カルデアの喫茶店 (朝日が登る頃に)
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オルタさんは珈琲が好き

fateの作品を書きたかったそれだけです。

*この作品にはオリ主×キャラ崩壊×ご都合主義が多く含まれます。それらが受け入れ無い方は今すぐブラウザバックをオススメ致します。

大丈夫な方はそのまま……どうぞ。





カルデア内にヒッソリと建つ、レトロな日本喫茶店をモチーフにしたお店に一人の一際変わった服装の女性が入店してきた。電球が薄暗い独特の雰囲気を放つ部屋のカウンター席に座る一人の女性。

 

「トウカ、コーヒーを飲みに来たぞ」

 

実に高らかで艶のある声で何時ものように珈琲を店主に要求する。色素の抜けた髪にシルクのような白い肌を覆う刺々しい黒の鎧を着た黄金色の瞳の女性…名をセイバー・オルタ。

世界中で知られるかのアーサー王伝説に登場するアーサー王のもう一つの姿である。

 

「またお前か…毎朝懲りずに此処によく来るもんだ。そろそろカルデアに現界してから皆勤賞なんじゃないか?」

 

そしてトウカと呼ばれた黒を主体にした調理服を身に纏う二十代半ばの染めたであろう明るい茶髪の東洋人は呆れたように溜息をついた。そして馴れた手付きでせっせと尊大かつ偉そうな黒騎士様の為に準備に取り掛かる。

 

ゴリゴリと銅板の手挽きミルで挽く心地よい音が響き渡る、同時に珈琲豆の芳醇な香りが静かに店内を覆っていく。周りの席には漆黒の騎士王と食堂のオーナーの折樹燈日(おれき とうか)以外は誰も居なかった。

 

「ふむ…良き香りだ。カルデアのサーヴァントとして現界してからというもの貴様の作る珈琲の香りは実に私の鼻を満たしてくれる。これで悦い朝を迎えられるモノだな」

 

「モーニングコーヒーってお前は現代人かっての」

 

ペーパーの敷いてあるカリタ式のドリッパーに先程挽いた珈琲豆を入れ青色の予め最適な温度に調整していた湯の入ったケトル(コーヒーポット)で豆に染みる程度に回しながら全体に回して入れていく。香りを引き出す為に蒸らし作業は決して忘れず、円を描くように摘出量を間違えること無いようにする。赤子を扱うように優しく豆に湯を淹れ終えコーヒーカップに移す。

 

最後にソーサーにスプーンと角砂糖を二つ添えて出来上がり。

 

「どうぞ『カルデアブレンド』です」

 

漆黒の騎士である彼女のカウンター席に静かに置く。

 

「御苦労」

 

その一言は貫禄ある王の言葉。

 

オルタはカップの取っ手部分を持ち優雅に珈琲を一口だけ啜る。その飲み姿さえ十人居ればその全員が見惚れてしまうであろう上品で美しい貴婦人の姿である。

 

珈琲の苦味と独特のコクのある旨味が彼女の口に拡がる。

 

「…………普通だな」

 

カップをソーサーに戻し、子鹿のように小さく感想を呟いた漆黒の騎士の顔には感想とは真逆の歳相応の少女の微笑みがあった。

 

その微笑みをみた店主はお店の奥に早足で向かって行く。暫くすると無造作にさも当たり前のように彼女の前にバカラのグラスとスプーンを差し出した。グラスの中にはコーヒーゼリーと生クリーム、そして自家製のアイスクリームが入った彼女の好む物が敷き詰めてあるデザートであった。

 

「トウカこれは一体なんだ…?」

 

「これは最近取り寄せた物の余り物だ。決してお前の為に新しく作ったデザートでは無いからなそこら辺を間違えること無いように」

 

オルタの居る方向とは違う場所をソッポを向き不機嫌そうに言い張る頬をほんのり赤らめた店主。

 

「トウカの作る料理はジャンクフード好きの私に何故かよく合うのだ…王として兵站を無駄には出来ん。カルデアのサーヴァントの責務として戴くとしよう」

 

オルタはスプーンでコーヒーゼリーを一口含む。奥行のある『カルデア ブレンド』とは違う苦味と旨味を合わせた味が口に拡がる。

 

「珍しく中々良い出来だトウカ。このデザートをこの喫茶店のメニューに出せば必ず成功するであろう、この私が保証する」

 

「全く…そういうのは全部食べ終わってから最後に言う台詞だぞ」

 

「何を言っているトウカ?デザートなら疾うに食べ終わっているが?」

 

「はい?」

 

空になったバカラのグラスにスプーンを添えた物を燈日の前に見えるよう当たり前のように差し出すセイバー・オルタ。

 

「どうした?トウカ 鳩が豆鉄砲を喰らったような面をして」

 

「…いやさ、うん、お前相変わらずだな」

 

「相変わらず?何を言っているのだお前は?」

 

「呆れを通り越して驚きになってるんだよ」

 

「ますます解らぬな…それはそうと今日の朝食のパンケーキを私は二十枚程食したいのだ。腹が減った早く作ってくれないのか」

 

「お前の胃袋は底なしのブラックホールかよ」

 

「その言葉 褒め言葉として受け取ろう」

 

「はぁ…大食いしたいのなら赤い弓兵が経営するカルデア食堂に行けよな」

 

赤い服装に身を包む白髪の弓兵とその仲間(女性陣)が経営するカルデア食堂。そこには多くのサーヴァントやカルデアスタッフが食事をしに集まる食堂である。通常のスタッフやサーヴァントはこの喫茶店に来ること無く全てが揃った食堂に向かうのが普通なのだが。彼女、セイバー・オルタは何故かカルデア食堂には余り行かず、この喫茶店に頻繁にやって来る。

 

「馬鹿者…それでは毎日…お前と話が出来ないではないか」

 

頬をほんのり朱色に染め下に恥ずかしそうに俯くセイバー・オルタ。それを聞いた店主はただ「馬鹿か…お前」と恥ずかしそうに小さく呟いた。

 

 

此処はカルデアにある小さな喫茶店を開く店主の青年とサーヴァント達のちょっと変わった物語である……

 

 

 

 

 




初回なので短くなってしまいました。

次回はオルタXさんと店主のお話です。



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ヒロインは唐突にやってくる


お気に入り登録数が58件という数字に大変驚いた作者の朝日が登る頃に、です。今後ともこの作品を閲覧して頂けると大変嬉しいです。

では…本編をどうぞ……



いつも通り、朝から喫茶店の準備。

コーヒー豆、カップ、コーヒーミル、コーヒー機材の全てをチェックし終えると、ハンガーにかけておいた愛用の白エプロンを腰に身につける。

すべての準備を終え、出入り口の扉にある『Close』と書かれたプレートをひっくり返し『Open』の文字に変える。そしてメニューの書かれた看板を店先に出せば準備完了。あとはお客を待つだけだ。

…といっても、訪れる客は少ない。常連を除けば、一日に十人来れば多い方だ。

噂をすれば、常連客であるセイバー・オルタが最初の客として喫茶店に訪れた。

 

「トウカ、コーヒーを飲みに来たぞ」

 

来店と同時に実に高らかで艶のある声で毎朝の習慣であるモーニングコーヒーを要求する騎士王セイバー・オルタ。この光景もこの喫茶店では当たり前になっていた。

 

「アルトリアか…それで、注文はいつものブレンドでいいか?」

 

「構わん、それでよい」

 

「ん、ちょっと待ってろ」

 

アルトリアはカウンター席に腰を下ろし、燈日は何時ものように愛用の鋼板使用のミルに珈琲豆を入れて、豆を挽き始める。ゴリゴリとという豆が擦れる音が店内に小さく響く。

 

「……」

 

「……」

 

互いに無言。

 

アルトリアは黄金色の大きな瞳を閉じ、豆が擦れる音と喫茶店に流れる静かな洋楽の音楽を静聴していた。次第に珈琲の香ばしい薫りが珈琲好きの二人以外に誰も居ない空間を包んでいく。

 

カリタ式のドリッパーにペーパをセットし、挽いた豆を入れる。後はケトルに最適な摘出量で調整した湯を豆に注いでいく。蒸らし作業を決して忘れず、手間と時間をかけてゆっくり優しく淹れる。

 

「どうぞ、カルデアブレンドです」

 

珈琲の入ったカップに砂糖を二つ添えたソーサーをアルトリアの前に差し出す。

 

アルトリアは無言でカップの取っ手部分を持ち一口だけ音を立てること無く静かに啜る。

 

そして一言。

 

「………普通だな」

 

いつも通り変わらず、誰にも聞こえない程、小さな声で「…普通だ」と同じ感想を微笑みながら述べるセイバー・オルタ。その表情に非情さ撤しきった騎士王の面影は無くなっていた。

 

アルトリアの感想を聞いた燈日は心の中で「今日も旨く作れたのか…」と、ホッと安堵の溜息をついた。コーヒーカップを両手に包みながら、珈琲を美味しそうに飲んいるアルトリアを燈日は横目で見つめていた。

 

 

 

 

 

*・*・*・*

 

 

 

 

 

セイバー・オルタは珈琲と朝食のパンケーキを五人前を瞬きの間に食べを終え「また来るぞ」と頬を紅く染めながら喫茶店を後にした。それからというもの常連客のサーヴァントやカルデアスタッフの接客やら調理を提供しているうちに時間がみるみる間に経過していった。

 

喫茶店の人足も遠のき、店内に飾ってある古時計の針を見ると時刻は『参』の文字を指していた。つまり今の時刻は午後の三時。

 

「…昼休憩だな」

 

落ち着いたせいか、先ほどから自身の腹の虫が五月蝿いのだ。さっさとこの音を消す為に出入り口の扉に飾ってあるプレートの表裏をひっくり返す為に外に出ると…

 

「ん?」

 

見慣れた一人の少女が出入り口の扉の取っ手に手を伸ばそうとしていた。そして急に扉が開いたのが驚いたらしく目の前の少女は後方に二歩下がった。

 

「オルタか」

 

色素の抜けた髪にピョンと跳ねた愛らしい髪の毛。何処かの騎士王に似たシルクのような白い肌。青の学生服に黒のブレザーを羽織り、首にはチェックの温かそうなマフラーを覆っている。さらに文化系の人物を連想させる黒眼鏡を彼女は掛けていた。そんな彼女の隣には不思議と何処かで見た事のある、コンパクトな形をした黒色主体のキャタピラで動くロボットが少女の隣に居た。

 

彼女の名は、ヒロインX オルタ。

最近になってカルデアに召喚された新参者のサーヴァントである。容姿は言わずとしれたアーサー王、アルトリア・ペンドラゴンと同じである。そしてクラスはセイバーでは無くバーサーカーのクラスで現界したのだ。

 

因みに隣に居るにロボットの名前はヴォロイド“K6-X4”。通称、黒騎士くんである。

 

「…あの、オーナーさん。喫茶店はまだ開いていますか?」

 

おどおどと体を揺らしながら質問するオルタ。

 

「悪いが今から喫茶店は昼休憩だ。一時間後に再度開店するから来店しなおせ」

 

オルタにそう告げると基本、喜怒哀楽の感情を面倒くさがって表に出さないあのオルタが「ガーン!」という擬音が表情に見えるほど凄く落胆していた。そんなオルタを必至に慰めようとする黒騎士くん。

 

「わ…かりました…行こうか…黒騎士くん…」

 

目線を床にやり「私…悲しいです」と言わんばかりの負のオーラを纏いながら危うい足取りで帰路に戻ろうとしていた。振り返り際に一瞬、オルタの瞳は涙でじんわりと潤っていた…そんな瞳を見てしまった燈日は居てもたってもいられず。

 

「……今から喫茶店を少しの間、臨時開店をする。という訳だ、さっさと喫茶店に入れ」

 

馴れない台詞を吐いてしまった。

 

オルタは振り返り有り得もしない台詞を聴いてしまったため、唖然と口を細かく動かしながら燈日の顔をまじまじと見つめていた。

十秒、二十秒。オルタは上目遣いで見つめくる。そんなオルタの姿を見ていると…可愛いっていうか、守ってあげたくなるという…こう、抱き締めたい気持ちになってくるというか…そんなイヤらしいことを悶々と燈日は考え込んでしまっていた。

 

……馬鹿か!?!!?冷静になれ、歳下の娘に対してなんて破廉恥な事を考えているんだ!と自身の如何わしい煩悩にカツをいれる。

 

「め、メシ食いたいなら店に入れ、飯が要らんのならそのまま帰ってよし。あと臨時開店だから店内でのマトモな接客は期待するな…以上!」

 

「は、い!」

 

捨て台詞のような言葉を残し早足で店内に逃げ込んでしまう燈日。その後ろを嬉しそうに付いてくるオルタ。喫茶店の出入り口で「⿴⿻⿸⿴⿻⿸⿴⿻⿸(ツンデレかよ)」と黒騎士くんが呆れながら呟いたのは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

その後オルタに試作品の『キャラメルラテ』を作ってあげると大変美味しそうに飲んでくれた。

 

「これは…喫茶店のメニューに追加するべきです」

 

…と強めの口調で言われた。

 

 

 




FGOのバレンタインイベントとても楽しいですね。
ついついガチャを回して…爆死するのがオチですけど…エッちゃん凄く欲しいです。私は性能よりも可愛さを優先しますとも!

次回は…両儀式と店主のお話です。


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夢と着物と店主

新宿…面白かったです…

特に…アルトリア・オルタさん…

超…可愛いかった…です…

モーション変化…おめでとう…


*アーマーゲモンさん誤字報告ありがとうございます。





これは多分、夢だということに気がついている。しかし、それを頭の中でどこか現実じゃないかって考えてもいる。

 

現実のような夢、夢のような現実。どっちが本当で嘘なのか、その答えはどこにあるのだろうか。

 

醒めればそれは夢、醒めなければそれは現実か。じゃあ醒めた先が現実だ、という保証はどこにある?

