蛇の守り神 (堕天使)
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プロローグ

「ふわぁ、よく寝たぁ。ってあれ?」

 

目を覚まし、周囲を見るとそれはいつものアパートの自分の部屋ではなく、緑が鬱蒼と茂る木々がいっぱいある森であり、どこか自分の声変わりをしてかなり低い声からまるで自分のお母さんのような高い声に変わっていた。

 

自分の体を見ると胸を最低限に守っている黒い鎧に下半身を黒い布が隠しており、隠す白い肌に両腕の先と太ももからしたの部分が黄緑色の鱗肌になっていて、その爪が鋭く尖り、地面に広がるほど長い紫色の髪に尻部には黄緑色の蛇の尾が生えている。

 

「この姿ってまさか……ゴルゴーン?」

 

ゴルゴーン、FGOで初登場をしたアヴェンジャーのサーヴァントでメドゥーサが本来の怪物であるゴルゴーンの性質が強調され、召喚された姿であり、サーヴァントとしては本来召喚されない存在である。

 

確かに一番好きなサーヴァントで最終再臨して、親愛度マックスにし、マイルームに固定にして遂にはチョコレートをもらったりしたが、まさか、自分自身がゴルゴーンになってしまい、ここは分からない森だけど不思議に動揺しないというか落ち着き過ぎている。

 

「とりあえず、この森を探索するか」

 

しばらく、歩いていると弓矢や剣を持った緑色の耳が尖っている人間とは違った異形の生物、恐らくゴブリンであろうモンスターが現れたが、勝手に私の髪が無数の蛇の頭に変化してゴブリン達を丸飲みをしてしまった。

 

まぁ、倒す手間が省けたし、お腹が膨らんだからよしとしようか。この子たちも撫でてあげたら、可愛い声を上げてもっと撫でてと言うようにすり寄ってきて可愛いし、一人称が私に変わってしまったが別にどうでもいいことだろう。

 

やはり、このようなモンスターが存在したことからここは私の住んでいた世界とは全く別の世界だと言うことが分かったが、分かっただけで戻る方法も知らないし、この姿のままで戻ったらそれこそニュースに取り上げられてしまうだろうし、かといって行く宛もないし、考えが纏まらないが一先ず歩くとしようか。

 

「ひっ、モンスター!!」

 

「ッ!!誰だっ!?」

 

その時、その声を聞いて私がその声の方を降り向くとそこにはまだ幼い中世の市民が着てそうな洋服の女の子が腰を抜かしていた。

 

「待て、この幼子を喰らうな。おい、お前」

 

私は今にも女の子を喰おうとしている蛇たちを抑えて、少女に目を向けると女の子はブルブルと背筋を震わせ、お祈りみたいなものをしていた。うーん、確かに姿はゴルゴーンだけど別に人間に嫌悪感を感じないが、食べたら美味しそうだと唾液が出てきた。こうなると本当にモンスターになったみたいだなと思うが、心もモンスターのようになっているのかその事が普通だと思ってしまう。

 

「ひゃい…」

 

「とりあえず、お前を喰らうつもりない」

 

「本当に……?」

 

「ああ、だが、生憎私には知識が不足していてな。お前の知っているこの世界のことを全部話せ」

 

女の子はおどおどしながらもこの世界の大まかな地域こと、この近くの町には冒険者なるものが存在していること、魔法が存在していることなど様々なことを教えてくれた。

 

日本と言う地域は知っているかと聞いたがやっぱり知らないか、情報をも聞き出したからこの女の子も用済み、喰らってやってもよかったが流石に私は元人間、そこまで鬼畜なことをしたらそれこそただのモンスターだ。

 

「それでお前は何故ここにいるのだ。お前みたいなか弱い存在では他のモンスターたちに襲われたらひとたまりもなかろう」

 

「……実はお母さんの言いつけを破ってこの森の中で探検ごっこをしてたらそのまま迷っちゃって……」

 

「なるほどな。では、お前はその母親の言いつけを破った罰を受けて貰おう。後悔は私のお腹の中でするんだな」

 

「ひいっ、ごめんなさい……」

 

私はその言葉を聞いて、震える女の子の頭にぽんと優しく手をおいて、右手を使って抱えあげて微笑みを浮かべる。

 

「なんてな…母親に会ったらそのようにきちんと謝るのだぞ」

 

