この星の魔法使いに祝福を! (村正 ブレード)
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エピローグ 『終局』

今回は転生モノによくある切っ掛けの話。このすば要素は次回からになるかもです。

少し修正しました


 ーーーその戦いは、終局を迎えようとしていた。

 

 

 

 此処は地獄。死した霊達の集う場所。本来であれば静寂に包まれ、聞こえてくるのは罪人の呻き声位のもの。

 しかし、今の地獄にそんなものは無かった。彼方此方で爆音が鳴り止まず、衝撃が常に響き渡っている。

 地形を破壊し続けるそれが、たった二人によって起こされているなど、誰も思うまい。

 

 「ハァ……ハァ……!」

 「ーーー何故だ、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️。何故貴様は倒れない」

 

 金髪の青年と対峙している黒のドレスを着た女性が問う。

 その問いに青年はさも当然の様に、

 

 「何故?そんなもん、決まってんだろうが!ーーーお前に、勝つ為だ!」

 

 勝つ為ーーー。そう、唯それだけの為に彼は拳を握り、足を前に出すのだ。

 

 「……そのような体で、未だ戦うと?」

 

 彼女の言う通り、彼の体は酷い有り様だった。

 彼には右腕が無く、体中に決して浅くは無い傷を負っている。衣服はボロボロで、上半身は何も着ていなかった。

 それでも尚、彼の瞳は輝きを失ってはいなかった。

 

 「…………そうか。ならば、せめてもの手向けだ。次で終わりにするとしよう」

 

 彼女の指先から、体が凍り付く程の圧力が発せられる。

 それら全てが、一つのカタチを創っていく。ーーー小さな宇宙が、そこには有った。

 「さらばだ⬛️雨⬛️⬛️⬛️。せめて、痛みを感じずに塵へと還そう。ーーー『魔星転輪』」

 

ーーーーー

 

 宇宙という名の死を目の当たりにしたというのに、俺の中には不思議と恐怖は無かった。

 それどころか、脳が沸騰する程の怒りが、自身の中で暴れていた。

 

 「これで、終わりだぁ?ーーー舐めんじゃ、ねえーー!!」

 

 そうだ。こんな所で終われない。否、終わらせられないーーー!

 

 とは言っても、マントは元より、相棒(■■■■■)ももう手元には無い。

 しかし、だからと言って諦める訳にはいかない。

 (……仕方ねえ、命を捨てることになるが、ここで無惨に死ぬよりかはマシだ)

 

 瞬間、雀の涙程しか残っていなかった自身の魔力が、爆発的に増大する。

 同時に、全身の神経が千切れ飛ぶ様な感覚に襲われる。体がグチャグチャになる程の魔力が全身を駆け巡り、激痛が奔る。

 

 “この禁術を使えば、あんたは確かに強大な魔力を手に入れる事が出来る。しかし、その代わりに、あんたの命を代償とする事になる。絶対に使うな、とは言わないけどさ、使いどきは見極めなよ?”

 

 今は亡き師匠(母さん)の言葉が脳裏に蘇る。彼女もまた、この禁術によって命を落とした魔法使いの一人だった。

 ああ、そうだ。今こそ叫ぼう。

 強大な魔力を得る代わりに、自身の命を捨てるこの禁術の名はーーー

 

 「『ラスト・マジック』ーー!!」

 

 そして、もう一つ。

 

 左手を銃の形で構え、人差し指に魔力が灯る。禁術で得た魔力を全て、指先へと集中させる。

 これぞ我が魔法。

 これぞ我が最期の軌跡。

 これぞ⬛️⬛️魔⬛️沙の代名詞ーーー!!

 

 「『マスター・スパーク』ッッッーーー!!!」

 

ーーーーー

 

 『魔星転輪』と『マスター・スパーク』が同時に放たれる。

 「お、おおォォォオオーーーッッッッッ!!!」

 

 砲撃が触れた瞬間、霧■魔理■は瞬時に理解した。

 ーーーこれでは足りない、と。

 ならば、如何するか?

