スパロボVで頑張る (白い人)
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1ページ目 海が枯れた地球で頑張る

ゲームやってたら書きたくなりました。


 ○月○日

 本日、俺は頭がおかしくなったらしい。

 記憶喪失になったかもしれない可能性の事も考えて、今日から日記を書く事にしたんだが、普段はこういうのは書かないから中々難しいもんだ。

 さて、今日起きた事を簡単に書いてみよう。

 大学に行こうと目が覚めたら、何故か自室ではなく謎の病室で眠っていたのだ。意味が分からん。

 ここの人に話しを聞いた所、辺鄙な所で倒れていたらしい。更に意味が分からない。 

 

 

 ○月◎日

 俺が拾われた施設の代表の一人だと言う教授に話を聞いた。

 なんかとんでもない世界だと言う事が判明した。

 異星人に襲撃されて地球の海が干上がったとか、やばいんだけど……。

 どうしてこんな場所にいるんだ俺は……。

 

 

 ○月△日

 俺が拾われて数日経った。

 今、俺はこの施設で仕事を手伝っている。雑用だけど。

 そういえばここの施設名を聞いてきたが、ニコラ・ヴィルヘルム研究所という施設らしい。

 発明家ニコラ・テスラと精神学者ウィルヘルム・ライヒの名前から取られたらしいが、何か何処かで聞いた事がある名前である。

 なんだったっけか……?

 

 

 ○月▲日

 そうだ!テスラ・ライヒ研究所だ!

 スパロボOGなどで出てくる施設じゃないか!

 うーん、よく似た名前だが偶然なんだろうか。でも同じ偉人同士の名前をつけるとかピンポイントすぎじゃないかなぁ。

 えっ、何?ここにゲシュペンストがある。

 やっぱスパロボの施設じゃねーか!!

 

 

 ○月▽日

 なんと!ゲシュペンストに!!乗った!!!

 突然テンションが上がってすまない。いや、誰に向かって書いてるんだ、俺?

 とりあえずあれだ。教授と話してて、乗ってみたい事をさり気なく話したら二つ返事でいいよーと言ってくれたのだ。

 ありがとう教授!

 シミュレーションだけだが凄かった。うむ。

 

 

 ○月▼日

 今頃の話だが、ここは日本支部だと言う。

 なんでもアメリカ支部とドイツ支部にてヒュッケバインとグルンガストがそれぞれ開発中だという。

 ここにあるゲシュペンストは二機。話を聞くとタイプRとタイプSのようだ。

 一番最初に開発されたパーソナルトルーパーである。

 いやぁ、有名な二機に触れるとか感動するなぁ。 

 

 

 ○月□日

 今まで知らなかったがこの施設は第三特殊戦略研究所防衛隊とかいう所と隣同士でくっついてるらしい。

 世界がボロボロの為、使える施設は急速に減ってる為、こういう所が増えてきてるとかなんとか。

 という事で今日はお隣さんのお手伝いに行く事にした。俺みたいな素人が研究所の手伝いをしている時点で分かっていたが人不足は深刻らしい。

 一緒に手伝いをしてくれたのは如月千歳とかいう美人さんだった。

 その、なんだ、胸がでかくて目がそっちに行ってしまった。すまない。

 

 

 ○月■日

 今日は逆に如月さんが手伝いに来てくれた。

 いやぁ、俺一人だとやれる事が少ないから本当に助かった。

 で、手伝ってくれた如月さんなんだけど、ゲシュペンストに凄い興味があるみたいだ。

 後で教授に頼んでシミュレーションを使わせて貰えないから聞いてみよう。

 

 

 ○月☆日

 教授に頼んだら、一発でOKを貰った。

 如月さんにそれを話したら凄い喜んでくれた。美人さんに喜んでもらえて嬉しいな。

 筋も良いと褒められてた。

 うーん、俺も頑張ってみるか。

 

 

 ○月★日

 教授から聞いた話しだが、なんでもこの悲惨的な状況を打破する計画が進められているらしい。

 他職員さんからチラっとイズモ計画とか聞いたけど、それなんだろうか?

 

 

 ○月◇日

 本日も雑用をこなしながら、ゲシュペンストのシミュレーションで特訓中。

 タイプRはリアル系なだけあって、足が速く手持ち武器も多いんだけど、個人的にはタイプSの方がしっくりくる。

 必殺!ゲシュペンストパンチ!究極ゲシュペンストキック!

 ジェスさん、パットさん。貴方達が生み出した技を使えるなんて素晴らしいです。

 職員の人にドン引きされたけど。

 タイプSとはいえ、あそこまで無茶苦茶な使い方にびっくりしたそうな。

 ええい、誰でも使えるようにモーション登録してやる!

 

 

 ●月○日

 月からお客さんが来た。敵も来た。

 まずお客さんは叢雲総司さん。月面特殊戦略研究所防衛隊の隊員さんである。

 なんでもとある荷物を第三特殊戦略研究所に持ってくる為にやってきたのだとかなんとか。

 時間がある時に話したが、気のいい兄ちゃんって感じである。

 暫くこっちにいるそうなので、これからも会う事もあるだろう。

 敵は異星人であるガミラスの戦闘機。まぁ、適当に攻撃して帰って行ったからたいした被害はなかったようだが。

 しかしガミラス……どっかで聞いた事があるような……?

 

 

 ●月●日

 総司さんがこっちの研究所にもやってきた。

 どうやら一月ぐらい休暇を取ったんで暇だとか。

 適当にぐだぐだするのもいいが、実戦経験があるみたいなので訓練をつけてもらった。

 悪態をつきながらも付き合ってくれたのは本当に感謝である。

 

 

 ●月◎日

 遂に例の計画が発表された。

 なんでもこの激変した地球の環境を回復できるシステムがあるのだとか。

 しかしそれは16万8千光年も離れた場所に取りに行く必要だと言う。

 正直、どれくらい遠いのか全然想像つかないんだけど。

 だけど驚いたのはヤマト!宇宙戦艦ヤマトですよ。見た事ないけど、俺でも知ってる奴だわ。

 スパロボだと思ったら、ロボットじゃないとか想像もしてなかった。まぁ、テッカマンとかロボット以外にも出てるんだけど。

 まぁ、俺はヤマトに乗る予定はないんだけど如月さんはヤマトに乗りたかったようだが駄目だったらしい。

 総司さんは何か思う所はあるようだが、特に乗艦予定はなく俺達と一緒に見送りをするようだ。

 

 

 ●月△日

 ヤマトに乗った。拘束された。

 いや、まぁ、意味が分からない。

 

 

 ●月▲日

 無事に誤解が解けた。

 おかげでヤマトの一室を貰ったのでそこで日記の続きを書いている。

 先日あった事を纏める為に書いてみようと思う。

 まずあの日、ヤマトが発進する直前に異星人ことガミラスの襲撃があったのだ。

 何でも総司さんがやってきた日にあった襲撃は、ヤマトを確認する為だったとかなんとか。

 そして発進できてないヤマトを防衛する為に出撃したのが、休暇中だった総司さん。

 戦略研究所にあった新型機動兵器ことヴァングレイで防衛にあたったのだ。

 んで俺はと言うと何か出来る事はないかと思い、色々考えた結果、ゲシュペンストで出撃する事だった。

 敵の数は多くないし、防衛にあたるなら一機より二機の方がいいだろうと思っての事だ。

 教授達からの許可も貰いタイプRで出撃。ブーステッド・ライフルで狙撃に専念していたが結果は上々。被弾0で乗り越える事が出来た。

 総司さんからも褒められて、いい気分でヤマトを見送ろうと思ったのだが、なんか知らんが総司さんと共にヤマトに乗れという命令書が届いたのだ。

 はて、どういう事だと首をかしげてしまった。

 正規の軍人である総司さんはともかく、ニコラ研究所で雑用なんかやってる俺に命令が届くは意味が分からん。

 まぁ、今回の戦闘で価値ある事が認められ、少しでも戦力になればという事なんだろうか。

 教授に確認を取ったら、あっちにも命令書が届いてるっていうし。

 結局、総司さんと一緒にヤマトに着艦。

 なんとそこで如月さんとも再会し、これからよろしくってなったらヤマトの保安員に捕まったという訳だ。

 俺だけではなく総司さんと如月さんもまとめてゴヨウである。

 三人で命令書が来てた事を説明。

 特に問題ないという事に加えて艦長の判断もあり、解放となった次第である。

 という事で戦術長預かりになりヤマトの一員となった訳である。

 途中合流したというヒュッケバインとグルンガストもいたりしてびっくりだが、こうして俺と総司さんに加えて二機のパイロットを加えたメンバーが機動兵器チームになった訳だ。

 しかしこうしてここまで書いた日記を見るとなんとも濃い生活をしてると思う。

 ただの一般人がパーソナルトルーパーのパイロットになった上で宇宙戦艦ヤマトに乗るとか、本当に人生分からないもんである。

 そういえば途中、総司さんが何かあったか?と聞いてきたが特に思いつかない。

 一体なんだったのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 叢雲総司は焦っていた。

 被弾した戦略研究所を覗いたら、ハンガーに吊るされていた機体ことヴァングレイに乗って出撃したのはいいものの、その操作の扱い難さに加えて、予想を超える敵数に苦戦していた為である。

 このままガミラスの攻撃を受ければ自分は勿論だが、発進準備を進めているヤマト、そして避難している筈の人々を失ってしまう可能性がある。

 

(誰がそんな事をさせるかよ……!)

 

 敵を一機撃墜しながら、心の中でそう呟く。

 もう誰も失いたくないのだ。

 だがそんな決意をしても敵の攻撃は無情にも襲い掛かってくる。

 

「ちぃっ!」

 

 後ろから敵が来るのを察知してなんとか撃墜しようと機体を動かすが。

 

(間に合わないか!?)

 

 被弾を覚悟した、次の瞬間。

 敵機が爆発したのだ。

 

「味方か!?」

「総司さん!」

「なっ!翔か!」

 

 総司が目を向ければそこには黒い機体、ゲシュペンストの姿が確認できた。

 狙撃用のライフルであろう長銃を構えて滞空している。

 乗っているのはニコラ研究所で雑用をしているという高坂翔である。

 どうして、と思ったがすぐに理解した。多分、こいつも自分と同じくじっとしていられなかったのだろう。

 

「援護します!」

「助かる!だが無茶するなよ!」

「分かってます!」

 

 自分と違い翔は実戦経験がない以上、無茶はさせられない。

 が、戦局が進むと思ったより、いや思った以上に翔はやれている。やれていたのだ。

 

(あいつ、こんなに強かったか?)

 

 暇つぶしのシミュレーション訓練での動き以上だ。

 ライフルでガミラスの攻撃機を撃ち落していく様は熟練のパイロットにも見える。

 最後に動きを見たのはほんの二日前。

 翔に何があったのか。

 ヤマト乗艦後に聞いてみたが、何もないとの事。

 

「まっ、いいか」

 

 疑問は残るが、これからの過酷になるであろう旅路において腕がいい事に問題はないだろう。

 本人もいい奴なのはこの一週間でよく分かっている事なのだから……。



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2ページ目 火と木の星で頑張る

 ●月▽日

 今日はちゃんと挨拶が出来てなかったヒュッケバインとグルンガストのパイロットである二人、ヴェルターブ・テックストさんとシャルロッテ・ヘイスティングに挨拶をする事にした。

 着ていた制服がスパロボFっぽいけど、Fに出てきた主人公達ではないようだ。

 研究所名の事もあるし、あくまで平行世界って事かな。

 挨拶した後、ゲシュペンストがある事に驚いてた。

 まぁ、俺が乗ってるのはタイプRで一番最初のパーソナルトルーパーだしなぁ。

 さて、これでヤマトに乗った4機の機体でチームを組む事になったが、色々大変である。一番大変なのはリーダーになったソウジさんだけどさ。

 どうにか訓練を乗り越え、ある程度チームとして纏まったが別の問題を発見してしまった。

 如月さんである。

 彼女だけ機体がないのである。羨ましそうにこっち見てたし。

 うーん、ゲシュペンスト・タイプSがあればよかったんだけどなぁ。

 試しに通信でどうにかならんか聞いてみるか。

 

 

 ●月▼日

 どうにかなった……だと……!?

 俺からの連絡を受けて、ゲシュペンスト・タイプSと予備パーツにあるだけの武器セットを送ってくれるという。マジかよ。

 虎の子の輸送シャトルが残っており、ブースターつけて飛ばしてくれるらしい。

 で、何処で受け取ればいいん?

 えっ、火星?

 

 

 ●月□日

 どうして火星かと思ったら、未完成であるヤマトを完成させるべく、火星の施設に残ったパーツを回収する為らしい。

 という事で、火星でヤマトが作業してる間に受け取ればいいとの事。ありがたや。

 沖田艦長達にも無事許可を貰えたし、やる事が出来たぞ。

 が、その前にヤマトのパーツ回収の任務を達成しないとこの旅が始まらないから頑張らないと。

 

 

 ●月■日

 まさかの木星帝国である。クロボンじゃねーか!

 基地に到着したのはいいけど、なんと木星帝国に襲われてしまった。

 どうやら二年前にクロボン本編が終わったらしい。ガミラスに襲撃されているのにも関わらず、木星帝国とも戦争とかやばすぎだろ。

 こっちは原作通り、海賊の皆さんが中心になって解決したらしい。

 で、肝心の襲撃だけど最初はヤマトを中心に敵と戦っていたのだが、途中で更なる増援が来てどうしたもんかという所になんと、二機のガンダムが駆けつけてくれたのだ!

 ドクロを掲げたガンダムに青い機体。

 クロスボーンガンダムX1改・改ことスカルハートとハリソン専用ガンダムF91である。

 トビアとロリソンキター!って内心思った俺は悪くない。

 その後、俺と総司さんヴェルト、ロッティ――愛称で呼んでいいって言われた――と共に出撃し彼等と共に敵を撃退したのである。

 いやぁ、生ガンダム見れて感動物である。

 

 

 ●月☆日

 昨日の続きであるが、トビア達は火星に避難していた人々を支援していたのだとか。

 その途中で木星帝国が襲来。ハリソン大尉と合流し力の限り戦っていたが、さすがに限界が見えてきたらしい。敵味方お互いにだ。

 火星にいる連中は先日の戦いで駆逐に成功したようだが、トビア達に残された戦力はガンダム二機だけだと言う。

 うーん、それでもあの数を相手に戦い抜けたのはトビアとハリソン大尉の実力だよなぁ。

 で、木星帝国の様子が知りたいが木星までの足がないという事で、後で合流したベルナデットを含めた三人がヤマトと共に来る事になった。

 ウモンの爺さんや、ハリソン大尉の部下達はこのまま火星の人々を支援しながら潜伏するのだという。

 木星までかもしれないが、戦力が加わって良かった。

 ヤマト用のパーツも無事に見つかり、組み込み作業が今行われている最中だ。

 そろそろ教授からゲシュペンストが届く頃だから回収しに行く事にしよう。

 

 

 ●月★日

 正座にて反省中。

 何事かと思われるかもしれないが、今回は俺が悪かったのだからしょうがない。

 古代さんからじっくり怒られたし、ソウジさんからも怒られた。チトセからも怒られた。

 名前で呼んでいいよ、やったー!とか喜んでる場合ではなくなった。

 いや、本当にごめんなさい。

 

 

 ●月◇日

 何をやらかしたか。

 なんと超高速移動してるシャトルに飛び乗ったのだ!

 EWでのヒイロの真似事である。

 なんでこんなアホな事をやる羽目になったかと言うと、シャトルがガミラスの攻撃を受けて制御不能になってしまったのだ。

 本当ならこっちのコントロールで止まれる予定だったのに、おのれガミラス!

 ガミラスを撃退しながら、ブレーキがぶっ壊れたシャトルを見送らざるをえない状況になったのだがここで俺がピコーンとひらめいたのだ!

 で、同乗していたチトセにゲシュペンスト・タイプRの操縦を任せて、超高速移動してるシャトルと速度をあわせて飛び移った訳である。アホス。

 それを見ていた全員が呆気に取られ、敵も動きが一瞬止まったのだから相当アホな事をやらかした訳である。

 ま、まぁ、おかげでゲシュペンスト・タイプSは無事に回収できたし、色々な備品も回収出来たから結果オーライで……駄目でした!

 

 

 ●月◆日

 そろそろ木星軌道に向けてワープするらしい。

 まぁ、ワープなんて使わないとイスカンダルに行ける気がしない。

 で、その準備中な訳だが俺とチトセ、ヴェルトの三人は届いたパーツをそれぞれの機体に取り付け作業をしていたのだ。

 ヴェルトのヒュッケバインなんて手持ち武器がなかったしちょうど良かったと言わざるをえない。

 で、色々と相談した結果だがヒュッケバインには追加武器としてメガ・ビームライフルを装備。

 チトセのタイプRには基本のプラズマカッターとニュートロンビームに加えて、取り回しが簡単なハイパー・ビームキャノンとスプリットミサイルを追加。

 俺のタイプSはパンチやキックは勿論、ブラスターキャノンとプラズマ・スライサーが使えるのでM950マシンガンとスラッシュ・リッパーを装備するだけで留めておいた。

 まぁ、タイプSはグルンガスト寄りな機体だしこれで十分である。

 そんな装備で大丈夫か?的な表情をされたのでシミュレーション訓練で見せ付けてやった。

 ふははは!タイプSは伊達ではないのだ!

 

 

 ●月※日

 遂に木星にワープした!

 まさに一瞬!恐ろしく速い移動、俺でなくとも見逃しちゃうね!

 で、早速木星帝国への偵察に出撃する事になったのだが、あんまり大勢で行くと目立つので、ここは木星帝国をよく知っているトビアと経験豊富なソウジさんが行く事になった。

 ハリソン大尉はヤマトに残って何かあった時に備える事になった。

 で、出てきたのはまさかのアムロ・レイのクローンことバイオ脳である。

 まさかのここでスカルハートの展開が来るとは予想外だった。

 俺達も遅れて援護に駆けつけるのだが、そこでもう一人新たな同行者が!

 銀色のクロスボーンガンダム!まさかの!X0で!キンケドゥさんである!

 予想外すぎるわ!パン屋はどうしたぁ!?

 あっ、クローンが入ったアマクサはトビアとキンケドゥさんのコンビネーションでボッコボコにされてた。さすがである。

 で、キンケドゥさんがどうして木星にいたかと言うと、木星帝国が再度軍事侵攻を開始したという事で、それを止める為にベラ・ロナさんと一緒にやってきたのだと言う。

 トビアも驚いてたX0はなんでも途中で拾ったとか。確かゴーストでも宇宙空間に漂ってたんだよなぁ、X0。

 そんな感じでヤマトと合流した訳だが木星帝国は今回の戦闘で壊滅、というか姿を消したらしい。

 今の地球に興味を失い、外宇宙に旅立って行ったとか。

 確かに彼等のメンタリティは地球人とは言い難い状態になってのもあって、新天地を求めたのかもしれない。

 納得できない部分はあるが、これで木星帝国との戦いは終わり。

 いやぁ、無事に終わってよかった……とは行かないんだよなぁ、これが。

 

 

 ●月♯日

 木星付近にガミラスの基地があるとの事。

 なんとオーストラリア大陸に匹敵する面積の浮遊大陸だと言う。正直な話、全然想像つかない。

 真田副長によれば地球をガミラスフォーミングする為に大陸ごと木星に移植したのだとか。ロッティも言っていたが悪趣味な連中である。

 今までは木星帝国の軍備があったからこそ、おいそれと攻撃を受けてなかった木星だが、彼等が旅立ってしまった為、攻撃を受ける可能性が非常に高くなってしまった。

 そして今の木星に防衛力は0!これは俺達が頑張るしかないよねとなり、攻撃を仕掛ける事に決定。

 戦術は沖田艦長が色々と考えているらしいが、俺達機動兵器部隊が前線を務め、ヤマトが後方から援護射撃をして戦線を押し上げるというものだ。

 一部の人が不安がっていたのは、ガミラスにMSでの戦闘が通用しなかった為とか。

 まぁ、ヴェルトが補足していたが今、ヤマトにある機体はどれも制式MSとは違いワンオフに近い機体であり、突出した戦闘力を持った機体ばかりである。

 言葉を借りれば一機で巡洋艦クラスの戦力らしい。

 現在、ヤマトが保有する戦力はMSであるクロスボーンガンダムX1とX0、F91。

 PTのゲシュペンスト・タイプSとタイプRにヒュッケバイン、スーパーロボットのグルンガストに加えて試作機のヴァングレイで合計8機。

 これだけあればなんとかなるに違いない。

 沖田艦長からも色々と期待をかけられているようだし、これは頑張らないとな。

 

 

 ●月=日

 大勝利である。

 前線の機動部隊が敵陣を切り崩し、後方の戦艦の大火力で仕留める戦術は見事に決まったと言っていいだろう。

 だが最後の一撃はヤマトの波動砲だろう。威力が高すぎて、一発試射したら浮遊大陸が跡形もなく吹っ飛んでしまった。こえーよ。

 あんなクソ高すぎる威力の武器を無邪気に喜んで使える気がしない。沖田艦長なら大丈夫だと思うんだけどなぁ。

 で、そんな中、ソウジさんのヴァングレイが突如新たな力を覚醒させていた。

 いや、正確に言うとヴァングレイに搭載されているOSが起動というか反応したらしい。しかも喋った。

 AIで女の子らしい。うん、何処をどうなったら女の子になるんですかねソウジさん?とか思ってたけどチトセも同意見らしい。なるほど女の子か。

 そういえば良い事と言えば正式にトビア、キンケドゥさん、ハリソン大尉の三人がイスカンダル行きに同行してくれる事になった。

 エースパイロット三人の合流は非常にありがたい所。

 なんせソウジさん以外、みんな実戦経験が足りなさすぎるしな!

 これだけの戦力があればイスカルンダルにも行けるに違いない。

 うーん、火星でも凄かったし、木星だって凄かったけど、明日から銀河の外へと旅立つのか。

 不安もあるが、期待とワクワクもしている。

 誰も足を踏み入れた事がない世界。

 俺達は遂にそこに旅立とうとしてるんだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を見た時、心臓が止まるかと思った。

 

『えっ、えええ!』

『な、なんだと……!?』

『ば、馬鹿なのかあいつは!?』

『ショ、ショウ君!?』

『非常識すぎる……』

 

 通信機からトビア、ハリソン大尉、ソウジ、ロッティ、ヴェルトの驚愕の声を聞きながら同感だと古代進は全力で頷いてしまった。

 事の発端は、地球からブースターつきのシャトルでゲシュペンストや予備のパーツに武器などが送られてくるという事で、ヤマトが作業をしてる間に回収する事になった事だ。

 しかしその矢先にガミラスが襲撃。狙われたのか不明ではあるが、シャトルが攻撃を受けてしまい制御不能になってしまった。

 先日、協力してくれたトビアとハリソン大尉のガンダムを入れても6機しかない状況でガミラスの攻撃を凌ぎつつシャトルを止めるのは不可能だと思った。

 だがその矢先に、ゲシュペンスト・タイプRのパイロットである高坂翔が一言。

 

「私にいい考えがある」

 

 と言って、同乗していた如月三尉に操縦を代わってもらい、超高速で飛んできたシャトルに並ぶと。

 飛び移ったのである。

 宇宙空間で、超高速移動をしているシャトルに生身一つで、である。

 あまりにも非常識かつ命知らずの行動である。

 遠目から見ていた自分達ですらこれである。

 目の前でそんな馬鹿げた行動を取られた如月三尉は。

 

『ねぇ!生きてる!無事なら返事して!』

 

 可哀想になるぐらい狼狽していた。

 どうやら何の相談もなく先ほどの行動を実行していたようだ。

 

『おう。無事にシャトルに到着。今、出るから待ってろよ』

 

 少しして高坂からの声が届くと同時にシャトルから黒いパーソナルトルーパーが飛び出してきた。

 ゲシュペンスト・タイプSである。

 大量のコンテナもシャトルから放り出されると同時に、制御を失ったシャトルは何処かへと飛び去ってしまった。

 あと少し遅れたら彼もまた何処かに飛ばされてしまっただろう。

 そういう意味では二重の命知らずと言っていい。

 残っていたガミラスを撃退し、帰還しながらふと考える。

 

(彼はどうしてあんな事ができるのだろうか?)

 

 高坂自身から聞いた話では、少し前まではただの一般人だったらしい。

 記憶の一部を失っているとは聞いたが、その立ち居振舞いは素人そのものだ。

 だがそんな彼があんな芸当を出来たのかと興味が出てきてしまった。

 天賦の才か、はたまた失った記憶に関係するのか。

 

「まぁ、それより今は彼に色々と言わなければな」

 

 説教である。



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3ページ目 太陽系の端で頑張る

 ●月@日

 今日は新事実が判明した。

 ヴァングレイに喋るOSが搭載されていた事なんだが、なんと俺とソウジさんとチトセの三人がヤマトに乗り込む原因になった命令書を送ったのはこいつだという事が判明したのだ。

 どうしてこんな事をしたのかは喋ってくれなかったが、特に害はないようだ。解体するとか言われなくて良かったなと思う。

 所が他にも出発して少ししてから新しい問題が浮上した。

 一つはベルナデット密航事件。そういえば特技でしたね、密航……。

 なんでも木星帝国が何を求めて外宇宙に旅立ったのかを知りたく、ヤマトに乗り込んだとの事。ベラさんも手伝ったとか。結局、主計科に配属となり収まった。

 で、本命は土星の衛星であるエンケラドゥスの南極付近から救難信号が発せられていたのか。

 上の人達で会議をした結果、揉めたみたいだがヤマトのコンデンサが損傷していた為、その物資調達を兼ねて向かう事になったみたいだ。

 無事な人がいるといいな……。

 

 

 ●月?日

 グ ロ イ。

 まさかのインベーダーだよ!アイエエエ!チェンゲ混じってるー!?

 古代戦術長は救難信号の艦に向かうようなので、護衛ついでにゲシュペンストで同行したがすっごいキモイ怪物に襲われる羽目になってしまった。ガミラス兵?適当に蹴散らしたよ。

 戦術長達を逃がしたのはいいものの、キモグロイ連中がわんさか出てきたのでどうしたもんかと思ったがそこで援軍が来てくれた。

 なんとブラックゲッター!山本三尉のコスモゼロの事を忘れる程のインパクトだよ!

 戦術長達はコスモゼロに乗って貰って脱出してもらった後、ブラックゲッターと共闘してインベーダーと戦っていたのだが更なる増援祭りでさすがに焦る。

 しかしこっちも更なる援軍。まさかのグレートマジンガー!

 プロ!戦闘のプロじゃないか!偉大な勇者かもしれないけど!

 ていうかどうしてここにグレートマジンガーがいるんだよ。俺は大根RUNに陥ったよ、ほんと。

 その後、採掘場に現れたガミラスを蹴散らしたヤマトが駆けつけて、インベーダーを全滅させる事に成功したのだが、ほんと疲れたわ……。

 ……そしてグレートのパイロットの鉄也さんが記憶喪失だったり、竜馬さん達が平行世界の住人とかどんだけなんだよ、ここ。

 

 

 ●月<日

 正式に竜馬さんと鉄也さんがヤマトに同行、航空隊に配属される事になった。

 どうやら竜馬さんは時間と空間を越えた直後にやってきたようだ。鉄也さんは……記憶喪失なのでさっぱりだ。Zなのかカイザーなのかも分からない。何があったんだろ。

 しかし並行世界の存在が証明されている事は知らなかった。俺がどうしてこの世界にやってきたのかももしかしたら分かるかもしれない。

 時間がある時でいいからヴェルトや真田副長に色々と話を聞いてみる事にしよう。

 そして次の目的地が決まったようだ。

 目標は冥王星。ガミラスの前線基地を攻撃するようだ。

 前線基地となれば敵の抵抗も激しくなるだろう。

 機動兵器とヤマトによる連帯戦術の事もあるし、新入り二人と一緒に連帯訓練をしなければ……。

 

 

 ●月>日

 特訓マジ、厳しい。

 いやぁ、竜馬さんと鉄也さんに鍛えて貰ったのだが回りがドン引きしかねない程、激しいものだった。

 ちゃんとこっちのスペックを見て手加減して貰えたのだが、それでもボッコボコにされてしまった。

 俺は正規の訓練を一切受けてないからこれぐらいやらないと大変だ。

 まぁ、竜馬さんから筋はいいと言われた事だけは良かった、うん。

 

 

 ●月¥日

 初っ端からガミラスに痛い先制攻撃を受けてしまった。こっちが気がつく前に攻撃してくるとかロングレンジすぎるだろ。

 しかも死角に入ったのにも関わらず攻撃を受け続けてるはめになった。

 おかげでヤマトは損傷。海に沈没してしまった、偽装だけど。

 艦長の咄嗟の判断で、俺達機動部隊は出撃する事になった。敵基地に奇襲を仕掛ける為だ。

 その判断は見事に成功。その際に活躍したのがヴァングレイに搭載されてるOSで、彼女が敵のロングレンジ座標の位置を確認。

 ヤマトが攻撃して破壊に成功したのだ。しかも誘爆して基地本体も壊滅状態。一石二鳥である。

 脱出した敵戦艦一隻を逃がしてしまったが、他はきっちり壊滅させたから、これで地球に遊星爆弾が落ちる事はないだろう。

 それだけで一安心である。

 しかし木星帝国がガミラスについてるとは思わなかったな。

 地球を捨てた地球人。なんだか悲しい響きである。

 そういえば出撃前は表情が固かったソウジさんとチトセが若干、柔らかくなっていたのに気がついた。

 きっと二人にも何かの理由があって、今回の一戦で何かしらの区切りがついたのだろう。

 良かった良かった。

 

 

 ◎月○日

 冥王星の基地を叩いてから数日。

 古代戦術長と竜馬さん達の間で何かあったのか、敵基地に向かって出撃していった。

 何かあったんだろうかと思ったけど、現れたインベーダーを撃退してきただけのようだ。

 だが戦術長や竜馬さん、鉄也さんの間からは何か信頼関係のようなものが見えた気がした。

 きっといい事があったのだろう。

 

 

 ◎月●日

 遂に太陽系外縁部に差し掛かった。まぁ、イスカンダルへの旅からすると本当に一歩ぐらいの距離なんだろうけど、地球人にとっては大きな一歩である。

 そろそろ地球との通信ができる限界距離に近づいてるという事で通信許可が下りた。

 俺に肉親はいないが、世話になったニコラ研究所に連絡を取る事にした。

 教授からは「無事に帰ってきなさい。旅の話を楽しみにしてるわ」と言われた。相変わらずだったけど元気そうで良かったな。

 それに加えて太陽系赤道祭が開催された。

 昔から船が赤道を通過する時に行われるものだと言う。ご馳走が並んだので美味しく頂かせてもらった。

 何故か原田衛生士がそっち系のお店で見られるようなメイド服を来てやってきていた。ご馳走様です。

 まぁ、酒癖は酷そうだったので近づかなかったけど。

 うん、これからの旅も頑張ろう。

 

 

 ◎月◎日

 ワープした先で襲撃を受けた。

 敵はどうやら先日、冥王星にいた部隊だと言う。こっちを追ってきたようだ。

 しかもとんでもない事にガスのような何かを撒かれ、接触すれば分解。

 かと言ってよければ、恒星に突っ込まざるをえない状況に陥るとは思わなかった。

 慌てた俺達と違って、艦長は冷静だった。まさか恒星に最大戦速で突っ込むとは……。

 俺達は捨て身で追撃してくるガミラスを迎撃。熱さで気が狂いそうになったわ。

 しかもワープによる敵援軍……と思ったんだが来たのはまさかのガンダム!

 ダブルオークアンタとラファエルガンダム。まさかのソレスタルビーイングで刹那とティエリアだよ!

 しかしどういう状況なんだ、これ?あの二機という事は劇場版なんだろうけど、クアンタとラファエルが並んだ事はない。

 という事は何かしらのスパロボ補正的な何かでクアンタの完成が早まったのだろうか?

 で、戦闘はというと。大火力攻撃が可能な二人が加わってくれたおかげでだいぶ戦線が楽になった。

 最終的に恒星のフレアを波動砲でぶち抜いて、脱出に成功した。

 敵はそのまま飲み込まれて散っていってしまったようだが。

 あー、今日も無事に生き残れた。

 

 

 ◎月△日

 話を聞くと刹那とティエリアの二人もまた別の並行世界からやってきたようだ。

 うーん、並行世界多すぎじゃね、ここ。まぁ、俺が言うのも今更か。

 二人も協力してくれるという事で戦力がまた増えたぞ!

 後で、二人に頼んでガンダムを見せてもらおう。

 しかし刹那がこっちをじっと見ていたような気がするがなんだったのだろうか?

 

 

 ◎月▲日

 今日は機動部隊のみんなと色々と話をしたが、別世界でもガンダムはやっぱり重要なポジジョンだという。

 この世界ではスーパーロボット扱いだが、刹那の世界ではどうやら違うようだ。

 うーん、もしかして刹那世界も純粋なガンダムOO世界という訳ではないのかな。もしかしたら普通にゲッターやグレートみたいなスーパーロボットがいるのかもしれない。

 もっと話を聞きたかったのだが、敵の追撃をかわす為に長距離ワープを行うようだ。その間、俺達は警戒態勢で待機。

 何事もなければいいなぁ。

 

 

 ◎月▽日

 フラグ乙。

 ワープした先は次元の狭間、宇宙船が沈むサルガッソーとか洒落にならないんじゃが。

 えっ、あっ、何?ガミラス?使者?

 

 

 ◎月▼日

 ガミラスの艦も次元の狭間に捕らわれており、協力して脱出する事になった。

 チトセ達は信じられないようであったが、俺は……信じていいと思っていた。

 まぁ、先日の特攻があったから、当初は半信半疑であったが、その気ならさっさと攻撃を仕掛けてもおかしくはないと思ったのだ。

 そんな事を話していたら、加藤隊長達に色々と言われてしまった。チトセも暗い表情で出ていってしまうし。

 俺は色々考えた結果、追いかける事にした。

 チトセをあんな顔のままにしたくはないからな。

 ソウジさんも行って来いって言ってくれたし。

 ゲシュペンストのコックピットにいたチトセと話をした。

 話の内容は……うん、ここに書く事ではないな。

 これは俺の胸の中にしまっておこう。

 ただチトセの表情が少しだけ晴れやかになった事だけをこちらに残しておく。

 

 

 ◎月□日

 問題発生中。

 状況が判明次第、記述を再開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刹那・F・セイエイは始めて彼を見た時から違和感を感じていた。

 

「どうした刹那」

「ティエリア……」

 

 二人の眼前には格納庫に納められている機動兵器達が並んでいる。

 そんな中、自分達のガンダムを熱心に見ている彼――高坂翔がいた。

 何でもガンダムに興味があり、別世界のガンダムであるクアンタとラファエルを見学したいという事で許可したという事だ。

 特に問題行動を起こす事もなく色々な角度から二機のMSを見ている姿は、大好きな物を見つけた子供のようにも見える。

 

「彼、ショウに何かあったのか?」

「……」

「刹那……?」

 

 ティエリアの声に反応する事もなくじっとショウの後姿を見続けている刹那。

 そんな刹那の様子は何処かおかしい。

 このヤマトに来てから何かあったのだろうかと思うが、ショウとの接触は許可を貰いにきたほんの僅かだ。

 二人の間に何かあったとは考え難かった。

 

「ティエリアは何か感じないか?」

「……?」

 

 ようやく口を開いたと思ったら聞こえてきたのはそんな刹那の言葉。

 何か、とは何だろうか。

 

「いや、僕は何も感じないが……」

 

 少なくとも脳量子波は感じられない。

 ショウよりはトビアとキンケドゥ、彼等二人の方がはっきりと感じられる程だ。

 だが刹那は何かを感じ取っているのだろう。

 

「刹那、彼から何か感じているのか?」

「俺にもわからない……。だが何か……」

 

 上手く言葉に出来ないのか、説明しようとして再び口ごもる。

 だがイノベイドであるティエリアと違って、イノベイターである刹那には何か感じられるのだろう。

 

「刹那、無理に話さなくてもいい。君の中で整理がついたら話してくれればいいさ」

「すまない、ティエリア」

「ああ、構わない。警戒は必要か?」

 

 あの様子を見た感じ、敵とは思えないが警戒が必要かもしれない。

 だがそんなティエリアの考えを払拭するように、刹那は首を横に降った。

 

「いや、必要ない。そういう悪意を感じている訳ではない」

 

 むしろ、何かしらの好意を感じられる程だと刹那は言う。

 ティエリアはそれを聞いてそうか、とだけ答えた。

 願わくば刹那の言う通り、彼が味方であればいいと思った。

 

 

 

「……だが何だ、彼から感じる違和感は」

 

 一人になった刹那がそう呟く。

 その小さい呟きは、誰にも聞かれる事なく消えていくのであった。



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4ページ目 並行世界で頑張る

 ◎月☆日

 ようやく状況が落ちついたので日記を再開する。

 ガミラスを信じ、協力して次元の狭間から脱出計画は途中まで上手く行っていたのだ。

 正体不明の敵に襲われるまでは。

 白い機動兵器だったが、あれは一体なんだったのだろうか?ガミラスにも攻撃を仕掛けてきたからあいつらの機体ではないだろうし、俺の知ってる作品の奴にもない。

 うーん、分からん。

 まぁ、そっちの方は撃退できたのだが、エネルギー切れで移動できないヤマトを引っ張ってくれていたガミラスの艦は自分達だけで逃げてしまっていた。

 のだが、途中で戻ってきた。どうやら、あちらもあちらで何かあったようだ。

 最終的には無事に脱出成功。

 したんだけどなぁ。

 脱出した直後に、ガミラスの艦隊が出現。なんとこっちと協力したガミラスの艦ごと攻撃してきやがったのだ。

 おかげでガミラスの艦は撃沈。ヤマトもピンチに陥り、後ろからは正体不明の敵も襲撃してくるという大ピンチ状況になったのだが、突如として次元が揺れたのだ。

 多分、時空が不安定になったのだろう。

 衝撃が襲いかかった直後、俺の意識は吹っ飛んでしまった。

 で、気がついたらなんと青い海。

 何処か別の惑星かと思ったら、なんと地球でした。別世界の。マジかよ。

 

 

 ◎月★日

 昨日の続き。

 気がついたら海に浮かぶ無人島に漂流していた俺とゲシュペンストだったが、近くにゲシュペンスト・タイプRとヴァングレイを発見。

 チトセとソウジさんも一緒に巻き込まれたと思っていたのだが、コックピットに二人の姿はなかった。

 もう脱出してたのかと思ったが回りに俺以外の生命反応はなし。砂浜に足跡もないし、ここから出た様子は見られなかった。

 どうしたもんかと思ったが、ヴァングレイのOSであるシステム99と会話をする事に成功。

 どうやら彼女からしても、ソウジさんは突然、コックピットの中から消えたらしい。

 そうなるとさっきの転移で、二人だけ個別に飛ばされてしまったという事か。

 これからどうしようかと思ったが、システム99より二人の捜索をしたいと提案されたのでそれを承諾。一緒に探索する事になった。

 その前に機体のチェックをしたのだが、思ったより芳しくない。

 ゲシュペンスト・タイプSとタイプRは結構な損傷と消耗をしており、これから戦闘になると考えると正直不安が残る。

 ヴァングレイの方は弾薬の消耗はあるものの、損傷は殆どない。これはやっぱり腕の差だとと思う。

 修理と補給を優先したいけど、さすがにこの世界情勢が分からないとなぁ。

 え?今、調べてる?さすがですわ。

 

 

 ◎月◇日

 まさにカオス!

 この世界、混沌としてませんかね!?

 システム99の調べてくれた情報を纏めるとこれは酷い。

 数年前までザフトと戦争をしてたとか、アロウズが台頭してたとか、蜥蜴戦争とか、 ガイゾックが襲撃してきたとか、メガノイドがいるとかカオスすぎるわ!

 と最初見た時、衝撃を受けたけどスパロボ世界だと割りとあるよな、と納得する事にした。

 うーん、俺達というかヤマトの世界よりもスパロボやってますわ、ここ。というか始祖連合国とかミスルギ皇国って見えた気がするんですけど……。

 

 

 ◎月◆日

 情報を集め、機体の応急処置を済ませていたんだが、突然システム99より行きたい場所があるとの事。

 あまり遠くない工業地域だった事もあり、そちらへと移動する。

 うーん、こんな所に何の用があるんだろうか?

 待ってる間に色々と調べたのだが、ヤマトらしき情報がちょろっと入ったのだ。

 と言っても俺だけだと詳しく調べきれず、システム99待ちだが合流できる可能性が出てきただけでも良かった。

 

 

 ◎月※日

 美少女爆誕!

 システム99が美少女になりやがった!

 なんでも人と円滑にコミュニケーションをとる為に人型がいいだろうという事で、アンドロイドの体を作り上げたらしい。

 すげーな、おい。

 凄い凄いと褒めまくったら顔を赤くされた。

 こうして見ると本当に普通の女の子にしか見えないよなぁ。

 で、これからどうする?え、ヤマトは見つからないけどソウジさんとチトセが見つかった?

 システム99!行くしかあるまい!!

 

 

 ◎月#日

 私、メリー。今、警察の留置所にいるの。

 

 

 ◎月=日

 無事に警察から釈放されたので日記再開。そして長い!

 二人が監視カメラに写った場所ことヌーベルトキオシティにやってきていたのだが、ここにもやはりテロリストというものはいるもんである。

 不恰好の赤いロボが工場を襲っているではないか。

 近くに二人がいる上にシステム99が二人に会いに行っている状況、俺がなんとかするかと思ったが、その前になんと列車が!変形して!ロボットになった!

 マイトガイン!マイトガインじゃないか!ガオガイガーしかスパロボに出れないと思ってたぞ!

 彼等が颯爽と現れてテロリストと戦闘を開始したのだ。

 俺の出番はないかな、と思ったが敵援軍が出現。これは一機だと厳しいだろうと思い、俺もゲシュペンストで無理をして出ようかと思ったらシステム99より連絡があった。

 まさかのヴァングレイでの出撃要請である。

 え?そこはソウジさんじゃないの?と思ったがそんな事を言ってる場合ではないので、ヴァングレイに乗り換えて出撃する事に。

 ガイン達に何者だ?と聞かれたので思わず、貴様らに名乗る名前は無い!とか言いたくなったが、流れのお節介という事で通す事に。

 彼等と協力してテロリストを撃退したのはいいが、警察の厄介になる事に。

 まぁ、未登録の機体を振り回してたんだから仕方がないと言えば仕方がないのだ。

 とは言え、街を守ってくれた事は理解してくれたおかげか酷い事はされなかったし、カツ丼まで奢ってくれたのだ。あれって自腹で買うしかないんだよねぇ。

 で、警察に真相を話したかと言うと話してない。まぁ、別世界からやってきましたとか説明しても理解できないだろうし。

 俺も警察の人も本気で困り果てていると意外な所から援軍がやってきた。

 ソウジさんとチトセである。

 二人が一緒に連れてきたのは旋風寺コンツェルンの青木桂一郎さん。あのマイトガインの主役である旋風寺舞人の執事である。

 どうやら俺は旋風寺重工のテストパイロット扱いらしい。

 つまりこの世界に基盤を持つ身元引受人がやってきてくれた訳である。あー、助かった。

 で、無事に釈放された俺はヴァングレイをトレーラーに積み込んで旋風寺コンツェルンへと移動。

 その間に二人に話を聞くと、二人は揃って近くの海で倒れており、そこを親切な人に助けてもらったのだとか。

 そこで世話になりながら、世界の事を調べていた所を俺達がやってきて昨日の戦闘になったと言った所らしい。

 パイロットが俺だと気づいたのは謎の美少女から教えてもらったので、世話になった人を通じて旋風寺コンツェルンと接触して、釈放の手続きが取れたとの事。

 しかしソウジさんもチトセもシステム99の事は気づいてないっぽい。いやまぁ、OSが突然美少女になりましたってなっても気づかないよなぁ、普通。

 でも気づいて欲しかった。無言だがシステム99が不機嫌になってるし。だから二人には教えません。自力で気づいてください。

 旋風寺コンツェルンに到着した後は速攻で社長室に通され、社長こと旋風寺舞人とご対面となった。

 旋風寺社長もとい舞人からは助けてもらった礼をされた。

 こっちとしては二人を助けたかっただけだし、テロリストの好きにさせたくないっていう個人的な思惑があったから気にしなくていいと伝えたのだが、それでもと何度もお礼を言われた。

 うーん、ナイスガイである。

 事情を話すかどうかソウジさんとチトセは迷っているようだが、俺は話す事にした。

 メタ知識を持ってるのもあるが、こう直接対面しただけでも舞人は信用できる人物だと思うからだ。

 で、事情を早速話そうと思ったのだが再びテロリストが襲来。

 昨日の今日でか!

 よーし、ヴァングレイはソウジさんに任せて俺はゲシュペンストを取りに行こう!

 なんでここは任せますよソウジさん!

 

 

 ◎月@日

 困った。本当に困った。

 昨日のテロリストの襲撃は軽く捻ってやった。俺とシステム99、舞人、ガインの四人で、である。

 そう、ソウジさんは出撃しなかったのだ。

 これには俺も困惑。俺の知っているソウジさんなら出撃すると思っていたのだが、まさかの拒否である。

 事情を聞こうと思ったのだが、時間もなかった為、俺が再びヴァングレイで出撃した、という訳だ。その後、ゲシュペンスト二機はしっかり回収した。

 旋風寺コンツェルンの工場で修復作業を行ってくれるとの事。本当に助かるわ。

 で、だ。

 ソウジさんもそうだがチトセの様子もおかしい。

 どうしたもんかと、二人を助けてくれたタツさんという方に話しを聞いたのだが、どうやら数日前から二人とも何か思いつめた様子らしい。

 一体何がどうしたのだろうか……?

 これじゃあ折角勇者特急隊、特別隊員に任命されたのにテンションが上がらないではないか。後、システム99が拗ねたまんまだし。

 舞人達が協力してくれたヤマト捜索も暗礁に乗り上げたのも原因なんだろうか?

 何か元気付けられないだろうか……。

 

 

 ◎月?日

 何か元気付けようと思い、舞人と一緒に街へ買い物へ。

 色々と話をしたが、やっぱ十五歳に見えないなぁ。二十歳の俺なんかよりもずっと大人びてるよ、ほんと。

 で、プレゼントとしてソウジさんには美味い酒を。チトセには舞人推薦の花を贈る事にした。

 そのプレゼント選びの最中でなんか舞人が花の娘さんとイチャイチャし始めたけど俺は気にしない。多分、この娘、ことサリーちゃんってヒロインの子だよなぁ。どうぞ幸せになってください。

 花の方は派手な奴だとチトセのイメージにはあわないと思い、色々話した所、サリーちゃんに色々と選んでもらう事になった。しかもサリーちゃんが育ててくれた花である。ありがたや。

 といい気分だったのはここまで。

 その直後に襲われたのだ。

 テロリスト、しかも質の悪い事で有名な火星の後継者である。しかも俺を御指名ときた。いや、俺はお前等に狙われる理由がないんだけど。別に火星生まれって訳でもないしな!

