再発領域 特異点改 (時雨日和)
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プロローグ 神様転生・俺得召喚

え〜…完全に俺得でいてご都合主義まみれなので気をつけてください。


(今日…今日こそ…今日こそは!)

 

『復刻 羅生門』

 

(ぬおわぁぁぁぁ!!!)

 

学校の教室、俺は1人でツイッターを見て打ちひしがれた。今回こそはグダグダ本能寺イベント来ると思ったのに…運営というかツイッターでは次は日本がどうのとか言ってた気がしたのに…いや合ってたけど…中の人的にも…

俺としてはもう酒呑ちゃん持ってるし、宝具レベル上げるとかそういうタイプじゃないから…

いや、そういう建前とかどうでもいいから沖田さんが欲しいんだよ!!!俺の推しサーヴァント筆頭だよ!!あの声と強さ、そして何よりも性格がどストレートだよ!!あと足も!

 

言っておくけど学校の教室でこんな発狂してないからね?心の中だけだよ?ほんとだよ?だって俺今はただ自分の席で携帯でツイッター見て固まってるだけの奴だから。友達?いや、いないわけではないよ?ほんと、少ないだけ、しかも別クラスだし。クラス替えしてからほとんどクラスメイトで喋ってないよ…寂しいね、さっちゃん…そういえばさっちゃんの歌ってめちゃくちゃ怖いらしいね?

 

そんな落ち込んだ雰囲気のまま家に帰る。携帯にイヤホンを差し、音楽を聞きながら帰ることにする。安心しろ片耳は外してあるし割と田舎だから…まあ、多少はね?

一人で帰る。今は一人暮らしで少し狭めだがかなり安めなアパートの2階暮らし。別に苦労はしてないし1人だから狭い方が落ち着く。そんなアパートについて部屋の鍵を開けて中に入ったら部屋の真ん中辺りに黒ずくめで顔も見えないような人がいた。

明らかな空き巣だった。ほんと運ないね俺。

 

「え…ちょっ……」

 

人間って咄嗟の出来後になると声も出ないし動けないってホントなんだね、今までめっちゃ馬鹿にしてたよ本当にごめんなさい。

そんな俺の心情を知る由もないその空き巣さんはおそらくテンパっているのだろう、万が一に備えていたのか包丁を取り出して俺に向かってジリジリと寄ってくる。

おいおいおいおい…まじ死んじまうぜ。ドアも閉じてるし……なら、早い方がいいな。速攻!

俺はドアをすぐに開けたが部屋の距離が短いためすぐに追いつかれて空き巣さんが持っている包丁が俺に向かって振り下ろされた。というか無言なの怖いなお互い。きっと空き巣さんは声を出して他の人に見られるのを恐れているのだろうけど、何で俺は声出さないんだよ!!なんて巫山戯ていることを考えながら今ある力を最大限に引き出して、それを回避した。そのせいですげぇ反動で腰くらいの高さの手すりにそのまま腰をめっちゃぶつけたけどな。

まじ痛てぇ、痛みで麻痺したのか足場の感覚無いんだけど、何俺宙に浮いてんの?

…いや、手すりから落ちてるわ…背中を軸になってそのまま半回転して落ちたのな。まあ、ここ2階だし、下も…下はアスファルトだったわ。それなら少しだけ体痛める程度だ済むかな?…あれ?このままだったら俺頭から落ちるよな?流石に2階からでも頭からアスファルトは死ぬぜ?

…ハッハッハ!こんな事で死んでたまるか!空中でも少しなら動かせるんだよ!ほら半回転なら何とか出来たぜこれで足から…やべ回りすぎた。

俺は見事に背中から落ちその反動で頭も少しだが打った。そこで俺は気を失ったのだろう。目の前が真っ暗になった。

 

目を覚ますとそこには夢オチでよくある自分の家ではなく、本当にあった事だが病院に運ばれていて病室にいるでもなく、そこは建物のがれきが散乱し、辺りが火の海状態になってる場所だった。

 

「は?……夢?」

 

まあ、そうなるよね。ほんと気が付いたらここにいたし、記憶が…いや何か変なのに会ったような…いや、気のせいだ。そしてこれも夢だ。寝て起きたらまたアパートの地面に落ちてるよ。というわけでおやすみ。

 

ガシャ…ガシャ…

 

…何か聞こえるんだけど、なに?鎧を着た何か?が歩いているような…いや実際にこんな音なるのかわからないけどアニメとかでは良くなるような音が…でも、それよりはもっと乾いているような音…

俺は目を開けるとそこには骸骨が歩いていた。剣を持ちながら。

 

「は…?え…?………うわぁぁぁぁ!!?」

 

やっと大声出たわ。ってか、今気づいたがここに見覚えあるぞ?確かこれ…FateGOの特異点Fだよね?冬木だよね?これとかスケルトン…え?いや、そんな事ないだろJK。はぁ…どんだけ俺FGO脳になってんだよ。大声出して、奇声あげたけど、こんな事あるわけないよな。さてさて、寝よう。

と、また目を瞑ったらもう既に近くにいたスケルトンが俺目掛けて剣を振り下ろしてきた。

 

「うおぅぅぁぁぁぁ!!!?」

 

訳わかんない奇声をあげながらぐるぐる回りながら何とか回避した。その回避のあと近くの瓦礫に背中を削られて声にならない悲鳴をあげるほどの痛みに襲われた。

 

「っぅ……!?」

 

もう、俺は涙目になってた。痛みで。

それよりもやっぱり夢じゃなかったよ。いや知ってたけどね、でもさあ、現実逃避位はさせて欲しいよ。俺だって魔術師でも無ければゴリゴリの体育会系ってわけでもないのよ?ほとんど普通の喋らせればまだ、あとは文章とかはある程度…いや書けないな。

とにかく俺だけだったら戦えないんだよ!

 

と心の中で絶叫しながら痛みに悶えてるとまたスケルトンがこっちに迫ってくる。何とか痛みに耐えながら距離をとろうとしてももう、瓦礫に塞がれて行き止まり状態だった。

 

「くそっ!…行くしかねぇか」

 

その瓦礫を何とかよじ登ってたがその途中で足を掴まれた。

 

(あ、終わった…今度こそ終わった…ごめんなさい家族の皆さん…先立つ不幸をお許しください…)

 

何て諦めていたらスケルトンは何もしてこなかった。いや、動き自体止まっていた。

 

「…え?」

 

俺以外の動きが止まっていた。スケルトンも、炎までもが止まっていた。

 

「どういう事?マジでついていけないんだけど…」

 

色々なことがあり過ぎて頭がショートしそうだ。そんな時に目に入ったのは何かもう明らかに不審者というか変な奴だった。ただ、普通に顔はイケメンなのが腹立つ。心做しか見たことあるような気がしなくもない。そいつは俺に向かって声をかけてくる。

 

「無事かい?烏丸 鈴桜(からすま りおう)君」

 

何で俺の名前を知ってんの?ストーカー?うわ、めっちゃ怖いんだけど。俺の名前とか珍しいから絶対に確信持ってないと読めない確率が高いんだよ。よく『りさ』って間違えられるけど。

 

「何で知っているんだって顔してるね」

 

「まあ、そう思ったので…」

 

俺は答えながら瓦礫から降りた。もちろんその…男か女かもよく分からないけど声的に男かな。その男からしっかりと距離を取って。

 

「警戒しているね。別に怪しいものじゃないよ?」

 

「その言葉自体が怪しいですし、あと、名前を知っているとかマジで怪しいです。マジで怖いまであります」

 

「名前を知っているのはほら、私は神様だから」

 

「うわぁ…」

 

なに?この人電波?