ゴルゴーンの尻尾はかなりの長さがあるが、このままでは森の上から女の子の故郷が見える高さまで及ばないだろうが、怪物の時の尻尾になればそのくらいになるはずと思うとその尻尾はまるで怪獣のように大きくなり、その尻尾の筋力で体をかなりの高さまで持ち上げた。

 

「うわー、すごいたかーい」

 

「高いところは好きか?」

 

「うん、大好き」

 

「そうか、それでお前の故郷はどこにあるのだ?」

 

「えーと、あったあそこー!」

 

「そこだな」

 

私はそのままその巨大な尾を使い、木々を薙ぎ倒しながらその少女の故郷に向かって進んでいく。女の子はおびえてないだろうかと思い、女の子を見つめるが女の子は怯えた様子もなく、楽しそうに景色を眺めているのを見て、最初の食物としては見ていた時と変わり、微笑ましく感じた。その光景を見てか蛇たちがジェラシーを感じているのか少女を威嚇していたが、私の怒気によって静まらせる。

 

「モンスターのお姉さんってすごいね」

 

……ゴ……ンだ

 

「え?」

 

「ゴルゴーンと呼べと言ったのだ。私をそこら辺のモンスターと一緒にするな。それと私が名乗ったのだ。お前の名も教えろ」

 

「私の名前はねメリ・エモットって言うの。よろしくねゴルゴーン」

 

「まぁ、そういうことにしておいてやろう」

 

町に近づくと人目につきたくないために尾を通常の状態を戻して女の子もといメリをゆっくりと地面に降ろすが、メリは名残惜しそうな顔をしていた。

 

「ここを真っ直ぐ行けばお前の住んでるカルネ村とやらに着く」

 

私は村の方を指差すが、メリは寂しげな表情を浮かべて村の方に行こうとしない。

 

「ゴルゴーン、また会えるよね」

 

「ああ、また会えるだろうからさっさと行け。行かなければここで喰ってしまうぞ」

 

「うん、じゃあ、またねゴルゴーン」

 

嬉しそうに笑顔で手を振って、村の方に行くメリを見送って私は蛇たちを撫でながら森の中に入って行きながら思考に耽る。現在は満腹の状態だからあまりメリを喰おうと思わなかったが、もし、空腹の状態でメリに会ってしまったら思わず喰っていたかもしれない。あのfgoのようにマスターと主従関係を築けていない私は人間といい関係を築けるのかはっきり言って自信がない。たまたま、メリには問題なかったが二回目も問題が起こらないとは限らない。なら、もう会わない方がいい。(怪物)のためにもメリ(人間)たちのためにもな―――と思っていたのだがそれは伝言(メッセージ)と言う魔法でたまにメリが連絡してくることによっていつの間にか蛇たちとも友達になることを私はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 



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プロローグ裏

私は現在、お母さんがモンスターが出るから入ってはいけないと言われた森にちょっとした好奇心で入ってしまい、気がついたら迷ってしまっていた。

 

怖い、そんな感情に襲われながら、兎に角、森を出るために歩みを進めて、もう時間がかなり経ったのは分かるが、一向に森から出られる気配がなく、少女は歩くのが疲れて座り込んでしまった。

 

「誰でもいいから助けてよ……」

 

思わず涙が頬を伝ったとき、近くから人の声が聞こえた。よかった、近くに人がいたんだと私はほっとしてこれで村に帰れると思いながら駆けていくとそこにいたのは体は人間とそっくりだが肌の色は異様に白く手とか足とかは黄緑の鱗肌になっていて巨大な蛇みたいな黄緑の尾がお尻から生えており、その綺麗な高い身長にも関わらず地面に付くほど長い紫色の髪には蛇みたいな形になっているものがあり、明らかに人間ではない。お母さんが言っていたようなモンスターを見てしまったとき私は思わず声を発してしまう。

 

「ひっ、モンスター!!」

 

「ッ!!誰だっ!?」

 

モンスターのお姉さんの瞳が此方を捉え瞬く間に距離を詰められてしまい、逃げようとしても腰が抜けたのと変な痺れによって体を動かすことができない。その間にモンスターのお姉さんの髪の蛇が襲いかかって来ようとするがそれをこのお姉さんは抑えて、声を掛けてくるが私はこのまま食べられちゃうのかもしれないと思うと体の震えが止まらなくて震え声で返事をしてしまう。

