東方鬼人伝 (ヴェルディ)
しおりを挟む

プロローグ
〜1人の鬼と災人〜


どうもヴェルディです!
東方鬼人伝の第1話!まだ駆け出したばかりの新米ですが今後の展開にご期待くたさい!



第1話:終わり

 

……

 

…………

 

………………

 

「……もうこんな時間か」

 

時刻は17時を過ぎたくらいだろうか、俺はビルの屋上で1人

山の奥へと沈んでいく夕日を眺めていた。

俺の名前は「進来 翠」(しんらい みどり)。17歳の高校生だ。

今まで食事に勉学に娯楽に、何不自由なく育ってきてた。

…育ってきてたつもりだった。

 

俺は赤子の頃、この街の近くにある伊吹山に捨てられていたらしい。

たまたまハイキングに来ていた夫婦が、「赤子の泣き声がする」と言ってハイキングコースを外れて探したところ俺がいたらしい。

実の両親の名前も分からない、なぜこんな所に捨てられて生きていたのかも分からない、わかっていたのは自分の名前だけ。

そんな俺をその夫婦はまるで自分達の子のように育ててくれた。

しかしこんな生い立ちのせいか、周りのヤツらにはいじめられ暴力を受けた。自分の身を守るために徐々に抵抗して、おかけで体力には自信があった。高校生にもなる頃には陰口こそあったものの俺に暴力を振るってくる奴はいなかった。

 

…しかしその高校生になった年、俺のたった1人の友人が事故で亡くなった。友人も、その両親もまた俺を兄弟のように接してくれて、もう一つの家族のような感覚だった。

悲しみに明け暮れていた所、もっと辛いことが起こった。

先月、俺を育ててくれた夫婦が病気で死んだ。

その前にも不吉なことは多かった。俺がよく通る道路で事故が頻発したり、火災が起きたりなど………いつしか俺は不幸をもたらすとして避けられるようになった……

 

 

「……こんな世界…楽しい事なんて何もないや…」

 

スマホをポケットにしまい、俺は屋上の鉄柵を乗り越え座り込んだ。

人生で最後にみる光景が山に沈んでいく夕日とは…なかなかロマンチックじゃないか。

そう思い俺は目を瞑り、身を投げる決心をした。その瞬間後ろから

 

 

「貴方はまだ死ねないわよ」

 

 

確か女性の声だったと思う。この屋上にはさっきまで俺以外いなかったはずだ。

突然聞こえてきた声に驚き目を開けて振り向いた

 

「……あっ」

 

突如として吹く突風。その勢いに煽られて俺の体はビルの下へと落ちていった。

あぁ…これで終われるのか、いい人生とは言えないが少なくとも幸せや温もりはあった。重力に身を任せ体が落ちていく刹那、脳裏に今までの出来事、思い出が鮮明に蘇った。いわゆる走馬灯と言うやつだろう。

楽しかった夫婦との日常、ただ1人の友人と騒ぎ合っていた思い出。

 

果てには不幸をもたらすなんて言われた1人の青年の人生が……

 

……終わる……

 

 

「いいえ、まだ終わらないわ」

 

またあの女性の声だ。幻聴でも聞いているのか?それとも死後の世界ってやつなのか?

しかしその疑問は一瞬で解けた。「生きている」という感覚がある。

目の前に見たことのない女性がいる。

 

「!?」

 

仰向けの状態で倒れていた俺は驚いて体を起こした。辺りを見回すとそこは赤紫のような、黒のような、またはその二つが混ざりあっているような。そんな背景に無数の目がある。

 

「な、なんだぁ…?ここは…いったい…」

 

そこはまるで地面の上のような、水の中のような、空中のような

全てが曖昧な世界だった。こんな突拍子もない非現実的な世界をすぐに受け入れられたのはそこに「自分」という現実で確かな存在をしっかりと認識していたからだ。

 

「ここは『スキマ』と呼ばれる境界よ。」

 

目の前の女性が理解に苦しんでいる俺を見てそう答えた。

髪は金髪、背は高め、雨も日光もないというのに傘をさしていて不思議な帽子を被っていた。

 

「はじめまして。私の名前は『八雲 紫』(やくも ゆかり)

言っても理解出来ないだろうから簡潔に説明させてもらうわ。

貴方にはこれから『幻想郷』という世界に行ってもらう。

貴方にとっては異世界とも言えるし同世界とも言える場所。

そこで貴方にはある化け物を倒してもらう」

 

……理解が追いつかない。幻想郷?異世界であり同世界?化け物を倒す?