 

「信じてないの?ここの時を止めてこの時空に君を飛ばしたのも私なんだけど?」

 

「…なんのために?」

 

「そんなもの神の気まぐれだよ。ただ、強いて言うなら君はこの世界の事を知っていたし、この世界にも順応出来そうだなと思ったからかな」

 

「…でも俺だとここでは戦えませんよ。ましてや俺は魔術師じゃないんでサーヴァントを召喚も出来ない。なら、死ぬだけじゃないんですか?」

 

「それは大丈夫。私が君へ並の魔術師程度の魔力と令呪を授けた。これならこの世界の基準でも何とか生きていけるよ」

 

「そして、サーヴァントだけど。これからは君のよく知る基準ではだんだんとサーヴァントを増やしていって状況に応じて使い分けていくってやり方だっただろう。しかし、それを君には禁止させて貰う」

 

「は?!ちょっ…それっ…」

 

そんな事したら…ってか、まだ召喚すらしてない…

そんな俺の嘆きを無視して自称神様は話を続ける。

 

「つまりだ。今から私の力で3回だけ召喚してもらう。これからの召喚はなし。この3回で召喚したサーヴァントだけでこれからを生きていってもらう」

 

「ちなみに聴きたいんですけど…召喚の指定とかは…」

 

その俺の疑問に自称神様はニッコリと笑って

 

「もちろん、完全にランダム。君の運次第だよ」

 

デスよね…ここはFateGO基準なのか…厳しいぜ…

 

「あとは…召喚した瞬間俺の事が気に食わなくて俺の事を殺すとかは…たとえばバーサーカー系の人達とか、アーチャーの英雄王とか…」

 

「その点は安心して大丈夫だよ。元々そんな事にはならないようになってるし、君の性格ならそうならないと思うから」

 

良かった…正直召喚がガチャ基準の事よりも気になってた事だったから…ってか、この自称神様は何で俺の性格を…というより俺の性格とか嫌われる要因しかない気がするのだが…興味無いことにはとことん無関心で、天邪鬼。それに伴って、人の弱みにつけこむような事ばかりして、相手のことを考えない発言ばかりして…これのどこが大丈夫なのだろうか。

 

「ここまで説明しておいて何だけど、君を元の世界に戻すことも出来るよ」

 

「…その場合はどうなるんです?」

 

「今はゲームでいうセーブポイントと同じだ。あっちの世界では君が落ちて気絶しているところで止まっている。もし、今から戻ったら君は病院にいて治療されて病室に寝ている事にはなっているが体に支障はない、今まで通りの生活に戻る。もし、ここに残るのならあっちの世界の君は落ちた後空き巣にそのまま殺される事になる。つまりは、こっちの世界で生活を続けなければならない。もちろん、こっちで死んだら君の人生は終わりだ。私も今のこの最初の時しか君を干渉しない。そして、私はどんな判断だろうと君を責めることはない。強要もしない。君の判断に任せる」

 

「………」

 

元の生活…か……

 

『アイツマジで何考えてるかわかんねぇよな。気持ち悪ぃ』

『それにたまに本とか携帯見ながらニヤニヤしてる所とかほんとにキモイんだけど』

『確かアイツ先生とかに媚び売って成績とか良くしてもらってるらしいぜ。それに、何かアイツ一人暮らしらしいけどその理由って家族に捨てられたかららしいぜ』

『マジかよ。ま、あんな最低なヤツ捨てられて当然だよな。意味わかんねぇ言葉ばっか並べて俺頭良いですよアピールする意識高い系だし』

『そこ関係ねぇじゃん』

『『『キャハハハハ!!』』』

 

「………」

 

「家族には……家族には何の恩も返せないままなのはちょっと心苦しいですが…ここで生きていきますよ。もう、あっちの生活は飽きましたし、大好きなゲームの世界に入れるとかマジ俺得ですよ」

 

「そうかい…」

 

自称神様はきっと気づいているだろうな。

……やだ、何でこんなにシリアスな雰囲気になってるのん?やめてくんない?最初の頃と今とかギャップありまくりでしょ。はいはい、やめやめ。最初の頃はめちゃくちゃテンション高めの俺を出すんだから、あとからならいくらでもシリアスにしていいから今だけはテンション高いやつにしよう。ほら自称神様も、何が『そうかい…』だよ!憐れむな!

 

「それじゃあ、召喚する前に君にやってもらわなくちゃならない事を説明するよ。ここは君の知っている通りFate/Grand Orderの世界だ。しかも最後のマスター『藤丸 立香』君によって人理修復が成された後だ。だが、今まで藤丸君が定礎復元を終えた特異点がまた新たに異常をきたしたんだ。この特異点Fもその一つだ。他には『オルレアン』『ロンドン』そして『バビロニア』の4つだ。本当は藤丸君がまた行けたら良かったのだけれど、今新たに特異点が現れてしまって藤丸君はそっちに回されてしまっている。だが、こっちの方も早くしなければ何が起こるかわからない。そこで私は君を呼んだ。ちなみに君は新たに誕生した49人目のマスターとして、カルデアに所属している。はい、質問あったらどうぞ」

 

…つまり、俺は藤丸さんのサポート…ではないか、補助要因兼新たなマスターとして…と思って大丈夫なのかな?そんな感じで、異常をきたした特異点の復元に駆り出されたというわけか…

 

「ちゃんと俺のことはカルデアは認知しているんですか?」

 

「もちろん。ちなみに君がここにいるのはカルデアからレイシフトしたってことになっていて、今はカルデアからの通信が途絶えている状態だ。そして、私が消えたらちゃんとカルデアと通信が始まる。そこからは君がきちんと話を合わせて貰うよ。ただ、ちゃんとあっちからは君の事を認知しているから楽だと思うよ」

 

「次に、ここでの俺の事をもう少し詳しく教えてください」

 

「まず君は霊器属性は混沌・善だ。魔術は出来ない訳では無いが得意という程でもないという感じだ。カルデアではダヴィンチ君は藤丸君と同じくらい君の事を気に入っているけど、ほかの職員からはあまり良くは思われてない感じだね。君の性格だと。あ、もちろん藤丸君とマシュ君からも良好な関係を築けているよ」

 

「何となく予想できてましたよ。ダヴィンチちゃんからは嫌われてなくて良かったですけど。あと藤丸さんとマシュとも」

 

「まあ、あとは何とかなるよ。一応君のメタ知識もあるし。ただ、君が挑むのは異常をきたした特異点だ。もしかしたら君の知らないサーヴァントが出てくるかもしれないことを忘れない事だよ」

 

「承知していますよ」

 

「それじゃあ、召喚の方に移ろうか」

 

「あ、召喚の前に質問なんですけど…藤丸さんと契約しているサーヴァントと被ることってあるんですか?」

 

「まあ、被っているサーヴァントは召喚出来ないね。でもそこは安心していいよ。実質藤丸君と本契約を交わしているのはマシュ君だけだ。ほかはどちらかと言うとカルデアとの契約となっているよ」

 

つまりはマシュ以外のサーヴァントの中からランダムというわけか…うわぁ…厳しいぜ…

いや、だが、使えないサーヴァントなんて居ない!使えないなんて思うのは使いこなせないマスターが悪いんだ!つまりハズレはない!うん、そうだよ。誰が来たってしっかりと俺はそのサーヴァントのマスターとして頑張るだけだ!贅沢なんて言わない。

 

そんな葛藤を心の中でして、決心を強めた俺をよそに自称神様は魔法陣を出して準備を終わらせていた。いやもう、自称って外そうかな。魔法陣を一瞬で出すとか普通じゃ考えられないだろ。

 

「はい、召喚の準備はできたよ。この石を3つ同時に魔法陣に向かって投げて」

 

神様が渡したのは3つの刺々した石。聖晶石じゃねぇか…ドンドンガチャっぽくなっていくなぁ…

…よし。覚悟は決めた。どんなサーヴァントが来ても俺はしっかりと愛でる!贅沢は言わない!言わないが…せめて可愛い子来い!!!

 

「では…いきます」

 

心の中で煩悩垂れまくりに願いながら聖晶石を魔法陣の真上に目掛けて投げると、魔法陣のちょうど真上で浮いて弾けたと思うと、そこから眩い光が辺りを包む。

 

「うぉぉ!目がぁぁ!!目がぁぁ!!!」

 

そう言って俺は絶叫しながら目を押さえた。

そのまま少ししたら声が聞こえた。

 

「サーヴァント、バーサー…セイバーです。多分…」

 

あれ?この召喚ボイス、聞き覚えがあるぞ?この特徴的な言い直し…まさか…

俺は目から手をどけた。

目の前の魔法陣の上には紛うことなき『謎のヒロインXオルタ』がいた。もちろん第一霊基再臨状態で…

 

「あなたが私のマスターさんですか?」

 

「あ、ああ…」

 

俺はヒロインオルタからの質問に答えた後、神様の方を見た。

 

「ま、マジですか?」

 

「うん、マジだよ。私は操作してないから君の運だけだよ」

 

うおおおぉぉ!!俺の運スゲー!!マジかよヒロインオルタ引き当てるとか持ってんなぁ!ゲームの設定では評価低かったけど俺はめちゃくちゃ育ててたよ…聖杯もあげてたし…良く出てくれた。

そんなヒロインオルタは俺の隣まで移動していた。大体身長173〜5辺りの俺の肩あたりまでしかない。つい頭を撫でてしまった。ヒロインオルタはビクッと肩を震わせて俺の方を見た。

 

「あ、ごめん。つい何か撫でちゃって…ほんとごめん…」

 

「いえ…別に嫌という訳では無かったので気にしてませんよ。ちょっとびっくりしただけなので」

 

「そっか、良かった。まあ、改めてよろしく。頼りないかもだけど」

 

「はい、よろしくお願いしますマスターさん」

 

そう言ってぺこりとヒロインオルタはお辞儀をする。天使かよ…

 

「はい、じゃあ次行ってみよう〜」

 

と言って神様はまた聖晶石を3つ渡してきた。よし、もうヒロインオルタが来てくれたし割と満足してるからもう誰が来ても俺は大丈夫だ。贅沢は言わない。言わないけどできれば女の子が…

