もしも楽と双子の兄がニセコイ生活を始めたら。 (孤独なバカ)
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オリキャラ紹介 (ネタバレ注意)

主人公とヒロイン達をまとめました。ネタバレ注意です。


一条夕貴

 

この作品の主人公であり、楽の兄。十年前の失恋を引きずっていたが、桐崎千棘とニセコイ関係を続けていることで少しずつ変わっていく。

昔のある事件をきっかけに集栄組が嫌いになり隠れて自立を狙っている。家にいるのが嫌いでなるべくアルバイトや千棘とデートをするようにしている。

千棘のことを第一に考えており、そのことでつぐみともめることが多いが正論をぶつけることで言い争いは負けなし

ただヒロイン達には弱く、なるべく頼みを聞いてあげる。

性格 長所 優しく他人第一なこと

   短所 自己犠牲にすることが多い

 

学力優秀、運動神経はかなりいい。ただ片付けや日々の日常生活はグーダラしており、やる気になることが少ない。また人を守る時だけは本気をだし街を一人で破壊する力と集以上の交友関係を使い徹底的に相手を潰す。

見ためはSAOのキリト

 

桐崎千棘

 

ほぼ原作と同じだが、最初に主人公に跳び蹴りしたおかげで基本は素直な性格。主人公に甘えることも多くすごくウブな反応をする。

 

村杉杏

 

ずっと主人公のことが好きな女の子。クラスでは小野寺の次に人気があるがそれ以外はほとんど長所も短所もない女の子。本当は林間学校の時に主人公に告白しようとしたが千棘が事故ったため告白できなかったけどそれがきっかけで千棘に宣戦布告。あのグループの中で唯一の常識人で突っ込み役にまわるが、恋愛にだけは誰に対しても諦めない。しかし炭谷麗香のことを妹みたいに思っている。

 

性格 長所すごく負けず嫌いで常識人

   短所モフモフに目がない

 

学力は普通だが運動はちょっと苦手。家庭部に所属しており、料理はうまく和食がおいしい。

見ためは化物語の羽川翼。

 

炭谷麗香

 

炭谷産業の一人娘、昔羽姉と楽、集と主人公と遊んでいた。主人公のある事件の被害者でありそのことがきっかけで主人公のことを恩人であり好きな人だと思っている。しかしかなりの残念な子であり、主人公の愛人になることが目標としていて、主人公第一に動く。また少し常識が分からず家からリムジンで送迎されることもしばしば。だけどなぜかみんなから好かれており、憎めない。また天然にかわいいことを言うので主人公も困る原因の一つ

 

性格 長所 誰からも好かれる

      いつも明るいムードメイカー

   短所 残念なところ、アホの子

 

運動神経はいいが勉強は勧任せ。しかしなぜかずっと赤点はなくクラス順位はトップくらす。また料理は見た目はひどいがどんなものを作ってもおいしく作れるといううらやましい能力を持つ。

見た目はけいおん!の平沢唯。

 

 



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ヤクソク

10年前夢が敗れた女の子が泣いていた。

目の前には僕の弟と友達の女の子が結婚の約束をしていた。

……ゴメン。○○ちゃん楽が

……大丈夫。もう会うことないから。

でも俺はこのいじけている女の子がずっと好きだった。明るくて、泣き虫で、そして優しい女の子が

「○○行くよ」

「うん。じゃあねゆうくん」

と女の子の名前が呼ばれていた。

「待って!!」

と僕は女の子の手を握る。でもその手は届かない。だから大声で叫ぶ。最近アニメで見たセリフだけど再開を願う時に言う言葉

「またね。○○ちゃん」

するとその人が少し笑っていたように感じた。

 

「おい兄貴起きろ!!」

「……後一日」

「学校休んで寝る気かよ!!」

と弟の声がする。仕方なく起きる。

「おはよう楽」

「はぁ…飯できているからさっさと食べろよ。」

と制服を着て学校にいく楽。そして俺も起き制服に着替え

える。

俺の名前は一条夕貴。この春から高校に通うどこでもいる高校生だ。ただ一点をのぞいては

「おはよう皆」

「「「おはようこぜぇます!!坊っちゃん」」」

と厳つい男たちがたくさんいる。

そう俺の家はヤクザだ。

「とりあえず飯」

と楽の飯はおいしい。まぁだからいくらでも食べられる訳なんだけど。和食ばっかりなんだよなぁ……そして食べ終わる。

「ご馳走さまでした。」

「あいかわらずのんびりしているな。」

「あっ、父さんおはよう。」

と俺はとりあえず挨拶する。

「おはよう夕貴。そうだ、近いうちてめーに大事な話があっから覚えときな。」

「……?」

「それにお前時間は大丈夫なのか?」

「大丈夫。俺は自転車登校だから。」

と俺はのんびり立ち上がりあくびする。

「んじゃいってきます!!」

と自転車をこぎ始める。

そして今日見た夢を思い出した。

あれから10年か。あの女の子は元気かな?

と何度も見続けた夢を思い出す。

あれから俺はずっと楽と暮らしてた訳だか楽も結婚した約束の女の子が気になっているらしい。

「ザクシャ イン ラブか」

とずっと気になっていることばを言う。

もしも、あの時の少女に言えなかったこと

好きです。

って言えたら俺は何か変われたのかな?

「げ」

と言う声が聞こえた後に隣から衝撃をくらう。自転車から落ちて数メートル飛ばされた。

「いたた」

と見ると金髪の女の子が俺の上にのっている。

「お前、大丈夫か?」

「えっ、あっ、うん大丈夫だけど。」

でもとんできた方を見ると2メートルはある壁があるのだけど。

「あっ、ゴメン急いでたから」

と金髪の女の子は立ち上がる

「……別にいいよ。なんなら後ろ乗るか。」

と自転車を立ち上げるとパンクもなし、そして故障もしてなかった。

「えっ?」

「急いでたんだろ。乗れよ。うちの制服だから目的地は多分同じだからな。」

と自転車にまたがる。焦っても仕方ないし。

「じゃあうん。お言葉に甘えて。」

「んじゃいくぞ」

と自転車をこぎ始める。皆からの視線が痛いけど気にしない。そして本当に1分くらいでつく。

「んじゃ着いたぞ。んじゃ俺は自転車置き場でこれ置いてくるから。」

「うん、ありがとー!!」

と走って校舎の中に入っていく。

何か面白い女の子だったな。

「……名前聞いておけばよかった」

と俺は苦笑してしまった。

 

俺は教室に入るといつものメンバーがそろっていた。

「オースゆう珍しいな。遅刻ギリギリじゃないなんて」

と俺の友達であり幼馴染みの集が言う。

「まぁちょっと面白いことがあって」

「面白いこと?」

と俺と楽に話かけてくる少ない女子代表の小野寺が話かけてきた。

「何か失礼なこと考えてないか?」

「楽うるさい」

「ひどいな」

「まぁ金髪の女の子が2メートル以上ある壁から跳び蹴りしてきてそして一緒に登校した」

「「「はい?」」」

と皆が首をかしげた。

「だから金髪の女の子が2メートル以上ある壁から跳び蹴りしてきて、一緒に登校したんだよ。」

「……突っ込みどころが多すぎなんだがそれ嘘だろ」

「嘘じゃねぇよ。」

とため息をつく。

「ってか冗談が嫌いって知ってるだろ。」

「そうだけどさぁ。」

「さすがに信じたくないよね。」

「ってか兄貴何でその後一緒に登校してきたんだよ。」

「急いでいたから。チャリで後ろに乗っけてあげただけだよ。」

「……お人好しすぎるだろ!」

そうか?楽だって同じことしそうだけど。

「ほら席につけ、HR始めるぞ。」

と担任の先生がくる。でも眠いなとうつぶせになると

「おい一条兄寝るな」

するとクラス中から笑い声が聞こえる。

「だって眠いし?」

「まったくお前は……でも今日は転校生がくるから起きておけ。」

「ふぁ~い」

「あくびと返事を混ぜるな。」

するとまたクラス中から笑い声が起こる。

「じゃあ入って桐崎さん」

「はい」

とするとざわっとクラスの雰囲気がかわる。

「初めまして!桐崎千棘です。母が日本人で父がアメリカ人のハーフですが日本語はこの通りバッチリなのでみなさん気さくに接してくださいね。」

とどこかで聞いたことがある声だけど。気にせずに眠ろうとすると

「おい一条兄寝るな!」

「……眠いんだよ。」

と前を見ると、今日一緒に登校してきた女の子が立っていた。

「「あーーーーーー!!」」

と俺は立ち上がってしまう。

「あなたさっきの」

「あぁ、間に合ったか?」

「うん、お陰さまで。」

「兄貴知ってるのか?」

「あぁ、今日遅刻すれすれだったらしく送っていった女の子だよ。えっと、桐崎だっけ。」

「うん。でも自転車は?」

「いや、壊れてないから平気。」

「もしかしてさっき言ってた暴力女か?」

楽が失礼なことを言った。するとクラスが固まる。

「おいバカそれ俺が暴力女って言ったみたいになってるじゃあねぇか!!」

「だって金髪の女の子が2メートル以上ある壁から跳び蹴りしてきたって言っただろ!」

「俺一言も暴力女って言ってないだろうが!!」

「あの、そういえば誰?」

あっ悪い

「ゴメンあのバカな弟で、俺は一条夕貴そこにいるバカの双子の兄だ。だから夕貴か一条兄っていえば基本は俺だ。これから1年よろしくな」

「うん、よろしく」

「後俺に余り関わらない方がいいぞ。」

と小さい声で忠告する。するとえっと言っていたが寝るモードに入る。

「そうか?転校生とお前って知り合いだったのか!」

……何か落ちが読めた。

 

あの後席が隣になり桐崎が話してきたが。寝ている振りをして誤魔化しながら放課後に入る。楽は飼育係なので遅れるらしい。

そして自転車置き場に行くと

「……」

桐崎が座っていた。俺はその前を通ろうとすると

「……ねぇ、どういうこと?」

と服を掴まれる。

「……何のこと?」

「関わらないない方がいいって」

「あぁ、……お前って集英組って知ってるか?」

「……まだ引っ越したばっかりだから知らないけど」

「……ここを守っているヤクザなんだよ。アメリカ風にいえばギャング。」

すると桐崎の笑顔が固まる。

「そこの長男なんだよ。俺はだから皆からは怯えられるんだ。友達作るのも俺と一緒だと大変だろうしな。お前も学校生活は楽しみたいだろうし、」

「……それって本当なの?」

「残念だけど本当だよ。俺は昔からそのせいでほとんど友達が作れなかったからな。んじゃ俺に近づかない方がいいぞ。お前可愛いんだからすぐに友達もできるだろ。」

「ちょっとあんた何言ってるのよ。」

「んじゃな。」

と俺は桐崎の前を通り自転車をこぎだす。それいこう桐崎は俺に話かけてこなかった。数日後のある事件が起こるまでは。



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シツモン

「ただいま」

と俺はいつも通り一人で帰ってくる。楽や集と帰ることが多いが今日は俺が日直だったので先に二人とも帰ってきているはず。

「お、帰ったか。夕貴、ちょいとオレの部屋にきな。」

と俺は不思議に思いながら父さんの部屋にいく。すると楽がすでに立っていた。

「あれ、楽お前も?」

「兄貴もか?」

と俺も楽も来るなんて珍しいな。

「なんだよ親父いきなり呼びつけて」

「今度大事な話するっつったろ?思いの外早く事が動いてな…てめぇらも最近のギャングとの抗争は知ってると思うが、それがいよいよ全面戦争になりそうなのよ」

……はぁ?

「ちょっと父さんギャングって聞いてねぇぞ!」

「……お前は知らなかったのか?」

「知らね」

「……まぁいい」

とため息をつきながら父さんが言う。

「もし戦争何か起ころうとするとお互いにただじゃすまない。だがお前らどちらかしかできない方法で回避することができる。」

「俺らしか?」

「嫌な予感しかしないけど聞くか?」

「実ァ向こうのボスとは古い仲でな、奴にもてめぇと同じ年の娘がいるらしいんだが…」

……なるほど

「恋人になれってことか」

「さすが夕貴は勘がいいな?」

「……はぁーーー!!?」

と楽は驚いていたが。

「そりゃ戦争になるよりかはいいだろ。ただ恋人のフリしてたら戦争回避できると思えば安いもんだろ。」

「じゃあ兄貴がやれよ。」

「別にそのつもりだったから別にいいけど」

「おっ、やってくれるか夕貴!!」

と父さんは嬉しそうにしてる。

「ちょっと、兄貴いいのかよ?」

「お前は好きな人いるだろうが」

と楽がずっと小野寺のことを好きなことは知っていた。

「それに俺は好きな人いねぇし、それにこういう時に兄貴面させてくれよ。一応応援しているんだぜ。」

「……サンキュー兄貴」

「マックドバーガーのポテトMで許す。」

「あぁ。明日買ってくるよ。」

と俺は父さんの方を向く。どうせ一ヶ月かその程度だろうしな。

「んで相手誰だよ?父さん」

「もう来てるはずだ」

「もう来てるのかよ!!」

とため息をはく。まぁブスじゃないことを祈るか。せめて桐崎みたいに可愛い奴ならいいけど

「本当にやってくれるのかい」

「うん。パパ任せておいて」

……あれこの声って

「…兄貴この声?」

「さぁ、この子が夕貴の恋人になる」

とカーテンの開かれると俺は目を見張った。

「…宜しく一条君」

「桐崎千棘お嬢ちゃんだ。お前ら二人は明日から三年間恋人同士になってもらう。」

……今なんて言った?

「ちょっと父さん桐崎がギャングの娘って本当なのかよ!!」

「あぁ本当さ」

「ってか三年間ってどういうことなのよ!!少しの期間だけって言ったでしょう!!」

「おや、三年間って僕達からしたら短いけどね」

確かに人生観は全然違うからそうだけど。

「ちょっと兄貴いいのかよ!三年間も」

「……とりあえず桐崎はお前覚悟はできてるか?」

「えっ、どういうこと?」

「もしかしたら三年間は恋人ができないってことだよ。そうだろ。」

「話は聞いていたけど理解が早いね。夕貴君は」

「……ってことだけど、」

「でもそんなこと言ってる場合じゃないんだけどね。」

「「「……えっ」」」

「お嬢!!」

とドガァァァン!!

と俺の後ろの壁が破壊される。

「……」

「なんだ?」

「見つけましたよお嬢…」

と金髪の男が入って来たんだけど

「……誰?」

「何で兄貴は驚いてないんだよ。」

「集英組のクソ共がお嬢がさらったと言うのは本当だったようですね。」

「クロード!!」

「ふーん。クロードって言うのか。」

と俺は歩きだす。

「こんにちはクロードさん」

「お前は確か」

「集英組二代目の一条夕貴です。お初にお目にかかります。」

「はぁ、どうも」

と礼をする。

「お茶を出しますのでお座りください。楽案内しろ。」

「えっ」

「ついでに紅茶でよろしいですか?」

「……あぁ」

「桐崎も手伝ってくれないか?さすがにこの人数は持ちきれないから」

「えっ、分かったけど」

と俺は桐崎と一緒に厨房に向かう。

「……んでどうする?」

と桐崎にお茶をいれながら聞いてみる。

「えっ、どういうこと?」

「さすがにこの状況は不味いだろ。あいつ爆弾使ってきたんだぞ。でも偽の恋人になるのは嫌だろ。」

「……でも一条君はそんな」

あぁもう

「……せめて一条兄か夕貴で呼んでくれ、楽とわかりづらいから」

「……じゃあ夕貴は私と偽の恋人になることに対して抵抗はないの。」

「さすがにあるな。俺は彼女いたことがないし、それに友達も少ししかいないから……」

元々ずっと集と楽の3人でいたからな。んで時々小野寺と宮本か。

「……私もそうなんだ。」

「はぁ?」

「クロードっているでしょ?」

「あの金髪メガネか」

「うん。小さい頃から良くしてくれてるんだけど、知っての通り過保護でね。学校行くにもやれ護衛だの、出かけ先でも銃持ってうろうろしたり。しまいには私の交友関係までチェックし始めて…」

こいつもしかして

「……もしかして友達少なかったのか?」

すると顔を赤くさせていたが頷いた。

「そうか……本当にお前もこっち側だったんだな。」

と俺は桐崎を見る。

「んじゃ俺と友達にならねーか?」

「……あんた何言ってるのよ!」

「いや、何かお前といたら面白そうだし。それにどうせこの流れじゃあニセコイするしかないだろ?」

「なんなのよニセコイって」

「偽の恋人略してニセコイ、まぁ女友達として遊びに行ったりすればいいだけだろ。」

「……そうだけど、いいの?」

「俺はな。ちょっと俺も興味わいたし。」

ちょっとこの女の子が日本がいる時くらいは楽しい思い出をつくれるようにしてほしい。

「どうする?お前に好きな人が出来たらなんとかするし、」

「……分かった。じゃあ宜しく。」

と桐崎が笑う。やっぱり笑顔が可愛いなこいつ。まぁその笑顔が見られるのが報酬ってことでいいか。

「あぁ。宜しく桐崎」

 

「お茶はいりました。」

と俺の隣を銃弾が当たる。

「おい、坊っちゃんに何してくれとんじゃあ!」

と日本刀で桐崎の横を切る。

「てめぇらいい加減にしろ」

と俺は少しキレる。

「暴れるのだったらどっかおもてに出てやれや。後、竜俺の彼女に手を出したら殺すぞ!!」

「「「「なっ…なぁぁにぃいいーー!!」」」」

と楽が俺の方を見ると頷く。

「そうだよ。兄貴と桐崎は付き合い始めたんだよ。」

「そ、そうよ。だから皆落ち着いて」

……こいつらが演技が下手なことは分かった。

「まぁそう言うことだ。」

と父さんがヤクザとギャングに向かって言う。

「とりあえず竜お客さんだ。どいてろ。」

「へぃ分かりました。」

と俺は竜を下げさせる。

「すみません。クロードさんとりあえず紅茶どうぞ。」

「……あぁ」

と言ってお茶をテーブルの上に置く。

「ついでに毒なんて入ってませんので。」

「……」

とどうやら疑われているのか俺の方をじっと見る。

「そう言えばどっちからどうやって告られたんですかい?」

「えっ」

「俺からだよ」

と全部俺が答えた方がいいと思った。どう考えても桐崎は演技がうまくわないからな。

「あぁ、そうだ。私も坊っちゃんに聞きたいことがあるのですがいいですか?」

「……は?」

「お嬢の好きな食べ物と音楽は何でしたっけ?」

「知るわけねぇだろうが?まだ付き合って一日も経ってないんだぞ。まぁ弁当からみたら甘いケーキと肉じゃあないのか?後音楽はクラシックかな?」

「……そうです。」

クロードは頷く。へぇ桐崎って肉とクラシック、そしてケーキが好きなのか。こっちを桐崎は見る。

「じゃあ次は。」

「ちょ、ちょっと待ってよ質問攻めなんて失礼じゃない。」

「おおっとこりゃすみません!!」

と俺はため息をつく。

「んじゃ最後お嬢二人はもうキスは済ませたんですか?」

……

「おい、いい加減にしろ。そこまでだ。」

と俺はとめる。

よく考えたら何で質問攻めにされてるんだ。俺らは

「ちょっとお坊ちゃんは黙って」

「お前が黙れよ。このくずが。」

と皆の雰囲気が凍る。

「ちょっと夕貴」

「困っているのに質問攻め、ふざけんな。よう考えたら俺達はあんた達に何で教える義務があるんだよ。変に介入するから別れる原因になるんだよ。お前らには失礼って言うのが分からないのか?」

と俺は少しためてから

「いいから楽と、まぁクロードさん。そして桐崎の父さんと父さん、そして桐崎以外は出ていけ。」

「……坊主の言う通りだ。」

と父さんが言う。

「ここは元々夕貴と桐崎のお嬢さんが俺らに報告するように言ったから集まったんだ。お前ら下がれ。」

「そうだね。クロード達も帰りなさい。」

「ですがボス」

「早く帰りなさい。本当にごめんね。夕貴君」

「いや、いいです。」

と俺は軽く嫌悪感を持っていた。

「……分かりました。」

とクロード達は帰っていった。

「……あいつらに謹慎一週間言っておく。」

「僕の方でも何か罰を与えておくよ。」

「あぁ、そうしてくれ。全く、怖い思いさせてごめんな、桐崎。」

「ううん。助けてくれてありがとう。」

「でも兄貴よくあんなこと言えたな。普段とは大違いじゃねぇか」

「一応偽物とは言え恋人は恋人だ。守るのが当たり前だろ」

「……神経太いよな」

「それより飯、せっかくだし食ってけば。」

「いや、料理人に作らせてあるから今日は帰るよ。」

「んじゃ玄関まで送ります。」

「いいよ。でも娘のこと宜しく頼むよ。夕貴君。」

と笑顔で言う桐崎の父さんはとても優しそうだった。

「それは本当に桐崎に彼氏ができた時に言ってあげてください。んじゃまたな。」

「うん、またね。夕貴と一条さん」

「じゃあな桐崎。」

と俺達と桐崎はわかれる。

そうして俺達のニセコイ生活は始まった。



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ハジメテ

夕飯食べてたらお気に入り登録者が10人超えてた。


「おい兄貴起きろ」

と楽の声がする。

「……休日くらい寝させてくれよ」

「いやお客さんが来てるんだよ。お前に」

「~客?」

としぶしぶ立ち上がる。どうせ集か宮本だろうしこのままでいいか?