 

 出力を上げる?ーーー否。

 これよりも高威力の魔法を使う?ーーー否。

 では如何するか?

 答えは単純。ーーー数を増やす。

 しかし、ただ数を増やすのでは無く、砲撃が砲撃を放つ形で数を増やす。そうする事で発動までのタイムラグを無くすのだ。

 この技、否、この魔法の名はーー!

 

 「『インフィニティ・スパーク』ッッッーーー!!」

 

 

 そこからの事を、俺はよく憶えてはいない。

 唯一記憶に残っているのは、段々と朽ち果てていく自分の体と、全身を焼け焦がす程の真っ白な光だった。



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プロローグ『転生』




 「……どうなってんだこれ」

 

 目が覚めると其処は三途の河が果てしなく流れる地獄の入り口ーーーではなく、何処とも知らない不思議空間だった。

 更に体が幽体ではなく、実体の状態だった。千切れた筈の右腕も元通りになっている。

 本当に、一体どうなっているのだろうか。何故か置いてあった椅子に腰掛け、思案していると、

 

 「それについては、私がご説明します。霧雨魔理沙さん」

 

 声が聞こえた瞬間、俺は反射的にその場から飛び離れ、臨戦態勢をとる。

 そこに居たのは羽の生えた女性で、先程の態度に驚いているのか、呆けた表情をしていたが、すぐにむっとした表情に変わる。

 

 「……初対面の女性に対して、その態度はどうかと思いますが」

 「悪いな、こちとら初対面の女に殺されかけた事も有るんでな。これ位は許してくれや」

 

 嘘は言っていない。実際、出会って数秒で戦闘になった事もあった。

 

 「……まあいいでしょう。さて、お気付きかと思いますが、貴方は死んでしまいました」

 

 分かっていた事なので素直に頷く。寧ろ、あれで死んでいなかったら首を傾げていた所だ。

 いや、今も充分首を傾げる状況なのだが。

 

 「……あまり驚かれ無いんですね」

 「そりゃあ、分かりきった事に驚く意味もないだろ。それよりも、早く進めてくれ」

 「あ、はい。という訳で貴方には選択肢が有ります」

 「選択肢?地獄か、天国かを選べってか?」

 「いえ、天国か、それとも転生するかです」

 「……?」

 「えっとですね、実を言うと天国は貴方たちが思っているような場所ではなくて、お爺さんなどが日向ぼっこしているだけの、何もない場所なんです」

 「……ん?」

 

 天国とは天界の別称だと思っていたが、どうやら違うらしい。どちらかというと冥界に近いモノの様だ。

 

 「……なら、転生ってのは?」

 「転生は主に二つの選択肢が与えられます。ゼロから現代に転生するか、記憶を保持したまま異世界に転生するかの二つです。異世界への転生は諸事情により特典を与える事は出来ませんが、その代わりある程度の支援をさせていただきます」

 

 よく分からないが、つまりはこのまま何もない所でひたすらぼーっとしているか、赤ん坊から人生をやり直すか、このまま異世界で一生を過ごすかを選べって事か。

 

 「ひとつ質問」

 「はい、何ですか?」

 「異世界に転生した場合、このままの状態で送られるのか?」

 

 何でもないような質問に見えるが、実はそうではない。このままの状態で送られるならばいい。しかし、違うのならば問題だ。成長しきるまで自由に動けないというのも有るが、自分の両親はあの二人だ。違う両親に育てられるというのは、余り喜べない。

 

 「ああ、その事ですか。それなら心配いりません。そういった願い出がなければ、貴方はそのままの状態で送られます。なんなら、そのボロボロの衣服も修復しましょうか?」

 「ありがたい。ぜひ頼む。......となると、もう特に要求というか質問は無いな」

 

 言いたい事は言い尽くしたし、これなら異世界でも何とかやっていけるだろう。懸念があるとすれば、面白い奴が居るかどうかだが、異世界なんだし、問題ないだろう。

 

 「それじゃあ、異世界行きで頼む」

 「分かりました。では......コホン。霧雨魔理沙さん、貴方の毎日が充実したものに為るよう、陰ながら祈っています」

 

