城下町の低身長 (かるな)
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プロローグ

はじめましてかるなです

ダンデライオンの作品が書きたいと思い執筆開始いたしました!

今のところストック皆無なので、出来るだけ早く投稿していきます!!


今は朝の6時半。

側に置いてある目覚まし時計が鳴り始め、俺に早く起きるようにと訴えてくる。

しかしまだ起きる気は全くないので、主張を続ける目覚ましに拳を叩き付けて黙らせて再度眠りにつく…

 

 

 

 

「優!! 起きてっ」

 

 

意識が飛び立とうとした瞬間、勢いよく掛け布団を引っぺがされる。

立て続けに体を揺すられるがそんなことで起きる程、俺は甘くない。

しばらく耐え続け、俺の体を揺すっていた手が離れる。

 

勝った! 俺は睡眠を妨害しようとする悪の手先から己を守り切ったのだ。

 

 

「全然起きない…」

 

 

当たり前だ、お前みたいな三流とは鍛え方が違うのだ。

あきらめて魔王のところへさっさと帰れ!

そして任務を遂行できなかった罰を受けるがいい。

あーはっはっは!

 

 

 

 

「キスと腹パンどっちがいい?」

 

 

「起きます! 起きてます!! 起きました!!!」

 

 

どうやら俺を起こしに来たのは魔王 (双子の妹) だったらしい…

 

 

「おはよう優」

 

 

「おはよう茜、いつも思うけどもうちょっとマシな起こし方は無いのか?」

 

 

「普通に起こしても絶対起きないくせに」

 

 

茜からのジト目が向けられるが特に気にしない。

俺が起きないのはいつものことだ。

 

 

「早く支度して、皆待ってるよ」

 

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

手早く支度を済ませて一階にあるリビングへ向かう。

ドアを開けて入ると、すでに家族全員が座っていた。

 

 

「優、遅い!」

 

 

「ごめんかなねえ、そいや今日生徒会あるんだっけ」

 

 

入ってさっそくお姉様からお叱りを受ける。

 

 

「そう言ってやるな奏、優は身長を伸ばすために日々努力してるんだぞ」

 

 

「いい度胸だな修、そこを動くな、直ぐに頭ぶち抜いてやる」

 

 

「はいはい、早く椅子に座る」

 

 

「放せ茜! 今日という今日はこいつを黙らせなきゃならねぇ!」

 

 

修に渾身の右ストレートを喰らわせようと構えると、茜に後ろから襟を掴まれて席まで移動させられる。

抵抗するも、茜の能力「重力制御」によって宙に持ち上げられた体は素直に椅子の上へと運ばれる。

 

 

「ていうか優ちゃんまだ身長伸びてないの?」

 

 

「まだって言うな光。これでも一応伸びてんだよ。後ちゃん付けんな」

 

 

「昔はもっと小さかったもんね優兄」

 

 

「優兄さんは中学の頃は今の岬より低かったから、確かに伸びてるね」

 

 

「お前ら後で覚えとけよ」

 

 

「優君そこまで、他のみんなもはやく朝ご飯食べて」

 

 

『はーい』

 

 

家族間のこういったやりとりをお互いに楽しみつつ、ちょうどいいところで長女である葵がまとめる。

櫻田家というのはどこにでもある普通の家族だ。

…でも兄妹10人って多くない?

 

 

「あなた、食事中ですよ!」

 

 

母さんが父さんが読んでいる新聞を取り上げると、新聞に隠れていた父さんの姿があらわになる。

 

 

「なんで王冠被ってるの…?」

 

 

「いや~置いてくるの忘れちゃたんで、せっかくだから」

 

 

「パパ本物の王様みたい!」

 

 

「いや、一応本物だから」

 

 

訂正…。

何も普通じゃない。

 




短くてすみません...

ちなみに優の身長は159です




妹っていいですよね
欲しいです、はい

誤字・脱字・感想等お願いします!


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登校

プロローグと一緒に投稿したかったんですけど、プロローグが1話みたいなもんなのでいいかなーと


 朝食を済ませた俺は葵姉さん、修、かなねえ、茜と学校へ向かう。

 

 

「もう桜も終わりね」

 

 

「うん、今週末が花見の最後のチャンスかも」

 

 

「花見か」

 

 

「今週末はバイトないから行けるかも」

 

 

「おはようございます」

 

 

「「おはようございます」」

 

 

「……おはようございます」

 

 

突然女性に挨拶をされる。

葵姉さんとかな姉は挨拶を返し、俺と修は会釈で返す。

茜はというと、俺の背中に隠れながらか細い声であいさつをする。

 

 

「バイバイ」

 

 

「……ばいば~い」

 

 

小さな子にもこのありさまである。

 

かな姉が俺の方を睨んでくる。

 

 

「はぁ…茜、そろそろこういうのにも慣れようぜ」

 

 

「優までそういうこと言うの!?」

 

 

「というかなんで俺の後ろに隠れてるわけ?」

 

 

「あんたが甘やかしすぎてるのよ」

 

 

「奏、優君、二人ともそれぐらいで」

 

 

「「は~い」」

 

 

いつもの感じで話をしていると、近くにあった電柱に付いている一台の監視カメラがこちらをとらえる。

 

 

「ひゃっ!」

 

 

「……。」

 

 

監視カメラに驚きながら俺の背中に額を当てて、顔を隠す茜。

妹だが、女の子にそんなことをされるとちょっとドキッとするのでやめてほしい。

 

 

「茜、こういうのもカメラに映ってるから恥ずかしいんだが」

 

 

「そう言う割には顔にやけてるわよあんた」

 

 

「......。」

 

 

「しょうがないさ茜。これが俺たちを守るためだってことはお前も分かってるだろ?」

 

 

「それはそうだけど。町内に2000台って多すぎない!? しかもせっかくカメラの位置全部覚えたのに変わってるし….」

 

 

『全部ってすごい…』

 

 

この町には茜が言った通り2000台もの監視カメラがある。

これは王族の生活を監視するためであり、なぜ設置されることになったのかはまた別の話。

 

 

「カメラの位置なんてよく覚えたわね、私だったら国民へのアピールに使うのに」

 

 

「なんでアピールするの?」

 

 

茜が奏にそう尋ねる。

 

 

「だって私たち次期国王選挙の候補者よ?自分の支持率を挙げようと思うのは普通のことでしょ?」

 

 

「う~、なんで選挙で決めるのよ…」

 

 

茜はそう言ってガックリと肩を落とすが、俺もあまり選挙に乗り気ではない。

やはりこういうのは長男長女が王様になるのがお約束というものだろう。

 

 

「お父さんが決めたことなんだからしょうがないでしょ」

 

 

「にしても光と輝と栞が候補というのはいいのだろうか」

 

 

「それより奏、生徒会があるんだよね、時間大丈夫?」

 

 

「え? もうこんな時間!? ありがとう葵姉さん、先行くわ」

 

 

「んじゃ、俺も行くわ」

 

 

2人はそう言うと走っていってしまった。

 

 

「私たちも行こう茜、優君」

 

 

「で、でも監視カメラが…」

 

 

「茜は俺が何とかするから、葵姉さんも先行ってていいよ」

 

 

「でも…」

 

 

「今日は本当に間に合うか微妙だし、姉さんまで遅刻するわけにはいかないでしょ」

 

 

「そう? じゃあお願いね優君」

 

 

葵姉さんにも先に行っててもらう。

 

 

「ごめん優」

 

 

「いつものことだから気にしてないよ。監視カメラは俺が引き付けるから、捕まらないように来いよ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

土下座をしてまで感謝を伝えてくる妹。

こいつは近くに監視カメラがあるということを忘れているのだろうか。

あまりゆっくりしてもいられないので、カメラを引き付けるために先導する。

予定通りカメラは俺を捉え続ける。

この調子なら茜は問題なく進めるだろう。

 

 

 

そう思っていた。

 

 

 

が、俺を捉えていたはずのカメラは突然向きを変え、茜を捉える。

 

カメラが自分の方に向いていると気付いた茜は、悲鳴を上げながら超ダッシュで駆け抜けていく。

まったく、カメラの性能を上げるなんて税金の無駄遣いではないだろうか…。

 

そんなことを考えながら、兄を置いて先に行ってしまった妹を追いかける。

 

 

 

 

 

茜はすぐ近くにある公園のベンチに座っていた。

 

 

「兄を置いていくとは薄情な妹だ」

 

 

「だ、だってカメラが! あいたっ」

 

 

そんな薄情な妹の脳天に手刀を当て、制服のポケットからスマホを取り出して時間を確認する。

 

 

「なあ茜、どう頑張ってもこのままじゃ遅刻なんだが」

 

 

叩かれた頭を押さえていた茜が「こうなったら」と言って覚悟を決めたような顔をする。

 

 

「いいのか? お前ズルしてるみたいだからって使いたくないんだろ?」

 

 

「だって、このままじゃ本当に遅刻しちゃうんだもん。せっかくの皆勤賞なのに」

 

 

「たまには遅刻しても大丈夫だろ」

 

 

「優は授業さぼりたいだけでしょ。はい、手だして」

 

 

「はいはい」

 

 

茜から差し出された手を握る。

女の子の手を握りながら登校なんて他の男どもが見たら発狂もんだが、あいにく俺にとってはそこまで嬉しいものではない。

妹だからな。

手をつなぐぐらいならどうってことはない。

あまり密着されるとあれだが……

 

 

「じゃあ、行くよ」

 

 

すると、茜の体が輝き始める。

少し経つと体が浮き始める。

何度やっても俺はこの感覚には慣れない。

 

 

今更だが、王族の血を引くものには特殊能力が宿っている。

今朝も茜が俺に使っていたが、こいつの能力は重力制御。

簡単に言うと、自分と自分が触れているものの重力を操ることが出来るのだ。

この能力のおかげで空を飛べるので、監視カメラには映らないし、国民の視界にも入らないので極度の人見知りな茜でも問題なく進むことが出来る。

 

飛び方は地面に対して体を水平にして飛ぶ。

直角にするとスカートの中が見えてしまうのだ。

 

茜に引っ張られるように飛んでいるため、自然と茜の斜め後ろを飛ぶ感じになる。

 

斜め後ろだからって特に何もない。

が、今の茜はスピードを出しながら飛んでいるため、風に煽られてスカートがひらひらとしている。

 

 

「茜、もう少しゆっくりいかないか?」

 

 

「え、どうして?」

 

 

「パンツ見えてるぞ」

 

 

「……へ?」

 

 

茜が素っ頓狂な声をだすと、しだいに顔が赤くなっていき、最後には口をパクパクさせてショートする。

 

やべ、言わない方がよかったかも……

 

時すでに遅く、完全に取り乱した茜は能力の制御が出来ずに落下を始める。

 

 

「ば、馬鹿っ! 落ち着け!!」

 

 

「ゆ、ゆゆゆ優が悪いんだからね! なんで今そんなこと言うの!?」

 

 

何とか立ち直した茜は先程と同じように飛び始める。

しかし顔はまだ赤かった。

 

 

「なんでって、そりゃあ俺にパンツ見せびらかしたいなら何も言わないけど......ちょ、手! 力強すぎ!! 潰れるって!!!」

 

 

こいつの能力は重力制御だが、器用に使えば馬鹿力を生み出すこともできる。

 

 

「茜! 茜さん!! なんで振りかぶって……うおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

茜は俺を力任せに分投げ、落ちる寸前でキャッチするというのを学校に着くまで繰り返した。

 

 

「もういや……ガクッ」

 

 

学校についたときには意識は無くなっていた。

 




前回より1000文字以上多くなっててびっくりです


これ書いてる最中に気付いたんですけど、輝と栞がまだ喋ってない...
ごめんよ


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学校

寒いです。

ダンデライオンは見ても書いても飽きないです
まだ3話目なんですけどね

最近はfateにはまってます
第6章攻略に向けて育成中です!

ネロが欲しい


何とか学校に間に合った俺たちは、教室へと入り自分の席に着くと一人の女の子が近づいてきた。

 

 

「おはよー、優。なんで今日はそんなにグロッキーなの?」

 

 

「花蓮か、おはよ。どうにもこうにも茜のせいだよ」

 

 

「あ~…」

 

 

何かを察したのか、同情の目を向けてくる花蓮。

 

 

「優が悪いんだからね!」

 

 

「だからってぶん投げることないだろ……」

 

 

まだ完全に復活していない俺は、机に突っ伏しながら反論する。

 

 

「まあまあ、二人とも。もうすぐ授業始まるからね。茜も席ついて」

 

 

花蓮に促されて席に座る茜だが、まだ何か言いたそうな顔である。

 

 

4限目が終わり、昼休みになった。

特に友達が多くない俺は、いつもの通り茜と花蓮のところへ混ざりに行く。

 

 

「へぇ~、朝そんなことがあったんだ」

 

 

「絶対に優が悪い。そう思うでしょ、花蓮」

 

 

「いや、茜の不注意のせいだ。そう思うだろ、花蓮」

 

 

2人が花蓮に同意を求めるも、花蓮の表情は呆れていた。

 

 

「どっちもどっちでしょ。まず茜はパンツみられるのが嫌ならスパッツ履きなさい! そして優は何でもかんでも思ってること口にしない!」

 

 

「だってスパッツはむずむずするんだもん」

 

 

「事実を言ってるだけなのに」

 

 

「口答えするなら買い物にも付き合わないし、宿題も見せてあげないから」

 

 

「「申し訳ございませんでした」」

 

 

花蓮には昔から頭が上がらない。

茜もだが、俺たち二人は友達が少ない。

別に他の人たちと仲が悪いわけではいのだが、気軽に話せる人となると花蓮しかいないのだ。

 

 

「それよりも優! なんであんたはいつも宿題やってこないの!?」

 

 

「それは愚問だな花蓮。俺にとって睡眠とは成長することにおいて必要不可欠なもの。そんな大切な時間を宿題なんぞに使っていられるか」

 

 

某グラ○オさんのように片手で顔を隠しながらセリフをきめる。

中学の最初の頃は夜更かしに謎のカッコよさを感じていた俺であったが、現実は甘くなかった。

日に日に自分を置いて成長していくクラスメイト達。

つい先日まで隣にあった顔は気付くと自分を見下ろしていた。

周りだけ人類を超越した進化をしているのかと錯覚する日さえもあった。

 

危機感を感じた俺はTVや健康本を見て手あたりしだいに身長について調べ、食生活にも気を付けた。

この努力が認められたのか、中学を卒業するときには入学前よりも5cm程身長を伸ばすことに成功したのだ。

 

 

「その割には男子の平均割ってるよね」

 

 

「…………………。」

 

 

それでもなお現実を叩き付けられる始末。

くそっ! 神よ、俺が何をしたっていうんだ…

そもそもなんで男子の平均が170cm近くあるんだよ、頭おかしいんじゃねぇの!?

 

 

 

そっか、みんな人類やめたフレンズなんだね 

 

 

 

「優、そんなに落ち込まないで! うちのクラスにも優より背が低い人だってきっと…」

 

 

あぁ、なんて優しい妹なんだ…こんな俺を励ましてくれようとしている。

 

 

 

ん?? 茜今「きっと」って言った?

 

 

 

「いる…はず…」

 

 

 

おい、目線をそらすな。

俺と茜の目線の高さはあんま変わんないからすぐ気づくんだぞ!

 

 

「でもさ、身長ってそんなに気にするもん?」

 

 

「当たり前だ! あんな乳お化けで猫かぶりな女よりも背が低いなど死んだ方がマシだ!!」

 

 

「一応聞いておくけど、それってかなねえのこと?」

 

 

「当たりまがっ…!」

 

 

「じゃあ茜、こいつ借りてくわね」

 

 

「「…コクコク」」

 

 

言い終わる前に後ろから (偶然俺に用があって来ていた) 奏に殴られて気を失った。

茜と花蓮はというと、どす黒いオーラを出しながら微笑む奏に向かってうなずくことしかできなかった。

 

 

 

目を覚ました優は昼休みが終わるぎりぎりまで生徒会の仕事を手伝わされ、今後の生徒会の活動にまで駆り出される羽目になったとか。

 




ストックが無いと言ったな...

気付いたらもう4話目が書き終わっていた!

評価・お気に入り・感想お待ちしております!


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下校

毎日1話ずつ投稿するのがじれったくなってきたんですが、ストックがまだたまってないので仕方ないですね...

後一週間もすれば暇になる予定なので、そこまでの辛抱です...


大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございました!


午後の授業も終わり、クラスメイト達が少しずつ帰宅していく。

帰り支度を済ませた俺は、机に突っ伏してため息をつきまくる妹の所へと向かった。

 

 

「はぁ…幸せな時間って何でこんなに早く終わっちゃうんだろう……」

 

 

「茜ってほんと学校大好きだよね」

 

 

「だって学校だとみんな私のこと王族扱いしないでしょ?」

 

 

「そりゃあ、友達だし?///」

 

 

「そりゃあ、妹だし?///」

 

 

 

 

 

「「……………。」」

 

 

「悪かったって、だからそんな冷たい目で見ないでくれ」

 

 

まったく、ただの軽いジョークじゃないか。

ちょっと顔赤くしてみただけじゃないか。

目線を逸らしながらとかグッときそうな仕草してみただけじゃないか。

 

 

 

 

 

 

そのお返しがその目とか…………癖になりそう。

 

 

 

 

「茜、優君。葵様が迎えに来てるよ」

 

 

軽い雑談をしていると、クラスメイトの一人が葵姉さんが来たことを教えてくれる。

そいや今日は葵姉さんが迎えに来るんだっけ。

 

 

「キャ―!葵様―!」

 

 

「今日も綺麗です!」

 

 

「結婚してください!!」

 

 

今日も葵姉さんは人気だな。

 

え、最後のセリフの奴?

 

八つ裂きだよ。

 

 

「葵さんはほんとに人気が高いよね。あの調子じゃ次期国王は葵さんかな」

 

 

「やっぱりお姉ちゃんは人気あるなー…」

 

 

「茜にはファンクむぐっ!」

 

 

「優どうしたの?」

 

 

ファンクラブがあるぞと言いかけたところで花蓮に手で口をふさがれる。

 

 

「ほらほら、お姉さんを待たせちゃ悪いからさ! 早く行った方がいいんじゃない?」

 

 

「確かに…優、行こう。また明日花蓮!」

 

 

「また明日な」

 

 

「バイバイ二人とも」

 

 

 

 

 

花蓮と別れた俺たちは、クラスメイトに包囲されている葵姉さんを救出して学校を出る。

 

 

「おねえちゃん、どうやったらそんなに人気出るの?」

 

 

「うーん、特に何もしてないんだけど…」

 

 

「それでも人気あるって本当にすごいよね」

 

 

「あれ? 優君も結構人気ある方だよ?」

 

 

「え、そうなの?」

 

 

「うん。私のクラスでは結構小っちゃくてかわいいって有名だけど…..」

 

 

「優が泣いてる…」

 

 

「嬉し泣きだいっ!!」

 

 

「「あ、行っちゃった…」」

 

 

あまり知りたくなかった事実を知ってしまった俺は、脱兎のごとく駆け抜ける。

足には自信あるんです。

 

 

 

 

 

ある程度走った俺は反転し、走ってきた道を戻る。

結構無駄な体力を消費したが、身長関係のやり取りがあると大体こうなるので問題ない。

始めの頃は茜たちもびっくりして呼び止めたりしたが、今じゃどうせ戻ってくるからいいや、とか思ってたりするので最近は少し寂しい。

いっそのこと家出でもしてみるか?

 

 

 

 

 

だめだ、後が怖い。

 

肉片一つも残らなそう…

 

 

そんなことを考えながら走っていると、葵姉さんが見えた。

あれ、茜がいない。

 

 

「おかえり優君」

 

 

「ただいま葵姉さん。茜は?」

 

 

「茜ならひったくりを追いかけてったよ」

 

 

「えぇ…何やってんのあいつ」

 

 

「心配だけど、茜能力使って追いかけてるからもう追いつかないかも…」

 

 

「俺に任せて、葵姉さんはここで待ってて」

 

 

葵姉さんの返事を待たずに鞄を預け、茜が走っていった方へと走る。

さっき走ったおかげでウォーミングアップが済んでいるおかげで体が軽い。

茜は能力を使っているが、それでもこれ以上大幅に距離が離れることは無いだろう。

 

 

「さて、まずは茜を探さなきゃな」

 

 

俺の体が光る。

そう、王族の血を引くものならではの特殊能力だ。

 

 

「でも届くかな…まあやるしかないんだけど」

 

 

俺は頭の中で茜の姿を思い浮かべると、声には出さずに、頭の中で茜を呼ぶ。

 

 

(茜、聞こえてるか? 聞こえてたら返事しろー。 茜ー。)

 

 

俺の能力は精神感応、いわゆるテレパシーだ。

話をしたい相手を思い浮かべ、頭の中から喋りかけるような感じでやると相手の頭の中に自分の声が響くのだ。

俺が話しかけている最中は向こうも同じ感覚で喋れば俺の方にも伝わってくる。

ただ話したい人と距離が離れすぎていると使えない。

いけて1kmぐらいかな。

 

それにしても茜が全然返事を寄越さない…

流石に聞こえてるはずなんだけどな、追いかけるのに夢中で気づいてないのか?

仕方のない妹だ。

お兄ちゃんがすぐに気付かせてあげよう。

 

 

 

 

 

(おい貧乳)

 

 

(殺す!!)

 

 

よし! 茜との連絡は取れた。

 

 

怒り狂う茜を何とかなだめ、茜から聞き出した場所へ行くと、なぜか報道陣に囲まれている茜がいた。

 





妹が欲しかったです(n回目)

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ニュース

毎日更新が途切れてしまいました...

昨日楽しみにしてくださった方、申し訳ありません!!

なので、今回は2本投稿します。

これでチャラにしてください!


『皆さんこんばんは、櫻田ファミリーニュースの時間です!』

 

 

毎日夜7時に放送される櫻田ファミリーニュース。

その内容は、王家の一日を総集編にしたものである。

基本的には父さんの仕事のことなのだが、監視カメラが設置されているため、俺らの行動でネタになりそうな場面があればそれも放送される。

俺たちのプライバシーとかは無いんでしょうか…

 

 

「優ちゃーん! ニュース始まったよー!!」

 

 

冷蔵庫の中を漁っていた俺は、光に呼ばれる。

 

 

「ほいよー。あと優ちゃん言うな」

 

 

「えー? いいじゃん! 優ちゃんは優ちゃんだもーん」

 

 

「はいはい」

 

 

適当に選んだアイスカップとスプーンを手に、光が待つソファに向かう。

光は俺がアイスを持っていることに気付くと、目をキラキラさせながらこっちを見てくる。

 

 

「やらんぞ光」

 

 

「まだ何も言ってないよ!」

 

 

これは俺がバイトをして手に入れたお金で買ったアイスなのだ。

絶対にやらん。

 

 

光の隣に座り、アイスカップを食べ始める。

やはり労働をした報酬というものは心地いい。

労働の喜びを知ってしまったのだ。

将来は良い社畜に……

 

はっ! いかんいかん。

将来はホワイト企業に就職するんだ!

ちゃんと定時に帰るんだい!!

 

 

「優ちゃんがニュース見ようだなんて珍しいね」

 

 

「今日は面白いもんが見られそうだからな」

 

 

面白いもんとは十中八九茜のことである。

 

うーん…ただ見るだけじゃ勿体ないし、茜でも呼ぶか。

ソファから立つのはめんどくさいし、夜に大声で2階にいる茜を呼ぶのは迷惑なので、能力を使う。

 

 

(おーい、茜―)

 

 

(どうしたの優?)

 

 

(一緒にテレビ見ようぜ)

 

 

(私宿題があるんだけど)

 

 

(アイスやるからさ)

 

 

(行く!!)

 

 

ちょろいやつだ

 

 

「来たよ優!」

 

 

「早いな!?」

 

 

言ってから10秒もしないうちにきやがった。

どんだけアイス食べたいんだよ…

 

 

「ニュース見るの?」

 

 

「ああ、今日は面白そうだからな」

 

 

「へー。優、アイスは?」

 

 

「ほれ」

 

 

俺は自分が食べていたアイスカップを茜に渡す。

 

 

「食べ掛け…」

 

 

「嫌ならいいぞ?」

 

 

「久しぶりのアイスだし…いただきます」

 

 

「一口だけな」

 

 

「ケチ!!」

 

 

何を言う。

食べれるだけでも幸せだと思え。

ちなみに家族の中でアイスを買うのは俺だけなので、割と貴重なのである。

 

 

「太るぞ…いでっ!」

 

 

言い終わった瞬間に茜に殴られる。

 

 

「今のは優ちゃんが悪い」

 

 

年頃の女子というのは扱いが難しい。

言葉の選択を間違えようものなら容赦なく拳が飛んでくる。

 

ひどいときには重力によって強化された拳が…

 

 

『さて皆さん、次のニュースはこちらです!』

 

 

「お、そろそろかな」

 

 

「何が?…あ、あ、ああああぁぁぁ!!」

 

 

テレビの画面を見た瞬間に絶叫する茜。

ふふふ、この反応が欲しかったんだよ!

 

 

「茜ちゃんがテレビに映ってるー!」

 

 

今始まったのは、今日の下校中に茜がひったくり犯を捕まえたという内容。

俺が茜を見つけた時には茜は報道陣に囲まれていたので、何事かと気になったが、茜に何度聞いても「聞かないで!」、「うるさい!」と断られる一方だった。

どうしても詳細が気になった俺は、報道陣がいたのなら今日のニュースに必ず出るはずだと確信し、この計画を企てた。

ついでに俺の要望を断りまくった茜に対する嫌がらせでもある。

 

しかも茜の犯人制裁の映像は防犯カメラがしっかりと捉えている。

 

というか茜、能力で追いかけたは良いが犯人の顔面に膝蹴りっていうのはちょっと…

しかもあの角度だとパンツが…

 

 

「優! これやるの知ってたでしょ!! せっかく忘れかけてたとこなのにー!!!」

 

 

「さぁて、何のことかなー」

 

 

俺はニヤニヤしながら立ち上がり、茜の反応に満足して気分が良くなったので、光に残りのアイスをくれてやる。

 

 

他の兄妹たちが晩御飯のために下に降りてくると、幸せそうにアイスを食べる光と、生気を失った目で壊れたように「あははは…」と言い続ける茜がいたそうだ。

 

 

ついでに食事の前にアイスを食べていたのが母さんにばれて、主犯である俺と半分ものアイスを食べた光はこっぴどく叱られた…

 




やっぱ兄妹のやりとりって心が安らぎます。


ヨシーダさん、感想ありがとうございます!

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ダンディ君 前編

ダンディ君ゲームがいつもよりかなり長くなりそうだったので、前後半に分けました。



「はぁ~、なんでこんなめんどくさいことを…」

 

 

 

 

今日は土曜日、いつもならバイトをしている時間だが、なぜか大きなビルの下にいる。

しかもその周りには多くの報道陣。

上にヘリも飛んでいる。

 

なぜこうなったかというと、昨日の父さんの一言が原因である。

 

 

 

 

 

「急な話だが、明日お前たちのテレビ出演が決まった。どうした、嬉しすぎて声も出んか」

 

 

「急すぎてびっくりなんだけど…」

 

 

ほんとびっくりである。

しかも明日はバイトがある日なのだ。

せっかく中学の時の後輩である女の子と一緒のシフトなのに…

 

 

「いやー悪いとは思うんだが、なんせ今日決めたことだからなぁ」

 

 

「今日かよ!」

 

 

前日に決めたのにテレビ局が許すとは、さすが王様である。

 

 

「というわけで、皆頑張ってくれ!」

 

 

 

 

 

ということがあり今に至る。

 

今俺らがやってるのは、「ダンディ君を救え!」というゲームである。

ビルの屋上に置いてあるダンディ君人形を、ビルの下にあるそれぞれの籠に多く入れた人の勝。

参加者は王族兄妹である。

しかもビリには罰ゲームがあるらしい。

 

 

 

「僕はこのビルを上ります!」

 

 

どうやら一番最初に動くのは輝らしい。

小学1年生がビルを上るというのは非現実的すぎるが、それを現実的にしてしまうのが我ら兄妹の四男、輝である。

 

輝がビルの側まで寄ると、しゃがんで力を貯める。

 

ここで輝の能力を説明しておこう。

 

輝の能力は『怪力超人』。

自分の身体能力を大幅に上昇させるというものである。

 

輝はこの能力を使い、ビルの突起している部分を掴みながら上っていく。

順調に進んでいくが、たまたま掴んだ部分が砕けてしまい、それに驚いたのか能力を解除してしまう。

能力が無くなってしまうと力は元に戻ってしまう。

そんな状態で自分の体重を支えられるわけなく、落下してしまう。

なんとか近くの突起に掴まった輝は、上る作業を再開する。

 

まったく、心臓に悪い。

これが終わったら説教だな。

 

 

 

「次はあたしー」

 

 

今度は光か。

 

光の能力は『生命操作』。

触れたものの年齢を自由に変えることが出来るのだ。

ただし一度変えたら24時間は元の姿には戻らない。

 

光は近くの木に上り、この能力を使って木を成長させ、ビルの屋上まで一気に行くつもりらしい。

 

光にしては頭を使ってるな。

 

と感心していると、どうやら成長させすぎたらしい。

ビルよりも高く成長してしまい、降りられなくなってしまった。

 

前言撤回。

やはり光は光だった。

こいつも説教だな。

 

 

「よし、私も!」

 

 

今度は岬。

 

岬の能力は『感情分裂』。

最大で7人の分身を生み出すことが出来るのだ。

 

成程、人員を増やして正攻法で集める作戦か。

岬らしいな。

 

 

 

 

 

ん? 一人足りなくね?

 

岬は分身を7人出したはずなので、8人の岬がビルの中に入っていったはずなのだが、一人見当たらなかった。

思考を共有できる岬-ズ達が一人だけ別の手段を使うとは思えないんだが…

 

そう思いながらあたりを見回していると、急に服を後ろから引っ張られる。

 

 

「お、なんだブブか。どうしたんだ?」

 

 

「優兄、アイス頂戴」

 

 

「早く行け」

 

 

暴食という特性をもったブブがアイスをねだってくるも、外にいるのにアイスなんか持っているはずはなく、岬―ズの所へと送りかえす。

 

 

「え? そうなの? ごめんなさい、よくわからない…」

 

 

「栞、どうしたの?」

 

 

「あのね、消火器さんが近道を教えてくれたんだけど、行き方が分からなくて…」

 

 

「じゃあ一緒に行こっか。ビルにはこの前入ったことあるから覚えてるしね」

 

 

次は栞と葵姉さんか。

 

栞の能力は『物体会話』。

 

動物や物、いろんなものの声を聴き、会話することが出来る能力。

ビルの近くにある物から話を聞いて近道を見つけるとは、幼稚園児ながら要領がいいな。

 

 

葵姉さんの能力は『完全学習』

 

一度覚えたら絶対に忘れない能力。

正直うらやましい…

 

 

 

「よく考えたら、自分で行くなんて効率が悪いですね」

 

 

次はかなねえか、正直もう説明めんどくさくなったから省いていいよね?

 

 

「ダメに決まってるでしょ! ちゃんと説明しなさい!!」

 

 

「心読まないでよかなねえ」

 

 

そんな分かりやすい顔してたかな?

確かに嫌そうな顔はしたけどさ…

しかも素が出てるぞ。

外面用のおしとやかな話し方はどこ行った。

 

かなねえの能力は『物質生成』。

欲しいと思ったものが具現化する。

ただし、出てきたものに等しい金額が自分の通帳から自動的に引かれるのだ。

 

その能力でドローンを4機生成した奏は、そのままダンディ君に人形を取りに行かせる。

 

要領が良いというか、ずる賢いというか…。

 

まさか、栞はあんな風にならないよな?

容姿は似てるけど、まさかな……

 

 

「じゃ、俺もそろそろ行くかな。カメラに映りっぱなしってのも嫌だし」

 

 

「え? うひゃあ!!」

 

 

次は修兄か。

そんで茜、お前はずっと修兄の背中に隠れてたのか。

お兄ちゃん気付かなかったぞ。

 

 

修兄の能力は『瞬間移動』。

 

瞬間移動するだけ。

以上!!

 

 

 

「茜姉さん、このままだと76%の確率で僕たちビリになっちゃうから、協力しない?」

 

 

「私ビリでもいいよ。目立つならお城のトイレ掃除やるもん」

 

 

「はぁ、城のトイレ何個あると思ってるの? しかも、トイレ掃除の期間は一週間。その間お城の人たちと会うかもしれないんだよ?」

 

 

「そ、そんな! それは嫌だよ!! 遥、行くよ!」

 

 

「あ、待ってよ茜姉さん!」

 

 

遥かの能力は『確率予知』。

あらゆる出来事の確率を予知することが出来る。

 

さっき遥が言っていた数値はこの能力によって導かれたものである。

 

 

遥と茜は協力するのか。

確かに茜の能力を使えば、ビルの上までひとっ飛びだからな。

 

 

さて、俺も動くとするか。

 




優がどんな手段を使うのか想像しながら次話をお待ちください!


評価・お気に入り・感想お待ちしております!


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ダンディ君 後編

時間ぎりぎりになってしまってすみません...

シャドバやってたら投稿時間が迫ってました


兄妹たちが続々と動いていく中、まだ何もしていない俺はどうしたものかと考える。

俺たち家族の中で、このゲームに適さない能力を持つのは俺と遥と葵姉さん。

 

遥は機動力のある茜と。

葵姉さんは近道を知っている栞と。

 

それぞれが相方を見つけてこのゲームを進めている。

 

まあ葵姉さんの場合は栞の子守りみたいなもんだけど。

 

 

ふと顔を上げると、目の前をダンディ君を掴んで飛行するドローンが目に入った。

 

 

 

 

これは使えそうだ。

 

 

 

 

(かなねえ聞こえる?)

 

 

(聞こえてるわよ。あんた、さっきから何もしてないけどいいの? このままだとビリになるわよ)

 

 

(そのことなんだけどさ、ここは一つ手を貸してよ)

 

 

(嫌よ、自分で何とかしなさい)

 

 

くそっ、このデカ乳ババアめ。

 

 

(なんか言った?)

 

 

(いえ、何も。それよりも、そこを何とか頼むよかなねえ! ほら、俺の能力ってこういうのに向いてないじゃん? 不利な弟に手を差し伸べる姉。支持率上昇間違い無しだよ?)

 

 

(…………分かったわ。でも、今回だけだからね!)

 

 

(さっすがかなねえ、 大好き!!)

 

 

(やっぱこの話は無しね)

 

 

(ごめんって…)

 

 

 

 

まったく、茜といい、かなねえといい、何で冗談が通じないんだ…

 

 

 

 

こうして何とか協力者(かなねえ)を得た俺は、ビリにならずに済んだ。

結果は茜と光が0個でビリとなった。

 

 

結果発表の際に、茜が何やら魂の抜けた顔をしていた。

一緒に行動していた遥に聞いてみたところ

 

茜が飛んでいる最中にスカートが捲れるのを気にしていた。

遥がスカートを抑えた。

それによって茜が動揺し、能力の制御が利かなくなって暴走。

ビルの屋上にいた輝とぶつかりそうになるが、修兄の能力によって輝を助ける。

しかし、修兄と輝は茜のスカートを巻き込んで瞬間移動。

スカートが無くなったことに気付いた茜が大絶叫。

 

 

 

 

 

 

 

 

説教しなきゃならないやつが2人増えた...

 

 

 

 

 

 

ゲームの後に選挙の支持率が発表された。

 

1位 葵姉さん

2位 かなねえ

3位 茜

4位 俺

5位 岬

6位 遥

7位 栞

8位 輝

9位 光

10位 修兄

 

俺は茜よりも下なことに少しショックを受けながらも、これからどう選挙活動をしていくのかを考え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後……

 

 

 

 

「まずはお前ら座れ」

 

 

『はい』

 

 

俺は帰宅してすぐ、輝と光と遥と茜を部屋に入れ、正座させる。

何をするかというと、もちろん説教だ。

 

 

「まずは、輝から!」

 

 

「はいっ!優お兄様!! 」

 

 

「お前は自分の能力を過信しすぎだ! いくら力が強くなったっても体はまだ小学生なんだぞ? あんまり危ないことするな!!」

 

 

「申し訳ありません!! 優お兄様ぁっ!!」

 

 

「次は光!」

 

 

「はい…」

 

 

「お前はもうすぐ中学生なんだぞ!? 少しは後先のことを考えられるようになれ!」

 

 

「はい…」

 

 

「次、遥!!」

 

 

「うっ…」

 

 

「お前は公衆の面前で何をやってるんだ!? 少しは自重しろ! このむっつりスケベ!!」

 

 

「ムッツ……! ごめん優兄さん…」

 

 

「最後に茜!!」

 

 

「うぅ…」

 

 

「パンツみられんの嫌ならスパッツ履くか、スカートじゃないの履け! 花蓮にいつも言われてるだろ!?」

 

 

「はい……優だって宿題やってかないくせに……」

 

 

茜が返事の後に何かを言ったが、俺はそれを聞き逃さなかった。

 

 

 

 

「口答えするのはこの口か!!」

 

 

「いひゃい、いひゃい!! ふぉへんなひゃい~」

 

 

「ったく、お前ら周りにあんまり心配かけんなよな……て、光! 何勝手に足崩してんだ!!」

 

 

「だ、だって痺れちゃったんだもん!」

 

 

 

 

「………光以外は戻ってよし」

 

 

「そ、そんな! 酷いよ優ちゃん!!」

 

 

「光、お前は最近俺に対して生意気だからな。兄というものがどんなものか教えてやろう」

 

 

「ひっ! あ、茜ちゃん何とかして!!」

 

 

「ごめん、光。私たち先戻らなきゃ….」

 

 

「はるちゃん、目逸らさないでよ! 輝も!」

 

 

 

 

「さて、覚悟はできたか? ひ・か・り?」

 

 

 

 

「…………………………………はい」

 

 

 

この日以来、この部屋にいたものは今後優を怒らせないようにしようと誓ったのであった。

 

 




アニメに出てくるような男女のやり取りって現実ではお目にかかれないですよね。

アニメならではって感じがしてこういうシーン大好きです。


大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございます!


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バイト

オリジナル回です

いつもより内容少ないです...


空音スチーマー。さん、感想ありがとうございます!