「はい、どなたですか?」

「ご、ごきげんようダーリン!」

と桐崎が扉を開けたとたんにいた。

「と、突然で悪いんだけど、今からデートに行かない?」

「……ちょっと待ってろ」

と俺は部屋に戻る。隣には金髪メガネもいることだし断れないだろうな。

そして20分後

「な、何で私がこんな目に遭わないといけないのよ。」 

「ゴメン。俺があんなこと言ったからな。」

「ううん。私のせいでもあるから。」

「んじゃ、適当に町内案内するよ。」

と俺は歩きだす。

「えっちょっと」

「桐崎後ろ見ろ」

と桐崎は後ろを見ると気づいたのだろう。

「もしかして全員」

「ついてきてる。全くうぜぇ奴等だな。」

とゆっくり歩きだすけど。

「桐崎って肉とか甘いものが好きだったけど嫌いなものってあるか?」

「納豆とかわさびとかかな?」

「んじゃラーメンはどうだ?うまい店知ってるからおごってやるよ。引っ越し祝いってことで」

「ラーメン?まぁいいけど。」

そして俺達はラーメン屋に入る。

「おっちゃんいつものと桐崎は?」

「えっとチャーシュー麺大盛に肉ダブルでトッピングにコーンともやしほうれん草と白菜煮卵メンマネギ」

「おっちゃんもう全部乗っけちゃって。桐崎替え玉は?」

「いる!!」

と桐崎は嬉しそうに言う。

「おかわり自由だから好きに食ってもいいぞ。」

「でもここっておいしいの?」

「俺はボリュームがあるから好きだな。ここのラーメンは。俺は肉ダブルをふたつつけてるし。」

と俺のはお得意様なので好きに注文できる。

「それにチャーハンと唐揚げもおいしいからな。まぁ安くておいしいもの食べたくなったらここにくる。」

「あんたのところってお坊ちゃんじゃないの。」

「いや小遣い制でアルバイトもしてるし。」

「へぇ大変なのね。」

「まぁ俺の食費は凄いことなってるらしいからな。でも大丈夫かその服しみとか。」

「多分大丈夫!!」

「まぁ気にしなくてもいいんだったら別にいいけど。」

と店員が来て大量の料理がくる。

「じゃあ食うか。」

と俺達は箸をとり食べ始めた。

 

「おいしかった!」

「だろ!」

と俺は笑いながら言う。正直桐崎も俺と同じくらいに食べていたので正直料金はくそ高くなった。

「んじゃ映画館でもいくか?一応デートってことになってるし。」

「いかにもデートって感じね?」

「まぁな。」

と映画館につくと色々あるんだけど

「まぁ何見る?基本俺はアクション系が好きだけど」

「そうね、あっこれ観たいCMで爆発とか超派手で面白そーだった。」

「んじゃいいか。俺もこう言うの好きだし」

と俺はチケットを二枚買う。

結局俺もけっこう楽しくみてた。途中桐崎が寝ていたので冷えないようにタオルをかけていたけど、爆発音で起きたので楽しそうにしてた。途中ヤクザとギャングが邪魔してきたからつい殴っちゃったけど。

「あー面白かった。」

「まぁな。途中お前らのところにキスしろとか言われてたから少し殴っちゃったから帰ったら言い訳しといて。」

「えー」

「その分ジュース奢るから、紅茶でいいか?」

「いいけど。」

「んじゃ少し待っとけ。」

と俺は自動販売機に向かう。まぁ桐崎が楽しく遊んでいた気がするから成功かな?そして戻ってくると桐崎が4人の男に捕まっていた。

……あいつやっぱりもてるよな。

と苦笑してしまう。元々モデル顔だから本当はモテるはずなのにギャングの娘ってだけで色々制限があるんだよな。

近づいていくと

「つかこいつハーフじゃん。友達にハブにでもされちゃった?」

「あー分かる分かる。大丈夫、お兄さん達んな事しねーからさ。」

……あいつら

そして桐崎の手を見ると握り拳を握っていた。

……あのバカ

と俺は走り出す。

「すみません。こいつ日本語まだできないので」

と俺は桐崎の手を引く。

「悪い桐崎待たせた。ほら、行くぞ。」

「えっちょっちょっと待ってよ」

「いいから」

としばらく行ったところに公園があった。

「桐崎少し落ち着けよ。」

「何で止めたのよ」

「止めるに決まってるだろ。お前あんな奴殴っちゃいけないぞ」

「何でよ」

と本気で苛ついているのか桐崎は俺を睨む。

「お前はあんなクソみたいな奴を殴るほど安い女なのか?」

と俺はなるべく優しく言う。

「どうせあんなクソみたいな奴殴ったってなんにもならないだろ。そんなクソみたいな奴を殴ると同じ土俵の人間ってことを認めることになるんだよ。……お前はそんな安い人間じゃねぇだろう。」

「……なっ何を偉そうに言われなくたって私があんな奴ら相手にするわけないでしょう!?」

「まぁそう言う風にしといてやるよ。ほら」

と紅茶が入っているペットボトルを投げる。

「でも今日は楽しかったわ、ありがと」

「ならよかった。俺が好きなところばっかりまわってたからな。」

「でも彼女とかいたことないの?」

「うーん、何か女々しいから言いたくないんだけど、昔失恋してからトラウマになってるんだよ。だから好きって気持ちが分からないって感じかな。」

と10年前のトラウマが今でも残っていた。だから俺は恋愛ってものができなくなったのかもしれない。

「ふーん意外ね。あんたは過去のこと引きずらないタイプだと思っていたのだけど。」

「……でもその女の子も振られちゃったんだよ!楽に」

「……嘘!!あいつモテるの?」

「今はモテないけど……今でも一人だけあいつのことが好きな人は知ってる。」

「……うわーあんなもやしを好きになる女の子が分からないわ」

「ひでぇな。一応俺の弟だぞ。」

「それにしてもあんたともやしって似てないわね。」

「よく言われるよ。似てるところはお人好しってところだけって。」

「……そうね。」

「とりあえず次はどうする?」

「今日はこれくらいでいいんじゃない?」

時間を見ると3時をまわっていた。

「そうだな。ついでに送っていくよ。」

「……あんたね。……それじゃーね」

「いってらー」

と俺は携帯を開く。とりあえず楽に晩飯作ってくれって連絡しとこ。

「……楽も小野寺誘ってみたらいいのに、あのヘタレが」

「……え?今呼んだ?」

「え?」

と目の前には小野寺がいた。

「あっいたんだ。ゴメン全く気付かなかった。」

「ひどいよ夕貴君。何してるの?」

「桐崎に街を案内してただけだよ。んで今から送って行くところ」

「……あれ?仲よかったの?」

「失礼すぎるだろ俺だって一応友達いるんだぞ!!全く楽と上手くいってないからって俺に八つ当たりするんじゃねえよ」

「……ひどいよ!!」

「はぁ、全くせめてデートぐらい誘えって。宮本も言ってるだろ。」

「うぅ夕貴君もるりちゃんと同じこと言って!!」

小野寺を弄ってると

「ダーリンお待たせ!!ゴメンね~思ったよりずっと時間掛かっちゃって~」

こいつ凄いタイミングでくるよな。

「……小野寺、紹介するけどこいつは桐崎千棘。桐崎、そっちは小野寺小咲」

ととりあえず紹介する

「え?桐崎さんと夕貴君付き合ってるの?」

「……さあ?楽から聞いたらどうだ?」

「……最近私の扱いひどくない?」

「気のせいだよ。まぁ楽から聞いておいて。」

「私一条君の電話番号知らないのだけど。」

「……えっと、夕貴あのこの人って」

「俺の数少ない友達の一人。」

「認めるんだ……」

俺って友達少ないからな。

「んじゃ俺桐崎送っていくから。じゃあな。ついでにこいつと仲良くやってくれると嬉しい。」

「あっうん。じゃあ今度話そうよ!桐崎さん」

「うん小野寺さん」

ととりあえず一人友達できるかな?

「……ほら桐崎いくぞ」

「あっ待ってダーリン。」

と俺はため息をつく。あいつの恋も進展しないよな

「後ダーリン言うの辞めろ。嘘っぽい。普通に名前でいい」

「分かったけど小野寺さんに今日のこと話さないの?」

「そんなタイプじゃあねぇよ。だから俺も信頼してるわけだし。それにどっちにしろ、二人で出かけるってクラスメイトに見られたら、付き合ってるの?って言われるぞ。」

「……面倒臭いわね。これじゃあ休む暇がないじゃないの。」

とその言葉は分かる。

「それが現実だよ。日本は女も男も恋話が好きだからな。絶対聞かれるぞ。まぁ俺は寝たふりするだけだから全部桐崎の方にいくと思うけど。」

「ちょっと少しは助けなさいよ。」

「まぁ気が向いたらな。」

余り関わりたくないけど。そして桐崎を家に送っていったのはいいんだけど。

「……でけぇ」

俺の家もでかいけど、桐崎の家はもっとでかかった。本当に城みたいな家でそう考えるとこいつは本当お嬢様なんだと思う。

「じゃあまた学校で」

「あぁじゃあな。」

と笑顔で言ってくれたあたり今日は成功だったと思いたい。あいつとは長い付き合いになりそうだ。



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トモダチ

デートから2日後の月曜日いつも通り楽に起こされてから学校に行く途中の道。

「ちょっと夕貴。」

と通学路に桐崎がいてとてもやつれていた。

「……おはよう桐崎。お前も質問攻めにあったのか?」

「ってことはあんたも?」

「俺もだよ。うざかったからそのまま寝ようって思ったんだけど、無理だった。」

とあくびをしてしまう。そういえば

「乗ってくか?後ろ。まだ時間あるから歩いてもいいけど。」

「うーん、じゃあ歩いていきましょ。」

と俺は自転車から降りると隣を歩く。

「でもあんたが相手でよかったわ、あのもやしとやったらかなりきつかったと思うわ。」

「最初の一言が暴力女だもんな。あいつ空気読めないから大変なんだぜ。」

「そんな気がするわ」

と笑っている桐崎。でも電話でも楽のことをもやしって言っているから慣れてきた。

「そういえばあのクロードは?いつもお前にべったりくっついている。」

「さぁ今日は見てないけど?」

「ってことは見張ってるのか。俺らにプライバシーと自由な時間がほとんどないな。」

「……ってことは付き合ってるってことを否定は」

「不可能だな。……今日一日寝てよう。」

「だから助けてよ!!」

「ついでにダーリンだけは禁止。まぁフォローはするし、友達作るの手伝えることなら手伝うから普通に起こしてくれ。」

「私は子どもみたいに扱ってない?」

「気のせいだろ。」

……はいそのとおりです。

あんな演技でごまかせる人は少ないだろうし忠告しておかないと危ないからな。

「んじゃ自転車置いてくるから、先行っといて。」

「はーい」

と俺は自転車を置いてから教室に行く。すると教室に向けて大きな歓声が教室から聞こえてくる。

……あっこればれてるな。

凄く教室に入りたくなくなった。桐崎は質問攻めにあってるけどさっきフォローするって言ったしな。と嫌々俺は教室に入ると集が飛びついて

「ゆうーオレは悔しいぞ!!まさかお前が先に彼女が出来るなんて」

あっこいつ気づいて言ってるな。

「……何のことだよ。集」

「とぼけんなってゆう、もーネタはあがってるんだ!」

もしかして小野寺が話したのか?

「一昨日の土曜日…!!街で二人がデートしているのを板野と城ヶ崎が目撃してしまったのだよ。」

「……はぁそうだよ。」

と外にクロードがいるので肯定するしかない。

「嘘でしょう!!一条君付き合い始めたの?」

「戻ってきてよ!」

「……え?」

女子から悲鳴声が聞こえる。ってか泣いている人までいる。

「……集どういう訳?」

「お前って寝てばっかりだけど、けっこう人気高かったんだぜ。運動できるし」

「でも部活も何もしてないからな。意外だったわ。」

「鈍感って言うより寝すぎだったってことだろ。」

と楽が言う。でも

「もしかして俺って鈍感なのか?」

「多分そうじゃね。」

それはきついな。けっこうくるもんがある。

その後質問攻めされてマジで疲れた。

 

「……疲れた!!」

「あんた授業中ほとんど寝てたじゃない。」

と桐崎が呆れたようにしている。

「んでどうする?今日は学校案内しようか?」

「ううん。今日は用事あるから。」

「了解、じゃあな。桐崎」

「うんじゃあね。」

と俺はずっと気になっていた。こいつ女子と楽しそうに話しているけど、ずっと仲良くしているとこをまだ見ていないのだ。

「……ちょっとふらふらしてみようか。」

と俺はそういえば楽が飼育委員だったので少し手伝いにいくか、ついでに情報収集してみようか。そして飼育小屋の方にいくと楽と小野寺が一緒に飼育委員の仕事をしていた。

……邪魔したら駄目か。

と俺は帰ろうとすると

「って訳で偽の恋人を演じることになったんだよ。」

「へぇそうなんだ。」

と楽と小野寺は俺と桐崎の話をしているとこだった。

「一昨日一条君に聞けって言ってた理由って」

「見張られているらしいぞ。兄貴と桐崎。でもよくできるよな恋人のふりなんて」

と陰に隠れて盗み聞きしてしまう。

「でも、偽の恋人だけど仲が悪いってことではないんでしょ。」

「あぁ、はたから見るとちゃんと恋人に見えるらしいぞ。初日に色々あって仲が元からよさそうだし。」 

「でも皆、桐崎さんと距離があるって思っているんだって。」

と小野寺が気になる発言をしている。

「……小野寺どういうことだ?」

「って兄貴聞いてたのかよ」

「夕貴君、これは」

「いいから、小野寺教えてくれ。」

「……私も聞いただけなんだけど、桐崎さんって金髪美人の帰国子女でしょ。だから話しかけづらいんだって。でも桐崎さんって夕貴君と楽しそうに話しているのを見て私達のこと見下しているのかなって。」

……あいつ

「ゴメン、小野寺サンキュー、後このことは誰にも言うなよ。偽の恋人のこともな、楽も。ちょっと行ってくる」

「あぁ、でもどこに行くんだ?」

んなもん決まってるだろ

「彼女のところだよ。」

 

と教室に入ると一人だけ座っていた。

「がんか?いわ…岩下もー音読み訓読みって本当になぞだわ、岩下さんはポニテの子、テニス部で活発で明るくてよく話しかけてきてくれる。」

「桐崎」

と俺は話しかける。こいつ

「なっ、なななななんであんたがここに」

「お前の評判を聞いたんだよ。んでちょっと俺は甘く考えてしまったんだと思ってな。んでさっき来たんだけど」

と俺は桐崎に近づく。そこにはこのクラスの女子の特徴、好みなどが詳しく書いてあった。

「ちょっと何見てるのよ。」

「……俺とは大違いだよ。」

「…はっ?」

「桐崎は凄いな。友達作るために人のいいところも全部調べていたのか。まったく俺の知ってる人とそっくりだよ。」

「……笑いなさいよ」

「笑うかよ。むしろ凄いと思う。俺は家がヤクザってだけで友達を作らなかったからな。」

と桐崎は驚いていた。

「俺ってヤクザの長男ってことで昔けんかしたんだけど、あの竜が学校に乗り込んできてな。その子を病院送りにしたんだよ。それ以来俺は友達をほとんど作らなかったんだよ。楽はそれなりに努力しているけど、俺はまったく作ろうと努力もしてこなかったんだ。」

俺は笑う。でもとても乾いていた。

「普通に友達と遊んだり、普通に恋愛とかしてみたかったんだ。でも家がヤクザってだけで友達に迷惑かけるわけにはいかないし、それより楽に迷惑かけたら駄目だろ。あいつは普通の高校生って感じで学校に行ってるからな。」

「…もしかして私に関わるなって言ったのは?」

「迷惑かけるわけにはいかないからだよ。」

もしも前みたいに病院送りになるかもしれないって思っただけで嫌だからな。

「結局関わっちゃったけどな。一昨日だって俺がいきたいところばっかり回ってるし」

といらないことを話したな。楽にも話したことないのにな。

「だから手伝うよ。俺だってお前の気持ちは痛いほど分かるからな。」

「うん、じゃあお願いしてもいいかな?」

「もちろん、岩下はお前とスポーツの話をしたかったはずだ。鈴木は勉強ができるから聞けばいいし、森谷はお前と相性はいいと思う。話したがっていたぞ。」

とメモを取っていく桐崎。とりあえず一通り教える。

「んじゃ送る。帰ろうぜ桐崎。今度他のクラスの女子のことはもっと詳しいやつのノート見せてやるから。」

「うん、じゃあ頑張ってみるね。ありがとう夕貴」

桐崎が笑う。その笑顔は本当に普通の女子高校生だった。



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テヅクリ

お気に入り人数30人超えた!!
読んでくれてありがとうございます!!


背中から鼻歌が聞こえる。

「桐崎今日楽しみにしていたもんな」

と自転車で二人乗りしながら学校に行く。最近では慣れてきた。

「うんだって今日こそ友達を作るって決めてるんだから…!今日は調理実習の日よ!!」

今日の5、6時間目に調理実習だった。

 

「そういえば桐崎って料理作れるのか?」

「うんバレンタインデーにチョコ作るけど皆に好評なのよ」

「でもチョコってまだ料理の方だったら簡単な方だぞ。湯煎して形整えて冷やすだけだし。」

「夕貴も料理作れるの?」

「洋食だけ。俺と母さんだけ和食より洋食の方が好きだからな。だからケーキは大丈夫だと思う。」

和食は楽が作ってくれるからな。俺はほとんど作れない。作れるとしても卵焼きとかすき焼きとかの簡単なものだけだ。

「そっか、今日の課題ってケーキだったね」

「でもそれにしても、案外そのエプロン似合ってるなお前。最初見たときは少し恥ずかしいと思ってたけど」

「え?そう?ありがとう。」

と見るとフリフリのエプロンってどういうわけなんだろう。ビーハイブは桐崎になにを求めているんだ。

「まぁ頑張ってこい。」

「うん。」

と自分の班に向かって行く桐崎、でも桐崎って料理本当に作れるのか?

バサァ!!

と薄力粉をひっくり返す桐崎、あっこいつ料理できないわ。…後からフォローにいくか。

んじゃ俺も作り始めるか。とりあえず薄力粉を90クラムっと

と一応何回かつくったことがあるので、余裕で焼く工程まですませた。後はオーブンの中に入れる。

「よしこれで完了後は待つだけ。」

「さすが手際いいよなゆうは」

「まぁつくったことあるしな。」

と桐崎の方を見ると

玉子を混ぜるところだった。そして近づくと

ガシュ

と近くにあったボールを取り落ちてくる玉子をキャッチする。

「……桐崎手伝おうか?」

「…え?」

「ちょっとさすがに危なっかしいし、俺はもう終わったから、手伝うよ。おいしいやつ作るんだろ。メインはお前が作って俺は計量や道具の準備とかしてやる。」

「じゃあお願い。」

と料理を自分で作るってことは変わりないけど基本的なことは計量と道具の状態できまる。

「んでそこはこれ入れて。」

「んじゃこれは」

「後からだな。んでここは」

と俺が教えながら言う。後は焼く工程だけだし多分桐崎のも大丈夫だと思っていたのだけど、

「……」

俺が仕上げに戻った数分でケーキは真っ黒になっていた。多分焼きすぎたのが原因だろうけど……

桐崎は涙目になっているし、クラスはざわめいてる。

「……桐崎それよこせ」

「…え?」

と俺は桐崎の手から黒焦げのケーキを奪いとる。多分俺にも責任があるし少しくらいは食べようか。

今度までに教えてあげればいいし少しくらいは不味くても食える。

恐る恐る一口を食べる。

すると口の中にクリームの甘さとスポンジの柔らかさが伝わる。

「……」

と俺はもう一口食べるけどやっぱり

「うめぇ」

「え!?ちょ…うそだろ」

「ホント?」

と桐崎も食べると俺の方を見て

「……おいしい!!」

「えっマジ!?オレも食いてー」

クラスメイトが桐崎のケーキを食べていく。

「ホントだウメー!!」

「なんでこんなに焦げてるのに…」

「すげーうまいよ桐崎さん」

と皆が桐崎のケーキに殺到するクラスメイト

「よかったな。」

「……ありか…と…」

「…どういたしまして」

と笑う。楽だったら似合わねとか言って殴られそうだな。さて俺の出番も終わりかな。この後はほっといても自然に友達できそうだしいいか。

と俺は片づけに入る。俺のケーキは頑張った桐崎にあげるか。味見したけどいいできだったし。

そして片づけが終わり寝ようかなって思っていると

ボフンと廊下から聞こえてきた。

「おい一条兄ちょっと廊下見てこい」

と先生に言われて廊下を見ると、楽が泡を吹いて倒れていた。

「おい楽!!」

「一条君…!!」

と近くに小野寺がいた。

「どうして楽が倒れているか知ってるか?」

「えっえっと……私の作ったケーキを食べたらケーキが爆発しました。」

「……はっ?」

今あり得ない言葉が聞こえてきた気がするのだけど。

いやそれよりも

「ちょっと保健室行ってくるから抜けますって先生に報告しといて。」

「うん、分かった。」

と楽を背負い保健室に連れていく。正直もう調理実習は二度とやりたくないな。



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ホウモン

「おっはよー桐崎さん!」

ときょとんとしている桐崎に小声で

「ほら、行ってこい。」

と言ってやる。

「お…お…おはよー」

「ねーねー昨日のサッカー見た~?」

桐崎はあの黒ケーキ以来無事にクラスに馴染んでいった。元々友達に困るような人じゃないしきっかけがあればこれが自然なんだろう。

「ってことでめでたしめでたしっていけばいいんだけど。」

「何か言った?」

「別に」

その日の放課後、桐崎を家に送る途中でため息をつく。結局帰りと行きは俺が桐崎を送っている。雨の日は仕方ないけど楽だからいいらしい。すると携帯電話から好きな音楽が流れる。