 舞人と共に適当に蹴散らせたのだが、その後に出てきた連中を見て一瞬で顔を青ざめるしかなかった。

 北辰六人衆である。

 俺でも分かる程の圧倒的な力。正直、俺と舞人では生身だと勝ち目はないだろう。しかもサリーちゃんまでいるのだ。

 敵わないと分かっていたが、同時にすぐには殺される事はないだろうと思い舞人とサリーちゃんを逃がせたのは本当に良かった。

 俺もその後、助けられたんだけどね。アキトに。

 だー!やっぱ劇場版かよ!

 北辰六人衆はアキトが撃退。

 しっかしあいつら、何の為に俺を狙ったんだ?助けてくれたアキトにも話したが俺は火星生まれではないのだが……。

 その後、火星の後継者達が襲撃。

 それに対抗すべくアキトがブラック・サレナで出撃。うーん、かっこいい。

 俺はどうしたもんかと思ったが、ヴァングレイとシステム99が駆けつけてくれた。

 ありがたやありがたや。

 で、適当にアキトと協力して火星の後継者達と戦闘をしていたのだが、ここに勇者特急隊に加えてナデシコBが駆けつけてくれたのだ。

 ナデシコきたわぁ!リョーコさんとサブロウタさんのエステバリスも援護に来てくれてこっちの戦力は一気に増加。

 六人衆はアキトが撃退していた模様。強いなぁ。

 

 

 ◎月<日

 火星の後継者が宣戦布告をしてきた。

 色々と黒い噂がある連中だし、正直ただのテロリストだしぶっ飛ばしておきたい所だ。

 そしてなんとこいつら、ヤマトを鹵獲しているようなのだ。

 分かったのはアキトからのデータに入っていた画像のおかげである。

 あの後、ヤマトに何があったのかは分からないが、俺が奴等と戦う理由がまた一つ増えた訳だ。

 で、これからの事なんだが勇者特急隊はナデシコ隊に協力。

 火星の後継者は勿論、今活動しているテロリスト達に対抗すべく仲間を集める事となった。

 さて、それはいいが俺としてはまずソウジさんとチトセの問題を片付けないとな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 システム99にとって高坂翔とは三人目の人間である。

 一人目は叢雲総司。二人目は如月千歳である。

 彼は非常によく喋り、よく笑った。

 そして総司と千歳と同じように、システム99をただの機械とは見ず、まるで人間のように接してきた人物でもある。

 

『助かったよ、システム99』

「いえ、間に合って良かったです」

 

 翔の脈拍やバイタルから異常事態に気づき、ヴァングレイを向かわせたのだが、どうやら大正解だったようだ。

 彼を今、失うのは彼女としても不本意である。

 特に本来のマスターと決めていた総司の様子がおかしい事から、その予備としていた翔の価値は非常に高まっていた。

 いや、しかし、それでも。

 

(ヴァングレイに乗せるのならば、叢雲総司……マスターの方が良かったと考えてしまったのは何故でしょうか……?)

 

 自分でも分からない思考。

 それを思いながらもFCSを起動させていく。

 すると翔がポツリと口を開いた。

 

『悪いな、乗せるならソウジさんの方が良かっただろう?』

「……え?」

『何、ソウジさんとはこの戦いが終わったらきっちり話すさ。勿論、チトセにもな』

 

 それはつまり総司に起こっている、なんらかの異常を解決してくれるという事だろうか。

 もしそれが実現し、再びヴァングレイのシートに彼が乗ってくれるのなら、それはありがたい事である。

 

『それにあれだ。そろそろお前の名前、ちゃんと決めてやらないとな』

「……!」

 

 名前。

 人に与えられる最初の祝福。

 それを自分にも与えてくれるというのか。

 

「私はシステム99です」

『俺は嫌だよ、お前をいつまでもシステム99なんて呼ぶの』

「……」

『俺と君と、ソウジさんとチトセの四人でちゃんと考えようぜ。君の名前を』

 

 それを聞いたシステム99はまた不思議な思考が生まれる。

 だが先ほどのようなストレスが生まれないものであった。

 それはきっと、人の感情で言うなら……。

 

『だからその為に今は力を貸してくれ。生き残る為に、そして二人を守る為に』

「……了解です。全力でサポートします」

『ああ、行こう!』

 

 嬉しいというものであるに違いない。



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彼等の進む道

 如月千歳の表情は暗い。

 叢雲総司の表情も暗い。

 原因なんてとっくに知っている。

 彼等は既に疲れていたのだ。

 家族を殺され、仲間を殺された絶望的な世界に対して。

 今まではヤマトという希望に乗り、地球をどうにかしなければならないという気持ちのみで保っていた。

 だが、その糸が切れた。

 偶然、迷い込んだ平和な世界を見て、生活をしてしまった為だ。

 だからか。

 自分達を探してきたと言う高坂翔とヴァングレイを見ても、その心は深く沈んだままであった。

 総司は戦いを拒否した。

 千歳も同じ立場なら拒否しただろう。

 拒否してしまっただろう。

 そして拒否された時に見せた翔の表情を見て、更に二人の気持ちを沈めてしまっていた。

 分かっている。このままではいけない事を。

 だけど、だけどだ。

 どうしても戦う力が湧いてこないのだ。

 

「……」

 

 この世界にやってきてから世話になってる家の一室でぼおっと空を見上げる。

 天気の良い青空なのにも関わらず、二人の心はずっと黒く染まってしまっていた。

 そして……高坂翔がこの家を訪ねてきた。

 

「よく来たな」

「どうもこんにちは」

 

 数日ぶりぐらいかに見る翔を直視できないでいた。

 実はあの日、再会したあの日から一度も顔をあわせていないのだから。

 何を言われるのか怖かった。

 だから家主であるタツさんが去った後も、二人は顔をうつむいたままであった。

 

「ソウジさん、チトセ」

「……」

「……」

「俺はナデシコと一緒に行く事にします」

 

 その話は二人の耳にも入っていた。

 先日、表へと出てきた火星の後継者。そして日夜活動している複数のテロリスト達。

 それに対抗すべくナデシコBを中心にした部隊が結成される事。そして勇者特急隊がそれに協力する事。

 そして翔もまたそれに協力する事。

 

「なぁ……ショウ。お前が戦う必要があるのか……?」

 

 それは純粋な疑問であった。

 ここは自分達の世界ではない。

 だと言うのに命をかける必要があるのだろうかと。

 

「ヤマトが火星の後継者に捕まっている以上、どっちにしろ行く必要がありますよ」

「だけど……だけどヤマトを取り戻しても元の世界に戻れるか分からないわ……」

 

 翔の言葉を否定するように千歳がポツリと呟く。

 その通りだ。

 ヤマトを取り戻したとしても、元の世界に戻る事は難しいだろう。

 それならば……。

 

「ここで静かに暮らしたっていいじゃない……」

 

 疲れたんだ。

 あれだけ頑張っただから休んだっていいじゃないか。

 ここは自分達の世界じゃない。なら命を賭けるなんて……。

 

「ソウジさん、チトセ。俺はこの世界の人間じゃありません」

「……?ああ、そうだな」

「そしてあの世界の人間でもありません」

「……え?」

 

 翔はなんて事のない穏やかの表情で呟く。

 意味が……分からない。

 

「俺はあそこともこことも違う別世界からの転移者なんです」

「そ……んな……」

 

 それは、つまり……。

 

「お前は……ヤマトに乗る必要だってないじゃないか……!」

 

 ヤマトの旅は成功するかどうかも分からないものだ。

 自分の世界であろうと躊躇うものであるアレに別世界の住人である翔が命を賭けてまで参加する必要はない。

 そう思った総司と千歳の表情が驚愕に満ちる。

 しかし、それでも翔の表情は変わらず穏やかのものであった。

 

「ある人が言いました。感情のままに行動することは人間として正しい生き方、と」

「感情……」

「俺もそれを全て実践出来てる訳じゃないですけど、ヤマトに乗る時……いや、ゲシュペンストで出撃した時、俺は自分の感情に従って行動しただけです」

 

 そして今回もそうだ、と言う翔。

 そこに迷いはなく、後悔もない。

 

「だから今回もまた俺は俺の感情に従ってナデシコと一緒に行くつもりです」

「ショウ君……」

 

 軍人でない彼は強かった。

 少なくともここで、心を折りそうな自分達と違って。

 

「だから俺は二人に何も言いません」

「……」

「それじゃあ、お元気で」

 

 お土産という品を置いて、翔は去って行った。

 その後姿を見て、総司も千歳も無言のままであった。

 それはどうしていいか分からない迷子のようでもあった。

 

 

 

 どうしていいか分からず数日が経ったある日、再びヌーベルトキオシティにテロリストが複数現れていた。

 

「……数、多いな」

 

 遠目から見ても、その数は圧倒的だ。

 よくまぁ、これだけの数を集めたもんだと総司は呆れ返ってしまう。

 だが、それ以上に。

 

「どうして俺は逃げないのかね……」

 

 戦わない事を選んだのなら、逃げればいい。

 だと言うのに、こうして遠くの戦闘を見てしまっているのだから。

 

「ソウジさん……」

「チトセちゃんか、どうしたんだ?」

「逃げないんですか?」

「そりゃ、こっちのセリフだよ」

 

 千歳もどうやら同じらしい。

 どうしていいか分からず、こんな所にいる。

 そして視線の先では翔が、そして舞人達が戦っているのだろう。

 

「二人とも……」

「タツさん……」

「どうしてここに?」

 

 声をかけられて振り向くと、そこには自分達を助けてくれた人物がいた。

 どうして、ここにと声をかけると二人が心配だと答えてくれた。

 

「タツさん」

「なぁ、二人はどうしたいんだ?」

「えっ……?」

 

 そんな事を聞かれるとは思わなかった。

 どうしたいか、どうしたいか……。

 それは自分達が一番分からなかった。

 

「感情のままに行動することは人間として正しい、か。今のご時勢、しかもお前さん達の世界じゃそりゃあ難しいだろうな」

「なんだ、聞いてたんですかタツさん」

「すまんな。聞くつもりはなかったんだ」

 

 苦笑しながら答えた。

 勿論、二人は責めるつもりはない。あの家はそもそもこの人のものだし、信用できるという事も知っているからだ。

 

「あの子の事は知らんが、どんな状況になってもそれを貫こうとしている」

「……」

「お前さん達も彼みたいに素直になっていいんじゃないか?」

「素直に……?」

 

 彼の言葉にきょとんとなる千歳。

 素直になる。そんな考え思いもつかなかった。

 

「お前さん達の過去も知らん。だが若いんだ。時には素直になって、感情のままに行動してもいいんじゃないか」

「……」

「なぁ」

 

 タツの真剣な表情が総司と千歳をまっすぐ見つめる。

 

「二人は何がしたい?」

「俺は……」

「私は……」

 

 今までの旅を思い出す。

 ヤマトの事、チームを組んだ事、星の海で出会った事。復讐の道を辞めると決めた事。

 そして今も戦ってる翔と、正体に気づかない振りをしたあの少女の事。

 それを思いだし、心の奥底に封印しようとしていた思いを重ねて行く。

 そうだ、そうだった。

 復讐だけじゃない。

 地球の為、そして仲間の為に戦うのだと誓ったのだ。

 それは決して偽りのものではない。

 今もなお、心から望んでいる自分達の願いだ。

 ならば……それならば……。

 

「ありがとうタツさん」

「私達、行こうと思います」

「そうか。なら気をつけてな」

「はい!」

「今日まで……ありがとうございました!」

 

 それだけを言って飛び出す。

 まだ何をできるか分からない。

 だけど今は、翔に、あの少女に会いたかった。

 会って話がしたかった。

 そしてその願いを叶える為のものは既に用意されていた。

 舞人の執事である青木に連絡を取ると、工場に向かって欲しいとだけ伝えられた為、向かった二人が目にしたのは……。

 

「ゲシュペンスト……」

「ご丁寧に二機ともあるな」

 

 工場にて新品同様に修復されたゲシュペンスト・タイプSとタイプRであった。

 工場長によれば、ヴァングレイを持っていった翔が代わりに置いていったとか。

 もし、再び二人が立ち上がったら渡して欲しいという言葉と共に。

 

「修理は完璧だ。いつでも出せるよ」

「なら俺がタイプSを借りて行くか」

「ああ、叢雲君にはもう一つ伝言が」

「はい?」

 

 千歳がタイプRに乗り込んだのを見て、総司はタイプSに乗り込もうとすると工場長から再び声をかけられる。

 自分にだけまだ伝言があるらしい。

 

「返しに来てくれ、だそうだ」

「……了解です。その伝言、しっかり受け取りましたよ」

 

 そういう事ならば行かなければならない。

 シミュレーションで何度か乗った事があるが、やはりこれは自分の機体ではない。

 そう決意すると、まだテロリストと戦闘を繰り広げている戦場に向かって機体を発進させた。

 自分の感情を信じるままに。

 こうして再び、二人は戦場へと舞い戻った。

 

『ソウジさん……?』

「おう、待たせたな」

 

 ヴァングレイを囲んでいたテロリストの機体を蹴り飛ばし、ゲシュペンストを着陸させる。

 どうやら間に合ったようだ。

 

『随分な到着ですね』

「まぁな……。悪かったな、翔」

 

 頭を下げる。

 まずは謝りたかった。

 

「俺は一度逃げようとした。この平和な世界で戦いから逃げようとしたんだ」

『……』

「だけどな、やっぱり逃げたくなかった。失った仲間達のように、お前達を失いたくなかったんだ」

 

 総司には沢山の仲間がいた。

 でもみんな死んでしまった。

 残されたのは自分一人。

 ヤマトから離れようと思ったのは、再びこんな気持ちを味わいたくなかった為かもしれない。

 だけど。

 

「もう一度だけ立ち上がろうと思った。今度こそ失わないように……。だから……」

 

 だから……。

 

「そんな情けない俺を許してくれるか?」

『許しますよ、ソウジさん』

「ショウ……」

『だからまず降りてくれません?』

「……はい?」

 

 唐突に機体から降りろ宣言に呆気に取られる総司。

 真意を問う前に、翔の方が先にヴァングレイのコックピットから降りていた。

 それを見て、慌ててゲシュペンストから降りる総司。

 

「じゃっ、そういう事で」

「お、おいっ!?」

 

 軽く手を上げて、ヴァングレイからゲシュペンストに乗り換えようとする翔。

 慌てて止めようとするも、無視して乗り込んで行ってしまった。

 

「ゲシュペンストが俺の機体なんで。ヴァングレイはソウジさんに返します。ああ、ちゃんと謝っておいた方がいいですよ」

 

 それだけ言うと翔はゲシュペンストを発進させる。

 先に戦闘を開始していた千歳を援護しに行ったのだろう。

 

「あー……」

 

 謝った方がいい。

 その相手に察しがついた為、どうしたもんかと頭を抱えてしまう。

 だが何を考えようが、やるべき事は変わらない。

 ヴァングレイのコックピットに乗り込むと、そこは変わらない光景が目に写る。

 だが同時に総司を拒否しているようにも見えてしまった。

 

「……」

『……』

 

 そしてモニターに写る一人の少女。

 あの時、翔と再会するきっかけをくれた娘だ。

 そして、このヴァングレイのOSである。

 

「システム99……なんだよな」

『はい』

 

 気づいていた。

 だが気づかないフリをしていた。

 だって気づいたら、拒否できなくなってしまうから。

 

『……捨てられたのかと思いました』

「すまん」

 

 悲しい顔をされた。

 

『……貴方は私のマスターです』

「……すまん」

 

 悲しい顔をされた。

 

『私を……捨てないでください』

「ああ、もう勝手な真似はしない」

 

 そうだ。もうこんな顔をさせたくない。

 

『なら一つお願いが』

「おう」

『名前をください。貴方とチトセさんとショウさんと一緒に私の名前を考えてください』

 

 名前。

 それはとても大事なもの。

 

「ああ、ちゃんといい名前を考えてやるよ」

『なら行きましょう。戦いを終わらせないと名前が決まりません』

「ああ、そうだな」

 

 ヴァングレイは再び空へと飛翔した。

 二人の気持ちが一つになって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◎月$日

 ソウジさんとチトセが帰ってきた。

 二人と再び再会できて本当に嬉しい。

 システム99にもナインというちゃんと名前をつけれたし、これで心配事が一つなくなった。

 ソレスタルビーイングとも合流して、トビアやヴェルト、ロッティとも再会できた。

 こんなに嬉しい事はない。

 後はヤマトを奪還するだけだ。

 その為にもこれから頑張ろう。




おまけ

ゲーム的な話
12話クリア後、オリ主ソウジチトセが乗り換え可能になる。
乗り換え可能な機体はヴァングレイ及び、ゲシュペンスト2機及びヒュッケバインとグルンガストに搭乗可能。
ヴェルトとロッティもゲシュペンストへ乗り換え可能になる。ヴァングレイは不可。


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5ページ目 アルゼナルで頑張る

 △月○日

 本日は休養日。

 正確に言うと艦長達が今後の方針を相談中な為、時間が出来たというのが正しい。

 そういう訳で新規合流した人達と交流する事になったり、色々な話をする事になった。

 話題の一つとしてはナインがチトセの事を姉さん、ソウジさんの事をキャップと呼び始めた。俺?俺は普通に名前呼びである。

 最初は希望はあるか聞かれたのだが、好きに呼んでいいと答えた為、名前になったようだ。何故か顔を赤くして色々と葛藤してたけど。可愛い。

 しかしそんな中で、ミスルギ皇国の皇女がノーマである事が発表された……訳だが俺達転移者組にとってはノーマってなんぞや状態である。

 まぁ、遠い国の話であり追放された皇女は国外で暮らす事になるんだろうな、的な話であった。……勿論、そんな事はないんだろうけど。

 しかしクロスアンジュか。となるとここにもやっぱりあいつ等が出てくるんだろうか……?

 そんな話をしていると、会議が終わったらしく次の目的地が決まったようだ。

 太平洋にある、不可思議な場所、エリアD。

 うーん、考えすぎかもしれないけど、もしかしたらあれがあるんではなかろうか……?

 

 

 △月●日

 当たりだったよ!

 エリアDに向かった俺達を待ち構えていたのは無人のMS部隊であった。

 モビルドールみたいなもんかと思い、適当に蹴散らした。

 ここまではいいのだが次に出てきた連中を見て、さすがの俺も度肝を抜かれる事になった。

 異常な磁気嵐から現れた連中、それはなんとドラゴン!やっぱクロアン案件でした

 まさかこんな所でドラゴンを見る事になるとは、分かってても驚くわ!気分はモンハンのハンターか、地球防衛軍の兵士気分である。EDF!EDF!

 舞人によればドラゴンはこの地球で見た事はないとの事、そりゃそうだ。設定通りならあちら側からやってきているのだろう。

 で、やってきたのはドラゴンだけではなく追加でやってきたのは潜水艦とガンダム!ってあれΞじゃねぇかぁぁぁぁ!マフティー・ナビーユ・エリン!?どうしてここに!?

 Ξガンダムばっかに目が行ってたけどあの潜水艦ってもしかしてミスリル?トイ・ボックス?トゥアハー・デ・ダナン?

 この世界にASがあるような記録はなかったけど、ミスリルいるの!?

 と思ったが、彼等はドラゴンと一緒にやってきた。それはもしかしたらつまり……。

 ホシノ艦長が上手く話しをつけてくれたおかげで、潜水艦と無事に共同戦線を張って、更にASの存在も確認。アーバレストがいたから間違いなくフルメタである。

 そしてドラゴン退治をしていたのだがここでパラメイルが三機出現。まぁ、ドラゴンが出てきたらそりゃ来ますよね。

 で、戦闘終了後、パラメイルはこっちの呼びかけを無視して撤退しようとしたのだが、まさかのあちらからアルゼナルに招待される事になった。

 マジですか。

 

 

 △月◎日

 クロアンの基地であるアルゼナル到着前にミスリルの面々と会う事になった。

 ミスリルのメンバーは俺の知ってる通りだった為、割合。で、驚いたのはΞガンダムのパイロットがハサウェイ・ノアという点だ。

 自己紹介の時に普通にハサウェイと紹介されたし、肩書きもテストパイロットだと言う。

 ふむ。となるとマフティーは結成されていないという事か。

 しかしこれは困った。実はヤマトの世界ではマフティーの乱が起こっており、首謀者がハサウェイ・ノアだという事も判明している。

 チトセ達は気づいていないようだが、トビアは気づいている様子。この話は出したら駄目な奴だな……。

 そんな会話をしてる間にアルゼナルに到着。

 ホシノ艦長とスメラギさんに加え護衛数名が話しを聞きに。

 俺達は何かあった時の為に待機である。

 そいて判明したのはノーマの行き着く先がここであり、ドラゴン退治の専門家であるという事。そしてアルゼナルがこっちを招待した理由は助っ人要請という事だ。

 艦長達は何か不可解に思っているようだが、まさにその通り。

 裏にいるあれは色々とやばそうな感じがする。

 

 

 △月△日

 本日は敵襲なく平和な一日。

 時間もあった為、トビアと一緒にΞガンダムの調査をする事にした。

 幾つか判明したのは同系統の技術が使用されているという事だ。

 トビアはあの世界の過去からやってきた可能性を考えているみたいだが、それだとX1とΞの性能が同じぐらいなのはおかしい気がする。

 それとも空白の10年や100年の間に技術が衰退してしまったのだろうか?

 うーん、疑問が尽きない。

 

 

 △月▼日

 数日が経った。

 俺達に出撃命令は出なかったが、何度かドラゴンの襲撃があった。

 そしてそんな中で数人のパイロットが亡くなったらしい。

 もし、原作通りに進んだとしたら亡くなったのは……。

 

 

 △月□日

 遂に出撃命令が下った。

 アルゼナル周辺でのドラゴン迎撃任務である。

 と防衛準備をしていたのだが、そんな所に最初に飛び込んできたのはドラゴンではなくMS。しかもZZガンダムにZガンダム、百式、ガンダムMkⅡであった。

 ってガンダムチームじゃねーか!パイロットもご丁寧にジュドー、ルー、ビーチャ、エルの四人だし!

 ハサウェイの仲間だと言う。ええい、あっちの世界はどうなってんだ!?

 戦力が増えて、ジュドー達を追ってきたドラゴンを迎撃していたのだが、ここでクロアン主人公ことアンジュがヴィルキスに乗って出撃してきた。

 死ぬつもりだったらしいが無意識の内に回避を繰り返した後、ジュドーと刹那に叱責され生きたいという気持ちを覚醒。ヴィルキスも覚醒して見事に迎撃していた。

 その弾けっぷりは凄まじい物だった。こえーよ。

 出撃後、ヤマト組みと話をしたのだが、やはりハサウェイ達は過去ではなく別世界の可能性が高いようだ。

 なんとあちらの世界では災害で海が赤くなってしまったらしい。なにそれこわい。

 まぁ、そんな大災害があったら記録に残るに決まっているのに、残っていない。となるとやはり別世界か。だけど赤い海……まさかなぁ……。

 でガンダムの類似性に関しては千鳥さんが意味深な事を言って立ち去っていった。「ウィスパード」の能力か……。しかしどういう意味なんだろうか……?

 

 

 △日☆日

 アルゼナル周辺を調査した結果、ドラゴンばかりで火星の後継者の影も形もない事が分かった。

 そういう事で部隊を二つに別ける事になった。

 日本へ戻るのはナデシコBを母艦に勇者特急隊とトビア、ハサウェイやジュドー達のMS部隊。アルゼナルに残るのはソレスタルビーイングとミスリルの面々になった。

 俺やソウジさん達は相談した結果、俺とチトセがアルゼナルに残り、ソウジさん、ヴェルト、ロッティの三人は日本へ戻る事となった。

 同じチームで動いてもいいんだけど、五人全員で同じ部隊だとちょっと数に偏りが出るので、補強みたいな形で分かれる事になった訳だ。

 なんかソウジさんに頑張れよ、って言われたけど何を頑張れと……?

 

 

 △月★日

 アンジュが行方不明になった。

 あー、そういえばそんなイベントあったっけ。という事は原作通りなら今頃、どっかの島でタスクとよろしくやっているのだろう。

 アルゼナル側、と言うより司令であるジル達が焦っているようだ。まぁ、アンジュの身柄というよりはヴィルキスの事が心配なんだろうなぁ。

 さて、俺も捜索に出るとしますか。

 

 

 △月@日

 アンジュ遭難から一週間。これだけのメンバーがいるなら原作より早く見つかるかもしれないと思っていたのだが、中々発見できないでいた。

 俺達は毎日朝から晩まで捜索をしていたのだが、アルゼナル側からすれば不気味に見えたようだ。これはやはり人間扱いされていない事が原因なんだろうか。

 しかしアルゼナル側との衝突もチラホラ見られるようになってきた。今日なんかチトセとヒルダの奴がぶつかってたし。

 で、外部協力者からの連絡でアンジュ発見の報を聞いて、駆けつけた訳だが、まさかのインフィニットジャスティス!アスラン!アスランじゃないか!そういえばここってオーブの近くだっけ。

 まさかの協力者が彼等とは驚いた。

 同時に襲ってきた敵がドラゴンじゃなくて、あの次元の狭間で出会った正体不明の白い連中だとは思わなかった。

 あの時の転移で俺達と同じように飛ばされたのだろうか。しかしどうしてこのタイミングでここに現れたんだろうか?

 もう一つの疑問は標的が俺とチトセのゲシュペンストだった点も気になる。

 チトセが仇討ちの事を話してたけど、それならクアンタとラファエルも狙われてもおかしくないのだがそんな素振りは見えなかった。どういう事だ……?

 撃退は楽だったけど、謎は残った一日であった。

 それとアンジュの雰囲気が少し柔らかくなった。大変な一週間だったけど、良かった良かった。あっ、タスクは原作通りいたようです。

 

 追記:アスランに赤い閃光なんて通り名がついていてちょっとびっくりした。

 

 

 △月?日

 アンジュ帰還パーティを得て、アンジュは若干だがとっつきやすくなったものの、相変わらず問題だらけ。

 チトセもよくパラメイル隊と話をしているが、色々と衝突したりしている模様。なんか今日、エルシャやヴィヴィアン達に囲まれてたっけ。赤い顔でこっちを見てたけどなんかあったのかな?

 で、アンジュと他メイルライダーが衝突する原因はどうやら金問題らしい。金、キャッシュである。そういえば原作でもあったような気がするな、この問題。

 アンジュ大活躍!アンジュ大儲け!他のみんなは安給料。悲しい。

 それが原因で俺達外部協力者とも連帯はあんまり上手くいっていない。こっちが撃墜するとやっぱり給料が減ってしまう為だ。

 因みに俺は勇者特急隊の一員という事で旋風寺財閥から給料貰ってます。

 どうしたもんかと思ったら、なんか侵入者がいた。

 みんなして敵か!?と思ったが、俺は一人だけあっ、となってしまった。思い出した、気づいた。

 アンジュの侍女であるモモカである。ノーマと判明したアンジュを最後の最後まで裏切らなかった従者の鏡みたいな人である。

 しかし再会できたのはいいが、その処遇が問題である。ドラゴンの事は秘密。知られたからには、処刑だそうだ。

 うーん、原作ではアンジュはどうやって助けたんだっけ……?

 

 

 △月<日

 思い……出した!

 そう、そうだったっけ!

 アルゼナルらしいルールだ。だが、これならばなんとかなる筈だ。

 えーっと俺の手持ちは……。

 

 

 △月>日

 アンジュがアスランとヒルダ達三人と一緒に出撃した。なんか決着をつけるのだとか。

 ドラゴンは問題なく撃墜したのだが例の無人MS軍団が襲ってきたので俺達も出撃。到着して早々、アンジュとヒルダ達の言葉による殴り合いが勃発してた。悪化してるじゃねーか!

 で、これにはスメラギさんも激おこ、激おこぷんぷん丸である。

 一喝して見事に纏め上げてしまった。というか、アンジュ達の第一中隊がソレスタルビーイングに買い取られてた。この展開にはさすがにびっくりである。

 ヒルダ達から文句が出たけど、ジル司令は喜んで売るという連絡。あーあ。

 アンジュ達はヤケクソ気味だったけど、連帯も少しはできるようになったから良かったんじゃないかなぁ。

 しかし気がついたら、マークデスティニーのファクターことシン・アスカとその嫁、ルナマリア・ホークが合流してた。アスランが助っ人として呼んでいたらしい。

 さて、アンジュにとっては戻った後が本番である。

 

 

 △月¥日

 祝!モモカ生存!

 いやぁ、無事で良かった良かった。

 助けた方法は単純明快。金で買ったのである。金さえ積めば何でも手に入る、というアルゼナルのルールがあったからこそである。

 気がついたら俺も手持ちの金を全部渡しておいたから少しは役にたっただろう。

 アンジュからはお節介な奴、と言われたがありがとうとも言われた。うん、良かった良かった。大切な人を失わずに済んだのだ。まぁ、俺の支援なんか焼け石に水で借金してたみたいだけどね。

 

 

 △月$日

 最近、アンジュとモモカとよく話すようになった。まぁ、軽い挨拶や食事を一緒にする程度だけど。

 そんな中でチトセから変な目で見られてるような気がする。というかチトセの様子がおかしい、なんだろうか?

 

 

 △月%日

 今日はデスティニーやジャスティス、インパルスを見せてもらった。さすがガンダム、イケメンである。

 少し前からだがあの憧れの機体を見ているだけではなく、機体の構造などにも興味が出てきた。ちょっとずつだが整備の勉強もさせてもらっている。

 可能なら俺のゲシュペンストを改造してみたいなぁ、と思ってきた為だ。

 ぼくのかんがえたさいきょうのげしゅぺんすと、なんてものを作れたら楽しそうである。

 タイプRは改良型があるけど、タイプSはないからなぁ……。

 って事で今日も勉強である。

 

 

 △月&日

 クルツさんからチトセちゃんとの仲はどう?と聞かれた。

 良好、と答えたんだがどうやら求めていた回答とは違ったようだ。解せぬ。

 俺だって子供じゃないし、クルツさんの言わん事は分かるのだが。

 うーん、俺ってチトセの事をどう思ってるんだ?勿論、仲間としては凄い大切なのは分かるんだが。

 少し考えてみる事にしよう。

 

 

 ▲月○日

 新型もとい新種ドラゴンがやってきた。気分はマジモンハンなんだけど。

 しかしあいつが高重力攻撃をしてくるとは思わなかったもとい忘れてたわ。アンジュが高熱を出した時点で思い出しておけば良かったのだが。

 だけどあの初物ドラゴンを見た瞬間、嫌な予感がしたので思わず上空に向かって全力退避したおかげで重力攻撃から回避する事に成功した。

 この時点では重力の事は思い出していなかったのだが、よく回避できたな俺。

 だけどタイプSじゃ重力圏外からの攻撃手段は乏しい上に、他ドラゴン達の妨害が酷すぎて初物に近づけないでいた。

 そこにやってきたのはまさかのダブルヴィルキス、ではなくヴィルキスとストライクフリーダム。キラ・ヤマトである。まさに舞い降りる剣状態!

 高熱フラフラのアンジュとサリアの指揮のおかげ?で重力攻撃も解除できて、サリアは指揮官として一皮剥けたみたいだ。

 中隊もチームとして纏まりつつあるようだし、少しずつ前にいけてるかな。まぁ、代わりにシンとキラの間で微妙な雰囲気が流れてるけどな。

 

 

 ▲月●日

 アルゼナルから出発。日本のナデシコBと合流する為だ。

 で、アンジュ達もこのまま一緒に来る事に。外に出られる事に驚いてたけっか。俺も少し驚いてるけど。

 久々にソウジさん達との合流だ。

 どうせあっちも色々とあったのだろう。話を聞くのが楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンジュから見て高坂翔はお節介な奴である。

 モモカを助ける為に金策をしていた所に現れて、結構な額の金を置いていったのだから。

 

(まぁ、そのおかげでモモカを買えたんだけど)

 

 最初は邪な目的でこっちに近づいてきたのかと思ったのだが、そんな素振りは一切見られない。

 本人は至って普通通りに過ごしているのだから少し拍子抜けしてしまった。

 

「ようアンジュ。今時間あるか?」

「ショウ」

「時間があるならお茶にしないか?」

「それってナンパ……な訳ないか」

 

 噂をすればアルゼナルの通路でばったりあってしまった。

 そしてお茶に誘ってきたのである。

 これが、あの金髪軟弱男もといクルツならば素気無く断っていたが、翔はそういう目的で誘ったりしないだろう。

 多分だが……。

 

「モモカに誘われた?」

「ああ。さっき宗介やかなめ、エルシャ達と一緒にいる所にばったりあってな。そこで誘われた」

 

 それに快諾した結果、アンジュを探しに来た、という事だろうか。

 そういう事ならば断る理由はない。参加する事にした。

 

「後、チトセを見なかったか?」

「ごめん、見てないわ」

「そっか。じゃあ会場は」

「どうせいつもの場所でしょ。先に行ってるわ」

「ああ」

 

 それだけ言うと翔は千歳を探しに別方向に歩いて行く。

 その後姿を見て思うのは、異世界からやってきたというのによく人助けなんてできるな、という事か。

 ノーマとして国を追われた自分は色々な意味でいっぱいいっぱいだったと言うのに。

 

(生粋のお人よしって事かな)

 

 とりあえずそう納得しようとして、翔から視線を外そうとして……。

 

「え?」

 

 それを見た。

 次の瞬間には翔は通路を曲がって姿を消してしまったが、先ほど、確かにアンジュは見たのだ。

 

「……黒い……靄?」

 

 一瞬、翔の姿が黒い靄のように包まれた事、そして同時に靄の先に翔以外の誰かがいた事。

 気のせいではない。

 間違いなく、そこに誰かがいたのだ。

 それを認識した瞬間、自分でも理解できない寒気が襲い掛かる。

 どうしてそんな気分になるのかまったく理解できないままアンジュは通路で呆然と立ち尽くすのであった。



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6ページ目 宇宙で頑張る

 ▲月◎日

 料理うめぇ!

 無事に日本に到着した俺達は舞人が用意してくれたパーティをおもいっきり楽しんだ。

 アルゼナルの料理も悪くはなかったんだけど、やっぱり日本食最高!って事である。日本人だしね。

 それはそうと、ソウジさん達の方でも色々とあったそうだ。その代わり仲間も増えたみたい。

 まず俺達と同じくこちらに飛ばされていた鉄也さんが合流した。同じく合流した破嵐万丈さんに拾われて世話になっていたそうだ。

 他にも旧ナデシコクルーであるマキ・イズミさんとアマノ・ヒカルさん、そしてガイゾックを倒したザンボット3の神ファミリーが合流していた。

 俺もよく知る人達が合流して、スパロボ部隊って感じになってきたなぁ。

 

 

 ▲月△日

 ホイなんちゃらがやってきた。そしてブラックガインを置いていってくれた。いい奴である。

 真面目に書くとホイなんちゃらとか言うマフィアがガインをコピーして、こっちを襲ってきたのだが正義の心までコピーしてしまった為、普通に味方になってしまったのである。

 うーん、何もせずに戦力増加でガインの弟が出来るとかすげーな。

 

 

 ▲月▲日

 特許許可する東京都特許許可局!

 先日襲ってきたマフィアが再度襲ってきて、ブラックガインのコントロールを奪ってしまった。しかもブラックマイトガイン状態になるとは思わなかった。

 さすがにマイトガインなだけあって、パワーも桁違いだったのだが戦力がアップしたこっちの敵ではなかった。

 で、ブラックだが無事に助ける事が出来た。

 相手のコントロールユニットを破壊する為に、早口言葉が有効だとは思わなかったなぁ。

 マフィア?怒りに満ちた全員の攻撃を受けて、ヒエーとか言いながら逃げていったよ。

 

 

 ▲月▽日

 今日は休みだったので、設計図の図面を引いてみた。

 趣味レベルのものだし、見せられたもんじゃないけど楽しかった。

 将来、本気でこっち方面の職についてみようかな。

 

 

 ▲月▼日

 情報が纏まったのでブリーフィング。

 どうやら火星の後継者は陽動と足止めの為、大気圏内で行動していたようだ。あのマフィア達の攻撃もその一環と判断するのが打倒だろう。

 これは大きな作戦の準備の為のようだ。

 リョーコが憤っていたが、放置すれば鉄道網の中枢であるヌーベルトキオシティが壊滅し、世界が大混乱に陥っていた可能性が高いから仕方がないと言えば仕方がない。

 しかしアスラン達も言っていたが、火星の後継者の組織力半端ないな。

 だけど奴等の快進撃もここまでだ。

 俺達ばかりに目を取られ、万丈さん達が奴等の目を盗んで敵の前線基地の割り出しがされていた。

 とは言え数が多すぎて、一つ一つを潰すのにはあまりにも非現実的だ。ボソンジャンプで逃げられる可能性が高いしね。

 で、打開策として敵中枢への電撃作戦。

 それを行う為に、こっそりではなく堂々と宇宙に上がる事になった。つまり俺達は大きな餌である。

 あちらがこちらを警戒しているならば、間違いなくアクションがある筈。そこから敵中枢を割り出すようだ。

 簡単に書いたけど、敵の規模が見えない以上、中々難しい作戦なのは間違いない。

 頑張らないと。

 ん?え?例の物が出来た?今すぐ行きます!!

 

 

 ▲月☆日

 ようやく落ち着いたので再開。

 宇宙に上がる事に決定した後、少ししてマフィアやら宝石泥棒やら将軍もどきやらマッド達が連合を組んで襲撃してきた。

 とは言え、この手の連合にありがちな組んだものの、連帯せずに各々の判断で攻撃してくる手合いだった為、撃退は楽であった。

 敵で一番強かったエースのジョーに関してはチームプレイ?何それ美味しいの?と言わんばかりに舞人ばっかり攻撃してくるし。

 で、最後は舞人とジョーの一騎打ちとなったのだが、あのマフィアがジョーごと攻撃してきた。なんというか早い裏切りであるが、よくある事とも言える。

 結果的に言えば援軍として駆けつけてくれたバトルボンバーにグラハム・エーカーとパトリック・マネキン、そしてジョーのおかげでマフィアは軽く捻り倒してしまった。

 ……のだが、チトセが負傷してしまった。

 戦闘に巻き込まれたというか戦いを止める為にやってきたサリーを庇ってゲシュペンストを割り込ませた結果、運悪くコックピット近くを被弾してしまった。

 こう、冷静に書いてるように見えるがあの時、俺は多分ぶち切れて、奴等がもってきた戦車をかなり派手に破壊しまくった。

 後で聞いた所によるとドン引きレベルだったようだ。

 戦闘後、チトセは大事をとって入院。宇宙行きもなしになった。

 チトセは行きたがってたけど、ゲシュペンストも工場での修理が必要だし、ここは我慢してもらった。

 というか今のままついてこられたら俺が冷静じゃなくなる。間違いない。

 そしてここに来てソウジさんの言葉の意味が分かった気がする。

 覚悟を決めておこう。

 

 

 ▲月★日

 出発前にチトセと会話。

 多分、お互い顔が真っ赤になったと思う。

 答えは俺が火星の後継者を倒して、ヤマトを奪還し、戻ってきた後に出してもらう事にした。

 よし、頑張ろう。

 

 

 ▲月◇日

 トゥアハー・デ・ダナンが宇宙へ飛んだ!スパロボZかよ!

 話によると、あちらの世界では大気圏内外両方でドンパチが行われていた為、航宙艦として改装したとの事。やっぱスパロボZじゃないか。

 で、チラっと鉄也さんにジュドーがマジンガーZの事を聞いていた。えーっとそれはつまりジュドー達の世界にマジンガーがいるのか……マジかー。

 しかし鉄也さんは知らないと答えていたが、どうにも怪しい。

 記憶喪失とは言え、マジンガーZとグレートマジンガーは兄弟機。何かしらの反応があってもいいと思うのだが。

 それを見ていたナインとソウジさんもなんかコソコソと会話していた。もしかしたらナインが何かに気づいたのかもしれない。

 けど疑うのって俺苦手なんだよなぁ。そういうのは専門家に任せる事にしよう。

 

 

 ▲月◆日

 ボソンジャンプによる急襲を受けた。

 やっぱりこのジャンプ攻撃すげーうざいわ。

 しかも宇宙戦が初めてなパラメイル隊は動きが鈍かったし。ここは俺がフォローに回る事にした。

 で、ボゾンジャンプによる追加の増援が来た、と思ったらその上から敵襲を受けた。

 あの白い無人機軍団である。

 どうやらあの時、撃退したのが全てではなかったようだ。

 だが無人機の撃退なんぞお手の物、と思ったがなんと一機だけ有人機がいたのだ。

 スピードを追い求めている口ぶりの男であり、こっちとコミュニケーションをとる気はまったくないようであった。

 そして口だけではなく腕も機体性能も優れていた。

 だけどこっちは奴の態度に静かに切れていたソウジさん、そして援軍に駆けつけてくれたキンケドゥさん、竜馬さん、そして古代戦術長達のおかげで撃退に成功した。

 しかし結局、あいつらの正体は分からなかったが、あのスピードマニアはグーリー、そしてガーディムという組織名だけ。けどまた来るみたいだから、その時に聞き出せばいいだろう。

 それより今はヤマトだ。

 火星の後継者に捕らわれたヤマトの状況と場所が分かった以上、是非もない。奪還に全力を尽くすだけだ。

 

 

 ▲月※日

 作戦成功!無事にヤマトを奪還する事が出来た。

 真田副長の特製ウイルスとルリ艦長のクラッキングコンボとか鬼すぎる。相手、手も足も出なかったみたいだ。

 しかし今回も驚きっぱなしだったなぁ。まさか万丈さんがA級ジャンパーだったとは。火星生まれだったんですね。

 そしてまさかのνガンダムとアムロ大尉!どうしてここにいるんだぁー!?って感じである。

 後で聞いた話によると、アクシズショック後にこちらに転移してしまったらしい。一体何がどうしてそうなったと言いたくなった。

 だが問題も残った。

 アキトの奥さんであるユリカさんは捕らわれたままだし、火星の後継者には逃げられた。

 だが同時にチャンスでもある。

 前線基地を失い、浮き足だった今こそ攻め時だ。

 アキトさんも合流した事で、ナデシコBもボソンジャンプが可能になったので補給が済み次第、ワープで火星へ強襲をかける事になった。

 さぁ、ここ一番の大勝負だ。ポカしないようにしなければ……。

 

 

 ▲月#日

 問題発生中。

 状況が判明次第、記述を再開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 如月千歳はヌーベルトキオシティの病院の一室にいた。

 先日の襲撃により負傷してしまった為だ。

 翔達と一緒に宇宙に行けない事が非常に歯痒いが、自身の負傷もだが愛機であるゲシュペンスト・タイプRの修理が終わらなければ、どちらにせよ戦力としては数えられなかった。

 だからこそこうして早く傷を治す為に病室で大人しくしているのだが、どうにも機嫌がいい。

 こういう状況になったのなら、焦ったり、落ち着かない様子になりそうなものだがそれを覆すように機嫌がいい。

 どうして入院しているのに機嫌がいいのか。それを聞いたのは見舞いに来たサリーから見てもそれは明らかだった。

 

「何かいい事があったんですか千歳さん?」

「あ、う、うん」

 

 サリーが見舞いの品として持ってきた林檎の皮を剥きながら聞いてみると、顔を赤くした千歳が控えめに頷く。

 それを見てサリーは脳内で幾つかの『いい事』をピックアップしていく。

 そして彼女が顔を赤くした様子から辿り着いた答えは……。

 

「恋人さんですか?」

「ふぇっ!?あっ、いや、こ、恋人はいないんだ……。こ、今度できるかもしれないけど……」

 

 最後の方はかなり小さい音量になったものの、サリーの耳にはしっかりと届いていた。

 なるほど。意中の相手から告白された、という事か。

 そしてまだ答えは出してないけど、これは間違いなく両思いに違いない。

 

「おめでとうございます!」

「うん……ありがとうねサリーちゃん」

 

 相手はどんな人だろうか。

 こんな美人でスタイルもよい人が思う相手だ。きっと相手も良い人なのだろう。

 赤い顔でゴニョゴニョしている千歳を見ながらそんな事を考えていたが。

 

「そ、そういうサリーちゃんは好きな人いるの?」

「えっ、あっ、わ、私は……」

 

 千歳の切り替えしに今度はサリーが顔を赤くする。

 相手は、いる。

 あの時、助けてくれたヒーロー。

 住む世界は違うけれども、この胸に宿った想いはきっと……。

 お互いに顔を赤くしながら、そんな話を暫くしていたがサリーのバイトの時間が迫ってきていた。

 もう少し話していたいが遅刻する訳にはいかない。

 お暇しようと、立ち会った次の瞬間、病室の扉が突然開かれた。

 一体誰が?と声を上げようとする前に、サリーは見てしまった。

 自分達に突きつけられた拳銃の存在に……。

 

「……貴女達、何者?」

「如月千歳だな」

 

 千歳の質問を無視するように、確認を取ってくる襲撃者達。

 どうやらこちらの質問に答えるつもりはないよだ。

 

「我々と共に来てもらおう」

「断る、と言ったら?」

「こうなる」

 

 その次の瞬間、爆音が鳴り響いた。それと同時に聞こえてくる悲鳴。

 間違いない。街中で何かが爆発した音だ。

 

「なっ!?」

「今の爆発で死者はいない。しかし」

「っ!」

 

 続きの言葉は聞くまでもない。

 次に再び同じ音が聞こえてきた時、今度は必ず誰かが死ぬ事になるのだと。

 

「……分かったわ。連れていきなさい。でも彼女は」

「我々に下された命令は貴様を連れて行くだけだ」

「そう……」

「ち、千歳さん……!」

 

 襲撃者に屈して、ついていく事にした千歳。

 それを見てサリーは言葉をかけようとするが、何を喋ればいいか分からないでいた。

 

「……ごめん、行って来るね」

 

 それだけ言い残して千歳は襲撃者と共に姿を消していった。

 サリーは呆然とそれを見送る事しか出来なかったが、しかしここで彼女は諦めなかった。

 自分には力がない。だから千歳を助ける事はできない。

 だがそれを成す事が出来るHEROを知っている。

 そんな彼に伝えるべく旋風寺財閥に足を向け――

 

 

 

 彼等が火星で消息を絶った事を聞いたのであった。




離脱フラグが折れたとは一言も言っていない。


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7ページ目 新しい並行世界で頑張る

 ▲月=日

 状況が落ち着いたので再開。

 まずあの日、何があったのかを書こうと思う。

 俺達は火星の後継者と決着をつけるべく、ワープやボソンジャンプで火星へと強襲をかけた。

 最終通告をするも無視された為、武力制圧に乗り出した訳だ。

 あちらも負けじと持てる戦力を全部出してきたのだろう。

 北辰六人衆や積尸気は勿論、旧式であるマジンやテツジン、バッタまでも大量に展開してきた。数は正義である。

 しかし残念ながらこっちはみんな一騎当千と言っていいメンバーが揃ったスパロボチームである。北辰六人衆以外の相手に負ける気はまるでしなかった。

 俺も旋風寺財閥で作ってもらった新型武装もといブーストハンマーを装備してぶんぶんバッタを撃退してたし。

 実際このまま何事もなければこちらの勝ちであったのだが予想外の乱入者達が現れたのだ。

 ドラゴンである。

 アルゼナル周辺にしか出ないと思っていたあのドラゴン達が火星に現れたのだ。しかもデカブツばっかりで。

 この登場には火星の後継者達もびびっていた模様。

 見境なしに暴れるドラゴン達のせいで三つ巴となってしまったが、ドラゴン達はアンジュやサリア達が向かい、撃退に成功していたのだが更にここで追加メンバーの到着。

 ガーディムである。

 先日現れた指揮官の男、グーリーも来ておりソウジさんとハイスピードバトルを繰り広げていた。

 という感じで火星は四つ巴の大決戦という有様になってしまった訳である。

 だけどさっきも書いたが、こっちも戦力アップに成功していたおかげで、最初はドラゴンを撃退。

 次にソウジさんがグーリーを叩き落してガーディムを撃退。

 そして北辰をアキトさんが倒して、火星の後継者終了のお知らせと言った所だ。

 所がここからが問題だ。

 火星の後継者は演算ユニットを持っていなかった。

 これには俺も!?状態である。

 原作だと持っていた筈なのに持っていない?訳が分からない。話によれば回収に失敗したとかなんとか。うーん、一体何があったんだ?