「おはようございま~す」

 

 

ダンディ君ゲームが終わりその翌日。

昨日はバイトに行けなかったので、その埋め合わせとして今日来ている。

 

 

「おはよう優君、いつもすまないね。開店まで時間はあるから、奥でゆっくりしてていいよ」

 

 

挨拶を返してくれたのはこの喫茶店のオーナーである紫音さん。

 

 

「好きでやってることなので、オーナーが気にすることはありませんよ。ではお言葉に甘えて時間までゆっくりしてます」

 

 

そう言いながらスタッフルームへと向かう。

ドアをノックしてから中に入ると…

 

 

「あ、おはようございます。 優先輩!」

 

 

「おはよう、さくらちゃん」

 

 

一つ下の後輩で同じバイトの女の子がいた。

名前は加藤 桜、俺よりも一つ下ということは中学三年生である。

普通なら中学生はバイトを許されていないのだが、桜ちゃんの両親は海外で仕事をしており、祖父祖母は中学に上がったと同時に他界してしまったため、一人暮らしをしているのである。

学費と生活費を稼ぐためにこうして毎日バイトをしている。

 

 

「ここで会うたび思うんだけど、たまには休み入れないと体壊しちゃうよ?」

 

 

「む…優先輩は私に会いたくないんですか?」

 

 

頬を膨らませながらジト目を向けてくる桜ちゃん。

 

 

「はいはい」

 

 

「なっ! 受け流さないでくださいよ!」

 

 

軽い雑談をして時間を潰した俺たちは、制服に着替えてから仕事場に向かった。

桜ちゃんは既に制服を着ていたので俺が着替えるだけだった。

もちろん、着替えるときはさくらちゃんを部屋から出したけどね。

 

 

 

 

 

「今日はお客さん少ないですね、オーナー」

 

 

「ふむ、なら私は買い出しをしてこよう。留守番は頼んだよ」

 

 

「それなら私が行きますよ?」

 

 

「それには及ばないよ。買い出し以外にも用事はあるしね」

 

 

「そういうことなら、留守番は私たちに任せてください!」

 

 

ビシッと敬礼をする桜ちゃん。

 

 

「では行ってくるよ。あ、優君」

 

 

「はい、なんですか?」

 

 

 

 

「二人きりだからって、手を出さないようにね」

 

 

「出しませんよ!! それに毎回言ってるじゃないですか! 俺はもうちょっと胸のある女性が好みだって……待って桜ちゃん、何で包丁をこっちに向けてるの!? 誰も料理は注文してないよ?」

 

 

目からハイライトが消えた桜ちゃんの手には、いつの間にか持ってきた包丁が握られていた。

ちなみに桜ちゃんに胸の話は絶対にNGなのである。

まだ中学生だが、それでも三年生。

成長期を迎えているはずの桜ちゃんの体には、女の子らしい膨らみは全くと言っていいほど無い。

 

 

下手すると中学の頃からほぼ胸が成長していない茜よりもペッタンコである。

 

 

 

 

「活け造りって、新鮮なうちに食べれるのでとっても美味しいんですよ?」

 

 

「それって魚とかの話だよね? 間違ってもバイト先の先輩を捌いたりなんてしないよね!?」

 

 

「フフフフフ 」

 

 

「怖い怖い怖い!! 助けてくださいオーナー!」

 

 

「今回は君の自業自得だから、自分で何とかしたまえ」

 

 

「そ、そんな!!」

 

 

無慈悲にもオーナーに見捨てられた俺は、迫りくる恐怖を何とか乗り切るために、来週の予定や財布の中身を思い出しながら必死に打開策を考えていた。

 

 




後輩の女の子って羨ましいです。



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決意

fgoでネロが欲しいあまりにイベントガチャを無視して回した結果、くーふーりんオルタが出たのでパリピです




時間は1日戻り土曜日。

ダンディ君ゲームが終わった日の夕食をみんなで取っていた時のことだ。

 

 

 

「明日からトイレ掃除……おまけにパ、パ、パンツ。しかも3位…」

 

 

「茜、ご飯食べないの? 大好きなハンバーグよ」

 

 

落ち込む茜に母さんが声をかけるが、それでも椅子の上で膝を抱え込んでうつむく茜。

 

 

「ドンマイ茜」

 

 

そう言いながら茜のハンバーグに手を伸ばそうとするも、隣に座っていたかなねえに頭を叩かれる。

 

 

「王家に生まれたせいで、お前たちは必要以上に注目浴びてしまう。そのせいで傷つくこともあるだろう。だが王族として最低限の義務と責任は生じる。お前たちは国の希望だ。誰が私の後を継ぐかは分からないが、皆その自覚を果たすための覚悟だけは忘れないでほしい」

 

 

いつもおちゃらけている父さんだが、さすが王様だな。

威厳がある。

 

 

 

「パパったら、また被って帰ってきちゃったの?」

 

 

 

こういう抜けたところが無ければ完璧なんだけどな。

 

 

 

 

 

食事を終えて風呂も済ませた後、暇だった俺はテレビを見に部屋から出てリビングに向かった。

 

 

「こんなところで何やってるの茜?」

 

 

この声は葵姉さんだな。

茜もいるのか。

 

 

声が聞こえてきたので、ドアを少し開けて会話を聞く。

 

 

 

 

 

「私は野に咲くタンポポになりたい…」

 

 

えー…いきなりどうした

 

 

「注目されたり、監視されたりするのはもういや」

 

 

そういうことか。

茜も好きで人見知りやってるわけじゃないからな。

いつもの日常が茜に与えるストレスは半端なものじゃないだろう。

 

 

「一つだけ方法があるとしたら、王様になることかな。そうすれば監視カメラを廃止したり、王家ニュースを打ち切ったりできるかも」

 

 

監視カメラはともかく、王家ニュースはたまに面白いから残してほしいなー

 

 

「お姉ちゃん、私王様になる。王様になってひっそりと生きる!」

 

 

矛盾してるぞ茜。

 

 

「私は応援するよ、茜」

 

 

「うん! ありがとうお姉ちゃん」

 

 

茜が目標を見つけたのなら、兄としても嬉しいもんだ。

 

 

 

 

 

「じゃあ、茜の大きな一歩を祝って、優君に一言貰おうかな」

 

 

え?

 

 

「優いたの!?」

 

 

「はあ、葵姉さんにはかなわないや」

 

 

どうしてばれたのか、やっぱり長女というものは恐ろしい。

 

 

「最初にタンポポになりたいなんて言った時にはどうしたものかと思ったけど」

 

 

「最初から聞いてたの!?」

 

 

「俺も応援するよ。でも、負けないけどね」

 

 

「ありがとう! でも、優も王様になりたいの?」

 

 

「ま、俺もやりたいことあるしね」

 

 

「そうなんだ……よし、王様目指すなら普段から意識高くした方がいいよね?」

 

 

「そうかもな。じゃ、俺もう寝るから」

 

 

そう言いながら部屋に戻ろうとすると、茜に肩を掴まれる。

 

 

かなり嫌な予感がする。

 

 

 

 

 

「優も王様目指すんでしょ? だったら、優も明日から花蓮に宿題見してもらうんじゃなくて自分でやんないと!」

 

 

「あ、茜!? もうちょっとこう、遠回しにだな!」

 

 

 

まずい、かなりまずい。

普段二人でこういう会話をするのは問題ないのだが、ここにはもう一人……

 

 

 

 

 

「優君? 宿題見せてもらってるんだ?」

 

 

櫻田家の兄妹序列一位、葵姉さん…

真面目で責任感が強い葵姉さんが、宿題を見せてもらうことなど許すはずも無い。

 

 

「あ、いや、その…さ、最近忙しくてですね?」

 

 

「優君、私が宿題見てあげるから部屋においで?」

 

 

「ま、まさか答えを!?」

 

 

「自力で解き終わるまで部屋から出さないから」

 

 

「……………。」

 

 

 

 

終わった…

どう考えても終わる気がしない。

別に量が多いわけじゃないんだが、なにせいつも授業を聞かず、宿題もやってかないのでさっぱりなのである。

 

こうして俺の長い夜が始まった。

 

 




後書き書くことなくなってきた...


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GW&登校2

今回は長いです

岬サナさん、感想ありがとうございます!


「ね、眠い…」

 

 

「珍しいな、お前が眠いだなんて」

 

 

そう、ほんとに珍しいのだ。

普段から早寝遅起きという生活を送っている俺は、睡眠不足などまずありえない。

葵姉さんにより宿題が終わるまで寝れず、何とか終わらせたときには夜中の3時だった。

俺と同じ時間に寝て俺よりも早く起きた葵姉さんはいつも通りだったので、やはり長女というものは恐ろしい。

 

 

「今日寝たら、全国にお前の寝顔が広まるぞ」

 

 

「くっそー、なんで音楽会なんてあるんだよ」

 

 

今俺たちは、毎年恒例の音楽会に参加している。

男性陣はタキシードを着ており、ドレスを着る女性陣の準備が終わるのを待っている状態だ。

 

 

「それについては同感だな。お、全員そろったみたいだぞ」

 

 

修兄が顔を向けて方を向くと、ドレスを着終わった女性人たちが歩いてきていた。

 

 

「どう? 優ちゃん、似合ってる?」

 

 

光は俺を見つけると小走りで寄ってくる。

 

こらこら、ころんだらどうするんだ。

 

 

「かわいいぞ光」

 

 

「えへへー///」

 

 

褒めながら頭を撫でてやると、気持ちよさそうな表情をする。

 

 

「むう…」

 

 

頬を膨らませた茜がこちらを睨んでくる。

こういう茜は機嫌が悪いので、何とか褒める点を探そうと茜のドレス姿を観察する。

 

 

「スラッとしてる体にドレスがよく似合ってて……ごふっ!」

 

 

「優のバカ!!」

 

 

能力によって強化された拳が俺の腹に打ち込まれる。

おかしい、ちゃんと褒めたのに…

 

 

「優ちゃんってさ、わざとやってるよね?」

 

 

光にまで冷たい目で見られる始末。

 

後で茜のフォローしとかないとな…

 

 

音楽会ではもちろん睡魔に耐えられず寝てしまい、今度は母さんに怒られましたとさ…

 

 

 

 

 

GWが終わり、またもや忙しい日々が始まった。

 

 

「う、うるさい…」

 

 

いつもより早い時間にアラームが鳴り響く。

今日は委員会の集まりがあるのだ。

 

俺はとくに委員会に入ってはいないのだが、書記の人が休みらしいので代わりにやってほしいとかなねえに言われたのだ。

 

 

「準備するか…」

 

 

部屋から出てリビングに向かう。

 

 

「おはよー」

 

 

「おはよう優。ごめんね、急に頼んじゃって」

 

 

丁度かなねえが朝食を食べていた。

 

 

「別にいいよ、どうせ暇だし。いただきます」

 

 

席について俺も朝食を食べ始める。

 

 

食べ終わったので洗面所で歯を磨き、玄関で待っているかなねえの所へ行く。

 

 

「お待たせかなねえ」

 

 

「大丈夫。じゃあ行くわよ」

 

 

靴を履いてると、ドタドタと足音が聞こえてくる。

 

 

「かなちゃん! 待ってー」

 

 

食パンを片手に走ってくる茜。

まさか加えたまま登校したりしないよね?

 

 

「玄関で大声出さないで」

 

 

「何でこんなに早く出るの? まだ時間あるよ?」

 

 

「あんたと一緒に行くのが嫌だからよ、時間かかるし」

 

 

「そ、そんな~……あれ?優も委員会?」

 

 

「そうだよ、書記の代わり」

 

 

「なら起こしてよ! いつも起こしてあげてるじゃん!!」

 

 

「悪い悪い、茜がクラス委員ってこと忘れててさ」

 

 

「同じクラスでしょ!!」

 

 

「「いってきます」」

 

 

「奏様に優様、おはようございます」

 

 

「「おはようございます」」

 

 

茜を置いて家を出ると、近くを通りかかった人に挨拶をされる。

自分たちが王家という身分なので、たとえ全く知らない人からでも挨拶をされることは多いのだ。

 

 

「今日はお早いんですね」

 

 

「臨時で生徒会の招集がありまして、わたくし副会長なものですから」

 

 

「大変ですね」

 

 

「生徒会の活動は好きでやっていますので」

 

 

でた、かなねえの外面モード。

満面の笑み、丁寧な言葉遣い、そしてさりげなく副会長アピール。

この完璧な化けの皮を瞬時にして被るかなねえに白い眼を向けざるを得ない。

 

 

「まって~!」

 

 

そして突然食パンを加えながら飛び出してくる茜。

当然こちらにも白い眼を向ける。

 

少しは周りを気にしてほしいものだ。

 

 

 

 

 

「背後霊みたいにくっついてこないで」

 

 

いつものように背後に隠れる茜。

今日は俺の後ろに隠れないからと言って寂しくはない。

これ重要。

 

 

「いい加減監視カメラぐらい慣れなさいよ」

 

 

「む、無理だよ! でも、私が王様になったら無くすもん」

 

 

「王様なる気あったんだ。でも、王様になったらもっと注目浴びるんじゃない?」

 

 

「あ、それもやだ!」

 

 

「それにしても、人見知りがよくクラス委員なんてやってられるわね」

 

 

「あ、同感。茜って真っ先に立候補してたよな」

 

 

「だって学校の皆は知り合いだもん」

 

 

「あっそ、なら世界中の人と知り合いになれば、あんたも楽になるんじゃない?」

 

 

あ、これかなねえちょっとイラッとしてるな…

あんまり刺激しない方がいいかも。

 

 

「あはは、何言ってるのかなちゃん、国民が何人いると思ってるの?」

 

 

笑いながら返す茜。

やばい、かなねえキレそう…

でも茜にしては結構面白い返しだな。

まずい、堪えきれない…

 

 

「ププっ……いでっ!」

 

 

吹き出すとかなねえに頭を殴られる。

 

理不尽だ…

 

 

 

「そもそも、何でクラス委員なんてやってるのよ」

 

 

「何でって、クラスにはまとめ役が必要でしょ? でも皆やりたがらないし、それにクラス委員なら全員に目が行き届くし、皆が困ってるならそれに応えたいでしょ?」

 

 

「そんな風に考えてたのか、すごいな」

 

 

性格は全く向いていないが、潜在的な王族の血がそういう考えにさせるのかもしれない。

性格さえどうにかなれば、かなねえを脅かす存在になるかも。

 

 

「そうだ! かなちゃんの能力でリムジンとか生成してよ。それで登校しよう!」

 

 

「あ、それありだね」

 

 

「あのね、あんた達は姉にリムジン買ってって揺すってるの。分かる?」

 

 

「かわいい弟や妹のためにリムジンを買ってやる姉。支持率向上間違いなし!」

 

 

「…………嫌よ」

 

 

「「今少し考えたよね?」」

 

 

「うるさい」

 

 

なんだか最近、かなねえが支持率のためなら何でもやってきそうな気がして怖い。

料理に毒盛られたりするのかな…

 

 

 

 

 

「みてみて、仲いい!」

 

「ほんとだ!」

 

「あら、仲がいいのねぇ」

 

 

住宅街を抜け商店街のなかを進んでいると、朝だがやはり人は多くなってくる。

そんな中、妹が姉に後ろから抱き着いて登校してる姿を見るなという方がおかしいだろう。

 

 

(かなねえ、流石に恥ずかしいんだけど)

 

 

(私もよ。全く…。優、代わってくれない?)

 

 

(代わりたいけど、クラスの奴らにバレでもしたら俺は血祭りにあげられるからなー)

 

 

(代わりたいんだ…)

 

 

かなねえにドン引きされるが…

 

妹に後ろから抱き着かれて嬉しくない兄なんているものか!

たとえ背中に当たる感触が小さくともな!!

 

 

「優、なんか失礼なこと考えてない?」

 

 

「気にするな」

 

 

これが女の勘というやつなのか。

鋭すぎる。

 

 

「茜、この手だけでも放してくれないかしら?」

 

 

「嫌だよ、話したら走って逃げる気でしょう?」

 

 

「こんな人前で全力疾走の方が恥ずかしいわよ」

 

 

確かに、朝っぱらからいきなり全力疾走してる奴なんて正直引く。

 

 

「じゃ、じゃあ…」

 

 

ダッ

 

 

「あ、まってかなちゃん!」

 

 

「は~…」

 

 

自分で言ったそばから走るのかよ…

かなねえらしい逃げ方だけどさ…

弟を置いてくか?

 

まあ時間に余裕はあるから、ゆっくり行くか。

 

 

 

 

 

のんびり歩いていると、信号が見えてきた。

何やら少し騒がしい……事故でもあったのか?

 

少し目を細めて見てみると、横断歩道の上には茜とかなねえがいた。

その側にはかなねえが作り出したと思われる大きな壁と、それに突っ込んだトラックがあった。

 

 

何やってるんだあいつら!

 

 

トラックの運転手が二人に怒鳴っており、かなねえがそれに謝罪しているのは見て分かった。

もうちょっと詳しい情報が知りたかったが、いかんせん距離が遠い。

 

うーん……あの茜とかなねえが信号無視をするとは思えないしな…

 

何か理由があるのかと考えていると

 

 

「優先輩?」

 

 

「ん? 桜ちゃんか、おはよう」

 

 

不意に横から声がかかったので顔を向けると、バイトの後輩がいた。

 

 

「おはようございます……じゃなくてですね!!」

 

 

「え? あ、うん」

 

 

「あそこにいるのって茜様と奏様ですよね?」

 

 

「そうだけど、桜ちゃんはあれについて何か知ってる?」

 

 

「はい、一部始終を見てたので。トラックに轢かれそうになった猫を茜様が助けに向かったんですけど、トラックのスピードが速くて茜様も轢かれてしまいそうだった所を奏様が助けたといった感じです」

 

 

「成程な、ありがとう桜ちゃん」

 

 

「はい…はぅ///」

 

 

お礼ついでに頭を撫でてやると、顔を赤くしてうつむいてしまった。

 

中々かわいい反応だな…

 

 

「さてと、あいつらの弁明してあげないとな」

 

 

能力を使って先程から怒鳴っている運転手に話しかける。

 

 

(突然すみません。王家の次男、櫻田優と申します)

 

(な、なんだ!? 声が! それに、王家の次男だって!?)

 

(落ち着いて聞いてください。あなたが先程から怒鳴っている彼女たちは、道路に飛び出した猫を助けようとしていたようなのです。彼女たちの優しさに免じて、見逃してくださいませんか?)

 

(い、いくら王家の頼みでも許さねぇぞ!! 危うく轢きそうになったんだからな!!)

 

(それについては申し訳ありません。ですが、あなたが運転していたそのトラック、いささか速度制限を超えていたという目撃情報もあります。あくまで目撃情報なので確証はありませんが、幸いここには監視カメラもございます。検証するには十分かと)

 

(くっ……わ、分かりました)

 

 

そう言うと、トラックの運転手はしぶしぶと引き下がった。

 

突然黙ってしまった運転手を不思議に思ったのか、周りを確認するかなねえ。

 

俺と二人の距離はお互いが見える程には近いので、目が合う。

 

 

(危なかったね、かなねえ)

 

 

(優、あんたが収めてくれたのね、ありがとう助かったわ)

 

 

(お礼は後で何かおごってくれればいいからさ。それよりも、いつまでそこにいるつもり?)

 

 

俺に言われてから思い出したのか、かなねえは急いで茜を連れて横断舗装を引き返す。

 

 

「あの、先輩。わたしは学校がありますので、これで失礼しますね」

 

 

「うん……あ、ちょっと待って。桜ちゃん、少しだけ時間貰っていい?」

 

 

「 はい、大丈夫ですけど…どうしたんですか?」

 

 

「今回のことは桜ちゃんがいなかったら収集がつかなくなってたかもしれないからさ。あの二人にもお礼を言わせないと」

 

 

「そ、そんな! いいですよ、お気になさらず!!」

 

 

「俺の気が済まないからダメ。ほら、行くよ」

 

 

「あ、ちょっと先輩!?」

 

 

桜ちゃんの返事を待たずに、手を引いて二人の元へ向かう。

 

 

「優! かなちゃんから聞いたよ、助けてくれてありがとう!!」

 

 

「礼なら俺じゃなくてこの子に……あれ?」

 

 

おかしいな、さっきまで一緒だったのに…

あたりを見回してみると………いた。

 

そろ~りそろ~りと抜き足差し足忍び足で逃げようとする後輩。

 

 

「二人ともちょっと待ってて」

 

「う、うん」

 

 

(どこに行くのかな、さくらちゃん?)

 

(ひゃっ!! せ、先輩!?)

 

ゆっくり動いていた桜ちゃんの体がビクッと反応する。

 

(戻っておいで、いいから、はやく)

 

(で、でも...)

 

(桜ちゃん?)

 

(はい……)

 

これでも俺はバイト先の先輩であるため、怒らせでもしない限り、彼女は基本的に言うことを聞いてくれる。

 

そそくさと戻ってきた桜ちゃんを俺の横に立たせる。

 

 

「優、この女は誰?」

 

茜怖っ!! めっちゃ怖いんだけど!!

しかも何? その浮気相手かどうか確認するような聞き方!

ほら、桜ちゃん怖がってるじゃん!

 

 

「この子は俺のバイトの後輩で、桜ちゃん」

 

 

「は、初めまして 加藤 桜です…」

 

 

「櫻田 奏です、よろしくお願いします加藤さん」

 

 

「櫻田 茜です! よ・ろ・し・く・ね!!」

 

 

茜…どんだけ敵視してんだよ…

 

いつも人見知りであまり喋らない茜だったが、このときだけはなぜか好戦的であった…

 




最近投稿時間変えようか迷ってます...


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登校続き & くじ引き

最近、中々区切れなくて話の内容がグダグダになってる気がしてきました。

気になることがあったら何でも行ってください!

作者は合金メンタルなのでドンと来いです!!
あ、酸をかけて溶かすというのはNGです。


大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございます!
いつもほんとにありがとうございます!!!


睨む妹と、睨まれる後輩。

この二人には全く接点が無いのだが、なぜだかこんなことになっている。

 

 

ていうか茜!

お願いだからもう睨まないであげて!!

桜ちゃん泣きそうだから!!!

 

 

「こら茜、はしたないですよ」

 

 

「う……ごめんなさい」

 

 

かなねえが外面モードで叱ってくれる。

 

 

「この桜ちゃんがさっきの出来事を詳しく教えてくれたおかげで、運転手を説得できたんだよ」

 

 

「あら、そうだったのね。ありがとうございます加藤さん。ほら、茜も」

 

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 

「いえ、とんでもないです。頭を上げてください、当然のことをしただけなので。でも先輩がいなかったら、私は何も言えなかったと思います…」

 

 

そう言ってうつむいてしまう桜ちゃん。

 

 

そんな桜ちゃんの頭に、ポンと手を乗せて撫でてあげる。

 

 

「それでも、桜ちゃんのおかげで姉さんたちが助かったのは事実だよ。本当にありがとう」

 

 

「はわわ///」

 

 

うんうん、何度見てもかわいい反応だ。

こんな反応を毎日見れるんならいつ死んでも悔いはな………待って、今死にそう。

なぜだか知らんが茜の目が怖い、なんか黒いオーラ出てる!!

 

 

 

 

 

 

「優?」

 

 

「は、はい!」

 

 

「もう行かないと、委員会の集まりに遅れちゃうよ?」

 

 

「え、確か時間にはまだ余裕が」

 

 

「お・く・れ・ちゃ・う・よ?」

 

 

「ハイ………じゃあ桜ちゃん、またバイトでね」

 

 

「はい先輩、またバイトで!」

 

 

桜ちゃんはそう言うと、自分の学校へと走っていった。

あまり長く引き止めすぎちゃったかな、中学って高校よりも朝早かった気がするし。

後で謝っておこう。

 

 

それよりも今はこっちだ

 

桜ちゃんと会ってからだいぶ機嫌が悪い茜。

早く何とかしないと後がめんどくさい。

 

なんて、こんなこと口が裂けても茜には言えないな……

 

 

(かなねえ、茜の機嫌何とか出来ない?)

 

 

(あんたの自業自得よ。自分で何とかしなさい)

 

 

(はあ、分かったよ。ところであそこに置いてある壁、置いといていいの?)

 

 

(………あっ!)

 

 

 

壁をどけた後学校に着いたが、結局ギリギリになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

学校が終わった後の土日。

櫻田家では恒例の家事の当番決めが行われていた。

 

 

「毎週毎週くじ引きなんて面倒だな」

 

 

「だったら、修ちゃんがずっと買い物当番やって? それだったら私他の仕事全部やってもいいから!」

 

 

「茜姉さん何もそこまで言わなくても…」

 

 

「だって監視カメラがあるんだもん!」

 

 

「じゃあ、買い物以外はあかねぇにやってもらおうよ」

 

 

「だめだ、これは全員で決めたことなんだからな。茜もそんなこと言うな」

 

 

「う…優が冷たい」

 

「優君の言う通りよ、ちゃんと分担してやらないと」

 

 

そう言って、それぞれが自分が引いたくじを確かめる。

 

 

「俺掃除」

 

 

「私は洗濯ね」

 

 

「お、料理か」

 

 

「ラッキー!」

 

 

「やったー!」

 

 

「ごめん、茜姉さん」

 

 

「と、いうことは……」

 

 

修兄さん、葵姉さん、俺、かなねえ、岬、遥の順に確認していく

 

茜が恐る恐るくじを確認すると

 

 

「買い物~!!!」

 

 

机に突っ伏す茜。

だが安心しろ茜!

冷蔵庫の中が空っぽじゃなければその分買い物に行かなくて済む。

 

 

「冷蔵庫空っぽらしいぞ」

 

 

 

慈悲はなかった。

 

 

 

「私カレーが食べたい!」

 

 

「え~…」

 

 

「茜ちゃん! カレー嫌いなの!?」

 

 

「カメラが嫌いなの!」

 

 

成程、今晩はカレーか。

ならどんなふうに作ろうか…

 

 

「この前カメラに映って超目立ってたじゃん! 羨ましい」

 

 

「そんなつもりじゃなかったのに~! これ以上恥をさらしたくないの!!」

 

 

「パンツ見られる以上の恥なんてあったら大問題だな」

 

 

「うわ~~ん!! 外出たくないよ~!!」

 

 

「あ~あ、優兄泣かしたー」

 

 

「ったく、しょうがないな。俺が出す条件をのんだら、一週間買い物付き合ってやるよ」

 

 

「条件って?」

 

 

「これから一週間、髪形をサイドテールに…」

 

 

 

 

 

「後輩の子の髪形?」

 

 

 

 

「…………………。」

 

 

 

 

やばい、冷や汗が止まらない。

 

 

 

 

「なになに優ちゃん! 彼女出来たの!?」

 

 

「なっ! 違う違う!! 何言ってんだ光!!」

 

 

突然爆弾を投下してくる光のほっぺたを左右に引っ張る。

 

 

「いひゃいよゆうひゃん!」

 

 

「でもこの前見た時には結構いい感じだったわよね? あんたとあの子」

 

 

「かなねえまで!!」

 

 

さらに追加攻撃をしてくるかなねえ。

これ以上茜の機嫌を損ねるわけにわいかない!

この前だって結構苦労したんだぞ!!

もう財布の中お札入ってないよ!!!

 

 

 

 

 

「ふんっ!」

 

 

「………はぁ」

 

 

拗ねてしまった茜のために、条件なしで買い物に付き合うことと、一週間外に出かけるときの壁役を引き受けることになった…。

 




気付いたら茜がヤンデレっぽくなってる...


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告白

昨日書き忘れてました...

2話アップしたかったんですけど、間に合いませんでした...

明日その分アップします!


「は~学校終わっちゃった…」

 

 

「お前ほんとに学校好きだな」

 

 

いつものごとく机に突っ伏す茜。

 

 

「もうちょっと授業増えないかな」

 

 

「めったなこと言うな茜。もしそれのせいで宿題が増えてみろ、俺は毎日葵姉さんの部屋に監禁されることになる…」

 

 

体が震えてきた…

おかしいな、葵姉さんとの勉強は楽しいものだったはずなんだけど……

うっ! 頭が!!

 

 

 

「それは優の自業自得でしょ。そろそろ帰ろう」

 

 

 

「はいよ……あ、ごめん茜。かなねえに頼まれてた仕事があったんだった! 先に行っててくれ」

 

 

 

「え~、しょうがないな~」

 

 

 

流石に茜を一人で帰らせるのは申し訳ないので、仕事を早く終わらせるために生徒会室へと急ぐ。

 

 

 

 

 

「いつも手伝わせちゃってごめんね優」

 

 

 

「暇だしいいよ。俺もう行くから、お先に」

 

 

 

「気を付けて帰りなさいよ」

 

 

 

「は~い」

 

 

 

 

 

先に行っているであろう茜に追いつくために走ると、何やら見知った先輩がなぜか電柱に隠れていた。

 

声かけた方がいいかな…

 

 

(あの~、佐藤先輩?)

 

 

 

「うひゃあ!!」

 

 

 

(ちょっ! 落ち着いてください佐藤先輩、櫻田 優ですよ! 修兄の弟の!!)

 

 

 

「優君!? え?どこにいるの!?」

 

 

 

う~ん…この人には何度か能力で会話したことある気がするんだけどな…

なんでこんなに動揺してるんだろう。

 

ふと佐藤先輩が見ていた方を見ると、修兄と茜が歩いていた。

二人並んで、ぴったりくっついて。

 

あ~、成程。

佐藤先輩にはあれが茜に見えてないのか。

確かにあんなにくっついてたら、いつものツインテールが見えないもんな。

 

これは面白そうだ…

 

 

 

「佐藤先輩、後を付けるならもうちょっと上手くやりましょうよ」

 

 

 

「え!? そ、そんなつもりは…」

 

 

 

「二人が角を曲がっちゃいましたよ! 早く追いかけないと」

 

 

 

そう言って佐藤先輩を修兄の元へと急がせる。

 

 

 

「ふむ、我ながらいい仕事をした」

 

 

 

そんなことを思いながら、自分も後を付けていき、曲がり角に隠れて様子を伺う。

 

 

 

「佐藤、どうして俺たちの後を付けてきたんだ?」

 

 

 

「す…好き、だから…櫻田君のことが好きだから!!」

 

 

 

「なっ!!」

 

 

おうおう修兄め、かなり動揺してるな。

茜に至っては顔を赤くして目を逸らしてるし。

 

 

 

「お前の気持ちは嬉しい。だが、俺は今奏を王様にしないための妨害工作で忙しいんだ!!」

 

 

 

「へ?」

 

 

え? かなねえを妨害する?

何のために?

 

 

 

「しかも選挙はまだまだ先だ。それでも、待っていてくれるか?」

 

 

 

「も、もちろん!」

 

 

 

よし、これで一件落着だな。

 

そう思ってその場を立ち去ろうとしたが、近くにあった木の枝を踏んづけてしまう…

おいおい、どこの漫画だよ。

 

三人とも流石に気付いて………ますよね~

 

しっかりとばれてしまい、なんて言い訳を使用か考えていた所に、茜がダッシュで突っ込んで俺の手を引っ張る。

 

 

 

「修ちゃんは佐藤先輩をしっかりと送っていってね!」

 

 

 

「ちょ、待て優! お前いつからそこに!?」

 

 

 

「じゃ、修兄。お幸せに~」

 

 

茜に引っ張られながらその場を後にする。

後で修兄に何か言われそうだけど、かなねえを差し向ければいいか。

 

 

 

 

 

「いいなー修兄、彼女かー。俺も欲しいなー」

 

 

「………あっそ」

 

 

なんか茜が冷たい…

さっきのやり取りからずっとだ。

 

 

 

「もしかして、修兄が取られるとか思ってる?」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

図星だな。

 

 

 

「いいか茜。いくら俺たち兄妹が他の誰かと結婚しても、俺たちが兄妹であることには変わりない。なんて言ったって血が繋がってるんだからな。それ以上に強い繋がりなんて存在しない。甘えたいときはいつでも甘えていいんだぞ」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

茜が先程よりも少し力を込めて俺の手を握る。

まったく、可愛い妹だ。

 

 

 

 

 

「優はあのバイトの子が良いの?」

 

 

 

 

 

「な、なんてこと言うんだ茜! 桜ちゃんとはそう言う関係じゃなくて、その、ほんとにただの後輩だから! しかも俺の好みはあそこまで胸が小さくなくて、葵姉さんぐらいは欲し………痛い痛い! ちょっと茜、手が潰れる!! ほんとマジで!!!」

 

 

 

 

 

「潰れろおぉ!!!」

 

 

 

 

 

「ああああぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

俺って、何でこんなに不運なんだろ………

 




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団らん

個人的には光と茜が好きです

岬サナさん、katakinさん、感想ありがとうございます!


 

「今週もまた買い物―!? 出かけたくない…」

 

 

茜ってほんとくじ運無いよな…

 

 

「茜ちゃん、あたしカレーが食べたい!」

 

 

んで光、お前はどんだけカレーが好きなんだよ…

 

 

「出かけたくないんだって…」

 

 

 

「茜ちゃん! やっぱりカレーが嫌いなの!?」

 

 

 

「だから違うって言ってるじゃん…一歩外に出たら監視カメラが…」

 

 

 

「そんな気にすることないよ、全国ネットでパンツ見られてるんだし」

 

 

 

「やめてえぇぇ!」

 

 

机に突っ伏す茜、妹に弄ばれるってどうなの?

 

 

「あんたちって選挙活動する気ゼロよね」

 

 

 

「僕はあります!」

 

 

 

「私だってあるもん!」

 

 

あかねえの言葉に対して輝と光が文句を言うが、俺ら兄妹で選挙活動まじめにやってるのなんてかなねえくらいだろ。

 

 

 

「輝や光じゃ相手にならないの」

 

 

 

「「ええ~!」」

 

 

言い方はきついけど、俺もそんな感じするなぁ。

選挙活動してないけど。

 

 

 

「そんなことないよね? 光だって頑張ってるよね?」

 

 

 

「頑張っては無いかも」

 

 

おいおい…

 

 

 

「フォローした私のためにも頑張って!!」

 

 

 

「ふふん! いざとなったらあたしの能力で票集めなんて楽勝だもん。大人の魅力でメロメロにしちゃうんだから!」

 

 

光の成長した姿か…

それはそれで早く見てみたいな。

 

 

 

「24時間しか持たないじゃない」

 

 

 

「うっ!」

 

 

 

「しかも国民にはあんたが10歳だってばれてるから意味ないじゃない。それに変化するのは外見だけだし」

 

 

 

「ううっ!」

 

 

 

「見た目で人を引き付けようだなんてだめよ」

 

 

手鏡見ながら前髪直してるやつが言うセリフじゃない…

 

 

 

「いいもん! 将来はあたしの方が胸大きくなるし」

 

 

 

「はあ!? 大きさより形が大事なの」

 

 

そう言って自分の胸を強調するかなねえ。

ほんとは見たいけど、目のやり場と茜からの視線に困るのでやめていただきたい。

 

 

 

「大きさだよ! 修ちゃんが言ってた!!」

 

 

おいおい、その話佐藤先輩にするなよ。

泣き崩れるぞ。

次の日からバストアップ体操とかやり始めかねんぞ。

 

 

 

「言ってねえ! しいて言えば感…ボフっ…」

 

 

言い終わる前に近くにあったクッションを投げつける。

我ながらいい仕事をした。

 

 

 

「茜ちゃんはどう思う?………ごめんなさい」

 

 

茜に話を振った光は、茜の胸を見ながら申し訳なさそうに言う。

 

 

「謝らないで……」

 

 

 

「ごめん…」

 

 

 

「やめてぇ…」

 

 

茜って光にとことん弄られてるよな。

 

 

(ドンマイあか..ゴフっ!!)

 

 

慰めてやろうとしたら湯のみが飛んできた…

なんて妹だ、兄を殺す気か!!

 

 

 

「お兄様大丈夫? 痛いの痛いのとんでけ~」

 

 

 

「ありがとう…栞…」

 

 

そんな俺に天使が舞い降りた。

純粋に俺を心配してくれる!

他の奴らなんて自業自得だなんて思ってるのに、栞は何ていい子なんだ…

これが奏似じゃなかったら完璧なんだけど…

 

 

 

「優、なんかムカつくから手鏡投げていい?」

 

 

 

「理不尽!!」

 

 

 

「葵姉さんもだけど、皆選挙に興味が無くて助かるわ」

 

 

 

「興味が無いわけじゃないけど…」

 

 

困ったような顔をして答えた葵姉さんはそのままリビングから出てしまう。

 

 

 

「本気出されたら敵わないし…」

 

 

 

「でも現状一位葵お姉ちゃんだよ?」

 

 

 

「なぜだか分からないけど、姉さんは王様になるのを嫌がってるし、何とかして支持率を下げてくるに違いないわ」

 

 

 

「何か悪いことして?例えば?」

 

 

 

「うーん…そこの優みたいに、茜のプリンを勝手に食べちゃうとか」

 

 

 

「それ私に嫌われるだけじゃん! ………優!?」

 

 

 

「じゃ、俺バイト行ってくるから!!」

 

 

食べていた茜のプリンを栞にあげると、全力で玄関まで急ぐ。

 

 

 

「あ、優! 帰ったら覚悟してよね!!」

 

 

背後からの死刑宣告を聞きながら家を出る。

 

 

俺今日帰りたくない…

 

 

 

 

 

 

「流石にこの時間帯になるとお客さん少ないね。いつもこんな感じなの?」

 

 

 

「はい、夕方にもなると少ないですね。夕食を喫茶店で済ます人もそんなにいないので。それにしても、先輩のシフトはとっくに終わってるんですから、残らなくてもよかったんですよ?」

 

 

 

「いや~、お客が少ないときに残業してしっかり稼ぐ。大事なことだよ」

 

 

 

「そうですか、ならこの事はオーナーに包み隠さず報告しときますね」

 

 

 

「冗談だって! ちゃんとオーナーにも連絡は入れてるから! はぁ、あの人怒らせるとほんとに怖いんだよ…」

 

 

オーナーが起こった時の怖さといったら、葵姉さん以上…

普通の人間なら即死レベルである。

 

 

 

「いつも頑張ってる桜ちゃんを手伝おうと思ってね」

 

 

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 

うんうん、素直な反応が一番だよね。

かなねえも見習ってほしいもんだ。

 

 

「おっと、電話だ」

 

 

不意にポケットに入れていたスマホが鳴る。

 

 

「先輩、仕事中ですよ」

 

 

桜ちゃんから冷たい目で見られるが、今はお客さんがいないので許してほしい。

俺の勤務時間も終わってるしね。

 

 

「葵姉さん、どうしたの? え? まだいるけど……ハイ…申し訳ございません、今すぐ戻ります…え? 大丈夫だけど…分かったよ、それじゃあ」

 

 

 

「葵様からですか?」

 

 

 

「うん、バイトで残って仕事をしているのを連絡し忘れてた…」

 

 

 

「あはは…そしたらもう戻った方が良くないですか?」

 

 

 

「でもその前に一つお願いしたいことが…」

 

 

 

「今はお客さんもいないので、構いませんよ」

 

 

 

「ほんとごめんね、俺も手伝うからさ」

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう桜ちゃん、それじゃあ後はよろしくね」

 

 

 

「はい、任せてください。でも先輩? 貸し一つですからね?」

 

 

 

「あはは、もちろん…」

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 

 

「お帰り優君」

 

 

出迎えてくれたのは葵姉さん。

 

 

「頼まれてたもの、ちゃんと持ってきたよ」

 

 

 

「急にごめんね、助かったわ。でも、バイトの時間が延びるなら、ちゃんと連絡すること!」

 

 

 

「はい、本当に申し訳ございませんでした……ところで、何でテイクアウトが必要なの? 買い物は?」

 

 

 

「それなんだけど……茜と光が行ってくれたんだけどね、買い物を忘れてたみたいで…」

 

 

 

「何それ……」

 

 

ていうか買い物しに行ったのに買い物しないなんて、何しに行ったんだよ…

 

 

「ほら、皆待ってるから早く早く」

 

 

 

「はいよ~」

 

 

リビングに入ると葵姉さんが言った通り皆揃っていた。

 

 

「「優(ちゃん)遅いよ!」」

 

 

 

「誰お前ら…」

 

 

訂正しよう。

2名以外は揃っており、後2名は見たことあるような奴が…

 

 

 

「「優(ちゃん)の妹だよ!!」」

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

「あー、成程ね。それで自分を大きくしたけど、服のサイズが合わないから茜を小さくしたと………それにしても小さすぎないか?」

 

 

 

どうやら買い物に向かう途中に光が猫を追いかけてたら、猫が木に上って降りられなり、猫に手が届かない光は自分を成長させて猫を助けたのだが、成長したことで服のサイズが合わなくなった光は茜を小さくして服を交換したのだそうだ。

 

 

 

「でしょ優兄! かわいいよね!!」

 

 

茜の隣に座っている岬と奏が、小さくなった茜を撫でまわす。

 

こりゃあもとに戻るまでずっと二人の玩具だな。

 

 

 

 

 

 

 

「にゃ~」

 

 

 

「っっっっっ!!!!」

 

 

 

「どうしたの優兄さん?」

 

 

 

「猫っ! 猫っ!!」

 

 

俺は瞬時にソファまで撤退する。

少しでも遅かったら殺られてた…

 

 

「優ちゃん猫苦手なの?」

 

 

 

「苦手っていうか、何を考えてるのか分からなくて怖いんだよ!!」

 

 

 

「優兄さんの能力は動物には使えないからね」

 

 

昔道にいた野良猫に能力を使ったことがあったが、こちらの言葉は送れても、向こうからの言葉は意味不明な単語が羅列されて帰ってくる。

一種の暗号のようなものなのである。

 

なんというか、それらが頭の中に流れ込んでくるのは非常に気持ち悪い…

俺はその日から動物に対して敏感に怯えるようになってしまった。

しかもたちが悪いことに、どうやら俺は動物に好かれやすい体質らしい。

 

 

 

「優君、皆待ってるから早く席について」

 

 

 

「わ、分かってるけど…」

 

 

ボルシチと格闘? し、何とか席についてバイト先から持ってきた料理をみんなで食べる。

 

 

 

 

 

食後にかなねえから羽交い絞めされ、岬にボルシチ(猫)を近づけられるといういじめにあった俺はその後、生気が抜けて廃人になっていたという…

 

 




春休みに入ったので完璧に暇なので、超スピードで書き上げていきたいと思います。

それに伴って、登校時間をバラバラにしようかとか思ってます。

今考えてるのは1日3話です。

時間帯はまだ決めてないので、朝のHRがつまらないからヒマつぶしが欲しい方、会社の休憩時間に読みたい方、寝る前に読みたい方など、自分の読みたい時間を言っていただけたら、その時間にしようと思います。

活動報告にアンケートを出しておくので、ぜひお願いします!

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お使い?

皆さん眠気を覚ますときには何をしますか?

自分は珈琲でカフェインハイテンションですね



「え~!! また今週も!? この間もその前も買い物ばっか当たるなんて!!」

 

 

「くじ運悪すぎ~」

 

 

「葵姉さま! 僕にも当番くじを引かせてください!」

 

 

「輝がもうちょっと大きくなったらね」

 

 

今週も茜が買い物当番か。

ここまで来るとなんだか哀れに思えてくる…

 

 

「姉上! お買い物は僕が行きます!」

 

 

「さっきからどうした輝? 何か理由があるのか?」

 

 

「僕は、大切なものを守るために、もっともっと強くならなくちゃいけないんだ! そのために、試練が必要なんだ!」

 

 

成程、自分に当番が来ないのはあまりいい気分でもないしな…

 

 

「気に入った! 輝、お前に任せる!!」

 

 

「兄上!」

 

 

修兄、任せるのは良いが輝にはちょっと荷が重くないか?

