やはり俺の高校生活は間違っている (のらネコ)
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登場人物の設定について

本作品での登場人物たちの設定について書き留めたいと思います。
※主に作者が設定について忘れないように書いただけなので、需要は皆無です...


※基本的には俺ガイル主要人物にオリヒロを加え、総武高での3年目の学校(外も)生活を描いたものになる予定です。

 

~時系列について~

 

原作第11巻の続きで、比企谷らが高校2年の終わりごろからの始まり。

高校3年までの出来事については、原作と同じで、そこから先は作者のご都合主義による想像の世界となります。※書いてる途中で俺ガイル第12巻が発売される可能性についてはここでは言及しないですださい...発売するまでに完結(高校卒業)できるように頑張って執筆していきたいと思います。

~登場人物の設定について~

 

・原作と同じ登場人物については基本的に同じです。そこから若干の作者の理想、想像、性格、都合補正で多少の改変があるかもしれません。

 

・オリヒロについて

 

名前: 早弓 実弥 (はやみ みや) 

 

性格: 普段はおっとり、若干天然だが、自分の趣味や興味のあるものについてはものすごい関心を示す。(ことがある) 一人称は私。

 

容姿: 黒縁の眼鏡をかけ、茶色がかった黒髪を頭の右横で一つに結んでいる。いわゆるサイドテール?サイドポニーテール?で、長さは肩くらいまで。胸は雪ノ下より少しあるくらいで、身長は低く、スレンダーな体型。(小町を少し成長させた感じ)顔は、普通に可愛いと形容されるくらい。

 

この容姿と性格が相まって時折男子の勘違いを招くことも。俗称『ロリ』に当てはまりそうな容姿のため、意外とファンが多いが、如何せん、同じ学年に雪ノ下などの超絶美少女がいるため、あまり目立たない。コンプレックスは身長と胸。若干アニオタ気味なのだが、友人たちにはそれらをひた隠しにしている。

 

 ↓早弓の親友であり、彼女の良き理解者。(早弓がアニオタだと知っている唯一の人物)

 

名前: 結城 柚木 (ゆうき ゆき)

 

性格: 常に冷静で物事を判断することに長けている。常々勘違いを招こうとする(本人は無意識)早弓のストッパー役。他人の色恋沙汰には全く興味を示さない。が、そういった話題をふると途端に顔を赤くし、俯いて黙り込む。一人称は私(わたくし)。かといって別にお嬢様ではない。

 

容姿: 早弓と釣り合う程の容姿の持ち主で、隠れファンがいたりする。身長は男子より低く、女子の平均より高いといったところ。長い黒髪を後ろで一つに纏めている。その凛々しい表情から、踏まれたい男子がいたりもするが、彼女は決してSではない。

 

普段は感情をあまり表に出さない故、クラスメイトに敬遠されがちだったが、早弓のおかげで、親しい友人がいたりするが、本当に友人と呼べるのは早弓一人だと彼女は感じている。コンプレックスは上手く表情が作れないこと、他人に話しかけるのが苦手なこと。(早弓は別)

 

 

 

こんな感じでやっていきたいと思います。時々キャラに、設定を逸脱する行動、言動をとらせてしまうことがあるかもしれません。これじゃない感がでることがありますが、作者補正だと思って生温かい目で見守ってあげてください...お願いしますm(-_-)m



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物語の内容についての修正や改訂

今までの5話までで、たくさんのご指摘をいただきました。ですが、それらについて今さら変更、削除、というわけにはいかないので、ここで一旦、変更点などについてまとめておきたいと思います。


《修正、追加変更、改訂点》

 

・第2、3話 彼と彼女の邂逅(早弓視点も含む)

 

 ・八幡と実弥の、それぞれの初対面時の第1印象を追加。

 

 ・実弥が八幡を探すときの心情、動機などについての記述の追加、変更。

 

・第5話 彼と彼女は再び顔を合わせる

 

 ・2回目の対面時の八幡と実弥の心情描写の追加。

 

 ・奉仕部メンバー(雪ノ下、小町)と実弥の初対面時のそれぞれの第1印象の描写の追加。

 

 ・実弥の依頼内容の若干の改訂。

 

 ・小町の立ち位置についての細かな設定描写の追加。

 

を主に考えています。大幅に修正し、話が少し変わる可能性があります。ご了承ください。

 

・実弥の男子に対する感情の抱き方についての設定の描写が全く無いので、4話と5話の間に実弥の過去編を入れたいと思います。

 

 

字数が余りまくってこのままじゃ投稿できないので、今まで投稿してきての感想をぶちまけたいと思います。

《小説を書いてみての感想》

 まず、ハーメルンに作品を投稿しようと思ったきっかけについて話そうと思います。

 私は、学生をやっている身分なのですが、毎日同じことの繰り返しで、何の刺激もない日々を過ごしていくうちに、気づけば刺激を求めて書店に足を向けていました。その書店で出会ったのが、渡 航さんの、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でした。この出会いがきっかけで、ラノベを好きになり、はまっていきました。ですが、小説というものは、新刊が出てから3ヶ月くらいしないと次の話が発売されませんよね?そこで、web小説に手をつけたところ、そこでも面白い作品に出会い、web小説に興味を持ち始めました。それから何日か経ち、いつもの習慣で書店で本を買いました。その時買った本が、『エロマンガ先生』でした。エロマンガ先生では、主人公が小説家、ということで、執筆に関する記述が多くありました。そこで、私は自分で小説を書く、ということに本格的に興味を持ち、ずっと、携帯のメモ帳に自作のお話を書いていました。ですが、他のSSやweb小説を見ているうちに、自分の作品はどうなのだろうか、どういった評価をされるのだろうか。と気になり、つい先日、『初投稿』してしまいました。興味本位で投稿したものが、頑張ってください!という応援コメントや、こうしたほうがいい、などの的確な指摘のコメントをいただくことができました。それらは私に大きな刺激と影響、やる気を与え、うまくいかないからこそ、燃えることができました。(こういうのって、普通は物語が完結した時にやるんですよね...)みなさんのコメントのおかげで、刺激的な日々を送れています。(勉強は捗りませんが...)

 これからも、めげずに投稿し、貪欲に色々なことを吸収していきたいと思っています。思いの外反応は柔らかく、なるほどな。という指摘が沢山、というか全部ですが、それらを修正し、自分のものにしよう!と努力するのは、とても楽しく、気持ちの良いものだと感じることができました。

 

 これからも、貧弱な文章力でもどんどん投稿していくので、その度に指摘、応援コメントください!それを励みに頑張ります!




こんくらいでいいですかね?とりあえず今回は修正についてのお知らせでした。(途中趣旨変わってたケド)

では、また次話でお会いしましょう!


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彼と彼女の邂逅

gdgdで展開がわかりやすいと思いますが、初投稿なので生温かい目で読んでいただけると幸いです。
感想をいただけるとありがたいです。それらを次に活かせるように頑張ります。亀更新ですが、よろしくお願いします。


高校3年の春休み。俺は予備校と勉強の合間の休憩が欲しくて、最寄りの映画館に来ている。何故かって?それはーーー

ソードアート・オンライン オーディナル・スケールを見るためだ。前から見に行きたいと思っていたんだがな、卒業式やらなんやらで一色に仕事丸投げされて(本人は手伝いとか言ってたが)忙しくなっちまったもんで、今日、初めて見に行く。中には既に4~5回行ってるやつもいるらしいがな。しかしなぜ、今日行くことを決意したか...それは、今週の来場者特典が関係している。《ソードアート・オンライン ホープフル チャント》映画特別版書き下ろし小説が特典で貰えるのだ。SAOは前から好きだったし、これは是非ともいただきたい。ということで、柄にもなく土曜の9時過ぎから、映画の開演に間に合うように足を早めている。Twitter等ではかなりの好評だったので、かなり楽しみにしている...さっさとチケット買って、パンフレットでも読んでるか...お、特典の小説ギリギリ貰えた...あぶね、これ貰えなかったら来た意味なくなっちゃうからな...開演まで少し時間あるし、適当に時間潰すか...

 

     ***     

 

ふう...やっぱり面白かった。アニメの劇場版なんてプリキュアくらいしか見たこと無いからな...

さすがはSAO。戦闘シーンの迫力が桁違いだぜ。あと、やっぱりキリトくん最強なのな...

小説読みたいし、腹減ったから、近くの喫茶店にでも入るか...普段は喫茶店なんてあまり入らないのにな...今日の俺は色々と珍しいな...さすがにサイゼはお昼時で混んでてすぐに入れそうにないな...しょうがないしょうがない...って誰に言い訳してんだ俺は...

 

うお...やっぱり昼前だし混んでるな...2人用の席しか空いてないってか...場所変えてもどうせどこも同じだろうし、まあいいか。目についたものを注文して、特典の小説を読む。

 

???「あ、あの、相席よろしいでしょうか...?」

 

なんだこの美少女?もしかして陽乃さんの差し金か?見た目は...なんとかく小町に似てる気がするな...アホ毛のない小町を俺と同じ歳まで成長させたらこんな感じになりそうだな...特に慎ましやかな胸部とか...   小町「クシュンッ!」

 

俺のターン!オートスキル発動!通称『お兄ちゃんスキル』!このスキルは場に小町(妹属性持ちもしくは容姿が似ているならOK)がいる場合、小町()が困っているときに自動発動する、シスコンスk(ケプコン!!ケプコン!!、優れものなのだ!

 

比企谷「え、ええ。どうぞ...」

 

ジーーーーーーーーーーーーーー

あの?お向かいさん?なんかすごく熱い視線を感じるんですが?俺になにか付いてる?あ、目が腐ってるって?それもとからだわバッキャロー。

本か...?この本なのか?もしかしてこの人は来場者特典で小説貰えなかった残念な人なn(調子に乗りましたすいません。

ちょっとテーブルに置いてみよう...ポンッ

ジーーーーーーーーーーーーーー

あ、本ですねこれは。確定ですわ。さっきからずっと本を一途に見つめてる...

ここでもお兄ちゃんスキル発動!あと少しで読み終わりそうだし貸してもいいかな。小町を見てるみたいでなんかいたたまれないし。

 

ちょうど料理もきたから、貸してやるか。

 

比企谷「あの、これ。もしよければどうぞ。(貸しますよ)」

キランッ!!!

目が輝いてる...

 

???「ほ、ほほほ本当にいいんですか!?そそ、その...ほn

 

比企谷「ああ、自分はもう読み終わったんでいいですよ。」

 

???「あ、え、えと...その...お返しは...どうしたr

 

比企谷「いや、お返しとかそういうのはいいんで。たいしたことはしてないですし。」

 

???「え?でも...その...ぁ、じゃあ...ここの会計持たせてもらっても、いいですか...?」

 

比企谷「いや、でもさすがにそれは...男子としt

 

???「いいんです!これくらい!えっと...伝票は...ウゲッ...」

 

比企谷「いや、やっぱりいいですって...これくらい...」

 

聞かなさそうだな。飯も食い終わったことだし、もう出るか。けど…

タダでもらった小説と引き換えに昼奢ってもらうってのは少し気が引けるな...自分の分の代金だけでも置いていくか...

スタスタ...

あしまった...気まずさに打ち負けて本返してもらう前に店出てしまった...実はまだあと少し読んでなかったんだけどな...いいや。

というか、それ以前に名前すら聞いてないな。いやでも聞いたところで怪しまれるだけか...

 

それより、大人になった小町。か...小町に言ったら「ごみいちゃんそれはさすがに...」とか言って引かれる未来が見えるな...




はい。拙い文章ですいません。コメントお待ちしてます!思った意見を率直にお願いします!心折れないように頑張りますので!


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彼と彼女の邂逅 ~早弓視点~

どうも、のらネコです。12巻発売までに完結と言ったからには、完結させます!手抜きにもならないように頑張ってやっていきたいと思います。

今回はオリヒロ、早弓視点でお送りします。

それでは、幼稚な文章ですが、楽しんで読んでいただければ幸いです。


はい!みなさん、初めまして!早弓 実弥ですっ!って誰に挨拶してるんだろ私..

机に山積みになった参考書と問題集。その前に突っ伏しているのは私。

 

実弥「やっと、終わったァァァァァァァァッッ!!」ノビー

 

両手を天井に向けて伸ばし、無い胸を張る。そう、私は春休みが始まってからずっと、ずっとこの問題集の山を片っ端から片付けていたのだ。我ながらよく頑張ったよ...

そうだ!ご褒美にお出掛けしよっ!柚木は今日空いてるかな...メール送信っと。

 

 

 

10分後...

 

 

 

返ってこない...もういいや、一人で出掛けよ。

 

実弥「なにかいいとこないk...あっっっっ!SAOの映画っ!」

 

オイ、ウルサイゾ!

 

あ、はい...すいません...じゃなくて、今日土曜日だからあの特典もらえるじゃん!うわ、第一公演までもう時間ないや、急がなきゃ!バタバタ

 

実弥「ちょっと出掛けてくる~!いってきま~す!」

 

 

 

ハァ、ハァ、ハァ...やっと...ついた...ギリギリ間に合った...早くしないと間に合わない...

こうして私は、「休みたい」と悲鳴をあげる体に鞭を打ってチケット売り場へと急ぐ。

 

 

 

 

 

結論から言おう。うん。間に合ったけど間に合わなかった。意味が分からないって?そこは察してくれ...うわぁ...これ欲しくて急いで準備してきたのに...え?友達に借りろ?今まで友達にはアニオタだってこと隠してたの!だから...私には借りる方法がない!よって詰んだんだ...もう王手。チェックメイト。うわぁぁぁぁぁぁ...

くっそぉ、一瞬で映画見る気が萎えた...でもせっかくお金払ったし、映画は映画でちゃんと見よう。ドリンク買ったときにアスナのミニフィギュアもらえたし!帰りにアニメイト行ってクリアファイルでも買っていくか...

 

     ***     

 

映画を見終わり、感傷に浸っていたところ、私のお腹の中の虫が傍若無人に鳴き始めた...恥ずかしいっての!今大勢の人がこっち向いたぞ!怖い怖い怖い、私襲われちゃう!ってんなわけないか...まあいいや、今朝急いでて朝食もろくに食べてないからお腹減っちゃった...近くのお店にはいろうっと。サイゼ...女子一人でサイゼはちょっと、ね...あ、そこの喫茶店でいいや。

 

店員「いらっしゃいませ~。何名様でしょうか?」

 

いや、見たらわかるだろ1名様だよっ!わざと言わせるとか嫌味かっ!

 

実弥「ひ、一人です...」

 

店員「申し訳ありませんが、ただいま空席がございませんので、少々お待ちください。」

 

実弥「え、あ、あの、あそこの席は...?」

 

私が指差したのは奥の方の2人組の席。そこには既に男性がいて、本を読んでいた。

 

店員「?あちらの席は...!待ち合わせでしょうか?」

 

実弥「え?あ...は、はい...」

 

やっべー適当に嘘吐いちゃった...まあ、それで座れるんだったらいいか...あそこの人にはなんて言い訳しよう...

 

店員「それではご案内させていt...

 

実弥「あ、いえ...大丈夫です...」

 

ああどうしよう、案内拒否しちゃった...明らかに不審がられてるよね...?あれ?なんか笑顔で送り出された...あ、もしかしてカップルとかって勘違いされてるのかな...遂に私は男子だけでなく女性まで勘違いさせてしまったのか...あの席の人、ほんとごめんなさい!

 

その人の席の近くまで寄って、いざ見てみると、読書しているのがなかなかサマになっているなぁと沁々感じた。ていうか、わりとイケメンなんじゃね?あとアホ毛かわいい。でも男性...ちょっと怖いな...

 

実弥「あ、あの、相席よろしいでしょうか...?」

 

いきなり面識ない人から相席いいかって聞かれたら普通は怪しむよな...多分拒否さr

 

???「え、ええ。どうぞ...」

 

彼は読んでいる本から顔を上げながらそう返事した。

っ!

彼と目が合い、私は怖く...ならなかった。彼の瞳は...なんと形容したらいいんだろう、こう、なんていうか、濁っている?んだけども、どこか温かさを孕んでいるような気がした。

私はその瞳に似た目を持つ女性を知っている。もしかしたら彼も...そんな淡い期待を抱いている自分に失望しながら、彼の向かいの席に座る。

 向かいに、至近距離に男性がいる、と考えるだけで前のことがフラッシュバックしてきそう...なんとか意識をそれから逸らすために、私はとりあえずメニューを手に取る。

さてと。何頼もうかな~...

って、普通にメニュー取っちゃったけどこの人はもう決めてたりするのかな...?まあ本読んでるしいっか。さてメニューメニュ...

 

 

ちょっと彼が気になったので、ちらと見てみる...普通に本読んでるなぁ...もしかしてこんなに意識してるのって私だけで、彼は実はなんとも思ってなかったり?というかなんの本読んでるんだろ。

 

《ソードアート・オンライン ホープフル チャント》

 

.........

おい!それ!君が今読んでるその本!それは私が貰えなかったSAOの来場者特典の短編小説じゃないか!欲しい!読みたい!読みたすぎるっ!(渋めな声)うぅぅぅぅぅ...

 

ポンッ

 

本を置いた!って、あ。多分私たちは店員さんにカップルだと思われてるんだよね?だとしたら本読んでたらおかしいよね...

 

店員「失礼いたします。ご注文のオムライスとコーヒーになります。ごゆっくりお楽しみください。」

 

うん、さすがに会話ないと店員に怪しまれる...恐らく彼は今日のSAOの映画を見たのだろう。その本が証拠だ!ということは、映画の感想とかについて話せるんじゃない?いやでも私にそこまでのコミュニケーション能力があるだろうかいや断じてない。どうしよう...

 

???「あの、これ。もしよければどうぞ。(自分は読み終わったんであげます)」

 

意外にも彼の方から声をかけてくれた。ん?なんだって?今なんて?本くれるって!?

 

実弥「ほ、ほほほ本当にいいんですか!?そそ、その...ほn

 

???「ああ、自分はもう読み終わったんでいいですよ。」

 

もしかしてずっと本見てた私がキモかったから仕方なくくれたのだろうか?でもここは素直に貰っておこう!ありがとう!

 

実弥「あ、え、えと...その...お返しは...どうしたr

 

???「いや、お返しとかそういうのはいいんで。たいしたことはしてないですし。」

 

さっきからこの人私の話すごい遮ってくるな...私のことキライ...?いや、逆に好かれてても困るっつーの...それとすごいキョドる...いつもならこんな風に噛んだりしないのに...やっぱりまだ苦手意識があるのかな...だいぶ慣れたと思ってたんだけどな...

というかなんでこの人こんなに優しいんだろう...見ず知らずの私に本くれるなんて...でも、きっとこういう人は誰に対しても優しいんだろうな。

 

実弥「え?でも...ぁ、じゃあ...ここの会計持たせてもらっても、いいですか...?」

 

お会計だけでもさせてもらおう。いや、えっちな意味じゃないよ?私食べてもおいしくないよ!?

 

???「いや、でもさすがにそれは...男子としt

 

やっぱり、誰に対しても優しいんだ。でもさすがに何もしないのは...

 

実弥「いいんです!これくらい!えっと...伝票は...ウゲッ...」

 

た、高い...オムライス一皿で2000円近くってぼったくりじゃない?決めた、もうこの店こない。ていうかこの人コーヒー飲みすぎでしょ!本読みながらどんだけ飲んだの!もう!どうしよう...このあとアニメイトいく予定でそこでもお金使いたいからな...

 

???「いや、やっぱりいいですって...これくらい...」

 

オムライスを食べ終わった彼は私から伝票を奪い取るのかと思いきや、財布を取りだし、自分の分の代金を机に置いて逃げた。

 

はぁ...どうしよう...本貰った上に何もお返しできてないや...もし次に会う機会があればせめてお礼くらいはさせてもらいたいな...

でも、本当は...もしかしたら彼は...『あのお姉さん』と同じかも知れない...そんな儚い期待に身を任せるのはよくないことだとは重々承知している。でも、あの『瞳』を見てしまったら...

多分見た目から考えて高校生か大学生くらいだったんだよなぁ...まずは顔の広い友達に聞いてみよう。特徴は...

 

 

 

 

あの目。だな。




いかがでしたでしょうか。頑張ってボリュームを増やしながら別視点で書いてみました。誤字脱字がありましたら報告のほう、よろしくお願いします。(それ以外にも使い方の間違っている慣用句や表現などもお願いします)
次のお話も早弓視点で書いていきたいと思います。それでは、また次話で!


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迷探偵 早弓 実弥

どうも、のらネコです!本編内容3話目になります!今回は早弓視点で書く予定だったんですが、他のキャラの思惑もいれたいので、視点がころころ変わり、少し読みづらくなってしまうかもしれません。ご容赦ください。

コメントを書いてくださった方々、本当にありがとうございます!こうしたらいいんじゃないかという建設的な意見や、応援コメントなどはすごく励みになります!これからも頑張っていきたいと思います!
それでは、第3話、『迷探偵 早弓 実弥』どうぞ!


《早弓 side》

 

あの特徴的な目...濁っている...いや、あの場合腐っているとでも形容するべきか。とにかくただならぬオーラを纏っている彼の目...

まぁ、明日から学校だし!みんなに聞き込めばすぐに見つかるでしょ!

 

     ***     

 

柚木「目の...腐った...男子...?」

 

実弥「そう!なんかすごい優しかったんだけど、名前聞きそびれちゃった!」テヘペロ☆

 

柚木「私は知りません。他の女子には聞いたのですか?例えば...相模さんや、由比ヶ浜さんあたりなんかは、人望も厚いですし、該当する人を知っているのでは?もっとも、話を聞いた限りでは、この総武高にいるかさえ怪しいですけどね。」

 

実弥「そっか!由比ヶ浜さんか!ちょっと聞いてくる!」

 

柚木「では、私は隣のクラスですので、また何かあればご連絡ください。」

 

実弥「うん!ありがと柚木!ばいばーいノシ」

 

 

《由比ヶ浜 side》

 

 

実弥「由比ヶ浜さ~ん、今ちょっといいかな?聞きたいことがあるんだけど~」

 

由比ヶ浜「ん?どうしたのみやっち。聞きたいこと?いいよ~」

 

実弥「実は...」

 

     ***     

 

由比ヶ浜「で、みやっちはその名前を聞きそびれた目の腐った男子が誰か知りたいってこと?」

 

実弥「そう!由比ヶ浜さんなら知ってるかなって。」

 

多分、みやっちの言ってる目の腐った男子ってヒッキーのことだよね...どうしよう...ヒッキーの魅力に気付いてくれる人が増えるのはいいけど、これ以上ライバルが増えたら...最近いろはちゃんとも仲が良いみたいだし...ごめん!みやっち!今度何か奢るから!

 

由比ヶ浜「ご、ごめん、あ、あたしは特に知らないかなぁ...ナンチャッテ...」

 

実弥「そっか、ありがと!じゃまたね~ノシ」

 

本当にごめんね!騙すような真似してごめん!そうだ、その時はすぐに思い付かなかったって言えばいっか!

 

 

その後、この結末は彼女の比企谷に対する美化された固定観念が生んだ不必要な嘘だと気付くのは、もう少し先の話になる...

 

 

由比ヶ浜「ねぇヒッキー!ヒッキーみやっちと何かあった?」

 

比企谷「みやっち?誰だそれ。」

 

由比ヶ浜「ヒッキーひどい!みやっちは同じクラスでしょ!早弓 実弥!知ってるよね?」

 

比企谷「いや、お前のネーミングセンスが悪い。よって俺は悪くない。あとそんなやつ知らん。」

 

由比ヶ浜「ふぇ?で、でもさっきみやっちにヒッキーのこと聞かれたよ?」

 

比企谷「え?何、俺見ず知らずの人からもそんなに敵対されるの?もう俺には戸塚しかいないか...あでも戸塚はクラス違うからもう天使の『八幡!おはよう!』が拝めないのか...」ガクッ

 

由比ヶ浜「またヒッキーワケわかんないこと言ってるよ...」

 

比企谷「で?そのなんとかってやつが何だって?」

 

由比ヶ浜「ヒッキー!名前くらい覚えて!それでその子は...」

 

 

《早弓 side》

 

 

実弥「ねーねー小春ちゃーん!目が腐った男子の知り合いいない~?」

 

小春「目の腐った男子...?あっ!確かその人、いろはちゃんと仲いいはずですよ!先輩!」

 

実弥「?いろは...ちゃん...?」

 

小春「はい!一色いろはっていう、生徒会長の子です!」

 

実弥「ちょっと紹介してくれる?」

 

     ***     

 

一色「ど~もっ!2年の一色いろはです!」

 

実弥「えっと、3年の早弓 実弥です...」

 

一色「で、先輩がどーしたんですか?」

 

実弥「ん?先輩って、私の言った目の腐った男子のこと?」

 

一色「そーですね、自他ともに認める目の腐った男子ですねー。」

 

実弥「えっと、じゃあその先輩の苗字は?」

 

一色「ヒキガヤ ですねー。もしかして興味あるんですか?」

 

うわ...私こういう小悪魔みたいな女子は苦手だな~...説明するの面倒だし興味あるって答えればいっか...でもヒキガヤ?噂でヒキタニなら聞いたことあるけど...相模さんを泣かせて海老名さんに嘘告したって噂の...でもそんな人とこの人が仲いい...?ありえる...

 

実弥「そう。この前ちょっとお世話になってね。で、ちなみに漢字だとどう書くのかな?」

 

一色「へぇー先輩ってばまた他の人に手を出したんですか...結衣先輩や雪ノ下先輩に留まらず...あ、漢字で書くと、確か...

 

     比企谷

 

です!」

 

実弥「え?これってヒキタニくんと同じ苗j...ヒキガヤって読むんだ...知らなかった...」

 

一色「そーなんですよ、戸部先輩がヒキタニって呼ぶからその呼び方が定着しちゃったみたいで。」

 

実弥「ん?でも待って、さっき結衣先輩がどうのって言ってたよね?その結衣先輩って由比ヶ浜さんのことだよね?」

 

一色「そうですよー。先輩と結衣先輩は2年のときから同じ部活ですよー。あと雪ノ下先輩も。」

 

実弥「さっきなんで由比ヶ浜さんは知らないって言ったんだろう...」

 

一色「先輩について結衣先輩にも聞いてたんですか?でも多分結衣先輩は先輩のこと好きなんで、ちょっと教えたくなかったんじゃないんですかね?」

 

小春「あ、あの...それについては、直接由比ヶ浜先輩に聞けばいいんじゃないですかね...?」

 

一色&実弥「「それだ!!!」」

 

一色「多分今の時間帯ならまだ部室にいると思うんで呼んできますね!」

 

別に私は由比ヶ浜さんと同じクラスだし、明日でもよかったんだけどなぁ...まあいいか、面倒事は先に済ませちゃったほうが気が楽だし。(すでに早弓の中では由比ヶ浜は面倒扱い)

 

     ***

 

一色「早弓せんぱ~い!結衣先輩連れてきましたよぉ~!」

 

実弥「よし、じゃあ事情聴取といきますか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

《由比ヶ浜 side》

 

 

実弥「基本的にはさっき一色ちゃんが言ってたのと同じだったね。」

 

うげっ、あたしの気持ちっていろはちゃんにバレてたの!?

