百合ぐだ子 (百合と百合と百合と)
しおりを挟む

清姫編

微ntr注意。百合注意。
きよひー好き、マシュ好きは気に入らないかも。
あとぐだ子が弱い。語彙力ない。中途半端に長い。
二次創作特有のオナニー感は生暖かい目でよろしく。



夢だと思った。

夢ならよかった。

魔術王との決戦を終えたある晩のことだ。

藤丸立香の寝室に何者かが侵入した。まるで蛇のように、するりと。

またか、と立香は心の中で呟いた。

カルデアに残ったサーヴァントは基本的に立香を気に入っており、情愛の念を持つ者も少なくなかったのでこういったことは頻繁ではないが何回かあった。

しかし瞼の裏側の暗闇で、立香は妙な違和感を感じていた。いつもは入り口から立香の寝姿を見つめているだけなのだが、今回は明らかにベッドに近づく気配がした。

彼女はゆっくりと、だが確実に近づいてくる。

乾いた靴音はその存在感を増していった。

どれ程時がたったのだろうか?

靴音が十数回聞こえたところで、彼女は止まった。

固く目をつぶる。ちょうど自分の顔に視線を注がれるのを感じたからだ。

「マスター……」

何かを求めるかのような声で彼女は呟いた。

そしてかけていた布団を剝いで立香のそばに横たえた。

首筋にあたる吐息堪えきれず彼女と反対方向を向くと、左手を回して強く抱き寄せてこう言った。

「起きてますか」

意識があるのだけは悟られまいと必死に暗闇に潜り込もうとしたが、彼女の左手の力が強くなるとあまりの力強さに思わず声を上げてしまった。

「良かった。このまま狸寝入りをしていたら焼き殺してしまうところでした」

そう耳元で囁きながら余った右手で内股を弄り、右脇腹を通って胸元辿りながら最後に愛おしげに唇に触れた。

「……お願いやめて、清姫。こんなのおかしいよ」

両手で清姫の左手に抵抗するがびくともしない。

むしろそんな立香を嘲うかのように清姫はその体を密着させ、右手で肩を抱き、その舌で首をチロチロと舐め回した。

「…んっ…いや……」

声を震わせてなんとか清姫の締め付けから逃れようとするが無駄なことだった。

「首筋に弱いんですね、マスター」

ふふっ、と笑いながら肩を押さえていた手の指先で舐めていた側とは反対をなぞった。

「ひゃっ」

胸を掻き立てるこそばゆさで立香は声をあげる。

そんな立香などお構いなしで清姫は首筋を責め立て続けた。切なさと悩ましさに身体を揺らしながら、しかしその両手はなんとか抵抗を続けていた。

「マスターがいけないんですよ。私の思いにいつまでたっても応えてくれないから……」

首を舐めるのをやめて清姫は呟いた。

「だって私には……」

「わかってます」

清姫は強引な手つきで立香を無理矢理自分の方へ向き直させて言った。

「私を見て」

清姫の瞳が立香を捕らえた。

それに背くことも出来ないで逡巡してると、着物からすり出た片足が立香の右足を絡め取り、腿の間に侵入してくるのを感じた。

「嫌だ、駄目っ」

思わず飛び退こうとするが清姫の右手がそれよりも速く立香の後頭部に回り込んで阻み、そのまま口の中に入り込んだ。

「んあ…おっ、おお…ぁあ……」

舌で蹂躙された立香の口から間抜けな喘ぎ声が漏れる。

そのまま清姫は上に乗り、立香を堪能し尽くした。

腕がいうことを聞かない。

抵抗する力が徐々に抜けていくのがわかって、立香は自分の敗北が迫っているのを感じた。

最後に清姫は優しくキスをすると、自分との間に透明な糸を引かせながらその顔をあげた。

「もう楽になってください」

力の抜けた腕がベッドに落ちた。

“ごめんね、マシュ”

いつも心にあった後輩を裏切ることになると知りながら虚ろな表情で頷く。

立香の身体は清姫を受け入れた。




僕はどうして美少女じゃないんだろう。

あと内容を補足するとマシュとぐだ子は付き合ってない。でもお互いの気持ちをなんとなく察してる感じでお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ケツァルコアトル編

注意点はだいたい清姫のやつと同じ。
ただしケツァルコアトルの一人称視点で進むので苦手な人はブラウザバック推奨。


カルデアの広い廊下を一人で歩いていた時のことだ。

アナタは私に駆け寄って飛び込むと頬にキスした。

「4月にマシュと一緒に日本に帰ろうと思うんだけどケツァルコアトルもどう?」

私の可愛いマスター。

アナタとなら何処へだって行きたい。

それでも───

「行きまセーン。マシュと二人で楽しむデース」

私がそう言うとアナタは困ったように笑った。

「それ皆に言われる。清姫に言われた時はビックリしちゃった」

そうか、あの娘もきっと同じ気持ちだったに違いない。

マスターとマシュの絆はとても強固で私の入り込む余地なんてどこにもなかった。善神として呆れる話だが、マシュが居なければ私がアナタに寄りそえるのではないかと思ったこともあった。

ウルクで初めて会った時から私はアナタに惹かれていた。空から落ちてくるアナタを受け止めた時、私は恋に落ちた。ティアマトに特攻する前、命を燃やし尽くす覚悟を決めるために口づけしたときのことを覚えているだろうか。

……まあ流石に憶えているか。

バビロニアでの戦いを本来記憶しえない筈の私でさえ憶えているのだから。

「マスターは色んな子にキスしすぎデース」

二人っきりだからだろうか。何となく思っていたことが口に出てしまった。

「そうかなー。私なりの親愛の情を示してるだけなんだけどなぁ」

悪びれるでもなくアナタは呟いた。

その行動が私の心をかき乱していることにはきっと気付いていない。

全く、罪作りネー。

「でもケツァルコアトルは私にとって特別なんだよ。お姉ちゃんみたいだし」

なので恋人にはなれない。

「安心するんだ。マシュと同じくらい」

つまりアナタにとっての一番ではない。

「なんかいつも一緒にいてくれる気がしてさ」

無論そのつもりだ。だから心が辛く、辛い。

「……そろそろ行くね。大分話し込んじゃった。他の子も誘いに行かないと」

そう言って駆け出そうとしたアナタを、私はその手をつかんで引き留めていた。そしてそのまま壊さないように抱き寄せて唇を交わした。

咄嗟のことに大分驚いたようだった。

「──気を付けて行ってきてね、私のマスター」

「……うん!!」

気が早いなどと茶化すこともなく、柔らかな陽射しのような笑みを私に向けてから、アナタは元気よく走り去った。

ふと窓の外に目をやる。

雲が陽を遮り、激しい吹雪だけが音もなく窓ガラスを殴りつけていた。

日の光とは随分弱い物だと思いながら私の行く末、楽しみを酷烈に叩きつけられたような気がした。




書いてる間凄く恥ずかしかった。
ロリの真似しながらア⚪ニーするのと同じくらい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モードレッド編

言いたいことは前と同じ。


物好きなマスターだ。

モードレッドはそう思った。

アーサー王の栄光に終焉をもたらした悪逆の騎士に物怖じしないどころか、まるで友人のように接する者がいようとは思いもしなかった。

信頼したことがなかった訳ではない。

信用されたことがなかった訳ではない。

力だけには自信があった。

その剣技には相手を破壊するだけの説得力があった。

だから何もかもを終わりに追い込むことが出来た。

故に何もかもを失った。

モードレッドは肉体的にも、精神的にも、およそ真っ当ではなかった。表に見せることはしないが、普通の人というのにコンプレックスがあった。

だから機械になることも出来ない人でなしのホムンクルスにいつも笑いかけるマスター──藤丸立香が苦手なのだと気付いた。

そこからは立香の隣に立つのが苦しくて仕方がなかった。彼女の期待が怖かった。

そして今朝、彼女の手を跳ね除けた。

立香はモードレッドの髪を引っ張って悪戯することがあった。気分が沈んでいたモードレッドはつい立香を怒鳴りつけてしまった。

「俺はお前が嫌いなんだよ!あっち行け!!」

余程ショックだったのか、目に涙を溜めて立香は走り去っていった。

良い顛末とはいえないがこれで清々する筈だった。いつも通りの嫌われ者に戻っただけだ。苦しみからは解放さた。

しかし、それならば、この胸を刺す痛みの正体は───?

そんなことをぐるぐる考えて三時間、突然自室の自動ドアが開いた。その先にいるのは立香だった。

彼女は部屋に入り、頭を下げて謝罪した。

「ごめんね。モードレッドが本気で嫌がってるなんて思わなかったから」

心苦しさがぶり返すのを感じながら、モードレッドは言った。

「別に、謝ってくれなんて言ってねえよ」

立香を直視出来ずにそっぽを向いた。

気まずい緊張が流れる。

暫くの重い沈黙のあと、先に口火を切ったのは立香だった。

「私のこと嫌い?」

思ってもみなかった質問にモードレッドは狼狽えた。

「そんなわけねえだろ!?あ……」

自分で叫んで、自分で気付いた。

モードレッドは立香が嫌いではない。寧ろ気に入っている。だから自分が立香を苦しめてしまわないか不安だったのだ。

気恥ずかしさで赤くなるのを感じながら、勇気を出してこんな自分に頭を下げに来てくれた立香に応えるため、自分の思いに決着をつける為にモードレッドは尋ねた。

「俺は叛逆の騎士だ。サーヴァントとしてお前を守るどころか傷つけちまうかもしれない。そんな奴が傍にいて良いのか?」

少し間を置いて、立香が答えた。

「守ってくれなくていい」

モードレッドは驚いた。

「お前何馬鹿なこと言ってんだ!?サーヴァントはマスターを守るもんだろうが!!」

だってと立香は続けた。

「私も皆と一緒に戦う。私のせいで皆の、モードレッドの足を引っ張りたくない」

やられたと思った。

こんな単純なことを見失い、柄でもないことに執心していた自分が恥ずかしかった。

いや、こんな奴だからこそ守ってやりたくなるのか。

とにかくモードレッドの気持ちは晴れやかだった。

“───全く、とんだ物好きの大馬鹿野郎だ”

そう心のなかで呟いて、立香の前に跪いた。

「手、貸せ」

言われるがまま差し出された右腕を両手で受けて、その甲に口づけた。

「俺の剣を預け、名誉を預け、命を捧げる。……騎士としては三流かもしれないがそれでも構わないか?」

そんな問いに、立香は額にキスをして答えた。

親愛と信頼に満たされ、それでも生意気な奴だと心の中で呟きながら円卓の騎士として父に忠誠を誓った日のことを思い出した。

今度こそは最後まで忠義の騎士でありたいと、モードレッドは願った。




モーさんマジモーモーちっ⚪い

読点打つの苦手なんだけどどうだろう?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スカサハ編

兄貴とスカサハの絡みが好きな人は注意。


藤丸立香はヘロヘロになって床に座り込んでいた。

「もう無理だよ……師匠」

「文句を言うな」

週に何度か、立香はスカサハのもとに訪れることがあった。相談には厳しくも真摯に当たってくれるし、どこか厭世的なスカサハのことが気がかりなこともあってだった。

しかし逆にスカサハから立香をたずねることも少なくなかった。そういう場合は大抵弟子の自慢か、

「次は私の攻撃から避け続けろ。加減はするが手は抜かん。当たれば当然痛むから覚悟しろよ」

立香を鍛える為に徹底的に扱く時である。

訓練は実戦形式で、既に定礎を復元した特異点にレイシフトし、現地でスカサハの無茶ぶりに対応し続けなくてはならなかった。魔術や武器の使用は認められいたが、スカサハの前には目眩ましにもならず、いつも滅多打ちにされていた。

「きゃっ」

槍の一撃が当たり、弾き飛ばされた。

刃先とは逆の方で攻撃してはくれていたが、それでも棍棒としての威力は十分にあった。

一度当たると態勢を立て直すのは困難だった。

二撃、三撃と攻撃があたり、呼吸するのも苦しくなる。必死に逃げ回ったが、背中に衝撃が来るのを感じて意識が途絶えた。

 

目を覚ますと、既にカルデアに戻って来ていた。

廊下が勝手に動いているような錯覚を覚え、奇妙に思いながらふと上に視界を移すと、スカサハの顔がそこにあった。

「目覚めたか?」

横向きに抱き抱えられているのがわかり、立香は慌ててスカサハの両手から降りた。

「疲れただろう?部屋まで送ってやっても良かったのに」

「い、いいよ。一人で歩けるから」

微妙な気恥ずかしさで、立香の鼓動は早くなっていた。

「こうして歩いていると、あの馬鹿弟子との修行の日々を思い出す」

懐かしそうにスカサハが呟いた。

「師匠は私と歩くと兄貴を思い出すの?」

その時、立香の心に悪魔が出るのを感じた。

それ程深い意味を持った質問ではなかったが、私の言葉に動揺したのかスカサハは頬を薄く染めていたからだ。しかも要領の得ない返事を口にしながら。

「師匠って兄貴のこと好きなんでしょ?」

「え。あ、ああ」

主導権を握ったことを確信し、立香はさらに調子に乗った。スカサハの修行はありがたかったが、あまりの厳しさに不満がなかった訳ではない。それに彼女が動揺することなど滅多になかったので、罪悪感はあったが少しいじめさせてもらったのだった。

「ねぇ、師匠」

スカサハの腕に抱きつく。

「師匠は大好きな兄貴と私とどっちが好き?」

「どっちということはないが……」

「私は師匠が好きだよ。大好き。格好良いし、頼もしいし……」

出来る限りの甘い声を出して立香は続けた。

「私じゃ、ダメ♡」

立香は笑いをこらえるので必死だった。

スカサハを手玉に取るのは他に形容しがたい爽快感があった。心の中で「勝った」と勝手に呟いた。

本当の恐怖がすぐそこまで迫っていることも知らずに。

「なんちゃって~冗談に決まって、ひゃあ!?」

立香の誤算は二つあった。

一つ目は調子に乗りすぎたこと。

二つ目はスカサハが立香の発言を本気にする可能性を考慮しなかったことだ。

スカサハは再び抱き抱えると、立香の自室に向かった。

「あの、師匠?さっき一人で歩けるって……」

スカサハは答えなかった。

異様な雰囲気に圧倒されるがまま運ばれているとすぐに部屋の前についた。

「もう部屋についたから下ろして欲しいんだけど……」

スカサハは無言のまま部屋に入り、ベッドの前に立つと立香をそこに投げ出した。

「きゃ!?」

両手を頭の上で拘束し、無防備になった立香の上に覆い被さりながらスカサハは言った。

「私もお主のことが好きだよ」

「いや、だからあれは冗談だって……」

「ほう。冗談でお主は私の心を弄んでくれたのか」

立香は怖じ気づきながら謝罪した。

「嫌な気持ちにさせちゃったのは謝るから。許して」

「許せるものか」

スカサハは立香の輪郭を愛おしげに撫でながら、しかしはっきりと断言した。

「お主は見所のある勇士だ。それでいて可愛らしい」

耳元で囁いて、ふうと息を吹きかけた。

こそばゆさで背中を浮かせながら立香は後悔で涙を流した。

「ケルトの戦士は往々にして気に入った女子を力で組み敷くことがあってな」

スカサハはその指で立香の泪をふき取りながら続けた。

「私も影の国の女王となる前は何回かやったことがあった。お前のような生娘は最初は恐ろしさで泣いているのだが、快感に慣れ始めると甘い声で鳴きはじめ、最後には精も根も尽き果てるまで私を求めたものだ」

スカサハは立香の顎をクイと持ち上げると、その頭を互いの息の届くところまで近づけた。

「まずは唇の純潔から貰おうか」

立香は目をつぶった。

そして色んな事が浮かんできた。

ここでキスしたらスカサハはきちんと嫁に貰ってくれるだろうかとか、ファーストキスの味はどうだろうとか。意外と自分って乙女だったんだなぁ、などと考えているうちにあることに気がついた。

いつまで経ってもキスが来ないのである。

恐る恐る目を開くとスカサハが、クスクス笑っていた。

「期待したか、マスター」

みるみるうちに、立香の顔が羞恥で真っ赤になっていった。

「年寄りをからかうものじゃないぞ。ついこっちもからかいたくなる」

そう言ってスカサハはベッドから降りた。結局、終始手玉に取られていたのは立香だったのだ。

敗北感とちょっとした物足りなさでいじけていると、部屋から出る前にスカサハが振り返らずに言った。

「お主のことが好きなのは本当だ」




クーフーリンとぐだ子だったらクーフーリンを選ぶ。
最後まで手を出さなかったのはそういうこと。でもノンケでも百合は出来ると思うの。

本編のスカサハはあんまり好きじゃなかったけどマテで見直した。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

静謐のハサン

ドレイクか邪ンヌと言ったな?
あれは嘘だ。


その女は毒酒だった。

若くしなやかな肢体は瑞々しく、均整のとれた胴は引き絞るようなか細さではち切れんばかりの美しさを放っていた。一度目にすれば追い立てる情欲に逆らえず、下劣な色情からは逃げられない。誰もがその腕に抱きたいと思わずにはいられなかった。

女の身体には生来の毒が染みこんでいた。鮮やかな紫はその末端に至るまで滴り、清水には最早清らかな部分などどこにも残されてはいない。

人は彼女に触れようと思う。彼女は人に触れられたいと願った。死毒は永久に別つもの。

不幸なことは、毒酒には人並みの感性があったことだ。

彼女の名はハサン・ザッバーハ。かつて暗殺集団を束ねた十九人がうち、静謐と呼ばれた毒の名手。

彼女は慣れた暗闇に忍び込み、寝入る己の主を見下ろしていた。

彼女の主、藤丸立香は快活な少女だった。強大な英霊が相手でも物怖じしない度胸と誰に対してでも分け隔てなく接する優しさを供えていた。それはハサン相手にも発せられていたが、当の本人は不器用さが故に上手く接せられずにいた。

