幻想郷(仮題) (パンドラぼっくス)
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神社にて

桜の咲く季節、冬に活動する妖怪は休みに入り、春告精は忙しく動き回る。暖かくなってきた気温に幻想郷に住む者たちは、縮こめていた羽を存分に伸ばす。そう、ここ博麗神社にもそんな少女が一人...

 

「ん~...お賽銭...いっぱい...」

 

余程いい夢でも見ているのだろう、少女の寝顔はこれでもかという程にやけている。

少女の名は『博麗(はくれい)霊夢(れいむ)』この博麗神社の巫女である。そんな少女ののどかな日常は、突然訪れる嵐のような、これまた少女に壊されるのであった。

 

「おっす霊夢!」

 

神社の境内に飛び込んできた少女の名は『霧雨(きりさめ)魔理沙(まりさ)』普通の魔法使いである。

 

「ん、ん~........何の用よ魔理沙...」

 

折角のいい夢を潰されたためか、霊夢はご機嫌ナナメのようだ。しかし、その視線を受ける魔理沙は特に気にする様子もなく笑顔で対応する。

 

「なに、折角暖かくなってきたんだからいろんな所に遊びに行こうかと思ってな、霊夢も一緒に行こうぜ!」

 

「え~....そんなのアンタ一人で行きなさいよ...」

 

霊夢が渋るのは訳がある、この魔理沙という幻想郷一、二を争うのトラブルメーカーの『遊びに行く』はつまり、迷惑をかけに行くということと同義だからだ。博麗の巫女が、わざわざ各地の勢力に自分から出向くこと自体が珍しいのだ。ましてや、迷惑をかけに行くなどもっての外である。異変の時はその限りではないが。

 

「ふっふーん、霊夢だったらそう言うと思ってだな...」

 

魔理沙が自分の帽子の中を漁りだす。

「じゃーーん!これだぜ!」

 

自信ありげに魔理沙が取り出したのは一枚の紙。その紙には大きな文字で、【博麗神社で花見!】と書かれている。それは、間違いなく霊夢が冬の間に書いたもので、霊夢の頭から今の今まですっかり忘れ去られていたものだ。

 

「...っ!!.........はぁ~~~」

 

それに気づいた霊夢は頭を抑える。自分が言い出したことだ、流石に言い逃れが出来ないと思ったのだろう。

 

「やっぱり、花見を博麗神社でするなら霊夢が直接...「わかったわよ...」伝えてだな.....えっ?」

 

魔理沙の言葉を遮り霊夢が同行することを伝える。『おそらく、この友人は私が『魔理沙が一人で行って伝えればいいじゃない』と言っても、屁理屈をこねて私を連れて行くつもりなんだろう。』と、霊夢は思った。しぶしぶ布団から出て、巫女服に着替える準備をする。

 

「今日はやけに素直だな霊夢...どこか具合悪いのか?」

「....私の気が変わる前に行くわよ」

 

着替え終わり、魔理沙の前に立つ。

 

「へいへい...それじゃ!行くとするか!」

「...」

「おーい、霊夢!まさかもう気が変わっちゃたのか?」

「まだよ」

「じゃあ、突っ立ってないで早く行こうぜ!」

「はいはい」

 

『確かに普段の私と比べると今回は素直過ぎる。』と、霊夢は思ったがあまり気にしないことにした。

 

やはりこの季節は羽を伸ばしすぎてしまうようだ。

 

少女は先を行く友人を見て笑った。

 

 

 

 

 



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人里にて

人里にて

 

霊夢と魔理沙はまず、博麗神社から一番近い人里に行くことにした。

もちろん里の者に花見のことを伝えるためでもあるが、霊夢の隠れた目的は各勢力の者を人里で見かけたら花見のことを伝え、わざわざ出向く手間を省くことである。

魔理沙は一番近いという霊夢の言葉に素直に従った。

人里は春になったこともあって、活気に溢れている。霊夢と魔理沙は会話しながら人里の中を散策する。

すると、一つの建物の前に女性が立っているのが見えた。

 

