お前にふさわしいソイルは決まった!! (小此木)
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第1話

骸骨王様、気まぐれな星様誤字報告ありがとうございました。


 

 

 

「君と組むのも大分慣れて来たよ」

 

森の中で男はそう言った。男はいつも顔を隠しているが、今日は珍しく青い入れ墨の様な模様がある顔を出して目の前で木に寄りかかっている男と話をしている。

 

「…そうか」

 

相槌を打ったのは右手を金色の金属で覆われ、片方しかレンズの入っていない奇妙なサングラスをした男。

 

「なぁ、前から誘っているが俺達のギルドに入らないか? 数年組んでいるが、君ほどの男がどこのギルドにも入っていないのはもったいなく思うんだ。」

「…考えておこう」

「ハハハ、またそれか!」

「…まぁな」

 

(そりゃ、そうだよ。ギルドってアレだろ。登録して、ちまちまレベルとランク上げるって典型的なヤツだろ? パッと出の目立つ新人を難癖付けて潰したり、逆に返り討ちにあったり…俺そう言う面倒でギスギスしたの嫌なんだよ! だから、俺はこれからも()級クエストの手伝いだけでいいわ。有名にもなりたいわけでもないし、金も必要最低限でいいからこのまま()の助手生活が続けばいいな~)

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

「…此処は、何処だ?」

 

全く記憶にない森で俺は気が付いた。拉致!? と思い自身が何処かに括り付けられていないか、布か何かでくるまれていないか咄嗟に確認したのだが、

 

「…何だこれは」

 

右手は変な金属をはめられて指は動かないし、動く左手で何かされていないか体を確認してみたら、何時もの幻想をぶち殺す上条さん似のツンツンヘアーは何故かサラサラヘアーに変わってるし、何故かマントを羽織ってるし、視線は高くなってるし…

 

「…何だこれは」

 

だから、何なんだよこれ!! ってか口調に感情が乗らねぇ!! 声も違う!? それと、持っていたスマホや財布は大丈夫か!?

 

「俺の持ち物が何もない。…あるのは上下二連式『ショットガン』とベルトの弾丸に入った『ソイル』のみ…」

 

っん!? 今俺『ショットガン』と『ソイル』って言わなかったか!?

 

「何故『ソイル』と言う言葉が出たんだ?」

 

ソ、イル? …ソイル!? 覚えている、覚えているぞ!! 『ソイル』の入った弾丸と云えば、途中打ち切りになったFFのアニメで召喚獣を召喚する為に使用する特殊な弾丸だ。ああ、懐かしい。毎週早く家に帰って観てたな~

ってそんな懐かしんでる場合じゃない!! 『ソイル』『右手の金属』でほぼ確定してるけど、その金属で顔を映してみよう。俺の予想があっていれば―

 

「…黒き風」

 

ヤベー、予想大当たりだわ。俺、黒き風になってる!! だったら、

 

「ここはファイナルファンタジーの世界なのか?」

 

よっしゃ、チョコボ、チョコボはどこにいるぅぅぅぅぅぅぅー!!

 

 

 

~約3時間後~

 

 

 

い、居ない…無駄に高性能の風様ボディーを駆使し、数十キロあるこの森を数時間駆けずり回ったのに!! ぐぬぬ…

 

「何故だ…」

 

何でチョコボ居ないんだよ!! FFだぞ! FF!! チョコボの居ないFFなんて、FFじゃねー!!

 

「…少し、いいか?」

 

驚いた事にこんな森の中にも人が居た。俺みたいな怪しい人物に声を掛けてくるほどの出来た人だった。よし、第一村人(?)発見!!

 

「何か、用か?」

 

ちっがーう!! 『何かようですか?』って気さくに答えるのが普通だろ!? この風様ボディ、身体能力は驚異的だがコミュニケーション…特に会話が思うように出来ない!! てか、この人顔をスカーフで包んでるよ!? ヤ、ヤバイ団体の人だったら殺される!!丁重に断らなければ!!

 

「い、いや。何かを探しながらここ一帯を走っていたのが見えてね。探し物なら俺も手伝うよ」

「いらん。ここには存在しなかった。他を探す」

 

うっそー!? あれ見られてたの!? 恥ずかしー!! ってそうじゃない。口調はもう諦めるとして、

 

「他人に顔を見せないヤツは信用できん」

 

そうそう。信用できないんだよね。こういう時はこの口調で良かったと思う。絶対元の俺だったらこんな事言えなかったぜ。

 

「…分かった。俺の顔は見せるが誰にも言わないでほしい。俺の名前は―」

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

あぁ゛~、懐かしいな。右も左も分からない中、森でチョコボを探し回ってコイツ(何故割り木に座ってんだ?)に出会ったんだよな。最初は怪しいヤツだったけど、話していく内に俺と同じで、この()()じゃない所から来たって共通点があってそれからつるんでるだよな。

 

「マカロフのバカタレ!!! そんなに死にたきゃ勝手に死ねばいい!!」

 

で、この婆ちゃんだれよ?

 

「お前は何「で、何してんだい()()()()()」もの―」

「このリンゴ、頂いても?」

「…ミストガン、誰だコイツは?」

 

おい、無視をしないでくれ、二人とも!!

 

「人間同士の争いを助長するような発言はしたくないけどね、あんたも一応マカロフの仲間だろ。とっとと出ていきな。そして、勝手に争いでもしてるんだね」

 

言われなくても、やってましたよ! ちょっと前まで!! 相棒の()()()()()に連れられて各地を巡って、変な団体さんを相手に風様ボディの身体能力とマシンガンだけでやり合ってましたよ!! でも、まだ()()は動いてくれませんでしたよ!! ま、全然大した奴らじゃなかったからいいけどね。

 

『謎の老婆』もとい、()()()()()()の言葉を待っていたミストガンは集めて来た『ファントムロード』の旗を見せた。

 

「あんたら、二人で何てことしてんだい…」

 

だぁー! 二人して俺を無視しやがって!!こっちもこっちで勝手に話に入り込んでやる!!

 

「…知らん。ミストガンにとって悪害だったから潰したまでだ。それに、」

 

二人の会話で(ようや)く何をしていたか分かった。ギルド同士のイザコザに巻き込まれていたのか。ま、色んな考えが対立するのも仕方ないが、

 

「人質を取るようなギルド、俺には到底支持できん」

「で、アンタはミストガンの相棒なんだね。私は、ポーリュシカ。名は?」

「…黒き風」

 

 

 

~楽園の塔~

 

 

 

いや~、ミストガンのギルドの皆が無事で良かったよ。未だにどこのギルドにも入ってないけど。あれからミストガンと別れて、久しぶりに元の世界に戻る方法を探しに海へ出たんだ。

 

「私もお前を救えなかった罪を償おう」

「オレは…救われたよ」

 

高い所なら海が見渡せて何か分かるかなって近くにあった塔に登ったら、頭上に大きな光が現れるし、目の前で最期を覚悟した二人が抱き合ってるし

 

「…何故お前が?」

 

ホント何で()()()()()がこんな所にいるんだよ!! 彼女と抱き合って!! う、羨ましく何て無いんだからなー!!

 

「き、貴様、どうやって此処へ!? いや、今から急いでここから逃げ「動いた。…ソイル、我が力!」ろ!?」

 

よっしゃあー!! 初めて魔銃が動いたー!!

 

風の右腕の金属が形を変え、

 

「魔銃、解凍」

「ま」

「銃?」

 

一丁の魔銃が右腕に現れた。最期を覚悟したエルザ、ジェラールは突然現れた男の行動にあっけに取られている。

 

『お前にふさわしいソイルは決まった!!』

 

風は迫り来る光へ指を向け静かに叫ぶ。

 

『大空を超える無限、スカイブルー。』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

『大地を貫く完全、グランドブラウン。』

 

そして、二本目。

 

「や、奴は何をしているんだ!?」

「私達の事はいい!! 早く逃げろー!!」

 

『そして、次元を抉り出すまやかし、マジックバイオレット。』

 

最後はベルトを叩き勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

『出でよ、召喚獣…テュポーン!!』

 

風が魔銃の引き金を引きソイルの弾丸を降り注ぎつつある光へ打ち出した。

 

「しょ、召喚!? いかん!! ルーシィの様な星霊魔導士でもこのエーテリオンは止め―!?」

 

エルザとジェラールはエーテリオンの光の眩しさに目を瞑った。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

「い、生きてる…」

「エ、エーテリオンはどうなった!?」

 

あれ? 二人とも見てなかったの?じゃ、説明するわ。

 

「テュポーンは風と共に歩み、空間と共に消滅する召喚獣。あの光を一瞬受けさせ、その全てを空間ごと消滅させた。」

 

てか、こんな所で二人とも何やってたんだ?

 

「き、貴様「なんてことをしてくれたんだ!!」ジェ、ジェラール!?」

 

へ? ミストガン何でそんなに怒ってんの? 助けたつもりなんだけど!?

 

「エーテリオンの魔力を吸収し、『Rシステム』を完成させる計画が水の泡になってしまった!!」

「な、ジェラールまだそんな事を!?」

 

ん?ジェラール?

 

「…お前、ミストガンでは?」

「違うな。オレはジェラール」

「ミ、ミストガンを知っているのか!?」

「ああ、つい最近共に仕事をした」

 

あっれー。彼はミストガンじゃないの!? この女性はミストガンを知ってるようだけど…ま、まさか!?

 

「スマン、人違いだった」

 

人違いでした。済みません。じゃ、帰りまs―

 

「クソォ!! エーテリオンが途中で消え、評議会も混乱している!!」

「ジ、ジークレイン!? 何故ここに!?」

 

おいおい、またソックリさんが出て来たよ。世界に三人は居るって言われているソックリさん全部見たの俺が初めてじゃね!?

 

「「俺達は一人の人間だ。最初からな」」

 

ゆ、幽霊さんでしたか!? やべ、呪われそう。

 

「し、思念体!?」

 

おっ! そこの姉ちゃん説明乙です。これで呪われる心配は無くなったな。てか、もう俺は居なくていいだろう? 後は当事者だけでやってくれ。

 

「帰る」

「オイ待て! エーテリオンをも消すその力。オレに寄越せ!!」

 

知らんがな! やりたくなかったけど、

 

「お、おいそっちは!?」

「ミストガンに会ったら、『また依頼を待っている』と伝えてくれ」

 

紐なしバンジー!! ヤッハー!汚物は…止めよう。さて、風様ボディならこのくらい屁でもない! 体は!! でも、やっぱ落ちるのは怖いよー!!

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

エルザやナツ達のお陰でジェラールの野望は消え、シモン達『楽園の塔』のエルザの弟分は晴れてフェアリーテイルへの入団が決まった。

 

一方、評議院ではエーテリオンを消した謎の男の行方を捜している。影からジェラールを操っていたウルティアも…

 




2017/6/1修正しました。


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第2話

ふまる様、骸骨王様誤字報告ありがとうございました。


 

 

 

彼に最初に会ったのは、クエストに行く途中の森だった。

 

「何故だ…」

 

ここら一帯を駆けずり回り、何かを探していた。そして、俺は気が付いた時

 

「…少し、いいか?」

「何か、用か?」

 

声を掛けていた。

 

「い、いや。何かを探しながらここ一帯を走っていたのが見えてね。探し物なら俺も手伝うよ」

「いらん。ここには存在しなかった。他を探す。…他人に顔を見せないヤツは信用できん」

 

そ、それはそうだ。だが、見ず知らずのこの男に俺の顔を見せるわけには…いや、『エルザ』に知られなければ大丈夫か。それに、最後は俺に関する記憶を消せば問題ない。

 

「……分かった。俺の顔は見せるが誰にも言わないでほしい。俺の名前はミストガン。フェアリーテイルの魔導士だ」

「俺の名は…黒き風だ」

 

それから俺は彼と行動を共にするようになった。魔力をほとんど持っていない彼と行動するのは少し心配だったが、それは杞憂に終わった。魔法無しで魔導士を軽く蹴散らす身体能力。狙ったものは外さない射撃能力。それに、周りにある魔力を弾丸として撃ち出すマシンガンには驚いた。多くを語らない彼は、ぽつりぽつりとしか自身の事を話してはくれなかった。そして彼について分かったことは、

 

「な、何!?お、お前も此処ではない()()から来たのか!?」

「…ああ。気が付いたらあの森に立っていた。それ以前の記憶は無い」

 

此処ではない世界から来た事。それ以前の記憶が無い事。そして俺は一つの仮説を立てた。

 

〝エドラスの世界にある、どこかの国か俺の国が寄越したこの世界の魔力を奪う為の先兵〟

 

そう考えれば色々な事に合点がいく。

まずは、体内にほとんど無い魔力。エドラスの子供は元々魔力を持っていない者や少しある者がほとんどだ。そして、魔力が枯渇しそうな()のエドラスで育ち、鍛えられたのならあの身体能力も頷ける。

次に武器。微量の魔力でも弾丸に変える技術ならエドラスにも存在するだろう。

最後に右手の金属だが、

 

「そう言えば、お前の右手のそれは何なんだ?あっ、いや、話したくなかったら話さなくてい「魔銃だ。」ま、がん?」

「このベルトにある『ソイル』の入った特殊な弾丸を打ち出す銃だ。…今は動かないが―」

 

魔銃。恐らく強力な魔法を撃ち出す銃だったんだろう。彼がこの世界に来る時、彼の記憶が無くなったと同時に壊れてしまった…壊れていて、良かったと思ったらいいのかどうか。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

話をしよう。あれは今から36万………いや、1万4000年前だったか?―オホン。

 

〝カグラ・ミカヅチ〟

 

彼女の話をしよう。

 

つい最近、変な塔(楽園の塔)から飛び降り、各地を転々としている時出会ったのが彼女である。

 

「風殿、私を鍛えて下さい!!」

「…無理だ」

 

まだ幼い少女が、トテトテ可愛く俺の後を付いて来て『鍛えてくれ』と言ってくる。今日もこれで4回目だ。

 

「何故!? 私は強くなりたい!! エルザ姉さんを見つけ、シモン兄さんを救える力を!!」

 

獣に襲われている所を偶然助けてから俺に付いてくるようになった女の子。でも、こんな可愛い子を俺が鍛えるなんて…

 

「悪い、出来ない」

 

ゴメン。出来ないわ。それと恐ろしい事に、この風様body(ボディー)力加減を間違えたらこの娘、肉塊に変えちゃう危険性があるんだよ!!

 

「何故です!! 私が小さいから? 女だから? 何故鍛えてくれないんです!!」

 

あらら、とうとう泣いちゃったよ。ち、ちくせう。元の口調だったら少しは慰めてやれるが、この無感情な口じゃ

 

「…悪い。教えられん」

 

わ、分かってましたよ!!本当は『ごめん。俺は君に教える事は出来ないんだ』って言おうとしたのに!! 何で教えられないって? だって俺、この風様body(ボディー)の身体能力だけで戦って来たから、戦い方を教えようにも知らねぇんだわ!!

 

「そ、そんな…」

 

ヤッベー、この世の終わりって感じの表情してる………こ、こうなったら!!

 

「…行くぞ」

「へ? 風殿!?」

 

カグラちゃんを脇に抱えた俺は、

 

「フィオーレに俺の知り合いのギルドがある。そこで鍛えて貰え。お前と同い年の娘もいたはずだ」

「わ、分かった!! ありがとう風殿!!」

 

相棒のミストガンの所属しているギルドを目指し走り出した。フッフフ、ミストガン。本んんっっ当に申し訳ないが、この娘俺には荷が重すぎる。君んとこのギルドで世話してくれ!!(人は此れを丸投げと言う)

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

あれから数日カグラちゃんと野宿をして、ミストガンから貰った地図と道中出会った人に道を尋ね(カグラちゃんがほとんど聞いた。最初、俺が聞いたら避けられたからである。解せん!!)(ようやく)く辿り着いたのだが、

 

「うわ~、街の真ん中に丸い変なのが浮いてる~!!」

 

カグラちゃんが言ったように、何故か()()している球体がいくつも浮いていた。あれは、何かヤバイ!! 俺の直感がそう言っている!!…かも。

 

「何だ、あれは?」

「か、風!?」

 

あら? ミストガンじゃないか。今日はフード取ってんだな。そっちの方がいいぞ。顔はハンサムだから隠さなかったらモテモテ間違いなし!!

 

「済まない! せっかく来てくれたのに…俺達のギルド内でイザコザが起きてしまって…」

 

ミストガンから聞いた話を簡単に纏めると、

・マスターの孫の考えは、力こそパワー、弱い奴は要らない!!

・その孫と孫寄りの部下が新入団員が気に入らないと(かん)(しゃく)を起こし、街を全体を人質に暴れている。

ま、こんな感じか。

 

「…下らん」

「か、風!?」

「風殿…」

 

本当に下らない!!俺みたいに意思疎通が難しいんじゃないのに、話もせず一方的にやってんだろ? ま、新入団員が前イザコザを起こしてた所だから仕方がないだろうけど!!

 

「街を人質とは…見ていて気分のいいものではない」

 

ホント、気分の良いもんじゃねぇな!! 関係ない人を巻き込んで!! って…は、初めて思考と口調が一致した!! ってそんな事は置いておいて、カグラちゃんをそんな危ない所には向かわせられない! 保護者として!! どうにかあの黒いのを消せないかな<ウォン>こ、これは!?

 

「動いた。…ソイル、我が力!」

 

よっしゃー! 2回目は都合のいい時に動いてくれたー!!

 

「魔銃、解凍」

「か、風殿これは!?」

「な、何と云う魔力!?(壊れていたのではなかったのか!?)」

 

 

 

『お前にふさわしいソイルは決まった!!』

 

風は街を包む様に浮遊している(かみ)(なり)殿(でん)へ指を向け静かに叫ぶ。

 

『死を包む眠り、スチールグレイ。』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を顔の前に持って来て、指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

『湧き上がる血の滾り、ヒートクリムゾン。』

 

更に、二本目。

 

『そして、闇を貫く閃光、ライトニングイエロー。』

 

最後はベルトを叩き、弾丸を勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

『唸れ、召喚獣……イクシオン!!』

 

風が魔銃の引き金を引きソイルの弾丸を(かみ)(なり)殿(でん)へと打ち出した。

 

そして、現れたのは

 

「き、綺麗~!!」

「ま、魔獣か!?」

 

雷を纏い、翼の生えた白馬。

 

「浮遊しているアレを全て消せ」

 

風の指示に吠えて答えたイクシオンは瞬く間に(かみ)(なり)殿(でん)を破壊していった。

 

「す、凄い!!」

「これが、魔銃の力…」

 

呆然としている二人を他所に風はマントを(ひるがえ)し、

 

「…カグラをフェアリーテイルで鍛えてくれ」

 

それだけを伝えると風はその場から離れて行った。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

し、死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!! おいちゃん痛いのと痺れるの同時は我慢できんよ!!

 

誰も居ない小屋で風は、先程破壊した(かみ)(なり)殿(でん)のダメージでのたうち回っていた。

 

ミストガンが大丈夫って言ったギルドだ。カグラちゃんを任せても心配ないはず!! ま、何かあったら、イフリートでも召喚して塵も残さないよう消し炭にしてやろう。…あっ、俺自由に魔銃起動できないや…やっぱ、痛い! 痺れるよー!!

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

この日、ラクサスはギルドを追い出され、旅に出た。入れ違いでミストガンが連れて来た女の子、カグラ・ミカヅチは幸運な事に偶然妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ入団していた兄と再会。そして、

 

「…お、お前カグラか?」

「エ、エルザ姉さん!?」

 

風に助けてもらうより以前に助けてもらった恩人、エルザにも再会できた。

 

(風殿!! 本当にありがとう!!)

 




2017/6/2修正しました。


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第3話

緋想天様、akiha様誤字の報告ありがとうございました。


 

 

 

『貴様にふさわしい、ソイルは決まった!!』

 

風は六本の足で歩行する古代都市へ向け叫ぶ。

 

「す、凄まじい魔力だ!!」

 

スキンヘッドの男、聖十大魔道(せいてんだいまどう)にも数えられる蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のジュラが驚愕し、

 

「な、何なんだこの男は!?」

 

眼球が黒く白髪の男、闇ギルド六魔将軍(オラシオンセイス)の首領ゼロが吠える。

 

『冴えわたる知性の煌めき、マーベラスオレンジ!』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を顔の前に持っていき、指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

『限りなき探求への欲望、マニアックパープル!』

 

更に、二本目。

 

『そして、完全勝利の誓い、ウルトラショッキングピンクゥゥ!!』

 

何時もとは違い、何やらハイテンションの風が最後はベルトを叩き、弾丸を勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

「これぞ完璧無敵の組み合わせ、唸れ魔銃、ソイルの導く生ご…ソイルが導くがままに!!(あの六本の足で動く城は危険だ。これ以上()のような被害者が出る前に…此処で俺が打ち砕く!!)」

 

「出でよ!究極の召喚獣!砲撃獣(バハムート)!!」

 

 

 

 

~数時間前~

 

 

 

 

「…もうそろそろ指定の場所か」

 

今日は、珍しくアイツからの依頼。あのミストガンが俺に頭を下げてまで頼んで来た依頼だ。余程()()()が心配なんだな…

 

「カグラは元気だろうか?」

 

カグラちゃん元気かな~。って、これじゃ俺もミストガンの事言えんな。んで、あの娘って言うのは、ミストガンが俺に会うずっと前、この世界に来て初めて助けたって言っていた()()()()()って少女の事だ。ま、カグラちゃんの事は、

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々にあった時、聞こう」

 

風は走る。今回、正規ギルドの4つが集まり連合を組み六魔将軍(オラシオンセイス)と言う名の闇ギルドを討伐する為に集まっている場所へ。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

「…これは、どうなっている?」

 

やってきました!! 此処が、今回闇ギルドを討伐するチームが集合する場所でぇ~す!! ま、

 

「………人が、倒れている。他には誰もいない―」

 

一人、お腹を押さえて倒れているだけで誰も居ないんだけどね!!さぁ、応急処置しなくちゃな。簡単な応急処置ならお手の物。伊達に数年間この世界で生きてないぜ(キリッ

 

「メ、メェ~ン…」

 

お、まだ人が居たの…くぁwせdrftgyふじこlp!?<ドン!ドン!!>

 

「メ、メェーン!? き、君!私を撃たないでくれたまえ!!怪我人だぞ!!」

「…済まない。条件反射で撃ってしまった」

 

に、人間だったのか!? 変な生物かと思って撃ってしまった。でも、後悔してない。

 

「メェ~ン!」

 

何か、濃ゆいし、仕草がムカつくから。

 

「ジュ、ジュラさん!? いけない!手当は君がしてくれたのか!? ありがとう!! でも、念のために痛み止めの香り(パルファム)を!!」

 

お、何かいい匂い。

 

「グ、ぬかった!! 一夜殿、早く彼らの加勢に!!」

「まだ動いてはいけない!!」

 

何か良くない事が起きたか? だったら、

 

「…俺も手伝おう。俺の名は黒き風。化猫の宿(ケット・シェルター)の加勢に来た者だ」

 

手伝うのが、普通っしょ!!

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

………れ、連合…ぜ、全滅やねん。なんでやねん! でもこれ、ほんとやで。

 

って使い慣れねぇ関西弁やっている場合じゃない。俺と変な生き物(青い天馬(ブルーペガサス)の一夜)、スキンヘッドのオッサン(蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のジュラ)で連合の皆に加勢に来たんだけど、全滅でした。ハイ、お疲れさまっした!! 解散!! ――って、こんなんで終われるかぁ!! 何でかウェンディちゃんの加勢に来たのに当の本人は攫われてるし、

 

「私の腕ごと斬り落とせ!!」

 

腕に毒を受けたエルザって人は、足手まといになるから腕ごと毒を排除しようとするし!? ホント、どうなってんだよ!!

 

「あの娘は天空の滅竜魔導士、天竜のウェンディ!! あの娘ならその人を治療できるわ!!」

 

ありゃりゃ、俺が無い頭で一生懸命整理していると、いつの間にかウェンディちゃんの救出が決定されたみたい。

 

「それと、貴方は誰? あの二人を助けてくれたらしいけど?」

 

おっと、ネコさんがこちらに質問してきた。此処は華麗に、分かりやすく、友達が出来る様に、近所のオッサンの様に気さくに自己紹介をしよう!!

 

「ある人物から化猫の宿(ケット・シェルター)の加勢を頼まれて来た。黒き風だ」

 

チ、チックショー!! 悔しいです!! な、何故こんな硬い自己紹介しか出来ないんだ!! 友達がミストガン以外居ない俺。知り合いがミストガンしか居ない俺。…さ、寂しくないやい!!

 

「お前が風!? ラクサスの魔水晶(ラクリマ)を一人で消し飛ばしたヤツ!?」

「楽園の塔でエルザさん達を救ったって言う!?」

「…カグラが感謝してたぞ」

 

ナツ、ルーシィ、グレイが風に話しかけた。

 

オイオイ、一度に話しかけるな。照れるだろ!! って違う。俺は聖徳太子じゃねぇからいっぺんに話しかけるなっての。それよりも、

 

「カグラが世話になってる。それより今はウェンディの救出だ。俺も手を貸す」

「うおぉぉ!! コイツ今から仲間だ!!」

「心強いわ!!」

 

そ、そんなに期待しないで!! 外見は大丈夫だけど、中身は一般人だよ!!

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「な、何故エンジェルちゃんを助けたんだゾ?」

 

何故、お前を助けた、か。ウェンディを連れ去った理由、()()()()()()と云う魔法の特性を知る為だ。

 

「知るかよ!人を助けるのに理由が居るのか? それより、ウェンディちゃんを攫った理由と、さっきの光がニルヴァーナって魔法だろ? そいつを教えてくれねぇか、嬢ちゃん。」

 

…先程の光を見てから何かがおかしい。

 

「て、天空の巫女を攫ったのはジェラールと言う人物を回復させ、巫女を人質にニルヴァーナの有りかを吐かせる為だゾ」

 

ジェラール、聞き覚えのある名だ。…つい最近牢獄に入れられた犯罪者だったな。

 

「ジェラール、確かあの変な塔で何かしようとしてた兄ちゃんだったな。で、何故回復がいる? それに、そいつは牢獄の中だったはず…それと、あの兄ちゃんはウェンディの兄貴だったのか?」

「…ジェ、ジェラールはニルヴァーナの正確な位置を知っているから、エンジェルちゃんのジェミニ(星霊)を使って脱獄させたゾ。脱獄させたら、何故か善人になってたから拷問して吐かせてやろうとしたけど…口を割らなかったゾ。だから此処まで連れて来て「あ~、嬢ちゃんもういいわ」な、何なんだゾ!!」

 

人とはこうも変われるモノなのか……良い事だな。

 

「あの兄ちゃん改心したのか。良い事だぜ。済まねぇなこっちで話を振ってんのに中断させちまって。だが、これ以上嬢ちゃんの話を聞いてると、殺気が抑えられなくなる。で、ジェラールとウェンディの関係は?」

「ブ、ブレインが言うには恩人らしいゾ」

 

…恩人、か。

 

「ま、それじゃ仕方ねぇわな。最後にこの魔法に付いて教えてくれや」

「ニ、ニルヴァーナは―」

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「すげぇヤベェ魔法じゃねぇか!!」

 

表と裏を入れ替える魔法。(正しくは光と闇の感情を入れ替える魔法である)

 

「俺みたいに思考と口調が逆転しちまったら、世界が混乱しちまうぜ!!」

 

風は走る。先程地面が隆起し大きな都市が動きだした方向、化猫の宿(ケット・シェルター)へ。

 

そして、冒頭に戻る。

 




2017/6/5修正しました。


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第4話

骸骨王様誤字報告ありがとうございました。


 

 

 

六魔将軍(オラシオンセイス)のレーサーはグレイ、リオンの氷の造形魔法を操るコンビに〝自分が早くなっているのではなく、周りの速度を遅くしていた事〟を見破られ敗れた。エルザは助け出されたウェンディによって無事治療された。が、皆の奮闘も虚しくニルヴァーナは起動されてしまった。

ニルヴァーナ起動の反転魔法の影響で六魔将軍(オラシオンセイス)のホットアイは『愛』に目覚め改心し、ジュラと共に元の仲間たちを止める為にニルヴァーナへ。それとほぼ同時に星霊魔導士同士の激闘の末ルーシィがエンジェルを打倒。

場所は移り変わりニルヴァーナ上で毒竜のコブラは耳が良すぎてナツの咆哮により気絶し、ブレインはジュラによりあっけなく打倒された。ミッドナイトを追い詰めたと思ったホットアイ。だが、それは幻覚魔法であり敗れてしまった。しかし、復活したエルザの義眼であった右目には幻覚は効かず、ミッドナイトも倒された。

しかし、六魔を打倒したせいでブレインのもう一つの人格、六魔将軍(オラシオンセイス)のマスターゼロがナツ達の前に立ちふさがったのだった。

 

 

 

「オレは、只破壊してぇぇんだよ!! 何もかも全てなぁー!! ニルヴァーナ発射だぁぁ!!」

 

ゼロが化猫の宿(ケット・シェルター)へニルヴァーナの砲身を向けた。

 

「さ、させるかぁ!! 岩鉄壁(がんてつへき)!!」

 

ナツ達を庇いダメージを受けたジュラは気絶していたが、ゼロの声を聞き目覚めニルヴァーナの発射を阻止せんと魔法を放った。

 

「邪魔すんじゃねぇよ!! オラァ!!」

 

ゼロはその石の壁をブレインが多用していた魔法常闇回旋曲(ダークロンド)でいとも簡単に破壊した。ブレインが使っていた時より、魔法の強さがけた違いに強かった為だ。

 

「クソッ!ここまでか!! …あ、あれは!?」

「ん?何だ?化猫の宿(ケット・シェルター)の前に変なヤツが立ってやがる!?ま、このままニルヴァーナの餌食になっちまうがなぁぁ!!」

 

 

■□■□

 

 

その男の声は、激しい戦いの中で不思議とジュラとゼロの二人には聞こえた。

 

 

 

 

 

『貴様にふさわしい、ソイルは決まった!!』

 

風は六本の足で歩行する古代都市ニルヴァーナへ向け叫ぶ。

 

「す、凄まじい魔力だ!!」

 

ジュラが驚愕し、

 

「な、何なんだこの男は!?」

 

ゼロが吠える。

 

『冴えわたる知性の煌めき、マーベラスオレンジ!』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を顔の前に持って来て、指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

『限りなき探求への欲望、マニアックパープル!』

 

同じように二本目を装填。

 

『そして、完全勝利の誓い、ウルトラショッキングピンクゥゥ!!』

 

最後はベルトを叩き、弾丸を勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

「これぞ完璧無敵の組み合わせ、唸れ魔銃、ソイルの導く生ご…ソイルが導くがままに!! ………出でよ!究極の召喚獣! 砲撃獣(バハムート)!!」

 

 

 

「ド、ドラゴンだと!?」

 

誰が叫んだかは分からない。だが、いまこの()()に頭が三つの銃口の形をもった、異形の竜が姿を現した。

 

「そ、そんなモノもうこの世に存在しねぇ!! ミッドナイトと同じ幻覚魔法だ!! 行け! ニルヴァーナ発射ぁぁ!!」

 

ゼロの号令と共にニルヴァーナが放たれる。

 

「そんなちんけな攻撃で俺を倒せるかってんだ!! それに、俺を倒したければ白い雲を呼んで来るんだなァァァ!! やっちまえバハムートォォォォ!!」

 

 

 

一閃。…それですべてが終わっていた。

 

 

 

「な、何が起こったんだ!?」

「こ、この目でドラゴンを見る時がこようとは…」

 

ゼロは何が起こったか分からず、ジュラはドラゴンを見た事に感激を覚え、

 

「あ、あれがドラゴン…」

「ナツ達、ドラゴンスレイヤーが倒す相手…」

 

ルーシィは唯々呆然とし、グレイはその凄まじさにドラゴンスレイヤー達を心配した。

 

ニルヴァーナの魔法はバハムートの攻撃に拮抗すらしなかった。バハムートの攻撃はニルヴァーナの砲塔を簡単に貫き、中心にあったコアを全て破壊。―するだけでなく、ニルヴァーナの背後にあった2つの山の(いただき)を簡単に消し飛ばし、地面や山に抉られた後を大きく残し大空に消えて行った。そして、バハムートは大きな咆哮をあげ()()を壊して何処かへ行ってしまった。

 

「あ、あんなのイグニール達ドラゴンじゃねぇ!!」「あれは私達が知ってるドラゴンじゃないです!!」

 

だが、ナツとウェンディは()()をドラゴンとは認めなかった。自身が知っているドラゴンは心を持ち、人と語り合うことが出来たのだ。今、目の前に出現した感情の無い無機質の生物とはかけ離れた存在だったからだ。

 

「残念無念、また来てねん!!」

「き、貴様ぁー!!」

 

ゼロは風に向け得意の常闇回旋曲(ダークロンド)を放つ。

 

「ちょいなっ! 回避成功!! 反撃…は無しだ! 後は任せたぜツンツン頭!!」

「…すまねぇな風! それに、やってくれたな黒目野郎!! 行くぞ!! リベンジマッチだ!!」

「まだ生きてやがったかクソガキ!!」

 

ゼロの魔法を軽々と躱し反撃しようとした風は、ジェラールの炎を喰らって復活したナツにその場を任せた。

 

 

■□■□

 

 

「…戻った。」

 

(ようや)く口調が元に戻った。てか、戻らなくても良かったかもしれねぇな~。あと、その場のノリで砲撃獣(バハムート)を召喚しちゃったけど~。ま、勝てたから問題ねぇな!! って、しまった!!

 

「ウェンディを救出しなければ…」

 

ウェンディちゃんを救出するのが目的だった!! や、ヤッベー。あの変な城には居なかったよな!! 中心撃ち抜いちゃったよ!?

 

「あ、あの…」

「何だ?」

 

何だよホントに!! こっちはウェンディちゃんを探しにまた走り回らなければならないって言うのに!! は~、どれどれ、誰が話しかけてきたのかな? 腰まである青い髪に羽をあしらった可愛らしいコーディネートのワンピース。あらら、ミストガンに聞いたウェンディちゃんの容姿にぴったりじゃん。…ウ、ウェンディちゃん!?

 

「…良かった。無事だったか」

「あ、あのあの…わ、私達のギルド、化猫の宿(ケット・シェルター)を守ってくれてありがとうございました!!」

 

おおう!? そ、そんなに勢いよく頭を下げなくても良いって!!

 

「…気にするな。俺が勝手にした事だ。それに、六魔将軍(オラシオンセイス)を壊滅させたのはお前達だ。俺は何もしていない」

 

そうそう、気にしなさんな。俺ってば、オッサン助けた後は森を彷徨(さまよ)ってただけだし…変な魔法受けて口調が元に戻ったのは嬉しかったけど、確実に足手まといだったからあれぐらいしないと割に合わねぇぜ!!

 

「そ、それでもありがとうございました!!」

「…受け取っておこう。」

 

真っ直ぐな娘だ。おっちゃんそう云う娘の押しには弱いんだわ。

 

「おい! 風!! ドラゴンだせドラゴン!! 俺と勝b「メェーン!!」どうしたオッサン!!」

 

ん? 何か変な模様が足元にある? …あれ? この変な文字が書いてある場所から出れねぇ!?

 

「私は、新生評議員第四強行検束部隊隊長、ラハールと申します」

 

うわっ、こいつ絶対堅物の真面目ちゃんだ。眼鏡掛けて堅っ苦しい自己紹介してんだもん!!

 

「そこにいるコードネームホットアイを渡してください。」

 

ま、そうなるわな。どういった経緯で仲間になったか知らんけど、元々闇ギルドで悪りぃ事してた所の人間だ。ま、情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)の余地はありそうだがな。

 

「それと…脱獄犯、ジェラール。貴様は問答無用で牢獄へ戻ってもらう。ひっ捕らえろ!!」

 

あ~、どう言ったらいいのか分からん。犯罪起こして、刑期中に脱獄だもんな。更に罪が重くなって一生牢獄生活を送る人生になるかも……エルザって姉ちゃんには申し訳ねぇけど、こりゃとんでもない善行しないと釈放は無理だわな。

 

「それと、賞金稼ぎ〝黒き疾風〟」

 

だ、誰だそんな厨二な二つ名のヤツ!!そんな名前恥ずかしくて名乗れねぇぞ!!

 

「ハァ、君の事だ風君。様々な闇ギルドを潰している事には感謝している。しかし、ギルドに出されたクエストも勝手に請け負い、クエスト報酬も受け取っている。これは以前から評議会でも問題になっていた。今回、それも踏まえ評議院で証言してもらう。エーテリオン消滅の真相も聞きたい。来てもらうぞ」

「…分かった」

 

って、その二つ名俺かよ!! 上等だ!! 評議会でも何でも行ってやるよ!! その時、変な二つ名は絶対消させてもらうからな!!

 

ホットアイとジェラール、そして何故か風は評議院達によって連れていかれてしまった。

 

「あっ、あの人って、結局何で私達の助っ人に来たの!?」

「「「さぁ」」」

 

色々謎を残しながら。

 




2017.6.18修正、加筆しました。


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第5話

 

 

 

このアースランドに来て様々な人に出会った。

 

まずはウェンディ。彼女はこっちに来て初めて出会った娘だ。当時の俺はこの()()の事を良く知らなかった。それで、

 

「僕の名前は()()()()()。君の名前は?」

「ウ、ウェンディ…」

 

彼女にジェラールと名乗ってしまった。そして、〝アニマ〟を止める為、彼女を一人の老人に託し(後の化猫の宿(ケット・シェルター)マスターローバウル)俺は彼女と別れたんだ。

 

次に出会ったのが、今所属しているギルドのマスターマカロフ。

 

「おぬし、儂のギルドに来るか?」

「…いいんですか?」

「ああ。大歓迎じゃ!!」

 

温かい心で俺を受け入れてくれた。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入っても〝アニマ〟を消す事を目的としていた俺を理解してくれた人物だ。合間合間に受けたクエストが好成績だった為、俺はS級への試験を受けられるようになり、見事合格。これで、俺が長期間ギルドに居なくてもS級クエストを受けに行ったと思ってくれる。…でも、皆を騙しているようで心苦しい。

 

そして、同じエドラスから送り込まれたと思われる記憶を失った男、風。

 

「…俺もお前が受けるクエストを手伝おう」

「いいのか?君、探し物があったろう」

「いい。お前と行動しながら探す」

「因みに何を探してるんだ?(恐らく失った記憶に関する何かだろう。下手に思い出して敵対されたら危険だ。でも、今()()を聞き出し()()に関係するモノから遠ざければ心配ない筈だ)」

「…黄色い走る大きな鳥だ。俺を超える高さの奴もいた」

「は、走る黄色い鳥!? お前を超える大きさだと!?(この世界を旅している俺でも見た事も聞いたことも無いぞそんな鳥!?)」

 

風とは様々なクエストを一緒に受けて行った。当初、監視も込めて一緒に行動していたんだが、

 

「これより、催眠魔法を使用する。後はいつも通りだ」

「…分かった。サポートは任せろ」

 

俺が眠らせ、風が様々なフォローに回る。風の射撃は目標を一度も外さないし、驚異的な身体能力で目当ての物を即座に取って来て内心驚いたり。今まで一人でこなしてきた事が二人になった事で楽になり、知らず知らずのうちに、彼が本当の相棒(パートナー)の様になっていた。

 

「ッ!? アニマ!?」

「…どうした?」

「す、済まない。どうしても一人で行かないとならない任務が―(アニマを見て記憶が戻っても大変だ)」

「行って来い。このクエストは俺が代わりにやっておく」

「―やはりダメk…い、いいのか!?」

「行って来い。お前にしか出来ない事だろう」

「済まない!! 行ってくる!!」

 

突然発生したアニマの対応も風は快く承諾してくれた。それに、俺が受けたクエストも代わりにやると言ってくれる。彼の存在で即座に〝アニマ〟対策が出来て助かっている。

 

「…この前受けたクエストの報酬だ。半分は依頼主に返した。…悪いな」

「この前…あれは、確か捕らわれた人質が何処にいるかの調査だったか?」

「ああ。で、救出した」

「は?(あれ? 俺の耳が悪くなったのか? 今、救出したって聞こえたが?)」

「警備がザルだったからな。簡単だった。それに、人質が捕まっていた檻も脆弱だったせいもあって、思ったより早く終わったぞ」

「そ、そうか…では何故報酬を半分返したんだ?」

「依頼は『調査』だったのに『救出』してしまったからな。それでだ。…ダメだったか?」

「い、いや。君がいいなら問題ない」

 

ど、何処を突っ込んだらいいか分からなかった。確かあのクエストは、闇ギルドに連れ去られた領主を捜索する依頼だったはず。目星を付けたのは、その闇ギルドが縄張りにしている大きな城。本当なら城の構造と領主が捕まっているだろう場所を特定後、数人の正規ギルド員で敵を殲滅。同時に領主を救出するという手筈だった。なのに、風はそれを一人でやり遂げたらしい。

報酬も今後領土の警備や整備に回せるよう配慮したんだろう。普通なら助け出せたんだから報酬を上乗せするヤツが多いのに…全く、頭の回転もいいのに他人を気に掛ける事の出来る変わった奴だ。

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「…君は偶に俺を驚かせてくれるね」

「…」

「でも、これはどう言う事だ!!」

「…スマン」

 

ども、風です。評議院に連れて来られて、変な光(エーテリオン)を消した事と数個S級クエストを一人でこなした内容の中で、一番最初に請け負ったヤツを話したぜ。

S級クエストだった『人質が何処に攫われたかの調査』はミストガンが受けたクエストだったんだけど、急な『任務』ってのがミストガンに入ったから俺一人で行ったんだ。んで、この風様body(ボディ)を駆使し、捕らわれた領主が居そうな城のてっぺんに侵入。見事領主のおっちゃんを見つけ出した俺は―

 

「…助けに来た」

「ど、どうやって此処まで侵入したんじゃ?」

「そんな事はどうでもいい。逃げるぞ」

「ど、どうやってじゃ?」

 

話しかけ、脱出路へ案内し、

 

「わしゃ、まだ死にたくないー!!」

「…黙ってろ。舌をかむぞ」

 

紐なしバンジー!! スタッ!! 華麗に着地!! 10点! おっさんも、

 

「うぅ~」

 

死んでない!! やったね! ミッション成功!! 後はこのおっさんを領地に戻せば終わりだ。って、

 

「な、何だお前!?」

「…」(※BGM:目と目が逢う瞬間~)

「そ、そいつはこの前攫った領主!?」

 

見つかっちゃったぜ。こ、こうなったら!!

 

「隠れてろ、此処を潰す」

「は? な、何言っているんじゃ!?」

 

もう、形振(なりふ)り構ってられるか!! 此処を潰す勢いで反撃だぁぁぁぁぁぁ!!

