弱ければ相手から何もかも奪えばいい。 (旋盤)
しおりを挟む

始まり

ゆっくり見ていってください。
ご意見、ご感想待ってます。


俺こと楠木龍一は、友人は少なくもないが多くもない。運動神経は普通の人より若干高いレベルで知力は普通かそれ以下の存在だ。

そして、今この深夜の時間帯と思われる時、自分でも寝ていると思われる時に

 

「異世界に行きたいかーーー!!」

 

と、深夜に常識知らずなテンションと大声で聞かれた。

 

「………」

 

とっさのこと、ということも相まって返事が出来なかった。だが、こう言われた時に言うことは決まっている。

 

「おーーーー!!!」

 

「よし。じゃあ君も異世界行き決定ね。」

 

案外あっさり決まった。さらにそいつ君もとか言ってたから行くの俺一人じゃないぜ。

 

「軽く説明しよう。君が今いる世界に退屈していた様だからその救済措置だと思ってくれ。」

 

おっと、退屈だと思っただけで異世界へ行けるらしいぞ。

 

「そうだよ、それだけで行けちゃうんだよ。」

 

心の声が読まれただと!?

 

「神様だから当然っちゃ当然だね。」

 

粗方、予想ついてたけど心読まれると不気味だな。クラスでも、何考えてるかわからないと言われた程、仏頂面なのに。

 

「話を戻そう。君は異世界に行く。その世界へ着いた時0・01パーセントの確率で記憶と体が吹き飛ぶから気をつけてね。」

 

確率はかなり低いが死ぬという事か。

 

「その通り。そして、その世界はステータス制だから自分の状態がステータス画面を出せば確認できるよ。自分の力は向こうに着いてからのお楽しみだね。」

 

さらっとまた心の声を読みやがった。しかし、自分の力を数字で確認できるのは何気楽しみだ。

 

「向こうでは、チートスキルみたいなのがあるけど僕からあげる物は無いから。不幸な死に方をした奴が他の神からそういうのを貰うことがあるけど君達には無いから。理由は分かるよね。」

 

「ああ。異世界へ行くのは俺たちの意思とかそんなんだからな。」

 

心の声が読まれるのなら、喋っても問題ないだろう。喋るのが面倒な時は心の中で言うとしよう。

 

「手に入れたかったら特殊な条件をクリアして見てくれ。もう時間が無いからザックリ説明するけど、その世界の事はアイテムポーチの中の本に書いてある。以上。」

 

おい!最後、本に丸投げしたぞ。

 

「ああ。後向こうの世界の言語は僕の力で頭の中に適当にねじこんどくから安心してくれ。なぁに、人間の脳は130年分の事を記憶できるらしいから異世界の言語のひとつやふたつ大丈夫だよ。」

 

安心できねーー。

 

「じゃ、幸運を祈る。」

 

へ?

視界がグニャングニャンに回る。気持ち悪。酔ってきた。そして、そのまま気絶した。

 

 

…。

……。

………。

…………ハッ!

気がついたら、家の天井ではなくどこまでも広がる大きく青い青空が広がってました。周りは森、いつまでも寝ていたい気分だ。木の上に小石を持った猿が居なければ。

さぁ、逃げよう。仰向けからいつもより素早く立ち上がり、全力疾走する。猿が小石を投げてきたのと同タイミングで今までいた地面に石が当たり、粉になった。

あれ?石がどこにも無い。その瞬間、直感に任せてジグザグ走行。猿が石を投げると同時に地面に小規模のクレーターができていた。

 

「最初に出くわすレベルの敵じゃねーーー!!」

 

人知れず叫ぶ。猿から逃げる。すると猿たちは追って来ず別の方向に去って行った。

 

助かったーー!!

 

大声を出すと猿を呼んでしまうかも知れないから、心の中で叫ぶ。それから歩く事、数分。

さて、ステータス画面はどうやって出すのかわからなかった。すると、目の前に青い半透明の板が出てきた。

〈名前〉楠木龍一〈性別〉男〈職業〉無職 〈種族〉 魔族 〈Lv〉1

〈ステータス〉物理攻撃力 24 物理防御 18 魔力 21 魔法攻撃力 13 魔法防御力 14 俊敏力 31 運 50 魅力 無に等しい

〈装備〉 服 ズボン

〈スキル〉 測定

なんじゃこりゃ。職業はこの世界じゃあ仕方ないかも知れない。だが、魅力の所悪口だよね。彼女いない歴=歳の数の俺だがこれは酷くないか。

しかし、スキルを一つ持っていたのだな。測定って何を。身長か?すると、また青い半透明の板が出てきた。

〈身長〉175,3cm

本当に出た。これはおそらく、調べたいものを調べるスキルだろう。あの神様の贈り物かな。有難や。

そして、、最後にとっておいたが種族の所、何故魔族!!さっきまで人間だったじゃん!何故この世界に来て魔族!!おかしくね!?

あーだこーだ言っても仕方ない。気を取直して行こう。

数十分歩くとあの猿達が居た。俺と同じく転移した奴だろうか。誰かが襲われて居た。助けに行く前に測定を使ってみた。

 

〈種族〉 グレートモンキー 〈Lv〉143

 

は?と、一瞬目を疑うもあの小石の威力を見た後だと少し納得するが初期で出会う敵ではない。いわゆる今では勝て無い敵である。

そこまで考えを巡らせていると猿が石を投げた。それが当たったと思われる場所は体を貫通し消えていた。さらに周りに居た猿も石を一斉に投げる。すると一瞬で体が穴だらけになった。

あれは死んだ。そして勝て無い。逃げるしかない。思考がそう思うや猿とは逆方向へ逃げ出した。助けようと思いはした。だが、助ける前に死んだ。それ以前に助けに行ったとしても俺も死ぬだけだろう。

いつの間にか夜になる。幸い月が明るく足下が見える。少し先も見通せる。こんな所で野宿したら、眠るどころか、永眠するだろう。

それにこの森は早く抜けたい。その一心で体を動かし、見え無い出口を求めて動き出す。

森は出ることができた。だが見渡す限り草原のこの状況どうしようもない。

グギュルルルル。

腹が減った。食料無し、辺りに草があり、それを見て、

 

「ものは試しだ。」

 

ブチ。パク。

雑草を食べてみた。案外悪くない。それをいくつか食べていくと不味い事にきずいた。味覚が麻痺してたか。空腹って怖いね。そして、歩いていく。

数日が過ぎた。雑草を食べても味気ない。肉が食べたい。手に入れようにも、手段が分からない。

そんな事を考えていると数十メートル先の方に猿に襲われている少女を見かけた。今度は何も考えずに突っ込んだ。少女と猿の間に入って少女を庇うように猿の前に立った。測定で猿の強さを見てみる。

 

〈種族〉 グレートモンキー 〈Lv〉 86

 

まだこれ程強いとは。もしかして、この少女は見かけによらずかなり強いのか?

 

〈種族〉 人間 〈名前〉 ??? 〈Lv〉 1

 

測定を発動させたけど、そんな事は無かった。なら、取るべき手段は一つだ。

 

「逃げろ。それだけの時間は稼いでやる。」

 

少女を逃し、俺が時間を稼ぐ。正直、一秒も持ちそうにないがなるべくかわして少女から引き離す。

 

「足が、動かない。」

 

怯えた声でそう言われた。なんてこった。仲良く死ぬ道しかないのか。

相変わらずの自分の弱さに嫌気が刺してくる。なんせ、自分の身を守るのも、少女の身を守る事も出来ないのである。なんて自分は弱いんだ。

強さが欲しい。なにおも守れる強さでは無く、完膚なきまでに相手を叩きのめす強さが欲しい。

ただそう思う。人間で無くなってもいい、悪魔にだってこの身を売っていいだろう。強くありたい。誰も追いつく事のできない、文字通り最強になりたい。その時、

 

『〈強欲Lv0〉を獲得しました。』

 

そんな声が響いた。

 

『レベルを上げるには運のステータスを10捧げて下さい。』

 

無機質な声であったが、考えるまでも無く、運を10捧げた。

 

『〈強欲Lv0〉が〈強欲Lv1〉になりました。スキル〈略奪〉を獲得しました。』

 

そんな声がした。〈略奪〉の説明を求めると青い半透明の板が出てきた。

 

『〈略奪〉触れた相手のステータスやスキル、レベル、魔法、ドロップアイテムを奪う事が出来る。(運のステータスは百分の一に落とされる。)ただし、一つづつしか奪えない。』

 

少し顔がにやける。強さを手に入れるために奪うと。そういう事か。

なら、話が早い。猿に近付く。

そして、猿が動き出し、こちらに向かって、殴りかかってきた。あの森の猿が投げていた石ほどの速度ではないにしろ、速かった。

それを、直感だけで回避する。自慢では無いが、感は鋭いのだ。

避けたついでに猿を掴み、逃げないように俊敏力を奪う。次に物理攻撃力を奪おうとしたが、強引に振りほどかれた。

少し距離が開く。猿がまた殴りかかってくる。だが、その速さはさっきまでと比べられない程遅かった。そして、俺はさっきまでとは比べ物にならない程の速さで猿を掴む。

先程奪い損ねた、物理攻撃力を奪う。すると猿は振りほどこうとするが物理攻撃力を奪われれば幼子がただ叩いている程度にしかかんじない。

後は一方的だ。順調に全てのステータスを奪う。後はスキル、魔法、ドロップアイテムを奪うだけだ。

 

『スキル〈神速〉を獲得しました。スキル〈全能力超向上〉を獲得しました。スキル〈完全耐性〉を獲得しました。』

 

次に足元に宝箱が落ちてくる。4つ程落ちて止まった。これ以上なにも奪えなかった。後は、殺すだけだ。その猿を全力で地面に叩きつける。

 

「ウギャ!!」

 

グギバキボキ

 

猿の悲鳴と骨がいくつも折れる音がして猿が消えた。成る程、モンスターを倒すと消えるのか。と思った。そして、我に返って、しまったと思った。子供の目の前で、猿の残虐な殺し方をしてしまった。

 

「大丈夫か。怪我はないか?」

 

さっきの殺し方を忘れたように少女の心配をする。怖がられるか?その心配をする。流石に子供から怖がられると少しへこむ。

 

「ありがとうございます。」

 

礼を言われた。正直、怖がられると思った。こういう事は普通なのか?

 

「無事で何よりだ。」

 

この世界に来て初めての笑顔を浮かべられたと思う。

 

「あの、あなたのお名前はなんというのでしょうか?」

 

この子、見た目によらずしっかりしてる。

少し驚くが、そんな事は置いといて。名前か。本名はある。だが、異世界に来たんだ。別の名前を名乗ってもいいだろう。決まっているのかって?愚問だな。

 

「俺の名前は『マグナ』だ。」

 

すると、

 

『名前が「マグナ」に変更されました。』

 

嘘だろ。本名になっちゃったよ。まぁ、カッコいいと思うからいいんだけどさ。

 

「マグナさんですね。助けていただき、ありがとうございます。」

 

この子、かなりしっかりしてる。

何この子。異世界だから、貴族の子供か何か?だとしてもスゴイよ。

 

「私の名前は、レオナ・ルーンです。」

 

わぁ、名前が異世界っぽい。異世界だから当然だけど。

 

「そうか。では、何故このような場所にいる?」

 

その質問に

 

「家出です。」

 

即答された。しかも、家出って貴族の線が少し濃くなったぞ。嘘だろ?こんなモンスターが強い場所に出てくるって、自殺志願者位のもんだろ。俺みたいな奴を除くがな。

 

「まさかモンスターがあれ程強いとは思いませんでした。」

 

知らずに来ていたとは、

 

「まぁ、無事で何よりだ。」

 

すると遠くから、

 

「レオナー。何処にいるー。」

 

と言う声が聞こえる。この子の迎えが来たようだ。

 

「何が理由で家出をしたか分からないが、今のお前は弱い。こんな所に来ても死ぬだけだろう。家出したければ、もっと強くなってこい。」

 

それだけ言っておきたかった。

 

「はい。そうしておきます。」

 

これでこの子も安全だろう。

 

「あの、次会うときもこのように接してくれますか?」

 

はい、貴族確定。俺のような接し方は、珍しいのかな。

 

「いいだろう。次会うときも、このような接し方をしよう。」

 

「ありがとうございます。」

 

すると、少女は笑顔になった。今までの歳に似合わない対応が嘘に見えるくらい歳相応の笑顔だった。それに俺は微笑みながら、

 

「それじゃあな。また会おう。」

 

それを聞くと少女は声のした方にかけて行った。それを見送って

 

「さて、宝箱を開けるか。」

 

猿が落とした宝箱を開けていく。

一つ目、

 

〈グレートモンキーの肉〉 グレートモンキーの肉。焼くと独特の食感で一部の者に人気。

 

そう書いてあった。肉が数日ぶりに食えることにかなり喜ぶ。

二つ目、

 

〈グレートモンキーの大骨〉 グレートモンキーの大骨。軽くて丈夫。武器に加工も出来る。

 

おぉ、なんか、ぽいな。異世界というより、ゲームに近い。武器は作りたい。武器があるだけで、戦闘も楽にできそうだ。

三つ目、

 

〈マシラのブレスレット〉 RR装備 装備者の攻撃力を500上げる装備。

 

ゲームだな。レアリティがセットされているもん。

異世界より、ゲームの世界と言われた方がしっくりきそうだよ。だが、この装備使えそうだな。早速、腕にはめてみる。何が起こるわけでも無いが、変化はステータスを見れば分かるだろう。そこで、略奪で猿のステータスを奪ったことを思い出した。

まぁ、四つ目を確認してから、見てみよう。

四つ目、

中身は、革袋だった。中身は、金貨と銀貨だった。金貨が34枚、銀貨が6枚だった。

この世界のお金だろうか。普通に考えて、金貨が一番高価だろう。小金持ちになった気分だ。

よし、ステータスの確認だ。

 

〈名前〉 マグナ 〈性別〉 男 〈職業〉無職 〈種族〉 魔族 〈Lv〉87

〈ステータス〉 物理攻撃力 5604 物理防御力 5069 魔力 3491 魔法攻撃力 2898 魔法防御力 2540 俊敏力 6721 運 40.2 魅力 無し

〈装備〉 服 ズボン マシラのブレスレット

〈固有スキル〉 強欲 Lv1

〈スキル〉 略奪 測定 神速 能力超向上 完全耐性

 

一気に強くなってる。だが魅力の値、無しと言い切られてしまった。

悲しいぞ。泣くぞ。名前が本当に変わってるし。ステータスが大幅に上昇してるし。運の値は微妙だし。固有スキルとか出てるし。

気を取直して、新しく手に入れたスキルの確認をしようすると目の前に以下略

 

〈神速〉 誰にも捉えられない速度で一瞬動く事が出来る。

 

〈能力超向上〉全てのステータスを五分間だけ三倍に引き上げる。

 

〈完全耐性〉 全ての状態異常にならない。

 

チートだな俺の力。こんなにも強い力を奪えるなんて、略奪まじでスゴイよ。能力超向上とかチートに近い能力じゃん。このステータス多分レベルが上がったボーナスも含まれているのではないか?そうだとしたら、物凄く強くなれそうだ。

さぁ、略奪をし尽くす為に最初にいた森へと引き返そう。さらなる力を求めて。




楽しんでいただけたら、幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

森の奥へ

ご意見、ご感想ありがとうございます。
それではゆっくりしていってください。


その後、俺は森から来た道を引き返していた。道中に猿と何体も出会ったが、略奪を使用して、弱体したところを一撃で仕留めた。

 

〈名前〉 マグナ 〈性別〉男 〈職業〉 無職 〈種族〉 魔族 〈Lv〉 587

〈ステータス〉 物理攻撃力 34913 物理防御力 33917 魔力 25781 魔法攻撃力21597 魔法防御力 20815 俊敏力 50017 運 42.1 魅力 諦めてください

〈装備〉 服 ズボン マシラのブレスレット

〈固有スキル〉 強欲Lv1

〈スキル〉 測定 略奪 神速 能力超向上 完全耐性 アクロバット

 

うん。ステータスが万を超えた。もはや、この辺りでは最強だろう。

マシラのブレスレットやグレートモンキーの肉、グレートモンキーの大骨と金が大量に手に入った。

アクロバットとは

 

〈アクロバット〉 柔軟性やバランス感覚あらゆる動きの補助が出来る。常時発動。

 

グレートモンキーの一体が持っていたスキルでかなり役立ちそうだ。これの効果を使えばあらゆる場所の移動が楽になるというこれからの旅の安心感が出てくる。

もうすぐで夜だ。火を起こそう。どうやって火を起こすかって?枯れ草、枯れ枝を集めて、枯れ枝を挟んで、枯れ草を下に敷いて、枯れ枝を擦り合わせて摩擦熱で火を起こす。

普通なら時間がかかるだろう。だが、俊敏力が高ければすぐに着くだろう。ほら着いた。

まずは枯れ草を入れて、威力をあげて、枝を入れて火を持続させる。

そして、グレートモンキーの肉を取り出し、枝に刺し、火で炙る。やっと肉が食える。いい感じに仕上がった。

 

ガブッ

 

美味い。食感が独特とか書いていたが、ホルモンに近い。だが、味はしっかり肉だ。次々に焼いて食べていく。

食べ終わり、明日について考える。明日は森に向かいつつ、スキルを使ってみよう。

 

次の日、スキル〈神速〉を使ってみる。すると一瞬で五メートル程移動した。次に連続使用してみる。今度は十メートル程を一瞬で移動した。

今度は、〈能力超向上〉を使用してみる。ステータスを確認して、全てが三倍になっていた。まじでステータスが高いから化け物じみたステータスを見て、口角が吊り上がったのは別の話。

〈アクロバット〉の能力を確かめるべく、体操選手ばりの動きをしてみるが、そのどれも簡単にこなせた。

木に一瞬で登り、木から木へと飛び移っていく。それは、ありえない速度でだが、それでも木から落ちることはなく、落ちそうになってもその木を蹴り別の木に止まったりする事が出来ているので順調に進んでいる。

そして、昼頃あの森へと到着する。最初は数日かかったのに今では一日あれば着く事が出来る。

ステータスの差が出ている。そして、ここの猿に勝てる事が出来るのか。それを試しに行こう。

結果を言おう。楽勝だ。圧勝だ。出会った猿のステータスを全て奪っていくと面白い事が起こった。

 

〈名前〉 マグナ 〈性別〉 男 〈職業〉 無職 〈種族〉 魔族 〈Lv〉999

〈ステータス〉 物理攻撃力 163548 物理防御力 162486 魔力125384 魔法攻撃力 119367 魔法防御力 117947 俊敏力195824 運 45.6 魅力 …

〈装備〉 服 ズボン マシラのブレスレット

〈固有スキル〉 強欲Lv1

〈スキル〉 測定 略奪 神速 能力超向上 完全耐性 アクロバット

 

レベルが上がらなくなった。ステータスはもうこんなんで普通だろ。むしろまだ強くなる。

それより、魅力の所はもはや言葉が無い。虚しくなるぜ。

レベルの話に戻すとこれは、カンストしたのか?このレベルが最高なのか?

だが、カンストしても猿から略奪が出来るのでステータスは上がっている。ということは、まだ先があるのではないか?

これからレベルを上げるには特殊な条件を満たさないといけないのではないか。

そういう気がする。森を奥へと進んでいく。すると、

 

「グルルル!」

 

と威嚇するような鳴き声が聞こえる。その方角を見てみると体長二メートルくらいある狼がいた。測定を使用する。

 

〈種族〉 フロストウルフ 〈Lv〉 241

 

新手が登場した。〈神速〉を使い一瞬で近ずく。足を掴み〈略奪〉を発動させる。俊敏力を奪う。

フロストウルフは暴れるが、離さない。暴れたところで何の痛みも感じない。

物理攻撃力を奪う。次に魔法攻撃力を奪おうとしたところで、氷の矢が飛んで来た。驚いて跳びのき回避する。

すると一瞬であたりを凍らせて来た。それは、俺の背後の森も一瞬で凍らせるようなものだったので、俺も凍るはずだったのだろうが魔法防御力もかなり高いので無意味だったようだ。

今度は身体能力だけで近ずき頭を掴み略奪を再開する。ステータスを全て奪い、スキルを奪う。

 

『スキル〈連爪斬〉を獲得しました。スキル〈威嚇〉を獲得しました。スキル〈索敵〉を獲得しました。魔法〈氷属性魔法 極〉を獲得しました。』

 

おぉ、魔法を手に入れる事が出来た。狼が魔法を持っている事に驚くよ。

そんな事は、置いといて。次は、ドロップアイテムだ。今度は五つ程落ちて止まった。

後は、殺す。

いつもの様に地面に叩きつける。すると、モンスターは消える。いつもの光景だ。ドロップアイテムを確認する。

 

〈凍狼の大牙〉 フロストウルフの尖った大きな牙。このままでも十分武器になる。

 

〈凍狼の圧毛皮〉 フロストウルフの厚い毛皮。防具にすると氷耐性は強いが、炎耐性が弱い。

 

〈凍狼の肉〉 生臭い。焼いても生臭い。とにかく生臭い。だが美味しい。やみつきになる人がいる。

 

〈極冷の長剣〉SR装備 切りつけた相手の傷を凍らせる。氷属性魔法の攻撃力が上がる。

 

初めての武器だ。しかも、説明のところに書いている効果が強そう。早速装備だな。

だが、腰にベルトが無いので、腰に装備出来ない。持って歩く事にしよう。

〈凍狼の大牙〉はこのままでも武器になる様だが、かっこ悪いし〈極冷の長剣〉があるのでアイテムポーチに収納する。

〈凍狼の圧毛皮〉は防具に加工出来る様だが、その技術は無いし、ステータスを見ればわかる様に魔法防御力も高いので、今の所必要無いだろう。

〈凍狼の肉〉は悪口しか、書かれていない様に感じる。

ものすごく生臭いのであろう。しかも、やみつきになる人がいる。という事は少数の人しか好まない食材だろう。

一応食料だアイテムポーチに入れよう。アイテムポーチって生臭くならないよね?

あっ、そういえば、この世界の事はアイテムポーチの中に入っている本で確認するんだった。まぁ、後でいいや。スキルの確認をする。

 

〈連爪斬〉 爪から斬撃を飛ばす。射程五メートル。

 

〈威嚇〉 自分よりレベルが下の相手の動きを止める。効果時間はレベル差によって変わる。

 

〈索敵〉 半径二十メートル以内の敵の気配を知る事が出来る。常時発動。

 

使えるスキル満載だね。〈連爪斬〉は中距離の戦闘に使えそうだ。威嚇は、今の自分のレベルは999なので全ての敵の動きを止める事が出来そうだ。

〈索敵〉は今まで視覚で敵を探していたが、半径二十メートル以内であれば、気配で探せる様になるのだ。今までより効率よく略奪出来そうだ。さて次は、魔法を見てみよう。

 

〈氷属性魔法 極〉 氷属性魔法をなんでも扱える様になる。

 

やったー。氷属性魔法を扱える様になったぞ。努力も何も無いけど。

これで、遠距離攻撃手段が出来た。〈氷属性魔法〉なので足止めも出来ると思うから、略奪をしやすくなりそうだ。

アイテムポーチから本を取り出す。どうやって取り出したかって?念じれば出てきた。しまう時も念じれば入る。この世界って不思議だし、ゲームに近いね。

本に載っていた俺が気になっていた事を説明しよう。まずは、この世界にいる人型種族の種類だ。

 

〈人間〉 この世界に最もいる種族。稀にスゴイ力を持った者が現れる。

 

〈獣人〉 体のどこかに獣の特徴を持っている。体の獣の特徴に沿った部位のステータスが高い。

 

〈エルフ〉 長い耳が特徴。視力、空間認識能力に長けている。ダークエルフとは仲が余り良くない。寿命が二番目に長い。

 

〈ダークエルフ〉 肌が浅黒いのと長い耳が特徴。後は、エルフと同じ。

 

〈魔族〉 体のどこかに悪魔に似た部分がある。全体的なステータスが全種族で一番高い。全種族から敵視され、軽蔑されている。最も人口が少ない。寿命が一番長い。

 

魔族。なんか、やらかしたか。というよりも、俺に悪魔に似た部分って見つからないんだが。

その状態で何故、魔族になっているのか、ますます分からなくなったのは言うまでも無い。

人間の稀にスゴイ力を持った者って転生者じゃ無いだろうか。少数に天然の者もいるかも知れないが。

獣人とエルフ、ダークエルフと一度会って見たいものだ。

次に金銭感覚の確認だ。

こちらは少し、誤算があった。

金貨の上に白金貨というものがあった。後は、百枚ずつで次の位の金になるのだ。例えるなら、一円玉百枚で十円玉になるという事だ。

次は、魔法についてだが、これは驚いた。

 

〈魔力魔法〉 魔力を全体的に使い扱える魔法。習熟は魔力の最大値を捧げると覚える事が出来る。自在に魔法を作る事が出来る。

 

〈精霊魔法〉 漂っている精霊の力を借りて放つ魔法。魔力魔法より消費魔力が少なく、基本的な威力が高い。習熟には努力が必要。又、場所や時間によって威力が変わる。使える魔法はある程度決まっている。

 

なんと、魔法は二種類あったのだ。魔力魔法と精霊魔法。俺が習得したのは、魔力魔法だと思う。

全く魔力の最大値を捧げて無いけど。精霊魔法か。興味が湧いたら、使える様になるのも、良いかもしれない。

次は、装備のレアリティだ。

 

N•NN•HN•HHN•R•RR•SR•SSR•UR•UUR

 

である。

まだ、SRしか持ってないが、あれより強い武器がまだ、たくさんありそうだ。そして、この世界は本当にゲームのようだ。と思った。

まぁ、こんな感じだろう。他にも、色々な常識が書いているが、寝る前にでも見てみよう。

翌日。奥に行くにつれてモンスターの実力が上がってきている。まぁ、今の俺からすれば弱いし、略奪で奪えるステータスが多くなるから、良いんだけど。

そういえば、強欲ってどうやってレベルが上がるんだ?

 

〈強欲Lv1〉 次のレベルまで運を20捧げて下さい。

 

運のステータスを捧げるのか。運のステータスは微妙にしか上がらないが、この間、やっと50になった。

捧げても良いが、運が30を下回ると俺が殺したモンスターと同じ様に殺されてしまうのではないか?

と疑問を持ってしまう。何故なら俺が殺したモンスターの運のステータスは1〜30前後なのだ。なので40以下にしたくない。

なので、60になってからにしよう。

そう思った時、〈索敵〉によって、モンスターが近くにいる事がわかる。それを目視して、驚く。それは、甲冑をきたモンスター?人か?少し戸惑う。測定を発動する。

 

〈種族〉 怨嗟の甲冑 〈Lv〉 547

 

うん。モンスターだ。しかも、さっきまでレベル300中盤位だったのに一気に強くなってる。

向こうは、こちらを目視し、襲いかかってくる。刀を振り上げての一撃を難なく回避して相手の甲冑を掴もうとするが、回避されてしまった。

驚く。決して、遅くない動きだったはずだ。それを回避されて驚いているところに刀の一撃が放たれる。

それを回避して、距離を開ける。〈能力超向上〉を発動する。そして、〈神速〉を使い、一瞬で敵の懐に入る。

そして、今度は、全力の速度で、相手を掴む。そこに少しの驚きが混ざる。

なんと、音速を超えていたと思われる動きを回避しようとしたのだ。

まぁ、捕まえたから関係ないが。ステータスを一つずつ奪っていく。次にスキル、

 

『スキル〈見切り〉を覚えました。スキル〈夜視〉を獲得しました。』

 

回避できていた理由がわかった。次にドロップアイテムだ。足下に三つ宝箱が落ちた。

折角なので、魔法を使用する。魔力魔法なので、自分で魔法を作る事が出来るらしいので、氷属性魔法で氷の剣を作り出し怨嗟の甲冑に放った。

その剣は甲冑を貫くと勢いそのままに背後の木を全て貫き、見えなくなった。

魔法の力加減の方法を考えなくてはならなくなった。

ドロップアイテムの確認。

 

〈玉鋼〉 武器に加工出来る。作られる武器や防具は丈夫。

 

〈怨嗟の刀〉 SSR装備 恐ろしい切れ味がある。さらに、切りつけた敵にランダムな状態異常〈特大〉を与える。

 

怨嗟の刀の能力は強力かどうか判断しかねるな。 まず、状態異常〈特大〉がよくわからん。

 

〈状態異常 特大〉 かなり強力な状態異常。長時間持続する。生半可な治癒では治らない。

 

おぁ、チート武器だ。ていうか、あのモンスターこれを持ってたの?そうなってたら相当強い部類に入るんだけど。

まぁ、ここのモンスターはどれも強いんだけど、あれは、別格だと思うぞ。武器はこっちの方にするか。

最後は金である。白金貨が入っているのはこの敵が初めてだった。

次にスキルの確認。

 

〈見切り〉 相手の攻撃を完全に読み切る事が出来る。

 

〈夜視〉 夜中でも昼間と同じくらい明るく見える。

 

やはり、そういう効果だったか。これから出会うかもしれない強敵に使えそうなスキルと夜中の戦闘に役立つスキルが手に入った。

さぁ、ステータスの確認だ。

 

〈名前〉マグナ 〈性別〉 男 〈職業〉 無職 〈種族〉 魔族 〈Lv〉

999

〈ステータス〉 物理攻撃力 343759 物理防御力 335976 魔力 299648 魔法攻撃力 274978 魔法防御力 284927 運 51.2 魅力

〈装備〉 服 ズボン マシラのブレスレット 怨嗟の刀

〈固有スキル〉 強欲Lv1

〈スキル〉 測定 略奪 神速 能力超向上 完全耐性 アクロバット 連爪斬 威嚇 索敵 見切り 夜視

〈魔法〉 氷属性魔法 極

 

なんも言えねぇ。

魅力の所とうとう空欄になってしまったよ。俺ってそんなに魅力ないかな?

ステータスは三十万を超えた。瞬殺できるよ。殺そうと思えば。

だが、そんな勿体無い事はしたくない。俺は、まだまだ強くなる。そのためにも、強欲のレベルを上げておきたい。

さらに、また、こんなモンスターと出会えるかもしれないから、まだまだ奥へと進んでいく。




ご意見、ご感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強敵

すみません。投稿遅れました。諸々の事情があるので、許してください。
ご意見ご感想お待ちしています。


あれから、数日が経った。今、俺の目の前には、数日前どころか、ここ最近頻繁に会っているモンスターと対峙している。だが、数日前とは決定的に違う所がある。それは、レベルだ。

 

〈種族〉 怨嗟の甲冑 〈レベル〉 794

 

ものすごく高い。その敵に俺は、刀を持って対峙していた。実戦経験を積んでいない事に昨日気付き、今経験を積んでいる。

さっきも、同じことをして一撃で殺しているので、回避重視で戦っている。

甲冑が刀を振り下ろす。その速度は欠伸が出るほど遅いので危なげなく回避する。

スキル〈見切り〉が発動しているせいで、遅く見えるのだろう。

次は、真横に切り裂いてきた。それを、刀で受け、弾く。相手は構えを直し連撃を繰り出してくる。右から左からくる攻撃を回避したり、刀で受ける。

そして、隙を見せたところで左手で甲冑を掴む。その際、刀で攻撃してきたが、刀を右手ごと切りとばす。

安定してるな。この辺りの敵では相手にならないのが一目瞭然だ。

昔、平和な日本にいて、たまに喧嘩をしたくなった時があるが(その時は抑えました。)その時は戦うというのはワクワクしていた。

野蛮であり喧嘩を舐めてんのか。と言われるかもしれないが、本気でそう思った時があった。

だが、今はそんな気持ちなんて無く、ただ、敵となったものを殺していくという機械の様になっている。

強くなるというのは、誰かを守れる強さと引き換えに戦いにおいてのなんというのかな。高揚感?の様なものを奪っていっている。

レベルはカンストし、ステータスにおいてはこの辺りで勝てるものはいない。

近くの町にいるモンスターを倒す人たちのレベルが俺よりも高ければ、もしも、対人戦がおきた時に高揚感を感じるんだろうか。

そんな思いを抱きながら見てきた中で一番レベルが高かった怨嗟の甲冑を殺した。

いや、アンデッドに見えるから、浄化というのかな?まぁ、そんな事はどうでもいい。奥に行くたびにレベルが高い敵が増えて行く。

そして、さっきの甲冑が多く肉が少なくなってきていた。主に猿の肉が。

狼の肉?生臭いと見たあたりから、手をつけていない。ただ、たまに狼が出てくるので、狼の肉は徐々に数を増やしていっていた。

晩御飯だ。狼の肉、初挑戦の日だ。

どれぐらい生臭いんだろう。気絶するレベルとかじゃないよね。

さすがに肉を食べて気絶する奴はいないと思うが、覚悟をする必要があるだろうか。そんな事を思っている内に肉が焼けた。肉を顔に近ずける。

 

「クッサ!!!」

 

思はず声が出ていた。生臭いと聞いていたが、ここまでとは。正直にいうと、人間が食べて大丈夫な品物か?と言える一品だった。

正直臭いを嗅いだだけで、この肉は食べたく無くなったが、それは、俺が殺した狼に失礼にあたるので、我慢して食べる。

恐る恐るかじってみる。するとどうでしょう。噛めば肉汁が溢れ出し程よく柔らかく、物凄く美味しい肉に思えた。

 

臭くなければな!!

 

吐きかけるのを我慢する。あまりの臭さに口から胃から出ようとするを我慢する。

ただ、美味しい。それは変わらない。臭くなければ本当に最上級の肉なのに。勿体無い。

そんな事を思いながら、もう一口食べる。臭い。とてつもなく、臭い。だが、美味しい。味覚と嗅覚がおかしくなりそうな肉だ。

肉を食べ終えて、臭さに悶え終えて、落ち着いたあたりで、ステータスを確認しようか。

 

〈名前〉 マグナ 〈性別〉 男 〈職業〉 無職 〈種族〉 魔族 〈Lv〉 999

〈ステータス〉 物理攻撃力 746923 物理防御力 764972魔力 705268魔法攻撃力 684782 魔法防御力 693825 運 58.6 魅力

〈固有スキル〉 強欲Lv1

〈スキル〉測定 略奪 神速 能力超向上 完全耐性 アクロバット 連爪斬 威嚇 索敵 見切り 夜視

〈魔法〉 氷属性魔力魔法 極

 

見よ!この強さ。ここらのモンスターも強いが、相手が強ければ強い程俺の〈略奪〉の能力がよく発揮される。

相手の強さを奪い、自分の強さにする、スキル〈略奪〉。ただ、一つ失念していた事があった。

あくまで、奪った力であり、俺が一から築いた力では無いのでその力の表面の部分しか使いこなせない。

その力の効率的な使い方を習得するには、実戦で使う事だが、力を振るえば一撃、相手からの攻撃は鈍足であり、そもそもで戦いにすらならなかった。

この力は強者から力を奪い、自分を強者にするがそれは、ステータスやスキル、魔法の事でしかなく技術的な面は弱者としか言いようがない。

さらに、それを伸ばそうにも対等かそれに近い形の敵に出会う事が無いので、技術が向上するには時間がかかるだろう。

という事で技術が向上するまでステータスに頼り切ったゴリ押し戦をするしかない。

まぁ、ほぼ七十万に近いステータスなので、負ける事がまず、ありえないだろう。

だが、それに驕る事なく、日々の研鑽をこれからする予定だから、技術面でも強者を目指す予定だ。だが、今日はもう遅いので寝るとしよう。

 

いつも通り森の奥を目指して歩いて行く。道中でモンスターと遭遇すると回避重視の戦法を取り、隙を突いて〈略奪〉を発動させる。

まだ、最小限の動きとはいかないが、素人とはあまり思えないだろう(素人目に見てだが)。

当たった攻撃は無いし、回避重視の戦法が功を奏しているのか。スキルが強いだけなのか。多分、後者だが、その内使いこなしてみせる。

俺が持っている武器は強力だが、それを使いこなせているか。と、問われれば。そうで無い。としか言いようがないだろう。

寝る前に武器の取り扱いの練習でもするか。ざっと考えただけでも今の自分がスキルに振り回されている事が誰の目から見ても明らかだった。

一度、〈略奪〉を使用しないで全力で目の前に出る敵を片っ端から切り倒して行こうか?

何故だろう、それが面白そうに思えるのだ。そして、少しとせずにそれをしようと心の中で決める。

それを決めると行動は速かった。全力で駆けて目につく敵と〈索敵〉によって発見した敵を片っ端から殺していった。

ドロップアイテムの事など頭の中から消えていた。相手を確実に殺していき、次の敵を探して駆けて行く。

その姿は血に飢えた魔獣のようだった。その表情は殺戮を楽しむ、悪魔のようであった。彼が魔族となったのは表面的なものではなく、その奥の彼の心の中にあるものだったのかもしれないが、彼はそれを知らないだろう。

今も彼は気の赴くままに彼の心が命じるままに殺戮を楽しむ。

 

モンスターを殺し終わるのには数時間かかった。だが、息一つ切らしていない。ステータスってすごいね。

モンスターを倒して行くのってスッキリするね。ドロップアイテムをどうしようかと考える。近くにある怨嗟の甲冑のドロップアイテムを確認するが、玉鋼と金の宝箱があるだけだった。

〈怨嗟の刀〉はレアドロップらしい。まぁ、当たり前か。あんなのが一体倒しただけで手に入るのならあの性能はありえないでしょう。

ふと、近くに洞窟があるのを発見した。

うん。入りたくなるね。

洞窟にいるモンスターってなんだろう。

そして、〈夜視〉は洞窟の中でも発揮されるのか試してみよう。そんなこんなで洞窟の中に入る。

 

〈夜視〉は問題なく発揮される。

洞窟の中に光は無いはずなのに昼間のように明るい。だが、モンスターがいない。

洞窟にいるモンスターに少し興味があったのだがな。

ただ、少し歩いたところに重そうで、いかにもボスモンスターがいそうな雰囲気の扉があった。

ん?何故だろう。まじで、ボスモンスターいそうなんだけど。

さらにここら辺にいたモンスターのレベルを考えると、ヤバイと思う。

ゲームにおけるボスモンスターは多対一で勝てるものだ。一人で挑んで勝てるものでは無い。

そこらへんにいたモンスターとは格が違う。ここは人里に降りて仲間を募るべきだろう。

ん?仲間?あれ、俺に仲間っているのか?相手はボスモンスターの様だが、怯える事はないのでは無いか?

俺の強さは普通を超えすぎていると思う。うん。なんか、自分が化け物になってる自覚がある。

 

ギィィ

 

と、音を立てて重そうな扉が開いた。中に入った感想があるとすれば、行き止まりだ。洞窟のまんまだ。それと、中に鎧がある。

怨嗟の甲冑に近いが、あれは、甲冑というより、騎士がつけていそうな鎧だ。

 

「誰だ。」

 

うは、喋った。モンスターが喋ったのって初めてだろう。そんなことを思っていると

 

バタン

 

と扉が閉まった。退路が塞がれたか。ていうか、開くときは音が鳴ったのになんで、閉まる時はなんで音が鳴らないんだ。

今、考えるべきでない事を考えていると

 

「まずは、先に名乗るのが礼儀だったかな。私は、ゼギアノス。元帝国騎士団長だ。」

 

礼儀正しいな。名乗られたら名乗るしか無いじゃないか。

 

「俺の名前はマグナだ。」

 

すると、騎士がゆっくり動き出す。

 

「さぁ、決闘を始めよう。」

 

嘘だろ。礼儀正しいと思っていたのにいきなり決闘しろとか言いいだしたぞ。しかも、武器を構えたぞ。武器は黒い細剣の様なものだ。

 

「さぁ、そちらも武器を構えよ。」

 

これは、闘うしかない様だな。武器の構え?知らねぇよ。適当に武器を相手にぶつけやすい様な構えを取る。

 

「では、いざ尋常に。」

 

敵が踏み込んでくる。その速度は、〈見切り〉をもってしても早いというしかない。

慌てて回避する。するとそれを読んでいた様に連撃を打ち込んでくる。切り傷が多くなる。

相手の連撃の隙を突いて反撃をするも、相手から受け流される。

だが、受け流されたとしてもこれを好機と思い、仕返しとばかりに連撃を繰り出す。しかし、どれも受け流される。

 

「力や速さはすごいが、技がなっていない。」

 

「ご指摘ありがとうございますよっと。」

 

敵の指摘に皮肉で返す。だが、その通りだろう。一度相手から距離を取る。ていうか、俺に切り傷を与えるってすごい攻撃力だぞ。一体どんなレベルだ?

 

〈種族〉 闇騎士ゼギアノス 〈Lv〉 100

 

その情報に驚くが、ある可能性に思い至る。なんらかの偽装スキルがあるのだろう。小説やアニメでは、よくあるパターンだ。

 

「その強さ、どこで手に入れた。」

 

「ある者を守りたく、私を守ったが為に死んでしまった。その者を生き返らそうと奔走している内に強くなっていた。だが、生き返りの方法を見つけた時には遅すぎた。そして、私は、アンデッドになっていた。帝国に復讐するという負の感情が強すぎた為にな。アンデッドになってからもさらに強くなった。これが、私が強さを手に入れた方法だ。」

 

なんというか、重いな。ゼギアノスの話からすると誰かを守ろうと強さを手に入れたが、死んでしまった。

そいつを生き返らせようと奔走している内に強くなって、死んでからもアンデッドになってまた強くなった。

というわけか。というか、話の内容からするとゼギアノスの守りたかった者を殺したのは帝国だぞ。

 

「すまない。話が長くなったな。さぁ、決闘を再開しよう。」

 

相手が武器を再度構える。それにつられる様に構える。相手が踏み込んでくる。

やっぱり早いが、俺の特技で一度見た技なら対処できる。これは、ゲームをしている内に身についた。

前の時より、防御しながら、隙を突いて、魔法を放つ。一メートル位の氷でできた剣を相手に向けて放つ。

 

「!!」

 

初めて向こうの方から距離を取る。それを好機と思い、氷剣を次々に放つ。

 

「〈マジックホール〉」

 

だが、その魔術は敵の手に現れた紫色の渦の中に吸い込まれて消えた。

 

「フッ、実に良いタイミングだったぞ。だが、私の〈マジックホール〉はあらゆる魔術を吸収する。貴様の魔術はもうきかん。」

 

はぁ、魔術も防がれるか。これは、どうしたものか。

 

「貴様は、何の為にその力を手に入れた。」

 

予想外にも、ゼギアノスの方から質問をしてきた。

何の為に力を手に入れた。か。

 

「それは、多分、俺が守りたいと思う者を守る為だと思う。」

 

それ以外に多分ないだろう。

 

「それは、守るべき者の為ならどんな犠牲もいとわないと?」

 

「それは違うな。俺は救える命があるなら救うし、それを、一つも落とそうとは思はない。だが、守りたい者とその他大勢の命と引き換えなら俺は迷い無く守りたい者を取るだろう。それこそ、どんな犠牲を払ってでも。」

 

「そうか。貴様も私と同じなのだな。だが、その様な考えを持つ者にとって、無力は罪だ。私は自分の力が及ばなかったから失ったのだ。貴様がその考えを持つに相応しいか、私が試してやる。」

 

何だろう。初めて、敵と戦って高揚感がある。その考えを持つに相応しいか試す、か。

いいだろう。面白い。今度はこちらから行ってやる。こんな気持ちも初めてかもしれない。相手を全力を尽くして殺す。

そして、その先の勝利を勝ち取る。面白い。面白いぞ。さぁ、

 

「勝負はここからだ。」




読んで下さり有難うございます。
ご意見ご感想お待ちしています。
次回もお楽しみに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

闇騎士ゼギアノス

初めて、ルビを使った。変な感じじゃなければいいな。それに、初めて八千文字いったぞ。長かった。どうか、暇なときでも、最後まで見ていって下さい。では、ゆっくりしていって下さい。


ガンッ!!

 

金属同士がぶつかり合う音がする。光が無い洞窟の中を火花で明るく照らす。それは絶える事無く続く。

 

ガンッ!!

 

その音はまた響く。その音は一つなぎに聞こえるが、耳を凝らせば数回響いているのがわかる。そして、火花もまた、同じ箇所で起こらず一瞬で数カ所に起こる。

それは、人とは思えない者同士が常人には決して届かない高みで戦っているのだった。

 

「はぁ!!」

 

「フン!!」

 

刀と細剣がぶつかり合う。それだけで多大な火花が飛び散る。二人は剣をぶつけ合う。どちらかが敗北するまで。どちらかが死ぬまで。

二人は幾度となく剣をぶつけた。二人は同じ位置にいることは無い。何度も動いて、相手の背後をとって、相手の虚を突いて、二人は殺しあっていた。

 

「ウオらぁぁ!!」

 

「グッ!!」

 

刀が振り下ろされそれを細剣で受け止める。それだけで地面が割れ砂埃が舞い上がる。細剣が動き刀が空を切る。細剣を持つ騎士がその隙を逃さず、刀を持つ少年の心臓にむかって細剣を突き刺す。それを少年は体を捻って回避し捻った反動を利用し一回転して相手の鎧の隙間を狙い、刀を横薙ぎに一閃する。だが、騎士は体を動かして鎧に刀が当たる様にした。

 

キィィィン

 

金属が鋭い物で切り裂かれるような音がなる。いや、刀が鎧を切ったのだ。

 

「グッ!?」

 

騎士が後ろに引く。それを少年は追撃する。幾たびもの火花と金属がぶつかり合う音がする。それは、暗いはずの洞窟を明るく照らし幻想的な光景にも見えた。

 

 

 

幾度剣を振るったかわからない。ただ、思うことは目の前の敵を殺す事だけだった。剣を振るうのは、野生の勘や直感に近い形だった。動きにしてもそうだった。

 

「はぁ!!」

 

気合いとともに剣を振るう。それを相手は剣で受け止める。そのタイミングで〈神速〉を使い、相手の背後を取る。

 

「何!?」

 

相手の声を無視して相手の首めがけて刀を振るう。

 

「もらった!」

 

だが敵は一瞬で屈み刀を回避した。まじか!と思っていると敵が振り返りその細剣を俺の首めがけて振るわれる。それを〈神速〉で回避して距離を取る

 

「いい手だった。だがその程度の事生きている内に今まで多くの者がしてきた。そんなものか?貴様の守りきる覚悟とやらは。」

 

「ハッ。言ってくれるぜ。」

 

やはり一筋縄ではいかないようだ。まず、戦ってきた年季が違いすぎる。あらゆる攻撃手段を見てきているからこそ、不足の事態における対応速度が違う。一撃を決めるには相手の反射速度を上回る必要があるし、相手が見たことの無い技を使う他ないだろう。勝算は低いだろう。だが、こいつに勝ってみせる。

〈神速〉を使い敵との距離を一気に詰める。刀を敵の肩口から反対の横腹までを切り裂くように振る。それだけでは終わらずそれを横一閃に切り裂こうとするも、敵は危なげも無く回避する。敵が細剣でこちらの肩を狙うがそれを回避する。〈神速〉を使い敵の背後を取り攻撃すると見せかけ、再び〈神速〉を使い敵の真横に移動する。そこから敵を串刺しにせんと突きを放つがそれは避けられる。だが、完璧に避けきれず鎧に傷を作る。虚はつけていた。だが、決定的なものには至らなかった。今度は敵が細剣で胴体めがけての突きを放つ。それを完璧には避けきれず胴体に多少深い傷を作る。多少の切り傷には慣れていても深い傷には慣れていなかった。それを見逃す元帝国騎士団長ではなかった。怒涛の連撃だった。突きから斬りはらい、止まることの無い連撃を凌ぐのに必死だった。防御に徹しても防ぎきれなかった攻撃が腕や足、胴体、顔に切り傷を作る。だが、相手が何度目かの突きを放つタイミングを見切り、それを回避して突きを放つ。それは胴体を完璧に捉え胴体に突き刺さる。

 

「グゥゥ」

 

相手が苦悶の声をあげる。だが相手も反撃してくる。刀を引き抜いた直前に蹴られ吹き飛ばされる。それを数メートル飛ばされたその時に相手がとてつもない速さで突進してきた。それを横飛びで回避しようとするも間に合わず、右手に細剣が突き刺さった。

 

「グッ」

 

今度はこちらが、苦悶の声をあげる。敵が剣を引き抜いたタイミングで敵を蹴り飛ばす。相手が倒れる事なく飛ばされていく。

 

「ハァ、ハァ…フゥ」

 

「ハァ、ハァ…ク、ハハハ」

 

二人とも疲労困憊、満身創痍だった。二人の体と鎧は傷だらけで、アンデッドは疲労することは無いと思っていたが、存外そうでは無かったらしい。そんな状況であるのに敵は笑い出した。

 

「いや、すまない。戦い慣れしていない様なのに貴様は、私に戦う意思を示した。それも、私を殺す意思をだ。だが、私との戦いで貴様は確実に腕を上げている。」

 

元帝国騎士団長に言われるとなんか、現実味があっていいね。だが、それは、自分でも感ずいてはいる。相手の技を見て回避するすべを感覚で覚え、相手の技を見てその技を吸収していた。だが、

 

「いずれ、私に追いつくだろうが、まず、その疲労と傷で貴様が先に死ぬだろう。」

 

その通りだ。このままいけば、俺は死ぬだろう。傷を回復する手段が無く、この疲労だ、敵の状況はわからないが、その予感がある。さっきの突進も気がかりだ。

 

「そこで、どうだろう、次の一撃で決着を付けるというのは。貴様はまだ切り札を隠しているのだろう。」

 

「ああ。その通りだ。だが、それを使えば…」

 

お前を殺せる、と言いかけ、止める。この様な相手に全力を出さなければ男として失礼だと思った。

 

「いいだろう。その申し出受けよう。」

 

一泊ほど間を置いて、

 

「全力で葬ってやる!」

 

それは覚悟に近いかもしれない。利き腕はあまり動かせそうに無いだろう。それだけでも不利だ。さらに、そこに経験の差があるときた。不利としか言いようがないだろう。だが、それを補うしかない。

 

「フッ、そう来なくては。」

 

二人の距離が開く。あくまで、こちらが不利だが、思いついた手ならある。あとはタイミングだろう。その前に、

 

「〈能力超向上〉」

 

奥の手を使う。この戦いを楽しもうとして使わなかった技だ。

 

「〈能力大向上〉」

 

敵が似た様な技を使った。技名からして〈能力超向上〉の下位互換だろう。

 

「ほう。〈能力大向上〉の上が存在していたのだな。この戦いに勝ったらそれを習得するのもいいな。」

 

「ハッ。ここら辺にいた猿が普通に持っていたぜ。」

 

「そうか、貴様の強いステータスの割に技が未熟だったのはそういう事か。」

 

俺が強くなった理由を知られたか。まぁ、いいだろう。ここで死ぬ奴に知られたところで、意味は無いだろう。

二人が武器を構える。

 

「私のスキル〈突進〉は高速で移動し、相手のどこかを貫くスキルだ。」

 

敵に自分の技を知らせるとは自信の表れかそれとも、死を望んでいるのか。それとも、こちらの不利の差を技を教える事で補わせようとしているのか。これなら、俺を舐めているとしか言いようがない。

あちらが技を明かすのならこちらも明かすまでだ。

 

「俺の技はスキル〈神速〉を使う神速の太刀だ。カウンターでいかせてもらう。」

 

「フッ」

 

相手が薄く笑う。

 

「貴様の名はマグナと言ったな。」

 

「そうだ。」

 

「その名、しかとこの胸に刻んだぞ。」

 

敵は腰を落とし、細剣を後ろに引きいかにも強力な突きを放つつもりだ。対する俺は剣を左手に持ち、後ろに構える。利き手じゃない分、違和感があるが、多分、問題ないだろう。俺が放つ技は〈神速〉を用いた神速の太刀、日本では居合斬りと呼ばれていた様な技を使う。もちろん、初めて使う技なのでこちらから、踏み込みはせず敵の動きに合わせ、カウンターで仕留める。

 

「では、いくぞ。」

 

敵がものすごい、速度で突進してくる。あと数歩踏み込めば、細剣と刀の間合いだ。

まだだ。

あと五歩。

あと一歩。ここだ。

俺は〈神速〉を使い、一歩踏み出し刀を横一閃に振るう。それは鎧の中心部を深々と切り裂き、切れた鎧の隙間から、心臓の様な赤色の何かが切れているのが少し見えた。

敵の細剣は俺が一歩踏み出した事によりタイミングがズレたが、スキルではあるので、左肩を貫かれる。

 

『スキル〈一閃〉を習得しました。』

 

無機質な声が響く。だが、そんな事より、

 

「俺の勝ちだ。」

 

「ああ、私の負けだな。」

 

そのまま騎士は倒れこむ。それから、壁に寄りかかり、光に包まれ消えようとしていた。

 

「貴殿の覚悟、見事であった。その不利な状況でも抗う強さがあれば、守りたい者も守り抜けるだろう。」

 

「ああ、そうかよ。だが、お前は俺に勝ちを譲っただけではないのか?」

 

単純な疑問をぶつける。

 

「そんな訳ないだろ。騎士は敵が全力を出して戦っているのに手を抜く訳ないだろ。」

 

「そうかよ。」

 

しばらく、沈黙が訪れる。

 

「貴殿の最後の技、見事であった。」

 

「そうか。その賞賛ありがたく受け取る。それと、その技の名前は〈一閃〉という名前になった。」

 

「そうか。初めて使う技だったのだな。それにしても自ら挑んだ勝負に負けるとは。久しぶりに、いい勝負をした。あれが、今生の最後の戦いとなるのならば、我が人生の最後に素晴らしい事が起こったものだ。」

 

ゼギアノスは守りたい者を帝国という自分が属したものによって殺された。それは、ゼギアノスを守っての事だったので、帝国の目的はゼギアノスを殺す事だったのだろう。愛する者を失い、属した軍には、裏切られる。壮絶なものだっただろう。

 

「貴殿に私に勝った祝いの品を渡すとしよう。」

 

「テメェも、モンスターならドロップアイテムがあるだろ。」

 

「私の最後の戦いを、楽しませてくれた勝利者に、これから役立つもの位、贈ってもいいだろう。」

 

「それならば、ありがたく受け取ろう。」

 

断ったのだが、騎士はこの戦いの報酬と礼を含めて渡そうとしていたので、貰うことにした。貰わぬば、失礼にあたると思ったからな。

 

「まずは、その傷を治す為と、これから必要になる治癒のポーションをやろう。」

 

ゼギアノスは何も無い空間から中に赤い色の液体が入った、小瓶を取り出した。それが十本あった。それを地面に置く。その内の一本を取り、蓋を開けて、中の液体を飲み干す。味は、苦くは無い。だが、美味しくも無い。微妙な味だ。すると、傷だらけだった全身が一瞬で治る。細剣によって穴が空いた、右手と左肩も治り、動かしても、問題なかった。それの残り九本をアイテムポーチに入れる。

 

「次に、その服装では舐められるだろう。これを持っていけ。」

 

ゼギアノスが何も無い空間から、赤黒い服の上下と紺色のロングコートを取り出す。

 

「これを持っていけ。」

 

その服を受け取り、その場で着替える。元から怪しい顔なので怪しさが増大しているだろう。

 

「次に、その強さを隠す、スキルを与えよう。」

 

「スキルを与える事が出来るのか?」

 

この世界に来て、日は浅いが、スキルは与える事が出来ない。という固定観念があった。

 

「エリアボスの特権だ。普通はできん。」

 

エリアボス?新しい単語だ。それより、スキルを与える事は普通はできない。そこは俺の読み通りでいいんだな。

 

『スキル〈完全偽装〉を与えられました。』

 

完全偽装。これは、俺が〈測定〉を使用した時に強さの割にレベルが低かった理由か。

 

「〈完全偽装〉は己のステータスを偽る事が出来る。さらに、自分の強さと雰囲気をステータスと同じ位に出来る。」

 

それで、完全偽装か。ステータスだけにとどまらず、強さや雰囲気までも。ん?まてよ、

 

「お前、これを使ってステータスを弱くしていた。と言う事はしていないだろうな。」

 

「そんな事をしていたら、私の負けは揺るがなかっただろう。」

 

本気を出し尽くした。と言う事だろうか。それなら、良いのだが。

 

「それとは、別のスキルだが、役立つスキルである事に変わりは無いからこのスキルも持っていけ。」

 

『スキル〈看破〉を与えられました。』

 

「それは、相手の嘘や言葉の裏に隠された思惑を読み取る事ができる。さらに、幻術などにかからなくなる。」

 

確かに使えるスキルだ。

 

「次に、簡単な質問だ。お前はどんな事をしても守りたい者を守れるか?」

 

「その質問の答えは、さっきの戦いの最中に言ったぞ。守りたい者を守るためなら、俺はどんな事でもするだろう。だが、その過程で救える命があるならば、その命も救う。」

 

それは、子供の頃に持った夢を捨てきれず、時が経ち現実を知り、不可能だと思い知り、それでも捨て切れなかった夢の残骸だった。救える命は救う。人は全ての人を守れない。この現実は覆しようが無い。

 

「そうだったな。」

 

この想いからもう変えようとは思わない。たとえ、この身が滅びるとしても。たとえ、幾万の犠牲が出ようとも。たとえ、その守りたい者から、全ての者から嫌われようとも。俺は守ってみせる。

 

『職業が〈闇騎士〉になりました。』

 

ッ!!いきなりなんだ!職業?