「おーい!慧音!」

「む、魔理沙と霊夢か、珍しいな人里に来るなんて」

「ちょっと用があったのよ、ちょうど良かったわ」

「用か、私でよければ話を聞こう」

 

彼女の名は『上白沢慧音(かみしらさわけいね)』人里の守護者である半獣であり、同時に寺子屋を営む教師でもある。

幻想郷の強者は基本的に皆何かしらの能力を持っているが、彼女の力は『歴史を食べる程度の能力』である。

 

「毎年恒例のあれよ」

「ああ、あれか」

「ええ、それで用ってのは」

「構わん、里の有力者には私の方から話しておこう」

「話が早くて助かるわ」

 

彼女は教師だけあって話の理解が早い。

幻想郷の者はほとんどが話を聞かないので、霊夢としては彼女のような存在は非常に助かる。

 

「ねぇ慧音、今この里に誰か来てる?」

 

霊夢が尋ねる、誰かというのはもちろん各勢力の誰かである。霊夢は己の隠れた目的を遂行するつもりのようだ。

 

「いや、今のところ誰かが来ていると言う話は無いな。昨日だったら来てたんだが」

「誰が来てたんだ?」

 

 

 

 

 

 

「紅魔のメイドだ」

 

 

 

 

 

((咲夜か...))

 

 

 

紅魔のメイドと言われて、二人の頭に浮かぶのはこの幻想郷で数少ない人間の強者である。それを聞いた魔理沙は少しあごに手を当て考え込む。

しばしの間、霊夢は慧音との世間話をする。

 

「最近どうなの寺子屋の方は」

「そうだな、生徒も増えたし私も生徒の元気に負けないよう頑張らねばと思っている」

「頑張るねぇ...」

 

 

「....よし!霊夢!」

 

 

 

突然魔理沙が何かを決めたように声を出した。

 

 

「次の目的地は紅魔館だ!」

「そういうと思ったわ」

 

 

ここに次の目的地が決まった。霊夢は止めはしない、どうせした所で無駄なこと、なぜなら霧雨魔理沙は幻想郷の話を聞かない人物の筆頭なのだから。

 

「紅魔館に行くのか、気をつけてな」

「あぁ、情報提供感謝するぜ」

「そうだ、紅魔館に行く途中でチルノに会ったら伝えてくれ『今日の宿題を出さないものにはプレゼントがある』と」

「任されたぜ!行くぞ霊夢!」

「はいはい」

 

霊夢は思う、慧音の能力は『歴史を食べる程度の能力』ではなく『頭突きをする程度の能力』ではないか、と。

 

されたわけでもないのに頭が痛む気がする。

里の教育者の愛のムチは博麗の巫女をも恐れさせるもののようだ。

 

 




まだ全然キャラの個性を出せない、次回からはきっと。。。(;`皿´)グヌヌ


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紅魔にて

幻想郷にある霧の湖の畔にそれはそれは紅い館が建っていた。

吸血鬼が住むと言われるその館の名前は『紅魔館(こうまかん)

 

そんな紅魔館で、今日も一日が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館のメイド『十六夜咲夜(いざよいさくや)』は紅魔館にいる全ての従者を取り纏めるメイド長である。

メイド長の朝は遅い、なぜならこの館の主人は吸血鬼であるからだ。

主人が起床するのは日が落ちるころ、メイド長である彼女はその前に起床し、館の掃除と食事の準備をする。

主人の部屋に入るわけにはいかないが、部屋の前に仕掛け(・・・)を施す。

 

彼女が次に出向いたのは館にある大図書館と呼ばれる、主人曰く親友である魔法使いが管理する場所。

 

彼女が中に入るとすぐに一人の少女と思わしき人物が出迎える。

 

