星の守護者、来たれり (帰灰燼)
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最初の一歩

 

 

 

 

「え……っと、〈876(バンナム)プロ〉はこのビルだったよな……ああ、あったあった」

 

 

知り合いから書いて貰った地図を片手に、俺は雑居ビルの窓にテープでデカデカと貼られた「876」の数字を発見した。

 

876プロダクション。

 

弱小ながら個性的な三人のアイドルを抱える、今注目の芸能プロダクションだ。

 

そして、今日俺がこれから面接を受ける会社でもある。 ……と言っても、別にアイドルになりに行く訳じゃない。

 

所属アイドルが増えた事もあり、物騒だからと警備員を増やす事にしたらしく、その募集に俺が応募したのだ。

 

自慢じゃないが、こう見えても腕っ節はそんじょそこらのチンピラなら束になって襲ってこようが問題無く対処出来る自信はある。

 

それに、俺はとある事情で高校を三年の半ばで中退する羽目に陥っており、学歴の問題で真っ当な職に就けないという事情もある。

 

そんな訳で、この面接は是非とも合格して、とりあえず手に職を付けたい訳だ。

 

 

「さて、面接は何処で……あっ、すいませーん!」

 

「は、はい!?」

 

 

雑居ビルの前で「876プロダクション警備員面接の方はこちら」というプラカードを掲げた、メガネが特徴的なオドオドした女性に声を掛け、面接が行われる876プロの入っている階へ案内して貰う。

 

 

「じゃあ、こちらの部屋でしばらくお待ち下さい」

 

「あ、はい。 ありがとうございます」

 

「いえ。 あ、確認したいのでお名前を教えていただけませんか?」

 

「あ、そうですね。 〈観堂〉、と言います」

 

 

俺がそう名乗ると、メガネさんは手に持っていたファイルを目を通して軽く頷く。

 

 

「はい、確認しました。 それでは」

 

 

そう言い残し、メガネさんは部屋を後にした。 ……あ、名前聞き忘れた。

 

まあ、後でいいか。

 

そんな事を考えていると面接が始まったらしく、同じ部屋に居た面子が次々とメガネさんに呼ばれて退出していく。

 

そして、俺の番が来た。

 

 

「へえ、岡本さんって俺より年上なんですね」

 

「そ、そんなに幼く見えますか?」

 

 

メガネさんーー〈岡本 まなみ〉さんと談笑しつつ会場へと向かう。

 

見た感じ女子大生かと思ったのだが、二十代半ばだと言う。

 

生来の押しの弱い性格が災いし、中々仕事で成果を出せないのが悩みらしい。

 

そんな事を話している内に、面接会場となる部屋に辿り着いた。

 

 

「それでは、本日は頑張って下さいね」

 

「ありがとうございます。 それじゃ」

 

 

そう言って部屋に入ろうとすると、岡本さんは俺の手を取り真顔でこう言った。

 

 

「本当に、頑張って下さいね! 多分、取って食われないとは思いますから! 御武運を!」

 

 

そう言い残し、何度もこちらを振り返りながら岡本さんは去っていった。

 

 

「……えーと……」

 

 

え? なに? そんなに怖いの、ここの試験管?

 

多少及び腰になりながらも、改めて部屋へと入る。

 

すると、試験管席に着いていたのは……こう言っちゃ失礼だが、こんな弱小プロダクションには似つかわしくない程の大物オーラを纏った中年女性だった。

 

その隣には、パッと見て「ヤ」の字が頭に付く自由業にしか見えないコワモテの男性が座っている。

 

……なんか、本当に取って食われそうなくらい怖いんですけど。

 

 

「ほ、本日面接を受けさせていただきます、観堂です!」

 

 

せめて気後れはしまいと、背筋を伸ばして挨拶。

 

それに対し、面接官の女性は冷徹な目でこう名乗った。

 

 

「観堂君か。 本日、君の面接を務めさせて貰うーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「美城だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いきなりラスボス降臨



因みに、物語の展開上意図して設定を変更する場合もあります

ご了承下さい


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無茶振りはブラック企業のお約束

 

