を読んで作ったんですけど、本番で上手く動いて良かったです』

 

どうやら本当にキラを戦場から帰せないかもしれないと思うと、刹那は少し頭が痛かった。




ストライクは
新技
「鉄山靠」を
覚えた!

そのうち
アスラン「キラぁ!」ビームサーベル構え
キラ「把子拳、寸勁、頂肘・・・猛虎硬爬山!」
アスラン「ぐほっ!?」
とか、Gガンみたいなことになったら面白いなぁ・・・
鉄血を超える肉弾戦ガンダム、

ストライク・ベオウルフ

とか、

ストライク・八極式

みたいなステゴロ型派生機に乗せるか・・・?
(創作なので調べても出ません:武装、拳とサーベルのみ)

キラってSEED覚醒で戦闘狂にも目覚めそう・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

23話:岩屋の会談

ひらめいたぁ!
ということで話のネタがひらめいたところを少し煮詰めて執筆。

次回、オリジナル武装が出ますがお許しください・・・(今更だけど)


砂漠での初戦闘は勝利したものの、刹那のジンが動かなくなってしまった。

 

「あー、フレームが一気に歪んじまってますぜ」

 

マードックの診断によると、重力下であり得ない動きをしたせいで一気にフレームの負担が増加し、回路が焼き切れたのではないかということだった。

 

「規格外だとは思っていたけどここまでとはね。コーディネーター以上の反応速度なんて、益々コーディネーターとは思えないわ。ジョージグレンも銀メダリストだし。」

 

マリューもジンのOSのログを見ているのだが、動きをシミュレータで再現させても冗談としか思えない。

 

「ねえ曹長、この時何があったのかしら?」

「・・・ミサイルの弾幕を凌いだ時だ」

 

まず弾幕は刀剣で凌ぐものではない。

 

「それで重斬刀が焦げてるのね・・・」

 

マリューは考えることを放棄したが、それで機体が動くようになるわけではない。

そんな時、整備室に呼び出しがかかった。

 

『ラミアス大尉、ヤマト少尉、ソラン曹長は至急ブリッジへ』

 

とりあえず、力なく笑っているマリューを引いて、機体の応急修理をマードックに任せ、刹那とキラはブリッジへ本日三回目の登壇を果たした。

そんな三人を待っていたのは、通信画面に映る色黒で壮年の恰幅が良い男性だった。

 

『揃ったのか?』

「ええ、主要メンバーはこれで全員です」

『じゃあ改めて自己紹介しようか。おれはサイーブ・アシュマン、レジスタンス組織「明けの砂漠」のリーダーをしている。それで、共同戦線を張らせて欲しいという打診だったんだが、こっちも手土産を持って行こうと思ってな。あんたらの上司の准将から聞いてたもんは持ってきたんだが・・・』

「追加で何か必要なものはあるかということです」

 

サイーブの言葉を艦長が引き継いだ。

 

『あんまり大したもんはねぇが・・・そうだな、鹵獲したMSやら』

「MS!?」

『おう、虎の基地を襲撃した時にな、ジンオーカーをほぼ完品で頂いたんだ。操縦できるやつもいないから遊んでいたんだが・・・必要か?』

「ええ、実は曹長のMSがもう限界で・・・」

 

まさに渡りに船とはこのことか。

 

「では、今日の夜にこちらから出向きます。その時に引き渡しをしましょう」

『了解だ。では、また後で会おう』

 

通信は切れた。

マリューはとてもほっとしたというような気の抜けた顔をしている。

 

「曹長のMSはそんなにひどい状態なのですか?」

 

先ほどのやり取りを見ていなかった艦長は疑問を呈するが、キラ、マリューの二人は激しく同意する。

 

「ジンオーカーってジンの強化型ですよね?」

「ええ。砂漠用だし、地上で運用するためのMSだからフレームも堅牢よ」

「OSは今のを移植できますよね・・・」

 

キラとマリューは機体の改修を目指して二人の世界(技術者は参入可)に入ってしまった。

 

「とりあえず、夜までに目標地点まで航行せねばな」

 

今は昼だが、夜までには目的地に辿り着いて身を隠す必要がある。

三人が来るまでに、明けの砂漠はアークエンジェルが隠れることのできる岩山を紹介してくれていた。

通常なら航行は危険だが、艦長が操縦士の腕を信じると運用が決まった拠点ポイントである。

 

余談だが、現在アークエンジェルはベージュの布をブリッジに被せ、なるべく姿勢を低くして航行中だ。

これも、サイーブ・アシュマンの入れ知恵である。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ようこそ、明けの砂漠へ」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

岩屋の中に作られた明けの砂漠のアジトで、艦長とサイーブ・アシュマンが握手を交わしている。

現在、岩屋の中にはサイーブ・アシュマンとその仲間二人、刹那とムウ、艦長がいる。

 

「しかし、この兄ちゃんがパイロットかい」

「ええ、うちのエースです」

 

サイーブは刹那をじっと見る。

 

「コーディネーターじゃねぇな」

「分かるんですか!?」

 

艦長が驚いて尋ねるが、サイーブはいたずらっぽく笑った。

 

「今までに中東出身のコーディネーターには会ったことが無くてな。それに、連中はみんなヨーロッパ系の容姿にしたがる。イタリア系じゃなけりゃあ、耐日光用のコーディネートをしてるからみんな肌が白い」

 

驚きが止まない艦長とムウに、サイーブが続ける。

 

「これでも昔は大学の教授でね。見識は有る方さ」

「そんな貴方が、何故レジスタンスのリーダーを?」

 

尋ねた刹那に、サイーブは豪快に笑って答える。

 

「そんな鬼気迫った顔で聞くな!・・・家族のためさ。俺も大学の教授にまでなった。ほんの恩返しだ」

「そうか・・・すまない、大尉のところへ行ってくる」

 

刹那は表情こそあまり変わらなかったが、普段に比べるといそいそと、礼をして外へ出ていった。

 

「あの兄ちゃん、なんかあったのか?」

「いえ、彼の出自はあまりよくわからないので・・・」

 

戸籍情報では、刹那はある時期にオーブへ移住し、ヘリオポリスへ昇っている。

オーブの法律で、それ以前の経歴は見ることが出来ない。

 

「そうか」

「すみません、代わりに来ました」

 

そんなところへ、キラが入れ替わりで訪れる。

それをみたサイーブが、思い出したように言った。

 

「ああ、艦長、ちょうどいいからこれからのことについて話しておきたい。そこのストライクのパイロットにも多少関係がある」

 

そういって部下の一人にハンドサインを送ると、部下の一人が退出する。

 

「俺たちがあんたらに共同戦線を張った理由は三つある。一つはハルバートンに頼まれたから。一応旧知の中でね。二つ目に、俺たちもレジスタンス活動に限界を感じていたからだ。連合の新型MSが丁度あるし、負けなし。しかも良いパイロットまでいる。それで三つめが・・・」

 

三つ目を言おうとしたところで、岩屋の奥側の扉が開いた。

 

「リーダー?アシュメドが来いって・・・お前!?」

「あの時の!?」

「こいつを連れて行って欲しいんだ。オーブ迄な・・・・知り合いだったのか?」

 

サイーブの目の前で、キラは肩に組みつかれている。

 

「まさかお前がストライクのパイロットなのか!?」

 

肩をつかまれてグラグラと首を揺らされながらも、なんとか口から漏れた空気を言葉にする。

 

「き、みは・・ヘリオポリスにい、た・・・・」

「おい、そろそろ止めてやれ、落ちるぞ」

 

我に帰ったのか、やっとキラは解放された。

 

「あー、すまない。おい、挨拶しろ」

「・・・カガリだ。ごめん・・・」

 

気まずそうにふらふらしているキラに謝るカガリ。

なんとかしゃんとしたキラは、返事をする。

 

「うん、大丈夫・・・それで、確かにストライクのパイロットは僕だけど・・・」

「そっか・・・見せてもらっていいか?」

 

キラが、連れて行ってもいいかという風にたった今登場したタンクトップの男とサイーブに目をやると、二人とも頷いた。

 

「じゃあ、こっちに来て」

 

二人は、岩屋からアークエンジェルが停泊している広場へ歩き出した。

 

「しっかしお前、なんか体格良くなってないか?」

「すごくハードで・・・ハードで・・・うん。ハードだったんだ」

「そ、そうか」

 

過去のことを思い出せば出すほど目から光が無くなっていくキラを見て、カガリが顔を青くして笑う。

 

「でも、よく無事だったな。お前なんだか弱そうだったのに」

「うん、僕は弱かったけど、助けてくれた人がいたんだ」

 

砂漠の夜は冷える。

さっきまで暖かい岩屋にいたカガリに、キラが上着を差し出した。

 

「上着忘れちゃったの?」

「ありがと。そうだな、ストライクのパイロットがいるって聞いて焦ってさ」

 

そこで、カガリがはっとした顔をする。

 

「そういや、お前、名前なんて言うんだよ」

「キラ。キラ・ヤマトだよ」

「ふーん・・・じゃあキラでいいか?」

「・・・いいけど・・・あ、あそこに・・・ストライク・・・が・・・」

 

そこでは、ジンとバクゥがバラバラにされていた。

 

「え?」

「これジンと・・・バクゥだよな?」

 

見ると、マリューとマードック、その他整備班が、嬉々とした顔でジンのフレームを切り出し、装甲を加工していた。

 

「あら、キラ君。そちらのお嬢さんは?」

「あ、えっと・・・」

「カガリで良い」

「カガリはオーブまで同行するらしくって・・・」

「ボウズ、手が早いな」

「そんなんじゃないですって・・・」

 

そこへ、刹那が顔を出した。

 

「ソランさん、これどうしたんですか?」

「新しいジンが入ったからな。古いジンのフレームを使って武器を作ってもらっている」

「新しい武器、ですか?」

「ああ、対PS装甲用の武器だ。それと・・・」

 

そんなキラを、カガリが引っ張る。

 

「おい!ストライク見るんだろ!?」

「すみませんソランさん、また後で!カガリ、こっちだって・・・」

 

整備班の何人かはにやにやと、若い何人かは奥歯をぎりぎりと噛みしめてキラとカガリを見ていたが、刹那は全く違う視点で二人を見ていた。

 

(脳量子波が似ている・・・?)

 

余談だが、この後キラはトールに見つかった。




実はSEED因子を持っているカガリさん。
Destinyでも発揮すればインパルスに勝てたのでは・・・(たぶん却本の都合)

個人的に、ヒロインは強くていいと思います。
むしろ主人公より強くていいと思うんです。
つまり、パイロットランクが
刹那>超えられない壁>カガリ>=キラ
でもいいよね?
え、ヒロインはフレイ?
いや、濡れ場は要らないんで・・・
え、マリューさん?
すいません、薄い本で探す方向でお願いします
今作のヒロインはカガリなんじゃァ!
(ちゃんとオーブでキラとの関係は出ますし不健全にもなりません)

作中に出てきた設定なんですが、
・ハルバートンさんとサイーブさんが旧友
・ジンオーカーをかっぱらった
・コーディネーターはヨーロッパ系

というのは独自解釈です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

24話:砂漠の虎、あるいはケバブ狂

みなさんは種キャラ劇場という映像作品を見たことがあるでしょうか?
そこにはあのケバブ戦争のキラにとっての真実が描かれています。


アークエンジェルが明けの砂漠のアジトへ到着した翌朝、アークエンジェル、ナタル・バジルール艦長と明けの砂漠、サイーブ・アシュマンは作戦会議をしていた。

 

「では、軍需物資の補給は囮を用意しろと?」

「ああ。そちらも生活物資の補給なんかもあるだろう。こっちからはカガリを出すが・・・」

 

サイーブは、地元の武器商人へ物資の買い付けに行く際に、虎の目を引く囮を用意しようという。

 

「では、こちらからはストライクとジンのパイロットを出しましょう。ストライクのパイロットは囮、ジンのパイロットは護衛に着かせることが出来るでしょう」

 

刹那は、中東系の顔をしているため、この北アフリカの町でも溶け込むことが出来るだろう。

護衛としての強さも、現役の軍人以上と申し分ない。

 

「ああ、あの兄ちゃんか。確かに強そうだな。ああ、それとこの写真なんだが、砂漠の虎があんたらを・・・どうした?」

「大変だ、虎が!」

「落ち着け!なにがあった?」

 

会議室に、非常に焦った様子の男が飛び込んできた。

サイーブは落ち着けというが、むしろ男はヒートアップしている。

 

「落ち着いてる場合じゃねぇんだ!虎が町を焼きやがった!」

「なんだと!?それで、何人やられた!じい様たちは!?」

「それが・・・」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

キラたちは、アジトから少し離れたところにある町へ来ていた。

町から少し離れた丘で、町の住民たちが炎を上げて燃える町を悲しそうに、憎々しげに見ていた。

サイーブは、集まった人々の中の老人に話しかける。

 

「それで、虎が警告をしたって?」

「ああ。15分後に砲撃すると・・・それと、覗き見に気を付けろとか・・・」

 

サイーブは苦々しい顔をして犠牲者がいないかの確認をし、アジトに貯めてある物資と難民の数のすり合わせを命じた。

 

一方のキラは、初めてではない焼ける町を、こちらも苦々しく見ていた。

キラの表情を見ていたカガリは、ふいと町に背を向けて呟いた。

 

「虎の奴は、確かに無駄な殺しはしないさ。けど、これじゃあもうここでは暮らせない・・・アイツはプラントの奴で、コロニーも一つ無くしてるはずなのに、なんでこんな・・・」

 

カガリの口調に表情にも、抑えきれない憤怒がにじみ出ている。

 

だが、またしても慌てた男が走ってきた。

サイーブがもううんざりだといった風に男に話させる。

 

「大変だ!アフメドの奴が虎のところに!」

「あのバカ・・・!死んだ方がマシなんてのは身一つの奴が言うことだ!おふくろを置いてどこに行く気なんだ!」

 

どうやら、砂漠の虎がまだ補足可能な位置にいると知ったレジスタンスの若者グループが自走砲で襲撃をかけたらしい。

だが、レジスタンスが所持しているランチャーやサブマシンガンでは、バクゥを倒すことが出来ないし、砂漠の虎は敵対者には全く容赦がない。

砂漠の虎は、現段階で歯向かっても本当に無駄で、デメリットばかりが発生する。

だからこその同盟だというのに、若者たちは血気を抑えることが出来なかった。

サイーブは、キラに頭を下げた。

 

「すまない、あんな馬鹿な連中だが、この町にとっては変えられない仲間なんだ。どうか、助けてやって欲しい・・・頼む!」

 

年上の男性から頭を下げられたキラは、慌てて頭を上げさせ、コンソールで艦長を呼び出す。

艦長は、あっさりと出撃を承諾した。

 

「同盟相手だし、人命は優先だ。機体を壊すなよ?」

「はい!」

 

出撃許可を得たキラは、一度コクピットの扉を開けてサイーブとカガリに呼びかける。

 

「出撃許可出ました!どっちの方向ですか!?」

「3時の方向だ!艦長にお礼を言わせて欲しいと伝えてくれ!」

「私からも頼む!」

「はい、確かに。じゃあ、行ってきます!」

 

再度コクピットの扉を閉め、キラはストライクを発進した。

 

「頼んだぞー!!」

 

指示された方向へ発信したストライクに、カガリは大声で呼びかけた。

その声に、ストライクは親指を立ててそのまま飛んで行った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「もっと早く・・・!」

 

現在、ストライクは砂漠を飛ぶように()()()()()

着地しては地面を蹴り、スラスターをふかして飛び上がる。

しかし、まだ速度が足りない。

一歩ごとに足が砂をとらえ、しっかりと踏みつける。

センサから得られた空気流からスラスター周りの空気の流れを演算させ、出力が最適化される。

気温が生み出す気流を、角度を変えた翼が完璧に受け止める。

進めば進むほど、ストライクは完璧な飛行へと近づいていく。

 

この進化を見れば、連合はおろか、ZAFTの技術者でさえ目を剝くだろう。

 

()()()()()と。

 

遂にはPS装甲の電力さえ分配が変わり始める。

足には装甲では考えられない弾性が生まれ、前面装甲には空気圧に耐える硬さが付与される。

必要ない部分は灰色に変わり、シールドは衝角として空気を受け流す。

 

一度のジャンプが1㎞の大台に乗ったところで、前方に交戦の煙が見えた。

 

「見つけた!」

 

上空から牽制にビームライフルを数発撃つが、ビームは上に曲がってしまい、牽制にならない。

 

「熱対流か!」

 

キラは、しまったキーボードを再び取り出し、ビームライフルのジェネレーターの設定を書き換えた。

 

「これなら!」

 

次に放たれたビームは、寸分の狂いもなくバクゥの武装を打ち抜いた。

そして、着地してから無事な戦闘車両一台を抱え、やってきた方向へと離脱する。

 

だが、後方から3台のバクゥが襲ってきた。

 

「すみません、揺れますけど落ちないでくださいよ!」

 

ストライクはエールストライカーを軸にくるりと回り、バクゥの方を振り向いた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「さて、連合のパイロット君はどんなものかな!」

 

バルトフェルドは、バクゥの一機を借りてストライクに迫っていた。

そのバクゥはテスト用も兼ねてビームライフルが搭載されているし、もちろん技術者が丸一日かけて熱対流の対策も済ませている。

 

「俺が攻め込む。君たちはミサイルで援護してくれ」

『『了解!』』

 

着地して一度失速しているストライクの上と左右を、バクゥがミサイルでドーム状に道を閉じた。

前方に離脱すればバルトフェルドのバクゥが、後方に離脱すれば二機のバクゥが道を塞いでいる。

 

「さあ、この状況をどう凌ぐ?」

 

コーヒーの調合と同じくらいわくわくする。

どう出てくるのか分からない、そんな楽しみが目の前にある。

 

そんなバルトフェルドの期待に、ストライクは見事に応えた。

こちらを向いていたストライクは、そのままバックすると空中でバク転しながら後方を躱した。

更に、フォローで撃ったビームを、いつの間にか抜いたビームサーベルで切り裂いたのだ。

そしてそのまま地面に着地すると、持ち替えたビームライフルで見事な偏差射撃を披露し、バクゥ三機の足を打ち抜いて、凄まじい速度で離脱していったのだ。

 

「全機全速で離脱。負傷者はいないな?」

『ええ、最初からそうしましょうよ・・・』

 

自分が「死んだ方がマシなんて人間はいるのか?」等と言っていたことを思い出したバルトフェルドは、思わず笑ってしまった。

 

「今回は僕の失敗だ。お詫びに諸君にはレセップスで僕の成功作のブレンドを振舞おう。それと、少々給料に色を付ける。どうかな?」

『『よっしゃぁー!』』

『隊長サイコー!』

 

はたして給料が嬉しいのかコーヒーが楽しみなのか。

その答えは、広告心理学者であるバルトフェルドの胸の内のみにある。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

明けの砂漠のアジトでは、アフメドたちがサイーブから 責を受けていた。

 

「あれほど考えて行動しろと・・・」

「お前にはおふくろが・・・」

 

この調子ではや30分だが、時計を見たキサカが止めに入った。

 

「もうそろそろアル・ジャイリーのところへ出発する時間では?」

「おお、そうだったか」

 

この一言でアフメドたち四人は解放されたが、アフメドは次のサイーブの一言で凍り付いた。

 

「こいつをカガリについて行かせようと思ったんだが、懲罰房だから・・・」

「一人でも・・・」

 

結局カガリとキラ、刹那が町へ出向くこととなったのだが、真っ白になったアフメドの耳には何も聞こえていなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

一時間後、キラはカガリと刹那と一緒に町中を歩いていた。

車を運転していたノイマンににやにやと「がんばれよ」等と言われ、思わず殴ってしまったのだが、白い眼をしたバジルール艦長からはお咎めが無かった。

 

「あ、あそこで休憩しよう」

「買い物はすべて済んだのか?」

「多分な・・・けど、このフレイって奴の要求はヤバすぎる。なんだこの化粧品の山」

「あはは・・・」

 

化粧などなど、女性のことはよくわからないキラは愛想笑いでごまかしたし、刹那はいつも通りの仏頂面だ。

キラは笑いながら、四人掛けのテーブルに座った。

 

「ケバブサンド三つ頼む」

 

勝手にカガリが注文するが、二人は特に文句が無いので何か言いはしなかった。

すぐに小麦粉生地の上に削ったケバブが乗り、三つの皿を器用にウェイターが運んできた。

 

「キラ、お前、ケバブ食ったことあるか?」

「無いけど・・・」

「それならこの「ヨーグルトソースがおすすめだ!」・・・あん?」

 

赤いソースボトルを持ったカガリとキラの間、刹那の前の席に、いきなりサングラスにアロハシャツ姿の男が座り、ヨーグルトソースの魅力について力説し始めた。

 

「君、ケバブを食べたことが無いんだろう?ならば!このヨーグルトソースを使うべきだ!

何と言っても肉のうま味も臭みもすべておいしさに昇華するこの優しい味わい、油を適度に変え、口の中をさっぱりさせるほんのりとした酸っぱさ

ケバブでヨーグルトソースを使わない?

ナンセンス!

それこそまさに、ケバブへの冒涜に等しい!

さあ、食べてみたまえ」

 

男はいつの間に頼んだのか自分のケバブにヨーグルトソースをかけると、キラの方に差し出した。

しかし、これにはカガリが黙っていない。

 

「ヨーグルトソース?

はっ。そんなお子様のかけるソースはケバブには合わない!

ケバブにはチリソース!

チリソースはカラダを温めて食欲を増やすし、体も動きやすくなる!

なんてったてこのソースの辛さとラムの香ばしさが作るうま味はヨーグルトソースなんかじゃ作れっこないからな!

さあ、キラ!最初の一口はヨーグルトソースなんかじゃなくってチリソースを食べるんだ!」

 

そう言って、キラにチリソースがかかったケバブを渡そうとしてくる。

皿がカッとぶつかると同時に、サングラスの奥の瞳と、カガリの金色の瞳から火花が散っている。

どうすればいいのかまごまごとしているキラに、刹那が救いの手を差し伸べた。

 

「お前は辛い物が好きだ。チリソースでいいんじゃないのか?」

 

本人は、ソースをかけずにケバブを食べているのだが。

その言葉で、アロハシャツの男はがっくりと項垂れ悲しみを、カガリは腕を突き上げて喜びをそれぞれ表現していた。

 

「よーしキラ。こっち側(正しい世界)へようこそ。さ、早く食べないと美味しくないぞ!」

辛党(ダークサイド)め・・・」

 

やや罪悪感を感じつつ、キラはチリソースをかけたケバブを口に運ぶ。

目の前では、見たこともないほど嬉しそうにニコニコとしているカガリが感想を待っている。

アロハシャツの男は、刹那に布教を試みていた。

 

そして、一口目が舌に触れる。

唐辛子のピリピリとした辛味が、肉の油を吸って旨辛く口の中に広がっていく。

小麦粉を焼いた生地は、香ばしさと程よい甘みを送ってくるし、口の中身をきれいに混ざらせて、味が円滑に口の中をめぐるように助けてくれるようだ。

二口目で、キラはカガリがミルに入った胡椒を持っていることに気づいた。

その視線に気が付いたのか、カガリは何も言わずに笑顔で渡してくれた。

振りかけて、三口目に挑む。

コショウの香りと辛さが足されたチリソースは、一つ次元が上がったかのようなおいしさだった。

もしかして、チリソースは胡椒を載せることを前提に調合されているのだろうか。

・・・いつの間にか、キラはカガリと握手を交わしていた。

 

「カガリ、ありがとう。君と出会えて本当によかった」

「私もだ。同志が増えてくれてうれしいよ」

 

余談だが、カガリと町へ来たアフメドは甘党のためケバブの味が共有できず、非常に悔し思いをしていた。

アロハシャツの男は、刹那がヨーグルトソースをかけることに応じてくれたためテンションが持ち直したようだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「さて、私がここにいるのはもちろんケバブのためということもあるんだが・・・」

 

アロハシャツの男は、すくっと立ち上がると、いきなりしゃべり始めた。

 

「実はほかにも目的があってね」

 

次の瞬間、刹那が二人を机の片方へ引き寄せ、アロハシャツの男が机を蹴り倒した。

 

「おい!ヨーグルトソースがかかったぞ!嫌がらせか!?」

「・・・気のせいだ!そっちの君!拳銃は持ってる?」

「ああ。援護しよう」

 

カガリはなおも文句が言いたそうだったが、机に銃弾が当たって黙った。

アロハシャツの男も、懐からサブマシンガンを取り出す。

 

「じゃ、行くよ」

「右からだ。マシンガンが厄介だ」

 

そういうが否や、刹那が拳銃でサブマシンガンを持った男の頭を打ち抜いた。

弾幕が薄くなったその隙に、アロハシャツの男がサブマシンガンで拳銃を持った数人を殺した。

すると、銃声を聞きつけたのかZAFTの兵士が集まってきた。

 

「ご無事ですか隊長!」

「ああ、なかなか上手くいったね」

 

カガリは、ショックで声も出ないようだった。

刹那が、小さく「砂漠の虎」とつぶやいた。

キラは、叫んだ。

 

「危ない!後ろに!」

 

すぐに振り向いたZAFTの兵士が、アサルトライフルで後ろにいた男を撃ち殺した。

 

「助かったよ。そちらのお嬢さんは偶然「わざとだろ」・・・ヨーグルトソースで汚れてしまっているようだし、僕の家に招待しよう」

 

相手がこちらの身分を知っているのかは不明だが、もし知られていた場合、逃げ出せるような状況ではなかった。

 

「世話になるな」

 

それでも、刹那は普段どおりだったが。




キラは辛党らしいです。
それもかなりの。

作者も辛党だったのでキラ君には食レポをしてもらいました。
まだまだ表現に改良の余地があるような・・・

ちなみに、感想で展開が遅いというお言葉を頂いたので今週のようにじわじわと文字数を増やしていきたいと思います。
また、視点の切り替わりや改行ももう少しどうにかならないかとのお言葉も頂きました。
毎週更新するたびに一話ずつ遡って確かめますので、読者の皆様も突っ込みどころがあったら感想欄なりに意見を寄せていただけると幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

25話:この戦争

アドバイスを頂いて一つずつレベルアップを重ねていきます・・・

RPGみたいだな!


現在、私たちはアジトから北に数キロ離れた町の地下にて、武器商人と軍需物資の取引を進めている。

 

「では、こちらがご注文の品になります」

「うわ・・・純正品じゃないか!」

 

ノイマン曹長の驚きようも納得だ。

しかし、連合がこのような地区まで品を流通させているとは驚きだ。

横流しとして敢えて敵の勢力圏まで流通網を作るなど、私には思いもつかない。

だが・・・

 

「この水の代金は高すぎやしないか?」

 

軍需物資は納得できる価格だが、真水の値段が高すぎる。

しかし、この質問は相手方もわかっていたようだ。

 

「この地では、水は大変貴重なものです。それをこのような量用意させていただきましたから、多少はお勉強させていただいています」

「すまんが、これは俺にもどうしようもない」

「そうですか。では支払いを」

 

サイーブ氏がここまで来る途中に提示した追加の条件を思い出す。

 

『一応艦長のあんたには話したが、カガリを連れて行ってもらうとこっちの借りが大きすぎるからな』

 

支払いをしなくていいというのはありがたい話なのだが、まさか彼女が・・・

 

「艦長?」

「ああいや、すまない。退出しよう」

 

艦長は退出ですよ?と続きを予想したのだが、実際は体調が優れないのでは・・・と商談中に顔を顰めたり顔を青くしたりした艦長を気遣ったものだった。

残念ながらどちらもお互いが勘違いしているとは知る由もないのだが。

なんとなく察しがついているのか、サイーブは冷ややかというかあきれ顔というか・・・兎に角微妙な顔をしていた。

 

「しかし少尉たちは大丈夫ですかね」

 

その質問には、二人が答えた。

 

「まあ曹長がいるさ。問題なかろう」

「あの兄ちゃんだろ?まああいつがいりゃあ大抵はどうにかなるだろ」

「まあそうですね・・・」

 

一方のキラたちはと言えば・・・

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「アイシャ、彼女を着替えさせてやってくれ」

「まあ、またケバブ?もう職人を雇えばいいじゃない」

「分かってないねー、外で食べるから美味しいんじゃないか」

 

キラたち一行は、砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドの家に来ていた。

キラと刹那は無事だが、カガリはヨーグルトソースにまみれてしまっている。

そして、カガリは目に見えて怒りの沸点が近づいている。

 

「お前がシャワーを貸してくれるって言うから・・・」

「もう少しそのままならヨーグルトソースの良さがわかるんじゃないかい?」

「お前なぁ・・・!」

「はいはいそこまで」

 

カガリの額にはっきりと青筋が立った所で、金色のメッシュが入った女性・・・アイシャが止めに入る。

 

「アンディ、あんまりヨーグルトソースをそんな風に使ってるとダコスタ君に怒られるわよ?」

「それは困るね。彼女をシャワールームに頼む」

 

アイシャはふふっと笑ってカガリの肩を抱いた。

 

「それでいいのよ。さ、行きましょう」

「あ、ああ・・・」

「カガリ!」

「あら心配?でも綺麗になるところは男の子には見せられないわ?それとも・・・」

 

連れ去られるカガリは一抹の不安を拭えない、といった体でキラの方に目を向けたのだが、ぼそぼそという声の直後顔を真っ赤にして抵抗が止まり、どうしようもなくそのまま連れ去られて行ってしまった。

 

「大丈夫ですかね・・・」

 

キラとしては、自分の身分がばれていないかとひやひやしているのだが、刹那が答えるよりも先に答えが出た。

 

「彼女のセンスは中々だ。期待してくれていいよ?連合のパイロット君たち」

「なっ!」

「・・・」

 

キラは焦って思わず腰の拳銃を目で追ってしまったが、刹那はあまり驚いた顔もせずじっとバルトフェルドを見ている。

 

「ふむ、君は気づかれている。と、気づいていたのかな?」

「ああ」

 

キラとしては、一声欲しいくらいだったが、どこで口にしても聞かれていただろうとも思いなおす。

目の前では話がなおも続く。

 

「まあ、今回君たちに手を出すことはないよ。君たちは客人として此処に来ているわけだからね」

 

そう言って、虎は身を翻して刹那達に背を向け、こっちだ、と扉を開ける。

付いて行っていいのか?とキラは刹那の方を見るのだが、刹那は何も聞かずに頷く。

ああ、勘が良いというのか・・・そう、トールと似てるんだ。

キラの中では、トールと刹那は勘の良さという点ではいい勝負だ。

だから、お互いに全て分かっているものとして刹那と共に、虎に続いて扉をくぐった。

 

そこは、応接間のようだった。

品の良い、それでいて質素なソファや机が置かれている。

恐らく昔はシャンデリアが置かれていたであろう天井には電気照明が置かれ、シーリングファンがくるくると回って空気を掻きまわしていた。

空調もどこかにあるのだろう。空気は少しひんやりとしている。

刹那は、昔の癖で逃走経路を眼で探す。

窓くらいしか目立った出口はないが、その外には数体のMSが置かれていた。

自分一人ならともかく、キラとカガリが逃げられないだろうと結論を付け、ソファに腰を掛けた。

キラも、刹那に続いてソファに座った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

バルトフェルドは、自分の執務机から来客用の成功したブレンドの豆とミル、ドリッパーを取り出す。

・・・さて、お客人のお気に召すかな?

成功したブレンドの味を他人に批評してもらうのも、ケバブに並ぶ彼の趣味である。

 

「君たち、コーヒーは好きかな?」

 

刹那は、嗜む程度には。キラは、あまり飲んだことが無い。そう答えた。

ああ、これはいい感想が聞けそうだと、少しほくそえんで豆を挽き、お湯を沸かし始めた。

丁度豆を挽き終わったところで呼び鈴が鳴る。

 

「アイシャかな?」

「ええ、そうよ。さ、入ってきて」

 

多分見違えるような恰好なんだろうなとバルトフェルドは予感する。

先ほど意見の相違があった(ダークサイドに堕ちた)彼は、仲が良かったようだからきっといい反応が得られるだろうと、そちらを振り返っておくことにした。

 

「わ、笑うなよ!?」

 

入ってきた彼女が相当な変わりようだったであろうことは、少年の顔から分かった。

何といってもこの驚きようだ。

口が大きく開いているし、頬の紅潮も顕著だ。

おまけにそのまま固まってしまっているし・・・

 

「アイシャ・・・おお、なかなか綺麗になったじゃないか」

「からかってんのか!?」

 

言葉遣いさえ直せば、どこぞのご令嬢と言っても通るんだろうな。

そんな風に思えるくらい、このお姫様のような服を()()()()()()()

翠と白を基調にしたドレスを、自然体で着こなしている。

 

ああ、ストライクの方の少年。そんなほめ方じゃあ振り向いて・・・いや、まんざらでもないのかな?

思えば、昔から人の反応を見るのが好きで広告心理学者なんてなったのかもな。

では、コーヒーも丁度蒸れて入れ時だし、こちらの反応も見せてもらおうか。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「これは・・・」

 

恐らく、オリジナルのブレンドだろう。

自慢げな顔でこちらを見ている虎の顔は、子供のようでもある。

どうだい?と聞かれ、素直に感想を述べる。

 

「驚いた。素晴らしい味だ」

 

そうだろう。と、嬉しそうに顔をほころばせる。

一応先にあちらが飲んでから口をつけたが、杞憂だったようだ。

隣のキラと、さらにその隣のカガリが恐る恐る口をつけ、全く同じように目を見開いた。

 

「すごくおいしいですよ!」

「ホントだ!旨いな!」

 

二人からその感想を聞けて満足だったのか、バルトフェルドはうんうんと頷いている。

だが、キラは次の言葉の衝撃に吹き出しそうになったようだ。

 

「それで、ストライク、だったな。凄まじい腕だね、君は」

 

先ほど同様笑顔だが、目が笑っていない。

手が、勝手に拳銃の位置を探る。

一瞬で警戒をむき出しにしたこちら側をみて、バルトフェルドは両手を挙げて向かいのソファに腰を下ろした。

 

「君、コーディネーターだろう?」

 

真っ直ぐに目を見つめられたキラは、答えに窮しているが、勝手に話が進んでいく。

 

「君の戦闘を二回見た。一度目は、砂漠上であっという間に歩行用の運動パラメーターを書き換えた。

二度目には、砂漠の熱対流を一瞬でパラメータ化してしまった。

しかも、砂漠で二足歩行型MSを使ってあんな速度まで出している。

正直、君がナチュラルだなんて言われたら、それこそ何かの冗談だ」

 

言いたいことをひと段落言ってしまったのか、バルトフェルドはコーヒーを一口含んでキラの反応を待っている。

 

キラからは質問の意図がつかめないからだろうか、困惑が。

カガリからは、少しの困惑と温かさが流れてくる。

 

キラは、腹をくくったのかバルトフェルトをはっきりと見て言った。

 

「はい。僕はコーディネーターです」

 

バルトフェルドは何とも言えない笑いを顔に張り付けているが、続く一言は予想できなかったのか、一瞬無表情で顔が固まった。

 

「でも、そんなことはどうでもいいことじゃないですか」

 

・・・これは、俺がアークエンジェルに乗っているからの特異な思考なのだろうか。

少なくとも、コーディネーターとナチュラルに分かれて戦争をしているのだからそんな考えの人間は少数派だろう。

バルトフェルドは、そんな考え方の人間ではなかったようだ。

 

「大した問題ではないと。そういう言うことかい?」

 

今度はこちらへ眼を向けて言った。

だが

 

「ああ、その通りだ。俺はナチュラルだが・・・キラと同じ人間だ。考え、食べて、寝る。何も変わらない」

 

今度こそ納得できない答えだっただろうか。

バルトフェルドからは、失望と諦念・・・少しの羨望が感じられる。

 

「それは夢物語だよ」

 

今、俺は理解した。

この男は諦めてしまったのだ。

だが、それは間違っている。

 

「だが、少なくともこのコーヒーは等価だ。

俺もお前も同様に楽しむことが出来る。

対話で分り合うことへの道が開ける。

ナチュラルとコーディネーターが分り合えば、この戦争は終わる」

 

「それこそ夢物語だよ。

うちの連中も、コーディネーターがナチュラルより優れていると言ってはばからない連中だよ。

この戦争は、ナチュラルとコーディネーターがお互いの違いが許せず始まった戦争だ。

こうして価値を共有できる人間はわずかなんだよ」

 

「それでも、お前が疑問に感じていることはお前を責め続けるだけだ。

だから非情に徹しきれず、街の住人を逃げさせた」

 

「あれは・・・」

 

バルトフェルドは否定しにかかるが、俺は断固として譲るわけにはいかない。

 

「お前の疑問が形になったようなものだ。

分り合えるはずだと。そう頭のどこかで考えているのではないか?」

 

バルトフェルドの顔に、一瞬悲しみがよぎるが、本当に一瞬だった。

 

「さて、今日はこのくらいにしておこう。

さもないと、君たちも僕を撃ち難いだろう」

 

バルトフェルドはすくっと立ち上がって、先ほど入ってきた扉を開く。

 

「僕たちは、分り合える()()()()()()

だが、その可能性を選ぶのが怖くて選べないんだ。

みんながみんな、君のように強いわけではない・・・

久しぶりに有意義な話が出来て良かったよ、奇妙なパイロット君」

「・・・ソラン・イブラヒムだ」

「・・・次はまた戦場で会おう、ソラン君」

 

バルトフェルドが俺とキラの、アイシャという女性がカガリの手を引いて、宅の外へ連れ出す。

 

「町のはずれまでは送ろう。そこの車に乗りこめ」

 

後部座席に三人が押し込まれ、運転席にバルトフェルドが乗り込む。

車は颯爽と走り、すぐに町のはずれまで到着した。

 

「憎しみは無くても・・・

結局、プラントという国に愛着があるのさ」

 

車の中では終始無言だったが、車を降りたところでバルトフェルドはそう言った。

 

「またお前と()()()()()()()()()()()()()()戦うのを楽しみにしているぞ!」

 

言うだけ言って逃げるように車を発進させたバルトフェルドに、カガリがそう叫んだ。

少なくとも、その言葉が強く彼に響いたのは空間を埋めつくすほどの歯がゆさと口惜しさから確かだろう。

 

 

 

その後、砂漠の虎に掴まっていたと聞いた艦長から数時間にわたる説教と反省文の提出を命令された。

物資の補給は上手くいったようで何よりだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

アークエンジェルの自室で反省文を書いていると、ノックの音がした。

 

「キラ?いるか?」

 

その声は間違いなくカガリだ。

 

「空いてるよ?」

 

何の用だろう。

そう疑問には思ったけれど、特に表に出さずに招き入れてしまった。

 

そういえば二人っきりだ。

・・・すごく緊張する。

 

なんだか顔が見せられず、反省文に集中するふりをする。

けれど、カガリは後ろから話しかけてきた。

 

「お前、コーディネーターだったんだな」

 

多分、鏡があったら自分の顔から色が無くなるのが見えたと思う。

その位顔から血の気が引いたような気がした。

サーっという音がしなかったのが不思議なくらいだ。

今度は、恐怖のあまり後ろが見れない。

 

直後に頭が捕まえられた。

いや、後ろから抱きしめられたの方が正確かもしれない。

しかも、次の言葉も(想像という機能が働いていたかは別にして)全く想像してない言葉だった。

 

「今まで大変だっただろ?」

 

どうやら僕がコーディネーターだから大変だっただろうということらしい。

でも、それは間違いだ。

 

「この艦にそんな人はいないよ」

 

みんな、僕に良くしてくれる。

コロニーでだってそうだ。

コペルニクスで、僕がドジだからっていじめていたような人とも違う。

一緒に向いていることを探して、結局大学のゼミまで同じだ。

ああ、思えばアスランも僕に良くしてくれて、それでうちに遊びに来るくらい仲良くなったんだっけ。

 

「みんな、僕がコーディネーターだからって変な目で見たりしないし」

 

だから

 

「だから、僕がみんなを守りたいんだ」

「そっか・・・」

 

分かってくれたんだろうか?

 

「でも、だったらお前が死ぬとみんな悲しむぞ?」

 

それは、思ってもみないことだった。

 

「それは」

 

一瞬言葉に詰まったけど、その一瞬でカガリに頬を手で捕まえられて顔を向かい合う向きに固定されてしまった。

 

「悲しむに決まってんだろ?それが友達・・・だろ?多分」

 

確かに、当たり前だ。

そっか、なら僕は、すぐに答えられないといけなかったんだなと痛感する。

 

「うん、そうだね。無茶はしないようにするよ」

 

だからまたソランさんに鍛えてもらわないとな・・・

実力があれば無茶も無茶じゃないわけだし

 

「じゃあ私は行くけど・・・その、あれほんとか?」

 

・・・?

何だろう。

もじもじしてる。

かわいいけど。

かわいいけど。

 

「虎の屋敷で言ってたこと」

「えっと・・・?」

 

何だろう。

思い出してみたけれど、思い当たるのは一つしかない。

 

「うん。お姫様みたいで奇麗だったよ?」

「そ、そうか。じゃあな!」

 

そう言って、せかせかと出て行ってしまった。

なんか変な事言っちゃったかな?

 

「キーラー」

 

トール?

 

「見たぞ・・・?」

 

本日二回目だけど、さっきまでのやり取りやカガリが今さっき出ていったことを思い出して頭が真っ白になった。




バルトフェルドさんは迷いがあっても全力は出すタイプです。
行動に甘さは出ますが。
何といっても砲台は別の人間だからね!

カガリは頑張ればヒロイン力高い!
・・・ええ、最近自分がやばい奴な自身はありますよ?
カガリに友達がいない?
なのは原作見てる人は分かるよね?

今回は地の文を足してみました。
分かりやすいといいな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

26話:普通のコーディネーター

キラがおかしいことは段々明らかになってましたね本編でも。
だってそこそこ優秀なはずのイザークさんも砂漠歩けなかったし・・・

現在同時並行で再筆版を書いていますが、こちらの最新作などは再筆版が出来るまでの原稿のようなものとして読んでいただけると幸いかもしれません。


「クルーゼ隊所属、イザーク・ジュールです」

「同じく、ディアッカ・エルスマンです」

 

高名な砂漠の虎と会うことが出来て光栄だなどと言っているイザークたちに鷹揚に頷きながら、バルトフェルドは二人の機体をしげしげと眺めていた。

 

「この機体、連合の足付きに乗っているものと意匠が似ているねぇ」

 

目の前の、憤怒の表情を隠そうともしないイザークを、内心で苦笑しながらもうひとつ尋ねる。

 

「消せる傷を消さないのは、復讐の誓いか」

「ストライクは俺がやります」

 

熱くなっては退き時も分からなくなる、とはバルトフェルドがいつも口を酸っぱくして隊の人間に言っている事なのだが、この二人は正にそれだ。

明確に敵わないだろうに、なぜ負けるのかという条件をすべてを無視して「相手が強いから」と一元的に思い込み、特攻していく。手段を選ばなければいくらでも勝てる敵だろうに。

その証拠に、このどこまで行っても砂漠で歩けない事を相手も出来なくて当然だと思っているのか、修正しようとする努力が見られない。

自分たちがこうだから、相手はそれ以下だ。あまりにも都合のいい妄想である。だが、これはコーディネーターの持病でもあった。

何故なら、どのコーディネーターも多少はこう考えている。「コーディネーターはナチュラルよりも優れている」

もちろん、例外はある。クルーゼなどその最たる例だとバルトフェルドは考えている。だが、その隊長の美点を何も受け継いでいないというのは部下として嘆かわしいことではないかと感じていた。

故に、バルトフェルドはこう命じる。

 

「君たちには、艦上から支援射撃を行ってもらう。君たちではバクゥの高速戦闘についてこれないからね」

 

二人は、屈辱を感じたのか反論しようとするが、ディアッカがイザークを押しとどめた。

ちゃんとここで成長してくれれば、あるいは。

これからをどう使うかと相談しているらしい二人を見ながら、人の部下に如何に教育を施すかと考えるバルトフェルドは正に有能な指揮官であった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

昨日はひどい目に会った・・・まさかトールに見られてるなんて。

 

今、キラは刹那のジンの改修プログラムを作成している。現在の設定では刹那の反応速度に追いつく前に回路が焼き切れてしまうからだ。

今までの戦闘データから、同じような動きをよりモータにかかる負荷が少ないように組みなおす。さらに、追加された脚部の無限軌道装置をなるべく高寿命に扱えるように設定を見直す。

ヘリオポリスを出てからと言うもの、こうしてMSのプログラムばかり作っているが、おそらく世界にキラ以上にプログラム作成が上手な人間は存在しないだろう。

何と言っても、経験値が圧倒的すぎる。まだ世に出て1年かそこらの兵器をここまで詳しくいじっているのだから当然ではあるが。

 

カタカタとシミュレーターで出来を確認しながら作業をしていると、部屋の戸がトントンとノックされた。

一瞬トールかと昨日の悲劇を思い出して疑うが、そもそも覗き見をするような人間が今更ノックをするだろうか?