寝室に忍び込んで、眠る立香を闇の中から垣間見るようになったのは 2週間ほど前からだった。日が出ている間は話せずとも、せめて夜は二人でありたいと思ったからだ。

温かな微笑みは浮かべずとも、健やかな寝息の音を聞いている。

溌剌とした歩みの隣にはいれなくても、ゆっくりと上下する胸の安らかさを見つめている。

それだけで満足だった。

触れることだけはすまいと気を張り詰めて数刻、それだけが主の傍に寄り添える時間だった。

「立香……」

普段は決して口にすることのない下の名前もこの時だけは呼べた。

それが特別な意味を持つことを自覚しながら、その先に紡がれる言葉だけはなんとか押し止めて部屋を去ろうとした。

その時だ。

「待って」

声がするのを背中で聞いた。

「やっぱり静謐ちゃんだったんだね」

パニックで沸騰しかけている頭だったが、立香がベッドから起き上がって近づいてくるのは分かった。

「待って!!」

逃げようとするハサンの手を引き止める。

「マス、ター……」

乾いた声が響く。

「嫌!!私に触れたら死んじゃ、死んじゃ……!?」

恐怖と絶望でハサンは目を見開いた。

そんな彼女に立香は微笑みかけて言った。

「大丈夫だよ」

頭を撫でながら、言い聞かせるように立香は話した。

「私、毒が効かないんだ。まぁ私が凄いわけじゃないんだけど……」

「それって……」

「だから大丈夫、死んだりしないから」

立香目の前にある黒い瞳だけを見つめ、その額をくっつけた。

「ほらね?」

そう言って少しだけ微笑んだ後、立香は酷く申し訳なさそうな様子で眉を寄せた。

「ごめんね、君が寂しい思いしてたの知ってた筈なのに何もしてあげられなくて」

立香はハサンをそっと抱き寄せた。その声は悔しさで震えていた。

「それは違いますよ」

ハサンは言った。

「謝罪が必要なのは私の方です。結果的に無事だったとは言え、マスターの命を危険に晒してしまいました」

───それに、

「こうして頂けるだけで私はもう十分幸せ者です」

生前あまり浮かべる事の無かった笑みを浮かべて、ハサンはその両手を立香の背に回した。

「私は毒の花。

この先、貴女を殺してしまうかもしれない。

それでも、私はマスターの傍にいたい。

こんな身勝手をあなたは許してくれるのですか?」

その答えは今まで感じたことのない強い抱擁で帰って来た。

ハサンは泣いた。

しかし、それが悲しみによるものではないことだけは知っていた。




何故ぐだ子が途中で起きたのか?
愛じゃよ、トム。

出来の悪さは自覚ある。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マシュ編①

どきつい描写あり
終章後の話



決してよこしまな感情で動いた訳ではない。

マシュ・キリエライトは心の中で弁明した。

彼女は藤丸立香の部屋の前に立っていた。時刻は深夜の2時。真面目なマシュが普通の人間ならとっくに寝静まっているはずの時間に出歩くこと自体が一種の異常だった。

部屋のロックを解除する鍵はDr.ロマンから借りていた。その気になればいつでも扉を開けることが出来る。しかし加速する胸の鼓動が頭を麻痺させて動けなかった。

引き返そうか。散々逡巡した挙げ句に逃げの一手を打とうとしたその時、突如扉が開いた。

「うわぁ?!」

驚きの声が二つ上がった。

「びっくりしたぁ。こんな所で何してるの?」

部屋の主、藤丸立香は目をしばたかせながら言った。

「少し先輩とお話したいことがありまして」

マシュはパニックで頭を沸騰させながら、なんとか平静を装って応対した。

「先輩こそどうして?」

「中々眠れなくて。自販機で飲み物買おうと思ったんだ。マシュも行く?」

マシュは立香に着いていくことにした。

立香の部屋から自販機はそれほど離れてはいなかった。数分歩けば薄暗い夜の廊下を照らす光がもう見えていた。

立香は機械にコインを入れてコーラとオレンジジュースのボタンを押した。そして購入したジュースをマシュに渡し、自販機前のベンチに座って尋ねた。

「それで話って?」

マシュもベンチに座って、答えた。

「清姫さんやエリザさんとキスしたって本当ですか?」

マシュが夜遅くに立香を訪ねたのはこれが主な理由だった。昼間に清姫とエリザベートが、夜な夜な立香と行為をしているという自慢をし合っているのを聞いて、真偽をその目で確かめようとしていたのだった。

「うーん。まぁチューはされたかな」

「先輩は!」

マシュは無意識の内に声を荒げていた。

「先輩は平気なんですか……」

マシュの必死さが予想外だったのか、立香は暫くきょとんとしていた。

しかしそれに気分を良くしたのか、マシュの肩に手を置き顔を近づけながら意地の悪い笑みを浮かべて言った。

「もしかして嫉妬してくれた?」

マシュは俯いた。

「ふふっ、それはちょっと嬉しいかも」

そして赤くなった頬を突きながら立香は言った。

「マシュったら可愛い」

その一言で、マシュの心に火がついた。

「先輩、こっちむいてもらえますか?」

「え、むぐぅ!?」

マシュは立香の唇をそのまま奪った。

立香は急いで離れようとしたが、か細い腕からは信じられない程の力で抱きしめられていた為そうすることが出来なかった。

マシュは立香の後ろに回り、その胸に手を伸ばした。

形の良い二つの双球は僅かな抵抗を示しただけで、指の侵入を許した。

「んっ…駄目、こんな所で……」

マシュは胸のベルトを外した。そしてホッグを少しだけ降ろして今度は直に右手で胸を触った。

「あっ、んっ…あん……」

立香は最早自分が感じているのを隠そうともしなかった。

特に抵抗するわけでもなくただ甘い快感に身をゆだねていた。

「いけない子ですね、先輩」

「マシュが、あんっ、感じやすい所を触るから……」

「そうやって清姫さん達ともやったんですか?」

マシュが胸の先端を軽くつねった。

立香は背中を仰け反らせ、短く悲鳴を上げた。

「変態」

マシュは立香を罵倒した。

そのことにマシュも立香も驚いたが、二人にとってそんなことはどうでもいいことだった。

「もっと…もっと……」

立香に応えるようにマシュはベンチの上に押し倒した。

「こんな所で感じるなんて情けないですね、恥知らず」

「あん、言わないで♡」

「言葉だけで感じてるんですか?幻滅です」

この場において、主従関係は完全に逆転していた。

「はぁ、なんか萎えました」

嘘である。無様な雌顔を晒している立香を見て、マシュも昂ぶっていた。

「え?」

しかし立香の表情には困惑が広がる。

「ま、待って!!」

ベンチから立ち上がろうとするマシュを慌てて引き止めた。

「続き、してくれないの?」

マシュが蔑みの視線を立香に向ける。

「先輩がこんな人だと思いませんでした。もう二度と近寄らないで下さい」

立香を乱暴に押し退けると、マシュはその場を去った。

「お願い、待って!!置いてかないで!!」

泣きそうになりながら立香はマシュを追いかけた。

「何でもするから私を見捨てないで」

立香はマシュの足元に縋り付いて声を震わせ求めた。

「それじゃあお願いして下さい」

「え?」

「私の気が変わるようにお願いしてください」

立香はなにふりかまわず懇願した。

「私を可愛がって、マシュ」

「誠意が足りませんね」

「可愛がって下さい、マシュ様」

「それで私の気が変わるとでも?」

ついに立香は四つん這いになって言った。

「私藤丸立香こと雌豚は一生

をご主人様に捧げます。だからどうか私を飼い慣らして下さい」

「豚にしては上出来ですね。でも……」

マシュは冷たく立香を見下していた。

「豚が人間の言葉を喋るなんておかしいです。ちゃんと豚語を使ってください」

その言葉に、立香は鳴いた。

「ブヒッ、ブヒッ。ブフォ」

こうしてマシュは一匹の雌を手に入れたのだった。

「それじゃあ豚小屋に行きましょうか。勿論せんぱ、豚は四つん這いのままですよ」

立香の部屋でマシュは苛烈な愛を叩きつけた。立香はその愛で年ごろの少女とは思えない豚声をあげた。明け方になって二人とも疲れ果てて眠った。

起きたとき、二人は死ぬほど後悔した。

そして立香が恥ずかしさでふらつきながら廊下を歩いていたとき、ガウェインと黒髭が近づいてきて言った。

「結構なお点前でした」

「ブヒッ、ブヒッ。ブフォwww」

その日からマシュと立香は1ヶ月間、自室から一歩も出ることはなかった。




なんかごめん


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

沖田編①

歴史捏造あり


月は高く、丸く。

夜の街並みはそよ風に寝かしつけられるかのごとく静まり返っている。

しかし立香にとって優しい風音はむしろ胸を掻き立てる不穏さをならしていた。

それもその筈である。

この土地は日本。

ではあるが現代ではない。

コンクリートで舗装されていない道、鉄ではなく木で造られた家屋、そして視界いっぱいに広がる満天の星空が証明している。

江戸時代、だろうか。

立香は思った。

「待たれよ」

後ろで力強い男の声がした。

「貴様は異国のものか。

それとも南蛮思想に取り憑かれたものか」

不安で自然と心臓の辺りに手が伸びる。

「ここは天子様のおわす京の都ぞ。

貴様らの存在が許される所ではないわ」

刀の握る音がする。

恐らく彼は攘夷浪士だ。立香の服装を見て敵だと勘違いしたに違いない。

一人の英霊もいない今、自分の身は自分で守らなくてはならない。しかし魔術で撃退しようにも加減がきかないから、男の命を奪ってしまう可能性もあった。

「切り捨て御免!!」

どうするべきか逡巡しているうちに、男が走り出す。

対応が遅れた立香を真っ二つにするはずの一撃は、しかし乾いた鉄の音に阻まれた。

恐る恐る立香が振り返ると、男と立香の間に別の人間がいつのまにか立っていて、刀剣を刀剣で受け止めていた。

「夜中に出歩く少女を襲うとは。

貴様それでも武士か?」

自分より一回り小さい身体、華奢にも見える細い腕で自分の剛剣を受け止められたことに驚く男だったが、月影に浮き出た浅葱色の陣羽織に憤激して叫んだ。

「農民の成り上がり風情が真の侍に敵うものか!!」

刀に込められた力がさらに強くなる。

しかし男の激情も剣撃も、目の前の相手を動かすには至らなかった。

「ではご教授願いますかな」

鍔迫り合っていた刀を軽くいなすと、自由になった得物で男の首を狙って言った。

「真の武士というものを」

死神の声を聞いた直後、男の咽を鋼が貫いた。

刹那の妙技に男は断末魔を上げることさえなく絶命した。

「大丈夫ですか?」

男から刀を抜き取り、立香の方に振り返って言った。

「見苦しい所をお見せして申し訳ない」

その声も、顔も、姿も、立香は知っていた。

「沖、田……?」

絞り出たのは僅かな言葉だった。

だが目の前の『少女』はそれに少し困った様子だった。

「何時ぞやにお会いしましたか?

……いや、きっとあなたが知っている私は冷酷な人斬りでしょうね」

少女は立香の手を取り、立ち上がらせた。

「初めまして、沖田総司です。よろしくお願いしますね」

夜風が優しくそよぎ始めていた。




物理の試験中に思い付いた。
一応三部作構成で考えてるけど長くなったり短くなったり、やめたりするかも
マシュは深夜テンションでsmシリーズにしようかと思ったけどやめたし


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

沖田編②

今までより長めなので注意


ドクターによれば、立香は幕末の京都にいるらしかった。

彼との通信で分かったことはそれだけではない。

今回のことはカルデアの電力不足によるレイシフトの失敗が原因だということ。

電力の節約の為、最低限の連絡しか出来ないこと。

復旧作業自体は1週間で終わる物の様々な要因が折り重なって、立香の時間でどれくらいで回収出来かは分からないとのことだった。

つまり、良い知らせは皆無。陰鬱な気持ちになりながら、立香は部屋の床に寝転がった。

あの夜、沖田によって保護された立香は新選組の本拠地である西本願寺に匿われていた。下手にフルネームを言ってしまったことや幕末では風変わりな服装を着ていたことで、藤丸という名家の不良娘であると勘違いをされていた。京都にある藤丸家を当たられるとまずい為、九州からのお上りさんであることと荷物の少なさは浪士に奪われたからという設定は立香の方で付け加えた。

沖田と出会うのは本能寺の一件以来であるが、生前の彼女には勿論知るよしのないことである。しかし彼女の人の良さは相変わらずで、気前よく寝床を分けてくれていた。

木で出来た天井をじっと見つめる。することが何もなくて暇だった。立香は起き上がって沖田に何か手伝えることはないか尋ねようと思った。

屋敷の中を歩いていると、沖田自体はすぐに見つかった。彼女が声を荒げているのを聞いたからだ。

「何故です!?何故私が一番隊隊長を降ろされなくてはならないのですか!?」

屋敷の大部屋に沖田を含めた三人が何やら話し込んでいるのが見えた。

立香は物陰に隠れて様子を伺うことにした。

「お前、病を患っているらしいな」

「そんな、ことは……」

沖田が俯いた。

「この間の稽古の時も新八に負けたそうじゃないか」

「あれは一さんとの連戦で疲れていただけです!!」

「いや、以前のお前なら勝てていたはずだ」

二人の男はため息をついた。

「総司、武州に戻れ」

その言葉に、沖田の表情が凍り付いた。

「どうして……」

「療養しろ。それだけだ」

「い、いやです」

沖田が首を横に振った。

その顔には絶望が広がっていた。

「今更戻っても、三女の私に居場所なんてない。

穀潰しだと死ぬまで後ろ指を指される位なら、いっそここで」

そう言って懐の短刀を取り出すとそれを両手で硬く握りしめ、それを自分のはらわたに突き立てようとした。しかしそれは二人の男の手によってすんでのところで止められる。暫く揉み合っていたが、大の大人二人にはさすがにかなわないと悟ったか。短刀をはなして、男に涙を流しながら縋り付いて言った。

「お願いです。

私を見捨てないで下さい。

私にはここにしか居場所がないんです。

最後まで新選組で戦わせてください」

声を上擦らせ、しゃくり上げながら懇願する沖田に根負けしたのか、男達は何度めかのため息をつきながら言った。

「病状が悪化していく場合は容赦なくお前を家元に送り返す。いいな?」

沖田は男が部屋を去ったあともずっと頭を床につけていた。立香はいたたまれない気持ちになって、元来た道を引き返した。

 

 

 

沖田が部屋に戻ってきたのはそれから数十分経ってからだ。

「剣術の稽古?」

立香は自分のしていることに罪悪感をいだきながら、素知らぬふりをした。

「いえ、藤丸さんについて近藤さんと土方さんと少し」

沖田は棚から自分の装束を取り出すと、それを立香に投げ渡した。

「今から外に出ますからこれに着替えてください。藤丸さんの服装では目立ちますから」

立香は地味な黒色の和服を見つめた。

「どうしました?

私と同じ服ではご不満ですか?」

「私、こういうの着たことないんだけど」

「ああ、すみません。

自分女物の服を持っていないもので。

着付けは私がしますからとりあえず服を脱いで貰えますか?」

立香は疑わしそうに目を細めた。

「あ、いや。

私女ですし。

他意はありませんよ?」

困ったように沖田が言った。

「ふーん、それならいいけど」

立香は上から順に脱いでいった。最後にストッキングを脱ぎ捨てて、黒の下着姿で沖田の方に向いた。

「変なさらしとふんどしですねぇ」

「変態」

「変態じゃないですよ!?」

他愛ないやりとりをしながら、沖田は長袖袴、着物、帯を出際良く立香の身体に着付けていった。

作業が全て終わった頃には立香の姿は一変していた。

元々この黒い隊服は男物として作られたものであり、和服は着た人間の体型を隠す役割があるものの、立香の姿は一目見れば誰もが侍だと思うほど様になっていた。

「似合ってます」

「お世辞として受け取っておくよ」

立香は少し照れている様子だった。

「そう言えば、外ってどこへ行くの」

「八ツ橋でも食べに行こうと思いまして。

立香さんも三日も屋敷の中にいたのでは息が詰まるてましょう?」

ありがたい話ではあるが、立香には金が無かった。

「私、持ち合わせないんだけと……」

「良いんですよ。

私が誘ったんですから、銭は私が持ちます」

気が引けない訳ではなかったが沖田の気分転換になればと思い、立香は付いていくことにした。

昼間の京都の町は往来が多く、立ち並ぶ店先には男女問わず大人数が賑わっていた。沖田と立香は歩き続けた。いくつか八ツ橋を食べられる店はあったが、沖田は目もくれなかった。いつしか商店街を外れ、人通りも少し少なくなっていた。

「さっきのお店で食べないの?」

「客が怯えるから来ないでくれと頼まれてしまいまして」

「はぁ!?

沖田は街を守ってるんでしょ。何でそんなこと言われなくちゃいけないわけ!?」

立香は憤慨した。

「京都の人達は新選組より長州の方が好きなんですよ。

新選組が出来る前は長州の人が京都を守っていましたから」

「そんなの関係ないよ!!