 

「これは、職種を極めるとできるようなものでな。普通は特殊な条件をクリアしないといけないが、お前には不必要なものだろう。」

 

こいつ、俺の職業が〈無職〉の事まで知り得たのか。

 

「すまないな。何から何まで。」

 

こんなに貰ってしまって、良いのだろうか?些か、貰いすぎている様な気がする。

 

「何、良いのだ。今から死んでしまうのだから、持っていても仕方が無い。なら、使うものの手に渡した方が良いだろう。」

 

その通りだ。持っていても意味がないなら誰かに渡した方が良いだろう。自分に勝った報酬として。

 

「話は変わるが、貴殿よ。」

 

「どうした?急に。」

 

「貴殿がよければ、ゼギアノスの名前を名乗らぬか?」

 

「どう言う事だ?」

 

「そのままの意味だ。私の家名を名乗る気はないか。と言う意味だ。」

 

家名だったのか。てっきりお前の名前と思ってた。

それは、置いといて。さて、こいつの家名を名乗るか。か。それならば、

 

「良いぞ。その家名名乗ってやる。」

 

カッコイイじゃないか。守りたい者の為に命を張った男はカッコイイじゃないか。そんな男の家名を名乗れる事に何の躊躇いも躊躇も無い。

 

『名前が「マグナ・ゼギアノス」に変更変更されました。』

 

名前って、簡単に変わるよな。思ったら、思った通りに変わっていくな。元の楠木龍一という名前は嫌いでは無いし、愛着も少しはあった。だが、異世界という事で名前も変えていきたかった。

 

「これで、俺はお前の義理の息子みたいなものになったのか?」

 

少し、思った事をいう。元の世界の親に不満も何も無い。どちらというと、感謝している。だから、親に不満があった訳では無い。ふと、思った疑問を聞いただけだ。

 

「それは、貴殿の自由だ。しかし、息子か。私達に子供はいなかったが、貴様は私そっくりではないか。顔などでは無く、思想などが、な。」

 

「そうかよ。」

 

親は誰かと聞かれたら、「ゼギアノスの子供だ。」とでも言っておくか。

 

「それにしても、お前、消えるの遅くないか?」

 

今まで、話していても、体が、薄くなっている程度って今までと違い、遅いぞ。

 

「強いモンスターほど消えるのには時間がかかるのだよ。」

 

そういう事にしておこう。そして、この世界の知識として、頭の中に留めておこう。

 

「今から、消えるには、少々時間がある様だ。何か、聞きたい事があれば、できる限り答えよう。」

 

「お前が生きていた時の魔族の待遇や状況を聞かせてほしい。」

 

ちょっと、聞いておきたかった、全種族から、敵視されているって実際どの程度のものなのか、知りたかった。

 

「そうか、お前も魔族だったな。私が生きていた時は、魔族は見かけたら、騎士団へ報告してあたりを捜索して見つかったら、殺されていた。まぁ、中には自分で見つけて、殺していく奴もいたがな。」

 

え。そんなに?そんなに、酷い扱いなのか。何というか。人種差別反対。そんな標語を掲げたくなる気分だ。

 

「貴族などになると、邪魔な存在を魔族扱いして、帝国が殺す。という事もあったな。」

 

うわぁ。クズだな。人としてクズだな。そして、いつの世も、どんな世界も、人の世には、そんな人間もいるのだな。いつの世も人が権力や力を持つと、ろくな事がない。まぁ、俺も人だがな。

 

「まぁ、王国の有力な貴族は魔族と結婚したそうだがな。その時、王国は反対したと思うが、その貴族がいなくなると、まずい事になると思ったのか、それとも、その貴族が裏で、王が納得のいく金額を掴ませたのか、それとも両方か。私は分からぬが、その様な事があったと聞く。」

 

おぉ。その貴族と一緒に話しでもしたいな。多分、死んでるけど。

次は何を聞こうか?そうだ。これがいい。

 

「お前が守りたかった者の話しでも聞かせてくれるか?」

 

「あぁ、もちろんいいとも。」

 

早。即答か。

 

「マリーは私のいた、屋敷で働く、メイドだった。私に献身的に尽くしてくれている内に私は彼女に惹かれていった。まぁ、私の片思いだったと思うから、彼女幸せになれる様に、」

 

「出て行きたい時に出ていっていい。」

 

「と、言っておいたのだが、それを言った時に彼女から、悲しい顔をされたので、その時は、」

 

「お前が出て行きたくなければここにいろ。」

 

「と、言ったが。その時に嬉しそうな顔になったので、その顔に私は釘ずけになり、ずっと見ていたかったが、そういう訳にもいかず、その時は去ったが。何故、あの言葉を言って、悲しい顔をされたのか、よく分からない。」

 

うわ。結構長々と喋り出した。それに、こいつ、鈍感過ぎだろ。彼女、お前のこと、多分、好きだったぞ。多分だけど。

 

「それに、彼女は………」

 

まだ続くのかよ。長い。今までの会話からして、そんな長くない会話と思っていた自分がいたぞ。奴、延々と喋り続けているぞ。長いな。

 

それからしばらくして……

 

「そして、私は帝国に呼ばれたのだが、それは、帝国の罠だった。強すぎた私を嫌ったのだろう。私はその時、彼女を連れてこいと、言われたので、彼女に関係がある事と思って行ったのだが、」

 

長かった話も終盤だ。もう少しで終わるだろう。

 

「城に着いて、中に入ったらいきなり、何人もの兵士が私を殺そうと、マリーを殺そうとしてきた。マリーを守りながら逃げようとしていたが、数が多すぎた。」

 

確かに、それでは、守りながらの戦いは不利だろう。

 

「そして、とうとう、私に剣が突き刺さる、刹那、私を庇いマリーが私が受けるはずだった、剣をその身に受け止めていた。その時ほど、自分の弱さに腹が立った事はない。その時ほど、自分の強さに自惚れていたと実感させられた事はない。」

 

その言葉を、自分に言い聞かせる様に、怒鳴る様に言った。

 

「それから、目の前が真っ白になり、近ずく敵を全て斬り伏せた。そして、彼女を連れて脱出した。」

 

おぉ、そして、それから、墓を建てたと。そういう事か。

 

「それから、私は、死者復活が闇属性魔力魔法でできるという噂を耳にして、闇属性魔力魔法を極めようとした。」

 

まだ、続くか。いい加減飽きてきたぞ。それに、もう、あいつの体、今にも消えそうなくらい、薄いぞ。

 

「知っての通り、魔力魔法は魔力の最大値を消費して、極める。当時の私に極める程の魔力は無かった。だから、モンスターを倒して、レベルを上げ、極めた時には、遅すぎた。魔法は効かなかった。」

 

それは、悲しいな。愛した者を復活させる希望を持てたのに、それからも、裏切られたのだから。

 

「そして、いつの間にか倒していた、ここのエリアボスになり代わりここのエリアボスになっていた。」

 

え?エリアボスになり代わる?ちょっと、今、聞き捨てならない言葉があったぞ。

 

「そろそろ、時間の様だな。貴殿との時間、楽しかったぞ。」

 

うわ。聞こうと思ったのに聞きにくい雰囲気になった。

 

「それでは、さらばだ。義理の息子(ムスコ)よ。私の様には、なるなよ。」

 

「ッ!!お前の様にはなるかよ。俺は何がきても、守り通してやる。」

 

「いい返事だ。」

 

消えゆく騎士、いや、

 

「じゃあな、義理の親父(オヤジ)。」

 

「ッ!!」

 

そして、騎士は消えていった。最後に驚いていた様だが、無視しよう。

 

「いやぁ、見事な戦いでしたね〜。」

 

いきなり、後ろから第三者の声がした。今まで〈索敵〉に反応がなく、突然、そこに現れた様な感じだ。

そして、その姿を見て、固まる。だって、こいつ、

 

「なんで、お前がここにいる。俺をここに送り込んだ。神様みたいな奴。」

 

そう、そこにいたのは、俺をここに送り込んだ。張本人だった。




どうでしたか?面白ければ幸いです。
ご意見、ご感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

神様再登場

ハァ。ノープランでこの小説書いてるけど、話を面白くしようと頑張っていますが、面白いですか?
まぁ、最後まで見ていって下さい。ゆっくりしていって下さい。


『レベルが上がりました。限界を突破しました。種族が〈魔族〉から〈獄魔族〉になりました。』

 

無機質な声が頭の中で聞こえる。俺はそれを

 

「え?〈獄魔族〉って何?」

 

無視できなかった。だって種族がレベルが上がっただけで変わるんだぜ。驚くし、びっくりするわ。それに目の前に神様みたいな奴がいるし。

 

「神様みたいな、じゃなくて僕は正真正銘神様である。」

 

意味の分からん事を。それに、俺の心の中を読みやがった。

 

「まぁ、そんな事は置いといて。限界突破おめでとう。君の種族が〈獄魔族〉になっただろう。」

 

「なんで、テメェが知っているんだ?なんちゃって神様。」

 

「何度言えば。まぁ、いいや。〈獄魔族〉は〈魔族〉で最初に限界突破した人だけがなれる。いわゆる、ユニーク種族だね。やったね。」

 

やったね。じゃねぇよ。限界突破ってなんだよ。

 

「限界突破はね、」

 

また、心の中を読みやがった。

 

「レベルって999が限界なんだけど、さっきみたいなエリアボスを倒すと、それ以上のレベルが解放される。それに、」

 

『固有魔法〈獄属性付与〉を習得しました。』

 

「特殊な効果を得る。」

 

俺の頭の中に無機質な声がして、あのなんちゃって神様の声がした。なんだよ〈獄属性〉って。青い板が目の前に表れる。

 

〈獄属性〉 あらゆる魔法に付与可能。どんな魔法にも勝る。様々なことが可能。

 

…終わり!?え?終わりじゃないよね。説明雑すぎない。何、様々な事が可能って、どういう事だよ。

 

「まぁ、いわゆる、この世界の概念に囚われない魔法が使える様になる。という事だよ。」

 

また、サラッと心の中を読みやがって。一発きついのかましたろか。

 

「あはは。それは、嫌だな。」

 

こいつ、また、心の中を読みやがって。こいつ、絶対友達少ないぞ。

 

「何気、グサッとくること言うね。その通りだよ。僕は友達は少ないよ。だから君が僕の友達に……。」

 

「お断りします。」

 

史上最高の笑顔で返してやった。ムカつく奴の嫌がる事をすると、スカッとするね。

 

「……そうか。……まぁ、冗談は置いといて。」

 

すごく残念そうな声と表情で次の話になろうとしている。クソッ、そんな感じでこれからいかれても困るっての。

 

「あぁあぁ、わかったよ。友達になってやるよ。」

 

「あぁ、うん。ありがとね。それで、」

 

こいつ全然、嬉しそうな声じゃないぞ。クソッ、マジで一発ぶん殴りたい。

 

「ここにきた本題なんだけど。」

 

「ん?なんか理由があったのか。」

 

「そりゃ、理由がなければきませんよ。」

 

てっきり、なんとなくで、来ているのかと思った。

 

「それで、本題なんだけど、君は本来、死ぬ為に送り出されたんだ。」

 

は?こいつ、一発ぶん殴っていいか?

 

「まぁ、理由はここにいる君みたいな存在は本来いない存在。それを一時的にこの世界に、ゆるく止めているんだ。すぐに切り離せる様に。」

 

「どう言う事だ。」

 

「ほら、君がいるこの場所はモンスターが強いでしょ。だから、君たちを送り込んで、君たちの犠牲と共に得られた情報を神が選んだ者たちとこの世界に転生した者たちに伝えて、この場所を踏破してもらおうとしたんだけど。」

 

うむ、何を言っているのか。さっぱり分からん。

 

「まぁ、いわゆる、予想外の出来事の要因が君だ。って言う事だね。」

 

あぁ、予想外の出来事が起こって、その原因が俺と。

 

「んで、本来なら、このエリアはこの世界の住人が踏破する予定だったんだけど、君が、踏破しちゃったんだよね〜。」

 

あぁ、俺がやらかしたパターンか。

 

「そうなんだよ。君のせいで、君をこの世界に送った僕が他の神から怒らちゃって、ほんと迷惑だよ。まぁ、友達だから許すけど。」

 

うわぁ、なんか、ごめんね。

 

「うん。許す。」

 

ありがとう。

ていうか、俺の会話、心の中だけで成り立ってんじゃん。

 

「本来、君はこの世界由来の魔族になれないのになってるし。この世界由来の固有スキルまで手に入れちゃってるし。さらに、スキル、魔法までも手に入れちゃったせいで、この世界が君を一部として取り込み始めたんだ。」

 

あぁ、そうか。そういう事か。本来なら、死ぬ予定の俺が生きていて、この世界でやろうとしていた事が出来なくなったと。そして、こいつは死ぬはずだった俺を。

 

「そうか俺を殺しに来たのか。」

 

刀を構え、先手必勝、思いっきり踏み込んで刀を振り下ろす。

 

『副職業が解放されました。職業〈武士〉を手に入れました。』

 

今!!??なんで今更。そして、振りかぶった一撃が避けられる。そして、なんちゃって神様が

 

「違うよ〜。」

 

そんな事をいった。

え?違うの。なんだよ今、結構、キリッ、みたいな感じだったのに、うわぁ、恥ずかしいわー。

 

「プックスクス。まぁ、誰にだって間違いは、あるよ。プッ」

 

クッソ、笑いながら言われてもなんのフォローにもならんは。

 

「フゥ、なんというか、君の親が元はこの世界の人間で、その間に生まれた子供だから。という、君のこの世界への適合の速さの問題は、こんな仮説で片がつく。」

 

何?俺の親が元はこの世界の人間?

 

「そうかもしれない。まぁ、仮設の範囲だから適当に聞き流しといて。」

 

なんか、本当にこの神様、変な奴だ。

 

「さっき、変なタイミングで、何か追加されたと思うけど、それは、この世界がゆっくりと君をこの世界の一部に組み込んでいるからだよ。」

 

あぁ、だからそうだったんだ。ってなるわけ無いだろ。

 

「ゆっくりと君もこの世界の住人になりつつある。という事だよ。」

 

あぁ、そういう事か。これならわかる。

 

「現に君のステータス画面には称号が表示されて無いし、さらには、一番表示しなくてはならない項目が表示されて無いんだ。」

 

「それは、一体なんだ。」

 

「それは、」

 

「それは」

 

ゴクリ

 

「〈年齢〉が君のステータス画面に表示されて無いんだ!」

 

俺は静かに刀を持っている手に力を込め、気合と共に横一閃。

 

「嫌だな、ジョークじゃないですか。」

 

それを、避けられる。クソッ、こいつに一発ぶちかましたいが、無理だろう。こいつ、マジでムカつく。

 

「まぁ、それは、不老になった君には関係ないか。」

 

「おい。どういう事だ。不老って。」

 

「そのまんまの意味ですよ。〈獄魔族〉になった事で年齢という概念は君に適用されなくなった。そういう事さ。」

 

嘘だろ。俺はこれから年をとらないし寿命で死ぬ事も無いのか?

いや、また、あいつのジョークだ。そうに決まってる。

 

「喜ばしい事に、事実だよ。」

 

うわぁ、マジか。いきなり異世界に来て、不老になったのか。喜んでいいのかわからないな。

 

「喜んでいいと思うよ。それと、僕から記念のものをあげよう。」

 

しばらく、悩んで、

 

「よし。これでいいだろう。さっき、副職業が解放されたらしいし。」

 

『職業〈ネクロマンサー〉を手に入れました。』

 

うわ、物騒なのがきたよ。

 

「その通り。物騒極まりない職業だよ。」

 

「なんで、こんなものを渡す。」

 

「だから、記念のものだよ。友達だから、何かの記念の日には贈り物をした方がいいかな。と。」

 

そういう事か。ってなるか。なんでそれで、職業を渡す。

 

「神様だから。それにその職業、稀少なんだよ。普通は最上級のモンスターしか持てないんだから。これで君も一歩化け物に近ずいたね。」

 

最後の一言で嬉しくなくなった。なんで、そんなものを俺に?

 

「友達だから。」

 

釈然としない。何か裏がありそうだ。

 

「フッフッフッ、その通り。僕は君を選んだのだよ。」

 

「は?知るか、そんなもん。勝手に決めんな。」

 

「勝手に決められるのだよ。それに君は僕からの贈りものを受け取ったからね。」

 

強引にな。渡したというより、もたせた、という方が近いぞ。

 

「これから貴様に普通の日常が来ることは無い。これから貴様の先にあるのは、神から、こき使われる人生だけだ。フーハッハッハ。アーハッハッハ。」

 

こちらを蔑みバカにしたような目を向けてくる。

 

「もはや、神より悪魔になってんだけど。」

 

呆れた声でいう。

 

「まぁ、冗談は置いといて。安心してくれ。こき使われる事は少ないよ。あるとしても、今回みたいな未踏破エリアやダンジョンの踏破をしてくれるだけで、いいから。それに、これは、君にとっても僕にとってもいい事だからね。」

 

なるほど。俺は強力なダンジョンやエリアのボスと戦い、その力を奪える。今回は相手が強力な上に奪いたくなかったので、奪わなかったが、次はボスの力を奪ってやる。そして、俺が踏破すると、未踏破だったものが踏破される。これが神の利益にどう繋がるかは、わからないが、そういう事だろう。

 

「そういう事。僕に選ばれてくれるかい?いや、僕と協力するかい?」

 

「フッ、いいだろう。」

 

二人が握手をする。

今更だが、こいつ見た目が女みたいだ。金髪のロングヘアーだし、手とかすげー細いし、顔とか、結構整ってるし。

 

「あぁ、言い忘れてたけど、僕は女性だよ。」

 

「冗談を言うな。」

 

「本当だよ。」

 

「マジで?」

 

「マジ。」

 

しばらくの静寂の中、

 

「エェぇぇぇぇ!?!?」

 

ヤベェ、男だと思ってた。

 

「んじゃ、そろそろ、時間だから、行くね。エリアボスおめでとう。んじゃねー。」

 

「まてーー!!お前マジで女なのか?それをはっきりさせろ。」

 

だが、もう、奴の姿はなかった。ここのエリアボスといい、神様といい、何か疑問に残る事でも残さないといけないのか?次あったら、一発ぶん殴ってやる。いや、もしも、あいつが女だったら、クソッ、殴りづれーー。

そして、落ち着いた俺は、闇騎士ゼギアノスが消えた時に出てきた、三つの宝箱を開けて行く。

一つ目

 

〈憎悪具現の細剣〉 UUR装備

闇騎士ゼギアノスの武器。切りつけた相手の体力、魔力を奪い、自分の体力、魔力を奪ったぶんだけ回復する。切りつけた相手にランダムな状態異常〈超特大〉を与える。負の感情が強ければ強い程、切れ味が増し、魔法の威力も上がる。尚、周囲の負の感情でもよい。

 

チートだな。魔王辺りが、持っていても、おかしく無いレベルだ。これは、怨嗟の刀より強いな。よし、二本目として、腰に差しておこう。ゼギアノスよりもらった服は腰に剣を差す事が出来るのである。そういえば、この服、どういうやつなんだろう。あとで、〈測定〉を使うか。

二つ目

 

〈憎悪具現の鎧〉 UUR装備

闇騎士ゼギアノスの鎧。並の武器では、擦過傷すら、できない。自分の魔法防御力より低い魔法を全て反射する。任意で自分の姿を他の者から隠したり、自分の姿や存在を他の者からの知覚や、探知魔法を阻害できる。負の感情が強ければ強い程、鎧の硬さや装備者の魔法防御力が増す。尚、周囲の負の感情でもよい。

 

ゼギアノスの鎧もすごかった。だが、この鎧を俺が持っている、怨嗟の刀が切ったのだ。怨嗟の刀の切れ味を思い知らされた。説明のところに書いてあったのは、伊達ではなかった。ただ、結構、刃こぼれしてる感じがする。怨嗟の刀でも、憎悪具現の鎧を切るのは、結構、キツかったように思える。だが、鎧を着ようとは、今の所思ってない。ので、使う事が今の所無い。アイテムポーチで、一生、眠らせるような事は、したく無い。どこかで、使う事を願おう。

三つ目、これは、言わずもがな。である。

中身は、お金です。しかも、白金貨が三十五枚も、入っていた。強ければ強い程、出てくるお金が、多いので、ゼギアノスのレベルが、気になった。だが、もういないので、知る事は、もう、できない。

なんか、心が暗くなりそうな事を、考えてしまったな。

さて、切り替えて、エリアボスってなんだ?すると、目の前に青い板が表れる。あれ?さっきまででてこなかったのに、なんでだ?さっき、いた彼奴が言っていた、俺がこの世界の住人になりつつある。という事に関係するんだろうか?まぁ、なんでもいいや。

 

〈エリアボス〉 そのエリアを仕切るボス。エリアボスによって、出てくるモンスターが違う。倒すと限界突破できる。

 

ふーん。そんなもんか。うん。大した事ないと感じているのは、俺だけだろうか。まぁ、いいや。

次に〈職業〉の確認をしておくか。

 

〈闇騎士〉 闇に堕ちた騎士。物理、魔法攻撃力が上がりやすい。敵の弱体化、行動の阻害、バッドステータス付与ができる他、闇魔法が使える。

 

〈ネクロマンサー〉 死霊魔術師。魔法攻撃力、防御力が上がりやすい。死体を利用してのアンデッド作成等の死霊魔術や禁術等が使える。他の魔術も使用可能。

 

〈武士〉 極東の地より伝わる、戦士の派生系。攻撃力、俊敏力が若干上がりやすい。戦士とは異なる、特異な剣術を覚える。

 

これが、手に入れた〈職業〉の全てだ。どれも、使えそうである。どれも、一癖ありそうだが、全部合わせると死角が無さそうにみえる。ただ、〈ネクロマンサー〉の禁術とやらが、かなり、気になるが今は置いておこう。

次は〈副職業〉についてだ。

 

〈副職業〉 〈職業〉とは違い複数セットできる。ステータスの上がり値には影響しないが、〈職業〉特有のスキル等を使用できる。

 

あれか、様々な技能が詰めるようになると。そういう事ですか。なんだそれ、良いじゃん。俺の〈略奪〉の短所を補えそうじゃん。ただ、さっきみたいに〈職業〉を解放していかないといけないのでは無いのか?それを考えると面倒だな。まぁ、強くなるのに、近道はあんまり無い。という事か。

次は、〈種族〉について確認するか。

 

〈獄魔族〉 最強の魔族。戦闘力は魔王を超える。どんな、武器、魔法、スキルでも使える。

 

あれ、戦闘力って魔王を超えるの?嘘だろ。なら、俺が魔王になった方がよくね?まぁ、それは置いておくとして。〈獄魔族〉これまた、〈略奪〉と相性が良い。これで、最強を目指す。っと言っても別に大丈夫じゃね。あとは、自分の技術力を高めればそれで、大体は大丈夫だろう。

次は、この服の確認。

 

〈魔力鋼糸の服(上下)〉 UR装備

魔力によって作られた糸を使用して縫われた服。鎧のような強度をもつ他、装備者の魔法防御力以下の威力の魔法を全て無効化する。

 

〈暗雲の来訪者〉 UR装備

暗く深い雲より出てきた者が纏っていたと云われる。装備者の任意で周囲からの知覚や探知系魔法、探知系スキルを阻害できる。

 

服もチート級だな。いや、俺のステータスが尋常じゃ無いからそうみえるだけか?まぁ、どうでも良いや。

よし、ステータスの確認をするか。

 

〈名前〉 マグナ・ゼギアノス 〈性別〉 男 〈職業〉闇騎士Lv1 〈副職業〉 ネクロマンサーLv 1 武士Lv1 〈種族〉 獄魔族 〈Lv〉 1001

〈ステータス〉 物理攻撃力 821923 物理防御力 839972 魔力 780268 魔法攻撃力 759782 魔法防御力 768825 俊敏力 828489運 58.6 魅力 10(限りない慈悲を込めて)

〈装備〉 魔力鋼糸の服(上下) 暗雲の来訪者 マシラのブレスレット 怨嗟の刀 憎悪具現の細剣

〈固有スキル〉 強欲Lv1

〈スキル〉 測定 略奪 神速 能力超向上 完全耐性 アクロバット 連爪斬 威嚇 索敵 見切り 夜視 完全偽装 看破

〈固有魔法〉 獄属性付与

〈魔法〉氷属性魔力魔法 極 獄氷属性魔力魔法 初級

 

いつの間に〈副職業〉の設定がされていたんだ?それに、〈職業〉にもレベルがあるし。さっき、解放された時には出てきてなかったよね。まぁ、これも、別に良いだろう。

〈魔法〉のところにも、〈獄氷属性魔力魔法〉っていつの間にか追加されてるし。いつもみたいにアナウンス的な者なかったし。まぁ、これも、良いだろう。

だが、次が一番問題だろう。〈魅力〉のところ(限りない慈悲を込めて)ってなんだ!!バカにしてんのか?今までのも大概だが、これなら、書いてない方が幾分かはマシだわ!!次から、書くなよ。絶対書くなよ。何も、書くんじゃ無いぞ。ていうか、〈魅力〉のところだけ何故に変な事になってんだ。

と、ステータスの確認もした事だし、ここから出て、適当に旅でもするか。そして、俺は立ち上がり、きた時に見た扉を見てから、一歩踏み出し、振り返り、黙祷をして、さらに歩を進めて、目の前にある扉を思いっきり押し開けるのだった。

 




どうでしたか?面白かったですか?
ご意見、ご感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

森探索

更新予定時刻を送れている?眠いし、途中で蒸発する事ってよくあるよね。特に俺みたいな、面倒くさがりやは特にね。
まぁ、今の所は、書きつずけていきたいから、書くと思います。多分と付くがな。
最後までゆっくり見ていって下さい。


あのボス部屋を出て、初めに驚いたのは出てくるモンスターが全然、違う事だろう。だって、目の前にいるモンスターが

 

〈種属〉 キュウキ 〈Lv〉 859

 

うん。見た事が無い。それに、ゼギアノスを倒す前にこんなモンスターいなかったぞ。見た目が、虎に近いが、翼が生えていて、全身が赤い。それに、頭に二本の角が生えている。その角も右の角が赤く光っていて、左の角が青く光っている。こんな派手なモンスター一度見たら、忘れるわけが無い。

そんな事を思っているとキュウキが突進してきた。ただ、それを見ながら、

遅い。

としか思いようがなかった。いや、普通の人が見たら、速いんだろうけど、遅い。まぁ、おれが化け物じみてるだけなんだけどね。

突進を危なげなく回避する。また、回避重視の戦法をとって、戦闘時の足運び、移動方法を培っている。俺が攻撃すると、一撃で殺してしまうからな。すると、次は、鋭い爪でこちらを仕留めにきた。それを後ろに少し引くだけで回避する。すると、今度は、少し溜めての突進だった。それは、さっきの突進よりは速い程度だった。だがそれを、腕を交差させて、防御の構えをして、受ける。すると、キュウキの角が赤く、青く、光ってきた。それが、弾けると、空から成人男性の身長を超える程のでかい火球が沢山、いや、雨の様に降ってきた。

 

「嘘だろ。てか、何これ魔法?」

 

思わず疑問が口から出る。その間に火球がドンドン落ちてくる。落ちた部分が真っ赤に燃え上がる。しかも、それが雨粒がが落ちて弾ける様に地面にぶつかった瞬間にいくつもの小さな火球が飛んでくるので、かなり強力だ。避けきれないと判断して(当たっても大丈夫と思われるが)剣を抜く。〈憎悪具現の細剣〉でわなく、取り替えた、〈怨嗟の刀〉の方を抜く。そして、特大の火球を切る。まぁ、実際には切れなくて直撃しましたが。無傷。どこも痛く無い。やっぱり装備がいいからなのかな。次は、魔法をぶつけてみる。氷の剣を作り出し、それを特大の火球にぶつける。氷の剣が

バン!!

という、空気が爆ぜる音が聞こえたが、気にしない。氷の剣が火球に激突する。

ドカァァン!!

すると、爆発した。そして、多分、ぶつかった火球は消えているのだと思う。まだ、火球がいっぱいあるから、消えたかどうか、わからんが。氷の剣をかなり作り、空を覆い尽くす特大の火球に全てぶつける。

しばらく、爆発音が響く。そして、空は青くなっていた。どうやら、魔法は切るといった事は出来ないが、魔法をぶつければ、消せるようだ。あれ、なら、剣に魔力を乗せて切れば、切れるんじゃ無いか?あ、やべ。試して見たくなった。

そんな事を思っていると、キュウキの角がまた、光っている。また、さっきの魔法か?なら、歓迎しよう。魔法は本当に切れないのか、実験しよう。だが、魔法は予想を上回った。

それは、燃え上がる津波だった。しかも、こっちに向かってきている。無傷で終わるから、さっき考えた実験をしよう。まず、魔力を乗せる。これは、もう、物理攻撃力とかじゃなくて、あのー、気?みたいなものを乗せればいいはずだ。多分。もしかしたら、できるはずだ。武器を構える。そして、

 

「ハッ!!」

 

気合と共に横一閃。すると、それは魔法に当たるとその魔法を切ろうとしているのがわかる感じだった。そして、もはや物理攻撃力で押し切るような形で魔法を切った。

 

『スキル〈スペルブレイク〉を習得しました。』

 

お、新たなスキルが手に入った。しかも、かなり使えるスキルだ。

フゥ、そろそろ、終わりにするか。〈神速〉を使い、〈一閃〉を使って、翼を切り落とす。

 

『スキル〈神閃〉を習得しました。』

 

この戦闘は有意義なものになったな。使えそうなスキルを二つも習得できたのだから。いや、この世界の住人にとっては、普通の事かもしれない以上は、慢心せず、敵から、もしくは自分でスキルや魔法を多く使えるようにならなければ。

翼が無くなれば飛べないだろう。恐らく。そんな訳で〈略奪〉開始。今回は、魔法から奪っていこう。

 

『魔法〈炎属性魔力魔法 極 〉を習得しました。魔法〈水属性魔力魔法 極〉を習得しました。』

 

やはり、二つあったか。次は、ステータスだな。暴れているが、気にしない。奪うって罪悪感のある行為だと思うよね。だけど、自分の命を賭けているんだから、これ位の事だと、罪悪感も何も感じない。

そんな事を独り言の様に思っていると、もうスキルを手に入れるところだ。

 

『スキル〈魔法合成〉を手に入れました。スキル〈魔法多重展開〉を手に入れました。スキル〈覇爪斬〉を手に入れました。』

 

魔法寄りでありながらも、近接戦闘もできるんだな。

キュウキってメチャクチャ強いモンスターじゃなかったのか?

そんな事を思いながら、スキル〈一閃〉を使い、首を切り落とす。

 

「ハァ、弱い。まぁ、俺がチートスキルを使って強くなりすぎたのはわかるが、どうにかならんかな?」

 

そんな事を言いながら、キュウキが落とした、宝箱を開けていく。

 

〈虚火・水鏡〉 SSR武器

真実と嘘を見抜くのを手助けする双剣。装備すると任意で相手の真実か嘘をおおよそ感じる事ができる。火と水属性魔法の威力が大きく上がる。

 

〈不正獣の赤角〉

不正獣の赤い角。金属に近い性質がある。炎属性魔法の威力を上げる事が出来るので、武器に使用すると良い。

 

〈不正獣の青角〉

不正獣の青い角。金属に近い性質がある。水属性魔法の威力を上げる事が出来るので、武器に使用すると良い。

 

〈不正獣の尖爪〉

不正獣の尖った爪。良く尖っている。武器にもできる。

 

〈不正獣の肉〉

そのまんまの意味。美味しいと思う。多分。

 

あぁ、武器と角と爪はいいよ。爪の方は説明雑だな。とは思ったが、いいとしよう。

問題は肉だな。〈測定〉を使って、不確かな情報が出てきた。何故だろう。食べない方がいい気がしてきた。それに、連日、肉しか食べてないから、別のものを食べたい。だが、周りは森、それに、人里へ降りようにも、俺は魔族、追い出されるのがオチだ。

フッ、どうしようも無いな。

ハァ、戦っても余り面白く無いし、する事無いし、どうしようか。やりたい事か。

あっ。あれがあった。よし、そうだ。旅に出よう。なるべく強くなって。

さて、旅に出る前にここのモンスターと戦って強くなろう。目標、1万レベル。これ超えたら旅に出よう。

 

結構、歩いた、キュウキが結構多く出るが、多分、このエリアの外に近ずくにつれて、別のモンスターが出てくるはずだ。あと、二種類位。

っと、そんな事を考えている内に真打登場。

 

〈種族〉 アルミラージ 〈Lv〉 999

 

わぁ、兎だー。ただ、頭から黒い角が生えて、口から鋭い歯が見えていなければ可愛いはずだ。多分。

アルミラージの突進。それを難なく避け…られなかった。

なんでだ?確実に避けたと思ったぞ。現に相手の突進速度は決して速くは無かった。というか、遅かった。確実に避けたはずだ。可能性は、奴がなんかしたな。

どうすっかな。

そうだ、ゼギアノスからもらった、〈看破〉を使おう。

あれ、そういえば、これの能力なんだ?

 

〈看破〉 あらゆる物事を見抜く。

 

「説明がここ最近、雑!!!」

 

ここ最近で起こった、不満を叫んだ。アルミラージから突進をくらいながら。

さて、敵が、突進をしてきそうだ。てか、突進しかできないのか?

アルミラージの突進。ここで、〈看破〉。

普通の突進だ。

だが、油断してはダメだ。何をするかわからないからな。キュウキなんて、炎の雨を降らしたからね。

アルミラージの突進を避ける。避けた瞬間に、多分、前足で空中を蹴って急激な方向転換をしてきた。

何じゃそりゃ。

と思いつつもそれを、横飛びで回避する。すると、アルミラージの黒い角に

バチバチッ!

と、電気が走る音がした。これはまさか。と思った時に。

バリバリバリッ!!!!!

やっぱり、放電でした。尚、現在放電が直撃しております。

痛み?そんなものは、俺の魔法防御力を上回ってから言ってくれ。

放電が終わり。俺は、アルミラージに触る。いや、離れないように握る。

 

『スキル〈幻影〉を習得しました。スキル〈跳躍〉を習得しました。』

 

次は、魔法を奪うか。尚、アルミラージは暴れたり、放電をしているが、そんな事は無意味だ。

 

『魔法〈雷属性魔力魔法〉を習得しました。』

 

魔法でも無いとなると、スキル二つであの攻撃ができていた事になるな。何となく、タネがわかった。

アルミラージ君は光となり消えました。

スキルは、キュウキのも含めて、よるの眠る時にでも確認するとして。宝箱だ。

 

〈幻兎の黒角〉

アルミラージの黒い角。硬く、魔法耐性も高い。防具のいい素材になる。

〈幻兎の毛皮〉

アルミラージの白い毛皮。フサフサで暖かい。防寒着にするといいかもしれない。

〈幻兎の肉〉

アルミラージの肉。かなり美味しい。高級食材。

 

なんか、すごい。アルミラージの肉、美味しいって書いてる。嬉しいのが半分。肉かよ。という思いが半分。複雑な気持ちだ。他の素材もかなり使えそうだ。加工が必要になるがな。

 

その後、歩き続け、キュウキとアルミラージと戦い続けた。(一方的な略奪でした)

 

夜になると、火を焚いて、それを使って肉を焼いている。肉は、アルミラージの肉ですよ。美味しそうだ。

魔法で火をつけようとしたが、火が出ます。デカすぎます。地面にぶつけます。クレーターができて、辺り一面が焼け野原になりました。キュウキの火の雨をくらっても、燃えなかった木が燃えてしまった。その時の一言

 

「やっちゃった。」

 

そんな事を考えていると肉が焼けたようだ。一口。

何だこれ。美味い!程よい感じの脂で、しつこく無い。しかも、肉汁が溢れてくる。俺が食った中で一番美味い肉だな。

よし、ステータスの確認をするか。

 

〈名前〉 マグナ・ゼギアノス 〈種族〉獄魔族 〈年齢〉 17 〈性別〉男 〈職業〉 闇騎士 Lv1 〈副職業〉 ネクロマンサーLv1 武士Lv1 〈Lv〉 8325

〈ステータス〉 物理攻撃力 57285375 物理防御力 56927461 魔力55894823 魔法攻撃力 56372832 魔法防御力 53674985 俊敏力 60124879 運 65.8 魅力 20(この値で絶望せず、希望を持て)

〈装備〉魔力鋼糸の服(上下) 暗雲の来訪者 マシラのブレスレット 怨嗟の刀 憎悪具現の細剣

〈固有スキル〉 強欲Lv1

〈スキル〉 測定 略奪 神速 能力超向上 完全耐性 アクロバット 連爪斬 威嚇 索敵 見切り 夜視 完全偽装 看破 スペルブレイク 神閃 魔法合成 魔法多重展開 覇爪斬 幻影 跳躍

〈固有魔法〉 獄属性付与

〈魔法〉 炎属性魔力魔法 極 水属性魔力魔法 極 氷属性魔力魔法 極 雷属性魔力魔法 極 獄炎属性魔力魔法 初級 獄水属性魔力魔法 初級 獄水属性魔力魔法 初級 獄雷属性魔力魔法 初級

 

うわぁ、五千万を超えた。てか、目標、1万レベルなんだけど、すぐ達成出来そうだな。これは目標を変える必要があるな。よし。十万レベルが今後の目標だ。

そして、ステータス画面のスキル等の所が量が多く、見ずらい。これなら、スマホのアプリをまとめる事が出来るような感じで、まとめる事が出来ないかな。

そんな事を思いスキルをスマホでアプリをまとめるような感じでスライドすると、

出来ましたー。

なんか一つにまとまった。名前も決められるようだ。なら、補助系のスキルだから、補助スキルという事で。よし、どんどんまとめよう。

結果的に〈攻撃スキル〉〈魔法スキル〉〈補助スキル〉〈妨害スキル〉といった感じだ。これなら魔法もまとめれそうだ。

結果的に出来た。名前は〈基本属性魔力魔法〉〈獄属性魔力魔法〉という感じでまとめた。まとまっているとスッキリするね。っと、忘れる所だった。スキルの確認をするか。

 

〈完全偽装〉 あらゆる事を偽装できる。(実力や気配、足音等)

 

〈看破〉 あらゆる物事を見抜く。(幻術や幻聴、幽霊等)

 

〈スペルブレイク〉 相手の魔法攻撃力が自分の物理攻撃力以下なら、相手の魔法を破壊する。

 

〈神閃〉 神速で動き、その軌道上にいる敵を切る。

 

〈魔法合成〉 複数の魔法を組み合わせる事が出来る。

 

〈魔法多重展開〉 複数の魔法を同時に放つ事が出来る。

 

〈覇爪斬〉 爪から出る斬撃。威力が非常に高く、相手を追尾する。

 

〈幻影〉 相手に幻影を見せる事が出来る。

 

〈跳躍〉 空中を蹴る事が出来る。最大三回。

 

ざっとこんな感じ。チートってすごいね。何の努力も無く、最強に近い強さを手に入れる事が出来た。〈看破〉は見えちゃいけないものまで見えている気がする。まぁ、気にしない方がいい部類だろう。

さて、こんなものか。魅力の値は気にしたら負けだ。あれは、もうあんまり期待すんなって事だぞ。

あっ、そういえば、〈魔力魔法〉って魔力の最大値を使って、極までいけるんだった。魔力の最大値が物凄く高いので、使っても問題ないだろう。

そして、全てが、極に至った。魔力の最大値を捧げて思い出したが、運のステータスが60以上になったな。よし〈強欲〉のレベルを上げよう。

 

『〈強欲〉のレベルが上がりました。スキル〈武器生成〉〈防具生成〉〈道具生成〉を習得しました。』

 

フッ、チートって楽しみがあるね!




面白かったですか?まぁ、俺が自分で面白ければそれで良いのだがな。何気に書く作業って楽しかったりするし。まぁ、白紙の状態を見るとやる気が無くなるがな。
ご意見、ご感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

森探索2

表現の仕方などの指摘がある場合にもドンドン言ってきてください。
自由に書いていますが、やっぱりうまく書くには読んでくださっている方々の意見を聞いた方が早いと思いましたのでドンドン言ってきてください。


〈武器生成〉 素材を使用して武器を作る。普通の方法では作れない武器も作る事が可能。魔術付与も可能。作る武器種は指定可能。

 

〈防具生成〉 素材を使用して防具を作る。普通の方法では作れない防具も作る事が可能。魔術付与も可能。作る防具種は指定可能。

 

〈道具生成〉 素材を使用して道具を作る。普通の方法では作れない道具も作る事が可能。魔術付与も可能。

 

無いなら奪えばいい。その次は、無いなら作ればいい。という事か。

武器か。槍なんかも作れるという事か。まぁ、実際、試した方が良さそうだ。

素材は何にしようか。玉鋼と不正獣の角二種と不正獣の尖爪、凍狼の大牙この位でいいか。さて、どうやって、〈武器生成〉を使うんだろう。

すると、目の前の地面に魔法陣らしき物が出来た。

 

「うわ」

 

少し驚いた。だっていきなり魔法陣ができるんだぜ、誰でも少しは驚くだろ。

まぁ、多分、中央に置くんだろうな。置きました。どうするんだ?すると、目の前に青い板が表れる。それには、武器種が書かれていた。俺は、槍を選択した。

そしたら、魔法陣が光って、素材を吸い込んで、ブワーって感じで眩しく光って、目を瞑って、光が収まると目の前には、槍が刺さっていた。それは、血のように赤く、凶暴そうな槍だった。それを。〈測定〉を使って調べる。

 

〈悪憎の凶槍〉 EX装備

悪を憎み凶器に堕ちた槍。付与効果無し。

 

説明は凄く強そうだけど、付与効果無し?どういう事だ。よくわからんが、特殊効果は無いんだろう。付与効果に関しては魔術付与と同様な感じにしておこう。

さて、切れ味はどんなものかな。槍を握り、地面から引き抜き、近くにあった木を切った。抵抗は全く感じ無かった。木はバタンと倒れた。断面も綺麗だ。切れ味に関しては、問題無いだろう。扱えるかは、戦うしか無いだろう。まぁ、その前に練習はしますがね。

槍を構える。槍なんて使った事も、握った事も初めてだが、アニメなんかで見た構えを取る。これは厨二病の名残のようなものだが、今は、それが役に立っている。無駄な知識とは無いものだな。

横に切り払ったり、突きを放ったりするが、どれも、ピンとこない。剣の方はゼギアノスとの戦いのおかげで、かなりのものになっているが、槍はまだ、誰の技を見た事が無かった。なので、吸収する事が出来ない。技を見れば、ある程度は自分のものにできるが、技を見ない事には何も出来ない。技か。

あ!ある。だが、アニメの中でだが。あー。ダメかもしれない。人外すぎる。あ。俺も大概人外だ。できるできる。多分できる。

まずは、構え方だな。左手は前の方を持って、右手は後ろの方を持つ。腰を落とし、左足に力を入れる。

 

バガン!!

 

思いっきり踏み込み、槍を右に左に斬りはらい、近くに来られた敵には、槍を足めがけて振るい、槍の底の部分で敵の顎を狙う様に槍を振るっていく。どこから、攻撃されても対処できる様にしていく。

記憶を頼りに振るっているが、結構いけるもんだな。やっぱり、アニメで出てくるキャラは人外みたいだから、奇妙な感じだ。それを平然とやってのける俺も大概だがな。

 

『職業〈槍使い Lv1〉を獲得しました。』

 

職業まで解放されたよ。だが、どうやって、レベルを上げよう。ステータスを一時的に下げる効果のあるスキルとか持ってないかな?

あ。〈完全偽装〉って実力も偽装できるって書いてた気がする。よし、どうやって使うんだ?こう、自分の実力を下げる感じか?手加減する感じか?よし、木を殴って確かめよう。最初は全力。

 

「ハァァァ!!!」

 

腰を捻り、文字通り、全力の一撃を木にぶつけた。

 

ドォォォォン!!! バキバキバキ!!

 

やり過ぎた。目の前の木どころか、目の前に見える範囲の木は倒れて、地面は荒れていた。文字通り、やり過ぎた。

さて、後ろを向いて、今まで通りの木が並ぶ、方を見た。

今度はこの木を折る程度の力加減でいこう。まぁ、あれだ。多分、自分が考えた感じのステータスに変わるのだろう。千位あればいいかな。前と同じ感じで、一発。

 

ドン!!

 

パラパラと手から木屑が落ちる。木にはヒビが入っている。へし折るには、力が足りなかったようだ。もう一発。

 

ドン!! バキバキバキ!

 

二発で折れた。これが、〈完全偽装〉か。実力をも偽装し敵を完全に欺く事が出来るスキル。多分、容姿も気配も何もかも偽装する事が可能なのだろう。これは、強すぎるな。ゼギアノスよ。このスキルをくれた事に感謝をしよう。ありがとう。

まぁ、これで、ここら辺のモンスターの実力と俺の実力を同じぐらいにして、自分の本当の実力を鍛えよう。明日からの修行内容だな。まずは、ここら辺のモンスターの実力を調べるか。

槍をアイテムポーチにしまい、木に寄りかかり、眠る。

 

目を覚ました俺は早速、敵と対峙していた。何の事は無い、いきなり目の前にモンスターがいただけだ。捕捉するなら、見た事が無いモンスターだ。

 

〈種族〉 カーバンクル 〈Lv〉 999

 

子狐が宙に浮いて、額に宝石がはまっている、一見すると結構可愛いモンスターだ。だが、モンスターではあるので、油断は出来ない。カーバンクルといえば、額の宝石から、なんか出たりするものをゲームで見かけた。

さて、どう出る。初見のモンスターだ。警戒していこう。尚、今は素手である。敵のステータスを奪う為である。初見のモンスターのスキル、魔法を知る為である。

カーバンクルの周りに氷柱が表れる。それが、俺目掛けて飛んでくる。それを全て回避して、敵に突撃する。途中、かなり強い風が吹いたが、その程度じゃ、俺の足止めは出来ない。

敵を捕まえ、〈略奪〉を開始する。まずは、スキルから、

 

『スキル〈浮遊〉を習得しました。』

 

一つだけか。他のスキルは持っていたのかな。さてと、〈略奪〉を再開……っていない。どういう事だ。何が起こった。考えられるのは、転移魔法を使った。という事だろうか。

まぁ、目の前の現実が変わる事は無い。

今回は諦めて、次に期待しよう。面白そうな敵だった。魔法を主体にして、攻めてくる敵だ。両立した、キュウキとは違う。トリッキーに戦う、アルミラージとも違う。どんな、魔法が見られるか。楽しみである。

次からは、魔法攻撃力から奪う事にしよう。多分、転移魔法の移動距離は魔法攻撃力が関係していると思うからである。魔法防御力の可能性もあるが、それは次の時に……。

あ。魔力自体奪えば、魔法使えないんじゃないか?あぁ、それが良い。よし、多分、外に近づけば会えるはずだ。

はい。会えました。アルミラージと二回ほど戦闘して、また、カーバンクルと遭遇した。

〈神速〉を使い、一瞬で距離を詰める。敵を掴み、〈略奪〉を開始する。決めていた通り、魔力を先に奪う。次に魔法。

 

『魔法〈風属性魔力魔法・極〉を習得しました。魔法〈木属性魔力魔法・極〉を習得しました。魔法〈土属性魔力魔法・極〉を習得しました。魔法〈光属性魔力魔法・極〉を習得しました。魔法〈闇属性魔力魔法・極〉を習得しました。魔法〈無属性魔力魔法・極〉を習得しました。魔法〈空間魔力魔法・極〉を習得しました。魔法〈支援魔力魔法・極〉を習得しました。』

 

まさかの魔法全種。これはすごい。ものすごい量だ。あとで整理しないと。あとは、ステータスとドロップアイテムを奪えばいい。一応、目新しいスキルがないことも確認する。たまに、妙なスキルを猿が持っていた事があった。

よし、もう奪えるものがない。カーバンクルを殺して、地面に落ちている宝箱を開けていく。数が多少多い。

 

〈全神の魔石〉 全ての魔石と親和性が高い。全ての属性の魔法の威力を物凄く引き上げる。

〈火神の魔石〉 火の魔石全てと親和性が高い。火属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈水神の魔石〉 水の魔石全てと親和性が高い。水属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈氷神の魔石〉 氷の魔石全てと親和性が高い。氷属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈風神の魔石〉 風の魔石全てと親和性が高い。風属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈木神の魔石〉 木の魔石全てと親和性が高い。木属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈土神の魔石〉 土の魔石全てと親和性が高い。土属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈光神の魔石〉 光の魔石全てと親和性が高い。光属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈闇神の魔石〉 闇の魔石全てと親和性が高い。闇属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈無神の魔石〉 無の魔石全てと親和性が高い。無属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈空神の魔石〉 空の魔石全てと親和性が高い。空間属性魔法の威力を途轍もなく引き上げる。

〈支神の魔石〉 支の魔石全てと親和性が高い。支援魔法の能力を途轍もなく引き上げる。

 

宝箱が多かった。まぁ、魔石という面白い物が取れた。魔石の説明よ来い。

 

〈魔石〉 不思議な力を持った石。魔力を通すと魔力を引き上げる効果がある。魔杖や魔法武器、魔防具に使われる。

 

おぉ。すごい。カーバンクルが全種類と思う物を持っていた。しかも、全てに神が付いているので、最上級かそれに近しい物が手に入った。

これを使って、武器や防具を作ればかなりの出来が期待できる。夜にでも、取り掛かろう。

よし、これからの方針は、カーバンクルを見つけたら、〈略奪〉を優先して、他のモンスターなら、敵のステータスは〈略奪〉で増えた値から、予測して、それを基準にして、偽装しよう。

 

ここらのモンスターの平均のステータスは二万程だった。そのステータスに合わせて偽装した。

平均という事は二万より上もいたという事だ。強くなるには、自分より強い敵と戦う事が、一番早く強くなる方法だと思う。

まぁ、危険が付きまとうが、その方が戦闘に、命のやり取りになれるだろう。一歩間違えば命を落とすが、百も承知だ。やっぱり自分の為に戦う戦いは、危険が隣り合わせの方が楽しい。守る為の戦いならば、一方的な虐殺でも構わないのだが。

まぁ、それは置いといて。よし、敵と会う為にウロウロするか。

 

アルミラージが現われた。刀を抜く。相手を注意深く観察する。相手の動きに合わせて動けるように態勢を整える。注意すべきは突進からの電撃だろう。あとは、冷静に対処すれば良いだろう。

アルミラージの突進。〈看破〉を発動する。クッ、速い。自分の速度が遅く感じる。

なんとか、回避したと思ったが、やはり、〈跳躍〉を使い、急激な方向転換をして、またこちらに、速度を変えずに突進してくる。それを横に飛び、回避する。服に掠めて金属音の様なものが鳴った。

バチバチバチッ!!!

電撃がくる。急いで起き上がり、バックステップで距離をとり、刀を構え、放電に備える。

バリバリバリッ!!!

〈見切り〉を駆使して、放電を見切り、電撃を〈スペルブレイク〉を使い、全力を尽くして、電撃を切り続ける。

だが、〈スペルブレイク〉は自分の物理攻撃力以下の魔法を破壊するスキルだ。このアルミラージの魔法攻撃力は俺の物理攻撃力を上回っている。

なので、破壊しきれずに残った電撃が周りに、自分に当たり、辺りの地面はえぐれていた。自分に当たったものは、魔法の威力を下げる事は出来ていたので服の効果で無効化出来ていた。

放電が収まり始めた。だんだんと鎮まっていく放電を見ながら、完璧に鎮まったタイミングで足に力を入れて、突撃する。

ガキン!!

刀と角がぶつかる。アルミラージは頭を振るい俺の刀を受けていた。刀が角の中心部分まで切り込まれていた。

アルミラージが下がり、距離を取っているが、それを俺は追撃する。刀を横に振るう。角が横に振るわれる。

ガンッ!

俺はそれを無視する様な感じで、アルミラージの横に立ち、刀を横一閃に振るう。これで殺せるか。しかし、アルミラージは体を回転させる様に動いて、角と刀がぶつかる。

それからは、正面で数撃かまして、横に移動して、殺しにいくが、アルミラージは体を回転させて、角をぶつけてくる。

ガンッ!ガンッ!ガンッ!

正面で角と刀をぶつけ合う。

 

「ハァァァ!!」

 

気合いと共に刀を振るう。角の硬さと刀の切れ味、刀の切れ味が強いので角は少しづつ削れていった。そして、

バキッ!

アルミラージの角が折れた。

 

「フン!!」

 

一歩踏み込んで、刀を角が折れた事によって見えた首あたりを狙って振るう。それを、アルミラージは後ろに飛んで回避する。

アルミラージが着地するタイミングに合わせて、〈神閃〉を発動させる。一瞬でアルミラージの前足を切りとばす。そして、着地した瞬間に前足を切断されて、態勢を崩したアルミラージの首を切り落とした。

普段と違い、苦戦した。アルミラージだったから、良かったが、キュウキだとこれ以上に苦戦する事だろう。

〈索敵〉に反応がある。その方向に目を向けると、紅い毛に赤と青の角の虎に似て、翼が生えている、良くわからない生物がいた。

 

「はぁ、連戦とは面倒くさい。」




面白かったですか?面白ければ幸いです。あと、前書きやらが、長くてすみません。
ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

連戦

遅れてすみません。
ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております。


目の前に虎の見た目に紅い毛に背中から生えた翼、頭部から、赤と青の二本の角が生えた、キュウキと対峙していた。

アルミラージと戦ったばかりではあるが、刀を構える。こいつに殺されない為の手段は、戦う事だと本能が告げる。

キュウキの赤と青の角が光始める。前に戦った時に見た、魔法の発動前にられる現象だ。それを無視する程優しい俺ではない。

足に力を込め、敵の懐えと一気に駆ける。中断から横薙ぎに振るい、頭を横に一刀に殺そうとする。

それを頭を上に上げるだけで避けられる。それを追撃する様に刀を斜め上に振り上げる。追撃を体を右に傾けて避けられる。さらに追撃を加える。振り下ろしの一撃を角で受け止められる。

ガンッ!!

角にめり込むも断ち切る事が出来ない。押し切る形で振り下ろす。角を切る事が出来ない。

右に薙ぎ、振り下ろし、切り上げ、斜めに切り。連撃を繰り返す。それを全て避けられ、角で受けられる。そして、キュウキが距離を取る。そのタイミングで、角に宿った光が弾ける。

そして、空を覆い尽くすほどの火球が現れる。今の状態で受けるのはよくは無いが、目の前のキュウキ無視しながら戦うのも難しい。面倒な攻撃だな!

考えるのを俺はやめた。もう、本能で動こう。それが一番いい。死のうが死ぬまいが関係無い。とっさの判断に身をまかせる事にした。

さて、どうするか。そんな事を思った矢先に体が動く。大地を蹴り、敵の懐に突っ込んでいく。勢いそのままに刀を横に振るう。

ガンッ!

当然防がれる。敵の横に来て刀を斜め上に切り上げる。キュウキが体を回転させて避ける。それを追撃する。

魔法は、空から降って地面に落ちるまで時間がある。が、落ちてくるまで、もう、時間が無い。

熱波が空から注いでくる中で、敵の正面に立ち、頭を切ろうとしていた。前と違うのは、敵の攻撃を恐れずに果敢に攻撃している事だろう。

一歩を大きく踏み込み、角もろとも切りにかかる。

バキッ!

左の角が折れた。

ドンッ!!

そして、火球が地面に落ちたのは同時に近かった。

そのまま敵の横に回り、胴体を切る。それを体を回転させて避けるのは予想済みで、一歩を飛ぶ様に踏み込んで、〈一閃〉を使う。

胴体を深々と切り裂いた。敵の悲鳴が聞こえる。〈神速〉を使い、その場を飛び退く。

ドンッ!!

さっきまでいた所に火球が落ちて来た。敵にも当たったがあの程度では死なないだろう。

地面に当たると同時に飛んで来た降って来た火球より、小さい火球が分裂して、いくつかこっちにくるので、〈スペルブレイク〉を使い、全て壊す。

こっちに降ってくる火球を刀を頭上に振り上げ、〈スペルブレイク〉を使い、破壊する。

しかし、数が多すぎる。。飛びっちってくる小型の火球や大型の火球が無数に降り注いで来た。

氷の剣を無数に作り出す。それを上空の火球へとぶつけにいかせた。

ドドドドドンッ!!!!!

無数に爆発する音が聞こえる。いくつかの氷の剣を作り、敵に向ける。それを撃ち出す。それと同時に〈索敵〉に新たな反応があった。

右から飛び出して来た黒い角を上半身を反らせる事によって避ける。そして、宙を一回蹴り、目の前を通り過ぎ、少し離れた所で一回宙を蹴り急な方向転換をして、もう一回宙を蹴り加速して来た。それは、予想できていたので、左足を軸に回転して避けて、その勢いのまま乱入して来たアルミラージに回し蹴りをくらわせた。

次にキュウキの方を見ると、氷の剣が二本刺さっている状態で立ち上がり、前足を振り下ろした。その瞬間爪の辺りから何かが出て来た。

あれが、〈覇爪斬〉だろう。

俺も指に力を込め、振り上げる。〈覇爪斬〉を使い、迎撃した。二つの斬撃はぶつかり合い、辺りに衝撃を与えた。

そんな事に興味を持たず、弱ったキュウキに突っ込み、刀を振るう。前の様な反応はなく、反撃も弱々しい。振り下ろした刀を受け止められ、その瞬間に右足で、敵の顔を蹴り飛ばした。頭は蹴った方角を向き、俺は〈神速〉を使い、一瞬で態勢を整えて、キュウキの頭を切り飛ばした。

アルミラージの方を向いた瞬間に突進をして来た。見慣れれば、対処も簡単だ。軽々と避ける。相手が急な方向転換をする前に蹴り飛ばした。それを追撃する。勢いを乗せて突きを放つ。それは、胴体を捉え、そのまま、振り下ろし胴体の三分の二を切った。

アルミラージはそのまま光となって消えた。

戦利品を確認した。キュウキの双剣や角は無く、アルミラージの角も無かった。ドロップ率が低いのだろう。

回収もひと段落して、ゆっくりしようとすると〈索敵〉に反応があった。しかも、一つや二つでは無く、背後に二つ、右後ろに一つ、左右に一つずつの計五つの気配があった。

二十メートル以内にいるので、いつでも攻撃されそうだ。

後ろにいる敵が動いた。それと同じ様に左の敵も動いた。突進攻撃だろう。それを飛び上がり回避する。それと同時に敵の種類と配置を見る。

それを見て、驚いた。突進して来たのはアルミラージで、後ろにいるのはキュウキが一体にカーバンクルが二体だった。

三つの種類が合同で俺を殺しに来ていた。しかも、待機していた三体は魔法を発動させていた。キュウキはまだ発動準備をしているが、カーバンクルはもう撃ってきそうだ。

すると、いきなり強い風が吹いた。

マズイ。

直感でそう思う。腕を目の前で交差して顔を守る。すると、服のあちこちが切れて、その切れた隙間から血を流す自分の腕があった。

次に氷柱が飛んできた。

 

「グッ!!」

 

腕に突き刺さる。それがいくつも起こる。幸運だったのは心臓に当たらなかった事だろう。自分で炎魔法を発動させて、空中にいるが辺りを焼き尽くす程の猛火を起こす。氷柱は溶け、風は無くなっていた。地面に降りる。いや、地面に激突する。全身に傷を負いすぎて、体に力が入らなかった。支援魔法で回復出来るかを試してみる。結果はできた。

だが、また攻撃がくる。アルミラージ二体が時間をずらして突進してくる。それだけでも厄介なのにカーバンクルの魔法が飛んでくる。しかも、キュウキの魔法が発動した。

空を覆い尽くさんばかりの火球が降り注いできた。

ヤベェ、本気を出して、一瞬でカタをつけたい。だが、これからこんな事も起こるかもしれない。その状況下で敵の方が慣れていたら負ける可能性がある。だったらこんな状況を今の力でどうにかせねば。

そうだ。弱くなっているとはいえ、魔法の威力も桁違いのはずだ。それに魔力魔法はイメージしたものがそのまま魔法になる様なものだ。

なら、アニメなんかで化け物や怪物が使っていた様な技も再現できるかもしれない。

 

「フゥ、よし。」

 

息を鋭く吐き、決意を固める。

降り注ぐ火球は突進してくるアルミラージと共に氷漬けにした。火球は凍ったがアルミラージは完全には凍らなかった。

カーバンクルにはお返しとばかりに風で剣の様に切れる魔法を想像する。すると強い風が吹き、カーバンクルの体を傷つけていく。

また火球が迫ってきたので、アルミラージごとまた凍りつかせる。

キュウキが上体を持ち上げて、二本の腕を同時に振り下ろす。すると、氷が大きく出ていた場所が鋭利なもので切り裂かれた様にゴンッと落ちた。それを腕を振り上げて〈覇爪斬〉で迎撃する。

地面に五本の鋭利な切り傷をつくりながら、同じスキル同士が激突する。敵は合計で十本の斬撃を飛ばしているので、こちらが負けるが、時間は稼げるだろう。

腕に雷を纏わせ、それは、槍の形を形成する。右腕に自分の身長ほどある槍ができた。それをキュウキに向かって、右ストレートで撃ち出す。

雷の槍は騒々しい音を立てながら、キュウキへと突撃していく。雷の槍はキュウキを貫き、森の奥へと姿を消した。

次に手を出す魔法は〈獄属性〉まだよく分かっていない魔法の属性だ。

試しに普通の氷属性魔法で凍りついていないアルミラージの体内に氷を作りそれが膨れ上がり、内部から殺す魔法を想像する。だが、発動しなかった。

ならば、獄氷属性魔法ならどうだ。さっきと同じ想像をして発動させる。アルミラージがさっきとは違い、苦しみだした。そして、内側から出てきた黒い氷によって、所々を内側から貫かれ無残な姿になっていた。

これが、違いなのだろう。普通ではできない事が出来ると。そういう事か。ならば、こちらを主体にして魔法を使った方がいいだろう。

すると、カーバンクルがこちらに氷柱や炎の矢を放ってきた。それを獄炎属性魔法で黒い炎が出てきて焼き払うと、〈神速〉を使い、距離を一瞬で縮め、二体のカーバンクルを掴み、同時に〈略奪〉を開始した。容量は掴んでいるので、楽だった。獄氷で地面と繋ぎ合わせて、どんな魔法を使うか悩んでいると、

バチバチバチッ!!

放電が発動する前段階の音がした。

面白い魔法を思いつく。まぁ、普通の様な魔法だが、強力そうな魔法だ。

魔力を溜めていく。

バリバリバリッ!!!

向こうの方が早かったが、こちらも、もう、準備はできた。

バァァァン!!!!!