栞がものすごい心配そうな顔してるんだが…

 

 

「私も行く」

 

 

「栞、これは試練なんだ。どんな危険が待ち構えてるか…」

 

 

「………行く」

 

 

「しょうがないな栞は。分かった、絶対に僕から離れるんじゃないぞ!」

 

 

「うん!!」

 

 

流石の輝でも栞の上目使いには敵わなかったらしい。

 

俺でも無理だ。

 

 

「気を付けてなー」

 

 

「何だか私押し付けたみたい……」

 

 

「なら、付いていけばいいんじゃないか?」

 

 

「でも、あんなにやる気になってるし……そうだ! 光、変身させて!」

 

 

「いいけど、何歳がいいの?」

 

 

「えーと、ちょっと大人っぽく、23……いや、7かな」

 

 

「任せて!」

 

 

光が茜に触れて能力を発動させる。

27歳の茜か、ちょっと気になるけど本人的にはあまり先の自分の姿は見ない方がいいんじゃないかな……

胸とかの問題で…

 

 

「光! 27って言ったでしょ!!」

 

 

「7って言いましたー!」

 

 

茜の言い方が悪かったのか、それとも光が勘違いをしたのか、茜は7歳の姿になっていた。

このちび茜はマスコットって感じでかわいいな……

 

 

「そうだ! 優も行こうよ!!」

 

 

「めんどくさい」

 

 

「ちょっとは悩んで! いいから行くよ!!」

 

 

「拒否権無いのかよ……まあいいや。光、俺にも能力使ってくれ」

 

 

「何歳がいい?」

 

 

「そうだな……20で」

 

 

「え、ほんとにいいの? まあ優ちゃんがいいって言うなら…」

 

 

光が渋い顔をしていたが、何か問題でもあるのだろうか…

未来の自分の姿を見るのって初めてだから、結構ドキドキするな。

 

 

「えいっ!」

 

 

光が俺に触れて能力を発動させる。

 

 

「優ちゃん、終わった……よ」

 

 

「何で目を逸らすんだ? 何かおかしなところでもあるのか?」

 

 

「な、何でもないよ……。ごめんなさい……」

 

 

「まあいいや」

 

 

「どこ行くの優ちゃん?」

 

 

「いや、鏡見てこようかと……」

 

 

言い終わるやいなや、茜と光がしがみついてきて身動きが取れなくなった。

 

 

「ダメだよ優! それよりも早く輝たちを追いかけないと!!」

 

 

「そうだよ優ちゃん! これは一刻を争うことなんだよ!!」

 

 

「いや、あいつらの速さなら十分追いつくだろ。てかそんなにくっつくな!」

 

 

「「痛いっ!」」

 

 

2人の頭に手刀を喰らわせると、洗面所へと向かう。

 

 

他の兄妹も何か言いたそうな顔をしていたが、何がそんなに気になるんだろうか…

まさか、イケメンすぎて鏡を見ると気絶するほどとか!?

 

まったく、皆素直じゃないな。

 

上機嫌になった俺は、鼻歌交じりに洗面所へ入る。

そして、20歳になった自分の姿を見てみると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぐっ! うっうっ……」

 

 

「よしよし」

 

 

「茜、優、そろそろご飯よ!」

 

 

「ごめん葵お姉ちゃん、もうちょっとだけ待ってて!」

 

 

今何をしているかというと、電気が消えた部屋の隅で泣きながら体育座りをしながら、茜に背中をさすってもらっている。

俺が鏡を見た時に目にしたものは、背が伸びていないどころか若干縮んでいる未来の自分の姿だった。

 

当然頭の中は真っ白になり、気付いたら部屋の隅で泣いていた。

 

茜曰く、ゾンビのような足取りだったらしい。

 

 

「背が……伸びてないならまだしも…縮んでるなんて……」

 

 

「ぜ、絶対誤差だって! 3cmしか変わってないんでしょ?」

 

 

「3cm………」

 

 

「あーーもう! ショックなのは分かるけど、いつまでもくよくよしてないで。優らしくないよ」

 

 

茜が俺を後ろから軽く抱きしめてくれる。

 

 

「皆を待たせてるし、行こう?」

 

 

「うん…」

 

 

次の日、昨日のくじ引きからの記憶がなぜか抜けていた……

光の能力の効果が切れて元に戻ったわけだが、戻ったということは背が伸びたということであり、勝手に浮かれていたところにかなねえから現実を叩き付けられ、泣き崩れた。

 




前話の後書きにも書いたように、よろしければアンケートお願いします!


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スカート戦争 前編


まだSAOの映画見に行ってないので早く行かねば...

コウさん、ゆりンスさん、大鉄人ワンセブンさん感想ありがとうございます!


「先行くぞ、茜」

 

 

 

「優、もうちょっとだけ待ってて。 ねえ栞、ボルシチってよくビニールかじるけどそれの何がいいのか通訳してくれない?」

 

 

 

「うん、わかった」

 

 

 

ボルシチの名前が出た瞬間に身を隠す。

最近結構早く反応できるようになったんだぜ。

 

 

 

「放浪の身であった私を拾ってくれたことには感謝している。しかし、王族の料理がどんなものを楽しみにしていた所、とんだ期待外れだったことは誠に残念である」

 

 

 

随分な物言いだなこの猫…

てか普段からそんなこと考えてたのかよ。

 

 

 

「それに比べたら、ビニールの歯ごたえには快楽すら覚える。論理的に言えば、ここの食事はビニールにすら劣るわけだが」

 

 

 

「分かった栞。もうやめて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

HRが始まる前の教室は、学生の喋り声でにぎやかである。

そんな中、廊下からバタバタと足音が…

 

 

 

「おっはよー! 間に合ったー!!」

 

 

 

「今日もギリギリだな、櫻田」

 

 

 

「おはよう茜、相変わらずど真面目なんだから。たまには遅刻してもいいのに」

 

 

 

「おはよう花蓮。だって皆勤賞狙いたいからね!」

 

 

 

花蓮がふと目線を下げると、茜の健康的な太ももが……

クラスの奴らも視線を向け、一瞬固まる。

茜がスカートを履いていない。

 

しかし、その後皆何もなかったかのようにお喋りや授業の準備を再開した。

 

その後も、茜に対して誰もスカートの事を教えるものはおらず、迎えた昼休み。

事件が起ころうとしていた…

 

 

 

 

 

「あ、メールだ」

 

 

 

いつものように茜と花蓮と共に昼食を取っていると、メールが届いた。

 

From 葵姉さん

 茜がスカートを履いてないみたいなんだけど、優君は何か知ってる?

 

To 葵姉さん

 登校するときは履いてたから、今履いてないなんてことはないだろうけど……茜に確認してみる。

 

 

 

「誰から?」

 

 

 

「桜ちゃんからだよ。バイトの件でちょっとね」

 

 

 

最近メールが届くたびに茜から誰からだと問われることが多くなった気がする。

 

 

 

「桜ちゃんって誰!?もしかして優の彼女?」

 

 

 

「ゴホッゴホッ……違うって! ただのバイトの後輩!!」

 

 

 

「はっはっは、冗談だって」

 

 

 

まったく、そういう冗談はやめてくれ。

危うく隣からシャーペンが飛んでくるところだったぞ。

 

結構痛いんだからな。

 

それよりも茜がスカートを履いてないって?

あの恥ずかしがり屋の茜だぞ?

しかも朝スカート履いてたし。

 

隣に座っていた茜の腰あたりをちらっと見る。

その動作に気付いた花蓮に目線をやる。

花蓮が気まずそうに視線を逸らす。

 

 

 

(おい花蓮。お前知ってたな)

 

 

 

(ナ、ナンノコト?)

 

 

 

 

 

(茜が露出狂に目覚め始めたこと)

 

 

 

 

 

「え、そうなの茜!?」

 

 

 

「え!? 花蓮どうしたの!?」

 

 

 

「ごめんなんでもない」

 

 

 

(いきなり大声出すなよ)

 

 

 

(優が変なこと言うからでしょ!?)

 

 

 

(それよりも、茜にスカートの事言わなくていいの?)

 

 

 

(それなんだけど、今茜に気付かせると恥ずかしさでショック死しちゃうかもしれないし……)

 

 

 

(まあ、確かにそれはあり得るな)

 

 

 

(それにもしこれが茜のファッションだったら、友達の私から指摘するのはまずいと思う……)

 

 

 

(いや、指摘してくれ! こんなファッションセンスを持つ妹なんて嫌だ!!)

 

 

 

(そ、それならもうちょっと人の少ないところで、やんわりと指摘した方が良くない?)

 

 

 

(まあ、教室内で言うことでもないしな)

 

 

 

(ていうか優が言いなさいよ。兄のあんたからなら特に問題ないでしょ)

 

 

 

(やだね。茜には日ごろの恨みがあるんだ。それに、このまま学園生活を送らせるのも

中々面白そうだしな)

 

 

 

(クズだ……)

 

 

 

(もしこのままなら、何かしらのハプニングで茜のパンツが見れるかもしれないぞ?)

 

 

 

(なっ! ………ありかも)

 

 

 

(………。)

 

 

 

あれ、花蓮ってこんなやつだったっけ?

 

 

 

「さっきから二人して何で黙ったままなの? しかも目を合わせたまま…」

 

 

 

おっとまずいまずい、どうやら茜をほったらかしにしてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

『1年3組の櫻田 茜さん。生徒会副会長がお呼びです。至急生徒会室まで来てください』

 

 

 

 

 

おっと、今度はかなねえが動き出したか。

葵姉さんの所まで伝わってたらかなねえも知ってて当然か。

 

 

 

「かなちゃんどうしたんだろ?」

 

 

 

「さあな、でも早く行かないと怒られるぞ」

 

 

 

「茜、私付いてくよ」

 

 

 

「俺行くよ。心配だからね」

 

 

 

「え、どうしたの二人とも? でも二人がそうしなきゃいられないんだったら、やぶさかでもないけど?///」

 

 

 

ムカつく……

今すぐ大声でスカートを履けと叫んでやろうか。

 

 

 

「ほら、早く行くよ」

 

 

 

俺たちが教室から出た途端、クラスの男子たちが一斉に立ち上がる。

 

くそっ! あいつら!

 

今いる棟から生徒会室に行くには階段を登らなければならないので、下から追いかければ必然的にスカートの中を見れるのだ。

そしてさらに他のクラスの男子たちも出てくる。

こいつら連絡を取り合ってたのか!

 

 

 

 

 

『下から覗ける。下から覗ける。下から覗ける。』

 

 

 

 

 

こいつらクズだ!!

 

流石に見ず知らずの男に妹のパンツを見せるわけにはいかないな…

さて、何か策でも考えるか。

 

 




今日東京に連れてかれることになったので、投稿が間に合うか分かりません!

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スカート戦争 後編

昨日は大変申し訳ございませんでした...

東京から帰ってきたのが11時30で、流石にこの短時間で書き上げるのはきついと判断し、布団へダイブしました。

明日か明後日に2話分投稿します...


 

『下から覗ける。下から覗ける。下から覗ける。』

 

 

生徒会室へ向かうも、茜のパンツを見るために付いてくる変態集団。

 

変態が編隊を組んでやってきた!!

 

 

 

「今日はやけに視線を感じるなー?」

 

 

 

のんきだなぁおい!

こっちはお前のパンツを見せないように必死なんだぞ!

 

 

 

(どうするよ花蓮)

 

 

 

(どうするも何も、男子たちに覗かせないように急いで生徒会室に行かないと!)

 

 

 

くそ、何か打つ手は無いのか!?

そうだ!

 

 

 

(おい花蓮! あいつらは俺が引き付ける。そのうちに茜を生徒会室に!)

 

 

 

(待って優、相手は一年男子全員よ! どうにかなるわけないじゃない!!)

 

 

 

(妹のためだ。兄が体を張らないでどうする!)

 

 

 

(優……あんた最高の兄だよ! 生きて帰って来てね!!)

 

 

 

(任せろ)

 

 

 

花蓮にグッと親指を立てると、変態集団の前に立ちふさがる。

 

 

 

 

 

 

 

「ここを通すわけにはいかないな」

 

 

 

「な、櫻田 優! 貴様っ、我々の邪魔をするつもりか!!」

 

 

 

「お前ら、茜のパンツを見ようとしたんだ。生きて帰れると思うなよ!!」

 

 

 

「くそっ! 我々の理想郷はここまでなのか!?」

 

 

 

ふっ、初戦お前たちが何人集まろうとも、妹を守ろうとする兄の前にはすべて塵に等しいぞ!

さあ、かかってくるがいい!!

 

 

 

「少し待ってもらおう」

 

 

 

「ん? 何だお前」

 

 

 

突然、集団の中から一人の男が現れた。

 

 

 

「これを」

 

 

 

すると男は、懐から一つの封筒を取り出して俺に差し出す。

 

 

 

「何のつもりだ? 金など払っても、妹のパンツなど見せはせんぞ」

 

 

 

「いえ、これはあなたにとってお金よりも大事な存在かと……」

 

 

 

そこまで言われると、受け取って確認せざるを得ない。

 

受け取った封筒を開き、中身を取り出すと……

 

 

 

「こ、これはっ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は教室で一人、席に座っていた。

 

 

 

 

 

渡された写真を見ながら……

 

 

「はぁ~、これが見れるなら茜のパンツなんて惜しくないな」

 

 

そう、渡されたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイト中の桜ちゃんが映っている写真

 

 

ご来店したお客様を笑顔で席に案内する桜ちゃん。

 

忙しく食器を運んでいる桜ちゃん。

 

注文を間違えてしまいペコペコと頭を下げる桜ちゃん。

 

お客様が連れていた子供と遊んであげる桜ちゃん。

 

お客様に笑顔で「ありがとうございました」と見送る桜ちゃん。

 

 

 

 

 

あぁ、心が癒される……

 

 

 

 

 

一緒にバイトをしていても、すぐ側で常に働いているわけではないため、こういった桜ちゃんの仕事ぶりや表情は伺えない。

これらは金などといった汚れきった物とは比べ物にならない、とても貴重な写真である。

 

 

 

まったく、これをただでくれるなんて、あいつらって結構いいやつなのかも。

 

 

 

 

 

 

 

「随分幸せそうね、優君?」

 

 

 

「そりゃあ、こんなもん見せられたら誰だって……」

 

 

 

後ろから声がしたので振り返ると……

 

 

 

「お姉ちゃんもそれ、見てみたいな?」

 

 

 

「あ、あ、葵姉さん!! いつからここに!?」

 

 

 

本来なら一年生の棟にいるはずのない、葵姉さんの姿が……

 

 

 

「さっき来たばっかだよ。それよりも、優君? 写真」

 

 

 

「あの……これはとくに大したものではなくてですね? お姉様が見る程の物では…」

 

 

 

「優君、見せなさい」

 

 

 

「………どうぞ」

 

 

 

葵姉さんの圧力には逆らえず、頭では渡してはならないと思っていても、体が勝手に動いてしまう。

 

 

 

「ふーん、優君はこういう子が好みなのね」

 

 

 

「いや、別に好みというわけではなくて……その、先輩として後輩が仕事をちゃんとできてるか確認したくて…」

 

 

 

「ふふふ、そうゆうことにしといてあげる」

 

 

 

葵姉さんから写真が返される。

 

良かった、処分だなんて言われたら今頃窓から飛び降りてたよ…

 

 

 

「ねえ優君。茜がスカートを履いてないって噂あったでしょ?」

 

 

 

「そ、それがどうかしたの?」

 

 

 

「さっきかなちゃんから連絡を貰ったの。それで、茜は登校中にスカートを引っ掛けて破けちゃったみたいなの」

 

 

 

「へ、へぇ~」

 

 

 

「それで短パンに履き替えたつもりだったらしいんだけど、授業の予鈴に体が反応しちゃって、短パンを履き忘れちゃってたみたいなの」

 

 

 

「あ、茜らしいね…」

 

 

 

「それで、クラスの子たちは茜がスカートを履いていないのを知って、生徒会室に呼ばれた茜の下着を見ようと付いていったんだって」

 

 

 

「ま、まったく、男子ってしょうがないですよね…」

 

 

 

「でも茜は短パンを履いてるつもりだったから、皆の誤解を解くために制服を持ち上げちゃって、案の定下着が見えちゃったらしいの」

 

 

 

「ははは、ドジですよね…」

 

 

 

「しかも、茜が下着を見られないように男子を引き付けようとした子が、ある写真で買収されちゃったらしいの」

 

 

 

 

 

 

「…………………。」

 

 

 

 

 

ゆっくりと後ずさる。

いつでも逃げれるように。

大丈夫、足には自信がある。

いくら葵姉さんでも俺には絶対に追いつけない。

 

 

 

 

 

「あら優、どこに行くつもりなのかしら?」

 

 

 

声が聞こえた方を振り向くと、満面の笑みで仁王立ちしているかなねえが……

 

 

 

「その、気分が良くないので保健室へ行こうかと……」

 

 

 

「なら、私たちが付いていってあげるわ。ねえ葵姉さん」

 

 

 

「優君とお話ししたいことがいっぱいあるし、その方がいいわね」

 

 

 

じりじりと二人に距離を詰められる。

 

 

 

「あ、あの、お姉様方?」

 

 

 

「「ふふふふふ」」

 

 

 

全てを悟った。

 

俺はここで死ぬ運命にあると……

 

 

 

 

 

 

 

茜のスカートの事に気付いていたのに指摘しなかったこと、写真で買収されたことなどを問われながら保健室に連行された。

 

その後、貰った写真を二人の目の前で処分するか、茜に渡すかの究極の二択を迫られた。

 

 





今度fgoコラボカフェに行こうと思います。

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アイドル

今日はもう一話ありまーす

居眠り常習犯さん、ゆりンスさん、感想ありがとうございます!
大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございます!


「ねえ優。ボルシチ知らない?」

 

 

 

平日の夜、いつも通りテレビを見ていると茜に声をかけられた。

 

 

 

「そんなものの存在など知らん………光の所じゃないか?」

 

 

 

「何だかんだ答えてくれるあたり、優ってツンデレだよね」

 

 

 

「うるせぇ」

 

 

 

別に動物は嫌いではないのだ。

テレビで見たり、遠くから見たりする分には他の人と変わらないだろう。

ただ、近くに来られるのは苦手なのだ…

 

少しして茜が戻ってくる。

 

 

 

「ねえ優、光が何か企んでるっぽいんだけど何か知らない?」

 

 

 

「茜にばれるなら相当だな。ちょっと様子見てくる」

 

 

 

「なんかムカつく……」

 

 

 

 

 

 

 

 

光(俺と茜)の部屋に向かう。

 

 

 

「小学生の募集はどれも保護者同伴、後2年もすれば私一人でオーディションに行けたのになー」

 

 

 

ドア越しにそんな声が聞こえる。

 

 

 

「時代が私についてこれてないんだよねー」

 

 

 

「小学生についてくほど、時代は暇じゃないぞ」

 

 

 

「優ちゃん!? いつからいたの? ていうか、ノックぐらいしてよ!!」

 

 

 

「今さっき……というか、自分の部屋に入るのに何でノックしなきゃいけないんだよ」

 

 

 

「話聞こえてた?」

 

 

 

「あー、オーディションが何とかしか…」

 

 

 

「しょ、しょうがない…こうなったら優ちゃんも巻き込んで……」

 

 

 

「ほんとになんか企んでたのかよ…」

 

 

 

光に一人で何かをやらせるのは輝と同じくらい心配だが、まあ好きにやらせるか…

 

 

 

「優ちゃん! 岬ちゃんの部屋まで付いてきて!」

 

 

 

「どうしたんだ急に?」

 

 

 

「いいから!」

 

 

 

「はいはい」

 

 

 

妹には弱い俺であった…

 

 

 

 

 

 

「うーん、どれもぱっとしないなー。勝負服とか無いの?」

 

 

 

岬の部屋に俺を連れていった光は、何をするのかと思えば岬の服を漁り始めた。

おいおい、そんなん岬にばれたら殺されるぞ。

主に俺が。

 

 

 

「ゴホン!!」

 

 

 

「ふへ?」

 

 

 

あらら、遥にばれたか…

俺も気付かなかったぞ。

まぁ岬にばれなかっただけマシか。

 

 

 

 

 

 

「光だって、自分の物を勝手にいじられたら嫌だろ? というか何で優兄さんも一緒にいるわけ?」

 

 

 

「「ごめんなさい…」」

 

 

 

「オーディションを受けに行く服が無くて…」

 

 

 

「オーディション?」

 

 

 

「私、王様になりたくて。人気集めるにはどうしたらいいか考えて、アイドルになった

らいいんじゃないかって」

 

 

 

「「アイドル?」」

 

 

 

「そうアイドル!」

 

 

 

「優兄さん知らなかったの?」

 

 

 

「ああ初めて聞いた。それでオーディションとか言ってたのか」

 

 

 

光がアイドルか…

確かに派手好きな性格と合ってい良いのかもしれない。

 

 

 

「何であれ、光がそうしたいのなら、俺らは止めるつもりはないぞ。なあ遥?」

 

 

 

「うん、光にやる気があるなら僕も賛成するよ」

 

 

 

「ほんと!? やったあ!」

 

 

 

「ただし、光の面倒は遥見ろよ」

 

 

 

「「え!?」」

 

 

 

「俺バイトあるし」

 

 

 

「そこを何とか!!」

 

 

 

いつもは人をあまり頼らない遥が土下座で頼み込んでくる。

そうかそうか、そんなに俺の力が欲しいのか。

そこまで言われたら兄として融通を利かせてやっても……

 

 

 

「優兄さんがいないと、歌の練習でカラオケとかアイドルの情報誌とかの費用が……」

 

 

 

「………いい度胸だなぁ、遥?」

 

 

 

「あ、ちょっと待って優兄さん! 僕の腕はこれ以上そっちには曲がらなっ……」

 

 

 

 

 

 

 

その後、死にかけた遥を捨て置き、光と話し合った結果、アイドルの給料が出たらそれまで借りていたお金を返すということで話がついた。

 

それから数週間、光がアイドルになるための特訓が始まった。

 

カラオケや走り込みを繰り返し、着実に実力をつけていた。

 

一次審査は写真審査であるため、ある程度見た目が良ければ受かるのだが、光なら天地がひっくり返ろうとも落ちることなどないだろう。

もし落ちたら審査員全員血祭りにあげてやる。

 

 

 

 

 

無事に一次審査を通過し、いよいよ二次審査。

面談が行われるのだが、光なら緊張することも無いだろう。

それよりも心配なのは中身が小学生ということだ。

光には悪いが、あまり真面目な話が出来るのか心配である……

 

 

俺と遥と光はアイドル事務所へ到着。

 

 

 

「ごめんね優ちゃん。バイト休ませちゃって…」

 

 

 

「別に構わないよ光。昔と違ってオーナーと俺がいなくても、安心して任せられるからな」

 

 

 

「光、そろそろ時間だよ。王族ってだけで敬遠されるだろうが、今のところは順調に来てる。名前を貸してくれた光の友達のためにも、絶対に合格しないとな」

 

 

 

「うん!」

 

 

 

俺たちの最後の仕事は、光を信じて待つのみ。

ここまで来たんだ、しっかりやれよ。

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていたのだが、直ぐに光が帰ってきた……

 

 

 

「計算外だった...未分証を見せなくちゃいけないなんて…」

 

 

 

(なあ遥、俺らのどっちかが変装して保護者を演じれば、小学生の部には応募出来たんじゃないか?)

 

 

 

(僕も今そう思っていた所だよ……光には言わないでおこう)

 

 

 

(そうだな……)

 

 

 

「帰るぞ二人とも」

 

 

 

「「うん」」

 

 

 

失敗は成功の元とも言うしな。

まだアイドルになれないと決まったわけじゃない。

選挙まで時間もあるんだ、どうにかなるさ。

 

 

 

「あ、すまん二人とも、電話だ」

 

 

 

歩き始めた頃に電話がかかってくる。

 

 

 

「どうした桜ちゃん? え……はぁ~、分かったよ。今行くから」

 

 

 

「どうしたの優兄さん?」

 

 

 

「バイトの後輩がドジやったみたいでな、ちょっと行ってくる」

 

 

 

2人を置いてバイト先へと急ぐ。

 

やっぱ桜ちゃんには、まだあの仕事は早かったかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ優ちゃんって面倒見がいいよね」

 

 

 

「そこが優兄さんのいいところでもあるからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、桜ちゃん? 言い訳があるなら聞くけど?」

 

 

 

「あの、その~......先輩の言う通りにやってたんですけど~」

 

 

 

バイト先に着いてすぐ、桜ちゃんが犯した失敗を確認して問い詰める。

 

 

 

「俺の言う通りにやったなら、こんなことにはならないはずなんだけどな~?」

 

 

 

「あははは……」

 

 

 

桜ちゃんが失敗したのは、売り上げ金額や売り上げ数、在庫の個数を数えて計算すること。

作業の簡略化をするためにオーナーから頼まれて、表計算ソフトで計算できるようにしたのだが、桜ちゃんはパソコン操作が大の苦手なのである。

そんな桜ちゃんのために、前から少しずつやり方を教えてあげたのだが……

 

 

 

「何で今までのデータが全部消えるんだろうね~? 桜ちゃん?」

 

 

 

「い、言われたこと以外の事をしたらそうなると思います……」

 

 

 

「うんうん、よく分かってるね~桜ちゃん」

 

 

 

「ご、ごめんなさい…」

 

 

 

桜ちゃんが涙目になってきている。

そろそろやめてあげるか……

 

 

 

「誰だって失敗はあるから、今日はこれくらいにしといてあげるけど、次からは気を付けてね」

 

 

 

「はい…//」

 

 

 

あやすように頭をポンポンとしてあげる。

 

 

 

「今までのデータは別の所に保存してあるからいいとして、オーナーが戻ってくる前に今日の分を終わらせようか」

 

 

 

「え? データ残ってるんですか!? それじゃあ私怒られ損じゃないですか!!」

 

 

 

「自分が失敗したのに何を言ってるのかな~?」

 

 

 

「ふぉへんなひゃい!ふぉへんなひゃい~!!」

 

 

 

割と強めに桜ちゃんの頬を引っ張る。

 

ほぅ…良く伸びるな。

 

 

 

 

 

 

オーナーが返ってくる前に何とか終わらせ家に帰ると、なぜか光がアイドルになっていた……

 

 




バイトにかわいい後輩がいると羨ましいですね

働きたくないでござる!!


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町内清掃

ちょっと短めです

そういえば結局SAO見に行けなかった......


 

『続いて生徒会長に代わり、櫻田副会長のお話です』

 

 

集会ってメンドクサイ……

 

 

 

「会長また休みか…」

 

 

 

「俺会長見たことないぞ?」

 

 

 

「実は一年生らしいぞ?」

 

 

 

あー、卯月会長か……

 

俺は生徒会の仕事をかなねえに手伝わされる事があるから、何度か顔を合わせたことがある。

体が弱いと聞いていたが、まさか今年の集会に未だ顔を出せないまでとは……

 

 

 

「かなねえの話を聞いてもなー…」

 

 

 

「こら優、そんなこと言わないの。大事なこと言ってるんだから、真面目に聞かない

と」

 

 

 

「はいはい、分かってますよ」

 

 

 

 

かなねえからの連絡によると、来週末に町内清掃活動があるらしい。

 

茜死んだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

集会が終わり、授業が始まるまでの間に先生から頼まれたノートを運ぶクラス委員の福品と同じく茜。

そしてなぜだか大量のプリントを持つ俺。

 

 

 

「くそっ……何で俺がこんなこと……」

 

 

 

「優がいつも宿題やってこないのが悪いんでしょ、自業自得」

 

 

 

「でも限度ってものがあるだろ。一週間もこき使われるだなんて……憂鬱だ」

 

 

 

「ごちゃごちゃ言わないの。そんなことより私の方が憂鬱だよ……町内清掃……」

 

 

 

「うちのクラスだけでも、校内清掃にしてくれるように頼んでみようか?」

 

 

 

「そんなわがままは言えないわ。町の人たちだって、町がきれいになったら嬉しいだろうし……でも、やっぱり人が来ちゃうんだろうな……」

 

 

 

「………。」

 

 

 

福品がなぜか幸せそうな顔をしている。

なんかムカつくから後で一発殴っとくか。

 

しかし、あの堅物副会長がそんなこと受け入れるとは到底思えないな。

 

 

 

「会長! 今朝の朝礼の件ですが……」

 

 

 

「朝礼が何ですか? 武田先輩?」

 

 

 

「……あっ、櫻田さん!?」

 

 

 

「櫻田さん、急を要するようだから、ノート頼めるかな?」

 

 

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 

 

福品は茜にそう言うと、武田先輩を連れてどこかへ行ってしまった。

 

 

 

「ねえ、優。福品君って何者なんだろう…」

 

 

 

「さあな」

 

 

 

茜ファンクラブの会長だなんて口が裂けても言えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは皆さん、町内をピッカピカにしちゃいましょー!」

 

 

 

週末になり、町内清掃が開始された。

この日までに、福品がかなねえや葵姉さんと話しをしていたようだが、特に成果は無かったらしい。

 

 

 

「ふぅ~」

 

 

 

「お疲れ様です卯月会長。お体の調子はいかがですか?」

 

 

 

「今日は暑いので、あまり無理しないでくださいよ」

 

 

 

「はい、今日は大丈夫みたいです。いつも任せっきりですみません奏さん、優さん」

 

 

 

「いえ、お安い御用ですわ」

 

 

 

「まあ、もう慣れましたし。それでは俺もう行きますね」

 

 

 

「はい、ありがとうございました。優さん」

 

 

 

「ほんとに、いつも手伝わせちゃってごめんね」

 

 

 

「いいっていいって、また必要だったら呼んでよ」

 

 

 

俺はそう言い、自分のクラスの所へと向かう。

 

なぜか、俺らのクラスの志気が異常なほど高かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

「親切な弟さんを持ちましたね、奏さん」

 

 

 

「家でもあれぐらい働いてくれると嬉しいんですけどね……」

 

 

 

「でも、バイトをしていらしてるんですよね?」

 

 

 

「その件は卯月会長には頭が上がりませんわ。校則では特別な理由が無い限りバイトは

認められないのに、先生方に口添えしていただいて……」

 

 

 

「お安い御用ですよ。優さんには生徒会でもないのに仕事を手伝ってもらってるんですから、これぐらいは当然です」

 

 

 

「ありがとうございます、卯月会長。優のことはこき使ってやってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町内清掃が終わり、家へと帰った。

 

 

 

「あ~、疲れた~……」

 

 

 

「若いのにだらしない!」

 

 

 

着替えるなり、リビングのソファで寝っ転がる茜。

お前は中年のおっさんか。

 

 

 

「誰のせいよ、人目にさらされて精神的に疲れたの……うぐっ」

 

 

 

茜の腹の上にボルシチが上り、丸くなる。

 

 

 

「ボルシチが茜以外の上で寝るところって見ないな」

 

 

 

「ご飯あげてるの私だもんねー。優が寝てるときにも上に乗ったりしてるよ」

 

 

 

「………え?」

 

 

 

数秒間思考がフリーズする。

 

俺が寝ている間に?

ボルシチが俺の腹の上で?

 

 

 

「優が完全に壊れたわ。戻ってきなさい」

 

 

 

かなねえに頭を叩かれて正気に戻る。

 

今度ボルシチが上ってこれないように対策しとかなきゃな……

 

 

 

「……………言えない」

 

 

 

栞がボルシチを見ながら何とも言えない表情をしている。

ボルシチと会話してたのか。

 

 

 

「大方、そのなだらかさがいいんだろう」

 

 

 

「えぇっ!」

 

 

 

「なだらかさなら、私も中々だよ。ボルシチ、おいでー」

 

 

 

一度顔を上げたボルシチだが、それ以上動く気配を見せず、また寝始める。

 

 

 

「来ない……」

 

 

 

「光の方がならだからだと判断したか」

 

 

 

「光はいま成長期だからな。茜などその気にならずとも一捻りって感じだな」

 

 

 

「……ボルシチ、GO」

 

 

 

「うお! 待てボルシチ、それ以上はだめだ!! それ以上近づくとおやつ抜きにするぞ!!」

 

 

 

「あんたにそんな権限はない」

 

 

 

またしてもかなねえに頭を叩かれる。

かなねえって俺に対してあたりきついよね……

 




成長期って恐ろしいですね

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反抗期

あ~、fgoの育成が進まないんじゃ~

大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございます!


 

「ただいまー」

 

 

 

「お帰り優」

 

 

 

「茜か……納豆臭っ! なんで今納豆混ぜてんだよ!」

 

 

 

家に帰って出迎えてくれたのが納豆を混ぜてる妹って中々シュールだよね。

 

 

 

「え? 真島さん好きだから食べるかなって思って……」

 

 

 

「インタビュー中にそんなもん食わせるなよ。俺は部屋に行ってるからな」

 

 

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反抗期来たー!!!」

 

 

 

部屋で漫画を読んでいると、遥と岬の部屋から茜の叫び声が聞こえてくる。

 

そろそろ真島さん来るんじゃなかったかな?

 

あいつらの所に行くの面倒だな……

こういう時にこそ、俺の能力が役に立つ。

 

 

 

(遥、なんか茜の叫び声が聞こえたけど何かあったのか?)

 

 

 

(優兄さん、いいところに! 今すぐ僕の部屋に来て!!)

 

 

 

(めんどいから嫌だ)

 

 

 

(そこを何とか! このままだと岬の機嫌が直らないんだよ……)

 

 

 

(俺が行って直ると思うか?)

 

 

 

(優兄さんなら何とか出来るから!お願い!!)

 

 

 

(分かったよ……しょうがねぇな)

 

 

 

弟の必死の頼みを無下にするわけにはいかないので、渋々部屋に行ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ってさ、何やっても平均以下だから。運動も勉強も、顔もスタイルも全部普通。だからお姉ちゃんたちが羨ましかったんだ。普通の私が、特別なあんたたちに相談してもしょうがないよね」

 

 

 

ドア越しに岬のネガティブな声が聞こえる。

 

 

 

「普通の人間が分裂とかするかよ」

 

 

 

「優兄………ノックしてよ」

 

 

 

「今それ言う?」

 

 

 

結構いい感じのタイミングで助けに来たと思ったんだが、空気の読めない妹め……

 

 

 

「普通でいいじゃん。ていうか、僕の周りには変な奴ばっかだから、僕にとっては岬が特別なわけで、岬が岬じゃなくなったら、僕は困るんだけど」

 

 

 

いいこと言うな、遥は。

 

でも変な奴って俺含まれてないよね?

 

 

 

「いいか岬、人には向き不向きってもんがあるんだよ。社交性の無いやつとか、模範解答しか返さないやつとか、俺みたいに毒ばっか吐くやつとかいるんだよ。結局は適材適所。岬には岬にしか出来ないことをやればいいんだよ」

 

 

 

岬に諭すように言うと、いきなりドアが開く。

噂をすればといういやつだ。

 

 

 

「岬ー! この子エッチなことしか言わないし、岬なら客観的に皆のこと表現できるし、岬にしか任せられないの!!」

 

 

 

「遥~、茜ちゃんにめちゃくちゃ怒られちゃった。慰めて」

 

 

 

「そこぉ~! どさくさに紛れて何やってんの!!」

 

 

 

「優兄アイス頂戴~」

 

 

 

「あんたも何やってんの!!」

 

 

 

さっきまで落ち込んでいた岬にいつもの活気が戻る。

やっぱり、自分の大好きな人からの言葉って影響力すごいよな。

 

 

 

「も~、私がいなきゃみんなダメダメなんだから! 全員中に戻れ!」

 

 

 

せわしなく分身を戻した岬は、急いで真島さんの所へと向かう。

 

 

 

「ところで遥、俺いる意味あった?」

 

 

 

「何言ってるのさ、優兄さんのおかげだよ」

 

 

 

「そうか? ま、そう言うことにしといてやるよ。 ほら茜、部屋戻るぞ」

 

 

 

「あ、待って優」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に戻った俺は漫画を読み始め、茜は勉強を始める。

 

 

 

「優は余裕そうでいいよね。もうすぐテストだよ? 勉強しなくていいの?」

 

 

 

「俺は短期集中型だからいいんだよ」

 

 

 

「そんなこと言って、今度また化学が赤点だったらまた葵お姉ちゃんに怒られるよ?」

 

 

 

「今度こそ大丈夫なはず………」

 

 

 

俺の得意科目は数学と英語。

化学は全くダメなのだ。

 

だってあんな記号みたいなの覚えられるわけないじゃん……

将来そんな薬品使わないのに……

 

 

 

「今度だめだったら漫画とゲーム全部処分されちゃうかもね」

 

 

 

「茜、タンス貸してくれ」

 

 

 

「嫌、赤点取らなきゃいいだけでしょ」

 

 

 

「お前だって数学赤点なくせに……」

 

 

 

「優が教えてくれないからでしょ!?」

 

 

 

「俺のせいにすんなよ! それにかなねえとか修兄とか葵姉さんとか教えてくれそうな人いるだろ?」

 

 

 

「かなちゃんに聞くと馬鹿にされそうだし、修ちゃんには貸作りたくないし、葵お姉

ちゃんの所は戻ってこれなくなりそうだし………」

 

 

 

最初の2人はよく分からんが、葵姉さんに関しては下手したらほんとに戻ってこれない……

 

 

 

「話変わるんだけど、優は何で王様目指してるの?」

 

 

 

「ほんとに変わったな、内容変わり過ぎてびっくりだよ」

 

 

 

「で、どうなの?」

 

 

 

妹からの突然の質問に、少し間をあけて答える。

 

 

 

「中学の頃から、変えたいって思ってることがあるだけだよ」

 

 

 

「何を変えたいの?」

 

 

 

「そこまで言う気はねぇよ。茜も王様目指すんなら、目標ぐらい見つけとけよ」

 

 

 

「うん……」

 

 

 

「ちょっとコンビニ行ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家を出て少し歩く。

コンビニに行くって言ったのは嘘で、ただ一人で歩きたかっただけである。

 

 

 

「………。」

 

 

 

ふとスマホを取り出し、電話帳を見てある番号にかける。

 

 

 

「あ、もしもし? 俺だけど、いきなりごめんね。 少し聞きたいことがあるんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜ちゃんは、今のままの生活でほんとに幸せ?」

 

 

 




意味深な描写は苦手でござる...

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昔話1

眠い...


少しだけ昔の話。

俺が中学に入って2年目の春。

 

 

 

「おはようございますマスター」

 

 

 

「おはよう優君。ずいぶんとここの仕事にも慣れてきたね」

 

 

 

俺がこの喫茶店でバイトを始めてから一年。

一年生の時にどうしてもお金が必要だった俺は、両親に頼み込んで特別に許してもらったのだ。

 

 

 

「この喫茶店って、ほんとに俺とマスター以外働いてないんですね」

 

 

 

「ああ、なんせここは小さい店だしね。あまり多すぎると、逆に息苦しいぐらいさ」

 

 

 

「ですね」

 

 

 

「ところで今日一人、新しいバイトの子が入るんだよ」

 

 

 

オーナーから突然そんなことが告げられる。

 

 

 

「え? いつの間に面接やってたんですか?」

 

 

 

「店を閉めた後だから、優君が知らないのも無理はないよ。年はそうだね、君の一つ下かな」

 

 

 

「1年生じゃないですか! 俺が言うのもなんですけど、いいんですか?」

 

 

 

「彼女は特別な事情を持っているからね。君みたいに、学校の先輩からのコネでバイトをしているのとは違うんだよ」

 

 

 

「うぐっ! そ、そう言えばオーナーは俺の母さんの後輩でしたもんね。ということは、オーナーの年って……」

 

 

 

「さて優君、減給はいくらがいいかな?」

 

 

 

「ごめんなさい冗談ですもう二度と言わないので許してください」

 

 

 

少し言い返してみようとしたが、給料には逆らえない……

 

 

 

「あまり思ったことをすぐに言わないように、君の悪い癖だよ」

 

 

 

「申し訳ございませんでした」

 

 

 

「分かればいいんだよ」

 

 

 

「ん? 彼女ってことは、新しい子は女の子ですか?」

 

 

 

「そうだよ。あと、彼女の教育係はもちろん君だよ?」

 

 

 

「え? 俺が女の子を教えるんですか!?」

 

 

 

「もしかして、優君は年下の女の子に手を出すのかい?」

 

 

 

「いえ、そんなことは無いと思います………多分」

 

 

 

俺だってまだ早いが年頃の男の子なのだ。

女の子と一緒に働いて平静を保てと言うのは難しいかもしれない……

 

 

 

「もし手を出せば、君のお母さんに連絡せねばならないね」

 

 

 

「命をかけても手は出しません!!」

 

 

 

絶対に手を出してはいけない。

出せば俺の命は無い。

 

 

 

「そろそろ彼女が来る頃だ。よろしく頼むよ優君。私は少し買い出しに行ってくる」

 

 

 

「了解です」

 

 

 

店の開店時間にはまだ余裕がある。

奥で時間潰すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おはようございます!!」

 

 

 

お、来たみたいだな。

 

 

 

「あれ? 誰もいない……時間間違えたかな?」

 

 

 

「大丈夫、合ってるよ」

 

 

 

「え? うひゃあ!」

 

 

 

突然声をかけられたことに驚いたのか、俺がいきなり出てきたことに驚いたのか、中々かわいい声で悲鳴を上げる。

 

やばい、理性を保たないと俺の命が……

普段話してる女の子が姉や妹ということもあり、全く面識の無い女の子との会話は少しドキドキする。

 

 

 

「あ、ごめんなさい! いきなり大声出してしまって……」

 

 

 

「いや、こっちこそびっくりさせてごめん。自己紹介しとくね、俺は櫻田 優 中学2年、一応、君の先輩になるのかな」

 

 

 

「さ、櫻田……優......お、王族の人!? す、すみません!ご無礼しました!!」

 

 

 

「そんなにかしこまらないで、王族として扱われるのはそんなに好きじゃないんだ」

 

 

 

「で、ですが……」

 

 

 

「なら、これはバイトの先輩としての命令。これならいい?」

 

 

 

「わ、分かりました……」

 

 

 

渋々と承諾してくれたが、これは慣れるまで時間がかかりそうだな……

 

 

 

「ところで、君の名前は聞いてなかったね。良ければ教えて」

 

 

 

「は、はい。私は加藤 桜 中学一年生です。よ、よろしくお願いします……」

 

 

 

なにか仲良くなれるきっかけがあればいいんだけど……

 

 

 

「加藤さん、まずは最初の仕事なんだけど、いきなり接客は厳しいと思うから、今日は

俺の対応を見ててね」

 

 

 

「はい、でもそれだけでいいんですか?」

 

 

 

「もちろん、他の仕事もしてもらうよ。まだ開店まで時間はあるから、すぐ出来そうなことだけ教えるよ」

 

 

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

とりあえず加藤さんには掃除の仕方だけを教え、残りは空いている時間に少しずつ教えていくことにした。

 

 

 

「いらっしゃいませー、何名様ですか?」

 

 

 

「かしこまりました。当店全席禁煙です。お好きな席へどうぞ」

 

 

 

「ご注文は何にいたしますか?」

 

 

 

「かしこまりました、少々お待ちください」

 

 

 

加藤さんの手本となるように。いつも以上に丁寧に接客をする。

あ、いつも適当にやってるわけじゃないからね?