 彼女が指を鳴らすと、足元に魔方陣の様なものが出現する。恐らく、異世界への転移装置なのだろう。天使と思しき彼女は微笑んで、

 

 「それではーーーいってらっしゃい!」

 

 陣が光ると同時に、俺の意識はかき消えた。

 

 

ーーーーー

 

 彼の姿が見えなくなったのを見て、私はふぅと息を吐いた。

 

 「不思議な方でしたね……」

 

 アクア様の仕事を受け継いで初めての人とはいえ、自身も天使の端くれ。数々の人間を見てきたと自負しているが、それでも彼の様なタイプは初めてだった。

そして、会話の中で少し違和感を感じていた。会話は問題無く出来ていたのだが、なんとなく噛み合わない感じがしたのだ。まるで、住んでる世界が違う(・・・・・・・・・)ような、そんなあり得ない感じがした。

 

 

 

「さてと、次の仕事は……あれ?」

 

 自室に戻ってきた私を待っていたのは、一枚の手紙だった。宛名を見ると上司からのようだ。封を切って取り出し、手紙を開いて読んでみる。

 

 「……『緊急につき簡潔に伝える。先程、別次元から混入した魂がそちらに向かった模様。そのまま私が向かうまで監視しておくように。くれぐれも異世界に転生させぬよう注意せよ。 ps.対象の生前の名前は霧雨魔理沙』………」

 

 いつも通りの機械的な文面だったが、その内容に私は思わず頰が引きつってしまった。

 

 どうやら、私はとんでもないことをしでかした様だ。これでは陰ながら祈る処か、逆に祈られてしまうかもしれない。

 

 「謹慎程度で済めばいいなぁ......」

 

 これからの事に体を震わせながら、私は大きな溜め息をついた。




時系列的にはカズマが転生して直ぐの所となっています。


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第一話『異世界』

 遅くなってしまい申し訳ありませんでした...!

 今回はカズマ視点です。上手く出来てるか不安......


俺の名前は佐藤和馬。

突然だが、俺は転生者だ。

若くして死んでしまった俺を嘆き哀しんだ(ゲラゲラ笑いやがった)気高く美しい(バカでクソッタレな)女神アクアによって(もろとも)この世界に降り立ったのだ。

 

そんな俺だが現在、二人の仲間と行動を共にしている。一人は女神アクア。もう一人はここには居ないがーーーて、ああ!

 

「おいアクア!待て!」

「神の一撃を喰らいなさい!そして、己の行いを悔いなさい!ーーー『ゴッドブロー』ッ!」

 

 アクアの光輝く鉄拳が唸る。その拳は目の前の巨大なカエルーーージャイアントトードの腹部を打ち抜ーーー

 

「おお、良いパンチ……ん?」

「あ」

 

ーーーく事は無く、そのままアクアは頭からバクリと食べられた。暫し呆然としていた俺だが、正気を取り戻し、ショートソードを構え、ジャイアントトード向かって駆け出した。

 

 

 

ー ー ー ー ー

 

「「…た、ただいまー……」」

 

あの後俺達は無事に戻って来ることが出来た。アクアのでしゃばりで多少のトラブルも有ったがまあ、討伐数が増えたとポジティブに受け取るとしよう。

 

「お。おかえり二人共。どうだったよクエストは」

 

ギルドのカウンター前に座って居た青年が声をかけてくる。彼が先程言いかけていたもう一人の仲間である『霧雨魔理沙(キリサメ・マリサ)』だ。彼はこちらに歩いてきて、アクアの粘液塗れの体を見るなり吹き出した。

 

「ぶっ!あ、アクア、お前……くく」

 

あ。アクアが泣きそうだ。

 

「う、うう……うわぁぁああああああああん!!」

「……あー、何つーか、すまんアクア。俺が悪かった」

「あー!マリサくん、アクアちゃんを泣かせてるー!いけないんだー!」

「おいカズマ、言い掛かりはそれぐらいにしとけ」

 

