超超高校級の78期生 (天星)
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真の絶望の始まり

初めましての方は初めまして、
会ったことのある方はお久しぶり。

注意書きはお読みになられましたか?
本作はネタバレから始まりますので原作未プレイの方はブラウザバックする事を強くお勧めします。



















大丈夫ですか? ではスタートです。


 江ノ島盾子は勝利を確信していた。

 

 超高校級の絶望である彼女は世界を絶望と恐怖に陥れようとしていた。

 彼女自身の才能やら何やらのおかげでその目的は大体達成されていたのだが、人類というのは存外にしぶとく、未だに希望を持って反抗して来る者が居た。

 それを見た江ノ島は一計を案じた。

 

 かつて、超高校級と謳われた才能を磨く学校であった『希望ヶ峰学園』。

 彼女の母校でもあるその施設を使って同級生15人(潜伏している彼女自身も入れれば16人)にコロシアイをさせ、それを全世界へと生中継しようとしたのだ。

 なお、その同級生達は希望ヶ峰学園の技術を使って学校で過ごした記憶を全て剥奪してある。

 彼ら彼女らにしてみれば、希望をもって入学したと思ったらいきなり訳の分からないコロシアイをさせられるわけだ。

 そんな彼らの絶望を発信する事で、残された希望を根こそぎ刈り取ってしまおう。そんな計画だった。

 

 ……しかし、彼女は失念していた。

 彼女の同級生たちは『超高校級』なんて器に収まらない、『超超高校級』、いや、むしろ『人外級』とでも言うべきバケモノたちだったという事を……

 

 

 

 

 

 

『え~、皆さんには、この学校でコロシアイをしてもらいます!』

 

 江ノ島自身は潜伏しているので、マスコットキャラである『モノクマ』のロボットを操って15人の高校生達に話しかける。

 

「ちょっと待ってよ、殺し合いって……」

『コロシアイはコロシアイだよ。

 刺殺毒殺絞殺中略。

 何でも良いから誰か一人殺せば、その人だけはここから出られる!』

 

 ちなみに、窓ガラスや通気口、その他諸々の外への通路になり得るものは全て金属板で塞がれている。

 ここに使われている金属は『超高校級の錬金術師』が作り上げた特殊な合金であり、そう簡単に破られる事は無い。

 『超高校級の解体屋』等の協力で様々な破壊試験を行ったが傷一つ付かなかった代物だ。

 これを破るのは絶対に不可能……

 

「ふん」

 

ズドォォォンン……

 

『…………え?』

 

 あっさりと、板に風穴が開いた。

 

「ふん、大したことは無かったな」

 

 超高校級の解体屋には破れなかった。

 しかし、この場には『超超高校級の格闘家』が居る。

 彼女の手にかかればこの程度の壁は紙クズに等しい。

 

「こんな茶番には付き合ってられぬ。さっさと出るとしよう」

「あ、待ってよさくらちゃん!」

 

『ちょ、すとっぷ、ストォォップ!!!』

 

 このままではマズいと判断した江ノ島は禁じ手を切る。

 記憶操作の為に皆の頭の中に埋め込んだ機械を使って全員を強制的に眠らせる。

 今の場面もしっかりと配信されているのでできれば自分の手による介入は避けたかったのだが仕方あるまい。

 

「えっと……どーすんのよコレ……」

 

 とりあえず、彼女が持つ才能とモノクマを駆使して破られた壁を修復する。

 かなり脆くなってしまったが、それでも普通の人間に破られる事は無いだろう。

 

「で、記憶をまたリセットして……

 ……でも、このままだとまた破られるわね」

 

 仕方がないので、埋め込んだ機械を使って暗示をかける。

 『壁を殴る寸前に力を抜く』と。

 『超高校級の催眠術師』が残した技術があればそのくらいの暗示は造作もない事だ。

 

「よーし、今度こそ大丈夫よね?

 それじゃ、テイク2スタート!!」

 

 

 

 

 ……余談だが、外の世界の人間の生き残りたち、『未来機関』の人たちはこの放送を見て大笑いし、生きる希望を感じ取ったという。




せっかくだからキャラ紹介を。

  超超高校級の格闘家
 『神域の淘汰者』と謳われた人外級の格闘家。
 学園に在籍していた当時は『超高校級の空手家』とか『超高校級の柔道部員』とか、そんな感じの連中数十人を相手に一切ダメージを受ける事無く制圧した実績がある。
 その肉体は極めて強靭で、ナイフ等の刃物を通さず、銃弾どころか砲弾すら跳ね返す。
 毒物に対する耐性も非常に高く、フグを丸飲みしても平然としていた。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』



こんな感じでこの人外どもを絶望させるという江ノ島さんの絶望ゲーが始まります。
ストックがあるうちは週刊更新の予定です。
ではまた来週~


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運命の選定者

 想定外のハプニングを受け、全人類絶望計画テイク2が始まった。

 ……が、ここでもまた彼女の誤算が発生する。

 

「……あれ? さっき鉄板に穴が……あれ?」

 

 機械の誤作動か、記憶消去が正常に機能していない人物が居たのだ。

 そう、記憶消去を免れたのは『超超高校級の幸運』の持ち主である。

 宝くじを毎回当てられるのは当然で、ロシアンルーレットに弾丸を6発込めても生き残るような人外だ。

 ちなみに装填数が7つとか8つとかそういう話ではない。装填数6発の拳銃にきちんとフルに詰めている。

 彼の機械のみが誤作動を起こす確率は極めて低いが……まぁ、彼なら平然とやってのけるだろう。

 

 ……なんてのんびり解説してみたが、このまま放置しておくと面倒な事になる。

 故に江ノ島は行動を起こす。

 

『壁に穴なんて開かなかった。イイネ?』

「え? えっと」

『イイネ?』

「え? でも壁にダンボールみたいなので補修した跡が……」

『イイネ?』

「……まあいいか」

 

 彼が細かいことにこだわらない主義で本当に助かった。

 騒ぎ立てるような人だったら今頃計画は頓挫していた。既に頓挫している気がしないでもないが、そこは目を瞑ろう。

 あと、壁の補修に使ったのはダンボールなどという安っぽい素材ではなく『超高校級の壁職人』と『超高校級のダンボールマニア』が協力して作ったと言われるダンボールの見た目を持ちながらもチタン合金板よりも硬いという特性を持つ最新素材である。その辺を勘違いするのは失礼だ。

 

『それじゃあコロシアイ学園生活を以下略!!』

 

 こうして、ようやくコロシアイ学園生活は始まった……

 

 

 

 ……始めた……のだが、

 当然ながら『はいそうですか』といきなり誰かを殺しにかかるような生徒は居ない。

 数少ない例外の一人が江ノ島盾子だが、あいにくと彼女は黒幕だ。

 よって、2~3日ほど待ってから次の手を打つ。

 

『え~、皆さんにはそれぞれDVDを用意しました!』

「え~? ブルーレイじゃないの?」

『そこ、うるさい』

 

 江ノ島が用意したのは彼らの家族等の大事な人が凄惨な目に遭う事を連想させるような映像だ。

 それを見せる事で不安を煽り、人を殺してでも外へと出たいと思わせるのだ。

 なお、その家族はある街で監禁してある。

 つまりかなり安全な状態であり、現状では危ない事は全く無いのだが……

 ……人というものは、恐怖だけでも絶望するのだ。江ノ島はそれをよく理解していた。

 

『それじゃ、視聴覚室にレッツラゴー』

 

 視聴覚室にはDVDを見れる機材が置いてある。

 一応他にもいくつかあるのだが……現在、生徒達に開放しているのは1階のみ。それ以外の階を開放するのは望ましくない。

 だから視聴覚室への誘導は当然の選択だ。

 ……しかし、彼女は彼女自身の安直な行動を後悔する事となる。

 

「えっと、ここが視聴覚し……うわわっ!!」

 

 超超高校級の幸運の少年が真っ先に部屋に入ろうとするとうっかり転んでしまう。

 そしてそのままモニターに頭から突っ込む。

 当然、モニターは破壊される。少年も無事では済まないだろう。

 ……ここまでは、まだ江ノ島も理解できた。

 しかしその直後、どっかの回線がショートしたのかバチバチと音を立てる。

 その音は何故か部屋全体に広がり、モニターというモニター、その他機材が一斉に爆発する。

 

「わわっ、な、何ですか!?」

「おい、どうなっている、説明しろ苗木!!」

 

 『幸運』の少年の後をついてきた他の生徒が当惑するが、それをモノクマのカメラ越しに眺めていた江ノ島は焦っていた。

 

(ヤバい、コロシアイ以外で死んだ!?)

 

 あくまで『コロシアイをしてもらい絶望してもらう事』が目的なのだ、事故死なんて勘弁してほしい。

 ……しかし、それは杞憂に終わった。

 

「おっとっと、転んじゃったよ。

 あれ? 皆どうかしたの?」

 

 『幸運』の少年は何事もなかったかのように起き上がると室内の機械を調べ始めた。

 その顔には傷一つ無い。

 『実はロボットで鋼鉄製の顔だったから怪我しなかった』とか言われても信じられる気がするが、単に一切怪我しなかっただけである。

 

「あ~……どれもこれも壊れちゃったみたいだね。ごめん」

『ちょ、ちょちょっ、全部壊れたの!?』

「え? う~ん……多分?」

 

 ここに来て江ノ島は更に焦る。

 モノクマで喋ってるのに素の口調が出ちゃうくらい焦る。

 いや、焦りというより恐怖だろうか? まあどっちでもいい。

 

『と、とりあえず違う部屋に案内するね。

 DVDプレイヤーがある部屋』

 

 これくらいのアクシデントでへこたれてはいけない。

 計画を、計画を完遂するのだ。




  超超高校級の幸運
 『運命の選定者』と謳われた人外級の幸運の持ち主。
 『宝くじの独占は当たり前』『6面ダイスで7以上の目を平然と出す』『ロシアンルーレットでフル装填して連射しても生還する』等のエピソードを持つ。
 彼の強運にかかればたとえナイフで刺されたり毒を盛られたりしても死ぬ事はまず無いだろう。
 彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


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絶望する絶望は屈しない

 さて、結論から言おう。

 

 DVDプレイヤーが全滅した。

 

 新しい部屋に案内する度に『幸運』の少年が何かしらをやらかし、機材が吹っ飛んでいくのだ。

 その度に超超高校級の御曹司(噛ませ)が「どういう事だ! 説明しろ苗木!!」と言っていたが……まぁ省略する。

 って言うか、江ノ島にそんな事を考える余裕は無い。

 

「や、ヤバい……どうしよう……」

 

 予備も含めて全部壊れたのでもう外から調達するくらいしか方法が無い。

 まぁ、学外にも協力者は多数居るので、適当にプレイヤーを持ってきてもらい、少しの間だけ正門を開けば調達自体は何とかなるのだが……

 

「……このままやっても、間違いなくまた全滅する」

 

 あの『幸運』の皮を被った悪魔なら間違いなくまた全滅させてくる。

 いや、それだけならまだ良い、いや、決して良くは無いのだが……

 下手すると搬入作業中に目を覚まして正門から悠々と脱出される恐れもある。

 いやもう、彼一人だけなら脱出させた方が良いんじゃないだろうか?

 

「……いやいや、ここで弱気になってどうすんのよ。

 そんな事したら絶望が希望に屈したことになる」

 

 というわけで却下だ。

 ではどうするか?

 DVDを使わずに別の動機を用意する? いや、どうせ何かの不運で妨害されるだけだろう。

 彼だけを隔離する? いや、彼に近づいただけでモノクマが誤作動してもおかしくはない。

 彼の能力を封印……できるならさっさとやってる。

 …………八方塞がりである。

 

「…………なら仕方ない。ダメモトでやってみましょうか」

 

 完全に追い込まれた江ノ島が取った秘策とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っていうわけでお願いします! その幸運を何とかしてください!!』

「え? いや、そんな事言われても……」

 

 『幸運』の少年に土下座して頼み込む。これしかなかった。

 いや、土下座してるのはモノクマなんだけどさ。

 

「お願いします!!」

「中の人出てきた!? って言うか江ノ島さん!?」

 

 誠意を見せる為にわざわざ潜伏を解除して江ノ島自身もやってきた。

 ちなみにここは『幸運』の少年の個室なので他の人には見られてない。

 外への放送に関しても今の状態は流さないようにしている。

 

「江ノ島さん……って事は、あっちの江ノ島さんは戦刃さんなんだね」

「うえっ!? 何でその名前を!?」

「えっと……視聴覚室でモニターに頭を突っ込んだ衝撃で大体思い出したからね」

「どんだけ幸運なのよ!! アホじゃないの!?」

 

 なんかもう最初の計画なんて完全に破綻してる気がするけど気にしてはならない。

 

「そういうわけなんでその(私にとって)絶望的な幸運を何とかして下さい!!」

「いや~、何か哀れだからできるなら僕も手加減したいんだけど、これは生まれつきだからね」

 

 むしろ生まれた時からだったのかその体質。

 

「そこを何とか! 何かあるでしょ!?」

「う~ん……とりあえず適当に頑張ってみるよ。

 近づいて欲しくない場所があったら先に言ってくれるかな」

「OK! それじゃあ頼むわよ!」

 

 こうして、超超高校級の幸運と超高校級の絶望の交渉は終了した。




原作における超高校級の希望と絶望が手を組むという謎現象。
なお、こうやって幸運が頑張って手加減してくれないと不幸なコロシアイが一切起こらない模様。

あと、何かダンロンじゃなくてめだかボックスか何かになってる気がしてきたけど気にしない。


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秩序の監視者

 DVDプレイヤーを外の世界から調達する。

 言葉にすると簡単だが、それを実現する為にはほんの数分だけだが入り口を開かなければならない。

 きっと未来機関の連中はその隙を突いて突破しようと試みるだろう。最大限に警戒しなければならない。

 ……そう、江ノ島盾子は考えていた。

 

 

 ……しかし、実際に実行してみれば何事もなく呆気なく終わった。

 まぁ、何かもう明らかに絶望に屈しなさそうな、って言うか絶望に屈しようともそうそう簡単に死ななそうな78期生(人外ども)をわざわざ救出しようなんて酔狂な作戦を立てる無能が未来機関に居なかったというだけの話なのだが、彼女がそれに気付く事は無かった。

 ……ちなみに、絶望サイドの人間である江ノ島(より正確には彼女に扮している超高校級の軍人)に対しては人外度が足りないと若干心配する声が上がっていた(外の人間は彼女が絶望サイドだと知らないので)

 しかし、人外どもが一緒に居るから大丈夫だろうという結論になっていたようだ。

 

 

 

 

 

 

『それじゃあ今度こそ、DVDスタートっ!!』

 

 幸運の少年が何か上手いことやってくれたので皆に無事にプレイヤーを起動する事ができた。

 ……長かった。たったこれだけが本当に長かった。

 江ノ島盾子の目尻にうっすらと涙が浮かぶのも無理は無いだろう。

 

 異常な才能を持つ人外どもであってもやはり心は人間だ。

 自分の親しい人間の絶望的な状態を暗示させられるビデオをみて完全に平静で居られる者は僅かだった。

 とりわけ影響を受けたのは『超超高校級のアイドル』の少女である。

 

「苗木君っ! 私はどうすれば良いんですか!!」

「落ち着いて舞園さん。きっと大丈夫、あんな映像は偽物さ!!」

「でもっ、本物だったら? 私はここから出たい、出たいんです!!」

 

 江ノ島はこの光景を見て涙を流していた。

 ああ、やっと絶望が見れた……と。

 

 この密室から出るためのルールは明確に示されている。

 『他の誰かを殺す。但し誰にもバレないように』

 もしDVDを見せても膠着状態が続くようなら人質を使って強引に誰かを殺させようと思っていたのだが、この様子ならその必要は無さそうだ。

 最初からケチがつきまくりの作戦だったが、上手いこと行きそうだ。

 江ノ島盾子は勝利を確信した。

 

 ……なお、彼女の心の動きは一般には『フラグ』と呼ばれている。

 

 

 

 

 

 

  ……その夜……

 

「な、苗木くん、助けてください!」

「ど、どうしたんだい!?」

 

 アイドルの少女が幸運の少年の個室に駆け込んできた。

 そしてそのまま包丁で少年をグサリ……なんて安直な展開ではないので安心してほしい。

 まぁ、原作通りに部屋を入れ替えて幸運の少年の部屋で誰かをグサリと殺そうとしているという意味では安直なのだが。

 ……だが、その安直な作戦は、ある超超高校級の才能の持ち主によってあっさりと消し飛ぶ。

 

「君達、何をしているんだ!! 夜中に男女が同じ部屋に居るなど風紀が乱れているぞ!!」

 

 扉をバンと開けて入ってきたのは『超超高校級の風紀委員』である。

 彼は風紀を守る事に関して超一流。よって、銀河系の半径くらいの範囲なら風紀の乱れを感知できるのだ。

 そして彼の台詞にもあるように、男女が密室に二人きりなどという状況は明らかに風紀違反。彼の感知に引っかかるのも当然である!

 ……なお、決して非リア充の僻みとかではない。

 

「君達、さっさと自分の部屋に戻りなさい」

「ちょ、ちょっと待ってください! 話を聞いてください!!」

「そうだよ! 舞園さんは何か相談したい事があるみたいなんだ!!」

「むぅ……仕方ない。但し、風紀が乱れる事は看過できないので僕もここに居よう!」

「う~ん……分かりました」

 

 ここで抵抗しても埒があかないのでアイドルの少女は用意しておいた話をする。

 なお、彼女は超超高校級の才能を駆使して演技しているので普通の人外には彼女の話が嘘だとは分からない。

 ……普通の人外って何だろう?

 

「何っ、不審者が君の部屋のドアを叩いただと!?」

「それは大変だったね。うーん、どうしようか?」

「それで、あの、良かったら部屋の交換を……」

「よし、舞園君、君は自分の部屋から布団だけでもこの部屋に持ってきてここで寝たまえ!

 僕は今日は入り口近くの床で寝よう。

 3人も集まっていれば不審者など恐るるに足らずだ!」

「なるほどね。部屋を交換するとかも考えたんだけど……」

「君と舞園君がか? それだと君が危険だろう」

「そうだね。石丸君の案の方が良さそうかな。舞園さんもそれで良い?」

「え、あの、えっと……

 あ、そうだ! 男の人が2人も一緒の部屋に居るのはちょっと……」

「むぅ、名案だと思ったのだが……」

「それじゃあさ、大神さんも呼ぼうよ。ほら、格闘家の」

「それは余計ダメなのでは無いのか!?」

「え? ……あ、大神さんって女子だよ。パッと見分からないかもしれないけど」

「何!? そうなのか!? それなら護衛役としてもかなり心強そうだし良いな」

「それじゃあ呼んでくるね」

「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってください?

 わ、私の為だけにそこまでしてもらうのは悪いですよ!」

「いやいや、遠慮する事は無いよ」

「そうだそうだ。まあ、彼女が嫌がるようであれば無理強いするつもりは無いから安心してくれ」

「あ~、えっと、そうじゃなくて……」

 

 この後、アイドルの少女の奮戦虚しく格闘家の少女も混ぜた4人で寝る事となった。

 当然ながら不審者など来なかった。そもそも居ないし、居たとしても裸足で逃げ出すんじゃないかな。




  超超高校級の風紀委員
 『秩序の監視者』と謳われた人外級の風紀委員。
 風紀の乱れを感知するとたとえ地獄の底からでも駆けつけて風紀を正す。
 また、風紀委員ならではの能力を多数保有しており、例を挙げるのであれば距離や障害物の制約を無視して現場に駆け付ける瞬間移動、手をかざすだけであらゆる液体を飲料水に変える能力(飲酒を防ぐ為)、睨むだけで物体の温度を絶対零度まで下げる能力(タバコの火を消す為)等がある。
 彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


え? 瞬間移動使えば脱出できるんじゃないかって?
サアドウデショウネー。


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(やっと始まる)最初の事件

 江ノ島盾子はちょっと呆然としてた。

 せっかくコロシアイが起きそうだったというのに謎の超能力に邪魔された。

 最初に邪魔された日から2~3日ほど経過を見たが、『夜時間に男女が二人きり』という条件を満たす事でほぼ確実にあの風紀委員を自称する超能力者が飛んでくる。

 モノクマで適当に妨害を試みても凄い速度で移動するので振り切られる。実際には走っているのではなく瞬間移動を連続して使用していたので妨害など不可能だが、彼女がそれに気付く事は無かった。

 

 今度は風紀委員に土下座して頼み込もうか? いやいや、そんな事はできない。

 彼女にもプライドというものがあるのだ! そう易々と土下座なんてできない!!

 ……え? プライドなんてあったのかって? あるに決まってるじゃないか!