 

「私だけど」

 

声からするにマリューだが、以前ボイスチェンジャーでフレイの声真似をし、いたずらしてきたトールを思い出したキラは一応インターホンの液晶を見る。

そこにいたのは本物のマリューだったので、どうぞと言ってドアを開ける。

 

「お邪魔するわね」

 

流石に軍人さんなだけあって礼儀正しいなと思った。接待などしたことは無いが、以前刹那からお茶を出されたことを思い出す。

そういえば虎に聞いてたのと同じコーヒーを偶然食堂でもらったんだった。

もらった豆をファルターに入れてコーヒーを出す。自分でも一口飲んでみたが、虎ほどおいしくは淹れることが出来なかった。

 

「どうぞ。あんまりおいしくはないですけど・・・」

「そう?気を遣わせちゃって悪いわね。いただくわ」

 

一口飲んでおいしいじゃない!と言うが、おそらく整備班のコーヒーが不味すぎるかお世辞を言っているかの二択だろう。恐らくは後者だが。

コーヒーを飲みながら、作業の進捗を聞かれたので、今日中には終わりそうだと答える。大仰にびっくりされてしまった。

今更ながら、こんなに驚かれるとなんだかやりずらい。僕も肯定するのも気が引けたので、そうですかね、とお茶を濁す。

マリューは微笑んでいたが、瞬きをするとすぐに真剣な顔に変わった。

 

「これは後回しに出来ない問題だから今言うわ」

 

カガリをオーブへ連れて行くとき、一緒に降りるかどうか。

本来、軍事機密を知ってしまった一般人を放置することはできない。だが、キラたちヘリオポリスの学生は、なし崩し的に付いて来てしまったという面も見れば、情状酌量の余地がある。

ハルバートン准将はそう言っていたそうだ。

だから、緘口令さえ守ればオーブで降りてもいい。そのための書類も準備してある。

 

かみ砕けばそういうことだ。

目の前に置かれた退役許可証を見ながら、今までの事を思い出す。

正直に言うと、いつの間にかアークエンジェルにいることは僕の中では当たり前になっていた。

命を懸けて一緒に戦っているからだろうか。整備班やその他の人々とも、いつの間にか仲良くなっていく。

名前を覚えた人が、いつか戦場で戦って死んでいるのかもしれない。ヘリオポリスで、ただ学生をやっていて、ニュースを見ていた時には実感が無かった戦場だが、今となっては心に大きなウェイトを持ってしまっていた。

 

「ずるいですよ」

 

今までの事を思い出して、そう言っていた。

 

「こんなにみんなに良くしてもらって、今更みんなを見捨てて降りれるわけ、ないじゃないですか」

 

ストライクに乗ったあの瞬間だけなら、降りることが出来たかもしれない。

でも、今はマードックやノイマン、チャンドラー二世などなど、アークエンジェルの人々の人となりを知ってしまった。

ムウさんとやった戦闘訓練、ソランさんと続けたMSの操縦訓練が、ニュースを見るたびに思い出されるのだ。

 

「きっと、戦争が終わるまで降りれませんよ」

 

僕は非情になり切れない。仲間が見捨てられない。当たり前の人間だから当然だ。

 

「そう。ごめんなさいね」

 

そういって、マリューさんはもう一枚の紙を出した。先にこっちを言うと心残りになるんじゃないかと思って。そういって、書類を出した。

書類には、ZAFTの基地周辺のここのところの動きが書かれていた。

 

「サイーブ氏の予見なんだけどね。恐らく明後日には虎と戦闘になるわ。艦長もほぼ間違いないだろうって」

 

戦闘になると言われて少し身構えてしまったが、予想戦力の欄を見て少しほっとした。バクゥの10機くらいならソランさんがいれば大きな問題じゃない。

どちらかと言うと・・・

 

「虎の戦術が厄介よ」

 

高名な戦術家なのだから、そちらがメインなんだろう。僕の方はムウさんからたまに講習を受けているくらいで、戦術はMSの操縦に比べるとからっきしだ。

 

「それと、未確定情報なんだけど、あの追撃隊のMSも降下している可能性があるわ」

 

流石に厳しいとは思うが、僕たちにはここを突破せねば進路が無い。

コーヒーごちそうさまと言って部屋を出ていくマリューさんに手を振って、再びPCと向かい合う。

僕もソランさんも、ここで死ぬわけにはいかない。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「そっか、あいつ降りないのか」

 

偶然扉の外を通ったカガリは、少し残念そうな顔をしていた。

 

「オーブであいつと会えなくなるのか」

 

私はどうしても立場上オーブで一度降りなくてはならない。だから、お父様に何と言われてももう一度アークエンジェルに乗らないと。




なんだかダメな気がする・・・
多分再筆します。
きっと再筆します。
確実に再筆します。

だって納得できない出来だし・・・
上述の通り、再筆版が出来るまでの原稿のようなものとして読んでいただけると幸いかもしれません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

27話:砂漠戦

来週は休みます。
ホントです。
テストやばいです。
お盆までには新作が書けたらなぁと思います。
つまり最大お盆までは休むと思います。


「一応地雷は埋めてみたが、多分バレてるだろうな」

 

サイーブ・アシュマンは、渋い顔で戦闘準備の報告をしていた。

 

「では、必然的に我々が戦闘を行うことになりますが」

 

バジルール艦長は、分かっていたことだと落ち着いて話している。結局、現在の戦場ではMSが有るか無いかが大きな差となっている。バジルール艦長はそう感じていた。今までの戦場も、MSが無ければたとえ「エンデュミオンの鷹」がいても突破は難しかっただろうと。

 

「因縁のある相手も降下してきたとのことでしたし」

 

また、第八艦隊の観測隊から投下された通信用カプセルが朝に回収された。文章には、「クルーゼ隊からGが二機が降下、注意されたし」とあった。しかし、バジルール艦長には信じることが出来た。

 

「彼らなら、やってくれますよ」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「一応、あっちの地雷原焼き払っとこうか」

 

ZAFT地上艦、レセップスの主砲が、明けの砂漠のメンバーが作った地雷原を正確に捉え、砂漠の只中で爆炎が上がる。

 

まさかこれで終わりとも思えないな、とバルトフェルドはバクゥ部隊に出撃を命じる。そして、自室にいるアイシャを呼びに行く。

 

「さて、アイシャ、準備は・・・」

 

悲し気な笑顔を向けられて、バルトフェルドは言葉に詰まった。

 

「あの子たちと戦うのね」

「僕だって気分は良くないさ」

 

バルトフェルドの悩みは見透かされていたようだ。だが、悩みがあっても目的のためには止まらないのがこのバルトフェルドの良いところだ。

 

「それでもね、やらなくちゃいけないんだよ」

 

そう、笑いながら言ってバルトフェルドは扉を開けて外に出た。エレベーターに二人で乗り、新型の指揮官用MS、ラゴゥに乗り込む。

 

「アンドリュー・バルトフェルド、」

「アイシャ」

「「ラゴゥ、出る!」」

 

そうして、砂を巻き上げながらオレンジの機体が発進する。

戦場に出てすぐに、アイシャが敵を発見した。

 

「早い!」

 

そのジン・オーカーは恐らくは増設されたスラスターの出力を全開にしているのだろう。直線のみではあるが、バクゥですら出せないほどの速度で砂漠を滑走している。

だが、そのような速攻は予想できた事だと口の端を釣り上げる。この時のために、何度も陳情に来た彼らをそこに配置した意味がある。

 

「ディアッカ君!」

 

レセップスの艦上で、バスターが砲を構える。

 

『直線しか進まない敵なんて怖くないね!・・・!?』

 

バスターが砲を構えたその瞬間。ジン・オーカーのスラスター光が消え、次の瞬間にはジン・オーカー自体も照準の中から消えた。

その瞬間を、バルトフェルドはしっかりと見ていた。今明らかに、あのジン・オーカーは《横に》高速で移動した。背面に焼き付けられただけのスラスターでどうやって、と機体の正面を敵に向けながら考える。敵艦の攻撃に向かわせなかったバクゥにジン・オーカーを包囲させ、アイシャがビームライフルのトリガーを引いた。

 

「また!」

 

またもや、バクゥ以上の急加速でビームを避けた。しかも、しゃがみながら砂を巻き上げて即席の煙幕を張った。

 

『どこに・・・・ぐぁぁぁぁぁ!』

 

通信で聞こえた断末魔の声に、バクゥのパイロットがやられたことを悟る。

 

「全機下がれ!」

 

あの砂煙の中では一方的にこちらがやられてしまうと、バクゥ部隊に牽制射撃をさせながら後退、散開させる。

砂を巻き上げただけの煙幕はすぐに晴れ、ジン・オーカーが再びその姿を現した。その腕には大きな装置が取り付けられ、足には巨大なクローラーが接続されている。

 

「どうにも優秀なメカニックがいるらしいね」

 

あれほどの速度で格闘戦をこなされると、バクゥの有利な点は射撃ができる点くらいしかなくなる。あのクローラーはおそらくバクゥの物を移植し、継戦性をかなぐり捨てて速度に特化させているのだろう。これ以上、こちらがやられれば防衛線すら張れなくなる。

 

『ば、化け物だ・・・』

「うろたえるな!」

 

怖気づいた部下に一括して、攻略法を探る。そして、気づいた。

 

「いいか、確かに敵は驚異的な機動力を持っている。だが、装甲自体は通常のジン・オーカーと変わらん!一発当てれば致命傷だ!一発だ!一発で良いから命中させるぞ!」

 

その言葉に、訓練されたバルトフェルド隊の面々は、はい!と返事をして一斉にジン・オーカーに向けて背中のウェポンコンテナからミサイルや滑空砲の弾を放つ。

《そんな策が通じればいいが》。バルトフェルドは苦い顔で射撃を命じた。

バルトフェルドは報告を聞いて知っている。実際に見てもいる。あのジン・オーカーは一度バクゥ数機からの弾幕を食らって全て凌いでいると。

それでも、現状ではこのジン・オーカーを落とすにはこれしか最善手がないのも確かである。

 

最初の一機が撃った滑空砲の弾が、前屈したジン・オーカーに全て躱される。誘導が効いたミサイルが、マニピュレータで腹を押されて軌道を変え、重斬刀で叩き落されて届く前に爆発し、後からのミサイルは強く巻き上げられた砂のカーテンで遮られて届かない。

フォーメーションを変えて次々と撃ちつづけても、同じ様に対応され全く攻撃が届かない。レセップス艦上のバスターやデュエルも射撃を行うが、虚しく砂埃を巻き上げるだけだった。

 

『あれは!ストライクゥ!!!』

 

不意に、イザークが狂喜の声をあげてレセップスから飛び降りた。整備士たちの徹夜に続く徹夜でデュエルは砂漠を歩くことが可能となっていた。

段々慣れてきたのか、歩行スピードが上がっていき、遂には走ってストライクへ向かっていく。

 

ざくざくと砂漠を踏みしめながら、他の何も眼に入っていないのか、コンソールに響くバルトフェルドの声をものともせずにデュエルはストライクの方へジン・オーカーを横切っていこうとした。

だが、当然ジン・オーカーのパイロットは不用意に近づく敵を看過しない。

 

流石に攻撃されれば気が付いたようで、ビームサーベルで重斬刀を持った手に斬りつける。

 

『邪魔をするな!』

「囮だ!避けろ!」

 

バルトフェルドの声が聞き届けられるよりも、イザークが沈黙する方が早かった。

囮の右腕でデュエルの機体をつかみ寄せ、左腕の装置をコクピットに突き付ける。

高速で射出された鋼材が、デュエルのコクピットに叩きつけられた。周囲に甲高い金属音が鳴り響く。後ろ向きに吹き飛ばされたデュエルは、倒れたままピクリとも動かない。

通信音声で僅かに聞こえる息遣いの音で、まだ死んでいないことは分かる。だが、時間の問題だ。

バルトフェルドは一旦通信を切った。

 

「僕に地獄の底まで付いて来てくれるかい?」

「もちろんよ、アンディ」

 

当然のことを聞かないで頂戴、とアイシャが笑う。バルトフェルドもつられて少し笑ったが、すぐに表情を引き戻して通信を再びONにする。

 

「諸君、撤退だ。基地へ戻る。殿は僕が努めよう」

 

そう言って、ラゴゥをデュエルの前に割り込ませる。

 

「君とはもっとケバブの話をしたかったがね」

 

デュエルが回収されたことを確認して、アイシャがビームを放つ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

恐らく彼は降伏などしないだろう。誇りや大切なもののために死を選ぶ。プラントを憂うといっていたバルトフェルドの顔は確かにあの時の言葉が真実だと物語っていた。

刹那にプラントの権利をどうこうする権力が無い以上、彼がこちらへ来ることは無い。

 

ゆっくりと光り始めた銃口の打ち手の意思を、感じて、狙われた位置からジン・オーカーを動かして躱す。同時に放ったアーマーシュナイダーは、口元で発振したビームサーベルに切り払われた。

 

どうにも、一筋縄ではいかないようだ。




次回はアークエンジェル組視点から描くと思います。

ああ、眠い・・・・

7/30追記
鋼材が叩きつけられた、と表現を変更しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

28話:紅海へ

なんとかこのクソ忙しさに一段落付き、スプラトゥーンを延々とプレイできるくらいには時間が出来ました。
よかったー。
今週からまた週一で頑張りたく存じ上げます!


アークエンジェルは地表から僅かに浮いてレセップスの方へ航行していた。

 

「戦況はどうだ?」

「凄まじい戦果ですよ・・・」

 

現在、味方のMSから送られる情報によれば、既に敵バクゥが一機とデュエルが戦闘不能。敵は撤退を開始し、殿の隊長機と思しい機体と曹長が一騎打ちを繰り広げていた。

 

「戦術で相手の戦略を押し切るとはな・・・」

 

送られてきた情報からマップを使い再現してみると、相手は一点突破を警戒して鶴翼の陣を組み、数で劣るこちらのMSを包んで殲滅しようと考えていたのだろう。だが、曹長の戦力は敵の想定を超えていたようだ。まだ撤退ラインである全戦力の20%すら失っていないのに撤退を始めているということは、このままでは全滅すると指揮官が判断した証左でもある。

 

「あいつ、こんなに強かったのか」

 

そんな戦況を眺めて呟かれたカガリの言葉は、いったいどちらに向けられたものだったのか。

 

「ストライク、帰投してきます」

「エネルギー切れか?」

「そのようです」

 

先にストライクが帰ってきたことを訝しんだ艦長は、収容されたストライクへつながせた。

 

「少尉、なぜこんなに早く帰ってきた?」

「あの隊長機にライフルで牽制してたんですけど、全く当たらなくて・・・」

 

頭をぐっしょりと濡らす汗が、キラの疲労を物語っている。これは曹長一人では万が一があるかもしれない、と、次の指示を出す。

 

「少尉、次はランチャーパックで艦上から援護射撃を加えろあと五分ほどで射程に入るはずだ」

「りょ、了解です」

 

ふらふらとはしながらも、敬礼で返事を返したキラに頷いて、整備班にも同様に指示を出す。

艦長には、「勝てる」という確信がうっすらとあった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「射撃と操縦が別か」

 

相手から向けられる感情は、砲身を操るものと機体を操るもので分かれているように感じられた。こちらの攻撃を間一髪で躱しても、砲撃は絶え間なく刹那のジンを狙ってくる。

流石にジンの装甲では一撃すらも耐えることが出来ないため、必然的に回避がいつもより大きくなっている。相手は二人で行っているとは信じられないほど密に絡み合った連携で、刹那に肉薄しようと機体を振り回している。

足元に打ち込まれた二発のビームを事前に後ろへ急加速することで躱し、新たに装備されたレールガンの弾を打ち込もうとするが、砂煙を咥えたような形状のビームサーベルで切り裂きながら迫ってくる。仕方なしにレールガンのチャージを中断して上体を下げビームサーベルの斬撃を躱し、左ひじでMSの頭部をかちあげた。

そのままひっくり返ってしまえば勝負は決まるのだが、背部のスラスターで姿勢を取りながらフォローにビームを打ち込み、姿勢を立て直した。

 

「!・・・これは」

 

背後からの感覚に、刹那は勝負を決めにかかった。

 

地面をバクゥから移植したクローラーが踏みしめ、寿命を完全に無視したオーバースピードでジンを加速させる。

左手に重斬刀を装備させ、背部のスラスターまで全開にして姿勢を立て直したばかりの四足のMSに迫る。相手の回避方向に重斬刀を斬り上げ、迎撃しようとした相手のビームサーベルの発振部を正確にとらえた。

ここまでなら先ほど同様に正確なビーム射撃がフォローを入れるのだが、今度は先にジンの遥か後方から飛来したビームが連装ビーム砲を破壊した。

その衝撃で背部のスラスターも故障し、一瞬敵MSは宙に浮いた。

そして、ジンの右腕の装置、G-Eaterが、先ほど同様にMSをとらえた。

 

「これで!」

 

装置のトリガーを、親指で押し込む。画面の右下に電力ゲージが表示され、アラートが鳴った。電磁加速された鋼材が、MSの装甲を割り砕いて内部を破壊する。

MSの首の付け根から、斜めに入射したパイルバンカーの弾は、コクピットの横を掠めて

砕いた。

 

MSの頭部から光が消えたことを確認した刹那は、ゆっくりと息を吐いた。

どうやら、この二人は時間を稼ぐ事に成功したようだ。見渡す限りでは敵部隊らしきものは見えないし、脳量子波からもかなり遠く離れていることが分かる。

同時に、目の前の残骸の内部で、まだ二人が生きていることも分かった。驚くと同時に、コクピットにノイズが入った。

 

『・・・あの、ときの、話が分かる方かな』

「・・・ああ」

 

バルトフェルドの声に、おそらくは自分だろうと刹那は返事をした。

 

『君は・・・コーディネーターをどう思う』

「どうも何もない・・・人間だ」

 

少なくとも、トールやその友人たち、整備班の人間はそう思っているだろう。その返答に、弱々しい笑い声が聞こえてくる。

 

『みんなそうなら、戦争なんて・・・っく、起こらないんだろうけど、ねぇ』

 

まだ何か言いたいことがあるのだと察した刹那は、口をつぐんで続きを待つ。

 

『まさか、二人とも生きていられるとは思わなかったが・・・僕らは、君たちの捕虜と言うわけだ。だが、どうか、アイシャだけは・・・』

「ああ、了解した」

 

返事をした直後に脳量子波は弱まり、気絶したことが伺えた。後方から、アークエンジェルが接近してきたため、刹那は回収させるための通信を入れた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「じゃあ、カガリを頼んだぜ?」

「もちろんです」

 

カガリの背後関係を一人だけ聞いた艦長が、びしっと敬礼をして返事をする。

アークエンジェルのクルーたちは、砂漠に出て明けの砂漠のメンバーからお礼と別れの言葉をかけられていた。

特に、刹那は若い女性に囲まれて困惑している。

キラは、目から血の涙を流している男から頭を下げられて慌てていた。

 

それも30分ほどで終わり、アークエンジェルは紅海を目指して航行を開始した。

 

整備班は、ジンからクローラーを外し、新たな装備をどうするのかミーティングを始めていた。

ソフトウェア担当としてキラも招かれている。

 

「スクリューじゃあ推進力がなぁ」

「大体ジンじゃ耐圧に問題があるぞ」

「曹長のスピードも反映できないしなぁ」

「じゃあ狙撃なんてどうですか?」

 

キラは、刹那の射撃が正確であることから水上からの狙撃用にカスタムすることを提案する。

 

「水上で動けた方が良いよな?」

「ホバーだろ」

「動力はクローラーに使ってたやつを転用すればいけるな」

「スラスターを水で冷却しながら使ってもいいんじゃないか?」

 

少ないながらも様々なものを開発してきた整備班だからか、とてもたくさんの意見が出る。そして、これらをまとめるのがマリューとマードックの仕事である。

 

「まとめると、ホバーで水上を移動しながら魚雷なんかで攻撃する、で良いかしら」

「「異議なし」」

 

そうと決まれば、と、人が小分けに集められ始める。

 

「資材加工系の連中、集合。ホバー用の外装先に作っちまうぞ」

「武装班、艦載の魚雷とランチャーの互換性確認急ぐぞー」

「残りはスラスターの加工と熱フロー計算と強度計算、モデル作成はキラ君にお願いするわ」

「はい」

 

アークエンジェルが一種の実験部隊であるのは確かなのだが、こんな一つの軍事工廠と化すとはだれが予想しただろうか。

この部隊をZAFTが潰そうとして失敗すればするほど、アークエンジェルがアラスカ本部に辿り着いて発生するリスクが加速度的に上昇していく上に、艦には実験武装を十全に使いこなす最強のパイロットとその弟子がいるのだから、ZAFTからすれば悪辣極まりない。

そして、極めつけに、艦長は軍事の名門、バジルール家の才女である。

 

アークエンジェルが、「不沈艦」として、そして「最強の実験部隊」として名を馳せる日はそう遠くない未来だろう。




実はDestinyのブラストインパルス水上戦がとても好きで、ホバー機構付けちゃいましたww
この刹那さんこそワンマンアーミーではなかろうか


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

29話:紅海の鯱の影

再筆版進まねぇ・・・

此方の通常更新は恒常的な、彼方の再筆版は瞬間最大の文章力が鍛えられていくようなイメージでやってます。で、最大パワーが出ない・・・
つまり、片方スランプ。

昔、塾の先生に「成長が緩やかになるからスランプに見えるだけ」理論を聞かされたので、解決方法もそれに従うということで(投稿するかは分かりませんが)手当たり次第色々書いてみようと思います。

あと、一時期再筆版で読みにくいというご意見がありましたので、現実的にやろうと思ってできる方法をアンケートしてみます。
意見がある!と言う方はアンケートへどうぞ。今のままが一番っしょ!という熱い意見をお持ちの方は3と投票しておいてください。


「魚雷用のランチャー、試作アダプタ完成しましたー!」

「ホバー用スカートの元型です!後は装甲材の溶接を―!」

「クローラーからバッテリー外してきました」

 

現在、アークエンジェルはソナーで索敵を並行しながら紅海を進んでいるが、整備班は大変忙しくしていた。

 

「もしかして、ここはいつもこうなのかい?」

 

医務室から士官用の牢へ連行されるバルトフェルドは、呆れたように笑っている。

 

「ええ。アナタが戦ったあのジンもあんな感じであっという間に作っちゃったんですよ」

「うちにもこのくらいの工作部隊がいればねぇ・・・」

「アンディ、ダコスタくんに怒られるわよ?」

 

一応述べておくと、アイシャとバルトフェルドの牢は別々である。本人たちも了解済だ。

先ほどのアイシャの言葉に「違いない」と苦笑しながらぼんやり整備班を眺めていたバルトフェルドの目に、見覚えのある少年が映る。

 

「あれは確かキラ君だろう?」

「ええ。彼がいなければ開発もこう上手くはいかないでしょうね」

 

つまり、ZAFTは未来を担うべき優秀な若者をその手から逃しているのだ。流石にその一人で戦況が覆りはしないだろうが、一定の戦果を挙げていた自分たちの部隊は彼ともう一人のたった二人に算を乱され敗走しているのである。一騎当千を謳うZAFTの敵がこれか、とバルトフェルドは虚しさを噛みしめていた。何といっても、戦前は若い命を散らせるのかと反戦派だったのだから。

 

「すまない、長く立ち止まりすぎてしまったようだ」

「いえ・・・では、申し訳ありませんがお手を失礼します」

 

再び、手錠を取られて歩き出した。

 

「あとで、キラ君と話がしたいんだが、可能だろうか?」

「監視が付きますが」

「構わないよ」

 

さて、何を話そうかと考えたところで、艦内に警報が鳴った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「敵は!」

「ゾノです!グーンも二機!」

 

ゾノは、グーンの後継機として開発されたZAFTの水中用MSだ。艦長は急ぎ対策を考える。

 

「曹長のジンは?」

「まだ出せません」

「ならストライクか。ソードに換装して出撃させる。先に魚雷を目くらましに垂直投下しておけ」

「はっ!」

 

一分ほどで、魚雷がミサイル砲台から零れるように投下され、同時にソードストライクが発進する。

 

「さて、ノイマン曹長。君にはやってもらうことがある」

「なんでしょう!」

「バレルロールだ」

「・・・・は?」

「二度は言わんぞ!急げ!」

「やりますよ!やって見せます!」

「それで良い。タイミングはこちらで指示する。トノムラ伍長、イーゲルシュテルンの操作を手動に切り替えて銃座につけ。ケーニッヒ二等兵、索敵に交代だ」

 

「「は!」」

 

二人とも、バレルロールのような無茶でなくてよかったと思いながら配置についた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

その頃、水中のキラは必死に攻撃を捌いていた。

 

「動きが鈍い・・・!」

 

当然のことながら、水中では人型が水の抵抗を受ける障害となり、上手く進むことが出来ない。アークエンジェルの真下で、魚雷やフォノンメーザーなどの敵の攻撃をなんとかかわし続けていたその時、水を介して音声が届いた。

 

『・・・えるか、聞こえるか、准尉。エールストライカーに換装せよ』

 

どうやら、高出力のスピーカーのようなものを鳴らしているらしい。キラは急いで水上へと飛び上がった。

 

「どこだ?」

 

さすがにソードストライカーではスラスター出力の問題でジャンプは出来ないので、ワイヤークローで真上のアークエンジェルに掴まり、体を中空に維持させる。

 

「え?」

 

同時に、船体が大きく回り始めた。

 

『しっかり掴まっておけよ?』

 

そして、敵MSが顔を出すと同時にアークエンジェルの甲板側が海面を向いた。

 

『撃て!』

 

対空砲火が海面に向けられ、度肝を抜かれて動きの止まっているグーンのうち一機を確かにとらえた。しかし、もう一機はすぐに姿を消してしまった。

 

「た、助かりました」

『ノイマン曹長に言ってやれ』

「お、お疲れさまです」

『どうやら敵は撤退したようだ。帰投しろ』

 

ストライクは、慣性で一周振り回されて再びアークエンジェルからぶら下がっていた。回収には刹那のジンが回された。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「おそらく、紅海の鯱マルコ・モラシムだ」

「名将ですね。でもカーペンタリアからわざわざですか?」

 

水中用MSの操り手で、かつインド洋に近いこの海域でなら、確かにモラシムの名が出るのは不思議でもないのだが、カーペンタリアからはかなりの距離がある。

 

「いや、ジブラルタルに偶々いたという可能性もある。それに、かのクルーゼ隊もこちらを追っているようだからな」

 

艦長の頭には、刹那からの報告にあったデュエルとバスターの影が散らついていた。何といっても、クルーゼ隊は執念深いことで有名だ。

 

「クルーゼ隊が足止めを相応の実力者に頼んだという線も有りうる。慎重になって悪いということは無い」

「では、ジンの改良を急ぎます」

「ええ、お願いします。大尉」

 

一応数時間で完成はするのだが、流石に試運転が必要なので完成まで12時間は見ていたが、戦況に余裕がないということで、試運転込みで10時間を切るようにとなった。

 

一方最近出番の無かったムウは、スカイグラスパーの調整が終わったため小躍りしていた。ただし、キラは帰りにムウがMSがよかったという小言をつぶやいていたのを聞いてしまった。

 

一応、ジンの改造の前段階でキラの手伝えることは大体終わってしまったため、休もうと部屋に帰った。

 

「ようキラ!」

 

先客がいた。

 

「なんでいるの?」

「シミュレーターの使い方を教えてくれ!」

 

流石に軍事機密で不味いのでは・・・とブリッジの艦長に止めてもらいに戻ろうとすると、今度は途中の食堂でムウに呼び止められた。

 

「シミュレーターしに行こうぜ!」

 

キラは頭を抱えたくなったが、先にカガリの要望について聞いてみた。

 

「良いんじゃね。あれは入隊試験でも使うしな。大体オーブ製だぞ」

 

実際、カガリはオーブではそれなりの立場があるため機密でもなんでも見ようと思えば見れるので、キラの杞憂と言えば杞憂なのだ。つまり艦長も止めてくれない。

ムウは一応艦長から聞いてカガリの本来の立場を知っている。知っていてこれと言うのも何とも言えないものはあるが・・・

 

「やった!早く行こうぜキラ!」

 

本人の自覚にも問題があるだろう。しかし誰も止めない以上、このままで事態が進んでいく。引っ張られながら後ろを振り向くと、一見誰もいなさそうな所へムウがウインクをしていた。

 

「すぐ行く!先行っといてくれ!」

 

シミュレーター室には、先に刹那がいた。刹那からは一言だけだった。

 

「許可は取ったのか?」

「い、一応」

「そうか」

 

これだけだ。とりあえず刹那からはこれ以上なにもなさそうだと判断したキラは、カガリに操縦方法を一通り教える。

 

「じゃあ早速対戦するぞ!」

「一応ゲーム機じゃないからね?」

 

まあゲーム機に見えるのも確かだが、パイロットの命が懸かっているのも確かである。そして回数の積み重ねが練度と生存率に直結しているのも確かなので、キラもシミュレータの操縦席に着いた。

 

「じゃあ、僕はエールストライカーで」

「私は・・・同じの行こう!」

 

キラの方に限らず、今シミュレーターには各パイロット用に細かくパラメータの調整がなされた機体のデータが入っている。それに対し、カガリのストライクは初期状態もいいところだ。当然・・・

 

「勝てないー!」

「あんまり簡単に勝たれると僕の立場が無いからね?」

 

その後やってきたムウの発案でチーム戦になり、刹那&カガリ対ムウ&キラでやったところ、キラは惨敗した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

翌日の早朝、キラはたたき起こされた。

 

「敵襲だ!早く起きろ!」

 

夜襲と言う戦法は、古典的ながら非常に有効である。センサ等で敵を見つけられる現代でも、戦っているのはいまだ人間だからだ。

 

「昨日の奴ですか?」

「多分な。けど今日はあいつがいるんじゃないか?」

 

整備班の徹夜で、試運転を残しジンの改造は完了していた。




ミニッツメイドの朝リンゴとウェルチのアレキサンドリアマスカットジュースが美味しすぎてつらい。

来週はジン海戦型のお披露目になります


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

30話:紅海の鯱の叫び

うーむマスカットジュースウマー


「ああ。試運転は不要だ」

 

整備班が「試運転もしていないのに流石に戦闘は・・・」と渋ってはいたが、刹那は敵が迫っていることを理由に整備班を押し切ってジンに乗った。

 

「良いですか!?フルスロットルで吹かさないでくださいよ!?ホバー部分が壊れても知りませんからね!?」

「了解。ジン・マリンカスタム、フルスロットル!」

「(絶句)」

 

どうも、やるなと言われてやってしまうのは刹那の十八番かもしれない。まあ、整備班の自信作は壊れることもなく無事発進したわけだが・・・

 

「これが・・・魚雷を撃つ側に回るのは初めてだったか?」

 

艦載の魚雷を撃てるようにカスタマイズされたランチャーは、キラが魚雷を直線に飛ばせるように調整している。そして、ジンはアークエンジェルのレーザーと電波でターゲットのソナー情報を共有している。更には、刹那は脳量子波で敵の居所を探ることが出来るため、敵を見逃す心配はほぼ無かった。

 

『ソランさん、僕が囮になります』

 

続いて発進したソードストライクは、ワイヤークローに小型の推進器が追加され、水中での機動性を向上されていた。

 

「無理はするなよ」

『はい!』

 

刹那のつぶやきは、ある意味自分へ向けられたものだったかもしれない。だが、少なくともキラは特に何か感じたわけでもなく、素直に返事をして潜っていった。

刹那も、無理をさせないのが俺の仕事か。と心の中で呟いてランチャーを構える。

敵らしき反応を意識で追いながら、ふとロックオンもこんな気持ちで俺を見ていたのだろうかと思った。同じような事をしているからだろうか。

そんなセンチメンタルな事を考えていても、指は自然に動いて、こちらへ直進しようとしていたグーンに魚雷が発射される。

魚雷はグーンの頭頂部に直撃し、破損した頭部から水が入ったグーンは水圧で自壊した。

感情や心の動きと体で全く違う動きができるのは、刹那がイノベイターだからか、それとも戦士としての力なのか。どちらにしても、キラにはそうなって欲しくないものだと思いながら、二発目の魚雷を発射した。しかし、今度は相手からも魚雷が発射されている。水上で停止していたジンは、スラスターに点火しスケーターのようにその場から動いて回避した。一方、水中のグーンは躱しきれずに直撃し、水上まで爆炎を上げた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

水中のキラは、今までとは違う緑色のMSに追われていた。

 

「硬い!」

 

水中用の新型MSゾノは、水中での格闘性能を高めたグーンの後継機である。水中で十分な馬力を出すために、一般的なMSよりも高出力だ。また、水圧に耐えるために装甲も丈夫で、電子ビームの使えない水中では正に要塞のような相手だった。

その上、水中用の水圧ジェットですさまじい速度で水中を泳ぎ回るのだ。潜れるだけのストライクでは苦戦は必至だった。

先ほど一度接近されたときに、アーマーシュナイダーで斬りつけてみたものの、装甲に流されてあまり効果は無かった。そもそも、水が強く揺らされてエネルギーが無駄になるため、アーマーシュナイダーは水中ではあまり効果が無いのだ。

今はただただ逃げ続けているキラに、水中用の信号弾でメッセージが届いた。

 

「一度帰投せよ?」

 

今のままでは何もできないので、一旦ワイヤークローをアークエンジェルへ伸ばし、急いで帰投する。後を追ってきたゾノは、アークエンジェルから発射された下向きの対空砲火で水中へ引き戻された。いつの間にか戻ってきていた刹那から、接触回線で声がかかる。

 

『魚雷は効くと思うか?』

 

どうにも、あまり効果が無さそうだと返事をすると、動きを止めて欲しいと頼まれた。

 

「分かりましたけど、どのくらいですか?」

『10秒ほどで良い』

「ちなみに、どうやって撃破するんですか?」

『二発の魚雷で挟む。圧力差で潰れるか、内部から破裂するはずだ』

 

つまり、二発の魚雷が作る爆発圧で潰し、そのあと発生する真空で内部から外側へ力を発生させて自壊させるというのだ。時間稼ぎは、信管の時間調整と魚雷の位置合わせに必要なのだろう。

もっとも、二発を全く同時に爆発させるだけでなく、目標との相対距離も調整する必要がある酷く実戦に不向きな技なのだが。

 

とりあえず、二機はアークエンジェルの脚部から水面へ降り立ち、ストライクは水中へ、ジンは水上に構えた。

水中へ戻ってきたストライクは、ゾノから熱烈な歓迎を受けた。ゾノのクローが、ストライクの頭と腕をつかんだのだ。

 

『やっと捕まえたぞ!我らの家族の裏切り者が!』

「何のことだ!」

『貴様も!コーディネーターならユニウスセブンのことを忘れたとは言わせんぞ!私の妻、私の娘!何の罪もない家族を虐殺し!それでものうのうと正義を騙る連合などになぜ屈するか!その機体、へし折ってカーペンタリアまで持ち帰ってくれるわ!』

 

ゾノのパイロット、マルコ・モラシムは、クルーゼからストライクのパイロットはコーディネーターの裏切り者で、連合が更なる力として開発した新型MSのパイロットをしている。このまま放っておけば再びユニウスセブンのような悲劇の引き金になるだろうと。

あらん限りの言葉で煽られ、当て馬にされていると気づきながらも、コーディネーターの裏切り者が許せずにこんなインド洋の下側まで来てしまっていた。

 

『貴様を放っておけばまた犠牲者が出る!ここで始末してくれる!この裏切り者が!』

 

語彙が怒りからうまく回らなくなっているのか、とにかく裏切り者と連呼する相手パイロットに、キラは混乱していた。なぜ自分の素性を知っているのか。

アスランが僕を売ったのか?軍人だから当然なのか?それとも別の誰かが?誰が?

 

頭が真っ白になって抵抗を忘れたキラは、ストライクが海底へ叩きつけられた衝撃で我に帰った。見れば、敵MSは頭をねじり取ろうとしていた。まだ自由な左手にアーマーシュナイダーを握らせ、頭をつかむ右腕のの手首に勢いよくぶつけさせた。上手く関節部に食い込んだのか、右腕から力が抜けた。その隙に、もう一撃肩関節にねじ込み、右腕全体の動きを止める。敵も黙ってやられているわけもなく、左腕で今度はストライクの右前腕部をつかみ、体全体でストライクの体を抑える。

 

『ふん!これで動けまい!』

 

今度はその言葉に耳を貸さず、右腕で敵のボディを抑え込んだ。

次の瞬間、泡を伴いながら二発の魚雷がゾノを挟むような形で着弾し、全くの同時に爆発した。泡が収まると、辺りにはMSの残骸が散らばっている。魚雷とゾノの爆発の衝撃で頭がくらくらするキラだったが、変形に対して絶対的な防御力を持つストライクの装甲と気圧の変化に対応するパイロットスーツが、キラを無事守ってくれていた。敵はいなくなったらしく、水中に再び撤退信号が光った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「僕は裏切り者だって言われましたよ」

 

キラは、ムウに格納庫で愚痴っていた。

 

「でもよ?俺らからするとなんのこっちゃって感じじゃねぇか?」

 

もちろん、裏切り者と思っている人間はアークエンジェルにはいない。だが、キラとしては敵意を前面に押し出されて裏切り者呼ばわりされたのが多少堪えたらしい。気にするなと声をかけても沈んだままのキラに、ムウは仕事の命令を出した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「バルトフェルドさん?食事を持ってきましたけど・・・」

「お、ありがたいねぇ。コーヒーもなんて気が利いてるじゃないか」

 

以前マリューに出した時も、あまりいい出来ではなかったのだが。それでも、一応コーヒーを淹れて来たキラだった。バルトフェルドは、ふふんと匂いをかいで笑ったが、何も言わずにコーヒーを飲み干した。

 

「一つ、聞きたいことがあるんです」

「何かな?まあ、このコーヒー代くらいは答えてあげよう」

「僕は、裏切り者と。そう見えますか?」

「うーん、どちらとも言えるね。コーディネーターの裏切り者とは言えないかな。プラント以外にもコーディネーターはいくらでもいる。一方で・・・いや、今のコーヒー代だとこのくらいまでかな」

 

これはコーヒーをもっとうまく淹れて来いということなのだろうか。それよりも、もっと違うアプローチで攻めるべきかとキラは考える。

 

「次の差し入れはコーヒー豆のブレンドキットでどうでしょうか」

「君は、プラントをコーディネーターにとって唯一の国と考える連中から見た裏切り者。そういうことだよ」

「ありがとうございます。では明日の昼食の時、コーヒー豆とか持ってこれるか聞いておきますね」

「ああ。ありがとう」

 

つまり、彼はコーヒーを淹れることに関しては自他ともに認める程度には上手だということだ。キラが上達するよりは自分で淹れさせた方が早いだろう。くるりと背を向けて牢から立ち去ろうとすると、バルトフェルドから待ったがかかった。

 

「チリソースの彼女にヨーグルトソースの良さを・・・あ、待ってくれたまえ・・・冗談なのに」

 

キラは足早に牢から立ち去りながら、一つの疑問が持ち上がっていた。

プラントをコーディネーターの聖地と考えるかどうか。アスランにとって、僕は裏切り者なのか?




バルトフェルドさんは差し入れに応じた情報をくれる代償付きドラ〇もんです。
良いコーヒー豆かヨーグルトソース味のケバブで大体何でも喋ってくれます(ZAFTの情報を除く)
しかし、刹那さんの水上用ジン・カスタムの出番はまだまだこれからでゲスよ!(生贄:某仮面の隊の皆さん)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

31話:フラガズブートキャンプ再び

先週の話でプランタはヤバいといろいろな方からご意見をいただきました
やってることだけ抽出してみると完全にテロリストですからね
是非もないよネ

今週は3度目のキラ強化回です


「キラー、運動は続けてるか?」

「はい、一応毎日1時間はランニングしてますけど」

「あいつ呼んできな。今日は戦闘訓練やるぜ・・・ああ、理由はお前がそんな難しい顔してるからだよ。体動かして忘れちまいな」

 

以前ユーラシア連邦のアルテミス基地に寄った時から、キラは基礎運動を義務付けられていた。単純に、パイロットという仕事には体力が必要だからだ。また不定期に(ムウの気まぐれで)、生身での戦闘訓練が実施される。参加者は主にキラ、ムウ、刹那の三人だが、偶にトールが引きずり込まれている。

そして紅海の鯱を倒した翌日、すなわち現在、また戦闘訓練が開始されようとしていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「さて、今日は射撃訓練から入るぞ」

 

アークエンジェルには射撃訓練場があるが、的は通常の動かないものである。また、銃はいわゆるレーザー射撃用の実弾の飛ばないものではあるが、反動は連合軍の技術でしっかり再現されている。

最初はキラも動かない的で良いのかと聞いてはいたが、今は動かない的に当てるだけでも大変だということがよくわかっている。照準を合わせれば勝手に構えるMSと違い、きちんとした体勢で構えなければ的にかすりもしないからだ。

初回ではムウから基本姿勢を叩きこまれ、姿勢を維持するインナーマッスルがいかに大事かと説かれ、毎日インナーマッスルを鍛えるようになった。そうして、今では多少の効果が見込まれ的には当たるようになった。

射撃訓練は、一日に決まった量の弾を撃ったら終わる。成長具合を正しく比較するためだ。

 

「次はランニングだ。お、嬢ちゃんもやるかい?」

 

次は、運動がしたいとゴネたカガリと護衛のキサカを加えてランニングだ。アークエンジェルはかなりの大型艦(全長420メートル)のため一周すればよい運動であるが、そこは軍隊なので甲板を10㎞ほど走る。キラは最初医務室に担ぎ込まれる程度には疲労困憊だったが、今ではなんとか次の訓練にそのまま参加できる程度には体力がついていた。正しく走り込みの成果だ。

ムウと刹那は、ムウが一方的に刹那に対抗して競争していたが今のところムウが勝ったことはない。それでも息が乱れているだけで会話しているあたりは流石といったところだろうか。

カガリはもともとよく運動する方らしく、最初からキラと同じくらいのペースで走り切り、キラにかなりの危機感を抱かせた。キサカはムウやキラを気にせずかなり早いマイペースで走り切った。

 

「よっしゃあ、次はお楽しみの戦闘訓練だ。もちろんあんたもやるだろ?」

 

全員が水分補給を終えると、今度は主にムウが楽しい戦闘訓練だ。

今度はカガリが観戦に回り、キラ、ムウ、刹那、キサカの四人が戦闘訓練に参加する。最初から模擬専用の武器が増え、今では大抵の武器は用意されており、キサカが感嘆の声を上げていた。将来MS用の武器の原型になるからと頑張った技術班の努力の賜物である。

ここで各人の武器の使用傾向を見ていこうと思う。

まず、ムウと刹那はナイフと拳銃を使っている。ムウは小型の取り回しの良いものを使っているが、刹那は大きめの威力を重視した拳銃を持っている。ムウは軍隊格闘術を併用するが、刹那は独特のナイフ戦闘術で戦う。

本日初参加のキサカは、ナイフとアサルトライフルを手に取った。ムウの見立てによると特殊部隊系の軍人だろうとのことだった。ファイトスタイルは不明だ。

最後にキラは、小太刀くらいの長さの大型ナイフと軽量型拳銃に、中国系の武術を組み合わせたもので戦っている。もちろん、中国武術の練度はまだまだである。ただ、受け身はなかなかのものだし、前に比べると反撃も増えてはいる。

 

さて、2時間ほど戦闘訓練が続き、勝敗をまとめると

一位、刹那。誰も勝てなかった

二位、キサカ。相当に強い。刹那相手にもかなり粘った

三位、ムウ。かなり頑張ったが、本人曰く専門家には敵わないとのこと

四位、キラ。前より打ち身が減った。走り込みの成果か体力の向上が見られた

といったところだろうか。キサカによると、いくらムウが軍人とはいえパイロットでこの強さは素晴らしいとのことだった。刹那については首をかしげるばかりだ。

 

「いや、あいつおかしいだろ」

「カガリ、ソランさんはいつもあんな感じだから」

 

カガリの脳内では、おかしいやつ、という不名誉な称号が刹那に贈与された。

 

さて、次のシミュレーター訓練に移る前に最近のシステム改善点をいくつか記しておこう。

戦闘訓練の模様を聞いたマリューの要請で、シミュレーターにはMSの各種データが記録されるようになっている。それは被弾率のようなものだけでなく、設計で想定されていない動きによってどのような負荷がMSにかかるのか、特定動作に対するシステムの反応速度、スラスターガスの使用率、武器の損耗率、電子回路の時間ステータスといった整備に大いに関係するデータが数多く追加されている。刹那のジンがいきなり動かなくなった時のようなことが無いように、各部の損耗や強化が必要な場所を突き止めるためである。

また、前回の刹那が乗っていたクローラー駆動のジンのようなワンオフ機も再現されている。とはいえ、基本的にはキラの作ったナチュラル用OSが乗っているストライクがカガリやムウに選択されているのだが。

 

今回は、カガリが参加しキサカが報告書仕事があるからと部屋の隅で端末の操作を始めた。

 

では、戦闘の会話の一部を聞いてみよう。

 

カガリvs刹那

「おい、なんでそんなところからミサイルが飛んでくるんだよ!」

「置き弾だ・・・」

「く、実体剣ならビームサーベルで・・・今どんな軌道で斬られた?」

 

キラvs刹那

「射撃が当たらない・・・頭の中が読まれてるみたいだ!」

「モーションが大きすぎる。それでは弾道を読まれるぞ」

「距離を取って立て直す!」

「そこだ!」

 

キラvsカガリ

「当たらないなー」

「そう簡単には・・・ね!」

「うわ!やっぱりやるなー」

 

キラvsムウ

「そこ!」

「ち!射撃が上手くなったじゃないの。けどなぁ!」

「ビームサーベルを投げた!?」

「こっちだって成長するさ!・・・な、盾で受け流した!?」

「それはこっちも同じですよ!」

 

結果はやはり刹那の全勝だった。最後のキラvsムウの対戦では、コクピットに与えられた衝撃がムウ専用に設定されていた12Gを超えたため終了となった。

 

「キラ、地面からの反動を上手く扱っているな。中国武術の技か?」

「はい、震脚ってやつです」

 

コクピットへの衝撃は、ストライクの重さが肘から余すところなく敵のコクピットへと伝わった結果だった。キラ曰く、原理を理解していても体で実行するのは難しいということだ。また、シミュレーターのデータによると、ストライクの関節に尋常でない負荷が掛かったようである。

 

「さて、今日の訓練これで終わり。キラ、シミュレーターのデータ運んできてくれ・・・悩みは良くなったか?」

「ええ、とりあえず合ってみないと何も始まらないということが分かりました」

「結構。運んだら食堂行くぜ」

「私も行くぞ!・・・シャワーは浴びないのか?」

「それも終わってからだな!もちろんソランも行くよな?」

「ああ」

 

その後、食堂ではムウがケバブはヨーグルトソース派だと判明し、カガリと熱い舌戦を交わした後、キラがカガリの味方をし、刹那からは無視されたためムウはコーヒーを持って終日バルトフェルドの牢屋で言葉を交わしていた。もちろんヨーグルトソースについてだが。




キラ君体育会系だね!
強化回というよりは、キラがどんな風に成長しているか確かめるの回でした。
キサカさんは報告書を書いてます。もちろんあの人に関してです。
・・・どう考えてZAFTと連合だと戦争にならなくて・・・もしかしするとオーブ編荒れるかもしれませんな・・・最終決戦より。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

32話:無人島での邂逅

あの人とあの人が出会う・・・
分り合えるか?これ

なお、感想で希望のあったロックオン(ニール・ディランディ)との再会が番外編に載ってます。SEED×00:Extra_Contentsで確認どうぞ。(十分で作ったのであまり出来は良くないです)


「じゃあ偵察だが・・・」

 

ムウは、ようやく本来のパイロットとしての仕事に立ち戻ろうとしていた。いわゆる斥候である。

 

「嬢ちゃん、指示にはちゃんと従えよ?」

 

更に、シミュレーター成績が非常によかったカガリがスカイグラスパー二号機で同行する。

 

「分かってるよ」

 

最初はキサカが止めたのだが、延々と抗議し続けるカガリに折れ、エンデュミオンの鷹と一緒ならと泣く泣く許可を出した、という経緯がある。ただし、絶対服従を念押しされていたが。

 

「んじゃ、ムウ・ラ・フラガ、スカイグラスパー出るぜ」

「スカイグラスパー、二号機出るぞ」

 

現在、航行中のインド洋は雲が疎らに出てはいるが概ね視界は良好だった。だが、視界が良かろうと悪かろうと敵がいるときはいる。

 

「なあ大尉、あれ」

「あー、輸送艦だな。どう見てもZAFTだ。良く見つけたな」

「眼は良いんだ」

「おい、撃墜しようとか考えんなよ?中に空戦型MSでも積んでたらお前一瞬で藻屑だぞ?」

 

幸運なことに、ZAFT空輸艦は空戦型MSは積んでいなかった。

不幸なことに、ZAFT空輸艦は二機のスカイグラスパーに気が付き、かつ空戦可能なMSを積んでいた。

 

「おいおい、気付かれちまったみたいだな」

「撤退か!?」

「ああ。流石にあいつらの援護が無いときついぜ!」

 

ムウの判断では、この足場の無い状況でこちらへ足の遅い輸送艦が向かってきているということは、十中八九こちらを撃破可能な戦力が積まれているはずだ。それが空戦型か空中戦闘可能なMSかまではわからないが、戦力評価については敵のパイロットと全くの同意見だった。

 

「先に行け!分かってると思うがお前は一直線に退くんだぞ!迂回して撃墜されたりしちゃあの特殊部隊の兄さんにぶっ殺されちまう!」

「分かってるよ!」

 

実は迂回して敵を撒こうと考えていたのだが、流石に直接言われては指示に従う。

だが、重なる不幸で、今回はそれが最悪の選択だった。

 

「こちらアスラン・ザラ。敵機の退路を塞いだ」

『では攻撃を仕掛けた後、五分後に回収に来よう。幸運を祈る』

 

雲の一つに隠れ、背後からイージスが迫っていたのだ。慌ててカガリはビームライフルを発砲するが、イージスの盾に阻まれた。逆にカウンターを取られ、コクピット狙いの一撃こそ躱したものの翼の一部を失い、近くの無人島へと煙を曳いて流れていく。

イージスは追撃を狙ったが、ムウのスカイグラスパーが二点射でビームライフルとフライトユニットを正確に打ち抜いた。

現状Gシリーズで単独飛行が可能なのはキラたちにカスタムされたエールストライクだけなため、当然イージスもまた墜落していく。

ムウも追撃は狙ったが、アラートから背後と前方のイージスから挟み撃ちにされることを察し、いち早く離脱を選ばされた。ただし、背後の輸送艦に12Gの縦ループターンで奇襲し、ミサイルを一つお見舞いする。

輸送艦は何とか撃墜したものの、弾薬不足でアークエンジェルへ引き返さなくてはならない。

 

「待ってろ、嬢ちゃん」

 

ムウは、歯を砕かんばかりに食いしばり帰投した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

無人島では、カガリが縛られていた。イージスのコクピットにしまわれていた食料で料理をしているアスランの頬には、立派な紅葉がついている。

 

「その・・・すまない。君の心情を考えれば許してもらうのは難しいとは思うが・・・」

「なんだよ。キラはもっと思いやりがあったのに・・・」

「キラを知ってるのか!」

「デリカシーの無いヅラには教えん!」

「これは地毛だ!」

 

不毛なやり取りは数分続いたが、ベーコン数枚とタバスコソースを犠牲に、最終的にアスランはキラについての話をぽつぽつと聞くことが出来た。

 

「結局、俺たちはどっちも自分の意志で戦争に参加したわけか」

 

キラがストライクに乗った経緯を聞いたアスランは、自嘲気味に笑う。

 

「一応確認するが、キラがマインドコントロールなどを受けているという可能性は・・・」

「連合って200万人はコーディネーターいるんだろ?流石にいちいち洗脳するかぁ?」

「連合では、一般人に薬物を摂取させコーディネーター以上の性能のパイロットを作る研究をしていると聞いた」

「キラはそういう処理は受けて無さそうだけど・・・なんでだ?」

 

俺が知っているキラとは何もかもが違いすぎるから、と、答えようとしてできなかった。こんなにも食い違いがあるというのに、自分は本当にキラを理解できていたのか?そう疑問が首をもたげる。

 

「俺はキラのことは誰よりも詳しいと・・・思ってた。でも、今は自信が無いんだ。キラは誰かと争いを起こすような性格ではなかったし」

「あいつは強いよ・・・だって」

 

アスランはそのだっての続きが聞きたかったが、それよりも先にアラートが響いていた。

 

「お!見つけてくれたんだ!」

 

それは、カガリが不時着したスカイグラスパーのコクピットからなる友軍の接近信号だった。

 

「俺は、お前とここで会ったことを味方に話さない。お前も・・・そうしてくれるか?」

「ああ、そうする。それと・・・」

 

戦争が終わったら、キラと話し合ったらいいんじゃないか?そう言ってカガリはコクピットで示された海岸へと走っていった。その言葉に、アスランは表情が思わず固まってしまった。

 

「戦争が終わって、二人とも無事なら奇跡だな」

 

再び、アスランは自嘲気味に笑うが、その未来に期待してしまっている自分にも気が付いた。

 

「戦争の終わりまで生きる・・か」

 

実は、アスランには戦争後のビジョンなど欠片も持っていなかった。母の復讐で、と思考を止めて軍に入り、作業のように訓練を続け、首席で卒業し、そして・・・今、元親友の安否が気になって仕方がない。

これが俺の望みなのか?生まれてこの方16年、誰かの期待に応えるように生きてきた俺が、望んでいるのが親友との再会だったのか?

ばからしい、とも言えない。結果としてそうなったとはいえ、父から呼びも出されなければ、ずっとキラの家族と一緒に居たかったと今なら言える。

だが、輝かしい思い出の全ては過去だ。

 

「それでも、俺は、俺のできることをする」

 

アスランの首席卒業の評価用紙から、引用しよう。

「アスラン・ザラは、実技、試験の成績のさることながら、一番に評価すべきはその意識の強さである。自身の欲求よりも全体の利益を追求するその姿は、軍人の目指すべき姿そのものである」

 

アスランは、イージスのコクピットで仲間の到着を静かに待っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

『カガリ』

 

スカイグラスパーを支えるジンから、接触回線で声が響く。

 

『一緒に島にいた人間は知り合いか?』

 

思わずびくっと体を震わせてしまった。

 

「いや、その」

 

つくづく嘘の着けない人間だと自嘲するが、それで質問が消えるわけではない。仕方なしにぼかす。

 

「まあ、知り合いだ」

 

間違ってはいない。正確には知り合いでは「なかった」だろうが。

 

『そうか、なら良い』

 

何も良くは無いのだが、ここでの意味は「俺も黙っておく」である。

 

「ありがとう」

 

脳量子波の無い刹那よりは空気の読めるカガリはそれを察した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

アークエンジェルではキサカから軽いお説教があった。一応命令には従っていたからである。

 

「いやー、始末書ってめんどくさいなぁ」

 

当然、軍の備品を壊したので始末書を書かなくてはならない。アークエンジェルのMS、戦闘機は基本的に壊れないので備品には余裕があるのだが、それはそれ。軍隊であるからには書類での報告は義務だ。ちなみにアラスカに着く前にマリューやムウが上手く誤魔化す所存である。

 

「終わったらキラの部屋でも行くか―」

 

書類はまだ数冊あるが、カガリは自分にご褒美を出してやる気を出す。何といっても、明るい未来を考えるのは楽しい。




いまさらどんな顔して合えばいいんだ!(アスラン)
いろいろあったけどなんとかなるさ!(カガリ)

うーんメンタルの差が如実に出てる・・・

ちなみにもう一つネタがあって
「アスラン・ザラ・・・中略・・・最高の兵士」(寝返った回数作中一位)
です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

33話:熾烈の岸辺にて

18時投稿を目前にしないと話が思いつかないという無能っぷり。
万死に値する!
そしてキラ×ラクス派閥の皆様ごめんなさいな回です。

18時といえばFGOの☆4サーヴァント交換券の交換開始・・・やってる人は何にするんでしょうね?