「桐崎悪い少し止まる。」

「分かった。」

とメールを見ると楽からで勉強会の案内だった。

「そういや今日楽と集と宮本と小野寺から勉強会誘われてるんだけどお前も行くか?」

「えっ?」

と言うことで

「おかえりなさい坊っちゃん!!おやお嬢ちゃんもご一緒で」

「あぁ桐崎の分のお茶も頼む。桐崎汚いところだけど上がってくれ。」

「あぁうん」

と明らかに桐崎は落ち着いてなかった。

「……どうした?緊張しているのか?」

「な!!してないわよわくわくなんて。」

「わくわくしてたんだな。」

と普通に本心を言ってくれたな。

「仕方ないでしょ。私…勉強会なんて始めてだし…悪い…!?わくわくしてちゃ…!」

「別に、ってここだ。おーい楽入るぞ。」

「了解」

と開くともう全員揃っていた。

「悪い。桐崎送っていく途中だったから少し遅れた。ついでに連れてきたけどいいか。」

「えぇいいわよ。」

「桐崎、とりあえずメガネをかけた女が宮本るり、水泳部のエースだ。」

「ちょっとその紹介やめなさい。よろしく桐崎さん。」

「よっよろしく。」

「んでそこに座ってるどこからどう見てもエロいメガネをかけた男が舞子集だ。俺と楽の幼馴染みでもある。」

「ちょっと俺の紹介ひどくない。」

「ついでに兄貴が言ってることは全部本当だから」

「楽も俺の扱いひどい」

すると桐崎が笑う。

「ついでにこの四人は本当の俺らの関係を知ってる四人だからな。」

「えっそうなの?」

「うん知ってるよ」

と結局こいつらには楽から全部送ってもらった。

「ってことだ。」 

と紹介したので参考書を開く。

「あれ兄貴宿題は?」

「もう終わってある。学校で終わらせてあるからな。」

「あら、夕貴君って勉強できたんだ?」

「失礼だな、一応学年トップだぞ俺。」

「「「えっ?」」」

と女子が驚く。

「あー兄貴って基本オール百点なんだよ。だから寝てても怒られないだろ。」

「高三までなら解けるぞ。そのために中学の時楽と一緒に猛勉強したからな。」

「俺は受験勉強だけどな。」

楽が受験勉強している時に高校のテキストはほぼ終わらせてある。

「とりあえず小野寺と楽以外は教えるから頑張れ。」

「ちょっとなんで。」

「おい兄貴なんでだよ。」

「自分で考えろ。」

そうしないと進展しないだろ。おまえら

「ってか桐崎は勉強できるのか?」

「あっち側だったらだいたいAだよ。」

「ってわりにスペルミスしているけどな。ここ」

「あっ本当だ」

とさすがアメリカに住んでいただけあって英語はそれ以外はケアレスミスもなかった。数学も英語も本当にケアレスミスも何もなく。本当に勉強はできるみたいだった。

「ゆう坊っちゃん、桐崎のお嬢ちゃんちょっといいですか?」

と竜が俺達を呼ぶ。

「なんだ?」

「裏の蔵にお高いお茶があるらしくて取りに来てほしいんです。」

「てめぇがいけばいいだろ。」

「あっし達はちょっと組長から頼まれ事がありまして。入ればすぐにわかりますので」

「はぁしゃあねぇ。桐崎すまんがついて来てくれねーか。」

「まったくしょうがないわね。」

「ゴメンなこいつらが使えなくて。」

と俺は苦笑する。

「ひどいですぜゆう坊っちゃん。」

「はいはい、んじゃさっさといこうぜ」

と俺はすぐに部屋を出る。

さっさと俺は片付けてしまいたかった。

庭に出て俺は歩き始める。

「あ~あまったく楽しんでいたのに。」

「本当にごめん。今度ラーメン奢ってやるから。」

「大盛りでもいい?」

「トッピング全盛りもいいぞ。でも替え玉は一回までな。」

「えー」

と俺はほっとする。正直竜達と話していると気分が悪くなる。あまりださないようにしているけど俺はヤクザってやつが嫌いだ。

「あ蔵ってこれのこと?」

「おうそうだ入ればすぐ分かるっていってたけど」

と桐崎が蔵の方を見ている。

「どうした?」

「……あんたさっさと取ってきなさいよ。」

「……まぁいいけど。」

まぁ蔵の中はほとんど真っ黒だし女子には危険か。

「んじゃ待って」

と言うところで背中を誰かに押された。

やばいもしかしてと思った時には遅かった。

バタンと扉が閉まる音がして閉じ込められる。

扉を叩くと鍵がかかってそうだし。完全に引っ掛かった。

「……やられた。あのクソ野郎何考えていやがる。」

と舌打ちする。ポケットの中から携帯電話を取りだし明かりかわりにする。

「桐崎大丈夫か?悪いなあのクソ野郎のせいでこんな…」

と俺は真っ正面から抱きつけられた。

「……はっ?桐崎、ちょっちょっどうした?」

「う、うっさいちょっと黙っててよ!こっち見たらぶん殴るわよ。」

「桐崎じゃ一回離してくれ。俺後ろ向くから。」

と俺はこの時気づいた。桐崎は暗いのが怖かったんだと。

「ほら、5秒だけ離して、。んじゃねぇと後ろ向けないから。」

「う、分かった。」

と少し手が離れるうちに背中を向ける。

「もういいぞ」

「……ありがと。」

と涙目で言う。ちょっとドキッとしてしまうけどさすがに失礼だろ。

「お前携帯電話のライト使うか?」

「うん借りる。でも電話したら」

「ここ電話もメールも繋がらないんだよ。圏外になってるだろ。」

とここは監禁部屋にも使われるらしく、通信機能が全く使えなくなっているのだ。

「……ゴメンな本当に。」

「……あんたっていつもやさしいよね。」

「それ照れるからあまり言わないでくれないかな。けっこう色々と限界なんだよ。」

こんなにかわいい子と暗いところで密室ってけっこうきついんだよ。

「…あ、ねぇあれ見て!」

と俺はその方向を見るとはしごがあるけど

「駄目だ。俺は出られるけど桐崎は絶対登れないだろ」

「う、…私はちょっと…無理かもだけど…」

「ゴメンだけどそんな奴、俺は置いていけないんだよ。一応偽のだけど俺はお前の彼氏だ。泣きそうなお前を置いていけるはずがねぇだろ。」

「……カッコつけちゃって…」

とでも後ろがくっつけてくる。

「そういえばお前あいつらと仲良くなれそうか?」

「何よいきなり」

「いや話している方が怖くないだろ。だから話して誤魔化そうぜ。それにそっちの方が楽しいしな」

と適当に言っているけど色々俺の方が限界が近い。呼吸の音やシャンプーのにおいなどけっこう普通にかわいいのだ。

「そうね。小野寺さんはとてもいい人だと思うわよ。かわいいし優しいしさ……私あの人なら良い友達になれる気がするのよね!」

「確かに小野寺は誰にも優しいし、かわいいけど、宮本もいい奴だぞ。親友の恋愛を応援したり、正直あまり目立たないけど、本当はかなり頼りになる奴なんだよ。」

「舞子君は?」

「あいつはあぁ見えても一番大人だな。女の子にちょっかいかけてばっかだけど、誰よりも友達思いのいい奴だよ。」

あの性格じゃなければ普通にモテると思うんだけどな。

「じゃあ、あんたの弟は?」

「……ただのバカだよ。いい意味で。自分のことを考えず他人がよければそのことをその人と同じだけ喜ぶ、まぁかなりのお人好しだよ。」

まぁオレもかなりのお人好しってよく言われるけど、多分楽よりはましだと思ってる。

「皆のことよく見てるわね。」

「俺の唯一の友達だからな。もちろんお前もあるけど、聞くか?」

「ううんいいや。」

「ならいいや。」

と時間を見るともう15分たっていた。

「……多分もうそろそろ楽が来てくれると思うんだけど。」

「あれ?でも何かいつの間にか平気になってる。」

「あー目が慣れてきたのか、でも立つなよ。腰抜かしてたから急に立つと危ないぞ。」

と俺は立ち上がり手を桐崎の方に出す。

「ほら、掴まれ。」

「うん。」

と手を掴まれると思いっきり引き上げる。

「おーい兄貴どこだ!」

と外から楽の声がする。

「楽ここだ。」

と壁を叩く。すると

ばたーんと思いっきり扉があく。

「お嬢ーー!!!」

と金髪メガネが入ってくる。助かった。

「すみません。うちのクソ野郎どもがあなた方のお嬢さんを閉じ込めてしまい。」

「……いやそれはお前は関係ないのでいい。ところでなんでお前ごときがお嬢の手を握っているのだ。」

「……えっ。」

と見るともう明るくなっているのに手を握ったままの桐崎がいた。

「……桐崎、とりあえず手を」

「もう少しくらいいいでしょ。お礼よお礼。それとも嫌なの?」

「別に嫌じゃあねぇけど」

「ならもう少しだけこのままでいて。」

「……分かったよ。」

とよく見ると少し涙が浮かんでいる。相当怖かったのだろう。

「クロードさんこいつは責任かけて家まで送り届けるので安心してください。」

「いやそれは私が」

「あっラーメン奢ってくれるんだよね!」

「あぁ、今日は悪かったから思う存分食べてくれ。」

「ってことでパパに晩飯いらないってクロード言っといて。」

「ちょっとお嬢?」

「楽あいつらは?」

「あっ夕貴君こんなところにいたんだ。よかった。心配したんだよ。」

と小野寺がやってくる。

「悪い、ちょっと色々あって、とりあえず楽あのクズどもを監禁部屋に三日閉じ込めといてって言っておいてくれないか?」

「……分かったよ。」

と楽は意外に簡単に折れた。

「そういえば、勉強会はどうした?」

「まだやってるよ」

「んじゃ続きしますか。桐崎行くぞ。」

「はーい」

といつの間にか手も離していていつもの桐崎に戻っていた。でもなんだか距離がちょっと近づいたような気がしたそんな勉強会だった。



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スイエイ

あの勉強会の翌日

「あのバカが」

と俺はかなりイラついていた。

あの後お詫びに桐崎をラーメン屋に連れていった後、とりあえず竜達を謹慎処分を言い渡しその後に桐崎とビーハイブに謝罪文を書かせたり、後の処分に追われたからだ。

「おーい夕貴」

とクラスメイトの男子の声をかけられる。

「なんだ?」

「明後日の他校との水泳部と練習試合があるんだけど、一人が怪我して人数足りないんだよ。かわりに出てくれない?」

確か明後日は

「すまん、明後日は桐崎とデートの約束してるんだけど。」

と桐崎とはバレないように定期的にデートに行くことになっていた。

「あぁそれなんだけど女子の水泳部も人数が足りないから桐崎に助っ人頼むらしいぞ。」

「まぁ適任だな。あいつ運動神経はかなりいいからな。あいつがいいんだったらいいぞ。俺も体動かすの好きだし。」

「本当か、サンキュー夕貴。」

「んじゃ明日練習混ざるから。さすがに少し体動かさないと辛いし」

「あっ、俺達女子が練習するから練習休みなんだよ。」

「ちょっさすがに急に試合って辛いんだけど。」

と帰宅部の俺にとったら水泳部には相手にならないだろう。

「あっ。それなら、」

とクラスメイトはとんでもないことを言い始めた。

 

翌日

「なんでこんなことになったんだろう。」

と俺は今女子水泳部の練習に混ざっていた。

「仕方がないじゃない、今日は私達が練習する番だから。」

「でも俺だけ男子は辛くない?」

「いや、もうそろそろ」

「…宮本ここ女子水泳部だろ……?な…なんでオレまで…」

と楽が水着を着てきた。

「ってなんで兄貴までいるんだよ!」

「俺は明日の男子の水泳部の助っ人」

とすると楽は納得したらしい。中学生の時から俺は助っ人として色々の部で活躍していた。だから今回は水泳部になっただけの話だ。

「あれっ夕貴何でいるの?」

と桐崎がくる。

「だから俺は男子水泳部の助っ人頼まれているんだよ!お前昨日もいっただろ!しかも何でお前競技用の水着じゃないんだよ!」

と桐崎はビキニを来ていた。遊びにきたのかよ。

「仕方がないじゃない!まだ学校用の水着買ってないんだから!」

「あーそれならしょうがないな。桐崎すまん。」

「えっ、わ分かったんならいいけど」

「あんた達いちゃつくのはやめてくれる。」

「「いちゃついてねぇよ(ないわよ)」」

と俺と桐崎は同時に言う。

「うじゃ、適当に泳がせて貰うぞ。さすがにやるからには勝ちたいしな」

と俺は気合いが入る。俺は自分でも負けず嫌いって感覚がある。俺が出るのは2種目だが最低でも3位以内には入りたい。と俺は泳ぎ始める。最初は軽めに泳いでいた。

「ちょっと夕貴遅くない?」

としばらく泳ぐと 桐崎が話かけてくる。

「うーん、ちょっと泳ぐの久しぶりだしな。まぁ少し手を抜いてるからな。」

「なら少し勝負しない?負けたらジュース1本奢りってことで。」

……まぁ少しくらい本気だしても大丈夫か。

「別にいいけど後悔するなよ。」

「フフン。するわけないでしょ。」

と言ってから5分後

「もう一回だけ、もう一回」

「……さすがに諦めろよ桐崎」

と本気だした結果、平泳ぎ、クロール、バタフライ全てにおいて桐崎に勝った。

「うぅ、勝てると思っていたのに!」

「一応俺小学生の時水泳の県代表だぞ。さすがに敗けるわけにはいかねーよ。」

と俺はプールからあがる。さすがにずっと泳ぎぱなしだったから疲れた。

「桐崎ジュースいるか?」

「えっいいよ。私が負けたんだし。」

「俺はもうあがるから、ついでに買ってくる。」

「じゃあ私もあがるよ。」

「遠慮しなくていいって。どうせ送っていかないといけないんだし。それまで待ってるから」

と俺は自動販売機に向かう。こいつの好みは定期デートで分かっているし、多分大丈夫だろう。

そしてジュースを2本買うと

「おいゆうお前もジュース買いにきたのか」

と集がくる。

「お前も来てたのかよ。」

「そりゃもちろん。桐崎さんと小野寺の水着姿がみられるんだぜ。」

「気持ちは分かるけどな……」

と苦笑する。桐崎も小野寺もクラスで一位二位を争うくらいの美少女だ。それが見られるくらいなら確かに見にいくよな。

「でもゆうはいいよな。桐崎さんと付き合ってるし。」

「まぁ偽物だけどな。ほら」

とお茶を集に投げる。

「あいつは俺には勿体無いよ。どう考えてもな。かわいいし優しいし、気づかいができるけどな。」

「でもゆうは桐崎のこと、どう思っているんだよ。」

「……いい奴。本当に彼女だったらいいよなって思う。」

「それって好きなのか?」

……それは

「……わからないな。好きなのかどうかは。」

「…お前まだ10年前のこと引きずっているのか。」

と集に痛いところをつかれる。集には一度俺の過去について話したからな。

「あぁ、今でも夢に出るくらいな。」

「お前それじゃあ彼女永遠にできないぜ」

「それはさすがに嫌だな。お前は好きな人いるのか。」

「あぁいるさ。」

と集は頷く。しかしちょっと落ち込んでいる気がした。

「そうか…ゴメンな。」

「何でゆうが謝るんだよ。」

と集が笑う。つられて俺も笑ってしまう。

「でもゆう、お前今桐崎さんといる時が一番楽しそうだぞ。」

「……えっ?」

「じゃあなゆう、先行ってるぞ」

と集が走っていく。

そのこと自体は自分でも気づいていた。桐崎といると楽しい。あのケーキの時もそして閉じ込められた時も

「行くか」

と考えても仕方がないのでジュースを2本持ちプールに向かう。そのことは後からゆっくり考えよう。どうせ桐崎とは3年間ニセコイ関係を続けていかないといけないんだし。でもなるべく早めに答えをだそう。次は絶対に後悔しないように。

「ほら桐崎買ってきたって何してるの?」

とプールに戻ってくると紐にぐるぐる巻きにされた弟が宮本と桐崎にぼこぼこにしていたところだった。

 

「あんたの弟って本当に最低ね!」

と翌日、昨日から何回も同じことをくりかえし言う桐崎に苦笑してしまう。どうやら昨日、女子更衣室の鍵と小野寺の首からかけている鍵が楽の首にかけてあるペンダントの錠だと思い込んで確かめてみようと思ったらしい。

「そんな悪いこと言うなよ。あいつにとってあのペンダントは大切なものだから。」

「そういやあれはなんなのよ!」

「10年前に旅行先で女の子に会ったんだよ。その時再会を願って女の子は鍵、楽は錠を交換したらしい。そうしたらその女の子と再会できるって楽は思っているらしいぞ。だから再会を祈ってってことだな。」

「……なんかロマンチックね。あいつらしくないっていうか。」

「そうだな。」

と俺は下を向く。その時に俺は大失恋をしていたのでちょっと楽が羨ましかった。

「って次はお前泳ぐ番じゃあないのか?」

「あっそうだった。じゃあ行ってくる。」

「おう、頑張ってこい」

と俺は桐崎を送りだす。

あの時、俺はただずっと見ていた。楽のことが好きな女の子、しかしその女の子は楽から振られ、ずっと俺の隣で泣いていた。もし、俺がその女の子に再会できたのならば、好きって一言を伝えたかった。

「……もう会えないと思うけどな」

と俺は下を向く。

「ねぇあれ見て。もしかしてあの子溺れてない?」

と俺はその声を聞いて前を向く。すると

「…!!」

と桐崎が沈んでいた。両足が全く動いていない。よく考えてたらあいつ俺の隣にずっといたけど、一回も準備体操をしていなかった。

「桐崎」

と俺はプールの中に飛び込む。そしてなるべくはやく泳いで桐崎のもとへ急ぐ。そして桐崎の手を掴み引く。

そして背中に担いですぐにプールサイドに向かう。

「楽、保健室の先生呼んでこい。急いで!!」

「えっあぁ」

「集あげるの手伝ってくれ。」

「お、おぉ」

と名前が分かる奴を呼んで引き上げる

そして息をしているか確認すると

「スースー」

と息をしていたのでひと安心する。

「ゆう桐崎さんは?」

「息しているから多分大丈夫。でも桐崎を保健室に連れていった方がいいのか?救急車呼んだ方がいい?」

「ちょっと落ち着いて、夕貴君」

とわけがわからなくなってくる。すると

「あれっ私」

「桐崎さん!!」

と小野寺が叫ぶ。

「あれ小野寺さん私」

と桐崎が起きあがると俺の方を見てくる。

「何泣いてるのよ。あんた。」

「……えっ?」

と俺は自分の顔を触ると目から水滴が出てきた。

「……」

と俺は体から力が抜ける。そして座りこんでしまった。

「……ちょっと夕貴」

「あぁ大丈夫。」

と涙をぬぐう。でも何で泣いたんだ。立とうとするが全く力が入らない。てか動けない。

「……ゆうつかまれ。」

と集が手を差し出してくる。

「すまん、何か力が抜けた。」

「ちょっと何があったのよ。」

と不思議そうにしてる桐崎が保健室に運ばれるまで俺は集の支えなしではいられなかった。



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ホンシン





「いやー、楽とゆうの弁当って相変わらず健康的だな。」

と昼休憩の時間集が行ってくる。

俺たちの弁当は鮭の塩焼きとかひじきの煮物とか和食重視の弁当だった。

「作ってくれてるから言い辛いけど俺と楽ってかなり好き嫌いが分かれてるよな、俺は洋食が好きだし。」

「昔から女の子の好きなタイプも違ったよな。夕貴は明るい女の子、楽はおとなしく優しい女の子だったよな?」

「俺集に好きな女の子のタイプ言ったことないんだけどなぁ。」

と俺は苦笑してしまう。しかもあっているから。そして桐崎の方を見てしまう。今桐崎は宮本と小野寺と飯を食べている。ちょっと前まで俺と食べていたので大きな進歩がみられた。昨日の件があってから桐崎とは話しづらくなっていた。桐崎も俺を避けているのか、今日は一緒に登校していない。

「……やっぱり気になるのか兄貴。」

「まぁな、昨日から訳がわからなくてな。」

と昨日水泳で一位になっても、久しぶりに授業をまともにうけても何だか違和感があった。ずっと桐崎がいないのが少し寂しく思う。

「……やっぱりそうなのかな?」

「ほう、ゆうには心当たりが」

と集がちゃかしてくるが

「多分ある。ずっと考えていたからな」

と飯を食べおわる。水筒の水を飲もうとするとすでに空っぽだった。多分今日の体育で水をがぶ飲みしたからだろう。

「楽ごちそうさん。飲み物買いに行ってくるわ」

と俺は立ち上がる。そして自動販売機の方に歩いていく。ジュース一本くらい飲んで気分をかえよう。

でもいつからこんなに桐崎のことが気になるようになったんだ?最初は突き放したはずなのに今じゃあ自然と桐崎を見てしまう。

「ちょっと夕貴」

「ひゃい」

と桐崎に呼ばれて少しビックリしてしまった。

「……何変な声出してるのよ。」

「いや、ちょっとびっくりして。」

と少し離れる。正直急にきたからびっくりしていた。そして一瞬だけ嬉しくなる。

「んで、なんのようだ?」

「あ…あのさ…んっんー…昨日のことなんだけど。」

「あぁ、気にすんなよ、俺も気付かなかったのが悪かったし。」

「えっなんのこと」

「溺れた原因、お前準備体操せずに泳いだだろう。俺と話していたから桐崎が溺れたのは俺にも責任あるってことだよ。すまんな、気づいてやれなくて。」

「……それは私の責任よ。後助けてくれてありがとう。」

「どういたしまして。」

となんだかたわいのない話をしているのが楽しい。少しだけ浮かれているのかもしれない。

「夕貴は何が好きなの?」

「肉とラーメン。後スイートピーかな。」

「スイートピーって花の?」

「あぁ、母さんに教えてもらったんだ花言葉をその花言葉が昔から好きで今でも家に飾ってある。」

スイートピーの花言葉は優しい思い出、その一言が好きだった。

「花は基本興味ないけどな。でも何か好きなんだよ。」

「ふーん。意外ね。」

「俺でもそう思う。」

何で気に入ったのかまったくわからないけど

「んじゃ、今度お礼にラーメン奢ってあげるわ。」

「了解。あっそう言えば今日バイト早めに来てくれって言われたから家まで送れないわ。だから明日でいいか?」

「了解。じゃあね」

と桐崎が走って行った。まぁデートできると思ったら安いもんか

「んでそこに隠れている二人はなんのようだ。」

と少したった後、

「気づいていたの?」

と宮本と小野寺が出てくる。

「あぁ、多分桐崎を助けたのも伝えたのもお前らだろ。」

「うん、迷惑だった?」

「別に、それよりもなんのようだよ。ただ桐崎を心配して付いて来ただけじゃないだろ。」

「えっ違うの?」

と小野寺はびっくりしていたけど、謝るくらいなら桐崎でも普通にできることを知っているはずだ。

「えぇそうね。じゃあずっと気になっていたんだけど、本当に付き合ってないのあんた達。」

と宮本は行ってくる。人は誰もいないから別に気にすることじゃないか。

「付き合ってないけど。」

「そう、なら」

「でも俺は桐崎のことが好きだよ。」

と小野寺が驚き過ぎて凍っている。

「……」

と宮本も同じように驚いていた。

「なんだよ。宮本はわかってたんじゃねーのか。」

「いや、そこまでキッパリ言われると思わなかったから。」

「別に俺は気にしないけどな。気にしたらこの気持ちが偽物だと思ってしまいそうだからな。特に偽の恋人なんかやってるとな。」

すると二人が俺の方を見る。

「俺はこの関係を終わらせたい。んで新しくやり直したいんだ。偽物じゃなく本物の関係にな。まぁ桐崎には内緒にしといてくれ。小野寺は顔にでやすいから心配だけど。」

「だ、大丈夫だよ。」

と言っているけど、ほとんどクラス中に楽のことが好きってバレている人には信用0だけどな。

キーンコーンカーンコーン

と予鈴がなる、もうそんな時間だったのか。

「さて戻るか」

「そうね。でもあんた飲み物買いに行ったんじゃないの。」

「……あっ」

と俺は今さら教室から出て行った理由を思い出した。

結局喉がカラカラな状態で次の授業を受けることになった。



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ライバル

「えっ今日転校生が来るの?」

「またかよ」

と俺は苦笑してしまう。最近桐崎が来たばっかりと言うのにな

「らしーよなんか突然決まった事らしくてさ生徒には通知が遅れたんだと。」

集がめんどくさそうにしていることから男子だとすぐにわかる。

「…ねぇまたあんた関わるなって言うの?」

「いや、さすがにないかな。多分強制的に関わることになりそうだし。」

「…どう言うこと。」

「最近あのメガネいないだろう。多分この転校生は」

「クロードの刺客ってこと?」

「だろうな。だからお前が知っている奴がくるんじゃないのか?」

とあくびする。あぁ眠い。

「んじゃおやすみ。」

と眠る姿勢に入る。昨日のバイトがしんどすぎたのでしょうがないね。

「おーい一条兄何でいつも転校生が来るときだけ確実に寝るんだ?」

……めんどくさいからです。

「まぁいい突然だが今日は転校生を紹介するぞ。入って鶫さん。」

「はい。」

「ちょっと夕貴起きなさいよ」

……お前から言われると起きないといけないから。

「……ファー」

「おっ、彼女から起こされたら起きるのか。」

すると笑い声が聞こえるけど

「初めまして鶫誠士郎と申します。どうぞよろしく。」

と男子の制服を着た女の子が挨拶をしていた。クラスではかっこいいって言われているけど、

「……なぁ桐崎、あいつ」

「つぐみ!!」

「お嬢。」

とこの時点で知り合いってことが確定する。

これまでは読んでいたんだが

「お久し振りです。お嬢ー!!」

と桐崎に飛び込む転校生。

「おぉ~~~~なんだぁ!?」

「転校生が桐崎さんに抱きついた~~~!!」

「バ、…バカ…!!何やってるのよ。皆の前で。」

「あぁお嬢…!!お会いしとうございました…!」 

「……まためんどくさそうな奴を」

とため息をつく。

女子とかは修羅場とか言ってるけどまぁ寝るか

「ちょっと夕貴助けて。」

「……はぁ。」

と教科書を丸めて転校生の頭を叩く

「何するんですか。」 

「とりあえず座れ、せめて休み時間にしてくれ。そういえば、今日こいつからラーメン奢ってもらう約束しているけど、一緒に行くか?桐崎の事聞いてみたいし」

「……貴方誰ですか?お嬢と仲がいいみたいですけど。」

「あーあのメガネから聞いていると思っていたわ。」

と目付きが変わる。なるほどこれが本性か。

「まぁ千棘から聞けばつぐみさん」

と挑発してみる。クラスの皆は修羅場だと思っているから挑発しやすい。でも俺はこの瞬間こいつのことは敵だと認識した。

 

「あー、けっこうくるな」

と俺は弁当を食べながら集に言う。

「イライラしているなゆう」

「そりゃ、あいつのおかげで全然桐崎に話せていないからな。」

ずっと桐崎にまとわりついている転校生に腹が立つ。

「なんか女だとわかっていてもさすがにな」

「おっゆうは気づいていたのか?さっき楽男だと思っていたぜ。」

「そりゃここが少し膨らんでいたからな。」

胸を叩く。正直服が変に膨らんでいたのでわかってしまった。

「まぁそうだよな。でもゆうって意外とムッツリだよな。」

「興味がないよりかましだろ。俺だって一応男だぞ。」

「ちょっと夕貴来てー」

「はいはい。集悪い」

と俺は桐崎のところにいく。

「なんだよ。」

「彼!この人が私の恋人よ…!」

「…ども」

「おお」

といかにもわざとらしく笑う転校生。さっさと話をつけたいな。

「なぁ鶫さんでよかったよな。少しいいか?」

「はい?なんでしょうか?」

「桐崎、ちょっとこいつ借りるぞ。」

「えっちょっと」

「どうせこいつは桐崎のいないすきを見て俺に話かけてくるつもりだったと思うしそれなら先に仕掛けた方がいいと思って。」

とニヤリと笑う。すると

「分かりました、お嬢ちょっといってきますね。」

「えっつぐみまでちょっと」

「屋上でいいか?」

「えぇ構いませんよ」

と俺と転校生は屋上に出る。

「んじゃ少し話そうか。ブラックタイガーさん」

「……なんだ知ってたのか?」

「まぁな、日本では余り知られてないけど、アメリカで桐崎のことを誘拐しようとしたアウトライオンを一夜で壊滅させたって友達から聞いてな。二週間前からアメリカで消えたって話題になっていたらしいぞ。」

「さすがヤクザの二代目って言ったところだな。」

「残念だけど俺はそっち側じゃあないからな。ヤクザの二代目なんてつぐつもりはないから。」

と苦笑する。もとよりヤクザの二代目よりやりたいことがあるからな。ってかヤクザ嫌いだし。

「まぁそんなことはどうでもいい。どうでもはっきりさせておきたいことがあるんです。」

「俺は桐崎のことは好きだぞ。まぁ信じてもらえるかは別だけどな。」

「じゃあお嬢のためなら死んだっていい?」

「それは絶対にヤダな。」

「はっ?」

「絶対にヤダって言ってるんだよ。聞こえないのか。」

と俺は笑う。

「ふざけるな。」

と転校生はきれている。でも

「ふざけるはずがねぇだろが。本気で言ってるんだよ。」

とニヤリと笑う。

「誰かを守って自分が死ぬ。そんなのバカがすることだ。それが好きな人ならなおさらな。」

「貴様そんなことでお嬢が好きって言えるのか。」

「あぁ、大好きだよ。」

と俺は言う。

「てめぇらとはやり方だって考え方だって違う。でも俺なりに一番大事な奴なんだよ。家族や友達とくらべられないくらいな。それにな、桐崎は俺の恋人なんだよ。てめぇごときの自己満足だけの奴なんかに絶対わたさねぇ!!」

それだけは絶対譲れないんだ。最悪の場合実力行使になったとしても。

「恋人だと…ほう…」

「ちょっ、二人ともストップストップ、」

「桐崎止めんな」

と完全にヤル気になった。てめぇごときが守るって言うな。

「これは俺とこいつのけんかだ。桐崎は見とけ。」

「ほう、私に勝てるとも」

「あぁ、勝てるさ」

「なら一条夕貴、貴様にお嬢をかけて決闘を申し込む!!!」

「望むところだ。時間は放課後のここでいいか?」

「あぁ場所ならどこでもいい。でもお前が負けたらどうなるかわかってるだろうな。」

「奴隷でも殺されてもいいさ。そのかわり俺が勝ったら少し付き合え。本心を話してやる。」

「あぁ、でも負けるはずはないがな」

と教室に転校生は戻っていった。

「ど、どうしよう……」

「さて俺も教室に帰るか、」

「ちょっと夕貴どう言うことなのよ。」

「だから意見が食い違ったからこういうことになったんだよ。さすがに引けないところつかれたから仕方がないだろう。」

「あんたバカでしょ。」

「バカだよ。でもあいつほどじゃないけどな」

と俺は苦笑する。

「……なぁ桐崎は俺が死んだらどう思う。」

「何よ急に。」

「いいから、」

「……嫌に決まってんでしょうが。」

と桐崎が下を向く。

「ずっと守ってもらってばっかりでお礼も何もできてないもん。あんたが負けたら絶対許さない。つぐみから言って死ぬ以上の命令をしてもらう。」

その一言だけでも十分だよ。

「だったら勝たないとな。まだ時間もあるから準備してくるわ。」

と俺は職員室の方に走っていった。

 