 

 

 

「加藤さん、ちょっと来てくれる?」

 

 

 

キッチンに入り、注文された品を作り始めようと思ったが、加藤さんが掃除を終えたよ

うなので声をかける。

 

 

 

「はい、何ですか?」

 

 

 

「バイト初日だけど、喫茶店らしく何か作ってみようか」

 

 

 

「え、いきなりですか!?」

 

 

 

「大丈夫だよ、作ると言ってもコーヒーを入れるだけ。ちゃんと教えてあげるから、やってみよう」

 

 

 

「は、はい! お願いします……」

 

 

 

先程来たお客さんは2人で、コーヒーとサンドウィッチを2つずつ注文していた。

まずは一杯、コーヒーを入れるところを見せて器具の使い方を教えてあげる。

 

その後は実際に加藤さんに入れさせながら、違うところを教えてあげる。

 

 

 

「お待たせいたしました、お先にコーヒーでございます」

 

 

 

届けた後は、先程使った器具を洗うためにキッチンへ戻る。

 

 

 

「…………。」

 

 

 

コーヒーを出してから、加藤さんがそわそわしている。

初めてお客さんに対して入れたコーヒーだからな、無理もない。

俺も最初は緊張したもんさ。

 

しかも初めて飲んでくれたお客さんの感想が……

 

 

 

「なんか微妙ですね」

 

 

 

しかも苦笑いされながら言われたんだぞ、こんなのトラウマもんだろ……

 

 

 

「あの、ウェイターさん、ちょっといいですか?」

 

 

 

「はい、なんでしょう」

 

 

 

「今日のコーヒー、いつもと少し違うのね」

 

 

 

「今日は僕と新人が一杯ずつ入れたので、そのせいかもしれませんね。少々お待ち下さい」

 

 

 

キッチンの掃除をしていた加藤さんを呼んで、お客さんの所へ連れていく。

 

 

 

「お客様、この新人に味の感想を言ってやってください」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

加藤さんが驚愕の表情でこっちを見てくる。

 

 

 

「そうねぇ、いつもとは確かに違ったわ……」

 

 

 

加藤さんが表情を曇らせてうつむく

 

 

 

「でも、すごくおいしかったわ」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

加藤さんの顔がバッと上がり、表情が嬉しさに包まれている。

 

 

 

「良かったね加藤さん。というか僕の時は微妙って言ってたのに!!」

 

 

 

「あらあら、そうだったかしら」

 

 

 

まったく……あの後俺がどんなに落ち込んだことか……

 

 

 

「あはは…」

 

 

 

「加藤さんまで!?」

 

 

 

「あ、すいません先輩。つい……あはは」

 

 

 

なんだろう、後輩との距離も縮まったし、まあいいとするか……

 

 




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昔話2

今日はあの人視点です。




 

私がここに来てから数か月、随分この仕事にも慣れてきました。

ですが、まだミスが多いので先輩やオーナーに怒られることもしばしば……。

 

これでも毎日バイトをしてるのに。

 

 

なんで中学生の私が毎日バイトをしているかというと、今私は一人暮らしをしているからなのです。

幼いころから祖父と祖母に育ててもらったのですが、私が中学に上がると同時に他界してしまいました。

 

でも、両親はちゃんと生きています。

海外で仕事をしているらしく、年に一度しか会えません。

 

小さいころから海外に生活させるのを反対した祖父と祖母が、私を引き取ってくれたのです。

 

なので、祖父と祖母がいなくなってしまって寂しいです。

 

 

でもバイトを始めてから、先輩やオーナーとお喋りするのがとても楽しいんです!

あ、ちゃんと仕事はしてますよ!?

 

 

 

「おーい、加藤さん!」

 

 

 

「は、はい。すみません! 今行きます!!」

 

 

 

先輩に呼ばれてしまいました。

あまりぼーっとし過ぎると先輩に怒られちゃいます。

てへへ……

 

 

 

「ちょっと在庫が切れちゃったから、買いに行ってほしいんだけど、頼めるかな?」

 

 

 

「はい、任せてください!」

 

 

 

「俺今日3時で上がりだから、それまでには戻って来てね。これメモ、無くさないようにね」

 

 

 

「はい、では行ってきます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…………」

 

 

 

ピンチです、超ピンチです。

渡されたメモを無くしてしまいました。

しかもスマホを置いてきてしまいました、これでは連絡できないですし、時間も分かりません。

何度かメモの内容を思い出そうとしたんですが、全然思い出せません。

 

 

 

「はあぁぁぁ………」

 

 

 

ため息が大きくなってきました。

 

 

 

「何か困ってるようだけど、私でよかったら相談に乗るよ?」

 

 

 

「え?……あ、はい、えーっと……どちら様ですか?」

 

 

 

ピンク色の髪の女性……

何だかこの人、見たことあるような気が……

 

 

 

「そんなこと気にしなくていいの。それよりも、話してごらんなさい」

 

 

 

「は、はい。よろしくお願いします……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程そう言うことね。なら、素直に謝りに行きましょう。私も一緒に行ってあげるわ」

 

 

 

「え!? それは申し訳ないですよ!! 話を聞いてもらっただけでも申し訳ないのに……」

 

 

 

「いいのいいの。さ、行きましょ」

 

 

 

何だろう、この人と話していると、とても安心した気持ちになれます。

知らない人に付いて行っちゃいけないとは言いますが、この人なら信じられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このお店です。あの、ここまで大丈夫ですので……」

 

 

 

「ダメよ、それじゃ私が付いてきた意味が無いじゃない。ほら、早く入りなさい」

 

 

 

「は、はい……」

 

 

 

女の人に言われるがままにドアをノックして中に入る。

 

 

 

「あ、あの~……遅れました~……」

 

 

 

怖いです、正直怖いです。

先輩が怒ってそうで怖いです。

 

 

 

 

「随分遅かったね、加藤さん」

 

 

 

良かった、いつもの先輩の笑顔です!

これなら怒られずに……………………

 

 

ち、違います、この笑顔はいつもの先輩のじゃないです!

なんか黒いオーラ出てます!!

ものすごい怖いです!!!

 

何を言っても簡単には許してもらえそうにないです……

 

 

 

落ち着くんです桜。

こういう時のために、さっきの女性が付いてきてくれたじゃありませんか!

 

あの人ならきっと今の先輩をどうにか……

 

 

 

「い、いない!?」

 

 

 

後ろを振り向くと、そこには誰もいませんでした……

 

 

 

「あれ? あれ!?」

 

 

 

「ちゃんとこっち見ようか、桜ちゃん? 今何時か分かってる?5時だよ?5時。 言い訳なら聞いてあげるけど?」

 

 

 

「ひっ!! あの、その……メモを無くしてしまいまして……それで先輩に連絡をと思ったんですけど、スマホを置いて行ってしまって……その、ずっとどうしようか悩んでまして……」

 

 

 

「成程、電話しても出ないわけだ。それにしても……………」

 

 

 

せ、先輩がすごい呆れた顔で見てきます!

スマホをロッカーに置いてきてしまうのはよくあると聞くんですけど、やっぱりメモを無くすのってすごいおっちょこちょいですよね……

 

 

 

「加藤さん、ちょっと失礼するよ」

 

 

 

え? 先輩? 何で手を私に近づけてるんですか?

失敗が多すぎるから体で責任を取れということですか!?

待ってください! 私、心の準備が……そうじゃなくて!

私たちまだ中学生ですよ!? まだこういうのは早いというか……

 

目をぎゅっと瞑りながら縮こまっていましたが、先輩の手が私に触れたのは一瞬でした。

 

 

 

「これ……」

 

 

 

「ふぇ?」

 

 

 

私が想像していたことは起こらず、気の抜けた返事が出てしまいました。

 

 

 

「メモ、内側のポケットに入ってたけど……」

 

 

 

「あれ? そんなはずは……………あ、ああっ…あああ~!!!」

 

 

 

思い出しました!

完璧に思い出しました!!

落とさないように内側に入れたんでした!!!

 

 

 

「うぅ~……」

 

 

 

恥ずかしさのあまりその場に崩れてしまいました……

穴があったら入りたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、いつまで落ち込んでんの。行くよ」

 

 

 

「え? でも、二人で行ったらお店が……」

 

 

 

「オーナーに連絡して、今日はもう店を閉めていいって言われてるから。行くよ」

 

 

 

「か、買い物ぐらい一人で大丈夫ですよ。ほら、今度はちゃんとメモもスマホも持ってますので……」

 

 

 

「加藤さん?」

 

 

 

「で、でも……」

 

 

 

正直男の人と一緒に買い物は恥ずかしいです……

 

 

 

「行くよ?」

 

 

 

「はい、是非ともよろしくお願いします……」

 

 

 

何だかこれ以上逆らうのは危険だと思いました……

 

 

 

「よろしい」

 

 

 

こうして私と先輩は、一緒に買い物に行くことになりました。

 

 

 

先輩のいない間に、メモに無いものをいっぱい籠に入れてしまい危うく買いそうになってしまいました。

もちろん、先輩をまた怒らせてしまいました……

 

 

 

 

必要だと思ったんです!!!

 

 

 

 

 

ごめんなさい………

 

 




女の子視点って難しいですね...

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昔話3

まだあの人の視点です

ちょっと今までと書き方が違います(些細な変化ですが)。
今までの話も、これに合わせて少しずつ書き直していきます。

大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございます!


 

まだまだ私、加藤 桜の話です。

 

今は冬、3年生の先輩は受験で忙しいので、最近は私とオーナーだけです。

オーナーも店の事は私と先輩に任せているので、誰もシフトに入れないとき以外は店にいません。

 

寂しいです.....

 

 

 

「はぁ......」

 

 

 

最近良くため息が出るようになっちゃいました。

しかもボーっとすることも増えてきました。

 

でも、お客さんの前ではちゃんとしてるんですよ?

あんまり呆けてると怒られてしまいます。

 

だ、暖房が付いてるのがいけないんです!

そうに決まってます!

 

外寒いので消しませんが。

 

 

 

 

よしっ、後は掃除だけですね。

まずはテーブルを拭きましょう!

雑巾を持って来て......

 

あれ? なんだか視界がぼやけて......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだかふわふわした気分です。

体は少し暑いくらいですが、おでこの辺りがひんやりしてて何だか気持ちいいです。

 

あれ? 私お店の掃除をしていたはずなんですけど......

 

 

 

「お店っ!!」

 

 

 

「うおぉっ!!」

 

 

 

あれ? 見知らぬ部屋です。

 

あれ? 今確か先輩の声が......

 

 

 

「だ、大丈夫? 加藤さん」

 

 

 

「え? 先輩、ここは」

 

 

 

「ここは俺の家。部屋は葵姉さんのを借りたんだけどね。茜も受験だから、流石に俺の部屋はまずいと思ってさ。ところで、オーナーから電話があったときはビックリしたよ。店閉めるときはオーナーに連絡するはずなのに、来てないって聞いてさ。急いで来てみたら加藤さんが倒れてて、俺加藤さんの家知らないから、ひとまず俺の家に連れてきたんだよ」

 

 

 

「そうでしたか......その、ご迷惑をおかけしてすみません、直ぐに帰ります」

 

 

 

「ダメだよ、加藤さん。結構熱が高いんだ。しかも結構暗くなってるし、今日は家に泊まってきなよ」

 

 

 

「と、ととと泊まり!? それこそご迷惑をおかけして......」

 

 

 

「最近加藤さんに結構仕事任せちゃってるから、そのお詫び。しっかり休んで、体治さないとだよ」

 

 

 

「で、でも、先輩とお泊り......」

 

 

 

「いや、さっきも言ったけどここ葵姉さんの部屋だから。それに加藤さんを俺の部屋に連れてくと、茜と光がうるさそうだし......」

 

 

 

そうだった、ここは葵様の部屋。

先輩が頼んで貸してもらってるんだ......

 

ん? もしかして先輩って、茜様と光様と同じ部屋?

 

 

 

「お、女の子二人と相部屋なんて良くありません!」

 

 

 

「お、落ち着いて加藤さん。いきなりどうしたの?」

 

 

 

「あ...すみません先輩。つい」

 

 

 

「まあ、あまり年頃の男女が同じ部屋ってのは良くはないと思うけど、茜も光も、俺の妹だよ? 手なんて出さないよ」

 

 

 

「で、ですよね......良かった......」

 

 

 

「ん? 何が良かったの?」

 

 

 

「い、いえ! 何でもありませんよ!? ただバイトの先輩が、妹フェチでなくて良かったってだけです」

 

 

 

「待って! 妹フェチなんかじゃないから!! 茜は発育が絶望的だし、光に至っては小学生だぞ!? 俺はもうちょっと大人な感じで、それなりにスタイルの良い人の方が」

 

 

 

「ふーん、そうなんですか」

 

 

 

「なんで加藤さん不機嫌なの?」

 

 

 

「何でもありません!!」

 

 

 

「う、うん」

 

 

 

何でしょう、すごくもやもやとした感じです。

 

 

 

「でも、加藤さんってしっかりしてるよね。あんまり浮ついてないというか……でもまだ失敗は多いからしっかりしてるわけではないのか」

 

 

 

「上げて落とさないでください」

 

 

 

「ははは、ごめんごめん。そうだ、もうお粥出来てるだろうから、ちょっと待ってて」

 

 

 

「すみません、晩御飯まで」

 

 

 

「気にしないでよ。さっきも言ったでしょ? 加藤さんの風邪は、俺のせいでもあるんだ

から。これぐらいはさせてよ」

 

 

 

「では、お言葉に甘えて......」

 

 

 

「うんうん、素直な反応が一番。ちゃんと寝ててよ?」

 

 

 

そう言って、先輩は部屋から出ていってしまいました。

 

何でしょう、とてもドキドキしてます。

恥ずかしいといわけではないんですが、先輩と話しをしていると鼓動が早くなるというか......

 

こ、これは風邪のせいです! きっとそうです!!

 

そんなことを考えていると、ドアがノックされました。

先輩でしょうか?

 

 

 

「はい」

 

 

 

とりあえず返事はしておかないと

 

 

 

「ごめんね、起こしちゃったかな?」

 

 

 

部屋に入ってきたのはなんと葵様でした。

葵様の部屋なんだから、葵様が入ってくるのは当然なのですが、先輩がいた時には誰も入ってこなかったのでびっくりしました。

 

 

 

「いえ、先程まで先輩とお話をしていたので、大丈夫ですよ」

 

 

 

「優君が女の子を抱っこして帰ってきたときはビックリしちゃった」

 

 

 

「だ、抱っこですか!?」

 

 

 

「うん、お姫様抱っこ」

 

 

 

「はわ、はわわわわ......///」

 

 

 

倒れてからの記憶が無いので、よく分かりませんが......

私、先輩にお姫様抱っこされちゃったんですか!?

 

 

 

「冗談よ、本当はおんぶして帰ってきたの」

 

 

 

「うぅ......」

 

 

 

王家の人ってみんなSなのでしょうか。

それとも私がいじりやすいだけなのかも......

 

 

 

「熱はもう大丈夫? 優君が連れてきたときには、気は失ってるようだったけど、苦しそうだったから」

 

 

 

「まだ熱はありますけど、先輩のおかげで何とかなりそうです。ご心配をおかけしてすみません」

 

 

 

「あんまり気にしないで。優君から大体話は聞いたけど、女の子に仕事を任せっきりだ

なんて、後でお説教しとかなきゃ」

 

 

 

「いえ! これは私の不注意と言いますか、健康管理が出来ていないと言いますか、とにかく先輩のせいではないんです! 先輩に任せてくださいって言ったのは私ですから」

 

 

 

「加藤さんって優しいんだね。優君には少し勿体ないかも」

 

 

 

「ふぇ?」

 

 

 

「ううん、何でもないの。それよりも、随分汗かいてるね。今拭くから、上脱いで」

 

 

 

「ええっ!? は、恥ずかしいです!!」

 

 

 

「だ~め。早く拭かないと、体冷えちゃうでしょ? いいから早く」

 

 

 

「うぅ......」

 

 

 

葵様にせかされるようにして上を脱いで下着姿になります。

女同士とはいえ、流石に恥ずかしいです......

 

葵様は優しく拭いてくださるので、何だか気持ちがいいです。

 

 

 

 

「前も拭いてあげようか?」

 

 

 

「そこは自分でやります!!」

 

 

 

やっぱり王家の人はSです!

私の反応を見て楽しんでるんです!!

 

それに、私の胸は小さいので余計に恥ずかしいです......

さっき先輩は大人な感じでスタイルの良い人が好みだと言ってました。

なんだか悔しいです……

 

はっ! なんでこんなこと考えてるんですか!? 早く拭かないと冷えてしまいます!

 

 

 

「ごめん遅くなっちゃった! 茜たちに質問攻めにされちゃっ......て」

 

 

 

「「......え?」」

 

 

 

お盆を持ちながら、先輩が入ってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

今の私は上を脱いでて......

前を拭いていたので当然下着も脱いでて......

しかも丁度ドアの方に体を向けてて......

 

 

 

 

 

 

 

「きゃ、きゃあああああああ!!」

 

 

 

「あ、いや! これは事故! そう事故なんだ!! 別に覗こうだなんて......」

 

 

 

「優君?」

 

 

 

「あ、葵姉さん!? こ、これはほんとに事故なんです!!」

 

 

 

「とりあえず、下でお話ししましょう?」

 

 

 

「......はい」

 

 

 

お盆を置いた先輩と、葵様が部屋から出ていきました。

 

私はすぐに前を拭き上を着ると、布団の中にもぐりこんで悶えました。

 

 

 

「先輩に......は、は、裸を、見られた......」

 

 

 



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勉強

すみません。一昨日は忙しく、昨日は野球を見てました......

ストック貯めるどころじゃねぇ!

今回は割と短めです...


 

「先輩覚えてますか? 私結構恥ずかしかったんですよ?」

 

 

 

「う~ん、看病をした記憶はあるんだけど......」

 

 

 

今俺は桜ちゃんの住んでいるアパートに来て勉強を教えている。

 

勉強の合間に、懐かしむように昔話をしていた。

 

 

 

「ちょっと待ってて、今思い出すから」

 

 

 

「思い出さなくていいです!!」

 

 

 

「えぇっ!? 桜ちゃんが覚えてるかって聞いたんだよ?」

 

 

 

「乙女の裸なんて思い出さないでください! 変態ですか!!」

 

 

 

「理不尽だ!!」

 

 

 

女の子って難しい......

 

 

 

「そう言えば、最初名字で呼んでたのに、いつ名前で呼ぶようにしたんだっけ?」

 

 

 

「覚えてないなら思い出さなくていいです!」

 

 

 

なぜか拗ねられてしまった......

 

 

 

「それよりも、俺がさっき言った問題は解けたの?」

 

 

 

「......まだです」

 

 

 

少し形成が悪くなっても、勉強の話を持ち掛ければ優位になるので、何か失言をしてもこの時ばかりは身の安全を保てる。

 

多分。

 

 

 

「先輩、この問題が分からないです」

 

 

 

「......。」

 

 

 

「そんな目で見ないで下さい!」

 

 

 

いや、だってねぇ。

 

 

 

「この系統の問題聞くの何回目だっけ?」

 

 

 

「さ、3回目......じょ、冗談です! 本当は7回目です!! ですのでグリグリだけは!!」

 

 

 

桜ちゃんの頭にセットしていた両拳を放す。

 

 

 

「はぁ、何回も聞いてくれるのはいいんだけど、せめて途中まで解けるようにしよう?」

 

 

 

「うぅ、すみません......」

 

 

 

考え方を教えた後は、ひたすら問題を解かせる。

桜ちゃんは俺と同じタイプで、好きな教科の勉強はするのだが、嫌いな教科は全く勉強しないので、誰かがやらせる必要があるのだ。

 

桜ちゃんの場合は先輩である俺。

俺の場合は茜か葵姉さんといったところだ。

 

 

 

「じゃ、一通り解いたら起こしてね。おやすみ!」

 

 

 

「あ! 乙女のベッドで勝手に寝ないでください!!」

 

 

 

「......。」

 

 

 

「くっ! 狸寝入り......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先輩が寝てしまったので、仕方なく勉強を再開したのですが、なにせ一番苦手な数学なのでかなりイライラします......

 

もぉ~! 何で数学なんてやんなきゃいけないんですか!!

 

 

何で点Pが動くんですか!

何で一緒に登校しないんですか!!

グッドタイミングで忘れものなんかしないでください!!!

 

 

とにかくイライラします!

これはもう何かで憂さ晴らしするしかありません!!

 

 

顔を上げると、丁度眠っている先輩が......良しっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてください先輩、解き終わりました!」

 

 

 

「んにゃ......あれ? もう終わったの?」

 

 

 

「ばっちりですよ!」

 

 

 

自信満々にノートを見せてくる桜ちゃん。

 

 

 

「どれどれ......おぉ、やれば出来るじゃん!」

 

 

 

「ほんとですか!? やったー!!」

 

 

 

嬉しそうにバンザイする桜ちゃん。

7回目だけど、最終的には出来たから良しとするか。

 

 

 

「おっと、もうこんな時間か。そろそろ帰らないとな」

 

 

 

「先輩、今日はありがとうございました!」

 

 

 

「暇なときはいつでも勉強見てあげるからね。次のシフトは明日だけど、無理しないでね」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

 

 

「あらお帰り優......ぷぷっ」

 

 

 

「どうしたのかなねえ?」

 

 

 

「ううん、何でもないわ」

 

 

 

「? まあいいや」

 

 

 

かなねえが笑いをこらえきれなかったようだが、何かあったのだろうか......

 

 

 

「ただいま、茜、光」

 

 

 

「「お帰り優 (ちゃん)......ぷっ、あはははは!」」

 

 

 

「どうしたんだよお前ら、突然笑い出して」

 

 

 

「優、何かの罰ゲーム? あはははは!」

 

 

 

「優ちゃん面白すぎ! あはははは!」

 

 

 

「?」

 

 

 

なんだ? 俺の顔に何かついてるのか?

 

疑問に思いながら洗面所に向かうと......

 

 

 

 

 

「なっ!!」

 

 

 

俺の顔には落書きされた跡が。

出かける前はもちろん何も書かれていなかったので、おのずと犯人は断定できる。

 

成程......

 

直ぐに自撮りし、添付して犯人にメールを送る。

この時間帯は暇なはずなので、メールを見ればすぐに返信が返ってくるはずだ。

 

 

 

 

 

Prrrr...

 

 

来たか。

電話が来たので、すぐに出る。

 

 

 

「どうしたの桜ちゃん? この時間には珍しいね」

 

 

 

「せ、先輩!? 違うんです!! あの落書きは、その......起きたら言おうと思ってたんです! 信じてください!!」

 

 

 

「次のバイトが楽しみだね、桜ちゃん?」

 

 

 

「ま、待ってください先輩! お願いですから話をっ!」

 

 

 

ツー、ツー、ツー......

 

 

 

 

 

この後しっかりとお仕置きされた桜ちゃんでした。

 

 




平均一日一話になるように埋め合わせします!

後、原作とアニメの内容がごっちゃになってて、順番がハチャメチャですが、作品に影響は無いので気にしないでください!


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喧嘩

お待たせしました~


 

「化学なんて嫌いだ~」

 

 

 

「何言ってんの優、覚えるだけじゃん......」

 

 

 

「お前なぁ、興味の無いもんほど覚えられないものは無いぞ」

 

 

 

「それは......分からなくもないけど......」

 

 

 

「だろ? だから化学の勉強なんてする必要が無いんだよ」

 

 

 

「でも、赤点取ったらバイトさせてもらえないよ?」

 

 

 

そうだった!

高校で部活をやらずにバイトをするときの約束として、赤点を取ったら補習期間が終わるまでバイトに出れないのだ。

 

 

 

「優が私に数学教えてくれるんだったら、私が化学の面倒見てあげてもいいけど?」

 

 

 

「めんどくさいから嫌だ」

 

 

 

「なんでよ!? お互いwin-winじゃん!」

 

 

 

「だって茜、何回教えても覚えないんだもん」

 

 

 

「うっ!それを言うなら優だって、途中で逃げ出すくせに!」

 

 

 

「俺は効率よく勉強してんだよ!」

 

 

 

「そんなこと言って出来たこと無いじゃん!」

 

 

 

「人には休憩が大事なんだよ!」

 

 

 

「それで出来ないんだから意味ないでしょ!」

 

 

 

「茜の分からず屋!!」

 

 

 

「優の頑固者!!」

 

 

 

「「ぐぬぬぬ......ふんっ!!」」

 

 

 

お互いに意見が合わずに言い争いになってしまう。

それだけならいいのだが、珍しく喧嘩してしまった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「......。」」

 

 

 

『はぁ......』

 

 

 

今日は父さんが国際会議に出席し、母さんがその付き添いをしているため今夜は兄妹だけの食事なのだが...

 

とても気まずい空気が流れている。

原因はもちろん俺と茜の雰囲気。

 

お互いに敬遠しているため、対角線上の端っこに座っている。

 

 

 

「「ごちそうさま......ふんっ」」

 

 

 

茜と言葉が重なってしまう。

普段なら気にすることは無いのだが、喧嘩中はなんともイライラする。

 

俺と茜は食器を片付けると、部屋に戻る。

終始無言である。

 

 

 

「あの二人何があったのよ」

 

 

 

「優兄さんと茜姉さんて滅多に喧嘩しないよね?」

 

 

 

「いつもなら、言い争いになっても直ぐに何事もなかったように話すのに......」

 

 

 

「光が言うには、昼頃からずっとあの調子らしい」

 

 

 

「も~、居心地悪いよ!」

 

 

 

「優お兄様と茜お姉様、仲直りして欲しい......」

 

 

 

「何とかしないといけないわね」

 

 

 

兄妹たちの中で、思いが一つになった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「......。」」

 

 

 

次の日。

俺たちの部屋にはペンを動かす音、紙をめくる音だけが部屋に響く。

 

一通りやることを終えた俺は、休憩に入ると同時にスマホを見る。

すると、一通のメールが届いていた。

 

 

 

 

 

 

 

To 先輩

From 桜ちゃん

 

もしよろしければ、今日喫茶店で一緒に勉強しませんか?

今日はお店が休みなので、オーナーが使っていいと言ってくれたんです!

 

 

 

 

 

 

 

茜と喧嘩中で部屋に居にくい俺にとって、桜ちゃんからのこの案は嬉しいものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ桜ちゃん」

 

 

 

「いえ、こちらこそ急な話だったのにありがとうございます!」

 

 

 

「ここなら勉強がはかどりそうだ」

 

 

 

「先輩の家は騒がしそうですもんね......あっ、別に悪い意味ではないですよ!?」

 

 

 

「気にしてないよ、ほんとの事だしね。じゃ、早速始めようか」

 

 

 

 

 

 

二人で勉強をやること二時間、桜ちゃんが分からない所を聞いてくれるので、適度な休憩を得られている。

でも流石にしっかりと休みたいので、二人分のコーヒーを淹れる。

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

「熱いから気を付けてね」

 

 

 

自分の教科書を見つめる。

ただその目は焦点が合っていなかった。

 

 

 

 

「先輩、どうかしましたか?」

 

 

 

 

「え? 何でもないよ」

 

 

 

「そうですか......何か難しい顔をしていたので」

 

 

 

「ごめんね、心配かけさせちゃって。大丈夫だよ、ほんとに何もないから」

 

 

 

「もしかして、兄妹の誰かと喧嘩でもしましたか?」

 

 

 

す、鋭い......

女の勘というやつか。

 

 

 

「どうしてそう思うの?」

 

 

 

「先輩が悩むなんてこと滅多に無いですから、もしかしたらと思いまして」

 

 

 

「失礼な、俺だって悩むわ! はぁ、桜ちゃんにだったら話してもいいかな」

 

 

 

「ほんとに喧嘩したんですか!?」

 

 

 

「そりゃあ兄妹だし、喧嘩ぐらいはするさ。俺らは滅多に無いんだけどね」

 

 

 

桜ちゃんに茜と喧嘩した原因を教えてあげる。

 

 

 

 

 

 

「たまに思うんですけど、先輩って頑固ですよね」

 

 

 

「桜ちゃんにも言われるとは思わなかったよ......」

 

 

 

「自分が決めたことはやり通すって感じですね。怒ると私の話を聞いてくれませんし」

 

 

 

「それ桜ちゃんも同じだからね?」

 

 

 

「ともかく、聞いた限りだと悪いのは先輩です! 茜さんは先輩の事を思って言ってるんですよ?」

 

 

 

「それは、分かってるけど......。なんかムキになっちゃって」

 

 

 

「子供ですか! ともかく、ちゃんと謝るべきです」

 

 

 

最近桜ちゃんがしっかりと成長してる気がする。

体はまだみたいだけど......

 

 

 

「聞いてますか、先輩!?」

 

 

 

「は、はい」

 

 

 

どっちが先輩でどっちが後輩なんだか......

 

 

 

「帰ったら茜さんに謝ってください、いいですね!?」

 

 

 

「わ、分かったよ......」

 

 

 

「それと、ちゃんと茜さんの勉強も見てあげてください。私は兄妹がいないのでよく分かりませんが、せっかく妹さんが頼んでるんですよ? それに応えるのは兄の使命だと思います」

 

 

 

桜ちゃんの言葉が心に突き刺さる。

 

 

 

「でも、あいつ覚え悪いし......」

 

 

 

「私も悪いじゃないですか」

 

 

 

「分からず屋だし......」

 

 

 

「でも先輩は頑固者です」

 

 

 

「胸小さいし......」

 

 

 

「先輩、何か言い残すことはありますか?」

 

 

 

しまった、特に何も考えずに失言してしまった!

最近胸の話を桜ちゃんの前でしないようにしていたから忘れていたが、桜ちゃんはあの茜以下なのである。

しかも現状立場が上なのは桜ちゃんである。

 

何とか平謝りでその場をやり過ごすが、次からは立場を考えなければ......

 

 

 

「とにかく、今日の勉強会はこれまでにして、先輩はさっさと茜さんと仲直りしてきてください」

 

 

 

「え、もう終わりにしちゃうの? せっかくオーナーが使わせてくれてるんだから時間いっぱい使った方が......」

 

 

 

 

「早く仲直りしてもらわないと、私の気が済みません!」

 

 

 

「えぇ......」

 

 

 

「とにかく! 早く仲直りしてきてください!」

 

 

 

桜ちゃんにせかされるようにして店を追い出された。

 

茜に何て言えばいいんだろう......

 

 




自分には兄妹がいないので、想像でこんな感じかな~と。

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秘密兵器

遅くなりました......野球見てたんです...勝って良かったです...

ヨシ―ダさん、活動報告コメントありがとうございます!


 

「くっそ~......」

 

 

 

後輩に店を追い出された俺は、とりあえず家へと向かう。

仲直りするといっても、特に悪いことをしたとは思っていないため、気が進まない。

 

そう思っているうちに、家へと着いてしまった。

 

 

 

「た、ただいま~」

 

 

 

誰も返事をしない。

父さんも母さんもまだ帰ってはいない。

テストが近い問うこともあり、皆部屋にこもっているのだろうか。

 

部屋に戻ろうとするが、茜と顔を合わせるのも気まずいためリビングへと向かう。

 

 

 

「あ、やっと戻ってきた」

 

 

 

そこにはテーブルに座りながらアイスを食べているかなねえがいた。

休憩中だったか。

 

 

 

「ただいま、それ俺のアイスだよね?」

 

 

 

「一個ぐらいいいじゃない。そんなにケチケチしてると社会に出てからお姉ちゃん不安よ」

 

 

 

「かなねえに言われたくない」

 

 

 

「そんなことは今どうだっていいわ。優、私の部屋に来なさい」

 

 

 

「え?」

 

 

 

姉から唐突に部屋に来いと告げられる。

かなねえの部屋に呼べれるのは珍しい。

 

 

 

「どうせ自分の部屋に戻るのは気まずいからって、ここで勉強しようって思ってるんでしょ?」

 

 

 

「うっ......」

 

 

 

「だったら私が教えてあげるから部屋に来なさい。休憩したくてここに来た人の迷惑でしょ?」

 

 

 

 

「まぁ、確かにそうなんだけど。いきなりどうしたの? なんか気持ち悪い」

 

 

 

「アイス投げるわよ」

 

 

 

「ごめんって」

 

 

 

かなねえに連れられて部屋に行く。

高校に入ってから部屋に行くのはあんまり無かったな。

 

 

 

「なんかかなねえっぽい部屋」

 

 

 

「それは褒め言葉でいいのかしら?」

 

 

 

「一応ね。ところで、何で俺を部屋に呼んだの?」

 

 

 

「さっきの言ったでしょ。あんたの勉強を見てあげるって言ってんの」

 

 

 

 

「嘘だね。栞以外に厳しいかなねえがそんなことを言うはずがない」

 

 

 

 

「はぁ。なんかムカつくけど、確かにその通りよ」

 

 

 

「それで、ほんとの目的は?」

 

 

 

「あんた茜と喧嘩してるでしょ」

 

 

 

「......うん」

 

 

 

「あんたたちの雰囲気が悪いと、あたしらまで雰囲気悪くなっちゃうの。どうにかしなさい」

 

 

 

「仲直りしろとは言わないんだね」

 

 

 

「そりゃあ、あんたらの喧嘩に口を出すつもりは無いわ。でもそのせいで悲しむ人がいることは覚えておきなさい」

 

 

 

「悲しむ?」

 

 

 

かなねえの言ったことに首をかしげていると、突然袖を軽く引っ張られる。

引っ張られた方に視線を向けると......

 

 

 

「優お兄様と茜お姉様、喧嘩しちゃ嫌なの」

 

 

 

栞がか細い声で、だがしっかりと意思がこもった声で言う。

 

 

 

「栞? これはお兄ちゃんとお姉ちゃんの問題でな?」

 

 

 

「喧嘩しちゃいや!」

 

 

 

「えと......その......」

 

 

 

「嫌!!」

 

 

 

「......。」

 

 

 

栞の目に涙がたまっていく。

 

 

 

(おいかなねえ! もしかしてこれを狙ってたのか!?)

 

 

 

(さあどうでしょうね。早くどうにかしてあげないと、栞泣いちゃうわよ?)

 

 

 

かなねえがしてやったりという顔でこっちを見てくる。

 

 

 

(くそっ! 後で覚えとけよ!!)

 

 

 

(あら? あんたがそんなこと言える立場かしら?)

 

 

 

(ぐぬぬ......)

 

 

 

気を取り直して栞の方を向く。

 

 

 

「栞、お兄ちゃんが悪かった。ちゃんと茜と仲直りしてくるから、ね?」

 

 

 

「お兄様ほんと?」

 

 

 

「あぁ、もちろんだ。俺が嘘をつくと思うか?」

 

 

 

「栞お兄様を信じる!」

 

 

 

なんて純粋無垢な笑顔なんだ。

昔のかなねえを見てるようだ。

 

 

 

「優お兄様、もう茜お姉様と喧嘩しない?」

 

 

 

「......。」

 

 

 

無言で顔を逸らす。

いくら栞の頼みでも、こればっかりは約束できない。

 

 

 

「うぐっ...えぐっ...うぅ......」

 

 

 

「優が栞を泣かしたー」

 

 

 

「違う! いや、違わないけども!! こればっかりは双子だししょうがないというか......ああもう、分かりました! もう茜とは喧嘩しません!!」

 

 

 

「......ほんと?」

 

 

 

「ほんとだ! だから栞、お願いだから泣き止んで」

 

 

 

「うん!!」

 

 

 

なんていい笑顔だ。

まさかかなねえに仕込まれたのか?

だめだっ!

栞があのかなねえと同じ考え方を持ってしまう!

捻くれてしまう!!

 

 

 

「あんた失礼なこと考えてるでしょ? いや、考えてるわね。別にどっちだっていいわ。あたし今結構イライラしてるの。少しぐらい姉のストレス発散に付き合ってくれてもいいわよね?」

 

 

 

 

「なっ! 理不尽すぎるぞこの悪魔!!」

 

 

 

「ええ悪魔で結構よ。とりあえず栞は自分の部屋に戻ってね」

 

 

 

「はい、奏お姉様!」

 

 

 

「え、ちょっと待って栞。今いなくなられると俺の身の安全がっ!」

 

 

 

「さ~て、覚悟はいいわね? 部屋に来たときさんざん人の悪口言ってくれたんだから、それ相応の事をされるってことは理解してるわよね?」

 

 

 

「待って、それかなねえの図星だっただけじゃん! しかも言葉なんだから、俺の体にダメージがあるのはおかしいと思うんだけど!!」

 

 

 

「そう、ならあんたのバイトの後輩、桜ちゃんだっけ? あの子にあんたが女の子とデートしてたって伝えておくわ」

 

 

 

「嘘を言うつもり!? しかもそれ間接的に俺の体にダメージあるんだけど! 下手したら死んじゃうんだけど!?」

 

 

 

「つべこべ言わずに男なら覚悟を決めなさい」

 

 

 

「ちょ、待っぎゃああああぁぁぁぁ!!!」

 

 




頑張れニッポン!

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仲直り

予約投稿で投稿してるので、もしかしたら前の分を今日投稿するかもです


 

「「......。」」

 

 

 

仲直りすると言ったはいいが、部屋に戻るとやはり気まずい。

俺が返って来てからお互い終始無言で、光に至っては俺と茜を交互に見てはいつまた喧嘩を始めるかと心配している。

 

 

 

(光)

 

 

 

「はいっ!」

 

 

 

(ばか、声を出すな!)

 

 

 

(ご、ごめん優ちゃん)

 

 

 

(少しの間部屋から出ててくれないか?)

 

 

 

(別にいいけど、どうしたの?)

 

 

 

(いいから)

 

 

 

(むぅ、分かった)

 

 

 

能力を使って、茜に悟られぬように光を部屋から出す。

 

 

ふぅ......

 

 

一呼吸置き、茜の方を向く。

 

なんて言って切り出せばいいんだ......

喧嘩中の話程、最初の一言は重要である。

昔は葵姉さんが仲介役に入ってくれたが、この歳になってそれは情けない。

茜の方を向いたまま、どうしたものかと考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か用? 優」

 

 

 

突然茜が背を向けたまま声をかけてくる。

特に言葉を考えていなかったため、直ぐに言葉が出てこない。

 

 

 

 

 

「昨日の事なら、もう怒ってないよ」

 

 

 

「え?」

 

 

 

昨日あんなにお互い険悪だったのに......