私、文句言いに行ってくる」

「わわ、待ってください!!」

沖田は立香を引き止めた。

「良いんです。もう慣れましたから」

「全然良くない。

そんなことに慣れちゃ駄目だよ」

「良いんですって。

私、あんな店よりも良いところを知ってますから」

沖田が悪戯っぽく笑った。

そして力強く立香の手を握ると、長屋と長屋の隙間を通り抜けて行った。目的地には数分でついた。人通りの少ない寂れた場所にある割には二階建てのしっかりした木造建築で、人は決して多くなかったが菓子を頬張る姿は満足そうに見えた。八橋小町と看板には書いてあった。

「おじさーん。いつもの二つ下さい」

沖田は無遠慮に店の中の主人に注文した。

「あ、藤丸さんはそこに」

沖田は小粋に紫色の大きい日傘が掛けてある店先の長椅子を指差した。

日差しを避けて傘の陰に隠れている部分に二人で座ると、表の大通りにはいなかった蝉がはっきりと声を上げているのが分かった。かんかんと日照る陽光の眩しさに、夏だったんだと立香は今更気付いた。

「暑いね」

「そうですね」

暫くしてから、二人の元に緑茶が二杯と八橋十個が届けられた。

お菓子の甘みと緑茶の冷たさが気候とよく合っていた。

「ねぇ、沖田」

「何です?」

「ありがとね」

素直な感謝の気持ちを述べていた。

沖田の気分転換に付き合うどころか、自分が逆に穏やかな気持になっていた。

「どういたしまして」

たまに二人の間を通り過ぎる夏風が涼しく心地よかった。




結構削ってるんだけどあと3話は茶番に付き合って貰うことになるかも。
逆に削りすぎでソードマスターヤマトになっていないか不安。今回戦闘いれようと思ったんだけど流石に長すぎるからそれは次回で。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

沖田編③

下手くそな戦闘描写あり


それから沖田と立香は八橋を頬張り続けていた。

目の前の景色は長屋ばかりで良いとは言えなかったが、白い浮き雲と明るい夏空が見上げるだけで十分な肴だった。

日が沈むまでの間、何回か茶をお替わりしながら穏やかな会話を続けた。

青空が夕緋色で染め上げられた頃、店の前を二人の男が通り過ぎた。

店の屋根で羽根を休めていた烏が啼きながら飛び立つ。沖田はその男の足取りを注視していた。

「藤丸さん、申し訳ない」

沖田は懐から財布を出して、銭を立香に渡した。

「私の代わりに勘定を済ませて、先に本願寺に戻って下さい。

私はあの男達を追います」

「……いきなりどうしたの」

沖田が鞘と柄に手をやる。中で鋼の当たる音が聞こえた。

「あの顔、恐らく指名手配中の攘夷志士。追跡して確認します」

「斬りあいになるんじゃないの?」

「その時はその時です」

沖田は立香の表情を見て微笑んだ。

「大丈夫。私、こう見えても結構強いんですよ?」

それでは、と最後に付け加えて、沖田は鋭い目つきで男達を追っていた。

一人残された立香は、とりあえず言いつけ通りに支払いを済ませて、このあとどうするべきか迷っていた。

沖田の腕は十分に理解している。しかし朝の会話の内容がどうしても気掛かりだった。史実の沖田総司は肺結核に冒されていたと聞くが、現時点で既にその症状は出ているようだった。

立香は走った。

もし、万が一を思うと居ても立ってもいられなかった。

既に沖田の姿は見えなくなっていたが、すれ違う人々に見かけたかどうかを尋ねることで道に迷うことはなかった。ただそれでも土地勘のない道を行くのは困難で、 否応なしに時間は取られていた。

分かれてから三、四十分経ってようやく沖田の姿を見つけた。立香は物陰に隠れ、魔術の詠唱を始めた。

交錯する刃と刃。

沖田の剣捌きは見事な物だった。

がたいのいい男二人の刀をたった一人で受け止め、まるで三本の剣があるかの如き神速で圧倒していた。

狭い路地裏で、風のような身軽さで躱し、いなし、距離を詰める。男達の後退する一歩分が、沖田の三手に相当していた。

男の内の片方が態勢を崩した。その隙を見逃さず繰り出された突きは、守るために構えられた鋼すらも貫いて男の首に突き刺さった。

「化け物かよ……」

残った男が冷や汗をかきながら戦慄に震えていた。

杞憂に終わったか。

立香がそう思ったその時だった。

「ゴフッ」

赤い鮮血が流れた。

男の物ではない。沖田のものだ。

「コホッ、ゴホッ」

戦いの緊張が身体に障ったのだろう。

咳き込む度に口から紅い物が溢れ出て来る。右手で口を覆っていたが、発作はどうしようもなく止まらない。その状態で男の剣を的確に躱していくものの、先程の動きからは信じられない程沖田の足は覚束なかった。

「何だか知らねえがこれで終いだ!!」

男が力強い一撃を放つ。

対する沖田は日本刀を支えにして立つのがやっとの状態だった。

覚悟を決めて目をつぶったその時だ。

「ガンド!!」

長屋の陰に隠れていた立香が詠唱を終え、指先から呪いの弾丸を男に繰り出した。速度も威力もそれ程高くはなく命中こそしなかったが、男を怯ませるのには十分だった。

「でぇりゃあああああ!!!!!」

その隙を突いて勇ましい雄叫びと共に沖田の前に飛び出し、未熟ではあるが八極の拳を男に撃ち込む。何の受け身も取らず食らった一撃は男の身体を宙に吹き飛ばした。

「大丈夫?」

「藤丸さん、あなた一体……」

「しっ。じっとしてて」

沖田の肩を右腕で支えながら左手を胸に当てて、応急処置代わりに傷を癒す魔術を行使する。

人理修復の戦いで身に付けた立香の技術だった。

「ちっ。妙な技を使いやがる。だが……」

男が起き上がる。

「二人まとめて叩き切ってやらァッ!!」

空中に飛び上がり、立香達を真っ二つにせんと刀を振り上げ、刹那の内に下ろされた。

しかしそれは、沖田の目にはとっては鈍重に過ぎた。

発作が治まった沖田は素早く刀を構え直すと、男の攻撃のタイミングに合わせて斜め上方向に斬り上げた。

数秒後、浪士の身体が力なく地面に落ちる音が響いた。

「……終わったね」

立香が言った。

その言葉に振り向くことなく、沖田は自分の掌を見つめていた。

「信じられない。

発作が始まったら数十分は止まらなかったのに……」

「沖田……?」

「お願いがあります」

振り返ると、朝に見た縋るような目つきで沖田は立香に頼んだ。

「私の……。

私のお医者様になってくれませんか」

昼間あれだけ高く上がっていた太陽が、地平の向こうに沈みかけていた。




次回は小休止で別の鯖にするかも。

魔術と八極拳についてはメディア嬢と書文先生に教えて貰ってるから多少は出来るんじゃないかということで


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モードレッド編②

粗雑ながら続編。
深夜テンションMaxでヒャッハー


気に入らねぇ。

モードレッドは心の中でそう呟いた。

彼女を苛つかせている原因は主の藤丸立香にあった。

立香は度々モードレッドにちょっかいを掛けていた。内容は彼女のポニーテールを引っ張ったり、頬を突くというような子供染みたものだったが、そのことにモードレッドは不満を募らせていた。

立香は、例えばブーディカには臀部を撫で回したり、マタ・ハリの胸を後ろから弄んだりしていた。

それで、モードレッドの方はというと完全にガキ扱いである。モードレッド自身何故こんなことで苛立っているのかよく分かっていなかったが、とにかくイライラしてしょうがないのである。

彼女が分厚い甲冑を外したのはその為だった。

厳つい鎧の下の姿は驚く程簡素で、上半身にいたっては胸を隠すさらしが一枚巻かれているだけという有様だった。

円卓の騎士だった頃はまともに素顔すら見せなかった彼女が自分の素肌を立香に見せるのは中々勇気が必要だったが、それでも覚悟を決めて立香の前に出たのだった。

その時の立香の反応はというと……。

無視。

無視である。

会うなり、彼女は何も言わずにモードレッドの横を走り去ったのだった。

モードレッドから立香に話し掛けた訳ではなかったが、ここまで姿が変わったら普通はあちらから話し掛けてくるものだろうと彼女は思っていた。まさか露骨に視線を逸らされるなどとは予想だにしていなかった。

馬鹿にされたと思った。

そして、気のせいだろうか。何だか目頭の辺りが熱くなっていた。

結局誰にも見られぬよう足早に、暗い表情のままモードレッドは自室に戻ったのだった。

それから深夜までモードレッドは一歩も部屋から外に出なかった。しかし長時間ベッドの上で寝転がっていたことで冷静になったのか、不思議と外を出歩きたくなった。

夜の二時のカルデアの廊下には、誰一人出歩く者はいなかった。

ブーツの音だけが静寂の中響き渡る。

今のモードレッドの心に苛立ちはない。彼女にとって立香は父以外に忠誠を誓ったただ一人の主であったが、立香にとってモードレッドは数ある英霊の一人でしかない。そのことが少しだけ悲しいだけだ。

「モードレッド……?」

前から投げ掛けられた呼び声に、モードレッドははっとした。

彼女の数メートル先に立香がいた。

「ッ!!」

何も言わずに立香が背を向けて走り出した。

「待てよ!!」

逃げ出す立香の腕を、モードレッドはいつの間にか強く握っていた。

「待てって……」

逃げ出さないよう、モードレッドは立香を壁際に追い込んで、顔のすぐ横に右手を置いた。

それでもなお、立香の目線は下を向いてモードレッドを見ようとはしなかった。

「……何よ。顔近すぎ。キスでもするつもりなの」

「してやろうか」

「馬鹿じゃないの。女同士じゃん」

「うるせえ。今更女扱いすんな」

意地でも自分を見ようとしない立香に対してモードレッドの苛立ちはだんだん甦ってきていた。

暫く沈黙を保ち続けていたが、それに飽きると立香の顎を左手の指で無理矢理持ち上げた。

「俺を見ろ」

二人の視線がぶつかる。

心なしか、焦りで立香の瞳が揺れているように見えた。

笑いでも堪えていたのだろうか。モードレッドはそう思った。

「俺、おかしいか」

「え?」

「どうせ馬鹿が馬鹿みたいな恰好してるなんて思ったんだろ」

言葉を紡ぐ度、モードレッドの頭は熱くなっていった。

「馬鹿にするなら目の前でやってくれ。こそこそするんじゃねえよ」

モードレッドは涙を堪えるので必死だったが、対する立香は呆気に取られているようだった。

そして訳が分からないというように首を横に振ると、少し照れながら話し始めた。

「馬鹿になんかしてないよ。ただその恰好で……」

立香の頬はほんのりと赤くなっていた。

「あんまり出歩いて欲しくない」

立香は目を硬くつぶった。

その様子に、モードレッドは動揺した。

「いやいやいや!!

カルデアにゃもっと際どいの着てる奴いるし、お前さんいつもセクハラしてる癖に何恥ずかしがってんだ!?」

モードレッドが怒鳴ると、立香も負けじと怒鳴り返した。

「あんたが痴女みたいな恰好してるからって言ってるでしょ!?

大体何よ!!

それじゃあモードレッドは私にセクハラして欲しくてそんな服着てるわけ!?」

「何でそうなる!?

お前は馬鹿だ!!」

「馬鹿って言った方が馬鹿よ!!」

「うるせえ!!馬鹿はお前だ!!

俺が何着ようが俺の勝手だろうが!!」

激しい罵倒の応酬。

最後のモードレッドの言葉を聞いて立香は──。

モードレッドの身体を強く抱き締めた。

「え?」

予想外の反応にモードレッドの口から驚きが漏れる。

そんな彼女なんてお構いなしに立香は怒鳴り散らした。

「私以外の他の人に見せたくないの!!

言わなくても分かりなさいよ。この、馬鹿……!!」

その言葉にモードレッドはたじたじだった。

「あ、いや。

馬鹿。こんなの他の奴らに聞かれたらどうすんだ」

「知らない。モードレッドのせいだもん」

結局最終的に根負けしたのはモードレッドの方だった。

「……分かった。分かったから引っ付くな。流石に苦しい」

「……ごめん」

言いたいことを言い合って、二人の頭はいつも通りの平静に戻っていた。

「なんか、怒鳴ったりして悪かったな。

でもお前も悪いんだぞ。何も言わずに逃げられたら俺だって傷付く」

「……逃げなかったら許してくれる?」

「ああ」

「それじゃあキスしても良い?」

モードレッドは噴き出しそうになった。

「ふざけてんのか?

というか本気でもこの雰囲気で言うか?」

「逃げなければ許してくれるんでしょ?

だったら私は自分の気持ちから逃げない」

立香は真っ直ぐモードレッドを見つめた。

「私はモードレッドのことが大好き」

そう言うと立香は下を向いた。

「……気持ち悪いかな」

「そんなことない」

モードレッドが言った。

「けど色々順番が滅茶苦茶なんだよ」

立香をそっと自分の方へ寄せて、耳元で優しく囁いた。

「マスターが、いや。

立香のことが好きだ」

「うん。私も」

モードレッドが立香に額を近付ける。

「キスせがんでたよな。

……どうする?やめるなら今のうちだぞ」

「やめない」

「俺なんかで本当にいいのか?」

「モードレッドじゃなきゃ嫌だ」

最後の確認を済ませ、モードレッドは立香の唇を奪った。

二人が口を付けていた時間はほんの数秒にも満たなかった。しかしそれは、親愛よりも深い情を確かめるのには十分だった。

見つめ合いながら、立香とモードレッドは幸せいっぱいに微笑んだ。




モーさん関連はどういう訳か筆が進むなぁと思って、よくよく思い出してみたら一番最初に手に入れた星5だった。
つまり、それだけ他の鯖よりも長く妄想してきたという訳で


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モードレッド編③

いちゃいちゃするだけの話


「こんなことして良いのかな……」

立香は言った。

「い、今更引けるか」

モードレッドが答えた。

二人は今、立香の部屋のベッドの上にいた。

立香は横たわり、モードレッドが馬乗りになる形でだ。

「……モードレッドのエッチ」

「お前が誘ったんだろ!」

「誘ってなんか、ひゃうっ!?」

立香の言葉を遮るように、モードレッドが胸の先端をつまんでいた。

「だ、ダメ。つまむの止めて!!」

「うるせえ!!始めてからヘタレやがって。絶対やめないからな!!」

そう言うと、モードレッドは先から全体へと立香の胸を弄び始めた。

「あん、あ、んっ…ああっ!?」

「そんな声出すな!!

自分を抑えられなくなっちまう!!」

「そんなこと言われても、んっ、がま、あん。我慢出来ないよぉ」

部屋中に甘い嬌声が響く。

モードレッドの頭はどうにかなりそうだった。

「いいっ!?」

シーツを握り、背中を浮かせて立香が艶めかしく声を上げた。

「お、おっ……」

達した後、瞳は上を向き、白目を半分覗かせながら、立香の口からともすれば間抜けな余韻がこぼれていた。

「すまん。ちょっとやり過ぎた……」

モードレッドは立香の頬を撫でながら言った。

「次からはちゃんと優しくする」

モードレッドはそのまま立香の唇を奪った。

 

 

 

「モードレッド♪」

立香はスキップしながらモードレッドの背中に飛び乗って言った。

「おんぶ」

モードレッドは首を横に振りながら、そのまま両手で立香の腰を支えた。

「鎧当たって痛くないか?」

「平気。それよりこのまま食堂いこ。お腹減っちゃった」

「おま、これで行くつもりか!?

……歩かないと太るぞ」

「それも平気。だって……」

立香はモードレッドの耳元に顔を近付けて囁いた。

「夜モードレッドと運動したし」

モードレッドは顔を真っ赤にして、出来る限り小声で抗議した。

「一々表現が親父臭いんだよ。他の奴ら、特にマーリンなんかにばらしたら承知しないからな」

そう言って、モードレッドは一つため息をついた。

「身体は大丈夫か?

気分悪くなったりしてないか?」

「してないよ。モードレッドが優しくしてくれたから」

付き合い始めて一ヶ月後、具体的には昨日、二人は初夜を迎えた。

そんな中でもモードレッドには気掛かりなことがあった。立香は一般人と比べると随分体力があったが、それでも人の域は出ていない。英霊とただの人間には身体能力からして抜本的な違いがあり、同じ性行為でも感じる疲労感に差が出るのは明白だった。

慣れないながらも、モードレッドは立香が身体を壊さないように配慮していたのだった。

「それなら良いんだけどな」

「まぁ、モードレッドってばちょっとおっぱい触った後キスしてすぐどっか行っちゃったから疲れようがないんだけどね」

「うるさい。

お前だって顔赤くして涙目になりながらあんあん言ってたじゃないか」

「そ、それは言わない約束でしょ」

そんなこんなで朝っぱらからいちゃついているうちに、食堂についた。

「おら着いたぞ。

ここからは自分で歩け」

「うん、分かった。

注文してくるから席取っておいて」

「まぁいいけど、ちょっと早く過ぎないか?

まだ誰もいないぞ」

「いいからいいから」

立香がモードレッドの背中から飛び降りた。

「あ、そうだ」

ドアノブに手を掛けた所で立香は振り返ると、モードレッドの頬に短く口づけた。

「行ってきますのチューだよ」

「お前なぁ。ちょっとは場所考えろ」

「嫌だった?」

「……嫌じゃないけど」

それじゃまた、と笑い皺を浮かべながら立香は食堂の中に入っていた。

困った奴だと呆れながら、満更でもないと思っている自分がいることがモードレッドは少し悔しかった。

それでも、立香の笑顔が眩しくて仕方なく。

「あいつ、本当に天使なのかも」

 

 

 

実は、今朝から立香はカレーを作り置きしていた。

料理の経験は殆ど無かったが、モードレッドには手作りの物を食べて貰いたかったからだ。一週間前からエミヤの下でジャガイモの皮の剥き方から教わり、今回は採用しなかったが本場のインドカレーまで調理出来るようになっていた。

「モードレッド、喜んでくれるかな」

盆に二つ分皿を乗せながら、自分の作ったカレーを食べるモードレッドを想像して一人にやにやしていた。

「薄笑いを浮かべて、何を考えているのですか」

振り返ると、源頼光、清姫、静謐のハサンの三人がいた。

「う、うん。ちょっとね」

この三人はモードレッドと付き合う前から、好意を立香にぶつけていた。

それだけにモードレッドの恋人になった今では少し気まずい間柄だった。

「……マスター」

次の瞬間、静謐のハサンが立香の懐に踏み込み、無理矢理接吻した。

「やめ、むぐぅ!?」

抵抗して押し退けたものの、頭と背中に手を回され、すぐに元の態勢に戻る。

静謐のハサンはその舌で容赦なく立香の口の中を蹂躙した。

「いや!!いやぁっ!?」

なんとか離れようと、腕に力を入れても全くびくともしない。その様子を他の二人は黙って見ていた。

「おい、何してる」

モードレッドが二人の間に割って入ると、立香の肩を寄せて言った。

「こいつは俺の女だ。つま先からアホ毛の先に至るまでお前達に分けてやるところなんか一つもない」

「大層な独占欲ですこと」

頼光が言った。

「何とでも言え。次、立香にふざけたことしやがったら問答無用で叩き切る」

鋭利な殺意がその場を支配する。三人の敵意にモードレッドの気迫は全く劣っていなかった。

「行くぞ」

立香の肩を寄せたまま、モードレッドが出口に歩き出した。

「カレー……」

連れられるまま、床の上にぶちまけられたカレーを立香は名残惜しそうに横目で眺めた。

「んなもんいつでも食えるだろ」

「あ、うん……」

二人はそうして食堂の外に出た。二人の後ろ姿を、耳まで裂けんばかりに口角を上げ、闇より深い眼で見つめる三人に気付かぬまま。

 

 