放課後、俺は約束どうり屋上にきた。

すると 

「……フッ逃げずに来たことはほめてやる」

「あんな啖呵切って逃げるはずないに決まってるだろ。」

と俺は気合いをいれる。

「……でもいいか?この騒ぎはなんだ?」

「それは俺にもわかんねぇよ。」

とまわりにはギャラリーができており、転校生の応援+食券で賭けまで行われている。賭けも転校生が圧倒的らしくまぁ完全アウェー状態だ。

「このコインが地面についたら決闘開始だ。覚悟はいいな!」

「あぁいいぜ。」

と転校生がコインを投げると銃を構えるけど俺は屋上を出た。使ってくるのはわかっていたので最短ルートを把握していた。

「待てぃ一条夕貴」

「待てって言われて待つ奴はいねーよ」

と階段を飛び降り。教室の中に入って混乱させていく。

「待てー正々堂々勝負しろー」

「だから正々堂々勝負って言ってテメーは銃使ってるだろうが」

と俺は目的の場所につく。あそこはずっと俺があいつに唯一転校生を怪我させずに勝てる場所だ。あいつが怪我しても桐崎は傷つけることにある。俺はあいつのことが嫌いだが、桐崎はあいつのことが好きなのだ。

「さてこれで終わりだ」

と俺は三階から飛び降りた。

「逃がさん」

と後ろから聞こえる。でも

「だから終わりっていっただろ。」

と落下していく先はプールだ。さすがに受け身も準備してないとできない。

そして2つの水柱があがる。俺は泳いで転校生を救う。

溺れたら大変だからな。

ひきあげてすぐに息の確認すると呼吸もしているし大丈夫だろう。完全にノビているけどそれは罰として受けてもらう。

そして数分後

「……ん」

「大丈夫か?」

と転校生が目覚めた。

「俺の勝ちだ。」

「あぁ、そうだな。」

と転校生はかなり落ち込んでいたらしく下を向く。

「なぁお前に足りなかったのがなんだか分かるか?」

「……」

と首を振る。

「お前さ、何で自分は生きようとしないんだよ。俺も最初は桐崎さえ助かればいいと思っていたんだ。でもなお前がくる前に桐崎がここで溺れたんだよ。」

「それは本当か?」

「あぁ準備体操をしてなくて、両足がつったんだよ。とりあえず助けたんだけど、あいつが目覚めた時俺は泣いていたんだよ。何も意識してないのにな力が抜けて少しの間動けなかったし」

とあの時を思い出すだけで寒気がする。

「……怖かったんだ。スゲー怖かった。桐崎が死んでしまうんじゃないかってな。そのときは桐崎がちゃんと生きていたからよかったけど、お前は桐崎にそんな思いをさせるのか?」

「……!!」

「俺はそんな思いしてほしくねぇよ。スゲー怖かっただぞ。」

……俺はだから

「卑怯でも汚なくても何でもいい。大事なのは生き残ることだ。汚名だったらどれだけでもいいんだよ。隣に好きな人が笑ってくれるだけで幸せなんだよ。」

あいつが笑ってくれるだけで力が出てくるし、俺だって笑顔になれる。

「これでも反論があるんなら、まだ相手になるぞ。今後はお前が言うよう正々堂々な。女だったから怪我させないように闘っていたけど。」

「いいや、私の完敗だ。」

と転校生が俺の方に向かってきて

「お嬢のことをよろしく頼んだぞ。一条夕貴」

「あぁ任された。」

と握手を求まれて素直に応ずる。こいつ根はいいやつなんだな。

「夕貴、つぐみ、」

「桐崎ここだ」

と声をあげる。けっこう本気で走ったから疲れていた。それに心配かけてしまったから多分殴られるだろう。

「夕貴」

桐崎がきた瞬間俺は抱き締められる。

「ちょっと桐崎お前」

「いいから黙って」

と後ろからヒューヒューとからかわれるけど、

「……」

と静かに涙を流していた。ずっと心配してくれたんだろ。

「バカ、無茶して。」

「ゴメンな心配かけて。でも勝ったから」

すると皆がため息に代わる。多分集主催の賭けに負けたからだろうな。

「いやー儲けた儲けた。」

「集後から少し分け前よこせ」

「わかってるよ。」

としてもかなり儲かったのだろう。とても嬉しそうだった。そういえば

「小野寺、宮本、鶫お願いしてもいいか?」

「えっどうして?」

「わかったわ。」

「小野寺、つぐみは女だぞ。」

「「「えーー」」」

とクラスメイトから驚きの声が聞こえる。

「気づいていたの?鶫が女の子って」

「あぁ、集が胸の大きさでわかったとか言っていたからな。」

「なっゆう」

と集が逃げようとしているがもう遅い

「ちょっと一条夕貴それは本当か?」

「あぁ」

「ちょっと待ってそれゆうが」

「問答無用」

と集が追いかけられているのを見て笑う。

「桐崎帰ろうぜ。んでラーメン食いにいこう」

「あんたの奢りね。」

「あぁ、了解。」

とまずは着替えてからいつものラーメン屋に食べに行ってそれから、少し昔の桐崎の話でも聞いてみようか。



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オトウト

「ってことがあってな。」

「兄貴無茶しすぎだろ。」

楽から言われる。今はプリントを教室に運びながら、昨日のつぐみとの決闘の詳細を楽から聞かれていた。

「まぁ結論、つぐみが女で決闘して勝った。そして集が身代わりになったんだよ。あいつ俺のおかげで大儲けしたからこれくらいの報いは受けてもらわないと。」

「ふーん。でもあいつが女だとは思わないだろ。」

「まぁ、顔とか普通にかわいいしこれから男からも女からもモテそうだけどな。」

「そうなのか?」

「……だから楽は集から鈍感って言われるんだよ。」

とため息をはく。どうみても楽は小野寺の好きな人が自分だってことを気づかないらしくしかもヘタレなのでまったくくっつくとは思えないのだ。

そして教室につくとリボンをつけて、女子の制服を着たつぐみがいた。なんか普通にかわいい。多分桐崎が仕立てたんだろ。

「おーなんだそのリボン似合ってんじゃんかわいいな」

「なっ…」

と楽の言葉につぐみは顔を真っ赤にさせて

「かわいくなんてない。」

とどうみても照れているのはわかった。

……鈍感、ヘタレ、たらしって最低な三要素を身に付けている弟だった。

 

「それでは改めまして自己紹介を。鶫誠士郎です。名前は男のようですが正真証明女です。」

すると小野寺、宮本、楽に自己紹介しているつぐみ。でもやっぱり男子の制服の方がいいらしくそっちに着ていた。

「あんたつぐみに何を言ったの、あの子あんたのことをかなり気に入ったらしいけど。」

「まぁ、色々な」

とつぐみにはプールで言ったことは黙ってもらっている。桐崎なんかにバレたら恥ずかしすぎるからな。

「ついでにクロードもあんたのこと認めたらしいわよ。」

「おっそれはありがたいな。」

「どうやらプールの時話したことを盗み聞きしてたらしいわよ」

「……えっ」

笑顔が固まる。

「夕貴のことをウチの次のボスにしたいって言ってたわよ。」

「ちょっと待って、聞かれていたの?」

「えぇ、パパもクロードの録音したやつを聞いていたらしくて、」

「……もうやだ」

「ちょっと夕貴どうしたの?」

あんな恥ずかしいことを聞かれるってかなりきつい。後々凄く後悔したしな。

「そういえば、一条夕貴」

「なんだよ。」

「これから、私がお前の警護を任された。よろしく頼む。」

……はい?

「えっとどうして?」

「クロード様からの命令だ。お嬢と一条夕貴を守れってな。」

「警護なんかいらねーよ。まったくあんたらのところも過保護だよな。」

「そりゃ跡継ぎがお嬢しかいないからだろう。」

……あっそうか。俺と楽は双子だから俺がなんかあっても楽が継ぐことができるけど、ビーハイブは桐崎しか跡継ぎがいないのか

「そうか、悪いことを聞いた。すまん。」

「あんたって自分が悪いと思っていたらすぐに謝るよね。」

「まぁ仲が拗れて険悪になるのが嫌いなんだよ。自分が正しいと思うことは絶対引かないけどな。」

「まぁ兄貴のいいところであり悪いところでもあるからな。」

と頭をかく楽

「そういえば兄貴、いつもの手伝ってくれないか?」

「まぁ今日はバイト休みだからいいけど。」

「えっ、何をするの?」

あぁ桐崎は知らなかったな

「楽は飼育係なんだけどここの動物かなりおかしい動物ばっかりいるんだよ。ワニとかカピバラとかヘビとか」

「何でそんな動物がいるんですか?」

全部楽が拾ってきました。

「んで、近くのペットショップで直接買うしかねぇんだよ。」

「ちょっと待って夕貴、今日約束してたケーキバイキングに連れて行ってくれる約束は?」

「それ明日だぞ。」

「そ、そうだったけ?」

うまくごまかせたかな。完全に忘れてた。

「お待ちくださいお嬢。なら私が一条楽の買い出しに行くので、一条夕貴と行ってきてください。」

「えっそう。」

「お前2日もケーキ食べに行くのかよ。せめてパフェかなんかにしろよ。」

「えー今日は私が奢るからさ」

「そんなにケーキ食べたいのかよ。あーわかったわかった行くから。」

「本当に桐崎に弱いよなゆう」

といつの間にか入ってきていた集に言われる。たしかに少しどころかかなり甘いよな。

「と言うわけで今日は私がついていく。」

「あっそうだつぐみ」

と名案を思い出したのか桐崎はつぐみを呼んだ。

 

「あー美味しかった。」

「まぁ美味しかったけどさ」

と俺はソーダを飲みながら言う。

桐崎とほぼ毎日一緒にいるおかげで好きなものも得意なことも知っているつもりだったけど。

「お前メイクとか自分でやってたんだな。メイクさんか誰か雇っているんだと思っていたよ。」

つぐみを見てビックリした。少し待っていただけでかなり女の子らしくなっていた。

「それって私が女の子らしくないって言ってるの?」

「いや、お前メイクうますぎなんだよ。それにあんな短期間でお前メイクしてきただろ。多分簡単なやつだと思うけど。」

「……気づいていたの?」

「まぁな。」

軽くほうが赤くなってたしな。

「ずっとお前が転校してきてから隣で見てたんだ。さすがに気づくさ。」

「ふーん」

となぜか嬉しそうにしている桐崎。すると俺の好きな曲がなる。ってことは

「悪い桐崎、メールきた。」

「あっ見ていいよ」

とメールを見ると楽からで

「桐崎つぐみが靴擦れ起こしたらしいぞ。」

「えっ、あっあの子ヒール初めてだった。」

「しかも隠していたらしくけっこう重症だから送ってくだって、あいつに住所教えていいか?」

「うん。いいけど、私たちも帰ろう。」

「わかった。でももやしとあんたってずっと似てないと思っていたけど時々やっぱり兄弟なんだって思うことがあるわ。」

と桐崎が言う。

「まぁ一応兄弟だしな。似ている点は両方無茶することぐらいしかねぇだろ。」

「でも優しいでしょう。私も転校してきた当時にノート書いてもらったことあるわ。」

「やりそうだな。楽は優しいからな。」

「あんたも優しいでしょう。」

と席を立つ。

「ほら行くぞ。」

「でも会計は?」

「もう払ってあるから急ぐぞ。」

と俺は自転車に乗る。

「桐崎急げ。」

「あぁうんちょっと待って」

と後ろに乗る桐崎。そしてこぎ始める。

でも俺はそんなに優しくなんかねぇぞ。桐崎。

多分、俺は桐崎以外には優しくない。桐崎にだけ優しいんだよ。それに桐崎が乗っているときだけ自転車のこぐペースを落とすからな。友達が怪我してようがな。

 

「んじゃな。桐崎」

「えぇ、じゃあね。後あんたもつぐみのことありがとうね。」

「あぁ、つぐみにもお大事にいっといてくれ。」

と楽が言う。そして俺たちは桐崎の家を後にする。

「そういや楽と帰るの久し振りだな。」

「前まではほとんど一緒に帰っていたからな。兄貴がぼっちだったから。」

「だけど、桐崎が来てからはなんか色々あったよな。なんか守る順番ができたつーか。凄く無くしたくないもんができた。」

「それってあのゴリラのことか?」

「あぁそうだよ。」

するとキョトンとする楽

「どういうことだ。」

「そう言うことだよ。俺は冗談が嫌いってこと知ってるだろ。」

「ウソだろ。」

と楽はビックリしていたけど

「なら応援するよ。兄貴が好きな人ができるって聞いたことなかったし。」

「まぁな。人と関わろうとすら思わなかったけどな。」

と苦笑する。

「まぁこの調子じゃ、楽よりも早く告白できそうだな。ずっと進展しないお前じゃあ。」

「……」

「否定しろや。まったくなぁ、小野寺に彼氏できても知らねーぞ。」

「まさか小野寺に好きな人いるのか?」

「……」

さすが楽だな。

「自分で聞け。俺は優しくないからな。」

「どの口が言う。」

「でもお前女から嫌われる三要素持ってるからな。」

「えっマジで」

「マジで。鈍感、たらし、ヘタレっていう三要素。」

「ウソだろ。兄貴ウソって言ってくれ。」

「だから言っているだろ。俺は冗談が嫌いってな」

と自転車をこぎ始める。でも俺と楽このコイが成就しますように少し動きだしますか。



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オミマイ

おきにいり人数が100人突破しました。
読んでくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!


ピピ

と俺は体温計を取り出すと39.1℃をしめす。

「マジか。風邪かよ。」

と布団がかぶる。昨日あたりから寒気があったけどバイト行ったら多分悪化したな。どうやら楽も多分俺の奴がうつったのか風邪をひいたらしく自分の部屋でこもっているらしい。まぁ小説でも読みながら寝転んでいればいいか?

ちょっとその前にっと

最近やっと買ったスマートフォンで小野寺にメールを送る。

さて送ったし、化○語でも読むか。

そして化○語上に手を伸ばした時

ピーンポーン

と玄関のベルがなる。でも俺の部屋は一番奥にあるから基本は楽か誰かが出るんだけどな

そして足音が聞こえてくる。多分メールした小野寺が来たのかな?まぁ俺には関係ないからな。

俺は赤い本を下から拾う。お世辞にも俺は部屋がキレイとは言えない。むしろかなり汚い方だ。参考書とかそこらに落ちている。楽と集はこの部屋の汚さが知っているので基本俺の部屋に近づくことは少ないから完璧に油断していた。

「何この部屋」

と一言声が聞こえる。

桐崎が俺の部屋に入ってきた。そしてすぐに後悔した。そしてその人から目線をそらす。

「……俺の部屋だよ。」

「あんたこんな部屋で生活してたの?」

と桐崎はあきれているが

「仕方ねぇだろ。片付けるのは苦手なんだよ。それに友達とかは来たことないからここ。」

この部屋に出入りするのは楽と父さん、そして竜くらいだ。

「まぁいいけど。それでからだの方は大丈夫なの?」

「一応な熱があって寒気がするだけ。だから生姜湯かからだを温めるもん食べてたら治るさ。」

「そうそりゃ良かった。」

とほっとしている桐崎。

「そういやお見舞いに来てくれたんだろ。サンキューな。」

「……本当あんたは素直なのにね。」

「聞こえてるぞ。」

と俺は苦笑してしまう。どうせ楽から珍しいとか素直じゃないとか言われてきたのだろう。

「まぁ、基本落ちてるのは本とゲームだけだから。汚いところで悪いな。」

「あんた少しくらいは片付けなさいよ。」

「掃除はしてるんだよ。ただ小説とゲームを買いすぎてな。タンスとか本棚に入らないんだよ。ずっと休日は暇だったからな、それしかやることなかったんだよ。」

「あんた本当に友達いなかったのね。」

と同情な目線を送る桐崎。

「悪かったな。」

と少し布団に入る。するとまたしても玄関のベルの音が聞こえてきた。今度こそは小野寺だろう。

「あれ誰かきたのかしら?」

「多分小野寺、楽のこと教えてあげたらすぐくるって言ってたからな。」

「あれ、あんたって子咲ちゃんの電話番号知ってたの?」

「あぁ、恋話とかしてる。恋愛相談のってあげたりしてる。」

と楽のことを話すことが多いな。

「それって子咲ちゃんに好きな人いるってこと?」

「自分で考えましょう。」

と俺は寝転ぶ。そしてスマホから竜にメールを送り布団に入る。

「ゴメン桐崎ちょっと寝る。竜にもてなしの飯つくっておくように言ったから小野寺と食ってくれ。」

「えっ、いいの。」

「朝早くから見舞いにきてくれたお礼だから」

と布団の中に潜る。

そして目を閉じる。正直誰かが見舞いに来てくれたのが嬉しかった。しかもその人が好きな人ってことが

そして意識を手放した。

 

高原の中に一人ぼっちで歩いていた。

どこを探していても、らくがいない。

「らくー、どこいったんだよ。」

と旅行先で勝手にどこか遊びにいくのはぼくの役目だった。

夕陽が沈む時間ずっと歩いて疲れている。

「……はぁ」

とさっきから同じ風景ばっかしだった。

ねぇどうしたの?

と女の子の声が聞こえる。見るとぼくより小さいけど明るそうな子だった。

「弟を探しているんだよ。えっと元気な男の子知らない?」

「えっとらくのことかな。知ってる私の家に遊びに来てるよ!」

「うんそうだよ。ぼくは一条夕貴。らくのお兄ちゃんなんだ。パパから楽を呼んできてって言われているんだ。」

「私は○○だよ!じゃあこの言葉の意味を教えてくれたららくのもとにつれていってあげる!」

と笑って言う少女。そして笑って少女が言う。

「ザクシャ イン ラブって知ってる?」

 

「……」

目覚めは最悪だった。時計を見ると深夜0時もう夜中だ。

自分の汚い部屋はもちろんのことだが、俺は今みていた夢を思い出す。

「なんでこの夢を今見るんだよ。」

と叫んでしまう。あの女の子と初めてあった思い出。俺にとったら悪夢でしかなかった。

俺にとったら、初恋は地獄だった。だから俺はあのときずっと弟のことが好きな女の子にコイして失恋して告白もせずに別れた。

しかも最後の言葉はまたね。楽みたいにちゃんと物で残っていたらいいけど、もし覚えていたら奇跡としかいいようがない。

「ゆう坊っちゃん大丈夫ですか!!」

と竜たちが急いでくる。すると少しだけ落ち着いた。

「すまん、起こした。大丈夫だ。」

と頭にのっていたタオルで冷や汗をふく。んタオル?

「竜、お前ずっと看病してくれたのか?」

「看病していたのは桐崎のお嬢ちゃんですぜ。」

「……えっ?」

「夜遅くまで濡れタオルをずっと変えていましたよ。さすがに九時回ったら帰りましたけど、」

……あいつ。

「本当にいい彼女をお持ちになりましたね。」

「あぁ、俺にはもったいないくらいの彼女だよ。」

と俺は寝転ぶ。

顔が熱い。でも多分熱のせいじゃない。

……どうしよ。桐崎にこれからどんな顔して会ったらいいのかわからない。しかもかなり嬉しくて凄くにやけてしまう。でもあの夢を見たのは多分後悔しないようにするためって言うことにしとこう。そして

今度こそは好きって伝えよう。

 

翌日、俺は早めに起き風呂からあがる。

「おはよう、兄貴」

と楽が起きてくる。

「おうおはよう。昨日小野寺来てただろ。なんか進展あったか?」

「……それが途中に青汁と栄養ドリンク、黒酢にレバーと納豆、ひじきに明太子とサプリが入った小野寺のお粥を食べたら気絶してしまったんだよ。」

「……えっ?今ありえない言葉が聞こえてきたんだけど。」

「……マジでまずかった。でも桐崎のお粥もヤバそうだったけど」

「俺はずっと寝てたからわからないけど、」

「なんか黒色のどろどろした物ができていたけど。」

マジか寝ていて助かったかも。

「……あいつらに料理させたらダメだな。」

と結論をだして、今朝の朝食は普通のおいしい楽の朝食だった。



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コクハク

「だからぁ、ずっと付いて来なくでいいってばぁ」

と桐崎がつぐみに言う。

「そういう訳には参りません。いつ何時でもお嬢達の側にいてお守りするのが私の務め。」

「と言って本当は久しぶりにあった桐崎に甘えたいだけだろ。」

「ち、違う。」

と慌てているつぐみ。こいつはなぜかヒットマンなのに考えが表情に出てしまう。致命的なんだけどなぁ。

「表情に何でわかったって出てるぞ。もう少しポーカーフェイスって言うのを覚えろよ」

「うっ」

「まぁ久しぶりなのは分かるけどその調子だったら3年間持たないぞ。」

「でも私はクロード様からの命令が」

と少し揉めていると前から楽が歩いてきた。

「おい兄貴に」

ガンッ!!

とつぐみが壁に顔をぶつける。

「どうしたのつぐみ」

「いやなんでも?」

つぐみ楽を見た瞬間つぐみの顔が真っ赤になる。まさか、つぐみも楽に惚れたのか。しかも楽も桐崎も気づいてなさそうだ。

「私に寄るな触るな話しかけるな!!」

「……俺なんかしたか?」

「さあ?」

「夕貴、何にやけてるの?」

やば、俺も顔に出てたか。

「行きましょうかお嬢、一条夕貴。教科書お持ちします。」

「俺はいい。」

とつぐみに断ると

「あ、肩にほこりが」

と楽がつぐみの肩に触ったら桐崎の教科書を持ったまま放り投げた。

「ちょっ…!!?どうしたのつぐみ…!!?」

「ええー!?そんなに触ったらまずかったのか…!!?」

誰も気づいてないのか?こんなにわかりやすいのに。

「突っ込み不在って辛いな。」

と小さな声で呟いた。

 

放課後俺と桐崎は中庭に呼ばれた。

「どうしたの相談って」

「いえ…大した事ではないのですが…」

と俺はこんな茶番につきあわないといけないのかな?