心の中でまた煩悩だらけの願いを言いながら聖晶石を投げた。また空中で止まると弾け、眩い光が辺りを包む。

 

「うおおおぉぉ!(以下略)」

 

「サーヴァント、アサシン…」

 

あれ?このロリボイス…そしてアサシン…まさか…

 

手をどけ目を開けると魔法陣の上には、紛うことなき『ジャック・ザ・リッパー』が立っていた。そのジャックが俺の前まで歩いてきた。

 

「私たち、ジャック・ザ・リッパー。よろしくねお母さん」

 

「うん、よろしくねジャック…」

 

そう言ってジャックは俺の隣に来たが、俺は1度そこからちょっとだけ離れた神様の前に行ってその場に正座し手をつき頭を下げた。

 

「ありがとうございます神様ー!!!!」

 

本音が漏れた。

 

「私は何もしてないからね?君の運の問題だからね?」

 

笑いながらそういう神様。いやもう、何でもいいです。聖晶石をくれたのは神様だから間接的に神様のお陰です。

 

「はい、ほら最後だよ」

 

最後の3つの聖晶石。もうここまで来たら満ち足りたよ。もう贅沢も何も言わない。誰が来ても愛でる。それが俺…

さっきの場所に戻り改めてジャックを見た。姿は第一霊基再臨状態だからマントを羽織っている感じだ。まあ、その下は凄い際どい格好をしているが…ここまで小さいと俺はこの子を本当に娘として見てしまう。ほんと愛くるしい。もう1人の天使…無意識下でジャックを撫でていた。

 

「お母さん?」

 

「あ、ごめん。まただ、撫でちゃってごめん」

 

「ううん、お母さんに撫でられるの好きだよ?」

 

「ありがとう…」

 

泣きそう何だけど…可愛すぎる…

 

「む…マスターさんマスターさん」

 

「ん?何?ヒロインオルタ」

 

「…ジャックさんだけずるいです」

 

可愛すぎかよ…嫉妬なの?嫉妬してくれるの?両手に華だよほんと…

1度2人ともの事を撫でてから最後の召喚を行う。聖晶石を魔法陣の真上に投げる。聖晶石は空中で止まり、弾け眩い光が(以下略)

 

「新選組一番隊隊長…」

 

この声…え?新選組?…え?うそだろ?いやまさか…

 

手をどけ目を開ける。

目線を上から下へとゆっくり動かしてみた。アルトリア顔、少しだけ小さいアホ毛、後ろで結んだ髪、髪の色は白髪、そして和服にブーツ…

 

「沖田総司です。あなたが私のマスターですか?」

 

「………」

 

「マスター?」

 

沖田さんが魔法陣から離れると魔法陣が消滅する。沖田さんは俺の目の前に来て俺の顔の前に手をふりふりとして反応を見ている。

 

「沖田さん?」

 

「はい、沖田さんですよ」

 

「………」

 

俺はその場に崩れ落ちた。

 

「マスター!?大丈夫ですか?!」

 

沖田さんが駆け寄り、ジャックとヒロインオルタもそれに続いた。

ああ…もう……

 

「みんな…俺の元に来てくれて…ありがとう……」

 

ガチ泣きしてた。危うく気絶しかける所だったよ。ただ、ガチ泣きしてる。正直気持ち悪いなぁおい。そんな心情を知る由もない3人は俺の事を慰めたり、撫でてくれている。うぅ…俺は天国に来たのか?アヴァロンか?ごめんね、こんな変な事を考えてるマスターで。今だけは勘弁して、これが終わったら真面目なマスターになるから。

 

「よし、これで召喚はすべて終わったね。君にとっては満足いく結果だったかな?鈴桜君」

 

泣き止んだ俺は立ち上がり神様の方を向く。

 

「幸せ過ぎて今死んでもいいくらい満足ですよ。俺得過ぎます」

 

「それなら良かった。まあ、これからは何が起きても私は干渉出来ないし、君達から私の記憶を消さなければならない。だからこれでお別れだ」

 

「お世話になりました。神様。正直最初はかなり疑ってましたが今ならあなたが神様だと納得出来ますよ」

 

「そっか、ならよかったよ。それじゃあ、君に幸運があらんことを…」

 

そう言って神様は消え、神様の記憶も消えた。

ここから俺の…FateGOでの烏丸 鈴桜のストーリーが始まる。




気の迷いで書いていたら結構眺めになってしまいました。
本当に気の迷いなので意味のよくわからない表現とか言葉遣いとか単語とかあると思うので質問等あれば気軽にお願いします。私自身の成長にも繋がるので


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特異点F 冬木
第1話 サーヴァントだって


難しいなぁ…サーヴァントたちの口調とか雰囲気とか
キャラ崩壊注意ですよ。
指摘等ありました遠慮なくどうぞ


特異点F、確かセイバーオルタさんが最後に出てきていて、それまでにシャドウサーヴァントが出てきたはず。でも、どうやらそうはいかないらしい。

 

「烏丸君!烏丸君!!きこえるか?!」

 

さっきまで全く繋がらなかった通信がようやく届いた。まあ、ダヴィンチちゃんでは無かったけど。

 

「聞こえますよ。遅かったですね。何かあったんですか?」

 

「原因がわからないが烏丸君がレイシフトしてから全く繋がらないどころか居場所さえわからない状態だったんだ。もしかしてレイシフト先を間違えたんじゃないかと思うほどには混乱した状態だったよ」

 

「ええ、まあそんな事になってたら恨みますよ。良かったですね」

 

「ほんとに君は…まあ、いい。ひとまず西に向かってくれ。すぐに地図を送るがその方向に洞窟があってその奥に聖杯のような反応がある」

 

「聖杯のような?何か歯切れが悪いですね。確証はないんですか?」

 

「ああ、聖杯ではないが、聖杯に似たような何かだ。以前にあった羅生門の時のに近い」

 

羅生門、確かあれは願いを歪めた形で叶えるもののはず。しかもあれは酒。

 

「ちなみに言っておくけど近いだけであの時と同じとは限らないよ」

 

「まあ、そうですよね…わかりましたよ。また何かあったらよろしくです」

 

そう言って1度通信を切って、地図が画像として送られて来たのを確認して開く。

ちなみにさっきの通信中3人は何をやってたかと言うと…近くにいるスケルトンをバッタバッタと倒していた。俺の指示とかいらないんだけど…

 

「あらかた片付けましたよ。マスター」

 

「あー…うん、はい、お疲れ様です」

 

なんだこれ?正直俺にとってはオーバースペックにも程があるよ?オーバーキルだよ?

 

「ええと…何か不審な相手とかいなかった?サーヴァントとか」

 

3人は皆首を横に振る。一応まだ姿を現してはいないか…いや、アサシンが気配遮断している可能性がある。正直油断は禁物だろう。

…FateGOの世界って実際に体験するとこんなにも危険なんだな…ゲームだったら移動とかないからなあ…

 

「それじゃあ、行こうか。西側に聖杯のようなものがあるらしいからそれを回収しに」

 

そして俺は歩き出した。歩き出したかったんだけど…

 

「烏丸君!近くにサーヴァント反応が!!」

 

誰だよサーヴァントいないって言ったやつ…めちゃくちゃ目の前に居たよ…いや、今来たのかもしれないから誰も責めないでおこう。

 

「マスターさん、下がってて下さい」

 

ヒロインオルタを筆頭に3人が俺の前に立つ。

目の前にいるサーヴァントは…

 

「あなた達は…違いますね。私の追い求めているマスターではありません」

 

静謐ちゃんじゃねぇかぁ…ハサンだけど、ハサンだけどさあ!