 

一色「むしろ、それでバレてないと思ったんですかぁ~?結衣先輩って結構分かりやすいですよぉ?」

 

由比ヶ浜「フツーに心を読まないで...」

 

由比ヶ浜「そ、それで...みやっち、さっきは勝手に私情挟んで嘘ついてゴメン。」

 

ああ...これは嫌われちゃったかな...でもしょうがないか...自分のやったことだし...

 

実弥「いや、別に大丈夫だよ~。」

 

一色&由比ヶ浜「「えっ!いいのかよ!」」 小春「...?」

 

実弥「いや、私は別に比企谷くんのこと好きとかじゃないし、ただ単に借りを返したいだけだから、そんなに気にすることないって。それと、確か由比ヶ浜さんって奉仕部?だよね。ちょっと依頼したいことがあるんだけど...」




はい。いかがでしたでしょうか。今日は休みだったんでこのままの勢いでもう1話書こうかなと思っています。文字量はどうでしょうか?1話目が少なすぎて軽く感じてしまったような気がしたので2話以降、多目に書いています。今回はこれで2500文字程度です。※文字量を増やしても、投稿ペースは変えないつもりでいます。
次話は実弥の依頼から。比企谷視点で書いていきたいと思います!それでは、また!

みなさまのご意見、お待ちしております!今作が初なので、コメントがなによりも執筆の励みになります故、書いてくださると、とても嬉しいです!


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彼女の過去

どうも、のらネコです。前回の修正のおしらせのときに言っていた、実弥の追憶編を書きたいと思います。ここでは、実弥の男子に対する感情の抱き方、苦手意識などの理由について心情の描写を増やして書いていきたいと思います。それではどぞ。


柚木「実弥は2年前とは随分変わりましたよね。」

 

実弥「そうかな?自分ではあまりそうは思わないけど...」

 

柚木「そうですよ。中学3年のあのころから...」

 

中学3年の夏...私は忌まわしい出来事に遭ってしまったのだった...

 

 

     ***

 ~2年前~

 

実弥「山田くん、今日も放課後ちょっと勉強教えてもらえないかな...?」

 

山田くんとは、私と同じクラスで、学年でも頭が良く、委員長タイプの面倒見のいい男子生徒のことだ。少し気が弱いところはあるけど...とにかく、私は比較的レベルの高い、総武高校に入るために、みんなより少し早くから受験に向けて勉強をしていて、今日もいつも通り山田くんに勉強を教えてもらいに彼の家に行っていた。とはいえ、彼とは付き合ってるわけでも両想いとかなわけではない。多分。少なくとも私はそういう風には考えてない。ただ、頭が良くて、私に親身になって勉強を教えてくれる委員長。そういう認識だった。

 最初は、付き合ってもいない男子の家に1人で上がり込むなどできないと思っていたが、彼の母親は専業主婦らしく、私が家に行ったときは必ず居てくれる。その上、彼は自分の部屋には行かず、1階のリビングで勉強を教えてくれるし、母親さんも付き添ってくれるという、安全な状況。

そんな状況に慣れてしまった私は最近ずっと彼の家に通いっぱなし。彼だって別に私にえっちないたずらをしてくるようなことはなかったし、しなさそうだし、そもそもできるような状況じゃないし。彼の母親さん、近くにいるからね?だから、多分山田くんも私と同じように、相手に恋愛感情とかは抱いていないだろう、と思っていた。

 

 

いつも通り、学校の帰り道から直接山田くんの家に2人で帰る。そのとき、クラスの男子が調子に乗って私たちをからかってたけど、全然そういう気持ちがないと案外平気なもので、意外と動揺しないものなんだなと思った。彼は顔を朱に染めていたけれども。その頃は、顔を赤くするのは単純に彼がそういうのに慣れていないからだと思っていた。

 

彼の家に着き、母親さんに挨拶したあと、テーブルに今日やる予定のテキストを広げる。まず自分で解いてみて、分からないところは彼に聞く。そんないたって普通の勉強方法を続けて、30分くらい経った時のこと。

 

母親「ちょっと買い物行ってくるから、待っててちょうだいね。翔ちゃん、お母さんがいないからって早弓ちゃんにヘンなことしちゃだめよ(笑)」

 

翔ちゃんというのは、山田くんのことだ。山田 翔大というので、友人らからは『翔ちゃん』と呼ばれている。

 

山田くん「しないって(笑)今までだってしてないし(笑)それより、いってらっしゃいノシ」

 

今思い返せば、この一言が全ての災悪の始まりだったことに、当時の私はなぜ気づかなかったのだろうか...

 

山田くん「お母さん、買い物行っちゃったね。」

 

いつもは自分から話しかけてこないあの山田くんが珍しく私に話しかけてきた。私は、特にどうとも思わず、問題を解きながら、「そうだねぇ~」と流していた。すると、

 

山田くん「ねぇ、ちょっといい?」

 

と声を掛けられたのでそっちを向きながら応えようとする私。

 

私「ん?どうしt.........んはぁっ!...え、ちょっt......んあ!やめて!何するの!」

 

するといきなり両頬を手で押さえられ彼に無理矢理唇を押し付けられた。ファーストキスだったとか、唇が柔らかかったとか、そんなことは微塵も思わなくて、ただただ、なんで?どうして?という疑問、そして『裏切られた』という絶望感だけが胸に込み上げてきた。山田くんだけはこういうことしない人だと思ってたのに...

それから彼は私を床に押し倒し、服の上から固くなったブツを私の腹部に押し付けてきた。その次にされることは考えるまでもなく分かる。犯される。そう思った。だから、彼から逃れるために全力で体を捩った。けれど、男子と女子の筋力差は歴然としていて、非力な私が彼から逃れられる訳がなかった。

 

私「なん...で...?」

 

私は辛うじて恐怖を押さえ、声を捻り出した。

 

山田くん「どうしてって?ふざけるな!こうやっていつもいつも僕の家に来て!僕が君のこと好きなのにも気づかないで!そうやって誘惑するような真似しておいてなんでだって!?誘ってるのは君の方じゃないか!僕だって...僕だってシたいんだよ!こういうことが!なのに...君はいつもそう...相手の気持ちに気づかなくて...それなのに誘うフリして...だってそういうことだろう!?襲われるって分かってて来てるってことは!そうされてもいいんだろ!?なぁ!」

 

私はいつもの優しい委員長とは遠くかけ離れた山田くん。否、獣のような男性を目の前にして、声を出して助けを呼ぶことも、身動きひとつとることさえも、ままならないで床に押さえつけられていた。このままじゃ本当に私は犯されてキズモノになってしまう...

私がそうこうしてる内にも恐怖の種は近付いてきていて、制服のスカートに、その下の下着に、今手を掛けようとしている...小さな胸は揉みしだかれ、柔らかそうに形を変えている。この状況に絶望し、彼という人間に絶望し、簡単に信じた自分の愚かさを呪い、目から涙を流している私の目に迫ってきているのは。

 

 『男子』から、『男性』へと姿を変えた、かの優しき委員長。山田くんだった...

 

もう一度唇を重ねようとしてきた彼を止めたのは、高校に行っているはずの、彼のお姉さんだった...お姉さんは彼の頬を思いっきり蹴飛ばし、私を抱えたまま奥の部屋へ向かった...

 

もしここでお姉さんが来なかったら私はどうなっていたんだろう...そう考えるだけで恐怖で体が震える。いつもなら脳が震えるとか言って笑って流せたのだろうけど、今は無理。絶対に無理。そして私はお姉さんの優しい、慈しむような顔を見た瞬間、今まで押さえてきた感情の箍が全て外れ、大泣きしてお姉さんの胸に飛び付いた。その胸は、私と違い、大きくて柔らかくて温かくて優しさに満ち溢れていた。そして、私はその胸で疲れて眠るまで泣き続けた。

 

その後、彼が私を襲おうとしたことが彼の両親にお姉さん経由で知らされたそうだ。何をされたかは正直考えたくないし、聞きたくない。ただ、彼の両親がうちに謝りに来たから、多分そうなのだろう。けど、私はその時誰とも顔を会わせたくなかった。なぜなら、顔を見るだけで、彼に襲われそうになったことがフラッシュバックするからだ。そんなわけで、私はその後1週間近く学校を休んだ。

 

     ***

 

久しぶりの学校、久しぶりの教室。そして、久しぶりのクラスメート達。彼は転校し、もうここにはいないそうだ。だが、そこに男子がいるという事実だけで、足が動かなくなり、膝が震える程に、私の精神は回復していなかった。考えただけで膝が笑いだし吐き気を催す。そんな状況にまで、私は陥ってしまっていた。それでも、誰とも関わらないようにすることで、なんとか学校には来れた。受験生なのに学校に行けないだなんて、辛すぎる。だが、学校にくることは、私にとっては災悪の第2波。地震で例えるならば、余震、もしくは津波であった。そう、クラスメート達が、私と彼の仲が良かったために、彼がなぜ転校したのか揃いに揃って聞いてくるのだ。私としては彼の名前を聞くだけで怖いというのに、何があったのかまで聞いてくるのだ。その時私は怖くなって1度教室から逃げ出したほどだ。逃げた先は、保健室。体調が悪いのでと言って、ベッドに横させてもらい、現実逃避するように眠った。

 

 

手に微かな温もりを感じ、目を覚ます。するとそこには、氷の様に冷たく、世界の理を見通したような、鋭すぎる眼差しがあった。しかし不思議と私はその眼差しは全く怖くなかった。人と顔を会わせるだけで怖がっていた私がだ。その瞳の奥には、包み込むような温もりが、確かにあった。そう、あのお姉さんのような。そして何を感じたのか、私の口は勝手に動きだし、今まで私が思っていたこと、感じていたことを、全て吐き出していた。

その間、彼女はというと、私の支離滅裂な話に呆れた態度をとるわけでもなく、うんうんと適当に流すわけでもなく、子供に何かを諭している慈母のような眼差しで包み込み、私の壊れた心を優しく握り、『今壊れてはいけない。そのためにあなたは今までを生きてきたのだから。』と囁いてくれた。

 

私は、この人なら信用してもいいのではないかと、心のどこかで思っていた。普通なら、そんなことがあったならすぐに人を信じるなんてできないだろ。と思うかもしれないが、壊れた心は、やはりどこか拠り所を探していたのだろう。なにより、彼とのことについて一切触れてこないのが一番の理由で、彼女は、恐らく私が聞いてほしくないことを分かっているのだろうと、直感していた。

 

それからというもの、クラスでまともに話ができるのは結局彼女1人で、だが、同時にこれでいいとも感じていた。そんな彼女が教えてくれた、この悲劇を繰り返さない方法。それは。

 

 

 

『相手に勘違いされないようにすること。』

 

 

 

だった。




どうでしたか。実弥の過去編。なんかしんみりした感じになりましたね。今回は心情描写に気を付けて書きました。その分文字量も増えました。初めての挑戦だったので、感想をいただけるとありがたいです。


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彼と彼女は再び顔を合わせる

どうも、のらネコです。本編4話目になりますね。前回、『なぜ実弥は八幡を一目見て自分と同じ高校だと思ったのか。』とのご指摘をいただきました。もう少し実弥の心情描写について克明に表現するべきでした。すいません。なので、これからは人物の気持ち、心境の変化などがわかりやすいように書いていきたいと思います!疑問や感想、指摘などは、次に活かしていきたいと思っているので、遠慮なく、コメントしていただけるとありがたいです!
それでは!どうぞ!


 

《八幡 side》

 

時は少し遡り、由比ヶ浜が俺にみやっちなるものとの関係について聞いてきた日の放課後のことだ。いつも落ち着かない由比ヶ浜が、いつもに増して落ち着きがない。3年になってからは、大学受験のこともあるので、部室で俺と雪ノ下は勉強している。そんな教室で、目の端でこっちをちらちら見てくるやつがいたらどう思うだろうか。もちろん、鬱陶しいのだ。言いたいことがあるならはやく言えよっ!ってツッコみたいくらいに。そしてこれがもう20分も続いている現状。何だろう。いい加減無視するのも限界が来たので、何かあるのか聞こうと、由比ヶ浜の方を向いた瞬間...

ガラガラ

 

一色「しっつれいしまぁ~す!」

 

雪ノ下「一色さん、私たちは勉強をしているのだからもう少し気を遣ってもらえると嬉しいのだけれど。」

 

一色「ああーすいませーん。」

 

一色が来たということは、俺は今日も社畜として駆り出されるのだろう。そう思って参考書を閉じて立ち上がろうとすると、

 

一色「ん、今日は先輩じゃないんでいいです。あ、もしかして意外と私とするの楽しみでした?でも今日はお呼びじゃないで~す!」ニヤニヤ

 

コイツ、ウゼェ...てかアイツ、私とって言ってたけど、実際仕事してるの俺だし。もう手伝ってやらねぇぞおい。

 

比企谷「んで、何の用なんだ?」

 

一色「お?気になりますかぁ?でも大丈夫です、先輩が使い物にならなくなったから戦力外通告しに来たとかそういうわけじゃないんで。今日私が用があるのは結衣先輩にです!」

 

もうその発想がでてくるだけで怖ぇよ...

 

由比ヶ浜「え?あたし?ゆきのんじゃなくて?あたし全然仕事できないよ?」

 

一色「いえ、今日は仕事の手伝いじゃなくて、ただの私用できただけなので。それに結衣先輩に仕事頼むくらいなら自分でやったほうが早いですし。」

 

由比ヶ浜「ええっ!ちょっとそれヒドくない!?かなり傷付いたんだけど!」

 

比企谷「いや、さっきお前自分で仕事できないって言ってたじゃねえか。俺もそう思うけど。」

 

由比ヶ浜「あ、そっか。ってヒッキーヒドっ!さいてー!タヒね!」

 

比企谷「あ?そうやって命に関わることを軽く言うな。もしその一言で本当に死んだらどうすんだよ。次言ったらぶっ殺すぞ?」

 

由比ヶ浜「そうだよね、ごめn...ってヒッキーも今言ったじゃん!」

 

「「アハハハハ!!!」」

 

由比ヶ浜「このやりとりって確か去年もやったよね。変わってないな~」

 

比企谷「というか、お前、一色に呼び出されてたろ。」

 

由比ヶ浜「いろはちゃん...?あっ!ごめんいろはちゃん!忘れてた!」

 

一色「この短時間で忘れるってどうなんですかね...まぁいいです。とりあえず行きましょ。」

 

結局一色も奉仕部に居座り続けてるよな。最近は小町もちょくちょく顔出すようになったし。お互いに軽口叩けるくらいの関係にはなれたってことかな。これも1年前の俺からじゃ想像もつかないだろうな。ほんと、居心地の良い場所を見つけたもんだ。第2のベストプレイスだな。

 

 

     ***

 

 

10分くらいして由比ヶ浜が帰ってきた。なんか複雑な表情をしてるな。さては一色に何かされたな?まあいいや。あいつらのことならほっといても大丈夫だろうし。

 

雪ノ下「今日はこのへんにしましょう。私は鍵を返してくるから。それでは。」

 

由比ヶ浜「バイバイ、ゆきのん!あとヒッキーも!」

 

俺はあくまでもついでってか。でもおかしい...いつもは抱きついてでも雪ノ下と一緒に帰ろうとする由比ヶ浜が今日はそれが全くなかった...どういった心境の変化だそうか...

 

 

     ***

 

 

ということがあって今日に至る。うん、やはり由比ヶ浜の青春ラブコメはまちがっている。いや、間違っちゃいないんだけどな、いつもと違う。別にいつも由比ヶ浜見てるから違うなって思ったとかそういうんじゃないから!メロンに目がいったりとかしてないから!ハチマンウソツカナイ

まあいいや、仮に問い質すとしても放課後でいいしな。今は授業に集中しないt...あ、数学だ。別にいいや。

 

 

 

 

時は移ろいで放課後、奉仕部にて。なぜか由比ヶ浜が遅れてくるらしいので、雪ノ下と2人っきりで勉強をしている。とはいえ、テーブルの端と端だけどな!

ガラガラガラ

 

由比ヶ浜「ゆきのん!依頼人連れてきたよ!」

 

お前がその台詞言うと『連行してきた』に聞こえるのは気のせいだろうか気のせいですねすいません...

 

雪ノ下「その依頼というのはどんな内容なのかしら?」

 

実弥「えと、3年の早弓 実弥です。依頼の内容は、とある男子に本をただでいただいてしまって、そのままお礼が出来ていないので、お礼をするにはどんなのが効果的か。それと...聞いても笑わないでくださいよ?ふぅ...わ、私の2つ目の依頼は、私の男性恐怖症の克服を手伝ってほしい、ですっ!」

実弥(はっ!?あの瞳...前に見たのと同じだ...そんな...彼はこんなに近くに前からいたなんて...それも悪名高きヒキタニくんだったなんて...噂の影響力ってスゴいなぁ...見ず知らずの人を酷い人だと勝手に思わせるんだから...)

 

あの早弓ってやつ、この前映画の後、喫茶店でいきなり向かいに座ってきた女だよな...?まさか同じ高校だったとは...あ、そうだ。あとで本返してもらおうか。

 

実弥「それと............」

 

早弓はそのまま雪ノ下に近づき、耳打ちで何かを伝えているようだ。

 

雪ノ下「ええ、私でよければ、その依頼。受けさせてもらうわ。」

 

やけに納得した表情で雪ノ下が依頼を受ける。嫌な予感...

 

比企谷「俺は礼とかしたことないから分からんし、紹介する友人もいないから今回は不参加で。」

 

雪ノ下「そうね、比企谷くんにはできることが無さそうですものね。」

 

そうですよ!俺にはそれほど親しい友人がいるわけじゃないし、男子が怖いって言ってる女子に無理矢理男子を会わせるだなんて出来ないからな。こまt...早弓に嫌な顔をさせたくないし。似てるから間違っちゃったぜ。テヘ

あ、戸塚は?あいつ男の娘だろ?ならセーフじゃね?

 

比企谷「なら、その男性恐怖症の克服にうってつけの人を紹介しよう。戸塚ならいいと思うぞ?あいつなら多分、勘違いして告白するーだなんてことは起きないだろうし。」

 

それに、一応奉仕部と関わりがあるからな。話つけやすいってのもあるしな。

 

由比ヶ浜「ヒッキーは、そういうの勘違いしないよね...?」

 

比企谷「ああ、俺はそういう勘違いは中学のときに卒業したからな。」

 

実弥(彼は勘違いしない…そっか…じゃあこの前のも本当に、普段の優しさなんだ…そう思うと余計『あのお姉さん』に似てる気がするなぁ…)

 

小町「これだからうちのごみいちゃんは...」

 

比企谷「なっ!小町、いつの間に!?」

 

小町「早弓さんの依頼聞いてるときからだよ。」

 

小町...お前いつからステルスヒッキー使えるようになったんだ...!?

 

由比ヶ浜「で、小町ちゃんはどう思う?」

 

小町「小町は全然いいと思いますよ~」(多分この早弓さんの言ってる男子ってお兄ちゃんの事だよね?結衣さんがさっきからすごいお兄ちゃんのこと気にしてるし...)

 

おい小町!それ絶対相手勘違いして黒歴史増えるだけだぞ!やめたげて!

 

雪ノ下「では、比企谷くんは不参加ということで、自宅待機でいいわ。この依頼は私たちだけでどうにかしてみせるわ。それと、そうね。戸塚くんには一度話してみましょうか。」

 

実弥「あのぉ~...もう、一回戸塚くんには試してみたんですけど...どうしても女の子としか思えなくて、効果が薄いというか...」

 

由比ヶ浜「じゃあ他の人を探さなきゃだね!他に誰がいいかなぁ~」

 

比企谷「いや、戸塚くらいで最低ラインだろ。それ以外の奴等ならどうなるかまるで見当がつかん。2つ目のは別に受けなくてもいいんじゃないのか?最低限話せればどうにかなるだろ。」

 

俺なんて全然他人と喋らなくてもどうにかなってきた、いや、どうにかしてきたからな。その辺は本人次第ってとこだな。

 

由比ヶ浜「いいの!あたしはみやっちの手伝いがしたいの!ヒッキーは不参加なんだから黙ってて!」

 

由比ヶ浜はなぜそんなに早弓の依頼にこだわるのだろうか。最悪、誰かの勘違いを招いて状態が悪化、なんてことになったらシャレにならんぞ。あと、俺は黙ってろってどういう意味だよ...こっちは何もできないなりに妥協案考えてるってのに。また意見の決別か...

これは...一色の選挙の時の二の舞になるんじゃないか...?どうするべきか...小町は一体どんな意味を持ってこの依頼を了承したのだろうか...取り返しのつかないことになる前に一度聞いてみるか...

 

 

     ***

 

 

比企谷宅にて

比企谷「なあ小町、さっきなんで依頼を受けたんだ?良い方向に向かう可能性が見出だせないんだが。」

 

小町「ほんとごみいちゃんだなぁ。とにかく黙ってお兄ちゃんは見てればいいの!」

 

は?黙ってってなんだよ。腐っても俺は奉仕部の正規部員なのに、なぜ俺の意見は、誰も受け入れない以前に耳を傾けないのだろうか。そして雪ノ下と由比ヶ浜が張り切っているときはあまりいい方向に進まないことが多い...これは去年のうちに学習したからな。さて、どうしたものか...小町は使えないし、雪ノ下たちは話を聞かないし...1人でどうにかするしかないか...

そういって俺はベッドに身を沈めた。




はて、前回の指摘を直せたでしょうか。まだまだ未熟者で、足りないことが多いと思いますが、どうぞよろしくお願いします。それでは次話で!

訂正後です。かなり話が最初と比べ変わってしまいました…


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本物のなかなら

どうも、のらネコです。投稿遅れてすいません!ちょっと期間が空いてしまったので軽くあらすじについて。
実弥の依頼をどうするか、という点で八幡とそれ以外で意見が割れる。ただ、比企谷は一度面識のある実弥の依頼を無碍にするわけにもいかず、けれども自分ではどうしようもできない上に、由比ヶ浜は自分の意見を聞き入れず、小町には黙っとけと言われて孤立。手の詰まった八幡はどうするか思案しながら目を閉じた…
という感じですかね?そんなつもりで書いたのですが…もしかしたら表現が抜けていて違う解釈をさせてしまっているかもしれませんね…すいません…では、気を取り直してどぞ!


去年はどうだったか。確か、修学旅行のときの俺の嘘告白で、雪ノ下たちとの関係が悪いときに、新たに、一色を生徒会長にさせないようにするという依頼が舞い込んだんだっけか。それでそのあと、俺が黒歴史を1つ作って、一応元通り。みたいになったんだよな。あのとき俺が『本物』を求めずに、ここから去っていたらどうなっていたのだろう。いや、仮定の話をしても意味がないな。

 それよりも、まず依頼の解決、解消方法についてだな。まず、1つ目のやつは、多分俺だろう。本を貸したってのに当てはまっているし。でも、本を貸して貰った相手が目の前にいたら、普通はすぐに返せばいいだけだよな...?なぜ早弓はそうしなかったんだろう...もしかしたら俺じゃない場合も有りうるな。となると、今日直接聞くしかないか。

 そして、次に2つ目の依頼。今回のメインはこっちだな。まず『男性恐怖症』について調べてみるか。「おっけーぐーぐる、男性恐怖症とは。」

Google先生「男性恐怖症とは、恐怖症のひとつ。個人差はあるが、男性に触れられると強い不安感に駆られたり、男性と話すとひどく赤面したり、男性と一緒にいることに耐えられないといった病的な心理。中には男性が近づいてきただけで不安を感じる人もいる。」

と。んで?主な原因は...?

 「レOプの被害に遭った」「父親もしくは兄弟から虐待を受けた」「子供時代に男子からいじめを受けた」といった経験。

...俺が近づいたら危ないのか...でも、雪ノ下たちはこのことを知っているのだろうか?早弓が男性恐怖症を発症しているということは、男性に対してなんらかのトラウマがあるということで、それを克服しないことには解消はできないんだよな...とはいえ、俺が直接的に動くことができないこの状況、1つ目の依頼さえもまともに解決できないんじゃ...てかあいつ、なんで男性恐怖症なのに男性に本なんか貰ったんだよ...恐怖症じゃないのかよ...いや、待てよ?そんな状態でも俺と会話していたし、どちらかというと、自分から寄ってきたよな、あの時。それに別に赤面しているようなことはなかったと思う。めちゃくちゃ噛んでたし、なんかオドオドしてたけど。ということは、別にそこまで強く症状が現れるということではないはずだ。症状の進行具合を由比ヶ浜を使って聞いてみるか。ついでにその本をくれた男子が誰なのかもな。

 

     ***

 

比企谷「なぁ、由比ヶ浜。少し話があるんだ、ちょっといいか?」

 

今朝は小町は全く変わった様子はなかったが、昨日のことがあり、こちらから話しかけるのは癪だったので、小町とは話していない。だから恐らく、いつもの、小町から情報が漏れてました!ってことはないはずだ。それなら由比ヶ浜は、早弓が本を貰った相手が俺かもしれないことを知らない。ならば、1つ目の依頼がすぐに終わるかも知れないから、ということを伝えたほうがいい。お礼がしたいなら、俺は本を返してくれれば問題ないしな。症状の具合も聞いておいてもらいたいし。

 

比企谷「由比ヶ浜。早弓の言っていた依頼についてなんだが。お前、1つ目の依頼の内容覚えてるか?お礼がしたいってやつ。あれな。もしかしたらだぞ?もしかしたら、その相手が俺かもしれん。一応条件には当てはまってるんだ。だから...」

 

由比ヶ浜「うん、そうだよ。みやっちの言ってる男子はヒッキーのことだよ。」

 

ふぁっ!?なぜお前が知ってるんだ?いや、なぜ断言できるんだ?もしかして、俺と早弓の関係について聞いてきたときから、由比ヶ浜は知っていたというのか?ならなぜ教えてくれなかったんだ。

それ以前に、知っているのなら話が早いな。

 

比企谷「お前がなんでそのことを知っているのかは置いておくとして…その、お前に折り入って頼みがある。早弓に俺は本を返して貰えればそれでいい、礼なんかはいらない、と伝えてくれ。それと、男性恐怖症の具合についても、どの程度か聞いてきてくれ。」

 

由比ヶ浜(なんでヒッキーこんなに気合入ってるんだろう…もしかしてみやっちのこと好き…いやいや、そんなわけない、だって今まで知らなかったんだから…)

 

とりあえず、ここまで聞き出せれば早弓の依頼も進めやすくなるだろう。判断材料である情報がないことには何も決められないからな。

 

由比ヶ浜は、うん。わかったよ。と応え、早弓の方に向かって小走りに去っていった。

 

あとは雪ノ下だな。あいつは男性恐怖症については知ってそうだから、由比ヶ浜からあいつの症状の具合を聞いてから話すか。

 

***

 

由比ヶ浜は、早弓の症状はあまり酷くなく、クラスメイトと会話するくらいなら大丈夫だが、近すぎたり、触れられたりするとダメだと言っていた。

 

比企谷「そこまで重症ではないと…」

 

確認するように1人、呟く。となると、本を返してもらうぶんには構わなさそうだな。放課後奉仕部にきてもらってそのことを話して。次はどうするか…恐怖症の克服…トラウマに触れたらアウト。それを上手く回避しながら依頼を遂行する必要がある。

近づかれる、触れられる…近づいて触れなきゃできないことはなんだ?暴力などによる直接的体に触れる行動だな…となると、どれも当てはまってしまうな。けれど、いじめというのは、教師に気付かれないように行われるのが基本的で、どちらかというと精神的にダメージを与えることが多いよな。仮にそうだとすれば、いじめの線は薄い…やはり暴力が原因か…家庭内暴力かどうかは本人に聞くしかないが、最悪の場合、即行で地雷を踏むことになる。これは避けたい。

どうしたものか…いや、ここは一先ずいじめの線を探ることだけを考えよう。本人に聞く以外で1番手っ取り早いのは、親しい友人に聞くことだな。これはあとで聞こう。それからその友人に詳細を聞くとするか…

 

***

 

奉仕部室から楽しげな声が聞こえる。いつもより多いな、一色でもいるのか…?