 

 というわけで対策を練る。

 ……二人きりになると確実に感知してくる。

 ならばそれを崩せば良い。

 とりあえず実験だ。幸運の少年の部屋に適当にモノクマを仕込む!

 そうすればアイドルが来ても男1女1クマ1で条件が狂うはずだ!!

 って言うかそうであって欲しい!!

 

 

 ……結論から言うとあっさり成功した。

 

 

「苗木くん! 今度こそ不審者が部屋に来ました! 助けてください!!」

「……あれ? いつもならこのタイミングで石丸君が来るんだけど……まあいいか。

 しっかし不気味だね。何者だろうね?」

「そうですね。あの、できれば今日は部屋を交換してもらえないでしょうか?」

「うーん……そうだね。

 僕の幸運があれば犯人を捕まえられるかもしれない。やってみようか」

「は、はいっ! ありがとうございます!!」

 

 この一連のやりとりを聞いて江ノ島が嗚咽を上げて涙を流したのも無理は無かろう。これでやっとコロシアイが起こるはずだ。

 本当に長かった……

 

 

 

 

 

 

 ……そして翌日。

 幸運の少年が見たのは包丁を腹に刺されて血を流すアイドルの少女の姿だった。

 

「っっ!! これはっ!!!

 ……ん? …………なるほど、そういう事か」

 

 扉を開けっ放しにしていたため声が漏れたらしい。探偵の少女も部屋にやってきてアイドルの少女を目撃する。

 

「苗木くん、どうし……っっ!!

 ……ああ、そういう事」

 

 そして、噛ませ……もとい、御曹司の少年もやってくる。

 

「苗木、どうし……おいどういう事だ、説明しろ苗木!!」

 

 それを言い切るのとほぼ同時に放送が流れる。

 

『死体が発見されました。一定時間の後に学級裁判が始まります』

 

 ……この時、江ノ島は大声を上げてガッツポーズをしていた。黒幕としての威厳なんて完全に吹っ飛んでる気がするが、一応誰にも見られてないのでセーフだろう。きっと。

 

 この後、続々と人がやってきて事件現場を見ていく。

 

「っっ!! ど、どうしてこんな事に!?」←江ノ島に扮した軍人

「っ! ……」←野球(犯人)

「あン? これは……」←暴走族

「こ、これ、夢だよね! そうだよね!!」←プログラマー

「こ、これはっ!! ……ん?」←風紀委員

「……ふむ」←同人作家

「おやおや、これは一体どういう事でしょうね」←ギャンブラー

「……なるほど」←格闘家

「そ、そんな!! どうしてこんな事に!?」←水泳

「あわわわわ! どどどどういう事だべか!?」←占い

「ひええええええ バタリ

 あっひゃひゃひゃ!! う~ん? こいつはいただけないねぇ」←文学からの殺人鬼

 

『それじゃあさっきの放送の通りに一定時間後に学級裁判がはじまります。

 最初だから流れを説明するんで、体育館に集まってね~』




Q、何で超超高校級の風紀委員はわざわざ瞬間移動で走ってるん?

A、「風紀委員が廊下を走って風紀を乱すわけにもいかない!
   だがしかし! 風紀の乱れを感じたら可能な限り早く現場に辿り着かねばならない!!
   よって僕は走らないかつ速い移動をする瞬間移動を常用しているのだ!!」


Q、……何で普通に走っているフリを?

A、「最初は現場に直接瞬間移動していたんだが現場に居たおじいさんがビックリして心臓を止めてしまった事があってね。
   何とか蘇生には成功したんだけど、僕が図らずとも風紀を乱してしまった事に変わりない。
   その時の反省を生かして普通の人間にできるレベルの動きに見えるように瞬間移動を使う事にしたんだよ」


Q、……あ、はい。ありがとうございました。

A、「これだけで良いのかい? これくらいならいつでも協力させてもらうよ!」


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因果の支配者

 校内放送に導かれて78期生達(人外ども)は体育館へと向かう。

 壇上には一体のモノクマが座っていた。

 

『え~、それでは、これから『学級裁判』について説明します。

 一回しか言わないから、オマエラよーく聞くんだよ?』

 

 江ノ島もどうやら調子が戻ってきたようだ。モノクマっぽい喋り方で自然と話せている。

 この後ルールを説明するが、要約すると以下の通りだ。

 

・一定時間後に裁判を開く。その前にできるだけ証拠とか集めとけよ。

・裁判が始まったら誰がクロ(犯人)なのかテキトーに議論してもらう。

・またしばらく時間が経ったら多数決でクロを決めるよ。

・クロを当てられたらクロはオシオキ。外したらクロ以外オシオキ。

・オシオキ=処刑。

 

 大体こんな感じである。

 

『オマエラ、ちゃんと理解したかな?

 それじゃあ調査パートスター

「フン、こんな茶番には付き合ってられんな」

 

 モノクマの宣言に水を差したのは……噛ま、御曹司の少年である。

 実は江ノ島にとってここで水を差される事自体は(割と珍しく)計算通りであった。

 しかし、それは潜伏させている姉の軍人の少女にやらせるというマッチポンプの予定だったのだが……まあこの際どっちでもいいや。

 彼には見せしめに死んでもらおう。

 

『キミィ、学園長であるこの僕に逆らうのかい?』

「学園長だか何だか知らんが、こんな茶番に付き合う必要は無い」

『う~ん、それなら仕方ないねぇ。

 召喚魔法発動! グングニルの槍!!』

 

 モノクマが呪文っぽい言葉を宣言すると御曹司の少年の周囲に太い鉄の串が多数出現する。

 この程度は『超高校級の空間歪曲者』や『超高校級の魔術師』の技術があれば事前の仕込みさえしておけば普通に可能である。

 そしてそれは御曹司の少年へと真っ直ぐ突き立てられ……

 

「貴様……誰に向かって武器を向けている!!」

 

 串が突き刺さる前に謎の影が割り込み、全ての串を叩き落とした。

 当然、御曹司の少年は無傷だ。

 

『ちょ、えええええっっ!? 何が起こったの!?』

「ふん、愚民が。

 俺が御曹司であるから以外に理由が要るのか?」

『要るよ!? 要るからね!?』

 

 さて、この辺で彼の能力について説明しておこう。

 彼は超超高校級の御曹司である。

 御曹司である以上、常に最高級の執事が居るのは当然の事だ。世界に刻まれた真理と言っても良い。

 故に、彼が呼べばいついかなる状況であっても執事は駆け付ける。

 更に、彼が使役する執事は超一流である。

 故に空間に突如現れた鉄串を一瞬で全て叩き落とす事など造作もない。

 そこに雇い主の許可は不要だ。故に自動的に叩き落とす。

 ……長々と語ってきたが、実際には執事などという人物は存在しない。

 しかし、『彼は御曹司である』『御曹司には執事が居る』『執事なら鉄串など容易に叩き落とす』『故に彼は怪我などしない』という完璧な四段論法が世界に真理として成立している事は確かだ。

 故に彼はこの理論を成立させる事ができる。

 『彼は御曹司である』『故に彼は怪我などしない』

 シンプルであるが故に完璧な理論により、鉄串如きでは怪我などはしないのである。

 

 しかし、こんなシンプルな理論すら理解できない江ノ島はただただ混乱するばかりである。

 

『と、とにかく、学級裁判してもらうんだからね! 解散!!』

 

 とりあえずそう言って強引に押し切るしか無かったようである。




  超超高校級の御曹司
 『因果の支配者』と謳われた人外級の御曹司
 御曹司であるが故に受けられる様々な恩恵を過程をすっ飛ばして受ける事ができる。
 彼が紅茶を飲みたいと思えば目の前にテーブルとお茶が入ったティーセットが現れ、脱出スイッチが欲しいと願えば即座に現れる。
 彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


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概念の魅了者

※ 今回から学級裁判パートが始まりますが、いちいち誰がどうこう言ったと書いてるとテンポが悪くなりそうなので部分的に台本形式を試験運用します。
必要なさそうであれば後から修正するかもしれません。


 何かよく分からないけど学級裁判する事になったので、超超高校級達は捜査に乗り出す。

 一部の人間は事件現場に張り付いている。現場保存とか、まあそんな感じの理由だ。

 

 しばらく捜査してると放送が鳴った。

 

『え~、皆さん、学級裁判の時間です。

 本校舎一階の赤い扉まで来てください』

 

 どうやら時間のようだ。

 15人の超超高校級の高校生達(正確には変装中の軍人はただの超高校級なので14人と1人)は指定された場所へと向かう。

 

 赤い扉の中に入るとそこはエレベーターになっており、下へ下へと向かっていく。

 まるで地獄の底へと向かっているようだ……と感じる人は居るかもしれない。

 

 しばらくしてエレベーターが止まり、扉が開く。

 そこにあったのは円形の会議場、と言うより裁判所か。

 15人の高校生たちが適当な場所へと立つ。

 

『え~、それじゃあ学級裁判を始めます!』

 

 先に来ていたモノクマがそう宣言する。

 学級裁判の始まりである。

 

 

 

※ 以下より台本形式にします。

 

 

 

 最初に口火を切ったのは噛ま……御曹司の少年である。

 

眼鏡「では、訊くまでも無い事だが一応訊いておこうか。

   犯人に心当たりのある者はその名を言え」

 

 この発言に対する反応は3つに別れた。

 

軍人「そんなの居るわけ無いでしょう。居たらとっくに言ってるわよ」

プロ「そうだよ!! あんな事する人に心当たりなんて無いよ!!」

水泳「うぅぅ……私には分かんないよ……」

占い「舞園っちを殺した犯人を占ってはみてるんだけど、全然出てこないべ」

文学「白夜様の期待に応えられないなんて、アタシは何てダメな奴なの!?」

 

 否定する者5名。上から軍人、プログラマー、スイマー、占い師、文学少女である。

 

暴走「犯人自体には心当たりはねぇが、まず間違いなく知ってる奴には心当たりがあるな」

風紀「暴走族と同じ意見というのも癪だが、僕も同じ意見だ」

同人「そうですな。あの人に聞けば一発でしょう」

博打「ええ。彼女に聞けば一発でしょうね」

格闘「我も同じ意見だ」

探偵「そうね。彼女に訊きましょう」

幸運「あの、僕らは黙ってて良かったんじゃないかな……? あ、霧切さんと同じ意見だよ」

 

 心当たりがある者に心当たりがあるという意見が実に7名。

 上から暴走族、風紀委員、同人作家、ギャンブラー、格闘家、探偵、幸運である。

 

  「言っちゃって良いんですかね……? 何か黒幕さんが可哀想になってくるんですが……」

 

 やや遠回しに心当たりがあると言っているのがアイドルの少女である。

 ……もう一度言おう。アイドルの少女である。

 

軍人「って、えええええ!?」

占い「アイエエエ! ナンデ!? マイゾノっちナンデ!?」

文学「あばばばばば!!」

アイ「あの、私、エレベーターから居ましたけど……?」

 

 念のためもう一度言おう、今回の事件の被害者であるアイドルの少女である。

 

プロ「あ、あの、し、死んじゃったんじゃなかったの?」

水泳「あ、夢だったんだね。良かったぁ~」

探偵「いや、夢じゃないわ。そうよね? 超超高校級のアイドルさん?」

アイ「はい、襲われてお腹に包丁を刺されたのは事実ですね」

 

 説明しよう。彼女は超超高校級のアイドルである。

 さて、アイドルとは一体何か?

 

  「アイドルとは、永遠の夢の体現である!!

   そしてゲームアイドルは日々進化を遂げており……」

 

 あ~、どっかの世界の超神級のギャルゲーマーさんは帰ってください。

 アイドルと一口に言ってもその仕事は多岐に渡る。

 どっかのステージで踊ったり、握手会したりとか。

 どっかの島で自給自足生活をしたり……え? これはレアケース? まあそうだね。

 で、その仕事の一つにドラマ出演がある。

 そして、ミステリーやらサスペンスやらホラーやらの場合、時に『死体役』が必要になる。

 超超高校級のアイドルである彼女はその死すらも完璧に演技する。

 そして、生きて帰ってくる。

 

 つまり、包丁で刺される事など彼女の日常生活の一環でしか無い。そのまま仮死状態を維持して完璧な死体に見せかける事も、そこから自力で蘇生する事も容易である!!

 

 ただまぁ、かなり無茶な事には違いないので一部の超超高校級の連中には見破られていたようだ。

 

幸運「偶然、体が少しだけ動くのが見えたからね」

探偵「探偵は検死を誤らないわ。この世の常識よ」

眼鏡「うちの執事は優秀だからな」

暴走「集団事故が起こったときのトリアージはマスターしてる。助かる人間かそうでない人間かくらい余裕で分かる」

風紀「こういう言い方もどうかとは思うが……死体(ゴミ)と人間の区別くらい付く」

同人「拙者、妄想と現実の区別くらい付きますぞ!」

博打「今日はジョーカーを引かなかったので、死人は出ませんわ」

格闘「相手の死んだふりに引っかかっていては格闘家は務まらぬ」

殺人「死体とそうでないヤツの区別くらい付くっての。あっひゃっひゃっ!!」

 

占い「……あっ、そっか。舞園っちを『殺した』犯人探してたからダメだったんだな。

   そう考えれば舞園っちが生きてるの分かったのか!」

 

アイ「う~ん、私もまだまだですね。これからも頑張らなくては」

軍人「いや、十分過ぎるからね!?」




  超超高校級のアイドル
 『概念の魅了者』と謳われた人外級のアイドル
 アイドルとして行い得る仕事の全てを完璧にこなす事ができる。
 本編でも述べたようにあらゆる殺害手段を用いても仮死状態に抑え、自力で蘇生する事が可能。
 なお、脱出系マジック等も極めているので閉鎖空間からの脱出もお手の物である。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』

 実は最初は『概念の偽装者』でしたが、その称号は今回の場面に特化し過ぎてたのでアイドルっぽい別の称号にしてみました。



Q、超神級のギャルゲーマーって誰やねん。

A、『神のみ』でググれ。作中でアイドルについて熱く語る場面があるので引用してきた。
  ちなみに、本人は神を自称しているし、ゲームで神に負けるシーンもあるので超神級という称号は相応しくない。
  そしてゲーム全般に精通しているのでギャルゲーだけに特化しているわけでもない。
  よって妥当な称号は『超高校級のゲーマー』……あれ?


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裁判は進む

 江ノ島盾子は唖然としていた。

 彼女の心情をありのままに説明するならこうだ。

 

 あ、ありのままに今起こった事を話すぜ!

 「いざ殺人事件の裁判を始めたと思ったら被害者が何食わぬ顔で出席していた!!」

 な、何を言ってるのかわからねーと思うが、私様も何をされたのか分からなかった……

 頭がどうにかなりそうだった。催眠術だとか超高校級だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……

 

 ……って感じだと思う。きっと。

 って言うか、これは裁判は無効になってしまうんじゃないだろうか……?

 

軍人「ちょっと待ちなさい!! って事はこの裁判自体が要らなくなっちゃったんじゃないの!?」

 

 江ノ島に扮した軍人が江ノ島の言いたい事を代弁してくれた。

 この時だけ、江ノ島は残姉ちゃんに少しだけ感謝した。

 いや、そんな事はどうでもいい。さてどうするべきか……

 

幸運「え? どうして?」

軍人「え? いや、だって……人が死んでなかったんだし……」

眼鏡「? それはそうだろう。この裁判はそもそも傷害事件の裁判じゃなかったのか?」

探偵「些細な犯罪でも裁判にかけられて犯人は死刑なんて、面倒なルールね」

 

 ……どうやら、そういう解釈をしてくれたようだ。

 本当は殺人事件限定だったのだが……そういう事なら乗っかってしまおう。

 

クマ『え~、それじゃあ裁判を続けてください』

 

幸運「それじゃあ舞園さん、犯人の名前を言ってほしいんだけど……

   ……どうせだったら犯人の人は自分から言ってほしいかな」

探偵「そうね、自白してくれた方が面倒が減るわ。

   ……目星は付いてるけど」

眼鏡「そうだな。時間の無駄だからさっさと出てこい」

 

 ここで一人の人物が手を上げる。

 この事件の犯人である、超超高校級の野球選手である。

 

野球「……犯人は、俺だ。

   済まなかったっ!!」

アイ「……確かに彼が犯人です。

   ……しかし、彼に犯罪を犯させてしまった原因は私にあります」

 

 アイドルの少女は説明した。

 何としてもここから抜け出したかった事。

 幸運の少年の部屋を借り、そこで殺人を犯す事で濡れ衣を着せようとした事。

 野球選手の少年を呼び出したが返り討ちにあった事。

 

アイ「……これで全てです。

   苗木くん、桑田くん、本当にすみませんでした!!」

野球「ちなみに、俺を選んだ理由は何だったんだ?」

アイ「一番引っかかってくれそうかな~って」

野球「たしかに、そうだけどよぉ……泣いて良いか、俺?」

 

探偵「……舞園さん、一つだけ質問良いかしら?」

アイ「何でしょうか?」

探偵「あなた、桑田くんに対して殺意は無かったんじゃないの?」

眼鏡「おいどういう事だ、説明しろ霧切!」

幸運「その台詞、僕以外のバリエーションもあったんだね……」

探偵「あなたたちは黙ってなさい。

   で、どうなの?」

 

 探偵の少女の言葉を受けてアイドルの少女は俯いて少し考え込んだ後、顔を上げてこう言った。

 

アイ「よく気付きましたね。

   その通りです。私は『殺したフリ』をしようとしました。

   ここの脱出のルールが曖昧だったので、誰かを殺した事をモノクマに言えばその場さえ切り抜ければ脱出できるかもしれないと思いまして」

野球「なっ!? そうだったのか!?」

アイ「私は超超高校級のアイドルですよ? 殺人者の演技も余裕です。あの時桑田くんが無抵抗で刺されていても48時間後に蘇生できるように仕込んでありました」

野球「すげぇなオイ……」

 

幸運「……ところで、わざわざ僕の部屋で殺そうとしたのは何で?」

アイ「自分が犯人だと思われない=他人に濡れ衣を着せるまでが卒業の条件かもしれないと思いましたので。

   苗木くんは一時的に殺人者だと疑われてしまう事になりますし、下手すると私刑にされてたかもしれませんが……

   苗木くんの幸運があればそのくらいは何とかなると信じてました」

幸運「えっと……信頼されて喜ぶべきなのかな?」

 

クマ『はいはい、お話はそこまで。そろそろ投票タイムに移ります!』

 

アイ「っ! 待ってください! この事件の犯人を……桑田くんを処刑するんですか!?」

クマ『そーいうルールだからね~』

アイ「悪いのは私です! 誰かを処刑するなら私を……」

野球「……良いんだよ、舞園さん。

   俺は確かに殺意をもって舞園さんを刺した。

   報いは受けるさ」

アイ「ですが……」

野球「安心しろ。俺は超超高校級の野球選手だ。

   オシオキとやらでどんな事されんのかはわかんねーけど、素直に死んでやる気は無い」

アイ「桑田くん……」

野球「……そうだ、約束しようぜ。もし俺が帰ってこれたら……

   ……俺と付き合ってくれ!!」

アイ「え? 無理です。私、好きな人が居るので」

野球「うぉぉぉぉおいいい!! 今のって完全に笑顔で送り出す場面だったよな!?」

アイ「空気に流されるな。自分で空気を作れと監督さんによく言われるので」

野球「チクショー、人生最後の会話が告白してフラれたなんて断じてゴメンだ!!

   ぜってー生きのびてやる!!」

 

クマ『それじゃあ投票タイムスタート!!』

 

 この場に居る15人が投票を行う。

 本人も含めた全員の票が野球選手の少年へと集まった。

 

幸運「……ところで、好きな人って誰?」

アイ「さぁ、誰でしょう♪」

野球「お前らイチャコラすんじゃねぇ!! もうちょい俺に気を遣ってくれても良いじゃねぇかよぉおおお!!!」

 

軍人(学級裁判ってこんな雰囲気で良いのかなぁ……?)

 

 多分良くない。







  超超高校級のアイドル 追記
 あらゆる役を演じる事が可能なので『超高校級の殺人鬼』とか『超高校級の暗殺者』とかを演じる事も可能。イメージトレーニングとか小道具の準備とかのある程度の準備は必要だが。
 よって準備時間さえあればあらゆる『超高校級』を演じる事が可能になる。流石に『超超高校級』は無理なようだが。
 但し、あくまで演技なので外傷は一切発生しない。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


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常勝の先導者

 江ノ島盾子は勝利を確信していた(フラグ)

 

 学級裁判ではクロだと思う人が投票で決定される。

 そして、その投票で最多票を獲得した者はクロか否かを問わず『オシオキ』を受ける。

 そのオシオキの内容とは残虐な処刑。

 直接手を下すのは江ノ島盾子なわけだが、彼ら彼女らも投票という形で間接的に手を下す事になる。

 クロだけが死ぬか、クロ以外が死ぬかという2択なのだからまともな人間なら前者を選ぶのは明白ではある。そう理屈では分かっていても間接的に残虐な処刑を行ったという事実は彼らの心を蝕み、絶望を齎すだろう。

 

 ……そう、思っていた。

 

 

『それでは、オシオキタ~イム!