オーブ近海、オノゴロ沖にて。

現在、アークエンジェルはジブラルタルで再編されたザラ隊に熾烈な攻撃を受けていた。ブリッジでは、ミリアリアの悲痛な叫びが響いている。

 

「敵MS四機が後方から迫っています!」

 

何もこの程度なら今までもあった事なのだが、地球の大気で足の落ちているアークエンジェルはうまく回避行動がとれないため対空砲火が攻略されると命取りだった。その上、前方にこれ以上進み過ぎればオーブの防衛軍と鉢合わせることになる。

 

「少尉!曹長!もう出られるか!」

 

艦長も状況が分かっているため、パイロットたちを急かす。

 

『僕と曹長は出られます!』

 

キラが二人分の状況を説明し、画面の端に頷く刹那が映った。次は大尉に連絡する。

 

「大尉、準備はよろしいですか!」

『OKだ!』

 

流石に何時ものおちゃらけた雰囲気はなく、連合軍トップエースにふさわしい引きしまった顔をしていた。三人の顔を見て、何故か艦長には勝機が見えた気がした。

まだ作戦の立案もMSの発進も済んでいないのにこれではな。そう心の中で呟いて、頭を戦闘用に切り替える。

 

「ハウ二等兵!MS及びスカイグラスパーの発進急げ!」

「エールストライク、及びジン・マリンカスタム、発進どうぞ!」

 

待ってましたとばかりに、ミリアリアは二人を発進させる。

 

「続いて、スカイグラスパー、発進どうぞ!」

 

最後の発進を見届け、艦長は前方を見つめなおした。発進した全ての機体がUターンして後方へ流れていくが、それよりも差し迫った問題は前方に並ぶオーブ防衛軍だった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

『キラ、お前はアークエンジェルの上を守れ』

 

確かに、現在戦場にいるMSの中で唯一単機での空戦能力を持っているストライクが防衛に着くのは当然だ。

 

『俺は下を守る』

 

何でも、艦長の話によると艦の下部に幾つか機銃を破壊されただけで安全地帯となってしまう場所があるらしい。恐らくそこを守るということなのだろうが、簡単に言ってくれるよと苦笑した。敵に弱点が知られているとは限らないが、当然ソラン・イブラヒムの乗るジンは最高戦力だし、敵は何度も戦っているのだからそれを知らないわけがない。

つまり、今の発言は囮になると言っているのも同然だ。

僕もああ言えるようにならなくちゃな。

来たぞ、と警告を発してくれるムウさんに「はい」と返事をして、着地していたアークエンジェルの甲板から離陸する。

ゆっくりと浮き上がって静止したストライクを見た敵機が止まった。

これは、驚いているんだろうか?

僕としては、まだ飛べるようになっていないことに驚くくらいだ。

そして、足の止まった敵機四つのうち、バスターの砲塔がいきなり爆発した。今のは、下からの砲撃、つまりソランさんの放った一撃というわけだ。相変わらずの射撃精度に舌を巻くが、僕もここでじっとしているわけにはいかない。

ペダルを一気にべた踏みしてストライクを急加速させる。こちらへグゥルを動かして接近しようとしていたデュエルが出鼻をくじかれ、ストライクが体ごと回して放った左腕の斬撃に足を切り飛ばされて海に落ちていった。そのまま体を回して、シールドで二発、サーベルで一発のビームを防ぐ。射撃元はイージスだ。ここで戦果を挙げさせる訳にはいかないので、そのままシールドチャージでイージスにシールドを押し込んだ。

接触の瞬間にグゥルを足で下向きに蹴り飛ばし、イージスも海に落下していく。

最後はブリッツだけなのだが、どうにも姿が見えない。周囲から音がしない辺り、ミラージュコロイドで姿を消しているわけではないようだ。

次の瞬間、遥か下の方から激しい金属の衝突音が聞こえてきたことから末路だけは理解した。

 

『俺の出番は?』

 

今までに散々活躍してるじゃないですか。という返しに、そうだけどさー、と力の無い返しが帰ってくる。戦闘後とはとても思えない弛緩した空気が流れかけるが、艦長から通信が入った。

 

『早々に帰投してください。今後についてのブリーフィングがあります』

 

中々にいいタイミングだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

オーブ、モルゲンレーテ隠しドック内にて。

 

「つまり、オーブと再び技術協力をすると?」

「概ねそういう認識でかまわない。違うのは、少尉とラミアス技術大尉、マードック曹長の技術交流、曹長に戦闘データを提供してもらうことと、短期間ではあるが教官を担当してもらうことだ」

 

艦長に呼び出されて何事かとは思ったが、オーブ軍がこちらを迎え入れたのはそういう交渉の結果らしい。そして、今までやってきたことから、俺の戦闘データの収集と教官への登用は予想される範疇内だ。

戦闘データについては、扱われると不味いほどの動きはしていないため問題無い。教官への登用についても同様だ。

 

「問題ない」

「そうか、今回の件は曹長に拒否権は一応あるが?」

「一度決めたことをフイにすれば色々問題があるだろう」

「そう言ってもらえると助かる」

 

最も有効な取引の札だったとはいえ、許可を取らずに交渉材料にしたことに負い目があるらしい。少なくとも、先ほどの暗い感情からの反転の様子を見れば言葉に嘘は無いようだ。

艦長は厳正な軍人なのだが、人間らしさを捨てきっていない部分がある。そういった部分は人間としては大変好ましい。

 

「それで、今から諸君は呼び出されている。すぐに向かって欲しい。案内は彼女が努めてくれるそうだ」

 

見れば、空いた扉の前にはカガリが立っていた。

 

「そのー・・・」

 

大変居づらい様子だが、これは自身がある程度重要な位置に就いていたことを黙っていたことに対する負い目ということだろうか。キラからは恐らくはその様子に対する疑問が立ち昇っているらしい困惑が流れ出ている。

ムウがキラを小突いて、カガリに聞こえないように小声で耳元で囁いた。残念ながらELS融合型イノベイターの俺には聞こえた。

 

「こんな機密の塊みたいな施設の案内が出来るってことは?」

 

キラは手で小堤でも打ちそうなはっとした顔をした。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

耳打ちしたキラが何を言うかと思えば、俯いてもじもじしてる嬢ちゃんの手を握って

 

「大丈夫、ちょっとびっくりしたけど、カガリはカガリでしょ?」

 

あーあ、顔真っ赤じゃねぇか。なんだあの爽やかな笑顔。ありゃ天然だな。若いねぇ・・・俺もマリューをデートにでも誘うかねぇ・・・

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

謎の高揚した空気が流れていたが、とりあえず頭を千切れそうなほどに振ったカガリが案内を開始した。

幾らか廊下を歩き、エレベータを降りると・・・

 

「モビルスーツ?」

「そ!ここはオーブ国防の要なのよ!」

 

ガラスで区切られた前方には、三機のMSが並んでいた。そして、管制をしているであろうこちら側には亜麻色の髪の女性が立っていた。

 

「始めまして、エリカ・シモンズです。モルゲンレーテ兵器開発部の主任をしています」

 

キラと握手を交わした後、こちらにも伸ばしてきた手を握る。

 

「へえ、本当にコーディネーターじゃないのね!」

 

キラが驚いた顔をしていると、シモンズ主任は自慢げな顔で説明してくれた。

 

「コーディネーターは、基本的にジョージグレンの遺伝子技術を流用して遺伝子改良されるから、共通する部分があるのよ。そのうちの一つが手。指の長さと掌の比率、肉の付き方、などなど、実は握手でわかっちゃう人はわかっちゃうのよー」

「いや、主任だけですよ。ていうか本題に戻ってください」

 

まとめると、この人物は握手でコーディネーターを見分ける特殊技能を持っているらしい。

 

「そうだったわ!ありがとうアストナージくん!」

 

先ほどの話も気にならないではないが、今は本題を聞こう。

 

「まずは見てもらった方が早いわね。ジュリ、マユラ、アサギ。やって頂戴!」

 

目の前の三機のモビルスーツがのろのろと動き始めた。どうやら武術の型のようなものをやっているらしいが・・・

 

「相変わらず遅いな・・・いや、多少マシにはなったのか?」

「ええ、20%ほどは・・・」

 

スピーカーからはブーイングが聞こえてくるが、刹那から見てもこれは酷い。恐らくティエレンでも3対1で勝てるだろう。

 

「キラ君、アナタにはこの3機を国を守れるくらいまで強くしてほしいの」

 

キラのソフトウェア技術は、おそらく世界でも群を抜いているレベルだ。確かに適材だろう。

 

「そしてソランさん、アナタには戦闘データの提供をお願いしてたわよね」

「ああ」

「ちょっとこっちの設計図を見て頂戴」

 

設計図がホログラムとしてテーブル上に投影され、情報を読み込む内に思わず言葉を失った。エクシアに迫るレベルの人間型の柔軟なフレーム構造。軽量化が必要と思しい部分に施された材質の緩やかな変更により、人間の骨格のような弾性もある。

 

「まさに芸術品、だな」

「そうでしょそうでしょ!分かってくれると思ってたわ~」

 

実際、フレームの完成度だけを見れば今までのMSより100年先を言っていると言ってもいいレベルだ。

 

「まあ、こんなに良いフレームもOSがアレじゃあ宝の持ち腐れってわけよで、キラ君、OSを」

「これ使えますか?」

「どれどれ?・・・・」

 

いきなりシモンズ主任の脳量子波が途切れた。現実でも指だけが動いて端末をスクロールするのみで、そこ以外の部分が全く動いていない。

 

「完璧じゃない」

 

シモンズ主任がキラの肩をがっしりと掴んでぐいぐいと前後に揺らしながら質問攻めにしている。先ほどのアストナージという青年が止めに入り・・・

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

落ち着いた主任から、技術交流の日程の大幅な更新が発表された。あれほど綿密に組まれていたスケジュールをあっという間に改変してしまうあたり、大変有能な人材ではあるらしい。

そして、オーブの代表が訪ねて来た時には流石に驚いた。幾つか会話を交わした後、国を守る力をくれたことへの感謝だ、と、一機のM1アストレイが譲られることになり、今度はラミアス大尉が壊れた。

モルゲンレーテ技術部からささやかな感謝の印に小さなパーティーも開催された。

パーティーは最初は落ち着いていたのだが、大量の酒を持ったムウが参加してきた辺りから泥沼の様相を呈し始めた。

 

まずキラが何故か酔っぱらったカガリに絡まれていた。最初は言葉でのみだったが、最後には物理的に。キラは脳量子波の様子からくっつかれた数瞬後に意識を失ったらしい。

 

次に、酔ったムウとラミアス大尉がどこかへ消えた。以前ソレスタルビーイングでもアレルヤがマリー・パーファシーと消えたことがあったが、ロックオンに聞いてやるなと言われたことを思い出す。

 

アストレイのテストパイロットの三人は、何故か俺と一緒に酒を飲んでいるうちに先に倒れてしまった。ELSがアルコールを分解するため、俺は酔わないのだが。

 

シモンズ主任は、爛々とした目で俺が受領したアストレイの改修案を書き連ね続けている。新開発のインビジブルチタニウム装甲とはどういう事だろうか。

 

比較的まともな様子の艦長はため息をつき、アストナージは普段からこのくらい仕事をやってくれとため息をついていた。

 

パーティーは、ある程度の人間が減ったところでお開きとなり、残った面々が人間を部屋に担ぎ込んだり部屋の掃除をしたりとあっという間に片付けを終わらせてしまった。

流石にカガリがキラを離さないからと言って同じ部屋に放り込むのは不味いだろうと止めたのだが、ちゃんと説明してやってくれと任されてしまった。まあそれは構わないのだが・・・

アークエンジェルの自室に戻る途中で、トールの悲鳴とミリアリアの笑い声が聞こえてきたのだが、時々あることなので無視する。

 

部屋にある数少ない私物の、ボトルに入った花を眺めていた。

あの時フェルトにもらった花と同じもので、北アフリカにいた時に買ったものだった。

もしかすると、この花には単なる贈り物以上の意味があったのだろうか?確認が出来るわけではないが、今の俺にはそう思えてならなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

案の定キラの部屋は大騒ぎとなり、朝から昨夜の出来事を説明したところカガリが倒れた。




ムウ:扉をくぐる前に力尽きて寝た
マリュー:自室のベッドまで行って力尽きて寝た

つまり何もありませんでした。

そして刹那用アストレイ・・・
以前番外編で出したものから更に改造されます。

ちなみに作者はFGOの引換券、賢王ギルガメッシュ陛下と交換する予定。
ウルク市民なので。

9/26追記
リフターをグゥルに変更


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

34話:新機体は光を食べる

前回ちらっと出たインビジブルチタニウムの話をしておこうと思います。
悪評高いGレコで出てきたやつですが、なかなか面白いエネルギーソースなのでぜひ皆さんに知って欲しい。

以下フォトンバッテリー(インビジブルチタニウムを使った電池)概略
インビジブルチタニウム合金は、一定以上の光を吸収することで色合いが発生する無色透明の金属である。インビジブルチタニウムには結晶格子の方向によってエネルギーを吸収、放出する向きが決まっており、それを制御して通常のバッテリーのように放電を可能にしたものがフォトンバッテリーである。ただし充電は光で行われる。
その常軌を逸した充電容量が最大の特徴であり、手帳サイズのものでもMSが一週間動きっぱなしにできるというほどの物。
なお、Gレコで主人公機体はこのインビジブルチタニウムで出来た装甲のMSに乗っていた。(全身にエネルギーソースが偏在している)

なお作者は現在新幹線に乗ってるはずです。


「OSに合わせた調整はこんなものね」

 

シモンズ主任によれば、キラのOSは実戦データを読み込むことで完成した学習型のものであり、俺の戦闘データで更に向上が見込めるだろうということだ。ただそれには時間がかかるので、先にMSの動作テストをして欲しい、と。

 

「彼女たちは大丈夫なのか?」

「ああ、あれね?」

 

目の前では、人間をそのまま大きくしたくらいのスピードで模擬剣をぶつけ合う姿があった。もう30分は続けているのだが、一向に終わる気配が無い。

 

「アナタたち、そろそろ次の訓練に入るわよ」

 

現在モルゲンレーテ一部作業員とアークエンジェルの作業員の大半が俺の機体を改造している途中だ。なので、通常のアストレイにキラが普段乗っていたジンのOSを組み込んだ。残念ながら一般人用のOSでは俺の反応速度についてこれない。

 

ストライク同様にコクピットが開き、GUNDAMとOSに表示される。キラがストライクのOSとジンにもともと搭載されていたOSを統合した時、ストライク側に表示を合わせた結果らしいのだが、最初は声にならないほど驚いたものだ。

だが、これはガンダムと書かれてはいるがその本質はガンダムではないのだ。だからこそ、むしろ俺はあの受領した機体をガンダムにしなくてはならないのだ。

 

立ち上がりは無事に終わり、アストレイの緑の目に灯が灯る。入り口で模擬剣を一つ掴み、入場する。?・・・通信が入った。

 

『なんていうか・・・惚れ惚れするわ。本当に巨人が中に入って歩いてるみたいよ?』

「これも経験だ」

 

流石に、俺と彼女たちではMSの操縦歴に10年以上の差がある。比べるのは酷というものだ。だが、模擬戦とはいえ手加減をする気もない。まずは戦場に今のまま出ればどうなるか知ってもらう必要がある。

 

「では、戦闘を開始する」

 

まず、一機がかかってきた。最初ののろのろとした練武に比べれば大した差だが、まだまだ戦場で生き残れるほどではない。間合いに入った瞬間に足払いをかけて転がし、コクピットへと剣を突きつけた。戦闘不能アピールが通信を介して入ってきた。

 

「俺は二人同時でも構わない」

 

一瞬ためらったようだが、今度は二人が右と左から仕掛けてきた。判断は悪くないが、連携が甘いため二人の攻撃の初動に差がある。先に斬りかかってきた方の剣をこちらの剣で受け流し、もう一人は体を回しながら勢いを載せた返す刀で模擬剣を撥ね上げ短時間行動不能にする。その隙に先に仕掛けた方に横薙ぎに剣を振って行動不能にし、復帰して上段から斜めに袈裟斬りを狙うもう一機の剣を躱しながらコクピットへ突きを入れた。

 

「まず、最初の一人だが・・・」

 

俺が講釈をしている間に、シモンズはすさまじい速さでキーを打っていた。アストナージ青年の話によると、後でテキストにするつもりのようだ。

その後何度かOSは操縦者に合わせてアップデートされ、反応速度や連携も少しづつ上がっていった。筋が良いのは確かだ。もっとも、当然ながら俺に攻撃を当てることは叶わなかったが。

訓練の終了後、三人からこの後は予定はあるかと聞かれたが、残念ながらキラと話があると断った。確かに出来ることは何でもやるべきとは教えたが、俺を疲労させる作戦だろうか?

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

翌朝、モルゲンレーテ社の建物内で割り当てられた自室で早朝のトレーニングをしていると、研究室から呼び出しがかかった。とりあえず概形が決まったから見て欲しい。

何のことか一瞬分からなかったが、すぐに改造中の自身のMSの事だと思い当たる。すぐに着替え、地下の開発室へ向かった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ここのエレベータは空力を計算しつくした超高速エレベータらしい。最も今はそういう事はどうでも良く、一刻も早く開発室へ向かうことが先決だ。地下の長い廊下を走っていると、前方にキラが走っていた。

 

「随分と体力がついたな」

「追い越しながら言われてもですね・・・」

 

そんなやり取りをしつつも、開発室に着いた。自動ドアをくぐると、そこには大型の工作機械や前時代的な錬鉄所、金属用3Dプリンターなど様々な設備があったが、そこに鎮座しているMSにはさすがに驚かされた。カラーリングこそ違うが間違いない。あれは・・・

 

「エクシア・・・?」

「そんな名前だったの?貴方の希望のデザインでしょ?」

 

そういえばそうだ。あまりの衝撃に忘れていたが、偽装装甲の案を自分で出していたのを忘れていた。

 

「忘れてたのね・・・まあいいわ、機能の説明をしましょう」

 

そう言って書類が渡された。まずは設計書からだ。

フレーム構造は基本的にアストレイのものを流用しているが、要所が強化され運動性が上がっている。モーターやヒューズも大容量の物が採用され速度が上がっている。軽量化のため、スラスターは小型化されているようだ。装甲は発砲金属装甲が採用されている。

脚部には、以前実験的に開発された水上用ホバーと陸上用スピナーが兼用になった新型のレガースがある。

次に拡張機能。ミラージュコロイド発生器が搭載されている。レーダーの誤認に役立つらしい。姿を隠すほどの機能は無い。そしてこれは・・・?

 

「それはね、わが社で最近開発された新型の光発電装置なの!」

 

つまりは実地試験だ。何でもバッテリーの補助器具らしく、動かないなら動かないで問題は無い物のようだ。丁度エクシアの額の部分に青く輝いている。

仕様書が本当なら昼間の戦闘ではずいぶん稼働時間が伸びるだろう。パワーアシストのようにも使えるようだ。撃破された時の装置の自爆装置はまあ当然だ。

最後に武装。右手に装備されている大型の両刃の剣は、折りたたまれている。両刃の表面に薄い自由電子ビームが発生し切れ味が大幅に上昇する。柄の部分にレールガンが仕組んである。

他、大型コンデンサーで投擲可能なビームダガー二本、通常サイズのビームサーベル二本、オプションとして形を変更した大小のグランドスラムが一本ずつ。

大型剣の持ち手の甲に装備されたラミネート装甲が一つ。

 

「良くこれだけの装備が作れたな」

「モルゲンレーテの設備がすごいわ」

 

何でも、設計データをある程度自動で作る機能があるらしく、キラが設計データを作り機器に入力、完成した部品を整備班の人間が調整しこのスピードらしい。確かに、工場施設の自動化は素晴らしい。が、ワンオフ機を作るための施設らしく、量産機は普通に生産ラインを構築して生産するらしい。

恐らく相当額の資金がつぎ込まれた事だろうが、主任曰く「全て実験になる上、リターンが大変大きいから許可が下りた」ということだった。

このペースでストライクも改修するらしい。手の速いことだ。

 

「ストライクはどうなる?」

「それなんですけど、マリューさんと開発してた反応装甲が形になりそうで・・・」

「すごいわねーキラくん。現行のものより数世代は先行ってるわよ」

 

キラはこのままモルゲンレーテに引き抜かれそうな勢いだが、連合がどうするだろうか?

またパイロット三人娘が寄ってきたが、残念ながらムウと先約があった。?どちらが右側とはどういう意味だろうか?

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「では、オペレーション・スピットブレイクの会議はこの辺にしておこう」

 

プラント首都、アプリリウス市において、ZAFTで最も大きな権勢を持つパトリック・ザラが軍事会議を仕切っていた。一応議長はシーゲル・クラインなのだが、こと軍事においては知識が足りずNo.2ものパトリックに後塵を拝する形となっていた。もっとも、無二の友人である二人はお互いにプラントを第一に考えていると信じているし思っている。ただアプローチが異なるだけなのだ。

 

「今や、パナマのマスドライバーを手に入れねば我々は行き詰まる」

 

プラントは、食糧生産こそ可能なものの鉱物資源は無きに等しい。近くの小惑星は基本的に連合の領域であるし、得られる資源も少ない。だからこそ北アフリカを占拠していたわけだが、流石に「砂漠の虎」が敗れるとはプラント議会にも予想外だった。だからこそ、ここで一発逆転の策を狙うわけだ。

 

「そうだな、最近はオーブも協力を渋っているわけだし・・・」

 

戦争前から戦争を良しとしていなかったオーブであったが、長い働きかけで開戦前に資源供給を受ける事には成功した。しかし、エイプリルフールクライシスから段々と資源の供給は減り、今や雀の涙ほどと言っても良い。それでも無いよりはマシだが、このままでは兵站が成り立つまい。

やはり、無差別攻撃は不味かったかという雰囲気は流れる。シーゲル・クラインの決定で核ではなく核を封じる兵器による報復が行われたが、予想よりも死者が多すぎたのだ。一旦はナチュラルの愚昧さが招いたことだと納得した者もいたが、現実としてこうも自分たちの首が絞めつけられている。

政治の評価が結果のみで問われるものであり、今こうして結果は示された。議員には周知の事ではあるが、もうすぐ代表の再選も行われるのだ。皆が、パトリック・ザラの当選を信じて疑わなかった。

それが、後の悲劇の幕開けである。




ガンダムとは・・・(哲学)
刹那さんのガンダムはエクシアの恰好をした魔改造アストレイみたいな認識でOKです。ただし周囲に光がある限り発電し続けるので核動力機に迫る稼働時間ですし、パワーもそう負けていません。
機動力も空を飛べない以外はエクシアばりで、しかも走る最高速度に至ってはローラーのせいで超えてる・・・海の上にも浮けます(オーブ海戦で無双フラグ)
あとビーム兵器が乗ったので犠牲者がマッハ・・・

プラントでは代表交代とスピットブレイク準備です。天才かよ!みたいなノリで可決したもののあまりの犠牲者の数にオーブから手を切られかけるプラント。一応周囲の小惑星から資源は集められるので、戦いは出来ます。が、もっと無いとつらいのは自明ですよね。ただでさえ物量負けてますから。
そしてスピットブレイク目標は代表交代で・・・

FGO関連で大反響だったのでもうひとつ、作者の友人はマーリンを引くために七十回分の石を貯めていましたがはてさて。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

35話:最大効率

ストライクにも市街地戦用の改良が入ります。これは帰りの電車で六時間という割りと何かやらないと気が狂いそうな時間で考えた思い付きですが、それなりに効果はあるんじゃないかなぁ~と信じたい。

次回が出来ちゃったので本日投稿となりました。ボーナスみたいなものだと思っていただけると幸いです。次回はちゃんと今週の日曜日に出します。


ワンオフ機体、エクシア・アストレイと並行して、ストライクにもアップグレードが施されていた。まず、出力の大容量化。新型バッテリー、パワーエクステンダー2つの併設で最大電力が数倍に向上し、モータや配線の容量も強化された。そして、脚部の全体的な設計変更。これは刹那からの助言もあってのことなのだが、そもそもキラと刹那の戦闘指向の違いが発端だ。

刹那は、元々のテロリストとして教育されていた時代の白兵戦技術とMS戦闘の技術を異なる技術として脳内に持っている。だが、キラにとっては戦闘というのはMSに依るものが全てなのだ。そこへ対人戦闘の技術も入る余地はあるのだが、いかんせんMSと人体では違う部分が多すぎるのだ。

その最たるものが脚部である。もちろん大まかな構造は同じだが、人体をトレースしようとすれば当然関節の可動域の差から再現が不可能な姿勢が現れる。

そこで、脚部をより人体の関節に近づける。爪先に関節を追加し、足首を横にも曲がるよう軸を通して膝に軟骨のようなクッション機構を備え、脚全体からの衝撃を人体そのままに上半身へ流す。

関節が増えた弊害は、世界最高の生きた情報処理装置、キラが全て吸収する。関節の追加によって可能になった動きをパターン化し、体重移動と関連付けて本体の姿勢制御プログラムに直結する。

こうした様々なスペシャリストの協力のもと、世界で最も人体を再現したMSが完成した。

中国武術、軽身功の応用で、90度近い壁に機体制御のみで座っているストライクを見て、シモンズ主任は呟いた。

 

「これまでのわが社の数年を遥かに上回る発展だわ。やっぱり分業って大事ね、アストナージくん」

「仕事してください主任」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

本日の日程が全て完了し、キラはカガリに市街地へ引っ張ってこられていた。ちなみに原因はこうだ。

 

「お前、私服とか持ってないのか?」

 

思えばストライクのパイロットになってからずっと軍服で、モルゲンレーテにいる間は支給された作業服だ。ちなみに私服を持っていないのも本当で、ストライクに乗ったあの日着ていた服はどうしようもないほど血まみれだったので捨ててしまった。

なるほど、では買いにいこうとカガリが言い出し、あれよあれよという間に許可が出され、半笑いのモルゲンレーテ所属運転手に送られて現在オーブ本島である。

お金は、と言い出しそうになったキラだったが、カガリの財布にちらりと見えた黒光りするカードを見て考えるのをやめた。

まず大きなショッピングモールで服を買い漁り(キラは何度もダメ出しされた)、同様に買い物に来ていたトールに盛大にいじられ(トールはカガリに殴られ感激したキラがカガリに抱きついて大騒ぎになった)、夕食を食べに二人で料理店に入った。

材料の唐辛子の量をゼロが二つ三つ間違っているのではないかと思われるほど赤い麻婆豆腐を平然と掻き込んだ後、カガリが話を切り出した。

 

「なあ、私はどうやったらお前らに着いていけると思う?」

 

それは、トールを一撃で気絶させた時とは打って変わって消沈した様子だった。キラも、先ほどブティックで再登場した黒いカードからそれなりに良い家の子供だということは想像がついていた。実際はそれなり、どころではなく最上位なのだが、ともかくかなり親から大事に思われているということも確かなのだ。そして、カガリも大切に思われていることをわかっている。だからこそのこの悩みの打ち明けなのだろうが、キラには答えが出なかった。そもそもキラが今アークエンジェルに乗っているのは緊急時の判断の結果だ。

親に認められて軍に入った訳ではもちろんないし、なんだったら父も母も自分を軍から抜けられるように尽力さえするだろう。それでもキラはアークエンジェルの乗員たちに絆されているし、自分でも分かっていてだからこそ何もかもから降りず此所にいる。オーブにいるというのに二人に連絡すらしないのは事が拗れるのを恐れているからだ。

それでも、なにも答えないだけでは相談された甲斐がない。だから、一番妥当だと思われる回答をひねり出す。

 

「ムウさんは、敵は一番弱いところから切り崩せって言っていたけど、これもそうなんじゃないかな。例えばお父さんの部下とか、家のお手伝いさんとか」

 

攻略しやすい部分から攻略するというのは考えれば通常当然なのだが、いざというときに人間は忘れやすい。ムウの教えは本人の思わぬところで役立ち、本人の知らぬところで株が上がった。

 

「みんな反対しそうなんだけど」

 

口でなんと言おうとも、外部から観測される結果は「戦争に行く」、である。カガリが思うに、父、ウズミは物事の本質がしっかりと見え、かつ生半可な言葉に騙されない人間である。民主主義が広く知られた現代で実質の独裁を行っている人間が、部下の言葉などに耳を貸すだろうか?

ウズミ・ナラ・アスハは一つの論理武装された城である。では、城を越えて父に届くものとは何か?

 

「父さまは・・・いくら言い方を変えても物事の見方は変えないと思う。あれでも政治家だけど、本質しか見ない人間なんだ。逆に、私がお前らに着いていって私が居なくなる以上のメリットがあれば説き伏せられるかも知れない。ほら、国益なら娘一人より優先されなきゃ政治家失格だろ?

生き方は変えない人だから、そこを突けばどうにか説き伏せられるかも・・・」

「でも国全体の利益になるほどのメリットなんて・・・」

 

そこで、カガリがガバッと立ち上がった。目には強い光が宿り、顔全体に喜悦の色が広がっている。

 

「お前、国籍はオーブだよな!?」

「そうだけど・・・・・・?」

 

キラには全く話が見えないのだが、カガリは我が意を得たりと言わんばかりにガッツポーズを決めている。

 

「キラ、お前は今日から私のものになれ!いや、戦争が終わってからでもいい!」

「・・・えぇ?」

 

嬉しい、確かに嬉しいのだが、キラの頭には圧倒的な困惑がクエスチョンマークを撒き散らしていた。

あー、頭使ったらお腹減ったなー、などと言いながら先程の辛さの限界に挑む人間用の麻婆豆腐をもう一杯頼んだカガリと自分も一緒に同じものを頼み、とりあえず説明を要求する。

 

「その話は、そのー、色々ほら、な?」

 

モルゲンレーテから外出時に渡された端末を指差されながら言われて、キラも察した。国防の機密に絡むことらしい。さすがに聞きたい放題のこの料理店では不味いだろう。新しく届いた麻婆豆腐をペロリと平らげ、帰りの待ち合わせ場所まで公共の無料バスで戻る。

送りとは違い、帰りの車を運転していたのは刹那だった。

 

「ソランさん!どうして・・・」

「キラ、少し遅刻だ。艦長が直接連れてこいと言っていた」

 

ムウからプレゼントだ、と渡された反省文の書類を見て、現実は非情だと実感した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

二時間後、キラの部屋にて

 

「それで、夕食の時のことなんだけどな」

「はい」

 

艦長から、一時間正座でいかに危険な状況に陥るかという軍隊教育も交えた理路整然としたお叱りの言葉を受けていたために痺れた脚をベットの上で伸ばしながら、机を挟んで胡座で座っているカガリの言葉を待つ。

 

「そうだな、ウチのテストパイロット3人がいるだろ?」

「アストレイの?」

「そ、あいつらだ。あいつら、防衛軍のパイロットでどのくらいだと思う?」

 

MSは、ZAFTが数ヵ月前に初めて実践配備した超最新兵器である。それで、オーブは時間の問題ではあるがまだテスト中である。つまり、

 

「トップ、かな?」

「そ、あれでトップ」

 

キラは言葉節があまり強くないためそこまで言及しなかったが、確かに現状のままでは的でしかないだろう。

 

「そこでお前だ!実戦経験なら多分世界一と言っても良いくらいだろ!?」

 

それは、間違いではない。但し書きとしてZAFTを除く(さらに言うと刹那を除く)、となるが、MSパイロットとしての戦闘経験でキラは世界一だ。

 

「しかも、開発も一流!そんなお前がウチの所属になれば、正に国益じゃないか!大丈夫、連合との交渉は上手いこと言わなくてもやってくれるさ」

 

此所で言うウチ、とはつまりアスハ家のことである。オーブの内政を司っているとは言え、戦闘用コーディネーターの双子を持つサハク家などに比べれば保有する戦力は無いも同然。カガリはそこまで考えていないが、政治的な札とも成りうる。単機の戦闘能力、世界トップクラスのソフトウェア開発能力、世界に名の知れたエースと軍事の名門から現在教育を受けている指揮官の視点、一つを持っているだけでも、軍隊から見れば喉から手が出るほど人材だ。

そして何より

 

「これからもずっと一緒にいられるだろ?」

「それは嬉しいけど」

 

そういうプロポーズめいた言葉は普通男の人から言うんじゃないかなと思いはした。それと、スケールが大きすぎて実感が湧かないがよくよく考えればカガリのヒモと言えなくもない。が、それがカガリの望む事なら助けになりたい。

 

「そうだね、じゃあ戦争が終わったら僕はカガリの物だ」

「よし!シモンズにプレゼン手伝ってもらってくる!」

 

最大の関門、キラ本人の承諾がとれ、カガリは意気揚々と主任の執務室へ向かっていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「若いわねぇ」

 

言って自分でそんな年でもないか、と笑ったが、一児の母ではあるためそれなりなのだろう。

彼女の溌剌とした行動は、十代に特有のエネルギーに溢れていた。そして、何よりナチュラルと結婚したコーディネーターの自分に被るのだ。

一応、出来る限りの手伝いはしたつもりだ。後はご息女の成長次第。とはいえ、心配は無用だろう。父に反発して出ていったあの時に比べて、本当に同じ人間かと思うほどの変わりぶりだ。

 

「まあ、ウチとの連携もしてくれるらしいし、駆け引きが上手になったわねー」

 

アストレイの本日の改良点をリスト化しながら、眉間を揉んだ。アストレイの改良も、そろそろ望まれた水準に迫る。つまり、アークエンジェル出港の日は近い。




カガリさん、マジ男前。
勢いでレストランでプロポーズするぐらい男前。そしてキラくん永久就職おめでとう。まあ働くだろうからヒモではないよ。給料が旦那さん(カガリ)の懐から出てるだけで。
来週は完全に存在が忘れられていたザラ隊と、カガリVSウズミの話です。いやー、新幹線で執筆が捗る捗る。
もうひとつこの調子で書けたら今週は二作突っ込むかもしれません。

受けがいいので作者のFGO近況報告も入れておきます。
タブー感があるのでガチャが当たったみたいなのは話題にしませんが。
ようやくブレイヴエリザが宝具レベル5!あとは再臨素材が金貨ワンセット分です。
あとアンデルセンとダビデがレベル80になりました。やつらはレア度の割にスキルやら宝具やらが自重してないので強いですよね。そういうとこすごく好きです。(10/2 17:30現在)

同日追記
勢いって大事ね。書き上がっちゃったからね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

36話:親離れと威光

あー、捗る、捗るぞう。鉄血×ドリフターズの方は全く話が浮かばないのにこっちはすごい思い付く。
やっぱり人間やりたい時にやりたいことやるのが一番ですね。(あっちがやりたくないわけではない)

それはそれとして00は10周年おめでとう。


ウズミは内心号泣していた。もちろん現実の顔は凄まじいまでのポーカーフェイスなのだが、心の中では娘の成長に感激しているのだ。だからこそ、少なくとも態度は鬼にして強く口論を交わす。

 

「では!お前が戦場へ行くことの必要性は!」

「確実にこちらに引き込むには粘り強い交渉と誠意が必要だと仰ったのは父上ではありませんか!」

 

カガリにそのつもりは全く無いのだが、論客としての成長が、紡がれる言葉の一つ一つが、ウズミの心に凄まじいまでの打撃を与えている。親とは、子に教えたことは本当に正しいだろうか?そう疑問に思いつつも自分の正しさを教えるために時には叱り、時には褒め、子供と共に成長していくものだ。

そして今、自身の教えが子供に理解され、その素晴らしい成長ぶりを示している。これが親にとっての喜びでなくてなんなのか?

心中は親として思い残すこと無しと灰に成りかけているが、そこはどうにか辛抱して話を続ける。

 

「なるほど、確かに私はそう教えた。国へのメリットの還元、戦場という一つの場所を目で見て治世に活かしたいという主張は正しい。だが、私もこの国の元首であると共に一人の親でもあるのだよ」

 

そう来るとは思っていなかった。いつも口を酸っぱくして国のために、と言っていた父が、私も一人の親だという。確かに、愛されていたと思う。でもなんという皮肉だろう。親不孝をしなければならないときに、親から言葉で大切だと言われるとは。

しかし、此所で引くわけにはいかない。キラをカガリの近衛としたりモルゲンレーテと提携、連合からの引き抜きには父の力が必要なのだ。

 

「父上がそう仰るのなら、私からも言うことが有ります。私は、あいつと一緒にいたい。私は・・・一人の人間としてあいつと一緒に・・・いや、そうか、私はあいつのことを」

 

ウズミは、大きくため息をついた。政治家としてのウズミ・ナラ・アスハは、大きな国益となる話を逃すことは出来ない。父親としてのウズミは、娘の幸せを叶えたい。

今回は敗けだ。娘の成長を素直に喜ばねばなるまい。

そう思って、椅子から立ち上がりカガリを抱き締める。

 

「お前は、大きくなってくれた。私にはそれが嬉しい。今はまだ未熟ではあるが・・・いずれ、この国を任せることも出来よう」

「では!」

「ああ、その少年の引き抜きを全力で行うと約束しよう。お前の近衛にする件、モルゲンレーテへの協力も同様だ」

 

喜びを噛み締めながらも、精一杯堪えて頭を下げるカガリを微笑ましく見ながら、ウズミは頭の中をかちりと切り替える。

 

「カガリ、その少年を此所へ連れてきなさい」

「父上、顔がとても怖いのですが」

 

娘の良人となるかもしれない人間を見極めるだけだというのに何を怖がっているのだろうか?そんなに怖い顔をした覚えはないのだが。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「やつらが本当にオーブにいると思うのか?」

「アラスカ周りを張ってる潜水艇部隊からは、それらしき船は見つかっていないそうだ。なら、オーブに滞在していると考えるのが自然だろう?」

 

イザークの疑問に、アスランは持論を述べる。もっともそれは事実に基づいた推論であり、イザークも確かにそうだなと頷いた。

 

「でもよ、あんな船衛星写真にも写ってなかったぜ?」

 

こちらはディアッカの疑問なのだが、確かに衛星写真の撮影を依頼し、解析を依頼したもののオーブにそれらしい船は見つからなかった。

 

「相手はあのオーブだぞ?秘密の軍港くらいあるさ」

「それに、新型を開発していたのがヘリオポリスだったというのも無視できません」

 

アスランとニコルの尤もな反論に、ディアッカはだよなー、とため息をついた。

実は、この議論はオーブ近海から撤退した直後から何度かあったのだ。ただ、アスランとニコルはその事実を信じて待つ人間であり、イザークとディアッカはその推論を体を動かして検証しようとするタイプの人間なのだ。

そういう意味ではバランスのとれたチームなのだが、狭い潜水艦から出られない事がイザークとディアッカの精神に負荷をかけているようである。これではいざという時に力を発揮できないかもしれない。メンバーの体調管理もリーダーの仕事だ。見張りも、しばらくは艦のオペレーターに任せておけばいい。

 

「イザーク、ディアッカ、お前たちはなにも出来ないのは苦痛だろ?だから、俺たちでオーブに潜入してみないか?」

 

イザークもディアッカも堅物の教科書のようなアスランがそのようなことを言い出すとは思っても見なかったのだが、提案自体は美味しい。二つ返事で頷いた。ニコルも、さすがに気が滅入っていないわけではなかったらしく、顔は嬉しそうだった。もっとも、ニコルは連日イルカと遊んでいたのだが。

 

そうと決まれば、全員の行動は早かった。艦のオペレーターを懐柔し、艦長に上陸許可をもらってオーブに潜入している工作員から偽造パスポートを受け取ってあれよあれよという間にオーブへ入ってしまった。

 

とりあえず足付きの痕跡を探るため、イザークとディアッカ、アスランとニコルの二グループに別れる。ディアッカとニコルが、じゃあまた後で!と明るく挨拶を交わし、それぞれの探索を開始した。

 

夕方になって、それぞれの成果報告が街中のダーツバーで開かれた。

まずイザーク、ディアッカ組からだが、こちらは愚痴から始まった。町中でディアッカが兄妹の妹をちらりと見たところ、兄の方が烈火の如く怒り始め、ガキに興味はないとディアッカが言ったところそれでまた怒り始めたらしい。

全く面倒な兄貴だよ、とディアッカが溜め息をついてはいたものの、プラントでの行いが行いなので誰もフォローしない。

イザークによると、兄の方は黒髪に真紅の目をした気の強そうな奴、妹の方は茶髪に茶眼のおっとりした印象の子供だったらしい。

アスランとしては、子供ながら妹を守ろうとするその気概は大いに評価したいところだった。

 

それからまともな報告がなされ、町中では特に異常は見られなかったが、心なしか警備がピリピリしているように感じられる、というのが結論だった。

 

アスラン、ニコルの報告では、海岸近くは余り家は無いが、崖のような地形が多く、秘密港を作るには持ってこいな地形だった。また、海近くのモルゲンレーテの工場は警備が非常に多く、近付くことさえままならなかった。

 

残念ながらモルゲンレーテの入社審査は大変厳しいらしく、それこそ本業の工作員ですら未だに潜入が出来ないらしい。もっとも、アスランとしては気晴らしと足付きのいそうな雰囲気だけでも掴めたので儲けものだ。

欲を言えば確固たる証拠が欲しかったが、これ以上はプラントの敵が増える可能性も有るため難しい。

 

話が一段落して、ディアッカはダーツを投げ、アスランとイザークはノンアルコールのカクテルを、ニコルはピアノを弾いて周りから絶賛されていた。

 

ダーツバーから出て、とりあえずその日はホテルに泊まり、翌日に引き上げる予定となった。

部屋で一人になったアスランは、キラの住む国に来たのだということにふと思い当たった。今まで自身の価値観で戦争というものを考えていたが、中立を主張するこの国はどうだろうか。

イザークなんかは、こちらは戦争をしているというのに、と憤慨するかもしれない。ディアッカやニコルは平和になったらまた来たいと言うかもしれない。だが、アスランの心の中でふと疑問が首をもたげる。

では、平和とはいつ来るのか?例えば、プラントの議員たちはどこで戦争を終わらせても良いと判断するだろうか。例えば現議長、シーゲル・クラインは核に依らない報復を宣言し、Nジャマーを世界に撒き散らした。報道では死者はほとんどいないと聞いたが、ダーツバーで、エイプリルフールで億は死んだだろうにまだやるのか、などと新聞を見ていた男性が呟いていたのを思い出した。

報道を鵜呑みにしていた部分もあったが、今プラントが言論統制を、敷いていることが分かってしまったわけだ。

結束を強めるという目的も有るのだろうが、事実を告げずに戦争を続けている議会は何をもって戦争を終わらせるのか?

戦争に勝った後に、市民はプラントが何をしたのか知るのか?

そもそも戦争は終わるのか?

考えすぎ、で片付けるには重要に過ぎることだ。

では、間違っていたら所属を変えるのか?

それは無理だ。思い出したのは、イージスを奪取したときの光景。ラスティが死に、連合の作業員が死に、作戦の結果ただただ死が広がっていた。あのうち数分の一は、アスランのせいで死んだのだ。

今戦争を辞めるということは、彼らの死は意味が無かったと断じるも同然だ。

やはり、戦争なんかに手を染めたのが間違いだったのかもな。そう自嘲気味に笑って布団を被った。安宿のベットは余り良いものではなかったが、それでもシーツを被るだけで包まれる安心感をくれる。

頭の中を切り替えて、明日以降のプランを考え始めた。結局、戦い続ける以外に道などないのだから。




書けちゃった。
とりあえず、親バカウズミ氏と、悩める男、アスランの苦悩と諦め回でした。
次回はキラと親、親バカの話からアラスカへ。
なお、アラスカから章を変えようと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

37話:追うもの

オーブからの出航と言えばそう、ニコルが終わりがないのが終わり状態にされたあの話が浮かびますね。一体ニコルが何をしたっていうんだ!俺はニコルが一番好きだったのに!
では、キラとウズミの対面からです。

話バッサリと変わりますが、先週の日刊ランキング入りました(22位)。読者の皆様、お気に入り登録してくださった方々、評価をつけてくださった方々。
いつも誤字報告をしてくださる方、感想を寄せてくださる方々にも感謝です。
ありがとうございました。これからもますます精進していく所存です。


キラは困惑していた。オーブの行政府まで来てほしいと言われ来たは良いのだが、入るように言われた部屋から尋常でない殺気が放たれているからだ。アスランのいる隊と同レベルなので確実に殺す気だ。

粘つくような重い空気に、思わずキラは顔を引いてしまう。だが、見たところ表札には代表首長と書かれている。つまり、あまり入らずにぐずぐずしているわけにもいかない。

意を決して扉を四度ノックする。扉の中からは、穏やかに「入りたまえ」と声が発せられたので扉を開けた。

 

中で待っていたのは、オーブ最高首長、ウズミ・ナラ・アスハだった。口元に立派なひげを蓄え、髪の色から老いていることはうかがえるものの背筋の通った衰えを感じさせない姿勢で椅子に座っている。まあ掛けたまえ、と椅子を指し示されたのだが、正直に言うと笑顔の圧力が凄まじい。完璧な笑顔なのに、こんなにも恐怖を感じさせるのは何故だろうか?とりあえず指示に従わなかった場合殺されそうなので素直に座る。

座ったことを確認すると、ウズミ氏も机を挟んだ向かいの席に着席した。

 

「娘のカガリが世話になったようだな」

 

そう言って、頭を下げたウズミを見てキラは慌てる。

 

「いえ、僕の方が寧ろお世話になっちゃいまして・・・」

「いや、あれはここを出ていく前は不出来な娘だった。それがああも成長して帰って来てくれたのは君たちのおかげだ。重ね重ね、ありがとう」

 

そう言って。もう一度頭を下げた。が、急に圧力が再発生した。

 

「それで、うちの娘のことだが、君はどう思っているのかね?」

 

間違いなく、下手な答えをすれば殺される。その証拠に、ウズミ氏の目は今までで見たことが無いほど凄烈な光を湛えていた。流石にすぐには答えられず、ごくりと唾を飲む。答えが無いキラに、ウズミ氏はさらに畳みかける。

 

「娘が君を護衛に雇いたいと言ってきてね、まあ私が直接人物を見ようというわけだよ」

 

キラとしては、一体何を言えばここまでの圧力を受けながら面接を受ける羽目になるのか、軽く一時間はカガリに問い詰めたい気分だったが、とりあえず頭をフル回転させてこの状況を切り抜けなくてはならない。

だが、モビルスールのパイロットをしていてもここまで死が近い事などあっただろうか?極度の緊張で頭が上手く回らない。

 

「ふむ、そういえばまだ名前を聞いていなかったね。キラ君、とりあえずフルネームを言ってもらえるかな?」

「キラ・ヤマトです」

 

それぐらいならどうにか、と名前を口から絞り出したが、その一言で圧力が消えた。

 

「もしかして、ハルマ・ヤマト氏の息子かね?」

「はい、そうですけど・・・」

 

何故こんな殿上人から父の名前が出てくるのか?今度は停止から混乱へと一気に頭が移り変わるが、ウズミ氏は失礼、と席を立ち、どこかへ電話をかけ始めた。電話は比較的すぐに終わり、席に再び戻ってきて神妙な顔で立ち上がるように手振りで示した。

 

「これも運命か・・・いや、すまない、君にはしなくてはならない話があるが、これは君のご両親にも関わることでね、勝手で申し訳ないがお二人を呼び出させてもらった。こちらへ来てくれ」

 

そう言って、ウズミ氏は立ち上がり執務室を出て廊下を歩き始めた。キラが扉を閉めると不穏な金属音が響いたが聞かなかったことにする。ウズミ氏はどんどん地下へと下っていき、キラもその後を追いかける形だ。そうしてしばらく歩くと、突然木製の扉が現れた。

扉を開けると、そこは広いサロンになっていた。窓からアークエンジェルが停泊しているのが見えるあたり、ここは秘密ドックの横にあるということだろう。近くの椅子に腰を掛けるよう言われ、座ると向かいの扉から入ってきた給仕がコーヒーを置いて行った。

ウズミ氏は再び電話をかけていたようだが、またすぐに仕舞ってコーヒーの置かれた席に座った。

あまりの状況にどうしても疑問が抑えられなくなったキラは口にした。

 

「こんなことになるような・・・僕の秘密って何なんですか?」

「申し訳ないが、すべては君の両親が来てからにして欲しい。あと十五分ほどだ」

 

確かにコーヒーは美味しかったが、キラには自身にはどうしようもない焦りで時計の針が止まっているようにさえ見えた。だが時間は止まらず、言われたよりも少し早く扉が開かれた。

 

「ウズミさま・・・キラ・・・!」

「母さん・・・・」

 

扉を開いた母は、ウズミに挨拶をしてすぐにキラの方へ駆け寄ってきた。自分をぐっと抱き締める母に、今更ながら心配をかけたものだと涙が出そうになる。

父はウズミ氏に挨拶をしたあと、穏やかな顔で頭に手を置き、生きていてくれて良かった、と言う。

怒られるかもしれない等と考えていた自分が少し恥ずかしい。

ウズミ氏も微笑ましい、と家族を見ていたが、話があると全員を席につかせた。

 

ウズミ氏は、まず呼び出したことに対する謝罪から始めた。親二人は、いつかこんな日が来るとは思っていた。どうぞ話を続けてほしい、と呼び出された時点で用事はわかっていたらしく、続きを促す。

 

「まず、大切なことだ。先に言っておこう。君はお二人の実の子供ではない」

「それは・・・」

 

昔は、何故僕をコーディネーターにしたのだろうと悩んだ事もあった。だが、どうやらそれは筋違いだったようだ。むしろ、コーディネーターの子供をわざわざ引き取って育ててくれたということになる。

 

「そう・・・ですか。でも、血が繋がっていなくても二人とも僕の両親ですよ」

 

ウズミ氏は、それはそうだろうと頷く。両脇の両親も、ありがとう、と言ってくれた。確かに大事なことだが、まだ話には続きがあるらしい。

やはりと言うべきか、それは実の親の話だった。いや、実の親と言うには語弊があるだろうか?