ファンタジー過ぎる。そんなものが実在するのか、と疑問に思った所で現状を見れば信じざるをえない。

 

「…一つだけ聞いていいか?えっと…八雲…さん?」

 

「紫でいいわよ。なにかしら」

 

この際、幻想郷だの化け物だの、そんな事は置いといて一つだけ聞きたい事が浮かんだ…そう

 

「じゃあ紫、なぜ俺なんだ?」

 

俺がそう聞くと、紫はすこし微笑みこう答えた

 

「幻想郷に貴方を連れてこようとしたのは私じゃないのよ。

強いて言うなら別の人?かしらね」

 

人?ってところがすこし引っかかる気もするが…まさか人ならざるもの、とかじゃないよな?

頭がこんがらがりそうだ、理解できないことが多すぎる。

おそらく長考してて固まっていたのだろう

それを見かねた紫が

 

「取り敢えずは幻想郷に言ってみる事ね……がんばってね〜w」

 

「…………ハァ!?」

 

さっきまでの険しい雰囲気が一変、急に少しおちゃらけたような性格になった。満面の笑みであった事は確かだが明らかに腹黒さがあった。

紫が手を振った途端、俺の真下に穴が出来た。途端に重力がかかり俺は真下へと落ちていった……

 

 

そう、幻想郷に行った時点で「外の世界」の俺の人生は終わったのだ

そして幻想郷での人生が始まる……




前置きが結構長いと思いますがようやく次回から幻想郷!
キャラが増えるにあたってセリフの前に喋っているキャラの名前を入れていきます。
なるべく誤字脱字は気をつけたつもりですが……あったさいはゴメンナサイ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

〜1人の鬼と災人〜その2

どうもヴェルディです!

週一云々とは言いましたが話が頭にあるうちに書いておこうかなぁなんて思ってある意味ペースを守れそうにありません!
前回の第1話はあまりにセリフが少なかったかなぁなんて事も反省しながらまた書いていきたいと思います!


第2話

 

 

……

 

翠「んぁ……?どこだここ?」

 

訳の分からない「スキマ」とかいう場所から穴に落ちて気を失っていたようだ。

目が覚めると森の中で倒れていた。

時刻は…分からないがよるだろうか?

でも俺のいる場所だけ少し明るい。横を見ると焚き木があった。

 

???「おっ、目が覚めたかい?」

 

焚き木の炎の奥から声がした。

体を起こして声のした方向を見るとそこには女の子がいた。

背丈は小学生くらいだろうか?

紫よりすこし淡い?薄い?そんな金髪のロングで両腕と片足に鎖を付けている。

 

…そして何より気になる…

 

翠「あ、あぁ……それよりアンタ…」

 

萃香「ん、あぁ私か?私は伊吹 萃香、萃香でいい。お前さんが森のど真ん中で倒れてたんでほっとけなくてな」

 

翠「そ、そうか。おれは進来 翠だ、翠で構わない。それよりアンタその頭……」

 

俺がそう聞くと萃香は少し不思議そうな顔をしたあと、あぁこれか、と自分の頭に生えている二つの角を指さして確認してきた。

 

萃香「お前さn…じゃなかったな。翠は多分外の世界から来たんだろうから信じられないと思うが、私は鬼なんだ」

 

……鬼?鬼って言ったかこの子。そりゃお伽噺やゲームでなら見たことはある。確かに角も生えている(?)

けどもっとこう…筋骨隆々で巨漢じゃないのか?そもそも鬼なんて実在するのか?

 

萃香「ほらね。鬼なんてホントにいるのかー?って顔してる

ま、紫に突然連れてこられたんだろう。どれ、この幻想郷の事を少し話してあげるよ」

 

俺は既にキャパオーバーしてる頭に必死に詰め込もうとした。

ここは幻想郷という俺のいたいわゆる「外の世界」から結界によって隔離された場所で、妖怪、魔法使い、幽霊、鬼、天界や地獄など、外の世界では幻想、想像上とされていたものが実在するらしい。

この幻想郷の住民の中には能力というものを持っている奴もいるらしい。

 

翠「お、オーケー…まだ全部は理解できないけど…取り敢えず夢とか幻覚じゃない事は分かったよ…」

 

萃香「ま、最初はそんなもんだよ。あたしみたいに外の人間に友好的なやつにでも合わなきゃ好戦的なやつに喰われてたかもか」

 

外の世界、なら笑える冗談だ。意味がアーッ!なもので済ませられる冗談だからな。でもこっちじゃそうでもないみたいだ。

夜で感覚が研ぎ澄まされて敏感だからだろうか、木の影から時々視線を感じることがある。それも殺気?って言うものに近い気がする。

 

萃香「気になるか?周りのヤツらが」

 