 彼には野球選手に相応しいオシオキを受けてもらいます。

 名付けて~、1000本ノック!!』

 

 説明しよう。

 これはマウンドの上に置かれたピッチングマシーンから時速200kmの野球ボールを次々に射出するというものである。

 ボールの向かう先には十字架に鎖で磔にされたクロが居る。

 たかが野球ボールと侮ってはいけない。メットの上からボールが当たった場合でも当たり所によっては昏倒するのだ。

 バットは勿論、ミットもメットもプロテクターも無い彼が1000発ものボールを受けたら……結果は言うまでも無いだろう。

 数発くらいはまともに受けても死なないだろう。しかし、だからこそクロの苦しみは長引き、残虐な処刑となる。

 

 ……実は最初は100発だったのだが、人外っぷりを見た江ノ島が不安になって10倍に増やしたのはナイショである。

 

『では~、スタ~トッッ!!』

 

 ピッチングマシーンの電源が入り、グオングオンという不気味な唸り声を上げる。

 数秒経過して安定状態に入ったのであろう。キィィンという甲高い音に変わる。

 他の高校生たちはそれをフェンス越しに眺める事しかできない。止める術など、無い。

 

 そして、最初の一発が放たれる!

 

カキィィィン

 

 そして、それが打ち返される!!

 

『…………はい?』

 

 そんな摩訶不思議な現象に直面しても心無きピッチングマシーンは止まらない。

 ズガガガガッという効果音が聞こえそうな速さで次々とボールを繰り出し、カキキキキィィンという連続した効果音を放ちながら打ち返される。

 

『ちょ、ちょっ!? えええええっっ!? どどどどうなってるの!?』

 

 ……さて、この辺で彼の、超超高校級の野球選手の少年の能力について説明しておこう。

 まず、究極の野球選手とはどういう存在だろうか?

 それはあらゆるポジションで完璧に役割をこなす存在であると言えよう。

 バッターであれば例え敬遠球であっても確実にホームランを叩きだし、ピッチャーなら一切打たせない投球を……するよりもあえてピッチャー返しを誘ってアウトを取る方が究極だろう。

 ファーストやショート等の内野手であれば渡されたボールを速やかに捕球し、タッチアウトを取る。

 外野手であれば捕球した弾を速やかに内野手へと回す……などという無駄な事はせずに自力で瞬間移動してベースを踏むだろう。

 これ以外にもチームのリーダーとして指揮力やカリスマ性を発揮する、等が上げられる。

 

 さて、ここで注目すべきはバッターとしての能力だ。

 彼はいかなる状況であってもホームランを叩き出す事が可能である。

 例え両腕が折れていようが、ピッチャーが180度真逆の方向にボールを投げようがホームランが打てるのである。

 十字架に磔にされている事など障害にもならない。

 彼がバッターボックスに立つ事とホームランを打つ事はイコールで結ばれているのだ。

 

 数分が経過して1000個のボール全てが射出された。

 その全ては打ち返され、野球選手の少年には傷一つ無かった。

 

「お、これで終わりか? オシオキってのも大したこと無かったな」

 

 野球選手の少年は希望に満ち溢れた満面の笑みを浮かべていた。






  超超高校級の野球選手
 『常勝の先導者』と謳われた人外級の野球選手
 本人が自重した為にリーダーとしての側面が目立ってこのような称号が付けられているが、選手としての質も人外級である。
 一切身体を動かさずに放つホームランは実は対象がボールでなくても成立する。超超高校級のアイドルが彼を仕留め損ねたのも実はこの能力のせいである。
 究極の捕球力、そしてアウトを取る能力を得る為に瞬間移動の能力を保有している。
 間に障害物があっても瞬間移動は機能するので、閉鎖空間からの脱出くらい楽勝である。
 彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』



イメージとしては禁書目録に出てくる一方通行さんと座標移動さんを足して2掛けた感じです。
学園都市基準のレベルだと18~19くらいかな。きっと。


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初めての新フロア開放

 1度目の学級裁判が終わり、参加していた高校生たち(人外ども)は各々の個室へと戻る。

 ところで、彼ら彼女らは今現在どんな感情を抱いているだろうか?

 自らが投票したクロにオシオキが与えられた罪悪感? 学級裁判を乗り切ったという安堵感?

 ……言うまでもなく、違う。

 高校生たち(人外ども)が抱えている感情は『何かやたら仰々しいだけで大したこと無かったな~』くらいのものである。一応安堵と分類できる感情なのだろうか?

 

 江ノ島盾子はそんな高校生たち(人外ども)の様子をモニター越しに眺めていた。

 

「お、おかしい、こんなハズじゃなかったのに……」

 

 情け容赦の無い絶望を叩きつけるはずだった。

 流石に現在の自分のように魂までもが絶望に染まり混沌とした絶望を振りまいてほしいなんて高望みはしていない。

 絶望へと堕ちるきっかけを、決して抜けない刺を心に刻もうとした。それだけで良かったはずなのに……

 

「…………」

 

 予測、できない。

 希望なんていうつまらないもの、そんなのは手に取るように分かるはずだというのに……

 

「……次は、絶対に負けない!」

 

 江ノ島盾子は独り、モニタールームの中でリベンジを誓う。

 

 

 

 

 

 翌日、江ノ島は高校生たち(人外ども)を体育館へと集めた。

 

『オマエラ、おはようございます!』

「おはようございます!!」

 

 良くも悪くもクソ真面目な風紀委員の少年だけが真面目に挨拶を返す。

 よし、予想通りだ。ちゃんと予想通りに進んでる。

 前回の裁判で妙な事になったのは何かの間違いだろう。

 

「おい貴様、俺の時間は高く付くぞ。さっさと用件を言え」

『ウンウン。そういうやる気に溢れた生徒、嫌いじゃないよ!

 それでは発表します。何と! な何と! ななな何と!!!

 (新しいフロアが公開されます)

「小せぇよ! 何でその一番大事な所が小声なんだよ!!」

 

 モノクマのボケに目ざとく反応したのは野球選手の少年だ。

 勿論五体満足でこの場に立っている。

 

『細けぇ事はイイんだよ!!

 それより、2階が開放されたから脱出口とか探してみると良いかもね~』

「興味ないな」

「そうですね」

『……え?』

 

 真っ先に興味が無いと断じたのは御曹……噛ませの少年とアイドルの少女である。

 

『え、ちょっ、興味ないの!? ここから出られるかもしれないんだよ!?』

「別に不満は無いからな」

「はい、一応私の知り合いの安否が気になりますけど、よく考えたらそんな簡単にくたばるような人じゃなかったですから」

 

 お、おかしい、こんなはずでは……

 いやいや、きっとやせ我慢だ! そうに違いない!!

 

『それじゃあ暇つぶしでも良いから行ってくれば? 何か面白い物が見つかるかもよ~?』

「……確かに暇ではあるな。行ってみるか」

 

 そんなこんなで、全員が2階へと移動した。

 

 

 

 2階にはプールや図書館、そしていくつかの教室があった。

 ちなみに脱出口なんてものは無かった。2階なんだから当然ではある。

 

 図書室にて、あるものが発見された。

 ノートパソコンである。中身は厳重にロックされたファイルが少々。それだけだ。

 これに強く興味を示したのがプログラマーの少年である。

 

「これをこうして……よし、開けたよ」

「よし、早速見てみるか。

 ……なんだ、ただの落書きか」

 

 開いたファイルには適当な文字列が並んでいるだけだった。

 勿論暗号の可能性を疑ったが、満場一致でただの文字列だと結論づけられる。

 ……実は高校生たち(人外ども)に危機感を感じた江ノ島が急遽内容を差し替えたのだが……彼らには知るよしもない。

 本当は数週間くらいかかって開けられる難易度のはずなのに……

 

「……このパソコンは使えそうだね。

 よし、これをこうして……できた。

 苗木くん!」

「何だい?」

「ちょっと預かっててくれないかな。

 絶対に壊されたりしないようにね」

「うん。分かったよ」

 

 こうして、2階の探索は終了した。






パソコンに入ってる情報に対する反応をさせるのが面倒だったので差し替えさせてもらいました。
なお、ロックの解除にふつうに苦戦するようであれば江ノ島が後でこっそりと差し替えるつもりだったもよう。


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2つ目の動機発表

 2階は開放されたが、この学園はそれだけでコロシアイが起こるほどの魔境ではない。

 ……別の意味で魔境な気がするが、きっと気のせいだろう。

 というわけで、お待ちかねの例のアレをやる。

 2階の開放翌日に江ノ島は再び生徒たちを体育館に召集した。

 

 

『え~、お待ちかねの新しい動機です!

 オマエラ、自分の名前が書かれた封筒を取ってね!』

 

 封筒の中には他人に知られたくない恥ずかしい秘密が隠されている。

 それを見て慌てる者が多数居た。

 

『えっとね、もし、万が一の話だけどね。

 コロシアイが一週間起こらなかったらその中身を世界中にバラ撒くよ~』

「な、ななな何だって!?」

「そ、そそそそんな!! ふ、ふふふざけないでください!!!」

『ああ、安心してね。外国にバラ撒く分はちゃんと翻訳しておくから』

「そんな気遣いはいりません!!」

 

 江ノ島の期待通り、慌てる人が出てきてくれた。

 いくら人外でも恥ずかしいものは恥ずかしいのだと思って江ノ島は少しだけ安心した。

 

 で、今回の動機についてなのだが、実は江ノ島自身も内容を把握していない。

 手下に指示して集めさせただけであり、内容は当日のお楽しみという事で見ていなかったのだ。

 配り終えたのだからネタバレを解禁して封筒の中身の写しを見てみる。

 慌てていた2人のうち……まずはアイドルから。

 

『苗木くんの事が大好き』

 

 ……なるほど。

 相手がただの女子高生だったら仲の良い人にからかわれる程度で済むが、相手は国民的人気を誇るアイドルだ。誰かとの恋人疑惑は結構なスキャンダルになるだろう。少なくとも被る金銭的な被害という意味では、例えば『小学校○年生までおねしょしてた』とかよりも各段に上だ。

 実際にアイドルの様子を見てみると……

 

(な、なななな何でバレたんですか!? 隠蔽は完璧であったはずなのに!!!!

 こ、こうなったら殺すしかない……苗木くん本人に知られる前に、黒幕を!!!)

 

 ……うん、まあ殺意を抱かせるという意味では成功してる。

 何かアイドル云々関係なしに慌ててる気がするし、殺意のベクトルがずれてる気がするがきっと気のせいだろう。

 

 

 続けて、幸運の少年の動機を見る。

 最初からさんざん煮え湯を飲まされてきた少年が慌てている動機だ。きっと凄まじい動機が……

 

 

 

 

 

『商店街の福引でポケットティッシュを当てた事が無い』

 

 

 

 

 

 

「ふっざけんじゃないわよ!!! こんなんが動機になるわけが無いじゃないの!!!」

 

 江ノ島盾子は激怒した。

 必ずやかの最低無能な手下を除かねばならぬと決意した……わけでは無いが、とりあえず動機の写しを床に叩き付けて何度も踏みつけた。ただの八つ当たりである。

 

 ……そして、そんな小物っぽい行動のせいで江ノ島は見逃していた。

 

 

 

 

 

(うおおぉぉおっっっ!! 何て卑怯な手を使ってくるんだ!!

 超超高校級の幸運たる僕が商店街の福引ごときで当てられない物があるなんて知られたら……もうおしまいだ! 破滅だ!!)

 

 

 

 少年が割とちゃんと絶望してくれていたことに。

 まぁ、数秒後には元に戻ったのだが。

 

 

 

 

『それじゃああと一週間、頑張ってコロシアイしてね~』

 

 それに気づかなかった江ノ島は何とか淡々と作業をこなした。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、今回は特に妨害は入んなかったわね」

 

 前回のDVDは散々だったので極限に警戒しながら進めたが、なんとか乗り切ったようだ。

 一部なんかおかしい奴が居た気がするが、全員が殺意を持つなんて想定してない。せいぜい1~2割がコロシアイに走ってくれれば成功だ。

 とりあえずこれでしばらく休める。流石に今日明日にコロシアイが発生するとは思えないからそれまでのんびり休もう。

 

「そうそう、きっと疲れてるのよ。休めば希望なんかに遅れは取らないわ!!」

 

 ……お気づきだろうか? 彼女がフラグを立てたという事を……

 

 

 

 

 ……そして、翌日に死体が発見された。

 江ノ島はその様子をモニター越しに眺める。

 

『……完全に死んでいるようね』

『探偵は検死を誤らない、だっけ?』

『今回は誤っていてほしいけどね』

『……ふむ、妙ですね……まあいいでしょう』

 

 高校生たち(人外ども)は特にショックを受けた様子も無く淡々と捜査を進めている。

 コロシアイが起こるのは江ノ島にとって喜ばしい事だ。

 うん、でも何か違う気がする。



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初めてのロンパ

 江ノ島が思い浮かべてたコロシアイと何か違うが、コロシアイが起こった事は事実だ。

 今回はあの探偵までもが死亡を確認している。前回のように実は生きていたという事はまず無いだろう。

 今度こそ、今度こそきちんと絶望を与えられるだろう。

 江ノ島盾子はそう確信していた。

 

 ……え? これはフラグじゃないかって?

 ハハッ、何を今更。

 

 

 死体発見アナウンスを流してからしばらくして再び放送で呼びかける。

 

『え~、皆さん、時間になりました。

 学級裁判を行うので集まってね~』

 

 その放送を聞いた高校生たちはエレベーターへと集まる。

 江ノ島はしっかり14人しか居ない事を確認してからエレベーターを降ろした。

 今度こそ、始まる。

 皆が皆を疑いあい、絶望と狂気に陥れる、学級裁判が。

 

 さて、この裁判は一体どんな言葉で始まるのだろうか?

 さぁ、外の世界へと発信しよう。絶望の裁判の開幕の言葉を……

 

 

暴走「すまねぇ! 今回の犯人は俺だ!!」

 

 …………アレ?

 

暴走「俺が……この俺がついうっかり不二咲を殺しちまったんだ!!」

 

 記念すべき第一声が、何か自白だった。

 

モノ『ちょっと!! もうちょい抵抗……っていうかせめて黙っててよ!!

   裁判の意味が無くなるじゃん!!!』

眼鏡「うるさいぞモノクマ。

   おいどういう事だ、説明しろ大和田!」

 

 超超高校級の御曹司のスタンド……もとい、執事にモノクマが弾き飛ばされる。

 学園長であるモノクマへの暴力は校則違反だが、今はそんな事に構ってられないので寛大な心で見逃してやる。

 決してあのスタ……執事が怖いわけではない。

 

暴走「実は……俺は不二咲に頼みごとをされてたんだ。

   体を鍛えてほしいっていうな」

眼鏡「あの不二咲が? にわかには信じられんな」

暴走「そう言われても、本当なんだよ!」

眼鏡「せめて納得できる理由を持って来い」

 

 今回の被害者である超超高校級のプログラマーは見た目は華奢な少女だ。

 明らかに不良といった外見の超超高校級の暴走族に何か頼みごとをするとはとても考え辛い。

 その内容が『鍛えてほしい』というのであればなおさらだ。

 まぁ、あくまで『プログラマーが鍛えてもらう』のが考えにくいだけであって『暴走族が鍛える』の方は割としっくり来るのだが。

 

暴走「……理由は、言えねぇ」

眼鏡「……フン、まあいい。とりあえず事実だったとしておこう。

   で、それで何で殺人事件になっているんだ?」

暴走「じ、実は……

   筋トレの為にダンベルを持ち上げた瞬間にあいつからある事を言われて驚いちまって……

   そしてダンベルがポーンとすっぽ抜けてあいつの頭に……」

 

 そんなふざけた話があるか! と思って江ノ島は急いで映像を確認する。

 するとそこには……暴走族の少年が言った通りの事が映ってた。

 

 ……え? 今まで確認しなかったのかって?

 だって、探偵の完璧な検死(秒単位の死亡推定時刻は勿論、凶器の形状、速度、犯人の性別身長体重年齢その他諸々まで完璧に看破した)があったからモノクマファイル作らなかったんだもん。

 

眼鏡「凶器がすっぽ抜けただと? 何に驚いたんだ?」

暴走「それも言えねぇ」

 

 ちなみに驚いた内容はプログラマーの少年による「実はボク、男なんだ!」発言である。

 

眼鏡「……まだまだ疑問は尽きないが、事件とは関係ない事のようだな。

   では、投票を始めるとしよう。辞世の句の準備はできたか?」

暴走「……ああ、一思いにやってくれ。

   俺は過失とはいえアイツを殺してしまった。

   せめて謝りたいが……『それすら叶わない』」

 

 こうして、一応2回目の学級裁判もあっさりと結論が出た。

 今回のオシオキも抵抗されるんじゃないかと不安だったが、この様子ならむしろ自殺しそうだ。

 前にも言ったが、投票した以上は間接的にクロを殺したことになる。その絶望は彼らの心を蝕むだろう。

 江ノ島盾子は勝利を確信した。

 

 

 

 

 

幸運「それは違うよ!!」

 

 

 

 

 そして、その絶望への導きを、超超高校級の幸運が論破する!






そう言えば、評価して下さった方が5人になったので評価バーに色が付きました。
皆さんの応援に感謝します。


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次元の管理者

幸運「それは違うよ!!」

 

 幸運の少年は暴走族の少年の発言にあったウィークポイントを的確に突き、言葉の弾丸を使ってそれを論破した。

 そしてその手には、今回の被害者から託されたある物が掲げられていた。

 

眼鏡「おいどういう事だ、説明しろ苗木!!」

幸運「確かに、大和田くんは不二咲さんを殺してしまったかもしれない。そこは変えようの無い事実だ。

   でもね、『もう話すことはできない』っていうのは違うんじゃないかな?」

暴走「ど、どういう事だ! 説明してくれ、苗木!!」

幸運「あ、うん……コレだよ」

 

 幸運の少年は被害者から託されたノートパソコンを開く。

 そこに映っていたのは……

 

プロ『えっと……こ、こんにちわ』

 

 今回の被害者である、プログラマーの少年の姿だった。

 

眼鏡「おいどういう事だ! 強制シャットダウンだ、苗木!」

幸運「いや、閉じたら意味が無いから。

   それじゃあ不二咲さん、出てきて」

プロ『うん。よいしょっと」

 

 そう言いながらプログラマーの少年は画面の中から出てくる。

 

モノ『って、ちょっとぉぉおおお!? 何がどうなってるの!?』

幸運「え? だってプログラマーなら自分のコピーくらい作れるでしょ」

モノ『そういう問題じゃないでしょうが!!』

 

 プログラマーなんだから、自分によく似た人工知能を作るくらいなら江ノ島も驚かない。

 だが、目の前で起きた事は文字通りの意味で次元が違った。

 質量保存の法則とか、その辺の法則に真っ正面から喧嘩を売るような事態である。

 

プロ「えっとね、今までの会話は聞いてたよ。

   約束を守ってくれてありがとね、大和田くん」

暴走「ほ、本当にお前なのか? 本物なのか?」

プロ「正確にはコピーだけど、記憶もほぼ同期してるからほぼ本物だと思ってくれて大丈夫だよ」

暴走「……そうか……本当に済まなかった、不二咲!!」

プロ「そっちこそ、約束を守ってくれてありがとうね。

   投票は君にする事になっちゃうけど……必ず生きて帰ってきてね」

暴走「あ、ああ!! 任せろ!! 男と男の約束だ!!」

プロ「……うん」

 

 何か江ノ島がわたふたしてる間に話がまとまってしまったようだ。

 しかも何か良い話風にまとまったようだ。

 ここで、ただの絶望なら諦めるだろう。

 しかし、江ノ島盾子は超高校級の絶望だ。この程度では諦めない!!

 暴走族の少年のオシオキをきっちりと完遂すれば万事解決だ!