 

「とりあえず、お前を喰らうつもりはない」

 

「本当に……?」

 

「ああ、だが、生憎私は知識が不足していてな。お前の知っているこの世界を全部話せ」

 

兎に角、私は震えを堪えながら、機嫌を損ねないようにこの世界のことを語るとモンスターの女性はふむと顎に手を添えて、考えていた様子だった。

 

「おい、お前」

 

「はいっ……」

 

「日本と言う地域は知らないか?」

 

「ニホン……ですか?」

 

「知らないのなら良い」

 

そこが何処なのかは知らないがモンスターのお姉さんの表情が少し暗くなったところが見えた気がした。モンスターも悲しげな表情をするんだなぁと言うかこの間に逃げられるのではないかと思っていたが実行するまでに私はモンスターのお姉さんに質問をされた。

 

「それでお前は何故ここにいるのだ。お前みたいなか弱い存在ではモンスターに襲われたらひとたまりもなかろう」

 

「……実はお母さんの言いつけを破ってこの森の中で探検ごっこをしてたらそのまま迷っちゃって……」

 

「なるほどな。では、お前はその母親の言いつけを破った罰を受けて貰おう。後悔は私のお腹の中でするんだな」

 

「ひいっ、ごめんなさい……」

 

さっきとは雰囲気が変わって邪気が籠った笑みを浮かべて、舌を舐めずさりをしてモンスターのお姉さんは私の顔見つめてきた。私は逃げようとは思うのだが震えて体を動かすことができず、その間にゆっくりゆっくりと近づいてくるモンスターのお姉さんを見つめることしかできなかった。そして、彼女の手が振り上げられたとき私は死を覚悟して目を瞑った――がその手は優しく頭に置かれ、目を開くとその化け物の女性はお母さんのような優しげな笑みを浮かべて、私の体はその手に軽々と持ち上げていった。

 

「なんてな……母親に会ったらそのようにきちんと謝るのだぞ」

 

モンスターのお姉さんはそう言って蛇の尾を大きくして、その体を持ち上げて、私はいつの間にかにまるで母親が読んでくれた絵本で出てきた主人公のお姫さまが優しいドラゴンに乗って空を飛ぶように現在(いま)、私は空を飛んでいるようだった。

 

「うわーすごいたかーい」

 

「高いところは好きか?」

 

「うん、大好きいっ!!」

 

私は笑顔で答えるとモンスターのお姉さんは微笑んで、私の故郷の場所を尋ねてくる。私はあそこーと指を指すとモンスターのお姉さんの尻尾は木々を薙ぎ倒しながら私の住んでいる村に近づいていく。モンスターのお姉さんの蛇さんたちが私を声をあげて威嚇してきたが、モンスターのお姉さんが一睨みするとしゅんとしてしまった。

 

風が気持ちよい、空を飛ぶってこんな気持ちよかったんだ。こんなことできるなんてやっぱりモンスターのお姉さんはあの物語に出てきたドラゴンみたいにかっこいいと私は思う。

 

「モンスターのお姉さんってすごいね」

 

「……ゴ……ンだ」

 

「え?」

 

「ゴルゴーンと呼べと言ったのだ。私をそこら辺のモンスターと一緒にするな。それと私が名乗ったんだ。お前の名も教えろ」

 

「私の名前はねメリ・エモットって言うの。よろしくねゴルゴーン」

 

「まぁ、そういうことにしておいてやろう」

 

そう言ってそっぽを向いてしまうが私はその表情が安らかに人間のように笑みを浮かべているような気がした。

 

村に近づくと人目につきたくないために尾を元の大きさに戻したゴルゴーンはゆっくりと私を降ろした。もっと空を飛びたかったなと思っているとゴルゴーンは村の方を指して、村に帰れと言ってくるが私はゴルゴーンともっと遊びたかった。それに物語の最後にドラゴンは別れを告げて、去っていくんだがその時と似ていてもうゴルゴーンと会えないと思うと寂しかった。

 

「ゴルゴーン、また会えるよね」

 

「ああ、また会えるだろうからさっさと行け。行かなければここで喰ってしまうぞ」

 

もうゴルゴーンのことを優しいモンスターだと分かっている私はもう体が震えることはなく、またねと告げて村の方に走っていく。

 