 

「君の親、と言うよりは・・・悪い言い方をするが許してほしい。君を作った人物と、君自身の体の話だ」

 

ユーレン・ヒビキ博士。究極のコーディネーターを作ろうとした男は、妻の子供の遺伝子からある特殊な遺伝子パターンを発見した。SEED因子と呼ばれたそれは、従来の限界を超えた性能を人間にもたらすだろうと予想された。

特に、反射神経の予想値は今までのどのようなコーディネート技術をも上回る値を記録した。

ヒビキ博士の研究は、平たく言えばコーディネーターの調整をより完璧にする事だった。如何に完璧なコーディネートを施そうとも、子供を育てる母親の体が環境として不完全なのだ。

人間でダメなら機械で実現すれば良い。ヒビキ博士はそう考え、人工子宮の開発を進めたのだ。世界の様々な場所から集められた優秀な遺伝子に現状で施せる最高クラスのコーディネートを施し、人工子宮で人間の赤ん坊まで到らせようとした。コーディネート技術の改良を行ったのだ。無数の赤子の犠牲と共に。

コーディネート技術よりも先に人口子宮は完成した。それによって数人の全く新しいコーディネーターが産まれたが、ヒビキ博士は満足しなかった。

丁度妊娠が発覚した妻の腹の子供から発見したSEED因子を組み込んだ新しいコーディネーターの胚を作り、人工子宮で育て始めた。

妻のヴィアは博士を何度も止めようとしたが、結局聞き入れられる事はなく、カガリと名付けられた実の子供と同じ日に、SEED因子に適合したった一人残った被検体、キラが産まれた。

博士が狂喜したのも束の間、ブルーコスモスの過激派が博士の研究室に攻め込み、人的被害は皆無だったものの施設は大部分が破壊されてしまった。

ヴィアは子供の身元を隠し、カガリをウズミへ、キラをヤマト夫妻に預けて隠遁した。

ヒビキ博士はヴィアとは別に逃亡したものの、ブルーコスモスから殺害したとの声明が出ている。真偽は不明だ。

 

「それが、僕ですか」

「確かに、ヒビキ博士の研究は狂気の沙汰だった。だが、生まれてくる命に何の罪があろうか。ヴィア博士はそう言って君を預けた。君は確かに人とは違う出自だが、その身を生かしているのは他の人間同様に愛だということを忘れないでほしい」

 

今まで只のコーディネーターだと思っていた自分は、狂気の実験の成果だった。ただ、それは新しい恐怖を助長する。コーディネーターだと差別された自分は、どうしても周りの見る目が変わってしまうのではないかと考えてしまう。

そんなことをするような友人たちでは無いだろうに!

とにかく、お礼を言う。

 

「教えてくださって、ありがとうございます。カガリにこの話は?」

「私が実の父でないことは既に知っている。後はあの子次第だ。知りたいと望めば教えよう。それと、君の出自のこと、信用のできる者以外には話さないでくれ。広まってしまえばジョージ・グレンのように・・・」

 

ジョージ・グレンは、自分がコーディネーターで無いことを呪った少年によって銃で撃たれ死んだのだ。ある意味第二のジョージ・グレンであるキラがそうならない保証はない。

それくらいに、連合、プラントの両方に影響のある話なのだ。スーパーコーディネーターとは。

同時にウズミの頭には疑問が立ち上がっていた。キラ・ヤマトがモビルスーツで戦果を挙げるのは頷ける。では、そのスーパーコーディネーターを上回るパイロットというのは何者なのか?とにかく、情報を集めるだけでもしておく必要があるだろう。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

再び執務室で、ウズミは頭を抱えていた。結局、へリオポリスに居たということと、好い人物であるらしいということしか解らなかったからだ。

調べさせたところ戸籍にも問題はなく、中東の国から移り住んだことになっていた。異常はない。だから異常だ。少なくとも、あれほどの能力を持った人間が存在していて騒ぎにならないはずがないのだ。

だが、目くじらを立てて逃すにはあまりにもったいない人材である。今までの行動の調書から好人物であることはわかっていが、どの様な物を求めているのか、何を信じているのか。知らねば陣営に引き込むには心許ない。

 

「やはり、直接顔を会わせるのが一番か」

 

深い溜め息と共に、本日数度目の電話をかける。

 

「私だ、モルゲンレーテのシモンズ主任に繋いでくれ

主任か?ああ、そうだ。ソラン・イブラヒム君を此処へ向かわせてほしい。なに?やっぱり?それは・・・いや、そうだな、確かに簡単に予想のつくことだ。全くもって優秀な部下だよ、君は」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

オーブ近海に停泊しているZAFTの潜水艦内では、ザラ隊のメンバーがそれぞれ以前アップグレードされていたストライクのデータを使い、シミュレーションを重ねていた。当然、オーブに滞在している間にアップグレードされていることも折り込み済みである。

そして、イザークは対ジンの訓練も繰り返していた。今までの分析から、銃撃戦よりは白兵戦の方が得意らしいと判断したイザークは一番に足止め役を志願した。最重要目標はストライクなのだが、どうしてもジンが邪魔になる。

故にジンの足止めは必要不可欠なステップなのだが、イザークにはどうしても勝利のビジョンが見えなかった。

シミュレータのジンには勝てる。当然だ。だが、普通のジンの動きを見れば見るほど、敵の異様さが際立っていく。三点射でコックピットを撃ち抜いた。奴なら当たらない。ビームサーベルでチャージをかける。腕を切り落とされた。組み付いて衝撃で落とす。体術レベルが違いすぎて不可能だ。

幾通りもの戦術を考えるが、例え平地や市街地だったとしても厳しいであろう。まして、考えられる戦場は海上。敵はホバーで縦横無尽に海面を走れるが、こちらは鈍重なグゥルの上なのだ。

ジンの残骸が映るシミュレータの画面を睨み付けながら思案していると、アスランが様子を見に来た。

 

「イザーク、話があるんだ」

「貴様がか?」

 

けして仲が悪い訳ではないが、イザークは一方的にライバル視していたアスランから覚えが良いとは思っていなかった。だが、頼むと頭を下げるアスランに、それは俺が勝ってからやれと軽く叩き自室へ連れていく。

 

「それで?」

 

いつも、軟弱な、と思っている情けない顔でこちらを見てから、アスランは話を始めた。

ストライクのパイロットが元親友だと。

始めは憮然として聞いていたイザークだったが、それでも俺はあいつを討つと力強く言い切ったアスランに、それでこそ、と思わずにはいられなかった。

そして、自分の打ち明け話をしたアスランに、借りを作りたくないとこちらからも話をしておく。

 

「悔しいが、俺はあのジンには勝てる気がしない。お前ならどうだ?」

 

かぶりを振ったアスランに、お前でもそうなのか、と歯噛みをする。だが、アスランから出た提案は思いもよらない物だった。

 

「正攻法では厳しいだろうな。こういうときは、ディアッカが良い案を出してくれそうじゃないか?」

 

正攻法ではアスランが一番強いが、詭道的な戦いではディアッカがかなり強い。性格もあるのだろう。

そして、一人で戦うことに拘りすぎていた事に気がつく。

とにかく時間が惜しいと、ディアッカの所に行ってみると、まずディアッカから発案されたのは機雷を仕掛けることだった。本人曰く、有るとわからせるだけでも価値が有る。他にも、単純な一騎討ちではあり得ないような案を出していく。二人は、それは卑怯だ、そんなことを言っていて勝てるのかと夜遅くまで議論していた。

そして、オーブの軍事演習が有ると言う知らせが届いたのはその次の日の朝だった。おそらく、そこで紛れて出てくるのではないかとは入国を手伝った工作員の談である。

艦内はあわただしく動き始めた。




次回、遂にキラと迷いを捨てたアスランが激突。
イザークは刹那を止めることが出来るのか!?
(そこ!出来レースとか言わない!)

何を間違ったらそうなったと言わんばかりの進化を遂げたストライクに、アスランたちはどう戦うのか。

ちなみに最悪来週はお休みします。忙しいです。ただ調子が良かったら上がります。出来る限り頑張ります!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

38話:ZAFTのトラッパー《前編》

さんざん噛ませになると言われ続けたザラ隊の諸君。でも今回は一味違います。
え?タイトルだけでも誰か死んでそう?
でもいろんな実例(宇宙でヘルメット飛んだ人)とかいるしどうでしょうね?

なお前回は不調でしたが、原因は三つほど考えられます
1、恋愛物を書いたせいで脳が拒絶反応を起こした
2、疲れてた
3、スプラトゥーンでランク落ちした


執務室から出て、刹那は近くにいた人間の存在を探した。場所はわかるが、目に見える場所には居ないようだ。最低限の礼儀として人間の心の中は非常時を除いて読まないようにしているため、どの様な目的をもって近くにいたのかは判断がつかない。

そのため、刹那はウズミ氏の護衛だろうと判断した。

長い政庁の廊下を歩きながら、先程の会談を思い出す。

オーブという国は平和主義だが、それ故に戦力を保持しなくてはならないはというソレスタルビーイングにも似た矛盾を孕んでいる。国家はパワーバランスで維持されている。今のような戦乱の時期にはなおのことだ。

平和のための戦力。それが今や世界最高水準であることは、しかし必然でもある。圧倒的多数の決断に従わないためには、それなりの支えが必要だ。今のオーブにとってのそれは、様々な技術が混ざって生まれたアストレイ。

そして、アストレイの開発を決断せざるをえなかったと苦悩するウズミ氏が、刹那には好ましかった。

本来、戦力を保持するものは苦悩していなくてはならない。いや、決断に際しては全てがそうなのだろう。かつては争いの破壊者になることを選んだ。今は見知った人間を助けて戦っている。悩まず人間の獣性に従って戦えば、いずれアリー・アル・サーシェスのような外道に堕ちる。

悩むことを放棄しなければ、ウズミ氏は責任ある指導者としてあり続けるだろう。

考えが一段落したところで、丁度政庁の出口まで辿り着いた。

 

「帰りの迎えは私よ」

 

大理石で設えられたエントランスでは、シモンズ主任がパンツスーツ姿で待ち構えていた。政庁はモルゲンレーテの工廠からそれなりの距離があるため、行きは外出許可を得たトールに送ってもらったのだ。

 

「あなたたちのスケジュール管理は私の仕事ですからね」

 

その言葉の意味するところは、出港日が決まったということだ。着いてきて、と駐車場に歩いていく主任の後を追う。帰りの車は、後部座席が会議ができるように改造された黒のワゴンだった。モルゲンレーテの技術で、後部座席はMSの装甲並みの強度らしい。うちの子はすごいでしょ、とボディーを軽く撫でながら、机が置かれた車内に手招きしている。

 

「確かに、素晴らしい車だ」

 

椅子の座り心地も並みではないが、刹那はその辺り無頓着である。椅子に腰かけて、目で本題を促す。主任は、それもそうね、と鞄から書類を引き出して渡してきた。

 

「明日、オーブ護衛艦隊の軍事演習があるの。それに合わせてアークエンジェルはオノゴロ沖に出港。詳しいタイムスケジュールは紙面を見てちょうだい」

 

見る限り別段問題が発生するような計画でもないように思われるが、主任の顔は険しい。

 

「計画に不備は無いように見えるが?」

「実はね、オーブ公海の外にZAFTの潜水艦が停泊しているのよ」

 

公式にはオーブにアークエンジェルは停泊していないため、それを理由に外交圧力を加えることは出来ない。オーブ諜報部によれば、ここ数日のうちに何処かの国の工作員が入れ換えになった可能性があるらしい。流石にモルゲンレーテ本社にまで侵入されたとは考えたくないが、物事に絶対は無い。だから、最悪の仮定としてオーブ出港直後に戦闘になる可能性も有り得る。

 

「それでも、これ以上の条件は望めない」

 

敵が数日ずっと待機しているということは此方がオーブに居ると確信しているということであり、作戦も練っていることだろう。此方が日数をこれ以上稼いでも良くなるのは作戦の完成度のみ。そして、それさえも相手に一日の長がある。ならば、予定通りに出るしかない。

 

「あなたたち、良く此処まで生きて来れたわね」

 

刹那の脳内で如何なる論拠が示されたにせよ、外部から観測できるのは「敵が居ようとも突破する」という決断のみだ。無謀にも見えるだろう。

 

「まあ、あなたとキラ君にうちの機体があれば大丈夫かしらね。でも、情報漏洩の可能性の件と同じで絶対は無い。気を付けてね」

 

流石は一児の母と言うべきか、その最後の言葉は完全に母性が発露したものだった。だが、そう感じた刹那の顔は主任には気が付かれない程度ではあったが苦悩に歪んでいた。

 

「どちらにしろ、俺は俺に出来ることをするだけだ」

 

その言葉に、それもそうね!と主任は破顔した。そして、そこからは到着まで延々と現在乗っている車の素晴らしさについて議論を交わしていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

出港の準備は恙無く整った。アークエンジェルはからは、此処で数名が降りた。カズィとサイは、俺頑張ったよな?ああ、人並み以上にな。誰も弱虫なんて言わないさ。なんてやり取りを交わしていた。

サイ、トール、ミリアリアは降りなかったが、サイと離れることになると判断したフレイの騒ぎようは凄まじかった。ムウなどは、ありゃあれだけで新しい戦争の一つでも起こしそうなレベルだなと苦笑していた。

その後でキラはサイから、本当にやりかねないから守ってくれと言われたが流石に笑えなかった。冗談と言うにはサイの顔が蒼すぎたからだ。

 

カガリは、ウズミ氏の必死の説得によりオーブに滞在することと成った。当然と言えば当然だ。

 

「ぎらぁ~、生ぎて帰ってごいよぉ」

 

出港の間近でキラを泣き笑いで送り出したカガリにはオーブ氏族の息女の身分を示す礼服に似合わない子供らしさがあったが、キラはその飾らなさがとても魅力的に思えた。

 

艦長は、出港の予定時刻までウズミ氏と話し合いをしていた。キラは、艦長に手渡された記録装置を見たが何と言っているのかは聞き取れなかった。艦長の疲れた顔からすれば、あまり嬉しいものでは無いらしい。

 

そうこうしているうちに時間は進み、アークエンジェルは周囲に注水され上に浮かび始めた。そうして開いた出口から、既に出口近くに停泊していた艦隊に合流する。

演習とは名目だけであると艦隊の人員も知っているため、索敵などが本格的に行われ沖へと進んでいく。

そうして、遂に何の異常も見つかることなくオーブ公海の外縁部まで到達した。

だが、護衛艦隊に返礼しアラスカへと進路を向けたあとも、艦内の緊張は解けない。聞かされていたZAFTの潜水艦。それがただ何もせずに消えるなど、あり得ないことだと艦内の全員が分かっているからだ。

そして、第一波は無人島に接近したときだった。

突如、ビームがアークエンジェルの下の海へ吸い込まれていった。次の瞬間、海からは爆炎が上がり、艦内が大きく揺れた。

 

「何事だ?!」

「ログから熱紋照合・・・これは!き、機雷です!スラスター破損!推力が低下しています!」

 

MSの兵器は、赤外線など高波長の電磁波で発射より先に照準をつける。アークエンジェルの装甲にはこれを発見する機能が搭載されており、通常は砲撃に先んじて回避行動をとるのだが、照準は海中の機雷に向けられていた。これでは回避が出来ない。だが、艦長の判断も早い。

 

「曹長!少尉!」

『発進します!』

 

遊撃戦力としてMSが発進する。アークエンジェルは推力の低下でしばらく動けない。なので、爆発と同時に展開してきた敵モビルスーツ三機に対応しなくてはならない。

だが、刹那はすぐに違和感に気が付いた。襲ってきた三機は、アストレイにデュエル、ストライクにイージスとブリッツと、二手に別れた。それは良いが、襲い掛かってきていて退き気味に戦っているのが解せない。

どうにも釣り臭い。だが、キラはそうは判断しなかったようだ。イージスとブリッツを追って無人島の方へ飛んでいく。相手の用意したフィールドへ出向くというのは、如何に腕があっても不味い。

刹那の脳裏には、過去のガンダム捕獲作戦が重なって見えていた。あの時、チームトリニティが来なければトレミィのガンダムマイスターは全滅していただろう。

 

キラを止めようとした刹那だったが、すぐ近くの海面が爆発したことで転進を余儀なくされる。

 

『お前の相手はこの俺だ!』

 

オープンチャンネルでの挑発的な言葉から、やはりデュエルは足止めのようだ。恐らくは、アークエンジェルの進路を予想してこの海域を機雷源にしたのだろう。

今はビームで水中を狙い爆破しているが、リモコン等で操作できないとも限らない。デュエル自体もそれなりの高度を保っているため、ダガーの投擲等での撃墜も難しい。

 

「キラ!、くっ、Nジャマーか」

 

手だてはある。だが、時間がかかるためにキラに耐えてもらわなくてはならない。この状況では、キラの成長を信じるしかないのだ。

 

「信じるぞ、キラ」

 

そう呟いて、刹那は反撃の準備を始めた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

無人島の密林で、アスランはストライクにサーベルを向けていた。空戦能力では到底及ばないため、平地で数の有利を恃みに勝負を仕掛けたのだ。

勿論二段構えの作戦ではあるが、ここでストライクを撃破できるならそれに越したことはない。

 

「ニコル、行けるな?」

『合わせます!先に攻撃を!』

 

ニコルは、ザラ隊のメンバー中で最もサポートが上手だ。此方が何らかのアクションを起こせば、それに合わせて追撃、援護など自在な支援を行う。

そのニコルなら、この攻撃にもフォローを入れてくれると確信して、上段からビームサーベルを振り下ろす。

対するストライクは、シールドのみを構えている。反撃は考えていないのか?咄嗟の事にアスランは判断がつかなかったが、ともかく振り下ろそうとした。

だが、腕を捕まれて止められてしまった。ならば、と右足のビームサーベルを発振させようとしたが、先にイージスのボディが持ち上がっていた。体がパイロットシートに押し付けられ、世界が一週する直前に強烈な振動がコックピットを襲い、アスランの意識は闇に落ちた。

 

ニコルは、援護射撃をしようとしたが、敵の行動に中断させられた。ストライクはイージスを一本背負いの要領で背後に回し、イージスを盾にしたのだ。

これでは!と思った直後に、そのまま地面に叩きつけられるはずだったイージスがこちらへ吹き飛んできたのだ。

予想外の事態に対応できず、現在ブリッツはイージスの下敷きになってしまっていた。

このままでは作戦が!

そう判断したニコルは、アスランに呼びかける。

 

「アスラン?!、く!ダメですか!」

 

どうにかイージスの下から這い出し、その最中にアスランに呼び掛けるがまるで応答がない。コックピットに穴はないので気絶しているらしい。幸いブリッツには故障がない。手元の無線機でディアッカに連絡を入れる。

 

「ディアッカ、アスランがやられました」

『・・・オーケィ、プランBでいく』

 

ここからのニコルの仕事は、ストライクを引き付けることだ。

 

「アスラン、見ていてください」

『・・・待つんだ・・・ニコル』

「アスラン!?」

 

それは意地なのか、アスランは意識を取り戻していた。

 

「しかしアスラン。待つといっても時間が」

『プランの内の、ネットだ。あれに、ストライクに格闘戦を挑むのは不味い』

 

アスランは、朧気ながらに自分がどうやられたのかを記憶の断片を繋ぐことで把握していた。

斬りかかった瞬間に腕を捕まれ、一本背負いでその勢いを利用してイージスをブリッツの方へ流し、体重が離れてイージスが浮いた瞬間にパイルか何かで吹き飛ばされたのだ。

想定外とは言わないが、最悪のパターンの一つだ。ストライクの格闘能力は、オーブで更に磨きがかかったらしい。

 

「それで、ネットですか」

『ああ、近接型のモビルスーツほど有効なはずだ』

「しかし、あれほどの機動性で捕らえられますか?」

 

ニコルの疑問も最もだが、アスランは苦しげな顔をニヤリと曲げて言った。

 

『此処に囮がいるだろ?』




忙しさ全く改善されず。
予定の半分くらいしか書けませんでした。ホントはここから更に話が進むのですが、残念ながら時間が有りませんでした。しかも、三連休も最悪の場合書けないのです。
モヤモヤしたところで終わって申し訳ないですが、最大で再来週までお待ち頂けると幸いです。

因みに前書きの三択、多分全部その通りです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

39話:ZAFTのトラッパー《後編》

なんとかできた・・・
良かった・・・

文法はまあ、あれだけど!
話は進むので読んでください!
次回原作と本格的に乖離していくので!

P.S.
次回は一か月以内に出せると良いな・・・
そのぐらい余力が無いです。でも急にやる気がわいて完成したりすると明日投稿もあり得ます。
話の要旨は出来てるので細かいところを詰めるだけなんです。
文章構成が出来ない系スランプなので。つまり成長して帰ってくると良いな!


イザークはまだ攻撃は受けてはいなかった。だがそれは、グゥルで敵の攻撃が届かない上空からヒットアンドアウェイを繰り返すというイザークにとっては屈辱にも等しい時間稼ぎの成果であった。

始めこそまるで姿の変わった敵機に用心を重ね大きく距離を取ったものの、敵のビームを躱して距離をつかんだ時、一息つきそうになった自分を殴りそうになってしまった。

そんな忍耐もそろそろ限界の近くなったその時、ディアッカから連絡が入った。

 

『イザーク、アスランがやられた。作戦を組み替えたからよぉく聞けよ?』

「ちっ・・・わかった、早く言え!」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

元々、ストライクをイージスとブリッツで、ジンは合金ワイヤーのネットで行動を封じる予定だった。だが、今その作戦は破綻し、やむを得ずサブプランだ。

 

『ニコル、行けそうか?』

「ええ、準備ができました。頼みますよ、アスラン」

 

ニコルが、アスランを置いて撤退する。同時に、イージスがライフルを構えた。

 

『お前の相手は・・・俺だ!』

「ミラージュコロイド、展開!」

 

森林の少し開けた場所を離れ、立木等の障害物を躱しながら、なるべく音を立てずに、しかし素早くストライクの背後に回る。奇襲は速度が命だ。

仕留めたと思ったイージスが動いていることに動揺しているのか、ストライクの動きは鈍い。

 

「アスラン、配置に着きました」

『よし、俺がもう少し引き付ける。ストライクは右に動かすぞ』

 

そう言って、アスランはスピーカーで声を出し始めた。

 

『聞こえるか、キラ。俺は・・・俺も決めたぞ。俺は、プラントの為に!お前を倒す!』

 

イージスは座ったままの姿勢から牽制に数発のビームを放ち、ストライクの左側へビームサーベルを発振させながら転がり突進した。当然、ストライクは右へ避ける。その瞬間に・・・

 

「お見事です、アスラン!」

 

ブリッツのランサーダート発射機から、合金製のネットが発射され、コロニー補修用のトリモチ弾が続く。だが、ストライクは驚くべき反応速度で回避を試みた。結果、ネットは外れたもののトリモチ弾が両腕を封じた。

 

『降伏しろ、キラ!』

『それは出来ない!』

 

劣勢は見れば明らかだ。だが、重心を落としたストライクは足のウェポンコンテナからアーマーシュナイダーを展開した。徹底抗戦の構えを崩さないキラに、アスランは歯噛みする。

 

『両腕を塞がれておきながら!まだ!』

 

続けてトリモチ弾を再発射するように促そうとしたアスランだったが、目の前のストライクは止まらない。アーマーシュナイダーは足のラックから上空へ向けて発射され、その柄をストライクの足が正確に蹴りぬいた。

凄まじい勢いで発射されたアーマーシュナイダーはイージスの右股関節を破壊する。

 

「アスラン!」

『俺は良い!早く行け!ここまで削れば俺でも抑えられる!』

「くっ、任せましたよ!」

 

ブリッツは、新型を抑えるために離脱した。

残されたアスランは、これ以上の会話は無用だ、と通信回線を切った。

正々堂々とはいかないが・・・

 

「今日こそおまえを倒すぞ、キラ・・・」

 

そうして構えた今、アスランの脳裏に流れる言葉はクルーゼの言った一言だった。

 

(今撃たねば、次に討たれるのは君かもしれんぞ)

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

アークエンジェルは、あと少しで修理が終わる寸前だ。既に外部は修復が終わり、配管系のチェックのみでもう飛行可能となっている。

そんな最中に、艦長へ通信が入った。

 

「艦長に直接と、通信が入っています」

「そうか、よし、変わろう・・・・はい、私が艦長のナタル・バジルールですが?現在は戦闘中ですので・・・こんなに早く、でありますか?

いえ、ありがたいことです・・・なんですって!?それは・・・はい、わかりました」

 

艦長は、緊張した面持ちで受話器を置いた。

 

「艦内に通達、アラスカから援軍が入る!」

「本当ですか!?」「なんでこんなに早く!」

 

いきなりの発言にブリッジのクルーから疑問の声が上がるが、艦長は首を振って力なく命令を繰り返した。クルーたちは急いで命令を実行したため、艦長の小さな呟きを聞いたものは居なかった。

 

「・・・私は無力だ」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

海上では、アストレイとデュエル、ブリッツの三機で戦闘が展開されていた。攻撃が二機になったことで徐々に包囲網を狭め、コクピットや当たれば儲けものとばかりに腕や足も狙ってくる。

 

連携が上手くなっているな。そう考えながら、海面を踏みしめて曲芸のように二方向から来るビームを躱し続ける。流石に手数の差から反撃は出来ず、機体に刺さる敵意とセンサが捉えた銃口の向きからビームを見切り、二機の攻撃を完全に躱し続けているのだが、そろそろ反撃の時間だ。

 

『インビジブルチタニウム蓄光システム、吸光率20%をオーバー。機体動力への転化効率は30%・・・』

「まさか、こちらでもこれを使うことになるとはな」

 

オーブで新規開発された光発電式のモビルスール強化システム。その名前は、非公式テストパイロットによってつけられた。

 

敵の攻撃を躱しながら、コンパネのボタンを二つ押し、音声認証を行う。

 

「・・・TRANS-AM」

 

その瞬間、機体の発光部分が赤く変色した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「なんだあれは?」

『分かりません!でも油断はしないで下さいよ!イザーク!』

「わかっている!距離をとるぞ!」

 

突然の敵機の変化に二人は戸惑う。何かあるに違いない、そう考えるには十分な威圧感を放っていた。

 

警戒した二人は、高度を少し上げ距離を二倍とるが()()()()()()()()()()

突如、敵機はすさまじい速度で飛翔した。いや、それはジャンプだった。ただ、一瞬にして空中の敵の上をとるほどの移動速度を実現しているのならその二つに違いはなかった。

二コルの眼前に、いきなり赤い敵機が現れ、大きくなった。と思った次の瞬間、ブリッツは宙を泳いでいた。そして、僅か数秒ののちに着水する。

 

(今のは!?)

 

「イザーク!あれは・・・」

『わかっている・・・一時的なブースト、だろうな』

 

牽制射撃をしながら高速で下がる事で、新型の攻撃をなんとか凌いだイザーク。

そのイザークから、先程の戦闘の動画クリップが送られてきた。

 

ブリッツを吹き飛ばした一撃は右手を使った当て身だった。本当ならコックピットを狙った一閃が有ったのだろうが、盾と一体化したトリケロスが有ったために当て身で吹き飛ばしたようだ。

 

ニコルは自分のやられ方を見ながら、素早く新機能の考察を始める。

 

モビルスーツは空中で格闘戦を出来るが、それはビームサーベルなど力を余り使わないものであり、今のように吹き飛ばすのは難しい。それをあの狭いグゥルという足場でやってのけるとは、まるで武術の達人のようだ。

そもそも、新型が既存のモビルスーツの動きではなかった。フレーム構造が未知のものであるらしい。

加えて、あの赤い状態は何らかの強化状態ではないだろうか?恐らくは、電力を過剰に消費して機動力を強化している。本体の電力を消費しているか、さもなければブースト用の予備のバッテリーを積んでいる。

 

『ニコル!』

「ありがとうございます」

 

着水した新型をみてそのままでは危険と判断したのか、イザークがブリッツ用のグゥルを遠隔操作で近くまで持ってきてくれた。

急いで乗り込み、上空へ離脱する。余裕が有ると判断できる距離まで離脱してから、ディアッカに通信を入れた。

 

「ディアッカ、アスランの方はどうなってます?」

『不味いぜ、押してるが、攻めきれてない!』

「では当初のプランだけでも!」

『分かってる!でもよ!あいつ千里眼でも持ってやがるのか!?俺からの射線を必ずフォローできる位置にいやがる!』

 

ディアッカが建てたプランは、目標の移動手段たるアークエンジェルの足止め、ないし破壊だった。強度計算からシールドでのガードが可能で、空中戦が単独で可能なため作戦における第一の脅威と判断されたストライクは引き離された。

未だに底の知れないジンは、多数戦力での足止めで射線に入らないよう誘導する予定だった。すぐに埋められない戦力差は、トラップという手数で埋めることになった。

トラップの利点は、時間さえかければ限界を超えて手数を増やすことが出来る事だ、とディアッカは考えている。時間差で攻撃を仕掛けることも出来るし、フェイントと思わせて攻撃をすることも出来る。トラップは、第三の手と言い切っても良い。

だが、この相手には腕が一本増えた程普度では及ばなかったらしい。

 

『俺が奴の盾を潰す』

「イザーク、それは!」

『ああ、死ぬかもしれんな。だが、母上の居るプラントを潰させるわけにはいかん!』

 

そう言って、イザークは二本のビームサーベルを両手に握らせた。

 

『行くぞ!ニコル!援護を頼む!』

『ち、俺が合わせるぞ!イザーク!』

 

返事も聞かずに急降下していくイザークの迷いの無さに唇を噛みしめながら、ニコルも随伴する。

イザークは、先にグゥルを下に向けて急加速させた。もちろん、これで攻撃が通るとは思っていない。だが、避けさせない事は可能だ。

 

イザークの目の前でグゥルは真っ二つになった。それでも、下向きにデュエルを加速させ続ける。

 

『その盾はもらったぞ!』

 

新型は、確かにシールドでビームサーベルを弾いた。いや、力に逆らわず横に受け流している。イザークの目の前で、もう一方の手が実体剣を握りこちらを仕留める準備をしている。だが、これでこの新型は足付きを守りに行くことが出来ない。

 

『やれ!ディアッカー!』

『外すかよぉ!』

 

もう一瞬でも時間を稼ごうと、実体剣を持った腕を蹴ろうとする。しかし、目の前の新型はその場でぐるりと回って裏拳で蹴りを受け止めた。一瞬歯ぎしりをしたイザークだったが、その腕を見て声を張り上げた。

 

『シールドは何処だ!?』

「イザーク!上です!」

 

ニコルには見えていた。デュエルに隠れて詳細は見えなかったが、シールドは上に弾き飛ばされていた。一瞬イザークが想像以上に上手くやったのかと思いもしたが、あれがジンに乗っていたあのパイロットだったとすればあり得ない。

 

「まさか・・・!」

 

ディアッカの撃った一撃は、まだ動かない足付きのブリッジと思われる部分までを正確に辿り・・・

打ち上げられた盾に当たり逸らされた。

 

『クソ!もう直しやがったのか!』

 

しかも、足付きは再び動き始めている。

 

『くそ、こうなったら俺は!』

 

止めてください!

そう叫ぼうとしたニコルだったが、レーダーから鳴り響いた大きな警報がザラ隊メンバー全員の動きを止めた。

 

『こちらは連合軍アラスカ基地防衛隊です。速やかに戦闘を停止してください』

 

今度は、逆に囲まれる事になってしまった。自分たちは何とか逃げられる。だが・・・

 

「アスラン・・・」

 

急いできた道は、振り返れば超える事すらできないほどに遠く見えた。




そういえば更新していないもう一方のドリフ×鉄血・・・
あっちも展開は考えたので時間が出来次第(こちらも一か月以内)に投稿したい・・・

ところで話がごろごろ変わりますがアスランは死なないのでご安心ください。まだ。
なお、皆さんお気づきだとは思いますがトラッパーはディアッカ君です。
今回の機雷配置、威力調整、作戦立案は全部彼がやりました。それでこの成果。南無。全部優秀過ぎるアズラエル盟主王が悪い。

つまり、次回は盟主王が出ます。早いですね。あの叫び、Fate/Apocryphaでも相当なものでした。SEEDではCV:檜山さんが一番好きだった・・・
銀髪のエセ貴族(種死)とはカリスマが違いますよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

40話:連合盟主アズラエル

なんだかんだで予定通り更新。
次からは話が出せるかどうか活動報告に乗せようかと思います。
今週は更新あるのかな~とか思ってくださる方は、基本土曜日までには出しますので確認してみてください。

話を考えてみると盟主王のセリフばかり浮かぶ・・・
やっぱ檜山さん(盟主王の声優さん)すげぇよ・・・


見通しが甘かった。そうとしか言い様がない。ストライクの腕は確かに封じられていた。味方からは遠く離され、ネットの射出罠や簡易的な落とし穴等多彩なトラップを施したこちらのホームグラウンドでの戦いを強いられている。

それなのに攻めきれない。むしろ押されている。攻めれば必ずその場で凌がれカウンターをもらい、トラップにかけようと退けば全く同じ機動を描いて追ってくるためまるで当たらない。

そんなことは不可能と思ってはいたが、どうやら接地面も全く同じ部分を使っているらしい。

友人はしばらく目を離した間に想像を遥かに超えた怪物と化していた。

 

都合十度目の攻撃。ビームライフルでは完全に電力の無駄だと判断したため、ビームサーベルで刺突を繰り出す。

今度こそはと思ったが、ストライクは足を使って体を淀みなく捻り、まるですり抜けるかのように躱してしまった。続けて、ストライクから捻りを反動として利用したミドルキックが繰り出された。

流石に何度もカウンターは食らうまいと残心があったため、左手で受け止めた。

何度も移動を繰り返せば、最終的にはトラップの配置を読まれてしまう。次の手を考えるためにも、イージスは積極的に手が出せなくなっていた。一方、ストライクも足だけでは攻勢に移れないため、またトラップの配置が見切れていないため動けないでいた。

 

じりじりと消耗戦になった。両者ともにコクピットの中ですら動かないが、明らかにキラの方に精神的余裕がある。次の手と相手の出方を必死に考え続けるアスランに対し、ただじっと動きを待つキラ。

今二人の様子を同時に見られるカメラがあれば、目を閉じて調息するキラと、どんどん汗を流して憔悴していくアスランが観られただろう。

 

そして、最後の一手が外から切られた。

 

『アスラン、狙撃は失敗だ!しかも奴らが!』

「落ち着けディアッカ!どうしたんだ!奴らってなんだ!」

『連合のモビルスーツだよ!新型の!奴ら遂に量産に・・・クソっこんなとこまで・・・撤退しろ!アスラン!』

 

時は既に遅かった。

ストライクとイージスが戦う戦場とアークエンジェルの中間地点で戦っていたディアッカはまだしも、アスランは完全に包囲されていた。況してや、ストライクのような自立飛行能力もない。

 

「ははは・・・詰み、か」

『おい、アスラン!?』

「俺は置いていけ!」

『何言ってる!お前隊長だろ!』

 

当然、食い下がる。だがアスランは、この状況で一人のために隊員を犠牲にする方が愚かだと考える。だから、此処で言うべきは・・・

 

「頼む・・・隊長命令だ・・・」

『くそ・・・ずりぃぞ、それ』

 

そうは言ってもしっかり三機とも撤退していくのは、ザラ隊のメンバー全員が義理堅い性格をしているということの証左ではないだろうか。

そうして、アスランはイージスに諸手を挙げさせた。

 

「ZAFT所属、モビルスーツパイロット、アスランだ。投降する」

 

姓を明かさなかったのは、人質としての価値を作るまいとするアスランのささやかな抵抗だった。だが・・・

 

『始めまして、アスラン・ザラ。君の身柄は僕が預かります』

 

オープン回線で顔を見せたのは、水色のスーツに身を包み、金色の髪を左右に撫でつけた男だった。アスランは、二重の驚きで声を引き攣らせた。

 

「お前は・・・!」

『おや、ご存知でしたか。そう、僕はブルーコスモス盟主、ムルタ・アズラエルです。以後お見知りおきを』

 

その顔には、底の知れない笑みが張り付いていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「さて、君がストライクのパイロット、キラ・ヤマトくん・・・ですね?」

 

アークエンジェルのデータを基に新規で造られたらしい戦艦に、キラは乗っていた。現在位置は艦中央部、アズラエルの執務室だ。目の前にはアズラエルが満面の笑みで座っていた。

 

「まあ来てください。お茶でも出しましょう。紅茶で構いませんね?」

 

キラがおっかなびっくり頷くと、アズラエルが呼び鈴を鳴らし、給仕がやって来ていそいそとお茶を注いだ。香りだけでも、昔家で飲んでいたものとはレベルが違うことが伺える。

口に含むと、柑橘類のような爽やかな香りが鼻を通った。

 

「落ち着きましたか?」

 

紅茶に一瞬心を奪われていたが、目の前にいるのは世界のコーディネーターを弾圧している組織、ブルーコスモスの盟主なのだ。気を許しては危ない、と居住まいを正した。

それを見たアズラエルは、ふふんと笑って紅茶を口に含んだ。

 

「君に害意があるなら、その紅茶に口をつける前に死んでいますよ。

まず、誤解の無いように言っておきましょう。僕は、コーディネーターであるかどうかなんて至極どうでも良いことだと思っています」

 

それはどういう事だろうか、と。まずは言葉の続きを待った。すると、アズラエルは笑みを深くして紅茶をもう一杯口に含んだ。

 

「冷静だね・・・実に僕の好みですよ。では続きですが・・・

僕が気にしているのは優秀か否か・・・つまり、コーディネーターに特別な敵意は持っていない、ということです。さっきの給仕だって、コーディネーターですよ。

ただ、プラントの連中は違いますがね。何故だと思います?」

 

キラに思い当たったのは、目の前の人物が途方もない金持ちではないか、ということだった。そこから考えれば、いくつか絞ることが出来る。どうも、この人物は損得勘定が第一のように思える。つまり・・・

 

「プラントの建築に出資していた・・・でしょうか?」

「素晴らしい!そう、現在プラントは評議会が政治を行っていますが、本来は建造のために出資した理事国が統治する予定でした・・・ですが、現在のプラントと評議会・・・昔は黄道同盟と言いましたか。彼らがプラントを奪取し、地球から不満を持ったコーディネーターを集めて建国し、今に至ります」

 

アズラエルが机に書類を置いた。そこに書かれていたのは、精巧なコロニーの設計図だった。

 

「これは・・・」

「砂時計型スペースコロニーの設計書・・・うちの部下が描いたものですよ。最も、プラントが奪われて数か月後に、心労で倒れましたがね」

 

表の人間は、プラントにコーディネーターが国を作ったとしか知らない。だが、裏ではシャレにならないほどの損害が計上されているのだという。

 

「当初、コーディネーターは優秀な作業員として雇われました。現場では当然ナチュラルもいましたが、蜂起の際に止めようとした者は銃殺・・・こちらもうちの財閥から死人が出ています」

 

コーディネーターとして、キラには少なからずプラントへ寄せる気持ちがあった。だが、キラにはプラントを奪った人間の考えがあまり好きにはなれなかった。

 

「最も、僕たちも利権のために兵士を死なせている・・・似たようなものです」

 

空になったカップをカランと皿に置き、アズラエルは深く息をついた。

 

「僕は、人が死ぬのを好みません。全ての人間は顧客にも労働力にもなり得るからです。だが、プラントの評議会。奴らにだけは裁きが必要だと。そう考えています。

今日、君とこうして話をしたのは、連合の責任者として僕の考えを、トップパイロットに聞いてほしかったからです・・・もう二度と、血のバレンタインは御免だ」

 

呼び鈴がもう一度鳴らされ、再び給仕が入ってきた。

 

「アークエンジェルから迎えが来ています。一緒にアラスカに向かいなさい・・・そして、考えて欲しい。この戦いの終了条件を」

 

案内を、とアズラエルが告げると、給仕はティーセットをもう一人の給仕に渡し、こちらへどうぞ、と言って歩き始めたが、アズラエルがキラを呼び止めた。

 

「これを」

 

手渡されたのは名刺だった。

 

「君のことは個人的に気に入りました。アズラエル財閥へ入社したいならいつでも連絡してください。それは僕への直通です。あまり周りには広げないでくださいね?」

「ありがとうございます・・・」

 

愛想笑いを浮かべるキラに、もう一つアズラエルが続けた。

 

「そうそう、君の友人は無事にプラントへ送り返します。もちろんイージスは返してもらいますがね」

 

驚くキラだったが、きっと金持ちには想像もつかないような情報網があるのだろう、と一人で納得した。では、と手を振るアズラエルにお辞儀をして、今度こそ迎えの待つモビルスールドックへ歩き始めた。

 

道の中頃で、給仕がキラへ話しかけてきた。

 

「理事の名刺を頂くなんてすごいですね・・・連合の幹部でも持っているのは数人らしいですよ?」

「そんな貴重品だったんですか・・・」

 

エレベーターへのスイッチを押して乗るように促された。軽くお辞儀をして乗り込んだキラに、話が続く。

 

「理事は、よほど気に入った人間にしか直接は取り次がせません。私も、面接だけで半年かかりましたよ」

「自分で望んでここに?」

「執事の養成学校にいたんですよ。バトラーに成るのが昔からの夢だったんですが、ある日学校に理事の部下が来ましてね。アズラエル財閥で働いてみないか、とね」

 

それで、と続けた給仕は、扉を開いて先に出るように促した。

 

「スカウトを受けたのは嬉しかったですし、その場で話を受けました。すぐにそれなりの地位にはつけてもらったんですが、今はもう少し出世して理事の御着きになっています」

 

アークエンジェルと似たようなドアが開き、いきなり目の前が眩しくなったことで少し瞼が絞られる。

 

「あちらでお待ちなのが、アークエンジェルからの迎えです」

 

そこにいたのは、スカイグラスパーを降りて、女性整備士を口説いているムウ・ラ・フラガだった。

ゴホン!と給仕が空咳をして注意を引くと、すぐに向き直ったがいたずらっ子のような顔をしている。キラは心のスケジュール表に艦長への告げ口を追加した。

 

「では、連絡をお持ちしております。ご武運を」

 

見事な礼をして、燕尾服を着た給仕はキラを見送った。また、ムウは懐かしい物を見るような目で給仕を見ていた。

 

「どうだった?」

「理事ですか?」

 

当然聞かれるだろうな、と思っていたキラは、考えていたことを直に伝えた。

 

「ブルーコスモスの盟主とは思えないような人でした」

「だろうなぁ・・・」

 

ムウからすれば、無事に帰ってきた時点でそれなりに真っ当な人間を予想していたからだ。

 

「で、連絡ってのは?」

「スカウトを受けたんですよ」

「マジか!」

 

アークエンジェルに着くまで、ムウの驚きの声は途絶えることは無かった。

そして翌日、キラはのどを痛めた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「君に伝えて欲しい事は一つです」

 

こちらは先ほどのキラの出発から数時間後。パナマのマスドライバーでの事だった。

 

「君の父、パトリック・ザラにです。我々は、評議会のメンバーの引き渡しと君たちが占拠しているプラントの建築費用、それのみを支払えば和平を結ぶ準備がある。そう伝えて欲しいのです。詳しくはそちらで書面にまとめていますので、そちらを渡してくだされば結構です」

 

スペースシャトルの中で、アスランは拘束すら受けていなかった。人体実験でも受けると思っていたのとは裏腹に、条約に基づいた捕虜としての扱いを受け、しかも即日で釈放されたのだ。

 

「・・・父には、確かに伝える」

「ふふ、頼みましたよ」

 

この文章は、確かに和平の先駆けになればそれで良い。そうでなくとも、十分な仕掛けになる。

発射前のシャトルから出たアズラエルは、肩を震わせて笑っていた。

 

「これで、プラントに出資した莫大な負債も取り戻すことが出来る・・・フフフフフ・・・ハハハハハ・・・ぃやったぁー!」




有能アズラエル、キラを口説いた挙句アスランを使ってプラントを揺さぶる策略を仕掛けるの巻き。
子供のころコーディネーターの子供に負けたのは、奴も部下にしてしまえばいいんだ!と吹っ切れています。完全な商売人・・・しかも情あり・・・
ちなみにキラ君に語った人情溢れる話は7割5分本気で、残り2割5分は落とし前付けたろうかとか考えてます。

おまけ:プロフィール

・給仕
執事の養成学校に入学していたところをアズラエルの部下にスカウトされる。紅茶を入れるのが非常に得意で、事務仕事も一般的な会社のたたき上げ専務くらいにこなす。有能だが恐らく二度と出ない。
本名はギルベルト・シュタイン。名前と違ってイングランド系。31歳。もちろん男。
見た目は黒執事のセバスチャンでどうぞ。

・ムルタ・アズラエル
現在30歳。アズラエル財閥の御曹司。趣味は商売を成功させることという超一流のワーカホリック。自分以外の人間はすべて将来の顧客だと思っているため、あまり人が死ぬのが好きではない。
GATシリーズにも出資しているのでストライクの親ともいえるかもしれない。(此処での設定です)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

41話:スピットブレイク・開始

来週はお休みしまーす。
ではプラントの議長がやばい人に変わったところから行きましょー


「では賛成多数により、パトリック・ザラをプラント評議会議長に任命いたします」

「ありがとう、エザリア女史」

 

アスラン・ザラがプラントへ帰還したこの日、プラントでは評議会の議長選挙が実施され、圧倒的な支持率でアスランの父、パトリック・ザラが当選した。

もっとも直接民主制ではなく、代表が投票するだけであるため、シーゲル・クラインの政治体制の先が短いと評議員が悟った瞬間から金の動き、スキャンダルなどなど、日の目を見ない活動が数えきれないほどあった。

そうして、裏工作を勝ち抜いたのは当然というべきか、タカ派にして評議員の中で最大の勢力を持つパトリック・ザラだったのだ。

 

プラントのコーディネーターたちは狭い世界に皆共通したコーディネーターである、という共通点をもって生活しているため、事を大事にすまいという心理的傾向を持っている。

投票日前夜に、パトリック・ザラとシーゲル・クラインがお互いの事を褒め合いながらエビデンス01の前で語り合ったのもそういった気質からかもしれない。

 

そう、昨日の語らいを思い出して、自分よりも上手くやるだろうと思っていたシーゲルは、落ち着いた心持でパトリックの就任演説を待っていた。

場所が首都の記者会見場から議会の円卓に移り、席について悪友のいない空席を見つめていると、エルスマン氏とジュール女史が拍手を始めた。なるほど、ザラ派の筆頭二人ならば行動予定も把握しているのだろう。シーゲルも合わせて拍手を始めた。

一分ほどして議場と外を隔てる扉が開き、遂に新議長が現れた。拍手に鷹揚に手を振りながら、もともと自分の指定席だったシーゲルとは真向いの席に座る。

 

「では、就任演説を始めさせてもらおう」

 

始めは、意味の無いおためごかしだ。そんなことはみんな分かっている。それからあまり中身の無い序文が5分ほど続き、いきなり言葉に熱が入り始めた。

これだ。結局、この熱意の籠った部分にこの男の真意がある。

 

「そして、最後に・・・オペレーション・スピットブレイク。その攻撃目標をパナマからアラスカへ変更することを宣言する!」

 

今この男は何と言ったか。つまり、連合の本部を急襲し大打撃を与える、無いし壊滅させると。この際人道的な問題は良い。言い換えれば、ナチュラルを徹底的に弾圧するということだ。それは現状既に厳しい資源が枯渇するということに他ならない。

代替案が有るのならば良い。だが、もしパトリックが妻の敵に眼が眩んでいるというのなら止めなくてはならない。他ならぬ前議長として、そして以前からの悪友として。

 

就任挨拶は終わり、プラント内での研究資金のフローなど、内容は普段の会議に戻っていった。そこへ、男性秘書官が入ってくる。何事かとパトリックが問うと、書類をカバンから取り出してパトリックに見せた。

 

「ふざけた落書きだ!アスラン・ザラに後で執務室に来るよう伝えてくれ」

 

その後、スピットブレイクの作戦会議において連合がモビルスーツの量産に成功したという恐るべきニュースが伝わってきた。情報元はエルスマン氏の子息、ディアッカ・エルスマン。情報の信頼性は高いどころか、証拠の写真すら撮ってきている。

 

「新型と言えばアマルフィ氏、新型の開発はどうかね」

「ゲイツはもう完成間近です。もう1週間ほどでロールアウトできるでしょう。スピットブレイクにおいても隊長クラスには配布できるはずです。」

 

この報告に、明らかに安堵した表情の議員もいたが、報告はまだ終わっていない。

 

「で、もう一つの方は?」

「お言葉ですが、議長。我々は核での報復を捨てたのです。そのためのNジャマーなのだ。それを無効化してモビルスーツに転用するなどと・・・万一奪われでもしたら、我々は再び核に怯えることになるのですよ?」

「ZAFTの最精鋭に持たせる分には問題ありますまい・・・そうですな、緋蝶・・・ハイネ・ヴェステンフルスなどどうでしょう。あれはまさしく我々コーディネーターの希望と言えましょう!」

 

新型のMS開発は、量産型には目途がついていた。だが、トップエース用の最新鋭機はその倫理的な観点から開発が遅れていた。撃破された際の核汚染、奪取された場合の技術盗用。危険性も大きすぎると。

だが、戦況が厳しいことも事実。現行のバッテリー機ではいずれ数の力で連合に押し切られかねないと提言したのはユーリ・アマルフィ本人なのだ。

 

「失礼します、議長。クルーゼ氏が例の件だといって取り次いで欲しいと・・・」

「そうか・・・よし、通せ」

 

再び扉を通って現れたのは、パトリック・ザラの善き手足。ラウ・ル・クルーゼその人だ。今回も胡散臭い仮面を着けてはいるが、書類をいくつか抱えており、ザラ議長に一枚を手渡した。

 

「アマルフィ氏もどうぞ・・・連合の新型量産機の予測スペックです」

「・・・これは!」

 

そこに記されていたのは、ジンでは相手になるまいと思われる驚愕のスペックの数々だった。中でも・・・

 

「なんですか、この反応速度は。本当にナチュラルが乗っているのですか?」

 

反応速度。モビルスーツを操る上で生命線とも言える能力だ。この反応速度を高い水準で備えているため、コーディネーターは圧倒的物量差の連合と戦争が出来ていたのだ。

だが、この資料が確かなら、ゲイツの量産は急がれなくてはならないことを示している。

そして、最新鋭機もだ。

 

「分かりました・・・もはや、戦況は予断を許さぬものらしい。それであれば、フリーダムとジャスティスを解禁しましょう。実は・・・既に完成は間近なのですよ」

「ふむ・・・大事をとって伏せていたと?」

 

こくりと頷いたアマルフィ氏を見て、パトリックはニヤリと笑った。

 

「そういうことであれば、完成を急いでほしい。スピットブレイクにて多大な戦力として貢献してくれることだろう」

 