 

 

 

「私ね......加藤さんに嫉妬してたんだと思う」

 

 

 

「......。」

 

 

 

「優は加藤さんに勉強を教えるのに、何で私には教えてくれないんだろうって」

 

 

 

違う、悪いのは俺の方だったんだ。

 

 

 

「いつも優が加藤さんと一緒にいると思うと、優がいなくなっちゃいそうで......」

 

 

 

違う! 俺は茜をもっとちゃんと見てあげなきゃいけなかったんだ。

兄として。

家族として。

 

 

 

「ごめん、私のわがままに優を付き合わせちゃって......」

 

 

 

「違うっ!!」

 

 

 

「優......?」

 

 

 

「お前は何も悪くない、悪いのは俺なんだ! 茜を...妹を...ちゃんと見てなかった。茜の気持ちも知らずに、茜に寂しい思いをさせてた。俺は、兄失格だな」

 

 

 

「そ、そんなことない! 優は誰にでも優しくて、中学の頃からバイトもやってて、しっかりしてて、私の自慢の兄なの!!」

 

 

 

「茜......」

 

 

 

「私の一番大好きなお兄ちゃんなの!!」

 

 

 

「茜っ!!」

 

 

 

咄嗟に茜を抱きしめる。

 

 

 

「これからは、ちゃんと茜の事を見るようにする。今まで茜にかまってやれなかったし、その分の埋め合わせみたいな感じになっちゃうけど。それでもいいか?」

 

 

 

「......うん」

 

 

 

茜を放すと、急に顔が熱くなった。

 

 

 

「わ、悪い! 急に抱きしめちまった」

 

 

 

「ううん、大丈夫。これも埋め合わせでしょ」

 

 

 

「そうだな」

 

 

 

そう言って、もう一度茜を抱きしめてあげる。

 

 

 

「でも、少し恥ずかしい」

 

 

 

「そりゃこっちもだ」

 

 

 

「さて、栞の所へ行くぞ」

 

 

 

「どうして?」

 

 

 

「ちゃんと仲直りした所を見せてやんないと、栞にまた泣かれても困るからな」

 

 

 

「栞を泣かせたの?」

 

 

 

先程までいい雰囲気だったのに、茜にジト目を向けられる。

 

 

 

「かなねえにしてやられたんだよ。ほら行くぞ」

 

 

 

ガタッ

 

 

茜と共に栞の所に行こうとした瞬間、ドアの方に物音がした。

 

 

 

「「.........。」」

 

 

 

茜とアイコンタクトを取り、瞬時にドアを開ける。

 

 

 

『痛っ!』

 

 

 

「「何やってんの?」」

 

 

 

ドアを開けた先には、栞と輝と遥を除いた兄妹たちがいた。

 

 

 

『あはは......散開!!』

 

 

 

「「待てっ!!」」

 

 

 

兄妹の大掛かりな鬼ごっこが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねーえー、ごめんってばー」

 

 

 

ムニムニ......

 

 

 

「ごーめーんー!」

 

 

 

ムニュ~......

 

 

 

「ふぉへんなひゃい~」

 

 

 

真っ先に捕まえた光を膝の上に乗せ、頬をいじくりまわす。

 

この行為は茜が全員を捕まえてくるまで続いたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ寝るか、電気消すぞー」

 

 

 

「「はーい」」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

電気を消し、ベッドに入ろうとしたところで異変に気付く。

 

 

 

「茜、ベッドから出ろ」

 

 

 

「嫌」

 

 

 

「そこは俺のベッドだぞ」

 

 

 

「知ってる」

 

 

 

「「......。」」

 

 

 

「分かったよ。俺はお前のベッドで寝るから」

 

 

 

「どうしてそうなるの!? 一緒に寝てよ!!」

 

 

 

何を言い出すんだこの妹は。

 

 

 

「それとも優は妹のベッドで寝て興奮したいんだ!」

 

 

 

「おい、なんてこと言うんだ! 断じてそんなことはない!!」

 

 

 

「じゃあ一緒に寝よ?」

 

 

 

「それは......」

 

 

 

「埋め合わせしてくれるんじゃなかったの?」

 

 

 

「うっ......」

 

 

 

先程茜との仲直りの際に確かにそんなことを言った......

今日だけなら......

 

そう自分に言い聞かせながら、ベッドに入る。

 

茜が入っていたせいか、僅かなぬくもりがある、

落ち着け俺っ!

 

 

 

「ふふ~ん」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

茜が俺の腕に抱き着いてくる。

柔らかな感触とか、女の子特有の匂いとか......

 

 

はっ! あぶねえ、理性が飛びかけた......

 

 

 

 

 

 

「あたしも一緒に寝るー!!」

 

 

 

「ゴフッ!」

 

 

 

光が俺の腹にダイブしてくる。

 

 

 

左に茜、右に光というなんとも刺激的な夜を過ごした俺は、もちろん一睡もできなかった。

 

 




また運動初めてみようかと思います。

評価・感想・お気に入りお待ちしております!


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海水浴

気付いたら通算UA10000超えてました!
皆さん、この作品を見てくださってありがとうございます!!

PS sao見てきました。めっちゃおもろいやんけ。


 

今は夏休みということもあり、兄妹全員で海に来ていた。

 

 

 

「兄妹だけで海とか、よく父さんが許したね」

 

 

 

「まあな。流石に高校生が5人もいりゃ安全だろう」

 

 

 

「そうか?」

 

 

 

「そうだ。あまり気にするな」

 

 

 

「優ー! こっちで一緒にバレーしようよー!」

 

 

 

「はいよー」

 

 

 

茜に呼ばれ、岬、光、茜のバレー集団の中に混ざる。

先程まで一緒にいた修兄は誘われなかったが、気にしないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっかくだから2対2でやるか」

 

 

 

「いいね優兄。でもチームはどうするの?」

 

 

 

「そりゃあ無難に俺と光、茜と岬のチームだろ」

 

 

 

「やった、優ちゃんと一緒だ!」

 

 

 

「私とは組んでくれないの?」

 

 

 

「高校生二人で小学生二人を相手するのはまずいだろ」

 

 

 

「待って優兄、あたし小学生扱い!?」

 

 

 

「「確かに」」

 

 

 

「二人とも納得しないでよ!!」

 

 

 

「あ、能力で成長すれば均等にならない?」

 

 

 

「だがある部分が均等にならな......ゴフッ!」

 

 

 

「「ぶっ殺す!!」」

 

 

 

岬と茜の団結力が高まったとことで、勝負を始める。

ルールは5点先取。

能力の使用は無しといった感じだ。

 

 

 

 

 

「じゃあ始めるよ、そーれっ!」

 

 

 

「行ったぞ、光」

 

 

 

「任せて!」

 

 

 

岬からのサーブを光が受け、上がったボールを俺が光にトスしてやる。

 

 

 

「えいっ!」

 

 

 

「へへーん、甘い甘い!」

 

 

 

光が相手コートに返すも、岬がそれを拾ってそれを茜がこちらに返してくる。

 

 

 

「今度は優ちゃんが打ってね、それっ!」

 

 

 

「よしきたっ!」

 

 

 

光がレシーブして俺に渡してくる。

渾身の一撃を放つため、力を貯める。

 

 

 

 

「ま、待って優。本気で打つのは怖いから無し!」

 

 

 

茜のそんな声が聞こえるが、お構いなしに思い切り腕を振るう。

 

 

 

 

 

ぽんっ。

 

 

 

 

 

「あれ......? あだっ!」

 

 

 

目を瞑ってしゃがんでいた茜が、ボールが来ないので不思議に思って顔を上た瞬間にボールが当たる。

しかし威力は低いのでけがは無いはずだ。

 

 

 

「優兄上手だね!」

 

 

 

「授業でやってた時に、上手いやつらを見てたからな。それなりには出来るぞ」

 

 

 

「優ちゃん。まずは一点!」

 

 

 

「「いえーい」」

 

 

 

光とハイタッチを交わし、ゲームを再開する。

 

このままいけば俺のワンマンプレイでゲームが決まりそうだったが、光にもボールを触らせてあげたいのと、岬が中々の運動神経を持っていたため点の取り合いとなった。

 

4対4となり、後一点。

 

 

 

「ねえ優兄、これ勝った方に商品とか無いの?」

 

 

 

「え? あ~、そういえば考えて無かったな。よし、じゃあ勝った方は俺が今度プール連れてってやるよ」

 

 

 

『ほんと!?』

 

 

 

「行くなら入場料は払ってやるよ。光はまだ小学生だから俺が出すけど、茜と岬は負けたら俺の分を払うんだぞ?」

 

 

 

「「乗った!」」

 

 

 

「でも優ちゃん予定空いてるの?」

 

 

 

「バイトはあるけど、夏休みでも忙しさは変わらないし、夏祭りも行きたいだろ、それに用事もあるし......」

 

 

 

「用事って、例えばどんな?」

 

 

 

「そう言えば、桜ちゃんと遊園地に行くんだよね?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「ばか光! その話は茜の前でするなって......」

 

 

 

 

 

 

「遊園地......行くんだ? 加藤さんと......二人きりで? 私聞いてないよ?」

 

 

 

茜がなんかやばいオーラを出している。

 

 

 

「お、オーナーからチケット貰って、せっかくだから行こうって話だったんだ! 他に他意は無い、本当だ!!」

 

 

 

「ふふ......ふふふふ」

 

 

 

完全に茜が壊れた......

岬は身の危険を感じたのか、同じチームなのに茜から距離を取る。

 

 

 

「ゆ、優ちゃん頑張ってね......」

 

 

 

「待て光、兄を見捨てるのか!?」

 

 

 

光も同様に距離を取り、俺と茜の一騎打ちをなった。

サーブは茜からなので、必然的に俺が受けるのだが......

 

避けていいかな?

当たったら死んじゃいそう。

 

ん? 茜の体が光って......

 

 

 

「待て茜! 能力は無しのはずだろ!? お願いだから普通に打ってくれ!!」

 

 

 

「問答無用っ!!」

 

 

 

 

 

 

迫りくるボール。

本来なら重力に引かれて落ちるはずが、まっすぐに俺の顔めがけて飛んでくる。

スポーツをやっていない俺が避けれるはずもなく、意識が薄れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある土曜日、久々にバイトが無かったためゆっくりと寝ていられ......

 

 

 

「「あああああぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 

突然茜と遥の叫び声が聞こえて飛び起きる。

 

 

 

「遥の部屋からか、何やってんだあいつら」

 

 

 

目が完全に覚めてしまったため、様子を見に遥の部屋まで行くことにした。

 

 

 

「おーい、お前ら朝から何やって......え、何この状況?」

 

 

 

そこには呆れ顔の遥と、土下座みたいな恰好で床に突っ伏している茜がいた。

 

 

 

「茜姉さんのファンクラブサイトの事なんだけど、姉さんがスカートで飛び跳ねまくるから、その......色々とね」

 

 

 

 

「成程」

 

 

 

突っ伏している茜はまだ立ち直れないようだ。

 

 

 

「僕が何度か削除申請してるんだけど、中々消えなくて困ってたんだ。優兄さんからも申請してもらえない?」

 

 

 

「一応やってみるよ」

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言えない......

そのホームページを管理してるのが自分だなんて言えない......

画像のバックアップもしっかり取ってるなんて言えない......

しかも自分も茜の写真をupしてるとか絶対言えない......

 

 

 




fgoのイベントでグダグダ本能寺が始まりましたが、正直ノッブ5体は無理......


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プール前編

マジですみませんでした。
色々忙しくなってしまい、中々投稿できませんでしたが、今日からは、今まで通り投稿できると思います。

失踪はしないので、ご安心ください!!


 

『いえーい! プールだー!!』

 

 

 

「はぁ......」

 

 

 

現在、茜、光、岬、+αでプールに来ている。

ついでに遥も岬に無理やり連れてこられている。

計8人だ。

 

 

 

「何でお前が来てんだよ......」

 

 

 

なぜかちゃっかり付いてきている花蓮。

 

 

 

「えー? いいじゃん。てゆうか、何で私を誘ってくれないのさ!」

 

 

 

「うるさい。面倒だからだ」

 

 

 

「うわっ、本音が出てるよ。そもそも、光ちゃんだって友達連れてきてるじゃん!」

 

 

 

「良いんだよ、光がいつも世話になってるらしいからな」

 

 

 

光には友達を連れて来いと言ったが、花蓮には一言も言っていない。

 

 

 

「それなら私だって優に宿題見せてあげてるじゃん! 」

 

 

 

「戯けが! 宿題よりも妹の方が上に決まっていよう!!」

 

 

 

「じゃあもう見せないから」

 

 

 

「すみませんでした」

 

 

 

この変わり身の早さよ。

 

 

 

「優ちゃーん、早く入ろうよー!」

 

 

 

「はいよー」

 

 

 

全員を引き連れて入場する。

いつも公共施設を利用する際は茜がいるので貸し切りにするのだが、人目に慣れるため

に今回は無し。

 

その代わりに茜にはいつものツインテールをほどいてもらい、あまり人目を引かないようにした。

 

 

 

「ほんとにいいんですか? 私たちの分のお金も払ってもらって」

 

 

 

「いいって、気にしないで。いつも光がお世話になってるから、そのお礼だよ」

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

小さい子の笑顔っていいよね。

しかも礼儀正しいし。

最近の若者も捨てたもんじゃないな。

 

 

 

「......ロリコン」

 

 

 

「黙れ岬。お前の分だけ自腹にさせるぞ」

 

 

 

先日のバレーボール対決のせいで、岬と茜の分を余計に払わなくてはいけなくなった。

高校生2人、中学生1人、小学生3人分。

 

結構きつい......

 

 

 

 

 

「さて、ひとまずみんな着替えて、あそこの前に集合な」

 

 

 

『はーい』

 

 

 

女性陣と男性陣とで別れる。

といっても、男は俺と遥しかいないんだが......

 

 

 

「遥、光たちのおもり頼んだぞ」

 

 

 

「分かったよ」

 

 

 

「さて、行くか」

 

 

 

着替え終わったので待ち合わせの場所に行くが、やはり女性陣はいない。

そんなに時間がかかるものなのだろうか......

 

集合場所に着いた後、しばらくすると女性陣が到着する。

 

 

 

『お待たせー!』

 

 

 

「よし、全員そろったな。なら行くぞ」

 

 

 

「ちょっと待った」

 

 

 

全員が揃ったところで移動を開始しようとすると、花蓮に腕を掴まれる。

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「どうした? じゃなーい!! 優、あんた女の子の水着姿に何も思わないの!?」

 

 

 

「そんなこと言っても妹たちのはこの前見たし......あ、光の友達がいたな。だが相手は小学生だぞ? さすがに......」

 

 

 

「私は!?」

 

 

 

「あー、カワイイ―ゾ―」

 

 

 

「腹立ったから三発ぐらい殴らせて」

 

 

 

「おい花蓮、小学生も一緒にいるんだぞ! 流石に今日は暴力無しで!!」

 

 

 

「ちっ!」

 

 

 

小学生がいなかったら本当に殴りかねないので、今日は光達に感謝である。

 

 

 

「さて、とりあえず高校生組と小中学生組に分かれて行動だな」

 

 

 

「えー! 優ちゃんも一緒に遊ぼうよ!!」

 

 

 

「そうだよ優兄!」

 

 

 

「う~ん、お前らはともかく、光の友達たちがいいなら構わないけど......」

 

 

 

「優さんの事は光から聞いています! 是非、私たちと一緒に遊んでください!!」

 

 

 

「分かった」

 

 

 

光の友達からの頼みだ。

無下にするわけにもいかんだろう。

 

 

 

「このロリコン兄貴」

 

 

 

「.........。」

 

 

 

「ちょ、ちょっと待って優兄! ごめん、ほんとにごめん! もう言わないから!! お願いだから手放して~!!!」

 

 

何かを口走った岬にアイアンクロ―を喰らわせる。

え? 暴力は無じゃなかったかって?

これは躾だよ、し・つ・け。

 

 

 

「岬、次は無いぞ?」

 

 

 

「はい......」

 

 

 

 

 

 

その後、午前と午後とでグループを分けた。

 

午前は高校生組と小中校生組。

午後は中高生組と小中校生組+俺。

 

 

 

 

「さて、取りあえず流れるプールに来たんだが......」

 

 

 

「ちょっと待って優、一つ気になってることがあるんだけど」

 

 

 

「どうした花蓮。何でも言ってみろ」

 

 

 

「何で浮輪付けてんの?」

 

 

 

「泳げないからに決まってるだろ」

 

 

 

「......。」

 

 

 

花蓮がかなり呆れた目で俺を見てくる。

だがな! 泳げないものはしょうがないんだよ!!

 

 

 

「茜、優の泳ぎってどれぐらい深刻なの?」

 

 

 

「う~んとね、顔を付けて泳げない」

 

 

 

「......。」

 

 

 

「......。」

 

 

 

もう死にたい。

 

 

 

「さ、流石に午前中だけで泳げるようにするのは難しそうだし、今日の所は純粋に楽しもうか」

 

 

 

「そう言えば、この流れるプールは何処に向かってるんだ? 見たところ無限ループする感じじゃ無さそうだし」

 

 

 

「多分あそこだよ。一定間隔で波が来るっていう」

 

 

 

「よし、早速行ってみるか」

 

 

 

茜と花蓮が先に進み、俺はその後ろを浮輪に乗って付いて行く。

 

 

 

 

 

 

「お~、結構波が強いな」

 

 

 

「優、奥まで行ってみようよ!」

 

 

 

「よし、行くか」

 

 

 

「あ、待ってよ二人とも」

 

 

 

茜に浮輪を引っ張られながら、波の発生地へと連れてかれる。

 

 

 

「ん? なんだか人が減ってるような......」

 

 

 

「もうすぐお昼だし、皆戻ってるのかも」

 

 

 

「成程、ならここは俺たちが独占だな」

 

 

 

 

 

 

『ただいまより、大波が発生いたします。十分注意してください』

 

 

 

 

 

 

「「「え?」」」

 

 

 

ゴゴゴゴゴ!!

 

音のする方を向くと、発生地の方から大波が現れる。

 

 

 

「「「ぎゃああああぁぁぁぁ!!!」」」

 

 

 

大きな波は、そのまま三人を飲み込んだ......

 

 

 

 

 

「う......あ、あれ? 俺たち確か波に飲まれて......」

 

 

 

波に飲み込まれてた際の記憶はないため、何が起こったのかは分からないが、とにかく無事だったらしい。

 

どうやら奇跡的に浮輪の上に乗れたらしく、水面に浮かんでいるのだが、なぜか温かい。

人のぬくもりだろうか。

 

それと右手に柔らかい感触が......

 

 

 

 

「あ、いたいた! おーい、優、花蓮!!」

 

 

 

少し離れたところから茜の声が聞こえる。

 

 

 

どうやら、茜だけ別の場所に流されたらしい。

 

 

ん? 茜だけ?

おそるおそる体を上げ、よく見ると......

 

 

 

「か、花蓮!?」

 

 

 

花蓮は俺の下敷きになっていたらしい。

 

 

 

説明すると

 

浮輪

花蓮

 

の順に積み重なっている。

 

 

 

「う......」

 

 

「花蓮気が付いたか! 大丈夫か?」

 

 

 

 

「まあ、なんとか......なっ!! 優、手、手!!」

 

 

 

「え? あっ! す、すまん!!」

 

 

 

「こ、今回のはお互い無事だったんだし......別にいいよ......///」

 

 

 

危なかった......

これが棒アニメのように転んだとかなら、ただでは済まないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「優?」

 

 

 

後ろから冷えた声が聞こえてくる。

振り向きたくない......

 

 

 

「人が心配してたのに......花蓮に何してんの?」

 

 

 

「あ、茜! これは事故なんだ!! ほら、全員無事だったってだけでも......ひっ!」

 

 

 

まずい、茜のオーラが半端ない。

 

早く逃げないと......でも俺泳げないし、これが絶体絶命というやつか!!

 

 

 

「で、でも今日は暴力無しのはずだろ!?」

 

 

 

「なら......」

 

 

 

茜が俺から浮輪を取り上げる。

今俺らがいる場所は、波の発生地付近なので、深い。

もちろん足はつかない。

 

 

 

「ちょ、茜! お願いだからそれだけは!!」

 

 

 

「さ、花蓮。そろそろ時間だから戻ろ」

 

 

 

「う、うん」

 

 

 

「待って二人とも! お願いだから置いてかないで!!」

 

 

 

足がつかないことと、元々泳げないこともあり、手足をバタバタさせながら助けを求めも、茜は振り向きもせずに戻っていく。

 

 

花蓮は少し申し訳なさそうな顔をしているが、茜が醸し出すオーラには勝てなかったのか、茜の後に付いて行く。

 

 

 

俺、生きて帰れるかな......

 

 




バンドリ楽しい!
蘭のピックアップまだかな......

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プール後編

約1ヶ月ぶりです......

ようやく余裕が出てきたので、執筆を再開しようと思うのですが、前程の速度は出せそうにないです。

気長にお待ちください!


 

「............。」

 

 

 

「さ、災難だったね優......」

 

 

 

茜に浮き輪を没収された俺は、溺れないように必死に手足を動かして、何とか戻ることが出来た。

 

ただし、相当な体力を持っていかれたため、今まさに死にそうなのである。

 

 

 

 

 

 

「あ、茜姉さん達が戻ってきたね」

 

 

 

「遅いよ優兄!」

 

 

 

「悪かったって。ほら、飯にしようぜ」

 

 

小学生組の相手をしていた遥と岬、小学生組と合流して昼食を取ることにした。

 

 

 

 

 

 

「優ちゃん、たこ焼き頂戴!」

 

 

 

「ほいよ」

 

 

 

「やったー! はむっ.......熱っ!!」

 

 

 

「熱いから気をつけろよ」

 

 

 

「遅いよっ!」

 

 

 

妹とのこういうやり取りは癒される......

 

 

 

「さて、皆食べ終わったな。じゃあ行くか!」

 

 

 

『はーい!』

 

 

 

午後は俺が小学生組の面倒を見ることになっているので、茜たちとは別れて別の場所に行く。

 

 

 

「ところで、光達は行きたい所とかあるか?」

 

 

 

「あ、あのっ! 私ウォータースライダーに乗ってみたいです!」

 

 

 

光の友達の1人、ちかちゃんがそう答える。

 

 

 

「ウォータースライダーか......。面白そうだが小学生は保護者同伴じゃないと滑らせてくれないんだよな~」

 

 

 

光達の行きたい所に行ってやりたいが、やはり危険な所は避けたいものである。

 

だがやはり、連れて行ってあげたい気持ちの方が強い。

どうしたものかと考えていると、光が何かを思いついたような顔をする。

 

 

 

「優ちゃんが私達の保護者になればいいんだよ!」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

ちょっと待て、俺が保護者に?

 

 

 

 

 

 

 

警察に通報されたりしないか?

 

 

 

「あ、でも優ちゃんじゃ保護者として見てくれないかな......」

 

 

 

「ん? どうしてだ?」

 

 

 

保護者同伴と言っても、しっかりとした人が一緒にいれば大抵何とか許してもらえた気がする。

 

 

 

「だって......背が......」

 

 

 

「.........。」

 

 

 

 

無言で光の頭に両拳をセットし、グリグリしながらウォータースライダーへと連行する。

 

光の友達は、俺と光のやり取りを微笑ましいといった感じで見ていた。

 

 

 

 

 

 

「そちらの3名様は小学生ですので、滑る際には保護者と一緒に滑って貰うことになりますが、よろしいですか?」

 

 

 

「ちかちゃん達は俺と一緒に滑っても大丈夫?」

 

 

 

「「はい!」」

 

 

 

4人纏めて滑るわけにもいかないので、1人1人俺と一緒に滑る。

 

 

 

「じゃあ最初は誰が行く?」

 

 

 

「あたし行きたい!」

 

 

 

勢い良く光が申し出てくる。

ここのウォータースライダーは俺も初めて体験するので、身内とならそんなに心配いらないはずだ。

 

何がとは言わない。

 

 

 

「では、保護者の方はここに座ってもらって、お連れの方は足の間に座ってください」

 

 

 

「よし、準備おーけーだよ!」

 

 

 

「光、しっかり掴まってろよ?」

 

 

 

「では、楽しんでくださいね~」

 

 

 

背中を押されて滑り出す。

 

ここのウォータースライダーは結構凝った作りで、何回も曲がりながらスピードが上がっていき、真っ暗なトンネルの中に入ると急に落ちるように速度が上がるため、絶叫系が苦手な人にはかなり辛いかもしれない。

 

 

 

「「いえーい!!」」

 

 

 

俺は絶叫系大好きなため特に問題はない。

光の方を心配していたが、こちらもかなり余裕らしかった。

 

 

 

 

 

 

「さて、次はちかちゃんだね」

 

 

 

「はいっ! 宜しくお願いします!」

 

 

 

光の友達という事もあり、かなり元気がいい。

 

 

 

 

 

 

 

「列があまり進みませんね」

 

 

 

「う~ん、新人の子とかが係をやってるのかな?」

 

 

 

先程よりも列の進みが遅い。

夏休みに入ったばっかりなので、まだ仕事に慣れない子が多そうだ。

 

バイトをしているせいか、すぐにこういった考えをしてしまう。

 

しばらくすると先程よりもスムーズに列が進むようになり、ほどなくして俺達の番になる。

 

 

 

 

「はい、では次の人どうぞ」

 

 

 

あれ? なんか聞いたことある声が.......

 

声のした方を見てみると、そこには何故か知った顔が.......

 

 

 

さ、桜ちゃん!?

なぜここにいるんだ?

確かに長期休暇の時は喫茶店以外にもバイトをしてるって聞いてたけど.......

なんて運が悪い!

 

1回目なら光が一緒にいたから何とか説明できそうだけど、今一緒にいるのは桜ちゃんにとって全く知らない女の子。しかも小学生。

 

 

 

バレたら間違いなく殺される......

 

 

 

最近学校でクラスの女子と会話をしたとか言うと、かなりの高確率で折檻されるか包丁を突きつけられる。

 

 

 

なぜだ......

 

 

 

とにかく目線を合わせずに指定された位置に座り、後は係員が背中を押すだけとなった。

 

良し! このまま行けばバレずに......

 

 

 

「その女の子は誰ですか? 先輩?」

 

 

 

「これは誤かっ!」

 

 

 

言い終わる前に背中を押されてスタートする。

 

 

 

 

 

 

もちろん滑ってる最中は、桜ちゃんにどう弁解しようか考えていた。

 

 

 

 

「さ、さて次は君だね」

 

 

 

冷や汗が止まらない。

 

 

 

震える体をどうにか動かし、またスタート地点に座る。

 

もちろん係員は桜ちゃんなわけで......

 

 

 

「2人目ですか、オイタガスギマスヨ? 先輩?」

 

 

 

「.........。」

 

 

 

もう何を言っても助からないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光達寝ちゃったね」

 

 

 

「結構はしゃいでたもんな」

 

 

 

帰りはぐっすりな小学生組だった。

 

 

 

「よし、じゃんけんで負けたやつがおんぶな」

 

 

 

『じゃーんけーん......』

 

 




週に1~3投稿できたらいいなぐらいです......

ps.執筆してると、他の作品も書きたくなる事ありません? そんな余裕無いですけどw


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夏祭り前編

大鉄人ワンセブンさん、するめーんさん、感想ありがとうございます!


「優ちゃん、夏祭り行こうよ!」

 

 

リビングで朝のニュースを見ていると、突然光から夏祭りに行こうと提案される。

 

 

 

「う~ん......行くならみんなで行くか。この前は俺らでプール行っちゃったしな」

 

 

 

「決定!」

 

 

 

「その前にちゃんと母さんに言っとけよ」

 

 

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 

「えっと、今日は何があったんだっけかな」

 

 

 

予定を確認するためにスマホのカレンダーを開く

 

 

 

 

 

10時~2時 バイト

 

17時~ 桜ちゃんと夏祭り

 

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

 

朝だというのにこの状況を理解しようと頭がフル回転する。

 

落ち着いて整理しよう。

 

 

 

① 光に夏祭りに行く約束をする

② 予定を確認すると既に桜ちゃんとの約束が

 

 

 

どうしよう......

 

 

 

「ねえ優! 浴衣どっちがいいと思う?」

 

 

 

いつの間にか茜が浴衣のパンフレットを手に訪ねてきていた。

 

 

 

「葵お姉ちゃんは水色で、かなちゃんと栞は紫で、岬はピンクで、光は黄色にするんだけど、私は赤か橙で迷ってるんだよね」

 

 

 

なんてこった。

既に夏祭りに行くという話は皆に伝わっているらしく、浴衣の準備まで始めてる。

おそらくかなねえが買ってくれるんだろうか。

 

 

 

「う~ん、どっちかっていうなら赤かな」

 

 

 

「わかった、じゃあ赤にする!」

 

 

 

「ところで茜、それはかなねえが買ってくれるのか? それとも母さん?」

 

 

 

「え? 優が買ってくれるんじゃないの?」

 

 

 

「は?」

 

 

 

「光がそう言ってたけど......」

 

 

 

「光いいいぃぃぃ!!!」

 

 

 

 

 

 

光に制裁を加えた後はバイトへ向かった。

 

確かに桜ちゃんと約束はしていたが、まさか今日だったとは......

 

前のプールの事もあるし、どうすれば......

 

 

 

バイトに行き作業を始めても、中々いい案が浮かばずにいた。

 

 

 

「優くん、少しいいかな」

 

 

 

「はい」

 

 

 

食器を洗っているとオーナーから声が掛かった。

 

 

 

「君は少し考え事をしているみたいだね」

 

 

 

「え、そんな顔してました?」

 

 

 

「君の癖は君のお母さんに似ているからね。それなりには分かるよ」

 

 

 

さすが、母さんの高校時代の後輩ということだけあってよく知っているらしい。

なぜ知り合ったかは未だに知らないけど。

 

 

 

「他の事を考えながら仕事をされると危ないからね」

 

 

 

「す、すみません! 気をつけます......」

 

 

 

「でも君がそんなに悩むなんて余程の事なんだろうね。もし良ければ聞かせてくれないかな? 私に何か力になれる事があるかもしれない」

 

 

 

確かに青春という名の戦国時代を生き抜いたオーナーなら、こういう状況を打開できる名案を思い付いてくれるかもしれない。

 

 

 

「実は......」

 

 

 

こうして包み隠さず今の自分の状況を説明した。

 

 

 

 

 

「成程。君は見知らぬ小学生を連れ回した挙句、約束を忘れて予定を入れてしまったと」

 

 

 

「あの、どっちも間違ってはいないないんですけど、もうちょっと詳しく纏めてもらわないと僕が社会から抹消される気がするんですよ。特に前半の部分とか」

 

 

 

「とにかく、予定をブッキングさせてしまったのは君の落ち度だ。こればっかりは自分で何とかするしかないね」

 

 

 

「ですよね......」

 

 

 

「と、今までなら言ってたんだけどね。先に来ていた桜ちゃんにね、今日は先輩と一緒にお祭りに行くんです。なんて笑顔で言われてしまったからね。何とかしてあげよう」

 

 

 

 

「あ、ありがとうございます! このご恩は一生忘れません!」

 

 

 

「話は帰り際にするから、取り敢えず君は仕事に戻りたまえ」

 

 

 

 

 

 

良かった、何とかなりそうだ。

 

 

 

 

 

「先輩。オーナーと何を話してたんですか?」

 

 

 

仕事に戻ったところに桜ちゃんが声をかけてくる。

 

 

 

「いや、大した事じゃないから気にしないで」

 

 

 

「先輩がそう言うなら私は気にしませんけど......」

 

 

 

その後はいつも通り時間まで仕事をした。

 

今日は俺と桜ちゃんのシフト時間を同じにしていたので、一緒に帰り支度をしていたのだが、打ち合わせ通りにオーナーに声をかけられる。

 

 

 

 

「2人ともお疲れ様。ところで、今日は桜ちゃんと優くんとで夏祭りに行くんだろう?」

 

 

 

「そうなんですよ! 先輩がどうしても私と一緒に行きたいと言ってたので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前...

 

 

 

 

 

「先輩、この前のプールは楽しかったですか? あ、ごめんなさい、答えなくても大丈夫です。楽しかったに決まってますもんね? 小学生の女の子を抱きながら、2回も。しかも違う子とでしたもんね。どうしたんですか先輩? 顔が真っ青ですよ? 楽しい事をして来たんですからもっと笑顔でいてください。ところで今度の日曜日に夏祭りがあるのは知ってますよね? いえ、別に無理に私なんかを誘ってくださらなくてもいいんですよ? 先輩は小学生の女の子が好きですもんね? たこ焼きをフーフーして食べさせあげたり、射的の打ち方を後ろから体をくっ付けて教えてあげたり、綺麗な花火を見ながら、君の方が綺麗だよって言ってあげたりするんですよね? 小学生の女の子に。私は先輩のそういう優しい所を本当に尊敬しています。でも先輩がどうしてもと言うなら、私が一緒に行ってもいいんですけど、どうしますか?」

 

 

 

 

 

「是非、一緒に夏祭りに行ってください......」

 

 

 

 

 

といったやり取りだった筈だ。

 

 

 

「ふむ、私も夏祭りに君たち2人で行くのは別に構わないと思っているんだが、場所はちゃんと調べてあるのかい?」

 

 

 

「はい! そこはちゃんと調べてありますよ。確かに30分ぐらいで着くはずです」

 

 

 

「成程......」

 

 

 

時間を聞いて少し考える様子を見せるオーナー。

 

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

 

「いや、最近ひったくりや誘拐事件が増えていてね。優くんが一緒にいるとはいえ相手は大人だ。それに夜道を襲われては桜ちゃんを護るのも困難だろう。それに片道30分となるとさらに心配だ」

 

 

 

「ですが、徒歩が無理となると移動手段が......あ、もしかしてオーナーが車を出してくれるんですか?」

 

 

 

「そうしたいのは山々なんだがね。今夜は忙しくて出来そうにない。ここで1つ提案なのだが、優くんの親御さんに車を出してもらうのはどうだい? 王族の車なら誰も手を出さないだろうしね」

 

 

 

「それは確かにそうですけど、急だとご迷惑ではないですか?」

 

 

 

そう俺に訪ねてくるが、父さんに頼めば何とかんるだろう。

 

 

 

 

「大丈夫だよ桜ちゃん。実際に運転するのは専用の人だし、最近は送迎の仕事を欲しがってたからね」

 

 

 

「ではそうさせてもらいます。心配してくださってありがとうございます、オーナー」

 

 

 

「では楽しんでくるといい」

 

 

 

 

 

お、大人ってすげぇ......

全然違和感無かった......

 

 




お待たせしました…

評価・感想・お気に入りお待ちしております!


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夏祭り中編

実は書いてる最中に、もしかしたらこれ4000行くんじゃないか?と思って中編を作りました。

大鉄人ワンセブンさん、コウさん、感想ありがとうございます!


「な、なぁ2人とも。やっぱり俺がこれに出るのは......」

 

 

 

俺、桜田 優は、悪魔2人に追い詰められていた。

 

 

 

「何言ってるの優。もう決まったことなんだからしょうがないでしょ?」

 

 

 

紹介しよう。

こちらが悪魔1号 桜田 茜。

 

 

 

「は、遥なら周りを誤魔化せても、俺は流石に無理というか......」

 

 

 

 

「そんな事ないと思いますよ? 先輩だって似合いますって!」

 

 

 

こちら悪魔2号(元天使) 加藤 桜。

 

 

 

「それでもっ......!」

 

 

 

俺は手に持っている紙を強く握り、歯を食いしばる。

 

そして目の前の悪魔に持っていたそれを見せつけて叫んだ。

 

 

 

「浴衣コンテストなんて、絶対に参加しないからな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【タイトル】

 

ドキッ! ○○夏祭り浴衣コンテスト

~今宵の浴衣美少女は誰だ?~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった?

 

 

 

 

 

遡ること2時間前......

 

 

 

 

 

「優ちゃんどう? あたしの浴衣!」

 

 

 

「中々可愛いぞ光」

 

 

 

「えへへー」

 

 

 

素直に褒めてやると、嬉しそうに目を細める光。

 

 

 

「虫除けちゃんと付けとけよ」

 

 

 

「はーい」

 

 

 

光は浴衣の袖を肩まで捲っているため、白い腕がさらけ出されている。

 

良い目の保養だ。

 

水着とはまた違う見せ方が良い。

 

 

 

「優、ど、どうかな?」

 

 

 

お次は茜である。

 

 

 

「おう、茜らしくていいと思うぞ」

 

 

 

双子の妹に対してそんな感想で良いのかと思われるが、もう既に褒め言葉のレパートリーが無い。

 

 

 

「ん? 茜、今日はツインテじゃないのか?」

 

 

 

「せっかくのお祭りだし......て言っても髪下ろしただけなんだよね」

 

 

 

「いつもよりおしとやかな感じがする」

 

 

 

「む、それっていつもはおしとやかじゃないって事?」

 

 

 

「そりゃあ、もちろおぉぉぉ!!」

 

 

 

言い終わる前に茜からアイアンクローを貰う。

俺の頭蓋から聞こえてはいけない音が聞こえ、今にも陥没しそうである。

 

 

 

「全く、優も早く支度初めてよね」

 

 

 

「はい.......」

 

 

 

まだ残っている痛みに耐えながらも、用意していた浴衣に着替える。

俺の浴衣は紺色のものであり、新しくかなねえに買ってもらったのだ。

 

勿論タダではなく、次の生徒会活動の手伝いを条件に......

 

 

 

「よし、着替えも終わって財布とスマホも持ったし完璧だな」

 

 

 

「優、加藤さんが来るんでしょ? 一応玄関で待ってたら? 他の皆ももう来るわよ」

 

 

 

既に支度が済んでいるらしいかなねえに言われて思い出す。

 

桜ちゃんとの約束(お祭り)と家族の予定(お祭り)が被ってしまったので、急遽一緒に行く事になったのだ。

 

 

 

不安しかねぇ。

 

 

 

 

「そうだな。じゃあ先に外でてるから、輝と栞の支度手伝ってあげて」

 

 

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ集合時間ではないので桜ちゃんは来ていないと思っていたが、いた。

 

浴衣は水色で落ち着いた感じを出しているが、そわそわとしてるのでだいぶ楽しみにしているのが見て取れた。

 

髪型はいつもと違い編み込んであるため、結構新鮮である。

 

数秒の間見とれていたが、ふと思いついたことがあったので実践する。

 

 

 

 

 

(早かったね、桜ちゃん)

 

 

 

「先輩!? ど、どこにいるんですか!?」

 

 

 

やはり急にテレパシーで話し掛けられるのはまだビックリするのだろう。

慌てふためく桜ちゃんだが、見てて楽しい。

 

 

 

(いつものテレパシーだよ。それより、今どこから桜ちゃんを見てるか分かる?)

 

 

 

(え? えっと......先輩のお部屋からでしょうか?)

 

 

 

(うんそうだよ。そこから窓が見えると思うから、しばらく見ててね)

 

 

 

(は、はい......)

 

 

 

勿論俺は部屋にはいない。

桜ちゃんが窓に集中している内に彼女の後ろに回る。

 

ゆっくりと近づいて立ち止まる。

至近距離である。

 

 

 

(先輩? 何も見えませひゃあぁぁぁ!!」

 

 

 

窓を見ていた桜ちゃんのめを手のひらで覆う。

傍から見たらこれから女の子を誘拐しようとする変質者に見えなくもないが、まあ何とかなるだろう。

 

あまり長く隠すのも可哀想なので、すぐに手を離してあげる。

全てを察したらしい桜ちゃんは、涙目になって顔を赤くしながら、恨めしそうに睨んでくる。

 

 

 

 

うん、かわいい。

 

 

 

 

「いきなり何するんですか先輩!」

 

 

 

「ごめんごめん、結構可愛かったもんだからついね。皆そろそろ支度終わるかもだけど、外で待つのもなんだし中入る?」

 

 

 

「いえ、さっき来たばっかりですので大丈夫ですよ......って! 今私にとって重要な事がサラッと言われた気がしたんですけど!? そういうのはもうちょっと雰囲気ってものを!」

 

 

 

「まあまあ落ち着いて、お祭り行く前に疲れちゃうよ」

 

 

 

「誰のせいだと思ってるんですかー!」

 

 

 

桜ちゃんの反応はやはり面白い。

 

 

 

「おーおーお2人さん、お暑いですなー」

 

 

 

「なんだ岬か、お前はもう済んだのか?」

 

 

 

「うん、だけど茜姉以外は皆もう来るよ。それよりも......さっきのやり取り茜姉が見てなくて良かったね」

 

 

 

「今度アイスやるから絶対に喋るなよ」

 

 

 

「了~解!」

 

 

 

たった今尊い命が救われた瞬間だった。

 

 

 

 

 

車の中では、他の兄妹たちに桜ちゃんとはどんな関係なのかを問い詰められ、茜からの殺気に何とか耐えながら受け答えしていた......

 

 

 

 

 

 

「着いたね、じゃあ各自自由行動で、20時までに此処に戻ってくるように」

 

 

 

『はーい』

 

 

 

葵姉さんからそう言い告げられてそれぞれ散らばる。

 

と言っても個人ではなく少人数でだ。

いくら家族+桜ちゃんできたとはいえ、総勢13名で移動するのは他の人の迷惑になる。

 

よって

 

葵姉さん、栞、輝、修兄、かなねえ

遥、岬、俺、桜ちゃん、茜、光

父さん、母さん

 

でグループを作り、それぞれ祭りを楽しむ事にした。

 

 




お待たせしてしまって申し訳ありません...


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夏祭り後編

お久しぶりです!
忙しい日々が終わったので、今日から前のように投稿していきたいと思います。

するめーんさん、感想ありがとうございます!


俺、茜、岬、遥、光、桜ちゃんの5人で行動を始めた俺達は、光の要望で射的屋台へと行くことにした。

 

 

 

「優ちゃん、あたしあれが欲しい!」

 

 

 

「お、猫のぬいぐるみか。任せろ!」

 

 

 

「やったー!!」

 

 

 

光から注文された猫のぬいぐるみは中々の大きさだが、問題は無い。

 

 

 

「あれ結構大きいけど大丈夫なの、優兄さん?」

 

 

 

「心配いらねぇよ」

 

 

 

遥に心配されたが、何の問題もない。

こういう時のために考えておいた策があるのだ。

だが、これは一人では成し遂げることが出来ない。

よって協力を求めるとしよう。

 

 

 

(茜、俺の体に触れるんだ。俺が打つ瞬間に能力でこの弾を.........)