ソワソワしている俺に萃香が聞いてきた。

 

翠「ま、まぁ……」

 

萃香「安心しなよ、あたしは鬼だ。同じ種族か知り合いでもない限り近づいてきやしないよ」

 

そう言う萃香は笑ってこそいたが少し悲しげだった。

それと同時に何か同じ物を感じた気がした。

きっと「1人だった頃」があるんだろう。

 

萃香「ほら焼けたよ!食いな!」

 

話題を切るように萃香は大きな声を出した

ハッと我に返ると萃香が串に刺した焼き魚を俺に分けようとしていた。

塩も何もかけていない、ただ魚を串に刺して焼いただけだが、今まで見てきたどの食べ物よりも美味しそうに見えた。

 

翠「いいのか?一つしかないみたいだけど…」

 

萃香「あたしは構わないさ。それより早く食べな!冷めちまうよ」

 

俺は礼を言って焼き魚にがっついた。

…美味い。今までこんな食べ方で食べた事ないはずなのに、どこか懐かしい

 

萃香「ちょ、ちょっと翠!あんた何で泣いてんだぃ!?そ、そんなに不味かったか!?」

 

気がつくと俺は涙を零していた。悲しかった訳でも、辛かった訳でもない。

何故だか涙が止まらない。

 

俺は今までの事を萃香に話した。

両親に捨てられた事、いじめられていた事、育ててくれた夫婦と唯一の友人が死んだ事、身の回りで事故が起こる事、「災いをもたらす」なんて言われていた事

その果てに自殺しようとしていた事……

萃香はただ黙って聞いていてくれた。

 

 

萃香「そんな事かい?」

 

返ってきた言葉は意外なものだった

 

翠「そんな事って…こっちはどれだけ辛かったか…」

 

萃香「だからそんな事かいって」

 

俺は苛立ちを隠せなかった。死ぬ覚悟が出来るほどに辛いことがあった。夫婦も友人も、関係の無い人までも多くの人が死んだ。

それを「そんな事」で済ませた萃香に腹が立った。

 

翠「アンタなぁ!何人も俺の周りで人が死んだんだ!

誰かが死ぬ度に!周りから虐められた!

でも…それでも生きてやろうって!強く生きてやろうって思っても……思っても……結局は弱いまま終わったんだよ!」

 

俺は声を張り上げて言った。今まで溜めてた鬱憤、悲しさ、辛さ。

思いのままに吐き出した。

 

翠「ハァ…ハァ……いいよな萃香は…鬼だから最初から強かったんだろ?」

 

俺がそう言うと萃香は少し笑い、でもその目は力強く真面目に

感情の入混ざった俺にこう答えた。

 

萃香「確かに、あたしは強かった。それはもう敵う者がいないほどに……いや「強すぎた」んだ。」

 

萃香はまた、少し悲しげな顔をして続けた

 

萃香「なぁ翠、お前さんは強ければいいって思ってるか?」

 

翠「そりゃそうだろ…」

 

そうだ、強ければ守れる。猛スピードで突っ込んでくる車にだって、上から落ちてくる鉄柱からだって、強ければ止められる、弾き返せる、助けることが出来る。

 

萃香「そうか…あたしもそう思っていたよ。強けりゃ守れる。怖いものなんてない。

……でもね、余りにも強すぎて逆に恐れられたんだ。

近づけば殺されるだの、村に行けば壊されるだの。

ある日、それでも仲の良かった人間と森を散歩していた。あたしが冗談交じりに背中をドンッと叩いた時、そいつの半身が吹き飛んだ。

自分でも恐ろしくなったよ。

確かに力があれば勝つことは出来る。でも守る事は…できないんだよ?」

 

そう言う萃香は最後にまた笑って見せたが、やはり悲しそうだった。

強ければ守れる。そう思っていた俺の考えを消すには十分過ぎた。

 

翠「あ……すまない…」

 

萃香「いいんだ…あたしも久々に人間と話せたよ。

翠がまた死にたいなんて思った時は、あたしが手を差し伸べてやるよ!」

 

その言葉を聞いた時、また涙が零れた。

災いだの死ねだの言われてきた俺に、唯一「手を差し伸べてやる」と言ってくれた。

 

萃香「さて…そろそろ行かなきゃね」

 

萃香が立ち上がってそう言った

 

翠「…もう行くのか?」

 

見ず知らずの俺を助けてくれたんだ。無理や我が儘は言えないが…もう行ってしまうと思うと寂しかった。

 

萃香「ん?行くって、翠もだぞ?」

 

翠「……え?何処に?」

 

 

 

萃香「外の世界から人が来たらまずある場所に行くんだ」

 

萃香が東の方に見える山の頂上を指さして言った

 

「博麗神社」

 

 




……はい!第2話終了です!