 

ここが現実です。ここが夢です。そんな示すモノさえ無い今、何処かなんて分かりそうにもない。

だから目の前にいる誰かも、本当か嘘かなんて分からない。

 

『あら。こんな堺目にお客様が来るなんて、どんな間違いかしら』

 

目の前に見知った女性に酷似した人が居た。

黒髪に白の着物を着込んだ美しい淑女。

 

『此処は境界のない場所。貴方のような名前を持つ人間が居てはいけない世界よ』

 

「ーーーーー?」

 

女性に返答すると、少し驚いた表情をする。

周りには何もない、そんな世界で俺は彼女と真正面で対面している。逃げ場も無ければ、隠れる場所もない。

 

『求めて来た訳ではないの?なら……ふふふ、ごめんなさい』

 

『縁を結んでしまったのはコチラみたいね。今のうちに謝っておくわ、燈日君』

 

ぺこりと頭を下げる着物の女性。

その仕草をみて反射的にコチラも頭を下げてしまう。

 

『ふふ、私は眠っているから外の事は分からないけれど貴方の身の回りで起きている事は分かるわ』

 

『出来る事なら貴方ともっとお喋りをしたかったけど……残念時間が着たみたい』

 

視界に白い靄が掛かり、周りの景色が急速に色褪せていく。おぼろげな輪郭を残しながら消える。

 

意識が遠のいていくのが段々と分かる。

どうやら彼女と話すのは終わりのようだ。

 

『……もう夜が明けてしまいそう。夢が醒める頃ね』

 

心底残念そうな表情をする女性。

俺はそんな顔をしている彼女の頬を利き腕で優しく包んだ。

 

「!!」

 

女性は突然頬を触られたことに驚き、頬は朱に染まる。

 

「ーーーー永遠の別れじゃない」

 

そう…彼女に告げる。

また彼女と会える、そんな気がした。

 

『そうね…貴方なら…私を…』

 

最後に彼女何かを呟こうとする姿を見つめるながら。意識が溶けて完全に消えていく事を実感しながらも、最後まで彼女を見つめていた。

 

 

彼女が誰なのか、結局…最後までわからないままであったが、今度あった時に名前を聞こう…そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今何時だ…」

 

質素な生活が溢れて見える個性の欠片もない一室で両儀式は呟いた。耳の辺りまで適当に揃えられた黒絹の髪を軽く櫛でといて寝癖を治す。そしてベットの上に設置されている電波時計を見ると画面には『16:00』と表情されていた。

 

「チッ…面倒な時間に起きたもんだ」

 

舌打ちをしながら式は先日の出来事を思いだす。マスターと相棒の盾娘に連れられ他のサーヴァントの連中と実戦を交えた模擬戦を行ったのだ。逸話や伝説を一度は聴いたことのある英霊や意味不明な事ばかり言う暑苦しい筋肉サーヴァント等と闘って、疲労困憊のまま部屋に戻ってきた時はシャワーだけを浴びて…あとは倒れるようにベットでオレは眠っていたんだった。

 

式はベットから起き上がり、カルデアから支給されているミネラルウォーターを一本冷蔵庫から取り出す。そして一気に飲み込む。

人間にも人外にも身体に良い、であろう清涼飲料水を四分の一程飲み終え、キャップを締め冷蔵庫に戻す。

 

「………」

 

ミネラルウォーターを飲み終えた式は目線を下にやり何かを思い出すが、元の気だるげな表情に戻り何事も無かったようにハンガーに掛かっている愛用の革ジャンを浅葱色の着物上に羽織る。そして常備している得物のナイフを背中の帯に隠し部屋を後にした。

 

式は一人カルデアの長々と続く空色と白の混ざった廊下を歩く。目的地に向かう途中、至る所にサーヴァントと呼ばれる英霊達が仲良さげに立ち話をしていたり、スタッフ達が「今日の食堂の晩御飯はなにかな?」と有りきたりな平和を感じずには居られない平凡な会話。式は「相変わらず此処は平和ボケしてる」と呆れたように小さく溜息をつく。

 

そして十分程歩いた頃に目的地のお店もとい喫茶店が見えた。木製の扉には『Open』と書いてある古臭いプレートのタグが掛かっている。扉の隣の看板には『和菓子を始めました』と白チョークで丁寧な文字が書いてあった。

 

「(別にアイツに会いにきた訳じゃない…)」

 

茶髪の店主が自分に対して優しく微笑む姿を思い出す。式は扉の取っ手部に手を掛け、少し重苦しい扉をゆっくりと開ける。カラン、カランと扉に付いている金の鈴が音を立てる。

 

「いらしゃいま…」

 

喫茶店の店主は式の顔を見るなり心底驚いた表情した。なんだ、彼奴は人の顔を見るなり幽霊でも会ったような顔をしやがって。

 

「おい折樹。オレが態々来てやったのになんだその顔は」

 

「あぁ…えっと…すまん」

 

何だ彼奴…様子が変だぞ。

返答が曖昧でかつ何処か挙動不信だ。

式は疑うように店主の周りを見つめる。

だが…これといって特に異常は何もない。

 

気になりつつも、式はいつものカウンター席に座る。

 

「何があったか知らんが気をつけろよ。此処はとんでもない亡霊やら英霊が居る危険地帯だって事を忘れるな。もし、そんな奴等に目をつけられたら一般人のお前は速攻でお陀仏だ。オレだって何時もお前を護れる訳じゃ…」

 

「式…もしかして心配してくれるのか?」

 

首を横に傾げ、少し微笑む店主。

 

「ば、莫迦か!?そんなんじゃない、お前の作る料理がオレの嗜好に合っているからだ。決してお前の心配などしていない!」

 

机を大きく両手で叩き、反論する。

 

「はいはい、ありがとうな」

 

「五月蝿い!さっさとアイスティーと適当な料理を作ってこい莫迦燈日!」

 

「仰せのままに…っと」

 

また店主は手を振りながら奥の厨房に消えていく。

クソ…彼奴と話していると調子が狂う。

 

そんな事を考えていると式は上の棚に飾ってあるアンティークな古時計が先程机を叩いた衝撃で頭上に落下している事を式は気付くことはなかった。

 

 

 

 

*・*・*・*

 

 

 

 

 

 

昨夜の夢に出ていた常連客の両儀式に良く似た着物を着込んだ女性。同一人物だとしか言いようのないくらい夢に出た女性と式。

 

あの二人が似ているのは偶然なのだろうか?分からないことばかりだ…

 

「完成っと…」

 

出来た料理を皿に乗せる。

今回作った料理はタマゴと野菜を挟んだシンプルなサンドイッチと式の好きなアイスティーだ。デザートには俺の特製ストロベリー味のアイスを振舞ってあげる予定だ。

 

盆にサンドイッチの乗せた皿とグラスを乗せて式の居るカウンター席に向かう。

 

「おーい、式。出来た…ぞ?」

 

カウンター席に向かうと先程まで居た式の姿は無く、上の棚に飾ってあるアンティークな古時計が床に落ちていた。

 

カウンター席に料理の乗せた盆と古時計を置くと、ギィとトイレの扉が開いた。なんだ…式のやつトイレに行っていたのか、と思い振り返ると……

 

「久しぶりね、燈日君」

 

花が散る程のお淑やかな美しい振袖姿の女性が其処には居た。

 

「あら、そんなに口を開いていると顎が外れちゃうわよ?」

 

うふふ、とお淑やかに微笑む着物の女性。

俺は顎が外れるんじゃないのかという位に口を開けて瞳を開いていた。

 

 

わ、訳が分からない。あ、ありのまま今起こった話すぜ!『式がトイレに入っていたと思っていたら夢で出逢った式によく似た女性が入っていた』な、何を言っているのかわからねーと思うが俺自身も何が起きたか分からなかった…頭がどうにかなりそうになった…と、ポルナレフ状態に陥ってしまった。

 

「……燈日君?」

 

はっ!いかん意識が吹き飛んでいた。

落ち着け…落ち着け…っと暗示をかけるように心に言い聞かせたが…次に彼女が自身の名前を発言した際に驚きの余り顎がポキッと外れてしまった。

 

というか…何で彼女も名前が『両儀式』なんだ?

 

「燈日君…顎は大丈夫かしら?」

 

「大丈夫…だ」

 

顎を擦りながらも痛みを堪える。

『式』に外れた顎を元に戻して貰い現在、喫茶店の窓側の席に座っている。

 

「ごめんなさいね、驚かせてしまって」

 

「あぁ…こちらこそすまない…いきなり煩わしい所を見せてしまって」

 

「そんな事は気にしなくていいのよ。寧ろ貴方の驚いた表情が見れて役得だったわ」

 

…この『両儀式』は俺の知る、両儀式とは別人のようだ。俺の知る両儀式はこんな台詞を絶対に言わないし、もし仮に言ったとしても絶対に彼女は否定する。これは彼女と関わって来て分かったことだ。

 

「貴方は式の事をよく知っているのね」

 

目の前に座る『両儀式』は何処か寂しそうな表情で俺を見ている。何故彼女はそのような表情するのだろうか…

 

「そんな寂しそうな顔をしないでくれ…俺はアンタのそんな顔は…余り見たくない」

 

目の前の彼女に心の底から思った事を正直に伝える。夢の世界でも思ったが彼女のそんな哀しい顔は余り見たくない…そう思わずにはいられなかった。

 

「ありがとうね…燈日君」

 

そう言って彼女は俺の頬を優しく触れる。

 

「これは嬉しい、という感情なのかしら…不思議ね。私はそんな感情を持つ筈はないのに…貴方と居ると良い意味で調子が狂うわ」

 

彼女の手は暖かくて、優しくて、そして何よりも儚い…そう思った。

 

その後『式』と俺は他愛のない世間話をしていた。いつもの喫茶店の話、お客さんの愚痴だったり、『両儀式』という存在について話していると時間は刻刻と過ぎていった。不思議な時間だった…まるで大切な人と話しているとような…そんな暖かい気持ちが終始続いていた。

 

「またね、燈日君」

 

式はそう言って姿を消した。

喫茶店は何事も無かったように静けさだけが残った。

 

「またね…か…」

 

そういえば…二人で話していると間、喫茶店には客が一人も来店しなかった。何故か…結局分からないままだった。

 

それから次の日に式が「お前昨日何が起きたか説明しろ!?」と問い詰められたという事があったのはまた別のお話で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で両儀式さんでした。
上手くまとめきれない感が半端ないです。
次回のキャラは反転属性キャラを出そうと考えております。

*アルトリア・オルタ欲しかったなぁ…



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店主の日記

くだくだ本能寺…の本編をさくっとクリアした朝日です。cv釘宮理恵さん最高です…今後も皆さんもイベント周回頑張りましょう!

という訳で…本編をどうぞ!

*玉藻の前が当たりました…明日には死ぬかも…




折樹燈日、年齢二十六、1月26日生まれ、血液型A型、職業、カルデアの喫茶店の店主。

 

東洋人、元々は料理人だったが何やかんやあって何故かカルデアに雇われる事になった。現在カルデアに日本の古き良き時代をモチーフにした古臭い喫茶店を開いている。

 

 

 

 

 

 

○月○日 晴れ…だった?

 

レオナルドに言われて日記を書くことになってしまった。一応仮初でも俺もカルデア職員だから…とのこと。面倒だが、彼奴には喫茶店をカルデアに開く際沢山の借りを作った。背に腹はかえられん、という訳で今日から日記を書いていく。

 

今日は何時のような通常運転で終わった。

アルトリアが朝イチに珈琲を飲みに来て、それからスタッフや常連客の方々の接客と応対に追われる日々だった。

 

 

○月○日 晴れかな?

 

今日は喫茶店はお休み。

自室でのんびり過ごしているとアルトリアがジャック、ナーサリー、ジャンヌ・リリィの仲良し三人を連れて俺の部屋にやって来た。

 

なんでも日本の童話を読みたかったみたいだが難しい漢字があり、上手く読めなくなり日本人の俺に助けを求めてきたらしい。ん?日本人なら…マスターちゃんが居たよな?とか思ったけど折角俺の部屋に来てくれたわけだしそんな野暮な事は口に出さなかった。

 

読み終えた時には四人には手作りの焼き菓子とココアを作ってあげた。子供達はキャッキャッと楽しそうな会話をしながら食べていた。しかし隣に座るアルトリアは相変わらず物凄いスピードで菓子を食べていた。やっぱりアイツの腹は底無しのブラックホールだ。

 

ちなみに読んだ本は『かぐや姫』

 

 

 

○月○日 晴れだといいな?

