俺は、この夢を見ると、巻き戻される。 (とろろ芋)
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1話

小さな丘のような場所。
夕陽をバックに女の子が喋っている。
声が小さく聞こえないが、一瞬きこえた。
「···また、繰り返される。私のせいで。ごめんね、」と。
これを何度も聞いた。


 

 「···また、繰り返される。私のせいで、ごめんね。」

 

 見知らぬ女の子が泣いている。この夢はとても不思議な夢だ。

              ···

 「···またか。」

 

 俺は、大学2年生で「河石 広夢」という。あの夢を見ると、1ヶ月前に戻るという、謎の夢だ。

 そんな訳で、本当ならば7月くらいだと思う。

 今月で、3回この夢を見た。そして、今は4月1日だ。カレンダーを見なくたってもう分かる。

 始業式を3回も一年で受けるか? 

 

 「さて、始めますか。3回目の4月1日を。」

 

 気合いを入れて行かなければ、やってられん。

 テレビを付けても、同じ番組しかやってない。

 ふと、時計を見ると、6時25分だ。

 

 「久しぶりに、8:00に出れるな。」

 

 2回目、夢を見たとき学校に行かなかった。そしたら夢を見なくなると思ったからだ。

 だけど、意味ないようだ。

 着替えて朝飯を作るか、と思った時キッチンの方から、「カチャッ」という音がした。

 

 「あれ、誰だ?誰か居るのか?」

 

 1ヶ月前はこんなのなかったのに、と思っているとどこかで聞いたことがある声が聞こえた。

 

 「あっ、だめ!静かにしなくちゃバレちゃう~。」

 

 声からして知り合いではない。じゃあ、誰だ?

 壁に隠れて、きいていると、また何かを話した。

 

 「···のためには、ここにいるあの人に手伝って貰わないと。」

 

 最初の方が聞こえなかったが、俺が必要なのか?

 勇気を出して、聞いてみることにした。

 

 「誰だ?君は。」

 

 「!?」

 

 そこには、どこかで見たことのある女の子がいた。

 女の子は、こっちを見たままどうしようかと、迷っていた。

 

 「えっと、あの、その、あっ、ドロボーじゃないですよ。」

 

 かなり怯えていた。しかし、その姿をどこかで見たことがあった。

 

 「怯えなくていい、君を通報したりはしない。だから答えてくれ、君は誰だ?」

 

 女の子は、今にも泣きそうな声で答えた。

 

 「えっと、うぅ~。」

 

 ついには、少し泣いている。何がいやなんだろうか?

 

 「ん~じゃ、名前は?何でここにいるの?」

 

 もう少し簡単な事を聞いていこう。

 

 「···音石 南、です。」

 

 震えた声で答えた。それにしても、聞いたことのある声だと思うがどこで聞いたのか分からないんだ

 すると、女の子が急に立った。

 

 「ど、どうした?急に立ち上がって」

 

 女の子の身長は思った以上高かった。俺より、少し低いくらいだった。

 女の子は時計を確認すると、こっちを向いて、言う。

 

 「学校は?」

 

 「あ、」

 

 時間とは、すぐに過ぎ去るものである、いつの間にか7:30分だった。

 

 「えっと、君は学校とかないの?」

 

 気になって聞いてみると、

 

 「うん、あるよ。だって君があるんだから。」

 「あと、「君」じゃなくて「南」って呼んで。」

 

 「あっ、はい。じゃ、俺の事も広夢って呼んで。」

 

 「広夢ね、わかったよ。広夢♪」

 

 はぁ~、南について謎はとてつもなく多いが、今は一先ず置いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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2話

 

 「さて、まずは南に聞きたい事がある。」

 

 「いいよ、何?」

 

 「学校は、どこにあるんだ?」

 「そして、何歳だ?」

 

 「学校は、広夢と同じだけど、アンタ女子に年齢聞くのってどうなの?」

 

 「は?いやいやいや、待て!学校が俺と同じ!?どう言うことだ?」

 

 色々急過ぎて分からなくなっている。俺と同じ学校ということは、同い年ってことだな。

 は?ワケわからん、頭が痛い。

 

 「どうしったって、こうしたって、同じ学校なんだもの。しょうがないよ。」

 

 「ま、まずうちに女子高生の制服はないぞ!」

 

 「知ってるよ、そんなこと。あったら気持ち悪いし。」

 

 「じゃあ、何着ていくんだよ!」

 

 「まぁまぁ、落ち着けって、ね?」

 

 「落ち着けるかっ!」

 

 朝から疲れた、何なんだコイツ。謎過ぎる。

 

 「まぁ、何とかなるっしょ。」

 

 「なる訳ないだろ!」

 

 「まぁ、広夢の中学生の時の制服とか、あるでしょ?」

 

 「あるけど、男の制服だぞ?」

  

 「大丈夫、貸してくれる?」

 

 「わかったよ。ちょっと待ってて。」

 

 タンスの下にある、白い箱を取り出した。

 

 「確か、この中だったような?」

 「!あったぞ、南」

 

 「どれどれ、ふ~ん。まぁ、いいか。」

 

 そう言うと南は目の前で着替え始めた。

 

 「ちょっと!南さん!?俺、男の子だよ!」

 

 「ん?あっ!」

 

 上半身下着姿でやっときずいた。

 

 「こっち、みないで」

 

 また、泣きそうな声で叫んだ。

 

 「す、すいませんでした!」

 

 5分後、扉が開くと、そこにはYシャツ姿の南がいた。

 

 「ど、どう?」

 

 「どうって聞かれても、あと寒くないの?」

 

 「結構、寒い。」

 

 「だろ、じゃあ、これ着てろ。」

 

 俺が、高1の頃着てた薄茶のコートを南に着せた。

 

 「暖かい。ありがと広夢。」

 

 南が温かい笑顔をくれた。さて、面倒なのはこの後だ。そう、「始業式」だ。

 高校生活2年目の初めに、新しい転校生が来たとしたら、クラス中えらいことになる。

 ましては、南と一緒に学校に行く所を友達に見られたら、精神的にアウト+帰りも見られたらってあれ、南ってどこに 住んでいるの?

 

 「なぁ、南。お前、どこに住んでいるの?」

 

 「どこって、ここだよ。」

 

 「ここだよ。」という言葉が頭の中で反響している。

 

 「な、何を言っているんだ?」

 

 ビックリ衝動が強すぎて、理解出来ず、声が震えている。

 

 「ここは、俺の家だからな!俺、男だからな!あと、自分の家くらいあるだろ、普通。」

 

 何とか、精神を落ち着かせて聞いてみた。

 

 「ううん、無いよ。私の家は。」

 

 「で、でも実家とかは?」

 

 「無いって、身内もいない。帰る場所が無いんだ。」

 

 少し、暗い表情で話している南。そして、話が急過ぎて頭が混乱している、俺。

 

 「だから、ここに住ませてくれない?お願い、広夢。」

 

 困った表情で南はこっちにお願いをする。

 

 

 「···はぁ~、全く困った奴をほっとけないのも罪か?まぁ、いいよ。」

 

 「ほんと?」

 

 「ああ、本当だ。」

 

 南が、嬉しそうにしているから、少しおちょっくってやろう。

 

 「だが、俺は男だ。いつ南を襲うか分からないぞ?」

 

 「ふ~ん、別にいいよ。その勇気があるならね。」

 

 「なっ、南!一応、女なんだからそう言う事を堂々と言うな!」

 

 少し、恥ずかしいんだこのセリフ。予想外の反応に少し、ドキッとしてしまった。

 はぁ、厄介なのがやってきたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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