次回はついに博麗神社へ!ここからキャラも背景も増えてくるのでとても大変になりそうです!
が!なるべく話がおかしくならないように、誤字脱字がないように気を付けて書いていきますのでよろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一章〜授かった力〜
〜勝つ力と守る力〜


どうもヴェルディです!
毎回書いてる度にこうしたら面白いかなぁとかこうしたら読みやすいかなぁとか考えながら書くのが楽しくなってきました。
今後楽しみなのはエッt……色恋沙汰を書くことですかね
だいぶ先になりそうですけどw


第3話

 

 

翠「博麗…神社…?」

 

突然萃香から一緒に行くと言われた神社。

聞いたこともない神社だ。

どうやら幻想郷と外の世界を隔てる結界の中心部みたいなところらしく。

外から来た人は取り敢えず博麗神社に行くそうだ。

 

萃香「ほら、行くぞ!」

 

翠「こんな夜更けなのに大丈夫なのか?」

 

萃香「ん〜、まぁ霊夢の事だし大丈夫だろう!

それに歩いて行くからつく頃には朝だろうしな」

 

ん?てことは夜通し歩くってことか?

歩くのは好きだからいいとして夜通し?

体力が持つかなぁ…

 

そんな事を考えながら俺は腰を上げて萃香について行った。

歩いている途中、黙りっぱなしってのも詰まらないので幻想郷についていろいろと聞いてみた。

人里がある事。

紅魔館という屋敷があること。

命蓮寺という寺がある事。

香霖堂という外の物が売っている店があること。

様々な妖怪、幽霊、人がいる事。

聞けば聞くほど幻想郷の社会は割としっかりしていた。

そもそも種族が違うのに情報を交換しあったり

新聞があったり

事件が起きればそれを解決する人がいたり

 

翠「結構しっかりしてるんだなぁ…」

 

萃香「だろぅ?昔はこうじゃなかったんだけどね

そこの博麗神社の現巫女、霊夢のおかげさ!」

 

どうやらその霊夢という人物は今の幻想郷のシステムを作り上げ

妖怪と人間とを和解させた

とにかく凄い人物だそうだ

 

翠「なぁ、その霊夢って人も強いのか?」

 

萃香が余りにも褒めるものだから気になってつい聞いてしまった

 

萃香「霊夢か?そりゃもう強いぞ

ただあたしや妖怪みたいに単純な力が強いんじゃない

あれは…守る力だよ

力無き者が、それでも護りたいと想う者が

編み出した本当の強さ

そうあたしは思ってるよ」

 

守る力…本当の強さ。

その響きに心を惹かれた。

すこし湿っぽい話になって話題がなくなってしまった

何か話さないと…

 

翠「そ、そういえばさ」

 

萃香「ん、なんだい?」

 

翠「幻想郷の人の中には能力…?

を持ってる奴がいるって言ってたけど、萃香もなのか?」

 

能力持ち、男子なら憧れる。

なによりカッコイイ

自分だけの特別な能力

何度妄想の中で描いていたことか

 

萃香「もちろんあるよ

あたしは「密と疎を操る程度の能力」

ってのをもってるよ!」

 

翠「密と疎?」

 

萃香「まぁ言っても分からない

ほら!」

 

そう言うと萃香が隣から消えた

と思ったら目の前にいた。

余りに突然の事で尻餅をついて驚いてしまった。

 

翠「うおっ!?」

 

萃香「あははっ!大丈夫かい?

驚かせてすまないね

簡単に言うと質量を操れるのさ

極限まで少なくして霧状になったり小さくなったり

逆に大きくして巨大化したり

そんな能力さ」

 

そんな能力って…程度で済むものなのか?

しかしすごい能力だ。霧状って物理攻撃無効じゃないか。

 

萃香「ほらっ、手貸すよ」

 

萃香が俺を起こそうと手を貸してくれた

その時、

萃香の後ろから何かがやってきた

暗がりで見えにくい上

音もなく、とても速く迫ってくる

明らかに人の形をしていないし

殺気を感じる。

萃香を見ると俺を起こそうと気付いていない

 

 

…守らなきゃ…

 

あってまだ少ししか立ってないけど

 

…守らなきゃ…

 

萃香が鬼でどんなに強くても

 

…守らなきゃ…

 

初めて、手を差し伸べてやると言ってくれた人だから

 

…守らなきゃ…

 

俺は強くないけれど

 

……守らなきゃ!