と真剣なようすでつぐみは話し始める。

「実は最近体の調子がおかしいのです。ある条件下でのみ体に変調が現れるという今までに経験のないもので。」

「ふーんどんなのなの?」

「それが特定な人物の前でのみ動作が激しくなって…胸も苦しくなって顔も熱くなりその人物の前では会話もまともに出来ない有り様でして…」

「えっ……あんたそれって」

と桐崎は気づいたかな。

「何か大きな病気とかじゃないでしょうね」

と思いきりこけてしまう。

「何やってるのよ。」

「……桐崎お前鈍感なのか?」

「ちょっじゃあんたはわかってるの?」

「あぁ、俺には分かるけど教えないぞ。」

「な、なんでですか?」

「…つぐみのためにならないしこれに関しては俺にも責任がとれないんだよ。自分が自覚しないと意味ないからな。」

「……」

「でも多分それはいいことだからな。医者に行かなくてもいいぞ。俺だってなったことがあるし今でもなっているからな。」

「そうなんですか?」

とつぐみが俺を見る。

「多分な。まぁ女子なら小野寺あたりに相談するのがいいかな。あいつも同じやつ持ってるから。」

「はい、わかりました。ありがとうございます。」

とつぐみが立ち上がり

「でももう少し誰かに当たってみます。」

「あぁ、まぁかんばってこい」

と俺は手を振る。するとつぐみは首をかしげながら歩いていった。

「……はぁ、なんでこんな鈍感ばっかりなんだ。」

ため息をつく。

「あの子もいなくなったからいいでしょう。結局なんなのよ。」

「好きな人ができたんだろ。」

「って恋してるってこと?」

「それ以外には思い浮かばないけど、俺がどうこう言える訳ねぇだろ。」

と俺は桐崎の座っているベンチに座り込む。

「それなら全部納得いくだろ。」

「まぁいくけど、あんた好きな人っていたの?」

「まぁ最近できたって言えばいいかな。」

と苦笑する。

「そ、そうなんだ。」

「ついでにお前の好きな人も分かるけどな。」

「……」

と顔を真っ赤にする桐崎。熱の日あの夢を見て決めたんだ。もう鈍感なふりをするのはやめだ。多分俺が冗談が嫌いなのは知ってるのだろう。

「いつから気がついてたの。」

「うーん、倉に閉じこめられて、クロードに救出された時かな。」

「……そうなんだ。」

と否定もしなかった。多分あってるのだろう。

「であんたの好きな人は誰なのよ。」

「……俺を変えてくれた人だよ。んで鈍感で俺の気持ちにまったく気づかないで振り回されるけど、優しくてずっと俺の隣にいる。ずっと同じ嘘をつき続けている最近転校してきたギャングの娘って言えばいいかな?」

「っ!!」

とさすがに気づいたようだ。顔がゆでダコのように真っ赤になる。

「多分一目惚れだったんだと思う。気づいたのはつい最近だったけどな。んで本当はもう少し後から告白しようと思っていたけど、多分このままじゃあなんも変わらないからな。」

と桐崎の方を向く。桐崎は何を言われるのかわかってるだろう。

「桐崎のことが好きだ。俺と付き合ってくれ。」

とあの時言えなかった一言。

そしてずっと待たせていた。正直、クラスの女子から人気があったのも全部知っていた。でも桐崎以上に俺のことを心配してくれたり、家まできて夜遅くまで看病してくれるやつなんて誰もいない。

そして少し時間がたった。

「……偽物じゃダメなの。今の関係なら後悔しなくていいんだよ。」

「偽物じゃダメじゃないけど嫌なんだ。どうせ3年間でこの関係は終わる。それなら全部最初からやり直したい。」

「……うん。ならよろしく。」

と桐崎は顔を背けて照れながら言う。

「あぁよろしく。千棘」

「なんでいまさら下の名前で呼ぶのよ。」

「偽物から本物に変わったからかな。嫌だったか。」

「ううん、嬉しい。」

と桐崎が照れながらも笑顔を見せる。やっぱりかわいすぎだろ。でもひとつだけ確認したいことがある。

「桐崎は俺で大丈夫か?俺じゃもったいないくらいだけど。」

「ううん、私はあんたのことが好き。大好き。だからずっと私を守ってね。プールでつぐみに言ってたみたいに」

とりあえず誰に聞いたのかは後から聞くとして

「あぁ」

と頷いた。

 

「まったくつぐみが話していたとはな。」

と俺は桐崎を送ってから呟く。結局あの後つぐみに軽く説教してきたんだけど正直どうでもよかった。

でも千棘と付き合うようになったんだよな。

まさか普通に恋人ができるとは思っていなかった。偽の恋人をやるって聞いた時から諦めたのにまさかその人と付き合うことになるとはな。

そして浮かれながら家に入る。

「おう、夕貴帰ったか。ちょっと話がある。」

「……はぁ?」

と俺は父さんに呼ばれる。多分このいい口は大事な話だろう。そして父さんの部屋には今度は楽もいない。

「なんだよ父さん。大事な話って」

「いやーオレもずっと忘れてたんだが、お前に許嫁がいるんだが。」

……

「ちょっと待って、許嫁?なんでそんな大事なこと忘れるんだよ。俺彼女いるんだぞ。」

「偽物のだろ。」

「あっゴメン、本当に付き合うことになったから」

「……それ本当か?」

「あぁ今日告白してきた。」

「……すまんがその許嫁もなんとかしてくれないか?正直ギャングより面倒な相手なんだ」

……あれより厄介って

「まぁ、なんとかやってみるけど知らねーぞ。どうせくることにかわりがないだろうし。」

「さすがお前は話が早い。明日から林間学校だろ。それが終わったら転校してくるらしいからよろしくたのむわ」

「はいはい。」

と俺はため息をつく。明日どう桐崎に話すか考える必要があるな。




やりたいことがあったので早めにくっつけました。そしてサブヒロインが林間学校に出てきます。


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オンセン

スマホが壊れていたため遅れました。
そういえば今日は春ちゃんの誕生日ですね!
早く春ちゃんのところまでいけたらいいなぁ。


……はぁ

と俺はため息をつく。

結局昨日のことを千棘に伝えたけど、かなり怒られた。まぁ告白したその日に許嫁がいるって言えば確かに怒るだろう。ただ許嫁の関係は解消することとデート1回で許してくれた。

でもさすがに怒ってるよな。

と思いながら通学路を歩く。

「おはよう夕貴」

と背中を叩かれる。その方を見ると千棘がいた。

「おう、おはよう。」

「そういえば今日はあんた自転車じゃないのね。」

「荷物が多いからな。荷物も乗せられないだろ。あのちょっといいか?」

「何よ。昨日のことならいいわよ。どうせまた戦争とか面倒なことに巻き込まれるとか言われたんでしょ。それを断れないことは知ってるわよ。」

「さ、左様ですか。でもせめて謝らせて、ゴメンな。」

と頭を下げる。そういえば、

「誰かに言ったか?小野寺とか宮本に」

「うーん、まだ言ってないかな。」

「オレも集にも楽にも言ってないな。昨日は結局お前に謝ったのと父さんから許嫁の名前を聞きだすだけでいっぱいいっぱいだったからな。」

「へぇ、でも名前聞いただけじゃ分からないんじゃないの。」

それがまさかのまさかだったんだよな。

「……炭谷麗香、炭谷産業の一人娘だった。知ってるか日本三大企業のひとつの。そりゃ断ったら大変だわ。」

もし断ったりしたら完全に潰されるからな。

「……ちょっと待ってなんでその人とあんたのお父さんが知り合いなの?」

「父親どうしが小、中、高でずっと同じクラスだった腐れ縁らしい。んで子どもと子どもを結婚させようって30年前にしたのをまだあっちは覚えていたらしい。だから結婚できる年齢になったからこっちに来るらしい。」

「でもなんでモヤシじゃダメなのよ。」

あーそれは俺も聞いたんだけど

「……あいつは刑事総監の娘が許嫁らしい。それもすっかり忘れていたらしいけど。」

30年前の約束と酒で酔った時に約束したらしいけど、相手はよく覚えていたよな。

「……まぁモヤシも大変なのね。」

「ついでに俺に黙っていたから楽にもギリギリまで黙っておくつもりらしい。だからこれ他言無用な。」

と言っておく。まぁ別にバレてもいいらしいけど黙っていた方が面白そうだし。

「まぁせっかくの林間学校だし楽しもうぜ。せっかくの同じ班なんだしな。」

「……ちょっと夕貴、班ってなんのこと」

……そういやこいつ寝てたな。俺でさえ起きていたのに。

初めての林間学校は最初から前途多難だった。

 

んでバスに乗り始めたのはいいんだけど。

「ちょっと一条夕貴ちょっとお嬢にくっつきすぎじゃないか。」

「んじゃつぐみが楽側に近づけよ。こっちだって狭いんだよ。」

ともめに揉めている。バスの最後列に俺達は座っているんだけど

 

小楽鶫千俺

モ宮 集モ

 

と言う席順だった。正直肩と肩がぶつかっている状況だ。心拍数が尋常じゃないくらいあがってる。

絶対集の仕業だろう。男子からの目線も痛いけどちょっと嬉しいな。

「千棘狭くないか?」

「う、うん大丈夫。夕貴は」

「一応大丈夫だけど。でも少し眠いから寝てもいいか?」

「うんいいけど。」

と言った瞬間俺は目を閉じる。そして少しずつ意識を失っていった。

 

「……大丈夫か?」

と楽に言う。どうやら俺が寝てる間色々あったらしく俺と千棘以外が疲れていた。

「どうだった?オレのセッティングしたスバラスィードライブは?」

「…+-で言えば+だろうがお前のことは殴りたい…!!」

「まぁ+だっただけラッキーだと思っとけ。」

と楽をなだめるけど

「俺達はここからが大変だからな」

「えっ、なんかあったけ?」

と首をかしげる楽。わすれたのかよ。するとキョーコ先生が言う。

「よーしみんなよく聞けよー!プリントにも書いてるけどお前らは今から近くのキャンプ場で飯盒炊さんとカレーづくりだ。楽しんで作れよ~」

「あーい」

とクラスのみんなが言っていたが俺達は前に楽が倒れるくらいのおかゆを作った二人だ。料理をやらせたらまずい。

「ー小野寺と宮本は薪を貰ってきてくれ。桐崎、お前はここで指示する勝手に動くなよ。」

と楽も同じことを思ったのか必死に指示さしている。

「んじゃ楽野菜切ってくるから少し頼む」

「おう、」

と野菜は基本俺が切ればなんとかなるだろう。

「あっ夕貴君手伝うよ。」

と小野寺が言っていたが

「お前料理下手だろうが、宮本から聞いたけど前に宮本が小野寺のチョコ食ったら泡吹いて気絶したって聞いたぞ」

「うぅでも切るだけだったら」

「やらせないぞ。今日は見学しとけ。」

と俺は一人で野菜を切って行く。

「そう言えば俺と千棘付き合うことになったから」

「あっそうなんだ」

………

「えっ!夕貴君今なんて!!」

「だから俺と千棘は付き合うことになったっていってるんだよ。」

と俺は野菜を切り終わり水で洗う。そして野菜をボールの中につめこむ。

「そ、そうなんだおめでと」

「あぁサンキュー小野寺。って言ったって何かが変化したわけじゃないし別にいつもどおりだけど。」

と俺は苦笑する。

「でもすごいね夕貴君は。私は全然告白できないのに。」

「んなもん人それぞれだと思うぞ。でも1つ忠告するけど後から取り返しのつかないようになっても知らないぞ。」

と向こうから千棘がやってきた。なんか慌てているように見える。

「どうした千棘、なんかあったか?」

「ううん何でもないの。」

「ならいいけど。」

と結局その後は普通に行動していた。でも千棘が何を考えていたのかは最後まで分からなかった。

 

「おお~!ここが今日オレ達の泊まる部屋か~!」

とオレ達はその部屋に入ると

「これ旅館だろ。」

「わぁー思っていたより広いね。」

「こういうとこウチのガッコ気前良いよな~」

他のところも気前いいけどな。

「でも男女おんなじ部屋で寝るってさすがにまずいだろ。ふすまごしとはいってもな」

「そうか、オレは本当にこの学校入ってホント良かったよ……」

「正直な奴だな。」

「しかも泣くほどかよ。」

と集のことを無視しながら荷物を片付けていく。そしてひとくぎりついたところで

「もうそろそろいいんじゃないか?ちょっと休憩がてらトランプでもしないか?」

「おっいいね。でも普通にやったらつまんねぇし負けたら罰ゲームってのはどーよ?」

「エロい奴はなしな、やったら女子にお前のヤバイ情報流すぞ。」

すると少し考えてから

「じゃあ初恋のエピソードを語るとか?」

「あら、まともね。それくらいだったら。」

「「「「えっ‼」」」」

とオレと集と宮本以外は動揺している。そんなに初恋の話をするのが嫌だったのだろうか。

でも結局はやることになり種目はババ抜き。正直この種目においては1度も負けたことがなかった。でも今回だけは違った。

オレは千棘から引き宮本に渡すことになった。でも千棘がジョーカーを引いたときにとても泣きそうな顔をしていたので引いてしまい、宮本はまったくジョーカーは引かなかった。つまり

「……」

「よしこれであがり。」

と最後の楽があがり、俺の敗北が確定した。

「はぁ、まぁしゃーないから話すけどさ…とりあえず集合時間近いからそれが終わってからでいいか?」

「あっ、本当だ。もうこんな時間だったんだ!」

「やべ楽、ゆう行こうぜ。」

と皆が走り始める。

まぁ多分当分の間は多分問われないだろう 逃げられたかな。覚えていたらそのときは素直に話すか。

「あぁ急ごう!」

と俺は集達の後を追った。

 

「は~食った食った!」

「めちゃくちゃ豪勢だったよな。今日の晩飯。」

と俺は集に続く。何で公立なのに時々豪勢になるんだろう?

「んじゃ風呂行こ~ぜ~!」

「……のぞきしようとか言わねーだろな。」

「お前のことだからな。やったら死なない程度に殴るけどな。」

「…ゆうがいるからできるわけないだろ。」

と集は苦笑する。

「それに俺だっていつまでもガキじゃねーしそれに男子と女子の入浴時間は違うんだし」

なら安心かな。千棘の裸なんか見ようもんならどんな状況でも殴っていたところだった。

「んじゃ風呂さっさと混む前に入ってしまおうぜ!」

と俺達は風呂に向かう。そして風呂場に向かうと。

「うぉー広い!」

と俺は誰もいなかったので飛び込んだ。

「兄貴、体は洗ったのかよ。」

「流石に洗ってるぞ。」

てかこの広さは本当に旅館だな。

「あー極楽極楽」

とゆっくり浸かる。  

「おいゆうおっさんくさいぞ。」

と集が言う。そういえば俺達以外誰もいないから報告しといた方がいいか。

「集、楽ひとつ報告。俺千棘と付き合うことになった。」

「ふーん」

「おっ、やったじゃんゆう」

とまた少し経ってから、

「えっ今なんて言った?」

「ゆうと桐崎さんが付き合うって言ったと思うんだけど。」

「集あってるぞ。ついでに来週から俺の許嫁まで来るらしい。」

「「……はっ?」」

と楽と集が驚いていた。

「それマジ?」

「大真面目。ついでに千棘には話してある。ついでに全部昨日の出来事だから。」

と風呂に浸かりながらのんびり言った。

「正直どう接したらいいのかまったくわからないんだよ。会ったこともないしな。」

「でも、兄貴が好きなのは桐崎なんだろ。それならそのことを正直にいえばいいんじゃねーか?」

「まぁ楽の言うとおりじゃないか?」

とは言ってるけどな

「よく考えてみろよ。会ったことのない人のことを振らないといけないだろ。しかも多分好きじゃない相手に」

とため息を吐く。

「まったく炭谷産業のお嬢さんとはな。」

「……兄貴それ本当か?」

「あれっ楽知っているのか?」

「ゆう覚えてないのか?俺達とよく遊んでいただろ。」

「集も覚えているのか」

と俺は昔を思い返したがまったく炭谷って名前が浮かんでこない。

……ヤバいマジで誰だっけ?

「まぁいいじゃんゆうは」

「兄貴は思い出さないほうがいいだろうしな。」

……うんどういうことだよ

「まぁ気にするな。」

「あれ?集達先入っていたのか?」

「まぁな。そういえばのぞきポイントはみつからなかったが会話が聞こえる場所は見つかったぞ。」

…こいつはやることはやってたのか。

まぁ今回くらいは見逃してやるかと俺はゆっくりと温泉を楽しんだ。



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クラヤミ

 

二日目の夜俺達は宿の前に集まって最後の行事を行おうとしていた。

「あー腰いてー」

「あんた大丈夫?」

昨日集が女子の部屋をのぞき込んだせいで俺と楽まで巻き添えをくらい宙吊りで一晩を過ごすことになったのだ。

「大丈夫だよ。それよりお前今日の肝試しって大丈夫か?暗いところ苦手だろ。」

「うぅ、大丈夫じゃないかも。」

「だよな。ついていってやりたいけど、ペアはくじ引きだしな。」

と俺はため息をつく。

「まぁ一応楽と集には交渉して変わってもらえるように説得したから三分の一だけどな。」

「あんたそんなことしてたの?」

と呆れている。でも仕方ないだろう。

「だって最近二人きりになれる機会少なかったじゃん。ゆっくり話したいし。」

「まぁ確かにそうだけど。」

千棘は納得していたけど他にも理由があった。確か、ペアになった女子は必ず手を繋がなければならないらしい。正直千棘が他の男子と手を繋いで歩いているところを見たくない。

「よーし全員注目。」

とキョーコ先生がスピーカーを使い大声で言う。

「これから恒例の肝試し大会を開始する!!準備はいいか野郎共ー!!」

「「「おぉー!!」

と皆から歓声があがる。

「じゃあ先生達はここで一杯やってるんで。生徒の自主性を重んじて?後はテキトーに上手くやってくれ」

ただ飲みたいだけだな先生は

「それじゃあ女子からクジ引いてください!」

「じゃあ行ってくる。」

「あぁいってらっしゃい。」

と千棘を送り出す。まぁダメ元で狙ってみますか

「これじゃあ次男子、一条君のお兄さんからね。」

俺はテキトーに引くと12って書いてあった。

「夕貴何番だった?」

と千棘が言ってくる。

「12番だった。千棘は?」

「私は11番。ルリちゃん達も違った。」

「んじゃ後は集と楽に頼むしか無いってことか。」

と結局千棘も他の友達に頼んでいたのか少し残念そうだった。まぁしゃーないか

「おいゆう何番だった。」

と集が言ってくる

「俺は12番だよ。千棘は11番」

「俺は10番だった。」

「ってことは舞子君はつぐみとだね。」

「そういや楽は?」

「小野寺と一緒らしいぞ。」

ほーあいつはよかったんじゃないかな。

「そういや、俺って相手って誰だ?」

「あっうん私。」

後ろからショートカットの女の子。確か村杉だったけ確か千棘がいなかった時は人気あったよな……

「……」

と千棘がうらやましいのかじー村杉の方を見ていた。

「えっと11番って誰だ?」

「あっ私。」

と見ると和田が立っていた。

「和田換えてくれないか?」

「いやに決まってるだろう。」

だよな。千棘も人気あるし、しょうがないか……

「んじゃ後でな。」

「うん、行ってくる。」

と手を振って別れる。

「本当仲いいよね。桐崎さんと夕貴君。」

「あぁそれじゃあ付き合ってないしな。」

と俺はちょっと心配してしまう。あいつ本当に大丈夫かな。

 

肝試しが始まってから数十分が経った

……

やっぱり心配になっていた。

「やっぱり桐崎さんの事が心配なの?」

村杉が俺に話してくる。

「まぁな…」

「ねぇ桐崎さんのどこが好きなの?」

と急に村杉が言ってくる。まぁいいか。

「そうだな。危なっかしくて本当は怖がりなくせに強がって無茶してしまうところかな。」

そういやニセコイを始めた時もそうだった。あいつはよろしくって言っていたんだ。多分俺がずっと謝りたかったんだろう。自転車置き場の時泣きそうな顔をしていた。自分がギャングの娘って言えなかったのがつらかったのだろう。だから謝りたかったから、多分少しの間の偽物の恋人関係を了承していたのだろう。

「後先考えず行動してしてさつっこむ。でも、失敗ばっかりしてるけど、本当に優しくて俺が助けてやると素直に感謝の言葉を言ってくれる。そしてまた笑って俺の隣にいてくれるからな。」

「本当に桐崎さんの事が好きなんだね。」

そりゃもちろん

「大好きだよ。」

本心からだった。すると村杉はちょっと悲しそうに

「そっかぁ~……」

と下を向いていた。

「おい一条兄、桐崎さん知らねーか?」

と和田がやってくる。

「ここには来てないぞ。千棘がどうした。」

「それがさぁいくら探しても見当たらなくてさぁ~…」

「あー桐崎さんならさっき森の中入ってくの見たよ?オバケのカッコして。」

クラスの女の子が言う。

「ちょっとどういうことだよ。」

「さっきオバケ役の人がお腹壊したみたいで代役頼んだんだって。」

「……それ本当か?」

またあいつな。話を聞いている限りだと懐中電灯を持たせているから大丈夫そうだけど

「和田君、桐崎さん戻ってきてない。」

「あれ?安達どうした?」

とオバケ役が戻ってきていた?

「いや実はさぁー桐崎さんにオバケ役お願いしたんだけど、懐中電灯に電池入れ忘れちゃって」

「ちょっと待ってってことはあいつ森の中に灯りを持たず一人でいるのか?」

「えっ、夕貴君どうしたの?」

と村杉が言う。

「……そ、そうだけど。」

「ゴメン、ちょっとあいつのところ行ってくる。」

と俺は森の中に入る。あいつまた無茶して

「あのバカ。」

と森をかき分けて中に入る。

そういえば10年前にもこんなことがあった好きな女の子が行方不明になった。そして俺と楽が探して結局楽が見つけて穴に落ちた。

全力で走りながら思い出す。

クソっ

あの時は好きな奴を見つけてやれなかった。いつも  楽が助けていた。

だから今度こそは俺が助けてやりたいんだ。

そして森の中にかすかに赤いものが見えた。そして俺はそこにかき分けていった。すると

「見つけた。」

と声を出してしまう。やっと見つけた。

「……夕貴」

と泣いている千棘に見つけてホッとする。そして抱きしめた。

「ちょっとあんた。」

「無茶しすぎだ。バカ。心配したんだぞ。」

と力を強めてしまう。

「ゴメン。」

と千棘は一言言ってから泣き出した。よほど怖かったのだろう。泣き止むまでは数十分かかった。いつのまにか千棘も抱きしめ返していた。

「……ありがとう。」

と千棘が言う。

「当たり前だ。お前は俺の彼女だからな。無茶していたら俺が絶対助けてやる。絶対な。」

「…うん。私夕貴のことが好きだよ。」

「あぁ。」

と力が入る。

「……もうちょっとこのままにしていい。」

「もちろん。でも俺も」

と千棘は俺の方を見る。ずっと言いたかったこと。

「大好きだよ。千棘。」

「うん。私も。」

と離れたくなくずっと抱きしめ続けた。

 

「あっお嬢ー」

とつぐみが手を振っていた。

「お嬢ー!!心配しましたよー!!」

とつぐみが駆け寄ってくると

「お嬢、一条夕貴なぜ手を繋いでいるのですか?」

とつぐみは俺と千棘を見て言う。

俺と千棘は顔を見合わせて顔を真っ赤にさせながら苦笑してしまう。

「まぁな…いろいろあって」

「夕貴君、つぐみさんに聞いたよ。桐崎さん暗い場所苦手だったんだね。」

と村杉が駆け寄ってくる。

「ゴメンな。肝試しめちゃくちゃにして。」

「ううん、桐崎さんが無事だったからいいんだよ。後桐崎さん」

「えっ、何かな村杉さん?」

「負けませんから。」

と笑って走っていく。あれっ俺いつフラグたてたっけ?

「えっ、どういうこと?」

「そう言うことだよ。」

とため息をつく。こいつの鈍感ぷりにはちょっと呆れてしまう。

「おい兄貴、先生が呼んでいるぞ。」

「はいはいすぐ行く。千棘、悪い少し行ってくる。」

するとちょっと残念そうに手をしぶしぶ離した。

「んじゃまた明日な。千棘。」

「うん。また明日」

と笑っていた。その後俺は先生に単独行動をしてしまったので先生に怒られた。




サブヒロイン登場です。
集は多分千棘とペアになったら主人公に売っていたと思うのでペアを変えました。
るりちゃんはモブと当たっています。
またサブヒロインはもう一人でます。


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アイジン

今クラス中がざわめいている。なぜかと言うと

「今日また転校生がくるんだって?」

「うん、しかもかなりの美人なんだって!」

「ってことは女の子かぁ。」

と今日転校生がくるってことでざわざわしていた。しかし俺と千棘は別の意味で緊張していた。

「今日よね。あんたの許嫁がくるって。」

「あぁ、」

「でも、あんたはあったことあるんでしょ。」

「でも、思い出せないんだよ。炭谷麗香って名前」

と俺は林間学校の後アルバムとか探ってみたがもともと写真に写るのが嫌いだったのもあって俺の写真が全くなかった。

「どうしたの?二人とも。」

と宮本が話しかけてくる。

「今日の転校生が俺の許嫁らしいんだよ。」

「……はぁ?」

と宮本は訳がわからないって顔をしていた。

「しかも夕貴はあったことがあるらしいのだけど忘れているらしいの。」

「集と楽は覚えているらしいんだけどな。」

と俺は首を傾げる。本当にあったことがあるのだったら多分見たら思い出せると思っていた。

「あんた一条君のことたらしって言えないじゃない。」

と宮本の言葉に否定できなかった。

「ほら、全員注目~!!今日は転校生を紹介するぞ。」

とキョーコ先生の声が聞こえてくる。

「じゃあ入って炭谷さん」

「はい」

扉があき、そこから出てきたのは、茶髪のショートカットの女の子。そして見た瞬間思い出した。

「……は、初めまちて。」

と思いきり噛んでいる。

すると男子がその子に見とれる。女の子が顔を真っ赤にして

「炭谷麗香です!皆さんよろしくお願いします!」

するとクラス中から歓声が聞こえていた。俺はそれどころではなかった。

「れいちゃん」

思い出した。俺と楽、集と羽姉とつるんでいた一人だった。小学校の途中で転校したんだけど、

すると俺の方をれいちゃんが見る。まずい

「あっ、ゆう兄だ久しぶり。」

と飛びついてくるのをかわす。

「なんでお前が帰ってきたんだよ。」

「ゆう兄と結婚しにきたんだよ。」

と嬉しそうにしている。

「ちょっと、夕貴君どういうこと?」

と凄く怖い顔をしている村杉さん。しょうがないので説明する。

「こいつは、ってあぶねー。」

「ゆう兄逃げないでよ。」

「集、楽説明頼んだ。俺は逃げる。」

と俺は教室から走って逃げる。ヤバいすっかり忘れてた。

こいつは幼なじみで唯一俺に告白してきたやつだ。

 