 

 

 

「アホっ!!」

 

 

 

「いったぁぁ! おま、能力使うタイミング違っ......」

 

 

 

まだ俺が撃っていないというのに、何故か茜が能力を使って俺に弾を撃ってくる。

 

 

 

「私に頼らないで自分で取って!」

 

 

 

「え、優ちゃん茜ちゃんの能力使おうとしてたの......?」

 

 

 

「.........。」

 

 

 

光から冷たい目を向けられるが、夜なのに割と気温が高い今に至っては気持ちいい......。

 

 

 

 

 

 

 

パンッ

 

 

ポトッ

 

 

 

 

 

 

 

「あ、取れました!」

 

 

 

『え?』

 

 

 

俺達兄妹が茶番をしている最中に桜ちゃんが猫のぬいぐるみを撃ち落としていた…

 

 

 

「光ちゃん、良かったらこれどうぞ」

 

 

 

「ありがとう桜ちゃん!」

 

 

 

「まさか一発で取るなんて」

 

 

 

「セコイこと考えてた優兄とは比べ物にならないね!」

 

 

 

見事一発で獲物を仕留めた桜ちゃんは一躍ヒーローに。

 

 

 

 

 

 

「ドンマイ優」

 

 

 

「.........。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分回ったね」

 

 

 

「もう殆どの出店は制覇したんじゃない?」

 

 

 

「う~、食べすぎちゃった…...」

 

 

 

「次はどこ行こっかなー」

 

 

 

皆が楽しげに話す中、俺は意気消沈していた。

 

 

 

なぜなら......

 

 

 

射的での失態を取り返すべく、良いところを見せようとしたところまでは良かったが。

 

皆が参加した金魚すくいでは真っ先に紙が破け、くじ引きは5000円投資したにも関わらず当たりはゼロ。

 

最後の希望をかけたカラオケでは、本職の光に叩きのめされる始末。

 

もうやだぁ...おうちかえるぅ......

 

 

 

「せ、先輩元気だしてください。たまたまですって、こういう日もありますよ!」

 

 

 

先程から桜ちゃんが励まそうと声をかけてくれるのだが、今日の桜ちゃんは調子がいいのか運がいいのか、全てにおいて俺よりも良い結果を出している。

 

 

 

「このままじゃ......兄としての威厳がっ!!」

 

 

 

「最初の時点で威厳は無くなってると思うんですけど…...」

 

 

 

「 何か兄として誇れるものを得るまで今日は帰らないぞ!」

 

 

 

「あの、それでしたら先程何かのコンテストをすると言ってましたよ?」

 

 

 

「本当に!?」

 

 

 

「は、はい! 何のコンテストかは分かりませんが、受付に並んでる人は女性だけではなく男性もいたので、恐らくは男性も出れるものかと......」

 

 

 

「申し込んでくる!」

 

 

 

これで兄としての威厳が保たれる!

なんのコンテストかは知らないが、意地でも優勝してやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい速さで行っちゃいました......。あの茜さん、あれで良かったんですか?」

 

 

 

「うん、ありがとう桜ちゃん。あの駄目兄には根性叩き直してもらわないと」

 

 

 

「コンテストの内容的に根性は関係無い気が......」

 

 

 

「でも、優の女装姿見てみたいでしょ?」

 

 

 

「それは......はい//」

 

 

 

「それじゃあ何としてでも参加させないとね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

(夏祭り中編の冒頭へ戻る)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浴衣コンテスト順位

 

1位 桜田 遥菜(はるな) 旧名 遥

2位 桜田 優香(ゆうか) 旧名 優

 

 

 

 

後日、茜は俺が予定をブッキングさせていたことを母さんを通じて知っていたらしく、桜ちゃんには内緒にするという事で、買い物係三週間を言い渡されたとさ。




ちょっと短いですけど許してください......

後、最近BanG Dream!(バンドリ)にハマりまして、そっちの方の小説も書こうかなーと思ってたりします。

評価、感想、お気に入りよろしくお願いします!


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アイス

まだまだ夏は始まったばかり!
(実は夏編が飽き始めてる)

大鉄人ワンセブンさん、感想ありがとうございます!


リビングで岬と一緒にアイスを頬張っていると、ある事を思い出した。

 

 

 

「金が.........無いっ!!」

 

 

「いきなりどうしたの優兄?」

 

 

 

俺、櫻田 優の財布の中は悲惨な有様であった。

 

 

 

「岬、よく考えてみろ。俺がこの夏休み中何処に行ったのかを」

 

 

「えーと、プールに夏祭りに、桜ちゃんと二人っきりで遊園地デート」

 

 

「かなりの出費だろ?」

 

 

「デートは否定しないんだ......」

 

 

 

実は夏祭りに行った数日後に、前々から桜ちゃんと約束していた遊園地に行ったのである。

 

勿論帰ってきた時の茜の不機嫌さと言ったら、過去最大ではないかという程だった。

 

 

 

「夏休み前に入ったバイト代が底を着きそうだからな。このままじゃアイスも買えなくなるかもしれん」

 

 

「それは困るよ! 櫻田家専用アイス貯蔵マシーンの優兄が機能しなくなったら誰がアイスを.........痛い痛い!!」

 

 

「お兄ちゃんは悲しいぞ。妹を失うという事が」

 

 

 

全く、この駄妹は何を言い出すんだか。

咄嗟にアイアンクローをキメてしまったではないか。

 

 

 

「というか朝から遥の姿が見えないんだがどこ行ったんだ?」

 

 

「あ...あたしも見てないよ......朝...起きたら...もう居なかっ...たし」

 

 

「最近の遥はなーんか怪しい気がするんだよな~。帰ってきた時とか余所余所しいし」

 

 

「あた......も...そう.....おも...う」

 

 

「これは付けてみる必要があるな」

 

 

「............。」

 

 

「ねえ優ちゃん、岬ちゃん動かなくなってるよ?」

 

 

「あっ......」

 

 

 

しまった、岬にアイアンクローを

キメたままだった。

動かなくなってしまった岬をソファに捨て置き、さてどうしようかと考える。

てかいつの間に居たんだ、光?

 

 

 

「なあ光、遥が最近出掛けてる場所とか知らないか?」

 

 

「ど、どどどうしたの優ちゃん? ひ、光がそんなことし、知ってるわけないじゃん......」

 

 

 

何かを悟ってしまった俺は、冷蔵庫の中からあるものを取り出して光の前に出す。

 

 

 

「ハ、ハーケンタッツ!? 滅多に買ってこないのにどうして!」

 

 

「もう一度聞くぞ光。遥は何処に行った?」

 

 

「うっ、それだけは......」

 

 

「そうか、それは残念だ」

 

 

 

光の前に出していたハーケンタッツの蓋を開け、更にビニールの蓋も開けると、そこには純白のミルクアイスが......

 

光が悲しげな瞳を向けてくるが、気にせずスプーンを取り出してアイスを掬う。

 

アイスが持つ滑らかさを見せつけるように出来るだけ、ゆっくりと。

 

スプーン一杯に掬ったアイスを口へと運ぶ。

 

もちろん、ゆっくりと。

 

口に入れた瞬間に広がるミルクの風味と、濃厚な味わいが夏の猛暑で疲れた体を癒してくれる。

 

このアイスを口にした俺の顔は恐らく、いや絶対に幸せそうな顔であろう。

 

ふと光に視線を向けると......

 

 

 

「うぅ......」

 

 

 

涙目になったいた。

 

少しやりすぎたか?

 

 

 

「光、全部話すならこのアイスを食べさせてやるぞ?」

 

 

 

そう言った瞬間光の顔がパァッと明るくなる。

 

 

 

「えっとね! 朝はるちゃんに会ってね、何か出かけに行くような格好してて、どこに行くのって聞いたら----」

 

 

 

成程.........怪しいな。

てかちょろくない?

 

 

 

「よし、だいたい分かったぞ。ありがとな光」

 

 

「ゆうちゃん! 約束通りアイスを!!」

 

 

「おう、勿論やるぞ......って光?」

 

 

 

アイスを渡そうとしたのだが、その前に何故か光が俺の膝の上に座る。

 

しかも向かい合うように。

 

 

 

「えへへ~、だって食べさせてくれるんでしょ?」

 

 

 

そういう事か......。

 

そういう意味で言ったんじゃなく普通にアイスをやるって意味だったんだけどな。

ま、少し意地悪しちゃったしこれくらいはな。

 

 

 

「ほれ、あ~ん」

 

 

「あ~ん!」

 

 

 

幸せそうにアイスを頬張る光。

何気に恥ずかしいが、役得だろう。

 

あまりにも愛らしく食べるので、自然に手が光の頭にいき撫で始める。

 

 

 

「ふへへ~//」

 

なんだろう、なでた感じが桜ちゃんに似ている気がする。

 

 

 

 

 

この後アイスを食べさせながら頭を撫で続けるという幸せな時間を満喫したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれ優兄ぃ......頭蓋骨の恨みを思い知れぇ......」

 




何か短くてすみません...
次話は多分長くなると思います。

評価、感想、お気に入りお待ちしております!


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追跡

最近書き始めたい作品が多くて困ってます...

キヨさん、感想ありがとうございます!
大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございます!




電柱に隠れながら住宅街を進む。

標的はただ1人、先日から疑惑をかけられている紫色の髪の美(?)少年。

お供に光と岬を連れてバレないように追跡するのだが......

 

 

 

「暑い~! 優ちゃんアイス買ってよー!」

 

 

 

追跡を始めてから僅か10分で脱落者が出るとは......

この軟弱者め。

 

と思いつつもしっかりアイスを買ってやるあたりやはり甘い。

 

金が無いんじゃないのかって?

妹の笑顔が見れるんなら安いものだ。

 

 

 

「優兄、私にも!」

 

 

「いいのか? アイスを買ってる間に遥を見失うかもしれないぞ?」

 

 

「光のときには全力ダッシュで買いに行ったくせに......このロリコン」

 

 

「櫻田家専用アイス貯蔵マシーンは燃費が悪くてな。すぐに再稼働は出来ないんだよ、み・さ・き?」

 

 

「ギブギブ! ごめんって優兄!! ていうかまだその事根に持ってたの!?」

 

 

 

全く、この駄妹はどうしてこんなにも俺を怒らせるのが上手いんだろうか?

もう予備動作無しでアイアンクロー出来るまで上達してしまったではないか。

 

 

 

「慈悲で聞いてやるが、岬は何のアイスが欲しいんだ?」

 

 

「勿論ハーケンタッ......冗談だって優兄! お願いだからこれ以上強くしないでぇ!!」

 

 

 

 

 

仕方ないので急いでコンビニに行き、頼まれていたパプコとついでにコーラを買う。

パプコというのは2つで1つのアイスである。

 

手早く会計を済ませて店を出ようとした時、ふとある子供に目が行った。

 

その子は光と同じくらいの年の男の子で、この炎天下の中誰かを待っているのだろうか、少しながらキョロキョロと周りを見ている。

 

 

 

「ねぇ君、誰を待ってるかは知らないけど、流石に外にいると暑いからコンビニの中に入ったら? このままじゃ熱中症になっちゃうかもよ」

 

 

「お兄さんだれ?」

 

 

「俺は櫻田 優。君は?」

 

 

「僕はアキラ! 妹を待ってるんだ」

 

 

「一緒には来てないの?」

 

 

「そのつもりだったんだけど、アイツ道を覚えたいからって僕を先に行かせたんだよ。迷子になったら危ないからって言ったのに駄々こねてさ」

 

 

 

成程そういう事か。

妹が暑い中歩いてるのに、自分だけ涼むのには抵抗があるんだろう。

なんだか、昔の俺と茜を見ているようだな。

 

 

 

「それでもこの暑い中待ってるんじゃ大変だろ。ほら、これあげるから、体調だけは崩すなよ」

 

 

 

「え、でも......」

 

 

「いいっていいって、こういうのは遠慮せずに貰っとくもんだよ。じゃあな」

 

 

 

渋る少年の手に無理やり先ほど買ったコーラを握らせると、スタスタと歩いていく。

その最中にふと思いついたことがあったので、スマホを取り出し電話をかける。

 

 

 

「町に腐るほど設置されてんだし、利用しない手はないよなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優兄遅いよ、何処行ってたの! しかも何でパプコ一個しかないの!? せっかく優兄に分けてあげようと思ったのに......」

 

 

戻って来て早々に岬に怒られるが、特に気にする様子を見せずに宥める。

 

 

 

「ちょっと人助けしてきただけだって。てか、岬って案外優しいんだな」

 

 

 

 

そう言いながら岬の頭を撫でてやると、岬の顔が少し赤くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、遥は何処まで行く気なんだ? もうそろそろ1時間経つぞ」

 

 

 

尾行を始めたはいいが、こんな真夏日に1時間も歩くのはかなりキツイ。

普段あまり運動しない俺にとっては中々にくるものがある。

 

光と岬はと言うと、ダンスの練習や元々の行動力のお陰なのかまだ余裕そうだ。

 

 

 

「あ、遥がショッピングモールに入ってったよ!」

 

 

 

遥がショッピングモールか......

もしかして本でも買いに来たのか?

いやいや、あいつなら外なんて出ずにネットで済ませるだろう。

そもそも小物なら近くの店で済ませるだろうし、家具とかならまず父さんや母さんが一緒に見に来るはずだ。

 

この前光から聞いた話だと隣町に行く事は確かなのだが、買い物では無いとすると一体何のために......

 

 

 

まさか......な。

 

 

遥に限ってそんな事は無いと思いたい。

 

 

 

「どうしよう優兄、遥を見失っちゃった!」

 

 

 

俺が考え事をしている最中に、どうやら人混みに紛れてしまった遥を見失ったらしい。

流石に夏休みのショッピングモールは普段とは違うな。

 

 

 

「見失ったもんはしょうがないな。こうなったら手分けして探そう。遥を見つけたら俺に連絡すること、いいな?」

 

 

 

「「ラジャー!」」

 

 

 

2人とも遥を探しに他の階へ向かったのを確認し、俺も動き出す。

 

よし、これで自由だ。

 

 

本来なら遥が居そうな場所を探しに行くべきなのだが、俺が目指す場所は1つ。

 

 

 

「いらっしゃいませ~、1名様ですか? ではこちらの席へどうぞ」

 

 

 

俺が来たのはカフェ。

理由としては、ライバル店の偵察という建前の元、とにかく休みたいから。

流石に歩き疲れたのである。

 

 

 

「アメリカンコーヒーとレモンチーズケーキ1つお願いします」

 

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

 

 

因みに俺は窓際に座っているため外の人には丸見えなのである。

 

だから何だという話だが、これでも王族の1人で次期国王候補なのである。

 

皆もうちょっと俺の事見つけて騒いでくれてもよくない?

店員さんとかならまだ分かるけど、同じ空間にいる客とかは気づいて欲しい......

 

SMSに上げてもいいからさ!

王子様ナウとか呟いてもいいからさ!

 

何で誰も寄ってこないんだよ!

 

 

あ、俺の知名度が無いだけか。

ロクに選挙活動もして無いからな......

 

 

 

「はぁ、少しでいいから年上のJKにちやほやされてみたいな」

 

 

 

身長以外でな!

 

なぜ年上なのかと言うと、姉さん達は絶対に俺の事を甘やかそうとしないからだ。

かなねぇはともかく、あの優しそうな葵姉さんでさえも最近俺に対して厳しい気がする......

 

 

 

「小学生の次は年上のJKですか。本当に困った先輩ですね」

 

 

「............。」

 

 

 

おかしい、このタイミングで本来聞こえてはいけないはずの声が聞こえる。

 

 

 

「そう言えばこの前新しい包丁を買ったんですよ」

 

 

 

落ち着け、この場所にあの子がいるはずがない。

そうだ! これはきっと光か岬のどっちかが俺をからかっているに違いない。

 

 

 

「少し高かったんですけど、値段以上の切れ味でして......」

 

 

 

なぁ、遥を見つけたんだろ?

そうなんだろ?

だから包丁の切れ味なんてそんな物騒な話やめて遥の情報を......

 

 

 

「先輩も味わってみるべきだと思うんです」

 

 

「さっきのは言葉のあやというか一瞬の気の迷いでして年上の女性に囲まれたいとかそういうやましい考えなど本当は微塵も無いんです信じて下さい申し訳ございませんでした」

 

 

一息で言えたよ!

皆褒めて!!

 

 

 




眠い!!!


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羞恥

魔法科高校の劣等生の映画が近くでやってなくて非常に萎えています。

大鉄人ワンセブンさん、感想ありがとうございます!


 

「----聞いてるんですか、先輩?」

 

 

 

「はい、聞いてます......」

 

 

 

1人でカフェに入ったまでは良かったが、運が無いことに偶然居合わせた桜ちゃんに自らのいやらしい欲望を聞かれてしまったのだ。

 

1人席で話(説教)をするわけにもいかないので4人用のテーブルに移動させてもらい、今は桜ちゃんと向かい合うように座っている。

 

 

 

「あ、ここのケーキ凄く美味しいですね」

 

 

 

「......そうだね」

 

 

ついでに俺が先程頼んだレモンチーズケーキを桜ちゃんは食べている。

 

何故かって?

 

説教の最中に目のハイライトどころか俺の存在まで消しかねない程の圧力だったので、やむを得ずケーキを差し出した所何とか収まったのである。

 

まぁいつもと変わらないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

スッ...

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

突然俺の目の前に、小さく切り分けたケーキを載せたフォークが差し出される。

 

 

 

「一応、先輩のケーキですし。先輩にも食べて貰わないと。私が全部食べたら太っちゃいますし......」

 

 

 

桜ちゃんの方を見ると頬を少し赤く染めて、少し顔を逸らしながら......それでも目線はチラチラと俺の方を見てくる。

 

どうやら怒りは収まったらしく、いつもの桜ちゃんに戻っている。

 

 

 

ということは.........

 

 

 

「成程、そうやって あーん をする口実が欲しいと」

 

 

 

「ち、違います!! その......ええと.........」

 

 

 

どうやら図星だったらしく、何か言い訳をしようにも中々言葉が出てこない桜ちゃん。

 

その様子がどうにも可愛らしく見え、ニヤニヤが止まらない。

 

 

 

「もういいです! 先輩がそう言うならこのケーキはあげませんから!!」

 

 

 

「悪かったって。ほら、この通り」

 

 

 

頬を膨らましながらケーキの皿とフォークを下げようとする桜ちゃんに、手を合わせて謝罪の意を伝える。

 

てかそのケーキ元は俺の......

 

なんて言ったら今度こそ貰えなくなりそうな気がする。

 

 

 

「しょうがないですね......先輩、どうぞ」

 

 

 

「え? ほんとに あーん するの?」

 

 

 

再び差し出されたフォークに少し戸惑う。先程は少しからかってやろうという気があってので気にしてなかったが、今は別だ。

 

さらに先程から多くの視線を感じる。テーブル席に二人しかいないとはいえ、ここはお店の中。

男女が あーん なんてしようものなら他のお客さんの目はそこに釘付けにあるだろう。

ましてや俺は王家の次男だし......

 

ってかお前ら、俺が1人で居た時は見向きもしなかったくせに何で今だけガン見してくんだよ!

 

おいそこのお前! 写真撮るな!!

 

 

 

「どうしたんですか先輩? 早く食べないと私が食べちゃいますよ」

 

 

 

「あはは、お腹いっぱいだから桜ちゃんが全部食べても.........ひっ!」

 

 

 

ちくしょう! またハイライトが消えてやがる!

 

 

 

恐らくそのまま あーん されようものなら......

 

①ネットに写真がUPされる。

②社会的に抹殺される。

③「.........優?」(ニッコリ笑顔の茜)

→死

 

死が2回程訪れるとか恐ろしすぎる!

 

 

 

なら断るしか......

 

①「.........先輩?」(ニッコリ笑顔の桜ちゃん)

→斬殺

 

 

 

どっち選んでも死ぬ未来しかねぇ。

 

 

 

 

 

ん?よく見ると桜ちゃんがニヤけて......まさか!

 

 

 

「最初からこれが狙いで......」

 

 

 

「ふふふ、先輩? 折角女の子に あーん して貰えるんですから、それを断るなんて無粋な事はしませんよね?」

 

 

 

「でもいいの? こんな大勢の前で あーん だなんて、結構桜ちゃんも恥ずかしいと思うけど......」

 

 

 

「食べるのは先輩ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだったーー!!!

 

 

いつもからかう立場なのに何故気づけなかったんだ......

 

 

 

「先輩、もしかして恥ずかしいんですか? どうです?これがいつも私が味わっているものですよ!」

 

 

 

くそっ! 桜ちゃんにペースを握られてしまった......

 

いつもからかうばかりでこういう事に耐性が無いのかっ!!

 

 

 

「どうします? せ・ん・ぱ・い?」

 

 

 

勝ち誇った用な笑を浮かべてジリジリとフォークを近付けてくる桜ちゃん。

 

周囲からは「いけっ」、「男を見せろ!」などの声が聞こえてくる。

 

お前ら後で覚えてろよ!

 

 

 

「あ~もう......// 分かったよ......」

 

 

 

俺は観念して差し出されたフォークを咥えてケーキを食べる。

 

恐らく今の俺は顔が真っ赤だろう。

そのせいなのかケーキの味など全く分からなかったが、ただただ甘いということだけは分かった。

 

屈辱だ......

 

嬉しくないと言えば嘘になるが、いつもからかっているはずの相手に手玉に取られるとは......

 

 

 

「いいよ~優兄、その赤くなった顔をもうちょっと見せて! あっ、出来れば涙目で!!」

 

 

 

突然いつも聞いている声が聞こえたので、いつものように鷲掴みにし、いつもよりも力を込めてアイアンクローをキメた。

 

 

 

「待って優兄! ここお店の中......きゅぅ......」

 

 

 

「凄い! 今までで1番早いダウンだったよ!」

 

 

 

「光も体験してみるか?」

 

 

 

「!?」 ブンブンブンっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、遥を追跡しに行ったはずが逆に2人とも見つかったと」

 

 

 

「.........きゅぅ」

 

 

 

「えへへ」

 

 

 

「行きのときからバレバレだったよ、優兄さんも」

 

 

 

現在、駄妹2人+弟と合流して5人でお茶をしている。

 

俺の隣に遥、向かいに桜ちゃん、その隣に岬、そして4人テーブルなので、お仕置きをするという意味も込めて光は俺の膝の上に座っている。

 

 

 

「ふえぇん......あひゃひはふぉめはのに~(あたしは止めたのに~)」

 

 

 

「いいか光、実際にあのアホが実行した時点で一緒にいたお前も同罪だ。覚えておけ。お前もだ遥」

 

 

 

「ははは、ごめんごめん。でも優兄さんがあんなに動揺するなんて......」

 

 

 

俺をここまで辱めた元凶は、今は岬の介抱をしている。

 

捨て置けそんなやつ。

 

 

 

「う~まだ痛い......、この暴力ロリコン兄貴め」

 

 

 

「ほう......」

 

 

 

額に青筋を浮かべ、口元を引き攣らせながら右手を岬に伸ばそうとすると、岬が自分の頭をスッと桜ちゃんの背中に隠す。

 

 

 

「奥義、桜ちゃんガード!」

 

 

 

「なら桜ちゃんごと......」

 

 

 

「えぇっ!! 落ち着いてください先輩!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、私はこれで。皆さん今日はありがとうございました」

 

 

 

「気を付けて帰りなよ。まだ日があるとはいえ、1人は危ないだろうし」

 

 

 

「はい、それでは!」

 

 

 

夕方になりショッピングモールを出た俺達は、途中まで桜ちゃんと帰路を共にして別れた。

 

家のすぐ側まで来た時、ふとある事を思い出す。

 

 

 

「そいや遥は何であんな遠くのショッピングモールに居たんだ?」

 

 

 

「それはっ......!! また今度話すから! 僕は先に戻ってるよ!」

 

 

 

「あ、そう言えば......って、待て遥~!」

 

 

 

「2人とも行っちゃった」

 

 

 

「ま、ゆっくり帰るか」

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰宅後

 

 

 

「で? 優、何か言い残すことある?」

 

 

 

玄関で仁王立ちしながら立っている茜の手に握られているスマホには、俺が桜ちゃんに あーん されている写真が......

 

 




次は奏回かな~

評価、感想、お気に入りお待ちしております!


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生徒会室

週一更新になりかけてる......

大鉄人ワンセブンさん、感想ありがとうございます!

ps 気付いたらお気に入りが100件超えてました!
嬉しい限りです!


 

「だぁ~~! 終わったぁ!!」

 

 

 

先程まで睨めっこをしていた最後の書類を上に放り投げ、机に突っ伏す。

長い時間目を酷使し続けていたからか、目を瞑っているこの時は少しだが安らぐ。

 

 

 

「書類を投げるな!」

 

 

「いでっ!」

 

 

 

不意に後ろから柔らかい何かで頭を叩かれる。

全く痛くはないものの、追撃が来ないように手でガードしながら後ろを振り返ると我が姉である奏(通称かなねえ)が腕を組みながら立っていた。

 

櫻田家の女性陣の中でもトップを誇るナイスバディの持ち主でもある。

 

なあ、アンタが俺を殴るのに使ったものは書類を丸めたやつだろ?

 

 

 

 

因みに今俺達は学校にいる。

 

もう少し詳しく言うと、夏休み返上で生徒会の仕事をしているのだ。

 

この真夏日に。

 

しかも今日に限って学校のクーラーを点検しているため、暑い。とにかく暑い。

しかも仕事が書類整理なので窓を開けるわけにもいかず、なんとか扇風機に風量を最低レベルまで落として誤魔化している。

 

そのせいか汗がかなり出てくるのだ。

 

夏の猛暑、汗、ブラウス。

この三点セットが揃い、予想される光景はそう!

 

 

ブラすk

 

 

 

「待ってかなねえ! 何でボールペン握ってるの!? しかも逆手持ち!」

 

 

 

胸元を片腕で隠し、もう片方の手に握るボールペンで俺に天誅を下そうとしてくる姉を必死で宥める。

 

 

するとそこへ......

 

 

 

「書類整理お疲れ様です。奏さん、優くん」

 

 

「う、卯月会長! いい所に来ました、助けてください!」

 

 

 

咄嗟に駆け寄り卯月会長の背中に隠れる。

隠れると言っても会長はかなりの小ささなので、厳密には盾にしているのだが......

 

 

 

「今日はダメですよ、優くん。ついこの間助けたばかりじゃないですか」

 

 

「そんなぁ!!」

 

 

「それに、いつもの事ながら原因は優くんにありそうなので.........では私はこの書類を提出しに行きますので、今日の仕事はここまでです。お2人ともありがとうございました!」

 

 

 

会長はそう言うと、俺達が先程まで整理していた書類の束を抱えて部屋から去ろうとする。

 

まずい、非常にまずい。

何とかして卯月会長の気を変えないとっ...!

 

 

 

「卯月会長、僕は以前から貴方は天使のように儚くお美しいものだと思っていました。会長のためならば如何なる事も喜んで受け入れるつもりです。ですので今回はどうか、ご慈悲を......!」

 

 

 

どうだ卯月会長!

人間なら褒めた讃えられれば嬉しくないわけがない。

ましてや女性ともなれば効果は抜群のはずだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妹の茜さんがいるにも関わらず私を口説くんですか? これは報告しておかないと......」

 

 

「しまったーーーー!!!」

 

 

 

くそっ、なんて取り返しのつかないことを!

我が身の可愛さあまりにラスボスへの最短ルートを開けてしまうとは......

これではいくらこの場を凌いでも待ち受けてるのはバッドエンドじゃないかっ!!

 

 

 

「ふふふっ、冗談ですよ。茜さんには秘密にしておきます。ではお2人共、後はごゆっくり」

 

 

 

書類を抱えながらこちらに一礼をし、会長が部屋から出て行った。

 

最後の希望を失うという気持ちがわかった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュカッ!

 

 

 

...............。

 

 

 

 

突然頬の横を何かが掠めたので、恐る恐る横を見てみると-----

 

 

ドアにボールペンが突き刺さってました。

 

 

 

「さて、会長の許可も得た事だし、覚悟はいいわよね? 優?」

 

 

 

かなねえの手にはいつの間にか増えたのであろうボールペンが6本握られている。

 

俺とかなねえの距離は3m程しか離れておらず、躱すのは絶望的だろう。

だが俺には常人よりも優れた反射神経がある筈だ、多分。

 

かなねえの右手が攻撃の予備動作に入る。

動作はゆっくりだが、ここは生徒会室とい事もあり多くの物品があるので、無闇に走り回る事は出来ない。

 

ならとるべき行動はひとつ、飛んでくる全てのボールペンの軌道を全て読み切る!

 

 

 

 

いくぞかなねえ、金(ボールペン)の貯蔵は充分か!!

 

 

 

 

 

 

シュカカカカッ!!←全てのボールペンが俺の体ギリギリに突き刺さる音。

 

 

 

カッターが紛れてたのは見間違いだと信じたい。

 

 

 

 

 

「........。」←にっこり笑顔のかなねえ。

 

 

 

シュシュンッ!←かなねえの手にボールペンが補充される音。

 

 

 

「.........。」←十字を切り必死に祈る俺。

 

 

 

最近こんなことばっかな気がする......

 




前回の反動なのか文が短い...

次回はまともなお話です。

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王様問答

かなりお待たせしました!

今回も短いです。もはや長文書く書く詐欺......

大鉄人ワンセブンさん、誤字報告ありがとうございます!


「全く酷い目にあった......」

 

 

「あんたの自業自得でしょ」

 

 

 

生徒会の仕事&バトル?が終わった後、俺とかなねえは何故か俺のバイト先で軽くお茶している。

 

自分のバイト先に身内が来るのって抵抗あるよね......。

 

 

 

「お待たせしました、コーヒー2つです」

 

 

 

身内との来店で少々居心地が悪いのを感じていると、既に注文していたコーヒーを桜ちゃんが持ってきてくれた。

 

 

 

「ありがとう桜ちゃん。ごめんね、休憩時間だったのに」

 

 

「とんでもないです、今日はお客さんが少ない上に先輩もオーナーも居なくて寂......暇してたので」

 

 

 

桜ちゃんの心からの本心を聞いたような気がし、次のシフト決めの時はなるべく時間を被らせようと思った。

 

 

 

「そいやさ、なんでいきなりカフェ行こうだなんて言ったの?」

 

 

 

洗い物をするために桜ちゃんが奥へと戻った所で、気になっていた事をかなねえに聞く。

 

 

 

「さっきも言ったでしょ? 生徒会の仕事を手伝ったお礼だって」

 

 

「いつもは素っ気なく自販機のジュースなのに......」

 

 

「失礼ね、私にだってこういう時ぐらいあるわよ」

 

 

 

ムッとした表情を向けるかなねえだが、この人と2人きりでいるのは兄妹の中でも警戒するべき事なのだ。

 

 

「で、何が聞きたいの?」

 

 

かなねえが兄妹の誰かと2人きりになるという事は、そいつが普段隠している事か、そいつに対して家族の前では聞けないような事を聞く時である。

 

故に、なるべくこの状況は避けるべきなのだが、店に入ってしまった以上諦めるしかない。

 

 

「単刀直入に言うわよ。優、あんた何で王様になりたいの?」

 

 

 

 

「............へ?」

 

 

 

いきなり何を言い出すんだこの人は。

折角ボケて返そうと思ったのに思わず素が出てしまった......

 

 

 

「へ? じゃないわよ、ちゃんと答えなさい」

 

 

「それ今じゃなきゃ駄目?」

 

 

「駄目よ。王様を目指す者同士、お互いの考えぐらいは知っておきたいでしょ?」

 

 

 

かなねえの要望に対し困った顔を向けるも、お姉様からの宣告は非情だった。

 

 

 

「(考えも何も、かなねえは修兄の足を治す事だろうに......) まあいいよ。俺の願いはさ、貧しい暮らしをしてる子供たちを助ける事なんだよね」

 

 

 

そう言い終わった後、柄にもなく緊張したからか直ぐにコーヒーを煽る。

かなねえも、「アンタらしいわね」と言いつつコーヒーを煽っていた。

 

 

 

しばらく沈黙を保っていたが、先に口を開いたのはかなねえだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ優、アンタの考えを実行するのは大人になってからじゃ駄目なの? ほら、支援活動だって今じゃ沢山あるじゃない。私が王様になれば資金援助だって 「大人になってからじゃ......」 .........優?」

 

 

 

「選挙は俺が高校を卒業する時......それでもほとんど手遅れなのに、大人になってからじゃ遅すぎる!」

 

 

「.........。」

 

 

「あっ......いきなり大きな声出してごめん、今のは忘れて。俺今日は調子悪いかもだから、先に帰ってるよ。暑さにやられちゃったのかな」

 

 

 

 

かなねえの提案を聞いた時、咄嗟に思った事が口に出てしまい、我に帰ったときはもう言い終えていた。

 

これ以上、自分の考えている事と本心が食い違ってしまわない様に、今日はこの話題について触れるべきではないと思い先に帰る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、何かあの子の気に障るようなことを言っちゃったのかしら......」

 

 

 

1人残された奏は先程の優との会話を思い出しつつ、自分に非があるのでは? と考えていた。

 

 

 

「あの......」

 

 

 

すると、横から申し訳なさそうな顔をした桜が立っていた。

 

 

 

「ごめんなさいね桜さん。私のせいであなたの優を怒らせちゃって」

 

 

 

「私の!? い、いきなり何を言うんですか///!」

 

 

 

奏の一言に動揺した桜が、頬を赤く染めながら文句を言う。

 

 

 

「それは冗談として、お店に迷惑を掛けてしまってごめんなさい」

 

 

 

先程の優の大声を気にしたのか、奏が店員である桜に頭を下げる。

 

 

 

「いえ、さっきは他のお客さんは居なかったので奏さんが気にする必要はありませんよ。先輩には私からきつく言っておきますので」

 

 

 

先程動揺してたのが嘘のようにしっかりと受け答える桜に、奏は少し感心していた。

 

 

すると、突然桜が顔を俯かせ

 

 

「あの、先輩の事で相談が.........」

 

 

 




シリアス は 苦手 です。


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迷い

やっとダンデライオン原作の4巻を買いました......

開幕の岬ちゃんがかわいかったです(表紙の方じゃないよ)!




 

「ただいま~」

 

 

 

王家の次女、奏が帰宅した。

その表情はいつものに比べると幾分沈んで見えた。

 

 

 

「あ、かなちゃんお帰り」

 

 

 

妹の茜が笑顔で出迎えてくれる。

 

 

 

「あれ? 優は一緒じゃないの?」

 

 

 

「え? あいつなら先に帰ったけど......もしかして戻って来てない?」

 

 

 

カフェから先に帰ったはずの優がまだ戻って来ていない。

茜は事情を知らないため不思議そうな顔をしているが、当事者である奏の頭には不安がよぎる。

 

 

 

「うん。というか一緒に帰って来てると思ってた。さっき優に電話したんだけど、部屋にスマホ置いてあるから......」

 

 

 

「茜、これお願い。ちょっと探してくる」

 

 

 

「え、ちょっとかなちゃん!? どういうこと!?」

 

 

 

茜に荷物を預け、来た道を引き返す。

何が何だか分からない茜に呼び止められるが、今は少しでも早く優を見つけることが先決だ。

 

 

 

「(全く、何処にいるんだか......)」

 

 

 

公園、学校、住宅街と捜し歩くも、一向に見つからない。

今日優は生徒会の手伝いのために外出していたので、財布を持って来ていない。

しかも茜が言うにはスマホも持って来ておらず、連絡が取れない。

 

奏の中で徐々に焦りと苛立ちが生じ始め、それと同時に日は沈みかけ、空には大きな雨雲が広がっていた。

 

 

 

「あっ......」

 

 

 

ポツリポツリと雨が降り始め、次第に強くなっていく。

幸いにも風は無いが、この様子だと大雨になってもおかしくない。

 

急いで能力を使ってカッパを生成して羽織り、また歩き出す。

 

 

雨が強くなってから約1時間が経った。

奏は思いつく限り優の行きそうな場所を回ったが、いまだに見つからない。

 

 

ここで一区切りつけ、一旦茜に電話をかける。

 

 

 

「(あたしにここまでさせといて入れ違いだったらタダじゃおかないからね!) もしもし茜? 優は戻って来てる? .........そう、分かったわ。お風呂沸かしといて。あんたには教えとくけど、状況的には優がちょっとした行方不明なのよ。あと、皆にはこのこと内緒にしておきなさい、いいわね? それじゃあ」

 

 

 

必要なことだけを伝えて電話を済ませ、とりあえず時間を確認しようとスマホの画面を見てみると、一見の不在着信が。

 

しかも未登録の番号であったため、もしや優が誘拐されたのでは? と頭が勝手に考えるが、直ぐにその番号に電話をかける。

 

 

不安を感じながらも、相手が出るのを待つ。

 

しばらくして電話が繋がり、相手の声を聴くために集中する。

 

 

 

『もしもし、奏さんですか?』

 

 

 

「え?......桜さん?」

 

 

 

なんと電話に出たのは、優のバイト先の後輩である加藤 桜であった。

相手が知らない人だったので安堵したが、それよりもなぜ彼女が自分の番号を知っているのだろうか。

 

 

 

「あの、桜さん。どうしてあなたが私の番号を?」

 

 

 

『す、すみません! 本人の了承を得てないので躊躇ったんですけど、状況が状況なので......。それで、奏さんに伝えたいことがありまして......その、先輩がお店に来てるんですよ』

 

 

 

「本当ですか!?」

 

 

 

『は、はい!!』

 

 

 

優が店に戻る可能性を考えなかったわけではないが、あの出来事の後だと戻りづらいだろうと考えて候補から外していた。

 

 

 

「あ、ごめんなさい、急に大きな声を出して......。今から向かいますね」

 

 

 

『はい、お待ちしております』

 

 

 

電話を終えると、安心感と共に疲労感が襲ってくる。

かれこれ2時間以上歩き続けたのだ、しかもところどころ走ったりしているので結構足にきている。

 

それでも何とか足を動かし、先程のカフェへと向かった。

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ~......あ、奏さん! お待ちしておりまひっ!!」

 

 

 

「桜さん、優は何処にいますか?」

 

 

 

おそらく今の奏は外用の顔で笑顔だが、今までの苦労とストレスによるものなのか、内心の怒りが外に漏れだしていた。

その証拠に、奏での笑顔から放たれる言動にかなりの怒気が含まれている。

 

 

 

「せ、先輩なら向こうの休憩室にいます......」

 

 

 

「そう、ありがとう」

 

 

 

奏はそう言うと、足早に部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いって~......」

 

 

 

湯船につかりながら、赤くはれた左の頬をさする。

鏡を見るとしっかりと手形が残っていた。

 

 

 

「かなねえめ、何も本気で叩くこと無いじゃんかよ......」

 

 

 

店で奏と別れた後、頭を冷やすために外を歩いていたのだが、急に雨に降られてしまった。

傘を買ってやり過ごそうかと考えたが、財布は家。

おまけにスマホも持って来ていないので、仕方なくビショビショになりながらも店まで戻ったのだ。

 

店に着いたときには桜ちゃんにかなり驚かれて心配されが、とりあえずタオルを借りて体を拭き、温かいコーヒーを貰って、雨が止むのを待ち、ついでに先に帰ると言っておきながらまだ戻っていないことにかなねえが気付かないはずがないと思い、桜ちゃんに電話を頼んだ。

 

 

一回目は出なかったが、二回目で出てくれたのでひとまず安心していた。

 

が、俺の事を探していたらしいかなねえに再会した瞬間に引っぱたかれ、挙句こっぴどく叱られたのだ。

この説教は桜ちゃんが止めに来るまで続いた。

 

説教が終わった後、桜ちゃんに礼を言って家に帰り、茜が沸かしてくれていた風呂に入るように言われ、今に至る。

 

 

 

 

「まだヒリヒリする......」

 

 

 

口の中が切れていないことが不幸中の幸いだろう。

 

浴槽の縁にもたれながら、冷えた体を温める。

 

 

 

「あの怪力ババアめ!」

 

 

 

「聞こえてるわよ!」

 

 

 

「げっ......あいたっ!!」

 

 

 

いつの間にかドアの向こうにいたらしいかなねえが、ドアを開けて瞬時に生成した桶を投げつけられた。

 

桶のダメージから何とか立ち直り、すでに閉まっているドアの方を睨む。

 

まだかなねえのシルエットが見えるので、何か用があるのだろうか。

 

 

 

「弟の風呂でも覗きに来たの?」

 

 

 

「あんたの裸なんか興味ないわよ」

 

 

 

くっ! ふざけて言ってみたはいいが、そう返されるとなんか癪だ......。

 

 

 

「で、ほんとは何しに来たの?」

 

 

 

「あんたに謝ろうと思っただけよ」

 

 

 

「まだほっぺ痛いんだけど」

 

 

 

「そっちじゃない」

 

 

 

なんだ違うのか。

 

 

 

「あんたの本心を無理やり聞き出しちゃった気がしたのよ。それだけ」

 

 

 

「.........。」

 

 

 

「で、こっからは別の話し。最初はあたしの勘違いかと思ったけど、桜さんの話を聞いてから確信したわ」

 

 

 

ドアに向けていた視線が床に行く。

これ以上は言って欲しくないと思ったが、それだと店での自分と何も変わらない。

自分の夢を、誤魔化し続けている自分と、何も―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた、桜さんのために王様になるつもりなんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「............。」

 

 

 

「沈黙は肯定と同じよ。桜さんに幸せになってほしい、でもそのために王様の権力を使っていいわけがない。だから王様になる表向きの理由が欲しい。それで思いついた理由に、あんたは苦しんでるのよ」

 

 

 

「そんなこと......」

 

 

 

「嘘はやめなさい。そりゃあ、貧しい暮らしをしてる子供たちを助けたい。それ自体は立派な考えよ。でも、あんたは心の底からそうしたいわけじゃない。別にあんたを否定するわけじゃないけど、そんな気持ちじゃ本当に助けることなんて無理よ。あんたは自分の欲望のために子供たちを利用しようとして、罪悪感を感じてるのよ」

 

 

 

かなねえの言う通りだった。

 

 

確かに俺は桜ちゃんのために王様になろうとしてる。

具体的に言うと、王様になって桜ちゃんの生活を支援することだ。

今のままの暮らしを桜ちゃんが続けてしまったら、間違いなく彼女は心身ともに疲労でボロボロになってしまう。

 

 

保護者が近くにいない彼女にとって、学費と生活費を一人で稼ぐのは無理がある。

 

実際に過去何度も、桜ちゃんは過労による体調不良などで倒れている。

 

 

一度桜ちゃんに「今の生活で満足か」と聞いたことがある。

彼女は「勿論です」と言ったが、あれはおそらく気を使わせないようにしたものだ。

いつも見てる桜ちゃんの笑顔だって、昔に比べたら随分と違う。

うまく言えないが、今の彼女は無理に笑っているようにしか見えない。

 

 

だが王様になれば、資金面は権力でどうとでもなるだろう。

そうすればかなり楽になるはずだ。

そのための口実も必死に考えた。

 

真の願いと偽りの願いがなるべく近くなるようにし、気持ちがぶれないようにもしてきた。

 

 

罪悪感が無いわけではない。

 

でも胸を張って言えるわけでもない。

 

そんな不安定な状態で、かなねえとのあの会話だ。

 

ボロが出ない方がおかしい。

 

 

でも......