お母さんに何してきたのって言われたらこう言うんだ。ドラゴンみたいにすごくてかっこいい素敵な友達ができたって……

 

 

 

 

 

 

 



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一話

「ゴルゴーンー!!」

 

私は何時もの場所で待っているとメリが私の名を呼んで、駆け寄ってくる。こういうのは元の世界で彼女とデートをするときにやりたかったなぁと思う。まぁ、メリと遊ぶのも楽しいのだが――それにしても、私がこの世界に来てから早一ヶ月経つのか。

 

メリはあれから伝言と言う魔法で度々、私に連絡して、遊ぼうとする。ほぼ森の中で引きこもりの私は毎日が暇なので話し相手がいるだけで非常に楽しいのだがまさかこうなるとは思ってもいなかった。

 

「どうしたのゴルゴーン?」

 

首をかしげて尋ねてくるメリに何でもないと伝えて、彼女のくり色の髪を優しく撫でるとメリはまるで猫のように気持ち良さそうにふにゃーと鳴く。

 

「それで今日は何をするのだ?どうせ、今日もいつもと同じあれだろ?」

 

「ピンポーン、今日も探検するよ」

 

大体の場合、メリは私と一緒に探検ごっこをする。メリの子供らしい微笑ましい姿は森で生活している私にとってはいい癒しになる。一人でいるときはゴブリンやオーガなどのモンスターを喰らったり、モンスター相手に自身の戦闘能力などを試してたり、森を探索している程度に暇で退屈なのである。

 

「実はねこの森にはすごい話があるんだ」

 

「そうなのか?」

 

「うん、この森には森の賢王と呼ばれる魔法すら使える強大な魔獣がいて、数百年の時を生きている蛇の尻尾を持つ銀色の四足獣なんだって」

 

森の賢王か……そのような魔獣はまだ会ったことないが想像するに気高き狼のようなモンスターなのだろうか。それが実際に存在するならゴブリンとか雑魚相手とは違っていい練習相手になってくれそうだな。

 

「今日、そいつを探しに行くのか」

 

「うん」

 

「それでその森の賢王とやらは何処にいるのだ?」

 

「え?」

 

すっとんきょうな声をあげるメリにまさかと思ってその森の賢王がいる場所を尋ねてみるが生憎返ってきた答えが分からないと言うことで私はやはりかとため息をついた。

 

「でも、この森にいることは分かっているし、すぐに見つかるよ。多分……」

 

「まぁ、最初から何処にいるか分かっている獲物を探しに行くのもつまらないしな。じゃあ、行くとするか」

 

「うん、行こう!!」

 

と言ったものの手がかり無しでこの広い森を探すのは骨が折れる。何かしら手がかりがあればいいのだがと思うが無いものをねだっても無駄なことだ。兎に角、しらみ潰しに探すとしようか―――と思ってから早一時間ぐらい経ったが……

 

「なかなか見つからないね」

 

「そうだな。まぁ、この広大な森の一帯から一匹の魔獣を見つけ出すのはかなり難しい。見つからない方の確率が高いだろう。とりあえず、一休みするか?」

 

「うん、ちょっと疲れちゃった。あ、私お弁当作ってきたんだ。ゴルゴーンも食べる?」

 

持ってきた鞄から弁当箱を取り出したメリは私にそう尋ねてきた。確かに久々に人間が食べるご飯を食べてみたいと思ってしまった私はメリの言葉に甘えてお弁当を少し貰うことにした。

 

メリに貰ったこの何気ないホットドッグがまるでご馳走のような気がしてゆっくりゆっくりと味を噛み締めていると蛇さんたちにもと言ってソーセージを蛇のようになっている髪にあげると喜びの声をあげてソーセージを喰らっていく。

 

すぐに食べ終わった蛇たちはメリにもっともっととせがむようにすり寄ってくるが、また今度ねと言って撫でると喜んだように可愛い声をあげる。

 

まさかこんなに簡単に仲良くなるなんてなといい意味で驚きながらホットドッグを食べ進めていく。やっぱり人の食べ物は美味しいな。森のモンスターはそこまで美味しくないし、最近は狩りすぎたせいかモンスターが私の寝床の洞穴付近に来なくなったし……待てよ。

 

「ふふっ、そうか……」

 

「どうしたのゴルゴーン?」

 

「喜べ、森の賢王に会えるかも知れないぞ」

 