ドアに手を掛け、左に動かす。

 

比企谷「うーっす。」

 

雪ノ下「こんにちは、比企谷くん。」

 

由比ヶ浜「あ、やっはろーヒッキー!」

 

実弥「こ、こんにちは、比企谷くん…」

 

比企谷「おお、早弓もいたのか。」

 

やはり男子には症状が発現するのか。さっきまでは普通に喋ってたのにな。やっぱり本人に俺が聞くのはマズいか…?いや、クラスメイトと会話するくらいなら大丈夫なはずだ、俺も一応同じクラスだしな。認識されてるかは別として。

 

比企谷「なぁ、早弓。聞きたいことがあるんだが、ちょっといいか?」

 

実弥「は、はい、なんでしょう…?」

 

比企谷「早弓の中で1番親しい友人って、誰だ?あ、いや、無理にとは言わない。」

 

由比ヶ浜(ヒッキー、なんでそんなこと聞くんだろ?今日はみやっちの依頼について話そうってゆきのんと考えてたのに…)

 

実弥「え、えっと…と、隣のクラスの…結城さん…です…」

 

比企谷「そうか、ありがとな。」

 

実弥(比企谷くんにありがとうって言われると、なぜか安心する…なんだろう、この心の安らぎは…)

 

由比ヶ浜「えっと、ヒッキー?今のには何の意味が?」

 

比企谷「いや、ちょっとな。アレがアレで…」

 

雪ノ下「比企谷くんがそういう時は、大抵私たちにも関係するこのなのでしょうね。言わなくてもわかるわ。」

 

こいつは普通に心読むようになったよな。雪ノ下さんかよ。陽乃「くしゅんっ!」

 

比企谷「そうか、そうだと助かる。」

 

雪ノ下「いいえ。比企谷くんはもういいかしら?私たちも彼女に話したいことがあるの。」

 

俺は雪ノ下に続きを促し、話を終始黙って聞いていた。ツッコミたい

のを懸命に堪えて。

雪ノ下が何を話したかというと、早弓の依頼について、まず1つ目は、相手にお礼をするのは恐怖症のため難しいから、相手が本をくれたなら、また同じように本を、お礼の一言をのせて本をプレゼントすればいいのではという提案。ねぇ、それ俺この前言ったよね?なんでその意見無視しといて今サラッとあたかも自分の意見のように言った⁉︎俺1人だけ奉仕部の危機とか深く考えてたのがバカみたいじゃん⁉︎まぁ、いいや。これで奉仕部が無くなったりしないなら。なんだよ、最初から決別のけの字もなかったんじゃねえか…

次に、恐怖症の克服。さっきのは正直茶番に過ぎない。こっちが本題みたいなもんだからな。

 

雪ノ下「早弓さん、できればその恐怖症が発症した原因に心当たりがあれば教えて欲しいのだけど…もちろん、無理にとは言わないわ。」

 

早弓は、ぁ…ぇっと…と言いながらこちらを見てくる。俺は席外した方が良さそうだな。

 

比企谷「なんか飲み物買ってくるぞ。注文があれば受け付ける。」

 

実弥「あ、いえ、席は外さなくても大丈夫です…」

 

比企谷「そ、そうか…」

 

実弥「そ、それで…その原因についてなんですけど…」

 

まさか友人から聞こうと思っていたのが意外にも自分から話してくれるとは…

 

ガラガラガラ

平塚「全員揃ってるな。もう時間だ、下校したまえ。」

 

ちょ、平塚先生、タイミング…

 

雪ノ下「早弓さん、明日、そのことについて聞かせてもらえるかしら?」

 

実弥「ぁ、はぃ…」

 

やっぱり本人は話したくないだろうな、自分の苦い過去のことについてなんて。俺?俺はもう振り返っても黒歴史しか出てこないからそんな感情とっくに捨てたぜ。

さ、明日、原因を聞かせてもらうか。




心情描写多目にかくと、どうしても文字数が膨らんでしまいます。どのくらいの文字数が読みやすいんでしょうか?ちなみに今ので3731文字でした。ご意見をお聞かせください。


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彼女の恩返し

どうも、のらネコです。最近携帯アプリのファンキルにはまってしまい、執筆の時間が取られてしまっています...戒めなければ...
 それでは、第7話目、彼女の恩返し。どうぞ。


早弓の、『男性恐怖症』の原因についての話を平塚先生に遮られ、ものすごく気になるまま帰宅。

今朝は小町に対して冷たく当たってしまったな。怒っているだろうか。多分怒ってるな。小町には黙れとしか言われなかったが、あれは恐らく「お兄ちゃんが思っているほど奉仕部はすぐに崩壊したりしないよ。だから別に大丈夫だよ。」って意味だったんだろうな。いや、でもそこまで深読みできねえよ。とりあえず、冷たく当たってしまったのは事実だから、謝って、それで和解してもらおう。

ガチャ

 

比企谷「たで~ま~」

 

シーーーーン

やはり小町は怒っているな...さっきだって何も連絡よこさずに帰ってたもんな。

 

比企谷「小町、いるk...

 

俺は目の前の光景を見て絶句した。なぜなら、さっきまで奉仕部で一緒だった早弓が家にいたからだ。小町からの連絡待ちで少し帰るのが遅くなったとはいえ、そこまで遅れた訳ではないはずだ。多分、10分そこらだ。しかし俺が驚いたのはそれだけじゃない。マイエンジェルシスター小町じゃなくて早弓が料理しているのだ。え?小町は?あとなんで早弓は普通に家にいんの?

 

小町「あ、お兄ちゃん帰ってきてたんだ。おかえり。」

 

おお、小町か。っておい、お前これはどういうことだ。別に怒っているような感じはしなかったが、家帰ってきたら最愛の妹がいない上に、それを埋めるかのように同じクラスの女子がいて料理してるって...お兄ちゃん家間違えたかと思ったよ!いろいろ問い詰めたいのを押さえて、一番重要であろうことをまず最初に聞く。

 

比企谷「小町、なんで早弓がうちにいるんだ?あとなんで飯作ってんの?」

 

小町「?だって、実弥さんの依頼って、こういうことでしょ?」

 

何を言ってるのこの子!?いや、早弓の依頼ってお嫁入りの練習とかじゃないからね?

 

比企谷「これのどこが早弓の依頼に関係してるんだ?」

 

小町「だって実弥さんの依頼って、本を持ち主に返すのと、そのお礼をするのと、男性恐怖症の克服でしょ?全部できるよ!」

 

確かに...本を返せるし、お礼は晩飯か?男性恐怖症の克服っても...もし俺が何か早弓にとってトラウマの原因になっている行動をしてしまった場合、依頼の遂行どころの話ではなくなる可能性がある...それについて小町氏はどうお考えなのだろうか。ちょっくら聞いてみるか。

 

比企谷「小町、もし俺が早弓の地雷踏んだらどうするんだ?そうなれば悪化する可能性だって考えられるし、これが最善の策だとは考えられないぞ?」

 

小町「でも、実弥さんのそれは暴力とかがトリガーになって発症したんでしょ?大丈夫、お兄ちゃんはそういうことする人じゃないって小町信じてる!あ、今の小町的に超ポイント高い!」

 

おお...小町よ...いや天使よ!愛してるぜ!

 

小町「まぁ、それはお兄ちゃんがヘタレなお陰なんだけどね。」

 

はい、前言撤回。やっぱり小町は小町でした。そして小町の策略で今日、早弓はうちに泊まっていくことに。おい、いくら小町の友達とはいえ、俺だっているんだぜ?クラスメイトだけど、そこまで親しくない男子高校生の家に泊まるって...おい早弓、お前んちの親どうなってんだ...

 

     ***

 

それから小町と和解し、早弓に本を返して貰った。本を返してもらうときも前ほどキョドってはいなかったし、意外と早く克服できるようになるんじゃないか?と思い、今日は眠りに就いた。明日は土曜...溜まったアニメ見るから早く起きなきゃ...

そういえば、本を返してもらうとき、俺の方を見て、「やっぱりあの瞳...」などと呟いていたな。そんなに俺の目って腐ってるか?最近そうでもなくなってきたと思ったんだがな...

 

 

 

 

 

     ***

 

 

「ひ、比企谷くん。朝ですよ。お、起きてください~...」

 

聞き覚えのある声に起こされた。かといって、聞きなれている声ではないし、そもそも俺を『比企谷くん』と呼ぶものはそう多くない。雪ノ下と、雪ノ下さんと、城廻先輩と...それぐらいか。

そう思って目を開けると、予想は全て外れていた。うん。早弓だよね、昨日泊まってくって言ってたもんね、わかってたよこうなることくらい...ただ、ちょっと気になる。

 

比企谷「早弓、お前俺に話しかけたりして、その、大丈夫なのか?」

 

実弥「は、はい。昨日小町さんに、比企谷さんはそんなことしない人だって、教わりましたから。」

 

小町...一体こいつに何を吹き込んだんだ...まぁ、信頼してくれているということでいいだろう。せいぜいその信頼を裏切らないよう、頑張らなきゃな。

 

比企谷「それより、わざわざ起こしに来たってことは何か用があるんじゃないのか?」

 

実弥「あ!そうでした!えっと、今日、これから、一緒に、その...デート...しませんか...?」

 

ん?俺の聞き間違いかな?今、小声でデートって聞こえたんだが...てか、昨日までまともに話せなかったくらいなのに、なんでそんなことになってんの?まじで何吹き込んだの?

 

     ***

 

俺は今、クラスメイトの女子と妹に連れられ、ららぽに来ている。なんでかって?事情を説明しよう。それは...本を貸してくれたお礼と男性恐怖症の克服のため、2人で買い物に行ってこい、とのことだ。なぜか早弓は俺に信頼を寄せていて、一緒に歩くくらいなら大丈夫、と言っていた。ただ、何があるか分からないから。と言って後ろに小町を侍らせている。

そんな2人が向かった先は、書店。初デートが書店ってどうなの、だって?しょうがないだろ、お互いの趣味、まだ知らないんだから...あ、でも、SAOの小説が読みたかったってことは、アニメとか好きだったりするのか?

 

比企谷「早弓は、普段何読むんだ?」

 

実弥「わ、私は...ラノベですかね...アニメとか、す、好きなので...」

 

比企谷「おお、そうなのか。実は俺も意外とそういうのが好きでな。何かオススメとかあれば、教えてくれるか?」

 

恐怖症の克服には、その根元の認識を改めることが必要になる。よって、俺は会話を繋げる必要がある...

 

実弥「えっと...もうすでに知ってるものもあると思いますが...私的には...

 

 

 

 

その後、早弓とかなり喋った。そのなかで、2人ともSAOのゲーム、《ホロウリアリゼーション》を持っていることが分かった。それで一緒にやるために、連絡先を交換し、LINEの《友だち》の欄にまた1人、追加された。早弓のほうは、男子の連絡先は俺が初めてだったらしい。

それからまた少し話し、その後、それぞれの帰路についた。

 

明日、このことを雪ノ下らになんて報告すればいいのやら。




はい、実弥と八幡の初デートでした。実弥がなんでそんなにいきなり八幡を信頼するようになったかって?それはみなさんのご想像の小町に任せます。作者はご都合主義者なので、悪しからず。


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似た者同士の想い

どうも、のらネコです。小町x早弓。ついに百合畑展開キマシタワーーーーーー!






ってならないように自重します…


小さい頃の私みたい…

 

大きくなったら小町もこんな感じになるのかな?

 

***

 

~実弥side~

それが私たちが初めて会った時の印象だった。あれ?ドッペルゲンガーって実際に会ったら死んじゃうんだっけ。え?私死ぬの?

 

 

 

まぁそんなわけもなく、今ちゃんと生きてます。はい。

 

私が彼女に初めて会ったのは、私が初めて一色さんと話した日。由比ヶ浜さんの事情聴取を行なったあと、私は帰ろうと昇降口に向かっていた。すると正面から見覚えのある姿が…それは、毎日朝鏡で見ている人物と似ていた。って私じゃねーか!

 

~小町side~

お兄ちゃんのいる奉仕部ー特別棟にある部室をでて、お兄ちゃんより先に帰る。いや、ごみいちゃんがまたやらかして呆れて帰るってわけじゃないよ?それも時々あるけど。じゃなくて!今日の晩御飯は小町の当番だから材料を買いに行かなきゃいけないんですよ〜。ん?いつから当番制になったか、ですか?いや〜、実はお兄ちゃんが、「専業主夫たるもの、料理くらいつくれないといけないからな」とかいって交替で晩御飯つくることになっちゃってー。3日に1回、ビミョーな晩御飯が出るようになりました!てなわけで帰宅するのです!

……((((;゚Д゚)))))))っ‼︎あれは!もしかして小町、今未来との邂逅を果たしてたりするの⁉︎

 

「「こ、こんにちは〜…」」

 

声が重なる。この人、小町に似てる…リボンが赤ってことはお兄ちゃんと同じ学年かぁ。

自分と似てる人を見たとき、うまく形容できないって本当なんだ…

この人、普通にかわいいと思うけど、でも自分と似てる人をかわいいって言うってことは間接的に自分をかわいいって言ってることになっちゃうし、かわいくないっていうのは相手に失礼だし、嘘になるし…

 

実弥「3年の、早弓 実弥です、名前、教えてもらっても、いいですか…?」

 

年上の人に敬語使われるって変な気分だね。

 

小町「初めまして、1年の比企谷小町ですっ!」

 

お兄ちゃん、この人だったら大丈夫かなぁ?小町と似てるし。性格全然違うけど。あ、でもお兄ちゃんとは接点ないか!

 

実弥「時間とらせてすいません…では。」

 

実弥さんとかいう先輩は申し訳なさそうに去っていく。

 

***

 

う〜ん。なーんか引っかかるんだよなぁ〜。あの実弥って先輩。まぁ、いっか!深く考えてたらのぼせちゃうし!

 

そう思いお風呂からあがる。あ、同じ学年だからお兄ちゃんに聞いてみればいいや!あ、でもあのごみいちゃんが他の人覚えてるかな…小町聞く前から期待薄だよ…

 

「お兄ちゃん、小町に似た3年生の人知らない?早弓 実弥っていうらしいんだけど〜」

 

~八幡side~

風呂上がりでやけにスッキリしたような表情の小町が開口一番、こんなことを聞いてきた。

 

比企谷「あ?俺が他のやつを知ってると思うか?あ、でもこの前映画行ったとき小町に似てたやつは見たな…」

 

あの喫茶店で俺の本借りパクしてったやつ。まぁ、あんなの、貸した時点で戻ってこないのは明白なんだけどな。

 

小町「えっ⁉︎ごみいちゃん、小町みたいな人探してたの⁉︎さすがにそれは引くよ…」

 

比企谷「ち、ちげぇっての。映画のあと、店入ったらいきなり相席いいかって聞かれたんだよそいつに。」

 

小町「お兄ちゃん?悲しいのは分かるけど、ゲームの中と現実をごっちゃにしちゃだめだよ?現実にリセットボタンはないよ?」

 

小町、さすがにお前のお兄ちゃんはそこまでごみじゃねえぞ。

 

比企谷「本当だっての…」

 

小町「まぁ、でも。もしお兄ちゃんのその妄想が本当なら、実弥さんの可能性が高いね〜。あでもお兄ちゃんあのとき確かアニメの映画見に行ってたんだよね?実弥さんはそういう風には見えなかったなぁ〜。どっちかっていうと、ガリ勉?みたいだった。」

 

妄想って。俺はどこまで信用ねぇんだよ。

 

比企谷「ま、確かにそうかもな。自分のそっくりさんは世界に2〜3人はいるっていうしな。ただ同じ地域にそれが3人揃うっていうほうがオカルト臭いけどよ。」

 

実際、後ろ姿が似ていたーとか、髪型が同じだったーとか、見間違える要素ってのはいろいろあるからな。

 

小町「んまぁ、小町今度会ったら聞いておくよ。」

 

***

~小町side~

 

実弥さんねぇ…確かにかわいいんだけど、なんでかそれを生かしてる感じがしなかったんだよなー。小町と喋ったときもちょっとキョドってたし。まぁいつかエンカウントできるでしょ!

 

***

~実弥side~

 

まさか…由比ヶ浜さんのいる奉仕部に依頼しに行ったら小町さんがいたなんて。

 

 

そして奉仕部をでて昇降口に向かう途中で小町さんに引き留められた。あれ?私、昇降口に向かう途中に小町さんに会うこと多くない?気のせいか。

 

小町さんには映画に行ったかどうか、お礼をしたい人が比企谷くんかどうか、というのを聞かれた。それから連絡先を交換させられて。

今まで寂しかった連絡先欄に家族と柚木以外の人が追加され、4人になりました!へ?少なすぎる?そうかもね…だってお父さん、お母さん、柚木。だけだったもんね…なんか☆★ゆい★☆って人から追加きてたけど、スパムメールっぽかったから消しちゃったし。

 

***

 

みなさんは知らないかも知れませんが、私と小町さん、意外と逢引してたんですよ?比企谷くんが奉仕部に出払ってるとき、小町さんに勉強を教えてたんです。もちろん、私の部屋で。昔嫌なことがあったとはいえ、相手が女性なら問題ないですしね!まあ私の親は仕事でいないことが多く、帰ってきても疲れてすぐ寝てしまうような感じだったんで、全然小町さんと話したこと無いみたいなんですが。そんなわけで、比企谷くんの帰りが遅くなるときは、私の家にきて勉強。というのが習慣になってました。小町さんとは割と積もる話をしたり…ていうか!小町さんてばなんで恋バナばっかりするの!小町のお兄ちゃんどうですかって…もう!

 

そんなこんなでいろいろ話して、すっかり仲良くなっちゃいました。たまに一緒に私の家でご飯作ったり。そういえば小町さん料理上手かったなぁ〜。なんか、柚木とは違うタイプで、親しみやすく、妹みたいな感じでした。こんな妹がいれば、私もあのお姉さんみたいになれるかな…

 

***

~小町side~

実弥さんは、最初会ったときこそ、この人キョドってるなーって思いましたけど、今ではいいお姉ちゃんです。かわいいし、かわいいし、あとかわいい。勉強はできるのに、時々抜けてるとか、それもう神設定ですよ!これはお兄ちゃんが妄想のなかの人と間違えるのもうなずけますね!いや、小町にそんな趣味も性癖もないけど。

本当にお姉ちゃんになってくれないかな〜。あ!それこそお兄ちゃんのお嫁さんになってもらえば義姉になるじゃん!小町あったま良ぃ〜!

…それに、実弥さんならできそうな気がする。今まで雪乃さんも結衣さんもできなかったことが。お兄ちゃんを変えることが。

実弥さん、きっとお兄ちゃんが好きな人のタイプだと思う。ちょっとおっちょこちょいで、笑顔がとても似合ってて。お兄ちゃんの『お兄ちゃんスキル』がフルで発動するくらい、『妹』って感じがするのに、ここぞっていうときには、ちゃんと『姉』らしく包み込んでくれる。お兄ちゃんは意外と寂しがり屋なうえに、感情を隠しちゃうから、実弥さんみたいな人がピッタリなんだろうなって小町は思うよ、お兄ちゃん。だからもしそうなったら…

 

 

 

 

 

『逃げないでね』

 

 

 

 

 

まぁ、まだ実弥さんがお兄ちゃんのことを好きになるかなんて決まってないですけど?でもでも、本当のお兄ちゃんを知ったら好きになるのも時間の問題ですよっ!だって、ここにお兄ちゃんを16年間愛し続けている妹がいますから!




あれ?小町と早弓って相思相愛なんじゃ…







そういう風に書いてしまったのは私でしたすいません。


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彼女から見た彼

とうも、のらネコです。更新遅くてすいません。
最近はなかなかいい感じで書けてきていると思います。思い上がりでしょうか思い上がりですねすいません。それについて、感想をまたいただけるとありがたいです。
それでは、『彼女の恩返し』早弓視点、どぞ。


平塚先生...ありがとうございます...おかげであのことを思い出さなくて済みました...

でも...いつかは。その時が来たら、少なくとも彼には、あのことを話さなきゃいけないだろうな...なんとなくそんな感じがしていた。否、彼に話してみたいとさえ思った。彼の、『あの瞳』になら。

仮に、あのことを彼に話したら、どう思うだろうか。やはり、安い同情を買うことになるのだろうか。それとも、あのお姉さんのように、親友の柚木のように、こんな私のわがままを受け止めてくれるのだろうか、私の過去を、私の弱いところを。

そう考えていながらも。いつか話さなきゃいけないことはわかっていても。話してみたいとさえ思っていても、今はまだその時ではない気がしている。考えと気持ちが矛盾している...いや、彼に話してみたいというのは、本当のことだなんだけれど、今それを話してしまえば、彼との今の関係が崩れ、これからの可能性まで、失われてしまうようで、とても怖くてそれができない。という感じ。それに、今はまだ、このまま、彼のことを知りたい、正確には彼の『過去』を知りたい。なぜ彼は、あんなにも優しいのに、悪い噂が流れ、クラスではいつも独りなのだろうか。その根底にある理由を、私は知りたかった。

 

     ***

 

部室を出て、昇降口へと向かう途中、小町さんに引き留められた。

 

小町「実弥さん実弥さん、依頼のことで、小町、すっごくイイコト思い付いたんですよ!」

 

 

 

 

 

彼女の言う、『すっごくイイコト』とは、お泊まりのお誘いだった。ただ、それだけじゃなく、『彼に本を返すこと』、『本を借りたお礼をすること』、『男性恐怖症の克服』と、彼女の言う通り、イイコト、なのは間違いないのだけど、私のお母さんがそれを許してくれるだろうか...でも、小町さんの家に泊まると言うことは、きっと、私は小町さんと同じ部屋で睡眠をとることになるだろう。だとしたら、彼について色々聞くことができるんじゃないか?そう思った途端、私の指は「電話→お母さん」を選択し、コールしていた。

 

するとお母さんは、「小町さんとお話してみたい」と言い出し、小町さんと電話をかわることに。小町さんは、とても楽しそうにお母さんと話している。小町さんは電話をしながら、相手には見えていないのに派手な身ぶり手振りで応えている。その行動がいちいち愛らしくて、比企谷くんが結いさんに『ヒッキーシスコンすぎっ!!!』って言われるほど小町さんが大好きなのも、納得できる。私もこんな妹欲しかったなぁ...あ、でも私が比企谷くんと結婚したら小町さんは私の義妹.........

ううう、違う違う、そういうことじゃない...

っと、私がそんなこと考えてるうちに小町さんから電話が返ってきた。そしてお母さんは私に、「小町さんって子、とっても可愛い子なのね!なんか昔の実弥に似てるわね~」と、私と同じ感想を抱いていた。後半は違うけど。それから、「小町さんに迷惑をかけないように、楽しんできなさい!」と意外にも快く承諾してくれた。

それから、私は小町さんに、条件として『私と比企谷くんを何があっても2人っきりにだけはしない』というのを提示し、それをのんでもらった上で、改めて私は小町さんのお誘いを快諾した。

 

     ***

 

自転車の後ろに乗せた小町さんにナビゲートされるがままに比企谷宅に向かって全速力で走る。普段は2人乗りなんてしないから意外とキツかった...あ、いや、小町さんが重いとかそういうわけじゃなくてですね...て誰に弁解してるの私...

そうこうしてるうちに比企谷宅にとうちゃーーく。私が頑張った甲斐あってか、まだ比企谷くんは帰ってきていなようだ。

 

 

さっそくお家に上がらせてもらい、小町さんのご両親に挨拶を...

 

 

 

誰もいない...そのことを小町さんに訊ねると、「小町の両親は共働きで、帰ってくるのは朝方になりまーす!」と言われた。親御さんがいない...あのことを思い出してしまう...あの時も、母親が買い物に出掛けて...ううん、大丈夫。私には小町さんがずっといてくれるはずだから。何も怖がることはない。さぁ、すぐに夕飯の準備に取りかからなきゃ!

 

準備しはじめて、10分くらい経ったとき。

 

「たで~ま~」

 

ッ!!!ご両親は朝まで帰ってこないから、この声の主は...そう考えた時、私は自分の体が強張るのを感じた。手が動かない...力が入らないのではなく、力が入りすぎていて動かない。そういう感じの症状に陥った。もしかしたら彼でも無理なのかな...もしそうなら私はどうすれb...

 

『しーーーーーーーー!』コソッ

 

小町さんは私に向かって、片目を瞑りながら唇の前に右手の人差し指をたて、『静かに!』のジェスチャーで黙ることを要求してくる。そんな小町さんを見た瞬間に、体の硬直が解けた。それから私は小町さんに向かって頷き返すと、小町さんはウインクしてくれた。ほんとかわいいなぁ...

 

比企谷「小町、いるk...

 

急に喋るのをやめた比企谷くんが気になるけど、それでも私は平然を装って晩御飯を作る。

 

小町「あ、お兄ちゃん帰ってきてたんだ。おかえり。」

 

そこで隠れていた小町さんが登場。隠れていた意味は...私にはわかりません。

 

比企谷「小町、なんで早弓がうちにいるんだ?あとなんで飯作ってんの?」

 

なんか、お前はいちゃいけないみたいなニュアンスを含んでいたような...まぁ、小町さんに誘われたとはいえ、勝手に家に上がり込まれてたら嫌だよね...