「あっ、咲夜さん!お疲れ様です」

「お疲れ様、こぁ」

 

少女の者の名前は『小悪魔』館のほとんどのものからはこぁ、と呼ばれている。

 

「あら咲夜、もう起きたのね」

 

図書館の奥の方から女性の声がする。

 

「おはようございますパチュリー様」

「私にとって今は夕方なんだけど」

 

咲夜の挨拶に渋い顔で答えた彼女こそ、紅魔館の主の親友(主人談)にして図書館を管理する魔法使い、『パチュリー・ノーレッジ』である。

 

「レミィは起きたの?」

「はい、もうすぐかと」

 

「 「 「ドンッッ」 」 」

 

その時轟音が館の中に響く。

それと同時に館に濃密な妖気が充満する。

 

 

「お目覚めのようです」

「はぁ~、今日という一日がまた始まるのね」

「ブルブルします~~....」

「いい加減慣れなさいよ」

「でも~....」

「さあ、私たちの主人をで迎えに行きましょう」

「私にとってレミィは主ではないのだけれど」

 

小悪魔は不安そうに。

パチュリーは面倒くさそうに。

咲夜は少し嬉しげに。

 

主の下へと向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館 正門

 

「お、お嬢様がおきたようですね」

 

一人の女性の前に何匹かの異形の者達が集まっている。

 

 

「うーん、今日のごはんは何でしょうか。「グ~~」おっといけない」

 

彼女はそれを目の前にして今日の晩御飯を想像し、腹を鳴らす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館 地下室

 

 

「あら、起きたのね」

 

一人の少女が音に気づく。

少女の背中にはキラキラと光る宝石のようなものが付いた羽がある。

 

「『お姉さま起床なう』っと」

 

少女の笑い声が壁に冷たくコダマする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館 主の部屋

 

 

紅魔館の主の部屋であるはずの場所はめちゃくちゃになっていた。

というのもドアにワイヤートラップが仕掛けられていたからである。

 

凄まじい惨状の部屋に一人の少女が立っている。

 

 

 

「ふふふ...見える...見えるぞ!」

 

少女の目の前には壁に空いた巨大な穴、日が沈み月が出てきている空が見える。

 

 

「うむ!今日もいい天気だ!」

 

 

少女の高笑いが紅魔館の外に響く。

 

 

 

 

 

 

「ふう、やっと着いたぜ」

 

「まったく、チルノも面倒くさくなったものね」

 

「ほんとだぜ、まさかあんなことをしだすとは」

 

 

 

紅魔の館に少女が二人

 

 

 

いつもとは違う、今日の始まり。

 

 

 

 



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紅魔にて2

紅魔館の食堂に人影が入ってくる。

 

「はあぁぁ〜お腹すきましたぁ〜」

 

彼女の名は『紅美鈴(ほんめいりん)』この紅魔館の門番を務める妖怪である。彼女はチャイナ服というものを着ており、本人曰く中国妖怪であるとのことだが、その正体は定かではない。

 

「お疲れ様美鈴」

 

その次に入ってきたのはパチュリーと咲夜である。

 

「お疲れ様です、パチュリー様。あ、咲夜さんもおはようございます。」

「おはよう美鈴」

「あれ、小悪魔ちゃんは?」

 

美鈴が姿の見えないパチュリーの使い魔の所在を聞く。

 

「こぁなら妹様の部屋に料理を運んでいったわ」

「あれ、珍しいですね。咲夜さんが持っていかないなんて」

「今日はお嬢様のお目覚めがいつもより早かったのよちょっと準備のために代わりにこぁに行ってもらったわ」

「なるほどですね」

 

咲夜の答えに納得したように美鈴が頷く。

 

「ところで問題のレミィ本人はまだ来てないのね...」

「あれ、パチュリー様お嬢様に早く会いたいんですか?」

「そういう訳じゃないわよ....」

 

パチュリーのつぶやきを美鈴は聞き逃さない。

 