 そんな時にまさかのドラゴン達が再び現れたのだ。しかもさっき撃退した以上の数を揃えて。

 ドラゴンの群れの中にパラメイルが一機いたようだが、そちらを気にしている余裕はすぐになくなった。

 何せ黒いヴィルキスが六機も現れたのだから。

 敵か味方か分からない状態に加えて、俺はメタ知識と知っている事があったからすぐに正体がなんとなく気づいていたがそれを気にする余裕はない。

 加えて歌が聞こえてきた。

 そこからの黒いヴィルキスからの攻撃に、全員が容赦なく晒されてしまいしっちゃかめっちゃかな状態になってしまった。

 そしてドラゴンの攻撃も入って、大ピンチに陥ってしまった。

 撤退しようにも無数のドラゴンの群れによる無差別攻撃、黒いヴィルキスの攻撃を彼等のちょうど真ん中で受けてしまった俺達は撤退する事もままらなかった。

 なかったんだが、ここで女性の声と共に空間が歪み転移させられてしまったのだ。

 そう、赤い地球に……。

 

 

 ▲月@日

 昨日の続きだが、俺達は転移させられた。演算システムと一体化していたユリカさんの手によって赤い地球へと。

 こっちはまさかのハサウェイ達の世界である。

 そして目の前には戦闘状態に陥っていた地球連邦とネオ・ジオンがいたのだが、そこにまさかのガミラス襲来である。

 地球連邦とネオ・ジオンを横から撃破してこっちに襲い掛かってきたのだ。

 つーか、どうしてお前等がいるんだよ、と思ったが次元断層脱出時にこっちを味方ごと撃って来た連中だと判明。

 そうなるとあの時、俺達が舞人達の世界に飛ばされたあの時にこっちに飛ばされていたのか、あいつら。

 状況を掴む為に離脱しようと思っていたんだがガミラスとなれば話は別である。というかこっちの世界にまで迷惑をかける訳にもいかないし、応戦決定である。

 んでガミラスは木星帝国のMSを出してきたのだが、その先頭にクロスボーン・ガンダムX2があったのだ。

 ええええ!?って感じである。しかもパイロットは変わらずザビーネである。お前、死んだんじゃなかったのかと言いたくなったわ!

 なんというかクロボンのパイロットって死ぬような状況になっても生きて帰って来るのがお約束なんですかね……?

 しかしこう言うのもあれだが、戦力がパワーアップした今のメンバーならガミラスが相手でも問題なく撃退に成功してしまった。

 いやー、ヤマトの火力は勿論だがナデシコBのグラビティブラストも強いし、ピンポイントでこっちを援護してくれるトゥアハー・デ・ダナンとプトレマイオス2改もいい仕事をしてくれる。

 加えてマイトガインやザンボット3、ダイターン3みたいなスーパーロボット達もいるから突破は割と余裕だった。

 そんな若干余裕のある戦場だったが、キンケドゥさんのX0VSザビーネのX2は凄まじい戦いだった。

 機体は変わったがお互い手の内が分かっているライバル同士の戦いは、余人が割り込む余裕がないレベルだったよ。

 まぁ、ガミラスが不利になったのを分かると撤退してくれたが。

 うーん、ザビーネも生きているとは思わなかった。クロボン本編の最終決戦に何があったのやら。

 で、戦闘後にようやく落ち着いて会話できたのだが一部空気が悪くなってしまった。

 まぁ、転移直後だししょうがないか。

 俺からすれば二回目所か三回目だしなんとかなるって。

 って言ったら全員、ばっとこちらを見てきた。えっ、お前何言ってんの?って感じである。

 あー、そういえばチトセとソウジさん以外に俺が転移者って事を話してなかったっけ。

 そっちの説明にも時間がかかってしまったわ……。

 ヴィヴィアンからは楽しそーって言われたし、まぁ、確かに楽しいのかもしれないな。

 

 

 ▲月?日

 状況確認。

 俺達が飛ばされた世界をそれぞれ新正暦世界、西暦世界、宇宙世紀世界と呼称する事になった。ヤマト世界は新正暦世界である。

 で、今いるのがハサウェイやジュドー達の世界こと宇宙世紀世界。どうやらここもカオスのようである。

 宇宙世紀ガンダムが中心なのは間違いないがフルメタに加えて、チェンゲとマジンガーが混じっている世界のようである。そして俺が危惧していたものもいたようだ。

 それ即ちエヴァンゲリオン。セカンドインパクトという災害、そこから発生した赤い海。

 どう考えてもヱヴァンゲリヲン新劇場版の方である。色々なフラグが立ってて怖いんだけどぉ!

 しかしこちらの世界もどうも時間の流れが微妙に違うようだ。

 俺の知っている歴史なら1年戦争終結後、7年後にティターンズが台頭しているがこちらでは13年とだいぶ違っている。

 そのせいかZ、ZZ、CCAが短い期間で一気に発生しているようだ。

 大体の状況説明が終わった後、次の俺達の行動についてだがテッサ艦長は連邦の良心であるロンド・ベルに接触する事を進めてきたが沖田艦長はこの世界の状況確認の為、独自行動を取る事になった。

 スメラギさんも言っていたがこのメンバーが丸ごと、戦争に巻き込まれると色々とまずいしな。

 という事で状況確認、そして補給の為に赤い地球へと降りる事になった俺達であった。

 

 

 ▲月<日

 赤い地球……話には聞いていたが悲しい場所である。

 生き物さえ住んでいない赤い海。海が干上がったヤマト世界の地球も相当だがこちらも酷い場所である。

 加えて地球人同士の戦争で滅びそうとなれば、話したがらないのも当然か。

 しかし真田副長がかなめと宗介を見て何か呟いていた。あの二人がどうかしたのだろうか?

 

 

 ▲月>日

 この世界からの連邦軍から救援要請が入った。

 駆けつけてみれば、そこにいたのはネェル・アーガマでありユニコーンガンダムである。

 UCかと思ったがそれだけで終わらないのがスパロボ世界クオリティと言うべきか。

 まさかのジェリドとヴァースキ大尉もといヤザンがいたのである。お前等も生きてたのか!?

 色々な意味で凄い状況だが、ネオ・ジオンもまさかガミラスと組んでるとは思わなかった。

 これは沖田艦長も激おこ案件である。

 参戦した俺達だけど、無理なく撃退。そう簡単に負ける訳にはいかない。

 こうしてロンド・ベルと合流。

 悲しくも三つ目の世界でも俺達は戦いの渦に巻き込まれるようだ。

 ヴィヴィアンに色々な世界を見るのは楽しい、と言ったが戦争に巻き込まれるのは悲しいものだ。

 

 

 ▲月<日

 今日はみんなと街に来てみたが酷い有様である。

 ガイン達も言っていたが完全に死んでしまっているようだ。

 主要都市ですらこの状況に近いとなると、末期状態と言ってもいいかもしれない。

 これを見ると西暦世界って平和な方だったんだなぁ。

 

 

 ▲月$日

 いきなりだが地球連邦と戦闘になった。

 まぁ、その、なんだ、スパロボ的にはいつもの事である。

 連邦軍総司令部の部隊であるGハウンドから俺達異世界の部隊を引き渡せとの命令。

 オットー艦長が突っぱねてくれたがネェル・アーガマに乗り込んでいたエコーズが艦を掌握。こっちに命令に従うように言ってきたのだ。

 まぁ、肝心のダグザ中佐は乗り気じゃなかったようでアンジュと沖田艦長の言葉に反応し、バナージ達によって心を動かされたようで拘束を解いてくれた。やっぱりいい人である。

 結局、戦闘になったがそこで援軍としてラー・カイラムとプル&プルツーに加えてカミーユとファまで駆けつけてくれた。

 プルとプルツーは生きてたのか!であるがもう今更である。Gハウンドにブラン・ブルタークまでいるし。

 しかしカミーユとファはどうやらロンド・ベルの一員ではなく独自行動を取っているようだがどういう事なんだろうか?

 ジェリド、ヤザン、ブランの三人は確かに強かったがカミーユやジュドーに押さえ込まれていた為、余裕とは言わないが勝利。

 困難な道のりになるが、大丈夫だろう。うん。

 しかしカミーユとファは一体どうしたんだろうか?

 アムロさん達の呼びかけを無視して去って行ってしまった。

 また会える事を願っているような言葉を残していったから、これが別れという訳でもないようだ。

 彼等の道と俺達の道が重なる日が来るのを願うだけである。

 戦闘後の俺達は補給の為、ミスリルの基地であるメリダ島に向かう事になった。そこで少しでも休めるといいんだけどなぁ。

 ああ、そうだ。千歳はどうしてるだろうか。

 こうして世界の壁に挟まれていると分かると、無性に会いたくなる。

 ……千歳に会いたいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 如月千歳は何処かの戦艦の中にいた。

 

(多分、宇宙かな……?)

 

 病院で拘束されてから、意識を失い五感を奪われた状態で運ばれていたがこの足が浮くような感覚は宇宙に違いない。

 今は目を隠され、両手を拘束されてしまっているがそれぐらいは理解できていた。

 暫く歩かされた後、何処かの部屋に入るとようやく目隠しを外された。

 

「ふむ、ようやくご対面と言った所かな」

「……貴方は」

 

 目の前にいるのは白い服を来た初老の男。豪華……と言っていいか分からないが中央の椅子に座っている事から、この部屋の主であるのは間違いないだろう。

 その横に似たような服を着た金髪の女が秘書のように立っているのも判断材料だ。

 

「ようこそキサラギ・チトセ。私はアールフォルツ・ローム・ハルハラス。超文明ガーディム、第8艦隊司令官である」

「……」

「ふむ。嫌われたようだな。が、まぁどうでもいい話だ」

 

 返事をしない千歳の態度にどうでもいいような様子を見せるアールフォルツ。

 その様子に顔を顰める千歳。

 口遊びなどではなく、本当に千歳に興味がないようなのだ。

 ならば何故自分を拉致したのかが理解できない。

 前に翔から火星の後継者に転移者として狙われた事があると聞いていた為、自分を拉致したのは火星の後継者だと思っていたのだが違うようだ。

 しかしガーディムとは一体……?

 

「さて、本題に入るとしよう。君達はイスカンダルを信じているのかね?」

「……?」

 

 イスカンダルと言えば、自分達の地球に救いの手を伸ばしてくれたあのイスカンダルなのだろうか?

 

「君達、テロン人、ああ地球人だったかね。それは母星を救う為、イスカンダルに向けてあのヤマトという艦で出発した」

「……ええ、そうよ」

 

 このまま口を閉ざす事も出来たが、イスカンダルの事を何か知っている様子を見て口を開く。

 もしかして自分達が知りえない情報を知っているのだろうか。

 

「騙されている。と言ったら信じるかね?」

「え……?」

「これを見たまえ」

 

 アールフォルツの言葉に驚くと同時に後ろのモニターに何かの映像が映し出される。

 それは……。

 

「波動砲……の光……?」

 

 ヤマトに搭載されている波動砲と同じ光が宇宙を貫き一つの星を撃ち貫いている様子であった。

 その破壊力を知っている以上、貫かれた星の末路もすぐに理解できた。

 次の瞬間に、大爆発を起こして宇宙の藻屑と消える星。

 これは……いったいなんだと言うのだ。

 

「これが我がガーディムの星の末路だ」

「えっ、貴方達の星……?」

 

 まさかの発言に驚愕する。

 超文明と名乗っている彼等が母星を失っているとは思わなかったのだ。

 

「そう。あの忌々しいイスカンダル。奴等は我が星に攻め込み、あの武器を持って星を破壊したのだ」

「……!」

 

 ここで騙されている、という発言をようやく理解した。

 この映像が本当に本物ならば、あの救済は嘘の可能性が高いという事だ。

 

「君達の星は救われない」

 

 その事実を目の前の男は突きつけてくる。

 地球が救われない。

 汚染されたあの地球はそのまま朽ちて行くのだと言われたのだ。

 

「だが我々にはそれを救う術がある」

 

 そして目の前に出されるのは大きな飴。

 自分達なら地球を救えるだと。

 だから……。

 

「貴方達に手を貸せ、と」

「話が早くて助かる。そう、その通りだ」

「……」

 

 イスカンダルは星を救わず破壊する者達。だから地球は救われない。

 だが正体不明のこいつらに手を貸せば地球は救われる。

 それは甘い誘惑。そして大きな毒である。

 そんな誘惑に惹かれている自分がいる事にも気がついた。

 

「さて、返答を聞かせてもらおう」

 

 だけど。

 

「断るわ」

「ほう。母星を見捨てるのかね?」

 

 如月千歳は断った。

 その誘惑を断ち切ったのである。

 

「それでも……私は信じている」

 

 思い返すヤマトの旅路。

 共に旅をした仲間達の事を。

 折れそうになった自分を救ってくれた彼の事を。

 

「だから私は貴方達には手を貸さない。私はヤマトと共にイスカンダルに行くわ」

 

 それが答えであった。

 それを聞いたアールフォルツは。

 

「そうか」

 

 心底どうでもいいと言った表情で答えた。

 

「ジェイミー一等武官」

「はい」

 

 アールフォルツが次に声をかけたのは横に侍らせていた女であった。

 女もまた淡々とした様子で答える。

 

「それの扱いはお前に任せる」

「お任せください」

 

 まるで物の扱いを任せるような声色に悪寒が走る。

 駄目だ、逃げなくては。

 だが千歳が体を動かす前に、回りに待機していた女達が拘束してくる。

 最初から分かっていた事だ。

 ここは敵の拠点。逃げる術は……ない。

 

「さぁ、調教の時間よ」

「は、離して……!」

 

 それでも逃げなければならない。

 この目の前に立った女は間違いなく自分にろくでもない事をしてくるのだと、勘が告げているのだから。

 

「安心して。目が覚めれば貴女もまた立派なガーディム人となれるのだから」

 

 嫌だ。

 そんなものになりたくない。

 

「さぁ、眠りなさい」

「……!」

 

 首筋に走る衝撃。

 目の前が黒に染まっていく。

 

 

 

 ――ああ。

 ソウジさん、ナイン、ロッティ、ヴェルト……ショウ。

 ごめんなさい、もう……会えないかもしれません。

 ごめんなさいショウ。貴方に告げる答えを返せないかもしれません。

 ……ごめんなさい。

 

 

 全て黒に染まり、意識は暗い闇の底へと沈んで行った。



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8ページ目 赤い地球で頑張る

 ▽月○日

 ミスリルの基地であるメリダ島に到着。

 補給作業は勿論、火星での戦闘で受けていたダメージを直すべく修復作業に取り掛かっていた。

 俺達は休息。手伝える事は手伝ってるけど、さっさと休めって言われたんで休んでいる所だ。

 その中で俺はネェル・アーガマに乗っているタクヤ・イレイと仲良くなった。

 タクヤもメカニックを目標にしているだけあって俺より知識があるし、こっちの目的ことゲシュペンスト改造計画に理解を示してくれた。同士って素晴らしい。

 って事で休みの間は割りと長時間、タクヤと一緒に図面とか引いたり、改良案を上げたりしていた。ミコットには呆れられてたけど。

 その流れでバナージとも仲良くなった。なんか首を捻られてたけど何だったんだろうか?

 

 

 ▽月◎日

 アマルガム襲来。

 まさかメリダ島の位置までばれているとは思わなかった。

 しかも相手はあのガウルンである。モミアゲ野郎までいやがる。話によれば香港事件は終わった筈なのに生きてるとは。ジェリド達含めて生きてる人多いな!

 奇襲をかけられた形なので、出撃が遅くなってしまいラムダ・ドライバ搭載機に押されてしまいダメージを受けてしまった。

 ただしゲッター達スーパーロボット達が本格的に出撃してからは、容赦なくぶち抜いて殴り飛ばしていたけどね!

 ガウルンの野郎も宗介がきっちり撃退して勝利。

 で、終われば良かったのだがここからが急展開。

 リディ少尉がデルタプラスでオードリーを連れて離脱してしまったのだ。

 なんか話を聞くとバナージも聞いてないみたいだし。あれ?男と見込んだ殺し文句は?

 とか混乱してる間に次はネオ・ジオンがガミラスを引き連れてやってきやがった。

 しかも先頭にいるのは赤い機体ことシナンジュ。シャア……ではなくやはり全裸ことフル・フロンタルであった。アムロ大尉のお墨付きだ!

 更に更にシナンジュに攻撃されたバナージとユニコーンガンダムが見事に暴走し始めた。

 トビアやジュドー、ハサウェイ、アムロ大尉などニュータイプ組みが狙われ、刹那達、量子組みも狙ってきやがった。

 解せない事になんか俺も途中で狙われてたんですけど、どういうこっちゃ?

 まぁ、俺もジュドー達と一緒にユニコーンの方に突撃したから流れで狙われただけかもしれないけど。

 んで暴走ユニコーンはジュドーやハサウェイ達の手できっちり動きを止められた。すぐに再起動して動き出した上に全裸とマリーダさんがやってきてピンチになったけど。

 マリーダさんに狙われたユニコーンだけどジュドーが救援、したんだけど後ろから暴走ユニコーンに撃たれてやばぇ!ってなったんで俺が取り付いたんだけどまさか吹っ飛ばされるとは……。

 タイプSを投げ飛ばすとかこえーよユニコーン。

 最終的になんか宗介と協力して出力が上がったらしいZZがユニコーンの動きを止め、刹那がGNフィールドを展開してくれたおかげでバナージは帰ってこれた。良かった良かった。

 全裸はデストロイモードを制御できるようになったバナージに加えてアムロ大尉によって、マリーダさんはジュドーに撃退されていた。

 全裸には逃げられてしまったが、マリーダさんは途中でクシャトリヤが爆発してしまった為に捕虜になったようだ。

 うーん……これって言うまでもなくフラグだよなぁ……。

 戦闘後、色々話してたけど俺は加わらなかった。

 うっかりメタ知識を喋っちゃいそうだったので……。

 

 

 ▽月△日

 アルベルト・ビストがマリーダさんを連れてここから去っていった。

 何かしら思う所があったようだが、多分そういう事なんだろうな……。

 

 

 ▽月▲日

 なんか凄い警報がなったと思ったらとある場所に緊急出撃となった。

 場所は第3新東京市。エヴァンゲリヲンですね、分かります。

 急いで駆けつけるとなんかマジンガーZとエヴァ初号機が殴り合ってた。何やってんねん、と思ったが初号機の方は暴走中だった。となると使徒は既に撃退済みか。

 謎の無人MSもこっちを攻撃してくるし大混戦状態である。

 無人MSはこっちもMS中心の部隊で撃退し、エヴァ初号機はスーパーロボット達が向かっていったのだが中の人がいるとなるとさすがにやりにくい。

 最終的にマジンガーZが上手くダメージを与えたのか、動きが止まって回収されていった。

 ここで終わればよかったのだが、そこにやってきたのはまさかのドラゴン。お前等ここでも出てくるのかよ!

 加えてなんかまた使徒が来た、ってあるぇー!?あれ2番目にやってくる奴じゃね?どうして同じ日にやってくるんだよ……。

 それに対抗してかエヴァ初号機に加えて零号機が出撃してきた。シンジとかさっきまで暴走してたけど大丈夫なんだろうか?

 意識ははっきりしてたし、会話も出来たから大丈夫みたいだが。

 んで使徒は無事に撃破。最後はきっちり初号機が決めてくれた。

 増援などもなくこれで本当に終わり、と思ったらなんか鉄也さんが竜馬さんを勧誘してた。そして断れたら何処に去ってしまった。

 うーん、やっぱ何かあったか。しかしどういう事なんだろうか、さっぱり分からん。

 

 

 ▽月▽日

 マジンガーZにビューナスA、ボスボロットとエヴァ初号機と零号機が合流した。

 安定のスパロボ部隊になりつつあるが、初号機と零号機もやってくるとは思わなかった。やっぱり何かしらの目的があるんだろうけどね。

 鉄也さんの事だが甲児によれば叔父であり既に亡くなっているとの事。なるほど、真マジンガーか。

 竜馬さんは並行世界の同一人物、と言っていたが俺にはそうは思えない。

 マジンガーZに明確に反応していたし、甲児の事も知っていた。そして一人でここから去っていったという事は行く充てがあるに違いない。

 どうしたもんかと思ったけど、竜馬さんはほっといても大丈夫という事で話自体が流れてしまった。

 それはいいんだけど、その、なんというか、いいようのない不安が過ぎるのは気のせいなんだろうか……?

 

 

 ▽月▼日

 今日はマジンガーZを見せてもらった。

 甲児からも色々と話を聞いたりできて有意義な一日だったと言っていい。

 しかし上の方で何かしらの話し合いがされているようだったが、これからの行動方針についてかね?

 

 

 ▽月□日

 海のど真ん中で襲撃を受けた。

 相手はあのDr.ヘルの軍団の一人、あしゅらである。なんか凄い機械獣に乗ってきたぞ……。

 機械獣もMSなんかよりもパワーがある上に硬いからそこそこ苦戦したけど、まぁ、返り討ちには出来た。

 そして甲児があしゅらにトドメを刺そうとしたのだがこっちも返り討ちに。拙いと思って突っ込もうと思ったらなんかマジンガーZがパワーアップしてたんだが……。

 しかも新しい武器が生まれたってどういう事だよ……。

 俺の疑問は横に置いておいて、今度こそあしゅらを倒せると思ったんだがそこに乱入してきたのがグレートマジンガーと鉄也さん。

 しかもマジンガーZを攻撃してくるし、一体何があったし。えーっと寝返った……訳はないか。

 すると次に甲児にマジンガーZから降りろ発言。俺の知ってるプロとも勇者とも違う。訳が分からないぞ、ほんと……。

 甲児は動揺しちゃってるし俺がフォローに入らないと思い、グレートマジンガーに突撃。鉄也さんからは「お前では俺には勝てない(意訳)」と言われたが引けない時があるのだ。

 まぁ、予想通り返り討ちにあいましたよ!ちくしょう!ただし一発だけゲシュペンストキックをぶち込んでやったぜ、ざまあみろ!

 その後は真・ゲッターがやってきたりドラゴンがやってきたりと大忙しだったようだが俺は気絶してしまったので覚えてない。

 くそー、特訓して強くならないとなぁ。

 

 

 ▽月■日

 なんとボソンジャンプの応用で西暦世界に戻れるらしい。

 何でもドラゴンはこの宇宙世紀世界に生息しており、この世界から西暦世界へと侵攻していたという。

 つまり次元歪曲波形をドラゴンのシンギュラーという次元扉と一致させれば西暦世界への扉が開かれるだと。

 問題は幾つかあったのだが、次元歪曲波形はヴィルキスが発生させる事が出来ると判明。更にナインが計算すれば道を切り開けるとの事。

 勿論、問題がない訳ではないが道が開けただけでも十分な一歩である。

 しかし第三特殊戦略研究所防衛隊が並行世界の転移の研究をしていたとは驚きである。まぁ、ヤマトのワープ機能の応用での研究なのかもしれない。

 とすると教授あたりも一枚噛んでる可能性があるな。

 さて、色々と道を開けてきて準備が進めているが一番の問題はあれだ。

 アンジュがその次元歪曲波形を作れるかどうかである。今は無理らしいので特訓だそうだ。

 俺も竜馬さんとかに頼んで特訓しないとな。

 

 

 ▽月※日

 アンジュがタレパンダならぬタレアンジュになってる。

 さすがに毎日長時間ヴィルキスに乗せられてるんだから当然か。俺も竜馬さんといわずゲッターチーム相手に特訓してるから疲れた。

 一緒に食堂でタレパンダ状態!!

 アンジュはコーチ相手に色々文句を言っているが俺は特にない。まぁ、体動かした方がいいっていう部分はあるしね。

 で、飯をもぞもぞ食いながらゲシュペンストについて考える。

 先日のグレートマジンガーとの戦いは俺の技量も勿論だが、性能差も問題の一つのように感じられた。

 キックを上手くぶち込んだのはいいが、少し押し出しただけでダメージというダメージにはなってなかったし。

 当たり負けしてる所があるからなんとか強化できないもんか。

 ブーストハンマーは雑魚戦で活躍してくれるけど、一騎打ちとかだと使い難いしなぁ。

 ヴェルトにちょっと相談してみるかな。

 えっ、アンジュが逃げた?一緒に探してくれ?

 ……だそうですがどうするアンジュ?えっ、逃げる?今日一日だけ?

 しょうがないなぁ!

 

 

 ▽月#日

 スーパー着ぐるみ大戦!(嘘)

 アンジュがこっそりペロリーナの着ぐるみで艦から脱出したのは確認したのだが、まさかのボン太くんも登場である。

 ……何やってんだ。女性陣からは好評だったけど、その、なんだ中身は……。

 で、アマルガムがやってきたけどボン太くんとヴィルキスに撃退されてた。

 転移も使えるようになったし、良かった良かった……なのかなぁ。

 

 

 ▽月@日

 ようやく並行世界へ転移するパラレルボソンジャンプの準備が整った。

 ヤマト組みはこのまま残るようだが、俺はナデシコBに乗って西暦世界へ戻る事にした。

 チトセを迎えに行く必要があるしな。ソウジさんやヴェルト、ロッティはそのままヤマトに残るが再会を約束した。

 アンジュも用事が済んだらこっちに送ってくれるって言ってたし、戻るのに苦労はしないだろう。

 さて、チトセを迎えに行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バナージ・リンクスは高坂翔を一目見た時から違和感を感じていた。

 

「で、ここをこうしたらどうだろうか?」

「なるほど。だけどこれも捨てがたい」

「おおー!」

 

 目の前では友人のタクヤと一緒に設計図を見て色々と話している姿が見える。

 内容は機体の強化についてであり、趣味があったのか少しの時間で仲が良くなったようだ。

 バナージから見ても翔は悪い人間でないと思う。

 だがどうしても拭えない違和感を覚えるのだ。

 

(なんなんだろう、この感じは……?)

 

 高坂翔は悪い人間ではない。

 だけど、どうしても消せない違和感。

 これは一体なんなのか。

 思わずじっと翔を見つめてしまう。

 途中で翔がこっちを見たが、すぐにタクヤとの会話に戻って行く。

 その姿からはやはり何も感じられない。

 だが気配から感じられる違和感が残るのだ。

 どうしてだろうと思いつつも答えは出ない。

 そこまで考えるとそれなりに時間が経っていた。

 このままいても答えは出ないだろう。そう思い、一旦席を外そうと思い座っていた椅子から立ち上がった所で。

 

 ――目が合った。

 

 ソレは黒い何かで翔に被さるように、そこにいた。

 一体なんだ、と声を上げようとするも音が出ない。

 体を動かそうと思っても体は動かない。

 必然的にバナージはそれを見る事しか出来ないでいた。

 するとソレはまるで嘲るような表情を作る。

 まるでこちらの価値などなく無意味であると思わせるようなナニカであった。

 どれくらい時間が経ったのか分からない。

 しかし気がつけばバナージは元の場所へと戻っていた。

 五感を取り戻していけば、先ほどと変わらずタクヤとショウが図面を見ながら話しているだけで、部屋に変わった様子は見られない。

 先ほどの黒い何かがいる様子も見られない。

 だが。

 

「……っ!」

 

 少し目を向ければ、先ほどの黒い何かがそこにいるかのように思えてくる。

 しかしそれは幻想だ。

 翔からは何も感じられない。黒い影は見られない。

 ただそこに変わらずいるだけだ。

 そこまで考えてバナージはようやく安堵した。

 すると喉が渇いてきた。水を貰ってこようと思い、二人に声をかけて部屋から出て暫く足を進めると、一つの事実に気がついた。

 

「……さっきの違和感」

 

 先ほどまで感じ取っていた違和感。

 それは……。

 

「ショウがまるで二人いるような気がしたんだ……」

 

 その呟きは誰の耳に届く事もなく静かに消えていった。



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9ページ目 西暦世界でブチ切れ

一部抜けている部分がありましたので追加+上げなおしを行いました。


 ▽月?日

 無事に西暦世界へと帰還を果たした。

 いやぁ、青い海はやっぱり素敵ですわ。

 時間の流れもどうやらあちら側と同じのようなので、時差などは考えなくていい事が判明したし新正暦世界に戻る時もこちらで過ごした時間が流れている可能性が高くなった。

 となればやはり一年というタイムリミットは変わらないようだ。

 で、問題が起きたとすればナデシコBのエンジントラブルが発生したのだ。まぁ、無理やりフィールド出力を上げたりしてたみたいだからな。

 補給、そして情報収集の為に日本に向かう事になった。

 うん、チトセとすぐに会えそうだ。

 

 

 ▼月○日

 ―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ▼月☆日

 ようやく頭が落ち着いたので日記を再開する。

 あの日、ヌーベルトキオシティに戻った俺に知らされたのはフザケタ話であった。

 チトセが攫われた。まるで意味が分からない。

 どうして、と何度も考えても理解できないでいる。

 旋風寺財閥とネルガル重工が共同でこの一月の間に捜索を行ってくれたらしいが、消息は掴めず。攫った組織の影すら捕らえられていないという。

 前に俺が火星の後継者に狙われた事があったので、そっちの線かと思ったのだがそちらではないらしい。

 当時一緒にいたサリーちゃんによれば白い服を着た女達らしいが、情報は集まらず。監視カメラなどの映像も残っていないという。

 加えて、脅迫の為に爆弾を複数仕掛けられる点を考えるとかなりの規模の組織なのかもしれない。

 更に工場で修理中だったゲシュペンスト・タイプRも強奪されてしまったとか。

 ほぼ同時刻に犯行が行われた事を考えると同一犯として考えていいだろう。

 今も必死に捜索活動を行ってくれているし、ルリ艦長やソレスタルビーイングも協力してくれている。

 信じて……待つしかない。

 

 

 ▼月★日

 少し前にあった記録も書いておこう。

 舞人の友人である浜田君に彼女が出来ていた。

 旋風寺重工でアルバイトをしていたそうだが、そこで浜田君に一目ぼれ。猛アタックをして結ばれたとかなんとか。

 この時の俺はかなり冷静じゃなかったが、ここは素直に祝福できたと思う。

 その後に舞人とエースのジョーの一騎討ちがあったり、ザンボット3を狙ってショーグン・ミフネが襲ってきたが返り討ちにしてやった。

 あんまりこう書くのもあれだが、俺は悪い意味でかなり派手に暴れてしまった。

 襲ってきた奴等を容赦なく千切って潰して砕いてしまった。アンジュや万丈さんに諌められるまでやってしまい色々と反省するしかない。

 

 

 ▼月◆日

 幾つかの補給や修理を終えた後、アルゼナルに向かう事になった。

 ドラゴンの情報をジル司令に渡す為である。

 俺は先日の暴走もあり、部屋で休んでいる所だ。

 正直な話、チトセの事もあるから落ち着かないので体を動かしたいのだが何故かモモカが部屋で陣取りこちらを見張ってくるので部屋から出る事もできない。

 おーい、アンジュの世話はどうした?えっ?アンジュから頼まれた?ほっとくどっかに飛び出しそう?

 さすがにそんな無茶はしないんだけど……。

 アンジュや勝平達が部屋に遊びに来た。

 もしかしなくても気を使わせてしまたのかな。

 色々と申し訳ない。

 

 

 ▼月※日

 アルゼナルに到着。

 情報交換などしていたら、北辰達が襲ってきた。

 アキトさんとの一騎討ちをご希望らしかったが、まぁ、罠ですよね。こっちもちゃんと近くで出待ちしてたけど。

 その際にあっちが矜持がないのかとか色々と喚いてたけど知るかそんなもん状態である。

 火星で大敗していた火星の後継者の戦力はあんまり多くない為、北辰とその六人衆さえ抑えればどうにでもなると思っていたのだがナデシコBが北辰の攻撃で大破。

 加えて、始祖連合国の無人MSが援軍としてこっちに襲い掛かってきたもんだから正直、かなり焦ってしまった。

 しかしそこに現れたのはまさかのナデシコC。

 どうやってボソンジャンプしたんだろうかと思ったが、更にまさかのまさかのミスマルもといテンカワ・ユリカの登場である。

 怒涛の超展開に驚愕しっぱなしである。

 トドメとばかりにルリ艦長のクラッキングで無人MSの大半が沈黙。

 この展開にさすがの火星の後継者の士気も低下。雑魚はあっさりと討ち取られ、北辰六人衆も順番に叩き落され、北辰はきっちりアキトさんがトドメを刺して終わりであった。

 その後、アキトさんが立ち去ろうとしていたが勿論逃がす訳ない。

 みんなの声、ルリ艦長の声、そして何よりもユリカさんの声を聞いてアキトさんも帰ってきてくれた。

 あんまり覚えてないが、あれだとこんな終わり方ではなかった筈だ。

 だからこそ言える事がある。

 ハッピーエンドが一番である、と。

 ああ、本当に良かった……。

 

 

 ▼月#日

 昨日の続きであるが、戦闘後にやってきたアカツキ会長達の話によるとチトセを攫ったのはやはり火星の後継者ではないらしい。

 逮捕した草壁達を取り調べたがなんら一切知らなかったそうだ。

 となると、犯人は誰だ……?

 あのテロリスト達の集団であるDG同盟ではないようだし。

 この後もネルガルはチトセの行方を追ってくれるらしい。そこは素直に感謝だ。

 ルリ艦長も言っていたが攫った、という事は何か目的があるのだろう。わざわざゲシュペンストまで持っていたのなら尚更だ。

 スパロボ的なお約束のアレなのか、もっと別の何かがあるのかは分からない。

 だけど抱き合っているアキトさんとユリカさんを見て思う。

 俺も決して彼女を諦めたりしないと。

 

 

 ▼月=日

 アンジュの様子がおかしい。何か思いつめた様子だ。

 この時期に何かあっただろうか。

 最近、色々な展開があって忘れてくる話もあるから困る。

 ちょっと本気で記憶の海を漁ってくるとしよう。

 

 

 ▼月@日

 昨日の答えだがすぐに判明した。

 始祖連合国、アンジュの故郷であったミスルギ皇国にて妹であるシルヴィア嬢が処刑される事が決まってしまったらしい。

 罪状はノーマを匿った事。つまりアンジュの事だ。

 仲が良かったのだろう。アンジュは助けに行きたいと思っている。

 勿論、一国家、しかも地球連合ですら手出しできない国相手にそんな事が出来る筈もない。

 と、なれば……。

 

 

 ▼月?日

 やはりスメラギ皇国か、いつ出発する?

 俺も同行する。

 

 

 ▼月>日

 以下、カズマ・アーディガンの真似をして脳内日記である。

 あの日、脱走の話をしていたアンジュ、モモカ、ヒルダと協力して俺もまたアルゼナルから飛び出したのだ。

 こんな事をやらかした理由としては一つ目は純粋にアンジュとモモカの手助けをしたかった事。

 そしてもう一つは始祖連合国を調べたかったからだ。

 前にティエリア達から聞いた話によればあの国はヴェータですら調べきれないモノが大量にあるらしい。

 旋風寺財閥、ネルガル重工、ヴェータですらチトセを攫った犯人を特定できない事を考えると、攫った犯人が始祖連合国にいる可能性が高い。

 火星の後継者すら援助した連中だ。他にテロリストを抱え込んでいてもおかしくないだろう。

 そんな訳で俺も同行した訳だ。

 アンジュからは止められたけど、チトセの話を聞けば頷いてくれた。

 途中でヒルダと別れ、俺とアンジュ、モモカの三人で潜入となった訳だ。

 目的は二つ。アンジュの妹であるシルヴィア嬢の救出と、チトセに関する情報がないか調べる事だ。

 因みに俺はゲシュペンストは置いてきて、ヴィルキスに三人乗りしてやってきた。今回の潜入作戦に相棒は邪魔になってしまうからな、目立つし。

 二人からは心配されたが、ゲッターチームと鉄也さんから仕込まれた体術と幾つかの道具でどうにかするしかない。

 それに切り札と保険も用意しておいたしな。

 

 

 ▼月¥日

 無事にミスルギ皇国に潜入完了。

 ヴィルキスの跳躍チートすぎる。一瞬で行けるとは思わなかった。

 で、潜入後の動きとしてはアンジュとモモカは二人で皇宮に進入し、シルヴィア嬢を救出。俺はモモカから教えてもらった幾つかのポイントからチトセに関する情報を探す事にした。

 定時連絡や合図、合流場所を決め、作戦開始。

 

 

 ▼月$日

 アンジュとモモカが捕まった。

 しまった、今頃思い出したけど今回の話って罠じゃねーか。自分の低脳っぷりに呆れてしまう。

 シルヴィアの処刑が一転してアンジュの処刑となってしまった。

 助けなければならないが正直、俺一人だと手が足りない。

 だがモモカも捕まった以上、俺一人でどうにかしなければならないが……。

 あっ。

 見知った……いや、かつて映像を通して見た顔を一人見かけた。

 こいつなら間違いなく力を貸してくれるに違いない。

 

 

 ▼月%日

 大混乱!

 アンジュの処刑会場は大混乱に陥った。

 犯人は言うまでもない、俺である。

 途中で会ったヴィルキスの騎士もといアンジュの騎士であるタスクにアンジュとモモカの救出を依頼。

 俺は囮となって派手に暴れたのだ。

 勿論、生身ではない。タスクと違って忍者スキルは持っていないんだ。

 で、何で暴れたかって?

 勿論、ミスルギ皇国に配備されてあったMS、GN-X IVを強奪して、である。

 いやぁ、事前にコーラサワー大尉に色々聞いておいて正解だったし、無人MSがビルゴみたいなタイプじゃなくて後付タイプでよかった。

 俺の知識で無人制御部分を破壊して有人機仕様に戻して動かしたのである。

 おかげでアンジュ達は脱出に成功。ヴィルキスもやってきて合流。

 加えてボソンジャンプでナデシコCもやってきてくれた。書置きを置いておいてよかった。

 アンジュ達はそのまま無事にナデシコCに合流。俺は適当に暴れた後、奪った機体を自爆させて脱出。タスクに拾ってもらってナデシコへと帰還に成功した訳である。

 えっ、途中でやってきたドラゴンにミスルギ皇国との模擬戦?

 全部叩き潰したに決まってるじゃないか……!

 

 

 ▼月&日

 今日から再び書き込み日記。

 当然ながら戻ったら大目玉を食らった。

 説教に加えてナデシコCの一室にて謹慎処分である。

 まぁ、こうなる事は分かっててやったので後悔はないんだけど。

 一応、手土産として持ち帰った始祖連合国のデータを渡したおかげか日記だけは許してくれた。ありがたや。

 しかし俺のスキルではチトセに関する情報は見つけられなかったが、ルリ艦長達なら何か分かるかもしれない。

 後は持ち帰ったデータから何か分かればいいんだが……。

 

 

 ▼月!日

 ヴィヴィアンドラゴン化事件が発生した。

 こうなると色々と隠していたアルゼナル側も情報開示をするしかなくなったのだろう。

 今日、色々と話を聞いた。

 大半は俺の持っていた知識と一致していたが、驚いたのはコーディネイターもまた古の民だったり、イオリア・シュヘンベルグもまた『神様』を倒す為に動いていたとは。

 なんとなく分かってはいたが、この世界、やっぱり混沌としてるなぁ。

 

 

 ▼月*日

 ―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ▼月|日

 またかなり意識が吹っ飛んでた。いや、怒りすぎて何も考えられなくなった、というべきか。

 あの日、何があったのか自分を落ち着かせる為にも書いておく。

 まずはドラゴンの襲撃から始まった。

 襲撃場所はアルゼナルに近いオーブ。ミスルギ皇国へ攻め入る為の前線基地とする為か。

 しかしアスハ代表とマリナ皇女の二人がミスルギ皇国に行ったきり消息不明とは。

 考えるまでもなく犯人ってあいつだよなぁ……。

 それは置いておいて、ドラゴン退治だが例の指揮官機もやってきたのでそいつから話を聞く事にした。まぁ、力ずくでだけど。

 しかしさすがにオーブの防衛をしながら戦うのは辛い所だ。とは言え、そう何度もこの国を焼かせる訳にはいかない。

 シンやキラ、アスラン達が中心になってドラゴン達は無事に撃退。

 指揮官機もアンジュがきっちり頭を抑えたんだけど、上手く逃げられてしまう。

 そこで刹那がフォローとしてGN粒子を撒いてくれたおかげか、アンジュと指揮官機、サラマンディーネは無事に意思疎通が出来たようだ。

 俺達もドラゴン達の意識に触れる事が出来た。

 そのせいかお互い戦意が失われていくのが分かった。さすがにただの怪物退治という訳にはいかない事を理解してしまったせいか。

 アンジュとサラマンディーネは決着をつけようとしてたけど。

 だがそこに横槍が入る。

 ガーディムである。

 いつもの白い機体がこちらとドラゴンを攻撃してきたのだ。

 ……そしてそこに彼女がいた。

 チトセ、だ。

 チトセがゲシュペンスト・タイプRに乗ってガーディムの一員となって襲ってきたのだ。

 彼女が裏切った、なんて考えはない。攫われたんだから当然だ。

 そして予想通り、彼女からは何の意志も感じられなかった。ただただガーディムとしての命令を果たす、それだけしか感じられないのだ。

 洗脳。

 予想通り……最悪の展開である。

 そしてチトセの横には見た事がない大型の機体がそこにはいた。

 グーリーが乗っていた機体よりも一回り以上大きな機体。これは後の話だが通信・索敵能力を強化した指揮官機だと言う。

 そしてこいつがチトセを洗脳した奴であった。

 ジェイミー・リータ・スラウシル。

 ガーディムの指揮官の一人だそうだ。

 だがあの時の俺はそんな事はどうでも良かった。

 チトセを攫った相手、ぐらいの認識であり、こいつは潰す、とした感情しか抱かなかった。

 だが、負けた。

 俺とゲシュペンストはあのクソ女とチトセの連帯攻撃によって返り討ちにあってしまった。

 フォローにきてくれた刹那やキラがいなければあのまま命を落としていたかもしれない。

 他の敵機は全て撃破。チトセとクソ女は撤退。オーブの防衛に成功。

 結果的に見れば俺達の勝ちであったが、そんな事は何の慰めにもならなかった。

 そして悪い事は続くものである。

 敵が全ていなくなった後、行われたアンジュとサラマンディーネの決闘。

 二人の攻撃で次元が乱れたのか、アンジュ、そしてそれを助けようとしたタスクとヴィヴィアンが消息不明。サラマンディーネもまた同じように姿を消していた。

 ああっ、クソっ……本当にどうしてこうなったんだよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その音はまるで地獄の底から響いてくるようなものであった。

 

「……」

 

 だがその音よりも、ホシノ・ルリは音を生み出した本人、高坂翔の方に恐怖を覚えていた。

 その顔からは何も読み取れない

 しかしその内に秘めた意志は自分だけではないここにいる誰もが理解していた。

 

「頭を……冷やしてきます」

 

 それだけ言うと、ブリーフィングルームから立ち去って行く翔。

 その姿を見届けると、誰が漏らしたのかは分からないが息を吐き出す。

 先ほどまで蔓延していた重い空気が少しだけ消えて行く。

 

「尋常……じゃなかったわね」

「はいです……」

 

 怒りに満ちた翔の姿に恐怖を覚えたのは決して自分だけではない。

 同じように話を聞いていたスメラギ達もその顔に怯えの色が見える。

 だが今はそれ所ではない。

 翔が先日、ミスルギ皇国に潜入した時のように飛び出して行く事が考えられる。

 無闇に飛び出しても攫われた千歳を助ける事など出来ない事は分かっているが、人の感情はそんな問題を無視する可能性があるからだ。

 

「その心配はないだろう」

「アキトさん……」

 

 ルリの傍にいたアキトが安心させるように口を開く。

 

「怒りに満ちていたが、冷静な部分も見えた。今すぐどうこうするとは思えない」

 

 先程、出て行ったのも本当に頭を冷やす為だろう。

 だが、とも付け加える。

 

「冷静なのは今だけだ。何かきっかけがあれば冷静な感情などすぐに吹き飛ぶだろう」

 

 ガーディム、千歳を攫い洗脳した連中が来る可能性は高い。

 何せあの指揮官である女はまた来るような口ぶりだったからだ。

 

「しかし敵の目的が読めませんね」

「ええ」

 

 如月千歳は別世界の人間、という点以外に何か特別な要素は見受けられずわざわざ攫う必要があるとは思えない。

 話を聞く限り因縁、という可能性も低いだろう。

 彼女とガーディムとの接点は次元の狭間での戦闘ぐらいしかない。

 視点を変える必要がある。

 

「チトセさん個人に用があった訳ではないのかもしれません」

 

 千歳という個人に何かの価値があった訳ではなく、それを利用して何かをするつもりなのかもしれない。

 しかし一体何をするつもりなのか……?