 

で、そんなに強くなかった(風感覚)からそいつらを全員無事殲滅。紐なしバンジーと戦闘になってしまった事のお詫びに報酬を半分にしてもらったぜ。

 

 

 

話は戻るが評議院で俺は、

 

「S級クエストはミストガンから頼まれたから実行した。(正直簡単だったからサクッと終わったぜ)」

「エー、テリオン? あぁ、あの光の事か。テュポーンで空間ごと消した(初めて魔銃が動いた! 召喚獣ならあんな光一瞬だぜ!!)」

 

正直に話したんだぜ! 正直に!! それで、

 

「エンジェルちゃん驚いたゾ。あれが反転した影響だったなんて思わないゾ。」

「…話掛けるな」

 

って、エンジェルの嬢ちゃん、今は話し掛けないでよ!! 今ついさっきのこと思い出して俺、沈んでるの!!

 

「何したんだゾ。…まさか元闇ギルド員だったゾ!?」

「違う。今までどこのギルドにも所属したことはない」

 

闇ギルドって!? そ、そんな危ないとこに俺は、お世話になってませんよ!! って話し掛けてくれるのは良いんだけど…

 

「ま、変な事をしていないって言うのは、エンジェルちゃんもそうだと思うんだゾ。お前は、こんな美人のエンジェルちゃんと()()()()に入れられているんだゾ。闇ギルド員の犯罪者だったら異性を同じ牢屋に入れないんだゾ!」

「…そうだな」

 

エ、エンジェルの嬢ちゃん、俺を慰めてくれるのか!? 嬢ちゃんは他の奴らとは違ってすげぇ(わり)ぃ奴じゃなかったんだな!!

話は戻るが、俺を危険視した評議院にこの牢屋にぶち込まれちまった。んで、牢屋が足りないからって六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルと同じ牢屋って………どう言うこと?

まぁ、他の六魔将軍(オラシオンセイス)は全員男だから当然彼女は別の牢屋に入れられるのは必然だ。それに、ブレイン、ジェラールは超危険人物だから厳重な個別の牢屋に入れられ他は一つの牢屋に入れられている。

この牢屋に入って通りかかる評議院の話をちょくちょく聞いてみたら…俺が使った召喚獣(テュポーン)が危険だから此処にぶち込まれたらしい。そりゃ、そうだよな。召喚獣を使って攻め込まれたらどんな奴でも一溜りもないぜ。

でも、このぐらいの檻なら簡単に破壊できる。が、ミストガンに迷惑掛かるからな~。誰か知り合いが来て事情を話してくれないかな…ってミストガンしか知り合いいねぇ!? ミストガンに迷惑掛けるばっかじゃん!! おっ、誰か来た!!

 

「…君は偶に俺を驚かせてくれるね」

「…。」

「でも、これはどう言う事だ!!」

「…スマン」

 

本当にスマン、ミストガン!! それに、ファーブラ様に誓ってエンジェルちゃんには手を出していませんから!!

 




2017.6.19修正、加筆しました。
BGM「目が逢う瞬間」コード143-9133-3


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第6話

 

 

 

『私はファーブラ。導く者。』

 

ミストガンの要請を受け、〝アニマ〟を通りエドラスに向かっていた風…

 

「何!?」

「この女は誰なんだゾ!?」

 

とエンジェルの前に大きな二枚貝の中から一人の女性が出て来た。

 

異界の夜へようこそ…ってそうじゃねぇ!!

 

『お久しぶりです。風。』

「何故、お前が…」

 

ホントにどうしてアニマの中でファーブラ様に出会うんだよ!!はっ、まさかさっきいた空間は、双子やリサが乗っていた()()()が走っていた()()()()()()の中だったのか!?

 

 

 

 

~数十分前 牢獄~

 

 

 

 

「どう言う事だ。」

 

ど、どういう事だよ!!

 

「さっき話した通りだ。俺達の世界『エドラス』の枯渇しそうな魔力を得る為アニマで別の世界の魔力と…魔力の高い人間を魔水晶(ラクリマ)に変え魔力を得る計画に妖精の尻尾(フェアリーテイル)がギルドごと巻き込まれた。」

 

そ、そんな!?じゃ、じゃあ

 

「カグラは?」

「……」

 

ミストガンの奴は無言で首を横に振りやがった。そ、そんな事って……で、でも、ミストガンが此処に来るってことは…

 

「救う方法はあるんだな。」

「ああ、ある。今、星霊に守られて間一髪免れたルーシィとドラゴンの力でアニマが通じなかったガジル、あとナツとハッピー、シャルルと…ウェンディが向こうへ行っている。俺も直ぐ向かうつもりだ。」

 

それなら話は早い!!

 

「直ぐ俺を送れ。」

「い、いや待て!こんな所でアニマを開ける訳には「送れ。」…はぁ、わかったよ。これが君の銃とソイルの弾丸だ。それじゃ、アニマを開けるよ!!」

 

待ってろよ!カグラちゃん!!今から助けに行く!!…でもその前に、

 

「ミストガン。」

「なんだ?」

「ありがとう。」

 

本当にありがとうミストガン!!

 

「気にするな。相棒だろ?」

「ああ。」

 

風はミストガンが開いたアニマに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「脱獄のチャンスだゾ!!」

 

六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルと共に。

 

「なにっ!?まt…クソッ、逃げられたか!!はぁ、仕方ない。事が済んだら、こっちの評議院に引き渡そう。」

 

何故かミストガンの背中は少し疲れた様に見えた。

 

 

 

 

~現在 貝の館~

 

 

 

 

『混沌を倒した後、外界の世界での活躍は観ていました。傍観しか出来ない私の存在を知りながら、責めもせず世界の為に戦ってくれました。本当にありがとう。…そう伝える事しか出来ない私を許してください。』

「いや、貴女を責めるつもりは無い。」

 

全然責めるつもりはありませんよ。だって、俺は〝黒き風〟本人じゃないし、外界の章(異界の章テレビシリーズ全25話の後)は少ししか知らない半端モノですから。

 

『そして、また貴方は世界の為に戦うのですね。』

「…世界なぞ知らん。奪われた者を取り返しに行くだけだ。」

 

世界の為なんてそんな大それたモノの為じゃないですよ。ただ、奪われたカグラちゃんを助けに行くだけ。ハハハ、俺も過保護なもんだぜ!!

 

『そう、ですか。では、貴女は彼に何故付いて行くのです?』

「…脱獄の為。と、風と一緒にいれば本当に〝風〟の様に舞って天使の様に空に消える事が出来るかもしれない…からだゾ。」

『天使、ですか…天使とは違いますが、貴女は空を駆ける雲をどう思いますか?』

「唐突に何なんだゾ。…羨ましいってかんじだゾ。」

『嘘偽りのない〝魂〟からの言葉…貴女になら託してもいいでしょう。』

「な、何を言ってるんだゾ?」

『これは、雲。』

 

ファーブラは一振りの白い剣と複数の容器をエンジェルに渡した。

 

「白い雲…」

 

な、なんで〝白い雲〟の武器持ってんのファーブラ様!?

 

『白い雲。風と共に戦い、時には対立し互いを認め合った彼の宿敵です。すべての役割を全うし眠りに付きました。貴女と()()なら上手く扱えるでしょう。使い方は白い雲…この剣が教えてくれます。』

「わ、分かったんだゾ。」

『かすかに感じた風、貴方の気配を辿って来ましたが、この()()に干渉するのも、もう限界のようです。アナタ方が救った私達の世界は未だ崩壊もなく、様々な行く末を魅せてくれています。またいつか私達の運命が交わるその日まで、アンリミテッドな導きを…』

 

その言葉と共に大きな貝もファーブラも二人の目の前から消えて行った。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

「彼女は知り合いだったんだゾ?」

「…ああ。」

 

〝俺〟じゃなくて〝黒き風〟のって訂正があるけどな。でも、そうか…彼女の世界の〝黒き風〟は混沌を本当の意味で倒し、平和をもたらしたんだな…

 

「で、いつまで()()すればいいんだゾ?」

「…知らん。」

 

んなもん、知らん!!でも、落下するのは慣れてる俺だけど…

 

「地上が見えんな。」

「何を悠長な事言ってるんだゾ!?」

 

中々愛しの大地が見えません。…こ、これは風様body(ボディ)でも無理かも!?

 

「こうなったら下に向けて魔力を放って減速…ま、魔法が撃てないんだゾ!?」

「魔銃は…やはり動かないか。」

 

やっぱり魔銃は思うように動かないぜ!ファーブラ様、かむばっく!!魔剣返すからこの魔銃を修理してくれぇー!!

 

「こ、こんな時の貰った剣だゾ!!」

 

いや~、それは無理でしょ。

 

「………。」

 

ほらやっぱr「ミストが(かなで)光の前奏曲(あやかしの歌に抱かれて)、」

 

「なにっ!?」

 

エ、エンジェルちゃんって前世、白き雲って落ち!?

 

「眠るがいい!白銀の練習曲(エチュード)…だゾ!!」

 

―白い(つるぎ)に一刀両断された容器から凄まじい光が飛び出し、

 

「…一刀獣。」

 

頭が剣の様に尖った魔獣が現れた―

 

「エンジェルちゃん達を降りられる場所まで、連れ行くんだゾ!!」

「…礼を言う。」

 

ありがとうエンジェルの嬢ちゃん!そして、ファーブラ様。酷い事思って済んませんでしたー!!

 

―そして、エンジェルの命令に一刀獣は咆哮で答え、二人を背に乗せ飛び立っていった―

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

永遠の魔力を欲する『エドラス』の王ファウスト。その魔の手は『神』と崇めていたエクシードにも及び、コードETD(エクシード・トータル・デストラクション)天使全滅作戦を発動。そして、滅竜魔導士から抽出した魔力を竜鎖砲として魔水晶(ラクリマ)に変えられた妖精の尻尾(フェアリーテイル)のいる浮遊島へ接続され、エクシード達が住む浮遊島(エクスタリア)消滅の兵器に変えられてしまった。

 

「止まれぇぇぇぇぇ!!」

 

衝突を阻止しようとナツ、ハッピー、エルザ、グレイ、ガジルが押し返す。

 

「止まってぇぇぇ!!」

 

その後に、エクシード達を説得していたウェンディ、シャルルが合流。そして、続々と国を守らんとウェンディ達に説得されたエクシード達が押し返す。

 

『オォォォォォォォォォォォォォ!!』

 

全員の心が一つとなる。そこに、

 

「何か分からないけど、加勢するゾ!!行け一刀獣!!こんな石ころなんて押し返すんだゾ!!」

「…助けに来たぞ。」

 

な、何か状況は分からんが…かぶとぉー!じゃない!!皆、助けに来たぜ!!

 

一刀獣に乗った風とエンジェルが駆けつけたのだった。

 




2017/7/2 修正・加筆しました。


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第7話

一部変更し再びUPし直しました。


 

 

 

結果的に風と共に脱獄を果たしたエンジェルは奇妙な人物、ファーブラから何故か白い両刃の(つるぎ)を受け取った。ファーブラはファイナルファンタジー:アンリミテッドで前回のダイジェストと次回予告に出て来る人物。ファーブラに会えた風は彼女の世界の『混沌(異界を創った化物)』が無事倒された事に安堵した。

そして、ファーブラが消えた途端エドラス世界に入り突如の落下を始めた二人。見えない遥か下の地面への激突を避ける為、ファーブラより託された『白い雲』の(つるぎ)を使い一刀獣を召喚する事に成功し激突を免れたエンジェルと風。二人は降りられる場所が無いか徐々に降下しながら進んでいた。

 

 

~side 風~

 

 

ぼ~や~良い子だ、ねんねしなぁ~……ってか!!おっ!?

 

「…この前方で巨大な浮遊島同士がぶつかっている。その島と島の間に…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者達がそれを阻止しているぞ。」

「なんで、そんな事してるんだゾ?…それも不思議だけど、アレはエンジェルちゃんには点にしか見えないゾ!!どうして、あれがハッキリ見えるんだゾ!?」

 

な、なんだと!?あんなにハッキリ見えてるのに!!う~ん、恐らく風は狙撃手だから目がいいんだろう。

 

「…俺は狙撃手だからな。…どうして阻止しているのか理由は分からんが、加勢するぞ。」

「え~、嫌なんだゾ。そもそも、アイツ等の中にはエンジェルちゃん達を倒した奴らがいるんだゾ。助ける義理なんて無いんだゾ!!このまま潰されちゃえばイイんだゾ!!」

 

そっか、そう言えばそうだった。エンジェルが普通に落下を助けてくれたから忘れてたけど、エンジェル達六魔将軍(オラシオンセイス)を倒す為、四つのギルドが力を合わせて戦ったんだよな。んでもって、無事六魔将軍(オラシオンセイス)は全員投獄。―何故か俺も。ま、これ以上俺の事情にこの嬢ちゃんを巻き込むのも悪いしな。

 

「分かった。この先は好きに生きろ。達者でな。」

 

そう言うと風は一刀獣の背から飛び降りた。

 

「えぇ!?な、なんで飛び降りるんだゾ!?…し、仕方ないんだゾ!!一刀獣、風を回収してあの島押し返すんだゾ!!」

 

(わり)ぃな嬢ちゃん。巻き込んじまった。

 

「悪い。巻き込んだ。」

「今度何か埋め合わせが欲しいんだゾ!!」

 

 

 

 

~side out~

 

 

 

 

魔水晶(ラクリマ)が押し返されていく…」

 

エクシードでありながら、人間の子供を助けたとして堕天させられたパンサー・リリー。自国を守ろうと決心し、飛び立ち途中落下したシャゴット女王を抱えながらそう言葉を漏らした。

 

「風ぇ!!遅かったな!!」

「…スマン。」

「何悠長に会話してんのよ!!もっと踏ん張りなさい、押し返すわよ!!…って、なんで六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルが風と一緒に魔獣に乗ってんのよ!!」

「一緒に脱獄したんだゾ。お前と今度勝負したら、エンジェルちゃんが圧勝しちゃうんだゾ!!」

 

風の登場にナツとルーシィが気付き、話しかけた。しかし、全く予想していない六魔将軍(オラシオンセイス)エンジェルの登場にルーシィは驚愕している。

 

「お前、誰だ?」

「あっ、以前は有難うございました!!」

 

一度も会った事のないガジルは警戒し、ウェンディは再会を喜び再び礼を言った。

 

「ミストガンは何処だ。それに、カグラは何処にいる?」

「ミストガンは私達をこっちに送り込んでそれっきりよ!!カグラちゃんは「カグラはこの魔水晶(ラクリマ)にされてしまった…以前に助けられたな。私はエルザ。カグラの兄、シモンとは友人だ。」って、エルザ余裕ね!!」

「…そうか、お前がカグラの言っていたエルザか。そして、カグラは兄に会えたか。だが、この魔水晶(ラクリマ)にカグラが―(良かったぁ!!お兄さんには会えたんだな!!それに、探していたエルザ姉さんにも会えた。こりゃ、おっちゃん感激だわ。でも、そんな幸福だったカグラちゃんをギルド毎かっさらって魔水晶(ラクリマ)に変えただとぉ!?そんな奴、この世界諸共『メテオマスター』で一掃してやらぁ!!)」

 

途中から会話に入って来たエルザ説明で大体把握した風。

 

「…動かない。(畜生ぉ!!なんでこんな時魔銃は動かないんだ!!)」

 

<カッ!!>

 

魔水晶(ラクリマ)が消えた…!?」

「アースランドに帰ったのだ。」

 

グレイの呟きに男が答えた。

 

「(こ、この声は!?)ミストガン…」

「風。君が時間を稼いでくれたお陰で間に合ったよ。」

「いや、俺はエンジェルに助けられた。この召喚獣はエンジェルの召喚したモノ。礼ならエンジェルに言ってくれ。(イヤイヤ、そんなことないぜ。俺は今回も全く役に立たなかった。この嬢ちゃんがいなかったら、多分俺はミンチになってたよ!お礼ならエンジェルの嬢ちゃんに言ってくれ!!)」

「何っ!?…にわかに信じがたいが風がそう言うなら本当だろう。ありがとうエンジェル。礼を言わせてくれ。」

「平伏すがいいんだ<ゴチン!!>ゾ!?」

「調子に乗るな。(本当に感謝してるが、調子に乗るな!!)」

「い、痛いんだゾ!!死ぬかと思ったんだゾ!!」

「…(やかま)しい。帰るぞ。(全く、最近の若けぇ奴は!!でも、これで全て解決!!皆で帰るか!!)」

 

<ズッ!!>

 

「グハァ!?」

「まだだ、まだ終わらんぞー!!」

「何ッ!?(ク、クロヒョウが撃たれた!?ってか、何で(ひょう)に天使みたいな羽があるんだよ!!)」

 

様々な事が起きて少ししか処理できていない風は心でツッコんだ。そして、クロヒョウことパンサー・リリーがエドラス世界のエルザ、エルザ・ナイトウォーカーに魔水晶(ラクリマ)が消え、安堵していた隙を突きバズーカの様な武器で撃ち抜かれたのだった。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

―エドラスの王、ファウストは禁式と称される兵器『ドロマ・アニム』を起動。これは世界の魔力を吸い続け動き、魔法は効かないと云う強力な物だった。その兵器に、ミストガン(エドラスのジェラール)は敗れ、エクシード達は王国軍に追われる状況になってしまった。そして、エクシード達を助ける為、

 

「仲間はやらせねぇぞ!クソヤロウども!!」

「ロキ!!」

「待たせたね!!」

 

グレイ、ルーシィは地上で

 

「スカーレットォォォォォ!!」

「ナイトウォーカァァァァ!!」

 

エルザはエドラスのエルザと()()で戦いを繰り広げている。

 

更に、

 

「鉄竜棍!!」

「火竜の鉄拳!!」

「『アームズ』!!攻撃力強化の魔法です!!」

 

三人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)はドロマ・アニムと対峙し、その名の通り機械仕掛けの竜と戦っている。―

 

 

「多勢に、無勢!!なんだゾ!!」

「分かっている。」

 

クソッ!!エンジェルの嬢ちゃんの召喚獣は消えちゃって今は、

 

「てや!!<斬!!>…何で召喚獣が出ないんだゾ」

 

ミスト入りの瓶を切っても現れないし、

 

「…動かない。」

 

俺の魔銃はやっぱり動かないし!!

 

「…<スカッ、スカッ!!>」

 

何故かショットガンは弾切れで撃てないし…絶体絶命じゃん!!

 

「…やるか。」

 

こうなりゃ、ヤケだ!足しか使えないなら…()()をやってやる!!

 

「クルダ流交殺法・影技、吼狼襲(クロス)!!」

 

―風の驚異的な脚力により、足から二つの巨大な真空刃が十字を描きながら国王軍を薙ぎ払って行った。―

 

うっそ~!!で、出来た!?

 

「…そ、そんな事が出来たなら早くやってほしかったゾ!!」

「…出来るとは思わなかった。」

 

エ、エンジェルの嬢ちゃん。そのジト目はヤメテ!!本当に出来るとは思わなかったんだよ!!

 

「余所見をとは余裕だな!!」

 

余裕なんて一つもねぇよ!!今度はこれだ!!

 

「…死重流(シェル)!!」

「なっ<ドゴ!!>にいぃ……」

 

―エンジェルと話していた風を王国軍が取り囲んだが、数十発の蹴りを放ち攻防両立できるフィールドを作り此れを撃退。―

 

『グォォォォォォ!!』

「ちょ、この剣には大きすぎるんだゾ!?」

 

―レギオンなる王国軍の使役する大型モンスターがエンジェルに迫る。―

 

ヤベェ!今のエンジェルの嬢ちゃんは魔剣を上手く扱えてねぇ!!…ま、俺もだけど、援護だ!!

 

衝苦(ソニック)!!」

 

―超音速の蹴りを振り下ろしその衝撃でレギオンをふっ飛ばす風。―

 

「…切りがない。」

「同感なんだゾ!!(でも、風は何か余裕そうなんだゾ。)」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のグレイとルーシィ、召喚されたレオ、風とエンジェル、そして笑顔のある世界を夢見て寝返ったココが応戦(一部蹂躙している場所もある。)するが、連戦の影響から膝を付き、倒れ、自身の不甲斐なさに涙する。そんな時、

 

「な、何だこれは!?木が生き物みてーに!?」

 

「「「「「オォォォォォォォォォォ!!」」」」」

 

「すまねぇ、遅くなったな。アースルーシィ。」

「エドルーシィ!!」

 

エドラス世界の妖精の尻尾(フェアリーテイル)が駆けつけたのだった。―

 




2017.7.18 修正加筆しました。


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第8話

出来るだけ簡単に読める様にしていたのですが、今回は話が長くなってしまいました。


 

 

 

エドラス世界の妖精の尻尾(フェアリーテイル)が参戦し形勢は逆転…までは行かず、一部を除いて拮抗していた。その一部は―表記しなくてもいいだろう。

 

裂破(レイピア)!!」

 

風が蹴りを入れた箇所の王国軍が爆ぜた。

 

「…オイオイ、アースランドの妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはあんなバケモンが居んのかよ!?」

「ゴメン、エドルーシィ(エドラスのルーシィ)あの人は違うのよ。(たま)に私達を助けてくれるんだけど、あの人妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってないの。見ての通り、強くて頼りになるけどすべてが謎の人物で、名前を〝黒き風〟って言うらしいわ。本名かコードネームかは分かんないけどね。」

 

風の出鱈目な戦闘力に驚愕するエドルーシィ。すかさずアースルーシィ(アースランドのルーシィ)が訂正したが、そのアースルーシィでさえ

 

「ホント、何者なのよ風は!?魔法を使わないのにあの戦闘力、()()()()をも使役する謎の召喚魔法…強いって言葉だけじゃ表現できないわよ!!」

「な、なに!?()()()()を使役するだと!?」

 

以前目の当たりにした()()()()に呆然としてしまった。そして今、目の前で繰り広げられている光景でも驚愕しているエドルーシィにその言葉は、更なる衝撃を与えたのだった。

 

 

 

~side 風~

 

 

 

邪魔なんだよテメェら!文字通り、蹴散らしてやらぁ!!おりゃぁ!!

 

「…。」

「む、無言で蹴ってると怖いんだゾ!!」

 

な、なにぃ!?こんなに心では叫んでるのに風様mouth(マウス)は動いていないだと!?

 

「…そうなのか。」

「そ、そうなんだゾ。って、あっちで妖精の尻尾(フェアリーテイル)滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達が押されているんだゾ!?エ、エンジェルちゃんは囲まれてないから、もう大丈夫なんだゾ!!だ、だからあっちを手伝うほうがいいんだゾ!!(風を見た敵兵士達の士気が下がり始めたんだゾ。これならエンジェルちゃんのへっぽこ剣でも倒せるんだゾ!…そ、それより今は、風と一緒に居たくないんだゾ!!あっ、また兵士達の目がバケモノにでも出会った様に怯えているんだゾ!!)」

「分かった。」

 

分かったぜエンジェルの嬢ちゃん。ウェンディ達の助太刀をしてくるぜ!!

…でも、あのロボットに何が通用するんだ?クソッ、もうこうなったら破れかぶれだ!!って、何時もの事だけどなぁ!!

 

 

 

~side out~

 

 

 

三人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)で放った〝咆哮〟は、まさかの跳躍でかわされその直後受けた反撃で、ナツ、ガジル、ウェンディは地に付してしまった。

 

『大人しく我が世界の魔力となれ。態度次第ではそれなりの待遇を考えてやってもいいぞ。』

 

倒れている三人にエドラスの王、ファウストがそう言葉を放つ。

 

「グゥ…(まだだ…)」

「ハァ、ハァ…(もうダメ…立ち上がれない…)」

「…。(ここまで…か…)」

 

 

 

 

『我は無敵なり、』

 

風の言葉は()()を体現していた。

 

『我が影技に敵う者無し、』

 

魔力を使わず、己の体のみで戦い兵士達を蹴散らし続けた。

 

『我が一撃は無敵なり!!』

 

風は自身の身体能力を生かし、ドロマ・アニムに肉薄。そして、

 

神音(カノン)!!』

 

ドロマ・アニムの両足が直線上になる真横から、超振動の破壊技を放った。

 

「風…(親父(イグニール)を見てるみたいだ…)」

「出鱈目だな…(アレに躊躇(ちゅうちょ)なく蹴り込むって、どんな神経してんだよ!?)」

「風さん…(凄い…)」

 

その蹴りはドロマ・アニムの両足を粉々に砕いた。そして、

 

「…繋ぐぞ!!(これ以上ヤツに不甲斐ない所見せられるか!!)鉄竜棍!!モタモタしてんじゃねぇ!行けぇ火竜(サラマンダー)!!」

「分かったぜ、ガジル!!ウェンディー!!オレに向かって咆哮だ!!」

「は、はい!!『天竜の…咆哮』!!」

「うぉぉぉぉ!!『火竜の劍角(けんかく)』!!」

 

ガジル、ウェンディ、ナツの連携でドロマ・アニムを破壊。コックピットに搭乗していたファウストをナツが最後の攻撃と一緒に連れだした。

 

 

■□■□

 

 

いや~、俺の声にあのロボットが振り向いてくれて助かったわ。あのまま追撃されたら皆御陀仏だったからな~。そして、何処かの世界に存在するかもしれないディアス=ラグ、エレ=ラグ、ガウ=バン申し訳ない、勝手に『武技言語』を使ってしまった。…だ、だって、影技(シャドウスキル)の大技使うから仕方ないじゃん!!

ま、俺は『武技言語』使って肉体強化出来ないから只のハッタリとあのロボをこっちに引き付ける為だったけどな。さて、じゃミストガンに礼を言って―<ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ>こ、今度は何だぁ!?

 

「島が落ちている…」

「な、何を悠長な事言ってるんだゾ!?逃げるんだゾ!!」

 

俺は、全然悠長に言った覚えは無いですけど!?

 

 

 

 

ミストガン(エドラスのジェラール)に逆展開された〝アニマ〟により、エドラス世界の全ての魔力がアースランドへ流れていた。

そして、ナツ、ガジル、ウェンディの三人は街を破壊していた。自分たちを〝悪役〟に仕立て上げミストガン(エドラスのジェラール)をその()を迎え撃つ〝英雄〟とし、()()の無くなったこの世界でミストガン(エドラスのジェラール)の発言力、説得力を持たせる為だった。

 

「これは、オレ流の妖精の尻尾(フェアリーテイル)式壮行会だ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)を抜ける者には三つの掟を伝えなきゃならねぇ。」

 

『一つ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の不利益になる情報は生涯、他言してはならない。』

 

『二つ、何だっけ<ドゴ!>ぐえ!?』

 

『…二つ、過去の依頼者に(みだ)りに接触し、個人的な利益を生んではならない。』

「そうそう。」

 

『三つ、たとえ道は違えど、強く力のかぎり生きなければならない。決して自らの命を小さいものとして見てはならない。愛した友の事を、』

『生涯忘れてはならない…』

 

<ドン!!>

 

「届いたか?ギルドの精神があれば出来ねぇ事なんかねぇ!!また、会えると良いな。()()()()()!!」

「ナツ…お、お前体が!?」

 

逆展開された〝アニマ〟により、ナツ達体内に魔力を持つ者は体が光り出し〝アニマ〟に吸い込まれて行く。

 

「ミストガン…」

「ああ、風。ありがとう。君にはこれからエドラスの…か、風!?」

 

ミストガンが驚くのも無理はない。

 

「君の体が…」

「俺も向こうに引き寄せられている。別れを言いに来た。」

 

風の事をミストガンはエドラスの住人だと思っていたからだ。

 

「風…君は…」

 

あらら、そんな悲しそうな顔しないでくれよミストガン。俺はアッチに戻ってまた俺の世界に帰る方法を探すから。それに、探している最中どっかでまた会えるかもしれないしな!!

 

「俺は向こうでまた、俺の世界に帰る方法を探す。探している間にまた会えるかもしれん。」

「…君の、記憶は」

 

ん?記憶?記憶っても…

 

「俺の世界、『ソイル機関』が発展していたウインダリアは混沌と呼ばれるモノに襲撃を受け壊滅した。そして、永い旅の後、皆の力を借り混沌を消滅させた。そして、俺は別の世界を放浪していた…」

 

って云うのが俺が知ってる黒き風の()()で、俺の()()は…

 

「良かった。記憶が戻ったんだね。そして、壮絶な話だ。」

 

は?え?記憶が戻ったって!?ミ、ミストガン!?って、

 

「…体が浮いた。」

 

話している内に体が浮いちゃったよ!?別れの際は何か渡すんだっけ?は、早く何か渡さないと!!

 

「また、何処かで会えるといいな。風。」

「また、会おう。これを受け取れ。」

 

<ピーン!!>

 

クソッ、今何も持ってないからこれしか渡せない!!

 

「こ、これは『ソイル』が入っていない空の薬莢(やっきょう)?」

「『ソイル』とはその者の魂のことでもある。それはお前が輝かせるんだ。達者でな。」

「ああ、君も達者で。そして、これをマスターマカロフに!!」

「分かった。渡しておく。」

 

風はナツ達と一緒に〝アニマ〟に吸い込まれて行った。

 

 

 

 

 

~アースランド~

 

 

 

 

アースランドに送られたエクシート達とシャルルのわだかまり(滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を抹殺する為の使命)は、シャルルが持つ『未来予知』により彼女が勘違いした事。そして、本当は女王の『未来予知』で浮遊島(エクスタリア)が崩壊する未来を見て子供たちをアースランドへ()()()為だった事が分かり解決した。そして、

 

「リリーは何処だ!?」

 

ガジルは、自分の相棒にする為(ナツとウェンディにエクシードが居るのに自分には居ないからである。)勧誘したパンサー・リリーを探した。

 

「オレなら此処にいる。<小っちゃ!!!>…オレは王子が世話になったギルドに入りてぇ。約束通り入れてくれるんだろうな…ガジル。」

「もちろんだぜ!!相棒(オレのネコ)!!!」

 

アースランドの影響か小さくなったパンサー・リリーに頬ずりするガジル。

 

「で、怪しいヤツを見つけた…」

 

 

 

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

 

 

 

「なんかギルドも変わってるし。ミラ姉も雰囲気変わってるけど。」

「そう?」

 

2年前死んでいたと思われていたリサーナは〝アニマ〟に吸い込まれエドラスで生きていた。そして、今めでたくアースランドに帰って来たのだ。

 

「ミストガンの事は残念じゃったが、そのエドラスとやらで元気にしてる事を願おう。」

「元気さ、このギルドで育ったんだ。元気に決まっている。」

 

マカロフとギルダーツが話している間も、妖精の尻尾(フェアリーテイル)内はドンチャン騒ぎだ。そこに、

 

「え~、エンジェルちゃんは嫌なんだゾ!!」

「ミストガンからの頼みだ無下には出来ん。それと、お前には関係ない。外で待っていろ。」

「それも嫌なんだゾ!!一人にされたら此処の連中に捕まってボコボコにされるんだゾ!!」

 

風が元闇ギルド六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルを連れて入って来た。

 

「マカロフと云う人物はいるか?」

 

様々な手助けをしてくれた『風』と何故か行動を共にしている闇ギルドの一人、『エンジェル』の登場で、一瞬で騒ぎが止み全員が固唾を呑む。

 

「お主は…「がじぇ゛どの゛~!!」カ、カグラ!?」

 

マカロフが話を切り出そうとした瞬間、以前風に助けられ恩義を感じているカグラが風目掛け飛び出した。

 

「(おぉ!?カ、カグラちゃん!?)…元気か。」

「う゛ん゛!」

「兄と姉には会えたそうだな。」

「う゛ん゛!!」

 

「(こんなに、嬉しそうに泣きじゃくって。おっちゃんもらい泣きしそうだわ。っと、まずはマカロフさんに此れを渡さないと。)…マカロフ。ミストガンからだ。」

「これは、あヤツが使っていた杖か?」

「ああ。それに感謝しているとも言っていた。ではな。」

 

風はミストガンから渡された杖をマカロフに渡しそのまま帰ろうとした。が、

 

「カグラ放せ。」

「い゛や゛だ!!」

 

カグラが風のマントを掴み放そうとしない。

 

「(カグラちゃん放してよ。これじゃ、此処を出れないよ~!!)はな「じゃあ、放さなくていいゾ。エンジェルちゃんがその手を斬りおとして」止めろ。スマン、しばらくやっかいになる。(ちょ、エンジェルの嬢ちゃん皆が居る時にそんな事言うんじゃない!!ほらほら、怖いお兄さんやお姉さんが睨んでるよ!?)」

 

「冗談なんだゾ。エンジェルちゃん達は一応『脱獄囚』だから他人には知られないような所がいいんだゾ。(上手く行ったんだゾ。風と一緒なら怖いモノはあまりないけど…もう、野宿は嫌なんだゾ!!)」

 

「(は?脱獄?…あ゛俺達牢屋の中から行ったんだった!!)…頼む。」

「わ、分かった。」

「風殿~!!」

 

ミストガンから受け取った杖をマカロフに渡すだけだった風。しかし、カグラのお願いと野宿が嫌になったエンジェルにより少しの間妖精の尻尾(フェアリーテイル)に居る事になった風。

 

「(ヤ、ヤベェ…脱獄ってどうやってもみ消せばいいんだ?)………どうする。」

 

そんな彼は今後妖精の尻尾(フェアリーテイル)と共に様々な出来事に巻き込まれて行く。

 




2017.7.29 修正加筆しました。


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第9話

 

 

 

<ギィン!!>

 

ギルドの一角で凄まじい音と共に次々交差する剣撃。

 

「てい!!」

「甘い!!」

 

その音の正体は、

 

「ハァ、ハァ…風殿見てくれましたか?カグラは此処まで強くなりました!!」

「こら、まだ修練の途中だぞ!!気を抜くなカグラ!!」

 

エルザがカグラに剣の稽古をしている音だった。

 

「…そうだな。」

 

って、イヤイヤ、強くなり過ぎじゃね!?この風様 eye(アイ)だから余裕をもって避けれそうだけど、普通は避けきれねぇぞ!!

んで、こっちじゃ、

 

「そうだ!もっと腰を入れて振るんだ!!」

「こ、こうなんだゾ?」

「そうだ。中々見込みがある。」

 

ファーブラ様から受け取った〝白い雲〟の剣をメイン武器にしようとエンジェルの嬢ちゃんが、元エドラス王国軍のパンサー・リリーって(ひょう)に指南してもらっている。

 

<ポン!!>

 

「ふぅ、元の体でいられる時間は短いな。」

「おい、〝疾風〟よぉ。あの女はお前が連れて来たんだろう。わざわざリリーに指導させずに、お前が剣を教えてやれよ!!」

 

小さい体に戻ったリリーの傍でガジルが風にそう愚痴を言う。

 

「俺の右手は()()だからな。それに、剣技は使えん。」

 

俺の右手は魔銃だし、剣なんて持った事ねぇから無理!!それに、

 

「リリーは教えるのが上手い。俺には出来ん事だ。」

 

すっげー教え方上手いし、エンジェルの嬢ちゃんも覚えるの早いしな!!

 

「王子が隣にいる事を認めていた男にそう言われると、少し照れるな。」

「なに!?相棒!?あいつに鞍替(くらが)えするつもりか!!」

 

こいつらもいいコンビになりそうだ。ミストガン、今度会った時話したい事が色々あるぞ!!

 

「な、何!?か、風殿は体術…特に強力な足技の使い手だと!?」

「そう言えば、ルーシィやナツも言っていたな。」

「ほぅ、そんな足技ならぜひ見てみたいものだな。」

 

ん?何故急に俺のなんちゃってクルダ流交殺法の話題になってんだ!?

 

「…何故。」

「ギヒヒ…」

 

なっ!?ガジルてめぇ!!

 

「…蹴り砕くにはちょうどいい鉄があるな。」

「ギヒヒ、そんな軟な鉄、何処にもねぇよ!!いいから、掛かってきな!!」

 

…ハハハ、これは少しキツめのお仕置きが必要だな。(悪い顔

 

蛇乱(チャクラム)。」

「な<ガキン!!>ウッ…」

 

風の足が円を描くように動き、ガジルを蹴り上げた。

 

「「「ガジル!?」」」

「あ~、死んじゃったんだゾ?」

 

硬ってー!!でも、

 

「…気絶しただけだ。加減はしてる。」

 

手加減はしたぜ(キリ!!

…本気でやったら、俺のなんちゃってでも死ぬかもしれない程危険だからな。…陰流。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ハッ!?疾風!!…あん?」

「もう出て行った。大丈夫かガジル。」

「…負けたのか?」

「完膚なきまでにな。(強い。あの滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が手も足も出ず、一瞬で負ける程とは思わなかった。)」

 

ガジルに簡単な応急処置を施したエルザ、カグラは一緒にクエストへ。エンジェルは風を追って出て行った。そして、ガジルが起きるまでリリーが傍にいたのだった。

 

「…ぜってぇ俺はアイツを超えてやる!!」

「俺も共に強くなろう。」

 

ガジルとリリーが共に強くなることを決心している頃、風は森の中。

 

舞乱(ブーメラン)。」

 

獣の首へ蹴りが入り、爪刀で首はいとも簡単に切断された。

 

砕竜(スクリュウ)。」

 

獣へ向け地面スレスレを回転、そこから跳ね上がった蹴りが相手を容赦なく(ほふ)る。

 

聖爆(セイバー)。」

 

その蹴りを放つ瞬間、真空刃が生じ数体の獣は呻き声あげながら、胴を真っ二つに切断され絶命した。

 

刀砲(トマホーク)。」

 

揃えた両足から爪刀が生じ、無慈悲に獣達を地獄へと叩き落す。

 

「…最近、此処での殺戮が多いんだゾ。これじゃ、生態系が壊れてしまうんだゾ。」

 

エンジェルがそう言った先には、複数のバルカンの屍が点在しており、返り血さえ付いていない無傷の風が佇んでいた。

 

「…分かっている。」

 

(分かってる。分かっているよ!!でも、そ、そんな事言われても俺は〝殺さない程度の力加減〟を覚えようとしてんだよ!!でも、)

 

「…今日で終わりだ。」

 

(きょ、今日で終わりにしてやらぁ!!これ以上は本当にヤバイ!…本当はカグラちゃんに何か教えれないかなって考えたんだ。で、銃は勘で撃ってるだけだし、魔銃は俺にしか使えないし!!だったら、影技(シャドウスキル)なら教えれるかなって。その辺にいたサルを蹴ったら…足が簡単に貫通してビビった。んで、手加減を覚えるいい機会だったし、技の確認も兼ねて凶悪って言われているデカいサル共を最近蹴って練習してたんだけど…見るも無残。手加減はさっきガジルにやった程度まで。…それも、只の鉄なら蹴り砕く威力。)

 

「何を警戒して修練を積んでいるかは分からないけど、そんなに気を張らなくてもいいんだゾ。エンジェルちゃんもちょっとはこの剣で戦えるようになったし、いざとなったら風とエンジェルちゃんの召喚獣であっという間なんだゾ!!」

 

(警戒とか、そんなんじゃねぇんだけどな。あ~、でも、エンジェルの嬢ちゃんにいらん心配させちまったな。)

 

「…そうだな。」

「早く帰るんだゾ。こんな所で評議院に見つかったら、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に隠れている意味がないんだゾ。」

「…分かった。」

 

(それは分かっている。が、やっぱり…)

 

「やはり俺は別の「ダ、ダメなんだゾ!!エンジェルちゃんが寝ている間、強力な魔導士に襲われたら誰が守ってくれるんだゾ!?」知ら「風が守るんだゾ!!」…」

 

(何でだよ!!)

 

「一緒に脱獄した仲なんだゾ。それにカグラを斬ろうとしたから、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一部から酷く睨まれてるんだゾ!!」

 

(あ~、シモンの兄ちゃん達ね。って、自業自得じゃん!!俺、全く関係ねぇ!!)

 

「関係な「風に傷モノにされたって、泣きながら言いふらしちゃ」分かった。お前と一緒の()()でいい。」

 

(クッソー!!健全な女の子と同じ()()ってどう言う事ですかマカロフさん!!俺の精神がゴリゴリ削られて行くんですけど!?)

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)女子寮~

 

 

 

 

「風殿~!!」

「カグラか。」

 

やぁ、カグラちゃんこんばんわ。この寮に叩き込まれて唯一癒しと感じる時間が来た。無論、幼女を襲う気は全くないぜ。

 

「今日はクエストで―」

 

ほうほう、今日はエルザ姉さんとクエスト行ったのか。上手く行って良かったな。この寮に叩き込まれて((かくま)われて)唯一良かったのが毎日、一日の出来事を報告にくるカグラちゃんの笑顔が見える事だ。最初は手を斬られそうになったエンジェルの嬢ちゃんを警戒してたが今では、

 

「ムッ、デカちち女!!風殿は渡さない!!」

「フン、チビッ子が!!このエンジェルちゃんに勝てるわけ無いんだゾ!!」

 

喧嘩するほど仲が良いと言えば良いのか、よくエンジェルの嬢ちゃんに突っかかって行っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日前~

 

 

 

 

 

 

 

「マスターマカロフ。風とエンジェルを女子寮で(かくま)ってみてはどうですか?」

「エンジェルは分かるが、何故風を女子寮に入れるのじゃ?(なんて羨ましい!!)」

「う~ん、理由を聞いてみないと何とも私からは言えないわね。エルザ、何故二人を女子寮へ?」

 

ギルドの一角でエルザとミラ、そしてマスターのマカロフが風達を何処に(かくま)うかの議論をしていた。

 

「まずは、エンジェルは信用できんからだ。冗談とは言え、カグラの手を斬りおとそうとしたのだ。正直、一人にするのは危険すぎる。」

「成程。」

「そして、風はあの()()()()()が顔を見せる程信頼していた人物。そして、体術も強いらしい。これ以上彼女を監視し抑制できる適任者は居ないだろう。」

 

そして、風の知らない所で彼の評価は鰻登(うなぎのぼ)りし、

 

「明日から、貴様は女子寮だ。」

「……(ハァ!?)」

 

エンジェル監視の任を勝手に押し付けられたのだった。

 




2017.10.15 加筆修正しました。


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第10話

 

 

 

「…もう一度聞く。誰だ、ソイツは?」

 

誰だソイツ?

 

「だ、か、ら、一週間前新たにS()級昇格試験に出場する者が決まった時に選出された仲間よ!!()()()()()とコンビ組んでいたアンタが一番良く知ってんじゃないの!?」

 

ビスカさん近い近い!!…ってそうじゃねぇ!!

 

「…()()()()()の相棒だったから分かる。アイツは()以外の者との交流は控えていた。そんなアイツが()()など取るわけがない。」

 

アイツはエドラスって世界の住人だったんだぞ。そんな奴がこっちの世界で痕跡を残す…心残りを作る様なマネはしねぇ!!…あれ?そう言えば一つ心配してたな―ハッ!?

 

「そ、そう言えば私達ですら()を隠して接していたのに…あら?()()()って去年誰とパートナーだっけ?」

 

ソイツ()()()じゃねぇか!!そ、それよりも!!

 

天狼島(てんろうじま)は何処にある。」

「えぇっと、確かあっちの方角「行ってくる。」ちょ、風!?」

 

ミストガンが心配する事…それは〝ウェンディちゃん〟の事だ!!アイツ俺に依頼するほど心配してたじゃねぇか!!そんなウェンディちゃんが、

 

「『メスト』という正体不明の者の為に、S級昇格試験のコンビを組んだだと…危険だ。」

 

き、危険すぎる!!あの時、手加減の練習せずにギルドでのんびりしとけばよかった!!