 

モノ『それじゃあ、投票タイムスタートっ!!』

 

 15個の票全てが暴走族の少年に集まる。

 本来なら有り得ない票の数を見て若干へこむが、すぐに切り替えて宣言する。

 

モノ『それじゃあ、オシオキタイムスタートっ!!』




  超超高校級のプログラマー
 『次元の管理者』と謳われた人外級のプログラマー。
 あらゆるハッキングや暗号解析を行うという普通のプログラマーにもできる事は今更言うまでも無いだろう。
 彼の真骨頂はプログラムで組んだものを次元の壁を越えて瞬時に実体化させる能力にある。
 本編中では出てこなかったが、凶器になるような危険物やそれらから身を守る為の装備、あるいは脱出スイッチさえも実体化させる事が可能。
 その真髄が彼自身のコピーであり、記憶媒体さえ無事なら彼は何度でも蘇る。
 彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


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臨界の超越者

 江ノ島が暴走族に対して用意したオシオキ装置は『超高校級のハムスター』の尊いぎせ……献身により作られた装置だ。その装置を一言で説明するとハムスターの回転車のようになっている。

 違うのは、中に入るのはバイクに乗った人間であること、そして、回るのは装置ではなく中に入って爆走するバイクと人間であるということだ。

 恐るべき速度のバイクは遠心力により壁に押しつけられ、乗る人間もまた遠心力の影響を受ける。

 最初は少々気持ち悪いくらいで済むだろうが、段々と遠心力は強くなっていき、肉体はひしゃげ、最終的には遠心分離機のように綺麗に分けられる。

 これを受けて無事で済む人間などまず居ないだろう。

 江ノ島盾子は勝利を確信した。

 

モノ『それじゃあ、オシオキタイムスタートっ!!』

 

 暴走族の少年がバイクに乗せられる。

 そしてバイクは装置に一直線に向かい、入る。

 装置の中でバイクと少年がぐるぐる回る。見てるだけでも目が回りそうだ。

 

 バイクが速度を上げる。目が回りそうだが、ちゃんと見て速度を調整しないといけないので頑張って見る。

 

 更に速度を上げる。暴走族の少年の顔は涼しげに見えたがきっと気のせいだろう。

 

 更に更に速度を上げる。まだ普通の人間でも目で追える速さだろう。江ノ島の動体視力ならまだまだ余裕だ。

 

 更に更に更に速度を上げる。一般人だと回っている物が見えないくらいの速さだが、江ノ島ならまだ大丈夫。

 

 更に更に更に更に速度を上げる。暴走族の少年の顔は涼しげだった気がするがきっと気のせいに違いない。

 

 更に更に更に更に更に速度を上げる。気分が少し悪くなってきたがまだ大丈夫だ。暴走族の少年の肉体はまだ無事のようだ。

 

 更に(中略)更に速度を上げる。そろそろ江ノ島の動体視力の限界が近づいてきた。これ以上上げると中の様子は殆ど分からない。しかし暴走族の少年はまだ無事のようなので頑張る。

 

 更に(中略)更に更に速度を上げる。江ノ島の動体視力をもってしても完全に分からなくなった。なお、超超高校級の格闘家とかはまだまだまだまだ余裕の模様。

 

 (全略)。江ノ島の動体視力が限界を迎えてから100倍くらいの速度まで上げた。もうそろそろ止めても大丈夫だろうと思って装置を止めようとするが、これまでの失敗の苦い記憶が蘇る。まだまだ安心できない。更に加速する。

 

 

 もう音速なんてとっくに越えてそろそろ周速度が光速に近くなってきた。流石にそろそろ大丈夫だろうと判断して装置を止める。

 

 

 

 ……そして、暴走族の少年が普通に装置から出てきた気がするけど気のせいであってほしい。

 気のせいであってほしいんだけど、現実から逃げ続けるわけにもいかなかった。

 

『え~……あの、何で生きてるのカナ?』

「んぁ? あの程度の速度、俺のバイクの平均速度より低かったぜ?」

 

 彼は超超高校級の暴走族である。

 彼の持つ才能は基本的にバイクに関わるものが多い。

 例えば、バイクを一瞬でトップスピードに上げる能力、

 そしてそのトップスピードそのものを大幅に引き上げる能力、

 あらゆる鋭角カーブで最短距離を駆け抜ける能力などである。

 これらの現象は全て彼自身の能力により引き出される為、乗るバイクの種類は一切問わない。

 

 そして彼はこれらの操作に耐える為の能力を持っている。

 故に、あの程度の遠心力で死ぬ事など断じてない!

 

「これで終わりか? んじゃメシにするか」

「お、大和田くんちょっと待って、め、目が回って……」

「おいおい、中に居た俺より辛そうだな。

 それじゃ、ゆっくり休んでから行くぞ」

「う、うん。ありがと」

 

 勿論そこに、絶望などというものは一切無かった。




  超超高校級の暴走族
 『臨界の超越者』と謳われた人外級の暴走族。
 慣性、摩擦係数、重力などを操作する事で身体への負荷を全て無効化し、一瞬でトップスピードに到達したり、鋭角カーブも物理法則を無視して最短ルートを駆け抜ける事が可能。
 また、一応バイクに触れるだけで魔改造を施し、バケモノじみた性能の走りを見せる。本編中でも述べたように普通のバイクでも上記の能力だけでも十分に人外染みた走りを実現するが、本人的には自分が改造したバイクの方が使いやすいようだ。
 本人の趣味の問題もあって魔改造の才能はバイクにしか使っていないが、実は乗り物なら何にでも使える。尤も、機体性能が凄すぎてよっぽど強靭な肉体を持っている人か本人しか使えない為あまり意味は無いが。
 彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


 オシオキを受けた本人よりも回りの被害の方が微妙に大きい模様。
 そしてむしろ超超高校級の暴走族の方が絶望的なオシオキマシーンを作れそう。


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3つ目の動機発表

 五体満足でオシオキマシーンから出てきた超超高校級の暴走族を見てへこみそうになった江ノ島だったがすぐに気合を入れ直す。

 今回は失敗してしまったが、きっと絶望のチャンスは来るはずだ。今はルールに従って粛々と進めようじゃないか。

 ……そんな彼女の思考は現実逃避っぽいのだが……まぁ、気のせいという事にしておこう。

 

 では、裁判後恒例のイベント、フロア開放を行おう。

 江ノ島は再び体育館に生徒たちを集める。

 

「また呼び出しか? 俺の時間は高く付くぞ」

『え~、裁判も終わったので新たなフロアを開放します!

 そこには脱出口がある可能性が無きにしも非ずというわけではありません!

 出たかったらさっさとコロシアイ成功させてね~』

「『可能性が僅かでもある』というわけじゃないって事は無いって事かな?

 まあ暇つぶしにはなりそうだから行くけどさ」

 

 そもそもこの中に真面目に脱出口を探そうとしている人が居るのかは疑問ではあるが。

 半分くらいは脱出口なんて関係なく脱出できそうだし。

 

 

 

 

 

 皆で3階を捜索したが、特に面白い物は無かった。

 強いて言うなら超超高校級の暴走族がついうっかり巨大空気清浄機を壊してしまったというショボい事件があったが、何人かの超超高校級が集まってとりあえず直した。

 外の汚染された空気を綺麗にして学園中に流す大事な装置だったのだが……あの人外どもがたかが毒ガスでくたばるかは疑問だ。

 ちなみに江ノ島と軍人にとっては普通に毒だ。開発には自分が一枚噛んでいるのでその対策くらいは常備しているが、軍人はそんな物は持ち込めないし、江ノ島にも助ける気は全く無かったので一瞬の修理により一番救われたのは軍人だったりする。

 

 

 さて、新しいフロアを開放したは良いものの、これだけでコロシアイが起こるならとっくに起こっている。

 と言う訳で、次の動機を用意する。

 江ノ島は再び体育館に生徒たちを集める。

 

『ハ~イ! 今回はまたまた動機を発表するよ~!

 じゃ~ん、10兆円で~す!

 クロがもし無事に逃げきれたら、これをあげちゃうよ~!』

 

 ステージの上に札束の山をドサリと置く。

 実は最初は100億円の予定だったのだが……監視カメラから拾った生徒たちの雑談によればその程度の金なら数日で稼ぐバケモノが複数存在するようなので頑張って増量した。

 本当はもっと増量したかったが、急いで印刷機を修理してインクや紙などを用意するのに時間がかかったのだ。これでもかなり頑張ったのだ。

 一応、周辺の民家や民間人の死体から強奪する事も平行して行ったが雀の涙ほどしか回収できなかった。

 

『ふふ~ん、殺人の動機としてお金っていうのは使い古された手だよね~。

 と言う訳で、レッツコロシアイ!!』

 

 ……なお、今更お金なんていう紙クズを欲する人外など皆無だったのだが……可哀想だから黙っておこう。

 

 

 

 動機が発表された夜、ある人物が超超高校級の幸運の部屋を訪ねていた。

 早速コロシアイが起こるかもしれないと江ノ島は期待に胸を膨らませる。

 

 コンコンとドアがノックされ、幸運の少年が客を出迎える。

 

「ごきげんよう、少々お時間をいただけないでしょうか?」

 

 そこに居たのは超超高校級のギャンブラーである。

 原作では幸運の少年をカモにする場面もあったが、本作では運が絡むギャンブルにおいては絶対に勝てなかったりする。

 運が絡まないゲームで勝負をするなら勝てるのだが……まあその辺は置いておこう。

 

「あれ、セレスさん? こんな時間にどうしたの?」

「苗木くん、あなたに少々預かってほしい物があるのです」

 

 そう言ってギャンブラーの少女が差し出したのはモノクマが刻印されたコインだ。

 このコインは学園中に落ちており、一階の購買部にあるガチャガチャ、通称『モノモノマシーン』で使う事ができる。

 ちなみに、幸運の少年にとってコインは脱出スイッチの引換券になっており、彼の部屋にはこれまで出てきた脱出スイッチがうずたかく積まれている。

 実用用や保存用だけでなく鑑賞用贈答用売却用分解用改良用改悪用護身用投擲用防具用重石用重り用踏み台用自爆用……等などの用途に使われている。

 最近では接着剤で繋げて板材や棒材にしてそれで家具を作る等の使用法も検討しているようだ。正直いくらあっても足りない。

 まあそれはさておき……

 

「こんな物を預かれって言われても……何に使うの?」

「ちょっとしたゲームに使います。

 私が『BET』と言ったらそのコインを投げて表か裏か私に言ってください」

「……うん、分かった。けど、これってどっちが表?」

 

 コインの片面にはモノクマが、もう片面には希望ヶ峰学園の校章が刻印されている。

 ちなみに、これを作らせた江ノ島は特にどっちが表だとか考えてない。

 

「そうですね、ではモノクマを表としましょうか」

「了解」

「では折角だからやってみましょう。『BET』」

 

 その宣言を聞いて幸運の少年がコインを弾き、手の甲で受け止める。

 コインは裏を、希望の学園の校章を示していた。

 

「裏だね」

「ありがとうございました」

「うん。これくらいならいつでも。

 でも、どうしたの?」

「……それはですね……」

 

「おい君達! そこで何をしている!! 風紀が乱れているぞ!!」

 

 ギャンブラーの少女が説明をしようとした所で風紀委員の少年が乱入してきた。

 一応、ギャンブラーの少女はずっと廊下に立っていたので『部屋の中で男女が二人きり』という条件は満たしていなかったのだが、長々と話していたせいか引っかかってしまったようだ。

 

「……今は失礼させていただきますね」

「うん、また明日ね」

 

 ……それが、幸運の少年とギャンブラーの少女の最後の会話だった……

 なんて事は無いので安心してほしい。



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3つ目の事件

 翌々日の朝、超超高校級の風紀委員が死体で発見された。

 それに続けて、超超高校級の同人作家も死体で発見された。

 

『え~、死体が発見されました。一定時間の後に学級裁判が始まります』

 

 ちなみに、今回も超超高校級の探偵が死亡宣言を出してくれた。探偵は検死を誤らないらしいので有難い。

 

「ところでモノクマ、一つ質問があるんだけど」

『ん、何かね? この学園長に言ってみなさい』

「この2つの事件、犯人が同じなら楽なんだけど別件だったらどうなるの?

 あとついでに共犯者が居たらどうなるの?」

『お答えしよう!

 まず共犯者が居ても結局は殺したクロ1人のみが卒業できます!

 で、別件だった場合だけど……そうだね、両方のクロをキチンと考えてください!』

「なるほどね。ちなみに、クロが既に死んだ場合、例えば石丸くんがクロだった場合はオシオキはどうなるの?」

『流石に死んでる人にオシオキするのはねぇ……別にやってもいいけど、面倒だから無しだね」

「……分かった。ありがとう」

『うんうん、先生として質疑応答にはちゃんと答えないとねぇ。

 それじゃあ、調査パートスタート!!』

 

 そしてそれぞれの生徒が独自に調査を進める。

 

 

 

 しばらくした後、再び放送が鳴り響く。

 

『え~、皆さん、学級裁判の時間です。

 本校舎一階の赤い扉まで来てください』

 

 念のためエレベーターに乗り込んだ人数を確認したがキチンと13人だった。

 まぁ、本来ならもっと人が減ってるのでこれでも多すぎるのだが……

 

 

 そして再び、学級裁判が始まった……

 

 

探偵「一応確認しておくけど、自白する人は居ないわね?」

 

 探偵の少女が確認するが、答える人は居なかった。

 今までは一瞬で裁判が終わっていたので江ノ島は少し安心した。

 

探偵「……それじゃあ、私から言わせてもらうわね」

 

 そして、その安心は一瞬で崩れ去った。

 

探偵「石丸くん殺害の犯人は山田くん。

   そして山田くん殺害の犯人は安広さん、貴女ね?」

占い「お、俺の事だべか!? お、おおお俺はそんな事してねぇよぉ!!」

水泳「犯人はみんなそう言うんだよ!」

プロ「葉隠くん……信じてたのに……」

占い「いやいやいやいや!! マジで俺はそんな事してねぇから!!」

 

 もちろん、彼は犯人ではない。

 このまま行けばクロの勝利で全滅だが……江ノ島は嫌な予感を感じていた。

 

探偵「安心しなさい、彼の事ではないわ。

   私が言ったのは、そこに居る安広多恵子さんの事よ!!」

 

 探偵がそう言い放った瞬間、皆が『誰だ?』と思っていた。

 ……そう、ただ1人を除いて。

 

博打「……お見事です、超超高校級の探偵さん」

 

 超超高校級のギャンブラーである、彼女を除いて……




う~ん、適当に書いてたら少々って言うかかなり短くなっちゃいましたね(1061字)
よし、では明日も投稿します。それで勘弁してください。
……ストックの消費スピードが想定より速いです。頑張って書き溜めなければ。


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幻想の創造者

 江ノ島盾子は混乱していた。

 探偵が何か聞き覚えの無い名前の人物を告発したらギャンブラーが名乗り出てきた。

 しばらく考えて、その聞き覚えの無い名前がギャンブラーの本名だった事を思い出した。

 って言うか、何で探偵は知ってたんだろうか?

 

探偵「お約束だから訊いておくわ。どうしてこんな事を?」

博打「フフッ、実に簡単な事ですよ」

 

 ギャンブラーの少女は、少しの間を置いた後に堂々と言い切った。

 

博打「あの10兆円が本物かどうか、気になったからです!!」

クマ『お金が欲しかったからじゃ無いんかい!!』

 

 あまりに下らない理由に思わずツッコミを入れてしまったが、あの大金が動機になった事だけは確かだ。

 思ってたのと何か違う気がするが、お金を必死にかき集めたあの努力は無駄では無かった、努力は報われたのだという事に気付き少しだけ目が潤む。

 ……後半の文章だけ抜き出したら借金に追われてた人みたいに聞こえるけど気にしない。

 

野球「オイオイ、そんな理由で人殺したのかよ!? バカじゃねぇのか!?」

幸運「いや、キミも大した理由無かったよね?」

野球「そ、そうだが……いや、理由無しの方がまだマシだろうが!」

幸運「う~ん、まあそうかもしれないけど」

水泳「今回のは流石に悪ふざけが過ぎるよ! どういう事なの!?」

 

 何だか思ったより良い感じに絶望的になってる気がしてきた。

 よく分からないが、今回は上手いこと行きそうだ。

 

 江ノ島盾子は勝利を……確信しなかった。

 

 何故かって?

 だって、毎回確信する度に何か妙なアクシデントで結局絶望してくれない。

 だから、決して確信してはいけないのだ!

 江ノ島盾子は、そう確信した。

 ……アレ?

 

博打「フフッ、ところでモノクマ、一つだけお尋ねしたい事がございます」

モノ『う、うん? 何かね?』

博打「探偵さんが仰ったように、今回の事件の犯人には被害者が含まれております。

   その山田くんはもうオシオキを受けない。それで合っていますね?」

モノ『え? うん。そうだけど?』

博打「それは安心しました。

   それでは山田くん、出てきてください」

 

 そう言ってギャンブラーの少女は何かの冊子を広げる。

 すると、その中から殺されたはずの同人作家がポンッと飛び出てきた。

 

同人「ふぅ~、やっと出られましたか。少し窮屈でしたぞ」

モノ『ちょっっっ!? ええええええっっっっ!?!?』

 

 突然出てきたピンピンしてる被害者に一時場は騒然となるが、一部の人は澄ました顔をしている。

 

眼鏡「おいどういう事だ! 説明しろ苗木!!」

幸運「いや、そこは本人に訊こうよ」

眼鏡「どういう事だ! 説明しろ山田!!」

同人「ふふっ、まあ実に簡単な事です」

 

 では、お待ちかねの能力説明である。

 彼は超超高校級の同人作家である。

 故に最高級の同人誌が書ける、または描ける事は人外の基礎教養なので語るまでもなかろう。

 彼の創作活動は2次元の同人誌のみならず3次元まで及ぶ。例を出すのであればフィギュア等だが、他にも様々な物を創作する事ができる。

 そして彼が作る作品は例外なく魂が宿り、最早本物と区別が付かないレベルとなる。

 

同人「というわけで、我輩の死体は我輩による創作物であったというわけですな」

格闘「ふむ、生の残滓が感じられなかったのはそのせいであったか」

同人「おや? 看破されておりましたか? 次作る機会があればもう少し気をつけてみましょうか」

モノ『ちょっと待ったぁっ!! 検死してた探偵は気づかなかったの!?』

探偵「『死んでいる』とは言ったけど『生きていた』とは一言も言ってないわ」

クマ『ふざけんなー!!!!』

眼鏡「おいうるさいぞモノクマ。

   山田、さっさと続けろ」

同人「分かりましたぞ」

クマ『え? ちょ、わt、ボクがおかしいの!? ねぇ!!!』

 

 モノクマの絶叫は無視して解説が続けられる。

 

同人「では、我輩が同人誌から出てきた事についてですな。

   これも実に簡単な事ですぞ」

 

 超超高校級の同人作家は物語の創作の際にその紙の中に新たなる世界を生み出す。

 故に、その世界に入り込む事は容易い。

 

同人「とまあこんな感じですな」

博打「つまり、私が犯した罪は器物破損のみですわね」

 

 そんな話を聞いて江ノ島盾子は自分の部屋で白目を剥いて気絶した。







  超超高校級の同人作家
 『幻想の創造者』と謳われた人外級の同人作家
 印刷物やフィギュアなど、様々な創作物を神がかったクオリティで実現することができる。
 今回はトリックの為に極めてリアルな自身のフィギュアを作ったが、明らかに現実世界に居ないようなアニメや漫画っぽいフィギュアを作る事も勿論容易。むしろそっちが本職である。
 印刷物の方は文字通りの意味で世界を創造し、その中に入り込む事もできる。
 もちろん、中から物を取り出す事もできるので脱出スイッチも余裕で作れる。
 彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


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冥府からの帰還者

 江ノ島盾子は学級裁判でのあまりの事態に気絶してしまったが、幸いな事にそれはほんの少しの時間だったようだ。

 ……まぁ、ずっと気を失ってた方が本人にとって幸せだった可能性がかなりある気がするが……きっと気のせいだろう。

 

同人「器物破損とはヒドい言い草ですな。拙者の創作物には魂が宿るのですぞ?」

博打「……まあどっちでも構いませんわ。どうせオシオキを受けるのは確定でしょうし」

軍人「あ、そうだったわね……」

 

 言うまでも無く『器物損壊事件』は最初の裁判の『傷害事件』より更に低い犯罪だが……そんな事を気にする人は居なかった。

 

暴走「だが待ってくれ! どうして石丸を! あいつを殺したんだ!!」

プロ「そ、そうだよ! どうして!!」

博打「クロを誤魔化す為にちょっと変わった殺人を演出しようと思いましてね。

   被害者がクロ、奇想天外だと思いませんか?」

暴走「その為だけにあいつを殺したっていうのか!?」

博打「正直言うと、動機が動機だったので被害者は誰でも良かったのです。

   しかし、黒幕に『被害者が死んだ』と思わせる必要もありました。

   なので、今までの被害者とクロを選んでしまうといくら想像力に乏しい黒幕であっても偽装死の可能性を疑ってしまうでしょう。

   ですから、それらの人物を除外して、くじ引きで決めました」

 

 くじ引きで被害者を決めて殺すなんてどう考えても絶望サイドの人間の行動だがそんな事にツッコミを入れる人物は居なかった。

 って言うか、江ノ島の想像力はそんなに乏しくなく一般人感覚ではむしろ豊かな方だ。ただの超高校級に人外の行動を想像しろというのは少々酷だろう。

 

幸運「ちょっと質問いいかな?」

博打「どうぞ」

幸運「その気になれば山田くんみたいに偽装殺人もできたよね? どうしてそうしなかったの?」

博打「それは簡単です。する必要が無いと判断したからです」

幸運「……つまり、わざわざ何かしなくても蘇生できるって事かな?」

博打「さあどうでしょう?