と、パチュリーを美鈴がからかっていると、

 

「おはよう誇り高き紅魔の諸君!主様のお目覚めだ!...ところで咲夜今日の飯は...『ガキィィイィンッ』」

 

扉をぶち破る勢いで入ってきた一人の少女の言葉は金属同士がぶつかるような音に阻まれる。

 

「今日のご飯はそちらになります、お嬢様」

 

「ふむ...『ボキッ』...今日の飯は...『バキッ』銀製のナイフ...『ボリッボリッ』...程よい歯ごたえに舌がピリッとする刺激...『ゴクン』...うむ、美味い!」

 

お嬢様とよばれた少女は口で受け止めたナイフを、何の問題もないように噛み砕き、咀嚼する。

やがて出てきた感想は美味の言葉。

彼女こそ、吸血鬼にして魑魅魍魎の集まる紅魔館の主、『レミリア・スカーレット』である。

 

そんなレミリアの感想に応える様に咲夜もお辞儀をし、

 

「お気に召された様で、(わたくし)としましても嬉しい限りでございます。

 

 

 

 

 

 

ではおかわりを

 

 

 

 

 

 

瞬間、レミリアの周りに無数のナイフが現れる。

 

 

「はっはっはっ!!..今日は..『ガキッ』...何だか...『バキッ』...いい日になりそうだから.....『ボキッ』」

 

次々に現れるナイフ、レミリアは笑いながらそれら全てを時には手で掴んで、時には直接、その鋭利な牙で噛み砕いていく。

飛び散るナイフの欠片が証明に反射し、その姿はまるで光り輝くステージで踊っているようにも見えた。

 

「しっかり食べて体力をつけねば...な!!..『パシッ』」

 

最後の一本を手でつかみとり。人が爪楊枝を扱うように器用に歯の隙間を掃除している。

 

「しかし咲夜、私はお前の手料理も食べたいぞ」

 

咲夜は全く問題無さそうなレミリアに嬉しそうにしながら声をかける。

 

「しかしお嬢様、私の手料理はすでに...」

 

と、レミリアが咲夜の指し示す方を見ると。

 

「ふぅ〜、お腹いっぱいです〜」

「・・・・・・・」

 

さっきのやり取りの間に美鈴の前に大量の皿が積まれている、ちなみにパチュリーの前には皿は積まれていない。こころなしか、パチュリーの持つフォークが震えている。

 

「むっ、また美鈴が全員分食べてしまったのか...はっはっ!食べ盛りで何よりだ!」

 

レミリアは美鈴の見事な食いっぷりに満足しているようである。しかし、納得のいかないものもいる訳で

 

「何よりだ...じゃねぇぇええええっ!!!」

 

パチュリーがフォークを持ったまま慟哭をあげる。

 

「む、どうした我が親友パチェよ!」

「親友じゃねぇ!んなことより、私の食べ物はどこにあんだ!」

「だから美鈴が全て食べたと言っているだろう?」

「ふざけんじゃねぇ!また今日も私の食べる分はこれだけか!?」

 

パチュリーがフォークで指す場所にはポツンと1枚のハムが皿の上に置いてある。

 

「美味しいじゃないかハム、何が問題なんだ?」

「〜〜〜〜〜〜っ!!!!」

 

パチュリーが言葉にならない叫びをあげる。

 

「そうですよ〜ハムでいいじゃないですか、ハムチュリー様、なんつって」

 

美鈴がそう零すとパチュリーは無言になる、『あ、やべっ』と美鈴が思ったのもつかの間、パチュリーの前に魔法陣が出現する。

 

「よ〜し、じゃあハムでいいわ...ただし...

 

 

 

 

お前をスライスしてハムにしてやるがなぁぁぁぁああっ!!!