「改めまして私は炭谷麗香です。」

と俺の後ろに隠れながら言う。

「あいかわらずだな。れいちゃんは。」

「集。ならとりあえずこの雰囲気をどうにかしてくれ。」

と今の俺は千棘と村杉に手をつながれていて、背中にれいちゃんがいる状態だ。

「でも、まさか集ちゃんと楽ちゃんがいると思いませんでした。」

「俺たちだってびっくりだよ。」

と楽も苦笑する。

「とりあえず炭谷は極度の人見知りなんだ。でも悪い奴じゃあないけど見ての通り俺に昔からくっついてくる奴だ。」

「は、はいよろしくお願いします。」

「ついでに右から村杉杏、小野寺小咲、宮本るり、鶫誠士郎、んで」

と村杉の手をはじいて千棘を俺の前に引き寄せる。

「ちょっと夕貴」

「俺の彼女の桐崎千棘。」

「えっ!」

と皆が固まる。すると

「……ゆう兄彼女いるの?」

「あぁ、いるけど。」

「へぇえっと桐崎さんだったよね。」

「えっ…あっそうだけど。」

そして少し見た後

「……かわいい。ハーフですよね。」

「えっあっうんそうだけど。」

「ゆう兄の彼女だけあってかわいいね~。じゃあ結婚するのは無理だー。」

「えっ……」

「んでさっきの村杉さんはゆう兄とはどんな関係なの?」

「今は友達かな?」

「今はじゃなくて、友達だろ。」

とため息をつく。

「んで鶫さんと小野寺さんは楽ちゃんの彼女?」

「ち、違う!」

「そ、そうだよ!!ただの友達」

「んで宮本さんは恋の相談役?」

「そ、そうだけど。」

……ちょっと待てこいつするどくなってないか?身長も小さなまんまだし、あの頃とほとんど変わってないけど。

「ね~桐崎さん。」

「私のことは名前でいいよ」

「じゃあ千棘ちゃん私を千棘ちゃん公認の愛人にしてくれないかな?」

すると皆の笑顔が固まる。しかしれいちゃんは笑顔で話続ける。

「えっ…」

「ゆう兄が選んだ人なら文句は言わないけど、私もゆう兄のこと好きだからさ……ダメかな?」

と上目づかいプラス涙目を使って千棘を誘惑していた。

「いいかげんにしろ。」

とため息をつく。

「お前な、いきなりきて急に愛人になりたいってどういうことだよ。」

「じゃあ奴隷?」

「お前それ絶対言うな。それ以上はさすがに怒るぞ。」

「ケチ!」

「お前の常識がおかしいんだ。まったく」

「だってお父さんがこれを言ったらゆう兄が喜ぶって」

「あのクソオヤジ実の娘に何を教えているんだよ!」

「あーこの雰囲気なつかしいな……」

と懐かしげに楽が見ている。

「そうだね、小学校とまったく変わってないからなぁ。」

確かにな。

「う~でも、ゆう兄は私の命の恩人だから。一生かけてでも」

「れい。」

とオレは声を大きくだす。するとクラス中が静かになる。

「二度とそのことを言うな……あのことは、オレが悪かったんだ……」

「でも、」

「本当はオレの方が償わないといけないんだ。」

あんなおもいをさせてしまったのにオレを恩人だと思っていることがかなりつらかった。

「ねぇ、あんた達に何があったのかは知らないけど、とりあえず炭谷さんは、夕貴君のことが」

「好きだよ。大好きずっと八年間楽しみに待っていたんだ。そして約束を守りにきたよ。」

とれいちゃんは笑い。

「ただいま、ゆう兄。」

「……あぁお帰りれいちゃん。」

と笑う。そういえばこいつにも言っていたな。

皆は不思議そうにしていたが俺はちょっと嬉しくなった。

 

「あ~集ちゃんも楽ちゃんも変わってなかったな~」

「お前自由すぎるだろ。」

とため息をつく。なぜか千棘と帰るまでついていくと言い出したのだ。

「ねぇ千棘ちゃん、ダメかな、ゆう兄の愛人になったら。」

「あはは。」

と困っている千棘。

「でもそういえばお前なんで俺の許嫁を許可したんだ。あの時お前をきっぱり振っただろうが。」

「うーん、ゆう兄のことが好きだったからかな。私のことを助けてくれたのもそうだったけど、私の初恋相手だったんだよ。」

「えっ……」

と千棘がびっくりする。

「ずっと家の言いなりみたいな私のことをつまんないって言って両親をバカにしたからよくケンカしていたよね~」

「へぇー昔の話はあまりしてくれないから聞きたいなぁ~!」

「……まぁしょうがないな。でも昔は俺も友達作ろうと努力してたんだよ。でもな千棘には昔話しただろう。昔竜が俺とケンカした相手を病院送りにしたって。その相手が炭谷だよ。」

「えっ……」

「昔みたいにれいちゃんでいいよ。でもあの時はゆう兄が助けてくれたじゃん!」

「バカ言うな…あれは俺の自己責任みたいなもんだよ。」

竜が突入した時、少し怖かったんだ。

「始めて血を見たんだよ。俺が悪かったのに。」

「あの傷まだ跡残っているよ。」

と腕に一生ものの傷跡が残っていた。

「でもゆう兄は知らないと思うけど、あの後私も変わったんだよ。もう自分の好きなことをするようにしたし、それに幸せだったんだよ。毎日のようにお見舞いに来てくれたし何よりもあの後も私のことを看病してくれて、」

「あーわかる。心配性だよね~。」

「うん……でもゆう兄はもともとは優しいけど、自分に責任があるって思いこみやすいんだよ。」

「でも何かと困っていたら絶対助けてくれるし。」

「だから私はゆう兄のことが好きなんだ。」

と俺に抱きついてくる。

「おい、あぶねー。」

と千棘を後ろに乗っけている分動けなかった。

「ずっと、ずっと好きだったんだよ!千棘ちゃんにあった時、ゆう兄は千棘ちゃんと付き合っているってわかった。でもね…私諦めないから。絶対にゆう兄の第2婦人になってみせるから。」

と俺は苦笑してしまう。

「ふーん、夕貴と結婚するのは私でいいの?」

「はい……悔しいですけど、千棘ちゃんといっしょにいるゆう兄は幸せそうですから。私は二番手で構いません。ただ私ゆう兄のそばにいることが幸せですから。」

「お前な。友達とか親友とかじゃあだめなのか?」

「嫌です!」

ときっぱり断っていた。

「まったくゆう兄は女心がわかってないんだから。好きな人と結婚するのは夢の一つだけど、それよりも私はゆう兄の子どもを産みたいですから。」

俺と千棘は咳き込んでしまう。

「それに既成事実さえ作ってしまえば、ゆう兄も私のことをめんどうをみてくれますし、」

「おいお前」

「冗談だよ。でもねゆう兄だってハーレムは憧れるって思うでしょう。」

「思わねーよ!俺には千棘がいるんだよ。」

「千棘ちゃんだってゆう兄がモテるのはうれしいでしょう?」

「まぁ……」

「それに私の家を継いだら3人くらい簡単に養えますし!一番は千棘ちゃんでもいいですから。」

「おい一人増えているぞ。それに世間の声っていうもんが。」

「ゆう兄は世間の声って気にしないでしょう!自分が守りたい人は絶対守るって私に言っていたでしょう。」

こいつまだ覚えていたのか。

「それに、私のこといくらバカとか悪口言っていたけど嫌いとは一回も言ってない。本当は私のことどう思っているの?」

その一言に固まってしまう。

「ゆう兄が嫌いっていうなら私諦めるから。本当のことを教えて、ゆう兄は私のこと。」

「嫌いじゃね~よ。ただ恋人として考えたことがないだけ。確かにお前のことは好きだけど、千棘よりも少ない。もし、千棘と炭谷のどちらかを助けてやらないとするんだったら絶対に千棘を選ぶ。」

「そんなことは知って」

「だから今回も千棘を選ぶ。」

ときっぱりいう。

「ゴメン、れいちゃん。俺は正直お前のことは異性として見てなかった。ただの友達として見てたからな。そんな状態でお前と付き合うのも失礼だし、それよりも千棘のことが好きなんだ。」

「……そっか……」

と落ち込んでいるれいちゃん。でも

「……じゃあ千棘ちゃん、ゆう兄に宣戦布告。」

「「はい?」」

「私のことを絶対異性として好きにならせてみせるから。それで千棘ちゃんにもゆう兄の愛人になってみせる。そして全員がゆう兄のお嫁さんにならせてみせる。」

ちょっとこいつ何言ってるの?

「じゃあね、千棘ちゃん、ゆう兄。」

「おいちょっと待て」

と言うが遅かった。もともと走るのが早かったのですぐに見えなくなった。

「ねぇ夕貴、」

「……なんだ?」

「炭谷さんって……けっこう残念な人だよね。」

「……それを言うな。」

とため息を吐く。頑張るところを間違えている幼なじみに頭を抱えた




3人目登場
オリキャラはこれ以上は出てこない予定です。(れいちゃんの両親以外は)


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カイモノ

つぐみ回は飛ばします


あれから数日がたち最初はギスギスした関係になると思っていたのだが

「それで昔のゆう兄ったら」

「へぇ~そんなことがあったんだ!」

「夕貴、あんたね。」

とすぐに仲よくなっていた。ってか

「あのさぁ…オレの昔話なんか聞いて楽しいか?」

あれからずっとオレの小学校の話をしていた。

「あんたに聞いても教えてくれないじゃない。」

「まぁそうだけどさぁ……」

もともと昔話は嫌いだからな

「そう言えば千棘、お前理科準備室にプリント運ばないといけないんじゃダメだったんじゃなかったか?」

「あっ……忘れてた。ちょっと行ってくるね。」

「はいはい。」

と俺は千棘を追い出した。さて、

「なぁ二人ともちょっといいか?」

「う、何?」

「はい…なんですか?」

「ちょっと今日何だけど千棘の誕生日らしいんだよ。」

「えっ、そうなんですか?」

「へ~千棘ちゃん誕生日だったんだ!」

「んで、ちょっと買い物付き合ってくれないか?誕生日プレゼント買いに行きたいんだよ。千棘には今日バイトって言ってあるから」

「つまりデートですか?」

とうれしいそうに村杉が言うけど

「んじゃ、れい行くか。」

「うん。二人きりで行こうか。」

「すみません。調子にのりました!」

と謝る村杉

「まったくまぁ…そう言うことだ。」

「じゃあ私たちも用意しないとね。」

「でもなんで知っているの?」

「まぁ共通の知り合いから聞いた。今日の誕生日パーティーに参加してほしいってな友だちも呼んできていいって言ってたからどうだ?」

「もちろん行くよ」

「私もー」

「わかったそう言っとくよ。」

とクロードにメールを送る。あの後普通に仲良くなったので集栄組の愚痴を言いあっている。

「おや皆さんお揃いで」

とつぐみがやってくる。

「つぐみもう話したぞ。クロードから連絡あった。」

「あっそうでしたか?」

とつぐみは笑う。

「でも、一条夕貴お前今日バイトってお嬢に言ってなかったか?」

「はったりに決まってるだろ。千棘の誕生日パーティーに行かないわけないだろうが。誕生日プレゼント買いに行くんだよ。だから適当にごまかしとけ。」

「わかった!じゃあ参加でいいんだな。お嬢昨日悲しんでおられたぞ。」

「大丈夫、今回はちゃんと参加するから。」

と笑う。それに正直買うものは決まっていた。

 

「お待たせ!!」

とれいが来る。

「おう、後村杉だな。」

と俺は千棘を送った後家に帰って着替えてきたんだけど

なんでこんなに時間がかかるのだろうか?

メイクをしているれいはいつもよりかわいくなっていてびっくりしていた。

「ゴメン、待った!」

と村杉も時間どおりにきた。なんで女子はメイク一つでこんなに印象がかわるんだろうか?

「んじゃ商店街でいいか?」

「うん。大丈夫だよ。」

「ね~ゆう兄どう、変じゃないかな?」

「大丈夫だよ。二人ともちゃんとかわいいし、似合ってるぞ。」

「あっ……ありがと。」

「よかったー」

と二人ともほっとしているけど

「ほら、行くぞ。千棘には内緒できたから早めに済ませるぞ。」

「ちょっと待ってよ!」

と村杉が手を握ってくる。

「これでよしっと。」

「……お前けっこう積極的なんだな。」

「こうでもしないと幼なじみの麗香ちゃんと彼女の千棘ちゃんに夕貴君をとられてしまうもん。イヤだったら放すけど、」

「あのさぁ…オレが千棘と付き合っているだけでとられていると思うけど。」

「そうだけど!でも、あきらめたくないの!!」

村杉ってかなりの負けず嫌いなのかよ。

「それにこんな簡単に初恋をあきらめたくないのよ。だからせめて告白して終わりたいの。」

「……はぁまたやっかいな奴に好かれていたんだな。まぁうれしいけど。」

と頭を撫でる。

「……あんた本当にずるい。」

と顔を背けていた。

「ずるくてけっこう。でも本音だからな。」

「杏姉とゆう兄仲いいね」

「正直なところ林間学校まで話したことないけどな。でも好かれていることは気づいていたしな。ただ、こんなに積極的だと思ってなかったけど。」

「えっ……気づかれてたの?」

「……昔から好意と嫌悪の視線は区別できるからな。クラス全員の好きな人はだいたいわかる。」

もともとそういうのは慣れていた。嫌悪の視線の中で唯一普通に接してくれたのが今のメンバーだからな。

「気にしすぎだよ。ゆう兄は、」

ともう片腕に抱きついてきて

「でも、私はそんなゆう兄が好きだよ。」

「……」

「ゆう兄照れてる。」

こいつは昔から苦手だった。意識しないようにしても、俺のことを一番わかっているので弱いところをせめてくる。

「ほら行くぞ。そんなこと言うんだったらマックドバーガーのプチバンケーキおごってやらないぞ。」

「ひどいよ。ゆう」

とここでれいは固まる。

「ゆう兄なんで?ハンバーガーとかじゃないの?」

「お前確かケチャップ食えなかっただろうが。んでブルーベリーが好きだったからブルーベリーソースのプチパンケーキだと思っていたんだけど、もしかして好み変わっていたか?」

調味料がほとんど食べれなかったので覚えてる。ずっとマックドバーガー行く時はそればかり食べてたから。

「ううん…そうだけど。」

「ならそれおごってやるから、さっさと決めてしまうぞ。」

「本当にゆう兄はずるいよ。」

「それで夕貴君は何を渡そうと思っているの?」

「それがな、」

と思っていたものを言う。すると

「……いいなー桐崎さん」

「うん!!いいと思うよ。」

「本当か、よかったー」

と一安心する。

「でもなんで?」

「俺らしくないけど、たまにはかっこつけていいかなって思ったんだよ。」

「私の誕生日プレゼントもそれにしてほしいな。」

「まぁ、一つは別にいいけどもう一つはな。まぁ考えておく。」

と苦笑する。

「んじゃ買いに行こうか。あと離してくれ、」

「う~ケチ」

「少しくらいはいいんじゃないかな~。」

「また今度やってやるから。千棘が許可したらな。」

と俺は店に向かった。



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オイワイ

お気に入り150人突破にUAが10000突破だと
正直ここまで伸びると思ってなかったので一人でびっくりしてました。
これからもよろしくお願いします!


買い物をし終えていつもは自転車で送る道を上がる。

「えっとここが桐崎さんの家なの?」

「まぁ、そうなんだけど。」

「大きくない?」

とオレは目線をそらす。

「もしかして千棘ちゃんってお嬢様なの?」

「まぁ、そういうところっていうか。俺の同類なんだよ。あいつアメリカ番ヤクザの一人娘。」

「……えっ。嘘。」

と村杉は固まっている。

「ガチだよ。でもオレだってヤクザの長男なんだけど。」

「違うよ!私大した物持ってきてないのに」

あっそこなの?

「大丈夫だよ。私だって大した物じゃないし。」

「ってかオレもそこまで高いものじゃないし大丈夫じゃないか?」

「おっゆうじゃん。お前も呼ばれたのか?」

と集が来る。

「一応彼氏だぞ。呼ばれないわけがないだろ。」

と苦笑する。

「それよりも集が呼ばれてるのがびっくりだわ。」

つぐみにきらわれていたのに

「俺呼ばれてないけど。」

「ゴメン!完全に忘れてた。誘おうとは思っていたんだけど、」

楽が誘うと思ってたからな。

「まぁ、れいちゃんから聞いただけだけどね。」

「れいよく覚えてたな~」

と感心してしまう。そしてそこから三十分ぐらいでみんなが集まる。ただ

「おっきいね~!」

「本当千棘ちゃんの親って何をやっている人なんだろー」

「楽ちゃんと伝えとけって俺言ったよな。」

とため息をつく。

「とりあえず、千棘の家はアメリカのヤクザのドンだと考えておけばいいさ。つまりギャングの家の跡取り娘ってことだよ。」

「へぇ~やっぱり千棘ちゃんすっごいお嬢様なんだー」

と小野寺が言う。まぁそういうことでいいか

そして奥から千棘がやってくる。

「あ千棘ちゃん今日はお誕生日おめでとう!」

「な、な」

珍しく千棘が驚いている。

「ってなんで夕貴までいるの?今日は」

「バカか。彼女の誕生日をすっぽかしてまでバイトする彼氏がいるか。もともとクロードから誕生日は聞いてあったからな。どうしても驚かせたいって言っていたから協力しただけ。」

と苦笑する。

「とりあえず千棘誕生日おめでとうさん」

「ちょっと夕貴私、」

「大丈夫だよ。全部説明してある。お前の心配してたこともな。でも俺に付き合っているメンバーだぞ。ヤクザの子どもの俺の友達なのに驚く方がおかしいだろう。」

と苦笑する。

「だから気にしなくて大丈夫だよ。つぐみ案内よろしく。」

「あぁわかった。」

と俺たちはパーティー会場に向かっていった。

 

           

「「「ハッピーバースデーお嬢~!!」」」

とギャングの野太い声が聞こえる。クラッカーの音が鳴り響いた。

「ねぇ~ゆう兄もうごはん食べてもいい?」

「お前本当に変わってないな。ほら行ってこい。」

と送りだす。まったくあいつはこどもぽいな。

「そういえば、夕貴君は桐崎さんの家には?」

「送っていく程度だ。入ったこともなかったな。オレの家にはきたことあるけど」

「じゃあ夕貴君の部屋行ったことがあるの?」

と村杉はわくわくしているけど

「入ったことあるけどキタネーぞ。本ばっかりだし。」

「じゃあ片付けてあげ」

「絶対やめろ。」

と絶対やらせない。男子には見られたくないものもあるのだ。

「おや、一条夕貴お坊ちゃんじゃないですか?」

と後ろを向くとクロードがいた。

「ひさしぶりだな。クロードさん。」

「あぁ…ところでそちらの女性は?」

「村杉さんって言って千棘の友達」

「は、はじめまして!」

「そんなに怖い人じゃないから大丈夫だよ。」

「あっ……そうなの?」

「あの……夕貴お坊ちゃん、そちらの女性とは?」

「オレからしたら友達だよ」

すると言葉の意味に気づいたらしい。

「もしかして愛人ってことですか?」

「今は違う!」

「まぁそうでしょうね!お嬢のこと泣かせたりしたら殺すどころじゃすみませんよ」

「わかってるさ。」

とクロードは千棘のところに歩いていく

「……今はって私も将来、愛人にしてくれるの?」

「さあな~」

とオレはごまかした。

 

「ほら最後は坊ちゃんだぞ。」

「あぁわかっているさ。」

とオレは花束をだした。

「お誕生日おめでとう!千棘。」

すると周りが盛り上がる。

「やるじゃないか坊主。」

とどうやら良かったらしく背中を叩かれる。

オレが選んだのはカランコエという花だ。

ピンク色の花はなぜかオレが目をとめた。

「らしくないけど受け取ってもられると嬉しい。」

「ううん…嬉しい。」

と俺に近づいてくる。

「ありがと。いつも一緒にいてくれて。それとこれからもよろしくね。」

「おう」

すると周りから口笛やヒューとからかう声が聞こえると少しだけ照れる千棘。

「後これ」

と俺は一つ箱を渡す。

「えっ…開けてみてもいい?」

俺は頷く。千棘が開けると

「うわー」とガラス細工で作られたネックレスをい手にとる千棘

「これもいいの?」

「あぁ…安物だけど似合うかなって思って」

「つけてみてもいい?」

「もちろん!」

と千棘は首にかけるとガラス細工を見る。

「千棘ちゃん似合ってるよ。」

「えへへ、そうかな~。」

と小野寺が誉めていた。

どうやらプレゼントは成功に終わったらしい。

 

あれからパーティーは順調に進んでいた。

食事を食べたり友達と話したり、色々みんなが慌てている。その中でオレはトイレの為、少し席を外していた。千棘もみんなと楽しそうに話している。

少しちょっと寂しいけどな。

「おっ兄貴なんでこんなところにいるんだ。」

と楽が歩いてきた。

「ちょっとトイレに行ってきただけ。」

とオレはあることに気づいた。

「あれ、楽そのペンダントなんで何か変じゃないか?」

「あ、あぁちょっと色々あって壊れてしまったんだよ。」

「おまえなぁそれ大事なものだろ。もっと大事にしろや。」

「返す言葉もねぇよ。」

まったくお前にとったら大切な思い出なんだから。

「おや、ひさしぶりだね夕貴君、楽君。」

すると、千棘の父さんがやってくる。

「お久しぶりです。」

「誕生日を祝いに来てくれたのかい?どうもありがとう。」

と笑う。

「いやー本当に恋人同士になったんだって。千棘から聞いたよ。」

「まぁ色々ありまして」

「まぁ夕貴君なら任せられるよ。千棘は本当に日本に来てから楽しそうだから。」

元々ギャングのせいだからなぁ~

「まぁクロードとかのせいだと思いますよ。過保護もよくないので。」

「そうだね。それに子どものときも、夕貴君は千棘のことが好きだったからね」

「……はい?」

オレは固まってしまった。

「ちょっとどういうこと何ですか?」

「ハハ…やっぱり覚えてないだろうねぇ。」

「もしかして兄貴あの後にまたねって旅行先で言った女の子がいたか?」

「なっ」

とオレは少し固まっていた。

「ってことは千棘が……」

オレの初恋の相手だったのか?

「まぁ、千棘は気づいてなかったけどね。でもずっと再会したいと思っていたよ。」

「………?」

「でもね。あの子まで一緒にいるとは思わなかったよ。」

「あの子?」

と懐かしそうにしながら言う。

「それってオレのことですか。」

「いや違うよ。覚えてなかったのかい?同時はの君たちはよく4人で遊んでいたんだけど、ほら今日君と一緒にいたあの子だよ。」

楽と一緒にいた?それって

すると

ゆう君遊びにきたよ。

ゆう君らっくんどこにおると?

わたしらく君のことが好きなんだ。

ゆう、遊ぼー

4人の女の子が思い出した。そして

「アハハマジか。そういうことだったのか。」

笑いがこみあげてくる。

「ちょっと兄貴」

「なんで忘れてたんだろ。あんなに楽しかったのに。」

そうだ。思い出した!