 

小町「?だって、実弥さんの依頼って、こういうことでしょ?」

 

と言いながら、2階に上がっていく2人。ふぅ...なんとか最悪の状態に陥るのは避けれた...けど、声を聞いた時、体が強張ったってことは、まだ全然克服できそうにないのかな...?あとで小町さんに報告しないと。

 

     ***

 

3人で夕飯を食べる。小町さんが主体となって、会話はした。けれど、そのなかでも、私のあのことについて、2人とも触れないでいてくれた。こういう気が利くところ、すごくありがたいな~。

そして、夕飯を食べ終わったあと、小町さんがお皿を洗っていたので、手伝おうとすると、

「お兄ちゃん、本読みたがってましたよ。」

と、言われた。実を言うと、まだ怖い。けれど、そんな私に小町さんは機会を設けてくれた。その厚意を無駄にするわけにもいかない。そう私は決心し、彼から借りていた本を持って、彼のところに行く。なんか叱られに行く気分だ。

 

実弥「あ、あの。比企谷くん。これ、この前からずっと借りっぱなしだった、本。あ、ありがとね。」

 

なんとか話せた。けれど、本を渡すということは、必然的に距離が近くなる。そう、手を伸ばせば届くくらいの距離に。

本を取るときに、手に触れられたらどうしよう...そんなこと考えていた私に彼は、

 

比企谷「おう。持ってきたとこ悪いんだが、そこの机に置いていてもらっていいか?」

 

と、直接受け取らなかった。多分彼は無意識にそうしたのだろうけど、直前にあんなこと考えていた私は、これも彼の気遣いなのだと思った。

そのとき、私は不覚にも、「やっぱりあの瞳...」と呟いてしまった。彼に聞かれてたりしないよね?

 

 

それから、お皿を洗い終わった小町さんと一緒にお風呂に入る。なんとなく顔とかは小町さんと似ていると思ったけど、まさか体型まで同じとは...

 

小町「ごみいちゃん、どうでした?話しかけたとき、キョどってたりしませんでしたか?」

 

お湯に浸かりながら小町さんに聞かれた。

 

実弥「うん、どちらかというと、気遣ってくれたよ。」

 

小町「あのごみいちゃんがっ!?」

 

小町さんは湯船から飛び上がる勢いで驚いていた。いや、彼、結構そういうところ気が利くよ...?

そうして、私は小町さんと少し喋ってからお風呂から上がった。なんか、こうやって誰かと喋るの久しぶりだなぁ。柚木とは喋るけど、あまり向こうから話しかけてくれないから、なんか久しぶりにお喋りした気がする。

 

それからそれから、寝る前に色々話してもらった。彼の過去、というか、どうして彼はああなってしまったのか。

 

小町「大半のことは、奉仕部で過ごして、改善されつつあるんです。でも、これだけは、未だに直りそうにないんです...」

 

小町さんが珍しく渋面をつくり、重そうに口を開く。

 

小町「まだ、お兄ちゃんは、人からの、特に女性からの『好意』を、素直に信じられないんです。相手から好意を向けられると、疑ってしまう、逃げてしまう。そんなところがあるんです。」

 

そして、私の方を向いて、思い詰めたような表情でまた口を開く。

 

小町「そんな、そんなお兄ちゃんを、実弥さんに、変えてもらいたいんです...」

 

小町「む、無理な願いだってことはわかってます!でも、でも!お兄ちゃんを変えられるのは、実弥さんしかいないんです!小町は嫌われてもいい、だから、だから、お兄ちゃんを...!

 

泣きながらそう訴える小町さんの口を私は塞いだ。唇を押し付けて。それから小町さんを抱き締め、頭を撫でながら、私の口は勝手にこんなことを言っていた。

 

実弥「もう、そんなに無理しなくていいよ。私でよければ力になるから。頼りないかもしれないけど、私は小町さんの、『お姉ちゃん』だから...」

 

実際に血が繋がっているわけではないし、ついこの前まで面識すらなかった。けれど、ここで小町さんを突っぱねるなど、私には到底出来なかった。私がなりたかった、憧れていたあのお姉さんのように、私は小町さんに優しく微笑みかけて、眠りについた。




どうでしたか。まだこの後デートのシーンが残ってるんですが、比企谷視点とほぼ同じになりそうなので、カットします。気が変わったら書くかもしれません。
では、また次話で。


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彼と彼女と奉仕部と

どうも、のらネコです。最近ネタ詰まりが起きていて、全然書き進められません。それと、書く時間が十分にとれません。私は少しずつ書いていくのよりも、時間をとって一気に書き上げる、という方法をとっているため、まともな時間がとれない最近、更新が滞ってしまっています。理由としては、一回目書いた内容の上に時間をあけて二回目を書くと、一回目と二回目の間に若干の内容の差が生まれてしまうからです。普通に書いていても辻褄が合わないことのある私にとって、それはぜひとも避けたいので、何卒ご理解のほう、よろしくお願いします。


土曜日に小町がしでかしたことを報告するため、俺は奉仕部に...

 

 

向かわずに、とりあえず自販機でマッ缶を買っている。それから近くに腰かける。あのことをなんて言い繕うか...

まず、小町のしたことを整理しよう。

 

1、早弓を俺の家に連れ込んだ。

2、お礼の代わりに早弓が料理をつくるように促した。

3、本を返させた。

4、早弓と俺をでーt(買い物に行かせた。

 

ざっとまぁ、こんな感じだったろ。重要なのは早弓の恐怖症の具合。どれくらいならセーフで、どこからがアウトなのか。ここをはっきりさせて報告しないと、ただの俺と早弓の休日の内容になって、雪ノ下に、「依頼を受けているのにもかかわらず、あなたはその依頼人と遊ぶようなどうしようもない人間なのね。」とかいって蔑まれる未来が見えてくるからな。

 

ここで一旦要点整理だ。俺の行動に対し、早弓はどういう変化があったか。一度、整理しておく必要がある。

・基本的には大して怯えているようなそぶりや、危険視しているような印象は受けられなかった。

・本を返してくれたとき、前ほど噛んだり、どもったりしていなかったように見受けられる。

・小町とは仲良くしていたし、コミュニケーション能力には問題は見らr

 

 

「「ヒッキーーーーーーッ!!!」」

 

俺の脳内会談を邪魔したのはピンクのお団子頭の由比ヶ浜だった...せっかく時間かけて考えてたのに...行きたくなかったから...

 

由比ヶ浜「ヒッキーが全然来ないから心配したんだよ!?」

 

あーはいはい、由比ヶ浜的にポイント高ーい。さ、お呼ばれしてしまったし、部室に行くか。

 

     ***

 

雪ノ下「あら、遅かったじゃない、のろま亀君。」ニコッ

小町「あ、お兄ちゃん遅かったねー。」

 

くそ、小町め...こいつ、自分で説明すればよかったものを俺に押し付けたな!

もうしょうがねえ、こうなったらもうどうにでもなっちまえ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言おう。

『ファッ!?』

でした。

ん?何も分からないって?いや、俺もいまいちこの状況がのみこめん。なんで雪ノ下が俺と早弓が本買いに行ったの知ってんの?でなんで由比ヶ浜はそれ知らないの?なんで小町の策略は実は奉仕部の計画だったって俺は知らされていないの?知らないほうが素が出るから?え俺実験に使われるネズミかなんかなの?もう...

 

「なんで!?」

 

意外にも俺の気持ちを代弁したのは由比ヶ浜だった。そいやこいつも知らされていないメンバーのうちの1人だったっけ。まあ、知らされていないのは2人だけなんだけど...

 

由比ヶ浜「みやっちとヒッキーはデートしたの!?なんで!?」

 

え、突っ込むとこそこかよッ!?それと...「あ、あれはデートじゃなくt...

 

由比ヶ浜「デートだよッ!ヒッキーひどい!あたしまだハニトー奢ってもらってないのに!」

 

あぁ...ハニトーね...まだ覚えてたんだ、俺すっかり忘れてた。うん。

 

由比ヶ浜「じゃあ、もう少しであたしの誕生日だから、ヒッキーハニトー奢ってよ!」

 

そういえば由比ヶ浜の誕生日って6月18日だったな。今日は13日だから...って今週の土曜かよ!いやさすがに一昨日本買いにいったばっかりでちょっと金欠といいますか...

 

由比ヶ浜「じゃ、ヒッキー。楽しみにしてるね!」

 

おい、本人の意思を尊重しろ本人の意思を。俺には平等権が適用されていないんですかそうですか。

 

雪ノ下「いいえ、あなたには人権すら適用されていないわよ、Subhuman君」ニコッ

 

さっきからこいつの笑顔の温度が異様に低い。それとナチュラルに心を読むな!あと俺サブヒューマンじゃないし!人間以下ってなんだよおい。

 

っていうか、報告のことはどうなったんだよ。俺頑張って考えてたのに。

 

雪ノ下「そうね、先日のことについては、誇張ヶ谷くんに聞いても重要なところを聞かせてくれないでしょうから、早弓さんを呼びましょうか。」

 

おいこの部長サマ俺への信用皆無じゃねえか。まあ、今に始まったことじゃないのも確かなんだけどよ。

 

由比ヶ浜「あ、ごめんゆきのん、あたしみやっちの連絡先持ってないや...この前みやっち携帯変えたみたいで、まだ新しいの登録してないんだよね...」

 

雪ノ下「そうだったの。なら日を改めましょう。」

 

比企谷「あ、早弓の連絡先なら俺、持ってるぞ。」

 

雪ノ下「あらそう。たまには使い物になるのね。では連絡してちょうd...えッッッ!?」

 

ん?なんでこいつそんなに驚いてるんだ?

雪ノ下(なんですと!?もしかしてこの中で彼の連絡先を持っていないのは私だけというのかしら...)

 

雪ノ下「そ、そうよね。別にあなたが持っていてもおかしくはないものね...でも、一奉仕部員として、部長の連絡先を持っていないというのは、困るのではないのかしら?」

 

比企谷「いや、別に特に連絡することがないから困ったことはないな。」

 

雪ノ下「そ、そう...でも、万が一のことがあったときのために、一応持っておくことをおすすめするわ。」

 

比企谷「おう、そうか。なら頼む。」

 

雪ノ下「あら、そんなに私の連絡先が欲しいのかしら?まぁ、今なら別にあげなくもn...

 

比企谷「あ、やっぱいい。あとで小町に教えてもらうことにするわ。」

 

小町「ごみいちゃん、せっかくのチャンスなんだから、自分から聞いておきなよ!あと、小町から教えるつもりはないからね~。」

 

なっ!?小町に見限られた...しょうがない、ここは小町のためにも、兄として一肌脱ぐしか...

 

     ***

 

そんな茶番のあと、無事に俺は雪ノ下の連絡先を追加し、早弓を部室に呼び、一昨日の詳細をこと細やかに説明してもらった。ところどころ俺とは違った解釈で腑に落ちないところもあったが...

 

 

そして、

「ヒッキー、今度こそはちゃんとハニトー奢ってよ!もう先延ばしはできないからね!」

と由比ヶ浜に念を押され、帰宅した。

今年はもう最後の年だな。いい加減、あいつと向き合ってもいいかな。そう思えている自分がいた。




今回はものすごく短くなりました。次回はもっと長くする予定です。このままだと12巻発売までに間に合わない...急がなきゃ...


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それから彼彼女らは

どうも、のらネコです。最近毎日更新できてなくてすいません。学生は勉学が本業ですから・・・すいません、言い訳しました。それでもなんとか書いていきたいと思います。卒業までの大まかなシナリオはもう決まっているので、あとは書く時間さえあればいつでも完結させられるんですよ実は!え?その更新速度じゃ信用ならん?そういうと思いましたので、今日は2つ投稿します!


6月19日。

 

昨日、由比ヶ浜の誕生日会をやった。去年と同じく、カラオケで。メンバーは、由比ヶ浜、雪ノ下、小町、早弓と最後に俺の5人。材木座は「我が唯一の戦友である八幡の誘いを断るなど無礼の極みであるが、我の右手が今こそ筆を振るう時だと唸っているぅ!!!」と。ようするに、小説を書きたいから行かないと。戸塚も部活と予備校で忙しいから来れなかった。去年より人数が減ったしまったし、男子率が最低まで落ち込んだうえに女子追加というどこのリトくんだよ状態で行われた誕生日会は、俺にとっては自分の誕生日より疲れた一日となった。もっとも、俺の誕生日なんていつもと変わらない夏休みの一日でしかないんだけどな。

そんなことを考えながらマッ缶を啜り、一息ついて勉強を再開する。俺の志望は私立文系だから、文系科目の得意な俺にはさほど焦る必要がないのはわかっているのだが、やはりこの年になると勉強していないとなんか落ち着かないのだ。

 

「焦りながら勉強しても頭に入らねえしな・・・」

 

誰にでもなくただ独り、そう呟く。あ、ネットにって意味じゃないぞ?その前にTwitterとかフォロワーいないし。そもそもやってないし。

 

「ちょっと休憩挟んで息抜きしないとなぁ。あ、SAOでもやるか。」

 

ボッチは独り言が多いのだ。だって、誰かに話しかけても反応してくれないから、必然的に話しかける相手が自分しかいなくなるからだ。

そんなリア充から見れば悲しいと思われるであろう理論をでっち上げながら、俺はvitaちゃんを手にとる。

 

「あ、そういえば早弓もこれやってるっていってたな。ちょっと誘ってみるか。」

 

これというのは、去年の10月?だったかに発売された、

《ソードアート・オンラインーホロウ・リアリゼーション》

というゲームのこと。確か3月にSAOとAWがコラボした《千年の黄昏》とかいうのもあったっけな。いや、今はDLCストーリーのためにHRやるか。

それから早弓に連絡を取る。

『ちょっと息抜きにHRやろうと思うんだが、もしよかったら一緒にやらないか☆』

ん?やらないかの後に星がついてた?それはホモにしか見えないフォントでして・・・

するとすぐに早弓から返信がきた。打つのはやくね?やっぱり女子ってそういうの早いの?

『通話?』

あ、そりゃ早ぇわ。だって4文字だろ?てか単語で会話するとか俺かよ・・・

『そっちのほうがやりやすいと思う。』

それから返信まで少し時間が空いて、

『ごめん、今はちょっと・・・また今度ね。』

『いや、こっちこそ急に誘って悪かった。すまん。』

ふぅ。やっぱり俺相手だとこうなるか。こうなることは分かってた。けど、少し親しくなったと思ってたやつに拒否されると、別に期待してたわけじゃないが、まぁ心にくるものがあるね。

それからしばらくして、

『せっかく誘ってくれたのに断っちゃってゴメンね。通話するとき、耳元で男性の声が聞こえるのがちょっとまだ怖くて・・・。』

ああ、そうか。まだそんなに良くなってないんだな。もう少し症状を緩和させられるように工夫する必要性がありそうだな。明日少し試してみるか・・・そのためにはまずは俺自身と戦わなきゃな。

 

     ***

6月20日。

 

「よう、早弓。おはようさん。」

 

朝、偶々遭遇した早弓に、今までの俺じゃ想像つかないくらいに努めて明るく挨拶した。むこうは「えっ!?」みたいな顔してたけど。そんでそのまま逃げるように足早に去っていった。

失敗したな。今の反省点は・・・

と俺は1人、考えながら教室へ向かう。そう、お気づきの方もいらっしゃるでしょう。今のが、早弓の症状を緩和させるための作戦、『まずはボーイズとフレンドリーになってみる!!』だ。なんか今一瞬頭に、両手をぐるぐるしながら覚えたてのビジネス用語使って話す意識高い系の会長が浮かんだような浮かばせたくないような・・・

以前も話したと思うが、恐怖症を緩和・克服させるには、その恐怖の根底にある原因の認識を改めさせる必要がある。ということは、だ。早弓が男子に恐怖を抱いているのであれば、男子は別に早弓が思っているほど怖い存在ではないと、認識させ直さなきゃいけない。

そこで俺が思い付いたのは、早弓のトラウマの地雷を踏むことなく出来るであろう、この作戦なのだ。まぁ、これが失敗したらもう終わりの始まりなんだけどな。そんな訳で、俺は昨夜、自分自身との戦いを経て、こんな恥ずかしいことをしている。

ちなみに由比ヶ浜は、早弓に恋をさせて恐怖症を克服させようと1人で奮闘している。やっぱりあいつ頭ん中ピンクだな。なお、苦戦を強いられている模様。

雪ノ下は、その恐怖症の原因を探っている。直接聞く以外の方法でな。この前あいつが直接聞こうとしたから無理矢理止めたんだが、さすがに大丈夫だよな・・・?

まぁ、各員の健闘を祈ろう。

そういえば、さっき早弓の隣にもう1人女子がいたよな?あれがこの前早弓の言ってた『結城さん』なのか?その可能性が高そうだが。今度会って少し話をしてみるか。早弓について、何か聞けることがあればいいんだけどな。

 

 

     ***

 

「なあ、少しいいか?」

 

俺が声を掛けたのは、今朝言っていた、『結城さん』だ。なんというか、怖いイメージが・・・それこそ、会ったばかりの頃の雪ノ下のような冷たい刃物のような冷気と鋭さを持っていそうだな~というのが一般論だろう。だが、本当はこいつは誰よりも早弓を理解しようとしていて、また早弓も結城を理解しようとしている、『本物』の仲なのだろう、と俺は感じた。今朝下駄箱で会ったときの早弓を見つめる暖かい眼差し。あれは多分そういうことだ。

 

結城「なんでしょうか?」

 

振り返りながらそう答えた彼女はとても美しく、どっかのご令嬢のようだった。県議会議員のご令嬢とは違うな。どことなく育ちの良さを感じる。誰だよ、冷たい刃物とか言ったやつ。俺でした。

 

比企谷「ちょっと早弓に関して聞きたいことがある。立ち話もなんだし、そこでいいか?昼もまだ食ってないしな。」

 

そう、今は昼休み。俺がいつも通りに購買に行くと、なんか見覚えのある後ろ姿を見つけたもんで、声を掛けて、注文を買ってくるという社畜っぷりを見せつけたら、ありがとうと言って去っていこうとした。そこで、『あ、こいつ今朝のやつじゃねえか』と思いだし、今に至る。

 

結城「そう。実弥に。で、何が聞きたいのですか?」

(この男、今朝実弥に話しかけていたやつ。もしかして実弥を狙っているのか・・・?だとしたら実弥が過去のトラウマをまた味わうことになってしまう・・・)

 

比企谷「ああ。それより、お前、どのくらい前から早弓と友人なんだ?」

 

結城「中学3年からです。」

(やはりこいつは実弥のことを狙っている可能性がある。気を付けなければ・・・)

 

比企谷「中3か。そのとき、早弓に親しい友人とかいたか?」

 

恐らく、あれだけ重度の恐怖症を抱えていれば、それに気づく人もでてくるはずだ。もしかしたらそこで親しくなった女子の友人ならいるかもしれない。それに、恐怖症を発症したのがいつかわからない以上、結城が発症したことについて関わっていると断言することはできない。

 

結城「いいえ、実弥は中学の頃はクラスの人気者でした。親しい友人なら多かったのではないでしょうか。」

(中学のころの友人についてなど聞いてどうするのだろうか・・・)

 

ということは、中学3年までは人気者、ということはまだ発症していなかった可能性が高いな。となるとこいつと友人になったことがきっかけで人気者じゃなくなった、あるいはなんらかの出来事があって、こいつと友人になった。の2通りと推測できる。まぁ、陰キャラと仲良くしたらカースト下落なんて話はざらにあるからな。けど、恐らくこいつは陰にいるかもしれないが、陰キャラではないな。どちらかというと、雪ノ下のような完璧属性持ちだろう。なら1人でいることはあっても、独りでいるようなことにはならないはずだ。それに人当たりも悪くない。だったら、こいつと仲良くしてカースト下落はほぼありえないと考えてもよさそうだな。まあ、今と3年前が全く同じとは限らないのは、俺を含めてそうなんだけどな。んじゃあ残る可能性としては・・・

 

比企谷「なぁ、お前が早弓と友人になったきっかけを教えてくれないか?」

 

そうだ。親しい友人が沢山いた当時の早弓なら、わざわざこいつと友人にならなくてもどうにかなっていたはずだ。そこには何か、触れてはいけないであろうことが隠されている。

 

結城「その前に。あなたは実弥の何なんですか?彼氏様ですか?婚約者様ですか?クラスメイトくらいの関係のあなたに話す義理はないと思うのですが。」

(なんだこの男、実弥の友達事情を聞いたと思えば、私と実弥の関係まで聞いてくるなんて・・・もしかしてこの男は実弥のアレについて知っているのか?)

 

おっと、この反応は何かを隠しているな。仮にその隠していることを恐怖症発症事件としよう。そうだとすると、完全に辻褄があう。早弓が人気者から下落した理由、早弓がこいつと仲良くなったのは、こいつの性格と事件のことを考えれば合致する。

これらについて聞き出したい・・・んだがシンデレラはもうお時間のようだ。鐘が鳴るから今日はここで切り上げるか。

 

比企谷「そうかもな。でもまだ聞きたいことがあるから、時間だし放課後聞かせてくれないか?それと、そのことについて早弓に話してもいいか聞いてきてくれ。比企谷って言えば多分分かると思う。」

 

よし、カマはかけたし、それで本人の了承も得られればあの原因が遂にわかるはずだ。もっとも、こいつが関係してるとは今の段階では確定することはできない。だが可能性は高い。俺はそこにかけるしかないみたいだな。

 

結城(やはりこの男、比企谷という男、実弥のアレについて知っているのか。でもアレのことは私しか知らないはず。だとすれば実弥本人が明かしたことになる。ならばこいつは信用に値するのかもしれないな。放課後、行ってみるか。)

 

そうして俺は結城に背を向け、教室に向かって歩き出す。と、襟首を捕まれてその歩みを止められた。

 

比企谷「お、お前、いきなり何すんだよ・・・」

 

結城「放課後、どこで話すか決めていませんでしたね・・・どこにしますか・・・?」

 

結城は肩で息をしながら俺に問うてくる。てかこいつ体力ないのかよ、7~8mだぞ、ここまで。

ほんとに雪ノ下ソックリだな。本物と違って優しいけど。ユキノシタ「クシュンッ!!」

 

比企谷「じゃ、じゃあここで。」

 

最後に結城は「わかりました」とだけ言い、去っていった。場所を聞いてきたということはちゃんと来てくれるということでいいのかな?ちょっと不安だな。別に告白するつもりとかじゃないから素直に来てくれないと困るんだけどな。

そういって俺も見えない背中を追うようにして自分の教室に戻った。放課後が待ち遠しいぜ!




どうでしたか。勉強のために他の方の作品も拝見させていただいてるのですが、その中に雪乃が八幡のことを「お兄様!」って呼ぶのがありまして・・・それで魔法科高校の劣等生とのクロスオーバーを考えたりと・・・まず第1作完結してからにしろって感じですね、ほどほどにそっちも書いていきたいと思います。


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やはり彼と彼女は上手くいかない

どうも、のらネコです。本日2本目!と思って書くつもりだったのですが、いろいろあって深夜になってしまいました…すいません。





あっ、今回は実弥視点です。


6月20日。

 

はぁ…彼からのせっかくのお誘い断っちゃった。本当は彼と一緒にゲームしたかった。彼とおしゃべりしたかった。でも、私の過去がそれを許さない。もし、彼ー比企谷くんも『あの人』のようになってしまったら…比企谷くんは勘違いしないって言っていたけど、健全な男子高校生がそんなこと思わないはずがない。だって、クラスの男子、みんなおっぱい大きい子のことずっと見てるもん。私にはそんな魅力ないから大丈夫だって?バッキャロー、これでもBなんだぞ!

っと、話が逸れてしまった。まぁようするに、私の意識は彼のことを大丈夫だと思っていても、本能がそれを許容してくれていない、そういう状況なんです。今でも後悔してる。なんであのとき勇気を振り絞って彼と通話しなかったのか。けれど、心から感じた恐怖は、そう簡単には拭えなくて、今でも私を蝕んでいる。

由比ヶ浜さんは私に恋愛を勧めてくる。男子のことを好きになれば恐怖症なんて大丈夫!って。こんな症状がなければ、とっくに彼氏くらい作ってるっての。誰かって?それは教えられないなぁ〜。

雪ノ下さんは原因や心当たりについて聞いてくる。原因をしっかりと把握し、それについての対処を練らなければ、今後も同じことで苦しむことになるわ。って。わかってるんだよ、そんなこと。けどね?そんな簡単にいかないから依頼してるの。それにこの前は比企谷くんがいなかったらあの事件について根掘り葉掘り聞かれるところだったし。私は雪ノ下さんほど強くない。だから誰かの手を借りなきゃ自分のこと1つさえ満足に解決できない。それをわかってくれているのは、やっぱり比企谷くんだけなのかな。でも、今朝の彼、ちょっとおかしかったような…やけにハイテンションで挨拶してきて。彼ってそんなキャラだっけ?そういえば柚木も言ってたな、比企谷という男子から実弥について色々聞かれたって。

 

 

 

ちょっと不安。彼もあの人と同じにならないかって。大丈夫だと、信じたい。でも心のどこかで疑ってしまっているのも事実。

少し彼とは距離を置こう。

 

***

6月25日。

 

今日は、柚木とららぽに来ていまーす!なんでこんなにテンション高いかって?それはねー、柚木と1ヶ月ぶりのデートだからなのだ!普段あまり遊びに行ったりしない柚木を連れ出すのは本当に骨が折れるんだよ〜。お洋服買いに行こ?って誘ったら「家に居ても買えますよ。それに私は今洋服に困っていませんから。」って言って断られるし、買うとしてもアマゾン使おうとするし。あとメルカリとか。私が1人で外出れないの知ってるくせに。そんなヒッキーな柚木さんを連れて外を出歩いていると遠くに見覚えのあるシルエットを発見。

「あのアホ毛は…」

そしてその横しいるのは…?ゆ、雪ノ下さん⁉︎もしかして付き合ってたりするのかな?私は悪い事だとは知りながらも2人を尾行した。柚木はなんか言ってたけど私を説得できないと見たのか、黙って後ろをついてきた。

あ、小物屋に入っていった。2人の探してるものは…マグカップ?なんで2人でそんなものを…………あ。もしかして同棲?やっぱり比企谷くんもそういうことするのかな?もしかしてあのとき勘違いしないっていったのは、俺にはもう相手がいるからって意味だったのか…な?うう、なんで私はこんなに悲しくなってるの?ああ、比企谷くんがあの人と同じかもしれないって思ってしまったからか。そっか、そうだよね。

 

***

6月27日。

 

「えっ⁉︎違うの?」

 

驚きの声を上げたのは他でもない、由比ヶ浜さんだ。ん?なんでこんな声を上げてしまったのか?それはですね…

 

 

時は遡り2分前。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

私「あの、雪ノ下さん。この前、雪ノ下さんと比企谷くんが一緒に買い物してることを見てしまったんですが、あれはどういう…?」

 

雪ノ下さん「えっ?あ、ああ、あれは、私がこの前手を滑らせて彼のカップを割ってしまったから、新しいのを買いに行っていたのよ。」

 

雪ノ下さんはそういって机の上の新しい『お揃い』のカップを指差した。誰と誰のがお揃いなのかはご想像にお任せします…

 

私「そうだったんですね、変な誤解してすいませんでした。」

 

雪ノ下さん「いいえ、あなたのように自ら誤解を解きにきてくれるほうがよっぽどありがたいわ。中には自分の見たものを全て本当のことだと勘違いして広める輩までいるのよ。それに比べたら全然。」

 

雪ノ下さんがそういうといままでだんまりを決め込んでた由比ヶ浜さんがビクッと反応する。あれ、彼女前科持ちかな?そして続けて雪ノ下さんは言う。

 

雪ノ下さん「要約すると、別に私は比企谷くんと一緒に買い物に行きたかったわけではなく、あくまで備品を壊してしまったために部長自ら買い出しに行っていただけよ。特に深い意味はないわ。」

 

あのぉ…雪ノ下さぁ〜ん…比企谷くんとお揃いのマグカップそんなに大事そうに握りしめながら言っても、まっっっっったく、説得力ないですよ〜。

そして話はさっき(2分後)に続く。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

由比ヶ浜「じゃ、じゃあヒッキー!今度の週末、あたしと一緒にサブレの服買いに行こうよ!ね!ヒッキーどーせ暇でしょ!」

 

あ、あぁぁぁぁ…これはこれは。私はとんでもないトライアングルに迷い込んでしまったんですね、バミューダトライアングル並ですよこれ…どうしよう、私もちょっと彼を知りたい。聞いてみようかな由比ヶ浜さんに。でも、今度でいいや。




はい、今回は実はいつもと大きく違うところがあります。さてどこでしょう。チクタクチクタク…

チーン!正解は!いつもとデバイスが違う、でしたー!いつもはパソコンからなんですが、今回はケータイから投稿しています。分からなかった?そりゃそうですよね、だって『自分シャンプー変えました。匂いは前と同じですけど。』みたいな感じたですからね。で、私の作品内でデバイスが違うこと見分けるのは、***の打ち方でできます。パソコンのときは***の前に空白があり、ケータイの場合は空白がありません。というかつけれませんでした。なので、いつもと違うなと思っても、あまり気にしないでください。
長くなりました、それではおやすみなさい。


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やはり彼は彼女から逃れられない

どうも、のらネコです。いつもいつも更新遅くてすいません。書けるときに一気に書きますんで。






あっ、今回も早弓視点です。


 今度でいいや、とか言っていたけどあのことを聞くのは思っていたよりも早くなってしまった。

 

学校一の美貌と学力を兼ね備え、極めつけにあの大企業のご令嬢。雪ノ下雪乃。

明るい性格と胸元の大きな双丘で男子から大きな人気を得ているアホっ子。由比ヶ浜結衣。

 そんな美少女2人に好意を寄せられている比企谷くんは、一体どんな人なんだろう。もしかしたらまだいるかもしれないけど、私が知っている限りでは、今のところこの2人だけかな。この前小町さんの家に泊まったときに少し聞かせてもらったのは、比企谷くんの奉仕部に入る前までの過去。小町さん曰く、比企谷くんは『誤解されやすい』人なのだそうだ。それに私も、実際に比企谷くんと関わってみて感じたことがある。目が腐ってるとかじゃなくてね?