二人は暫く無言で廊下を歩いていたが、先に口を開いたのは立香だった。

「あのまま三人と殺し合うかと思って心配してた」

モードレッドはやれやれというように片目をつむりながら答えた。

「お前、そういうの嫌がるだろ」

立香は驚いた。

「モーさん、私の心が読めるの?以心伝心だね」

「これ位誰でも分かるわ」

そう言って立香の先を歩いていたモードレッドだったが、ふと何かを思いついたようにその場に立ち止まった。

「今から俺、何すると思う?」

「何って……。キスとか?」

「正解」

そう言って、モードレッドは柔らかい唇を立香に押しつけた。本当にすると思ってはいなかったのか、立香は目を大きく見開いていた。

「お前が他の女とキスしてるのを見るのはごめんだ」

モードレッドは立香の頬に着いていた青い髪の毛を取り去った。

「俺が今何考えてるか分かるか?」

「私が今何思ってるか分かる?」

二人の言葉は同時だった。

「モードレッド様かっこいいだろ?」

「立香ちゃん可愛いいでしょ?」

二人は声を上げて笑った。




沖田より早く終わりそうで草。
三人の扱い酷すぎなのでいつか埋め合わせる。

次回は微ntr注意


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モードレッド編④

書くことない


モードレッドと付き合う前まで、三人は深夜の時間帯を狙って立香の部屋に忍び込むことが多々あった。布団の中に潜り込まれるのは少し窮屈だったが、特に何をする訳でもないので黙って見過ごしていた。

異変が起こったのはつい二週間ほど前のことだ。暫くぶりに三人が、三人同時に部屋に入り込んで来たのだ。異様な雰囲気の中、頼光が毛布を奪い去ると、清姫と静謐のハサンが立香の左右に横たえて身体を撫で回した。何かの間違いかと思った。しかし背筋に走る悪寒が、これが現実であることを強く主張する。

足裏、内股、胸、脇、首筋、唇と三人は立香を朝方まで貪り尽くした。

モードレッドには言わなかった。自分の身体が穢れているなどとはとても。

立香は何も出来なかった。

得体の知れない恐怖感に目と口をひたすら閉ざす事でしか耐えられなかった。しかし三日前から、その行為が別の意味に変わっていることに気付いた。

三人によって責められ続けた部分を触られると、立香の意思に関係なく感じられるようになっていたのだ。服を着替えるだけで疼く切なさに立香は焦った。それでも三人の責め苦は止まらない。それどころかさらに激しさを増していっているようだった。

そして一昨日のことだ。

「ひっ!?」

立香はついに声を上げてしまった。

「そんなに気持ち良かったんですか」

清姫の声が耳のすぐそばで聞こえた。

「それじゃあ、もう。

そろそろ食べ頃ですね」

「必死に我慢してるマスターも可愛いかったですよ。でも……」

三人の引き裂くような笑みが闇に浮かぶ。

「あなたのよがり狂う姿を私は見たい」

全く同時に言うと、頼光が黒のストッキング破り捨てた。

「中身は桃色ですか」

静謐のハサンが言った。

「今に肌色になりますよ」

清姫のその言葉を聞いて、立香の止まっていた頭が正常に働き出した。しかし、もう遅い。逃げ出そうともがく立香を静謐のハサンは無理矢理うつ伏せにしその背中に馬乗りになると、両腕を片手で拘束した。

清姫か、頼光か。両足も足首の辺りを持たれて閉じることが出来なかった。

最後の布地が破れる音がした。立香は泣きながら懇願した。だがそれは三人を余計に駆りたてて昂ぶらせるばかりだった。その日、立香は後ろの穢れを暴かれた。

「お願い。私の所に来て」

立香がモードレッドを誘ったのはこういった背景があったからだ。

時刻は消灯少し前。三人が侵入してくるのにはまだ数時間あった。立香はその間に、まだ健在だった少女の証をモードレッドに捧げてしまいたかった。

モードレッドは顔を真っ赤にしていたが、短く分かったと呟いて、立香の後に付いていった。

部屋に入るとドアに施錠し、白色の電気をオレンジに変えて立香はモードレッドに抱き着いた。

「今は鎧を脱いで」

魔力で出来た甲冑が解かれ、モードレッドの素肌が現れる。立香はその温かさを感じながら言った。

「今日は、私をすきにしていい日。だから」

言い終わる前に、モードレッドは立香の両足と両肩を抱きかかえて言った。

「言わなくてもいい。全部分かってる」

モードレッドはそのまま立香をベッドまで運び、そっと降ろした。モードレッド自身は立香の上に乗った。

モードレッドの両腕は立香の顔の左右に置かれ、お互いがどんな表情をしているかよく見えた。

恥じらいで顔を赤らめながら、少しの不安を瞳に宿しているモードレッドを見て、立香は罪悪感を覚えた。

「こんなことしていいのかな……」

「い、今更引けるか」

モードレッドを焚き付けることになると分かっていながら、立香は自分を止めることが出来なかった。

「……モードレッドのエッチ」

自分から処女を押し付けるのでは意味が無い。彼女の方から求められたかった。

「お前が誘ったんだろ!」

「誘ってなんか、ひゃうっ!?」

胸の先端をつままれる。

今までで一番心地良い快感だった。

「だ、ダメ。つまむの止めて!!」

「うるせえ!!始めてからヘタレやがって。絶対やめないからな!!」

モードレッドの責めが本格化する。

「あん、あ、んっ…ああっ!?」

「そんな声出すな!!

自分を抑えられなくなっちまう!!」

「そんなこと言われても、んっ、がま、あん。我慢出来ないよぉ」

快楽の拷問とは違う。

いつまでも浸っていたいような甘さだった。

「いいっ!?」

今まで我慢してきた物が吹き出した。

「お、おっ……」

今の自分は随分だらしない姿をしているだろうな、などと自嘲しながら立香はモードレッドだけを見つめた。

「すまん。ちょっとやり過ぎた……」

あなたのせいじゃないと立香は言いたかった。

「次からはちゃんと優しくする」

モードレッドの口づけが立香の身に染みた。

「……もっと乱暴にされるかと思った」

「そんな道具みたいにお前を扱うかよ」

「モードレッドなら良いよ」

「馬鹿言え。泣くほど優しくしてやる」

立香は笑った。

「モードレッドってさ」

「何だ?」

「たまに凄く男前だよね」

モードレッドは顔をしかめた。

「普段は違うのかよ」

「いつもは可愛いかな」

「お前……。

会ったばっかの頃なら叩き切ってるぞ」

「今は違うでしょ?」

モードレッドの首に手を回し、今度は立香の方から唇を交わす。

いつのまにか態勢は変わり、一人用のベッドの上、二人は横向きになって手をつないでいた。

「ごめん。私、甘えてた」

立香は言った。

「モードレッドはいつも私のために頑張ってくれるから……」

立香は自分から処女を押し付けるのでは意味が無いと思っていた。しかし、今晩の自分の行為はどうだろうか。モードレッドの気持ちを利用することは押し付けることに他ならないのではないか。結局、立香は自分しか見えてなかったのだと気付いた。立香は逃げていた。全てを知ったモードレッドが自分を拒絶することを怖れる余り。

立香は打ち明ける決心をした。

「モードレッドはさ、私が汚れててもいい?」

「お前ヤリマンか?」

「違うけど」

モードレッドの表情は神妙だった。少しの沈黙の後、彼女は答えた。

「別に良いんじゃないか?

俺はお前が、例え魔神柱みたいな姿をしてようが愛してやる」

「そんなの無理に決まってる」

立香は茶化した。

しかし、モードレッドの眼差しは真剣そのもので。

「本当だ」

その強さに圧倒され、立香は何も言えなかった。

「それに、さ。

甘えたって良いじゃないか。俺はお前の騎士だぞ。多少の無理難題は聞いてやるさ」

モードレッドは立香を自分の方にそっと寄せた。

立香の中で、重荷が外れた。

「言いたいことあるんだろ?」

その優しさに本当に泣いてしまいそうだった。

表情を悟られないように目線を下に逸らしながら、立香は全てを話した。

その間モードレッドは一言も言葉を発さなかったが、全身から漲る怒りで空気がピンと張り詰めていた。

「……この部屋を出るぞ」

モードレッドは立香を抱きかかえ、部屋を出た。その身には重厚な鎧が既に装着されていた。そして自室のベッドに立香を置くと、額にキスした。

「そこで見張ってる」

一晩中、モードレッドは立香の安全を見守っていた。

 

 

「昨日は……ありがとね」

食堂からの帰り道、立香は言った。

「別に。

感謝されるようなことはしてない」

「ううん。凄く救われた」

立香の頬は仄かに赤かった。

「まだ何も解決してねえよ。……でもまぁ今日は元気そうで良かった。ここ最近ずっと暗かったからな」

「そんな暗かったかな?」

「ここ数日は思い詰めた表情でコソコソしてたぞ」

「あ、それは……」

立香の表情が真っ赤になる。

「会う前にモードレッドをおかずにオナ」

「ワー!?ワー!?何とんでもないこと言ってんだ!?」

「身体を開発されすぎてどうにも我慢出来なくて」

立香は両手で顔を覆った。

「前半私責めモードレッド受けからの後半攻守逆転の妄想が一番捗りました」

「エッチなのどっち!?

つか聞いてねえよ!?

つーか全然元気じゃねえか!?」

「私、モードレッドといる時はいつも元気だよ?」

立香は笑った。

憮然とした態度を取っていたが、心なしかモードレッドは少し嬉しそうだった。

「ちっ。まぁいい。

……今回のことは不可解なことが多すぎる。ここからは気、引き締めていくぞ」

「うん」

立香とモードレッドの戦いが今、始まった。




次は多分戦闘という名の茶番


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モードレッド編⑤

独自解釈、設定の塊


その日の夜、三人は血眼になって立香を探した。

昨日に続いて部屋はもぬけの殻だった。暫く様子を見るつもりだったのだが、我慢の限界はすぐにきた。立香の身体を貪ろうと、深夜のカルデアを徘徊するその姿は狼そのものだ。

獣達の視線をくぐり抜け、立香は走り続けていた。三人は廊下に響く足音、空気を震わせる息、そして僅かに残った匂いを追って着実に小鹿を追い詰めていく。

その気になればすぐに終わらせられるこの鬼ごっこを続けていたのは、彼女達の嗜虐的な昂ぶり故か。

そしてついに立香の足は疲労で動けなくなった。身を隠すため、一番近くの空き部屋に立香は転がり込む。

「どこにいるのですか?」

扉の向こうで頼光の声がした。

「姿を見せて頂かないとこの頼光、鬼になってしまいます」

立香は両手で口を覆い、必死に息を潜めた。

だが頼光はその場から一歩も動かない。

「安珍様はどこにいらっしゃるのでしょう」

清姫が嘲うかのようにやってくる。

「……他のどこにも居られない」

静謐のハサンの静かな声が、しかしはっきりと聞こえた。

「私達はあなたの居場所を知っている」

スライド式のドアが開く音がした。

一番初めに部屋に入った頼光の容赦の無い平手打ちが立香の頬を襲った。

そして痛みで怯んだ隙を突き、か弱い少女をベッドに投げだす。

それでもなお逃げようとする様子を見て清姫と静謐のハサンが両腕を拘束し、頼光が立香の腹の上に乗った。

「マスターには少し、折檻が必要ですね」

そう言って見下ろす頼光の視線は冷たかった。

彼女は立香の首を即死しない程度に絞めた。

「誠意を込めて謝って下されば母は許します。

さあ、早くしないと本当に死んでしまいますよ?」

頼光はいつものように柔らかく笑っていた。

立香は持てる全ての力を使って声を出そうとするが、掠れた息が咽を通るだけだった。不自然に痙攣する身体が怯えて震えるかのように助けを訴えているが、救いの手は何処にもない。

「本当に反省しているなら声を出すこと位容易な筈。さあ!!」

頼光はさらに両手に力を込めた。

立香の意識が混濁していく。両目はあらぬ方向に向き、舌はだらしなく垂れ、不自然な嗚咽を口から漏らす姿を見ればこれ以上は取り返しのつかないことになるのは誰にでも分かることだ。

全身の痙攣が一層増していき、そして最後に一際大きいのは放って立香は動かなくなった。

「死んでしまいました」

頼光は言った。それが何でもないことのように。

「分けましょうか。私は後ろを」

「私は前を」

「……私は口を」

三人は動かない立香を弄ぶ気でいた。

屍姦と呼ばれるそれは人の尊厳を踏みにじり尽くす行為そのものだ。だが三人はそれを愛の証明だと信じてやまない。全く無抵抗のその身体を蹂躙せんと三人はその手を伸べた。

「なんてね」

立香の口が歪む。

油断して力の抜けた三人を振り払い、ベッドを飛び降りて立香は床に躍り出た。

三人の顔が怒りに震える。

「どういうことです?

反省したのではないのですか」

「反省してたら声出してるよ?」

立香は笑った。

その挑発に三人は激昂する。最早辛抱ならんと、それぞれが武器を構えて飛び上った。数秒後には立香はただの肉塊になっている筈だった。

しかし──。

「出番よ、モードレッド!!」

「待ちくたびれたぜ!!」

隣の部屋に隠れていた赤い激情が雷を纏って壁を破壊し、立香の前に現れる。魔力の奔流を走らせた剣の一振りは三人を軽く吹き飛ばした。

「しかし凄い演技だったな。肝が冷えっぱなしだったぞ」

「なんか変な河が見えたけど、モードレッドを思ったら戻ってこれた」

「三途の川渡り掛けてんじゃねえか!?」

無茶し過ぎだとモードレッドは立香の額にチョップを入れる。

その様子を三人はゆっくりと立ち上がりながら、暗い瞳で見つめていた。

「こんな所で惚気られては嫉妬してしまいますわ」

清姫が声を低くして話す。

「どうだ?

結構いい女だろ。俺の彼女だ」

立香と三人は顔を赤くした。そんなことはお構いなしにモードレッドは続ける。

「こっちはとうの昔に沸点は超えてるんだよ。どうだ、カルデア(ここ)でやるか?魔術王のお使いさんよ」

三人の表情が電源が切れたかのように一転して無くなった。

「いつから気付いていた?」

静謐のハサンの声を使って話す。その口調は彼女の本来のそれとは似ても似つかぬ程に尊大で傲慢だった。

「最初からさ。

お前が今話してる奴の身体は凄まじくてな。二度触ればどんな英霊でもあの世行きだ。だがこいつは見たんだとよ。お前らが行為中にぶつかって何度も肌が触れ合うのを」

それは静謐のハサンの持つ能力からは考えられない現象だった。

「そして確信したのはたった今、あなたが分けようなんて言ったからよ」

「そう。独占欲の塊みたいな奴らが、仲良しこよしで皆で使いましょうなんて言う訳ねえだろうが!!」

モードレッドの言葉に三人の体を使って敵は邪悪な笑みを浮かべた。

「幾つか教えてやろう。この一件は魔術王の差し金ではない。我の独断だ」

彼女達の口から、赤黒い瘴気のような物が飛び出して空中に浮遊する。

「そして我が名はアスモダイ。72柱が一柱、第三十二位の色魔アスモダイなり」

霧の中から一つの大きな眼が開かれ、立香達を見つめた。

「はん。とびきりの色情魔が相手ってことか」

モードレッドが剣を構える。

「ここで戦っても勝ち目はないよ。流石の魔神柱でも多勢に無勢じゃない?」

立香が言った。

「抜かせ。英霊共はまだこの騒ぎに気付いてはいまい。この小娘共が万が一何者にも操られていなかった場合を考慮して他の者には言っていないのだろう?

わざわざ使われていない施設に逃げ込んだのもその為だ」

「馬鹿か?

これだけ大きな存在反応だ。ロマン達が気づかない筈がない」

その通りだとアスモダイは言った。

「だが猿公。時間稼ぎにはなった。何、ここで戦わなければ良い話だ」

その瞬間、空間に暗黒が広がった。人も物もないただの闇。その中心にアスモダイは本来の柱の状態で立っていた。

「応援は来ない。いや来れないと言った方が正しいか。とにかく他とは断絶した空間に引き込ませて貰った。

人類最後のマスターよ、我はお前を殺しはせん」

柱に開かれた無数の目玉が一斉に笑った。

「朦朧の希望たるお前を捕らえ、その肉体に絶望を刻み込んでやろう」




戦闘入れなかった……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

清姫編②

前回との繋がりなし


愛しの彼女は薄暗い鉄格子の彼方。

清姫は冷たいコンクリートの上で膝を抱える立香を見つめていた。

「ご機嫌よう、安珍様」

立香は即座に否定する。

「私、そんな人じゃない」

清姫は武家の娘らしい凛然さで姿勢良く屹立していた。それとは対照的に立香の目の下には隈が出来、身体も少し窶れている。

陰鬱とした表情で俯きながら立香は言った。

「あなたは何も見えてない」

立香は蹲った。

清姫にはそれが泣いているように見えたが、何故そう見えるのかはよく分からなかった。

「私は女」

「知っています」

「年は十六」

「存じていますとも」

「では私の名前は?」

清姫は首を傾げた。

「安珍様でございましょう?」

その言葉が立香の心に火を付ける。

「違う!!」

鬱蒼とした心を燃える激情が照らし出した。立香は頭を掻き毟って立ち上がり、声を荒げる。

「何回言えば!!

あと何回言えば清姫は知ってくれるの!?

私の姿を、心を、名前を!!」

鉄格子掴み、立香は叫ぶ。

細かい唾が清姫に掛かるほどだったが、しかし当の本人は全く涼しい顔をしていた。

「私には貴方だけ。なのに何が気に入らないのです?」

それが立香の心を逆撫でする。

立香は鉄の隙間から手を伸ばし、清姫の髪を鷲掴みにして自分の方に引っ張った。鈍器で殴られたような音が牢獄の中でこだまする。今、二人の額は鉄格子越しに接していた。

「私を見ろ」

視線がふつかる。瞳から発せられる狂気めいた光に魅入られながら。

清姫は自分を強引に求めようとする力強さに恍惚としていた。

「愛しています、マスター。世界で一番」

清姫が微笑んだ。

それを聞いて、立香の表情は少しばかり和らいだ。

暫くそのまま二人はじっとしていたが、鉄が頭を冷やしたのか、立香は冷静さを取り戻した。

「……ごめんね。さっきの痛かったよね」

申し訳なさそうに額を撫でたあと、立香は愛おしげに清姫の頬に触れた。

「でも清姫がいけないんだよ?