そして、その辺りに黒い強力な雷が落ちた。しかも、ただ落ちるだけでなく、辺りに同じ様な黒雷を枝分かれしながら落ちていく。

黒い光が治ると地面が抉れて、辺りの木が黒焦げになっていた。残っているのはモンスターのドロップアイテムくらいだ。不思議な箱だ。

この魔法で分かった事は、魔法は使用者には効かない。という事だ。

この戦いは、魔法の事を理解する事が出来る、良いものだった。無属性や空間魔法や支援属性の説明を見ておこう。それだけで無く、他の魔法なら説明を見ておこう。

ドロップアイテムに変化は無く、同じものだった。

今日は、連戦続きだ。疲れた。早く寝たい。飯は食べなくていいかな。だめだ。腹減った。この状況では寝られない。

〈索敵〉に反応がまた、いくつもあった。

 

「いい加減にしてくれよ。」

 

少し疲れ気味な声でそう呟いた。反応は四方八方にあり。面倒だ。

3、4体がこちらに突撃する。それを、獄氷で氷漬けにする。今度は、全身が凍っていた。これも普通の氷属性との違いだろう。

五体目が突進してきた。五体目はアルミラージで、黒い角を避けて、方向転換してきても冷静に避ける。アルミラージの顎にあたる部分に膝蹴りをくらわせ、左ジャブ、右アッパー、左ストレート、回し蹴りから右足でアルミラージの顎を蹴り上げる。そして、獄炎でアルミラージを焼き尽くす。

残るは、魔法を放つ奴らだろうか。〈神速〉でその場を動く。遠距離攻撃する敵がいる時は、その場に留まらず動き回る事で魔法に当たる確率が減るだろう。そして、刀を抜き放つ。

遠距離攻撃が出来るであろう敵を見つけては、切りつけた。魔法の発動を直視と直感に頼って、避けていた。当たったものもあるが無視して、増えてきたら、回復していた。

二十体くらい倒して、やっと、いなくなった。キュウキとアルミラージがほとんどで、カーバンクルは五体くらいだった。

カーバンクルはドロップアイテムがいいので、〈略奪〉していった。他は皆殺しだ。簡単だった。ステータスは変わっていないはずだ。うん。確認して見たが、変わって無い。やはり、スキルと魔法が強力なのだろう。ドロップアイテムを確認してアイテムポーチに入れる。

ハァ、しんどかった。連戦でしんどかった。ハァ、もう、今日は戦いたく無い。

そんな事を思っていると、目の前にいくつものモンスターがいた。しかも気配が四方八方に無数にあった。

 

「本当もう、いい加減にしろよ!」

 

怒気を孕ませてそう言った。

そして、辺り一帯が黒い炎に包まれモンスターが全滅した。

 

数分が経ち、

 

「やっちまった。」

 

冷静になって考えて、辺りを見回すと未だ黒い炎が上がり、燃えていた。切れたとはいえ、やり過ぎた。前よりも、よく狙われているんだけど、ハァ、よし、今日は寝ずにこの森にいるモンスターの数を減らそう。

だが、体が気だるい。多分、この症状は定番の魔力が尽きかけているのだろう。魔力の上限を解放する。すると、気だるさが抜けた。ゆっくりと立ち上がり、黒い炎が立ち込める地帯を抜けて、普通のもりが広がる地帯に出る。尚、火事を防ぐため、火は獄水魔法で消火しました。

まさか、〈エリアボス〉になったから狙われているのでは?と、思いはしたが、それなら、お前らと俺でどれだけ差があるか知らしめてやろうと思ったのは別の話。




疲れたー。特に目が。千文字書くのに一時間かかっているから、合計五時間向き合ってる。しかも、面白いかわからない。辛いよ。
ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

連戦・武器生成

投稿が日を跨いでる?…………………………察してください。間に合わせようとは頑張ったつもりです。しかし、ネタを思いつかない。しかも、ノープラン時間が足りませんでした。すみませんでした。
最後までゆっくりしていって下さい。


寝ずの夜を過ごして、朝日が昇る。

 

「あぁー、眠い。」

 

普通に口から出てきた。前まで、日が落ちたら、食って寝ていた。太るぞ。と言われたら、結構動いているから大丈夫と言える。

最近、早寝をしていたせいか、徹夜がキツイ。いや、転移前も徹夜なんて、あんまりしなかったからキツかったけど。この現状とは違う。

夜通しモンスターと戦い続け、殺しつくし、カーバンクルからは奪い尽くした。なぜカーバンクルだけ奪ったかって?魔石が面白そうで欲しかったからだよ。

体が持たねー。

モンスターと連戦で(自分のせいだが)物凄く疲れた。これから続くのかと思うと、辛いわー。

ほら、言ってるそばからモンスター出ちゃったよ。徹夜しておかしいテンションになりかけているこの状況で出くわすとは運が無いな。俺と戦うモンスター大概、運のステータス低いけどね。

〈神速〉を使い、一瞬で距離を詰め、アルミラージと思われるモンスターの顎を蹴り飛ばす。グワンと頭が上を向いた所で刀が鞘に入ったまま〈一閃〉を使い、首を切り、一瞬で刀を鞘に戻す。

慣れたものだ。一体、夜に何回戦闘したのか覚えていない。ただ、言える事は、新しく手に入れた職業の〈拳士〉と〈武士〉がレベルマックスになり、〈拳闘士〉と〈侍〉になった、という事だろう。

そこまで戦った。今度は槍術に手を出そうかな。一日もかからずに〈職業〉を手に入れ、レベルマックスにする自信が今の俺にはあるよ。

あと、〈職業〉のレベルが上がってもスキルは覚えられない。わかるのは、その武器の扱い方という事だろうか。〈拳士〉も〈武士〉もレベル15が最大だった。

よし。まずは腹ごしらえだ。アルミラージの肉を焼いて食べる。美味しいが肉を毎日食べているのでかなり飽きる。野菜と白米が欲しい。魚は煮付けがいいな。焼き魚だとちょっと嫌いだから。

まぁ、どうでもいい事は置いといて。槍を取り出して、さぁ出陣だ。

 

野生のキュウキが現れた。話は変わり、自分で考えた槍の基本を思い出そう。

まずは、距離の取り方だ。槍を使っている時に近ずかれると本来の力を出せない。槍の長さを考慮した距離の取り方をしなければならない。

それに、槍の穂先の部分以外の使い方も重要になってくる。さらに、状況に合わせて柄の持ち方を変えなければならない。

こう見ると剣と違い、かなり難しく思える。こればっかりは場数を踏むしか無い。

後攻を取るより、先攻を決めた方が距離を取る戦いをしやすいだろう。

そうと決まれば、勇猛果敢に臆病に攻めていく。大地を蹴る。相手との距離を詰め、無難に突きを放つ。さらに、横に切り払い、槍を回転させ、底の部分で顎を狙う。穂先で顎にさらに追い討ちをかける。それを飛んで回避される。

ことごとくを回避され、最後の一撃で顎に切り傷を作る程度で終わってしまった。

だが、俺も追い討ちをかけぬ程あまい鍛錬を積んではいない。

一瞬で距離を詰め、槍を切り上げる。足を狙い、勢いよく切り払う。深く足を捉え敵が体勢を崩す。

好機と捉え突きを放つ。横に切り払い、その勢いのまま回転する。半回転した時に底の部分で頭の側面を叩く。一回転した時に叩いた頭を切り裂く。

だが、切った部分が悪く、絶命していない。

横に移動し槍の長さを活かして首を狙う。短く飛んで避けられる。一歩踏み込んで連続して突きを放つ。しっかりその一撃一つ一つに相手の命を奪うように、必殺の意を込めて放つ。

 

『スキル〈五月雨突き〉を習得しました。』

 

敵が反応出来なくなり、槍が所々に刺さる。そして、光となり消える。

敵の攻撃を受けずに倒す。対戦に置いての理想だな。連戦になった時に、ある程度楽になる。

あー。思い出すな。夜の出来事を。倒しても倒しても次から次へとモンスターが出てきて、戦って戦って殺して殺し尽くして、一息つく暇も無く、延々と敵を倒し尽くした。

結構前の出来事のように思える。長い夜だった。

昔話のような最近の話を思い出す。仮眠をとりたい。仮眠をとったらモンスターに囲まれてタコ殴りにされて終わりだ。力を解放すれば、大丈夫だが、サバイバル生活に慣れておかないとこれからの生活は厳しい。

まぁ、気配を察知して起きられるようにしないといけないのかな。

よし、ステータスを元の値に戻して、仮眠を取ろう。敵の気配を察知して起きるように意識して寝よう。

木を背にして目をつぶり眠る。

 

 

「んっ。はー。良く寝た。」

 

さて、敵は。目の前と全方位に複数いる。俺が起きると敵がいるのが普通になってきた。

目の前のモンスターを蹴り飛ばし、槍を取り出し、蹴飛ばした敵に投げる。ステータスが高いのでありえない速度で貫く。さらに大地を蹴り、投げた槍に追いつき、槍を掴み敵のいる方向を向き、手短にいる敵を一撃で殺す。

 

「さぁ、どっからでもかかってこい。全力で殺してやる。」

 

 

数十分で終わったのかな。全力を出した俺にとっては幾多の敵が相手になろうと雑魚である事に変わりは無い。

〈槍使い〉の職業のレベルも後、1レベル上がればレベルマックスだ。早いね。

早いとこ敵を見つけて、レベルを上げるか。

っと、その前に貰った服を治そう。だが、裁縫道具があるわけでは無い。なんと無く、〈獄援魔力魔法〉を使えば、治るんじゃね。そんな事を思ったりしたからだ。

服を元の感じに戻すだけ、そんなイメージで魔法を使う。

結果は治った。本当に魔法って便利だね。〈獄属性〉だから出来たのかは、わから無いが、治ったから良しとしよう。

数分も歩けば敵に会う。会敵率高いね。アルミラージと対峙する。

槍を構える。それと同時に突進して来た。槍を使い、アルミラージの軌道を逸らして、突きを放つ。空を蹴り、かわされる。それを追撃する。

切り上げ、横に払い、振り下ろし、切り上げ、連続で回転させ、穂先と底の部分がアルミラージに襲いかかる。数多の切り傷を作らせたが、致命打にはなっていない。

回転した勢いを使い、勢い良く横に切り払う。また、空を蹴り、避けられる。勢い良く踏み込み、槍の底の部分を地面に打ち付け、棒高跳びの要領で飛び上がり、空中で一回転し槍を叩きつける。

それを角で受け止められる。しばらくの間せめぎ合って、

 

「ハァァァーー!!!」

 

押し込み、地面に叩きつける。

ドガン!!!

槍を引き、柄の底に近い部分を持って、突きを放つ。首を捉え深く刺さる。それを横に払い、致命傷を作る。光となり消える。

 

『職業〈槍術士〉を手に入れました。』

 

〈槍使い〉のレベルが最大になったか。今度は〈侍〉、〈拳闘士〉、〈槍術師〉のレベルを上げよう。それと、短剣の職業と魔法の職業を手に入れて起きたい。

魔法はこれから、使う事が多くなるだろうから、手に入れておきたい。

短剣は携帯が楽で、常に邪魔になる事が少ない。いざとなった時に使えるだろう。それに、投げナイフとして活用する事ができる。アイテムポーチから取り出す時に少しだけ時間がかかる。携帯していれば、練習さえしていれば、すぐに取り出せるので職業は手に入れておきたい。

まずは、短剣を作らなければならない。〈武器生成〉を使い、短剣を作る。

 

〈凶剣の短剣〉 EX装備

特に効果なし。

 

これに効果を付与する事ができるのでは無いか?多分、できるだろう。魔術付与可能となっていたので、出来るのだろう。魔術と魔法の違いがなんなのかわからんが、出来るだろう。

なんとかなるだろう。どうにかなるだろう。もしかしたら出来るだろう。

さぁ、試してみよう。魔法陣が現れる。

魔法を武器に宿らせる感じかな。出来るはずだ。多分。

 

〈凶剣の短剣・獄〉 EX装備

攻撃した相手にランダムな〈状態異常・特大〉を付与。相手の物理防御力を無視して攻撃出来る。魔力を一定値込めるたびに分身を作り出す。

 

へ?嘘だろ。強くなりすぎてる。バカみたいに強い。どうしよう。大量に作ってみるか。いや、その前に槍の魔術付与をしよう。前と同じようにすればいいはずだ。武器が強くても、問題無いはずだ。

 

〈悪僧の凶槍・獄〉 EX装備

攻撃した相手にランダムな〈状態異常・特大〉を付与。相手の物理防御力を無視して攻撃出来る。魔力を一定値込めると使用者が敵と定めた者全ての心臓を貫く事ができる。

 

ん?ゲイボルグか?有名な槍の能力がそのまま、書かれているような気がする。いや、実現した、という事だろうか。それに、様々な効果が追加されていて、使用者を化け物にしてしまうだろう。俺も十分化け物ですけどね。

さて、短剣を大量に作るか。

数分で大量生産できるって、怖いなー。あっ、足に巻きつけて、装備する前提で動いていたから、その装備を作らなければ。

 

〈短剣ホルスター・ベルト〉 EX装備

短剣を納める事ができるベルト。どこにでも巻きつける事が可能。短剣を幾らでも納められる。

 

はい。できました。ていうか、幾らでも納められるってそれは無理だろ。もう一つ作って、両足に巻きつける。手をだらんと下げて、少し腰を落とす事で取り出せる感じだ。それに短剣を納めていく。

その時に俺は、忘れていた事があった。ここは、異世界であり、前の世界とは概念が違う事を。例えば、アイテムポーチのようにアイテムを異次元へとしまう事ができる。

といった感じに。短剣を納めていくと、七本納める度に消えて、最初は驚いたが、取り出そうと思うといきなり現れる。

それを、両足が均等になるように納めていく。

よし、こんな感じか。

刀も作るか。

思いつきのようにそう思った。いや、怨嗟の刀も十分使えるけど、短剣と槍の性能を見るとなんか、見劣りしてしまう。

そして、出来たものがこちら。

 

〈村正・獄式〉 EX装備

攻撃した相手にランダムな〈状態異常・特大〉を付与。相手の物理防御力を無視して攻撃出来る。魔力を一定値込めると空間を切り裂き、相手が見えていればどんな距離でも攻撃出来る。

 

村正って妖刀の?ってか、これの能力もチートだな。化け物だよ。装備が怖い。こんなにいいものが作れるなんて思いもしなかった。

さて、いろいろな準備も終わった事だし。さっきから攻撃してきている奴らに試して見るか。

まずは短剣の能力。分身は装備も全く同じで、ステータスも少し弱くなる程度だ。使用者が敵と定めた奴らを殺すまで、止まらない。他の武器の能力も試そうと思っていたが、いなくなってしまったので仕方がない。まぁ、他の武器は説明文に全て書かれているようなものだったから、別にいいか。

さて、職業レベルを上げる旅に出ますか。




面白かったですか?へ?面白くなかった。では、どこが面白くなかったか教えて下さい。そしたら、それを直し、この小説を更に面白くしてみせます。
ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

旅立ち

今度は間に合った。だが、今日はエイプリルフールだ。ギリギリに終わったていうのは嘘じゃ無いからね。本当だからね。
まぁ、ゆっくり見ていって下さい。


「職業レベルって簡単に上がるんだな」

 

つい、そんな言葉が出てしまった。

いや、俺が異常なだけで普通はもっと、困難なはずだ。

職業レベルを上げようと思ったのは昨日の昼で、今は夜で、食べ飽きた肉をヤケクソ気味に食べ終わった後だ。野菜か白米、もしくは、パンが欲しい。いくら美味しくても肉はもう見たくない。だが、食べねばならない。人だから。

話が逸れた。今の〈職業〉の新しいものはこれだ。〈夜叉〉、〈拳聖〉、〈槍聖〉、〈短剣使い〉、〈短剣師〉、〈短剣聖〉、〈魔法使い〉、〈魔術師〉、〈殲滅魔術師〉といった感じだ。これらが、一日で手に入ってしまった。

しかも、〈夜叉〉、〈拳聖〉、〈槍聖〉、〈短剣聖〉、〈殲滅魔術師〉は前までの職業とは違い、スキルを覚える事が出来た。まぁ、素の強さがあれだから、どうだろう。という感じだ。そして、一つ不思議に思う事が出来た。

なんでだ。何故職業レベルがこんなに上がるんだ。〈闇騎士〉や〈ネクロマンサー〉のレベルは一つも上がらないのに、なんで、後から出てきた職業に先を越されるんだ。レベルの上げ方が違うのか。

 

『〈闇騎士〉が次のレベルになるには、かけがえない者を守るために、数多の者を殺して下さい。

〈ネクロマンサー〉が次のレベルになるには、数人の死体を捧げて下さい。』

 

物騒極まりない!!

レベルの上げ方が違ったけど、根本的に違った。

やはり、〈職業〉が特殊だからレベルの上げ方も特殊だ。〈闇騎士〉のレベルを上げる算段は思いつかないが、〈ネクロマンサー〉ならば、山賊や盗賊などに襲われた時に返り討ちにして、出来た死体を捧げればいいか。

今の俺は、数多のモンスターの戦闘で殺らねば、殺られる。と、刻み込まれているので、襲ってくる敵は容赦なく殺すだろう。ましてや、山賊や盗賊なんて生かしていたら、善良な人々が理不尽に殺されるだろう。そう考えたら、どんな理由があるにしろ、殺した方が世の為なのだ。

人を守るために人を殺す。矛盾だ。人を守ろうとすると、敵はモンスターや野獣の他に人がいる。しかも、状況次第では、人の方が厄介ときている。

前の世界では、人が自然界最強だと言っていたが、その通りだと思う。だが、天敵は数多に存在して、『最強』の天敵がいた。

人は銃や戦闘機を開発した。それはなんの為に。人を殺す為だ。人は人を敵と認識した。最近ではなく、銃が出来る最昔から、そうだっただろう。

そう、人は人という天敵がいた。昔から変わらずに天敵は『最強』だった。

醜いと初めは思った。だが、それでも、誰かを守るという決断をすると、どうしても、人という存在が敵になっていた。戦争が起こると何が敵になる。人だ。守るには、敵に回すしかなかった。

だから、モンスター(せいぶつ)を殺す事に抵抗は初めから無かった。

俺は本当は守る側の人間では無く、殺す側の人間では無いかと思った。それは、人の視点によって違った。守った者からは守る側と捉えられ、敵になった者からは殺す側の者と捉えられた。

それは、決して目を離していい問題では無かった。守る為には殺さねばならず、殺さなければ守れないかもしれない。

答えが無かった。見つかる筈が無かった。誰かを殺さなければ守れない。誰かを守る者は、数多の死体の上に立つしか無い。

よって、誰かを守る決断をした者は、残酷に生きなければならない。そうしないと、誰も守れない。

誰かを守る決断をした者は、全ての人を幸福にする事は出来ない。だから、戦争が無くならないのかと思った。絶望した。だが、そんなものは一瞬だった。もう、自分はいつでも、殺す側の人間になれるのだから。覚悟は決まっていた。

話が180度逸れたな。まぁ、山賊や盗賊がきたら、返り討ちにしてやる。そして、おれが強くなる為の踏み台となってもらう。

悪役みたいな感じだな。元から、〈スキル〉が強い悪役が持っていそうなものだからな。後に作者が弱体化イベントかそれ以上に強い奴の登場シーンで瞬殺される感じの敵役だろう。

まぁ、インフレのぶっ飛んだ感じで、作者が扱いきれなくなった感じだろう。簡単に言うならば、手に負えなくなった化け物という事だろう。

自分で思ってて、ちょっと落ち込む。俺は、〈魔族〉だが、人種族のはずだ。決して化け物では無いはずだ。多分。恐らくは。もしかしたら。

 

「完全に否定出来ねぇーーーー。」

 

自分の力が普通なのか。そんな訳ない。全力で殴ったら、前方が吹き飛ぶ力が普通だなんて思いたく無い。

前の世界の人とこの世界の人の力を同じ位に考えよう。そして、自分と比較してみよう。普通の人が何も使わず自分の力だけで、前方を吹き飛ばせますか?出来る訳ない。そんな事が出来るのは………

 

「化け物じゃねぇかーーーー!!!!!」

 

あぁ、やっぱり俺は化け物なのか。まて、まず、化け物の定義は何か。力が尋常じゃない事と見た目が人とは違う事のはずだ。俺の見た目は人だ。前に川で反射して見えた自分の顔は人のものだった。

よかったー。まだ、人だ。右ストレートで前方を吹き飛ばすのが人と言えるのかは疑問だが、人のはずだ。

ふぅ、そろそろ、本格的に〈略奪〉するか。そして、人里に降りようか。前に十万レベルを超えたら、人里に降りると決めたから、それを変える気は無い。

男が決めた事はよっぽどの事がない限りは、変えない。そうやって生きている方がカッコいいから、そう生きたい。

だが、もう寝よう。さすがに起きとくにはきつい。周りに気配は無いし、寝ても大丈夫だろう。

 

普通に起きる。朝というには、真っ暗だ。〈夜視〉があるから、明るく見えるが、空は暗かった。辺りの気配を探る。気配があった。

自分の環境適応能力は意外に高かった様だ。気配で起きられる様になった。まだ、一回だけだから、信頼できないが。

気配のする方を見てみると、標的を俺に定めた、キュウキがいた。

深夜に森を歩く紅い魔獣。うん。なかなか、幻想的な感じだが、敵になったからには、殺すまでだ。

短剣を取り出す。左手の指の間に三本構える。右手に刀を構える。そして、大地を蹴る。

途中で短剣を投げて、先制攻撃を加える。三本の短剣は深々と刺さっていた。こうなれば後は簡単だ。〈神閃〉を使い、顔を切る。だが、絶命せず、耐えていた。〈一閃〉を使い、トドメを刺した。なれたものだ。フッ。

あっ。しまった。最近の癖で倒したけど、〈略奪〉し忘れてた。まぁ、次からでいっか。

ナイフを回収する。血を近くにあった草などで拭く。そして納める。

まだ、朝には早いが探索するか。

 

太陽が夕陽に見えるくらいの時、レベルは、後一回〈略奪〉すれば十万レベルを超える。人里に後少しで降りれる。

この世界の人と会ったのは、結構前に女の子一人だからな。元気にしているかな。元気だといいな。

ん?その前にあの女の子はどうやって、あの場所まで来たんだ?正直あそこは、レベル1の女の子が一人でこれる様な場所じゃ無い。可能性としては、馬車かなんかの移動中に飛び降りて走って来たとか。そんな感じだろうか。

当時でも、レベル88位だったはずだ。単純に考えても、勝ち筋も何も無い。不思議だ。少し怖くなったぞ。

この話題は、今は深く追求しない様にしよう。

っと、何かが近い。目視でカーバンクルか。〈空間魔力魔法〉の〈獄属性〉版、〈獄界魔力魔法〉を発動し、カーバンクルの内部空間の時間の流れを遅くする。

動きが遅ければ、捕まえるのも楽だ。カーバンクルを掴み、〈略奪〉を開始する。その間に魔法は便利なものだと痛感する。

アニメで見た最強に似た能力の原理を自分なりに解釈し、それを当てはまる魔法で発動すると出来るのだから。最強だ。化け物だ。

〈略奪〉が終了し、カーバンクルを殺して、森を出ようとして、ある事に気ずく。

 

「森から出る方角ってどれだ。」

 

あっ。詰んだ。これはどうしようもないね。あっちえフラフラ、こっちえフラフラしていたから、あのボス部屋がどっちの方角にあるかすらわからない。

落ちていた木の枝を立てて、離す。コロンと倒れて、右斜め上を向いて倒れたのでその方角に向けて、歩を進める。

 

太陽が落ちて、完全に夜になった時に火を焚いて、夕食を作る。今日の夕食は、キュウキの肉である。美味しいかわからない奇妙な肉だ。これをこんがり焼けば食べられる。

上手に焼けましたー。

どこかのゲームで言っていた様な言葉を頭の中で流しながら、肉を持ち上げる。見た目は普通だ。匂いも普通だ。〈凍狼の肉〉より、百倍マシな匂いだ。ただ、肉という事でもう拒絶反応が出て来ている。

ええい!勢いだ。勢いで食べれば、どうにかなるはずだ。

ガブリ。

味はレバーか?いや、カルビ?やっぱりレバー。いやカルビの様な感じがしないでもない。美味しくはないが、不味くもない。そして、普通でも無い。形容しがたい味だ。

そして、寝る。寝る直前まで、魔法で使えそうな事を考えながら。

 

朝にしては早く、深夜にしては遅い時刻。微妙な時間に起きた。気配は、後ろにあった。スキル〈魔法合成〉で〈獄界魔力魔法〉と〈獄氷魔力魔法〉を合わせる。

敵を空間に閉じ込め、そこを、氷で固める。そして黒い氷はモンスターと一緒に砕け散った。これも寝る前に思いついた魔法だ。

そして、歩き出す。最近肩こりが酷くなっている気がする。腰痛も出て来ているし、やっぱり外で寝ているせいかな。後、体を洗わないと人と会うには、結構汚い感じだ。川か何かあると良いんだが。

 

歩いて行くと敵と出会う事が多い。その敵も雑魚と呼べる様な感じがするが、強い部類だろう。普通の人がレベル999はいかないと思うんだよね。

もしも、それ以上に強かったら、あっ。俺まだ人だ。と、安心できるし、この世界の住人は化け物に近い。と言える。元の世界なら、人間兵器だよ。化け物だ。俺が言えた義理じゃ無いけどな。

 

それから、数日後、いつか見た草原があった。木の棒を道標にするのって意外に当たるのかな。尚、道中何回もそれをして、ジグザグに移動していたのである。川を発見し、体と服を洗ったりもした。これで人と会っても大丈夫だろう。

そういえば、この雑草を食べていたな。これを〈測定〉してみる。

 

〈特薬草〉 素で食べても効果があるが、苦い。ポーションにすると効果も味も上がる。

 

まじかよ。嘘だろ。雑草だろ。その辺にいっぱい生えてるの全部それか。まぁ、詰めるだけアイテムポーチに入れよう。

思わぬ収穫があり、ポーションの制作方法を知りたいところだが、まずは、人里に降りねばならない。

〈完全偽装〉で〈種族〉を〈人間〉へと変えて、人がいるところで、あまり目立たずに旅をしながら、生きて行くのが、当分の目的だ。

歩いて行くと、また、森が広がっていた。また森かよ。ていうか、草原のところ、モンスターが出なかったな。運が良かったのか、そういう仕様なのかわからないところだ。

目の前に全長二メートルを超えるクマがいた。

 

〈種族〉 ブラッドベアー 〈Lv〉 5

 

弱っ!!!

急激に弱くなった。とりあえず、向かって来ているから、構えるか。

クマが毛だらけの手を振り上げる。肉球がプニプニしていそうで、触りたかったが、こちらも一歩踏み込み、左ボディブローをかます。

すると、殴った箇所が貫通して、後ろの木の枝が穴が空いた直線上に沿って無くなっていた。

ハァ、俺が化け物なのはよくわかった。人里にいるときは、ステータスを弱くしなければ。

そして、正面を見据える。そして、驚いた。

そこには、ブロンドの長い髪をしたいつか見た少女がいた。

 

「マグナさん?」

 

あの少女で間違いないだろう。だって、俺がこの世界であった事がある人物はこの子しかいないからね。

 

「久しぶりだな。確か……レオナ。」

 

名前を一瞬だけ忘れていた。だって、あったのが結構前に思えるんだから、仕方がないよね。

 

「さっき、名前を思い出した様ですが、お久しぶりです。」

 

思わぬところで、再開したのだった。




面白かったですか?面白ければ幸いです。
これから先の展開が悩む。ある程度考えたが、複数あり、取捨選択しなければならない。はぁ、面倒だ。
ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再開

はぁ、明日朝早くから出なければいけないのに、もう三時近いよ。ヤベェ、まぁいっか。どうにかなるでしょ。多分。
今回もゆっくり見ていってください。


今、俺はこの世界に来て初めて人と一緒に行動している。

隣を歩くのは、この世界に来て初めて会った、女の子だ。

ただ、前の世界で女の子と一緒にいる経験など無く、さらに、この世界に来て数週間、森を彷徨い続けた事でこの世界の話題など思いつくはずも無く、無言の空間が出来上がってしまった。

ここは、俺が思っている疑問、ここまでどうやって来たかを聞くべきか?というか、それしか思いつかない。

 

「レオナはどうやってここまで来たんだ?」

 

無言空間の中で言いづらい雰囲気ではあったが、無言でいるよりかは、良いはずだ。ただ、無言空間の中で言葉を発せられるのは、空気読めない奴が多かったと思う。俺、空気読めない奴の仲間入りしたく無いな。

 

「屋敷から、一週間分の食料を持ってここまで来ました。」

 

屋敷?屋敷って言ったこの子。もう本物の貴族じゃないですか。前に会った時に貴族だと思ってたけど、確証が得られたよ。この子が将来、悪事を働く子に育たない事を祈ろう。

というか、行動力が凄くあるな。見た目、十代前半の子が、ここまで来るとは、すごい事だな。

まぁ、それは置いといて。一週間分の食料という事は、往復の分を含めていると考えて良いだろう。という事は、片道3日位だろうか。

 

「ここから、君の家まで片道3日なのか?」

 

「大体、その位です。」

 

「そうか。」

 

あ、会話が終わった。どうしようか。このまま無言で歩き続けようか。それはしんどい気がする。

はぁ、会話のネタが思いつくまで無言で歩き続けようか。

そういえばこの子、どうしてここまで来たんだろうか。よし、会話のネタが見つかった。

 

「レオナはどうしてここまで来たんだ?」

 

しばらく、黙り、そして言いづらそうな顔をしている。

あれ、聞いてはいけない事だったのかな。なんか、また言葉を発しづらい空気になってしまったよ。どうしよう。

そんな事を考えていると、意を決したのか言葉を発した。

 

「前あった時に次にあっても同じ様に接してくれると言ってくれたので、また会いたくなったので、会いにきました」

 

それを恥ずかしがりながら言ってくるから、こっちまで恥ずかしくなってくる。

だが、恥ずかしい感情より、とある言葉が反射的に出てしまった。

 

「それは嬉しいが、ここまで来るのに、モンスターだって出るんだ。それに、あそこの草原にはあの森から出てくる事があるから、危険だ。これからは、危険なマネはしないでくれ。」

 

「すみません。それと、モンスターはまものの事ですか?」

 

「あ、モンスターって魔物って言うんだ。それと、わかったなら別にいい。」

 

恥ずい。結構恥ずかしい。最後の言葉が言えただけでも俺に拍手してくれ。

モンスターでは無くて、魔物って言うんだ。新しい知識ができて、恥ずかしい記憶が新しくできてしまったー。

普通に歩いてるけど、隣にいるのが、少女じゃ無くて友達だったら、うずくまってるよ。

はぁ、また無言タイムに突入してしまった。どうしよう。

ん?右に何かがいるな。

あ、クマだ。どうしよう。即死させたら、怖がるかな。子供に怖がられるのって結構精神的にダメージをくらうからな。

あ、こっちに気づいた。気づくなよ。無視できれば、それに越した事無いのに。

ん?前方の木の上からも気配を感じる。魔物かわからんが、敵対するのかな。

 

「はっ。右からブラッドベアーが来ています。あの、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ問題ない。」

 

どっかの死亡フラグを言って、右と前方に注意を向ける。

ブラッドベアーが突っ込んで来るので、少女をお姫様抱っこして、右に避ける。少女を地面に降ろす。

そして、クマを木の上にいる奴に向かって蹴り飛ばす。

 

「うわぁ!?」

 

木の上から女の声がして、何かが落ちて来た。尚、クマはどこかへ消えました。

落ちて来たのは、大剣を背負った、かなり長い黒い髪の十代後半位、もしくは、二十代位の女だった。どれ位髪が長いかというと、腰に届きそうな位に長い。

 

「お前、何者だ。」

 

「そっちこそ、ブラッドベアーを蹴り飛ばすって、非常識だし、どんな物理攻撃力なんだよ!!」

 

そんな事を女が言って来たので、

 

「常識なんぞすぐに塗り替わる。それと、物理攻撃力はブラッドベアーを軽々と蹴られる程だ。」

 

「親切にどーも。それと私はミコトだ。」

 

向こうもこちらの質問に答えてくれた。後、〈看破〉を使用していたので嘘はついていなかった。

名乗られたら名乗り返す、それが礼儀だと思っている。

 

「俺の名前はマグナだ。それと、何が目的だ。」

 

「お?以外に礼儀正しいな。」

 

「お前は失礼だな。それで?もう一度言うが、目的は何だ」

 

「私は、依頼でそこにいる少女を連れ戻して来いって言われて、探していたんだよ。」

 

敵意は無いのかな。まぁ、気を抜いてはダメなのだがな。

依頼かぁ。異世界だし、冒険者的なものかな。俺もなろうかな。面白そうだし。

っと。話が逸れた。これは、レオナにどうしたいかを聞いた方がいいな。

 

「そういう事だが、レオナ、お前はどうしたい。」

 

レオナの方に目を向けると、驚いている表情をしていた。

怖がらせたか?にしては、表情は怖れとは違う気がする。ヤベェ、他人からこんな表情されたのは初めてだから、戸惑ってしまう。

 

「はっ。私は、目的は達成しましたから、戻っても構いません。」

 

「目的?」

 

まぁ、ミコトの疑問はもっともかもしれないが、触れないでいてくれた方が俺としては嬉しいな。

だって、この子貴族だし。タメ口で話してたし。それが、異世界でどういう事になるかは知らないけど、面倒な事になるのが、目に見えている。

 

「それじゃ、今からミコトと家にでも戻るといい。」

 

「え?貴方は一緒に来ないんですか?」

 

「ん?別にいいだろ。そいつもそれなりに強いはずだ。問題は無いと思うぞ。」

 

「初めて会うので、信用ができません。」

 

「俺は会って2回目で初対面と大して変わらないと思うのだが?」

 

「いえ、信頼出来ます。」

 

どうやったら、二回あっただけで信頼できるんだ?

 

「だって、貴方は私の命を助けてくれましたから。」

 

そういう事か。命を助けられた経験が無いからわからんが。それと、命を助けられただけで、信頼するのは早計だと思う。

相手が打算で助けている可能性を考慮すべきだ。例えば、助けたのは連れ去って、この子の親に身代金を要求する為だとか、考えるべきだ。

まぁ、信頼していると言われた手前この事を言いずらいんだけど。

 

「あれ?私ってそんな信頼出来ない見た目かな?少なくとも、そいつよりかは信頼できると思うんだけど。」

 

「いきなり現れて、親の元に連れ戻しに来たと言われて、信じられますか?」

 

「そういう事か。」

 

あ。俺も納得したは。なら、少しの間、自由気ままな旅はお預けだな。

 

「わかった。俺も一緒に家まで送ってやる。」

 

「ありがとうございます。」

 

「じゃあ、私も同行していいか?」

 

俺としてはどちらでもいいので、判断はレオナに任せた。

 

「別にいいでしょう。」

 

「良かったー。報酬が貰えない所だった。」

 

あ、そういえばこいつ依頼で来ていたっけ。生活がかかっているから結構重要な事だったんだろうな。

そして、三人で行動する事になったのだった。

 

あれから、数時間後、ブラッドベアーが現れた。しかも二体。

 

「じゃあ、俺が片方を片付けるから、もう片方をお前が片付けるか?俺が二体片付けても構わんが。」

 

「いや、少なくても経験値が欲しいから、片方は私が片付ける。」

 

「了解。」

 

そういうと俺は刀を鞘に納めたまま構え、居合斬りの構えをとった。ミコトは、白い大剣を構える。

クマは突進してくるが、あの森にいた魔物とは比べ物にならない程、遅かった。突進を躱し、すれ違いざまに首を落とした。

ミコトはクマの攻撃を避けて、大剣を横に振り、クマの腹をザックリ切った。

瞬殺だった。戦闘して十秒も経ってなかった。

 

「へぇ、あんた中々やるじゃん。」

 

「あそこにいた魔物と比べると相当弱いからな。」

 

「は?まだ、ここらの魔物のレベルは同じくらいだぞ。」

 

「ミコトさん、草原の奥の魔境の事です。」

 

ミコトが固まった。

 

「へ?嘘だろ。」

 

「本当の話です。」

 

また、固まった。すると表情が徐々に驚きへと変わり、

 

「ええぇぇぇぇぇぇ!!!???」

 

叫び声が森に響き渡った。

 

「え。えぇぇぇ!?あの魔境に入って無事に帰って来たのか。化け物だな。」

 

「化け物では無い。まだ人のはずだ。」

 

「いや、十分化け物だよ。なぁ。」

 

「まぁ、私達の常識からして、絶対に入ってはならない。入ったら死ぬ。と言われて、実際、入った人の生還話なんて聞かないですからね。」

 

あぁ、やっぱり、俺は強さの面でいえば、化け物何だ。はぁ、わかってはいたよ。そうじゃ無いかとは思っていたよ。改めて突きつけられると。はぁぁぁ。

 

「歩きながらでいいからさ、魔境の話を聞かせてくれよ。」

 

「あぁ、別に構わんぞ。」

 

そして、俺たちは、魔境の話をしながら、歩き続けるのだった。

 

 

そして、夜になると、焚き火を焚いて、俺は肉を焼いていた。二人は携帯食料なのかな?そんなものを食べていた。

 

「それは、なんの肉何だ?」

 

興味があるのかそんな事を聞いてきた。

 

「さぁ、〈アルミラージの肉〉だったかな?」

 

二人が固まった。

 

「今、焼いているのは、〈アルミラージの肉〉なんですか?」

 

「多分、そうだと思うけど。」

 

「これが、最高級食材なのか。それを惜しげも無く焼いているこいつはなんなんだ。」

 

「はぁ、肉は正直見飽きた。」

 

「それを、今言うか。」

 

さて、そろそろいいだろう。焼き加減がわかって、一番いい状態に焼けても、食べ飽きたら、そこまで美味しくなくなる。

 

「なぁ、私の分の肉も焼いてくれないか?」

 

「できれば、私の分もお願いします。」

 

腐るほど持っているし、断る理由も無いので、

 

「あぁ。別に良いぞ。」

 

すると、ミコトは

 

「よっしゃー!」

 

と、ガッツポーズしていた。レオナは

 

「ありがとうございます。」

 

と頭を下げられた。

俺としては、一人で食べるより多人数で食べた方が美味しく感じられるかもしれないから別にいくら、焼こうとどうでもよかった。

そして、ちゃっかり自分の追加の分を焼いていた。

そして、焼きあがった。

 

「うわァ、生きていて良かった。生きている内にこんな物が食べられて良かった。」

 

「かなり美味しいですね。ただ、焼いただけのものでは無くて、調理されたものを食べてみたいですね。」

 

結構好評だった。そして、今日の肉の味はいつもより美味しく感じられた。

 

さて、深夜と言っても別にいい時間帯になってきた。レオナがウトウトし始めている。

 

「レオナ、寝たければ、寝ていいぞ。」

 

「そうはいきません。皆さんが起きているのに、私だけが寝るなんて出来ません。」

 

「明日に疲れを残して、体調を崩されたら、迷惑がかかるのは、俺たちなんだから、休む時にはしっかり休め。それに、ガキは寝る時間だろ。」

 

「私は、そんな子供ではありません。ですが、そうですね。わかりました。それでは、おやすみさい。」

 

「おやすみ。」

 

レオナは案外あっさり寝た。やっぱり疲れがあったのだろう。

 

「寝たのか?」

 

「あぁ、多分な。」

 

ミコトはまだ起きている。それと俺と一対一で話したい事があるはずだ。

 

「聞きたい事があるんだけどいいか?」

 

やっぱりな。俺の感って今まであんまり信じて無かったけど、大活躍しているな。

 

「今までどんな場所に居たんだ。」

 

「ここから、観測できないような遠い場所だ。」

 

「は?どう言う意味だ。まぁ、いいか。」

 

あまり、深く追求しないタイプか。ありがたい。

 

「今までどんな冒険をしていた。」

 

「あの魔境をただひたすらに彷徨い続けた。」

 

「その前は」

 

「冒険と呼べるものは、それまでだ。」

 

「じゃあ、どうやって、魔境に入って生還できるだけの力を手に入れたんだ。」

 

やっぱりこの質問が来たか。どうやって答えるかな。まぁ、予想ついていた時点で考えていた答えがあるのだがな。

 

「自分の命を賭けてあらゆる魔物と戦い続けた果てに手に入れた。」

 

「ふーん、そうか。」

 

まぁ、それっぽい事を言ってみたけど、俺の強さに追いつくにはそれだけでは足りないだろうな。

 

「よし。じゃあ、私とチームを組まないか?」

 

「へ?」

 

想定外。いや、冷静に考えれば、チームにかなり強い奴がいたら、それだけ安全だし、レベル上げも楽になる。理にかなった考えだ。

 

「それも、面白いかもしれないな。」

 

「じゃあ、決定だな。」

 

強引に決定された。まぁ、面白そうと思ったのも事実だし、別にいいと思っている。

少し、聞いておきたかった事を聞くか。

 

「なぁ、ゼギアノスってどう言うやつか知っているか?」

 

当時の俺を殺せた男だ。俺が知っている、ゼギアノスと大衆が知っているゼギアノスは違うかもしれない。

なぜなら、ゼギアノスを裏切ったのは国そのものだからだ。歴史に嘘の事が書かれている事があると思ったので、聞いておきたかった。

 

「裏切りのゼギアノスの話なんて聞いてどうするんだ?」

 

「いや、聞いておきたいだけだ。知っている範囲でいい、教えてくれ。」

 

「まぁ、別にいいけど。」

 

話を聞くと、やっぱり違った。ミコトの話に出てくるゼギアノスはかなり悪名高い感じだ。小説に一人は出て来そうな位の悪役だ。

そして、一通りの話が終わって、ミコトが次に発した言葉に俺は驚く事になる。

 

「まぁ、それらは全部嘘なんだけどな。」

 

「嘘とはどう言う事だ。」

 

「そのまんまの意味だよ。私の家に古い本があって、当時の帝国の事が書かれていて、それで、ゼギアノスは帝国に裏切られた事になっている。」

 

「そうか、俺が知っているのは、帝国に裏切られた方だから、こっちの方が正しいのかな。」

 

「へぇ、この事を知っている人が私以外にいたとは。もう、三百年前の事なのに。」

 

「まぁ、ちょっとした事があってな。」

 

それで、会話が終わってしまう。しばらくの無言の後後に

 

「じゃあ、私も寝るから、見張りよろしく。」

 

「あぁ、わかったよ。おやすみ。」

 

そして、ミコトも寝てしまった。

しばらく経ってから、ミコトがレオナを連れ戻す依頼を受けておきながら、寝た事に気付いたのだった。




結構早くに書き上げた部類ですが、どうでした?面白いですか?今回出て来た敵が雑魚でこれから先に出てくる敵もそこまで強くないので戦闘を楽しみにしている方は、暫くはそこまでいい戦闘がないでしょう。
ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三人での時間

間に合ったーー。よかった。ギリギリだけど。前書きも早めに終わらせないといけない。まぁ、皆さんゆっくり見ていって下さい


徹夜をした。まぁ、ゲームを真剣やってる時は、よく徹夜したが、する事が無く、体術や刀剣術、槍術を練習していた。もちろん、少し離れた所で。

森にいた時は、時間こそ短いが休眠をとっていた。久しぶりに徹夜した。さすがに今日は徹夜したくない。

朝日が昇り、体を動かしていたので目が醒めている。体は幾分かしんどいが、ここら辺の敵と戦うぶんには支障は無いだろう。

焚き火を焚いて、肉を焼く。内心、

 

(もう肉は食べ飽きたんだよ。野菜が欲しい。汁物が恋しい。白米が最も欲しい。誰でもいいから肉以外の食料を分けてくれー!)

 

なんて事を思っていたりする。暫くは肉を食べずにいたいものだ。人里が近いから、もう少しでこの肉しか食べられない生活ともおさらばできる。

二人も自分で持っている食料を食べている。二人は、どちらも干し肉みたいなもので、どう見ても肉にしか見えなかった。

肉が焼けて、食べる。二人が欲しそうに見ていたので、追加で二つ焼くのだった。

 

「さて腹ごしらえも済んだしそろそろ行くか!」

 

元気よくそう言ったのは、腰まで届きそうな長い黒髪の少女だ。名前をミコトと言っていたはずだ。

 

「そうですね。」

 

そして、ブロンドの長い髪をした、見た目十代前半位の子供に見えるレオナ・ルーンという少女だ。ミコトより行動が大人びているので見た目以上の年齢かもしれない。

 

「はいよ。」

 

そして、一行はレオナを家に帰すために街を目指して歩くのだった。街なのかなんなのか聞いてないからわからんが。

まぁ、どうでもいいか。

 

「なぁ、マグナはどこでレオナと出会ったんだ?」

 

いきなりの質問。まぁ、無言でいるよりかはマシだけどね。

 

「魔境の近くの草原で出会った。」

 

嘘をつく理由は特に無かったので事実を言った。

 

「レオナもあんな所の近くによく行こうなんて思えるな。」

 

驚かれていた。まぁ、あんな所にレベル1で行くとは余程のバカか、狂人だろう。

 

「死んでもいいとは思っていましたから。」

 

俺は死なないように頑張って、この子と出会ったから〈固有スキル〉の〈強欲〉が手に入ったのだろう。そして、今の俺がいるのだろう。だから、簡単に死んでもいいとは言って欲しくは無いものだ。

まぁ、この子が命の危険に晒されたら俺がそれを全て叩き潰しますけど。

 

「ふーん。まぁ、死んで無いならいいんだけど。」

 

ミコトは仕事に生きてるな。

心配する言葉をかけずに現実を見る。報酬が手に入るならどうでもいいという事ですか。

俺はあそこまで非情になれるかな?

まぁ、決断をした時点で、他人の命と自分の命はどうでもいいと思っていますけど。

現実でそんな場面に出くわした事が無いからな。どうなる事やら。

 

「ところでさ、マグナだっけ。なんで、そんな髪の色してんの?」

 

「は?」

 

「いや、髪の色。どうやったらそんな髪の色になるのか聞いてるんだよ。」

 

え?黒一色のはずなのだが。

あっ、異世界だから黒髪が珍しいのか。そういう事か。

 

「髪の色は生まれつきだ。」

 

ミコトも黒髪だし。大丈夫のはずだ。多分。

 

「へぇ、そんな、前髪が白くて、後ろ髪が黒い奴は初めて見た。」

 

「え?」

 

「どうしたんだよ。そんな驚いた顔をして。」

 

驚くよ。俺が知らないうちに髪の色が変わるってどういい事だよ。

どうしよう。正直に言うべきかな。いや、でも、恥ずかしいな。

 

「それ、地毛だったんですか?最初見たときは、黒一色ではありませんでしたか?」

 

ナイス。これで、多少は言いやすくなった。

 

「ああ。俺も最初はそうだったんだが、いつの間に変わったんだ。」

 

「え?元は黒一色だったのか?」

 

「元はな。どういう訳か髪の色が一部変わった。」

 

「へぇ、不思議な事があるもんだ。」

 

本当に不思議だ。まさか、限界突破とか、〈種族〉とかが関係しているんじゃ無いだろうな?

まぁ、確かめる手段が無いからどうする事も出来ないんだけどね。

 

そんな会話を交わしながら、今日という日を終えようとしていた。

 

「今日は私が見張りをするよ。」

 

ミコトがそんな事を言ってきた。

 

「いえ、私が見張りをします。」

 

と、レオナが言ったので、

 

「レオナは寝ていろ。お前が一番疲れているんだ。自覚は無いかも知れないが、体は自分の予想以上に疲れているはずだ。だから、お前は寝ていろ。安心しろ。俺やミコトは慣れている。」

 

「ですが、」

 

「安心しろ。今日は俺とミコトが交代でするから、俺もあいつも休める。」

 

義務感の強い子供だ。寝かしつけるのは大変だな。

 

「それでしたら、私も交代で見張りをします。」

 

「ハァ、もうそれでいいよ。」

 

口ではそう言って、絶対起こさない俺だ。

 

「だから、お前は先に寝ていろ。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

そして、レオナは眠りにつくのだった。

 

「お前、あんな事言って良かったのか?起こさなかったら、拗ねるぞ。あれ。」

 

「でも、子供を夜中に起こすのもどうかと思ってな。」

 

「お前は父親か。これ位の年の奴にはこういう経験を積ませた方が良いんだよ。」

 

父親では無いが、ミコトの言うことにも一理あるような気がする。

 

「そうだな。」

 

経験を積ませるということで、レオナにも見張りの役目をしてもらうか。

まぁ、心配だから、レオナが見張りの時は寝たフリでもするか。

 

「それでは、先に休ませてもらうぞ。」

 

「はいよ。」

 

俺は木を背にして寝るのだった。

 

 

何かが、近ずいてる感じがして起きた。

 

「あ、起きたか。」

 

ミコトが俺を起こしに来る途中だったのだろう。

 

「交代しよう。」

 

「ああ。それと、レオナが見張りをする時、バレないように起こしてくれないかな?」

 

これは、驚いた。ミコトも俺と同じ事を考えていたらしい。

 

「驚いたな。俺もレオナが見張りをする時は寝たフリでもしようと思っていた。」

 

すると、ミコトはやっぱりみたいな顔をした。

 

「やっぱりか。私たち二人してこの子の事が心配なんだよなー。」

 

「お前も、母親か姉だな。」

 

「それは、お前もだろ。お前は父親か兄か。」

 

二人して、苦笑する。

 

「じゃあ、私も休むけど、起こしてくれよ。」

 

「お前が起きれると良いのだがな。」

 

「子供を一人起こして寝ていられるか。」

 

「はいはい。わかったからもう寝ろ。」

 

「ちゃんと、起こしてくれよ。おやすみ。」

 

「おやすみ」

 

一人の時間が出来たが、さて、レオナを起こした後にどうやって、ミコトを起こそうか。

あっ、レオナを起こす前にミコトを起こせば良いんだ。うん、これくらいしか良い方法が思いつかない。

しかし、髪の色が変わっているか。前髪が白くて、後ろが黒って、どこの厨二だよ。これって、人に会ったら、恥ずかしいだろ。俺も落ち着いた年頃だから、恥ずいぞ。

どうするか。〈完全偽装〉で隠すか。いや、フード付きの服を作るっって手もあるぞ。

一番良いのは、フード付きの服を作る事かな。なんせ、ミコトと一緒にチームを組むことになっているので、出来るだけミコトにも俺の〈スキル〉の一端をあまり見せたく無い。

実力を隠しておかなければ、多分、この力は怖れられる。他人からも、国からも。

強さの平均をミコトに合わせるならば、俺の力の全力を出したらミコトの数千倍、数万倍は軽く超える。

圧倒的すぎる。人里に降りたら、力の調節をしなければならない。そうしなければ、怖れられるか、下らん国家間の争いに利用されるだろう。自分の力はさしずめ、動く核兵器といった感じだろう。

迂闊に力を振るう事が出来ないだろう。環境破壊もしたく無いし。しかし、本気でミコトは俺とチームを組もうと言ったのか。それは、明日にでも聞けば良いだろう。

あと、魔法も普通の属性にしたほうがいいだろう。〈獄属性〉は目立つだろう。いや、そもそも〈精霊魔法〉では無いから、目立つか。なら、魔法を使うのも禁止しておくか。

一人ならこんな禁止事項を決めなくてもよかったのにどうして面白そうだと思ったのかな。人肌が恋しかったのかな。

やっぱり、人と一緒にいた時間が長かったから一人の時間が耐えられなくなったのかな。後少しで一人暮らしになったのに、一ヶ月で人肌恋しくなったのか。

ハァ、俺もちゃんとしないといけないのにな。俺もいつか一人に慣れないといけないな。俺はウサギじゃ無いからな。

と、そんな事を考えていたが、どれくらいの時間で変わればいいのかな?もうちょい起きとかないとな。

 

 

そして、もうちょい起きとくか。を何回も繰り返し、限界が近ずいてきた。

まず、ミコトを起こすか。ミコトの隣にまで来て、

 

「おい、起きろ。」

 

「んにゃ、もう朝か?」

 

こいつ、寝ぼけてんのか?まぁ、どうでもいいか。

 

「違う。レオナを起こすから、お前を起こしただけだ。」

 

「ん?」

 

こいつ自分で言った事を忘れてんじゃ無いだろうな?

どうするか。軽く殴って起こすか?いや、でも女性だし。どうするか。

 

「あっ、そういう事か。」

 

「やっと、気づいたか。」

 

寝ぼけから回復したか。

 

「ハァ、今からレオナを起こすぞ。」

 

「了解」

 

そして、ミコトは寝たふりをし始めた。

それは、下手だったがある程度は誤魔化せるだろう。

俺はレオナを起こすべくレオナが眠っている方向へと向かっていく。

 

「レオナ、起きろ。」

 

「ん?」

 

こいつもか?寝起きが悪く無い事を願おう。

 

「あ、交代の時間ですか。」

 

「ああ。その通りだ。」

 

「では、休んでいて下さい。後は私が見張りをします。」

 

「ああ。頼んだ。それと次は、ミコトだから自分がそろそろいいと思ったら、起こして交代しろ。」

 

「わかっています。」

 

「それならいい。それでは、休ませてもらう。」

 

「おやすみなさい。」

 

そして、俺は木を背にして寝たふりをするのだった。

 

体感時間的には三十分だろうか?そんな時間が流れた時にレオナが動いた。

尚、俺は〈完全偽装〉を使って、寝たふりをしているので、並大抵の人では寝たふりだと気づかないだろう。

 

「ミコトさん、起きてますよね。」

 

何バレてんだーー!!

確かに下手だったけど!誤魔化せると思っていたけど!レオナの観察眼もすごいけど!

クソ、バレているぞミコトどうするんだ。

 

「Zzzz」

 

寝息を追加する事で誤魔化そうとしている?下手か!下手なんだな!!

あいつは馬鹿か。そんな事をしても起きていると言っているようなものだぞ。

 

「寝ていますか。私も疲れているんですね。」

 

え?誤魔化せた。まじか、誤魔化せれたのか?嘘だろ。

 

「氷の精霊よ我に……」

 

「起きた!起きたからその詠唱をやめてくれ!!」

 

誤魔化せれていなかった。

にしても、さっきのは〈精霊魔法〉の詠唱だろうか?だとしたら、さっきのは氷魔法だろうか。

はぁ、バレやがって。俺が起きている理由が無くなったぞ。

 

「なんで起きているんですか。今は休んでいて下さい。」

 

「悪い悪い。だが、そんな事を言ったら、そいつも起きているぞ。」

 

何故、俺も巻き込むんだ。奴は本当に馬鹿なんだな。

 

「え?」

 

レオナが驚いている表情をした。

どうしようか。起きたほうがいいのかな。

 

「ハァ、なんでバレてんだよ。」

 

結局起きた。ここで起きなければ、俺が言ったことは嘘になるかもしれないと思ったからだ。

 

「なんで二人とも起きているんですか。」

 

「いやぁ、それは……なぁ。」

 

なんで言い淀んで俺に振るんだ。普通に答えられるだろうが。

俺にどういう回答をして欲しいんだよ。

 

「お前が心配でな。起きて、お前を見守っておこうと思ってな。」

 

レオナは少しムッとして、

 

「私はそこまで幼くありません。もう14です。」

 

「まだ、子供だろうが。」

 

いうて俺も今年で18なんだが、まぁ、そんな事はどうでもいいが、結局全員起きてしまったな。

 

「私は今年で17だ。」

 

聞いても無いのにミコトが年齢を言ってきた。

 

「そうか。」

 

「んで、お前の年齢は?」

 

俺の年齢を言わせるためか。女性が年を言って、俺が年を言わないというのも、なんか、俺の礼儀が許さない。

 

「俺は今年で18だ。」

 

二人が、こちらを見て固まる。

 

「嘘は良く無いですよ。」

 

「そうだぞ。嘘を言うのはどうかと思うぞ。」

 

あれ?真実を言ったのに嘘だと思われている?まぁ、見た目が二十代後半くらいに見えるからな。仕方ないか。

泣いていいかな?

それから俺は、年齢を追求され続けた。みんなで笑いながら。この世界でも前の世界でも楽しかった時が来たのだった。




白紙の画面を見ると頭が真っ白になって、書こうと思った事を忘れてノープランでまた書き始める。これが毎回の流れでどんどん書くのが遅くなっていく。まぁ、ある程度の流れはきちんと紙に書いているから大丈夫のはず。ただ、大雑把すぎて、途中どうしようか?なんて事になりますが。
ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友人

遅れてすみません。言い訳のしようがありません。本当にすみません。書き終わりませんでした。
ゆっくり見ていってください。


俺の年齢の追求は、朝日が昇ると共に終わり。

 

「木の上から見る、朝日は綺麗なのかな?」

 

というレオナの疑問を解決すべく、朝日が見えやすいような背の高い木を手短に見つけ、レオナを抱えて飛ぼうとしたら、

 

「私も一緒に連れていってほしいな。今まで旅をした中じゃないか。」

 

と、ミコトに言われたので仕方なく二人を抱えて〈跳躍〉を使い、難なく木の頂点にたどり着く。

そこで見えた景色は、

 

「綺麗。」

 

「山の上ならわかるけど、木の上からこんな朝日が見えるものなんだな。」

 

綺麗だった。

 

「俺も驚きだよ。日常の一風景のようなものなのに、見え方が変わるだけで変わるのだな。」

 

遥か地平線の彼方に見える太陽。眼下には、広大な森。奥には草原、そして、目的地である街の城壁の様なものが見えていた。

元の世界では田舎で育ち、周りは森に囲まれていた。だから、森を見るのには慣れていたのだがな。

やはり、一人でいるよりも複数人いた方が楽しいな。一人旅をしようとする気が失せてしまうじゃないか。

本当にミコトと一緒にチームとやらを組んでみるか。もちろん、実力は隠すがな。

 

しばらくの間、木の上にいたが朝日が昇っていき、景色を記憶にとどめて俺たちは木の上を降りて、朝食を食べた。

そして出発する。今日中につけるらしいから、三人での旅も今日で終わりだろう。

だが、俺たちは総じて睡眠時間が短かった。俺は慣れていて、多分ミコトも慣れているはずだ。残るはレオナだが、どうみても昨日の疲れが取れていない様だった。

進行速度が落ちているので、もしかしたら明日までかかるかもしれない。

 

「大丈夫か?」

 

心配になったので、声をかけると

 

「ハァ、ハァ……大丈夫です。」

 

果たして、息を切らしながら歩いている少女を、大丈夫と言えるのだろうか。

体感時間にして五分くらいだろうか。川が近くに見えた。

 

「ここいらで、休憩をするか。あそこに川もある事だし。」

 

「私は大丈夫だと……」

 

レオナがまだ歩けると声にしようとしたところで、

 

「おー、良いね。喉が渇いたところなんだ。」

 

ミコトが本気なのか、レオナを休ませる為なのかそんな事を言った。

そして俺たちは川辺で休む事になった。

辺りは木に囲まれていて、川の流れる音が聞こえる。キャンプに来るならこんな場所が良いな。と思える場所だった。

ミコトは川の水を飲んでいる。一体何杯飲むんだ。と思えるくらいに飲んでいる。後で気持ち悪くなっても知らんぞ。

レオナは手短な石に腰をかけて休んでいる。

俺は、そんな様子を木を背にしながら、眺めていた。

 

「家に帰るのが嫌ですね。」

 

レオナが独り言を呟いた。それは運悪く、俺にも、ミコトにも聞こえていた。

 

「ミコト、こいつが家に帰らなかったら、一大事か?」

 

「一大事だな。今は街の領主だが、国王の血筋だからな。」

 

マジか。貴族と思っていたが、国王の血筋って将来の女王候補の一人ってことか?予想を上回る事実が発覚したぞ。

いや、今はそんな事はどうでもいい。

 

「という事は、レオナが戻らなければ、俺と、ミコトのクビが飛ぶって事か?」

 

「え?」

 

レオナが驚いた様に声をあげた。

 

「多分、いや絶対そうなるな。だから、私達の為にも家に返さなければならない。」

 

「やっぱり、そうだよな。」

 

正直に言おう、もしも国から狙われる様な事があっても、大丈夫だと思う。

逆に俺を殺せる奴を見てみたい。

その時は、俺も全力で相手をしてどちらが勝者か敗者かを決したい。

また、話が逸れた。

だが、その道を通れば戻る事が出来なくなる。さらに、レオナとミコトの人生を血みどろの道に変えてしまう。

俺もだが、敵対すれば殺すのが普通になった俺は関係ないだろう。問題点は、俺が二人を守りきれるかどうかだろう。

次から次えと出て来る敵を前に守りきれるかは、わからない。乱戦になれば、一瞬で殺されてしまうかもしれない。

それが、理由で俺はレオナを家の返した方がいいと思った。レオナには悪いかもしれないが、血みどろの人生を歩ませる訳にはいかない。

 

「わかりました。ちゃんと家に帰ります。」

 

レオナがしっかりと覚悟を決めた様に言った。

 

「ですが、また今度会いましょう。」

 

レオナが願う様な口調と願う様な顔で言ってきた。

まぁ、断る理由も何もない。さらに、そんな口調と顔で言われては、断れないではないか。

 

「あぁ、また会おう。そしたらこいつの肉をみんなで食べよう。」

 

ミコトも同じ気持ちらしい。

 

「そうだな。また会おう。そして、また三人で朝日を見よう。」

 

「ありがとうございます。」

 

レオナが今にも泣きそうな顔をしながら、笑っていた。

ハァ、そんな顔をしないでほしい。なんて言えばいいかわからくなる。

その後、三人でしきりに話し合った。そして、また歩き出した。

 

「にしても、貴族っていろんなしがらみがあるんだな。」

 

「そうですよ。出来る事なら一般人で会いたかったですよ。」

 

貴族には貴族の苦しみがあるらしい。幼い女の子が姫様とやらに憧れるのは、姫様が負う責任や苦労を知らないからで、現実は憧れる様な存在ではないかも知れない。

 

「一般人でも色々と不便な事があるよ。」

 

ミコトが苦笑しながら言ってきた。

 

「なら、一般人で生まれても、貴族に生まれても不便な事があるって事だな。種類とその質は違うと思うがな。」

 

「そうですね。」

 

「確かにな。」

 

そんな会話を交わしながら、森を歩き続けた。

途中で、

 

〈種族〉 ゴブリン 〈Lv〉 1

 

定番だな。RPGや様々なゲームに絶対と言っていいほど出て来る敵だ。

見た目は、緑色の体に醜悪な顔、手にはボロボロの石でできた剣を持っていた。

 

「どうする?」

 

と俺が聞いた。

 

「どうする?って倒す以外の道があるの?