……とまあ、おふざけもこれくらいにして、と。その後、何とかアクアを泣き止ませることに成功した俺達は、涙を拭っているアクアを尻目に話を進めていた。

 

「……で、クエストはどうなったんだ?」

「取り敢えず、アクアが囮になったお蔭で二匹仕留めた。あと三匹仕留めればクエストクリアだ」

「ふむ……なら、明日は俺も付いて行こう。戦闘に参加することは難しいかもしれんが、まあ、援護ぐらいは出来るだろう」

 

俺は素直に頷いた。今日のクエストを通して人数が多ければそれだけ効率が高まるという事を学んだからだ。主に囮が増えるという事で。

 

 「……そういやマリサ。お前の職業って何だっけ」

 「……ああ、カズマには伝えてなかったっけか。俺の職業は『作製者(クリエイター)』だ」

 「作製者(クリエイター)?……生産職系の上級職か何かか?」

 「んにゃ、その逆。言っちまえば、生産職版の冒険者って所だ」

 「は?…どういう事だ?」

 「クリエイターは基本『何でも』作れる。その気になれば、スキルだって作れるぜ?

 そんでもって、スキルの熟練度が高ければ高い程作れる物も増えていくんだよ」

 「……それの何処が冒険者に似た職業なんだよ。半分チートじゃねえか」

 「チート…?何だか知らないが、そんなに万能でもねえぞ。

 まず、スキル取得のポイントが中々に高い。俺は運良く最初からとれたが、平均の初期スキルポイントじゃあ足んねえ。俺もとったらスキルポイントが無くなったからな。

 次に、スキルの熟練度が殆ど上がらないんだよ。まあ、スキル無しでもある程度はなんとかなるが......有ると無いとでは全然違うからな」

 「……具体的にはどの位で?」

 「熟練度で言うと5〜10位。経験値換算でそこまでいくのに30000は要る」

 「さんまっ!?」

 

 ……成る程、作製者(クリエイター)が冒険者級と呼ばれる所以が分かった。そりゃあ、そんな職業なんか誰もやりたく無いわな。

 ん?だとすると……

 

 「何でお前はそんな職業なんか選んだんだ?冒険者の俺が言うのも何だが、そんな職業誰も選ばないぞ?」 

 「カズマ。お前は何の理由も無く、俺がこの職業を選んだと思っていたのか?」

 「……何かもっともらしい理由が有るのか?」

 

 大儲けしたいとか、そんな理由だろうか。……まあ、そんな理由なら即座にパーティーから追い出すが。

 こっちだって命を張っているんだ。そんな理由なら商人にでも成れば良い。実際、俺はそっちの方が向いているとも言われたのだから。

 

 「ズバリ…………浪漫だ」

 

 「……………は?」

 

 

 さっきまでの解説は何処かへ行ったのか、どうやらこいつは半分酔狂でこのハズレ職業を選んだらしい。

 ……なんとも言えない感じがするのは、俺だけだろうか。



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第二話『仲間』

今回はめぐみんの初登場。キャラ改変が光るぜ()




 「……来ないな……」

 「………来ないわねえ」

 「来る気配すら無いな」

 

 現在、俺たちは圧倒的な人材不足を解消すべく、パーティーの募集をしていた。

 今欲しい人材は魔法職一人に戦士職一人といった所だろうか。もっとも、多少選り好みはすれど、来てくれる人を拒絶する事はしない。そんな事をして後で後悔するのはこちらなのだ、とマリサは言っていた。

 俺もそれに同感だったのだが、アクアの奴が余計な事をした所為で、そんな考えは無になってしまった。

 バンッ!とアクアがテーブルを叩いて立ち上がる。

 

 「というか、二人はともかく、何でアークプリーストの私が居るのに誰も来ないのよ!おかしいとは思わない!」

 「そりゃあ、お前……」

 「あんな募集の仕方で、人が来る訳ないだろ」

 

 チラリ、とクエスト掲示板の隣にある募集掲示板を見る。そこの張り紙の一つが、俺たちのだ。内容は流石に言い辛いが、簡単に言えばブラック求人みたいな物だと思ってくれればいい。