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

天狼島(てんろうじま)。今回妖精の尻尾(フェアリーテイル)のS級昇格試験が行われている場所である。

 

此処で試験を受ける対象者とパートナーを紹介しよう。

何時も行動を共にするナツ・ドラグニルとハッピー。

以前S級に挑む時パートナーを組むと約束していたグレイ・フルバスターと星霊ロキ。

意外や意外エドラス世界では仲が良かったらしい(リサーナ談)ジュビア・ロクサーとリサーナ。

何故か組むことになったエルフマンとエバーグリーン。

今回のS級に全てを駆けるカナ・アルベローナとそれを手助けすると誓ったルーシィ。

ラクサスを継承するのは俺だ!フリード・ジャスティーンとビックスロー。

敵対していた時、痛めつけてしまった罪滅ぼしか?俺がS級にしてやるとガジル…と被害者レビィ・マクガーデン。

自称ミストガンの弟子メスト・グライダーと巻き込まれヒロイン枠のウェンディ。

 

一次試験が終わった段階で合格者はナツ・ドラグニルとハッピー、グレイ・フルバスターとロキ、エルフマンとエバーグリーン、カナ・アルベローナとルーシィ、レビィ・マクガーデンとガジルだった。そして、二次試験『初代ギルドマスターメイビスの墓を探す事』が始まり少し経った今…

 

「総員戦闘配備!!コンディションレッド、撃退態勢に入れ!!」

 

闇ギルド悪魔の心臓(グリモアハート)がこの島に居るとされる〝伝説の黒魔導士ゼレフ〟を狙って攻め込んできた。

 

 

 

「危ない!!」

 

突然の攻撃で狙われたウェンディ。それを助けたのは風が正体不明と称した()()()だった。

途中ウェンディを心配したシャルルとそれに付き添って来たリリーにギルド員ではない事を見破られたメスト。そして、メストから知らされた彼の正体は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を潰す情報を探る為評議院の送り込んだスパイだったのだ。

 

「戦闘艦?あれの事<聖爆(セイバー)!!>な、何!?」

「船が!?」

「真っ二つに!?」

 

評議院の戦闘艦は船主と船尾の真ん中が何かに切られた様に真っ二つにされてしまった。

 

「な、何が起きている!?」

「お前がやったんじゃないのか!?」

 

木の中から現れた悪魔の心臓(グリモアハート)煉獄(れんごく)の七眷属アズマはそれに驚愕し、評議院のメスト…ドランバルドはアズマがやった事ではないかと抗議した。

 

「こ、この声、出鱈目な技の威力…ま、まさか!?」

「あ、アイツが助けに来てくれたの!?」

「風さん…」

 

 

 

 

 

~Side 風~

 

 

 

 

 

水面を走れない?そもそも、右足が沈む前に左足なんて出せない?ハッ!足りない!!足りないんだよ!!お前に足りないもの、それは!!情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!そしてなによりもォォォオオオオッ!!速さが足りない!!

 

「だから、俺は水面を走れなかった。」

「…な、何の話だゾ!?」

 

フッフッフ。だが、今の俺は〝風様body(ボディ)〟のお陰で、速さ・パワー・疲れを知らない体を手に入れた!!だから、今やっている様に皆が憧れる、

 

十傑集(じっけっしゅう)走りが出来る。」

「エンジェルちゃんを抱えながら、変な独り言は止めて欲しいんだゾ!!」

 

あっれ~?口に出ちゃってた?悪いねエンジェルの嬢ちゃん。

 

「悪い。」

「もう、良いんだゾ。」

 

クッソ怪しいメストって奴を取っちめる為に今は()()天狼島(てんろうじま)って所を目指して走ってるぜ。それと、エンジェルの嬢ちゃんがどうしても付いてくるって聞かないから、

 

「本当にこっちであってるんだゾ?(役得過ぎるんだゾ!!一緒に行くって言って良かったんだゾ!!)」

「…分からん。」

 

何故か『お姫様抱っこ』して十傑集(じっけっしゅう)走りしをしている。

 

「ど、どうするんだゾ!?」

「大丈夫だ、問題ない。」

 

大丈夫、大丈夫。俺、遭難には慣れてるから。無人島でその島の獣を倒して頂点に上り詰めたり、変な集団に囲まれたと思って撃退したら実はいい人達で丁重に持て成されたりと経験豊富!ムッ!!

 

「南方向に信号弾だ。」

「信号弾?確か、緊急事態の時使うってエルザが言ってたゾ。」

 

な、何ぃ緊急事態だぁ!?急がねば!!

 

「ちょ、風はや「急ぐぞ。」ま、まつんd―!?」

 

オラオラ、急ぐぜ!!って前方に船発見!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマーク…じゃねぇ!じゃ、緊急事態の根源…敵だ!!

 

「邪魔だ。聖爆(セイバー)!!」

「あれ?評議院のマーク(小声)…ま、気にしないんだゾ。」

 

見つけた!!あれがメストに違いない!!エンジェルの嬢ちゃんをリリー達の傍に降ろしてっと。

 

「お前がメストか?」

 

風は木から生えている悪魔の心臓(グリモアハート)のアズマの頭にショットガンを突き付けた。

 

「お、俺がメストだ。そっちは悪魔の心臓(グリモアハート)の…」

「俺は悪魔の心臓(グリモアハート)煉獄(れんごく)の七眷属アズマ。君は誰かね。」

「黒き風。」

「グ、悪魔の心臓(グリモアハート)!?最強の闇ギルドだゾ!?」

 

ヤッベー、人違いだったぜ。ここは謝って…

 

「悪い、人ち「タワーバースト!!」…ッ!?」

 

突如アズマを中心として爆発が起こった。

 

「ほぅ、アレを躱すか。」

「…。」

 

しかし、風は瞬時に回避し無傷。

 

「それに、脱獄した六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルが何故此処に居るのかね?」

「エ、エンジェルちゃんが何処に居ようとエンジェルちゃんの勝手なんだゾ!!」

 

…謝るのは無しだ!此処はみんなを逃がさねぇと。

 

「…お前は危険だ。本気を出そう。オレの魔法は失われた魔法(ロスト・マジック)大樹のアーク。葉の剣(フォリウムシーカ)!!」

「…。」

 

風の周りの木々の根が、枝が、風を襲いだし葉っぱの集団が追撃を行う。それを風はショットガンで(ことごと)く撃ち落として行く。

 

「す、凄い…」

「此処を離れるんだゾ!!」

「でも、風さんが!!」

「心配は要らない。王子が認めた男だ。」

「早く逃げるのよ!!」

 

その場にいたエンジェル達は呆然とするドランバルドを引っ張りながら離れていった。

 

「…行ったか。」

「他人を心配するとは余裕だな。左手のショットガンと右手の黄金、そして異常なまでの身体能力…そうか、お前がウルティアの言っていた〝風〟と云う人物かね。」

 

は?ウルティアって誰だ?

 

「…誰だソイツは?」

「気にするな、こっちの話だ。そして、貴様には生半可な攻撃は効かない事も調査済み。仲間にしたかったが、これで貴様は終わりだ!!」

 

風の周りにある木々から先程とは比べ物にならない量の根や枝が伸び、風を包囲した。

 

大地の叫び(テラ・クラマーレ)!!」

 

木々が風を雁字搦(がんじがら)めにし、大爆発が起きた。

 

 

 

 

 

~Side Out~

 

 

 

 

 

「か、風さん!?」

「あんなモノを喰らって生きては…」

「舐めるんじゃないんだゾ!!風は絶対負けないんだゾ!!」

 

逃げるエンジェル達にも見えた大きな爆発。心配するウェンディとドランバルド。そんな二人の声を聞き、エンジェルが反論した。

 

「風は絶対に勝つんだゾ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔銃、解凍。」

 

それは、無感情な言葉。

 

「な、何ぃ!?あれを喰らって無事なはずは!?」

 

聖爆(セイバー)の真空刃で簡単に脱出出来たぜ!!その後、回避したって訳だ。でも、知っているか?影技(シャドウスキル)最源流の一つに神移(カムイ)ってのがあってな、『姿』も『音』も『気配』もねぇ『目』や『耳』、『心』でも捉えられない技なんだよ!!ソイツを回避に使ったぜ。ま、俺のはなんちゃってだから、精度は劣るがな。

 

聖爆(セイバー)の真空刃で脱出し、影技(シャドウスキル)最源流神移(カムイ)を使い回避した。」

「し、真空刃!?そ、それをあの一瞬でだと!?」

 

そして、お返しだぜ!!

 

『お前にふさわしいソイルは決まった!!』

 

風はアズマへ指を向け静かに叫ぶ。

 

『灼熱の牙、カーディナルレッド。』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を顔の前に持って来て、指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

「さ、させん!!枝の剣(ラームスシーカ)!!!」

「…死重流(シェル)。」

 

風の召喚を止めようとアズマが攻撃するが、数十発の蹴りを放ち攻防両立できるフィールド死重流(シェル)を展開した風には通らなかった。

 

『紅蓮の疾風、ダーククリムゾン。』

 

一本目と同じように二本目を装填。

 

『そして、鋼の力、バーントシェンナ。』

 

最後はベルトを叩き、弾丸を勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

『焼き尽くせ、召喚獣…イフリート!!』

 

<オワァ!!>

 

召喚された金色の巨人は両手を頭上に掲げ、炎の球体を作る。

 

「ま、まだだ!!タワーバーストォォォ!!」

「…その程度の火力ではイフリートは止められん。行け、イフリート。」

 

イフリートの炎はアズマに容赦なく放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうなっているんだこの島は?」

 

ホント、どうなってんだよこの島は!!でもま、変な奴も倒したし、

 

「エンジェル達に合流するか。」

 

エンジェルの嬢ちゃん達と合流して情報交換だぜ。

 

アズマを倒した風は、空から降って来る悪魔の心臓(グリモアハート)の戦闘員達を蹴り飛ばしながらエンジェル達を探すのだった。

 



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第11話

再構成し投稿し直しました。仔犬様1~5・7・8・11話の誤字連絡ありがとうございました。


 

 

 

マカロフは悪魔の心臓(グリモアハート)のマスターハデスに一騎打ちを試みるも、圧倒的な力の差で負けてしまう。そして戦いの最中、ハデスはマカロフの前任、2代目の妖精の尻尾(フェアリーテイル)マスタープレヒトだった事をすんなりと肯定した。

 

戦いは激しくなり、滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)のザンクロウに滅竜神魔導士(ドラゴンスレイヤー)のナツは、自身の魔力を空にするという思い切った方法で喰えなかった〝神の炎〟を無理やり吸収。一部傷ついたマカロフの手助けもあったが、吸収した炎を用い反撃し勝利した。

 

悪魔の心臓(グリモアハート)のウルティアは本当の力は眠っているとされている〝伝説の黒魔導士ゼレフ〟をやっとの思いで倒し、ゼレフを担いで森を歩いている。彼を手に入れる事で悪魔の心臓(グリモアハート)の掲げる『混沌と闇が支配する〝魔法〟本来の世界』への第一歩を掴んだ。…その世界は、魔力の無い者は全員消滅してしまう最悪の世界だ。

 

エルフマンとエバーグリーンは悪魔の心臓(グリモアハート)ラスティーローズの〝具現のアーク〟に為す(すべ)もなく敗れ、やっとの事で妖精の尻尾(フェアリーテイル)のベースキャンプに逃げおおせた。

 

悪魔の心臓(グリモアハート)カプリコーン…『人間隷属魔法ヒューマレイズ』を用い〝星霊と融合〟してしまっていた()()()()()は、レオと解放されたカプリコーンの連携により人間に戻され、その場で消えて行った。

 

悪魔の心臓(グリモアハート)華院(かいん)は自身の『丑の刻参り』に使用する人形をナツ・ルーシィ・ハッピーチームに取られ燃えるルーシィ…〝ルーシィファイヤー〟の前に敗れたのだった。

 

 

 

 

 

永久(とわ)なる二重奏で、眠るがいい!白夜の二重奏(デュエット)…だゾ!!」

 

エンジェルの召喚した二匹の一刀獣が悪魔の心臓(グリモアハート)の戦闘員達を蹴散らしていく。

 

「オラァ!!」

「天竜の咆哮!!」

 

それに続き、戦闘フォームのリリーの拳とウェンディの咆哮が次々と敵を倒す。

 

が、

 

「何でこんなに敵が多く潜入してくるのよ!!」

「そんな事、エンジェルちゃんに聞かれても知らないんだゾ!!それより、メストって奴が居ないんだゾ!?」

「あんな奴放っておけば良いのよ!!」

 

シャルルとエンジェルがそう言い合いながら駆け抜けていく。今もなお空から降って来る敵の数は多く、彼女らはなかなか妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間達に合流出来ていない。

 

 

 

 

 

「…アズマが敗れた!?(天狼樹(てんろうじゅ)を倒させ妖精の尻尾(フェアリーテイル)に最後の足掻きも出来ないよう計画していたが…)」

「あのアズマが敗れただと!?」

 

此処は悪魔の心臓(グリモアハート)達が乗って来た船の中。マスターハデスともう一人の男が話している。そして、何故ハデスが天狼島(てんろうじま)の中央にそびえ立つ巨木天狼樹(てんろうじゅ)を倒そうと計画していたのかは、その巨木の特別な力を消すためだった。その特別な力とは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章を刻んだ者に加護を与え、この島で命を落とす事を防ぎ、魔力を増強するという力だ。

 

「どう云う事だ!!」

「私も見当が付かん。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の中で奴を倒せるのはギルダーツだけだ。やはり、先ほどの大きな魔力…奴がこの島に居る、と云う事か…」

「…俺が行く。今日は飛べそうなんだ。」

「分かった、主に任そう…ブルーノート。」

 

ブルーノート・スティンガー。彼が通った道には雑草すら残らないと言われる程の大魔導士が動き出した。

 

 

 

 

 

評議院であるドランバルドはブルーノートが悪魔の心臓(グリモアハート)に在籍している事と、それにより天狼島(てんろうじま)に〝エーテリオン〟が落とされる事を妖精の尻尾(フェアリーテイル)に伝え避難を促したが、

 

家族(ギルド)に手を出す奴はみんな敵だ、全て滅ぼしてやる!!」

 

そうナツに突っぱねられた。

幸運な事にこの時、ウェンディ達(エンジェルを含む)はナツ達と傷ついたマカロフに合流。マカロフやルーシィの治療をしていた。

 

悪魔の心臓(グリモアハート)のメルディは〝グレイを1番殺したい〟と発言。理由は自身を大切にしてくれたウルティアの母を〝殺した男〟と認識しているからであった。が、

 

『…誰の命を狙ってるって?』

 

激昂したジュビアの猛攻、自身が扱う感覚を共有する失われた魔法(ロスト・マジック)〝マギルティ=センス〟により共有したジュビアの強すぎる『愛』により戦闘不能になった。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

此処は妖精の尻尾(フェアリーテイル)のベースキャンプ。負傷したガジル、エルフマン、エバーグリーンが寝かされ、ミラジェーンとリサーナの姉妹とレヴィが看病をしている。そして、先行して来たリリーによって知らされた情報により、後からウェンディ達と治療されたマカロフもこの場所で休まされる手筈になっていた。

 

「みんなで力を合わせればきっと…」

 

マスターをも倒され意気消沈気味だったレヴィは、リサーナの声によって立ち直り

 

(あきら)めも大事さ」

 

掛けた所に悪魔の心臓(グリモアハート)のラスティーローズが現れた。

 

「世の中にはどうにもならない力の差ってものがある。震えるんだよオレの(カケラ)が、妖精を一人残らず…喰い尽せと…」

「…クッ!!(まずい!!!戦闘モードを維持出来るか!?)」

「リサーナ達は下がって!!(〝サタンソウル〟…には、まだ魔力が足りない!?)」

「ミラ姉!!(ミラ姉も私達ももう限界よ、早く来て…ナツ!!)」

 

 

 

一方、そのナツ達は、

 

「なに?この魔力…」

「何でアイツの近くだけ雨が激しいの!?」

「肌がビリビリする…」

「―だゾ。」

「誰だテメェは!!」

 

ある男と対峙していた。

 

「飛べるかなァ?いや…まだ飛べねぇなァ…落ちろ!!」

『早く此処から逃げるんだゾ!!』

 

<ゴガッ!!>

 

エンジェルの叫びと同時に、大きな崩落の波が島の一部に起きた。その崩落を起こした男が、ドランバルドが言っていた人物、ブルーノート・スティンガー。悪魔の心臓(グリモアハート)の副司令である。

 

「…お前は、確か六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェル。何故そいつ等に味方する?」

「み、味方はしていないんだゾ。たまたま一緒に居るところをお前に攻撃されたから回避しただけだゾ!!」

 

崩落した場所より少し後ろに、とぐろ巻いた一刀獣がエンジェルとナツ達を守っていた。

 

「その魔獣はお前の魔法で造ったものか?興味深い…だが、恐らく魔獣が出て来た()()()を奪えばいい事。それは後回しだ。…妖精の尻尾(フェアリーテイル)初代マスターメイビス・ヴァ―ミリオンの墓は何処だ?」

「…そんなのエンジェルちゃんは知らないんだゾ。(アイツはヤバすぎるんだゾ!!さっき評議院が言ってた大魔導士に間違いないんだゾ!!…それにしても、()()()()が召喚獣を出してくれたから助かったんだゾ…)」

 

<ズン!!>

 

「きゃあ!!」

「あう…」

「にゃー!!」

「ぐぁ!!」

「い、一刀獣が!?」

 

エンジェル達を守っていた一刀獣は、ブルーノートの魔法に敗れ霧の様に四散していった。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)初代マスターメイビス・ヴァ―ミリオンの墓は何処にある!!」

「そ、そんなの知らないw<ドン!!>きゃあ!?」

「ルーシィ!!お前<ドドン!!>うわぁ!!」

 

その場の全員にその質問をし、『知らない』と言った者は次々と重力魔法の餌食となって行った。ブルーノートが探していたのは妖精三大魔法の一つ、妖精の輝き(フェアリーグリッター)。そして今、その場に立っているのはブルーノートただ一人。

 

<ドムッ!!>

 

「ぐ、おああぁぁぁ!!」

「ナツ!!」

「ナツさん!?」

「ナツー!!」

「クソドラゴン!?(は、早くエンジェルちゃんを助けに来るんだゾ!…風!!)」

 

重力魔法の餌食になりながら、何度もブルーノートへ挑んだナツだったが、先ほどの反撃により地面に埋まってしまった。

 

「お?そこでヨレてんのマカロフ?なーんだそいつに聞けばいいのか。」

「じっちゃんに手を出してみろ!!ただじゃおかねぇぞ!!!」

 

気絶しているマカロフにブルーノートの魔の手が伸びようとした…その瞬間、

 

「おまえかぁ!!」

 

響いた女性の怒気。

 

「カナ!!」

 

そこに現れたのは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のカナ・アルベローナだった。

 

妖精の(フェアリー)!!<ズドン!!>うあっ!!」

「まさか…テメェの持っているその魔法は―」

 

ブルーノートも驚愕するカナの放とうとした魔法は、彼が探し求めていた妖精の輝き(フェアリーグリッター)。カナは見事、第二次のゴール、『初代マスターメイビス・ヴァ―ミリオンの墓』へたどり着き〝メイビス〟から妖精の輝き(フェアリーグリッター)を受け継いだのだった。しかし、

 

<ズン!!>

 

「オレの重力下で動ける者などいねぇのさ。まさか、探してた魔法が向こうからノコノコやってくるとはなァ。」

「うわぁぁあぁぁ!!」

「安心しろその魔法はオレがもらってやる。」

 

ブルーノートの重力魔法で思うように動けず捕まってしまったカナ。そして彼女を助けようにも、重力魔法のせいで皆動けない。

 

「知っているかね?殺した後でも〝魔法〟を取り出せ『砕竜(スクリュウ)!!』ガハァ!?」

「こ、この声…」

「やっぱり、アズマって奴を倒してたのね…」

「か、風ー!!待ってたんだゾ!!」

 

だが、その重力下に一陣の〝黒い疾風〟が吹き抜けた。

 




2017.10.24 修正しました。


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第12話

 

 

 

畜生!!此処が何処だか分かりゃしねぇ!!

 

風はアズマを倒した後、エンジェル達と合流するべく森を駆け抜けていた。

 

「ウェンディー!!どこにいるー!!」

 

ん?この声!!

 

「エルザ・スカーレットか。」

「何者だ!!」

 

うぉ!?エルザさん怒鳴らないでくれ。心臓に悪い。それと、

 

「何故水着なのだ?」

 

森の中水着って!?…眼福、眼福。御馳走さまっす。<ゾワ!?>な、何か悪寒が!?

 

「風…か?何を言っている?それは、此処が熱いからだ。」

「成程。」

 

…ま、まぁ、この島が熱いから仕方ねぇな。あと、

 

「何故ウェンディを探していた?」

「そ、そうだった!!ガジルとレヴィが負傷してしまった。早く治療を頼まねば!!」

 

そ、それは一大事じゃねぇか!!こうしちゃいられねぇ!!

 

「お前はベースキャンプの位置を知っているか?」

「無論だ。」

 

なら、話は早ぇ!!

 

「道案内しろ。恐らくウェンディ達もそこに居るはずだ。」

「…何故そう言い切れる?それに、ギルドに居るはずのお前が、何故此処に?…ま、まさか敵の変身魔法か!?」

 

や、ヤベェ!敵扱いされてる!?ど、どうにか誤解を解かねぇと!!

 

「気付いてよかった。よりにもよって風に成りすますとはな…だが、私に出会ったのが運の尽き!!換装〝天輪(てんりん)の鎧〟!!」

 

ザ・戦闘態勢じゃん!?こ、こうなったら…

 

「信号弾を見て駆け付けた。」

「世迷事を!!」

 

説得あるのみ!!だって、他に考えられられねぇよ!!…正式なギルド員でもねぇからギルドマークもねぇし、証明しようが<斬!!>って危ねぇ!?

 

「ほぅ、良くよけたな。だが、次は無いぞ!!」

「…此処に来る前、悪魔の心臓(グリモアハート)煉獄(れんごく)の七眷属アズマと云う(やから)に襲われていたウェンディ達を助け、その男を倒した。」

 

木から生えていた変態…オホン、変人だったぜ。ま、風様body(ボディ)で難なく倒し<ザン!ザザン!!>話聞いてよエルザの姉ちゃん!!

 

「よくそんな嘘が並べられるな。なら聞くが、どうやってこの島まで来た?」

()()を走って。」

「………は?」

 

お、剣の猛攻が止んだ。き、聞いてくれるのか?

 

「メストと云う人物が怪しいと思い、エンジェルを抱えながら()()を走って来た。途中、信号弾が見えた為この島に辿り着けた。」

「…。」

 

さて、これで俺だと認識して<斬!!>くれてない!?なんで!?

 

「嘘でも、話を盛りすぎだな。そんな事信じる訳がなかろう!!」

 

ち、畜生!!こうなったら実力行使だ!!

 

「む、仕掛け「悪い、緊急事態だ。」てぇぇぇぇ!?」

 

俺が

 

「お、降ろせ!!」

 

最速で

 

「わ、分かった!!こんな芸当、出来るのはお前しかいない!!」

 

エルザの姉ちゃんを抱えて森を突っ走ればいいんだ!!(錯乱)

 

エルザは風に天輪(てんりん)の鎧のまま、お姫様抱っこ状態で拉致…道案内役を押し付けられベースキャンプへの道のりを指示していく。そんな中、

 

<ズン!!>

 

大きな崩落音が島に響いた。

 

「な、何だ!この膨大な魔力は!!」

「…地震か?」

 

ま、魔力!?そんなもん全く感じないんですが!?地面が揺れてるのは分かるんですけど!!てか、そんな『あっちからすげぇ〝気〟を感じる』的な能力、みんな亀○人様みたいな人に弟子入りして修行したのかよ!?

 

「エルz「風はあっちから感じる大きな魔力の方に行ってくれ。私は一度ベースキャンプへ行き、皆の様子を見て来る!!」…分かった。」

 

わけわかめだ!!大きな魔力って言っても俺分かんねぇし…クソッ!こうなったら、音と揺れの激しい所に突撃じゃい!!

 

「こっちか?神移(カムイ)!!」

 

風は崩落音のする方向へ駆けていく。

 

「!!!」

「ん?何か居たか?」

 

途中、何かを追い越して行った気もするけど…って、飲んだくれの姉ちゃんがサルに襲われてる!?助けねぇと!!

 

砕竜(スクリュウ)!!」

 

サル…もとい、ブルーノートへ向け風が地面スレスレを回転、そこから跳ね上がった蹴りでカナを掴んでいた腕へ攻撃を叩き込んだ。

 

ヤベ、飲んだくれの姉ちゃんが地面に激突しちまう!!…いや、俺の出番じゃねぇな。後は頼んだぜ、

 

<ガシ!!>

 

()()()()()のおっちゃん!!

 

 

 

 

「…大事な試験だった。」

「あ…」

 

カナを地面への激突から救ったのは、先程風が追い抜いて行った男ギルダーツ。彼も信号弾を見てこの島へ帰って来ていた。

 

「明日へ歩き出す為のガキなりの決意を、てめぇらは踏みにじったんだ!!」

 

おぅおぅ、(げき)(おこ)だな。さて、俺はっと

 

「エンジェル、ウェンディ無事か?」

「がぜー!!」

「はい。…一応ですけど。」

「ならいい。行くぞ。」

「うぇ(キャ!?)!?」

 

二人を脇に抱えてっと。じゃ、次はネコ二匹。

 

「かぜー!!」

「フン!!もっと早く来なさい!!」

「悪い、遅くなった。」

 

ゴメン、遅くなっちゃったぜ。でも、そんなに怒らなくてもいいじゃん!!

 

「こら!クソネコ!!エンジェルちゃんの風に向かって失礼だゾ!!」

 

おいおい、俺はいつの間にエンジェルの嬢ちゃんの私物になったんだ?っとそれよりも

 

「次はナツとルーシィを回収…」

「グゥ…な、何故この重力下で動ける!?」

 

は?何故かって?そりゃあ、

 

「俺の足が早いから。」

 

足が早いからに決まってんだろ!!馬鹿かテメェ!!

 

「そ、そんな事でオレの魔法が破られて(たま)るか!!」

 

<ドン!!>

 

ん?ちょっと風の抵抗でも増えたかな?

 

「か、風…大丈夫!?」

「…大丈夫だ、問題ない。」

 

大丈夫、大丈夫。な~んか抵抗を感じるだけだから。

 

「ホント何者よアンタ!!」

「…話をするな。舌を噛むぞ。」

 

ハイハイ、怪我人は戦場から離脱しますよ~。

 

風はブルーノートの重力魔法を物ともせず、その俊足でエンジェル、ウェンディ、ハッピー、シャルル、ナツ、ルーシィそして、

 

「マカロフ…」

 

マカロフをその場から助け出した。

 

オイオイ、爺さん(いた)()って楽しいのか!?…このサル、俺自慢の蹴りで躾け直してやろうか!!

 

「蹴り砕く「まて。」…ギルダーツ?」

 

どうしたんだギルダーツのおっちゃん?

 

「カナを頼む。」

「…分かった。」

 

分かったけど、突然どうしたんだ?

 

「此処からは、俺達『ギルド』の喧嘩だ!お前さんは高みの見物でも洒落こんでな!!」

 

…うひゃあ、怖ぇ。じゃ、

 

「お手並み拝見、と行くか。」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の男の戦い、見せてもらいましょうか!!

 

「行くぞ!!」

「クソッ、貴様を倒した後は、あのマント野郎だ!!」

「俺に勝てたらな!!」

 

二人の激突から、それを中心に衝撃波が周りに発生しだした。

 

「地面が」

「ひっくり返った!?」

 

次々に起こる場所限定の天変地異。

 

「押し負けた!?この俺が!!?」

「…。」

 

さてさて、此処も安全地帯じゃなくなってくるな。

 

「…俺より前に出るな。余波で死ぬぞ。」

「出るわけ無いでしょ!!」

「やっぱ、ギルダーツ(つえ)ぇー!!」

 

オイオイ、はしゃぐなよ。猫の嬢ちゃんにツンツン頭。俺が頑張ってこっちに飛んで来る瓦礫を蹴り砕いてんだから…こっちの苦労も

 

「…死重流(シェル)!!」

「あ、危なかったんだゾ!!」

 

ってもうこっちに岩飛ばしてくるんじゃねぇ!!

 

「いいぞ…!!いいぞギルダーツ!!もっと、飛べそうな戦いをしようぜ!!そろそろ、互いに本気をだしてよォ!!超重力球(ブラックホール)!!」

 

ブルーノートが両手を前に突き出し、そこに黒い球体が造られて行く。

 

「くぅ、んだコレァ!!」

「全てを吸い込む無限の重力場!!」

 

あ゛?んなちっぽけなもんを誇んなよ!!アトモスでならこの島程度吸い込んでやるぜ!!

 

「トベェ!!トベェ!!!」

「オォラァァァァ!!」

 

その球体にギルダーツが右手を(かざ)すと

 

「ヒビ!?」

「そんなに飛びたきゃ、飛ばしてやろうか!!」

「魔法が割れるとか…え!?」

 

ブルーノートの超重力球(ブラックホール)にヒビが入り、割れて無くなってしまった。

 

()(じゃ)(けん)(せい)(いっ)(てん)!!』

 

<ドゴォ!!>

 

「あああああぁぁぁぁ…」

 

最後は、ギルダーツの拳で文字通り空へふっ飛ばされて行った。

 




2017.10.24 修正しました。


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第13話

 

 

 

ギルダーツのおっさんがサルをぶっ飛ばしてから俺達はベースキャンプへ向かった。そこで知らされたんだが、フリードとビックスローも信号弾に気付いて戻って来ていたらしい。そして、ラスティーローズ?って厨二病のヤツを倒したそうだ。んで、俺は何か成り行きで、敵さんの本拠地に乗り込むチームに付いて来たんだけど、

 

「やれやれ、この私が兵隊の相手をする事になろうとはな、悪魔と妖精の(たわむ)れもこれにて終劇。どれどれ、少し遊んでやろうか?」

 

何か偉そうな爺さんと出会ったぜ。…そして、爺さんよ。そんな高い所に居ると落ちて死んじまうぞ?

 

「老人、落ちると死ぬぞ?」

「…貴様、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者ではないな。」

 

ま、俺も見た目は(わけ)ぇけど、アンリミテッド(果てのない命を持つ、神をも超える存在)だからな。…この風様body(ボディ)の歳なんざいくつか分からねぇよ。

 

「私はうぬを見た事が無い。だが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ肩入れするなら相手をしてやる。掛かってくるがよい。」

 

じゃ、遠慮なく。……本気で行かせてもらうぜぇ!!

 

聖爆(セイバー)!!」

「何!?」

 

今までにない勢いで蹴りを放つ風。その蹴りの瞬間真空刃が現れ、ハデスが立っていた船首を切り裂き

 

(カツ)!!」

 

進んでいたが、ハデスの膨大な魔力によりかき消された。

 

「…浅いか。」

「〝悪魔の目〟開眼!!こやつ…(あの一撃、魔力を解放しなければやられていた。一体何者だ!?)」

 

風の攻撃は通らなかったが、その一撃の危険性に一瞬で気付いたハデスは眼帯を外し抑えていた魔力を解放した。

 

「バカな!?」

「こ、こんなの…あり得ない…」

「こんな魔力は感じたことがない!!」

「まだ増幅していく!?」

 

…あ~、ハイハイ。〝気〟が高まる、溢れるぅ!!ってやつだな。でも、おあいにく様!!俺には

 

「……。(何も感じない)」

「……何?(私が魔力を解放しても動揺すらしないとは…こやつは危険だ。此処で確実に仕留める!!)」

 

な~んも感じないぜ!!武天○師様ってこの世界に居るのか?居るんなら〝気〟を感じることが出来るように修行付けてほしいぜ。今度探してみようかな。

 

「こんな所で足踏みをしている暇はない。私は〝ゼレフを覚醒〟させ、『一なる魔法』を手に入れるのだ!!」

 

は?熱く語ってくれるのは良いんだが、そんな事知らんし、俺には全く関係ないし、興味もない。

 

「知らん。興味もない。」

「何だと!!」

 

来るか?魔銃は、

 

「…動かない。」

「うぬは此処で死んでもらう。ゼレフの書第四章十二節より、裏魔法『天罰(ネメシス)』!!」

 

やっぱ、動いてくれねぇな。

 

「船首の残骸が!?」

「ひっ、ひぃん…」

「ガレキから、バケモノを作ってるのか!?」

 

おっと、余所見してたら、ガレキから変な生物兵器を出してたよこの爺さん。

 

深淵(しんえん)の魔力をもってすれば、土塊(つちくれ)から悪魔をも生成できる。悪魔の踊り子にして、天の裁判官。これぞ裏魔法。」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士達はその存在に恐怖し、体が震え思うように動けずにいた。だが、

 

『我は無敵なり、』

 

風にとって悪魔(ソレ)はどうでもいい存在だ。

 

『我が影技に敵う者無し、』

 

理由は簡単。〝立ちはだかるなら、倒せばいい〟から。

 

『我が一撃は無敵なり!!』

 

何の迷いも、恐れもなく悪魔たちへ肉薄し蹴りを放つ。

 

刀怒(トルネイド)!!」

 

両足にひねりを加え、敵を(ほふ)る。悪魔たちは肉片も残らず塵となり消えて行った。

 

「ま、まだだ!!」

 

風の周りに複数展開されるハデスの魔法。

 

死重流(シェル)!!」

 

その魔法を風は()()()死重流(シェル)により防御した。

 

「ば、馬鹿な!?ゼレフの魔法が、深淵(しんえん)の魔力が…」

 

だから、んな事はどうだっていいんだよ!!ただ、

 

「そんな事はどうでもいい。この島から立ち去れ。」

 

この島から出ていけってんだ!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士が試験をしていたのを邪魔して、良く分かんない事を一方的に言って襲ってきやがって!!でも、()()()あえて避けずに()()して、俺に爺さんの妖術?は効かないって証明したろ。そろそろ諦めて帰ってくれねぇか?

 

「S級昇格試験中だ。俺も含め部外者はこの島を出なければならん。」

「風…」

「風あんた…」

「フフフ、頼もしい男だ。」

 

()()()を含め俺ら部外者は早くこの島から出て行って、早く試験を再開させてやらないと!!

 

「エルザ、俺はこの爺さん「じじいの仇は何処だぁ!!」…今度は何だ。」

 

次から次へと、いったい何なんだ!!今日は俺の厄日かよ!!

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

(ようや)悪魔の心臓(グリモアハート)って闇ギルドの連中がこの島から出て行ったよ。あと、

 

「「「ラクサスー!!」」」

 

この前カグラと入れ違いで退団したマカロフさんの孫が帰って来た。ま、最初敵と思われて攻撃されたけどな。で、

 

「「「ええ~、S級昇格試験()()!!??」」」

 

ま、まあ予測し、していたよ。クソッ、俺がもっと早く駆けつけていれば!!

 

「……風は()()を警戒してバルカン相手に技の確認をしていたんだゾ。これからは、()()()()()()()()()()の力を借りたいときは、供物をエンジェルちゃんに備えるんだ<ゴチン!!>ゾ!!??」

 

コラコラコラァ!!勘違いされそうな事言うなよ!!たまたま手加減の練習をしていただけで…

 

「す、すげ~。」

「な、なんだと…」

「風、ワシのギルドに入らんか?」

「規格外にもほどがある!!」

 

だぁー!!やっぱり勘違いされたじゃん!!

 

「戻るぞエンジェル。」

「い、痛いんだゾ!!うあぁ!?」

 

風はエンジェルをお姫様抱っこし、()()をフィオーレへ向け走って行った。

 

「「「は!?」」」

「ほ、本当に走って来たのか…」

 

風が新たな勘違いに苦しみ帰って行った頃、カナはギルダーツに()()()()であることを打ち明け親子として向き合えるようになった。が、

 

『グォォォォォォォォォォォォォ!!』

 

〝破滅〟は突然やって来る。

 

アクノロギア。黙示録にある黒き龍が突然天狼島(てんろうじま)へ飛来した。かの龍には島に居る妖精の尻尾(フェアリーテイル)全員で挑んでも歯が立たず、()もしようとしない。アクノロギアからの人間の認識は虫。害虫。そんなモノに話をするわけがない。

 

咆哮(ブレス)だぁー!!」

「防御魔法が使える者は全展開!!」

 

天狼島(てんろうじま)ごと消し去ろうと咆哮(ブレス)を溜めるアクノロギアに対し、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士は全員手をつなぎ防御魔法が出来る者へ魔力を集める。そこへ、

 

『瞳に満ちる光、ティアレインボー!!』

 

風の声が響いた。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

「か、風…あんなのには勝ってこな「行ってくる。」…な、何で赤の他人にそこまでするんだゾ!?」

 

ありゃ?エンジェルの嬢ちゃんには言ったけど忘れちまったかな?

 

「……人を助けるのに理由が居るのか?」

「風……エンジェルちゃんも一緒に行くんだゾ!!」

 

ちょ、それとこれとは、

 

「それは「行くったら、行くんだゾ!!」…分かった。」

 

分かった。分かった。<ウォン!!>さぁ!魔銃も空気を読んで起動してくれた!!流石にあの黒龍に俺のなんちゃって影技(シャドウスキル)は通用しないだろうからな~。

 

 

 

 

 

『瞳に満ちる光、ティアレインボー!!』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を、顔の前に持って来て指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

『究極の魂、ソウルガンメタル!!』

 

一本目と同じように二本目を装填。

 

まいったな、最後の色はベルトにねぇわ。……ま、()()にあるかは分かっているけど…エンジェルの嬢ちゃんには悪いが、やってもらうしかねぇぜ!!

 

『そして、お前にふさわしいソイルは決まった!!』

 

風は自身の胸に手を当てた。

 

「風!?」

『…エンジェル。』

「な、何なんだゾ!?」

『俺を、撃て!!』

「…。」

 

風の言葉にエンジェルは涙を流しながら無言で頷いた。

風の右腕にあった魔銃が粒子となり風に漂い、エンジェルの右腕に装着された。

 

『我が命の螺旋(らせん)、エンドレスホワイト!!』

 

風は己をソイルとし、シリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

「あんな蜥蜴(とかげ)なんかに負けるんじゃないゾ!風ー!!」

 

エンジェルが魔銃のトリガーを引きそう叫んだ。魔銃からソイルの弾丸が螺旋(らせん)状に三つ飛び出し、眩い閃光が放たれる。そして、一体の召喚獣が召喚された。

 

アクノロギアの咆哮(ブレス)とほぼ同時に現れた顔が三つの銃口で出来た異形の竜。アクノロギアの咆哮(ブレス)砲撃獣(バハムート)の攻撃は互いを貫いた。

チャージが出来ず半分の力も出せなかった砲撃獣(バハムート)天狼島(てんろうじま)へ落下。アクノロギアは右腕を失うほどの傷を受けたが、天狼島(てんろうじま)へ再び咆哮(ブレス)を行い、()()()()()事を確認し何処かへ飛んで行った。

 

「終わったんだね。ナツ…でも、突然現れたあの龍は一体…」

 

X784年12月16日天狼島(てんろうじま)、アクノロギアにより消滅。

 



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第14話

 

 

 

『お前に相応しい()()()は決まった!!』

 

風は黄色い()()を指さし、静かに叫ぶ。

 

『全てを焼き尽くす、ファイヤーレッド(トマトソース)!!』

 

風は装備して(持って)いた一つ目の弾丸(容器の中身)を黄色い()()装填し(かけ)た。

 

『生み出す事を許さない、ヴァージインホワイト(ホワイトソース)!!』

 

一つ目と同じように二つ目を装填(かけ)

 

『そして、鋼の力、ヴァーントシェンナ(デミグラスソース)!!』

 

最後は容器を叩き、勢いよく中身(ソース)を飛ばし、黄色い()()装填(かけ)た。それを見ていた()の心臓は早くなり自然と歓喜の声を上げてしまう。

 

『食べてみろ、渾身の、3色オムライス!!』

 

赤、白、茶色のソースが掛かった黄金に輝く卵の中には、ケチャップで味付けされたお米が食べられるのを今か今かと待っている。

 

 

 

 

「か、風殿ー!!カグラは、カグラは!!風殿の手料理なら、いつまででも食べていられます!!」

「ど、どうしたカグラ!?」

「……シモン、兄さん?…風殿の手料理は!?」

「何を言っているんだ?あいつが居なくなって7()()。色々思う事はあるが、あの日何があったのか聞き出すために風を探しているんだろうが。」

 

そ、そうだった。エルザ義姉さん達が消え、風殿が行方不明になったS級昇格試験から7()()。私とシモン兄さんは東へ向け風殿を探しに出た。が、今までこれと言って手掛かりは無い。

 

「長旅で疲れているんだろう。明日は俺が、近くの街で情報収集をする。明日は一日休んでおけ。」

「私も!!「カグラ!!」分かった。明日は休む。」

 

寝る時間も一日3時間に短縮して風殿を探していたから、あんな(パラダイス)を見たのかもしれない。何でもいい。何か手がかりが欲しい!

 

シモン兄さんに心配は掛けられないから、はやる気持ちを抑え、次の日は一日休むことにした。そして、情報収集から帰って来たシモン兄さんは何か興奮した様子だった。

 

「偶然街で出会ったんだが、ウォーリーから吉報を受けた!!」

「ウォーリーから?」

「…無事、兄リチャードを釈放出来たらしい!!それも、俺達と一緒に風を探す手伝いをしてくれると言っている!!」

「ほ、本当!?」

 

ミリアーナと一緒に西へ向かったウォーリーからの嬉しい知らせ。評議院に捕まっていた兄リチャードを釈放したと云う知らせだった。それも、風殿を探す手伝いを買って出てくれていると言う。頼もしいかぎりだ!!

 

『探す人数が増えると云うのは心強いね。』

 

突然響いた青年の声。

 

「ああ。今日一日休んだから体調も戻った。何時もの様に貴殿と修練を積みたい。頼めるか?」

 

カグラはその声へ()()()()様に話し掛けた。

 

『任せてくれ。これでも〝ミステリア〟では名を馳せた剣士だったからね。それに、君は強くなった自分を風に見てもらいたいんだったっけ?』

「弱いままだったら、風…オホン、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のジュラ殿に笑われてしまう。それに、向こう(死後)の世界に行った時エルザ義姉さん達に会っても、恥ずかしくないようにする為だ!!」

 

カグラは白い両刃の()へそう力強く答えた。

 

『フフフ、風は良い娘に好かれているようだね。』

「く、()殿!?か、からかわないで頂きたい!!」

 

…風殿、貴方はいったい何処にいるのですか?