 

 

 

「〈島村 卯月〉、17歳です。私、精一杯頑張りますから、一緒に夢叶えましょうね♪」

 

 

サイドを結んだロングの少女が輝く笑顔で、

 

 

「〈本田 未央〉15歳、高校1年生ですっ! 元気に明るく、トップアイドル目指して頑張りまーっす!」

 

 

外ハネショートの少女が弾ける笑顔で、

 

 

「ふーん、アンタが私のプロデューサー? ……まあ、悪くないかな…。 私は〈渋谷 凛〉。 今日からよろしくね」

 

 

黒髪ロングの少女が素っ気なく、

 

 

「ようこそ、〈346プロダクション〉へ。 私は今日から貴方の上司を務めさせて戴く〈武内〉と申します。 どうか宜しくお願いします」

 

 

一週間前に俺を面接した強面の男が名刺まで差し出しつつ物凄く丁寧に、それぞれ自己紹介する。

 

 

「は、はあ……って、今俺の事何つった?」

 

 

聞きなれない肩書に黒髪ロングに聞き返してみるも、

 

 

「プロデューサー、だけど?」

 

 

真顔で返された。

 

WHY? といった表情で振り向いてみるも、

 

 

「そうだな、改めて自己紹介させて貰おうか。 今日から君達の上司となる〈美城〉だ。 君も自己紹介するといい」

 

 

いや、この状況説明して欲しいんですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと記憶を整理しよう。

 

といってもざっとしか覚えてないけど、まずは一ヶ月程前。

 

俺は美城と名乗った女性面接官と武内と名乗った男性面接官相手に、如何に自分が警備員として有用かアピールした。

 

自慢じゃないが、俺は高校に入ってから腕っ節でそんじょそこらのチンピラに負けた事は一度も無い。

 

また、人に教えるのもそれなりにこなせ、「先生」と呼んで慕ってくれてる奴も何人か居たりする(まあ、その殆どが俺に喧嘩を売ってきた元チンピラだったり拉致紛いの強引なナンパに興じてた元チャラ男だったりするんだが)。

 

そんな事を至極正直に答えていると、美城と名乗った女性が一枚の紙を差し出してきた。

 

 

「ご苦労だった。 これで今日の面接は終了だ。 一週間後、そのメモに記された住所まで来るといい」

 

 

そう言い残し、二人は退出した。

 

 

「……あれ? 普通こういう時って俺が退出するんじゃ……まだ面接受ける奴残ってたよな?」

 

 

違和感に首を傾げていると、岡本さんが呼びに来たのでとりあえず帰る事にする。

 

 

「じゃあ、今日はこれで。 もし受かったらよろしくお願いしますね」

 

「はい。それでは」

 

 

岡本さんの見送りを受け、876プロを後にする。

 

ただ、去り際に、

 

 

「観堂さんならきっと受かります! ですから、頑張って下さいね! お元気で!」

 

 

と励まされたのが妙に心に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一週間後。

 

俺は、メモに記された住所まで来ていた。

 

 

「……えーと、ここで間違いない……よ、な?」

 

 

俺の不安も無理も無いと思うんだ。

 

何せ、目の前にあったのは城と見紛うばかりの馬鹿でかい建物なんだから。

 

勿論、876プロの入ってた雑居ビルとは比べ物にならない。

 

 

「……つっても、いつまでもここで突っ立ってる訳にもいかないしな……ええい、当たって砕けろ!」

 

 

意を決して中に入ってみるも、

 

 

「あ? 呼ばれたから来た? 下手な嘘つくんじゃねえよ、帰れ帰れ」

 

 

入り口にいた警備員にメモを見せた途端破り捨てられた。

 

てか、随分とガラの悪い警備員だなおい。

 

 

「いや、確かにここに来いって言われたんですけど……」

 

「うるせえな、さっさと帰らねえと警察を呼ーー」

 

 

 

 

「観堂君か。 良く来てくれた」

 

 

 

 

警備員の台詞を遮るように背後から声が掛かった。

 

 

「えっと……美城さん、でしたよね?」

 