 ご丁寧にも、有りもしない感想まで書いていたので、その気合の入りようが分かる。

 ………そのやる気を、頭の良さに変えて欲しい。

 

 「魔王討伐が目的とはいえ、流石にハードル高すぎじゃねえか?」

 「確かに、仕方ないっちゃあ仕方ないが、上級職のみ募集は厳しいだろ」

 「うう……。だってだって、魔王が相手なのよ?言っちゃ悪いけど、そこいらの冒険者じゃ蹴散らされるのがオチよ。それなら、最初からある程度まで戦える上級職のほうが良いじゃない」

 「……まあ、それには一理ある。とは言っても、新人の上級職なんて早々見つかる訳無いだろ?」

 

居たとしても、他のパーティーに参加しているだろう。受付の人に聴いたが、今の時期は新人冒険者は少ないのだそうだ。

 

さて、どうするか……。

 

「「 「うーん……」」」

 

 

ーーーーー

 

その後も暫く待ったが、未来の英雄候補は遂に現れなかった。もうしょうがないと、条件の手直しをしようとしたその時に、“それ”は現れた。

 

「ーーーすままい。上級職募集の張り紙を見たのだが、此処で間違いないかな?」

 

俺たちの前に現れたのは、俺と同じ位の女の子だった。

その娘は気怠げな、それでいて芯はしっかりとしている様な紅色の瞳を此方に向けている。

腰まで伸びたその黒い髪は、何処か艶かしい印象を俺に抱かせる。黒いローブをその身に纏い、右手に杖を持つその姿は、正しく“魔法使い”そのものだった。

そんな、俺の好みドストライクな少女に見惚れていると、彼女は静かに名乗りを上げた。

 

「ーーー我が名はめぐみん。紅魔族随一のアークウィザードにして、爆裂魔法の境地に至りし者が一人」

「…………冷やかしに来たのか?」

「ち、ちがわい!」

 

その奇想天外な名乗りに、俺は思わず声に出して突っ込んでしまったが、彼女は慌てて否定する。

いや、めぐみんってなんだ。渾名かなんかか?

 

「その紅い瞳…もしかして紅魔族?」

 

アクアのその問いに、めぐみんはこくりと頷いた。

 

「如何にも。私は紅魔族だ。……それと、図々しい願いなのは分かっているのですが、その、何か食べさせてくれないでしょうか?」

 

めぐみんがそう言うと、めぐみんの腹が鳴った。

 

「えっとねカズマ。彼女達紅魔族は生まれつき高い魔力と知力を持っていて、一族の殆どがアークウィザード、つまりは魔法使いのエキスパートになる素質を秘めているの。……そして、大抵変わった名前を持っているの」

「それに、爆裂魔法の遣い手と来ている。紅魔族随一ってのも強ち間違いじゃないだろう。……名前以外はまともそうだしな」

 

成る程。俺をからかっている訳じゃ無いのか。

俺はメニュー表をめぐみんに向ける。

 

「あー、何だ、うん。取り敢えず、何か好きな物でも頼んでくれ。……あんまし高いのは勘弁してくれ。それと……」

「?何ですか?」

「……俺はカズマだ。これから宜しく頼む、アークウィザード」

「めぐみんです。……此方こそ、宜しくお願いします。カズマ」

 

めぐみんはむっとしながら、それでいてとびきりの笑顔を浮かべながらそう言った。




次回はジャイアントトードとの再戦。原作とは一風変わっためぐみんの爆裂魔法が火を噴く!予定。


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第三話『爆裂』

 あの後、満腹のめぐみんを連れて街の郊外に来た俺たちは、魔理沙がいつ間にやら作成していた小型のレーダーを使ってジャイアントトードを探していた。試作品のデータ収集目的で今回使用するらしいが、売り出したりするのだろうか。

 

 「さて、奴さんはどうしたもんかな……と、いたいた。カズマ!こっちだこっち!」

 「早っ!?……あー、状況は?」

 「数は二つ、片方はこっちに気付いてない!」

 「あいよっ!めぐみん!魔法の準備!遠い方を狙ってくれ!」

 「え、ええ。了解しました。遠い方ですね?では……!」

 