貴女が私を中々好きになってくれないから……」

そう言って、立香は牢獄の鍵を開けた。

今この牢獄において、憐れな罪人は清姫、身勝手な断罪人は立香である。牢を開けたからと言って立香が清姫を許した訳では当然ない。立香は牢屋の中に入ると、内側から施錠し、鍵を鉄格子の外に放り投げた。

「これでずっと。

ずーっと一緒だね」

「はい、マスター」

指と指を絡ませ、今度こそ本当に額をくっつけながら二人は嬉しそうに笑みを浮かべた。

「やっと恋人になれたね」

立香は優しく清姫に口づけた。

「足りませんわ、マスター」

今度は清姫の方から立香を求めた。

こうして互いが互いを欲しながら心に灯った焔を煽り続け、焼き尽くすような業火にしていく。舌を絡め、体位を変え、大きな瞳で見つめ合いながら。

一通りし終わって、二人は握りしめた両手の力を緩めた。清姫が口の中に残ったものをごくりと飲み込む。それを見て立香はもの欲しそうに人差し指を加えた。

「私は清姫さえいたら何もいらない」

立香が清姫を強く抱きしめる。

だから、清姫は言ってしまった。

「私はいつも貴方だけのものですよ、安珍様」

するりと立香の両腕の力が抜けた。

「辛い、苦しい、悲しい……?」

瞳の光が徐々に失せていく。まるで涙で流れ出てしまったかのように。

「……憎い」

立香が呟いた。

「憎い、憎い……」

全身が熱い。

「憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎」

焔はもう、人を焼き殺せる程に燃え上がっていた。

気がつくと、そこには一匹の白い大蛇がいた。清姫は立ち上がり、蛇の前へ出た。

大蛇の口が大きく開かれる。飲み込まれる直前、清姫は思った。

───嗚呼、立香()がいる。

清姫は全てを受け入れた。




一応埋め合わせのつもりだけどハッピーエンドがよかった人は御免な。清姫のハッピーエンドって凄く想像し辛いんだ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モードレッド編⑥

目玉の一つ一つに走る血管が有機的に脈動すると共に黒い害毒が流れ出る。柱は肉のように伸縮し、鞭の如くにしなってモードレッドを襲った。

だがその攻撃をモードレッドは恐れない。魔神柱の戦いはこれまでで十分に学習している。出力で勝る相手だろうが、モードレッドには情報のアドバンテージがあった。精密に、正確に躱して壊す。それを繰り返していけば必ず勝てる。いや勝てなければ英雄を名乗る資格はなかった。

「モードレッド、上!!」

「了解!!」

そしてモードレッドには敵の戦いをより俯瞰的に観察出来る主がいる。

立香はただの凡人だったが、それでもこれまでの戦いの経験をモードレッドは買っていた。

「小癪な」

苛立ちを含んだ声が耳障りに響く。

格下を相手に劣勢を強いられているその状況がアスモダイの冷静さを奪っていた。

「どうだ?

猿も舐めたものじゃないだろう」

「貴様!!」

アスモダイの放つ闇を切り裂き、モードレッドは弾丸よりも速く疾走する。

アスモダイが気づいたときにはその懐に潜り込み、重心を低くしてその力を貯めていた。

「とっとと逝っちまいな」

紫電よりも赤黒い稲妻がアスモダイを攻める。全身の力と連動して放たれたそれは一撃、二撃、三撃と折り重なり、反攻の隙を与えぬ高速連撃となって対象を蹂躙していく。その威力は凄まじく、魔神柱には耐え難い苦痛になっていた。

「おのれ!?

下等生物の分際で我に刃向かうか!!」

強い怒りで無数の眼球が怨敵を睨みつける。

それをモードレッドはただ静かに受け止めた。

「これでお終いだ」

モードレッドが魔神柱よりも高く飛び上がる。剣先には一際鋭い雷撃が迸り、振り下ろされた時にはアスモダイは真っ二つになっていた。

「やったね!!」

立香がモードレッドに抱きつく。全てが終わったと思ったからだ。

だがモードレッドの表情は依然険しいままだった。彼女の直感がまだ終わりじゃないと告げていた。

そしてそれは的中する。

四つの雷がモードレッド達の前方に次々と落ちた。その一つ一つからアスモデウスの影が顕れて笑った。

「……頼光の宝具だな。

さっきのは分身か」

モードレッドが言った。

想定外の出来事に焦りが生まれる。

「その通りだ。

使ってみると中々便利なものだな」

状況は最悪だった。

広範囲に展開されては、一方向にしか進まないモードレッドの宝具では一掃仕切れない。その上、傍には立香がいる。

「伏せろ!!」

モードレッドの怒号が飛ぶ。見ると、四体のアスモダイが魔力砲を放とうとしていた。

モードレッドは覆い被さるようにして立香をしっかりと抱き締めた。

数秒後、モードレッドの絶叫がこだまする。己の主人を守るため、全ての攻撃を肉壁になって受け止めたからだ。

「いや……。

いやあああぁぁぁっ!!??」

立香の心に絶望が広がる。

モードレッドはかろうじて意識は保っていたが、全身から力が抜けて虫の息だった。

「どうしよう…私の、私のせいで……」

その瞳から涙が流れる。

「投降せよ」

アスモダイの目玉が不快に歪む。

「その女を死なせたくないのだろう?」

モードレッドは首を振った。

「駄目、だ……」

息も絶え絶えに、彼女は立香に言った。だがその制止は彼女に届かない。

「……どうすればいいの」

モードレッドを抱き抱えたまま、立香は尋ねた。

「肉体を我に委ねよ」

「私をどうするつもり」

「言ったであろう。絶望を刻みつけると」

立香は瞼を閉じた。

するべきことはすでに決まっていた。

「私、モードレッドを助けたい」

立香が耳元で囁いた。

「やめ、ろ」

声を何とか絞り出して、モードレッドは立香を引き止めようとする。

「た、の…む……。やめて、くれ……」

立香の肩に熱いものがこぼれ落ちた。

「ごめん。それはちょっと聞けそうにない」

立香はモードレッドの頬にキスして、左手をかざした。

「令呪を以て命ずる!!

逃げて、モードレッド!!」

手の甲の紋章が赤く光り、そのうちの一画が消費された。

行使された絶対命令権は一時的な奇蹟さえ可能にし、サーヴァントをカルデアに空間転移しようとする。

その直前、立香は笑ってモードレッドを見送った。

「さようなら。

あなたのこと、いつまでも愛してる」

令呪に抵抗しようともがくが、それも傷ついた体では無理な話だった。

モードレッドの視界が頭痛がしそうな白で染まる。しかし、脳裏に焼き付いていたのは最後の立香だった。

涙で濡らしながら、それでもモードレッドを傷つけまいと微笑む馬鹿な彼女の優しさだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モードレッド編⑦

目覚めると、そこは自分のベッドの上だった。

「やぁ、やっと起きたんだね」

声のする方に目を向けると、白いローブを身に纏った青年がいた。

「……なんでテメエがここにいる」

モードレッドはその青年、マーリンが苦手だった。始終胡散臭いにやけ顔を晒しているし、それに違わず人格も褒められたものではなかったからだ。そして何より、彼は生前からモードレッドの素性をどういうわけか知っている。その上でアーサー王に何も報告しなかった彼に、モードレッドは不信感を抱いていた。

「随分酷い言い草だね。

君の命の恩人は僕なんだよ」

相手の敵意にマーリンは余裕を崩さない。

「俺の命を救ったのはあいつだ」

モードレッドはむきになって反論した。

「いや、彼女の令呪だけではここまでは届かない。虚数空間で彷徨う君を拾ってカルデアまで運んだのは僕だ。

君の壊れかけた霊基を数日がかりで修復したのも僕」

マーリンはニヤリと笑って見せた。所謂ドヤ顔というやつである。

モードレッドはすぐに言い返そうとしたが、マーリンの一言に気が付いてやめた。その代わりに気持ちの悪い焦燥感で背筋が寒くなる。

「……お前、今数日って言ったか?」

モードレッドはマーリンの首を掴む。

「あいつは!?あいつはどうなった!?」

取り乱すモードレッドとは対照的に、彼は落ち着いて、あくまで冷静に答えた。

「さあね。

ただあの魔神柱の特性からすると、人の身では耐えられないほどの責め苦を受けてるだろうね。あるいは想像を絶する快楽の拷問か。

どちらにせよ、もうとっくに廃人さ」

それを聞いたモードレッドが飛び上がってすぐに部屋を出ようとするが、背中に走る激痛でしゃがみ込んでしまう。傷が完治した訳ではないのはすぐに分かった。

「やめといた方が良いと思うよ。それに、今のカルデアはそれどころじゃない」

モードレッドは終始他人事であるかのように振る舞うマーリンに激昂する。

クラレントを構えて叩き切ろうとするが、彼はひらりと身をかわした。

「すぐに怒るのは悪い癖だよ」

マーリンは埃を払うような仕草でローブをはたいて言った。

「僕の言葉は真実だ。今魔神柱アスモダイの幻影がカルデアに攻め込んで来ていてね。これが厄介なことに時限式で五体に増殖するんだ。その上、幻影達の出力は本体と変わらないときた。分かりやすいピンチだろ?」

彼は諭すようにモードレッドに言い聞かせる。

彼女も頭では分かっていた。今はネズミ算式で増える魔神柱の撃滅が最優先なのだと。

しかし、それでも、モードレッドの最優先は違っていた。

「……父上は今どこにいる」

マーリンは値踏みするように目を細めてモードレッドを暫く見つめていたが、これも気まぐれなのか。彼女の問いに答えた。

「今は自室で出撃の準備をしてると思うよ」

「ふん。さっさと言えってんだ。

……それと今回は世話になったな」

短く礼を言ってモードレッドは部屋を出た。

 

 

 

目的の部屋に着く前に、モードレッドは彼の王とその騎士達と鉢合わせた。

「何事です」

他の騎士達の先頭を行って風を切るその人が、凛とした視線でモードレッドを捉えた。

「魔神柱の撃滅に行くのか、アーサー王」

アルトリアの眼差しを睨み返すような形で返上しながら、モードレッドは尋ねた。

「だとしたら?」

それを受け止めるように目を瞑りながら、アルトリアは冷酷に宣言した。

「私はキャメロットの王として、裏切り者の卿と共に戦うつもりはない。あの悪魔と戦うつもりならば勝手にすることだ」

アルトリアの宣言に、モードレッドは皮肉で返す。

「はっ。未だに王様気取りか。ブリテンはもうキャメロットを望んではいないだろうよ」

「貴様!!」

後ろで控えていたガウェインが声を荒げた。

日輪の聖剣を向ける彼を、アルトリアは片手を上げて嗜める。

「控えよ、ガウェイン卿。

……それで?

叛逆の騎士よ、そんなことを言いにわざわざやって来たのか?」

瓜二つの顔をした二人の間に、極度の緊張が走る。

敬愛し、尊敬し、そして憎悪した相手を前に、モードレッドはクラレントを握り締めた。ただならぬものを感じ取ったランスロットとガウェインが王を庇わんと間に割って入り、警戒する。

そんな彼らをよそにモードレッドはクラレントを振りかざし、そして目の前に突き立てて跪いた。

「かつて円卓の末席にいた者の浅ましき願いをどうか。どうか聞き入れて欲しい。

立香を救ってやって下さい」

騎士達の間に動揺が広がる。しかしアルトリアだけはしっかりとモードレッドを見据えていた。

「……俺は。

いや私は、もうあなたの騎士ではない。だからあなたが私の言うことに耳を傾ける必要もない」

しかしとモードレッドは続ける。悟られぬよう俯いていたが、その瞳には涙を溜めていた。

「今のあなたはブリテンの王である前にマスター藤丸立香のサーヴァントである筈だ。主の危機を見過ごしたとあっては騎士の頂点たる騎士王としての示しがつかないではありませんか」

情に訴えるモードレッドに対して、王は冷たく言い放つ。

「私がどういった人間であるかは貴殿がよく知っているだろう。我々は最優先事項を最速で果たすだけだ」

合理で動こうとするアルトリアに対して、モードレッドは哀れになる程訴え続けた。

「存じています。

しかし私にはあの者が、あの者の笑顔が愛おしくてならないのです。

名も知れぬ民の幸せを慈しんだあなたならば聞き入れて頂けるものと馳せ参じました」

俺が王として相応しいと不遜に言い放つモードレッドはそこにはなかった。

あるのはただ、マスターに忠誠を誓った騎士の姿だけだ。

「私一人では、あの魔神柱には届かない。

だからどうか、私に力を」

それでもアルトリアは、あくまで冷たかった。

「モードレッド卿よ、あなたは二度私を裏切ったな」

そう言って彼女は騎士達の方へ振り返った。

「ベディヴィエール、あなたは第一を。

トリスタンは第二。

ガウェインは第三を頼みます。

ランスロットは第五が良いでしょう」

「王はどちらに?」

トリスタンが尋ねた。

「無論第六です。

作戦は魔神柱本体の捜索及び排撃。マスター立香を救出した後、正義の鉄槌を下すのだ」

騎士達が敬礼する。

アルトリアはモードレッドを横目で見た。

「勘違いしないことだ。

我々円卓は元々本体の攻撃を任されていた。あなたの頼みを聞いたわけではない。私はあなたと足並みを揃えない」

アルトリアの言葉に、人の良さそうな笑みを浮かべてベディヴィエールが付け加えた。

「幻影達の方も心配いりません。トップサーヴァント達を中心に今は優勢を保っています。全滅も時間の問題でしょう」

アルトリアは再びモードレッドの方へ向いた。

「さあ、早く行きなさい。

もたもたしている暇はありませんよ」

モードレッドは円卓の騎士達に頭を下げ、その場を走り去っていった。

「……意外でした。

あの乱暴者にこのような一面があったとは」

ガウェインの呟きにランスロットが答える。

「確かに。王が女の子だったということを初めて知った時と同じくらい驚いた」

そんな二人の横で、ベディヴィエールは静かに己の主に言った。

「いつか、王は話して下さいました。人にはそれぞれ役割があると。しかして王が彼女に与えた役割は」

「それ以上は言わぬが花だぞ、ベディヴィエール」

アルトリアは穏やかな表情で小さく微笑んだ。

「──今ならば認めても良いかもしれない。あの者の力を」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モードレッド編⑧

大幅な設定捏造あり


アスモダイは目の前の少女が不思議でならなかった。

魔術師として突出している訳でなければ、超越的な肉体を持っている訳でも、悪魔的な頭脳を持っている訳でもない。

それなのに、有史以来何人もの英雄を地獄に落とした快楽がたかが小娘の精神性を突破出来ない。

立香の身体は肉の触手に絡め取られていた。そこから電気的な刺激が流れ、行き過ぎた喜びを与え続ける。

享楽で涙を流しながら髪を振り乱しているところを見ると感じていない訳ではないらしい。人類最後のマスターを屈服させる為の術式は正常に働いている。

だが、立香はアスモダイに負けていなかった。

「もーどれっどぉ♡

だめぇ、はげしすぎるのぉ」

アスモダイと立香しか存在しない虚数空間は絶望的に他の時間軸と断絶している。モードレッドなど来る筈がない。だからこれは立香の妄想だった。

「あん、ちくびいじめちゃだめぇ~~。エッチしゅぎるよぉ」

触手が胸を刺激すると、立香はそこを触られている想像をする。

口も、性器も、全身が愛しの彼女で満たされているかのごとく立香は振る舞った。送られた快感の場所、強度、淫らな空想の中でのモードレッドに合わせて。

「ゆびちんぽだめぇ!?ゆびちんぽだめなのにぃぃぃ!?!?!?

りちゅかのいんらんめしゅぶたまんこにそそりたつにくぼうがつきたてられてるのおおおおおお!?!?!?!?!?」

聞くに堪えない野獣の猛りが静寂の世界に轟き叫ぶ。

「おほっ☆

いまイッた、イッっちゃったぁ~~~//」

筋肉の弛緩した情けない顔を晒してなお、立香は強大な悪魔に敗北していない。

吹き出す汗も、涙も、鼻水も、よだれも、生暖かい潮水と黄金水も。穴という穴から吹き出るその全てがモードレッドの為だけに流された物なのだから。

「どういうことだ。

何故精神が壊れない?」

アスモダイは困惑していた。彼女を捕らえてから数日間責め続けていた触手を消して立香に尋ねる。

その力の根源がどこにあるのかが知りたかったからだ。

「……好きだから」

絞り粕のような小声で立香は答えた。

「また一緒に、笑いたいから」

アスモダイは倒れ込む立香を見下ろす。

「あの女が今の貴様の醜態を見たら何と言うだろうな」

「……馬鹿、ね。

あんなの、あなたへの……当てつけに、決まってる…でしょ」

「よがり狂う貴様の姿は滑稽だったぞ。

あのように不様な姿を見ては千年の恋も冷めるというものだ」

無数の瞳が不愉快にゆがみ、立香を嘲笑する。

だが立香はアスモダイを不敵に笑い返した。

「滑稽なのはあなた。

女の子一人落とせないなんて情けないんじゃない」

全身に力が入り始める。食事も睡眠もなしに犯されたボロボロの体だが、立ち向かう勇気とモードレッドへの愛おしさだけは最初から変わらない。

だから立香は立ち上がる。

「私は、あなたなんかに絶対負けない!!」

アスモダイは嗤いを止める。こんなにも苛立つのは数千年ぶりだった。

理解不能。それが彼の下した結論だ。己の愉しみの為に散らせずにおいた命だったが、面白味の欠片もない下らない玩具だと記憶して、矮小だと蔑む人間にとどめを刺すことを決定する。

運命づけられた冷酷な死。

しかしそれは訪れなかった。

「やっと、見つけた」

暗黒の世界に亀裂が入り、ひび割れた硝子のように崩壊していく。射し込む真白の光の向こう側から、待ち望んだその人はやって来た。

「馬鹿な。

どうしてここが?」

アスモダイが驚愕する。

その問いにモードレッドは答えない。

真っ直ぐ立香の下に駆け寄り、倒れそうなその体を支えた。

「俺から離れるな」

立香はこくりと頷く。

モードレッドは小さく微笑んで、すぐに剣をアスモダイに向けた。

「我と片手で戦うつもりか」

「お前なんか片手で十分だ」

「まさか、あの時の戦いで我が本気を出していたとでも思っているのか?

まだ我は力の半分も使っていないのだぞ」

「それがどうした。

幻影達はカルデアに侵攻していて使えない。単体なら俺はお前に必ず勝てる」

慧眼が挑戦的に燃える。

「叛逆の騎士風情が偉そうに!!」

「叛逆の騎士?