 

 

 

~7年前フィオーレ妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

 

「放せ!は・な・せぇ!!」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド内では、いまや日常になってしまった騒動が起きていた。

 

「放せマカオ殿!私は風殿を、エルザ義姉さんを探しに行く!!」

「だぁー!!分かってる。分かってる!!アイツらが簡単に死ぬような奴らじゃねぇって事もな!!もう少し、もう少し待てカグラ。評議院や蛇姫の鱗(ラミアスケイル)青い天馬(ブルーペガサス)の面々が天狼島(てんろうじま)()()()場所をいまだに捜索している!!そいつ等の連絡が入ってからでも遅くはないだろう!!」

 

天狼島(てんろうじま)が消滅して3カ月。その一部始終を見た評議院から(もたら)された情報は、黙示録に登場する黒き龍の襲来。そして、島の消滅。これを聞いたギルドメンバー達は当初、何を言っているのか分からなかった。だが、主力メンバー達が帰ってこない日々が数週間経ち、初めてその事実に気が付き始めた。そして現在、

 

「貴方はマスター〝代行〟。マスターではない貴方の命令を聞く必要はな<バタン!!>誰だ!!」

 

エルザ達を単独で探しに行こうとしているのは、二代目妖精女王(ティターニア)と噂されている〝カグラ〟。カグラを止めようと羽交い絞めにしているのは、オールバックhair(ヘアー)に口髭を蓄えたマスター代行を引き受けている〝マカオ〟。そんな騒動が数日続いていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)に、今日久しぶりに来客があった。

 

「……。」

 

入って来たのは、顔をフードで隠しマントを付けた人物。

 

「悪いな。今は取り込んでてな。また明日出直してくれや。(警戒してくれって言っている様な格好で入ってきやがって、何者だ?)」

 

入って来た人物にトレードマークのタバコを咥えた男、ワカバが出直すように言った。

 

「……。」

 

だが、その人物は動こうとしない。

 

「は~。じゃ、話だけでいいか?だが、今このギルドは仕事を請け負える様な状態じゃねぇんだ。そこん所は了承してくれよ。」

「分かっている。話は外で。」

 

ワカバにそう言われ、謎の人物は外で話をする事を提案した

 

<チラ>

 

瞬間。

 

「あっ!!」

 

マントで()()()いた()()が見えてしまった。

 

「が」

 

走る。

 

「ぜ」

 

走る!!

 

「ど」

 

カグラがその人物へ走って行く!!

 

「の゛ー!!」

 

そして、その人物の胸へ飛び込んだ。<ポヨン!!>

 

「がぜどの゛~!!<プニップニプニッ!!>ごん゛な゛に゛柔ら゛がい゛胸筋に゛な゛っでじ、ま、わ、れ…て?」

 

その人物の右手に見えたのは、懐かしい黄金の武器。だが、

 

「こ、この弾力!この形!!か、風殿が女体k「チビッ子が!馴れ馴れしくエンジェルちゃんの胸を揉むんじゃないんだゾ!!」<ゴチン!!>痛い!?」

 

飛び込んだ先には慣れ親しんだ(カグラの中では)細マッチョで鍛え上げられた胸筋では無く、たわわに実った…オホン。母性を感じる弾力だった。そして、カグラの脳天に振り下ろされたその右腕。

 

「エ、エンジェ…デカちち女!?何故!?どうして!?風殿は!?その右腕は!?いったいどう言うことだー!!」

「ハイハイ、落ち着けチビッ子。…こうなるのが嫌だったから、外話をしようとしていたんだゾ(小声)。仕方ない、一つずつ説明していくんだゾ。まずは―」

 

驚いた事に入って来たのはエルザ達と同じように天狼島(てんろうじま)へ向かい行方知れずとなっていたエンジェル。彼女から説明される一言一句逃すまいとカグラは睨みつけるように聞いていた。

闇ギルド最強悪魔の心臓(グリモアハート)の強襲。その強襲でガジルやマスターマカロフ、ギルドメンバー達が倒れていった事実を知らされ、皆拳を血が流れる程握りしめた。しかし、そこからは大逆転の数々。特に〝風〟の活躍が大きく取りあがられていた。

 

「最後にしゃしゃり出て来たクソ〝黒龍〟。アイツの咆哮(ブレス)のせいでエンジェルちゃんは天狼島(てんろうじま)から何キロもふっ飛ばされてしまったんだゾ。やっと今日(ようや)妖精の尻尾(フェアリーテイル)へたどり着いたんだゾ。」

「成程、そこまでの経緯は何となく分かった。でもどうして、デカちち女は無事で風殿の()()を装備しているのだ?エルザ義姉さん達は何処だ!それに、肝心の風殿はいったい何処へいったんだ!!」

 

誰もが思う疑問。風や島にいた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々達がどうなったのかが話されていない。

 

「……無責任だけど、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーに関しては全く見当が付かないんだゾ。だけど、風なら無事なんだゾ!!」

「デカちち女!何故風殿だけは無事だと言えるんだ!!」

「エンジェルちゃんの右腕にある魔銃。以前風に聞いたけど、これは風の()()で動くんだゾ。その魔銃が消えずに存在しているし、()()してるんだゾ。これ以上風が生きている証明をするモノなんて無いんだゾ!!」

 

その言葉を聞き、カグラ達は魔銃に耳を近づけ音を聞いた。

 

<ドクン。>

 

「「「!!」」」

 

確かに彼女の右腕から心音が聞こえた。

 

「これで、()()()()()()()()()()が生きている事は証明「待てぃ!!」何だチビッ子?」

「『エンジェルちゃんの風』だと!!風殿は、風殿は!!」

「フッフッフ、今()()()()()()()()()()()文字通り()()()()。チビッ子にはこの()を貸してやるんだゾ。」

 

エンジェルは無造作にカグラへ〝ファーブラから渡された白い雲の剣〟を投げつけた。

 

「<パシ!!>…良いだろう。その腕叩き切ってやる!!」

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ。デカちち女!!」

「ハァ、ハァ、チ、チビッ子、風情が!!」

 

ギルド内を所狭しと暴れた二人は肩で息をし満身創痍。

 

「ど、どっちが早く風殿を見つけるか勝負だ!!」

「ハン、どうせエンジェルちゃんに決まっている!!」

 

そして始まった人探し勝負。

 

「お前なんかに風殿は渡さない!!」

「チビッ子には10年早いんだゾ!!」

 

 

 

~7年後フィオーレ妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

 

以前の見る影もなくボロボロになった妖精の尻尾(フェアリーテイル)。そこへ青い天馬(ブルーペガサス)の一夜達が嬉しい知らせを持ってやってきた。

 

天狼島(てんろうじま)は、まだ残っている!!〟

 




阿寒湖様、ネタ提供ありがとうございました。


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第15話

 

 

 

天狼島(てんろうじま)は、まだ残っている。〟

 

青い天馬(ブルーペガサス)一夜達からの嬉しい情報。そして、

 

「大きくなったな、ロメオ。」

「おかえり!ナツ兄!!みんな!!!」

「「「おかえり~!!」」」

 

7()()ぶりにエルザ達が妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ帰って来た。

7年前アクノロギアの二回目の咆哮(ブレス)に対し、〝幽体〟であった初代妖精の尻尾(フェアリーテイル)マスター、メイビス・ヴァ―ミリオンは皆の絆と信じる心に感化され、絶対防御魔法妖精の玉(フェアリースフィア)を発動し皆を守る為凍結封印を行った。しかし、その封印を解除するのに7()()をも費やしてしまったのだ。

 

「ギルド、なんか小っちゃくなったな~。」

「そう言えば、そうよね。」

 

ナツ、ルーシィの何気ない会話の内容は、帰って来た皆が不思議に思っていた事。以前の見る影もなく小さくなってしまったギルド(我が家)

 

「わ、悪い。」

「こ、これには訳が…。」

 

マカオとワカバがそう濁した。

 

「ダンディに俺達が、」

「説明する、デスヨ!!」

 

その場に現れたのは、以前より大人びたウォーリーと少し髭を生やした()六魔将軍(オラシオンセイス)のリチャード。そして、

 

「エルちゃん!久っしぶり!!元気!最強ミャ!!」

 

女性らしさが溢れ出る肢体を魅せつけるような格好のミリアーナだった。

 

「ミ、ミリアーナか!?」

「前より渋くなったな、四角ー!!」

「えぇ!?貴方ホットアイ!?」

 

エルザ、ナツ、ルーシィが彼らの登場に驚いた。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆から連絡を受けたんだ。でも、本当に生きてて良かったミャー!!」

 

そう、叫びながらエルザに飛び込んだミリアーナ。

 

「ギルドの絆がなせる業、デスヨ!!」

「ダ、ダンディに…ウグ、本当に良がっだ!!」

 

その光景に涙を流すブキャナン兄弟。

 

「あ、貴方捕まっていたんじゃないの!?」

 

何故ここにリチャードが居るのか疑問に思っていたルーシィの質問に、彼は涙を流しながら

 

「…弟と、このギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さんが!この私の為に数年かけて評議院を説得してくれたお陰で、昨日晴れて自由の身になったのデスヨ!!」

 

そう答えた。

 

「そう、そう。このギルドが小さくなったの「エルザ義姉さん!!」は…」

 

泣いている二人に代わりにギルドが縮小した事を説明しようとしたミリアーナの言葉を遮って、

 

「エルザ義姉さーん!!」

 

前髪は(ひたい)あたりで切り揃えられ、腰まである黒髪を(なび)かせ走る女性。

 

「ミャ!?」

 

咄嗟にミリアーナはエルザから離れたが、エルザと変わらない身長で、誰もが美人と認める人物がエルザの胸目掛け突っ込んで来た。

 

「ま、まさかお前()()()か!?」

 

エルザに飛び込んでいったのは、7()()()エルザに剣を習い彼女と〝風〟を慕っていたカグラだった。今は、東方の()と呼ばれる剣と、何処か見覚えのある()()両刃の剣を帯刀している。

 

「もう会えないと思っていたぞ。7()()()のまま息災で何よりだ。」

「お前はシモン!?」

 

カグラの後に続いて少し大人になったシモンが現れた。

 

「お前達が消えて大変だったぞ。ギルドはガタガタ。カグラはお前達を探しに行くと聞きやしない。」

「…。」

「も、もう兄さん!!」

 

シモンの言葉に何も言えず黙ってしまうエルザと、エルザに抱き着きそれに抗議するカグラ。

 

()()()が居なかったらどうなっていた事か。」

「アイツ?」

 

シモンの言葉を繰り返し、不思議に思うエルザ。

 

「今日は此処で年に一度の情報交換する予定なんだが…。」

「む!!」

 

<ダダッ!!>

 

突然走り出したカグラ。エルザ達の目がそれを追い、その先に居る()()を捕らえた。

 

「あれ?」

「あの姿!?」

「ま、まさか!?」

 

フードで顔を隠しているが、トレードマークだった〝マント〟に色取り取りの薬莢(やっきょう)の入ったベルトを締め、左手に見える上下二連式ショットガン。

 

「「「()!!??」」」

 

幾度となく助けてもらった存在。名前以外、何も分からなかった存在。

 

「奴が居たのなら納と<ガキンッ!!>くぅ!?」

 

エルザが驚愕したのも仕方がない。カグラは持っていた刀の()ごと()()を込めてその人物を切りつけたのだ。そして、ソレは持っていたショットガンで防がれた。

 

「…。」

「クソッ!!大切な銃を防御に使うなど!!」

 

そこから始まった激しい剣撃と銃撃の交差する戦闘。カグラが切りつけ、相手はそれを躱し銃で反撃。カグラが自分に向いていた銃口を鞘付きの刀の先で逸らし、蹴りや拳を繰り出せば、その反撃で蹴りや拳がカグラに飛んでいく。それらは全く加減をしていない。その為、ギルドの至る所が破壊されて行っている。

 

「カ、カグラは何をしているんだ!?」

「アイツと会った時はいつもこうだ。所構わず互いに全力でぶつかり合い、周りに被害を出していく。最近では被害を抑えるため、このギルドの近くでやらせている。カグラはお前が居ない寂しさと、()が見つからない焦りと悔しさ。」

()が見つからない!?なら奴は!?」

 

どう見ても〝黒き風〟を彷彿とさせる格好なのだが、驚いたことにシモンによれば目の前でカグラと戦っているのは黒き風ではない。

 

「ハァ、ハァ、さっさとその()()置いて行け!!」

「ハァ、ハァ、もう(いさぎよ)く諦めるんだゾ!!」

 

(あらわ)になった右手には〝風が召喚獣を出す為使っていた()()〟が待機状態で装備されていた。そして、聞き覚えのある語尾。カグラと対峙している人物は()六魔将軍(オラシオンセイス)()()()()()だった。

 

()を探しに旅をしている時、カグラは寝言でお前と風の名前を発しながら泣いていた。それをアイツに相談したら、何かガス抜きが必要だって言ってな。ああやってガス抜きを買って出たんだが…何時もマジでやり合うからギルドはボロボロ。俺達が仕事して稼いでも、お前達の捜索依頼の費用に風を探す為、長期的に組んだ費用。被害を出した場所の修復費と謝罪金で吹っ飛んで行った。その影響でギルドの修復費も出せなくてな。申し訳ないが、こんな状態だ。」

「「「ああ、成程。」」」

 

帰って来たエルザ達は、目の前の惨状を見てボロボロになったギルドに納得してしまった。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

「久しいな。リチャード殿!」

「おぉ!!ジュラ殿!!」

 

そして次の日、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のジュラがリチャードに話しかけた。しかし、彼の周りには誰もおらず、一人で来ていた事が分かる。ほとんど死亡扱いされていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の主戦力が帰還したとの知らせと、()()()の為に仲間達より早く駆けつけた。

 

「よーし、みんな聞いてくれ!!」

 

他の蛇姫の鱗(ラミアスケイル)メンバーと青い天馬(ブルーペガサス)の面々が揃った時、四代目マスターを押し付けられ…失礼。請け負ったマカオが全員に聞こえるよう叫ぶ。

 

「皆が帰ってきて嬉しい…が、更に嬉しい事に、この度新しい家族が増える!!」

 

その言葉に動揺を隠せない面々。

 

「ウォーリーの兄、『リチャード・ブキャナン』を新しい()()として歓迎する!!異存のある奴は出てこい!!この決定だけは死んでも譲らねぇ!!」

 

そして、起こる歓喜の叫び。

 

「わ、私が!?」

「リチャード殿。私はこの瞬間を〝友である貴殿と一緒に立ち会う〟為に来た。(はや)る気持ちを抑えられず、早く此処に着いてしまった事は反省すべき点だ。しかし、嬉しい事に昨日、皆が帰って来たのだ!この日に立ち会えた私は幸運だな!!」

 

ジュラはリチャードが釈放された事をマカオから聞いた。そして、彼を妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ入団させることを提案したのだ。弟のウォーリーも入っている事もあり、とんとん拍子で話が進み、今日晴れて入団が決まったのだった。昨日、エルザ達が7年ぶりに帰って来たのは嬉しい誤算であった。

 

「エルザ義姉さん、風殿は…。」

「済まんカグラ。私達も天狼島(てんろうじま)中を探し、メイビス…初代マスターにも聞いたが奴は何処にもいなかった。」

 

ドンチャン騒ぎが起こっているギルドから少し離れた場所で、カグラはエルザに風が天狼島(てんろうじま)で一緒に封印されていなかったかと聞いていた。

 

「そう、です、か…。」

「そんなカグラへ、エンジェルちゃんからの有り難~い情報、だゾ!!」

 

突然聞こえたエンジェルの声。彼女も宴会から抜け出し、二人をこっそり付けていたのだ。

 

「…フゥ、また貴女が変装して響いている〝黒い疾風〟の噂でしょ。」

「フッフッフ、今回は全く違う。2年前から突如現れた凄腕の拳法家。」

「そ、その人物は足技を!?」

「残念だがあまり使わないそうだゾ。主に()()での格闘を得意としているらしいゾ。」

「ハァー。」

 

その言葉を聞いて落胆の色を隠せないカグラ。

 

「だけど、()()()()()()()()()を使用すると云う噂を耳にしたんだゾ!!」

「な、何ぃ!?」

 

エンジェルの言葉を聞き、さっきの態度とは一変し歓喜の色を隠せないカグラ。

 

「その人物に会えば、「風殿の手がかりが掴める!?」…そう言うことだゾ!!」

「フゥ、乗りかかった船だ。その場所には私も同行しよう。」

「エ、エルザ義姉さん!!」

 

風の居場所を突き止める手がかりを掴んだカグラとエンジェル。そこにエルザも加わり、現地調査を行う事が決まった。

 




オリ主が2話連続登場していない事実。…実は次の話も出てこない予定です。


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第16話

 

 

 

7()()()と云う時間の流れは様々な変化をもたらしていた。―

 

「お父…さん。」

 

―ルーシィの父ジュードは一月前に亡くなり、

 

『火竜の…鉄拳!!』

砂の防壁(サンドウォール)!!』

「俺の炎が!?」

 

以前は弱かったマックスに苦戦するナツ。7年前の彼らの力では()()()()では通用しないと痛感し、修行を決意した天狼組。―

 

―そしてカグラ達は、〝凄腕の拳法家〟の噂を調べる為…

 

「で、本当にこんな辺境な場所に風殿の情報があるのか!?」

「なら、カグラはこれ以上付いて来なくて良いんだゾ~。さぁ、とっとと帰るんだゾ!!」

 

オホン(気を取り直して…)。エ、エルザ達が帰って来て心に余裕が出て来たカグラはエルザとエンジェルと一緒に風を見つけ出す為…

 

「お、お前達言い争いはそれぐらいに…」

「エルザ義姉さん、コイツは放っておいて私達だけで行きましょう!!」

「エルザ、前衛のお前とならいいコンビ組めそうだゾ。今日から()()()〝黒い疾風〟として賞金稼ぎをしながら風を探すんだゾ!!」

 

か、風の痕跡を探す為、(うっ)(そう)と茂った森へ踏み込んでいた。(チィ、さっきからナレーションの邪魔ばかりし「「(やかま)しい(んだゾ)!!」」アッ、ハイスミマセン。そ、それでは、続きをどうぞ!!)―

 

 

 

 

「何をー!!」

「何だゾ!!」

「はぁ。(全く、この二人は…)」

 

7年、と云うのはこんなにも人を変えるモノなのだな。アルザックとビスカはけ、けけ、結婚していたし。(れ、冷静に、冷静になれ。)あんなに可愛いかったカグラは、

 

「エルザ義姉さん?どうかしました?」

「いいや。カグラはやっぱり美人になったと思ってな。」

「な、何を言って!?エ、エルザ義姉さんの方が私なんかより美人ですよ!!」

 

私が想像していたよりも美人な女性になっていた。だが、

 

「で・も、風はお前なんかよりエンジェルちゃんにメロメロなんだゾ。7年前の熱い抱擁(唯抱えて運んだだけ)に、女の憧れお姫様抱っこ(これも以下略)、同棲生活(問題を起こさないかの監視)していたんだゾ。」

「ぐぬぬ…」

 

エンジェルと一緒に居ると以前の可愛いカグラに戻っている。エンジェルが必要以上に(あお)るのが原因なんだが…

 

「エルザ(小声)。」

「ん?何だエンジェル?」

「良く、帰って来てくれたんだゾ。今までのカグラはエンジェルちゃんが(あお)らないと、なりふり構わず突っ走って壊れそうで怖かったんだゾ(小声)。」

「そう、だったのか…。」

 

カグラだけではない。私達は、皆に心配を掛けてしまった。私がその立場になれば、同じことを…否!それより大きな事をなりふり構わずやっていた!!エンジェルはそんなカグラを引き止め抑止してくれていたのだな。感謝しても、しきれん。

 

(あお)っても空元気の時も多かったんだゾ。そんな〝ライバル〟に勝ってもエンジェルちゃんは何にも嬉しくないんだゾ(小声)。」

「そう、なのか?」

 

ライ、バル?ライバル…ああ、互いを高め合う良い強敵(ライバル)の事か!!

 

「風を見つけたら、決着を付けてやるんだゾ(小声)。」

「ああ、頼んだぞ。」

 

何故風を見つけてから…そ、そうか!風が帰ってくれば以前のメンバーが全員揃う。それに、カグラはあんなに風を慕っていたんだ!風が無事である事が分かれば、カグラの心配事は無くなり、全力で戦えるからな!!

 

「エルザ義姉さん!!そんな奴放っておいて先に行きましょう!!」

「分かった。今行く。」

 

……今度、エンジェルに何か礼をしてやらんとな!!

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

カグラ達が目指す場所は、マグノリアから遠く離れた森を抜けた所。そこには小さい町があり、その町の人々は世の中から隔絶したかのようにひっそりと暮らしていた。

 

「ハイハイ!一応この町の『何でも屋』をやっている〝ダフネ〟と申します!!そして、横に居るのが、」

「………。」

「ハイハイ、この人はあまり喋らないんで~!彼の名前は〝フィンガース〟。ずいぶん前にこの村…失礼。この町へ傷だらけで辿り着いて、ここの住民に治療され晴れて私の用心棒兼この町の自衛隊員になった者です!!」

 

眼鏡にテンガロンハットが特徴の女性ダフネと、その横に目と口以外の顔を包帯でグルグル巻きにした怪しい巨漢の男フィンガースがカグラ達を出迎えた。

 

「………〝疾風〟だゾ。」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のカグラと」

「エルザだ。事前に連絡したが、此処には凄腕の拳法家が居ると噂を聞いたから来た。」

 

エンジェルは道中していなかったフードを深く被り顔を見せないようにし、口数を少なくしている。エンジェルは7()()()評議院の牢屋を脱獄して指名手配になっていたからだ。逆に風は脱獄したものの、今までの功績と評議院に実害が少ない事もあって出されて直ぐに取り消されている。その事実を利用しエンジェルは、〝黒き疾風〟の相方〝黒()疾風〟として様々な依頼を受けている。そして、二人は道中その話を聞いていた為、エルザが代表して此処まで来た経緯(いきさつ)を話した。

 

「ハイハイ!その方は覚えていますよ!!(色々ありましたからね…)ハイハイハイ!それより、実は(わたくし)以前美の伝道師をやっておりまして……おおっと、()()でも〝貧乏〟の()じゃ御座いませんよ!!美貌の美、美人の美、美形の美の()の事でございます!ハイハイハイ!!私が独自に開発した〝美の〟ダイエット食品『メタモちゃん』お一つどうですか?「そんな事はどうでも―」ハイハイハイハイ!!この『メタモちゃん』実は、長年の研究に研究を重ねて出来た奇跡の食品なんですね。解毒作用を持つ海の幸を三日三晩、秘伝の薬に漬け込んで、天日に干して更に一週間。そうして出来たのがこの〝美の〟ダイエット食品『メタモちゃん』なのです!!そして、これを食べればあらビックリ!中々落ちなかったアノ脂肪が!?こんな脂肪も!?贅肉達は『メタモちゃん』の効力により、たちまち落ちて行っちゃいます!!」

「なん、だと…。」

「び、美のダイエット食品…。」

「お、おい!お前達!!」

 

美の伝道師だったと語るダフネの怪しげな食品。途中エルザの声を遮ってまで商品の説明をカグラとエンジェルへ行い、そのせいで二人の心は大きく揺らいでしまった。

 

「…お前たちは〝ブラック=ウインド〟の事を聞きに来たんじゃなかったのか?」

 

その揺らぎを止めたのはダフネの横に立っていたフィンガースだった。

 

ブラック(黒い)!?」

ウインド()だと!?」

 

その名前を聞いた途端、カグラとエンジェルの二人はたちまち険しい表情になった。

 

「…その名を名乗ったのは、何処のどいつだ。」

「内容次第では、」

「そいつを」

「「殺す(んだゾ)!!」」

 

先程までとは一変し、エルザは低い声で聴き返し、カグラとエンジェルに至ってはバンバン殺気を出している。

 

「あ~、ハイハイハイ。もう少しで新しい顧客が出来たのに(小声)。そんなに殺気立たなくても、お答えしますよ!!(てか、なんで私がこんな怖い目に合わなければならないんですか!?)彼は2年前突然この町へやって来ました。どこから来たのか、何をしに来たのか、()()に聞いても分かかりませんでした。」

「本人に聞いても、」

「「分からなかった(んだゾ)!?」」

 

ダフネの返答に聞き返す三人。

 

「…アイツは〝記憶喪失〟だった。自分の住んでいた場所、名前、何の仕事をしていたのか。全て何も覚えていなかった。断片的に覚えていた〝黒〟と懐かしく感じた〝ウンインド〟と云う言葉をもじってアイツが〝ブラック=ウインド〟と名乗ったのだ。」

 

ブラック=ウインドの話になると、突然口数が多くなったフィンガースが三人へ答えた。

 

「ハイハイハイ。見かねた私とフィンガースで面倒を見る事になったんですけど「…アイツは拳法の達人だった。手刀で林を切り倒し、どんな凶暴な動物も素手で捉える強者なのに……嫌な顔一つ見せず()()でこの町の人々の頼みを聞いてくれた!!」…っとまぁ、素晴らしい好青年でしたよ。」

「な、成程…。(一瞬風かと思ったが、奴が()()()事なんて無かった。人違いか…)」

 

エルザは熱く語るにつれ、近づいて来たフィンガースに若干引いてしまった。

 

「で、ソイツは今何処にいるのだ?」

「ハイハイ。生憎、2週間前に『ちょっくら、記憶探しの旅に出て来るわ!!』って言った切り顔を見てないです。」

「…アイツの指導のお陰で、この町の自衛員の力は大きく伸び、俺一人で撃退していた闇ギルド風情なら、全員単騎で倒す事が出来るようになった。感謝してもしきれん!!」

 

フィンガースの反応を見ると、噂の彼は本当に好青年だったと考えられる。しかし、その彼はもうこの町にはいなかった。肩透かしを喰らったカグラ達は情報を纏める為、ギルドへ帰って行った。

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「どう思う?」

「…何がなんだゾ?」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドが見え出した頃、エルザはエンジェルにそう聞いた。

 

「彼らの話だ。風……に近い人物、風の知り合いだと私は思うのだが…。」

「エンジェルちゃんは〝風かもしれない〟と思っているんだゾ。」

「何故?」

「………今は、女の勘って事にしておくんだゾ。」

 

 

 

主力メンバーがいないこの7年の間に、いつの間にか〝最弱〟のレッテルを張られていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)。エルザ達が風捜索から帰って来た今日、3か月後に開催されると言うフィオーレ中のギルドが集まり〝魔法〟を使って競い合う大会。大魔闘演武(だいまとうえんぶ)への出場が決定したのだった。

 



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第17話

 

 

 

カグラ達が風を探しに行っている間、5代目マスターに任命されたギルダーツは、ラクサスを再び妖精の尻尾(フェアリーテイル)の家族と認め、6代目をマカロフに押し付けたのち、

 

「マスター………とか(わり)ぃが、ガラじゃねぇ。それと、道中で風の野郎を見つけたら連絡するわ。」

 

とミラに言い残し旅に出て行ってしまった。

 

ナツ、グレイ、ルーシィ、ウェンディはシャルルとハッピーを連れポーリュシカの元へ赴き、鍛えてもらえるよう頼みに行ったが……予想通り追い返された。しかし、なんとポーリュシカは〝何十年も前にエドラス世界から来たグランディーネ(ウェンディの育ての()の名前)〟だった。

ポーリュシカはグランディーネからウェンディが〝強くなりたい〟と赴いた時に渡すよう言われた魔法書を彼女に渡した。グランディーネから魔法か何かで心に直接語り掛けられ、それを(つづ)ったものだ。その中身は、『ミルキーウェイ』と『(しょう)()(てん)(くう)穿(せん)』と云う滅竜奥義。

 

そして…

 

「「「わーい!海だー!!」」」

 

エルザ達は海合宿で自身達を強化する予定だ。

 

 

~3カ月後~

 

 

「ジェット、ドロイ。エルザ義姉さんは何処にいる?」

「え、えっと…」

「な、なんて言えば良いのか…」

 

私は風殿の手掛かりを探す為、エルザ義姉さんとは別行動していたんだが…

 

「早く言うんだゾ!エンジェルちゃんは暇じゃないんだゾ!!」

「貴様と同意見なのは尺だが…早く言え!義姉さんは何処にいる?今日義姉さんと手合わせする予定なんだ!!」

 

今日、この浜辺で手合わせすると3カ月前エルザ義姉さんと約束していたんだ。……何故かエンジェ、このクソアマも予定していたがな!!

 

「せ、星霊界が滅亡の危機だったらしく…」

「俺達以外、天狼組だけで星霊界へ乗り込んで行っちまった。でも、問題ねぇ!!」

「「アイツ等なら、サクッと星霊界救って帰ってくるぜ!!」」

「成程、そんな事情があったとは…」

「また、大きい事に巻き込まれているんだゾ。」

 

な、なんと、義姉さん達は星霊界の危機を救いに行っているのか!?さ、流石、私の義姉さんだ!!(錯乱)

 

「まあ、大魔闘演武(だいまとうえんぶ)には数日ある。此処で修行がてら待っておこう。」

「カグラは出場するのか?」

「愚問だな、私は風殿を探しに行く!!」

「アハハ、いつも通りのカグラだな。」

 

さて、義姉さんが帰って来るまでどんな修行を―「カグラ。」チィ、このアマまだ私の近くに存在していたのか!もっともっと鍛えて、今度こそ切り刻んでやる!!

 

「…何だ?」

「手を貸すんだゾ。」

 

ハァ?手を貸せだぁ?いつもいつも、上から目線で話し掛けて来て!!今じゃ身長も同じくらいだし!む、胸だって育ってきてるんだぞ!!

 

「知らん!一人で「頼むんだゾ!!」…お前一人では太刀打ち出来んのか?」

「無理だゾ。お前も知っている〝ソイツ〟との差がどれだけ埋めれたのか、確認がしたいんだゾ!!」

 

〝彼〟との差、か。良いだろう!!

 

「邪魔はするなよ!!」

「ハッ、どっちがだゾ!!」

 

今度こそ私の全身全霊を掛けた剣撃で、()()()()程度は喰らわせてやる!!

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

「エンジェル合わせろ!!」

「任せるんだゾ!!」

 

此処は浜辺。

 

「この至近距離なら!!」

「カグラ待つんだゾ!あぁもう!!」

 

刀と剣が互いを切りつけ金属音が鳴り響き、その刹那に魔力の弾が発射される音が鳴る。カグラの刀が敵を切りつけ、それを回避ないし打ち合っている隙を付きエンジェルが銃で追撃をしている。だが、カグラとエンジェルの攻撃は簡単に弾き返され、躱され、相殺されてしまう。二人が対峙するのは一人の最強。

 

『流石だね。あんなに頼りなかった射撃制度が驚くほどに飛躍している。』

「当たり前なんだゾ!でも、3年間鍛えたのに一発も当たらないってどうなっているんだゾ!!」

『年期が違うからね。それに僕は、頭上全面を覆い隠すような銃弾の雨を(くぐ)り抜けた経験もあるよ。』

「も、もうお前の話を一々驚いてやんないんだゾ!!」

 

彼を表現するなら〝白〟。

 

「無駄口を叩いている暇があるなら加勢しろ!!」

 

そして、カグラの渾身の力を込めた刀を片手で持った剣で止めていた。

 

「分かっているんだゾ!見様見真似、聖爆(セイバー)!!」

「って、私も巻き込むつもりかぁ!?」

「ライバルは少ない方がいいんだゾ。」

 

カグラから加勢を言われたエンジェルは、最近風の蹴りを真似て出来るようになった聖爆(セイバー)でカグラ諸共倒しに出た。

 

『じゃあ、少し本気を出そう。ミストが(かなで)光の前奏曲(あやかしの歌に抱かれて)、眠るがいい!白銀の練習曲(エチュード)!!』

「「うわぁぁぁぁぁ!!」」

 

彼の名前は〝白い雲〟。元々ミステリアと云う世界の住人だったが、混沌に全てを破壊され、一時は混沌の下で客将をしていた経緯を持つ。だが、その心の奥底では混沌を倒す事を目論んでいた。黒き風と双子やリサ達の力を借り、やっとの思いで混沌を倒し永い眠りに付き、以前ファーブラの手からエンジェルの手に渡った。因みに、呼吸をすることで召喚に必要な〝ミスト〟を自身で生成したり、生あるものを〝ミスト〟に変える事が出来る。

 

「クソォ!<ブチュ!!>悪いエンジェ……ルゥ!?」

 

一刀獣に吹き飛ばされたカグラは起き上がる為、後ろに居るナニカに手を付いた。カグラは恐らくエンジェルを下敷きにしてしまったと思い謝ろうとした。が、

 

「どうしたんだカグラ?エンジェルちゃんはこっ……ちぃ!?」

 

エンジェルは別の場所に倒れていた。そして、驚愕する二人の目の前には、

 

「「―ンンッ!?」」

 

目の前には、

 

「いい度胸だ。……その首叩き切ってやる!!」

「あ、朝からそんな関係は…つ、慎むんだゾ!!(風との朝チュン…想像しちゃったんだゾ!!)」

 

抱き合ってキスをしているジェラールとエルザがいた。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

「「「「アァァァァァァァァァァ!!」」」」

 

小さな小屋でナツ達の悲鳴が響いていた。

 

「殺す!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」

「ま、待て!早まるなカグラ!!」

「お子ちゃまのカグラには、キスを見るにはまだ早かったんだゾ。」

 

刀を振り呪術かと思うような言葉を出しながらジェラールへ迫るカグラ。それを羽交い絞めにし止めるエルザ。そして、不干渉でカグラに毒を吐くエンジェル。まさに混沌(カオス)である。

 

「さ、さっき説明したようにこれで彼らも第二魔法源(セカンドオリジン)が目覚めるわ。ってか、何でアンタら平気なのよ?」

「簡単な事だ。私は修行していたからな!後、ジェラール殺す!!」

「どうどう!落ち着くんだカグラ!!」

「風に近づく為なら、エンジェルちゃんはなんだってやるんだゾ!!」

 

エンジェルとカグラは、さっきのキスは事故だと説明され、エルザから今までの経緯(いきさつ)を聞いた。星霊界の滅亡が嘘だったのは衝撃だったが、エルザ達が星霊達に歓迎されたのは喜ばしい事だった。だが、星霊界の1日がこっちの3カ月とはこれ如何に。

そんな時現れたのがジェラール達だった。新たに発見された第二魔法源(セカンドオリジン)と云う器官を活性化させ魔力等の底上げを行う、所謂(いわゆる)荒療治を今行っている。

 

「そ、それじゃあ…」

「あ、ああ…」

 

何か別れを惜しむ様なジェラールとエルザ。

 

「ま、まt<斬!!>のわっ!?」

「さっさと行けー!!」

 

が、怒れる鬼神。カグラに切りつけられジェラールは逃げる様に去って行った。

 

「バイバーイ!!」

「みんなによろしくね。グレイの事もお願いね!!」

 

そして彼女らウルティアとメルディも彼を追って去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大魔闘演武(だいまとうえんぶ)二日目~

 

 

 

今日私は、カグラをこの観戦に連れて来ていなかった事を後悔した。

 

『本日の最終試合!人魚の踵(マーメイドヒール)ブラック・ウインド!!』

 

な、何だと!?

 

『対するは、剣咬の虎(セイバートゥース)ユキノ・アグリア!!』

 

ブラック=ウインドだと!?確か奴は男だったはずだ!!

 

『新人同士の対決になりました。な、なんとブラック選手は一週間前に入ったばかりと言う異例の新人。女性ばかりの人魚の踵(マーメイドヒール)に唯一の男だそうです!羨ましい!!そして、その実力は未だベールに包まれたまま!!一方最強ギルド剣咬の虎(セイバートゥース)に所属しているだけでユキノ選手の強さは期待がかかります!!』

 

クソッ!カグラと連絡を取るのは後だ!!

 

「皆、この戦い絶対に目を離すな!!特に()()()()()()()のブラックは!!」

「ど、どうしたのよエルザ?」

「良いから良く見ておけ!!」

 

彼の動きを観察し、誰にその技を習ったかを聞き出し、それが風なら…居場所を聞き出す!!

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

「命を…賭けましょう。」

 

あ~。何だこの嬢ちゃん?命を賭けるってか。じゃ、俺も。

 

「あ~。分かったよ嬢ちゃん。俺も賭けよう。命…ってか、負けたらお前のギルドに入ってやるよ!!」

 

外野からギャーギャー姉ちゃん達が騒いでるけど、このぐらいじゃなきゃ釣り合わんだろ。

 

(わり)ぃな姉ちゃん達。負けたら俺は向こうに行くわ。」

「そんな軽くていいのですか?」

「良いの良いの。ま、入れてくれた恩は返せたと思うし。」

 

ま、大魔闘演武(だいまとうえんぶ)に出る為の助っ人要員だったしな。

 

剣咬の虎(セイバートゥース)の前に立ったのが、貴方の不運。『開け、双魚宮の扉』!!」

 

来るか!!

 

「ピスケス!!」

「キモッ!!」

 

キモイ魚は跳躍で躱してっと。

 

「『開け、天秤宮の扉』!ライブラ!!」

 

今度は何だ?

 

「ライブラ、標的の重力を変化!!」

「了解!!」

 

ぬ!?

 

「ピスケス!!」

 

身動きが出来ない俺に魚で攻撃するつもりか。だが、俺には効かねぇ!!

 

「世の中上手くいかないもんさ、こいつが!」(BGM:DARK KNIGHT脳内再生希望)

 

へっ、簡単に抜け出してやったぜ!こんな重力前会ったサルの方が…ん?サル?サルが何で重力を?

 

「私に開かせますか。十三番目の門を。とても不運な事です。」

「運がいいか悪いかは俺が決める事だ。嬢ちゃんが決める事じゃねぇぜ!!」

「『開け、蛇遣座の扉』オフィウクス!!」

 

でっけー機械の蛇が出て来たよ!?でも―

 

「記憶がなくても、技の威力は変わらんぜ!!」

 

さ~て、怪物退治と洒落込みますか!!

 

「クルダ流交殺法・陰流!!空牙(クーガ)!!」

 

コイツは5本の指から出る真空刃で攻撃する技だ!!お次は………は?

 

「あり?これで終わり?」

「そ、そんな…」

 

もっと頑丈そうだったのに、アレ一発で終わっちまった。あっ、ユキノって嬢ちゃんは呆けてるわ。

 

『こ、こんなことが!?始まりは圧倒的有利だったユキノ選手ですが、ブラック選手の放ったたった一つの技で星霊<ビシ!!>ッ!?訂正!!星霊を倒し、驚く事に闘技場を守る魔法壁にヒビを付けました!!よって勝者ブラッ―』

 

さて、目立つのは好きじゃねぇから帰りますか。

 

『え~。大変申し上げにくいのですが、規定により勝者ユキノ選手!!』

 

はぁ!?ど、どう言うこどだ!?

 

大魔闘演武(だいまとうえんぶ)では、〝魔〟を競い合う事を主としています。競技パートではそれだけではないのですが、このバトルパートでは、魔法を使()()()戦って頂いています。……ですが今回驚くべき事に、あれ程大きな威力にも関わらず、ブラック選手から大きな魔力反応が全くありませんでした。その為、魔法を使()()()にユキノ選手と戦った事になります。その為ブラック選手は規定上失格。勝者はユキノ選手になります!!』

 

「「「「「はぁー!?」」」」

 

やべ、俺今日から剣咬の虎(セイバートゥース)へ居候決定だな。

 




感想に「ミストガンの代わりにジュラと戦う風様見たいです!」とありましたが、出来なくて申し訳ありませんでした。番外編や個別の没ネタで出すかもしれません。


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第18話

 

 

 

~2年と数カ月前~

 

 

 

「…クッ、此処までか。………悔しいが、俺では貴様の()()に太刀打ちできん。」

 

数多(あまた)いる敵兵の前で、一人の巨漢の男が片膝を付き、そう言葉を発した。

 

「…最後の、頼み、を聞いてくれるか分からんが、見ず知らずの俺を助けてくれたあの村は襲わないくれ。……後生だ。」

 

満身創痍の状態で頭を下げ()懇願(こんがん)するしかない自身に怒りさえ覚える彼。

 

「ハイハイハイ、そんな懇願(こんがん)しなくても、あんな村に興味ありませんから気にせず……死んでください。」

「……此処までのようだな。(エドラスと云う世界に飛ばされたお陰で此処まで生き永らえた。が、お嬢。再びお会いできず申し訳ありません。)」

 

対峙するは、眼鏡に猫の耳を連想させる特徴的な白いテンガロンハットの女性と、それに付き従う全身を覆う白い外套の兵士。傍から見てもその戦局は圧倒的に女性側に傾いている。巨漢の男の敗北は決定事項だった。

 

「ハイハイハイ!貴方の死因は、この研究施設を見てしまった事ですね。では、来世があるなら来世で幸せに過ごしてください!!」

 

彼女の号令で襲い掛かる謎の兵隊。

 

「…おじょ「助太刀するぜ!これがな!!」う!?」

 

そこへ突如響いた青年の声。

 

「狙いは、バッチリなんだなこれが!!()()()()()()()()()刃拳(ハーケン)!!」

 

青年、黒髪の青年が両方の拳を()()()場所から謎の敵兵目掛け降り抜いた。

 

「ま、待て!こいつ等は相手の()()に合わせ別の個体が()()し…なぃ!?」

「ど、どうして相手に合わせた〝リザードマン〟が出現()()()の!?」

 

為す術もなく上半身と下半身に分断され倒れていく謎の兵士達。そして、それを見て驚愕する敵対していた二人。

それもその筈。巨漢の男―フィンガース―が対峙していた、あるモノを造り出す為にダフネが偶然生み出した〝リザードマン〟は、対峙していた対象と同じ〝魔法〟を使う個体が()()で出現する仕組みになっていた。そのリザードマンが出現()()、尚且つ目の前のリザードマンも多少は対抗しているのだが、それでも簡単に屠られて行ったからだ。

 

「そんな事知ったこっちゃねぇぜ!それに、まだ終わってないんだな、これが!!ロケットソウル…違った!ハートを狙い撃ち…とか言ってな!!盾破(トンファー)!!」

 

青年の両手の拳から繰り出された闘気の矢が、残っていたリザードマンをいとも簡単に屍に変えられていった。

 

 

 

 

~数十分前某所~

 

 

 

 

「……痛てて、って。あれ?此処は何処だ?」

 

此処は砂浜?俺こんな所で何して<ジャリ!!>ッ!?

 

「うぇ!?ペッ、ペッ!!口の中が砂まみれじゃねぇかよ!!でも、何で俺はこんな所で寝てたんだ!?」

 

落ち着け…まずは状況の整理だ。俺は…誰だ?何でこんな所で寝てたんだ?

 

「アイツらは…アイツら?」

 

俺には仲間がいたのか?クソッ、思い出せない……これは記憶喪失ってやつか!?

 

「………ま、何とかなるだろ。まずは情報収集だ。此処が『何処』で『いつ』かを誰かに聞かないとな~。てかこの〝星〟に意思疎通(いしそつう)ができる相手は居るのか?」

 

さ~て、知的生命体はいるかなっと。

 

 

 

 

「オイオイ、俺の体軽すぎるんじゃね!?」

 

さっきは浜辺だったのに、ちょいと走ったら森の中を走ってるって、どう云うことだよ!?

それに、体が軽い!!綿の様に軽いぜ!!