 俺達の会話に多少驚きながらも、めぐみんは詠唱を始める。詠唱が一つ進む度に、発せられる重圧が増して行く。思わず固唾を飲んで見守っていると、詠唱が完了した。

 

 「 ーーー『エクスプロージョン』ッ!」

 

 めぐみんの眼がカッと開かれ、それと同時に爆裂魔法が放たれる。その真紅の奔流は真っ直ぐにジャイアントトードへと向かい、その肉体を灰すら残らず消し飛ばした。しかし、それだけでは終わらず、ジャイアントトードを中心とした半径五メートル程のクレーターを開けた。

 

 「……マジかよ」

 「おー、凄えなぁ。流石は紅魔族」

 

 圧倒的だった。レベルを見るに、殆ど変わらない筈なのだが、そんな事は知らないとばかりのこのバカ火力。アクアやマリサが凄い凄いと褒めていたのも頷ける。

 

 ……そういえば、アクアが妙に静かなのが気になる。辺りを見渡して見ると、先程まで近くにいたアクアの姿はそこには無く、あるとすれば、近くの方のジャイアントトードの口から見たことのある両脚が……。

 

 「って、アクアー!?ちょ、おまっ……だあああああ!!」

 

 

 

ーーーーー

 

 「うぅ……ぐず、えっぐ……」

 「おい、大丈夫かアクア。……ったく、いつの間になに喰われてんだお前は」

 

 無事にアクアを助け出したのだが、案の定アクアは粘液まみれになっていた。しかも、その状態で抱きついてくるのだからさあ大変。俺まで粘液まみれになっちまった。くそったれ。

 

 「……なあ、カズマ」

 「なんだよマリサ。今俺はアクアにどんな仕返しをするかを考えてる最中なんだ。後にしてくれないか」

 「お前なぁ……」

 

 マリサがめぐみんをおんぶしながら此方に近寄ってくる。……ん?

 

 「なあマリサ。お前なんでめぐみんを背負ってるんだ?」

 「ああ、これはめぐみんが爆裂魔法を放った後にぶっ倒れてな。……じゃなくてカズマ。周りをよく見てみろ」

 「周り…?……あっ」

 

 周りには、ジッとこちらを眺める三体のジャイアントトードの姿が。

 ……どうしよう、これ。

 

 

 

ーーーーー

 

 「はぁ……。とりあえず、なんとかなって良かったなぁカズマ」

 「この状況でそんな言葉が出てくるお前の神経を疑うよ、俺は」

 

 そう言うと俺はチラリと、顔の死んでいるアクアと、アクアに背負われているめぐみんを見る。

 あの後、真っ先に食べられた二人が足止めした事と、またまたいつの間にか作っていたマリサの魔道具のお陰で何とか切り抜ける事が出来た。

 

 「……なあアクア。いい加減元気出せよ。ほら、クエスト完了の報告と換金は俺達でやっておくから、めぐみんと一緒に風呂に入って来るといい。な?」

 「……うん。ありがとね、カズマ」

 「…………カエルのお腹の中って、地味に暖かいんですね。全然知りたくなかったです」

 

 アクアに浴場の代金を渡し、アクアが去ろうとすると、めぐみんがそんなことを呟いた。……うん。気持ちは分かる。俺だってそんな事知りたくなかった。

 

 その後、無事にクエスト報告と換金を済ませた俺達は、風呂から上がって元気を取り戻した二人が戻ってきた後の話し合いで、めぐみんが爆裂魔法しか使えない事が分かり、一悶着あったものの、無事めぐみんが正式にパーティーに加わる事になった。

 

 ……今更こんなことを言うのも何だが、もう少し考えた方が良かった気がする。




 次回はダクネス登場……?