 

 

 

「それでも、俺は王様になる。このままじゃ、桜ちゃんが幸せになれない」

 

 

 

「そう、王様を目指すことを止めるつもりは無いわ。でもね優、それで本当にあの子が幸せになれるのか、良く考えなさい」

 

 

その言葉を最後に、かなねえは脱衣所から出ていった。

 

 

 




今日はいつもと違う時間帯にしてみました(とくに意味はないけど!)


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ダイエット

ぱぱっと書き終わったので早めに上げました!!

夏編はもうすぐ終わりです(現実の夏は始まったばかり)。


かなねえとのいざこざ?から数日、夏休みは終盤に差し掛かっていた。

 

今日はいつものことながら父さんと母さんは王宮で仕事をしており、葵姉さんは輝と栞の買い物に付き合い、修兄は花さんとデート、かなねえは選挙活動、岬は部活の助っ人に出ており、遥はその付き添い。光はダンスのレッスン。

 

ということで、今家にいるのは俺と茜だけである。

 

葵姉さんの日ごとに増す無言の圧力のおかげで、俺と茜は夏休みの宿題が片付いており、家を留守にするわけにもいかないのでかなり暇だが、一応バイト先のカフェから、今年の秋から新しく提供を始めるコーヒーの試飲を頼まれており、それを飲んではテーブルに突っ伏している。

 

バイトを入れれば良かったと思いつつも、茜を1人にすると後からうるさそうなのでどうしようもない。

 

のだが......

 

 

 

「ぐへ~~」

 

 

 

この駄妹、先程からソファーに寝そべりテレビを見ながら俺が買ってきたアイスを食べているのだ。

 

確かに特にやることは無いが、お前一応“王女”だよね?

 

何この堕落した生活......。

 

何を隠そうこの堕妹、このままだと夏休みの半分を無駄にしかけない。

母さんや葵姉さんもこの夏休みは忙しいのか、あまり茜を注意することは無かった。

 

え? 父さん? 逆効果でしょ。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

そんな妹を見ていると、ふと違和感に気付く。

何だかいつもと違うような......

でも髪形とかが変わったわけじゃないし......

顔つきも堕落しきったアホ顔以外はとくにいつも通りだし......

 

 

まさかな......

 

 

 

「優、何飲んでるの?」

 

 

「ん? あぁ、今度うちの店が出す新しいコーヒーだよ。店長から味の感想を頼まれてる」

 

 

「私も飲んでいい?」

 

 

「良いけど、茜ってブラック飲めたっけ?」

 

 

「や、やめとく......」

 

 

 

茜がソファから立ち上がったので、頭の先からつま先までじっくりと観察する。

 

 

 

「ゆ、優? そんなにジロジロ見られると恥ずかしいよ///」

 

 

 

俺の視線に気付いた茜が、顔を赤くしながらもじもじし始め、顔を逸らしながらも時折こちらをちらちらと見てくる。

 

そんな茜に俺は、

 

 

 

「茜、太った?」

 

 

 

そう言った途端、茜の動きがピシッと止まる。

口元は引きつっており、腕と足は小刻みに震えている。

 

 

あ、膝から崩れ落ちて四つん這いになった。

 

 

 

「優にデブって言われた......」

 

 

 

「おい、そこまでは言ってないぞ」

 

 

 

膝立ちになりながら、「そんなに太ってないよね?」と言いつつ自らの腕やお腹のお肉をつまみ始める茜。

 

そんなに認めたくないのなら兄が現実というものを教えてやろう。

 

リビングを出た俺は、あるものを取りに脱衣所へと向かう。

 

目的の物を見つけると、それを茜の前に置き、指をさして......

 

 

 

 

「乗れ」

 

 

 

「ぜっっったいに嫌!!」

 

 

 

この反応を見るに、どうやら自分の体の状態に薄々気付いていたらしい。

だが、ここでしっかりと見せておかないと、取り返しのつかないことになりかねない。

兄としてここだけは譲れない。

 

 

 

「どうした茜、体重計に乗るくらいどうってことなあいだろ? ま、どうしても嫌なら水着姿を見せてくれるだけでもいいんだけどな」

 

 

 

「うぅ......」

 

 

 

やはり贅肉が付いてきたときに水着を着るのは嫌なのか、ゆっくりと片足ずつ体重計に乗り始めた。

 

 

 

「優は向こう向いてて!!」

 

 

「はいはい」

 

 

 

流石に女子の体重を見る程デリカシーが無いわけじゃないので、素直に反対を向く。

 

ほどなくして、茜のすすり泣きが聞こえてきたので向き直ると、灰と化した茜がいた。

 

 

 

「で? 前測ったときよりどんくらい増えてた?」

 

 

「2きr......」

 

 

「本当は?」

 

 

「5......」

 

 

 

成程、51ってとこか。

 

 

 

「割と深刻だな」

 

 

「これじゃあ水着着れないよぉ......」

 

 

 

今の体系の時に既に着たのかは知らないが、やはり5キロも太ったんじゃ相当なのだろう。

 

これは、心を鬼にするしかないな。

 

 

 

「茜、痩せるまでアイス禁止な」

 

 

「そんなぁ!!」

 

 

「それと、今日から毎日走り込みだ。それくらいなら俺も一緒にやってやる」

 

 

「この鬼! 悪魔!! ■■■!!!」

 

 

 

何とか逃れようと思いつく限りの暴言を吐いてくる茜に、少し、ほんの少しだがイラッと来たので......

 

 

 

「嫌なら葵姉さんに手伝ってもらうしか......」

 

 

「何言ってるの優! 時間は限られてるんだから早く走りに行かなきゃ!!」

 

 

 

まあ分かってはいたが、こうも手のひら返しが早いと葵姉さんがかわいそうというか、自分でもおそらくこういう反応になるだろうから何とも言えない。

 

 

 

「よし、今から行くから着替えて来い」

 

 

「優は着替えないの?」

 

 

「あのな、部屋同じなんだから一緒に着替えるわけにはいかんだろ」

 

 

「私は、別に一緒でも///」

 

 

「早く行け」

 

 

「むぅ」

 

 

 

茜が不満げな顔をするも、知ったことではない。

なぜ妹と一緒に着替えなきゃならんのだ。

 

 

俺と茜は着替え終えると、玄関で久しぶりに掃く運動靴を取り出していた。

 

 

 

「そう言えば、家留守にしちゃうけど大丈夫かな?」

 

 

 

茜が心配そうに聞いてくる。

確かに家の鍵を閉めてしまうと、後から帰ってきた他の兄妹が家に入れないという事件が起きてしまう。

 

だが、我が家では高校生組がカギを持っており、岬と遥は買い物に行った葵姉さんたちよりかは帰りが遅いため問題なし、光はまだ小学生なので安全を考え、レッスンが終わる時間を見計らっていつも俺が迎えに行っている。

 

まあ問題は無いだろう。

 

 

 

「よし、じゃあ行くぞ」

 

 

「うへ~......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいま~」」

 

 

「あら、優くんに茜、お帰りなさい」

 

 

 

5キロぐらい走ったところで今日の所は終了した。

初日なのだからこれくらいで十分だろう。

 

 

 

「それにしても茜、お姉ちゃん感動しちゃった」

 

 

「「え? 何が?」」

 

 

 

葵姉さんが目をキラキラさせながら言ってくる。

はて、茜が太ったのは自業自得だし、ダイエットを始めたからってそこまで感動するものなのか......

 

 

 

「だって、あの茜が監視カメラを気にせずに外を走れるようになったんでしょ?」

 

 

 

「「あ」」

 

 

 

みるみる内に茜の顔が真っ青になっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、茜の走ってる姿写真をサイトにアップロードしなきゃな。

 

 

 




茜の体重は身長から女子の平均体重を出し、そこから本来あるべきものの重さを引いたのと、結構スレンダーなので大体こんな感じかなと思って計算しました。

ご了承ください......。


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夏休み最終日

大変お待たせしました......

そういえばfgoフェスに行ってきました!
初めてああいう場所に行ったのでかなり疲れましたが、行けて良かったです!




ダンデライオン

「ふぇ~ん、終わんないよー!!」

 

 

「はぁ......」      

 

 

 

夏休み最終日の朝、毎年恒例と言うかなんというか、光の宿題を手伝っていた。  

 

「光、あと何が残ってんだ?」

 

 

「えっとね、算数と理科と国語のワークに、絵日記でしょ、あと......」

 

 

「じゃあな光、俺出かけてくるから」    

 

 

「お願いだから見捨てないでー!!」    

 

 

 

立ち去ろうとする俺を何とか引き留めようと、後ろから抱き着いてくる光。

 

こら光、最近のお前は茜より発育がいいんだからそんなことするんじゃない。 色々と柔らかいだろうが。      

 

 

 

「ったく、しょうがないな」

 

 

「わーい! 優ちゃんありがとー!!」

 

 

 

なんだかんだで俺は妹に甘いのだ。      

 

 

 

「その代わり条件がある」

 

 

「どんなの?」

 

 

「今日の午後は俺の言いなりになること」

 

 

「うっ......午前中に終わるのは嬉しいけど、身の危険を感じる」

 

 

 

光は両腕で自分を守るように抱きしめ、目はまるで不審者を見るかのような目だ。

 

 

 

「そんな変なことしねぇよ! とにかく、嫌なら俺は手伝わないからな!」

 

 

「う~、分かったよ......」

 

 

 

渋々と承諾する光であった 。

 

 

 

「やっと終わった~!」

 

 

 

握っていたペンを置き、両腕を上げて軽く伸びをする。

 

 

 

「よし、これで全部だな」

 

 

 

終わった問題集や絵日記などを、夏休み明けに忘れないよう光のランドセルに詰めてやる。

 

 

 

「さて光、そろそろ行くぞ」

 

 

「どこに行くの?」

 

 

「俺のバイト先にね。ちょっと手伝って欲しいことがあるんだよ」

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい優君。すまないね、今日はシフトが入ってないのに」

 

 

昨日の夜、急遽店に来てくれないかと店長に頼まれたのだ。

 

ただいつも通りバイトをしてくれと言うわけではなく、ちょっとした手伝いで。

 

 

「いえいえ、大丈夫ですよ店長。丁度暇してたので。あと、今日は光も連れてきました」

 

 

 

「いつも優ちゃんがお世話になってます!」

 

 

 

アイドル活動を始めてからか、光の目上の人に対する話し方などがしっかりしてきた気がする。 兄としてその成長は嬉しいのだが......。

 

 

 

「光、頼むから店長の前で優ちゃんはやめてくれ......。

 

 

「まあまあいいじゃないか。可愛い妹さんだからね、多めに見てあげたらどうだい、優ちゃん?」

 

 

「やめてください......」

 

 

 

店の入り口で他愛もない会話をしてると、奥の方から足音が聞こえてくる。

 

 

 

「先輩! 来てくださったんですね!」

 

 

 

出てきたのは、エプロンを付けてボウルを抱える桜ちゃんだった。

丁度例のあれをしているところだったのだろう。

 

 

 

「とりあえず中に入りたまえ」

 

 

「おじゃましまーす!」

 

 

「光、あんまりはしゃぐなよ」

 

 

「分かってるってー」

 

 

 

今店は臨時休業なので多少は騒いでも問題無いが、流石に光に限っては何をしでかすか分からないので心配だ。

 

 

 

「先輩、もう少しで出来上がるのでそれまで待っててください」

 

 

「そうだね、なら出来上がるまでコーヒーを飲んでるといい。今淹れてくるよ」

 

 

「いいんですか店長?」

 

 

「もちろんそれくらいはするさ。さて、では出来るまで席で待っててもらえるかい?」

 

 

 

店長にそう言われた俺は、店の中を散策し始めた光を捕まえて席に座って待った。

 

 

 

「ねえ優ちゃん。そういえば何であたしはここにいるの?」

 

 

「おや、優ちゃんから聞いてなかったのかい? 今日は今度うちの店で出す新作のケーキを試食してもらおうと思ってね」

 

 

「ケーキ!?」

 

 

 

店長の優ちゃん呼びが定着しつつあるが、半ばあきらめ状態である。

 

 

 

「ん? てことはもともと誰かつれてくる予定だったの?」

 

 

「まぁな。でも兄妹全員連れてくるのは材料や時間的に厳しいから、たまたまいた光を連れてきたんだよ」

 

 

「あたしが宿題頑張ったご褒美だね!」

 

「いや、あれほとんど俺がやっただろうが」

 

 

「えへへ......」

 

 

 

まあ光と俺だけ食べるのも皆に申し訳ないので、余った分は持ち帰らせてもらおう。 茜と岬辺りがうるさそうだし......     

 

 

「お待たせ、取りあえずコーヒーだよ」

 

「ありがとうございます。あ、光はコーヒー飲めたっけ?」    

 

 

「何言ってるの優ちゃん。あたしだってもう子供じゃないんだから、ブラックだって平気だもんね!」      

 

 

 

小学生風情が何言ってやがる。

しかもお前が家でコーヒー飲んでる姿なんて見たこと無いぞ。      

 

 

 

「なら砂糖とミルクは必要ないな。じゃ、下げてくるわ」    

 

 

「えっ......」    

 

 

 

角砂糖とミルクが入ったカップを厨房に下げようとしたところを、光が何のつもりか服の裾を引っ張って止めてくる。

 

 

 

「どうした光?」    

 

 

「わ、わざわざ下げる必要は無いと思うんだ......」      

 

 

 

割と必死に光が止めてくるので元から察してはいたが、今ので確信してしまった。

 

こいつブラック飲めないな......。  

よし、飲ませるか。      

 

 

 

「大丈夫だ光、お前は出来る子だ。それに今どきのアイドルはブラックなんてしょっちゅう飲んでるぞ」    

 

 

「そうなの!? よ、よしっ! ならあたしだって!!」    

 

 

「光ちゃん! そんなこと無いからね!? 先輩も変なこと教えないでください!」      

 

 

 

意を決してブラックを飲もうとしていた光を桜ちゃんが止める。  

 

ちっ、後もう少しだったのに......。      

 

 

 

「ケーキ出来ましたよ。試食お願いします」      

 

 

 

俺と光の前に置かれる二種類のケーキ。 一つはシフォンケーキ、もう一つはガトーショコラである。  

 

 

 

「それじゃあ、いただきまーす!」

 

 

「いただきます」

 

 

 

光がシフォンケーキ、俺がガトーショコラを一口ずつ食べる。

 

 

 

「このシフォンケーキ美味しい! フワフワでクリームも滑らかで......最高だよ桜ちゃん!!」

 

 

「こっちのはしっかりビターな感じで、クリームの甘さが控えめなのもいいね」

 

 

 

光と俺は次々と桜ちゃんの作ったケーキを賞賛した。

 

その度に桜ちゃんが顔を赤くして俯きながら、「ありがとうございます......」 と口にし、かなり照れていた。

 

 

 

「ねぇ優ちゃん、あたしにもそれ頂戴!」

 

 

 

光が身を乗り出して、俺のガトーショコラを求めてくる。

 

 

 

「ああいいぞ、ほれ」

 

 

 

俺は食べていたガトーショコラを一口フォークに乗せ、光に あ~ん をしてやる。

 

光もそれに応じ、差し出されたケーキを食べる。

 

 

 

「あんまり甘くない......」

 

 

「光にはまだ早かったな」

 

 

 

甘い物が大好きな光に、ビターな味は合わなかったのだろう。

 

 

 

「優ちゃん、お返し!」

 

 

 

今度は光がシフォンケーキを一口フォークに乗せて俺に あ~ん をしてくる。

 

特に断る理由も無いので、それに応えてやる。

光の言ってた通り生地がフワフワで、食べていると頬が緩んできそうだ。

 

 

 

 

ゾクッ......!

 

 

 

不意に隣から寒気がし、恐る恐る視線を向けると、そこには桜ちゃんがニッコリと微笑んでいた。

 

一瞬兄妹の仲睦まじい光景を見て自然と笑顔になったものと見えるが、これは嫉妬の微笑みだ。

さらに俺はこの笑顔の危険性を知っている。

 

幸い光のケーキはもう貰ったので、これ以上桜ちゃんの機嫌が悪くなるような事は起こらないはず.........。

 

 

 

「はい優ちゃんもう一口、あ~ん!」

 

 

「え...ちょ、光......」

 

 

 

何故か再び差し出されたケーキ。

戸惑う俺。

殺意が増していく桜ちゃん。

 

これ以上は本当に後が怖いので、光にやめさせるように言おうとしてあることに気付く。

 

光の顔が何かよからぬ事を考えている時のものだった。

 

まさか妹に弄ばれる日が来ようとは......

 

 

 

 

 

 

 

 

結局光のしつこさに負けてしまった俺は、あ~んを受け入れてしまい、さらに機嫌が悪くなった桜ちゃんの対応に追われるのだった。

 

 




気付いたらいつもより長くなってました。



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文化祭前編

お久しぶりです!

結構間が空いてすみません......

するめーんさん、感想ありがとうございます!


「起きなさーい!!」

 

 

「ゴフッ!」

 

 

 

夏休みが終わり、憎き学校が始まった。

夏休み明けの課題テストも何とか乗り越え、今は学園祭でやる出し物を決めている最中である。

 

クラス委員である茜と福品が前に出て、出し物の案をクラスメイトから求めているのだが......。

 

 

 

「何だよ茜。俺は眠いんだ、頼むから寝させてくれ」

 

 

 

そう、俺は今かなり睡魔に襲われている。

なぜかって?

 

全部あの光のせいだ!!

 

 

 

 

 

それは夏休みが終わる前日。

つまり昨日である。

 

例年通り光が何も手を付けずに残していた夏休みの宿題を午前中のうちに片付けた。

 

はずなのだが......。

 

 

 

 

― 昨日の夜 ―

 

 

 

「ね、ねぇ優ちゃん」

 

 

 

次の日から始まる学校に備えて (少しでも身長を伸ばすために) 早めに寝ようとしてたところに、光が来た。

 

 

 

「ん、どうしたんだ光。明日は学校だろ? 寝坊しないように早く寝ろよ」

 

 

「それは分かってるんだけど......」

 

 

 

そう言いつつ、光はかなり申し訳ない顔をしながら手に持っている細長くも丸みを帯びた白い色の何かを......真っ白な何かを広げて見せてきた。

 

光はバツが悪いのか、顔を合わせようとしない。

 

そして俺は、ふつふつと煮えたぎる何かを感じながら光ににこやかな笑顔を向ける。

 

 

 

「それで光、俺に何か用か?」

 

 

 

俺が向けた笑顔にガクガクと震えながらも、光は口を開く。

 

 

 

「絵の宿題を忘れてて......ひっ!!」

 

 

 

まだ言い終わる前に、光の頭を上からわしづかみにする。

光から短い畏怖の悲鳴が聞こえたが、気にする必要はない。

 

少しずつ、掴んでいる手に力を込めていく。

 

 

 

「忘れてて、何なんだ光?」

 

 

 

光の目に涙がたまっていくのが見える。

いつもならこの時点で妹愛に妨げられるのだが、今は愛の鞭として心を鬼にしている。

 

 

 

「て、手伝って優ちゃん......」

 

 

 

消え入りそうな声で、しかも今にも泣きだしそうな表情で言われると流石に心にくる......。

 

深くため息をつき、手の力を緩めて頭を優しく撫でてやる。

 

 

 

「ったく、早く支度してリビングに行ってろ」

 

 

 

「手伝ってくれるの!?」

 

 

 

光の顔が見る見るうちに驚きと嬉しさを含んだ顔に変わる。

 

 

 

「光。俺はな、お前の宿題なんかより、お前が寝不足になって体調崩す方が心配なんだよ」

 

 

「優ぢゃ~~ん!!」

 

 

「なっ! こら光、泣きながら抱き着くな!!」

 

 

「だって~~!!」

 

 

 

泣きじゃくる光の頭を撫でて何とか泣き止ませようとするが、中々泣き止んでくれない。

他の部屋に居る皆は既に寝ているし、これ以上騒ぐと起きかねない。

まあ茜は起きないから大丈夫だが......。

 

 

 

その後、途中で光が寝落ちしてしまったため、明け方まで一人で絵を描くことになってしまった。

 

 

 

 

 

― 現在 ―

 

 

 

茜にたたき起こされた俺は、他に寝ているクラスメイトへの見せしめのためにボコボコにされてロープでつるし上げられていた。

 

 

 

「で、皆何かやりたいことは無い?」

 

 

委員長らしく、クラスの指揮を取る茜。

 

それにつられて皆それぞれ案を出す。

 

 

 

成程。

メイドカフェにお化け屋敷、喫茶店か……普通だな。

 

 

 

てかそろそろロープほどいてもらえないでしょうか?

 

 

 

 

 

「じゃあ出し物はメイド喫茶で......」

 

 

 

多数決の結果、我がクラスの出し物はメイド喫茶となった。

よくある感じのものだが、男子によこしまな考えが無いことを信じている。

 

 

 

「はい!」

 

 

「どうしたの花蓮?」

 

 

「メイド喫茶だと恥ずかしい思いをするのは女子だけだから、執事も取り入れるべきだと思う!」

 

 

 

まあ確かにメイドもあるなら執事もあった方がいいのだが、もうちょっとマシな理由なかったの?

 

 

 

「皆もそれでいい? 何もないなら、これで決まり! じゃあ早速厨房とホールを誰がやるか決めよう!」

 

 

 

茜の号令によって、班分けが始まった。

 

基本的には料理が出来る奴が厨房をやるのだが......。

 

 

 

「なあ茜、俺が厨房とホールを兼任するのはまだいいんだが.........なんで衣装がメイド服なんだよ! 普通執事服だろ!?」

 

 

「女子のホール班が少ないからお願い!!」

 

 

「嫌だ!!」

 

 

俺と茜が言い争っていると、クラスの女子たちがぞろぞろと俺の前に出てきた。

 

おい、まさか......

 

 

 

『お願い優君!』

 

 

「うっ......」

 

 

 

まさか女子が一団となって俺を説得に来るとは......。

 

後ろの野郎どもが笑いをこらえきれずに吹き出しているのが分かる。

お前ら後で覚えとけよ。

 

女子たちにここまでされて断ると後が怖い。

腹をくくるしか......。

 

 

 

「わ、分かったよ! 着ればいいんだろ、着れば!」

 

 

『やったー! ありがとう優君!!』

 

 

 

どうやら俺は押しに弱いらしい。

分かってたことだけどね。

 

 

 

この後、衣装を注文するために必要なサイズを測るのだが、勿論俺も測るわけで、先程の腹いせにサイズの記録係に名乗りを上げたところ、今度は女子全員に袋叩きにされてつるし上げられたとさ......。

 

 

 




文化祭は良い文明

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学園祭中編

女の子と学園祭を回ってみたい人生でした。




 

時は流れ文化祭当日。

 

全てのクラスが準備を終え、始まりのチャイムを皆が今か今かと待っている。

俺たちのクラスはメイド&執事喫茶、だれもメイド喫茶などに行ったことは無いが、櫻田家に従えている曽和さん達の仕草や言葉遣いなどを勉強するためにビデオで隠し撮りをしていたのだ。

 

勿論バレないわけが無く、計画・実行した俺と茜は静かに曽和さんに怒られたのだった。

三時間みっちりと......。

 

 

 

 

 

「そういえば、曽和さんって結構怖かったね」

 

 

「確かにあれは葵姉さんと同じ......いや、もしかしたらそれ以上! あの時の冷え切った目とか特にやばい......」

 

 

 

いつも通り茜の人見知りのせいで遅刻しそうだったが、何とか間に合った。

開始時間までにはしっかりと服に着替えないといけないので、足早に教室へと向かう。

 

 

 

「あらアンタ達、やっと来たのね」

 

 

「あれ、かなねえじゃん。生徒会はどうしたの?」

 

 

 

教室のすぐそばにある曲がり角でばったりとかなねえに出くわした。

ん? 俺らの教室の方から来たよね?

 

 

 

「やっと来たって、俺らを待ってたの?」

 

 

「そうなのよ。正確には優、アンタを待ってたのよ」

 

 

「じゃあ俺準備があるか......ぐえっ!」

 

 

 

学校行事の時に俺に用があるということは、ほぼ生徒会関係である。

生徒会長である三年の卯月先輩には、アルバイトの件で頭が上がらないため出来る限りの事は手伝いたいのだが、今は流石に時間が無い。

 

というのにこのバカ姉は......。

 

 

 

「お姉ちゃんが話をしようとしてるのにどこに行く気かしら?」

 

 

「店の準備をしたいんだけど」

 

 

「心配すること無いわよ。話自体はすぐ終わるし、なにも今すぐにやってもらいたいわけじゃないしね」

 

 

「そうなの? なら茜、悪いけど先に行っててくれ」

 

 

「うん、分かった」

 

 

 

茜はそう言って小走りに教室へと向かう。

教室に茜が入ったのを見届けてから、かなねえの方に向き直る。

 

 

 

「それで、俺に何を頼むつもり?」

 

 

「急で悪いんだけどね、来年の学校のHPに学園祭の様子を乗せたいから、衣装を着て写真に写ってもらいた......」

 

 

「それじゃあ!かなねえごめんね、もう時間だから!!」

 

 

「え!? ちょっと優!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなねえから写真を頼まれた瞬間、これに応じてはいけないと頭が判断し、体が勝手に動いたのだ。

ま、体が勝手に動いたんだから、許してくれるよね!

 

ほんとにごめんお姉ちゃん!

衣装を着たままは駄目なんだ!

 

 

後でちゃんと謝りに行こう......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、優。脱いで」

 

 

「い、いきなり何言い出すんだよ花蓮/// こんな人前で......俺でも流石に恥ずかしいぞ///」

 

 

「誰か金属バット持って来て」

 

 

「俺が悪かった! だからそんな物騒なこと言わないでくれ!!」

 

 

 

俺は今、メイド服の着付けを花蓮にやってもらっている。

当初は茜がやる予定だったが、全てのクラス委員長が生徒会に招集されてしまったのだ。

 

 

 

「なんで俺がメイド服を......」

 

 

「優が自分で言ったことでしょ? 無理やり言わせたのはあたしたちだけどさ……。ま、その分不便なことは手伝ってあげるから」

 

 

「はいはい......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませご主人様」

 

 

「まあかわいいわねこの子!」

 

 

「ありがとうございます。お褒めに預かり光栄です」ニコッ

 

 

 

 

 

死にたい......。

 

接客は散々バイトでやってきたので慣れてはいるが、口調やら仕草はまだかなり違和感がある。

しかも女装......過去に一回したような、しなかったような......。

 

 

 

「櫻田君、厨房お願い!」

 

 

「は~い、今行きます」

 

 

 

ホールと厨房を兼任しているので、行き来が激しい。

慣れていると言えば慣れているが、服がメイド服なので動きにくい。

 

 

 

「はぁ~、疲れた......」

 

 

「お疲れさま、優」

 

 

「おう茜か、やっと休憩だよ......」

 

 

 

簡易的な休憩スペースの中にある机に伏せてぐったりとしている俺に、茜からねぎらいの言葉がかけられる。

茜も看板娘?としてホールを担当している。

人見知りの茜としては、慣れないことに疲れているだろう。

 

 

 

「お前もお疲れ様な」

 

 

 

そう言いながら頭を撫でてやると、顔を赤くしてうつむいてしまった。

 

 

 

「い、いつまで撫でてるの?」

 

 

「悪い悪い、ついな」

 

 

 

茜の恥ずかしがる仕草が、疲れている俺にとっては癒しと感じられたのか、結構な時間撫でていた。

 

さて、休憩時間もそんなにあるわけじゃないし、ちょっと他の所も回ってみるかな。

 

 

 

「茜、一緒に見て回るぞ」

 

 

「うん!」

 

 

いつも一緒にいる花蓮たちはまだ作業中なので、茜と二人きりである。

最近茜と一緒に行動することが無かったからな。

今日は一杯構ってやろう。

 

兄とし...姉として。

 

 

 

「ほら茜、早く行くわよ?」

 

 

「お姉ちゃん......///」

 

 

 

裏声で何とか清楚な女子の声を出しつつ穏やかな笑みで語り掛けるように話すと、茜の中でときめいたのか、うっとりとした目をしていた。

 

 

 

 

 

「そこの君、このクレープを二つ頂戴!」

 

 

「は、はい/// 400円になります!」

 

 

 

となりのクラスで販売していたクレープを買ったのだが、たまたま店番をしていたのが一年生の間でもめずらしい彼女持ちなのだ。

これを見逃す俺ではない。

 

茜の時とは違う活発な女子を演じ、しかもお釣りをもらうときにはしっかりと手に触れておく。

去り際にウィンクをするのも忘れずに行う。

 

別の場所に向かい始めた時に彼女らしき人物が尋問を始めていたが、気にしないことにした。

 

 

 

「茜、おいしい?」

 

 

「うん! でもいいの? 奢ってもらっちゃって......」

 

 

 

こいつ...!

いつもは奢らないとグチグチ言うくせに!

 

 

 

「ほら茜、ほっぺにクリームが付いてるわよ」

 

 

「え? あっ///」

 

 

茜のほっぺに付いたクリームを指で取ってぺろりと舐める。

他から見たら仲のいい姉妹にしか見えないだろうが、姉の方の中身は男で、しかもメイド服を着ている。

 

やばいやつじゃん......。

 

 

 

 

 

ピロリロリン! ピロリロリン!

 

「あら、電話だわ。茜、ちょっと待っててね」

 

 

「うん」

 

 

 

 

 

廊下の隅まで来た俺は、スマホを取り出して電話に出る。

 

 

 

『もしもし、どなたかしら?』 ※裏声

 

 

『え、先輩?』 ※桜ちゃん

 

 

 

 

 

あ、やっべ......。

 

 





ここのところ熱いせいか、中々寝付けません......。


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学園祭後編

最近文章がグダグダしてる気がする......。

大鉄人ワンセブンさん、感想ありがとうございます!



 

前回のダンデライオン!

 その1、メイド姿でご奉仕

 その2、女子声で妹をメロメロに

 その3、女の子気分で後輩からの電話に出る

 

 

 

 

 

 

 

パシャッ! パシャパシャッ!

 

 

「事情は分かりました。とても似合ってますよ先輩!」

 

 

「桜ちゃんお願いだから写真撮らないでぇ!!」

 

 

 

桜ちゃんからの突然の電話の後、何とか誤解を解き、今に至る。

電話の件はと言うと、今から学園祭に行きますということだった。

 

 

 

「さて、優君の可愛い写真は店に飾るとしよう」

 

 

「何でいるんですか店長。てか、そんな写真絶対に飾らせませんよ!!」

 

 

「何でとは失礼だよ。せっかく可愛いバイトの子の学園祭なんだ。行かなくては面白くないだろう?」

 

 

「店長の求めてる面白さって純粋じゃないから怖いんですよ!」

 

 

 

現に俺のメイド姿の写真を店に飾ると言い出している時点でお察しである。

 

 

 

「てか桜ちゃん! 何ちゃっかり待ち受けにしてんの!? 嬉しいっちゃ嬉しいけど、せめて別の写真にして!!」

 

 

 

 

 

桜ちゃんたちと別れた後、休憩が終わったので茜と一緒に教室へと戻った。

前半にしっかりと茜の相手をしたおかげか、いつもより機嫌が良かったのは幸いだ。

 

それよりも......。

 

 

 

「くそっ! こんなに忙しくなるなんてっ!!」

 

 

 

今は丁度お昼時、学園祭とは思えないほどの込み具合の対応に追われていた。

混雑時を予想して事前に作っておいた料理は勿論、人気があると思われるメニューの作り方は優先的に厨房スタッフに教えこんだ。

 

だが、この学校の学園祭というものを完全に甘く見ていた。

 

俺たちが通うこの学校は、王族である俺たちが通っているというのもあるが、大学への進学率もかなり高いため有名なのである。

 

 

 

「優香ちゃん (優)、接客お願い!」

 

 

「は~い、今行きます!」 ※裏声

 

 

 

 

 

「ぐったり......。」

 

 

 

ピークが過ぎ、お客さんたちも捌けてきたので今は休憩中である。

 

 

 

「......。」

 

 

「......。」

 

 

 

茜と花蓮もぐったりした様子で、他の皆も慣れない接客でかなり営業スマイルが引きつり始めている。

 

 

 

「バイトしてる俺が皆より早くへばるのはなんか違うよなー」

 

 

 

休憩室を出て、ホール担当の人と代わり仕事に戻ると、丁度二人組のお客さんが来ていた。

 

 

 

「お帰りなさいませご主人さ...ま......」

 

 

「やあ優君、お昼は大変そうだったね。それにしても、面白いものが見れたよ」

 

 

「先輩! 今のもう一回お願いします!! ちゃんと録画するので!!」

 

 

「う......うわああぁぁぁん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと......終わった!」

 

 

学園祭は何とか終了し、片付けも終えた俺たち。

後は後夜祭のキャンプファイヤーの準備が終わるのを待つだけである。

 

人生で初めての文化祭は疲れこそしたものの、クラスの皆で協力して作業をするということにかなりの達成感を感じていた。

 

 

 

「う~ん......なんか忘れてる気がするんだけどなー。ま、いっか。」

 

 

「優、そろそろ準備が出来たみたいだよ!」

 

 

「おう、行くか!」

 

 

キャンプファイヤーでは、お馴染みのフォークダンスがある。

男女で踊るのが一般的だが、葵姉さんによると、流石に皆恥ずかしいのか参加する人自体が年々少なくなっているらしい。

 

生徒会はこの傾向を良く思っていないらしく、何とか参加人数を増やそうとしているのだが、中々良い案が出ないという。

 

 

 

「あのさ、優」

 

 

「ん、どうした茜?」

 

 

 

グラウンドに向かっている最中、隣を歩いていた茜が突然聞いてくる。

 

 

 

「その......後夜祭のフォークダンスに、誰かから誘われてないの?」

 

 

 

茜が不安そうな顔を向けながら聞いてくる。

いつの間にか手が握られていた。

 

 

 

「んなわけないだろ。そう言う茜こそどうなんだよ? お前に浮いた話なんて聞いたこと無いぞ?」

 

 

「......うるさい、ばか」

 

 

 

握っている手に少しだけ力が込められる。

いつものお仕置きではなく、妹らしい反抗のように感じた。

 

 

 

「ほら、むくれてないで早く行くぞ」

 

 

 

外が騒がしくなってきた。

どうやらもうそろそろ始まるらしい。

 

メイド服のまま踊るのは少し躊躇ったが、ここまで来ては最後までこの姿でいるのもいいかもしれない。

 

グランドに着くと、既に集まっていた男女ペアがいた。

 

 

 

「.........。」

 

 

「ほら茜、手出せ」

 

 

 

まださっきの事を引きずっているのか、頬を膨らませして顔を逸らしながらだが、手を出してきた。

 

全く、扱いづらいお姫様だ......。

 

茜の手をしっかりと握り、曲に合わせて踊る。

今回のフォークダンスはペアの入れ替えが無いので、終始茜と一緒なのだが......。

 

 

 

「茜、顔上げろ」

 

 

「......うぅ///」

 

 

 

2人組のダンスでは腰に手を当てたりと、体が触れることが多い。

気持ちは分かるが、この程度で恥ずかしがっていては国同士の交流会で開かれるパーティで踊ることすらできない。

現に茜は俺意外と踊ったことは無い。

 

全く、ほんとに手のかかるお姫様だ。

 

 




ダンデライオンの原作の続きが早く読みたいです。

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勉強2

お久しぶり?です。

最近twitter始めたので、よろしければフォローして下さい!
執筆状況等を呟いています!

感想ありがとうございます!