 

今日は珍しく式がお昼の喫茶店にやって来た。

何でも旨い飯が喰いたい、とか言っていたのでいつも以上に気合いを入れて作った。

 

食べてる時に式があんまりにも幸せそうに食べていたから周りに花が咲いていたような気がした。

 

本人の前で言ったら怒られそうな気がしたからこれは忘れないために日記に記しておこう。

 

 

○月○日 曇り…な気がした

 

今日の朝イチに来店したのはアルトリアではなく反転した方のジャンヌがやって来た。やって来て早々に、あの冷血女が毎日飲んでいるアンタが作る不味い珈琲を飲ませなさい、とか言い出したので、とりあえずアルトリアと同じのブレンドを反転ジャンヌに提供した。

 

一口、口に含んで飲んだジャンヌは、不味いわね、えぇ、本当に不味い。例えるなら黒く澄んだ酷く濁った泥水を飲んでいる気分だわ。とか言いつつもそっぽ向いてもう一口珈琲を啜っていた。

 

……このジャンヌ・ダルクとアルトリアって何処か似ているな〜とか悠長な事を考えていたら…

 

「フランスの片田舎子娘…貴様…よほど死にたいようだな」

 

怒気の篭った冷徹な声が店内に響いた。

今日も喫茶店に一番に来店する予定だったアルトリアさんが溢れんばかりの魔力を黒い聖剣に溜めている。完全武装(バイザー姿)の状態でも理解出来る暴龍の如き恐ろしい形相でジャンヌ・ダルクを見ていた。

 

「あら?何処の誰かと思えば最高にいけ好かない冷血女じゃない、残念ね貴方の大好きな店主の朝一番の珈琲は私が頂いわ」

 

 

ニヤニヤと嘲笑うような表情で目の前の宿敵を煽る黒く染まったフランスの聖処女。火に油を注ぐという言葉はこの時に使うのだろう。

 

 

「目障りな口だ…貴様は以前から気に食わなかった事など今はどうでも良い。だがな突撃女。貴様はよりにもよってトウカが丹精を込めて作った珈琲をその卑劣な言葉で愚弄した。その罪…貴様の死をもって償って貰うぞ」

 

 

「あーら、冷血女にしては随分と感情的ですこと!なによアンタこの店主の事が好きなわけ??」

 

 

アルトリアがその問に答えるまえに…店内で反転属性同士の宝具使用の大乱闘が勃発しそうになったが…

 

『燈日君の喫茶店での乱闘は禁止よ』

 

颯爽と喫茶店に現れた晴れ着姿の最強お姉さんによって二人のサーヴァントは一撃で再起不能の状態に陥った。改めて『両儀式』の強さを再確認した。今度お礼に『式』に対して俺が出来る可能な限りのお願いを聞いてあげようと思う。

 

 

それと喫茶店の方は…まぁ…少し店内が荒れたので明日は大掃除と修復作業をしようと考えている。その時は折角なのでサーヴァント達の力でも借りるとするか。

 

ちなみに…二人の反転サーヴァントは暫くの間、裁定者のサーヴァント達とマスターから外出禁止の通告と命令が出た。

 

レオナルドからは「君も大変だね〜」と笑いながら肩に手を置いてくれた。マスターとマシュちゃんは「本当に申し訳ございませんでした」と深々と謝られた。

 

明日辺りにあの二人に会いに行こう。

 

 

 

 

 

 




日記風作品を初めて執筆してみました。
おかしな感じに仕上がってしまい申し訳ございません。何かありましたら感想等でお知らせして頂けると助かります。

お気に入り登録、評価をありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。




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続 店主の日記

何気なく日間ランキングを見ていたら…6位に私の作品がありました。この結果は閲覧して下さる皆のお陰でございます…お気に入り登録、評価、感想をして下さった皆様…誠にありがとうございます。これからもこの作品は連載していくので、これからも応援の程宜しくお願いします。






○月○日 天気は…晴れだ…多分。

 

今日は先日起きた通称W反転属性鎮圧事件によって破損した商品や机や椅子を修理及び喫茶店の大掃除を行った。俺の作るお菓子が大好きなちびっ子サーヴァント三人組や槍の兄貴やエミヤ(弓)、更にはあの一日殆どぐーたら寝て過ごしている式までもが喫茶店の修理を手伝ってくれた(これを式に言ったら隠し持っている得物で襲われそうになった…襲ってる姿が毛を逆立て怒った猫に見えたのはここだけの話)

 

それからマスターとマシュちゃんも遅れて手伝いに来てくれたお陰でお昼頃には全ての作業が終わっていた。サーヴァントの作業スピードがとてつもなく早くてすげぇと改めて感心した。

 

手伝いをしてくれた皆にはお昼に喫茶店で人気メニューの一つ『ドレス・ド・オムライス』を無償で提供してあげた。

 

一応料理の説明も書いておくか…『ドレス・ド・オムライス』とは通常のオムライスにひと手間かけて卵を螺旋状にした食べ物である。出来上がった姿がまるでオムライスが貴婦人の着たドレスのようにヒラヒラとひるがえしながら踊っているように見える事からこの名前がついたとされている。

 

本人達の口には出さなかったが皆が美味しそうに食べてくれてやはり嬉しかったな。特に仲良し三人組とマシュちゃんとマスターちゃんは見ていて微笑ましかったな。槍の兄貴は猛犬みたいにガツガツ喰っていた。エミヤに限っては何か小声で「この味は…」とかブツブツ呟いていた…何呟いていたんだアイツ。それと、式は無言で黙々と食べていた。「美味しいか?」と聞いたら「…普通」と質素な回答が戻ってきた。次は式が美味しいと答えてくれる料理を作ってやる。あと、あの事故を起こした二人の話も一応書いておくか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が落ちる頃、燈日は一人カルデア食堂に向かっていた。食堂に入ると既に席に座って飲食を取っている人達から物珍しい人を見たという目線を送られる。それもそうだろう、彼がこの食堂にやって来る事は殆どないのでスタッフ達は驚きを隠せずにいた。

 

燈日はある人物に会うべく食堂の厨房に向かう。そこで一人厨房でニャハハ〜と笑うメイド服に桃色の髪に獣耳が生えた女性を見つけたので声をかけてみる。

 

「おうさっ、むむ?誰かと思えば喫茶店のビックオーナー?珍しい人物が来たのだな。挨拶も兼ねてGood morningなのだワン」

 

いや、何故に夕方なのに挨拶がおはようございますなんだ?こんばんはだろ?

 

「むむ、キャットはいつでも元気よく挨拶をする主義なのだ。というか今はもう夕刻になったのか?時の流れとは早いものだな……」

 

あー、頭が痛くなってきた。

相変わらずこの自由奔放なブレブレバーサーカーとは言葉のキャッチボールが上手く出来ん。というか遠い目をして急に黄昏るな。

 

「ビックオーナーよ、それで何か用があってキャットに話しかけてきたのではないか?」

 

いかん、いかん。肝心な目的を忘れていた。

悪いが、ちょっと質問があるんだがいいか?

 

「むむ、ビックオーナーはキャットに無償で答えろと申すのか?むふふ〜それは駄目だぞ?キャットは無償(タダ)で答える程安い狐ではないのではないワン」

 

分かった、分かった。もし快く答えてくれたらキャットが喫茶店に来店した時に人参を献上するから。

 

「おお!流石はビックオーナー!我らがご主人並に話が分かるである。それでオーナーがキャットに聞きたい質問とはなんだワン?」

 

あぁ…余り大きな声で話せないのだが…その…黒い方のアルトリアとジャンヌの部屋を教えて欲しい。

 

実の所、長い付き合いである二人の部屋を未だに知らない燈日なのであった。マスター及びマシュちゃんは既にトレーニングの為レイシフトしてカルデアに居なくなっており、モナ・リザ(レオナルド)に聴くのは十中八九おちょくられるので絶対に嫌だった。

 

「なんと…ビックオーナー!まさか暴走噛み付き狂犬共の部屋が知りたいとは!もしかしするとビックオーナーよ…二人に夜這いをするつもりか?ならばキャットの悩殺女官落としテクニックを教えてしんぜようではないか!任せよキャットはこれでもかつて数多のスーパー悩殺テクで何国か国を傾け……」

 

阿呆かそんなテクは知らんでよか、と言ってキャットに必殺技、正義の断罪チョップ(普通のチョップ)を脳天めがけて勢いよく振り下げた。

 

「……解せぬ」

 

涙目で頭部を両手で擦るキャット。

 

というかあの娘二人に夜這いとかしたら犯罪だわ。何処ぞの王様大好き円卓の騎士さんやジャンヌ親衛隊の目玉が飛び出てる妖怪に成敗されるっての。

 

「確かにビックオーナーがあのような半ば狂人の連中に追われては一瞬で天に帰してしまうのだな」

 

ニャハハハハと笑うキャット。

この野郎…笑える事じゃねえよ。

 

「まあキャットとしてはビックオーナーが居なくなると悲しいのだ。故にそのような事は絶対にするでないぞ?」

 

勿論だ、なんなら神に誓おうか?

 

「結構なのだ、ビックオーナーの良識を満ちた瞳をみれば一発で解るワン」

 

キャットはそう言うとメイド服から白の紙とボールペンを持ち素早く書き始めた。ていうかコイツ手につけた獣の手袋?みたいなやつ付けてるのによくこんなにサラサラと早く書けるな。

 

キャットに書き終わった紙を渡される。内容は勿論アルトリアとジャンヌの部屋番号だ。

 

わざわざありがとな、とキャットにお礼を言って受けとる。

 

「うむ、気にすることはないのだな。人参の件を忘れるでないのぞ?もし忘れようでもしたら本当の酒池肉林をお見せしよう」

 

忘れないよう肝に銘じておくさ。じゃあな。

キャットに振り返りながら手を振り燈日は食堂を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから反転二人組の部屋に向かった。先にアルトリアの部屋に行ったら先日の件で凄く気を落胆させたアルトリアが部屋の片隅でハンバーガーをやけ食いを行なっていた。部屋はハンバーガーの包み紙と空になった炭酸飲料が大量に散乱していた。

 

声をかけるなり「私は…私のような存在は…トウカの喫茶店に足を運ぶことはもう二度しない」

 

の言葉一点張りで、かなり病んでる感じだったので…説得することにした。

 

昨日の件は気にすんな、どんな形であれ、お前は俺の名誉を護ろうとしてくれたんだろ。おれは昨日の事は気にしてないしお前も気にしないでいいんだよ。というか…常連のお前が来なきゃ喫茶店が…あの店が寂しくなるだろうが。

 

…みたいな事を言った。

改めて書いてみるとかなり恥ずかしいな。二度と言わんぞ…こんなキザな台詞。

 

それからアルトリアに明日からまた開店するから寝坊せず朝食食いに来いよ、っと言って部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次にジャンヌ・オルタの部屋につきインターホンを押そうとした瞬間に扉が開いてジャンヌと急に対面する事になった。

 

「なっ!なんで!アンタが居るのよ!?」

 

と驚きながら聞かれたので、昨日件についてだ、と答えた。

 

「ふーーん、ふーーーーん!どうやら竜の魔女である私に昨日件で復讐をしにきたようね。いいわ、貴方にはその覚悟があるようね。でもタダで復讐される私ではなくてよ?復讐者(アヴェンジャー)に復讐するということをその身に刻んで…」

 

何故か宝具を発動させようとするジャンヌ・オルタ。いやいや、俺がお前に復讐とかするわけないだろう。というか明日からまた開店するから、また来店してくれって伝えにきただけだ。

 

「は、はぁ!?アンタ自分が何言ってるか解ってんの!?」

 

失礼なやつだ。そのぐらい分かってるての。

 

「何で…拒絶しないのよ」

 

阿呆が、あんな事でお前のことを嫌いになる訳ないだろうが。

 

「やっぱり…前から思っていたけど今回の件でアンタって馬鹿だという事が確信になったわ。えぇ、底抜けの大馬鹿者ね」

 

こいつ…人のことを馬鹿、馬鹿言いやがって。

 

「でも…アンタみたいな底抜けの馬鹿は嫌いじゃないわ。いいわ…明日からまた喫茶店に行ってあげる。アンタ、後悔先に立たずという言葉を知っているかしら?」

 

知ってるとも。まっ、そん時はそん時さ。

男に二言は無い、じゃあまた明日な。

と言い残し俺はジャンヌの前から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月○日 晴天だった

 

いつもように喫茶店は平常通りお客さんは少なかったが常連さんが今日は多く来店してくれた。勿論アルトリアとジャンヌも来てくれた。何故か二人同時に来店して来たが…まあそこら辺は気にしてない。

 

乱闘は起きなかったが、二人の口喧嘩は相変わらず起きていた。あいつらやっぱり仲良しだわ…本人の前で言ったら反論されるので日記に記しておく。

 

今日は平和でした。

 

こんな日が続く事を心から願っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらずね…燈日君は」

 

晴れ着姿の麗しい淑女は先ほどまで読んでいた日記をそっと閉じ、元の位置に戻した。

 

「ふふっ、燈日君にお礼は何をして貰おうかしら?」

 

妖艶な笑みを浮かべながら晴れ着姿の淑女は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 




日記風作品を書いてみましたがどうでしたか。楽しんで頂けたらなら幸いです。今後は通常通りの執筆か日記風作品の両方を投稿しようと考えております。作者のネタが尽きるその日まで…!!