 

「情報がない以上、推測しか出来ません」

「ええ。となると……」

「次にガーディムが襲撃してきた時ですね」

 

 手元に情報がない以上、手に入れるしかない。

 そして入手する方法はたった一つ。

 ガーディムから直接入手するだけだ。

 

「情報だけではありません。チトセさんも必ず奪還します」

 

 そうだ。情報だけの入手で満足する訳がない。

 彼女の奪還こそが本命だ。

 

「仲間を攫い、洗脳した奴等を許す気はありません」

 

 その言葉に全員が頷く。

 怒りを覚えているのは決して翔だけではないのだ。

 仲間を奪った相手を許す訳にはいかない。

 

「彼等には思い知って貰いましょう」

 

 我々の怒りを。



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10ページ目 二つの世界で頑張る

 □月○日

 アンジュ達が行方不明になってから一週間が経った。

 俺達はあのままアルゼナルに滞在しているが、アンジュ達の事は未だに発見できていない。

 捜索は行っているがうまく行っていないのが実情だ。

 で、俺の話だがここ数日、ゲシュペンストの改良活動に精を出していた。

 あの時、チトセを助けれなかったのは俺の腕という点もあるが、機体性能もガーディム相手だと当たり負けしてしまっている。

 この点もどうにかしなければならないようだ。

 そういう訳でイアンさんやウリバタケさん達と一緒に修理を兼ねて作業をしているのだが、やはり劇的な強化は無理という結論に至ってしまった。

 これは俺のゲシュペンスト・タイプSに問題があったのだ。

 ゲシュペンストシリーズは非常に高性能な機体で扱いやすい機体。つまりある種、完成された機体、という訳である。

 つまり無駄がないのだ。特にタイプSなんて本当に余裕がない。20メートル級の人型兵器にスーパーロボットのパワーを押し込んだ弊害である。

 これがタイプRならば余裕があったんだろうが……。

 ルリ艦長やメイも加わって色々と見てくれたんだけどなぁ。

 そういう訳で強化案はブラッシュアップを中心とした新装備案で落ち着いた。

 旋風寺財閥も協力してくれると、舞人も約束してくれたので前々から考えていた装備案のデータやら適当に引いた図面を見てもらう事に。

 まぁ、酷評の嵐でしたが!技術的に無理なもんもあったからしょうがないっちゃしょうがないが。やっぱり別アニメやゲーム、漫画のトンデモ武器は無理だったか。

 しかし幾つか実現可能な装備はあったので、大至急作ってくれるとの事。ありがたや。

 機体本体の方も手を加えている。

 待ってろよ、チトセ。必ず助けるからな。

 

 

 □月△日

 最近はテロリスト達の動きもなく平和と思っていたのだがどうにも違うようだ。

 始祖連合国の動きがきな臭いとの情報が入ってきたのだ。

 どうやら兵力を整えているとの事。

 もしかしてももしかしなくても、奴等の目標は……。

 

 

 □月▽日

 予想通りだが始祖連合国の標的はここアルゼナルだったようだ。

 奴等の攻撃部隊が出撃したと、マネキン准将から連絡が入ったのだ。

 それはつまり奴の計画が動き出したという事になる。

 俺達は自衛、そして協力者を守る為に残って迎撃の準備を進めている状態だ。

 ソレスタルビーイングやグラハム少佐とコーラサワー大尉の機体は強化されている。物資だって色々と入ってきて補給も万全だ。

 で、ゲシュペンストの方は改良が終了。今までより出力が向上したし、装甲などの部分も強化されている。

 更に超突貫で製作された新装備こと鉄血メイス先輩が旋風寺重工から届けられた。

 確かに一番作りが簡単なので最初に作るとは言っていたがまさか本当に出来るとは。感謝するしかない。

 他装備も完成したら届けてくれるとの事。

 ならこんな所で負ける訳にはいかない。

 

 

 □月□日

 宇宙世紀世界なう。色々あってこちらへと飛ばされてしまった。

 あの日、始祖連合国が襲来してきた。

 圧倒的な数が目立ったが、それ以上にDG同盟や火星の後継者などのテロリスト達の機体、更に宇宙世紀世界のMSまで出してくるとは驚くしかない。

 確かに火星の後継者を支援していたようだから、機体を持っていて当然か。宇宙世紀の機体はどうせ奴がかっぱらってきたんだろう。

 しかも奴等のターゲットはアルゼナル、というよりは俺達独立部隊そのもののようだ。

 ボンコラ皇帝が色々と喚いていたが、適当に追い払われていたのが笑えてくる。しかもアンジュがいない事を知ると後ろに引いてくし。

 で、作戦としては撤退だ。

 アルゼナルは対ドラゴン用の基地だが、さすがに大国の部隊に襲われれば守りきるのは不可能に近い。

 残念だが現状では枷になってしまう為、捨てるしかないのだ。

 そういう事で撤退が完了するまで敵を迎撃していたのだが、その途中でアンジュ達が転移で帰還。タスク、ヴィヴィアンに加えて竜姫ことサラマンディーネ達も助太刀しにきてくれた。

 が、それに応えるようにラグナメイルに乗った奴ことエンブリヲが襲来。ジル司令官曰く神様である。本人は調律者が好みらしいが。

 わざわざ前線にやってきた今が討つチャンスではあるが、確か今のままじゃ倒しきるのは無理だった気がした。後で書くが実際倒せなかった。

 迫り来る敵機を破壊して、包囲網を崩壊させたのまでは良かったのだが、すっかり忘れていたボンクラ皇帝が自ら乗り出してきてアルゼナルに攻撃を仕掛けてきやがった。

 俺がたまたま近くにいたから、奴の旗艦であるガルダ級に急接近。鉄血メイスで攻撃を仕掛けた。これのおかげで多少、攻撃先が俺に移ってくれたが、それでも被害は甚大。

 ボンクラ皇帝の勝ち誇ったような声を聞いてアンジュもぶち切れてガルダ級のエンジンを破壊。もはや逃げられない状況にしたのだが、そこにやってきたのは先程撃退したエンブリヲである。

 奴の攻撃でガルダ級は一瞬で崩壊。ボンクラ皇帝も海の藻屑へと変わり果ててしまった。ついでに言うと俺にもちょっと当たりそうだったぞ!

 加えてエルシャ、クリスの二人が撃墜。サリアも暴走しそうだったのでアンジュが追い払ってたけど。

 しかしラグナメイルが追加で六機やってくるとは。火星の二の舞になりそうだったのだが、アンジュとサラマンディーネの二人が対抗。なんとか敵の攻撃を相殺する事に成功していた。

 だけどその影響か次元が歪み、飛ばされてしまったという訳だ。

 急いで戻りたい所だったが、始祖連合国との戦闘でダメージを負ってしまった以上、すぐには戻れない。

 そこで状況確認の為、ヤマトやロンド・ベルと合流する事になった。

 あちらも予想通り色々あったようだ。

 ……ソウジさんとナインにチトセの事を伝えないとな。

 

 

 □月☆日

 日本の第3新東京市にてヤマト達と無事に合流。補給はNERVが用意してくれるようだ。間違いなく善意じゃなくて対使徒戦に向けてだろうなぁ。

 合流して最初に情報交換をしたのだが、色々と衝撃な話であった。

 カリーニン少佐がアマルガムに通じていた事やら千鳥が拉致されてしまった事、ガミラスの状況に加えてメルダ少尉がこっちに合流した事など。

 真ゲッターがパワーアップしたりEVA弐号機が合流した事、ついでに黒いユニコーンの事とかはまぁ、よくある事だろう。

 そういえばバナージはまだオードリーの正体を知らないようだった……と見せかけて何かしら気づいているか知っているようだった。話さないという事ならしょうがない。知らん振りで通そう。

 しかしカミーユさんがジンネンマンと行動を共にしていたとか一体何があったんだろうか?

 で、俺は俺でソウジさんやナイン達にチトセがガーディムに拉致された事を伝えた。どうやらソウジさん達もガーディムに襲われたようだ。

 しかもグーリーがいるとは。どういう手であの火星で生き残ったんだろうか?しかも負けた事を忘れてるっぽいし。まさか『二人目』とかそういう事じゃないよなぁ……?

 

 

 □月★日

 そうか……そうだったのか……ゲッター線とは……ドラグニウムとは……!

 と虚無りそうな事を書いてみたが、まさかこの二つが結びつくとは思ってなかった。まさかドラグニウム=ゲッター線とか誰が予想できるんだよ……。

 宇宙世紀世界のゲッター汚染もドラゴンが浄化をしてくれたおかげらしい。彼女達と歩み寄りも出来たし万歳である。

 問題はエンブリヲか。確かその気になれば色々な所に現れるらしいから注意しないとな。

 で、そこに問題襲来。

 そう使徒である。しかも宇宙からの襲撃である。

 

 

 □月◇日

 第八の使徒は宇宙からやってくる訳だが、問題はその巨大さ。そしてそれを全て覆えるATフィールドにある。

 当初は宇宙に上がって迎撃とも考えたのだが、下手に倒せないとなると何処に落ちるのか分からない状態になり、甚大な被害が出るという事で却下。上手くいかないもんだ。

 結局、地上でEVA三機による受け止める作戦になった訳である。

 まぁ、原作と違ってヤマトを中心とした艦隊が砲撃を加えて落下速度減少させて受け止めやすくなった訳だ。しかも計算によれば成功率は50%。当初の成功率の50万倍である。

 で、準備していたのだが本当の問題がやってきた。

 DG同盟がまさかの襲撃を仕掛けてきたのだ。

 仕掛けてきた、というよりはエンブリヲによって西暦世界より連れてこられ、仕方なくと言った感じか。世界が滅ぶかもしれないっていう状況なんだけどなぁ!

 しかしあっちとしても元の世界に帰る為に死に物狂いで攻撃を仕掛けてきやがる。

 正直な話、かなり厳しい戦いになってしまった。

 だけどその流れを変えたのは舞人であった。

 援軍としてボソンジャンプで飛んできたガインがやってきたのだ。ウリバタケさんが色々な技術を使って次元トンネルを開通させたようだ。すげーな、おい。

 そしてグレートダッシュである。グレートマイトガインになった訳だ。燃える展開である。

 鉄也さんも駆けつけて、ドラゴン達と一緒に使徒の足止めをしてくれる。うーん、やっぱり燃える展開だわ。

 エースのジョーは舞人により撃退された為、敵の士気も下がったおかげでその後は楽な展開だった。適当な所で撤退した連中も多いみたいだしな。

 ほっとくのもあれだが、今は使徒優先という事で放置である。

 DG同盟を撃退して、使徒という所でヤマトが謎のアンドロイドのせいでエンジントラブル発生。ヤマトの武器が使えなくなってしまった。

 ヤマト以外の戦艦や機体じゃさすがにあの質量の敵を押し返すのはきつい。

 EVAだけに頼るしかないかと思ったが我等が勇者グレートマイトガインがその大出力で迎撃する事になったが、エネルギー不足が判明したけどエースのジョーがフォローしてくれたおかげで助かった。

 俺達もないよりはマシぐらいの気持ちで迎撃。落下速度が大幅に低下した所でEVA三機の受け止めが成功。無事に使徒を殲滅する事が出来た。

 鉄也さんは何も言わないまま去っていったけど、完全に敵になったという訳ではないようだ。

 ……いつか戻ってきてくれるといいな。

 

 

 □月=日

 使徒戦滅は達成できたが、新たな問題としてヤマトのエンジン不調が出てきてしまった。

 工作員であった敵アンドロイドだが、なんでもチトセを攫った連中に似ているらしい。となると、これはガミラスではなくガーディム?

 証拠も確証もないからなんとも言えないがやはり警戒が必要だろう。

 で、俺達はというと敵を迎撃したりするものの、大きな動きは出来ていない。ヤマト修理の為に色々な人達に支援を受けている所だ。

 俺も俺でヴェルト達と機体改良の話をしたり、ソウジさん達と訓練を続けている。

 次、ガーディムが、チトセが現れたら取り戻す為に。

 さぁ、明日も頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、こんなものか」

 

 メンテナンスを終えた機体を見上げるイアン。

 そこには新品同様に整備されたゲシュペンスト・タイプSが佇んでいる。

 つい先程まで、彼等によってしっかりと機体調整を行われていたのだ。

 

「ああ。だがショウの奴が満足行く形には出来なかったな」

 

 一緒に整備を行っていたウリバタケがそれに答える。

 そう、彼等は機体の状態に満足いっていないのだ。

 

「確かに機体自体は完璧だ。けどガーディムのあの指揮官機と殴りあうには不安が残る所だな」

 

 会話に加わったのがアストナージ。

 そしてアストナージの言葉こそが彼等が満足いっていない原因でもある。

 データで見たチトセを攫い洗脳して、現在彼女を指揮しているらしい女が乗った機体。

 完璧とは言えないが解析したデータから指揮官機でありながら非常に性能が高い事が判明している。

 そしてそれと真っ向勝負できる程、ゲシュペンスト・タイプSは高い性能を有している訳ではない。

 モビルスーツサイズでスーパーロボットのような戦い方を出来る機体ではあるが、ある種のどっちつかずの機体と言っていい。

 他パーソナルトルーパーよりも機動力は低い、マジンガーZなどと比べたらパワーもないのだ。

 ヴェルトの話によれば、このタイプSはショウが乗る機体と後継機にあたるMKⅡのみであり、量産タイプとして設計された機体はタイプRをベースにしているとか。

 

「俺達も色々と手を加えたが、やっぱ根本的な改善にはならねーな……」

「エネルギー伝導率の効率化や、パーツを変更して性能向上を狙ったが、ここまでだな」

「それ以上にショウの成長もある。昔のアムロ大尉じゃないが機体がパイロットに追いついていない所があるぞ」

 

 彼を指導しているアムロから最近のショウの成長は目覚しいものがあると話していた覚えがある。

 実際、出撃後の機体状況を見ると関節を筆頭に損耗率が激しい事が見て取れた。

 もはやタイプSではショウの動きについていけてないのは明白であった。

 

「しっかしショウは本当に一般人だったのかね?」

「本人はそう言ってたが?」

 

 ウリバタケの言葉にそう答える。

 ヤマトに、というかニコラ・ヴィルヘルム研究所に来るまではただの大学生だったという。

 しかしもしそうだったとしたら。

 

「凄まじい成長振りだな。才能って奴かね……?」

「本人のやる気もあるだろうな。シミュレーションでの訓練は勿論だがフィジカル面の訓練もやってるみたいだしな」

 

 才能としか言い様ない部分も見えるが、それ以上にやる気と努力が見えるからこその成長だろうとイアンが答える。

 最近だと刹那達などにも訓練をつけてもらっているとか。

 それも全ては。

 

「攫われた彼女の為ってか。くー!泣けるねぇ!」

「大切な人を助ける為に頑張る。これ以上のない原動力だな」

 

 そうだ。攫われ洗脳された千歳を助ける為。

 その為にショウは力をつけているのだろう。

 ならば自分達整備班は、その時がきたら最高の動きが出来るようにしっかりと整備を行うだけである。

 

「さて、そろそろ休憩は終わりにするか」

「ああ。まだ他にやる事があるしな」

「ナインちゃんの頼まれごともあるしな」

 

 最近、ナインから依頼された事も残っている。

 依頼内容は新型の開発。それも三機作られている。

 一機は間違いなく彼のパートナーであるソウジの機体。

 ならば他の二機は……。

 

「さ、行くか。俺達の戦いはこれからだ!」

「なんだかここで完結しそうな台詞だなぁ……」




次回……。


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君の声と結末

 その日がやってくる……。

 

 

 

 ヤマトの修理の為、光子力研究所にやってきていた彼等。

 敵の襲撃などもなく修理が終わるまでパイロット達は待機となってしまった為、時間が出来ていた。

 するとナインの様子がおかしいと話を聞いたソウジは彼女から話を聞いていたのだが、そんな中で奴等が現れた。

 ガーディムのグーリーである。

 奴等の目的はナインの拉致。

 彼女を拉致してどうするつもりかは不明であるが、ナインを奪われる訳にはいかない。

 いや、それ以上にソウジに闘志が湧いてくる。

 ガーディムはチトセを既に拉致しているのだから。

 だがグーリーが求めていたのは拉致ではなくソウジとの決着。

 それを承諾したソウジは負傷を押して出撃。

 ヤマトを防衛しつつ行われた戦闘はやはりと言うか、何度も繰り返されたようにソウジ達の方に勝利の女神が微笑んでいた。

 そう、あれがやってくるまでは。

 

「ぐぅぅ!」

「キャップ!!」

 

 グーリーにトドメを刺そうとしたヴァングレイに対して奇襲で攻撃を仕掛けてきた機体があった。

 それは、誰もが目を見張るものであった。

 

「ゲシュ……ペンストだと……!?」

 

 被弾し、ボロボロになったヴァングレイを操作しながらこちらを攻撃してきた機体を確認するソウジ。

 それは奪われたチトセの機体、ゲシュペンスト・タイプRによく似た機体。

 いや、これは似ていると言うよりも……。

 

「ゲシュペンスト・タイプRVだって!?」

「ショウ、知っているのか!?」

 

 ショウが機体を見て驚きの声を上げる。

 間違いなく奪われたゲシュペンスト・タイプRの改造機だろう事は分かったが、まさかショウが機体名まで知っているとは思わなかった。

 

「ゲシュペンストの改良プランにあった機体だ!だけどここじゃペーパープラン!いや、それ以前にペーパーにだって上げられてない機体だぞ!どうして!?」

 

 幾つか引っかかる物言いだったが、気にする余裕はない。

 今、必要なのは奪われた機体がガーディムによって改造され、こちらに矛を向けているという一点だけだ。

 そしてもう一つ。

 彼女がやってきた、という事は。

 

「貴様もいるんだな!ジェイミー・リータ・スラウシル!」

 

 怒りの声で叫ぶショウ。

 チトセを操っている張本人だと思われる女指揮官。

 何か不測の事態に備えて近くにいるに違いない。

 そう思ったのだがやはり予想通りであった。

 

「五月蝿いわね。そんなに吠えなくても聞こえているわ」

「っ!」

 

 ゲシュペンスト・タイプRVの横に現れたガーディムの大型指揮官機。

 そこから聞こえてくる声は間違いなくあの女のものであった。

 

「まったく弱い犬程、よく吠えるというけどまさに貴方の事ね、タカサカ・ショウ」

 

 見下すように、まるで物を見るかのように声を出すジェイミー。

 それを聞くだけで頭が沸騰しそうになるショウではあったが、いきなり飛び掛る真似はしない。

 熱くなりすぎたら、相手の思う壺だという事を分かっているからだ。

 

「あら、思いのほか冷静ね。でもこの子を見て冷静でいられるかしら?」

「ショ、ショウ……」

「チトセ!?」

 

 ジェイミーの声に反応して聞こえてきたのはチトセの声だ。

 そしてそれは先日の操られた状態ではない。

 

「は、早く逃げ……て……!」

「チトセ!チトセなのか!」

「そこまでよ」

 

 一体どうして、と声をかける前にジェイミーの声が響き渡る。

 すると、テレビの電源を切るかのように一瞬にしてチトセの声も沈黙する。

 

「ふふふ、どうかしら。久しぶりの彼女、声はいかがだった?」

「……!」

 

 それだけ聞けば全て理解できた。

 操っているのも、そしてチトセを玩具のように使っているのは間違いなくこの女だと。

 

「で、こちらの要求は簡単よ。そのAIとヤマトを渡して欲しいのだけど」

「断る」

 

 ジェイミーの要求を一刀両断するソウジ。

 それを理解できないと言った様子を見せるジェイミー。

 

「あら、そんなボロボロの機体でよく吠えるわね」

「俺がボロボロだろうが、お前達を倒すのとチトセちゃんを奪還するには十分だ」

 

 強がり、ではない。

 例えソウジが敗れたとしても頼れる仲間達が沢山いる。

 今までの戦いが物語ってきたように、ガーディムに負けるとは思えない。

 

「そう、でもこれを見てそんな事を言えるかしら」

『敵機の反応増大!この数は!』

 

 ナデシコCからの声に反応して全員が回りを見渡す。

 そこには夥しい数のガーディムの機体が並んでいた。そこにはいつもの白い機体だけではなくグーリーが乗っている機体も数多く見られる。

 

「なんて数だ!」

「チッ、さっきまでは様子見だったって事か!」

 

 事実そうなのだろう。

 最初の戦闘時と比べると敵機の数があまりにも違いすぎる。

 これはつまり目的の物を入手する為に本気を出してきた、という事だろう。

 だが逆に言えばこれはチャンスである。

 

「関係ないな!お前を倒し、チトセを取り戻す!」

「ああ!これだけの数を撃退すれば敵の攻勢だって弱まる筈だ」

 

 これだけの機体を出してきたという事は逆に言えばこれの撃退に成功すれば、ガーディムの弱体化に繋がる可能性は高い。

 ピンチの中にチャンスあり。ここが正念場だ。

 それを理解しているのか、誰もが弱音を吐くものはいない。逆に闘志を燃やし続けている。

 そしてそれは彼女もそうである。

 

「キャップ!こっちに乗り換えてください!!」

「ナイン!その機体は!?」

 

 ボロボロになったヴァングレイの前に現れる新しい機体。

 それはMSやPT以上の大きさを持つ機体。まさしくスーパーロボット。

 

「ヴァングレイの強化型!グランヴァングです!」

 

 強化型、というよりはコンセプトを見直した機体なのだが。

 いつの間にこんな機体が出来ていたのかと思うソウジではあったが、今はそんな時間ではない。

 

「乗り換えてください!」

「おう!」

 

 ボロボロになったヴァングレイからグランヴァングに乗り換えるソウジ。

 驚いた事と言えば、ナインもそのままコックピットに乗ってきた事か。

 

「お前も一緒に乗るのか?」

「はい。グランヴァングを正確にコントロールするにはダイレクトなオペレートが必要ですから」

 

 それに、と付け加える。

 

「私も姉さんを助けたいですから」

「……ああ!そうだな!」

 

 ソウジ、そしてナインが乗り込んだグランヴァングが光を点す。

 完全に起動した証である。

 

「チッ……グーリーめ。みすみす乗り換えるのを見過ごすなんてね」

 

 忌々しそうにグランヴァングを見つめるジェイミー。

 既にボロボロになった機体であり、そのトドメはグーリーに任せていた事から完全に対応が遅れてしまった。

 だが。

 

「例え新型だろうと、この戦力差は覆せない。それを教授してあげましょう」

 

 各機に指示を出す。

 あのAIが乗っているらしい新型は捕獲を。

 他は敵を撃破し、ヤマトを鹵獲する事。

 そしてジェイミー自身は。

 

「さぁ、チトセ。私達のコンビネーションであれを破壊しましょう」

「……」

 

 その視線の先に映るのは巨大なメイスを構えたもう一機の黒き亡霊。

 あれを破壊すれば新たなステージへと進めるのだ。

 チトセは無言のまま機体を動かす。

 その巨大な銃、メガ・バスターキャノンをゲシュペンスト・タイプSへと向けると共になんの躊躇いもなく発射する。

 

「悪いがやられる訳にはいかない!」

 

 それをすかさず回避するショウ。

 しかしそれは囮。

 

「たった一機で私達を止められるのかしら?」

 

 回避した先に現れた巨大な機体、マーダヴァがその両腕に仕込まれたビーム砲を向ける。

 その光の槍で亡霊を貫こうとした瞬間。

 

「させるかあぁぁぁ!」

「くっ!?」

 

 その腕を吹き飛ばされた。

 ジェイミーが吹き飛ばしてくれた犯人に目を向ければ、そこには髑髏のマーク。

 

「ドクロつきのガンダム!?」

 

 クロスボーンガンダムX1・改・改とトビア・アロナクスである。

 近接戦闘用に調整されたMSはその手に持つ格闘武器――ムラマサブラスターの出力を全開にして倍以上の巨大差を誇るマーダヴァを吹き飛ばしたのだ。

 

「ガンダムとは言え一機程度の増援で!」

 

 機体スペックは遥かにマーダヴァの方が上である。

 数は並んだが、それだけであると判断する。

 しかし。

 

「一人じゃないわよ!」

「チィッ!雑魚がわらわらと!」

 

 上空から砲撃と共に降り立つのはアンジュのヴィルキスとタスクのアーキバスだ。

 

「だ・け・ど!」

 

 まるで指揮棒を揮うかの如く、腕を振るうとグーリーが乗る機体と同一の機体、プラーマグが複数現れる。

 

「貴方達はこれと遊んでいなさい」

 

 プラーマグを援護に現れた三機へと向けると共に己はゲシュペンスト・タイプSへと意識を向ける。

 チトセは先に戦闘を開始しているようだ。

 それを援護しようとして。

 

「待ちな。てめぇは俺達と遊ぼうぜ」

「っ!お前は……!」

 

 巨大な斧による攻撃相手に回避を余儀なくされる。

 攻撃を仕掛けてきたのはいつの間にか接近していた真・ゲッターロボとゲッターチームであった。

 

「真・ゲッターロボ……。確かに情報は取りたいけど、今は貴方の相手をするつもりは……!」

「おせぇ!」

 

 先程と同じようにプラーマグを相手にさせようとするもに、瞬時に叩き落される。

 そのあまりの瞬殺っぷりに思わず呆然とするジェイミー。

 

「な……なっ……!」

「焦るなよ。ちょっとはゆっくりしてけや」

「フッ、そういう事だ」

「ああ。そして味わっていけ。俺達とゲッターの恐ろしさをな!」

 

 真・ゲッターの猛攻に防御を専念するはめになるジェイミー。

 護衛のプラーマグ達も後から駆けつけてきたグレートマイトガインやブラックサレナ達の相手で手一杯という有様だ。

 しかも戦局全体を見渡せば。

 

「押されている!?我々ガーディムが!」

 

 そう、押されているのだ。

 あれだけの数の戦力を投入したのにも関わらず既に数で並べられている状態だ。

 

「チトセは!?」

 

 ゲシュペンスト・タイプSとタイプRVは激しい戦闘を繰り広げていた。

 スペックは改造されたRVの方が上。

 だがそれ以上にタイプSは動き回っていた。

 

「チトセぇ!」

「っ!」

 

 機動力も運動性も低い機体だが、それでも果敢に飛び込みタイプRVへと攻撃を仕掛けるタイプS。

 メガ・バスターキャノンを破壊しようと、左のプラズマ・スライサーで攻撃を仕掛けていく。

 しかしタイプRVも負けていない。

 攻撃を回避すると同時に距離を開けながらヴァンピーア・レーザーで反撃する。

 タイプSもそれを回避しようとするが、攻撃を仕掛けた直後だ。左腕にかすり傷とはいえ被弾してしまう。

 

「くそっ!エネルギーが減少するとか本来の効果も持ってるのか!」

 

 被弾した事により機体エネルギーが予想以上に磨り減っていく。

 悪態をつくがショウの目はタイプRVから目を離さない。離してたまるものか。

 

「チトセ!聞こえているか!」

「……」

「俺が!俺達が今、助ける!」

「……っ!」

 

 気のせいかもしれない。

 だが、今反応したように見えた。

 

「うん!今助けるよチトセ先輩!」

 

 タイプSから距離を離したタイプRVに、接近した機体、超闘士グルンガストとシャルロッテ・ヘイスティング。

 その拳が今度こそタイプRVを捉えた。

 

「……!」

 

 グルンガストの拳で体勢を崩すが、それでも一瞬にして立て直す。

 その優秀さに関心するが、それでもまだ攻勢は続くのだ。

 

「ヴェルト!」

「任された!」

「っ!?」

「切り裂け!」

 

 体勢を立て直した先に待ち構えていたのはヒュッケバインとヴェルターブ・テックスト。

 ロシュ・セイバーの一振りによりメガ・バスターキャノンが破壊される。

 

「チトセ先輩帰ってきてよ!」

「貴女の帰る場所はガーディムなどではない!」

「ロ、ロッティ……ヴェルト……!」

 

 今度こそ聞き間違いではない。

 チトセの声が聞こえたのだ。

 

「チトセ!?」

「もしかして!」

「ああ、彼女も戦っているんだ!」

 

 洗脳されたチトセもまた戦っている事を確信する。

 それならば尚の事、今がチャンスだ。

 

「チトセちゃん!」

「姉さん!」

「ソウジさん……ナイン……」

 

 グーリーを撃破したグランヴァングも駆けつける。

 気がつけば、大体の敵は掃討されており残っている敵もジェイミーとその護衛だけだ。

 

「帰って来いチトセちゃん!」

「姉さんの居場所はここなんです!」

「チトセ!」

「あ……あ……!」

 

 ソウジやナインだけではない。

 共に旅をしたヤマトの皆が、転移した先で出会った新しい仲間達の声が集まって行く。

 

「刹那!」

「ああ!クアンタムシステムを使う!」

 

 まだ調整が完了していないとは言え、この場を満たすだけならば可能。

 みんなの想いと願いをチトセに届ける為に、使う事を決意する。

 次の瞬間、大量のGN粒子が世界を満たす。

 

「届け!」

 

 GN粒子を通して、みんなの声がチトセへと届く。

 それにあわせるようにタイプRVの動きが鈍っていく。

 

「みんな……!わ、私は……!」

「ショウ!」

「ああ、分かってる!」

 

 後一押し。

 そして最後の一手は彼に委ねられる。

 

「もう一度言う!」

 

 ボロボロのゲシュペンスト・タイプSがメイスなどの武器を投げ捨て、拳を構える。

 

「俺が!俺達が!」

 

 相手を破壊する為ではない。

 

「お前を救い出す!」

 

 大切な人を助ける為に。

 

「必殺!」

 

 拳を構えて放つは必殺の一撃。

 

「ゲシュペンストパンチ!」

 

 亡霊の一撃がタイプRVの頭部のみを破壊し、動きを止める。

 

「チトセェェェェ!」

 

 同時に動きが止まったタイプRVを抱え込む。

 もう二度と離さないというように。

 

「ショ、ショウ……わ、私……」

「チトセ……」

 

 接触回線で写るチトセの姿。

 そこにはガーディムの服に身を包んだチトセが写るが、その目にはしっかりとした光を取り戻していた。

 ショウはそれを見て安心したように呟く。取り戻せたのだと核心しながら。

 

「そ、そんな……こんな……」

 

 二人の様子を目の当たりにしたジェイミーが呆然とした姿を見せる。

 

「俺達の勝ちだ!ガーディム!」

 

 それを見て勝ち鬨の声を上げる。

 チトセは取り戻した。

 スピード狂のグーリーは倒された。

 相手がつぎ込んだ戦力はほぼ全て殲滅した。

 残るは少数の敵機と指揮官のジェイミーのみである。

 相手の戦力がどれだけあるかは分からないが、これ以上の戦闘は不可能と判断するだろう。

 

「ああ……なんて事……」

 

 呆然したままのジェイミー。

 ならば、と彼女を捕まえる為に動き出す。

 未だに全容が見えないガーディムの情報を聞き出す為だ。

 近くにいた舞人達がジェイミーを拘束しようと動き出した時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなにも思う通りに進むなんて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 誰の声が聞こえたのかは分からない。

 しかし、彼等は見た。

 

「……え?」

 

 チトセの乗るゲシュペンスト・タイプRVが。

 

「どう……して……?」

 

 ショウの乗るゲシュペンスト・タイプSを。

 

「なんで……!?」

 

 その手に持つメガ・プラズマカッターで。

 

「……馬鹿な」

 

 コックピットを貫いているなんて。

 

「え、あ……どう……して?」

 

 呆然とコックピット内で呟くチトセ。

 目を手に向けてみれば、しっかりと機体を操作している姿が映った。

 それは、つまり。

 

「わ、私が……」

「ええ、そう」

「ジェイミー!?」

 

 先程まで呆然としていたジェイミーの機体がタイプRVの真上に現れていた。

 いつの間にと驚く暇もない。

 

「貴女がやったの」

「……あ……ああ……」

「駄目だ!」

「そいつの声を聞いては!」

 

 それは毒を含んだ声色だ。

 それに気づいたバナージと刹那が止めようと動き出すが、あまりにも遅すぎた。

 

「貴女がタカサカ・ショウを殺したのよ」

 

 決定的な一言であった。

 毒が呆然したチトセに染み込んだ瞬間。

 

「あ、あああああああああああああああ!!」

 

 どうしようもない悲しみを含んだ悲鳴を上げるチトセ。

 

「駄目だ、彼女の心が……!」

 

 あまりの衝撃にチトセの心が罅割れる。

 いや、それはもう壊れると言っていいかもしれない。

 

「……」

「あら、もう終わり。なら」

 

 全ての心が失われたようにチトセの動きが止まると同時に、いつの間にか現れたプラーマグ達によって回収されていく。

 同時にタイプRVに組み付いていたタイプSが振り払われ、地面に倒れ伏す。

 

「逃がすか!」

「残念」

 

 チトセを連れて行かれてたまるかと、近くにいた真・ゲッターが攻撃を仕掛けるが、もうチトセ達の姿はそこにはなかった。

 

「空間転移か!くそがぁ!」

 

 再び連れ去られた怒りを今度はジェイミーに向ける。

 だがジェイミーは先程の余裕のない姿などではない、余裕に満ちた姿をこちらに見せ付けてくる。

 そして刹那とバナージはようやく理解した。

 この女が仕込んだ事を。

 

「貴様が全て操っていたのか!」

 

 それは単純な話ではない。

 

「全て……ショウ達の声で反応する事も、次第に心を取り戻していく事も……全て貴女が!」

「ええ、そうよ」

 

 そう。

 ショウ達の声でチトセが反応する事。

 少しずつ洗脳から解かれていく事。

 ソレ全てがジェイミーの掌の上で行われた事だったのだ。

 

「だってチトセったら、いつまでも抵抗するんだもの。なら自分の拠り所を自分の手で壊してくれればいいでしょう」

 

 だから一芝居打ったのだ。

 

「ええ、おかげでチトセは立派なガーディムの人間になれそうよ。ああ、そのゴミにも感謝をしないとね」

 

 地面に転がったタイプSに目を向けると同時にビーム砲で攻撃を加える。

 主を失った機体は抵抗する事もなくボロボロになっていく。

 

「貴様ぁ!」

「あんたは!」

 

 その姿を見て、堪忍袋の尾が切れたとヴェルトとロッティが同時に攻撃を仕掛ける。

 この外道に満ちた女を斬る為に。

 だが。

 

「遅いわ」

「がはっ!?」

「きゃああぁ!」

「ヴェルト!ロッティ!?」

 

 同時に襲い掛かったヒュッケバインとグルンガストをゴミを払うように一蹴するジェイミー。

 その動きは先程まで竜馬達に追い詰められていた奴とは思えない程であった。

 

「テメェ!さっきまで三味線を弾いてやがったな!」

「だってそっちの方が雰囲気が出るでしょう」

 

 何処までも馬鹿にした様子を見せる。

 ここに来て全員の怒りが頂点に達しようとしていた。

 

「今日はここまでね」

「逃がすと……思ってるの……!!」

 

 もはや慈悲はないといった怒りを滲み出すアンジュ。

 

「思っていないわ。でも欲しい物は手に入ったしね」

「え、なっ!?」

 

 突然、ヤマトの一区画が爆発する。

 なんとそこから複数のプラーマグが飛び出してきたのだ。

 そしてそこはナインが見覚えがある場所であった。

 

「あそこは……!」

 

 そして何処までも相手の方が一枚上手であった。

 

「それじゃあさようなら。次はそのAIを頂くわ」

「ま、待て!」

 

 瞬時に姿を消すジェイミー達、ガーディムの機体。

 先程と同じように空間転移で離脱したのだろう。

 

「くそ……くそぉ……!」

 

 燃え上がる森。

 噴出す黒煙。

 撃墜した敵機の残骸。

 そして、ズタボロになったゲシュペンスト・タイプS。

 紛れもない……彼等の敗北であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ショウは」

「……」

 

 戦闘後、回収されたゲシュペンスト・タイプS。

 パイロットの行方を聞くも答えは無情なものであった。

 

「サーベルの直撃だ。……遺体も何も残っていなかったよ」

「……」

 

 ソウジにだって分かっていた事だ。

 だが聞かずにはいられなかったのだ。

 高坂翔は死んだ。

 彼が守りたいと願った女性、如月千歳の手によって。

 そして被害はそれだけではなかった。

 

「まさか新型も狙われているとはな……」

 

 ヤマトの格納庫に置かれたナインが開発していた三機の新型機。

 一機はソウジのグランヴァングであったのだが。

 残った二機。

 チトセ用に作られていた高機動機、ヴァングネクス。

 ショウ用に作られていた格闘機、ヴァングセイバー。

 この二機は無残に破壊されていたのだ。

 いや、正確に言えば。

 

「破壊されたのはセイバーだけだな。ネクスの方は奪われたらしい」

「ネクスだけをか?」

「ああ。それに武器や追加装備なんかはそのままだ」

 

 アストナージとウリバタケは残った残骸の様子からそう判断する。

 

「……姉さん、ショウさん」

 

 二人の新しい剣は砕かれ、奪われた。

 そしてショウの事を考えるだけでナインは胸が苦しくなっていく。

 出来ればここにはいたくなかった。

 格納庫から去って行くナインと入れ替わるようにヴェルトがやってくると、その足はまっすぐに作業を進めていたアストナージとウリバタケの方へ向かって行く。

 

「……ウリバタケさん、アストナージさん」

「ヴェルトか。怪我は大丈夫か?」

「ええ、僕もロッティも軽症です。ですが今はお願いが」

「ん……?」

 

 ヴェルトが手に持つのは一枚のデータディスク。

 それに見覚えがあった。

 

「そいつはショウのディスクか」

「ええ。そしてこれを」

 

 モニターに映し出された二枚の設計図。

 

「こいつは……」

「僕とショウで作っていたヒュッケバインとグルンガストの改良型です」

 

 二体の機体。

 いなくった彼と共に作り上げていたもの。

 

「今回で二機ともダメージを受けました。ですがただ修理するよりも」

「なるほど」

 

 ヒュッケバインもグルンガストもジェイミーの手によってかなりのダメージを受けていた。

 それを単純に修理するよりも思い切ってパワーアップさせたいという事なのだろう。

 

「僕は奴等を許さない。ですが今のままでは力不足です。だから……」

 

 助けられなかった。

 その悔しさが今の彼の原動力なのだろう。

 だがその想いは整備班も一緒だ。

 二人が頷く。

 次は負けやしないと。

 そんな想いを込めて。

 

「ガーディム……!」

 

 誰が呟いたか分からない言葉。

 怒りに満ち溢れたものである。

 ショウとチトセの事。

 こんな目にあわせた奴等を許しはしないと。

 誰もが思っていた。

 

 

 

 

 

 それにあわせるように、ナニカクロイものが小さく蠢いた。




スパロボVで頑張る、完。










嘘です。
もうちっとだけ続くんじゃ


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それでもと願った先

 仲間を失ってしまった彼等だが、それでも落ち込んでいる余裕などなかった。

 ネオ・ジオンによるコロニー落としの情報が入ったからである。

 それを止めるべく出撃したメンバー。

 しかしそこで更なる悲報が待ち受けているとは思いもよらなかった。

 

「どうして……どうしてそちら側にいる!サリア!」

「私はエンブリヲ様に救われた……故にあの方の騎士となった!」

 

 行方不明になっていたサリア、エルシャ、クリス、ターニャ、イルマの五人がエンブリヲへ降っていた。

 かつての仲間達との敵対だけではない。

 死んだと思われていたレナード・テスタロッサもまたエンブリヲの仲間になっていたのだ。

 ……攫われていた千鳥かなめと共に。

 

「かなめ!」

「うるさいわね、宗介。私はレナード達と一緒にコロニーを落とすの」

 

 失っていく。

 仲間が、大切な人が、どんどんと掌から滑り落ちて行く。

 彼等の脳裏にチラつき始める闇。

 しかしそれだけではなかった。

 

「オードリー……」

 

 かつてオードリー・バーンとして共に行動していた少女。

 彼女がミネバ・ラオ・ザビとして戦場へ舞い戻ったのだ。

 戦争を止める為に。

 

「私達は止めなくてはならないのです。繰り返される憎しみの連鎖を」

「その為に俺達はここに来た」

「カミーユさん!」

 

 カミーユ・ビタン、ファ・ユイリィ、マリーダ・クルス、スベロア・ジンネマン。

 彼等もまた彼女の言葉と共にここにやってきた。

 

「行こう!まずはあのコロニーを止めるんだ!」

 

 奮闘する戦士達。

 だがそれを嘲笑うかのように、エンブリヲは次の一手を打っていた。

 コロニーの落下速度が、こちらの想定、計算より遥かに上回っていたのだ。

 

「事態は刻一刻と変化している。こういうハプニングも想定していなくてはね」

 

 そう。エンブリヲがコロニーの落下速度を速めていたのだ。

 想定より地球へと近づいていたコロニーへの下手な攻撃は、破片を地球全土へと降らせるだけとなってしまう。

 跡形もなく完全に砕くには時間が足りない。

 だがまだ希望は残されていた。

 

「コロニーレーザーで落下するコロニーを狙撃します」

 

 グリプス戦役で破壊されたコロニーレーザーが残されていたのだ。

 しかしその為には一時でもコロニーの落下速度を減速させなくてはならない。

 勿論、彼等ならばコロニーを支えて減速させるのは不可能ではない。

 

「ですが、コロニーを支える我々もそれに巻き込まれる事になります」

 

 アルの一言が全てを物語っていた。

 確かに支える事は出来る。

 だが脱出する時間がない。

 つまり逃げ場がないのだ。

 

「いえ、まだ手はあります」

 

 ボソンジャンプが可能なナデシコCがコロニーを支える。

 しかし脱出は出てきてもコロニーを支えきれない。

 故に全員でコロニーを支え、時間ギリギリでナデシコCに着艦し、ボソンジャンプで離脱する方法が挙げられるが。

 現実的な時間問題として、全員が着艦できる時間などない。

 

「それでも俺達は行きます」

 

 バナージの決意の声。

 確かに限りなく不可能に近いかもしれない。

 だけど、それでも、だ。

 彼等は地球を救う為に不可能を可能にするのだ。

 だけど決意したのは彼だけではない。

 彼女もまた最善の結末にする為にこの場にやってきていたのだ。

 

「ユニコーン!」

 

 彼女からの提案と方法を聞いて、バナージは即座に行動する。

 ユニコーンガンダムのサイコフレームを通じてこの場にいる命の輝きを一つへと纏めていく。

 皆の意識を一つに繋ぐ事が出来れば、それは一つの生命、物質とみなされ着艦せずともナデシコCとボソンジャンプができる。

 それを行う為にユニコーンガンダムは赤い光から、緑の光へと姿を変えこの空間を満たして行く。

 シンカ。

 そう呼ばれる力の片鱗が見えた時。

 

「これは……!」

「感じるぞ、みんなを……!」

 

 確かに彼等は一つとなった。

 そしてボソンジャンプ。

 一つになった彼等は飛んだのだ。

 その時……。

 

「え……?」

『――』

「貴方……いや、君は……まさか……!」

 

 バナージは誰か、いや、見知った声を聞いた気がした。

 まるで自分達を導くように。

 

 

 

 

 

 彼等がやってきたのは、かつてアムロ・レイが押し返したとされるアクシズの片割れ。

 そこでラプラスと呼ばれる組織と出会う事になる。

 戦争をどちらかが倒れるまで続ける、とはまた違った形で戦争を終わらせる為に結成された組織。

 憎しみに疲れた者や、アクシズで放たれた光から希望を見出した者達が集まったのだ。

 そこで預けられたボソンジャンプの演算ユニットとコロニー・レーザー。

 果てしなく重い物ではあったが、戦争を終わらせるべく受け取る。

 だが戦いは繰り広げられるのであった。

 ネオ・ジオンと手を組んだと思った連邦特殊部隊Gハウンドの強襲。

 コロニー・レーザーを手中に収めるべくやってきたフル・フロンタル率いるネオ・ジオン。

 なんとかこの二つを撃退したものの、彼等の戦いに終わりは見えなかった。

 この戦争を左右するかもしれぬ存在、ラプラスの箱を狙うネオ・ジオン。

 地上を制覇せんと動き出したDr.ヘル。

 そして不気味な存在、エンブリヲ。

 それらを止め、戦争を終わらせんと分担して戦いに挑む事となった。

 その結果、ネオ・ジオンとの和解に成功。フル・フロンタルとも歩み寄る事が出来た。

 千鳥かなめを始め、サリア達三人も戻ってきた。

 だが事態はいい方向ばかりに転じた訳ではなかった。

 エンブリヲ、Dr.ヘルは倒したものの、新たにミケーネと呼ばれる神々の到来。

 そのミケーネすら打ち倒した程に強力な機体へとシンカしたマジンガーZの暴走。

 そしてトドメとばかりに襲い掛かってきたEVA3号機を乗っ取った使徒。それに乱入するように現れた新たな使徒。

 まだ終わりではないとばかりに現れるマジンガーZ。

 否、マジンガーZERO!