「えっ、本当に!?」

 

「ああ」

 

私は残ったホットドッグを一気に食べるとメリに不敵な笑みを浮かべて、探索を再開した。森の賢王はこの森で上位のモンスターと言うことは絶対的な縄張りがあるはずであり、モンスターが彷徨かない場所に縄張りがあるに違いない。つまり、そこを探し出せれば森の賢王に会えるということだ。

 

人間の五感では無理だがこの姿になり、五感も化け物レベルになった私ならこれくらい優しいことであるはず……のだがその方法で見つけたのは尾が巨大なハムスターだった。

 

「ちっ、ハズレか。行くぞメル」

 

「それがしをハズレとは何と言う侮辱でござるか?」

 

「まぁ、喋れるくらい脳はあるみたいだが所詮、その程度だ。私たちは森の賢王を探している。お前に構ってられるほど暇ではない」

 

「私はこの賢く立派な魔獣こそ森の賢王だと思うよ」

 

「何?」

 

確かによくよく見れば銀色の毛並みを持ち、蛇の尻尾を持つ四足獣だがこんなものが森の賢王なのか、それにしてはやっぱりこのハムスターと瓜二つの姿を持っているせいかあまり強そうに見えない。

 

メリが言うんだからこいつが森の賢王で合ってると思うのだが仮にこれが森の賢王なら思ったより期待はずれだな。こんなものが語られる魔獣となるならば私は神話に登場する化け物になってしまうのではないだろうか。まぁ、元の世界では『ゴルゴーン』は神話で語られる化け物だったな。

 

「お主よりもそちらの娘の方が賢いみたいでござるな。ここは特別に見逃してやるからさっさとそれがしの縄張りから立ち去るでござる」

 

「ああ、すまない。私にとってお前と他の雑魚モンスターとの強さは大差ないようにしか見えないから間違ってしまった。生憎私には雑魚と他の雑魚の強さを計れるように器用にはできてないからな」

 

「ちょっ……」

 

「それは挑発と見て良いでござるか?」

 

メリは止めに入ろうとするが森の賢王はムカッとした表情を浮かべて尋ねてきたので、私は思ったことをそのまま伝えてやった。

 

「ああ、好きに見ていい。だが、私と戦うのは森の賢王として賢くない態度かもしれないぞ」

 

「その言葉……後悔しても知らないでござるよ」

 

挑発に乗った森の賢王はドリルのように回転しながら私の元に突っ込んで来るがそれを跳躍して避けて、そのまま上から拳を一撃叩き込んで地面に思い切り叩きつけると綺麗な大穴が空いた。

 

「メリ、今のうちに離れていろ。巻き込まれたらお前じゃただでは済まないからな」

 

「うん……」

 

メリを離れさせると森の賢王は地面から這い出て、私の前に立つがかなりのダメージがあったのか息をかなり切らしていた。

 

「今のはなかなか効いたでござるよ……」

 

「ああ、かなり手加減はしたんだからこのくらいでへばってもらっては困るんだがな。おっと運動したらお腹空いてきたな……ふふっ、最近は森のモンスターは不味くて嫌になっていたがお前は特別に旨そうだな。敬意を表してお前には特別に私の魔眼の力を見せてやろう」

 

魔眼の力を解放した豊満な肉体を持つ森の賢王に私は思わず美味しそうに思ってしまう。森の賢王はどんな味がするのだろうか、想像するだけで涎が出てきそうだ。

 

「ひいっ、降参……降参でござる。それがしが悪かったでござるよ。だから、食べないでほしいでござる」

 

「ゴルゴーン、私からもお願いっ。それに今のゴルゴーンなんだか怖いし……」

 

「はぁ、メリの優しさに免じてお前を見逃してやろう」

 

森の賢王の命乞いならまだしもメリの頼みなら仕方ない。元はと言えば目的は森の賢王と会うことであり、森の賢王を食べることではないしな。

 

「だが、それには条件がある。まず、森の賢王は私の従者になること……あと、メリにも条件がある」

 

「えっ、私も?」

 

「ああ、こいつを助けたいのだろう……なら私の言うことを聞いてもらおうか」

 

私の言い放った言葉にメリは真剣な表情をして頷くのを見て私は笑みを浮かべて条件を述べる。

 