最後になりますがこの作品を続けられるのは閲覧して下さる皆様のお陰です。感想をいつも見るたびとても楽しく思います。今後ともこのような喫茶店を宜しくお願いします。


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天才剣士は甘い物がお好き

三月二十二日に日間ランキング一位をとることが出来ました。応援、閲覧して下さる方には本当に感謝しております。また、お気に入り登録、評価、感想、誤字報告して頂き誠にありがとうございます。今後ともこの作品を宜しくお願いします。




今から約百五十年前、日本は幕末の世。黒船来航から明治維新までの十五年、様々な思想と理想の渦まく最中。剣を持つ者は新時代を作ろうとする維新志士と時代を守ろうとする徳川幕府側に別れ、双方らの熾烈な闘いが起きていた。その争いの中心である京都では日夜血風と白刃の魔都と化していた。血煙のたたぬ日無い、生首が御転ばぬ日は無い、そんな地獄絵図にも似た世界が拡がっていた。

 

そんなさなか京都を拠点に腕の立つ剣客達を束ねた治安組織が発足した。京都を守る為に命懸けで剣を振るい続けた。朱に一文字の『誠』の旗を掲げ浅葱色にだんだら模様の特徴的な羽織に卓越した剣腕と死をも恐れぬ揺るぎない闘志で「壬生狼」の異名で呼ばれた者達。進んで行く時代の流れに消えはしたが日本史史上最大にして最強そして最後になるだろう伝説の剣客集団……

 

 

人々は彼等の事をこう呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー『新撰組』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喫茶店のカウンター席にハイカラな着物を着込んだ女性が自分の目の前に置かれた不思議な菓子を身を震わせながら見つめていた。花柄のアンティークなお皿に乗せられたカスタードを使用しているであろう生地に少し上部を焦がした変わった菓子。更に横には生クリームと綺麗な才色のされた彼女が生涯一度も見たこともない奇天烈な食べ物が目の前に置かれている。

 

「……逝きます」

 

覚悟は出来た。

 

意を決したような低い声を出し女性は皿に添えてある手馴れぬフォークを手に取り恐る恐るゆっくりと口に小さく切った生地を口に含んだ。

 

「ムッ…!!?」

 

その瞬間…『幸せ』という言葉が脳裏を横切った。程よく冷えたアイスクリームのような滑らかな食感。甘く口溶けの良い濃厚なカスタードと上部に焦がしたキャラメルのほろ苦さが合わさり感嘆の溜息が漏れてしまう。まるで雲の上に昇るような心地よさが身体を包んだ。

 

「甘ァ〜〜い!?」

 

余りの美味しいさに女性は童のように心の底から思った事を叫んでしまった。

 

「なんですかこれ!?生前にこんなに美味しい食べ物は食べた事はありませんでしたよ!?」

 

喫茶店に喜色を帯びた声がいつになく大きく響いた。それもそのはず、今の喫茶店は人っ子一人も居半ば店内は貸切に近い状態なっているのだ。

 

現在、喫茶店の古時計の針は伍を指している。詰まり今の時刻は夕方の五時であり、喫茶店の人の足が最も遠のく時間帯なのである。

 

「なんだ…お前カルデアに召喚されてから結構経ってるのにカタラーナも食べた事ないのか?」

 

燈日は呆気とられたような表情をしてしまう。目の前に居るセイバーのクラスに召喚されたサーヴァント。名を沖田総司…幕末の京都を中心に活動した治安組織、新撰組一番隊隊長。日本人なら一度は聴いた事のある歴史上に存在した伝説の剣士。だが歴史では男性と書かれているが本当は男装をした女性であったようだ。

 

「かたらーな?その名がこの奇天烈な食べ物の名前ですか?」

 

「正しくはクレマカタラーナ。別名クレマ・デ・クレマーダ。フランス菓子「クリームブリュレ」の原型と呼ばれるスペインの地方菓子だ。イタリアンレストランじゃドルチェ(デザート)として出されるているぞ」

 

「………???」

 

聞き慣れない言葉を聴いてクエスチョンマークを傾げ首を横にする新撰組の天才剣士さん。

 

「えっと…だな…まあ、とりあえず世界にはこんな甘味菓子があると思えばいいぞ?」

 

「はぁ…世界は拡いですね。まさか天才無敵の沖田さんの舌を唸らせるとは…恐ろしい限りです。この菓子と出会える機会をくれた燈日さんにはいつか御礼がしたいですね…人斬りの私には出来るか不安ですが…」

 

「そんなに自分を卑下する必要はないと思うがな…あと、礼ならもう貰ってるから別に要らん。」

 

「へっ?燈日さんに私、何か御礼をしましたか?」

 

気にすんな、っと燈日は話を無理矢理終了させた。

 

疑問に思いつつも沖田はフォークで三角形の切られたカタラーナを一口サイズに再び切り、口に含み「甘ァ〜〜い」と年相応の少女のような喜色満面の笑みを浮かべ、美味しそうに味わいながらカタラーナを食している。

 

美味しそうに食べている沖田の姿を横目で見ながら、今のお前の姿を見れた事がここの料理人としての最高の御礼さ、と心の中でそっと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、沖田さんや」

 

「何ですか?燈日さん」

 

「貴女の口から血が流れておるんだが」

 

「あぁ、これはですね…きゃらめる、ですよ!私の病弱(スキル)ではないですからね!?安心して下さ……コッフ!!」

 

「医者ーーッ!!」

 

 

その日、血を吐いて倒れた沖田を燈日が背負おうとした瞬間、たまたま来店したカルデアスタッフが『血を流しながら店内な倒れ込んだ女性と返り血を浴びている店主が抱えようとしている』所を見てしまい…喫茶店で殺人事件が起こしたのではないのか?とカルデアのスタッフ達に一週間疑われてしまう誤解される事件が起きた。そのせいで一週間、喫茶店に客足が驚くほど遠のき常連のアルトリアやジャンヌが珍しく優しく接してくれたのはまた別のお話で……

 

 

 

 

 

「まあ、是非も無いよネ♪」

 

知り合いの人斬りがまたカルデアで騒動を起こしたのを知って、何となくお馴染みの台詞を呟いた尾張の第六天魔王であった。

 

 

 

 




通常より短くなってしまいまして申し訳ありません。この作品は我がカルデアに天才無敵の沖田さんが来てくれた祝いに執筆してしまった作品です。元々は沖田さんはこの作品に登場する予定は無かったのですが…登場しても指して問題ではないという結論に達したので登場させて頂きました。次回は…Wオルタさんのお話を予定しております。

では、また次のお会いしましょう。


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店主の日記 part 2

○月○日 晴れ

 

カルデアの婦長ことナイチンゲールさんがカルデア清掃環境パトロールの一貫にて喫茶店に来店して来た。婦長さんが来店した時、ランチ用の新作アップルパイを作っていて丁度手を離せなかったので。

 

「すみません!ナイチンゲールさん!いま手が離せないのでまた後日で……」

 

と、言ったのが不味かった。

有無を言わさず後頭部に六発同時に打てるリボルバー式拳銃を向けられた(気になったので調べると、その拳銃の名はペッパーボックスピストルと呼ばれ彼女が生きていた時代に流行っていた拳銃らしい)

 

「ミスター・オレキ。理解していると思われますが時間というのは無限にありません有限なのです。なので今すぐ喫茶店内の清掃及び衛生環境を確認させて頂きます、これは貴方の為でもありカルデアの兵士の皆様の為でもあるのです。宜しいですか?」

 

「……あっ、ハイ…」

 

「ご協力ありがとうございます」

 

その日のアップルパイは焦げた。

 

彼女曰く、店内汚れは殆どなく隅々まで綺麗に清掃されおり他人に食事を提供するには全く問題ないとクリミアの天使様からお墨付きをもらった。

 

それと…婦長さんの笑顔は正しく天使のようだった。というか人生で初めて拳銃向けられた…怖かったな。

 

 

その日アップルパイを楽しみにしていたガキンチョ三人組が泣きそう顔をしていたので、三人には秘蔵のチョコレートを使用したクッキーと百パーセントオレンジジュースを提供した。

 

そして秘蔵のチョコレートをガキンチョから聞き入れたエッちゃんことヒロインXオルタに全て食べられてしまった。俺の楽しみが……

 

 

 

 

○月○日 晴れ

 

マスターちゃんの寝床に侵ny……よく行くらしいサーヴァント達が来店して来た。清姫、頼光、静謐、の三トリオである。

 

やれ、マスターは最近冷たいなど、マスターが可愛い過ぎて辛い、マスターの肌の露出が多すぎる、マスターの部屋に勝手に入りにくくなったとか……

 

今日は三人の愚痴にひたすら付き合わされた…なかなか堪える時間だった……

 

主観であるがあの三人にとってマスターは保護すべき存在であり、自分達の庇護下にいなければいけないと思っているのだろう。

 

とりあえず…マスターちゃん、頑張れ。

喫茶店のお兄さんは陰ながら応援してるゾ。

 

 

 

 

○月○日 晴れ

 

今日は久しぶりにレオナルドと魔術の授業及び訓練を行った。現在、俺は魔術師(仮)である。レオナルド曰く才能はそこそこあるらしい。最近になって知ったが祖父が魔術師だった事も関係しているなのだろう。まっ、正直な所、魔術とか余り興味は無いがカルデア職員(仮)として働くには最低限の魔術の知識と力が必要なのだ。

 

いざという時、使えなければ支障が出るので今日の夜に予習と復習でもしておこう。

 

 

*レオナルド、お前は人に教える時位、奇天烈な物ばかり作っとらんで、授業の時くらい真面目にせんかい。

 

 

 

 

 

○月○日 曇り…だった…

 

なんだが気分が優れない。

昨日の魔術訓練が身体に悪かったみたいだ。

更に風邪でも引いてしまった……

 

災厄だ……

 

これ以上は上手くかk………

 

 

 

 

○月○日

 

 

 

 

 

記入無し

 

 

 

 

 

 

 

○月○日

 

先日アルトリアとジャンヌには迷惑をかけてしまった。風邪を引いたのを知ってわざわざお粥まで作ってくれるなんて…ありがたい限りだった。ジャンヌの切った兎林檎は可愛いらしかった。

 

今度二人にお礼にお菓子でも振舞ってあげようと思う。喜んでくれると嬉しい限りだ。

 

 

 

 

○月○日 晴れ

 

最近凄く視線を感じる。

自惚れとかでは無く、本当に何かに睨まれている感じをするのだ。

 

喫茶店を閉店した辺りから、視線を感じる。

 

どうしたものか…此処は信頼出来るアルトリアかジャンヌ辺りに相談してみようと思う。

 

何か良い解決策が見つかればいいのだが。

 

 

*二人に特製サクサク生地シュークリームを渡した。やっぱ、慣れないことはしない方が良かった…渡す時…中々恥ずかしかった。

 

 

 

 

○月○日 曇り

 

朝一番に来店したのは何故かアルトリアとジャンヌが同時に来店して来た。やっぱりこのおふた方は仲良しのようだ。二人に朝食を振舞って上げた後に最近感じる視線について相談した。

 

「最近喫茶店を閉店した後に睨まれたかのような視線を感じんるだ、どうしたらいいと思う?」

 

的な台詞を言ったと思う。

 

すると、二人は何処か歯切れの悪そうというか、少し挙動不審な感じだった。アルトリアは無言でコーヒーの入ったカップを震わせながら飲んでいて、ジャンヌは馴れない口笛を吹きながら顔を逸らされた。

 

なんだ、だったんだ?あの二人……?

妙に顔が紅くなっていた気がしていたけど…?

 

 

 

 

 

○月○日 雨

 

喫茶店に『式』がやっと来店してくれた。

最近の『式』はマスターちゃんの主力レイシフトのメンバーであり常に最前線で闘っており中々逢えずにいたのだ。久しぶりに出逢う事が出来てやっぱり嬉しかったな。

 

元気そうで良かった。って言ったら…

 

『うふふ、私も貴方と二人きりで静かに過ごせてとても嬉しいわ』

 

相変わらず、綺麗な笑顔で応えてくれた。

その言葉が聴けただけで良かった。

 

『燈日君、最近貴方の周りに変な虫が飛んでるみたいね。困ったり、少しでも怖いと思ったらすぐに私の名を呼んでね。どんな場所であろうと燈日君の元に駆けつけるから。それが例え夢であろうと奈落であろうとも貴方の隣に来てあげるわ』

 

『式』はそう言い残すと喫茶店から姿を消していた。頼もしい限りだ…でも、彼女に助けて貰ってばかりは男としての意地が…『式』には悪いが今回の件は一人で解決してみせる。

 

 

 

 

 

○月○日 晴れ

 

 

結果、犯人はWオルタことアルトリアとジャンヌだった。正直かなり驚いた。なんでも日本に旅行に行こうと誘われた。

 

二人共恥ずかしそうな顔をしてたとので断るにも断れなかった。

 

仕方ないので、明日辺りにレオナルドに相談してみよう。多分無理だと思うが……駄目元だが言ってみるだけ言うことにする。

 

 

 

○月○日 晴れ

 

 

 

意外に意外。なんとレオナルドからカルデア外出の許可を頂いた。条件は俺が責任を持って二人を案内し、状況を連絡の為、朝と夜に無線で報告すること。そして必ずカルデアに帰還する、が条件だった。無線の件だけが面倒臭いが、なんやかんやで許可がおりた。

 

 

二人に報告したら、何故かいつもの通り口喧嘩をしていた。

 

「何故貴様がついてくるのだ突撃女!」

 

「はぁ?!五月蝿いわよ!アンタこそなんで付いてくんのよ!冷徹女!」

 

みたいな…会話だった。

 

無事にカルデアに帰還出来るよう最善を尽くそう。ガキンチョ三人と常連さんに日本のお土産をキチンと買うのを忘れないようにしておかなければ。旅行の準備が大変なので今日はここまで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




更新が遅れてしまい申し訳ありません。




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店主の旅行話

*不具合があった為、再投稿しました


日本のとある県のとある有名旅館にて、カルデアの店主及び反転サーヴァント二人組は宿泊する宿に身を戻していた。

 

辺りは夜になっていた。

旅館の中庭に視線をやると地面には玉砂利が一面に敷き詰められ、古めかしい灯籠が置いてある。更に丁寧に植栽された盆栽が見るものを楽しませてくれる。遠くの池からは響くは鹿威しの音だろうか。

 

これぞ日本の旅館、情緒溢れる庭園だった。

 

「それではお客様、どうぞごゆっくり」

 

夕飯を運び終えた数人の着物着込んだ仲居さんが一礼した後に部屋を出ていった。

 