 

正論だけど、俺が聞いたのはそういう意味じゃない。

 

「そういう意味じゃなくて、誰が倒すか。という事だ。」

 

「私達以外の誰が倒すんだ?レオナにでも倒させる気か?子供にそんな事させる奴だと思わなかったよ。」

 

「何故、自分を含めていないんだよ。」

 

「今更、レベル1の奴を倒してもな。」

 

という事は俺が倒さなければならないらしい。

どうやって倒そうか?いや、瞬殺できるんだけど、人型だし、子供の前だし、できるだけショッキングな場面にならない様にするにはどうしたらいい?

あっ。あの方法があった。

ゴブリンに向かって心の中で、こう思う。

 

(サッカーやろうぜ!お前ボールな。)

 

四散させない様に注意しながら、蹴り飛ばす。

ゴブリンはどこかに消えてしまいました。

何だろう。今思ったけど、四散させない様に注意しながら蹴り飛ばすのって、俺だけじゃね。いや、レベルが上がればこれが普通になるのかな。

まぁ、どうでもいいか。

 

「その魔物を蹴飛ばすのって、癖なの?」

 

癖なわけがあるか。

 

「違う。子供でも目を背けられずに見られる倒し方をしたまでだ。」

 

「なら、クマを何で剣で倒したんだよ。」

 

「クマなら大丈夫だろう。」

 

「基準がわかんないんだけど。」

 

呆れた様に言われた。

移動していると、度々魔物と出会ったがどれも、サッカーをして倒した。

夕焼け色に染まる空を見ながら、森を歩き続ける。結局森を抜けられなかった。まぁ、仕方ないか。

 

「もう直ぐで夜になるから、焚き火の準備をしようか。」

 

「そうだな。」

 

「そうですね。」

 

二人も同じ意見だった。

明かりがある時に火を起こせそうな枝や枯れ草を探す。

 

空には満点の星空と満月が浮かんでいた。さらに所々に雲が浮かび、それが、さらに幻想的な景色にしていた。

 

「朝に負けず劣らずに綺麗な景色だな。」

 

「確かに。朝と違って、暗いからこそ綺麗だな。」

 

レオナはこの景色に言葉を失っていた。

そっとしておくことにした。

肉を焼くのに専念する事にした。この肉だけを食べる生活も、明日で終わりだ。やっと、肉だけではなくなる。結構前から栄養の偏りを気にしていたので、野菜を食べたい。

そして、俺たちは夜食を食べ終えて、どの順番で起きておくかを決めた。

そして、順番で言えば俺が寝ている時間に俺は起きていた。理由は、

 

「どういう事だ。」

 

数にすれば馬鹿にならない程の気配がしていた。それが、ここを囲もうとしている様に動いていた。

 

「どうした?」

 

ミコトは俺の次の番だったので、俺が起こした。こいつは今いる気配に気づいていない様だ。

 

「囲まれかけている。」

 

それで、ミコトも近ずいている危険に気づいた様だ。

続いて俺は

 

「レオナを頼めるか?」

 

ミコトはこの言葉に驚いていたが、

 

「わかったよ。だが、約束はちゃんと守れよ。」

 

「俺があんな奴らにに負けるとでも?馬鹿を言うな。友人に危害を加える奴らに俺は容赦はしない。」

 

そして、俺は近くにいる気配に向かって、駆け出した。その途中で〈暗雲の来訪者〉の能力を使った。自分の周りに黒い霧が出てきた。それは、視界を妨げる様な事は無く、だが、見る事はできる。不思議だ。

短剣を二本構える。敵は、人だった。だとすると、盗賊だろう。

囲もうと動いている二人の盗賊の一人の首を切る。すかさずに、後ろにいた盗賊の心臓を貫き、肺を切り裂いた。

盗賊は、その場に崩れ落ちた。敵の気配は前方に弧を描く様に広がっていた。

それを感じて、自分の心から感情が失せていく。ただ、自分の正義のために動く機械の様になった。

大地を蹴りかける。前方には数えるのも馬鹿らしく思える程の敵がいる。だが、そんなの関係ないほど、そいつらと俺の間に実力差がある。

塵が積もれば山となる。だが、塵である事に変わりはない。一つの強風が吹けば、簡単に吹き飛ぶ。

今、この現状の様に。辺りには、物言わぬ骸が無数に転がっていた。この(盗賊)達は俺と言う強風が吹いた事により一瞬で命を散らした。

全ての敵を短剣を使い、急所を狙い一撃を確実に当てていった。敵の動く速さは亀よりも遅く見える。敵から見れば、俺は速すぎて捉えられない位だろう。

しかも、運がいい事に敵は即死か、〈状態異常〉で声も出せずに絶命していく。近くにいるであろうレオナを起こさずにすむ。

一直線上に敵が複数いる。〈神閃〉を使い、一瞬で複数の骸を作り上げる。今気づいた事だが、〈神閃〉は一刀だけで無く、複数回、刀を振れる事がわかった。

そんな事はどうでもいい。次の敵を一瞬で見つけて、そこに向かって駆けていく。

敵の半数は殺し尽くした。まだ、五分いや三分も経っていないだろう。後、大体、三十か四十位だろう。

今、敵が鈍間な足でミコトとレオナがいるところに奇襲を仕掛けていった。

冷静さを少し取り戻し、敵がいる空間の時間の流れを〈獄界属性魔力魔法〉を使い、時間の流れを遅くする。さらに、その空間を〈獄氷属性魔力魔法〉を使い、氷漬けにした。辺りが暗いので氷は見えなかった。だが、気配はミコトとレオナの気配しかしなくなった。

殲滅したのだ。しかも、五分と経たずに無数にいた盗賊を一人も残さずに殺し尽くしたのだ。

直ぐに向こうに戻ればいいのだが、やっておきたい事があった。だが、周囲には死体が転がり、あらゆる所に血溜まりができていた。まずは、掃除をしようか。

〈獄炎属性魔力魔法〉を使い、周囲の死体と血だけを、焼き尽くした。そして、〈防具生成〉を使う。

目の前に魔法陣が現れる。その中央に〈玉鋼〉を置く。そして、一応、〈氷神の魔石〉を一緒に置く。そして、出来たものがこちらです。

 

〈友情の証・氷〉 EX装備

登録した〈友情の証〉を持つもの同士で、離れていても魔力で会話ができる。氷属性の魔法全般の威力を五倍にする。

 

これって防具なのだろうか?まぁ、名前はこれをあげようと思っていたからいいんだが、能力が付いてしまった。まぁ、仕方がない。

よし。これと同じものを自分の分を含めて、後二つ。

こちらが、完成品になります。

 

〈友情の証・火〉 EX装備

登録した〈友情の証〉を持つもの同士で、離れていても魔力で会話ができる。火属性の魔法全般の威力を五倍にする。

 

〈友情の証・全〉 EX装備

登録した〈友情の証〉を持つもの同士で、離れていても魔力で会話ができる。全属性の魔法の威力を三倍にする。

 

よし。あとは渡すタイミングだな。いつ渡そうかを考えながら、あいつらの所に戻るのであった。




面白かったですか?面白ければ幸いです。ノープランで書き続けていると、設定があやふやになったりする。キャラの名前や口調をどうしようかで悩んだりする。
ご意見、ご感想、ご指摘お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友情の証

投稿がかなり遅れてしまった。眠い。疲れた。この言葉で察してください。
ゆっくり見ていってください。


そして、俺はミコト達がいる場所へと戻ってきた。

 

「早かったな。数はそう多く無かったのか?」

 

「いや、それなりにいたが、弱かっただけだ。」

 

事実である。

五分かかったかかからなかった位の時間で制圧できたんじゃないかな。

あっ。死体の処理はどうしようか?後で〈ネクロマンサー〉のレベル上げに役立ってもらおうか。

それに従って、というか、絶対にしとかなければならない事がある。

 

「移動するぞ。レオナに死体を見せるわけにはいかないからな。」

 

14歳とはいえ死体を、しかも血だらけのものを見せる気にはなれない。しかも、朝っぱらに見たら、トラウマになりかねない。

 

「はいはい。わかりましたよ。」

 

ミコトも同じ気持ちなのだろうか?

それとも、なんとなくなんだろうか?

人の気持ちなんてわからないし、興味ないからいいか。

俺はレオナを起こさないように抱きかかえ、静かに移動を開始した。その後ろをミコトがついてくる。

 

「にしても、一気に冷え込んだな。」

 

「そうか?俺はそこまで変わらんと思うが。」

 

冷え込んでいたら、服とロングコートしか着ていない俺でも気付くはずだ。

 

「は?お前大丈夫か?このままではいると風邪をひくくらいさむい寒いぞ。」

 

「……」

 

そこまで一気に寒くなるか。

あっ。俺のせいだ。俺が魔法で盗賊を氷漬けにして放置しているから、周りの温度も低くなってしまったんだ。

やばい。魔法ってどうやって消すんだ。あれか?魔力の結晶体と考えて、それを分解するイメージか?

だめだ。確認できない。周りの景色と同化しているのか消えたのか全くわからん。

ハァ、気温が下がったのは俺のせいか。そのせいで、風邪を引かれては困るな。

だが、今はレオナを抱っこしているので何もしてやれない。

しばらく歩いて、野宿できそうな場所に来ると、焚き火をおこした。

 

「しばらくの間、またレオナを頼めるか?」

 

「今度はなんなんだ?」

 

「いや、敵じゃない。ただ、死体を焼いてくるだけだ。」

 

疫病が流行ると大変だからね。

まぁ、俺は小説で手に入れた知識だから、焼いたほうがいい。位の事しかわからんが。

 

「はぁ。直ぐに戻ってこいよ。私も眠いんだ。」

 

そう言って、欠伸をこらえたような顔をした。

俺は直ぐにその場から静かに離れて駆け出した。

第一の目的は〈ネクロマンサー〉のレベルを上げる事だろう。まぁ、どれだけ捧げればいいかわからんが、四十を超える位には死体ができているはずだ。

あっさり付いてしまった。死体を捧げるかー。どうやるんだろ。

そんな事を考えていると、周りの死体が紫色の光に包まれ、

 

「消えた!?」

 

驚く事に跡形もなく消え去ってしまった。

捧げるとは知っていたが、こんな感じだとは思はなかった。

それから、死体を探したが、見つからなかった。明かりが見えないとミコトが不審がると思ったので、周りの木に燃え移る事がない場所で火をおこした。

その火を見ながら、〈ネクロマンサー〉のレベルを確認して見た。

 

〈ネクロマンサー Lv3〉

 

思ったより上がらなかったな。一気にレベルマックスまでいくと思ったが、そうでは無かった。

次のレベルに上がるには何が必要か見てみた。

 

〈ネクロマンサー Lv3〉 次のレベルに上がるには死体を後25体捧げてください。

 

俺に何人殺せと?

まぁ、今の力で間に合ってるから別にいいんだが。

かなり殺していたんだな。実感がないだけで、十分自分がやばい力を持っている事が実感できた。

少しの時間落ち込んで、立ち上がり、ミコト達がいる所に戻っていった。

 

「やっと、戻ってきたか。ふわぁ。」

 

欠伸をしながらそんな事を言われた。

 

「すまない。それと、まだ寒いか?」

 

「マシになってきたけど、まだ肌寒いな。」

 

それを聞いて俺は、ロングコートを脱ぎ、

 

「レオナと一緒に使え。何もないよりマシだろう。」

 

「案外優しいじゃん。」

 

そして、ミコトはレオナと一緒にロングコートを上にかけて寝た。

久しぶりに感じるステータスの確認でもしようか。

 

〈種族〉 獄魔族 (人間) 〈名前〉 マグナ・ゼギアノス 〈年齢〉 不詳〈職業〉闇騎士 Lv1 〈Lv〉 102674

〈ステータス〉 物理攻撃力 測定不能 (20000) 物理防御力 測定不能 (20000) 魔力測定不能 (20000) 魔法攻撃力 測定不能 (20000) 魔法防御力 測定不能 (20000) 俊敏力 測定不能 (20000) 運 60.9 魅力 測定不能(どちらかの意味で。)

〈固有スキル〉 強欲Lv3

〈スキル〉 〈攻撃スキル〉 〈魔法スキル〉 〈補助スキル〉 〈妨害スキル〉 アンデッド作成

〈固有魔法〉 獄属性付与

〈魔法〉 〈基本属性魔力魔法〉 〈獄属性魔力魔法〉 死霊魔法

〈称号〉 死の具現

 

なんか色々変わってる!?!?

年齢が不詳ってなんだ。俺は今年で18になるんだよ。だから、17だ。なのに不詳ってなんだ。

ステータスが測定不能にまでなってしまった。今までは、十万や百万くらい表示できていたのに、とうとう測定できなくなってしまった。

スキルのアンデッド作成って、もはや人ができる領域を超えているだろ。いや、あの神が渡してきた時点で嫌な予感しかしなかったけど。

称号の〈死の具現〉って何!?物騒だな。てかどういう意味だよ。

 

〈死の具現〉 「死」そのもの。この者が殺すと決めた相手は死の運命から逃れられない。殺気を調節できる。

 

物騒すぎる。俺はなんなんだろう。バケモノの領域もブッチギリで超えていると思ったのは俺だけだろうか。

魅力の所は相変わらずだな!!ないんだろ!俺には魅力が無いんだろう!だったらそう言えよ!

フゥ、久しぶりに見てみたが、これは、どうしようか。桁違いすぎて人と一緒にいていいかすら怪しく思えてきたぞ。

山奥でひっそりと暮らそうか?いや、でも一人じゃ寂しいか。多分、()内の値が〈完全偽装〉で表に出てきている強さの値だろう。

 

「ハァ……」

 

と一つため息をついたところで、二人の寝姿が目に入った。

二人仲良く寝ている姿は顔立ちや諸々似てはいないが、姉妹の様だった。

それを見て、少し笑い、ステータスを閉じて、二人にあの装備を渡す時の言葉を考えるのだった。

 

 

 

次の日、焚き火で肉を焼きながら、今日で肉だけの生活とおさらばできる。という思いで一杯だったが、眠たかった。徹夜に慣れていると思ったが、そうでは無かったらしい。

 

「そういえば、チームを組まないか。と、前に言っていたが、それは本気で言っていたのか?」

 

前に思っていた疑問を聞いてみた。

あれが、冗談や面白半分ならば、一人で旅をしようと思っている。あれが、本気ならチームを組んでもいいとは思っている。

 

「ああ。あの話か。そういえば返事を聞いていなかったな。」

 

「なんの話ですか?」

 

レオナはこの話をしていた時は寝ていたな。

 

「ミコトとチームを組むか、組まないかの話だ。」

 

「お二人はチームを組まれるのですか?」

 

それにミコトが、

 

「今、チームを組むかその返事をもらおうとしているんだ。それで?どうする?」

 

どうやら、本気で聞いてきていた様だな。

どうするも何も、目的が無いより、あった方が何かと捗りそうだ。主に情報収集が。ある程度達成したら、人助けでもするか。

無償で。と言いたいが、そうもいかないだろう。ミコトもいるのだ、生活費を稼がないといけないからな。

 

「いいだろう。だが、チームを組むのに必要な条件はあるのか?」

 

「よっしゃ!後、必要な物は冒険者登録証を持っていればいいだけ。そしたら、周りが勝手にチームだと認識してくれるから。」

 

結構緩かった。

問題は冒険者登録証をどうやって手に入れるかだな。俺は〈獄魔族〉だ。種族的に〈魔族〉と変わりは無い。種族を見抜かれたら俺だけでなく、ミコトにも迷惑をかける。

過信かもしれないが、俺の〈完全偽装〉を見破ることはできないから、それは心配するだけ無駄かもしれない。

 

「冒険者登録証はどうやって作るんだ?」

 

「お前も、もしかしてどこかの貴族の息子とかか?」

 

反応から察するに常識らしい。

仕方ないじゃ無いか。こことは違う世界から、いきなり連れてこられたんだから。この世界の常識を俺が知るわけないだろ。

そんな事を言えるわけがないので、

 

「野育ちだからな。世間の常識なんて俺は知らんぞ。」

 

そういうと、二人はなんとも言えない表情をして、

 

「いやー、なんか、スマンな。」

 

「あの、なんというか、辛い記憶を思い出させていたら、すみません。」

 

二人から謝られてしまったよ。どうしようか。誤魔化す為に吐いた嘘だから、謝られると困る。

しかも、このタイミングで俺が黙ったら気まずい空気が流れてしまう。

 

「気にするな。過去との折り合いはつけている。」

 

そう言うと二人は少し安心した様な顔をした。

そして、俺たちは朝食を終えた。

森を三人が歩いて行く。

この森は魔境と呼ばれていたあの森とは違い、優しい木漏れ日が差し、落ち着く雰囲気があった。

そんな事を思っていると、

 

「そういえば、剣を二本腰に差していますが、二本とも使うのですか?」

 

レオナからそんな質問がきた。

二本とも使っているかと聞かれれば、Noだ。

〈村正・獄式〉は使っているが、〈憎悪具現の細剣〉は使っていない。

細剣の方はなんと言うか、覚悟の証みたいな感じで差している。

 

「主に使うのは刀の方で、細剣は覚悟の証の様なものだ。」

 

「覚悟?なんのですか?」

 

俺が守れるもの全てを守る覚悟だ。

まぁ、そんな事を俺は恥ずかしくてあまりいえないので、

 

「秘密だ。真理とは教えられるものでは無く、自分の手で掴むものだ。知りたければ、自分で探してみる事だな。」

 

レオナは釈然としない顔をしながら、渋々といった感じで引き下がった。

 

「聞き損ねていたが、冒険者登録証はどうやって手に入れるんだ?」

 

「ああ。そういえば言ってなかったけ。簡単だよ。冒険者ギルドへ行って、発行すればいいだけ。」

 

冒険者ギルドってあるんだ。ラノベとかでよく見かけていたけど、あるんだね。

その前に詳しい事を聞いておくか。

 

「発行するのに、必要な手順とかはあるか?」

 

「うーん、必要な手順か。名前を書く事位しかなかった気がする。あと、スキルを任意で書く事位だったかな?」

 

スキルを書く?

 

「スキルを書く意味がわからないのだが。」

 

「確か。緊急時の依頼で有効なスキルを持っている者にいち早く頼みたいとか。どうたらこうたら言っていたな。」

 

あてにしていいのかな、こいつの情報。

そんな事を話しているうちに雑草があちこちに生えている場所に出た。そこに遠目から見てもかなりでかい城壁があった。

 

「あれが目的地のアレストだ。」

 

ミコトが少し残念がる気持ちが見える様な感じでそう言った。

アレストという街の名前なのだろう。聞き慣れないから、一瞬なんの事を言ったのかわからなかった。

 

「もう、終わりなのですね。」

 

レオナも残念がる様に言った。

 

「ああ。これで終わりだが、もう会えない訳じゃない。」

 

それを言って、少し忘れかけた物を渡すことにした。

 

「これをお前達にやろう。」

 

そう言って、〈友情の証〉と言うブレスレットを取り出す。

 

「これは?」

 

「これか?正直に言うと、俺もよくわからん。」

 

説明が大雑把でどれをどうすればいいかなんかは書いていなかった。ので、作った俺ですら把握しきれないのだ。

 

「まず、登録とやらをしなければならないのだが、仕方がわからん。」

 

「まぁ、とりあえずはめてみよう。」

 

ミコトがウキウキしながらブレスレットをはめた。レオナも腕にブレスレットを付ける。だが、大きさがあってない事に気付く。

 

(ヤベェ)

 

と思ったが、なんか、ぴったりになる様に自動で調節された。

これが異世界か。魔法的な力が働いたのだろう。

俺はあらかじめ〈マシラのブレスレット〉を外していたので、そのまま付ける。

 

「んで、登録ってどうやんの?」

 

それが、分かっていれば、苦労はしない。

適当に魔力でも流すか。

すると、ピカッと光った

 

「どうやったんですか?」

 

「魔力を流したら、なんか出来た。」

 

すると、レオナとミコトのブレスレットもピカッと光った。

そして、ブレスレットに命じてみる。レオナとミコトのブレスレットを登録しろと。

するといきなり

 

『レオナとミコトを登録しました。』

 

久しぶりにこの無機質な声を聞いた。

なんか出来た。やっぱり製作者だな。なんとなくで分かっちゃうからな。

 

「登録の仕方がわかったぞ。ブレスレットに命じれば勝手にやってくれる。」

 

「「え?」」

 

二人が驚いた様に声を上げる。そして、三十秒もかからないうちに

 

「あっ、本当だ。」

 

「すごいですね。」

 

二人とも出来た様だ。これって、結構すごい防具なんだろうけど、なんで俺防具にしたんだっけ。

あっ、身を守って欲しいといった感じだったはずだ。確かそんな事だったはずだ。たぶん。

そんな事を考えているといきなり

 

『おーい、聞こえるか?』

 

と、頭に直接話しかける様な声がした。それが、〈友情の証〉の能力だと気付くのにそう時間はかからなかった。

 

『ああ。聞こえるぞ。』

 

俺もそんな事をブレスレットを通じてそう思う。

 

『へぇ、こんな感じで聞こえるんだな。』

 

どうやら、聞こえているらしい。

俺はそれをレオナにも話しかける様にして、

 

『レオナ、聞こえるか?」

 

レオナはびっくりして辺りを見回す。どうやら、よくわかってない様だ。

 

『このブレスレットは登録した者同士で離れていても会話ができるらしいぞ。』

 

それで、レオナはある程度理解した様だ。

 

『聞こえますか?』

 

と、頭の中に聞こえたので、

 

『聞こえるぞ。』

 

と答えた。

 

『コレって三人で同時に会話をする事が可能なんだな。』

 

ミコトも聞こえていた様なのでどうやら、三人で会話をする事が可能らしい。

 

「俺たちは離れてしまうが、これがある限り近くにいるのと同じだ。だから、悲しむ事は無いな。」

 

俺は声を出してそう言った。

 

「ええ。確かにそうですね。」

 

「ああ。そうだな。」

 

二人も声を出してそう言った。

 

「それじゃ、行くか。」

 

そう言って、別れの道の一歩を踏み出した。




面白かったですか?
やっと、街に着いた。やっと話を次に持って行く事ができる。長々と書きすぎた。
ご意見、ご感想、ご指摘よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

別れ

まずい。遅れすぎたし。字数が今までより少ない。決して、ネタ切れだから、パッと思いついたネタで時間を稼ごうなんて思っていませんから。
ゆっくり見ていって下さい。


次第に城門が近ずいて行く中、俺は少し重要な事を考えた。

 

「なぁ、街に入るために必要な物ってあるか?」

 

ミコトが

 

「自分の身元を証明できるものがあればいいだけだ。」

 

やばい。詰んだ。どうしよう。街に入れないかもしれない事態に直面するなんて。

こんな時はどうすればいいんだ。

手段として思いつく方法は、俺が持てる相手の目を欺く効果がある〈スキル〉やら能力を使って、入る方法がある。

できる限りやりたく無い方法だな。

できるなら、目立たずに犯罪にならない方法で入りたいな。

 

「どうしましたか?険しい顔をして。」

 

レオナが心配そうにこちらを見てくる。

これは、俺より常識がある人に聞いてみるのがいいだろう。

そして、俺が口を開こうとした時、

 

「そっか、お前野育ちだったな。」

 

ミコトが俺が悩んでいた内容に気づいた。

真実を言えば、野育ちではないが、この世界に来てからは野育ちですがね。

 

「身元を証明する物が無くても、あの街の領主の娘を助けたんだ。そこら辺を私とレオナで話せばどうにかなるだろ。」

 

本当にそれで大丈夫かどうかはわからないが、それを信じるしか無いだろう。

心配な事は沢山あるが、今は、前へ進むしか無いだろう。

 

進んで行くと、あっという間に城門の前にたどり着いた。

 

「とうとう、着いたか。」

 

「ああ、やっと肉だけの生活とおさらばできる。」

 

「そこかよ。」

 

わからないか。肉だけを食べねばならず、一ヶ月間過ごした者の気持ちが!

まぁ、それはどうでもいい事なんだが、問題はレオナの事かもしれない。

 

「この旅もここで終わりなのですね。」

 

とても残念そうな声だった。

俺の気分まで落ち込んでしまう。こればっかりはどうしようも出来ないからな。

いい経験だろ。人生でずっと一緒にいてくれる存在は少ない。ここで、友人としばらくの間別れて過ごすのも、大人の階段を登るのに必要な事だろう。

 

「そう落ち込むな。もう二度と会えない訳じゃ無い。それに俺たちには、これがあるだろ。」

 

そう言って俺は腕に嵌めたブレスレットを見せた。

ミコトもブレスレットを見せる。

そして、レオナもブレスレットを見せる。

 

「俺たちは離れてしまうが、俺たちはこれで繋がってる。それを忘れるな。」

 

「そうだよ。私たちはこれで繋がってる。何かあったら、このお姉さんに相談しなって。」

 

ミコトもレオナを励ますのに手伝ってくれた。

やっぱり、落ち込んだ様子で別れるより、笑って別れた方が良い。

 

「はい。そうですね。では、困った時には、頼りにさせていただきます。お兄ちゃん、お姉ちゃん。」

 

そう言って、レオナは可愛らしい笑顔を見せた。

 

「「!?」」

 

当然俺たちは突然、「お兄ちゃん」、「お姉ちゃん」と呼ばれたので、驚いて固まった。その間三秒。

 

「なあ、聞いたか!お姉ちゃん、だってよ。うん。いい響きだ。」

 

ミコトはかなり喜んでいた。

俺も内心かなり喜んでいる。

 

「ああ。俺も弟はいたが、そんなふうに呼ばれた事は無かったからな。」

 

この子を見ていると守りたいという気持ちが一層出てくるな。

これが、保護欲やら庇護欲といった気持ちなんだろう。

俺の口も勝手に釣りあがっていく。

俺って見た目が老けて見えて、見た目が怖いから笑った顔ですら相手を怖がらせてしまうのではないかとずっと前から思っていた。

なので、顔を背けてレオナ達から顔を見えないようにしようとする。

 

「なんだ?照れてんのか?」

 

ミコトがからかうように言ってくる。

 

「照れてない。笑っているだけだ。」

 

「なんじゃそりゃ。」

 

そして、三人が笑い出す。

そして、歩き始める。再び三人で笑いあえる日が来るのを確信しながら。

 

 

アレストの城門にて、

 

「これは、レオナお嬢様!無事でなによりです!」

 

全身鎧を着た、声から男だと分かる。まぁ、見た目もゴツそうだし、見た目でも、男だと分かる。

 

「隣にいるのは、ミコトと……誰だ?」

 

そうですよね。見知らぬ男が、知っている女の近くにいたら、警戒しますよね。

しかも、それが王族の血統の領主の娘だったら尚更だ。

 

「しがない放浪者だ。」

 

「言葉と見た目からしてかなり怪しいんだが。」

 

ですよね。わかってましたよ。そんな事を言われるのは。

 

「マグナさんはいいひとで信頼できる人です。」

 

レオナがフォローする。

十四歳の少女にフォローされないと入れない俺って、悲しいな。

 

「そうだぞ、おっさん。私より先にレオナお嬢様を守ってくれてたんだぞ。」

 

ミコトもフォローに加わる。

誰かにフォローされないと入れない俺って何者なんだ。

 

「おっさん………まだ、30になったばかりなんだが。」

 

少し悲しそうな声で全身鎧の男が言った。

安心しろ。お前は俺を二十代後半と思っていると思うが、まだ、17で今年で18だ。

 

「まあ、レオナお嬢様がそう言うんだ。信じて大丈夫だろう。」

 

検問も結構緩い気がするのは気のせいですか。

気のせいだよね。検問が緩かったら、大変な事態が起こるかもしれないからな。

そして、俺たちは城門をくぐる。

その街を見ての第一の感想は、中世の世界観みたいだ。

異世界みたいといえば、異世界みたいだ。

第二の感想は、活気があるな。

至る所に店や露店があり、人混みが多い。一目見れば、いい街だと思える。

だが、店の奥の薄暗い通りにみすぼらしい格好をした人たちが、羨ましそうに見ていなければ、手放しでいい街だと言えたのだがな。

 

「どうですか?ここが私達のアレストです。」

 

レオナが感想を求めるように聞いて来る。

 

「いい街だとは思うぞ。」

 

当たり障りのない言葉で返す。

 

「そうですよね!私は、この街をより良くしようと思っています。」

 

そうか、ならばこの街の隅々まで知った方が良い。

と、言おうか悩んでいると、

 

「ですので、何か不憫な点などがあれば、私に言って下さい。」

 

俺は、言うのをやめた。まだ知る時じゃない。

ていうか、俺がここに住むのが決まっていたらしい。

 

「ああ。その時は、お前に言ってやる。」

 

そう言って、頭を撫でた。

なぜか、撫でてしまった。無自覚に撫でた。本当に無自覚だから。やましい気持ちなんて、全くありません。

ハッとして頭から手を離し、レオナの顔を伺うと、顔を赤くしていた。

 

「あの……頭を撫でてくれるのは、嬉しいですが、人が多いところでされると、恥ずかしいです。」

 

恥ずかしかっただけなら、良かった。

 

「ああ。すまない。これから気をつける。」

 

そして、俺たちは、何事もなく、屋敷の前にたどり着く。

 

「じゃあ、俺は部外者だから立ち去る。」

 

事前に自分で決めていた事を言う。

 

「そうですね。それでは、またどこかでお会いしましょう。」

 

「冒険者登録するなら、私もついていた方がいいから、どこかで待っといてくれ。」

 

「ああ。またな。」

 

そう言って、俺はこの街の探索をするのだった。

 

 

この街の城壁から察するにこの街は円形らしい。

中央に近づくほど、裕福な者が住んでいる。その周りが、主な主街区だ。

城門は四つで、東西南北に一つずつだ。そして、その城門の間の主街区とは違いそうなのは、貧民街なのだろうか。

その事を城門の上に乗って確認する。

どんな活気があっても、やっぱり、あるんだな。貧富の格差が。

まぁ、ひとまず飯だ。適当に露店で買い食いするか。

 

マグナの手には、トウモロコシ焼きみたいな物が握られていた。

それの味は、そのまんまトウモロコシだった。だが、ずっと、肉だけの生活を送っていたので、それが、かなり美味しく感じられた。

 

「おーい。お前、今から冒険者登録しに行くぞ。」

 

いきなりそんな事を言われたので振り向くと、ミコトがいた。

意外に早く終わったようだ。

そして、俺は新たな人生の第一歩に期待するのであった。




面白かったですか?色々と事情があって書く暇がありませんでした。本当に申し訳ない。
ご意見・ご感想・ご指摘お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

冒険者登録

遅れたーーーーー。リアルが、いつもより忙しくなり、ペースが落ちて、新しい小説を並行して書こうか悩んだりしたので、遅れました。申し訳ない。
ゆっくり読んでいってください。


しばらく歩くと、妙な木造の建物があった。

 

「ここが、冒険者ギルドだ。」

 

「ここがか。」

 

色は木の色なのだが、看板が派手な色をしている。しかも、所々にヒビが入っている。さらに、てきとうに直された箇所が数カ所あった。

冒険者ギルドと聞いて、綺麗なイメージは無かったが、幾分か綺麗だ。だが、何か変だ。

あれだ、綺麗に見えるけど汚くも見える。見方の問題もあるんだろうが、奇妙だ。

ミコトが扉を開け、俺がその後ろをついていく。

中は静かで、人が二、三人見えるくらいで、他には見えなかった。

イメージとしては、騒がしいイメージだったのだが、そうでも無いらしい。

 

「今は、人がいないが、朝と夕方からは騒がしくなるぞ。」

 

イメージどうりらしい。今は人が少ない時に来ているようだ。

都合がいい。正直、ゴロツキみたいな奴に絡まれると面倒だから、人が少ないうちに、登録を済ませよう。

 

「どこで登録すればいいんだ?」

 

「あそこだ。」

 

そう言って指差した先には、一つのカウンターがあった。そこには、一人の若い女性がいた。

やっぱり、受付には若い女性がいるんだな。それは、前の世界でもよく見た光景だ。

俺はその近くまで行き、

 

「冒険者登録をしたいんだが。」

 

要件を伝えた。

 

「あ、はい。冒険者登録ですね。かしこまりました。」

 

そして、机の引き出しを開け、何かを探し始める。

こちらからは引き出しの中は見えないが、その中に必要な物があるのだろう。

 

数分後。

 

「やっと、見つかったー。」

 

「やっとか。」

 

つい口に出してしまった。紙を見つけるのに数分かかるって整理整頓を怠っているとしか。

 

「お待たせして申し訳ありませんでした。」

 

事務的な口調である事から、平静を装っているか、何度もした事があるかのどちらかだな。

 

「では、こちらにご記入をお願いします。」

 

この人何度もこんな事があったような感じがする。整理整頓を改めて重要だと思わせてくれる出来事だ。

さて、記入事項は名前とスキルは事前に聞いていたが、他にも出身地や職業などがある。

 

「これは、全て記入しなければならないんですか?」

 

「いえ、最低限名前だけで結構です。」

 

どうやら、ミコトが言っていた情報は正しかったらしい。

俺は「マグナ」とだけ書いて渡した。

 

「はい。マグナさんですね。発行までしばらくかかりますので、適当にお待ちください。」

 

そして、俺は近くにあったイスに腰をかける。

 

「お前文字は読めたしかけたのか?」

 

そうだった。野育ちとこいつには話したのだった。

 

「最低限の読み書きなら親に教えてもらった。」

 

「へぇ。マシな親に育てられたんだな。」

 

「ああ。そうだな。」

 

なんと言うか、野育ちの子の話は聞かない方がいい気がする。

 

「いったい何分待てばいいんだ?」

 

「十分くらいだったと思うぞ。」

 

十分か。長くも無い。短くも無い。妥当かもしれない。

暇だ。

 

「最初はどう言う事からやるんだ?」

 

これからどういう事をするのかを知っておいた方がいいだろう。

 

「まずは、簡単な依頼をこなす。そしたら、ランクが上がる。そしたら、難しい依頼を受けられるようになる。」

 

そんな感じか。

 

「ランクとは、どんな感じだ?」

 

「ランクは、低い順に、F•E•D•C•B•A•S•SSこれくらいだな。」

 

アルファベットなんだ。まぁ、どうでもいいか。

そうか。ならば俺は討伐系の依頼をこなして、早くランクを上げるか。

 

「ちなみに私のランクは、Dだ。そして、Cからが一人前と認識される。」

 

Cからが一人前か。どれくらいの依頼をこなせば、Cになるのだろうか。

 

「マグナさん。冒険者登録が完了しましたよ。」

 

呼ばれたか。

俺はさっきのカウンターへ向かい、冒険者登録が完了したとした証を手に入れた。

 

「依頼はどこで受ければいい。」

 

「それはあっち。」

 

指差した先には、別のカウンターがあった。

俺はその場所に行き、

 

「依頼を受けたいのだが。」

 

「では、冒険者登録証を見せてください。」

 

俺はさっき手に入れた冒険者登録証を見せた。

 

「ランクはFですね。それではこの中で選んでください。」

 

「依頼は一度に幾つまで受けられる。」

 

これは、聞いておきたかった。

 

「一度に三つまでとなっております。」

 

「そうか。では、これらにしよう。」

 

俺は差し出された依頼の中で、討伐系の依頼を三つ選んだ。

 

「了解しました。」

 

そして、依頼が書かれた紙に印が記入された。

俺はそれを手にして、外に出ようとした。

 

「おいおい。さっきまで森を歩き続けたんだぞ。少し休んだらどうだ。」

 

俺を心配しているらしい。

あの程度の事で疲れる事が無い。これが、ステータスがもたらしている事なのか。それとも、別の何かが関係しているのかは、わからないが、今は全く疲れていない。

 

「大丈夫だ。俺もすぐDまで上がる。お前は休んでいろ。」

 

そう言って、俺は冒険者ギルドを出ていった。

 

受けた依頼は、近くにいた、ゴブリンとブラッドベアー、スライムを各5体ずつだ。

ゴブリンとブラッドベアーはいいが、スライムは見たことが無い。まぁ、探せばいいか。

 

城門の前まで来て、全身鎧が

 

「あ。お前はあの時の。」

 

どうやら、交代の時間はまだらしい。全身鎧だから誰かはわからないんだ。

 

「今回は冒険者登録証を持っているぞ。」

 

「どうやら、本物のようだな。」

 

そう言って、通してくれた。

さっきの話からすれば、偽の冒険者登録証があるらしい。

 

「まぁ、どうでもいいか。」

 

そう言って、俺は〈完全偽装〉にて変更したステータスの全力を出した。

にしても、ここら辺の魔物と俺の強さを比較したら、馬鹿に思える。

スライムがいた。以外に近くにいた。では、〈職業〉によって手に入れた〈スキル〉を試そう。

 

「まずは、〈掌破〉」

 

俺は、スライムに触れる寸前で、〈スキル〉を発動させた。

すると、スライムが一瞬にしてスライムが四散した。

 

〈掌破〉 衝撃を発生させる。衝撃を与える位置を調整することができる。

 

使い方を考えれば、切り札にもなる技だとは、思っている。

まぁ、スライムではあまりわからなかったが。周りに大体、7体いるので、実験すればいいか。

一体目、中央に集中させて放ったら、スライムの中央だけが、消し飛び、スライムが消えた。

二体目、横一直線に出るように調整して、放ったら、上と下で分断されて、消えた。

三体目、縦一直線に出るように調整して、放ったら、今度は左右で分断された。

四体目、スライムの形通りに放ったら、消し飛んだ。

これで、五体目。依頼は、終わった。

そういえば、スライムを倒したと、どうやって、証明しよう?

依頼の紙を取り出し確認すると、討伐数と書いていて、5/5となっていた。これならば、大丈夫だろう。

〈掌破〉をスライムで試すのは、やめておこう。どうやって、使おうかは生物で試した方がわかりやすいだろう。

 

森に入る。もちろん、手加減した全力を出しながら。

もちろん、周りに人がいない事を確認しながら。

ブラッドベアーがいた。こちらを見つけるなり突進して来たが、〈掌破〉を使い、頭部を吹き飛ばした。

そして、消えた。一つだけわかった事だが、魔物はある程度強くないと、金貨や銀貨を落とさないらしい。

それと、他のドロップアイテムも落とさない。

まぁ、どうでもいい事だが。

〈索敵〉では、気配で九体いるが、それらで、試そう。

一体目、ブラッドベアーだった。振り上げた腕に向かって、縦一直線に放つ。そしたら、腕が、一直線に切り裂かれたようになった。そして、最後は頭部に中央に穴をあける形で倒した。

二体目、これもブラッドベアーだった。振り上げた腕に向かって横一直線に放った。すると、腕が切断された。一応で、別のスキル〈手刀〉を使い、首を落とした。

三体目、ゴブリンだった。体が小さいので、調整にはもってこいの相手だ。〈掌破〉を使い、胸に穴をあける。

四体目、ブラッドベアーだった。突進して来たが頭から背中の中程まで穴をあけた。

五体目、ゴブリンだった。頭部を消しとばす。

六体目、ゴブリン。頭部をクラッシュ。

七体目、ゴブリン、胴体をスパーキング!!

八体目、ブラッドベアー。割愛。

九体目、ゴブリン。もはや、蹴り飛ばす。

 

「フゥ。これで、各5体達成。」

 

途中から、目的を考えずに目の前にいる敵を倒す一方的なものだったが、スキルの使い勝手は良かった。

あっという間に、城門の前にたどり着く。

 

「かなり早かったな。」

 

全身鎧から驚かれてしまった。

 

「そうか?あの程度なら、もう一度こなせるぞ。」

 

「マジかよ。」

 

そんな言葉を交わして、城門をくぐる。

 

 

冒険者ギルドで、依頼の報告をした。

 

「依頼を終わらせたのだが。」

 

すると、受付嬢が驚いた顔をして

 

「報酬はこちらになります。」

 

そう言って、銅貨十五枚を渡された。

魔物一体につき、銅貨一枚か。手に入らないよりかはマシか。

 

「あと、ギルドマスターを呼んで来ますので、しばらく、お待ちください。」

 

へ?ギルドマスター?俺、何かやらかしたか?




また、字数がいつもより少ない?これが、この小説の普通の字数になる日もそう遠くない。
ご意見、ご感想、ご指摘ありがとうございます。
ご指摘を下さった方、ありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決意の強さ

間に合ったか?久しぶりに。来週から、この小説で出て来た。単語を振り返るコーナーを作るか。ネタ切れに近いし。
最後までゆっくり見ていって下さい。


何かやらかしたか?

俺は、そんな事を考えていた。

普通に考えて、ギルマスが呼ばれる事は普通に有り得ない。これは、俺がやらかした可能性が高い。

だが、何も思いつかない。俺は討伐の依頼を手っ取り早く済ませただけで、何もしていないのだから。

早かったのがいけなかったのか?

依頼を早く済ませちゃいけないって、どういう事だよ。

 

「お待たせしました。」

 

どうやら、ギルマスを連れてきたようだ。

 

「やあ。君が問題の人だね。」

 

そう言ったのは、桃色の髪をした少女だった。

ん?少女??

桃色の髪をした身長130か140㎝くらいの少女だった。

マジかよ。四十代くらいの男かと思ってたよ。

まぁ、ギルマスである時点で、ソコソコの実力者だろう。

 

「率直に言おう。まず、冒険者ギルドでは、高位の冒険者が減っていて、C級以上の魔物がすこしずつ増えている。」

 

魔物もランク分けされていたんだ。まぁ、当然か。自分の実力を考える上でも。

 

「なので、少しでも早く高位の冒険者を増やそうという事で、各冒険者ギルドで、実力のある新人を各冒険者ギルドのギルドマスターが実力を見て、それに見合ったランクをつける。という事がこの前決まった。」

 

「そういう事か。」

 

早く上のランクになりたい俺には、ちょうどいい時期にここに来れたようだ。

ただ、あの程度の魔物を倒しただけで実力があるって、少しおかしいぞ。

 

「今、あの程度の魔物で実力って。とか思ったよね。」

 

こいつも俺の心の声を読んだ、だと。まぁ、簡単か。少し考えれば、予想できる事だな。

 

「実は、同時に三つの依頼を受けて達成した速度が、最速なんだ。だから、君の実力を私が計らせてもらうよ。」

 

「面白い。お前の実力も俺に見せてみろ。」

 

 

 

 

俺たちは、街を出て近くの草原にきていた。

城門をくぐる時、門番の全身鎧から、

 

「気おつけろよ。」

 

と、小声で言われた。

どうやら、この少女のようなギルマスは相当の実力を持っていそうだ。

まぁ、関係ないか。俺と同等ならばいい勝負ができそうだ。

互いの距離が十メートルくらいになり、

 

「準備はいいかい?」

 

「別にいいが、お前は素手でいいのか?」

 

見た目、小学生だから心配になる。

 

「敵の心配とは余裕だね。」

 

「強者の余裕。とでも言っておこうか。」

 

敵が右足を引き、構えをとる。

 

「その余裕、打ち砕いてみせるよ。」

 

「そうか。では、いざ尋常に」

 

「「勝負!!」」

 

俺は後の先の戦い方を得意とするので、こちらからは動かず相手の動きに合わせて戦おう。

敵が距離を詰めてくる。こちらとしてはありがたい。尚、今は武器を装備していないので、素手である。

相手もなかなかに早いがまだ遅い。

左ジャブで迎撃する。

しかし、相手はそれを避ける。それどころか、俺の後ろに回っていた。

どうやら、腕の長さを考えて素手の攻撃の射程を見切り、射程に入ったところで回避した。といったところだろうか。

冷静に分析している場合じゃなかった。

すぐに振り向き、敵の位置は、〈索敵〉によって、大体把握しているので、そちらを向くも、移動していた。

どうやら、機動力で敵を翻弄して攻撃を加えるタイプだろう。

こうゆう敵の対処法を俺は知らない。

動いた方が不利なのか、止まった方が不利なのかさえわからない。

なので、俺は止まった。〈索敵〉で敵の位置を探り、攻撃にカウンターを加えていく作戦でいこう。

下手に動いて敵のペースに乗せられたら面倒だ。

敵を追うのは、目だけでいいだろう。下手に動いて、後ろに回っての攻撃が面倒だ。

敵が動いた。こちらに向かってきている。これは、攻撃かさっきみたいな翻弄が目的か。

今度も左ジャブで牽制する。しかし、今回も避けられる。前回と違うのは向こうが後ろに回った瞬間に攻撃を加えて、またどこかに行ったところだろうか。

それを、振り向きざまにガードしたが威力も高い感じだ。ここら辺の魔物に比べたら。

さて、ヒットアンドアウェイの戦法の打開策は、相手のリズムを崩す事だな。

それならば、いい方法がある。

また、こちらの方に向かってくる。

相手はこちらの射程を考えているようだが、射程は腕の長さだけで決まるものではない。

俺は、敵をできるだけ近くに引き寄せる。左ジャブが届く距離になる。だが、ここではない。

そして、敵は、こちらが何もしていないのに屈み、横に少しずつ移動している。

このタイミングで、一歩踏み出し右ストレートを素早く、しかし威力を抑えて、放つ。

それを相手は地面を強く蹴り回避する。回避されたが、敵のリズムを崩した。敵はその場に止まっていた。

 

「さっきまでの速度はどうした?」

 

俺は挑発の意味を込めてそんな事を言った。

 

「どうなってんの。この速度にまで対応するって、バケモノかよ。」

 

自分でもバケモノだと思っています。

 

「ここまでの戦闘でランクはどれくらい上がりそうだ?」

 

これは疑問だ。ギルドマスターでは俺は倒せない。言ってしまえば無駄でしかない。

勝てない敵に戦いを挑むのは馬鹿のする事だ。しかも、別に戦う必要のない相手にだ。

なので、C級以上になっていれば、別に終わってもいい。

 

「私では、君は倒せない、か。」

 

どうやらギルマスも気づいているみたいだ。当然か。

 

「この戦闘で高位のランクにできるが。これは、私の願いだよ。最後まで戦わせて欲しい。」

 

意味がわからない。

ギルドマスターはある程度忙しいはずだ。こんな事に時間を割いても、無駄でしかない。

 

「なぜだ?なぜそこまで戦う。これ以上戦っても、無意味に等しい。なのに何故戦う。全力を出し、俺に打ち勝っても、なんの得にもならないだろう。」

 

それを聞いて、ギルドマスターは不敵に笑い。

 

「君に勝てば、君みたいな実力者が街に攻撃を仕掛けに来ても、街の人たちや、君たちを守れる。今、君と戦っていれば、君みたいな実力者が来ても、私は戦える。」

 

それを聞いて俺は自分を疎かに思った。

俺は自分より強い敵が挑んで来ても戦えるのだろうか。答えは否だ。

ここに来た頃、自分より強い猿がいた。その猿に殺された人を見た。

俺はその時、その人を見捨てたのだ。助けに行く素ぶりすらせず。

この事から、俺は自分より強い敵が現れた時、俺は逃げるかもしれない。

こんなんで、自分が救える人は救うなど、馬鹿げている。

救いたい人がいるのならば、守りたい人がいるのならば、自分の命を賭しても守るべきだ。たとえどんな強敵が現れても、どんなに疎かだと思われようとも。

それを目の前のギルドマスターは鍛えている。

どうやら俺は甘かったようだ。

どうやら俺は口先だけだったようだ。

どうやら俺は疎かだったようだ。

今からでも変われるのならば、今から変わろう。

 

「俺はお前を馬鹿にしていたようだな。まずは、詫びよう。すまない。」

 

さっきまでの実力から、引き上げる。

 

「これからは、手加減は無しだ。覚悟はいいか?」

 

敵は、俺の方をみて驚いた表情をする。

 

「まだ強くなるって。本物のバケモノかよ。」

 

そう言って、両手に短剣を持つ。

どうやら、あちらも全力では無かったらしい。

こちらも、全力を隠しているし〈獄属性魔法〉を使用する気は無い。全力で戦えば、ギルドマスターも一秒も待たず死ぬだろう。

まぁ、今の実力でも十分殺すには十分過ぎるくらいだ。

 

「一つ忠告しておこう。」

 

一応、忠告はしておこう。

 

「今からお前が戦うのは、勝てない相手だ。それも、お前を殺す気でいる、な。」

 

それを聞いて、敵はまた、不敵に笑った。

 

「一瞬でも気を抜くな。お前が一瞬でも隙を見せようものなら、一瞬でも気を抜こうものなら、俺はお前を殺す。」

 

俺は、拳を固く握る。

そして、さっきとは違い、構えをとる。魔境の魔物との戦闘で考えて作った、自分が一番戦いやすい構えだ。

 

「じゃあ、第二回戦開始でいいかな。」

 

「ああ。構わない。」

 

そして、敵も二つの短剣を構える。互いの距離は近くもなく、遠くもない。

 

「さぁ、かかって来い。お前に死を教えてやろう。」

 

「では、いざ尋常に、勝負!」

 

敵は最初から全力で駆けて来た。対峙する俺は、

 

「フッ……」

 

鼻で笑い、カウンターをさっきとは比べられない程の威力と速度で繰り出した。

それを相手は、回避していた。だが、地面に着地できずに、転んでいた。

自分の意思ではなく、本能が回避した。という事だろうか。

なんにせよ。倒すべき敵は生きている。

まだ俺は勝っていない。

敵は起き上がり、こちらを見てくる。

呼吸は荒く。目を見ても、体が震えている事を見ても、俺に恐怖を抱いているだろう

そして、敵の本能はこう言ってているだろう。

 

逃げろ。

 

と。だが、敵は震える体で、恐怖している目をしながらも、武器を構える。

どうやら、さっき言っていた事に偽りは無かったらしい。

その強さは賞賛に値するだろう。

だがその程度の決意と実力で超えられる程、俺は弱くは無い。

 

「さぁ、かかって来い。お前の守りたいものは、俺を倒さねば、守れんぞ。」

 

そう言った刹那、敵はこちらに駆けて来た。

本当に此奴は、強いな。

俺は彼女の決意に応えるように、対峙するのだった。




ここ最近、リアルが一段と忙しくなった気がする。小説の字数が少なくなったのはこれと、もう一つの理由。ネタ切れ。ノープランだと、この小説の未来が見えない。
ご意見、ご感想、ご指摘、お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自身の戦闘力の高さ

久しぶりに五千文字を超えた。やっぱり、戦闘シーンを書いているとテンションが上がって、長々と書いてしまうね。面白く無い上に、奇妙な文章になっているかもしれないけど。
ゆっくり見ていって下さい。


ドンッ!!!

 

空気が揺れ、大気が爆ぜる。

理由は単純であり、だからこそ有り得ない事であった。

人のただ単純な右ストレートによって起こった衝撃波のみで、大気が爆ぜ、地面はえぐれていた。

しかも、〈スキル〉も〈魔法〉も使わずに、だ。

そんなバケモノに挑んでいるのは、小柄な少女と呼べる、ギルドマスターだった。

つい先ほどのカウンターを含めると二度目の必殺とも呼べる一撃を躱し、次の動作に移行しようとするも、追撃の膝蹴りを見て、全力での防御を行う。

ただ単純な魔力により作られた〈魔力障壁〉に自分の持っている、大半の魔力を注ぎ込む。

しかし、そんな事を嘲笑うかのように一瞬で〈魔力障壁〉を打ち砕き、威力が減衰したとは思えない程の激痛を味わう。

吹き飛ばされ、地面に何度もバウンドしてようやく止まった時には、距離がかなり開いていた。

致命傷は避けたが直ぐには起き上がれず、咳き込み、その拍子に吐血する。

魔力を使って傷を治そうとするも、傷が酷いせいで治りが遅い。

そして、それを追撃する素ぶりすら見せず、悠然とその場に佇む男の姿があった。

その姿はまさに

 

「死神」

 

まさにこの言葉が似合う姿であった。

死神に挑めば命が無くなるのは必定。

だが、挑まなければならない。

己が定めた誓いを守るために。

ここで、目を閉じればどれだけ楽か。

ここで、負けを認めればどれだけ楽か。

だが、ここで妥協すれば強敵が現れた時に挑めず、守れないかもしれない。

それは、自分が傷を負うよりも痛く。惨めに思い、後悔しか残らないだろう。ならば、彼女は挑む。

今の自分より強く。目の前の「死神」より強く。未だ見ぬ敵より強く。

そして、少女は立ち上がる。今より強くなるために。数少ない勝ちを拾うため。

圧倒的強者に挑み、誰より強くなるために。

少女は、いや、ギルドマスターは諦めずに立ち上がり、自分に打ち勝ち続ける。

 

 

 

目の前の少女にしか見えないギルドマスターを見ながら、

 

(まだ、楽になろうとしない、か。当然か。誰かを守る決意をした者がこの程度で、諦めてはならない。)

 

圧倒的な戦闘力差を見せつけても、まだ立ち上がるギルドマスターを見ながら健闘を讃えるのだった。

だとしたら、俺ができる事は絶望的な戦闘力差を見せ続ける事だろう。

殺してしまわないように注意しなければ。

それより、先程の見えない壁のような物は何なのだろう。

障壁みたいな物だろうか。防御魔法ならば、容易に突破はできなかっただろう。

無駄な事を考えている間にギルドマスターの治癒も終わったようだ。少し強めに蹴りすぎたようだ。

先程までのような攻撃はないだろう。二度も打ち破られた技など戦術的価値など皆無なのだから。

だとしたら、どうくるか?

ステータスの面で奴が勝っている要素などは、無い。

勝敗を左右するのは、奴が今までどんな敵と戦ってきたか。どんな戦術を使ってきたか。

技術と実戦の累積の差による勝敗しかない。だが、ステータスの差は絶望的。生半可な戦術などは意味をなさない。

それは奴もわかっているだろう。

これからどうやって巻き返すか、それが肝心だろう。

敵が動く。

だが、直線でこちらには来ず、右に大きく旋回しながら、いや、周りを回っているように感じる。

機動戦のような感じもするが、おかしい。

攻撃するには、近づくのが条件。だが、近付いている感じはしない。俺の知り得ない戦術か。

正面から受けて立つが、時間がかかり過ぎるならば、こちらから仕掛けるぞ。

 

「!?」

 

このタイミングで仕掛けるか。

準備は整ったのだろう。

先程までより少し早い程度で、俺の速度を超えられるとでも思ったのか?

舐めているのか?

そんな事はないと思うが、愚策である事に変わりは無い。

 

(一撃で沈めてやる。)

 

拳を握るだけで、他の動作は無い。

これだけで十分なのだ。これが、差というものだ。

ノーモーションで放たれた拳はギルドマスターにあたる直前で、右に躱された。

その拳をなぎ払うように右に振る。だが、敵は予想していたようで、躱される。

次に右足で敵を蹴る。これは、後ろに飛ばれ躱される。

その瞬間、敵は不敵に笑うのを見た。

足元に巨大な魔法陣が現れた。

 

「〈ユグドラシル・バインド〉!!」

 

敵が、技名を言うと同時に魔法陣から、巨大な樹が出てきて、それは城壁の高さを超え、俺を拘束した。

そういう事か。先程までの時間は、魔法陣を作るまでの時間。走りながら、作れるとは恐れ入る。

だが、こんな物は一瞬で抜け出せるのだが一撃くらいは受けてやろう。

すると、敵は一際高く飛び、魔力を収束し始めた。

それは、多種多様な色をしていた。共通しているのは全ての色が、黒を入れたように少し黒くなっていた。

それが、段々黒さを増していき、禍々しい黒一色になった。

巨大な黒一色の球体ができ、それが形を段々変化させ、ドラゴンと思える形になり、

 

「〈カオス・ドラゴン・クライシス〉!!!!」

 

禍々しい黒い龍が〈ユグドラシル・バインド〉によって動けない体に向かって放たれた。

防ぐ気もなければ、避ける気もない。というか、出来無い。

次の瞬間、焼かれているでも無い、切られているでも無い。奇妙な感覚に陥った。

ただ、直感で言うならば、俺の体を破壊しようとしているのはだと思う。

さらに、〈ユグドラシル・バインド〉の第二の効果が発動した。

 

ドォォォン!!!!!