   私から言えるのは『あの日私たちは完全な殺人を達成する事は不可能だった』という事です」

幸運「うーん……石丸くんを復活させるには……うわっと!」

 

 幸運の少年がブツブツつぶやきながら歩いていると()()()段差に躓いてしまう。

 そして、少年が倒れた先には……

 

アイ「きゃぁっっ!」

 

 都合良くアイドルの少女が立っており、転んだ勢いのまま床に押し倒してしまう。

 いわゆるアレだ。ラッキースケベという奴だ。

 

野球「お、おいてめぇ! 舞園さんに何してやがんだ!!」

風紀「そうだそうだ!! 風紀が乱れているぞ!!」

 

 アイドルのファンである野球選手が文句を言い、駆けつけた風紀委員が取り締まろうとする。

 

クマ『ちょっ、えええええええええ!?

   ななな何でここに居るの!?』

プロ「どどどどどういう事!?」

暴走「い、石丸!? 生きてたのか!?」

風紀「む? 騒々しいな。風紀が乱れているぞ?」

クマ『そういう問題じゃねぇえええええ!!!!!』

 

 念のためもう一度言っておくと、今回の被害者である風紀委員の少年がやってきた。

 まさか探偵が検死結果をごまかしたのかと思いそちらの様子を伺うが……

 

探偵「ど、どういう事!? そんなバカな! 確実に死んでいたはず!!」

眼鏡「どういう事だ! 説明しろ苗木!!」

 

 珍しい事に探偵までもが驚いているようだ。

 ついでに噛ませが何か言っていたがスルーする。

 

風紀「あ、そうだモノクマ」

クマ『え? あ、はい。何でしょうか?』

風紀「僕の死体なんだが、きちんと焼却処分してくれたかい? 放置しておいたら腐ってウジが湧いてしまうからね」

クマ『え、えっと……しょ、証拠品なんで冷凍保存してあります』

風紀「うぅむ……まあ良かろう。後でキチンと片付けておいてくれたまえ!」

 

 あ~、確かに死体の処理は面倒だ。外ならともかくこういう閉鎖空間だと……

 

クマ『ってそうじゃなくて! どういう事!? 死体って言ったよね!? 死んだんだよね!?』

風紀「ん? 風紀が乱れたら例え地獄の底からでも駆けつけるのは風紀委員として当然の事だろう?」

クマ『そんなわけあるかぁぁあああああ!!!!

   ゲホッ、ゲホッ』

 

 少々叫びすぎたようで喉を痛めたようだが、そんなどうでもいい事を気にする親切な人は居なかった。







  超超高校級の風紀委員 追記
 文字通り、地獄の底からであろうと風紀の乱れを感知するとやってくる。
 その時、死体が蘇るのではなく本当に『やって来る』ので彼の肉体は増える。
 なので、強い相手と死闘を繰り広げる場合、死亡と復活のサイクルを繰り返す事で死体がどんどん増えていく事になる。それをそのまま放置すると環境汚染に繋がるので後で本人の手で片付けられる。
 彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


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奇跡の精製者

 色々と、本当に色々と騒ぎがあったが、何とか全ての真相が明らかになり学級裁判がほぼ終わった。

 終わったという事実に江ノ島は息をつくが、そんな自分の様子に舌打ちをする。

 何をやっているのだ。これではまるで学級裁判を恐れているようではないか。

 そんなはずはない、何かの間違いだと自分に言い聞かせ裁判を再開する。

 

『え~、では大体真相が明らかになりましたね。

 お手元の投票ボタンをお願いします』

「念のため訊くけど、器物破損事件のだよね?

 殺人事件の方はオシオキ免除だよね?」

『…………』

 

 そう言えば、言ってしまった。

 『クロが被害者の場合はオシオキ免除』と。

 こんな事態は全く想定していなかった時の発言だが、一応は自分が決めたルールだ。従うしかあるまい。

 

『……しょーがないね。器物破損だけね』

「じゃあ私ですね。投票お願いします」

 

 今回の裁判でも15の票が集まる。

 今までの成果が0である事を見せつけられたような気がして泣きそうになるが、何とかこらえてオシオキの処理に進む。

 

『はーい、今回のクロはセレスさん、本名は安広多恵子さんでした~。

 それでは、オシオキを開始しま~す!』

 

 そうだ、オシオキさえ成功させられれば良いのだ!

 この人外どもに誰かを殺させる事さえできれば!!

 江ノ島は気合を入れ直した。

 

 

 さて、それでは今回のオシオキについて説明しよう。

 簡潔に説明してしまうと今回の処刑方法は火あぶりである。

 中世の魔女裁判よろしくクロを磔にして火であぶる。

 しかし、この人外どもがただの火で死んでくれるだろうか? 非常に怪しいと言わざるを得ない。

 そこで江ノ島は工夫を凝らした。

 かつて希望ヶ峰に在学していた超高校級たち。その中の『超高校級の放火魔』と『超高校級の中二病』、『超高校級の忍者』らが協力して開発したという通常の手段では決して消えない炎、通称『黒い炎』を用いて火あぶりを行うのだ。

 更に、万が一その炎で止めを刺せなかった場合に備えて『超高校級の消防車マニア』や『超高校級のドリル使い』等の手によって魔改造された消防車により跳ね飛ばす。

 これだけやって生還する人間はまず存在しないだろう。

 江ノ島盾子は勝利を確信した。

 

 ……あ、確信しちゃった。

 

 

 超超高校級のギャンブラーは磔にされ、下から例の黒い炎が這い上がっていく。

 その禍々しい炎は遠くから眺めているだけの他の生徒達にもはっきりとした熱を伝えていた。直上に居るギャンブラーの少女がどれだけの熱気を感じているかは言うまでも無いだろう。

 

「ふむ、こういう趣向で来ますか……

 構いません。苗木くん? 『BET』お願いします」

 

 少女は呟くように、そう告げた。

 その言葉が幸運の少年の耳に届くと同時に、少年はコインを投げた。

 弾いたコインを手の甲で受け止めた少年は高らかに告げる。

 

「裏」

 

 少年から裏が、希望の象徴たる希望ヶ峰学園の刻印が告げられる。

 そしてそれと同時に、あれだけの熱を伝えていた黒い炎が一瞬で消失した。

 

『……はいぃぃぃっっ!?』

「これでおしまいですね。ではもう一度、『BET』」

「裏だよ」

 

 続けて、少女を磔にしていた拘束が消失した。

 拘束が解かれた少女は当然のように舞台から降りようとする。

 

『ま、待った待った待った!! まだオシオキ終わってないよ!?』

「おや? そうでしたか。では少し待ちます」

 

 少女は余裕たっぷりに舞台の上に舞い戻った。

 何か凄く舐められている気がするが、江ノ島は気にせずオシオキを断行する。

 

『それでは消防車! GO!!』

 

 先ほど説明した魔改造消防車が少女に突っ込む。

 それに対して少女は慌てず騒がずにただ宣言する。

 

「苗木くん、『BET』」

 

 コインが弾かれ、受け止められる。

 そこに刻まれていたのは……

 

「……表」

「っ!!」

 

 モノクマ、絶望の象徴であった。

 

 その直後、消防車がスピードを全く落とさずに舞台に突っ込む。

 当然、ギャンブラーの少女は跳ね飛ばされる……だけでなく、車体の表面についたドリルやら何やらでミンチにされる。

 もはや原型を止めない肉塊となって、かつて少女だったものはボトリと床に落ちた。

 

「せ、セレスさぁぁぁん!!!!」

『や、やった!! 今度こそ仕留めた!!

 これが3度目の正直って奴だよ!!!』

「そうですか、ご苦労様です」

 

 そして、次の瞬間にはギャンブラーの少女は無傷で幸運の少年の後ろに立っていた。

 

『って、えええええっっっ!?』

「お、おいどういう事だ! 説明しろ苗木!!」

「い、いや、僕も知らないよ!?」

「うむ、ゴミになりそうだった肉塊も消えているな。復活時に環境に配慮しているとは、さすがはセレスくんだな!」

 

 さて、そろそろ彼女の能力を説明しておこうか。

 彼女は超超高校級のギャンブラーである。

 ギャンブルである以上は『何かを賭けて勝負し、勝てば何かを得られ、負ければ賭けたものは失う』というのが基本ルールだ。

 そして彼女は、賭けの対象に制限など存在しない。

 例えば、コイントスをしよう。彼女自身が投げても良いし、誰かに投げてもらっても良い。

 その時彼女は賭ける。『自分の周りの炎』を賭け、『確実な無傷での生還』を望み、『表』が出る事に賭けた。

 結果、裏が出る事により『確実な無傷での生還』は得られなかったが『自分の周りの炎』は没収されて消滅した。

 磔の拘束も同様の手順で消去、消防車も似たような方法で処理しようとして失敗したが『確実な無傷での生還』を得る事ができた。というわけだ。

 

「苗木くん、一応コインはそのまま預けておきます。

 何かあったらまた宜しくお願いしますね」

「う、うん……分かった」

 

 こうして、第3の学級裁判も犠牲者無しで終了したのだった。







  超超高校級のギャンブラー
 『奇跡の精製者』と謳われた人外級のギャンブラー。
 あらゆる概念を賭博の対象にする事が可能である。
 この能力は占いのように使う事もでき、例えば『今から24時間で完全なる死人が出る場合にそれが誰か察知する権利』を求め『今から24時間で完全なる別離が発生する確率』を賭け、『54枚のトランプからジョーカーが出る』事に賭ければ『ジョーカーが出なければ死人は絶対に出ない、出ても死者が出るかどうか察知できる』という事になる。
 他人のものを賭ける事は一応不可能だが、奪い取れば賭ける事が可能である。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』




 なお、このときの彼女の賭けの勝率は求めたものと賭けたものの価値の比(+彼女自身の運)のみで決まる。分かりやすく言うと、1円を賭けて10兆円を求めてコイントスすればコインの裏が延々と続く。

 ちなみに、『24時間、仲間の死体が発生しない』事を求める事は不可能です。個人で持てるものではないので。(そもそも死体が生き返るから意味ないですし)
 また、『24時間、完全なる別離が発生しないこと』のように『無い』事を求める事も不可能です。発生確率を賭けて消費する事で疑似的に得る事はできますが。

 自分で書いてて恐ろしくややこしい能力になってます。感想欄などで質問が出た場合はできるだけ真面目に答えたいと思いますが、あんまり深く突っ込むのは勘弁してください。


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内通者

 江ノ島盾子は考え込んでいた。

 どうしてこうも上手く行かないのか。

 どうして誰一人死者が出ないのか。

 

 その原因として一番大きいものはやはり連中の並外れた生命力だろう。

 ナイフや鈍器などで致命傷を与えても死なない連中が確認しただけで2名、それ以外にも居そうだ。

 攻撃そのものを弾いてしまう連中も居る。ダメージを与えられれば殺せるかもしれないが、そもそもダメージが入らない。

 故に生半可な方法で殺す事は不可能なのだ。

 

 そしてもう一つ、大きな理由がある。

 それは、連中の結束が強い……とまでは言わないが、全く仲違いしていない事だ。

 これだけクセの強い連中が集まったらほぼ間違いなく些細な事で仲違いして、この状況もあいまってコロシアイへと発展するはずなのだ。

 つまり何が言いたいかというと、連中は本気でコロシアイをしていないという事だ。

 最初の事件だってあの野球選手が本気で確実に殺そうとしていれば殺せていた……かもしれない。三回目の事件では同人作家を殺そうとしていれば仕留められていた可能性が高い。

 

 この2つの理由がマッチする事でこの『誰も死なないコロシアイ』という異常事態が出来上がっている。

 ……であれば、次の動機はアレにするとしよう。

 

 

 

 生徒たちを再び体育館に呼び集め、モノクマが壇上に立つ。

 

『え~、オマエラ、おはようございます!』

「おはようございます!」

「何の用だ? 次からは先払いで払え」

 

 風紀委員が律儀に挨拶を返し、御曹……噛ませが文句を言う。

 それを華麗にスルーして、モノクマは宣言する。

 

『まず、ちょっとしたルール変更ね。

 もしクロが被害者でも、生き残ってた場合にはキッチリとオシオキするから、ヨロシクね~』

 

 前回の事件を反省して新ルールを追加する。

 理不尽にルールを覆すのはあまりよろしくないのだが……これくらいは理不尽ではないだろう。少なくとも人外どもの方が数百倍くらい理不尽だ。

 

『それと、恒例のフロア開放だよ~。ついに4階だね。脱出口がある可能性が以下略だよ~』

「どうせ暇だから行くけどさ」

 

 幸運の少年やその他数名が踵を返そうとするが、モノクマから待ったがかかる。

 

『ちょ~っと待った! 今回はそれだけじゃないんだよ!』

「まったくもう、忙しいから早くしてね」

『いや、さっき暇だって言ったよね!?』

「だから、暇に過ごすのが忙しいんだよ」

『どんな理屈だよ!! って、そうじゃなくて……』

 

 わざとらしくタメを作ってから、モノクマは宣言する。

 

『ななな何と! 皆さんの中に誰か1人だけボクに協力してくれている内通者が居ます!!』

 

 一応説明しておくと、嘘は言っていない。

 真っ先に退場するはずだった超高校級の軍人は未だにしぶとく生き残っているので、嘘ではない。

 まぁ、別に嘘を吐いて居もしない内通者に疑心暗鬼になってもらっても良いのだが……なるべくなら、そんな嘘ではなく真実を以って絶望を味わってもらいたいのだ。

 それが、江ノ島盾子の未だにしぶとく生き残っているプライドというものだった。

 さぁ、これで疑心暗鬼になり、全力でコロシアイが起こればあるいは……

 

「協力してくれる内通者……ああ、彼の事ですね」

「間違いなく彼の事でしょう。安心できますね」

『……え?』

 

 ちょっと待ってほしい。江ノ島盾子の姉でもある超高校級の軍人は女子だ。

 実は男子だという事も無ければ外見も男子ではない。って言うか江ノ島に変装しているので女子にしか見えないだろう。

 アイドルとギャンブラーは一体誰の事を言っているのだろうか?

 

「おいどういう事だ、説明しろ苗木!」

 

 超超高校級の噛ませがいつものように幸運の少年に問いかける。

 それを少年はいつものようにあしらう、と思ったのだが……

 

「……そうだね、説明しておこうか。

 モノクマが言ってた内通者っていうのは多分僕の事だよ」

 

 そんな事を、宣言した。

 

『……え?』

 

 モノクマは驚きの声を漏らしたのだが、それに反応する者など居なかった。

 それもそうだろう。だって……

 

「お、おいどういう事だ、苗木!!」

「そ、そうだよ! 説明してよ苗木くん!!」

 

 そんな感じで、幸運の少年に注目が集まってるのだ。誰もモノクマの事など気にも留めない。

 そして注目を集めた少年は語り始める。

 

「僕のしたこと、いや、しなかった事は大した事じゃないよ。

 僕の才能の行使を、ほんの少し手加減して欲しいって頼まれただけなんだ。そうじゃないとDVDもロクに見れないってね」

 

 そう言われて、江ノ島は思い出した。あの時に土下座して頼んだ事を。

 確かに、彼が自分の事を『協力してる内通者』だと勘違いするのも一応納得できる。

 でも、違う、そうじゃない。

 

『あ、あのねぇ! 内通者は彼じゃなくて……』

「一応最初から内通者の存在の可能性は考えてたから全員見張ってたけど、特に協力した人は居なかったみたいだし、彼のみが内通者で間違い無いでしょう」

 

 探偵にそんな事を言われて、考える。果たして本当の内通者がちゃんと自分に協力していたか。

 いや、協力していたのは確かだ。しかし実際に具体的な協力行動を取ったかと言われると……

 

 ……よく考えたら、あの悪魔(幸運)の方がずっと自分に貢献してる。

 いや、存在自体が江ノ島にとってマイナスで、それを軽減しただけなので決して貢献はしてないのだが、夜中にたまに「鎮まれ、僕の右腕っ!」などと苦しそうにしている事がよくあるので努力はしているようだ。

 

 本来の内通者よりも宿敵の方が努力して貢献しようとしている。それを悟った瞬間、江ノ島の目からボロボロと涙が零れたのは無理も無い事だと言えるだろう。



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4つ目の事件

 内通者の存在を明言する事で疑心暗鬼を促す策は見事に失敗した。え、知ってた? そんな残酷な現実はどうか彼女には言わないであげてほしい。

 別にあの後にもう一度だけ幸運の少年以外の内通者の存在を明言する事もできた。

 しかし、そうしなかった。江ノ島の中でも彼女が本当に内通者と言えるのか自信が無くなってきたからだ。

 何か急にやる気が無くなった江ノ島はその日はずっとふて寝していた。

 

 

 

 そして数時間が経過したころ、江ノ島はうっすらと目を開ける。

 体がだるくて眠いが、寝起きはこんなものだろう。

 江ノ島は二度寝しようとして……気付いた。

 モニターの中で、人が倒れている事に。

 

「っ!! 死体!?」

 

 江ノ島は飛び起きてモニターを食い入るように見つめる。

 しばらくじっと見てみるが、画面の中の少女……超超高校級の格闘家が動く気配は無い。

 ……ちなみに、彼女はかつて超超高校級の風紀委員に男と間違われていたほどの筋骨隆々の姿をしていて、少女と呼ぶには少々抵抗があるが、いちいち呼び方を変えていては非常に面倒なので便宜上『少女』と呼んでおく。

 まあそんな事は置いておいて……

 江ノ島は過去の録画を漁り何が起こったのかを確認する。

 どうやらほんの2~3分ほど前に化学室に置いてあった毒薬を自分から飲んだらしい。

 念のために言っておくと、飲み物などに紛れ込んでいたとかではなく、いかにも毒薬っぽいビンに入っていたものをゴクゴク飲んでいる。

 しかもあの毒は、『超高校級のコブラ』と呼ばれた男と『超高校級の魔女』が共同で開発したという超強力な致死毒だ。

 体重1kgあたりの致死量が1ngを下回る(フグ毒の10000倍くらい強力)という代物だ。いくら人外でもこれをあれだけ摂取すれば……

 ……いやいや、あの人外ならこれでも生き残りかねない。ここはきちんと確かめるべきだろう。

 そう判断して江ノ島はモノクマを起動させた。

 

 

 現場に到着するが、特に怪しい点は無い。被害者も微動だにしない。

 とりあえず、近くに置いてある小物をぶつけてみるが反応は無い。

 おそるおそる近づいて顔の辺りを猫パンチしてみるが、それでも反応は無い。

 胸の辺りに聴覚センサーを押し当てて確認しても心音は確認できず、呼吸も全くしていない。瞳孔散大と対光反射の停止も確認したかったが、モノクマでは対象に傷を付けずにまぶたを開けるのは少々難しいので諦めた。

 江ノ島の見立てでは、そしてそこらの医者の見立てでも格闘家の少女はきちんと死亡していた。

 

 何だか良く分からないが、ようやく自分にも運が回ってきたようだ。

 自殺というのはコロシアイという観点からは少々マイナスだが、今の状況を考えるとそう悪いものでもない。

 今までの事件では必ず被害者と加害者が居たが今回は自殺なのでその二者は同一だ。つまり当事者が1人しか居ない上にその当事者は死んでいる。

 という事はだ、唯一真相を知る黒幕である自分が自由に筋書きを立てる事が可能なのだ。

 勿論、直接の死因をごまかす等をすれば超超高校級の探偵などに勘付かれるが、流石にあの人外でも死亡の動機などは断定はできまい。

 そう考え、江ノ島は早速行動を開始した。

 

 

 

 

 そして数時間後、生徒たちに死体が発見された。

 それと同時に、遺書と思しき手紙が死体の近くから発見された……

 

 その手紙の内容をざっくりと意訳するとこうだ。

  『あの幸運の少年が内通者であった事に絶望した。

   我は一足先にこのコロシアイから脱出させてもらう』

 大体こんな感じである。

 

「そ、そんなっ! さくらちゃん……うぅっ」

 

 こうする事で自殺者が出たという絶望を味わってもらい、死の遠因を作った幸運の少年に恨みが集まるという寸法だ。

 ……そう言えば、本物の遺書はどこを探しても見つからなかったな。できれば先に回収しておきたかったのだが……

 

「くっ、僕のせい……なのか?」

 

 そんな幸運の少年の独り言に対して誰かが糾弾するというのが江ノ島の理想ではあったがそう都合良く事は進まなかった。

 

「そのような事は無いでしょう。安心して下さい」

「大丈夫ですよ! 苗木くんは悪くありません!」

 

 すかさずギャンブラーの少女とアイドルの少女がフォローに入る。

 そんな雰囲気の中で少年に詰め寄ろうとする人は居なかった。

 

「……確かに死んでいるわね。死因はそこの毒物ね。

 少し舐めてみたけど、致死量はおおよそ1ng/kg。彼女は大柄な方だけど、軽く舐めるだけであの世行きでしょうね」

 

 よし、探偵もキチンと死亡判定を出した。良かった良かっ……

 

『ってぇっ!! 何で舐めてるの!?』

「細かいことはどうでも良いでしょう? 調査開始よ」

 

 そういう事で、調査パートが始まった。







Q、格闘家って毒物耐性なかったっけ?