その後、僅かに一日の組み立てにプラントの労働力の相当数が割かれ、フリーダムとジャスティスは完成した。

砲戦機であるフリーダムはディアッカ・エルスマンに、白兵戦機であるジャスティスは、本人がアスランへ譲ってほしいと言いはしたものの、もう一機がロールアウトされ次第受領されると聞かされ渋々イザーク・ジュールが受領した。

 

肝心のアスランはどうなったのか?話は議会当日に遡る。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「只今帰投しました、議長」

 

円筒形の水槽がライトアップされ、ブクブクと踊る泡を照らしている。羽クジラの化石、エビテンス01もレプリカが置かれているが、味気のない調度品や照明と一緒におかれていると妙な一体感があった。

そうして執務室は落ち着いているというのに、議長、パトリック・ザラが醸し出す雰囲気は剣呑そのものだった。

 

「アスラン・ザラ、なんだ、あの書類は」

 

そう、評議会議長、パトリック・ザラに向けられた降伏勧告。評議会の即時解散とプラントに関連する資金の変換と、降伏条件としては至極真っ当だ。

その心情を考慮しなければ。

 

「お前は、降伏などあり得ると本気で思っているのか」

「いえ、自分はそのようなことは」

 

あくまでも、この場では一兵士と議長。それをわきまえた息子の物言いに異論は無かった。

だが、言っておかねばならぬからと敢えて父親として口を開いた。

 

「アスラン・・・お前の母は・・・レノアは、いや、レノアに限った話ではないが、ユニウスセブンの死者はプラントを連合から守るために死んだのだ。それをみすみす明け渡すなどと・・・二度と口にしてくれるな。いいな?」

「分かりました・・・父上」

 

満足のいく返事だった。実に優秀な子だ。

 

「ではアスラン・ザラ。戦場に戻る準備は良いかね?」

「申し分有りません、議長」

「それと、先程の書類、決して外では漏らさぬよう。厭戦派の連中と内乱を起こしていては勝てるものも勝てまい。では行ってよし」

「はっ」

 

敬礼して退出するアスランを、パトリックは少しだけ見ていたが、すぐに書類に意識を戻した。そうして10分ほどは事務仕事をこなしていたが、ふと電話をとる。

 

「クルーゼか?先程の報告はいいタイミングだった。礼を言っておく・・・ああ、そうか。スピットブレイクでは戦果を期待しているぞ。ではな」

 

アスランはこの日すぐにプラントを発ち、スピットブレイク決行前日にフリーダム、ジャスティスと共にビクトリア宇宙港に到着した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

連合のアラスカ本部では、かの盟主が会議を召集していた。

 

「して、なにようですかな、理事。今話し合うこととは」

「私の内偵が調べたところによると、この数日のうちにパナマかここ、アラスカに大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性が高いと報告が上がっています」

 

それは、将軍達にも報告が上がっていることだった。ただ、続く言葉には度肝を抜かれた。

 

「これは僕の読みですが、奴ら、核を動力源にしたモビルスーツを使うのではないかと考えています。是非これを鹵獲したい」

「なぜそのような結論に?核を禁じたのは連中でしょうに」

 

この質問に、大袈裟な手振りで理事は答えた。それは着ている服が明るいだけに目を引いた。あるいはそういった狙いで水色のスーツなのかもしれない。とにかく答えは出された。

 

「数日前、私が出撃しましたが、あの時わざとこちらの量産型をお披露目しました」

「その心は?」

「こちらの統制具合、機体スペックがわかるはずです。そして、奴らは焦る。こちらが最低でも同じレベルのモビルスーツを奴らより多く手にいれたことにね」

 

ここまでで、その場の全員が理解した。

 

「それで、現行機を短時間に上回るために核を使うと」

「交渉材料としてNジャマーの無効化装置を既に作っている可能性は高いですな」

 

それで、どうやって?もちろん手段は用意しているのだろうが、それも全員が思ったことだった。

 

「理事は、既に手段はお持ちだと?」

「2つ有ります。1つはアークエンジェルの戦力をぶつけます」

 

既に、アークエンジェルの重ねてきた戦果は周知のものだ。そして、理事はチームワークから生まれた戦力を分散するような愚は犯さない。

 

「彼らには追加で設備を与えています。かつ、敵の予想戦力も伝えてある。遊撃戦力として戦場を好きに回らせ、核動力とおぼしい機体が来たとき適宜当たらせましょう」

「では、もう一つは?」

 

その質問に、アズラエルはふふっ、と笑った。

 

「それはいざ捕獲の時にお見せしましょう。ウチの技術部の実力が分かりますし・・・兵器が持ってて嬉しいだけのコレクションではない事をお見せしますよ」

「ははは、基地を潰すはめにならなくて助かりますな」

「左様。理事には頭が上がりませんな」

 

連合の作戦会議は、終始アズラエルが仕切っていたものの、それでいて完成された効率的会議が行われていたのは彼のカリスマと実務能力の証だろう。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ニコル!」

「アスラン!無事でしたか、良かった・・・」

 

アスランにニコルが抱きついた。仲の良い兄弟に見えなくもない。または兄妹だが。

 

「心配したぜ、隊長さん」

「ふん、独断専行は控えろよ」

 

お前が言うか、そう言ってイザークに殴られるディアッカを見て、アスランは笑っていた。

 

「はは、すまない。これからはちゃんとチームであたるよ。それとニコル、そろそろ離して」

「すみません、つい」

 

なお、ZAFT士官学校では女子生徒からどっちが、などと良く言われていた事をここに記しておく。

 

「で、隊長さんのことだから作戦の要項はがっちり読み込んでるんだろ?」

「ああ。それと、実は足付きの出撃予想ポイントをリストアップしてみたんだ」

「どうやって勝てばいいんだかねえ」

 

それは士気を下げるため余り誉められた発言ではないが、アスランはむしろ笑った。

 

「勝てはしないだろうな。けど、俺たちが足付きを引き付ければそれだけ作戦の成功率が上がるはずだ。無理に勝ちにいく必要はない」

 

だんだん頭が柔らかくなってきたな。そうディアッカは思った。以前は冗談の一つも通じない岩石のような男だったが、今では作戦を自分の都合の良い方に解釈できるくらいには変わってきている。

 

「まあ隊長がそういうなら仕方ないな」

「ディアッカ・・・」

 

そんな隊長になら、まあ精一杯尽くしてやるのもやぶさかではない。

 

「じゃあちゃっちゃとプラン組んじまおうぜ」

「そうですね」

 

スピットブレイクは、地上部隊と降下部隊に戦力が二分されている。主戦力は降下部隊だが、地上部隊が戦える場を用意しておかねば戦力が発揮できない。まして、報告にも上げた通り敵にはこちらと互角のモビルスーツ戦力が有る。いくらZAFTのパイロットが優れていると言っても、戦力差が100対1などとなっては勝ち目がない。

だからこそ、先に足付きと戦った時のような仕掛けが必要になってくる。

 

「つっても今度は時間がなぁ」

「明日が決戦ですからね」

「ふははは、やはり俺達が前線で暴れるしかあるまい!」

 

そう言ってヘルメットを小脇に抱えているのは、ジャスティスを受領したイザークだった。

 

「いや、そりゃ有効だろうけどよ」

「アスラン!シミュレーターで戦え!俺と決着をつけるんだよ!」

 

腕を引っ張って連れていかれたアスランを見て、ニコルが呟いた。

 

「頑張ってください、ディアッカ」

「ああ。イザーク(あのアホ)には任せられん」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

来る攻撃の予想された日。そこはアラスカ基地のモビルスーツドックだった。

 

「おぅ、キラ、準備は良いか?」

「マードックさん・・・」

「どうだ、その連合から支給された新装備、ニュートロン・ディスターバーフィールド射出装置は」

 

それは、現在ストライクの右腕に装着された中型ライフルだった。

 

「凄いですよね、これがあれば殺さずに敵を完全無効化できるなんて」

 

そう、Nジャマ―とは別の方法で核エネルギーの発生を抑制する新兵装。それがアズラエルのもう一つの秘策だった。

 

「なんかいい名前が欲しいだろ。制式じゃ名前が長すぎやしねぇか?」

「じゃあ・・・いや、突然言われても浮かびませんよ」

 

かなりグダグダしたやり取りをしていたが、突然出撃のアラートが鳴り響く。

 

「じゃあ戦ってる最中に考えな。なにかやり残したことがある方が人間死なないもんさ」

「ええ、緊張ほぐれましたよ。ありがとうございます」

 

今回、刹那は別のポジションに配置されている。前回に引き続き、戦友のいない戦場というわけだ。

 

「・・・それでも、守りたいものがある」

 

ストライクは勢いよく飛んだ。




おまけ、ザラ隊の女性関係

イザーク
筋金入りのマザコンだが、シホというSEED世界では凄まじく稀少なマトモな女性に好意を寄せられている。この一点でディアッカから凄まじい恨みを買っている。

ディアッカ
一時期イザークと出来ているという噂が立ち、以来年上の女性に声をかけ続けているがまるで相手にされていない。
一度シホに声をかけてイザークに殴られている。

ニコル
年上の女性から声をかけられる事が多い。しかし大抵女性が潰しあうため、食事やデート以上の事は経験がない。
年上女性連合につけられたあだ名は「絶対不可侵領域」

アスラン
年下からモテるが、余り断るのでやはり同性愛者疑惑をかけられている。なお本人は許嫁に悪いからと断っており他意はない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

42話:見守ることしか出来ない彼は

面倒事が割と片付きました。
あとはコンスタントに続ける必要のあるタスクばかりなので執筆再開!


潜水艦の指令室で、アスランは歯噛みをしていた。

 

捕らえられたのは自分のミスだ。猛省したい。

モビルスーツが連合に回収されたことも、経緯を考えれば殺されなかった事が奇跡と言えるだろう。

ニコルやイザーク、ディアッカに他の隊のパイロット達が戦場へ勇み足で駆けていくことも仕方がない。なにせ、この作戦にはプラントのこれからが懸かっていると言っても過言ではないのだから。

 

だが、のうのうと一つ一つと目減りしていく味方の反応を見続けるというのはあまりにも耐え難い。

 

もちろん、死んだ方がマシだった等と言うつもりは毛頭無いのだ。自分が出撃すればMIAやKIAが減るなどと傲るつもりもない。

ただただ、何も出来ない事が耐え難い重みとなって頭に腹にのし掛かってくる。

 

ふと、今の状況に父の事を思い出した。

ある意味、父は同じ状況に常に晒されているわけだが、このような葛藤が有るのだろうか?

今となっては知る由もないが。それでも疑問に思わずにはいられない。

 

思いだけでは何も変わらない。アスランは、食い入るように味方の配置図を見つめ続ける。

 

果たして海上で味方を撃墜し続けている敵はあのどちらだろうか?

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「敵はどこだ?」

 

アラスカ基地は、大瀑布に守られた入り口と、圧倒的な質量で侵入を拒む土の天井を持っている。キラが守るのはその天井だ。

出撃前に伝えられた作戦はこう。

 

『捕虜を作ること』

 

なんでも情報戦の一部らしいが、情報をプラントへ流すための運び手にするであろう事はなんとなく察しがつく。

では、作戦をどう遂行するかと言えば、まずキラは前衛だ。そして、その後ろに三小隊ほどの量産型モビルスーツが着いている。

二小隊が牽制射撃で援護し、キラが接近戦で五体を完全に分解する事で無力化、残りの小隊がボディ部分を回収するという三段構えの陣形だ。

 

既に、戦闘開始から一時間ほどが経過し、周囲にはZAFT降下部隊だったスクラップの山が出来ていた。

なんでも、これらのスクラップも資源として戴くらしい。本当に抜け目の無いことだ。

 

それはそれとして、現在既に視界の内には敵が居なくなってしまっていた。

 

「敵は・・・どうやらいないみたいです。前進するので後ろをお願いします」

『任せときなぁ!』

『けどお前さんみたいな戦果は期待すんなよ!』

『そうそう、ほどほどに頑張るぜ』

 

人の事は余り言えないが、とても1ヶ月に満たない訓練期間とは思えないほどの上手さだった。それでも謙遜する辺り、それが連合のトップまで登り詰める秘訣なのかもしれない。

 

しかし、まだ油断はできない。確かに動きの良い新型こそいたが、恐らくそれはバッテリー機の改良型であり、核動力が使われていればもっと次元の違う機動力を発揮しているだろうとキラは予想していた。

 

一機のみで不意打ちをしようと飛び出してきた新型量産機を一瞬で達磨にしながら、基地の通信スポットを探す。

 

余談だが、アラスカ基地にはNジャマーの散布を受けて設置された有線の通信スポットが至る所に配置されていた。連携が前提に据えられている現代では、通信系統がないことは死に直結するからである。また、全部の場所がそうではないが量産型はビームライフル用のコネクタを通信ポートに繋ぐことで電力を補給することも可能だ。

運良く、見つかった通信スポットは電力の補給も可能なものだった。

 

「こちらストライク、敵を概ね捕らえました。指示をお願いします」

『おお!素晴らしい戦果だな・・・コホン、今からそちらへデコイを送ろう。それと入れ替わる形で地下へ降り、海岸線の防御を頼みたい・・・』

「入口はA-10ですか?」

『話が早いな、その通りだ。五分後に入れ替えを行う。引き続き警戒してくれたまえ』

 

同じ回線を使っているので、隊の全員に話は伝わっている。

 

「聞こえてましたよね?」

『ああ。給料アップのチャンスらしいね』

『おかげで彼女(金食い虫)のオーダーにも応えられそうだ』

『お前まだあの金髪と付き合ってたのか』

『しょうがないだろ!でかいんだよ!胸が!』

『おい隊長さん、あれ!』

 

いきなり聞こえてきた切羽詰まった声に、全員が一機のモビルスーツが指さした先を見る。

 

「・・・僕が殿を務めます。じわじわA-10まで退いてください」

『なんだと、と言いたいところだがやめとこう、ありゃやばそうだ』

 

海の方から、二機のモビルスーツが接近してくる。海岸の防御線を意にも介さず、射線をすいすいと躱しながら進み続ける。

 

『司令部、こちらダガー07。最優先確保目標を発見した』

『本部了解。先ほどまでの作戦行動を全て撤回する。今後の指揮は目標の無力化までキラ・ヤマト中尉に一任するものとする。通信部、作戦行動マップの転送を』

「こちらキラ・ヤマト。了解しました。作戦行動に移ります」

 

敵機からのアプローチを前に、ダガー全機が地下区画への入り口、ポイントA-10に到着した。

 

「新兵器・・・上手くいくといいけど」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「見つけたぞ、ストライクぅ!」

 

能動空力弾性翼とリフター、連合が開発したGATシリーズに改良を施したフリーダム、ジャスティスの二機に搭載された空戦用の兵装である。特にフリーダムの能動空力弾性翼は、リアルタイムに変形して空力を最適に受けるため、従来のモビルスーツを凌駕する空戦能力をフリーダムに与えている。

 

一方のリフターも、ジャスティスに完全な単体飛行させており、当然こちらも十分に戦える飛行能力である。

 

今回は、意地からなのかジャスティスが凄まじい速度で先行している。

 

『落ち着けよ、ったく、あんなに派手に迫るから取り巻き逃げちまったじゃん?』

「あの程度の腰抜けは相手にならん!援護しろディアッカ!」

 

そう言って、イザークは一直線にストライクに向かって降下していく。血気に逸ってはいても、脚部が耐えられる限界で速度を押さえているのは素晴らしい。

ディアッカは口笛を鳴らしてハイマットモードを終了し、銃口を展開した。本来なら多数を圧倒するマルチロックオンシステムを、ただ一機のモビルスーツに向ける。

 

対するストライクは、ジャスティスの突進を宙返りで避けながら、フリーダムにビームサーベルを二本投擲してきた。

 

「やっぱりやるな!」

『誉めてる暇があるか!』

 

地を蹴ってスラスターを吹かし、ジャスティスが再びストライクに突進する。ストライクは体を深く沈めて斬撃をシールドでするりと受け流し、起き上がる力でジャスティス空中に打ち上げた。ジャスティスは空中で受け身を取るが、距離が大きく離されてしまった。

 

「おいイザーク、逃げたぞ!」

『逃がすか!追うぞディアッカ!』

 

言われなくてもやるっての!

恐らくは地下への入り口に、ストライクが駆け込んでいく。

そんなちゃちなシャッターで俺たちを止めれると思うなよ!

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

予定通りここ、A-9ゲートのシャッターを閉めて撤退すれば着いてきた。確かに核の動力は驚異だが、ここ、廃棄地下都市区画なら負けはしない。また、地下区画は、各場所にアンテナが設置されているため電波で通信が可能だ。

 

「ライフルを当てて五分か」

 

ニュートロン・ディスターバーは徐々に核反応を抑制するが、電力を消失させるわけではない。兵器なら予備電力を用意していると考えて然るべきであり、完全な無力化には五分はかかると予想を伝えられていた。

 

『まあ、接近して三分も稼げば充分ですよ』

「そうですね。それならニ対一でも問題有りません」

『こちらダガー05、入り口を埋める準備は完了だ』

 

これで、二機の核動力モビルスーツを閉じ込める準備は整った。

一発の受け流しでボロボロになったシールドを投げ捨ててストライクは転進し、距離を再び詰め始める。

 

『奴さんたち調子に乗って追っかけてきますぜ。よっぽど勝てそうなのが嬉しいんですなぁ』

 

廃棄予定だった旧市街は、大通りもあるがとても強度の高いビル群が乱立している。そのような横の足場が沢山ある場所ならば、ストライクの機動性は平地の比ではない。なにせ、ストライクにとっては天井以外の全てが足場なのだから。

 

『目標まであと200、律儀に地上近く飛んでますよ』

『まあ視界が悪いところじゃぁ飛行は避けるのがセオリーだろうさ。対空攻撃が物陰から飛んでくるからな』

「あの人たちは強いですよ」

 

通信用スピーカーからは、これだから強いんだよとか、嫌味が無いねぇなんて声が聞こえてくるが、キラはすべて無視して、ビルの合間を低空飛行するジャスティスとフリーダムに向かい、ビルを上から下へ駆け下りていく。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

『イザーク、上だ!』

 

ディアッカの叫びにカメラを上に向けたイザークは、口元を凶悪に吊り上がらせた。

 

「迂闊だな、怖気づいたかストライク!」

 

先に構えていたビームライフルを一発打ち込み、素早くビームサーベル二本を連結させる。躱すだろうと思っていたビームを、ストライクは右斜め下に加速することで回避した。その速度なら抵抗も限られるだろうとほくそ笑みながら、ビームサーベルを振り下ろそうとした矢先に、ストライクが消えた。

 

「何処だ!」

『ぐっ!』

 

すぐ後ろに居たはずのディアッカのうめき声が聞こえ、ビームサーベルを構えなおしながら素早く振り向くと、ストライクがフリーダムにマウントを取っていた。

 

「この!」

 

ジャスティスのビームサーベルが刺さるよりも早く、ストライクは地面を蹴って壁に着陸した。

 

『ああクソ、猿みたいな動きしやがるぜ』

「問題無いか?」

『ああ。貧弱なライフルで一発食らっただけさ・・・来るぞ!』

 

今度は、ストライクは壁を蹴って真上に上昇した。そしてそのまま、ビルの屋上に離脱して姿を消した。

 

「逃げるな!」

『オイ!落ち着けって!』

 

仲間がやられかけて激昂しているのか、イザークの駆るフリーダムは地面を蹴って飛び上がった。援護が出来るようにディアッカも後を追うが、不揃いな高さのビルの影にいるのか、姿が見えない。

 

「がっ!?」

 

次の瞬間、ジャスティスのコクピットが強く揺れた。

 

『そこか!』

 

PS装甲が、ライフルの一撃を完全にシャットアウトした。先ほど自分が食らったものと同様だと判断したディアッカは、イザークに確認するよりも先にフリーダムの砲門を開いた。

果たして、ビルの下から腕に装着されているライフルの銃口を向けていたストライクは、スルスルと後ろに下がりながら4本のビームとレールガンをすべて躱してしまった。

水平な壁を何度も蹴りつけて、スラスターよりも遥かに機敏に上昇してきたストライクに復活したイザークがビームライフルを乱射する。ストライクは、屋上に着地するや否や、小円を描くような体捌きで一発を除いてすべて躱し、残る一発もサーベルで切り捨ててしまった。

 

『ははっ、持久戦なら俺らに分があるんじゃないか?』

「そんな弱気でどうする、と言いたいところだが・・・」

 

流石に考えを改めて、イザークが右に、ディアッカが左に飛び出しながら、手持ちのビームライフルで十字砲火を浴びせる。砂漠の一件でミサイルは凌がれたらしいが、ビームのスピードはミサイルの比ではない。

流石にその場では捌ききれないと判断したのか、最初に当たりそうになった二発を一太刀で弾いてまたもやビルを駆け下り始めた。射角を下に下げて空から攻撃を当てようとはするが、まるで地面を走っているかのように壁を駆け抜けるストライクにはまるで当たらない。それどころか、反撃にビームを打ち込んできた。

 

二発で足りないならと、ディアッカがリフターを寄こすように言う。フルバーストモードを起動したフリーダムの能動空力弾性翼が放熱板に役目を変え、空中にいられなくなったからだ。ジャスティスは、リフターが無くとも受けるように設計されているため、空中で射撃を続ける。

 

『穴だらけのスイスチーズにしてやるぜ!』

 

バラエーナプラズマ収束砲が、ルプスビームライフルが、クスィフィアスレール砲が一斉に火線を曳いた。五本の火線がストライクへ殺到し、ストライクが腕部の装甲でレールガンを弾いたのを見たところで、フリーダムは機能を停止した。

 

「おい、ディアッカ!ディアッカ!・・・これは、エネルギーが切れているだと!?」

 

フルバーストを放っただけでも、ZAFT製の新型は素晴らしいと言えるだろう。プラズマ収束砲など、一発の発射でジンのバッテリーを干上がらせるのだから。だがフルバーストの直前に、新型の肝、核エンジンは完全に機能を停止していたのだった。結果、フルバーストで全てのエネルギーを使い果たして先に機能を停止してしまった。

 

そして、完全に機能停止したことを確認したストライクが、フリーダムに向かって急接近する。

 

「させるかぁ!!!」

 

残り少ないエネルギーなどと考えず、ビームライフルで寄せ付けまいと弾幕を張るが・・・

 

『こんな事をしたくは無いですけど・・・降伏してください』

 

空中でするりとビームは避けられ、ビームサーベルをコクピットに突き付けられてしまった。

 

『捕虜としての扱いは保証します。降伏を!』

『俺に構うな!自爆系統もイカれちまってるんだ!頼む!俺ごと・・・馬鹿野郎』

 

例え人質に取られていなくても、この状況で勝ち目がないことも分かっていた。ここで暴れても、一矢報いるどころかディアッカが死に、結局自分も掴まるという最悪のシナリオが存在する。アスランを見ても、捕虜としての待遇は問題無い物だろう。そう分かっているイザークの決断は早かった。

 

「・・・降伏する」

『・・・武器を置いてください』

 

ビームサーベルを向けられ、屈辱に震えながらジャスティスは武装解除された。速やかにダガーの回収隊が区画へやってくる。

 

「こちらへ来てもらいましょうか」

「ああ」

 

コクピットから降ろされたイザークとディアッカは手錠を掛けられてトラックへ乗せられ、基地の奥へと連れていかれた。

 

「いやぁ、すごかったねあの動き。後でログを見せてもらえるかい」

「ええ、良いですよ。でも今回の作戦が終わってからですね」

 

小休憩をとることを指示されたキラたちの隊は、トラックで運ばれてきた食料を掻き込んでいた。

 

「うめぇー!!レーションと比べたら月と鼈だぜ!」

「なんだそれ」

「アジアの諺だとよ」

 

食料は一般的な軍用レーションではなく、いつか食べたケバブを使ったサンドイッチだった。何でも、キラの好きな食べ物を聞かれたムウが答えたらしい。艦内でのカガリ&キラとムウ&檻越しのバルトフェルドのソース論争を根に持っているのか、半分はヨーグルトソースだった。

しかし辛党だというのもしっかり伝わっていたらしく、とても美味しそうな真っ赤なソースのついたサンドもあり、キラは周りに断ってそれを食べた(皿に垂れたソースを舐めた奴の反応を見た後だったので周りは退いていた)。

 

「もう少し凌げば今回の作戦は成功です」

「それもこれもアンタのおかげさぁ!」

「そうそう!きっとすげぇ勲章来るぜ?」

「勲章どころか特別給金もちゃんと出ますよ」

「理事!」

 

食事を終え、モビルスーツに乗り込もうというところでアズラエルが現れた。

 

「なぜこんな所に?」

「ねぎらいに来たんですよ。君たち、特別給金、いくらだと思います?」

「10万A$くらいですかい?」(※1A$=5円換算)

「30万A$出します。隊の全員にです」

 

適当に言った数値の三倍である。一般の兵士の基本給が7万A$だと考えれば、凄まじいボーナスだ。

 

「流石です理事!」

「一生ついて行きます!」

「本当にそんなに出して大丈夫なんですか?」

「君モビルスーツ一機につきどれくらいかかるか知ってますか?」

「10億A$位ですか?」

 

キラとしては、自分で開発に携わっていた部分もあるので高級な車よりは高いだろうというくらいの感覚だったのだが・・・

 

「新型は1200億A$です。量産型なら800億といったところでしょうか」

「そ、そんなに・・・」

「君のストライクやその鹵獲した新型なんて・・・僕の資産の数パーセントはいくでしょうね。それを考えればこの程度、安いものです」

 

コクピットに昇るロープの手前で狂喜乱舞しているパイロットたちに知らせるべきか否か一瞬考えたが、水を差すのは良くないと考えなおした。

 

「それでは、君なら心配いらないと思いますが頑張ってください」

「は、はい。あの、ソランさんは・・・」

「彼は凄まじいですね。海上ですさまじい戦果を挙げて・・・ああ、君の捕らえた新型の方が価値はありますがね、それでも君たちが今回の戦果のトップであることに変わりは無いでしょう」

「そうですか・・・」

 

やられているかもしれないとは微塵も考えていなかったが、やはり無事と聞けば安心できるものだ。

 

「では今度こそ行ってらっしゃい」

「はい!」

 

小隊は、隣の区画から地上へと戻っていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「フリーダム、ジャスティス、共にMIAです・・・」

「そんな!」

 

一体、どれだけ苛まれれば良いのだろうか。一度のミスが、取り返しのつかない後悔へと転落していくのを、アスランは感じていた。

ニコルは・・・ニコルはどうなっただろうか?必死に海のMAPを見渡すアスランの目の前で、丁度見つけたブリッツの識別信号は、アスランを待っていたかのように途切れた。




モビルスーツの価格は米軍のステルス戦闘機の二倍換算です。戦争って金かかるのね・・・
そして再びアスラン心労回。多分そろそろ胃潰瘍で癌になるか血管貫通して失血死すると思います。

ストライクが壁を走り回っていたが後悔はしていない(キリッ)

文字数が多分記録更新してます。

追伸、FGOエレキシュガル登場で財布に遂に手が伸びる予感有り


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

43話:終わりの始まり

タイトルが不吉・・・?
ガンダムではよくあることです。
そして今週からFGOに忙殺されるのだろう・・・イベントは辛くてもカルナさんのためなんじゃ・・・カルナさんのためなんじゃ(大事な事なので二回)

追記 12/17 17:00
現在ボックスガチャは7箱目まで空になりました


海上には、ただの一機しかモビルスーツは存在していなかった。否、動くものに限定すれば、の話だが。

遠浅の海の底には腕や足が所狭しと散乱しており、深刻な海洋汚染が危惧されることだろう。それでも、その空間へ挑む者はいた。そして、海底の友人たちと談笑を交わす羽目になるのだ。

 

こちらではサルベージ部隊が大量に控えており、海底をモビルアーマーが往復してコクピットブロックを主に回収していく。海底の敵モビルスーツは廃材で構築されたバリケードを突破できず、次々と海上から撃ち込まれる発泡魚雷の餌食になり沈んでいく。

 

ただ一機で戦場を縦横無尽に滑りまわり、ビームライフルで的確にコクピット以外の部位を打ち抜き近づいてきたものは一瞬で達磨に変身させる。なるほど、流石はキラ・ヤマトの師匠と言うべきかとアズラエルはモニタを覗きながら考えた。確かに同じような処理を熟してはいるが、その動きの練度が桁違いだ。

もしかしすると切り口すら全く同じ位置に作っているのではないかと思えるほどに、淡々と機械的に敵機を処理していく。

 

「ああ、あの敵機はもう何度か見ていますね」

 

こんな常軌を逸した戦場で、何度も見かけられる奪われた最後の一機、ブリッツ。アークエンジェルから上げられた情報でも、最も生存率の高い機体だ。

 

「あれは引き際の巧さですかね」

 

その撤退は実に巧妙だ。単純に姿を完全に消せるミラージュコロイドの恩恵もあるが、空中に身を躍らせて認識されていた位置からずれて撤退を始めるなど、戦法のトリッキーさも目立つことながら、敵わないと判断した機体の制空権の見切りが上手い。

 

目立つワンオフ機だというのに、ミスディレクションのように他の機体の認識にぼかされて見付かり辛くしているなど、ニコルの涙ぐましいブリッツに合った戦法の模索の結果でもある。

しかし、そろそろ見つからないようにするには心許ない機数となってきた。

 

散弾銃で鳥の群れを撃つように残るモビルスーツも数を減らしていき、遂に・・・

 

「これで、二機のモビルスーツが奪還されました」

「まあ、今開発している三機に比べれば機密性は劣りますが、我々が作ったものがいつまでもテロリストの手に渡っているというのは気分が悪いですからな」

 

最後の一機は、海上にて抱き留められていた。

 

「ソラン曹長、ご苦労様です。帰投してください」

『了解、帰投する』

「理事、基地上部の探索部隊から報告、『敵影見当たらず』・・・防衛、成功です!」

 

基地司令部では、一斉に歓声が上がった。普段は厳格な将校でさえも、諸手を挙げて笑っている。第一次ビクトリア降下作戦以来、実に1年ぶりの連合の大勝だった。

 

僅か30分ほどで全部隊が地下三層に収納され、地下第一層では、パイロットたちが大騒ぎし、上着を振り回したり肩を叩き合ったりと、やはり喜びを爆発させていた。捕虜は一応階級別に階層を分けて収監され、食事や手当を受ける。爆発した喜びの声から負けを悟ったのか、捕虜たちの態度をおとなしい物だった。

 

キラと刹那は、理事に呼ばれキラに追従していた部隊のメンバーと共に最下層近くまで降りて来ていた。そして、それはほぼ運命の分かれ目となった。

 

アズラエルが満面の笑みでメンバーを迎えた時、刹那が突然廊下で上を見上げた。

 

「これは・・・!」

「どうしましたか?ソランさん」

「上が危ない!」

「・・・それは今すぐ?なぜそんなことが分かるんです?」

 

疑問には思いながらも常在戦場の兵士の言葉に思うことはあったのか、アズラエルは指示を出した。

 

「ああー、指令室。一層の全員に移動を命じてください・・・ソランさん?どのくらい逃げれば?」

「なるべく深く!」

 

此処は核の直撃にも耐えるんですがねぇ、そう呟きながらも、エマージェンシーコールが基地全体に響き渡った事から刹那の必死さが窺えるだろう。

 

『緊急事態発生、緊急事態発生。上空から何らかの攻撃を受ける予兆を確認。総員、地下へ避難してください』

 

「避難警報は出しました・・・これで何も起きなかったらボーナスは・・・なんだ?」

 

そして、地下に大きく揺れが走った。

 

「指令室!」

『理事!これは・・・γ線レーザーです!』

「まさか・・・そんな・・・」

『発射予想地点はZAFT軍事コロニー、ヤキン・ドゥーエ!』

「取り乱しました。続けて。・・・被害状況は?」

 

最早、アズラエルの顔には表情という色が無かった。表情筋の硬直が顔中から血液を追い出し、正に蒼白と言える。一方で、素早く立ち直ったアズラエルの言葉に中てられたのか、指令室の通信士官も落ち着きを取り戻した。

 

『一層は完全に消滅・・・二層は一部損壊ですが、放射線の影響が大きく明確な情報は得られていません・・・』

「追撃の可能性は?」

『現在ヤキン・ドゥーエの位置はジョシュア直上から離れています。威力も加味すれば追撃は無いかと』

 

アズラエルは、ゆっくりとキラたちの方を振り向いた。

 

「私は、今後のためにやらなくてはならない事が出来ました。君たちは、そこで待機していてください。アークエンジェルのメンバーの安否は追ってお知らせします。どうか」

 

頭を深く下げるアズラエルに、刹那は短く分かったと呟いて、示された部屋へ入っていった。キラも、慌てて頭を下げて後を追い、部隊のメンバーも敬礼をしてその場を退いた。

全員がいなくなって、アズラエルは頭を擡げた。

 

「ええ、私です。先週来たオーブからの親書へ返信をします。執務室で用意をしていてください」

 

アズラエルは端末で秘書に連絡を入れ、握りしめた拳から血を流しながら足早に執務室へ向かって歩き出した。目は爛々と見開かれ、燐光を放っているようにすら見える。

 

「第8師団・・・私は必ず敵を討つ・・・そう、必ずだ」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

結論でいうと、アークエンジェルはほぼ無傷だった。というのも、γ線レーザーは基地の中心を狙って照射されたため、海岸線近くに停泊していたことで爆発に伴う暴風こそ受けたものの直接の被害は受けていなかったからだ。乗員も、けが人は頭をコンソールに打ち付けたトールだけだった。

 

『決定したことを伝えます』

 

今や、アークエンジェルのブリッジには主要なメンバーがほぼ集っていた。

 

『我々連合軍はオーブと協力関係を結びます。君たちには、オーブ宇宙軍と合流してヤキンドゥーエへ侵攻してもらいます』

「了解は取れるのですか?」

『既に事前折衝は済んでいます。さっきそちらへ送った書類が決定事項を載せたものですから、氏族のセイラン氏に渡してください』

「その、被害ってどれくらいなんでしょうか」

 

ミリアリアの疑問ももっともだと、全員がアズラエルを注視する。アズラエルは、まったく顔色を変えずに答えた。

 

『我々の全戦力の30%を損失しました。捕虜は15%が死亡、手に入れた資源も80%が消失しています』

「それって・・・」

『そうです、キラ君。今回の作戦の成果はほぼひっくり返されたと言っても良い。核動力機の動力部のみ地下へ移していたのがせめてもの救いですが・・・いや、敵にこちらを直接攻撃できる兵器のスイッチが握られているという点では悪いといっても良い。放射能汚染のせいで、アラスカ基地は・・・周辺ごと壊滅したと言えます』

 

地球に、大規模な核を行使した。それは、地球のほぼすべての場所が核の脅威に晒されているという脅迫のようなものだ。地球連合軍として、そのような脅威は排除しなくてはならない。

 

『幸い、ストライクに装備されていたニュートロン・ディスターバーの大型版で無効化できると思います。それでもヤキン・ドゥーエの防衛網を抜けなくてはいけませんが、君たちのモビルスーツを宇宙用に最適化さえすればそう難しいことではないでしょう』

 

幸運を祈ります。そういってアズラエルは通信を切った。

 

「私たち、こんな処まで来てしまったのね」

「でも、俺たちが行かないとオーブも危ないんだろ?」

 

直接、被害にあった基地を見たわけではない。それでも赤く焼け焦げた基地の外縁を見て、自分達の故郷に撃たれたときどうなるのか、想像はついた。

 

「それに、俺はキラとソランさんを信じるよ」

「トール・・・」

 

先ずは、オーブへ。

 

「では、アークエンジェルは本時刻を以て発進する」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

僅かに一日で、一行はオーブへと到着した。今度は彼方でも予期していたことなのか、防衛軍ではなく首長直々の出迎えだった。オーブ行政府の大ホールで、アークエンジェルのメンバーは出迎えられた。

 

「プラントが使用した核の事は聞き及んでいる」

 

ウズミ氏は、暗い表情で首を振った。

 

「エイプリルフールクライシスで、プラントの核を使わせないという選択は、寒冷地域の被害に目を瞑れば喜ばしいものだったが・・・」

 

言わずとも分かるだろう?キラには、ウズミの目がそう言っているように思えた。

 

「話については、こちらのウナト・エマ・セイランがあたる」

 

紹介されて頭を下げたのは、壮年間近といった風体の男性だった。鍛えているようには見えない外見だが、醸し出す雰囲気は剣呑でもあり歓迎しているようでもあり、掴めない人間に思える。

 

「マスドライバーは、明日全ての予定に先だって使用していただけます。それまで、先ずは御休みください」

 

それと、と言って差し出された手に、艦長ははっとして書類を手渡した。ウナトはその場で封を破り、中身を改める。書類を読み進めたウナトは、突如笑い始めた。

 

「連合理事どのは太っ腹だ」

「内容は?」

「アズラエル財閥系列企業の誘致です。今や、世界で最も大きな財閥の一つであるアズラエル財閥ですが、我がオーブには出店がない。これは、アズラエル財閥直轄企業の本店が移転されるという証書になります」

 

観光資源など目ではない経済効果を生むでしょうと、ウナトは満足げに頷いている。

 

「まあ、戦後の事を考えるのは宰相のお前の仕事だがな、ここでそう言うことを言うから支持率が低いのだろう、お前は」

 

ため息をつくウズミに、私はその様なことは気にしませんと笑ってウナトは書類を畳んだ。

 

「では此方へ。ああ、それと、パイロットのお二方、少々話があるという方々が居られますので」

 

行政府の長い廊下。そこにいたのは、カガリと、同年代の青い髪をした優男風の青年だった。

 

「キラ!心配したんだぞ!」

「カガリ、僕の紹介は・・・だめか。では改めまして、ユウナ・ロマ・セイランです。よろしくお願いします」

 

絞め落とされる寸前のキラを尻目に、ユウナが刹那に手を差しのべた。刹那は躊躇い無くがっしりと手を握る。

 

「握手(シェイクハンド)は、元はと言えば相手の袖口から暗器を振り落とすための作法だったとか。貴方は人を疑わないのでしょうか?」

「差し出された手を握らないのは信条に反する」

 

その答えに、ユウナは笑みを深めた。

 

「政治家として人を疑うよう育てられた私としては、カガリや貴方のように真っ直ぐな人は眩しいです・・・カガリ、そろそろ止めないと命が・・・」

 

顔が赤紫色になっているキラに、ようやくカガリが気付いた。今度は必死に介抱している。

 

「是非、明日の出発を前にお話を伺いたかったのですが、お疲れでしょう。この度の作戦が終わったら、一席どうでしょうか」

「俺は構わないが」

「そうですか!それは良かった・・・それでは、私はここで」

 

優雅に一礼をして、ユウナは秘書か誰かの待つ方向へ去っていった。去り際に、夜には帰らないとその子次はウズミ様のせいで命が危ないと思うよ、とカガリに言ったのを刹那は聞き逃さなかった。

それでもキラを部屋へ運んでいくカガリに一抹の不安を覚えながらも、刹那はカガリ(キラをお姫様抱っこ中。トールが写真撮影した)と他のメンバーを追って行政府のゲストハウスに向かった。

 

本来はかなりの上級階級が利用する部屋のため、そういった知識に疎い刹那でも高級品であることがわかる程度には高価な調度品が据えられていた。

そして、落ち着いた暗い色の枠にガラスが嵌められた執務机には、モルゲンレーテ、エリカ・シモンズと書かれた手紙が乗っていた。

 

内容を要約すれば、今回の作戦にオーブ宇宙軍が実践検証として参加すること、それに、主任も帯同するということが書かれていた。アズラエルは、戦力の補給に成功したということだ。

 

それにしても、と、刹那は今回のレーザー照射を思い出していた。

以前、A-LAWSによって建造されたメメントモリは、自由電子レーザーだった。それに対して今回は核。核なのだ。もちろん、大量破壊兵器を非戦闘員の存在する区画に撃ち込むなどと正気の沙汰ではない。それとも、指揮官によるユニウスセブンの個人的な復讐なのか。

少なくとも発射の直前に、地球にいた刹那が捉えることが出来るレベルの膨大な悪意が放たれていた。あんな悪意を放てる人間を捨ておくわけにはいかない。

 

「結局、俺は同じことを繰り返しているわけか」

 

またしても、刹那は武力をもって闘争の壊滅を目指すのだ。

 

「彼女が言った通り・・・終わりは無いのか」

 

前もそうだった。アリー・アル・サーシェスに止めを刺そうとした時も、マリナ・イスマイールの何かが刹那を止めた。それが何だったのか、今なお刹那には分かっていない。

 

「それでも、今はこうするしかない」

 

トレーニングで培われた習慣か、刹那はあっという間に深い眠りに落ちていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

時は遡り一日前。ZAFT潜水艦の中では、アスランが半狂乱に陥っていた。

 

「俺が!俺があそこにいられれば、いや、ちがう俺は・・・俺は!」

 

艦長は、あえてアスランを止めなかった。気持ちは痛いほどに分かるが、あの一射がこれ以上なく有効であったことも分かるからだ。

そしてアスランも、考えてしまっていた。もしかしすると、俺があそこに居てもパトリック・ザラは躊躇いもせず撃ち込んでいたのではないかと。もしそうならば・・・もしそうならば、父は何のために戦っているというのか。

よろよろと自室へ戻りながら、アスランは本国への帰還申請書の場所を頭の中でぐるぐると回る何かを必死に手で押さえながら探していた。

 

「問いただすんだ・・・俺がやらなくちゃ・・・」

 

最早、ニコルやイザーク、ディアッカの消息は露ほどにも分からない。それでも、だからこそ、真意を聞かねばならない。

 

「でも・・・もし父さんがくるっていたら俺は・・・どう、すれば、いい?」

 

撃つのか?ZAFTの兵士の努力はその瞬間に水泡に帰すだろう。では誰もが納得できる結末とは?

アスランは、日の出近くに意識を失うまでぶつぶつと部屋で呟き続けていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

アークエンジェルがオーブへ航行している最中、アメリカ・デトロイト・アズラエル財閥工廠にて。

 

「これが、私の第二の最終兵器・・・」

 

アズラエルが手に掴んだ新型のパイロットスーツヘルメットは、意匠はあまり変わらないものの、一つ大きな違いがあった。側頭部部分に取り付けられた突起。

 

「オルガ、クロト、シャニ・・・実験の準備は良いですか?」

「OKですよー?理事様」

「こっちもオーケー」

「行ける」

 

三人は、アズラエルに雇われたテストパイロットだった。軽犯罪で収監され裁判を待っていたところで、そのモビルスーツ適性に目を付けたアズラエルが裁判に関わる全てを金銭で円満解決させ、雇用したものである。

 

「では、GAT-IACMシリーズのテストを開始します。三人とも、作戦まで終われば何か買ってあげましょう」

「マジか!じゃあ筒井康隆全集頼むぜ!」

「東方ってシューティングゲームやってみてーんだけど」

「ミーア・キャンベルさんのデスメタルシングル集で」

 

口々に欲しい物を言って、三人ともモビルスーツをシミュレーターで起動する。思い思いに操作を続けさせ、十五分ほどでデータが提出された。

 

「アズラエル会長!想像以上の成果です!見てくださいこの反応速度!」

 

反応速度に限ったものではなく、殲滅能力、白兵戦能力など、戦闘にかかわる全ての数値がコーディネーターの乗ったGATシリーズを凌駕していた。

 

「はは、行けるぞ!やはり資金を継ぎこんで間違いは無かった!主任、君たちの研究グループに特別報酬です」

 

そう言って、アズラエルはジェラルミンのブリーフケースを主任研究員へ渡した。

 

「ありがとうございます、中身を改めさせていただきますね」

 

研究員は札束を数えていたが、1000万A$の束が20を超えたところで考えるのをやめた。

 

「新型のGATシリーズにインテンション・オートマティック・・・これにキラ君が開発したOSが乗れば敵なしだ!はははははははははははは、やった!やったぞ!」

 

ひとしきり「やった」と叫んで、アズラエルは機体を個人所有のロケットへ積ませた。

 

「月表の私の所有地でアークエンジェルを待ちます。君たちも実戦訓練を兼ねて月からの作戦に参加させます・・・ああ、私の私兵なので面倒な指揮系統はありません。自由に暴れられますよ」

 

正確には自由に暴れさせた方が良い戦場にアズラエルが三人を放り込むわけだが、三人組にそんなことを気にする奴は居なかった。

 

「待っていろ、パトリック・ザラ・・・私の部下を殺した罪は是が非でも償わせてやる!」

 

後で小さく三人組が、

 

「これがあるから理事サンに着いてくって感じだよな。死んでも忘れないでくれる感じ」

「金払いも良いしな」

「欲しいもの探すのも手伝ってくれるしね」

 

シャトルはすさまじい速度で点検、打ち上げ申請までを終了し、丁度アークエンジェルがオーブへ到着したタイミングで月のアズラエル財閥領へ着陸した。




一旦ジェネシスの被害を生々しく書きすぎたグロverを書いてしまったのですが、要望があれば番外編に乗せたいと思います。
内容としては、けが人を運ぶことになったキラが途中でばたばた人が死んでいくものだから心が折れかけ、刹那に人の命について尋ねるという感じです。

次回からは最終章。End:This is a war for world True/Falseです。
ようやくここまで・・・・最終章はどちらかというとSEEDや00らしい人間の在り方が主体の話に見えると幸いです。そのつもりで書いているので。
SEED Destinyは・・・終わり方次第でしょうね。終幕のやり取りは思い浮かんでも事後がどうなるのか頭の中で処理ができていないので。
ちらっと浮かんだ感じでは

オーブ国防軍 隊舎にて
「キラさん、今日はどちらへ!」
「ああ、シンくん・・・カガリが誕生日プレゼントが欲しいっていうから買い物に・・・」
「カガリさんにですか!俺もお供します!」
「じゃあまた君の妹さんに何か買ってあげないとね」
「はい!マユのやつも喜ぶと思います!」

「シンのやつまた隊長にくっついてるぜ」
「ありゃクリスマスにはプロポーズするな」
「おめえら聞いてりゃ勝手なこと言いやがってぇー!許すもんかぁー!」
「顔にアイアンクローはやめろ!この前袖に隊長用のタバスコ仕込んでやがっただろうが!」

「キラ隊長、アズラエル氏から電話が・・・」
「ありがとう・・・もしもし?・・・え、外宇宙から謎の金属が大量に飛来している?」

どっちかっていうとGUNDAM SEED -A wakening of the Trailblazer-


小ネタ

ミーア・キャンベル
ある日ラクス様ファンクラブ(メンバーがファン過激派なため非公式。会員番号は堂々の1番)のメンバーと共にカラオケに行き、ネタでデスボイスで歌ってみたところ大ウケ。現在、作詞:ギルバート・デュランダル、ベース:タリア・グラディス、ボーカル:ミーア・キャンベルで唯一まともに働いているタリアに合わせたスケジュールで活動中。
デビューアルバム、『ファッキン・評議会』(写真付き)は苛烈な販売規制に遭うものの水面下で高値で取引され、地球でもコピーされたものが出回っているが手に入れた全員が歌手に正当な購入金額を払うことを要求したという。
実はイザーク(公式ファンクラブ一号会員)とお互いを知らず過激な口論をしたことがある。

ネオ三馬鹿
カリスマと金払いで盟主王に忠誠を誓う不良騎士。
逮捕された原因は三人とも貧困からくる盗みであり、オルガ・クロト・シャニの順で文庫本、最新ゲーム、食糧。アズラエルが店ごと買い保釈金を払ったためため不起訴となった。全員ラテン系アメリカ人。(育ちが悪いので)口が悪い以外には能力的には欠点が無いためそんなことは気にしない盟主王が重用している。性格は、美味しい飲み薬(γ-グリフェプタン)を服用していないのでかなり丸い。
年俸は現代日本円換算で2000万円ほど。金銭感覚の無い三人のために専属マネージャー:ソキウス・ワン&ツー&スリーが安心安全アズラエル財閥系列銀行に預金して管理している。

ユウナ・ロマ・セイラン
民衆からの指示はカガリほどではないが女性からの指示はアツい(30~40代)。
次期宰相として教育を受けているがそこそこ優秀なので不可なく教師は満足している。
親とコンビ打ちして雀荘から出禁になるくらいには親子仲は良い。
カガリは美味しい物と称してデスソースを誕生日に渡されて以来恐怖の対象である。

12/17追記
ウナト・ロマ・セイラン→ウナト・エマ・セイランでした。SEED時点ではあまり偉くない(五大氏族ではない)のですが、有能さゆえに下級氏族で宰相に任命されているということでお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

End:This is a war for world True/False
44話:偽証と告白


(皆さんがこれを12/24/18:00に読み始められているなら)間に合いました。

皆が納得できる人類絶滅ビームの発射理由を考えてみるともうパトリック氏が取り返しのつかない悪役と化してしまった・・・
全国のパトリック・ザラ・ファンの皆様お許しください

エレシュキガルガチャは財布と相談した結果、お金がFate/蒼銀のフラグメンツドラマCD一巻&Fate/StrangeFake1~4に変換されたため課金しませんでした。ボックスガチャは20超えたので許してください。
正月こそは・・・・


オペレーション・スピットブレイクを終え翌日、プラント評議会では緊急会議が開かれていた。凍り付いたように遅々として進まない空気を読めずか。それとも敢えて読まずか。後悔など一片の欠片も無いとばかりに悠然とした態度で扉をくぐり、非難の目を物ともせずにどかりと椅子に腰を下ろした。

 

「議長、何故緊急会議が招集されたのかお分かりですね?」

 

代理で議長を務めているのは、クライン派の中でも特にその実務能力と穏健さで知られるアイリーン・カナーバ。しかし、幾ら穏やかだと言っても今日ばかりはその限りではない。同胞を気遣ってか、非常に低い声で話しかけた。

 

「もちろん、分かっているとも」

 

パトリック・ザラは、平然とそう返した。演技には到底見えないその様子に、議員たち、特にシンパでない者たちはいったいどのような考えなのか、と。特に、シーゲル・クラインは顔に出る寸前だった。

そうこうしている内に、パトリック・ザラは今回のために設えられた尋問用の檀に登った。

 

「今回、私は我らがZAFTの兵士を含むエリアを標的にγ線レーザーの照射装置を使用した。その理由は・・・()()()()()()()()()()!」

 

驚愕からか、それとも困惑からか。議員たちは騒めくが、議長代理が珍しく声を張り上げ、周囲を制する。

 

「静粛に!ザラ議長、発言の意図を掴めませんでした。説明を要求します」

「良いでしょう。君、書類を」

 

見慣れない黒髪碧眼の人物が、円卓に座る議員たちに書類を手渡していく。最初に書類を渡されたエザリア・ジュールは、あっ、と声を上げた。

 

「行き渡りましたかな?それでは説明しましょう。私へ大西洋連合の理事が送ってきたこの書類について」

 

そこに写っていたのは、沢山の人間のファイルだった。前半はその人物の詳細なプロファイルが記され、後半には何やら薬品を点滴されている者、頭に機械を取り付けられ虚ろな目をしている者、それからも何枚も続く写真、データを見る限り、これは・・・

 

「コーディネーターへの人体実験・・・!」

「そう、あの理事は!あろうことか大人しくすればモルモット扱いは勘弁してやろう等と抜かし、我々に降伏を迫ってきたのです!」

 

またもや、議会は騒めき始めた。最早言っても収まらないと判断したのか、議長代理はそのまま続けるよう促した。

 

「無論、私は降伏する気など無い!しかし、我々の部下はスピットブレイクでその全てが生け捕りにされていたのだ!このような書類を受け取った後で!連中がどのような事を考えていたのか想像に難くはないでしょう!