 

拘束していた大樹がいきなり爆発した。

 

 

 

一瞬にして砂煙が大量に舞い上がる。

これが、ギルドマスターの奥の手にして、必殺の切り札。

一つ目は、〈術式魔法〉という第三の魔法。

もはや使う者が世界で数人しかいない希少な、〈術式魔法使い〉。

使われなくなった理由は、時間がかかるのと、対象が魔法陣内にいる事なので、使う者は極少数だ。

二つ目は、これも希少な〈龍属性魔法〉である。

〈龍属性魔法〉は千年に一人、持っているかの確率であった。

今回は、その二つを使い、殺しにいった。

二つは、最大級の威力を込めて作った。渾身の必殺の一撃だった。

〈カオス・ドラゴン・クライシス〉は単純な威力はさる事ながら、追加効果で、対象の防御力を持続的に下げる効果があった。

さらに、〈ユグドラシル・バインド〉の拘束した者に極大の爆発を与える効果を使い、本気で殺しにいった。

ギルドマスターである彼女が持てる、最大の必殺技であった。

しかし、魔力の消費が激しく、立つのが困難になり、膝をつく。

絶対の威力である必殺技は、どんな防御力を誇っていようと下げてしまうので、関係なかった。

 

「ハァ……ハァ……」

 

荒く息を吐きながら、息を整える。

そして、砂煙と爆炎が失せていく。

そして、そこに絶望があった。

砂煙と爆炎の中にありながらも、ギルドマスターの必殺技を受けながらも、平然としている「死神」が立っていた。

 

「なん………で………」

 

それもそのはず、彼女が必殺と思っていたのは、彼女の常識の内に収まる人だけで、常識の範疇を超えている「死神」には必殺たりえなかった。

いや、必殺ですら無かった。「死神」にとっては、少し強い攻撃程度にしか感じなかった。

 

「素晴らしい攻撃だった。」

 

彼女の必殺の攻撃を受けてなお、しっかりとした声を発し、痛みも疲労もうかがえなかった。

 

「こちらの余裕の隙を突いて、魔法陣を作る時間を作り、しかも、これ程の威力の魔法を使わずに、確実に当てられる時まで温存し、さらに、並の相手であれば必殺たり得る一撃を同時に放つ事で、確実に屠る。中々の戦術だ。」

 

冷静に先程の一撃を分析されてさえいる。

 

「だが、その程度の一撃で屠れると思うなよ。」

 

彼女にとっての必殺技を「この程度」呼ばわり。

仕方がない事だった。なぜなら、元からそれ程の戦闘力差があったのだから。元より、勝機など皆無だったのだから。

 

 

 

中々の戦術だった。

砂煙と爆炎の中にいながら、そう思う。

こちらの行動を読み、戦術を立てていたのだから。

確かに、俺の行動は読みやすかったかもしれないが、確実にそうなるとは言い切れない。

だが、彼女はそれを実行したのだ。

しかも、全て読み当てて。

実戦で培ったのか、はたまた勘か。

どちらにしろ、敵の予想は全て当たったという事だ。

それは、賞賛に値する。

敗因はこちらを過小評価してしまった事だろう。

 

「さて…」

 

これで終わりにするか。と言おうとした瞬間に、

 

「〈ライトニング・セイバー〉ッ!!」

 

勢いよく、横から雷を纏った剣を振り下ろしてきた。

それを、片手で掴み、周りを確認する。

新手が四人いた。しかも、冒険者ギルドの人達っぽい。

俺はギルドマスターに目で、

 

『どうする。』

 

と訴える。

結果は目を逸らされた。しかも、新手の四人にはみえない様に笑いながら。

戦え。という事か?

掴んでいた剣を持ち主ごと振り上げて、

 

「うぉ!?」

 

投げ飛ばした。

 

「うわァァァ」

 

軽く投げたので、木に一回当たった程度で済んでいた。

全く。殺さない手加減も大変なのに。

 

「〈フレア・バースト〉」

 

今度は、自分を中心に直径五メートルくらいが爆発した。

爆発が終わった後に

 

「でりゃァァァァ!!」

「はァァァァァァ!!」

 

一人は若くショートソードを持っていた。一人は少し年をとっていそうで斧を持った男達だった。

左右から挟み撃ちにする形だった。

初歩的な戦術だ。チームを組んでいたら、一度は使う戦術だ。

確かに、同じ様な戦力ならば、有効だったかもしれない。しかし、差が開いている相手には通用しない。

まずは、剣を掴み、その次に斧を掴んだ。その二つはピクリとも動かず、力が入っているとは思えなかった。

いや、実際二人は全力を出していた。抜こうにも、押し切ろうにも、相手の力が強すぎて、全く動かなかった。

 

「クッ、グゥゥ!」

「う、おぉぉぉぉぉ!」

 

さらに、力を込めるも、全く動かなかった。

 

「ハァ……」

 

ため息を吐いた後に、二人を後ろで待機している二人に投げつけた。

 

「チームを組んでいて、なおかつ、後方支援ができるものがいるのならば、前衛は敵の注意を引きつけながら、距離を取れ。そうすれば、魔法も幾分か撃ちやすくなるだろう。」

 

思った事をそのまま口に出したが、どう出る。

五人は目線を交わすと、一斉に動き出した。

ギルドマスターは何かを飲んでいる。その隣には、新手の一人が〈治癒魔法〉を使っている。

残る三人は、剣と斧が一定の距離を保って、一列になっていた。魔法使いは、左側に移動していた。

最初は、剣の一撃でそれを危なげもなく躱す。斧の一撃は、躱す位置は限られていたため、躱しづらかった。そこに、

 

「〈フレア・バースト〉!!」

 

範囲爆発魔法を使ってきた。

ここは、一点に集中して放てる技を使い、剣や斧の一撃を当たりやすくするところだろう。

 

すると、頭上から、

 

「〈ライトニング・セイバー〉!!」

 

なるほど、頭上からか。

という事は、これは囮だ。かといって、無視する事も出来ない。〈索敵〉によって、斧使いの位置はわかっている。

剣の一撃を余裕で躱すと、追撃はせず、そのまま、後ろに退がった。

そして、背後から、

 

「〈スラッシュ・インパクト〉!!」

 

後ろから来る事も、こいつが攻撃する事も予想済みだった。

〈スキル〉を素手で掴み防御する。

 

(おおよそ、こいつも囮だ。本命は、)

 

そう思った所で、足元にいつか見た、魔法陣が出現した。

斧使いを放り出し、また、〈ユグドラシル・バインド〉の拘束をくらう。

こんなもの、すぐにでも抜け出せるが、奴らの全力を見たかった。

もしかしたら、俺に擦り傷程度は付けられるかもしれない。

そうなれば、俺は化け物では無くなるはずだから。

今度は、新手一人が魔力を収束させていた。ギルドマスターは先程、治癒を行なっていた者から、魔力を分けて貰いながら、収束していた。先程のも、そうだったが、何かを呟きながら。

残った、前衛二人は、

 

「〈サンダー・ブレイク・ソード〉ッ!!!!」

 

今までより、強力な雷を纏った剣を横薙ぎに振り払う。

 

「〈グランド・ブレイク〉ッ!!!!」

 

何かのオーラを纏った斧が振り下ろされた。

勿論のこと、何も痛みを感じない。こいつらでは、俺に擦り傷でも、付けるのは無理か。

 

「〈サザンクロス・プロミネンス〉ッ!!!」

 

次は、十字に灼熱の炎がはしった。だが、痛くも無ければ、熱くもない。

そして、前見た時よりも、巨大な黒龍を生み出した、ギルドマスターがいた。

 

「〈カオス・ドラゴン・クライシス〉ッ!!!!!」

 

その一撃も直撃する。

そして、最後は、巨大な大樹が爆発したのだった。

砂煙で前が見えない。爆炎で当たりが点々と煌々と照らしていた。

 

「無駄だったな。」

 

その一言を言う。

結果を伝えただけだ。

しかし、それだけで敵の目には絶望が映る。

恐怖、絶望、焦燥それらが手に取るようにわかった。

 

「これからは、反撃させてもらうぞ。」

 

足を半歩引く。

正直、これ以上は付き合いきれない。

 

「死にたい奴からかかって来い。」

 

その一言から、四人の目に戦闘の色が見えた。もう一人は、こちらを見ながら、

 

「もう終わりだよ。」

 

それを、全員に聞こえる音量で言った。

 

「「「「へ?」」」」

 

新手の四人が一斉にギルドマスターを見ながら、驚いている。

 

「そうか。」

 

と俺は言い、ステータスを元の値に戻した。

 

「へ?どう言うことですか?マスター。」

 

そう言ったのは、剣を持った男だった。

その質問に、笑いながら、

 

「ハハハ。いや、これって実は、私が彼の実力を測るためにしていた事だから。いやぁ、驚いたね。君たちの介入は。」

 

そう言って、また笑い始めた。

 

「それならそうと、早く言って下さいよ。」

 

男は疲れた感じで、言った。他の三人も同じような感じだ。

俺はそれに近づきながら、

 

「それで、俺のランクはどうなりそうだ。」

 

「ああ。ハイハイ。ランクね。」

 

俺としてはCランクになれれば良いのだが、

 

「SSランクでいいと思うよ。」

 

ですよね。

なんとなく予想付いてましたよ。

いきなり、SSランクか。面倒な奴らが湧きそうだ。

 

「俺としては、Cランクから始めてもいいのだが。」

 

それを聞くと、なぜか、嬉々とした顔をして、

 

「本当に!?ありがとう!正直、いきなりSSランクにしたら、他のギルドマスターとか、色々な事で面倒だったから、ありがたいよ。」

 

あー。確かに面倒くさそうだ。

 

「ああ。別に構わない。」

 

「よし。じゃあ、君は今日からCランク冒険者からスタートだね。」

 

「ああ。わかった。」

 

そう言った直後、

 

「おーい、マグナ!なんか、すごい爆発と炎が上がっていたが、大丈夫か?」

 

今までの戦闘音を聞いて、ミコトがきた。

 

「彼女とはどういう関係で?」

 

嘘をつく理由が無いので、

 

「あいつが前に受けていた依頼の途中で出会って、一緒に冒険者をやろうと誘われた。」

 

正直に答えた。

 

「そうか。なら、君みたいな化け物を冒険者にしようとするなんて、何を考えているか、少しお話でもしようか。」

 

そう言って、ギルドマスターが歩き出す。それに付いていくように、四人と俺は歩き出す。

ミコトとギルドマスターの距離が近くなると、

 

「なんで、マスターそんな邪悪な笑みを浮かべているんですか。」

 

「いやぁ、君と少しお話しようと思って。」

 

「なんで、話をしようとするだけで、そんな邪悪な笑みを浮かべるんですか!!」

 

そう言って、ミコトは逃げ出した。

 

「逃すか!」

 

そう言って、マスターも駆け出した。

その光景を見て、四人と俺は笑い出した。




今更だけど、感想書いて下さった方、毎回読んで下さっている読者の皆様、本当にありがとうございます。
後書きがつまらない?いつもの事だ。だから、大丈夫だ。問題ない。
ご意見、ご感想、ご指摘、お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決着の後

マジで新しい小説を書こうか?
また、ノープランでまったりやる感じで。
ゆっくり見ていってください。


もはや、子供がイタズラをされて怒っているような光景を見ながら、四人と俺は笑う。

 

「君は一体誰なんだい?」

 

唐突に若い剣使いから聞かれた。

 

「誰?と聞かれても、答えに困るのだが。」

 

この質問地味に困るんだが。名前を聞かれる方がマシだよ。

 

「質問を間違えたな。君は一体何者なんだい。」

 

変わってねぇよ!!

心の中で突っ込んで、口には出さなかった。

 

「その質問も解答に困るのだが。」

 

そしたら、思案顔をして、

 

「では、どう聞けばいいんだ?」

 

名前を聞けよ。

これは、言って良かったが、言う前に

 

「そんなの簡単でしょ。ガツンと一発強めに聞けばいいのよ。」

 

そんなんでどうにかなる訳無いだろ。

そして、こいつらは馬鹿か。

若い強気な女魔法使いがそんな事を言って、

 

「そんな事を言ってはダメですよ。」

 

優しく諭しているのは、こちらも、若い女シスターと言った方がしっくりくる装いをした女だ

 

「そうだぞ!初対面の相手にはまず、自分から名乗らねばな!」

 

豪快な声を出しながら言ったのは、見た目四十代くらいの斧使いだった。

 

「そうか。確かそうだったな。」

 

こいつは天然か。

 

「名乗り遅れました。私はアルブ・サークルと申します。」

 

丁寧に名乗っているが、名乗るまでに数分かかったからな。

礼儀として名乗り返すか。ゼギアノスの名前は避けて。

 

「俺はマグナという。」

 

手短に答えた。

 

「私はセシリー・クリスタと申します」

 

優しそうな雰囲気を持った女シスターが丁寧に名乗った。

 

「ワシはザルガ・ディラという!よろしくな!」

 

豪快な声を出しながら、大きな声を出して名乗った。

結構、耳にくる。はっきり言うと、うるさい。

 

「私はルシア・ヒューネス。まぁ、よろしく」

 

強気な女魔法使いがそう名乗った。

おおよそ、四人パーティーなのだろう。

剣使いが遊撃手か盾役、斧使いが壁役か威力の高い一撃を叩き込む役割、魔法使いが敵の撹乱と遊撃、回復役が傷を負った者の回復。

それぞれの役割がこなせていれば、相手が多少強くても太刀打ちできるだろう。

 

「それにしても」

 

呟きながら、どんどん遠くなって行く、ギルドマスターとミコトを見る。

ギルドマスターの行動に少しばっかり引っかかりを覚えるのだ。

普通に考えれば、俺が入った所で何が変わる訳でも無い。

それなのに、ギルドマスターはミコトを追いかけ回している。意味のよくわからない怒りをぶつけて。

いや、どちらかというと楽しんでる気がする。

俺達が戦った後を振り返り、観察する。

地面はえぐれ、草は焼け、辺りに亀裂がはしった地面を見ながら、思う。

 

(やっぱり俺、化け者だよな)

 

弁解のしようが無い。

それと、この後処理をどうしようか。

多分、騎士達がやってくれるはずだ。

そこまで考えがおよび、この先の事、といっても、数分後くらいに訪れそうな未来を考えてしまう。

まずは、騎士達が来るだろう。そして、この荒れ果てた大地を見て、どう思うだろう。

というか、後処理を手伝えと言ってきそうだ。

正直に言うと、面倒だ。

この考えに至った瞬間に、地面を傷付けないように配慮して、〈跳躍〉で空中を全力で蹴り、森へと突撃した。

辺りに暴風が起こったが、気にしない。

森を進みながら、あの四人組とその前方に、騎士達が大勢集まっている。

二者が出会って、話し合い、というか、言い争っているように見える。

結局、四人組は騎士達に連れられる様な形で、後処理を行なっていた。

予想的中。どうにか、免れた。あの四人組には悪いが、犠牲になってもらおう。

そんな事を考えながら、城門の前にたどり着く。

さてと、適当な嘘でもつくか。

 

「おぉ、あの火力馬鹿娘の攻撃をくらって無傷とはすごいな」

 

また、全身鎧の人か。

この人に交代ってあるの?騎士団って意外とブラックなのか?

 

「それにしても、すごい轟音だったな。後処理がすごく大変そうだ」

 

それに対して

 

「ここの騎士達は優秀そうだから、後処理もすぐに終わらせそうだ」

 

という言葉で返した。勿論、そんな事微塵も思っていない。

 

「そうだろうなー。毎回、冒険者がやらかして、後処理は俺たちだもんな」

 

「よかったな。何もしていない騎士団と呼ばれる事は無いじゃないか」

 

そんな会話を交わしながら、城門を通る。

嘘を考えなくてもよかったな。

明日から依頼を開始するか、今からするか。ミコトの戦闘力を考えて、ランクDなのだから、俺が心配することはないだろう。

明日から、ランクCだ。短かったな。

さて、当分の問題はどこで飯を食べて、どこで、寝泊まりするかだな。

こういう時は、ギルドの人に聞いた方がいいだろう。

 

そんな訳で、ギルドの目の前。

中に入ると、ちらほら人を見かけるような感じだ。

そんな中で、暇そうにしていた受付嬢に聞いた。

 

「寝泊まりできる場所と食事ができる場所を教えてもらいたいのだが」

 

そしたら、一瞬で

 

「御食事はここで取られてはどうです?あそこで、注文できますので」

 

角の一角を指差した。その先には、何かを受け渡しできるようなスペースがあった。

 

「宿泊場所でしたら、輝き亭などはどうでしょう。御値段もあまり高くないと評判ですし」

 

そんな場所があるのか。よし。まずは、食事にしよう。

 

「ありがとう」

 

礼を言って、その場を去った。

この世界に来ての初めてのちゃんとしたご飯だ。何があるのだろう?

カウンターは混んでおらず、すぐに頼める状態だった。

とりあえず、貼り出されているメニュー表から何かを選ぼう。

うん。馴染みがない。

まず、料理名から料理の内容を想像できない。

まあ、当然といえば、当然なのだが。

ここに、異世界と元の世界の文化の大元の違いを感じる。

とりあえず、中間より少し上の、少し金を多く使うご飯を注文しよう。

そして、注文を手っ取り早く済ませ、近場のテーブルに腰をかけた。

ミコトもここで食べるか、別の場所で食べるかによって変わるが、明日からどうするかを、話し合っておくべきだろう。

俺の方がランクが上になってしまったからね。

 

それにしても、俺の力はどうも規格外すぎる。ギルドマスターですら、手も足も出せなかったのだから。

これからの力の加減をどうにかしないと、マジで戦争に利用されそうで怖い。

まあ、利用されそうになったら、真っ先にこの国を潰すことも躊躇わないが。

何せ、戦争は得るものより、失う物の方が多く。さらに、人が大勢死ぬ。そんな事は俺の手でしたくはない。

そんなこんなで、力を加減しなければならない。

 

料理が目の前に運ばれて来た。

パンと汁物、煮込まれた肉が並べられた。

まずは、汁物からいただく。

味は、コンソメに近い。具材は、野菜が数種類とベーコンの様なものが入っている。

パンは、全世界共通であると実感した。

肉料理だが、煮込まれているだけで、嬉しく感じて、他のパンや汁物がある事に涙しそうになった俺は、末期なのだろうか?

肉は、牛肉の様な感じで、よく煮込まれていた。柔らかく、味が染み込んでいる肉は、かなり美味しかった。

料理人の腕がいいのか、俺の味覚が少しおかしくなっただけなのか、わからない。

 

食事を終わらせ、食器を片ずけ、俺はミコトを待っていた。

そろそろ戻って来てもいい頃だろう。

戻って来なければ、先ほど勧められた宿を探そうと思っている。

人が入ってくる気配を感じた。

 

「なんで私、追いかけられていたんですか!?」

 

非難の毛声をあげながら、ミコトが入って来た。

 

「ウーン。なんとなくかな。」

 

それをからかう様に言いながら、ギルドマスターが入って来た。

そういえば、俺たちに悟らせない様に騎士達から逃げるために利用されていたな。

向こうの話がひと段落したら、俺の方から話しかけるか。

誰かが、俺の近くの席、というか、目の前に座った。しかも二人。

なんとなく誰か理解できる。

 

「さて、改めて、私はここのギルドマスターをしている、シルヴィアだよ。よろしくね」

 

ギルドマスターはシルヴィアというらしい。

 

「知っていると思うが、俺はマグナという」

 

なんというか、今更の挨拶だな。

 

「お。じゃあ、私も。私の名前はミコトだ」

 

「「それは知ってる」」

 

俺とシルヴィアが言ったのがほぼ同時だった。

 

「ちょっ。私の時だけ冷たくない!?」

 

ふふふと俺は少し笑う。目の前のシルヴィアも俺と同じ様な感じだ。

 

「さて、大体の説明はされているから、大丈夫そうだね。」

 

「ああ」

 

「じゃあさ。君の冒険譚でも修羅の道でも、なんでもいいから聞かせてくれないかな?」

 

あざとく、子供の様に首を傾げて聞いてくる。

子供の可愛らしさはあるが、俺にそんなものは通用しない。だが、別に教えていいので、教えるがな。

 

「別に構わんが、つまらん話だぞ」

 

「構わないさ。君が戦って来た強者がどんなものか興味があるだけだから」

 

「なら別にいいのだが」

 

そして俺は、重要な事は省いて話し始めるのだった。




これくらいなら大体書き上げられるから、二作目を書いても問題ないかな。これが、フラグにならない事を祈ろう。
ご意見。ご感想、ご指摘よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

明日の予定

前書きらしい前書きでもするか?しかし、前書きって何を言うの?
あと、更新遅れてすみませんでした。
あと、ご意見を下さった方ありがとうございました。
最後までゆっくり見ていってください。



俺は、あの森であった出来事を自分なりの脚色を加えて話した。

 

「へー。かなり強い魔物の巣窟か」

 

目の前にいる、見た目小学生のギルドマスターが真剣な顔で言った。

 

「カーバンクル以外全く聞いた事がない名前だろ」

 

そう言うのは、腰まで届くほどの髪を束ねずにいるミコトという名前の少女だ。

 

「カーバンクル以外は聞いた事がないか。ならば、気になる事があれば言ってくれ。大体の事は話そう」

 

それを待っていたと言わんばかりに

 

「じゃあ、君が見た魔物の情報を全て話してほしい」

 

かなりの速さで返されてしまった。

大体の事は話すと言った手前、面倒だが覚えている範囲で話そう。

 

「まずは、グレートモンキーから」

 

「その名の通り猿だ。だが、個体としても強いのに群れを成して行動する事が殆どだな。基本は殴るか蹴るか噛み付く。それと、石を投げてくる」

 

懐かしいな。最初はこいつから逃げ出していたな。

そんな事は言えないので黙っておこう。

 

「次は、フロストウルフ」

 

「狼の行動と基本は同じだが、氷属性の強力な魔法を使ってくる。それと、爪を使ったスキルを使ってくる」

 

始めて魔法を見たのがこいつだったな。

 

「次は、怨嗟の甲冑」

 

「こいつは、甲冑を着た魔物だ。持っている刀には状態異常を起こす可能性がある」

 

そこで、質問が出た。

 

「可能性。という事は持ってないかも知れないんだね」

 

「その通り。〈状態異常〉に俺はかかる事があまり無いから、確かめようが無かった」

 

「なるほど。了解」

 

俺のスキルの一つをバラしたような感じだが、別にいいだろう。

 

「次は、アルミラージ」

 

「こいつは、少し厄介でな。スキル〈幻影〉を使って、突進の方角を誤魔化して突進を仕掛けてくる。さらに、雷属性魔法を使ってくる」

 

二人が考えている。対策方法を考えているのだろう。

少し時間をおいて、考え終わったのを見計らい、最後の魔物の話をする。

尚、ゼギアノスの話はしていない。理由はなんとなくだ。

 

「最後は、キュウキだ」

 

「こいつが、あの森では一番強かったかな。炎と水属性の魔法を合わせて使ってくる。さらに、爪を使ったスキルもあった。なかなかに手強い相手だった」

 

これにも質問があったようで、

 

「魔法は同時に使ってくるのか別々か。どっちなんだい?」

 

「同時の時もあれば、別々に使ってくる時もある。さらに、二つの魔法を合成させて使ってくる時もある」

 

その言葉に目を険しくして、

 

「それは、特殊な個体がいるという事かい?」

 

「いや、全体が普通に持っている」

 

「そうか……」

 

思案顔で考え込むギルドマスター。脅威としての度合いを考え、対策を考えているのだろう。

まぁ、見てきた中で騎士団の強さと冒険者の強さを足しても、敵わないだろう。

 

「君の意見を聞きたい。奴らの強さの度合いを知っている君に聞きたい」

 

教えておこう。

 

「正直に言うと、絶対に一体たりとも倒せない」

 

「やっぱり」

 

予想していたみたいだな。俺が力を出せば、百体来ようと敵では無い。

まぁ、力を出す気は無い。ここにあいつらがきて、ここを滅ぼしてもそれは、必然と考えてもいいだろう。

まぁ、人が逃げる時間は稼ぐが、それ以上はしない。

 

「攻めてくると思うかい?」

 

それはどうだろう?全くわからんが、攻めてくるとは思えない。

 

「それはわからんが、攻めてくるとは思えない」

 

「君の見解はそうなんだね」

 

そう言うと、また険しそうな顔をする。

 

「仮に攻めてきたとして、対抗しようとせず、逃げるべきだ。俺がいれば、逃げる時間は稼いでやる」

 

「ありがとう。だけど、君がいない時にどうやって逃すかを考えないといけないんだ」

 

それは難しい課題だな。今から強くなったところで、たかが知れている。

一体でも来れば、壊滅は免れないだろう。

 

「私が全力を出して、時間稼ぎはできるかい」

 

「無理だと考えた方がいい。奴らの強さは、お前たちと戦った俺並みの強さだ」

 

「そこまでかい」

 

さらに、難しい顔をする。

一方、ミコトは寝ているように見える。考えるのを諦めたようだ。

 

「自分の目で見てきた方がいいか」

 

それを聞いて驚く。

 

「馬鹿か?勝てない相手に、しかも、相手にしないでもいい相手に挑むのは、愚かだぞ」

 

「だけど、相手の力を知るには、見た方がいいかね」

 

死にに行くのと同義だな。

 

「生きて帰れる算段は」

 

「あるよ」

 

「聞いて見たいものだな。その算段とやらを」

 

普通ならば勝てない。生き残る可能性は確実にゼロ。それを覆す算段がある。

これからのために聞いておきたいな。

 

「友人のような感じで話していたけど、この話はギルドマスターとして話すよ」

 

そういう事か。

 

「近々、魔境〈哀しみの森〉の調査に行きます。そこに冒険者マグナ、あなたに同行を依頼します」

 

そうきたか。だが、今の俺は

 

「今の俺はミコトとチームを組んでいてな、もしかしたら、明日から依頼を一緒にするかも知れないので、行けるかどうかはわからない」

 

それを聞いて、ミコトが起きた。

ていうか、マジで寝ていたのかこいつ。まぁ、他人からすればどうでもいい話か。いや、他人じゃ無いよね。

 

「ん?なんの話をしてたの?」

 

「マグナに魔境に一緒に来てもらおうと思っているので、少しの間、借りていいかい」

 

何か変な感じがするが、別にいいだろう。

 

「ん?魔境か。私も一緒に行くよ」

 

「あなたの力量では力不足です。それに、魔境の調査は、Cランク以上の冒険者しか認められていません」

 

「そうか、ならマグナを貸すことはできない」

 

やっぱり俺、物扱いされてない?気のせいならいいけど。

 

「ならば、特例として、同行を許可します。これでいいですか?」

 

「ならば良し」

 

なぜに上から目線。いや、物理的には上から目線だけど、立場で言えば、ギルドマスターの方が上だぞ。

 

「マグナさん。二人を守りながら、魔境を回ることはできますか?」

 

そんな事は簡単だ。力を出しさえすれば。

 

「一応出来るが、死ぬ覚悟はしておけ」

 

「覚悟はできているので、よろしくお願いします」

 

「私もできているし、マグナの力は信頼できるから大丈夫だって」

 

明日の予定はこれでできたな。

 

「いつ頃出発するんだ?」

 

「そりゃあ全員揃ったらだろ」

 

時間の設定はそこまでなしか。

 

「では、今日は解散にするか?」

 

「それでいいと思うぞ」

 

「問題ないね」

 

「じゃ、解散」

 

そして、俺は立ち上がり周りを見回す。

冒険者ギルドの中はかなりの人数であふれていた。何かに巻き込まれる前に帰ろう。

あっ、宿屋を探さないと帰る場所がない。

説明された、〈輝き亭〉を探そう。場所わからないけど。

冒険者ギルドを俺はすぐに出た。

 

 

〈輝き亭〉は直ぐにしては長いような、苦労したと言えば、苦労していないような、微妙な感じで見つかった。

まぁいい。問題は、泊まる事ができるかどうかだ。

中に入ると、普通な感じの宿であった。宿屋は知らないから、普通がどんな感じかわからないけど。

 

「この宿に泊まる事はできるか?」

 

と、聞いてみた。

 

「はい。可能ですよ。連泊ですか、今日限りですか?」

 

「連泊にしたいけが、数日いなくなるかも知れないが、いいか?」

 

「はい。大丈夫です。泊まっていない日は、料金に加算されませんので安心してください」

 

「そうか。では、連泊にしたい」

 

「ありがとうございます。では一泊、一銀貨です」

 

俺は銀貨を出し、渡された鍵の番号の部屋に入った。

明日はするべき事があるし、寝床もあるし、疲れているので寝よう。

あいつらは、俺が確実に守ると誓いを立てて、眠りについた。

 

 

 

 

マグナという謎の冒険者が去った冒険者ギルドで、

 

「彼は何者だい?普通〈魔法合成〉を使える魔物に単独で勝てるなんて、この国最強の騎士と最強の冒険者並みだよ」

 

「私に言われても困る。だけど、強い事は確かで、意味もなく人を襲う事は無いだろうから、私としては別にいいんだけど」

 

「それは理解できるけど、異常だよ。あの強さは…」

 

と言いながら、あの時に深傷を負った箇所を触る。

二人は、ミコトとギルドマスターだった。

二人は、マグナの強さについて話し合っていた。

 

「まぁ、下手に刺激しない方がいいけど、何が刺激になるか、わからないんだよね」

 

「それは同感だよ。しかし、防衛のためには力を振るってくれれば、百人力だけど、そういう訳じゃ無いみたいだよね」

 

「そんな話していたのか?」

 

「ハァ…」

 

マイペースな感じのマグナとチームを組んだミコトを心配に思いながら、席を立ち、ギルドマスターとしての仕事に戻るのだった。

その中でも、あの冒険者の事を考えながら。




ネタが無い。まぁ、書きながら考えればいいし。変なふうになっても、この作品はこんな感じです。で、通せばなんとかなるだろ。
ご意見、ご感想、ご指摘お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出発前

資格試験筆記合格。次は実技か。まぁ、なんとかすればいいか。
よし、伏線はしいた。後は回収するように話を持っていこう。
最後までゆっくり見ていってください。


「ここはどこだ?」

 

ボケている訳では無い。ただ、見覚えがないのだ。この景色に。

辺りは一面の荒野。それ以外は砂塵と共に吹く風のみだ。奥の方は、砂煙によって見えない。

止まっていても、状況は変わらないので歩く。

不思議な場所だ。宿屋で寝ていたら、荒野にいるのだから。だが、何かおかしい。

いや、荒野にいる時点でおかしいけど。

そうではなく、何か違和感を覚えるのだ。知らないのに知っているような。見た事が無いのに見た事があるような。

一番近いのは、親近感だ。

本当によくわからない。

しばらく歩いたところで、何かの気配を感じた。

 

「誰かいるのか?」

 

それは、人型だった。人ではあるようだが、別の何かに感じる。

砂煙のせいでよく見えない。

 

「お前に生きている意味があるか」

 

向こうが声をかけてきた。しかも、返答に困る質問を。

 

「それはお前にはあるのか」

 

質問を質問で返した。

 

「それはわからない。だが、わかる事はある。私には、成したい事がある」

 

奴は何者だ?

成したい事があるならば、成せばいいだろうに。

 

「なぜ、成したい事があるのにここにいる」

 

「成すためには、しなければいけない事がある。その一環だよ」

 

どういう事だ?

その前にこいつは、ここがどこだか知っているのか?

 

「お前は、ここがどこだか知っているのか?」

 

「そういうお前はここがどこだか知らないのか?」

 

知っているわけが無いだろ。

 

「その反応は知らないようだな」

 

こちらの顔は見えていないはずなのに、こちらが思った事を言い当ててきた。

 

「ここはお前の世界なのに、本人がわかっていないとは、傑作だな」

 

向こう側から、笑い声が聞こえてくる。

俺の世界?何を言っているんだ。そして、こいつは何者で、誰なんだ。

 

「お前は誰なんだ」

 

「私は、お前だよ。まぁ、お前と言うには少し語弊があるがな」

 

本当にこいつは何を言っているんだ。

 

「まだわからないようだな。私がなぜいるのか。ここがどこなのか。」

 

ここがどこかは、考えがあるが、現実離れしぎている。ここがたとえ異世界で魔法があったとしても。

いや、冷静に考えたら、ありそうだな。

ここは俺の心の世界なのだろう。荒野とは、どういう事かわからないが、そういう事なのだろう。

だが、こいつの正体はわからない。

正体としてわかっているのは、俺であり、俺ではない者。

全くわからない。

 

「いずれお前とはもう一度会うだろう。その時が、私の成すべき事の始まりになるだろう」

 

こいつは何をしようとしているのだ?俺の世界で。

 

「その時まで、さらばだ。」

 

 

 

その時、俺は目を覚ました。

周りは、俺が寝る前の状態で全て整っている。

 

「あの夢は一体……」

 

しばらく悩むが、答えが出そうに無いので諦める。

身支度を整えて、鍵を宿屋に預けて、ギルドへと向かう。

ギィィ。と、扉を開けた瞬間に軋む音が聞こえるが、壊れていないので大丈夫だろう。

ギルド内は大勢の人で溢れかえっていた。かなり大きな作りをしているギルドでも手狭に感じる程だ。

空いている席に座り、食堂のカウンターが空くのを待つ。多分、この時間は並ばないといけないと思うけど。

周りに知っている顔は見えないし、しばらくはここで、じっと待つか。戦略を考えたりして。

 

「おっ、もう来たんだ。早いね」

 

そう言って来たのは、ここのギルドマスターだった。

いつ見ても背が小さい。

 

「君、今失礼な事を考えななかった?例えば、私の身長の事とか」

 

ズバリその通りです。そんな事、言えませんが。

 

「いや、戦略について、少し考えていただけだよ」

 

「そうか?それならいいんだけど」

 

そう言って、俺の正面に座った。周りの視線が、こちらに集中しているのが、なんとなくわかる。

目立ちたく無いのだがな。こいつといると、強制的に目立ってしまいそうだ。

役職が役職だけに全員知っていて、強さも大体知っているのだろう。

 

「戦略って、どんな感じのものだい?」

 

「おおよそ、あの森ではお前達が、足手まといになるのは目に見えているから、どんな感じで守ろうかと」

 

「あー」

 

納得したようだ。

 

「君の強さを私は知らないから、お任せするよ。大丈夫。死ぬ覚悟は元からできているから」

 

何気にプレッシャーになる言葉を。俺のせいで死ぬとか、勘弁してほしい。

まぁ、それは俺が全力で守りきればいい。

問題はその方法だ。

あの森の魔物は、全て遠距離攻撃ができる。なので、あまり離れることはできない。

なので、こちらも魔法主体の攻撃にしなければならない。

一撃で倒せるからといって油断はできない。魔力は有限だ。あそこの魔物の出現率は一時間で、数体ほど。

正直、日帰りでないと厳しい。奴らは、寝ている間でも容赦無く襲いかかる。その場合、俺の反応が遅れれば、こいつらは死ぬだろう。

俺が不眠で起きておくしかないか。

 

「そういえば、君って魔法は使えるのかい?」

 

「使えるぞ」

 

「へー。どんな魔法を使えるんだい」

 

俺は少し考えて。

 

「氷属性と無属性あと支援が使える」

 

それを聞くなり、意外そうな表情をして、

 

「もしかして、昔誰かと一緒に冒険をしていた?」

 

「いや、ずっと一人で冒険をしていた」

 

「なんで支援魔法を……。一人で冒険をする人は支援魔法は使わないよ」

 

そうなんだ。俺には関係ない事だが。

支援魔法か。もしかして〈支援魔力魔法〉を使えば、どうにかなるか?

ものは試しだ。ステータスを全て40000程にまで上げて、

 

「今から、お前に支援魔法をかける。ステータスがどれだけ上がったか確認してくれるか?」

 

「わかったよ」

 

そして、俺は支援魔法を使った。

 

「!?」

 

ギルドマスターはかなり驚きのようだ。

ステータスがどれだけ上がったかによって、戦略が立てやすくなる。

 

「なんの魔法を私にかけたの」

 

「普通の魔法をかけた」

 

「普通って、そういえば、君の強さは異常だった」

 

納得してくれたようだ。

 

「で。ステータスはどんな感じだ」

 

「全てが20000を超えているよ。これだけあれば、国を滅ぼせそうだ」

 

それは怖い。一人の人が国を滅ぼせるなんて、なんて馬鹿げているんだ。

などと、思ったが、それは俺にも当てはまっている。

 

「それだけあれば、簡単には死なないか」

 

それを聞いて、ギルドマスターが慌てて、

 

「ちょっと聞いていいかな。これだけのステータスがあっても、死ぬ事があるの」

 

その質問に

 

「あるよ」

 

簡単に答えた。

 

「マジで」

 

「マジだ」

 

それを聞くなり、ため息を吐き出して、

 

「この依頼が終わって、私達の中の誰かが生き残ったら、この国に報告をしてもらわないと。いや、絶対信じてもらえない……。どうすれば……」

 

これから先の事を考え始めた。

だが、国に報告をして、騎士団でも向かわせるのだろうか?

だとしたら、やめさせなければならない。

あの森にここの騎士団が入っても、無意味だろう。無意味な死をさせるくらいなら、この街の守りについてもらいたい。

 

「報告をして、万が一に国が動いて、あの森に入っても、無意味な死が増えるだけだから、オススメはしない」

 

それを聞くなり、落ち着きを取り戻したのか、

 

「そうだね。さっきの話は聞かなかった事にしよう。その方が得策だ」

 

そう言って、納得した。

それにしても、20000か。25000は欲しいな。ならば、俺の魔法攻撃力を上げておくか。

これで、大体の戦略が決まった。

主体は魔法攻撃。ギルドマスター達は俺が支援魔法をかけて、強化する。

魔物の攻撃に対しては、俺の無属性魔法で障壁を創り出して守る。

魔物がこちらを分断してきたら終わりだが、これしかないと思う。

これで、戦略が決まった。

目の前の子供。じゃない。ギルドマスターを見て、ふと思う。

 

「お前って、本当に人間か?」

 

そう言って、ギルドマスターが反応する。その表情は、物凄く真剣な表情だ。

 

「それは、どんな意味だい」

 

かなり威圧を感じるが、そんなに聞かれたくなかったか?

簡単な話、こいつの〈種族〉が人間かどうかが疑わしかった。

 

「お前の〈種族〉は人間なのか?」

 

それを聞くなり、席を立ち上がり、俺の隣に座った。

 

「君って遠慮がないね。いいよ。教えてあげる。あまり聞かれたくないから、耳を貸してくれるかい。」

 

俺は、ギルドマスターに耳を傾けた。

そしたら、小声で、

 

「実は私は獣人と人間のハーフなんだ。」

 

そう言って、元の席に戻った。

 

「ふーん。そうか」

 

それを聞くなり、ギルドマスターは、

 

「あれ?反応薄くない。ここはもっと驚くところでしょ」

 

「だって、驚くも何も、お前の母親と父親が愛し合って、お前が生まれたんだろ。だったら、そこに獣人も人間も関係ない。」

 

それを聞くなり、少し固まっていたが、やがて、笑顔が見え始めた。

 

「まさか、この国で、いや、この世界で獣人と人間のハーフが、許せる人を見かけるとは。」

 

意味がわからん。

 

「君は何も知らないんだね。だからこそ、言える事なのか。それとも素でそんな事を考えているのか。」

 

「後者だ。別に俺は愛し合っているならば、〈種族〉が違えど、子を成してもいいと思っている。」

 

「ハハハ。君は本当にすごいと思うよ。世間に全く流されず、我を貫いている」

 

そんな凄くはないと思うが、まぁ、いいか。

 

「この世界では、魔族以外の人が、共存しているけど、他種属同士で結婚してはいけない。子を成してはいけない。というよくわからない法律がある。」

 

本当に意味がわからないな。

 

「だから、皆他種属で子を成す事に、嫌悪感があるみたいなんだよ。」

 

「そうか。大体わかった。」

 

ここから先は気まずくなるだろうから、話題を変えよう。

 

「そう言えば、ミコトはまだ来ないのか?」

 

その質問に、苦笑しながら、

 

「まだ寝ていると思うよ。だって、いつも来る時間は、昼少し前くらいだから」

 

「おいおい、遅起きにも程があるだろ」

 

「仕方ないと言えば、仕方ないけど、昨日、君が帰った後にかなり飲んでいたからね」

 

飲んだって、酒か?この世界では、二十歳以下でも酒が飲めるのか?

 

「酒を大量に飲んだのか?」

 

それに、コクリと頷く。

まじかよ。

 

「馬鹿か。あいつは。酔っ払っていたら、置いていこう」

 

「確かに。それがいい」

 

そんな話をしながら、ミコトが来るまで時間を潰したのだった。




面白かったですか?精一杯書いているつもりです。たとえ、二日で終わらせた突貫工事だったとしても。
ご意見、ご感想、ご指摘お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出発。その前に……

小説がどれくらい読まれているか気になって見たら、6000を超えていることに驚いた。この作品がそんなに読まれている事を素直に嬉しく思っております。面白く書けるよう努力します。
最後までゆっくり見ていってください。


「よっす。遅れてすまん」

 

そう言って、ミコトがやってきた。

もう、昼が近いが今から出発するか、それとも、昼を食べていくか。俺は後者だが、二人はどうだろう?

 

「もう昼が近いしここでご飯を食べていくか?」

 

「それがいい。ミコトの奢りで」

 

「なんで!?」

 

涼しい顔でミコトにとっては無視できない事を言う。それを、どうしてだ!という顔で見るミコト。

 

「自分の心に聞いてみれば早いぞ」

 

俺はそう言って、カウンターの方に向かった。

無論、俺は自分の分は自分で払う予定だ。仲が良いと言える間柄かもしれないが、払わせようとは思わない。

なぜかって?俺もわからん。ただ、その方が俺らしいし格好いいと思う。

そして、俺は昨日とは違うものを頼んだ。ちゃんと自分で金を出して。

 

「あれ?ミコトに払わせないの?」

 

「お前はそうすればいい。俺はそういうのは遠慮する」

 

「助かった…」

 

助かったって、俺は別にいいが、シルヴィアはお前に払わせる満々だぞ。

金に困っているのか?まぁ、ギルドではCランクからが、一人前と評価されているので、金の巡りが悪い仕事をしているのだろうか?

というか、ここの世界では一年間過ごすのに、どれくらいの金が必要なんだ?

まぁ、どうでもいいかな。そんな事を考えていると、二人が注文を終えたようだ。

シルヴィアは、ご機嫌のようだが、ミコトは、

 

「ハ、ハハハ……」

 

何があった!?乾いた笑みを浮かべながら歩いているんだけど。

少し怖いよ。どっちがかって?二人ともだよ。

 

「何をしたんだ…」

 

「ん?別に?普通に食べる量を注文して奢らせただけだよ」

 

え。この子見た目に似合わず大食い?それなのにこの身長……

 

「何か失礼な事を考えた?」

 

「そんな事は無い」

 

エスパーか!こっちが思った事を読まれているんだけど。なんだ、読心系のスキルがあるのか。

欲しいな。そんなスキル。手に入れて見るか。

どうやってかって?……気合い?

そんな無駄な事を考えていると、料理が届いた。

見た感じを言うと、辛そう。赤いのだ。尋常じゃなく。どうやったら、こんな色になるのか聞きたい。

 

「チャレンジャーだね。それ、誰も食べようとしないよ。罰ゲーム以外で」

 

「なんでそんなものがあるんだ……」

 

「わかってて注文をしたんじゃ無さそうだね。どれ、久しぶりにどれくらいの辛さなのか味見してみるか」

 

「どうぞ」

 

シルヴィアが赤い物体を掬う。それを一口。

 

「っ!!!???」

 

言葉とも悲鳴とも言えない絶叫が聞こえた気がする。

水を慌てて飲み。それでも足りないのか、水を汲みに行き、そこからしばらくは、水汲み場から戻らなかった。

 

「どんだけ辛いんだよ」

 

それを見て、呆れるしかなかった。ミコトは、腹を抱えて笑っている。

これは覚悟を決める必要がありそうだ。これから襲い来る、辛さに。

 

「いただきます」

 

覚悟決め、赤い何かを掬い、口に入れる。

その瞬間、カッと目を見開き、襲い来る辛さに耐えた。

ただ、辛さは耐えられるほどではあった。

味は、辛過ぎるのを除けば、美味しいと思う。前の世界で食べた激辛メニューの方がまだ辛い。

 

「へー。普通に食べられるんだ。どれ、子供が耐えられなかった辛さはどんなものかな」

 

シルヴィアがいたら、怒られて、ひどい目にあっているだろう一言を呟き、一口食べた。

 

「ッ!!!???」

 

被害者第2号の誕生の瞬間であった。シルヴィアの時と全く同じで、水を一気に飲み、水汲み場に一直線に向かった。

 

「そんなに辛いか?」

 

そんな事を言って、もう一口食べる。何度食べても、耐えられるほど程度の辛さでしか無い。

周りの人がこっちをありえないような目で見ているが、気にしない。

 

「おい、あれ食べて平然としているぞ。」

「化け物か」

「いや、辛さが弱くなっている可能性が……」

「あれ見てみろ……」

「「「化け物だ」」」

 

なんて会話が聞こえたが、気のせいだろう。

世の中には気にしたら、自分が普通ではなく、化け物呼ばわりされる事になるのだ。

今呼ばれているって?気のせいだよ……。

しばらく、食べ進めていくと

 

「あれ?シルヴィアさんとミコトちゃんは?」

 

と、料理を運んできた人に言われたので、

 

「これを食べて、向こうにいます」

 

それを聞くと

 

「ああ…」

 

と言って、納得した。

 

「お料理の方はこちらにおいて大丈夫でしょうか?」

 

「別に構わないと思いますよ」

 

「では失礼します」

 

そして、色とりどりの、俺の食べている赤一色しか見ない料理とは違う。

コトッコトッ

どれも美味しそうで、食欲をそそられるな。

コトッコトッ

食欲を……

コトッコトッ

量……多く無いですか?

 

「あの、すみません」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

あっ。普通に返されたと言う事は、これが普通なのかな。

 

「ギルマスはいつもこんな量の食事を?」

 

「いえ、自分がお金を払う時は普通の量ですが、他人が払うとなると……」

 

「わかりました。すみません。気になったものですから」

 

「いえいえ。お気になさらず」

 

そう言って、去っていった。

並べられた料理の量を見てみると、成人男性が限界まで食べられる量の五倍近くはあった。

 

「これをあいつ一人で食べるのか?」

 

そう言って、赤い何かを食べた。

 

 

数分後……

 

「辛かったー」

 

「舌が……舌が痛い」

 

二人が戻ってきた。その間に俺はあれを食べ上げていた。

かなり汗を掻いてしまったが別に大丈夫だ。

 

「あれを平気で食べるって、味覚が狂っているとしか言えない」

 

どうとでも言うがいい。周りの小言が予想以上に俺に聞こえてきたので、言われ慣れた。

 

「早く食べないといけないね」

 

と、遠慮なしに料理を口に次々と運んでいる。そして、表情を見ただけで、美味しいとわかる表情をする。それを見て、可愛いと思う。

俺はロリコンでは無い。子供を見て、可愛いと思うのは、普通のことだと思う。

 

「何か私に対して、失礼な事を思った?」

 

「そんなわけない」

 

しかし、ここまで美味しそうに食べてもらっていると、作った人は嬉しいだろうな。

 

「まずい。夜までに食料を集めなければ!」

 

嬉しい以前に今日の営業の問題があった。

これを奢った奴は、

 

「これからどうやって生計を……」ブツブツ

 

何か食べながら小言を言っている。同情するよ。

 

「はい。これ。デザートです」

 

「え?頼んでないぞ」

 

「サービスですよ。あれを頼んで美味しそうに食べる人がいなかったから、お礼ですよ」

 

「いや、頼んで無いからいいですよ」

 

「いえ、あれの発案者である私からのお礼ですから、受け取ってください」

 

あれを発案したのこの人だったんだー。驚きがかなりある。

しかし、これは引き下がりそうに無いな。

 

「わかった。ありがとう」

 

「はい。どういたしまして」

 

出されたデザートは……

見事に赤一色で統一された、パンケーキのようなものだった。

 

「これは、デザートなのか?」

 

それを切り、口に入れると、甘酸っぱく、パンケーキのようなふわふわした食感があった。

そして、それをぶち壊すように、辛かった。

これはデザートでは無い!!別の何かだ。

主食といっても通用する。朝に食べようとは思わない。パンケーキの形をした何かだ。

ただ、これも、耐えられるほどの辛さでしかない。

慣れれば美味しいものだ。ただ、味覚がグチャグチャになっていきそうで、少し恐怖した。

 

「フゥ、久しぶりに辛いものを食べた」

 

俺は全て平らげた。

 

「ごちそうさまでした」

 

ミコトも食べ上げたようだ。

残るは一人。まだ、ガツガツと食べている。どこにあの量が入るかはわからない。

もう、7割型食べ終えている。すごい食欲だ。そして、微笑ましい。

美味しそうに食べている上に、見た目が子供みたいだから、かなり微笑ましい。

決して、俺はロリコンでは無い。強いて言うなら、子供を見て、微笑ましいと思う年寄り的な感じだ。

 

「また失礼な事を…」

 

「何を思っていませんよ」

 

こちらを睨んできたきたので、視線を外した。

そんなこんなで、全員が食べ終えた。

 

「さて、最終確認だ。俺がお前達に支援魔法を使う、だが、それでは心許ないので俺が守りながら、進む。これでいいか?」

 

自分で言っといてなんだが、この作戦大分、いや全部俺任せな気がする。

 

「支援魔法をかける意味はあるのか?」

 

「流れ弾が当たっても即死はしない程度には強くなれる」

 

それを聞いて、ミコトが黙った。

 

「全部君任せな作戦だけど、大丈夫かい?」

 

「問題ない。いざとなったら、周囲を全て凍らせる」

 

「それは怖い」

 

そう言って、黙った。

 

「よし。これでいいか。では、出発するか」

 

「よっしゃ。魔境はどんなところか楽しみだ」

 

「そんな楽しそうな場所ではなさそうだけど、緊張するよりかはましかな」

 

そして、三人はギルドを出て、魔境へと向かった。




面白ければ幸いです。次回には魔境に着くよう考えなければ。執筆って、難しいけど、存外楽しくもありますね。
ご意見、ご感想、ご指摘お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔境突入

今の目標は、目指せ10000UAそのために、さらに小説を面白くしていこう。ただ、俺一人では限界がきそうなので、ご指摘や何やらがありましたら、教えてください。
最後までゆっくり見ていって下さい。


城門を出て、森へ入った。出てくる敵は雑魚ばっかりで、退屈であった。ただ、不満があるとすれば…

 

「なんで、お前らは戦わないんだよ!」

 

それを聞いた二人は顔を見合わせて、

 

「だって、私たち女の子だしね」

 

「そうそう。戦うのは男の人の方がいいよ。カッコつけられるし」

 

こいつら、一発殴ってやろうか。

 

「こんな弱ければ、カッコつけられるはずないだろう。側から見れば、弱い者いじめに見えそうだから、あまり好きじゃない」

 

「結構男らしい一面があるんだね」

 

「俺は男だ。それ以外何に見える」

 

「それはそうだけど、内面的な事だよ」

 

まさか、子供……じゃない。他人からこんな事を言われるとは。

 

「今、子供と思ったでしょ。思ったよね」

 

地味に怖いんだけど。

 

「いや、背が小さいとは思ったけど、子供とは思ってない」

 

「同じ事だよ」

 

それは見事にいい笑顔で、目が笑っていれば、微笑ましかっただろうと思わせる笑顔で言われた。

そして、手には燃え盛る業火が握られていた。

魔法は不思議だと再認識できる場面だね。

その業火をこちらに向け、

 

「死ね!!〈ドラゴンフレイム〉!!」

 

それは、見た限り広範囲に広がって、攻撃する範囲魔法的な感じだろう。

 

「危な!」

 

ミコトが一目散に距離をとったが、回避は間に合いそうに無い。

 

「馬鹿者が。ハァ」

 

ため息を吐いて、片手を炎に向ける。炎が手に触れた瞬間を狙い、炎を凍らせた。

火って凍るんだね。魔法だから凍るんだろうけど。

 

「危な!」

 

今度はシルヴィアが危険に晒された。まぁ、これは因果応報という奴だろう。

森の中で火を放つとは、馬鹿としか言いようがない。

 

「頭は冷えたか?」

 

「それはもうキンキンに」

 

そう言って睨んできた。

どうやら、子供扱いされたくない様だ。だけど、すぐ実力行使してくる辺り、子供だと思う。

 

「また子供と」

 

「何も」

 

また、あれをされて、山火事なんぞにしたくは無い。されたとしても凍らせますが。

 

「もうあんな事しないでください!私が死んでしまいます!」

 

「なら、もっと鍛えるべきだな。あんな事で死なない程度に」

 

「そうだよ。もっと鍛えるべきだよ」

 

「さっきまで喧嘩していたのに今では二人して私に鍛えろと言ってきている」

 

「仲がいいんだか、悪いんだか」

 

「そうだね」

 

「喧嘩していた人たちが言う事か!」

 

そんな会話をしながら、着実に魔境に近ずいていった。

 

 

 

魔境を目の前にしての晩。尚、日付は変わっていない。

 

「しかし、いざ魔境を目の前にすると緊張するな」

 

俺がそう言った。

此奴らでは、決してあこモンスター達には勝てないだろう。

冗談抜きで強いから、俺の防御が遅れれば、死ぬだろう。

そんな結末にはしたく無い。

 

「弱気だね。どうしたんだい?」

 

心配そうにシルヴィアが見てくる。

 

「いや、お前達を死なせない様に進むのは初めてだから。それに、一撃で即死だってありえるからな」

 

「え!?そんなに強いのか?」

 

ミコトが今更驚いた様に言った。

 

「聞いてなかったのかよ」

 

「今からでも引き返していいよ」

 

俺が呆れて、シルヴィアが引き返す様に促した。

 

「いや、ここまできたら最後まで行くよ」

 

そう力強く言った。

その言葉には、覚悟は決まった様な、何かが含まれていて付いてきても大丈夫だと思わせる何かがあった。

 

「私も大丈夫だよ。私かミコト、もしくはどちらが死んでも、貴方の所為じゃ無い。私も覚悟をして来ているから、それは覚えておいて」

 

ハァ。そんな言葉を聞いたら、余計死なせたく無い。だが、緊張は少しはほぐれた気がする。

 

「安心しろ。お前らは確実に俺が守ってやる」

 

「フッ、そうこなくっちゃ」

 

それからは、何事もなく食事をして、交代で見張りをした。

 

 

 

朝が来た。素晴らしいとは、これから来る敵を思い浮かべると、到底思えなかった。

 

「よし、朝食にしよう」

 

全員肉を食べた。それも、俺が持っていた〈幻兎の肉〉を食べている。

 

「お代わり!」

 

「はいよ」

 

俺は肉を何個も焼いている。ざっと5個ほど。

焼いている間に俺も肉を食べている。飢えることは、肉がある限り無い。ただ、健康状態が気になる。

 

「お代わり!」

 

「早い」

 

ミコトが呆れた様に呟いた。

シルヴィアに肉を渡し、追加で焼いていく。その間に、あと何個焼けばいいのか聞いてみる。

 

「あと何個いる?」

 

と聞くと、目を輝かせて、

 

「あるだけ!」

 

そう言って、肉を凄まじい勢いで食べ進めていく。微笑ましいな。

 

「はいはい」

 

そう言って、肉を焼くのに集中する。

 

「なぁ。お前って、ロリコンだったりするのか?」

 

若干、俺がそうでは無いか?と思っていた事を言いやがった。だが、俺はロリコンでは無い。ノーマルだ。

 

「それは、ありえ」

 

無い。と言おうと思ったが、それを言う前に、

 

「それは私を子供と言っているのか?そう言ったね」

 

それはもう笑顔では無く、相手を睨みつける姿は、肉食獣だった。

それから、かなり騒がしくなった。俺はそれをすぐには止めず、見守っていた。

 

 

 

魔境に入る前に支援魔法を全員にかけて、周囲を障壁を張って守っていた。

そして、周囲に注意を張り巡らして、警戒をしていた。

その時、どこからか、特大の火球が飛んで来た。それは障壁に当たると爆発した。

辺りは炎に包まれて、見えなかった。

 

「うわ!?!?」

 

「これは、中々に強力だね」

 

二人は驚いているが、ここでは、これが普通である。

 

「最初は過保護だと思ったけど、納得したよ」

 

今、聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ。俺が過保護?そんな事は無い。俺は必要だと思った事をしたまでだ。

それはそれ、これはこれと、置いといて。

手をかざし、火球が飛んで来た方角に、氷でできた槍を飛ばした。

 

バンッ!!

 

空気が弾けた様な音を出して、氷の槍が火球が飛んで来た場所をめがけて、飛んでいった。

 

「うお!?今度はなんだ!?」

 

「今のはマグナが魔法を放った音だ!」

 

軽くこっちはパニック状態になっているが、大丈夫か?

周囲を確認する限り、囲まれては無い。だが、前方に五体くらいいる。

戦闘は数では無く質だ。ならば、こちらが優勢だ。足手纏いがいても。

地面を凍らせ、敵の動きを止める。そこに、五つの槍を同時に放つ。

 

バンッ!!!!

 

五つの音が重なり、五つの氷槍が音速を超えて敵を穿つ。

一瞬で戦闘が終わる。だが、背後の二人からすれば、ありえない事尽くしだっただろう。

 

「ここの事を一つ教えておくと、お前達の常識の範囲を超える様な敵が無数に現れるぞ」

 

その言葉にミコトが、

 

「マジで?」

 

「マジだ」

 

「あんな戦闘を毎日やっていたのかい?」

 

シルヴィアが聞いてきた。それは、まだ困惑が入り混じっている様な表情をしていた。というか、ミコトもだった。

 

「当たり前だ。これからは、五体と言わず、数十体一気に襲って来ることもある。だから、気を抜けない」

 

「……すまない。そして、ありがとう」

 

なんだいきなり。

 

「気にするな。お前達は俺が守る。だから、安心しろ」

 

それから、また、歩き始める。

 

「さっき襲ってきたのは、なんだい?」

 

「さっきのは、多分、アルミラージとカーバンクルだと思う」

 

今気づいたが、宝箱の確認をしていなかった。

だが、戻ろうとは思わない。今は進む方がいいだろう。

すると、急速に向かって来る気配がした。

予想はついている。アルミラージだ。

すぐさま、〈看破〉を発動させて、アルミラージを探す。その際、半透明の人みたいな人がいたが、気のせいだ。

いたら多分、幽霊だ。

〈看破〉には、そういう効果があったはずだ。見えちゃいけないものが見えるとかがあったはずだ。

そんな無駄な事を考えている間に見つけた。

 

「どこ見ているの!そっちには何もいないよ!」

 

「そっちには何がいる!」

 

「でっかい白兎!」

 

表現可愛らしいな。

俺は俺が見えている敵に向かって、氷槍を放った。

それは、顔面に当たり、アルミラージを一撃で絶命させた。

その時、

 

「あれ?消えた?」

 

やっぱりか。

 

「お前が見ていたのは、アルミラージが作り出した幻だ。スキル〈幻影〉だ」

 

「はぁ。眼に映るものを信じちゃダメって事だね。学習したよ」

 

どうやら、落ち着きを取り戻した様だ。

しかし、やっぱり引き返した方がいいかな。ここは、此奴らより確実に強いし、心労が絶えない。

そういえば、モンスターを倒せば、レベルが上がるけど、その仕組みはどうなっているんだ?

 

「なぁ、お前らって、ここのモンスターでレベルを上げる事ってできないか?」

 

それを聞くと、みるみる表情が変わり、

 

「それがあった!」

 

ミコトが少し大きな声を出した。

できるんだ。多分、予想できる。

ゲームと似た感じならば、攻撃一発与えて、誰かが倒せば、それでレベルアップできるはずだ。

 

「そうだよ。そうすれば、私も強くなれる。そうすれば、稼ぎのいい仕事ができる!」

 

願望丸出しだな。

 

「私もその意見に賛成だね。これからの事を考えると」

 

「わかった。まぁ、ドンと頼ってくれ」

 

言葉が思いつかなかったから、なんとなくそう言った。

 

 

存外すぐ敵に会う。それも一気に数十体。

さて、気張っていくか。

 

「炎の精霊よ我に力を〈フレアアロー〉」

 

ミコトは手から、炎の槍を出して敵に放った。

なんと無く、ミコトのイメージから、火を連想したけど、腕輪の効果にぴったりだ。

 

「〈カオス・ドラゴン・クライシス〉!」

 

シルヴィアは、いつか見た魔法を放っている。それに詠唱の様なものを言っていない。ミコトは言っているのに。

そんな事を考える前に、俺は目の前の奴らを片付けなければならない。

 

「もういいよ。攻撃しても」

 

俺はそれを聞いて、今度は無数に氷槍を生み出す。その数は数え切れないほどだ。

尚、自分でも作った数を把握していない。

決して、シルヴィアの魔法と競った訳ではない。そこの所を勘違いしてはならない。

それを一気に放つ。

一瞬で、周りにいた数十体のモンスターは消え去った。

すると、

 

「おお。かなりレベルが上がってる」

 

よかった。レベルは順調に上がっていっている様だ。ただ、心配なのは、

 

「うるさい。そろそろ、言うのやめてくれないかな?」

 

シルヴィアがそんな事を言った。

やっぱり、自分よりかなり強い相手を間接的に倒したんだ。それなりにレベルは上がるだろう。

 

「うるさい!そろそろ黙って!」

 

シルヴィアは我慢の限界を迎えた。

 

「言うのをもうやめてくれー。ゲシュタルト崩壊しそうだ」

 

力なくミコトが何か言っている。その様子を見て俺は、

 

「まぁ、頑張れ」

 

こんなことしか言えなかった。

すると背後に何かの気配を感じて振り返るが、何もいない。

しかし、〈索敵〉により、気配は感じる。〈看破〉を発動させる。すると、目の前に半透明の女がいた。

まじかよ。幽霊って本当にいるんだ。俺って何かしたかな?