「なら、私と会うときはいつもホットドッグを大量に持ってこい。それで見逃してやろう」

 

「え?」

 

「私がもっと厳しい条件を出すと思ったのか?お前みたいな子供ができることは少ない。なら、これが要求できる最大限の物だろう。それとそろそろ日が暮れてくる時間だ。メリ、送ってやるから帰るぞ」

 

「ああ、うん」

 

そんな帰り道、私は疲れてしまっているメリをおぶって村の方に向かっているとメリはねぇ、ゴルゴーンと呼び掛けてきたのをなんだ?と素っ気ない返事を返す。

 

「ゴルゴーン、今日はありがとう」

 

「気にするな、それに私も怖がらせてしまったみたいだしな」

 

「ううん、怖かったけどとってもいい日だったよ。だって、森の賢王と友達になれたんだもん」

 

「なら、よかった」

 

「また遊ぼうね」

 

「ああ、そのときは美味しいホットドッグを大量に持ってくるんだぞ」

 

私とメリは互いに笑みを浮かべながら夕焼けの空の下の中を歩いていた。

 

 

 

 



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二話

「それでねエンリとネムが可愛くてね……」

 

「はいはい、それは耳にタコができるほど聞いた」

 

私とメリが出会ってから数十年が経ってメリは結婚してもう二児の母となって、私は幾度かカルネ村の脅威を取り除いていたらそれを見た村人たちから村の守り神として崇められてしまっていた。

 

それに気づいたら霊基再臨の最終段階の姿となって更に能力が強化されて、巨大竜巻をブレス一つで吹き飛ばす辺りもう完全形態の大魔王様かよと呆れてしまうぐらい強くなっていた。

 

「それにしても時が経つのは早いな」

 

「そうだね。ゴルゴーンと会ったときまだ私がネムぐらいの歳のときだったしね」

 

「ああ、あんなちっちゃかったお前がこんなに大きくなったんだもんな。あの頃はお前に散々色んなことに付き合わされたものだ」

 

「あはは…苦労かけたね」

 

「全くだ。だが、そのお陰で全然退屈しなかったがな」

 

「じゃあ、ゴルゴーンはあんまり会えなくなって今は退屈なの?」

 

「そ、そんなわけなかろう。わ、私は一人でも大丈夫だぞ、うん」

 

子供のように無邪気な顔をしたメリの質問に私は顔を赤くして強がって答えるとメリはゴルゴーンってたまに子供っぽいところあるよねとクスクスと笑みを浮かべたその時、突如爆音が鳴り響いた。

 

「な、なに!?」

 

「落ち着け。カルネ村の方で大爆発が起きたみたいだ」

 

私はカルネ村の方から立ち上る煙を見てそう判断する。

 

火事、いや、火事であんな爆音が出るなんてそうないし、人為的に起きた現象か……どちらにしてもただ事ではなさそうだと思った私はカルネ村に向かおうとするとメリに手を握られる。

 

「危険だ。お前を連れていく訳にいかない」

 

「わかってる。でも、子供が危険に晒されているかもしれないなかおとなしく見ているだけなんて嫌なの」

 

決意を決めた表情でそんな風に言われたら断れるものも断れるわけなく、私は離れるなという条件をつけて同行を許可して、メリを背中に乗せてカルネ村に向かっていく。

 

「……強くなったのは私だけではなかったみたいだな」

 

「え?」

 

「何でもない。全速力で行くからちゃんと捕まっていろ」

 

「うん!」

 

村に着くと家は燃やし、壊され、村の人々が多くの兵士によって襲われ、中には既に殺されている者もいた。

 

「チッ、思ったよりも酷い状況だな」

 

「ひどい……」

 

「ああ、少し止めてくる。隠れていろ」

 

本来ならメリの村を襲ったこいつらを皆殺しにしたいところだが今回は人命救助が優先だし、何よりメリの前で人殺しの化け物にならないと私は魔眼の力を解放して、周辺の兵士だけを気絶させていった。

 

「守り神様だ。守り神様が来てくれた」

 

「俺たち助かるぞ」

 

町の人が囃し立てる中、メリの方を見るとメリはぼろぼろになっているが軽傷程度の傷を負った旦那さんの方に駆け寄っていた。

 

「貴方良かった……」

 

「ああ、だけどエンリとネムが逃げてあっちに……」

 