 

「って、それよりも現地住民が居るかどうかの確に<ドン!!>ん!?」

 

山の(ふもと)から大きな衝撃と音…だと?確かめに行ってみるか。

 

 

 

 

「おっさんが、集団暴行にあってる!?」

 

あ…ありのまま今起こっている事を話すぜ!お、俺の目の前で巨漢なうえに包帯で顔を隠した怪しいおっさんが、白装束の集団にリンチに遭ってる!!な、なにを言ってるか…って、そんなこと考えてる暇はねぇ!!怪しかろうが、何だろうが集団で襲われている人を見かけたら、

 

「助けるのが、俺の性なんだよ。これが!!」

 

 

 

 

 

 

破れかぶれで突っ込んで行ったけど、まぁ大丈夫だったぜ。物騒な拳法が自然と出たがな!!

 

「ハ、ハイハイハイ!!凄いですね貴方!!こうなったら、アレの起動実験用の的になって下さいな!!」

 

な~んか、嫌な予感がするぜ。これは、おっさん逃がした方が良いかも…

 

「おいおっさん!」

「…なんだ。」

「今から全速力で逃げろ!!」

「…済まん。体が動きそうにない。」

 

マ、マジっすか!?

 

『ハイハイハイ!初めて出会った〝ドラゴン〟に恋い焦がれて造ったのが、この『ドラゴノイド』です!!そして、偶然手に入れた〝土の魔水晶(ラクリマ)〟をコアにすれば、あら不思議。私の操作で動く人工ドラゴンの出来上がりです!!』

 

あらら。でっかいトカゲが出現したぜ。

 

『ハイハイハイ!じゃ、殺っちゃって下さい!!』

「嘘ぉ!?殺す気満々じゃん!?」

 

おっさん守って、こんなデカブツに対抗するには、対抗するには…アレだぁ!!

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

『我は無敵なり、』

 

ダフネが人知れず山の(ふもと)に造った施設に一人の男の声が響く。

 

『我が表技に敵う者無し、』

 

その男は名も名乗らず、ある村唯一の魔導士の助太刀をした。

 

『我が一撃は無敵なり!!』

 

そして、その男は何の迷いも、恐れもなく自分よりも遥かに大きい…10メートルを超える敵へ挑む。

 

神悪(ガイヤ)!!』

 

男は地面に拳を突き立てた。

 

『ハイハイハイ!何をやっても無d<ドワオ!!>キャァァァァァァァァァ!!』

「なっ!?うお!!(な、何だこの技は!?)」

 

彼が拳を突き立てた直後、彼を中心とした衝撃波が施設全体を襲った。

この技は表技の最源流に当たる技であり、地面に拳を突き立て360度、全方位に神音の超振動を放つ技である。それに意外と器用な彼は、少し加減し自身の後ろにいるフィンガースへの衝撃は最小限にすると云う芸当もしていた。

 

「あ、ヤベ。やりすぎちまったか?」

 

男の目の前には、ドラゴノイドがバラバラに破壊された姿で倒れ、コアであり操縦席だった場所から吹き飛ばされ気絶(奇跡的に生きていた)したダフネと、

 

「…こ、ここまでの破壊力の魔法。初めて目の当たりにしたぞ!!」

「そ、そうなのか?」

 

完全にガレキと化した施設の無残な光景が広がっていた。

 

「…礼を言う。俺の名はフィンガース。この近くの村で魔導士をやっている者だ。」

「こっちは、たまたま通りかかっただけなんだがな。俺の名前は…名前は?俺の名前って何だっけ?」

「「………。」」

 

沈黙がその場を支配した。

 

「ま、待てよ。今思い出すからな!!ブラック=ハウ…なんか違う。アクセル=アル…これもしっくり来ない。ブラッド=スカイウィン…別人だなこりゃ!!」

 

腕を組んで悩み続ける青年。

 

「ブラック…ウインド…おっ、なんかそれっぽい名前になった。今日から俺はブラック=ウインドって事で宜しく!!」

「あ、ああ…。」

 

 

~sideフィンガース~

 

 

…懐かしいな。アイツと初めて会った時のことを久しぶりに思い出した。

 

ダフネを捕まえた後、彼女は激しい抵抗や喚いたりしたが、評議院に突き出すと言ったら大人しくなった。だが、それを聞いたブラックのヤツに説得され渋々この村に住まわせてやったわけだが…ダフネには色々手を焼かされた。

指示は聞かないし、勝手に変な実験をするし、挙句はあの変な食べ物……苦肉の策で記憶喪失のブラックを監視に置き、村の発展に協力させ…今年(ようや)く『何でも屋』を出店できるまで更生し、店が軌道に乗り出した。

 

「…で、今日は何の用で来たんだ?」

「…この前話した男の特徴をもっと詳しく教えるんだゾ。」

「…分かった。それにしても賞金稼ぎで名高い〝疾風〟がこれほどまでヤツの事が聞きたいとは…他言はしない。特徴を教える代わりに教えてくれ。奴は何をしでかしてたんだ?」

 

何故ここまで疾風がブラックにこだわるんだ?ま、まさか、アイツ闇ギルドに所属していて賞金首だったのか!?

 

「そ、それは「ハイハイハイ!フィンガース大変、大変!!」な、なんだゾ!?」

「…どうしたそんなに慌てて?」

「アイツ、ブラックが大魔闘演武(だいまとうえんぶ)へ選手として出場してるわ!!」

 

………は!?アイツ何やってんだ!?

 

「…本当なのか?」

「ハイハイハイ!今映像魔水晶(ラクリマ)持ってくるから!!」

 

…また何かに巻き込まれたのかもしれんな。

 

『こ、こんなことが!?始まりは圧倒的有利だったユキノ選手ですが、ブラック選手の放ったたった一つの技で星霊<ビシ!!>ッ!?訂正!!星霊を倒し、驚く事に闘技場を守る魔法壁にヒビを付けました!!よって勝者ブラッ―』

 

「…間違いない。ブラッ「か、風ぇー!?」くぅ!?」

 

ど、どうしたんだ?何故、疾風が叫ぶ!?

 

「ウッグ、ヒック…」

「な、何故泣く!?」

「あ~、ハイハイハイ。フィンガース、他人を泣かす魔術に目覚めたんですか?」

「ち、違う!!」

 

ど、どうすれば!どうすればいい!?

 

「やっと、やっと見つけた…<パサッ!>」

 

疾風がフードを取っ!?

 

「お、女!?」

 

お、驚いた。疾風は女性だったのか…ま、まさかブラックは!?

 

「ハイハイハイ!流石鈍感男!私は気付いていましたよ!何故なら、私は美の伝道師ですから!!」

「そ、そうなのか…」

 

 

~sideout~

 

 

今日、『ダフネの何でも屋』に店主ではない女性のすすり泣く声が聞こえる。

 

「よ゛がっだ!よ゛がっだん゛だゾー!!」

 

賞金と〝何か〟を求め数々の依頼をこなし、今や知らぬ者がいないと言われる噂の賞金稼ぎ〝黒い疾風〟の泣き声。

 

「…そうか、ブラックはお前の旦那だったんだな。」

「だ、旦那!?…<プシュー!!>」

 

疾風ことエンジェルはフィンガースの一言で嬉しすぎて昇天。

 

「ダ、ダフネ!緊急だ!!担架だ!担架!!」

「ハイハイハイ!変態は女性に触れないでください!!何人か女性の方呼んできます!!」

「へ、変態ではない!!」

 

今日も『ダフネの何でも屋』は平和だ。

 



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第19話

 

 

 

『お前達に相応しい()()()は決まった!!』

 

―風は業火の中の()()()を指さし、静かに叫ぶ。―

 

『全ての源、マザーブラック(ブラックソルト)!!』

 

―風は装備して(持って)いた一つ目の弾丸(薬莢の中身)を少し火の通った赤い()()装填し(かけ)た。―

 

『全てを焼き尽くす、ファイヤーレッド(レッドソルト)!!』

 

―先程とは違い二つ目は少量別の()()装填(かけ)

 

『そして、全てなる臨界点、バーニングゴールド(ゴールドソルト)!!』

 

最後は容器を叩き、勢いよく弾丸(薬莢)を飛ばし回転している弾丸(薬莢)が三つ目の赤い()()へ中身を装填(かけ)た。―

 

それを見ていた()の心臓は自然と早くなり、歓喜の声と(よだれ)が込み上げてくる。

 

『出でよ、召喚獣(調理された)フェニックス(三種ステーキ)!!』

 

()の目の前に召喚獣(調理された)フェニックス(三種ステーキ)が現れた。

 

「……あ、あぁ!!さぁ、何処からでも掛かってこい!!」

 

気付いた時にはもう……

 

 

 

 

 

()負け(美味しく食べ)ていた。

 

ブラックソルトの乗った肉は、成分である硫黄が炎で消え、肉の旨味が引き立っていた。

レッド(ピンク)ソルトは少量しか使用していないにも関わらず、調理された肉の旨味が増し、空腹だけでなく同時に()の中にミネラルを補給してくれる。

ゴールドソルトが掛かった肉からは、柑橘(かんきつ)類の香りが豊かに広がり、さっぱりとした食感で()の食を更に掻きたてる!!

 

…これは!

 

これは!!

 

「う、うーまぁーいーぞぉー!!()殿()!カグラは、お代わりを所望する!!」

 

さぁ!早く!ハリー、ハリーハリーハリー!!

 

「ど、どうしたカグラ!?」

 

あぁ、シモン兄さん?そ、そうだ!!

 

「は、早く、綺麗なお皿を()殿()に渡し、装ってもらってくれ!!」

「……は?」

 

何をモタモタしてるんだ兄さんは!!

 

「早く、かぜ、どの、の料理、ステーキを…を?」

 

風殿の三種ステーキ………あぁ、さっきのは桃源郷(シャングリラ)だったのか。

 

「ステーキがどうしたカグラ!?何か逢ったのか!?」

「いや、風殿はひもじい思いをしていないだろうか。そんな事を考えていたら声を出してしまったらしい。風殿にステーキを食べさせてあげたい…。」

 

咄嗟に付いてしまった嘘…兄さんにこれ以上心配事を増やさないよう気を付けよう。

 

「そうだな。そうなっていたら、俺達の特性料理を食べさせてやろう。…そ、そうだ!!今、映像魔水晶(ラクリマ)を持ってくる!!」

「ん?どうしたんだ兄さん?」

 

一体どうしたんだ兄さんは?

 

「今日は大魔闘演武(だいまとうえんぶ)の2日目だからな。空いた時間は応援をしようと思って持って来たんだ!!それに、今日からバトルパートになるらしい。今年も俺達"捜索組"は出場しないからな。今回ぐらい応援したっていいじゃないか!!」

 

あー。そう言えば兄さんは毎年見てみたいって言っていた。自身の魔法を他人に見せながら戦うなんて…私はそういう()()()は好きではない。私の表現が悪いが、死地での戦いの中、既に相手に自身の手の内や()()()を見せている。或いは、見られ知られていると同等なのだ。そんなモノやれと言われても私は断固拒否する。が、エルザ義姉さん達も無事だったし、それも出場しているんだ。兄さんにこうした息抜きは必要だろう。

 

「私は否定していないよ、兄さん。今日は、捜索活動は休みにしているんだ。一緒に義姉さん達を応援しよう。」

「今日は、ゆっくり観戦し、明日からまた風のヤツを探しに行くとするか!!」

『僕も観戦していいかい?』

「おお!雲!!お前も俺達のギルドの応援宜しく頼むぜ!!」

『分かっているよ。』

 

この頃、兄さんは以前の元気を取り戻してきている。これも義姉さん達が帰って来てくれたk「あれ?何で()()()()()が出場しているんだ?」な、なんだとぉ!?

 

「ほ、ほぉ~。ミ、()()()()()が出場しているんだ。」

「ああ。でも、もう元いた世界に帰ったんじゃなかったか?」

「こ、この日の為に帰って来たんじゃないか?」

「成程。よし!行けぇ!!ジュラさんに負けるな!!」

 

さて、あの()()()()何枚に下ろしてやろうか?

 

『どうしたんだいカグラ?殺気なんて出して。』

「ああ、雲殿。()()を切り刻む良い()()()が見つかったんだ。……武者震いが殺気に変わっただけだ。」

『そ、そうかい。』

 

間違いない。あれは()()()()()だ。エルザ義姉さんの周りを飛ぶ()()が!今から行って、この私が引導を渡してくれるわ!!

 

<カシン!キン!!カシン!キンッ!!>

 

「ど、どうしたカグラ?刀の(つば)を上げたり下げたりして…。」

「ああ。気にしないでくれ兄さん。思い出し笑いと同じように、"思い出し斬り"って云うのがあって、思い出しただけで斬りたくなる人物が頭に過ったんだ。」

「そ、そうか……。」

 

ヨシ、殺ソウ。ソウト決マレバ……

 

「お、おい!ミストガンが急に苦しみ出したぞ!?」

 

そのまま、死んでくれないかな~。

 

「あ〝、アイツ突然気絶して負けちまった!?」

 

兄さんがあんな悔しそうに地面を叩いている。そりゃ、あのジュラさんに善戦出来ていたんだ兄さんが悔しがるのも納得だな。さて、

 

「……兄さんを落胆させた。行ッテ殺ソウ。」

 

サクッと()って来マスカ!!

 

『新人同士の対決になりました。な、なんとブラック選手は一週間前に入ったばかりと言う異例の新人。女性ばかりの人魚の踵(マーメイドヒール)に唯一の男だそうです!羨ましい!!そして、その実力は未だベールに包まれたまま!!一方最強ギルド剣咬の虎(セイバートゥース)に所属しているだけでユキノ選手の強さは期待がかかります!!』

 

ん?まだ最終試合があったな。これを見たら………はぁ?

 

『記憶がなくても、技の威力は変わらんぜ!!クルダ流交殺法・陰流!!空牙(クーガ)!!』

 

あ、あの一瞬消える様に躱す動き!それと、髪を下したら……ッ!!?

 

『こ、こんなことが!?始まりは圧倒的有利だったユキノ選手ですが、ブラック選手の放ったたった一つの技で星霊<ビシ!!>ッ!?訂正!!星霊を倒し、驚く事に闘技場を守る魔法壁にヒビを付けました!!よって勝者ブラッ―』

 

ま、まさか!まさか!!まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか!!!

 

「ど、どうしたカグラ?映像魔水晶(ラクリマ)を両手で持って。」

 

兄さんの声が何故か遠くに聞こえる。

 

『―ですが今回驚くべき事に、あれ程大きな威力にも関わらず、ブラック選手から大きな魔力反応が全くありませんでした。その為、魔法を使()()()にユキノ選手と戦った事になります。その為ブラック選手は規定上失格。勝者はユキノ選手になります!!』

 

こ、この…

 

「このクソ審判共が!!」

 

<斬!!>

 

「あぁっ、苦労して買った魔水晶(ラクリマ)だったのに……。」

「兄さん!大魔闘演武(だいまとうえんぶ)は何処でやっている!!」

「俺に何か恨みでもあるのかカグラ……あるなら、謝る。だからその刀を鞘に仕舞って、話し合おう。」

 

何を言っているんだ兄さんは!!

 

「兄さん!魔水晶(ラクリマ)は必ず弁償する。そんな事より、さっき映っていた人物ブラックは、恐らく()殿()だ!!」

「な、何だって!?」

『僕もそうだと思うよ。』

「やはり雲殿もそう思うか!!」

 

善は急げだ!!

 

「兄さん!ウォーリー達に連絡し途中で合流!その後、」

「分かっている。俺達"捜索組"も大魔闘演武(だいまとうえんぶ)へ乱入だ!!」

 

何故あの様な口調になっているかは後だ!()殿()!!今からカグラが貴方に会いに参ります!!

 




今回はカグラ視点です。


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第20話

遅くなりました。


 

 

 

大魔闘演武(だいまとうえんぶ)が始まる3カ月程前~

 

俺の名前は、"ブラック=ウインド"。

 

………って()は名乗ってる。

 

今はってのは、記憶喪失で自分の名前も思い出せない"名無しの権兵衛"ってのが、今俺の状況なんだな!これが!!

 

いや~、フィンガースやダフネの嬢ちゃん、村の皆とこの2年間自分の事を色々調べてみたんだが…

 

()()()()()()()って物騒な拳法が使える事と、やたら体が頑丈で、やろうと思えば数週間飲まず食わずでも生きていけるトンデモ人間ってことしか分からなかったぜ。」

 

って、自分で言ってて何じゃそれ!?俺、本当に人間!?飲まず食わずって、普通の生物止めてね!?…ま、まさか某宇宙帝国が開発した戦闘アンドロイドとか!?

 

「あ~、やめやめ。今まで散々色んな人と考えて分からなかったんだ。今更そんな事考えても、埒が明かねぇぜ。」

 

散々考えても分からなかったから、俺は旅に出た。そして今、

 

「唯一残っていた記憶の中から、十傑集(じっけっしゅう)走りってのを再現し、()()を爆走中なんだな、これが!!」

 

十傑集(じっけっしゅう)走りってのは、()()()()()()()にさせずに走ることをこう呼ぶんだぜ。この走りを体得するには4つのステップをクリアする必要がある。ま、此処じゃ割愛するがな!

 

 

 

 

 

一人の男が海上を滑るように走っていた。

 

「し、しまった!!キセルを持ってきてない!!十傑集(じっけっしゅう)走りの上級者なら必要不可欠だったのに!!」

 

彼にとって大事な記憶に関する事を見つける為の旅だが、当の本人は気楽にそんな事を言っている。

 

「くっそ~!今度街を見つけたらキセルを購入せねば!!って俺、お金なかったんだ!!む、村での自給自足がこんな所で裏目に出るとは…」

 

彼、ブラックは悩む。キセルをどうやって手に入れるかを。……海上を走りながら。

 

「ま、人に会ったら何とかなるさ!!」

 

そう口に出しあっけらかんとしながら彼は、何処か町が無いか海上を走りながら探すのであった。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

海岸沿いにある少し廃れた建物から、女性たちの声が漏れている。

 

「クソッ!黄昏の鬼(トワイライトオウガ)の奴ら、私達が女だけのギルドだからって舐めやがって!!」

「アラーニャ…」

 

此処は女性だけで結成されたギルド、人魚の踵(マーメイドヒール)

 

「あんな奴ら蹴散らして「アラーニャ!!」ご、ごめんリズリー…」

 

言い争っているのはドレッドヘアの女性のアラーニャ・ウェブと、パーマの掛かった髪のぽっちゃりした女性リズリー・ロー。

 

「あいつ等のやり方が気に入らないのは私も同じさ。でも、私らは5人しかいない少数ギルド。あいつ等を相手取るにはいささか人数が足りないよ。」

「で、でも!これ以上街の皆がひどい事されるのを黙って見てられないよ!!」

 

海辺に近いこの街に黄昏の鬼(トワイライトオウガ)がやって来たのは2年ほど前。以前ギルドがあった場所を、奇妙な拳法家と大男、トカゲのバケモノ達によって奪われて此処に逃げて来たらしい。当時出来たばかりだった人魚の踵(マーメイドヒール)は、彼らを快く向かい入れ2つのギルドで街を守って行こうと思っていた。

 

が、

 

「よう嬢ちゃん。羽振りが良さそうだな?俺達にも分けてくれないか?…無論、断れば分かっているだろうな?」

「ひぃぃぃ!!」

 

街で見かけた少女を脅し、金を巻き上げ、

 

「おいジジイ!誰が此処で商売していいと言った!!するなら俺達へ10万ジュエルの許可金と毎月2万ジュエル上納しやがれ!!」

「なんじゃと!?」

 

勝手に地主に成り代わり商売だけじゃなく、街全体を数の利を生かし管理しだした。

以前のギルド…根城にしていたところは、恐らく奴らの蛮行を目の当たりにした正義の味方が追い出したのだろうと街の人々は考えた。だが、転がり込んで来られた街の人々にとっては、いい迷惑だ。彼らもただ黙って見ているわけではなかったが、数が多いうえに魔法を使える彼らを追い出すには街の人々と彼女達では無理な話だった。評議院にも何度か視察に来てもらった。が、視察日は非公開なのだが、どう云うわけかその日は必ず彼らは大人しくしていた。恐らく評議院の中に彼らと通じている者がいるのだろう。

 

「2年間あちき達は耐えた!でも、もう!これ以上耐えられない!!」

「ベス…」

 

三つ編みの髪にそばかすが特徴のベス・バンダーウッドが、今まで抑えていた感情をさらけ出した。

 

「分かったわ。二人がそこまで言うなら、今まで行って来た評議院への報告は今日で中止し別ギルド…青い天馬(ブルーペガサス)へ助けを求めましょう。」

「なら、直ぐにでも連絡が必要ね。私かベスが連絡役。リズリーとリサが…「た、大変だ!!」ど、どうしたの魚屋のおじさん!?」

 

ギルドで黄昏の鬼(トワイライトオウガ)への対応を話し合っていたリズリー達の所へ、彼女達を気に掛けてくれている魚屋の店主が駆け込んで来た。

 

「さ、さっき大通りでルーちゃんが黄昏の鬼(トワイライトオウガ)の連中に絡まれちまった!!」

 

店主の話も(ろく)に聞かないまま4()人はギルドから飛び出して行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、何か変わった拳法を使う兄ちゃんに助けられたんだけどよ…って、リズリーちゃん!?話は最後まで聞いてくれー!!」

 

店主は彼女達を追ってまた大通りへと駆けていく。

 

「ハァ!ハァ!!もう年かな?」

 

息切れしだした自身の年齢を考えながら。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

「助けてくれてありがとう!!ルーは〝ルー・ルピス〟って言うんだよ!!」

「ルー・ルピスか良い名前だな!!(……何だ?以前聞いたことのあるような名前だ。)」

 

海上を走っていたブラックは、丁度近くに見えたこの街に寄っていた。無論、キセルをどうにかして購入する為だ。

 

「おっと、俺の名は〝ブラック・ウインド〟ってんだ。ここいらに〝キセル〟って…えぇっと、煙を出す短い木みたなもんって売ってないか?」

「…う~ん、ルーは知らない。」

「分かった。教えてくれてありがとよ、ルー。変な奴には気を付けろよ!じゃあな!!」

 

ブラックは、次の人にキセルがこの街で売っているか聞く為その場を後にしようとして、

 

「これ以上、ルーに手を出すんじゃない!ぽっちゃりナメちゃいけないよ!!」

 

ぽっちゃり…していないパーマの掛かった髪の女性に頬を殴られ、

 

「私の糸魔法で拘束してやる!!」

 

蜘蛛の様な糸に拘束され、

 

「いっけー!あちきのニンジンミサイル!!」

 

ニンジン型のミサイルの雨に遭い、

 

「私の魔力を水の魔法に変えて…お願い!ルーを守って!!」

 

水に呑まれて行った。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「申し訳、ありませんでした!!」」」」

「ごめんなさい。ブラックサマ。」

 

4人の女性とルーが水浸しになったブラックへ頭を下げた。

 

「いや~、怪我も無いし誤解も解けたから構わねぇよ!!」

 

当の本人はそんなに気にしていない様子。

 

「それでも、貴方にルーが襲われていると間違えて殴ってしまったわ。…傷は、あら?無傷?(…おかしい、私は本気で殴ったハズよ。無傷なんて!?)」

「ま、服が破れて、ビショビショになっただけだ。気にしなさんな!じゃ、俺はキセルを探しに「居たぞ!アイツだ!!」…はぁ、行けそうにないな。」

 

ブラックが動き出そうとした時、先程蹴散らした男が仲間を10人程連れ仕返しに戻って来た。

 

「俺の弟分を痛めつけてくれたらしいな!!」

「俺達に舐めた真似しやがって!唯で済むと思うなよ!!」

 

彼らはブラックへ詰め寄ろうと近づいて来た。

 

「…兄さん、私達があいつ等を相手するから、そのうちに逃げ「おいでなすったか…!滅刺(メイス)!!」てぇ!?」

 

ブラックはリズリー達の前に一瞬で出て来たと思ったら、男を含めた全員を目にも止まらぬストレートで倒していった。

 

「あ、アンタ何者…」

「な~に、只の通りすがりのモンだ。あいつ等あっちから来たな。ゴミ掃除と洒落込みますか!!」

「ま、まっ…行っちゃった。」

 

リズリーの静止も届かず、ブラックは一人で黄昏の鬼(トワイライトオウガ)のギルドがある方向に走って行ってしまった。

 

「……。」

「あ、あの人一人で行っちゃったよ!リズリー!何呆けてんの!?強そうだったけど一人で100人を超えるギルドに殴り込みに行くなんて自殺行為よ!!」

「あ、あちき達も行こうよ!!ルーの恩人を見殺しなんてあちき出来ない!!」

「ルーもブラックサマを助けたい!!」

「最悪、倒れた彼を連れて逃げるのも視野に入れておきましょう。私も戦う覚悟をしましたから…行きますよリズリー。」

 

アラーニャ、ベス、ルー、()()がリズリーへ彼を追いかける事を促す。

 

「…分かったわ。私達人魚の踵(マーメイドヒール)をナメちゃいけないよ!!」

 

彼女達は走る。黄昏の鬼(トワイライトオウガ)のギルドへ。

 

 

 

 

 

男の声が聞こえた。

 

『我は無敵なり、』

 

力強く、その声の前では誰も反論出来ない。

 

『我が〝拳〟にかなうものなし、』

 

その声に黄昏の鬼(トワイライトオウガ)のギルド員達は、恐れ、逃げ惑う。

 

『我が一撃は無敵なり!!』

 

そして、街全体を揺るがすような衝撃が起きた。

 

霊悪(レイア)!!』

 

 

 

 

彼女達が到着したころには全てが終わっていた。

 

「嘘、でしょ…。」

「ま、まさか…。」

「あわわわわ。」

「すごーい!ブラックサマ!!」

黄昏の鬼(トワイライトオウガ)のギルドが跡形もない…。」

 

ガレキの上に立つ一人の青年。その周りには100人を超えるごろつきが倒れていた。

 

「ありゃ?アンだけ啖呵を切ってたのに、こいつ等口だけかよ!!」

 

いや、確かに黄昏の鬼(トワイライトオウガ)の中には口だけ威勢のいい事を言って、大した実力の無い輩も多い。だが、それを含め全員を相手取って()()なのは異常だろう。

 

「おお、嬢ちゃん達。(わり)ぃけど、キセルってどっかに売ってない?後、こいつ等拘束するの手伝ってくれないか?」

 

この日黄昏の鬼(トワイライトオウガ)は二度目の壊滅を期した。今度は追い出されるのではなく、評議院の管理する独房の中なので、これ以上彼らからの被害が出る事は無いだろう。

 

「これがキセルです。それと、ルーを…ひいてはこの街を助けて頂きましたので、それは差し上げます。」

「いや~、なんか(わり)ぃな嬢ちゃん。でも、只より高いものはないって言うからな。なんか手伝う事あるか?」

「じゃ、じゃあ、ルー達に拳法教えて!ルー、もっともっと強くなってリサ達を守るんだ!!」

「ちょっとルー!!」

「良いぜ!じゃ、今日から少しの間俺の技術を伝授するぜ!!俺の名はブラック・ウインドよろしく!!」

 

ブラックはこのルーのお願いを快く承諾。

 

「はぁ、私はリズリー・ロー。リズリーって呼んでよ。」

「私はアラーニャ・ウェブ。アラーニャって呼んで色男さん。」

「あちきはベス・バンダーウッド。ベスって呼んでね!それと、野菜は好き?」

「私の名前はリサ・パツィフィース。リサって呼んでください。」

「…じゃ、今日からよろしく!それと、野菜は好きだぜ!!(…リサ、リサ?どっかで聞いた事ある名前だな。…ダメだ。思い出せん。)」

 

こうしてブラックは人魚の踵(マーメイドヒール)にしばらくやっかいになることになった。

 

接収(テイクオーバー)ウルフ・ソウル!!」

「じゃんじゃん攻めてこい!!」

 

ルー・ルピスの得意とするのは、変身魔法の接収(テイクオーバー)。半狼化し、その四肢と咆哮で戦う。

 

「ウォーターアロー!!」

「連発して制度が落ちてるぜ!刃拳(ハーケン)!!」

 

リサ・パツィフィースが良く使用するのは水魔法。変幻自在で様々な使い方が出来るからだそうだ。

 

そして、あっと云う間に3カ月が過ぎ、今日ブラックに鍛えられた人魚の踵(マーメイドヒール)は、大魔闘演武(だいまとうえんぶ)の本選に出場した。

 




ルーとリサは本人ではなく、似ているだけです。所謂パラレルワールドの人物です。


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第21話

 

 

 

剣咬の虎(セイバートゥース)宿屋~

 

 

 

「この、剣咬の虎(セイバートゥース)の面汚しが!!」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)のマスター、ジエンマは()()には勝利したが、完全に()()では負けたユキノを呼びつけ、その場で剣咬の虎(セイバートゥース)を解雇。それをギルドの主力全員の前で行い、暴言を吐き、食べかけていたブドウを房ごと投げつけたのだった。

 

「クッ…ん?(あれ?ブドウの衝撃は?)」

 

が、その房はユキノには当たらず、

 

「おい、クソジジイ!食い物を粗末に扱うんじゃねぇ!!作物は、ベスの様な農家の人が汗水垂らして作り上げてんだ!!」

 

一番後ろの扉に待機していた筈のブラックが、ユキノの前に立ちそれを防いでいた。

 

「ほぅ、ワシに感知されずアレを容易く掴むとは…」

「さっきから聞いてりゃ、ガキかテメェは!この嬢ちゃんは俺に勝っただろう!勝ち方が気に入らねぇのは分かるが、食いもんを投げつける程じゃねぇだろうが!!(クソ、このギルド第一印象から最悪だぜ!!)」

 

マスターのやり方に異見を堂々と言うブラックに、その場にいた全員が驚愕していた。

 

「小童が、言わせておけば…」

「あぁん?数十年ぐれぇしか生きて来てねぇガキが吠えるんじゃねぇ!!(あれ?俺って何年生きてんだっけ?ま、記憶喪失中だからいいか。)」

 

一触即発の中、

 

「ユキノ、何故そこに立っている?とっとと失せろ、ゴミめ。」

「あ゛ぁ゛ん?」

 

その一言でその場にいた剣咬の虎(セイバートゥース)の大半は死を覚悟した。

 

「おい、カス。この嬢ちゃんに何て言った?ゴミだと!失せろだと!!」

 

ソレは、たった一人の男から出る怒気。

 

「…話にならん。ユキノ嬢ちゃん。行くぜ。」

 

ブラックから放たれているものだった。そして、このギルドのやり方が気に入らなくなったブラックは、動けないでいるユキノの手を引いてその場を出ようとする。

 

「待て、お主はワシの「うるせぇなガキが!!」…何だと!?」

 

しかし、ジエンマがそれを静止した。

 

「俺は、()()()()()()()()()()()に入ると言った。が、さっきユキノはテメェに此処を追い出された。なら、俺が此処にいる道理はねぇよなガキ!!」

 

が、完全にブチ切れたブラックはそう言って立ち去ろうとする。それを止める者は…いや、止められる者は誰も居ない。体が動かないから。本能的に自身では勝てないと悟ってしまったから。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)で名を馳せるローグやスティングさえも。

 

「それと、そこに隠れている女。これ以上変なことすると…殺すぞ!!」

「ッ!?」

 

そして、隠れて機会を伺っていたミネルバも彼には筒抜けで何も出来ない。だが、ミネルバと一瞬話していたその隙を狙ってジエンマが攻撃魔法を展開。

 

「唯で帰すと思う『裂破(レイピア)!!』ッ!?」

「父上!?」

 

だが、ブラックはジエンマが拳を振り上げたと同時に、俊足を生かし一瞬で肉薄。影技の蹴りを放ちその一撃でジエンマを気絶させた。

 

「邪魔したな。それと、女。ユキノの嬢ちゃんが付けているギルドのマーク消せるか?」

「…は、はい。消せます。」

「じゃ、消してくれ。そしたら、俺達は此処を去る。」

 

ミネルバにギルドマークを消させ、ブラックはユキノを連れて剣咬の虎(セイバートゥース)の宿屋を出て行った。

 

「…あれがユキノと戦った男。今のオレじゃ〝最強〟などほど遠い…それに、アレが魔法じゃねぇってのが増々信じられなくなった。」

「オルガ…皆、マスターを部屋へ。ユキノはあの男と対峙し、戦った。あれ程強い男だったとは思いもよらなかった…今のオレ達はユキノを笑えない。いや、笑う資格すらない!!」

「…ス、スティング君の方がt「いいんだ、レクター。オレを思って言ってくれてんだろ。」スティング君…」

()はどうやってもオレ達は奴、ブラックには勝てない。だけど、もっと、もっと強くなって()()会った時は、アイツにオレ達の名前を刻みつけてやる!!」

「う゛、う゛ん!!」

 

ブラックが立ち去り、その強さの片鱗を垣間見たオルガは自身の力を過信していたと真摯に受け止め、スティングは新たな目標を見つけた。

 

「フロッシュ。この大会が終わったら、スティング達と修行をやろうと思う。」

「フロー、ローグがそう言うと思ってた。」

「…付いて来てくれるか?」

「何を言ってるのさローグ。フローは何時もローグと一緒だよ!!」

「…そう、だったな。よし、スティング達を追いかけるぞ。大魔闘演武(だいまとうえんぶ)と、このギルドの今後について話し合うんだ!!」

 

ローグはフロッシュと共にスティング達を追いかける。

 

「フフフ。」

「ん?どうしたフロッシュ?」

「何でもないよ。」

 

今までにない、やる気に満ちた凛々しい顔しながら。

 

 

 

 

~side ブラック~

 

 

 

 

だぁー!胸糞悪い()()だった!!あんな奴がよくギルドのマスターに成れたな。…評議院っつたか?人魚の踵(マーメイドヒール)の事といい、今回の事といい。そいつ等ちゃんと仕事してんのか?一回殴り込んでみるのも手だな。

 

(わり)ぃなユキノの嬢ちゃん。俺の所為でギルド、クビにさせちまって。」

「……い、いえ。し、しかし、ブラック様があれほどお強いお方とは思いませんでした。」

「ん?俺が強い?ただガキを蹴り飛ばしただけだぜ。あんな奴より以前戦ったサルや自己中ジジイの方が…ん?いや、最後のは忘れてくれ。(サル、自己中ジジイ。何だ、何か思い出しそうなんだが…)」

 

やっぱり、旅に出て正解だったな。断片的だが俺の記憶が戻りつつある。

 

「ジ、ジエンマ様を子供扱い…そう言えば何処へ向かっているのですか?」

「…何処いこう。」

「へ?ま、まさか行く当てが無いのですか!?」

人魚の踵(マーメイドヒール)の嬢ちゃん達には、あの場で別れを言った手前おずおず帰る訳にもいかねぇし。…ま、剣咬の虎(セイバートゥース)の奴らが人魚の踵(マーメイドヒール)の嬢ちゃん達に変な事しないよう、大魔闘演武(だいまとうえんぶ)の観戦デートなんて洒落込みますか!!」

 

ま、デートは冗談だけどな。可愛い嬢ちゃんだからな。役とk<ゾクリ!!>な、何だこのプレッシャーは!?

 

「デ、デートォ!?」

「わ、(わり)ぃデートってのは冗談だ。あいつ等を監視するってのは本当なんだな。これが。」

 

何ださっきの寒気は。どんな相手でも今まであんなことは無かったハズ…いや、一回あったかもしれん。何なんだ一体。

 

「じゃ、宿を取り直して「ダブルを!?まさか、シングル!!」…いや、普通に別々の部屋だ。ユキノ嬢ちゃんどうしたんだ?」

「にぁ、オホン。何でもありません。」

「そ、そうか。」

 

さて、この大魔闘演武(だいまとうえんぶ)で俺の記憶が戻ってくれればいいんだがな。

 

 

 

 

~side out~

 

 

 

 

「ム、此処だな。」

「じゃ、俺が殴り込んで「バカ者!今回は絶対に問題を起こすな!!」…あい。」

「ププ、やっぱりエルザには勝てないね。ナツ!」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)の宿舎の前にエルザとナツ、ハッピーが立っていた。

 

「今回は()と話をするだけだ。内容によってはカグラ達に連絡し、調べて貰わなければならん。」

「分かってるって。」

 

事情を宿屋のカウンターで話していた時、

 

「あれ?ナツさんじゃん!!」

「お前は、確か…」

「俺はスティング。で、ウチのギルドに何か用?ぶっちゃけ今アンタらと話す時間もないくらい忙しんだけど?」

 

気分転換にカウンターまで降りて来たスティングが話しかけて来た。

 

「なに、ブラックと云う男に話があってな。忙しいのなら、此処に呼んでくれさえすれば問題は無い。」

「あ~、ブラック()()ならユキノが此処辞めさせられた時、一緒に出て行ったよ。」

「成程、出て行ったのなら仕方な…出て行ったぁ!?どう言う事だ!詳しく聞かせろ!!」

 

鬼気迫る形相のエルザに両肩を掴まれ、揺さぶられたスティングはついさっきの事をエルザ達へ話し、漸く解放され宿屋の一室で行われている会議へと戻って行った。

 

「…胸糞(わり)ぃ!!」

「そう、カッカするなナツ。それに、ブラックが既にお灸を据えて行ったと言うんだ。今後あのギルドは良くも、悪くも変わって行かなければならない。」

「でも、これでまた〝風〟のヤツの手掛かり無くなっちまったな~。」

「ま、また探せばいいさ。〝生きている〟事は確証が持てているんだ。カグラ達には私から連絡しておく。」

「じゃ、明日も大魔闘演武(だいまとうえんぶ)頑張るぞ!!」

「あい!!」

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

「ま、待てカグラ!もう少しペースを落とさないと倒れるぞ!!」

「恋する乙女に、止まると云う選択肢は、無いデスネ!!」

「此処は、クールに行こうぜカグラ。」

 

木々が生い茂る森の中、カグラ達は大魔闘演武(だいまとうえんぶ)が開催されている場所へ急いでいる。

 

「……ああ。(今すぐ行きます!風殿!!)」

 

 

 

 

「ハイハイハイ!フィンガース早く、疾風さんに置いて行かれてしまうわよ!ブラックを応援に行くって言ったのは貴方なんですから!!」

「……分かっている。だが、こんな無茶なペースで走り続けると付く前に倒れてしまうぞ?」

「ハイハイハイ!分かってませんねフィンガースは。恋する乙女に〝不可能〟の文字は無いんですよ!」

 

大魔闘演武(だいまとうえんぶ)の会場に続く田舎の一本道を黒い影と、それを追う二人の男女が走っていた。

 

「今度こそ、女としてエンジェルちゃんを扱わせてやるんだゾ!!(小声)」

 

それぞれ『黒き風』の情報を掴み、当の本人がいる大魔闘演武(だいまとうえんぶ)会場へと向かう。だが、彼女達は知らない。その会場で起こる壮絶な戦いを。

 



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第22話

 

 

 

俺は、剣咬の虎(セイバートゥース)の奴らが変な事をすると思っていたんだが…

 

「杞憂に終わったんだな。これが。」

 

それに、ユキノ嬢ちゃんのギルドマークを消せたあの姉ちゃん水の中の競技じゃ、あっと言う間に全員を押し出して勝ちやがった。あんなに強いとは思わなかったぜ。

 

「どう致しましたブラック様?」

「いや、何でもない。今日で大魔闘演武(だいまとうえんぶ)も終わる。記憶の手掛かりになりそうなのは〝ミストガン〟って男だけ。」

「……ブラック様の大切な記憶に関係する男。ですが、直接の接触は控えて下さい。…また、あのように苦しまれる事は私も望んではいません。」

「…そうだな。ま、会えたら会えたで気楽にいくわ。」

 

数日前、俺は偶然ミストガンと云う妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士を偶然見かけた。その時彼は誰かを探していたんだとおもう。

 

『ブラック様!先程の伏魔殿(パンデモニウム)100体制覇の初代妖精女王(ティターニア)様に続き、魔力測定器(マジックパワーファインダー)でのカナ様が叩き出した測定不能!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士様達は凄い方達ばかりですね!!』

『凄ぇって言葉だけじゃ、表すのが勿体ないぐらいだな。そう言えば、俺は妖精の尻尾(フェアリーテイル)って言葉を聞いたことがあるような?無いような?あいつらを知ってる?いや知らないのか…』

 

俺は、ユキノの嬢ちゃんと二人で大魔闘演武(だいまとうえんぶ)を観戦していた。丁度、露店で買った焼きそばや串焼きを全部食っちまったから、追加で買いに行く途中で俺達は人ごみの中、そいつを…ミストガンを見つけた。ミストガンは顔に傷がある男ともめていたんだが、俺はミストガンを見た瞬間、

 

『……ウアァ!!あ、頭が!!』

『ブ、ブラック様!?どうしたんですが!?』

 

突然の頭痛に眩暈。最後はその場に立つこともままならなくなり、ユキノ嬢ちゃんの肩をかり近くに有った椅子へやっとの事で辿り着いた。

 

『……ち、が…う、奴は()()()()()じゃ…ね…』

『ブラック様!お水持ってきました!!』

『…わ、(わり)ぃ。さっき何か思い出せそうだったんだが…ッ!?』

『ブ、ブラック様!!無理をしないでください!!』

『…分かってるんだな。これが。』

 

それ以来、彼とは遭遇していない。

 

 

 

 

で、

 

 

 

 

「がぜざま゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「……何で、綺麗な姉ちゃんが俺に抱き着いて、涙や鼻水を擦り付けて来るんだ?」

 

何故か俺は観客席に行こうと歩いていたら、前髪を切りそろえた黒髪の姉ちゃんに突然突進され押し倒されちまった。てか、この姉ちゃん、周りの人目を気にせずわんわん泣いてんだが…どうしよう。

 

「あ、貴女様は二代目妖精女王(ティターニア)と名高いカグラ様!?」

「おーい、この嬢ちゃんの説明はいいから助けてくれ。」

 

か、かぐら?神楽?…カグラ?どっかで聞いた名前何だが…ダメだ思い出せん!!

 

「は、はい!!カ、カグラ様。ブラック様が困っています。それに周りの目もありますので、此処は離れて「五月蠅い!この、泥棒猫が!!」ど、泥棒猫!?」

 

…何だろう。この姉ちゃんのユキノを見る目。親の仇を見る様な目、なんだな。これが。

 

「貴様!無様に負けたくせに!その体を武器にし、審判に取り入って試合に勝つなど言語道断!!その首叩き切ってやる!!」

「い、いえ!私は審判様に取り入ってなど!!「問答無用!!」ひぃ!?」

 

ヤバイ!この姉ちゃん本気でユキノを斬るつもりだぞ!!

 

<ガキン!!>

 

「な、なぜ…」

 

ふ~、間一髪。抜刀した瞬間、刀身を右手で捕まえれてよかった。この体のスペックに助けられたな。

 

「こっちも〝何故〟って質問したいんだな、これが!いきなりユキノ嬢ちゃんに斬りかかりやがって!!」

「う、あ、う…」

 

ん?ちょっとキツク言い過ぎたk

 

「か、風殿に嫌われたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「は?お、おい!!」

「う゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

……今度は涙を流しながら突然逆方向に走って行きやがった。

 

「な、何だったんだ?」

 

奇妙なヤツだったな。それと、〝風殿〟?どっかで聞いた気が…おっと、ユキノ嬢ちゃんはっと…ん?