「そうだ。 良く覚えていたな」

 

「いや、まだ一週間しか経ってないですし……ところで、何でここに呼び出したんですか?」

 

 

その問いに、美城さんは当然といった顔でこう返した。

 

 

「面接に決まっているだろう。 付いてくるといい」

 

 

そう言って、答えを待たず歩き出す。

 

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! そいつ、不審者ですよ!? 呼ばれたとか言って変なメモまで自作して、ここに進入しようとしたんです!」

 

 

去ろうとする美城さんの背中に向かってガラの悪い警備員が叫ぶ。

 

だが、美城さんは警備員を一瞥すると、

 

 

「不審者? 彼は紛れも無く私が呼んだ。 私の書いたメモも待たせていた筈だが?」

 

 

その言葉に警備員が固まる。

 

 

「あー……それならさっきその警備員に破かれちゃいまして。 ほらこれ」

 

 

ダメ押しとして元メモだった紙吹雪を美城さんに見せると、警備員の顔が某ガミラス帝国総統のように青褪める。

 

 

「いや、あのっ! それはっ!!」

 

 

慌てて取り繕う警備員に向かって、

 

 

「今度の査定を楽しみにしているといい」

 

 

そう言い放つと、美城さんは真っ白に燃え尽きた元警備員を尻目に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、〈今西〉と名乗る初老の男性面接官との面接でもしっかり警備員アピールをしておいた。

 

俺が自分の事を語る間、今西さんはにこやかに頷いていたのでとりあえず好感触だったと思う。

 

そして、面接が終了して退出する際、今西さんからこんな事を言われた。

 

 

「君は実に面白いね。 君が我が346プロに来てくれるのを楽しみにしているよ」

 

 

その言葉に、内心ガッツポーズしながらも礼儀正しくありがとうございますと返して部屋を後にした。

 

だからこそその場では気付かなかったのだろう。

 

今西さんは確かにこう言っていた。

 

「346」プロ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから二週間後、つまり今日。

 

「346プロ」からの合格通知を手に、俺は改めてあの馬鹿でかい建物へと足を運びーー〈千川 ちひろ〉と名乗った三つ編みがキュートな事務員に案内された部屋にてさっきの自己紹介と相成った訳だ。

 

 

「あの……ちょっと説明して欲しいんですが。 俺、確か警備員の面接でここに来た筈なんですけど」

 

「ああ、そうだったな。 悪いが、私の独断で志望先を変えさせて貰った」

 

「何故に!?」

 

 

あまりに酷い台詞に、思わず頭を抱える。

 

 

「申し訳ありません。 実はーー」

 

 

武内さんの話によると、美城さんーー美城常務と共にとある仕事の話で876プロに赴いた際、偶然面接に来ていた俺にとある「素質」を感じた武内さんが美城常務に直談判し、美城常務が直々に面接した結果876プロに交渉し「実質まだ面接を受けてないから」と346プロの方で引き取る事で話を付けたらしい。

 

その「素質」というのが、人の才能を見抜きその資質を引き出すーープロデューサーとしての素質という訳だ。

 

 

「すいません、私の方で説明するべきでした」

 

「いや、私も説明不足だった。 すまない」

 

 

二人掛かりで頭を下げられ、思わず溜息がついて出る。

 

 

「はあ……もういいですよ。 けど、プロデューサーといっても何をすればいいのか……」

 

 

その呟きに、背後から初老の男性の声が返ってくる。

 

 

「そうだね、先ずはーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー君の眼力を見せてくれないかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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キノコのこの子可愛い子

 

 

 

 

何故、こうなったんだろう。

 

私はただ、「トモダチ」と静かに暮らしていたいだけだったのに。

 

 

「う、うう……」

 

 

ココは、私の居場所じゃない。

 

ココでは、私は「不協和音」だ。

 

 

「……ふ、フヒ……」

 

 

汗が吹き出す。

 

動悸が乱れる。

 

息が詰まる。

 

 

「……う…うっ……」

 

 

誰か、助けて。

 

誰も、来ないで。

 

誰か。

 