違うな。今の俺は──」

立香を強く抱きしめて、モードレッドは烈風よりも速く疾走する。

馬鹿女(立香)の守護騎士様だ───!!」

アスモダイの放つ魔力瘴気を避けることすらせず最短距離で突っ切っていく。剣と鎧で立香には当たらないよう弾きながら、アスモダイを切り刻む。

青黒い血液を噴出させながら、なりふり構わずモードレッド達を殺そうとするが、幻影を生み出した影響で疲弊した攻撃ではまるで通用しなかった。

たがそれだけでは理由として弱い。アスモダイは考え、そして答えは簡単に見つかった。

クラレントだ。

カリバーンと同格の剣とされたこの王剣には持ち主の能力をワンランク上昇させる特性があった。モードレッドは気付いていなかったが、失われて久しいその機能が復活していたのである。

故に、紅の暴風と化したモードレッドにとってたかが弱体化した攻撃など攻撃に入らない。

「ぎゃあっ!?」

アスモダイの悲鳴が崩れていく闇にこだまする。

モードレッドの剣技が貫通したからだ。霊基に致命傷を負い、構成因子の魔力が解けていく。

気が付くと暗闇は全潰し、見覚えのある風景が広がっていた。

「ここって魔術王が顕現した……?」

立香が呟く。

「無駄口は後だ。

あいつ、まだやるらしいぞ」

消滅しかけた体を繋ぎ止めながら、アスモダイは怒りで身震いした。

「現れ出でよ!!

我が幻影達よ!!」

するとカルデアに送り込んでいた手駒達が次々と出現し、最終的に九体の魔神柱が屹立した。

「幻影を戻すことは出来たのか」

モードレッドは舌打ちする。アスモダイはいくらか余裕を取り戻し、哄笑した。

「これだけの我を相手に抵抗することなど──」

その優勢は長く続かない。

魔神柱の言葉は突如として降り注ぐ閃光にかき消された。

星よりも尊いその光は人類の理想そのもの。最強の聖剣の一振りはあらゆる不浄を刹那の内に浄化する。

約束された勝利の剣(エクスカリバー)

モードレッドが呟く。

「調子に乗って敵の実力を測り間違えるとは。まだまだ未熟ですね」

天井にぽっかりと空いた大穴からアルトリア・ペンドラゴンが降り立つ。

「わざわざ加勢しに来たのか?」

「まさか。

手が空いたのでマーリンに言われて残った第四を見に来ただけです」

見上げるとマーリンが「僕もいるよー」とニコニコ手を振っていた。

「さあ、本体をさっさと片付けなさい」

モードレッドが剣を振り上げる。そんな彼女を立香は後ろから抱きしめた。

「頑張って」

令呪を三画全て使用し、モードレッドの力に変える。

クラレントはいつもの禍々しい雷ではなく、どんな宝石よりも眩い白銀に輝いた。それこそ、星の聖剣に劣らぬ程に。

我が麗しき(クラレント)、いや──」

怯えて逃げようとするアスモダイに、それは容赦なく解き放たれる。

我が愛しの永遠誓条(アリジエンス・クラレント)──!!」

かくして、全ての闇は打ち払われた。




本文では状況を説明しきれなかったことを少々。
・虚数空間はアスモダイが広げた訳ではない。
第四特異点に魔術王が降臨する際に使用された、神殿から特異点を結ぶ一本道のような物。だからモードレッドは第四特異点から空間に入ることが出来た。
魔術王の力は強大なので移動するのにも専用のルートが必要なのです。

・アスモダイが感情豊かなのは高い神性を持つ神霊と似た原理。個体能力は他の魔神柱と変わらないものの、ソロモン王の指輪を奪った逸話から悪魔としての格が他の個体よりも高いイメージ。

・アスモダイが口語バリバリなのは俺の古文の点数が赤点ギリギリchopだから。

・クラレントの特性が使えるようになったのはアルトリアがモードレッドを認めた為。
ただし本人は意地っぱりなので王として認めた訳ではないと言い張っている。

次回でモードレッド編は最終回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モードレッド編⑨

モードレッドは人間が嫌いだった。不都合には堪えられず、他者を省みない傲慢さ。彼らは理想を望みながら欲望への忍耐は持ち合わせない。騎士王に対する叛逆はその最たる物だ。

であるならば、その頭目たるモードレッドは───

彼女の奥底にはその実自己嫌悪感が渦巻いていた。

「おや、貴様は……」

カルデア内を一人で歩いていると、ランスロットと偶然出会った。あの一件いや、カルデアに召還されて以来彼とまともに話すのは初めてだった。

「お前、ギネヴィア妃のことどう思ってるんだ?」

モードレッドは尋ねた。

ランスロットは少しの間逡巡し、答えた。

「愛してる」

「昔も、今もか?」

「そうだ」

モードレッドの質問が止まったところで、ランスロットは逆に彼女に尋ねた。

「貴様はどうなのだ。

人当たりが良いとは言え、マスターは女だろう?」

「良いんだよ、俺は女じゃないんだから。

それに、大事なのは気持ちが通じ合ってるかだ」

「惚気か?」

「事実だ」

二人はすれ違う。

それだけの言葉を交わして、あとは無言のままその場を立ち去った。

 

 

 

 

一方その頃、立香は清姫達と会っていた。

魔神柱に洗脳された三人だったが、それ以降の働きは目を見張るものがあった。幻影達によるカルデア侵攻の際には率先して迎撃に当たり、三人合わせてとは言え撃墜スコアはギルガメッシュやカルナらを抑える程だった。

立香はそんな彼女らにお礼と謝罪をしていた。

「……何故謝るのですか?

人が人を好きになるのは致し方ないことだと思います」

「でも」

後ろめたそうに俯く立香に頼光は優しく説く。

「私の想いはあなたの想いとは別。逆もまたしかりなのです」

ですから、と清姫は続けた。

「私は当然あなたの命(愛)を狙います。

浮気をした罪は重いのでお覚悟を」

物騒な笑みを残して、三人は去って行った。立香は後ろ姿が見えなくなるまで、三人を見送っていた。

 

 

 

 

食堂についたのは二人同時だった。時刻はまだ約束の時間の三十分前。相手を待たせたくないという思いが起こしたある種の奇跡だった。

「早くついちゃったね」

「ったく。張りきり過ぎなんだよ、お前は」

二人は食堂の中に入る。

立香は厨房に向かい、モードレッドは席に座った。

立香がカルデアに帰還してから、モードレッドの食事は全て彼女が作っていた。一ヶ月経った今ではレパートリーも増え、モードレッドの舌を楽しませた。

「お待たせー」

立香がモードレッドの前にカレーを一皿用意する。

出来たてのそれは湯気を立ち上らせ、香りも芳ばしい。

「はい、あーんして」

「あーん」

スプーンに一杯分のカレーをよそい、モードレッドの口に運ぶ。初めは恥ずかしがりながらしていたそれも、時間が経てば習慣だった。

「どう美味しい?」

「ああ。

世界で一番だ」

「それ前も言ってた」

「それだけ腕を上げたってことだよ」

「本当に?

じゃあ私にも食べさせて」

同じスプーンでモードレッドはカレーをよそう。

「はい、あーんだ」

「あーん」

こんな風に二人は交互にカレーを食べさせていった。

これでは時間がかかって仕方がないが、相手の顔を見ながら食べられる利点に比べれば些末なことだった。

途中お代わりを差し挟みながらその行為は粛々と、けれどニヤニヤしながら遂行される。真顔でいるつもりでいるのは本人達だけだ。モードレッドにとって愛情で以て接っせ、また接してくれる立香は得難い存在だった。

あらゆることが平凡な立香にとっても、モードレッドへの思いは凡庸でいられない。

(何故だ。日に日に立香が可愛くなっている気がする。こいつは俺の天使なのか?いや、そうに違いない)

(あ、今笑った。絶対笑った。どうして?どうしてモードレッドはモードレッドなの?)

こんな日がいつまでも続けばいいのにと、二人は心の中で思った。過ぎ去った時間は戻らない。通り過ぎていく刹那を笑っていけたら、それが一番幸せなのだと信じて。




今までこんな駄文を読んでくれてありがとう。
次は沖田編を完成させられるといいな……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ケツァルコアトル編②

前回と繋がりなし


立香とケツァルコアトルがレイシフトした先は常夏の島だった。

南の海は透けるような青さで光り輝き、背中には濃い緑で生い茂る原生林がある。

靴とタイツを脱ぎ捨てて波に素足を晒す。照り返す白い砂浜に目をそらして見上げると、太陽が一番高い所で曇りない空を明るく照らしていた。

「うーん、眩しい!!」

片手をかざして影を作りながら立香は呟く。

吹き抜ける潮風にオレンジの髪を靡かせて、彼女は相方の方に振り返った。

「中々良いところネー」

ニコニコ笑いながら彼女は言った。

「お姉ちゃんに気に入って貰えて良かった」

ほっと胸を撫で下ろして、立香は少し安心する。

立香とケツァルコアトルの関係は他の英霊達よりも少し深かった。ケツァルコアトルは素直で優しい好意のストレートを立香にぶつけていたし、立香の方もそれをしっかりと受け止める。それが証拠に、立香はケツァルコアトルの呼び名を状況によって使い分けていた。他の人がいる場合はコアトルさん、二人きりの時はお姉ちゃんと。

だからそうしている内に立香はもっと仲を深めたいと思っていた。例えそれが、姉妹的な絆を越えてあらゆる関係を破壊しかねないことだとしても。

「私の話、しても良い?」

「いつでもいいわ」

ありがとうと言って立香は微笑む。

夏の空気を胸いっぱいに吸って、少女は覚悟を決めた。

「お姉ちゃんはね、私の太陽なんだ」

いつかケツァルコアトルが立香に言った言葉、それをそのまま返す。

「私の心の中の太陽はお姉ちゃん。いつか、私を太陽だと言ってくれたあなたの気持ちに応えたい」

ケツァルコアトルの目の前に立ち、その形相を見上げた。どうやらあちらも緊張しているようだった。

「キス、しても良い?」

勇気を振り絞って尋ねる。喉が酷く乾くのは真夏の暑さだけではなかった。

彼女がゆっくりと頷く。

その了承を受け取って、立香はつま先立ちで唇を近づけた。

「うーん…うーん……」

瞳を閉じて真一文字に結ばれた口先は、しかしケツァルコアトルには届かなかった。

キスを拒絶された訳ではない。単純に背の高さの問題である。

それに気付かない立香はいつまでも踵を上げ、そしてバランスを崩した。

「わっ!?」

前のめりに倒れる立香をケツァルコアトルはすかさず受け止める。謝る立香を眺めながら、彼女の直向きさに笑みがこぼれた。

「ここからはお姉さんの出番よ」

立香の脇を抱えて持ち上げる。目と口が危険に歪んでいるのを見て、立香は危機感を覚えた。

だが、もう遅い。

「あなたには高さが足りまセーン!!それー!!」

そしてそのまま空中高く放り投げ、嵐を巻き起こして青い空の彼方へ吹き上げた。たった数秒で先程までいた無人島がただの点になっていく。立香の肝は音速で冷えた。

「どわあああああああああ!??」

立香の絶叫が広い世界の片隅にこだまする。空中で無軌道に転がりながら、天空に落ちているかのような錯覚を覚えた。

「落ーーちーーるーー!!」

その叫びに呼応するかのように、日輪よりも明るい火の鳥が天高く翔け上がった。神をも焼き尽くす大翼は立香を柔らかく包みこみ、熱の球体へと収束する。それが徐々に膨張して光を放って破裂すると、中から両手を繋いだ二人が現れた。

「手を離してはダメよ、マスター」

そう言うケツァルコアトルの両手は硬く立香を握り締めている。

「私、絶対離さないよ!!」

一直線に二人は繋がり、回転しながら落下していく。刺激的な青空のメリーゴーランドは二人だけのデートスポットだった。

「お姉ちゃん大好きーーーー!!」

逆巻く風に負けないように立香は声を張り上げた。碧い海と蒼い空の狭間、どこまでも広がる青さの果てに至るまでそれは伝わり行く。ただし、その中心にいるケツァルコアトルの頬だけは少し紅くなっていたが。

「もう、私好みの直球過ぎるわ!!」

「どういたしまして!!」

気が付けば、点だった無人島がその存在感を取り戻そうとしている所だった。

彼女は立香を庇うように抱いて言った。

「そろそろ着陸よ。

衝撃に備えて」

少女は己の身体をぴったりくっつける。

数秒後、二人は砂浜に落下した。大きな衝撃音と共に白い砂が煙を巻き上げる。

それが晴れると中から無傷の二人の姿が見えた。

奇しくも、立香がケツァルコアトルを押し倒すような形になっていた。

「これなら届くや」

立香がそっと口づける。

風の轟音はもうない。海鳥の陽気な祝福と、さざめく波の穏やかさが耳に心地良い。

「これからもよろしくね!!」

ケツァルコアトルの好きな天真爛漫な笑顔が彼女の胸に落ちた。彼女はその表情にそっと手を伸べる。

「こちらこそよろしくお願いするわ、私の花嫁(ノービア)

辛いとき、悲しい時だけでなく、嬉しい時も楽しい時もあなたを抱きしめましょう」

胸を焦がす情熱は互いの心を不必要な程に熱くして。




姉さん良いキャラですよね。
課金してでも手に入れたいと思ったのは初めてでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外 愛しのあなた

保健室イベ後の話


ユリウスとアサシンの撃破を誓った所で、白野は玉藻に昼間からずっと抱いていた疑問を尋ねた。

「昼間、凛と何やってたの?」

玉藻の瞳が怪しく光る。

「ご主人様は何をしてたとお思いですか?」

予想外の表情に、白野は何も言えなかった。緊張しているのだろうか。狐につままれるというのはこのような事を言うのだろう。

「肩の力を抜いて言ってみて下さい。

今なら電源落とされてますから」

玉藻のシリアスは長く続かない。しかしいつものおちゃらけが、今だけはありがたかった。

「何って、魔力供給……」

そうではない。

白野は心の中ではそう思っていながら、本当の事を口にすることが出来なかった。そんな白野を見て、玉藻は妖しく笑って、豊満な胸の隙間に手をいれた。

「そうです、その通りです。ご主人様」

その色気に魅了されながら、白野は疑念を確信に変えた。

「魔力供給の過程で凛さんとそれはもう熱く激しくヤりましたとも。白い壁面に囲まれ、白いカーテンで遮り、そして白いベッドの上で過ちを恐れずに求め合う青春と言いますか。まさにwhite reflection!!」

中々言い出さない白野を気づかってか、玉藻の前が巫山戯つつ、しかし認めた。凛と行為をしたことも。それが玉藻の前にとってそれほど悪いことではなかったことも。

「もし」

「もし凛さんが良いのなら、マスターの権限を彼女に譲ると。そう言おうとしましたね?」

凛の実力なら不可能なことではないと白野は考えていた。それに玉藻の前が自分よりも彼女に仕えることを望むなら、その意思を尊重しようとも。

玉藻の前は少し怒っている様子だった。

「ご主人様には私がそんな薄情な女に見えますか?

そうであるならば、私は自分を抑えられずにご主人様に手を上げてしまうかもしれません」

玉藻の前はいつになく真剣に白野に迫った。

「あれが必要なことだったってことは理解してる。けど」

白野は苦しそうに胸を押さえた。

「ここが、締め付けられるように、痛い……」

白野は胸の内を正直に打ち明ける。

「あなたは私より凛の方が良いんじゃないかって、そう思った」

白野が俯く。

「今回あなたが苦しい思いをしたのだって私が暗殺に気付かなかったから。私に実力がなかったから……」

熱いものが目から溢れ出していた。

「凛ならあなたをこんな目に合わせることもなかったと思う」

ぼやけた視界で玉藻の前を見つめた。一度流れ出したものはどうやっても止まらず、白野は嗚咽交じりに何とか話した。

「それに、あの時満更でもなさそうだったし」

不安、嫉妬、罪悪感が複雑に折り重なって、白野は歯を食いしばる。

そんな白野の元に、玉藻の前はいつも座っている簡易神殿から降りてやってくる。叩かれる覚悟は出来ていた。しかし、玉藻の前はあくまで優しく白野を抱き締めた。

「あ」

止めどなく流れていた涙が不思議と止まった。

この冷たい電脳世界に彼女の暖かさがいつもと変わらずそこにある。それが分かっただけで白野の心は満たされた。

「ご主人様は私のこと、どう思ってますか?」

考えるまでもなかった。

「そんなの決まってる。大好きだよ」

それを聞いて、玉藻の前は白野に表情を見せずにわなわなと震えていた。

「どうしたの……?」

心配になって白野は玉藻の前に声を掛ける。

しかしそれは無意味なことだった。

「言質、とったどーーー!!!!」

玉藻の前は満面の笑みで天井まで跳び上がった。玉藻の前はただの英霊ではない。今をときめくスイーツ(笑)英霊なのである。

「今の発言は正式なお付き合い宣言と見て間違いないですよね!?」

白野はしまったと思った。

しかしそれでもいいかと、気を取り直して言った。

「私はあなたに惚れてる」

「もう一度言って下さいませ」

白野はあまり多くない語彙をたぐり寄せ、頭をフル回転した。

「……私とあなたはラブラブだ」

「こういう親父ダサイところもス・テ・キ」

「親父ダサイ!?」

微妙にショックを受けつつ、白野は穏やかだった。

「とりあえず座ろうか。ちょっと足が疲れた」

二人は玉藻の前がいつも鎮座する神殿に並んで座った。

「しかし意外ですねぇ。

私の真名にドン引きしているのかと思いきや、逆に独占欲を爆発させてたなんて」

「その言い方はどうかと思う……」

白野は玉藻の前の手を取った。

「昼間、あなたがいなくてずっと不安だった。

ここが戦場だからってのもあると思うけど、多分それはあなたが傍にいなくて寂しかったから」

そう言って、白野は玉藻の前にそっと重心を傾けた。

「思えば、初めて会ったあの日から惹かれてた気がする」

そしてそれからの日々は言わずもがな。

白野の困難には前に立ち、倒れてしまいそうな時には後ろから。そしていつもはこうして隣にいるそれに、白野は心奪われたのだ。

「私、もう我慢出来ない」

握りしめた手が熱っぽくなる。この時ばかりは玉藻の前も神妙な顔つきだった。

「私、今日を忘れない。

初めてあなたの名前を知ったこと、あなたのかけがえのなさに気付いたこと。

そして、あなたとこうして……」

「ご主人様?」

息を荒くして手を伸ばす白野に、玉藻の前は顔を赤くしていた。淫乱を気取っていても根は純情なのである。

そして──

「タマモの尻尾、モフモフだ」

白野は玉藻の前の尻尾に抱き着き、幸せそうに頬ずりしていた。

「ご、ご主人様……?」

「もしかして嫌だった?」

「いえ、そういうことではなく……。今の雰囲気って完全にエッチなことする流れでしたよね?」

「……何でエッチなことするの?」

白野はポカンとしていた。

訳が分からないという表情をしている白野を見て、玉藻の前はようやく気付いた。彼女は玉藻の前と凛が魔力供給をしている時に、尻尾をモフモフしていたのだと勘違いしているのだ。

「タマモのそういうピンクな所は少し自重した方が良いと思う」

「挙げ句の果てに叱られた!?」

みこーん、と玉藻の前はないた。しかし彼女の嬉しそうな笑顔を見ると、これでもいいかと思ってしまうのであった。

……次こそはご主人と熱いエロスを交わすと誓いながら。




あなた=玉藻の尻尾

このザビエルが女々しいのはご愛嬌


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マシュ編②

前回と繋がりなし


「あ、いたいた」

マシュがカルデアの真っ白な廊下を歩いていると、反対側からやって来た立香が駆け寄って来た。

「メディアさんに出された課題手伝って!!」

のっけからこれである。

仏に拝むように手を合わせる彼女を見て、マシュはため息をついた。

「いくら人理を修復して平和になったからと言って最近気が抜けすぎです」

「そんなこと言わないで頼むよ……」

立香は頭を下げ続ける。手を擦るハエさながらに彼女は一心不乱に頼み続けた。

「お願い!!一生のお願い!!」

もう何度目かになる人生をかけた祈りに立香は全てを掛けていた。こういう時だけは全ての特異点を踏破した最後のマスターの顔に戻る。諦め知らずのしつこさで彼女は頼んだ。

「……仕方ありません。今から先輩の部屋にお邪魔します」

「助かったー!!マシュありがとー!!