流石は三つ星指定の人気旅館である。従業員一人一人の作法、お辞儀の所作や仕草が一つ一つ実に洗練されているではないか。

 

「凄いな……」

 

眼前に広がるは、庶民に届かぬ目を弾くばかりの美味しさを香る食べ物。

 

テーブルに中央に置かれるは、重ね盛りに置かれた肉厚のある伊勢海老、一度は見た事のある魚や一風変わった海の幸を文壇に使用した豊富な食材がこれでもかという位にカリカッリに揚げてある。

 

少し離れた場所にある小鉢には野沢菜の山葵漬け。お吸い物の椀から漂う芳ばしい香りはきっと松茸に違いない。流し盛りに盛りつけられた白身魚の刺し身も、一つ一つが脂がよく乗っていて食欲をそそる。

 

その他にも、花型の刺繍の焼き物、見たことも無い和を強調した美しく綺麗な食べ物。お品書で名前を見ても正直なところサッパリ分からない物が見受けられた。

 

それもそうだろう。テーブルの上に乗っている物は日本のテレビ番組などで観られる高級懐石料理なとで紹介されるような物ばかりが並べられているのだから。一般庶民である自分にとって、このような御馳走、生涯に指の数食べるか食べられないか……そう思うと心の底から感嘆の溜息を漏らさずにはいられなかった。

 

「話に聴くよりも中々豪勢な品が集まっているではないか、そうは思わぬかトウカよ?」

 

隣を見れば浴衣姿のアルトリアが余裕たっぷりの悠々とした顔つきで問うてきた。流石は一国の王様、これほど豪勢な料理を前でも王としての気品は一切衰える事を知らない。しかし彼女の浴衣姿、容姿や姿を裏腹に従順と見事に着こなしているではないか。何気なく彼女の姿を見ていると脳裏に何処ぞの軽装ゆえにアロハシャツが恐ろしい程似合っていた槍を持つ人物が脳内をふっと、横切った。

 

「いや、本当に凄いよ。アルトリア、本当にオレみたいな庶民がこんな高級旅館に宿泊してもいいのか?」

 

「愚問だな。私が貴様に嘘をつくはずもなかろう。これくらいの旅館を提供出来ずして何が王であるか。それともなんだ…トウカは私の事を信用出来ないのか?」

 

少しばかり、頬を膨らませ不機嫌さをコチラに伝えてくる。そうだよな、彼女を疑うこと自体が善からぬものだ。悪かった、と言い頭を彼女に下げると、アルトリアはいつものように優しく微笑み返してきてくれた。

 

「フ。わかればよいのだ。それはそうとトウカよ、少し聴くが、貴様は此度の旅行の趣旨について理解出来ているか?」

 

燈日は首を横に傾げる。

 

趣旨?一体なんだろうか?

確かに数日前に二人に日本に旅行に行こうと誘われ、流されるままに数年ぶりに自分の祖国、日本に戻ってきた。海外やカルデアに居すぎて久しぶり過ぎて帰ってきたのは何年ぶりかは忘れてしまっていた。

 

「なんだ解らないのか?貴様は?」

 

本気で分からんぞ。

頼むから教えてくれないだろうか?

 

「枯れた花のように俯きおって…全く…一度しか言わぬからしかと聴くがよい」

 

「トウカの心身を休養させるのがこの旅行の一番の目的だ。カルデアマスターによる人理修復後、トウカは大変疲れ気味だったではないか?瞳の隈と風邪の一件がなによりの証。それでは喫茶店の常連客として店主の気分が晴れなければ私の愛する珈琲の味も劣化する恐れがあったのでな」

 

「アルトリア……」

 

確かに魔術協会の応対やカルデア内の施設改築、予算決議、などなど、話せば長くなるのでここらで切るが、思い返せば最近は寝不足気味だったと思う。普段以上に張り詰めたのが原因かな。それもそのはず、あのマスターちゃんが遂に人理を修復した。あんな年端もいかぬまだ幼げが残る娘が全人類の未来を救った。ならば、こんな年長かつ半端者も彼女の為に人一倍頑張らなくてはいけない、と意気込み普段の倍以上頑張ってしまったのだ。結果、風邪で倒れてしまったが。

 

もし、今のオレのこんな姿を友人に…あのおっちょこちょいの八方美人に見られたら笑われてしまうだろうな。

 

「故に貴様は此度の旅行では存分に楽しみ祖国の料理を愉しむがよい。ブリテン王として貴様に命を下そう」

 

アーサー王は人の心を理解出来ない。

そんな言葉を聴いた事があった。そんな言葉は一切の間違いであると断言する。彼女は喫茶店という小さな店の店主である自分の事をこんなにも案じ心配してくれているのだ。

 

「有り難き幸せでございます、アーサー王…いえ、ありがとうな…アルトリア」

 

その言葉しか出せなかった。

彼女に対して、これ以外の言葉は出来なかった。

 

「うむ…で、では…食事が終えたら今宵は共に私と愛……「莫迦店主、なに人前で蝋人形とイチャついてんのよ。焼き殺すわよ」

 

アルトリアとは反対の隣の席につい先程まで蚊帳の外だつた竜の魔女ことジャンヌ・オルタは大変不機嫌かつ怒りを露にした状態で座っていた。彼女も旅館から支給された装いである浴衣に着替えていた。

 

「おい、田舎者はさっさとカルデアに帰還するがよい。貴様はこの場において邪魔以外の何者でもない」

 

「はあ?寝言は寝て言えっての、アンタみたいな何でも噛み付く狂犬を放置してたら莫迦店主に迷惑がかかるでしょうが」

 

「ほう、随分とムカつく物言いだな」

 

「真実ではなくて?真黒な騎士王サマ」

 

「ふむ、殺すか」

 

漆黒に染まった聖剣を、取り出し今に黒聖女に対して斬り殺さんとするアルトリアの前に燈日は両手を広げる。

 

「待て待て!!!喧嘩駄目だ!そんな事をしたら折角の美味しい食事が冷えるぞ?」

 

「むぅ…トウカがそう言うなら仕方あるまい…命拾いしたな突撃女」

 

「ア・ン・タ、がね冷徹女」

 

相変わらず、互いを邪険に見つめながらも食事を取り始める黒いおふた方。燈日も二人に続くように豪勢な料理に箸を伸ばした。

 

 

 

*・*・*・*

 

 

 

食事を取り始めて少し時間が経った。のだが、先程お風呂上がりである隣の二人は、何時にも増して女性としての色気が増しているような気がした。

 

湯上りで僅かに頬が火照り、小雪のような真白な髪の毛の先はシットリと水気を含んでいる。何より、浴衣の襟から僅かに見えるシルクのような白い谷間いつになく色香を漂わせていた。というか、色気がありすぎるというかセクシーの一言に尽きる。

 

和洋折衷。

 

西洋人と浴衣はここまで似合うのか。

否が応でも燈日は隣に座る二人を異性として見られずにはいられなかった。

 

「なにジロジロ見てんのよヘンタイ」

 

「バッ!そんなに見とらんわ!」

 

道場に打ち捨てられたゴミを見るように鋭利かつ氷の如く冷たい目線で燈日を睨みつけるジャンヌ。

 

クソぅ…完全に否定出来ないのが悔しいところだ。一応オレも男だし。普段とは違う格好した仲の良い女性をみたら否が応でも少しは意識してしまうものだ。

 

「む?トウカよ、そんな駄肉の塊のような女に何故鼻の下を伸ばしている。そんな阿呆よりも私をジックリと見つめるがよい」

 

「おい、アルトリア……あんまり…近寄るな」

 

「トウカよそう私から露骨に離れようとするな。もっと近こうよれ、近こうよれ」

 

肩を撫でるように擦り寄ってくるアルトリア。燈日は羞恥心を感つつあり、なんとか離れようとすると絶対に離さんといわんばかりに華奢な両腕からは見合わない力を隣から感じた。これが筋力Aランクか…恐るべし、微塵も動けないぞ。

 

「フ。残念だったな、突撃女。この通りトウカは私にゾッコンでかつ虜でな」

 

ドヤ顔でジャンヌに話しかける騎士王様。

ちょい、マジで動けんのだが……おい、顔を抱き抱えるなコラ。超恥ずかしいから!

 

「あら、やだ。コイツ自分の体を鏡で見直した方がいいんじゃない?アンタみたいな貧相な死体肌の女に店主が欲情するなんて地球が壊れてもありえないんですけどー?」

 

ジャンヌはそう言うと燈日の両脚を握りアルトリアから無理矢理引き剥がそうとする。

こ、これは不味い、非常に不味いぞ!?

サーヴァントに引っ張れでもしたら一般庶民(仮)の上半身と下半身が離れてしまう!そんなR18指定のことは誰も望んでない筈だ!

 

「待て待て!!!ちょ、少し二人共落ち着け!おい、バカ!!これ以上!引っ張りあうな!痛いから!凄く痛いから!無茶苦茶痛いから!」

 

「む!トウカ貴様!先程といい貴様は私の味方ではないのか!」

 

「スケベ店主!アンタまさかこの蝋人形に欲情してるわけ!?ヘンタイ!」

 

「だからなんでそうなるだよ!!!?というか早く離せェェェーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お客様どうされましたか?」

 

部屋に入ってきた仲居さんに苦笑いを浮かべ「大丈夫です、ご迷惑をお掛けしました」と素直に謝罪した。

 

それから今にも喧嘩を始めようとする二人を体を引っ張りあわれながらなんとか諌めることに成功した。旅行が始まって、二人の喧嘩は一体何度目なんだ…と思いつつ回数を数えるのは止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月○日 晴れ

 

無事にサーヴァント二騎をカルデアに帰還しました。休養も存分に出来大変結意義な休暇でした。レオナルドとあの二人には感謝してもし切れません。ありがとう。

 

さてと、明日からまた頑張るとしますかね。

 

 

*和菓子と新茶お土産を常連さんとカルデアスタッフに渡したら喜んで貰えた。わざわざ悩んで買った甲斐があったものだ。

 

 

 

 

 

 

 




次回は番外編を予定しております


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たまには和食も

今年最後の投稿。
2部凄く楽しみです。
来年もよろしくお願いします。

*誤字報告 感想ありがとございます。


「えっ!カルデアに茶屋ってあるの!?」

 

ある日のカルデア食堂に驚きの声が響く。

私の声に呼応するように隣に座っている同じ女剣士であり幕末の京都にて壬生狼の異名で知られたかの有名な新撰組の沖田総司も大変意外そうに驚いた顔をした。

 

「あれ?もしかして喫茶店のこと武蔵さん知らなかったのですか?」

 

 

武蔵と呼ばれた鮮やかな色の着物に日本刀を帯に四つ帯刀している女性は、日本では誰もが一度は聴いたこのある二天一流、五輪書で知られる日の本一の剣豪と謳われた『宮本武蔵』そのご本人なのである。何故に史実や歴史と違い性別が女性なのか知りたい方は自身の手で確認することを推進する。

 

「初耳よ、初耳!カルデアにそんな所があるなんて全く知らなかったわ!」

 

かんしゃく玉を噛み砕いたかのような衝撃が武蔵の中を大きく伝わる。

 

「あれれー?カルデア内じゃ一部の人達に有名な名所ですよ。通常のスタッフさんや私達のような召喚されたサーヴァントがよく足を運んでいますよ!主に黒系の気難しい性格の方が大変多いですが」

 

沖田は苦笑いを浮かべつつ話す。

はい?黒系とはなんぞ?

 

「そ、そうなの?私カルデアに召喚されてから剣の修行と食堂で旨い御飯(タダ飯)にあり付いていたから知らなかったのかしら……なんてことでしょう……茶屋とうどん好きの剣客としてこの所業は失格だわ……」

 

「わわ、そんなに落胆することはないですよ武蔵さん!私も召喚されてから暫くの間ノッブに聴くまで知らなかったのですから!」

 

悲壮に満ちた表情を気が鬱する武蔵をわたわた、と慌てながらも必死でフォローする沖田さん。因みにどっちが本来年上なのかは触れないでおこう。

 

「うん、うん。やっぱ!沖田ちゃんの言う通りいつまでも落ち込むのはよくないわね!」

 

暫く沖田に慰められ、武蔵の表情は霧の晴れるようないつもの明るい女性の表情に戻った。

 

「それで、その茶屋……じゃなくて喫茶店はどんな料理を振舞ってくれるの?」

 

「えーっと、珈琲やふれんち?とやらの西洋料理を主に扱っている日本の今風?の喫茶店ですねー。燈日さん……いえお店の店主さんがお客さんリクエストで和菓子も作ってあるので私達日本の英雄の好む食事を提供してくれますよ」

 

ふーーん、と顎に手をやり武蔵は軽く頷く。

一体どんな人物なのだろうか、人類史を護るために魔術師達と国連に設立されたカルデア。言うなれば人類を護る為の最後の砦であり矛でもあるそんな場所に茶屋、喫茶店を開く人物とは。さらに少し前まで魔術という存在すらも知らかった言うではないか。不思議と武蔵そのお店の店主に少しばかり興味を抱いてしまった。

 

「でも、そんなに有名な人なら私はなんでカルデアで見たことなかったんだろー?」

 

「燈日さんはカルデア内ではトップランクの料理の腕をお持ちですが本人曰く『カルデアじゃあんまり目立ちたくないし、折角料理好きサーヴァントの腕を振るう場所を奪うような行為はしたくない』とのことなので余りカルデアでも見かけないのそのせいかと思います」

 

目立ちたくないか。

店主さんは随分と謙虚な人なのね。

 

「それと!私のオススメで燈日さんの作ったカタラーナはとても美味しいのでオススメします!」

 