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第四話『スキル習得』

今回はダクネスと、ウチの魔理沙時空の幻想郷からのオリキャラが登場です。

それと、今回のオリキャラ登場に合わせて、魔理沙時空の幻想郷の話を書いてみようかなと思います。


 ジャイアントトードの一件から一日がたった。

 

 「なあめぐみん。スキルの習得ってどうやるんだ?」

 「スキルの習得……ですか?そんなの、冒険者カードにあるスキル欄から……て、ああ。カズマは冒険者でしたね。冒険者はまず、誰かにスキルを教えてもらい、それから習得するのです」

 「因みに、冒険者はどんなスキルでも覚えられるから、教えてもらえさえすれば、リッチーやデュラハンみたいな、アンデッドモンスターのスキルも習得出来るぞ。まあ、教えて貰えれば、だがな」

 

 なるほど。そうなるとつまり……。

 

 「ポイントさえあれば、俺でも爆裂魔法を使える訳か」

 「ええ、そうなりますね。まあ、覚えるまでいけるかは知りませんが」

 

 ん?どういうことだ?

 

 「……ああ、カズマは知らないんだったか。あのなカズマ、爆裂魔法はその威力もあって、ポイントをバカ喰いするんだよ。......幾つだっけ」

 「はいはい!えっとねカズマ。爆裂魔法のスキルポイントは十や二十じゃ足りないの。そうねぇ......50レベル位まで何もスキルを覚えないで行けば、覚えられると思うわ」

 「なめんな」

 

 50レベルって、なんだよそりゃ。ふざけてんのか?まあ、これで爆裂魔法のあの火力にも納得出来る。ん?それなら……、

 

 「なんでめぐみんは爆裂魔法を覚えてるんだ?レベルは俺達とそう変わらないはずだろ?」

 「ええ、その事なのですが……多分、マリサの方が詳しいのでは?」

 「……成る程な。スキルアップポーションか」

 「スキル......何だって?」

 「スキルアップポーション、な。取り敢えず、スキルポイントを獲得するポーションだと思ってくれればいい。だが、スキルアップポーションは貴重だったと思ってたが、爆裂魔法を覚えられる程の数をよく集められたな」

 「……紅魔の里の学校の成績優秀者三名には、成績発表の時にスキルアップポーションが与えられるのです。言ってしまえば、優秀な者への報酬の様な物……ですかね」

 「へー、成る程な。つまりめぐみんはそれだけサバを読んでたわけか」

 「む、変な事を言わないで下さいカズマ。事実とはいえ、そんなことを目の前で言われると、流石に傷つくのですが」

 「そうよカズマ!何時もそうだけど、貴方はデリカシーって物が欠けてるわ!」

 「はぁ?いつもおっさん臭いお前相手にデリカシーを持つとでも思ってんのか?」

 「なっ!?……へぇー、そう。なら、そのおっさんに見惚れてたあんたは一体何なのかしら?」

 「ばっ!?あん時はお前がこんなんだと思ってなかったからだよ!言っとくが、これからはお前に見惚れるなんて事は絶対に無いからな!」

 

 そんな、俺達の会話を聞いてか知らずか、後ろから笑い声が上がった。

 

 「ク、クハハハハ!お前さん、面白いなぁ!思わず笑っちまったよ!」

 

 失礼な言葉に振り向くと、其処には盗賊風の格好をした銀髪の美青年がいた。

 青年はその鋭い碧色の鋭い眼を更に細めて俺に問う。

 

 「どうだい兄ちゃん。盗賊スキル、覚えてみるか?」

 

 

 

ーーーーー

 

 青年、サクヤの提案に頷いた俺は早速、盗賊スキルを覚える為に、外に出た。

 

 「で、盗賊スキルについてだが、お前さん。スキルポイントはいくつだ?」

 「えーと、3ポイント有るな」

 「そうなると……、潜伏に敵感知、それと窃盗スキルにするか。……あー、そうなると相手が必要だな……」

 「……なんか問題でも有るのか?」

 「いやなカズマ?今から教えるスキルは、相手が必要なんだよ。そこらで窃盗でもするか?いやそうなると……、アイツに怒られちまうな。……しょうがねぇ、悪いカズマ。ちょっと待っててくれるか?」

 「いや、別に構わねえよ。教えて貰えないよりかはマシだからな」

 