比企谷くんは、優しすぎるのだ。だって、返ってくる可能性はほぼゼロなのに、初対面の人に平気で本を貸してしまうような人だから。もしあのとき本を借りたのが私じゃなくて他の人だったら、彼のもとに本が返ってくることはなかったかもしれないのに。というか、私でさえついこの間まで返せていなかったのに。そんな彼が『校内では嫌われもののヒキタニくん』だなんて、おかしいと思う。あれだけ優しければそんな嫌われたりしないと思うんだけどなぁ・・・

 きっと、彼の噂には何か隠されている!

 

 

 そう思った私は、さっそく比企谷くんの秘密を知ってそうな人。とりあえず好意を抱いている由比ヶ浜さんに聞きに行ってみたのです。

 

 

 

 

 

 

 

そこで知らされた衝撃の事実・・・っていうほどでもなかったよ。なんとなく予想はついていたし。簡潔にまとめると、今までの噂には全て裏で奉仕部の依頼が関わっていた、というだけのカラクリでした。彼があんなアクションを起こしたのは、全て依頼の解決・解消のため。その裏事情を知らない人たちが彼のことを勝手に誹謗中傷しているだけで、一部事実で、一部虚実だそうだ。

確かに、彼はそういうところがあるよね。考え方が斜め上を行っているというか、犠牲が伴う解決方法を使うというか。色々なことを解決できるのはリスクを背負う覚悟ができているからってことなのかな。そっか、彼の斜め上の優しさは分かる人にしか分からないんだ・・・相模さんなんて3年になってからも比企谷くんの悪口広めているみたいだし。今まで相模さんの話を聞いて「そうなんだ~そんなことされたんだね~かわいそうだね~」とか思っていた自分が恥ずかしくて死にたい(笑)。あ~あ、比企谷くんに謝りたいな~。でも、きっと彼はそんなこと求めてないんだろうね。他のみんなに真実を知ってもらうっていうのも違うんだろうな。私がそうしてしまえば、彼はあんな扱いを受けることがなくなるかもしれないけど、それと同時に。私は彼の決意と覚悟、プライドを踏みにじることになってしまう。それだけは嫌だ。私は彼を肯定したい。彼は本来肯定されるべきはずの人だから。

 

 『今日はちょっと彼と距離を置こうなんて考えていたけど、明日からはいつも通りにしよ。』そう決意しながら沈み行く太陽を眺めている。

 

 

    ***

 

翌日の放課後。

コンコンコン

 

 どうぞ、となかから返事が返ってきたのでドアを開ける。

 

「失礼しま〜す。」

 

雪ノ下「あら、早弓さん。こんにちは。」

 

実弥「雪ノ下さん、比企谷くん。こんにちは。」

 

比企谷「おう。」

 

 あれ?いつもは雪ノ下さんの隣にいる由比ヶ浜さんが・・・

 

雪ノ下「由比ヶ浜さんは今日は三浦さんたちと出掛けるみたいよ。」

 

 そうなんですか。なんというタイミング、まさか心を読んだんじゃ・・・?それはないか。

 

雪ノ下「それで、調子のほうはどう?」

 

実弥「そうなんです。それについて少しお話がありまして・・・」

 

 そう言って私は男性恐怖症があまり克服に向かっていないことを伝える。それから私は昨晩思い付いたことを話す。

 

実弥「克服に向けて、少し比企谷くんをお借りしたいんです。」

 

 もちろんこれは比企谷くんを連れ出すための口実でしかない。まぁ、昨日お風呂に入ってて思い付いたんだけどね、自分の顔を鏡で見たらなんか小町さんを思い出して、それからこの前小町さんの家に泊まったことを思い出してーって。そこで私は小町さんからの依頼を思い出した。

『自分は兄に嫌われてもいいから、兄を変えて欲しい。』

 そう。それこそが私にできるであろう比企谷くんへの最大のお返しなのだ。本を貸しただけの彼からしたら大きすぎると思うかもしれないけど、私は彼に出会って、多少なりと影響を受けた。あと、本を返すのが遅くなっちゃったからそれに利子をつけただけなのだ。だから問題なし!

 

     ***

 

 こうして私は比企谷くんと本屋にきている。一緒におすすめの本を紹介しあったりして、それこそ本物のカップルみたいにお喋りしている。ように見えると思う。まぁ、そんなべったりくっついてるわけじゃないよ?まだちょっと怖いから。でも、彼と話していると私は少し、自分が恐怖症持ちだということを忘れる。正確には、『忘れられる』かな。いつかはこんな恐怖症を完全に克服して、手を繋いでみたりしたいな~って、ちょっと思った。傍目に見えるボディータッチしあってるバカップルが一瞬羨ましく見えたりもした。でも、肝心なのは、『私の恐怖症が治っても、彼が私の好意を受け入れてくれるか』ということだ。ってあれ?私、彼って・・・もしかして比企谷くんとそういうことするの想像してた!?あわわわわ・・・///った、確かにっ!比企谷くんと一緒にいるのは楽しいけどっ!それは否定しないけどっ!なんだろう、意識した瞬間顔があっちぃや・・・

 

比企谷「おい、早弓。大丈夫か?お前顔真っ赤だぞ?」

(確か男性恐怖症の症状のうちのひとつに、激しく赤面するってのがあったような・・・やはり早弓にはまだキツかったか・・・?)

 

早弓「ビクッ!! う、うん。多分大丈夫だよ。」

 

 比企谷くんてば、私がそんな邪な想像してたらいきなり声かけてくるんだもん・・・びっくりしちゃうじゃん。

 

     ***

 

 それから私と比企谷くんは近くの公園で休憩中。そこでも比企谷くんは気をきかせて飲み物を買ってきてくれた。

 

実弥「ありがと。」ニコッ

 

 あれ?普通にありがとって言っただけなはずなのに、比企谷くん、そっぽ向いちゃった・・・なんか変なことしたかな?

 

 

 

比企谷「なぁ、早弓。依頼のことについてなんだが。なんでそんなに急いでるんだ?この依頼は解消がすごく難しいのは早弓も分かっているし、実感していると思う。けどな、もしその途中で早弓のトラウマを再発させてしまえば、本末転倒だ。確かに俺は暴力を振るうようなことはしない。けど、俺だって健全な男子高校生だ。そういうことだって考えるときくらいある。最悪の場合、俺が早弓に更なる傷を、心にも体にも負わせてしまうかもしれないんだ。だから・・・」

 

実弥「俺とあまり関わらないでくれ。でしょ?」

 

 先を言いにくそうにしていた比企谷くんの言葉を引き継ぐと、彼はとても驚いたようすで私を見つめる。いやん、そんなに見つめないでえっちぃ~。・・・何やってんだ私・・・

 

比企谷「ああ。だから、その。依頼を遂行できなくてすまん。」

 

実弥「ふふっ、比企谷くんのことだから絶対そう言うと思った!でもね、私は、そんな比企谷くんの、優しいところが、好きだよ!」

 

 あ~あ、言っちゃった!どうしよう、もしかしたらこれから先、比企谷くんに避けられるかもしれないや。もったいぶってゆっくり自分にも言い聞かせるように言ったけど、比企谷くんには届いてるかな?

 

チラッ

 

 リンゴ病患者みたいになってる・・・照れてる比企谷くんかわいい。

 

実弥「じゃ、また明日。学校でね!」ノシ

 

 ふふっ!明日学校でからかってやる!




最初のころよりは、ちゃんとキャラクターの心情について書けていますかね。ちょっとここらで小町x早弓の話いれてあの2人の関係について掘り下げますかね。今日か明日投稿します。


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伏線は忘れた頃にやってくる

どうも、のらネコです。お久しぶりです。はい、みなさんの言いたいことはわかります…長い期間空いてすみませんでした。それについて言い訳させてください。
PCがぶっ壊れ、携帯のほうからログインできなくなり、四方八方、いや十六方くらい塞がれました。ですが、また今日から投稿していきたいと思います。投稿できない間ずっとメモ帳に書き溜めておいたので!それではどぞ!


時は1学期最終週の水曜日。明日は終業式で、その次から夏休み。っていっても夏期講習やらなんやらで忙しいんだけどね。

比企谷くんと会えるのも今日が最後か…なんだかんだ言って比企谷くんと会うのを楽しみにしてる私がいる。

あ、噂をすればすぐそこに…‼︎

 

「おはよっ!」

 

後ろからヒョコっと顔をだして比企谷くんの前にでる…

はずだった。

 

「おお!おはよう!」

 

いや誰だコイツ。こんなやつ私は知らんぞ。なんだこのアホ毛みたいの寝癖かよっ!だらしないなおい!

 

 

ってそんなことよりも重要なのは、

『私から男子に声をかけてしまった』

ということであって。私はまぁ、その場に立ち尽くしたよね…

 

 

「おい、早弓、こんなとこで何突っ立ってんだ。」

 

「きゃっ⁉︎」

 

びっくりして私はそのまま重力に逆らえず下に引っ張られる。アニメみたいに彼が抱きかかえてくれるわけもなく、私は廊下にコケた。いや恥ずかしい…

 

カァァァ///

 

比企谷くんがまたリンゴ病発症してる…あっ、あっち向いた。

 

「そ、その。見えてるぞ。」

 

見えt…

カァァァ///

彼の一言で私もリンゴ病を発症。なに?彼は病原体か何かなの?もしかして比企谷菌(ごめんなさい調子に乗りましたすいません。

 

どうしよ、転んだせいで比企谷くんにパンツ見られた…もう!こんな展開、どこのリトくんだよっ!でもよかった!今日のパンツはキャラクターのやつじゃない!水色と白の縞パン!

 

って私はさっきから何をしてるんだ?自分で自分を見失っちゃったよ…

 

「ご、ごめんね?ちょっとぼーっとしてた。」

 

「あ、いや。こっちこそすまん。」

 

そんなハプニングのせいでせっかくの比企谷くんタイムを無駄にしてしまい、私の気分は不調のまま夏休みを迎えた。

 

***

 

《八幡side》

 

「なんだ?急に呼び出して。」

 

終業式の日の放課後、俺は雪ノ下に呼び出されて部室にきていた。

 

「少し長くなるかもしれないから、そこにかけてもらって構わないわ。」

 

雪ノ下はそう言って俺に着席を促す。なんだ?椅子に縛り付けて放置でもするのか?

 

「比企谷くん。突然なんだけども、もし私が、今学期でこの学校を辞め、海外の大学に編入したとしたら、あなたはどう思うのかしら?」

 

「可能性の話をしたところで意味はないだろ。」

 

俺がそう言うと雪ノ下はクスッと小さな笑みを作り、

 

「あなたは最初からそうだったわね。でも、それが本当になる可能性だって、完全に否定できるものではないのよ?」

 

と言いながら近付いてくる。その様子は、どこか儚さを孕んでいた。

 

「まぁ確かに、お前の場合ならそれはありえるかもな。だが、もしそうだとしても、俺はなんとも思わないんじゃないか?素直に応援すると思うぞ。」

 

だからつい、『応援』だなんてクサいフレーズを使ってしまった。きっと雪ノ下は、何かしら自分の夢を見つけ、それに向けて頑張っていくのだろう。けれどそのどこかに雪ノ下を不安にさせる要素がある。だからこんなにも儚さそうに見えるのだ。

 

 

その時の俺は、そうだと思っていたんだがな。

 

***

 

ときは移ろいで夏休み開始から3日。いつものように机に向かっていた俺に一本の連絡が入る。

多分平塚先生だろうし、でなくていいか。

そう思ったが、結局は小町を使ってでも連絡しようとしてくるからここは素直にでようか、いやでも今は勉強をしていることを理由に断れるのではないか…

 

「おにーちゃん!陽乃さんから電話!」

 

なっ⁉︎もしかしてさっきのは平塚先生からじゃなくて雪ノ下さんからだったのか⁉︎だとしたら魔王に殺される…っ!

即行で小町から携帯を受け取り努めて明るい声音で電話にでる。

 

「もしもしっ!比企谷くんっ?急ぎの用事があるからっ、ちょっと今からドーナツ屋までこれるっ⁉︎」

 

雪ノ下さんにしては珍しく緊迫した状況のようで、俺はいつものように言い訳するわけにもいかなくなって簡単な身支度を済ませて家をでた。

 

「ああ!比企谷来てくれたんだっ!よかったっ!」

 

そんなカウンターから振り返りながら嬉しそうな顔で俺に話しかけないで…他の客からの視線の温度が一気に下がってるから。

 

俺は雪ノ下さんに「ども」と軽く挨拶すると、いきなり本題を持ち出して来た。

 

「呼んだのは他でも無い、雪乃ちゃんのことなんだけどっ、比企谷くんは何か雪乃ちゃんから聞いてるっ?」

 

雪ノ下?あいつがなんか言ってたっけ?1番最近の話なら海外編入の話をされたよな。

まだ息が整っていないのか、肩を上下させながら問うてくる。

呼吸に合わせて揺れる2つのメロンに視線が行かないように注意しながら俺は答えた。

 

「確か、海外に行くみたいなことを遠回しに言っていたような言ってなかったような…」

 

「そこまでは知ってるんだ!なら話は早いね。実は、雪乃ちゃん。お母さんの意志で海外の大学に編入することになっちゃったの。当然雪乃ちゃんはそれに反対したんだけど、それが悪い方向に転んでお母さんが怒っちゃってね…雪乃ちゃんが海外に行かないんだったら私をお見合いで結婚させるって。でも雪乃ちゃんとは最近やっと仲良くなれたばかりだから、きっと雪乃ちゃんはそんなことしたら私に嫌われると思ってるんだと思う。けど、私は別にそんなのはどうでもいい。姉として、雪乃ちゃんには幸せに、望む方に進んで欲しいと思ってる。だから、」

 

この先に何を言われるかは想像がついていた。きっと、自分を結婚させて雪ノ下を日本に残らせる気だろう。だからこそ。だからこそ、そう返事しなくてはいけなかったと俺は思い、その言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか…この依頼は受け入れられないんだね…そうだよね、家庭の事情だもんね。勝手に巻き込んでごめんね。もう今日のことは無かったことにして…もう忘れて。」

 

そう言って雪ノ下さんは寂しい背中を俺に向けて去っていった。

 

《陽乃side》

 

(そっか、私は比企谷くんならなんとかできるかもって、勝手に思い込んでたんだ…今までのことは全部1人でやってきたくせに、こんな肝心なところで他人の手を借りるなんて、カッコ悪いよね。)

 

もう、私は弱くなんかない。お母さんの言いなりになんてならない。今なら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『闘える』



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彼女らの想いは雪の下から芽生えだした

どうも、のらネコです。今回から雪ノ下&雪ノ下姉vs雪ノ下母の話になります。あと八幡もでます。2〜3話で決着を付けさせる予定でいます。


俺は雪ノ下さんと別れた後、まだ1人で店に残っていた。

 

「こんなときでもお代はちゃんと置いて行くのな…」

 

俺は誰にでもなく、苦笑しながら呟いた。きっと、この状況下でも笑える余裕が欲しかったのだろう。けれど無理して作った笑いは乾き切っていて、後悔の念が滲んでいた。

 

本当にあの言葉でよかったのだろうか。もしかしたら何かいい方法があったのではないか。雪ノ下さんがお見合いせずに、雪ノ下が海外に編入せずに済む方法が。

 

 

だめだ、仮定の話をしても意味がない。現状俺はその問題の解決を放棄したのだから。もう取り戻すことはできない。

それに今は夏休みだ。学校のある日と違ってそう簡単に雪ノ下に会える訳ではない。

 

もう手遅れだ。一介の高校生でしかない俺に介入できる問題ではない。おまけに相手はかの大企業の夫人だ。普通の家庭を相手にするよりももっと複雑で、困難な問題。こんなのはきっと赤チャートにすら載ってないような難問だ。分が悪すぎる。

 

それに、俺みたいなちっぽけな存在がなんでもできるだなんて自信過剰だ。

 

今回は…俺に何かできるような問題ではなかった、それが今回、俺が辿り着いた1つの解だ。

 

 

《陽乃side》

 

比企谷くんに気付かされた。

私はどうするべきかを。今までは不仲だったけれど、それでも唯一の姉妹。

それに、仲が悪かったというだけで、私は雪乃ちゃんが嫌いなわけではない。

私なんかができるのは、その雪乃ちゃんが望まぬ形で比企谷くんたちとお別れしてしまうのを防ぎ、代わりに自分が結婚することくらいだ。

私は雪乃ちゃんのためなら誰と結婚させられようが構わない。そういうつもりでいたけど…

やっぱり、私も結婚するなら面白い彼がよかったかなぁ、なんて無理なことを考える。

 

はぁ。それじゃ、お母さんに私が結婚する意思があるって伝えてこなきゃ。

 

 

《雪乃side》

 

「雪乃、少し話があるから来なさい。」

 

私は「はい」とだけ返事してお母さんのところに向かう。お母さんとは、この前の海外編入の話に反対してから冷戦状態。

当たり前だろう、何せ私は今までお母さんの話に反対せずに、姉の後ろだけを追いかけてきただけで、お母さんにとっては、ただの扱い易い娘だったのだから。

だからきっと、もう既に私の編入先は決まっていて、私1人ではどうもできない状況になっているのだろう。どの道こうなるなら最初から自分の意思で行くことを決意しておけばよかった。

 

そう思いながら部屋に着いた私に飛んできた言葉は、私の予想を大きく外れるものだった。

 

「姉さんが私の代わりに結婚するから海外に行かなくていい⁉︎」

 

どういうこと?私は海外に行かなければならないのではないの?

ひょっとして姉さん…

 

「いいえ、私は海外に行くわ。だから姉さんには結婚しなくてもいい、そう伝えてください。」

 

そう一言言い残して部屋を出た。

けれど、本当はどうすればいいかわからない。お母さん相手ならば、誰かに助けを求めることはほぼ不可能だから。あの人に勝てる人なんて…

 

そう思ったとき、目が腐ってて捻くれ者で、けれど誰よりも優しい彼の姿が脳裏に浮かんだ。

 

「連絡先とは一応交換しておくものなのね…」

 

つい最近にやっと追加された彼の連絡先。

慣れない手つきで書いては消し、書いては消しを繰り返してやっとのこと、文面を完成させた。

 

ーーーーーーーーー

『相談にのってもらいたいことがあるの。手が空いたら電話をかけてください。雪乃』

 

珍しい。雪ノ下からこんなメールが届いた。あいつが相談か。あんなやつでもわからないことってあるんだな。やっぱり人間だもんな。まぁそれが俺に分かるかなんて言われても可能性はほぼ皆無だがな。

 

 

『もしもし、比企谷くん?かけてくれたのね。』

 

「雪ノ下が俺なんかに相談なんて珍しいじゃねえか。なんだ、明日は傘でも降るのか?」

 

『真面目な相談だから、真剣に聞いてくれるのと助かるのだけれど。』

 

「あ、そうか。すまん。でも、俺も助言できるかなんてわからんぞ?」

 

『ええ、それでも構わないわ。聞いてくれるかしら?』

 

雪ノ下にしては随分と低い要求だった。こいつもあのことで悩んでいるのだろうか。

 

『まず、話というのはあなたもわかっていると思うけれど、私の海外編入のことよ。私が編入することは姉さんあたりから聞いてるでしょ?』

 

「あぁ。続けてくれ。」

 

『そこから先の話が少し複雑で、お母さんの命で私が海外編入することになって、それを止めようとした姉さんが私の代わりに結婚を決意、私はそれを止めるために海外編入を決意。詳細を端折るとこんな感じよ。』

 

⁉︎ 雪ノ下さんが〜のところは多分そうだろうと予想はついていたが、まさか雪ノ下自身が雪ノ下さんのために海外編入を決意だなんて。どういう風の吹きまわしなんだこれは。

 

「つまりあれか、一周回って戻った感じか。」

 

『端的に表現するならば、それが適切ね。』

 

『けれど、やっぱり私のために姉さんが結婚するのはおかしいわ。結婚は少なくとも女性にとっては大きな問題だわ。それを妹の海外編入なんかで潰すだなんて、寝覚めが悪すぎるのよ。』

 

まぁそうだろうな。自分のせいで姉が好きでもない人と結婚させられるだなんて、罪悪感で死にたくなるわな。

 

「でも、そう思うならそれを行動で示せるのは雪ノ下しかいないと思わないか?俺がどうこうできる問題じゃないし、ましてや俺にはどうすればいいかもわからん。」

 

「その問題の答えを俺が出したとしたら、それは雪ノ下の回答にはならないだろ。」

 

ーーーーーーーーー

 

彼に言われて気が付いた。

今までずっと自分で答えを出してきた。けれどいつしか、自分と違う方法で答えを出す人に頼ってしまっていた。

 

 

彼に

『依存』

していた。

 

 

 

「そうよね。ありがとう。お陰で自分が今どうしたいか、何をすべきかが分かった気がするわ。」

 

『そうか。何がヒントになったのかはわからんが、よかったな。』

 

「それじゃあ、また。」

 

そう言って電話を切った。

私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『闘える』



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夏の暑さは氷塊をも溶かしてゆく 前半

どうものらネコです、今回は二部編成です


姉さんに気を遣わせるわけにはいかない。

いつまでも姉さんの後ろを追いかけるだけの私ではない。

いい加減、『彼』からも、『姉さん』からも、巣立つ時だ。

ただ、私が海外に行くという選択肢では今と変わらない結果が待つ。ならば誰も予想しなかった方向に切り替える必要がある。

姉さんを納得させられる、母さんに諦めてもらえる、そんな理由。

 

今から新しくやりたいことを見つけるのでは間に合わない。かと言って海外に行かなくて済む方法も直ぐには思いつかない。

 

こうなれば…

 

 

 

 

姉さんを引き込むしかないわね…

姉さんを頼るのはまだ抵抗があるけれど、利害関係から考えても、私が手を組めるのは姉さんしかいない。

 

 

ーーーーーーーーー

 

「雪乃ちゃん?いきなり呼び出してどうしたの?」

 

「姉さん。私の海外編入の話について、提案があるわ。聞いてくれるかしら。」

 

「お?いいけど、雪乃ちゃんが海外に出ることを決意した、とかなら受け付けないよ?」

 

「姉さんならそう言うと思ったわ。大丈夫よ、どちらにとっても良条件なはずになっているわ。」

 

「そんなに雪乃ちゃんが自信満々なら少しは期待できそうだね!」

 

「その前に1つ聞きたいのだけれど。姉さんは私のこと、嫌い?率直に聞かせてほしいの。」

 

「およよ?どうしたの?雪乃ちゃんらしくないなぁ〜。でも、私はどんな雪乃ちゃんでも大好きだよ?嘘偽りなく、妹である雪ノ下雪乃が好き。」

 

「そう、なら私の提案を受け入れるがいいわ。」

 

「そうやってすぐに調子に乗るところもだよ♪」

 

ーーーーーーーーー

 

雪ノ下嬢2人の秘密の会談は雪乃の提案を受け入れることでまとまった。

そしてこれから、2人はその提案を、

 

 

『ラスボス』

 

 

にぶつけにいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

「そうですか!それがあなたがたの出した答えね?ふふっ。2人ならやってくれると思いました。さすがは私の娘たちです。」

 

「「えっ⁉︎」」

 

雪乃、陽乃は自分たちの想像していたものとのギャップに完全に硬直してしまっていた。

 

「雪乃、陽乃。あなたたちはやっと自分たちの想いを私にぶつけてくれましたね。」

 

そう言って雪ノ下母は続ける。

 

 

いつもいつもいい顔を作って挨拶回りに出てくれる陽乃。

あまり言葉に表さないけどやることはしっかりやる雪乃。

2人とも優秀だけれど、2人とも不器用だから、都合が悪くなると思ったとき、自分の想いを言葉にせずに隠してしまう。

そんな部分があると分かってはいながらも、私はそれを無視してしまっていた。そのほうが自分に都合がよかったから。

いつも不満を隠して本音を隠していた2人に、いつかは素直に、わがままを言って欲しかった。

けれどそうできないようにしてしまったのが私自身なのだから、本当にバカな母親ですね。

それに、あなたたちの意見を受け付けなかったのだから、最低な母親でもありますね。

 

なんて言って母は涙ながらに笑ってみせた。その姿はとても麗しかった。そしてとても儚かった。

 

ーーーーーーーーー

先に硬直から治ったのは意外にも姉さんではなく私だった。

 

「と、ということは、私たちの提案を受け入れてくれるということでいいのかしら、母さん。」

 

私がそう尋ねると母さんは、

こんな私でも母さんと呼んでくれるのね、言った。それから

 

「いいえ、あなたたちの提案をのむ訳ではありません。ですが、雪乃に予定していた海外編入と、陽乃に予定していたお見合いを無しにしたいと思います。」

 

最初の一言を聞いたとき、私は完全にダメだと感じた。けれども二言目でその感情は吹き飛んだ。

 

まさか、あの母さんがそんなことするとは。

 

今まで17年近く共に過ごしてきて、そんなことは一度もなかった。自分の言ったことは絶対で、有無を言わさせなかっなような母がだ。

 

「実はね、最近色々考えてたのよ。雪乃と陽乃がどうやったら幸せになれるかってね。だから雪乃には海外編入、陽乃にはお見合いをさせようとした。」

 

本当にバカよね。と、

母さんはそのまま続ける。

 

「けれど、雪乃と陽乃に言われてやっと気付けたわ。それぞれの幸せは、それぞれが自分で作るものだって。親が押し付けるものではないものね。」

 

「そのことに気付かされたのは、雪乃の

 

『母さんが絶対にそうするというのであれば、私と姉さんは親と縁を切って、2人で暮らします。』

 

って言葉よ。あのとき、私は自分の理想を押し付けているだけのことに思い至ったわ。なんて醜いことをしていたのかしらね。過去の自分を呪いたくなったわ。」

 

「お母さん…」

 

「けどね、これだけは覚えておきなさい。」

 

『どんなことがあっても、私はあなたたち2人の親を辞める気はありません。いつまでも、愛し続けます。』

 

 

 

このあと3人で抱き合って泣いたのはいうまでもない。



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夏の暑さは氷塊をも溶かしてゆく 後半

どうも、のらネコです。なるべく18時に投稿します。


『比企谷くん。直接会って話したいことがあるから、夏休み中に一度会えないかしら?都合のつく日を教えてください。雪乃。』

 

…やっぱり、最近雪ノ下って変わったよな。

まぁ変わったとか変わってないとか言えるほど親しい訳でもないが、付き合いはそれなりに長いからな。

 

最初会ったときなんて氷の女王がピッタリなくらいだったのに、今じゃその面影はほとんどないように見える。ちゃんと俺の予定聞いてくれるし。そんな事されたら惚れちゃうよ?