…ああ、staynightでは呪腕さんで、zeroでは百貌さんだったから改では静謐ちゃんってか…うわ…早速普通とは違うよね。しかも心做しか狂化されてない?言動とかも割と。

っと、それよりもまずいのは毒だ。俺自身もあるけど流石にサーヴァントだからって全く効かない訳では無いだろうし…このパーティーの弱点はみんながみんな近接タイプ何だよなぁ…よし、まずはお喋りから入ろう。

 

「静謐のハサン…だよね?君は俺たちをどうする気?」

 

「私が追い求めているマスターではないので、殺します」

 

狂化決定だろ。静謐ちゃんってこんなに直接的な物言いじゃなかったよね?あれ?俺の知識不足?とにかく、この子の願いは『カルデアのマスター』に会う事ってところだろうな。

 

「ごめんね、俺で。…俺毒耐性持ってるかわからないから近づけないんだごめんね。3人も気をつけて攻めて。俺の出来ることは喋ることしか出来ないから。指示としては…ヒットアンドアウェイ作戦で行こう」

 

何て大まかな指示だろう。なのに3人とも了解と言ってすぐに行ってくれた。何この子たち有能すぎる…と、それは置いておいて。

流石に敏捷A+の静謐ちゃんでも3人がかりでは厳しいようでこっちが押している。具体的にいえば主はヒロインオルタが担い静謐ちゃんの動きを止め、ジャックと沖田さんでサポート、そして俺の指示を守ってかちゃんと打ち込み離れ、打ち込み離れを繰り返している。ほんと…従順…可愛いよお前らぁ

 

「烏丸?大丈夫なのか?隠れなくて、というより毒を喰らわないようにしなくて」

 

「ええ、まあ…あいつらが命かけて戦っているのに俺だけ安全ってのは性にあわないんで…」

 

指先やつま先から段々と痺れてきた。正直目の前も朦朧とする時さえもある。まじか、静謐ちゃんの毒ってここまで強力なのかよ。藤丸さんどんな体してんだよ。

 

「それでも、君はマスターだ。しかもこれからだって君の力は必要になる、こちらとしては無理をしてもらっては困る。あとはサーヴァントたちに任せ君は安全な所で経過を待つんだ。なに、サーヴァントなんだから多少傷ついても平気だよ」

 

ああ…困る。そりゃ俺はか弱いマスターだよ。指示だってろくにできない、説得もできない、戦うことなんて以ての外だよ。でも、そんな俺でも少しくらい…

 

「…先の事を考え、今の状況を適切に判断する。それはとても大切なことです。でも、サーヴァントだから?傷ついても平気?何を言っているんだよ…サーヴァントだって傷ついたら痛みだってあるんだ!それなのに…あなた達はいつもそうだ!サーヴァントを物かなにかと勘違いしている。だから俺はお前らが嫌いなんだ、どうしてサーヴァントを下に見る。彼女らがお前らに劣っているとでも?はっ、何を言うんだ。彼女らはお前らなんかよりもずっと前の世界を生き、お前らなんかよりも名を残してきている。そんな彼女らをどうして下に見れるんだ?」

 

そして、俺は腕を前に出し痺れている手を無理やり動かす。

 

「俺はそんな事を思っている奴らの指示なんか聞かない。そんなサーヴァントの事を考えない指示を聞くくらいなら自分の浅はかな考えを貫き通す!そして、カルデアから追放されてもいい。それくらいの覚悟と信念は俺ですら持ち合わせている」

 

指先に魔力を貯め、指を銃のように人差し指と親指だけ立てほかは閉じる。

 

「ガンド」

 

魔力を放出した。その魔力は静謐ちゃんにちゃんと当たり動きを止める事に成功した。

 

「なっ?!」

 

「決めろヒロインオルタ」

 

「了解です。マスターさん」

 

指示を聞いたヒロインオルタは後ろを向いてから後ろ向きのままビームセイバーのようなネクロカリバーを展開させて静謐ちゃんに突き刺す。

その動作が終わった後、静謐ちゃんは刺された部分を抑えながら膝をつく。痛みに耐えるような声を漏らしながら。

俺はゆっくりと静謐ちゃんに向かって歩いていく。俺がその場につく頃には光の粒子が出てきてすぐにでも消えそうだった。それでもこれだけは言っておきたかった。

 

「ごめんね静謐ちゃん。次会うときは君の願いを叶えるために一緒に戦えればいいな」

 

それを言い終わると静謐ちゃんは消えた。そして俺は…

 

「こふっ…」

 

血を吐いた。毒が…毒が肺をー!いや流石にないか、毒で胃でも損傷したか。血を吐いた俺はフラフラとし体制を崩した所を沖田さんに支えられた。

 

「ありがとう、沖田さん。そして3人ともお疲れ様」

 

「マスターもお疲れ様です。そして、ありがとうございます」

 

「え?」

 

「お母さんは私たちの事もちゃんと考えてくれてた」

 

「正直最初はマスターさんのこと疑っていましたが、とても信頼できると確信しました」

 

「聞いてたの?」

 

「うん。お母さんかっこよかったよ!」

 

優しく答える沖田さん、無邪気に答えるジャック、安心したように答えるヒロインオルタ。三者三様にも見えるが、全員が同じ事を考えているのだろう。

そして俺は頬が…いや顔全体が熱くなるのを沖田さんに支えながら感じて、あわあわするだけで何も答えられ無かった。

 

褒められることなんて無かったんだよ。この年になってから!




ちょっとどころか結構雑だったと思います。とりあえず主人公のキャラ変わってない?って思うかもですが、後半の方が素だと思って下さい。ハッチャケておちゃらけているだけですから、心の中で


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第2話 似たもの同士達

アーサー王当たらなかったよ…


「ンッン!俺の事はいいから…」

 

「お母さん顔赤いよ?」

 

「やかましい!いいの、俺はいいから。次行くよ次」

 

「別に恥ずかしがることは無いと思うんですけどね」

 

「沖田さん?いつまで引っ張るつもり?」

 

「マスターさんは偉いですよ。それは私たちが知ってます」

 

「もういいって!?何なの?ヒロインオルタ?俺をどうしたいんだよ。えっちゃんって呼ぶよ?いいの?呼んじゃうよ?」

 

「むしろ大歓迎です」

 

「…えっちゃん…」

 

遊ばれているような気がする。いや確実に…とは言い難いなぁ、この子達本気で言ってそうだからなぁ…

 

「それでマスター、毒は大丈夫ですか?」

 

「え?そういえば何か気づいたら何とも無くなったよ。毒耐性Eくらい持ってんのかな」

 

そんな無駄話のようで俺にとっては割と黒歴史化するようで全く無駄とは言えない話をしているとカルデアから通信が入った。いや、正直気まずいのだが…

 

「やあやあ、鈴桜君。さっきの啖呵見事だったよ」

 

ダヴィンチちゃんじゃねぇか…

 

「ダヴィンチちゃん…いや、あの…」

 

「あー、あー、謝らなくてもいいよ。私も君のそういうところは気に入った」

 

「まあ、それはどうも…それはいんですけど藤丸さんの方は大丈夫なんですか?」

 

「ああ、今はマシュがナビゲートしてるから問題無いよ。立香君もそっちの方が喜ぶと思うし、私としてもいつもよりは暇だったんだ」

 

そう言ってダヴィンチちゃんは少しだけいたずらっぽく笑った。

 

「それはそうと君の方は今は異常ないかな?」

 

「まあ、そうですね。今のところは…ジャックに気配遮断して探索してもらっているんですけど、報告もないので特には…そっちとしては何か反応はないんですか?」

 

「そうだね。大聖杯の所とその付近に2つ、3つ…あとはスケルトンやらゴーストやらの魔物がいるくらいかな」

 

「…そうですか」

 

「ん?もしかしてどんなサーヴァントがいるかとか予想ついた?」

 

「いいえ、具体的にはそこまで…でも、俺の勘が正しければ、この場所に縁のあるサーヴァントの可能性が高いんてすが…」

 

「それでは静謐のハサンが出てきた事に説明がつかない」

 

「はい。なので仮説としてはこの場所に縁のあるサーヴァントに縁のあるサーヴァント…なのではないかと」

 

「ほう…」

 

「そして、その静謐のハサンの様子を見るに俺の見方の問題かも知れないのですが少し狂化されていたような感じがするんですよね」

 

「ということは、奥の大聖杯の所にいるのはオルタ化したサーヴァントの可能性もあるという事かな?」

 

「俺の勘が合っていればですけどね」

 

「…そうだね〜、君は案外優秀なのかも知れない。そして、マスターというよりどちらかと言うとオペレーターの方が向いているんじゃないか?」

 

「自分でもマスターよりはって感じですけど…」

 

その先を言おうとしている時にジャックが戻ってきた。

 

「お母さん、サーヴァントは見つからなかった。骨のやつとかは沢山いたけど」

 

「そっか、お疲れ様。ありがとう」

 

そう言って俺はジャックの頭を撫でてあげた。ジャックは猫のように嬉しそうに撫でられている。

すると、それを見ていた…

 

「マスターさん、マスターさん、私も見回りしてきました」

 

「ああ、うんありがとう。大丈夫だった?」

 

「はい、問題ありませんでした。ですのでマスターさん」

 

そう言ってえっちゃんはずいっと俺の目の前まできた。察した俺はえっちゃんの頭も撫でてあげた。

えっちゃんも気持ち良さそうだ。

 

「あー!マスターマスター!沖田さんも!沖田さんも見回りしました!」

 

そう言って沖田さんまでもが俺の近くに寄ってきた。

ああ、だからみんなの姿が見えなかったのか…何て鈍感な事など考えない。明らかに後の2人は撫でられたいがために言っているな、そこまでして撫でて欲しい何て…めちゃくちゃ可愛いよお前らー!!