信用に足る部下たちに、もしそのような状況になった時には、すぐにγ線レーザー制御室に直接連絡を入れ、せめて味方の手で楽にするようにとの命令を出しておいたのです。

私も人の親だ・・・直接息子に手を下すなど、決心が鈍ってはならぬと・・・

加えて、フリーダムとジャスティス、あの二機がナチュラルどもの手に渡れば、連中は再び核を・・・ユニウスセブンの二の舞ではないか・・・そのようなことに、私は耐えられない。1500万の同胞のためならば、私は例え我が子といえども犠牲にして見せる!」

 

演説は終始力強く、同情を引くべき所では涙ぐみ、最後にはザラ派からのこの拍手だ。上手いものだよ、と、黒い鬘をつけ、マスクを外したクルーゼは内心ほくそ笑んだ。彼らにとっては憎々しい相手であるアズラエルに自らの行いを押し付け、息子も帯同していたという事実を逆手にとって自分の息子は、と主張する声を抑える。

すすり泣くエザリア・ジュールに息子は苦しまなかったはずだ等と嘯いている事も、反論を抑えるいい材料だ。ジュール女史は本心からだろうが、議長殿は打算でやっている。公衆の意見というものは女性や母の叫びに弱いのだから。

 

クルーゼにしても、こうして双方が大きな傷を負っていくのは嬉しい位なのだから、喜々として情報工作に手を貸した。自らの身にも似た境遇に若干の嫌悪を覚えないでもなかったが、人類廃滅のためならば安いものだ。

 

その後、ザラ派の一部と、中立だった議員の合わさった過半数票でパトリック・ザラは無罪。議長は再び会議の舵取りを始め、すでに学徒動員、工業労働と食糧生産への注力を政策として認可させた。このままなら、必ずや酷いことになるだろう。愉悦に浸るクルーゼの懐で、ふるふると端末が震えた。

 

「ああ、私だ・・・そうか。ではパイロットスーツのままヘルメット着用で議長の執務室控えへお通ししろ・・・くれぐれも姿を見られんようにな」

 

どうやら、悲願達成の日は近いようだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「シーゲル・クライン!」

「これはこれは・・・アマルフィ議員。どうされましたか?」

 

会議が終わった後、シーゲル・クラインの執務室のドアを開いたのは機械工学のマイウス市代表、ユーリ・アマルフィだった。

 

「私は・・・分からないのです。息子が人体実験をされていると思えば、怒りもあるが我慢もできる。戦局が傾きかねない危機だったことも頷けるのです。ザラ議長にアズラエルの手紙が届いていることも私の部下が確認しているが・・・しかし・・・・しかし、この気持ちはどうすればいいのですか!あの子はまだ!」

「・・・法律が制定された時、15歳で成人というのは、早すぎると思いました。ですが、奴は・・・パトリック・ザラはコーディネーターの優位性を示すため絶対に存在すべき法律だと主張し、最終的には私も同意しましたが・・・」

 

シーゲルは頭を振った。

 

「やはり、早すぎたようだ。子供たちにとっても、我々にとっても。しかし、パトリック・ザラの行動が目に余るのも確か」

「では」

「水面下になるが、第三勢力を結成しようと思う」

 

マイウス市は、ZAFTの軍需工学品を一手に生産している。その代表ならば、物資の横流しごときは容易いものだ。

 

「他に当てが?私の方から物資は提供できると思いますが・・・」

「ああ。ジャンク屋は、我々が思っている以上の技術の宝庫だ。技術力も申し分ない」

 

その後、5人に満たない議員がシーゲルの執務室を訪れ、ザラ派に及ばないまでも大きな組織内組織が誕生した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「それで、よろしかったので?」

「ああ。地球のコーディネーターは裏切り者も同然だ!ならば、少しでも我々の力の一部になるのがコーディネーター全体にとっての利益となるだろう・・・」

 

議会で提出された連合の人体実験の証拠写真は、パトリック・ザラが保有する地球のコーディネーターを使った実験施設の物を加工して得られたものだった。

 

「人間の恐怖を消す、従順にする、反応速度を上げる・・・我々コーディネーターがこうもしなければ勝てぬとは、我々の主張の根幹にかかわるな・・・」

「ご冗談を」

 

無論、本気でそんなことを思ってはいない。どうしてもムラのある兵士の実力水準を引き上げ、より確実に勝てるようにするためだ、とパトリック・ザラは本気で信じている。そう、コーディネーターが絶対的に勝っているわけではないと、考えが至らないのだ。

 

「それで、議長。ご子息が面会を希望しておられますが・・・」

 

一瞬、パトリック・ザラの目に逡巡の色が走った事を、クルーゼの感覚は見逃さなかった。

 

「・・・通してくれ」

「”ジェネシス”の施工の進み具合を見ねばなりませんので、私はこれで」

 

くるりと回れ右をして扉を向いたクルーゼの口元は、かつてないほどの喜悦に歪んでいた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ザラ議長、本日は質問があって参りました」

「・・・内容は、分かっているつもりだ。掛けなさい」

 

椅子に腰を下ろしたアスランは、正面に座る父の顔に何らかの決意を見た。

 

「今日は・・・お前の父として言っておかねばならないことがある。お前の母、私の妻・・・レノア・ザラのことだ」

「母さんの?」

「お前に教えていない事実がある・・・レノアは・・・ナチュラルだったのだ」

 

今、世界で最も強くナチュラルを敵視する人間の一人とは思えない告白に、しばしアスランは固まった。

 

「まあ、信じられない気持ちも分かるが、ともかく話を聞くんだ」

 

コーディネーターが生まれ始めた、黎明期。大西洋連邦にて、パトリック・ザラは生まれた。

 

「あの頃は、コーディネーター黎明期ということもあり、そしてジョージ・グレンの活躍によって世界は二分されていた・・・」

 

秘密裏にコーディネートされ誕生したパトリックは、英才教育を受け、常人の何倍もの能力をもって成長していった・・・

 

「そして、我々コーディネーターが成長し、種としての違いが発露した時、迫害が始まったのだ」

 

迫害は凄絶を極めた。仕事を追われると思ったものが就職を制限しようとし、経済活動から弾かれる。芸術家からは疎まれ、アスリートとしても干され活躍の場を与えられない。「作られた」才能に多くの人が忌避感を抱き、自分の価値を証明するためにコーディネーターを貶めようとした。

 

「我々が生まれた事に何の罪があったというのか・・・そうして社会から爪弾きにされ、いよいよ命も危ういかと思われた時、私を救ったのがレノアだった。それをナチュラル共は!」

 

異分子に混ざる物は異分子だ。社会の大きな声は、個人の主張を撥ね退ける。パトリック・ザラというコーディネーターを庇うものは社会に歯向かう異分子として、より凄絶な迫害を受けた。

 

「私たちは、一つ所に留まることが出来なかった。そうして、各地を放浪している時に、このプラントを作るという大事業に携わることになった」

 

一足早く成人し、一代にして大企業を作り上げたコーディネーターがいた。その男はせめてコーディネーターが世界に溶け込む足掛かりになればと、L5ポイントに建設計画が立ち上がったスペースコロニー、プラントに多額の出資をし、作業員としてコーディネーターを雇い入れたのだ。

世界から集まった多くのコーディネーターは打ち解け、互いの夢を語り合った。我々の国さえあれば。コーディネーターが安心して暮らせる理想郷が!

そうして、完成も間近となった頃。遂に事態は抗争へと発展し、数の上も単体性能も有利だった独立派のコーディネーター達は安住の地を勝ち取ったのだ。

 

「私は安堵した。これで、レノアと平穏に暮らせるのだと・・・それを・・・それを奴らが・・・そうだ!いつもナチュラルが私の幸せをすべて奪う!壊す!生かしてはおけぬ!存在を許してはならない!地球でのうのうと暮らす者共全てだ!

そう、地球に巣くう全てが私の敵なのだ!」

 

狂っている。それが、アスランが抱いた最も大きな感想だった。愛する人を殺されたから、だから力に頼り、プラントを守らんとすることは自分と同じだ。だが、これは余りにも・・・

 

「そして、これも必要な事なのだ。許せ・・・いや、許さずともよい。アスラン」

 

いきなり、視界が歪んだ。みるみるうちに見えるものが暗くなっていく。

 

「まさか、そんな」

「まだ意識があるのか。流石は私の息子だ」

 

父さん、貴方は間違っている。その言葉がアスランの口から漏れることは無かった。




前回よりちょっと短くパトリックさん外道モード。
補足を入れると、コーディネーター感情の実際の変遷は

最初期:混乱
黎明期:混乱
中間期:排斥
晩期 :安定
現在 :共存

です。だいたいアズラエル財閥のおかげ。(ブルーコスモスはコーディネーターの新規生産を禁止。財閥は働き口を用意した。なおブルーコスモスに入っているテロリストもいるが見つかり次第監獄行きとなっている)
最初期に生まれた年代は反コーディネーター感情が最悪だった時代に育っているので、かなりナチュラルを敵視している。
中間期に生まれたコーディネーターは、法整備が追いつき感情がかなり和らいだ年代に育っているのであまり浮いていない(プラント育ちを除く)。

そして、評議会の派閥が少しばらけて再構成されました。その辺次回で詳しくやれたらと思います。

小ネタ
某所にて
「ギル、ラウは何で帰ってこないの?」
「なんでも遂に願いが叶いそうらしいよ」
「ギル、なんで女物の服があるの?」
「タリアが置いて行ったのさ」
「ギル、なんで昨日の夜タリアと裸で」
「さあお薬の時間だ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

45話:命捨てるは誰が為

そういえば前々回日刊ランキング3位まで行ってましたね。正直ビビってまともに話が浮かばなかったという・・・
でも応援ありがとうございます。
前回はなんだか作者としてもうーん?みたいな出来だったもので先々週から書いては消して書いては消して・・・

それと、とある方にやんわりと指摘を頂いた時に気が付いたのですがコメント付き評価、前回初めて見ました。率直に言うと泣きそうです。ありがとう、本当にありがとうございます!

追記
設定にツッコミをもらいましたので少々話が変わると思います。今日の夜12時に変更を加えますのでお暇な方は確認どうぞ。

追追記
更新しました。


朝。マスドライバーにセットされたアークエンジェルは、否、連合とオーブの合同部隊が出発の時を待っている。そんな最中、オーブで建造された宇宙艦、クサナギでは、親子(より正確に言うなら親父)による寸劇が繰り広げられていた。

 

「父上・・・カガリはオーブの脅威を払うため、行ってまいります!」

「カガリ・・・カガリよ・・・おお、我が娘はこんなにも立派に・・・ウウゥ」

 

管制官たちも、最高責任者であるためにいくら茶番とは思っていても何も言えずにいたが・・・

 

「はい、時間が押していますのでそこまででお願いします。はい、拘束完了・・・発射時刻まで開放しないでね?」

 

合理性の塊であるシモンズ主任が、スケジュールが押しているからとSPに拘束させて連行させた。

 

『アークエンジェル、発射シークエンスに入ります。乗員は耐G姿勢をとってください・・・』

 

月の位置、地球の角度、気温、湿度、エトセトラ・・・いかなる幸運か、今日は打ち上げにもってこいの条件がそろっていた。もう一世紀以上も前から、世界では宇宙への打ち上げが行われている。そうして現在という技術の最高到達地点まで欠片も変わらないのは、体に懸かる慣性力だ。

 

「なあキラ」

「なんですかムウさん」

「覚悟、決めときな」

 

パイロットが詰め込まれた発射待機用の垂直ベッドで、ムウが差し出したのは、耐G訓練で使用するマウスピースだった。

 

「これって・・・」

「向こうで彼女と会った時?舌が無くちゃ話せないだろ?」

 

顔を赤くしながらも素直に受け取ったキラを、ムウはによによとした顔で見ている。反論しようにももごもごと話せないキラを見て、今度は計画通り、と悪い顔になった。

 

と、丁度ここで打ち上げが始まった。最初はゆっくりと、次第に強く、壁に押し付けられる。

 

「・・・!・・・!!」

 

声を出していなくても、キラが何か言いたそうだということは分かる。ただ、キラ同様に全パイロットが声を出せるような状況ではなかった。

そうした凄まじい加速度の中でも、アークエンジェルがレールに沿って緩やかに曲がるのが感じられ、遂に三半規管が上を向いたことを知覚し、加速が終わった。

 

キラは口に手を入れてマウスピースを外した。

 

「これ、もう飛んでます?」

「ああ、飛んでいるな」

 

海上を航行していた時とは違うゆらゆらとした不安定さが、いままでの低空飛行とは違うのだと感覚に訴えかけてくる。三人そろってブリッジへ向かうと、ノイマンを除いた全員がゆったりと寛いでいた。

 

「無事終わって良かったですよ。後はオートパイロットに任せるだけでいいんですよね?」

「良くないぞケーニッヒ二等兵!オートパイロットじゃ!操縦が!できないだろう!?」

 

打ち上げは無事終了し、月と地球の間を真っ直ぐに、しかし弧を描いてアークエンジェルは昇っていく。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

月の重力が支配的に変わり始めた地点で、アークエンジェルは月の目的地に向けて()()()()()

ふとキラがレーダーを見てみると、後方にはしっかりとクサナギが付いて来ているらしい。顔を上げてみると、目の前の窓には一面の工業地帯が映っていた。

 

「現在、地球圏の工業はその大部分が月へ移行している・・・質量の影響はあるが、地上へ落下し難い分建築コストも安くて済むというわけだ」

 

艦長の言う通り、月には地球圏の工業がかなりの割合で存在している。それは、コズミックイラの暦が使われ始めた頃、地球外での建築ノウハウが実用段階まで達し、資材を運ぶコストが建築コストの差分と月の土地代の合計を下回り始めた時に始まった。

月でしか作れない特殊な合金もある。アストレイのフレームもその一種で、通常、混ぜ合わせた時に、軽い金属と重い金属は分離する。だが、月では地球の6倍金属の重さが影響し難いため、地球よりも滑らかな「偏り」を実現できるのだ。そうして生まれた偏りがある硬度は、金属に今までにない強さを与えた。

 

キラが眼下の工場で作られ続ける製品に思いを馳せている間に、アズラエル財閥の所有する宇宙港が近づいてきた。ここ、アズラエル財閥の宇宙港の桟橋は最新式で、宇宙と生活スペースが特殊なゲルの流れで遮断されており、時間をかけて空気を出し入れする必要が無い。

無駄が無く素晴らしいと、アズラエルは案が出た時直ぐに採用した。

 

透き通ってはいるものの、表面形状から歪んで見える向こう側には既に一隻の船が係留されていた。岩山をくり抜いて作られた港が、薄く青に光る口をぽっかりと開けて待っている。

ブリッジからはゲルの遮断幕を通り抜ける時、厚さが1メートル近くもありそうなゲルの断層が見て取れた。

 

完全にアークエンジェルがゲルを通り抜けた後、ブリッジに通信のコール音が鳴り響いた。

 

『ようこそ、アズラエル財閥第七工業地帯へ。アークエンジェルの皆様は三番ドックへ停泊してください』

 

今時に珍しく画像なしの通信はどうやら人工知能が発信しているらしい。ノイマンは歓喜の表情でミリ単位で着艦して見せると鼻白んでいたが、艦長に頭を叩かれて考え直すよう言われていた。横のムウが「まさか怒られたくてわざと」と呟いているのを聞いてしまったキラは笑いを押さえるのに必死でそちらは聞いていなかった。

 

数センチ単位で着艦したアークエンジェルから降りた乗員たちを出迎えたのは、秘書と(おぼ)しいスーツ姿の麗人だった。

 

「改めまして、ようこそ。こちらで理事がお待ちです」

 

後ろでヒソヒソと、「あんな美人が秘書!羨ましいー!」とか、「なに鼻の下伸ばしてるの!」などなど聞こえてくるが、キラはあの若さで秘書なんてきっとすごく優秀なんだな、と直接アズラエルに面会した人間特有の感想を抱いていた。

秘書は、ざわつく乗員を完全に無視し、短く「どうぞ」とだけ言って踵を返した。美人がやればなんでも絵になるらしく、一挙一動に小さくざわめきが上がる。正直少々うざったいが、ともかく全員が動き始めたため着いていく。

 

斜め下に伸びる動く歩道を下ると、突然目の前が開けた。アークエンジェルの個室より五倍は広い部屋で、アズラエルが窓の向こう側を黒いどう見ても不透明なバイザーを装着して見ていた。

 

秘書が部屋の壁に設置されたボタンを押すと部屋にジリジリと音が響き、アズラエルがバイザーを外しながら立ち上がった。

 

「失礼しました。皆さんようこそ私の城へ、さ、座って下さい」

 

アズラエルが何やらリモコンを押すと、ほとんど何も置かれていなかった部屋のタイルが割れ、丁度乗員が座れる数の椅子がせりあがってきた。驚く乗員を満足そうに見ながら、アズラエルはバイザーに繋がれたマイクに話しかけた。

 

「あー、君たち、そろそろ戻って来なさい。作戦行動を共にする相手とコミュニケーションをとるのは大事ですからね」

 

返事が微かに響いて、窓の向こう側に三人の人間が現れた。ハンドサインで入ってくるように指示を出すと三人は窓の端に消え、扉から入ってきた。

 

許可証持ち(ライセンサー)、オルガ、クロト、シャニ入りますよー」

「ええ、おつかれさま」

 

同時に、三人組の後ろから給仕がカートを押して入ってきた。

 

「アメリカ人ですのでコーヒーで歓迎しましょう・・・かの砂漠の虎ほどの味は保証しませんがね」

 

砂漠の虎はアークエンジェルがアラスカに到着した時点で軍に引き渡され、先日の基地崩壊からも生還。現在はパナマの収容所に収監されているが、その戦功と気さくな性格から看守ともそれなりによくやっているらしい。

 

「さて、時間も有りませんので手短に。ギルベルトくん?」

「はい」

 

以前キラと少し話をした執事が、手早くアークエンジェルのメンバーに書類を手渡していく。

キラの書類を覗きこんだトールが一言。

 

「あれ?俺のと内容が違う」

「ああ、役職ごとにスケジュールは違いますよ?」

 

連合の要人と早くに協議を済ませ、秘書に分業させて全ての役職のスケジュールを作成させたらしい。

 

「シミュレーターを用いた合同演習・・・休憩、食事含む・・・出発・・・これだけですか?」

「これだけとは言ってくれますね。まあ片手間で作らせたことは否定しませんが、今回の訓練はかなりのものに成ると思いますよ?」

「確かに、その通りですね」

 

聞き覚えのある声に、キラはきょろきょろと辺りを見回し、オーブの軍服を発見した。

 

「レドニル・キサカ、オーブ宇宙軍一佐。ただいま到着いたしました」

「遅れてすまない、理事」

「いえ、時間通りです。座ったままで失礼。そちらへお掛けになってはいかがでしょうか、アスハ代表代理どの?一佐も」

 

立ち上がって首を垂れるアズラエルに、では失礼して、と二人は新たに出現した椅子に腰かけた。

 

「話は中継で聞かせていただいておりました。わが軍のパイロットも含めた合同軍事演習・・・の、シミュレーションというわけですな?」

「その通り・・・ただし、慣性まで再現された高級仕様品ですのでそれなりの臨場感は出るかと・・・」

 

先に入ってきた三人組のパイロットたちは、あれか、といった感じで顔を見合わせている。事実、先ほどまで彼らが使っていたものがそれだ。

 

「あー、それと、スケジュールに休憩とありますがそれは絶対です。もし私の方で休憩になっていないと判断しましたら・・・防衛設備の麻酔ガスで眠っていただくことになりますので」

 

冗談というには目に込められた意志が強すぎる。

 

「では、作戦を開始しましょう。そこに書いてある通り、γ線レーザーの性質上戦艦を総動員しての物量作戦は効果が薄いでしょう。私は無駄なことは嫌いですし、要は君たちの活躍に懸かっているというわけです・・・失敗が何を意味するかは分かりますね?

機体の損失、人材の損失、人類(顧客)の大幅な減少、投資の債権回収失敗を意味する最悪の結果だけが残ります。失敗の無いように、各自最善を尽くしなさい。以上、解散!」

 

随分自分勝手な事を言っていたような、と首をかしげたが、とりあえずやることはやるべきだろう。ちらりと見たスケジュール表の裏面には、スケジュールにおける必要性が簡潔に纏められていた、が、キラは敢えて見なかった。あれほど立場のある人間が、自分に頭を下げた時のことが忘れられなかった。無駄なことは何一つ無いのだろう。

 

「キラ、置いてくぞ」

「あ、ムウさん、すいません」

 

案内に置いて行かれそうな自分を待っていてくれたらしい。ありがたいと思った。

 

「スケジュール、なんて書いてありました?」

「遂に機体がもらえるんだとよ」

「訓練が報われる時が来たな」

 

ムウも待たれていたらしい。曲がり角に刹那が立っていた。

 

「お前でも冗談を言うんだな」

「人間だからな」

 

本人のみ知ることだが、酷いブラックジョークだと刹那は思っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

グリニッジ標準時刻、10時。全員が港の桟橋に集合していた。訓練は内容こそ濃かったものの、一時間に一度見回りに来る理事が途中でストップをかけたため疲労がたまる前にお開きとなった。

集まった全員の目には、抑えられないエネルギーが迸っているようだ。それは十分な休息に拠るものでもあり、全員が共有する世界を救うのだという目的意識にも依るのだろう。

古来から将があの手この手で求め、作り上げてきた錦の御旗、大義名分。最初から用意されているようなものだ。正義のためならば、と、人は死力を尽くす。

 

「ええ、休憩を強制した甲斐があったというものです。では出航しましょう」

 

ムルタ・アズラエル大西洋連合理事は、財閥が建造したらしいアークエンジェル級二番艦、ドミニオンに乗り込んだ。

カガリ・ユラ・アスハ代表首長代理はオーブの技術の粋を凝らしたクサナギに乗り込んだ。

ナタル・バジルール艦長は、最新鋭にして歴戦の不沈艦、アークエンジェルに乗り込む。

 

『全艦発進』

 

力強いながらも、どこか感情の抜けたアズラエルの声が三隻の戦艦に響いた。全艦が見事な反転を見せ、出口へと舳先を向ける。オーブの時とは異なり、計算された角度に向いた出口は、重力まで考慮した最短航路を指している。

 

「オートパイロットには負けないさ!」

「イーゲルシュテルンの制御は任せてください!」

 

乗組員の気鋭も十分だ。斯くして、三隻の船は放たれた矢のように月を離陸した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

プラント支配圏・ヤキンドゥーエ宙域にて。

 

道中は、今までの攻勢は何だったのかというほどに静かだった。罠を警戒して最大限注意しながら進むも、これといって障害は無く、不気味なまでに静かな旅路は基地の直前まで続いた。

 

「これをどう見ますか?」

「どうもこうも・・・いや、遂に頭がおかしくなっちまったていう可能性もありますね」

 

艦長のつぶやきに、チャンドラーがため息をつきながら答えた。何の先触れも無く、ヤキンドゥーエの防衛ラインにそれは現れた。

 

「どうしたんだキラ?行かないのか?」

「いや、敵の部隊にちょっと違和感があって・・・」

 

キラにはそれ以上感覚を他人に説明できなかった。何でもないと言って発言を取り消し、パイロットスーツを着たままここまで来たために格納庫へと直行する。

 

「キラ・ヤマト、エールストライク発進します!」

『ムウ・ラ・フラガ、ガンバレルストライク・改二、出るぜ!』

『ソラン・イブラヒム、エクシア・アストレイ目標を駆逐する!』

 

三機は散開して、オーブ部隊の戦闘を守る。離れ際に、刹那からキラに一つ伝言が渡された。

 

『キラ』

「なんですか?」

『今回の敵は何かおかしい。気を抜くな』

 

ソランさんがそんなことを言うとは。信じられないという気持ちと、違和感の答えのようなものに触れられた気分がぶつかって、キラは拳を握りこんだ。

 

だが、疑問を整理する暇もなく、周囲は狂乱の戦場へと変貌していく。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

絡みつくような殺意と迫る手からするりと身を躱し、刹那・F・セイエイは今度こそ間違いなく敵の「脳」を刺し貫いた。

 

「厄介だな・・・」

 

多少の欠損では怯みもせず、コクピットを半壊させたとしても尚迫りくるZAFT防衛軍に、刹那が漏らした一言がそれだった。月で合流したアズラエルの部下、オーブの防衛軍も奮闘しているが、敵にはおおよそ人間らしい感情が感じられなかった。他の感情が混ざる余地もない、透明ですらある純粋な殺意。

複数の敵機に組みつかれ、自爆で吹き飛ばされた僚機をみて、思わずキラに確認を取る。

 

「アストレイ部隊、下がれ!キラ!ディスターバーランチャーは無事か?」

『遂に僕の安否は確認しなくなりましたね・・・はい、無事です。フォビドゥンのシールド、すごいです・・よっ!』

 

声は平静だ。だが、刹那にはキラの疲労の色が見える。

 

「・・・目標は近い。気を抜くな!」

 

ストライクがフォビドゥンの背後からビームを放ち、フォビドゥンがゲシュマイディッヒ・パンツァーを利用した軌道制御で周囲の敵に叩き込む。雲霞のごとくだった敵影も、徐々に減ってきていた。

 

こちらも被害は大きいが、遂に戦果と呼べそうなものが目に入りだした味方の士気は落ちていない。敵方もそう判断したことだろう。だからこそ、このタイミングでそれは来た。

 

『なんだアイツは!?はやすぎ・・・る・・・』

 

あっという間に、味方の識別信号が四つ途絶えた。アストレイのパイロットに知る顔がいないことを確認して少し安堵しつつ、ビームライフルを消えた僚機のあった方向へ構えなおす。

 

「シャニさん?4時、15時の方向にです」

『あの赤いやつ?』

 

カメラが映し出したそこには、血のように赤いモビルスーツが浮遊していた。その両手の甲と足の側面には、輝く何かが懸架されている。その装備が武芸者の具足のようなものと判断したキラは、フォビドゥンにランチャーを預け、同時にアタッカーとサポーターのポジションをスイッチした。

 

「あれは・・・やばそうですよ」

 

最早ベテランと言って差し支えないパイロットであるキラは、その隙の無さに嘆息していた。

構えの隙は、全てあの輝く盾で守れる部分に集中している。ならば、それは相手の形を崩すためにある隙なのだろう。攻める隙を見つけられずただ守りを固めて佇むキラに、赤い敵は勢いよく加速した。

右の握る手が大きい?暗器だろうか?

一合目の短いビームダガーの突きを角度をつけた盾で弾き、膝蹴りを見舞おうとした敵の太ももを蹴り足で抑えて機先を制したキラは、つま先から伸びるビームサーベルを半身になって躱し、相手の特性について頭の中でまとめ始めた。

 

動きの特徴を今まで見た例に強引に当てはめると、ムウが最も近い。恐らくは軍隊格闘をモビルスーツで再現しているのだろう。三合目、潰された蹴りから繋がれた背撃を右手をクッションに吸収し、その動きにあまりに淀みがないことに驚いた。キラはOSを自分に合わせて一戦一戦でカスタマイズを続け、意図的に動きの型を選び続ける事で操縦しているが、目の前の敵は似たような動きこそあれ同じ動きは無い。

クッション作用を利用して離した距離をさらに維持するべく、右肩付近へ三点射を入れる。敵は、二発を躱して最後の一発を盾で弾いた。そのまま体を沈めた動きで近くの残骸を蹴り、ストライクへ再度接近する。

 

今度は、左に通常より太く見えるビームサーベルを装備している。シミュレーターで見たフリーダムの解析結果を思い出した。

 

「一発でシールドがダメになったアレか!」

 

高出力ビームサーベルの斬りつけを、腕を押して逸らし、腕の付け根を蹴り飛ばして再び距離を取る。

 

執拗な目的への追従、動的なマニューバの生成、センサと一体化したかのような反射神経。敵機は人工知能が操縦しているのかと考えたキラだったが、事実はそれ程軽くは無かった。

 

敵機が迫り、再度向けられたダガーを払おうと配した左手を、ダガーを捨てた右手が人体ではありえない角度の手首の曲げに捕らわれた。そうして、敵機はつかんだ左手を引きながら右足で強烈な蹴りをストライクの腹部へと当てた。

 

だが、キラを襲った衝撃はその前に来ていた。接触回線で流れ込んだ声を、キラは聞いた。その言葉の内容に比べ、あまりにも薄い感情。聞き覚えのあるその声。

 

『俺は敵を討つ・・・父上の(テキ)を討つ。母上の(カタキ)を討つ』

「アス・・・・ラン・・・?」

 

直後、コクピットが後方にブレた。前方に揺さぶられていた体を急速に振り戻され、キラの意識はブラックアウトに近い状態へ落ち込んだ。後方の斜め上からキラを守るように発射されたビームと、それに釣られてターゲットを変えた赤いモビルスーツは、キラの目には映っていなかった。

ただ、目には映らずとも脳は少し働いている。キラの走馬灯が色濃く映し出したのは、つい先日の事だった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「なあ、お前はどうして戦ってるんだ?」

 

聞く人によっては深遠な質問と取るのかもしれない。ただ、キラには目の前の男、オルガ・サブナックがそのような遠大な意図は持たず、ただ頭に浮かんだ疑問を口にしただけなのだろうと判断して答えを口に出してみる。

 

「最初は巻き込まれた友達を助けたかったんだけど・・・今は、いや、今も同じだと思う。地球を守ることで結果は同じ、守ることになるでしょ?」

「おお・・・立派なことだぜ」

 

いつの間にか大きなものを守るようになっていたな、と今更ながらキラは苦笑する。

 

「守るために、か。育ちが良いんだな」

「?」

 

同じように笑っていたオルガは、ぽつりとそう呟いた。キラは、発言の意図がつかめなかった。もちろん、今日入港した基地で出会い、高々1時間。シミュレーターで合同戦闘訓練を一度や二度重ねた程度で分り合えるほど人間は簡単に出来ていない。だから聞く。

 

「どういうこと?」

 

聞かれるとは思っていたのかいないのか。にやりと笑ってオルガは自分たちの過去を語った。

 

「俺は北米のスラムで育ったんだ・・・あそこは子供には住みづらくてよぉ、まあいわゆる腕力が全てってやつさ」

 

それは、キラが暮らしていたコロニーとはまるで違う一つの修羅道の話だった。一つのパンをめぐって発生する殴り合い、持ち出されるナイフ、拳銃。娼婦の母に育てられた彼は、食事こそ飢え死にしない程度には与えられていたものの、外では例えパンの欠片でも持っているのを見せるべきではない。お前はまだ小さく弱いのだからと聞かされて育った。

幸か不幸か、どうにかスラムを一人で生きていける程度に大きくなったところで母は病に倒れ、帰らぬ人となった。多少恵まれた食生活を送っていたおかげか、人より腕っぷしが強かったオルガは喧嘩屋として成り上がり、それでも町の外では生きられない人間だった。

数年後、スラムは都市開発で消え去り、どうにか狭くなった裏社会で生きていたオルガも、へまをして盗みの最中に掴まってしまった。

 

そうして、アズラエルに拾われて今に至るわけだが・・・

 

「守るってのはつまり守れる物を持ってるってことだろ?」

「考えたことも無かった・・・」

 

此処に一つの価値観の崩壊を見る。守るというのは持つものによる言葉であると。ならば。キラはこの人物に聞きたいと浮かび上がった一つの疑問をぶつける。

 

「昔の友達が敵になったら、どうしますか?」

「殺すさ。未来よりも過去よりも今が大事だからな」

「貴方は・・・」

 

今も持っていないのか?そんな勢いだけで生まれたような問をぶつける前に、外に出て行っていた刹那、ムウ、クロト、シャニが帰ってきた。

 

「さーて作戦のシミュレーション再開すっかぁ?」

 

おそらく、ムウは部屋の空気を敢えて読んでいない。ただ、二つ目の問は言わなくてよかったと心中で冷や汗を流すキラにとっては有難い提案だった。

 

「そうですね、休み過ぎましたし」

 

オルガは少々怪訝な顔をしていたが、気にしないと決めたらしく立ち上がってシミュレーターの前に戻った。一日を置かずに予定される作戦行動に、その後再開された訓練はまたもや一時間ほどで終了し、全員が宛がわれた部屋の高級な寝具でゆっくりと体を休めた。

 

ただ、キラはオルガの答えを何度も反芻していた。前もその前もその前も、アスランを討たなくて済んだことに内心胸を撫で下ろしていた。だが、もしアスランの命を天秤に懸ける時が来たのなら?

やる、やらない、やる・・・ぐちゃぐちゃと、

 

そして作戦行動開始時刻。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ここだ。夢だと気付いた時に目が覚めるように、キラの意識は主観から切り替わった。

カガリに手を握られ、私も頑張るから、と。そう言っていた。

 

―爆音が耳に入り始めた。

 

カガリを死なせたくない。

 

―起きろよ、と、感情の平坦なシャニの声が意識を失っていたことを知らせる。

 

アスランを放っておけばどうなる?

 

―どうやら思った以上に時間は経過していないらしい。

 

決めるしかない。

 

―今、キラの頭でスイッチが切り替わる。どうしても順位がある。今それはキラの危機管理と結びついて、一つの判断を下した。

 

カガリを守るために、僕はアスランを殺すのか!

 

現実に帰還したキラは、両手の武器をビームサーベルに持ち替えて電源を落とし、全身の武装をアイドリング状態へと引き上げた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

アスラン・ザラは夢を見ていた。

 

体は固定されて動かないが、意識の半分はモビルスーツを直接操っており、もう半分は父の記憶を追体験していた。

 

半日かけて頭に刷り込まれた疑似体験。父親の怒りが、まるで自分自身の怒りのように感情を突き揺さぶる。頭に直接送り込まれた情報は、目の前の機体を識別信号からナチュラルと判定。士官学校で体に叩き込まれた体術が、直接モビルスーツに出力されて敵のコクピットを穿つ。

 

そうだ、母さんの敵じゃないか。父さんの敵だ。じゃあ殺す。ナチュラルは殺す。ナチュラルに組する裏切り者も、全て、全て・・・

 

見覚えがあるような白くて赤くて青い敵がいる・・・あれは誰だったろうか。頭がもやもやする。そうか、敵か。じゃあ排除しなくては。

目の前の憎きブルーコスモスのテロリストは卑劣にも二人組で同胞を攻撃している。それはいけない。直ちに消さなくては。

 

腕を突き出してジャブを防がれた。腕を回して掴んだ。ここで有効なのはこの卑劣漢に罪を叩き込む鳩尾への蹴りだ。父の声がそう呟いた気がした。

目の前の人間は少しはやれるようだが、母上の敵を討つために鍛えた俺の敵じゃあない。父上の言う通り鳩尾に蹴りを叩き込んでやった。

 

後ろに控えていた男がこちらへ撃ってきた。守る?奪ったお前らが?ふざけるな!

 

お前だ、お前が、お前はそんな資格もないのに戦う!

 

手の甲に着けた防弾シールドで弾を弾きながら、懐に潜り込もうと加速する。

ああ、背中にジェットでもついているかのように身軽だ。生身だなんて信じられない。

 

右、下、ああ鬱陶しい・・・全然近づけない。

ああ、さっき罰を与えてやった男が立ち上がる。そうだ。俺は奴を倒さなくちゃいけないんだった。あいつが一番の敵だ。父上もそう言っている。ああ、早く、早く!

 

ああ?なぜ武装を解いたんだ?まあそんなことは関係ない。ナチュラルの味方であるというだけで罪だ。もう一度立ち上がれなくなるまで殴りつけてやらなくてはならないんだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

夢から覚めることは必ずしも幸せだろうか?キラは、意識の覚醒によって全身にジンジンと響く痛みを思い出した。これは短期的な痛みだろうと当たりを付けて、迫るアスランに対して構える。

 

右手でレバーを引いて、近接格闘用のモードを切り替える。

 

奇しくも、ストライクの採った戦法によってストライクは無手となったため、相対する二機は赤と白のペアのようだった。

 

「ごめん、アスラン。もしかしたら僕は前から分かっていた」

 

目の前に迫る足を先に置いた突進を、ストライクの足裏が柔らかく吸収し、まるで磁石のように張り付いた。

 

「僕は、周りの人間に順位をつけていて」

 

何も持っていない右手を。鉄槌のようにアスランの乗るモビルスーツの脇腹に叩きつける。

 

「今、こうして明確な意識で選んだ」

 

叩きつけた拳もまた、磁石でもあるかのように張り付いて、ストライクは右腕を軸に反転した。右足のつま先で、ビームサーベルの柄を蹴り上げた。膝部分で打ち上げられたビームサーベルは、装甲越しの信号で発振し、身をよじった敵の腹側を焼き削った。

コクピットに直撃はしなかったが、モビルスーツは動かない。それで、例え生きていたとしても・・・

 

「僕には今、殺意があった。これで、僕も人殺し、かな」

 

動かなくなったモビルスーツは小さく爆ぜ、コクピットからワイヤーでつながれた物体を吐き出した。拡大された画像から、ワイヤーがパイロットのどうやら首筋に直接刺さっていることと、その顔を確認したキラは、小さく嗚咽した。

 

『生きてる?』

「ええ・・・ランチャー、もう一度僕が持ちます」

 

もうすぐ、目標に先陣が触れる。




過去最長更新いたしました。
いや、深夜テンションでしたね。ちょっと後半が鬱です。まさかここで死ぬということは・・・そうです、あの人もラスボスです。はい、あの人「も」。

単語だけの説明なしが幾つかあったのでここで説明を。

ムウの新型
キラの戦闘データをムウのシミュレーター記録に基づいて抽出し、組み込んだストライク2号機。フレーム構造はアストレイからの一部フィードバックが無いため旧型同様だが、各部の耐久性、反応性、耐損耗で言うならグフイグナイテットより強くね?というレベル。
付属の専用ストライカーパック、ガンバレル改二は財閥が買い取ったガンバレルをリニアガンから小型電子収束砲に換装し、ランチャーパックの発展用に開発された新型バッテリーを内蔵したワンオフパック。ガンバレルは全部で四つあり、衝突させる等の使用法も思案されたためTPS装甲で覆われている。四つのガンバレルを同じ方向に向けると、フリーダムと同等の加速を発揮する(宇宙限定)。

ZAFTの新型
いわゆる鉄血の阿頼耶識に、加えて、パイロットには薬品と脳内信号への電気的干渉による洗脳で「パトリック・ザラ」の経験を植え付けられている。人体を動かす感覚でモビルスーツを操縦する上にほとんどが兵士としての教育を受けているため、並みのパイロットでは到底及ばない戦闘力を発揮する。
原作での「生体CPUは人間ではない」がプラント側で実行された場合はこうなるのではないかと予想。
外見はまんまゲイツ。

赤いモビルスーツ
特に試験成績が良かったアスラン専用機。肘近くと膝近くにある発振器からビームシールドを出す近接格闘機。抜き手がやばい威力で、PS装甲以外は一発で貫ける。
地上で戦うようにOSが出力を調整して再現することで、本人の格闘術を活かしている特別仕様。
イージスとインフィニットジャスティスのファトゥム(後についてるアレ)無しを足して二で割った感じの外見。もちろん核動力。

ディスターバーランチャー
財閥の月基地で新型の量子通信ユニットを開発中に発見された、電磁波を遮断するニュートリノの一種を発生する装置が弾体として組み込まれている。コズミックイラのモビルスーツはレーザー核融合で発電しているため、レーザーによる核融合の維持と電力の取り出しを阻害することで核エンジンを停止させる。(実用的な技術でこれ以外はあり得ない、とされているためのメタ)
今回の作戦では装置を四つ同調稼働させ、電源もパワーエクステンダーを利用しているため超高出力。
γ線そのものを阻害するため、γ線レーザー発射装置(ジェネシスのプロトタイプ)の機能停止に利用される事となった。勘の良い人はもしかして?となるかも。

磁石でもあるかのように・・・
武術の応用。合気に代表される力の利合で、そう錯覚させているだけ。なまじ人体と思って操縦されていることを逆手に取っている。モビルスーツのマニュアル操縦でやるのは人外の証。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

46話:二つの変化

深夜に作業を始めたので何とか終わりました!
またゲテモノ作っちまった気しかしない・・・

アスランに救いは無いのかと思いました?
そうでもないかもしれないしそうかもしれない・・・もっともこの話でどうでも良くなるかもですが。

先週酷い目に会っていたあの人の視点から開始です。


それは正に、夢の場面が変わるかのような緩やかな変化だった。

ああ・・・俺はどこにいたんだろうか。まだ夢の中にいるような浮遊感に体が揺れる。

 

・・・段々と記憶が戻ってきた。さっきまでは何処か知っているのに知らない場所で戦っていたが、今ははっきりとわかる。ここはヤキンドゥーエ宙域だ。頭の中に直接浮かんでくる宙域のマップによると、どうやら敵の前線の内側に入り込んでしまっているらしい。近くに連合の戦艦がいる・・・

 

もう全てがどうでもいい、そんな虚無感に覆われて宇宙を漂う。応戦しようと例え思えたとしても、網膜に投影された機体コンディションは全身が真っ赤だ。

 

戦艦があまりに何のリアクションも見せずに航行しているので何事もなく通り過ぎていくのだろうかと考えてしまうが、どうやら違うらしい。小さな作業艇が近づいてきた。

 

そうして、同時に二つの事が起きた。

 

微かに聞こえていた無線が途絶えた。そして、ヤキンドゥーエ基地から、輝く緑の粒子が驚くほど広域に飛散している。

アスランの目に、同じ色の光が映りこんだ。

 

「あれは・・・」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ヤキンドゥーエ宙域、試作γ線照射装置一次反射ミラー周辺にて。

 

地上からも暗ければ見えるほどに、色とりどりの閃光が散っている。連合にとオーブの合同部隊は、囲むZAFTのモビルスーツを、陣形を拡大したり縮小したりと繰り返しながら、潰されることなく目標に向けて前進していた。

 

「残弾はこれだけか!」

 

陣形の最外縁で敵を跳ね返し続けているのは、新しいGATシリーズに乗り込んだアズラエルの配下三人、アークエンジェルのパイロット三人だ。内側では、拡張バッテリーを装着したアストレイや合流を果たした数小隊のダガーが援護射撃を続けている。

 

『ああそうかい。まあ作戦上はあそこに辿り着いちまえば帰る前に死んでも問題は無いぜ?』

『冗談じゃない!』

 

幾ら予備のエネルギーと補給人員があるとは言っても、時間が足りない作戦故に多勢に無勢。しかも、想定されていたよりも敵が強い。いくら優秀とはいえ経験の差は大きく、エネルギーロスは大きかった。

 

『無駄口叩くな!後500!それで迎撃されずにキラさんのランチャーであのクソッタレ兵器を無力化できる!』

 

それは、Nジャマーの影響もあってかレーダーにモビルスーツとして映らないほど小さく、そして一撃で金属の装甲を貫く破壊力を持ち、何より技術と冷徹さを併せ持った狂人がその引き金を握っていた。

 

「なんで・・・味方の反応が減って」

 

続きが、オーブ防衛軍士官の彼の口から漏れることはついぞ無くなった。

丁度陣形が外側に展開しきっている時に、滑り込むように陣形の内側へ入った不可視の砲座は、さらに続けざま三機のモビルスーツを破壊した。

破壊と同時に、二人のパイロットが反応を示す。

 

「脳量子波だと!?」

「この感じ、クルーゼか!?どこに・・・!」

 

牽制のためか、はたまたいよいよ成就を目前にしたために舞い上がっているのか。彼を知る人は前者を思い、本人は後者を口にすることだろう。虚空から、黒いモビルスーツが出現した。

 

「私の夢、私の願い・・・あとはあれさえ!」

 

十一門のドラグーンがスルスルとモビルスーツ本体へ回収されていく中、ひと際大きな一つがストライクの構えるランチャーに向けて放たれた。

周りがようやく危機に気づき、ビームに仰天してキラを庇おうと遅すぎる行動を開始する中、ストライクは盾を斜めに構えビームを防ぎ切った。

 

「やはりあれが今回の作戦の要らしい・・・お前が私の邪魔をするか!キラ・ヤマト!」

 

周囲を取り囲む新型の内数機が、いきなり動きを変えた。まるで誰かが乗り移ったかのように、正確にストライクに射撃を始めたのだ。

もちろん、ストライクには一発たりとも当たらない。周囲に防御陣を組もうとしていたのか、集まっていた連動やオーブの新型をすべてコクピットを一撃で打ち抜きながら、クルーゼは目的遂行の助けになりそうなオブジェクトを探す。

 

「まずは母艦か」

 

思えば何度も辛酸を舐めさせられたものだが、今やこうもあっけない物か。飛ばしたドラグーンに急接近する小物体を感知したクルーゼは、ドラグーンに複雑な軌道を描かせるがなかなか食い下がる。小物体はモビルスーツにしては小さすぎる。動かす意思の大本を辿れば・・・

 

「お前か、ムウ」

 

足付きの前方には、シールドを構えたストライク・・・カラーリングからして今まで追っていたものとは別機体なのだろう。だが。間違いなく、わかる。私とお前だから分かる。

 

「なるほど、お前もあの男の息子だ・・・しかし、弱いな!」

 

装備されている僅かに四つのドラグーンもどきを見て、クルーゼは嘲笑した。更に数機の新型、ゲイツPに指令を出した。今度はビームクローを起動して四機が一気にストライクに襲い掛かる。

ストライクは何とか四機全てを打ち払い、プロビデンスにビームサーベルで打ちかかった。

 

『お前は・・・クソ、どうしてお前からオヤジと同じような気配がする!』

「ムウ・・・お前と私の因縁はあの世界樹攻防戦に始まった事ではないのだよ。すべてはあのアル・ダ・フラガの過ちなのだ

覚えているか?お前と私は、戦場を前に一度会ったことがあることを!」

 

接触回線で見えた仮面の無いクルーゼの顔を、ムウは見た・・・

 

『まさか・・・』

「そうだ!私こそはあの男のクローン!あのキラ・ヒビキを生み出す金のために作られた出来損ないだ!」

 

拮抗していた剣と盾の押し合いを、力を後ろへ流すことでストライクの姿勢が崩れた。そして、流れた体をへし折る勢いで膝蹴りが叩き込まれる。

 

「お前が動かすその機体・・・お前だけの力では到底実現できたものではないな?」

 

確かに、ムウは空間認識能力と12Gに耐える強靭な体を持つが・・・

 

「ははは!あの男が失望するのも無理はない!普通に生まれた息子の方が失敗作とはな!」

 

なんとか姿勢を立て直したストライクにもう一発足蹴りを繰り出して吹き飛ばした。そろそろ消してやろうと構えたビームライフルに、吸い込まれるようにビームが命中した。

 

「あの男か!」

 

それは、間違いなくあの何度も足付きを助けた、あのジンのパイロットである。こちらにも、クルーゼには確信があった。コーディネートされただけの人間では及びもつかないその技術。流れ込んでくる、こちらを排除しようとする鋼鉄の意思。

私が憎む本当の人類そのものだ。

 

「消えろ!」

 

ムウに回さず充電を済ませておいた小型ドラグーンを、八機。半分をビームスパイクにして打ち込む。

 

「やはり凌ぐか!」

 

ムウならばこれは凌げなかっただろう。一息に四つのビームスパイクを切り捨て、檻を形成するように発射された八本のビームも、ほとんどその場から移動せずに躱してしまった。

これは、近くのゲイツPを十機差し向けても相手になるまい。そう判断したクルーゼは、近くにあった残骸をドラグーンで集め・・・

 

「ここで死ぬわけにはいかないのでね!」

 

周囲を巻き込んで大爆発を起こした。当然、ドラグーンを利用した加速で爆発の範囲からは離脱し、戦場からも一気に離れていく。

 

それに、ここだけが世界を滅ぼす手段でもないのだからな

 

爆風で機体を損傷したムウのストライクを見ながら、クルーゼは心の中でそう独り言ちた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ヤキンドゥーエのγ線レーザー照射装置管制室では、オペレーターが冷や汗を流していた。先ほど、ザラ議長の直属兵がレイ・ユウキ特務隊長を拘束し、牢へと移送してしまったからだ。

議長は直属兵になるべくオペレーターを減らさないように指示しているらしく、それ以降は従順にしていれば特に手は出してこなかった。しかし、オペレーターたちの全員がきっと思っているに違いないとテテス・ハレは信じていた。

 

こんな事は間違っている、と。

 

地球で迫害を受け、プラントに移住した後も、何度も考えた。地球に帰れることはあるのかと。確かに、プラントは完全に独立が可能な生活環境が存在している。しかし、本当にそれだけでいいのだろうか。

人間が暮らすために必要な環境はプラントに全てあるのに。故郷を思う心は何処へ行けばいいのか。故郷の、北米の大地を赤く濡らす夕陽を見ることは叶わなくなるのか。

宇宙で生まれれば、地球を思う心は無くなってしまうのだろうか。

テテスには、ガラス一枚を隔てた向こう側に孤独な宇宙が広がるあのプラントを、どうしても心から好きになれていなかった。

 

「・・・い、おい、聞いているか?」

「は、はい」

 

思考の海に沈んでいたテテスを、銃口が小突いた。

 

「早く発射しなくては間に合わなくなる。シークエンスを開始するんだ」

 

震える手で操作盤に手を置いたテテス・ハレは、生れて初めてナチュラルに心から祈った。

どうか、私に無事失敗させてくれ!