 

そんな冗談は置いとくとして、俺は

「いつでも暇だから日程はそっちに合わせるぞ。」

と返した。

ちなみに最近2週間くらい早弓に会ってない。いや、俺と会っても嬉しくはないだろうけどな。雪ノ下のことで早弓を放置してしまったからな。あとでなんか言われんのかなぁ。

 

ーーーーーーーーー

「久しぶりね。比企谷くん。会いたかったわ。」

 

うっ…/////////

その言葉にその笑顔は反則じゃないっすかねぇ…

危ねえ、うっかり惚れるとこだった。そういやこいつ見てくれは超絶美少女なんだったな。実に厄介。

 

「お、おう…そうだな。」

 

「あら?比企谷くんも恐怖症かしら?私が直してあげましょうか?」

 

だ、大丈夫です、俺はただ人間不信なだけなので…

ってそれも違うか。

 

「え、遠慮しておくぞ。」

 

俺はどっかのチキン次郎くんじゃないからな、女性のみに対して恐怖症を抱くなどないのさ!むしろこの世の全てに恐怖してるまである。

 

「それで、話したかった事というのはね?」

 

これって学校の屋上とかだったら告白の前フリだよな?

 

「一応言っておくけれど、告白とかではないから期待しないでね?」

 

さらっと俺の予想全否定されたわ…

 

「私、この前海外行くって言ってたでしょ?」

 

なんとなくわかった。恐らく海外に行って会えなくなるからこうして知り合いのとこ回ってるのか…俺も一応知り合いだと思ってくれてたんだな。人生で初めての知り合いだったよ…材なんとかくん?誰それ。

とにかく、今までありがとな、雪ノしt…

 

「ちゃんと最後まで話を聞いて頂戴。」

 

もう心読まれたことに関しては何も言わない。決めた。

 

「で、その海外編入のことなんだけど、私、行かなくていいことになったわ。姉さんがお見合いするというのも、同様にね。」

 

「よかったじゃねぇか。」

 

「ええ。本当に良い結果になったと思うわ。これも全部比企谷くんのお陰ね。」

 

は?なんでそこで俺が出てくる?俺はどちらかというと…

 

「あなたには突き放されたわよね。でもその時に気づいたの。

『自分自身でなきゃ答えを出せない問題がある』ということを。」

 

それから雪ノ下は続ける。

 

私はあなたの優しさに溺れてしまっていた。今まで感じたことのない優しさだったから、ついそれに依存してしまっていたのね。我ながら情けない限りだわ。

 

そういって雪ノ下は自分を卑下する。

 

「別にそこまで悪いことじゃないだろ。ほら、よく使われるだろ?

『助け合い』

って言葉。それだと思えばいいんじゃねえの?」

 

「あなたが言うとすごく嫌味ったらしく聞こえるわね…でも、その優しさに頼りすぎていたのも事実。私は自分を見失っていたのよ、甘やかしていたのよ。私自身が嫌うはずのことを、いつのまにか許容していた。」

 

だからその、罪滅ぼしをさせて…

 

そう言って雪ノ下が近づいて来る。

 

 

 

その勢いは眼前でも消えずに俺の頰へ向かっていった。

 

 

「な、何してんだお前…⁉︎」

 

「あらどうしたの?比企谷くん。これはヨーロッパでは友達同士の普通の挨拶よ?」

 

「い、いやでもここは日本だぞ?」

 

俺がそう言うと何故かムスッとした表情になる雪ノ下。

何がいけなかったのか本当にわからん。いや割とマジでわからん。

 

ーー『友達同士の…』ーー

 

そう言うことか、分かりづらいわっ!

 

「友達…でいいのか?」

 

恐る恐る尋ねる。

 

すると雪ノ下は嬉しそうであり、申し訳なさそうでもある表情で

 

「ええ。会ったばかりの頃は断ってしまったけれど…今では、あなたと友達。出来ればそれ以上になりたいと思うわ。友達だなんて関係では、すぐに壊れてしまうような気がするから…」

 

友達以上⁉︎そ、それって…

 

 

 

『恋人』ってことか?

もしかして今のは告白だったのか?

どうしたらいいんだ…?

これが告白なら正面から向き合う必要があるし、雪ノ下の言う友達以上の関係が俺の考えてるのと違う可能性だってあるよな。

 

 

…地雷覚悟で聞いてみるか。

 

「な、なぁ雪ノ下。お前の言う友達以上って、どんな関係のことなんだ?」

 

「どんな関係?それは…私と由比ヶ浜さんのような関係ね。一緒にいても苦にならなくて、お互い本当の意味で助け合える。そんな関係になりたいわ。」

 

ほぉ…もしこれが告白と勘違いしてたら俺はまた同じ過ちを犯すところだったのか…

 

「そうか。そう言う関係、なんて言うか知ってるか?」

 

『親友』

「「あっ」」

 

2人の声が重なる。

 

「心が通じ合っているのかしらね。これこそ本当の親友ね。」

 

雪ノ下さん、それ並大抵の男子なら即落ちですよ…

 

それじゃあ、これからもよろしく。

 

と雪ノ下が満面の笑みで言う。

 

なんだろう、今日の雪ノ下さんはやたらと積極的だな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(雪ノ下さんと比企谷くんって、やっぱりそういう関係なのかな…)

 

なんか、見てはいけないものを見てしまったような気がするなぁ…

比企谷くんと、付き合う。ちょっと羨ましいな。

 

 

 

 

 

やっぱり、向き合わなきゃいけないのかな?私は、私の中にあるこの感情と向き合って、素直に言葉にするべきなのかな?

私からそうしないと、いつまでも来ないまま終わってしまいそうで、私が選ばれないまま卒業してしまいそうで…

 

 

 

 

不安になる。

私はこの感情が大嫌いだ。普段は好きな友人同士でも、恋愛感情を挟めばすぐに敵として認識してしまう。

それに、嫉妬する、ということは自分が相手に劣っていると認めている証拠だからだ。

いや、雪ノ下さんに勝っている人のほうが少ないとは思うけど、それでも大好きな友達に嫌悪を抱いてしまうのは、とても辛い。

 

ねぇ、どうしたらいいかな?



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彼と彼女の進展

『比企谷くん

 

 雪ノ下さんから話は聞いたよ。いろいろあったんだね。お疲れ様。

 ところで私からひとつ提案なんだけど、今度の土曜日、息抜きも兼ねて二人で買い物に行かない?

 

 

 突然でごめんね?』

 

よし、こんな感じでいいのかな・・

 

夏休みも終わりかけの八月第四週。夏期講習やらなんやらでほとんどの時間を勉強に費やし、塾以外にろくに外へも出かけていなかったため、いろいろと溜まっている。ヘンな意味じゃなくてね。

 

今週の土曜日・・・まであと三日。

大丈夫かな?太ってないかな?ここ最近塾に行くのも電車だし、それ以外は出かけてないし・・・

 

不安だからちょっとだけガマンしよ。

 

 

 

 

――――土曜日―――

 

≪八幡side≫

 

「おはよう比企谷くん。久しぶりだね。」

 

「お、おう早弓。確かに久しぶりな気がするな。この前の夏期講習以来だっけか?」

 

「そうだね、比企谷くんのことだから干からびちゃったんじゃないかって心配したよ~」

 

 

最近、といっても夏休みに入ってからだが、早弓は俺としゃべるときにどもったりしなくなった。塾でたまたま同じ講習のとき、隣に座ってきたり。そのあとサイゼで昼を一緒に食ったり。そのときの周りの男子の視線が痛かったのは言うまでもない。

 

「その服装、涼しそうで似合ってるぞ。」

 

「えっ?あっあっあありがとう!」

(比企谷くんのこの唐突な天然ジゴロみたいなのどうにかならないかなぁ・・・心臓がいくつあっても足りないよ・・・)

 

服装について褒めないと今後小町が口をきいてくれなくなるのでしっかりと褒めておく。

 

こうしてみてみると慌ててる早弓もなかなかかわいいんだな。

 

ん?誰だ今かわいいとか言ったやつ。俺はそんなこと言わんぞ。いや知らんけど。

 

「ぐぅぅぅ~~~」

 

誰かの腹の虫が鳴いている。言わずもがな隣にいる早弓なんだけどな。朝食ってきてないのか?

 

「俺朝飯食ってないから先に飯行きたいんだが、いいか?」

 

「え?わわたしは全然それでかまわないよ」

 

「そうか、さっきの誰かさんのお腹の虫の鳴き声聞いてたら少し腹が減ってな。」

 

「も、もう!からかわないでよ!」

 

「はいはい。んじゃ、どこか希望はあるか?」

 

「う~ん、私サイゼ行きたい。」

 

珍しく早弓と意見が一致。いや、早弓とはかなり意見が合うほうなんだがな、いかんせんほかの二人や後輩の誰かさんはご希望が高いもんで。

 

「それじゃあサイゼで決まりだな。」

 

「比企谷くんはサイゼなんかでよかったの?」

 

「何言ってんだ、俺は学生の味方・サイゼを愛してるんだぞ?サイゼへの愛についてなら動画一本、いや五本分くらい語れる自信があるからな。」

 

「い、いやさすがにそれは愛しすぎじゃないかな?」

 

こういうところで早弓とは少し意見が合わなかったりする。実を言うと今までこの手の意見について誰にも共感された覚えがない。

ざいなんとかくん・・・?知らない子ですねぇ・・・

 

 

 

というわけでサイゼに来た。まぁいつも通りだし別に書かなくてもいいよね、割愛ィ!

 

 

 

会計のところでどっちが出すか少し揉めたが、いやもちろんどっちも「自分が出す」って言って聞かなかっただけだぞ?早弓に会計を支払わせてしまった。

 

「今日のデートに付き合ってもらうんだから、ね?」

 

そんなことをレジの店員の前で大声で言われてしまっては、さすがにこれ以上食い下がるのは相手に失礼だと考え、抵抗するのをやめた。

おい、そこの店員、生温かい目でこっちを見るな!悲しくなるだろ・・・



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彼と彼女の距離

サイゼで遅めの朝食を摂ったあと、二人が向かったのは本屋だ。

 

以前、小町に無理やりでーt(二人で買い物に行ったとき、早弓はラノベやアニメが好きだと言っていたな。

 

「どうする?分かれて各自好きなのを見ていく形にするか?」

 

「私はどちらでもいいんだけど、比企谷くんもラノベとか見たいなら一緒に行きたいなぁ~・・・なんちゃって。」

 

「そうか、俺もそう思ってたところだ。じゃあこうしようぜ。」

 

『お互いのおすすめの本を一冊、もしくは一シリーズ選ぶ。』

 

『購入後、お互いのおすすめの本を読む。』

 

『感想を言い合う。』

 

まあ、簡単に言えば、おすすめの本紹介って感じだな。

 

「いいね!私もちょうど比企谷くんのおすすめ知りたかったんだ!」

 

「そうだったのか、なら、制限時間は15分でどうだ?」

 

ルールが決まったため、各自おすすめの本を探す。

 

 

 

はずが、どちらもスタート地点から動かない。

個人的に何が一番おすすめかを熟考しているのだ。

 

(でもなぁ、早弓の好みとか全く知らんしなぁ。)

(でもなぁ、比企谷くんの好みとか全然知らないしなぁ。)

 

 

そして同じ結論に至る。両者、「自分のおすすめ」の本を選ぶことを完全に忘れている。

 

 

――――15分後――――

 

 

「これしかないよな、多分。」

「やっぱりこれかな、うん。」

 

 

「じゃあ、せーのでカバー外すか。」

「了解!」

 

「「せーのっ!」」

 

 

ででーん。

 

「私立魔法科高校の留学生っ!」

「私立魔法科高校の留学生っ!」

 

同じじゃあないですか。

 

「まさかの・・・」

 

「同じ・・・」

 

「こんなことってあるんだね!」

 

「いや、唯一知ってたのがSAOだったからな、主人公最強系&ハーレム系だと俺が知ってるのはこれかなって・・・」

 

「わ、私はハーレムとか別に好きじゃないからね!?」

 

ラノベの読みすぎだろうか、今のがツンデレのセリフにしか聞こえなかったのは。

 

「あー今ツンデレとか考えたでしょ。本当にそういうの好きじゃないからね?ハーレム好きなのは比企谷くんのほうでしょ!いっつもいっぱいかわいい女の子に囲まれて。」

 

何言ってんだこいつは。

 

何はともあれ、おすすめした本が同じという企画倒れな現象が起きてしまったため、本についていろいろ語り合った。

 

早弓の好みも若干知れたし、何より意見が合う人間としゃべるのはこんなにも面白いことだったんだな。今まで友達とかいなかったから知らなかったぜ。

 

ちなみに、俺と早弓のなかで一番意気投合したと思えた部分は、二人とも好きなキャラが東山 雫だったというところだ。

 

つっこみキャラっていいよね。※個人の感想です。

 

そんなこんなでカフェで軽い昼食を摂りつつ語りつくし、大変ご機嫌な状態で店を出た。

 

そんな中、早弓はふと足を止める。

 

「あ、お会計払ってない。」

 

「ん?会計なら払っておいたぞ?」

 

「あああああもう!今日は私が払うって言ったのに!なんで教えてくれなかったの!」

 

キレるとこそこですかそうですか。

 

「ま、まぁいいだろ、割カンした分デートの回数が増えるってことでいいんじゃないのか?」

 

デ、デート…

 

などと言いながら顔を朱に染める早弓。

もう今更じゃないか?朝だって店員の前で言ってたじゃねえか。

 

「ほら、今更そんなこと気にしてないで、帰るぞ。」

 

「そ、それもそうだね!よし、帰ろう!」

 

「んじゃ、この辺で。ノシ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、なんでお前はついてきてるんだ?家こっちじゃないだろ?」

 

「へ?今日は小町ちゃんの家に泊まる予定があるって小町ちゃんから聞いてない?」

 

 

・・・

 

 

おのれ小町ィ・・・

覚えてろよぉっ!



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彼女と彼の距離

「ふ、ふつつかものですが、よろしくおねがいします・・・」

 

 

「まぁて早弓お前は何かを勘違いしているやめろ俺はまだ間違いを犯したくないんだぁ~!」

 

「うふふ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もぉ。そんなことするわけないでしょ。」

 

「そ、そうですよね・・・」

 

「ちょっと比企谷くんの趣味が知りたかっただけだよ。これで比企谷くんの部屋に入るのは二回目だね。」

 

「そうなるな。本棚はそことそこの二ヵ所だ。」

 

「と、ベッドの下の三ヵ所だね。」

 

「いや、さすがにそこにはなにもないから・・・」

 

早弓はベッドの下に顔を突っ込みながら、あれれ?などと言っている。

 

だから何もないって言ってるだr

 

「あ、なんかあったんだけど。」

 

ここで早弓さんの声から感情が消えました。

 

うそ・・・だろ・・・!?

 

俺は常に部屋はきれいにしてあるはずだし、ベッドの下には普段から何も置かないようにしている。

 

 

「比企谷くん、日記なんて書いてたんだね。」

 

日記、だと?

 

俺はそんなの書いた覚えがないぞ?小学校の夏休みの宿題の日記さえ書かなかった俺が、わざわざ同じことを毎日書くだなんて、そんな無意味なことをするわけないし。

 

ちょっと見ていい?

と聞かれたが、その本の正体がなんなのかわからないため返事をすることができない。

 

「いや、俺は日記なんて書いたことないからそれは俺のじゃないような気がするぞ。」

 

「え?でも比企谷くんのベッドの下にあったんだよ?」

 

誰だよわざわざ俺のベッドの下まで来て日記落としていったアホは。

 

「心当たりがない。いっそのこと一緒に見てみるか?」

 

「そうだね、ちょっと気になる。」

 

じゃあ、もし俺のじゃなかったら見なかったことにしよう。

ひとつ条件を加え、恐る恐るページを開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、俺のでした。

 

ただ、日記、ではなく俺の絵の練習帳でした。

 

これは中学生くらいのとき、絵をかく練習に使っていたノートだ。

確かに練習ノートの表紙にはsinceと書いてあって書き始めた月日が書かれている。

一日一ページを目標に好きな絵を描いていく。まぁ書いてたのは基本的にアニメとかのキャラだったけど。

 

懐かしいな。日が進むにつれて徐々に上手くなっていっているのがわかる。

 

 

「比企谷くんって、絵を描くの上手かったんだね。」

 

確かに絵を描くのは好きだし得意だったが、特に美術の授業などで表彰されたりはしなかった。

 

最近では全く描いてないな。また少しずつやっていこうかな。

 

「まぁ、昔は書けたかも知れないが、今となっちゃわからんな。三年前だし。」

 

「じゃあ、私に絵を教えて?暇なときでいいからさ。」

 

「お、おう。俺なんかで良ければ。」

 

「ありがと!前から描いてみたかったんだよね、自分の好きなキャラの絵。」

 

比企谷くんは何でもできてかっこいいなぁ~

と早弓は呟く。

 

あのぉ、お姉さん、それ、聞こえてますよ?

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら、意識してしまったのは俺だけだったようだ。



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彼の背後の彼女

八月も終わり、また面倒な学校生活が始まる。

 

今日も九月末にある学力考査試験に向け、授業が終わった後も勉強する。

勉強しすぎてもう働けないまである。

そうか、やはり俺は専業主夫になるしかないみたいだな。

 

最近、放課後は奉仕部のメンバーと一緒に過ごすことが多い。あとプラスアルファで早弓も。

 

いつもは奉仕部室かサイゼで勉強していて、時々戸塚が来てくれることがある。

もう戸塚がいるだけで八幡いくらでも勉強できちゃう。戸塚のためなら働くことも厭わないよ・・・!

 

 

今日は戸塚がいないので完全にオフモード。

 

「比企谷くん、数学の時間、珍しく起きてたね。何かずっと書いてなかった?」

 

え、こいつなんで俺の挙動把握してんの?

 

「確かに!ヒッキーずっと真剣な顔で何か書いてた!」

 

「不審谷くん、何か心当たりがあるのであれば潔く自首することをおすすめするわ。」

 

 

なんてやつらだ。俺への信用ゼロかよ。

さすがにネタだってことくらいはわかるけどな、疑われっぱなしだと勉強にも集中できないしな。

 

 

「これを描いてた。」

 

 

俺は一冊のノートに描かれた絵を見せる。

 

「さすがだね、比企谷くん。」

「え・・・?これヒッキーが描いたの・・・?」

「・・・。」

 

見せたのは小町をデフォルメにして描いてみたものだ。

 

 

え、なんでみなさん早弓を見つめるんですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ(察し)

 

 

 

 

「いやっこっこれは小町を描いたんだぞっ?」

 

 

「どうしてそんなに慌てているのかしらね。何かやましいことでもあったのかしら?」

 

「やっぱり、ヒッキーはそうだったんだね・・」

 

「ま、まぁ、似てるからしょうがないよね・・・」

(私だったならそれはそれで嬉しかったんだけどなぁ・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、雪ノ下さんが悔しそうな表情で、パンさんの絵を本気で書いてくれました。

とてもうまかったです。

 

また、口論の結果、俺が描いたやつにはもう一人同じようなキャラを追加して小町と早弓の二人の絵にさせられました。

おかげで全く勉強してません。センター落ちたらあいつらのせいだからな。

 

八幡、ゆるさないんだからねっ!

 

 

ちなみに今日は小町はかわ、かわ・・・。かわなんとかさんの弟と塾に行っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

帰ろうと思い、鍵を外し自転車にまたがる。

 

何か違和感を感じ、自転車を見てみる。特に異変は無し、か。

 

まあいい、気のせいだろう。そう思いペダルを漕ぐと明らかな違和感が。

 

 

 

ペダルが、重い。いつも以上に。

空気でも抜けてるのか?

 

 

プシューー

 

 

タイヤが柔らかい。空気が抜けている・・・?

 

 

 

 

あ。

タイヤに切れ目が入ってますねぇ・・・

 

嫌がらせかなんかですかね?しょうがない、このまま乗って帰るしかないな。

 

 

「比企谷くん、どうしたの?」

 

うわっ!

びっくりさせるなよ早弓・・・

 

「いや、ちょっとパンクしたみたいでな。」

 

「えぇっ!?それは大変だね!どうしよっか・・・」

 

 

 

「わ、私の自転車乗ってく?」

 

「い、いや、さすがにそれは遠慮しておくぞ・・・」

 

「で、でも、歩いて帰ったらものすごく時間かかるよね?」

 

「それはそうだが・・・でもこうなってしまったらしょうがないし、幸い明後日は休みだしな、修理に出せば大丈夫だろ。」

 

「よし、じゃあ一緒に帰ろっか。」

 

「おう、じゃあnっておい!なんでそうなるんだよ!」

 

「だって、比企谷くんと一番家が近いの私だし・・・ね?比企谷くんは乗ってるだけでいいから!ね・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町からの敗戦のお知らせ(メール)により、早弓の自転車に乗って二人で帰ることに。

だが、さすがに漕ぐのだけは俺がやると言い張った。後ろから女子にくっつくだなんてそのあと何が起こるかわからんからな。

 

そんなわけで早弓を早弓宅で降ろし、俺は早弓の自転車で自宅まで向かう。明日も学校なので明日は朝早弓の家に寄って早弓を後ろに乗せて登校しなければならない。

 

なんていやがらせをしてくれたんだあいつは。誰がやったか知らんけど。



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彼。with その他。

「おはよう早弓…お前って朝早い方なんだな。」

 

「おぁ…おはよう…(ゲンナリ)」

(この歳で興奮して夜寝れなかったなんて恥ずかしくて言えないなぁ)

 

俺と会うのがいくら嫌でもそんなにゲンナリするなよ…

確かに俺も朝からこんなやつに会うと思うとゲンナリするな。

 

ついに自分で自分をディスる日が来るとはな。もう末期だわ、これ。

 

ていうか朝から一緒に登校って仲良しか。いや恋人か。

けれども、ここで勘違いしてしまってはいけない。

 

時折背中にあたるやわらかな感触にものすごい居心地の悪さを感じながら学校へと向かう。

 

 

 

 

 

 

――――学校―

 

校門の近くで降りてもらおうかと思っていたが、生憎と今俺が乗っているのは早弓の自転車で、やはり女子なだけあって自転車も黄色なのだ。そんな早弓の自転車に俺が、俺だけが乗っていたら、早弓を知る生徒はどう思うだろう。

 

 

考えなくても想像つくよな・・・?

 

 

 

 

 

 

相変わらず早弓は女子たちからの事情聴取でお取込み中だ。

 

それと比べて俺は男子どもからの鋭利な視線を躱していく。

 

 

 

あぁあ、今日も面倒な一日になりそうだ。

 

 

 

――――放課後、自転車置き場

 

俺は徐々に傾いていく太陽を睨み付ける。あぁ目がおかしくなりそう。

 

俺は平凡な日常を過ごしたいだけだ。別に青春()みたいな出来事は求めていない。

それなのに、俺にはなにかしらの災悪がふりかかってくる。

 

俺は白米じゃねえ、勝手にふりかけんな。

 

声を大にしてそう叫びたいが近くに人がいる気配がするので自重しておく。

 

 

 

ガサッ

 

やっぱり誰かいるな・・・

 

絶対隠れてるよあれ、誰かと待ち合わせしてるような様子じゃねえよ・・・

 

 

 

ん?葉山だ。なんかこっちに向かって走ってきたぞ・・・

あいつに絡まれると面倒だし自販機でマッカンでも買いに行く素振りで自然に逃げよう、あくまで自然にな。

そう、俺はそこのに生えている木々だ。

 

 

 

 

そうしているうちに葉山がどっかいって見えなくなった。

あれ、本当に見えなくなっちゃったの?透明化に成功したみたいだけどさすがに八幡それはちょっと悲しいかなぁ・・・

 

ふう。自販機の前のベンチに腰掛けながらあの自転車をどうするか考える。

 

 

 

ピトッ(冷)

 

「うわああぁぁあぁあぁあああぁっ!」

 

何か首筋に冷たい物理攻撃を受けたので戦闘態勢に入る。

誰だ・・・やめてくれよ幽霊とかの時期じゃねえぞもう9月だぞそんなことされたら八幡夜トイレ一人でいけなくなっちゃ・・・

 

 

 

 

「葉山。やめろ。」

 

今自分でもびっくりするくらいガチなトーンの声がでた。

だってあの葉山の笑顔が完全に引き攣ってるもんな、どうやら俺が幽霊だったみたいだ。

 

「比企谷くんはどちらかというとゾンビじゃないかな・・・」

 

なんだこいつ、お前も心を読めるのか。お前ら、揃いにそろって俺のプライバシーをガン無視しおって。

ただじゃおかないからなっ!