 サクヤは礼を言うと、その姿を消した。

 

 その数分後、サクヤは一人の女性を連れてきた。その女性を目にした瞬間、俺は固まってしまった。

 その女性がとびきりの美人だった事もある。あるのだが、他の理由の方が強いだろう。

 

 「全く、突然連れていくと言うから来たものの、一体何の用……」

 「あ?どうしたダクネス。カズマを見て固まって、どうかしたのか?」

 

 サクヤが彼女、ダクネスに問うが、ダクネスは変わらず固まったままだった。

 突然、ダクネスは俺に向かって進んできた。……やばい、嫌な予感がする。

 

 「……昨日ぶりだな。それで、昨日の事は憶えてくれているだろうか?」

 「すいません。初対面でしたよね?」

 「んくぅ……!」

 

 反射的に言ったその言葉に、ダクネスはその顔を赤く染め、息を荒くした。

 ダクネスのその姿を見て、サクヤが呟いた。

 

 「……ああ、ダクネスが言っていた奴ってカズマの事だったのか」

 「おい、何で今ので気づくんだよ」

 

 俺のその言葉に、サクヤは顔を逸らした。

 

 「あー、んっんん!さ、さて、早速始めるか」

 「……ん、それで、一体何をーーー」

 

 ゴッ

 

 「……は?」

 

 突然、ダクネスの頭がのけぞった。辺りを見渡すと、サクヤの姿が消えていた。ダクネスの足下には拳大の石が……、

 

 「……お、おい、ダクネス、さん?大丈夫か?」

 「……………………」

 

 怖い。無言のままサクヤを探すその姿には、思わずちびりそうになる程の迫力があった。

 流石の俺もあれにはドン引きだったので、一緒に探す事にした。

 

 ……まあ、意外とすぐに見付かったのだが。

 

 

ーーーーー

 

 「いや〜、まさかあそこまでキレるとは思わなかったぜ」

 

 ダクネスの拳によって顔をパンパンに膨らませたサクヤがそんな事を言っている。

 

 「とまあ、こんな感じに、潜伏と敵感知については分かっただろ?」

 「まあ、な」

 

 敵感知については兎も角、潜伏については結構分かった。というか、俺の幸運が無かったら見つけられなかったかもしれない位には使える。

 

 「うし、なら次は窃盗だな。こいつは俺のお気に入りの一つだ。良く見とけ、ーーー『スティール』ッ!」

 

 何をしたのかと思ったら、サクヤの手には革袋が握られていた。……ん?そういえば、さっきから懐が心なしか軽い様な……って、

 

「ああ、俺の財布!」

「……とまあ、これが窃盗スキル(スティール)。ランダムで相手の持ち物を奪う事が出来るスキルだ。早速やってみるか?」

 

早速潜伏と敵感知、窃盗スキルを習得する。

 

 「よし、それじゃあーーー」

 「まあ待てカズマ。ここはひとつ、賭けをしないか?」

 「賭け?」

 「ああ。カズマはスティールで俺の持ち物を一つ奪ってみろ。因みに、一等はこれ、魔法のかかったダガーだ。こいつはオーダーメイドの特注品でな。攻撃時にランダムで属性付与(エンチャント)されるダガーだ。こいつを売れば、多少は暮らせるだけの金が手に入るぜ?」

 「マジかよ、いいのかそんなもん賭けて」

 「いいんだよ、どうせ俺には使いずらいからな。そんでもって、ハズレはこれ、そこいらの石だ。おっと、文句を言うなよ?何事も経験だ、ってな」

 

 ちくしょう、参考になった。だったら遠慮無く、一等賞をいただこうしゃないか!

 

 「『スティール』ッ!!!」

 

 よし、手応えあり!

両腕を組んで俺を見ていたサクヤに、俺はしたり顔で右手を差し出した。そして、その手の中には……。

 

「……一等賞、貰ったぜ!」

 

一等賞のダガーと、何故かくっついてきた俺の財布が有った。

 

 




次回はキャベツ乱獲と、ちょっとした小話を入れる……かも?


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