 

「どうかしたか?ボーッとして」

 

どうやら、レベルアップ地獄から抜け出せた様だ。

 

「お前は見えないのか?」

 

そう聞くと。

 

「何が?」

 

ミコトが言い。目の前の半透明の女が、

 

「!」

 

驚いた様に声になっていない声をあげた。

へ?声を出せるの?幽霊が?

 

「すみませんが、私が見えているのでしょうか?」

 

目の前の幽霊(仮)が喋った!まじかよ。幽霊って喋れるのかよ。

 

「見えているぞ」

 

「へ。お前誰に話しかけてんの?結構怖いぞ」

 

後ろの声を無視する。

 

「どうかしたのかい?」

 

シルヴィアも復活した様だ。

 

「お前達には見えていないのか?」

 

すると、目を凝らして何かを見ようとしている様だが、

 

「何も見えないよ?」

 

「そうか」

 

まじかよ。本物の幽霊だと。

 

「申し遅れました。私は種族〈ドライアド〉。名前はありません。貴方をこの森の支配者と見受けました」

 

支配者かどうかは知らんが、〈エリアボス〉ではある。

 

「本当に虚空を見ているから怖いね」

 

「だろ。本当に頭をおかしくしたんじゃないか?」

 

あいつら、聞こえていないと思って言っているのか。わざと言っているのか後ではっきりさせておこう。

 

「あの不敬な方々を私が始末しておきましょうか?」

 

何この子?半透明で口調が丁寧なのに恐ろしい事を言うね。

 

「ダメだ。で?他に言う事は無いのか?」

 

すると、一歩後ろに行くと。

 

「お願いがあります。どうか私を貴方の配下に加えては頂けないでしょうか」

 

そして、ピシッとした姿勢のまま、綺麗に頭を下げられた。

断る理由は無いが、なぜ配下?

 

「本当にどうかしたのかい?」

 

「いや、元から頭おかしそうな人だったじゃん」

 

「やかましい!」

 

そう言って、二人を黙らせ、目の前で未だに頭を下げる半透明の確か〈ドライアド〉の事を考えるのだった。




面白くできたか不安になるのは俺だけだろうか?だが、弱気になってはいけない。面白いと信じて書き続けるのみだ。
ご意見、ご感想、ご指摘よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

半透明の女性

遅れてすみませんでした!!(土下座)
病院に行っていたので遅れました。前日に終わらせる前に寝落ちしてしまったので、遅れました。本当にすみません。
最後までゆっくり見ていって下さい。


「いや、言っている意味がわからん」

 

俺は目の前にいる、半透明の女にそう言った。

 

「また誰かに話しかけているぞ。大丈夫なのか?」

 

そう言ったのは、髪が腰まで届く程長く、見た目だけで明るい性格だと感じさせ、こちらまで明るくなりそうな何かを感じさせる少女だ。

 

「多分、多分だけど、何かがいるんじゃないかな。ほら、ここで死んだ人の霊とか」

 

そう言ったのは、桃色の髪をした落ち着いている少女だ。見た目は確かに幼いが、侮る事無かれ。

落ち着いた物腰から、かなりの長さを生きている事がわかる。実年齢は不明。聞かぬが吉だと思っている。

 

「今かなり失礼な事を考えなかった?」

 

なぜバレるのだ。

この様に、彼女の基準で失礼に当たる事は何故かすぐバレる。

 

「お前の事に関しては何も考えていない」

 

「どうだか」

 

不満気に言う彼女。見た目が子供なので可愛らしい。

おっと。睨みつけられている。怖い怖い。

 

「配下と言うのは、言葉通りの意味ですが、特別な称号、特別な種族を持っている方に対してのみできる事です」

 

今目の前にいるのが、種族〈ドライアド〉の半透明の女性だ。容姿は、綺麗に整った顔立ち、凛とした表情をしている。一言で言うならば、美人である。

それ以外は不明。

話を戻して。

成る程。俺の持っている〈エリアボス〉がそれに当たるのかな。

ん?待てよ。こいつはなんで俺がここの〈エリアボス〉だと言う事を知っている。

一言も言ってないはずだ。ここに来てからも、ここまで来るまでも。

 

「待て。その称号や種族を俺は持っていないぞ」

 

半分正しくて半分は嘘だと思う。

正しいのは、俺の持っている〈エリアボス〉もしくは〈獄魔族〉がそれに該当しない可能性があるためだ。

嘘なのは、自分自身、十中八九それだと確信している為だ。

 

「御冗談を。貴女様はこの森の〈エリアボス〉であられますね」

 

俺は〈ドライアド〉との距離を縮めて内緒話をする様に聞いた。

聞かれていい内容では無いと自分で判断して決めた事だ。これで、変人扱いされようと文句は言わない。

 

「何故知っている」

 

〈威圧〉を少し発動して脅す様に聞いてみた。

すると、今まで落ち着いていた〈ドライアド〉だったが、目を少し見開き、冷や汗を流している様に見える。

 

「ここにいる魔物達が口を揃えて仰っていたので」

 

「魔物は喋っていたのか?」

 

魔物って喋れたのか?いや、確かに獣の鳴き声に聞こえたが、あれは喋っていたのか。

 

「はい。喋れますよ。皆さん口を揃えて貴女様と遊びたがっていましたよ」

 

「マジで?」

 

「マジでございます」

 

て事は魔物は俺目掛けて襲って、いや、戯れようとしていたのか?

それを俺は全力で殺していたのか。

クッ。罪悪感が半端ねぇ。

 

「気に病むことはありません。別に死んではいませんので」

 

「どういう事だ?」

 

「魔物とは一種の精神生命体ですので」

 

精神生命体ですね。ハイ。そうか……

 

「全くわからん」

 

それを聞いて、〈ドライアド〉は、

 

「精神生命体とは、実体が無く普通は見えませんが、存在としては、確かに存在する生命体の事です」

 

「生きてはいるが見えない存在。という事か?」

 

「はい。その解釈で間違いありません」

 

まだピンとこないが大体理解できた。

 

「さっきの話と、死んではいない。と言う発言はどう関係しているんだ?」

 

そこが問題だった。魔物は実体があるので精神生命体とは言えない。なのに関係している。どういう事だ?

 

「魔物を殺しても完全には死にません。精神生命体となって彷徨い、勝手に実体が生成されます。一種の不死性です」

 

殺しても殺しても出てくる仕組みはこれだったのか。しかし、魔物とは不思議な存在だな。

 

「話が脱線していましたね。それでは配下に加えてもらえるでしょうか?」

 

背筋をピンと伸ばし、丁寧に綺麗に頭を下げられた。

ハァ。さっきの事を教えてもらった恩もあるし、美人だし、断る理由は無い。ただ、配下と言う響きが気にくわない。

 

「別に良いが、配下では無く友人の様な感じでいてほしい」

 

「友人とは恐れ多いです。配下が気にくわないのであれば、部下でも秘書でも構いません」

 

〈ドライアド〉が目に見える形で狼狽えた。

それを、可愛らしい。と思いながら眺めていた。

部下か。まぁ、それぐらいなら大丈夫だ。前の世界でも上司と部下の関係があったからか、忌避感はあまり無い。

 

「じゃあ、それで良いだろう。それで、何かする事かしなければならない事はないのか?」

 

もう冷静さを取り戻した〈ドライアド〉がこう告げた。

 

「では、私の手を握ってください」

 

そう言って、手を差し出してきた。

半透明なので、握れるかが心配だ。そう思いながらも、手を握る。いや、手が差し出された位置に添える。

 

「これで握れている……!!」

 

これで握れているのか?と聞こうとしたところで、何かがこちらに向かって来ていた。それも数体。

俺は、二人を守るべく二人に駆け寄った。そして、迎撃しようとした次の瞬間。

 

「邪魔するな」

 

〈ドライアド〉がそう言ったのと同時に何本もの木が地面から生え、こちらに向かって来ていた魔物を全て殺した。

 

「え。今のは君の魔法かい?」

 

シルヴィアがそう聞いてきた。その表情は驚いている感じだ。

 

「いや、今のは俺ではない。あるとすれば」

 

俺はそう言って〈ドライアド〉を見た。

そこには微笑を湛えてこちらを見る彼女の姿があった。

 

「期せずしない形でしたが、私の実力を認めて下さいますか?」

 

「ああ。ここまで強いのは予想外だったよ」

 

そう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。

 

「ウフフ。さて、先ほどの続きをしましょうか」

 

今度は彼女の方からこちらに来て、また手を差し出してきた。

俺はその手に自分の手を添えた。

 

「そうです。そうして貴女様の魔力を流してください」

 

魔力を流すと言われても、やり方がわからん。まぁ、魔法を使うような感じで良いだろう。多分。

すると、俺の手が淡く光り、手の甲に何かしらの紋章が現れた。

 

「フゥ、成功ですね。これで私は貴女様の部下です。これからよろしくお願いします」

 

そう言って〈ドライアド〉は丁寧に綺麗に頭を下げた。その様子を見ていた俺含めた三人は。

 

「え……え?」

 

「何が……起こったの………」

 

「どういう…事だ?」

 

三者三様のリアクションを取りながら、目の前で起きた出来事に驚きを隠せずにいた。

 

「貴女様どうしたのですか?」

 

「自分の体を一回自分で確認してみろ」

 

「はい。…………え?」

 

〈ドライアド〉は自分の体を確認して目を見開いた。

何せ、今まで半透明だったのに、今では肌の色、新緑を思わせる綺麗な緑の髪、着ている服の色さえ確認できるのだ。

推測するに、精神生命体から実体を持った。という事だろうか。

 

「えっと…精神生命体が実体を持つ事はあるのか?」

 

恐る恐る聞いてみた。

 

「あ、はい。あります。ただ、上位種族にならない限りできません。それも、実体を持っている間は魔力を使い続けるのですが……」

 

「魔力を使っていないと。そういう事かい?」

 

シルヴィアは驚きから立ち直ってそう言った。

 

「はい。そのようです」

 

どうやら〈ドライアド〉も状況を飲み込んだようだ。

 

「あのさ。さっきまでマグナが話していたのってお前か?」

 

ミコトが疑問を口にした。

 

「はい。その通りです」

 

〈ドライアド〉が事務的な口調で答えた。

 

「上位種族……か。上位種族より上の種族を聞いたか、知っていたりしないのか?」

 

「そのような種族は、すみませんが聞いた事ありません」

 

「お前でも知らないか……。今の種族を確認する事はできるか?」

 

俺はステータス確認ができるが、〈ドライアド〉もできるのだろうか?

というか、今思ったのだが〈ドライアド」は魔物の一種なのか?それとも魔族に属するのだろうか?

 

「確認できますが…」

 

目線を一瞬だけミコト達に向けた。

成る程、そういう事か。あまり他の奴には教えたく無いのだろう。

 

「教えたく無いなら教えないでいい。気が向いたらでいい」

 

「では、二人きりの時にでもお告げします」

 

それを聞いて一瞬ドキッとしたが、仕方がない事だと思う。

何せ、恋愛経験ゼロ。男子の多い工業高校。友達男子ばっかり。連絡を取り合っていたのは男子しかいないのだから。

なんか自分で思っていて悲しくなってきた。

そんな状況だったから、女子との会話の仕方はわからない。

あれ?なら部下にしない方が良かったんじゃね?

もう決めた事だ。なんとかするしかない。

 

「ヒューヒュー。二人きりでとは積極的だねー」

 

ミコトがそんな野次を飛ばしてきた。

 

「いや、そんな意味で言ったわけではないと思うぞ」

 

その言葉を予想していたのか、素早くこう言ってきた。

 

「そんな意味とは、どんな意味のことですかな?」

 

ニヤニヤしながら聞いてくる。

こいつは絶対確信犯だ!いや、大体こんな事を言う奴は基本的に全て確信犯だ!

 

「それは私も聞いておきたいね。さて、どんな意味なんだい?マグナ君」

 

シルヴィアまで参加しやがった!

こんな時の対処法は……正直に話すか。

いや、そんな事をすればさらにイジられる可能性がある。というか、その未来しか想像できない。

だが、他の対処法を思い浮かべることができない。どうすればいいんだ。

 

「私は主人様と自分の種族を教えるためにそう言っただけですが?」

 

〈ドライアド〉が事務的な口調でそう言った。

ナイス!〈ドライアド〉さん。ミコト達もこれで切り返すことが難しくなったはず。

 

「うん。貴女の事を意味はわかっていたよ。だけど、この人が二人気で、という言葉を聞いてどう思ったかを知りたくてね」

 

すぐに返してきやがった!

これは俺が思った事を素直に話すか。

どんな言葉が来ようとも、ドンと構えて凌ぎ切ってみせよう。

 

「はいはい。わかりましたよ。話せばいいんでしょ。話せば」

 

それを聞いて二人ともニヤニヤしている。少しイラっとしたが、気にしない。

 

「告白でもするつもりか?と思いましたよ。まぁでも、そんなつもりがない事は十分承知でしたよ!」

 

それを聞いて二人のニヤニヤ顔が深みが増した気がした。

 

「ふむ。では貴方はこの人とそういう関係になりたいと?」

 

ハァ。面倒なことになるんだろうなー。

だが、耐えてみせよう。

 

「そういう意味では無い。ただ、そう思っただけだ」

 

そう言うと、〈ドライアド〉がこう言った。

 

「そうですよ。私が主人様と恋人関係になるなんて、恐れ多いです」

 

「恐れ多いなんて、貴女かなり美人ですよ」

 

「それは俺も同感だ」

 

俺も同調する。

決して、矛先を〈ドライアド〉に向けようとしたわけでは無い。ただ、思った事を口にしたまでだ。

 

「主まで言うのであれば、私は美人なのですね」

 

この人、強い。事務的な口調で告げたから、次の言葉をどうしようか悩んでいるぞ。

 

「それより主人様。何か私がするべき事はありませんか?」

 

急に話が変わったな。照れ隠しだろうか?照れている様子など微塵も見えないが。

しかし、すべき事か。思いつかないな。こういう時は一人で考えずに聞いてみるのが一番だろう。

 

「お前は何か成すべき事を思いつくか?」

 

「はい」

 

即答ですか。スペックが高い。優秀な人材ですね。俺よりか確実に優秀だ。

 

「では、それはなんだ?ここで言って差し支えなければ、教えて欲しい」

 

「では僭越ながら具申させていただきます。ここの魔物の統制を行うのがよろしいかと思います」

 

「え?魔物の統制とかできるの?」

 

「はい。できます」

 

その言葉を聞いて、背後の二人を見やる。

二人も驚いている感じだ。

 

「〈テイム〉すれば言う事は聞くんだけど、複数の魔物が同時にいると喧嘩も起こるから、統制とは聞いた事が無いね」

 

どうやら、普通では無いらしい。

しかし、統制か。それならば此奴らが危惧している事を解消できるかもしれない。

 

「統制すれば、ここの魔物が街を襲う事は無くなるか?」

 

「主人様が襲えと命令しなければ」

 

それを聞いて二人を見る。

 

「君は街を襲う気はあるのかい?」

 

至極真剣な表情で聞いてきた。

 

「襲う気は微塵も無い」

 

そう言うと、いつもの表情に戻り、

 

「なら安心だ」

 

納得した様だ。

俺は〈ドライアド〉に向き直り、

 

「その統制は、俺がいた方が早く終わるか?」

 

「はい。この中では主人様が一番お強いので」

 

「そうか。ミコト。悪いが」

 

俺が次の言葉を言い終わるまでに

 

「はいはい。わかってますよ。ただ、早く終わらせろよ。私もすぐにCランクに上がるからな」

 

「ああ。わかった。こっちもすぐに終わらせるから、待っていてくれ」

 

「あいよ」

 

今度は、シルヴィアに

 

「この森の情報は十分か?」

 

と聞いてみた。

 

「ああ。もう十分だよ。それにここに長居すると本当に死んでしまいそうだから、早く出てしまいたい」

 

その言葉に苦笑しながら

 

「わかった。じゃあ、すぐに出るか」

 

そう言って、また向き直る。

 

「まずは、此奴らを街まで送り届ける。夜には戻ってくる」

 

「おっと、夜に戻って来るとは、どう言う事ですか?」

 

「そのまんまの意味だ」

 

今度は何も考えずに普通に返した。

いつもの俺なら考えて行動するか、発言していただろう。

だが、今は成すべき事が目の前に見えているので周囲が見えていなかったのだ。

 

「普通に返されたな。んじゃあ、さっさと帰ろうぜ」

 

「そうだね。マグナ、もう行こう。早く帰って早くここに戻って行け」

 

「行ってあげて下さい。私は主人様が戻って来るまで待っています」

 

〈ドライアド〉の言葉に、

 

「ああ。待っていてくれ。すぐ戻って来る。んじゃあ、行って来る」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

今思ったけど、メイドみたいだな。まぁ、いいだろう。

なんにせよ、やる事があるってのはいいもんだ。




終わり方が中途半端になっている気がする。気にするべき所か。なんとか改善します。
それと、注意や指摘してくださった方本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
ご意見、ご感想、ご指摘よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔王(魔物の王)

この作品はどこに向かっているのだろう?
自分しか知りそうに無いことを自問自答する。答えは無い。ならば、面白い展開になる様に転げ回るだけだ。
最後までゆっくり見ていって下さい。


俺達は森の中を疾走していた。

理由は単純で早く街に戻るためである。

一番遅いミコトに合わせながら駆ける。

 

「お前等早すぎるだろ。本物の化け物か?」

 

「失礼だね。マグナに比べたら一般人だよ」

 

「俺と比べられたいなら、もっと強くなる事だ」

 

そんな会話をするくらいに平気だった。

道中でこの森の魔物と会敵したが、難なく倒した。

 

「いや、本当に化け物だよ!魔法が目に見えなかったんだけど!」

 

「今更何を言っているんだい。私にも何が起こったかわからないよ」

 

「褒め言葉として受け取っておこう」

 

もう俺が化け物と言われても、普通よりちょっと強い人、という感覚で受けいれられるようになった。

体内時間的には三時か四時辺りの時間だ。軽く見積もっても、夜までに戻れそうに無いな。

〈空間魔力魔法〉を試すか?いや、危険が多そうだからやめておこう。

 

 

森を出るのは意外に早く、途中休憩を挟んでも一時間半で抜ける事ができた。

なんにせよ、ここから街に出るまでどんなに急いで、最低でも半日はかかる。

これは、約束が守れそうに無いな。

男として情けない結果になるが、仕方ない。戻った時に謝っておこう。

そんな事を決めた時、

 

「ここまででいいよ。ここから先の護衛はいらない」

 

シルヴィアがそう言った。

確かにと思う反面、依頼である以上、仕事である以上途中で放り出して良いものか悩む。

 

「君の仕事は終わりだよ。さぁ、さっさと彼女の元に行ってこのもりを安全にしておくれ」

 

その言葉で決心した。

今俺がすべき事を。

 

「ああ。わかった」

 

と言って、踵を返す。

 

「ちゃんと戻ってこいよー!」

 

後ろから聞こえるその声に手を上げるだけで反応する。

それから、全力で走り出した。

 

 

三十秒もかからずに〈ドライアド〉がいる場所に辿り着く。

圧倒的速度だ。

レベルが上がった彼奴らの何倍の速度だ?

 

「お帰りなさいませ、主人様」

 

「ああ。少し早くなった。それで、統制する方法はどうするんだ?」

 

俺の帰って来る場所は、この森なのか?

その疑問があったが、俺の居場所は無いようなものだから、どこでも良い気がする。

 

「その事ですが、この森の魔物は貴方の力を認めています」

 

「それなのに、俺に挑んで来るのか…」

 

俺の力を認めて、集団で襲いかかるのか。

それが無駄に終わっているなら、他の方法を考えようぜ。

 

「いえ。前にお話しした通り、遊びたがっていただけで、戦意は無かったかと」

 

「そういえば、そうだった」

 

この性格の奴らが多いのか、この森の魔物は。

しかし、そんな性格の奴らをどうやって統制するんだ?

俺の短い人生経験上そんな奴らの統制は難しい。

 

「そんな奴らの統制は難しいんじゃないのか?」

 

その質問にいつものような感じで、

 

「いえ、魔物の社会は完全実力主義ですので、実力が認められていれば、簡単に済みます」

 

魔物に社会ってあったの!?

てっきり無法かと思ってた。

てっきり自由社会かと思ってた。

 

「なので、あとは覚悟と器、さらなる実力を示せばよいだけでございます」

 

「また実力を示すのか?」

 

「誰よりも強いという証明を知らしめれば良いという事です」

 

何度も殺しているけど、それでも足りないとは、実力主義なのは本当のようだ。というか、やり過ぎな気がする。

その前に、覚悟と器か。

なんの事だ?

 

「覚悟と器とは、一体どうすれば良いんだ?」

 

「覚悟は王となる覚悟の事です。器とは、魔物を受け容れる器の事です」

 

「王となる覚悟とはなんだ?」

 

何?俺を魔王にでもしようとしているのか?

 

「王とは、魔物の頂点に立つ者を指します。これは〈エリアボス〉とは別の扱いのものになります」

 

「それになるにはどうすれば良い?」

 

「条件は〈エリアボス〉である事が条件ですので、条件は満たしております。あとは、実力を示して下さい」

 

「また実力!!」

 

実力で解決させすぎだろ!

実力主義だと簡単で良いが、これは行き過ぎている気がする。いや、行き過ぎだな。

 

「器は、実力を示している最中に勝手に計られます。その器がこの森の魔物を受け容れる事が出来れば成功です」

 

今度は内面的な問題か。

この森全ての魔物を受け容れる器か。できるかわからんが、やってみるしか無いな。

すると、〈ドライアド〉が、

 

「そんなに難しく考える事はありません。器といっても、半分は器量ですが、もう半分は実力ですから、もう達成しているも同然です」

 

「…………」

 

もはや絶句するしか無い。

器量も実力が関係するってどういう事だよ……。

魔物の社会って実力主義とは聞いていたけど、どうなってんの?

内面的な問題も実力で解消できるって、現実的に考えるならば、ありえない。そして、意味がわからない。

ハァ。考えないようにしよう。前の世界の常識が通用する世界では無い。

 

「それで、大体理解したが、後は何をすれば良い?」

 

「実力を示していただければ。この辺りにこの森の魔物では太刀打ちできない強力な攻撃を放って、魔力で魔物に自分が上位種だと訴えかければ、完了です」

 

「攻撃まではわかったが、魔力で魔物に訴えかけるのは、魔力を辺りに撒き散らせばいいのか?」

 

「はい。それで大丈夫だと思われます」

 

「わかった。んじゃ、早速始めるか。できるだけ遠くに離れていてくれ。死にたくなければ」

 

「ハッ。了解いたしました」

 

そう言うと、この森から急速に離れていく。

その間に、俺はどんな技を放つか思考を巡らせていた。

どうせやるならば派手に強力に周囲を消し飛ばそう。

となると、生半可な技ではなく、絶対的な技を放つか。

そんな事を考えながら、思考を巡らせていくのであった。

 

 

五分が経過したと思われる頃、ある程度のイメージを終えて、技を放とうとしていた。

危惧があるとすれば、環境問題だろうな。

まぁ、今は目の前の事を済ませよう。それが、一番いい選択だと思うから。

 

「フッ!!」

 

短く、しかし勢いよく息を吐き出した瞬間、周囲何十メートルの範囲が凍りついた。

左手を空に掲げ、

 

「大地を切り裂き空を灼け」

 

イメージを忘れないように、予め決めておいた言葉を言う。

その瞬間、燃え盛る灼熱を纏った竜巻が幾つも現れた。

それが通った後には、焼かれ、切り裂かれた残骸が幾つもできた。

 

「大地は裂け、天は裁きを下す」

 

今度は、大地が急に裂け、空からは、赤き雷が幾重にも降り注いだ。

安全な逃げ場など無かった。

 

「我が手に宿りしは、万物を無へと帰す黒き白光(びゃっこう)

 

すると、右手に黒くあり、白く光る魔法が宿った。

それを、前方に放つ。

ピカッ!と、白く光った後に残ったのは、俺が放った魔法だけだった。

奥の方は残っているが、周囲は炎の竜巻が荒れ狂い、今もなお、大地は裂け、隆起し、赤き雷が大地を砕く。

まさに、この世に現れた地獄そのものだった。

そろそろかな。

魔力を周囲に放ち、魔物に訴えかける。

 

「俺が最強だ」

 

と訴えた結果、

 

『魔物の王となりました』

 

久しぶりに聞く、無機質な声だった。

 

『スキル〈魔物統制〉を習得しました。スキル〈魔王覇気〉を習得しました。スキル〈魔物創造〉を習得しました』

 

……なっちゃったか。とうとう魔王になってしまったか。王って魔王の事だったのか。

魔物の王。略して魔王。こんな感じか?

なんにしたって、俺がこの森の王になったのは確認できたし、成功だな。

新しいスキルの確認をしなければならないな。

 

〈魔物統制〉

配下の魔物を従わせ、まとめる事が可能となる。効果の上限は使用者の風格、器量、実力により変動する。

 

〈魔王覇気〉

敵を震え上がらせ、味方の指揮を高揚させる事ができる。効果の上限は使用者の風格、器量、実力により変動する。

 

〈魔物創造〉

魔物を創り出す事ができる。

 

中々に強力なスキルだな。

王にのみ許されたスキルって感じがする。

使用者の内部を参照するスキルの類か。俺の場合、九割九分九厘実力が占めているんだろうな。

恐怖政治よりみんなで意見を出し合いながら、より良い未来を選んでいきたかったな。

いや、実力しかなくとも、恐怖政治以外の道もあるはずだ。

というか、今も周囲で暴威を振るい続ける魔法を止めなければ。

だが、普通の消し方じゃ今は面白くない。ここは、手っ取り早く、自分の力を見ておきたい。

ここは、刀と魔法を使って消し飛ばそう。

理由はなんとなく格好良さそうだからだ。

イメージは、アニメで見た事ある様なシーンを脚色させてもらうか、再現させてもらおう。

刀を構える。

それに魔法を纏わせるイメージをする。

その刀は、禍々しい黒色をしていた。黒い魔力を纏った事で、黒色であり禍々しい雰囲気を出していた。

 

「光を裂き、闇を切り裂け」

 

〈一閃〉を発動させ、〈村正・獄式〉自体の能力を発動させ距離を無視した魔法斬撃を放つ。

 

ヒュン……

 

風をきる音が聞こえた。

それは一つの様に聞こえるが、斬撃は幾重にも放たれていた。

その斬撃は、一瞬で十発。その全ては、空間を切り裂き、魔法を一瞬で消し飛ばした。

その光景は、地獄絵図を一瞬で切り、英雄とも、化け物とも見える。

 

 

数分後、項垂れている人が、森の残骸の上に立っていた。

 

「やり過ぎた………」

 

魔物を統制させる為とはいえ、森の三分の一を更地に変えてしまった。

やり過ぎた。環境破壊を広範囲にわたってやってしまった。

俺がやった事を冷静になって考えたら、巻き添いを食らって死んだ魔物もいるだろう。

しかし、やってしまった物は仕方がない。これは、魔法でどうにかなるだろう。

 

「お見事です。これだけの事をすれば、〈魔王〉えの覚醒もなされた事でしょう」

 

〈ドライアド〉の女性が側にやってきた。

 

「王とは聞いていたが、〈魔王〉とは聞いていないぞ…」

 

疑問をぶつけてみた。

こいつは、王とは〈魔王〉の事だと知っていたはずだ。

こいつは、知っておきながら黙っていた可能性がある。

俺はその理由が知りたい。

 

「すみません。それを知れば、断る可能性があったので……」

 

申し訳なく話しているが、俺はまだ聞きたい事がある。

 

「何が目的だ」

 

それだけの訳が無さそうだった。

俺は犠牲を強いる事があっても、それが正しいと思えば俺は断る事は無い。

こいつは何か裏があると踏んでいる。スキル〈看破〉を発動させる。

 

「なんの事でしょうか?」

 

嘘だ。

スキルでわかる。

 

「嘘だな。何が目的だ」

 

新しく手に入れた〈魔王覇気〉を使い、問いかける。

 

「ッ!!さすがです。………世界征服と私が言えばどういたしますか?」

 

嘘だな。世界征服の部分はこいつは考えていない。

 

「嘘だろうが、その時はお前を殺す。……それで、何が目的だ」

 

静かに、冷徹な声で問いかける。

 

「……精神生命体は歳をとりません。長年生きていますと様々な〈魔王〉を見る事があります」

 

言いづらそうにしていたが、意を決した様だ。

 

「先ほど述べた世界征服、人間との共生、復讐、世界壊滅など、様々な目論見がありました」

 

やりそうだな。人間でも、魔物でも。

 

「ですが、どれにも知性と理性が足りませんでした。〈魔王〉になる時に魔物になってしまうからです」

 

えっ。魔物になってしまうの。

 

「ですので、魔物にならなければそのまま配下に、魔物になれば私を殺してもらおうと思いました」

 

嘘は言っていない様だ。

という事は、本当に魔物になる可能性はあったし、死のうともしていた様だ。

 

「今まで隠し立てして申し訳ありません。償いとあれば、煮るなり焼くなり、殺すなり、体を弄ぶなり、好きにしてください」

 

俺にそんな事ができるとでも?できるわけが無い。

据え膳食わぬは男の恥と言うが、この様な美人な人は俺みたいな奴より、いい奴がいるだろう。だから、できない。

ヘタレと言いたければ、言うがいい。

俺はその行為が正しく無いと思ったからしないだけだ。

 

「そんな事はしない。それで?これからどうする」

 

なんとなく予想はつくが、俺の予想を上回るかも知れない。

 

「わかっていますよね。私がこれからどうするか」

 

そう言うと、俺の前まで来て跪いた。

 

「我が忠誠を御身に」

 

どうやら、予想は当たっていたらしい。

こんな美人の部下ができるのは嬉しい限りだ。

それと同時に彼女の自由を奪ってしまいそうなので、そこの所の話をした方が良さそうだ。

 

「部下となった訳だが、基本は自由にして構わない」

 

すると、

 

「では、この場所に城を作りませんか?」

 

「え?」

 

城ですか。作る必要性を感じ無い。

 

「作る必要性としては、まずは、力を見せつける為です。二つ目は、やはり生活できる場所があれば便利かと。三つ目は、この更地を有効活用できると思われますので」

 

順に指を三本立てて言われた。

確かに、一つ目を除けば、考える余地はあるかもな。

この〈ドライアド〉の衣食住を整備しなければならないな。

そう考えると、家か城を建てる必要がありそうだ。

 

「城を周りから隠す事は可能か?」

 

「はい。可能です」

 

即答か。

やはりこの世界で長生きした人は違うな。

 

「では、城を作るか。んで、何年かかりそうか?」

 

「一日で完成できます」

 

なんなのこの世界は?城が一日でできるとか、訳が分からん。

詳しく聞くと、

 

「魔法を駆使すれば、すぐにできます」

 

との事です。この世界の家の価格を聞いておきたいところだな。

辺りはすっかり暗くなり、何時もならば、魔物が襲って来ていたであろうが、今日襲われる事は無かった。




強敵を出すまで、まだ時間がかかりそうな気がする。
それまで、強敵と呼べそうな奴は出て来ません。(絶対いつか出します。)
ご意見、ご感想、ご指摘よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな仲間

しっかりとこれから先の事を考えなければ。
ゆっくり見ていってください。


ヒビ割れた箇所を修復しながら、城とはどういう物なのかを聞いておく。

 

「お前はどういう城を想像しているんだ?」

 

〈ドライアド〉は暫く考えると、

 

「取り敢えずは、広く、大きなもの、としか考えておりません」

 

随分ザックリだな…。

 

「じゃあ、最初はどんな城にするか決めるか」

 

「はい」

 

それから、暫くの間意見を交換しあい、設計案はこんな感じとなった。

・外壁は黒く。

・素材は、魔力を帯びた物を使用する。

・取り敢えず広く。

・周囲から見えなくする魔法を施す。

・部屋数もできるだけ多く。

・王の間を作りたい。

・魔物の特訓場を設けたい。

・空間を歪ませて、迷宮にしたい。

などの案が出て来た。

無論、できるだけ設計案通りに作りたいが、具体的なものが出て来てない上に、空間を歪ませて迷宮って、何がしたいの?

しかも、完成したものを想像したら、RPGとかに出てくる魔王城じゃん!

俺も魔王だが、そこまで魔王らしくなくていいんだけど。

魔王と勇者が共闘して巨悪を倒すくらいがちょうどいいんだけど。

まぁ、愚痴っても仕方ないか。

 

「んで、素材はどうするんだ?」

 

俺は石材や鋼材、その他建築に使われそうな材料を知らない。

それすら魔法で作るのか。はたまた、自分達で集めに行くのか。

前者ならば、この場でできる。

後者ならば、時間がかかりそうなので、ミコトと冒険者の依頼をこなしながら集めよう。

時間は腐る程あるんだ。焦らずに地道にやっていこう。

 

「魔法で作る部分もありますが、集める必要がある物もあります」

 

両方か。面倒ではあるが、不可能ではないだろう。

 

「どういう素材を集めればいい?」

 

単純に考えるならば、石材や鋼材だろう?

だが、それらは魔法で作れそうな気がする。多分。

 

「そうですね………。魔石と武器と人材。それくらいでしょうか」

 

そうか。………全くわからん。

何をしようとしているのか皆目見当もつかない。

 

「それで何を作る気だ?」

 

「魔石は〈インビジブル〉を広範囲に使用する装置を。武器は迷宮で罠として。人材は魔物を束ねる事ができる者が、もしくは、知能が高い魔物が欲しいところですね」

 

なるほど、確かに一つ目と三つ目は必要かもしれない。

 

「魔石は俺が持っている物を使えばいいだろう。しかし、人材か…。魔物を束ねる物好きはいないだろうから、必然的に知能の高い魔物になるだろう」

 

「そうですね。ですが……」

 

その無言で察する。知能の高い魔物は少ないのだろう。

まぁ、それもそうか。ここの魔物はレベル999だけど、集団で行動する事しかできない。

あれ?以外に知能あるんじゃね?

 

「ここの魔物の知能は他と比べてどんな感じだ?」

 

暫く考え込むと。

 

「少し高いですが、足りませんね。〈種族〉関係なく集団で行動していますが、十数体程。二十、三十数体規模を束ねるのと、連携ができそうに無いので、足りません」

 

やはりか。

このエリアの魔物が知能が高い部類である事を知って少し嬉しかったが、解決にはならない。

 

「何人ほど必要なんだ?」

 

「三名ほどかと。私を含めると、二名となります」

 

「そこに俺を入れてあと一人か……」

 

「それはできません」

 

何で!?

速攻で否定されたんだけど。何でできないの?

 

「主人様はこの森の魔物を全て束ねる御方。ので、一部隊では無く、全ての部隊を束ねて頂く必要があります」

 

「俺が全ての部隊を束ねるのか?」

 

「左様でございます」

 

これも魔王になった運命か。

頭が痛くなってくる。

一ヶ月ほど前は普通の高校生だったのに、今となっては魔王だ。

向こうでの友達は元気にしているのかな?元気だといいな。

今の現状から逃げても仕方がない

 

「理解した。〈魔物創造〉で俺が魔物を作り出せば、知能が高い魔物は創れるか?」

 

「主人様が創り出せば、確実に創り出せます」

 

即答ですか。

俺を買い被りすぎ……でもない様な、買い被りすぎている気がする様な。微妙な感じだ。

 

「どんな魔物がいいんだ?」

 

「知能が高そうな魔物を、人型でも問題ないはずです」

 

人型の魔物。

目の前にいる〈ドライアド〉もその一種なのか?

 

「お前は魔物の一種なのか?それとも、人に属するのか?」

 

「そういえば、私の〈種族〉を言っていませんでした」

 

そういえば、そんな事を前に言っていたな。魔王になったりしていたから忘れてた。

 

「〈ニンフ〉それが私の〈種族〉でございます。魔物に属していると思われます」

 

〈ニンフ〉か。聞いた事がないな。

というか、この世界の〈種族〉について知らないんだけど。

 

「〈ニンフ〉についての情報はあるのか?」

 

〈ニンフ〉についての情報は知っておいた方がいいと思ったのだが、

 

「いいえ。私も長年生きておりますが、この様な〈種族〉は聞いた事もありません」

 

知らないか…。

稀少な〈種族〉という事か。

進化的なものが起こったという事か。この人、人?魔物が知らなかった様だし、これが一番有力だろう。

話を戻そう。

俺が〈魔物創造〉を使えば、一つの問題を解消できるそうだ。

 

「話を戻すが、創り出す魔物は二体でいいのか?」

 

「はい。その数であれば、この森の魔物を効率よく統率できると思います」

 

効率よくか。

俺には勿体無いくらい、できる女性の様だ。

そんな部下を持てて、俺は幸せ者です。いや、この世界に来れただけで幸せ者か。

 

「じゃあ、始めるぞ」

 

目の前に魔法陣があらわれる。

想像するは、二人の人間。

知能が高く、魔物を統率できる才能を持った人間。

それ以外の想像はいらないだろう。

魔法陣が一層輝きを増す。

そろそろだな。

そして、目も開けられない程眩しく光る。

 

目を開けると、目の前に二人の人影が現れていた。

一人は、浅黒い肌に長い白髪。鋭い眼光は肉食獣を彷彿とさせる。その顔付きから男だと思う。

もう一人は、燻んだ短い白髪、不敵に笑っている口元、顔付きから女だと思う。

 

「お前が俺を生み出し者か」

 

「貴方が私を生み出した者ですか?」

 

二者二様の言葉を聞く。

どうやら、男女の感覚はあっていた様だ。

間違っていたら、驚きが隠せなかっただろうけど。

 

「俺がお前達を生み出した者であっている。。まぁ、よろしくな」

 

「そうか。俺はお前の牙だ。お前の前に出て来る敵は、俺が引き裂いてやる」

 

そう言って立ち上がった。

 

「頼もしい限りだ。よろしく頼むぞ」

 

そう言って、手を差し出した。

 

「?」

 

どうやら意味がわからないらしい。

 

「握手だ。手を握り合うだけだ。出会った時や、歓迎する時にする行為の一つだ」

 

それで納得した様で、差し出した手を握り合う。

 

「改めて、よろしくな」

 

「こちらこそ。それで、俺は何をすればいい」

 

握手を解き、単刀直入に聞いてきた。

遠慮が感じられないので、こちらとしては、話しやすい限りだ。

 

「魔物を二十数体〜三十数体を束ねてもらいたい」

 

「楽勝だな」

 

そう言って、自信に溢れた笑みを浮かべる。

どうやら、心配しなくて良さそうだ。

んで、もう一人は、

 

「…………」

 

目を閉じて、両手を顔の前で合わせていて、何かに祈っている様な姿勢をしているのですが、大丈夫でしょうか?

魔物……魔物?の宗教なんて聞いた事ないし、この世界にどんな宗教があるかなんて俺は知らない。

すると、目を静かに開けた。

 

「終わりましたね。私は、貴方を神と思ってもよろしいでしょうか?」

 

………なんだろう。この、人の話を聞いてくれなさそうなオーラは?

 

「沈黙を肯定と受け取ります」

 

「待ってほしい!いきなり神と言われても困るし、俺は神では無い」

 

その言葉を言うと、

 

「貴方は神ですよ。なぜなら、私達はきわめて人に近い形で現れました。本来魔物とは、人ならざるもの。人に近い魔物はいても、見えなかったりするのが普通ですから」

 

〈ニンフ〉になる前の彼女がいい例だろう。

〈魔物創造〉でも、人型に近い魔物を創るのは、難しいだけで、できない訳では無い気がするのは、俺だけだろうか?

 

「それを貴方は、断片的な想像だけで私達を生み出した。さらに、人を生み出したのは神だとすれば、私達の神は貴方です」

 

笑みを浮かべながらそう述べられた。

その笑みは、裏がありそうなだと思わせるほどの何かを感じさせた。

 

「何か違う気がするが、まぁ、よろしく」

 

「ええ。こちらこそよろしくお願いします。我が神よ」

 

神は他にいるんだけどな。

俺をこの世界に連れてきたあの神様が。

そういえば、ミコト達は大丈夫かな?

 

 

 

 

 

時は少し遡り、魔境〈哀しみの森〉が遠くに見える場所。

 

「おいおい。なんだよ今の……」

 

ミコトが魔境の方角を見ながら、冷や汗を流しながら言った。

 

「彼が力を使ったんだろうけど……。やっぱり隠していたね」

 

さも当然だろう。という感じで言っているが、その声は少し震えていた。

それも当然だろう。遠目であるが、地獄を見ているも同じ光景を見ていたのだから。

いや、天変地異を思わせるそれは、世界を崩壊させんとするが如く、巻き起こった超常の威力の魔法の数々。

それが一人の手によって引き起こされたのであれば、畏怖するのは当然だと言えた。

 

「異常すぎる。なんであんな化け物が今まで人目に付かなかったのかが知りたいものだね?ねぇ、ギルドマスター」

 

「それは、私も知りたいよ」

 

二人がそんな会話をしながら、森の中を歩いていた。

とある場所を目指して。

 

「ここが例の場所だな」

 

そこは、いたって普通の森だった。

 

「ここが、君達が盗賊に襲われた場所なんだね?」

 

「ああ。確かこの辺りだった」

 

その場所は、マグナとミコト、レオナが盗賊に襲われかけた場所だった。

そこをしばらく歩いていく。

 

「血が大量に流れているけど、魔法は使ったかい?」

 

「使ったと思うけど」

 

「種類は?」

 

「氷属性だと思うぞ。いきなり冷え込んだから」

 

それを聞いた途端、シルヴィアの顔が険しい顔に変わった。

 

「おかしい。死体が燃やされたでもなく消えた。という事かい?これは」

 

「火属性は使われていないと思う。明かりが見えなかったし」

 

「思う。じゃなくて、もっとはっきりしてもらいたいんだけど」

 

それを聞いてミコトは、困った顔をして

 

「仕方ないだろ。あいつが私に見えない様に使っていた可能性があるんだから」

 

「それもそうか」

 

それを聞いて、シルヴィアも素早く手を引く。

理由は単純で、マグナならやれそう。と思ったからである。

 

「彼は、なんらかの手段を使って死体を消した。という事がわかったよ」

 

「いやいや。待ってくれよ。奴はその後、火葬したんだぞ。だから、消えている様に思えるんだって」

 

それを聞いて、シルヴィアは溜息を吐いて。

 

「これだけの血が流れた死体を引きずったなら、跡が残るはずだよ。それとも、火は複数起こったのかい?辺りを焼き尽くすほど大きかったかい?」

 

それを聞いてミコトは黙ることしかできなくなった。

 

「君がやる事は彼の監視だよ。いざとなったら、その大剣で背中から思いっきり切れ」

 

「でもなー。あいつが無闇に人を殺す奴には見えないんだけどなー」

 

「そうとも言い切れない現実があるんだから、用心するに越した事はないよ」

 

「わかったよ」

 

それを言って、帰ろうと踵を返す。

だが、その時

 

「期待してるよ。〈太陽の剣姫〉さん」

 

それを聞いた途端、ミコトが一瞬で大剣を抜き、シルヴィアの首筋に大剣を当てていた。

その早技にシルヴィアもついていけなかった。

 

「その名で私を呼ぶな」

 

その気迫は並みの者ならば、気絶してもおかしくは無いレベルだった。

 

「これからは呼ばないよ。ミコトちゃん」

 

両手を上げながら、そう言った。

 

「ならばいい」

 

その姿は、先ほどまでの飄々とした雰囲気は無かった。

変わりに、他を圧倒する殺気が漏れ出ていた。

大剣を背負い直し、街の方角へと戻っていくのであった。

シルヴィアは首筋にできた切り傷を撫でながら、

 

「危なかった。本気で殺されるかと思った」

 

そんな事を言って、ミコトの後に続くのであった。




面白かったですか?面白ければ幸いです。
ご意見、ご感想、ご指摘よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔王城完成

面白ければ幸いです。
ゆっくり見ていって下さい。


とりあえず集める物は集めた。人材もいる。あとは、居住空間だけだな。

 

「城の外見はどうする?」

 

未だ決まっていなかった事を聞いてみる。

二人から、四人に増えているので、意見も多くなるだろう。俺はそれをうまく統合して納得するものにすればいい。

そう、思っていたのだが、

 

「主人様にお任せいたします」

 

「お前に任せる」

 

「神の御意志にお任せいたします」

 

俺に丸投げされてしまった。俺が魔王城の外見なんて思いつくはずが無いだろう。

ならば、イメージでも聞いて、それを再現すればいい。

 

「魔王城と聞いて思いつくイメージってある?」

 

「黒くて禍々しい。というイメージですかね」

 

「強そうなイメージだ」

 

「神々しくあり、禍々しくもある。神秘的で、妖しい雰囲気を漂わせているイメージです」

 

うーん。一人が言っているイメージが全くわからん。

しかし、イメージだけで建物の外見はわからんぞ。

これが、策士策に溺れる。という事か。

策と呼べるものでは無かったけど。細かい事はどうでもいいだろう。

 

「イメージとしては、黒くて禍々しくもあり神々しくて、強そうで、神秘的で妖しい雰囲気。という事だな」

 

自分で言っていてなんだが、想像が全くできない。

いや、深く考えるからダメなんだ。そうだ。なんて事はない。前の世界の歴史的建造物の中から、合いそうなものに似せればいいんだ。

 

「んで、どうやって城を作るんだ?」

 

どうせ、魔法でパパッと作るんだろうが、聞いてみる。

 

「魔法で作る方が早いですね」

 

だろうけどさ。

まぁ、俺もその方法で作る気だったけどさ。

 

「魔法の種類は、土属性でいいか?」

 

「はい。鉱物や石材の想像を含めれば、鉱物などで創る事が可能です」

 

魔法ってなんでもありだな。

今更だが、魔法ってどういう原理なんだろう。魔力を使った超常能力程度しか俺にはわからない。

力はあっても知識はどうにもならない。

今そんな事を考えても何にもならない。

今やるべき事は、城の外見を創る事だ。内装は、後付けで大丈夫だろう。何せ魔法だから。

一応聞いておくか。

 

「内装は外見が出来てから皆で話し合うぞ。それでいいか?」

 

「異論はありません」

 

「特に無い」

 

「それが神の御意志だと言うのなら」

 

一人の頭のネジが数本外れていそうで心配になる。

そんな事は置いといて、魔法を発動させる。

発動させるは、〈獄土属性魔力魔法〉。理由はこっちの方が良さそうだから。

想像するは、五つの塔。四方に四つ、中央に一つ。外壁に囲まれた堅牢な城塞。

すると、地面が隆起し黒い鉱物でできた何かが、地面から続々出現し、各々意思があるようにひとりでに動いてゆく。

それは、徐々に形を成し、想像通りの形を形どってゆく。

徐々に徐々に大きくなり、数分もする頃には、立派な城塞と呼べるようなものができていた。

教会の様にも見える塔が五つ。それを囲む城壁。立派な魔王城じゃないか。

 

「こんな感じの見た目で大丈夫か?」

 

「完璧でございます」

 

「見事だ」

 

「おお。この様な素晴らしき建造物は世界を見ても二つとして無いでしょう!」

 

納得いく様な作品だった様だ。中身は何も無いどころか、通る穴の一つも無いけど。

それより、こんな巨大建造物を創ったから思い出したけど、周囲から丸見えじゃん!

今は深夜だから誰も見ていないと思うけど、早急に用意した方がいいだろう。

 

「確か………〈インビジブル〉の魔法を発動させる装置は何時間でできる?」

 

そう言うと、〈ドライアド〉改め〈ニンフ〉の彼女が、魔石を取り出し

 

「こちらに」

 

その魔石を差し出してきた。その数五つ。

ただの魔石に見えるが、よく見ると、魔法陣の様なものが描かれていた。

それを受け取り、

 

「これを何処に付ければいい?」

 

「塔の頂上に埋め込めば宜しいかと」

 

それを聞いて、急いで塔の頂上に飛ぼうとしたが、制止の声がかかった。

 

「待ってください。まずはその魔法陣に私達の魔力を流し、私達には見える様にしましょう」

 

焦っていた様だ。少し考えれば、考えついただろうに。

まぁ、魔法について何も知らないというのが、あったかも知れないが、これは考えついたはずだ。

 

「すまない。焦っていた様だ」

 

それを聞いて少し困った様な顔をして、

 

「謝らないでください。貴方は私達の王なのですから」

 

「すまな……善処する」

 

一瞬言いかけたが、仕方ない事だと割り切ってほしい。

それから、俺たちは魔力を装置へ流し、五つの塔の頂上に埋め込んだのだった。

自分が見えている為か、見えなくなっている実感がない。

 

「まずは城門を創ろうか」

 

東西南北の四箇所に城門が設けられた。

意味があるのかわからないが、一応創っておく。

 

「次は内装だが、五つの塔のどれから手をつける?」

 

「質問を宜しいでしょうか?」

 

〈ニンフ〉の彼女がその言葉を言った時は、驚きと嬉しさが湧き上がった。

驚きは予想外だったから、嬉しさは、自分で考えて意見を述べてくれることにだ。

 

「許す」

 

俺がこんな言葉を言う時が来るとはな。

 

「では、なぜ塔を五つお創りになられたのですか?塔を一人一つ管理しても一つ余ってしまいます」

 

「………」

 

見栄え的に五つでいいかな。的な軽い気持ちで創っていました。

これは正直に話して、どうしようか考えよう。

 

「見栄えが五つだといいかなと思い、この様な感じになってしまった」

 

呆れられたかな。それは俺の心の中で割り切るしかない。

 

「確かに見た目は全員の要望を満たすものですので、なんとも言えませんが。そうなると、あともう一人必要になりますね」

 

また人材を増やす気ですか。正直、君達を指揮できる自信は俺には無いよ。

 

「俺がまた生み出す方針か?」

 

「お願いします」

 

もう一人増えたところでなんだ。俺はやれば多分できる奴だ。だから大丈夫だ。

などと、自己暗示をかけながら自分に自信を持たせ、〈魔物創造〉を発動させる。

目の前に魔法陣が出現し、生み出す魔物の想像を働かせる。

今欲しい人材は、魔物を束ねる事が出来るのは勿論の事、何か欲しい能力的なものは。

気配察知に長け、気配を消すのにも長けた人材か。

それならば、この城の警備は万全の様に感じる。

想像は決まったな。ならば、そういう人材を創造しよう。

魔法陣が輝きを増してゆく。

さらに輝きを増し、目が開けられなくなる程眩しくなる。

 

魔法陣の中心に、銀にも見える白髪、髪型のせいか犬の様な耳が生えている様に見える。綺麗に整った顔立ちをした女性が佇んでいた。

 

「貴方が私の主人か」

 

あの二人とは違う始めの言葉を聞いて、

 

(三者三様だな)

 

なんて事を思ったが、目の前の事に向き直る。

 

「俺がお前の主人であっている」

 

最後に「多分」と付けたかったが、多分、後ろの人が許さないだろう。

 

「では、私が貴方を陰ながらお守りしよう」

 

頼もしいが、なぜかこれから先、誰かに見張られそうな予感がするぞ。気のせいだな。気のせいだといいな……。

 

「歓迎させてもらうぞ。早速だが、この城には塔が五つある。中央の塔は俺として、他の塔を誰にするか決めてもらいたい」

 

ちゃっかり中央の塔を自分のものにして。とか思った所があるが、俺が何を言おうと中央の塔にさせられるに決まっている。

わかるんだよ。なんとなく分かるんだよ。

 

「東西南北。ですから、加わった順にしてみるのはどうでしょう?」

 

「そうだな。その方がわかりやすい。という事は、俺は西だな」

 

「神の時間を無駄にする訳にはいきません。その案にしましょう。私は南ですね」

 

「では、最後に加わった私は北ですね」

 

決まった様だな。では、内装をどうにかしようか。

 

 

まずは、中央の塔に扉を設け、そこから、王の空間。というものを〈ニンフ〉から教えられるがままに作っていった。

だが、しっかりと自分なりのアレンジは加えているつもりだ。

そうで無いと自分の空間では無いからな。

あれよあれよと言う間に、直ぐに完成してしまう。

それは、魔王がいそうな空間で、いかにもラストバトルが繰り広げられそうな空間だった。

それが最上階の感想で、これより下の階は、空間を歪ませて迷宮を作るとの事だ。

全長20階建ての塔。その内19階まで迷宮と言う名のダンジョン。

そして、待ち構えるは俺。ラスボスじゃねーか!!

 

その後、他の塔の内装を本人の希望通りに創っていった。

尚、東西南北の塔は15階建てほどだ。

 

〈ニンフ〉の場合。

樹木が生い茂り、部屋と言うより、森の中という感じがする空間に仕上がっている。

さらに、その樹木は〈ニンフ〉の命令に従い、自由に動く仕様になっている。

 

長い白髪、浅黒い肌をもつ男の場合。

正々堂々戦う場所。というのがしっくりくる。

相手も自分も小細工ができない、何も無い場所。あるのは、敵と己のみ。という感じだ。

 

燻んだ白髪、不敵な笑みを浮かべる女の場合。

予想通り、教会の様な作りだ。

何故かここだけ、他の部屋と違い明るく見えるが、それは、彼女の内装のセンスが良かったのだろう。

ここで祈りをしている姿は様になるが、その対象が俺なだけに、どうすればいいかわからない。

 

銀の様に見える白髪、犬の耳が生えている様に見える髪型、綺麗に整った顔立ちの女の場合。

こちらは、戦いの場。という感じだ。

前の奴と違うのは、所々に隠れる場所があり、高所があり、様々な戦略が組めそうな地形だった。

 

と、この様な具合だ。

三者三様の様な形で、それぞれの個性が表れていた様な感じだ。作っていて飽きない。

そして、作っていた最中に重大な事に気がついた。

 

「お前たちの名前ってある?」

 

その言葉に、全員が、

 

「ありません」

 

「無いな」

 

「神に仕える身として、名前が無いのは変でしょうか?」

 

「名前を付けるとしても、主人の身がもつか心配になるぞ」

 

全員に名前が無い。という事かな。

ならば、名前を付けたいが、一人、気になる事を言っていたな。

 

「名付けは何か危険な事があるのか?」

 

その質問にやはり〈ニンフ〉の女性が答える。

 

「名付けには、付ける魔物の力に見合った魔力を使用します。私達の力は、主人様のお陰で相当なものになっております。ので、今の状況での名付けは危険かと」

 

そういう事か。問題ないと思うな。

魔力総量を解放すれば大丈夫と思うが、明日まで待って魔力が全回復してから名付けを行おう。

 

「そうか。では、名付けは明日に行うとして、他にするべき事はあるか?」

 

各々がしばらく考えて、

 

「魔物を集めて、四部隊に分ける事が残っております」

 

その言葉を聞いて、俺含めて全員が、確かに。という顔をした。

 

「では、此処にこの森の全ての魔物を集めれば良いのだな」

 

「左様でございます」

 

その言葉を聞いて、魔力を周囲に放ち、

 

「この場に集え」

 

という事を訴えかける。

すると、大地が震える。その振動は、多くの魔物が一斉にこの場に向かって来ている証拠だ。

すると、三秒と経たずに圧倒的な数の魔物がこの場に集う。

 

「では、部隊分けはお前達に任せるが、それでいいか?」

 

「お任せ下さい」

 

「問題ない」

 

「神の頼みとあれば」

 

「承知した」

 

この数の魔物を分けるのは、骨がおれるだろうが、こいつらならば大丈夫だろう。

 

そして、魔物分けは終わった。

一人二十五体程を束ねる事になった様だ。

さらに、各々束ねやすい魔物を選んでいる様だが、魔物の性格なんぞわかるわけがない。

 

〈ニンフ〉の場合。

俺に対する忠義が高い魔物を選んでいると言っていた。

 

長い白髪、浅黒い肌をもつ男の場合。

血気盛んで、戦闘を好む魔物を選んだと言っていたな。

 

短い白髪、不敵な笑みを浮かべる女の場合。

俺に、信仰に近い何かを思っている魔物を選んでいると言っていた。そんな魔物いるのかよ。と思ったが、いるらしい。

 

銀の様に見える白髪、犬の耳が生えている様に見える髪型、綺麗に整った顔立ちの女の場合。

比較的冷静な魔物を選んでいるらしい。だが、冷静と言われてもピンとこない。

 

この様な感じで分けている様だが、俺には違いが全くわからない。何せ、三種類の同じ顔があるのだから。

 

「決まったな。では、今日はもう遅い。明日に備えて寝るか?」

 

その言葉に全員が首を横に振る。

代表して〈ニンフ〉の女性が言ってくれた。

 

「魔族は基本的に睡眠を必要としません。ですので、安心して御就寝なさって下さい」

 

睡眠が必要なのは俺だけか。

それだと何か悪いが、そういうものなんだろう。

 

「分かった。まぁ、頼んだぞ」

 

そして、俺は俺が管理する塔に戻ろうとして、城全体を見た時、とある事を閃いた。

 

「そうだ。明日、俺と戦うか?」

 

「「「「!」」」」

 

その言葉に全員が少なからず、驚いている様だ。

 

「嫌ならば別にいい。今し方思いついただけだからな」

 

その言葉に四人はそれぞれの反応を見せた。

 

「いえ、私の今の力を計るチャンスですし、主人様の力量の底を覗けるかもしれませんので」

 

などと、いつもと変わらぬ表情で事務的な口調で言われた。

 

「いいだろう。俺の力を見せつけてやる!」

 

自信満々の顔で、自分が負けるとは微塵も感じさせない表情と声色だ。

 

「なんたる幸運!私が神の力を間近で見て、感じる事ができるとは。なんという幸運でしょう!」

 

興奮した様子で、俺に祈りを捧げるポーズをしている。物凄く反応に困る。

 

「我が主人の力を見るチャンスであり、私の力を見てもらうチャンスでもあるわけですか。断る理由がありませんね」

 

楽しみだ。とでもいう様な声色だが、冷静さも同時に感じさせる声色でもある。

どうやら、全員やる気らしい。

 

「じゃあ、明日準備が出来次第戦おう。戦場は、この森を模した場所を俺が創る」

 

常人が聞いたら、頭がおかしい人と思われるだろうが、俺にはそれだけの力がある。

 

「んじゃあ、俺はあの塔で寝させてもらうわ。あー。そんな事は無いと思うが、策も無しで俺に勝てるなんざ思ってないだろうな?」

 

その言葉に全員息を飲む様な感じがした。

思いつきだが、中々に良かったと思う。特に、俺の力の半分でも出せれば、万々歳だろう。

と、その前にやらなければいけない事があった。

 

「武器は今から創るものの中から合う物を選んでくれ」

 

新しく加入した奴らがどういう武器を使うのか気になるな。

明日に思いを馳せながら、眠りにつくのだった。




最初と比べて、少しは腕が上がったと思います。
ご意見、ご感想、ご指摘よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦闘

ゆっくり見ていって下さい。


その場は、先も見通せぬ荒野だった。

かろうじて、目の前に誰かがいる事がわかる。

そして、そいつは多分、

 

「また会ったな」

 

そう挨拶をすると、

 

「当たり前だ。私が呼んだのだからな」

 

そう、目の前の奴は答える。

俺は以前こいつの存在がわからない。俺であって俺では無い存在。そんな事を言っていた。

全く意味がわからなかったが。

 

「なぜ呼んだ?」

 

「何、ちょっとした事を聞きたくてね」

 

「聞きたい事?」

 

俺は首を傾げる。

こいつが何故いるのかわからない現状で、こいつが聞きたい事がわからないからだ。

 

「単刀直入に言うが。私は復讐するためにお前の体を乗っ取る」

 

「何?」

 

俺は少し怒気を含んだ声を出した。

 

「ので、最終的にお前をここに呼んで、私がお前を倒せば完遂する」

 

こいつの目的は、俺の体を乗っ取り、自分の復讐を果たす。そういう事か。

 

「そして、ここに呼んだのはお前に聞きたい事があったからだ」

 

「なんだ」

 

こいつが今聞きたい事がなんなのか予想がつかん。

 

「率直に言って、この世界をお前は守りたいか?」

 

「は?」

 

俺は素頓狂な声を出した。

何を言っているんだこいつは。

 

「質問が悪かったか?」

 

「いや、いきなり言われたから頭の回転が間に合わなかっただけだ」

 

この世界を守りたいか。か。そんなものは決まっている。

 

「守りたいとは思わない」

 

「だったら……」

 

「だが、お前の復讐は止めさせてもらう」

 

「何?」

 

今度は向こうが疑問に思った。

 

「俺は、世界ではなく友達を守る為にお前の復讐を止めさせてもらう」

 

そう言って、俺は奴が言ってきた事を拒否した。

世界では無い。俺には、友達を守れる事が出来ればそれでいい。

 

「…では、お前とはいずれ戦う事になるだろう。手加減はせんぞ」

 

「望むところだ」

 

そして、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

目を覚ますと、黒い天井が見えた。それ以外は見えない。

辺りに目を回すと、先日創った部屋であった。

部屋の中には、〈道具生成〉で様々な毛皮を使って創ったベッドしかない。というか、他に置く物を思いつかない。

変な夢だが、確かに奴と戦う予感がある。

だが、今日はあの三人と戦う予定だ。

三人とも強さは強大だろうから、俺の特訓になるだろう。

負ける気はさらさら無い。

支度を早々に済ませ、外に出る。

迷宮は特定の人であればスキップする事が出来る。

尚、この仕組みを教えてくれたのは〈ニンフ〉の彼女である。あの娘が魔王の方がいいんじゃない?