 

翠「萃香!危ない!」

 

俺は萃香の手を掴み

もう片方の手で勢いよく体を起こした。

萃香の手を掴んだまま手を横に振り

萃香を横に飛ばした

次の瞬間

音もなく向かってきた何かが

俺に勢いよくぶつかり、大木に押し付けた。

 

翠「…っ!」

 

萃香「翠!」

 

余りに一瞬の出来事で痛みは無かった。

俺は自分の体を見ると

角のようなものが右胸を貫き

下半身が喰われていた。

 

萃香「なんで!言っただろう!あたしは鬼で強いんだって!」

 

徐々に痛みを感じはじめ

出血も多く、意識が薄れ始めた。

残った力を振り絞り、萃香の方を見て

なるべく笑顔で答えた

 

翠「…ったから…

初めて…手を差し伸べてやるって言ってくれたから…

二年前に友人が死んで…

先月、育ての親が死んで…

その後も俺のせいなのか…多くの人が死んで…」

 

カスカスの声を振り絞りながら喋っているなか

何かは俺の体を喰い続けてる

萃香は…額から汗を流し焦っているようだ

 

翠「もう…俺の周りで人が死ぬのは嫌なんだ

思い出や…恩があるやつは尚更な…

最後に…誰かを守る事が出来て

よかった…よ」

 

もう意識を保つのが限界だ

血はダラダラと流れ

もうすぐ下半身も噛みちぎられる

俺もここまでかと思ったとき

急に何かが咬むのを止めた

隣には萃香がいて両手で何かの口を広げていた

 

萃香「まさか鬼が人間に助けられるなんてね

言っただろう?手を差し伸べてやるって

翠の事…気に入ったよ!」

 

萃香が何かの口を勢いよく大きく広げると

俺の体をが一瞬浮いた。

何かの牙が外れたのだ。

その刹那、萃香が蹴り上げた

その小さく華奢な体からは想像出来ないほど

重い音がし、何かの顎が吹き飛んだ

そのまま体を捻りもうひと蹴り

何かは粉微塵になった

そのまま萃香は落ちる俺を受け止めた

俺の体から牙が外れ、落ちるまでの間に

これだけの動きをしたのだ

 

萃香「大丈夫かい…」

 

萃香はなるべく表情には出さないようにしているが

心配している様子がわかる

俺を抱えている手が震えている

幸いまだ意識はある

 

翠「へへっ……なんとかまだ生きてるよ…

もうダメそうだけどな…」

 

萃香「全く…無茶するよ

鬼を助ける人間なんて聞いたことがないよ」

 

翠「鬼も何も…関係ないさ…

森で倒れてた俺を助けて…

飯も…くれた…それだけで十分だ…」

 

流石に意識が遠のいてきた

呼吸をする、目を開けている事さえ

疲れてきた

こっちに来て短いけど

生まれて初めて

本当に守ることができた

 

翠「……守る事に…強さはいらないんだな…

 

そこで俺の意識は途絶えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翠「萃香!危ない!」

 

 

…初めて人に助けられた

人に忌み嫌われ、妖怪からも恐れられ

妖怪と人とが和解した今こそ

嫌われる事は亡くなったものの

 

助けられたなんてことはない

 

ずっと独りだった

強いから大丈夫だと思われていた

あたしも自分の強さに酔っていた

 

萃香「鬼も何も関係ない…か」

 

あたしは不思議な感情を抱いていた

手を差し伸べてやる

鬼は嘘はつかない

けどそれとは別に……

たとえそう言っていなかったとしても

助けたい。そう思っていた

 

萃香「はぁ…仕方ないねぇ」

 

あたしは近くに落ちていた何かの牙を拾い上げた

なるべく傷口に泥が入らないよう

翠を下ろし、拾った牙を

あたしは掌に刺し、血を流した

その血を傷口に流し込み

あたしの血を分け与えた

あたしは翠を抱きかかえ

博麗神社へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

暖かい

ただその感覚だけが体を包んでいた

体は動かない

今度こそ本当に死んだんだなと思った

けど何処からか声が聞こえる

 

……ーい

 

ぉーい……

 

…………おーい!