「かたらーな?なにそれ?」

 

沖田は両腕を組み、よくぞ聞いてくれした!と言わんばかり喜色の笑みを浮かべる。

 

「確かいたりあん?料理とらやのデザートで出る甘味菓子でしてね。食べたから口の中で甘さと苦味のはーもにーが奏でるのです!」

 

「ほうほう!沖田ちゃんがそこまで褒め称えるそのトウカって、人はさっき言った通りやっぱ相当の腕を持つ料理人なのね」

 

「えぇ、まぁ、はい……」

 

沖田は何処か歯切れの悪そうに口篭り、目線を下にやる。その様子をみた武蔵が「どうしたの?」っと声をかけると雀のような小さな声で呟いた。

 

「なんというか……私情で大変恥ずかしいですが沖田さんは……その……茶屋然り燈日さんの居る喫茶店が大変気に入っているのです」

 

沖田はソッポを向き何処か照れくさそうに頬をかきながら答えた。彼女のこの表情の理由はカルデア吐血事件の際に自分を英霊である自分を不器用なからも手厚く異性の自分を看病してくれた燈日に沖田は次第に心が惹かれていったようだ。共に過ごした日々は短いが彼には自分達のマスターと同様に「人種や言葉、思想が違えど人を引き寄せる」不思議力を持つ人物だった。彼女の恥ずかしそうな顔と瞳は何処からどう観ても僅かな淡い恋心を持つ乙女だったが、しかし残念かな。目の前に居る恋心に疎い新免武蔵には「沖田ちゃんやカルデアの皆に美味しい料理を提供してくれる優しい店主なのか!」っと想うしかなかったのであった。

 

友人の沖田に喫茶店の居場所を聞き終え、スグにでも喫茶店に来店しようとした新免武蔵だったが我等がマスターに偶然鉢合わせ共に訓練しないか、と問われてしまい気がつくと日が落ちる夕刻まであっという間に過ぎてしまったのだ。そして現在新免武蔵はカルデアの廊下を全力疾走中なのである。

 

「まだ開店してるかしらッ!!?」

 

両腕を大きく振り風を切り走り続ける。

そして目的地、カルデアの廊下の隅に置かれたレトロな看板を見るや否や急停止する高速車の如く少々廊下に大きな摩擦音をたて、重苦しい木製の扉の「Open」の文字を見て安堵のため息をついた。

 

風で少し乱れた髪や着物を身嗜みを最低限整え、鈴の音をたて木製の扉に手を掛けた。

 

「アンタなによその格好。死体肌の女が着たメイド?あっははは!!!まるで生きた屍のようね!滑稽ね、実に滑稽よ。ハロウィンはとっくの昔に終わってるわよ。ふふっ、それはそうと客であるこの私にスマイルを百個程頂けないでしょうか冷徹屍生人メイドサマ?」

 

「今日は随分と醜い口を開くな地雷女。給仕係に対しそのような浅ましい暴言を吐くとは……これだから常識を知らぬ田舎娘は。なに、私も人並み情があるからな、先の私に対し知能程度の低い会話した件については貴様をこの喫茶店に永久に出禁の刑で許してやろう感謝するんだな中二病患者」

 

 

なんだこれ……

 

 

レトロな店内でメイド服に身を包んだカルデアの高火力代表格のセイバー・オルタと竜の魔女こと墜ちた聖女ジャンヌ・オルタが互いに一歩も譲らないと言わんばかり口論で火花を散らしていた。奥のテーブル席にはゴスロリ服のナーサリーライムとジャック・ザ・リッパーが足をパタパタと振りながら忙しそうに待っていた。

 

そして厨房から出てきた黒い調理服に身を包んだ茶髪の若い容姿の男性が湯気の立つ二つマグカップ持ってそんな光景に軽い溜め息を零し、子供達の前にマグカップを置いた。

 

「ご注文のミルクココアです。二人ともカップ凄く熱いから気おつけて飲むんだぞ」

 

子供達に気さくな優しい笑みを浮かべ、エプロンのポケットから板チョコを互いに渡し、アルトリアお客さんと小さく呟き子供達の喜んだ顔をひと目見てそそくさと厨房に消えた。

 

「むっ、いらっしゃいませ。貴様は確か新米セイバーの新免武蔵だったな?そら、適当に空いてる席に座るがよい。おい、ポンコツ娘さっさとこの店か出ていけ」

 

「はぁーー!?誰がポンコツよ!?」

 

武蔵はとりあえず空いてるカウンター席に座る。すると厨房から店主が戻り、武蔵の前にお店の注文表が書かれた品書きを置いた。

 

「ご注文がお決まりになりましたら、近くのメイドにお頼み下さい」

 

店主は再び厨房に消える。

品書きには基本的に珈琲やパスタ、オムライスやデーザート等の西洋料理がやはり多く書かれてあり、下に行くにつれて羊羹や大福等の和食が品が書いてある。沖田の言っていたカタラーナも品の中に書いてある。しかしその中で郡を抜いて存在感を漂わせていた料理があった。

 

「み、御手洗団子両儀スペシャル?緑茶付き?」

 

料理の下の説明欄には『あの魔眼使いの両儀式が手掛けた白玉団子をシンプルなみたらし団子にしてみました』

 

き、気になる。凄く気になる。

武蔵は自然とメイドさんに声をかけこのスペシャル団子を頼んでしまう。

 

「では、少々お待ち下さいませ」

 

メイドは注文表に書き軽く一礼すると店主の居る厨房に向かっていた。暫く楽しそうに食べている子供達と談笑しながら待ってすると厨房から木目の盆に緑茶と団子乗せた皿を目の前に置かれる。

 

「緑茶のお代わりは自由だ。その時は私に声をかけろ。味わって食べるがよい」

 

黒メイドはそう言うと魔女に改造された拳銃を突きつけ、さっさと帰れと促す。

 

まだ……喧嘩するんだ……あの二人。

 

 

「さてと……」

 

団子、それは日本を代表する和食の一つ。

色合い、食感、味によって全てが変わる難しい一品なのだ。

いま目の前にある三本の竹串に刺さっている焦げ目のついた一口サイズの団子に砂糖と醤油をベースにしたであろうまろやかなタレのかかった団子を見つめる。そして息を止め、一つの竹串を持ち一口口にゆっくりと入れる。

 

「うまッ……」

 

なにこれ…なにこれ!?

気がつくと団子は既に喉を通っており、口内に砂糖と醤油の御手洗のタレの味だけが残っていた。

 

こ、今度こそは!!

 

武蔵は再び竹串を持ち団子を口に含んだ。ゆっくり咀嚼すのだ。と心に言い聞かせて団子を噛み漸く、いや瞬時に理解した。この団子は柔らか過ぎるのだ、と。甘美な甘さと柔らかな食感、女性のみならず男性にも誰からも好まれる餅。そして完璧過ぎる御手洗の砂糖と醤油タレ二つのコクの味わい。

 

「お、おいひぃ……」

 

感服致しました。

武蔵は悟りを開いた者のように静かに瞳を閉じ団子と緑茶を静かに飲むのであった。

 

「美味しかったですか?」

 

「へっ??」

 

団子を食べ終えた頃、音も無く目の前に現れた喫茶店の店主さんが先の子供達を見るような優しい笑みを浮かべ武蔵の前に立っていた。

 

け、気配遮断!?

この人は一体何者なの!?

 

と、武蔵は考えてしまったが。事実、余りの美味しさと甘美な空間によって気が緩み過ぎて周りの存在すらも気付かなかっただけなのだ。

 

「あっ、もしかしてタレは薄味派でしたか?それなら申し訳ありません……うちは少々濃ゆ味でしたので」

 

「い、いえ!とても、とても!美味しかったです!新免武蔵大変感服致しました。誠にありがとうございます!」

 

「それは良かったです。お粗末様でした」

 

彼は照れながらそう言って微笑んだ。さっきの笑みよりも深みのある微笑みで武蔵は無自覚にその表情に面を喰らってしまった。

 

あぁ、この人は絶対良い人だ。

そう直感が告げてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ〜燈日さんの手作り御手洗団子ですか〜美味しそうですね〜」

 

「あれは凄かった、色々と凄かった。是非沖田ちゃんも食べてみるといいわよ!それとも今日時間が空いてるなら一緒に行かない?」

 

「はい!是非!是非一緒に行きましょう!」

 

そんな喫茶店好きの仲良し二人の会話がその日いつになくカルデア食堂に響いたそうな。

 

 

 



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二部(本編ネタバレ注意) 女神様は夜の喫茶店にやって来てくる

*2章の僅かなネタバレ有り


アイスクリーム。それは世界中で現在最も浸透し深く愛されている氷菓と言っても過言ではない食べ物。歴史は古くから遡り、征服王の名で知られるアレキサンダー大王ことイスカンダルが戦場の兵士達に山から取ってきた氷雪にミルクや蜂蜜等の糖を加えた飲み物、ソルベットを提供し軍の指揮を高めたという逸話が残っている。また、ローマ帝国のシーザーことカエサルそして暴君ネロの異名で知られる、茨の皇帝もソルベットを食べていたそうな。

 

そして現在。アイスクリームは態様な変化をし様々な人々をいまも虜にしている。そう、それは神霊や神様やら氷菓子のことを一切知らない過去の英霊達すらも魅了している。

 

「うむ、実に美味である」

 

喫茶店の空調が最も届く涼しいテーブル席にてバニラアイスを食べる一人の女性。気品と趣きある紫のドレスを身に纏う淑女、名をスカサハ=スカディ。かつて異聞帯にてカルデアと激闘を繰り広げた英霊の一人であるが訳あって現在ではカルデアのマスターに力を貸すサーヴァントになっている。

 

「今日のアイスはどうですか女神様」

 

「うむ、食堂とは少々味が違うが貴様の作る氷菓も中々であるぞ店主」

 

「そいつは嬉しい限り……だけど、女神様もう少し早く来店してくれると自分は大変嬉しいんですけどね」

 

「む?何を言うのだお主は、風呂上がりのアイスを食べるのが私の日課なのだ。というかまだ日は変わっておらぬではないか」

 

喫茶店の店主こと折樹燈日は既に日付が変わろうとしている時計の針を見て少し心の中で溜息を零した。目の前の彼女とは召喚されてから少しばかり親交があり最初は取っ付きにくい人物だと思いきや意外とフランクかつ純粋な性格で幾度が廊下で雑談やらしている。彼女は喫茶店の大事なお客さんとして度々食事を提供しているが、彼女は決まって夜の喫茶店にやって来るのだ。理由は決まってマスターちゃんに有り。不意なイベントや微少な特異点解決等の様々な場面で女神としての彼女の超が付く程の有能な力を凄く借りているが原因である。

 

「最近は喫茶店によく来てくれるのは嬉しいんだけどさ、いまの時刻が閉店時間だってことを忘れるなよ?サービス残業みたいで嫌だぞコラ」

 

店主はスカディの前にバニラアイスの乗ったブルーハワイのクリームソーダを静かに置くが、無意識に気が抜けてしまいフワッと、思わず欠伸が漏れてしまった。これはいけない、と思い反射的に彼女に謝罪をしようとしたが、彼女から気にするなと抑制された。

 

「気にせずとも良い、既に営業時間は終えている。私の前で欠伸をするくらいの無礼は貴様の作った美味なブルーハワイに免じて許してやろう」

 

女神様は寛大な言葉で言うが、クリームソーダの入ったグラスをチューと可愛いらしい音を立てて飲んでいる姿のせいか、どうも締まらない気持ちになる。だがカルデアに来たばかりの物騒な神霊のスカディがこうも優しくなったのかと思うと素直に礼を言うことにした。

 

「そういえばお主はいつからにカルデアに所属しておるのだ?」

 

グラスの入った氷をストローで回しながら、彼女は何気なく聞いてきた。カラカラと氷同士がぶつかり合う音と血のように真っ赤な双眼がジッと品定めるように見つめてくる。

 

「あれ?女神様に言ってなかったけ?」

 

聴いておらぬ、と頬を栗鼠のように膨らましてあからさまにご立腹な態度をしめす彼女の姿を見て、相変わらず変な所で純粋だなと思い少し頬が緩んだがきっと許される筈だ。

 

「元々は友人に資金集めに良い場所があるとか言われて一般応募でカルデアに来たんだ。んでお偉方にレイシフト?やら魔術やらの才能があると言われて……詳しく調べると祖父が貴大の魔術師だったという事も解ってね、んで見習いとして暫くは医療担当のサポートしていたかな」

 

「む、お主医学の心得を持っているか?」

 

失敬な、補助を任されたから当然ある程度並の知識は持っていた。サボりがちの少し年上の主任とは良く甘味について雑談したものだ。

 

「勿論、そのお陰でマシュとも出逢えたからな」

 

思えばあの友人に勧めれてからこのカルデアにやって来て、ガラス張りの無菌室で彼女とも出会ったんだっけな。当時は無表情で感情の起伏が少なくて本当に籠の中の鳥という言葉が最も合う子供だった。今じゃ、マスターちゃんと一緒に人理修復を成し遂げ仕舞いには世界を壊さんとする異聞帯のクリプター達との激闘に身を投じている。マシュは本当に立派になった……戦いすら知らない女の子が大切な人を守る為に命懸けで震える脚を抑え前に必死に進んでる。あぁ、凄く感慨深いしマシュの背中を思い返せば今すぐにでも涙が流れてきそうになる。最近じゃ涙脆くなってきた。

 

「それで、お主は才能も適正もあるにも関わらず何故食事処などを開いているのだ?」

 

「それかぁ……うーーむ、凄く単純だぞ?」

 

「なんだ?早く答えよ」

 

「ここの飯がめちゃくちゃ不味くてだな、んでオレが元料理人だったから結果的にオレがカルデアの飯を作ることになったんだ」

 

「な、なんじゃそれは……」

 

あとは流れるまま、オレの作った飯が職員や所長に気に入られ気がつけば一般応募で着たはずの者がカルデアの食堂の責任者になって、万能の天才の弟子にもなり、様々な場面で人類最後のマスターとその相棒のマシュを陰ながら支えてきた。現在ではマスターちゃんに呼ばれた料理好きの英霊達がオレの跡を引き続き食堂を切り開いている。そして未だにオレの料理が食べたいという要望に応えてレオナルドに許可を貰い使用されていない一室を喫茶店に改築して現在に至っている。

 

「みたいな的な感じかな?女神様的にはなんの面白味のない話だっただろ?」

 

あははは、適当に愛想笑いを作ってみせるが女神様は意外と驚いたようで呆れた顔をしていた。あれ?こんな表情見たことないぞ?