 

 

 

 

魔法陣から剣の形をした光が出てきて、美鈴を襲う。

 

「ひぃぃい〜〜!!パチュリー様が人喰いになった〜〜!!」

 

『美鈴って人じゃないわよね』と咲夜は思いつつ敬愛する主を伺う。主はその光景を見て満足そうに大笑いしている。スキだらけだ、いけるか、

 

「なぁ、咲夜」

 

「っ!?なん、っでしょうかお嬢様?」

 

気づかれていたようだ。

 

 

「今日は客がくるぞ」

 

客?客ならいつも紅魔館の門前で美鈴が処理しているではないか、と咲夜は思う。

 

「違う違う、特別な客だ。もてなしの準備をしておけ」

 

なるほど合点がいった。あいつらが来るならそれはしっかりとおもてなしをしなければいけない。

 

「かしこまりましたお嬢様、この咲夜の名にかけて」

 

咲夜の姿が消える。もてなしの準備をしに行ったのだろう。

 

未だ騒いでいるパチュリーと美鈴を見ながらレミリアはくくっと笑う。

 

「やはり今日はいい日になりそうだ....よし、私も混ぜろ!!」

 

レミリアは来客を待つ。

 

 

 

 



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紅魔にて3

『よくきた、幻想郷の巫女よ。お前は私を殺せるか?』

 

『何言ってんの?私はこの異変の元凶であるアンタを、ぶちのめしてさっさと終わらせたいだけ』

 

『じゃあ私はお前を殺す気でいこう、そうせざるを得ないほどに』

 

『だから、私はアンタの命なんか』

 

『だからこそ、私はお前に殺して欲しい』

 

『...まぁ、いいわさっさとやるわよ』

 

『クックック...』

 

 

 

 

 

 

 

 

『よく、ここまで一方的にやるもんだ!さあ、巫女よ!もっとやろう!』

 

『...さっさと負けを認めなさい』

 

『認めているさ!

 

お前は私を殺せるだろう!

 

だったら私はやり続けるまでだ...

 

お前が私を殺すまで!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故殺さない?』

 

 

『最初に言ったでしょ、私はアンタの命なんか欲しくないの』

 

『....ならば今回は引くとしよう、いつか私を殺してくれることを楽しみにしているぞ』

 

『はぁ、なんか勝った気がしないわ』

 

『クックック...よく言われるよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館の門前に降り立った二人の少女、霊夢と魔理沙。

 

日はとっくに暮れている。

 

「結局夜になっちゃったじゃない、もう帰りたいんだけど」

「おいおい霊夢、ここまで来て帰るわけにはいかないだろう」

「そもそもなんで私が...」

 

霊夢がぶつぶつと文句を言い始めたので魔理沙はさっさと紅魔館に入ることにした。

 

「たのもー!」

「その挨拶はどうなの?」

 

 

魔理沙の声が門に響く。

 

「いらっしゃいませ」

「うわっ!」

 

魔理沙の目の前に咲夜が現れる。

 

「びっくりしたぜ、咲夜〜いい加減それビックリするからやめてくれよ」

「魔理沙こそいい加減慣れて欲しいわ、霊夢を見なさい」

「・・・」

「む〜、なんか悔しいぜ!」

「うふふ、さあお嬢様がお待ちよ、入りなさい」

「何の用かは聞かないのね」

「聞くだけ無駄よ、お嬢様がもてなすと言った以上、刺客でももてなすのが紅魔館流よ」

「ほんと不思議な館だわ...」

「ふふっ...よく言われるわ」

 

咲夜と話をしながら紅魔館の扉を抜ける。

抜けた瞬間紅魔館の外でも感じていた妖気がさらに濃密に襲いかかる。

 

「フハハハハ!よく来たな!」

 

扉を開けてエントランスに置いてある椅子に座り、ふんぞり返っていたのはレミリア、入口に主がいるというのは館としてどうなのかと霊夢は問いたかった。

 

「まあ、よいではないか。吸血鬼の気まぐれだ」

「アンタの気まぐれでいきなりあてられるコッチの身にもなりなさいよ...」

 