 

うっすらと輪郭が見えてくる

だんだんと意識がしっかりしてきて

視界がはっきりとする

 

翠「……あれ、萃香……

俺って死んだはずじゃ…」

 

目の前には萃香がいた

俺が声を出すと途端に笑顔になって

 

萃香「お、やっと起きたか

まだ生きてるよ」

 

体を起こそうとすると激痛が走った

 

翠「い"っ!」

 

萃香「あぁ!まだ起きるんじゃないよ

怪我は治ってないんだから!」

 

体を見ると包帯が巻かれていた

噛みちぎられたと思っていた足は

まだ繋がっていて

貫かれたはずの右胸も何故か塞がっている

 

翠「ここは一体…俺は何でまだ生きてる?」

 

あたりを見回した所

和室にタンスや机が置いてある一部屋で寝ていたようだ

 

萃香「ここが博麗神社だよ

で、なんで生きてるかは…」

 

???「それは私から説明させてもわうわよ」

 

突然襖の向こうから声が聞こえてきた

麩が開き、声の主が現れる

 

紅白の衣装を身にまとい

頭には赤いリボン

お下げにも赤い筒(?)のようなものが二つあっり

茶髪でロングの少女だった

 

霊夢「初めまして。私は博麗 霊夢。霊夢でいいわ

萃香から話は聞いているわよね」

 

翠「進来 翠だ。翠でいい」

 

霊夢「そう翠。で、貴方が生き延びてる理由だけど

萃香に感謝しておく事ね

面倒な事にはなったけ

あなたの命を助けた事に変わりはないわ」

 

萃香があの怪我を?どうやって?

 

霊夢「今の貴方には萃香の血が流れているのよ

所謂鬼の力ってやつね

それに伴い、貴方には鬼力(きりょく)が備わった

その鬼力のおかげで再生能力が劇的に上がったのよ」

 

翠「そう…なのか?萃香」

 

萃香「へへっ…まぁね」

 

萃香はすこし照れくさそうに

でも内心は嬉しそうに微笑んだ

よく見ると手には包帯が巻かれていた

きっとそこに傷を作って血を流したんだろう

 

萃香「でだ霊夢

翠の世話なんだが…」

 

そうだ、俺はこれからどうすりゃいい

でもきっと霊夢の事だ

真面目そうだし優しそうだし

居候させてくれるに違いない

うんうんそうだ

 

霊夢「嫌よ面倒臭い

目が覚めて動けるようになったら

出てってもらうわよ

食費がかさむ」

 

前言撤回

かなりのめんどくさがりだ

食費がかさむ?食費がかさむって言ったか!?

 

霊夢「だいたいね萃香!

あんたのせいで外に返す事も出来ないのよ!」

 

萃香「えぇー!ケチんぼ!」

 

ん?外に返せない?

帰れないってことか?

それはそれでもいいんだが何故だ?

 

翠「えっ、何で?」

 

そう聞くと霊夢がため息をついて答えた

 

霊夢「翠、貴方に鬼の力が混じった所までは話したわね

萃香が貴方に血を分けたことで

貴方も厳密には人じゃなくなったのよ

さしずめ半人半鬼(はんじんはんき)ってところね

そんな人じゃない人を外に出せると思う?」

 

それを聞いた俺は驚いた

半分人間で半分鬼らしい

その後霊夢から傷口を見てみろ

と言われたので見てみると

さっきまで激痛が走っていたのに

もう何ともない。傷跡こそあるものの

完治している

 

翠「治…ってる…すげぇ…」

 

傷は完全に治り

もう動いても不自由ない

 

萃香「おっ!治ってる!良かったぁ…」

 

元気になった俺を見て萃香は安堵していた

どうやら結構心配してくれたらしい

そこまで気にかけてもらえると何だか照れてくる

 

霊夢「さ!動けるなら出てってよね!

こっちも忙しいんだから!」

 

そう言いながらも出ていく前に

ご飯を用意してくれていた

やっぱり霊夢は優しい人のようだ

 

……

 

ご飯も食べ終わり

出ていく支度を整えていた時

萃香が話しかけてきた

 

萃香「なぁ翠」

 

翠「ん?なんだ?」

 

萃香「翠は鬼も何も関係ない

って言ったよな

それは…その

これからも仲良くしてくれるってことか?」

 

萃香は少し不安そうに聞いてきた

ずっと独りで嫌われてきたからだろう

それは俺も同じだった

 

翠「もちろんだよ

萃香は俺を助けてくれたんだ

自分の体を使ってまでな

俺ももっと仲良くなりたいって思ってるよ!」

 

そう言うと萃香は嬉しそうに笑った

そして俺に手を出してきた

 

萃香「な、なら握手してくれるか?

大丈夫だ、力加減は出来ると思う」

 

昔の事もあるのか少し震えていた

だけど俺はその手をしっかりと

握って握手した

感謝の気持ちも込めて

 

翠「よろしくな、萃香!」

 

彼女は満面の笑みで

力強く握り返してきた

その力は確かに鬼の力がだったが

その手はとても優しく暖かいものだった

 

 

 

 

外に出ると境内と鳥居が見えた

鳥居まで歩き、神社を出ようとすると

霊夢が声をかけて止めてきた

 

霊夢「そういえば一つ言い忘れていたわ

翠が半人半鬼になったことで

貴方にも能力が備わったのよ」

 

翠「能力…?」

 

それは嬉しい事だった

能力!ついに俺にも!