A、フグ毒(テトロドトキシン)が大丈夫であっても未知の猛毒をガブ飲みしたらそりゃ死にます。


Q、瞳孔散大と対光反射の停止って何?

A、死の3徴候のうちの一つ。瞳孔が開き、目に光を当てても瞳孔が縮まる反応を示さない状態の事。ちなみにほかの二つは心拍動の停止と呼吸停止。
  まぁ、最新の医学では3徴候よりも脳死してるか否かを以て生死の判定をしているのだが、専用の機材無しに判定するならこっちかなと。


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神域の淘汰者

 調査パートはサクッと省略して、15人の高校生たちは裁判所へと向かう。

 まぁ、単純な事件故に調査する事なんて殆ど無かったが。

 

 裁判所にたどり着いてまず口火を切ったのは探偵だった。

 

探偵「今回の事件は被害者の自殺。それで間違い無いわね?」

格闘「ああ、その通りだ」

探偵「それじゃあ、投票に入りましょう」

 

 そして、短かった調査パートよりも早く裁判は終了を迎えた。

 

クマ『って、ちょっと待てぃ!! どうなってんのさ!!!』

眼鏡「おいうるさいぞモノクマ」

水泳「ちょっと黙っててよ!」

クマ『えええっ!? いや、何で皆平然としてるの!?』

幸運「え? だって今回もエレベーターから居たよ?」

クマ『……え?』

 

 そう言われた江ノ島は少し前の映像記録を見直す。

 ……確かに、居た。

 って言うかなんでこんなデカいのを見落としてたんだろう。

 

探偵「納得した? それじゃあ投票に……」

クマ『ちょっと待ったぁっ!! じゃああの死亡宣言は何だったの!? 死んでなかったの!?』

探偵「? 何を言っているの? 死んでいたに決まっているでしょう?」

クマ『じゃあ何で今は生きてるの!?』

探偵「? 何を言っているの? 生き返ったに決まっているでしょう?」

クマ『何でそんな平然と言ってるの!? 命っていうのはそう簡単に戻らないから大事なんだよ!?』

水泳「そう言われてもね。今生きてる事が大事なんだよ!」

 

 命の重さが重いんだか軽いんだか良く分からなくなってくる問答だが、江ノ島が話したいのは当然そんな事ではない。

 

クマ『って言うかキミ! さっきは死体の前で何かショックを受けてたよね!?』

水泳「え? ああ、アレはわざわざ毒を飲んでまで体を鍛えようとするさくらちゃんはやっぱり私みたいな運動選手とは考え方が違うんだな~ってちょっとショックを受けてただけだよ」

クマ『どゆこと!? 体を鍛える!?』

格闘「む? 自分から毒を飲む行為に体を鍛える以外の意味があるのか?」

クマ『そんな意味普通は無いからね!?』

 

 さて、そろそろ彼女の、超超高校級の格闘家の能力を説明しておこうか。

 まず、一つの疑問を提示しよう。

 格闘家にとって最も重要な能力は何だろうか?

 障害を文字通りの意味で打ち砕く腕力? 格上相手に策を弄する知力? まあそれも重要な要素であろう。

 だが、彼女の意見は違う。

 最も重要な能力、それは『成長力』であると彼女は答える。

 

 そしてその為に必要な能力、それは並外れた『回復力』である。

 

 超回復理論という言葉をご存知だろうか?

 より身近な言葉に言い換えると筋肉痛。アレは酷使した筋肉繊維が破断し、それを修復する際に最初よりも多く回復する事でより強力な筋肉へと生まれ変わるという物である。

 彼女の場合は訓練や戦闘などにより筋肉が破断した瞬間により強く再生する事で驚異的なスピードでの成長を実現した。

 そして、彼女の超回復は筋肉だけに留まらない。

 筋肉を持たない内臓などであっても傷を付けられた場合により強く回復するのである。

 ……さて、お分かり頂けただろうか?

 彼女はわざと毒を摂取する事で自分の肉体を傷付け、そして強くするのである。

 尤も、今回は毒が強すぎた為に一度死んでしまったが、その自慢の回復力により数時間で復活し、何とか裁判に参加する事ができたようだ。

 

 そして、実は彼女の目的はこれだけではない。

 

水泳「それじゃあさくらちゃん、頑張ってきてね!」

格闘「うむ、オシオキを受けてくるとしようか」

クマ『え? ちょ、まさか……』

 

 そう、彼女の目的はオシオキを受ける事でダメージを負い、そして自らの肉体を更に鍛える事である!!







  超超高校級の格闘家 追記
 彼女の能力の真骨頂はその驚異的な回復能力と成長能力である。
 実は幼い頃はフグ毒もナイフも普通に効いていたのだが、死なない程度のダメージを受けつづける事によりそんなものを全く受け付けない強靭な肉体へと進化した。
 きっと今なら今回の事件で使われた猛毒も普通に飲み下せるだろう。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


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オシオキという名の何か

 江ノ島盾子はもう何が何だか分からなくなっていた。

 オシオキを受ける為に殺人(自殺)するなんてどうかしている。お仕置きという言葉の定義に真っ正面から喧嘩を売っているのだ。

 頭のイカれ具合では超高校級の絶望たる自分に敵う者など居るはずが無いと思っていたが、明らかにこっちの方がイカれてる。

 こうなったらオシオキを実行しない方が正しい意味でのお仕置きになる気がするが、罪を犯した者はオシオキを受けるのがルールだ。そうコロコロ曲げるわけにもいかない。

 大丈夫、オシオキで殺せれば良いのだ。まぁ、今までのように『誰か1人に投票して人柱を決める』と言うよりも『本人の希望を通した』だけなので殺す事に成功しても事故死っぽく扱われて大して絶望しなさそうだが……多少は絶望してくれるはずだ。きっと。

 ……え? 人外級の回復能力なんてものを持ってる相手を殺せるのかって? ははっ、そんなの訊くまでもないじゃないか。

 

『それじゃあ、オシオキ開始っ!』

 

 

 では、オシオキの内容を説明しよう。

 本来なら格闘家に相応しいオシオキ、例えば無双ゲームとでも言ってモノクマの大群でリンチにしてやろうとか考えていたのだが、本当にただの無双になりそうなので断念した。

 しょうがないので全く別の機会に使うかもしれないと用意しておいたオシオキを流用、改良して実行する。

 このオシオキの本来の予定はこうだ。

 『超高校級の免許マニア』が愛用していたというパワーショベルを使ってクロを滅多打ちにして肉塊にした上でモノクマのマークの烙印を押す。

 だが、これだけであの人外が大人しく死亡してくれるだろうか? 非常に疑わしいと言わざるを得ない。

 というわけで追加だ。

 せっかくだから建設機械で統一して、ブルドーザー、クレーン、掘削機、ロードローラー、発電機、圧砕機などなど。

 これだけ様々な方法で殺せばきっと殺せるだろう。

 江ノ島盾子は勝利を確信した。

 

 え? また確信したのかって? 確かに失策だが、どうか彼女を責めないであげてほしい。

 無理矢理にでも勝利を確信しないとやってられない状態なんだから。

 

 

 というわけでスタートだ。

 まずは最初の予定にもあったパワーショベル。

 音ゲーを操作するようなノリで重機を操ってクロをバコバコ叩いていく。

 グシャッとかバキッとか、明らかに人体から響いてはいけないような音を聞きながら操作して数分、変化は起こった。

 ナマモノっぽい効果音からバリッ、ピキッといった金属が悲鳴を上げるような音へと変化していったのだ。

 さらに続ける事数分、ショベルの先端はひしゃげひび割れ、本来の用途には使えないであろう事が一目で分かる状態になった。

 それでも一心不乱に続けてみるが、気がついたらショベル部分がきれいさっぱり消失していたので諦めて次に行く。

 

 続けてブルドーザーだ。

 ちなみにブルドーザーとは土砂のかき起こしや盛土、整地に用いる重機の事で、土を押しのけるための大きな排土板がついている。

 これでただ押すだけでは大したダメージは見込めないので、格闘家には床に寝そべってもらった上で排土板を叩きつける事にする。

 グシャッとかバキッとか、明らかに人体から響いてはいけないような音を聞きながら操作して数分、変化は起こった。

 ナマモノっぽい効果音からバリッ、ピキッといった金属が悲鳴を上げるような音へと変化していったのだ。

 さらに続ける事数分、排土板の下端はひしゃげひび割れ、本来の用途には使えないであろう事が一目で分かる状態になった。

 それでも一心不乱に続けてみるが、気がついたら排土板がきれいさっぱり消失していたので諦めて次に行く。

 

 続けてクレーンだ。

 説明するまでもなく、重い物を吊り上げて運ぶ重機だ。そんな機能をそのまま使ってもダメージは少ないので工夫を凝らす。

 クレーンを凄い勢いで振り回して先端部を格闘家にブチ当てるのだ。前2つよりダメージが少ない気がしなくもないが気にせず実行する。

 グシャッとかバキッとか、明らかに人体から響いてはいけないような音を聞きながら操作して数分、変化は起こった。

 ナマモノっぽい効果音からバリッ、ピキッといった金属が悲鳴を上げるような音へと変化していったのだ。

 さらに続ける事数分、クレーンの先端はひしゃげひび割れ、本来の用途には使えないであろう事が一目で分かる状態になった。

 それでも一心不乱に続けてみるが、気がついたら先端部がきれいさっぱり消失していたので諦めて次に行く。

 

 続けて掘削機だ。

 その名の通り、土砂や岩石を掘削する装置だ。

 これはこのまま使えばかなりのダメージが期待できるだろう。

 前略、掘削機の先端が中略、先端部が後略。

 

 続けてロードローラーだ。

 ローラーを使って地面を押し固める重機。普通の使い方で以下略。

 前略、ローラーの表面が中略、ローラー部が後略だ。

 

 続けて発電機。

 発電する重機だ。

 前略、電極の先端が中略、電極が後略。

 

 続けて圧砕機。

 大型のペンチみたいな重機。

 全略。

 

 

  ……以下略……

 

 

 というわけで、格闘家は普通に生き残った。以前より強い肉体を得て。

 江ノ島盾子を救う奇跡は、起こらなかった。



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勝利を求めて

 結局、オシオキによる処刑は失敗した。

 失敗するだけに留まらず以前よりも強くなってるらしいので格闘家を殺す事はもう絶望的だろう。

 

「ははは、あっはっはっはっ……どうしろってのよ!!!」

 

 江ノ島盾子は理解した。人というものはもう涙すら出ないくらいにどうしようもなくなると笑いがこみ上げてくるのだと。

 

「アハハハハハ、もう絶望だ、絶望的だ」

 

 江ノ島は混沌とした絶望を信奉しているが、ここまで絶望的だと少々受け入れ難いようだ。

 まあ無理もなかろう。彼女が作ったり経験した絶望は所詮は人の手によるものなのだから。

 並の人間であればそろそろ精神が崩壊していてもおかしくはない。だが、江ノ島盾子は幸か不幸か並ではなかった。

 

「…………ふぅ、少し落ち着いた。

 さて、どうやってやろうかしら」

 

 ひとしきり笑った後、彼女は立ち直った。その顔には挑戦者の表情を浮かべていた。

 

「今回の裁判の後、いつも通りにフロアを開放。

 その5階は最上階。行き止まりだ。

 開放できないならできないで構わないけど……これが最後ってくらいの意気込みでやろう」

 

 次の1回。次の事件で決着を付けると彼女は決断した。

 背水の陣で、彼女は挑む。

 

「ルールの範囲内で、手段は選ばない。

 こっちの勝利条件はあの人外どもに絶望してもらうこと、それが達成できなければ敗北。

 その手段は『コロシアイ』。あいつらの手で誰かを殺させる、あるいはクロを処刑させる事。

 だけど、殺してもあいつらはほぼ間違いなく生き残ってくる。ちゃんと死ぬ事が確信できるのは16人の中では私と残姉ちゃんだけ。

 そして黒幕である私を殺してもそこまで絶望しない。ちょっと悪いけど残姉ちゃんには上手く死んでもらおう」

 

 その顔には苦渋が浮かんでいた。

 それも当然だろう。この人外が跋扈する校舎の中で自分以外の唯一の人間だ。情が湧くのは極めて真っ当な自然の摂理である。

 だが、彼女は勝つと決断していた。何を犠牲にしても絶対に勝つと。

 

「となると残姉ちゃんが殺すパターンか殺されるパターン。

 まず殺すのはできる? あの人外相手に?

 ……仮死状態とか、そういうのにする前に撃退されそう。

 となると、殺されるパターン?

 撃退死なら割と簡単かもしれないけど、相手にそこまで罪悪感は湧いてこないかもしれない。

 何か別の方法で、例えば何かの誤解とかで殺されてくれれば『何の罪もない一般人を殺してしまった』という事になって絶望してくれるはず」

 

 一応言っておくと、残姉ちゃんこと超高校級の軍人は絶望陣営の人間だ。

 しかし、人外どもの中では『幸運のみが内通者=それ以外は内通者ではない』という事になってるはずなので一般人と認識されるだろう。

 

「誤解で殺させる…………

 …………よし、決めた」

 

 こうして、江ノ島盾子のこの学校での最後の戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 いつも通りに全員を体育館に集める。

 ちなみに、超超高校級の噛ませは「俺の時間が欲しければ先にそれに見合う金を払え」と言ってきたので100万円の札束を投げつけておいた。

 15人が揃ったのを確認してから口を開く。

 

『え~、オマエラ、おはようございます!』

「おはようございます!!」

 

 いつも通りに風紀委員が挨拶を返し、他の人は突っ立っている。

 だが、きっとこの光景も最後になるのだろう。

 そんな事を思いながら江ノ島は昨日用意した追加ルールを伝える。

 

『まず、今回もフロアを開放したよ。

 で、見れば分かると思うけど、この建物は5階で最後だ。もう公開するフロアは無い。

 だからね、次で最後にしようと思うんだ』

「最後? どういう事だい?」

「どういう事だ、説明しろモノクマ!」

『はいはい焦らない焦らない。

 まず、オマエラの勝利条件についてだよ。

 この事件の『黒幕』を殺す事。それができれば君達は開放される。

 一応言っておくと、黒幕は学校内に居る高校生のうちの1人だよ』

「なるほど、で、敗北条件はあるのかな?」

『うん、勿論だよ。

 オマエラが勝利条件を満たすまでに、この学校の中で誰一人として死亡してはならない。だよ』

「当てずっぽうで殺しまくるのを防ぐ為のルール……かな?」

『まあそんなとこだね。あと、自殺の場合は構わないよ』

 

 勝利条件は黒幕を『殺す』事なので黒幕が勝手に死んだ場合は勝利条件を満たさないのだが、そんな逃げの一手は使わないと決めていた。

 あと、このルールだと黒幕陣営2人が殺し合えば敗北条件が満たされるが、そんな勝ち方をしても意味が無いのでやらない。

 

「……一度殺した後に生き返っても敗北条件は満たされるの?」

 

 これは……どうしたものだろうか?

 普通だったら『生き返る』なんて単語は出てこないはずなのだが、人外だから侮れない。

 これは満たされる……いや、絶望陣営は人外ではないから何かの拍子に事故死してしまうかもしれない。最悪の場合、威圧されただけで心臓が止まる……とか有り得そうだ。

 それはそれで絶望だが、流石に理不尽だろう。ではこうしよう。

 

『……10秒以内に蘇生したらセーフにしておくよ。

 但し、黒幕を殺したかどうかの判定もしないからね』

「もし黒幕だったらモノクマが止まるから分かっちゃうんじゃないの?」

『ボクは高性能だからね! 1日くらいならモノクマブレインの力で自然に動けるよ!』

 

 さて、これでルール説明は終わった。

 最後に、動機の発表に移る。

 

『では、最後に黒幕についてのヒントをあげるよ!

 ヒント1・黒幕は江ノ島盾子さんです!!』

「…………あっ、えっ!?」

 

 その具体的なヒントを聞いて、その場に居たほぼ全員の視線が江ノ島盾子……の姿をした超高校級の軍人へと集まった。

 

 

 言うまでもなく、超高校級の軍人は黒幕ではない。

 この学校に入ってからというもの特に何の仕事もしてないただの一般人である。

 この一般人を濡れ衣で殺すような事があれば絶望的だし、前回説明したルールに則っても人外どもの敗北である。

 

 江ノ島だってたったこれだけの言葉で騙されてくれるとは思っていない。

 まず疑惑を植え付け、状況証拠を少しずつ並べていく事で殺される。

 それが理想の展開だ。

 

『ま、そういうわけで今回は解さ……』

「なら、黒幕かどうか試してみましょうか」

「ヒャッハー!!」

 

 解散する前に2人の人……じゃなくて人外が動いた。

 超超高校級の探偵はどこかで見たことあるような包丁を片手に軍人に突進。

 超超高校級の文学少女……じゃなくて殺人鬼の方もどこからか取り出したハサミを両手で1本ずつ構えて軍人に突進した。

 

「えっ、ちょっ、待っ!!」

 

 軍人の制止も虚しく、2人の人外は一切躊躇うことなく凶器を振り下ろした。

 

『…………え?』



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輪廻の殺戮者、真実の解放者

  前回までのあらすじ!

 軍人が探偵と殺人鬼に刺されたよ♪

 

 

 

『え、えっと……ええええええ!?』

「……8・9・10秒経過。判定は?」

 

 江ノ島盾子は恐怖を感じた。

 目の前の人外どもは顔色一つ変えずに軍人を殺した。

 それこそ、虫を踏み潰すくらいの気軽さで。

 彼女たちは軍人が黒幕だと確信していたんだろうか?

 仮にしていたとしてもここまで容赦なく殺せるものなのだろうか?

 と言うかあの様子なら一般人であっても躊躇い無く殺すんじゃないか?

 もうこの人外どもの方がよっぽど絶望なんじゃないだろうか?

 

「で、どうなの?」

『……彼女は黒幕じゃないよ』

 

 呆然と、そう言う事しかできなかった。

 

「そう、じゃあ起きなさい。戦刃むくろさん」

『…………はい!?』

「ん、ぅぅ……あ、あれ? 私、生きてる……?」

『えええええっっ!? いや、ちょっ、えええええええ!?』

 

 この1分足らずのやりとりを振り返ってみる。

 ……明らかに凶器で刺されていたんで死亡確認なんてするまでもなく死亡判定を出してしまっていた。

 しかし、実は死んでいなかったとしたら……

 

『騙されたぁぁああああ!!!!』

 

 

 では、今回の犯人2名の能力について解説していこう。

 まずは殺人鬼からだ。

 

 超超高校級の文学少女の第二の人格である彼女は超超高校級の殺人鬼である。

 さて、殺人鬼にも色々な種類がある。

 スラム街生まれで周囲から殺して奪わねばならないという過酷な環境の生まれであったり、

 殺人を生業とし、金持ちからの依頼を受けて要人を暗殺したり、

 まぁ、これらのような性質であればまた別の称号が付きそうだが、要するに『殺人の動機は人それぞれ』という事だ。

 で、問題の彼女の動機、それは『殺したいから殺す』という動機になっていないような動機だ。

 『沢山殺したい』という願望を持つ彼女の能力、もうお分かりだろうか?

 

 それは、何度でも殺せる能力。つまり、『殺した瞬間に相手を蘇生する能力』だ。

 

 軍人は一応死んではいたのだ。すぐ生き返ったけど。

 ……ちなみに、彼女が今回動いた理由は江ノ島を騙したかったからとかではなく『殺しても文句を言われなそうだったから』であったりする。

 

 

 続けて、超超高校級の探偵についてだ。

 探偵として証拠品を見つけたり嘘を看破したりといった基本的な事が極めて高い水準にある事は説明するまでもなかろう。

 ところで、探偵というものはある種の負の側面を持ち合わせている事をご存知だろうか?