 まさに混戦。

 大嵐の中と言っていいだろう。

 しかし希望は決して途切れはしない。

 グレートマジンガーを超える新たなマジンガー。マジンエンペラーG。

 覚醒し、圧倒的な力を見せるEVA初号機。

 そして真・ゲッターロボ。

 これらの活躍により、マジンガーZEROは暴走が収まり再び甲児の力となった。

 使徒二体は倒され、捕らわれていたレイとアスカは無事に救出された。

 見事。見事と言っていい。

 考える中でも最上の結果と言っていいだろう。

 だがそれを嘲笑うかのように、奴等が再び現れた。

 

「ガーディム……!」

「ジェイミー、貴様か!」

 

 ガーディム大型機、マーダヴァを駆る女指揮官。

 そして大切な仲間の仇。

 それが再び目の前にやってきたのだ。

 

「チトセちゃんもいるな……」

 

 その横にゲシュペンスト・タイプRVの姿も見える。

 しかしその姿はまた何処か変わっていた。

 前回、持っていた手持ち式のライフルの姿はなく変わりに、両腕に大型キャノンが装備されている。

 更に背中にも多数のパーツが追加されているのが確認できる。

 

「あの機体……!」

「ナイン、分かるか?」

「はい!あれは姉さん専用機として開発していたヴァングネクスのパーツです!ガーディムは奪った機体を使って強化したんです!」

 

 前回の襲撃時に奪われた機体。

 それを使われたのだ。

 

「ええ、そう。貴方が使うより私達が使う方がいいと思ってね。さすがドクター、いい仕事をしてくれるわ」

 

 上機嫌そうに答えるジェイミー。

 その言葉を聞いて、ソウジの怒りのゲージと言うべきものが上がっているのが分かった。

 弟分を殺され、妹分は洗脳されたあげく心を壊された。挙句に相棒の大事な機体を無断で利用されたのだ。怒りで狂わない方がどうかしている。

 そしてソウジだけではない。ロンド・ベルをはじめた全員がジェイミーに怒りの眼差しを向けている。

 この外道を許す訳にはいかない、と。

 

「さぁ、今日こそそのAIとヤマトを頂きましょう。チトセ、始めなさい」

「……了解」

 

 チトセが感情の篭らない声で返答すると、両腕のキャノンを向けてくる。

 戦闘開始だ。

 

「待ってろよ、チトセちゃん!」

 

 前回の襲撃時を上回る戦力で襲ってくるガーディム。

 それを迎え撃うソウジ達。

 しかしその数は圧倒的であった。

 

「くっ!奴等の戦力は底なしなのか!」

 

 Ξガンダムを最大稼動、ファンネルミサイルも最大限に放出しながら悪態をつくハサウェイ。

 前回の戦闘で、かなりの数の敵を撃破した筈だ。

 それにも関わらず、前回以上の数を用意するとは恐ろしいと言うしかない。

 

「だけどこちらも!」

「負けられねぇんだよ!」

 

 ダイターン3とザンボット3が密集していた敵に突っ込み陣形を崩すと同時に。

 

「邪魔だ……!」

「どきなさい!」

 

 ブラックサレナとヴィルキスの突破力がある機体が敵を一網打尽にしてく。

 こちらの狙いはこんな雑魚ではない。

 

「狙いは一点だ!ナイン!」

「了解です!」

 

 防衛線として機能していた敵機を撃墜すると同時に、グランヴァングが突っ込んで行く。

 狙いはただ一つ、ジェイミーの指揮官機である。

 それに続くように真・ゲッターやマジンガーZERO、加えてクロスボーンガンダムなどの機体も突っ込んで行く。

 チトセを救うには、まず洗脳しているだろうジェイミーを落とすしかない。

 

「狙いは私。だけどそう簡単には行かないわ。我等ガーディムの力はこんなものではないわよ」

 

 指揮棒を振るうかの如くマーダヴァが手を振ると、敵機が何もない場所から出現する。

 空間転移だ。

 数は30近く。

 この数に突っ込むのは自殺行為だろう。

 しかし。

 

「舐めるなぁ!」

「っ!」

 

 パワー任せに、敵機を破壊する二体の破壊神。

 さすがにこれは予想外だったのか目を見開くジェイミー。

 だが。

 

「それでもこちらの優位には変わらないわ!チトセ!」

 

 ジェイミーの指令を受け取って、チトセのゲシュペンストが襲い掛かってくる。

 分かっていたとは舌打ちをしたくなる。

 ジェイミーの方はどうでもいいが、こちらはチトセは救うべき対象だ。

 下手な攻撃をして傷つけたら、ショウに何を言われるか溜まったものではない。

 それはガーディムも理解している。

 つまりソウジ達はチトセを人質にされているも同然だ。

 

「くっ!チトセちゃん!」

「……」

 

 声は届いている筈。

 だと言うのになんら反応が帰ってこないのは、前回と違い洗脳の状態が高いレベルになっているのか。

 それとも……。

 

「ええ、貴方の考え通りよ。ムラクモ・ソウジ」

「ジェイミー!ぐっうっ!」

 

 いつの間にか目の前に現れたマーダヴァがグランヴァングを地に叩き落す。

 なんとか体勢を整えながらもジェイミーの言葉に耳を向ける。一つでも情報を手に入れる為にだ。

 

「そう。今のチトセはそれ程、強い洗脳がかかってるとは言い難いわ」

「なら、どうして……!」

「簡単な話でしょう」

 

 それはもう彼女には心がないから。

 

「姉……さん……!」

 

 あの時、ショウを自らの手で殺したと思った瞬間、心が壊れたと刹那やバナージが言っていた。

 その通りなのだろう。

 チトセからは感情も何もかもが抜け落ちた機械人形のようになってしまった。

 今の状態ならば、ナインやアルの方がよっぽど人らしい。

 

「いいわ、いいわよ!チトセ!」

「調子に乗りやがって!」

 

 どれだけ悪態をついてもガーディムの有利は変わらない。

 この一戦で全てにケリをつけるつもりなのか、増援が止まらない。

 そんな惨状にさすがの彼等にも疲れが見え始める。

 終わりの見えない戦いは人から余裕を奪っていくものなのだ。

 

「だが!」

「諦めるか!」

 

 それでも吠える者達がいる。

 どれだけの敵が襲い掛かってこようと関係ないと。

 マジンガーが敵を潰す。

 ゲッターが敵を切り刻む。

 グランヴァングが敵を撃ち抜く。

 まだだ、と。まだ終わらないと。彼等はまだ叫び続けていた。

 そんな彼等に勇気付けられたのか、一時は弱まった攻勢が一気に巻き戻る。

 そんな光景を見てジェイミーは舌打ちをする。

 なんと美しくない光景か。

 見苦しくて仕方がない。

 さっさと諦めて楽になればいいのにと身勝手な事を考える。

 

「なら、希望の一つを奪うとしましょう。チトセ」

 

 動きが変わった。

 それを瞬時に理解したのはナインであった。

 

「拙いです!狙いがヤマトに変わりました!!」

「くそったれ!」

 

 敵の動きを止めたいのは山々だが、次々に襲いかかってくる敵を倒すので精一杯だ。

 

「回避行動!」

「駄目です!敵の方が……!」

 

 ヤマトが必死に回避運動を取ろうとするも、マーダヴァとゲシュペンストの方が早い。

 

「ブリッジを潰して終・わ・り」

「ヤマト!!」

 

 マーダヴァのビーム砲がヤマトのブッリジに向けられる。

 もはや逃げる術はない。

 誰かの悲鳴が聞こえる。

 こんな所で終わりなのかと。

 戦場にいる全員の視線が一点に集中する。

 

「これで!」

 

 その引き金を引こうとした、その瞬間。

 世界に光が満ちた。

 

「な、何っ!?」

 

 それだけではない。

 マーダヴァが弾き飛ばされたのだ。

 

「一体何の光だって言うの……!?」

「……」

 

 この異常事態の発生源。

 それはいつの間に上空に舞い上がっていた機体、ユニコーンガンダムであった。

 同時にバナージの声。

 

「聞こえる……」

「えっ?」

 

 ユニコーンガンダムから発せられる光が強くなっていく。

 ジオフロント全てを満たさんとしているようだ。

 

「聞こえる!」

「一体誰のだって言うのよ!」

 

 ヒステリック気味に叫ぶジェイミー。

 せっかくいい所だったというのに。

 

「いいわ!まずは貴方から破壊してあ・げ・る!」

「バナージ、逃げろ!」

 

 マーダヴァの矛先がユニコーンガンダムに向けられるが、無防備のまま。逆に武器を全て手放し、両手を空へと掲げてしまっている。

 思わずジュドー達の叫びが響き渡るが、バナージからの反応はない。

 そんな様子を見ながら、ジェイミーがニタリと笑いを零す。

 邪魔をする敵はこれで消せると、そんな表情だ。

 

「俺は……俺達は……ここにいるぞ!」

「錯乱でもしたのかしら。いいわ、消えなさい」

 

 ようやく聞こえてきたバナージの声に、首を傾げながらも引き金を引く。

 放たれるビームがユニコーンガンダムを貫かんと進む。

 が。

 

「は?」

 

 ユニコーンガンダムに触れる直前に消滅したのだ。

 意味が分からないと、思わず間抜けな声を零すジェイミーではあるが、すぐに思い出した。

 

「サイコフィールドって奴ね……なんて面倒な!」

「いや、違う……!」

 

 しかしそれを否定したのはバンシィに乗るリディであった。

 同型機に乗っている彼だからこそすぐに気づいた。

 今、ビームをかき消したのはユニコーンのサイコフィールドではない。

 そしてその解はすぐにやってきた。

 

「ワープ反応!」

「ボソンジャンプでもシンギュラー反応でもありません!ガーディム、ガミラスのワープ反応とも異なります!」

「反応場所は……ユニコーンガンダムの更に上!?」

 

 戦艦のオペレーターや観測班から上がってくる反応。

 何者かがここにワープしてくるようだ。

 それも今まで出会った事がない、まったく新しい存在。

 敵か、味方か。

 新たな敵が来たのかと、そんな事を思いながらも気づいた者達がいた。

 

「これは……!」

「この感覚は……!」

「そうか、これは!」

 

 アムロを始めとするニュータイプと呼ばれる者達である。

 

「来る!」

 

 閃光。

 雷鳴が落ちた如く、光と共にそれはやってきた。

 

「あ、あれは……!?」

「ああ、間違いない……!」

 

 白い装甲。特徴的な白い耳のようなパーツ。

 丸みを帯びていたパーツは、何処かエッジのような鋭さになっているものの大きな変化は見られない。

 特徴的な巨大になった右腕を始め、 鉤爪が装備されたような左腕など自分達が知っているものとは大分違いを見せるが、やはりその姿を見間違う事はあるまい。

 

「ゲシュ……ペンストですって……!?」

 

 ジェイミーの言葉が全てを物語っていた。

 姿も色も装備も変わったが、あの機体に違いない。

 そう、あれこそが……。

 

「ああ、そうだ」

「っ!」

 

 白い謎のゲシュペンストから聞こえてくる声。

 その声を聞いて、誰もが驚愕の表情を浮かべる。

 

「え……」

 

 心が壊れたとされるチトセすらもその表情に変化が見られる程だ。

 

「悪いなジェイミー。もう一度言うぜ」

「な……な……!」

 

 今度こそジェイミーは言葉を失った。

 それはありえない人物の声だったからだ。

 もう、この世にいる筈のない存在。

 

「どうしてお前がここにいるタカサカ・ショウ!?」

「チトセを取り戻しに来た!それだけだ!」

 

 タカサカ・ショウ。

 今、戦場に帰還した。



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貫く力の先に

 戦場にいる誰もが驚きの声を隠せないでいた。

 白いゲシュペンストから聞こえてきた声は、間違いようのないショウのものだ。

 

「ショウ!お前……生きてたのか!」

「ええ、死ぬかと思いましたけどね」

「でもどうやって……?」

 

 ソウジの声にちゃんと反応し、声を返してくれるショウ。

 それを聞くと彼が本当に生きていたのだと実感する。

 だが疑問も残る。

 

「そう!そうよ!どうして生きてるのよ!?あの時、プラズマで貫かれたじゃない!どうして!?」

 

 意味が分からないとジェイミーが錯乱したかのように叫び続ける。

 だがそれはナインとしても同感であった。

 あの時、確実にコックピットを貫かれていた。回収した機体だって確認したのだ間違いない。

 

「悪いがトリックを説明する気はないぜ」

「くっ……ならもう一度、殺してあげる!」

 

 ジェイミーの指揮の下、新たな白いゲシュペンストに襲い掛かるプラーマグの軍団。

 一機に対して多すぎる数ではあるが、一度殺したのにも関わらず蘇ってくる相手だ。量をぶつけなければならないと判断したのだろう。

 回りの機体に対しても援護に行かせないようにしっかりと攻撃を仕掛けておく。

 これならば、と思ったジェイミーであるが。

 

「は?」

 

 その次の瞬間にその思いは覆される事になる。

 攻撃を仕掛けたプラーマグを一瞥すると、白いゲシュペンストは飛び上がると共に、その左の爪であっと言う間に一機を貫いて破壊。

 すぐさまに破壊した残骸を投げつけると、更に跳躍。今度は大型化した右腕で撃ち貫いて行く。

 とどめとばかりに固まった相手に大しては胸部発射口が開き。

 

「落ちろ!メガ・ブラスター・キャノン!!」

 

 その光の一撃で破壊していってしまった。

 

「ヒュー!やるじゃないか!」

「見た目だけではなく出力や機動、運動能力が凄い向上しています……」

 

 その蹂躙劇を見たソウジとナインからは感嘆の声が上がる。

 どうやら見た目だけ、という訳ではないようだ。

 今も地を這うように突撃を繰り返して、文字通り千切っては投げを繰り返している。

 

「ええい!ならチトセ!今度こそあいつを殺しなさい!」

 

 業を煮やしたジェイミーがチトセに攻撃を仕掛けるように指示を送るが。

 動かない。

 チトセのゲシュペンストは一歩も動かないでいた。

 

「チトセ!?」

「い、いや……わ、私は……!」

「ええい!言う事を聞きなさい!」

「……っ!」

 

 壊した筈の心が戻ってきている。

 それに気がついたジェイミーはすぐさま、洗脳を強める。

 再び人形のように表情を消したチトセではあるが、ジェイミーの怒りは凄まじく燃え滾っていた。

 それも全てあの死に損ないのせいである。

 

「行きなさい!チトセ!」

「なら相手になるぜ!チトセ!」

「何っ!?」

 

 動き出したゲシュペンスト・RVに対して、すぐに白いゲシュペンストが突っ込んで行く。

 まるで待っていた、とばかりの動きである。

 あの様子、声色。

 そこには自信と覚悟の色がついていた。

 

「まさか……気づいた!?」

 

 それに気づいたからこそ、連鎖してある一点を思いつく。

 最初からこれを狙っていたのだとしたらまずい。チトセを取られてしまう。

 

「させない……!」

「それはこっちの台詞だ!」

「くっ……!」

 

 慌てて援護に向かおうとするも、立ち塞がる機体があった。

 真・ゲッター、マジンガーZERO、マジンエンペラーGの三機である。

 圧倒的な力を持つ三機。

 さすがのジェイミーもこの三機相手では無視する事は不可能だ。

 増援にマーダヴァを呼び出していく。

 

「ど・き・な・さ・い!」

「退くかぁ!」

 

 それと同時にショウとチトセも戦闘を繰り広げていた。

 機械的な動きで堅実に白いゲシュペンストに攻撃を繰り返すチトセ。

 逆に荒々しい動きで回避していくショウ。

 傍目から見れば押しているのはチトセで、押されているのはショウ。

 だがショウにはある狙いがあった。

 しかしその為の情報が足りず、それを調べる方法も持ち合わせていない。

 だからこそ。

 

「ナイン!力を貸してくれ!」

 

 仲間に力を借りる事にした。

 自分は一人で戦っている訳ではないのだから。

 

「キャップ!」

「おうよ!」

 

 ショウの声を聞いて、すぐに駆けつけるグランヴァング。

 何をしたいのかは分からないが、自分の力を頼りにしてくれる。それがナインにとってとても嬉しかった。

 

「チトセのゲシュペンスト、コックピット回りにエネルギー、電波、なんでもいい奇妙な流れはないか!?」

「サーチしてみます!」

 

 すぐにサーチを開始するナイン。

 ソウジは回りに集まってくる敵機を潰しながらショウに疑問の声をぶつけた。

 

「何をするつもりだ!」

「教授が言っていた。洗脳具合を変更できるなら、それは何かしらの方法で指示を送っていた筈だと!」

 

 先日の戦いでジェイミーはチトセの洗脳状態を好きに変更できていた。

 それは催眠、薬などの直接的な方法ではなく、パルスなどの外的方法で操っていた可能性が高い。

 前者ではなく後者であるならば。

 

「つまり受信装置がある……ですね!見つけました!」

「そこを破壊する!」

 

 ナインが見つけたのはコックピットの真上。

 そこに受信機がある。

 だが。

 

「狙いを外せばチトセちゃんが……!」

「それでもだ!」

 

 表示された部分を見て顔を顰めるソウジ。

 少しでも狙いを外せばチトセがどうなるか分からない上に、この乱戦でそこのみを貫くのは至難の技である。

 だがショウは吠えた。

 今度こそ目の前の人を助ける為に。

 

「一意専心!狙いは一つ!」

 

 白いゲシュペンストが左腕を構える。

 たった一点を貫くにはこれしかない。

 

「援護する!」

「行って下さい!」

 

 グランヴァングからミサイルと銃弾の嵐が降り注ぎ、回りの敵機に襲い掛かる。

 一瞬。

 この一瞬のみ、ショウとチトセは一騎打ちの状態になる。

 それを逃さす、白いゲシュペンストは一気に駆け抜けた。

 

「……!」

 

 それを黙って見逃す筈もなく、迎撃していく。

 だが地を滑るかの如く、回避し時には正面から突っ込んで行く白いゲシュペンストを止めるには至らない。

 そして。

 

「そこだ!」

 

 白い爪がゲシュペンスト・RVに突き刺さった。

 その結果は……。

 

「そんなチトセがやられた!しかも受信機のみ破壊されたっていうの!?」

 

 ジェイミーの悲鳴染みた声が全てであった。

 チトセは鎖から解き放たれ、元の場所へと戻って行くだろう。

 だがそれは認められない。認めてたまるものか。

 

「お前達!チトセを回収しなさい!」

「了解」

 

 量産型グーリーが乗ったマーダヴァがチトセのゲシュペンスト・RVを回収せんと動き出す。

 だがそれはすぐに無意味な行動となる。

 

「二人の邪魔は!」

「させないよ!」

「なんですって!?」

「ブラックホール・キャノン発射!」

 

 

 黒い衝撃。

 全てを飲み込む重力崩壊が襲い掛かったのだ。

 その武器に聞き覚えがあったショウは視線を向ければそこには一体のPTの姿があった。

 だが自分の知っている姿とは違っていた。

 

「赤いヒュッケバイン……」

「ああ。これが君と開発していた改良型……ヒュッケバインEX。レッドの姿だ」

 

 ショウの呟きにヴェルトが答える。

 あの時、破損したヒュッケバインが改造され、新たな力を得て新なる凶鳥に生まれ変わったのだ。

 それならば、と視線を動かせば巨大な影。

 

「天に二つの禍つ星……!その名も計都羅喉剣!暗剣殺!!」

「黒いグルンガスト!」

 

 敵を両断したのは黒いグルンガスト。

 ヒュッケバイン同様、改良された姿なのだろう。

 

「そう!これがグルンガスト改!ブラックだよ!」

 

 ロッティの嬉しそうな声が響く。

 それは生きてたショウに対して、そして助ける事に成功したチトセに対してのものに違いない。

 

「嘘……嘘よ!」

 

 ヒュッケバインEXとグルンガスト改が現れた事によりもはやチトセの回収は不可能だ。

 それだけではない。チトセばかりに視点を向けていた反動か、押していた筈の戦局がいつの間にか逆転しているのだ。

 

「くっ……!データは集まった。一度引いて」

「逃がすと!」

「思っているのか!」

「!」

 

 退こうとした瞬間、目の前に真・ゲッター1とマジンガーZERO、マジンエンペラーGが現れる。

 ジェイミーの護衛にと配置していた部隊も彼等によって殲滅させられていた。

 

「今日で終わりにしてやる!鉄也!甲児!あわせろ!」

「応っ!」

 

 最初に飛び込んだのは真・ゲッターとマジンエンペラーG。

 トマホークとソードによる剣戟の嵐がジェイミーのマーダヴァを切り刻んでいく。

 

「こ、この程度で……!」

「まだだぁ!」

「がっ、はっ!」

 

 剣戟の嵐が収まった瞬間、上から急降下してきたマジンガーZEROに体当たりされて地面に容赦なく叩き落される。

 その衝撃で、ジェイミーの意識が吹き飛ばされそうになるがまだ、である。

 

「……ひっ!」

 

 すぐに意識を戻したジェイミーであるが、マーダヴァの上空に佇む三体のロボットに思わず悲鳴を上げる。

 もはや逃げ場などない。

 

「これで!」

「終わりだ!」

 

 マジンガーZEROのブレストファイヤー。

 マジンエンペラーGのグレートブラスター。

 二つの炎が襲い掛かる。

 そして。

 

「ゲッタービィィィム!」

 

 真・ゲッター1から放たれるゲッター・ビーム。

 三つの力が容赦なく襲い掛かる。

 

「ファイナルダイナミックスペシャル!!」

 

 閃光。

 そして爆発。

 進化し、強化された機体の力は間違いなく絶大であった。

 

「は……は……!生きてるわよ!た、大した事なかったわね!」

 

 それでもジェイミーは生きていた。

 マーダヴァも半壊を通り越した状態ではあるが、まだ動ける。

 そんな少しだけ生まれた余裕から、軽口を叩く。

 

「は、手加減してやったに決まってるだろう」

「……え?」

 

 そこから帰ってきたのは容赦のない返しであった。

 手加減されていた。

 前回は手加減して遊んでやった相手に逆に手加減された。

 なんて屈辱。

 この借りはすぐに返さないと、頭が沸騰してしまいそうだ。

 しかしそんな思考は次の一言でかき消される事になる。

 

「お前にトドメを刺すのは俺達じゃない」

「……!」

 

 その一言で全てを察した。

 手加減された訳を。

 それを裏づけするように、こちらに急接近してくる反応が一つ。

 

「タカサカ……ショウ!」

 

 白いゲシュペンストである。

 止まる事など考えてないとばかりの全力疾走。

 それにあわせてその巨大な右腕を構えている。

 疑う余地もない。

 あの男こそがジェイミーにとっての死神になるつもりなのだと。

 

「ふざけないで!お前如きにこの私が!」

「撃槍起動……!」

 

 必死に離脱しようとするジェイミーだが、マーダヴァの損傷は限界を超えている。逃げるなど不可能だ。

 逆に軽快に動く白いゲシュペンストは巨大な右腕が変形していく。

 回転とパーツの組み換えにより、手の部分を覆うように現れた巨大な突起物。

 これこそがジェイミーを貫く必殺の一撃。

 

「トロニウムエンジン、フルドライブ……!」

 

 出力上昇を確認。

 その出力の数値を見てナイン達が目を見開く。

 単純な数字だけで見るならば真・ゲッターやマジンガーZEROクラスと言っていい膨大な出力なのだから。

 ジェイミーもまたその出力を見て、顔を引き攣らせる。

 

「来るな……来るな……!」

「リミッター解放、全開!」

 

 白いゲシュペンストがバーニアを全開で吹かす。

 止まりはしない。

 最速で最短でまっすぐに……突っ込むだけだ。

 

「響けぇ!ガングニール!!」

 

 閃光。

 繰り出された右腕から放たれた一撃は、迷わず、狂いなく、マーダヴァを撃ち貫いた。

 

「あ……ああ……」

 

 貫かれたコックピットでジェイミーが呻く。

 こんな結果は認められない。認めたくないと。

 そんな事を思いながら。

 

「こん……な……の……美しく……ない……。絶対に……何か間違って……」

 

 しかしどれだけ否定しようと、これが現実。

 ガーディム一等武官、ジェイミー・リータ・スラウシルは敗れたのだ。

 これ以上の否定は美しくない。

 

「……チトセ」

 

 それが最後の台詞であった。

 

「敵の全滅を確認」

「……うむ」

 

 沖田艦長が頷く。

 長い戦いであった。

 使徒達の戦い、マジンガーZEROの暴走、ガーディムの襲来。

 そして死んだと思っていたタカサカ・ショウの帰還。

 時間にすれば一時間も経っていない筈の戦いではったが、長い戦いと言ってもいいかもしれない。

 さぁ、帰ろう。

 そう思った時、それは現れた。

 次元境界線の歪曲の暴走。

 EVA初号機とマジンガーZEROを基点にした時空融合……いや、時空崩壊。

 これにより世界は新たなステージに進む事になる。

 だが。

 

「まだ終わりじゃない、これから始まるんだ」

 

 誰かが呟いた。



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繋がる想い

 時空融合。

 エンブリヲ達によって行われた世界の崩壊。

 それを食い止めたのは竜の民の始祖にして、次元制御も可能な存在アウラ。

 だがそれは一時の凌ぎでしかない事は誰の目から見ても明白であった。

 アウラが力尽きた時、宇宙世紀と西暦世界を飲み込んでしまうだろう。

 しかし希望がない訳ではなかった。

 竜の巫女であるサラマンディーネがアウラと交信した時、アウラから一つの道が提案される事になる。

 

『イスカンダルへ行け』

 

 ヤマトの乗員を始め、誰もが驚きを隠せないでいた。

 別次元の事を知っていたアウラに対してもだが、この世界崩壊を止める術をあのイスカンダルが持っている事に対してもである。

 ならば、次元の壁を越えて新正暦世界へと戻るしかあるまい。

 その為の道も示され始めているのだから。

 だが、その前に。

 今は戻ってきたあいつの話を聞かなければならなかった。

 そう、高坂翔の話を……。

 

「って事でキリキリ話なさい」

「アンジュリーゼ様、そんな尋問みたいな事は……」

 

 ヤマトの一室、そこに高坂翔を始めとするメンバーが集まっていた。

 時空融合に加えて、復活怪人の使徒のゴタゴタで中々聞けなかったが最大の疑問が残っているのだ。

 それ即ち。

 

「あの状況で生き残るとか、どんな魔法を使ったか気になるでしょうが!」

 

 アンジュのそれが全員の疑問であった。

 ゲシュペンスト・タイプSのコックピットに寸分なくサーベルを刺されたのだ。

 誰もが翔の死を確信していた筈だ。

 だと言うのに生きていたのだから驚きである。

 

「生きていたのは嬉しいけど、確かにどうやって生きていたのかは気になるな」

「だよね。絶対助からないと思ってたもん」

「ああ、うん。ちゃんと説明するよ。その前にチトセは?」

 

 全員からの圧力混じりの質問に苦笑しながら頷く翔。

 しかしそれよりも助け出した千歳の事が気になっていた。

 あれから彼女は意識を失ったままの状態であった。

 

「大丈夫ですショウさん。診察結果で異常は見られませんでした。後は目覚めるだけだと思います」

「そっか。ありがとなナイン」

 

 そんな疑問にすぐに答えてくれたナインに礼を言うと、翔は息を吐き出した。

 今度こそ彼等の質問に答える為だ。

 

「それじゃあ説明するよ。あの時、何があったかを」

「……」

「まぁ、ぶっちゃけて言うとアレだ。コックピットが潰される直前、転移したんだよ」

「え?」

 

 あっさりと言う翔に全員が呆然となる。

 転移したと簡単に言うが、そんな事が簡単に起こるのかと疑問も出てくる。

 だが生きていた当人がそう言うのだから、そうなのだろう。

 

「一応聞いておくが自分の意思で?」

「いや、さすがにそれは無理。あっちで教授と話したんだけど、俺は転移しやすい特異体質の持ち主、って考えるのがいいかもしれないってね」

 

 ああ、と一部の人間は感づいた。

 よくよく考えれば翔が転移したのは一度ではない。

 そう、そもそも新正暦世界に転移してやってきた人間なのだから。

 

「しかし教授って事は」

「ええ。ソウジさん。俺が転移した先は新正暦世界のニコラ・ヴィルヘルム研究所日本支部。ようするに一番最初に転移した先に飛んだんですよ」

 

 話はあの戦いが起こった直後へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

「貴方がここに転移してやってきたとは驚きよ」

 

 ベッドに寝かされていた翔が目を覚まして、とある人物と会っていた。

 

「お久しぶりです教授」

「ええ。でもヤマト帰還前に会えるとは思ってなかったわ」

 

 アイナ・クルセイド。

 それはかつて自分を拾ってくれた相手、ニコラ研究所の職員の一人である。

 

「しかし色々と貴方も波乱万丈な生活を送ってるわね」

「まぁ、今更ですね」

「それもそうね。で一応、報告として聞いてるけれど」

「ヤマトの事ですよね」

「ええ」

 

 目が覚めてから、ヤマトの旅路の事は大体報告してある。

 並行世界への転移は勿論、そこで起こった出来事なども全部。

 

「上層部は焦ってるわ。頼みの綱として送り出したヤマトがイスカンダルに着いていない所か別世界に飛ばされるなんてね」

「でしょうね」

 

 無事である事は分かったが、まさかの別世界である。

 地球滅亡のカウントダウンが始まっている今、彼等の焦りは翔にも理解できた。

 

「地球はどうなんです?」

「ガミラスの攻撃はあれから一切ない事から、地球圏から手を引いたと判断。ヤマトが間に合わなかった事を考えて、コロニーへの脱出活動が行われているわ」

 

 ガミラスの攻撃で傷ついたコロニーの修復活動が始まったらしい。

 万が一、間に合わなかった事を考えると妥当な考えである。

 

「で、もう一つは今の私達の研究ね」

「研究?」

「並行世界への転移よ」

「!」

 

 並行世界の証明がされた以上、研究されている可能性があると話には聞いてはいたが実際にその研究がされている事を聞くと驚きを隠せない。

 つまりガミラスの脅威がない世界へ逃げる事も考えているという事か。

 

「その通りよ。ただ研究は停滞していた……のだけど運がいいのか悪いのか、進歩がありそうなの」

「……俺ですか?」

「ええ」

 

 停滞していたが、それも終わりそうだと。

 それはつまり何か切欠があったという事だが、その原因はすぐに思いついた。

 隠す事もない、翔自身である。

 

「貴方が転移した時、私達は実験をしていたの。つまり転移してきた時の観測データが手に入った」

「それを解析すれば」

「ええ。遠くない未来、並行世界への転移が可能になるでしょう」

 

 まさか自分の転移がきっかけとは更に驚きを隠せない。

 並行世界転移。

 これがこの世界に何を齎すのか。それを思えば確立されて良かったのかと考えてしまう。

 だが、今はそれが翔にとってありがたい事であった。

 

「……教授」

「行くの?」

「はい」

 

 翔が何を言いたいのかすぐに理解した。

 行くつもりなのだ。並行世界へ転移したヤマトの所に。

 

「機体は適当なのを貸してくれれば……」

「一ついいかしら」

「なんです?」

「ここで休んでもいいのではないかしら?」

 

 わざわざ苦しい戦いの舞台へと戻らなくてもいい。

 教授はそう言っているのだ。

 

「貴方は確かに自分の意思でゲシュペンストに乗ったけれど、その後は奇妙な命令でヤマトに乗っただけ。ここで休んでも問題ないと思うわ」

「似たような事、前にも言われましたよ」

 

 かつて千歳と総司に話した時にも同じよう事を言われた事を思い出す翔。

 だけどあの時、返した言葉は今も覚えている。

 そして今もそれは変わらない。

 

「すいません。それでも俺は行きます」

「……決意は変わらないのね」

「はい」

「分かったわ」

 

 教授が頷く。

 誰の目から見ても明らかだ。

 翔は何を言われようが、自分の道を進むのだと。

 

「なら大人しく休んでいなさい。準備はこっちでやっておくわ」

「準備?」

「これよ」

「それって……」

 

 教授が取り出したのは一枚のデータディスク。

 それには見覚えがあった。

 

「俺の……?」

「ええ。面白い物が沢山あったわ。夢物語から実用できそうな物までね。ちょっと借りてくわ」

 

 それだけ言うと出て行く教授。

 それを見送ると、翔はベッドに倒れこんだ。

 準備をする、という事はきっと機体やら転移やらの準備なのだろう。

 もし用意してくれるのだとしたらありがたい。

 それならば自分に今できるのはその時に備えて休息を取る事だろう。

 翔は何か違和感を覚えながらも、大人しく休む事にした。

 一方、部屋を出た教授はすぐに格納庫へと向かった。

 現状、少しでも時間が惜しい。

 格納庫に入ると、近くにいた整備班班長を捕まえる。

 

「班長」

「どうしたんです教授?」

「タイプSは?」

「タイプSなら今、ばらし終えた所ですよ」

 

 目先を追えばそこには、装甲を全て外された機体、ゲシュペンストMkⅡ・タイプSの姿が見える。

 それを確認すると好都合だと呟く。

 

「それをベースに改修するわ」

「改修ですか?」

「ええ。プランは大体出来てるの。後は作業するだけ」

「はぁ」

 

 突然の話に、うまくついていけない班長。

 だが気にする事なく話を進めて行く教授。

 

「シズキはいるかしら?」

「ええ。今はヒュッケバインの所だと思いますが……」

「呼んできて。ドイツ支部とアメリカ支部にも協力を要請するわ」

「へ?」

 

 どうやら思っていた以上に大きな話になっている事に驚きを隠せない班長。

 だが話はそれだけではなかった。

 

「それとトロニウムも使うわ」

「……はい?」

「パイロットから例の念が検出されたわ。T-LINKシステムも組み込むわよ」

「ちょ、ちょっと待ってください教授!」

 

 教授から出た言葉に驚きながらも悲鳴じみた声を上げる班長。

 その声に周囲の人間も驚いて二人を見る。

 

「トロニウムエンジンは確かに完成してますし、T-LINKシステムとのリンク制御も問題ありません」

「ならいいじゃない」

「ですがトロニウムは地球じゃ手に入らない貴重な物質な上に6つしかないと聞いています!それをゲシュペンストに組み込むなんて……」

「うるさいわね。MkⅢと参式に組み込むらしいけど、まだMkⅡも弐式も出来てないんでしょ。それなら今使ってもいいじゃない」

「で、ですが……!」

 

 色々と文句をつけてくる班長。

 だがそれを聞くのも飽きてきたのか、無視して話を進める事にした。

 

「後、あの機関から提供があった資材も使うわ」

「はぁ!?あれも使うんですか!確かゾル・オリハルなんとかっていう金属ですよね!ど、どれだけ貴重な物を使うんですか!?」

 

 今度こそ悲鳴を上げる班長。

 先程から教授が言う物は本当に貴重な物であり、旧式のカスタム機に使うような代物ではない。

 だが教授は本気でそれを使うらしい。

 

「……冗談じゃないんですよね」

「勿論よ」

 

 そこまで言われて、大きな息を吐き出した班長。

 もうこうなった以上、彼女の考えを覆すのは不可能だ。

 

「……分かりましたよ。もうどーにでもしてください」

「ならさっさと作業を開始して。データはこれに纏めておいたわ」

「了解です」

 

 ディスクを受け取って作業場に戻って行く班長。

 それを見送ると、一人の女性が教授の下にやってくる。

 

「あのアイナ教授。呼ばれたみたいですが……」

 

 シズキ・シズカワ。

 ドイツ支部所属の人間で、とある理由で日本支部に出向してきたパイロットである。

 

「ええ。ドイツ支部に協力を要請したいの。連絡を取ってくれるかしら?」

「は、はい。それは分かりましたが何を……?」

「地球を救う為の手伝いよ」

 

 それだけ言うと、一枚のデータディスクをシズキに放り投げる。

 

「至急、それを作ってこっちに運んできて欲しいって事を伝えてくれるかしら。完成は早ければ早い程いいわ」

「わ、分かりました!」

 

 ディスクを受け取ったシズキは連絡を取るべく慌てて通信施設へと足を向ける。

 それを見送ると教授は次の作業を進める事にした。

 時間は貴重なもの。

 それを無駄にする訳にはいかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 翔がヴィルヘルム研究所日本支部に転移してきてから二週間が経った。

 その僅か二週間でゲシュペンストの改修は順調に進んでいた。

 新装甲の取り付けは勿論、動力部の強化にT-LINKシステムの搭載。

 ヒュッケバインを開発したドイツ支部からは、MkⅡ用の武器を調整しなおした武器を。

 グルンガストを開発したアメリカ支部からは、新装備搭載の右腕を提供されていた。

 他にも多数の新金属を使ったクローを始め、様々な新装備を搭載されていく。

 翔自身も暇ではない。

 新機体を乗りこなす為にヒュッケバインのパイロットであるシズキと共にシミュレーションを行い、T-LINKシステムを使いこなす訓練も行っていた。

 そして更に一週間後。

 怒涛とも言える短期間で新型のゲシュペンストが完成していた。

 

『どうかしら』

「いいですね。こんなに動かしやすいとは思いませんでした」

 

 ゲシュペンスト改を実際に乗り回す翔は感嘆の声を出すしかなかった。

 その操縦性は素晴らしいものだし、専用機として開発されただけ自分との親和性も非常に高い。

 自分の思う通りに動いてくれる機体。

 それをこの短期間でくみ上げてくれたスタッフ達には頭が下がる一方である。

 

「しかし武器の開発はまだなんですね」

「まぁ、機体の組み上げが終わっただけ凄いと思うよ」

 

 大地を駆けるゲシュペンスト改に並行する形でついてくるシズキのヒュッケバイン。

 彼女の言葉に返事をする。

 実際、幾つかの武器案がありそちらの開発も行われる予定であったが一先ず機体本体の開発が最優先と言う事で、そちらの方は手付かずである。

 おかげでゲシュペンスト改に搭載されている武器は右腕の大型槍ガングニールに尻尾とも言えるテイルブレード。更に両腕のクローに元からあったメガ・ブラスター・キャノンぐらいなものである。

 

「これでも十分戦えるさ。こいつの本領は近接戦闘だからな」

「ゲシュペンストサイズの特機。小型化したグルンガストみたいなものですからね、その機体は」

 

 そう、トロニウムエンジンを搭載した事により出力も大幅に向上。

 そのパワーは特機にも引けを取らないレベルになっていた。

 

「そろそろいいかしら」

「ええ。付き合ってくれてありがとうございました」

 

 テスト機動を終えて、研究所近くへと戻って行く二機。

 するとそこには大型の機材が並べられていた。

 

『ショウ君。追加のテストだけどいいかしら?」

「教授、これは?」

『並行世界転移のテスト装置よ。貴方のT-LINKシステムと連動させてみたいのよ』

「了解です」

 

 例の転移システムと聞いて頷く。

 ヤマトに戻るにはこちらのテストも行わなければならない。

 翔は機体を転移装置の近くに止めると、ケーブルを繋ぎ始める。

 シズキは近くで警備を行ってくれるようだ。

 

『準備完了。こちらの装置を起動すると同時に、ショウ君もT-LINKシステムを起動してみて』

「はい」

 

 遂に行われるテスト。

 転移装置の起動を確認すると同時にショウもまたT-LINKシステムの起動を行う。

 翔としてはT-LINKシステムのもう一つの問題に気づいてはいたが、転移の為には仕方ないと割り切る。

 教授やシズキに伝えるには情報ソースが足りないのもあるが。

 

「……」

 

 装置を起動して数分。

 何も感じられず、若干だが焦りが生まれてくる。

 このまま何も手応えを感じられる事なく終わってしまうのかと思い始めてきた。

 更に数分待つが何も反応がない。

 今日はここまでかと教授が実験終了の指示を出そうとしたその時。

 

「……声が」

『えっ?』

「声が聞こえる……」

 

 翔の耳に誰かの声が聞こえてきた。

 だが教授やシズキ達には何も聞こえてこない。

 空耳か何かかと思ったが、翔にははっきりと聞こえてきた。

 

「この声は……バナージ!」

 

 今度こそはっきりと聞こえた。

 耳からではない、脳に直接伝わるような声。

 間違いない。あの声はバナージ。バナージ・リンクスの声だ。

 

「感じる……みんなの声が……気配が……!」

『転移装置に異常!?いえ……正常に起動!?』

『まさか……転移するのショウ君!?』

「ええっ!?」

 

 スタッフ達の話し声の内容を聞いて驚きの声を上げるシズキ。

 まさか並行世界へ転移するつもりなのか。

 

「すいません教授、シズキ!俺は行きます!」

「ショウ、本気!?」

『行けるの?』

 

 シズキは本気でこのまま転移できるのかと心配の声をあげ、教授は本当に転移できるのか問いかける。

 翔は両方に頷きで返事を行った。

 逆に今でなければ飛べないだろうという確信もあった為だ。

 

『……なら行きなさい。今度はしっかりとね』

「ああ、もう!ショウ、気をつけて。イスカンダルへ必ず辿り着いて」

「任せろ!」

 

 巻き込まれないようにとスタッフ達が装置近くから退去する。

 

『ああ、そうだ。最後に一ついい?』

「どうしたんです教授?」

『その機体名はどうする?一応、ゲシュペンストMKⅡ・タイプS改ってつけてあるけど』

「……」

 

 そういえば何も決めていなかった事を思い出す。

 だがどうせならしっかりとした名前を登録していきたい。

 少しだけ思考の海に潜ると、自然に浮かび上がった名前を口にした。

 

「ゲシュペンスト・タイプSBでお願いします」

『分かったわ。でもB?何の略?』

「ああ、それは……」

 

 新しい愛機の姿は見知ったゲシュテルベン改に近しいが、その全体的な姿は悪魔的と言っていい。

 ここではない何処かの世界。

 いつかどこかで咲くかもしれない鉄血の花。

 その系譜を受け継いだと言うべき機体につけるならば……。

 

「……それは内緒という事で」

 

 それだけ答えると、再び意識を集中させる。

 行くべき場所。そこにいる光を目指して。

 

「……行け!」

 

 飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う訳だ」

 

 ヤマトの一室で話終えた翔が一息つく。

 

「なるほど。あのゲシュペンストはヴィルヘルム研究所で作られたという事か」

「ああ」

 

 助かった理由。

 そして新しく乗ってきた機体の謎が解けた。

 

「しかし助かったよバナージ。お前の声がなければきっとここに辿り着けなかった」

 

 あの光がなかったらきっとここにはこれなかったショウは言う。

 

「それはこっちもだよ。ショウの声が聞こえたから、繋げたんだ」

 

 バナージもショウの声が聞こえたから、と答える。

 あの時、あの瞬間、お互いに声を出し合ったからこそ届いたとも言える。 

 

「……」

 

 ナインはそれを聞きながら思考を走らせる。

 幾つかの謎は解けた。だが転移体質を始め色々と疑問に残る点も多い。

 それは翔自身も感じている事だし、実際は偶然が続いただけの可能性、それに加えて本当にそういう体質なのかもしれない。

 そこは考えても仕方のないと思うしかない。

 翔は無事に助かった。それだけで良かったのだから。

 他のみんなも同じような考えなのだろう。

 もう疑問は口に出さずに翔の帰還を祝っていると同時に彼がいない間に起こった事を話している。

 そうなると懸念事項は後一つ。

 

「……医務室から連絡があった。チトセ君が目を覚ましたようだ」

「!」

 

 聞くと同時に飛び出す翔。

 そう、後は彼女の問題だけである。

 僅か数分で医務室へ辿り着くと、出迎えてくれたのは佐渡医師と原田衛生士であった。

 話によれば意識は戻って、落ち着いてもいるそうだが大分落ち込んでいるとの事。

 当然と言えば当然である。

 敵に拉致され洗脳されていたとは言え、敵対し大切な人を殺したと思っていたのだ。受けた心の傷がどれ程、大きいものか。

 

「チトセ」

「……ショウ」

「ああ」

 

 ベッドに横になっているチトセに近づくショウ。

 チトセの瞳には怯え、失望、そんな負の感情が写っている。

 念動力者となった影響かは分からないが、表面に浮かんでいる以外の感情もなんとなく分かるようになっていた。

 

「無事で良かったよ」

「……」

「本当に君が無事で良かった」

「わ、私……」

 

 何かを言いたいのだろう。

 だが震える体や心のせいか、中々千歳から声が出てこない。

 翔は静かに声が出るのを待っていた。

 

「あ、貴方の事を……」

「ピンピンしてるから気にするな」

「敵として戦って……」

「誰も気にしてないし、悪いのはガーディムの連中だから」

 

 そうだ。

 千歳の落ち度なんて何処にもない。

 しかし。

 

(割り切れないものもある……か)

 

 それでも、と千歳は自分を責めているのだろう。

 だけど、と翔も思う。

 

「なぁ、チトセ」

「……」

「俺は君が好きだ」

「!」

 

 告白。

 あの日、別れ際にした言葉をもう一度口にした。

 

「今でも変わらない俺の想いだ」

「ショウ……」

 

 千歳が感じている重責も、何もかも一緒に背負おう。

 

「だから、なんだ。大丈夫だ。これから一緒に取り戻していこう」

「……うん」

 

 君/貴方が傍にいてくれるだけで頑張れる。

 

「ショウ……ありがとう」

「ああ」

「私も貴方が好きです」




後継機となったオリジナル機体、ゲシュペンスト・タイプSBの見た目。
ゲシュペンストMk2・Sをゲシュテルベン改二号機のようにして、ガンダムバルバトス・ルプルスレクスを足して、右腕にガングニールを搭載すれば完成!

次回から日記形式に戻ります。


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11ページ目 二つの世界で頑張る

 ■月○日

 久しぶりの日記である。

 ようやくヤマトに戻ってきた訳だが、なんというか色々あった。

 千歳が攫われた所から始まって、並行世界転移の事やら、研究所での新型ゲットとかその他諸々だ。

 なんとか無事に彼女を奪還できたのは本当に良かった。

 仲間達からは手荒い歓迎を受けたが、みんな本当に嬉しそうにしてくれたから問題なしと。

 しかしこの旅の本番はこれからだ。

 イスカンダルに行かなければ、三つの世界を救えないのだ。

 本当に頑張るしかない。

 でも仲間達が、千歳がいるならどんな苦難も超えていけそうな気がする。

 

 

 ■月◎日

 鉄也さんが隠していた事情を説明してくれるという事もあり、彼の指示した場所に向かったらなんと科学要塞研究所があったのだ!

 光子力研究所の所にもあったんだけどどういう事だよ、と思ったら兜博士の弟子の一人が建設したもう一つの研究所だと言う事。

 ん、それってつまりあの人ですよね?

 とか思ってたが予想通り兜剣造博士でした。あれ、真だと亡くなってたというか、頭だけ状態だった気がしたんだが普通に体があった。サイボーグだったけどな!

 そこで新正暦世界へ戻る為の方法があるらしい。

 正直な話、検討もつかないが戻れるならなんでもいい所だ。

 俺もこっちに転移してきた時のデータとか渡しておいたから役に立てて欲しい所である。

 

 

 ■月●日

 転移に関してメドがついたらしい。

 準備が出来次第、転移を敢行。そのままイスカンダルを目指すようだ。

 現在はその準備中。物資は積み込めるだけ積み込む予定。西暦世界と宇宙世紀世界の両方で色々と準備をしてくれるようだ。

 俺はというと、機体調整に忙しかったりする。

 元々、テストしてる時に転移して無理やり戦闘行動を取ったせいで機体がガタガタだったりするのだ。

 調整にナインやヴェルトが手伝ってくれてるから本当にありがたい。

 問題と言えば手持ち武器が一切ないのが問題か。鉄血メイスはあの戦闘で破壊されてしまったって言ってたし。

 うーん、暫くは適当な武器を使うかな。

 

 

 ■月△日

 その名は真・ドラゴン!

 ってええええぇぇぇ!剣造博士が作ってた切り札って真・ドラゴンだったのかよ!予想の斜め上だよ!

 早乙女博士の復活はまぁ、そうなるよなぐらいのノリだったけど色々と驚きだ!

 ついでにミケーネもやってきて戦場は混沌状態に陥った!まぁ、勝ったけどね!

 ミケーネは甲児達マジンガーが中心になって撃退し、真ドラゴンは竜馬さん達に叩き落されていた。

 更に予想外な事に、エンブリヲがやってきやがった。

 みんな驚いていたけど、まぁ、生きてるよなって感じ。黒いG並みにしぶとい奴である。

 しかし笑えるのが、協力者らしい?早乙女博士に科学者を名乗る資格はない!って一蹴されてた。道化か!

 まぁ、真・ドラゴンが最高傑作とかないわー。あれを超える怪物を知ってる身としてはねぇ……。頼むから来ないでくれよ。マジンガーZEROだけでお腹一杯なんだよ俺は。

 後、早乙女博士は綺麗な博士でした。今回の騒動はこっちの力試しの為にわざとやったって感じだし。

 そんで真・ドラゴンが自軍入り。パイロットは勿論、號、渓、剴の三人である。そういえば博士と渓が和解したのって……。

 あっ、エンブリヲはそのまま真・ドラゴンに撃退されてた。やっぱりつえーな。後、タスク。やったか!とかやってないフラグだから。

 ドラゴン達も援軍として駆けつけてくれたおかげかミケーネも撤退。これで終了かと思ったらガミラスを中心にネオ・ジオンの残党とかがやってきたけど消化試合すぎる……。

 何事もなく撃退終了。

 さすがにその程度の戦力でこの部隊を倒すとか無理だと思うぞ。

 しかし俺も強くなったよな。

 最初は戦うだけで精一杯だったが、今はコックピットを外して敵を落とせるぐらいにはなった。

 特訓の成果や今までの経験もそうだけど、念のおかげか敵の動きが見えるようになったんだよな。

 最後にこの三世界合同艦隊の呼称が決定された。

 その名は地球艦隊・天駆!

 天を駆けるって意味なんだろうか。オリジナル部隊名で漢字だけっていうのが、かっこいいな。

 

 

 ■月▲日

 今日は出発前の補給活動だ。

 イスカンダルへの道のりは途方もないぐらいに長いもの。

 その間は補給できる当ては一切ない以上、大量に持って行く必要がある。

 そんな訳で食料、燃料、パーツなど大量の物品を運び込んでいる状態だ。多分この作業だけで後数日はかかる予定だ。量が凄いからしょうがないけどね。

 俺も補給パーツ関連で問題にぶち当たっていたのだ。

 基本的なパーツはゲシュペンストである以上、問題なかったのだがゾル・オリハルコニウムだけは補給できなかったのだ。当然だけどさ。

 というか新正暦世界にゾル・オリハルコニウムがある事が驚きだよ。確かあれってラ・ギアス産の希少金属だった筈。という事はあの世界にラ・ギアスがあるんだろうか?

 トロニウムも何処で手に入れたんだろうか。ガミラスばっかりに目を向けてたけど、もしかするとあの帝国も存在している可能性が高くなってしまった。

 で、だ。ゾル・オリハルコニウムは自己修復機能も持っているとはいえ、完全に破壊されればそこで終了である。

 代わりのものはないかと相談した結果、剣造博士が超合金ニューZ製の物を用意してくれた。ありがたや!