 

 

「これで機嫌直してくれないかな?」

 

そういって葉山がマッカンを渡してくる。

さんきゅ、といって受け取る。なるほど、物理攻撃(冷)の正体はこいつか。

 

 

 

 

・・・

「なぁ、比企谷。ちょっと真剣な話があるんだ。聞いてくれるか?」



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グ腐腐腐☆

「なんだよ話って。」

 

俺がそう聞くと葉山はやけに真剣な顔つきでこういった。

 

「さっき、比企谷の後ろに人がいたの、気付いていたか?」

 

「ああ、さっきの物音はそいつだったのか。」

 

「気づいていたのか・・・」

 

「ぼっちなめんな。」

 

はは、そうか。と乾いた笑いのあと。それで、そろそろ本題に戻りたいんだが。と。

 

 

 

「実は、ある噂が流れているんだ。比企谷くんに関するね。」

 

「焦らさなくていいからはやくしてくれ。小町が待ってる。」

 

「そうか、なら細かい説明は省く。結果から話すと、君を妬んでるものが少なからずいる。君は心当たりがない、と思うだろうが、実弥だ。君と彼女が仲良くしているところを見聞きしたものがさっきのように君に襲い掛かってくるかもしれない。さっきのは比企谷くん自身も、俺も気付いていたから何事もなかったが、必ずしも相手は一人で来るとは限らない。」

 

だから・・・

 

「あ~はいはい、気を付ければいいんだろう?簡単じゃねえか。」

 

「待ってくれ、そういう意味じゃぁっ・・・!」

 

「じゃあな葉山、マッカンさんきゅな。」

 

 

 

 

これだと比企谷くんは確実に実弥と距離をとろうとするだろう・・・

でも、そうしてほしいわけじゃないんだ・・・

 

 

 

――――

 

葉山に何か言われたが、忘れた。

だが、前の俺がとっていた方法では解決も解消もできない、それどころか状態が悪くなるだけ、そう言われた気がして、俺は正直気に入らなかったんだろうな。

今までずっとこのやり方を貫いてきた、いや強いられてきたのにその方法では全く持って解決できない事象が現れたからな。それも深く考えなくてもわかる程に。

 

これからどうするか。幸い明日は土曜、考える時間はたくさんある。

 

まあまずはパンクした自転車でも修理にだしてくるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

手押しで自転車を動かし最寄りのサイクリングショップまで行く。

約20分間のウォーキング。

いつもならバードウォッチングやらなんやらして20分を潰すが今日はそういうわけにもいかない。

考え事をしながら歩くと20分という時間は短すぎた。

修理してもらっている間も帰りもずっと同じ問題で悩んでいたが、どう進めても可能性の話になってしまい、考えること自体をやめた。

 

こればっかりはあいつ自身に聞いてみるしかないか。

 

ひとまずでた答え、否、聞くべきこと。まずは、早弓本人に被害がいっていないかだ。

 

ここで本人に被害がいっているのであれば俺は距離をとったほうが良い。だがしかし、本人に被害がいっていないのであれば、まだ対策を考える時間ができるということだ。

 

しかし来週まで待ってられんな。もしこの休日の間に早弓の身に何か起きてしまっては時すでにお寿司だ。

 

なぜ俺がここまで焦っているかって?

 

理由を説明しよう。

まず俺を襲おうとしてきたやつと早弓が接触してしまった場合、劣情をこじらせて何するかわからないため、早弓が非常に危ないということ。

もし早弓が何かされてしまった場合には、早弓の男性恐怖症は不治の病となるだろう。そうすれば依頼は達成されなくなってしまう。

 

そう、つまりは依頼を完遂するためだ、依頼のため。

これに俺の私情は含まれない。

 

そう、あくまで依頼のためだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

早弓に連絡をとったが返事がこない。

 

ピコン

 

と思ったら返事がくる。世の中不思議なものですねぇ。

 

「ごめんね、お風呂入ってた・・・(笑)」

 

 

ちょっと、なんだかこっちまでのぼせてきたじゃないですかヤダ。



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彼と彼女と彼女

早弓視点になります


「おはよう比企谷くん。」

 

今日は月曜日。いつもなら憂鬱でしかたがないのですが、今日はなぜかとっても元気です。

 

「ちょっと気になることがあるんだけど、聞いてもいいかな?」

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「八幡くん。目、腐ってるね。」

 

「いつも通りだ、気にするな。」

 

「あれ、名前呼びしてみたのに意外とリアクションが薄かった・・・」

 

八幡くんは「ふっ。今更そんなことで動じる俺ではない。」

とか決めセリフ?を吐いてた。

 

けど、かすかに耳元からは羞恥の色が見受けられます。えへへ、かわいい。

 

この前、いきなり八幡くんは私に何かあったかって聞いてきたから、その理由を聞きだしてみた。

 

 

 

そんなことがあったなんて怖いな、と他人事のように思いつつ、私を心配してくれてとても嬉しかった。

 

でも彼もあの男のように裏切るのではないか。誰かが私の心の奥底から囁く。きっとこれは悪魔のほうだ。

 

だって、ほら。彼の腐ったような、濁っている、なんとも形容しがたいこの目を見て。

私はこの目の人に何度も助けられた。

今だって現在進行形で助けられている。

 

そんな彼を信用できないほどに、私は腐ってしまったのか。人間として廃れてしまったのか。

私は、信じたい。彼になら・・・

 

何をされてもいい、は言い過ぎだけど、ちょっとくらいなら、ね。

 

 

 

 

 

私はこの感情が『好き』という名前だと気付くのには、まだ時間が足りなかった。

 

 

 

――――

 

「ねえ柚木。ちょっと昔話を聞いてくれる?」

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

「へぇ、そんなことがあったんですか。」

 

そういって柚木は私の頬に指を優しく掠めさせる。

 

「えっ?」

 

自分でも気づかないうちに泣いていたみたいだ。

 

「そうなんですか、その比企谷くんは優しい方なのですね。安心しました。あの目は見るからに危なさそうな雰囲気が・・・」

 

「それは違うよ、柚木。あの目は、あのお姉さんと同じ目。優しくて、温かい目だよ。」

 

「ふふ、実弥がいうからには、そうなのでしょうね。」

 

「実弥、あなたは前と比べて変わってきているのを、実感していますか?」

 

どうだろう、と私は曖昧に答えてしまったが、本当はわかっている。

 

彼の影響で、変われたこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、あんな状態だった実弥をここまでにさせるとは、私も少し彼について知りたくなりました。実弥、教えてくれますか?」

 

 

「もっっっっっちろんだよっ!」

 

 

「そうですか、ありがとう。」

(こんなに笑顔の実弥を見るのは初めてかもしれないですね・・・)

 

 

 

 

 

 

――――

 

「八幡くんおはよー!」

 

「ごきげんよう比企谷くん。」

 

 

 

 

「お、おう・・・」



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今年の彼ら

やっと文化祭ですよ?こんな調子で終わるんですかね?


かくかくしかじか、いろいろあって、俺はいつものベスポジで昼食をとっている。

もちろん、隣には早弓もいる。だが今日は早弓だけでなく、早弓の友人である結城(?)さんとやらもいる。

 

あのねぇお二人さん。ここはボッチのベストプレイス、つまりは一人用なのだよ。そんなところに君たちみたいなお綺麗さんがいるとどうなってしまうか本当はわかってるんでしょうぅ!?

 

ここは購買の裏。つまり購買にパンを買いに来た男子生徒が早弓らの匂いに誘われてチラッっとこっちに顔を出す。

ええい鬱陶しいわい。

 

 

 

 

今日もパンがおいしく感じられなかった。俺は味覚音痴にでもなったのだろうか。

いや違う明らかにこの環境が問題だッ!

こいつら(早弓&結城)とあいつら(チラチラしてる男子生徒)のせいだっ!

 

 

 

「ん?どうしたの?比企谷くん。」

 

「ここでは落ち着かないのでしょうか?」

 

ああ、ご名答だ、主にお前らのせいでな・・・

 

「でもここは比企谷くんのベストプレイスだよ?そんなはずないと思うんだけどなぁ・・・」

 

そうだな、そこまでわかってて原因が突き止められなかったらもうお手上げだな。

 

「もしかして・・・邪魔だった・・・?」

 

そんな上目遣い+瞳うるうるで問いかけられたら断れないだろうがよ・・・

もし断ったら隣の結城さんから鉄拳制裁飛んできそうだしな。

 

 

 

「いや、ちょっとあいつらがな。」

 

といい俺は向こう、購買のほうを指さし、正解の半分だけをいう。

 

「ああ、さっきからチラチラ見てきてたもんね・・・」

 

気付いてたのか。というか最近早弓は目敏くなったような気がする。

てかよくあの視線を受けても平然としていられるな、ボッチで注目されることになれていない俺には無理だな。そのかわり晒されても平気だがな(ドヤァ

 

 

「じゃあ場所を変えよっか。」

 

 

ここなら誰も来ないよ?

そういって連れてこられたのは・・・

 

 

 

「みなさんやっはろー!」

 

 

奉仕部でした。

てかここなら誰も来ないよ?ってエロゲかなんかのフラグかっ!

 

「あら、早弓さんと結城さん。珍しいわね。やっはろう。」

 

お前もやっはろー言うんか。

 

「あ!みやっちとゆっきーやっはろーっ!」

 

「もう、比企谷くんなんで入ってこないの!」

 

 

いやだってもう鐘鳴るし・・・

 

「そういえばもう少しで文化祭準備期間が始まるわね。そのことについて話があるから、今日の放課後は部室に集まってもらえるかしら?」

 

おっけー!☆

りょーかいですっ!

わ私も・・・?

おう。

 

各自それぞれの返事をする。一人なんか確認してるやついたけどな。

 

 

 

 

――――

 

「で、話というのは、あらかた想像がついているとは思うけれど、文化祭準備期間の部活動に関してよ。」

 

「例年通り、といっても去年しかないのだけれど、部活動は休止、という形でいいかしら。」

 

「そうだね、みんな何かしらで忙しくなりそうだしね。」

 

「でも、みやっちの依頼はどうするの?」

 

確かに。由比ヶ浜にしてはいい視点だと思うぞ。

 

「それは・・・比企谷くんに委任する、という形でどうかしら。」

 

俺に委任ですか丸投げですかそうですか。

 

「で、でも、ヒッキーだけじゃちょっと不安な気がしなくもないというか・・・」

 

そ、そうだそうだ、俺一人に任せるのはちょっと荷が重いんj・・・

 

「でも、そんなに期間が長いわけじゃないし、様子見って感じでいいと思うし、何かあれば連絡するようにすれば、どうにかなりそうだよ?」

 

今までどうにかなってたと思ってるんですかあなたは・・・

 

「本人がいうのであれば大丈夫そうね。任せるわ、比企谷くん。」

 

「は、はい・・・」

 

「お兄ちゃんもっとシャキっとしてよ!」

 

もちろん俺に拒否権はない。最近人権は一部保障されるようになったみたいだがな。

 

 

というわけで、部活動は休止、空いた時間読書にでも勤しむとでもするか。



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28話

「ええと、それじゃあ文化祭実行委員を決めたいと思います。

男女各一名ずつです。まず、男子で立候補してくれる方いますか・・・?」

 

シ~ン・・・

 

いやシ~ンじゃないよ誰か手を挙げてくれよそうじゃなきゃほら委員長が俺のことを見つめてくる・・・!そんなに見つめられたら八幡恥ずかちぃ・・・

 

 

とかやってて今自分で「あ、恥ずかしいわこれ」と思いましたまる

 

 

 

「え~と・・・じゃ、じゃあ去年もやってくれたしヒキタニくん・・・」

 

ほらきた。と思ったけど俺はヒキタニくんじゃないのでじっとします。

 

 

 

 

 

 

「比企谷・・・」

 

やめろ葉山ぁぁぁぁぁぁぁぁ!

委員長に俺の名前を教えるなぁぁぁぁぁぁぁ!

 

 

「あっ、えっと、比企谷くん・・・?」

 

 

「アッハイ」

 

 

ということで男子の実行委員が決まりました。

 

 

問題は女子です。去年へまをした相模、そして相模の話を聞いて俺を悪人だと思い込んでる女子は俺が委員になった時点で望みはない。

 

「あ、じゃあ私やりま~す。」(ドヤァ

 

ドヤ顔でこっち向くな早弓、前を向け前を。

 

「えっと、じゃあ今年の文実はひきt・・・比企谷くんと早弓さんで決まりでいいですか・・・?」

 

「いいんじゃない?」

 

ここで女王様の許可が下りた。

どういう意味かわかるよな?反論は許されないということだ。

 

 

そんなわけで順調(?)に委員が決まり、ほかの委員も次々と決められていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このとき俺は由比ヶ浜のどうしたらいい?という表情を見たことを忘れようとした。

 

 

 

 

――――

 

「文実なっちゃった。」

 

なっちゃったじゃねえよあんたは立候補だろうが。

 

「そうだな、改めてよろしくな。」

 

やっぱり由比ヶ浜の表情が忘れられない。実はあいつも文実やりたかったんじゃないだろうか。去年は奉仕部のなかであいつだけ文実じゃなかったし、今年も文実にならないと去年と同じようになってしまう、そんなような気がしてるんじゃないだろうか。

 

じゃあ今回は由比ヶ浜に依頼しておくか、「手伝ってくれ」って。

 

 

 

「ねぇ、聞いてる・・・?」

 

ああ、聞いてたぞ。で、なんて?

 

もう、聞いてないんじゃん

 

 

 

 

 

「で、どうするの?結衣ちゃん。」

 

やっぱり気付くか。

 

「去年から考えて、ゆいちゃんがやろうとしても三浦さんが止めるだろうし、私と結衣ちゃん以外はやろうとしないだろうし。」

 

「だったら私しかいないでしょ?」

 

そこまで考えてたのか。こいつアホっ子に見えて実は頭いいからな、そこは小町と違うところ。

 

 

小町(ハクシュンッ!!

 

 

「で、考えたんだけど、私の案としては、部活は休止だから、」

「由比ヶ浜自身に依頼として手伝ってもらう、だろ?」

 

 

「そう!もしかして同じこと考えてた?」

 

そうかもな。

 

 

早速そのことを伝えるか。

悩みの種は早めに消化したほうが仕事がはかどるからな。

 

 

――――

 

 

「なあ由比ヶ浜。話があるんだ。

落ち着いて聞いてくれ。」

 

「う、うん。」

(みやっちと二人で話があるってことはそういうことだよね、みやっちやけに笑顔だし・・・)

 

「お前のことだから何か勘違いしてるかもしれないから先に言っておくぞ、これはお前に関する依頼についての話だ。」

 

「依頼・・・?」

 

「ああ、去年、雪ノ下が相模に対して受けた依頼と同じように、由比ヶ浜自身に対しての俺らからの依頼だ。」

 

「ヒッキーと、みやっちからの、依頼・・・」

 

「去年を思い出してくれるとわかりやすいと思うが、もしダメ委員長になって仕事が足りない、なんてことになるのは嫌だからな、予め由比ヶ浜にも手伝ってもらおうかと。そうすれば、奉仕部としては休止になるがメンバー全員で過ごせると思ってな。もちろん、クラスのほうの仕事が忙しい時とかはこれなくても大丈夫だから。あと、もちろん断ってくれても構わないぞ。それは由比ヶ浜の判断にまかs・・・」

 

「来るなって言われても行くからねっ!」

 

「そうか、それじゃ、よろしくな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー変わったね。前なら全部一人でやるって感じでほかの人の手とか借りなさそうだったのに。」

 

 

「まあ、状況が状況だし事情が事情だしで、今俺らにとって最善の選択になれば、どっちの方法だろうが使う、それだけだ。でも、確かに視野は広がったかもな。」

 

お前らのおかげで。



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29話

「んで、雪ノ下。そっちのクラスはどうなったんだ?」

 

 

はぁ。

と一度大きなため息をつき重そうに口を開く雪ノ下。

 

「恐らくあなたが委員になったのと同じ理由で文実にさせられたわ。それと、もう一人は結城さんになったわ。」

 

文実の委員は基本は男女から各一名ずつになるが、J組は男子が少ないので女子2名でもよしとされている。

 

 

 

「まあ、今年はあんなとばっちりは御免だな。」

 

「ええ、間違いないわ。」

 

 

 

 

――――

 

「ええと、それじゃあ第一回文化祭実行委員会を始めま~す。」

今仕切っているのは一色だ。生徒会長なんだから当たり前なんだがな。

 

 

「まず、今年の文化祭実行委員長から決めたいと思います、立候補いますか~」

 

なんか、一色が仕切るとあまりビシッとしないな。間延びしているというか。

 

ん?

 

「あ、比企谷先輩なんかどうですかぁ~?去年もやってましたし、適任だと思いますよぉ?」ニヤニヤ

 

まさかバレたか?いやそんなはずはない、あいつはアホだから心は読めないはずだ・・・

 

 

というかお前ら、いくら去年の噂で俺の悪評が広まったからとはいえ、そんなに露骨に嫌な顔するんじゃない、これでも一応三年なんだからな!?こんなんだけど。

 

 

「じゃ、じゃあ・・・」

 

 

おお、二年(多分)の女子が立候補してくれた。

真面目っぽい雰囲気の、やわらかそうな女子。

今年は何とかなりそうだな・・・

そうじゃないと困るんだけど。

 

 

イテッ!

 

ちょっと早弓さん腕をつねらないでください変な声でるところだったじゃないですか!

 

「ジロジロ見すぎ。」

 

あ、ごめんなさい。あれ?でも俺一回も早弓のほう向いてないぞ?

 

「私じゃなくてあの子のこと。」

 

ああ、そっち。てかそんな見てないって。

 

「はいそこいちゃいちゃしないでくださ~い」

 

一色さん、生徒会長ともあろう人がそんな風に冷めた目で注意するのはよくないと思いまーす。

ほら、他の人たちがこっちジロジロ見だしたじゃないの。

 

挙句には睨んでくるよ・・・八幡怖い

 

「八幡くんすごい睨まれてるね(笑)」

 

俺敵どんだけ多いんだよ・・・

 

 

 

 

 

 

「とゆーことで、今回の委員会はこれで終わりにしま~すお疲れ様でしたぁ~」

 

気付いたら終わってました。

 

 

 

「ってゆーか、先輩今年も文実なんですね、私の専属召使としてコキ使わされてもらいますからね!」

 

「遠慮しておく。それになりたくてなったわけじゃないからな。」

 

「え、私の専属召使になりたくて文実になったんじゃないんですか?」

 

こいつの頭のなかはどこまでお花畑なんだろうか。

 

 

「もう。八幡くんは私の召使だよっ!勝手に奪わないでよぉ」

 

え、早弓さん。一色のネタ発言にそんなマジな顔で返したら一生そのネタでいじられますよ・・・?主に俺が。

 

・・・

 

ほら、一色も固まっちゃったじゃないですかやだ。

 

「先輩って、彼女さんできたんですか・・・?」

 

 

 

こいつもこいつで俺の予想の遥か斜め上をゆく返事しやがったよこんな調子で大丈夫か文実。先が思いやられる・・・

 

ほら、雪ノ下嬢も凍てつくような視線で・・・

「比企谷くん、ざいなんとかくんのような呼び方をしないで頂戴。」

 

 

レーザービームの対象はどうやら俺だったようです。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、面白くもない会話を済ませたあと、俺は帰路につく。

 

今年は、どうなるかな。




あれ、俺ガイル12巻発売しましたね。目標達成ならずです。ごめんなさい。
でも完結まで頑張ります。


それと、あとから気付いたんですが、もしかして体育祭って文化祭の前・・・?


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30話

今年の文化祭は上手く行きそうです。

もう去年のような思いはしたくないので、最初から社畜全開で頑張っていたらなんと委員長がご褒美をくれました。マッ缶です。

 

ふと当たりを見ると、全員に配られたわけでは無いそうです。

あれれ?委員長って俺のこと好きなのかな?

 

とか勘違いしてはいけません。恐らくみんなには配ったけどこいつの分忘れてた、だから後から買いに行ったから遅くなった。みたいな感じでしょう。

 

 

ふぅ。なんで敬語かって?ちょっと社畜バカ日記なるものを書いてみようかと…

 

嘘です釣りじゃないですごめんなさい。

 

今日も今日とて仕事が多い。俺だけな。

 

早弓は2年とかの男子が手伝ってくれたりして割とすぐ終わるし、雪ノ下、結城ペアは廃スペックだからすぐに終わる。

 

俺は他のやつらから仕事を追加される一方でいっこうに片付かない。

これが

☆社☆会☆的☆格☆差☆

ってやつだ。

 

そうしていると結城と雪ノ下が俺のところから書類の束を持っていってしまう。

 

仕事が遅いと暗に言われているのだろうか。

 

「そうね、あなたの所にだけ書類が溜まるのだもの。どうしてかしらね。」

 

雪ノ下さん、心を読まないでください…

それと、そんなに露骨に周りを見回しながら言わないでください、周りの奴らに聞こえるように言ってるのバレますよ…

 

「そう、それはよかったわ。だって聞かせているんですから。」

 

最近、というか夏休み明けから雪ノ下さんが優しくなった。

毒もあまり強く吐かなくなったし、なんというか、雪ノ下らしくない。だから俺は雪ノ下のことを雪ノ下さんと呼んでいる。

 

陽乃(ヨンダ?

 

あ、魔王はお呼びじゃないです。はい。

 

陽乃「またまたぁ~!そんなこと言っちゃっていいのかな?」

 

あっ(察し

 

 

って、俺に話してたわけじゃなかった…

 

陽乃さんは今、有志のバンドの登録に来ている。

つまりこの教室にいるといるということ。

 

さっきからこっちをちらちら見ながら受付の男子と談笑している。

あの男子も顔を赤くしながら笑っている。ああ、こうやって堕ちていくんだな、と、魔王の手の一つを垣間見た気がした。

 

 

すると突然、真顔で魔王がこちらを一瞬見た。

あの男子には用無しってか…飽きてしまったならしょうがない、こちらも何か対抗する術を考えなくては…

 

「比企谷くん!どうしたのかなぁ?今日はよく目が合うね!」

 

陽乃さん変なこと言わないでくださいさっきの男子の目がァァァァ!

 

あーあ、魔王がこっちに来る前にマッ缶でも買いに行ってばっくれようと思ってたのに。気づいたら目の前に。

 

「比企谷くん。目の前の仕事に集中してくれないかしら?仕事が減ってないわよ。」

 

雪ノ下さんナイス!これで俺が仕事をしなきゃいけない、だから陽乃さんに構ってる暇はない、と言外に伝えられる!

 

「そっか、じゃあ私がそんな比企谷くんを癒してあげるよ!」

 

え…?

 

ムニュ

 

ん?

 

モミモミ

 

あ、

 

 

 

おい、お前ら。今何を想像した?

 

肩揉まれただけだぞ?ホントダヨ?ハチマンウソツカナイ

 

「比企谷くん、そんなに大きい方が好きなのかしら?」

 

確かにっ!お〇ぱいは当たってるけどっ!そうじゃないだろっ!だめだろそんなこと言っちゃっ!

ほらさっきお前らが持っていった分の書類が追加されていくぞっ!

 

 

ガチャ

 

「せぇ~んぱ」

 

「い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな「何してるんですか?疲れてたなら教えてくれればよかったのに…」

 

え?

 

「先輩のためにマッ缶これだけ買ってきたんですよ?ちゃんと頑張ってくださいね!」

 

お、おう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか、急に優しくされるとなんか違和感があるな…




少し投稿に間が空いてしまいましたが心配無用です、やる気がネタを上回っているだけです!


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31話

そんなこんなで迎えてしまった文化祭。小町は生徒会役員共として文化祭の運営に貢献しているみたいです。兄として嬉しい限りです。

 

私は何をしているかって…?

 

 

 

「比企谷くんとデート!」

 

じゃなくて見回りですねはい。

隣にいるのは早弓さんです。

私は出来る限り仕事が少ないものを選ぼうとしたのですが、社会的格差に負けました。

 

後に発行される学校の行事の風景?を映した冊子のための写真撮影。

ところどころ早弓さんが映っていますがそれについては問題なし。

どうやら映っちゃいけないのは私だけだそうです。幽霊だからかな?

 

 

 

はぁ。普段やらないことをいきなり始めると存外疲れるんだな。

 

こうして比企谷八幡の社畜バカ日記は幕を閉じた。

 

 

 

「あっ!ヒッキー!とみやっち!」

 

「おお結衣ちゃん!やっはろー」

 

「やっはろー!」

 

「2人で偵察?」

 

偵察ってお前な。俺らはスナイパーかなんかか。

 

「視察だね。結衣ちゃんは?」

 

「あたしは…暇だから来た!」

 

「そっか!それじゃ一緒に回ろうよ!」

 

ということで由比ヶ浜が仲間に加わった。

3人で歩いているのだが、こいつらが物凄く視線を集めるせいで落ち着かない。別に怪訝な顔をされたりはしなかったと思うが、明らかに女子中学生らには笑われていたような気がした。

 

そんなことを考えながら俺は由比ヶ浜にやるハニトーを買ってくる。

 

それからカフェのような趣の教室で3人でハニトーを頬張りながら時間を潰す。

 

 

 

すると

「あ、優美子からLINEきたからそろそろ戻るね!ヒッキーハニトーごちそうさま!」

 

「おう。頑張れよ。」

「行ってらっしゃい!結衣ちゃん!」

 

また2人きりに戻ってしまった。

しょうがない、お仕事の続きといきますか。

 

 

 

 

 

 

――――

「八幡。」

 

っと。誰かに袖をつままれた。

といっても声と呼び方で大体分かるんだがな。

 

「久しぶりだな、ルミルミ。」

 

「ルミルミいうな。」

 

ふと視線をもとの高さに戻すと…

 

「こんにちは、八幡さん。初めまして、になりますね。」

 

鶴見の母親だった。

 

とても綺麗な人で、長く艶やかな黒髪を下ろし、優しそうな瞳をしている。

確かに鶴見(親)と鶴見(ルミルミ)は似ているかもしれない。そりゃそうか、親子だもんな。

 

「留美とはとても仲が良いのですね。家でもよくあなたのお話を留美から聞くんですよ。」

 

「ちょ、ちょっと、お母さん…」

 

「普段は全然学校でのことを話してくれないのに、あなたの話だけはしてくれるんです。娘がお世話になったみたいです。ありがとうございました。」

 

「も、もう…お母さんったら…」

 

「いえいえ、こちらこそ。別に大した事じゃないですから。」

 

「そうでしたか。では、またいつか、お会いした時には、よろしくお願いしますね。」

「バイバイ、八幡。」

 

 

 

 

 

 

「八幡くん、既に名前呼びされてたんだね…しかも年下の女の子に…」

 

あれ?早弓さん?なんかちょっとダークオーラ纏ってません?