 

「うん、ありがとう。お疲れ様」

 

なのでご要望通り撫でてあげた。甘やかし過ぎじゃね?俺。明らかにダメな子達になっちゃいそうだけど…俺なんかよりも相当出来る子達何だよなぁ…キャラ崩壊が過ぎるけど。

その光景を見ていたダヴィンチちゃんは爆笑している。いやまあ、俺もそっちの立場だったら爆笑してるか羨ましがっているのどっちかだよ。

 

「まあ、その…こういう事なんで、自分で召喚したので責任は持ちたいですし…何より俺の所に来てくれた事感謝してるんです」

 

「君、性格は天邪鬼だったんじゃなかったっけ?」

 

「間違っていませんよ。昔は少数派ばかり…いや、違いますね。悪手、嫌悪されているものを支持していたようなタイプでしたし」

 

討論会とかいっつも少数派、1回だけ俺1人の時とかあったし。それでもそういう時だけは饒舌になってたから、相手の発言の裏かいたり、その少数派の意見がどういったものかという発言したりしてその議論で勝ったりしてたし…そのせいで肩身が狭くなったんだけどね、気にしてないけど。

 

「友達も少なかったんで、人との接し方とか分からないんですけどね」

 

「それは、彼女らの君に対する態度を見れば一目瞭然何じゃないかな?」

 

「まあ…いや、この子達が特別って可能性が無きにしも非ずって感じですけどね」

 

左側にジャック、正面にえっちゃん、右側に沖田さんが擦り寄って来ている。いや、擦り寄って来てくれていると言った方が個人的にはポイントが高い…この子達の。

 

「人に嫌われやすい質なんですよ」

 

「それは否定出来ないなぁ」

 

「否定して欲しい訳じゃないので、気にしないで大丈夫ですよ」

 

「でも、いいんじゃないかな、万人に嫌われても。偉人なんてそんな人多いよ」

 

「俺偉人じゃないんですけど…」

 

「ものの例えさ、万人に嫌われても一部の人に好かれるだけでも幸福だと思うけど?君は違うかい?」

 

思えば、沖田さんは人斬り、ジャックは連続殺人鬼、えっちゃんだって、オリジナルはアルトリアさんで叛逆もされるような人だ。そして俺…生徒全員を敵に回し、今ではカルデアの職員殆どを敵に回したかも知れない。町内に悪性と評されるほどの問題児扱いをされた。『姉と違って』なんて言われ慣れた言葉を吐かれた。

3人とは比較するのもはばかられるし、誰かの為とかそういうのもないが…きっと似ているのかも知れない。

 

「ええ、そうですね」

 

そう答えてから少しだけ笑ってからまた俺は続けた。

 

「俺には贅沢な話ですよ」

 

「卑屈だね〜君は」

 

「性格に問題があるので」

 

「変わらないね、君は」

 

「世界は変わっても、人間は簡単には変われないので…気長に待って下さいな」

 

「そこは変わらないと否定しないんだね」

 

「世界に絶対は無いんで、ダヴィンチちゃんほどの天才でも絶対に成功する作戦を考えろと言われても無理ですよね?」

 

「…まあ、そうだね」

 

「でも、否定しないのは実例があるからですよ。藤丸さんとマシュの2人が特に」

 

「そうだね…」

 

ダヴィンチちゃんは感慨深そうな感情を孕んだように答えた。

その時、俺の頭の中で何かが起きた事を感じた。もしかしたら直感スキルかも知れない。という淡い期待と共にダヴィンチは話した。

 

「鈴桜君、大変だ、新たなサーヴァント反応が出た。しかも、大聖杯付近、つまり大空洞の入口付近にいたサーヴァント反応が消えた。つまり」

 

「そのサーヴァントと戦って負けたと」

 

「その通り。そのサーヴァントが敵か味方かわからないけどすぐに接触した方がいいだろう。ただ、サーヴァントを1人倒している事からかなりの実力者だと言う事を忘れないように」

 

「はい」

 

そう返事をしてその反応のある場所へと急いだ。ちなみに急ぐということで俺は沖田さんに担がれながら移動した。

 

締まらないなぁ…




この話の流れが良く分からないよ…一体どこへ向かっているのだろうね…


アーサー王欲しいなぁ…


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第3話 2人の騎士

アーサー王は来ない、フレンドさんに任せます


件の場所まで行くとそこには既に誰もいなかった。ここまでで少しだけ魔物の相手をしてたからだろうか、それともそのサーヴァントがとても用心深いか。

 

「ダヴィンチちゃん、反応は今どこに?」

 

「今は、大空洞から東に進んでから少ししたら北に向かう道があるんだけどそこを進んでいるね」

 

「わかりました。じゃあ進もう」

 

そう言ってまた俺は沖田さんに担がれながら移動した。流石サーヴァントだよね。標準体型だから重過ぎることは無いとは思うけど女の子が男を担ぐって…

とにかく、指示された場所に行く途中また通信が入った。

 

「どうやらまたサーヴァントと接触したみたいだ。もう少しした所にふたつの反応がある。気をつけて」

 

言葉通り少しした所にサーヴァントがいた。1人は白銀と蒼を基調とした鎧を身に纏った騎士と、黒と赤の鎧を身に纏った騎士。

これは…

 

「おいおいおいおい…マジかよこれ…」

 

「マスター?」

 

「…ダヴィンチちゃん、大聖杯にサーヴァントはいる?」

 

「ああ、もちろんいるね」

 

「………」

 

「マスターさん、どうかしました?」

 

「お母さん?私達も行かないの?」

 

「…ここは、様子を見ていた方が良い」

 

俺が言った白銀と蒼の鎧の騎士、それは男性だった。

そして、黒と赤の鎧の騎士、それは女性だった。

 

ここで、俺のメタ知識が発動する。

女性騎士はこの特異点Fにおいて大聖杯にて待ち構えているはずのサーヴァントだ。だから俺はダヴィンチちゃんに大聖杯の所にサーヴァントはいるかと聞いた。つまり、女性騎士はセイバーオルタさんだ。

そして、男性騎士は本当にイレギュラーな存在だろう。少なくとも俺の次元ではFateGOには実装されていないサーヴァントだ。だから最初はガウェインとかの見間違いかとも思ったが、色合いが合わない。つまり、このサーヴァントは/Prototype系統のセイバー、アーサー・ペンドラゴンだ。

 

アーサー王VSアーサー王の戦いという事なのだろうな…これでは無駄に入る事はかなわないだろう。

 

………………アーサー王実装されてたら欲しかったなぁ……………

 

「貴女は…そうか、別の時空での私という事か」

 

「そんなことはどうでもいい。貴様は私の前に来た。つまり刃を交えに来たという事だろう?」

 

「…ああ、不穏な気配を感じたからね。洞窟の奥の方がその気配も強かったが、こちらの方も無視出来なかっからね」

 

「ほう…つまり貴様は私に勝つこと前提で来ているという事だな?随分と舐められたものだ」

 

「私もそれなりに思うところがあるからね」

 

そして、2人は構えを一層厳しくした。明らかに開戦目前、まさか舌戦から始まるなんて思わなかったけど、すぐ終わったけどね。

え?何で声が聞こえるのかって?割と近くに居るんだよ元々素質はあった気配遮断。多分Bくらいある。学校でも普通に気付かれずに授業が進んだ事とか普通にあるし、順番に当てられるのにナチュラルに飛ばされたりとか。という訳でジャックと2人で結構近くにいて、ほかの2人は遠めな所で待機してもらっている。

 

そして、2人はどちらからとは無く…ほとんど2人とも同士に動き出し正面から刃が交じりあった。

その衝撃は凄まじいものだ。たった1度だけ合わさっただけにも関わらず衝撃波で俺なんか飛びそうに…あばばばば!あぶっ!?危なっ!!本気で吹き飛ぶところだった…魔力が無ければ飛んでたな。(関係ない)

 

それからセイバーオルタさんが一太刀、二太刀としたのをアーサー王が受け止め、アーサー王が一太刀、二太刀としたのをセイバーオルタさんが受け止める。そんな剣同士が交わる攻防が続く。

 

(ジャック、もう少し下がろう。ここじゃ危険だ)

 

(うん、分かった)

 

小声で話し、少しだけさっきよりは距離を取った。その間も攻防は続く。魔力量の影響か、魔物が寄ってきたりしていたがその衝撃波で吹っ飛んだのとかいる。哀れ魔物。

そしてまた俺の直感スキルが働いた。明らかに嫌な予感を拾った。それを裏付ける証拠もある。それは2人が最初よりも大人しくなったからだ。そして2人は距離を取った。その後剣を下に下げた構えを取る。

メタ知識的にまじでやばい。

 

「十三拘束解放、円卓議決開始!」

「卑王鉄槌、極光は反転する。」

 

「ジャック逃げるぞ!明らかにまずい」

 

「え?…うん分かった。」

 

俺はジャックに担がれすぐにその場から急いで離れる。

 

「『承認、ベディヴィエール、ガレス、ランスロット、モードレッド、ギャラハッド』

是は、世界を救う戦いである

『アーサー』」

「光を呑め!」

 

「「約束された勝利の剣!!」」

 