持つべき物は出来る後輩だね!!」

立香は遠慮なくマシュに抱きつく。ずれた眼鏡を慌てて戻しても、瞳の奥の動揺は隠せない。立香を甘やかすことになるとは分かっていても彼女の願いを断ることは出来なかった。それに、立香に頼られるのは悪い気分ではない。

マシュはため息をつく。口角が微小に上がっていることには気付かぬまま。

「手、つなご」

マシュの確認を取らず、立香は彼女の手を取った。

「こうするとカップルみたいだよね」

マシュの胸はドキドキしっぱなしだった。

わざとなのか天然なのか。裏表のなさそうな笑顔を見ると恐らく後者だろうと勝手に結論付けてマシュは平静を装った。

加速する鼓動が足をも早めたのか、すぐに立香の部屋に到着した。

もっと遠ければいいのにと少し残念に思いながらマシュは先に彼女の部屋に入る。

「それで課題は」

後ろで突然電子音がした。見ると、立香が内側から部屋のロックを掛けている所だった。

「先、輩……?」

「フフッ、逃がさないよ」

有無を言わせぬ力でマシュを強引に引っぱると、立香はそのまま彼女をベッドに押し倒した。

「一体、何を……」

心拍数の上昇を確認しながら、マシュは立香に尋ねた。

「マシュ、私はすごく怒っています」

両手を腰に当てて仁王立ちしながら彼女は言った。

「昨日フィンさんとデートしたでしょ」

立香は半目で見つめ、鼻をフンと鳴らす。

憮然とした態度の彼女に、マシュは慌てて弁明した。

「ち、違います!!あれは食事に誘われてデートした訳では!!」

「世間ではそれをデートと言うんだよ!!」

ビシッと立香はマシュを指さす。

「そんなこと言ったら先輩だって他の娘にセクハラしてるじゃないですか!?」

「それは皆が可愛すぎるのがいけないのであって私は何も悪くないもん」

清々しいまでの棚上げである。あまりの傍若無人ぶりにマシュは呆然とするが、立香の身勝手は留まることをしらない。

「とにかく」

立香の眼がカッと開いた。

「今日はマシュとイチャイチャする日なの!!」

左手の指をいやらしくくねらさせてマシュに迫った。

「先輩待って!!落ち着いて!!」

立香がマシュの上に乗る。

二人の柔らかな胸が押し合いへし合い揉み合った。

「マシュのドキドキ、私の胸に伝わってくる。

本当はしたくてしたくてたまらないんでしょ?」

事実マシュの心臓はいつになく仕事していた。それが立香の心臓に伝わって相乗効果で身体が熱くなる。

そして熱くなった心は理性をも蕩けさせ、甘く切ない欲望で頭の中を埋め尽くすのだ。

いける。

立香はそう思った。

指先が震えないようにマシュのそれぞれの指と絡ませ、彼女の唇に自分のそれをゆっくりと近づける。

「先輩、いけません……。

こんなこと……」

マシュの頬は熱く上気していた。言葉とは真逆の表情が立香にはたまらなく愛おしい。

「いけないこと、しよ」

最後にそっと耳打ちして、マシュの唇を奪った。

「❤」

それを境に、二人の思考力が全て消し飛んだ。

 

 

 

 

 

少女よりも淫靡で、雌よりも仄かな香り漂うベッドの中心で二人は飽きることなく互いの身体に触れ合う。

強引に迫った立香は存外優しく、無理矢理迫られたマシュは意外と強烈に。何度も何度も体位を変え、攻守を逆転させ、した。

「はぁ…マシュ、はぁ……。お願いしても、あんっ❤

いいかな……?」

「うんっ❤んっ……何ですか?」

身体の動きはとめずに立香は言った。

「わた、し…イッ!?

…はぁ…はぁ……マシュに全部あげるから❤

あんっ❤

私お゛っ❤

私を全部あげるから❤

もう他の娘とイチャイチャしないからっ❤」

突き上げる情欲に逆らいながら何とか言葉を紡いでいく。

「マシュも、お゛おっ!?

私のに、んっ❤

私のになって❤」

その申し出をマシュは断らない。断るはずがない。

「先輩好き❤

大好き❤

あ゛っ!?んお゛あ゛!?

それよりも一旦止めでっ❤

こんなの、やんっ❤、いけないことなのに❤

あんっ❤

止まんないのぉ❤」

二人の表情が果てしない快楽でだらしなく垂れる。

「い゛ぐううううぅぅぅぅ!!??んお゛お゛おおおおっ❤」

ビショビショの服をさらに濡らして、二人は同時に頂点に達した。

精も精も尽き果て、二人はベッドの上で力尽きた。




二人はナニしてるんでしょうね。
くすぐりですかね?


もし次があったら新宿がマシュ成分足りなすぎだったので、新宿でバカップルデートさせてみたいですね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カーミラ編 前

カーミラ様はアサシンにて最強


「お帰りなさいませ、ご主人様❤」

カーミラが自室に戻ると、そこにはメイド服を着用した立香がいた。

「結構似合ってるでしょ?」

フリルのついた紺色のロングスカートを揺らしながら立香は己の姿を見せ付ける。エプロンの前飾りは肩からストラップを回し、細いウエストを締め付けていた。黒い花のような妖しい可愛らしさと折れてしまいそうな細さにカーミラは面食らう。

「今日は私があなたのサーヴァントだよ、カーミラ様」

立香がウィンクした。

そんな彼女にカーミラはあくまで冷たく言い放つ。

「気でも触れたのかしら」

彼女は立香を無視してズカズカと部屋に入ると、自分で調達したアンティーク調の椅子に座り、禍々しい厚表紙の──恐らく黒魔術系統──を読み始めた。

それは身体を拘束するかのように編まれた黒服と素顔を隠す仮面、誘惑的な香り放つ銀髪とマッチングし、心掻き立てながら触れてはならないような気高さと、夜の魔物としての恐ろしさを醸し出している。

しかし、藤丸立香はそんなことでは怯まない。

「もっと構ってほしいなー」

 立香は後ろから抱きついた。

イタズラっぽい笑みを浮かべながら頬ずりして甘える仕草はある意味悪魔的だった。

「ふぅー」

「!?」

あくまで見えてない振りを貫こうとするカーミラの耳に、立香は息を優しく吹きかける。驚きとこそばゆさで身体を反応させたカーミラを見て、彼女は気をよくした。

「無視なんてさせませんよ」

わざとらしい猫撫で声で吸血婦人に媚びて見せる。まるで、食べられるのを待ち望んでいるかのように。

「しつこいわよ!!」

カーミラは声を荒げて振りほどいた。

しかし立香は全く意に介していなかった。

「指から血が」

立香が指さす。

本の紙で指を切ったようだった。

「手、貸して下さい」

了承を受け取る前に半ば強引に手を取る。

そして床に両足をつけ──

「あむっ」

カーミラの二つの指を勢いよくしゃぶった。

「なっ!?」

咄嗟に手を引っ込めようとするも立香の力が思いの外強く、動かすことが出来ない。

いや、それだけではないか。

指を舐められる。それが心地良くて仕方なかった。

口の中では立香の舌が指の隙間を縦横無尽に這い回り、頭を上下に運動させ、わざと水っぽい音を立てて二つの棒を吸い上げた。

「ぐっ、はぁ……」

カーミラの息が荒くなる。

快楽に抗うためであったが、それは立香によってもたらされたものではない。加虐的で、暴力に充ち満ちた衝動を必死で抑えているからだ。

子リスのような召使いは上目で見つめている。理由はよく分からないが信頼を寄せているようだった。

カーミラは胸を押さえた。

目の前の少女を壊したい。その欲求が爆発しかけている。

例えば、口に含まれている細く長いそれを咽奥に突っ込んだらどのような表情をするだろうか?

か細い首筋に牙を突き立てて生き血を啜ったら?

四肢を切り落として弄ばれるだけの肉奴隷にするのは?

────それとも、今すぐに殺してしまおうか?

魔の手が立香の首に伸びる。




カーミラ様はアサシンにて最高……覚えておけ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マシュ編③

二人は昼間だというのに薄暗い階段を登っていく。カルデアの屋上に通じるそれは、扉が施錠されている為通行止めである。

しかし、それは立香にとって都合がよかった。一方通行だから余程の物好きでなければわざわざ登って来ない。だが階段の一番下は普通の廊下と繋がっているので人の気配が全くない訳でもない。内緒事の場としては及第点、秘め事の場としては満点だ。

「先輩、こんな時間から……。やっぱりいけません」

行き止まりの壁に押しつけられたマシュが目をそらしながら訴えた。

「本当にそう思ってるの?」

立香が後輩の顎をクイと持ち上げる。

「ここまで来る間に私を払い除けることだって出来た筈だよ。マシュの方が私より強いんだし」

「それは……」

「大丈夫。もし見つかっても私が無理矢理したことにするから」

悪戯な笑みが優しいものに変わる。

マシュは卑怯だと思った。

これでは断りようがないからだ。

「先輩、するなら早く……」

顔を真っ赤にしながらマシュが頼んだ。

立香はそんな愛らしい少女の表情をいつまでも見ていたい感情に駆られ、彼女のすぐ横の壁に手を置いた。

「なるべく早く済ませるね」

嘘である。

つい数秒前に真から偽に変わったところだ。

心の中で謝罪しつつ、立香はマシュの両足の間に膝を突き立てた。

「んっ…先輩……」

甘い声が漏れる。

「マシュってばこれされるの好きだもんね」

そう言って立香は膝を小刻みに回していく。

スカートの中の布地が擦れるたび、マシュは喘いだ。蕩けるような嬌声が響く。

それはだんだん大きくなって誤魔化しきれない程の音量になっていた。

「こっち見て」

「ふぇ?」

トロンとした眼差しのマシュを無理矢理自分の方へ向かせ、その唇に侵入する。

くぐもった声が立香の口内にのみ伝わり行く。

他の何者にもこの声を聞かせてなるものか。

おのれの快楽とマシュの世間体のため、立香は優しい独占欲を爆発させていた。

「んむっじゅるっ、しゅぞっ❤」

膝が秘所を突き上げる度に身体は痙攣し、舌と唾液を吸い上げる度に瞳から理性が消えていく。

壁についていない方の手をマシュの後頭部に回し、ラストスパートに入る。

ゼロ距離で混じる視線、中に直接送り込まれる息、張りのある肌を流れる汗の全てが気持ちいい。

「はむっ❤ぢゅるるっ」

強烈なバキューム音が他の全ての音を打ち消した。マシュの全ては私の物だと言わんばかりに立香は彼女を貪る。

「~~~~~❤」

そしてついに、眼鏡の奥が快楽の海に溺れた。立香の膝を生暖かい何かが伝う。

「どう?まだする?」

一旦唇を離し、立香は尋ねた。

それに答えることなく、マシュは立香と体勢を逆転させ、今度は彼女を壁に押し付ける。

「今度は先輩の番です❤」

マシュは蠱惑的に笑った。

当然、立香に断る理由はない。

「いいよ、来て❤」

自ら胸のベルトを外し、谷間が見えるか見えないか位の所までチャックを下げてマシュを誘惑した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 

久しぶりに書いた気がする。


「これ、どういうこと?」

「あはは……」

玉藻の前を正座させ、白野は酒瓶を片手に問い詰める。酒瓶には媚薬が詰められており、ラベルには『玉藻ちゃんのラブラブらぶじゅ~す』などという何とも頭の悪そうな名前が、達人を思わせる筆づかいで書かれている。

最近身体の感度が不自然に上がっており、どうもおかしいと玉藻の前の周辺を探ってみれば案の定といったところだ。

「毎食私の皿にこれを盛ってたでしょ?」

「いや~なんのことでしょう~?」

露骨に目をそらし、下手な口笛をふきながら良妻(?)狐はすっとぼける。

白野はため息をついた。

「こんなことしなくてももっとちゃんとしてくれれば……」

「今なんて言いました?」

玉藻の前が目を輝かせる。

少し弱みを見せたらすぐにこれだ。

「もう、こっちは真剣に話してるのに!」

今日の白野はきつくお灸を据えるつもりでいた。

しかし体内に蓄積した媚薬の効果か、奥底から訴えかける火照りが収まらず、実のところ今すぐに玉藻の前を抱きたい性衝動を抑えるので精一杯であった。

玉藻にはそれが分かっているようで、目を細めてにやにや口元を歪めていた。

策士である。

当然このまま駄狐の思惑通りにことを進めさせるつもりはない。かといって熱に浮かされるような切なさを無視することも出来ない。

どうすれば良いか。

決まっている。性的欲求を発散させつつ、玉藻を躾ければ良いのである。

白野は酒瓶の蓋を開け、その全てを畳の上にぶちまけた。

「ギャアーー!!

これ作るの大変なんですよ!?」

自作をほぼ裏付ける発言を聞いた所で、白野は右手をかざす。

「令呪を以て命ず。

タマモ、その媚薬を全て舐め取って」

「な!?」

玉藻の前が驚愕するのも刹那、命令権によって縛られた彼女の頭は擦り付けんばかりの勢いで床に近づき、舌を突き出して溢れた媚薬を犬のようになめ回した。

「~~~~//」

さすがに堪えるのか、玉藻の頬は赤く染まっていた。

ピチャピチャという水音を聞く度に白野の心は背徳感による危険な悦に浸る。

「私がタマモのご主人様だってこと、分からせてあげる」

白野は土下座に似た形をしている玉藻の後ろに回りこみ、左胸を鷲掴み、尻尾の付け根を撫で回す。ビクンと震える狐耳を見て、白野は己が優位を確信し、今度はそれぞれの先端を筆の先でなぞるように苛めた。

乱暴な攻めと繊細な責めを駆使し、白野は玉藻の体を弄んだ。

「ふぇ……」

蕩けきった表情が命令を完遂したことを告げている。

それ程多い量を摂取していない白野ですら情欲を抑えきれないのだ。玉藻の前が感じている肉の欲求は計り知れないものがある。

「あ、ああ……」

だらしなく舌を垂らし、荒い息で雌狐は主人を待ち望む。

白野はゴクリと息を吞んだ。

飄々としていて、いつもどこか掴み所のない彼女が今は自分に隷属している。媚びる姿はとても官能的で、強引に扱い、汚し、貶めたい淫らな高揚を煽っていた。このまま無理矢理犯し切るのも良いかもしれない。

そう考えたものの、白野はある望みを捨て切れなかった。

「タマモ、あなたのことだから解毒薬を持ってるでしょう?」

女狐は答えない。

野生の獣さながらに激しい呼吸を繰り返すばかりだ。

「令呪を以て命ず。

解毒薬を出しなさい」

彼女は知性のない瞳のまま四つん這いで台所へ移動し、棚から一本の瓶を取り出して白野に渡した。

『賢者の薬』と書かれたそれから一滴だけ人差し指に垂らしてそれを舐めた後、残り全部を咽を詰まらせないようにゆっくりと玉藻に吞ませた。

しばらくすると玉藻の眼に知性の光が戻り始め、数分後には完全に正気に戻った。

「……ご主人様って結構どSだったんですねぇ。

まさか新調した令呪を2画使うことになるなんて」

疲れた表情で玉藻は呟いた。

「懲りた?」

「かなり。

那須野以来の賢者タイムです」

「じゃあそんなタマモにお願いがある」

白野は玉藻の前の手を握った。そこにはまだほんの僅かだが熱さが残っている。

「私はあなたのマスターで主人。

だけど私も女の子なんだからこういうことはもっと丁寧に扱って欲しい」

俯きながら、彼女は続ける。

「もっとタマモが落ち着いて求めてくれたら、私の身体ぐらい好きにさせてあげてた。

……それで、今は結構落ち着いてるから」

「ええっと、それってつまり……」

「どうせタマモのクールタイムなんて長く続かないだろうし」

聞こえるか聞こえないくらいの声になりながら。

「タマモと今すぐにしたいな」

照れで頬を染めて、あざとく両手で♡の形を作って白野は誘った。

無言で、玉藻の前は彼女を押し倒した。




タマモナインとの決戦を終えた後の話


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マシュ編

人の気配を感じて目覚めると、仰向けの立香に馬乗りになる形で見下ろすマシュがいた。そのことに対する所感は、驚きよりも困惑に近かった。午前二時の真夜中に寝室に侵入している事実もさることながら、彼女の表情は怒っているような、泣いているかのような複雑さを孕んでいたからだ。

「どうしたの?」

なるべく優しげな声になるように努めながら、立香は尋ねた。

「先輩は考えたことがありますか?