「夕貴君は思い出したのかい?」

オレは頷く。そうだ、思い出した。

十年前のことも、楽の約束の相手も

「んじゃ。ぼくはもう行くよ。」

と千棘の父さんは去っていく。ただ呆然とオレと楽は見送るしかなかった。



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シャシン

千棘の誕生日の翌日

「あー昨日は楽しかったわー!」

「それはよかったな。」

とオレはいつもどおり自転車をこぐ。結局あのことは千棘には黙っておくことにした。だから普段どおり普通に接している。

楽のペンダントは集の知り合いが直してくれることになった。でもあのペンダントはもともと壊れていて小学生のころに修復ができないことを思い出していた。

あのペンダントは開かない。そう思い出した時に少しほっとしていた。十年前、天狗高原に旅行に行ったさいのことを千棘はたぶん気にしないだろう。でもそれはただの推測でしかない。

……ただ今の関係が崩れることが嫌なんだよな。

自分の臆病さに呆れてしまう。

そうしているうちにも学校に行く。そしてホームルームの時間にキョーコ先生が教壇に立つ。

「はーい皆注目~林間学校の写真が焼きあがって掲示板に張り出されてるから各自欲しい写真の番号を書いて提出する事。OK?」

「「はーい」」

クラス中から声があがる。そうか林間学校の写真出来てたのか。

「後恥ずかしくても好きな奴の写真はちゃんとゲットしとけよ?」

「「「は~何言ってんだこの人」」」

まぁたぶん皆買うんだろうけど。

 

「わー!これ好きなの買ってもいいの?」

「まぁな。一枚百円だけど、まぁお前の家なら大丈夫か。」

よく考えてみたらこいつギャングの一人娘なんだよな。だからいくら買ってもたぶん大丈夫だろう。

「いいなぁ~私も林間学校行きたかったなぁ~」

「そっか、れいちゃんは林間学校が終わってからこの学校に来たんだよね。」

「そっか、でもなんでお前封筒持っているんだ?」

「先生が言ってたじゃん。好きな人の写真は買いなさいと。だからゆう兄の写真を買いにきたんだよ。」

「お前な、なんでオレのって」

「冗談じゃあないよ。」

れいは笑いながら言うと

「私は冗談が嫌いってことゆう兄が一番知ってるでしょう。ずっとすぐ近くで見てきたんだから。」

「オレが嫌いだったからな。」

れいはオレみたいになりたいって昔から言ってたからな。

「だから、全部本当だよ。ゆう兄のことが好きなことも全部。」

「だからって愛人になるって方がおかしいと思うけどなぁ」

まぁいいか。そういえば

「そういえば、林間学校の時ごめんな村杉。」

「桐崎さんのこと考えてでしょう。しょうがないよ。でも、なんで暗闇が苦手ってこと知ってたの?」

「一回勉強会開いたときにいろいろあって蔵に閉じ込められたんだよ。そのときにわかった。」

「……どうして蔵に閉じ込められる状況を作れるのか教えて欲しいところだけど。それに私のことは杏でいいよ。私も夕貴君のこと名前で呼んでるし。」

まぁいいか。

「了解。んで杏」

すると顔が真っ赤に杏は染まっていく。

「えっ?」

「ううんなんでもないよ。話続けて。」

「いや、写真買わなくていいのか?もうけっこうたってるけど。」

「人ごみに紛れるのは苦手だから。もともとあまり目立たないようにしてたし。」

「恋愛には積極的だけどな。」

恋愛だけは性格が変わるのか。でももともとは照れ屋なんだろうな。さっき名前で呼んだとき顔真っ赤になってたし。

「まぁいいか。」

「あ~小咲ちゃんとモヤシの写真あるよ!」

千棘ははしゃいでいる。まぁいいか。こういうのは初めてなんだし。オレも写真選びにいくとしますか。

 

しばらくしてオレも写真選びが終わった。そして家に帰ってから呟く。

「ほとんど千棘としか写ってないな。」

約8割の写真は千棘と写っていた。ずっと一緒にいることがわかる。でも少しだけ楽と集の写真もあったし、杏と写ってあった写真も少しあった。

結果的にいえばよかったなと思う。集が写真を売ってこようとしてたけど千棘に連行されていった。

まぁ一週間くらいで届くらしいし楽しみに待ってよう。

「兄貴、ちょっといいか。」

と廊下から楽の声がする。

「なんだ?」

「倉で探し物、手伝って欲しいのだけど。」

「マックドナルドのダブルチーズバーガーセット」

「別にいいけど」

よしならとジャージに着替えてから部屋を出る。もともと頼みごとはあまりしてこないからな

「んで何を探せばいいんだ?」

「この紙に書いてある箱だよ。」

まあいいか。

しかしその後その紙に書いてある箱は見つからなかった。



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アイアイ

投稿遅れました。すみません。
ついにお気に入り人数が二百人を突破しました!
本当にありがとうございます


「親父、親父はどこだ!?」

楽が廊下を走る。

「父さんなら、さっき出かけたぞ。」

オレはあくびをしながら廊下に出る。

「兄貴。」

「どうしたんだよ。そんなに慌てて。」

「昔の写真が見つかったんだよ!!兄貴は十年前の旅行のこと覚えてるか?」

すると少し焦ってしまう。もしかして

「鍵のことか?」

「あぁどうやら鍵を持った女の子ととった写真を探してたんだけど、それが見たことない女の子だったんだよ。」

「でも写真見ないとわからないだろ。少し見せてくれないか?」

「あぁ、いいけど。」

楽に手渡される写真には

……懐かしいな

オレのあの頃の親友と言える茶髪の女の子がいた。

「あぁ、あいつか。今福岡かどっかにいるんだろ。」

「知っているのか?」

「昔親友だったからな。まーちゃんか懐かしいな。」

今楽の許嫁だとは言わない。こういうのは父さんが言うべきだ。それにおもしろそうだしな。

「ごめん。今日寝るけど、楽お前皿洗い忘れてるぞ。」

「あっ、やべっ行ってくる。」

楽は厨房から走って行く。さて明日は雨だし早めに行くか。

 

そして翌日

「林間学校の写真できたぞー出席番号順に取りに来い。」

そのときに楽の隣を通る。すると何かを考えている様子だった。

たぶん昨日の女の子だろう。あの頃の写真は昔ほとんどオレが燃やしてしまったのでない。だから唯一出てきた写真が知らない女の子だったから気になっているんだろう。

オレは楽と違って株やバイトをしてお金には困っていない。だからかなりの数を買ったから写真だけでもかなりの数があるだろう。

そして席につくと

ザァァァアァァ

空から水滴が落ちてくる。

「……雨だな。」

しばらくの間校庭を見ていた。

 

「あ…ちゃ~」

帰り玄関に向かうと千棘が困ったように立っていた。

「…傘忘れたのか?」

「あっ夕貴。うんそうなの。」

「……入るか?」

「えっ。」

反応したのは後ろにいた杏だ。

「近場だし送ろうか?ちょっと恥ずかしいかもしれないけど。」

「うーん。ならお願いしてもいいかな?」

「了解。ほら入れよ。」

「ありがと。」

と腕に抱きついてくる。

「ちょっとお前。」

「あんたまで濡れたら意味ないでしょ。」

「お前場所考えろ!ここでやったら」

「おっ!?あいつら相合傘じゃん。ヒューヒュー!」

こうなるんだよ。

千棘も気づいたようだけど離す気配はない。ってことは

「じゃ行くか。」

「う、うん」

ゆっくりだけど歩き出す。

「そういえば来週には梅雨明けるらしいぞ。」

「本当?」

「あぁ、ニュースでやってたぞ。ひさびさに遠出するか来週あたり。」

最近のデートは雨ばっかりだったからゲーセンや水族館など近場の遊園地によく行っていた。

「じゃあ最近できた遊園地に行きたい!」

「んじゃ、行くか!!」

「本当?」

「あぁ、最近出かけてないだろう。お前の誕生日とか色々あったしな。」

「本当にアメリカにいたときとは思えないわよ。」

「オレも最近じゃあ普通に男子から話かけられるしな。お互いによかったんじゃないか?」

怖がる人はもはや誰もいないしな。

「夕貴。ありがとう。」

「んなこと言うんだったらこっちこそありがとな。」

すると目が合う。そして笑い合う。

「何言ってるんだろうなオレら。」

「付き合いたてのカップルみたい。」

「って付き合い始めたばっ」

するとピカッと光る。そしてすぐにゴロゴロと大きな音が聞こえた。

「すげー近かったな今」

すると腕に柔らかい感触が強くなっていた。

「ちょっと千棘当たって、」

「ちょっとだけこのままでいて。」

千棘まさか

「雷に弱いのか。」

すると頷く千棘。しょうがないか。

そして近くの公園に入る。

「大丈夫か?」

「うん。」

離れないのにそう言われても説得力ないぞ。

「……ねぇ、夕貴?少し聞きたいことがあるんだけどいい?」

「別にいいけど、どうした?」

「村杉さんとれいちゃんのことどう思う?」

「友達。」

即答だった。

「ふーん。じゃあ私が愛人にしてもいいって言ったら。」

「今のところはする気はねぇよ。逆にお前はどうなんだよ。オレが愛人作りたいって言ったらどうするんだよ。」

「……わからないや。」

その返答に少し戸惑う。

「……そっか。でも正直なところ、好きなのは今のところは千棘だけだよ。きっぱり断らないオレが悪いんだけど。」

「ふーん。」

千棘はこっちを見る。その目は少し悲しそうだった。

「……夕貴、私のこと好きなの?」

少し上目づかいで言ってくる千棘。たぶん真剣に言っているんだろう。

「好きだよ。」

「どんなところが?」

「不器用だし、鈍感で俺の気持ちにまったく気づかないで振り回されるけど、優しくてずっと俺の隣にいるところ。振り回してきても悪いと思ったときは素直に謝るしなによりも、根は強くて努力してるところかな。苦手なものは多いけどな。」

オレは千棘の頭を撫でる。さらさらしていて気持ちがいい。ずっと心配だったのだろうな。最近は杏や少し笑ってしまう。

「千棘好きだよ。」

「……あんたそんなこと言って恥ずかしくないの?」

「恥ずかしいこと言わせてるのは誰だよ。」

「……でも嬉しい。」

千棘が腕から離れると少し笑っていた。

「私も好き。大好き。」

そう言って抱きついてきた。オレは苦笑しながらずっと千棘の頭を撫でていた。

 

「……そういえば雨やんだな。」

千棘が離れてからオレはつぶやく。時間を見るとあれから一時間経っていた。

「あっ。テレビ見たいやつあったのに。」

「でも動けなかったんだから仕方ないだろう。今度の遊園地奢ってやるから。ほら帰ろうぜ。また雨が降らないうちに。」

「そうね。」

千棘がまた手を繋いでくる。

「じゃあ行こうか。」

「うん。」

オレたちは手を繋いで歩き出す。これからもずっと一緒にいられたらいいと思いながら。



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タチバナ

「はぁ、また転校生?」

あの雨の日の翌日のHR前、集が話かけてきた。 

「あぁ、このクラス他のクラスよりも少ない人数で構成されていたんだけど、家の都合上入学式から来れない人が多かったらしいぞ。」

「ふーん。」

オレはここまで転校生で来た3人を思い出す。

一人目千棘

二人目つぐみ

三人目れい

「……」

インパクトがあるやつしかいねぇ。

しかも、何かとオレと関係があるやつばっかりじゃねーか。千棘は彼女でつぐみはオレと千棘の護衛

、そしてれいは愛人志望。

「……どうしてこうなったんだろう。」

オレはため息をついた。

おかしい。なぜか全員がオレと関係している。

「アハハ、ゆうは大変だねー。」

「集、笑い事じゃねーよ。」

「うん。なんの話?」

今日遅れてきた千棘がやってくる。

「今日転校生がやってくるらしいんだよ。」

「また転校生?」

「そういえばどっちだ?男か女で変わってくるんだけど。」

「うーん…オレも分かんないんだよね。何しろ急に決まったらしいんだよ。」

集の耳に入らないってけっこう凄いよな。

「おーい皆席に座れ。HR始めるぞ。」

キョーコ先生が入ってくるが未だに隣の人としゃべっている人がいる。

「はーい、全員注目~~!!今日は突然だけど転入生を紹介するぞ~!」

するともっとクラスメイトの声が大きくなる。逆効果せめてオレと関わりのないやつだったらいいよな。

「それじゃ入って橘さん。」

「はい。」

あれ今キョーコ先生なんて言った?確か橘さんって

すると教室の中から一人の女の子が入ってくる。茶髪のロングヘアの女の子。どこから見ても

「なんでワンピース姿なんだよ!万里花!!」

ここの制服でもなく普段通りの私服で現れた女子に突っ込む。

「あら、お久しぶりですね。夕貴様。」

「お前こっちくるんだったら連絡よこせばよかっただろ。」

するとクラスメイトがこっちを見る。

「夕貴、知り合いなの?」

千棘が聞いてくる。あぁそうか。覚えてないのか。

「10年前にあったきりのオレの親友って言えばいいのかな?」

「はい。そうですわ。」

万里花もそう思っていたらしく頷く。手紙を昔よく書いていた相手だったので普通に会えて嬉しかった。

「あの、そういえば楽様は?」

「楽様?」

「楽ならあそこだよ。」

オレは楽の座席の方を指さす。すると

「ねぇ?夕貴どういうこと?」

千棘が隣の席から聞いてくる。

「見てたら分かるって」

と言った矢先に

「楽様~~!!ずっとお会いしたかったですわ!!」

万里花が楽に抱きついた。

すると楽、小野寺、つぐみの顔が焦っているような顔になった。そしてクラスメイトは

「うおおおおなんだぁああ!!?転校生が一条弟に抱きついた!!」

「前に話したよな。楽に許嫁がいるっていうの。」

「もしかしてあの子がもやしの許嫁なの?」

「そうな感じだな。」

オレは苦笑してしまう。

いやー本当に来るとは思わなかったな。父さんも近ごろこっちに来るって言っていたけどこんなに早くくるとは

「兄貴知ってたのかよ。なんで話してくれなかったんだ。」

「そっちの方がおもしろくなりそうじゃん。後オレばっかり被害にあってるから、ちょっとはお前もおんなじようにしてもらわないと。」

「八つ当たりすぎるだろう。えっと、……誰?」

「橘万里花だよ。」

オレは苦笑する。やっぱり覚えてないか。

「とりあえず離れた方が身のためかな。まだ自己紹介してないだろ。楽はあの時のこと覚えてないらしいし。」すると楽はびくっと反応する。

「あら、そうなんですか?では改めて、橘万里花と申します。何卒よろしくお願いします。」

クラスメイトにあいさつしている。

「あれ?あの子」

れいは多分会ったことがあるだろうし見知っててもおかしくはないな。

「……?」

杏は訳がわからないらしくきょとんとしている。

「そういえば、楽様には彼女はいらっしゃるのですか?」

うわーいきなり聞きにくいことを聞いてくるな。あいつ。

「いねーよ。兄貴はいるけどな。」

「……あら?夕貴様はいらっしゃるのですか?」

「…」

楽お前なんてことを聞いてくるんだよ。

「まぁな。」

「……あんた調子でも悪いの?」

千棘が近づいてくる。

「別にそんなことはねぇけどな、昔のことを知っているやつに話すのはちょっと……」

「確かに、意外ですわね。どなたでしょうか?」

「目の前にいるだろうが。」

すると千棘の方を向いて、

「こちらのゴリラみたいな女の子ですか?」

するとクラス中の空気が凍りついた。そうだった。こいつら昔からこんな関係だった。

「……よく聞こえなかったな~~」

「千棘ちゃん抑えて」

れいが千棘を押さえる。

「貴様お嬢になんて無礼な事を」

つぐみが万里花に銃を向ける。

「あら…いけませんわ。そんな物騒な物を私に向けたら。」

「突入ー!!」

声が聞こえてきた。オレは

「うるせぇ。外野は黙ってろ。」

近くにあったイスを思いっきり投げつける。それは盾もろとも警官隊を吹き飛ばした。

「「「は?」」」

「千棘もそんなことくらいでキレるな。まったく。」

「いや。でも」

「言いたい奴らの相手しとったらキリがねぇよ。万里花、お前も少し言い過ぎ。こいつ楽に言われてから気にしているんだよ。」

オレは頭をかく。

「あら?そうだったのですか?すみません桐崎さん。つい本音が」

「万里花いいかげんにしろよ。」

口調を強める。

「……はい。でも、」

「あの時のこと気にしてるんだったらやめてくれ。余計オレが惨めに見える。」

「そういったわけじゃないんですが。まぁそういうことにしときます。」

すると万里花が千棘の方を見て

「夕貴様のことをよろしくお願いします。」

と頭を下げる。

「えっと、」

困ったような千棘に何か万里花が近づいて話しかけていた。

「はぁ。」

まさかあの時のメンバーがここまで集まるとは思わなかったな。後あいつだけか。楽たちにバレないように教室を出る。

10年前のときに近づいているそんな感覚があった。そして、すぐ近づいてくる騒ぎの予感もしていた。



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アイタイ

「これでよし。」

「……サンキュー兄貴」

ため息をつきながら楽はオレの選んだ服を着る。

千棘が彼女になってからオレは気にしたことのないファッションや身だしなみについて勉強し始めた。そのおかげで少しはましになった。

「…たぶんこれで大丈夫だと思うけど……」

と言うわけで今日は楽のデート服を選びに買い物にでていた。どうやら、万里花からデートに誘われたらしくオレが楽の服をコーディネートするはめになったのだ。

まぁ家のことを脅された結果だったらしいけどな。

時間を見ると楽の約束の時間にぴったり時間だった。

「んじゃオレは帰ろうかな。さすがにオレがいたら迷惑だろうし。」

「サンキュー兄貴。これ」

オレは楽から図書券千円分を渡される。楽から頼まれると基本的には食べ物か、図書券をお礼に渡される。

「へいへい。後少し早めに行けよ。一応脅されたとはいえデートに誘われたんならな。」

ニセコイのときもオレは数十分くらい前には待ち合わせ場所には着いていたからな。さすがに女を待たせるようなまねはしないとおもうけど……

会計は楽に任せてオレは店を出る。このままゲーセンかどこかに行こうかな?と思っていると

お気に入りの曲にスマホからなる。この曲が流れると言うことは千棘からのメールだな。

メールを開く。すると

「ぷっ」

オレは笑ってしまった。そしてすぐに電話をかける。

コールが何回かなった後に

「もしもし?」

「もしもし、オレ」

「どうしたのよ。急に」

「メールのことだけど別にいいぞ。すぐに凡矢理駅に来れるか?」

「分かった。すぐにいくね。」

電話を切ると少し苦笑してしまった。

メールには

 

夕貴、今から会えない?

 

たった一言書かれていた。でも付き合い始めて約1ヶ月。初めて千棘からデートに誘ってきたメールだった。

 

そして一時間後

「夕貴待った?」

と一生懸命走ってきたのか息切れしていた。

「大丈夫か?」

「ううん。平気」

といってもオレは千棘の息切れする姿は一度も見たことない。

「それにしても千棘から誘ってくるって珍しいよな。」

「別にいいでしょう。」

「そうだな。んでどこ行くか?」

「うーん。適当に散歩する?」

「その前に飯食っていいか?さっきまで楽の服選んでいたから飯食ってないんだよ。」

「もやしと一緒にいたの?あいつ今日万里花とデートじゃあ。」

「うーん。まぁその話は飯食いながらでいいか?」

「いいけど」

すると何か思いついたように千棘が言う。

「じゃあもやしのデートに尾行してみない?」

「……」

一瞬千棘と2人きりになれないのかと思ったのだが

「いいな。おもしろそうだし。」

ニヤリと笑う。

「そういえば、あんたはデートの場所知ってるの?」

「万里花から聞いている。どうやらオレのバイト先のレストランで食事するらしいぞ。」

「……あんた、万里花と仲いいの?」

「まぁな。親友として中2まで会わなくても月一で手紙書いていたくらいには仲いいかな。手紙書かなくなった原因はあいつが勉強するだめだからな。まぁ、この学校に来るために努力してたんだと思うけど……」

「変なところで真面目ね。」

「……あいつにも色々あるんだよ。」

オレはあいつのことはかなりのことの知っている。たぶん楽と集以外だったらあいつのことがオレは一番知ってるだろう。

「……そういえばあんたは」

千棘は少しだけ何か言いたそうにしていたが、

「行こうか。」

すぐに笑顔に戻った。

 

そしてオレ達は街中を歩いているとあることに気づいていた。

「ねぇ、ここの辺り警察官多くない?」

数十メートル置きに警察官が配置されていたのだ。

「まぁ、万里花がいるからなぁー。あいつ警視総監の娘って前言ったよな。」

「……だからあの子が来たときに警官隊が来たのね。」

千棘忘れていたのかよ。

まぁ話しながら楽と万里花を探していた。すると

ガサガサと草が揺れている。

……

そこにいたのは小野寺と宮本だった。それで隠れているつもりだろうか?

オレはため息をつく。気になるくらいなら自分がデートに誘えばいいのにな。すると小野寺と目が合う。

「…る…るりちゃん。」

「……」

すごくにらまれる。まったくしょうがない。今度宮本にたかるとして今日のどころは見逃してやるか。

「夕貴、どうしたの?」

「あぁ、すぐ行く。」

オレは小走りで千棘そばに行くと

ぎゅっといきなり手を繋がれる。千棘の方を見ると顔を真っ赤にして。

「…何よ」

たった一言。

前を向くとそこには楽と万里花の後ろ姿が見られた。どうやら腕を組んでいるらしい。

……はぁ、なるほどな。

オレは千棘の手を絡ませていわいる恋人繋ぎにする。

「…なっ」

「本当にお前かわいいよな。」

「あんた殴るわよ。」

「顔を茹でダコ状態のお前に言われても怖くねぇよ。」

「あんたも顔真っ赤じゃないのよ。」

「うっせ。オレだって恥ずかしいだよ。」

するとスマホからメールの曲が流れる。見ると楽からで

 

すまん、橘が暴走する可能性があるからついて来てくれ。

 

……あいつ何やったんだ?

とりあえず了解って送るとオレは千棘にそのメールを見せる。

「……あの子何やったのよ?」

「さぁ?」

「まぁいいや。許可ももらったから監視させてもらいますか。」

もうバレてるぽいしまぁいいか。

 

そして数分後

「お前なぁ。まぁいいけど」

オレはレストランで苦笑するはめとなった。

簡単に言うとレストランで食事しているんだけど。

千棘はかなりの量を食べているんだよなぁ。

金銭的にはまだ余裕があり、テーブルマナーが悪いわけでもないけど、あまり頼みすぎるとあいつらのことを見失う可能性がある。

まぁ、正直発信機着いているからそれを使えば追えるけど。

「そういえば今日どこ行きたかったんだ?」

「えっ?」

「いや。楽の追尾なんて本当は予定はなかっただろう。それならどこか行きたかったところがあると思ったんだけど。」

「……」

するとくすりと笑って

「別にどこでもよかったわよ。あんたと一緒なら」

「……」

顔を背けてしまう。全身が熱くなり千棘の顔が見れなくなる。

「あれっ、万里花たちどこ行った?」

「えっ?」

するとオレは見回すともうレストランから出ていた。

「……はぁ。」

とため息をつきスマホを開くとGPSは近くの公園を指し示していた。

「行こうか。近くの公園に逃げあがった。追いかけるだろ。」

「もちろん」

「んじゃ行こうぜ。」

頭を一回叩き笑う。そして楽と万里花のところに向かっていった。

 

急いでついたおかげで後ろに回り込まれた。

「なんか、楽しそうね。」

「まぁな。別にいいんじゃねーか。」

「でも話の内容聞いてみたくない。」

「はぁ、背中に捕まってろ。」

「あんた何するのよ。」

「こうするんだよ。」

オレは木を壁を蹴り音を立てずに飛び乗った。

「えっ?」

「離すなよ怪我するぜ。」

元々ヤクザの長男ってことで拉致未遂にあうことが何回もあったのでにげる方法についてはかなりすごく慣れている。

そして2人くらいが安全に座れるところに飛び乗った。

「まぁここらへんでいいか。」

「あんた今どうやったの?」

「ちょっと忍者の知り合いがいるからなぁ。」

オレは真下にいる楽と万里花の話している声が聞こえる。そして写真が見える。

「っ!!」

オレは楽の持っている写真を見て焦る。

「夕貴?」

千棘が驚いている。

「ごめん。オレ帰るわ。」

オレは木から飛び降りる。

「ちょっと夕貴?」

「じゃあな。また明日。後ごめん」

オレはしのび歩きでここから抜け出した。

結局オレは十年前のことを忘れさせてくれないんだな。

オレはそう思いながら家への帰路についた。



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サンボン

UA 20000 お気に入り登録者が250人突破しました。
正直ここまで伸びるとは全く思っていませんでした。
ご覧になってくださったみなさん、又お気に入り登録してくださった方本当にありがとうございます。
後注意ですがここからオリジナル回が多くなると思います。
今更ですが原作崩壊、キャラ崩壊には注意してください。


「兄貴。」

「なんだよ。楽。」

家に帰ってから料理当番だったので、カレーを煮込んでると楽から話しかけてくる。

「なんだ?」

「明日の朝ちょっと屋上にきてくれないか?」

「別にいいけどなんかあったのか?」

「ちょっと兄貴に聞きたいことがあるんだけど、」

「10年前の約束のことか?」

俺はカレーを煮込みながら楽の方を向かず答える。

「あぁ。橘から聞いた。」

「ふーん。まぁいいか。ついでに千棘と小野寺も呼んどけ少しくらいなら話してやる。」

すると楽はびっくりしていた。

「やっぱり兄貴は俺の約束の相手思い出してたんだな。」

「思い出してたよ。千棘の誕生日に千棘の父さんがいっていた時にな。」

忘れていたこと全部。

「まぁ、いい機会だし少しだけ話すけど真実は言わないぞ。」

「あぁ。いいんだけど」

すると楽が俺の方を見て

「このカレー焦げてないか。」

「……あっやば。」

夕飯は昨日の残り物になった。

 

翌日の始業前、俺、楽、千棘、小野寺、万里花は屋上にきていた。

「え?…私たちが10年前に会ってる?」

「あぁ。ついでにつぐみともあってるし小野寺とこの妹にもあったことがある。まぁ昔のことだし覚えてないだろうな。まぁこの中で楽と千棘、小野寺はよく遊んでたな。一応聞くけど覚えては無いよな。」

「まったく。」

だろうな。俺だって千棘の父さんが言うまでおぼえていなかったしな。

「そういえば、もやしはなんで顔赤いの?」

「えっ!?いや別に?」

マリカとなんかあったか?