片や金色に光輝く斬撃波、片や黒く悍ましく映る斬撃波が2人の丁度真ん中でぶつかり合う。その衝撃波たるや先程の剣と剣が打つかるなんて比ではない。大量の爆弾が爆発したとか、隕石が落ちてきたとかそんなレベルに相当するだろう。

斯く言う俺らもかなり距離を取ったと思っていたが吹き飛ばされた。2人で宙を舞っていたが何とかジャックを抱きかかえクッション代わりになり、俺が背中から木にぶつかっただけで済んだ。危ねぇ、折れるところだったぜ、俺の背骨が。ジャックだったら折れてたな。

 

「つぅ…大丈夫か?ジャック」

 

「うん。お母さんは?痛くない?」

 

「痛くないって言ったら嘘になるな。でも折れては無いっぽいからな、さほど心配するものでもないよ」

 

「ありがとうお母さん」

 

しかし、1人だったら痛みでどうにかなりそうだったけどジャックがいて良かった。いい気付けになるな。

それにしても…なんて威力だよ。

街吹き飛ぶんじゃねぇかと思ったぜ。隕石の落下地点みたいにはなってるけど。とにかく行ってみるか。

 

「ジャック行けるか?」

 

「うん」

 

「よし、なら行こう」

 

またまた俺は担がれながら移動した。…いや、今回は仕方ない急いでたし背中痛いし、ジャックの方が早いし。

 

現場に行くと本当に隕石でも落ちたのではないかと思うほどクレーターが出来ていた。千里眼スキルを持っていない俺にはどちらが残っているとかは見えない。もちろんジャックにも見えない。というか、クレーターの端から肉眼で確認出来ない程遠くにいるってどんな威力なんだよ!まじで街壊せるだろ。

そのまま進んでいくとようやく肉眼で見えるようになった。そこに立っていたのはアーサー王の方だった。

アーサー王は剣を地面に突き立て足元に倒れているセイバーオルタさんを見下ろしていた。気配遮断をしたまま近づいて行くとセイバーオルタさんから光の粒子が出ているのが分かった。そして、何も言わず…若しかしたら言えなかったのかもしれないがすぐにその粒子と共にセイバーオルタさんは消えていった。…心苦しい。

 

「そこにいるんだろう?出てきたらどうだ?」

 

バレていらした。

俺は観念したように、しっかりと両手をあげて気配遮断を解いた。

 

「驚いたな。まさかマスターまでいるとは」

 

「ええ、まあ、元々気配を消すというか、影が薄かったというか…」

 

俺に続いてジャックも気配遮断を解いた。すると、遠くから沖田さんとえっちゃんも来て俺を守るように前に出た。

沖田さんはアーサー王から目を離さず背中を向けたまま俺に話しかけてくる。

 

「マスター、お怪我はありませんか?」

 

「少し背中をうった程度だよ。そっちは?」

 

「私達は問題ありませんよ。マスターさん」

 

「そっか、それは良かった。あと、構えは解いて。交渉なり説得、言いくるめ、舌戦、言葉攻め、言葉を使う手段の時はあまり表立って敵意を見せたらダメだからね」

 

その言葉を聞いて2人は構えを解いた。ちなみにジャックは最初から構えてない。最初に俺が両手をあげたのを見ていたからだろう。

 

「その相手を前にそれを言ってしまうのはどうなんだい?」

 

「俺としてはあなたの事は別に疑ってませんしね、あなたの目的だって大空洞の奥にいるサーヴァントを倒すこと。そうなのでしょう?アーサー王」

 

「…私の真名すら知っているとは」

 

「あなたほど有名な英雄は少ないですからね。でも、ご自身でも分かっているでしょうがこの世界ではアーサー王、アルトリア・ペンドラゴンは女性の英雄となっている」

 

「そうだね。それはさっきの彼女を見て分かっていた」

 

「話を戻します。あなたは大空洞の奥にいるサーヴァントを倒すという目的で間違いないですか?」

 

「ああ。私自身どうしてここに召喚されたかはわからない。でも奥にある邪悪な気配、そしてその付近にもある邪悪な気配を見逃すことが出来なかった」

 

「俺たちカルデアは以前ここの特異点を修復しましたが、何らかの影響によりまたここは特異点と化しまたここを復元しなければならないのです。

そして、以前大空洞の奥、そこには大聖杯がありそこに待ち構えていたのが先程あなたがたおした。アルトリア・ペンドラゴンオルタ。通称セイバーオルタと言ったところです。本当はあなたの手助けをすれば良かったのでしょうが…俺には少し野暮なような気がして」

 

「なるほど、大体は理解した。つまり君が言いたいことは私を味方につけたいという事かな?」

 

「簡単に言ってしまえばそういう事です。余計な敵は作りたくもない、有効な関係を築けるのなら築く、利用し利用される。目的が同じなら尚更です」

 

「…君はわざと私の顰蹙を買うような事を言っている感じがするね。意図的に自分の評価を…いや、印象を悪くさせるようなね」

 

「…不器用なだけですよ。他人を信頼する経験が少なかったんで」

 

「そういう事にしておこう。私としても3体のサーヴァントと君を相手にするのは骨が折れる。最悪私が負ける」

 

「それではよろしくお願いしますよ。アーサー王」

 

「ああ。そう言えば君の名前を聞いていなかったね」

 

「鈴桜です。烏丸 鈴桜」

 

「そうか、よろしく鈴桜」

 

握手を交わした。

 

………………ふぅ。ほんと、こういう雰囲気は息が苦しくないよ。

とにかくエクスカリバられなくて安心した。




正直腹いせでアーサー王を出しました。
原作をあまり知らないFateGO脳な私なのでアーサー王は本当に齧り程度の知識しかありません。何かおかしな点がありましたらご指摘下さい

そして、他の感想やご指摘はいつでも歓迎しております。


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第4話 推理開始

先に謝っておきます。本当にすみません


アーサー王を味方につけることに成功した俺はそのまま大空洞へと向かい、その奥へと進んだ。

案の定中はゴーストだらけだったけど、まあ頼もしいことこの上ないね。アーサー王もそうだが他の3人もいい働きを見せてくれている。…何かこの言い方だとどっかの王とか皇帝みたいな言い方してる気がする。

 

ダヴィンチちゃんによるとサーヴァント反応は奥のみという事もあり割と大空洞内での雰囲気は軽いものだ。

相手がゴーストという事もありジャックは解体できなくて不満そうにしてるけどね。

 

「君はサーヴァントに好かれているね」

 

「え?」

 

突然のアーサー王からの言葉。正直アーサー王イケメンすぎて眩しいんだよなぁ…苦手ではないし尊敬もしているんだけど…畏れ多い。

そんなアーサー王から好かれている発言。まあ、前にも言った通りこの3人からは異常なまでに好かれているのは流石に自覚しているけど…そんなにわかりやすいものだろうか?アーサー王の前ではそんな素振りは見せていないような?分別出来てる子達だし。

 

「君が私の前に出た時、すぐに君の前に立って構えていたし、今も君の事を気にしながら戦っている」

 

「それってサーヴァントとして普通なんじゃ?」

 

「確かにそうかもしれないが…でも雰囲気が違うんだ」

 

「雰囲気?」

 

「そう。サーヴァントだって感情はあるし感性だってある。従いたくないサーヴァントだっている。そんなサーヴァントはそのマスターを殺し単独行動をしたりするが、それが出来ないサーヴァントは嫌々という感じでそのマスターに従うことがあると聞く。君たちにはそれが無くて心の底から君を信頼し慕っている事が分かるよ」

 

「ちなみにそう思う根拠は?」

 

「さっきも言った雰囲気と勘かな」

 

流石直感スキルA…

 

「こふっ…」

 

突然沖田さんが血を吐いて倒れた。流石病弱スキルA…なんて言ってる場合か!