 ただし時間がなかったので補給できたのは一式分だ。戦闘の時は注意して戦わないとな。

 

 

 ■月■日

 補給作業が一段落した。

 しかし色々と凄かったな。

 まずは旋風寺財閥から浜田君やサリーちゃん、ルンナちゃんがやってきた。浜田君は整備班に。二人は生活班に加わるとの事。

 それに加えて勇者達用のパーツも大量に持ってきたとの事。加えて、旋風寺財閥に依頼していた武器を受け取る事が出来た。

 強化されたメイスに、なんとルガーランスまで作ってくれたのだ!ありがとうと言うしかない。

 ルガーランスは一期仕様だから正しい使い方しないと。え、リミッター解除すればいける?よくやった!

 アナハイムからはなんとアルベルト・ビストがやってきた。俺の知ってるアルベルトと違う……。

 とまぁ、それは置いておいて。

 アナハイムからも補給パーツは勿論だが他にも色々と持ってきてくれていた。

 まずはなんとνガンダムの開発者であるオクトバー・サランがやってきたのだ。新型、Hi-νガンダムと共に。

 アムロ大尉の生存が確認された後、慌てて開発を進めて持ってきてくれたとの事。上層部?勿論内緒にしてたらしいよ。

 加えてガンダムMk-ⅡとZガンダム用のフルアーマーパーツ、FA百式改を持ってきてくれた。

 なんかフルアーマー関係が凄い充実したんだが。というかZガンダム用のフルアーマー装備とか知ってる人がどれだけいるんだよ……。

 クロスボーンガンダム二機もパワーアップもとい、フルクロスとフルアーマーを装備してた。X1がフルクロスで、X0がフルアーマーだ。っていうかそれは一人スーパーロボット大戦のやつじゃ……。

 EVAチームもパワーアップしてた。

 復活怪人もとい復活使徒が出現したらしいが、不思議猫もとい真希波・マリ・イラストリアスと8号機が参戦。

 更にシンジが渚カヲルと共にエヴァンゲリオン第13号機で出撃したとの事。

 あるぇー!?色々な意味で早すぎませんかその機体!

 初号機とは状況に応じて乗り換えるとの事。更に零号機、初号機、弐号機にF装備が用意されていた。

 この充実な装備っぷりに俺も驚きを隠せないんだが。アスカとレイも助かったし、Qフラグは完全に折れたんじゃないかなぁ。

 他にはネオ・ジオンからフル・フロンタルがやってきた。……話には聞いていたけど俺の知ってる全裸と違う。

 激励しにきたとの事だが、αアジールとクィン・マンサ・セプテットを持ってきてくれたあたり本気だな!色々と!

 後、ジェリドにヤザン、レーンと言った今まで敵対していたGハウンドのメンバーも天駆に参加する事になった。

 色々と一悶着あったけど一番の懸念だったカミーユとジェリドが和解していた。……これって歴史的な和解なんじゃないかなぁ。

 人員と言えば俺としては予想外の人物がやってきていた。沙慈・クロスロードである。

 劇場版でELSがやってきていないから地球で嫁と一緒にいると思っていたんだが、天駆に参加する為にやってきたらしい。

 色々悩んだらしいが、ルイスに背中を押されてきたとか。

 ソレスタル・ビーイングのメンバーからは歓迎されてたな。特に刹那は色々思う所はあったけど何処か嬉しそうな様子である。

 やっぱり相棒って事なのかな。

 

 

 ■月☆日

 ついに全ての準備が完了した。

 俺のゲシュペンスト・タイプSBも調整と整備は完了。フル出力で戦闘可能だ。

 チトセのゲシュペンスト・タイプRV改も調査と修理が終わり問題なく使用可能に。

 さぁ、行くは星の海。33万6000光年の旅路。

 目指す場所は全てを救う可能性があるイスカンダル。

 道のりはどうせ険しいに違いないが、大丈夫。

 みんなで行くのなら怖いモノはない。

 希望を抱いて突き進むとしよう。

 だけど、イスカンダルへの旅路で終わりという訳ではない。

 エンブリヲを始め、倒すべき敵はまだ残っているのだから。

 だから必ず俺達はここに帰って来る。

 三つの世界。その全てを救う為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「連中はイスカンダルへ向かうか」

「まぁ、予想通りだね。で、どうする司令官?こっちの戦力は少し不足気味だ。グーリーもジェイミーも倒されチトセは奪い返されてしまった」

「ドクター。機体の生産状況は?」

「問題なく稼働中。で、指揮官はどうする?さすがにあの連中相手にAIの部隊をぶつけても資源が無駄になるだけだよ」

「いや、断続に攻撃を仕掛け連中の物資を奪う」

「飢餓の剣とするのか。それなら例の連中を上手く使った方がいいね」

「その調整は任せる。で、指揮官だがコマンダー:C873Kを使う」

「ふむ。もう少し調整したかったがジェイミーが倒された以上、仕方ないか」

「では頼む。我等ガーディムの名の下に劣等種どもに裁きを与えねばな」



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12ページ目 大マゼラン銀河で頑張る

 ■月◆日

 パラレルボソンジャンプにて地球艦隊・天駆は無事に新正暦世界へと無事に帰還を果たした。

 ああ、無事に戻ってこれたな。

 現在地は銀河系と大マゼラン銀河の中間点あたりとの事。

 問題は航海スケジュールは三ヶ月ほど、遅れてるという点か。このスケジュール通りだと、イスカンダルについても一年以内に地球への帰還は不可能。

 ただしボソンジャンプなどの新技術により巻き返し可能らしいが。

 そういえばガミラス人であるメルダ・ディッツが天駆より離脱した。

 元々、敵同士であり新正暦世界への帰還までの間限定の関係とは言えさみしいもんである。

 実際、山本三尉をはじめ色々な人に見送られてたっけ。

 うん、今度会う時も戦場以外の場所がいいな。

 

 

 ■月※日

 なんか航海スケジュールが無事に修正されたらしい。

 ヤマトに搭載されている自動航法システムが解決手段を示してくれたそうだ。

 一体どんなシステムなのかナインがすげー気にしてたっけ。俺も気になるが多分、最高機密になるだろうし見る事は出来ないだろうなー。

 

 

 ■月=日

 通常ワープを得て到着したのは巨大な建造物こと亜空間ゲート。

 なんでもこれを使えば、戦艦単独でのワープよりも更に長距離ワープを可能にしてくれる代物だと言う。

 問題は現在は稼動してないという点だが、古代戦術長や真田副長達がゲートを再起動する為に制御システムを弄ってくるそうだ。

 ……うーん、しかし眠い。

 無事に新正暦世界へ戻ってきて気が緩んでしまったんだろうか。

 当直の事もあるし体を動かして眠気を飛ばす事にしよう。

 

 

 ■月@日

 寝てる場合じゃねぇ!な昨日だった。

 敵からの精神攻撃を喰らって見事にみんな眠ってしまった。

 俺は念を得て耐性を得てしまったのか、クソ眠かったけどギリギリ踏みとどまる事が出来た。途中でソウジさんとナインが来てくれなかったら即死もとい即眠だったけどな!

 同じように耐性でも持っていたのか岬准尉も眠らずにすんでた為、全員で波動エンジンルームに入ったらなんか侵入者がいるし!

 捕まえようとしたら実体がないという。岬准尉によれば精神感応波が使えたり幻覚を見せる事が出来るという。何で知ってるかは知らんが、とりあえずめんどそうな相手だと理解した。

 どうしようかと悩んだらなんか、岬准尉がトドメを刺してたんだけど本当にどうなってんだ状態である。そして正体はイスカンダルのユリーシャっていう人だし訳が分からんぞ!

 そして艦隊での襲撃!まぁ、作戦失敗したら当然だよな!

 しかし今回のガミラスは強敵だった。

 作戦指揮、部隊の錬度。今まで戦ってきたガミラスの連中とは次元の違う連中であった。

 なんとか撃退したが、次も同じように撃退できるとは考えない方がいいだろう。

 後でガーディムの連中が来たけど指揮官なしのAI部隊だったのであっさり撃退。うーん、何を考えてるんだろうか?

 

 

 ■月<日

 亜空間ゲートの調整が終わり、次の目的地が決まりバラン星系に行く事になった。

 なんでもそこはイスカンダルへの旅の中間点と言うべき場所らしい。

 それと同時にワープネットワークのハブステーションも兼ねており、ガミラスのワープの基点だとか。

 無事にワープを成功させれば大マゼラン銀河までワープする事が可能であり、スケジュールの短縮も可能という事らしい。

 まぁ、問題はそんな重要地点なんだから、防衛戦力がいるのは当然だろうなぁ。

 で、この話を持ってきたのは森船務長によく似た美人さんことユリーシャ。イスカンダルの使者である。先日、岬准尉に意識だけ憑依してたとか。お、オカルトだー!今更だがな!

 しかしチラっと俺を見て何か呟いてたような気がしたが……気のせいか?

 因みにチトセにほっぺを抓られました。見とれてない!見とれてないから!

 

 

 ■月$日

 敵の数はなんと一万隻以上の艦艇がいるとか。凄い数だ。戦艦の数で言えば百倍以上の差がある。

 機動兵器の数も考えると頭が痛い。まぁ、一人頭百隻ぐらい潰せばなんとかなるんではなかろうか。無理?ですよねー。

 運が悪いとか思っていたら、沖田艦長は好機と捉えてる様子。さすが歴戦の艦長。考える事が一味違うぜ。

 

 

 ■月!日

 ヒャッハー!殴りこみだぁ!

 バラン星にワープした俺達はそのまま敵本陣に突撃を敢行した。密集陣形を取っていたのが命取り。中に飛び込んでしまえばこっちのもんよ。

 敵砲撃の嵐を突破して、陣形内部に飛び込んだ俺達は暴れるに暴れまくった。相手がオープン回線にしてた為か、あっちこっちから敵の悲鳴が聞こえてきたっけ。

 この戦力差で突っ込んできて暴れてくる敵とかこえーよな、確かに。

 でもその悲鳴、俺達の攻撃だけじゃなくて敵指揮官の艦艇からの攻撃によるものも混じってた気がする。つーか、あの指揮官、正気か?って思いたい。

 マジ味方に当たるのを無視して攻撃してきやがる。

 面倒な奴だったが俺が砲台を破壊した後、ヤマトの砲撃を喰らって沈黙。その間にゲートへと飛び込む事に成功した。

 ヤマトが一瞬脱落したように見えて焦ったけど、後からしっかりと続いてくれた。

 バラン星に波動砲をしっかり撃ちこんで来たようだ。

 これで亜空間ゲートの制御システムを破壊した事により、バラン星にいた敵部隊はこちらへの追撃が不可能ないし、困難になっただろう。

 敵の戦力がどれだけ削れたかは分からないが、これで少しは楽になった筈だ。

 

 

 ■月~日

 まさかの問題発生である。

 なんと地球から持ってきた資材が底をつきそうだという。

 予想以上の激戦により、消費量も予想以上だと言う。

 パーツ自体はヤマトにある万能工作機で製作可能だが、その材料がないんじゃどうしようもない。

 資材の採掘場でもあればいいんだけど、さすがにそんな都合よくいくもんじゃにしなぁ。

 さすがに命に関わるから、機体のパーツをケチる訳にはいかないしね。

 暫くは撃墜した敵機の残骸から調達するしかないだろう。

 そう来ると、ここ最近ちょこちょこやってくるガーディムの連中が非常に鬱陶しい。

 指揮官がいないから雑魚なんだが、あいつらのせいで余計に資材を消耗してる気がする。

 あー、ガーディムじゃなくて高級なパーツとか積んでる連中とか補給物資満載の敵とかいねーかな。

 

 

 ■月|日

 カモネギ襲来!

 メルダ少尉が言っていたガミラス総統の親衛隊である。

 親衛隊という事は潤沢な予算に立派な装備を持っているに違いない!つまり俺達の獲物!獲物である!

 ハサウェイとバナージが海賊みたいだ、と呟いていたが海賊だよ!何せクロスボーンガンダムがいるしな!

 ハリソン大尉も「まさか俺が海賊側に回るとはな」とか呟いてたけど、気にするな!

 さあ、こっからは海賊の時間!

 海賊らしく頂いていく!

 ……美味しく頂いたぁ!

 

 

 ☆月○日

 今日の艦長会議により、天駆の部隊を二つに分け、お互いがお互いの陽動として動く事になった。

 バラン星での足止めには成功したと言っても、銀河での移動能力という点ではやはりガミラスの方が上だと考えていいだろう。

 その為、既に俺達の存在はガミラス本星に知られていると判断するべきという事らしい。

 そういう訳で部隊を二つに別けて、陽動活動を行う事になった訳である。

 とは言え、イスカンダルへの移動経路を知っているユリーシャ嬢がヤマトに乗っている関係上、ヤマトがいない部隊はイスカンダルに向かう事が出来ない。

 その問題をウリバタケさん達が解決。なんとボソントランスリミッターとレシーバーという代物を開発。何処に居ようがナデシコならヤマトのいる所にボソンジャンプできるようになったのだ。

 イネスさんが設計図を書き上げ、ヤマト内で作っていたそうだ。まさにこんな事もあろうかと、である。

 そんな訳で部隊はヤマトとナデシコをそれぞれの軸にした編成になった。

 ヤマト側はMSを中心とした部隊、ラー・カイラム、ネェル・アーガマ、ガランシェール、プトレマイオス2改、エターナル。

 ナデシコ側は残りの真・ドラゴン、トゥアハー・デ・ダナンとなった。

 こう見るとやっぱりヤマト側の方が多いが、ガミラスは間違いなくヤマトを狙ってくる以上、仕方ないか。

 俺達はと言うとヤマト側にソウジさん、ヴェルト、ロッティが配置。

 ナデシコ側に俺とチトセという事になった。

 まだ旅は半分も終わっていない。

 ちゃんと再会できる事を祈ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユリーシャ・イスカンダルにとってそれはまさしく正体不明の存在であった。

 地球艦隊・天駆。

 イスカンダルに力を求める彼等の存在を観察するのが彼女の役割である。

 だからこそ、こうして再び肉体を得た今、彼等の艦艇内を歩き回っているのだ。

 そんな中でナインという不完全な相手など個人的に興味がある相手を見て回っていたのだが、それだけは唯一毛色が違った。

 不確定で不安定。

 彼を称するならばこの二つがもっとも相応しい言葉であろう。

 他の人々からは感じられない不安定さ、不確定な形。

 そう、地に足をつけていないとも言っていい。

 だが彼は確かに不確定で不安定だが、彼という存在は天駆の中でも受け入れられている。

 どういう事だろうか、と思う。

 一体何がどうしてあんな風になったのか疑問が次々と浮かび上がってくる。

 少しの間、彼を観察するが仲間達と話す姿、訓練をする姿、食事をする姿。

 どれもが自分達と何ら変わりのない普通の人間としか見えない。

 ならば原因は彼にある訳ではない。外的要因か何かではないかと思い、その奥底を覗きこもうとして。

 

「ああ、それは困るなユリーシャ・イスカンダル。まだ君に彼の事を知られる訳にはいかない」

「!?」

 

 いつの間にか近くに誰かがいた。

 その声色に聞き覚えはなく、身に宿るのは純粋な悪寒と恐怖。

 正体を探るまでもない、間違いなくこの相手は敵である。

 

「――……!?」

「ああ、無駄だよ。その口煩い嘴は封じさせてもらった」

 

 誰かを呼ぼうと声を上げようとするも、何の音も出さない。

 一体いつのまにと驚く暇もない。

 しかも回りを見れば、誰一人いない。遠くにも感じる事が出来ず焦りばかりが焦っていく。

 ならば、と逃げ出そうと足を動かそうとして。

 

「――」

 

 今度こそ完全にユリーシャの体は機能を停止したかのようすに倒れこんでしまった。

 目は見えない、口は動かない、手は触れず、足は踏み込めない。

 敵が近くにいるというのにユリーシャは完全に打つ手を失ってしまった。

 

「安心するといい命は奪わない。まぁ、記憶は奪うけどね」

「――」

「何、今分からなくても答え合わせはいつか行われる。その時、君が生きているかは知らないけどね」

「――」

「ではお休みなさいお姫様。良い悪夢を」



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13ページ目 惑星フェルディナで頑張る

 ☆月▲日

 ヤマト達と別れて数日経つが敵の攻撃がしつこいぐらい襲い掛かってくる。

 ガミラスは勿論の事だが、今日はなんとパープルとかいうエセロックバンド野郎が襲ってきやがった。どうしてこんな所にいるんだと突っ込みたい!

 さすがにここ数日の戦闘ダメージが残っていたので、今回は撤退。長距離ボソンジャンプで離脱する事に成功した。

 で、ついた場所はウラノメトリア星雲にある惑星フェルディナ。人が生活可能な星だ。

 この星はガミラスの勢力圏内からは外れているとの事で、すぐには発見されないそうだ。そういう訳でここで各艦の修理作業を行う事になった。

 俺も修理活動に参加。さすがに本格的な事は無理なので手伝いぐらいだけどな。

 後は浜田君の手伝いもやっている。これが本当に必要になるかは分からないし、間に合わない可能性もあるがやれるだけの事はやっておきたい所だ。

 

 

 ☆月▼日

 修理作業を始めて数日。みんな色々と忙しいが、一部の人達はイチャイチャしてた。

 俺もチトセとイチャイチャしたいなぁ。え、恥ずかしい?

 安心して欲しい。俺も恥ずかしいからな!

 

 

 ☆月□日

 敵に発見された。なんと相手はガミラスでもガーディムでもなくロックバンドの皮をかぶった悪の幹部ことパープル。

 こんなにも早く発見されるとは正直思ってもいなかった。奴等の探知能力半端なさすぎ。

 それにしてもDG同盟の連中もここまでついてきてるとは思わなかった。相手の様子からすると無理やりの可能性が高いんだけど。

 投降を呼びかけたけど拒否されたんでザンボット3、ダイターン3、グレートマイトガインがサクっと撃退。メンバーがいつもより少ない=弱いってわけじゃねーからな。

 前座を撃退した後にパープルが襲来。凄い余裕ですオーラがあるけど、敵数は少なめ。最初から全員で襲ってきた方が良かったんじゃねーかなぁ……。

 とか思ってたらマジ強かった。魔のオーラってなんだよ。与えたダメージが速攻で修復されたんだけど。

 更にミケーネの連中もしつこい事にやってきやがった。居場所を探すのに手間取ったとか言ってるけど、今はお呼びじゃない!

 無敵の魔のオーラはマジ無敵すぎてやばかった。一撃で倒せばいいんじゃね?とか思ったんだけどバラバラに吹っ飛ばしても即座に復活するとかチートすぎるだろ、あれ。

 真・ゲッターやマジンガーZEROの攻撃でも倒しきれないとか本当にやばかった。

 それ以上の問題はパープルの言葉で舞人に迷いが生じてる事。悪が生まれるのは舞人のせいだとか言ってるけど、そんな訳ねーだろ。逆だ逆!

 だけどそんな舞人を引っ張り上げたのはアキトさんであった。

 かつてナデシコに乗っていた人、ヤマダ・ジロウことダイゴウジ・ガイ。アキトさんの友人だった人。

 心の底から正義を、完全無欠のヒーローを信じていた。

 それを体現したのが舞人だ。

 みんなが、俺だってそれを信じている。

 そこからは逆転劇だ。

 魔のオーラがどういう訳だが弱り、ダメージを与えられる状態になったのだ。

 気力もマックス!怒涛の反撃でまずはミケーネの連中を撃退。あのWマジンガーマジ怖い。

 パープルも勇者軍団にタコ殴りにされてた。まぁ、大した武器も持ってなかったみたいだし当然か。

 これにて無事に撃退。敵にこっちの居場所はばれてしまったが、まぁ、今更か。

 しかし一つ気になる事がある。魔のオーラを打ち破った時、サリーちゃんの念のようなものを感じ取ったのだ。

 勿論、彼女が念動力者ではない事はなんとなく分かる。

 つまり俺が感じたのは念以外の何か、という事か。

 うーん、マイトガインはそんなに詳しくないからなんとも言えないなぁ。後で少し話してみようか。

 

 

 ☆月☆日

 パープル撃退から数日。

 修理作業を進めながら、俺達は静かな時間を過ごしていた。敵襲がないのは素晴らしい事だ。

 そういえばサリーちゃんと少し話したけど、よく分からないとの事。

 しかし浜田君はしっかりキャッチしていたようだ。イノセントウェーブ、それがあの時に感じられたものか。

 問題はそれをどうすればいいか分からないって事か。

 とりあえずそっちは研究班に任せる事にして俺は肉体労働である。

 今日の夕飯はハンバーグ。美味しかった。

 

 

 ☆月◇日

 怒涛すぎる一日だった。

 千鳥の様子がおかしい事はなんとなく分かっていたが、あんな事になるとは……。

 レナード達が次元の壁を越えてやってきやがった。一体何の用かと思ったが千鳥を拉致する為だったとは思わなかった。どんだけ執着してるんだろうか、彼女に。

 追わなきゃと思ったらやってきたのはインベーダーが襲ってきやがった。しかもメタルじゃない純正のインベーダーである。

 話し合い不能な相手な以上、撃退するしかない。つーかお前らは宇宙世紀世界の連中だろ!どうしてここにいやがるんだ!

 とか思ったらエンブリヲのせいだった。スティンガーとコーウェンまでいるし。

 進化の為にゲッター線が必要であり、自分達以外の種を根絶やしする為にヤマトの波動エネルギーが必要なんだとか。

 波動エネルギー優先とばかりにあの二人は撤退したが、置き土産のインベーダー連中を倒す必要がある。月面戦争時よりパワーアップしてるとかめんどくせぇ!

 襲い掛かってくるインベーダーを撃退してたらレナードの配下連中まで襲ってきて面倒!トドメにガーディム連中まで乱入してきやがった。

 インベーダーなら見境なく攻撃しろ、と思ったが悲しい事に攻撃対象はこちら一点集中状態。俺達を倒す事を最優先にしてやがる。

 乱戦状態はさすがにきつかったが、なんとか乗り切った。

 筈だった。乱戦だったせいか敵スナイパーの位置を把握できなかった。そのせいでクルツさんが……と思ってたんだけどなぁ

 とどめとばかりにエグゼブがやってきて、この星のマントル層で爆発を起こし星を破壊しようとしやがった。

 緊急脱出には成功したが、あの綺麗な星は破壊されてしまった。

 星に残っていた宗介も無事に脱出。ついでにDG同盟と……まさかのクルツさんも無事に脱出。生きてたよ、おい!

 しかしそれを喜んでる暇もなくエグゼブの部隊が攻撃を仕掛けてきた。さすがの連戦はこっちもきついがしょうがない。

 敵の数は幸いにも多くないし、魔のオーラの瞬時回復もないみたいだから撃退できるだろう。

 って思ってたら、倒した瞬間に即時回復。加えて暗黒大将軍率いるミケーネまでやってきやがった。

 疲労困憊の状態であいつらの相手をするのは酷く大変だ。

 だけどこっちにも切り札があった

 イノセントウェーブ増幅装置。魔のオーラを破る代物である。

 作業をコツコツ手伝ってたけど、制御部分も完成したのか。しかし強力すぎだろ。魔のオーラを打ち払っただけではなく受けた物理的なダメージも修復するとか色々と半端ないな。

 αでの主人公がサイコドライバーとしての力を発揮した時も似たような事がおこった気がするし、人の思念ってマジすげーや。

 魔のオーラがなくなった事でエグゼブはポンコツ化。もはや雑魚同然。

 逆にミケーネはいつも通りだった。まぁ、そんなもんに頼るような連中じゃねーわな。

 エグゼブは舞人とジョーの二人によってきっちり撃破された。

 ミケーネの連中もついに今回の戦いで全滅させた。

 あしゅら男爵、勇者ガラダブラ、暗黒大将軍。どいつも強敵であった。エグゼブと違って誇りある敵だった。

 

 

 ☆月#日

 各機体の修理と補給を終えた俺達はヤマトと合流すべく動き出していた。

 エグゼブとミケーネの陣営を壊滅させた事は勿論、陽動としても十分に仕事をしたと判断した訳だ。

 ヤマトの方も激戦だったらしいが無事が確認されている。

 イスカンダルへ至る旅ももう少しで終わりが見えてきた。

 油断は出来ないが、ゴールが見えるのはいい事だ。

 さて、長い旅ももう少し。頑張っていくとしよう。

 ……しかしどうにも嫌な予感がする。

 イスカンダルへ至る道のりに関してではない。レナードやエンブリヲの事ではない。インベーダーの事ではない。ましてはガーディムの事でもない。

 正体不明の悪寒。

 それがどうしても消えないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一つ……また一つ」

 

 ここではない何処か。

 暗闇に満ちた場所にナニカがいた。

 それは手元に無数の何かが浮かび上がっていた。

 その正体は本であり、旧世代の記録媒体であるCDやDVD、BDと呼ばれる物であった。

 ナニカはそれを愛おしそうに眺めていると、再び光が満ち手元に新たな物が産まれていく。

 

「ああ、こんなにも産まれていく。これこそが我が狙い、我が計画の要」

 

 もし、もしもだ。

 ここに高坂翔がいたとしたら、生まれていく物を見れば驚愕に満ちた表情を見せる事であろう。

 それがまさしく自分が知る■■■や○○、▲▲▲、××なのだから。

 そしてこれを計画の要だと知れば、もしかしたら、万が一の可能性でその計画の全貌を察知する事が出来たかもしれない。

 だが残念な事に彼はいない。

 他にその正体を知る物達もいない。

 残念ながら、ここにこれを写す絵も画像もない。

 故に気づかない。

 誰にも気づかれる事なくその計画はひっそりと、だが確実に進んで行くのであった。

 

「ん……ああ、連絡か。仕方ない、表の顔の仕事もこなさなければならないか」

 

 ガチリ、ゴクリ、そんな奇妙な音を立てながらナニカの形が変わっていく。

 それは幾分かの時間をかけて変形し、誰が見ても分かる人間の女へと姿を変えていった。

 その姿は間違いなく――

 

「さぁて、お仕事お仕事」



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14ページ目 ガミラスで頑張る

 ☆月@日

 無事にヤマト達と合流に成功した。

 あちらもあちらでかなりの激戦だったらしく、疲労が残った状態ではあったがこの広い宇宙で再開できた事をまずは喜ぼうと思う。

 

 

 ☆月?日

 ELS襲来に大混乱中の俺である。

 影も形もなくてすっかり忘れていたが、OOがいる西暦世界ではなく新正暦世界にいるとは予想外だった。

 原作通り、刹那が対話を試みて失敗。ティエリアは肉体を失うはめになったようだ。これって妖精もといサブパイフラグなんだろうか。他のシリーズじゃ見た事なかったけど。

 みんなも刹那の対話には好意的。うん、これなら成功する確率は高くなりそうだ。……俺もT-LINKシステムを使えば援護出来そうだし、ちょっと調整しておこう。

 他の話と言えば、ガミラスはやはりヤマトに集中攻撃を仕掛けていたようだ。その最中に木星帝国やジオン残党と決着がついたみたい。なんとアンジェロは投降してくれたみたい。

 これもまたスパロボ時空って事なんだろうなぁ。

 さてタランチュラ星雲を越えた先にイスカンダルがあるようだし、もう一踏ん張りだ。

 

 

 ☆月<日

 インベーダー対策会議。

 研究者の一人である隼人さんの推測では波動エンジンの技術を持ったイスカンダルそのものだそうだ。

 俺達の地球を救ってくれる彼等を守る為にも先んじてイスカンダルに到着したい所。

 しかし最短ルートであるタランチュラ星雲、七色星団は濃密な星間物質やイオンの嵐が吹き荒れる厳しい環境だそうだ。

 馬鹿正直に突破するにはヤマトでも厳しいそうで、ワープでも回避不能。迂回ルートを使えば敵に反撃の時間を与えてしまう事になる。

 という事で沖田艦長の一言で七色星団を突破する事に決定。かなり難しい舵取りを強いられる事になりそうだ。

 問題は敵がこちらの狙いに気づいているかいないかか。シンジ達は気づいてないと思っているようだが、そうは問屋がおろさないのがスパロボである。

 何があってもおかしくないように準備はしっかり進めておく事にしよう。

 

 

 ☆月%日

 最短ルートに敵がしっかり迎撃の布陣を敷いてた。ですよね。

 敵の指揮官も相当強く、短距離ワープを利用した攻撃を仕掛けてきた。あれはこっちでも探知しきれないから相当やばい。ボソンジャンプ戦法のデータがあるから七面鳥撃ちにはならないけど。

 だがそれ以上にやばかったのが、あの特攻機だ。こっちの攻撃を掻い潜ってヤマトの伝装系を破壊する一発を撃ちこんで来たのだ。そのせいでヤマトは航行は不可能になってしまった。

 それを防衛しながらの敵艦隊との戦いは正直困難だった。ぶっちゃけまともな一発を喰らったらお陀仏コースだし。

 なんとか敵中枢の艦隊を破壊、撃墜を完了したのはいいがそこにやってきたのはインベーダー。戦いの匂いに引きつけられたらしい。

 迎撃をしていると、ガミラス艦隊の旗艦が襲来。三つ巴になるかと思いきやあちらから一時休戦を申し出てきた。どうやら先にインベーダーを迎撃してくれるようだ。

 後ろから撃たれる不安はあるけど、沖田艦長が相手を信じたのならこっちも信じるだけである。

 そんなかんなで共にインベーダーを迎撃。コーウェン達はいなかったからすんなり叩き潰せた。

 で、一息ついた所でガミラスの増援が到着。

 あの旗艦との決着をつける事になった。

 多分、今までの中で一番激しい攻撃だったが、勝利の女神はこっちに傾いた。

 敵艦隊は全て撃墜。敵旗艦もヤマトがトドメを刺していった。

 敵だったが凄い男だった……。

 

 

 ☆月&日

 無事にガミラスの攻撃をやり過ごせた、と喜んでる暇は全然なかった。

 どうも先日の攻撃の最中に敵部隊がヤマトに進入。なんと森船務長が拉致られて行方不明だそうだ。えーっと、マジで?

 やっぱりイスカンダルの使者ことユリーシャによく似ていたから間違えられたって事だろうか。

 もしあっちで正体がばれたら無事ではすまない可能性が高い。

 俺達が助けに行くまでなんとかやり過ごして欲しい所だ。

 色々な疑問は残るが今はイスカンダルに向かうしかないか。

 古代戦術長も変に思いつめなければいいんだけど……。

 

 

 ☆月/日

 今日は重要な情報が入ってきた。

 こちらの世界に戻ってきてから別れたメルダ少尉から通信が入ってきたのだ。

 どうやら彼女は軍に戻ったのはいいが、政治的な争いに巻き込まれていたとの事。ガミラスも一枚岩ではないという事か。

 そんな彼女から齎された情報がガーディムの部隊についてである。メルダ少尉の父が捕らわれている収容所の星付近に展開してるとの事。

 どうしてそんな所に展開しているのは不明だが、ガーディムがこちらの妨害行動または何かしらの作戦展開をしている可能性が高いとの事で、向かう事になった。

 しかも捕らわれた森船務長もいるとの事。これは行くしかねーな。

 

 

 ☆月★日

 きつい一日だった。

 惑星レプタボーダ付近に展開していたのはガーディムではなくなんとインベーダーどもであった。

 どうやらエネルギー鉱石の鉱脈がある惑星を喰らうつもりでいたらしい。

 勿論そんな事をさせるつもりはなく、片っ端から叩き落す事にした。森船務長を救うのは勿論だけど、こちらの味方をしてくれそうなガミラス人を救えば戦いを終わらせられる可能性が高くなる。

 そんな感じに気合を入れてインベーダー退治をしていたのだが、そこにやってきたのは大物ことコーウェンとスティンガー。合体版である。途中で色々と喰ってきたのかかなりでかくなっていた。

 やはり狙いはレプターボーダのエネルギー鉱石を食い、そして波動エネルギーも喰らうつもりだったようだ。

 そんな様子に頭に来たのかゲッターチームがぶっ放してくれました。真・シャインスパークである。

 ……一瞬、虚無るんじゃないかと心配したけどさ!ってか一瞬、ゲッペラー様が見えた!一瞬だけど見えちゃったよ!

 しかしあっちもあっちでしつこかった。回りのインベーダーを喰らって復活するとか。数も多いからどうしたもんかと思ったが、なんと波動砲解禁である。

 今まで戦闘においては使ってこなかった波動砲だが、インベーダーのような生命の敵相手には遠慮しないという事らしい。

 加えて刹那もなんかクアンタフルセイバーを持ち出していた。持ってきてたのか!まぁ、対話できる相手じゃないし遠慮はいらないって事だろう。

 結果は勿論、こちらの勝ち。回りのインベーダーどもは俺達がきっちり壊滅。

 コーウェンとスティンガーは……ゲッターチームに再び落とされていた。シャインスパーク、ではなくゲッタートマホークで。そう、ファイナルゲッタートマホークである。

 あのゲッタートマホークでかすぎぃ!星一つ真っ二つになっちゃうよ、そりゃあ!

 これでインベーダーは全滅、かな?まぁ、油断できないのがインベーダーなんだけどさ。

 で、とりあえず回りの危険がなくなったので古代戦術長を指揮官にレプタポーダに突入。先行して降りたメルダ少尉の仲間達の支援と森船務長の救出に向かう事になった。

 捕らわれていたガミラスの人達の救出には成功したが、伊藤保安部長が森船務長を救出の際に戦死。森船務長も既に他の部隊に連れられて去った後であった。

 しかしガミラスの情報がかなり手に入ったのは大きい。色々と衝撃的な情報も手に入ったけどなぁ、うん。

 

 

 ☆月#日-1

 数日の通常航海を終え、遂にイスカンダルがある所へとワープを行おうとした直後、まさかの情報が入ってきた。

 ガミラス本星が金属生命体ことELSに襲撃されているというのだ。

 大急ぎでやってきたが巨大ELSマジでけぇ!これはまともに考えたら絶望的ですわ。でもこれでも半分ぐらい減ってるっていうんだから恐ろしい話である。

 こっちの作戦は原作通り、刹那がELSとの対話をする事。問題は容赦なくELSに攻撃を仕掛けてくるガミラスだけど、それはこっち担当もといソウジさん達が担当してくれる事になった。

 俺は刹那と一緒に巨大ELSに突撃。T-LINKシステムでサポートする事になった。実はこの為に妖精ティエリアと色々と調整してたんだよね。

 ガミラスの方がソウジさん達、スーパーロボット部隊が中心に撃退。俺は刹那やMSを中心としたリアルロボット部隊と突撃してたんだけど、そこにガーディムがやってくるとは思わなかった。

 しかも、相手はあのジェイミーだったのだ。あの時、とどめを刺したと思ったんだけど生きてたのか!……って感じだったんだけどな。

 ジェイミーもまたグーリーと同じだったのだ。そう、アンドロイドである。

 なんで分かったのかだって?そりゃあ顔の半分が焼け爛れたようになった機械部品が見えてればな……。

 しかも狂ったようにチトセを取り返そうとし、俺の事を敵視してきたのだ。

 彼女を治した奴がいるとすれば随分と悪趣味な奴だ。

 結局、チトセとの連帯でジェイミーを撃墜。

 俺を殺そうとして、チトセを拉致し洗脳した相手とは言えなんとも後味の悪い気分であった。

 ガミラスもある程度蹴散らした後、大火力持ちで道を作り俺と刹那でELS内部に突入に成功した。

 中枢部に突入した後、クアンタムシステムを起動。ティエリアは膨大な情報をさばく事。

 俺の役目は刹那とELSの意識が上手く共有できるように思念を集中させる事、そして地球艦隊・天駆に所属する人々の意識を集め託す事だ。

 しかしこれがかなり難しかった。膨大すぎる情報はティエリアのサポートがあっても刹那どころか俺の意識すらすっ飛ばしかねない程だったのだ。

 だけど刹那の決死の声、俺が集めた天駆の人々の声。それが上手く通じたのかELSの攻撃衝動がなくなり、無事に対話に成功したのであった。

 とここまで見れば大成功だったんだけどな。

 ガミラスの要塞にガーディムの別働隊が侵入。その要塞には森船務長がいるとの事で、古代戦術長とソウジさんが救出任務として要塞内部に突入。

 森船務長は無事に救出するも、ナインを人質に取られた事によりソウジさんがガーディムに拉致されてしまった。

 チトセの事がある以上、ソウジさんも洗脳される可能性が高い。ナインの事もあるし急いで救出したいんだけどまずはガミラスとの決着をつける事となった。

 

 

 ☆月#日-2

 ELSとの対話を終えてすぐに俺達はガミラス本星へと降り立った。俺達がこの銀河を旅する切欠となった相手との決着をつける為に。

 それはあちらも同じなのか、しっかりと布陣を引いて俺達を待っていた。

 精鋭であろう部隊を引き連れたガミラスとの戦いはかなり激しいものだった。あっちも首都防衛の為、士気は相当高かっただろうし。

 こっちも余計な被害を出さないように注意して戦闘する事になったが、やっぱり建物が多い市街地での戦闘は非常にやり難い。地の利は完全にあっちにあったし。

 とは言え、敵の数は今までに比べるとかなり少なかったので、突破は難しくなかった。

 しかしイレギュラーってのはいつでも起こるもんである。総統が乗ると思われる戦艦を追い詰めた直後にガーディムが乱入。なんと今まで姿を見せなかったガーディムの司令直々にやってきたのだ。

 なんかガミラスと言い争っていたが問題はその後、ガミラスの総統が逃げた後にラグランジュポイントから6000万トンとか言う質量が降ってきたのだ、ここに。

 沖田艦長が市民の避難誘導を呼びかけるも、ガーディムはこれを無視。ガミラスはガミラスでなんか混乱しているようだし困ったもんである。

 しかし会話の中で幾つか分かった事があった。ガーディムの狙いはヤマトの波動エンジンを使い地球を奴等の母星にする事だったのだ。地球狙われすぎだろ。今更だけどさ。

 ソウジさんとナインも利用価値があるとかで返す気は0。歩み寄るつもりも対話するつもりもない連中である。

 数分以内にガーディムを撃退し、落ちてくる構造物の破壊をするとかいう無茶な作戦だがこれをやるのがスーパーロボット大戦!地球艦隊・天駆である。

 途中、ソウジさんが自力で脱出して、ヤマトの格納庫から発進したヴァングレイに乗り込んで死んだ筈のグーリーと戦っていたが、最後は敵艦から脱出したナインとグランヴァングと合流。

 見事にグーリーを撃退していた。

 で、勇んでやってきたガーディム司令も最後はボッコボコにされていた。

 うーん、しかしあっさりと倒せたな。ずっとガーディムがスパロボで言うオリジナル敵だと思っていたんだが違うんだろうか?

 落下してくる構造物の速度をELSが押さえ込んでくれ、その隙にヤマトの波動砲で無事に破壊する事が出来た。

 色々あったが、決着はついた。

 捕らわれていたソウジさんとナインも無事だったし、ガミラスとの決着もついた。

 後はイスカンダルに向かうだけである。

 

 

 ☆月=日

 イスカンダルへと到着した。

 その途中でELSとガミラスの要塞都市が融合したものを見たが、あれって劇場版ラストに出てきたELS花じゃねーか!

 刹那の中にある平和の象徴か。

 しかし刹那はこれからどうするんだろうな。劇場版みたいにメタル刹那になるんだろうか。

 まぁ、これも地球に戻ってからかな。

 イスカンダルへ無事降下。綺麗な星である。……が、どうにも違和感を覚える。トビアやカミーユさん達も同じ意見らしい。

 イスカンダルの代表との面会に行く事になった訳だが、代表はブライト艦長。随伴員として真田副長、古代戦術長、新見情報長が。

 これに加えてユリーシャの希望により森船務長、刹那、ナイン、何故か俺まで一緒に行く事になった。

 で、代表であるスターシャ女王陛下と会見。最初は波動砲について色々あったがちゃんと話をする事が出来た。

 刹那を呼んだのはELSと対話を成功させた事に驚きをもった為。刹那曰く仲介役に過ぎず、分かり合えたのは天駆全体の意志であるとの事。

 俺を呼んだのは念動力を持つ者だかららしい。念動力は今はもういない古代人類、または人類のルーツの一つが残した力。それを受け継ぐ俺を見たかったとの事。

 この話を聞いてそういえばそんな設定だったな、と思った。αシリーズでは渚カヲルが言及していたっけ。確か……黒き月の民が遺した力だったかな。

 だとすると更なる疑問を浮かべる事になる。俺はこの世界の人間ではない。故にこの世界の残された力を受け継いでるのは何故なんだろうか。うーん、分からぬ。

 もしかして元の世界にも彼等はいたんだろうか。……そう考えると余計に怖いな!