 

「ユ、ユキノなんだゾ!?」

「…ソ、ソラノ姉さん!?」

 

おぉっと、ユキノ嬢ちゃんが知り合いにエンカウントしたみてぇだな。

 

「ね、姉さん!?よくご無事で!!その右腕は…まさか!?ゼレフを信仰する集団に何かされたのですか!?奴らに連れ去られてから数年!漸く、漸く会えたのに…絶対姉さんの右手の仇は私が取ります!!」

「いやいやいや、これは違うんだゾ!!えぇっと、そう!魔法具だゾ!で、でも、そっちこそ、よく無事だったんだゾ!!」

「はい!姉さんを探す為、様々な魔法の修行を行い、星霊魔導士になれました!!それより、魔法具。成程、それのお陰で脱出出来たのですね!!」

「ま、まぁ、そう云う事…なんだゾ!!」

 

いや~。姉妹感動の再開!!第三部完!!ってか?

 

「ユキノとは色々聞きたい事、話したい事がいっぱいあるんだゾ!でも、風…無事で良かったんだゾ!!」

 

ってこの姉ちゃんもさっきの姉ちゃんみたいに、俺へダイブするんだな!?

 

「オイオイオイ!俺はユキノ嬢ちゃんのおまけみたいなモンだから!!」

「何を言ってるんだゾ!これからユキノは…か、風の…()()になる予定なんだゾ!!」

 

………はぁ!?

 

「ね、姉さんそれはどう言う事ですか!?」

「ユキノと行動を一緒にしている男の本当の名は『黒き風』。7年前、私と…その、なんだ…オホン。将来を誓った仲なんだゾ!!」

 

衝撃に続く衝撃。俺には、恋人が居たのか!?それも元の名前が『黒き風』って俺の両親、苗字の無い農民的なポジションだったのか!?

 

「そ、そんな!?…な、なら私はブラック様を『風お義兄様』と呼ばなくてはならないのですか!!」

「好きに呼べばいいんだゾ!!」

 

へ~、ふ~ん。再確認するけど、俺って恋人がいたんだな~!!でも、

 

「……クソッ!!恋人と再会したのに、記憶が全く戻らない!!どうしてだ!?」

「ブ、ブラッ…風お義兄様!大丈夫です!!私と姉さんが付いています!!ゆっくり、ゆっくりでいいですから。少しずつ思い出していきましょう。」

「そうなんだゾ。焦っても記憶が戻る事は無いんだゾ。焦らず、ゆっくり私達と一緒に暮らして思い出して行けばいいんだゾ!!(フフフ、計画通り、だゾ!カグラのヤツが突っ走って風に接触してくれたお陰で、記憶がまだ戻っていないのを確認できたんだゾ!これで、偽りの記憶を信じ込ませエンジェルちゃんのお婿さんに!!それに、ユキノにも再会出来た!!これは、もう!一石二鳥ならぬ一石三鳥なんだゾ!!)」

 

何かこの姉ちゃん悪い顔してるような気が…

 

「ま、まぁ、俺の昔の知り合いでもあるんだ。色々昔の事を聞くから宜しくたのm『あぁ、やっぱり君は素敵だね。風。』…こ、今度は誰だ!?」

 

な、何なんだこの寒気にも似た感覚は!?

 

『口調が変わっても、君の素敵なソイルの波動は変わらないね。早く全てを思い出して、もう一度君と戦いたいよ。』

「…雲、何の用なんだゾ?」

 

く、も?あの真っ白い青年は〝くも〟って名前…〝雲〟!?

 

『何の用?僕は風と長い間、時には対立、時には共闘してきた。そんな僕やあれ程慕っていたカグラを差し置いて記憶の無い風を独り占めするのは良い事なのかい?』

「そ、それは…」

『まぁ、いいよ。最後は僕の所に帰って来るはずだから。記憶の無い()()見逃してあげるよ。』

 

ヤッベー!絶対この〝白い雲〟はヤッベー奴だ!!断言できる!!俺の中の何かが強烈な警笛を鳴らしているんだな。これが!!

 

「じゃ、じゃあ俺達は大魔闘演武(だいまとうえんぶ)の最後の試合を観戦しているから、気になったら…あ、会いに来てくれ。それと、さっきの口ぶりからカグラってさっきの娘の知り合いだろ?怒鳴って悪かったって伝えてくれたら嬉しいんだが…」

『勿論伝えるよ。それじゃ、()()()()()()()()()()()。』

「ああ、()()()()()にも宜しく伝えておいてくれ。」

 

ん?ファーブラ?どっかで聞いた女神の名だな。

 

「…風…」

「ん?どうしたのソラノ姉さん?」

「な、何でも無いんだゾ!じゃ、皆で行くんだゾ!!」

 

白き雲、黒き風、ファーブラ。そして、ソラノ、カグラ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)…ミストガン。俺は…俺は!!

 



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第23話

一部変更しました。


 

 

 

『決着!!大魔闘演武(だいまとうえんぶ)優勝は……妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!』

 

…すげぇな、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士ってのは。

 

どんなにボロボロになろうとも立ち上がり、力の差を見せつけられても立ち向かい、どんな絶望的な場面だろうと諦めない。

 

俺は知ってる、そんな奴らを。俺は出会った、そんな奴らに。

 

「…あいつ等元気にやってんな。(小声)」

「ん?どうかされました?風お義兄様?」

「…いや、何でも無いんだな。これが。」

 

…あいつ等?あいつ等って誰だ?それに妖精の尻尾(フェアリーテイル)の連中を見てたら、少し懐かしい気持ちになる。

 

「…カグラ…ちゃん…」

 

クソッ!黒髪の綺麗な嬢ちゃんにさっき会ってから、偶に幼女が俺の頭をよぎっていく。一体なんなんだ!俺の娘か!?はたまた養子か!?再婚相手の連れ子か!?ってか、俺には恋人がいる!!だから、俺はまだ未婚って事でいいんだよな!!…よ、よ~し!未婚かどうかは、隣にこ、恋人のソ、ソラノがいるんだから聞いてしまえ!!

 

「ソ、ソラノ…き、聞きたい事が……あれ?」

「さっきからどうされました風お義兄様?ソラノ姉さんならついさっき、知り合いの方が来られて席を外されましたよ。」

「へ?そ、そうなのか!?」

 

大魔闘演武(だいまとうえんぶ)の観戦を堪能しすぎたな。

 

「じゃ、大会も終わったしソラノを探して帰るか。…一応あると思う我が家へ。」

「あ、あると思います。多分、恐らく!!」

 

…そう言う時は嘘でもあるって言ってくれよ義妹(予定)ユキノ嬢ちゃん。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

大魔闘演武(だいまとうえんぶ)は〝エクスプリス〟と云う魔道具を起動させる為、魔導士から少しずつ魔力を集める為に開かれた大会であった。エクスプリスは二通りの使い道がある。一つはその門を通った者を〝時間の移動〟させる事。そして、もう一つは一万のドラゴンをも倒し得るE(エクスプリス)・キャノンを発射できる。……と云うのが、〝未来から来たローグ〟の話しだ。

 

「オレはその扉を〝閉める〟邪魔者を抹殺する為に、此処へ来た。それは、お前だ!『ルーシィ・ハートフィリア!!!』」

 

そう言うや否や未来のローグはルーシィ目掛け闇魔法を放った。

 

「え?」

「ルーシィ!?」

 

<ドム!!>

 

が、闇の剣を横から割り込んで来たフードを被った人物が庇い…それを庇う様に現れた黒い何かに未来のローグが放った剣は刺さり、ルーシィには届かなかった。

 

「…悪いな。俺も〝闇魔法〟を少しは使えるんだ。」

「…え、何で貴方が生きて…」

 

そこに現れたのは、

 

「…貴様、何者だ?それに、何故ルーシィが二人存在する!?」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)内で闇魔法が唯一使える〝男〟。

 

「俺は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士!シモンだ!!…それに、ルーシィが二人存在している事に俺()も驚いている。」

「俺達だと…」

 

未来のローグが顔をしかめた時、そいつらは現れた。

 

「囲まれてるから助太刀しようと思ったけど、一応大丈夫だったミャ。」

「…風殿に嫌われた。…はぁ。あっ、皆無事?」

「って、まだ落ち込んでいたんだミャ!?」

 

ミリアーナと何故か意気消沈したカグラ。そして、

 

「フフン、これでエンジェルちゃんの完全勝利で決着だゾ!!それと、ルーシィ達が捕まってるって聞いて手助けしに来たけど、これはどう言う状況だゾ?」

 

カグラとは真逆に上機嫌なエンジェル(ソラノ・アグリア)が現れた。

 

「う、嘘!?何で死んだはずのシモンが此処に!?私、もう死んだ!?…それに、カグラってミリアーナと一緒に人魚の踵(マーメイドヒール)の主力じゃなかったの!?そ、それに何で捕まっているハズの六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルが此処にいるのよ!!」

 

流石ツッコミ担当(?)のルー…()()から来たルーシィが自分の理解の及ばない事へマシンガンの様に絶叫に似た質問を繰り出した。

 

「ん?ルーシィ、何言ってんだ?シモン達は俺達妖精の尻尾(フェアリーテイル)の家族だぞ。エンジェルは…恐らくギルドの誰かが助っ人を頼んだんじゃねぇのか?」

「そ、そう言う事じゃなくて「そんな事はどうでもいい!!ルーシィ!二人纏めて死ね!!」って、私達ピンチ!?」

 

突然の事で未来のルーシィが説明を求めている時、いち早く思考が復活した未来のローグが二人のルーシィ目掛け闇で作った剣を次々投擲した。

 

が、

 

『ソイル!我が力!!』

 

一人の男がルーシィ達の目の前へ現れ、渦の様な魔力を発生させる事によって、闇の剣は全て弾かれてしまった。

 

「こ、今度は誰が来たの!?」

 

 

 

 

~side 風~

 

 

 

 

…俺の名前は…『黒き風』。この名前で呼ばれると凄くしっくりくる。それと、ソラノの右腕にある魔道具。どっかで見た…いや、使った事がある。それに、ミストガンと云う男の名前。良く知ってる、のか?う~ん。分からん。

 

「風お義兄様、此処は何処なんでしょう?」

「…分からん。此処無駄にデカすぎるからな。下手に戻ろうとしてもっと迷いそう…人の声がしたら、そっちに行って道を尋ねようか。」

「私もそれが良いかと。」

 

どうも、絶賛迷子中の風とぎ、義妹です。いや~、簡単にソラノさんを見つけられると高を括ったのが運の尽き。ユキノ嬢ちゃんまで巻き込んでしまったぜ。

 

「ム?あっちから人の声が聞こえる!!」

「えぇ!?私には何も聞こえませんでした!!」

 

フフフ、風様ear(イヤー)は地獄耳ってな。…あれ?

 

「ま、行ってみるか!!」

「はい!!」

 

さてさて、声の聞こえる方へ来たんだけど、

 

『そ、それに何で捕まっているハズの六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルが此処にいるのよ!!』

 

お取込み中でしたね。それと、ソラノさん発見!これで家へ帰れる!!それにしても、六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェル?どっかで聞いたことが…

 

『二人纏めて死ね!!』

 

黒い、剣?闇、魔、法?…闇………こ、ん、と、ん…混沌(異界を創った化物)!?

 

「…混沌(異界を創った化物)は俺が全て消滅させる!!」

「か、風お義兄様!?」

 

…待っていろ、アウラ!今俺が、全て終わらせてやる!!

 

 

 

 

~side out~

 

 

 

 

「ソイル!我が力!!」

 

突然現れた男、ブラック=ウインド―黒き風がそう力強く叫ぶと

 

「…あっ!!(そ、そんな風の記憶が戻っちゃったんだゾ!?)」

 

ソラノの右腕にあった魔道具―魔銃は光の粒子となり、流れる様に風の右腕へたどり着き

 

「魔銃、解凍!!」

 

黄金に輝く一丁の銃へ変わった。

 

『お前にふさわしいソイルは決まった!!』

 

風は呆然としている未来のローグへと指を向け叫ぶ。そして、その人差し指の周りに魔力が集まり出し三つのソイルが精製された。

 

『全ての源、マザーブラック!!』

 

一つ目の弾丸を顔の前に持って来て、指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

『全てを焼き尽くす、ファイヤーレッド!!』

 

更に、二本目。

 

『そして、全てなる臨界点、バーニングゴールド!!』

 

最後は弾丸を勢いよく弾き飛ばし、シリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

『燃えよ、召喚獣!フェニックス!!』

 

一体の不死鳥が場内の廊下を破壊しながら現れた。

 

「こ、これって星霊!?」

「何なんだこの生物は!?」

 

初めて見る存在に驚愕する未来のルーシィとローグ。

 

「これって、まさか貴方風!?」

「探したぞ、こん畜生!!」

 

現代のルーシィとナツが探していた人物に会え喜んでいる。

 

「混沌は焼き尽くす!!」

 

風はその場に妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士達がいるにも関わらず、問答無用で攻撃に移った。

 

「えぇ!?ねぇ私!私達の仲間じゃないの!?」

「…一応私達の仲間、だったけど…私も何で攻撃してくるか分からないわ!!」

「こ、この炎食えねぇ!?」

「嘘ついたのは私が悪かったんだゾ!!怒らずに話を聞いて欲しいんだゾ!!」

「風殿が私を嫌って…」

「風!どうしたって言うんだ!?」

 

そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士達は混乱し、

 

「クソッ!此処は引く!!」

 

その隙を付いて未来のローグは影に入り逃げて行った。

 

「混沌は、混沌は何処へ行った!!」

「か、風お義兄様!?どうされたんですか!?」

 

風が突然人が変わったように走り出し、黄金の銃を片手に叫んでいる様を見たユキノはそれを止めようと駆け寄った。

 

「キャア!?」

 

が、ユキノはソラノ達の方向に弾き飛ばされたしまった。

 

「ユ、ユキノ大丈夫なんだゾ!?」

「ソラノ姉さん!私は大丈夫ですが、風お義兄様が突然『混沌』と言う言葉を呟いたらこんな事に…」

 

そして、絶望的な言葉が風によって放たれた。

 

「なら、この建物全てを燃やし、混沌の隠れ場所が無いようにしてやる!!」

 

風がフェニックスへ指示を出そうとした時、

 

『風、君はまだ完全に記憶を取り戻してないようだね。混沌はアイやユウ、リサ達と力を合わせて倒したじゃないか。』

 

白い思念体の青年が現れた。

 

『此処は僕が止めるよ。さ、君たちは安全な場所へ行ってくれ。』

 

そして、雲の実力を知っている妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士達はその場を任せエクスプリスへと駆けて行った。

 

「雲、私は此処へ残る!風殿を正気に戻す手伝い、私もやろう。第二魔法源(セカンドオリジン)にも目覚めた。此処で風殿に認めてもらいたい!!」

「エンジェルちゃんも当然残るんだゾ!!ちゃんと謝らないと…(小声)」

「ソラノ姉さんが残るなら私も。それに、家族になるはずの方を見捨てるなんて私には出来ない!!」

 

三人を残して。

 

『フフフ、それじゃ今回は皆本気で行くよ!ミストが(かなで)光の前奏曲(あやかしの歌に抱かれて)、眠るがいい!白銀の練習曲(エチュード)!!』

「風殿、カグラは強くなりました!今それをお見せします!!」

聖爆(セイバー)だゾ!!」

「『開け、天秤宮の扉』!ライブラ!!ラブラ、風お義兄様へ重力変化を!!」

 

残った一振りの剣と三人は風を止める為、正気を取り戻させる為戦う。

 




亜蘭作務村様誤字報告ありがとうございました。


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第24話

更新遅くなって申し訳ありません。ちょっと体調を崩していました。
tak00様誤字報告ありがとうございました。
一部変更しました。


 

 

 

エクスプリスのある場所とは逆の方向で、激しい戦いが繰り広げられていた。

 

「風殿、カグラは此処まで強くなりました!東国に伝わる秘剣、ご覧ください!!」

「…混沌を何処へやった!!」

 

風はライブラの重力魔法に意を介さずその言葉を繰り返していた。そして、風はフェニックスを操り、カグラに突撃させる。

 

「………。」

 

が、ピクリともカグラは動こうとしない。

 

「…此処です!!」

 

<斬!!>

 

カグラはフェニックスをギリギリまで引き付け、文字通り紙一重で躱し抜刀し刀を鞘へ戻した。

 

「これが〝居合〟です!!」

 

フェニックスの片足は無残に切り裂かれ粒子となり消えて行った。

 

「風は、エンジェルちゃんが嘘ついたから不安定に記憶を戻してしまったんだゾ…正気に戻す為、エンジェルちゃんの全力をぶつけるんだゾ!第二魔法源(セカンドオリジン)解放、だゾ!!」

 

カグラの作った反撃のチャンスを生かし、エンジェルは第二魔法源(セカンドオリジン)を解放させ魔力を引き上げた。

 

『我は無敵なり、』

 

エンジェルはその言葉を発しながら、また魔力を上げる。

 

『我が影技に敵う者無し、』

 

彼女が一歩ずつ歩いた場所は小さなひび割れが広がっていた。

 

『我が一撃は無敵なり!!』

 

限界まで引き上げた魔力で体を限界まで強化し放つ一撃!

 

聖爆(セイバー)…だゾ!!』

 

蹴りを放つ瞬間、真空刃が生じフェニックスの残った足を両断。本体にも聖爆(セイバー)の一撃がまともに入りフェニックスの炎が弱まった。

 

「流石ソラノ姉さん!ライブラ!!風お義兄様からあの鳥へ重力変化を変更!!」

『この時を待っていたよ。この一撃で僕達を思い出してくれ。ミストが(かなで)光の前奏曲(あやかしの歌に抱かれて)、眠るがいい!白銀の練習曲(エチュード)!!』

 

ユキノはライブラにフェニックスへ重力魔法を使用する様に指示し、それに合わせ雲が一刀獣をフェニックスへぶつけた。

 

「風殿!!」

「風ぇ!!」

「風お義兄様!!」

『思い出して欲しい。僕達の事を!』

 

が、

 

「…混沌は何処だ!!」

 

彼女らの声は風には届かず、炎が弱まり満身創痍だが確かな敵意を見せるフェニックスが彼女達と対峙した。

 

 

 

~side ???~

 

 

 

落ちていく。

 

…落ちていく。

 

……落ちて、られるかぁ!!

 

畜生!唯々落ちて行くってのはもう飽きた!!漸くカグラちゃんやミストガン、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆の事思い出したってのに…

 

『風殿!カグラは、カグラは!!』

『ごめんなさい!嘘ついてごめんなさいなんだゾ!!何度でも謝るから!!だから、だから元に戻って欲しいんだゾ!!』

『お義兄様!正気に戻って下さい!!』

『黒き風よ。混沌はもう存在しない。僕達で滅ぼしたじゃないか。』

 

ってか、カグラちゃんやっぱり美人になったな。俺の目は確かだったわけだ。うんうん。それに〝白い雲〟が幽霊?で復活してるじゃないか!ファーブラ様なんつーもんエンジェルの嬢ちゃんに渡してんだよ!!

それよりも、クソッ!早く攻撃を止めたいのに、スマン皆!!体が言う事を聞かないんだ!!

 

「…混沌、混沌は何処だ!!」

 

うわぁ!?何だぁ今の声!?

 

「…待っていろアウラ、今助けてやる!!」

 

ってまさか風か?

 

「…モーグリ、モーグリは何処だ!ギガフェニックスへ強化し、この建物ごと混沌を焼き尽くしてやる!!」

 

ご、ご乱心!殿がg…ゴホン。風が乱心しまくってる!?

 

「……アウラ、モーグリ、俺がソイルに…俺は…」

 

風、まだ記憶が断片的にしか戻ってないのか?

 

「…アイ、ユウ……リサ。」

 

〝俺〟って云う異物が入っているから記憶が戻らないのか…それなら!!

 

「…俺は、俺は…何だ。何なんだ!!」

「だぁー!!まどろっこしい!歯、食いしばってくれや!!」

「…貴様何もn<ドゴン!!>ウグッ!!」

 

ぶん殴って俺が覚えている風達の記録を伝え、〝俺〟って存在が消えれば万事解決!!

 

「俺はアンタの体に入り込んだ者だ。ざっと俺が知ってるアンタらの事とこれまでの事話すから黙って聞いてくれ。」

 

俺は風に何があったのか、これまでの何があったのかを話した。

 

「…混沌は滅んだのか。」

「ああ。ファーブラ様も感謝してたぜ。で、これからが重要だ。アンタと対峙している彼女達はこの世界の人だ。これ以上攻撃しないでくれ。それと、俺をアンタの魔銃で消し飛ばしてくれ。これでアンタの記憶や体の異変は治るはずだ。」

 

正直言って消えちまうのは嫌だが、これ以上風に迷惑は掛けられねぇしな。カグラちゃんやエンジェルの嬢ちゃん達なら〝俺〟がいなくても風や雲が居るんだ心配ないだろう。

 

「…お前はそれでいいのか?」

「良いも何も、アンタまだ記憶は全部戻ってないんだろう?とっとと俺を消して、記憶戻して、彼女達への攻撃止めてくれねぇか?」

「…分かった。攻撃は止めよう。」

「すまねぇな。ありがとう。」

 

これで、彼女達をこれ以上傷付けなくて済むな。

 

「…だが、お前を消す事はしない。」

「ん?何でだ?」

「…今の俺は魔銃の中に残っていた記憶に過ぎない。俺は魔銃を使用する時のみ動くことが出来る。」

 

は?え?そ、それって!?

 

「そ、それはどう言う事だ?」

「…魔銃が解凍されていない状態では俺は動けない。体を動かすにはお前が必要だ。それに、俺の知らない武術、技術、知識を持っているお前を消すなどデメリットしかない。」

「そ、そうなのか!?」

「…それに、あの小娘達は俺ではなく〝お前〟を望んでいる。」

「ははは、それは無いわ。こんなオッサンの何処がいいんだよ!!」

「…それより早くあの鍵使い達と合流した方が良い。大変な事になっている。リサ達に似た存在も同じ場所に居る。助けてやってくれ。」

「な、なんだって!?急いで行こう!!相棒!!」

「…ッ!?ああ、急ごう。(フフ、相棒か…良い響だなモーグリ。)」

 

 

 

~side out~

 

 

 

E(エクスプリス)・キャノンと云うのは未来から来たローグがこの時代に〝ドラゴン〟を呼び込む為の嘘だった。

 

「ルーシィ!!早く扉を閉めて!!」

 

ハッピーが扉を閉められる星霊魔導士のルーシィへそう叫ぶ。今や数十匹いや、数百匹のドラゴン達が既にこの時代へ来て街の一部を破壊していた。

 

「また、出て来たぞ!!」

「何で、何で扉が閉まらないのよ!!」「閉めるには鍵が必要なの!!でも、もう()の私は持ってなくて…」

「…わ、私の選択のミスで、世界がおわる…」

 

必死に扉を閉めようとするルーシィ。そのルーシィを守る為、此処に集まった魔導士達はドラゴンと対峙し一進一退の攻防をし、その傍でフィオーレ王国の姫ヒスイ・E・フィオーレは絶望していた。

 

「こんな所で諦めるなんて、らしくないんだゾ、ルーシィ()!要は扉を閉めればいいんだ。これでも喰らうんだゾ!聖爆(セイバー)!!」

 

突然現れたエンジェルが扉へ向け蹴りを放った。

 

「ソ、ソラノ姉さんそれじゃ扉が壊れてしまいます!!ルーシィ様、黄道十二門の鍵を出してください!!私の鍵と合わせて十二の鍵で扉を封じます!!」

 

次いでユキノがそう言いながら現れた。

 

「星霊で!?」

「ルーシィ様!!」

「分かった!!」

「…よかった(これで扉を閉める事が出来る。でも、ユキノ…)。」

 

12の鍵が空中で円状に停滞し黄金に光だした。

 

「「黄道十二門の星霊たちよ、悪しきものを封じる力を貸して!開け十二門の扉、ゾディアック!!」」

 

十二の星霊達が現れ漸く扉を閉める事が出来た。が、既に100を超えるドラゴン達が門を超えてこの世界に来てしまった。

 

「ククク、これだけいれば問題ない。よく聞け愚民共!今より人の時代は終わりを告げる、これより始まるのはドラゴンの時代!!」

 

未来から来たローグはそう宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

「ハイハイハイハイ、そんな事はどうでもいいです!せっかく王都で稼ぐ事が出来るからって簡易屋台持ってきたのに、〝オオトカゲ〟に踏みつぶされちゃったじゃない!!〝リザードマン〟達、徹底的にやっちゃってください!!」

 

眼鏡に猫の耳を連想させる特徴的な白いテンガロンハットの女性…ダフネが、そう怒りながら私兵の人工ドラゴン擬き達を召喚した。

 

「お嬢さん実にダンディだな。助太刀するぜ!!」

「ジュラ殿、遅れて申し訳ないデスヨ!!此処から私達捜索組も参戦するデスヨ!!」

 

そして、ブキャナン兄弟。

 

「少しの闇魔法なら俺に任せろ!!ってか俺よりカグラ達の方が早いなんて…」

 

シモンが駆けつけた。

 

「何人集まろうと烏合の衆。竜を支配する秘術、操竜魔法!!さぁ、世界を蹂躙『お前()にふさわしいソイルは決まった!!』またお前かぁ!!」

 

未来のローグが何かしようとした所へ、風の声が響いた。

 



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第25話

漸く始めに思いついていたこの話まで来れました。
皆様に楽しんでもらえたら幸いです。


 

 

 

未来のローグが竜の手に乗る少し前まで遡る。

 

「風、殿…」

「風!!」

「風お義兄様!!」

『漸く目が覚めたみたいだね、風。』

 

先程まで〝混沌〟の事しか言葉を発さなかった風が急に止まり、

 

「…フェニックス、よくやった。もう、消えていいぞ。」

(悪い、フェニックスさん。あの娘ら俺の知り合いなんだ。でも、守ってくれてありがとう。)

 

フェニックスに消える様に指示を出した。

 

「…済まなかった。」

(スマン皆!混乱していたとは言え、召喚獣に攻撃させちまった!!)

 

そして、風は謝罪の為4人へ向け頭を下げた。

 

「いえ、風殿が正気に戻られて良かったです。私はこれからエルザ義姉さん達の助太刀に向かいます。…さようなら風様。(小声)」

「…待て、カグラ。」

(ちょ、ちょっと待とうかカグラちゃん!!)

 

そして、謝罪を受けたカグラは目的―風を元に戻す事―を終えた為、その場を立ち去ろうとした。カグラは、以前の出来事で風に嫌われたと思っていたからだが、立ち去る前に風に呼び止められてしまった。

 

「…ッ!!な、何でしょう風どn「…大きく、強くなったな、カグラ。」か、風様ぁ!?」

 

風は、振り向いたカグラの腰を掴み、大人が子供へよくする〝高い高い〟をした後、頭を撫でねぎらった。そのカグラの目には、今にも零れそうな涙が溢れていた。

 

「…何故悲しそうにしているかは俺には分からん。だが、お前は以前の様な元気のある方が好ましい。」

(何でそんなに悲しそうなのかな、カグラちゃん?あの元気で無鉄砲だったカグラちゃんの方が、今の悲しそうな顔のカグラちゃ…いや、カグラ()()より100倍いいぜ!!)

 

「カ、カグラ!なんて羨まけしからん事を!!ずるいんだゾ!!」

「か、風お義兄様大胆です!!」

 

傍から見ていたソラノは悔しがり、ユキノは無意識に風に対してそう叫んでいた。

 

「か、風殿!?…は、放してください!我慢して嫌いな私を慰めなくてもいいですから!!」

「…俺が、カグラを、嫌う?」

(は?俺がカグラちゃんを嫌う?無い無い無い無い!!そんな事無いって!!)

 

風は、ジタバタ腕の中で暴れるカグラをお互いの顔が見える様に降ろし、両肩を掴み顔を逸らせないように話し掛けた。

 

「…何を言っている?俺はカグラを嫌った事などない。」

(何でそんな事言っているのかは分からないけど、俺がカグラちゃんを嫌うことは無いぜ!嫌われる事はあるかもしれないけどな!!ハハハ…)

「ふぇ…ほ、本当に!?」

「…本当だ。」

「良かった、良かったー!!」

 

歓喜極まったカグラは涙を流しながら風へ飛びついた。

 

「…カグラは元気が一番だな(小声)。…それはそうと、エンジェ…ソラノ。」

(フッハッハ、この風様body(ボディー)なら大きくなったカグラちゃんでも余裕で受け止められますよ!!元気になってよかった!泣いてるけど、笑顔が眩しいぜ!!…娘が成長したって感じで、何か、こう、くるものがあるな。っと、エンジェルの嬢ちゃ…じゃない。ソラノさ~ん。ちょっとイイデスカ!!)

「は、はひぃ!!」

 

カグラが右腕に抱き着いたまま、風はソラノへ鋭い目を向けた。こんな状況で皆忘れていたが、ソラノは風へ自身が未来の伴侶だと嘘を付いている。それに関して何か言われるであろうと思い、ソラノは緊張し変な声が出てしまった。

 

「…嘘は駄目だ。」

(俺は嬉しかったけど、流石にあの嘘は駄目だぜソラノ嬢ちゃん。)

「う、ぁ…」

 

身構えてはいたが、その言葉が風から放たれた瞬間、ソラノの顔は絶望に変わり膝から崩れて行った。

 

「わ、私が悪いんだゾ。私が悪いんだゾ。私が悪いんだゾ。私が悪いんだゾ。私が悪いんだゾ。私が悪いんだゾ。私が悪いんだゾ。私が悪いんだゾ…」

「ソ、ソラノ姉さん!?」

「…だが、俺が記憶を無くしている間、魔銃を守った。それで、許す。」

(でも、俺が記憶無くしている間に魔銃を守ってくれていたんだ。これでチャラってどう?ってか、何でソラノ嬢ちゃん、何で影技(シャドウスキル)使えるの!?そっちも驚きだぜ!!)

 

絶望の淵に立たされていたソラノへ掛けられた希望の言葉、何かのゲームで使用される復活の呪文、何処かの勇者王の勝利への鍵。それが、ソラノには風の口から〝許す〟の一言だった。

 

「…式、式は何処で挙げるんだゾ!?家族構成は、唯一無二の奥さんが私!義妹がユキノ!!…風がそこまで言うんなら、仕方ないから養子枠でカグラだゾ。実子が出来たら待遇はちょっと変わるけど、カグラはこの偉大な義母へ泣いて感謝するんだゾ!!」

「ね、姉さん…(でも良かった。元気になって。)」

「何が義母だ!それに、私がそうはさせんぞエンジェル!!」

 

何時もの調子を取り戻したカグラとソラノ。二人が言い争っているのを止めたのは、やはりあの男。

 

「…止めろ。そんな事をしている暇はない。これから皆を助けに行く。」

(な、何故、式や家族構成の話に!?って、止め止め!!こんな事をしてる暇はねぇっての!!風の話で何かヤバイ事になってるらしいから、皆を助けに行かなきゃな!!)

「分かったんだゾ!とっととこの騒動を終わらせて結婚式を挙げるんだゾ!!」

「だから、そんな事はこのカグラが許さん!!」

「え、えっと…頑張ります!!」

『賑やかで楽しい仲間だね風。』

 

そして、四人のヒロイン(?)ズを連れ城の外へ出た風が見たのは、

 

「…何だここれは。」

(なんじゃこりゃ!?ドラゴン達が空を飛んでるし、そのドラゴン達に街が破壊されてるし、そのドラゴン達をギルドの垣根を超えて魔導士達が抑えているし、そのドラゴン達が出て来たであろう門を必死に閉めようとルーシィの嬢ちゃんズが頑張ってるし、それを攻撃しようとするドラゴン達を妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士が食い止めてるし…って〝ドラゴン達〟つう言葉がゲシュタルト崩壊しそうだぜ!!考えろ、考えろ!この状況を打破する名案を…そ、そうだ!!)

 

扉から出て来たドラゴン達によって無残に破壊された街と、必死にその被害を抑えようとする魔導士達の攻防だった。

 

『これは、凄い事になったね。』

「ゆ、悠長に言っている場合ではないぞ雲殿!!早く助太刀せねば!!」

「…これは夢だゾ。うん、夢から覚めたら風と子作りしている寝室に戻るんだゾ。」

「ソラノ姉さん戻ってきてください!!」

 

雲はこれより酷い光景を何度も見た事がある為あまり脅威に思っていないが、カグラは直ちに仲間たちの下へ行こうとし、ソラノはこれは夢だと現実逃避。ユキノはそんな姉をこっちに戻そうと必死だ。

 

「…俺に考えがある。俺に皆の力を貸してくれ。」

(私に良い考えがある!ってこれじゃ、死亡フラグだ!!ちょっと皆の力を貸してくれ!!この蜥蜴共を一網打尽にする良い考えが浮かんだんだ!!)

「夫の意見を聞くのは当たり前なんだゾ。」

「何が夫だ!チチデカ女!!…このカグラに風殿の作戦聞かせて下さい!!一刻も早く皆を助けたいのです!!」

『久しぶりの風との共闘…あぁ、素敵だね。』

「わ、私も微力ながら協力させて下さい!!あの門だけなら何とかできます!!」

 

 

 

 

 

 

 

「「「え!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

風の考えた作戦が決行された。まずは、

 

「クソッ!防戦一方とは歯がゆい!!」

「エルザ義姉さん!!」

「ム、カグラか!済まないが手を貸してくれ!!私一人で二頭は少し荷が重い!!」

「…大規模作戦を決行します(小声)。悔しいですが、一旦ここから撤退しましょう!!」

「お、おいカグラ!?」

 

バラバラに散らばっていた魔導士を一か所に集める事。

 

「カグラさっき言ってt「義姉さん!ドラゴン達に聞かれてしまいます(小声)。お気持ちは分かりますが、体制を立て直す為撤退を!!」…分かった!!」

 

最前線で戦っていたエルザはカグラと共に同じく最前線で戦っていた魔導士達を引き連れ城まで駆け足で撤退していく。

 

『脆弱なる人間共め、我らに敵わないと漸く理解したか。』

 

どのドラゴンがそう言ったかは分からないが、魔導士達が撤退していく様子を見たドラゴン達の想いを代弁していた。

 

「何をしておる!!妾達が引いては被害が拡大してしまうではないか!!」

 

そして、それを見ていたミネルバは激昂したが、

 

「ご無事ですか!お嬢!!良かった。何かの作戦かもしれません。此処は彼らと撤退しましょう!!」

「え、お前は、なぜ、生きて、夢…」

 

死んだと思っていたフィンガースが駆けつけた為、思考が追い付かなくなり呆然と立ちすくんでしまった。

 

「お、お嬢!?…仕方ない。失礼します!!」

 

そして、急に動かなくなったミネルバをフィンガースは両手で持ち上げその場を離脱した。…所謂お姫様だっこで。

 

「ほ、本当にお前か?」

「はい。本当でしたらもう少し俺の心の準備をして再開したかったですが…知り合いが出場していた為、観戦と今いる店の足しになるかと稼ぎに王都まで来ました。そしたらコレです。」

「そ、そうか。…言いたい事、話したい事山ほどあるが、今はこの危機を共に乗り越えようぞ!!」

「はい!!」

 

魔導士達を一か所に集めた後、作戦の第二段階へと移行する。

 

「皆、状況が著しく変わり把握していない者が多いようだが、これより〝大規模殲滅作戦〟が決行される。皆には此処で防御魔法を最大出力で張ってほしい!!なに、心配するな。私達の仲間〝白い雲〟が殲滅攻撃とドラゴン共から皆を守る。だが、雲も全てを守れる訳ではない。各々(おのおの)全ての魔力を使い防御に当たってくれ!!」

 

そう指示を出したのは二代目妖精女王(ティターニア)と呼ばれているカグラ。

 

「初代、最悪此処まで被害が来るようなら妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士を魔法防壁の傍へ配置し妖精の球(フェアリースフィア)を発動して欲しい(小声)。」

『わ、分かりました。ですが、その様な規模の魔法、一度も見た事も聞いたことも無いですよ?』

「その魔法…いや、その召喚獣は風殿と雲殿の話によると、此処一帯を簡単に更地にしてしまう威力だそうです。幸い国王様が大魔闘演武(だいまとうえんぶ)を開催される際にこの王都を魔導士だけにしてくれていたので、一般人に被害が及ぶ事はありません。」

 

長くこの世界を観て来たメイビスでさえ知らない魔法。

 

『フム、私の知らない召喚魔法ですか。では、この作戦が終わったら貴女を通して風さんと雲さんとお話しさせて下さいね!!』

「分かりました。」

 

最終段階は、ユキノが扉を閉めたら即風の召喚獣で殲滅。その攻撃から雲が魔導士達を守ると云うのが風(に憑依しているオッサン)が考えた作戦である。

 

さて、ソラノ嬢ちゃんにマシンガンとソイルを装備しているベルトを返してもらったし、何故か俺が羽織れるサイズのマントも手に入れたし…いよいよやるかな。てか、何故俺が羽織れるマントを持っていたんだ?用意周到すぎでしょ!?

 

『風、いよいよだね。』

「…ああ。それと礼を言う。」

(白い雲様本当にありがとうございます!!だって、この作戦貴方が手伝ってくれないと、俺と貴方以外全員殲滅されちゃいますからね!!)

『風が、この僕にお礼を…』

 

風からの意外なお礼に雲が少し放心してしまった時、

 

「「黄道十二門の星霊たちよ、悪しきものを封じる力を貸して!開け十二門の扉、ゾディアック!!」」

 

ユキノから聞いていた扉を閉める呪文が唱えられた。

 

「…合図だ。行くぞ雲!!」

『こっちは任せてくれ!!』

 

そして、ドラゴン達はアクノロギアが可愛く思える様な恐怖を味わう。

 

『ミストが(かなで)光の協奏曲(あやかしの歌に抱かれて)、眠るがいい!』

 

雲が瓶を四つ空中に投げ、それを自身の剣で一刀した。

 

『白亜の四重奏(カルテット)!!』

 

一か所に集まっていた魔導士達を守る為、四体の一刀獣がとぐろを巻いている。そして、間髪入れずに風が動き出す。

 

『お前()にふさわしいソイルは決まった!!』

 

風はドラゴン達へ指を向け静かに叫ぶ。

 

『天空滅ぶ轟き、ホライゾンゴールド!』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を顔の前に持って来て、指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

『降り注ぐ怒り、エアロブラック!』

 

一本目と同じように二本目を装填。

 

『そして、永遠に(くさび)うつ光、フォートシルバー!』

 

最後はベルトを叩き、弾丸を勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

『滅ぼせ!召喚獣!メテオマスター!!』

 




2017.10.23少し修正しました。


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第26話

tak00様、まりも7007様誤字脱字の報告ありがとうございました。


 

 

 

その日、王都は炎に包まれた。

 

だがその炎は、世界を無慈悲に焼き尽くす絶望のモノではない。

 

未来へと続く為の〝希望〟の灯火だ。

 

 

 

~Side 未来のローグ~

 

 

 

王国の娘に嘘の情報を流し、無事ドラゴン達をこの世界へ向かい入れる事が出来た。フッフフ、それも100体を超える数だ。これでこの世界のアクノロギアを倒せば俺がこの世界を牛耳る事が出来る!

 

俺はそう思っていた。

 

が、

 

だが!!

 

「何なんだあの〝召喚獣〟と云う存在は!?それに(はく)(えい)竜の(あしぎぬ)!!ヌォォォォォ!!」

『後は任せろ!咆哮(ブレス)!!』

 

奴が何らかの方法で呼び出した小さな生物が空へ消えたと思ったら、無数の火球がこの王都全体に降り注ぎ始めた。それも、その一個が俺の全力の滅竜魔法とドラゴンの咆哮(ブレス)でやっと破壊できる魔法だと!?

 

「…ハァ、ハァ。クソッ!予想外にもほどがある!!俺のいた時代にはあのような魔導士は何処にもいなかったぞ!!だが、恐らく強力なのは奴の右手の銃で召喚した生物のみ。召喚に頼っている奴自体の戦闘力は無い筈!此処は一旦ドラゴン達を壁にし、銃を奪って…ど、どう云う事だ!?」

 

な、何なんだ奴は!?あんな存在がこの世に存在するのか!!

 

 

 

~Side Out~

 

 

 

『全員、死ぬ気で魔力を絞り出せ!此処で私達がやられてしまったら、全て水の泡だ!!』

 

周りにある建物を遥かに超える大きさの火の玉―〝メテオ〟が降り注ぐ中、エルザが魔導士達に激を飛ばしている。

 

『…これが、ブラック『風だゾ!絶対に間違えるんじゃないんだゾ!!』…失礼、風本来の力か。2年間も一緒に過ごして只者ではないと思っていたが、此処まで桁外れの力だとは思わなかった。』

『何?お主、あのブラッk『風殿だ!間違えるな!!』…す、済まぬ。(何故、妾が謝らなければならんのだ!?)フィンガースお主、あの風と共に過ごしておったのか!?』

『…はい、そうです。俺はジエンマの強襲を運良くエドラス世界の〝アニマ〟と云うモノの〝他の世界の魔力を吸収する〟作用に助けられ、エドラスと云う世界で生きていました。そして、7年前何故か再びこの世界に『ハイハイハイハイ、そんな事どうでもいいです!早く魔力の出力を上げて下さい!!』…あ、あぁ。』

 

剣咬の虎(セイバートゥース)のフィンガースとそのギルドマスターの娘ミネルバの会話を強制的に中断させたのは、現フィンガースの雇い主の猫耳付きテンガロンハットが良く似合うダフネだった。

事実、彼女が言ったようにフィンガース達が話していた場所の防御壁は他より薄くなっていた。

 

『お嬢!今は、この危機を乗り越える時!!』

『分かっておるわ!事が済んだら存分に語り明かそうぞ!!』

 

もう死んでしまって会えないと諦めていた存在が、生きて自分と肩を並べ戦っている。ミネルバにとって、これ程心強い存在は他には居ないだろう。そのお陰かは分からないが、自身でも想像が付かない程の魔力を出しているにも関わらず、全くと言っていいほど疲労は感じずドラゴン達も驚異とは思えなくなっていた。

 

 

が、

 

 

『脆弱な人間共め!』

 

 

ピンチとチャンスはどちらの勢力にも存在する。一瞬防御壁が緩んだ隙を狙って一体のドラゴンが空から突っ込んで来た。

 

『我が咆哮(ブレス)で焼き殺してy「舞乱(ブーメラン)!!」…。』

 

だが、そのドラゴンの首は何者かの蹴りと、その爪刀で無残にも切断されてしまった。そして、首と離れた胴体は重力に従い大きな音と共に、地上へ落ちて行った。

 

そう、その相手のチャンスを(ことごと)く潰して来たのがこの男、

 

『風どn『風ぇー!!』邪魔をするなエンジェル!!』

「…皆、無事か?」

 

黒き風である。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

さて、トンベリ…じゃないよ!メテオマスター先生ですよ!メテオマスター先生!!…が、飛び立って行かれました!!