 

「ふむ、お主が我等のマスター同様に以上に肝の据わった者だと改めて思ったぞ」

 

「いやいや、女神様マスターちゃん程オレは凄くないぞ??」

 

あの子程のコミニケーション能力はないし、異国の地で直ぐに順応するほどの適応力はない。そして何より……どんなに絶望的な場面であろうと諦めようしない強い心に対して彼女に決してオレは勝てないだろう。

 

「もし、お主が我等のマスターになっていたら現在より更に異な事になっていたやもしれぬな」

 

ふふふ、っと女神みたいに……いや女神様だったわ。てか微笑みながら何とんでもないことを言ってんだこの人!?

 

「はぁ?女神様あんた何言ってんだ?そんなこと万に起きる筈ないだろ」

 

「さぁて、それはどうかな」

 

夜の喫茶店でバニラアイスを大変美味しそうに頬張る女神様の有り得ない言葉を聴いて店主は、愛想笑いを浮かべるほかなかった。

 

 

 




お久しぶりです。
筆がすごく乗りました。
生きています、また宜しくお願いします<(_ _)>


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店主の日記 Part 3


*二部のネタバレ有り
*ほのぼのではないので注意


2017年 12月△日 晴れ

 

レオナルドから朝のミーティングにてカルデアに第一次査問団がやって来る日付を伝えられた。これにより、マスターちゃんに従うサーヴァント達は強制的に退却せざるを得ない状態になった。まだ英霊達が退却するまで数日こそあるが……この日が人理修復を終えた日から分かっていたつもりだったが、幾分か彼等との思い出が多く出来すぎた。正直言うと……サーヴァントの皆との別れは辛い。だが辛いのオレ独りではない。皆辛い、そしてその中で最も辛いのは一番サーヴァントと契約を結び何日もの間、絆を深めてきたマスターちゃんなのだから。オレは大人として決して涙を流さず出来る限りの笑顔で彼等を見送ることに決めた。

 

2017年 12月☆日

 

カルデア退却における雑務があるので今日は割愛。レオナルド・ダ・ヴィンチさん?弟子のオレに雑務を押し付け過ぎではありませんか?巫山戯けていますか?よし、折角だし彼奴に対する今までの文句を全て書いてやろうか。

 

肉体性別が女性の癖に男湯に入ろうとした実に変態的な行動は弟子としt…………

 

 

2017年 12月☆日

 

あの野郎……最後の最後でとんでもない仕事の量を笑いながら押し付けやがって……例のトランクは数日後に移し替えが出来る。絶対にカルデアを退却する前に思いっきりぶん殴ってやる……勿論隠れてるホームズの奴もな!!!!オレは絶対に許さないからな!!!!

 

 

2017年 12月25日 快晴

 

多くのサーヴァントが英霊の座へと退却、彼らの居るべき場所へ還って行った。マスターちゃんとマシュは笑顔を崩さず、大切な仲間達を見送る。オレ自身も仲の良かった英霊達は別れの挨拶をしてどんどんと戻っていく。エミヤの野郎なんて別れの挨拶もせずに地味に嫌味&お節介な置き手紙なんて退却しやがった。兄貴に関してはじゃあな、の一言の後に肩を叩かれて実に彼らしい別れ方をした。

 

えっちゃんことヒロインXオルタは友人(そっくりさん)にオレの手料理を凄くお勧めしてくれるらしく、御礼にチョコを与えると軽やかな足取りで帰還していった。子供英霊達とも別れのハグをした後に幕末剣豪こと沖田は突然別れの挨拶に来たかと思えば私にもハグしてください!!!!とか頼まれたので恥ずかしいから無理と丁重に断ると、そんな!?後生ですから!! と擦り寄ってきたアイツの勢いに負けてハグしました。沖田は満足気に今度会ったらもう一度お願いしますね、っとなんかめちゃくちゃ下手くそに色っぽく頼まれた。がお前とは金輪際しないとそっぽ向いて応えておいた。

 

その様子を偶然?見ていたジャンヌ・オルタに慌てて声を掛けるとトマトみたいな真赤な表情で今度会ったら全力でぶん殴る!!!!とか意味不明な言葉を残して還った。本当になに言ってんだろなジャンヌのやつは?まぁ、最後まで元気そうで良かったと純粋に思った。

 

そして式はいつも通り気だるげな表情のまま、挨拶無しでそそくさと退却しようとしていたので元の世界でも健康に生活しろよ、って伝えると振り返らずに片手を挙げてまたな、と言ってくれた。彼奴とはもう一度ちゃんとした形で友人として会いたいものだ。勿論、もう一人の『両儀式』とも別れの挨拶をした。彼女は私と貴方は直ぐに逢えるわ、と意味深な事を言い残してカルデアを去った。最後に頬に触れた彼女の手は相変わらず暖かくて寂しい気持ちになる。

 

アルトリアは、いつものように喫茶店にやって来てカルデアで過ごして来た普段通りに珈琲を頼んで朝食を食べて帰路に発とうとした時に、去り際に今までに凄く綺麗な笑みを浮かべていたので……

 

「またの来店をお待ちしております騎士王」

 

なんて言葉を吐いてしまった。

アルトリアはオレのそんな言葉を聴いたら

 

「あぁ……また来るぞ……トウカ」

 

そう、言葉を返してくれた。

これがオレのサーヴァント達との別れ話。

この遠い併置にやって来て数年こんなにも思い出が出来るなんて夢にも思わなかった。この喫茶店とも遂にお別れだ……素晴らしい人達との出逢いに感謝を……カルデアを解雇されたら日本にでも帰ろうかな。暫く祖国の実家で静かに暮らすのも一興だろう。だが、数日後には査問団との対談だ、全てが無事に終える事を願っている。

 

 

 

 

2017年 12月27日 曇りのち晴れ

 

カルデアから英霊達が去って日か経ち、遂に魔術協会から約50人程の人数で構成された第一次査問団がやってきた。アニムスフィア亡きカルデアを私財をはたいて買い取ったとされる錬金術の名家で知られるムジーク家の嫡子、魔術師ゴルドルフ・ムジークが物騒な私設部隊そして胡散臭い神父と女性を二人連れて来た。ホームズと師のレオナルドと共に予めムジークについて詳しく調べておいたが危険性は少ないと判断した。声は喧しい印象だった。しかし、あの二人。聖堂教会の言峰綺礼とNFFのコヤンスカヤはどうも妖しげな雰囲気を出していた。あのような奴等は危険な臭いがする。可能ならばオレ自身の杞憂で終われば良いが……

 

 

今日はとりあえず、独房にぶち込まれてオレは査問団に取り調べを受けた。出身、国籍、魔術、答えられる範囲を答えた。祖父が魔術師だったことを除けばオレはただの一般応募で来た普通の人間。そこまで質問は多くなかった。

 

マスターちゃんには査問団に変な事を聴かれても堂々としてなさいと事前に伝えておいた。君は最善の行動と最大の努力と行動をして世界を救ったカルデアのマスターと胸を張って答えろっと言っておいたので大丈夫だろう。

 

独房の帰り道にコヤンスカヤに嫌味を言われていたマスターちゃんと踏まれていたフォウ君を助けた。がそのせいで通りかかった数名の警備兵に銃で何度か殴られた。結構殴れたが、その時のコヤンスカヤは実に悪い顔をしていた……だけどマスターちゃんとフォウ君が無事で良かった。東館のスタッフの皆は元気にしているだろうか?元食堂の責任者として全員の食生活が心配だ。

 

 

2017年 12月31日

 

独房生活最終日との事だ。

上手くいけば解放されるだろう……マスターちゃんやマシュ……そして師のレオナルドは無事だろうか凄く心配だ。どうかこのままn…………

 

 

……文字が途中で消えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし、この日記を貴方が再び閲覧していることを願い書き残して置きます。レオナルド本当にすまん。ロマニとマリーとの約束を破ってしまった。これから先はオレに出来うる限りの行動をしておく。どうか皆が無事でいられるよう切に願っている。

 

 

 

 

 




次回に続きます。


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番外編 オルタさんは珈琲が好き (オルタ編)

「………む」

 

何か鳴っている。

ピピピピ、と耳障りな甲高い音を何度も何度も鳴らしている。

 

「……眠い」

 

まだ、眠たいのだ。

故に起きあがりたくない。

 

だが、アラームは一向に鳴り止まない。

 

「……騒騒しい」

 

自身を怨敵だと言わんばかりに、時計のアラーム音は私の頭に響く音を鳴らし続けている。

何故かこのアラーム音が私に対して、早く起きろ、起きろ、起きろ、と言って、いる幻聴が聴こえてならない。

 

寝惚けた瞳を擦り、現在の時刻を確認する。

電子時計はきっかりと午前7時を指している。

 

「……仕方が無い」

 

布団を畳み、何時ものように起床する。

洗面所で顔を洗い、寝癖のついた髪をブラシで通して、軽く身支度を整える。

 

そして最後に魔力で編んだ特注の漆黒の鎧をドレスの上から着込んで準備は完了だ。

 

「……では、行くか」

 

闇に堕ちた漆黒の騎士王、セイバー・オルタは呼吸を整え、見慣れた自身の部屋を後にした。

 

目的地は端から決まっている。

私の愛する珈琲を提供してくれる店主の元へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編 オルタさんは珈琲が好き (オルタ編)

 

 

 

 

 

 

近代最新鋭施設の集まるカルデアに最もそぐわない風貌をする扉の前にセイバー・オルタは立っていた。木製の扉に付いているプレートには「Open」と表示されてあり、店先の看板には普段のメニューと本日のオススメ料理についてチョークで記載されていた。

 

セイバー・オルタは喫茶店に来店する前に必ず看板を見るのが習慣である。

この看板には喫茶店の店主が薦める料理が記載されており、更には新しく入荷した品等が簡潔に書いてあることもある。喫茶店の常連として最新の情報を得る事が出来る場所の一つなのである。少し前に店主が看板でオススメの料理について童のように語っている姿を思い出し少しオルタの頬が緩んでしまった。

 

「ほぅ……べーコンエッグに黒トースト、ブレンドコーヒーが付いたモーニングセットが本日のオススメか」

 

看板には新しいべーコンと卵が入荷したので、是非モーニングセットをお勧めさせていただきます。モーニングセットを頼む方は御手数ですがべーコンは薄切りか厚切りか店主にお申し付け下さい。(こちらのモーニングセットは今後喫茶店で提供するか一考しております)

 

トウカめ、朝から私の食欲を唆る料理を薦めてきおって……今日の朝食はこれで決るではないか。

 

セイバー・オルタは内心、うきうきと高揚する気持ちを隠しつつ扉の取手に手を出し、鈴の音を鳴らす重苦しい扉を開けた。

 

喫茶店の中に入ると、薄暗い電球とレトロとアンティーク風の物が集まった独特の雰囲気を漂わせる喫茶店の中に彼は居た。

 

カウンター席の前で、ゴリゴリと手挽きミルで珈琲豆を挽く心地よい音は、まるで楽器を奏でているようだ。珈琲の芳醇な香りと店内に流れるクラシックな音楽が重なり、二つの波長と香りが重なりとても良き空間が創られている。

 

「トウカ、コーヒーを飲みに来たぞ」

 

いつもの台詞を言いカウンター席に座る。

 

当たり前だが喫茶店には誰も居ない。

今日も当然ながら一番乗りだ、と心の奥底でガッツポーズをとる。

 

「ん、いらっしゃいアルトリア」

 

トウカはコチラを一目だけ見ると、少しだけ微笑んできた。ゔ……最近のトウカは何故か私に優しく微笑んでくるのだ。普段は無愛想な顔であるのに、ふとこのように優しく微笑んで来るのは少し卑怯だと想う。

 

「んで、注文はいつものブレンドとパンケーキ十枚で良いのか?」

 

「フ。私がいつまでも砂糖と蜂蜜タップリのジャンキーなパンケーキなどで腹を満たすと思ったか?」

 

「はいはい、それじゃあ何が食いたいんだ?」

 

「モーニングセットとやらを戴こう」

 

「べーコンは?」

 

「無論、厚切りだ」

 

「了解っと……先に珈琲をお渡ししますので、少々お待ち下さい」

 

それからトウカは挽き終えた珈琲豆をペーパーをセットしたカリタ製のドリッパーに豆を入れ何時ものようにケトルに入った湯を注ぐ。香りを最大限引き出し、美味しい珈琲を作るために蒸らし作業は決して忘れていない。

 