 よく言われるのは『探偵が事件を呼び込む』というもの。

 彼女の身の回りでは有り得ないくらいに事件が頻発するのだ。勿論、すぐに解決するが。

 これはあくまでも一例に過ぎない。探偵はいくつもの『お約束』と言えるものに縛られている。

 詳しくは割愛するが、今回重要なのは『探偵は犯人にはなれない』というものだ。

 探偵役が犯人という叙述トリックが冴える作品も存在するが、基本的には第三者が事件を紐解こうとする時に著しくアンフェアになるため邪道だと言える。

 故に、彼女はどんな事をしようとも犯人になる事ができない。

 今回はその能力を使って全力で軍人を殺そうとして黒幕を出し抜いたのだ。

 

 

「それじゃあ、そっちに行くわね。4階に居るんでしょ?」

『……その必要は無いよ。今からそっちに行く』

 

 ヒドい不意打ちで騙されたが、負けは負けなのだ。

 江ノ島は潔く投了する事を決めた。






  超超高校級の文学少女(殺人鬼)
 『輪廻の殺戮者』と謳われた人外級の殺人鬼。
 快楽殺人者である彼女は1人の対象を何度でも殺す為に殺した直後に蘇生する能力を身につけた。
 ついでに、効率よく殺す為にかすり傷でも死に至らせるとか、写真を切り裂くだけで相手を殺すとか、そんな能力も色々と持ってる。
 しかし、蘇生した後は傷は一切残らないため犠牲者は白昼夢を見たと勘違いし、都市伝説になったりしてる。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』



  超超高校級の探偵
 『真実の解放者』と謳われた人外級の探偵。
 探偵としての人外の基礎教養は割愛しておく。
 一度見た証拠品をいつでも取り出したり、他人の個人情報を把握する能力などがある。
 本文中でも述べたように探偵としての負の側面も持っており、彼女の身の回りでは恐ろしい量の事件が発生する。誰も居ない所に暮らしていれば流石に発生しないが。
 他にも様々な縛りがあるが……代表的なものは『犯人になれない』『事件解決まで閉鎖空間からは誰も抜け出せない』等である。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』



 超超高校級化することで負の側面が強化されるという……

 ちなみに、本作には『叙述トリックやそれに類似するトリック』を貶す意図は一切ありません。何か53番目くらいの某作品に物申したい事があっても本作の感想欄などで発散するのはご遠慮ください。
 ……え? 何の事だって? 知らないなら気にしないで下さい。


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記録に残る彼女の最期

 江ノ島が投了してから数分後、体育館には16人の高校生たちが揃っていた。

 何だかんだ言って生身の人間が16人揃うのは原作でも無かったレアな展開だ。

 

「ご、ごめんね盾子ちゃん。わ、私……」

 

 まず口を開いたのは今までずっと江ノ島に変装していて、つい先ほど探偵の手で変装が解除された超高校級の軍人だった。

 与えられた使命を果たせなかった後悔故だろうか? その表情は深い絶望に染まっていた。

 

「……いいんだよ、お姉ちゃん。やれる事はやり切った」

 

 そんな彼女に対して江ノ島盾子はねぎらいの言葉をかけた。

 最初は捨て駒であったはずの軍人に対してそんな言葉をかけられたのは彼女の成長の証なのかもしれない。

 

「皆さん、お久しぶり、そして初めまして。

 私がこのコロシアイ学園生活の首謀者である江ノ島盾子です」

 

 江ノ島盾子は語る。その語らいを邪魔する者は居ない。

 

「さて、私がこの学園生活を企画したのは、ここから絶望を発信し、外の世界を絶望に叩き落とす為でした」

 

「しかし、あなた達は決して絶望しなかった。私を嘲笑うかの如く、予想も付かない方法でコロシアイを回避し続けた」

 

「……あなた達みたいな人外に分かりますか? 私が感じた無力感を。私が感じた絶望を」

 

「ええ、認めましょう。完全に私の負けです」

 

「誰一人殺す事もできず、誰一人絶望させる事もできなかった」

 

「脱出スイッチは一応ここに置いておきます。必要ない気がしますが」

 

 こういう言い方をすると語弊があるが、彼女は絶望していたのだ。

 

 彼女の世界には予定調和しか無かった。

 彼女は天才と呼ぶに何ら不足の無い才能があった。それ故に世界は彼女にとっては酷く単純でつまらないものだった。

 人類の希望になれる才能、永遠の予定調和。それは一人の少女を絶望へと変えたのだ。

 

 しかし、今の彼女の瞳には予定調和など映っていない。

 そこにあるのは世界の理不尽さ。規模こそ違えど普通の人間であれば誰もが遭遇するような理不尽がそこにはあった。

 

 彼女にとって初めての理不尽を受けた。

 それは耐性の無い者の心を折りかねないものだ。

 

 故に彼女は絶望した。

 予定調和だからこその絶望とは全く異なる、先が見通せない、混沌だからこその、絶望。

 

「……ところで、学級裁判ですが、本当は殺人事件のみに対して行う予定だったんですよ」

 

「でも、殺人なんて結局殆ど無かったですね」

 

「最初の事件で人が死んでなかったと聞いて咄嗟にルールをねじ曲げました」

 

「結局は器物損壊罪如きで裁かれるようなルールに変わってました」

 

「だからきっと、こうするのが正しいんでしょう」

 

 その時の彼女の表情はとても寂しそうで、悲しそうで……

 そんな表情を浮かべたのは彼女にとっては初めての事だった。

 

「盾子ちゃん、まさかっ!」

 

「……オシオキ。開始」

 

 彼女がそう宣言すると同時に彼女が立っていた床に穴が開いた。

 計画の初期段階では体育館で軍人を落とし穴に落として見せしめにする案があったので、その時に用意した代物だった。

 本来ならこの穴の出口は地下牢だ。しかし、事前に操作しておいたので別の場所へと繋がるようになっている。

 超超高校級達も何度も見た空間、地下のオシオキ場に。

 

 

 そう、彼女は幕を下ろすつもりなのだ。

 この事件の首謀者である彼女自身を裁く事によって。

 

 

「盾子ちゃぁぁぁぁんんん!!!!」

 

 彼女が穴に落ちる瞬間に一瞬だけ見えた彼女の姉の必死な表情を、彼女はきっとその命が消え去るまで忘れなかったのだろう。







 これで一応は本編完結です。
 次回の投稿は明日、

 ・後世の歴史学者の研究レポート
 ・あったかもしれない物語
 ・キャラクター紹介等

 以上、3本をそれぞれ21:00、21:10、21:20に予定しています。
 では、また明日!


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後世の歴史学者の研究レポート

タイトルの通り、『後世の歴史学者による考察』という体で展開しています。


 以上が、現在残っている『希望ヶ峰学園78期生 コロシアイビデオ』(通称、コロシアイ(笑)ビデオ)の全てである。

 この後の江ノ島盾子、及び戦刃むくろがどうなったのか、正式な記録は存在しない。終わりの場面を見る限りでは戦刃むくろは普通に生き残ったと思われるのだが、その後の歴史で彼女が活躍した記録は無い。人外たちのせいで霞んでいただけかもしれないが。

 超高校級の絶望と呼ばれた江ノ島盾子が生存したかどうかは現代の学者たちの間でも意見が分かれている。

 

 死亡派の主張は以下の通りだ。

  ・この学園生活の後、世界は急速に再生を遂げている。全世界に絶望を齎した存在が生存していたらそう簡単に再生などできない。

  ・プライドの高かった江ノ島盾子が自分へのオシオキをおろそかにするとは考えにくい。

  ・仮に生き残ったとして、超超高校級達が見逃すとは考えにくい。

    等など

 

 それに対して生存派の主張は以下の通り。

  ・江ノ島は超超高校級達に完全に心を折られたから妨害が無くてもおかしくない。

  ・江ノ島自身が全力でオシオキを行ったとしても超超高校級が止めに入れば完遂はまず間違いなく不可能である。

  ・そもそも超超高校級には江ノ島を殺す動機が薄い。

    等など

 

 両者の主張には『江ノ島と超超高校級が敵対関係にあったか否か』という点における解釈の違いが如実に出ている。実の所、超超高校級が江ノ島に殺意を抱いていたなら間違いなく死んでいるが、彼女の死を忌避していたとしたら間違いなく生存しているという意見だけはほぼ全ての学者が同意している。歴史に名を残した人物の生き死にが僅か14名の学生の意志一つで決まるというのも凄い話だが。

 

 これはあくまで筆者の見解だが、超超高校級たちは江ノ島盾子に対してそこまで悪感情は抱いていなかったのではないだろうか?

 もし殺意を抱いていたのなら落とし穴に落ちる様を見守るような事はせずにとっ捕まえて自分の手で凄惨な殺害を試みそうなものである。

 そもそもの前提として、超超高校級達は江ノ島に大したことをされていないのだ。強いて挙げるのであれば第一の動機と第二の動機であるが、第一の動機が発表された時の映像を詳細に解析すると半数以上が鼻で笑い飛ばしていた事が判明した。人外は知り合いまで人外であったのかもしれない。唯一取り乱していたのは超超高校級のアイドルだけだが、それも実は演技であったとする説が主力である。第二の動機については発表されてから数時間で事件が発生した為、外の世界への情報流出を恐れて悶々とする時間が極めて短かった。そして結局は流出しなかったので殺意を抱くほどでもないだろう。居たとしてもせいぜい2~3名だと思われる。

 しかしながら、『悪感情を抱いていなかった=江ノ島をオシオキから救い出した』という式は必ずしも成立しない。よってこの点で江ノ島盾子の生存を断定するのは不可能だと結論付ける。

 

 

 また、この学園生活と江ノ島盾子に関わる2つの興味深い説が存在する。

 その2つの説とはすなわち『幸運(探偵)黒幕説』及び『深淵の救済者=江ノ島盾子説』である。

 

 前者から説明していこう。

 希望ヶ峰学園で行われた件のコロシアイの真の首謀者は実は苗木と呼ばれていた超超高校級の幸運の少年であるという説だ。

 実際には幸運ではなく探偵が黒幕、影の薄かった占い師が黒幕等の説もあるのだが、尤も有力なのは幸運黒幕説なのでこれについて考察する。

 仮にこの説が真実だったとして、その動機は何か?

 それは、江ノ島の目的である『絶望を発信する事』の逆、『希望を発信する事』である。

 絶望の親玉が人外達に翻弄される姿を見せつける事で外の絶望勢力の心を折り、希望を鼓舞する為だったのではないか、と。

 江ノ島の計画を乗っ取った具体的手順は不明だが、人外ならどうとでもなるであろう。

 さて、仮にこれが真実であった場合、果たして江ノ島盾子は自殺できるであろうか?

 彼らなら『コロシアイ学園生活なのに人が一切死なない』という状態を作りだし、黒幕である江ノ島さえも殺させないのではないだろうか?

 これに対する死亡派は『仮に幸運が黒幕だったとして絶望の親玉を殺して締める事こそが完全な成功だろう』と反論するが、超超高校級のいずれかが真の黒幕であるという説に対しては目立った反論は無いのが現状である。江ノ島があの人外たちを御するよりもそちらの方が現実的だという事だろう。どちらも荒唐無稽な事には変わりないが。

 念のため言っておくと、江ノ島盾子が落とし穴に落ちた後の映像記録は残念ながら確認されていない。超超高校級たちが意図的に隠したのか、それとも江ノ島盾子が記録を止めたのか。疑問は尽きない。

 

 続けて、後者の説について説明しよう。

 これについてはまず、『深淵の救済者』について説明しなければならない。

 彼、ないし彼女は件のコロシアイ学園生活が終了して少し後から各地の記録に姿を現す謎の存在である。

 仮面か何かで顔を隠しており、声もボイスチェンジャー等を使っていたらしく、男か女かさえハッキリしない。

 おまけに人数さえはっきりせず、同時期に全く別の場所で目撃されるなどという事もザラである。当時の人間の創作だったのではないかとまで言われている始末だ。

 さて、この人物がやった事は簡単だ。その称号が示す通りに、人類の救済を行っていた。記録が真実であると仮定するならその活動は非常に多岐に渡る為、この場では割愛させてもらう。

 この謎の人物が実は江ノ島盾子だったのではないかという説が存在するのだ。

 何をバカな事を、と思うだろう。世界を混乱に陥れた張本人が今更人類を救済するなど、と。

 しかしながら、当時そんな活動をできる能力がある人間は彼女くらいしか考えられないのだ。勿論、超超高校級たちにも可能だと思われるが、彼ら彼女らの行動に関しては正確な記録が残っており、『深淵の救済者』の軌跡とは殆ど接触していない。

 私の友人であるこの説の信奉者は『人外達に心を折られた江ノ島は人外達に勝つ為に彼らよりも優れた復興をしようとしたのだ』というロマンの溢れる持論を展開している。

 

 もしそんな事が起こっていたのだとしたら、江ノ島盾子を改心、いや、絶望から救済する事こそが超超高校級の目的だったのかもしれない。

 ……なんて事を考えてしまうのは、ロマン溢れる私の友人に毒されてしまっているせいかもしれない。

 

 

 当時、彼ら彼女らが何を思って行動していたのか。今後新たな資料が見つかる事を期待しよう。







 今回出てきた二つの説はあくまで説という事にしておきます。あくまで「こうだったら面白いな」くらいのものであって、全く別の解釈でも構いません。

 では、また10分後に。


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あったかもしれない物語

 本日2本目です。

 ビデオの記録が途絶えた後、あったかもしれない物語です。


 江ノ島盾子は落ちる。

 薄暗く、深い穴へと、落ちて行く。

 それは時間にしてほんの十数秒だったはずだが、彼女にはその何倍にも感じたであろう。

 

 落ちた先にはクッションといくつかのリモコンが置いてある。

 こうやって自分に対するオシオキを事前にきちんと準備していたという事は、彼女自身も心のどこかで敗北を確信していたのかもしれない。

 これから彼女が彼女に行うオシオキは言葉にすれば簡単だ。

 すなわち、「今までのオシオキの全て+用意しておいた最後のオシオキを行う」という物だ。

 江ノ島盾子も一般人基準では人外と言えなくもない能力を持っているので、普通のオシオキであればある程度は生き残れる。しかし、これから行うのは最初に予定していた温いオシオキではなく、本物の人外用にバージョンアップした物だ。

 それを人外基準で見たらただの凡人である江ノ島が受けたら……容易く死を迎える事になるだろう。

 

 まずは1000本ノックだ。

 本来なら対象者を磔にするのだが、色々と面倒なので椅子だけ用意しておいた。これなら自分が倒れて球が当たらなくなる心配は無いだろう。

 

「それじゃ、始めましょうか」

 

 ピッチングマシーンの電源が入り、グオングオンという不気味な唸り声を上げる。

 数秒経過して安定状態に入ったのであろう。キィィンという甲高い音に変わる。

 この場には江ノ島盾子以外には誰も居ない。この処刑を止められる者など、この場には居ない。

 

 そして、最初の一発が放たれ……

 

ドグシャァッッ!!

 

 ……る前にピッチングマシーンが粉々に砕け散った。

 

「…………は?」

 

 今、何が起こったのか。

 理解し難かったが、その現象を目の前で見ていた江ノ島盾子には察しがついていた。

 一瞬だけ見えたピッチングマシーンに襲いかかる影。

 そう、あれは超超高校級の御曹司のスタンドではなかったか?

 

「っっっ、ふざけんじゃないわよ!! 最後くらい自由にやらせなさいよ!!

 アンタっ! 隠してある10兆円あげるから邪魔するんじゃないわよ!!」

 

 そう怒鳴りつけるとこの場から気配が去っていったような気がした。

 ピッチングマシーンは壊れてしまったので一つ目のオシオキは断念して次に行く。

 

 次のオシオキは回転車だ。

 江ノ島は自分の手で回転車の蓋を開け、中から厳重に閉める。

 今度こそ成功させられるだろうと震える手でスイッチを押して装置を起動させる。

 最初はゆっくりとした回転、しかし段々と強くなって行き、最後は遠心分離機のように……

 

ズガガガガガッ!!

 

「ちょっ、何!?」

 

 彼女からは突然壁が弾けたように見えただろう。

 しかし実際には超超高校級の野球選手が適当な物を江ノ島の居る部屋に投げつけて部屋の中にある物を破壊したのだ。

 彼が投げた物の一つは回転車の車軸を正確に捉えており、江ノ島は吹っ飛ばされた。

 

「痛っ、つ、次よ!!」

 

 それでも彼女は諦めない。諦めずにオシオキを完遂しようとする。

 回転車を修理する事は不可能だと判断して次に移行する。

 

 次のオシオキは火あぶりと消防車だ。

 自分を磔にするのは面倒なので、木の十字架によじ登ってから黒い炎を放つ。

 以前は超超高校級のギャンブラーにあっさりと消された黒い炎だが、彼女はこの場には居ない。

 これで、ようやく成功させられる。そんな事を思いながら江ノ島はゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 ……そして、目を開け、ゆっくりと下を見下ろした。

 

「……は?」

 

 黒い炎が、途切れている。

 上昇気流で上ってくるはずの熱気は一切感じられず、まるで見えない壁でもあるかのように遮られている。

 そんな様子を呆気に取られて眺めていると黒い炎の横方向からも見えない壁に圧迫され、しばらくすると完全に消え去った。

 

「……はぁぁぁぁっっっっ!?」

 

 さて、ここである人物、超超高校級のスイマーの能力について説明しておこうか。

 彼女はスイマーであり、水と慣れ親しんでいる。故に水を操作する事が可能。

 そしてその能力は水だけに留まらずあらゆる流体にまで及ぶ。

 ……もう分かっただろうか?

 彼女は空気を操作して黒い炎を断熱し、空気の供給を断つことであっさりと黒い炎を消したのだ。

 

「っっっ! 次っ! 消防車!!」

 

 江ノ島がスイッチを押すとどこからともなく魔改造された消防車が走ってくる。

 それはどんどん加速していき、江ノ島を跳ね飛ばそうとする。

 消防車が目の前に迫り、江ノ島は死を覚悟した。

 

 その直後、轟音が鳴り響いた。

 

 ……そして、彼女が目にしたのは大穴が開いて横転した消防車だった。

 

「……はっ、はははっ……」

 

 消防車を葬ったのは超超高校級の文学少女なのだが、詳しい説明は後書きにまわしておく。

 江ノ島は目の前の惨状に頭がおかしくなりそうになりながらも惰性で次のオシオキを始める。

 

 本来なら重機たちを使ったオシオキなのだが、残念ながら格闘家の肉体により全てが使い物にならなくなってしまったのでパスして次に行く。

 

 

 最後のオシオキ。それはプレス機で対象をペチャンコにするというシンプルなオシオキだ。

 実際には恐怖を煽る為に色々と小細工を施してあるのだが、面倒なので割愛する。

 

「これで、最後」

 

 江ノ島はプレス機の真下まで歩く。

 そして、スイッチを押して装置を起動させる。

 人体はもちろん、ほとんどの物を壊す事ができる威力を持つ鉄塊が江ノ島へと襲いかかる。

 そして……

 

 

 

 

 

 

「間に合った!!!」

 

 幸運の少年がそこに割り込む。

 彼に巻き込まれるなどという不運は存在しない。プレス機が突然停止……するだけでなく爆散して二度と使い物にならなくなった。

 

「アンタ……どうして最後まで私の邪魔をするのよ!!