高鳴る気持ちを抑え

霊夢にどんな能力か聞いた

 

霊夢「えぇ、輸血元が萃香だから

似通った能力よ

さしずめ……」

 

 

「密とを操る程度の能力」




第3話!
話がポンポン思いついてストーリーがおかしくなってないか
後半ネタ切れするんじゃないか
そんな不安でいっぱいです汗
遂に翠にも能力が来ましたね
密を操るとな
果たしてどう扱っていくのか!
それではまた!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

〜密の能力〜

どうもヴェルディです!

いよいよネタをしっかり練らないといけない場面になってきました
よって、ようやく予定していたペースに戻せそうですw
その他にも翠の立ち絵を考えたりしてますので
お楽しみに!


第4話

 

 

翠「密を操る程度の能力……か」

 

博麗神社を後にする時に告げられた

俺が手にした能力……

密を操るということは萃香の言ってた通りなら

巨大化出来るということになる。

 

 

萃香「しっかしまぁ〜

半人半鬼になるとは思ってたけど

能力まで付いてくるとはね〜!」

 

翠「ははは…

でも男子としては少し興奮してるよ」

 

 

今は博麗神社を出て俺がどこで過ごすかを

萃香と一緒に幻想郷の案内ついでに探している

隔離された世界、なんて聞いたから

もっと村みないな大きさかと思ったらそうでもない

結構広い

森があって、山があって

湖があって、村があって

地底まであるという

 

萃香「さてと、じゃあまずはこっから近い

魔法の森でもいこうか!」

 

翠「魔法の森ってところには何があるんだ?」

 

萃香「魔理沙ってやつの家があるかな

一応魔法道具店だよ

あとは……

森境のほうに霖之助ってやつが外の世界のもの売ってる

香霖堂って場所もあるな」

 

ほう、道具店もあるのか

どうやら生活に困ることは無さそうだ

でも金とかないしどうしたら…

 

翠「なぁ、店があるんだったら

買い物とかもしたいんだけどさ。

金とかってどうすればいいんだ?」

 

そう聞くと萃香は少し悩んでいた

それは彼女がずっと自然で生きてきたからか

ものを買うという事をしないらしい

 

萃香「まぁなんとかなるって!

なんならしばらくはあたしと行動するかい?」

 

翠「ん?萃香が買ってくれるのか?」

 

萃香「いや、皆が分けてくれるのさ」

 

どうやら萃香はこの幻想郷で起こる

「異変」と呼ばれるものを解決したり

異変が起こっている最中

人里を保護したりして

村人からはそのお礼として食べ物や道具をくれるそうだ

 

 

萃香「あたしみたいな鬼や妖怪はさ

力ずくってのも出来るんだ

だけどそれじゃ恨まれてしまう

そんな思いして食う飯は不味いからね

こうして協力し合ってるのさ!」

 

翠「協力し合う……

俺にも出来るかな」

 

そう呟くと萃香は

 

萃香「そのうち出来るって!」

 

と言って軽く背中を叩きながら励まそうと

……していた

しかし背中を叩こうとした手は途中で止まり

少し怖気付いて手を後ろに回し

咳払いをした

 

萃香「でもその前に能力を使えるようにならなきゃな!」

 

翠「そ、そうだな。でも密を操るってどんなんだ?」

 

萃香「あたしと同じなら質量の増加だから

大きくなる。

ま、巨大化ってところかな?

翠は後天的に能力が備わったわけだから

まずは利き腕が大きくなる!

ってイメージをすれば能力を体験できるかな?」

 

やはり能力はイメージなのか

俺は萃香に言われたように

利き腕の右腕が「大きくなる」

というイメージをした

 

 

……しかし変化がない

イメージや意識をしているからか

右腕にいつもより力が入っている感覚はあるが

まるで変化がない

 

萃香「あれ〜?おかしいな…

あたしらはこうやって能力使ってるから

同じようにイメージすれば使えると思ったのに」

 

俺はまだイメージが足りないのか

と思い更に、もっと「大きくなる」

と、強いイメージをした

その時……

 

 

「右腕が重すぎる」

そう感じた

力を無理にいれてるとかそんなんじゃない

まるで重りを持っているようだ

まだまだ重くなっていく

 

右腕の重さに耐えられなくなった俺は

座り込んで右腕を地面の上に脱力するように

スっと置いたその時

 

 

ズシンッ!!