誰も。

 

だれか。

 

ダ レ カ ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーいや、何やってんだよ」

 

「フ、フヒィッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「スカウトったって、どうすりゃいいんだよ……」

 

 

眼力を見せてくれないか。

 

今西さんーー俺が配属される部署の部長の言う事には、武内さんはまだしも、人を見る目が相当厳しい美城常務までも認めたという俺の資質を確かめてみたいらしい。

 

それで、まずはプロデューサーとして最も必要とされる「人を見る目」を、俺がどんな女の子をスカウトしてくるかによって試そうという事だ。

 

 

「あの人、温厚な顔して実はドSだろ……大体、アイドルの資質なんて素人が見て判る筈がーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーぅーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー何処だ?」

 

 

ボヤきながら歩いていた俺の耳に、雑踏の中、微かに女の子の呻き声が飛び込んでくる。

 

 

「……近いな。 随分と怯えてるみたいだけど、怪我でもしてるのか?」

 

 

ひょっとしたら、悪質なナンパから逃げ出してきたのかも知れない。

 

だったら、早く保護した方がいいだろう。

 

そう決まれば、後は行動に移すだけだ。

 

 

「よっーーと!」

 

 

行き交う人混みや車の邪魔にならないよう、一呼吸で歩道から道路の向こう側まで跳躍。

 

呻き声の聞こえた場所ーー薄暗い路地裏へと急ぐ。

 

着地した際、如何にもガラの悪そうなグラサンパンチのおっさんが化け物でも見るような目で見てきたけど、なんか変な事でもしたか俺?

 

 

「ここかーーって……いや、何やってんだよ」

 

「フ、フヒィッ!!?」

 

 

路地裏を覗き込むと、小柄な女の子がゴミ箱の裏で何かを抱えて蹲っていた。

 

どうやら怪我や疲労の類は無いようだ。

 

 

「フ、フヒ……な、何か用かな……?」

 

 

臆病な性格なのか、こっちを思いっきり警戒している。

 

 

「いや、こんな所で蹲ってたら俺じゃなくても声かけるだろ。 ーーそれ、何持ってんだ?」

 

「フヒ!? い、いや、別に怪しいモノじゃない……」

 

「そんなに警戒しなくても取りゃしないっての」

 

 

まあ、いきなり身長182cmもあるゴツい男が話しかけりゃ、警戒するのも無理無いか。

 

 

「……本当に、取ったりしないか?」

 

「ん? ああ、俺は別に引ったくりじゃないし」

 

「……本当か?」

 

「ああ」

 

 

と、ややあって女の子が大事に抱えていた何かを見せてくる。

 

 

「……キノコ?」

 

 

それは、植木鉢一杯にビッシリ生えたキノコの鉢植だった。

 

 

「……私の、トモダチ……」

 

 

いや、そんな事言われても返答に困るんだが。

 

 

「……とりあえず、場所を変えないか? ここじゃ落ち着いて話せないし」

 

「……ここで、いい。 人混みは……苦手、だ……」

 

 

俺の台詞に、「トモダチ」を抱き締めながら縮こまる。

 

 

「だからって、ほっとく訳にもいかないんだよ。 特にここは色々とヤバい奴等もうろついてるしな。 俺が信用出来ないのはわかるけど、せめてここからは離れようぜ?」

 

 

よくよく見てみると、この女の子結構可愛いし、このまま路地裏にほっといたらタチの悪い奴等に連れ去られかねないんだよ。

 

そんな俺の願いが届いたのか、女の子が俺の方をじっと見つめてくる。

 

 

「……人の少ない所なら、一緒に行く……」

 

「決まりだな。 ほら」

 

 

手を取って立たせると、女の子は俺の陰に隠れるように付いてくる。

 

さて、どうしたもんか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

道すがら、女の子から事情を聞く。

 

名前は〈星 輝子〉。

 

見た所142cmの小柄な体格だが、こう見えて15歳らしい。

 

というか、良く見ると服から覗く手足も折れそうなくらい華奢だし、肌も病的なくらい白い。

 