 会見の方は女王とナインが会話。そして沖田艦長との会話を得て無事に終了した。

 どうやらあちらも納得してくれたのか、コスモリバースシステムを渡してくれるとの事。というかヤマトをコスモリバースシステムに改造するらしい。

 これで地球を救う手段が手に入った。戦いはまだ終わらないが一息つく事が出来そうだ。

 

 

 ☆月>日

 ヤマトの改造が終わりイスカンダルを出発する事になった。

 ガミラスとも停戦条約が結ばれ、戦争も終わりを告げたと言ってもいいかもしれない。

 後は無事に地球に戻るだけである。

 帰りはバラン星にあるゲートを使えるそうなので、かなり日程を短縮できるとか。

 地球に戻ればエンブリヲやレナード達との戦いが待っている。

 だがまずは無事に帰ろう。そして3つの地球を救うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……彼等は行きましたか」

「はい、お姉様」

 

 イスカンダルから飛び立って行く地球艦隊・天駆。

 それを見送りながら、スターシャとユリーシャは言葉を重ねていた。

 

「……ねぇ、お姉様。やはり彼は」

「間違いないでしょう。ショウ・タカサカ、彼は間違いなくサイコドライバーと呼ばれた者達の末裔でしょう」

「でも……」

「……ええ、分かっています。ですが彼等は既に滅んだ筈」

 

 スターシャはユリーシャの言葉に頷く。

 高坂翔。地球艦隊・天駆に所属するパイロット。

 本人が知っているかどうかは不明だが、彼女達にはその正体に覚えがあった。

 しかしスターシャが口にした内容が全てだ。

 既にサイコドライバーと呼ばれた者達は滅び去った筈だ。

 まさかあの者達の末裔が未だに生き残っているとは正直、予想外であった。

 

「サイコドライバー、ガンエデン。古い記録にのみ存在すると思っていましたが……」

「実際は存在した。滅びたとされたガーディムと同じ」

 

 ガーディムもまた既に滅び去ったと思われた存在だ。

 彼等と同じように生き延び、地球に流れ着き、その血を残していったのだろう。

 とは言え、既に薄まった血なのだろう。

 記録に残された強大な力を持っているとは思えなかった。

 

(あれ、確かショウは……)

 

 ふと、ユリーシャが思い出す。

 小さな違和感を覚える。

 それが何かを思い出す前に何者かが二人の前に立ちはだかった。

 

「スターシャ・イスカンダル、ユリーシャ・イスカンダル……」

「ガーディムの機械人形……」

 

 それはガーディムが運用するアンドロイドであった。

 どうしてここにいるのかは不明ではあるが、その目的は間違いなく波動エネルギーであろう。

 だが、それを否定するようにアンドロイドは首を横に振った。

 

「既に、この星に価値はない」

「……!」

「我々は大マゼランに別れを告げる。さらばだ、イスカンダル。遠い銀河からこの星が朽ちていく様をみさせてもらう」

 

 その言葉に驚愕する。

 ガーディムの生き残りがいた事も驚きではあるが、波動エネルギーを不要と切り捨てた事。

 そして何もせずにここから立ち去るつもりだという事に。

 しかしそれはまだ終わりではなかった。

 まるで別人になったかのような声色がアンドロイドの口から飛び出してきたのだから。

 

「まぁ、私からも別の言葉を送らせてもらおう」

「っ!?」

「まだ生きていたいのならば、貝のように口を閉じる事だ。さすれば、暗黒の星々からやってくるモノ達相手でも生き残る事が可能だろう」

 

 何を、とは問えない雰囲気。

 目の前にいるのはガーディムの機械人形などではない。

 ただ死を撒き散らすモノである。

 

「……」

「そう、それでいい」

 

 それだけ言うと役割は終わったとばかりに二人の前から姿を消していった。

 沈黙。

 スターシャもユリーシャも何を話せばいいか分からぬまま、イスカンダルの空を見上げる。

 

(まだ、試練は続く……。負けないで地球艦隊・天駆……。守の想いがきっと貴方達を救うから……)

 

 もう見えない彼等を想い、祈りを捧げる。

 彼等が無事に地球を救う事を願いながら。

 スターシャはそっとお腹に手を当てるのであった。



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静かな幕間の話

 ★月>日

 地球艦隊・天駆がイスカンダルから旅立ってから数週間が経った。

 道中、エンブリヲなどの敵対者の襲撃もなく穏やかな日々が続いていた。

 勿論、沖田艦長から気を抜かないでしっかり警戒するようにというお達しもあった為、気を抜いているという事は少なかった。

 ただ無事にイスカンダルに到着し目的の物を手に入れたという事もありささやかなお祝いを行ったりもした。

 最近、日記を書いてなかったので道中にあった事を今日はまとめておこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・エースパイロット

 

「メリー・エースパイロット。おめでとうございます、ショウさん」

「ああ、ありがとうナイン」

 

 イスカンダルから旅立って数日。

 何故かナインに呼び出されたショウにかけられたのはそんなお祝いの言葉であった。

 

「しかし俺もついにエースパイロットになったのか……」

「偶然でも奇跡でもありません。これはショウさんの努力の結果です」

 

 何かの間違いじゃないかな、みたいな雰囲気を出すショウの思考をナインが遮断する。

 これは今までの努力の積み重ねがあった結果だと。

 

「ありがとう、ナイン」

「ですので今日はお祝いを、と思いまして色々とご用意させて頂きました」

「用意って何を……これって音楽ディスク?」

 

 ナインが取り出したのは一枚の音楽ディスク。

 

「はい。ショウさんが音楽を聞くのが好きという事は聞いていましたので、歌手であるラクスさんは勿論、アンジュさんなど歌が得意な人達の曲を詰め込んだ一品になっています」

「なんと」

「勿論、姉さんが歌った曲も入っています」

「なんと」

「え、えっと……そのわ、私も頑張って歌ってみました……」

「……ありがとうナイン」

 

 ナインが本気で用意してくれた事に感謝する。

 上手とか下手とかそんなの関係なかった。

 彼女達が自分の為に色々してくれた事がショウにとって本当に嬉しかったのだ。

 

「後でゆっくり聴かせてもらうよ」

「あの、ショウさんはどうして歌が好きなんですか?」

「歌を聴いてると落ち着くし、嫌な事があっても頑張ろうって気持ちになれるからな」

「なるほど」

 

 ショウの答えにナインが頷く。

 それに、とショウが付け加える。

 

「遥か彼方で星が音楽となった、からとかかな?」

「……なんですかそれは?」

「それはきっと愛なのさ」

「え、どうしてそこで愛が!?こ、答えてくださいショウさん!」

 

 慌ててショウに問い詰めようとするが、既にショウの姿はそこにはなく姿を消していた。

 追いかけようとせず呆然とナインが佇んでいたが一つの答えに辿り着く。

 

「なるほど。つまり歌は……愛という事なんですね。え、でもそれはつまりショウさんの為に歌ったという事は愛を歌ったという事に……?」

 

 が、そこから導き出した答えから派生していく、考えに混乱していくナイン。

 ソウジがこの場にやってくるまで、顔を赤くしたり変な顔をしたりして呆然と立ち尽くすナインなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・機体開発

 

「うーん、どうだヴェルト」

「数値は悪くないが、実戦で使える物ではないな」

「そっか……」

 

 ヤマトの格納庫。

 ゲシュペンスト・タイプSBの前でショウとヴェルトがモニター画面を見ながら話し合っていた。

 

「やっぱり念動兵器の使用は不可能か……」

「使用前提を考えていないんだ、仕方ないさ」

 

 二人が行っていたのはゲシュペンストに搭載されているT-LINKシステムを使って、念動力を応用した兵器の使用が出来ないかの確認をしていたのだ。

 しかし先ほどの言葉通り、本来は使用の想定をされてない代物だ。簡単に使う事は出来ないだろう。

 

「まぁ、このゲシュペンストならば使えなくてもそれ程、問題はないだろう」

「そうなんだけどな……」

 

 ゲシュペンスト・タイプSBの性能ならば中途半端な念動兵器などなくても問題はないだろう。

 だがショウ個人としては何かしらの手札が欲しかったと思っていたのだ。

 その一つが今の念動兵器であったのだが、どうやらお蔵入りとなりそうである。

 

「それよりそっちのヒュッケバインはどうなんだ?」

「ああ。こっちは問題ない。一つあるとすれば、結局グラビコン・システムの開発が間に合わなかった事か」

「いや、それこそ無茶だろ。ヴィルヘルム研究所でもまだ開発が終わってなかった代物をここで作るとか」

「……いや、僕も分かってはいるんだがな」

 

 改造されたヒュッケバインEX、そしてグルンガスト改の初期構想では、開発中であったグラビコン・システムを搭載する予定だったのだが急な改造により未搭載なのである。

 とは言え、元々出来てなかった物を急に作れと言われても無理だろう。

 

「構想通りグラビコン・システムが出来ていれば、重力の壁を盾のように使える。それがあれば僕のヒュッケバインはともかくロッティのグルンガストにはかなり役に立つ筈だったんだがな……」

 

 その機動力を生かして戦うヒュッケバインと違い、その装甲の強固を生かして戦うグルンガストにバリア系統の装備がつけばかなり役に立つのは間違いない。

 

「……つまりロッティの為か」

「……待て、どうしてそうなる」

 

 いかにも理解したと言わんばかりの様子を見せるショウに、思わずヴェルトが突っ込む。

 

「だってグルンガストに装備できれば役に立つって言ったじゃないか」

「だからどうしてそれがロッティの為だと……」

「ロッティが無事に帰ってこれる、だろう」

「……」

 

 グルンガストは機敏な動きは出来ない為、どうしても被弾が多くなってしまう。

 そしてその被弾が万が一コックピットに直撃しようものなら……。

 それを防ぐには確かにグラビコン・システムはこれ以上にないぐらい役に立つだろう。

 

「ヴェルトも少しは素直になったらどうだ?」

「……考えておくさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・特訓

 

「はぁ、疲れた」

「お疲れ様」

 

 ヤマトの食堂にて二人の人影があった。

 一人はショウ。もう一人は珍しい事に勇者特急隊の一員である浜田満彦であった。

 ショウはそんな満彦の前にドリンクを渡すと席につく。同じように持ってきたドリンクで喉を潤していく。

 

「すいません、ショウさん。色々と手伝ってもらって」

「気にするなよ。俺なんかでよければ幾らでも手伝うさ」

 

 満彦の言葉にそう答える。

 

「それに俺も勇者特急隊の一員だしな」

 

 そう答えると、今度は真面目な表情を作り問いかける。

 

「で、間に合いそうなのか?」

「システムやパーツはなんとか。後は僕……僕達次第でしょうか」

「この短期間でよく組み上げれたな。他にもやる事は一杯あっただろうに」

 

 感心した表情を見せるショウ。

 だが逆に満彦の表情は不満気、いや悔しそうな表情で一杯だ。

 

「でも肝心の僕の準備が出来ていないんです。他の人達やショウさん達にも手伝ってもらったのに……」

「仕方ないさ。簡単にやれる程、柔なもんじゃないしな」

 

 満彦がやろうとしている事は生半可な事では達成できない事だ。

 本人もかなり努力しているが、正直な話し時間が足りてない状態と言っていいだろう。

 だからこそショウには一つ気になる事があった。

 

「……正直な話、俺よりも舞人本人に手伝ってもらった方がいいんじゃないか?」

 

 勇者特急隊の事、更に満彦がやっている事を考えればショウよりも隊長である舞人の方がよっぽど適任である。

 だからこそこの話しをこちらに持ってきた時、かなり驚いたものだ。

 最初は何も考えずに頷いたが、冷静に考えれば舞人に話しを持っていかない事がおかしい。

 

「それは最初に考えたんだけど、舞人にこれ以上負担をかけたくなくって……」

「確かに最近の舞人は忙しいからな」

 

 DG同盟は投降し、エグゼブ達は倒したがまだ何か思う所があるのか色々と動いているようだ。

 それを見ていると手伝いを頼むのを躊躇ってしまうのは仕方ないかもしれない。舞人本人はきっと笑顔で手伝ってくれるだろうけど。

 

「ですから今は自分で頑張りたいんです」

「そういう事ならOKだ。俺も出来るだけ手伝うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・呼び方

 

「ショウさん、一つお願いが」

「ど、どうしたナイン?」

 

 自室にて、音楽を聴きながら本を読んでいたショウの元にナインが現れる。

 並々ならぬ気迫の様子にたじろいでしまう。

 

「……」

「……」

 

 しかし最初の気迫とは裏腹にナインの動き固まってしまう。

 暫く待っていたが、何一つ動きを見せない様子に心配になって声をかけようとした時、ようやく再起動が終わったらしいナインが口を開きだす。

 

「お、お願いというのは……」

「というのは……?」

「に……」

「に?」

「義兄さん……と呼んでいいですか?」

「……え?」

 

 ナインから出た単語に驚きを覚醒ないショウ。

 まさかそんな呼び方をされるとは思ってもいなかったからだ。

 

「姉さんと恋人になったなら……こう呼ぶのが適切、かなと」

「あー……」

「本当はもっと早く聞きたかったんですけど……」

「そんな余裕なかったしな」

 

 ショウが帰還し、チトセの奪還した後はイスカンダルに向けての準備で忙しかった。

 加えて航海中も敵の襲撃を始め、そんな話しをする余裕は皆無だったからだ。

 

「今なら多少の余裕があるから今の内に……と思いまして」

「そっか……」

 

 それを聞いてショウは目を閉じ、一息つくと頷く。

 

「ああ、ナインの好きに呼んでくれていいよ」

「……はい!」

 

 そこから出た答えを聞くとナインの表情にも笑顔が浮かび上がる。

 それを見ながらショウはほんのちょっと前の事を思い出す。

 彼女がまだ体を手に入れたばかりの頃は、こんなに表情が変わるとは思わなかったからだ。

 

「それでは義兄さん、改めてよろしくお願いしますね」

「ああ、こちらこそ」

 

 なお、後日様々な人にからかわれた事だけ記載しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・二人

 

「んー……」

「チトセ、ちょっと……」

 

 ヤマトにあるショウの自室にて、チトセはベッドの上でゴロゴロしていた。

 イスカンダルから地球へと帰還中であるが、地球艦隊・天駆の総司令である沖田艦長より警戒を怠らないようにと命じられている為、中々休める時間は少ないのだ。

 ショウは勿論、チトセも色々と手伝いなどを行っている為、こうして二人でのんびり出来る時間は少ないのであった。

 

「えー、いいじゃない。こうして二人でいられるのって少ない訳だし」

「まぁ、そうなんだけどなぁ」

 

 だからこそこうした時間を楽しみたいと思うショウであったが、チトセとしてはゆっくり出来るだけで十分らしい。

 ショウも諦めたらしく、チトセがゴロゴロしている横目に電子書籍に目を通し始める。

 

「そういえばショウ」

「んーどうした?」

 

 暫く静かな時間が流れていたが、ふと思い出したかのようにチトセが声をかける。

 

「これが終わったら、ショウはどうするの?」

「……」

 

 それを聞いたショウの動きが止まる。

 何を、と聞き返すまでもない。

 地球艦隊・天駆として地球を救った後の話をしているのだ、チトセは。

 そしてその質問に即答できないショウであった。

 

「……何も考えてなかった」

「……そっか」

 

 ショウは3つの世界、何処の住人でもないエトランゼだ。

 今の今までは考える余裕はなかったが、元の世界の事も考えなければならない。

 そうだ。帰るか、残るかだ。

 

「……」

 

 書籍から目を離して、天井を見上げる。

 そうだ、いつか訪れる日がもう近づいている。

 だからこそ覚悟、そして選択しなければならない。

 それ故に思うのだ。

 選択肢は自分が思ってるよりも多いのだという事を。

 

「うん、俺は帰るよ」

「……っ!」

 

 チトセの表情が歪む。

 だが気にする事もなくショウは言葉を続ける。

 

「だけどここに戻ってくるよ」

「え……?」

「まずは家族にただいま、って言った後、今度はちゃんと行ってきますって伝えてくるよ。戻ってきたらそうだなぁ、舞人の所で本格的に就職するのもありかなぁ」

 

 雇ってくれるかねぇ、とぼやきを聞きながら呆然とするチトセ。

 

「だから……一緒にいてくれよ」

「……もう!」

 

 それなら最初からそう言いなさいよ。

 悪い悪い。

 じゃれ合う二人。

 

「……もう少しで地球だな」

「ええ」

 

 そんな静かな時間も、もう少しで終わり。

 ショウも、チトセも、地球艦隊・天駆の誰もが漠然と思っていた。

 地球に戻った時、全てに決着がつくのだと。




お待たせしました(小声)
1年以上放置しておりましたが、なんとか更新です。
終わりまではしっかり考えており、後は執筆だけだったのですが中々時間を作れずこんなにも時間だけが流れておりました。
エタでしたが、それでも更新の続きを待っていてくれたり感想を書いてくれた方々には感謝を。感想返信は出来ておりませんが、大事に読ませて頂いております。
残り話数はプロット通りならば5話+外伝2話ぐらいだと思います。
まぁ、大体自分が作ると話が増えて思った話数で収まらない事ばかりですが。
次回もいつになるか分かりませんが、よろしくお願いします。


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15ページ目 3つの地球の中心で頑張る

 ◇月○日

 ……ここからの日記は補給中にゲシュペンストのコックピットでなんとなく書きなぐりしたものである。

 もし俺達が無事に戻れたのならいつもの日記帳に書き直す事にしよう。

 さて、俺がどうしてこんな場所で書きなぐっているのか。

 まず亜空間内、ゲート内にてガミラスの総統達に襲撃にあったのである。

 すっかり俺達は死んだ者だと思っていたが、ちゃっかり生き残っていた様子であった。

 しかもヤマトに直接進入してきたもんだから困ったもんである。笑い話ではまったくない。

 追い出して、機動戦にて決着をつけようとした直後である。

 なんとエンブリヲが乱入してきたのだ。

 更に驚きなのが奴がアンジュを無視してラクスさん、テッサ艦長、ベルナデット、ユリカさん、サリーちゃんを浚って行ったのだ。

 加えて地球にいた筈のオードリー、カガリ代表、マリナ皇女、木星にいた筈のベラさんまで浚っているもんだからとんでもない奴である。

 追おうとした直後に巨大なボース反応により通常空間へと戻された俺達だが、驚いた事に3つの地球が眼に見えるのだ。

 そしてそんな空間に浮かぶアルゼナル。はっきり言って情報が多すぎて大混乱である。

 色々な疑問が浮かんでいたが、それに答えたのはまさかのレナード・テスタロッサやエンブリヲであった。

 しかし新正暦世界と宇宙世紀世界はやっぱり近すぎると思っていたが元々一つの世界とは思ってもいなかった。

 そしてここで出てくるのがゲッター線である。暴走して次元を歪めて世界を二つに分けるとかやっぱり禄でもない事になるなぁ!

 3つの地球が融合しようとした原因がサガラカナメという人物。

 新正暦世界で100年前に生きていたとされる科学者。俺達がよく知る千鳥かなめと同一人物。そんな彼女は夫を失い、研究に没頭したのが世界改変という代物。

 その成果は実を結ぶ事はなかったが、並行世界への扉は開いた、開いてしまったという。それこそがウィスパード誕生の起源だという。

 レナードは言う、宇宙世紀世界の戦乱が激化した原因が千鳥かなめのせいだと。

 勿論、俺達は否定したが肝心の本人はそうではなかったのだ。それが俺達の前から姿を消した原因のようだ。

 当然の事ながら奴らの考えを俺達は否定。

 3つの世界を救うのが俺達である。

 そしてそして驚愕の出来事として敵に倒された筈の北辰、加えてディビニダドとドゥガチまで現れたからとんでもない話である。

 だがそれだけで俺達を止められる筈もなく、レナードの部下達は簡単に蹴散らされ、北辰はアキトに簡単に仕留められ、ドゥガチはトビアとキンケドゥに叩き落されていた。

 元アルゼナル所属であったイルマとターニャは可哀想だったんで自爆される直前にコックピットを物理的にキャッチ。四肢はキラが見事に全部撃ち抜いてくれたんで楽勝だったわ。二人がどうなるかはアンジュ達に任せよう。

 エンブリヲは大口を叩いておきながら速攻で叩き落されていた。まぁ、今出てきても俺達の脅威にはなりきれないという事か。

 が、やっぱり復活。奴の言葉を借りれば不死身なのである。

 とは言え、本当に不死身とは思えない事から宗介とタスクがアルゼナル内部に侵入。その謎を知っている筈のレナードをとっ捕まえて吐かせるつもりだ。

 絶えない増援を蹴散らしながら、時間を稼いでいると宗介とタスクだけではなく姿が見えなかったアンジュが帰還した。

 浚われていたかなめ達もばっちり救出済みである。

 それを追って……とは言えない様子でやってきたレナード。複数いる事が判明したエンブリヲ。

 かなめ曰くこの空間がある限り奴は何度でも蘇るらしい。

 だけどそこで無茶振り!空間壊せってどうやれってんだ!いや、やれそうな機体が結構いるんだけどさ!?

 しかしそれをやったのはアンジュであった。

 ラグナメイルとアンジュが謳う歌を共鳴させて、この空間の理を破壊する。しかしそれだけでは足りないとエンブリヲの叫びに待ったをかけた人がいた。

 ラクスである。彼女の歌が足りないパートを補ったのだ。

 アンジュとラクスの二人の歌姫による旋律は世界を、エンブリヲの世界を破壊したのだ。

 これによりもう一人のエンブリヲは圧死。残されたエンブリヲもレナードに捨てられてただの情けない奴に成り下がったのであった。

 後は簡単。レナードとエンブリヲを倒して終わりである。

 それでも諦めないエンブリヲは残された戦力を全て出してきたのだがそれを撃破したのは俺達ではなくフル・フロンタル達であった。

 彼等が指揮する部隊が駆けつけてエンブリヲの戦力にトドメを刺したのだ。

 レナード・テスタロッサは宗介とアルによって撃破された。しかし何を思ったか離脱していった。何をするつもりだったからすぐに判明する事になったが。

 エンブリヲはアンジュ達に罵倒されながら倒されていった。だがしぶとい事にエターナルを道連れにしようとしたのだが、それを阻んだのだが先程離脱したレナードだった。

 そしてきっちりとアンジュにトドメを刺されて終わり。最後までアレだったせいか天駆所属の女性達に罵倒の嵐を受けながらの退場である、ザマァ!

 最後の最後でこっちを助けられたレナードはテッサ艦長に見送られて逝ったのだった。彼を許す事は誰もしない。だけどあの時、あの瞬間だけは俺達の仲間、だったのかもしれない。

 

 

 

 ◇月○日-2

 エンブリヲ達との決着はついた。

 だが3つの世界の融合は進んでいる。

 なんとかしてコスモリバースシステムを起動して世界を救わねばならないのだがそこに続いて襲撃をかけてきたのはミケーネ帝国であった。

 傷ついた体で己の信念を貫こうとする暗黒大将軍。正直、時間がないから帰れと言いたい所だがその覚悟を無碍にできないのが俺達である。

 だが大した戦力もないままの襲撃は俺達の敵ではなくあっさりと蹴散らされて行く。それがあちらの狙いだったようだが。

 暗黒大将軍の生命が冥府の門を開き闇の帝王を呼び寄せたのだ。

 そこから更に奴の力で倒した暗黒大将軍、ガラダブラ、あしゅら男爵達を蘇生しやがった。

 そして奴は言うこれは全て仕組まれた事なのだと。

 その操り手が現れたのはその直後であった。エグゼブの軍団を引き連れて現れた暗黒そのものだという存在、ブラックノワールである。

 これこそがマイトガインの真の敵。全てを裏から操っていた存在である。

 その正体は高次元人。次元を支配し操る存在。奴からすればエンブリヲすらも奴の手で遊んでいた道化にすぎないという事。

 この世界は物語である。それが奴の言葉。

 西暦世界で戦争を使って遊んでいただけだと言う。

 みんなは奴が世界の裏から戦争を操っていたという事は理解したが、高次元人の部分は話半分に聞いていた事だろう。

 だが困った事にそれを否定しきれないのが俺であった。

 何せ俺という存在そのものが奴の言う事を肯定しているようなものだからである。

 正確にはブラックノワールもまた駒にすぎない。だがそれを配置し作り上げていったのは……。

 そんな事を考えながらも奴らとの戦いは激化していった。

 先のエンブリヲ達の戦いから間もない為、ダメージは残っていたがそれでも確実に奴らを撃破していった。

 あしゅら男爵、ガラダブラがまず地獄へと戻され、暗黒大将軍も鉄也さんが再び撃破した。

 そして本命である闇の帝王とブラックノワールとの戦いだったが、こちらが攻撃してもあっという間に傷が治されていく。

 それに対抗してサリーちゃんのイノセントウェーブが放たれたのだが、まるであちらには通じていない。

 そう、エグゼブに対抗したこの力すらもあちらが用意したアイテムにすぎない、という事らしい。

 しかし神を気取る奴に罅を入れたのはルリ艦長と真田副長であった。

 奴は地球外文明が作り出した高度な社会管理システムにすぎないのだと。

 そして3つの世界の技術が融合したクアンタムバーストによってより強固なイノセントウェーブになり、そこに加えてゲッター線が干渉し、更に強大な力へと至り、ダイターン3に搭載された対次元干渉波動光によってブラックノワールの闇の衣は剥ぎ取られたのであった。

 これだけ書くと色んな物が干渉しすぎてやべーなって思った。

 想いが一つになった俺達を止められる筈もない。

 神様気取りのブラックノワールは舞人とマイトガイン、そして浜田君とブラックマイトガインによって倒されたのだった。

 いやー一度は妄想したダブルグレートマイトガイン。形になった本当に良かった。

 前々からこっそり浜田君に付き合って訓練したり、ブラックマイトガイン用のグレートパーツを調整してたんだよね。

 ダブル動輪剣・重ね斬りみたいな合体技でブラックノワールを撃破していた。

 舞人によって悪判定を受けて見事に撃沈。これで世界を裏で操っていた偽神は倒されたのであった。

 闇の帝王は甲児、鉄也さん、竜馬さん、號達によって倒されていた。

 マジンガーZERO、マジンエンペラーG、真ゲッター、真ドラゴンによるファイナルダイナミックスペシャルとか怖すぎて笑えないんですけど。

 何度でも復活してやるとか闇の帝王がぼやいてたけど甲児達が何度でも倒してやるという発言を聞いて急に弱気になって消滅していった。何があったんだろうかと思ったが……まさか『アレ』を見た、とかかなぁ。俺も怖いので黙っておこう。

 こうして、3つの地球圏に巣食っていた敵達は全て倒されたのであった。

 

 

 

 ◇月○日-3

 しかしそうは問屋が卸さないのが現実である。

 ヤマトの出力低下中に最初に襲撃してきたガミラス艦隊が現れたのだ。

 あちらにとっても不測の事態なのは間違いない。

 しかしあちらはやる気満々。こちらは交戦の意思はないと伝えようとしても通信を受け付ける気はないようだ。

 更にエンブリヲの所で見たドゥガチのディビニダトが複数機出してきやがった。中身は勿論ドゥガチ本人。そこまでして地球の最期を見たいという事なのだろうか。

 その執念、もっと別の事に使えなかったのだろうか。

 だけどその最期を見せる訳にはいかない。

 ……機体の補給は終わり、この戦いで今度こそ俺達の最期の戦いにしよう。




日記パートは多分これで終わり。
次回から最終決戦。


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終わりの始まり

 全ての戦いが終わった、と誰もが思った。

 木星帝国残党、いやクラックス・ドゥガチ共に現れた大ガミラス帝国の一党は地球艦隊・天駆の前に力尽きた。

 そしてボソンジャンプ、イスカンダルの時空制御技術を手に入れ、過去より召喚されたガーディム本隊。

 3つの地球を自らの母星にしようとした彼等もまた力尽きた。

 本当に?

 

「終わった……のか……?」

 

 動きが止まったガーディム旗艦を前にしてショウが首を捻る。

 これが最期の敵、というならばもっとこう切り札的な存在がいるものだとずっと思っていた。

 自分が知っているスパロボゲームなら当然の事であったし。

 しかしここが現実ならば案外こんなものなのかもしれない。

 だがまだ敵司令であるアールフォルツ・ローム・ハルハラスの様子が分かっていない。

 先程の攻撃で死亡したのか、また身動きがとれなくなったのか。もしくは脱出しようとしているのか。

 

『各機、警戒続行。ヤマトの保安部で敵旗艦を制圧する』

 

 ヤマトからの通信が入ってくる。

 それならば、と機体を動かそうとして。

 

「っ!?みんな避けろ!」

 

 敵意、殺意、それを感じ取りショウは叫び声を上げていた。

 察しのようメンバーは言われるまでもなく回避行動を取り、気が付かなかったメンバーもあわせて動いていく。

 閃光。

 全てを滅ぼさんとする光が容赦なく降り注ぐ。

 地球艦隊・天駆にではなくガーディム旗艦、バースカルに。

 

「な、何……!?」

「何だよ今の攻撃は……?」

 

 ショウの呟きに近くにいたシンの言葉が重なる。

 不可解な攻撃であった。

 確かに殺意や敵意はこちらに向けられていたのにも関わらず狙いはガーディムの旗艦であったのだから。

 どういう事だと、各種センサーを起動して攻撃されたバースカル、そして攻撃ポイントを探り出す。

 その数秒後、センサーにあるものが捉えられていた。

 

「人がいる……!?」

 

 ボロボロに朽ちたバースカルの残骸の上に人影が存在する事に気づいたのだ。

 その情報が共有され、地球艦隊・天駆の目がそちらに向く。

 視線が一点に集中した事に気づいたのか、はたまた最初からそうするつもりだったのかは不明だが人影が動き出す。

 

『やぁやぁ、皆様お集まり頂き光栄の極み』

「……えっ?」

 

 スピーカーから聞こえてきた声はショウにとって見知った声であった。

 

『ようこそ最後の戦いの舞台に。ああ、これがよく云うラスボスのステージというヤツさ』

「ラスボス?ステージ?あいつは……あの女は何を言っている?」

 

 続けて聞こえてきた声にリディが苛立ちを含んだ声を上げる。

 まるでゲームかショーのような声色、内容を聞けば苛立つのも無理はない。

 

『おっと、そうカッカしないでくれよリディ・マーセナス。これから全部説明してあげる所さ』

「こいつ……!」

 

 まるで全て知っていると言わんばかりの声。

 全員が警戒を強める中、ショウが困惑の声を出す。

 

「な、なんであんたここにいる……!?」

「ショウ?」

 

 そんなショウに疑問を持つアンジュ。

 困惑しているのはショウだけではないチトセもソウジも、ナインもまた困惑していたのだから。

 

「あ、なたは……?」

「おいおい嘘だろ」

「これは……」

「ちょ、ちょっとみんな?」

 

 ロッティがどうしたのか声を出すが、もう一人その正体を知る者がいた。ヴェルトである。

 

「代表して僕が聞きましょう。なぜあなたがここにいるのか?ついでにどうして宇宙空間で生身の姿で平気なのか聞きたいですね」

 

 一息に疑問を言葉にして出す。

 だが本番はこれから。

 ショウ、チトセ、ソウジ、ナインも知っている彼女の正体を口に出す必要があるのだから。

 

「……ニコラ・ヴィルヘルム研究所日本支部代表、アイナ・クルセイド教授」

 

 擬音なんて聞こえない彼らにもはっきりと聞こえた。

 ニヤリという音と共に彼女の口が月のように裂けたのだから。

 

「ニコラ・ヴィルヘルム研究所日本支部だと……!?」

 

 沖田が驚愕の声を上げる。

 日本支部と言えば、ヤマトが世話になっていた基地の横にあった所でもある。

 そんな場所の代表がどうしてここに?

 

『ふむ。まだ時間もあるようだし順番に答えて行こうか』

(……時間?)

 

 違和感を覚えつつも耳を傾けるショウ。

 しかしその違和感について考える前にアイナの口から流れるように音を出して行く。

 

『まずはそうだな。何故ここにいるのか。簡単さ。私はこれでもガーディムのドクター、ああ所謂、開発主任を兼任していてね』

「なっ!?」

 

 驚きの声を上げたのは誰だったか。

 だがその内容はここにいる全員に驚愕させるには十分すぎる内容であった。

 

「馬鹿な!?」

「嘘だろ、おい!?」

 

 そうだとするとガーディムの手は随分と前から地球に入り込んでいた事になる。

 しかしそうだとすれば疑問が次々と沸いてくる。

 

「ならば何故、今頃になって正体を現した……?」

 

 これである。

 今ここで正体を明かした事も勿論だが、あまりにも行動がチグハグすぎる。

 ショウが一度地球支部に戻った時が特にそうだ。あの時の行動は全てガーディムを倒す為である。

 それに嬉々として力を貸したのだから尚更だ。

 

『なんとなく分かってるんじゃないかな。僕はガーディムを滅ぼしてほしかったんだよ』

「なっ!?」

 

 まさかの発言に誰もが絶句する。

 

『正確に言えば盤面に存在する君達以外の駒を排除して欲しかった、かな』

「それはどういう……っ!?」

 

 更なる疑問を抱いた瞬間、閃光が走った。

 強烈なエネルギーの奔流がアイナ・クルセイドが立つ残骸をなぎ払ったのだ。

 

「よ、よくもやってくれたな裏切り者がぁ!」

「こいつは……!?」

 

 白を基調とした女性に似たボディを持ち、背中に巨大な輪を背負った20メートルクラスの人型機動兵器だ。

 見覚えはない。

 しかし感じられるのはアイナ・クルセイドに対する怒りである。

 

「姉さん!間違いありません、アレはシステム・ネバンリンナです!」

「ガーディムの文明再建システム……!?」

 

 ガーディム達が狙っていたシステム、それがまさか人型機動兵器となって目の前に現れるとは思ってもいなかった。

 しかも憤怒と言わんばかりの怒り。

 ビームでなぎ払ったにも関わらず攻撃を続けている。

 

「お前が……!お前が……!超文明ガーディムの再建を闇に閉ざした!」

『ああ、その通りだ。君が必死に集めていたガーディム人の情報は全て破壊したからね』

「っ!?」

「さっきのを避けていただと!?」

 

 ビームになぎ払われていたと思ったのにも関わらず聞こえてくる声に驚愕する一同。

 視線を動かせば別の残骸に腰掛けているアイナ・クルセイドの姿が見えた。

 

「システム・ネバンリンナ。君はよい道化であったよ」

「ああああっ!?」

 

 ネバンリンナは巨大な剣を生成するを衝動のままになぎ払う。

 その一撃は今度こそと思わせる一撃であったが。

 

「冗談……だろ……」

 

 トビアが絶句する。

 いや、ここにいる誰もが同じ事を思ったに違いない。

 視界から入ってきたのは、ネバンリンナの巨大な剣を指一本で止めるアイナ・クルセイドの姿があったからだ。

 

『そぉら、返すよ』

「そ、そんなあああ!?」

 

 次には剣を叩き折られた上、攻撃ユニットを蹴り返され吹き飛ばされてしまう。

 

「……ガンダムファイターだってこんな事、できやしないぞ」

 

 ショウがポツリと呟く。

 断言する。

 アイナ・クルセイドは人間ではない。人間であったたまるか。

 

『さて、次の質問に答えようか。私の目的でも答えよう。実はある情報を集めていてね。その為、このガーディムに所属していたのさ』

「情報だと……」

『ああ。ここだとかなり良い情報が手に入って好都合だったよ』

 

 一体何の情報を集めていたのか気になる所ではある。

 だがそれ以上にどうしてこんなにもベラベラと喋るのか、そちらの方も気になってしまった。

 話しても何も問題ない情報なのか。

 それとも、喋る事で時間を稼いでるのか。

 

『ふふ、そうだね。僕は時間が稼ぎたかった』

「なっ!?」

『全ては最後の鍵を動かす為さ』

「鍵……?」

『そう、最後の扉を開く鍵さ』

 

 それは何だ、と声を上げる前に光が走った。

 ショウのゲシュペンストを飲み込む光が。

 

「な、何っ!?」

「ショウ!?」

 

 チトセが声を上げる。

 その光が最初に放たれた一撃だと思ったが故に。

 しかしショウは無事であった。

 

「だ、大丈夫だけどゲシュペンストが……!」

 

 光の檻に捕らわれたように動かなくなる機体に焦りの声を上げるショウ。

 

「今、助けるわ!」

 

 チトセがショウのゲシュペンストを助けようとアームを伸ばす。

 だがそれは光の檻に阻まれてしまい、届く様子はない。

 それならば、と真・ゲッターやマイトガインが光の檻を殴りつけるがまるでビクともしない。

 今まで倒してきた相手のどれよりも強固な壁である。

 

「くそっ!なんだこれは!」

『それを壊されると困るんだよ。最後の情報を吸い出している最中だからね』

「最後の……情報?」

 

 ショウのゲシュペンストから一体何の情報を吸い出しているのか。

 ゾル・オリハルコニウムやトロニウムエンジンの稼働情報?

 T-LINKシステム?もしくはウラヌス・システム?

 だが、そんな情報をこんな大層な代物で直接吸い出す必要性はない。

 これ程の事を仕出かせる相手だ。侵入してこっそり手に入れるなんて簡単にできる筈。

 そもそもゲシュペンスト・タイプSBの開発主任を担当していたのだ。その気になればヤマトに乗艦する事も不可能ではなかった筈である。

 

『いいや、その情報は別にいらない。欲しかったのは君の記録さ。ショウ』

「な……に?」

『その記録こそが最後の扉を開くのだから』

 

 ショウの記録、記憶。

 それが一体何の扉を開くと言うのだ。

 だがそれに気づいたモノがいた。

 ショウではない。沖田やブライト達ではない。アムロや甲児、竜馬達ですらない。

 

「ッッッ!!」

 

 マジンガーZERO。

 原初の魔神である。

 

「ZERO!?」

 

 甲児が動かすよりも先にマジンガーZEROは己の意志で光の檻を破壊しようとする。

 いや、その勢いはショウのゲシュペンストも巻き込んで破壊しようとしているかのようだ。

 

「甲児!?」

「ZEROの奴が勝手に……!」

『さすがマジンガーZERO。君ならば最初に気づくのも当然か』

「何……!ZEROはお前の企みに気づいたっていうのか……!」

 

 アイナ・クルセイドの言葉に驚愕の表情を浮かべる。

 大したヒントもない状況で誰も気づいていない企みに気づいたのだから当然である。

 

『そう。私の企みはかつてマジンガーZEROが体験したモノと酷使しているのだからね』

「なんだと!?」

(ZEROがかつて体験したもの……。俺の記憶……?)

 

 ピースが揃っていく。

 だがそれは希望の扉を開く為のものではない事だと理解していく為の階段のようでもあった。

 

『だがZERO。君の体験したモノは2016年初頭までの記録にすぎない。私が起こそうとしているのはそれよりも先の話さ』

(……2016年?)

 

 違和感が増大した。

 その年号は3つの世界のどれにも当てはまらない物である。

 マジンガーZEROが元いた世界でも違う筈だ。

 ならばそれはどこの年号なのか。

 その答えにすぐそこにあった。

 

「まさか……お前の企みとは……!」

『ああ、ここまで情報を出せば君も気づくよね、ショウ』

 

 どこの世界にも使われていない年号、マジンガーZERO、そしてショウの記憶。

 ここまで揃えばショウでも、いやショウならば気づけてしまう。

 

『時に旋風寺舞人。ブラックノワールの言葉を覚えているかな』

「ブラックノーワルの……?」

 

 ブラックノワール。

 舞人の父が言っていた世界を狙う巨悪の正体。

 次元を越えてやって来た三次元人を自称して、この世界をゲームとした存在。

 だが真田やルリの言葉により、三次元人などと言った存在などではなくこの世界で開発された社会管理システムの成れの果てであった。

 

『もしも君達の推論こそが全て間違いであり、ブラックノワールの言葉が全て正しいとしたら?』

「馬鹿な!そんなモノは存在しない!」

 

 真田が再び否定の声を上げる。

 ブラックノワールは神ではない。三次元人などと云った存在ですらない。

 だというのにアイナ・クルセイドは何を言おうとしているのか。

 

『ああ、別にブラックノワールは神だった。なんて言う気はないよ。アレも結局は配置された駒にすぎなかったんだからね』

「な……に……?」

『私が言いたいのは三次元人の事さ。アレを配置した存在がこの世界の【外】にいるのだとしたら?』

「なっ!?」

 

 ブラックノワールの言葉、全てが正しいとは言っていない。

 だが間違いでもないのだ。

 それこそが……。

 

『この世界こそが【外】にいる存在の手によって作られた代物だとしたら?君達という存在も全て彼らの手によって配置された駒にすぎないとしたら?』

「……そんな事が」

「信じられるかよ!」

 

 勝平の叫び声が響き渡る。

 敵の言葉など簡単に信じられる筈もない。

 いや、それ以上に否定したかった。

 自分達が何者かの都合のいいように配置された駒である事を。

 

『証拠が欲しいかい?ならばすぐそこにあるよ』

「え……?」

 

 アイナ・クルセイドの指し示す先には光の檻に捕らわれたままのゲシュペンストがあった。

 いや、ゲシュペンストではない。その指先にはパイロットであるショウに向けられているのだから。

 

『ショウ・タカサカ。君ならばこの世界を示す言葉を知っているだろう。そう、世界を渡り歩く【彼】の言葉を借りるならば』

「……実験室のフラスコ、か」

 

 今度こそ地球艦隊・天駆の中に動揺が広がる。

 敵だけの言葉ならどうにでも否定できた。

 だが仲間であるショウからアイナ・クルセイドを肯定するような言葉が出た事にショックが隠せないでいた。

 

「だけどそれならば……!」

『残念だけど時間だよ』

「くっ!」

 

 何かを言おうとするショウ。

 しかしその前に光の檻が再び大きく輝いていく。

 檻を破壊しようとしていたマジンガーZEROとゲシュペンスト・タイプRVが弾き飛ばされる。

 

『全てはこの局面の為。そして君という存在をこの世界に定着させる為』

「くっ……!」

「ショウ!」

『そして、君の記録から扉を開く為』

 

 段々と光が強くなっていく。

 それが大きな塊となり、複数に分裂していく。

 

『そう、マジンガーZERO。君はかつて知っただろう。あの戦いの再現さ』

 

 分裂した光が弾け飛ぶ。

 その中から影が現れる。

 それを見てショウはああ、と完全に理解した。

 マジンガーZEROはかつてある戦いでその光景を見た。

 可能性という名の光のロボット達を。

 マジンガーZから始まり、世界を守る者、時に世界と戦う者、人を救う者。そんなロボット達を。

 

『だけど私が呼ぶのは真逆。兜甲児が示した光の軍団などではない』

 

 これはその真逆。

 世界を破壊し暗黒の時代へと導こうとするロボット。

 主人公に対する悪役。

 

『全てを無に帰す闇の軍団。さぁ、世界の終わりを始めようか』




こう、書いてて突っ込み場所が多いな、と思いつつ最後まで行きたいと思います。


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黄昏の戦場

「くそっ!また来やがる!」

「十時の方向からまた!」

 

 アイナ・クルセイドが放った光から現れたのは見た事がある軍勢であった。

 ティターンズやネオジオン、木星帝国のMSから始まり、インベーダーやミケーネの連中など今まで倒してきた連中である。

 

「こいつら倒しても倒しても湧いてきやがる……!」

「よそ見をするな!とにかく倒すんだよ!」

 

 厄介なのはその数。

 今までの旅路の中で倒してきた敵が全て同時に現れたと言わんばかりの量に地球艦隊・天駆とは言え悲鳴を上げたくもなる。

 後方に待機していた戦艦や待機していたメンバー全てが出撃し、その火力を集中させている状況だ。

 だが厄介なのはそれだけではない。

 

「北辰……!」

「ドゥガチ!」

「Dr.ヘルにハーデスまで……!」

「ブラックノワールもいるなんて……!」

 

 敵組織の親玉というべき存在まで蘇っている始末。

 そこに意識や意志があるかは不明だが、その力は間違いなく本物と同等だ。

 

「だけど!」

「再生怪人は倒されるのがお約束だ!」

 

 勿論、そう簡単に負けない力を持っている。

 彼等の力はその程度では負けやしない。

 しかしそれ以上に懸念すべき点は一つ。

 

「エネルギーが……!」

「弾薬も残り少ない、補給が必要だ!」

 

 さすがにエネルギーや弾薬がなければ歴戦の戦士達も戦闘継続は困難だ。

 各艦の整備士達もフル回転で補給準備を進めているが、残された物資にも限りがある。

 このままではいずれ兵站切れによる敗北は免れないだろう。

 だからこそ打開策がいる。

 この終わりのない敵の出現を止める必要があるのだ。

 そしてその鍵を握るのはただ一人。

 この現象を起こした犯人であるアイナ・クルセイド、ただ一人。

 

「止めさせてもらう!」

 

 光の檻がなくなった事により自由行動が可能になったショウのゲシュペンストを始め、数機の機体がアイナ・クルセイドの元へと飛び出していく。

 先程の会話に動揺しなかった訳ではない。

 しかしこの状況をどうにかしなければならないと思っているのはこの場にいる全員が抱いた共通認識だ。

 だからこそ、各メンバーはすぐにショウと共に元凶へ駆け出したのだ。

 

『おや、さすがに態勢を立て直すが早い』

「お前を倒せば止まるだろう!」

『その考えは正しい。まぁ、問題は』

 

 放たれたのはスラッシュ・リッパー。

 三つ刃のカッターが生身であろうアイナ・クルセイドに放たれる。

 それを非難する声はない。

 さっきまでの光景を見れば誰もがただの人間ではない事は理解できている。

 

『こんな玩具でどうにかできると思っているのかい?』

 

 そして現実はその通りになった。

 スラッシュ・リッパーはアイナ・クルセイドが放った拳一つで砕け散ったのだから。

 

「あんたは……一体なんなんだ!」

 

 残像すら見せる高速機動で接近するデスティニーの中でシンが叫び声をあげる。

 人間ではない。

 ならばその存在は一体?

 

『おや、気づいていないのかい?』

「何?」

『ショウ。君ならとっくに気づいていると思っていたんだがね』

「なんだと……?」

 

 ショウが呻く。

 だがアイナ・クルセイドの言葉に反して、その正体は掴めていなかった。

 ショウの正体を知っており、マジンガーZEROの事も知っている。そしてこんな無茶苦茶な事ができる存在。

 

『ヒントが足りなかったかな。じゃあ一つは私の名前だ』

 

 名前。

 アイナ・クルセイド。

 

『そしてもう一つ。実は私はかつてこれに似た現象を目にしている』

「これに似た現象……?」

『もっとも【僕】が体験したのは無数の可能性の世界からやってきた鬼械神達だけどね』

 

 アレは凄かった、と言うアイナ・クルセイド。

 それを聞いてようやく繋がった。

 この女の正体が!

 

「お前はまさか……!」

『そう!私は■■■■■■■■■■(N#%rl?t⊿§∑ep)!』

 

 意味不明の音が地球艦隊・天駆の耳に届く。

 だがショウにだけははっきりと聞こえていたのか、驚愕の表情を浮かべている。

 

「くそっ!まさか名前がそのままだったなんて!ファミリーネームはシスターから取ったのかよ!」

『その通り!少しは勘づくとは思ってたんだけどねぇ!』

 

 アイナ・クルセイドの顔が変わる。

 顔が漆黒に染まり、三つの燃え上がるような目、嗤っているような形の亀裂のような口が浮かび上がる。

 断言する。

 アイナ・クルセイドは人ではない。もっと悍ましい化け物だ。

 

『さぁ、私も少しは働くとしましょうか』

 

 アイナ・クルセイドの後ろから巨大なロボットが現れる。

 機械仕掛けの悪夢と別世界で呼ばれた存在によく似た鬼械神。

 ショウのゲシュペンストが速攻で襲い掛かる。

 乗り込まれる前に、と思ったがすぐに迎撃行動を取られる。

 なるほど。アレは厳密にいえば鬼械神ではなく化身の一つなのだ。本来は乗り込むという工程すら必要ないのだろう。

 

「これも全部、お前のシナリオなのか!この世界にあの二人がいるのか!?」

 

 超大型メイスを振るい、叩き潰さんとするゲシュペンスト。

 それを受け止める機械仕掛けの悪夢。

 他の仲間達は新たに表れたインベーダー達に阻まれ援護行動すらできないでいた。

 

『最初の問いにはイエスだがノーでもある。私は用意されていた舞台に少しエッセンスを足しただけさ!』

「何っ!?」

 

 テイルブレードが頭部を引き裂かんと動き回るが、無数の機械部品により動きを阻害されてしまう。

 パワーもゲシュペンスト・タイプSB以上なのかメイスごと弾き飛ばされてしまった。

 

『二つ目の問いは残念ながらノーだ。私は厳密には【僕】ではないからね。あの二人に必要以上に拘る必要がないのよ』

「ハッ!どこまで本当なのやら!」

 

 右腕のガングニールで殴り掛かるがやはりパワーが足りない。

 一人で戦うのは無理だ。

 しかしここで引いて態勢を整えるには状況があまりにも厳しすぎる。

 

「ショウ!無茶をするな!」

 

 ソウジのグランヴァングから放たれた攻撃が機械仕掛けの悪夢に直撃していく。

 足止めされていた仲間がようやく追いつてきたのだ。

 

『へぇ、やるじゃないか』

 

 戦場を見渡せば、現れる増援達と戦闘を繰り広げているものの主力級であるネームドユニットの殆どは討伐済みであるようだった。

 

「所詮は意志なき存在だ。本物の連中に比べればどうという事はない!」

「覚悟しなさいよ!」

「貴様を倒し、地球を救うんだ!」

 

 逆にこちらの主戦力であるメンバーの大半が集結に成功。

 切り札を切り、こちらに王手をかけたつもりのアイナ・クルセイドに対して逆王手を仕掛けた事になる。

 ……本当に?

 

『おや、もう勝ったつもりなのかな?』

「貴様の戦力の底は知れた。切り札らしい連中も大体は倒した以上、後はお前だけだ」

 

 まだ完全な力は分からない機械仕掛けの悪夢はともかく他の敵に関してはもはや問題はない。

 勿論、それだからと言って彼等に油断や慢心の気配はない。

 

「いや、まだだ!」

 

 だがショウだけははっきりとアイナ・クルセイドの戦力が残っている事を察していた。

 先程まで戦ってきた相手は地球艦隊・天駆が戦ってきた相手しかいなかったからだ。

 そうでなければ態々、ショウの記憶を使ったりなどしない。

 

「そう、あいつの狙いは!」

『そう、私の狙いは!』

 

 次の瞬間、再び光が弾ける。

 

「このフラスコの中に存在しない!」

『世界からの召喚!』

 

 光から新しく表れたのは地球艦隊・天駆が見覚えのない相手であった。

 モビルスーツがあった。アームスレイブがあった。

 それ以外にも無数の人型兵器が存在した。

 MSやASと同じような量産を前提とされた機体から、ワンオフと思わしき機体まで。

 見ればロボットには見えず、生物のような相手もいた。

 

「くそっ!囲まれた!」

「数もさっきの倍……いや、もっといるぞ!」

「無尽蔵だっていうのかよ!」

 

 機械仕掛けの悪夢に仕掛けようとするメンバーの迎撃行動を取り始める見知らぬ敵。

 戦闘力で言えば先程まで倒してきた相手とそう変わりはしない。

 だが情報が一切ない相手との戦闘は先程まで戦ってきた相手よりも遥かに労力使う。

 

「くそっ!こいつら、間違いない木星のMSだ!」

 

 トビアのX1に襲い掛かってきたMSは他と比べて異様な図体をした機体達である。

 手がドリルだったり、巨大な腕を持っていたり、ボールの上に乗っていたり、古代の土偶、バレリーナなどまるでサーカスのようなMS群である。

 

「トビア!」

「こちらに合わせろ!」

「はい!キンケドゥさん、ハリソン大尉!」

 

 クロスボーンガンダムを目の敵とばかりにX1とX0に攻撃を仕掛けてくるサーカスMS。

 ハリソンのF91とあわせて迎撃していくが、機体の独特の性能も厄介だが、まるでこちらの手の内を知っていると言わんばかりの動きに翻弄されていく。

 

「間違いない!知っている!知っているんだ、こいつらは!俺達、クロスボーンガンダムの事を!」

「だが木星戦役で見た事はない!」

 

 ならばこいつらはトビア達も知らない時代、もしくは世界でクロスボーンガンダムと戦った事がある連中という事か。

 

「ぐぅっ!?」

「ハリソン大尉!?」

 

 突如、襲い掛かってきたビームがハリソンのF91に襲い掛かる。

 なんとか回避したものの、ハリソンの表情はさえない。

 

「大丈夫だ。……しかし我々を目の敵にする敵が追加されたようだぞ」

「えっ?」

 

 ハリソンの視線の先を向ければそこには新たな敵の姿があった。

 その姿を捕らえた時、トビアとキンケドゥをもって知っても唖然とするしかなかった。

 

「木星はなんでもありだな。巨大な手が二つとはな!」

 

 トビア達が苦戦する頃、宗介達、ミスリルの部隊もまた苦境に追い込まれていた。

 

「新手のASだが見た事がない!」

「ガーンズバックもいるみたいだけど見た事がない仕様ね!」

「一つ目の機体もある、あれがリーダー機だろうが……!」

 

 見た事もない大量のAS部隊に加えて、ベヘモスに酷使した大型機も複数展開している。

 後方に控えている一つ目がリーダー機なのは間違いないだろうがアレを打ち取るには無数の敵を屠る必要がある。

 そして問題なのは。

 

「ラムダ・ドライバ搭載機も多い……!」

 

 見た事がないAS達の大半はラムダ・ドライバを搭載していないようだが、ファウラーやザビーナ達が乗っていたエリゴールタイプも無数に展開しているのだ。

 性能的に見れば決して高いものではない。

 だが実弾が多いAS機の消耗は他よりも一層激しい状態である。

 宗介のレーバテインは既に追加装備は使い切ってパージしているし、ファルケもライフルは撃ち切ったのかナイフとランスのみで戦っている。

 ガーンズバック二機も手持ち武器の大半を失っている。

 

「だが泣き言は言っている場合ではないな!」

 

 別のエリアでは黄金のような珪素でできたELSのような敵を相手にしているソレスタルビーイングのMS達がいる。

 虫のような小型機達に群がられているスーパーロボット達が。

 更に人の顔が付いた掌や足の姿の存在までも確認できる。

 光を見れば次々と新手が沸いて出てきている。

 なんとかして押し返したいが、この物量差ではいつか押しつぶされてしまうだろう。

 

(状況は不利……何か起死回生の一手を打たなければ……)

(宗介……みんな……!)