いや~、俺もこんな大規模殲滅召喚獣はあまり出したくないんだよね。俺以外の生物は全部死んじゃって、大地は無残にも更地に変えてしまうからな。そして、これで俺の仕事は終わりって、

 

「…何時から勘違いしていた?」

『風?…あぁ、行くんだね。』

 

俺のターンは、まだ終わってねぇんだよ!!雲も俺がやろうとしてる事に気付いたみたいだし…いっちょ、ヤッタるか!!

 

「…ああ。行ってくる。」

『フフフ、何だか夫婦のやりとりみたいだね。』

「…行ってくる。」

 

や、ヤバイヤバイヤバイヤバイ!何がヤバイって?あの雲が俺に向かって頬を染めて微笑んで来てんだぜ!?ヤバイに決まってんだろ!!一瞬ツナギを着た某人物が頭を過ぎったぜ!!この恐怖を蜥蜴(トカゲ)共へ叩きつけてやるぜぇ!!それも何と、手加減しなくていいしな!!(此れを人は八つ当たりと言う。)ってか、してたらこっち(カグラちゃん達)()られてしまうからね!!

 

「…居た。叩き落す。」

 

お、目標発けーん!!それもカグラちゃん達を狙ってる!?でも、この俺がやらせねぇぜ!!

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。彼の者達しかドラゴンとは渡り合えず、そして唯一倒せるのも彼の者達だけである。

 

そう、語り続けられてきた。だが、

 

砕竜(スクリュウ)!!」

『その様な技でオレの甲殻がやられる<ドゴッ!!>…グアッ!?』

 

岩でできた体のドラゴンの皮膚を、地面スレスレを回転しそこから跳ね上がった風の蹴りが容赦なく粉々にする。

 

『あ奴、只者ではない!!熟練の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)か!?えぇい!皆の者、距離を取れ!長距離からの咆哮(ブレス)で<ドン!!>ぬ!?…クソォ!空から落ちて来る邪魔な火球め!!』

「…神移(カムイ)!余所見とは余裕だな。聖爆(セイバー)!!」

 

距離を取って咆哮(ブレス)で風を倒そうとするも、空から降って来る〝メテオ〟を避け風から目を離した隙に、風は神移(カムイ)で肉薄し手加減無しの蹴りを放った。

 

『…無念。』

 

その蹴りでドラゴンは上半身と下半身に別れ絶命した。

 

「…次。」

 

ドラゴン達は空から降って来る〝メテオ〟と、縦横無尽に動き回りドラゴンを(ほふ)る風、雲の一刀獣を相手にしなければならない。

 

『上に咆哮(ブレス)を放て!!』

『『『オオ!!』』』

 

何体かのドラゴンが落ちて来る〝メテオ〟へ咆哮(ブレス)を放つも、

 

『ま、まだ降って来るのか!?』

 

一個だけなら数体のドラゴンの咆哮(ブレス)でなら問題ないが、幾つも降って来る為処理しきれない。

 

『我は無敵なり、』

 

そして、動いていない敵を見逃すなど風はしない。

 

『我が影技に敵う者無し、』

 

傲慢で偽善だが、風は知り合いに危害を加えようとする輩は許さない。

 

『我が一撃は無敵なり!!』

 

神移(カムイ)でそのドラゴン達に肉薄し、超振動の蹴りを放った。

 

神音(カノン)!!』

 

ドラゴン数体が吹き飛び、1体のドラゴンが息絶えた。そして、未来から来たローグは此れを目の当たりにし、呆然とするしか術はない。

 

「…両手を使う。(さて、もう一か所蜥蜴(トカゲ)共がたむろしてる所がある。風、両手を使いたいから、アレ頼めるか?)」

(…任せろ。但し、60秒しか両手は使えない。)

「…十分だ。(それなら十分だ。全然問題ないぜ!!)

 

風の右手にあった魔銃の手首部分が金色の粒子に変わり、腰のベルトに魔銃専用のホルスターが精製され、それに風は魔銃を仕舞う。

 

『我は無敵なり、』

 

そして、ドラゴン達が集まっている箇所に神移(カムイ)で肉薄。

 

『我が〝拳〟に敵う者無し、』

 

今度は両手へ渾身の力を籠め、

 

『我が一撃は無敵なり!!』

 

ドラゴン達へ叩きつけた。

 

霊悪(レイア)!!』

 

両手の指先から10本の強力な真空刃が生まれ、数体のドラゴンは肉塊に。他のドラゴンも重傷を負い満身創痍だ。そこへ、

 

『クソッ、この滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)強すぎ<ドン!>…』

 

無慈悲に〝メテオ〟がドラゴン達へ降り注いだ。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

「…な、なんだこの光景は!?」

 

何体ものドラゴンを使い、自身を〝メテオ〟から守らせながら、未来から来たローグが目の当たりにしたのは…一人の男が繰り出す蹂躙劇。

 

「貴様は、貴様は一体何者なんだ!!」

 

その両目に映るのは、ドラゴン達にあったアクノロギアへの恐怖を瞬く間に塗り替えた(バケモノ)

 

「…俺か?俺の名は〝黒き風〟。」

「黒き、風…」

 

未来から来たローグは、その名を繰り返す。

 

「…訳あって妖精の尻尾(フェアリーテイル)に居候している身だ。」

「…は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「…済まない訂正する。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に居候してい()身だ。」

「な、なんだそれは!!!!」

 

この日、ドラゴン達は一人の男によって殲滅させられてしまう。

 




や、やっちゃったゼ。


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第27話

再投稿しました。


 

 

 

昔、あるところに一人の青年がいました。

 

青年には目的がありました。その目的は、自身の世界を破壊したバケモノを倒す事です。

 

青年は仲間を失いながら様々な世界を旅し、自身の世界を破壊したバケモノを追って行きました。

 

幾つもの戦いを経て青年は新たに仲間なった者の助けを受けながら、やっとの思いでそのバケモノを倒しました。

 

それから、青年は幾つもの世界を渡りこの世界に辿り着き、悪に堕ちかけた一人の姫を助けました。

 

助けられた姫と青年は恋に落ち、元気な子供(既成事実)を授かり、更にドラゴンと呼ばれる怪物達から世界を守りました。

 

その後、その姫と間に生まれた子供……あと、養女と共に平和に暮らしm『待てぇい!!』…チッ、

 

養女(カグラ)、突然叫ぶなんてどうしたんだゾ?」

「誰が養女か!!」

「お前だゾ。」

「―ッ!!って、私はお前の養女になったつもりは無い!!それに、叫んだのはお前が妙なナレーションを入れるからだ!!それに、なんだ!子供(既成事実)だと!?ふ、ふざけた事を抜かすな!!(風様に限ってこのアマに恋するなんて断じてない!既成事実もアイツの狂言に違いない!!)」

「ハァ、そんな事でピリピリするんじゃないんだゾ。養女(カグラ)には、カルシウムが全然足りてないんだゾ。…良い事を思いついたんだゾ!養女(カグラ)を反面教師にし、私の子供達には紳士・淑女の立ち振る舞いを教えるんだゾ~。」

「クs(いや、待てカグラ!このまま奴と口論していては今まで通りではないか!風様…か、風殿が戻って来たのに今まで通りでは今度こそ愛想を尽かれてしまう!!)…フ、フン!わ、私みたいな()()にそんな(あお)り、通用せんぞ!!」

「(ハッ、さっきまでキレていた奴が何を言ってるんだゾ?プププ、それに、淑女ぉ?()を意識して言っているんだろうけど、身の程を弁えるんだゾ!!)…へぇ。なら()()のお前ならどうやって()の素晴らしい活躍を世界に広めるんだゾ?」

「フ、フン!私の語りの凄さに驚くがいい!!」

 

え、え~。あー。…うん。

 

これは一人の青年の英雄譚である。

 

その青年はある日、魔獣に襲われていた見ず知らずの少女を何も言わず助けた。

 

その青年の背中は少女にとって、どんな壁よりも頼もしく思えた。

 

その青年は、数えるのも億劫になるような戦いを経験し、幾度の苦難や強敵も物ともせず此処まで旅をしてきたのだ。頼もしいと思えるのも無理はない。

 

二人が出会うのは運命…いや、この世界の必然だったのだろう。

 

その青年は少女を家族の元へ届けまた一人戦場へ駆けていk『何か、堅苦しいんだゾ。』…えぇい!私の邪魔をするなぁ!!

 

「邪魔じゃないんだゾ。全うな意見を述べただけなんだゾ。」

「それが邪魔だと言うんだ!それに私は少し我慢したと云うのに、お前ときたら!!」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

…オホン。き、気を取り直して…何時ものナレーションを行っていきます。

 

未だ目の前で風がドラゴン達を蹂躙している中、ソラノとカグラは防御壁内で魔力を送りつつもそんな他愛のない(?)会話をしていた。

 

「お前達、言い争うのはいいが、今の状況をキチンと分かっているのか!!」

「エルザ?突然どうしたんだゾ?」

「エルザ義姉さんどうしたんです?」

 

言い争っていた二人に激を飛ばしたのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)のエルザ。そして、彼女から驚愕な事が告げられた。

 

「風は、これだけ数多(あまた)のドラゴンを倒しているのだ!いずれアクノロギアの様にドラゴンになってしまうぞ!!」

 

アクノロギアは元々人が竜を殺して竜となった者。そう、遥か過去この〝竜王祭〟で誕生してしまった忌むべき存在なのだ。

 

「か、風様が…」

「あの黒龍に…」

 

カグラとソラノはその言葉を聞き呆然としてしまった。

 

『そろそろメテオマスターの攻撃が終わる頃だね。申し訳ないけど、この防御壁の中で少し休ませてもらうよ。やれやれ、この思念体で作った身体が維持できなくなってね。』

 

そこへ浮遊して現れたのは、一振りの白く美しい両刃の剣。

 

「ああ、構わないぞ。この攻撃が終わり次第、私達で残りのドラg<ダダッ!!>お前達、何処へ行く!?」

 

エルザが雲と話している時、防御壁から二つの影が飛び出して行った。

 

 

 

 

■□■□■□

 

 

 

 

たった一つの命を捨てて、生まれ変わった不死身の身体(風様body)(ドラゴン)の悪魔を叩いて砕く。キャシャーン()がやらねば誰がやる!!…ってか!

 

「…舞乱(ブーメラン)!」

 

ドラゴンの首へ俺の蹴りが吸い込まれるように入り、爪刀で首を切断した。うん。ちょっちグロイな。でも、これ以上カグラちゃん達に近づけさせねぇぜ!!さぁ、此処から先に行きたければ、俺を倒して行きやがれ!!…ってフラグ!?き、気を取り直して。

 

「…聖爆(セイバー)!」

 

その蹴りを放つ瞬間俺は、数体のドラゴンを巻き込むように真空刃を出して蹴りを放った!このドラゴン達を無双してる感覚って、某吸血鬼じゃないけど…フ、フハハハハ!最高にハイってヤツだ!!

 

「…刀砲(トマホーク)!」

 

ブゥゥゥゥゥゥメラン…って叫びたい。揃えた両足から爪刀を生じさせ蜥蜴に蹴りを叩き込んでやった。今日の俺は、阿修羅すら凌駕する存在だぁ!!

 

「…蛇乱(チャクラム)!」

 

円を描くように足を動かしドラゴンを降り注ぐメテオへ蹴り上げてやった。手加減も遠慮も何にもしないでいい全力全開の業の数々!!それもそのはず、この星?に来てからの俺の記憶と、風の体に入る前の記憶が全て戻ったし、魔銃の〝風〟もほぼ以前の記憶を取り戻したからだ。

 

「…そろそろ、メテオマスターの攻撃が止む。」

 

メテオマスター先生の攻撃がそろそろ終わるな。皆よくこの隕石の雨を耐え抜いてくれた。この隕石の雨が終わったら、残りの弱ったドラゴン共を魔導士達と力を合わせ倒していくぜ!これが、俺が考えたこの作戦の最終段階だ!…ってか、カグラちゃんやソラノ嬢ちゃん達を殺そうとする奴ら(ドラゴン共)に慈悲など無い!!<竜・殺!!>

 

「…カトンボ共はこれで飛べなくなった筈だ。後は魔導士共に任せ此処を去るk『行くぞソラノ!今が駆け抜ける時!!』『私に指図するんじゃないんだゾ!でも、その言葉には〝承知〟と返すんだゾ!!』…何をしているんだ彼女達は!?」

 

ちょ、タンマ!待って!!ど、どう云う事だ!?何で防御壁の中にいる筈のカグラちゃんとソラノ嬢ちゃんが出て来てるんだよ!!それも、そのセリフは某ボスと某謎の美食屋コンビのセリフだぜ!?

(…それより、助けに行かなくて良いのか?彼女達がメテオに巻き込まれてしまうぞ。)

 

「…分かっている。今、助けに行くぞ。」

 

言われなくても、分かっているけど…あぁ!もう!!二人には後でお説教決定だ!!

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

一陣の嵐が吹き荒れている。

 

「どけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

その者はドラゴン達を切り崩し、文字通り道を切り開いて行く。

 

蜥蜴(とかげ)共が!私達の邪魔をするんじゃ、ないんだゾ!!」

 

その者はドラゴン達を蹴り崩し、最短で目的地へと道を造る。

 

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

 

その者達の目的地は同じ。

 

『な、何だこの女共は!?』

『こいつら、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)じゃねぇぞ!!』

『なのに何故この者達に我らが後退しなければ「見様見真似!空牙(クーガ)!!」グフゥ!?』

『ジ、ジルコニス!?女ぁ殺してy「我が一刀に断てぬもの無し!!」…。』

 

二人は立ち向かう敵を蹴散らし、切り開いて行く、何人(なんびと)たりとも抗えない災害となった。

 

「「人の恋路を邪魔する(ドラゴン共)は、馬に蹴られて飛んで行け(だゾ)!!」」

 

そう、恋はいつでもハリケーンなのだから。

 

 

 

 

■□■□■□

 

 

 

 

うおぉぉぉぉぉぉ!

 

「…神移(カムイ)神移(カムイ)!!」

 

神移(カムイ)の連発じゃい!!

 

『これ以上お前の好きってには「…退け!砕竜(スクリュウ)!!」グハァ!?』

 

邪魔するな!そこを退けぇぇぇぇ!!

 

「…神移(カムイ)!」

 

何で、あの娘らこっちに出て来てるんだよ!?遠目で見た時はドラゴン共には遅れを取ってなかったけど、〝メテオ〟に当たったりしたらひとたまりもないぞ!!

 

『『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』』

 

……ヤベッ、俺このまま行ったら()られる!!…かも。えぇい!ままよ!!

 

「…お前達、何をしている!」

 

こら!君達、こんな所で何やってんだ!!

 

「か、風…もう戦わないで欲しいんだゾ!!」

「風様!どうか、どうか後は私達に任せて頂きたい!!」

 

ってよく見たら二人とも涙と鼻水でグシャグシャじゃないか。

 

「…二人ともどうした?」

 

二人ともどうしたんだ?ってヤバイ!

 

「…二人とも下がっていろ。メテオが来る。」

 

メテオが降って来る!

 

「…裂破(レイピア)!!」

 

ふぅ、さてと。さっきのでメテオは打ち止め。二人が何故泣きじゃくってるか気になるけど、瀕死な周りのドラゴン共を蹴散らしてから事情を聞こう。バリヤー?を張っている近くのドラゴン共は大半死屍累々。だが、まだ油断は禁物。まだまだ気は抜けんなぜ!!

 




新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
後、今日誕生日でした。


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第28話

投稿が遅くなって申し訳ありません。
引き続き、4月ぐらいまで不定期更新になります。


 

 

 

そこは殺戮(さつりく)のかぎりがされ尽された場所だった。

 

「こ、こんなことが…」

 

見渡す限り屍の山。その場所をボロボロになった白と黒が混在している奇怪な髪をしている青年が呆然と眺め、呟いた。

 

「こいつ等は只の生物じゃないんだ!ドラゴン!ドラゴンなんだ!!…そのドラゴンが百体以上いて、何故たった一人の人間に負けてしまうんだ!?」

 

その屍は全て全生物の頂点とうたわれていた〝ドラゴン〟()

 

「…俺はアンリミテッド(果てのない命を持つ、神をも超える存在)。この程度なら造作もない。」

(ま、混沌(異界を創った化物)って規格外の存在か、完全体で我を忘れているオメガが相手なら怪しいけどな!)

 

奇怪な髪をしている青年…未来から来たローグの叫びを黒き風は何でも無いようそう答えた。

 

「ア、アンリミテッド…」

 

それは魔導士達には聞きなれない存在。

 

「か、風殿!体は、体は何ともないですか!!」

「こ、黒龍になってもエンジェルちゃんは添い遂げるんだゾ!!」

 

そんなやりとりをしている時、涙と鼻水でグシャグシャになった、カグラとソラノがまくしたてる様に風へ叫んだ。

 

「…ん?何の事だ?」

(そうそう、さっきから体がどうの竜がどうのって言ってたっけ?)

 

二人は簡単に風へ黒龍の生まれた過程を説明した。

 

「…大丈夫だ、問題ない。(ってそれはフラグってんだ!俺と変わってくれ!!)…お前達の言う滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ならその特性でトカゲ共の力を取り込み過ぎ、その力に溺れ破壊衝動だけの獣になりかねん。だが、お前たちの言う魔法を使えない俺は召喚獣と体術で対処した。だから、問題ない。」

 

そう、〝エクスプリス〟と云う魔力を吸収する魔道具が反応しないように、黒き風はこの()()の魔法は全く使えない。

 

「な、何だと!?貴様、あの召喚獣は魔法ではないのか!?」

「…厳密には魔法では無い。この()()()()を命の結晶であるソイルへ変換し、螺旋運動で物質エネルギー化したものだ。」

 

それを聞いた未来から来たローグは驚愕した。

 

「風殿、後はこの首謀者の男のみ。後は私と、」

「エンジェルちゃんに任せて、休んでいるといいんだゾ!!」

「クッ!!」

 

カグラが刀の鍔に手を掛け、エンジェルが自身の身体を魔力で包んで未来から来たローグを倒そうと臨戦態勢をとった。

 

「…では、俺はトカゲ共の骸を何とかしよう。このままでは都市の復興の邪魔になる。」

「「「は!?」」」

 

 

 

■□■□

 

 

 

センターマn…オホン、ローグって奴なら二人に任せても大丈夫だろう。何で二人が泣いていたか分かったし、良かった良かったってな。で、都市の復興だけじゃなく、景観にも悪いからこの蜥蜴の骸共をちゃちゃっと片付けますかね!!じゃ、相棒!行くぜぇ!!

(…任せろ。)

 

『お前()にふさわしいソイルは決まった!!』

 

風はドラゴンの屍の山へ指を向け静かに叫ぶ。

 

『大空を超える無限、スカイブルー!』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を顔の前に持って来て、指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

『邪気の闇満たす光、ホーリーブラック!』

 

一本目と同じように二本目を装填。

 

『そして、審判の果ての希望、ジャッチメントホワイト!』

 

最後はベルトを叩き、弾丸を勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

『照らせ!召喚獣!アレクサンダー!!』

 

魔銃から撃ち出された弾丸は螺旋を描き、最後に3つの弾丸が衝突しエネルギーが生まれた。そのエネルギーが一瞬にして物質化し召喚獣が現れた。

 

いや~、男の子なら誰もが憧れる、

 

「カッコイイ!!」

「お手伝いさんにしては大きすぎるんだゾ。」

「き、機械仕掛けのゴーレム…だと!?」

 

えぇぇい!ちっがーう!!ローグ君!!此処は〝ロボット〟って言ってくれ!!

 

「…全てのドラゴンの骸を消せ。」

『オオォォォォォォ!!』

 

○ッジーン、ゴー!!そしてそして!!バイ○ダー、オン!!

 

「うぉぉぉ!動いたー!!」

「もう少し静かに移動して欲しいんだゾ。」

「め、目から閃光!?…む、骸が消えた!?」

 

ローグ君、それもちっがーう!!ビームだよビーム!!光○力ビィーム!!

(…相棒、少し落ち着け。後、五月蠅い。)

す、済まん。スーパーロボットが目の前に有ったから興奮しちまってな。それともソウ○ゲイン、フルドライヴ!!の方が良かったか?

(…もういい。)

 

召喚された巨大ロボ似のアレクサンダーは、瞳孔の無い目から閃光(ビーム)を放ち敵を次々と包み消滅させて行った。

 

 

 

■□■□

 

 

 

「こ、こんな事…あ、あり得ない!こんな過去俺は知らない!!こんな過去あってはならないんだぁ!!(はく)(えい)竜の(あしぎぬ)!!」

 

目の前の現実を受け入れられない未来から来たローグは錯乱し、無差別に攻撃しだした。

 

「貴様の理想など知った事か!此処は私達の()()。」

「そう、明日から始まるエンジェルちゃんの新婚生活の邪魔なんだゾ!!」

「って違う!!そうではない!普通『此処から先の未来は私達で切り開く!』など皆が明るく暮らせる未来を思い描けるよう続けるのが普通だろうが!!」

 

未来から来たローグから数々の迫り来る滅竜魔法攻撃をカグラは刀の鞘でいなし、ソラノは強化した身体能力と動体視力を駆使しなんでもない用に回避していく。

 

「クソッ!何故、何故お前達みたいな只の魔導士に、この俺の攻撃が当たらないんだ!?」

「フッ、貴様の攻撃など、既に見切っ「()と一緒に行動してたから、もっと早い攻撃に慣れてお前の攻撃がトロく感じるんだゾ。」…一々私が喋っている時に横からしゃしゃり出るな!!」

 

規格外の存在〝黒き風〟を間近で見ていた二人にはローグ程度の速さでは驚かない。しかし、相対するローグは風の規格外さに畏怖を抱き、メテオのダメージも相まって攻撃の精度は随分落ちていた。

 

「クソォ!たかが女二人に負けて堪るか!!(はく)(えい)竜の『遅い!<斬!!>』『五月蠅い!吹き飛べ!聖爆(セイバー)!…だゾ!!』…グォ…」

 

ローグが渾身の一撃を放とうとした時、カグラとソラノは溜める隙を見逃さず切り裂き、倒壊した建物へ蹴り飛ばした。

 

「さて、皆の所に戻るか。」

()との新婚生活の始まりだゾ!!」

「私がさせん!!」

 

ローグを倒した二人は皆のいる所へ帰還したが、エルザを含めたS級魔導士達にこっぴどく怒られたのは…仕方のない事だ。

 

この日数体を残し全滅したドラゴン達。その数体のドラゴンも瀕死の状態だった。そして、未来から来たローグが倒された影響か、そのドラゴン達は元の時代に戻った。

 

この日、たった一人の男が数百体のドラゴンを相手に勝利した。此処から彼が英雄としてこの世界の伝説になる旅が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

よっしゃ!前世の記憶も取り戻したし。魔銃が連発出来る様に戻った。これで野宿や野営ももっとやりやすくなる!!

 

かもしれない。

 




この世界は多世界解釈、ドラゴンボールの未来トランクスの様なパラレルワールドと云う設定ですので、タイムパラドックスは起きないです。


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第29話

遅くなって申し訳ありませんでした。一部変更しました。


 

 

 

とある国の誰も近づかない森の中に、一軒の建物がポツンと建っていた。

その森へ入るにはそれ相応の覚悟を持って入らねばならない。魔獣と称される強力な獣が闊歩し、近づく者達は餌食になってしまう。そして、その一番深い場所に一見何の変哲も無い一軒家があるのだ。その家の所有者に関して詳細は謎。賢者や魔女、往年の英雄らが余生を楽しむために建てたとも噂されている。が、命からがら辿り着き生還した者の話では人の気配は無く、不気味な佇まいだったらしい。

だが、今日は珍しくその一軒家に人の気配があった。

 

 

 

 

 

『貴様にふさわしい、()()()は決まった!!』

 

俺の目の前で、()()が何も入っていない容器へ向けそう叫ぶ。

 

『堅牢なる守りの大地、ガイヤブラウン(パウダークミン)!!』

 

彼女は持っていた一つ目の調味料を容器へ入れた。

 

『生み出す事を許さない、ヴァージンホワイト(ガーリックパウダー)!!』

 

二つ目の調味料も同じように。

 

『そして、虚空をも噛み砕く、クラッシャーホワイト(岩塩)!!』

 

最後の調味料を入れ容器を叩き、勢いよく容器を飛ばし回転させながら三つ調味料を攪拌させていく。

 

それを見ていた俺の心は、期待と不安に支配され、彼女の準備が終わる事を今か今かと待っていた。

 

『調味料を掛けて…これが、私の(愛情てんこ盛り)、特性ステーキです!!』

 

焼けた鉄製の容器の上でジュウジュウと音を立てながら香ばしい臭いの漂う肉へ、三つの調味料が程よく混ざった調味料がかけられた。

 

「…こ、これは。」

「さぁ!遠慮せず、食べて下さい!この調味料はフレーバーソルトと呼ばれる物です!この調味料なら、まろやかな岩塩と粉状にしたクミンと香ばしいガーリックがお肉の旨味をさ・ら・に!引き上げてくれます!!」

 

ま、マジか!!この香ばしく食をそそる臭い!た、堪らない!!で、では!!

 

「…頂きます。」

(…相棒、忘れてはいないと思うが、両手を使えるのは60秒のみだぞ。)

「(分かってるって。そんじゃ、ま、頂くとしようか!!)」

 

俺はナイフとフォークを使い、肉を一口サイズに切り分け口に運んだ。

 

 

う!

 

うーまーいーぞー!!

 

その時、風の目と口から黄金に輝く光が溢れ出した―様にその場に居た者達は錯覚した―

 

まず一口食べた時メインの肉もそうだが、ガーリックパウダーの焦げたパリパリとした食感が堪らない。そして、その後来るクミン香りが旨味と食をそそる!素晴らしい調和!旨い!旨すぎる!!

 

「…旨い。」

 

あっという間に食べ終えた俺は、直ぐに彼女…()()()へそう伝えた。

 

「よっしゃあ!!」

「…では、次だな。」

「…フ、フフン、この()()の料理はカグラの上を行くんだゾ!!さぁ!()よ食べるんだゾ!!(カグラに先手は取られたけど、()()(ここ重要だゾ!!)の本当の力、堪能させてやるんだゾ!!)」

 

次はソラノの料理か。

 

「…では、頂こうk「って、私を無視して食事をするな!!」ムゥ。」

 

どわぁ!?耳元で叫ばないでくれよ()()()()ちゃん!?まぁ、流れに任せていた俺が言える事じゃないがな。

 

「「五月蠅い(んだゾ)!!」」

「ヒェッ!」

 

済まない、俺の所為で巻き込んじゃって。

 

 

 

~二日前~

 

 

 

過去から来たドラゴンを蹂躙しつくした後黒き風は、

 

「…皆無事k「早く此処から逃げるんだゾ!!」……何?(ぬぉ!?引っ張られる!?な、何か掴むモノは!?)」

 

<グイ!!>

 

「え!?」

 

魔導士達が集まっていた場所へ戻って来た。しかし、皆に言葉を掛けようとした時ソラノによって拉致?されてしまったのだ。

 

「待てエンジェル、風様を何処へ連れて行く!?…クソォ!地の果てまでも追いかけてやる!!」

『風は渡さないよ。』

「姉さん待ってください!!」

 

それを、カグラと少し回復し思念体で身体を構成した白き雲、ユキノが追いかけた。

 

「(な、何がどうなっているんだ!?)…どうしたん「此処まで派手に暴れたんだゾ!評議院共に捕まる前にトンズラするんだゾ!!」…分かった。」

 

やっぱアレ、やりすぎだったのか?まぁ、あの牢屋に入るのは嫌だし、またソラノちゃんも捕まったら気分が悪い。このまま彼女に身を任せよう。め、めんどくさいんじゃないんだよ!これが最善だと思ったからだ!!(キリッ

 

「は、早いー!!」

「(ん?聞きなれない声だな?)…誰の声だ?」

 

超スピードで走っているソラノの肩に腹部を担がれている状態の風の耳に、聞きなれない()()の声が聞こえた。

 

「風、どうしたn…こんの泥棒狐がぁ!私の風を(たぶら)かしてんじゃないんだゾ!!」

「ち、違うわよ!どう見ても私の所為じゃないわよ!!(エンジェル怖!!)」

 

声が聞こえた場所…風の()()を見れば、

 

「…済まない、咄嗟に掴んでしまっていた。(スマン、ルーシィちゃん。近くに居たから掴んじまった。)」

「い、いえ!お、お構いなく?」

 

ルーシィの左腕を掴んでいた。

 

「風!さっさとそんなモノ捨てるんだゾ!!」

「ちょ、汚いモノみたいに言わないでよ!!」

 

そんな状態でも、ソラノとルーシィは口喧嘩をし始めた。

 

「…放す「ダ、ダメ!放さないで!こんな速度で放されたら大怪我しちゃうわよ!!」ムゥ…(仕方ない、このまま連れて行くか。)」

 

ソラノの速度は風程ではないが、今のルーシィには十分早い。

 

「…もう片方の手も出せ。振り落とされるぞ。」

「えっ!?…そ、その…」

「そ、そんな!?うらやまけしからん事を!!エンジェルちゃんでも言われたことないのにぃ!!」

「(ん?どうして掴まないんだ?やっぱり、こんなオッサンの手には触れたくないのか!?)…無理強いをした。嫌なら気にする「ち、違うのよ!!」…ム?」

「ゴメン、私()()から来たルーシィなの。その、色々あってね。ギルドの紋章があった右腕…無くなっちゃった…」

 

<ザッ!!>

 

「うひゃあ!?急に止まらないで!!」

 

驚く事に風が掴んだのは、未来から来たルーシィの方だった。

 

「…ソラノ。」

「…分かっているんだゾ。私達を追いかけてる筈のユキノと雲、気に食わないけどカグラと合流して一旦私の…()()()()で話をするんだゾ。」

 

ん?あれ?俺の聞き違い?今新居って言わなかった!?

 

 

 

~現在~

 

 

 

「…流石は、ソラノ。旨かった。」

「フフン、当たり前なんだゾ。7年前は、何カ月も一緒に暮らして(ここ重要だゾ!!)食事は()()この(エンジェルちゃん)が作ってたんだゾ。(…今でも思い出すんだゾ。蛇みたいなナニカや猪のバケモノを左手の手刀で切って簡単に処理をした後、火が完全に通る前に待ち切れず半生で食べていた()。あの時は、エンジェルちゃん涙が止まらなかったんだゾ。)今では、お店の料理にだって負けないんだゾ!!」

「グヌヌ…」

 

二品目のソラノの料理に高い評価をした風。ソラノの料理は、風の知識で云う所謂(いわゆる)フルコース。一つ一つ丁寧に作られており、風の体が黄金に輝いた―様に見えた―それを見て、感想を聞きカグラは涙目で悔しそうにハンケチを咥えていた。

 

『今度は僕だ「って、待ってよ!!あれから一日経ったのに何で話し合いの一つもないわけ!?」…無粋なメスだ。僕たちの営みに文句があるなら、此処で切り刻んであげるよ。』

「ヒィ!?」

「…雲。」

『…分かっているよ。僕とユキノの料理を食べ終わってから話をしよう。』

 

三品目の雲の料理が出る前にまた文句を言う未来から来たルーシィ。雲の睨みに怯えたが、風が仲裁をして事なきを得た。

 

『さぁ!僕の料理は…このb「却下。食えるものにしてくれ。(ヤ、ヤバイヤバイ!!俺のケツがヤバイ!!)」つれないな、風は。』

 

風の貞操は守られた。

 

「で、では風お義兄様。私の料理をどうぞ。」

「…頂こう。」

 

ユキノが出したのは、

 

「ム、風殿が食べるには、少し質素では?」

「(な!?そ、そっちで攻めて来たんだゾ!?)…ユキノ、恐ろしい()!!」

 

何の変哲の無いパンとスープ。だが、

 

「…こ、これは!?」

 

風は体が電撃を受けたかのような感覚に陥った。

 

(質素だが、料理人の心が籠った一品だ。パンは自身で捏ねて作ったんだろう。外の皮はパリパリ、中はしっとりしている。この世界の店で売っているモノでは中々こうは出来ない。そして、スープ。葉野菜はシャキシャキ、人参や芋は中までしっかり火が通っていて口に入れた瞬間勝手に崩れていく。肉も同じだ…いや、皮はパリッとした食感がある。一旦火を通してから煮込んであるのか!?)

 

「…決まりだ。」

 

風がそう言うと、

 

「そ、そんな…」

「やられたんだゾ!!」

『何故!?』

 

カグラは膝から崩れ、ソラノは悔しそうにし、雲は何故だと虚空を見つめていた。

 

「じゃ、じゃあ!!」

「…ああ。明日からの朝食はユキノに作ってもらう。」

「やった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、誰が朝食を作るか検討してたんかい!!」

 

今日この日、魔獣の闊歩する森の奥にある一軒家で未来から来たルーシィの鋭いツッコミが響いた。

 



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第30話

ちょっとシリアスです。


 

 

 

私は、こんな…こんな絶望しかない()()なんて、要らない!!

 

 

 

今まで(くじ)けそうな事をいっぱい、いっぱい私は経験した。『楽園』なんて(うた)った兵器に登ったり、歩行する『古代兵器』を破壊したり、『エドラス』って別の世界に行ったり、『アクノロギア』って元人間の黒龍に襲われたり、その所為で7年間も凍結してたけどね…ホント、私って何だかんだ危険な事に逢ってるわ。

 

それで、私達が7年間いなくて妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドはボロボロ。一発逆転を賭けて、大魔闘演武(だいまとうえんぶ)って大会に出場したわ。皆ボロボロになっちゃったけど、見事優勝!!…そして、()()から剣咬の虎(セイバートゥース)のローグと…()が来た。

 

未来から来たローグが言っていた『一万を超えるドラゴンの襲来』…本当は過去の世界からエクスプリスによってこの世界に招かれたドラゴン達の襲来って事だったけど、私とユキノの黄道十二門の鍵で扉を閉め7()()に留める事が出来たわ。

 

けど…だけど、今回は今までとは全く違った。たった7()()のドラゴンによって此処に居た魔導士達は蹂躙された。

 

あれ程強かったナツやグレイ、ラクサス、エルザ…ジェラールもドラゴン達によって殺されちゃった。それだけじゃない。青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の皆も!エルザの知り合いのミリアーナがいた人魚の踵(マーメイドヒール)の皆も!!私達と決勝を争った剣咬の虎(セイバートゥース)も!!皆!皆!!

 

「…ルー…シィ…様。」

「も゛う゛喋らないで!!今、助けを呼ぶから゛!!…そうだ!ウェンディを呼べば!!」

 

でも、目の前で怪我をしてるユキノは助ける!絶対、助けるんだ!!

 

「…も…う…いい、です。それより…」

「ウェンディ!何処ウェンディィィィィ!!」

 

早く、早く助けないと!!

 

「…ルー…シィ…様、私の…残り、の全…魔力と、黄道、十二門…の鍵を…お渡し、します。」

「な、何を言ってるの!?私が貴女を絶対助けるから!!」

 

何処にいるのよウェンディ!!

 

「…も、う…分かって、いる、でしょう。わ、私は…助から、ない…って。」

「そんな事ない!私が!私が!!」

 

早く来て。ねえ、早く来てよ!!

 

「わ、私の…下半身、は…先程の、爆は…つによって、失われ…ました。」

「でも!でもぉ゛!!」

 

誰でもいい!早く!ユキノを治して!!私じゃ無理なの!!誰かぁ!!

 

「…お、優しい…ですね。…こんな、私を…心配して、下さる…なんて。」

「…うっえっぐ!!」

 

皆早く来て!ユキノが!ユキノが!!

 

「…こんな、未来…貴女の、手で…変えて、く、だ、さ…」

「ダメッ!ユキノ!ユキノォォォォ!!」

 

 

 

 

 

 

 

私は、こんな()()なんて要らない。

 

『黄道十二門の星霊たちよ、』

 

私は、こんな()()より!

 

『皆が…皆が笑顔になる()()の為に力を貸して!』

 

私は、皆が笑顔で過ごせる(i)(f)が良い!!

 

『開け十二門の扉、ゾ「させんぞルーシィ・ハートフィリア!!」…クッ!!』

 

もうローグに見つかっちゃった!?

 

(はく)(えい)竜の(あしぎぬ)!!』

 

<ザシュ!!>

 

「キャァ!?」

 

み、右腕が!!でも!!

 

「…皆が、ユキノが残してくれたこのチャンス!無駄にするもんかぁぁぁぁぁぁぁ!!『ゾディアック!!』」

 

過去の皆!今、行くね!!

 

「クソッ!逃げられたか!!だが、目的は達した!!待っていろアクノロギア!!」

 

 

 

■□■□

 

 

 

「早く妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆に会わないと!!」

 

私は、これから起こる未来の出来事を皆に教えようと思っている。でも、こんな事誰に言えばいいの…ナツやグレイじゃ突っ走って問題を起こすだけだし。エルザもギルドの仲間の事になると同じだし。う~ん。

 

「止まれ。」

 

へ!?

 

「オレも正体を明かす。お前も正体を明かせ。」

 

こ、この声って!?で、でも…えぇい!女は度胸!明かすわよ!!

 

「……!!!そんな……!?」

 

って、驚きたいのは、私の方よ!!でも、貴方に逢えてよかったわ。

 

「良かった、()()()()()に逢えて。」

「ど、どうしてルーシィから()()()の魔力が!?それに、お前はさっき皆と一緒に「お願い!私の話を聞いて!!」…分かった。何か事情があるんだろう。言ってくれ。」

 

それから私は、これから起こる事をジェラールへ全て話したわ。

 

「…そ、そんな事が未来で起こったのか!?」

「…ええ。」

 

…私にはついさっき起こった事だもの。でも、こんな突拍子もない事信じてくれるかな。

 

「…よく、頑張った。大丈夫だ。後は、俺達魔女の罪(クリムソルシエール)で対応する!!だが、今此処に潜んでいるのは俺とウルティア、メルディだけ。現在のお前やユキノを守る事しか出来ない。「信じてくれるの!?」…当たり前だ!今は仮だが、私はお前達の…妖精の尻尾(フェアリーテイル)()()だ!信じない事などあるものか!!」

 

()()、か。

 

「ありがとう。ジェラール。」

 

でも、ジェラール達の頑張りも虚しく現在の私は捕らえられ、ナツ達が私を助け出す『妖精の星作戦』は決行されちゃった。そして、

 

「…危ない!!」

 

現在の私を殺そうと未来から来たローグが闇魔法を放った。咄嗟に私は飛び出したんだけど、

 

「…悪いな。俺も〝闇魔法〟を少しは使えるんだ。」

「…え、何で貴方が生きて…」

 

死んだ筈のシモンが私を庇ってくれた。あれ?私、夢でも見てるの!?

 

「囲まれてるから助太刀しようと思ったけど、一応大丈夫だったミャ。」

「…風殿に嫌われた。…はぁ。あっ、皆無事?」

「って、まだ落ち込んでいたんだミャ!?」

 

ミ、ミリアーナと何故か意気消沈した…人魚の踵(マーメイドヒール)のカグラ!?そして、

 

「フフン、これでエンジェルちゃんの完全勝利で決着だゾ!!それと、ルーシィ達が捕まってるって聞いて手助けしに来たけど、これはどう言う状況だゾ?」

 

投獄中の魔導士、六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルが私の前に現れた!?

 

「う、嘘!?何で死んだはずのシモンが此処に!?私、もう死んだ!?…それに、カグラってミリアーナと一緒に人魚の踵(マーメイドヒール)の主力じゃなかったの!?そ、それに何で捕まっている筈の六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルが此処にいるのよ!!」

 

もう、訳が分からなかった。そして、此処に来て最大の衝撃が私を襲った。

 

『ソイル!我が力!!』

 

全く知らないマントの男。何故かエンジェルの右手に付いていた黄金の塊が粒子になって、男の右手に銃として現れて…

 

『燃えよ、召喚獣!フェニックス!!』

 

一体の魔獣を召喚した。その火の鳥の存在感に圧倒された私は、

 

「あ、あれ此処…」

 

エクスプリスの前まで連れて来られていた。そこでは、目を覆いたくなる光景が広がっていた。

 

「う、嘘…こ、こんな事って!?」

 

100頭を超える竜がエクスプリスの門から現れ、魔導士達がそれを相手にしていた。私が知っている未来より酷い事に…私がこの時代に来たから!?何で、何でこんな事に!?

 

「何で、何でなのよ!!」

「…どうしたんだゾ?」

 

エ、エンジェル!?…で、でも、何でそんなに冷静なの!?

 

「どうしてそんなに冷静なの!?ドラゴンが、ドラゴンがこんなにいっぱい!!私は()()を止める為に頑張ったの!!」

「…じゃあ、もうひと踏ん張りなんだゾ。」

「…え?」

 

エンジェルは何を言っているの?