 

「沖田さーん!?」

 

ほんと大事な時にこのスキルは…

俺は速攻沖田さんに駆け寄って抱き抱える形になって口と手で抑えた時についた血を拭いとった。

 

「大丈夫ですか?沖田さん」

 

「え、ええ…まだまだ行けますよ?」

 

「嘘つかないで下さい。今は安静にしてて下さい」

 

「うぅ…はい」

 

俺はよいしょ、と言って沖田さんを抱き上げた。まあ、言ってしまえばお姫様抱っこと言った方が伝わりやすいだろう。もう慣れた。

 

「大丈夫か?」

 

この大丈夫は沖田さんに向かって言っているのか、俺に対して言っているのかよく分からないなぁ…難しい。

 

「お互い慣れてるんですよ」

 

なんという無難回答。ちなみに俺は本当に慣れてしまって沖田さんを抱っこしてるとか特別な感じはもう薄れているから淡々としているよ。沖田さんは未だに嬉しそうだけど。

ちなみに言っておくけど抱っこにしているのは腰というか背中がちょっとやばいからだ。おんぶだったら腰とか背中とか曲がって痛いから抱っこしてる。

 

「マスター、重くないですか?」

 

「もう慣れたよ」

 

「それって答えになってないですよ」

 

「沖田さんで重かったら世の女性全てを敵に回しますよ」

 

「マスターはひねくれてますね」

 

なんてやり取りもいつも通り。

その光景を見てアーサー王はえっちゃんとジャックに話しかける。

 

「君たちはあの光景を見て思うところとかはないのか?」

 

「マスターさんですから大丈夫です」

 

「お母さんだから大丈夫」

 

ちょっと?目頭が熱くなるからやめてくれない?色んな意味で。

 

とにかく今回は沖田さんは不参加だ。が、その代わりにアーサー王がいる。むしろアーサー王1人でも良いんじゃないかと思ってるけどね…

そのまま奥へ奥へと進んでいくうちにまた何かを察知した。ここはスキル不足なのかほとんどよく分からない。ただ何かを察知したって事しかわからない。 この中途半端なのが怨めしい…

そして、最奥に着き最初に目に飛び込んだのは崖の上に立っているジャンヌ・オルタだった。

…ジャンヌ・オルタ?!来る場所間違ってません?なぜ故にここ?

 

「ようやく来ましたか。随分と遅かったですね」

 

「いえいえ、そんなこと言わないで下さいな。すいません、一つ聞きたいんですが…」

 

「何か?」

 

「来る所間違ってません?」

 

「間違ってないわよ!」

 

「いやだって…どうしてここへ?オルレアンでなく」

 

「私が聞きたいわよ!!」

 

やべぇ…何か面白い。崖の上下でのやり取りなのがシュール…

 

「それで…実際なぜここへ?目的は?」

 

「ふん。誰があなたなんかの指図を受けるものですか。聞きたかったら力づくで聞いてくださいな?サーヴァントが3人、そのうち1人は戦闘不能状態なんて…」

 

「では推理します」

 

「は?」

 

「当たっていたらそれなりの反応をお願いしますね。代わりに間違っていたら俺を火刑に処しても構いません」

 

「…ええ、良いでしょう」

 

そこで心配になったのであろう、アーサー王が俺に声をかけてくる。

 

「鈴桜」

 

「心配しないで下さいよアーサー王」

 

「しかし」

 

「今はまだ俺の計画通りに進んでいます」

 

そして俺は沖田さんをえっちゃんに預ける。

 

「沖田さんを宜しくね。えっちゃん」

 

「お任せ下さいマスターさん、信じています」

 

おぉ…めちゃくちゃ信じられてるよ俺。

 

「ちなみに失敗したらオルトライトニングの刑です」

 

「あ、私は無明三段突きの刑です」

 

信じてなくね?…

 

「おいそこの宇宙人、全然信じてねぇだろ。おいそこの人斬り、宝具を使うな」

 

なんて、軽口を叩いてからジャンヌ・オルタの方に向き直った。ちなみに言っておくけど冗談だってのは百も承知ですからね?

 

「さて…ではまず呼び出されたものからですが、それは言うまでもなくあなたの後ろにある真っ白い聖杯のようなもの…ですね?」

 

「…まあ、疑いようがないわね」

 

「では次は…その聖杯のようなものについて紐解いていきます」

 

「は?それと何の関係が…」

 

「推理に順序は付き物ですよ。この聖杯のようなものは出現した土地、ここでは冬木市ですが、そこに縁のあるサーヴァントに縁のあるサーヴァントが呼び出されるのではと仮定づけています。それを裏付けるのは俺達が会ってきた静謐のハサン、セイバーオルタ、そして、あなたです」

 

「そして、私が最初に出会ったフェルグス・マックロイというサーヴァントもいたよ」

 

「つまり、静謐のハサンは呪腕のハサン、ないしは百貌のハサン。セイバーオルタはセイバーオルタ自身もあるとは思いますが、ここではアルトリア・ペンドラゴン。フェルグス・マックロイはケルト神話においてクー・フーリンの友にして養父であるとされている。彼が呼ばれたのはそのためだろう。そして、あなたはセイバーオルタだ。同じオルタとして呼ばれたのだろうと俺は思う」

 

「ふーん…」

 

「そして、聖杯とは願いを叶える願望器。しかし、この聖杯は願いを叶える…いや、願いを聞き届ける事は無かった。あなたの願いは…」

 

「……」

 

「……まず前提としてオルレアンにて出現した、ジル・ド・レェが聖杯への願望として作られたジャンヌ・オルタ。あなたの記憶はあの時、そしてそれを阻止されたという事。故にあなたの願いは『自身を否定したフランスを否定する』という願いではなく、『カルデアのマスターに復讐する』という願いへと変わった。そして、この聖杯の不完全な所はその時に阻止した藤丸さんではなく俺がここに来たという事です」

 

「はぁ…」

 

ジャンヌ・オルタは一つだけため息のように息を吐いた。

…頭が痛い、脳を使いすぎた。知恵熱…

 

「最後になりますが、あなたがこのあなたとはほとんど接点のない冬木市に呼ばれたのは特に理由は無いとは思います。ただ、オルレアンではない場所への召喚が目的だと思いますよ俺は。この聖杯は気まぐれで遊び心に富んだものなのでしょうね…胸糞悪いですが…」

 

最後の一言は本当に消え入りそうなほど小さな声だった。1度目を伏せてからジャンヌ・オルタを見た。その表情は変わらず見下した目を変えることなくこちらを見ていた。

 

「…それで?それを言ったことで何があると言うのです?」

 

「俺の推理の感想は?どうです?」

 

「そうね…会ってるわよ。で?」

 

「俺の仕事は終わりです。それでは終わらせますよ、この特異点を」

 

「ふん、ようやくね。随分と待たせられたものだわ」

 

そう言って持っている旗を構えた。

するとジャンヌ・オルタの周りに霧が立ち込める。

 

「な、何よこれ…!」

 

「…チェックメイトというやつですよ。時間稼ぎをありがとうございます」

 

「あなたは最初から俺の罠にかかっていたのですよ。そう、最初から、俺達がここに入ってくる時からね」

 

「そんな…何を」

 

その霧の影響か、少し苦しそうだ。

 

「あなたは最初サーヴァントは俺が抱えてた沖田さんを含め3人と言った。今までの俺のパーティーなら何も問題ありませんが、今はアーサー王がいます。つまり、実際には4人必要なのですよ。その意味、分かりますか?」

 

「…まさか!?」

 

そのまさかですよ。ジャンヌ・オルタは咄嗟に後ろを振り向いた。しかし、霧によって視界が遮られ半径1m程の視界しかない。その中で声が響く。誰のって?決まっている。

 

「此よりは地獄。わたしたちは炎、雨、力。殺戮をここに……!」

 

「なっ!?くっ…これは…ジャック・ザ・リッパー!!」

 

すいません、竜の魔女…このような事をしてしまう事をお許しください。しかし、俺は出来る限りあなたとは戦いたくなかったのです。あなたが憎悪する事は痛いほど分かります。俺も…あなたほどではないが自らを否定された人間ですから…

 

「解体聖母!」

 

俺はその、霧に背を向けた。これで彼女の憎悪が俺に向けられるのなら…それはそれで構わない。




もうアレですかね、戦闘させない話としてタグ付けれそうですね…
もうほんと…邪ンヌ好きの方々本当に申し訳ありませんでした。
言っておきますが、別に私は邪ンヌ嫌いじゃありません。新宿の時とか可愛かったですし


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第5話 特異点F 冬木終結

遂に来てくれましたね。復刻本能寺イベ…
今回後半に沖田さん目線の軽い過去話がのってます


あの後俺はジャックと聖杯を回収し、アーサー王の前に行った。

 

「ここまでありがとうございました。アーサー王」

 

「…正直に言うと私には君がわからない」

 

「そうでしょうね…俺にもよく分かりませんから。すいません、騎士道に反したやり方をしてしまって」

 

「いや、その点に関しては心配入らない。しかし…君のやり方は…」

 

「…すみません。情が湧いてしまったんです」

 

「…情が?」

 

「俺、以前は日本に住んでた高校生だったんですけど、小さい頃から悪目立ちしててかなり嫌われてたんですよ。それに、無駄に勉強してて知識もそれなりにあったし、ズバズバと遠慮なしに言ってたんで自分でも嫌われるなぁとかは思ってましたが別にそれだけ何で。まあ、そんな事を続けてたら今まで友達だった奴もこんな奴とは付き合いきれないという感じで俺のもとを去って行きました。ただ、学校の人どころか町の人にすらほとんどいないように扱われたのには驚かされましたよ」

 

「君は…」

 

「何も言わないで下さいよアーサー王。俺は間違っていたなんて思ってませんし、今はこっちにいるのが俺ですから。存在している事を否定されたのなら、新しい場所に存在し直したと考えれば楽ですから」

 

「…そうか、君は強いな」

 