 

(俺がする事は、せいぜいあいつらの上司として恥じないようにする事か)

 

上司らしくもないか。と呟き外に出るのだった。

 

 

外に出ると、もう全員集まっていた。

各々別の武器を持っている。

〈ニンフ〉の彼女は、両刃のロングソードを持っていた。

浅黒い肌に長い白髪の男は、自身の身長を越す、片刃のハルバードを握っていた。

短い白髪の女は、レイピアを装備していた。

銀にも似た白髪の女性は、弓を携えていた。

 

「じゃ、始めるか?」

 

それに全員が頷き、俺は、森の方を向き、〈獄界魔力魔法〉によって、周囲の空間を別のものに変える。

これで、暴れても大丈夫のはずだ。多分。

魔法自体は数度使っているのでわかるが、見た目に変化が無いのでイマイチわかりづらい。

 

「これで多分派手に戦っても大丈夫だろう」

 

俺は刀を抜く。ステータスは10万辺りに設定している。

 

「俺は三十秒くらい待った方がいいか?それとも、もう始めるか?」

 

「三十秒待っていただけますか?」

 

それを聞いて俺は目を瞑った。

すると目の前にいたあいつらが何処かに行った気がする。

 

 

三十秒が経ち、俺は目を開く。

辺りに気配は全く無い。だが、どこからか見られている気がする。

 

(いつも以上に気を張らないとやられるかもな。)

 

なんて事を思いながら、一歩目を歩き出すと。

 

ヒュンッ!

 

何かが風を切る音と共に何かが飛んできた。

それを寸でのところで避ける。

 

ドンッ!!

 

地面に着弾した瞬間、地面を大きく刳る。

それを見た瞬間、高揚感が体を駆け巡った。

それは弓がだしたとは思えない威力を出していた。

矢が飛んできた方角を見やり、疾走を開始する。その時に数本飛んできたが、どれも回避する。

すると、横合いから何かが飛び出して地面を叩き割った。それを急停止で止まった事で回避する。

その直後、飛んできた矢を迎撃しようと刀を振るった。だが、刀は確実に矢に当たった。当たったが刀をすり抜けて俺の肩に突き刺さった。

信じられないとばかりに肩に刺さった矢を見つめる。それは半透明だった。

普通の矢ではない事が見ただけでわかった。

それに気をとられていた瞬間、ハルバードが横から迫り来た。それを刀で受け止めて吹き飛ばされる。

木をいくつもなぎ倒し停止する。

未だに肩に刺さった矢を握り〈スペルブレイク〉を使った。すると矢はパリンとガラスが割れるような音と共に砕けた。

やはり魔法か魔力でできたものだったか。

 

「ウォォォ!」

 

正面から迫り来るハルバードを素手で受け止める。

 

「何!?」

 

それは微動だにせず、全く動かない。

そして、俺は握っていた奴を蹴り飛ばす。そいつは、木をいくつもなぎ倒し、見えなくなった。

これくらいやっても、こいつらならば大丈夫だろう。

飛んできた矢を今度は〈スペルブレイク〉を使い打ち落す。

この場合、何が一番面倒か。遠距離からの狙撃だろう。

疾走を再開する。矢が幾度も飛んでくるが、その尽くを打ち落す。

だが、近くになるにつれ迎撃がギリギリになっていった。

だとすれば、俺は迎撃を諦め、スピードを上げた。そして、一直線ではなく、的にならないように動く。

それを追うように矢が飛んでくる。

それらに当たる事なく突き進む。

それに少しばかり違和感を感じる。何処かに誘われているような感じがする。

この狙撃手は動いていても平気で当てそうな狙撃手だ。

だとすると、おおよそ三人がこの先に待ち構えていると思う。

そんな思考を巡らしていると、

目の前に植物がありえない感じで動いていた。

そんな中でも狙撃は続いていた。周囲の植物は動いているのに狙えるって、中々に化け物だな。

そして、植物が鋭利な枝先をこちらに向けて一斉に襲いかかった。

刀を斬りはらい、その先にあった植物が異常な爆発に巻き込まれた。あの業火の中ではいくら魔法でも消え去るだろう。

だが、その業火を抜けて鋭利な枝が俺に向かって勢いよく襲いかかってくる。

 

(獄属性か!?)

 

驚きに目を見開くが、〈獄属性魔力魔法〉を急いで使い、周囲を守るように障壁を作り出した。

その障壁に阻まれ、植物の攻撃は俺まで届かなかったが、獄属性を使えるのか。あいつら。

そうなると、多分あいつら俺を殺せるぞ。獄属性は魔法防御力を無視して攻撃できるだろう。

ならば、俺がステータスを全開にしても、魔法を当てる事が出来れば殺せるだろう。

だとすれば、面白い。

諦めかけていた、俺は死ぬ方法も、戦いを作業にするしかないと思っていた。

 

「フフフ……クハハハハ!」

 

笑い声を抑えられない。面白い。俺を殺せる存在がいたとは。

 

ゴウッ!!

 

周囲に黒炎が広がり、植物を全て焼き尽くした。

その様子に驚く人が三人。

地面を叩き割る勢いで踏み込み、目の前の〈ニンフ〉の彼女に斬りかかる。

それを寸での所で受け止められるが、勢いで吹き飛ばされる。

 

「ウオォぉぉぉぉぉ!!」

 

ハルバードが上から振り下ろされるが、大振りで避けやすい。

それを半身を引くだけで回避し、刀を男に向けて振ろうとするが、

 

「ハァァ!」

 

横合いからレイピアの突きが放たれる。

その軌道を逸らし、膝蹴りで吹き飛ばす。

ハルバードを刀で受け止め、ハルバードを弾き飛ばし、その瞬間に刀を振り下ろす。

だが、矢が飛来し俺の右腕に突き刺さる。

後ろに飛び、後退した瞬間に矢がいくつも降り注ぐ。それらを後ろに飛ぶ事で回避する。

移動する時に矢を砕き、治癒する。

その瞬間に真下から剣が切り上げられる。

 

「セイッ!」

 

それを上半身を逸らして回避する。その際、太腿あたりを掠めて血が流れる。

魔法だけでなく、物理攻撃でも傷を作れるのか。

口元に笑みを浮かべながら、魔法を発動させる。その瞬間、周囲一帯に黒雷が弾け飛ぶ。

もちろん、殺そうとは思っていない。おおよそ、全員避けた事だろう。

あいつらはここまでやる奴だ、さっきの魔法くらい容易く避けるだろう。

黒紫色の槍が飛んできたが、それを素手で掴んで、破壊した。それが開始の合図となった。

上段から振り下ろされた剣を刀で受けとめ、後ろから放たれたレイピアを掴み、レイピアごと投げ飛ばし、ハルバードを持った男ごと吹き飛ばす。

そして、剣戟の音が鳴り止む事がなかった。

相手の剣を弾いたとしても、矢が飛来しそれを迎撃するが為にチャンスをものに出来ないどころか、不利な状況に追い込まれる。

 

ハルバードの一撃は振りがでかくとも素早く、重く、強い。一撃で地面が揺れ、抉れる。受け止めても、踏ん張らなければ吹き飛ばされる。

 

剣を持った〈ニンフ〉の女性は、魔法と剣を合わせた戦法を駆使して、単独で俺を抑え、隙を他から突かれるか、彼女が隙を突いてくる。

 

レイピアを持った彼女は、〈ニンフ〉の彼女と同じく、魔法と剣技を組み合わせた戦法だ。黒紫色の槍やら斧やら剣やらがどこからともなく飛んで来る。その隙を攻め立てる。

 

弓を持った未だに姿が見えない女性は、俺が攻勢に転じようとすると腕を狙ってきたり、他の奴らが攻めている時は、足や、振り上げた腕、心臓や頭部などの急所を的確に狙撃される。

 

一番厄介なのが狙撃して来るやつで、あとがそれぞれ厄介だ。

これってもしかして大ピンチなのだろうか?

もしかしなくてもピンチなのだろう。

予想以上に強かった。だが、負けるのが俺は好きじゃない。それに、カッコつけたんだ。ここで勝たないと恥ずかしい。

俺の手の内は、刀に短剣。魔法各種。それくらいか。使ったことの無い魔法もあるんだ、それを試すか?

いや、放つタイミングを間違えれば、不利になって負けるかもしれない。であれば、魔法は氷属性を主に使っていこう。

 

「フンッ!!」

 

振り下ろされた一撃で、地面が切り裂かれる。すかさずに斬り払い、周囲の相手に牽制をかける。

そして、周囲一帯の足元を凍らせる。それは、後方に飛ぶと同時に回避される。

そして、踏み込もうとした瞬間に、足を狙った矢が飛んで来る。それを迎撃したので、攻勢に出られなかった。

だが、それで俺は止められない。

全身に高揚感が湧き上がる。口元に笑みが浮かぶのが止められない。止めようとしても、すぐに浮かんでしまう。

 

「さぁ!かかってこい!俺を倒してみろ!!!」




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔王の実力

ゆっくり見ていってください。


右に迫る斬撃を刀で受け流し、前方より来たるハルバードの一撃を後方に飛んでかわし、そこで待ち構えていたレイピアの刺突を半身を捻りかわして、反撃を試みるも遠くより飛来する矢により、それは止められてしまう。

 

「チッ!」

 

何度目かの舌打ちをして、視界を遮るように氷の壁を創りだす。

さらに、氷の剣を周囲に放つ。

周囲を囲んでいるので、躱すには限りだあるので全員が迎撃している。勢いよく踏み込み、追撃をかける。

狙うは、ハルバードを持った男。

放った一撃、金属同士がぶつかるだけで空気は震え、大地が爆ぜる。

さらに、右、左と常人にも戦いに慣れた者でさえ捉えられない速度で戦闘が進んでいく。

ハルバードが反撃に切り上げるがその瞬間に後ろに回り込み、首を狙い横一線に刀を振るう。

だが、黒紫色の剣が刀に当たり、追撃するように黒紫色の槍が俺に向かって降り注ぐ。

それを後方に飛んで躱すが、カクンと曲がり、追尾して来る。

それに驚きつつも、それを切り裂く。

その瞬間に、銃弾のような速度で剣を持った女性が突撃してきた。

その流れるような剣さばきを迎撃しながら、反撃を加えるも、受け流されるのが殆どだ。

地面から木や植物などが異常な速度で生えて来るが、それを出てきた瞬間に凍らせる。

氷の剣を創り出し背後から攻撃を仕掛けるも、それらは全て木や植物によって防がれる。

左上からの一撃を半歩引いて回避し、右下から反撃の一撃を加えるが、それは黒紫色の槍に弾かれる。

それだけで止まらず俺に向かって飛んで来るので、すんでのところで左手で掴み、破壊する。

前方に急いで目を向けると、剣は今にも爆発しそうな光に包まれていた。それが勢いよく横一線に放たれた。

剣で受けようにも間に合いそうにない。間に合うのは右腕の方だろう。右腕で受け止める覚悟を決める。

 

ドガンッ!!!!!

 

聞いたことのない爆発音と共に、浴びたことの無い高熱の熱風、衝撃。

それらを全身に浴び、高速で吹き飛ばされる。

 

ドンッ!!!

 

「ガッ!!」

 

自らで生み出した氷の壁に打ち付けられ、派手な音を立てながら、氷の壁が俺の上に落ちてくる。

全身がかなり痛い。右腕の肘から下が無くなっているのがわかる。

なんていうか、皮膚じゃなくて、中の肉で冷たさを感じるのは初めての経験だ。

血が結構流れているんだろうな。

全身が痛いせいで右腕が吹き飛ばされても、こんなものでしょ。とか思っている自分がいる。

あいつら結構強いな。俺の右腕を切りとばすって、中々のものだぞ。

それじゃあ、多少の敬意を払って、少し本気を出そう。

ゴウッと辺りが火の海に変わる。

それと同時に右腕と服が元通りに戻る。

 

「俺の右腕を吹き飛ばすとは見事だ。俺も少しは本気を出すとしよう」

 

そう言った瞬間に短剣を指の間に挟んで六本取り出す。

それを、俺の右腕を切り飛ばした相手に向かって全て投擲する。

それらは全て狙い違わずに飛んでいく。だが、魔法によって生み出された木に全て防がれるが、地面を勢いよく踏み込み、音速を超えるような速度で急接近する。

相手を守っている木に手を当てて、〈掌破〉を発動させる。

目の前の木に大きな穴が開き、相手は勢いよく吹き飛ばされた。

 

「ハァァァァッッッ!!」

 

燃え盛るハルバードを大地を砕くような勢いで振り下ろされる。

それを素手で掴んだ瞬間、極大の爆発が起こった。高熱の爆風と衝撃が起こるが、今度は吹き飛ばされるどころか、微動だにせず傷は無い。

地面は数十メートル程沈んでいるが、俺に異常はない。

掴んだハルバードを引き寄せ、装備者を思いっきり殴り飛ばす。

その勢いは凄まじく、地面に当たるも止まらず、大地を削りながら吹き飛ばされた。

残るは、レイピアだけか。

その瞬間、矢が後方から飛来するも、体を傾けるだけで回避する。

弓を含めれば、二体一か。

レイピアを持った相手に一瞬で近づき、気絶させるように殴ろうとするが、それは回避される。

殴ろうとした右手に高速で突きが放たれるが、体を一瞬で屈み、足を引っ掛けて転ばす。

拳を放とうとするが、背後全体に黒紫色の槍が出現し、一斉に放たれた。

それらを障壁で全て防ぎ、拳を放つ。しかし、障壁に阻まれ決める事は出来なかった。

さらに、目の前でレイピアが幾つにも分かれて視界を埋め尽くす。

上空へ飛び、間一髪で回避すると、右斜め下から音速の域を軽く超えている程に速い矢が飛んでくる。

上空なのでうまく身動きがとれないので、右足で蹴り飛ばして迎撃する。

今度は左下から矢が飛来する。それに多少驚きつつも、障壁を張り防御する。

何かの気配を感じ、真下を向く。

そこには、黒紫色の大地が広がっていた。

いや、少し違うな。黒紫色の槍が地上を埋め尽くし、その矛先は俺に向いていた。

そして、レイピアの先をこちらに向けると同時に一斉に大地が動き出す。

体を大地に傾け、右腕を引き絞る。そして、魔法を宿らせる。

右腕は灼熱の黒炎を纏い、今か今かと放たれる時を待つ。

 

「ハァァァァッッッ!!!」

 

近ずく黒紫色の大地を捉え、引き絞られた腕が黒紫色の大地に放たれた。

灼熱の黒炎が弾け、黒紫色の大地を黒く染め上げる。黒紫色の大地は消え去り、黒の大地が広がる。

地面に降り立ち、周囲を見渡し、レイピアを持っている者に近づく。

近づくが、動く気配が無い。俺を誘い出しているのか?

上空から何かが降ってきている事に気付く。急いで障壁を上空に張ると、紅い矢が数十本障壁に刺さる。

刺さった瞬間、爆発を起こし視界が爆風によって巻き起こった砂煙に遮られる。

それを腕を振り、ある程度視界が回復する。

その瞬間、一つの光が瞬いた。そう思った瞬間、腕を顔の目の前で交差させる。

それが功をそうしたのか、腕に何かが当たり、当たった瞬間に凄まじい衝撃が巻き起こり、周囲の大地を粉砕する。

しかし、それを受けても尚無傷。平然とそこに俺は立っている。

だが、それをレイピアを持っていた奴は無傷とはいかずに、吹き飛ばされ、倒れていた。

急いで駆け寄り、抱きおこす。

 

「フフフ。もう私はダメですね。ああ神よ。始めに抜ける脆弱な私をお許しください」

 

その言葉に少しため息を吐いて、

 

「脆弱な奴に、俺が魔法やスキルを使う事は無いぞ。俺を馬鹿にしているのか?」

 

その言葉に慌てた様子で、

 

「そんな事ありません!神はお強く凛々しくあります!」

 

その言葉に苦笑して、

 

「だったら、自分の強さを知り、俺との実力差を痛感しろ。一応、一人倒したって事でいいんだな」

 

その言葉に不敵に笑い、

 

「はい。それであっています」

 

その言葉を聞いて、治癒を施す。

所々に火傷を負い、痛々しい事この上なかった。それに着ていた服も焼き焦げていたので、それも直す。

 

「フフフ。お優しいですね」

 

「こんなの当たり前だ」

 

そうぶっきら棒に返し、俺は他の場所に向かった。

にしても、吹き飛ばした二人も健在なんだろう。さらに、弓もいる。

状況は攻勢に傾いているが、いいともいえない。

その時、音速を超える速度の矢が飛来してきた。

それを素手で掴み、破壊する。そして、大地を踏み込み距離を詰める。

その速度は音速の域であるはずなのに、一度だけ矢が七本放たれた。それも、完璧に当たるコースで、だ。

それを障壁で防ぐも、二本だけ間に合わずに俺に当たる。しかし、刺さることは無く、俺が失速する事も無かった。

そして、とうとう今まで矢を放っていた奴を視界に捉える。

そいつの目の前まで接近し、拳を引き絞る。

その瞬間、もはや同タイミングで、弓が限界まで引き絞られた。

ゼロ距離射撃。そう気付いたが、もはや止められない。

先に放たれたのが、弓の一撃だった。

限界まで引き絞られた弓は、その弓が出せる最高の威力となっていた。さらに、それをゼロ距離で放つ事で威力が落ちることは無い。

それは寸分違わず心臓の位置へ放たれた、絶殺の一撃。

しかし、くらう相手は化け物だった。当たっても刺さること無く、弾かれた。

そして、化け物の一撃が鳩尾に直撃し、弓使いは気絶した。

 

「気絶したか。これで二人目か」

 

死んでないといいな。と思いながら、治癒を施すと

 

「あれ……私は」

 

「気付いたか?」

 

そして、俺を見るなり察したようで、

 

「ははは。そうか、私は負けたのだな」

 

清々しそうに笑い、現状を受け入れた。

 

「私で二人目か。存外早く終わってしまったな」

 

「俺相手にこんだけやれれば十分だろ」

 

「本気を出していなかったのにか?」

 

その言葉を聞いて、黙ってしまう。

 

「それでは、私はあの城へ戻らせてもらおう。警備も兼ねてな」

 

「ああ。頼んだぞ」

 

そう言うと、彼女は森の中へ消えていった。

あと二人か、手がかりが無いんじゃ、探しようが無いな。

とりあえず、吹き飛ばした跡を追ってみる事にした。

そして、存外直ぐに出会えた。

ハルバードを両手に力強く握っているが、全身ボロボロで、吹き飛ばされたままだと直ぐに気付いた。

 

「ハァァァァァァァァッッッ!!!」

 

裂帛の気合いと共に駆け出した男は、ハルバードを横に振るだけで、風を巻き起こし、敵を圧倒する。

勢いを増して振り下ろされたハルバードは、大地を砕き、周囲に大小様々な石を弾丸の如く、撒き散らす。

その威力に圧倒され、歴戦の強者でも、怯えるほどだが、目の前の化け物は怯えもしなければ、慌てもしない。

冷静にそれを避け、弾丸の如き石をその身に浴びても、傷一つない。

大地に突き立つハルバードを踏み、地面にさらに減り込ませ、右ストレートを放つ。

 

「グゥぅ………アァァァ!!」

 

しかし、気絶せずハルバードを強引に引き抜き、先程よりも強力な一撃が放たれた。

だが、それを素手で掴み、今度は先程よりも強力な拳を放つ。

そして、それを受け、今度は気絶した。

中々にタフな相手だった。

治癒を施すと、また直ぐに気付いた。

 

「ああ。俺は負けたのか」

 

潔く負けを認め、

 

「俺は城に戻り、自己鍛錬をしてきてもいいか?」

 

「ああ。構わないぞ」

 

それを聞くと一目散に城へと戻った。

速いな。彼は即決、即断、即行動が当てはまりそうだ。

 

「それでは、私も降参しますね」

 

後ろからかけられた声に振り向くと、〈ニンフ〉の女性が立っていた。

 

「戦う前から、降参するのか?」

 

「四人がかりでやっとだったのに、一人で、しかも、先程よりも強力になった主人様にどう勝つんですか?」

 

それに、少し考えて、無理だな。と結論づける。

 

「しかし、お前に片腕切り飛ばされた時は焦ったぞ」

 

それを聞くと、彼女の周りに大きな木の枝が、伸びて、

 

「これの事ですよね」

 

そう言って、中から現れたのは、誰かの右腕だった。右腕は黒い刀を握っていた事から、俺のだとわかった。

それに引きつった顔を浮かべて、

 

「それは、どうして持っているんだ?」

 

「記念にと」

 

なんの記念!?

怖いんだけど、何か良からぬ黒魔術とか使わないよね!?

 

「へー。そうか」

 

そうやって返すのが精一杯だった。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

親睦

いつもより文字数が少なくなり申し訳ありません。
ゆっくり見ていって下さい。


自分の片腕だった物を見るのは、人生で初めての経験だ。

それに、両腕がある状態で切り離された腕を見るのは、前の世界ではあり得なかっただろう。

自分の切り離された腕を見せられた時は、ある一種の恐怖を感じた。

さらに、その腕を見せてきた人は、それを記念にすると言っている。

そんな事を言う人を俺は初めて見た。

 

「というか、腐ると危ないから焼いておけ」

 

「腐らせません。その方法もあります」

 

即答ですか。そうですか。

 

「その方法は?」

 

「魔法の中に閉じ込めます」

 

出たよ魔法…。なんでもあり過ぎてもうなんも言えねぇ。

しかし、魔力の消費は発動させた分だけなのだろうか?維持に使う魔力は無いのだろうか?

そうなると、俺が創った魔王城(仮)の維持魔力はどうなっているんだ?

 

「魔法の維持に魔力は必要なのか?」

 

それに首を傾げて、不思議そうな顔で、

 

「はい」

 

と言われた。

この世界では常識なんだろう。

そして、そんな常識を聞いてしまったから、こんな顔をしたのだろう。

今はそれは置いておこう。

維持魔力が必要なら、あの魔王城の維持は難しいはずだ。今でも、あの大きさの建造物を維持するために俺の魔力が使われているはずだ。

だが、そんな感じはしない。

 

「それにしては、俺の魔力が使われている気がしないな」

 

「ああ。そういう事でしたか」

 

何か納得したような顔と声を出してそう言った。

 

「このエリアは主人様のもので、主人様の魔力が流れております。それはこのエリアが永続的に生み出します。その魔力は主人様の数十分の一程ですが、主人様程の魔力量になると、維持魔力の心配はありません」

 

そうだったのか。どうりで維持魔力の消費が無かったわけだ。

しかし、彼女も物知りだな。彼女がいればこの先の心配事は無いに等しいだろう。

まあ、いずれは俺も彼女の上に立つ者として恥ずかしくないようにはしておきたい。

 

「ありがとう」

 

それにいつもの事務的な口調で

 

「いえ、まだエリアボスになったばかりですので、知らなくて当然です」

 

知らなくて当然の事を彼女はなぜ知っているのだろう?

 

「お前はなんでこんな事を知っているんだ?」

 

「それは、父が同じエリアボスですから、父に教えてもらいました」

 

マジか。この子の父親がエリアボスとは。驚きだな。

確かに、父親がエリアボスなら色々知っていてもおかしくない。

ただ、なぜこのエリアに来たんだ?父親がエリアボスならば、そのエリアにいればよかったのではないか?

 

「なぜこの場所に?お前の父親の所にいても良かったんじゃないか?」

 

「……」

 

何か気まずそうな顔をして、言うか言わないか迷っているように見える。

俺はそれを黙って待つ。言うのは彼女次第だ。俺が強制する事でもない。

そして、意を決したようで、口を開いた。

 

「まずは、笑わないで下さいね」

 

「ああ。絶対笑わない」

 

内容による。と、心の中で付け足しておく。

 

「家出です」

 

「……」

 

……家出?ああ。家出ね。マジか。彼女にも可愛い所があるじゃないか。

事務的な口調を崩さず、大人びた雰囲気を持っている彼女が言った、子供じみた理由。

それは意外だった。

正直、ニヤッとしそうになったが、笑わないと言ったからには、堪えよう。

 

「今、心の中でニヤッとしていますね?」

 

「………いや、そんな事は無いぞ」

 

なぜバレたんだ。なぜ俺の心を読める奴が多いんだ。

この世界の住人は人の心を読む術に長けているのか?読唇術か、悟りか?第三の目か?

 

「しかし、なんで家出なんかしたんだ?」

 

「……」

 

またしても気まずそうな顔をされる。

また恥ずかしい理由があるのか?

 

「親が過保護気質でして、外に満足に出させて貰えませんでした。ですから、家出をしようと決意したんです」

 

「ああ。なんとなくわかるよ。その気持ち」

 

外に出たくても、出られないってなんか、イライラかなんかするよな。多分それだ。

 

「わかってくれるのですか?」

 

「大体だがな」

 

「それでも十分ですよ。では、この一件がある程度片付いたら外出してもよろしいでしょうか?」

 

それは、俺に聞かなくても別にいいのだが。

 

「俺にお前の自由を侵害する権限は無いと思うのだが」

 

その言葉に薄い笑顔を浮かべて、

 

「感謝いたします」

 

そう言った。

薄い笑顔だったが、表情に乏しい彼女からすれば、満面の笑みに近いのだろう。

できる事ならば、これから先も笑顔を見せてくれた方が嬉しいのだが、時間がかかるだろうな。

まあ、のんびり焦らずやっていこう。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦闘後

すみません。良い名前が思いつきませんでした。次回までには、良い名前を考えておきます。
面白ければ幸いです。


森を二人で歩く。

この森はかなり歩いているので、見覚えがない事もない。通ったことがある様な気がする。

少し前の事なので、ここを通った事があるのかわからない。

森なんて何度も通っていると全部同じ景色に見えてくるからよくわからない。

そして、終始無言もどうかと思うので、ちょっとした疑問を聞く。

 

「俺の維持魔力がここで使われないのはわかった。だが、お前は魔法で俺の腕を保存するといったが、維持魔力はどうする気だ?」

 

「それは心配に及びません。私達〈ドライアド〉は固有スキルとして、木属性魔法の消費魔力半減、維持魔力消費無し。というものがありますのでご安心下さい」

 

固有スキルか。俺も持っているには持っているが、なぜ〈強欲〉かが謎だ。

人間はおよそ転生者。魔物は本当に固有性能の様なものだろう。ならば転移者。俺はどういう事だろう。

〈強欲〉というチートを超えたブッ壊れ能力。もはや無敵能力。

〈強欲〉。七つの大罪の一種だったか。という事は、〈強欲〉以外の〈嫉妬〉や〈怠惰〉などがあるという事か。

そう考えるならば、俺の様な能力を持っている奴がいる可能性があるのか。

会いたい気持ちもあるが、万が一戦闘になった場合、戦闘をしている俺たちは無事でも、周囲の被害が甚大なものになるだろう。多分。

 

「固有スキルか。他の奴も持っているのか?」

 

「持っていますよ。お聞きになりますか?」

 

「いや、いい。それに自分で気づくのは俺の仕事だろうし、聞くならば、本人の口から聞きたい」

 

「そうですか」

 

そう言って、また沈黙が訪れる。

話す話題はないか探るが、あまり思いつかない。

そんな事を考えながら歩いたら、魔王城(仮)が目の前にあった。

 

「戻って来たか」

 

そう呟いた。

いつ見てもでかい建造物である。しかも、これ全部魔法で造って、維持魔力はこのエリアから供給されているのだ。

維持魔力の供給がなければ、どれだけの魔力が使われている事か。一日持って限界だろう。

全く、このエリアから供給されている魔力量は想像を絶するだろうな。

 

「お戻りになられましたか。我が神よ」

 

戻ってくるなり、俺を神と呼ぶ彼女に出会った。

 

「俺は神ではないのだがな」

 

俺がそう言った直後。

 

「何を仰っているのですか。貴方様は神ですよ。何故ならば…」

 

「いいから!説明しなくていいから!」

 

「いえ!させてもらいます!」

 

「いや!しなくていいから!長くなりそうだから!」

 

「私が貴方様を神と呼ぶのはですね……」

 

「言わなくていいから!ねぇ聞いて!俺の話を聞いて!」

 

「私達を生み出すのは……」

 

あ、もう聞きそうにないわ。

人生諦めが肝心だよな。何事も諦めが肝心だ。

俺がそう諦めていると。

 

「さ。無視して行きましょうか」

 

「無視して大丈夫なのか?俺がどこかに行こうとした瞬間に今より酷くならないよな」

 

一周回って落ち着いた俺は疑問を問いかける。

 

「大丈夫です。ああいう人は自分の世界に入ると周りが見えなくなりますから」

 

そう言って、どこかに行く彼女の後をついて行くと、以外にも、気付かれずにいた。

本当に自分の世界に入っている人は周りが見えなくなるんだと、実感した瞬間だった。

そして、ちょっと歩いたら。

 

ドォォォン!!

 

と爆音がしたので、その方に駆けてみると。

 

「どうした!その程度か!お前ら!!」

 

そこには、自分が統制していた魔物達と戦う、俺が生み出した魔物の男性がいた。

その戦いぶりは豪快でありながら俊敏に動き、敵を確実に仕留める。見事なものだった。

 

「統制している魔物の強さを上げようとしているのかな。魔物はほぼ死んでいるけど」

 

「魔物は以前述べた通り、時間が経てば復活しますから、効率が良いといえば、良いでしょうね」

 

「そうなのか?」

 

まぁ、彼女がいうのであれば、そうなのだろう。

そこを通り過ぎ、また少し歩いたら。

 

「やはり全員負けた様だな」

 

その声が急に後ろから発せられ、驚きながら振り向く。

 

「どうやら、私の気配を読めなかった様だな」

 

そして、少し勝ち誇った様な顔をする。

 

「ああ。自分で生み出しておいて、その気配をよめないとわな」

 

「そう気を落とすな。生み出した本人より強く生み出される魔物はいない。いずれ、いや、今すぐにでも私の気配に気付く事ができるだろう」

 

「そうなる様に努力するよ」

 

そして、その場を後にした。

そして、しばらく歩いて、

 

「お前はどうするんだ?」

 

後ろをずっと付いて来ていた彼女に問いかける。

 

「それは、昨日仰っていた。名付けはどうするのかと思いまして」

 

それを聞いて、

 

(あ、そうだった)

 

と思い出した。

戦闘をしている間に忘れていた。

 

「その様子ですと、忘れていた様ですね。それでは、また次の機会になさいますか?」

 

その言葉に少し考えて、

 

「いや、昨日俺が言ったんだ。言ったのならばしなくてはならん」

 

俺は覚悟を決めた。正直、あまり考えていなかったから、良い名前が思いつくか不安だが、どうにかしよう。

 

「そうだな、お前の名前は……」




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

名付け

誤字が多かった事に気づかされました。誤字を指摘してくださった方本当にありがとうございます。
ゆっくり見ていって下さい。


そこで言葉を少し詰まらせる。

忘れていたが故に良い名前が思いつかないのだ。

安直な名前になるが、許してくれ。

 

「〈リーフ〉。この名前でどうだ?」

 

その名前を聞いて、しばらく考え込んでしまった。

この少しの時間が俺には長く感じる。

リーフと名付けた理由は、まずは髪の色だろう。新緑を思わせる髪の色が、緑の木の葉を連想させた。

二つ目は、前の種族の〈ドライアド〉が、確か木の精霊とかそれに近い感じだった気がする。

まあ、理由としてはそんな感じだろう。

だが、それでも〈リーフ〉は自分でも安直な名前で、もっと良い名前があったと思う。

そんな事を考えていると、彼女が口を開いた。

 

「はい。私の名前は〈リーフ〉ですね。ありがとうございます」

 

どうやら名前に問題は無いようだ。

次の瞬間、魔力をごっそり持っていかれた感覚が起こる。

少しふらつくが、立っているぶんには問題は無い。

魔力の上限を一気に引き上げると、その感覚も一気に無くなった。

 

「大丈夫でしょうか?」

 

心配そうな声で聞いてくれているが、表情が変わっていないので、本当に心配してくれているのかがわからない。

まあ、心配してくれているだろう。

 

「ああ、問題ない。少し魔力を低くしすぎていたようだ」

 

その言葉を聞いて、

 

「そうですか。よかったです。こんな事で死なれては困りますから」

 

どうやら、心配してくれたようだ。少し疑ってすまなかった。

心の中で謝り、来た道を引き返す。

 

「どちらにいかれるのですか?」

 

「あいつらの名付けも済ましておこうと思ってな」

 

そう言うと、少し怒ったような声で

 

「主人様。さっき起こった事を忘れたのですか?このままで行くと、魔力切れで倒れて、最悪の場合は死にますよ?」

 

どうやら、心配で少し怒っているようだ。

 

「心配するな。魔力の上限はさっきとは桁違いに上がっているからな」

 

その言葉を聞いて、怪訝そうな顔をする。

 

「前から思っていたのですが、主人様は魔力の上限、いえ、ステータスさえも変動させているのですか?」

 

ああ、そうか。普通はできないんだろうな。俺が異常、では無いな。これは、あいつから貰ったスキルのおかげだな。

俺の前の〈エリアボス〉も異常な強さだったな。

いかんいかん。思い出に浸っている場合ではなかった。

 

「そうだな。そのスキルは俺では無く、俺の前の〈エリアボス〉が持っていたものだ」

 

その言葉にリーフは驚きを隠せないようでいた。

 

「ということは、前の〈エリアボス〉から任されたということですか?」

 

どうやら、俺があいつから貰った事に驚いているようだな。

 

「ああ。多分そうだな。一応言っておくと、前の〈エリアボス〉は俺の義理の父親だ」

 

その言葉にリーフはさらに驚いていた。

 

「まさか、主人様もお父上が〈エリアボス〉だったんですね。聞きにくいですが、その、お父上はどちらに」

 

その言葉に俺は

 

「義理な。そこは忘れないでくれ。そして、あいつなら、俺の手で殺した」

 

「……」

 

俺の言葉で沈黙が訪れる。

この重たい空気は俺は嫌いなんだよな。

 

「その事に関して言えば、俺が殺した後で、あいつが勝手に俺を義理の息子にしたんだ。だから、思い出も戦った記憶しかない」

 

「ですが、主人様もその方を父親として認めていますよね」

 

その言葉に関しては事実だろう。俺はあいつの事をこの世界の父親として認めているだろう。

 

「認めているが、悲しむほどじゃない。碌な思い出もない。それに、あいつは死んだ方が良かったんだよ」

 

「それはなぜですか?」

 

そこで、あいつが言っていた事を思い出す。

 

「あいつは今まで自分の力不足で守れなかった愛した奴の事を思い続けていた。だから、死んでよかったんじゃないのか」

 

「……」

 

その言葉に沈黙が訪れる。

俺も黙って次の言葉を待つ。

 

「……私には愛するという事がわかりませんし、そこまで思い続ける事もわかりませんが、確かにそれで良かったと思います」

 

どうやら、納得してくれたようだ。

 

「話が脱線したな。それで、俺はあいつらの名付けをしていいのか?」

 

その言葉にリーフは考え込む。

そして、結論を出したようだ。

 

「わかりました。しかし、私も付いていきます。主人様の容体に変化があった場合、即刻やめさせます」

 

どうやら俺の身を案じてくれるらしい。嬉しいね。美人に身を案じてくれるとは、運がいい。

 

「それで良いなら」

 

そして、俺は他の奴らを探して歩き出す。

 

 

 

「ハァァ!!」

 

勢いのいい声と共に地面が砕ける音が響く。

 

「次はどいつだ!!!」

 

そして、次の獲物を求める声が響き渡る。

そこに俺は顔を出した。

 

「ん?次はお前が俺地戦うのか?」

 

ハルバードをこちらに向けてそう言い放つ。

どうやら闘気は有り余っているらしい。ここでこいつと戦うのもいいが、今の目的はそうじゃない。

 

「戦うのもいいが、今は名付けをしていこうと思ってな」

 

「俺に名付けは不要。俺に必要なものは純粋な力のみだ」

 

どうやら根っからの脳筋思考をしていそうだな。

 

「名付けを行うと、名付けを施した方が強ければ強いほど、己の力は増しますが、どうします?」

 

えっ。俺も今初めて聞いた気がする。それじゃあ、リーフも強くなっているって事か。

しかも、俺の強さは異常だから、相当なものになっていそうだ。少し楽しみだ。

 

「そうか。そうだったな。では、頼むとしよう」

 

決まったようだ。

こいつの名前はなんとなく決まっている。

 

「お前の名前は〈ロウガ〉だ」

 

狼の牙と書いて、狼牙。なんとなく、この名前がしっくりくるのだ。

 

「俺の名前は〈ロウガ〉か。悪くないな」

 

そして、俺の魔力がごっそり持っていかれる。

まあ、全然平気なくらいだが。

 

「よし。さらに強くなった俺と戦え!」

 

どうやら、俺と戦う気満々らしい。

正直強くなったこいつらの力が気になるので、戦いたい。

 

「ああ。別に……」

 

「待ってください」

 

俺が了承しようと思ったが、その言葉は止められた。

 

「主人様は後二人名付けをする必要がありますので、無用な魔力消費を抑える必要があります」

 

「いや、あの程度だったら……」

 

「だとしてもです」

 

「……」

 

そして、俺は黙ってしまう。

 

「貴様。俺とこいつの戦闘を邪魔するつもりか?」

 

怒気をはらんだ声を出して、ロウガが闘気の矛ざしをリーフに変える。

 

「貴方は、名付けで魔力を消費した状態の主人様と戦い、万が一に勝ったとして、それを誇る気ですか?」

 

「……」

 

ロウガも黙ってしまう。

女性って強いね。

それを実感した瞬間だった。

 

「では、明日だ。明日には魔力が回復しているだろう」

 

「ああ。それで構わないぞ。リーフもそれで構わないか?」

 

「はい。それなら大丈夫でしょう」

 

そして、ロウガはハルバードの矛先をこちらに向け、

 

「では、明日お前を超えてみせる!」

 

「ああ。全力でかかってこい」

 

そして、その場を後にした。

 

「ウオラァァァァ!!!」

 

裂帛の声と共に地面が破砕される音が周囲に再び響き渡る。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

名付け2

すみません。忙しくなり少し短いかもしれません。
ゆっくり見ていって下さい。


遠くに轟音が響くのを聴きながら、歩いて行く。

後二人の名前を決めなければならない。

なるべく変な名前にしないで、しっかりとし名前をつけてあげたい。

俺にそんな事が出来るかはわからないが、出来るだけやってみよう。

しばらく歩くと、

 

「見つけましたよ!」

 

その声は、前方から聞こえ、その言葉を聞いた瞬間逃げ出したくなったが、名付けがあるので逃げられない。

それがなければ本気で逃げていたところだろう。

燻んだ白髪の女性が、近づいてくる。

 

「私の話の途中で抜けださないで下さい。さあ、続きを話しますよ」

 

そして、長くなりそうな話が始まろうとしたところで、

 

「まあ待て。今はお前の名付けをするのが先だと思うのだが」

 

「名付けですか?」

 

彼女は首を傾げている。どうやらあまり名前に頓着しないようだ。

というか、魔物自体名前に頓着しないのではないか?

 

「神であられる御身自身が考えてくださるのですか?」

 

「ああ。その通りだ」

 

言葉の最初か最後に神ではないのだが、と付けたかったが話がややこしくなりそうなのでやめた。

 

「そうでしたら、是非お願い致します」

 

そして、俺の前に跪き祈るような姿勢になる。

 

「そうだな。お前の名前は、〈ブラム〉この名前でどうだ?」

 

〈ブラム〉これもなんとなくこんな感じがするといった感じだ。

宗教と聞くと、まずは信仰者が真っ先に思い浮かぶが、その次が、罪なのだ。

なので、最初はシンというのにしようとしたが、男っぽいので、〈ブラム〉にした。

どちらにしてもあまり良い意味ではないのだが。

 

「〈ブラム〉ですか。……」

 

少し考え込み、そして、不敵な笑みを浮かべる。

 

「良いですね。フフ。〈ブラム〉それが私の名前ですか」

 

「気に入ってくれて何よりだ」

 

どうやら、問題は無いようだ。

名付けで結構ドキドキする。気に入られなかったらどうしようか。なんて事を考えてしまう。

必死に考えてはいるが、何せ時間が少ない。そんな時間の中で出来た名前が良いか悪いかと考えると、どうしてもマイナスに考えてしまう。

 

「では、後一人残っているので俺は行くぞ」

 

そして、俺はその場を去ろうとした。

しかし、

 

「待って下さい。次に行く前に私の話の続き…いえ、初めから言わせていただきますね」

 

マズイ。今この時にこいつの話を聞き続けると、日が暮れてしまう。

どうする?早く逃げないとかなり長い話を聞くことになるぞ。

さて、どうやって逃げるか。

 

「大丈夫だ。俺の強さは神と同等かそれ以上の存在だ。そして、お前達を生み出した。お前達の今後の活躍に期待しているぞ」

 

それとなく話題を逸らして誤魔化せるか?

 

「フフフ。そんな事当たり前ですよ。名を受け賜わり、さらに強くなった私の力にご期待下さい」

 

おっ。意外に誤魔化せてそうだな。

 

「ああ。期待しているぞ。まあ、力を振るうのは当分先になりそうだがな」

 

「それでも構いません。私の力が必要な際はいつでもお呼びください」

 

後少し会話をすれば俺の作戦は成功するはずだ。

 

「そうか。その時が来れば頼らせてもらうぞ」

 

「ええ。その時は必ず完遂させていただきます」

 

良い感じだ。

 

「これからもよろしくな。それではな」

 

よし。このタイミングなら大丈夫なはずだ。

 

「待ってください。私の話は終わっていませんよ」

 

「!!」

 

なんだと!誤魔化すには一手足りなかったか。

クソ。こうなったら、最終手段。

そして、俺とリーフの姿が一瞬でどこかに消えた。

 

 

「ふう。これで一安心だな」

 

「そうですね。明日はどうなるか考えると一安心ですね」

 

「……」

 

明日の事は置いておこう。

さて、後一人だな。

 

「それと一つよろしいでしょうか?」

 

リーフが俺に聞いてきた。彼女の言葉で助かる事もあるので、聞いてみる。まあ、誰の言葉でも聞きますけど。

 

「なんだ?」

 

「では、私の力が必要な際はいつでもお申し出ください。以上です」

 

「おう……。そうか」

 

いきなりの事に驚き、先のような返事しかできなかった。

しかし、最後の一人は探すのが大変だ。気配がわからない。見つけるのも困難。どうすりゃいいんだ!

 

「呼ばれたと思い、参上しました」

 

まさかの俺の思考が読まれた。俺の思考は読まれやすいんだね。ここ最近で実感したよ。

だが、話は早い。

 

「俺は名付けを行いたいんだが、別にいいか?」

 

「ああ。私は貴方をずっと見てきたから事情は理解しているし、どうぞ、名前を付けておくれ」

 

何それ。俺をずっと見てきたって事?それに空間魔法を使って逃げたのにその場所までわかったのか?

こいつすごいな。俺なんかより強いんじゃないか?

だが、俺も負けてられない。いつか、ここにいる奴がたどり着けないほど強くなってやる。

それを俺の目標にしよう。

俺はそう決めた。それを達成するまで曲げずに生きようとも決めた。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鍛錬

ゆっくり見ていって下さい。


さて、俺のこれからの目標が決まった事だし、こいつの名付けを行うか。

正直、探すのに手間取ると思っていたから彼女から出てきてくれて良かった。

そして、名付けに多少困るのだ。

どうしても、彼女にあう名前が思いつかずにいるので、今でも頭をひねっている。

 

「どんな名前でも構わんぞ?」

 

彼女はこう言っているが、名前はしっかりしたものがいいだろう。これからの人生的に。

俺がしっかりした名前を付けれているか不安だが、自分を信じるしかない。

 

「お前の名前は……そうだなぁ………〈シンシア〉。〈シンシア〉でどうだ?」

 

「うむ。いい名前だ。これから私の名前は〈シンシア〉だな」

 

即答か。他の人達は少しは考えたのに即答ですか。もしかして、他の人達は俺が付けた名前を気に入ってないかもしれない。

そんな嫌な予感が脳裏をよぎるが、今は考えないでおこう。

 

「そうか。気に入ってくれて何よりだ」

 

これで、全員分の名付けが完了した訳だが、暇になったな。

少し体がだるいが日常でよくあった範囲だ。

よくあったというのは、このステータスになってからというもの、疲れを全く感じないのだ。ので、過去形になってしまう。

体がだるく感じるのは、おおよそ名付けで魔力を大量消費したからだろう。

しかし、ステータス全開放した状態でもだるさを感じる程魔力を消費するとは。何気にすごいな。

 

「それでは、私はまたどこかに行くとしよう」

 

その言葉が聞こえたので、何か声をかけようと思ったが、もうすでに人影がいなくなっていた。

 

「これからどう致しますか?」

 

後ろに控えていたリーフが聞いてくる。

 

「やる事も無くなったからな、自己鍛錬でもしようと思う」

 

さっと思いついた案だが、それも確かに悪くない。

 

「でしたら、お供します」

 

俺の自己鍛錬にも付いて来ようとしたので、

 

「いや、お前は俺に付いてこなくていい。自由の時間くらいは自分でしたい事をすればいい」

 

「それは命令でしょうか?」

 

無表情なので何を考えているの読めないが、

 

「命令では無いが…」

 

「でしたら、これは私がしたい事なので命令であっても無くても、そうさせていただきます」

 

それって俺に聞く意味あった?などと思ったが口には出さなかった。

 

「しかしな、お前を付き合わせると、ロウガに知れると即刻戦闘が始まりそうなんだが」

 

そう言うと、考え込んでしまった。

どうやらそれなりにわかってくれたようだ。

自己鍛錬か。俺の技術不足の解消とスキルの確認をしておきたいな。

 

「では、私は主人様の魔力切れが心配なので側に控えていた。という事にしておけば問題ないでしょう」

 

そうきたか。まさか、俺の自己鍛錬にリーフが参加するとは。

まあ確かに。一人より二人だが、何か俺に付き合わせている感じがして、気がひけると言いますか、なんと言うか。

というか、俺が全力を出したら周囲が心配だが、また魔法で周囲を覆えば問題はないか。

目を閉じて少し考える。付き合わせていいものかと。

 

「私でしたら大丈夫です。強くなる事が魔物の性ですから」

 

俺と一緒に強くなるというのか?それならば問題はないが、いいものか。

メリットはあるがデメリットは無い。要は断らない方がいいという事だ。

だが、彼女には自由な時間があった方がいいと思うのだが、さてどうする?

 

「先のことは私が自分で考えて決めたことですので、それもお踏まえください」

 

一歩も引きそうに無いな。ここは俺が折れよう。

 

「……わかった。では、俺の鍛錬に付き合ってくれ」

 

「了解いたしました」

 

二人がどこからともなく剣を引き抜く。

一人は腰から刀を引き抜く。もう一人は地面から植物が現れ、それに埋め込まれる形でロングソードがあった。それをもう一人が引き抜く。

互いに距離をとり、剣を構える。

 

「開始の合図はどう致しますか?」

 

その言葉に俺は地面に落ちていた石を拾い、

 

「これを上に投げる。それが地面に落ちたと同時に。というのはどうだ?」

 

「異論はありません」

 

腕を少し振り上げる。石が放り出される。

それは狙ってか放物線を描きながら互いの中心に落下して行く。

二人の間に割って入ることのできないような、独特な雰囲気が生まれる。

一歩でも踏み込めば八つ裂きにされるような危険な雰囲気。

その雰囲気は石が地面に落ちると共に崩れた。

 

バンッ!!!

 

と音がした瞬間に二人の姿が搔き消える。

次に聞こえてくるのは、無数に重なる金属同士が激しく音を立てる。

常人には捉えられぬ域の高速の戦闘が繰り広げられた。

その均衡は一瞬で砕けた。その一瞬の間にも数百と剣が交わったが、それを感じる奴はいないだろう。

 

ガンッ!!!!

 

という金属同士が激しくぶつかった音と共にズザザザザと、靴底が擦り切れんばかりに立ったまま吹き飛ばされる。

 

「やはり、技術不足だな。ステータスではこちらが圧倒的に有利なのに、攻めきれんとは」

 

その言葉に無表情で、

 

「お戯れを。主人様が当たる直前に速度と力を緩めなければ、私の命は三度失われた事でしょう」

 

それを聞いて、確かにそんな時もあった気がすると思い至る。

 

「もし、お前が今まで加減していたなら、ここらが加減のやめ時だ。次からはスキルを使わせてもらう」

 

「今までも全力だったのですが、全力を超えろ、という事ですね」

 

そういう意味で言ったわけでは無いのだが、別にいいか。

 

「行くぞ!」

 

その言葉に無言で頷かれる。

その瞬間、一瞬で間合いを詰めて同時に二つの斬撃が二つの方向から放たれる。

その斬撃は、ほぼ同時でも全く同時でもなく、正真正銘同時なのだ。

スキル名〈燕返し〉効果は放った斬撃の対角線上にもう一つの斬撃を繰り出すスキルだ。

それを剣で受けることはまずできないので、後ろに後退するしかないだろう。

その読み通り、リーフは後退した。

それに追撃をかけて、新たなスキルを発動させる。

スキル名〈緋桜〉効果は、相手の隙を見えている範囲で探り出し、そこに高速の斬撃を放つ技だ。

この攻撃を放つ際、刀を逆さにして峰の部分で切りかかった。

 

「!!」

 

そして、その攻撃はリーフに全て直撃した。

そして、気を失った。俺がしでかした事なので、彼女の看病は俺がしなければならない。

だが、

 

「……私は、気を失ったのですね」

 

以外に早く気がついた。

 

「そうだ。もうやめておくか?」

 

「そんな事はしませんとも、主人様と戦える事は私にとって幸福でありますので」

 

強者と戦える事を幸福と捉えているという事か。ならば、終わりではなく、出来る限り鍛錬に付き合ってもらおう。

 

「それに、次に主人様と戦えるのがいつになるのかわかりませんし」

 

「確かにな。ならば、今からとことん鍛錬に付き合ってもらうぞ」

 

「望むところです」

 

そして、俺たちの鍛錬が夜になるまで続けられた。

 

 

 

辺りはすっかり真っ暗になり、周囲は暗闇の世界だが、〈夜視〉があるので明るく見える。

 

「ハァ……ハァ……ここらで終わるか?」

 

「…………そうですね。ここらで終わりましょうか」

 

二人とも満身創痍だった。

そして、二人とも魔王城へと戻るのであった。

余談だが、帰る途中でブラムに会う事はなかった。それにひどく安心するのだった。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

思案

最後までゆっくり見ていってください。


中央のいかにもラスボスがいそうな雰囲気の何の無い部屋に一人でいると少し寂しく思うが、安心も出来る。

誰もいない空間はこの部屋くらいだろう。

外へ出ると周りにはいろんな奴がいる。そして、それは俺の守ろうと思える大切な存在でもあった。

例えあった時間が短くとも、相手がどう思っていようと自分がそう思うのだから、この思いは忘れる事が無いようにしたい。

前の世界では、様々な事を忘れてきた。宿題しかり、教科書しかり、約束だって忘れていた。

今も、クラスの人の名前を思い出せるのかといえば、思い出せない。

さらに、友達の名前すらも、あやふやだ。

正直、こうも忘れると自分が自分という存在を否定したくなる。

 

「はあぁ」

 

ため息を少しこぼすが、現状は変わらない。

今の俺は、マグナ・ぜギアノスというこのエリアの魔王で、アレストの冒険者だ。

この世界に来た時は、こんな二足の草鞋を履く事になるとは思っていなかったな。

魔王と冒険者。出来るだけ両立させよう。

大丈夫だ。両方とも不定期で出社しても大丈夫なはずだ。出社っていうのかなこれ。

明日はどうするか。このままここにいるのもいいだろうし、アレストに戻るのもいいだろう。

どっちを選んでも不正解では無いだろうが、正解でも無いような気がする。

それを考えると、

 

「はあぁぁ…」

 

少し長いため息が出る。

悩み事が二つもあると、頭がこんがらがる。二つとも深刻なような気がするが、どうでもいいような気もする。

それと、今まで放ったらかしていたが、夢の中に出てくるあいつ。あいつは何者だ?

確か、復讐のために俺の体を奪うと言っていたな。そして、俺はそいつを否定した。

次会う時は、戦闘が行われるだろう。奴は俺の事を知っているようなので、それなりの策か、俺並みの強さを持っているのだろう。

だが、あいつの情報は無い。したがって対策のしようもない。

こちらは後手に回るしか無い状況だろう。

まあ、どう出るにしろあいつは倒す。倒さねばならんだろう。自己満足の殺しをさせるよりかは。

さて。もう寝るか。今日もいろいろあった。正直疲れた。

ベッドの上で横になる。この部屋は広いのにベッドしか置いていないので、凄く物寂しい。

ベッドに横になると、すぐに寝てしまった。

 

 

 

 

目を覚ますと、辺りは一面の荒野だった。ため息の一つこぼしたくなったが堪える。

前見た時のような視界を塞ぐ砂煙は全くない。辺りは一面の荒野。それ以外といえば一人いる。

一番の特徴は髪の色だろう、前髪が白くて後ろ髪が黒い。俺がよく見知った人物がそこにいた。

 

「なんで、俺がいるように見えるんだ?」

 

事実。俺の姿がそっくりそのまま荒野の中に立っているのだ。あんな髪の色は俺以外いないだろう。

 

「驚いているようだな。無理もない。この姿と力はお前からコピーしたものだ」

 

「コピー?」

 

という事は、俺と同じ見た目で同じステータスなのか。

マズイ。この勝負は技術がある方が有利だ。だが、俺は戦闘に関しては素人だ。分が悪い。

だが、それでも、逃げるという選択肢は無いな。

 

「どうやら、分が悪い事を察したな。それでも逃げ腰にならずにいるその姿勢は評価出来るぞ」

 

俺は戦闘態勢をとる。

 

「まあ待て。お前がどういった理由で殺されるのかわからなければ理不尽であろうから、せめてもの礼に教えよう」

 

その言葉を聞いて、戦闘態勢は解かずに聞く。

 

「私の復讐相手は〈ゾディアック〉と呼ばれる冒険者ギルドの秘密機関。及び、そいつらを扱う各国の代表及び重鎮共だ」

 

冒険者ギルドに秘密機関ってあったんだ。しかし。それを動かせるのは国だけってかなりの実力者なんだろうな。

 

「俺はあの日が来るまでは、幸せを幸せと感じずに生きてきた。ただ、隣に居てくれるだけで良かった存在。それをあいつらが奪ったのだ!!」

 

「私達はただ普通に生きていたのだ、それを奴らは燃やし尽くし、殺し尽くし、何もかも奪っていった」

 

それを聞いて多少の同情が生まれる。

それは、相手の作戦の一つ。という可能性を考えながら。

 

「彼女は遺骨すら残っていなかった。彼女だけじゃ無い。私が知り得る限り村人全員の姿は跡形も無かった」

 

「そして、俺は怒り、奴らの情報を得て、奴らの仲間の一人を問い詰めた。そいつがなんと言ったと思う?」

 

その質問に俺は

 

「必要ない」

 

「その通りだ。奴らは、国から依頼を受けて虐殺を行っていた。ならば、奴らは血で贖うべきだろう。奴らが起こした罪の罰として!」

 

確かにその通りかもしれない。だが、それでも、俺は否定しよう。

 

「だとしても、俺はお前を止める。お前が誰かを殺せば、遺族の人達がお前と同じ感情を抱く事になるだろうし、誰かが殺されると聞いて大人しく出来るような人間じゃない」

 

しばらくの間、無言の時間ができる。

 

「このまま話し合っても平行線だな」

 

「だろうな」

 

相手も戦闘態勢をとる。

こちらは刀を瞬時に抜けるようにしているが、相手は構え的に拳で戦うタイプだろう。

そして、一面の荒野に二つのなにかが爆発するような音と、巨大な砂煙が二つ起こった。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夢幻の世界

最後までゆっくり見ていってください。


刀と拳がぶつかり合う。

本来なら拳が切られ腕ごと斬り飛ばされるのだが、

 

ガンッ!!