ナチュラルに思考を読むことには触れず、隣で固まってしまった友人を見ながら霊夢はため息をはく。

 

「ほら、魔理沙起動しなさい!」

「あいてっ、べ、べつにビックリしてねーし!!」

「はっはっは!」

 

魔理沙を叩いて再起動させた霊夢を見てレミリアは笑い声をあげる。

 

「ま、それは置いといてさっさと用をすませるわよ」

「花見の誘いか、もちろん喜んで参加させてもらおう」

「話が早くて助かるわ、さ、魔理沙帰るわよ」

「え?あ、あぁ...」

「まあ待て、折角きたんだ少しばかり話をしていってもいいだろう?」

「私たちはまだ行くべき場所があるの、こんな所で止まってられないわ」

「ふむ、なるほど..ならば一つ賭けをしよう」

「賭け?」

「あぁ、私が勝ったらゆっくりしていってもらおう」

「私たちが勝ったら?」

「神社に一週間程咲夜をやろうじゃないか、家事全般は任せれるぞ」

「...2週間」

「ふむ、いいだろうでは「まてまて!」む?」

「私完全に置き去りじゃねーか!咲夜も神社に行く準備をしてくるって言って部屋出て行ったしよ!」

「魔理沙には図書館の本をやろう」

「よし、何の勝負だ?」

 

レミリアはパチュリーに許可をとっていない、そもそも親友なのだからとる必要も無いだろうと思っている。

パチュリー本人が聞いたら発狂するだろうが。

 

「なに、簡単な賭けさ。サイコロを振ってどっちが数が多いかのゲームだ」

 

これを聞いた魔理沙、スグに顔をしかめる。

 

「おい、それってお前が能力を使ったら勝てるわけねえじゃん」

「いや、私はこの勝負では能力は使わない。スカーレットの名にかけよう」

「まあ、そこまで言うんなら、リスクもあんまり無いしな」

 

プライドの高いレミリアが名をかけたのだ、まさか能力を使うことはないだろう。と魔理沙は思い、サイコロを手に取る。

 

「おっしゃあ!いくぜ!」

 

魔理沙が勢いよくサイコロを投げる、転がったサイコロは転がり、やがて6の目で止まった。

 

「っしゃあ!これで負けはないぜ!」

「なかなか運を持ってるじゃないか、それじゃ、ふんっ!」

 

レミリアも勢いよくサイコロを投げる

 

レミリアの豪腕から放たれたサイコロは人の目では追えない程のスピードをもって床に向かう。

 

決してサイコロと床が立ててはいけないような衝撃が発生し、粉砕された床の破片が舞う。

 

衝撃に目を閉じた魔理沙が次に目にしたのは

 

「な、なんだこれ...」

 

弾け飛び、2から6の目が全て見えるサイコロだったものである。

 

「ふむ、20か、1が出なかったのは悔しいがまあ、勝ったから良しとしよう」

「おいおい、それはないぜ!そんなんズルじゃねーか!」

「なぜだ?運も実力のうちと言うだろう?ならばこれしきの運、実力で掴み取らねばな」

「そんな理屈通るか!とにかくこの勝負はなしにしてもう一回だぜ!さあ、レミリアお前からサイコロを振れ!」

「ふう、仕方ないな」

 

そういってレミリアはサイコロを振る、普通に転がったったサイコロは2の目を出した。

 

「よし、これなら勝てるぜ!」

 

そう言って魔理沙が振ったサイコロは勢いよく転がっていく。

 

「よしっ、こい!」

 

そうして止まったサイコロの目は...

 

「っ、あ〜〜〜っ!!」

 

「フハハハハッ!!」

 

高笑いするレミリアと項垂れる魔理沙、勝者が決まった瞬間である。

 

 

ちなみに霊夢はその横でサイコロを転がし、6の目を連発して、ため息をついていた。

 

 

 



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