先輩に身体を触られていた時、私がどんな気持ちでいたか」

「それは……」

「先輩が他の女の人と仲よくしているのを見ているとき、どんな気持ちでいたか……」

声を震わせながら言葉を紡ぐマシュに、立香はかけるべき言葉が見つからなかった。

結局気の利いた慰め方もなく、痛すぎる沈黙に負けて立香は口にしたのだった。

「ごめん」

宥めるために口にしたその言葉は、しかし逆効果だった。

マシュは逸らした立香の目線を、顎を掴んで無理やり自分の方に向かせた。

「あ……」

真っ直ぐな瞳が立香の心を捉えて離さない。

マシュはいつの間にかサーヴァントの姿となっており、力強く両手首を拘束していた。

「ごめんなさい、先輩。

私、我慢できそうにないんです」

胸の鼓動が速くなるのを感じながら、立香は密着したマシュの身体から逃れようともがいた。

「待って、マシュ。

心の準備が、あっ!?」

頬を赤く染めての最後の抵抗に、マシュがそっと唇を重ねた。

「んっ」

立香の目尻が蕩けるように落ち、マシュに全てを委ねる。

しかし、

「……」

瞬きする間に二人の頭は離れた。

(え、良いところだったのに……どうして?)

見ると、力強くでキスを奪った相手は頭を抱えていた。

罪悪感で伏し目がちになりながら羞恥するマシュを立香は、

「ぷ。

アハハハ!!」

笑った。

「マシュったら優しすぎ。

もっと凄いことされるのかと思っちゃった」

明るく笑う立香とは対照的に、あらゆる意味で落ち着いたマシュは陰鬱としていた。

「私は、先輩にとんでもないことを……」

「まあね。

キスだけとは言え、無理やりだもん。正直強姦と変わらないよ」

「はい……」

でも、と立香は続けた。

「私、いつもと違うマシュにドキドキしっぱなしだった。だからさ」

逃がさないようにマシュの後頭部に手を回し、立香は彼女の唇に自分のものを無理やり押しつけた。

驚くマシュに、立香は静かに語りかける。

「今までも好きだったけど、今はもっと大好き」

たった一瞬。

しかし永遠を思わせるような数秒間、立香は極限まで近づいたマシュの表情に恋したのだ。

その心を、立香は正直にぶつけた。

「私と付き合ってくれる?」

マシュはこくりと頷いて、幸せに微笑んだ。

 




中々時間がとれない(涙)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スカサハイフ

前回もしもあのまま夜戦に突入したらというイフ


唇に来るはずの衝撃は、しかし首筋を襲った。

閉じられていた立香の瞳はたったそれだけで見開かれ、胸の奥底から湧き上がる感情を映し出していた。

「いや…いや……!?」

身体全体を使って抵抗するもスカサハの力の前には無意味に終わり、寧ろ揺れ動くその姿は、意識したものでは無いとは言え悩ましげでさえあった。

スカサハの首筋への責めは執拗に続いた。キスした所を中心に舌先を使って刺激を与えていく。

汗と津液が混ざりあい、それが互いを濡らした。

「セクハラ魔のお前がこうして小鹿のように震えているのを見るのは中々来るものがあるな」

次はどこを攻め立てようかとスカサハは少女の肉体を吟味する。長めの爪先で首から足までなぞり、繊細な部分を繊細に開発した。

立香は泣きながら懇願した。

「もうやめて…お願い……。

こんなのもう耐えられない……」

スカサハは立香の涙を拭って言った。

「耐える必要はない」

その言葉の無慈悲さに、立香の瞳孔が大きく開いた。

「身体の全てを私に預けろ。そうすればお前の味わったことのない酔夢をくれてやろう」

「あ…ああ……」

スカサハによる細やかな責め苦は未だ続いている。しかし真に絶望すべきは彼女の眼の獰猛さだ。獲物を決して逃がさない決意は、どうあっても逆らうことは出来ないんだという希望の断然を立香にはっきりと与えた。

「生きた少女の瑞々しい生鮮さはいつ味わってもいいものだな。

……時に、マスター。お前は処女か?」

それが、立香には嵐の前兆のように思えた。

「答えられないか。

しかし、快楽に慣れていない所を見ると十中八九そうだろうな。

……それに、もうすぐ分かることだ」

それを聞いた立香が露骨に顔を逸らすと、スカサハはすぐに顎を捕らえて自分の方にむき直させる。

「もう一度言おう。

身体を預け、献げろ。

私はその言葉をお前の口から聞きたい」

それでもなお首を横にふる立香に、スカサハは残忍な笑みを浮かべた。

「そうか。

では仕方ないな」

それは勿論許しなどではない。

触らぬ神にたたりなし。

そのことに気づくには、立香はあまりに遅すぎた。

「今度こそ、正真正銘唇の純潔を貰おう」

そう言ってスカサハは最初に立香の唇に短く触れて。

「んっ」

少女が短く呻くと同時に強襲が開始された。

「んー!?んぅぅぅぅ!?」

スカサハの舌が立香の口の中に深く入り込み、生娘のそれを掻き出して吸い上げる。そして柔らかい唇の間に挟み、舌先同士をくっつけ、撫で上げ、じっくりと堪能する。立香の舌がなんとかその拘束から抜け出してもスカサハの追撃がこれを許さない。

「やぁ…あっ…あんっ……」

少女の声に、女の甘いものが溢れ始める。スカサハは当然この隙を見逃さず、立香の豊かな胸を鷲摑みにする。先程の羽根を擦るようなタッチとは違う強い刺激に立香の背中は不自然に浮き、理不尽な快楽の暴力にその身をさらし上げた。

「あんっ、いやっ!?

あんっ、ああっ、ひゃあ!?」

繊細な責めで出来上がった身体はこの乱暴さを抵抗なく受け入れる。抗うのは理性のみ。しかしそれもじきに溶け落ちようとしていた。

「はぁ…はぁ……」

スカサハの顔が離れ、胸の責めが一時中断される。

焦点の合わぬ目で荒い呼吸を繰り返す立香にスカサハは尋ねた。

「どうしてほしい?」

立香は、両腕で抱き着き、両足をスカサハの腰回りに絡ませて答えた。

「こらから…お世話になりまひゅ……」

虚ろな瞳で自ら唇を押し付け、それから三日三晩スカサハを求め続けた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 女帝ギル

ギルだけでなくエルキドゥの女体化(?)要素あり。
ギルの容姿はエイプリルフールのあれです。
あと話の内容が今までと似たり寄ったりです。



数千年も昔、人々が眠り、渡る鳥さえ羽根を休める時刻のこと。

月が上り、星空が見守る大地に立つ樹木に少女の形をした人形が眠りについていた。太い枝の上、緑葉のような髪を垂らし白い衣を一枚を纏って存在する儚げな精巧さに、人が見れば思わず息を吞まずにはいられないだろう。

そしてその少女を目指して空から金色の流れ星が振り堕ちた。

……少女が眠る大樹のすぐ横に、轟音を立てて。

「な、何!?」

少女が飛び起きると、そこにはヴィマーナと呼ばれる飛行物体と長い金髪の美女がいた。

「フハハハハ!!!!

起きろ友よ!!!!

起ーきーるーのーだ!!!!」

「ギルか。

……もう起きてるよ!!」

それは轟音を立てて着陸するヴィマーナに負けない大声だった。

「夜中に訪ねてくるなんて珍しいじゃないか」

エルキドゥと呼ばれた少女は穏やかに、しかし不機嫌さを含めた口調で女を迎えた。

女の名はギルガメッシュ。

ウルクを支配するメソポタミアの女帝である。

「ジックラトへ来い。

今宵はそこで眠るのだ」

「その必要はないよ。

いつも言ってるじゃないか。私はここで停止するのが一番落ち着くって」

「これは(わたし)の決定だ。

逆らうならば今すぐの決闘も辞さぬぞ」

指先で長い金髪を遊ばせながら、ギルガメッシュは不遜に笑いかける。

唯一対等と認める友を相手にしても、根っからの傲岸さと身勝手さは変わらぬらしい。

このままでは拉致が開かないと判断したエルキドゥは渋々了承した。

「分かったよ。

でも今日だけだからね」

エルキドゥが軽く跳び乗り、それとほぼ同時にヴィマーナが空高くへと上昇する。

黄金の帆船は超音速で星空を駆け抜け、瞬きの間に女王の住まうジックラトに到着した。

二人はヴィマーナから飛び降り、ジックラトの中へ入りギルガメッシュの寝室へ向かった。

「ギル、先から女官の人にすれ違うんだけど」

事実エルキドゥ達は十人近くの女官を見かけていた。

「当然だな。

王より先に眠るなど刎頚に値する」

「あんまり王様が臣下を困らせちゃ駄目だよ」

「戯け。王だからこそだ。

(わたし)が所有物たる臣下を顧みることなどあり得ぬわ。

……まあ、少しは考えてやらんこともないが」

他愛ない話をしているうちに二人は寝室にたどり着いた。

「相変わらず豪勢だね」

事実その部屋は赤と黄金で彩られ、天蓋付きのベッドの周りや壁には王が気に入った宝物が置かれていた。

「ところでギル。

今日はどうして私を」

エルキドゥが言い終わる前にギルガメッシュは彼女を抱き抱え、ベッドの上に放り込んだ。

「え?」

咄嗟のことに呆けているエルキドゥをよそに、ギルガメッシュは上機嫌で叫んだ。

「A・U・Oキャストオフ!!!!」

金色の光に一瞬包まれた後、均整のとれた柔肌が露わになる。

ギルガメッシュは己の裸体を惜しげ無く晒し、髪を掻き上げながらエルキドゥに見せつけた。

「な、ななな何をしてるんだ!?」

エルキドゥが目を回しながら悲鳴を上げる。

「君に恥じらいはないの!?」

「愚問よね。

どんな宝石よりも輝きを放つこの(わたし)の肉体に恥ずかしい所などあるはずがなかろう?」

「私が恥ずかしいよ!!」

ギルガメッシュは鼻で笑い、ベッドに腰掛ける。

「今宵はお前を抱いて寝ようと思ってな」

「抱くってそれはどういう……」

「そのままの意味だ」

思い出してみれば、先程すれ違った女官達は全員冠婚葬祭を取り仕切る仕事をしていた。 

その事が指し示す事実を裏付けるかの如く、ギルガメッシュは逃げられないよう手を置き、妖しく笑いかけて言った。

「見ろ、(わたし)を。

神々がデザインした完璧な美、お前が千切れんばかりに引き縛ってくれたこの身体をな」

「君だって私に色んな物を突き刺したじゃないか!?」

「知らんな」

ギルガメッシュは貫頭衣に手をやり、一気に引き裂く。すると豊かな肉体をしたギルガメッシュとは対照的な、細く未成熟で無垢そのものの痩身が剥き出された。

「随分と愛らしい体付きだな」

「……ッ」

羞恥で赤くしながらエルキドゥは体を変容させて貫頭衣を作り直す。

「見せてくれないのか」

「見せないよ!!」

「では仕方ない。

このままでお前を抱くとしよう」

「着たままで!?」

既に近すぎるギルガメッシュの生身がゆっくりと沈んで行く。

(ああ、さようなら、私の純潔……。

さようなら、私の初めて……)

エルキドゥは固く目を瞑った。

しかし処女を散らす痛みはいつまで経っても来なかった。

恐る恐るギルガメッシュに目をやると、彼女は愉しげにエルキドゥの腕に抱き着いているだけだった。

「ギル……?」

「何だ?」

「何って……。

私を抱くんじゃなかったの?」

「抱いているが?」

先程とは違う羞恥心でエルキドゥが赤くなる。

その様子をギルガメッシュは愉快げに笑った。

「ほーう、抱いて欲しかったのか?」

「いや、ちがっ……」

「何が違うのだ?」

「うう……」

言葉に詰まるエルキドゥの肩を寄せて、彼女は言った。

「安心しろ。

今日はそっちの意味で抱くつもりはない。

まぁ、お前の態度次第ではあるが」

そうしてギルガメッシュは困惑するエルキドゥに呼んだ理由を話した。

(わたし)は常日頃収集した財宝をこうして抱いて眠っていてな。

今夜は最も価値ある財を抱こうと思ったまでのことよ」

「その価値ある財宝が私なの?」

「そうだ、我が友よ。

貴様が(わたし)にとっての一番の大切だ」

性酷薄な彼女にしては珍しく柔らかめに微笑み、しっかりと頷いた。

「私はいつも、君の兵器として使い潰してくれればいいと言っているのに……」

「お前の言う兵器として扱っているからこそこうしているのだ。

それにお気に入りはとっておきと相場が決まっているだろう?」

そんなの詭弁だ、と複雑な表情を浮かべるエルキドゥを、ギルガメッシュは明るく笑い飛ばした。

基本的には竜巻のように苛烈な彼女だが、偶にはこうして太陽のように心を照らすのである。

……そしてエルキドゥは纏っていた衣を消失させた。

「勘違いしないでね。

君の兵器の生まれたままの姿を見せているだけさ」

森に住まう野獣のような土塊ではなく、友と競い、語り合い、喜びを分かち合った、人共に歩む者としての姿を露わす。

「もう寝よう。

あまり遅いと夜が明けてしまうよ」

そうは言いつつ、照れ臭さで目を反らしているエルキドゥの耳元でそっと囁いて。

「おやすみ、妾の友(エルキドゥ)

ギルガメッシュは頬に口付けし、親愛の中で眠りについた。

 

 

 

 

 

エルキドゥ(こんなことされたら眠れる訳ないじゃないか───!!)

ギル「zzz」

 




二人ともキャラを掴み辛いですよね……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

extra放送記念

ネロは出ません


白野が畳の上に敷いた布団で眠りについていると、玉藻の前はその中にするりと入り込んできた。

まただ、と白野は思った。

白野を消滅の宿命から救い出し、電脳世界の果てで二人きりの生活を送り始めてから、毎晩キャスターはこうした事を繰り返していた。

特に何をするでもなく、ただ玉藻の細長い脚を絡ませ、上半身を優しく抱き寄せる。

彼女は時折白野の頰にそっと触れ、愛おしげにご主人様と囁いた。耳元のこそばゆさが妙に心地良かった。

白野はゆっくりと体の力を抜き、キャスターにその身を預けた。初めてのことにキャスターは少し戸惑った様子だったが、しばらくするとより強く抱きしめた。

ん、と白野の唇から短く声が漏れる。

それは拒絶の意思を示しているというよりはむしろ相手の愛欲を煽るような含みを持たせていた。

「起きて…いますよね……?」

ついに玉藻が問い掛けた。

誤魔化せない。

そう感じた白野は何も言わずに頷いた。

「もしよろしければ」

申し訳なさそうに囁いて。

「私を見つめて貰えませんか?」

白野はすぐさま目を開く。

闇夜に浮かぶ満月が如く大きな黄金色の瞳が、静かに白野を捉えていた。

何となく不安げな彼女を安心させる為、その手を握る。

玉藻は白野を救い出す為、千年もの修行を重ねたという。白野にとっては全てが一瞬の出来事であっが、キャスターには悠久の果てに掴み取った再会である。失うことへの憂いは相当あるはずだった。

「私はここにいる」

玉藻は少しの間目を丸くして、すぐに嬉しげに微笑んだ。

「ご主人様には隠し事が出来ませんね。

不安も、恐れも、全てを見透かされているようです」

「全部じゃない。

でもキャスターのことならきっと」

「分かって下さると?」

白野は頷いた。

「今宵は、甘えてしまっても良いでしょうか?」

細波のような小声に、白野はしっかりと首を縦に振った。

 

玉藻は白野の上半身を起き上がらせ、背中に回り込んだ。慣れた手つきで白野の胸元をはだけさせ、首筋のラインまでを辿る。荒い息遣いによる愛撫は感覚を高揚させ、両者の理性を麻痺させた。

玉藻が胸にその手を伸ばすと、まだ肉の快楽に疎い少女の身体はピクリと跳ねた。そして慎ましくも柔らかな双丘を手の平で包み、痛めつけない程度に責める。

白野は目を固く瞑り、口を両手で塞いだ。

「何故そのようなことをされるのです?

気分を害されましたか?」

心配になって、責めの手を止めて玉藻が尋ねる。しかしそれは杞憂に終わった。

「いや……感じてる声を聞かれるのは流石に恥ずかしいから……」

どこかいじらしい羞らいは玉藻の嗜虐心を煽る結果に終わった。

今度は厚い上唇と下唇で耳たぶを挟み、舌先でそれを舐め、突く。白野が背中を這うような感覚を我慢していると、追撃と言わんばかりに胸を弄んだ。

必死に迫り上がる快楽をコントロールしようとする白野の耳元で、玉藻はこう呟いた。

「ご主人様の可愛らしい声、聞かせて欲しいな」

最後に玉藻の頼みという切り札を前に、白野はあっけなく陥落した。

初めは小さくか細かった喘ぎは白野に快楽に身を委ねているという自覚を植え付けるにつれて大きくなり、二人の情欲を駆り立てた。

数分もすると、玉藻がいい加減胸への責めをやめようとしても「……やめないで」と言い出す始末だった。

「しかしご主人様。

次の楽しみが御座いますれば」

二、三回それを繰り返した所で玉藻は白野を押し倒した。

そして唇が白野のそれに吸い寄せられる。

喘ぎ声を漏らしていた口が塞がり、白野が無抵抗なのを確認してキャスターは舌を中に入れた。唐突な異物感による抵抗から背中が弓なりになるが、目の前の玉藻の瞳が「委ねて」と言っている気がして、力を抜いた。

口の中は少しの空気もない程の圧迫感で、白野の舌はされるがままだった。

玉藻は舌で舌を愛撫し、時折吸い上げることで自分の中に誘導したり、甘嚙みで鋭さを与えた。

ひとしきり楽しんだあと、玉藻は唇を離した。

名残惜しい気持ちもあったが、互いに呼吸を忘れる程であったので、大切な主人を気遣ってのことだった。

「玉藻の、すごい……」

頰を熱で赤く染め、蕩けた眼で見つめながら白野は言った。

「本当に、あなたは私が欲しい言葉を投げ掛けて下さるのですね」

白野は起き上がり、玉藻の前を見つめる。

何を言うわけでもなくただ自然に、キャスターは抑えきれぬ切なさで抱きしめるようかのように両手を白野の頰にあて、再び唇を重ねる。白野の方もキャスターの後頭部に諸手を回して離さなかった。

視界には愛してやまない互いの視線しか映らず、舌が交わる度に相手への愛しさが増していく。それはもう、三千世界の鴉を殺し尽くしても足りない程に。

______あなたしか見えない。

唇で交わされた甘過ぎる言葉を噛み締めて、二人は離れた。

「もう満足しちゃった?」

「いえ、まだ少し足りません」

私もだと白野は微笑み、抱きしめ合いながら布団の上に落ちる。

そうして二人の初夜は三晩続いたのだった。




スマホ変えたらfgoのデータが消えました


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。