腰まで届く髪も白に近い銀髪だが、これは生まれつきらしい。

 

何でも、人付き合いが苦手で、目を合わせると上手く喋れない為、人間の友達は全然居ないそうだ。

 

その為、休日は専ら趣味の「トモダチ」の世話に没頭しているらしく、そのせいで益々口下手になり、更に人付き合いが苦手に……といった、本人曰く「ボッチのスパイラル」に陥っていたらしい。

 

 

「まあ、気持ちはわからないでも無いけどな。 入学初日とかで友達作るのに失敗するとそのまんまズルズルと孤立しがちだし」

 

「フヒ……そ、その通り……」

 

 

何処か嬉しそうに頷く星。

 

だが、そんな彼女にも最近よく話しかけてくるクラスメイトがいるらしい。

 

 

「ちょっと、気は強いけど……凄く可愛くて、周りをグイグイ引っ張っていく魅力のある子……羨ましい……」

 

 

途切れ途切れの説明を要約すると、要は「イジメっ子グループのリーダー」といったイメージの子のようだ。

 

ただし、その子本人はイジメを酷く嫌っており、自分の取り巻きが他人を虐めている現場を見かけようものならそれこそ烈火の如く怒るらしい。

 

星もそんな感じでその子と知り合って以来、妙に話しかけられるようになったそうだ。

 

今日、学校の休校日を利用してこの街に遊びに来るのを持ちかけてきたのもその子らしい。

 

しかし、前日になって急にその子に急用が出来てしまい、「さっさと終わらせて合流するから、先に行って待ってて!」と取り巻きの一人を案内役として付けてくれたらしいが、駅に着いた所で案内役が姿を消してしまい、人混みから逃げるように路地裏に迷い込んだ所で俺が話しかけた、という訳だ。

 

 

「何ともまあ……大体、いきなり何で街に繰り出そうって話になったんだよ?」

 

「フヒ……女の子なんだから、ちゃんとオシャレした方がいいって言われて……服を選びに……」

 

「なるほど。 まあ、確かに星は可愛いしな」

 

「フヒッ!? わ、私が可愛い訳無いだろ!」

 

「いやいや、贔屓目に見てもかなり可愛いぞ。 その服も似合ってるし」

 

 

俺の台詞に、星は赤くなりながら俯いてしまった。

 

 

「フヒ……あの子と、同じ事言うんだな……ちょっと、嬉しいかな。 これ、母さんが前選んでくれた服だから」

 

 

どうやら、親御さんとの仲は良好のようだ。

 

 

「よし、着いたぞ」

 

「……う……こういう、リア充空気の漂ってるエリアは……苦手……」

 

「リア充空気って……」

 

 

辿り着いた場所は、346プロに併設された喫茶店〈346カフェ〉。

 

とりあえず、ここなら星のクラスメイトが見つかるまで落ち着いて休んでいられるだろう。

 

そんな事を考えていると、ウェイトレスが注文を取りに来る。

 

 

「お帰りなさいませ、ご主人様☆ ご注文は何になさいますか?」

 

 

……ここってメイド喫茶なのか?

 

 

「いえいえ、ナナがメイドとして働く許可を貰ってるんです。 あれ、その社員証……もしかして、今日から入社するっていうプロデューサーさんですか?」

 

「ん? ああ、そうだけど……君は?」

 

 

その問いに、ウサミミのようなでかいリボンを付けたメイド少女は完璧な振り付けと共に名乗り出した。

 

 

「よくぞ聞いてくれました! 歌って踊れる声優アイドル目指して、ナナはウサミン星からやってきたんですよぉっ! キャハッ☆ メイドさんのお仕事しながら夢に向かって頑張ってまーすっ!」

 

 

……え? は? う、ウサミン星?

 

 

「えっと……つまり、君は地球人じゃない、と?」

 

「え"っ!? そ、そういう事になりますね!」

 

「なるほど……」

 

 

流石老舗芸能プロ、まさか宇宙人まで在籍しているとは……格が違ったぜ。

 

 

「フヒ……なんか、変な勘違いをしてる気がする……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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