あっちって言うと私が出てきた森とは逆の方か。助けに行きたいがこのまま離れれば村人がまだ交戦してない気絶してない兵士たちがいるかもしれないし、襲われる可能性があるし、奥の手の一つを使うしかないかと考えていると森の中から灰色と色褪せた鎧に禍禍しいゾンビのような肉体を持ったモンスターが現れる。

 

こんなのはこの辺にいなかったから恐らく誰かが召喚したモンスターであろう。倒すかと考えるとその目は私が気絶させた騎士の方に向き、倒れている騎士に剣を突き刺して、とどめをさしていくだけで町の人には関心を持っていないようだった。

 

恐らく大丈夫だと思うが念のために保険をかけておくべきかと考えた私はさっき言ってた奥の手を一つ使うことにした。

 

「お前たち任せるぞ」

 

そう私が髪を何本か抜くと、それは紫色の大蛇の姿となって、町を周回し始めた。

 

この蛇たちは私の力の一端であり、あの程度の魔物が暴れたとしても町への被害を出すよりも先に倒すことができる。

 

それに、蛇たちの視覚、聴覚を共有することができるため問題があったとしてもすぐに駆けつけることができる。

 

蛇に任せて、メリの娘であるエンリとネムの方に向かうとそこから装飾をつけたローブを身に纏い仮面を着けた私が見た中で一番の魔力を持つであろう何かと血のように女性用の真っ赤な鎧を身に纏った私と同じような魔物の女性と対面した。

 

恐らくこの世界で出会った中で一番強いであろう奴等、あの騎士たちの仲間である確率もあるし、ここでも大蛇を出現させて、メリの娘たちの探索にあたらせ、私は目の前の二人に質問する。

 

「貴様ら何者だ?ここら辺では見慣れない顔だが、アイツらの仲間か?」

 

「貴様……アインズ様に貴様ですってぇ、礼儀を知りなさい。この蛇女風情がっ……」

 

鎧を身に纏った女性が襲いかかって来そうだったので魔眼を用いて行動を制限しつつかなり好戦的な性格をしてるなと内心で思う。

「貴様も行き成り攻撃しようとしてくる辺り初対面の奴に礼儀の欠片もないがな。それでどうなのだ?」

 

「ああ、私はただの通りすがりであって、あの騎士たちの仲間ではない。その証拠に先程、兵士に襲われていた娘二人を保護し、傷を治した」

 

仮面をして、声にも落ち着きがあって真意の判断がつかないので蛇たちがメリの娘たちを発見するのを待っていると間もなく結界が貼られ、その中に無事でいることが分かり、目の前にいる仮面の何かが言っていることが真実であることが証明された。

 

とりあえず、二人が無事だと分かり、安心しつつこの仮面のナニカに頭を下げて、謝罪する。

 

「疑ってすまなかったな。あの二人は私の大事な友の娘たちだ。救ってくれて感謝する」

 

「いや、当然のことをしたまでだ。それで疑いが晴れたならその魔眼の力を解除してくれないか?」

 

「ああ、わかった」

 

魔眼を解くとさっきの女性が再び襲いかかってきたが、仮面の何かが一言制するとその女性は失礼しましたと私に謝罪してきた。

 

「気にするな。私はゴルゴーンだ」

 

「私はアインズ・ウール・ゴウン」

 

「アルベドでございます」

 

「ところでゴルゴーン、お前はユグドラシルって言う言葉に聞き覚えがあるか?」

 

「ユグドラシル……北欧神話の話か?」

 

「まぁ、それもあるんだがそれ以外のユグドラシルは知っているか?」

 

「それ以外は知らないな。質問は以上か?」

 

「ああ」

 

「なら、私は二人を迎えに行く」

 

私は二人がいるところに向かいながら思考に耽っていた。

 

北欧神話、そんなものはこの世界には存在していない。だが、それを知っていると言うことはアインズやアルベドは私と同じ転生者なのか?だが、それ以外にユグドラシルという言葉がない以上、同じ転生者でも前世の世界が違うということか。

 

だが、そんなことはどうでもいいか。敵対したときは闘うだけだし、この世界には自分の力を全力で出せる相手がいなく、やっと骨がありそうな者を見つけられた。

 

「いつか手合わせしたいものだ」

 

私は舌をなめずりをして楽しみに思いながら野を蹴った。

 

 

 

 

 

 



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