 

無情にも、周りも銃を突き付けられて、又はそうでなくとも作業を進行させていく。

 

銃声が鳴り響き、全ての電灯が消えたのはその直後だった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ソラン・イブラヒムに構わず行けと背中を押され、キラは必死にストライクのアクセルペダルを踏んで加速していた。ストライクの熱源センサには、前方の発射装置に充填されていくエネルギーが克明に映し出されていた。

 

ディスターバーフィールドの性質上、湯気でレーザーを拡散して無力化するようなものであるため、発射前に十分にフィールドを構成する粒子が展開されていなくてはならない。そして、失敗は許されない。

 

「くそ、敵が多すぎる!」

 

一時は減った敵も、再び出撃準備が整ったのか大部隊を編成して装置を守っている。

 

「これじゃあ!」

『邪魔』

 

上から、もがれた四肢を物ともせず体当たりでストライクを止めようとしていた新型が、青いビームに焼かれて消滅した。そのまま、ビームは曲線を描いて数機の新型を巻き込む。

 

『此処は俺らが止めてやるからさ』

『早く行っちまいな!滅殺!』

 

レールガンが動きを止め、スパイクの付いたハンマーが止まった新型のパーツをフレームからへし折り、散弾のように敵へまき散らしていく。

 

「ありがとうございます!」

 

遂に、ストライクは迎撃までを考慮した有効射程へ辿り着いた。先ほどのアスランを不意に思い出し、震える右手を左手で掴みながら、トリガーを引いた。

 

一次反射ミラーと呼ばれていた金属製の尖塔に、ランチャーから発射された装置が着弾し、力場を形成した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

それは、偶然発見された技術だった。新しい核融合炉の実験をしていた時、発見された現象。強力な力で加速された重粒子が、衝突時に崩壊現象を起こす。この時、質量保存の法則から重粒子の質量と速度エネルギーが転化して新しい素粒子が発生するのだが、あるエネルギー量で加速を行った時最も多く生産される緑色の粒子には、Nジャマーのように電磁波の伝搬を阻害する働きが見られた。

 

或る世界では、それはGundam Nucleus と名付けられて兵器に転用された。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

出力が大幅に向上したことによって、今度は緑色に輝く粒子が肉眼で確認することが出来た。そして、どうやら作戦は成功したらしい。

 

通信機に成功を伝えようとしたキラは、目を疑った。コクピットに座っていたはずのキラは、そのままの姿勢で不思議な白い空間に浮いていたのだ。

 

一方、合同部隊の通信回線では大騒ぎが起こっていた。

コクピットハッチを開いた痕跡すら残さず、空になっていたエクシア・アストレイの横でムウが無線機に叫んでいる。

 

『応答しろ!ソラン・イブラヒム!』




もしかしたらお気づきの方が居られたでしょうか。作戦に使用されていたニュートロン・ディスターバーの正体はGNドライブ[Τ]です。
バッテリー電力を消費してGN粒子を生産しますが、それ以外のことはできません。

新機体について
詳しくは来週予定の番外編で出しますが、プロヴィデンスのみここで先に出します。(混乱が生じそうなので)

ZGMF-X13A-C:プロヴィデンス・アプスー
動力:核エンジン
装甲:PS装甲
武器:ドラグーン・システム
   ユーディキウム・ビームライフル
   複合兵装防盾システム
特殊兵装:ミラージュコロイド

本来のものと違う部分は三つ。一つは上記の通りミラージュコロイド。ドラグーンにも付与でき、見えないドラグーンで死角からビームを撃ってくる鬼畜仕様である。
二つ目は、ドラグーンにも本体同様の各種索敵センサーとビームスパイクへの変形機構があること。ドラグーンにもセンサがあり、得られた情報はクルーゼへフィードバックされる。
三つめは、いわゆる脳量子波制御システムを搭載していること。ただし、機体とのリンクを行ういわば「ケーブルを使わない阿頼耶識システム」みたいなもの。ドラグーンから得られる情報を基に制御されるため、リボーンズガンダムのフィン・ファング並みの性能を見せる。

周りの洗脳された新型に関する機能もありますが、それは新型のゲイツPに帰属する機能なのであちら側で説明したいと思います。

さてさて本編では一大事、どう考えてもイノベイター並みのスペックになっているクルーゼさんを前にいなくなる刹那さん。回収されるアスラン・ザラ。第三勢力が介入したヤキンドゥーエ。果たして次回はどうなってしまうのか・・・(作者も分からない)

・・・冗談です。最後はちゃんと決まっていますので、二月中の完成を目指して頑張りたいと思います。



没ルート:やられたアスランはクローンだった(本作とは違い死亡しました)
アプリリウスに突入するキラたち。そこで見たものは、水槽に浮かぶ何十人ものアスランたちだった・・・
記憶をインストールされたアスランは、もはやどれがオリジナルかさえ分からない状況であり、一先ず人権的な観点から人間としてプラントの一都市に住まされる。
戦争が終わり、ZAFTはナチュラルを含めた新体制で再稼働を始める。しかし、先の戦争の負の遺産であるアスラン・ザラ・クローンをどうするのか。出された結論は、火星で人類の新たな住まいを切り開くことに従事してはどうかということ。
それは議会で発案され、そして全てのアスラン・ザラ・クローンがそれを希望した。
マーシャン達に受け入れられたアスラン達は、火星を作り変えるべく新たな人生を開始するのだった・・・

数百年後、一部記録を紛失した未来人たちの火星学会
「このほぼすべての火星住民が有している遺伝子を辿るとアスラン・ザラという人間に辿り着くが、もしかして火星を征服した火星黎明期の王などだったのではないか?」
※恋愛結婚でカオスな状態になり、その子孫が訪れた人間と混ざっていった結果です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

47話:対話と帰還、そして

面倒ごとは大体終わった・・・やったぜ!
これから最終回までがんばります。


不思議な空間だった。上下は無く、重力もない浮遊感。そのくせ、今自分が見ている方向は確実に前だと確信がある。

意思が力を持つ空間、とでも言うのだろうか。

 

「ここは・・・?」

 

当然の疑問が口を突く。しかし、答えよりも先に空間を制圧するかのような強大な意思が周囲を満たしていた。

 

「まさか、あれはGN粒子だったのか?」

「ソランさん!?」

 

目の前にいるわけではない。しかし、確実に()()にいる事が感じられる。今までに無い不思議な感覚があった。そして、周りに感じられる強力な意思も、この人物によるものだという確信がある。

 

「キラ・・・そうか、これはあの装置が原因か」

「どういうことなんですか?」

 

刹那は、言葉では答えなかった。ただ、キラの脳内にイメージが投影される。

 

泣いている女性を撃った。神のために戦った?それからはいろいろな場所へ行き、必死に走り、それでもどうしようもない絶望が立ちふさがったが・・・ストライクに似た何かがすべてを打ち倒した。先ほど見た光のような輝く粒子を放っている。

場面が次々に変わる。

必死にシミュレーターで訓練を積んでいる。

やがて、戦争が始まった。

殺した。壊した。焼いた。撃たれた。撃ち返した。切り壊す。跳ね除ける。

仲間がいた。三人のパイロットと、クルー、整備士・・・

やがて、趣味の悪い金色のモビルアーマーがかなりの物を焼き壊した。世界が敵だった。

それでも、不屈だった。数年時を待ち、再び同じ組織として立ち上がった。

世界を救おうとしているのだと、理解した。そして、その手段の不器用さにも。

遂に、あの降臨した神のようだったモビルスーツのパイロットが現れて、袂を別った。

最後には大きな犠牲を払う。それはイメージだけではなく感覚だった。途中から感じ始めた仲間たちの感覚が消えていく。

 

「そんな!」

 

それでも、絶望しなかった。諦めなかった。

赤い光が目の前を通り過ぎ、意識が拡大していくのがわかる。だが、まただ、まだあの男がいる。

味方は倒れ、機体は欠損し、ぶつかる、ぶつかる、ぶつかる・・・

機体は壊れた。それでも、次の機体を使ってぶつかり続ける。お互いがお互いの存在を許容できない、そんなぶつかり様だった。

やがて、決着がついた。

 

そうして、また場面が飛ぶ。銀色の何かが夥しく、宇宙を覆っている。また戦争の繰り返しだ。

忌諱感が、ひしひしと流れ込んできた。何か道はないのか。他に、他に。どちらかが滅びるしか道はないのか?

一度見た顔がまた浮かぶ、それは空間を覆う感覚に引っかかっていたが、弾けて消えた。

 

結局・・・事態は対話によって解決した。目の前の人物、ソラン・イブラヒム(刹那・F・セイエイ)は、果てしない宇宙へと消え・・・

 

謎の空間まで、意識が戻った。

 

「今のは・・・」

「俺の記憶だ」

 

やはり、と思えた。しかし、今の言葉が意味することは

 

「あれ・・・未来、ですか?」

「いや、パラレルワールド、のようなものだと解釈している」

 

パラレルワールド。今まで信じたことも無かったものが、わずかに壁を隔てた先にあるかのような錯覚を抱いた。つまり、この数か月目の前にいた人間は次元を超えてこの世界にいたわけだ。

 

「どうして、いや、どうやってそんなことが?」

「手段は分からないが、原因は分かる。俺の記憶にあった、GN粒子。分かるか?キラ」

 

どこかで見ているのかも判らなかったが、頷いた。

 

「あれは、ガンダムの動力として使われてはいるが、未知の部分が過分にある。原因というなら、あれ以上の物は無い」

「そう、ですか」

 

余りに同時に浮かぶ疑問に、キラは短くそう返すしかなかった。

 

「そして、俺の正体も分かった」

「正体?」

 

悲しさが、一瞬流れたように感じられた。だが、それは泡が顔に触れたような程軽く消えた。

 

「俺は、どうやら本物の刹那・F・セイエイではなかったようだ。偶然、こちらの世界に紛れたELSに、俺の意識の一部が流れ込んだドッペルゲンガーとでも言えばいいのか・・・」

「じゃあ」

「ああ、元の世界とのリンクが復活した今、俺は消えるしかないようだ」

 

絶句した。今までに見たソラン・イブラヒムは、紛れもない()()だった。たとえそれが人間を超えた何かであっても・・・

 

「それに、俺が消えて悲しむ人間がいるらしい。それが、お前と触れて分かった。消えてゆく俺には、その事実だけで十分すぎるほどだ」

 

想像もしなかった過去に触れ、キラには言葉が無かった。涙が流れていることが分かる。

 

「もう時間が無い・・・仲間を失う悲しみは分かるつもりだが・・・いや、俺は所詮まがい物で」

「でも、ソランさんは、僕には一人しか・・・」

 

どんどん、周りから何かが消えていく。空間を満たしていた何かが、どこかへ流れ出していくような、崩れるような。

 

「ありがとう。お前はお前の世界を救え、キラ・ヤマト」

「ソランさん・・・」

 

消えた。同時に、現実へ帰ってきたのだと、ストライクのコンソールが教えてくれた。

 

『・・・ろ、キラ・ヤマト、応答しろ!』

「はい、無事です」

 

どうやら、何度も呼びかけられていたらしい。思っていたよりも、短い時間だったようだ。

 

『はぁ、まあいい。プラント政府から降伏するとの通達があった。一度本艦に戻れ』

「了解」

 

どうやら、フィールドの真っただ中にいたストライクは少しづつ外へ流されていたらしい。それで通信が復活したのだろう。あまりに多くの事があった。悲しみとも言えないような重さを頭にぶら下げて、キラはアークエンジェルの方位へストライクを戻した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

アークエンジェル級二番艦、ドミニオンのブリッジでは、レーザー回線による長距離通信でアズラエルと暫定議長、シーゲル・クラインが会談を行っていた。

 

「では、公正な裁判とコーディネーターの正当な人権の保障を条件に降伏し、評議会は解散するということでよろしいのですね?」

『ええ。パトリック・ザラの行いの証拠を集めるのには苦労しましたが・・・』

 

プラント内部では、クーデターが起きていた。クライン派がマスコミにザラ派の行った洗脳教育、地球の現状を大々的に報道させ、議会を占拠。パトリック・ザラ私兵の大部分を拘束することに成功し、政権を奪還したのであった。

 

「いや、プラントにもまともな人間がいて結構。全権大使として条件を確実に守ると誓いましょう」

『しかし、まだ問題があります』

 

はっきりしない物言いに、アズラエルが方眉を吊り上げた。

 

『パトリック・ザラを含む、ザラ派の主要人物数名が未だに発見されていない事です。既にアプリリウス以外でも非常線は張っているのですが・・・』

「あの狂人が見付かっていないとは・・・心当たりは無いのですか?」

 

心当たりは無いが、と、シーゲル・クラインは差し押さえた処分される前のザラ派が所持していると思われる物品のリストを提示した。

 

「装甲、バッテリー、鋼材、スラスター、フレアモーター・・・待ってください、このフレアモーターというのは?」

「太陽風を利用して加速するための装置だったと記憶していますが・・・」

 

近くにいた士官の答え、「太陽風を利用して」という言葉に、アズラエルは引っ掛かりを感じた。

 

「それはどの程度の物体を動かせるものですか?」

「一応、時間をかければ何分抵抗もない宇宙の事ですし、どれほどの物でも時間さえかければ・・・」

「いや、この宙域なら軌道さえずらせば地球の重力まで使えるでしょ」

「ああ、では、ユニウスセブン。どうですか、シーゲル・クライン氏」

 

そう聞かれたシーゲル・クラインは、明らかに動揺が見られた。

 

『実は、考慮しなかったわけではないのだが・・・あれほどの愛妻家が妻の墓標を落とすなどと・・・』

「信じたくなかった?まあ分からないではないですが、あれほどの事をやった人間をまだ信じているとは」

 

アズラエルは、頭を振った。

 

「まあいいでしょう。阻止は当たり前として手段を詰めねば・・・」

『それなら、我々からはメテオブレイカーを提供しましょう』

 

メテオブレイカー、その名前は記憶にあった。否、知識人ならば必ず知っているだろう。Nジャマーを世界へまき散らした悪名高き兵器なのだから。

 

「本来の用途で使うというわけですね。では我々からは人手を・・・君、コペルニクス基地と連絡は取れますか?」

「・・・可能です、少々お待ちください」

 

流石に、これ以上は独断で動くわけにもいくまいとアズラエルは判断した。予想の正確性を高めるという意味もあるし、相手方の顔を立てておくという意味もある。

 

「君、この資料を送れるようにしておいて。ああ、暗号化はA-1レベルで・・・」

「はっ!」

「では、作戦会議を行いますので、後は使用可能なメテオブレイカーの数を教えてください」

『あ、ああ。少なく見積もっても50機はある。搭載爆薬はHNIWで核ほどではないが破砕には十分だと見られている』

「結構。そこの君、今の情報を資料に付与して」

「まだ確定情報ではありませんが・・・」

「説得する必要があるときには便利ですよ・・・よし、ではまた後でお会いしましょう、シーゲル・クライン」

『健闘を祈る』

 

会議では負けなしだろうな、とアズラエルは見られている。実際、ノウハウをつかむまではそうでもなかったが、最近の結果だけを切り取れば確かに負けなしだ。そして、月のコペルニクス基地と通信が繋がった。

 

「レーザー通信モジュールは実用化出来て嬉しい技術の内の最たるものですね・・・あー、あー、聞こえますか?」

『聞こえているよ、理事。流石に今回は難しいのではないかね?』

「ええ。しかし何もしないという訳にもいきません・・・幸いプラントの新政権からもある程度の協力が得られるようですし・・・」

 

先に資料を読み込んでいたらしい将校は、今回の作戦に懐疑的なようだ。失敗すれば批判があると思えば、何もしない方が安全策に思えたかもしれないが・・・

 

「それに、今回は知らなかったでは済まないでしょう・・・プラントは外交チャンネルを再び開きましたから、今では世界中で情報を入手できるようになります。プラントがすべて悪いでは通じません」

『では勝算があると?資料にはあのアークエンジェルのパイロットが一名行方不明とあるが・・・』

「もう一人、極めて有能なパイロットがいます。今回のγ線レーザーの発射阻止作戦でも多大な戦功を挙げていますし」

 

キラの現状は、アズラエルの耳にも入っている。報告はイマイチ要領を得なかったが、なんでも彼、ソラン・イブラヒムが消える瞬間を見たとかなんとか・・・

 

「確かに疲労はあるようですが、作戦開始時刻までには必ず立ち直るでしょう。それで、戦艦は出せますか?」

『それは問題ない・・・隕石の排除は、もともと月艦隊の仕事の一つですからな』

 

パトリック・ザラが地球に大打撃を与えようとするのなら、ユニウスセブンが使われるだろうというのはほぼ満場一致の見解だった。作戦遂行も許可され、残る問題は軌道の計算となった。すなわち、どこが狙われているか、ということだが・・・

 

「私は、大西洋連邦首都、ワシントンDCではないかと考えています」

『それはまた、何故です?』

「あの国がパトリック・ザラの生まれ育った国だからですよ。あれほどの被害者意識が、育った場所とは無縁とは考えにくい」

『なるほど、一理ありますな』

 

結局、アズラエルが自身の意見の正当性を主張し、それが証明された会議は予定調和だ。もちろん、意味があると考えるアズラエルは無駄な時間とは考えない。ただ、早くしなくてはという焦りがあった。

 

「では、皆で地球の救世主となりましょう・・・」

『はは、理事もそのような事に憧れますか』

「ええ。売り上げが大事ですので。では」

 

通信は、切れた。人海戦術の準備は出来た。ドミニオンとアークエンジェルの進路も、演算された通過予想地点へ向かっている。後は・・・

 

「キラ君が、立ち直ってもらわねば」

 

人数では、どうにもならない障害がある。それは、モビルスーツが開発される前の戦況が証明していた。そう言った一騎当千の戦力のカウンターに、どうしてもキラが必要だった。

 

「はあ、此処で悩んでいても埒があきません。直接訪ねてみますか・・・もしもし、バジルール艦長ですか?今からそちらへ向かいます・・・キラ君は・・・錯乱している?まあともかくそちらへ向かいますので」

 

思い立てば実行は早い。並んで作戦宙域へ向かうアークエンジェルとの間を、小型艇で突き進む。到着してすぐに、アズラエルはブリッジへ向かった。

 

「ただいま到着しました・・・キラ君は?」

「現在自室にいますが・・・ソラン・イブラヒム失踪時の聴取を行いましたが、要領を得ず・・・その、言い難いのですが」

「錯乱している?」

 

予想した答えを、艦長は否定した。

 

「実際にお会いになられるのが一番かと思います」

「はあ・・・」

 

意味の無いことは言わない人間だと、アズラエルは評価している。ならば、実際に遭うのが良いだろう。

 

「部屋は・・・ここですね」

『アズラエルさん?』

 

インターホンを押そうとした直前に、部屋の内部から声が聞こえた。

 

「・・・ええ。開けてもらえますか?」

 

ガチャリと音がして、ドアが開いた。既に、部屋の中には先客がいた。

 

「アズラエル理事!」

「ああ、そのままで結構です・・・キラ君?君は帰投してから錯乱していたと聞いていましたが・・・」

 

その質問に、キラは苦笑した。

 

「そう思われても仕方のないことを言っていたとは思いますけど・・・」

「すいません、ちょっといいですか?」

「どうぞ?」

 

ためらいなく挙手して発言するトールに、キラはすごいなと思った。しかし、他人の口から説明してもらった方がこの異常は理解できるだろう。

 

「最初は、俺たちもキラが錯乱しているんだと思ったんです。けど、あれを見てから・・・」

「ふむ、それは、今見せてもらっても?」

「構いません」

 

アズラエルは、何か物品を提示されるものと思っていた。しかし・・・

 

「今のは?」

「ソランさんの最後の言葉です」

 

一瞬、腹話術かとアズラエルは思った。しかし、あまりに違う。これは、頭の中に声が響いている。

 

「これを踏まえて、ソランさんが僕に見せた物を話します」

 

語られる内容は、実に荒唐無稽だった。しかし、先ほどの怪現象が事実ではないかと疑わせる。長い一人の男の半生は、短く30分ほどで語られた。

 

「それで、全てですか?」

「はい、僕が見たものは」

 

一瞬、キラの目が輝いていたように、アズラエルには見えた。

 

「なるほど、艦長が言い淀む訳だ・・・」

「僕は、やります。僕は僕の世界を救う。そう、言われましたから」

 

どうやら、心配ないらしいとアズラエルは判断した。しかし、最後に一つ疑問が残る。

 

「しかし、君は帰投した時確かに憔悴していたと聞いています。報告した部下の目は確かだということも分かっています。何があってそこまでの回復を?」

「それはですね!俺が来る前に」

「やめてトール!」

「カガリさんが・・・」

 

「あ、大体わかりました。その辺にしないとキラ君がもう一度再起不能になりそうなので・・・」

「はぁ」

 

明らかに残念だという顔と、明らかに安心したという風な顔のトールとキラに、アズラエルは苦笑した。

 

「いい友人を持っているようで何よりです。よろしくし過ぎて、作戦を蔑ろにしないようにお願いしますよ?」

 

まだ障害はいくつかある。ZAFTの新型核動力モビルスーツや、私兵の中で最も厄介と思われる正体の存在、ユニウスセブンの強度などなど。だが、現実主義のアズラエルには珍しく、キラならどうにかするかもしれないと根拠の無い予感があった。




はたしてキラの立ち直りパートは必要だったでしょうか・・・言い換えるとキラ×カガリのいちゃらぶパートな訳ですが
駆け足過ぎてうまく書けてない感じが有ったので、再筆版を差し置いて加筆修正するかもです。

そして今週はFGOバレンタイン・・・セミラミス欲しい・・・(☆5アサシン未所持)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

48話:砕き落とせよ彼の星を

最近周りでスカイリム勢がうらやましいのでELONA始めました。
でもスカイリム実況面白くて見ちゃう。
最後に作者はセミラミスガチャは30回ほど引いて全滅だったことをお知らせします。


「前方に、敵部隊展開!」

「ミサイル。信管を5秒遅延設定で1から10番を発射!残りは敵のロックに合わせてチャフとアンチビーム爆雷の発射用に待機!ビーム兵装は不展開で回避に専念せよ!」

 

不沈艦、アークエンジェルにはそんな二つ名がある。それはもちろん艦自体の構造上の強度もあるだろうが、指揮や操縦にもその理由の一端はあるだろう。全体の指揮は、驚くほど流動的に全体の指針を決める。末端が、自身の最大限で指示を全うする。

速力も手伝って、アークエンジェルはどの地球軍艦よりも早く、前線を前へ広げ続ける。

 

「月、及びユーラシアの部隊が地球側から展開しています」

「よし、ヤマト少尉。敵の兵力は大部分が下方のモビルスーツ部隊が引き受けるが、上のメテオブレイカー設置部隊を護衛するまでは兵力が足りない。もちろん理事の施設部隊も出るが・・・」

『つまり、僕と大尉がそれをカバーすればいいんですね?』

「その通りだ。今までの戦果を信じているぞ」

『オイオイ、艦長がデレてるじゃねぇか。やるな、キラ』

「えっ」

「大尉、後で話があります」

『冗談だよ冗談!キラの緊張を解してやろうとさぁ・・・あ、ちょっと男同士の話があるんで切りますねっ・・・と』

 

プツンと、どこまで本気なのかわからないような発言を残して通信が切られた。一方、パイロット室では。

 

「なぁ、キラ。頼みがある」

「なんですか、改まって」

「あの新型、ああ分かるだろ?俺のガンバレルを改良したようなのをたくさんつけてる奴だよ。あれを見つけたら俺に戦わせて欲しい」

 

キラは、意外だなと思った。変わってはいるものの、飄々として誰か一人の人間にここまで執着するような人間とはあまり思っていなかったからだ。

 

「それは、一人でですか?」

「そういう事」

「分かりました」

「話が分かるねぇ・・・艦長なら理由も聞かずに止めちゃうだろうからなぁ」

 

これにはキラも同意だった。

 

「生きて帰ってきてくださいよ?」

「はは、確かにあいつもいなくなっちまったが・・・俺はそう簡単に死なねぇよ。なんつったって俺は――」

「不可能を可能にする男、ですか?」

 

ムウは驚いたような表情を浮かべた。

 

「俺、お前にこれ言ったことあったけ?」

「勘です。ソランさんがいなくなってからなんだか勘が良くなったような気がするんですよ」

 

なるほどね、そう呟いたムウは、見た。一瞬キラの目に不自然な光が走った・・・錯覚か?

 

「まあ、いいさ。不可能を可能にする男、生きて帰ってくると誓おうじゃないの」

「締まらないなぁ」

 

徹底して、こちらの力を抜きに来るその姿勢が、キラは好きだった。鬱屈しているだけの待機時間なら、きっと今こうして立ってはいられないだろう。

 

「じゃあ行きますか」

「そうですね」

 

お互いが、お互いを見ずに拳をぶつけ合う。これが、最終決戦か。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

戦闘開始から、10分。戦況は思った以上に膠着していた。まずZAFTのザラ側に着いた戦力の士気が、異様に高い。恐らくはナチュラルや地球人類への恨みが強い者なのだろう。

そして、こちら側の実戦経験の薄さ。つい1月ほど前に開発された新しい兵器を、自分の手足のように振り回すことが出来るのはそうはいないだろう。

 

それでも、圧倒的な数で徐々にユニウスセブンの残骸は包囲されつつあった。

 

11分目。遂に、戦況が大きく動く。戦線の一か所が、大きく崩れたのだ。キラとムウの二人は、感じ取った。あの男が、出たと。

 

『キラ!俺は行ってくるぜ』

「全く!この状況でですか!」

『悪いな!今度ヨーグルトソース味のケバブ奢るからよ』

 

ストライクの蹴りで、ムウの乗るストライク二号機は崩壊した戦線へと送り出された。

 

『おいおい、あいつやべぇなダイジョブかクロト』

『ビームが当たらねぇよ』

『ウザい』

 

どうやら、こちら側にも厄介な敵が現れたらしい。

 

「あれは・・・」

 

資料では、見たことがある。ジン・ハイマニューバⅡ型。手に持っているカタナのような武器は初めて見るが、噂に聞く日本刀のように実際に斬れ味も良いようだ。今まさに、デブリを一刀で4分割した。

 

「凄い達人だな」

 

アスランがやっていたように、神経接続で操縦しているのだろうか。動きが、まるで人間のようだ。体捌きも、スラスターの力を上手く攻撃や回避に廻している。

 

『こいつ!僕の鎌を足で止めやがった!がっ!?』

 

シャニが三人組での連携から足を切り飛ばそうと迫るが、まるで見えているかのように足で蹴り止め、反対側の足で味方へ向けて蹴り飛ばした。

 

「クロトさん!そいつは僕が!」

『悪ぃけど頼む!俺たちの手には負えねぇ!ああクソ!』

 

三機同時に相手取り、遂にはクロトの乗るレイダーの腕と翼、鎖が、切り飛ばされてしまった。

 

「あんな斬れ味・・・手甲があるということで行こう」

 

ユニウスセブンの地表から見た上空へ、レイダー・フォビドゥン・カラミティの三機が離脱する。追いすがろうとするジンを、キラが割って入って止めた。振り下ろされた刀を、PS装甲製の腕で受け止めた。ギリギリと音を響かせながら、火花が散っている。

 

「行かせない」

『貴様も邪魔をするか』

 

底冷えのするような声だった。同時に、キラの頭に半ば無理やり映像が流れ込んできた。戸惑いを押しつぶしながら、キラは声を張り上げる。

 

「それでも!これを地球に落とさせるわけにはいかない!」

『抜かせ!貴様程度に何が判るというのだ!我が最愛の婚約者を!クリスを失っていないお前に何が!』

「こんな事間違ってる!」

『そのような一般論に阿るか!所詮はあのような蛮行を見てなお連合に与する痴れ者か!』

 

イメージ。イメージが、頭へ濁流のように流れ込んでくる。それも、止まらない。まるで、目の前のパイロットの激情に呼応しているかのように知らない顔の女性や知らない男性の言葉が響く。

 

「くっ、これが、原因?」

 

何よりもキラが思ったことは、あまりにも自分と似ていることだった。友人や愛しい人のために戦い、その延長線上として此処で目の前に立ち塞がっているのだ。それは、未来の自分を見ているかのようだった。

 

「違う、僕はそうはならない!」

『口だけだ!貴様にも親しき友が居るか!ならばいずれ判るだろう!我らの採った行動こそ!唯一正しいものだったと!』

 

心を揺らされ、防戦一方だった。しかしサトーが叫んだその言葉は、キラの琴線に触れた。

 

「違う」

『何が違う!故人が復讐を望まぬ等と詭弁を弄するか!』

「違う、絶対に、トールも、カガリも、ムウさんも、ソランさんもみんな!絶対に間違っていると言ってくれる!」

 

何度も振り下ろされる刀を、腕で受け止めていた。それが、叫びと同時に刀が打ち返された。

 

「貴方は、復讐のために僕の友達まで貶めるのか!それなら、僕は貴方を許さない!」

 

中空を蹴った、ように見えた。ストライクは、エールストライカーに加えて足にもスラスターが追加されている。バックパック程には充填できないが、以前刹那が発案した”装甲にスラスターガスを閉じ込める”という方式から、かなりの持久力を持っている。そして、その爆発力は文字通り今までのストライクではない。

 

『其処か!』

「遅い」

『なっ!?』

 

後へ、ジンは斬りつけた。目の前ならば消えたも同然だったであろうストライクを、完全に捉えていたのは驚異の一言である。しかし、キラが一歩先を行った。真後ろへと放たれた水平切りを、上体を逸らして躱したかと思うと、再び中空を蹴ってこちらを向いたコクピットへ蹴りを入れた。

当然決定打にはならず、クッションのように背部スラスターを噴出したジンは袈裟斬りに刀を振るう。

 

「これは・・・」

 

ビームサーベルで防ごうとした、が、それは叶わなかった。

 

「ビームサーベルを、切った?」

 

一瞬、ビークサーベルが半分消えた。まさに、切られている。どう解釈しても、物理的には反対の結果になるはずである。そうならなかったのは、よほどの業物か剣の腕か。恐らくは両方だろう。これは片腕では受け止めてられないと判断したキラは、肩と腕の二点で体に寄せて受け止めた。

宇宙では慣性は消えず、ストライクは衝撃こそ殺したものの力積から弾き飛ばされた。

 

『やはり口だけか、ならば死ね!』

 

とどめを刺そうと、刀を居合のように構えるジンが加速する。対するストライクは、片手にビームサーベルを、もう一つの手には何も持たずに構えている。

果たして、居合の威力でコクピットハッチとの隙間を狙った斬撃は、刀が切り落とされたことで停止した。

 

『今のは!』

「夫婦手刀法二の段」

 

防ぐために振られたビークサーベルを、カタナはまたもや寸断した。しかし、次の瞬間、真っ向から切り合ったビームサーベルは持ち替えられ、刀は峰の部分から切断されてしまったのだ。

突きは止まったが、二人のパイロットは止まらない。折れた破片を、ストライクが蹴ってメインカメラへ飛ばす。

柄で弾いたジンはそのまま大上段から振り下ろすが、ストライクは受け止める瞬間に刀を躱しながら下へ加速させた。ジンの体勢は少し崩れたが、そのままショルダータックルをかけた。ストライクは両掌で受け止め、スラスターで生成された推力をすべてジンにぶつけた。

再び間が開く。

 

今度は、ストライクがビームを数発撃った。先ほどのビークサーベルのようにジンは刀を振るい・・・腕が吹き飛んだ。

 

『太刀筋を読まれた!?』

 

もちろん射撃技術も特筆すべきレベルだが、今遂に、キラは未来を見た。

 

「降伏は・・・しませんよね?」

『当然だ!わが命はこのために有る!』

 

銃口が突き付けられても、サトーは命乞いなどしなかった。先程の神懸った偏差射撃から、避けて反撃等ということは不可能だとお互い分かっている。マイナスの反射速度では先に動くなど不可能だ。

 

だから、如何に考えたくないような戦法だったとしても咄嗟にキラがその場から離れてしまったのも無理はない。さっきまで打ち合いを繰り返していたその場は、ジン諸共焼き尽くされていたのだ。キラは、このやり口を知っている。

 

「パトリック・ザラか・・・!」

 

ユニウスセブンには、地下の発電所が生きている。そこの電力を転用しているのだろう。巨大なプラズマレーザーはフレアモーターが形成する巨大な磁場に曲げられて、あらぬ方向から二人の戦場を焼き尽くした。

何よりも理解し難かったのは、焼き尽くされる直前のサトーの心情が感謝の一言だったことだ。

 

「ッ、なんで・・・そんな・・・そんな!」

 

いや、それでも止まることは許されない。今や、キラの体には億を超える人命が実体をもって圧し掛かっているのだから。メテオブレイカーを着陸させるために、ユニウスセブンに設置された迎撃設備をすべて破壊しなくてはならない。

 

「ああ・・・僕がやるんだ」

 

光るその目には、何故か暗さを思わせる色があった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「クソッ!」

『ふはっ!冷静さを欠いているようだな、ムウ・ラ・フラガ!』

 

プロヴィデンス・アプスーは、ミラージュコロイド、核動力、ドラグーンシステムという悪夢のような組み合わせを、非常に効率的に運用していた。

ミラージュコロイドで覆われた物質はレーダーに反応しない。ドラグーンシステムはダミーであり攻撃手段だ。核動力はバッテリー機には賄えないこのエネルギー消費を易々と実現し続ける。

熱源センサも、プロビデンス・アプスー本体が慣性移動しか行っていないため役に立たない。それでも落とされていないのは、クルーゼが嗜虐心から手を抜いているのもあったが、ムウの実力の一端でもあるのだろう。

周囲に出ては消え、消えたところから、或いは消えていないドラグーンからフェイントで放たれるビームを、驚異的な集中力で躱し、此処と思えるタイミングで反撃を続けていた。

 

『忘れているかもしれないが・・・』

「・・・」

 

オープン回線で響く声に、ムウは無視を決め込んだ。どうせ動揺を誘っているに決まっている。

 

『私とお前は、戦場を前に一度出会っているのだよ』

 

そんな記憶は、無い。そう声を振り払って背後に現れるであろうドラグーンにガンバレルを向ける。偶然、同じ場所に強く意思が重なり、二人の脳が共振を起こした。

 

「お前、まさか」

『そうだ!あの忌々しい男、アル・ダ・フラガの家に火を放って殺したのはこの私!

キラ・ヒビキという完成品を作る資金などのために作られた、貴様の父親のクローンがな!』

 

こいつが、オヤジのクローンで、オヤジを殺した?オヤジは、オヤジのクローンを作って・・・

頭を振って、妄念を振り払おうとするが、共振した二人の脳は分り合ってしまっていた。お互いの記憶が混濁する。

 

『思えば酷い男だろう!息子の貴様に勝手に絶望し、失敗作と分かれば私をも捨てた!』

「クソ野郎とは思ってたが、そこまでとはな」

 

発射されたビームは、かろうじてPS装甲に切り替えが遅れたドラグーンを一機砕いた。

 

『故に、私だけが人類への正当な復讐権を持っている!人の業が私を産んだ!そしてその私が人類を滅ぼすのだ!』

 

そこまでだった。反射的にコクピットへの直撃こそ防いだものの、不規則に断続的に周囲から照射されるビームをすべて防ぐには、シールドは小さすぎた。頭が吹き飛び、スラスターは壊れ、足は爆発した。

 

『安心しろ、殺しはしない・・・そこで人類が死に絶えるのを見ているがいい・・・』

 

意図的に、殺しきらないよう手加減していたらしい。朦朧とする意識の中で、ムウはぼんやりとそんなことを考えた。

 

「あぁ、生き残る約束は守れた、か・・な・・・・」

『相手がいればな』

 

接触回線で、意識が途切れる直前の声を聞いたクルーゼはそう独り言ちた。おそらく、キラ・ヤマトを目の前にした自分は決してその存在を許さないだろう。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ストライクは、ユニウスセブンの地表を跳ね回っていた。照射されるビームを躱し、落ちてくるミサイルを曲げて砲台へぶつけ潰す。50%ほどが消えただろうか。地を蹴るたびに舞い上がる氷の破片や腕、胴体、頭・・・

研ぎ澄まされた感覚が、周りに浮かぶすべての情報を正確に脳の処理中枢へ送り続けていた。

 

「うっ・・・」

 

口から吐き出された水は、パイロットスーツが吸収した。対空砲火が凌げる程度になった場所には、順次メテオブレイカーが設置され、爆薬が地面に埋め込まれていく。タイマー式にセットされた爆薬は、円形のユニウスセブンの残骸をバームクーヘンのような形へ割り砕いて行く。

周囲の艦隊が、剥離していく外壁を焼き砕く。

ZAFTの離反したモビルスーツ部隊は、時には身を盾にして砲撃を防ぎ、時には身を鉾にして戦艦に特攻した。

断末魔の絶叫が、敵味方問わずキラの脳にダイレクトに響き続ける。

 

遂に、キラの脳は外部からの声をシャットアウトした。キラの瞳孔が開き、まるで黒く光を失ったように見える。意識の全てが、自身の中に埋没した。

ストライクの反射速度が上がる。遂に、殆どの砲台は地表から消えた。

 

そうして、キラは地表にハッチを見つけた。此処に、パトリック・ザラが居るのか?

ハッチに穴をあけたキラは、地下へと降下していく。

 

何の装飾もない壁面は、首謀者の目的への盲目な邁進を暗示しているかのようだった。

 

エアロックを、ハッキングでこじ開ける。モニターの並ぶ狭い指令室に、その男は居た。

 

「貴方が、パトリック・ザラ・・・?」

「如何にも」

 

同時に、拳銃を構えた。キラには、目の前の人物の拳銃の構えがそれなりに洗練されていることに気づいた。

加えて、あまり広くはない管制室。他に人間もいない。微かに揺れているが、直に此処も崩壊するだろう。

 

「どうして、こんな事を?」

「言ったところで理解できるのか?実の息子ですら、私を理解するには至らなかったというのに」

 

暗い情念が、キラの身をチロチロと舐めるように焼いていた。キラが、親友を殺す羽目になったのはこの男のせいだ。そう思うと、拳銃を握る手が震えた。椅子に座ったままのこの男は、打ち合いになれば間違いなく先に死ぬだろう。

 

「僕は、カガリと二人で暮らせる世界を守るんだ」

「それは、私とてそうだ。私もレノアと二人で生きることが出来るなら、他に何も要らなかった」

 

お互いに、それが誰なのかは聞くまでもなかった。

 

「私は、レノアに似たアスランが、レノアが居なくなると同時に疎ましかった・・・レノアは最早この世にいないというのに、何故息子だけが、と」

「そんな勝手で、アスランをあんな目に?」

 

笑った。

 

「愛そうと思ったさ。我が妻の忘れ形見を。だが、できなかった。よく見れば見るほど、あれは私の期待に応えようと、私にレノアを失った悲しみを忘れさせようとしてきた・・・」

「何が悪いんですか」

 

アスランのことは、良く知っていたつもりだった。だから、アスランがそのような行動に出た理由は理解できたし、それの何が悪いのかと只々疑問だった。

 

「私に、レノアの事を忘れろと?それは、私にとって最悪の裏切りだ!」

「なんで話し合わなかったんだ!」

「言った!そしてあいつは言った!忘れることが悪いことではないと!私は決して私の息子を許さぬと決めた!」

 

狂っている。キラは、奇しくもアスランと同じ感想を抱いた。だから、それが言葉に出され心底驚いた。

 

「人は、忘れなくては生きていけない・・・だから、俺はそう言ったんです。それを捨てて、生きているのに死んだ妻を追いかけているんだ。父さん、だから貴方は狂っている」

「アスラン・・・?生きて・・・」

 

ああ、と短く、拳銃をパトリック・ザラ向けたアスランは返答した。

 

「俺は、父さんに立ち直って欲しかった。こんな、誰かに責任を擦り付けて現実から逃げるような立ち直りじゃなく、もっと真っ当に・・・でも、拒絶されて俺は、折れてしまった」

「私は・・・」

「俺は、責任を取ります。あなたと向かい合わなかった責任を」

 

リボルバー式拳銃の、撃鉄が引かれた。

 

「私を、殺すのか?」

「いいえ。父さん、俺は」

 

発射音に、キラは思わず視線を外し、アスランを見た。次に、パトリック・ザラを見る。

 

「貴方を、地球連合へ引き渡します。そのために、俺はここへ来たんだ」

 

パトリック・ザラの首には、麻酔弾の針が突き刺さっていた。

 

「アスラン・・・」

「お前が何でここにいるのかも聞きたいが・・・話は後だ。此処を脱出しよう」

 

手早くパトリック・ザラを担ぎ上げたアスランは、出口へキラを促す。

 

「此処はもう砕ける。その前に、父をここから連れ出す事が、俺がここに来る条件だったんだ」

「じゃあ、君は連合に」

 

エアロックに施したハッキングをアスランが手早く解除し、アスランは武装の無い連合の量産機に乗り込んだ。

 

『ああ。お前に目を覚まされた後、回収された。それで、あの理事が提案を持ちかけて来たんだ』

「それで、良かったの?」

 

画面越しではあったが、本当に久しぶりにアスランの笑顔を見た。

 

『後悔は、もうし飽きたよ』

 

急ぎ、縦穴を上へ上へと昇る。出口から飛び出ようとしたアスランの乗る量産機を、キラがいきなり引き留めた。

 

『これは!』

 

いきなり、何も無い空間からビームが放たれた。

 

「先に行って」

 

先程から、ユニウスセブンの揺れが止まっている。何か、作戦の進行に関わるような事態があったに違いない。

恐らくは、目の前に姿を現した深い青に染まったモビルスーツにも原因の一端があるのだろう。

 

「約束、守れなかったんですか。ムウさん」

 

打ち抜かれそうになった量産機を、キラがシールドで守る。尚も迷うアスランに、キラはもう一度短く告げた。

 

「行って、アスラン」

 

アスランとの再会によってもう一度開かれたキラの脳は、自身に向けられたあまりに深い憎悪を感じていた。オープン回線で、声が響く。

 

『君の存在は許されない。キラ・ヤマト・・・』




空の境界コラボやりたい・・・(半年前に小説全部読んだ)
あ”あ”あ”あ”あ”あ”アサシン式欲しいんじゃぁ!

と、思ったら執筆中に復刻決定・・・だと・・・?
ありがとうございます!幾らでも払いますありがとうございます!(一体俺からいくら絞るつもりなんだ!Type-moon!)


小ネタ
「ねぇギル」
「どうしたんだい、レイ」
「さっきミーアが、『ラウギル?いや、ギルラウでも』って言ってたけど何のこと?」
「ミーア・キャンベルゥ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

49話:日常へ帰りたい。それは もう遅い/まだ速い/今だから

科学雑誌で読んじゃったんですけどクローンの寿命って縮まないらしいですね。
まあやり方が悪かったという事にしておきましょう。これはクルーゼさんも激おこですわ。

ところで今週勢いのままに執筆していたら気付けば最終回、終わってしまったんですが早くも新作を考えてしまう・・・
案としては

ゼロの使い魔×Fate/Strange Fakeのフラット少年(青年)
ゼロの使い魔×AKABOSHIの戴宗
FGO×クラウス・V・ラインヘルツ
斗流血法を習得したベル・クラネル
Fate/stay night×雪代縁
劣等生×両儀式
オリジナル新作(かぐや姫+Type-moon魔術みたいな)

・・・全部書けるかチクショウ!しかし書きたくてたまらない。
今ほど影分身が欲しいと思った事は無い!