文化祭が終わり、中間テストが近付いてきた。

 

とは言え、まだ2週間程余裕はある。いつも通り行くなら、最初の一週間まではバイトを入れ、残りの一週間で詰め込みを行う。

 

本来なら2週間前から少しずつ準備をしていき、余裕を持ってテストに臨むべきだ。だが、先のやり方で中間以上の成績を取っているので、中々止められない。

 

しかも暗記科目は一夜漬けに近いので、当日フラフラになり、帰宅するなりすぐに意識を手放してしまう。

 

なので下の兄妹達に心配される事もしばしば......。

 

 

そんな事が中学生時代から続き、俺の体を心配した遙や岬が、それを上の姉さんに相談してしまったのである。

 

別に遙と岬が悪い事をした訳では無いのだが、相談する相手を別の人にして欲しかった.......。

 

せめて次女のかなねえに相談していたなら、「あいつの事だし、大丈夫でしょ」と言った感じになったはずだ。

 

 

 

「優君? 手が止まってるよ?」

 

 

「ここが分からなくて......」

 

 

「じゃあ教科書を見ようか」

 

 

「......はい」

 

 

 

この長女もとい葵姉さんは、妥協を許さず、甘えも許さないのだ(兄妹に対してのみ)。

 

そのせいで、分からない問題は教科書を見ろと言われ、どうしても理解出来ない所だけにヒントを出すという、学校の先生と比べて慈悲の欠けらも無い。

 

しかも1日の目安を終えるまで決して部屋から出れず、食事とトイレの時のみ出れる。

 

さらにスマホは取り上げられ、茜に預けられている。もし俺が逃げ出した時の保険としてとの事らしい。

 

 

 

「優くん、今日のノルマまで後20ページだけだから、頑張ろう!」

 

 

「......この鬼ババア」 ボソッ

 

 

「そういう事言っちゃうんだ? じゃあこの前桜ちゃんと一緒に買い物して、その後に家まで行ってご飯作ってあげたこと、茜に言ってもいいんだよね?」

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいお願いですからそれだけはっ...!!」

 

 

 

実は先週の土曜日の昼に夕飯の買い出しをしていた所に、偶然桜ちゃんと会ったのだ。

 

お互いにその後の予定が無く、折角なので昼食を作ってあげようと(無理矢理)桜ちゃんの部屋にお邪魔し、昼食を食べた後はゆっくりと世間話をし過ぎたせいで、葵姉さんに伝えていた帰りの時間を大幅に過ぎてしまっていた。

 

結果、帰った時には葵姉さんはかなり怒っており、洗い浚い話したのだった。

 

 

 

「全く、普段から勉強しろとは言わないけど、せめて2週間前からはやるべきだよ?」

 

 

「返す言葉もございません......」

 

 

 

自分の不甲斐なさに落ち込みつつ、気分転換にと少し部屋を見渡す。

 

葵姉さんの部屋は他の妹達とは違い、女の子らしいものがかなり少ない。1番そう言った物が多いのは光の部屋だが、あれはどちらかと言うと散らかっているだけだ。もしかしたら物が入り切らなくなっている可能性もあるが...。

 

 

 

「ところで葵姉さん。気分転換にファミレスとかで勉強しない?」

 

 

「駄目よ優くん。私たちがそこでまともに勉強出来ると思う?」

 

 

 

長時間滞在可能なファミレスでの勉強を提案したが、そもそも俺達が王族である事を忘れていた。

 

王族がファミレスで勉強しようものなら、周りからの視線でそれ所ではないだろう。

 

 

 

「あ、でも優くんが働いてる所なら大丈夫じゃない? この前行ったことあるけど、結構落ち着いた雰囲気だったし、勉強にはぴったりだと思う」

 

 

「いやっ...あそこはほら! 桜ちゃんや店長いるから長話ししちゃうし、染み付いた社畜魂が俺を仕事に引っ張り出すかもしれないし......」

 

 

「へぇ、優くんは私の前で勉強を差し置いてそういう事するんだ?」

 

 

「そういう訳ではなくてっ! あそこで勉強する事自体が...」

 

 

「でも、場所を変えてみるのはいい事だし、行ってみようか!」

 

 

「はぁ......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来てしまった...」

 

 

 

あの後、結局葵姉さんの言う通りに店まで来てしまった。

 

今は15時なので、おそらく2時間程は滞在する。最初の30分は軽く食事をして、残りは勉強、といった感じだろう。

 

ここまで来て家に引き返そうとは言えるはずもなく、渋々ドアを開ける。

 

 

 

「いらっしゃいま......あれ? 先輩に葵さんじゃないですか。珍しい組み合わせですね?」

 

 

 

今は丁度、桜ちゃんがシフトに入っている時間帯だ。相変わらず仕事は頑張っているようで微笑ましい。

 

 

 

「今日は優くんの勉強を見てあげようと思ったの。2時間ぐらい居座る感じになっちゃうけど、大丈夫?」

 

 

「今の時間帯なら大丈夫ですけど......そう言えば先輩この前、テスト勉強はもう完璧だからやらなくむぐっ!」

 

 

 

突如聞こえてきた不穏な言葉を遮るように桜ちゃんの口を手で塞ぐ。

 

傍から見ると女性定員に手をかけようとする変態客に見えなくもないが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

 

今桜ちゃんが言いかけた言葉だが、実はこの間テストの話題になった時......。

 

 

『先輩、もうそろそろテストだってこの前言ってたじゃないですか。勉強の方は大丈夫なんですか? 先輩のスマホにある予定表見た感じだと、シフトをいつも通り入れてたと思うんですけど......。』

 

 

『勿論! 最近はコツコツと勉強してたからね。バイトを入れても問題無いように、既に完璧にしてあるんだよ!』

 

 

『流石です! ですが先輩? 予定表に書いてあったテスト明けの土曜日に行われる、クラスの女子達と思われる数名とカラオケにフリータイムでみっちり歌うという事を目標に頑張っていたわけでは無いですよね?』

 

 

『......。』

 

 

 

 

 

と言ってしまったのだ。

 

決して嘘を付いていた訳では無いのだが(現にこうなってしまっている時点で嘘)、数ある教科の中で化学に関してはあの時点で未だにノータッチ。他の教科は化学程ではないにしろ、それでも点数は半分取れるかどうかだった。

 

だが、桜ちゃんにはそう言っておく必要があった。なぜなら、情報はどこで漏れるか分からない。なら誰が聞いても安心できるようなことを保険として言っておく必要があったのだ。

 

これなら、たとえ何かの間違いで葵姉さんに俺が言った事が伝わったとしても、特に詮索は無い。

 

我ながら完璧な作戦だったのだ。

 

 

そんな作戦も、昨日唐突に行われた葵姉さんによる口頭試問により無残に砕け散ったが...。

 

 

 

そんなこんなで、桜ちゃんが失言をしてしまわない内に釘を刺しておく必要がある。

 

突然口を手で塞がれた桜ちゃんは、自分が何をされたのかを理解した瞬間に顔を真っ赤にしていたが、落ち着かせている暇は無い。早くしないと葵姉さんが不審に思ってしまう。

 

急遽桜ちゃんの体を反転させ、葵姉さんに背を向ける感じで話しかける。

 

 

「桜ちゃん。葵姉さんの前では俺の勉強の話はしない事! いいね!?」

 

 

「ふぁ...ふぁい」

 

 

「どうしたの優くん? 突然桜ちゃんを襲ったりして...」

 

 

「誤解を招くような発言はやめてくださいお姉様。桜ちゃんに店長からの伝言を伝えただけだよ。企業秘密だからあんまり大きな声では言えなかっただけ」

 

 

「そうだったんだ」

 

 

 

何とかその場をやり過ごすことに成功した俺は、その後もボロを出さないように頭をフル回転させるのだった。

 




中々3000字いかない......。

これからの目標として、最低3000字でいこうと思ってたんですが、中々行きませんね(^_^;)

10月に入れば更新速度は早くなると思うので、もうしばらくお待ちください.....。.


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長女誕生日

お久しぶりです!

皆様、私が前回言っていた事を覚えていますでしょうか?

そう、「更新ペースが早くなる」的な事を言っていたんですよ!

まあそんな事は無かったと!
誠に申し訳ございませんでした(T_T)

今回は葵姉さんの誕生日回です!
ではどうぞ!



 

 

「ひーふーみー......よし、大丈夫だ」

 

 

「優ちゃん何が大丈夫なのー?」

 

 

「ん? 明日は葵姉さんの誕生日だろ? 何を買おうかなって思ってたんだよ」

 

 

 

机の上で諭吉さんを数えていると、後ろからひょっこりと光が顔を出してくる。

 

 

 

「あー...」

 

 

「さては光...忘れてたろ」

 

 

「そ、そんな事ないって! アタシはもう買う物決めてるもんね!」

 

 

「でも昨日お小遣い使い切ってなかったか?」

 

 

 

昨日の出来事を思い出してみる。冬休みに入った初日(土曜日)、朝っぱらから光に叩き起され、買い物に付き合ってと言われたのだ。

 

当然布団から出たくないので一人で行けと言ったのだが、どうやら光の友達であるチカちゃんたちも一緒に、割と遠くの方へと行くらしく、安全上俺も付いていくことにした。

 

そこで何があったかの詳細は置いておくとして、新しい物に興味を引かれた光は次々に金をつぎつぎ込んだ末、食事代を俺に立て替えてもらったのだ。

 

よって、光の所持金は0に等しい。

 

 

 

「優ちゃ~ん!助けて~...!」

 

 

 

光が後ろから座っている俺に腕を回して抱きついてくる。さらにそのままの状態でスリスリしてくるものだから、少しこそばゆい。

 

おまけに少しいい匂いがするものだから、ほんの少しだけだが、ドギマギしてしまう。

 

光のやつ、おねだりが上手くなったな。

 

 

 

「母さんに頼んでこい」

 

 

「月初めに貰ったばっかだから怒られちゃうって!」

 

 

「だったらかなねぇに...」

 

 

「かなちゃんはなんか嫌っ!」

 

 

 

母さんが駄目ならかなねぇの能力で...と思ったが、あの人の性格と、折角のプレゼントを能力で用意するというのは流石に嫌だったらしく、強く反対されてしまう。

 

近くにかなねぇが居なくて良かった...。

 

 

 

「ねぇ優ちゃ~ん...」

 

 

 

俺が中々折れないため、光は俺の横に来ると、膝の上に跨って更に擦り寄ってくる。

 

 

 

「光、流石にこれを茜に見られたら俺がただじゃ済まないんだが」

 

 

 

妹が自分を頼ってくれるのは嬉しいが、命の危険に晒されてると思うと気が気でない。

 

 

 

「はぁ、分かったよ。今回は助けてやる」

 

 

「ほんとに!?」

 

 

「ただし、冬休みの課題は年内に終わらせることが条件だ。年明けに慌てるなんて御免だからな」

 

 

 

 

 

俺はかつて、これ程までに絶望した光の顔を見たことがなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、先輩と光ちゃんはなぜ私の家に来たんですか? あ、迷惑とかじゃなくて逆に嬉しいんですけど、あまりにも急だったもので」

 

 

 

俺達は、今回の作戦に置いて重要人物と成りうるであろう桜ちゃんの元へと来ていた。

 

ここに来る前に俺が光に提案したのは、プレゼントを買うのではなく、作ることだった。

 

何かを1から作るのであれば、二人分ぐらいの材料費はそこまで痛くなく、むしろ誤差である。

 

そこで何を作るのかと言うと...

 

 

 

「桜ちゃんにフェルト人形の作り方を教えてもらおうと思って」

 

 

「フェルト人形...ですか」

 

 

「俺と光は裁縫とか全然駄目だからさ、桜ちゃんなら出来るんじゃないかと思って」

 

 

 

そう言うと、少し考える素振りを見せる桜ちゃん。

 

彼女が裁縫が得意という根拠は無いが、これでも女子中学生。

現役で家庭科の授業を受けているのだ。たとえ体の発育的に母性を全く感じなくとも、まるで子供の洋服のボタンや、穴を塞ぐぐらいの手軽さでやってみせてくれると信じている」

 

 

「優ちゃん、声出てる...」

 

 

「えっ?」

 

 

 

光の声で我に帰ると、目の前には満面の笑みで拳を構える桜ちゃんがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、君のその性格には恐れ入るよ」

 

 

「返す言葉が無いです...」

 

 

俺達が次に訪れたのは、アルバイト先である喫茶店。

 

オーナーならば出来るかもしれないという、淡い希望を持ってやって来たのだ。

 

因みに桜ちゃんには何を作るかを伝えたところ、流石に俺達素人に教えられる程の代物ではなかったようで、申し訳なさそうに断られてしまった。

 

 

 

「君達が作りたいものはなんとなく分かったが、具体的に何時までに作り終わればいいんだい?」

 

 

「今日が22日なので、明日の夜までには...て、店長!フライパンは待ってください!分かってます、店長の言いたい事は分かってます!!」

 

 

「全く、なら明日は光ちゃんを連れて店に来たまえ。空いてる時間に教えてあげよう。今日は流石に時間も材料も無いからね」

 

 

「ありがとうございます店長!ほら、光も!」

 

 

「ふぁふぃふぁほうほはいはふ!」(シフォンケーキを頬張りながら)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、光を連れて開店時間前に店に行き、昨日買った材料を使って少しずつ作っていく。

 

基本は店長が教えてくれるが、どうしても店を出なければ行けない時は桜ちゃんが見てくれる。

 

桜ちゃんが見てくれる時は、代わりに俺が仕事をする。

 

こうしたサイクルを繰り返す事で、光が中心に作業を行い、必ず誰かが補助に回れる。

 

 

これを夕方まで行い、光はもちろんのこと、仕事をしながらの俺と桜ちゃんもぐったりとしていた。

 

店長はと言うと、俺達のクリスマスパーティ件葵姉さんの誕生日の為のテイクアウト料理の下準備をしている。

 

この料理は、パーティ当日に俺が受け取りに行くものだ。

 

 

 

 

 

 

2人に何度もお礼を言いながら、作り終わった人形を手に帰路につく。

 

 

 

「葵ちゃん、喜んでくれるかな?」

 

 

 

作った人形を両手に、胸の前でギュッと抱える。

 

光にしては珍しい少し俯きがちな顔には、不安な感情が読み取れる。

 

そんな光の頭に手を乗せ、少し乱暴に撫でる。

 

 

 

「光は、葵姉さんのことが好きか?」

 

 

「あ、当たり前だよっ!!」

 

 

「その気持ちがあれば充分だ。いいか、光。兄や姉っていう生き物はな、弟や妹の気持ちがこもってりゃあ、何でも嬉しいんだよ。ま、要は出来や実用性なんて関係無いって話だ」

 

 

 

最後に頭をポンポンと叩いてやると、光が何か吹っ切れたように顔を上げ、「よしっ!」と気合を入れる。

 

 

 

「そう言えば優ちゃんはさ、貰うなら何がいいの?」

 

 

「う~ん......金」

 

 

「うわっ、サイテー...」

 

 

 

今までに感じた事の無い、光の軽蔑オーラを受け取ったのであった。

 

 




~誕生日当日~

光「葵ちゃん、これ!誕生日プレゼント!!」

葵「光が作ったの!?」

光「優ちゃんと桜ちゃんと、店長さんが手伝ってくれたの!頑張って葵ちゃんに似せようとしたんだけど、中々上手くいかなくて...」

葵「ふふふ。ありがとう光」

~ここまで~





葵姉さんの誕生日回なのに!
本編に葵姉さんが登場してない!

すみませんでしたー!!!


それでは皆さん、よいクリスマスを!
次回はお正月回かな...

評価・感想・お気に入り、お待ちしております!


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のんびり

皆さん明けましておめでとうございます

年明け初のダンデライオンです!

昨年感想・評価・お気に入りしてくださった皆様は勿論、読んでくださった皆様、大変ありがとうございました!

これからも「城下町の低身長」をよろしくお願いします!!


PS:もうすぐこの作品は一周年ですね(威圧)!


「あったけぇ~」

 

 

「あーつーいー...」

 

 

「アンタ達何やってんのよ」

 

 

 

時刻は昼の12時過ぎ。葵姉さんの誕生日&クリスマスを終えて正月を迎えた俺達は、現在休暇を満喫中だ。

 

リビングのソファで特番を見るのもその一つ。芸能人格付けチェックみたいなものを見ながら、妹の光と談笑している。

 

余談だが、俺の膝の上には光が座り、俺が腕を回して抱いている。

 

完全に湯たんぽ代わりである。

 

他の兄妹達は何をしているかと言うと、送られてきた年賀状を仕分けし、各々がそれに対して年賀状を書いている。

 

櫻田家では、自らが年賀状を送ることは少ない。

 

何故なら全国民に書きたがる王様がいるからだ。なので基本は来たらきちんと返す。自分が送りたい場合は勿論書く。なので、正月明けは忙しいのだ。

 

忙しい兄妹立ちとは違い、年賀状を後回しにしてだらけきった俺達に呆れるような目を向けてくるかなねぇ。

 

 

 

「年賀状、ちゃんと書いときなさいよ。後でみんなの分纏めて出すんだから」

 

 

「ほーい」

 

 

「かなちゃん助けて~...あーつーいー」

 

 

 

俺の腕の中でもがく光が、かなねぇに助けを求める。

 

妹からのSOSを受け取ったものの、面倒臭いのか光には同情の眼差しが向けられただけだった。

 

 

 

「優、茜に見られても知らないからね」

 

 

「ぐっ...!だって寒いし...」

 

 

「寒いなら暖房付けなさいよ」

 

 

「付けてるけど、設定温度が23℃じゃ寒いよ!」

 

 

 

櫻田家には、何故だか知らないが夏は26℃で冬は23℃というルールが存在する。

 

もし、これ以上下げたり上げたりしようものならば、母さんと葵姉さんに......考えただけでも恐ろしい。

 

 

 

「優が寒がりなのは知ってるけど、光で暖を取らなくても...」

 

 

「夏場は俺がアイスで助けてやってるんだ。これぐらいどうってことないだろ光!お兄ちゃんは寒くて死にそうなんだ!」

 

 

「う~、なら仕方ないかも...」

 

 

「仕方ないんかい!」

 

 

 

兄が妹に甘ければ、その妹も兄には甘いらしい。

 

呆れたかなねぇは、小腹でも空いているのか先日大量に買った切り餅を探し始めた。

 

 

 

「あれ?お餅結構あったと思ったんだけど、もう無くなってる」

 

 

「「あー、昨日全部食べちゃった」」

 

 

「今すぐ買ってこい堕落兄妹!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うー寒っ...」

 

 

「流石に街中で抱きついてこないでね、優ちゃん」

 

 

「妹にここまで拒絶されるとは...」

 

 

 

あの後俺達はかなねぇに罰として夕飯の買い出しを命じられ、光と2人で近くのスーパーに向かっている。

 

だがまぁ、今週の買い物当番は俺なので問題は無い。

 

だがその道中、昼間と言ってもやはり冬。

 

肌を刺すような寒さが襲ってくるが、風が無いのが唯一の救いだろう。

 

 

 

「そんなに寒いの?」

 

 

「寒がりだしな」

 

 

「うーん...。ねえ優ちゃん、ちょっとしゃがんで」

 

 

「ん?こうか?」

 

 

 

光の言われた通りにしゃがむと、俺の顔が光よりも低い位置に来た。

 

すると光は、自分の首に巻いていたマフラーを外し、俺の首へと巻く。

 

元々俺はマフラーを巻いていたため、本来よりも高い位置。

 

つまりは口元にマフラーが来ていた。

 

 

 

「むふっ...」

 

 

「じっとしててよ優ちゃん...よしっ!できた!」

 

 

 

想像して欲しい。首にマフラーを巻いているにも関わらず、更にその上にマフラーを巻いている男の姿を。

 

しかも口元が隠れているため、サングラスとニット帽を付ければ、女子小学生を連れた不審者の出来上がりだ。

 

しかも光のマフラーから女の子特有のいい臭いが...。

 

 

 

「はっ!危なかった...」

 

 

 

急いでマフラーを下げ、遠のいていた意識を戻す。

 

 

 

「どう?あったかいでしょ!」

 

 

「あぁ。ありがとな、光」

 

 

 

しゃがんだまま光の頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細める光。

 

そんな妹の可愛い表情をしばらく堪能した後、目的地であるスーパーへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと...切り餅、長ネギ、白菜、水菜、しいたけ、豚肉、うどん、あとは...」

 

 

「卵とダシだよ優ちゃん!」

 

 

「おっとそうだった」

 

 

 

スーパーに着いた俺たちは、渡されたメモを見ながら買い物をしていた。

 

メモから察せられるように今日の夕飯は鍋。葵姉さんが食事当番になると何故か盛大な夕食になるんだよなぁ...。賑やかで楽しくなるからいいけど、盛り上がり上がりすぎてやらかしそうな者の顔が数名思い浮かぶ。

 

そう考えていると、丁度すぐ隣の筆頭候補に目についた。

 

 

 

「光、さっき入れたお菓子を戻してこい」

 

 

「うっ!バレてた...」

 

 

 

悪事がバレた光は、渋々と言った表情でカートの籠からお菓子を取り出す。

 

ざっと見た所10個程あったが...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、これで全部だな。にしても光の奴遅いな...もしかして迷子か?」

 

 

 

光がお菓子を戻しに行ってから20分が経った。トイレに寄っているとしても遅い。

 

 

 

「久しぶりに能力使うか」

 

 

 

他の兄妹達が日々能力を使う中、俺の能力(念話)はあまり使われることがない。

 

なぜなら、純粋に使い時が無いからだ。

 

携帯が普及しまくっているこの時代に、わざわざ念話で会話をしようという者はいないだろう。

 

だが今回は光が行方不明?なので、使い時である。

 

 

 

(ひか...)

 

 

 

能力を発動させ、光と念話しようとしたその時、不意に後ろから肩を叩かれる。

 

 

 

「遅かったなひか...うおぉっ!桜ちゃん!?」

 

 

「明けましておめでとうございます、先輩」

 

 

「お、おめでとう...あれ?桜ちゃん髪切ったの?」

 

 

「はい!この時期に切るのはどうかと思ったんですけど、スッキリしたいなと思いまして...」

 

 

 

年末までは髪をサイドテールにしていた桜ちゃんだが、今は肩に掛からない程の長さになっている。

 

桜ちゃんが言っている'時期'というのは、彼女が置かれている立場の事である。

 

中学3年生の彼女は丁度受験期真っ只中。しかも最後の追い込みを行う時期である。その時期に髪を切るのは縁起が悪いとされており、もしかすると少し引きずってしまっているのではないかと心配になる。

 

 

 

「でも、縁起とか気にしてる余裕無いので、逆に開き直ってます」

 

 

 

どうやら杞憂だったらしい。

 

 

 

「余裕が無いと思えてるんだったら、大丈夫かな。いやー、てっきり失恋しちゃったのかと...」

 

 

「は?」

 

 

「何でもないです...」

 

 

「優ちゃんってホントにデリカシー無いよねー」

 

 

 

俺が桜ちゃんの威圧に萎縮していると、彼女の後ろからひょっこりと光が現れた。

 

どうやら隠れていたらしい。

 

 

 

「遅かったな光」

 

 

「途中で桜ちゃんに会って話し込んじゃったの!」

 

 

「なんであれ、迷子じゃなくて良かったよ」

 

 

 

光の無事が分かり、安心した声で話しながら光の頭を撫でる。

 

光は俺が心配してた事が分かったのか、しっかり「ごめんなさい」と謝ってくる。

 

 

 

「では先輩、光ちゃん。私はこれで失礼しますね」

 

 

「あ、桜ちゃん!夜予定とかある?」

 

 

「え...?特には無いけど...」

 

 

「じゃあさ、ご飯食べに来てよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「え!?」」

 

 

 




いつもよりほんの少し長かったですね。

実はお正月らしい話にしようと思ってたんですが、全然そんなことなかったです(苦笑)


では皆様、評価・感想・お気に入りお待ちしております!


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お食事

皆様お久しぶりです!

長らく更新していないのに、まだ読んでくださってる読者さんがいることに感謝です!

ps:実は一周年がとっくに過ぎてました......。


 買い物を終えた俺たちは、光の提案で一緒に夕飯を食べることになった桜ちゃんと共に帰宅した。

 

 買った材料を料理当番の葵姉さんに渡し、俺と光と桜ちゃんはリビングで談笑していた所に二階から降りてきた輝や栞、修兄(この三人は初めて会ったため)に桜ちゃんを紹介した。

 

俺が初めて女の子を家に連れてきたということもあってか、桜ちゃんは皆から質問攻めを受けていた。

 

 

 

「桜さんは、優兄様とはどういったご関係で?!」

 

 

「輝君のお兄さんとは、バイト先で知り合ったんだよ。お兄さん凄く頑張って働いてるの。だから輝君も、負けないように頑張ってね!」

 

 

「優お兄様、お顔真っ赤......」

 

 

「そ、そんな事ないぞ栞!ほら桜ちゃん、余計な事言わなくていいから!」

 

 

 

恥ずかしい事を弟に吹き込んでいる桜ちゃんを少し窘めると、「はーい」と、軽くニヤついた当人に返事をされる。

 

そのやり取りを見ていた他の兄妹達(茜を除いて)は暖かい目でそれを見ており、あまり面白くないと感じたのか、茜は少し不機嫌そうな顔をしてリビングを出て行った。

 

それを見かねた俺は、桜ちゃんに一声かけてから茜を追った。

 

 

 

「ったく、茜は変わんねぇな......ま、追い掛けてる俺もなんだろうけど」

 

 

 

俺は何の迷いもなく玄関に向かった。こういう時、茜は決まって一人でぶらぶらと何処かへ行ってしまう。

 

茜の事は分かっているつもりだ。俺が家族以外の女の子、しかも年齢が近い子と親しげに話していると、茜は嫉妬してしまう。

 

だが、茜は昔からこうであった訳では無い。

 

原因は、俺がバイトを始めた事による、茜と接する時間が極端に減った事だ。

 

バイトのシフトを多く入れるようになってからは更に茜との時間は減り、基本平日に2人きりで話す事はかなり少なくなってしまった。

 

そんな中、茜と衝突が起こった。

当時はバイトと勉学で手一杯だったため、自分以外の事に気を配る余裕が無かったせいなのかもしれない。

 

俺は自分の身内がバイト先に来る、という事を嫌がっていた。

 

勿論やりにくいし、恥ずかしいからだ。

 

更に日々の忙しさにストレスが溜まっていた。そんな時、茜が客として店にやって来たのだ。

 

その時に溜まっていたストレスが爆発してしまい、茜に酷い事を言ってしまった。

 

 

 

「はぁ......。思い出したくねぇ~」

 

 

 

口ではそんな事を言いつつ、当時の状況を自分への戒めとして思い出している。

 

 

 

「お、茜ー!」

 

 

 

少し歩いていると、赤いツインテールの女の子を見つけた。

 

服装からしても間違い無く茜である。俺は後ろからサッと近付くと、茜の肩をポンポンと叩いた。

 

 

 

「何?」

 

 

 

茜が振り向こうとした所に、少しイタズラ心で、丁度頰っぺに指が当たる位置に手を構えていたのだが......。

 

 

 

「ゴフッ!!」

 

 

 

俺が構えていた指は茜の頬に当たることは無く、代わりに拳が腹へと飛んできた。

 

 

 

「お、お前......」

 

 

 

振り向きざまに上半身を屈めて指を回避し、拳を俺の腹へと放った茜は、痛みに悶えて膝を地に付いた俺を見下ろしていた。

 

 

 

「優の考えてる事ぐらい分かるから。どうせ、私の頰っぺに指当てようとしてたんでしょ?」

 

 

 

茜の言葉にぐうの音も出ない俺は痛む腹を擦りながら立ち上がり、そのまま家とは逆の方向に歩き出した。

 

 

 

「ちょ、ちょっと優!?私を追い掛けてきたんじゃないの?」

 

 

「まぁそうだけどよ、お前が結構距離歩いてたからな。このまま帰るより、どっか寄ってこうぜ」

 

 

「で、でも夕飯は?」

 

 

「葵姉さんにはさっき伝えといたから大丈夫だ」

 

 

 

茜の返答を待たずに、そのまま早足で目的地へと向かう。

 

後ろから「待ってよ~!」と声が聞こえるが、気にせずに歩き続けた。

 

そして目的の物を見つけると立ち止まり、それをじっと見つめた。

 

 

 

「はぁ、はぁ。優!少しは待ってくれても......」

 

 

 

割と大きめの声で文句を言ってくる茜の唇に、俺は人差し指を軽く当てた。

 

 

 

「夜なんだから、大きな声出すな」

 

 

「う、うん......///」

 

 

 

茜は顔を赤らめながら軽く俯いた。俺と茜の身長はあまり変わらないため、その表情はしっかりと見えた。

 

双子の兄とはいえ流石にキザ過ぎるかとやった後に後悔したが、ここで謝ってしまうとカッコ悪いので、早速本題に入る事にした。

 

 

 

「茜は、本当に王様になりたいと思うか?」

 

 

「いきなりどうしたの?」

 

 

「どうなんだ?」

 

 

「私は......なりたい、かな?」

 

 

 

俺の質問に弱々しく答える茜。それを横目で確認してから、また質問をした。

 

 

 

「それは何故だ?」

 

 

「えっと......国の皆が期待してくれてるのなら、私はそれに答えたい」

 

 

「そうか。なら、国民が俺達に期待してる事は何だと思う?」

 

 

「それは......」

 

 

 

今度は答えが思い浮かばないのか、茜からは次の言葉が出てこなかった。

 

 

 

「質問を変えるぞ。お前は王様になって、やりたい事はあるか?」

 

 

「やっぱり、国民の期待に......」

 

 

「それじゃあ、王様は国民の奴隷だな」

 

 

「でも王様ってそうなんじゃないの?」

 

 

 

茜の質問に、俺は淡々と言葉を返す。

 

 

 

「そりゃあ国民の声に耳を傾けるのは必要さ。でも、それを一々叶えてたら、国は滅茶苦茶になるぞ」

 

 

「良い事と悪い事の違いは分かると思うけど?」

 

 

「じゃあ、その善し悪しの基準は何だと思う?」

 

 

「王様の考え......あっ」

 

 

 

俺の質問に何かを感じた茜は、ハッと顔を上げた。

 

顔を上げた先にあるのは、櫻田家の兄妹の選挙ポスターが貼ってある掲示板。

 

そのポスターには、それぞれが掲げるスローガンが書いてあった。

 

 

 

「ま、茜のはスローガンなのか大部怪しいけどな」

 

 

「しょ、しょうがないでしょ!急すぎて全然思い浮かばなかったんだもん......」

 

 

 

茜のポスターには、「私は...負けません」と書いてあった。

 

 

 

「優はどんなのだっけ?」

 

 

「『恵まれない子供たちに救いを』、だな」

 

 

「結構ストレートだね......」

 

 

「これでも大部オブラートに包んでるんだがな」

 

 

 

俺は数カ月前に掲げた自分のスローガンを見て、震えながら拳を握った。

 

 

 

「優、寒いの?」

 

 

「いや大丈夫だ。それより茜、俺のスローガンをどう思う?」

 

 

「どうって、優らしくて良いと思うけど?」

 

 

「俺らしい......か」

 

 

 

俺は街灯で照らされた自分のポスターを一瞬睨みつけ、すぐに視線を外した。

 

そして、自分の考えを妹に伝える事にした。

 

 

 

「茜、俺は王様にはならない。なっては......いけないんだ」

 

 

 

俺がそれを言い終わると、冷たい夜風が俺たち二人の間を流れて行った。

 

 




もうそろそろ二年目に突入します!

これからも「城下町の低身長」をよろしくお願いします!

評価・感想・お気に入り、お待ちしております!!!


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お食事(続き)

皆さんマジでお久しぶりです・・・。
数か月間を空けてしまいホントに申し訳なく思ってます(n回目)
ネタが尽きてきたわけじゃないんですが、他作品に熱が入ってました!
次の次辺りからは、原作の話をやろうかなと思ってます!(そろそろアンジェシカを登場させたいですし・・・でもまだ一年たってないんですよね~)

そんなこんなで、まだまだこの作品は完結いたしません!というか、原作が終わるまでは完結させたくありません!

では皆さん、今後ともよろしくお願いいたします!

PS:定期的にこの作品にアクセスがあり、それを見るたびに顔がにやけてしまいます・・・///



その後、俺と茜はそのまま真っ直ぐに家へと帰ってきた。

 

 

「もう、遅いよ優ちゃん!待ちくたびれちゃった~!」

 

「待たせた罰として、洗い物アンタがやりなさい・・・・・・って言いたいところだけど、今回は許してあげるわ」

 

 

素直に俺に対して文句を言う光とは違い、事情は知っていると言わんばかりのかなねぇ。これを見て何となく分かったが、かなねぇの隣にいた桜ちゃんの笑顔を見て確信した。

 

 

「その・・・待たせてごめん」

 

「ほんとだよ全く!私がどんだけ寒い思いして外で待ってたか」

 

「もとはと言えばお前が飛び出したのが悪いんだろうがっ!」

 

「まぁまぁ先輩。ご飯冷めちゃうので、早く食べましょう」

 

 

桜ちゃんに言われ、俺は渋々と引き下がる。その後はさっき茜と俺が深刻な会話をしていたのが嘘のように、家族+桜ちゃんで賑やかな夕飯となった。

 

 

 

 

 

「優ちゃんあーん!」

 

「しょうがねぇな」

 

「優、これも!」

 

「おまっ、それネギじゃねぇか!少しぐらい冷ましてくれ!」

 

「先輩、私のも食べてください」

 

「桜ちゃんに至っては豆腐!?しかも熱々だし、てか何で七味山盛りになってんの!?」

 

「ふふ、優君は人気者だね」

 

「花、呼んどけばよかったなぁ」

 

「呼ばなくて結構です」

 

「この熱さも、試練の一つなのか・・・!」

 

「お兄ちゃん、ちゃんとふーふーして」

 

「遥、私たちも負けてられないよ!」

 

「張り合うな岬!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食が終わり、それぞれが自室や浴槽へ向かう中、俺とかなねぇは洗い物をしていた。

 

 

「やんなくていいって言ったのに」

 

「俺が好きでやってんだよ」

 

「あらそう。なら、これからもずっとやる?」

 

「それは違うだろかなねぇ・・・」

 

 

軽口を叩きながら皿を洗い、水で流してかなねぇに渡す。するとテーブルの掃除が終わったらしい桜ちゃんがこちらへとやってきた。

 

 

「先輩、布巾を洗いたいので少しいいですか?」

 

「ごめんね桜ちゃん、客人なのに手伝わせちゃって」

 

「私が好きでやってるので」

 

「んんっ!口じゃなくて手を動かしてもらえないかしら?」

 

 

かなねぇの一言で、俺と桜ちゃんはお互いに赤面してしまう。そのまま黙々と作業を終えると丁度、岬と遥がリビングへと降りてきていた。

 

 

「ねぇ桜ちゃん、今日泊っていきなよ!明日休みだしさ!」

 

「こら岬、先輩を困らせるな」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて泊まらせてもらおうかな」

 

「あら意外。断ると思ったのだけど」

 

 

確かに桜ちゃんにしては珍しい。今までなら顔を真っ赤にして断っていたのだが、なんだか今日は落ち着いている。

 

 

「その、迷惑じゃ無ければ・・・」

 

「迷惑なわけ無いじゃん!着替えは私の貸してあげるからさ!」

 

「「あー、岬のだとブラが大き・・・」」

 

「先輩も遥君も、言いたいことがあるなら聞きますよ?」

 

 

俺と遥はつい思ってしまったことを言ってしまい、ハッと口を閉じる。だが勿論間に合うわけがなく、桜ちゃんのハイライトが消えた瞳が俺たちを見据えていた。

 

 

「泊るのはいいけど、桜さん何処の部屋で寝るの?」

 

「あっ、出来れば先輩と同じ「岬、お前のベッド使わせてやれ」むぅ・・・」

 

 

俺が岬にそう頼むと、桜ちゃんはちょっぴり不満げな顔をしてきた。そんな顔されても、茜と光がいる俺たちの部屋に桜ちゃんを入れようものなら地獄絵図になりかねない。

 

 

「じゃあ桜ちゃん、さっそく部屋来てよー!一緒に遊ぼー!」

 

「あ、まだ洗い物が・・・」

 

「いいよ桜ちゃん。後は俺らがやっとくから、行ってきな」

 

「す、すみません」

 

 

岬は桜ちゃんを部屋へ連行し、遥はその後を追って戻っていった。俺とかなねぇで残りの洗い物を片付けると、かなねぇが冷蔵庫から二人分のアイスを取り出した。

 

 

「真冬だけど、こういうのもいいでしょ。はい、お疲れ様」

 

「ありがとかなねぇ」

 

 

そのままリビングで二人、黙々とアイスを食べていると、急にかなねぇが口を開いた。

 

 

「ねぇ優。アンタ、生徒会に入らない?」

 

「やだ」

 

「即答しなくてもいいでしょ・・・。ま、バイトで忙しいってのは分かってるから、あまり拘束することはしないわ。副会長とかどう?」

 

「分かっててその役職進めるの?」

 

 

ジト目を向ける俺に対し、かなねぇは目線を合わせることなくアイスを食べ続ける。

 

 

「まぁ、今までずっと手伝いしてたし、いつかこんな日が来るとは思ってたけどさぁ・・・」

 

「大丈夫よ、今まで通り私が教えるから。ただ、新しい役員の教育係とかは任せるかもしれないけどね」

 

「それならバイトで慣れてるから大丈夫だと思う・・・・・・分かったよ。副会長やってあげる」

 

「ありがと優!私の後釜が居なくて困ってたのよ!」

 

 

かなねぇは両手を合わせて俺にお礼を言うと、食べ終わったカップをゴミ箱に捨てて部屋へと戻ってしまった。何とも薄情な姉である。だがかなねぇにもお世話になっているため、そこまで不満に思うことは無い。なんならこのまま生徒会長でもやってやろうかと思うほどだ。

 

そんなことを考えていると、ふとドアの方から視線を感じた。何となく察しは付いていたが、確認のために素早く振り向く。すると、それにビックリしたのか小さいからだが壁へと隠れた。だが、遅れて体に付いてきた黄色の長い髪が一瞬だけ宙にうねっていた。

 

 

「光、隠れてないで来いよ」

 

 

俺が声を掛けるとゆっくりとドアが開いた。そして予想通り光が姿を見せ、こちらに駆け寄ってくる。

 

 

「どうした光?いつものお前らしくないな」

 

「うにゅ・・・・・・」

 

 

どうやら光はかなり眠たいらしく、瞼は半分ほど下がっていた。しかも服は先程ご飯を食べた時のものである。

 

 

「風呂入っとけって言っただろ・・・」

 

「・・・・・・。」

 

 

光の視線は俺のアイスにくぎ付けになっていた。眠いくせに欲望に忠実な妹に呆れつつ、残りのアイスを食べさせてやる。片付いたところで光を風呂に入れてやり、髪を乾かして歯を磨いてやる。久しぶりに妹と入る風呂も悪くないと思いつつ、ふと脳裏に浮かんでしまった茜の裸を必死に振り払う。

 

 

「明日、桜ちゃんを紹介でもするかな」

 

 

俺も眠気でやられたのか、ふとそんなことをつぶやいてしまった。




ちょっとぐだぐだしてしまった感は否めませんが、許してください・・・。

ここでお知らせです!
私のハメ作家歴はかなり短いのですが、久しぶりに活動報告を更新しました!(これを書いてるときはまだ更新してませんが・・・)。そこである募集をやってますので、皆さん是非見てってください!

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お正月

お正月回ですよー!皆さん台風大丈夫ですかー!?


中々濃い一年を過ごした俺達家族は、正月というビッグイベントを楽しんでいた。

 

 

「優ちゃん初詣行こー!」

 

「あー・・・すまん光、俺今から用事あるんだよ」

 

「え~・・・あ、桜ちゃんとデート?!」

 

「大声で言うな!茜に聞こえたら「へぇ・・・優、私とも行くって約束したよね?」あ、あれは脅迫だろ!?関節キメながらだっただろうが!」

 

 

桜ちゃんと初詣に行く予定だったが、茜と光に捕まってしまう。何だかんだ言って連れて行ってしまうあたり、自分の命よりも妹の方が大事だと俺の本能が告げている。

 

全員支度を終えて家を出る。神社までは距離があるので、いったんある場所を経由する。

 

 

 

「やあ優くん、それに茜くんと光くんまで。あけましておめでとう」

 

『おめでとうございます!』

 

 

その場所は俺がバイトしている喫茶店。今日は定休日だが、オーナーにあることを頼まれていたため、初詣の前にこうしてやってきたのだ。

 

 

「せっかくのお正月だというのにすまないね。年末までには終わらせたかったんだが、店全部となると中々大変だったんだ」

 

「それならもっと早くに言ってくださいよ・・・掃除ぐらいいつでも手伝いますって」

 

「ありがとう。報酬と言っては何だが、お年玉を用意してるよ。桜くんはもう奥の方をやってるから、手伝ってあげて欲しい」

 

 

オーナーの言葉に頷くと、俺は自分のロッカーへと向かう。

 

 

「あ、あの!私たちも何か手伝いますよ!」

 

「ありがとう、気持ちだけ受け取っておくよ。流石にお子さんを3人も手伝わせたとなれば、五月さんに怒られてしまうからね」

 

「そういうことなら・・・」

 

「私コーヒーが飲みたい!今年こそブラック飲めるようになるんだもん!」

 

 

そんな3人のやりとりを聞きながら準備を終えると、桜ちゃんが作業しているであろう倉庫へと向かった。

 

 

(あけましておめでとう、桜ちゃん)

 

「っ!?」

 

 

倉庫の入り口から彼女の姿を確認すると、扉に隠れて能力を使う。彼女の頭に直接喋りかけているのだ。

 

桜ちゃんは毎度こういうことをするとよい反応を見せてくれる。今回もそうで、体をビクッとさせると、素早く後ろを確認し、誰もいないと知ると頬を膨らませて黙々と作業を再開した。

 

 

「無視は結構傷つくよ・・・」

 

 

おふざけも程々にして、倉庫の中へと足を踏み入れる。桜ちゃんの後ろ姿からは、[私不機嫌です]というオーラが出ていた。

 

 

「私と二人で初詣行ってくれるんじゃなかったんですか?」

 

「うっ、ごめん・・・。茜と光がどうしてもって聞かなくて・・・」

 

「全く、先輩は妹さんたちに甘すぎるんです」

 

「この埋め合わせはきちんとするからさ!」

 

 

両手を合わせて平謝りする俺に、桜ちゃんは[その言葉はもう聞き飽きました]というような目を向かてくる。

 

そんな雰囲気に耐えられなくなった俺は、自分も掃除を初めながら無理やり話を変えることにした。

 

 

「受験勉強はどう?」

 

「うっ、せっかくお正月気分で忘れてたのにぃ・・・」

 

 

言った瞬間に桜ちゃんは顔をしかめた。

 

 

「こっちが落ち着いたら勉強みてあげるから、頑張って」

 

「はい・・・」

 

 

桜ちゃんの志望校は俺が通っている小中高の一環校である。よって外部からの入学はそれなりの学力を持っていないと許可されない。今はそのための最終段階である。

 

お互いに少し喋った後は黙々と作業を再開し、掃除はあっという間に終わった。

 

 

「さて、それじゃあ戻ろうか」

 

「はい!」

 

 

作業着を脱ぎ、道具を片付けてホールへ戻ると、茜と光がケーキを頬張っていた。傍にはオーナーが腕組みをしながら笑顔でその様子を見守っていた。

 

 

「オーナーって子供好きなんですかね?」

 

「まぁ・・・あの年で結婚してないし、そういう願望はあるかもしれない」

 

「私たちはいつ結婚しましょう?やはり私が大学卒業してからですか?ですが大学生活をしながら家事を行うのもアリだとは思っていますが・・・」

 

「何言ってんの?」

 

 

中学生とは思えない言動をする桜ちゃんの頭にチョップを食らわせ、二人が座っているテーブルへと自分も向かう。

 

 

「オーナー、掃除終わりましたよ」

 

「ありがとう二人とも。とりあえずこれを受け取ってくれ」

 

 

そう言ってオーナーは懐から二つの封筒を取り出した。

 

 

「バイト代とは関係ない。これは私からの気持ちだ。存分に使ってくれたまえ」

 

『ありがとうございます!』

 

 

やはりお年玉を前にするとつい顔が緩んでしまう。その顔を見た茜と光は若干引いていたが、あいつらもじきにそうなるのだ。

 

 

「ところで優くん。私が独身だから子供に飢えているという見解について、少し話し合おうじゃないか」

 

「・・・・・・神社行ってきます!」

 

 

後日、俺はセルフ残業をすることで何とか許しを貰ったのだった・・・。

 

 




今回はちょっと短めでした!

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