 最後くらい……死ぬ時くらい好きにさせなさいよ!!!!」

「それはできないよ。君を死なせるわけにはいかない」

「はぁっ!?」

「だってさ、ここで君が死んじゃったら『誰も死ななかったコロシアイ学園生活』が達成できないじゃないか」

「……あ、アンタ、バカにしてんの!?」

「至って大真面目だよ。これが僕の考える最高の勝利だ。君が死んじゃったらせいぜい引き分けになっちゃうよ」

「わ、私は超高校級の絶望なのよ? ここで生かしておいたら今後どうなるか……」

「別に構わないよ。何度でも挑んでくればいい。

 その度に、誰も死なないように立ち回って見せるさ」

 

 幸運の少年のその言葉は、恐らく真実になるだろうと江ノ島は予感していた。

 今後、何らかの虐殺を試みても超超高校級たちが立ちはだかり、失敗に終わる。と。

 

「もう……嫌だ。嫌だよ」

 

 絶望を撒き散らす事もできなければ、死んで楽になる事も許されない。

 江ノ島盾子の心は壊れかけていた。

 

「……辛いかい? いや、聞くまでもないか」

「…………」

「僕達はもう行くよ。そろそろ正門も開いてるだろうから」

「…………」

「僕達が居なくなった後なら、自殺を止められる人は居なくなる。けど、これだけは忘れないで欲しいんだ」

「…………」

「ここが、今ここにある現実が君にとっての最低辺なら、後は上がるだけなんだ。

「…………」

「忘れないで。周りの全てが絶望だからこそ、その絶望は君を進ませる事ができる。『絶望は前へ進むんだ』」

「…………」

「それじゃあ、縁があればまた会おう」

 

 

 そう言い残して幸運の少年は去って行った。

 他の超超高校級達もきっと正門から去って行ったのだろう。

 監獄と化していたこの学園に残っているのは今や江ノ島盾子と……

 

「盾子ちゃん! 大丈夫!?」

 

 ……彼女の姉である、超高校級の軍人だけだ。

 

「……なんだ、残姉ちゃんか」

「怪我は!? どこか痛い所は無い!?」

「……私は、心が痛いよ」

「うぅ……外傷ならともかく心の傷は私には治せないよ……」

「……少し、一人になりたい。どっか行ってて」

「うん……あの、でも……」

「ハァ、ひとまずは自殺なんてするつもりは無いから、安心しなさい」

「……うん。飲み物とか取ってくるね」

「…………(ありがと)

「え? 何か言った?」

「何でもないわ! サッサと行きなさい!!」

「う、うん、ごめんね」

 

 軍人を見送って、江ノ島は考える。

 

「……ここが最低辺、か。

 いいでしょう。私のやり方で、お前たち人外どもに、吠え面をかかせてやる」

 

 そして彼女の聡明な頭脳は再び回転を始める。

 この後の無限の未来を見据えて……







  超超高校級のスイマー
 『流水の共鳴者』と謳われた人外級のスイマー。
 流体を操る能力を持っており、日常生活でも役に立っている。
 元々は空気中でも泳げるというだけの能力だったはずだが、インフレの結果こうなった。(元も十分に人間辞めてるけど)
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』

  超超高校級の文学少女
 『叡智の統括者』と謳われた人外級の文学少女。
 一度見たあらゆる書物の内容を全て把握している。
 その中にはマジモンの魔導書の類も10億3千万冊くらい存在し、人工衛星を撃ち落とすくらいなら朝飯前である。
 彼女の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


  超超高校級の占い師
 『真理の観測者』と謳われた人外級の占い師。
 本人曰く、99割当たる占いができるとの事だが、本作では最後まで生かされる事は無かった。
 実際には度々使用しており、最初の事件以外では真っ先にクロを看破したりしていたのだが、彼がそんな事をするまでもなくあっさりとクロが割れた為に脚光を浴びる事は無かった。
 彼の凄さを一言で表現すると『カムクラ君が裸足で逃げ出すレベル』


 占い師が最後まで出せなかったけど、占い師だから仕方ないね♪



 今回の話は正史として扱っても構いませんし、後世の創作として扱っても構いません。
 ノリと勢いで始めた本作なので、動機等の設定がガバガバです。本話はあくまで解釈の一つくらいにお考え下さい。 


 今日はあと一つ投下します。


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キャラクター紹介等

 本日3本目です。

 本項では本作に登場したキャラクターについて軽いノリで解説していきます。
 元ネタの紹介が非常に多いですが、『正しい意味で元ネタになったもの』と『無意識に影響を受けた可能性があるもの』と『強引に引っ張り出してきたもの』の3パターンがあり、ノリを重視しているのであまり真面目に捉えないで下さい。


  主人公たち(絶望陣営)

 

 

 ・江ノ島盾子

 原作におけるラスボスだが本作においては胃痛の絶えない主人公。女性主人公という意味でのメインヒロイン。

 どうやったかは未だに不明だが、14人もの人外を拉致して記憶を強奪するという偉業を達成している。まぁ、この偉業がコロシアイ学園生活における最初で最後の成功、いや、そもそもその成功が彼女にとって良かったのかどうかすら不明だが。

 結構涙もろく、何か成功した時などに涙を流す描写が多い。

 どうあがいても絶望であり、学園生活の最初を除いてずっと胃痛に悩まされ続けていた。一部の読者の方々から胃薬が届くほど。

 どうあがいても希望が勝つゲームだからしょうがないね♪

 

 

 ・超高校級の軍人(戦刃むくろ)

 原作において2番目に退場する絶望陣営の生徒。

 本作では影が薄いが、あの人外どもに囲まれて居れば仕方ないだろう。

 本作において唯一、江ノ島の予想通りに動いてくれた人物であり、彼女にとって心の清涼剤になっていた可能性が無きにしも非ず。

 

 

 ・カムクラ君

 原作において、超高校級の才能を集めて作られた人工的な天才だった。

 しかし本作では人外が跋扈していたため、つねに裸足で逃げ出すキャラになった。

 まぁ、江ノ島のように真っ正面から人外に立ち向かおうとすると心が壊れる恐れがあるので、彼の判断は賢明であったと言える。

 

 

 

  超超高校級の方々

 

 初めに述べておくと、彼らは希望陣営ではない。あくまで江ノ島さんと敵対してたから希望っぽく見えてただけであり、本人たちはきっと希望とか絶望とか特に気にしてない。未来機関に彼らを敵に回すようなボンクラが居たらあっさりと絶望陣営っぽく見えるような動きをすると思う。(流石にあのビデオを見た後でそんな事をする無能は居ないとは思うが……)

 あと、本名はほぼ不明。流石に面倒だったのでキャラ同士の呼び名は原作に合わせたが、あくまでも「苗木君っぽい人」や「舞園さんっぽい人」である。こんなバケモノどもと一緒にしたら彼ら彼女らに失礼だ。一応、地の文や感想返信では安広多恵子さん以外は一切使わないようにした。彼女だけ本名を断定したのは探偵の能力を強調する為と占い師をうろたえさせる為だったりする。設定よりもネタを優先するあたり、本作のテキトーさが伺える。

 

 

 

 ・超超高校級の幸運 運命の選定者

 作中では『苗木』と呼ばれていた本名不明のキャラ。

 能力は常識外れの『幸運』

 その幸運の例として上げたものにはいくつか元ネタがあり、ロシアンルーレットは狛枝凪斗(スーパーダンガンロンパ2)のファイナルデッドルーム。7以上の目が出る6面ダイスは強いて言うなら王様(アテム)(遊戯王)の割れたダイスが元ネタかな。

 その幸運によりモノモノマシーンでは脱出スイッチが量産できたので、本来なら脱出は容易だった。

 

 

 ・超超高校級のアイドル 概念の魅了者

 アイドルらしい多岐に渡る能力を保有している。

 各能力の元ネタは多分無いが、そもそもアイドルに多芸なイメージがあるのは中川かのん(神のみぞ知るセカイ)、高橋エナ(高橋さんが聞いている)辺りの影響が大きいかもしれない。あの人たちは少々手を伸ばしすぎてると思う。気のせいかもしれんけど。

 『超高校級の才能』を演技で完全再現する能力もあり、元ネタは考えてなかったがよく考えるとアーチャー(Fate/stay night)の無限の剣製に通じるものが無くもない気がする。1ランク下がる偽物って意味で。

 そんな万能な彼女はマジックショーのアシスタントどころか主役も担えるので、本来なら脱出は容易だった。

 

 

 ・超超高校級の野球選手 常勝の先導者

 野球選手には欠かせない多数の能力を保有している。

 究極の野球選手に必要そうな能力をピックアップしていったらいつの間にか一方通行(アクセラレーター)と結標淡希(両者とも「とある魔術の禁書目録」)っぽくなっていた。2人が所属していた某団体の事を考えると肉体がちょびっと再生する能力や風水を使う能力、皮を剥いで変装する能力や金星の光で敵をバラバラにする能力があってもおかしくない気がするが、仮にあっても野球じゃ役に立たなそうなんで彼が使う事は無いだろう。レベル4のテレキネシスなら活用できたのに……

 瞬間移動が使えるので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級のプログラマー 次元の管理者

 情報の実体化とでも言うべき能力を保有している。

 元ネタは特に無いが、強いて言うなら彼自身。アルターエゴを作る能力(異能ではなく実力的な意味で)を超強化したらこうなった。

 かつて、ある読者の方に『彼がエ○ゲーをプログラムしたら素晴らしいことになるのでは?』という非常に興味深い質問を頂いたが、あくまでプログラマーなのでデータの揃っていない生物等を取り出す事はできないという制限を設ける事となった。別の方にご期待下さい。

 脱出スイッチと同じ機能を持つ物体を自作できるので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級の暴走族 臨界の超越者

 重力や慣性、摩擦係数などを自在に操る能力、バイク等を魔改造する能力を保有している。

 元ネタは……特に無いかな。一応、オシオキに対抗する事を目標に組んだ記憶はあるが。

 摩擦係数を操る事で大抵の物は分解できるので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級の風紀委員 秩序の監視者

 風紀の乱れを感知し、どこからでも駆けつける能力を保有している。

 元ネタは特に無いと思うが、ふとトロデ王(ドラゴンクエスト8)の事を思いついた。あの人も重要なイベント時にどこからともなく現れている。まぁ、そういうキャラは他にも沢山居るケド。

 瞬間移動が使えるので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級の同人作家 幻想の創造者

 同人作品を通して異世界を創造する能力、極めて精巧な贋作を作る能力を保有している。

 元ネタは特に無いはず。気付いたらこんなぶっ飛んだ設定ができあがっていた。

 この能力の応用範囲は非常に多岐に渡り、ドラ○もん等の二次創作を作る事でオーバーテクノロジーな道具をいくらでも引き出せ、ドラ○ンボールなら精神と時の部屋を利用する事も可能。

 工夫次第では脱出スイッチを作成する事も、それ以外の方法で脱出する事もできるため、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級のギャンブラー 奇跡の精製者

 あらゆる概念を賭博の対象にする能力を保有している。

 あまりに無秩序過ぎた為、少々自重して適当に制限を設けたのだが(他者の物は賭けられない、存在が不確定なものは賭けられない等)それでもぶっ壊れ性能。

 脱出スイッチを求めてギャンブルをすれば調達できるので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級の格闘家 神域の淘汰者

 並外れた肉体と人外級の回復力、成長力を保有している。

 元ネタは特には無かったのだが。サイヤ人(DRAGON BALL)っぽい存在になっていた。

 シェルターをぶち破る肉体は筆者が最初に思いついた超超高校級の能力であり、ある意味では原点。

 江ノ島の暗示により壁を破る事はできなくなったが(今思えば成功したのは奇跡だと思う。いや、もしかすると空気を読んで効いたフリをしていた可能性も……)、壁ではなく正面の扉をブチ破れば良いだけの話であり、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級の御曹司 因果の支配者

 スタンドっぽい何かを召喚し、因果律を歪めて結果を出す能力を保有している。

 元ネタはダンガンロンパ3の彼自身。黒服に命じて何かしてる描写があったのでそれを超拡大解釈してみたらこうなった。

 本文中でもスタンドと言っているが、元ネタがスタンドと言うよりも気付いたらスタンドになっていたという解釈が正しい。

 脱出スイッチを召喚したり、扉をぶち破る事は容易なので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級の殺人鬼 輪廻の殺戮者

 他の生物を殺した瞬間に蘇生させる能力を保有している。

 彼女自身の設定、『快楽殺人者』に着目して能力を考えた。

 ついでに、掠っただけで殺したり、写真を切り裂くだけで殺したり、色々と凄い殺し方ができるが、殺された本人は少々痛いだけですぐに蘇生させられるので目立たない。

 元ネタに近いものとしては球磨川禊(めだかボックス)や遠野志貴(月姫)辺りだろうか?

 彼女の鋏による攻撃は壁くらいならバターのように切り裂くので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 ・超超高校級の文学少女 叡智の統括者

 あらゆる本の情報を読み取る能力を保有している。

 その中にはマジモンの魔導書なんかも数多く存在する為、スパコンを積んだ人工衛星くらいなら軽く撃ち落とせる。

 元ネタはもちろんインデックス(とある魔術の禁書目録)

 最初は能力は殺人鬼のみの予定だったのだが、せっかくだから追加した。

 言うまでもなく壁や正門の突破は余裕なので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級のスイマー 流水の共鳴者

 あらゆる流体(気体含む)を操作する能力を保有している。

 スイマーという能力を発展させて考えたら『空気中でも泳げたら凄くね?』というぶっ飛んだ発想に至り、その後更に発展させてこうなった。

 空気を圧縮してプラズマでも作れば校舎を消し飛ばすのは容易なので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級の占い師 運命の観測者

 彼曰く『99割当たる占いができる』とのこと。

 実際には990%ではなく100%である。

 占う対象を正確に指定さえすれば確実な未来予知や過去視ができたりするので十分人外なのだが、他の人外が人外過ぎてあまり目立たない。原作でも本作でも不遇枠。犯人を捜すだけなら実は探偵よりも向いているのだが、舌が回る方ではないので学級裁判ではそんなに活躍できない。

 『脱出スイッチをモノモノマシーンから出す方法』を占う事で割と容易に脱出スイッチを入手できるので、本来なら脱出は余裕だった。

 

 

 ・超超高校級の探偵 真実の解放者

 探偵の人外としての一般教養を持ち合わせているが、探偵としての負の能力をも保有している。

 身の回りで事件が発生しやすい、事件解決までクローズドサークルを脱出できない、怪しげな粉があれば舐めずにはいられない、等など。

 個人情報の看破の元ネタは笛吹和義(SKET DANCE)、粉を舐めるのは江戸川コナン(名探偵コナン)、人を殺せない等の制約は古戸エリカ(うみねこの鳴く頃に)。まぁ、うみねこに出てくる制約の類の元ネタはノックスの十戒なのでそっちが元ネタと言うべきか。

 証拠品の包丁を虚空から取り出したのは成歩堂龍一(逆転裁判)の『つきつける』が元ネタな気がする。あの人たちは弁護士って言うより探偵です。

 本来なら余裕だったはずの脱出を妨げていた人物である。ピッキングも探偵の基礎教養なので、負の側面さえなければ脱出は容易であった。

 

 

 

 

 

   その他、歴代の超高校級

 

 

 ・超高校級の錬金術師

 希望ヶ峰学園のシェルター化に使われた金属を開発した人物。

 元ネタは特には無いが……希少で品質の良い金属を作るという事であればアトリエシリーズの錬金術師だろうか? 作った金属は品質999のハルモニウムだった可能性が無きにしも非ず。

 ちなみに、この人物が書かれた文章を書いていた当時はアニメ2期(ダンガンロンパ3)はまだやっていなかったので金属を作成したキャラに鍛冶屋は使わなかった、と言うか知らなかった。

 

 

 ・超高校級の解体屋

 錬金術師が作成した金属の耐久試験を行った人物。

 解体屋と聞いてクラッシャー、つまりジョウ(クラッシャージョウ)の事を思いついた筆者は異常なのだろうか……?

 彼は原作小説の冒頭で微小惑星を塵にする爆弾を使用しているのだが、そんな彼が壊そうとして壊れなかった金属も異常だし、それを破った超超高校級の格闘家も異常だ。人外が異常なのは今更だが。

 

 

 ・超高校級の催眠術師

 超超高校級の格闘家に暗示をかける技術の元を作った人物。

 元ネタは特に無い……はず。

 

 

 ・超高校級の壁職人

 穴が空いたシェルターを補修する技術の元を作った人物。

 これも元ネタは思いつかない。壁職人、壁、絶壁……あっ、如月ちは(この文章はここで途切れている)

 

 

 ・超高校級のダンボールマニア

 どう見てもダンボールにしか見えないが極めて高い強度を誇る謎の板を作り上げた人物。

 本来は特に元ネタは無かったのだが、読者の方からのコメントで『スネークじゃね?』っていうのがあったので多分スネーク(メタルギアシリーズ)の事。

 尤も、彼に頑丈なダンボールを作る技術があるのかは疑問だが。隠密性の高いダンボールならともかく。

 

 

 ・超高校級の空間歪曲者

 アインシュタインによれば重力は空間を歪ませる。

 そして、あらゆる物体は万有引力の法則により重力を持っている。

 と言うことは、どんな人であっても空間を歪ませているのだ。

 そしてそれが超高校級という事はその人物はより大きな質量、すなわち体重を持っているはず。

 

 「つまり、超高校級の空間歪曲者とは超高校級の力士の事だったんだよ!!」

 

 「な、なんだってー!?」

 

 

 ・超高校級の魔術師

 グングニルの槍を呼び出す魔法っぽい何かの技術の元を作った人物。

 結果的にだが、夢野秘密子(ニューダンガンロンパV3)が元ネタみたいなものだろう。

 実を言うと全く意識せずに書いていたので後から指摘された時には結構驚いた。

 

 

 ・超高校級のゲーマー

 アイドルについて熱く語った人物。

 スーパーダンガンロンパ2に出てくるメインヒロイン……の事ではなく、今回の場合は桂木桂馬(神のみぞ知るセカイ)の事。

 ゲームアイドルについて熱く語るシーンがあるので一部抜粋させてもらった。

 ちなみに、得意なゲームジャンルはギャルゲーなのである意味ではダンロン2のゲーマーとは正反対。尤も、本来の彼女がギャルゲーを不得手としていたかは不明だが。と言うかあのクセのある77期生の連中を纏め上げるっていうリアルギャルゲーをやってたんだからむしろ得意でもおかしくないような……

 

 

 ・超高校級のハムスター

 オシオキ装置の原型を作る際に尊い犠牲となったハムスター。

 作者がトチ狂って正しい意味での人外を入れてみたけど読者からの反響は薄かった不遇のキャラ。

 しかしハムスターか。元ネタを考えて真っ先に思いつくのはとっとこ……いや、死んでしまったキャラなのだから不用意に元ネタは出さないでおくことにしよう。

 本作における唯一の死亡者、かもしれない。

 

 

 ・超高校級の放火魔

 『黒い炎』の開発に関わった人物のうちの一人。

 元ネタは特には無いが、放火魔と聞いて思いつくのは葛西善二郎(魔神探偵脳噛ネウロ)辺りだろうか。

 もっと他に居るかなぁ……?

 

 

 ・超高校級の中二病

 『黒い炎』の開発に関わった人物のうちの一人。

 元ネタはもちろん富樫勇太(ダークフレイムマスター)(中二病でも恋がしたい!)。ジューダス(テイルズオブディスティニー2)でも可。

 「闇の炎に抱かれて消えろ!」

 しかし、超高校級で中二病とはこれいかに。

 

 

 ・超高校級の忍者

 『黒い炎』の開発に関わった人物のうちの一人。

 元ネタはもちろんうちはイタチ(NARUTO)

 彼の用いる瞳術『天照』は「その目で見た物を黒い炎で燃やし尽くす」というもので、回避不可な上に防御不可と極めて強力なはずなのだが……本作はもちろん原作でも初登場時にあっさりと消されてるのはご愛嬌。

 

 

 ・超高校級の消防車マニア

 物騒な消防車の改造に関わった人物のうちの一人

 元ネタはエリュシア・デ・ルート・イーマ(神のみぞ知るセカイ)

 尤も、彼女は消防車の外見や機能に憧れているだけなので機械を改造する技術は皆無である。

 ……内部をいじれないだけであって、車体の外部にドリルとかを追加する事は普通に可能だが。

 

 

 ・超高校級のドリル使い

 物騒な消防車の改造に関わった人物のうちの一人。

 元ネタは萩原雪歩(IdolM@ster)

 ドリラーの名はアイマスをよく知らない筆者にまで広がっている。

 

 

 ・超高校級のコブラ

 一時とはいえ人外を死に至らせる事に成功した毒物を開発したと言われている人物。

 元ネタはコブラ(コブラ)

 毒→毒蛇→コブラという安直過ぎる発想から登場した。

 原作をよく知らないが、毒を作る技術は皆無だと思う。

 

 

 ・超高校級の魔女

 一時とはいえ人外を死に至らせる事に成功した毒物を開発した人物。

 そこまで意識した元ネタは無いが、強いて言うなら白雪姫(グリム童話)辺りかなぁ。

 軽く調べた所、魔女じゃなくて王妃っぽいけど、魔女っぽい事してるから魔女でいいでしょう、きっと。

 

 

 ・超高校級の免許マニア

 オシオキに使った重機類の持ち主。

 免許マニアと聞いて真っ先に思いついたのは本サイトでも活躍していた某バーサーカーだが、彼に重機を扱うシーンは原作でも某作でも存在しないので多分違う。

 違うったら違う。

 

 







 以上です。何か漏れがあったら連絡お願いします。

 これにて完結です。5ヵ月ちょいの間、お付き合いありがとうございました。

 それでは、またご縁があればお会いしましょう!


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