 

「フッフフ、()が素晴らしい作戦を練ったんだゾ!だから、もう少し踏ん張ったら、反撃開始なんだゾ!!」

「は、反撃!?」

 

そこから起こった事は一生忘れないだろうと私は思う。マントの人が流星を降らせ、パンチやキックでドラゴンを屠って、エンジェルとカグラがそれに突撃して行った。私が望んだ皆が笑っていられる世界。そんな世界が私の目の前に広がっていた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

『瞳に満ちる光、ティアレインボー!!』

 

一人の男がベルトに刺していたソイル入りの弾丸を、顔の前に持って来て指ではじき一本目を魔銃へ装填した。

 

『究極の魂、ソウルガンメタル!!』

 

一本目と同じように二本目を装填。

 

『そして、お前にふさわしいソイルは決まった!!』

 

男は左手の人差し指で()()を指し静かに叫ぶ。

 

『我が命の螺旋(らせん)、エンドレスホワイト!!』

 

最後は()()()を叩き、弾丸を勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。右腕に持っている銃…魔銃にある()の心臓の鼓動が早くなり中のドリルが唸りを上げる。

 

『出でよ、召喚獣!砲撃獣(バハムート)!!』

 

()()と対峙する召喚された三つの銃口の形の頭を持った龍。

 

『ほぅ。ボロボロになりながら、この()()()()に挑むとは。異星の戦士よ、名を聞こう。』

「…()()()

 

その男…黒き風は目の前に佇む星を喰らうバケモノを倒す為、その力を振るう。

 

『何故、全く関係のないお前が私に挑む?』

「…以前お前の様な存在に、俺の世界()は破壊された。これ以上俺のような者を生み出させはしない。(…リサ、アイ、ユウ。あの時の約束は守っているぞ。)」

 

一人の異星人によってその世界()は守られた。

 

『こ、このジェノバが消滅する!?』

「…言っただろう。以前似た存在と戦った事があると。」

 

一人の孤独な(アンリミテッド)によって。

 

 

 

 

 

 

『ハァ、ハァ。間一髪だった。この細胞を緊急脱出させていなかったら、文字通り()と云う存在そのものが消滅させられていた。あの戦士は…去ったか。』

 

驚く事に、間一髪脱出した細胞が待機させていた人間に取り付き、ジェノバは消滅の危機を脱していた。

 

『今度あの存在と接触すれば、私の命運は尽きる。…対策を練らねば。…そうだ。さっきの戦闘で奴の細胞が何処かに落ちていた筈…』

 

激しい戦いがあった場所を探すジェノバ。

 

『あった!!この細胞を取り込み、擬態…「混沌は全て消滅させる!!」…んな!?』

 

ジェノバが取り込み擬態した途端、自分自身を消滅させようと()()が動き出した。

 

「ソイル!我が力!!」

『クソォ!まともに制御できん!!こうなったら!!…右腕に全て封じ込めてやる!!』

 

三日三晩その一帯に呻き声が響いた。

 

『ハァ、フゥ。(ようや)く封じられた。あの男の記憶と魔銃はこのまま右手に封じておこう。一万年ほど経ったらもう一度制御に挑戦してみるか。』

 

そして、ジェノバ…黒き風となったバケモノは歩き出した。

 

『ホウ、異星へ通じる扉、か。』

 

暫くしてバケモノは一つの扉を見つけた。

 

『この世界()に居ればまた黒き風やクラウド、ティファの小娘に追いかけられる。未練もない。行くか。』

 

そのバケモノはその門を潜った。

 

<…けて…>

 

その声は聞かずに。

 

 

 

 

 

一人の男が死んだ。

 

彼は何の変哲の無い男だった。

 

だが、その男は信念を貫いて逝った。

 

『死んじまったな。でも、ま、助けた嬢ちゃんが生きててくれたんだから、悔いはねぇ。』

 

変な三人組に襲われていた女子高生を守る為、一人で対峙し守りきった男。

 

『あっ、連載中の小説や漫画、やりかけのゲームもあったな…ま、それはそれだ。』

 

あっけらかんとした性格だったが、一度思った事はやり遂げる筋の通った男だった。

 

『さて、来世があるなら子や孫の顔でも見て往生したいもんだ。』

<…けて…>

 

そんな事を思っていた男の魂に声が聞こえた。

 

<…すけて…>

『ん?あっちの方から聞こえるぞ。』

 

声が聞こえた方に漂いながら移動した男の魂は、大きな門を見つけた。

 

<…お願い!誰でも良いから、私達を助けて!!>

『間違いねぇ!この門からだ!!もう死んじまったけど、何か出来る筈だ!待ってろ!今行く!!』

 

その男の魂は躊躇なく声が聞こえた門へ飛び込んでいった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

『この空間は…』

『待ってろ!今行く!!』

 

果たして二つの存在はその門の中で出会った。

 

『貴様…丁度いい。お前を喰らって疲弊した精神の糧としよう。』

『あん?何だテメェ!こっちは助けを待ってる奴の所に早く向かわねぇといけねぇんだ!!そんな事に付きあってられるか!!』

 

一つはバケモノ。もう一つは只の人間の魂。

 

『何を訳の分からん事を。問答無用だ!!』

『何!?』

 

<ガブ!!>

 

『ホウ、このような強い精神の持ち主は初めて喰らった。』

 

男の魂はバケモノに簡単に喰われてしまった。

 

『さて、次の世界()は早々に支配し、あの者への対策を練らば『喰らっただけで勝ったつもりかぁ!!』…何だと!?』

 

だが、その男の魂は喰われても諦めない。

 

『俺を、俺を舐めるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「…此処は、何処だ?」

 




最後オリ主の過去が明らかになりました。
次回もお楽しみに!!


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第31話

更新が遅くなり申し訳ありませんでした。


 

 

 

未来から来たルーシィの話は、壮絶だった。

 

たった7頭のドラゴンに大魔闘演武(だいまとうえんぶ)に出場していた魔導士は全滅。それに、未来から来たと云うローグにギルドの紋章が刻まれた右手を奪われ…ユキノに黄道十二門の鍵と全魔力を譲渡され、この過去の世界へやって来た。

 

ユキノの死と、あれ程強かった妖精の尻尾(フェアリーテイル)や魔導士達の死。どちらも衝撃的な内容だった。そして、ルーシィを襲った未来のローグはあの黒い蜥蜴(アクノロギア)を倒す為行った行動なのだと言ったらしい。この世界に来た未来のローグも同じことを言っていたそうだから、まず間違いないだろう。

 

「…そ、そんな。私が死んでしまうなんて。」

「未来のユキノの仇!今からでも未来から来たローグには、八つ裂きになってもらうんだゾ!!」

「エ、エルザ義姉さんがトカゲ共に負けるだと!?」

 

三者三様の反応だな。白い雲はどんな反応を…

 

『…それは、残念だったね。』

 

雲はそれ以外に何も言わなかった。いや、言えないのだろう。彼女より壮絶な経験を彼はしている。仲間の死、故郷の焼失、そして彼の世界の滅亡。様々な経験から出て来た一言だと俺は思う。それを知っているのは〝黒き風〟か〝ファーブラ様〟だけ。…申し訳程度にテレビや作品集を読んで一部しか知らない俺には、そう思うしかない。

 

「…ルーシィ、先程まで済まなかった。朝食当番の決定などと悪ふざけが過ぎたな。…本当は思い出した記憶で混乱し、整理していた。貴重な一日を使ってしまい申し訳なかった。」

 

ごめん、ルーシィちゃん。さっきまでの朝食当番選手権なんてふざけた事をしちまって。先日思い出した記憶で混乱しちまって、整理してたんだ。早く説明したかったのに俺の所為で一日使っちまった!本当にごめん!!

 

俺そう言うと頭を下げ彼女に謝罪をした。直ぐに許してくれるなんて思わないが、彼女の話を今まで聞かなかったんだ。謝るのは当然だ。

 

「そ、そうだったの!?わ、私こそごめんなさい!そうとは知らずに…「ルーシィ、もっと誠心誠意謝るんだゾ!!」って貴女には言われたくないわ!!」

 

素晴らしいツッコミだ。彼女は吉○で食っていける。俺が育てた(キリッ

…って思考が脱線しすぎだ。

 

「…話を戻す。ルーシィがこの世界に来た理由、経緯は分かった。そして、俺が世界に来た経緯を話そう。ルーシィ、君に呼ばれたからだ。」

 

ルーシィちゃんがこの世界に来た理由や経緯は分かった。それと、この世界に来た時の事を思い出したから言うぜ。ルーシィちゃん、君に呼ばれたからだよ。

 

「へぇー私に…え、私ィ!?」

「そ、それはどう言う事なんだゾ!?」

「風様…風殿が何故ルーシィに!?」

「風お兄様!詳しくお聞かせください!!」

『実に興味深いね。』

 

うぉい!?4人共、急に迫って来るな!ビビるだろうが!!ま、風様(face)がビクともしないのが救いだったな。

 

「…まず俺は皆に言わなければならない。俺は()()()()()()()。」

 

まずは、俺の事を話さないとルーシィちゃんに呼ばれた事への説明が出来ないからな。正直に洗いざらい話し、そこで拒否されたらこの世界を一人で旅をするか。

 

 

 

■□■□

 

 

 

「は?」

 

4人の中の誰が発したのかは分からなかったが、その場にいた全員が発するであろう言葉。『風が風ではない』一体どのような謎々、又はとんちの類か。

 

「か、風殿?何を言っておられるのですか?カグラにはさっぱり分かりません。」

「…事実を言ったまでだ。俺は()()()()()()()。」

「な、何を言っているんだゾ!?エンジェルちゃん訳が分かんないんだゾ!!」

「…話を聞いてくれ。」

「わ、分かったんだゾ。」

 

カグラとソラノの言葉にそう返した彼は、驚くべき言葉を発した。

 

「…俺は死人。別の世界で一度死に、〝黒き風〟の体に入りこの世界に来た。」

『「「「は?」」」』

 

〝自分は既に死に、目の前の肉体に入り込んだ〟と言うのだ。

 

「…俺は此処とは別の世界で死んだ。そして、魂の存在になり漂っていた時、ルーシィとユキノが閉めた扉と同じ様な物を見つけた。」

「エクスプリスの扉が何んで!?」

 

ルーシィの疑問は最もだ。何故自分が通って来た扉が別の世界に出現したのか、全く想像できない。

 

「…俺はそこから、お前…ルーシィの声を聞き、その中へ入った。」

「わ、私の声!?」

「…ああ。『誰でも良いから、私達を助けてくれ』と。」

「あっ!!」

 

その言葉を聞きルーシィは思い出した。自分一人過去へ行っても何も変わらないかもしれない。もっと悪い状況を作り出してしまうかもしれない。そんな不安から扉へ飛び込んだ後、一気に不安が爆発し何度も叫んでいたのだ。

 

「ルーシィ様…」

「ルーシィ、もう大丈夫だ。お前の話で私はそっちの世界では別ギルドだったらしいが、こっちでは同じギルドの仲間。それに、私は小さい頃から妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入っているからな。ちょっと目つきの鋭いお姉さんとでも思ってくれ。無論、こっちのルーシィにも言ったがな。」

 

ユキノは名前だけを口にし、カグラはルーシィへそう話した。

 

「うぅ゛!!」

 

感極まって涙するルーシィ。

 

「じゃ、じゃあ、ルーシィが風を呼んだんだゾ!?」

「…そういう事になる。」

「ゴメンなんだゾ!ルーシィ!!」

 

そんな彼女を無視し話を進めたソラノだったが、ルーシィが風をこの世界に間接的だが呼んだ事を聞き、身をひるがえしルーシィへ駆け寄った。

 

「よく、よく頑張ったんだゾ!ルーシィ本当にありがとう何だぞ!!」

「えぇ!?」

「見事な掌返し。そこに憧れないし、痺れない。何やってんだデカチチ女。」

「ね、姉さん!?」

 

そんな彼女を見たカグラは冷え切った目で見ており、その傍でユキノは姉の変わりように困惑していた。

 

「…そして、その扉の中で正体不明のバケモノに襲われ、気付いたらこの世界の森の中で一人立っていた。…恐らくこの体の元の持ち主、『黒き風』がバケモノを倒した。そして、疲弊し彼はこの右手の〝魔銃〟に自身を移し、()に体を明け渡し眠っていたんだろう。」

『成程、少しソイルの色が違って見えたのはそう云う事だったんだね。』

「…雲。分かっているだろうが『大丈夫だよ。事情は分かった。気にしなくていいよ。』そうか。」

 

そして、彼は大きな爆弾を投下した。

 

「…俺は此処を去る。詫びになるかわ分からんが、お前達に嘘を付いていた。金輪際妖精の尻尾(フェアリーテイル)には近づかん。騙して悪かっt「「何を言っているんです(か)(ゾ)!?」」

 

その爆弾は落ちる前に彼女達に回収された。

 

『やっぱり、変な責任感やケジメなんて事を思ってたんだね。(小声)』

「何を言っておられるのですか風様!私は()()に助けられたのですよ!その右腕の魔道具に眠っていた〝黒き風〟ではなく!()()に!!」

「…だ、だが。」

「リサさん達に聞きましたよ!風お兄様、貴方は記憶を無くされていた時、人魚の踵(マーメイドヒール)の皆さんや私を助けてくれたではありませんか!!そんな方が、私達に何の理由もなく嘘を付く訳ないです!!」

「…何故分かるんだ?(何でそんに鋭く分かっちゃうの!?)」

「ほら、やっぱり!!」

 

彼の意見に異議を立てるカグラとユキノ、

 

「私は知っているんだゾ!風の素がもっと親しみやすく優しいって!!初めて会った時、敵だった私にも気を使って、牢獄の中でも私の話を聞いてくれた!嘘なんて私の方が一杯、いっぱい風に言ったんだゾ!!」

「…それは、(それは、そうかもしれないけど)」

「アンタ、馬鹿!?私の声を聞いてこの世界に来て、私が望んだ事を軽くやっちゃたのに…たったそれだけの理由で此処から居なくなるって言うの!!決めた!アンタは何としてでも妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドに連れて行く!!そこで、感謝されて、飲んで、食べて、もみくちゃにさちゃえ!!それを私が笑って見ててあげる!!」

「…何故。(何でルーシィちゃんまで!?結果的に嘘ついて騙していたんだぜ。)」

 

風と出会い原作(あったはずの歴史)から変化したソラノ、そして未来から来たルーシィも続いた。

 

『黒き風…いや、名も知らぬ〝戦士〟よ。僕も彼女らと同意見だ。一度彼らのギルドへ行った方が良い。君を拒否する者はだれ一人居ないと僕は思うよ。』

「…雲。(白い雲。貴方もか。)」

 

白い雲も彼女らと同意見だ。

 

「…だ、だが。」

『(…相棒。お前は何を勘違いしてるんだ。此処にいる者達を救い、導いたのは()()だ。黒き風ではない、()()なんだ。)』

「…(…風。)」

 

最後に魔銃の中に居る黒き風にもそう言われた彼は、

 

「…分かった。さっきの話は無しだ!皆独りよがりの意見を押し付けて悪かった!!未来のルーシィちゃんが落ち着いたら皆で妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ行こう!あいつ等にも世話になってたからな。礼を言っとかねぇと、此処へ引っ越すのも気が引ける。あるかどうか分からんが、俺の部屋に置いてあった私物を持ってこないといけないしな!!」

 

変な責任を取る事を止めた。

 

「風さ、ま?」

「風お兄様が、記憶喪失時の口調に!?」

「こっちの風もカッコイイんだゾ!!」

「何か隊長って言いたくなったわ。」

『それが君の素かい?それもいいんじゃないかな。』

『(…相棒、ちょっとしたサービスだ。数秒だけならお前の口調で会話ができる様になったぞ。)』

 

口調が変わった彼に驚く彼女達。

 

「(それは、ありがてぇ!!)俺の名前は――――だ。皆、改めてよろしくな!!」

 



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第31.5話 番外編

今回は番外編です。


 

 

 

大魔闘演武(だいまとうえんぶ)一日目()()()()

 

『さぁ、いよいよ一日目最終試合となります…妖精の尻尾(フェアリーテイル)B、ミストガン!!VS!蛇姫の鱗(ラミアスケイル)、ジュラ・ネェキス!!』

 

クソッ!もっと後半で出場したかったぜ!!

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)内でも、その素顔を知る者は少ないという謎の魔導士ミストガン!対するは今大会最強候補筆頭、(せい)(てん)の称号を持つジュラ・ネェキス!!』

 

うわぁ、そんな大それた称号が付いてる奴と戦いたくねぇよ!せっかく奴と入れ替わったて出たのに。

 

「こいつァ、ついてねぇな。」

「あのジュラとぶつかっちゃうなんて…」

「そんなに(つえ)ェのか?あのボウズ?」

「私とエルザの二人掛かりでも勝てるかどうか。」

「…(マジかよ!?)」

 

エルザって奴と、この姉ちゃん―たしか、ミラ・ジェーンつったか?―の実力は知らんが、ギルド内で一目置かれている奴らが言ってんだ、やっぱあのスキンヘッド(つえ)んだろうな。

だが約三カ月前、見ず知らずの(かは分からんが)俺を助けてくれた奴等への義理を返す為、無理を言って出させてもらってんだ。負けられねぇ!!

 

「オレ…私に任せておけ。」

 

()()記憶が無ぇが、以前オレの相棒(パートナー)だったヤツが、今アナウンスで呼ばれた男らしい。そいつが駆使して来た動きや、技をこいつ等に聞きながら魔法が使えないながら()()()()で模倣しまくったんだ。ま、意外とすんなり動き自体は模倣出来たからな。やれるところまでやってやる!!

 

 

 

■□■□

 

 

 

<<オオオオオオォォォォォォ!!>>

 

会場内に響く大歓声。これから開始される試合に、皆期待し興奮している。

 

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)、ジュラ・ネェキス VS 妖精の尻尾(フェアリーテイル)B、ミストガン!!本日の最終試合開始!!』

 

<ドッ!!>

 

最初に動き出したのは…

 

ミストガン!背負った杖をジュラ目掛け一斉に投げつk…ま、魔法で浮かせ殺到させる。

 

<バッ!!>

「…ッ!!」

 

ジュラは右手の人差し指と中指だけを立て、動かすだけで地面から岩石を発生させミストガンを翻弄する。

上下左右全ての方向から襲い掛かる岩の所為でミストガンは中々ジュラへ近付けない…が、回避している途中、器用に先程殺到させた杖を回収している。

 

(…妙だな。()()()()()なら、既にあの中を潜り抜け杖を投擲し魔法を発動している筈………ま、まさか!?)

 

それを見ていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)チームAのエルザは、彼が()()か気付いてしまった。

 

(ば、馬鹿な!まさか、()()()使()()()()()がミストガンの代わりに出場しているのか!?)

 

「(杖を壊さないようにっと。)手加減空牙(クーガ)(小声)」

<シュバッ!!>

「ぬ!?」

 

ミストガンは先程回収した杖をジュラの周りに投擲し、彼の動きを妨害。

 

五重魔法陣御神楽(空牙)!!』

<ドギャッ!!>

 

そこへすかさず攻撃を放った。

 

「おい、どういう事だ?動きはほとんど()()()()()をコピーしていたが…あいつ、()()()()()じゃねぇぞ!?ジェラールの魔力が感じられねぇ!(それも、さっきから攻撃してんのに、奴から魔力を一切感じねぇってのは…まさか!?)」

「えぇ!?だったら彼は何者!?」

 

そして、観戦していた妖精の尻尾(フェアリーテイル)チームBのラクサスとミラにも、彼がジェラールではない事が知られてしまった。

 

「やりおる。ぬん!!」

「チィ、『三重魔法陣鏡水(死重流)』!!」

<ガン!!>

『『すげぇ!!跳ね返したー!?』』

 

ミストガンが放った技を自身の魔法で耐えきったジュラが、岩石で出来た腕をミストガン目掛け放ち、それをミストガンが蹴り…魔法で跳ね返した。

 

「フン!!」

<ぐりん!!>

『『そ、それを更に曲げて…どうなってんだー!!?』

「ぐぁ!!」

 

帰って来た岩石の腕によりミストガンは吹き飛ばされ、不敵にジュラは笑っていた。

 

『強い!!やはり聖十の称号は伊達じゃなーい!!』

 

 

 

■□■□

 

 

 

ヤベェ。思ってたより3割増しで(つえ)ェじゃねぇか!!

どうすっかな、チームメンバーにあんな啖呵切っておめおめ帰る訳にも行かねぇし…

 

「なるようにならあね!」

 

無様に負けるのだけは、駄目だな!!

 

「ム、仕掛けてくるか?(こやつ、先程とは雰囲気が全く違う。何をする気だ?)」

「…しゃ、こっからは、()()で行くぜぇ!『神移(カムイ)』!!」

 

目にも止まらぬ速さ、とは彼の事を言うのだろう。

 

「何処へ消え「この切っ先…ってブレード付いてねぇわ。」いつの間に!?」

 

一瞬にして消えたかと思えば、ジュラの真下に両腕を構え戦闘態勢になっていた。

 

「前から、後ろからバッサリだ!『滅刺(メイス)刃拳(ハーケン)!!』」

「(間に合え!!)厳山(がんざん)!!」

 

ミストガンの両腕が振るわれる直前、ジュラが出現させた岩石が自らを盾にジュラを守った。

 

「ちっ、喋らなければ直撃だったのに…ミスったな。」

「それが、お主の本気か。(冗談ではない。あんなモノまともに喰らえば、只ではすまんぞ。)」

 

しかし、出現させた岩は無残に四散し中心部が辛うじて残っているのみだった。

 

「邪魔なマスクとフードは此処でサヨナラだ。」

「ム?お主、顔を知られないよう隠していたのでは…な!?(ジェラール()()()()だと!?)」

 

おーおー、驚いてる、驚いてる。何か犯罪を犯したって言うジェラールを、大陸中に放送しているこの大会に出させる訳にはいかねぇからな。出る直前に、恩を返すって無理言って入れ替わって正解だったぜ。

 

「じゃ、改めて。俺はミストg『風sむぐむぐむぐ!?』『ミ、ミストガン!頑張ってくれー!!』カグラちゃんもうちょっと静かに応援してくれねぇかな。」

 

後でエルザちゃんには礼を言っとかねぇとな。カグラちゃんの口をふさいでくれてありがとよって。

 

「さて、気を取り直して!しっかりと防御を固めろよオッサン!狙いはバッチリなんだな、これが!」

「(来るか!)全力厳山(がんざん)!!これを打ち砕けるか!!」

「上等ぉ!!」

 

素顔をさらしたミストガンは両の(こぶし)を構える。

 

「この一撃で極めてやる!『渺阯(ハルバート)!!』」

 

ミストガンがそう言った途端増えた。

 

「何!?」

<ドゴォォォォォォォォォン!!>

 

否、誰も彼の速さに目が追い付けず、残像だけ見えたのだ。ミストガンが放った技はクルダ流交殺法表門死殺技。残像を残すほどの速度で突進しつつ、拳による乱打を叩き込む高速連続攻撃だ。

 

「グゥ!?」

「極めるっ!!でぃぃぃやっ!!」

 

そして、岩を吹き飛ばした後、ジュラへ肉薄し

 

「ぬぅ!?」

 

威力を少し殺した肘鉄を鳩尾へ放った。

 

『…ハッ、申し訳ありません!実況しなければならない私も見入ってしまいました!!まさか、こんなことが!?素顔を見せた途端強さが跳ね上がったミストガン選手!圧倒的な力を見せつけジュラ選手ダウン!よって、勝者ミスt―』

 

さて、まずは一勝だな。

 

『え~。大変申し上げにくいのですが、規定により勝者ジュラ選手!!』

 

はぁ!?ど、どう言うこどだ!?

 

大魔闘演武(だいまとうえんぶ)では、〝魔〟を競い合う事を主としています。競技パートではそれだけではないのですが、このバトルパートでは、魔法を使()()()戦って頂いています。……ですが今回驚くべき事に、あれ程大きな威力にも関わらず、ミストガン選手から大きな魔力反応が全くありませんでした。その為、魔法を使()()()にジュラ選手と戦った事になります。その為ミストガン選手は規定上失格。勝者はジュラ選手になります!!』

 

「「「「「はぁー!?」」」」

 

やべ、負けちまった…どうしよ。

 

 




はい、今回はif√でした。以前ミストガン(風)VSジュラが見てみたいと感想を頂き書いてみました。

この本編同様人魚の踵(マーメイドヒール)を助けた後、偶然魔女の罪(クリムソルシエール)と遭遇。
エンジェル、カグラ達に直ぐ合流し彼女達が大魔闘演武(だいまとうえんぶ)へ参加すると聞き、記憶を取り戻す為彼女達と再会させてくれたお礼の為サプライズ参加。

ユキノは人魚の踵(マーメイドヒール)のリサに水魔法で負けてしまい、原作通り剣咬の虎(セイバートゥース)をクビに…

最後はこの小説と同じようにエンジェル(ソラノ)と出会い同じような展開になります。


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第32話

長らくお待たせしました。最新話です。
申し訳ないですが、今後も不定期になります。


 

 

 

『お前にふさわしいソイルは決まった!!』

 

風は対峙者達に対し指を向け静かに叫ぶ。

 

『光なき魂の叫び、ダークグリーン。』

『我は無敵なり、』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を顔の前に持って来て、指ではじき一本目を魔銃へ装填し、ソラノが魔力を脚部へ溜めながら一歩ずつ向かっていく。

 

『生み出すことを許さない、ヴァージンホワイト。』

『我が影技に敵う者無し、』

<ビシビシッ!!>

 

更に、風は二本目を装填。ソラノの魔力は周りの木々や地面を意図せず割いていく。

 

『そして、全てを凍てつかせる、アイスブルー。』

『我が一撃は無敵なり!!』

 

最後はベルトを叩き、弾丸を勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げ、ソラノの目が対峙する相手へ見開かれた!

 

『光れ、召喚獣……シヴァ!!』

『見よう見まね神音(カノン)…だゾ!!』

 

氷の結晶のような召喚獣が森の木々を凍てつかせ、その木々ごとソラノの音速の蹴りが対峙者達へ吸い込まれていく。

 

 

 

が、

 

 

 

『全ての、我が美しき調べによりて去り行くがいい!』

『行くぞ不俱戴天!』

 

対峙する者達も、

 

『白熱の夜想曲(ノクターン)!!』

『剛の型!!』

 

唯指をくわえてやられるのを待っているわけではない!!

 

<<グォォォォォォ!!>>

<<ガキン!!>>

 

白い蛇のような召喚獣が風の召喚獣とぶつかり、一振りの刀がソラノの蹴りを迎え撃つ。

 

『君の召喚獣はいつ見ても綺麗だよ。』

「…ぬかせ(け、(けつ)に危機感を感じるんだが!?)。」

 

片方は雑談を交え気軽に。

 

「カァグゥラァァァァァァ!!」

「エンジェルゥゥゥゥゥゥ!!」

 

もう片方は鬼気迫る形相、で…鬼気迫る形相で本気(マジ)()りあってるぅ!?

 

…何故!?

 

オホン、此処は魔女が住まうと噂される深い森の中。風達は来る対黒龍(アクノロギア)戦を想定し、自身達の能力や連携を確認するため修行がてら模擬戦を行っている。

 

行っているんだが、

 

「「ハァァァァァァァァァァ!!」」

 

…若干2名その趣旨を忘れ、全力で()りあってるんだが、どういうこと!?

 

「ユキノ!ライブラの重力魔法でカグラの動きを止めるんだゾ!!」

「えっ!?で、でも姉さんこれは模擬戦でs「風を義兄にする為だゾ!」ッ!負けられない戦いがあるのですね!お願い『ライブラ』!!」

 

…何故か、アグリア姉妹による息の合った連携が此処に完成してしまった。

 

「なっ!?…こうなったら、()()のルーシィ!星霊魔法で私に加勢してくれ!!」

「いや私、そんなカッコいい二つ名付いてないんですけど!?ってか、今の私鍵を持ってないから星霊魔法使えないって前にも言ったよね!?」

 

相対するカグラは、未来から来たルーシィ…隻腕のルーシィに「そこぉ!変な(あだ)名でナレーションしないで!!」おっと、鋭い突っ込み頂きました。しかし、鍵を失ったルーシィに加勢する術はなく、カグラが倒されアグリア姉妹が風を独占する未来が待っている…かも。

 

「そ、そんなこと…させてたまるかぁぁぁぁぁぁ!!」

「カ、カグラ様をこれ以上ライブラで抑えられません!ソラノ姉さん!!」

「分かったんだゾ!これで、極めるんだゾ!!」

 

ライブラの重力を打ち破ろうと魔力を全開にするカグラ。その隙を突き必殺の一撃を叩き込もうとするソラノ。一進一退の攻防が、

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「見よう見まねクルダ流交殺法、表技!刃拳(ハーケン)!!」

 

此処で、

 

「これで、晴れて風様が義兄に!!」

「これ、模擬戦なんだけど!?何で相手の命()りに行ってるわけ!?」

 

決着する。

 

死重流(シェル)!!」

<<ギィン!!>>

 

一人の男の登場により。

 

「…何をやっている(何やってんだよアグリア姉妹は!?今のはマジでやばかったぞ!!)。」

「か、風殿(あぁ、やっぱり風()は、私のヒーローだ!!)。」

 

ソラノの刃拳(ハーケン)が放たれた瞬間、風は神移(カムイ)でカグラとソラノの間に入り死重流(シェル)でカグラを守ったのである。

 

「チッ、もう少しで正妻の座が(小声)。ちょ、ちょっと力が入りすぎちゃったんだゾ。ごめんなさいだゾ。」

「か、風様申し訳ありませんでした!!」

 

アグリア姉妹は風には素直に頭を下げたが、

 

「…(べーだゾ)」

「…(叩き切ってやろうか!?:口パク)」

 

ソラノだけは風からは見えない位置で、カグラへあっかんべーをしていた。

 

『さて、今日の模擬戦はこれで終わりでいいかな?』

「…ああ、終わりだ。汗を流したら昼食にしよう。」

 

今日も今日とて森の一部が消し飛んだがいつもの事で、残った木々が魔力を吸って数日で元の森へ戻っていく。

 

この不思議な現象は、偶に森へ運悪く―魔獣ですら息を殺して模擬戦が終わるのを待っている為、魔獣に襲われないので運がいいのかもしれない―森へ訪れたA級以上の魔導士に目撃され、森へ入る人間が激減しているのだが、風達は全く知らない。

 

 

 

■□■□

 

 

 

「今までの模擬戦で分かったことがある…と言うより改めなくても本人や周りも理解しているだろう。」

 

ソラノ=アグリア 黒き風 と書かれた表札(ソラノ=アグリアの箇所だけ滅多切りになっており、辛うじて読めるぐらいなのだが)の家へ皆帰宅(?)し汗を流した後カグラが第一声にそう言い放った。

 

「…魔獣のソテーだ。(ほい、カグラちゃんソテー持ってきたぜ)」

「風殿が持ってきただけでエンジェルが料理した汚ぶt…失礼、風殿が持ってきただけで唯の素っ気ない肉が至宝に代わってしまったぞ!!」

 

料理当番は、ソラノ→ユキノ→カグラ の順番で日ごと変わっている。朝食だけユキノということだったが、風に食事を提供=餌付け という事実に直面した二人はユキノや風達を説得(半ばゴリ押し)した。

 

風も作ると言ったが、試しに作った料理がほぼ半生の何かの肉で常識人のルーシィとユキノに説得され、せめて料理を運ぶことはさせて欲しいと今のウェイターっぽいポジションを確保している。

 

風の料理の腕を知らなかった若干1名は、ソレを気合で食し数日腹痛に悩まされたが気にしてはいけない。

 

「今後の課題ですね。私のせいでもあるのですg「…ソテーだ。それと、食事中はその話は止めろ。」も、申し訳ありません風様!今日はソテーにしたんですね姉さん。」

「…ごめん。」

 

今話題になってしまっている未来から来たルーシィが、ユキノの後に顔を伏せたまま謝る。

 

「…隻腕の「まだそのネタ引っ張るの!?」スマン。先ほども言ったが、食事が先だ。その話をするのはその後だ。」

「も、申し訳ありません風殿!さ、さぁ!食事を楽しもう!!」

「…フフフ。あのカグラが此処までオドオドするなんで、今でも信じられないわ。」

 

風の機転(?)で重苦しい空気があっという間に飛散し、

 

「なーにが『ちょっと目つきの鋭いお姉さん』なんだゾ。そんなんだからお堅いお侍様って言われて子供たちに避けられるんだゾ元ちびっ子。」

 

料理をしていたソラノも食事のために食卓が置いてある部屋へやってきた。

 

「ム、そんな事はない!カッコいいお姉ちゃんと言われ子供達に慕わられてる!!」

「それは、唯憧れてるだけなんだゾ。エンジェルちゃんみたいに子供と一緒に遊び学んでいける事が、良き母になれるんだゾ。」

「グヌヌ!!」

 

息を吐くようにカグラを煽りマウントを取っていくソラノ。この家では日常の風景になりつつある。

 

カグラとソラノは口論しながら食事を器用にとり、ユキノと風が言葉数は多くないが話しながら食事し、食事を必要としない白き雲が風達の会話に入り微笑む。

 

「ウッ、グス!!」

 

そんな日常を、見慣れだした束の間の平和を彼女、

 

「ど、どうしたんだゾルーシィ!?またカグラに虐められたんだゾ!?」

「わ、私は虐めてなんていない!大丈夫かルーシィ!?」

「ル、ルーシィ様どうしたんですか!?何かあったんですか!?」

「…ルーシィ大丈夫か?」

『いったいどうしたんだいルーシィ?』

 

ルーシィは、

 

「私、この(i)(f)に来れて、本当に、本当に!良がっ゛だー!!」

 

噛みしめていた。

 



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第33話

 

 

 

以前から指摘されていたことだが、片腕となり星霊の鍵を失ってしまったルーシィの件だ。

 

「…ルーシィ、俺と同じように、周りにある魔力や魔素から〝星霊の鍵〟とやらは精製できないか?(そうそう、ルーシィちゃん。俺みたいに空気中の魔力やら魔素やらを指先に集中したら、鍵って作れねぇの?)」

「無理に決まってんでしょ!こちとら普通の魔導士じゃい!!」

「…なんだ、無理なのか(あー、やっぱ無理か)。」

「風の期待を裏切るルーシィには、失望したんだゾ。」

「えっ、何で私が悪い事になってるのよ!?」

 

このまま行けばルーシィは、これから迎え撃つ、或いは攻め込んで打倒する黒龍(アクノロギア)との戦闘で、この拠点で留守番役になってしまう。

 

「だが今後、私やユキノ、ソ…エンジェルでも太刀打ちできないような相手が出て来るやもしれん。ルーシィを守りながら戦闘を行うと云うのは恐らく無理だ。なので、決戦の際ルーシィだけこの拠点に残すと云う手m「それだけは絶対お断りよ!!」フ、予想通りの答えだ。」

「置いてきぼりなんて、絶対に嫌!やっとの思いで過去まで来て、皆が必死に戦っているのに私だけ安全な場所でのうのうと生き永らえているなんて絶対耐えられない!!」

 

それは、壮絶な未来を知り、その未来を変える為過去に来たルーシィの願い。

 

「私も連れてって。私が見てないところで、皆が死んでいくのなんて嫌よ!運命だろうが、天命だろうが、私がそんなものたたき壊してやるんだから!!」

「…碌に戦えないのに?」

「ぐうの音も出ない正論言うのは止めてよカグラ!?」

 

命尽きる最後まで仲間(無論、ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)と未来から来た自分を助け、匿ってくれたジェラール率いる魔女の罪(クリムソルシエール))と、目の前にいる自分が過去に戻った事でこの世界に招いてしまった黒き風達の未来を見届ける事。

 

「…そう言えば、()の技術ではどうだ?」

()って…あぁ、ワンチャンあるかもしれねぇな。)

「えっ、何か手があるの!?」

「…手だけに?」

「ユキノ、そう言うこと言わないでよ!?」

 

 

 

■□■□

 

 

 

「よう、久しぶりだな嬢ちゃん!」(黒き風アホ〇ルモード:努力の結果30分ぐらいなら喋れる)

「ハイハイハイ!ブラ…風、久しぶりです!()()()()までよく来ましたね。そ・れ・も!3人も女性を連れて…ハッ!ま、まさか(わたくし)に美の伝道師を再開させるために……おおっと、()()でも〝貧乏〟の()じゃ御座いませんよ!!美貌の美、美人の美、美形の美の()の事でございます!ハイハイハイ!!私が独自に開発した〝美の〟ダイエット食品『メタモちゃん』お一つどうですか?」

「いらn「何で、()()()()()()()にいるのよー!?」お前ら知り合いだったのか?」

「…ハイハイハイって、貴女、大手ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)のルーシィさんじゃないですか!?(わたくし)、貴女様とほとんど面識ないんですけど何故驚かれているんです?こっちの方が驚きたいんですけどー!?」

 

()()

 

「…そうなのか。おぉっと、話が逸れたな。あの町に行ったら、お前()いなくなっていて詳しく聞いたら、この()()()に籍を置いたって聞いてな。いったいどう云う風の吹き回しだ?」

「ハイハイハイ、そこは奥にいるフィンガースに直接聞いてくださいな。」

「うん?まぁ、分かったぜ。フィンガースのとこ行ったら、戻ってくるから。今日は、ダフネの嬢ちゃんに用があるからな。」

「ハイハイハイ、分かったわ…ま、貴方達の驚く顔が目に浮かぶけどね。(小声)」

 

何を隠そう、

 

「ルーシィ、一体どうしたんだゾ?ダフネの顔を見て驚いて。」

「…この世界ではどうか知らないけど、眼鏡にテンガロンハットの女ダフネに私とナツ、グレイはドラゴン関係で手痛くやられたことがあったのよ。機械仕掛けのドラゴンだったけど。」

「ああ、お前らもあのヘンテコなトカゲに襲われたのか?」

「って、()あのオンナに〝ナニ〟されたんだゾ!?言えないようなことだったら、此処からUターンして蹴り殺してくるんだゾ!!」

「貴様の()では無い!だが、後処理は任せろ!私の剣で跡形も残らないよう刻んでやる!!」

「いやいやいや、そんなことしなくてもいいぜ。昔の話だ。この先で待ってるっていう奴、フィンガースを襲ってた彼女のトカゲ共を殴り飛ばしてお灸を添えただけだから。」

「な、殴り飛ばしたってまさか…」

「ロボットトカゲ君は思った以上に脆かったから、ダフネの嬢ちゃんを殺さないようにするのに神経使ったわ。」

「「流石風(殿)だゾ!!」」

「…アンタらの話聞いたら、突っ込むことすら疲れるわよ。」

 

ギルド

 

「ようこそお越しくださいました。黒き風殿。」

「我ら、ギルド員全員貴方を歓迎します。」

「へっ、歓迎だぁ?此処のクソガキ(ギルドマスター)を蹴り飛ばして出てった奴に言う言葉じゃねぇぞ。」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)の本部。その最奥にフィンガースはいるらしい。

 

「…それでも、です。我らに別の道を示して下さった。これからは、お嬢を筆頭にこのギルドは変わっていきます。自己紹介が遅れました。お…私はスティング。」

「俺はローグ。」

「「ッ!?」」

<<ギン!!>>

 

最奥の部屋、ギルドマスターの部屋の前で殺気と怒気、そして魔力が急激に上がっていく。

 

「ど、どうしたー、スティングとローグ!って、どうして風殿が!?」

 

急激に上昇する魔力を感知したオルガがそこへ駆けつけ、来訪者に驚いた。

 

「此処で切り殺せば、未来であのような蛮行は行えまい…そして、ルーシィの右腕の恨みもある。」

「ええ、未来のユキノの恨み。そして、ユキノが受けた屈辱、此処でこのギルド潰せば一石二鳥ができるんだゾ。」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)のローグ。ルーシィが未来で出会ったのはもっと成長した未来の彼。ドラゴンの闇魔法に呑まれ、その力でドラゴンを使役した大罪人。

その罪を犯していないとはいえ、目の前に彼がいるのだ。今後未来の彼みたいになってしまう事もあるだろうと、カグラとソラノが処理しようとするのも仕方無いこと。

 

「ま、待ってくれ!ローグはまだ…いいや、俺たちで闇魔法に呑まれないようにするって評議院に契約書を作って許可が取れたばかりなんだ!未来のコイツが取り返しのつかない事をしてしまったのはみんな知ってる!!だが、やったのはコイツじゃない!!コイツじゃないんだ!そ、それに、未来のローグは今頃評議員の管理する牢獄に捕まっている!!」

 

スティングはローグを守るため、自身より格上であるカグラとソラノの目の前に立ち、今にも倒れてしまいそうに震えている両足に力を込める。

 

「で?」

「それだけか小僧?」

<<ドドン!!>>

 

だが、眼前の怒れる獅子の二人にはそんなことはどうでもいい事だった。さらに魔力は上がり続けている。

 

「ちょ、ちょっと二人とも私達の事で怒ってくれるのはいいけど、もう()()()()事よ!私の経験を聞いて、もう私が知ってる未来じゃなくなったって分かったわよね!だから、だからもう止めてよ…」

「…だが。」

「ルーシィは甘いんだゾ。悪の芽は此処で摘んだ方が未来のt「もういい、二人とも止めろ。」はぁ~い、止めるんだゾ。」

<<<<ズコッ!!>>>>

 

この時、スティングとローグ、オルガと未来から来たルーシィがズッコケた。

 

「…オホン。で、では、貴方方には現ギルドマスターに会ってもらう。くれぐれもビックリしないでくれ。」

「ん?まぁ、善処するわ。それと、身内が驚か…脅してすまなかったな。」

 

一門着あったが、風の一言で鮮血沙汰にならずに済んだ事だけは確信できた。

 

「邪魔するz…邪魔したな。お前ら帰るぞ。」

 

扉が開いて一番最初に部屋へ入った風は、()()を見てマントを翻し部屋から出た。

 

「ん?どうしたんだゾ?」

「風殿、どうしたんです直ぐ出てきて。」

 

不思議そうにするソラノとカグラ。

 

「どうしたの風?中に何があるって<ガチャ>…え、えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

そして、未来から来たルーシィはそのドアを開け、見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、あぁ、フィンガース。(わらわ)のフィンガース!魔力の無い世界で己が力を鍛え、あの〝風〟に体術を習い、魔力の扱いをこの数年一から学びなおし、スティングやローグ、力勝負でオルガを退けるとは!!流石(わらわ)のフィンガースじゃ!!」

「…いや、お嬢、それ昨日も一昨日も聞きましたよ。」

「何度でも、何度でも言ってやるぞ!!流石(わらわ)のフィンガースじゃ!!」

 

ソファーに座っているフィンガースの膝の上に寝ころび、ほっぺに何度も接吻しスキスキオーラを隠そうともしないミネルバの姿を。

 

 

 

■□■□

 

 

 

「…済まない。元々このギルドにいたんだが色々訳があって「訳など簡単なもの。(わらわ)のフィンガースがギルド内の試合で全戦全勝し、(わらわ)ギルドマスターの側近兼伴侶になっただけじゃ!!」そ、そう言う事らしい。」

 

驚く事にミネルバは剣咬の虎(セイバートゥース)のギルドマスターになり、その側近がフィンガースになっていたのだ。

 

「…これならユキノと雲に留守を頼まなくてもよかったかもな。それより、あのクソガキ(前ギルドマスター)はどうしたんだ?」

「…それが、大魔闘演武(だいまとうえんぶ)が終了した後、姿を眩ませたみたいなんだ。」

 

風は探し人が此処剣咬の虎(セイバートゥース)にいる事を知り、ユキノを家に残し(護衛に白い雲を置いて)てきた。以前のギルドマスターのやり方が酷すぎた為、またイチャモン付けられたらギルドごと潰そうとも考えていたが、ギルドマスターが娘のミネルバに代わり雰囲気も前とは打って変わって和気あいあいとしていたので杞憂に終わってしまった。

 

「あのガキ野放しにしていたら何するか分からんから気を付けとけ。」

「…ああ、評議院にも彼の危険性は連絡している。何かあれば此方に連絡してもらう手はずになっている。」

「済まぬ。父の蛮行を許してしまったのは(わらわ)にも責はある。そなたらからの罰は何でも受ける。だが、このギルドは見逃してくれんか。今再興しかけたばかりなのだ。この通りじゃ!」

 

ミネルバは躊躇なく自身の頭を風達に下げた。

 

「嘘、あのミネルバが私達に頭を下げるなんて…」

 

それに驚いたのは未来から来たルーシィ。どんな汚い手を使ってでも勝とうとしていた、彼女が知っているミネルバはそこにはいなかった。

自身がギルドの顔だと知っていて、それでも自分たちに責があるならギルドマスターとして謝ったのだ。

 

「自分達の責を認め謝る事が出来る。それが、上に立つものならどれだけ責任があるのかも…分かってるみてぇだな。じゃ、この話は終わりだ。」

「よ、よいのか!?(わらわ)達は「風殿は終わりと言った。」…済まぬ。」

 

そして、此処からが風達の本題。

 

「さて、おたくらのギルド員になったダフネの嬢ちゃんを借りられねぇか?」

「…ダフネを?いったい何故?」

「俺たちと行動してるルーシィちゃんな。、()()()()()()ルーシィちゃんで、ダフネの技術で()()()()()()()を再生させられねぇか?」

 

失ったルーシィの右手の復活だ。

 



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