まぁいいけど。

「んじゃとりあえず例のもの出してくれないか?」

「それで?これが…」

小野寺とマリカが鍵を出す。

「約束の鍵?」

「あぁ。そうだな。」

俺は頷く。

「まさか小咲ちゃんまでこんな鍵持ってるなんて思わなかったわ…」

「私も…」

「てか全く鍵と関係してない俺しか思い出せていないって。」

ため息をつく。

「しかしとりあえず女の子は言いました。 『ザクシャ イン ラブ あなたは『錠』を私は『鍵』を。』」

「……えっ」

「ちょっと夕貴。」

しかし俺は無視して続ける。

「『肌身離さずずっと大切に持っていよう。いつか私たちが大きくなって再開したらこの鍵でその中のものを取り出すから。そしたら。』。とすると男の子は頷き言いました。『うん、結婚しよう。』てな。それが約束の内容だ。このことを覚えているのは多分楽とマリカあたりか。」

「あぁ。俺は覚えてたけど。」

「結婚の約束と思っていたのですが。そこまで詳細には。」

「あーそこからか。」

本当に全部忘れているんだな。

「うーん。じゃあもう二つだけかな。一つ目は鍵は合計4つ。つまりはもう一人鍵を持っていること。」

「「「「えっ?」」」」

楽たちは驚いている。

「兄貴それって。」

「言葉の通りだよ。てかその鍵は昔よく遊んでいた楽のことがすきな奴が持ってたしな。さーて次は」

「「「……えっ」」」

すると驚いている3人。

「まぁいちいち驚かれてても進まないからいうけど二つ目はこの話は昔の絵本が元になってるんだよ。それも一冊しかない。」

「絵本ですか?」

「あぁ。ついでにザクシャはポルトガル語で永遠と言う意味らしい。心当たりは、あったら聞きに来ないか。だけど誰かは持ってるはずだぜ。」

「あんたは誰が持ってるか知らないの?」

「もともとは楽の約束の子が持ってたとは聞いてるけど。いまその子が持ってるかわからねえな。」

「うーん。探してみるしかないのかしら。」

「そうなんじゃねーの。」

「……ちょっと夕貴あんた昨日から機嫌悪い?」

千棘が心配そうに見ている。

「ちょっとな。俺にも色々あるんだよ。」

「うーん。多分だけど私も約束の相手じゃないと思うわ。」

「なぜでしょうか?」

「私はその約束の子よりもお別れに見送ってきてくれた。男の子の方が覚えてるのよ。」

「……」

俺は静かに息を吐く。

「その時、約束したと思うの。最近まですっかり忘れてたのだけど。またねって言われたの。」

完全に俺だなそれ。

「夕貴は何か覚えてない?」

「まぁ覚えてることは覚えてるけど。あーなんて言うか?」

さすがにオレって言いづらい。

「あのー桐崎さんはもし楽様の約束の相手だったとしたらどうするのですか?」

マリカがおもいっきり本題を言った。

「別に。何も変わらないと思うわよ。」

俺の腕に抱きついてきた。

「おい。千棘!!」

「なによ。別にいつもやってることだしいいでしょう。」

「やってるけど。ちょっと楽がいる前ではやめろ。」

家族の前でいちゃつくってどんな拷問だよ。

「ぶーケチ。昨日も勝手に帰ったくせに。」

「悪かったって。ごめん。」

「昨日の分補充するくらいいいでしょう。」

「お前もう隠す気もないよな。」

「アハハ。」

小野寺が苦笑するって相当だぞ。

「私には夕貴がいるからそこのもやしなんかに興味ないわよ。」

「……」

予想どうりの言葉に苦笑してしまう。

そうだ。今は千棘は俺の彼女なんだ。

あの時のことはもう関係ない。ふいに体が楽になったがあることを思い出す。

「もうどうでもいいけどさ、ひとつだけ確認いいか?」

「うん?」

「いま何時だ?」

そう言った瞬間チャイムがなる。

「やば。兄貴、小野寺急ごうぜ。」

「はいはい。急ぐぞ!!」

全力で走っていく。俺たち。

もし楽が恋人ができた時、

みんなをあの場所に連れて行こう。

俺たちが初めて会ったあの場所へ。



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イツモノ

今日は千棘の誕生日ですね!
千棘誕生日おめでとう!
間に合って良かった。


「夕貴。次の土曜日遊園地いかない?」

「次の土曜日か。べつにいいぞ。」

とオレと千棘が話していると

「ゆう兄、今週の土曜日映画いかない?」

れいが話しかけてくる。

「悪い、先約入ってる。」

「あー千棘ちゃんか。」

「そうだけど。」

「うーん。じゃあ日曜日は?」

「別に空いてるけど。」

「なら映画行こう。あの○物語見に行こうよ。」

「それって面白いの?」

すると杏が不思議そうに見てくる。

「面白いよ。戦闘シーンとか多いし。でも原作見ないと難しいよ。」

いつも俺の席はいつもの3人に囲まれる。でも一人一人がレベルが高いのでどうやっても男子から睨まれる。

「ゆう相変わらずうらやましいですなぁ。」

「……」

集の言葉に否定できない。

「楽様ー」

「だから離れろ橘。」

「貴様一条楽から離れろ。」

「………」

「ちょっとるりちゃん押さないで。」

「いつの間にこんなに騒がしくなったんだ?」

おれはため息をつく。

「なんか当たり前になったけどそういえばゆうって休み時間は寝てばっかりだったよね。」

「うん。千棘ちゃんがきてからは明るくなったよね。」

「悪かったな暗くて。」

「そうなんですか?」

「そうなのですか?」

つぐみと万里花が不思議そうにしてる。

「あっ。つぐみと万里花は知らなかったわね。夕貴は最初の頃あまり近づけないような雰囲気だったのよ。」

「まぁ兄貴は俺ん家のことを嫌ってるからな。オレと親父以外家では必要最低限しか話してないからな。」

「まぁ、実際のところヤクザっていうのは嫌いなんだよ。街を守るっていってもやってもいいことダメなことの違いははっきりしたほうがいい。」

正直オレのヤクザ嫌いは父さんも楽も理解している。だから俺に本当に大事なこと以外俺は家のことには無反応だった。

「あんた本当に大丈夫?」

「あぁ。どうせあと2〜3年だ。それからは家からでるつもりだから。」

「凡矢理からも?」

「そうだな。今一番有力なのはアメリカかな。」

「「「アメリカ!!!」」」

「ちょっとコネがあってな。昔から株やっててあっちにはオレの名は有名だからな。」

「本当何者なんですか?」

「誠士郎ちゃんゆうはちょっと常識がずれてるから。」

つぐみがあきれたようにしている。

「まぁしばらくの間は株でなんとかなるしなんとかなるだろ。」

「そっか。」

杏は少し寂しそうにしてる。

「じゃあ私もアメリカ行こうかな。」

「お前はちょっとは自重しろ。」

れいの頭を軽く叩く。

「じゃあ、千棘ちゃんはどうするの?」

「わたし?うーん将来のことなんて考えたことないからなぁ。」

「そうじゃなくて夕貴くんと離れることになっちゃうよ。」

「小咲、千棘ちゃんはもともとアメリカから出身でしょう。」

「あっ、そうだったね。」

「まだ決まったわけじゃないだろ。」

俺はため息をつく。

「俺も未定だけど凡矢理からは離れるだろうな。この街は楽しいことも嫌なことが多かったから。」

「そっか。」

「そんなことより夏休みどっかいかないか?最近全員でどっか行くことなんてないだろう。」

「おっいいね。海にでも行く?」

「どうせ集は水着が見たいだけだろ。」

「どうせあんたは水着がみたいだけでしょ。」

「あっバレた?」

いつもどおりの雰囲気に戻る俺たち。2年後なんて分からないけどせめて一人もかけず卒業できますように。

 

「おーい。千棘おいてくぞ。」

「ちょっと待ってよ夕貴。」

急いで走ってくる千棘。基本つぐみや小野寺などと約束している時以外はオレと帰ることが多い。まぁ放課後デートすることが多いからだけど。

「そういえば、今日はどうする?」

「うーん。少し歩かない?」

「別にいいぞ。」

俺は自転車から降り押して帰ることにする。いつの間にか普通になった日常。

この日常はいつか思い出に変わるものだろう。

「そういえば千棘は将来の夢ってないのか?」

「うん。考えたことはないわね。」

「ふーん。まぁなんでもできそうなきがするけどなぁ。」

「そういうあんたこそなんでもできそうなきがするけど。」

「そうか?」

よくいわれるけどそうみえるのかな?

「でも将来のことなんて考えたこともなかったなー。万里花とつぐみ、れいちゃんは相変わらずだったけど。」

「万里花はともかくつぐみとれいは少しは考えてほしいんだけどな。真剣に言っているから笑えないし。」

意外にも千棘と万里花は案外仲がいい。どうやら言いたいことをいいあえるので喧嘩も多いのだがよく話していた。

「うーん。わたしの将来かぁ?」

千棘はこっちをみると

「………///」

急に顔を真っ赤にしてた。

「なんだよ。急に顔を真っ赤にさせて。」

「ふぇ。」

すると急にあわてはじめる。

「べ、べつになんでもないわよ。」

「なんだよ気になるだろ。別に笑わないし。」

「なんでもないってば。」

「顔をそんなに真っ赤にされてもなぁ」

「うっ」

すると顔をそむけて

「本当に笑わない?」

「俺そんなに信用ねぇのか?」

「ち、違うわよ。ただ、」

すると顔をそむせて

「あ、あんたのお嫁さんになれたらいいなぁなんて。」

恥ずかしそうに小声でそういった。

「えっ?」

オレのお嫁さんになりたい?千棘から言われたことを理解するのに時間がかかった。

「えっと、ダメかな?」

「ダメじゃないけどちょっと恥ずかしいというか。」

「私の方が恥ずかしいわよ!!」

それもそうだな。

「えっと、その。」

オレは千棘の返答に少し戸惑う。本心から言ってくれたことは千棘の方を見ていると分かった。だから

「オレもずっと千棘の隣にいたいな。」

本当の気持ちでそう返した。

「本当?」

「本当だよ」

オレは苦笑してしまう。

すると腕に抱きついてくる。

「ねぇ。これからラーメン食べに行かない?」

「いいけど自転車持ってくる時から抱きついてくるな。あぶねぇから。」

「けち。」

と言いながら離れることはなかった。離れる気はないのだろう。

「ねぇ、夕貴」

「なんだよ?」

「何でもないわよ。」

うれしそうな千棘。

まぁこんな日常はいいか。

彼女がいて友達がいて家族がいる。

「夕貴早く行こう。」

「あぁ。」

この街も少しいいと思うオレは単純なのかもしれない。



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ウソツキ

「これなんだ?」

千棘の定期デートに迎えにいった時に面白そうな機械があった。

「おや、夕貴坊ちゃんどうしましたか?」

「クロードこれなんだ?」

「ああ昔うちが尋問用に使っていた特注の嘘発見器だ。」

「嘘発見器?よくテレビで見る?」

「あぁ、的中率は驚異の98%。」

結構すごいな。

「ふーん。じゃあ今から尋問するのか?」

「いや。ただ処理しようと思っていたのだが。」

「ふーん」

少し面白そうだな。

「これもらっていいか?」

「いいが?何するんだ?」

「ちょっとしたレクリエーションに使おうかなぁって。」

俺はニヤリと笑いそういった。

 

「ってことで勉強会の合間にこれを使って遊ぼうぜ。」

俺の家でいつものメンバーで勉強会を開いた時に笑いながらいう。

「あんたうちからなに持ってきてるのよ。」

「夕貴様何を持ってきてるんですか?」

千棘とつぐみに呆れられている。

「でも色々面白そうじゃね?嘘発見器なんかあまり見ることはないし。」

「うん。面白そう。私千棘ちゃんとゆう兄に聞きたいことある。」

「あっ私も。」

杏とれいは聞きたいことがあるらしく賛成らしい。

「まぁ、わたしも使って見たいけど。」

「じゃあ、面白そうだしやってみようよ。」

「ついでに100%ではないらしいからもしかしたら違う反応が出るかもな。んじゃあ誰からやる?」

「兄貴が持ってきたんだし兄貴からでいいんじゃないか?」

楽が俺をさす。まぁいいか。

「別にいいけど。」

「じゃあ私からいいかな?」

小野寺が手をあげる。

「別にいいけど。」

「じゃあ、夕貴くんは千棘ちゃんにどんな告白したの。」

「えっと、まじ、それ言わないといけない?」

「うん。」

嬉しそうな小野寺。

「えっと。シンプルに好きだって伝えたかな。」

反応はない。まぁ正直に答えたから当然だけど。

「これ嘘つくとどうなるの?」

「さぁ?そうだつぐみお前やってみろよ。」

「え、は、はい。」

俺はつぐみに渡す。

「じゃあ、私が聞いていいかな?」

杏が気になったのか手をあげる。

「村杉様、どうぞ。」

「つぐみさんは好きな人がいますか。」

するとつぐみがふき出す。

「す、村杉様…何を……」

「ちょっと気になったから……」

「いませんよ。そんな人は。」

すると嘘発見器からビービーと音がなり響く。

「なるほど嘘をつくとこう反応するのか。」

「夕貴様だからそんな人は。」

ピーピーピー

バンっ!!

「いやぁ……本当に壊れているんじゃないか。うんそうに違いない。」

必死だなお前。

「そういえば私も聞きたいことがあるのだけど、あんたと夕貴プールで何を話してたの?」

「ぶっ。」

俺は吹き出してしまう。

「えっとそれはですね。」

「ちょっとつぐみいったらわかってるよな。」

俺が軽く殺気を出す。

「すみません。なにもありません。」

ビーと音がなる。

「あんたいったいなんて言ったのよ。」

「千棘にだけは言えるか。」

俺はため息をつく。

「まぁ、兄貴がなんて言ったかは予想できるけどな。」

「言ったら殺るぞ。」

「本当になに言ったのさ。」

恥ずかしすぎることなんでスルーする。

「俺とつぐみばっかりじゃなくて他のやつにも聞こうぜ。」

「あら、では私が。」

万里花が手をあげる。

「んじゃ俺から聞きたいことがある。」

俺が手をあげる。

「はい。なんでしょうか?」

「お前と楽許嫁解消したって本当か?」

俺が聞くと万里花の顔が硬直する。

「えっ?そうなの?」

「らしいぞ。こいつの親父さんから連絡もらった。」

「兄貴、なんで警視総監と公友関係にあるんだ?」

「前にハリウッドスターが日本公演にきたときにパーティーに呼ばれた時に。」

「本当に兄貴の公友関係どうなってるんだよ。」

楽が呆れている。

「まぁ楽でもいいけどどうなんだよ。」

「……本当ですわ。」

嘘発見器は反応がない。

「ふーん。まぁフラットになったし面白くなってきたじゃん。」

「面白くなってきた?あんた何言ってるの?」

俺はため息をつく。なんでこいつらは鈍感なんだろう。

「別に。」

「次小野寺さんなどいかがです?」

「えっ、私?」

「あ!じゃあオレが質問していい?」

集が手をあげる。

「別にいいけど。」

「ずばり小野寺のバストはC以上?」

すると思いっきり集がぶっ飛ばされる。

すると宮本にいつもどうりボコボコにしていた。

「えっと、集ちゃん大丈夫?」

「れい。集は殴られるのが好きなドMやろうなんだ。いつも宮本に殴られているのがデフォルトだからきにするな。」

「そ、そうなんだ。」

「ゆう。れいちゃんに嘘つくのやめてよ。」

ボコボコにされながら集がいうけど

「お前ってドMじゃないのか?」

「ゆう。お前って俺のことどう思ってるの?」

「女ったらしドMメガネ。」

「辛辣すぎない?」

「まぁ、冗談だ。……半分は。」

「なんか、集と兄貴のこのやりとり久しぶりだな。」

「そうね。」

「いつものやりとりだったからね。」

「まぁ、俺たちは俺繋がりで結構つきあいあったからな。」

基本は楽の応援だったからなぁ。

「次誰行く?小野寺選んだら?」

「じゃあ。千棘ちゃん。」

「えっ。わたし?」

「あらでは質問は私が夕貴様と桐崎さんはキスはもう済ませたのですか?」

「ぬな!」

千棘が驚いているけどしてないから慌てる必要がないだろう。

「い、イエス。」

「……は?」

嘘発見器は音がならない。

「あ、あの?ち、千棘?」

「違う!!自転車に乗っているときに。偶然、頰に当たって。」

「でも、わたしもゆう兄にキスしたことあるよ。」

「ちょっと待て、れい。それはいつだよ。」

「ちょっと夕貴どういうこと?」

千棘からかなりの殺気が放たれている。

「千棘落ち着け。俺本当に知らないから。」

「うん知らないと思うよ。ゆう兄寝てたから。」

「ちょっと待て。お前オレが寝てる間何してる。」

「大丈夫だよ。小学生の頃だから。」

「いつのまにしたんだよ。」

そんなことしてたのか。

「まぁ次。」

「じゃあれいちゃん。」

れいに嘘発見器を渡す。

「じゃあ俺から。いい?」

楽が手をあげる。

「何?楽兄?」

「れいってなんで兄貴のこと好きなんだ。昔集のことがすきだったのだろう。」

れいの笑顔が固まる。

そうなんだよなぁ。昔れいは集のことが好きだったんだけどあの事件があってから俺に方向転換したのだ

「えっと、何個か理由はあるんだけど。わたしを変えてくれたからかな。」

れいが笑う。そして

「何よりゆう兄はわたしのヒーローだから。」

最高な笑顔でいうれいに俺たちはなにも言えなかった。オレはどうこういえるものでもないけど。

まぁこの後はなぜか始まったつぐみいじりで勉強会は全く進まなかった。



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オマツリ

甘い香りが、香ばしい匂いがしてくるので自然にお腹が減ってくる。

今俺は町主催の祭りの中でただフラフラしていた。

……暇だ。

楽は屋台の手伝いだし、集はナンパしてるらしいし千棘は後の待ち合わせ時間まで一時間あるし。

何しようかな?

適当にフラフラしてると

ゴツンと誰かにぶつかる

「キャ」

「あっ!すいません。」

とその人をみたら

「……何してるんだ?千棘。」

「えっ?夕貴?」

アイスクリームを食べている千棘だった。

「いや、俺は見回りと言う名の家の仕事をサボってるんだけど。」

「なにしてんのよ。あんた。」

「だって面倒だし。てか千棘は何してるんだよ約束の時間より。」

「し、仕方ないじゃない。お祭りって私初めてなんだから。」

「楽しみで早めに来たと。」

千棘らしいな。

「……それと、後あんたと早く会いたかったから。」

「……なんかお前どんどん素直になってるな。」

可愛すぎて真面目に顔熱いんだけど

「悪い?」

「全然。ちょっと待って。」

俺は小野寺にメールを送りつける。

「よし、完了。」

「誰に送ったの?」

「小野寺に楽に千棘とデートしてくるから先抜けるって伝えといてくれって送っといた。もちろん楽がいる場所とかも一緒に送りつけて。」

「……なんで?」

「まぁ。応援かな。」

どこからか大声が聞こえたが気にしないでおこう。

「そういや。千棘は浴衣着てないんだな?」

俺が言うと少し首をかしげる。

「ねぇ、夕貴。浴衣ってやっぱりいいものなの?」

「そんなん知らないけど……でも風情があるとは思うな。あとは日本ってあぁいう服多いからな。夏だなぁ〜とは思うけど…俺はそこまで気にしたことはないなぁ。」

「そうなんだ?」

「あぁ、ただあのクロードの性格だから無理やりでも着せてくると思ったんだけど…あいつ少し千棘愛強すぎだし。」

「……そうね。」

ゲンナリしている千棘に苦笑してしまう

「ほらこんなとこで立ち話するのもあれだし行こうぜ。千棘。」

「そうね。そういえばお祭りって何するものなの?」

「色々あるぞ。まぁ基本は屋台めぐりかな?あと時々意味不明なコンサートとかをみる。それと、ここだったら恋むすびのお守りが有名だな。」

「……なにそれ?」

「どうやら、とても有名らしく縁結びで凄い効果を発揮するらしいぞ。なんか楽も買いに行くとか…」

確かその為に午前中働いてるとか。

「それは夕貴は買いにいかないの?」

「……俺は必要ないもんなぁ。縁結びより普通に安全祈願とか買いに行きたい。」

縁結びはもう千棘がいるしいらないんだよなぁ。

「……そっか。」

「どうした?」

「ううん。何でもない行こう。」

「お、おい。」

すると手を引っ張られる。なんだよ

なんであんなに嬉しそうに笑うんだよ。

「夕貴。これ食べたい。」

「ん?」

「たこやきっていうの?」

「あぁ。別にいいけど俺の奢りなのか。別にいいけどさ。」

財布を取り出そうとすると、

「ううん。私に出させてもらえないかな?」

「……えっ?」

「いつものお礼ってことで。私いつも出してもらってるし。」

「……なら、奢られようかな。」

俺は苦笑してしまう。正直払ってもいいけどここは素直に好意を受け取ろう。

「オジサン2つ」

「あいよ。って桐崎のお嬢ちゃんじゃないですか!!」

うげ。ここウチの組の店かよ。

「……えっと今ゆう坊っちゃんなら多分見回りに。」

俺は少し離れる。

悪い千棘と思いながらただ買うのを見守る。

……いつから家の奴と話さなくなったんだっただろう。

やっぱりあの事件は大きいよな。

「夕貴。」

「ん?」

「離れるんだったら先に言ってよ。」

「……悪い。」

「……あんたって本当に家と仲悪いわね。」

「なんか言われたのか?」

千棘が首を横に振る。

「見てたらわかるわよ。あんたあのもやしより家の確執が深いじゃない。」

「……まぁ、俺は本能的に嫌ってるからなぁ。正直あまり家でも引きこもってるし。親父と楽ぐらいかな。あの事件前も俺結構家に反抗的だったし。楽は何度か拐われてるしな。」

「……あんたも色々あるのね。」

「そりゃ、家があんなんだからな。色々あるさ。」

俺はため息をつく。話を変えようとしたとき

「ところでさ、買ったのはいいんだけど……これって美味しいの?」

「……お前知らないもの買うなよ。」

「だって美味しそうだったもん。」

「……まぁ美味しいけどさ。熱いから気をつけろよ。それ結構火傷しやすいんだよ。」

「そうなの?」

「てかそういえばアメリカってタコ食べないんだっけ?美味しいのになぁ。歯応えがあって。」

「……好きなの?」

「食べ物の中だったらタコが一番好きかな?案外刺身とかなににでも合うし。寿司とかいったら絶対食べる。」

コリコリした食感が本当に美味しいんだよなぁ。基本的洋食派だけどもタコだけは別格だと思う。

「たこ焼きは千棘に合うかわからんけどな。一個もらうぞ。」

「あっ!ちょっと。」

俺は爪楊枝を取り出し一つ口の中に入れる。するとソースと青のり、マヨネーズのバランスのいい味わいと外はカリっと中はどろっとした味わい。やっぱりうまいわ。タコの食感も消えてないし。

「……うまいな。久しぶりに食べたけど。」

「あんた。本当に美味しそうに食べるわね。」

すると爪楊枝で同じように食べるけど…食べた瞬間こいつもものすごくいい笑顔になっているのはわかってるんだろうか?

「美味しい。」

「だろ?」

すると気に入ったのか本当に幸せそうに食べていく。

……こいつ本当に美味しいもの食べる時生き生きするよな。すると食べていくのを見ていると二箱しっかり全部食べ終わっていた。

「あ〜美味しかった!!」

「本当に美味しそうに食うよな。ほら水。」

「ありがとう。って。」

顔を真っ赤にさせる。気づいたのだろう。多分俺に買ってきた分まで食べてしまったことに。

「千棘本当に食べる時は我を忘れるよな。」

「うぅ。」

「とりあえず色々回ろうぜ。せっかくだから色々遊びたいし。それにもう慣れたしな。」

「ちょっと慣れたって何よ。」

「前に俺のラーメンまできっちり完食したのは誰だったか?」

「……ごめん。」

「もう知ってるって。別に隠さないでいいだろ。別にいいじゃねーか。……そういうとこも好きだから。」

「……あんた言ってて恥ずかしくないの?」

「恥ずかしいに決まってるだろ。ほら行くぞ。」

と今度は俺が手を引く。本当に千棘といるとらしくなくなる。

なんでこんなに恥ずかしいことになってるんだろう。

「そういえば千棘。鶫は?あいつのことだし付いてくるんじゃないかと思ってたけど。」

「えっと、何か用事があるんだって。」

「……なら少しゆっくりできるかもな。」

「なによ。鶫がいたらゆっくりできないの?」

「あいつもかなりの過保護で一回八時過ぎたときあっただろ?その時に散々無茶振りを言われた。」

「……なんかごめん。」

「監視のいないところで一度ちゃんとデート行きたいよなぁ。何度もデートスポットをあのメガネと鶫に押し付けられるんだよ。……なんかあの二人俺にも過保護になってきてないか?」

「…そう?」

「そう思うぞ。なんで俺が警護されないといけないんだよ。自分の身くらいは守れるしな。伊達にヤクザの息子やってねぇよ。」

「あんたも大概じゃない。」

だよなぁ。

「でも、仕方ないんだよ。俺らはそういう家庭に生まれてきたんだし。それにそれでもいいことはやっぱりあるし。」

「へぇ〜あるの?」

「あるだろ。そりゃ。楽と兄弟になれなかったかもしれないし、それにみんなと会えていなかったのかもしれないだろ。それになにより。」

俺は千棘をみて

「お前と会えたしな。」

「……あのね。」

「……悪いけど俺も恥ずかしいから何も言わないで。でも本音だから。」

「あんた本当に質悪いわ。」

すると手を強く握りしめ

「本当にずるいわよ。あんた。」

「まぁ、一番自爆してるのは俺だけどな。」

クソ恥ずかしいぞ。でも嘘はつきたくないから無理やりでも恥ずかしいことをいうしかない。

「でも、嬉しい。」

「……おう。」

「じゃあ次あれやりたい。」

まぁ。しばらくはこんなもんか。

これからは仲違いすることも意見が合わないこともあるだろう

でもこれだけは言える

俺は千棘を愛してます



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