 

硬い金属同士がぶつかり合った時に出る音がして、拳は刀を受け止めている事実がうかがえる。

だが、そんな事はハナからわかっていた。

自分のステータスをそのまま相手取るのだ、大体想像がつく。

ステータスが一緒なら、見た目も同じ。唯一違うのは積んだ修練の時間だろうか。

こちらが一ヶ月と少しの間しか鍛えていない剣術ならば、相手は数十年と鍛えた今の俺で勝てない敵。

その証拠に、連撃を加えているのに相手は見ただけで最小限の動きとわかる様な躱し方をしている。

 

「ステータスは高いくせに剣術はやはり素人だな。お前の記憶通りだ」

 

どうやら、俺の記憶まで知っているらしい。

ますます勝てる気がしない。

スキル〈燕返し〉を発動させ、一旦距離をとらせようとするも途中で腕を握られ、刀を振るえなかった。

 

「スキルとは発動すれば強力な攻撃ではない。発動し当てることができて強力な攻撃となる」

 

次の瞬間、目の前に拳が迫っていた。

気付いた時にはもう目の前だったので、防御することも回避することも不可能だった。

そして、吹き飛ばされる。受け身をとれず、地面をバウンドしながら減速していった。

あらかた減速したところで、受け身をとり態勢を整えようとするが、フラついて膝をつく。

脳震盪でも起こしているのだろうか。急いで回復させるが、その瞬間に敵の追撃が来た。

今度は目で追えた。急速に近づいて蹴りを放つ姿が目に追えた。

それが近づいて来た瞬間に、氷の槍を幾十と創り一斉に発射した。

敵は後方へ飛び回避したが、それを追尾する様に槍をさらに放ち続ける。

その間に回復を終え、手放さず持っていた武器を構える。

あれだけ飛ばされたのに武器を手放さなかったのは奇跡だろう。

一度槍を止め、その瞬間に〈神閃〉を発動させ一瞬で間合いを詰め斬りふせる。

しかし、こちらが相手の知覚スピードを超える斬撃を放ったにも関わらず、敵は上半身を逸らすだけで躱していた。

足下を狙った二撃目を放つが、それすらも躱される。

そして、お返しとばかりに回し蹴りが圧倒的な威力と速度で迫って来た。

それを刀を使って受け止めた刹那、足を戻し逆の足で正面から蹴りを放たれる。

それを横に飛び回避し顔を上げた瞬間には、次の攻撃が迫って来た。

それを寸でのところで躱すも、続けざまの一撃が直撃する。

そして、さらに一撃、さらに一撃とまともに連撃を浴びてしまう。

ここままでは負けてしまう。魔力を多く使い周囲を焦土と化す様な大爆発を起こす。

 

「カハ!!ゲホッ!!ゲホッ!!」

 

もうこの時には心は折れていただろう。

絶対に勝てないのはわかった。ならば逃げればいい。だがそれができない。

勝負にならない様な実力差を見せつけられ、もはや、ここで死ぬ道しか残されていないと知った。

だが、それでも俺は自身の治癒を行い、その場に立っていた。自分ですら意味がわからない。

死ねばこんな所から消えて、天国か地獄もしくはどちらでも無いどこかへ行けると思う。

早くここから消えたいはずなのに、俺は武器を構える。

 

「先ほどの攻撃で実力差を知り、もう立てぬと思っていたのだが、以外にしぶといな」

 

もういいや。考えるのをやめよう。

俺は立って武器を構えている。その行動の意味はわからなくても、それが意味する事はわかる。

 

「では今度こそ……死ね」

 

相手の姿が迫る。

そして、攻撃が無数に放たれる。先ほどの連撃の比では無く、対処のしようがなく無残に殺される。はずだった。

目で見えた攻撃に合わせ武器を振るい連撃を尽く防いでいた。

 

「…………!」

 

敵も少しばかり驚いた様だが、それに気づく事はなかった。

頭に心臓に肺に次は……その尽くを頭が気付いたと同時に剣を振るった。いや、もしかしたら頭が気づく前に動いているかもしれない。

その動きには無駄がなく、敵の攻撃をただ防ぐだけの機械の様だった。

そして、敵がスキルを発動させた。

周囲に無数の影の様に黒い何かが現れる。

スキル〈シャドウブロー〉無数の拳を創りそれで一斉に攻撃を行うスキルだ。

単純なスキルだが、強力である。

そのスキルの発動を一瞥するだけで確認し、それが放たれる前にそのスキルと敵ごと爆発させた。

周囲が砂煙で確認できなくなる。

 

「邪魔だ」

 

刀を横に振るう。それだけで周囲を隠していた砂煙は晴れた。

 

「先程までとは別人だな。私の動きにもうついて来れるとは」

 

だが、その言葉も届いてはいなかった。

無言で武器を構える。

 

「………」

 

敵も無言で構える。

そして、爆音が鳴り響く。

今まで通り、猛攻を加える方とそれを防ぐ方に分かれる。

何故か実力が拮抗し始めていた。

もはや死ぬだろうと思われた男の姿は無かった。

そして、拮抗が崩れた。

ただ、攻撃を防ぐだけだった男が一際強く弾き、蹴りを放った。

それは回避されるが、そこからさらに追撃をかけていた。

攻守が逆転した。

ただそれだけだが、防戦一方から攻守の逆転があまりにも早すぎる。

敵はそれに異常を感じ距離を取る。追撃はせずにただ武器を構えて油断なく立っていた。

敵は己の敵をよく観察し、異変を探り、見つけ出した。だが、異変というには小さすぎる事だが、異変だと感じた。

 

「何故お前は笑っている」

 

「……!」

 

その言葉に男は反応した。

そして、我を取り戻した。

 

「俺は今までどうやって……」

 

どうやら、記憶が曖昧な様だ。

 

「何が起こったかはわからんが、今度こそ死ね」

 

その言葉に男は慌てて武器を構える。

敵の一撃が必殺の一撃となり、当たった瞬間、俺の敗北が決まる。

敵の攻撃が見えた瞬間、武器を動かし防いでいく。だが、敵の流れる様な連撃の前で次第に防ぐのが遅れてきていた。

今のままではダメだ。間に合わなくなる。もっと速く動かなければ。相手の次の攻撃を予測しろ。

そう考えるが、今を凌ぐので手一杯で次の攻撃の予測など考えられない。

速く動かそうとしても今の速度で限界で無理だ。

そして、一発腹にくらう。

その一撃は腹部の深くまで入り、勢いよく吹き飛ばされる。

吹き飛ばされ、宙を浮いている状態で複数の攻撃を一身にくらう。その全てがスキルによる攻撃だった。

左腕は吹き飛び、腹部には穴が一つ空いていた。足は両足とも有り得ない方向に曲がっていた。

そして、殴られ地面に勢いよく叩きつけられる。

その衝撃で自身の体は止まり。同時に死を悟り。目を閉じた。

 

 

 

目を開けると、一面の荒野が広がっていた。見たことがある光景だ。

それと同時に、何故だ?と思う。

俺は多分死んだ。あの状況で目を閉じ、それからの事は覚えていないが、死んだはずだ。

まさか、死に戻り的なやつか。しかし、ここからとなると永遠に殺され続けるのだろうな。

そう考え、呆然と立っていると、

 

「よう」

 

目の前に現れたのは白髪の俺だった。

どうも、先程とは違うようだ。

 

「お前は誰だ?」

 

「俺か?俺はお前だ」

 

またこういう回答か。最近流行っているのだろうか?まあ、どうでもいいか。

 

「正確にいうなれば、この世界におけるお前だった者だ」

 

今ならば様々な事が理解できる。

こいつは、俺となるはずだったのだろう。この世界で。生まれや育ち方、性格も違うかもしれないが、俺なのだろう。

平たくいうならば並行世界の俺。という解釈だろうか。

 

「今、お前が考えた事には少し語弊がある」

 

俺の考えを読むか。どうやら俺は考えている事が顔にでるらしい。隠せていると自分が思っていただけで。

 

「俺にはそういうスキルがあるからな」

 

そういう事にしておこう。

 

「話を戻すが、世界は複数あるようだが、その存在はどの世界でもその存在だけで、別の世界に存在はしない」

 

であれば、おかしいな俺は別の世界で生まれ、育った。なのにこいつは俺という。

 

「気付いたな。元のお前の生まれるはずの世界はこっちだったんだよ。だが、なぜか別の世界で生まれた」

 

俺はそんな特殊な生まれだったとは知らなかった。

 

「俺も知らなかったさ。あいつに会うまではな」

 

俺も教えてくれた人に会いたいな。その人ならば、どうして俺が向こうで生まれたのか知っているかもしれない。

 

「そして、ものは相談だが、俺にお前の体を寄越せ」

 

「お前もか」

 

「そうだ。どうせ死ぬんなら、本来の所有者に返してもらおうか。俺ならばあの現状を打破できるからな」

 

ああ。それならばいいかもしれない。だけど、

 

「断る」

 

「何?」

 

なぜか断ってしまう。断る理由なんてないはずなのに。

 

「お前に残された選択肢は死だけだぞ」

 

「だろうな。だが、断る」

 

何故なのだろうか?俺は何故、俺で有り続けようとするのだろうか?

その答えを探す。

それは直ぐに見つかった。

 

「ああ。そうか」

 

それは実に簡単な事だった。

 

「俺にはやらなければならない事が沢山あったな」

 

目の前の男はそれを聞くなり、

 

「それがお前の行きたい理由か?」

 

「そうだな。そうだろうな」

 

それを聞くなり、俺を見る目が嘲り笑うような目に変わった。

 

「ハッ!くだらねーな!なんだ?お前はそんなくだらない事の為に生きてきたのか?つまらない人生を送ってきたな!」

 

くだらないかも知れないが、それが俺の生き様だ。

 

「そんなくだらない人生をこれからも送るなら、さっさと俺に体を返せ!」

 

「それはできない。俺は俺が成したい事は絶対成す。手に入れたいものは手に入れる。こう見えても欲深いらしい」

 

「だったら、お前にとびっきりの情報を教えてやる」

 

その言葉に少しの興味を覚える。

 

「お前は、平和な世界というものを望み、その夢は消えた。そう思っているみたいだが、お前の中ではその願望が今も強く残っているぞ」

 

その言葉に驚愕する。自分は不可能だと諦めた夢を今もまだ夢見ているらしい。

 

 

「さらに、お前は俺と同じで戦いを楽しんでいる。なのに、お前は戦いのない世界を作ろうとしている。滑稽だな!お前は!」

 

確かに。そうだな。俺は知らず知らずの内に戦いを楽しんでいたかも知れない。

だが、

 

「関係ない」

 

「何?」

 

「関係ないと言っている!」

 

俺がどういう人物でどういう人間かはわかった。

だが、

 

「それが今の俺に何の関係がある!俺は今、この状況を打破して俺が見たい世界を見る。その気持ちに俺がどういう人間かなんて関係ない!」

 

それを聞いて、目の前の男は目を閉じ、笑みを消した。

 

「お前のその先にお前が見たいものが無かったとしても?」

 

「ある!なにせ俺が作るんだ。不可能ではない」

 

目の前の男が目を開ける。その表情には嘲りは無かった。

 

「まるで子供を相手にしたみたいだ。まるで進歩していない。本当に…………俺そっくりだ」

 

その顔は非常に優しそうな顔であった。

しかし。俺そっくりとは向こうもかなりのバカとみえる。

 

「なら、お前がいるべきはここじゃないだろう?」

 

「確かにな。だが、今のままでは勝てないのは明白だ」

 

このまま、戻っても無残に殺されて終わりだろう。

なんとか、窮地を脱する方法を考えなければならなかった。

 

「ハッ!ならば手を出せ」

 

小馬鹿にしたような言い方だが、言われるがままに手を出す。そして、その手が握られた。

何をしようとしているのかわからなかった。

 

「〈略奪〉を使え。といっても、ステータスなんざ無いけどな。さっさとスキルだけ奪ってさっさと行け!」

 

その言葉に一瞬呆気にとられたが、すぐさま〈略奪〉を発動させる。

 

『スキル〈思考加速〉を獲得しました。スキル〈未来予測〉を獲得しました』

 

「感謝する」

 

礼を述べた。今の俺にはそれくらいしかできない。

 

「……あと、ここはお前の世界という事をよく考えろ」

 

それを〈思考加速〉を使い、その意味を考えた。そして、ある事に思い至る。

 

「ここは、俺の心の世界という事か」

 

「ハッ!今更気付くとか遅すぎるんだよ」

 

俺の心。万人にもあるものであり、その風景は異なるが。皆、同じ意味を持っている。

景色は移り変わり、吹く風も変わる。同じ世界はなく。それぞれの世界がある。その名を

 

『固有スキル〈無限の世界〉を獲得しました』

 

〈無限の世界〉これが俺の具現となるものだろう。

 

「さっさと戻りやがれ、俺」

 

「ああ。何から何までありがとう」

 

その言葉をかけると、照れ臭そうに頬をかいた。

そして、最後にこの言葉を聞いた。

 

「これから先、一回でも生を諦めたら俺の体を返させてもらうぞ!」

 

その言葉に、

 

「諦めるわけないだろ!」

 

そう言った瞬間、辺りを砂煙が包んだ。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無限の世界

最後までゆっくり見ていって下さい。


非常に重たい瞼を開ける。

目に入るのは今にも俺を殺そうと構える俺によく似た姿の敵だった。

必殺の拳が放たれた刹那、魔法によって障壁を生み出し、それを食い止める。

 

「そのまま寝ていれば楽に死ねたものを」

 

「まだ死ぬわけにはいかないからな」

 

敵が後方に大きく後退する。その瞬間、そいつがいた場所に巨大な氷塊が顕れる。

起き上がり、その間に考える。

 

(接近戦ではこちらが圧倒的に不利。魔法戦も意味がないだろう。だが、〈未来予測〉がある。それをうまく使えれば、勝機はある)

 

敵が少し体を低くする。

来る。

おおよそ、〈神速〉による高速移動。こちらは〈一閃〉を使い迎撃する方が良いだろう。

敵が消えた瞬間、〈一閃〉を発動させる。

 

「!」

 

その時、敵の頰に切り傷が一つ生まれる。

こちらは畳み掛けるように、連撃を放とうとするが一撃目にして敵の腕によって攻撃を止められる。

今更驚きは無い。それどころか、予想していた。

氷の槍を一瞬で生み出し、全て射出する。

尽く障壁に阻まれるが、地面から出た土の槍が敵の足を捉えた。

それは一瞬で破壊されるが、一瞬でも注意がそちらに向けばいい。

〈緋桜〉と〈一閃〉を同時に発動させ、敵の隙を見つけ出し、そこに神速の刃が迫る。

次の瞬間、嫌な予感を感じ、全ての動きを中断して後方に飛んだ。

瞬間、先程までいた場所が敵を中心に豪炎に包まれていた。

そして、その炎が止むと赤く赤熱した大地の中心に敵は立っていた。

 

「先程までとは別人だな。その戦いへの姿勢、中々のものだ。だが、」

 

その瞬間、あたりの大地が震え、空気が変わった。

 

「その程度で私に勝てると思うなよ」

 

素人でもわかるほど濃い殺気が溢れ、俺に逃げろと催促する。

だが、逃げるわけにはいかない。

 

「この程度でもお前に勝つ。まだ、やらねばならぬ事があるからな」

 

俺は油断なく敵を見つめそう言い放つ。

 

「その中心にいる奴もお前を残していずれ死ぬ。私はその悲しみを消し去る事ができるぞ?」

 

「確かに俺より先に死ぬかもな。だが、それが自然の摂理で俺はそれを受け止める」

 

「その悲しみを味合わなくていいと言っている」

 

「それを受け止めると言っている」

 

「………」

 

「………」

 

二人の間に沈黙が流れる。

二人は油断なく敵を怒りの目で睨みつける。

 

「お前を殺す理由が一つできた」

 

敵が言葉を発する。それは皮肉にも、

 

「奇遇だな。俺も同じ事を思った」

 

二人がゆっくりと歩み出す。

 

「「俺はお前が気にくわない」」

 

二人が同時に同じ言葉を発した瞬間、動きがあった。

敵が一瞬で肉薄し蹴りを放つ。それを刀の刀身で受け止め右に逸らす。そのまま刀を横一閃に振る。その瞬間右手を離し、横から迫る蹴りを防ぐ。

刀の一振りはカスリもせずに空を切る。右手で防いでいた足を掴み宙に放り投げる。

投げた瞬間ブラムが使っていた、黒紫色の槍や剣を地面が埋め尽くされる程生み出す。

それを全て射出する。放った時に右手に魔力を集中させる。

地面が埋め尽くされる程の魔法を敵は一瞬で焼き尽くす。その一撃は地面に到達し、俺を焼き尽くす。はずだった。

俺を焼き尽くそうとする黒炎を見ながら、右手に纏った黒い雷槍を敵のいる位置に放つ。

黒炎と黒雷がぶつかり合い、その一撃は拮抗し次の瞬間、激しい爆発を巻き起こす。

爆発が起こった瞬間、黒き風を巻き起こし黒い竜巻を巻き起こす。

敵は宙にいるので避ける術はない。

黒い竜巻が収まり、敵が地面に着地する。

その体は無傷。一つ足りとも傷は付いていなかった。

今度はこちらから踏み込み刀を振る。

その動きに迷いは無く。純粋な殺意と力が篭っていた。

敵はそれを冷静に弾き、その一撃の際に、誰とも知らない記憶が流れ込んできた。

それも、死や裏切りの記憶。

 

「!!」

 

「………」

 

その瞬間に手が止まり、敵の反撃を許してしまう。

敵の流れるような連撃は長年の術技、殺意、力がこれでもかと篭っていた。

だが、どのような不規則な連撃でも回数を重ねるごとに次にどこに来るのか予想できる。

その予想が外れる時もあるが、あらかた間違ってはないので致命傷にならない。

そして、次の一撃でまたもや誰とも知らない記憶が流れ込んできた。

それは負の記憶では無く、優しさや友情、愛情といった記憶だ。

 

「………」

 

「!!」

 

敵の動きが一瞬止まる。その隙に〈緋桜〉と〈一閃〉を同時発動させた。

それは狙い違わず敵の隙になった位置全てに神速の速度で迫った。

そして、それらは敵に致命傷とはならずも敵に当たる。

すると、地面から無数の土の槍が出てくる予感がし、大きく後退する。

その瞬間、地面に無数の亀裂が走った。おおよそ風属性魔法の類だろう。

地面に無事に着地し、体制を立て直す。

 

「お前にも、いい記憶の一つや二つはあるじゃねーか」

 

少しの皮肉を言う。

 

「いい記憶?笑わせる。友情は裏切りとなり、優しさは嘲に変わり、愛情は悲しみに変わる。俺の記憶を見たのならばわかるだろう?」

 

「………」

 

大体わかる。そして、この言葉が敵の何かに触れた事も分かった。

 

「お前も、そんな物味わいたくないだろう?考え直したのならば言うがいい。これが最後の通告だ」

 

確かに。これから先の未来、こいつの人生のようになるのかもしれない。

だけど、それでも受け入れてやる。受け入れて、友人として上司としてその場に俺は立っていよう。

 

「答えは変わらない。それでも受け入れる。覚悟は決まった。これから変えることは無い」

 

「笑わせるな。あの程度の負の記憶で絶望や失望を感じるお前に耐えられる訳が無い」

 

「そうとも限らない。人間は変わる生き物だ。あいつらに裏切られようと、友人や上司としてい続ける」

 

目の前の敵に覚悟をぶつける。

 

「人間はそう変わらんぞ。断言できる」

 

「そうでも無いさ。きっかけやそいつの近くにそいつを支える人がいれば、すぐに変われるさ」

 

「そんな物、そいつを切り捨てるに決まっている」

 

「俺が近くにいるといっている」

 

「…………」

 

「…………」

 

二人の視線が交差する。

次の瞬間、二人が同時に動き出した。

気にくわない。

自分勝手な事を他人に押し付けていかにも自分が正しそうにする。

人間が全てを裏切り、いかにも全ての人間がそうであるかのように話す。

こいつは地上に出てもろくな事をしない。ここで殺した方がいい。

気にくわない。

こいつがいずれ味わう悲しみ、絶望、失望。それを全て消そうというのに、こいつはいう事を聞かない。

人間はそんな物だというのに、可能性に縋っている。いずれ、私と同じ壁にぶつかるというのに。

それに復讐の邪魔になる。ここで殺して構わないだろう。

拳と刃がぶつかり合う。拳と当たったと思えない音を立てながら、戦闘が続く。

お互いに譲れない思いを胸に戦い続ける。

こちらの攻撃は最小限の動きで躱されるが、相手のおおよその攻撃は予想できる。

そのおかげで、ここまで戦えている。

相手の次の動きを予想できるアドバンテージで敵との技術の差を補っている。

それがなければ敗北は必定だっただろう。

 

「いづれお前も裏切られ、絶望する。そんな人生に意味なんてないぞ」

 

またその話か。

 

「人生に意味なんて求めていないし、裏切られても俺はそいつの傍を離れない」

 

互いに刀と拳を交えながら会話する。

 

「その考えが愚かしい。お前も裏切られ、絶望しそいつの傍を離れるに決まっている」

 

「それは無いな。裏切られても構わない。いずれまた分かり合える日が来ると信じている」

 

「お前は馬鹿か。その考えが馬鹿であることに気づいているのか」

 

「ああ俺は馬鹿さ。そして、お前も俺と同じ馬鹿さ。人間を信じたのは俺もお前も同じ事だ」

 

「!!!」

 

どうやら図星らしい。まあ、大体予想はついていたけど。

 

「お前が人間に裏切られた事を憎んでいるのは、お前も人間を信じたからじゃ無いのか?」

 

「……確かにな。だがそんな気持ち既に消え失せた」

 

尚も二人の技に迷いも偽りもない。ただ純粋な武によって勝負している。

互いに一歩も譲らず、退かない。果敢に攻め、守る。

ただそれだけの勝敗を決する勝負。

しかし、このままでは勝敗は決まらないだろう。勝敗が決まるにはもう一つ何かが必要だろう。

刀と拳が鍔迫り合いを始める。

通常ではあり得ないが、ここは異世界。そんな法則強者の前では通用しない。

 

「ここらでもう終わらせようか」

 

「敗北を認めるのか?」

 

「そんなわけあるはずがないだろう?」

 

一旦距離を取り、新たなスキルを発動させる。

すると、一面荒野の世界から、一面真っ白の氷の世界になった。

スキル〈無限の世界〉使用者の心象を具現化する能力。

俺の場合。移り変わり行く感情が現れている。

そして、この世界は俺の世界。地形の優位性はこちらにある。

 

「地形が変わった程度で私に勝てると思うなよ」

 

敵が一瞬で肉薄し、右ストレートが放たれた。

その一撃は、派手な音を立て、氷壁にぶつかった。そして、その氷壁の先には俺がいなかった。

 

「地形程度で勝てるとは思っていねーよ」

 

背後から声をかけると同時に刀を横一閃に振るう。振り向きざまに回避されたので、横腹を少し切っただけだった。

反撃として放たれた一撃はまたも氷壁にあたり、俺の姿が消える。

そして、別方向から斬撃が放たれる。

 

「何をしたお前!?」

 

敵をこの攻撃になれる時が来るはずだ。ならば、その時が来る前に殺す。

 

「お前じゃ俺にはもう勝てない」

 

敵が反撃を叩き込むと同時に氷壁が現れ、その先に俺はもういない。

 

「無駄だ」

 

その言葉と同時に仕掛けた。

大きく一歩を踏み込み、スキル〈奈落落とし〉を発動させる。

防御として使われた腕は刀で切られ、地面に落ちる。

そのまま刀を後ろに引き、突きを放つ。

敵も反撃で全力の右ストレートを放つ。

 

「「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

気合の叫びとともに刀と拳が交差し、刀は敵の心臓を貫き、敵の右ストレートは衝撃波で俺の腹に少し大きい風穴を開けた。

 

「カハっ!!」

 

吐血する。それを治癒魔法で直すと、一瞬でその傷は癒えた。

そして、敵は薄い光に包まれていた。

 

「俺の勝ちだな」

 

「そうだな」

 

ここに勝敗は決した。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去の自分

最後までゆっくり見ていって下さい。


薄れゆく敵を見ながら俺は勝利を確信する。

 

「………………」

 

「………………」

 

お互いの間に沈黙が流れる。

勝敗は決したが、お互いの目に闘志の色は消えていない。未だに相手を殺そうとする戦士の目だ。

勝敗は一目瞭然で、誰が見ても刀をもった男の勝利だった。しかし、二人の間では勝敗はまだついていなかった。

刀を勢いよく引き抜く。そうしても闘志の目は消えない。

 

「俺の勝利だ。どうだ?少しは可能性を信じる気になったか?」

 

その問いに敵は

 

「全く」

 

二人が睨み合い、ちょっとした事でまた戦闘が始まりそうな中、口を開く。

 

「お前の過去にどんな事があったかは知らないが、過去は過去だ。未来にもってくるな」

 

その言葉に不快そうに

 

「あの事を忘れて生きているお前が気にくわない」

 

そして、過去を思い出すように目を閉じる。

 

「私と彼女は最初こそ普通に生きていた。そして、私は彼女に恋をした。私は彼女を守れるようにと力を付けた。幸いにもその才能はあった」

 

「彼女はいつも明るく、まるで太陽のような女性だった。そして、私達はいつしか愛し合い、結ばれ、人並み以上に誇れる幸せを手に入れた」

 

俺はそれを黙って聞いていた。仮にもこいつは俺の過去の姿。自分の過去を知るのも必要だろう。

それに、俺以外に聞いている奴が数人いるしな。

 

「そこまで、私の人生は愛する人がいて、友人がいて、順風満帆の人生を送っていた」

 

そして、目を開けた。その目には溢れ出さんばかりの殺意があった。

 

「それをあいつら〈ゾディアック〉が奪っていったのだ!!」

 

「さらにその中の一人とその日に私に魔物退治を頼んできた者が私の友人だったのだ!」

 

だから友人も恨んでいたのか。そして、ここまでの話を聞いても全く思い出せない。

俺の過去ということはこの場面を一度経験しているはずだがな。

 

「私が魔物退治に出ている間に、私たちが住んでいた村に襲撃があった。その襲撃によって彼女は命を落とした」

 

「その時ほど彼女の側に居られなかった事を後悔したことはない。その時ほど、人を恨んだことはない」

 

「一通り悲しんだ後の行動は速かった。襲撃した者の一人を突き止め、拷問をして〈ゾディアック〉の存在と裏切り者の存在を知った」

 

「そして、私は復讐を開始した。だが、幸せな生活が長すぎたせいで、私の力は鈍っていた。そして、私は力及ばず殺された」

 

そして、今に至るということか。

正直〈ゾディアック〉というものは知らないが、こいつの、俺のいつかはわからない前世の過去はわかった。

壮絶なものだっただろう。悔しかっただろう、辛かっただろう、悲しかっただろう。だが、俺にはそれくらいの事しか言えない。

奴を改心させるか、復讐心を煽るかわからないがこの手しかないだろう。

 

「俺にはお前の過去について何も言えない。だが、あいつらから何か言いたい事があるように見えるぞ」

 

俺は、普通に見ると何もない空間だがスキルを使うと見える空間を指差した。

そこを見たあいつは、

 

「何もないではないか」

 

どうやらスキルを発動させていないらしい。

 

「〈看破〉を発動させてからまた見てみろ」

 

そして、また指差していた方角を見つめる。

 

「!!!!」

 

そこには、一人の女性と二人の男がいた。

 

「サクラなのか?……お前たちは!」

 

3人の幽霊があいつのそばに近寄る。

そして、あいつが女性と男二人の間を隔てるように立ちはだかった。

 

「リュウ君大丈夫だよ。その人達も嫌がっていたんだよ?」

 

「………」

 

その言葉を聞いても動く気配と敵意は全く薄れなかった。

 

「リュウ君。もしも私が人質に取られて、助けて欲しければ親友を騙さなければならないとしたら、リュウ君も親友を騙すでしょ?」

 

「………確かに。だが、サクラ。君が殺された事実は消えない」

 

その言葉に敵意は少し薄らいだ気がした。

そして、幽霊の男が口を開く。

 

「すまなかった!俺は両親と恋人を人質に取られていたんだ。今更許してくれ、なんて言わない。ただ謝らせてくれ。本当にすまなかった!!」

 

「俺も許して貰おうなんて思わない。すまなかった!!」

 

その言葉に嘘偽りがない事は、スキルを使っても使っていいなくても分かった。

 

「これでも、まだ許してくれない?」

 

その言葉にリュウは、

 

「…………まだ完全に許せたわけでは無いが、彼女に免じて許そう」

 

「よかったー。許さなかったらどうしようって思ったよ。それと、一人称も『私』じゃなくて『俺』の方がカッコよかったよ」

 

「そうか」

 

どうやら、もう心配はいらなそうだ。

彼らだけにして、他人は立ち去ろう。そう思って離れた場所まで移動した。

 

「よかったじゃねーか。勝てて」

 

聞き覚えがある声を聞いてそこを向くと、俺がいた。

詳しく言えば、この世界でそうなるはずだった俺がいた。

 

「確かにな」

 

俺は短くそう答えた。

 

「ハッ。もう俺の出番はなさそうだな」

 

そう言うと、目の前の俺の体が消え始めた。

 

「なんだ?死ぬのか?」

 

その問いに、面白そうに笑って、

 

「俺は生きていないんだぜ?なら、死ぬなんてできねーよ」

 

「確かにな」

 

そう言って、俺も少し笑った。

 

「だが、俺はお前を見張っているからな。それを肝に命じておけ」

 

「ああ」

 

俺が答えた直後、消えた。最後に腕を伸ばして親指を立てていた。

目の前にいたあいつに心の中で感謝しながら、前を向いた。

目の前には、あの四人がいた。

 

「少しは信じる気になったか?」

 

その言葉にリュウは真っ直ぐに俺を見て、

 

「全く」

 

短くそう言った。

これは予想外だった。少しは信じる気になってくれたと思っていたのだがな。

 

「……………だが、信じる努力はするつもりだ」

 

その言葉を聞いて、俺は一安心した。

 

そして、リュウの体は今にも消えそうなほど薄くなった。

 

「もう時間だな」

 

「そうだね」

 

そう言うと、周囲の幽霊も薄くなった。

 

「騒がせた。そして、すまなかった」

 

そう言ってリュウは頭を下げた。

 

「私の夫が迷惑をおかけして申し訳ございません」

 

夫婦仲はまだ全然大丈夫なようだ。愛し合っている事がかなり伺える。

 

「大丈夫とは言えなかったけど、いいですよ。お前、今度こそはちゃんと守れよ」

 

それを聞くと、リュウは小馬鹿にしたように少し笑って、

 

「誰にそんな事を言っている?お前だぞ。守りきれないはずがない」

 

「確かに」

 

俺はまたも少し笑った。

 

「さらばだ。未来の俺よ」

 

「さようなら。未来のリュウ君」

 

「ああ。じゃあな」

 

そう言うと全員消えた。

 

「俺もそろそろ現実に戻るか」

 

戻り方?多分、〈無限の世界〉をどうにかすればいいと思う。

確信はないが、予想はできる。

さて、理想を叶えるためにも、俺の守りたいものを守る為にも、戻るか。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

女神降臨

ゆっくり見ていって下さい。


そして、現実に戻ろうとスキル〈無限の世界〉を発動しようとすると。

 

「ちょっと待ったーー!!」

 

もう俺以外誰もいない世界に俺をこの世界に送り込んだ神の声が聞こえた。

そして、目の前に金髪の髪をした女性が現れた。

 

「あ。僕の事を女性と認めてくれたね。いやー、嬉しいねー」

 

「違う。細かい事を深く考えるのはやめにしただけだ」

 

あって早々に挨拶もせず、こちらの思った事を読んできたのは初めて会った神だ。女性だから女神か?

 

「そうそう。僕は女神だよ。さあ崇めたまえー」

 

辺り一面に当然の事ながら俺以外の人の気配は無い。辺りになんとも言い難い静寂が流れる。

一面の白銀世界に冷たい風が一つ吹く。

 

「うお。寒いね。この世界」

 

「景色は見ての通りだ。当たり前だろ?」

 

というか、こいつが用も無く俺の目の前に現れる事が無いから、多分何かあるんだろうな。

 

「ああ!忘れるところだった!君に少し用があったんだった!」

 

忘れかけたのかよ。ていうか、あって数分も経ってないよな?そんな短時間で忘れるってこいつ大丈夫か?

 

「大丈夫だよ。これでも神としては位は高い方だから」

 

神にも位があったのか。

まあ、今はどうでもいいか。

 

「んで、俺に用事って何の用だ?」

 

その言葉に目の前の女神が何か思い出すような仕草をした後に、あっ。と思い出したようだ。

 

「そうそう。君の事についてわかったからその報告に来たんだ!」

 

「俺の事についてか。それは気になるな」

 

俺の事か。大分自分の事についてかわかってきたが、それでもわからない事がある。それを知れればこの女神に会えて良かっただろう。

 

「会えて嬉しいなんて。照れるな〜」

 

「嬉しいなんて一言も言ってないし、思ってもねえよ」

 

「ちょっとは思ってくれてもバチは当たらないよ?」

 

「思うわけないだろ」

 

その言葉に少し残念そうにしているが、大して気にする事無いだろう。

 

「ちょっとは気にして欲しかったよ」

 

呆れた声でそんな事を言ってきた。

 

「それじゃ、本題は?」

 

またズレそうだった道を本題へと修正する。

 

「そうだね。それじゃ教えよう。実はね、君はね…………この世界の人間だったのさ!!」

 

「ああ。知ってるよ」

 

「マジで!?」

 

その時、また一つの寒風が吹いた。

 

「……冷え込むな」

 

俺が話題をちょっと切り替えるための言葉を放つ。

 

「…………そうだね」

 

そして、会話が途絶えた。

 

「……お前が来たのはそれだけを言うためか?」

 

その言葉にバッと顔を上げて、

 

「そんな訳ないじゃ無いか!」

 

さっきまでの暗い表情とは打って変わって、自慢げな表情をしている。

 

「そうか。それじゃそれを教えてもらおうか」

 

「まっかせてよ!」

 

また忘れるのでは無いか?と不安は少しあるが静かに聞いておくようにしよう。

 

「君はね、神たちの悪戯で別の世界に放り込まれたのさ。そしたら、この世界にも元いた世界にも異変が生じるようになる。そんな事を無視してね」

 

「で、今はこの世界もあっちの世界も修復しようと躍起になっている。主にやらかした神達の後輩が」

 

そこでちょっとした疑問が生じた。

 

「そのやらかした神達はどうした?そいつらに修復を押し付ければいいんじゃ無いのか?」

 

その言葉に笑顔に見えない笑顔を浮かべて。

 

「その神達なら、責任を取って貰ったよ。勿論、その時の上司だった私なりの方法で」

 

ものすごい気迫でそれを言ってきたので俺は頷く事しかできなかった。

 

「話を戻そう。今はこの世界も修復中だから何が起こるかわからない。邪神が現れたり、天変地異が起こってもおかしくないかも」

 

「おいおい。それってかなりやばいんじゃないのか?」

 

神の言葉に少し驚きを感じる。今までのように面白がって言っている感じではないのだ。

 

「ヤバイって問題じゃないね。下手すれば世界が滅びる。最悪の結末は二つの世界が滅ぶ事。最良の結末は二つの世界がこのまま回り続ける事。だね」

 

かなりマズイ事になっているようだ。それこそ世界規模の大きな問題が。

 

「向こうの神と連携して事に当たるけど、それでも手の回らない事がある。その時は君の出番だ」

 

そして、いつに無く真剣な眼差しで俺を見つめてくる。

 

「元々私たち神が悪い事は分かっている。自分勝手な事を言って悪いけど、頼まれてくれるかい?」

 

そんな真剣に言われて、世界が滅ぶなんて言われたら、断るなんてできないだろ。

 

「わかった。その時が来たら任せろ。力だけは強いからな」

 

「助かるよ。それじゃ。私はもう戻ろうかな!仕事はいっぱい残ってるし。何かあったら僕が報告するからその時はよろしくね!」

 

いつものような感じの神に戻った。

俺は溜息を一つ吐いて。

 

「そん時は任せとけ」

 

そして、女神が歩き出す。俺の横を通り過ぎる時に、

 

「巻き込んですまない」

 

と、謝罪の言葉を言った。その言葉に驚き、振り返った時には女神はいなかった。

 

「この世界は気に入っているんだ。言われなくても助けたっての」

 

と独り言を呟いて、まだ見ぬ強敵の事を考えながら、俺は現実へと戻るのであった。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

これから

ゆっくり最後まで見ていって下さい。


目を覚ますと昨日と同じ天井が見えた。

しかし、この無骨な天井と部屋に慣れた訳ではない。流石に十数年と過ごした実家の方が数ヶ月経った今でも忘れられない。

というか、あっちにいた方が快適だっただろう。だが、この世界に来た事を後悔することはない。

なぜなら、あの世界で感じていた退屈は感じないからだ。

その退屈は俺が別の世界の住人だった事が原因なのかは知らないが、そう仮定する事もできる。

確証も何もないが、今になってわかった事だ。そして、情報が少な過ぎるためにわからない事も多いが。

そして、俺は起き上がり今できる朝支度をし、外に出る。

そこは開けているが周囲は木に囲まれ、森が広がっている。

一応俺がこのエリアを統括している名ばかりのボスである。

 

「おはようございます。主人様」

 

声のした方に目を向けると、新緑を思わせる髪の色をした女性。な名をリーフという。俺の最初の配下、というか部下だ。というより秘書に近い感じがする。

実力も俺に届かずとも俺が見てきた平均の強さを圧倒的に飛び抜いている中の一人だ。

 

「ああ。おはよう」

 

と返事の挨拶を返す。

そして、俺がここに残ってすべき事を考える。

第一目標である、この森の統制。新しくできた部下の四人により、それは達成された。

第二目標。第二目標?あったけ?統制以外にする事はあったけ?

無いな。強いて言うならば、俺の部下たちに上司らしい事の一つくらいはしたいが、俺がいなくても全然回っているので意味がない。

たとえロウガのような脳筋でも統制はできているのである。

 

「起きていたのか。丁度いい。昨日の約束通り、俺と勝負してもらうぞ!」

 

噂をすれば何とやら、ロウガが来た。

そういえば昨日にそんな事を言っていた気がする。俺は約束は絶対に守るたちなので、刀に手をかける。

 

「ああ。いいぞ。さあ、かかってこい!」

 

俺がそう言った瞬間、ロウガの手にハルバードが握られており、大地を砕くほどの勢いで踏み込み、勢いよく振り下ろす。

 

「ハァァァァ!!」

 

振り下ろされた一撃を難なく避けるが、その一撃は大地を砕き震わせる。

その揺れは体制を崩すには十分過ぎるほどの威力を持っていた。

体制を崩し、満足に動くまでに数秒もかからないが、その隙は致命打となる。

高速で振り上げられたハルバードの切っ先はマグナの頭部にヒットし、決着がつくだろう。

マグナの敗北と。

だがそれは普通の人ならば、と限定されるだろう。

ここまでの展開はロウガと出会った瞬間に予想済みだった。否、予想などしなくともこの程度覆せる。

〈神速〉を使い、神速の腕でハルバードを受け止める。

そのハルバードはロウガが力を入れているにも関わらず、ピクリとも動かない。

次の瞬間、ロウガはハルバードを手放し、格闘戦へと移行する。

これは予想外だった。マグナの顔に驚きが映る。

ロウガはまたも大地を踏み砕き、肉薄する。だが、その瞬間に伸ばされた掌から放たれた衝撃波により、後方へと勢いよく吹き飛ばされる。

予想外の事も起こったが、〈思考加速〉により速くなった思考速度のおかげで、素早く対処する事ができた。

 

「さて、前回は殴り飛ばしただけでボロボロだったが、今回はどうだ?」

 

前方を見据えると、地面には二本の線が入っていた。そして、その先にロウガが立っていた。

その光景は予想はしていたが、驚く事である。

手加減こそしていたが、耐えられるほどでは無いはずだ。

考えられるのは、防御系のスキルを使ったか、もしくは魔法で守ったかのどちらかだが、あの一瞬で発動させたのだ。これは驚くほかない。

 

「なかなかだな。さっきの一撃を防ぐとは凄いな」

 

マグナの言葉に油断なく構え、まだ闘う意思表示をする。

マグナも構え、今度はマグナが踏み込み大地を粉砕する。

一瞬、いや、それすらも遅く思うほどの速さで肉薄し、単純な右ストレートを放つ。

豪風を伴った右拳は、なんの反応もできなかったロウガの腹部に直撃し、吹き飛ばずにロウガはその場に倒れた。

 

「勝負あり。勝者マグナ様」

 

リーフの声がして、俺が勝った事を知らせる。

ロウガはしばらく起きそうにないので、日陰に移動させ、少し介抱してやるとすぐに起きた。

その表情は悔しそうで、また挑んでくるな。と思わせた。

 

「俺も強くなったが、みんなも強くなっているんだな」

 

その独り言にリーフは、

 

「ロウガは昼夜戦闘を行なっておりますので、私達より強いかもしれません」

 

「そうか。いづれ俺と同等になるかもしれないんだな」

 

マグナは薄く笑みを浮かべた。そうなった時に勝てるのか?と疑問を浮かべると同時に楽しそうでもあったのだ。

そして、リーフに俺が考えた事を話す。

 

「俺はここに魔物の統制として残ったが、お前たちのおかげですぐに終わった。ので、そろそろ向こうに戻ろうと思うが、いいか?」

 

その言葉にリーフは

 

「それは主人様が決める事ですので、私からは何も」

 

「そうか」

 

ならば、もう戻っても構わないだろう。

 

「あ。ちょくちょく戻ってくるぞ。何というか心配だからな」

 

何を心配しているのかは、多分、ロウガとブラムだろう。心配の原因は。リーフとシンシアは全く心配はしていない。その点に関しては信頼はできる。

 

「では、私からも外出を致しますので、会う事もあると思いますので、その時はよろしくお願いします」

 

その時、重大な疑問が思い浮かんだ。

 

「お前がいなくても、お前が管理している魔物は大丈夫か?」

 

「心配には及びません。エリアの魔物は基本エリアから出ません」

 

「そうか。ならば安心だ」

 

俺たちは、歩き出した。

リーフは何を考えているのかわからないが、俺は少し、何が起こるか期待している。

期待を胸に、外へと歩き出した。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出発

ゆっくり見ていって下さい。


エリアの外に出る途中に、これからの事を少し考える。

まずは、アレストの街に戻る。そして、ミコトと合流する。あとは、冒険者の仕事をしながらここの様子を見に来るくらいか。

エリアボスと冒険者の二足の草鞋。どうにか両立するしかないだろう。

それと、この世界に異変が起こるかもしれないからその異変の解決もしなければ。

やる事はあるが、どれも漠然としすぎて計画が練られない。というか、どれも不定期だから計画のけの字も無い。

その時その時で臨機応変に対応しろ。という事か。不器用な俺には難しいかもな。

 

「主人様どうか致しましたか?」

 

俺の歩いていたリーフが無表情のままだが聞いてくる。

 

「ああ。これからの事を少し考えていた」

 

「そうですか」

 

そこで会話が終わってしまう。

会話が少ないとどこかいずらい感じがする。それに、何か不満があった時にそれが聞きづらくなる。

まあ、俺のコミュニケーション能力が低いのが悪いんだけどね。

 

「……何か不満があるなら遠慮なく言ってくれ。出来る事なら改善するつもりだ」

 

その言葉に視線をこちらに向ける。これは意外にも言ってくれそうだ。

正直、俺がメンタルブレイクする様な事にならなければそれでいいんだが。

 

「では僭越ながら述べさせて頂きます。まずは御自身の行動や決断にもう少し自信を持ってください。後は部下の躾をするのも上司の務めだと思います。自由過ぎますよ。ここは」

 

「すまない」

 

正論だと思った。確かに俺は自分の決断や行動に今ひとつ自信が持てない。そして、部下を自由にさせ過ぎているのも正しいだろう。

そんな事を言われた時に即座に出て来たのは謝罪の言葉だった。

いつかそんな所も治るといいな。

 

「自由にするのが主人様の方針ならばいいのですが、御自身の決断や行動の自信は持って下さい。上に立つ者が自信無さげだと下の者が心配になるので」

 

「本当にすまない。以後、改善に努力しよう」

 

自由は俺の尊重する所だが、ロウガは少し自重してくれないと戦闘の音などが聞こえてしまう可能性がある。そうなったら、また調査をしろ。と言われるかもしれない。

ブラムも何か心配だ。何をやらかすかわからない。勿論、予感でしか無いが、何か嫌な予感がする。

しかし、短い時間でよくこうも俺の欠点に気づいたものだ。彼女の観察眼はすごい。もしかしたら、そういったスキルを持っているかもしれない。

 

「一ついいか?」

 

「何でしょう?」

 

今俺は他人に聞くべき事を聞こうとしているが、それでも聞いておきたかった。

 

「俺はどういった〈エリアボス」になればいい?」

 

その質問にリーフはいつもの様な無表情で淡々とこう言った。

 

「それは主人様が決める事です。私が口を出す事では無いです。それは主人様もわかっているはずです」

 

どうやらお見通しらしい。本当に凄い。俺はステータスだけ強いが彼女はそれ以外の強さがある。その部分では彼女に勝てそうに無い。

しかし、俺が聞きたいのはそういうことでは無いのだ。

そのことに気づいたのか彼女はそれにと付け加え、

 

「私は主人様がどの様な〈エリアボス〉になったとしても付いていきます。その覚悟は主人様の配下になった瞬間に出来ております」

 

どうやら俺がどんな〈エリアボス〉になろうと付いて来てくれるらしい。

 

「それが、迷いだらけの者であってもか?」

 

その言葉に迷うことなく彼女は。

 

「それだけ迷うという事は最適な方法を模索している証拠ですので、何を嫌になるんですか?」

 

その言葉に少しの間言葉を失う。そして、俺が目指すべき〈エリアボス〉も決まった。

 

「ありがとう。お陰で決まったよ」

 

「そうですか。私の発言が実を結び至極光栄に思っております」

 

光栄に思っていると言っても、彼女は無表情だからそう思っているのかを知る事は俺にはできない。

しかし、彼女の言葉を信じる事はできる。それが俺にできる最大限のことだから。

そんな会話をしている内に、エリアの境界線である背の高い草原へと辿り着いた。

 

「お前はこれから何処へ行く?」

 

その言葉に少し悩んだ仕草を彼女は見せる。どうやらノープランであった様だ。

普通はそうか。見も知らぬ地に行くのだ。この質問はちょっと意地が悪かったな。

 

「すまなかった。この質問は意地が悪かったな。どうだ、一度俺の行くアレストまで行くのは?」

 

その言葉に彼女は、

 

「いえ、大丈夫です。私も周辺の状況の確認と各国の情勢を確認してまいります」

 

その言葉に俺は絶句する。

何故ならば、俺より〈エリアボス〉らしいからだ。

え?周辺の状況確認と各国の情勢確認?え、できるの!?それと、このエリアは何がしたいんだ。戦争はせんぞ。

 

「どうか致しましたか?」

 

俺の気を知ってか知らずか、彼女が無表情で心配した様な声で聞いてくる。

 

「いや。俺よりリーフの方が〈エリアボス〉らしいな、と思ってな」

 

「何を言っているのですか。この様な雑事は我々配下の仕事。主人様は我々に道を示してくれるだけでいいのです。その道にある障害は我々配下が取り除きますので」

 

そうか言っているが、その表情は薄いながら、少し勝ち誇った様な顔をしている。

嬉しいのか俺を小馬鹿にしているのかは分からないが、どっちでもいいだろう。

 

「そういうものなのか?」

 

「そういうものです」

 

そう言われては仕方がない。

そこでふと思いついた事があったので、聞いてみる。

 

「お前は俺との通信手段があった方がいいか?」

 

その言葉にリーフはこちらを向き、

 

「あるのですか?通信手段が」

 

と、少し驚いた様な表情をしていた。

 

「今はないが、すぐに創れる」

 

「すぐに創れるのですか?」

 

ここから先は言葉よりも行動の方がわかりやすそうだったので、魔石と玉鋼を取り出して、〈道具生成〉を発動させる。

前回はブレスレットだが、今回はネックレスにする。理由は何となくだ。

そして、出来上がる。使った魔石は木属性の魔石だ。

 

〈補助・通信用ネックレス〉 EX装備

木属性魔法の威力を5倍にする。登録を行えば離れたもの同士でも会話ができる。

 

いつか見た様な効果が出ていた。そんな感じの装備を立て続けに〈全〉〈風〉〈土〉〈光〉計5つの装備を生み出す。

 

「これが、通信手段ですか」

 

風属性の装備を手に取りリーフがそう呟く。

 

「そうだ。登録は多分、魔力を流せばいいと思う」

 

そう言って全属性の装備に魔力を流す。そして、その装備が光る。

リーフも同じような事が起こる。

 

「後は、登録したい奴をネックレスに命じれば勝手にやってくれるはずだ」

 

そう言って、俺がネックレスに命じると、

 

『リーフを登録しました』

 

懐かしき無機質な声が頭に響いた。

 

「本当だ。こんな物まで創れるのですね、主人様は」

 

俺を見る目は少しだけ輝いているように見えた。多分、俺の疲労が溜まっているので幻覚が見えただけだろうが。

 

「ですが、どうやって他の3つをあの人達に渡すのですか?」

 

「…………」

 

その時、一つの寒風が俺とリーフの間に吹いた。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自分の未来

最後までゆっくり見ていってください。


寒風がマグナとリーフの間にすぎる。3人に渡す方法?俺が知りたいよ。いや、戻って渡せばいいんだけどさ。

何というか、こう、カッコ悪いじゃん。だから、どうにかしようと考える。

考えられた中で名案だったのが、空間魔法を使っての移動だ。それならば、一瞬で目的地まで着けるので時間の短縮に繋がる。

それを言い出そうとした瞬間、

 

「ならば、私が渡しに行こう」

 

そこに現れたのは、シンシアだった。木の上から飛び降りてきたようだが、気配は全く無かった。

突然の事に一瞬だけ放心状態になっていたが、すぐに気を取り直して、頼む事にする。

 

「そうか。ならばありがたい。頼まれてくれるか?」

 

そう言って、残った三つのネックレスを手渡そうとする。

 

「ああ。頼まれた」

 

そう言って彼女はネックレスを受け取り、エリアの方へ飛んで行った。

 

「一体いつから見ていたのでしょうか?」

 

「……さあ」

 

いつから見られていたのか分からないが、少し助かったのは事実だ。

 

「シンシアが来なかったらどの様に渡す予定でしたか?」

 

「それは、空間魔法を使って移動すれば直ぐに渡すことができただろう」

 

考えついた事を素直に述べたが、果たして吉と出るか凶と出るか。

 

「そうでしたか。となると、最初は渡す予定は無かったという事ですね」

 

当たっている。最初は渡す予定は無かった。思いつきで行動してしまったのだ。

これについては何も言えない。

 

「確かにそうだな。だが、不便になる事は無いと思うが?」

 

「そうですね。これで不便になる事はないのでこの事は必要なものですね」

 

なんというか、彼女が何を考えているのかは分からないが、エリアにとっても俺にとっても不利益な事ではないはずだ。多分。

 

「では、私は周囲の状況の確認の為ここで失礼します」

 

どうやら彼女はもう行くようだ。

 

「そうか。頼んだぞ。何かあったら連絡してくれ、直ぐにとはいかずとも早くには行くつもりだ」

 

「その時はよろしくお願い致します」

 

そう言って彼女は別の道を歩み始めた。

その方角に何があるのかは俺も彼女も分からないだろう。だが、それが楽しいのだ。少なくとも俺は。

 

「さて、行くか」

 

そう独り言を呟いて俺も歩き出した。

あの時から全く変わりはしない森だが、こんな森を歩くなんて前の世界にいた時は全く考えていなかった。そして、こんなに強くなるとも。

だが、本来この世界にいなければならなかったのだ。俺は。正しい未来では俺はどんな生活を送っていたのだろう?

普通の生活か?例えば農民とか商人とかか?しかし、そんな生活は楽しくなさそうなので、直ぐに飛び出しそうだ。今の俺は。別の俺は違うのだろうか?それとも同じかな?

それとも貴族か?ダメだ。メンドくさそうな塊だから無理だな。俺に向きそうなものじゃない。俺基準でだが。

それとも冒険者か?これが一番しっくりくるな。今もなっているからかもしれないが。この方が楽しそうだ。

それと、どのような性格になっていたのだろう?

性格はその人物の人生の一部を反映しているに等しい。なので、生活環境によって性格は変わるだろう。

今の俺に知るすべは無い。

だが、それがいいんだ。変に知っても俺がどうこうできるものでは無い。

 

「俺の生い立ちが複雑すぎる」

 

そう独り言を呟いた。

と、ここで先程から攻撃を仕掛けようとした瞬間に射抜かれている魔物を見やる。

確かブラッドベアーと呼ばれていた魔物が攻撃をしようとした刹那、後方から飛来した何かにより頭部に穴が開いた。

 

「こう、面倒じゃ無いのはいいんだけど、少しは戦わせて欲しいものだな。それと、他人がいる時は少し自重して欲しいな」

 

そして、またブラッドベアーが目に入る。目に入っただけで向こうは気づいていない。

次の瞬間、ブラッドベアーがこちらを振り向いた。

あ、気付かれた。

そして、遅すぎる動きでこちらに突進してくる。また射抜かれれるのかと考えた瞬間、射抜かれない予想が起きた。

その予想に従い、刀で頭を切り落とす。

 

「まさか、この距離で聞こえていたのか?」

 

そう言って、後ろを振り向き注意深く観察するが、その影も形もない。

俺が生み出して起きながら、末恐ろしい。まさか、俺が生み出した奴ら全員こんな感じなのか?

それならば心強い味方が四人もいる事になるので、俺としては嬉しい限りだ。

俺はさらに歩き出す。

俺の仕事は冒険者のものと、〈エリアボス〉の時はあいつらに的確な指示送る事だろう。

この二つが両立しなくなった時は俺はどうするのだろう?冒険者として生きるのか、〈エリアボス〉として生きるのか。

今の俺に答えは出せそうに無いが、少し考えておく必要があるだろう。

今の所、〈エリアボス〉として生きる方がいいだろう。俺がいなくなったあいつらが何をするか心配だ。

それに、冒険者の仕事は何も俺だけがする仕事では無い。そう考えれば〈エリアボス〉で正解だろう。

正解なんだけどな。ミコト達と離れるのもどうかと考えてしまう自分がいる。

あいつらといると楽しいのだ。〈エリアボス〉の時よりも。だから、その生活も捨てられないだろう。

だが、それでも〈エリアボス〉の方を選ぶだろう。あいつらの忠誠を裏切る事も出来ない。それに、俺の持つ大望を叶えるためにもその方がいいだろう。

ふと、視線を彷徨わせると魔物が4匹ほど群がっている場所を見つけた。そして、その魔物に追い詰められる形になっていた人達も。

その時、俺の選択肢に助けないという選択肢はなかった。助ける一択だった。例え1キロほど離れていようと。

そんな距離は長くない。逆に短いくらいだ。

一瞬で近づき、俺とシンシアしか確認できないほどの速度で接近し、一瞬で屠った。

 

「大丈夫か?」

 

と心配した声の先にいたのは、頭から角を生やし他は人間と変わらない〈魔族〉の女性と少女が怯えてへたり込んでいた。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

顔も怖い

来週から週一投稿が厳しいので不定期になってしまいます。すみません。
最後までゆっくり見ていって下さい。


その二人はかなり怯えていた。振り向いた俺に対して。

それに気付き自分の体を確認する。返り血はない。他に怖がりそうな所はない。

その事にしばし考え、まさか。と思い至る。

 

(まさか!俺の顔が怖いのか!)

 

そう考えた。その瞬間、イヤイヤそれは無いだろ。と思い直す。

しかし、昔の友人の誰かからの指摘で、

 

『刑事事件一歩手前の顔してる。』

 

なんて言われたく事があるので否定できない事に気づく。

あいつら元気にしてるかなー。名前も顔も思い出せないがいた事は思い出せる。ギリギリで。

と、現実逃避している場合じゃなかった。

 

「大丈夫か?怪我とか……」

 

と言って近づこうと動いたら、

 

「ヒッ………!」

 

短く悲鳴をあげて、一層怖がった。

その反応に精神ダメージを受けたが、打ちのめされる寸前で踏みとどまる。

もう一度自分の格好を確認する。武器はしまっている。表情はいつも通り。返り血なし。顔の怖さは知らん。

もう一歩踏み出す。

 

「……!私はどうなってもいいのでこの子は見逃して下さい!お願いします!!」

 

そう言って魔族の女性は土下座をした。さながら悪役から我が子を守ろうとする母親のように。

マグナは精神ダメージ1万を受けた。マグナは項垂れ、倒れこみそうになったのを堪えた。

 

「大丈夫。何もしないから。傷はありませんか?」

 

俺は立ち止まり、少し離れた位置から声をかけた。

 

「いえ。ありません!私は奴隷にでも何にでもなりますから!この子だけはどうか……!」

 

「お母さん………」

 

少女の方は女性の娘だろうか?その娘が今にも泣きそうな顔をしている。さながら、悪役から大事な人を奪われる子供の様だ。

マグナは精神ダメージ10万を受けた。倒れそうになる体を必死に支える。

次にこんな事を言われるともう立てなくなりそうだ。

ここは態勢を整えなければ。

彼女が怯えている理由はなんだ。〈思考加速〉を全力で使用して思い至る可能性。それは、彼女が〈魔族〉だからだ。

〈魔族〉は他の種族から虐げられている種族。多分他の種族から逃げてきたのだろう。

娘がいて母親がいる。そうなるともう一人いないといけない。その人がいないという事は、多分もう。

 

「…………」

 

その場から離れた方が正解か、この家族を気にかける方が正解か。それは人によって異なるだろう。というか、同じ答えの方が少ないかもしれない。

 

「一つだけ勘違いしている事がある。俺も君達と同じ〈魔族〉であり、そのなり損ないだ」

 

厳密には違うが、嘘では無い。

 

「嘘です!そう言って私達を殺すか売るつもりでしょう!」

 

やはり勘違いというか、信じられないだろう。

だが、信じてもらうしか無いだろう。

 

「嘘では無い。と言っても信じられないと思うが、真実だ。それと、俺にその気があればお前たちなぞ一瞬だ。そして、俺がお前たちを生かしておく価値もない事を考えろ」

 

「…………!」

 

「だが、それをしない理由を考えろ。俺が人間でも魔族でもない。君達を助けた理由と生かした理由を」

 

俺は途中から何が言いたいのかよくわからなくなっていたが、彼女の警戒心が解れればいいな。

無理だよな………。

 

「……すみません。今まで追われていたので、気が動転してしまっていました」

 

通じた!なんで!?

 

「あ、ああ。まあ、誰にでも誤解はあるし、見た目が人間だから確かに誤解されて当然だな」

 

俺は少し近付いた。

 

「それで、怪我はないか?一応治癒はできるから、遠慮なく言ってくれ」

 

俺の言葉に女性が少女の体を確認して

 

「はい。問題ないです」

 

見た感じ女性の方にも傷は見当たらないし、二人とも大丈夫だろう。

 

「それなら良かった」

 

「お母さんこの人誰?」

 

少女が俺の方を指差して疑問を投げかけてきた。

 

「初めまして。俺の名前はマグナだ。よろしくな」

 

「うん!私はリリーだよ。よろしくね!」

 

子供は元気があるのがいいな。うんうん、どこの世界でも子供は元気なのがよろしい。

 

「私はリュウカと申します。助けていただきありがとうございます」

 

そんな一通りの挨拶を終えると、グ〜と可愛らしい音が出た。

 

「お母さん。お腹空いたー」

 

その娘の言葉に女性は困った顔をする。この感じから察するに食べ物が無いのだろう。

 

「お腹が空いたのか?なら、一緒に肉でも食べるか?」

 

その言葉に少女は目を輝かせて、

 

「本当に!?」

 

「ああ本当だ」

 

「よろしいのですか?」

 

「構いませんよ。魔物を討伐していくと自然と肉が多く手に入るからその心配は必要ない。というか、消費できて嬉しいくらいだ」

 

そう言うと、彼女も安心した様だった。

〈幻兎の肉〉を取り出しそれを焼いていく。

 

「まだかなまだかな。美味しそうだね。お母さん」

 

「ええ。そうね」

 

「まだ焼けてないから少し待っててくれよ」

 

「はーい!」

 

こんな会話に少し心を和ませながら、肉を焼き終わり、その肉を渡していく。

 

「美味しいね!」

 

「確かにそうね。美味しいわね」

 

そんな親子の会話に心をさらに和ませながら、追加の肉を焼いていくのだった。

 

 

 

 

「美味しかったね。お母さん」

 

満面の笑みでそう言うリリーの口の周りは肉の脂がかなり付いていた。

 

「はいはい。口の周りを拭くからジッとしていてね」

 

そう言うリュウカさんの口周りは綺麗だった。

流石としか言いようがない。俺はというと、リリーちゃん程では無いが、少し付いてしまっている。

 

「どうせなら余っている肉を渡したいが、生物だから無理だな」

 

「いえ、こうして食べ物を恵んで下さっていただけただけで十分ですから、お気持ちだけ受け取っておきます」

 

そして、俺たちは立ち上がり、

 

「それでは、お元気で」

 

「ええ。貴方もお元気で」

 

「うん。じゃあね。マグナ!」

 

最後に元気よくリリーちゃんが俺を呼び捨てにしたが、全く気にならない。それどころか微笑ましい。

 

「こら!マグナさんでしょう。すみません。娘が失礼しました」

 

「いえいえ。子供は元気が一番ですから。大丈夫ですよ。元気でなリリーちゃん」

 

「うん!」

 

そう言って、俺たちは別れた。その時にはもう日が夕焼け色に染まっていたので、アレストに着くのは夜になってからだと思った。




面白ければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。