「皮肉にしか聞こえませんよアーサー王」

 

「ふっ、本心だよ。君は強いよ、精神的に。人間で一番脆いのは精神だと僕は思っているよ」

 

「アーサー王に褒められるのは名誉ですよ」

 

「最後になるけど…」

 

そう言うとアーサー王から光の粒子が出る。

 

「いい意味で君のマスターになれなくて良かったよ」

 

「それは俺にとっていい意味ですか?それともアーサー王にとっていい意味ですか?」

 

俺は冗談めいた様に言ったら、アーサー王は微笑みながら答えた。

 

「どっちもだよ」

 

そう言って消えていった。最後まで俺にとってはかっこよかった。流石はアーサー王。

 

「さてと…ダヴィンチちゃん。お願いします」

 

「はいよ。随分と頑張っていたじゃないか。私は少し暇だったよ、途中から完全に空気だったし」

 

「申し訳無いです。でも、この特異点…いえこれから俺が行く特異点は少し特殊な気がして、それの予行練習ですかね」

 

「そうか、良し。準備完了だ今君たちを回収するよ」

 

と言われ俺達はカルデアに戻った。

カルデアに戻った瞬間の職員たちの視線が痛かった。いやまあ、自業自得何だけどね。すぐにダヴィンチちゃんが俺達の所へと来た。

 

「やあ、ご苦労様。どうだった?初めて行った特異点は」

 

「疲れましたよ。まさかあんな感じとは…藤丸さんはいつもこんな事になってたなんて思うとほんと尊敬しますよ」

 

「まあ、君は少し特殊だけどね。まさか、推理するとは思わなかったよしかも君1人でなんてね。立香君の方も新宿へと行って最後は色んな探偵を揃えてたらしいよ。推理もあったらしいしねその特異点では」

 

「へえ、新宿ですか」

 

「君は行ったことあったかい?」

 

「いいえ、俺の住んでところは新宿には滅多に行けないところなので行ったことないんですよ」

 

「そうか、残念だったね」

 

「いえいえ、むしろ個人的には冬木市に行ってみたいと思ってたので行けて良かったですよ」

 

「そうかそうか、よしひとまず今日は本当にご苦労様。また明日すぐに次はオルレアンへと向かってもらわなきゃならない。時間は無いが出来るだけ休息は取ってくれ」

 

「了解しました」

 

そして俺達は自分達の部屋へと戻っていった。

…まあ、全員同じ部屋なんだけどな。しょうがないじゃないか、何故か部屋がここしか使えないって言われたんだから。もう3ヶ月くらい生活してるからもう家族同然だから問題ない。問題とかも起こしてないから問題ない!

ちなみに風呂に入った……ジャックと。その風呂上がり。ちなみに沖田さんとヒロインオルタは2人で今風呂に入ってる。

 

「はあ…頭痛い…」

 

「大丈夫?お母さん」

 

「大丈夫だよジャック…こっちおいで」

 

と、手でジャックを招きベッドで横になってる俺の所へと呼んだ。その動作だけでジャックは俺の隣に来て横になった。そして俺はそのジャックの頭を撫でた。

 

「今日もお疲れ様ジャック」

 

「うん。私達お母さんの役に立てた?」

 

「もちろんだ。ジャックにはいつも助けてもらってる。本当にありがとう」

 

「えへへ」

 

「今日はもう寝てな。おやすみジャック」

 

「うん。おやすみお母さん」

 

そう言って俺はジャックの隣で寝付くまで添い寝してあげた。これもいつもの日常風景だ。そしてちょうどジャックが寝付いた頃に2人が上がってくる。

 

「マスターさん、今日はお疲れ様でした」

 

そう言ってジャックの寝てるベッドから離れたベッドに腰掛けている俺の膝に自然に乗ってきた。

 

「ああ、えっちゃんもお疲れ様。あまり活躍の場が無くてごめんな」

 

「いいんです。私は分かっていますから、何も言わないで下さい」

 

「ありがとう。もう寝るか?」

 

「そうですね。明日も早いそうですし、いつものお願いします」

 

「分かったよ」

 

えっちゃんにもジャックと同じように頭を撫でながら添い寝する。

そして寝付いた頃にまた離れて沖田さんの元へと行く。

 

「お疲れ様でした沖田さん」

 

「はい、マスターもお疲れ様です。すいません、また大事な時に…」

 

「気にしないで下さい。沖田さんはいつも俺の支えになってくれていますからお互い様です」

 

「もう…マスター」

 

「何ですか?」

 

「堅いです。二人っきりなんですからもっと砕けてくださいよ。マスターだってそっちの方じゃないと息が詰まっちゃいますよ?」

 

「う…まあ、そうですね…じゃあ…」

 

俺は立ち上がり沖田さんの座っている真ん前に来て座り、沖田さんの腰に手を回し沖田さんの足に頭を乗せた。

まあ、つまりは正面での膝枕という訳だ。この体勢に入ったら沖田さんは優しく頭を撫でてくれた。

 

「ふふ、気持ちいいですか?マスター」

 

「うん…2日は寝れる…」

 

極楽だよほんと…

 

「マスターはこれ本当に好きですね」

 

「うん…」

 

「マスターは偉いです。いつも私達優先で考えてくれて、自分の事より私達の事を考えるのは見ていて危なっかしいですが…それがマスターですからね。沖田さんはその分マスターを支えます。マスターが甘えたくなったらいつでも甘えて下さい。ジャックにも、ヒロインオルタにも偶には甘えて上げてください。あの2人も心配していますから。2人を娘の様に扱っているのは知ってます。でも、娘に甘える父親もいると思いますよ」

 

「…一つ訂正させて貰いますと。娘じゃなくて愛娘です」

 

「ふふ、まったく。マスターは親バカですね」

 

「自覚してます…」

 

「…マスターに初めて会った時のことを思い出します」

 

「初めて…ですか…」

 

「はい…」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

私が初めて会った時…つまりは召喚された時。マスターを初めて見た時は何か陰のようなものを感じました。それと同時にこの人とやって行けるのかとても不安になる程信用は無かったです。

 

マスターは普段あまり私達とは話すことはありませんでした。いつも業務連絡位しかの会話をせずに訓練を受けてましたし。とても不信感を強く持ったのを覚えています。2人もそんな感じだったのではないでしょうか。

しかし、マスターはそんな私達の気持ちを知ってか知らずか少しずつ話しけるようになりました。訓練後も自分よりも私達サーヴァント優先で自分の事を二の次で対応してくれました。相変わらずあまり話しかける事はありませんでしたけど。

 

そして、私にとってマスターの見方が変わった出来事が起こりました。マスターが倒れたのです。いつもは私が倒れるといったことが多くマスターに看病してもらう事もありましたが、今度はそのマスターが倒れたと聞きかなり驚きました。原因を聞くと過労でした。マスターは元々魔術師としての勉強をしてこなかったようで、その遅れを取り戻すために訓練に並行してその魔術の勉強を寝る間も惜しんでしていた様でした。

しかも私達に悟られないようにいつも通り変わらずに接していました。それを聞いてとても胸が…心が苦しくなりました。

心の奥でこの人なら、マスターなら大丈夫だろうとか勝手に思っていました。魔術師だろうと何だろうとマスターは人間で、万能ではない。体だって壊すこともあり、体調だって崩すことだってある。そんな当たり前の事すらも欠如していた自分にとても腹が立ちました。

 

それから私は出来る限りマスターの看病につきました。時には3人で一緒という時もありました。そして、そんなある時です。

 

「マスター、沖田さんが来ましたよ〜」

 

「ああ、沖田さん。いつもありがとうございます」

 

そう言ってマスターは起き上がろうとしました。

 

「あー!ダメですよ起きちゃ!まだ安静にしてないとダメですよ!」

 

「でも、いつも来てくれて悪いよ」

 

「いいんですって、沖田さんが好きでやってることですから。今は沖田さんに任せてください。ほら、横になって」

 

「うん…ありがとうございます。沖田さん」

 

そう言ってからマスターはまた横になった。それを見た時私は

 

(ああ、マスターも弱いんだな)

 

と思いました。別に馬鹿にしたわけではありません。こんなに弱いのに頑張っていたんだなって、こんなに脆いのに耐えていたんだなって思いました。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「それから私はマスターの支えてになっていこうと誓いました」

 

私は話し終えマスターの方を見るとマスターは静かな寝息を立てて眠っていました。

私は眠っているマスターを起こさないように静かに抱き上げてベッドに寝かせてからその隣に寝ました。

 

「えへへ、沖田さん大勝利です」

 

と小声で言って目を閉じた。

 

「おやすみなさい、マスター」




沖田さんピックアップが来るので沖田さん主体で書きました。
沖田さんっぽさが出てるか個人的には不安ですが何とか書いてみました。はっきり言って個人的な願望ですはい。
書けば出るを信じます!!
来てください沖田さん!!


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