あ、番外編のキラ×カガリのイチャラブとグラハム乱入編は書いてます!書いてます!ホントなんです!信じてください!(澄んだ瞳キラキラ)
(FGOの空の境界コラボ全クリした&両儀式アサシン最終再臨&当たってしまった浅上藤乃最終再臨&アサシン・パライソ育成中)


途中から、まるで砕けなくなったユニウスセブンの残骸を、アズラエルは睨み付けていた。

 

「なぜ砕けない!?」

 

今より落ちてしまえば、地球の大気圏に触れる。そうなれば例え砕けても、摩擦熱で焼き尽くされない可能性が高いだろう。

解析結果が届く。

 

「つまり、ユニウスセブンの残骸には内部の電力で稼働する巨大なフェイズシフト素材のフレーム材が埋め込まれ、破壊できないと」

「フレアモーターが邪魔ですが、首謀者がこちらへ来てしまったこの状況では操作も・・・」

「あれほど巨大ではフェイズシフト素材を破壊は出来ません。残骸を覆っている氷がエネルギーを逃がしますし」

「ビーム兵器も、フレアモーターを形成する磁場の影響で直進せず、機関部の破壊も難しいかと」

 

破壊チームが頭を抱える中、ユニウスセブンは刻一刻と北米大陸へ向けて降下していく。かつて平和に人々が暮らしていたその地平では、二つの影が跳ね回っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

キラが、ミラージュコロイドに対してとった対策は、一つがOSのアップデートだった。ミラージュコロイドによる微細な空間の歪みをストライクのディスプレイを動かす量子コンピューターが本来の画像と戦況から統合的に判断し、画像から抜き出して見えているように表示する。

完璧ではないが、キラの負担はかなり減った。

 

「これで一つ」

『ははは!やるじゃないか流石は最高傑作!だが、この星を止める手段は最早無い!』

 

キラが、ドラグーンの一つを潰した。キラが力を発揮すればするほど、クルーゼの想念はより暗く落ちていく。

 

『知ればだれもが望むだろう!君のようになりたいと!私のような怪物を作るほどに!』

「後か」

 

地面を蹴り、ストライクは後ろに三つ並んだドラグーンの砲火をすべて躱した。空中でスラスターの推力を利用して急降下し、すぐに着地して残心する。

 

「貴方は、人間じゃないのか?」

『どうかな?君は、作られた人間は人間ではないと思うのか?』

 

充電が切れたのか、ドラグーンは収納されビームサーベルで斬りかかってきた。ストライクはシールドで柔らかく受け止め、フレームのたわみを利用してプロヴィデンスを弾き飛ばした。

 

「僕は人間だ。ただ人より出来る事が多い、それだけの」

『そのように見てくれる人間はどれほどいるものかな。この状況を、人類の滅びの危機を作ったのも人類自身だというのに!』

 

どうせ当たるまいと、キラはビームライフルをプロヴィデンスに向けて投げ捨てさせた。ダガーの投擲で爆発するライフルを躱し、空中で姿勢を立て直したプロヴィデンスは、ミラージュコロイドを発動し姿を消した。

 

『人は滅びる。自らの業で!君もその一つ!共に墜ちろ!』

「何故僕を狙う!?」

 

不自然なデブリの動きから、キラはフェイントをすべて見切り当身を受け止めた。

 

『私がクローンだからさ!人類の最高傑作、キラ・ヒビキの研究資金のために作られた!故に私にはある。人類を滅ぼす権利が!』

「そう思いたかっただけだろ!」

 

キラは、焦っていた。先程から全く崩壊が進んでいないことに。その答えは、ミサイル爆撃で削れた縁にあった。

 

「あの火花の散り方!フェイズシフトか!」

『これも人間が生み出したものだ』

 

恩人の知識が悪用されている、そう思うだけで、より目の前の男が憎い、そう思えた。

 

『そうだ、私を憎むが良い、キラ・ヤマト!私もお前が憎い!故に我々は殺し合うのだ!』

「貴方が僕のせいで生まれたなら、僕が貴方を倒す!」

 

ストライクが、先ほどより荒く地を蹴った。叩きつけるようにビームサーベルを振るう。プロヴィデンスは半身で易々と躱し、返しをストライクもまた躱した。人間同士の組み打ちのように体を取り合い、氷に刻まれる足跡は入り乱れ、一歩ごとに構えだけでお互いが牽制しあう。

モビルスーツが開発されて一年。ある種の境地がそこには有った。

 

『はは、興味もないのに()()()()()とは』

「貴方は・・・貴方はどうして!」

 

お互いを緊密に見つめ過ぎたのか、お互いの脳にお互いの過去が一瞬流れ込んだ。

 

「何故その子のために生きようとしない!」

『思ったさ!それでも私がお前たちを忘れたことは無い!片時たりとも!こんな感情を抱えて生きて行けというのか!』

 

黒い霧が吹き出し続けているかのような錯覚を、キラは覚えた。今まで自分が接した人間の誰よりも鬱積された悪感情が、コクピットからモビルスーツ全てを覆うように。

 

『故に私は見逃した!あの日、ユニウスセブンに撃ち込まれた核ミサイルを!』

「・・・そんな」

 

それが真実なら、血のヴァレンタインの悲劇は

 

『連合の将校の一人が、個人で一つの核を動かしたという情報は持っていた。それを見逃したのは私だ』

「貴方のせいで、一体何人が!」

『知らぬよ。所詮人は己の知る事しか知らぬ!私が知っていたのは、昔日に私がお前のために作られたクローンだという事。その復讐心!それだけだ!』

 

伸びたストライクの腕を、プロヴィデンスが捕まえた。足払いから地面にたたきつけられたストライクを、プロヴィデンスが切り裂こうと構える。ストライクは足を振り回し、スラスターの噴射と組み合わせてコマのように回りながら立ち上がった。

 

「貴方は自分の心からさえ目を向けていない!」

『それがどうした!私の復讐は最早止まらない!遅すぎたのさ!何もかもが!』

『・・・ザザ・・・キラ!もう高度が限界よ!早く・・・』

 

最早、手が及ばないか。しかし、此処でどうにかしなければ地球は壊滅的な被害を受けるだろう。

 

「出来る事が、無い、のか」

 

呆然とつぶやいたキラを、クルーゼは冷笑を浮かべて見ていた。

 

「やっぱり、僕は人間だ」

 

不意に、一度だけ経験のある不思議な空間に再び居た。それは、ソラン・イブラヒムと最後の話をしたあの場所だった。

いや、お前にはまだ出来る事がある。そう、キラにもクルーゼにも聞こえた。

 

『お前は』

「貴方は!」

 

声に、覚えがあった。いつも自分に戦い方を教えてくれていた、それでいて何かが違う声が。

 

「そんな、だって、あの時」

「俺は、お前と一緒にいた”ソラン・イブラヒム”ではない。そして、この世界の住人でも。干渉できる時間も残り僅かだが、”ソラン・イブラヒム”最後の頼みを一つだけ叶えて行こう」

 

凄まじい速度で頭の中が読み取られ、それを最後に接続が切れた。そう感じた。意識を現実に戻したキラは、その意図を理解した。同時に、目の前の復讐者の本心が、少しわかった。

 

そして、はるか遠くからの薄赤い閃光が、正確にユニウスセブンの中心を打ち抜いた。それは、ユニウスセブンの地下発電所を制御する制御室を完全に破壊し、結果ユニウスセブンを固定していたフェイズシフトは解除された。

 

『おのれ・・・だが、まだ、まだだ!お前だけでも!』

「僕の人生には先約がある!渡すものか!」

 

外部から、フェイズシフトダウンの灰色が観測されたのだろう。一斉に砲撃が始まり、ユニウスセブンが崩壊へ近づく。

 

「これで!」

『私が生きた証は!ここにある!決して消させはしない!』

 

頭が、晴れた。周りが見える。ミラージュコロイドで消えたドラグーンを、キラは画面を見ずに蹴り壊した。周囲にある物質が、何なのか手に取るように分かる。

 

もう一つ後ろから飛来したビームを、ビームサーベルを投げて相殺した。二の矢で、ダガーを銃口に入れて破壊する。目の前まで迫ったプロヴィデンスと、再び組み打ちになった。腕や脚のみを消した状態で、中央部の装甲だけはフェイズシフトしている。腕や脚を抑えた反応から見るに、接触の瞬間のみフェイズシフトしているらしい。

 

「終わりだ」

 

先程とは逆に、ストライクがプロヴィデンスの腕を捉えた。腕を引き、倒れ込みそうになるプロヴィデンスのコックピット近くに、地面との反作用とスラスター噴射を聞かせた肘撃を当てる。その場で足払いをかけ、プロヴィデンスは完全に姿勢を崩した。

先程のビームで開いた大穴の近くで、ストライクが、マウントを取った。ビームサーベルを突きつけて、少しでも動けば止められるだろう。

 

『やはり、こうなる運命だったか』

「違う。貴方は強かった・・・そうまで鍛え続けた人間が、鍛え続けられるような人間が、人間じゃないはずがない」

『人間として生きて来た者の感想だよ。私が・・・不完全なクローン技術で生まれたせいで、寿命ももうそうはあるまい』

「なら、猶更生きるべきだった、そう思います。もう一人の貴方のためにも」

『・・・私の宿業の敵が、最も私を理解しているとは皮肉なものだよ』

 

繋がってしまって、分かった。クルーゼには迷いがあった。小さな「自分」のために、全てを忘れ友人たちと生きる努力をするべきだっただろうか。それとも、復讐心のままに復讐を完遂するべきだったのか。

 

『あの日の、血のヴァレンタインで私は迷ったよ。迷い、そして私は見逃した・・・君と同じだ、キラ・ヤマト。アスラン・ザラを殺す気だった君と。選んでしまった以上、私は突き進むしかない』

「僕と貴方は、同じですか」

『・・・止めを刺せ、キラ・ヤマト。私は、君の言う通り君に倒されねばならない怪物だ』

 

ビームサーベルが構えられたまま、ストライクの手がプロヴィデンスに触れた。

 

『何をしている』

「この機体はもらいます」

 

突如、プロヴィデンスの操作がクルーゼからでは一切不能になった。

 

「外から壊していても、限界がある。此処で核爆発を起こせば、もっと細かく砕けるから・・・」

『ふ、好きにしろ』

 

コクピットのコンソールが、カウントを始めた。もうすぐ終わりが来る。まさか、こんな穏やかな気持ちで最後を迎えようとは思ってもいなかった。

 

「それと、貴方はここで死にません」

『これは』

 

プロヴィデンス・アプスーには、脱出機能があった。コクピットブロックは排出され、ストライクの手に収まる。ストライクは、穴へプロヴィデンスを放り込んだ。それは、ラウ・ル・クルーゼを尊敬する設計者の一人が搭載した機能だった。

 

「僕は、貴方を憎いと思った。でもそれだけじゃダメなんだ。貴方の主張は、貴方が世界に届けるべきだと僕は思う」

『出来るかな?そんなことが』

「職権濫用、なるのかな。とにかく頼み込んでみましょう。もちろん裁判は受けてもらいますけど・・・」

『良い。どうせ死刑だ。話したいことを話して死ぬ』

 

ストライクが、ゆっくりとユニウスセブンから離れていく。十分に離れたところで、ユニウスセブンから白い閃光が広がっていく。ゆっくりと閃光が収まった後、かなり小さくなったユニウスセブンの残骸がばらばらと、地球へ落ちていくのが見えた。

ストライクが背を向けたそれは、赤く光って流れ星のように消えていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ユニウスセブンが砕けて、遂に心が折れたのか、大部分のZAFT兵が降伏していた。

残る復讐心に燃える者も、死ぬか行動不能になるかしていた。

 

戦争は、終わった。

 

代表は消え、狂気のような復讐に燃えるエースはおらず、ただ装備があるだけだ。最早、まともな戦闘にはならない。

 

「はぁ、戦後処理が面倒だ・・・なぜ私がこんな非経済的な・・・いや、戦場に出てくれた全ての兵士に悪いですね。撤回しましょう。これは、我々文官の仕事です」

「いえ、今回の任務は理事が私財を投じて頂かなければ解決できないようなものでした・・・我々も、力不足を痛感しています」

 

終戦の影には、いくつもの奇跡があった。それを、忘れまいと奇跡の一つでも知るものは思うだろう。

ともかく、これで第二次ヤキンドゥーエ戦役から続く史上最大のテロ、ユニウスセブン墜落事件は終わりを迎えた。勝利したのは地球連合軍だったが、その損害は余りにも大きい。軍費、総司令部であるアラスカ基地ジョシュアの崩壊などなど。

そして、例え戦争が終ろうとも人間の営みには続きがある。

 

アークエンジェルや、ドミニオンに収容された今回の戦争における諸役にも裁判がある。

 

確かに、頭が痛くなるほどの書類仕事が残っている。それはそれとしてだ。

 

「それで、クルーゼさんの事なんですけど」

「キラ君、それは出来ないと思いますが」

「やりたくない、ではなくてですか?」

 

頭を抱えたい案件を増やすのは止めてくれまいかと叫びたかった。世界初の星を落としたテロリストの話など公開すれば、世界の首脳や行政府が黙っていないだろう。

 

「やりたくないというのも事実ですがね」

「僕は、僕のために生まれたあの人が唯々死んでいくなんて嫌なんです」

「流石に、個人のためにそこまでする訳には行きません」

 

うっすらと、笑った。それで十分なはずだった。

 

「・・・そうですね。それなら」

「・・・いいでしょう。それは脅迫と言えますが、立証は出来ない。交渉成立です」

 

周りに聞こえないようにキラの口が動いた。確かに、ストライクの最新版戦闘データを手に入れることが出来れば財閥の軍用モビルスーツの独占販売は堅い。

そして、手が滑ることを立証は出来ない。

 

「公式の連合による裁判の様子をすべて私の部下にメモさせましょう。それを販売するという形でどうでしょう。もちろんダミー会社をいくつか経由したりはしますが」

「それで行きましょう。それと」

「公正な裁判ですよ。そこは見縊らないで欲しいですね。君の出生についても秘匿します」

 

キラが、笑った。アズラエルは、直観した。これは、何か断られる時の顔だと、よく知っていた。

 

「僕は、理事の部下にはなれません。オーブでやらなきゃいけない事があります」

「・・・そうですか。技術協力ならどうです?」

 

譲歩は、珍しいことではなかった。特に、人間のスカウトでは。強制して何かをやらせた人間ほど作業能率が長期的に悪い物は無い。

 

「ええ、それなら。何度でも出向しますよ」

「なら、それで十分です」

 

アズラエルには達成したい目標があり、そしてそれを叶えるのは戦争に勝った今、義務だろうと思えた。

 

「戦争が終わった今、世界中で何もかもが不足しています。ここからが僕の出番ですよ」

「根っから商人ですね」

「ええ、それこそ最初から最後までそうですとも」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

地球連合では、今回の戦争の首謀者とその側近として、パトリック・ザラ及びラウ・ル・クルーゼの裁判が行われた。様々な政治的意図が混雑しようとしていたが、最終的には()()()裁判官が選出され、死刑が廃止された連合の法律上の最高刑、終身刑の判決が両者へ下った。

 

「じゃあ、独房に収監、という事ですか?」

「ええ。そのまま社会復帰が出来るような人間でも、許していいような人間でもありませんし、個人的な報復の対象でもあるでしょう」

「個人的復讐は不公平、ですか」

 

戦時中ならいざ知らず、やはり人を殺めるというのは罪なのだ。

 

「戦争中ならともかく、生きて捕まえてしまった以上我々の法律に照らし合わせなくてはなりません」

()()()()気持ちは無いんですか?」

「無い、と言えば嘘になります」

 

事実、アラスカ基地の地下では復讐を誓った。

 

「ふと、恐ろしくなったんですよ。私が考えたことは、いつかあそこまで至るのではないかと」

「それで、自分を抑えようと?」

「ええ。私には、資産という力がある。だからこそ、私が誰よりも・・・いえ、止めましょう、キラ君。君はとっくにそこまで考えているのでは?」

「僕は、あの人と戦って、どこかでつながった感じがしました。それ以前はきっと同じようなものです」

 

強すぎる誰かの感情を見て、我に返るというのはよくあることだが、これは最早中てられたと言っても良いくらいの凄まじさだったのだろう。

 

「僕は、日常に帰れたんです。それが、ソランさんの願いだった」

「彼が・・・」

 

消えた、という事は、既に耳に入れていた。アズラエルからすればそんな事があるのか、という疑問もあったが、悲しむアークエンジェルのクルーの様子を見るに本当だったのだろう。

 

「以前とは何もかもが違いますけど、くだらないことで笑ったり泣いたりできる日常なんです」

「結局、彼も君の事はぼかしましたからね」

 

一般の聴衆も集まる裁判において、ラウ・ル・クルーゼは自身の生い立ちを子細に語って見せた。それは驚きと共に世間へ流布され、アズラエル財閥の力で報道は世界へノンストップで発信された。

キラは、自身の出生が明かされるかもしれないと覚悟していたのだが、クルーゼは()()()()()()()()()()()の研究資金のために作られた人間である、と詳細を伏せた。それは、クルーゼの心境の変化を端的に表したものではないかと思った。

強硬な反コーディネーター論の展開が心配されていたが、小規模な展開、つまり従来の過激派反コーディネーター集団が声を荒げるに留まっているだけだった。

 

「さて、今回の呼び出しなんですが・・・」

 

呼び出された秘書が、二通の封書をキラに手渡した。

 

「君の元親友から手紙が届いています。あの時ユニウスセブンからパトリック・ザラを運び出させた彼に頼まれまして」

 

今時珍しい、紙の手紙だった。

 

「約束でしたので、読んではいませんが・・・」

「謝罪と、僕が居なくあった後の事がまとめてありました。お父さんとちゃんと話し合ったみたいで」

 

きっと、立ち直ることが出来る。生きているのなら。

 

「もう一つ、やっとプラントへ打ち込む核ミサイルを用意した将校を掴みました」

「どうするんですか?」

「どうすると思います?」

「こっちは、酌量の余地もないと言いたげな顔ですね」

 

酷く、酷薄な顔に見えた。

 

「命令違反、大量殺人、etc・・・軍法に照らし合わせれば銃殺刑ですが、こちらは余りにも気に入らない人物でしたから・・・プラントのアプリリウスに強化ガラスに詰めて晒し物と、新しく発見した資源採掘衛星でつるはしだけ持たせて採掘機械並みのノルマで強制労働というのも考えています。

コネとカンニングに賄賂と血筋だけで成り上がった、肉体労働なんてしたことの無い無能さんですからね。きっといい声で鳴きますよ」

「殺された方がマシって本当にあるかもしれませんね」

 

短く、また次の定期交流で、とあいさつをしてキラはアズラエル財閥オーブ支店ビルを後にした。出口では、スピード以外の何物をも求めていないようなデザインの車が止まっていた。

 

「おーいキラー!早く来ないとお前の分のケバブ食べちゃうぞー!」

「待ってカガリ、今行くよ!」

 

鬱屈としていた大学時代も、戦友の背を追って走り続けていた戦場でもこの光景を待ち望んでいただろうか。少なくとも、自分がこの今に幸せを感じていることは確かなのだ。それで、キラには十分だった。




終わり・・・ません!
少なくともエピローグをやります。登場人物たちの一年後くらいが書きたくてたまらないので、それはもう長々と書きたいので、二、三回に分けて投稿していきたいですね!

とはいえ、戦いは一先ずここまで。一年を超えて、お付き合いいただきありがとうございました。最初の方を見てみると、いや、良くここまで続けたもので。
素材が良かったのもあるのでしょう。技術の向上も、少しくらいはあったかと思います。
一重に、感想や評価をくださった皆様、お気に入り登録で長く読んでくださった皆様へ、もう一度感謝の言葉を述べさせて頂きます。


続編は今のところ思いつかないので、やるとしてもしばらく空きます。先に浮かんでいるアイデアを消化したい・・・
番外編もいくつか思いついたら書きたいですね。以下、小ネタ


小番外編:C.E.70 2月10日

「久しぶりじゃないか、ラウ。来るなら連絡の一つも欲しかったんだがね」
「いや、緊急でこの近くを通ったんだが、予想よりも連合艦隊の進行が遅かったらしい・・・また紅茶のブレンドを変えたのか?」

ギルバート・デュランダルは、苦笑してガラス瓶を指し示した。

「最近懇意にしている女性が中々良いブレンドを知っていてね、君の趣味にも合うだろうと思ったんだ。レイも気に入っているし」
「まあ、同一人物ではないとはいえ味覚は似ているか」

仮面を外しているクルーゼは、可笑しそうに青い目を線にして笑った。

「久しぶりにチェスでもしようか」
「良いね。流石に、レイではまだ相手にならないし、指し筋も全く違う。遺伝子学者の私から見れば実に興味深い」

率直で、それでいて煙に巻いてしまうような言葉の巧みさもあって、それでもこちらに気持ちのありようを素直に伝えてくる。よくわからない人間だが、それでも色々なものを柔らかに伝えてくるこの男が、クルーゼは嫌いではなかった。

「・・・弱くなっていないか?」
「分かるかい?最近は音楽を始めてね、そちらにかかりきりなんだ」
「レイも?」
「君が、あの子に自分とは違う生き方をして欲しいというのは分かるんだが・・・」

珍しく、直接的な言い方をすると驚いた。

「そんなに顔に出ているか?」
「何時もの趣味の悪い仮面をつけていないから猶更な」
「君なら仮面をつけていても分かるのではないかな?」
「私の悩みは、流石に相談できるようなことではない」

チェス盤を片付け終わった所で、デュランダルはカプセル剤の入ったボトルを手渡した。

「レイにも渡したが、これを飲めば寿命の先延ばしに出来るはずだ。レイはまだ幼いし、君よりも効果が望めるだろう」
「そうか」
「私にはわからないね。君を必要としている子供がここにいるのに、君は命など要らないとばかりに戦場へ躍り出る」
「ラウ?」

噂をすれば・・・何だったか。とにかく、いつの間にか起きだしたらしいレイがシックな居間に姿を現していた。

「久しぶりだな、レイ」
「最近は戻って来なかったね」

悲しそうにつぶやくレイに、クルーゼは柔らかく頬に手を当てた。

「私には、やらなくてはならない事がある」
「分かった。俺は、ギルと待ってるから。タリアの紅茶も覚えるよ」
「良い子だ」

業の深いことだと、自分でも思う。きっと、私が復讐の果てに死ねば、それをいつかギルバートに真実を聞いてレイは私をなぞるのだろう。
気付けば、しゃがみ、レイを抱きしめていた。

「次は、今流行りのラクス・クラインのアルバムを買ってきてあげよう」
「ラウ、私はいつも言っているだろう。デスメタルが最高だと。最近も素晴らしい才能の持ち主を見つけてスカウトしていたんだ。OKをもらって、まだ正式に加入してもらったわけじゃないが・・・ミーアという名前なんだがね」
「レイ、この男は中々悪くない大人だが、こいつの作る歌詞は大人になるまで読まないでくれ。後生だ」
「・・・?分かった。ラウがそう言うなら」
「いい子だ」

憤懣やるせなしという顔をしているギルバートに一言。

「風俗を著しく乱したとかで捕まるなよ?」
「大丈夫だ。この前のライブでそのミーア・キャンベルに歌わせたときは大好評だったんだ」
「そこにレイを連れて行ったらここのチェスの駒を全部飲ませるからな」

ドアがバタンと開いて、闖入者が一人。完全に気を抜いていたクルーゼは、驚いてレイの頭を撫でているところで固まった。

「ラウ、こちらがボーカルのミーア・キャンベル・・・デスメタルの申し子でね」
「何故私とレイを見てよだれを垂らして息を荒くしている?」
「メモメモ・・・あ、初めまして。ミーア・キャンベルです一枚だけで良いので写真を撮らせていただけないでしょうか」
「あ、ああ。これで良いのか?」

クルーゼは、先ほどのようにレイの頬に手を当てる。レイは、嬉しいのか恥ずかしいのか頬を少し赤くしてクルーゼを見ている。

「キャー!美少年と美青年!これは1万部越えも夢じゃないわ!ありがとうございます!今日はここで失礼します!」

嵐のように去っていった。

「まあ、ああいう残念な部分もあるが才能は本物だ」
「あそこまで近づき難い人間が居るのか」

大人二人は苦々しい表情で閉まった扉を見ていた。一方、純真極まりない少年はクルーゼに尋ねる。

「ラウ、今日は泊っていくの?」
「ああ。明日の朝に出発すれば十分間に合うし、話し込んで遅くなってしまったから、泊まろうと思っていたんだ」
「じゃあ一緒に寝よう!」
「はぁ、後でタリアに連絡して何か作ってもらおうか」
「レイにココアでも飲ませればすぐに寝るだろう」

後日、レイとラウが一緒の布団に入った無防備な寝顔の写真でギルバートは念願のボーカルをゲットし、正式にバンド活動がスタートした。


◇◇◇◇◇◇

・・・楽しさのあまり小ネタ越えてしまった感があるな。そして美しく終わらないww
よろしかったら新作についてご意見伺いたく、活動報告のアンケートに目を通して頂けると幸いです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Epilogue:Form of Happiness
50話:婚前パーティー


お・・・終わった・・・
「ようやく」でしょうか。それとも、「もう」でしょうか。
続編求む、などなど、嬉しいことを言ってくださる方もおられる事は、大変うれしく思います。
続編としてSEED ASTRAYの火星編へ繋がる物が最も面白そうでやってみたかったですが、ASTRAYを読んだことが無いため、しばらくかかるかと思います。
それでも、その「しばらく」の間も執筆は何かしら続けようかと思いますので、とりあえずはまだ完結していない鉄血×ドリフターズを。
それと並行か後続で、FGO×血界戦線や、劣等生×空の境界あたりのアンケートが強かった話を書いていこうかと思います。

(少なくとも一部は)完結。お疲れさまでした。
残る二つのエピローグをお楽しみください。


C.E.74 6月10日 PM11:00

 

「おい!早くしないと飛行場の予約時間だぞ!」

「ちょっと待って・・・このラップトップだけ詰めるから・・・わ!爆発した!」

「ええー!?」

 

オーブ、オノゴロの郊外にある邸宅では、キラのバッグが爆発していた。

 

「あー・・・バルトフェルドのおじさんとの決闘用のチリソースかぁ」

「これとラップトップは持って行かないと困るでしょ?」

 

オーブ国防軍に飛び級入隊してから、キラはそこそこに忙しくなった。実績を買われてのスカウトによる入隊で、キラはオーブ国防軍のMS部隊隊長兼技術研究部副主任という大変長ったらしい称号とかなりの給金、そして書類に限らない仕事を手に入れた。

今日も、パナマのバルトフェルドの店でのムウとマリューの婚約記念パーティーに参加するためにキラはワークステーションのラップトップを自家用飛行機にまで持ち込む必要が発生したわけだ。

 

「これは?」

「アズラエルさんの伝手で輸入したハワイ産特級コーヒー豆セット」

「あーもう!こうすればいいだろ!?」

 

業を煮やしたカガリが中型コンテナとトレーラーを手配し、荷物問題は解決した。計画性が無いわけではないが、二人とも忙しさのせいで少々馬鹿になっているらしい。

 

「はぁ、疲れた」

「そんなんで良く将校の仕事が務まるな!」

「カガリは立場のわりに仕事が少ないでしょ・・・」

 

露骨に目を逸らして砂糖入りコーヒーをすするカガリに、キラは苦笑いした。どうやら罪悪感と自覚は有るらしい。

 

「あと20分くらいでパナマの飛行場に着くらしいけど」

「それにしても、あの頃はあの二人が結婚するとは思わなかったなぁ」

 

話を聞いてから二日おきにそんなことを言っているのだが、単に当時のカガリにそういう視点があまり無かったのではないかと少しキラは思っていた。それも気にしているらしく、一度口に出して泣かれたキラは黙っている。

 

「でも、ムウさんはパイロットだけの時は良くそれっぽいことは言ってたような・・・」

「私はマリューからって聞いたぞ?」

「じゃあ両想いだったのかな」

「そうなんじゃないか?」

 

結婚式とその前祝いの招待状が来たのは先月の事だった。それは、カガリとの交際についてウズミに相談に行き、同居することを耳に入れたウズミのせいで執務室が半壊し、その日の仕事が休みになったためカガリと一緒に読んだ。

小さな結婚式で、アークエンジェルの主要クルーが呼ばれている。恩師という事で、第八艦隊のハルバートン中将も呼んだらしいが、流石に忙しかったらしい。

何としても出席しようと決意した両名は、この日に回りそうな仕事をほとんど片付けた。

その残る少しも終わり話し込む二人は、機長の着陸する、というアナウンスを聞いて慌ててシートベルトを締めた。

 

荷物検査を早々にパスし、チャーターしていたリムジンでバルトフェルドの店に向かう。此処で、北米から旅客機で来たらしいノイマンとチャンドラーが車に同乗した。

 

チャンドラーは彼女に振られたらしく、かなり暗い顔をしていたが本人は祝うと明言しており、また流石に大人だし大丈夫だろうと判断した三名によりそのまま同行の許可が出た。

 

30分ほどで、バルトフェルドの店に到着した。トランクから取り出された荷物を台車ごと受け取り、車を見送る。

 

<Nossa loja está reservada para hoje>(当店は本日貸し切りです)と、看板がぶら下がっている。普段なら、コーヒーを目当てにかなりの数の客が木造りの店の前に並んでいるのだが、かなり事前に今日の貸し切りは決まっていたらしく知り合い以外は居なかった。前日から旅行で宿泊していたサイとフレイ、トールとミリアリアはここで集合した。

 

「キラ!久しぶりだな!」

「トール!あれ、ちょっと日焼けが・・・」

「そう!昨日ビーチに行ってさ!いやーこれが良い眺めで・・・・痛い!やめて!耳は勘弁!」

 

どうやら何も変わっていない親友たちに、キラは笑いがこみ上げてくる。そうして騒いでいると、サングラスをかけたバルトフェルドが店のドアから顔を覗かせた。

 

「あー、君たち。いつもなら営業妨害だと言ってやるところだが、今日はあえてこう言わせてもらおう・・・良いぞもっとやれ!」

「何馬鹿な事言ってるの・・・あら、お久しぶりね」

 

後から顔を出したのは、アイシャだった。歳をとった様子もない。

 

「お、今日の主役が来たみたいですよ」

「同志の鷹じゃないか!」

「同志の虎さんじゃねえか!」

 

顔を合わせるなり固い握手を交わす二人に、キラは遂に堪え切れず吹き出した。すると、二人が同時にこちらを向いた。

 

「今日は祝いの席だからね・・・もちろん新郎に合わせてヨーグルトソースのケバブを用意してあるとも」

「いえ、自前でチリソースを持ってきましたから」

 

キラがハンドバッグから取り出したそれは、呪いでも溶かし込んであるのかというほどの毒々しい赤と深い黒が融合した異次元の産物だった。

 

「そうそう。やっぱり正統派じゃないとな!」

「くっ、これだから暗黒面(チリソース派)は!まあ良い!こちらも今日のためにわざわざスイスからヨーグルトを取り寄せたからね!是非食べてくれ!」

「お、そりゃ楽しみだな」

 

議論が白熱する中、マリューは遅れて到着したバジルールと和やかに歓談していた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「では、新しい夫婦の誕生を祝って!」

「乾杯!」

 

数名を除いて格式ばったことはあまり好きでない人間が集まったためか、挨拶もそこそこに食事が始まった。

 

「はふっ、チリソース旨い!」

「いやー良く出来たヨーグルトソースだ!んぐっ、作った甲斐があったというものだよ!」

「いやあんたら祝えよ」

 

食事会と言うべきか宴会と言うべきか、少なくとも料理や酒類の減り様はすさまじいものがあった。アイシャによれば、どれもこの店の人気メニューらしい。

 

「明日の式は向こうの丘にある教会でやるのね?」

「ええ。彼が見つけてきたのよ」

「実はね、私たちもあそこで式を挙げたの」

「まあ。それは良いわね!」

 

今日、殆ど初めて顔を合わせたわけだが、マリューとアイシャは話が合うらしい。トノムラ、チャンドラー、ノイマンのアークエンジェル初期クルーはチャンドラーの愚痴に付き合っていた。トールはミリアリアに拘束されていたし、サイはフレイと楽しそうに食事をしている。バジルールは、あまり酒が強くないらしくコーヒーを驚き顔で飲んでいた。

幸せが、結婚する二人だけの物でなく、周りにも同じような量にばらまかれている。幸せは、きっとどんなに分けても小さくならない物なんだろうとキラは思った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

夜の8時ごろになって、バルトフェルドが手を打った。

 

「じゃあ、今日はここまでという事で・・・解散!」

 

各自は、ホテルやらなにやらに帰り支度をしてばらばらと、余韻に浸りながら帰り始めた。

 

「君たちとは、話し合い(デスマッチ)があるんだったね」

「いえ、ただの宿泊なんですけど」

「失礼、うちに宿泊だったね。しかし、良いのかね?君の友人たちのように二人きりで泊まらなくて」

 

当然の疑問だろうな、と、二人は全く同じく思った。

 

「いえ、そうしたいのはやまやまなんですけど」

「うちの父が・・・」

「まぁ・・・無理強いはしないが」

 

何かを察したらしく、バルトフェルドの方眉が吊り上がった。

 

「まあ、部屋は同じで良いんだろ?」

「ええ、一応」

「ベッドも一緒でいいの?」

「それはちょっと」

 

アイシャは、分かったうえでからかっているのだろう。キラも、余りムキにならずやんわり断る。

 

「それで・・・まあ、なんだ。コーヒーでも飲まないか?」

「あ、私も・・・」

「ちょっとカガリさんはこっちにいらっしゃいな」

「え、ちょっと!」

 

約一名は気が付かなかったが、かなり露骨な話題転換だっただろう。

 

「わざわざここに泊まるんだ・・・話があるんじゃないのか?」

「はい。バルトフェルドさんに相談するのが一番良いと思いました」

 

本当に、そう思っていた。だから、今日の予定を決めたのはキラだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ねぇ、最近、キラ君はどうなの?」

「えぇー?最近、ねぇ・・・あんまり変わんないと思うけどなぁ」

 

テーブルに、アイシャがコーヒーを置いた。普段店で出しているもので、今日で挽いてから日数が限界なので、淹れてしまった。日ごろの習慣なのだ。

 

「あ、最近指を良く触られた気がする」

「それで?」

「他にはあんまり・・・うーん」

 

サプライズだろうから、と、こちらはそっとしておくべきかな、そう、考える。恐らくこれは人生の一大イベントなのだから、私が伝えるべきではないのだろう。

 

「そう、変わらないのね。ちなみに、今日のケバブを焼いたのは私よ?」

「へぇ!じゃああのソース無しは」

「あの人が意地悪するだろうと思って」

 

それぞれの夜が、それぞれに更けていく。




とりあえず、前編のようなもの。来週でエピローグ完結の予定です。
まあ分かりますよね。何がしたいかは。オーブ国家元首のせいで滅びるんじゃあるまいか


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

51話:結婚式

此処で終わるか次回で終わるか
二部はASTRAY読む暇があるかどうかなんですがね。
とりあえず、書いてみます。


C.E.74 6月11日 PM11:00

 

時刻上は、オーブを出立して丸一日が経過した。最も、経度の問題で実際に経過した時間は高々半日と少しだろう。パナマの丘に建つ白い教会には、何人もの戦友やかつての敵が足並みを揃え、集まっていた。

今日、式を挙げて結ばれる二人の人徳がわかるだろうか。

 

新郎の控室には、ムウ、キラ、トールが三人で並んでいた。

 

「ああー緊張する」

「ムウさんでもですか?」

「そういうタイプだったんですね」

 

眉間を軽くつまむムウは、純白のタキシードをしっかりと着こなしていた。何でも、少々鍛えすぎたせいか特注品となっているらしいが、中々腕の良い仕立て屋が作ったらしく、違和感はまるで無かった。

そうして、意外だというような反応を示す二人にムウは噛みついた。

 

「俺だって人間だぞ?緊張くらいはする・・・ましてや、今までの人生最大の山場だし」

「でも出撃前でもこんなには緊張してなかったですよね」

「あはははは、ほんとかよキラ!」

 

鋭い払いが、トールの頭を確かに捉えた。

 

「いやな、マリューが俺のプロポーズを受けてくれたことはそりゃ嬉しいんだが・・・」

「目立つのがダメなような人じゃないでしょ、ムウさんは」

 

口には出したが、何がムウをこうしているのかを、キラなりに考えた。自分も、きっとムウがマリューに対してそうであるように信じているし愛しているのだ。それでも、土壇場で全てが夢だったように何かが崩れてしまうような不安がある。

それは、愛する彼女からの突然の拒絶かもしれないし、突然天災のような何かが起こるかもしれないという恐怖の幻影でもあった。

一度、壊れたのだ。壊れた直後から、元に戻ろうという努力は全力でやった。それでここまで帰ってきたのに、もう元の自分でない事が戻ってきたからこそわかる。一種の、幸せに対する拒絶反応染みた何かが体にあるのだ。それは、直接戦場に出たわけではないトールには無い感情ではないかとキラは思った。

 

「もしかして、マリューさんにここまで来て断られるんじゃないかと思ってたりします?」

 

そう、考えていたらトールがいきなり核心をついた。何なのだろうか、この勘の良さは。

 

「それは・・・その」

 

しかも、ムウの反応を見るにそう外れた言葉でも無いらしい。

 

「それならちょっとわかりますよ、俺」

「何かあったのか?」

 

キラの知る限り、トールはミリアリアと上手くいかなかった事はそうないように思えた。だから、キラも初めて聞く話だろうと黙って先を促す。

 

「アークエンジェルに、乗ってすぐぐらいなんですけど、俺、ミリーと一緒にいられないんじゃないかと思った事があるんですよ」

「そりゃまたなんで」

「キラです。俺の親友は、あんな事が出来る凄い奴なのに、俺は普通の人間なんですよ。それで、その、ミリーがキラの方見ちゃうんじゃないかって、思った事があるんです」

 

キラには、寝耳に水だった。もっとも、本人に面と向かって告白するような話でもないだろう。トールの話は続く。

 

「それで、聞きました」

「おいおい凄いなお前」

「良く出来るねそんな事」

 

そこは自慢げな顔をする所なのだろうか。そうかもしれないが、少々むかっ腹が立つのでわき腹を突いた。ムウも同時にやったらしく、トールが変な声を上げた。キラとムウが少々引いた。

 

「やめろよなぁ、もう」

 

軽く赤面しながら咳払いをして、トールはまだ話を続ける。

 

「そしたら、『今更そんなこと気にするの?私がどれだけトールの事でそれを気にしてたと思うの?』って。俺たち似た者同士だったみたいで」

「それで?」

「もう、気にならなくなりました。結局、俺とミリーは一緒にいられるくらいには人間が合ったんですよ」

「さ、参考になるようなならないような」

 

キラとしては、そうだった。ムウは、少し神妙な顔で考え込んでいる。

 

「いや、参考になった。ありがとよ、トール」

「いえいえそれ程でも」

 

お礼を言って、ムウは膝を打って立ち上がった。

 

「よし、お二人さん。そろそろ時間だから席に戻ってくれ。ビシッと決めるからよ」

 

それじゃあ、と、短く言って扉を出る。席には既にカガリが居て、こっちにこいと引っ張り込まれた。

 

「どうだった?フラガのおっさん!」

「ビシッと決めるってさ」

 

へぇ、と言ってクスクス笑うカガリは、やはり可愛かった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

キラたちの座る席の後方から、サッと光が差した。扉が開いて、ムウとマリューが入場してきたのだ。

以前マリューを見ていたころは大抵顔に黒い油や煤がついており、四六時中何か工具を持っていたが、今や白いドレスにベールをかぶり、軽く化粧を施したマリュー・ラミアスは見違えるように美人だった。

否、当時ですら美人ではあったから、磨きがかかっていると言うべきか。そして、奇麗になった手を、ムウが優しく捧げ持っている。

顔にはマリューとは対照的に、かつての覚悟の決まった笑みが浮かんでいる。

 

二人とも、ゆっくりと神父の待つ中央まで歩いていく。扉があいた瞬間から、静寂が支配していた。

 

やがて、中央の祭壇で二人は止まった。教会の関係者が、対になった結婚指輪を持ってくる。

 

「新郎、ムウ・ラ・フラガ、前へ」

 

一歩、ムウが進み出た。

 

「私、ムウ・ラ・フラガは、マリュー、君をいつまでも大切にし、幸せにすることを誓う」

「新婦、マリュー・ラミアス、前へ」

 

二人が、並んだ。

 

「私、マリュー・ラミアスは、ムウ・ラ・フラガを生涯変わることなく愛します」

「では、この結婚に異論のある者は?」

 

居るはずもないな、と、キラには思えた。きっと、ここにいる全員がそうだろう。

そして、予想通り誰も名乗り出ない。

 

「では、新郎、新婦の両名は誓いのキスを」

 

マリューが、ムウの方を向いた。ムウは、マリューの手を掴んだ。

 

「俺は、実はこの瞬間を迎えるまで怖かったんだ。どこかで、君を疑っていたともいえるかもしれない。そんな俺でも、愛してくれるのかい?」

「私は、貴方のそんな所まで愛しているわ?」

 

そう言って、マリューはムウの頭を抱き寄せ、キスをした。少しびっくりしていたムウも、やがてマリュをは抱きしめ、神父が祝いの言葉を述べる。

知らず、キラは拍手をしていた。それは段々周りからも聞こえ始め、静寂だった教会中に響いた。

まるで別の世界に居るかのようにムウとマリューは身じろぎもしなかったが、数分してようやく離れた。

ムウは、泣いていた。顔は満面の笑みなのだが、安心したようにぽろぽろと泣いていた。

 

「ありがとう」

「良いのよ、ムウ」

 

見ると、ノイマンとチャンドラーが泣いていた。トールやサイも泣いていて、キラも目元が濡れていることに気付いた。口に出して、おめでとうございます、言って、少し嗚咽が漏れた。自分の事のように、嬉しかった。

 

ムウとマリューが指輪を交換した後、全員が外へ出た。

 

「じゃあ、ブーケトスの時間ね」

 

そう言って、階段の上でマリューが扉の方へ向き直った。女性陣が、階段の下で並ぶ。

 

「えい!」

 

ブーケが飛んだ。どうやら男性陣の位置まで届くような珍事にはならず、女性陣の誰かが順当に受け取りそうだと、キラの優秀な空間認識能力が読み取った。どうやら、位置から見るにキャッチするのはミリアリアだろうか。後から見るだけでも、目に見えない何かが発散されているのが判る。

そうして、美しい放物線を描いて落下していたブーケは、突如吹いた海風に曲げられた。温度が一度ほど低下した気もするが、素早く落下予想地点を更新した。

そこに立っているのは・・・丁度、バジルール艦長とカガリの相中だろうか。

しかし、予想ほどブーケの飛距離は伸びず、ブーケはカガリの手中に吸い込まれるように落ちた。

 

「わっ・・・私!?」

「お、こ~れ~は~?」

「次はキラかよ」

 

先日は余り存在感の無かったマードックが突いてくる。トールも突いてくる。一部始終を見ていたムウも、にやにやと笑ってこっちを見ている。先程の泣いているムウの写真を撮っておくべきだったかと一瞬黒いキラが頭を擡げたが、倫理が捩じ伏せた。流石に人として不味い。

カガリはと言えば、顔を真っ赤にしておろおろしている。こっちをちらちら見ないで欲しい。可愛いけれど。

カガリの視線がこちらに向く度に、周りからの圧力が二倍になるような気がする。此処は、僕も覚悟を決めるしかないのか。

執拗に肩を揉んでくるトールの側頭部に痛烈なデコピンを当てて、カガリの手を取った。

 

「その・・・カガリ?」

「な、なに?」

 

何時もの、男勝りな部分がまるで無かった。何度でも言おうと思う。やっぱり可愛い。それでいて、ずっとそばに居たいと思える感情がキラの胸中を埋め尽くしている。

 

「僕は、正直優柔不断な方だと思うんだけど・・・これだけははっきり言いたいんだ」

 

唾を、飲み込んだ。万が一にも、舌を噛むなんてことは起こって欲しくない。

 

「カガリのそばに、僕じゃない人がずっと居るのは、嫌だよ」

「えっと、私も、その、キラが・・・良い」

 

言い切った。ほとんどプロポーズだと思う。いや、プロポーズだった。

 

「いやいや、お互いベタ惚れだな」

「キラがここまで言うなんて・・・」

 

外野がうるさいが、頭にはカガリの「キラが良い」という言葉があった。

 

「カガリ・・・」

 

流石に、この空気この人数の前でキスは厳しかった。ハグでも、許してほしい。カガリもふにゃぁとか良くわからない言葉を発しているし。

 

「ヘタレ」

 

あのソランさんと少しだけ混ざり合った時に知ったが、脳量子波と言うらしい。トールの位置は見なくても分かった。踵でつま先をそれなりの力で踏みつけた。

 

「馬鹿ね」

 

ミリアリアにも笑われているが、僕もそう思う。そんなところは友人として好きだが。

 

「ふふ、カガリさんが取ったのね」

「やるなぁ、キラ。嬢ちゃんもう顔がやばい色になってるぜ」

 

視線を下に下げると、カガリが目を回して気絶していた。幸せそうな顔をしているのだが、これは先ほどのやり取りを覚えているのか少々不安だ。もう一度やれと言われても流石に精神が耐えられないかもしれない。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

帰りの飛行機の中で、カガリが目を覚ました。

 

「す、すごい夢を見た気がする」

「それ夢じゃないよ?」

 

僕の顔を見るなり、カガリの顔はまたそれなりに赤くなった。

 

「はぁ、ウズミさんをどうやって調伏すればいいのかな・・・」

「エリカに聞くか?」

 

現実的な問題を聞いて多少いつも通りに戻ったのか、カガリがそんな事を言った。

 

「いや、あの人僕らが二人で住み始める時もオーブ政庁を半壊させたし、結婚するなんて言ったら・・・」

「オノゴロで言うべきじゃないかもなぁ」

 

カガリとしても、親バカとして認識はしているらしい。

 

「じゃあ果たし状ってことで無人島に呼び出すとか!」

「それだと周りに防衛軍を配置しないといけなくなるし・・・」

 

冗談を言い合っている内に、普段のような空気が戻ってきたように思う。結婚式場の時のような大きすぎる幸せも、こんな平凡さの幸せも、得難く、嬉しくてたまらなかった。




次回が一部、無いし1.5部の最終回になるかと。
次回テーマは更に時間が1~2年進んだDestiny一話くらいです。
ウズミとキラの最終決戦編も観たかったですか?
感想にあれば考えたいですね。

小ネタ・結婚式前に

「アスラン!お前、ラクス・クラインと挙式するというのは本当か!」
「いや、俺はこんな男で良いのかと断ったんだが・・・」
「きっさまぁ!!!!!」
「落ち着けよイザーク・・・」

最早、ライバル心、ファン精神、もろもろ混ざって本人も何を言っているのか認識していないのではないか。

「結局結婚するんだろ?」
「きっさまぁ!!!!!」
「寝てろ!話が進まないだろ!」

イザークは、アスランの部屋のシーツで簀巻きにされた。

「結婚式には呼んでくれるんだろ?」
「それは、まあ。同じクルーゼ隊のメンバーだし・・・クルーゼ隊長にも、連絡だけはしようと思う」
「ニコルは何処にいるんだっけ?」

ベッドの方から唸り声が聞こえるが、ディアッカは黙殺した。

「ニコルは、ピアノの世界公演中だから・・・今は確かオーブじゃなかったっけな」
「じゃあ直接来れるな・・・後は・・・」
「あと、ねぇ・・・アデス副官はなんか、だし・・・」
「そうだ、俺の元親友が居るんだが」
「元、ねぇ・・・それホントに呼べるのか?」

元、とは便宜上だが、呼べば来てくれるくらいには通じ合た相手だというのはアスランの見解だった。

「アイツは来てくれると思う・・・」
「そんなとこか。後はあっちが選ぶんだろ?」
「まあな」
「それと、こんなんだけど、流石に当日は祝うぐらいの知性はあるだろうから、イザークも招待してやってくれよな」
「そうだな、そうしよう」

そこで、イザークがシーツから脱出してディアッカに躍りかかった。

「貴様だけは殺す!」
「やってみろ!」
「他人の部屋で暴れるなよな・・・」

アプリリウスの郊外に相当するコロニーで、一戸建てなのであまり外がうるさく感じる、等ということは無いのだが、流血は勘弁である。

ベッドのマットレスに後頭部をめり込ませたディアッカが、手紙を発見した。

「なになに・・・
拝啓、アスラン
地球の海は素晴らしいですね。僕は、潜水艦の甲板でイルカと遊ぶのが好きでしたが、海を見ているだけでも楽しい。今は大西洋連邦のハワイに居るんですが、サーフィンが盛んなようで、プラントではとてもできないスポーツですよね。すごいと思います。
此処ではプラント出身らしいテテス・ハレという女性に会ったのですが、地球の北米大陸出身だそうで、今度北米の夕陽を見せてあげると言われました。是非アスランも一緒にどうでしょう。
敬具、ニコル・・・
お前、ニコルと文通してたのか」
「あ、ああ。別に黙っているようなことじゃないと思っていたんだが、言うほどでもないかなと思って・・・」

急に、ディアッカがイザークと内緒話の体勢に入った。

「なあ、あんなんだからホモなんて噂が立つんじゃないか?」
「流石にそんなことはないだろう。俺とお前でも立つくらいだしな」
「うわそうだったぜ寄るな」
「貴様が近づいてきたんだろうが!」

小声で怒鳴るというのは高度な技術かもしれないが、少し聞こえた。

「別に俺とニコルはそんな関係じゃないさ」
「そりゃよくわかってるけどよ、噂にはなるぜ?」
「それにニコルには彼女が居るらしいぞ?」

この日、一番の冷え込みがアスラン宅を襲った。

「う、嘘だろ?嘘だと言ってくれよなぁ!イザーク知ってたか?」
「知らんが・・・別に普通じゃないのか?」
「う、嘘だ・・・こんなマザコン野郎にも彼女がいる、だと?」
「死にたいのか」

ニコルからの二枚目の手紙には、オーブで知り合ったらしい金髪の女性の写真が同封されていた。演奏会後に海を見ていたら、二度も同じ場所で会ったらしい。

「ステラ・ルーシェねぇ・・・」

ニコルの幼く見える容姿もあってあまり不自然さは無いのだが、どちらもおっとりしているようで、写真だけなら良い二人組に見える。踊りが得意らしく、ニコルがその場で考えた曲を弾くと、とても喜んで踊ってくれるのだとか。

「お前、まさかシホちゃんとデキてたのかよぉ!」
「そんな言い方は止めろ!」
「はやく、戻ってきてくれないかな・・・」

アスランの目には光が無かった。結婚式前だというのにどうしてこんな目に会っているのだろうか。まあ。一種の幸せでもあるのだろう。
アスランは自己完結した。



一度はホーク姉妹のどっちかをニコルに充てようかと思ったものの完全に非合法なのでやめました。え?ステラもアウト?Destinyで16とするとこのタイミングでは14歳くらい、ニコルは16歳なのでセーフセーフ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

52話:弥終の住処に

やっと!
終わった!
セイバーウォーズではなくて。


元オーブ元首と現オーブ防衛軍モビルスーツ部隊大隊長の無人島での一騎討ちから、2年が経った。余波で壊れたオノゴロの一部も修復されたが、あの時の中継を見た俺は、オーブ軍に入隊しようと決意した。

モビルスーツ部隊は、広く募集の窓口を開いている。俺は、去年オーブ防衛軍でモビルスーツ部隊に配属されたけれど、試験の内容は凄まじいものだった。

まず、コーディネーターだから多少有利かもしれないという考えは、早々に捨てた。ナチュラルでも、とんでもない人間がごろごろと居るし、ナチュラルのために作られたOSの方が、寧ろ中途半端なコーディネーターよりも強いのだ。

特に、最後のモビルスーツを使ったトーナメントは凄まじかった。俺はどうにか1位になったが、決勝の相手は操作用インターフェースを自前で用意しており、凄まじい体術を再現してこちらに迫ってきた。辛くも戦闘不能になるようなダメージは避け続け、あわやコクピットに肘撃ちが直撃するか、というところで、アストレイはバッテリー切れで動作を停止した。

 

後で聞いた話だったが、それは大隊長その人だったらしい。普段と違うモビルスーツにおける操作用OSの及ぼす影響の調査と、自分の感覚で合格者を探すための出場だったらしいけれど・・・正直命の危機を覚えた。やっぱり上には上がいるもんだ。

 

そして、今日。自分のアストレイを受領した俺、シン・アスカは日課の妹への電話も終え、カスタムも済ませてしまったので営舎へ帰ろうとしたのだけど・・・

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「あーどうしよう」

「どうしたんですか?大隊長」

 

紅い瞳が、こちらを訝し気に見ていた。薄っすらと感じられる感情は珍しさなので、おそらくそれは今の僕の顔なんだろう。

 

「いや、今日カガリの誕生日なんだ・・・」

「えーっと、もしかしてプレゼントを用意してなかったとか・・・」

 

図星だ。頷いた。

 

「不味いですって!うちの妹だってすごい怒りますし、下手したら離婚とか・・・」

「それは無い」

 

自身をもって言える。それは無い。愛とは信じる事だってムウさんも言っていた。しかし、今から用意できるプレゼントなんて・・・

 

「じゃあ、とりあえず食事で時間稼ぎするとか・・・」

「それは、予約したお店にちょっと遅れて行く、とか?」

 

妙案かもしれない。少なくとも、時間稼ぎとしては。問題は、余り予約が必要なような食事が好きじゃないってことなんだけど、まあ誕生日ってことでゴリ押しできると思う。後はプレゼントか。

 

「ちなみに、それは彼女とか」

「いえ、妹から得たテクニックです」

 

もしかしてこの子は妹の奴隷とかそんなんなんだろうかとしばしば思う。

 

「まあ、これは流石に僕が決めないとね」

「じゃあ、頑張ってください!」

 

走り去るシンに手を振って、今から時間が稼げそうな行きつけのお店に電話を入れながら同時にプレゼントの内容を必死に考える。

 

「もしもし、20時からディナーの予約って・・・はい、じゃあお願いします」

 

予約が取れたので、カガリにメールを送る。音声の方が喜ばれるけれど、今はキーをタイプした方が早い。20時から、夕食を、行きつけの場所で、と、要点をまとめて書き付け送る。

僕の声が録音された目覚まし時計・・・トールに唆されて一度プレゼントしたけれど枕元で鳴ると不気味過ぎて粉砕した・・・却下・・・

 

「返信、大丈夫、か」

 

今日は、ハンコを押す書類が少なかったようだ。

何か少し高い物、というのは良くないかもしれない。なんだかんだでセレブだし。そんな気は全くしないところが、良いところだと僕は思う。

そういえば、と、少し前に受け取った手紙を思い出した。失礼ながらとてもそういう人間と接点があるような人間には見えなかったのだが、今売れているメタルバンドの「politician・of・rounds」と知り合いらしく、どんな人間なのか、詳しく書かれており―カガリはかなり引いていた―自分と同じクローンが一人いる。できれば会ってみて欲しいとあった。

もう一人のレイ、という人間も時間があれば会ってみたいけれど、ロックバンドの方も気になった。一緒に読んでいたカガリも、時間さえあればなと嘆いていた。

 

「今からオーディオショップに行ったら・・・」

 

何か、アルバムのような物が有るだろうか。

余談だが、CDというものは未だに販売されている。一世紀以上経過して進化してはいるけれど、見た目はほとんど変わらない。理由は、小さなメモリーチップよりも紛失に強いから、などなど。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ちょっと遅れる・・・よし!」

 

メッセージを送りながら、駐車場までたどり着いて、エンジンをかけた。電気式のモーターに微弱な電圧がかかり、わずかに車が振動する。

 

「一番近いレコードショップは・・・」

 

都合のいいことに、進路の途中にあった。オートドライブではとても間に合わないので、交通規制ぎりぎりの速度で走り始めた。もちろん免許は持っている。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「危ない・・・」

 

最後の一枚だった。丁度今日が発売日だったらしく、十数曲が収められたアルバムは一枚だけが陳列されていた。

後で嘆く声が聞こえたので、本当に紙一重だった。

 

「よし、じゃあもうあとは真っ直ぐ・・・」

 

車の助手席に荷物を置いて、また進み始めた。現在地はオノゴロの中心あたりだが、行きつけのお店は海底トンネルで繋がった別の島だ。

ハイウェイに車を滑り込ませて、市街地では出せなかった速度まで一気に引き上げる。思わず、笑いがこみ上げてきた。

 

「モルゲンレーテと共同開発して良かったよ」

 

この車の開発中の事を思い出した。空力特性の測定などなどはモルゲンレーテのプロに任せたのだが、操作系と駆動系の開発は自分がかなり関わっている完全なワンオフ品だ。

操作系は自分の反射神経の特性と脳波をモビルスーツ同様に反映して、完全に操作と思考の速度に追いつくことが出来るように調整してあるし、モーターは摩耗する部分をフェイズシフト化、よって出力をどれだけ挙げても完全に動力が伝達される。

なので、新規開発した超電導素材を使った超高出力モーターがモビルスーツ用のパワーエクステンダーの潤沢な電力を受け止めて力強く回転している。タイヤの形状もコンピューター制御で速度に合わせて最適な変形をするし、空力翼の動作も素晴らしいの一言・・・

 

多分、生涯で一番お金を投入した逸品だと思う。カガリに合わせたモードもあって、サーキットで運転させてみると絶賛してくれた。とても嬉しかった。

何故か主任は「夫婦そろってスピード狂・・・」と呟いていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

お店