優しく、優しく膨らんだ豆を壊さないようゆっくりと注ぐ姿はいつ見ても惚れ惚れとする。普段、とりわけのんびりとしているトウカが寡黙で珈琲を淹れる時の静謐な姿は、上手くは言えぬがとても私にとって好い姿なのだ。正直な所毎日トウカのこの姿と珈琲を飲みに来ていると言っても過言ではない。

 

「どうぞ、カルデアブレンドです」

 

「……御苦労」

 

王としての威厳を込めた言葉遣いで、角砂糖の乗ったソーサーに乗った珈琲をトウカから受け取る。

 

そして取手をとり、一口だけ珈琲を啜る。

苦味とコクのある旨みと酸味の絶妙なバランスがとれた絶妙な味が口に拡がり、今から朝が始まるのだ、という感覚に落ちる。

 

トウカは厨房に食材を厨房へ料理をしに行き姿を消した。

 

静かに漂う店内に流れるクラッシク音楽を耳を傾け、ブレンドコーヒーを味わい深く飲む、この静かな時間。

 

暫く悠智ある甘美な時間を過ごしていると、トウカが厨房から料理を持って現れた。

 

「どうぞ、モーニングセットです」

 

「うむ、御苦労だ」

 

トウカは二つの皿を私の目の前に置き、フォークとスプーンを置いた後はカウンター席の前へと戻って行く。

 

真白な皿には厚切りべーコンと目玉焼き、更にサラダが少々載せてある。味付けは塩コショウとシンプルな料理だ。左の皿にはバターを乗せ、斜め切れ目の入ったこんがり焼き目の付いたバター黒トーストが乗っていた。

 

ふむ、実に食欲を唆るではないか。

 

フォークを片手に、まずはメインであるべーコンから食べる。ベジタブルファースト?そんな今時の風潮など知らんな、王である私は好きな物から食べる派だ。これは誰にも譲れない。

 

む、それにしてもこのベーコンはよく脂が乗っているではないか。このジャンキーあふれるギトギトする感じが堪らんな。

 

ほぅ、目玉焼きは半熟か。

口に放り込んだ時のドロっとした時の卵の甘みも中々美味しいではないか。

 

黒パンはシンプルなバタートーストか。

これも味も食べやすく良いな。

今度はハムやチーズを大量に乗せたサンドイッチを頼むとするか。

 

「アルトリア、コーヒーのお代りはいるか?」

 

「もっきゅ、もっきゅ、頂こう」

 

「ほれ、カップとソーサー貸してみろ」

 

「うむ、トウカよ」

 

「ん、なんだ?」

 

「今日のデザートはなんだ?」

 

「ラム酒とドライフルーツのパウンドケーキだ」

 

「ほぅ……因みにそれは幾つ頼めるのだ?」

 

「残念だが、御一人様一切れの予定だ」

 

「フ。ではトウカよ、パウンドケーキを十切れ頂こうか」

 

「阿呆、話を聞けよな。お前だけ特別に出来るかっての。お客様は皆平等なんだよ」

 

トウカは呆れたように両手をわざとらしく挙げる。むぅ……そこは私にだけ特別扱い位してくれも良いではないか。

 

「まあ仕方が無い……まだ腹の足しにはならんがデザートを持ってくるがよい」

 

「へいへい、少々お待ち下さいな」

 

それからセイバー・オルタ前に出されたのはドライフルーツのパウンドケーキとコーヒーゼリーと生クリーム、自家製のコーヒーアイスの三位一体が満遍なくバカラのグラスに入ったセイバーの愛するパフェを差し出した。

 

「トウカよ……これは」

 

「いつもの食いに来てくれる礼だ。まっ、朝からパフェなんて普通ならナンセンスだがお前なら大丈夫だろ?」

 

照れ臭そうにソッポを向き、良かったら食べてくれるか?とトウカは問うてくる。

 

「フ。当然だ、トウカが態々作って来た食事を決して無碍にはせん」

 

「そいつは有り難い限りかな」

 

セイバー・オルタの朝は再び始まる。

店主と他愛のない毎朝の会話と美味しい朝食によりカルデアの為、世界の歴史を護る為、今日も漆黒の聖剣を振るうのだ。

 

 

 

 

 

 




水着メイドだと……!?
未だにセイバー・オルタを迎える事が出来ない朝日が登る頃に、です。今回の話を考えている時に水着メイドの情報が開放されたので正直、メイドオルタの話を描くか、ノーマルオルタの話を描くか悩みましたが。ノーマルで描く事にしました。

水着メイドオルタさんのお話も近いうちに描きたいと思っておりますので、お待ち頂けると嬉しく思います。

誤字報告、評価、感想いつもありがとうございます。そして最後まで閲覧して頂きありがとうございました。


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もしも冬木の学生だったら(stay night編)


番外編なので本編とは一切関係ありません

ps.嘘です……ごめんなさい



 

 

 

「───これで終いだ」

 

一閃。どう頑張っても躱すことの出来ない迫り来る無慈悲な一撃。その一矢は確実に命を刈り取るべく心臓へと真っ直ぐ、揺るぎなく直進する。奇跡など起る筈なく、希望なんてなにもかもなくなっていた。

 

一体全体自分がやったのか……

思い返す、数十分前の出来事。

 

「一緒に残ってくれてありがとな燈日。お陰で道場が前よりも綺麗になったよ」

 

「……別に良いが、いい加減にお前はもう少し他人に頼る事を覚えろ。優しさは度を超えると美徳でもなんでもないからな」

 

夜の学校にてあははは、と人懐っこく笑う赤毛とそんな彼に対して呆れる黒髪。

 

かつての部活生に掃除を押し付けられたお人好しの友人の手助けを遅くまでしていて、帰り道に運動場で闘う異形の姿を観てしまったからだろう。紅と蒼の色合いをした二人の死闘とも謂うべき現実離れした闘いはまるで映画のワンシーンのように迫力があり、そして心の底から脇立つ興奮の高揚感を覚えた。しかし自分とは反対に友人は目の前の出来事に対して驚きの余りにその場を去ろうと声をかけた。

 

それが不味かった。

 

「───誰だッ!!!」

 

蒼の男が叫んだの同時に自分も条件反射とも言える程の速さで声を荒らげた。

 

「士郎逃げるぞッ!!!」

 

それから自分と友人は慌てて逃げ出した、それからは余りに必死だったので後のことは覚えてすらない。家に帰り着き直ぐ友人の衛宮士郎の安否を確認するべく電話を掛けようとする前にくしゃみをした瞬間……頬を血よりも紅い見覚えのある朱槍が掠め切った。

 

「ん゙ん゙ん゙!?」

 

「おっ、運がいいな坊主」

 

振り返るとそこには、学校の運動場で暴れていた蒼の変わった服装をした槍使いが実に愉快な感情を隠さんとばかりに笑っていた。

 

「一撃で殺してやる、それが俺なりの配慮だったんだがお前さん随分と運がいいらしい」

 

次に来るのは右脇腹の衝撃。

ガッ!?と叫ぶ間もなく体が宙に浮かび上がり玄関まで勢いよく吹き飛ばされる。反射で受け身こそ取ったが直後肺が締め付けるられるように痛く、呼吸するのが辛い。忌まわしい怨敵と言わんばかりに蒼の男を睨みつける。

 

「さっき一緒に居た赤毛の坊主は始末しておいた。恨むんなら自分の弱さと不運を恨みな」

 

じゃあな、と朱槍を構える蒼の男。

解ったような台詞を叩く男に対して無性に腹が立った。野郎巫山戯やがって、俺の(ダチ)を殺して更には自分の弱さを恨めだと!? こんな事を言われて頭にこない奴はいない。どうやら野郎の顔面に一発ぶち込まないとこの激情は収まりそうもなかった。ギチギチと力強く握る拳、炎のように昂る感情。震える足に喝を入れ立ち上がる両脚。少年の表情は憤然を表した顔つきへと変化していった。

 

「良いねぇ随分と殴り応えのあるマシな面構になったじゃねぇか坊主」

 

愉快そうに笑う蒼の男は慣れた手つきで槍を回転させるフローリングに位牌を突き立てるように突き刺す。

 

「今のお前を普通に殺してもどうやら納得しないだろ?いいぜ付き合ってやる」

 

蒼の男は実に傲慢で小癪でそしてなによりも小僧の心中を察し気遣いの出来る悔しいが清々しい程の良き漢であった。

 

「……野郎!!!!ぶちのめす!!!!」

 

開幕のコングは鳴った。

 

しかし、あっさりと吹き飛ばされる。

経験の差だろうか、それとも気持ちの問題か?そんなくだらない気持ちは一切考えることなく再び蒼タイツに殴りかかる。

 

暫く経ち、殴ろうとすればカウンターで殴り飛ばされて。再び殴ろうとすれば正面からぶっ飛ばされて、体をくの字に殴られ、サッカーボールのように蹴り飛ばされ、それを何度も何度も繰り返した。阿呆みたいにひたすら同じことを繰り返している。

 

なんて一撃だ。一発一発が重く早くそして確実に目的を遠ざかっていく。

 

「───グッ!!!!」

 

一体何回此奴にぶっ飛ばされただろうか。

顔は血だらけで片目は見えなくなって歯は何本か吹き飛んだ。口内は切れ舌は血の味しかしない。体は恐らく部分的に骨折や青あざだらけだろう。だけど、ふらつく足取りであろうと何が何でも友の為にも奴に一矢報いてやらなければ、死んでしまった士郎が余りにも報われないじゃねぇか。その気持ちを胸にオレの身体は立ち上がって再び前に進む。

 

そして殴りにかかり、景気良く歯が折れて何度目か分からない程ぶっ飛ばされる。

 

「おいおい、坊主どんだけタフなんだよ。生まれる時代間違えちゃいねぇか?」

 

「う……っせぇ……よ」

 

ランサーは実に不思議な感情になっていた。最初は慈悲深く一刺で殺してやろうと思っていたが、先に殺した赤毛の少年の事を告げれば黒髪の少年は一瞬で表情が変化し、あろうことか震える足に喝を入れ自分に殴ろう決心したようだった。自分の方が弱いと頭の中で理解しながらも、精神(こころ)がランサーを許せなかったように見えた。

 

───面白ぇ

 

彼は怒りに震える小僧が後腐れなく死ねるように舞台を用意してやったのだ。槍で殺すのは容易い、だが自身の弱さを友の為に一矢報いるべく立ち上がった目の前の男を放っておくことが出来なかった。ランサーは胡散臭いマスターに伝来された本来の任務は忘れることなく、素手で完膚なきまでに叩き倒しそして殺す。そう決めた筈なのに……この小僧は何度ぶっ飛しても立ち上がってくるではないか。瞳の闘志は以前消えることなく、ひたすらに立ち向かってる。

 

随分と強情な性格だ。

そして自分が一度決心した事を曲がることを知らない、弛まない強靭な精神力を持っている。此奴はまるで幾ら叩いても斬っても折れる事を知らぬ巨大な大樹だ。姿こそ小さいが精神は巨大だった。

 

「(惜しいな……此奴は将来鍛えたらかなり強くなるのにな)」

 

そして遂に少年は再び殴り飛ばされ立ち上がることすら出来なくなる。玄関の扉に死体のように俯きに倒れてはいるがランサーを睨む鷹の如き猛獣の瞳は未だに捉えていた。ランサーはやむ無く突き刺さった朱槍を手に取り少年に問いかける。

 

「坊主、この勝負お前さんの勝ちだ。ダチの為に立ち上がったお前の勇姿を誰が忘れようと俺は忘れねぇでいてるよ」

 

当然ながら返答はない。

じゃあな、っと槍を構え。

 

「───これで終いだ」

 

少年の心臓に朱槍が一直線に向かう。

 

「…………し…………き……」

 

少年が無意識に呟いた言葉の瞬間、不思議な事が起こった。少年の利き腕に紅き模様が描かれたのと同時に無風の家の中で魔力を含んだ爽やかなさっと吹きはいったのだ。風は月明かりの照らされる隣部屋に拭きはいり10年前に描かれたデタラメな陣を再び描き、暗がり包まれていた部屋を全体をひたむきに輝かせる。

 

その光は希望か、はたまた絶望か。

だが、少年はその星の如き美しき光に何処かで見覚えがあった。暗黒な前途を照らす人々に希望と願いを与える美しき光明を。

 

瞬間、ランサーに向けて総毛立つような恐ろしき白刃の光が無慈悲に襲い掛かる。月光の光の中に降りかかる恐ろしき一撃をなんとか捌く事が出来たランサーは酷く同様した表情で叫ぶ。

 

「七騎目のサーヴァントだと!!?」

 

傷だらけの少年の前に着物を着込んだ独りの女性が彼を護るように立っていた。純白の華やかな着物を着込んだ彼女は少年の前に膝をつきそっと頬を添え、静かに微笑む。

 

「セイバーのサーヴァント。召喚に応じ参上致しました。私の名を呼んでくれてありがとう。異色にも程があるけど宜しくね、可愛らしいマスターさん」

 

麗しき淑女はそう言って少年を愛おしげに撫でる。これは、続くことのない有り得る筈のない物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター?私に対してもっと令呪を使ってくれても良いのよ?命令されるなんて新鮮で楽しいわ」

 

「セイバーに無理強いなんて出来ない」

 

「そう……残念ね」

 

「……セイバーのその表情は狡いと思う」

 

ふふふ、っと笑う女性と年相応に恥ずかしがり屋の少年が聖杯戦争中に参戦していたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





おっす、オラ朝日。
いや〜本編をすっぽかして番外編を書くとかマジ有り得ないよなぁ、とか今更思う頃です。だけど劇場版みたら無性に執筆欲を収まらなくて読者の皆には本当に許して欲しいと思うゾ。許して下さい……なんでもしますから!!!!<(_ _)>


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