ヤンデレからデレを無くしたらただの殺人鬼ですよ…?

 

「じゃあ、あだ名を考える必要があるね!私だけの!」

 

そうきたか。よし、健全な判断だ。

 

「う~ん…」

 

 

はっくんだのはちくんだのはっちーだのいろいろ模索しながら考えてるみたいだ。

 

 

考えてくれてるのはありがたいんだが、俺は別にあだ名にいい思い出が…

 

「よし決めた!はっちーにしよ!」

 

はっちー?

 

「はちくんだとなんかありきたりな感じがするし、はっくんだと他の人と混ざったりするかもしれないから!ね!」

 

お、おう。

 

普通なあだ名を付けられて少し嬉しいのは気のせいか。今まで本当にマシなあだ名付けられたこと無かったからな…

 

 

「はっちー!」エヘヘ

 

お、おう…これはこれでかわいいな…

はっちーの最後の音が『い』になるから必然的に「ニィーッ!」って笑ってるような風になるのはいいな。

 

 

「サンキュな。おかけであだ名嫌いが治りそうだ。」

 

特に発症してたつもりも無いけどな。

 

「そっか!じゃあこれからいい思い出作っていこうね!」

 

こいつのこういうポジティブなところっていいよな、こっちまで明るい気持ちにさせてくれる。でもそれでいて俺を振り回す訳でもない。

ちゃんと、俺の意見も汲み取ってくれるし、考えてくれる。

 

奉仕部のメンバーや、他にも色々関わったことがある人はたくさんいるが、ここまで親身になって支えてくれているのはこいつだけかもしれないな。

いや、それは俺の思い込みか。あーあ、新しい黒歴史増やす前に自重しておこう。

 

でも、支えになってるのは本当だな。

 

「ありがとうな。」

 

 

 

自然と思いが口をついて出た。

 

「うん。どういたしまして。」

 

どうやら向こうも分かってたみたいだ。




この先は早弓さんとはっちーくんのあまぁーい2人のお話になるので、みなさん砂糖吐く用のコップの準備、忘れないようにしてくださいね。


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32話

「明日ははっちーとデート…!」

 

どうも、早弓実弥です。最近はっちーって呼ぶのにも慣れてきました。でも学校ではちょっと恥ずかしくて「比企谷くん」って言ってしまいます。この前2人だけの時にはっちーって教室で呼んでみたんですが、丁度委員会から帰ってきていた生徒に聞かれていたらしく、後日「はっちーって誰!?もしかして彼氏!?」と物凄い剣幕で聞き迫られました…

 

はっちーも隣に居たのに…なんで気付かなかったの…

 

と、まぁ恐怖症の症状も良くなってきて、男子とも少し話せるくらいにはなりました。

 

それでも、はっちーがいないと少し怖いです。

 

この前はっちーと買い物に行った時は、変な男の人たちに声をかけられてとても怖かったです。

 

 

こんな感じで、私ははっちーに依存しきってしまっています。このままでは、ゆきのんが言っていた奉仕部の理念から外れます。

 

これは、私の問題です。私が答えを出すまでは、本物は手に入れられません。

今の状況は、はっちーからもらったものです。

恐らく、このままではこの学校を卒業した後、私は落ちぶれます。

でもそれは、問題の根本的な解決にはなりません。

私自身が、強くならなきゃいけない。

もう傷付きたくはないけれど、このまま弱いままではいや。

 

このままでは、私の大切な人に迷惑がかかるから。

 

 

 

 

 

 

というわけで、はっちーとデートを企画しました。

 

少しでも慣れようと思い、これから頻繁にデートして行きたいと思います!

 

 

 

 

 

――――

当日

 

「おはよう。」

「おう。」

 

私ははっちーとは家が近いので、朝家まで迎えに来てもらいます。

まるで幼馴染みたいだね!

 

今思ったけど、はっちーってイケメンだね。

最近目も濁ってないし。

 

目が…濁っていない…

 

 

 

イケメン!?

「おいどうした、顔が赤いぞ?」

 

「のぁっ!?」

 

やめて!顔をのぞき込まないで!

 

「熱でもあるのか?それなら家で休んだ方が…」

 

「大丈夫!いこ!」

 

お、おう…

と言いながら横に並ぶはっちー。

長らく異性を避けてきた私には、あの刺激はちと強すぎたみたいです…

 

 

さてと、気を取り直して楽しみましょー!

 

 

とは言っても、一度意識し始めてしまったことには、意識しないようにするのは存外むつかしくて。

 

ずっとドキドキしながらデート。

 

 

はっちーは…

そんなこと、意識しないのかな…?

 

 

 

「ねぇ」

 

「お、お、おう!?」

 

耳が真っ赤だよはっちー。でもよかった、私だけが変に意識しちゃってた訳じゃないんだね。

そう思うと少し気持ちが軽くなったよ。

 

さぁ、今回はちゃんとエスコートしてくれるかな?

 

前回は酷かったんですよ?

慣れない場所に連れていかれて、はっちーはずっときょどり気味で、頼りなかったんです。

 

でも、私が求めるのは頼りがいじゃなくて、はっちーそのものです。

えっちな意味じゃないよ?

 

はっちー本来の姿を、私の前では出していて欲しいなっていう願いです。変にかっこつけてオシャレなカフェに連れていって挙動不審になるよりも、なりたけで美味しいラーメンの食べ方を教えてくれるほうが私にとっては嬉しいのです!

 

でも、このことはとても伝えづらいのです…なぜなら、この事を言ってしまえば、確かに次から私の思い通りのデートになると思う、けど、それははっちーの頑張りを否定することになるんじゃないか、そんな気がします。

 

でもどうやって…

 

「なあ、腹減ってないか?」

 

おっといきなりチャンス!さすがご都合主義の作者!いい展開が思いつかなかったのか!ドンマイ!

 

「そ、そうだね、お腹空いたなぁ。」

 

まぁそりゃそうでしょ、もうお昼だもん(ご都合展開)

 

「てことでどっか昼食行こうかなって思ってるんだが、何処か行きたい場所とかってあるか?」

 

前は何も言わずに連れていったのに対し、今回は一応聞くみたいですね。前連れてかれたところは高かったからなぁ…

 

「じゃあ、あんまりお金ないから、少し安いところの方がいいかな…」

 

 

おっとはっちーが何かに気付いたようですよ?

「そうだな、前行ったところは高すぎたな、すまん。」

 

まぁさすがに高校生のお財布には負担が大きかったよね。

 

「とはいえ、俺が思い付く安い店って言ったら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここしかねぇよな…」

 

 

はい、サイゼです!

いいよね、サイゼ!安いし美味しいし近い!基本どこにでもある!

でも、普段女子のグループとかだとサイゼはなぜか忌避されるんだよね…

 

だからサイゼは好きだけどあまり行ったことはないのです。

 

 

「うん!実はあんまり行ったことないから行きたいな!」

 

するとはっちーはものすごく驚いた表情でこっちを見つめ、

「そ、そうか、ならここにするか。」

 

といい、本当に大丈夫か?という風に疑いながら入っていった。

無論私はちゃんと付いていきますよ。

 

 

 

「おかしいな、サイゼ行こうって言ったらほぼ否定されるはずなんだが…」

 

「はっちー、それは私が現代の女子高生らしくないって言ってるのかな?」

 

「そ、そういう事じゃなくてだな、なんて言うか、お前らしい、って言うんだろうか。」

 

私らしい?一体、比企谷くんは私の何を知ってるんでしょうかねぇ。

 

「そっか、じゃあ私らしいもの注文してみて?」

 

彼は私についてどこまで知ってるのかな?

 

「そうか、なら注文するぞ。」

 

あれ、メニュー見てないし何も考えたような素振り見せなかったけど大丈夫かな?

 

 

 

 

 

「ご注文お伺い致します。」

 

「ミラノ風ドリアと――――」

 

 

 

 

 

最初のドリアしか聞いてなかった。というか、聞けなかった。何も見ていないはずなのに、次々に注文をしていく。

 

 

やがて、運ばれてきたのはどれも美味しそうなイタリアン料理。

 

 

「私がイタリア系好きなの知ってたの…?」

 

「前街歩いていた時ずっとピザのお店見てたのが引っかかってな、それでサイゼにしたってのもある。」

 

そっか…

でも…

「はっちー!」

 

「お、おう。」

 

「違うよ!」

 

「ち、違ったのか…そうか、すまん…」

 

「ピザ、じゃなくてピッツァ、だよ!」

 

「そうか、じゃあこのピザは俺がたべるから、お前は金払わなくて…」

 

「だからピッツァァァァ!」

 

「そんなに怒るなよ…って、怒るとこそこかよ。」

 

「そこ大事だよ!ピザとピッツァは違うの!」

 

ということでまだまだ躾の足りていないはっちーに私は10分ほどピザとピッツァの違いを説明しました。

 

なんでたった10分で終わったかと言うと…

 

 

 

 

~~~~

「ピッツァはピザより美味しいの!だからピッツァ(はむっ!)美味しい。」

 

比企谷くんは私の口に無理やりピザを押し込みました。

 

「どうだ?お前のいうピザも悪くないだろ?ま、機会があれば俺にもそのピッツァとやらを食わせてくれ。」

 

「わかった!それまで楽しみにしててね!」

 

 

 

~~~~

ということです。

ちょっと熱くなりすぎましたね、失礼しました、あつも(ry

 

 

 

 

 

まぁ、いろいろあったけど、今週のデートはこれでおさらばです。

 

お家で第2ラウンド始まるって期待していた人。

私達はまだそんなに大人じゃないです!

 

そ、そんな、大人なことなんて…

 

 

 

って、女の子に何言わせよーとしてんじゃあー!

※ただの自爆です。




更新遅くなりました。文章書くの下手になった気がしますが、私の実力はこんなもんなので、あまり期待しないでください笑
次は日常に戻り、学校生活模様を書いていきたいと思います。


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33話

高校3年の秋、高校生は何をしていると思いますか?

 

 

 

 

 

答えは、勉強です。

9月末には中間学力考査があり、塾等では模試、おまけに体育祭。

ぶっちゃけおまけはどうでもいいのですが、とりあえず勉強の秋なのです。もう少しで大学受験だからね。

 

そんなこんなで最近では部室で柚木も呼んで基本的に5人、時々妹の小町ちゃんやあざと会長さんが混ざって7人くらいで勉強会を開いています。

 

学力的には、ゆきのんと柚木が同じくらいで、その下に私とはっちーが同じくらい、結衣ちゃんは…(察し)。

 

てな感じです。

 

大学進学については、ゆきのんと柚木が県外国公立、私とはっちーは県内国公立、結衣ちゃんはやっはろー、という感じです。

 

 

待って、やっはろーて何ですか…

 

 

 

 

 

 

まぁそれは置いておくとして、みんな勉強に励んでいるのです。

塾がある日は塾に行き、それ以外の日はここに集まってお勉強、たまにカラオケに行って気分転換をしているのですが、時々人が集まらなくて寂しい思いをすることがあります。でも、小町ちゃんの生徒会の活動が終わるまで、と言ってはっちーが大抵残ってくれているので、私が1人でいることはほとんどありません。

そして、今日もはっちーと2人っきりです。

実は昨日も2人っきりでした。

 

大体16時近くに6、もしくは7限が終わり、そこから1時間半から2時間程度時間を潰して小町ちゃんが来たら一緒に3人で帰る、いつもはそんな感じです。

 

今日は小町ちゃんは生徒会の人と夜ご飯を食べて帰るみたいなので、特に小町ちゃんを待つ必要は無いのですが、習慣的にこうなってしまいました。

 

 

 

そして、見事に帰るタイミングを失ってしまいました…

 

秋も深まり陽が落ちるのも早くなった今日この頃、何も無いのに6時まで学校に残ってるのはさすがに怪しまれます。だって、特別棟で、男女二人が誰もいない教室に2人っきりでいたら、ねぇ?

 

まぁそんな破廉恥なToLoveるは起きないんですけどね。

 

でも、寒くなる前に帰りたいので、もう帰りましょう!

はっちーのお家に。

 

 

 

 

「ただいまぁ!」

 

「…おかえり。」

 

一緒に帰ってきたのに私がただいまって言ったらおかえりって言ってくれるはっちーが好きです。

 

「はっちーもおかえり!」

 

「おう。ここ俺ん家だけどな。」

 

「そんなことはいいの!カマクラもただいまぁ!」

 

「ニャァー」

 

カマクラもおかえりって言ってくれました。

 

 

 

 

私、普通にはっちーの家に帰ってきてますが、これは私とはっちーの親公認なんですよ?

私の親は仕事で帰ってくるのが夜中だったり、帰って来なかったりするので、家に私一人を置いていくのは心配だ、と前から言っていたのですが、小町ちゃんが私の家に遊びに来た時、お父さんと仲良くなったみたいで、色々話してしまったそうです。そして小町ちゃんが「小町ちゃんの友達」の話という体で比企谷親に相談したところ、快く受け入れてくれたみたいで、運良く私はこうしてはっちーとお家デートが出来てるわけです!

 

まぁ、夜遅くなりすぎる前にお姉ちゃんが迎えに来てくれるんだけどね。

そう言えばまだみんなには私のお姉ちゃんのことについて何も話してなかったっけ。

 

なので少しだけ紹介したいと思います。

 

では、お姉ちゃんと私の関係についてから。

お姉ちゃんは私の7つ上で、本当の姉妹と言うよりは、近所の優しいお姉さん、みたいな感じです。

小さい頃からあまり一緒に居れなかったせいでそう感じるところもあるのかもしれませんが、とにかく、他人にしては距離が近く、姉妹にしては距離が遠い、そんなお姉ちゃんです。

お姉ちゃんはもう25なので働いていますが、私と一緒の家で暮らすようになったのはつい最近からです。今年度入ってからかな?多分。

 

そんなわけで、「今まであまり一緒にいられなかった分」と言って今はとても仲良くしてくれています。

でも、お姉ちゃんは私と似ていません。容姿も、声も、仕草も。まぁ一緒にいることがほとんどなかったためなのかも知れません。

それに、お姉ちゃんは私に対して、少し余所余所しい感じがします。

腰が低いというか…

言葉足らずですいませんが、まあそんな感じです。

 

つまり、お姉ちゃんなのにお姉ちゃんらしくない!という事です。

 

よくわからないかも知れませんが、ひとまずお姉ちゃんについての紹介はこの辺で区切っておきたいと思います。

 

で、さっきの続きなんですが、ただいま絶賛はっちーとお家デート中というところまで話しましたね。

 

はっちーとのお家デートでは、2人で一緒に台所に並んで晩ご飯を作り、一緒に食べ、テレビを見ていたらもういい時間、というスケジュールが決まっています。

特に決めたつもりは無いんですが、気づいたらそうなっていました。

 

 

けれど、

「お姉ちゃん遅いなぁ…」

 

今日は何故かいつもの時間になっても「今から迎えに行くね!」のLINEが来ません。

いつもは大体20時から21時くらいには迎えに来てくれるんですが、今日は22時になりそうという時間になっても、連絡が来ませんでした。

 

「今日は遅いですね、何あったんですかね…?」

 

心配そうに小町ちゃんも聞いてくる。

 

「ちょっとお姉ちゃんにLINEしてみるね。」

 

少し遅れる時は遅れると連絡してくれるんですが…

 

 

 

 

 

 

25分後、22時半くらいに返事が返ってきました。

 

「ごめんね、今日ちょっと遠くまで行かなきゃ行けなくて、今新幹線で帰ってきてるから今日はお母さんたちと同じくらいになりそう…連絡遅れてごめんね?ちょっと寝ちゃったみたいで…」

 

 

寝過ごしていないと良いのですが…

 

「じゃあ、今日は小町の家に泊まればいいんじゃないですか?明日の朝実弥さんの家に教科書とか取りに行けばなんとかなりそうですし。」

 

「いやぁ、さすがにいきなりじゃあ迷惑じゃない?とりあえずお家帰ろうかな。」

 

「そうですか…」

 

残念そうに首をもたげる小町ちゃん。そんな顔しないで。そんな顔しても、私の気は変わらないから…

 

「ごめんね、また今度、予め決めてからね(笑)」

 

「はいっ!ほら、お兄ちゃんっ!」

 

無理だと分かったのだろうか、小町ちゃんは勢い良く下を向いていた顔を上げ、敬礼をして応えてみせた。

小町ちゃんのこういうところが可愛いよね。

 

「へいへい。」

 

 

 

それからはっちーが家まで送ってくれました。ごめんね、こんな寒い時間に外に出させて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、そういえば…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、ただいまぁ…」

 

「お、おかえり…」

 

 

ドタドタドタ!!!

「おかえりなさいどうしたんですか!?」

 

 

 

「じ、実は…」

 

 

 

 

 

「鍵を持ってきてないなんて面白いよな、てことで早弓が家に泊まることは確定した。あと、お菓子買ってきたぞ。」

 

「へ?」

 

「ご、ごめんね…」

 

小町(もしかして、実弥さんはあh…小町と同じ属性持ち!?)

 

「そういう事ですか!なら全然おっけーなのです!親にも伝えておきますね!」

 

というわけで緊急お泊まり会です。

 

 

寒かったのですぐにお風呂に入り、比企谷家にあった服に着替えました。上ははっちーのパーカーで、下は小町ちゃんのスウェット。

 

なんで兄妹のを上下そろって着ているかというと、背丈は小町ちゃんとそこまで変わらないみたいなんですが、ちょっと小町ちゃんには無いものが付いていた訳でして…

 

はっちーのパーカーはぶっかぶかです。

彼氏の服を着てぶかぶか~ってやるの1回やってみたかったので、それが出来て満足です!彼氏じゃないけど。

 

それから小町ちゃんとはっちーの事で盛り上がり、夜中まで話してると比企谷親が帰宅。事情は話してあったみたいなんですが、私がリビングにいた事に驚いたらしく、転びかけてました。

 

 

お父さん曰く、「可愛い娘の小町が2人いた」そうです。

 

そんなに似てるのかな…?

とにかく、今日はとてもたのしかったです。




また更新に間が空いてしまいました…
ごめんなさい。その分、文量を多くしていきたいと思うので、どうか見限らないでください…!


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34話

小さな寝息を立てながら隣で寝ている彼を見つめる。

そんな立ち位置にいられることの嬉しさを噛み締めながら彼女は一抹の恐怖と、不安を感じた。

彼のおかげでできている今日は、彼がいなくなってしまったときに壊れてしまう、今までどうりが消えてしまう、そんな恐怖と不安だ。

 

しかしちょうど彼女の瞳に悲しみの色が見えたタイミングで、先程まで寝ていた彼が目を覚ました。

自然と2人は見つめ合う。すると彼はすぐに彼女の異変に気付き、どうした、と問う。

自分の変化に気付いていなかった彼女は、何が?というような表情を見せたが、彼の問いかける視線は変わらなかった。

 

すると彼は手を伸ばし彼女の目の下に人差し指を当て、何かをすくいとるような仕草を見せた。

 

「涙…?」

 

彼の指は朝日に反射して光っていた。

 

「何もなきゃ、涙なんて零れないだろ?教えてくれよ、どうしたんだ…?」

 

優しく問いかけてくる彼の姿がある女性の影と重なり、その瞬間、両目が熱くなり、温かい涙の粒が頬を伝って布団へと落ちていった。

 

自分でもどうして泣いているのかわからない、そういった表情だった。

悲しい訳でもないのに、辛い訳でも、痛い訳でもないのに、何故か涙が次々と頬を伝っては落ちてゆく。

でも、不思議と嫌な感じはしなかった。不愉快が生んだ涙ではないことは確か。それでも、自分が何故泣いているのかわからない。そんな状況に焦っている彼女の頭に、彼は大きく開いた手を乗せる。

彼は上半身を起こし、彼女をこちら側に抱き寄せ、頭を撫でた。何も言わずに、撫で続けた。

彼らしくない、いきなりの積極的な行動に彼女も最初は戸惑ったが、しだいに彼に身を預けるようにして目を閉じた。

 

「お兄ちゃん~?起きてる~?」

 

妹の小町が起こしに来た。

 

「って、実弥さんどうしたの?」

 

「少し疲れてるみたいだな。」

 

「うん…でも、実弥さん、お兄ちゃんのこと起こしに行ったはずなんだけどなぁ…」

 

ミイラ取りがミイラになるとはこの事だろうか。小町と顔を合わせ、クスッと笑う。

 

「んっ…」

 

腕の中にいた彼女が目を覚ます。本当に寝ていたのかどうかは知らないが。

 

至近距離で目が合った彼女に彼は優しく微笑みかける。

すると彼女は顔を赤くしながら彼の背中に両腕を回し、2人は抱き合う格好になる。

 

「ちょ、実の妹になんつーもん見せてくれちゃってんの…」

 

彼女は自分らの他にもう1人の存在を確認すると更に顔を真っ赤にして彼からすぐさま離れた。

 

そこに付け加えて妹は言う。

 

「まぁ、小町としては?あのごみいちゃんにこんなにベタ惚れな彼女さんができるっていうのは嬉しい事なんで気にしないですけどね!」

 

第3者からの意見に狼狽えながらもしっかりと手を繋ぎ彼を布団から無言で引っ張り出す彼女はやはり、不器用であり、素直なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人で囲む食卓はいつも2人なのに比べて少し狭い感じがした。

 

「ほら、お二人が朝からお熱いからもう時間が無いよ!急いで!」

 

「ゲホッゲホッゲホッ!!!!!」

 

彼女が味噌汁でむせた。

 

「おお…大丈夫か?」

 

そう言いながら彼は彼女の背中をさする。

 

落ち着きを取り戻したのか、彼女が反抗する。

 

「いきなり変なこと言わないでよもう!」

 

声が裏返り、顔を赤くしながら頬を膨らませてあざとさ全開で反抗しても、妹は何も動じない。

 

そこで更なる攻撃を仕掛ける妹。

 

「はぁぁぁ…小町ももうすぐでおばさんかぁ…早いなぁ。」

 

「ブフッ!!!!!」

 

今度は彼の方が吹き出した。いや、正確には吹き出しかけた。

慌てて手で口を抑えたためか、気管にでも入ったのだろう、彼は目に涙を浮かべながら妹を睨みつける。

 

一方で妹のほうはへらへら~っとした表情で残りのご飯を食べる。

 

「小町、もう自転車乗せてかないぞ?」

 

「いいよー、友達に乗せてもらう約束してるから、お兄ちゃんこれからは1人で行っていいからね。」

 

まさかの反撃に彼はあからさまに落ち込んだリアクションをとる。

それを見た彼女はなんとかフォローをしようと。

 

「じ、じゃあこれからは私を乗せていって?」

 

「お、良かったじゃんお兄ちゃん。じゃ、小町先行くね~。いってきまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日から小町の代わりに早弓を乗せることになり、後ろからくる色々な重圧に耐えながら学校へとペダルを漕ぐ。

 

重圧…?決まってんだろ、〇〇〇〇と〇〇だ。(自主規制)

 

 

 

 

 

 

 

学校に着くなり、平然とした顔で教室へと向かおうとすると、腕が後ろに引っ張られる感覚にそれを阻まれた。

 

また早弓がらみで因縁でも付けられるんだろうか。

そう思いながら振り向いた先にいたのは鬼の形相をした男子生徒。ではなく、顔を赤くしもじもじしながら意地でも目を合わせないという態度の早弓自身だった。

 

どうした、パンツでも履き忘れたか?まぁこの季節だしな、風邪引くなよ?

 

「………うよ…」

 

ボソッと呟かれたため聞きそびれたがなんとなく何が言いたいのか察しがついたため、そのまま手を引いて教室へとむかう。

 

「ところで、早弓は何組だったけか?」

 

「同じ…」

 

同じクラスだったわこんちくしょう。なんで忘れてんだ俺は…

 

というか、早弓の挙動が明らかにおかしく、いつもと違いすぎて中身が「入れ替わってる!?」してるみたいになっている。

 

いやぁ、つい最近「君の名は。」の地上波放送あったけど…

 

どうしたんだ急に…

まぁいいや、じきに治るだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま放課後を迎えたが、特に変化は見られなかった。

いや、変化が見られなかったってのは相当まずいんだが…

 

なんか帰りも無言でくっついてくるし…

 

 

今日一緒にいる時、いつも顔が赤かったのはもしかして男性恐怖症か…?

 

もしそうならそれが俺に対してなのか逆に俺以外に対してなのかわからないと早弓にとって辛い状況のままなのではないのか。直接聞いてみるしかないんだよなぁ。

 

多分今日も2人きりだろうし、部室で聞いてみるか。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、早弓。ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」

 

名前を呼んだだけでビクッと反応するということは、原因は俺にありそうだな…

 

「今日1日、俺と一緒にいる間、ずっと顔が赤かったけど大丈夫か?もし男性恐怖症のことで何かあるなら教えて欲しい。」

 

まぁ、原因が俺なら離れるしかないんだけどな…

 

 

「……」

 

早弓はずっと何かを恥じ入るようにもじもじしているだけで特に何も話してくれない。

 

「とはいえ、言えないようなことなら無理にとは言わない。けど、男性恐怖症のことかそうじゃないかくらいは教えてくれると助かる。」

 

 

2度目の沈黙の後、早弓が口を開いた。

 

「そのこと…じゃないよ…」

 

「そうか、わかった。サンキューな。」

 

 

「っんっと…ね?実は…」

 

 

とても言いづらそうに口を開く早弓。

その口からもたらされた驚愕の背景。

 

「お前…アホか…」

 

事情を聞いた俺はそう答えるしか出来なかった。

 

 

 

早弓の話を簡単にまとめると

「折角のお泊まりなんだから、何かしたかった。厳密に言うと、お父さんに少し茶化されて、それを本気にしちゃったために、寝てる八幡のところに行き、少しばかりの誘惑(意味深)をしたにも関わらず、八幡の八幡は全く反応せず、自分の魅力がないのかと落ち込み自分の布団に戻った。だが次の朝、八幡の腕の中にいるときに、自分のしたことを思い出してしまい、勝手に悶えてただけ。その後も八幡の顔を見ると思い出してしまい、勝手に悶え出した」というだけだった。

 

だけというには長い説明だったが、要するに自業自得だ。

 

「本当何してんだお前…寝てる高校生に誘惑って…一歩間違えれば退学もんだぞ…」

 

「は、反応しない八幡の八幡が悪い!」

 

なんだと…

俺のせいにされたぞ。凄まじい責任転嫁だ…

しかも反応してしまってたらそれはそれで更に問題なんだが…

 

「はいはい、俺の俺が悪うございました。さ、帰るぞー。」

 

えっ、なんで「はぁ?こいつ何言ってんの」みたいな顔されなきゃならないの。俺謝ったよね?

 

「わーった。帰りにハーゲンダッツ買ってやるから。な?」

 

泣く子も黙る、ハーゲンダッツ。これで早弓も…

 

 

「そうじゃなくて、その、き、今日も、泊まってもいい…?」

 

あーなんか嫌な予感がするぞぉ?




ごめんなさい。弁解はありません。


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