 

 

右腕を置いた地面はひび割れ

まるで小さなクレーターのように

砕けた

 

萃香・翠「……え?」

 

 

人が地面を殴ったって砕けない

鬼だって殴らなきゃ砕けない

ただ脱力して落とすように右腕を置いただけで

地面が砕けたのだ

 

俺も萃香もしばらく驚いて固まっていた

二人揃って口を開けて

しばらくして俺は萃香の方を見て

 

翠「な、何が起きた…?」

 

と話し掛けてみた

萃香はまだ驚いているようで

少ししてからハッと我に返って

 

萃香「わ、わからないよ

いくら翠か半人半鬼になったっていっても…」

 

2人はしばらく黙り込んでいた

その間に右腕の重さは元に戻って

普通に動かせるようになっていた

 

萃香「で、何が起きたんだい?」

 

翠「大きくなるってイメージしてたら

右腕が凄い重たく感じたんだ

で、重すぎて耐えられなくて

地面に座り込んで腕を置いたらこうなった」

 

2人はまた黙り込んだ

しばらくして萃香は

香霖堂に行こう、と提案した

 

店主の森近 霖之助という人物は

半人半妖で博識らしい

その人物を尋ねれば何かわかるかもしれない

 

 

〜香霖堂〜

 

 

外見は普通の家のような見た目だ

入口の上に「香霖堂」という看板があり

中を覗くと写真で見たことあるような

昔の「外の世界」の道具があった

俺と萃香は扉を開け、中へ入っていく

 

???「いらっしゃ…なんだ萃香か。

隣の男性は?」

 

青と黒の服

赤い箱の様なものを首から下げた

銀髪でメガネをかけた男が話しかけてきた

 

萃香「よう!こーりん!

こいつは幻想入りしてきた翠ってやつだ

訳あってもう人じゃないけどね」

 

霖之助「どんな訳だよ…

初めまして。俺は森近 霖之助

外の世界の物を売ってる」

 

翠「は、初めまして

進来 翠です

大怪我したところを萃香に命を助けられて

半人半鬼ってのになりました」

 

 

そう翠が自己紹介すると

霖之助は翠をじっと見た

頭のてっぺんから足のつま先まで

何回か上下に見ると

「あぁ、そういう事か」

と言って納得した

 

霖之助「それで、何の用だい」

 

萃香「翠の能力がな

密を操る程度の能力なんだけど

その仕組みがあたしのと違うみたいなんだ

詳しい内容を考えてもらいたくてね」

 

萃香がそう言うと

俺と萃香は魔法の森で起きた

俺の話を事細かに説明した

それを聞いた霖之助はしばらく考えた後に

店の奥に行って何かを探していた

 

 

しばらくして霖之助が奥から戻ってきた

その手には体重計があった。

 

霖之助「取り敢えずこの上に腕を乗せてくれ」

 

そう言われた俺は言われるがままに

体重計に腕を乗せた

いったい何をするのか

これで俺の能力がわかるのか

とにかく疑問だらけだった

すると霖之助が

 

霖之助「よし、じゃあ腕が「大きくなる」

イメージをしてくれ」

 

翠「は、はい」

 

俺は大きくなるイメージをした

やはり力を入れてるからか

腕が重くなる感じがする

 

ふと体重計の針を見ると

どんどん重くなっている

力を入れて押し付けてるなんてもんじゃない

自分の体重を超え始めた

そのあたりから霖之助が

俺の腕を触り始めた

つついたり、指圧したり

数秒間さわって

 

霖之助「よし、いいぞ。

イメージを止めるか

元に戻るイメージをするんだ」

 

と言ってきた

俺は元に戻るイメージをした

すると体重計の針は戻ってゆき

最初に乗せた時と同じ数値になった

 

 

霖之助「翠の能力の詳細がわかった」

 

萃香・翠「ホントか!」

 

 

霖之助の話によると

俺の場合、どんなに大きくなろうとしても

大きくはならないらしい

そのかわり重量の増加

それに比例して肉体の硬質化がある

 

しかし体も大きくなる萃香と異なり

体の大きさはそのままなので

あくまで重くなった身体を支え

動かしていくのは自分の筋力次第

……だそうだ

 

霖之助「加えて翠は元々は人間で

いまでは半人半鬼だ

鍛えれば力の向上率は

人のそれを優に超える」

 

萃香「す、凄いじゃないか翠!」

 

霖之助「ま、密を操る程度の能力

というよりは

 

 

「密度を操る程度の能力」だな」




第4話!
翠の能力の詳細がわかりまた!
語彙力の低さや
表現力の無さ
ストーリー構成の甘さでうまく伝わらない部分も
多いと思いますが
少しずつ頑張って面白い内容にしていきたいと思ってます

では!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。