 

 ウィスパード二人もその知識をフル稼働させるも、その一手が見えてこない。

 誰もがその心の奥底には絶望の感情が生まれ始めていた。

 

『ああ、見えるよ。君達の絶望に浮かぶ様子が』

「くそっ!」

 

 それを眺めていたアイナ・クルセイドの言葉を否定するようにショウのゲシュペンストが殴り掛かる。

 だがその機体は決して無傷ではなかった。

 手に持っていたメイスとランスは失われ、徒手空拳の状態で戦闘を行っている。

 テイルブレードはフル稼働。

 近づく敵を蹴散らしていくが、ゾル・オリハルコニウムの刃は少しずつ消耗していく状況だ。

 

『無駄だよ』

「ちぃっ!」

 

 機械仕掛けの悪夢に再アタックを仕掛けようとするも、邪魔するように現れた新手の機体がその道を塞いでくる。

 そして下手に足を止めてしまえば。

 

「ぐぅっ!?」

 

 まるで無限にいるのではないかと勘違いする程にいる敵からの集中砲火が襲い掛かってくる。

 ギリギリの所で回避運動を取るが、全てを回避できず肩や足の装甲が吹き飛んでいく。

 

「ショウ!ロッティ、ショウのフォローをするぞ!」

「任せて!」

 

 近くにいたヴェルトのヒュッケバインEXとロッティのグルンガスト改がフォローに入り、窮地を脱する。

 しかし二人の機体もダメージが確実に蓄積されており、戦闘の継続が厳しくなってきている。

 

『ふふ、状況は絶望的だね』

「抜かせ。俺達はまだ負けてなどいない」

『ああ、まだ負けていないだけだね』

「……」

 

 そう、このまま行けば負けるのは地球艦隊・天駆の方だ。

 だけどだからと言って諦める気になどならない。

 

『だけどショウ。君は本質的にこの世界の人間ではない』

「……」

『ならばこの世界の最期に付き合う必要はないんじゃないかな』

 

 ――私ならば元の世界に帰せる。

 

 そう言っているのだ。

 地球艦隊・天駆の元から去り、アイナ・クルセイドに従えば助けてやると言っているのだ。

 しかしショウの心は決まっている。

 

「はっ、お断りだ。そもそもお前との取引なんて間違いなく、確実にこっちが騙されるに決まってるだろう。阿呆め」

 

 相手は人間などではない。

 間違いなく人間を弄び、騙し犯す邪神なのだから。

 

『まぁ、そうなるよね。ならこれはもういらないね』

 

 まるで使い終わったティッシュを捨てるがみたいな気楽さの音色が響き渡る。

 

「ぐっ!?」

 

 と同時にショウのゲシュペンストの動きが一気に鈍くなる。

 まるで鉛でも仕込まれたように操縦桿が重くなったのだ。

 一体何が、と思うショウだがすぐにその理由を察した。いや、察してしまったのだった。

 

「……くっ!」

「ショウ、どうしたんだ!?」

 

 慌ててソウジがゲシュペンストを抱えて飛び回る。

 この乱戦の戦場で足を止めるのは自殺行為に近い。

 

「……怖いんですよ」

「えっ?」

「……機体を動かすのが、戦うのが……怖い」

「ショウさん、何を……!?」

 

 ショウの告白に絶句するソウジとナイン。

 ヤマトが地球を飛び立ってからずっとゲシュペンストで戦っていたのに今頃になって恐怖を感じている。

 

「……そうだ。今考えればおかしい事だらけだ。俺はあの時からどうして当たり前のように戦えているんだ?」

 

 高坂翔という人間は決して戦いを生業にしてきた人間ではない。

 現代日本で暮らしてきた一般人に過ぎないのだ。

 戦いの中に身を置いた記憶などは一切ない。

 だと言うのに戦ってきた。

 ゲシュペンストに乗り、命が危険な戦場を渡り歩いてきた。

 一般人とは思えない技量をもって。

 

「そうか……俺が感じた違和感は……!」

 

 ソウジが感じていたショウへの疑念が全て繋がった。

 ヤマトが飛び立った時に見せた熟練者のような技量。

 火星の時に見えた命を捨てかねない行動。

 どれも考えてみれば何もかもが可笑しかったのだ。

 

「お前の……せい、なのか?」

『ああ、その通り。君に色々と植え付けてね。君がここまで生き残れるように手助けしてあげたのさ』

「植え付け……?」

『パイロットとしての技術、度胸とかさ。簡単に言えば神勝平君の睡眠学習のようなものさ』

 

 さっき解除したけどね、と言うアイナ・クルセイド。

 

「そうか!それを解除されたから……!」

「ショウさんの動きが……!」

『でも感謝して欲しいな。君が生き残れたのは私の助けがあったからだよ。何せずっと見ていたんだから』

 

 見ていた、と疑問を抱くショウであったが、何人かのメンバーにはその心当たりがあった。

 

「そうか、俺が感じていた違和感の正体!」

「ショウを覆っていた悪寒がする霧は!」

「時折、ショウが二人いたような感じは!」

『そう、私だ』

 

 刹那が感じた違和感。

 アンジュが感じた悪寒、

 バナージが感じた異変。

 その全ての黒幕だと思わせるセリフを吐くアイナ・クルセイド。

 

『気づいたと思うけど、ショウを研究所に転移させたのも私。あそこで死ぬと困るからね」

「そういう事か……!」

 

 あんなに都合よく転移現象が起きる筈はないと思っていたが、全てアイナ・クルセイドのせいだったとは……。

 

『さぁ、どうする?君に与えられた借り物の力は失われた。どうやって足掻く?私に教えてくれないかしら?』

「ちっ、くしょう……!」

 

 分かってはいるが、手に力が入らない。

 体を動かそうとするも、その前に恐怖がショウを支配していく。

 ここで動かなければ死ぬ。そう分かっていても体を動かす事が叶わないでいた。

 

『君はもう用済み。ここで死んでくれ』

「……っ!」

「ショウ!」

 

 身動きが叶わないショウへ襲い掛かる凶刃。

 チトセが悲鳴を上げながら助けに入るが、もう遅い。

 

(……ここまでか)

 

 今までよく生き残ってこれたもんだと思いながらショウは諦める。

 もうこの凶刃から逃れる術はない。

 

「諦めるなショウの兄ちゃん!」

 

 だが諦めてない者はここにいる。

 

「……ザンボット3?」

 

 ザンボット3の槍がゲシュペンストを破壊しようとした騎士の鎧のような機体を貫いていた。

 

「諦めるなよショウの兄ちゃん!」

「勝平……」

 

 ゲシュペンストを庇ったザンボット3が次々とやってくる敵機をザンボット・ブローで破壊していく。

 しかし同時に敵の攻撃が被弾していき、装甲の所々は欠け、ひび割れている。

 

「その怖さは俺にだって分かる!だからこそ諦めちゃ駄目なんだ!」

「それは……」

 

 神勝平もまたショウと同じように睡眠学習でザンボット3の戦い方を学び、そして失った者だ。

 ショウが今抱いている恐怖を一番理解しているのは彼なのだろう。

 

「ショウの兄ちゃんが何者なのかはわからない!でも俺達は知っているんだ!兄ちゃんが頑張っていた事を!」

 

 困っている仲間を助ける為に奔走した事も。

 少しでも強くなりたいと特訓していた事も。

 大切な人を守る為に戦場に帰ってきた事も。

 

「だから負けるな!あんな訳の分からない奴に負けるんじゃないよ!」

「!」

 

 その叫び声と共にザンボット・ブローを持っていたザンボット3の左腕が吹き飛んだ。

 ゲシュペンストを庇う為に受け続けたダメージが噴き出てきたのだ。

 

「勝平!」

「ぐっ!負けるなザンボット3!!」

 

 それでも勝平は前に出た。

 恐怖に支配された仲間を守る為に。

 だけど一機では限界がある。

 全てを捌ききれなくなり、ザンボット3もまた今まで倒してきた敵と同じように砕け散る末路を迎えようとした時。

 音が響いた。

 

「っ!」

『へぇ……』

 

 先程とは逆にゲシュペンストのテイルブレードがザンボット3を攻撃していた敵を貫いていく。

 

「ショウの兄ちゃん!」

「うおぉぉぉぉ!」

 

 テイルブレードだけではなく両腕から放たれる爪撃が敵を破壊していく。

 

「……助かった、勝平。ありがとう」

「へへっ、いいって事よ!」

 

 ショウの中に恐怖はまだある。

 だけど同時に前に進もうとする勇気も花が咲くようにこの胸に宿っていたのだ。

 だからこそ動いていた。

 その事に気づかせてくれた大切な仲間を守る為に。

 

「ショウ!お前の力は誰かに与えられたものだけじゃない!」

 

 始まりはアイナ・クルセイドに与えられた物だったのかもしれない。

 だけどヤマトが飛び立ったあの日から手に入れた経験は間違いなくショウだけの物なのだから。

 

「だから負けられない!黒幕気取りのお前に負けてやれない!」

 

 そんなショウの雄叫びに反応するように地球艦隊・天駆の動きもまた活発になっていく。

 

「ああ!もう少しで地球を救えるんだ!」

「こんな所で止まれない!止まる訳にはいかない!」

 

 先程まで押されていたのが嘘のように、敵を押し返していく。

 

「だがこのままではジリ貧だぞ!」

「根本的な解決をしなければ!」

 

 解決方法は現状二つ。

 敵を召喚し続けている光をどうにかするか、アイナ・クルセイドを倒すかだ。

 だが光をどうにかする方法に検討はつかず、機械仕掛けの悪夢を破壊するには敵が多すぎる。

 連戦が続いている地球艦隊・天駆も限界が近づいてきている。

 

『士気は戻ったみたいね。だけどここからどうするのかしら?』

 

 アイナ・クルセイドの言う通り。

 未だに打開の手はなく、ジリジリと力が削がれていくだけだ。

 だが。

 

「ならばやるべき事は一つ!」

「ショウ?」

 

 ショウの声が地球艦隊・天駆、全体へと届く。

 

「俺にいい考えがある」




????「私にいい考えがある」CV:玄田〇章


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俺にいい考えがある(私にいい考えがある)

 

 ショウの言葉が戦場に響く。

 起死回生の一手がこの状況であるというのか。

 

「勝平!一度みんなの所に戻るぞ!」

「いいのかよショウの兄ちゃん!?」

「今のままじゃあいつは倒せない!」

 

 黒幕の近くまでやってきていたショウと勝平達だが、これ以上は無理だ。

 突っ込もうとしても数で押しつぶされてしまう。

 

「だから戻るぞ!」

「分かったよ!」

 

 周りを囲んでいた敵を蹴散らして、戻っていく二人。

 それを見て、他のメンバー達も自然と合流する為に機体を動かしていた。

 

「それで、どうするつもりだ?」

 

 補給や修理が必要な機体は母艦へと帰還。整備員達が必死に作業を開始する。

 他のメンバーは群れてくる敵を片っ端から迎撃していく。

 だがこれも時間の問題。

 いつか物資は尽き、パイロット達は疲弊し敵に打倒される日がやってくるだろう。

 

「目には目を歯には歯を、だ」

「え?」

「甲児!マジンガーZEROを使う!」

 

 ショウの言葉に視線がマジンガーZEROへ集中する。

 

「どうするつもりだ!?」

「あいつらは俺の『記憶』から様々な世界の存在をこちら側へ呼び寄せた!ならば!」

「方法は分からないがこちらも同じ事が出来ると、そういう事だな」

 

 ヴェルトの言葉にショウが頷く。

 確かにそれは有効な一手ではあった。

 しかし。

 

「どうやってあいつらと同じ手を使うってのよ!?」

「こっちはあっちの種も仕掛けも分かっていない状況だっていうのに……」

 

 アンジュやタスクの言う通りであった。

 対抗策はあれど、その実行方法が分からないのであれば空想上の論理にすぎない。

 だがショウにはある種の確信があった。

 方法ならば、あると。

 

「キーマンは甲児!お前だ!」

「おうさ!」

 

 ショウの言葉に甲児が答える。

 すぐさまマジンガーZEROをゲシュペンスト・タイプSBの元へと向かわせる。

 だがそれだけでは足りない。

 

「アムロ大尉!」

「了解した!カミーユ、ジュドー、ハサウェイ、レーン中尉、トビア、キンケドゥ、バナージ、リディ少尉ついてこい!」

「分かりました!」

 

 アムロがショウの言おうとする事を理解して、必要なメンバーを招集する。

 

「集合場所は真・ゲッタードラゴンだ!」

「竜馬ァ!」

「あぁ!」

 

 直感か何かか。

 號の呼びかけに竜馬達も真・ゲッタードラゴンの元へとやってくる。

 そしてショウの意図に気づいたのは號だけではない。

 

「ダナンを真・ゲッタードラゴンの傍に!相良軍曹!」」

「宗介!」

 

 テレサとかなめが同時に叫ぶ。

 

「分かった!」

「行きなさいウルズ7!」

「こっちは任せておけ!」

 

 マオとウェーバーの援護を受けて宗介もレーバテインを動かしていく。

 

「アンジュにクラインさんも来てくれ!」

「分かったわ!サラ達も!」

「分かりましたわ!」

 

 アンジュを筆頭としたパラメイル部隊が。

 

「エターナルを真・ドラゴンの傍に!」

「了解!」

「アスラン!」

「分かっている!シン、俺とお前で前に出る!キラとルナマリアはエターナルの防衛を!」

「分かりましたよ!ルナ!」

「ええ!きっちり守って見せるわ!」

 

 MS部隊もそれにあわせて動いていく。

 

「各員!彼等の護衛に専念!

「了解!」

 

 ヤマトの艦橋で沖田の激が飛ぶ。

 まともにやってもこの状況は覆す事は不可能。

 だからこそこの手に乗るしか残されていないだと理解したからか。

 

『それができると本気で思っているのかい?』

「当然!」

 

 アイナ・クルセイドの言葉に真っ向から反論するショウ。

 自暴自棄と取られてもおかしくない一手だという事は理解している。

 しかしこのメンバーならば可能だと、そう信じているのだ。

 

「マジンガーZEROの光子力エネルギーを呼び水に。ゲッター線で空間に穴を開け、ニュータイプや脳量子波、念動力で思念を飛ばす!助けてくれってな!」

「レーバテインのラムダドライバ、ダナンのTAROSを補助に使います!」

「ついでに私達の歌で世界への声を大きくするって訳ね!」

 

 ショウの方法をすぐさま理解したメンバーが声を上げる。

 しかし方法を提示されて尚、無茶だという事は誰もが理解していた。

 本当にこれで呼びかけに答えてくれるかどうかも分からないのだから当然だろう。

 だけど。

 

「時間を稼ぐぞ!」

「きっちり決めてくれよな!」

 

 同時にここにいる誰もがきっと成功するのだと信じていた。

 ダイターン3を始めとするスーパーロボット達は壁になるように立ちふさがり。

 

「抜けてくる敵を一掃する!」

「誰も後ろに

 

 エステバリスやASなどのリアルロボット達が隙間から襲い掛かってくる敵を叩き落していく。

 

「行くぞぉ!ZERO!」

 

 甲児の雄叫びと共にマジンガーZEROもまた、光の咆哮を上げる。

 

「――」

 

 マジンガーZEROはかつて見た。

 その認めたくもない、美しい光景を。

 マジンガーZ(自分)がいたからこそ、生まれ出たあの光を。

 あの光景がもう一度見れるなら、そしてその果てに自分こそが最強など証明できるのであれば。

 もう少し力を貸してやろう。

 何より。

 

 ――アンナ、邪神ノ紛イ物ニ負ケルナド許サレン

 

 光子力の光が放たれる。

 それを受け止めるのはゲッターロボ。

 

「やるぞ隼人、弁慶!」

「ああ!」

「おう!」

「俺達も行くぞ!」

「ええ!」

「ゲッターロボの力、見せてやろうぜ!」

 

 真・ドラゴンの上に乗った真・ゲッターロボ。

 二機がマジンガーZEROから放たれた光子力エネルギーを受け取る。

 

「行くぜえぇぇぇぇ!」

 

 それをそのまま虚空の彼方へ解き放った。

 いや、ただ解き放った訳ではない。

 ゲッター二機に込められたゲッター線と共にだ。

 人と密接な関係を持つ二つのエネルギーは螺旋のように世界の壁を穿ち、その輝きを解き放っていた。

 本来、どのようなエネルギーであっても世界の壁を穿つような真似は出来る筈もない。

 だが時空を超えた事があるゲッター線。

 平行世界への干渉が可能な光子力エネルギー。

 この二つが重なれば、この程度の事は可能である。

 

「道は出来たぞぉ!」

「これが俺達のファイナルミッション……!クアンタムバースト!」

「T-LINKシステム、リミッター解除……やってみせろよ!」

 

 刹那のダブルオークアンタが対話の為のシステムを完全開放する。

 それと同時にショウがゲシュペンストに搭載されているT-LINKのリミッターを解除を行う。

 いや、正確に言えばその裏に搭載されているであろうウラヌス・システムを無理やり使用する為だ。

 しかしショウの念動力では多分、いや間違いなく完全起動は不可能である。

 それは分かっていて尚、使用する事に躊躇いなどなかった。

 念動力は極まれば空間への干渉が可能な力(XNディメンション)。今という山場で使わなければいつ使うと言うのだ。

 

「全ての意思をゲシュペンストに、ショウに合わせるんだ!」

 

 アムロを始めとするとニュータイプと呼ばれる者達がその意志を一点へと収束させていく。

 いや、ニュータイプだけではない。

 ここにいる人々が誰もが願うのだ。

 それと同時に戦場に響き渡る歌声。

 世界によく聞こえるように、その願いが誰かに届くようにと祈りを籠めて。

 

『目ざわりな声だね』

 

 歌を謳いあげるアンジュやラクス達の元へ殺到する敵機。

 

「ここは通さない!」

「ラクスの邪魔はさせない!」

 

 タスクのアーキバスがアサルトブレードで切り結んでいくと同時にキラのストライクフリーダムが圧倒的な砲撃をもって援護に入っていく。

 

「撃て!銃身が焼け付くまで撃ち続けろ!」

「おうともさ!」

 

 モビルスーツが、エステバリスが、アームスレイブが全てを出し切らんと撃ち続ける。

 ネズミ一匹通さんとばかりの弾幕である。

 

『チィ、これはどうだ!』

「通さん!」

 

 ステルス性の高い機体が暗殺とばかりに近づいていくがそれを察知したアキトのブラックサレナがボソンジャンプで接敵、速攻で叩き落していく。

 

「力押しもさせる気はないよ!」

「おうさ!」

 

 巨大な機体での力押しは、同じサイズであるダイターン3を筆頭にスーパーロボット達が押しとどめていく。

 地球艦隊・天駆、全ての機体が平行世界への対話を実現させるべく一丸となって敵を押しとどめている。

 

「ここから先は通さん!」

『だがその声が世界の先に届くものか!』

 

 その通りだ。

 これだけやっても、本当にこの声が世界の誰かに届くとは限らない。

 例え届いたとしても、その願いの通り助けてくれるかも分からない。

 だけどショウは知っている。

 だけどマジンガーZEROは知っている。

 数多の可能性の光がある事を。

 その願いに答えてくれる者達がいるという事を。

 だから。

 

「俺達はそれでもと叫び続ける!」

「その力を俺達は知っているんだから!」

 

 彼等の切実な願いを聞き届けてくれる者達がいるのだと信じているのだ。

 

『チィッ!ならばその声が届く前に断ち切りましょう!』

「来るぞ!でかいのが!」

 

 苛立ちと共にアイナ・クルセイドの横に現れる巨大な砲台。

 全てを薙ぎ払う一撃とするのであろうか。

 

「チャージなど!」

「させるものか!」

 

 シンのデスティニー、アスランのジャスティスが神速の踏み込みでチャージを妨害せんと突撃する。

 だが今度は先程とは真逆の光景、二人の進路を妨害せんと数多の敵がその前に現れる。

 

「ならっぐっ!?」

「アキト!?」

 

 ボソンジャンプを行おうとするブラックサレナに組み付く敵。

 このままジャンプしても身動きを半分封じられた状態では攻撃するのもままならない。

 

「まずい!」

「チャージがもう!」

 

 射撃武器で攻撃を繰り返すが砲台の前に盾になる敵のせいで銃弾一つ届かない。

 その稼がれた時間で砲台のチャージが完了する。

 

『これで終わりよ』

 

 巨大なエネルギーが砲台から放たれる。

 盾になっていた機体諸共吹き飛ばしながら、地球艦隊・天駆の中枢を薙ぎ払わんと迫りくる。

 だけど、諦めぬ者達はまだここに。

 

「ATフィールド全開!!!」

「シンジ!?」

 

 エヴァンゲリオン13号機がATフィールドでその一撃を受け止める。

 

「碇君!」

「この馬鹿シンジめ!」

「あー、もう大変だなー」

 

 それに続くように零号機、2号機、8号機が同じようにATフィールドを張りながら攻撃を受け止める。

 

『防げるものではないわ!』

「それでも防ぐ!ショウさん達は僕達が守る!」

「ああ、やろうシンジ君」

 

 心の壁であるATフィールド。

 その意志の力をもって発言させる心の壁はシンジ達の想いによってその強度を増していく。

 誰もが防ぎきれないと判断したその一撃はその意志の前に消失していく。

 

『防ぎ……きった……!?』

「やったぜシンジ!」

「だけど13号機が……!」

 

 だがその代償は大きい。

 真正面で受け止めた13号機は無残な姿に成り果てていた。

 四本の腕は全てが消失しており、正面の装甲の全てが焼け爛れている。

 

「カヲル君、大丈夫!?」

「僕は大丈夫。シンジ君も無事で良かった」

 

 シンジとカヲルは無事である事にほっとする一同。

 とは言え、13号機はもう動かしようがないのには誰の目に見えても明らかであった。

 

「だけど希望は守ったんだ!」

 

 確かに13号機を犠牲にしたが、その希望を守る事は出来た。

 しかし。

 

『その希望が本物かどうかなんて分からないのにね』

「っ!」

 

 世界へ繋がる光はまだ繋がっている。

 だがどれだけ願っても、この場に現れる光はどれ一つと存在しないでいた。

 

「まだ……っ!?」

「光が……!」

 

 対話の光が小さくなっていく。

 光子力エネルギーもゲッター線も、GN粒子の輝きも。

 全てが収束していってしまう。

 希望はないのだと、そう言わんばかりに。

 

「もう……エネルギーが……」

「ちっ……くしょう……!」

 

 光が、消えた。

 もはや残されたのは静寂の宇宙に鳴り響く戦闘音のみ。

 全てのエネルギーを使い果たしたゲシュペンストを始めとした機体は身動き一つ取れず漂うだけであった。

 

『少しばかり驚いたけれど、あなた達の希望は現れる事はなかったわね』

 

 勝ち誇ったようなアイナ・クルセイドの声。

 沈黙した地球艦隊・天駆とは逆に次々と新しい機体が召喚されていく。

 最後の切り札というべき策が沈黙し、士気も落ち込んでいく。

 もはや勝ち目はない。

 そう誰もが思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪切実な願い、確かに聞き届けたぜ≫

 

 その声を聞くまでは。

 

『な、に……!?』

 

 光が走った。

 

「なっ!?」

「無数の敵機の破壊を確認。……ビーム砲、じゃない斬撃……!?」

 

 突然の事に地球艦隊・天駆の誰もが驚愕と混乱に陥る。

 アイナ・クルセイドもまた同じであった。

 

「この声は……!?」

 

 ショウ、ただ一人を除いては。

 

≪世界を守りたいという気持ち、確かに俺達に届いたぜ≫

≪私達は知っています、最後まで諦めない意志を持つ者達を≫

 

 それは少年の声であった。

 それは少女の声であった。

 そしてそれをショウは知っていた。

 

≪だから俺はあんた達に力を貸すぜ≫

≪それが私達が歩む道と交わるんですから≫

 

 ビームが放たれた方向へ、視線が向く。

 味方も、敵も、全ての人達の意識が。

 

≪だから俺はあえてこう言わせてもらうぜ≫

 

 二本の角、牙のような顔面を持った鬼を連想させる。

 その背に巨大なマントをなびかせながら現れたロボット。

 小さな点でしかなかった想い(願い)を重ね、繋ぎ、結び合わせ、可能性という名のラインを作り上げるもの。

 それはすなわち。

 

≪数多の平行世界から、一つの世界を護る為に集結する。それはなんて……≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ナイスな展開じゃないか!≫

 

 正義の味方がここに参上した。




Re:クロガネと少年


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スーパーロボット大戦 上

「凄い……」

 

 宇宙(そら)を駆ける流星達を見ながらタカサカ・ショウは小さく呟いた。

 その流星達のどれもが自分達の声に答えてくれた存在だとはっきりと感じ取っていたからだ。

 やってきた彼等は自分の存在が確固たるものになると、すぐさまアイナ・クルセイドの手勢達を撃退し始めた。

 説明は不要、という事だろう。

 

「間に合ったみたいで良かったです」

「ああ、ここへの道も無事にできたみたいだしな」

「君は……君達は……」

 

 ショウのゲシュペンストの近くにやってくる正義の味方。

 彼、いや彼等こそがショウ達の呼びかけに一番に気づきこの世界へと駆けつけてくれた存在。

 モニターに映る制服を着た男と麦わら帽子に白いワンピースを着た女。

 それを見て、なるほどと小さくショウは呟いた。

 あえて言うならば原作後の二人という事か。

 だからこそ納得もした。

 既に時間も空間も超越した正義の味方ならば、あの声を聞きここへ跳ぶ事も不可能ではない、と。

 

「ありがとう、助かったよ」

「礼を言うのはちょっと早いぜ」

「はい、まずは」

「ああ」

 

 ショウと正義の味方の視線がアイナ・クルセイドの方へと向く。

 既に自分が有利な状況ではなくなった事を理解したのだろう。

 呼び出した存在で守りを固めているようだ。

 

「だが甘い」

 

 ショウははっきりと感じ取っていた。

 ■■■■■■■■■■(N#%rl?t⊿§∑ep)がいるのならば。

 

『ッッッ!!!』

「ほら、な」

 

 彼等がやってくるのも必然である。 

 アイナ・クルセイドと機械仕掛けの悪夢が吹き飛ばされる。

 そこにはかつて■■■■■■■■■■(N#%rl?t⊿§∑ep)を屠った鬼械神――無垢なる刃が存在していたのだから。

 いや、それだけではない。

 彼等の息子()が駆る三位一体となった黒い鬼械神がいた。

 彼等と激闘を繰り広げた深紅の鬼械神がいた。

 彼等より前から邪神と戦いを繰り広げていた鬼械神がいた。

 

「まったく、ナイスな展開で最高の援軍だよ」

「だろう」

 

 子供のような笑顔を見せる男にショウも頷く。

 気が付けば正義の味方と共に戦った人の創り出した鬼械達もまたこの決戦の場に集っていた。

 

「露払いは任せとけ」

 

 それだけ言うと正義の味方は仲間と共に戦陣に加わっていった。

 

「ショウ!」

「みんな……!」

 

 それを見届けると同時にチトセやソウジ、ヴェルトにロッティが駆けつける。

 それだけではない。

 

「シズキさんまで……」

「遅くなったけど私も力になりに来たわ」

 

 ヴィルヘルム研究所日本支部で世話になったシズキ・シズカワのヒュッケバインまでこの場に現れていた。

 

「どうやってここに……」

「あなた達の声が聞こえてきたと思ったら、ここにいたの」

 

 どうやら駆けつけてくれたのは平行世界の人々だけではなく元の地球に残っていて戦う意志がある人々もらしい。

 

「で、俺達はどうする?」

「他のみんなは駆けつけてくれた人達と攻勢に出てるわ」

「決まってる」

 

 全員から意見を求められ、ショウは迷う事なくその意志を口にする。

 

「敵本陣に突貫だ」

「了解!」

「アイナ教授に一発入れないと気が済まないしね」

 

 全員、それに迷わず同意する。

 とは言え、その道のりは決し楽なものではない。

 アイナ・クルセイド本人は現状、鬼械神達と戦闘を繰り広げているものの、彼女が呼び出した存在が部厚い壁のように立ちはだかっている。

 そこを超えて行くのは楽な道のりではないだろう。

 だが各自で戦い始めた地球艦隊・天駆の面々も同じ場所を目指すに違いない。

 それならば自分達も目指さない理由が見当たらない。

 

「楽な道のりではないけど!」

「僕達ならば!」

 

 ダメージは残っている。エネルギーや弾薬も満タンには程遠い。

 だがこの身の気力は十二分に回復した。

 ならば後は少しだけ無茶をすればいい。

 全員の覚悟が決まった、その時。

 強大なエネルギーと衝撃が宇宙を駆け抜けた。

 

「波動砲!?」

「ヤマトか!?」

「いや……これは……!」

 

 T-LINKシステムが反応している。

 この反応は敵性反応ではなく、同じシステム(・・・・)に反応しているのだろう。

 

「……鋼の方舟と天翔ける龍」

 

 この世界にはまだ存在しない二つの戦艦の姿があった。

 それと同時に竜巻の如く駆け抜ける嵐。

 巨大な馬のロボットを駆る巨大な斬艦刀を構える鎧武者がショウ達の前に立ちふさがる敵を切り裂いていく。

 更に神雷の如く敵に切り込む蹴闘士。

 敵を正面から撃ち貫く鋼鉄の孤狼と白銀の堕天使、蒼い拳闘士、白き天使。

 四神の力を集結した真なる龍と虎。

 ショウの顔が引きつりだすぐらいの大戦力である。

 

(いや、時間軸とかどうなってんだよ)

 

 彼等がやってきたのはきっとあのフラスコの世界なのだろうが、それにしては乗っている機体が自分の知っているものとかけ離れている。

 よく見れば超機大戦の機体はプロトタイプのあちらではなく完成型の方である。

 加えると史上最強の家やら必殺仕事人とか新しい勇者ロボっぽい彼等までいる。

 

「ヒュッケバイン、に近い機体かアレは」

「グルンガストの強化型かな」

 

 凶鳥を超えた機体と超闘士の強化機体を見てヴェルトとロッティが興味深そうに呟く。

 

「ゲシュペンストのカスタム機とかもたくさんあるわね……」

 

 チトセも敵に砲撃を加えながら、呟く。

 それはそうだろう、と苦笑するショウ。

 自分達が乗っている機体はあの世界に属するのだから。

 

「あちらもこちらを見ているみたいですが」

 

 こちらが彼等の機体に興味を抱くように、彼等もまたこちらの機体に興味を持っているようだ。

 

(レッドもブラックもα世界の機体でOG世界では産まれない機体だし、俺のSBは絶対ありえないだろうしな)

 

 SBはともかく二機は違う形になった機体だ。

 興味を抱くのは当然か。

 だけどショウの視線はとある機体へ釘付けになっていた。

 

(黒い銃神までくるとは……この世界に因子は揃ってたのか?)

 

 翼を広げ禍々しい気配を持ったまま戦場を駆けるアクマの機体を見ながらそんな事を思う。

 それとも何一つ因縁あるものがないからこそやってこれたのか。

 しかしそれもなんとなく違うような気がする。

 トロニウムもT-LINKシステムもここにあるのだから。

 色々と考察したい所ではあるが、今はそんな時間ではない。

 

「機体考察は後回し。今は奴の元へ行くぞ!」

「了解!」

 

 ショウのゲシュペンストが敵に突っ込む。

 チトセ達が、そして鋼と龍達もそれに合わせるように突撃を開始した。

 

 

 

 

 

「本当に援軍が来たのか……!」

「カミーユ!」

 

 破損して使えなくなったハイパー・メガ・ランチャーを放棄しながら、次々にこの宙域に現れる存在に驚きの声を上げた。

 傍に居たファもまたやってきた存在から放たれる優しさに困惑しつつも、助けが来てくれた事に喜色の表情を浮かべる。

 だけどそれだけではない。

 

「アレは……!」

 

 目の前の敵が撃ち抜かれる。

 それを行った機体を見てカミーユもファも今日一番の驚きの表情を浮かべた。

 

「ガンダムMK-Ⅱ……!まさかエマさんか……!」

「それだけじゃないわカミーユ!アレは……!」

 

 ガンダムMK-Ⅱだけではないリック・ディアス、パラス・アテネ、ボリノーク・サマーン、サイコガンダム、サイコガンダムMK-Ⅱなど二人に縁がある機体達が現れたからだ。

 その乗り手達は確認するまでもない。

 共に戦った戦友達であり救えなかった人であり、心を触れ合った人達であるのだから。

 

「一緒に戦ってくれるのか、みんな……!」

「ええ、ええ!そうよカミーユ!みんな助けに来てくれたのよ!」

 

 声を聞くまでもなく彼等はZガンダムとメタスを中心に陣形を取る。

 そして見知った相手だけではない。

 赤や黄に染まったZガンダムや白鳥のような白い機体、百式の意匠を持ち合わせたZタイプ、妖刀を思わせるようなガンダムタイプも駆けつけてきている。

 否、それだけではない。

 

「あ、れは……!」

 

 妖精の女王を名を冠する白い機体。

 その中から発せられるプレッシャーにカミーユはすぐに気づいた。

 忘れる訳がない。

 

「シロッコ!!」

 

 傲岸なその気配は間違いなくカミーユがかつて倒した相手そのものである。

 どうしてこの場に現れたのか。

 復讐なのか、それともその力で再び自分の理想の世界へ導こうと言うのか。

 一瞬、だが永遠とも言える時間の中で思索にふけったカミーユに向けてその銃口を向ける。

 

「っっっ!」

 

 それに気づいたファが声を上げようとするがもう遅い。

 しかしカミーユの心は驚く程、落ち着いていた。

 シロッコが何をしようとするか分かっているように。

 

「……え?」

 

 銃口から放たれたビームはZガンダムの後ろにいた敵機を正確に撃ち抜いていたからだ。

 ファは呆然とした声を出し、エゥーゴの仲間達もまた驚いた様子を見せているようだ。

 

「世界をあんな奴の好きにさせるのは面白くない、か」

 

 カミーユだけは正確にその理由を理解した。

 するとお返しのようにカミーユもまたシロッコを狙おうとした敵をビームライフルで撃ち抜く。

 それが返答のように。

 カミーユのZガンダム、シロッコの白い機体。

 それが背中を預けあうと恐ろしい勢いで敵を駆逐していく姿は息のあったコンビのようであった。

 

「ふん、同窓会になっちまったな」

「ああ」

 

 ヤザンとジェリドもまた懐かしい顔ぶれに顔を綻ばせていた。

 戦友や愛した人。

 彼等にとっても無視できない人々である。

 

「ふん、だがそれだけではないな」

 

 ジェガンタイプにガンダムタイプ、しまいに赤いゲルググも現れてヤザンと肩を並べていた。

 

「未来か平行世界とやらで俺と一緒に戦う連中か。それにしては色々と混ざっているがな」

 

 連邦とジオン、両方の機体が混じりあった編成にそんな言葉を漏らす。

 だがその実力は間違いない。

 特にゲルググとガンダムは間違いなくエースクラスの連中だろう。

 その中心にいる赤いゲルググにはあの幻獣のエンブレムが描かれている。

 真紅に染め上げれた幻獣のエンブレムを持つ相手など一人しかヤザンには思いつかなかった。

 

「だが腕はいいし、どこか信用もできる。力を存分に貸して貰おうか!」

 

 二人もまたビームで敵を撃ち抜きながら、敵中心に突撃を開始した。

 

 

 

 

「万丈の兄ちゃん!」

「来たか勝平君!」

 

 ザンボット3とダイターン3もまた背中を預けながら襲い掛かる敵の波の中を突き進んでいた。

 無敵超人や鋼人と言われた機体であってもその物量を完全に捌き切る事は出来ず装甲に刻まれる傷跡も大きくなってきている、

 機体に寄せる信頼やパイロットの根性で傷は治る事はない為、可能ならば補給を兼ねて母艦に一度戻りたい所であったが、現実そんな時間はない事は四人とも理解していた。

 今は無理を通してでも前に進む時なのだ。

 修理不可能な程、ダメージを受けるかもしれない。

 だがそれでいいのだ。

 今この時、世界を守らなければ何もかもが終わってしまうのだから。

 

「くぅ!」

「勝平君!」

 

 だが限界がこない訳ではない。

 数の暴力は確実に着実に二機の機体から戦闘能力を奪っていく。

 万丈がなんとか起死回生の一手を探さんと目を凝らすが、そこに映るのは敵の姿のみ。

 その足が止まる、そう思われたその時。

 

「……!」

 

 鳥が宇宙を舞った。

 

「おい、勝平……」

「ああ、見えてるぜ」

「うん、私にも見える……」

 

 鳥型のオーラを纏ったロボットがザンボット3とダイターン3に襲い掛かってきた相手を蹴散らしていったのだ。

 見た事もないロボットだ。

 しかし、どこか懐かしく見覚えもあるような、気がする。

 理由は不明だが、ザンボット3に似ているような気さえしてくる。

 

「助かったよ」

 

 万丈が礼を言うのはやってきたロボットについてきた大型の戦闘機らしき機体から補給を受けた為だ。

 完全とは言えないが、戦闘継続はこれでまだまだ可能のようである。

 

「行けるかい?」

「勿論だぜ」

 

 力強く頷く勝平。

 敵は未だに無数の敵。

 だがここで立ち止まる訳には行かないのだから。

 

「ならまずは敵陣に穴を開ける!用意はいいかい、君達!」

「万丈の兄ちゃんの頼みじゃ仕方ねえ!」

 

 ダイターン3とザンボット3が並び立つ。

 そして鳥型のオーラを纏ったロボットもまた二体の横に並ぶ。俺達の力を見せてやろう、とばかりに。

 

「よし、では行くぞ!」

 

 太陽が、月が、そして鳥が。

 その力を解放した。

 

 

 

 

「シンジ君、13号機はもう動かない。初号機に乗り換えるんだ」

 

 身を犠牲にした13号機はもはやスクラップ同然。

 今はレイの零号機によって戦艦へと運ばれている状況だ。

 通信を聞けば既に初号機の出撃準備が始まっているようである。

 

「カヲル君はどうするの?」

 

 と聞いてみるが、既にカヲルが扱える機体はない以上、艦内待機だろう。

 しかしカヲルから笑みが零れる。

 

「そのつもりだったんだけど、どうやらあちらから来てくれたみたいだ」

「え?」

 

 13号機が艦に収容されると二人の目の前に突如、光と共にロボットが、いやエヴァンゲリヲンが現れたではないか。

 

「これは……!?」

「エヴァンゲリオンMark.06。本来、僕の搭乗機だった子だよ」

「カヲル君の……!」

 

 13号機から降りると、カヲルは迷わずMark.06の元へと向かう。

 周りの整備員達からは止められるが、大丈夫とだけ言うと無重力を利用してふわりとMark.06の巨体へと乗り込んでいく。

 

「シンジ君、急ごう。援軍が来たとは言え戦況は決していいものじゃない」

「分かったよ!初号機、出ます!」

 

 格納庫からMark.06が飛び出していくのを見届ける事なくシンジもまた初号機へと乗り込む。

 するとその手には見た事もない武器、大型の日本刀が握られている。

 

「これは?」

「知らん!気が付いたら持ってた!」

「なんて無茶苦茶な!」

 

 整備員の返答に思わず声を荒げてしまうシンジ。

 だがどういう訳がその武器からは嫌な感じがしない。

 多分、これもまたあの光に導かれてやってきた平行世界の武器という事か。

 

「置いていくか!?」

「いえ、持っていきます!」

「分かった!」

「初号機!行きます!!」

 

 遅れてシンジも飛び出すと、先に戦闘を開始していたメンバーから次々と通信が入ってくる。

 

「遅いわよバカシンジ!」

「碇君、大丈夫?」

「場はすっごいあったまってるよぉ!」

 

 ごめん、とだけ返して近くにいる敵を日本刀で両断する。

 カヲルのMark.06の槍を回収して武器として使っているようだ。

 

「お、こっちにも誰か来たね」

 

 マリが何かに気づいたように声を上げる。

 他のメンバーの所に援軍が来たように、シンジ達の元にも駆けつけてくれた人達が来たようだ。

 だがそれを見た時、まず最初に喜びではなく困惑と戸惑いと言った表情が浮かんできた。

 なぜならば……。

 

「3号機……ですって……!?」

 

 アスカから驚愕の声が出る。

 使徒に乗っ取られ破壊された筈のエヴァンゲリオンがどうしてここにやってきたのか。

 敵としてあの邪神に呼び出されたのかと思った瞬間、3号機がパレットライフルで次々に敵を撃ち抜いていく。

 更にはA.T.フィールドを展開してそれを敵にぶつけるという攻撃も行っているではないか。

 3号機の動きに皆が驚いている中、シンジだけはそのパイロットの存在を感じ取っていた。

 

「トウジ……?」

 

 地球にいる筈の友人の鼓動を感じて困惑する。

 敵をある程度、破壊した3号機はそんなシンジにまるで気にするな、と手を振る。

 ああ、とそんな動きを見て納得する。

 間違いなく3号機のパイロットは友人である鈴原トウジなのだと。

 だが次に現れたエヴァンゲリオンを見て、本気で困惑する事になる。

 

「白いエヴァ?」

 

 その手にランス持つからA.T.フィールドを発生させ敵を薙ぎ払っていく機体。

 こちらはまるで見覚えがない。

 ない、筈である。

 アスカ以外は。

 

「2号機……?」

 

 それはどこか2号機に似ている、ような気がする。

 そしてその中にいるパイロットの気配にもシンジと同じようにすぐに気づいた。

 

「ヒカリ……!?あんたが乗ってるの!?」

 

 大人びた気配があるものの、間違いなく友人である洞木ヒカリである事に気づいた。

 何故、彼女がエヴァンゲリオンに乗っているのか。

 驚愕、しかし聡明なアスカはすぐに納得する、せざるを得ないでいた。

 

「ああ、もう平行世界ってなんでもありね!ヒカリ!あわせるわ!」

 

 すぐにヒカリのエヴァンゲリオンに動きをあわせるアスカ。

 似た気配を放つ二体のエヴァンゲリオンはまるで姉妹のような動きで次々と敵を屠っていく。

 

「はー、エヴァっていっぱいあるもんだニャー」

 

 トウジとヒカリ以外にも複数のエヴァンゲリオンが援軍として駆けつけている様子から、マリも本気で驚きの声を漏らす。

 どうやら世界は思った以上に広いようだ。

 

「初号機……?」

 

 そして日本刀を構えていた初号機もまた新たな変化を迎えていた。

 

「これ……!」

 

 背中には見覚えのない四枚の可動式パイロンが増えており、出力も初号機と比べ物にならないぐらい向上しているように感じられる。

 

「並行世界の初号機……?」

 

 シンジから困惑の声が零れる。

 どこか母の匂いが感じられた初号機とは違い、この変容した初号機はまるで自分自身そのものに感じられるからだ。

 だがその困惑は今は必要なかった。

 世界を救えるのならば、この変容した初号機はむしろ歓迎すべきだからだ。

 

「……行こう(最終)号機」

 

 それだけ呟くとここに集った仲間達のエヴァンゲリオンを見渡す。

 

「みんな行こう!」

「ああ、行こうシンジ君」

 

 駆けつけてくれた仲間達と共に突き進む。

 それこそが世界を救う道などだと信じて。

 

 

 

 

 

「アイアンカッター!!」

 

 甲児の雄叫びと共にマジンガーZEROから放たれた一撃が無数の敵を容赦なく粉砕する。

 出力が高すぎて下手な攻撃を撃つと味方を巻き添えにしかねない一撃もこの状況ならば容赦なく放てる事が出来た。

 

「しかし数が多い!」

 

 その後ろを守るように鉄也のマジンエンペラーGがエンペラーブレードで敵を切り刻んで行く。

 二体の魔神は異界の道を作る為に大量のエネルギーを消費したばかりだが、そんなもの関係ないとばかりに敵陣を蹂躙していく。

 だが鉄也の言う通り数が多い、多すぎる。

 大体の相手は戦闘にもならない雑魚ばかりだが、時折戦闘が成立する敵も現れる為、油断はできないでいた。

 

「鉄也さん!」

「でかいな」

 

 巨大な丸太のような戦艦を見つけて呟く。

 周りには無数の円盤型の戦闘機が従っている姿が見られる。

 敵ではない。だが面倒だ、と二人が思ったその瞬間。

 閃光が走った。

 

「何……!?」

「あれは……?」

 

 一瞬にして旗艦らしき巨大戦艦が墜ちていく。

 それを成したのはその中心部で半月状の鎌を装備したロボットであった。

 

「あれは……」

 

 知っている。

 兜甲児はそのロボットを――マジンガーZ、グレートマジンガーに続く第三の魔神を知っている。

 宇宙の王者と呼ばれるそのロボットを。

 

「……」

「……」

 

 マジンガーZERO、マジンエンペラーG、そして宇宙の王者。

 静かな対面であった。

 数多の世界において出会う事がなかった三者はこの世界でようやくこうして出会う事になった。

 だが甲児としてはZEROの事が心配であった。

 未だに彼は自分がもっとも最強のロボットであるという考えを捨てていない。

 だからこそ敗北から産まれたグレートマジンガーを許さなかったし、その先にいる宇宙の王者もまた粛清対象と考えていてもおかしくない。

 一分にも満たない、どこか緊迫した対面を終わらせたのは意外にもZEROであった。

 

「ZERO……?」

 

 甲児に急かすように敵に攻撃を加え始めるマジンガーZERO。

 そんな様子を背中で見ていた鉄也達は首を傾げるが、甲児だけはすぐに気づいていた。

 

「なんだよZERO。そう言えばいいだろうに」

 

 小さく笑みを浮かべながらZEROの考えを理解した甲児が気合を入れなおして敵を叩き落してく。

 ZEROはそれに答える事なく自分の前に立ちはだかる敵を粉砕し行った。

 それを見た後、残された二人は顔を見合わせて笑みを浮かべると頷き合う。

 二人もまた理解したのだ。

 

「行くか」

 

 鉄也の言葉に、ああと頷くと魔神皇帝と宇宙の王者も終焉の魔神の背中を追う。

 

「最強の力を見せてやるから背中で見てろ、か。もう少しいい言い方があるんじゃないかZERO」

 

 そんな小さい呟きは誰に届く事もなく消えていく。

 それと同時に三体の魔神は無数に現れる敵を容赦なく消し飛ばしていた。

 誰にも止められない、止まる事がない魔神達の進撃であった。



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